衆議院

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第1号 平成17年2月25日(金曜日)

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本分科会は平成十七年二月二十二日(火曜日)委員会において、設置することに決した。

二月二十四日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      植竹 繁雄君    河村 建夫君

      村井  仁君    小泉 俊明君

      篠原  孝君    田端 正広君

二月二十四日

 植竹繁雄君が委員長の指名で、主査に選任された。

平成十七年二月二十五日(金曜日)

    午前九時開議

 出席分科員

   主査 植竹 繁雄君

      河村 建夫君    御法川信英君

      大島  敦君    岡本 充功君

      篠原  孝君    島田  久君

      藤田 一枝君    馬淵 澄夫君

      田端 正広君

   兼務 北村 直人君 兼務 中山 泰秀君

   兼務 萩生田光一君 兼務 稲見 哲男君

   兼務 大谷 信盛君 兼務 今野  東君

   兼務 阿部 知子君

    …………………………………

   法務大臣         南野知惠子君

   外務大臣         町村 信孝君

   法務副大臣        滝   実君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   法務大臣政務官      富田 茂之君

   政府参考人

   (内閣府遺棄化学兵器処理担当室長)        高松  明君

   政府参考人

   (内閣府規制改革・民間開放推進室長)       田中 孝文君

   政府参考人

   (防衛施設庁業務部長)  土屋 龍司君

   政府参考人

   (法務省大臣官房長)   小津 博司君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    寺田 逸郎君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    横田 尤孝君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    麻生 光洋君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  三浦 正晴君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 鶴岡 公二君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 齋木 昭隆君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 西宮 伸一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房国際社会協力部長)        神余 隆博君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長)   天野 之弥君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    河相 周夫君

   政府参考人

   (外務省中南米局長)   坂場 三男君

   政府参考人

   (外務省欧州局長)    小松 一郎君

   政府参考人

   (外務省経済協力局長)  佐藤 重和君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    鹿取 克章君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局次長)           大石  明君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局地域福祉課長)      北村  彰君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

   外務委員会専門員     原   聰君

   予算委員会専門員     清土 恒雄君

    ―――――――――――――

分科員の異動

二月二十五日

 辞任         補欠選任

  村井  仁君     御法川信英君

  小泉 俊明君     大島  敦君

  篠原  孝君     岡本 充功君

  田端 正広君     高木 陽介君

同日

 辞任         補欠選任

  御法川信英君     村井  仁君

  大島  敦君     島田  久君

  岡本 充功君     馬淵 澄夫君

  高木 陽介君     太田 昭宏君

同日

 辞任         補欠選任

  島田  久君     藤田 一枝君

  馬淵 澄夫君     篠原  孝君

  太田 昭宏君     田端 正広君

同日

 辞任         補欠選任

  藤田 一枝君     小泉 俊明君

同日

 第一分科員中山泰秀君、大谷信盛君、第二分科員稲見哲男君、今野東君、第四分科員萩生田光一君、第五分科員阿部知子君及び第六分科員北村直人君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十七年度一般会計予算

 平成十七年度特別会計予算

 平成十七年度政府関係機関予算

 (法務省及び外務省所管)


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     ――――◇―――――

植竹主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることになりましたので、何とぞよろしくお願い申し上げます。

 本分科会は、法務省、外務省及び財務省所管について審査を行うことになっております。

 なお、各省所管事項の説明は、各省審査の冒頭に聴取いたします。

 平成十七年度一般会計予算、平成十七年度特別会計予算及び平成十七年度政府関係機関予算中外務省所管について、政府から説明を聴取いたします。町村外務大臣。

町村国務大臣 平成十七年度外務省所管一般会計予算の概要について御説明申し上げます。

 外務省予算の総額は七千七十二億円であり、これを平成十六年度予算と比較いたしますと、百四十億円の減額であり、一・九%の減となっております。我が国外交の極めて重要な手段であるODA予算につきましては、政府全体でのODA予算が対前年度比三・八%減となる中で、外務省のODA予算は、対前年度比二・四%減の四千八百八十一億円となっております。

 我が国は、グローバル化の進展する国際社会の中で、我が国の安全と繁栄を確保するためにも、世界の平和と発展に向け日本としての役割を果たすべく、引き続き積極的な外交を推進する必要があります。

 このような観点から、平成十七年度予算においては、国民を守る日本外交、先頭に立つ日本外交、主張する日本外交及び底力のある日本外交を四つの重点事項として挙げております。

 まず、国民を守る日本外交に関する予算について申し上げます。

 この重点事項では、以下の三つを柱としています。

 第一に、さまざまな脅威から国民を守り、周辺の安全を確保するための経費を計上しております。この中には、北朝鮮の核開発問題、日本人拉致問題等の諸懸案に関連する経費が含まれております。

 第二に、テロ等の国民に対する新たな脅威への対応のための予算を計上しております。この中には、国際機関に対する新規拠出を含む途上国のテロ対処能力向上を支援するための経費や新たにICチップつきの旅券を発行するための経費が含まれております。

 第三に、海外邦人の安全の確保のための予算を計上しております。この中には、在外邦人にとって最後のとりでとなる在外公館の緊急時体制整備、治安情報等を在留邦人に迅速に伝達するメールマガジンの作成等に関する経費が含まれております。

 次に、先頭に立つ日本外交に関する予算について申し上げます。この重点事項では、以下の四つを柱としています。

 第一に、本年一月より我が国は安保理非常任理事国に就任したことを踏まえ、世界の平和と発展のため日本としての役割を今後ますます果たしていくために必要な経費を計上しております。具体的には、例えば、国際機関等において邦人職員を増強するための国際機関等への邦人派遣経費を増額して計上したほか、安保理非常任理事国としての活動経費を新規に計上しております。

 第二に、我が国の世界の平和と安定への取り組みに必要な経費を計上しております。この中には、イラク、アフガニスタンへの復興支援を含む緊急無償や、我が国が推進する人間の安全保障のための経費が含まれています。

 第三に、地域的な枠組みを通じた積極的な外交を展開するための経費を計上しております。例えば、EUとの協力関係の強化のための日・EU協力のための行動計画推進経費を増額して計上しております。

 第四に、グローバル化の進展に対する国際的なルールづくりへ積極的に参画するための経費を計上しております。例えば、EPA、FTA推進のための経費を大幅に増額しました。

 次に、主張する日本外交に関する予算について申し上げます。この重点事項では、以下の二つを柱としています。

 第一に、我が国外交政策の国内外への情報発信を強化するための経費として、アジア、大洋州、中東に向けた国際映像放送等関連経費等を計上しております。

 第二に、魅力ある日本を売り込むためのニッポンプロモーションを行うための経費としては、来月より開催される愛・地球博に対する関連経費、各種周年事業等を通じた文化紹介事業のための経費等を計上しております。

 最後に、重点事項である底力のある日本外交に関する予算について申し上げます。

 我が国の外交政策を強力に推進するためには、外交ツールをさらに強化する必要があることから、政策構想力の強化、情報機能の強化、ODAの積極的活用、国際文化交流の積極的活用及び外交実施体制の強化に係る経費を計上しております。

 特に、外交実施体制の強化をさらに促進するとの観点から、在スロベニア大使館の新設、在デンパサール出張駐在官事務所の総領事館への格上げ等を予定しております。また、定員については、合理化による削減努力を行う一方で、百十三名の増員を図り、平成十七年度末の外務省予算定員の合計を、前年度末定員から二十名増の五千四百三十四名とすることを予定しております。

 以上が、平成十七年度外務省所管一般会計予算の概要であります。よろしく御審議のほどお願いを申し上げます。

 なお、時間の関係もございますので、詳細につきましては、お手元に「国会に対する予算説明」を配付させていただきましたので、主査におかれましては、これが会議録に掲載されますようお取り計らいをお願い申し上げます。

 どうもありがとうございました。

植竹主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま町村外務大臣から申し出がありましたとおり、外務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

植竹主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

植竹主査 以上をもちまして外務省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

植竹主査 この際、分科員各位に申し上げます。

 質疑の持ち時間はこれを厳守の上、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。

 なお、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大島敦君。

大島(敦)分科員 おはようございます。民主党の大島でございます。

 町村外務大臣には、日本の外交の重責を担っていらっしゃることに心より敬意を表させていただきます。

 一九六九年の二月二十九日に、当時のアメリカの大統領のリチャード・ニクソンがパリのオルリー空港におり立ちました。そのときに、シャルル・ドゴールは、寒風の中、帽子をとり、そしてオーバーを脱いでタラップの下で迎えたそうです。シャルル・ドゴールは、アメリカの大統領だけではなくて、小さな国の元首に対しても同じようなことをし続けたそうです。多分、そのことが、フランスのアフリカあるいはラテンアメリカでの幅広い信頼関係というのを築いてきたかと思います。

