衆議院

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第2号 平成16年3月2日(火曜日)

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平成十六年三月二日(火曜日)

    午前九時開議

 出席分科員

   主査代理 萩野 浩基君

      丹羽 雄哉君    稲見 哲男君

      海江田万里君    川端 達夫君

      菊田まきこ君    中村 哲治君

      樋高  剛君    石田 祝稔君

   兼務 山田 正彦君 兼務 石井 郁子君

    …………………………………

   法務大臣         野沢 太三君

   外務大臣         川口 順子君

   法務副大臣        実川 幸夫君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   法務大臣政務官      中野  清君

   外務大臣政務官      田中 和徳君

   厚生労働大臣政務官    竹本 直一君

   最高裁判所事務総局民事局長

   兼最高裁判所事務総局行政局長           園尾 隆司君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 関   一君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    房村 精一君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    樋渡 利秋君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  増田 暢也君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           新島 良夫君

   法務委員会専門員     横田 猛雄君

   予算委員会専門員     清土 恒雄君

    ―――――――――――――

分科員の異動

三月二日

 辞任         補欠選任

  海江田万里君     稲見 哲男君

  河村たかし君     川端 達夫君

  石田 祝稔君     赤羽 一嘉君

同日

 辞任         補欠選任

  稲見 哲男君     菊田まきこ君

  川端 達夫君     樋高  剛君

  赤羽 一嘉君     赤松 正雄君

同日

 辞任         補欠選任

  菊田まきこ君     海江田万里君

  樋高  剛君     中村 哲治君

  赤松 正雄君     漆原 良夫君

同日

 辞任         補欠選任

  中村 哲治君     河村たかし君

  漆原 良夫君     石田 祝稔君

同日 

 第二分科員山田正彦君及び第八分科員石井郁子君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十六年度一般会計予算

 平成十六年度特別会計予算

 平成十六年度政府関係機関予算

 (法務省及び外務省所管)


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     ――――◇―――――

萩野主査代理 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。

 主査の指名により、私が主査の職務を行います。

 平成十六年度一般会計予算、平成十六年度特別会計予算及び平成十六年度政府関係機関予算中法務省所管について、政府から説明を聴取いたします。野沢法務大臣。

野沢国務大臣 平成十六年度法務省所管の予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 法務省は、治安、法秩序の維持確保及び国民の権利保全など国の基盤的業務を遂行し、適正、円滑な法務行政を推進するため、現下の厳しい財政事情のもとではありますが、所要の予算の確保に努めております。

 法務省所管の一般会計予算額は六千七十二億五千六百万円、登記特別会計予算額は千七百四十五億八千六百万円、うち、一般会計からの繰入額が七百十八億六千万円でありますので、その純計額は七千九十九億八千二百万円となっており、前年度当初予算額と比較いたしますと、五十三億三千万円の減額となります。

 何とぞよろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。

 なお、時間の関係もございますので、お手元に配付してあります印刷物を、主査におかれましては、会議録に掲載されますようお願い申し上げます。

 以上です。

萩野主査代理 この際、お諮りいたします。

 ただいま野沢法務大臣から申し出がありましたとおり、法務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

萩野主査代理 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

萩野主査代理 以上をもちまして法務省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

萩野主査代理 この際、分科員各位に申し上げます。

 質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。

 なお、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は特に簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲見哲男君。

稲見分科員 おはようございます。民主党の稲見哲男でございます。

 きょうは、中国残留日本人の継子、養子家族の在留資格についてお伺いをしたいと思います。

 私の選挙区は、大阪市内の淀川の右岸、東淀川区、淀川区、西淀川区、そして左岸の此花区でございます。その中で、今申し上げましたように、中国残留孤児吉岡勇さんの再婚相手の継子、いわゆる連れ子でございますが、鄭さん、尚さん家族九人が、九七年四月に来日をいたしまして、私の選挙区の東淀川区に住んでおりました。五年半経過をした一昨年の十一月に、突然、大阪入管から、入国許可要件の血縁はないと判明した、こういうふうなことで、在留資格を取り消されております。

 鄭さん、尚さんの家族を支援する会が結成をされまして、私も結成集会に参加をいたしました。お孫さんに当たるんですが、子供たちが通う小学校や保育所、そしてPTAや保護者会、それに連合町会長など、地域ぐるみの支援、支える態勢ができまして、そういう意味では、鄭さん、尚さんが地域に根差していたというふうな感銘を受けました。

 そういう中で、約八万人分の嘆願署名を法務大臣に提出するなどの結果、昨年六月二十日に在留特別許可がおりました。このこと自身は喜ばしいことですが、同様のケースが頻発をしているというふうにお聞きをいたしております。よって、まず実態についてお聞きをいたしたい。

 一つは、中国残留日本人の家族として一度は日本での在留を許可した者のうち、後に在留資格を取り消した件数、家族数、人数はどれだけあるのか。二つ目に、そのうち、家族の実態はあるものの、継子、養子家族であったために在留資格を取り消した件数、家族数、人数はどれだけあるのか。三つ目に、一方、継子、養子家族で、この鄭さん、尚さんの家族のように在留特別許可が出された件数、家族数、人数はどれだけあるのか。また、同様のケースということで、現在、退去強制命令の取り消しを求めて訴訟が提起をされている件数、家族数、また人数はどれだけあるのか。さらに、この継子、養子問題が中国残留日本人の円滑な帰国の障害になっているとするならば、現在中国でお暮らしの中で、継子、養子家族のある中国残留日本人はどれぐらいおられるのか。この五点についてお聞きをしたいと思います。

増田政府参考人 お尋ねの点について、順次お答えをいたします。

 まず、いわゆる中国残留日本人家族というカテゴリーでは、私ども、統計をとっておりませんので、詳細にお答えをすることは困難でございますが、日本人の子や孫、あるいはこれらの家族ではないことが判明して在留資格を取り消した件数は、ここ数年、毎年二百件以上はあると承知しております。その中で、お尋ねの、継子、養子家族であったために在留資格を取り消された件数はどれくらいかということですが、これは、先ほど申しましたとおり、いわゆる継子や養子に係る人数ということでは特に集計しておりませんので、これについてはお答えをいたしかねますし、したがって、それを前提として、継子、養子であって取り消された者が、その後、在留を特別に許可された件数はどれぐらいかということにつきましても、前提の数字を把握しておりませんので、その在留特別許可件数についてもお答えいたしかねます。

 現在、この継子、養子を理由として在留資格を取り消されて退去強制令書が発付された者について、その取り消し訴訟がどれぐらい起こされているかでございますが、現在係属している件数は、五件六家族二十一名の訴訟が係属しております。

新島政府参考人 中国残留邦人のうち、現在中国に残っている者につきましては、五百五十名でございます。このうち継子及び養子家族がいる者の数につきましては、把握してございません。

稲見分科員 戦後六十年近くたちまして、まだ未解決な中国残留日本人が五百五十名おられるということの中でこの継子、養子問題を考えていくにつきまして、今、退去強制命令を受けるということは非常に当該家族にとっては深刻なことでございますので、その点についてはもう一度、大変御苦労をおかけしますけれども、平成十三年から十五年、この問題が顕在化をしました例えば三年間の実態について、ぜひお調べをいただき、後日でも結構ですので、御回答いただければというふうに思います。

 次に、この継子、養子家族の在留資格が取り消された、その根拠になった法令についてお聞きをいたしたいと思いますとともに、問題になっておりました中国人養父母や中国残留日本人の継子、養子の日本への上陸、在留で特例があるとするならば、どういうふうな形があるのか、お教えをいただきたいと思います。

野沢国務大臣 委員お尋ねの中国残留日本人家族の方は、出入国管理及び難民認定法の第二条の二で定められておりますが、「日本人の配偶者等」または「定住者」の在留資格により入国、在留されていますけれども、この二つの在留資格の対象者には、中国残留日本人の継子や養子及びこれらの者の家族は含まれておりません。

 したがいまして、入国後、この二つの在留資格の対象者でないことが判明した場合には、出入国管理及び難民認定法に規定する上陸のための条件に適合していないということから、瑕疵ある行政処分として、取り消されることになるわけでございます。

稲見分科員 私も先ほど申し上げましたように、鄭さん、尚さんの家族の支援をする活動に少しだけ触れました。その中で、多くは、実子と偽って入国をして、その後、継子、養子であることが判明した、こういうことが取り消しの経過になっているというふうに思います。

 その点でお聞きをしますと、中国では、一般的な公証書には実子とか養子とかこういう記載をすることは余りなくて、子という表現が用いられることが多い、こういうふうにお聞きをいたしております。入国の段階で実子であるということを確認するためには出生公証書の提出指導というのが必要だったのではないか、もしそこまでの指導がなされていないとするならば、在留資格を認めた段階での入管の側の瑕疵があったのではないか、こういうふうに考えております。

 吉岡さんの家族の場合、再婚の年月日、それから家族の誕生日、これを正確に記した書類を入管に提出いたしております。子供たちが生まれた生年月日より後で再婚をしているということは明確でありますし、国内の身元引受人になりました中国帰国者センターの竹川理事長が連れ子であるということを明確に伝えておったというふうに私は聞いております。

 この点、実子であることの確認を十分してこられたのかどうか、その点についてお聞きをいたしたいと思います。

増田政府参考人 中国残留邦人等の家族として在留資格認定証明書の交付申請がありました場合には、日本人との関係を証明する公証書の提出を求めておりますが、その公証書の中には、今委員がお尋ねの出生公証書、これも含まれております。私どもといたしましては、そのような出生公証書の提出などを求め、問題の人物が日本人の実子であることの確認を求めてきているわけでございます。

稲見分科員 出生公証書あるいは親族関係公証書、これを提出したときに、中国の側の扱いとして、父親はだれだれ、母親はだれだれ、養子関係も継子関係も含めてそういうふうに記載をされているならば、実子かどうかというところまでそれでは確認できないんじゃないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。

増田政府参考人 先ほども申しましたが、私どもが出生公証書の提出を求めるのは、上陸を許可する要件として、日本人の実子であることが要件となっているために、実子であることの証拠をお出しくださいと。そういう観点から出生公証書の提出あるいは親族関係公証書の提出を受けて、それに基づいて、本当に中国残留邦人の方の実子なんですねということの確認をして、これは実子であると判断できた場合に在留資格認定証明書を交付してまいったわけでございます。

 したがって、入管の方で、この方が継子である、あるいは養子であることをわかった上で入国や在留を許してきたということはございません。

稲見分科員 先ほどの、根拠になった法令のところでお聞きをしたことですが、もう一度教えていただきたいと思います。

 中国人養父母の扶養問題がここで問題になって、養父母についても入国を認める、こういうことになっておりますし、あるいは離れられない家族としての一つの単位があって、初めから、これは継子、養子であるけれども何とか認めてほしいというふうな事前からの申し出があった場合、どういう特例があるのか。この二つについて、もう一度お聞きをしたいと思います。

増田政府参考人 在留資格につきましては、先ほど大臣の方から御答弁がありましたように、「日本人の配偶者等」という在留資格に当たるかどうか。ここには、日本人の特別養子である、あるいは日本人の子として出生したことなどが要件となっております。それともう一つは、「定住者」という在留資格が考えられます。これは、日本人の実子として生まれた子供であることなどが要件として定められております。

 ところで、お尋ねの、どうしても、養子などで、しかしやはり家族としてのこれまでのいきさつがあったから、残留邦人が日本に帰国したのを受けて、その養子などが日本に来ることについて何がしかの措置が考えられるかというお尋ねでございますが、これについて考えられますのは、残留邦人等が先に帰国して、その後、別途日本に来たいという養子等があった場合、日本に来るということで査証申請が出されることになります。査証申請が出された場合、それは法務省に対して査証を出していいかどうか協議が外務省の方から来ることになりますが、その協議の段階で、養子となった時期、あるいはその方たちの中国における家族の状況、こういったものを踏まえまして、これは日本にお迎えしても適当であろう、そういう事情が認められる場合には、個別に入国を認めるということが妥当であると考えます。

稲見分科員 それでは、少し質問を変えてみたいと思います。

 先ほど、定住者にかかわって、法務省告示百三十二号、こういうことがございましたが、その中で、インドシナ難民については養子であっても在留を許可する、こういうふうに特に明記をされております。インドシナ難民を受け入れる国際的な責務と同時に、すべての中国残留日本人の円滑な帰国に向けてはこの法務省告示の改正が必要ではないか、こういうふうに私は考えておりますが、いかがでしょうか。

野沢国務大臣 委員御指摘のように、インドシナ難民に関しては経緯がございます。

 ベトナム戦争の終結時、これは昭和五十年だったと思いますが、その前後の混乱によって生じました難民につきまして、昭和五十年十二月に国連総会において人道的援助の決議が採択をされております。また、昭和五十四年の六月には東京サミットでインドシナ難民の救済と再定住の促進を増大する旨の特別声明が出され、同年の七月にはジュネーブでインドシナ難民問題の国際会議が開催されるなど、インドシナ難民に対する国際的枠組みでの人道支援が要請されておりました。

 このような国際情勢を踏まえまして、我が国も、昭和五十四年七月十三日の「インドシナ難民対策の拡充・強化について」とする閣議了解、及び、五十五年六月十七日の「インドシナ難民の定住対策について」とする閣議了解において、アジア諸国に一時滞在しているインドシナ難民やベトナムからの家族呼び寄せケース、いわゆる合法出国計画につきまして、養子を入国許可の対象者に含むことといたしました。

 このように、入国許可の対象者に呼び寄せ人の養子を含むこととしたのは、国際世論の要請に適切にこたえるために、政府全体の判断によりとられた措置であると承知しております。

稲見分科員 そのことについては、私も評価をしたいと思います。したがって、この中国残留日本人の問題で同様の配慮というものが必要なんではないかというふうに思っております。

 そういう意味で、少し歴史的な問題を含めてお聞きをしたいと思います。中国残留日本人が存在する歴史的な背景について、さらには、中国残留邦人、中国残留孤児、中国残留婦人等、こういうふうに呼び方が違う経過はどうしてか、そして、とりわけ残留孤児、残留婦人等の帰国がおくれた理由について、この点、認識をお聞かせいただきたいと思います。

新島政府参考人 お答えいたします。

 昭和二十年ごろにおきまして、中国東北地域におきましては開拓団員を初め多くの日本人が居住していたわけでございますが、壮年男子の多くは現地応召ということで、残されたのは婦女子が主体ということでございます。昭和二十年八月九日のソ連参戦後におきまして、これらの人々は居住地を追われることとなりまして、避難する途中あるいは収容所において死亡するなどの事態が生じたところでございます。

 このような状況の中で、生活手段を失い、中国人の妻となるなどして中国にとどまった婦人等を中国残留婦人等と言っております。それから、肉親と生き別れあるいは死別をいたしまして、中国人に引き取られ、自己の身元を知らないまま成長した者を中国残留孤児と呼んでおります。これらの人々を総称いたしまして、中国残留邦人という言い方をしているところでございます。

 それから、帰国の関係でございますけれども、終戦から昭和四十七年九月までの日中国交正常化以前におきましては、中国との往来が自由でなかったことから、中国から帰国することは困難であったというふうに考えております。また、国交正常化後におきましても、長年にわたりまして中国に居住したことによりまして、既に現地での生活基盤が築かれており、それを直ちに解消して帰国するということは困難であったのではないか、そういう事情もあるのではないかと考えておるところでございます。

稲見分科員 敗戦直前の状況について、私もそういうふうに認識をいたしております。

 実は、私の父は満蒙開拓団の指導員でございました。大阪府交野市の私市というところに訓練道場がございまして、青少年義勇軍、それと一緒に満州に行く前に敗戦になりましたから、父親はそういう状況に至りませんでした。もしもということを考えますと、私も、私は二十三年生まれでございますが、少し違えば、私は生まれていなかったか、あるいは今おっしゃったように、満州で死亡していたか、あるいは残留孤児になっていた、こういうことでございます。

 そういう中で、先ほど中国の建国なり国交の断絶の中で非常に困難をきわめたということでございますが、特にこの残留孤児、残留婦人等ということで少し私の考え方を申し述べます。

 残留孤児、残留婦人の在留資格を、きょうは特にそこに限定をしてお聞きしているわけですが、厚生労働省からも回答がありましたように、敗戦直前にソ連の侵攻によって中国残留日本人が経験をした地獄の惨状は想像にかたくない、こういうふうに思っております。その後も、国共内戦や中国建国、日本との国交断絶によって引き揚げが中断をし、孤児も婦人等も中国人家庭に入ることで辛うじて生き延びてきたというふうに考えます。

 国交正常化後も帰国策は遅々として進まず、昭和五十年三月に厚生省が初めて中国残留邦人の公開調査を実施いたしております。そして、五十三年に「帰還者等に関する調査及び処理実施要領について」を出して、昭和五十六年三月、ようやく残留孤児の第一回訪日調査が実現することになった。しかし、帰国者の養父母の扶養問題や家族との離別など新たな問題も生じて、本格的に帰国が再開をされ進展するのは昭和五十八年から、そして平成十一年の三十次をもって集団訪日調査は終了した、こういう経過を持っております。

 特に、残留婦人については、自己の意思で残った者という見解から、昭和六十一年まで訪日調査の対象にもならず、日本在住の親族からの申請かつ身元保証がなければ帰国できなかった。平成五年に残留婦人十二名の強行帰国が社会問題化する中で、ようやく平成六年に、中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立支援に関する法律、これが制定をされたというふうに思っております。

 このように、中国残留日本人の帰国問題は、日本の侵略戦争の犠牲になった開拓民家族らに対して保護措置及び祖国への帰還を速やかに講じなかった結果であるというふうに考えざるを得ません。