 私は、去年の十二月に、我が党の岡田代表と一緒に東南アジアの各国を回る機会を持たせていただきました。その際に、ある国の外務大臣は、私の質問に対してこういう答え方をしておりました。最近の若い政治家は非常に高学歴でインテリなんだけれども、ナショナリズムが高まっていることにちょっと危惧しているというお話がございました。

 日本の外交も、中国あるいは朝鮮半島の方と戦後築いてきた人間関係というのが、あるいは東南アジアもそうだと思うんですけれども、世代交代によって失われてきているかなと私は考えております。ですから、日本外交を安定させるためにも、人と人との交流をもう一度築かなければいけないと私は考えております。

 その点につきまして、まず、町村外務大臣から簡単に御所見を伺えれば幸いでございます。

町村国務大臣 今のニクソン、ドゴールの貴重なお話をまずお聞かせいただきまして、どうもありがとうございました。

 委員言われたような人と人との交流、これは本当に外交の基礎、あるいは国と国との関係の基礎だと私も思っております。例えば、いかなる大きな援助を出すとか、大プロジェクトを進めるということよりも、やはり一人の人の影響力というのが大きい場合もしばしばあろうかと思います。

 そういう意味で、委員から大変な貴重な御示唆をいただきました。肝に銘じて、しっかりと誠実に外交に取り組んでまいりたいと思います。

大島(敦)分科員 それでは、個別具体的なことにつきまして、町村外務大臣に質問をさせてください。

 まずインドネシア、これは、東南アジア、東アジアの中での、多分世界でも有数のイスラムの大国でございます。同国に対しまして、我が国は今、同国の警察機能の近代化と行政能力向上に対する支援を行っているかと思います。どのような経緯で始まったのか、教えていただければ幸いです。

佐藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 インドネシアに対する警察協力の経緯でございますが、かつて、インドネシアにおきましては、警察は軍の一部ということでございまして、国軍の一部として警察は治安維持を担ってきたわけでございます。それが九八年以降、インドネシアが民主化の進展がございまして、警察を軍から分離するという動きが生じました。そして、二〇〇〇年にインドネシアの国会においてその分離というものが正式に決定をいたしまして、警察は国家警察として大統領直轄の機関になったわけでございます。

 そうした背景のもとに、インドネシア政府は、この国家警察というものが文民警察として独立をして国民の信頼を得る必要がある、そして治安を維持していくということがインドネシアの経済発展ということにもつながるという認識で、警察機能の近代化と行政能力の向上に対する支援ということを我が国に対して要請をしてきたということがございます。そうした要請を受けまして、我が国は、二〇〇一年以来、この民主的な警察制度実現や能力向上ということのために支援を行ってきているということでございます。

大島(敦)分科員 ありがとうございました。

 これは我が国としては非常にいい取り組みだと考えます。なぜかといいますと、警察権力あるいは警察の行政というのは国の骨格をなす仕組みであるからでございます。今御答弁ございましたとおり、インドネシアが国の軍の中から離れて新しい国家警察をつくる、その仕組みに関して日本国がしっかりと援助をして、日本国のスタンダード、まあ、我が国は規格とかスタンダードによる外交というのが苦手なものですから、一つの国のスタンダードを形づくるということは、私は非常に大切で有意義だと考えております。

 昨年の十二月に、今御説明がございましたインドネシアのその取り組みを見させていただく機会がございました。これはインドネシアのジャカルタの郊外にあるブカシという町の警察に日本の警察官の方が三人ほど入って現地で指導しているんです。皆さん本当にまじめな方でして、地元の信頼もございます。そして、私が受けた実感としては、定着しつつあるという実感を覚えております。

 私たちの日本から派遣されている警察官の方は前向きに仕事に取り組んでいらっしゃいまして、例えば指紋の鑑識。指紋の鑑識がまだインドネシアではそれほどスタンダードではない、あるいはそんなに高度な技術を持っていないわけなんです。今、そのブカシという小さな警察署の指紋の鑑識がインドネシアの中央の指紋の鑑識よりも技術的には上になっているそうなんです。

 そして、機材も日本から今運び込んでいるんですけれども、やはり現地に定着させなければいけないということで、私どもの日本から派遣された警察官の方は、例えばその器具についても現地でつくれるものは現地で任せようということで、現地の工場の方と相談しながら、現地でつくれるものは現地でつくるように今しているそうなんです。このことは、私どもが、日本が将来的に今回の援助から離れたとしても、その考え方というのが現地に根づいていくことだと考えております。

 その中で、今年間二十四人だったと思うんですけれども、インドネシアの警察官の方が日本に研修に来て帰られるんです。非常に皆さん誇りを持っているんです。日本の警察で研修を受けたインドネシアの警察官の方は非常に誇りを持って仕事に取り組んでいらっしゃるんです。そこのところ、今、今回のプロジェクトの始まりから終わりまでで何人ぐらいの方が日本で研修を受けられるのか、その点についてお聞かせください。

佐藤政府参考人 お答えをいたします。

 先ほど申し上げましたように、この国家警察に対する支援事業ということは二〇〇一年の二月から始まっているわけでございます。今のところでは、すべての技術協力というのは二〇〇七年度末まで行うということで、これだけの期間にわたって協力を行うということをやっているわけでございます。

 今御質問がございました、研修員の受け入れということでございますが、今のところ、この総受け入れ人数につきましては約百名ということでございまして、先ほどお話がございましたように、今年度につきましても年二十四名ということで受け入れを行ってきているということでございます。

大島(敦)分科員 私が伺っているところによりますと、今回のプロジェクトは二〇〇二年から始まって二〇〇四年には終了するということを伺っています。今年度の予算規模は幾らぐらいなんでしょうか。

佐藤政府参考人 本年度の予算の規模につきましては、約二億円ということを予定いたしております。

大島(敦)分科員 町村大臣、今年度の予算は二億円だそうなんです。それほど大きな金額ではないと私は思うんです、その費用対効果を考えますと。

 全部で百人程度の警察官の方が日本に来ていらっしゃる。僕は、初めが大切だと思うんです。今、インドネシアの国家警察は、幹部の方が日本で研修を受けて、その幹部の方が帰られて、十年後、二十年後にはインドネシアの国家警察、警察機能の中枢を担う方なんです。ですから、今、もう少し多くの方、多分、受け入れる体制というのも日本側の警察庁の方にはいろいろとお願いしなければいけないんですけれども、もう少し人というのは受け入れていった方がいいかなと私は思うんですけれども、大臣の御所見を伺わせてください。

町村国務大臣 貴重な御指摘をいただきまして、感謝を申し上げます。

 警察の近代化、やはり、それぞれの国の統治能力というんですか、グッドガバナンスというような言い方もあるようでございますけれども、これは企業であると国家であると自治体であるとを問わず、そういう組織をきちんと管理する一つの有力な手段が警察。これが不十分であったり、あるいは時として腐敗をしていたり、そういう問題もいろいろあるようでございますが、インドネシアについて、そういう規律正しいきちんとした警察組織が育つということはこの国の将来にとって大変有意義なことであろうと思います。

 確かに、毎年二十四名ですか、それは予算の制約等々なければ、あるいは受け入れ体制、警察の協力も得ながらやらなきゃなりませんので、そう多くもできないのかもしれませんが、限られた予算の範囲で、できるだけこうした分野の仕事は充実をしていければいいな、こう思っております。

大島(敦)分科員 ありがとうございました。

 やはり人と人との関係、皆さん、日本で研修を受けて帰られた方は日本ファンなんです。その研修を受けて帰られた方は私たちの日本に対して非常にいい印象を持って帰られているんです。伺うところによりますと、インドネシアの警察官が日本に来ると、日本の警察官の方と一緒に交番勤務をしたり、しっかりと研修を受けるとともに、実体験も積みながら研修を受けられるそうなんです。ですから、人と人との人間関係が必要だと思います。そのことについても今後とも充実してほしいと考えています。

 もう一つが、今回のプロジェクトは二〇〇七年、五年間で終わるということを伺っておりまして、これはインドネシア政府の意向もあると思うんです。インドネシア政府の意向が、やはりもう五年、あるいはもう十年やりたいという希望があった場合に、日本国政府としてもしっかりと、やはり五年では短いと思うのです。人の関係というのは長ければ長いほどいいと思っていまして、その点につきまして、インドネシア政府の要望がございましたら町村大臣としては今後とも進めていく御意向があるのかどうかという点について伺わせてください。

町村国務大臣 この事業は、ことしに中間評価をやる、さらに二〇〇七年終了前には終了時の評価をする、その上で継続するかどうかという判断をすることになろうと思います。また、先方政府からのどれだけ強い要請があるかということも当然考えなければならないと思います。

 ただ、委員から言われた、大変意義のあるものだということはよくわかりますので、さらにそういう御要請があれば、できる限りこたえていければいい、こう思っております。

大島(敦)分科員 私どもの国では、歴史をひもとくと、一九八〇年代からシンガポールの交番機能につきましても我が国のノウハウの提供を行っておりまして、そのことが、日本とシンガポールの警察が一緒になってほかの地域に対する援助も行っているかと聞いておりますので、特に今回のインドネシアというのはイスラムの国で、かつ二億二千万人の大国であるということ、そしてそこの中枢の機能というのが私たちの国と非常にいい関係を保つということは、東南アジアにおける、東アジアにおける秩序あるいは安定につながっているかと思いますので、その点の御配慮をぜひお願いいたします。

 もう一点御質問させていただきます。

 今、六十歳を超えた方あるいは六十五歳を超えた方の、シニアの方の海外協力という観点でございます。そのことにつきまして、今、我が国としてはどういうような仕組みがあるのか、その点について伺わせていただければ幸いでございます。

佐藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 今お話がございましたシニアの方を通じての海外への協力ということでございますが、まず一つは、独立行政法人国際協力機構、JICAが行っている事業でございますが、シニア海外ボランティア事業というものがございます。これは、中高年のボランティアの方々を国際約束に基づきまして途上国に派遣いたしまして、途上国でいろいろな技術協力の事業、プロジェクト等を行うという事業でございます。

 それからまた、財団法人日本シルバーボランティアズというところが、やはりシニアのボランティアの方々を特に中国にたくさん派遣しておられますが、中国以外にも派遣をしておられます。こちらの方は先ほどのJICAの事業より若干期間的には短期ということになりますが、そうした短期の活動を中心にシニアのボランティアの方々をこの財団法人日本シルバーボランティアズというところが派遣しているということを承知いたしております。

 こうした中高年、シニアの方々のボランティア派遣事業ということは、我が国のシニアの方々の豊富な技術と経験を生かして途上国の社会開発に貢献をする、そうした役割を担っているというふうに認識をしております。

大島(敦)分科員 今、二つのシニアの方の取り組みがあるというお話がございました。一つはJICAの中にあるシニアボランティア、これは長期の海外での協力、もう一つが日本シルバーボランティアズが取り組んでおります短期の海外での支援活動、この二つがあるというお話がございました。

 それでは、JICAの方は非常に有名なものですから、日本シルバーボランティアズという団体の設立の経緯について、あるいはまたそうした事業の目的について伺わせていただければ幸いです。

佐藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 この日本シルバーボランティアズでございますが、これは財団法人として一九七九年に財団法人が設立をされております。そもそも、初代のアジア開発銀行の総裁の渡辺総裁が日本の定年退職者の技術、知識、経験というものを途上国の自立援助に役立てるという構想を打ち出しまして、そうした構想に対する賛同者によりまして、一九七七年にシルバー奉仕隊という組織が発足をし、それが先ほど申し上げました一九七九年に財団法人となって設立をされたということでございます。

 この法人の目的につきましては、「奉仕の精神を有する中高齢者で、その技術と経験をもって開発途上地域等の発展に寄与しようとする者の登録及び派遣等を行い、もって我が国とこれら地域等との友好親善を増進すること」というふうにその目的が明記をされております。

 そして、中国を初めとする多くの派遣国にそうしたボランティアの方々を派遣してきたというふうに承知をいたしております。

大島(敦)分科員 この日本シルバーボランティアズが非常に多くの人数、多くの派遣を行うようなきっかけになった経緯というのがあるかと思うんですが、その点について御説明いただければ幸いです。

佐藤政府参考人 先ほど申し上げましたように、このシルバーボランティアズ、財団そのものとしては一九七九年に設立をされたわけでございますが、特にその後、中国との関係で、中曽根総理の時代でございますが、当時の胡耀邦総書記との間で、日本のそうしたシニアの方々、特に退職者の方々、その技術をぜひ中国の発展に生かしてほしいという中国側からのお話もあって、そうした経緯で中国に対する派遣というものがかなり大規模に行われるようになったというふうに承知をいたしております。

大島(敦)分科員 設立の経緯というのは一九七〇年代の後半、そして今御説明ございましたとおり、中曽根元首相そして胡耀邦さんとの協議によって弾みがついて、このシルバーボランティアズの派遣の人数がふえてきたというお話がございました。

 大臣、この人と人との関係が私は非常に必要だと考えておりまして、多分去年だったかと思うんですけれども、胡耀邦さんの息子の胡徳平さんが日本にいらっしゃっているかと思うんです。こういう人と人との関係を長くつなげるということが、これは私たちの外交にとって非常に有意義だと考えておるんです。したがいまして、今JICAの話がございました。JICAを通じてシニアボランティアの方が長期的に行っていらっしゃる、あるいはNPO法人を通じての海外援助もございます。そして、シルバーボランティアズのように長い歴史を背負って取り組んでいらっしゃる団体、あるいは人たちもいるわけでございます。

 私が伺ったところによりますと、厚生労働省の方からシルバーボランティアズに対して、昨年ですか、厚生大臣表彰を行ったというお話を伺っておりまして、その点について御説明いただければ幸いでございます。

北村政府参考人 財団法人日本シルバーボランティアズの活動実績に関しましては、派遣ボランティア数で見れば、昭和五十二年の発足から平成十四年までに六十五カ国、約三千五百人に上り、また活動分野で見ても、農林水産、鉱工業、日本語教育など、中高年の豊富な経験を生かした幅広い分野にわたっており、中高年の生きがいにつながる先進的、積極的な国際貢献活動を長年続けてきておられます。このような同財団の長年にわたるボランティア支援活動は模範となる功績として高く評価できるということで、平成十五年に厚生労働大臣表彰を行ったものでございます。

大島(敦)分科員 そうしますと、今、中高年の立場、厚生労働省的な立場からいうと、六十歳以上の方の生きがい、あるいはボランティア活動に対して非常に実績がある団体でございます。中国側から見ると、短期で日本の方が来ていただいて、そんなに高度ではない技術なんだけれども、いろいろな気づきを与えてくれる人たち、非常に有効というのかな、非常に中国の方にとってはありがたい日本の人たちであるわけなんです。

 ですから、双方にとって非常にいい団体でございますので、今後とも、中高年、あるいは今回の日本シルバーボランティアズのような歴史的な背景を背負った、長い歴史があり取り組んでいらっしゃる団体についての一定の配慮が日本国としても必要かと思うんですけれども、その点について御意見を伺わせてください。

町村国務大臣 大変立派な団体として評価をされている、大臣表彰も受けておられる、国の内外での評価も大変立派なんだろうと思います。

 ただ、これはどうも昨今の予算というか国の考え方で、できるだけ官から民へということもあると思いますが、団体の補助というのをどんどん減らしていくという傾向が一つあります。したがってJICAも、自分でやるときはいいけれども、JICAを通じてまたどこかに委託をするということが、独立行政法人になってからそれはできないということになってしまっている。だから、JICAを通じてのお金も出せない。外務省が直接やろうと思うと、これは団体補助だからだめだということになってしまうというので、何となくそのはざまに落ち込んでしまって、この日本シルバーボランティアズは何となく経営といいましょうか運営が苦しくなっているという実態がある。

 他方、私は自分でもまだよく頭の整理ができていないのですが、何かNPOというジャンルに入ると何となく今予算がふえていくぞみたいな感じがあって、ちょっとそこは私も正直言って、申しわけありません、自問自答しているようなところがあるんですが、どうも腑に落ちないところがあるんですね。それだったら、この財団法人をNPOだといって名乗れば、名乗っただけじゃだめかもしれませんが、そちらの分類に入ればもう少し予算が流れやすくなる、これもまた変な話だなという気がしております。

 今回、先生からこういう御指摘もいただきましたので、せっかくこういう歴史と伝統のある、またまじめな団体に、丸抱えというわけにはいかないと思いますが、できる限り効率的な税金の使い方として、こういうところにもう少しうまく資金パイプがしっかりと流れないかなということを少し考えさせていただきたいと思います。

大島(敦)分科員 ありがとうございます。

 仕組みをつくるのは私たちの仕事なものですから、現状に合っていないことについては、仕組みのところを町村大臣が考えていただけるということは非常にありがたく受けとめさせていただきます。

 最後に、また国が飛びましてカンボジアなんですけれども、カンボジアは、御承知のとおり、一九七〇年代にクメールルージュの大量虐殺がございまして、聞くところによりますと二百万人に近いカンボジアの方がそのときにお亡くなりになっております。特に、知識階級の方たちが一掃されたと聞いております。今のカンボジアとしては、恐らく日本でいうと知識階級あるいは技術を持っておる人たちが一掃されているものですから、なかなか国の発展というのが届かないのかなと考えているんです。