 そういう意味でいいますと、特に法務大臣にお願いをしたいわけですが、全く偽装ではなく家族として実態があり、かつ養子、継子家族であるために在留資格を取り消されているものに対して、ぜひ、在留特別許可を積極的に与える方針を持っていただきたいというのが一つ。

 それから、現実に私も、尚さん、鄭さんの関係で感じましたけれども、家族がともに生活できる権利があるとした国際人権規約、それに、日本においでになってから二人目、三人目のお子様が生まれた、お孫さんが生まれたということからいいますと、中国の一人っ子政策で、帰ると十分な教育を受けることもできない、こんな現状。教育を受ける権利を保障した子どもの権利条約から、この問題についても何らかの手だてを打たなければならないのではないか、こういうふうに思います。

 積極的な在留特別許可、あるいは先ほど申し上げましたけれども法務省告示の改正、こういう点について、法務大臣の積極的な御答弁をお願いしたいと思います。

野沢国務大臣 委員が、この中国残留孤児の問題につきまして、大変深い御理解と御尽瘁をいただいておりますことに敬意を表するわけでございます。

 私も、中国を訪れる機会がありました折には、先方での残留者の皆様との懇談その他を通して、いささかなりとも微力を尽くしてきた者でございますが、今お尋ねの問題につきましては、それぞれ個々の事案ごとに、上陸許可時の経緯、あるいは在留を希望する理由、家族、生活の状況等、内外の諸事情、その他諸般の事情を総合的に考慮しまして、許可すべき事情がある者に対しましては、これまでも在留を特別に許可してまいりましたし、今後もその方針で臨みたいと考えております。

稲見分科員 きょうは分科会ということで、十分私も意を尽くした質問にならなかったかと思います。私自身は法務委員会の所属ではございませんが、先ほど申し上げたような経緯がございまして、ぜひ、私自身も勉強しながら、また、法務省や厚生労働省といろいろ議論をしながら、この問題、改めて御質問をする機会を持ちたいというふうに思っております。ぜひ、大臣におかれましても、今後ともよろしくお願いしたいと思います。

 また、先ほどございました実態についての調査については、大変御苦労をおかけしますが、よろしくお願いいたします。

 きょうは、法務の関係の分科会でございますのに厚生労働省からも参加をしていただきまして、感謝をいたします。

 質問を終わります。

萩野主査代理 これにて稲見哲男君の質疑は終了いたしました。

 次に、川端達夫君。

川端分科員 民主党の川端です。

 大臣、副大臣、よろしくお願いいたします。

 私は、今回は、いわゆる地図混乱解消に向けてという政府の取り組みについてお尋ねをさせていただきたいと思います。

 総理は、この常会における施政方針演説の中で、「土地の境界や権利関係を示す地籍の調査を集中的に推進してまいります。」とお述べになりました。今まで私の記憶では、こういうことに関してお述べになったのは、私の経験では初めてでございました。

 それを受けてだと思いますが、大臣の所信の中に、「登記所備えつけ地図の全国的な整備や」云々というのがありまして、「多方面にわたる法務行政上の諸課題に積極的に取り組んでまいります。」ということで、登記所備えつけの地図の全国的な整備を行う、こういうふうにお述べになりました。

 内閣の都市再生本部が、これは総理が本部長でございますが、いわゆる都市の再生ということをテーマに大きくやっておられる中に関係をしているんだとも思うんですけれども、現実には、地籍、地図の混乱地域というのは相当あるわけですが、こういうふうな発言というか、施政方針、所信を言われた背景と問題意識を法務大臣としてはどのようにお考えになっているのか、まずお尋ねさせていただきたいと思います。

野沢国務大臣 委員御指摘のとおり、土地の問題は、国民の生活基盤でもあり、また社会活動の最も大事な基盤の一つでもあるわけでございまして、私も、かねてから、土地の適切な管理を行うために地図、地籍を適切に管理するということは、国の基を定め、そしてまた御指摘のように、最近重点的に取り組んでおります都市再生という大きな課題を達成するために必要不可欠の仕事と考えておりまして、総理の施政方針演説並びに、私としても所信の中で盛り込ませていただきました。

 今後とも、この問題についてはしっかり取り組みまして、おくれております課題につきましては、御要請にこたえられるよう頑張ってまいりたいと思っております。

川端分科員 この一連の政府の公式な、今回の施政方針演説、所信も含めて、地籍の混乱という用語が使われているんですね。

 例えば、平成十五年の土地白書においても、これは国土交通省ですが、地籍が混乱している状況が多く発生している、「ごく一部の地籍の問題によって再開発事業や土地の有効利用が妨げられることもある。」ということで、地籍、地籍というふうに書いてあります。都市再生本部でも地籍調査票云々という言葉が使われておりますが、地籍が混乱しているということは、実際は、地図が混乱しているんだと思うんですね。このことに関しては、地籍の混乱というのは地図の混乱であるという認識をすべきだと思うんですが、いかがでしょうか。

 それからもう一つは、土地白書においては「ごく一部の地籍の問題」というふうに書いてあるんですけれども、こういうふうに混乱しているという地域自身は、法務省としては、大体このあたりだということは特定して把握しておられるのかということと、地籍の混乱と地図の混乱は何か認識に違いがあるのか同じものなのか、お答えいただきたいと思います。

房村政府参考人 御指摘の土地白書で、地籍としては、所有者、地番、地目、境界及び地積というような、土地に関する最も基本的な情報ということで使われております。

 具体的に、御指摘の地籍混乱というのは、ただいま委員からおっしゃられましたような、地図が混乱している、登記所に備えられている公図が現況と一致していない、こういう状態を指していると理解しております。したがいまして、事実上、同じ意味であろうと思っております。

 また、その土地、地図が混乱している地域を把握しているかとのお尋ねでございますが、一応、各法務局において調査をいたしまして、おおむね、そういう混乱した地域については把握しているつもりでございます。

川端分科員 どうしてこういう事態が現在発生しているのかということはどのように認識されていますか。

房村政府参考人 公図と現況が大きく食い違ってしまっているということの原因としては、さまざまなものがございますが、主なものとしては、まず、宅地造成をいたしまして、きちんと所定の手続に従って地籍を訂正していただければよろしいんですが、そういうことをしないで私的に区画を整理してしまいまして、正確な登記手続がされていない、その結果、現況と地図が大幅に食い違ってしまっている、こういうものがございます。

 また、土地改良とか区画整理の事業をいたしまして土地の区画を変えたわけですが、その事業が途中で中止されてしまう。その結果、区画は変わったにもかかわらず、登記面あるいは地図の面にそれが反映していない。それから、水害とか地震とか山崩れ、こういうような災害によって土地の状況が変わり、しかも、その後、土地を勝手にいわば占有してしまって、現況と食い違ってきている。あるいは、一番ひどい例としては、公図そのものが最初から正確性を欠いたものであった。このようなさまざまな原因があると考えております。

川端分科員 現実に、そういうミニ開発や土地改良、災害とかも含めて、土地が、農地であり山林であるというふうなものが変化をした、あるいは壊れてしまったとかいうふうなときに起こったことは事実だと思うんですね。その部分で、ある意味、悪意があったのかどうかは別にして、ずさんな届け出がなされたということも事実だと思うんですね。

 しかし、問題は、そういうものが実態と乖離をしているものであっても登記できたというところにも問題があったのではないかと思うんですが、その部分の認識はいかがですか。

房村政府参考人 御指摘のように、本来、登記所の地図というのは、土地の現況を正確に反映したものでなければならないわけでありまして、そのために、実地調査など、登記機関が現地に赴いてその土地の所在あるいは形を確認するということも手続的に定められているわけでございます。

 ただ、何分、非常に事件が多かったというようなこともございますし、また、当事者から全く届け出がない場合には、なかなか、違っているという認識も持つきっかけがなかったというようなこともありまして、現状のような問題が生じてしまったということで、登記行政としても、過去のそういう点については反省をしているところでございます。

川端分科員 先ほど大臣もお述べになりましたように、土地の登記というものは、生活のまさに基盤であります。この部分が、いろいろな業者の問題があったにせよ、その基盤を保障し、管理している法務省の保有している部分が大変混乱をしているということは、私は、その責めは免れないと思うんです。それは犯人がだれかなんと言うつもりはありません。むしろ、一刻も早くこの状況を解消しなければならない。

 お尋ねをしたいんですが、こういうことによって、時間があれば後で若干触れますが、いろいろな混乱の中で、不都合が住民、当事者に生じている。確認しますけれども、この混乱で不都合を住民は受けているんですが、その住民、要するに善意の住民ですね、何か悪意でいろいろやった人は基本的に除いたとして、住民に、何かこういう部分に関して、混乱に責任はあるんでしょうか。

房村政府参考人 いろいろな原因があろうかと思いますが、基本的には、表示の登記につきましては、そういう土地の開発をした業者において責任を持って登記をしていただくというのが法の予定しているところでございますし、それを法務局として確認する責任はもちろんございますが、第一の原因としてはそこが挙げられる。そういう者から譲り受け、現に所有している方々が直接責任を負っているということはないんだろうと思っております。

川端分科員 そのとおりだと思うんですね。現に、登記簿のついている土地を手に入れて家を建て、住まいをし、そして税金を払っている。ところが、ある機会に知ったら、いわゆる法十七条地図はない、公図を見ると自分の地面がない、あるいは重複をしている。そして、ひどいのであれば、公図に区割りがしてあるんですが、どこにも当てはまらないから何か浮いたようなところに張りつけてあるというのが現実なんですね。それでいろいろなトラブルが起こってきた。

 例えば、これは報道された分で、平成十一年二月六日の朝日新聞で、公図と、市役所で作成された固定資産税の課税の基礎資料となっている地番図と、両方とも不正確であるため、国有地である土地が誤って裁判所の競売にかけられ、それを落札した人が建物工事を始めたところ、その土地が国有地であることが判明した。競売の対象となった土地は、登記簿も地番もあるにもかかわらず、実際には行方不明になっており、裁判所の執行官が別の地番の国有地を誤ってその土地だと認定して競売にかけてしまった。

 私の住まいしている大津市の隣に滋賀郡志賀町というのがございまして、そこに住吉台という、いわゆる山手を開発した住宅地があるんですが、ここでも、地元の大津の地方裁判所が、対象不動産の確定はできないが宅地造成団地の外縁部分の急斜面の草原と推定されるということで、資料をつけて競売にかけた。この土地はどこかはっきりわからないけれども、昔の公図で見ればこの急斜面の草原であったであろうというのをつけて競売にかけた。

 その土地は、実際には別の地番の土地として二十年以上前から家を建てて住んでいる人の土地であった。落札した人が地裁に、これは私の競売で買った土地だから、あなたが住んでいる家は私の土地だから明け渡してくださいという命令を、裁判所に起こしたところ、宅地造成団地の外縁部分の急斜面の草原と特定できないとして、明け渡し請求棄却の判決がおりた。

 裁判所が競売にかけて競売で買った土地をこれは私の土地だと言ったら、違う、これは私が住んでいるんだと言って、裁判に訴えたらおまえの土地じゃないと言われたというのは、何を信用していいのかと。こういう、本当に法治国家のベースとしての裁判所まで巻き込んで信じられないことが起こっている。そして、当然ながら全部税金とかは払っているというところへ住民は巻き込まれてしまったというのが実態です。

 それで、私が今例にとった以外にも、例えばこの滋賀県滋賀郡志賀町住吉台という地域は、道路はあるんですけれども、この道路までがいろいろ、公図上を含めては、だれの土地かわからないがだれかの土地になっているというのが入り組んでしまっているから、当然、私道。私道だけれども、本当に公道的な扱いがされる私道ではないという位置づけになってしまった。だから、通行権が保障されない。

 区画はきれいに割られて道路は走っているんだけれども、極端に言えば、その道路は違う区割りのもとに違う地番でだれかのものだという現実が存在している。だから、町としても、普通であればこれを開発して、この道路はみんなで寄附しますと言ったら公の道として引き取ってくれて舗装もやるんですけれども、わけがわからないからさわれない。本当に通っていいのかどうかもわからない。事実上、勝手に通っているだけだという事態も起こっている。

 ですから、舗装をしようと思ったら、みんなで、だれかがお金を払わないとできない。町もやってくれないからでこぼこなんですね。ごみの車が来るとか、いろいろな車が来たらバウンドして、本当に危険で、はまって自転車がひっくり返るということが起こっている。町に、どうにかしてこれを町道にしてくださいとみんなで言っても、それは地権が複雑であるからできないと。こんな被害までこうむっているという部分で、これは一刻も早く解決をしないといけない。

 先ほども、この部分に関して、経過の中のいろいろな不都合はあったけれども、そこに法務省の事務手続上きちっとなっていなかったということにおいては、結果においては、やはり責めはあると思うんですね。その部分では、こういうことをきちっともとへ戻さなくてはいけないというふうに思うんですけれども、どういうふうにこういう問題に対して対応していこうと思っておられるのか、まずお尋ねをしたい。

房村政府参考人 御指摘のように、地図が混乱しておりますと土地の権利関係がわからない、そういうことから、それぞれ、その土地をお持ちの方、あるいはそこに住んでおられる方の権利関係が不明確になる、さらには道路をつくるというような行政の面でもいろいろな不便が生じている。まことに、地図というのはいかに基本的なものであるかということを物語るものだろうと思っています。

 私どもとしても、原因はいろいろ考えられるところではありますが、いずれにしても、そういう事態を早急に解決することが望まれているわけでございますし、登記行政を預かっている法務省といたしましても、可能な限り速やかにそういう地図の混乱した地域を解消していきたい、こう思っているところでございます。

 そのために、法務局が中心となって、不動産登記法で備える地図、十七条地図と申しておりますが、この整備作業を実施しているところでございます。予算の関係もあって、なかなか大々的にできないわけではございますが、できるだけそういう緊急性の高いところを選んで、法務局職員が土地家屋調査士等と協力しながら、現地に実際に赴きまして、現状を調べ、その境界を確認し、地図を整備するという作業を行っているところでございます。今後もその作業を精力的に続けたいと思っておりますし、また土地関係で国交省等でも地籍調査を行っておりますので、そういったものと協力しながら、できるだけ早くそういったところを整備していきたい、こう考えております。

川端分科員 都市再生本部の議事録を見させていただいたんですが、こういうものが都市再生に当たるのかどうかというのはまた別の議論があると思うんですが、やらなければならないことは同じだと思うんですね。その中に、「民活と各省連携による地籍整備の推進」ということで、「国において、全国の都市部における登記所備付地図の整備事業を強力に推進する。(五年で都市部の約五割を実施、十年で概成)」と。その中身が、「一、測量基準点の整備や、公図と現況の関係についての基礎的調査を可及的速やかに完了する。(概ね二年)」「二、対象地域の現況に応じて、国土交通省や法務省が連携しつつ、既存の測量成果(図面)を活用した地籍調査素図の整備を行い、これをもとに正式な地図化を図るとともに、電子化、関係省庁での共有化を図る。」これは、二つは調査が中心だと思うんですが、三番目が、「今後、法務局が境界の確定等に関与して地籍調査素図を迅速に正式な地図とするための法整備を行う。」こう書いてある。

 今お答えになりましたように、まず調べなければわからない。そして、その調べるのには当然予算が要るということだと思うんですね。調べた後どうするかというときに、今までも、私の申し上げた住吉台もいろいろな経過があって、住民の皆さんが本当にまじめに熱心に一生懸命取り組んでこられたけれども、やはり民間の人たちだけではうまくいかない。

 そういう中でお尋ねをしたいんですが、一つは、ここに今都市再生本部の話として載っていますが、これは基本的に、先ほど申し上げてきたように、例えばこういう住吉台みたいなところも同じような、逆に言えば、もっと深刻な問題としてこういう考え方の中に対象として当然含まれるのかどうか。

 それから、調査をされること、それからその後法務局が迅速に正式な地図とするための法整備を行うというふうに書いていますが、法務局が基本的にはイニシアをとって調査をし、そしていろいろ、地図にちゃんとできればそれで終わりですから、というものに関してはイニシアをとって法整備も含めてやっていかれるということでよろしいのか、法整備というのは具体的にどんなことをお考えなのか、教えてください。

房村政府参考人 ただいまの都市再生本部の地籍整備の推進でございますが、これにつきましては、都市部の地図混乱地域に限らず全般的に地籍の整備を図るということで、主として国交省と法務省がこれを行っていくということになっております。

 具体的な法整備ということに関しまして、今考えておりますのは、まず第一に、境界に関する紛争を解決する法的な整備が現在なされておりません。境界確定訴訟という訴訟ですべてやらなければいけないような仕組みになっておりますが、これでは地図の整備に伴って起こる境界に関する紛争を迅速に解決できませんので、いわゆる裁判外紛争解決機関、ADRと申しておりますが、これを法務省に設けまして、地図の整備に伴って生ずる紛争を迅速に解決する。そういうことによって事実上の調査、あるいは境界を発見するということと、法的に画定していくということの両輪で進めていきたい、こう考えているところでございます。

川端分科員 ぜひともその部分を、本当に現実に困り、一生懸命運動をし、お願いをしている部分を引っ張って、リーダーシップをとっていただきたい。

 極端な事例は、先ほど道路の話をしましたけれども、道路のそのところへ入っていくネックの部分のところを、ここはおれの土地だといって占拠するという事態も一時期あって、だれも通れなくなってしまったというふうなことまで、生活が脅かされるという事態になっています。

 そこで、平成十五年八月六日に、この住吉台自治会から当時の森山法務大臣あてに陳情書を出されました。その中で、「地図混乱地域における実態調査、実地調査、基準点設置及び地域測量等のための予算措置の実施について。」それから「大津地方法務局による地権者への説明会の開催実施について。」「上記一、「地図混乱地域における実態調査」等での調査結果の公表について。」「地図混乱解消等に向けて、関係行政連絡会(仮称)と当自治会との協議の実施について。」というふうなもので、地図訂正が実現することを切望する、要するに十七条地図作成を何とかしてほしいということがあります。