 昨年、たまたま機会がございまして、当時のカンボジアの在京の大使の方とお話をする機会がございました。周辺国の東南アジアの在京の大使の方からも非常に尊敬されている方でして、メコンの父と言われている方だそうなんです。私も政治家として接しさせていただくと、柔和な顔の中に背負ってきた歴史を感じる方なんです。今、私たちの政治家の中ではなかなか見かけないタイプになってきているのかなと思っていまして、その方から雑談の中で言われたことが、日本のシルバーの方だと思うんですけれども、技術援助というのを行ってくれないかというようなお話がございました。

 恐らく、どんな技術が欲しいか、どんな技術のヒントがあったら農業にしても工業にしても飛躍的に伸びるかという気づきもない。カンボジアの人たち、知っているかもしれないけれども、まだ知らない方も多いと思うんです。まずはファクトファインディング、どういうニーズがあるかというのを私たち日本の目から見て、ここの技術をちょっと改良したら非常に農作物がとれるようになる、ここの旋盤機械をちょっと直したらこれだけ精度のいいものができる、そういう気づきをカンボジアの方たちに援助していくことも大切かなと私は思っています。

 最後に、その点につきまして町村大臣のお考えをいただければ幸いです。

町村国務大臣 委員御指摘のとおり、カンボジアは、大変な内乱、内戦の後、もう十年以上たった今日、大分国として整備はされてきたと思いますけれども、まだまだ発展をする基盤をこれからしっかりつくっていかなければならない、そういう状態であろうと思います。

 日本もそういう意味で、この和平協定が平成三年にできて以降十五年度までに、研修生の受け入れ五千七百三十八人、八百二十名の専門家派遣、百七十九名の青年海外協力隊派遣、五十八名のシニア海外ボランティアの派遣等をやっているというようなことで、かなり人を通ずる協力というものにも心がけてやってきたところでございます。

 今後、今委員が言われたような、もちろんメコン開発という大変大規模な計画もございますが、こうした、規模は小さいかもしれませんが、人を通ずる協力というものにも大いに心がけて、カンボジアの長期的な発展のお役に立っていきたいな、かように考えているところであります。

大島(敦)分科員 どうもありがとうございました。

植竹主査 これにて大島敦君の質疑は終了いたしました。

 次に、阿部知子君。

阿部分科員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日は、ちょうど先週の金曜日から週末にかけて、アメリカに、いわゆる2プラス2で、今後の日本の非常に重要な日米の関係を決めていく会議に御出席された町村外務大臣に、幾つかの点にわたって御質問をさせていただきます。

 まず、冒頭少し、通告以外のことですが、この数日メディアで報道されておりますことにつきましての確認をちょっと、申しわけございませんが、させていただきます。

 今回の2プラス2で話し合われた骨格的なこととも関係しておると思いますが、いわゆる沖縄での辺野古の、逆に普天間の辺野古への移設問題ということに関して、米国内でもこの進捗状況、あるいは日本政府内においても、きょうの新聞報道によりますれば、必ずしも辺野古と限らず、これからの検討も必要ではないかというような見解が政府の中にもあるというふうな報道もございますが、一点目は、この点については、現在、我が国政府、あるいはアメリカ側からの何らかの打診はございますものかどうか、お願いいたします。

町村国務大臣 先般の2プラス2の会議は、まずお互いに、アジアあるいは世界の安全保障環境についての共通の認識を持とうではないかという、そこをスタートにしよう、それ以前の会議にもいろいろなアイデアを出す段階もあったのでありますが、もう一度原点に立ち返ってということで、共通戦略目標というものを定めました。

 この後、その考え方に基づいて、それぞれアメリカ、日本がどういう役割を担うことができるだろうか、担ったらいいだろうかという議論を第二段階、そして第三段階として、それを実現するために米軍の施設・区域がどのように展開されたらいいだろうか、現在ある米軍の基地等をどのように再編成していったらいいだろうか、これも日米共同作業でいいものをつくり上げていこう、こういうことでありました。

 したがって、先般の2プラス2では、例えば普天間であるとか、例えば辺野古であるとかといった個別地域、沖縄をどうする、沖縄の負担を減らそうという地名は出ましたけれども、それ以上細かい段階での議論はこれからということでございます。

 もちろん、現在の普天間から辺野古への移設の話は、SACOに基づいて今進められておりますが、当初の予定より大分おくれている、そのことについてどうかと問われれば、それはもうちょっと早く進めばいいのになという思いはだれしも持っていると思いますが、現実にはなかなか進まない状況もある。

 したがって、きのう、きょう報道されているような意見が、それはいろいろなところにあるのかもしれませんが、今、日米間で正式に、普天間から辺野古への移設をやめてしまおうというような話し合いはございません。今後、再編成の議論の中で幅広く議論をしていくわけでございますが、その中で、SACOで合意をされた幅広い項目のうちの一つとしての普天間の問題がどこかで接点は出てくる可能性は私は否定はいたしませんが、現状、もう辺野古をやめにしたということを日米間で合意しているという事実は全くない、これからの議論のテーマであろう、こう考えております。

阿部分科員 三段階のお取り組みであるということは私も承っておりますし、その三段階目に現実の基地再編の問題があるということも承知しているつもりです。

 実際に、先ほど大島委員との質疑を伺っておりましても、結局、両国の関係というのは、その国に住まうお互いの国民一人一人の合意とか、納得とか、あるいは深い交流とか、そういうものがパイプを太くするということで、ただしかし、この基地問題にあっては、受け入れ側の、特に地元の負担ないし理解ということは不可欠であると思います。私は、我が党の東門美津子委員初め、この沖縄問題で何度も御質疑させていただきますのもその点にあると思います。

 私は、いわゆる第二の基地県と言われる神奈川の出身でございまして、二月の十九日の日にも、降りしきる雨の中、今後、座間キャンプに米軍の陸軍の第一軍団司令部が来るという報道もある中、実は、このことについては、相模原市の市長も、あるいは座間の市長も、何ら国からの改めての打診も、あるいは意見の聴取ももちろんないし、非常に地元に対して、今後どうなっていくのか、地元軽視ではないか。

 一方の市議会の議員にアンケートをとりますと、これは革新と保守とを問わず、九割近い方が反対をされておるということで、事をどのように進めるか、あるいは、政府レベルで合意ができたとしても、また現実にそのことがどう進捗していくかということにおいて、地元の不信を買うような形ではやはりできないものであるというのは大臣も重々御承知おきであると思います。

 ちなみに質問でございますが、この座間の陸軍の第一軍団司令部の受け入れについては、まだ政府として何ら公式なアクションもとっておらなければ、また交渉事でもないし、また地元への説明もまだ何ら行っていないが、今後、そういうことがあった場合に、やはり地元とのきっちりとした意見の交換を行うというこの一点を確認していただければと思います。

    〔主査退席、河村(建)主査代理着席〕

町村国務大臣 今委員から座間のお話もございました。これは先ほどの普天間と同様でございまして、まだ、2プラス2の段階で個別基地をどうするこうするという話は具体のものとして出ておらない状態でございます。

 先日も、知事さん方の集まりの中で、基地を持つ知事さんたちが渉外知事会というのをつくっておられるようでございまして、松沢知事あるいは沖縄の稲嶺知事初め関係知事さん、あるいはその代理の方が大臣室にお見えになられまして、現状を御説明しておきました。

 そして、その折にも、まだそういうことで具体な話をする段階にはなっておりませんが、折に触れて御報告を申し上げ、そして日米間で一つのまず原案ともいうべき合意ができた段階では、必ず知事会等々には、あるいは関係する市町村にはお話をして、そして、そこからまた皆さん方の御理解を得た上で最終的な日米合意に持っていく、そういう手順を考えておりますというお話をいたしました。

 今、松沢知事にも、私、今週月曜日に帰ってまいりまして、火曜日の日に知事にお電話をいたしました。こういう話をしたんですよということに加えて、最後に、できれば近日中に、神奈川の知事、そして関連する自治体の方々と外務省との懇談といいましょうか、話し合いの場を持ってもらいたい、こういうお話があったので、それは喜んでということで、多分、三月のどこかの時点でそういう会も開こうかなと思って、今、事務的に日程を調整しているところであります。

 それは神奈川だけというわけにもまいりませんので、沖縄を初め幾つかの県あるいは市とそういうことを、会合も持って、お互いによく理解をし、余り、わかりました、ウエルカムと言っていただけるかどうか、それはわかりませんが、できる限りやはり説明をし、理解をし、また地元の皆さんのお声も我々は踏まえながら、アメリカ側とまたいろいろな折衝をしていくというプロセスを経て最終合意に至りたい、かように考えているところであります。