 今お話を伺いますと、おおむねそういう方向に考えてはいただいているんだろうな。しかし、なかなかこれは容易なことでない部分は御案内のとおりでありますだけに、だからこそ、いわゆるその一番の主体である法務省法務局がイニシアをとってやっていただかないと、これはできないんですね。

 それで、ちょっと気になりましたのは、この陳情書を大臣に出すに際しての、大津地方法務局が、現地としてはこう考えるという書状が付されていまして、「法務大臣森山眞弓殿」ということで、「大津地方法務局長」「陳情書の進達について」ということで、当局の意見等を付して届けますということで出ました。

 経過も含めてずっとお書きいただいていて、何回も地元とも前向きにお話しいただいているんですが、この問題に側面からバックアップするというか、連携してきた私から見ますと、一生懸命お話をして、それは大変だな、何かうまくできないかなと一生懸命局長さんやっていただくんですよ。大体わかってきたと思ったら転勤されるんですよね。また話をせにゃいけません。多分、引き継ぎといったら一行ぐらい書いてあるかないかぐらいの話なんですよね。

 それで、実は、そういう話し合いということでやっとここまで来たかみたいな話なんですが、この文書を、意見書を読ませていただくと、ここにありますけれども、感想としては、おまえの責任だろうと言われて何か困っているみたいなことだけれども、私は、それは違って、いや、大変な責任があると思っていただかなきゃ困る、けしからぬことをしたからといって責めているわけではないわけですから、このことはぜひとも御理解いただきたい。

 それと、実はそういうふうに一方で話し合っているときに、比較的大きな土地を分筆して再登記するということをまた法務局がやっちゃったことがあるんですね。平成十一年ですから、もうごく最近の話ですね。ということは、地図が混乱して、地面もどうなっているかわからないところの地域をまた分割して登記させてしまったということで、これは混乱に大きな拍車をかけてしまった。一方で話し合いして何とかしましょうかといいながら。だから、そこはどうしてかというのは、この局長さんより前の話ですから、またいろいろ調べて、どうもいろいろあったみたいだみたいな話ですが、実は人はかわっているけれども、住民から見れば同じ政府であり、法務省であり、法務局なんですね。

 だから、そういう部分で、本当に、ちょうどこういう機会で、総理も含め、大臣も含め、この問題に真正面から取り組むとおっしゃっていただいた部分で、ぜひとも強いリーダーシップで、責任を持って、この問題は全力で解決に取り組む、予算措置も含め法整備も含めてやっていくということで、締めくくりに大臣の御決意のほどを伺って、終わりにしたいと思います。よろしくお願いします。

野沢国務大臣 委員、大変難しい問題にもかかわらず、かつ国民の生活にとって一番大事な土地、これに関する扱いが正常に行われていないというこの現実については、大変な御理解、またお取り組みをいただいていることについて、私どもも大変敬意を表するわけでございますが、法務省といたしましても、本問題の解決なくしては日本の将来における発展その他についても大きなブレーキになるおそれがありますので、今後とも重点を置きまして、予算あるいは人員を含めて、しっかり取り組んでまいりたいと考えております。

 引き続きのひとつ御意見をちょうだいいたしながら改善を進めたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

川端分科員 心強い御答弁、ありがとうございました。

 終わります。ありがとうございました。

萩野主査代理 これにて川端達夫君の質疑は終了いたしました。

 次に、菊田まきこさん。

菊田分科員 おはようございます。

 今回、私、初めて質問させていただきます、新潟四区、民主党の菊田まきこでございます。

 きょうは、私の選挙区であります新潟県三条市で起きました少女長期監禁事件についてお伺いさせていただきたいと思いますので、何とぞよろしくお願いを申し上げます。

 この事件は、例を見ない犯罪の悪質さで皆様の記憶にも深く残っていることと思いますが、私にとりましても、すぐ身近に起こった事件として大変なショックを受けた事件でございました。

 今から十四年前になりますが、一九九〇年十一月十三日、当時九歳だった小学校四年生の少女が、新潟県三条市で下校途中に行方不明になりました。そして、約九年二カ月後の二〇〇〇年一月二十八日、監禁されていた柏崎市の犯人の自宅で保護されたというものです。その後、犯人の男は、略取、逮捕監禁致傷、窃盗の罪に問われ、最高裁まで至り、二〇〇三年七月十日、懲役十四年の判決が下されました。

 きょうは、限られた時間でございますので、事件の子細についてはこれ以上申し上げませんが、この事件を通して私が疑問に思ったことを幾つか問いかけてみたいと思います。

 この被害者の少女は、突然連れ去られて、外の世界と隔離され、家族とも引き離されたまま、狭い部屋に九年二カ月も閉じ込められ、虐待を受け続けました。九歳で連れ去られ、助け出されたときには少女は既に十九歳。九歳から十九歳までというのは、人生の中でもとりわけ大切な成長期であり、本当なら一番楽しい青春の日々を送っていたはずです。一人の女性の人生の中で、この九年という歳月の長さ、重さが一体どのようなものであったか考えれば、胸が詰まる思いがいたします。

 被害者の女性が受けた精神的苦痛、そしてこれからも決して消えることのないであろう怒りや悲しみ、それらすべてを背負っていかなければならないつらさを考えるとき、犯人に下された判決が懲役十四年、たったの十四年というのはどういうことなのでしょうか。

 犯人は三十七歳ですから、懲役十四年といっても、刑を終えて出てくれば五十一歳です。まだまだ人生をやり直すことはできると思います。一言で年数や数字を単純に比べることはできませんけれども、私たち一般の感覚、普通の市民の目線からすれば、これは余りにも短く、何とも納得がいかない、やるせない思いに駆られてしようがありません。

 この事件で最高裁が懲役十四年と判決を下したことに対して、大臣はどのような御感想をお持ちでしょうか。まずお伺いしたいと思います。

野沢国務大臣 お尋ねの事件につきましては、まことに非道な事件でございまして、犯罪に遭われました被害者御本人、あるいはその関係者の方々の御心痛については、お察しを申し上げる次第でございます。

 具体的な判決の内容につきましては、法務大臣といたしましてはコメントすることは差し控えさせていただきますが、検察当局といたしましては、事実の実態に即した科刑が実現されるよう努めておりまして、今後も同様な努力を続けていくものと承知をいたしております。

 十四年という御指摘でございますけれども、これは現在の法律の中において最大限の配慮をしたものと私どもは考えておりますが、最も重い刑を科しているのではないかと思います。

 なお、この量刑のあり方につきましては、今後とも、課題もございますので、現在法制審等に諮問をいたしまして、御議論をいただき、それを受けて我々としても対応したいと考えております。

菊田分科員 この裁判では、犯人が以前万引きした窃盗罪を追起訴し、逮捕監禁傷害罪との併合罪を適用することで、結果として懲役十四年となりました。しかし、私などは、そもそも窃盗罪などなくても、この犯罪の卑劣さ、悪質さを考えれば、最高刑は免れないのではないかという思いにもなりがちです。刑法制定時には、このような監禁期間が九年余りにも及ぶ長期の事件が起こるとはだれも予想しなかったのではないでしょうか。

 私は、素人考えで申しわけないですけれども、しかし、現在の逮捕監禁傷害罪の法定刑が最高で十年というのは、余りにも短いのではないかと率直に思ってしまうのです。検察側も、監禁罪の刑の上限が妥当なものであったならば、窃盗罪を併合しなかったのではないでしょうか。

 量刑の妥当性についてお伺いするとともに、もう一度、今後是正に向けてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。

野沢国務大臣 具体的な判決の内容につきましてはコメントは差し控えさせていただきますが、一般の問題といたしまして、併合罪ということにつきましては、今回も十分これを配慮して決定をしたものと理解をいたしておりまして、今後の量刑全体のあり方についての問題は、先ほども申しましたように、国民感情の問題、さらには社会の状況の変化等を考えまして、十分な御議論をいただいた上で、御答申をいただいた結果を受け、対応してまいりたいと考えております。

菊田分科員 一般的に言っても、例えば監禁という犯罪行為が十日間というときもありますし、また、一カ月のものもあります。あるいはまた、この監禁という期間が二十年にも及ぶ、あるいは三十年にも及ぶという事件が今後起こらないとも断じ切れません。今の刑法では、このような二十年、三十年という例えば長期の監禁罪でも最大十年ということになりますけれども、大臣は、一般論としてこのことについてどうお考えですか。

野沢国務大臣 確かに御指摘のとおりでございますが、私は、今回の犯罪対策閣僚会議の行動計画の中でも、日本の刑法の中で、量刑のあり方について、これをしっかりと見直した方がいいということで御指摘もいただいております関係で、これにつきまして抜本的な見直しをするよう審議会にお諮りをし、御議論をいただいて、その結果を受けて我々としても対応したい。いささか、今の日本の国民的感情からしたら、委員御指摘のような感覚は、これはやはり常識としてあるかなと思ってはおります。

菊田分科員 ありがとうございます。

 この判決の過程で、二審判決で裁判長もこのように述べられていました。逮捕監禁致傷罪の刑の上限が十年で軽いとするならば、将来に向けて法を改正するしかないということでございますけれども、私も、これは本当に大きな問題提起ではないかというふうに思っておりますし、大臣からは、ぜひ、現在の刑法について、量刑のあり方、その妥当性も含めて、もう一度全般的に見直すという方向を強く示していただきたいと思っております。

 それから、ちょっとお聞かせいただきたいと思いますけれども、法制審議会についてでございます。

 平成十五年は三回、法制審議会の総会が開かれております。部会については八十回開かれているということでございます。その部会の審議内容を見ますと、昨今、少年犯罪や凶悪事件が増加しているにもかかわらず、少年犯罪に関するものについては一度も審議されていないようなんですけれども、法制審議会というのが大臣の諮問を受けて開かれているならば、大臣のお考え一つで、こうしたものについてもう少し積極的に、しかも迅速に議論していくことが可能だと思うんですけれども、いかがでしょうか。

野沢国務大臣 量刑のあり方については、最近諮問したものでございますのでこれからの議論になると思いますが、お尋ねの少年犯罪に対するこれからの科刑のあり方については、大変実は私も関心を持ち、また先ほど申しました行動計画の中でも、少年犯罪をどう減らしていくか、なくしていくかということについては、大きな柱として挙げているわけでございます。

 少年の問題につきましては、いわゆる罰則を強化するという方向がいいのか、あるいは矯正、教育、立ち直りということに重点を置くのがいいのか、これはそれぞれ関係者の皆様が今大変御議論をいただいているものでございまして、これのあり方についての御議論は、まさに関係者の皆様、そしてやはり国民的なコンセンサスをいただく中で決めていかなければならない課題と考えております。

 いずれにいたしましても、将来を担うべき子供たちがしっかりと、一つの事件でもう人生がおしまいということではなくて、再起可能な世の中をつくるという視点も踏まえながら考えなきゃいかぬかなと思っております。

菊田分科員 それと同時に、国民的なコンセンサスという意味においては、私は、ぜひ被害者の立場に立った、被害者の気持ちが率直に伝わるような体制になっていくことがとても大事だというふうに思っておりますので、今現在、法制審議会のメンバーを見ますと、必ずしもそうではないなという感じがいたしてなりませんが、このことについても、あわせて私の意見を酌み取って、検討していただきたいというふうに思っております。

 それから、私は、女性の立場からしますと、現在の刑法にはまだまだおかしいと感じるところがあります。御案内のとおり、現在の刑法は、今から百年前の明治時代に制定されました。百年前といえばどんな時代だったでしょうか。女性には参政権もなく、もちろん女性の政治家も存在していないという時代です。絶対的な男性優位の社会でした。そのような時代背景の中でつくられた刑法が、百年後の現在まで本格的な改正がなされずに至っております。

 今日、社会状況は大きく変わりました。女性にも参政権が与えられ、男女共同参画が進み、私も今、衆議院議員として国政に参画させていただく機会を得ました。明治時代の男性優位の社会の中でつくられ、あるいはまた人権意識も低い時代につくられた刑法、あるいは民法や商法もそうなんですけれども、現在の法律を見返すと、余りにも時代にそぐわないのではないかと感じるものがあります。

 例えば、女性の立場で言わせてもらいますと、婦女暴行関係の刑罰なども軽過ぎるのではないでしょうか。女性の人格を無視し、肉体的にも精神的にも多大な傷を負わせる強姦罪の刑が、財産を奪う強盗罪の刑と比べても軽過ぎるのではないかと思います。

 時代とともに、犯罪の形態も市民の処罰感情も変化しております。この際、刑法全体を点検して、実情にそぐわないものは積極的に是正していただきたいと考えますが、いかがでしょうか。

野沢国務大臣 お尋ねのように、百年前につくられた刑法ということについては、御指摘のような問題点があることは私ども十分承知をいたしております。

 ただ、あの当時の文明開化という中で、関係者が大変努力をしてつくられたこともありまして、なかなか手直しの機会というものがなかった。終戦後のあの混乱期においても、基本的に今の法律がそのまま継承されたということについては、今こそ、まさにこれを見直す大事な時期だと考えておるわけでございます。

 御指摘の婦女暴行等の問題でございますけれども、まず一般論として申し上げますと、各種犯罪における刑罰のあり方につきましては、その罪の罪質や他の罪との刑の均衡、あるいはその犯罪によって起きる被害の内容や程度、背景となる社会経済情勢等、種々の観点から総合的に考慮した上で決められるものでございますが、事案の内容に応じて、適切な刑罰を科し得るものでなければならないことは御指摘のとおりでございます。

 そのような観点からいたしまして、現在、法務省におきましては、現行の刑罰制度及びその運用状況全般について調査、分析を行いまして、諸外国との比較調査、研究も行っているところでございます。今後とも、所要の検討を進めてまいります予定でございます。

 今御指摘のございました強姦罪の問題でございますが、物よりも人をあやめることの罪が軽いということについて、与党の関係委員からも御指摘をちょうだいいたしております。また、この種の犯罪が増加していることも事実でございますので、これに対しまして、刑法等の規定が現在の国民規範意識にちょうど合致しているかどうかということもございますので、早急に刑事の実体法、手続法の見直しをする必要があると考えております。

 その意味で、ことしの二月十日に、法制審に対しまして、凶悪重大犯罪に対処するための刑事法の整備に関する諮問を行ったのは先ほど申しましたとおりでございますが、今後の御審議を踏まえまして、必要な法整備を進めてまいりたいと考えております。

菊田分科員 私もそのように思います。

 現在の刑法は、人の命や、身体、性的自由の価値を余りにも低く見過ぎていると思います。物を盗んでも、人を傷つけて一生介護が必要な体にさせても、同じく十年以下の懲役というのはおかしいということですし、また、何十人殺しても十五年たてば起訴されないというのも、これは一般の市民から見て余りにもおかしいのではないかと思いますので、ぜひ早急に取り組んでいただきたいと思っております。

 少し話は変わりますけれども、北朝鮮による日本人拉致問題というのは、私の住む新潟県でも、大変大きな問題として多くの県民が関心を持っています。一日も早い解決を願いながら、今後の政府の毅然とした対応を期待しているところです。

 拉致問題と、この少女監禁事件を全く別の次元だと思われないでいただきたいと思います。私は、私の選挙区の新潟県で起こったこの二つの事件が私たちに提起していることは、とても重要なことだと思うのです。国外からの不法侵入による拉致と、国内における略取、長期監禁という違いはありますけれども、どちらも重大な人権侵害だという点では同じだと思うんですが、大臣はどうお考えでしょうか。

    〔萩野主査代理退席、石田(祝)主査代理着席〕

野沢国務大臣 御指摘の拉致問題につきましては、今、我が国挙げての取り組みを行いまして、中国、米国、韓国あるいはロシア、御理解をいただく方々と力を合わせまして、六カ国協議を初め北朝鮮との二カ国協議も踏まえて、解決をすべく努力をしているところでございます。

 御指摘のように、ある日突然拉致をされるということにつきましては、この少女監禁問題とまさに軌を一にする問題がありまして、重大な人権侵害という点では、御指摘のような共通の課題があろうかと思います。

 現行の法体系の中でも幾つかこれを規制するルールがございますけれども、やはり何といいましても、こういった事件を起こさせないということの取り組み、これはやはり警察、我々法務を含め、そしてまた住民の皆様の地域の連帯意識、あらゆる面からこういった原因を取り除いていくということ、そして警戒を深めながら、そしてまた外国からのこういった問題の持ち込みに関しては、やはり我が国としてはしっかりした対応もとらなければいけないかな、こう思っております。

菊田分科員 私は、政府が北朝鮮による拉致問題の全面解決に真剣に取り組むと言うならば、こういう国内で起こった略取監禁事件に対しても、一つ一つきちんと対処していただきたいと思っています。

 国内で起きた人権侵害に対して寛大な対処をする日本という国は、北朝鮮やほかの国々から見たらどんなふうに見えるでしょうか。拉致などの人権侵害は日本人にとってはそれほど重要な問題ではないのではないかと思われてしまうと思います。日本は、国内であれ国外であれ、人権侵害を絶対に許さないんだという態度を国際社会に示すという視点からも、こうした問題に対して、一地方の小さな事件として風化させないでいただきたいというふうに思っています。

 それから、再発防止についてお伺いしたいと思いますけれども、この事件の後も、子供や女性が被害者となる事件が後を絶つことはありません。先月二十五日には静岡県で、小学生の女の子二人が四十歳くらいの男に連れ去られるという事件が起こりました。また、その同じ日に佐賀でも、幼稚園の女の子を四十九歳の男が連れ回した事件が起きています。さらにショッキングだったのは、同じ佐賀県で二十日、現職の警察官が小学生女児を連れ去った事件が起き、多くの人がショックを受けました。