阿部分科員 町村外務大臣には十分御承知おきと思いますが、神奈川、他県もございますが、神奈川には、横須賀への原子力空母の今後の配置の問題、あるいは厚木基地、これはその基地の影響が及ぼす範囲が人口百五十万という非常に広大な地域で、落下事故もございますし、せんだっての普天間の落下事故、ヘリコプターの墜落等々が起こりますと、やはり地域住民はとても人ごととは思えない状況の中で生きております。そして、かてて加えて、座間にもし司令部が来るとなると、基地の恒久化に結びつくやもしれないと、非常に懸念が今高まっております。

 ぜひとも誠意ある対応と、それから、なかなか日米地位協定の中に地元の声を反映する機構というのは、私は不十分と思っておりますので、その点もまた今後別途に取り上げさせていただきますが、よろしくお願いしたいと思います。

 では、引き続いて、私がお願い申し上げていた、主にFTA問題と、それから日中関係の中の一つの大きな障壁にもなってございます毒ガス問題ということについて移らせていただきます。

 FTAは、この間、東南アジアの国々と幾つか日本が積極的に締結を心がけ、また、幾つかの国々が今後の課題に上っておりますが、特に、東アジアという地域的な問題で考えました場合に、日韓のFTAという問題が非常に重要である。予算委員会の他の委員も御質疑でございますが、聞くところによりますと、やや膠着状態なのではないか。

 いろいろな理由があると思いますが、この次は韓国サイドがその日時を決めるという番でもございますし、今の日韓のFTAの進捗の現状、そして、これが一応、願わくばことし締結したいというのが政府方針であると思いますが、そのことの現実的な可能性について、前者は実務サイドで結構でございますが、後者は大臣にお願いいたします。

町村国務大臣 今、日本が具体の交渉をやっておりますのは、韓国、フィリピン、マレーシア、タイ、既に締結したのがシンガポール、メキシコ、こういう状態であります。さらに、近いうちにはASEANとの交渉も始めようかなということで、今、主としてASEAN、アジア中心にそうした取り組みを行っているところでございます。

 その中で、日韓の交渉の現状がどうかというお尋ねでございました。

 これは、二〇〇三年十二月に話し合いを始めてからもう既に六回の会合をやっております。そして、昨年の十二月に日韓首脳会談が指宿で行われまして、来年中、すなわちことしじゅうには実質合意に行こうということで、両首脳の合意を見たところであります。

 ただ、ことし早々にもお互いのオファーをテーブルの上にのせて話し合いをより具体的に始めようということを言ってきたわけでありますが、日本側はもう用意がありと言っているんですが、なかなか韓国のサイドがそれに応じてこないという状況が現実にございます。

 日本側の当初の、まあ、まだテーブルにのせていないので高いも低いもないと私は思っておるんでありますが、韓国側からは、どうも内々聞こえてくる、特に農水産物のオファーが韓国の期待値よりもはるかに低くてこれでは話し合いにならない、高いレベルの交渉をやっていこう、高いレベルの成果を上げようという折にこの出発点ではというようなことを韓国政府部内で議論があるようでございまして、現実、まだそういった交渉のテーブルに着けていないというのが実情でございます。

 まだはっきり決まっておりませんが、近日中に韓国の外務大臣も日本にお見えになる、こういうこともございますので、ひとつその場なども通じてできるだけ早く交渉が立ち上がるように努力をしていきたい、かように考えているところであります。

阿部分科員 FTA問題は、はらみます問題が多岐にわたりますし、相手国の産業構造やあるいは雇用労働形態等いろいろな問題が派生しますので、必ずしもすぱっと、すっきりというわけでないことは承知しておりますが、一方で、東アジアというエリア的なものを考えますと、日本と韓国あるいは日本と中国という形のFTA、あるいは日中韓FTAといってもいいかもしれませんが、そのような形での重要性は非常に大きいという認識に政府もおありだと思います。

 一方で今、日韓が少し、ちょっと停滞。じゃ、日中はいかがかと申しますと、これは今度駐日大使になられました王毅さん、これは六カ国会議の取りまとめを精力的におやりになった方で、この東アジアという骨格づくりにも非常に意欲をお持ちの方と思いますが、王毅さんなどは積極的に日中FTAをというお考えもおありだということで、新聞等にも見解をお述べでございます。

 町村大臣にあっては、この日中のFTAということと、もしそれが、聞き及びますところによると、やはり最初に日韓をなるべく詰めて、そして中国は、WTO等々との加盟との関連でまだまだ、日中FTAという形にするよりは、簡単に言えばもう少し日韓の後にというお考えもおありかと思いますが、この日韓がおくれていくと、総体的に見れば、また日中、日中韓もタイムテーブル的には時間がかかってまいりますので、そのあたりをどうお考えか、お願いいたします。

町村国務大臣 日中韓の経済関係、阿部先生御承知のように、非常に大きく進展を遂げているという状況にございます。お互いの、それぞれ相互補完をし合いながら発展を遂げているという姿かなと思っております。

 そういう中で、中国とのFTA交渉、私どもも当然あり得る話だ、こう思っております。ただ、現状をどうかといいますと、今委員からもお触れいただきましたけれども、まだWTOに加盟して間もないということで、当初の、そのWTO加盟のときに約束をされた事項が、正直言ってまだ十分履行されているという状態には必ずしもないわけでありまして、そういった様子をまずしっかり見定めるということが必要なのかな。

 それから、委員が言われた韓国あるいはASEANとの交渉の状況を見たり、さらに今、日中韓では、日本ではNIRAという、総合研究機構といいますか、ちょっと正式な名前はあれですが、これが代表になっておりますけれども、三カ国の研究機関が集まって、どうやったらばこの三カ国の間の自由貿易の進展とかあるいは投資の進展が進むだろうかという議論を精力的にやっている最中でございまして、いずれその研究結果などもまとまった段階でまた改めて考えていきたい、こう思っているところであります。

 いずれにしても、貿易・投資、あるいは知的財産の問題等々、幅広い問題で日中関係をより深化させていくといいましょうか強化させていくというようなことが必要かな、こう思っておりまして、今後とも、大きな方向の流れとしては日中FTAも私どもは視野に置きながら、今後、その前段階の作業を進めていこう、こう考えているところであります。

阿部分科員 ちょうど、先ほどの大島委員の例を引いて恐縮ですが、やはり政治というのは、現実に、一人の政治家が誠心誠意もって事に臨むことが、また、いろいろな意味で障壁を越えて結実させていくという、非常に困難であるがまたやりがいのある取り組みであると思います。

 私は、大臣がアメリカに行き、共同のいろいろな今後を話し合われて、一方、やはり日米と並ぶ日中との関係というのは、非常にあらゆる面で今重要になってきておる。この間、小泉首相も東アジア共同体という言葉を盛んにお使いであるし、またFTA、EPAという日本ではFTAよりさらに広い概念でとらえておりますが、その中の二項目めにも、いわゆる東アジア共同体の構築を促すため、政治・外交戦略上、我が国にとってより有益な国際環境を形成することに資するというふうに位置づけてのお取り組みだと思います。

 しかし、現実の中でさまざまな問題がある。日韓も日中もというところで取り組みながら、なおかつ、またほかにいろいろな取り組みができないかということで、この間、日中での共同作業計画というのがあるということを伺っています。

 この日中の共同作業計画というものについて、大臣の、もちろん大臣が率先してお取り組みなのだと思いますが、どのような考え方あるいはテーマをお考えであるのか、よろしくお願いいたします。

町村国務大臣 どうも最近、日中というと、原子力潜水艦であるとか調査船の問題であるとか、あるいは資源、天然ガス開発の問題であるとか、ややネガティブな要素ばかりが表に出てくるのは、私は決して好ましいことだとは思っていないのであります。もっとお互いに前向きなプロジェクトを進めていくということが必要なのではないか。

 先ほど大島委員からもお話のあり、また阿部委員からもお話のあった、人と人とのつながりを深めていく、特に青少年交流事業などは、確かに中国からたくさん留学生も来ておられますけれども、もっといろいろなレベルの人的交流を深めていく、文化交流を深めていくという方策がないだろうかとか、あるいは、今言った経済の問題にしても、実は昨年、ラオス・ビエンチャンで、日中韓首脳会議で投資に関連する法的枠組みに関する政府間協議をやろう、こういうようなことが合意をされているんですが、日本と韓国は前向きなんですが、逆に中国の方が、どこが担当なのか、なかなかその担当部局を決めてもらえないので立ち上がらないといったようなこともあります。