 未成年者に対する逮捕監禁事件は、何と昨年一年間だけでも百九十八件ありました。ことしに入ってからは既に十五件発生しています。十五年前と比べてみると、平成元年の逮捕監禁は百七件でしたから、この十五年間で約二倍近くにふえているということになります。過去五年間を見ましても、平成十一年が百二十五件、平成十二年が百七十五件、平成十三年が百七十七件、平成十四年が百九十三件です。未成年者略取誘拐事件についても同じです。平成元年の百二十四件と比べて、平成十五年は二百十七件となっており、異常にふえていますけれども、これを一体どう考えますか。

 新潟少女長期監禁事件を教訓として、警察庁は再発防止にどのように取り組んでこられたのか、お聞かせをいただきたいと思います。

関政府参考人 子供を対象といたしました暴行傷害事件、強姦、強制わいせつ事件、逮捕監禁、略取誘拐事件などの犯罪が多数発生しておりまして、国民に強い不安を与えているところでございます。

 このため、警察におきましては、教育委員会、学校、PTA、防犯関係団体、地域住民等と連携いたしまして、子供がこうした犯罪の被害者となることを防止するため、警察による通学路や公園などの警ら、警戒活動の強化や、警察官が同行しての合同パトロールの実施、子供を対象とする犯罪の発生状況や防犯対策に関する情報の迅速な提供、学校等における実践的な防犯教室、防犯訓練の実施等の対策を推進しております。

 また、警察庁では、平成十四年度のモデル事業といたしまして、小学校の通学路、児童公園等におきまして緊急時に警察に直接通報できます子ども緊急通報装置の整備を行いますとともに、子供のための、子供が犯罪に遭わないための具体的な注意事項を盛り込んだ防犯テキストを作成いたしまして、全国のすべての小学校と警察署に配付いたしまして、防犯教育で活用いたしております。

 子供を犯罪から守ることは、警察のみならず、家庭、学校、地域社会が共同して取り組むべき課題でありまして、警察としても、今後も引き続き全力で取り組んでまいります。

菊田分科員 そのようなさまざまの防止策を講じてきているにもかかわらず、先ほども申し述べましたように、年々こうした事件が後を絶たない、増加の一方だということで、実効性が上がっていないということは一体どういうことなんでしょうか。私はやはり、もっとより積極的な再発防止策をさまざまに機会をとらえて考えていくことがとても大事だというふうに思っておりますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。過去の事件を一つ一つ検証して、反省を繰り返していくこと、このことも求めていきたいと思います。

 それから、現在行方不明として家出人捜索願が出されて所在が確認されていない人は、平成十四年末現在で八万一千九百七十三人います。私たち新潟県でも八百九十四人の行方不明者がいますが、その行方不明者の中に、もしかしたら今こうしている間にもどこかに監禁をされ助けを求めている人がいるかもしれません。

 監禁というのは外部からはなかなか発見しにくい、わかりにくいという難しい面もあると思いますけれども、これらについてはどのように取り組んでおられますか。

関政府参考人 新潟事件の反省を踏まえまして、私どもが早期に被害者を救出できるような機会が何回かありました。そういった機会をうまく迅速にとらえて、被害の防止を図っていくということが重要だと考えております。

 したがいまして、地域警察官が行っております巡回連絡等で、不審の情報があるかどうかとか、それから我々地域警察官がパトロールをした場合に近所に不審な状況があるかどうかとか、そういったことについて幅広く情報を求めて、早目に被害者の救出を図るといったようなこと。それから、捜査になりました場合には、また迅速に捜査を徹底しまして、一刻も早く被害者の救出を図るというようなことにも努めてまいりたいと思っております。

菊田分科員 この少女が助け出されたときに、実は保護したのは警察じゃなかったんですね。地元の保健所の職員だったということです。しかし、県警が警察官が保護したように虚偽の発表をしたりとか、あるいは保護した当日に県警本部長らが接待マージャンをしていたとか、一つ一つ今は申し上げませんけれども、そういう捜査上のいろいろな問題、不祥事があったわけですが、それを肝に銘じて、これからしっかりと取り組んでいただきたいというふうに思っております。

 最後になりますけれども、被害者の支援についてお聞きしたいと思います。

 私は、こうした被害者がこれから立派に社会復帰していくために、公的なケア、精神的なケアや身体的なリハビリも含めてですが、支援体制をしっかりとつくっていくことがとても大事だと思っておりますが、日本は、どちらかというと、外国に比べても被害者への公的な支援体制がおくれていると思います。

 加害者には、罪を反省させ、更生させ、社会復帰するためのさまざまの制度が整っておりますけれども、例えば地下鉄サリン事件などで被害を受けた方もそうですけれども、まだまだ被害者への社会的な支援体制というのが整っておりません。ぜひこのことに強く政府を挙げて取り組んでいただきたいと思っております。

 具体的には、犯罪被害者支援対策会議などを設置して、被害者に対する給付金制度の抜本的な見直しを行ったり、支援組織の拡充、財政的措置あるいは刑事手続等の情報開示などを行っていただきたいと思っておりますが、最後にその取り組みについてお考えをお聞かせください。

野沢国務大臣 御指摘のように、犯罪の被害者やその遺族の方々の苦痛あるいは悲嘆、怒り等を真摯に受けとめまして、その立場に配慮し、保護、支援を図ることは、刑事司法の重要な責務であると考えております。

 そこで、法務省においては、平成十二年の五月に成立したいわゆる犯罪被害者保護二法によりまして、性犯罪の告訴期間を撤廃したり、被害者等が証人として受ける負担を軽減するためのビデオリンクシステムによる証人尋問制度、あるいは公判廷において被害者等がその心情等について意見を陳述する制度、被告事件に関する民事上の和解を刑事の公判調書に記載し、これにより強制執行ができる制度を新設するなどの法整備を行ってきたところでございます。

 検察当局においては、被害者の立場、心情に配慮しつつ、事件の適正な捜査処理に努めるとともに、被害者に対して可能な限り誠意ある対応をするよう心がけてきたところであると承知しておりますが、肝心の被害者に対しましては、検察庁における事件の処理結果や公判期日、刑事裁判の結果等を通知する被害者等通知制度や再被害防止のための被害者通知制度を実施しておりまして、全国の地方検察庁に被害者支援員を配置し、来庁した被害者への対応や被害者に対する相談業務等に従事させております。

 今後とも、被害者の保護、支援の充実に努めてまいりたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

    〔石田(祝)主査代理退席、萩野主査代理着席〕

菊田分科員 時間が参りましたので、質問を終了させていただきます。ありがとうございました。

萩野主査代理 これにて菊田まきこさんの質疑は終了いたしました。

 次に、樋高剛君。

樋高分科員 民主党の政調副会長、樋高剛でございます。審議、大変お疲れさまでございます。

 きょうは、前半で墓地政策について、そして後半では離婚に伴って子供たちの養育費の確保、この二つのテーマで議論させていただきたいというふうに思います。

 まず、墓地政策の不備についてお尋ねをさせていただきます。

 不動産登記法、これは明治時代につくられました片仮名、文語体の法律でありまして、市民にとってはわかりにくいという指摘がありますけれども、法文をまず現代語化する予定はないんでしょうか。

房村政府参考人 御指摘のように、不動産登記法は明治三十二年に制定された法律で、非常に古いもので、片仮名、文語体でございますので、法務省としてもこれを改正するということで、この国会に不動産登記法の全面改正の法案を提出する予定でございます。その法律におきましては、当然のことながら、平仮名、口語体に全面的に改めるということにいたしております。

樋高分科員 土地の登記がされている場合、その土地の用途についてどのように登記されているんでしょうか。例えばですけれども、墓地であるという場合は登記簿を見ればわかるんでしょうか。

房村政府参考人 土地の登記につきましては、地目という登記事項がございまして、そこに土地の用途が記載されます。宅地であるとか、田、畑などありますが、墓地もその地目として登記される事項でございます。

樋高分科員 墓地建設についてちょっとお尋ねさせていただきますけれども、きょうは厚労省から政務官竹本先生にお越しをいただいております。

 墓地建設に伴いまして、周辺住民との紛争が全国で激増していると私は認識をいたしておりますけれども、国としての把握状況、そしてどのように対処しているのか、また対処しようとしているのか。また、墓地を許可する法令の根拠、また概要はどのようになっておりますか。

竹本大臣政務官 墓地、埋葬等に関する法律第十条第一項は、墓地等の経営を都道府県知事または指定都市等の、等と申しますと、中核市を意味しておりますが、それの市長の許可によるものと決めておりますが、墓地に係る報告聴収、改善命令、許可取り消し等の権限についても、すべて都道府県知事等に与えているところであります。

 そこで、これらの規定の施行を初めといたしまして、墓地行政の運用に当たりましては、公衆衛生の確保に加えまして、墓地の需給バランス、それから住民の宗教感情、さらに周辺の生活環境との調和等の事情を考慮する必要がありますので、地域の実情に応じて都道府県知事等が判断することが適当であり、地方自治法上、いわゆる自治事務と整理されているものであります。

 国の役割といたしましては、こういった都道府県知事等の権限の適切な運用がなされるよう、必要な助言等を行うにとどまるものでございます。

 したがいまして、厚生労働省といたしましては、個別具体的に墓地建設に伴って生じております裁判事例等を全部は把握しているわけではございませんけれども、先生おっしゃるように、従前より各地でそうした事例が数多く生じていることは承知をいたしております。

樋高分科員 この墓地、埋葬法なんですけれども、大まかな概要を示しているにすぎなくて、今の答弁にありますように、自治事務で、結局それぞれの地方自治体の判断にゆだねられているというところに、私はある意味で、もちろん、それぞれの地域の特性やさまざまな状況をかんがみて判断するということも当然、地方に根差して考えることは必要でありますけれども、一方で、私は肝心な部分がちょっと抜け落ちているのではないかと思います。それは、いわゆる住民の合意という部分であります。

 実際は、地方の役所の担当部署が内規をつくって独自に運用して調整しているのが実態でありまして、法や条例に違反をしていない限り、墓地建設の申請があった場合は許可を出さざるを得ないというのが現実であります。いわゆる反対運動というのには法的な後ろ盾がないというのが大きな問題であろうと私は思います。近隣住民との十分な協議の必要性が盛り込まれていないというところが、あいまいな部分が多いのではないかというふうに私は思います。

 墓地建設反対といいますと、ややもしますと住民のエゴだというふうにとられがちでありますけれども、墓地建設に際しましては、付近にお住まいの方々、周辺、周りにお住まいの方々のいわゆる同意がやはり何よりも欠かせないのではないかと思います。今の行政は住民の同意を軽視しているのではないかと私は思いますけれども、いかがですか。

竹本大臣政務官 樋高先生の、民主主義といいますか、住民の意見を尊重される政治姿勢には、常日ごろ私も敬意を表している者の一人でございますけれども、今お話しの墓地の建設許可の現実を見ますと、許可に当たりましては、公衆衛生の確保はもとより、墓地が国民の生活に必要不可欠な施設であることを踏まえまして、その需給バランス、周辺の生活環境との調和など、立地する地域のいろいろな要素を総合的に勘案して判断する必要があると考えております。

 都道府県知事等が墓地建設の許可につき検討するに当たりましては、地域の住民の宗教的感情あるいはその意向も重要な考慮事項の一つであると考えます。

 要は、自治事務でございますので、国の方で細かいことまで、ああしろこうしろ、これ以下はだめだ、これ以上はいいということはなかなか言いにくい。むしろ、自治事務として権限を持っております都道府県知事等が、自主的に判断して適切な結果をもたらしてくれるのが一番住民のためにいいのではないか。その中に、おっしゃる関係する住民の意向というものをどのように酌んでいただけるかということは、まさに自治事務としての都道府県知事の判断に属するのではないか、そのように考えております。

 ただ、国としても何も言わずに見ているわけではなくて、適切な助言、技術的な助言等はやる姿勢でおるということでございます。

樋高分科員 要するに、自治事務だということによって国としての責任を放棄しているのではないかという私の指摘なんです。要するに、それぞれの地域に根差して判断をする、市民の一番近くで行政が判断をする、それはもちろん地方分権の時代にあってむしろ必要なことだと私は思います。しかしながら、国としてしっかりとしたアウトライン、国としての最低限のきちっとしたルールというものは定めなくちゃいけないのではないかという問題意識なんであります。

 今の御答弁を伺っておりますと、墓地を建設される近くの住民の方々が今の御答弁をお聞きになったときに、別に地域の反対なんかそんなの全然関係ないよというふうに聞き取られかねないんじゃないかというふうに指摘を申し上げたいと思いますし、やはり付近住民との十分な協議というものを法的にも整備すべきだというふうに私は思いますけれども、いかがでしょうか。

竹本大臣政務官 墓地は国民の生活に必要不可欠な施設でございます。地域における需要と供給のバランスを勘案いたしまして、周辺住民の感情や生活環境との調和もおっしゃるとおりに図る必要が絶対ございますけれども、これらの事情は地域によって余りにも異なるといいますか、大きい差があり過ぎますので、一律に決めることは非常に難しい。そういう判断から、都道府県知事等に任しておる、こういうのが現状でございます。

 こういった施設につきましては、全国一律の基準がこのようになじまないと考えておりますので、墓地の経営許可事務を都道府県知事の自治事務といたしますと同時に、知事の広範な裁量に結果としてはゆだねている。それが住民の意思を無視しているんだと言われますと、確かにそういう側面も結果としてはあるケースもあるだろうと思いますけれども、そこは住民のためにその責任者として行政を預かっておられる都道府県知事が、真摯に住民の意見も十分考慮しながら総合的な判断をしていただきたい、それが国のとっているスタンスといいますか、立場でございます。

樋高分科員 私が申し上げておりますのは、要するに、国として、少なくとも周辺住民の合意をきちっと得るべきだということを法的に何らかの手当てをすべきじゃないかと申し上げているわけであります。

 別の観点からちょっと御指摘を申し上げたいと思います。

 現在、墓地の建設で、先ほどおっしゃいましたとおり、当該地方自治体、県もしくは政令指定都市などの許認可事項となっておりますけれども、いわゆる二つの異なる地方自治体に隣接する墓地を立地させる場合は、敷地のある自治体側の条例が適用されるわけです。隣接はするけれども、敷地のない側の自治体の条例というのは反映されないという、私は大きな問題があると思います。

 例えば敷地のない自治体側に出入り口がつくられたというふうにしますと、そこの市民の意向は無視されてしまうというふうに思います。その上、接道道路が例えば幹線道ではなくて交通の渋滞を引き起こすなど、墓地のない自治体側の住民の住環境の低下ですとか、あるいは地価の下落など資産の減少を強いるのはおかしいのではないかと思いますけれども、いかがですか。

竹本大臣政務官 全国いろいろな事情があると思いますし、個々の自治体、個々のケースによって、今おっしゃられたようなケースは当然発生する可能性はあると認識をいたしております。

 ただ、一般論といたしましては、地方公共団体が決めております条例の効力というのは当該の地方公共団体の区域に限られるものでございます。したがいまして、御指摘の敷地のある自治体側の条例が適用されることが基本原則ということになっております。

 しかしながら、墓地は周辺地域の生活環境との調和も図りながらその確保に努める必要がありますので、仮に、当該墓地の設置により条例の適用されない側の住民の生活に著しい支障を与えることが明らかなような場合には、当該施設の設置者に対しまして、それらの住民に何らかの配慮をさせることが望ましいのではないかと考えておりますが、いずれにいたしましても、その判断は当該都道府県知事の判断にゆだねられるというのが法の仕組みでございますので、我々は先ほど申し上げましたような助言はいたしますけれども、最終判断は知事にゆだねられていると。

 したがいまして、住民の意向等も、そういったことも踏まえた総合的な適切な判断を我々は期待しておる、こういうことでございます。

樋高分科員 要するに、敷地のない側の住民にとりましては、生活権、生存権の侵害ではないかと私は問題意識を持っております。

 それと、基本原則であるという話でありましたけれども、それをやはり国として、自治事務だからといっていわゆる地方に押しつけて、嫌なことは早い話がもう押しつけちゃうということではなくて、やはり国として政策をきちっと打ち出して、むしろみずからその事態打開に乗り出すぐらいのいわゆる努力が私は欠如しているのではないかというふうに申し上げさせていただきたいと思います。

 例えばですけれども、敷地が隣接している場合なのでありますが、いわゆる新規墓地と民家との間のいわゆる緑地規定というのがあります。どのぐらいの距離を離すかということでありますけれども、距離を一定に確保することにつきまして、敷地のある甘い方の条例基準が適用される現実を好ましいと思われるのか。つまり、敷地のない厳しい条例が適用されるはずの市民に犠牲を強いていいとお考えなんですか。

竹本大臣政務官 先ほども申し上げましたとおり、一般論としては、敷地のある自治体側の条例が適用されることが原則でございまして、結果的に、今先生がおっしゃったように、規制の緩やかな方の条例が適用されることも現実にはあり得る話だと思っております。

 しかしながら、墓地は周辺地域の生活環境との調和を図りながらその確保に努める必要がございますので、仮に、当該墓地の設置により条例の適用されない側の住民の生活に著しい支障を与えることが明らかなような場合には、墓地設置者に対しまして、隣接側の住民に何らかの配慮をさせることが望ましいと我々も考えておりますけれども、申しわけありませんけれども、いずれにせよ、法的構成としては、当該都道府県知事の判断にゆだねられる、そういうことになっております。

樋高分科員 そこに問題があると私は御指摘を申し上げたいと思います。

 異なる県あるいは政令指定都市の隣接地に墓地を建設する場合、もう一度お尋ねをいたしますけれども、両方のやはり条例を加味すべきだと私は思いますけれども、いかがですか。

竹本大臣政務官 繰り返しになりますけれども、一般論としては、敷地のある自治体側の条例が適用されるのが基本でございます。

 しかしながら、墓地は周辺地域の生活環境との調和を図りながらその確保に努める必要があるということは今申し上げたとおりでございますが、墓地の設置により関係住民に著しい支障を与えるようなことが明らかなような場合には、墓地設置者に対し、隣接側の住民に何らかの配慮をさせることが望ましいと考えているのは、先ほど申し上げたとおりであります。

 さらに、必要に応じて自治体相互間で連携を図ることも重要でございますけれども、いずれにせよ、当然、当該の関係する都道府県知事等の両者間の話し合いが十分に行われ、関係住民に少しでも、与える被害といいますか、そういったものが少なくなるような結果をもたらすことが大事だと思っておりまして、そういう分野におきまして、我々としても、適切な助言、あっせん等もやらなきゃならないケースもあり得るんだろうというふうに思っております。

樋高分科員 墓地政策の不備は明らかでありまして、墓地経営のいわゆる許可条件に不透明な領域が存在するということを今の答弁はむしろ証明してしまったのではないかと私は申し上げたいと思います。やはりいわゆる法の不備であると私は思いますけれども、それを放置して、いわゆる地方自治体にその責任を押しつけるということではなくて、法的手当てをし、そして、例えば住民の同意を得るべくきちっと法制化をする、あるいは政府が主導して事態打開に乗り出すべきではないかということを申し上げさせていただきまして、時間がございませんので、次に移らせていただきたいと思います。

 次は、離婚によります、子供たちの養育費の確保につきましてお尋ねをさせていただきたいと思います。

 離婚の件数は、公表されております人口動態統計の推計によりますと、平成十五年は約二十八万六千件で、前年に比べて四千件減少したと推定されてはおりますけれども、一分五十秒に一件の割合で離婚が成立している計算になります。こうした状況のもとで、夫婦間の協議によって別れることができず紛争になってしまう夫婦もふえておりまして、紛争により調停や離婚訴訟という形で裁判所に持ち込まれる離婚紛争の件数も年々増加してきているようであります。

 そこで、お尋ねをいたしますけれども、離婚紛争などの解決のために人事訴訟の制度がありますけれども、この人事訴訟につきまして、この四月一日から新しい制度が施行されます。私も去年、法務委員会の理事として若干議論にも携わらせていただいたところでありますけれども、新しい人事訴訟は具体的にどのような点が変わったんでしょうか。

実川副大臣 離婚訴訟を含む人事訴訟でありますけれども、これは委員も本来法務委員会でおりましたので御承知のとおりでございます。これまで地方裁判所で取り扱われておりましたけれども、話し合いによる解決を行う家事調停が家庭裁判所で行われるのに、同じ紛争が訴訟の段階に至ると別の裁判所で取り扱われるというのでは、手続が国民にわかりづらいという指摘を受けてまいりました。そこで、今御指摘のありましたように、昨年の通常国会におきまして新たな人事訴訟法が成立いたしまして、ことしの四月一日から施行されることになっております。

 そこで、新しい制度におきます主要な変更点でございますけれども、まず、離婚訴訟を含む人事訴訟を家庭裁判所で取り扱うことといたし、離婚調停の段階から訴訟の段階まで、同じ家庭裁判所で取り扱うことを可能にしております。また、国民の司法参加の一環といたしまして、家事審判で認められております国民の中から選任された参与員の意見を聞いて裁判することができる制度を人事訴訟にも導入しております。そのほかにも、これまで訴訟上の和解によって離婚することは認められておりませんでしたが、離婚紛争の訴訟によります解決の実効性を高めるために、これを認めることとするなどの見直しを図っております。

樋高分科員 離婚紛争でいわゆる判決まで至るのはごく少ない割合でありまして、人口動態統計によりますと、平成十三年には人事訴訟の判決による離婚は二千二百件足らずということであります。とはいえ、離婚訴訟においては、当事者である夫婦の離婚の可否の問題のみならず、離婚に伴う未成年の子の処遇の問題をも同時に解決する必要があると私は考えます。未成年の子がいる夫婦の離婚訴訟を解決するためには、子供の問題をやはり第一に考えて、子供は国の将来を担う宝でありますけれども、その子供の問題を第一に考えていただいて、裁判所においても充実した審理が求められると私は考えます。

 新しい人事訴訟の制度では、その点についてどのような配慮がなされているんでしょうか。

実川副大臣 新しい人事訴訟法では、離婚紛争の当事者であります夫婦の間の未成年の子の福祉に配慮して、次の二つの手続を設けております。

 具体的には、まず、未成年の子の親権者の指定、また、子の監護者の指定等の裁判をするに当たりましては、心理学者また専門学的意見を有する家庭裁判所調査官によります調査を活用できるようにして、充実した資料に基づく審理を可能としております。

 また、これらの裁判をするに当たりましては、その子がみずからの意思を十分表明することが可能な十五歳以上である場合には、その意見を聴取することを裁判所に義務づけることとして、未成年の子の意向を裁判所の判断に反映する方法を充実させております。

樋高分科員 法務大臣、お待たせをいたしました。法務大臣に伺いますけれども、判決や調停などにおいて養育費の取り決めがされましても、実際に債権者が債務者から養育費の支払いを受けることができなければ私は意味がないというふうに思います。ところが残念なことに、我が国では養育費の取り決めが一たんされましても、いわゆる債務者が任意に支払わない場合も少なくない、これが現実であります。

 この問題については、法的にも何らかのやはり手当てをきちっと講ずる必要があると思いますけれども、どのように認識なさっておいででしょうか。

野沢国務大臣 御指摘のとおり、養育費は子供を養育するために必要不可欠なものでありまして、その履行が確保されることが極めて重要であると考えております。ところが、我が国では養育費の取り決めがされても、債務者が任意に支払わない場合も少なくないことは委員御指摘のとおりでございます。私といたしましても、養育費の履行が確保されるようさまざまな施策を講ずる必要があると考えております。

 そこで、民事執行制度を所管している法務省といたしましては、昨年の通常国会に養育費債権の強制執行に要する手続上の負担を軽減する民事執行法の改正法案を提出して、これを成立させていただきました。さらに、本日、今国会にも養育費債権の強制執行の方法を現在よりも拡充する民事執行法の改正法案を提出する予定になっております。

樋高分科員 では、その施策の具体的な内容はどのようになっているでしょうか。

実川副大臣 養育費を支払わない債務者に対します法的手当ての具体策としては、まず、昨年の通常国会で成立しました担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律におきまして、養育費の不払いがあるときは、将来発生する養育費も含め、一括して債務者の給料債権等を差し押さえることができるようにしたところであり、この法律はことしの四月一日から施行される運びとなっております。

 次に、今国会に提出される予定になっております民事関係手続の改善のための民事訴訟法等の一部を改正する法律案におきましては、養育費債権につきまして、現在認められております、債務者の財産を換価して支払いを受ける、いわゆる直接強制の方法によるほか、債務者が履行しない場合には、一定の制裁金を支払うよう裁判所が命じて、履行を心理的に強制する、いわゆる間接強制の方法によることもできるようにしております。

樋高分科員 最後に、大臣に伺います。

 近年の経済情勢の影響もこれあり、個人債務者の破産件数が激増していると伺っております。個人債務者が破産した場合には、その後免責の決定を受けることによって、いわゆる債務が免除されることになるため、おっしゃったような保護を図ったとしても、支払うべき者が破産して免責を受けた場合には養育費も免除される、したがって、結局、養育費のいわゆる債権を有する者の保護は図れていないというふうに私は認識をいたします。

 また、今国会で提出されている破産法案では、この点について何らかの措置はとられているんでしょうか。

野沢国務大臣 再起可能な社会をつくるという意味で、これまで法務省は、民事再生あるいは会社更生と取り組んでまいりまして、いよいよその仕上げでもございます破産法案の提出ということで、これから御審議をいただく予定になっております。

 委員御指摘のとおり、現行の破産法のもとでは、養育費の支払い義務を負う者が破産して免責を受けた場合には、養育費債権も他の破産債権と同様に免責の対象となるため、養育費の支払い義務を負う者はその責任を免れてしまうということになります。このような現行法の取り扱いに対しては、養育費債権を有する者の保護が不十分であるとの指摘がなされていたところでございます。

 そこで、今回の破産法案におきましては、養育費債権を含む扶養義務に係る請求権を免責の対象から除くことにいたしまして、養育費の支払い義務者が破産した場合においても、養育費の債権を有する者が保護されるよう制度的な手当てを講じております。

 よろしくお願いします。

樋高分科員 国は、いわゆる離婚に伴う子供の養育費確保につきまして責任を持って対策を講じていただきますことを強く要望いたしまして、私の質問を終わります。きょうはありがとうございました。

萩野主査代理 これにて樋高剛君の質疑は終了いたしました。

 次に、石井郁子さん。

石井(郁)分科員 日本共産党の石井郁子でございます。

 定期借家制度の見直し、正当事由制度のあり方の見直しなど、借地借家制度の抜本的改革などとして借地借家法の全面的改悪の動きがございます。私、きょうは、この問題で、これに関連いたしまして質問をいたします。

 昨年六月末、定期借家制度全国推進協議会が見直し案をまとめまして、これを受けた自民党定期借家権等特別委員会が、借地借家法の改正案を議員立法で提出する方向を検討し始めていると言われています。また、総理の諮問機関である総合規制改革会議が、昨年十二月二十二日に規制改革の推進に関する第三次答申を決定、公表しました。

 その中で、定期借家制度の見直し、正当事由制度のあり方の見直しにとどまらず、借家制度に関して、過度に借家人が保護されているので、普通借家も含めた制度そのもののあり方について、また、借地借家法の適用を除外し、民法の規定のほか、契約の態様を当事者の合意にゆだねるなどのあり方も含め、さらなる改革が求められていると、借家法をなくすことまで提言しています。

 具体的には、定期借家制度の普及促進として、一つ、居住用の建物について、既存の普通借家権についても、当事者間の合意で定期借家制度への切りかえを認めること、二つ目に、契約時の事前の説明義務の廃止、三つ目に、居住用の定期借家契約の中途解約権の廃止などの検討、それからまた、正当事由制度についても、建物の使用目的、建てかえや再開発等、付近の土地の利用状況の変化を反映した客観的な要件を加えること、また、立ち退き料の位置づけ、あり方の検討を答申している。

 私は、このような見直しがされるならば、賃貸借契約は、契約期限が来たらもう無条件で解消される、その上、中途解約すら認められなくなると思います。

 そこで、借地借家法を所管する法務大臣にお聞きをいたします。全国に二千万世帯近くの借家人がいらっしゃいます。その居住権を守ることは借地借家法の趣旨だと思いますが、大臣の御所見を伺います。

野沢国務大臣 委員御指摘のとおり、借地借家というこの法案、そしてまたこの制度そのものは、人間の生活にとって、住みかえもしくは一時的な居住を含め、大変重要な法案であるという認識を持っておりまして、今回のこの一連の改革の中でも重大な課題であると受けとめておるわけでございます。

 まず、借地借家法におきましても、通常の借家契約の賃借人が、賃貸人、賃借人双方の建物使用の必要性その他の諸般の事情を総合的に考慮して、正当事由があると認められる場合でない限り、賃貸人からの建物明け渡し請求に応じる必要はなく、その建物に居住し続けることができるものとされております。

 このような制度が設けられている借地借家法は、借家人の居住権の保護という趣旨を含んでいるものと考えております。

石井(郁)分科員 今御答弁いただきましたが、重ねて、借地借家法の核心をなす規定が正当事由制度なわけでございます。これは戦前の住宅難の時代に借家人の居住権を守るためにつくられた制度ですけれども、この立法の経緯と趣旨、また現在においても経済的弱者を保護する上で欠くことができない制度だということについて、大臣に御答弁いただきましたけれども、重ねてもう一言お願いいたします。

野沢国務大臣 人間のライフサイクルの一時的な時期として借地借家が大変効果がある、あるいは必要である、この点については私どもしっかり認識をいたしておるつもりでございまして、当然、これに伴う借家人、借地人の権利の保全あるいは保護というものについては、今後とも重要であると考えております。

石井(郁)分科員 今明確に御答弁いただきましたけれども、借地借家法を所管する法務省としては、これまで経済的弱者である借家人の最低限の生活を保護するために、居住の安定を確保するということで、不法、不当な要求に屈せず、定期借家制度の導入とか正当事由制度の見直し等に慎重な姿勢を示してこられたというふうに思います。

 そういうことがあってだと思うんですけれども、定期借家制度の導入ということについては、御承知のように、議員立法でこれは進められるという動きがありましたし、早期成立をねらっていた不動産業界などが国会議員に、とりわけ自民党を初めとした国会議員に大変働きかけをした、法案買収とも言える、国会審議買収とも言える重大な疑惑がございました。この問題は、私どもの木島日出夫議員が昨年の予算委員会、法務委員会において追及したところでございます。

 私は、初めにこの点で一問伺っておきたいわけでございます。

 この定期借家制度の法案は、法務委員会に付託されましたけれども、百四十二国会から百四十五国会までの四回、国会継続審議でしたが、ついに一度の審議も行われませんでした。そこで登場したのが、突如としてというか、私たちにはそのように映りましたけれども、良質住宅の供給、そういうまくらをかぶせて同じ内容を含んだ法律、これも議員立法、良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法案が出されまして、それで成立を図るという、これは前代未聞の暴挙だと言わなければならなかったわけです。提出者は両法案とも筆頭が保岡興治議員でございますけれども。

 だから、百四十五回国会の閉会で一度も審議されなかった借地借家法の改正法案は廃案。ところが、良質住宅促進法なる内容は借地借家法の改悪案、これは、閉会日の八月十三日の議運で強引に建設委員会に付託されて、継続されて百四十六国会で法案が衆参合わせてたった九時間の審議で強行成立したという経過がございました。

 こういう異常な委員会運営、法案のいわば二重提出というようなことの背景に、この業界による法案買収の疑惑というものが指摘されておりました。定期借家制度の創設運動を展開していたのが、全国宅地建物取引業連合会、略称全宅連、またその都道府県協会、そしてその政治活動のための組織として全国不動産政治連盟、略称全政連がございました。ここが法律改正に向けて大々的な政治献金攻勢を国会議員にかけていたということでございます。私どもの木島委員が、当時予算委員会、法務委員会に資料も提出して、こういう献金の実態があるということで追及をしたわけでございます。

 それで、伺うわけですけれども、普通の定期献金と違って、法案成立のために、その時期に談合があって、通常より際立って多額の献金があったんだと。これはわいろ性を示すものではないのかと当然疑いを持つわけでございます。そういう買収の疑惑があるということで、贈収賄事件の捜査の端緒となり得るというふうに考えるわけですが、その点では御答弁いかがでございましょうか。

樋渡政府参考人 お尋ねは、捜査機関がどのような契機で活動するかにもかかわる事柄でございまして、お答えいたしかねることを御理解いただきたいのでありますが、あくまでも一般論として申し上げますれば、検察当局におきましては、事案に応じまして、行政機関からの通報等のみならず、報道や国会における御議論を含め、広く社会の諸事象からその捜査の端緒を得た上、刑事事件として取り上げるべきものがあれば、法と証拠に基づいて適宜適切に対処をしているものと承知しております。

石井(郁)分科員 国会でこうした具体的な事実を挙げての追及、質問があったわけですから、今お話しのように、そういうことも見ているだろうというお話ですけれども、既にもう一年以上たっているわけですね。私は、法務省として、こういう国会での質疑状況、あるいは資料等々を、検察がどのように進めているのかということについて、やはりきちんと報告をしているのかどうか、捜査をしているのかどうかというようなことについて、きちんと御答弁いただきたいわけです。

 これだけの客観的事実があって、法案買収の疑いが濃厚だということで捜査も着手していないということになったら、これはもう法務省、検察が自民党やそういう関係議員に対して遠慮しているというふうにしか思えないわけですね。ですから、こういう国会での資料をまず法務省としてちゃんと伝えているのかどうか、その点はいかがですか。

樋渡政府参考人 先ほどもお答え申し上げさせていただきましたが、要は、捜査機関がどのような契機で活動するのかということにもかかわるものでございますので、なかなかお答えすることが難しいのでございまして、一般論として申し上げれば、あくまでも捜査機関は、この国会での御議論等も十分に含めまして、あらゆる、広く社会の諸事象からその捜査の端緒を得た上で、適宜適切に対処をしていくものと承知しております。

石井(郁)分科員 もうきょうは詳しく申し上げる時間がございませんけれども、先ほど申し上げましたように、良質住宅の供給という法案に名を変えて出てきたこの法案の成立に向けて、実はこれは一九九九年の七月十三日には自民党の三役と国対委員長とそれから全政連会長という宅建業界の方との談合が行われているんですね。そしてそこで、こういう形で法案をぜひ成立させようという奇策と、後に手柄話として言われたそうですけれども、それがちゃんともう載っているわけですね、そういう談合があったと。

 そして、この法案の提出と成立の、いわば審議の臨時国会召集日の二日前、そこで自民党に一千万円が渡る、それから幹事長にはそれぞれ相当な多額のお金が渡る、衆議院で法が成立した直後にはまた献金が渡る、参議院の本会議で成立した日、その日にも献金ということで、もう明白なんですよね、こういう一連の事実を見ると。これがやはり贈収賄に、わいろ性に本当に当たるんじゃないか、贈収賄罪に適合するんじゃないかというのは考えられるわけですよ。

 ですから、こういう事実をもってしてもまだ捜査が開始されないとか、あるいはどういう状態になっているのかもわからないというようなことでは、私は、本当に今、政治とお金、そしてそういうもので厳しい世論がありますから、やはり法務省の姿勢が問われるというふうに思うんですね。法務省としてもしかるべききちんとした態度を示すべきではないのですか。あるいは、検察に伝えるなり連絡するなり、そういうことは私はあってしかるべきだと。きょう、ここでも私はこのように申し上げているわけですから、その点ではぜひ明確な御答弁をいただきたいというふうに思います。