 でも、こういうものを立ち上げると、さらに三カ国での経済が進展をするであろう、経済、文化、人的交流、いろいろな面で前向きに取り組めるテーマも私は日中韓にあるだろう。そういうことを全部含めた、ある種の共同行動計画とでもいうんでしょうか、ともに努力をする、目標を定めてお互いに努力しよう、そういうものを今、議論を始めたところでありまして、いずれかの機会に私も中国の外務大臣とお目にかかって、一つの合意をつくってそれを進めていく、そんな努力をしていきたいな、こう考えているところでございます。

阿部分科員 ぜひとも町村大臣にはその方面で御活躍いただきたいと本当に心の底から思っております。

 御指摘のように、今我が国と中国では、尖閣列島問題あるいは原子力潜水艦の問題、靖国問題、そして私がこれから取り上げさせていただく毒ガス問題など、非常に、一つ一つ誠実に対応していかないと、逆に不信を強めたり、今後の将来にも差しさわるような問題が山積している中で、やはり、どうやって外交努力によってお互い信頼が築けるかということは、非常に重要な時期になっておると思います。

 引き続いて毒ガス問題でございますが、これは二〇〇三年の八月になりましょうか、黒竜江省のチチハルというところで、一人の死者を含む四十四人という膨大な数の毒ガスによる被災が起き、日本政府としても既に一九九七年から、この毒ガス問題については、内閣府あるいは外務省共通の各省庁挙げたお取り組みがあると思います。

 そこで、これはまず第一点、原局サイドにお伺いしたいですが、この二〇〇三年八月の事案のほかにも、二〇〇四年の五月には、実際の被災者は出ませんでしたが、やはり毒ガスが発見され、また二〇〇四年の七月には、小さな男の子二人が川で遊んでいて毒ガスが見つかって被災してしまうというようなことがございました。

 やはり今、国を挙げてのこの中国毒ガス問題の取り組みの進捗状況と、特に、吉林省のハルバ嶺に毒ガス処理工場をつくる。これは中国サイドから言わせますと、中国全土に二百万発以上あるんじゃないか、我が国では七十万発と申しておりますが、発見されれば数はふえますので、早急な建設に向けても我が国が誠意ある取り組みをしていかなければならないと思いますが、進捗状況と、また今後の努力というか決意について、ちょっと取り組みをお願いいたします。

高松政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国は、今委員御指摘のとおり、化学兵器禁止条約に基づきまして、旧軍が中国に遺棄いたしました化学兵器を廃棄する義務を負っているところでございます。中国全土にこのような遺棄化学兵器が発見されているわけでございますが、中でも中国の東北地方、吉林省ハルバ嶺には数十万発と見積もられております遺棄化学兵器が埋設されているとされております。

 私どもは、内閣府といたしまして、外務省等関係省庁と協力しつつ、この中国各地で発見されております遺棄化学兵器の処理と同時に、吉林省ハルバ嶺における廃棄処理事業をできるだけ早く行うべく、従来から努力をしてきております。

 ただ、このハルバ嶺の事業は、何分、土中に半世紀以上埋設されております大量の化学兵器を処理するという世界にも前例のない極めて特殊な事業でありますほか、中国国内で非常に規模の大きい発掘回収施設及び無害化処理施設を日本が建設するという事業でもございますため、現在、日中間で、それらの具体的な建設方法や施設の運営体制等について、安全面や環境面に十分配慮しつつ、協議及び調整を行っているところでございます。

 いずれにいたしましても、政府としましては、化学兵器禁止条約上の義務を誠実に履行していくとの方針のもと、中国政府の協力を得つつ、中国での遺棄化学兵器処理事業の一日も早い完遂に向けまして、引き続き最大限の努力を行っていく考えでございます。

阿部分科員 ぜひ、そのようなお取り組みを、時間を早めてというか積極的にお願いしたいと思います。

 私は、最後に、町村外務大臣に一つお願いがございます。

 実は、この遺棄毒ガスで実際に被害をこうむった例えば子供さん、小学校の残土、小学校に捨てた土で被害を受けた少女や、あるいはさっきの二人の少年等を、医療体制において、今後、今は出なくても将来いろいろなことがあるのではないかという不安とかが盛んに寄せられております。

 私は、たまたま広島に参りまして、被爆のための研究機関の中で、私の地元である寒川というところでの毒ガスの被災者のDNAの変異というものを見まして、非常に毒ガスという問題が、そのときだけじゃなくて、人体に長い影響を及ぼすという実態を見てまいりました。

 先ほどおっしゃった今後の共同作業の中に、医療面における長期の共同研究あるいは助言、助言といってこちらに責任があるものをと言われそうですが、しかし、やはり、日本での医療知見や、あるいは、そのときだけでなく、長い間どのように影響を及ぼすのかということにおいても、毒ガス問題でもぜひ日本の誠意あるお取り組みをお願いしたい。それがやはり一つでも国民間の不信や不安を解消していく道と思いますので、最後に一言お願いいたします。

町村国務大臣 先ほどのハルバ嶺の方針につきましては、先ほど内閣府の方から御説明ありましたが、これは実は日本側がどんどんやろうと言っているんですが、主として中国側の方の手続等々が進まないということで、むしろ今おくれているという問題があるという実態があることは、ひとつ委員、御承知をいただきたいと思います。

 その上で、今の中国の方が事故に遭うという懸念も確かにあるし、現実にそういうことが起きてきているわけでありますので、こういう場合にどういう措置をとれるだろうか、医療的な対応をやれるかということについて、遺棄化学兵器処理事業の一環として、今、日中の医療関係の専門家で話し合いが行われているところでございまして、この面につきましても、結論を得て、きちんとした対応をできるように検討を進めたい、かように考えております。

阿部分科員 ありがとうございました。

河村(建)主査代理 これにて阿部知子君の質疑は終了いたしました。

 次に、岡本充功君。

岡本(充)分科員 民主党の岡本でございます。

 本日は、外務関係の事項について御質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 本日、資料の方は配らせていただいておりますが、後ほど質問させていただく事項でございまして、まずは北朝鮮との関係について少し私の持論を話させていただいた後、大臣の方からコメントをいただければと思います。

 六カ国協議の枠の中で、これまで日本は、北朝鮮に対しての対話と圧力の中での対話を続けていこうという姿勢を貫いてまいりました。また、日朝間の交渉も、これまで小泉総理が二度訪朝するなど精力的に行ってきた中で、残念ながら前向きな対応が得られていない現実はだれしもが認めるところだと思っています。

 そういった中で、この国会の中において経済制裁論や、また北朝鮮に対する圧力を強めていくべきであるという声も上がっているのも私は承知しております。

 そういった中で、私の考えですけれども、経済制裁というこういう考え、これは実効性の問題、韓国や中国とどういうふうに連携ができるのか、ほかの六カ国協議参加の国の理解をどう得て実効性を高めるのかという問題と、そしてまた、経済制裁というのは日本が抜ける大変大きな刀でありますから、これを抜いてしまったらもう次の打つ手がないということであると、言葉は変かもしれませんけれども、いわゆる弾切れのような状態になってしまう、次に使う手がない、こういった状況に陥るやもしれません。

 そういった中で、非常に難しい判断を政府は迫られていることも重々承知する中ではございますけれども、今後に向けて、やはり北朝鮮に対して実効性ある、いわゆる圧力というものを順次段階を踏んで行っていくべき時期が近づいているのではないかと考えておるんですけれども、ぜひ大臣の方からコメントを一言いただきたいと思います。

町村国務大臣 委員御指摘の拉致の問題、五名の方々が帰国をされ、さらにその御家族も帰国をされ、ここまでは、ある意味では私はこの問題、そもそも拉致問題は存在をしないと言っていた国が、北朝鮮がこれを認め謝罪した上で帰還を実現した、ここはよかったと思うのでございますが、問題は安否不明者の問題でございます。

 昨年来、ずっと実務者の協議、あるいは証拠等を渡すということで先方は対応してきたわけでございますが、結果として遺骨がにせものであったということに象徴されるように、まことに説得力の全くない不誠実な対応しかしてこないということに、私どもは大変腹立たしい思いをしているところであります。

 昨年の年末にも、こういう対応が続くのであれば厳しい措置をとらざるを得ないということも既に伝えてあるところであります。これに対して、一月ですか、備忘録なるものを先方が出してきて、それに対して私どもが反論をしたところ、また昨日、中国にある大使館を通じてまた先方が意見を言ってきたということでありまして、まことに遺憾な反応であるな、こう思っております。

 私どもとしては、日朝平壌宣言に基づいて、まずこの拉致問題をきちんと解決しながら、同時に、核、ミサイル、こういう問題を包括的に解決し、そしてその先には日朝国交正常化というものを視野に置きながら取り組んでいこうということだったのですが、出発点でもうつまずいているというのが今の現状であります。