樋渡政府参考人 委員も御承知のとおり、犯罪の成否は、収集されました証拠に基づいて判断されるべき事柄でございます。先ほども申し上げましたが、一般論として申し上げますれば、検察当局は、常に厳正公平、不偏不党の立場から、刑事事件として取り上げるべきものがあれば、法と証拠に基づいて適宜適切に対処していくものと承知しておりまして、事件として取り上げるのかどうかという判断の契機というものは、検察当局がいろいろな角度から考えているところでございます。

石井(郁)分科員 私は、事実として、この法の成立に業界挙げての買収工作があったと言っていいと思うんですね。だから、こういうことがこのまま見過ごされるということならば、これは国会もその責任が問われる、このまま見過ごしたら、立法府としてのまさに責任すら放棄するということにもつながるわけですから、これは国会としてもきちんと取り上げていかなきゃいけない問題だというふうに思います。そのことを申し上げまして、きょうはこれ以上の御答弁ありませんので、次の問題で質問いたします。

 政府の、内閣の方が総合規制改革会議を立ち上げておりまして、その中でもこの借地借家法に関係する問題が出されておりますので、それと関連して、ちょっと一つ二つお聞きをいたします。

 総理の諮問機関である総合規制改革会議がございますけれども、十五人の委員を見ますと、財界代表が十一人なんですね。学者が四人いらっしゃる。私は、非常にこれは偏った構成だというふうに思います。少なくとも法務省にはこのような構成の諮問機関はないんじゃないでしょうか。

 そこで、大臣に一言伺いますけれども、借地借家法を所管する法務省の意に反して、この総合規制改革会議が定期借家制度の導入とか正当事由制度の見直しをさらに推し進めようとしているわけでございまして、まず、この総合規制改革会議の議長はどなたがしていらっしゃいますか。大臣、御存じでしょうか。

房村政府参考人 総合改革会議の委員長は、たしか宮内議長だと認識しております。

石井(郁)分科員 有名なというか、オリックス株式会社の代表取締役の宮内義彦氏でございます。

 実は、私が申し上げたいのは、ここで、非常に、借地借家法の見直しとか改悪にまで踏み込むようなことがずっと進んでいるわけですけれども、今そのもとでどんな事態が起こっているのかということなんですね。

 実は私の選挙区に、大阪市ですけれども、阿倍野再開発事業というのがありまして、大阪市挙げてこれは取り組んでいる大事業なんですけれども、この一月にも新聞にも大きく報道されましたけれども、もうこの事業は二千億円の累積赤字を抱えている、大阪市としても大変な、いわばお荷物事業にもなっているんですね。そういう一帯の一部ですけれども、オリックスが施主で、竹中工務店が施工で、昨年七月から来年二月までで今工事が進められているわけです。

 この阿倍野再開発事業の全体にも、借地借家人の方が大勢まだいらっしゃる。一部では膨大なビルも建って開発事業が進んでいますけれども、それはバブル期に地上げ屋で強引な、そういう更地になり、再開発事業が進められたんですけれども、しかし、今となってみたらテナントが入らない、そして本当に累積赤字が申し上げたように膨大に積み重なっていく、そういうところなんですね。ここはJR天王寺駅というところに隣接している一等地ですから、戦前からの本当にそういう住宅の密集地でもありました。

 そういう地域の一部で、政府の総合規制改革会議の議長なる人が、今度は何をしようとしているかといえば、都市再生法によってこの開発事業に取り組む。都市再生法というのは、政府、内閣が進めているものであるわけですね。ですから、こういう開発事業を推進している人が総合規制改革会議の議長をする、そして、立ち退きに応じない借地借家人を追い出すような、正当事由制度を廃止するというような方法で、この借家法をなくしていこうとすることにつながる動きというのは、どう見ても、余りにもこれは一部の利益の代表で事が進められている。そして、本当に借地借家人の居住権を危うくしているということにつながっていくわけで、本当に私は国民から見ても異常な方向で進んでいると言わなければならないと思うんですね。

 そこで、法務大臣にも重ねて伺いますけれども、だから、この総合規制改革会議の方から出てくるのは、都市再生のためには過保護の借家権を少し弱めてもいいんだ、こういうことが堂々と言われるわけですよ。そういう論が今まかり通っていくというようなことを、私はやはり見過ごすわけにはいかないというふうに思うんです。借地借家法を所管する大臣として、法務省として、この居住権を守るという問題、正当事由制度というのは、やはり借地借家法の根幹だということであって、居住権、営業権を保護するという上では重要な役割を果たしているんだということを、こういう事態の中だからこそ重ねて明言していただきたい。いかがでございましょうか。

野沢国務大臣 借地借家法の二十八条は、借家契約における正当事由の有無を判断する際には、賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情その他諸般の事情を総合的に考慮すべきものと定めておるところでございます。

 このことからも明らかなとおり、借家における正当事由制度は、借家人の居住の必要性を含め、賃貸借契約に関するさまざまな事情等を総合的に考慮して、賃貸人と賃借人との適切な利害調整を図るための制度であると考えておりまして、この点は変わっておりません。

石井(郁)分科員 定期借家制度がいかに居住者にとって過酷なものであるのか、生存権すら脅かしかねないということについて、私、ちょっと、一、二、事例で申し上げたいと思います。

 大阪市の、これは田中やすこさんという方なんですけれども、この方は「おはなし会」で語りをしていらっしゃるんですけれども、六十七歳の女性です。生まれたときからその土地で育ち、結婚で離れていたけれども、九年前に両親の看病のために実家に戻っていらっしゃる。その実家は借家だ。両親が亡くなって、借家権を相続して住んでいらっしゃるわけです。それが、突然家主から定期借家契約を締結させられる、よくお年寄りがそういう目に遭うわけですけれども、ことしの四月末で契約解除だということになっているわけです。

 この方がこういう著書「おはなしのたび」を書いていらっしゃっているので、その中からちょっと御紹介したいんですが、こういう経過なんですね。

 昨年十月三十日の夕方、郵便配達人が速達で内容証明書を届けてきた。あけてみると、家主から六カ月先に家を出ていけという通知だ。青天のへきれきだ。ここを追い出して、どこへ行けというのでしょうか。私は年金三万五千円です。三十年来の糖尿病を持ちながら、「おはなし会」のわずかな出演料で暮らしています。現在四万七千円の家賃より高い借家にどうして住めるでしょう。町の賃借住宅情報を見ますと、十万円の家賃が相場になっている。経済的にも不可能だ。二〇〇〇年五月に突然こういう定期建物賃貸借契約書というのを持ってこられた。どうもその方が同級生だったようですね、それで契約書に捺印をしてしまった。そのとき家主に、署名したかわりにずっとここに住ませてや、私はここでお話を語りたいねんと言った。彼はそれは当然だというばかりに、ありがとうとも言った。しかし、その同級生がだまし討ちのようにして追い出しをかける。もう何もしたくないし、歩く元気もないほどだ。インシュリンを打っても糖尿病の血糖値が異常に上がって倒れそうになったと。

 大臣に、いかがでしょうか。定期借家制度の実態というのは、このようにして経済的弱者の居住権、生存権を奪うものです。家主、借り主双方の人間性に対しても重大な負の影響を及ぼす。人間性を押し殺してそういうことを言わなきゃいけないということになるわけですね。

 今お聞きになって、ぜひ大臣の御感想をお聞かせください。一言で結構です。

野沢国務大臣 居住される方々の人権が十分確保され、そして、借家あるいは賃貸、両方の立場で、十分なこれはお話し合いを進めながら、円満、円滑に処理していくべきものと考えております。

石井(郁)分科員 民事局長にお尋ねします。

 このケースですけれども、現行法のもとでは、経過措置の規定並びに賃借人保護のための強行規定があるので、このようなケースでは普通借家を定期借家に切りかえることはできないと考えますけれども、明確に御答弁ください。

房村政府参考人 御指摘のように、定期借家制度の導入、平成十二年の三月一日でございますが、その前に設定された居住用建物の普通借家契約の契約当事者がこれを合意により終了させ、引き続き、新たに同一の建物を目的とする賃貸借契約を締結する場合には、附則によりまして、当分の間、改正後の借地借家法三十八条、いわゆる定期借家契約でございますが、その規定の適用はないとされておりますので、御指摘のようなケースでは定期借家契約にはなりません。

石井(郁)分科員 もう一点申し上げます。

 これは埼玉県のクリーニング屋さんの例なんですけれども、ことしの一月の十七日、これは、「契約更新ご通知」という形で届けられました。それは、平成十一年三月十五日に交わした店舗の賃貸借契約が、平成十六年三月十五日、だから、もう本当に今ですね、期間満了となるわけです。ついては、旧の賃料九万五千円を新の賃料十二万三千五百円、別途消費税とかある。そして、契約期間を、前回五年契約を新契約期間三年契約でお願いしたい、更新料と手数料、四十三万二千三百三十七円也、まずは書面をもって通知する、御連絡をお待ちします、こういうのが一方的に来るわけですね。

 こういう理不尽な契約更新が押しつけられてくるというのがあちこちであるわけです。今どき、この賃料は三割増しの値上げになっているわけですから、もう皆さんが、今いかに、公務員も多くの働く人たちも賃下げで苦しいという中で、三割の家賃の値上げだということですね。そして、契約期間の短縮だと。

 この方は、普通賃貸借契約ですから、今後の交渉の余地があって、合意が得られなくても借家権はあるというふうに思いますけれども、ちょっと、このケースではいかがですか。

房村政府参考人 御指摘の契約であれば、普通借家契約でございますので、更新を拒絶するには正当の事由が必要となります。したがいまして、そういう正当の事由がなければ、契約は更新されていくということになります。

石井(郁)分科員 だから、それでも嫌なら出ていけ式に強硬に出られたら、後はもう厳しい裁判になっていくということになって、これが定期借家だったら、本当に、無条件に出ていくか、要求をそのままのまなければならなくなるということなんですね。

 例えば、クリーニング業、いろんな業界、御職業もそうですけれども、やっぱり町の零細業者の御商売というのは、もう長年のお客さんが大事ですから、それを獲得するということが大変なわけで、簡単によそに行ったらいいという話にならないわけですね。だから、これが、規制改革会議が言うかぎ括弧づきの「強過ぎる借家人」という形の実態なわけです。

 大臣に伺いますけれども、こういう理不尽な要求が許されてよいわけはありませんが、重ねて、借地借家人の権利をやはり守る、正当事由制度は居住権保護のために重要な制度なんだということの御認識と確認、一言いただきたいと思います。

野沢国務大臣 個別の契約についての適否については御回答を差し控えさせていただきますが、いずれにいたしましても、貸し手、借り手の皆さん方が御納得のいく形でこの制度をしっかり運用していただきたいことは私どもの趣旨でございますので、その点はよろしくお願いします。

石井(郁)分科員 借地の契約の更改でも、法改正を先取りしたひどいケースがありまして、一点伺います。

 これは、一九九一年に、借地法と借家法を一体として現行借地借家法が制定されました。事業用の定期借地権制度が導入されまして、このときに、この法改正を先取りして、借地権の譲渡を受けた借り主をごまかして契約を法改正後にするという手法で、本来の契約期間を無効として十五年間で契約して、二〇〇八年に契約期間が切れると通告してきた、こういう事例があります。これは、新法で十五年間の契約期間にすることで期間の短縮を仕組んだものなんですね。私は、極めて悪質な手法だと思います。

 民事局長にぜひ伺います。

 こういうケースの場合は、書面による契約がなくても、地主の承諾のもとに借地権並びに建物の譲渡を受けた段階で普通借地権が成立したと思いますけれども、ちょっと、途中事例を少し省略しているんですけれども、いかがでしょうか。

房村政府参考人 旧法下で借地権の譲渡がされて、地主が承諾をしていれば、その時点で借地権は譲渡されて、建物の譲り受け人に借地権が帰属します。

 ただ、新法のもとで、借地契約について定期借地権に切りかえることを、定期借家とは違っておりまして、禁止しておりませんので、当事者の合意で事業用の借地権に切りかえるということは、法律的に可能でございます。

石井(郁)分科員 時間が参りました。

 一言ですけれども、借地借家法の見直しは、都市再生の名のもとに再開発と大型公共事業を促進させる、土地の流動化を期待する財界、不動産業界の強い要請にはこたえると思います。しかし、長引く不況のもとで困難な生活に耐えている借地借家人の権利を著しく制限する、国民の住みたいところに住み続ける権利を剥奪するものであって、断じて認めるわけにはいきません。借地借家人の居住権を定めた正当事由制度の見直しをやめて、また、借家市場にも受け入れられていない定期借家制度を直ちに廃止すること、同時に、本当の意味で国民が安心して住み続けられる良質な公営住宅の建設とか民間住宅への家賃補助制度などの実現こそ今求められているということを申し上げまして、質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

萩野主査代理 これにて石井郁子さんの質疑は終了いたしました。

 次に、山田正彦君。

山田分科員 民主党の山田正彦です。

 今、自己破産、そういった倒産というものが相変わらず大変横行しているわけですが、その件について、ひとついろいろお聞きしたいと思っております。

 まず、自己破産をしようにも金がなくて、お金がかかるから自己破産できない、それで夜逃げする、あるいは自殺するということが相変わらず出ているわけですが、ちょっと調べてみましたら、できれば本人申し立て、自己破産するにも弁護士さんにお願いするとやはり三十万なり五十万なりかかってしまうというところから、本人が申し立てすれば、それこそ八千円とか一万とか、あるいはそこらの少額でもってできるんじゃないかということで、自己破産を本人が申し立てするということは大変、大変大事なことなんです。

 ちょっと調べてみましたら、東京地裁では本人申し立てが年々減ってきている、割合からして四・五%しかない。ところが、高松地裁では自己破産の本人申し立て、これが四六・〇%ですから、約半分近くまで本人が申し立てられるようになっている。

 これは、裁判所によってこういう扱いがあるということは、国民にとって、自己破産をして何とか債務を免れてもう一回人生を再生、再建しよう、そうするときに法の不平等じゃないか、そう思いますが、いかがですか。

園尾最高裁判所長官代理者 個人の自己破産の本人申し立ての件数についてのお尋ねでございますが、統計報告を求めておらない関係上、協議会の機会などに裁判所の担当者に伺って実情を把握しておりますが、東京地裁では、ただいま御指摘のとおりに本人申し立ての件数が減ってきておるということでございますが、その他の裁判所では、むしろ本人申し立ての件数がふえてきておるという実情にあることを聞いております。

 ただいまの東京地裁それから高松地裁の実情、件数についてはそのとおりでございますが、東京地裁の本人申し立ての件数が減ってきた事情について御説明を申し上げたいと思います。

 東京地裁本庁で個人の自己破産の本人申し立て件数が減少した原因といたしましては、東京にある三つの弁護士会で法律相談に積極的に取り組んでいただいた成果が主な原因であるというように考えております。

 東京の三弁護士会では、平成十年に三弁護士会合同で多重債務者専門の法律相談センターを四谷に開設いたしまして、これに続いて平成十一年には神田にも多重債務者専門の法律相談センターを開設いたしまして、弁護士会が多重債務者の法律相談に積極的に応じてくださっております。その成果が実りまして、平成十一年以降、急激に、個人の自己破産について申し立て代理人の選任率が上がっているということでございまして、その反面としまして本人申し立ての件数が少なくなっておるという事情が、東京に限って言いますと存在してございます。

 特に、東京の三弁護士会におきましては、資力のない多重債務者につきまして、申し立て代理人の費用を分割払いでもよいというような運用まで行ってくださっておりまして、当座の手持ち資金のない多重債務者でも弁護士に委任することが可能になっておるという事情があるようでございます。

 その他の裁判所では、個人の自己破産の申し立て件数の増加に伴いまして本人申し立ての件数も増加しておるというような状況でございまして、本人申し立てについては、円滑に進行ができるような配慮はなお継続されていくものというように考えております。

山田分科員 各事務所において、破産事件はなかなか弁護士費用をもらえないから分割でやっているところは多いと思うので、何も東京地裁に限ったことじゃない。むしろ、東京地裁の扱いは、本人が司法書士に頼んで書類を出すことも司法書士代理人では認めない。よその裁判所では認めているところもある。東京地裁の自己破産に対する扱いは、他の地裁に比べて余りにもひど過ぎる。そういう意味ではどう考えられるか。

園尾最高裁判所長官代理者 個別の裁判所の運用についてのお尋ねでございますが、私ども、ただいまのような一般的な状況を把握しておりますが、個別の申し立てに関して裁判所がどのように対処をするかということは、これは個別の事件処理の問題であるというように認識をしておりますので、私どもの掌握をしておるという範囲の中での答弁ということで御理解を願えればというように思っております。

山田分科員 これから先、いろいろとまた聞かなきゃいけないので、最高裁判所のいわゆる各地裁に対する行政面、例えば予納費用の問題とか、いわゆる自己破産の扱いをどうするかとか、個人の民事再生の扱いをどうするか、そういったことについては大変大事だと思うので、それなりに十分な指導をなさなきゃいけないと思うんです。

 まず一つ、企業の自己破産の予納費用。これは、私も随分破産事件を扱ってみましたが、いわゆる企業が倒産する、夜逃げする、自殺する、それを防ぐには法律的に自己破産の申し立てをしたが一番よろしい。ところが、企業にとって、負債が二億から三億あるのは、中小零細企業にとってはざらであります。ところが、実際に破産の申し立てをしようといたしますと、予納費用、これが百五十万から二百万要求される。予納費用をいざ倒産時に用意できるような企業は全くない。ほとんどありません、これは。

 そうすると、いわゆる債権者にとってみても、債権者平等に法的に扱われた、処理された方がありがたいわけですが、いわゆる夜逃げして、そして暴力団みたいな連中があるものをごっそり持っていく、いわゆる早い者勝ち、そういった無秩序といったものを許している。一方では、破産も企業はできずに、夜逃げだけならともあれ、自殺まで追い込まれている。依然として自殺件数は年間三万何千件から減っていない。

 こういったことを考えると、当然のことながら、破産事件の予納費用の分割、あるいは今少額管財事件、これは東京地裁あるいは大阪地裁で行ってきて、二十万ぐらいの管財費用でやれるということで、非常にありがたい制度だと思って前回のときもお聞きしたんですが、この制度をぜひ、一方では地方の裁判所においてその制度がなされずに、いまだに夜逃げ、自殺が続いている、予納費用の高さで。

 こういったものについて、前回、七カ月ほど前、私は分科会じゃなくて法務委員会でお聞きして、この少額管財制度を直ちに、それこそ局長通達でもいいから全国の裁判所に適用してほしいし、かつ予納費用の分割払い、そういうことも含めて、本当に、幾ら司法制度を改革しようとも、その司法制度そのものを一般の人が、破産者、あらゆる人が使いやすいように、そういうことを行うのが最高裁判所の裁判所に対する行政指導じゃないか。その点、今の行政指導はなっていない。どう考えられるか。

園尾最高裁判所長官代理者 ただいま、倒産状態に陥った者の大変厳しい状況についての御指摘がございました。

 私どもも、そのような状況というように認識をしまして、破産事件の処理の方法について検討を重ねておるわけでございますが、ただいま御指摘のございました少額管財手続といいますのは、これは平成十一年の四月に東京地裁で始められた手続でございまして、管財事務を簡素化いたしまして少ない予納金で破産管財人を選任することができないかという観点から工夫された手続でございます。

 その結果、ただいま御指摘のように、企業の破産の申し立てであっても、予納金二十万円と官報公告費用一万数千円というような低廉な金額の予納によって、破産管財人を選任して手続を進めていくということが可能になってまいりました。

 ただ、これは、弁護士会とも協議をしながら、少しずつ検討を重ねて拡大をしていったわけでございまして、最初は一カ月に十件内外の事件から手がけてまいりましたが、現在では、幸い大変多くの弁護士の方々にも御理解を得まして、東京地裁でいいますと全破産事件の三割以上、一年間に八千五百件前後の件数の少額管財事件を処理しておるということでございます。

 ただいまの御指摘は、他の裁判所にもこのような手続を押し及ぼすことができないだろうかということでございますが、私どもも、よい手続であれば、できるだけ早期に他の裁判所にも及んでいってほしいというふうに願うわけですが、それぞれの地域の実情、それから弁護士会での体制、さまざまなものもございまして、それぞれの裁判所で今検討しておるところでございます。

 昨年の五月には御質問をいただきまして、東京、横浜、大阪、福岡の四庁の名前を例示して御説明いたしましたが、昨年の九月に日弁連から発行されました「自由と正義」という雑誌に、弁護士有志の方が全国の裁判所にアンケート調査を実施したという結果が掲載されております。

 これによりますと、その時点では合計十七の地方裁判所管内で、少額管財手続ないしはそれと類似の、例えば小規模管財手続、簡易管財手続、あるいはさらに別の名前を付するということで、それぞれの裁判所の工夫によって、ただいまのような低廉な予納金で破産管財人を選任するという手続を工夫しておるということでございます。

 したがいまして、全国のかなりの裁判所にこの手続が広がりつつあるということでございまして、私どもも、このような検討がされていくということについて、さらにその検討が進むように、私どもとしてやれることに関しましてはいろいろ検討をしていきたいというように考えております。

山田分科員 その「自由と正義」、弁護士会がアンケートをして十七というのがわかったということなんですが、最高裁判所民事局において、民事裁判のそういう扱いの実態の把握、これがなされていないというふうに今お聞きしたんですが、そういうばかなことがあっていいのかということと、これからそういう少額管財制度、これを各地裁に及ぼしていきたいということは、具体的にどのように考えておられるか。

園尾最高裁判所長官代理者 この少額管財手続は、それぞれの裁判所で、さまざまな名称もつけまして、手続の内容もそれぞれ異なるというわけでございますので、これをどのように把握するかについては、さまざまな検討、協議をしておるわけですが、一つの観点から弁護士の有志の方がこのような発表をされましたので、この結果というのを引用させていただきましたが、私どもも、機会あるごとにこのような状況の把握に努めておるわけでございます。

 その方法といたしましては、ただいま申しましたように、それぞれの裁判所の実情、申立人の実情、事件数、それから特に弁護士会との協議、個々の管財人の候補者となられる弁護士さんがどのような報酬でもって事件処理をしていただけるかということについての協議というのが大変重要な内容でございますので、これはそれぞれの裁判所で工夫を凝らしてやっていただくほかないということで、ただいまのような意見交換などをしながら、そのような検討が進んでおるということについて、我々も関心を持って見守っておるという状況でございます。

山田分科員 関心を持って見守っているというだけではどうしようもないんで、積極的に、行政としての、それはそれぞれの裁判所の判断ということもあるでしょうが、それはそれ、国民としては、法の下の平等のもと、平等な裁判を受ける権利は憲法上保障されているわけで、それが余りにも差があるということは問題である、これは。そういう意味で、具体的な行政指導といったもの、そういったものはでき得るはずで、それを最高裁はおろそかにしている、そう思わざるを得ない。

 これ以上話してもしようがないんで、ぜひ検討していただきたい、そう思います。

 それから、今、破産ですと、すべての財産、例えば今まで夫婦が一生懸命営々と築いてきたいわゆる住宅ローン、建物等も、みんな手放さなきゃいけない。ところが、個人の民事再生、これができて、運用されて二年ぐらいになりますが、非常にこれはいい制度である。いわゆる自己破産をさせないで、しかも破産するともうおれたちは何も払わなくていいんだ、これで免責とれて、もう破産ほどいいものはないと、この破産制度を悪用する者も近年出てきたわけですが、この個人の民事再生で幾らかでも払わさせる。例えば債権額の二割でも、個人の努力で、無理のない可処分所得の範囲内で払わさせていく。

 これは非常にいい制度で、私の方でも、私も弁護士事務所をやっておりますが、この二年間で二百十件ほど個人の民事再生を使わせていただきました。自己破産をできるだけやめさせて、幾らかでも払わさせるという民事再生制度にみんな切りかえろ、そういう形で今一生懸命やっているわけです。

 ところが、この個人の民事再生制度は手続が非常に煩瑣であるということが一つ。それと、弁護士、例えば代理人が、長い間その支払いに関与していかなきゃいけない。弁護士事務所に非常に負担がかかる。私の地元でもいろいろ問い合わせてみましても、なかなか弁護士事務所は、いいとはわかっているんですが、利用するのに非常に煩瑣である、負担が大きいということで、いま一つというところなんです。

 その中で、もう一つ、弁護士が代理人としてついているのに、裁判所によって、再生委員、これは報酬を十五万ぐらい払っているようですが、再生委員を別途つけるというところと、つけなくてもいいというところで、裁判所の扱いがある。ほとんど申し立て代理人である弁護士の方でやっていることに、付添人は現実的に必要ないんじゃないか。ちょっとこれは質問通告していなかったんで申しわけないんですが、その辺で、ひとつ制度の運用というものを考えていただきたいと思います。これはいかが思いますか。

園尾最高裁判所長官代理者 個人再生事件につきましては、御指摘のとおりに、弁済をして、再生という観点を加味しながら債務整理をしていくよい制度であるというような評価がございまして、平成十三年の四月から運用を始めたわけですが、当初、最初の年度には六千二百件程度の申し立てがありましたが、翌年、平成十四年には一万三千件余りの申し立てになりまして、昨年、平成十五年には二万三千件を超えるという申し立て件数になっております。

 そのような事件数の増加は、やはりこの手続のよさということをあらわしているというように考えておりますが、手続の運用におきましては、債務整理をしていくことのうちで平等に債権者に一部弁済をするという観点から法律上大変難しい手続が定められておりまして、この法律に定めた平等弁済をしなければいけないというところから手続が難しくなっているわけですが、その中で、裁判所の運用によって、原則として個人再生委員を選任するという運用と、それから申し立て代理人がついている場合には個人再生委員は選任しないというような、運用が分かれております。

 ただいま御指摘の東京地裁では、原則的に個人再生委員を選任するという運用でございますが、この個人再生委員の報酬といいますのは、これは毎月再生債務者に弁済予定額とみずから考える額をその分だけ予納を続けてもらいまして、その金額が個人再生委員の報酬に見合うような、そういうようなところまでいわば履行をテストしてみるのがよろしいというような東京の管内での検討で、このような運用がされているというように承知をしております。

 そうじゃない運用もまたあるわけですが、これはそれぞれの裁判所で、最も適当だという運用について、それぞれの弁護士会、特に申し立て代理人となっていただく、あるいは個人再生委員の給源となっていただく弁護士会と鋭意協議をして、最も使いやすいという手続は何かということを追求していくのがよいという考えで、現在のところ二つの手続の進行を見守っておるわけでございます。

山田分科員 実務をやってみて、再生委員は屋上屋を架すことで、さらに債務者に対して、いわゆる再生申立人に対してさらなる費用の負担につながっていく。ならば、できるだけ費用の負担をなくして再生できるようにするのが当然であって、そこはぜひもう少し実務の状況を最高裁としても調べていただきたい、そう思います。

 実際、私どもの実務をこの民事再生について精査してみますと、取り下げざるを得なかった中で二つほどあるんですが、一つは再生債権額が三千万を超えた。最初は三千万を超えるという予定じゃなかったけれども、住宅ローンの扱いなんですが、これは住宅ローンの特例でもって、いわゆる住宅ローンは外してある。だから、住宅ローンは別途その債権者との間に支払いの計画を立ててやっていけばいいことだというふうになっておると思うんですが、その住宅ローンの第一順位の抵当権の後に抵当権が設定された場合、例えばサラ金、武富士とかそういうところから五百万とか、そういうものが設定された場合においてはその適用をしない。

 いわゆる不足額についてさらに計上するから、最初三千万で外しておったものが復活した形になって、それで再生が受けられなくて取り下げた事例が、私も二件経験したわけです。これは裁判所によってもまた扱いが違うようですが、これではせっかく本当に再生によって再建を図ろう、個人の民事再生手続によって再建を図ろうということができなくなってしまう。しかも、裁判所の扱いによって、それがこっちができてこっちはできないというのは不平等じゃないか、こういうことについてどう考えられるか、お考えをお聞きしたい。

園尾最高裁判所長官代理者 ただいまの御指摘のような事実関係については、個別の事件処理でございますので説明を差し控えさせていただきますが、住宅資金貸付債権といいますのは法律でその定義がなされておりまして、これがその手続の経過中にその解釈が変わっていくというような法律の規定にはなってございませんので、裁判所としては、そのような法律の規定に従って運用をしていくということになろうかというふうに思っております。

山田分科員 実際にはなかなか現場サイドにおいてそうなっていないという現状があるので、ぜひ事実関係を調査していただきたい。その程度にとどめておきたいと思いますが、いずれにしろ、金額が三千万を超えたら破産にいかなきゃいけないというのではあんまりではないか、もうちょっと金額を引き上げるべきではないかと思いますが、それについてはどう考えられるか。

房村政府参考人 ただいまの小規模個人再生の限度額でございますが、法務省として、この国会に破産法案の改正をお願いしておりますが、それとともに、破産法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案も提出する予定でございます。

 その法律の中におきまして、御指摘の民事再生法の個人債務者のための限度額、現行法では三千万円となっておりますのを五千万円までに引き上げるということで考えております。

山田分科員 ぜひそうしていただきたい、そう思います。

 それからもう一つ、給与所得者の個人再生ではなく、いわゆる小規模の個人再生の場合において、過半数の反対があっては機械的にこれを却下するということになっております。

 ところが、現実には、給与所得者じゃない事業者、個人商店等々もいろいろあるわけですが、そういった場合に何とかこの個人再生で、本人も払う意思があるし、破産よりもそういう方向で持っていきたいと思うんですが、債権者によっては、反対のための反対という形で、もう事実上無意味な反対をしているということが間々見られるわけです。

 もともとこの制度は、企業の民事再生、これでやれば、債権者の過半数が賛成して、あなたの企業を何とか再生に協力しましょうということで意味があると思うんですが、もともと、小規模であれ給与所得者であれ、個人の民事再生は破産にならないように、幾らかでも払わせるように、そういう救済制度であるわけですから、そういった意味では、小規模について過半数の同意を得ているというようなことは必要ないんじゃないか、そう考えますが、いかがですか。

萩野主査代理 房村民事局長。時間が来ていますから、簡潔に。

房村政府参考人 今の要件でございますが、通常の民事再生の場合には議決権の過半数及び債権者の総数の過半数の賛成という要件でございますのを緩和いたしまして、要するに、議決権の過半数の反対あるいは債権者の過半数の反対、それがない場合には認めるということで、相当緩和した要件になっております。

 ただ、基本的に債権者の同意を要求しておりますのは、もちろん再生手続は弁済していただくためではございますが、破産になったときの配当との兼ね合いを債権者に判断してもらう、破産で清算した方が配当でより支払いが受けられる、こう思えば計画に反対する、そういう選択肢が債権者に認められているわけでございますので、現行法をさらに緩和するというのはなかなか難しいのではないか、こう思っております。

山田分科員 実際の事例を見てもらえばわかるんですが、ほとんど破産の配当は、現実に今破産事件あるいは個人の民事再生でもないというのが実情であって、考えられないというのが実情であって、実務はですよ、その中で個人の破産の配当と選択云々というのは、僕はそれは実務の扱いとしては納得できないんですが。

 いずれにしろ、そういったことを特別の場合には裁判所が事情を勘案して裁量でもってできるというような制度なりつくっていただいて、できるだけ幅広く個人の再生をぜひ実現して、いわゆる破産の、非常に地獄的な自殺とか夜逃げとか、そういったものから一日も早く救っていただきたい、そう申し述べて、私の質問を終わらせていただきます。

萩野主査代理 これにて山田正彦君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして法務省所管についての質疑は終了いたしました。

 午後一時に本分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    正午休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

萩野主査代理 休憩前に引き続き会議を開きます。

 外務省所管について、昨日に引き続き質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、これを許します。中村哲治君。

中村(哲)分科員 民主党・無所属クラブの中村哲治でございます。

 予算委員会分科会、この第三分科会の最後の質疑者として質問をさせていただくことに対しまして、本当に感謝申し上げます。

 私は、去る一月十三日から十八日まで、少し名前が長いんですけれども、「ドミニカ共和国への日本人移住者問題解決を進める国会議員懇談会」という議連のメンバーの一人として、ドミニカ共和国に行ってまいりました。以下、ドミニカというふうに略させていただきますけれども、ドミニカの皆さんとお話をさせていただいて感じたこと、それを、大きく三つの質問という形で、川口外務大臣また逢沢副大臣にお尋ねをさせていただきたいと思います。

 まず第一に、邦人に対する日本語教育についてでございます。

 在外邦人に対する日本語教育はどうなっているのでしょうか。いわゆる日本人学校という学校もあるそうですし、補習校、補習授業校という学校もあるそうです。その二つの学校の違い、また要件はどのように違っているのか、それについてお伝えください。

川口国務大臣 一般的に申し上げて、海外の日本人補習校というのがございます。これにつきましては、これは基本的に在留邦人の方によって運営をされるということであって、要件ということで、入学資格ですとかそういうことをおっしゃっていらっしゃるのでしたら、どういう人が、大体、運営委員会というのがそこにありまして、その運営委員会がその学校の運営について決めるということであると承知をいたしております。

 それから、日本人、日本語学校ですか……(中村(哲)分科員「日本人学校です」と呼ぶ)日本人学校。日本人学校、これは文部省の所管でございますので私はよく存じませんけれども、幾つか、海外にいる日本人の子弟を教育する学校はあると承知をしております。

 補習校というのは、通常、普通の場合は現地の学校に行って、国語、算数といった基礎的なものについて教えるということで、日本人学校というのは、それについて、現地校には行かないで、ウイークデー、日本人として日本語で教育を受けるというシステムだと承知しています。その詳細は、これは所管が外務省でございませんので、恐縮ですが、文部省をお呼びいただければと思います。

中村(哲)分科員 その補習校について、少し突っ込んでお話を伺います。

 確認になりますが、日本人学校が対象として想定しているような長期滞在者に限るわけではなく、補習校、補習授業校というものに関しては、移民など、それ以外の日本人の子弟も希望すれば入学できるというふうな、基本的にそういう仕組みであると考えてよろしいですね。

川口国務大臣 どういう人たちが中に入れるかというのは、まさに、それぞれの補習校の運営委員会、そこで決まっていくというふうに承知をしていますので、今委員がおっしゃられた話からすれば、具体的にどういう例があると知っているわけではありませんが、論理的な可能性としては、日系人も入るところもあるでしょうし、いろいろな範囲で入学資格については決めているのではないかと思います。

中村(哲)分科員 日本政府にとって、日本人の日本語教育をすること、日本語教育をきちんと日系人や日本人にすることというのは非常に意味のあることだと思うんですね。もちろん、海外にいるわけですから、日本の学校での教育がそのままできるわけではないですけれども、大臣がおっしゃったように、日ごろはインターナショナルスクールに行っていたり現地の学校に行っていたり、しかし、それでは足りない国語とか算数とか、そういったものに関してはきちんと補習をしていこう、そういうことで、日本人の子弟に関し、きちんと、日本語また日本の文化を実感できるような教育をしていくという機能が非常に重要だというふうに思います。