 ですから、私どもは、この拉致問題を解決するために、いつまでもただだらだらと待っているわけにもまいらないということもありますので、政府部内において、どういう経済制裁の手法があるかということを、まあいろいろな部局にまたがるものですから、それを今検討しているという状況でございます。

 かたがた、ちょうど今、六者協議再開という話が出てまいりました。もうこれをおくらす理由は全く何一つないんでありますが、また、条件が整えばとどうも言ったらしいんでありますが、そういう形でまた引き延ばし作戦を図っている。真意のほどは本当によくわからないのでありますが、今、この六者協議再開という非常にデリケートな時期でもあるだけに、私どもは、まずそれを今一生懸命やる。国内においては、そういった制裁をどういう形で実効性あるものにするかということについての検討を今進めているということで、今後、北朝鮮の出方を見ながら最も適切な対応を図っていきたい、かように考えているところでございます。

岡本(充)分科員 今、制裁の検討を政府で進めてみえるようでございますから、ぜひ前向きに、そしてなおかつしっかり実効性のある、そういった制裁を、まずは案を示す、これをアナウンスするだけでも一つまた大きな前進だと私は思います。一歩一歩を進めていきながら、本当に、最後に抜いてしまえば、今お話ししたとおり、これで次に抜けるものはないというような状況になってしまっては、向こうにまた大きな一手を打たれるかもしれませんので、そういった観点で進めていただきたいと思います。

 そして、本日は、その北朝鮮の問題とまた密接にかかわります、いわゆる中国におきます国籍不明者、もしくは脱北者と言うべきでしょうか、こういった方々が、今月も二十四日に八人駆け込んだと。昨年も十二月に七人ですか。そして今回、四回目の駆け込みだというような話、北京の日本人学校であったというような報道もなされました。

 その直後ですけれども、谷内次官がおっしゃってみえました、脱北者の人数の公表が駆け込みを誘引するのではないか、だから今後人数の発表をしないという方針を出されました。また、私が、実は昨年の質問主意書という方法で御質問をさせていただきました。脱北者の現状、どういった方が、どのくらいの人数が、そしてそれにかかわるお金がどのくらいかかっているのか、そしてまた、その方々がどういった国々に行かれているのか、こういった情報をいただきたいということで私はお願いをしましたが、こちらについてははっきりと御答弁をいただけませんでした。外交上の配慮にかんがみてということでございますけれども。

 私は、脱北者支援のあり方や、その是非について、やはり国として議論をしていくべきだ、国内で議論をするべきだと思いますし、国民の皆様方に御説明をして、日本がこういった人道問題に対しての取り組みをどういうふうに考えるのかを説明していく必要があるのではないかというふうに考えるわけなんですね。

 最初にも申し上げたとおり、人数を公表したから、今回は八人駆け込みました、今回は七人駆け込みましたというこの話が、では果たしてそれを聞いて駆け込みをしようと思うのか。私は、やはり日本という経済的に発展したこの国に魅力を感じる、もしくはアジアの一つの大きな国だと信じるに足るいろいろな要素があるから脱北者の方が駆け込むのであって、人数を公表されるから駆け込むわけではないと考えるわけなんですけれども、それについてぜひ御答弁をいただきたいと思います。

町村国務大臣 中国にあります日本以外の国々の在外公館、大使館等があるわけでありますが、そこに保護されている脱北者が例えばよその国に出国をするというようなことについて、その事実を公表している例というのはないんですね。日本だけがそれを今公表してきたということでございます。

 その理由はというと、確かに、一つは侵入を誘発するということもあろうかと思いますし、現実には、やはり中国も、あるいは最終的には大部分の方はやはり韓国に出国をするということになるんだろうと思いますが、その逐一の動きを明らかにしてほしくないという強い話があるんですね。

 したがいまして、私どもとしては、この脱北者の人権というものを考えたとき、できるだけ摩擦が中国においてもあるいは韓国においても生じない形で、それらの脱北者の方々の希望を実現するということが大切なんだろうというふうに私どもは考えまして、そういうことを考えたときに、すべてを公表するということが決して、現実に脱北した人たちのその後の行動というものを円滑に進めることが、かえって公表しない方がスムーズにいく、こういうふうに私どもは判断をしたものですから、そうしたことについての公表はしないということにしたわけでございます。

 例えば、先般、日本人学校にも実は脱北者と思われる方々が来た。もう日本人学校も実は大変困っておりまして、実は、日本人学校から大使館に当然移送されたわけですが、日本人学校そのものがそういう場所であるという認識をされることが、静かにみんな勉強しようと思って子供たちが来る場所なのに、いわば、そういう駆け込み寺的存在になることは非常に日本人学校としても迷惑であるという校長先生の談話が、その事実が起きた後に出されているといったようなことも実はあるわけでございます。

 そういったことなどを考えたときに、私どもは、ここは少し静かに対応した方がいいのかな、こう考えるに至った次第でございます。

岡本(充)分科員 今言われましたとおり、中国は、脱北者の駆け込みという事態を、最近は治安を乱す違法行為と神経をとがらせてきた、こういうようなコメントを私も聞いておりますけれども、中国への配慮は確かにあるのだろうと私も推察します。

 しかし、今言われましたけれども、日本人学校に駆け込んでこられる、これが、公表をしなかったからといって、駆け込みがふえるとか減るとかいうようなたぐいではないのではないか。要するに、公表をしていようと公表をしていなかろうと、ここで例えば、日本政府が、八人駆け込みました、十人駆け込みました、何月何日駆け込みましたというような事実を公表すると、まあ確かに、あそこには駆け込めるのかなと思う人も出てくるかもしれませんけれども、その情報がなくても、皆さんが考える、脱北者の方が駆け込もうと思われるところは、やはり現実的には限られているわけでございまして、駆け込んでくる、こないということに関して言えば、公表することがその誘引にはつながらないのではないかということを私は指摘させていただいて、次の質問に移りたいと思います。

 中南米のことについて、きょうはちょっと御質問をしたいと思っています。

 昨年、私は、中南米を訪問させていただきまして、ブラジルとペルーでございますけれども、その両国の経済関係の皆さん、また一般の大学生の方などとお話をさせていただく機会を得ました。

 御案内のとおり、ブラジルは、そしてまた、その次にペルーが、日系人がたくさん移住をされておりまして、日系人の方もたくさんいらっしゃるし、日本に対しての関心も非常に高い国であるのは事実なんです。こういった国々。また、中南米諸国というと、距離は遠いながら、日本とは経済的に言うと、銀や銅といった非鉄の鉱物、それからまた畜産関係や水産物、ペルーの沖なんかはいい漁場だそうです。こういったところがある中で、これから日本といわゆるEPA、FTA交渉を進めていきたいという意向を持っているやに伺っています。

 一月に、チリとはFTA、EPA交渉の可能性を検討する会議がスタートしたということもお聞きしておりますけれども、今後、そのほかの国を含めて、中南米諸国とのEPA交渉の進め方、またその方針について御説明をいただければと思います。

町村国務大臣 いろいろな国から、日本とEPA、FTAをやろうというお話があります。例えばスイスとか、世界のいろいろなところから参りまして、私どもも少し頭の整理をしないと、これは、ばらばらばらばらやっていたのでは、正直言って結構事務作業がなかなか大変なんです。

 外務省の定員はなかなかふえませんから、いわば条約をつくるというのは結構手間暇もかかるという実務的なこともございますが、やはり、言ってきたからやるというだけではいかにも芸がないのではないかということもあり、昨年の十二月に今後の経済連携協定の推進についての基本方針というものを関係閣僚が集まって定めたところであります。

 その中で、私どもとしては当面、今、フィリピン、タイ、マレーシア、韓国、多少早い遅いは出てくるかもしれませんが、そこと交渉を開始あるいは開始しようとしているということでございまして、主として今、ASEAN、東アジアを中心にやっていこう、限られた人材、能力、エネルギーをできるだけそこを中心にやっていこうということにしております。

 ただ、そうはいっても現実にもう昨年メキシコと締結をいたしまして、この四月一日から発効をする。それから、チリとも勉強を始めようということで、昨年小泉総理が行かれた折に、その勉強会の立ち上げを決めたところでございます。さらには、実は中南米諸国ともう過去六回やっておりますけれども、日・メルコスール高級事務レベル協議という場がございまして、貿易あるいは投資の円滑化のための取り組みというものもずっとやってきております。

 そういう形で、EPAばかりではなくて、さまざまな形で、それぞれの国との経済関係をより強化していくための取り組みはこれからもしっかりやっていきたいと考えているところでございます。

岡本(充)分科員 私は実は農林水産委員会に今出させていただいておりまして、そちらの方で、日本の食糧自給率を上げようじゃないかということを真剣に議論して、私もそう思っています。