 そういったことで、今おっしゃいましたように、補習校においては運営委員会というものがあって、そこできちんと精査をして、制度上は長期滞在者に限らないわけですから、移民など、その地域に根を張っている人たちにも道を開いていく、そういったことで理解させていただきたいと思います。

 だから、そういったことを、現地にあるいわゆる日系人協会などの現地の邦人相互扶助団体にきちんと周知徹底がされているのかどうかということが、普通、大使館の役割として大きな役割があると思うんですね。その周知徹底に対して、きちんとされていらっしゃるのでしょうか。

川口国務大臣 世界で幾つ補習学校があるか私は知りませんけれども、それぞれの学校でどのような入学資格を付与し、それからそれをどのように知らせていくか、一義的には、これをやっていくのはまさに運営委員会の仕事であるということです。

 もちろん、おっしゃいますように、大使館としましても、これは日系人も含めて、その方々が生活上の必要な情報を持っているということは大事なことでございますので、それについては今までもお手伝いをしておりますし、今後ともそれについては極力やっていく所存でございます。

中村(哲)分科員 事前の事務方のお話によると、補習校の管轄は外務省だというふうにお聞きしていたんですけれども、直接、日本人学校の方は文部科学省なんだけれども、補習校の方は私はそういうふうに聞いたというふうに思って……(川口国務大臣「共管です」と呼ぶ)共管ですか。共管であるということもありますので、外務省は一定の役割を果たせるということでございます。

 そうすると、補習校の中に二つクラスをつくることも可能だというふうに聞いておりまして、一つは長期滞在者用の、日本に帰る人向けのクラス、もう一つは現地で勉強されている、現地でお住まいになっているという方が対象のクラス、こういった二つのクラスをつくることが制度上可能だということをお聞きしておりますけれども、副大臣でも結構ですからお答えください。

逢沢副大臣 日本人補習校の実態について、より詳細な情報を求めるという趣旨であろうかと思いますが、今大臣からお話がございましたように、基本的に在留邦人の方々によって補習校は運営をされ、また入学資格等々も、それぞれの学校にございます運営委員会によって基本的には決められているということでございます。

 まさに委員御指摘のように、いよいよ海外に滞在をした方が日本に帰る、日本に帰れば日本の学校にまた帰国子女として戻らなくてはならない、特に力を入れて国語、算数の水準をできるだけ日本のそれに合わせていこうという趣旨、意図、目的で設立をされたという経緯もございます。そういったものに対応する中身、そして、引き続きその国にとどまる、海外にとどまってというお子さんに対する対応、大きく大別すればその二つになろうかというふうに思いますが、いずれにいたしましても、在外公館として、補習校の現状、また、そういうものが存在し、サービスを提供しているということについては、当地の日本人の方に周知徹底をする、そういう必要性は大いにあろうかというふうに存じます。

中村(哲)分科員 時間が思いのほか過ぎてしまっておりますので、二番目の質問は後に回しまして、メーンのテーマで、お聞きをしたかった三番目の質問について質問させていただきます。

 移民に対する貸し付けについてでございます。外務省の資料としては、「移住融資事業について」ということでございますが、経緯のところを読ませていただきますと、移住融資事業、「移住融資事業は、昭和三十一年にJICAの前々身の一つである日本海外移住振興株式会社により開始され、以来四十数年にわたり移住者の定着・安定のために重要な役割を果たしてきた。」以下は省略をさせていただきますが、このJICAが行う移住融資事業というものは、どういった政策目的でなされているのでしょうか。

川口国務大臣 JICAの移住融資の目的でございますが、これは、移住者の方々の移住先国における定着、そして安定に必要な生活基盤の確立を支援していくというものでございます。

 そして、これは個人もしくは団体で農業、工業、漁業等の分野で事業を行う方々に対しまして、おのおの事業に必要な資金の貸し付けを行うといったものでございます。

中村(哲)分科員 現地の方々にお話を伺っていると、ドル建てで貸し付けることに対する非常に大変な負担感を感じていらっしゃるんですね。最初は一ドル一ペソから始まるんですけれども、それが一ドル三ペソになり、一ドル六ペソになり、一ドル十三ペソになり、最近では、もうこの年末からの動きが激しかったんですけれども、一ドル今五十二ペソまで上がってしまっています。そういった中で、ペソを借りているんですけれども、ドル建てで借りているものですから返済が追いつかないという、そういった非常に悲鳴に似た声を伺いました。

 そこで、伺った話の中でまず出てきたのが、ドミニカ共和国の憲法や憲法の下位規範、日本でいうと民法とか金融関係法とかいうことになるんでしょうけれども、そういったドミニカの法規範の中ではドル建ての取引は認められていないんじゃないか、そういった声があったわけです。恐らくまだ確認中かもしれませんけれども、外務省としては、この件についてどのように把握をされているでしょうか。

川口国務大臣 これについて現地にも確認をいたしましたけれども、ドミニカ共和国においてドル建て融資を明示的に禁止しているという法令は存在するとは承知をしていないということでございます。

 それから、今までもJICAの移住融資をやってきたわけですけれども、ドミニカ共和国の関係当局からこれについて何らかの指摘があったということはないということでございます。

中村(哲)分科員 この法律的な観点に関しては、今からまたさらに弁護士を通じたり、話は進むと思いますので、その推移を出していただきたいと思うんですが、そもそも、その政策目的とこのドル建てというのが合致するものなのかな、そぐうものなのかなというそもそもの疑問が私にはあります。

 そこで、大臣にお伺いしたいんですけれども、この為替リスク、対ドルレートが大きく変動するドミニカ・ペソの状況を見ても、為替リスクを移民の側に負わせるのは非常に酷なんじゃないか、移住者の側に負わせるのは酷なんじゃないかということを思うのですけれども、この為替リスクを移住者に負わせる理由はどういうものがあるんでしょうか。

川口国務大臣 外国に、要するに為替変動がある関係のところに貸し付けをした場合に、だれがこの為替リスクを負うのかというのは、この問題も含め、あるいは円借款のようなことも含め、あるいは企業の貸し付けも含め、すべてこれはいつも変わらぬ問題であるということだと思います。

 それで、特にドミニカ共和国あるいは移住者の方々がインフレが高進をする中で、名目的に返済をしなければいけない現地通貨がふえていくということについて非常に問題意識を持っていらっしゃるということは、これはよく理解をいたします。

 それで、何でドル建てなのかという御質問でありますけれども、これは経緯的に、そもそももともとの原資がドルであったということから来ているということが一つあるようでございますけれども、基本的にはこれの為替負担、現在は国の要するに税金でやっているわけでございまして、その税金が円であるということでありますので、もしペソで貸し付ければ、国がその為替差損を負担する、すなわち、日本の国民がこれを負担するということになるということです。

 経緯的にドル建てになっているのは、経緯があって、これは日本海外移住振興株式会社というのが、その後JICAに吸収合併になった団体としてありますけれども、そこがそもそも移住融資を開始した時点では、アメリカの三つの銀行から移民借款をしてそれを原資としたということで、その原資の保全を考慮してドル建てで行われたという経緯がそもそものそのスタートであるということです。

中村(哲)分科員 外務省からいただいている資料では、「貸付金の原資は国からの出資金であるが、昭和六十三年度からは国からの出資を受けずに回収金を財源として貸付を実行している。」とあります。今の大臣の御答弁とは少し違うのかもしれないなということを感じておるんですが、それよりも少し違った見方を主張させていただきたいと思います。

 ドル建てで貸せる経済主体というのは、そのリスクを背負えるような経済主体でなければならないと思います。政策目的があくまでも移住者の定着、安定であるのであれば、移住者がその経済活動においてドル建てで貸し付けをさせられても十分それで返していけるような状況であるということが必要なんだと思います。あくまでも貸付事業の政策目的が移住者の定着、安定にあるのであれば、それは私は当たり前のことだと思うんです。

 なぜその制度の当初においてドル建てで貸し付けをさせられたかということを考えると、これは固定相場の時代だったわけですね。固定相場の時代だから、あえて、ドル建てで貸そうがペソ建てで貸そうが、制度が始まったときには余り問題にならなかった。しかし、その後ニクソン・ショックもあり、ドルが不換紙幣になって、そして大きく為替が変動する時代に入ってきた、そういったときに、さて、大きく為替が変動しない、そういった状況においては、大臣がおっしゃったことをそのまま政策目的と照らして検証することは必要なかったんだと私は思います。

 しかし、このように大きく為替が変動する時代において見ると、その為替リスクをどこに負わせるのか、どれぐらい負わせるのかということは、これは政策目的に照らしてまた検証をし始めないといけない、そういった段階に私は今入っているんだと思います。

 ここは今御答弁、なかなかいただけないかもしれませんけれども、検討をしていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。

川口国務大臣 本来のその政策目的を貫徹するならば、ペソ建てであるべきではないかという御意見、これもあり得る御意見だと思います。

 先ほど円借款の例を出しましたけれども、円借款も、言ってみたら途上国に対して支援をするわけでございまして、支援の対象として、国と個人はもちろん違いまして、すぐには比べられませんけれども、円建てで貸している、為替負担は途上国が負っているということがあるわけでございます。全体として、国の税金を使って、さっきの回収金を使ってというのは、もともとは国の税金であるわけですから、国民の税金を使ってだれが為替リスクを負担するのかという非常に大きな、一般的な問題になるというふうに思います。

 それで、そういった為替リスクの負担のほかに、この問題についてはいろいろな問題があるわけでして、それは、例えばほかの国でも同じような融資があるわけですけれども、そういったほかの国、あるいは同じドミニカ共和国の中で、返済をしている人たちがいるわけでございまして、その人たちの公平性の問題をどのように考えるかという問題があります。

 それからもう一つ、現地通貨でということにした場合に、為替リスクを国が負担しているわけですから、待てば待つほど返す金額は少なくなっている。インフレが高進をしている国ではそういうことになるわけでして、まさに今起こっていることの逆のことが起こると考えていただければいいわけですけれども、ペソは同じである。それで、ペソ建ては同じである。他方で、物価が上がって、インフレが上がっていきますから、相対的に小さくなるわけですね、所得もインフレにつながって上がっていきますから。という意味で、待てば待つほど、延ばせば延ばすほど得になるというようなこともあって、これは総称してモラルハザードといいますけれども、そういった問題も存在をします。

 そういういろいろな問題を考えてこの問題は検討をしなければいけない話でございますけれども、我々としては今までずっとそういうドル建てでやってきて、そして返済をしている人たちも大勢いる。全体として九百四十二件、件数がある中で、七百七十四件は返済をされているわけです。という状況がありますので、そういったことも考えなければいけない。

 ですから、今そういう状況で、今後いろいろ状況も変化する可能性がありますので、今後、そういった状況の変化を注視しながら、適切に対応していきたいというふうに考えています。

中村(哲)分科員 私が今の質問で申し上げたのは、政策目的と合致するのかというお話なんですね。先ほどおっしゃったように、円借款の場合に、途上国に対する貸し付けですから、これはまさに大臣がおっしゃったように、国と個人は違うんですよね。国はある程度為替リスクを負える体力もありますから、そして政策目的も、そういった国同士の貸し付けということで整理をされるわけです。しかし、このドミニカの移住者の人たちに対しては、移住者の定着、安定というのが政策目的でありますから、それに合うような形で貸し付けをしなくてはいけないというふうに私は申しておるわけでございます。

 だから、確かに、返済をしている人もいらっしゃる、その公平性を考えれば問題はないじゃないか、ドル建てで問題はないんじゃないかとおっしゃるんですけれども、逆に、ペソ建てにしても、返す、返さないということとは次元の違う話だとも言えるわけですよね。だから、そこは、返す、返さないと、ペソ建て、ドル建てというのは、必ずしも関係しないと言えると思います。

 それから、より深い問題としては、先ほどモラルハザードのお話がありましたけれども、返済がもうできない、返す意思はあるんだけれども、膨大な金額になり過ぎて、到底返すことができない。私は、この返したいんだけれども返す意欲を失ってしまっている人たち、そういった人たちに、ある程度返せるような、そういったスキームをきちんと組んであげることも必要だと思うんですね。

 少し具体的な質問をさせていただきたいと思います。

 ここは、JICAに当初聞いたときに、そんなことはしていないというふうにおっしゃったんですけれども、借りかえの実態があるんじゃないかということについて、今調査をしていただいております。まだ、きょう現時点で余り目立った答えは出ていないんですけれども、先週末に初めてこういった表が出てきました。「既往債権元本完済日と新規貸付実行日が同日の債権一覧表」、これで、四十件の今既往の債権の表をいただきました。これは、旧債権の元本が完済された日と、新しく貸し付け、同一の人に貸し付けた新しい債権の貸付日が同じものが四十件あったということなんですね。

 これに関しては、外務省の側からすれば、新しい貸し付けであり借りかえではありませんというふうにおっしゃるんですけれども、移住者の皆さんからお話を聞くと、実態的には新しい契約を結ばされて、そして返済をさせられているというか、することになってしまっている、そういったお話があるわけでございます。

 だから、そういったことも考えると、どうにかして、目先は返している、また、借りかえをしている、債務がなくなっているという状況ではなく、きちんと移住者の人たちが返せるような状況をつくるということが私は重要なんだというふうに感じております。

 そこで、大臣にお尋ねをさせていただきたいと思うのですけれども、今、大臣がおっしゃったこと、私も理解できるんです。ペソ建てで借りて、物価が上昇する。その中で、相対的にペソ建てで、低い金利で借りていれば、本当に払わなくていいわけで、実質的にはすごく目減りされてしまうんですから、そういった御主張も理解はできるんです。

 しかしながら、ここで考えなくてはいけないのは、途上国において為替が大きく変動するというのは、物価だけではないわけですね。ドミニカの場合、現地に行ってきてお聞きしてきたら、金融危機があったと。その中で、大きく為替が下がってしまった、通貨が下がってしまっているということもある。また、急激に物価がそれに伴っても上がるわけなんですけれども、物価が上がっても自分たちが売るものの、生産物の価格がそれに伴って上がっているのか、また、給料がそういったペースで物価の上昇とともに上がっているのかということを考えると、物価の上昇までに、支払いの能力がそれに伴って上がっていないという現状もあるわけです。

 だから、川口外務大臣がおっしゃることも一理あるんですけれども、それは、借りている人の層の給料の上昇がどれぐらいあったのか、また、貸し付けられている農家の皆さんが生産するそういった農作物、それの価格がどれぐらい上がっているのか、そういったことを基準にしていただいて既存債権の整理をしていただくということが、政策目的からして必要なことではないかと私は考えるわけですが、いかがでしょうか。

川口国務大臣 まず、委員がおっしゃっていらっしゃる問題意識、ドミニカに移住した人がインフレの中で返すことが非常に難しくなってきていて気の毒である、何とかしなければいけない、この気持ち、これは私もよくわかります。

 それは、そういうことを申し上げた上で、幾つかのことを申し上げているわけですけれども、まず、冒頭の、ペソ建てでないことが政策目的に反するという御主張。これについては、ずうっとドル建てでやってきて、ですから対応が必要だという問題意識はわかるんですよ。わかるんですけれども、そもそも、一番最初の御質問の、政策目的に反するではないか。これは、ずうっと七一年の変動相場以降もドル建てでやってきた、国が為替リスクを持たないということで、これは一応整理ができている話であろうと思います。

 その上で、それならば今困っている人たちにどういう措置をとるのかということが次の問題であって、それについては、先ほど申しましたように、問題意識としてはよくわかりますけれども、例えばモラルハザードの問題ですとか、それから公平性の問題ですとか、いろいろそういった問題がありますねということを先ほど申し上げたわけですね。

 それで、その上で申し上げたことが、これについては、今後いろいろな動きというのが経済についてもあり得るわけでございまして、国としてはこれについて注視をしていきたいというふうに思っているということを申し上げたわけです。

 それから、さらにもう一つつけ加えさせていただきますと、これはJICAの融資であるということでございまして、JICAが今独立行政法人ということになっております。したがいまして、国が今までのように、特殊法人であったときのように、JICAに対して一般的に指導監督をするということが制度上できなくなってきているということでありまして、個別の業務、これをどのように改善していくかということについては、これは直接にJICAとお話をしていただくということであると思いますけれども、外務大臣、私としても、外務省としても、この問題については関心を持って注視をしていきたいと考えているということだけ申し上げたいというふうに思います。

中村(哲)分科員 今のお話を伺って、どれだけの方が政策目的と為替リスクの負担についての関係ということを外務省がどのように考えているか理解できたかということに対しては、非常に私は疑問だと思います。

 ここに関しては、これからも引き続き検討していただきたいと思うんですね。時間が参りましたから、これ以上の質問がもうできませんし、二つ目の、国籍取得の問題についての問題も残ってしまいましたけれども、それだけ私はこの問題について外務省が果たすべき役割は大きいと思います。そこに取り組みをしていただきますようお願い申し上げます。

 一言だけ答弁いただけますでしょうか。

川口国務大臣 委員がおっしゃっていらっしゃる、今、移住者の中に困っていらっしゃる方がいらっしゃるということについては、その問題意識は私もよく理解をいたします。

 その上で、今後のその動向について注視をして、必要に応じ適切に対応していきたいというふうに考えております。

中村(哲)分科員 まだまだ聞きたいことはありますけれども、持ち時間が終わりましたので終了させていただきます。ありがとうございました。

萩野主査代理 これにて中村哲治君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして外務省所管についての質疑は終了いたしました。

 これにて本分科会所管の審査はすべて終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつ、御礼を申し上げます。

 分科員各位、そしてまた質疑者、また法務、外務、財務省の方々、また委員部の方々、本当に御協力ありがとうございました。皆さんの格段の御協力を賜りまして、本分科会の議事を無事終了することができました。ここに厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。

 これにて散会いたします。

    午後一時三十三分散会


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