 そういった中で、必ずしも、外国産の食物が、穀物に限らず畜産、水産物含めてですけれども入ってくる、どんどん入ってくるというような形になることは私は歓迎をするわけではありませんけれども、ただ、中南米諸国との関係を、昨年小泉総理が訪問されたブラジルでお話をされたとおり、新パートナーシップ構想を持って進めていこう、こういうお話をされている中でございますし、また先方からの非常に熱いまなざしを受けているというのを私もひしひしと感じておりますので、ぜひ前向きに取り組んでいただければと思っております。

 そういった中で、この新パートナーシップ構想の中での若者の交流、こういったことが一つのテーマになっておりました。今後五年間で四千人を招聘する、こういった話が出ておるようでございますが、国費留学だとか招聘だとか、こういったような形での訪問もあります一方で、個人的に中南米の若い人、まあもちろん経済的な事情で、なかなか航空券も高いですから、そう簡単に来れないのも事実ですけれども、若い方が日本に来ていただける。ちょうど折しも日本は万博があります。私の地元の愛知県で三月から始まりますけれども、こういった、万博に来るかどうかは別として、日本に来ていただける、もしくは日本に関心を持って、決して遠い国ではないというふうな考えを持っていただけるような取り組みをしていく必要があるのではないか。

 ちょうどペルーで私が大学生の方とお話をしたときに、やはり、アメリカには何とか行こうかなという思いを持つけれども、残念ながら日本はちょっと、なかなかクローズなイメージがあると言ったら失礼ですけれども、私たちが行ってもなかなか受け入れてもらえないんじゃないか、入国できないのではないか、こういったお話をしていました。

 昨日ちょっと資料をいただいたのですけれども、そういった中で見させていただくと、ビザの問題で、ここからちょっと細かな話なんですけれども、ブラジルやペルーの方が来られるときには、日本、本邦滞在中の一切の経費の支弁能力が明らかになる資料を疎明書類として添付するように、こういうふうになっています。

 こういったものがどうも一つネックになっているというふうに聞いておるんですけれども、具体的に「申請人が経費を支弁する場合には、我が国において支払可能なことを証する文書」とはどういったものを、もしくは支払い、このくらいの例えば預金残高が必要だとかそういうものが、明確な数字があるんでしょうか。お知らせいただきたいと思います。

鹿取政府参考人 今御質問のケースは、例えばブラジルの方が短期滞在で日本に来る、その場合は九十日以内は滞在できます。その場合、短期査証が必要となります。主に観光等で来る場合はこの査証をとることになります。

 その場合には、やはり我々としては一定のチェックは必要なものですから、旅行に行って航空券を持っているかとか、それで、今おっしゃったものについては、もしも就職されている方であれば、企業に働いているということと給料の証明書、また就職されていない方でも銀行残高、あるいはもしも未成年の方であれば別に御両親の就職証明とか給料証明、そういうものを見せていただいている、こういうことでございます。

岡本(充)分科員 済みません。具体的に幾らぐらいの残高証明があれば来れるんですか。日数にもよるんでしょうけれども、日数掛ける幾らとか、そういう意味で。

鹿取政府参考人 ちょっと私、正確に今幾らとは申し上げられないんですが、考え方といたしましては、例えば一週間滞在するという日程で来られる場合には、やはり一週間日本に滞在できる合理的な金額の預金証明書とか、勤めておられる方であれば、給料をもらっているわけですから、はるかにそれよりも高い収入を証明できるかもしれませんけれども、その旅行日程に照らしまして、ああこれなら大丈夫だというものを我々の査証官が判断しているところでございます。

 したがって、旅行の規模とか日数によって若干異なる面はございます。

岡本(充)分科員 今言われた、金額がひとつはっきりしないところがあるようなんですよね、大学生の方に伺うと。やはり日本に行くためのビザ、観光、短期滞在も含めて一体どのくらいのお金が要るんだ、日本は高いらしいけれどもどうなんだ、こういうふうに言われると、私も具体的な数字をその場で答えられませんでした。

 日本と若い方の交流を進めていくのであれば、ぜひそういったアナウンスメントもしていただいて、具体的に幾らかということを含めて、一度、資料があればまた要求をしておきたいと思います。あればください。

 そして、私、きょうお配りした資料なんですけれども、中南米から来ている人たちが、今度は働いている人ですけれども、一番上の資料です。外国人労働者の数としては、もちろん日系人が多いからではありますけれども、実は東アジアとほぼ同じぐらいの数が中南米から日本に働きに来ている、こういう事実があります。

 そしてまた、今お話をさせていただきましたけれども、実際に中南米から来られている方の数が非常に多いというのは、この三枚目の紙、私の地元、稲沢市の例で恐縮でございますけれども、本年の一月三十一日現在と二月一日現在、ほぼ同じ日ですけれども、こちらについて、外国人登録者数、そしてまた、その中でどういった国々が多いかというのを書かせていただきました。ブラジルが極めて多い。中国や韓国や、こういった東アジアの近い国よりも、フィリピンよりもはるかに多く、そしてペルーもこれに匹敵するぐらい多いという事実があります。

 こういった日系人の方も来られている、こういった現状ですが、ほとんどの方はやはり日系人なんですね。それ以外の方がなかなか来れない。そしてまた、実はこれはその中での内訳ではないんです。また一枚目に戻るんですけれども、在留資格別の外国人労働者というと、「就労の制限なし」、これは日系人を意味していると私は思いますけれども、これの数が多いということもその裏づけだと思っています。

 そういった中で、私は、専門的な技術を持っている分野の外国人労働者、優秀な外国人、優秀なと言っては失礼ですけれども、いろいろな意味で才能をお持ちの外国人の方をいかにこの日本にお連れすることができるか。資源が少ない日本において、知的な意味での資源を、知的な意味での日本の国力をもっと高めていくためには優秀な人たちが必要なんじゃないか。

 私はもともと医療の分野出身でございますから、医療の話で恐縮でございますけれども、日本の医薬品が非常に高騰している理由の一つに、日本でいい薬がなかなか開発できない、日本で治験をする、例えば治験をするそのデザイナーがいないんですね。そういった中で、なかなか日本で新薬が承認されるようないい研究がなされない、そういった現実があるのも事実です。

 専門的、技術的分野の外国人労働者の受け入れについて、きょうは厚生労働省の方から来ていただいていると思いますので、ちょっと御答弁をいただきたいと思います。

大石政府参考人 我が国はこれまでも、専門的、技術的な外国人の労働者につきましては、今先生御指摘のありましたように、社会の活性化あるいは国際化、こういった観点から積極的に受け入れていこうということで、そういった基本的態度をこれまでもとってきたところでございます。他国と比べましても、こういった専門的、技術的な労働者については数量枠といったものも設けないといったようなことで、各国と比べてもその点は非常にすぐれた形をとっているというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、こういった基本姿勢で今後とも我々も臨んでまいりたいというふうに思っております。

岡本(充)分科員 それで、最初の表に戻るんですけれども、いろいろな労働者がかなりふえてきている現状があるんです。いろいろな、これは就労目的別外国人なんですけれども、これで見ると、やはり研究、教育というのは余り人がふえていない。その一方で、さらに特筆すべきは、医療の分野は減ってきているんですね。これは、この中で見ていただいても特筆するべきことだと私は思っています。

 そういった中で、規制改革・民間開放推進会議の一次答申で、我が国の医師国家資格を有する外国人医師について、我が国の医師と同様の役割を負わせるべく、就労制限の撤廃について結論を得たというふうに聞いております。今後、これから先は厚生労働省の医政局との話になってくるのかもしれません。ただ、今後、民間開放推進会議の中で引き続き優秀な外国人受け入れの促進を検討していく、こういった考えがあるのか、強い決意をお持ちであるのかどうかについて、少し答弁を求めたいと思います。

田中政府参考人 今御指摘のありましたとおりに、昨年の十二月に規制改革・民間開放推進会議で第一次答申を取りまとめました。

 その中におきましては、現在、大学卒業後の六年間、研修目的である、あるいは僻地における勤務のみが認められているという状況でありましたのを、医療分野の国内労働市場及び医療提供体制の合理化への影響を勘案し、外国人医師移入の急増に対し、受け入れ枠の設定等適宜必要な措置を講ずることも考慮しつつ、このような就労制限を撤廃すべきというふうに盛り込んだところでございます。

 この答申を受けまして、政府は、十二月にいわゆる最大限尊重閣議というのを行ったところであり、今の件につきましても、本年三月に予定しております規制改革・民間開放推進三カ年計画の改定に盛り込み、同施策が確実に実施されるようフォローアップしていくということでございます。

 今後のことでございますが、規制改革・民間開放推進会議は三年間のマンデートで審議を行っておりますが、審議事項につきましては、今後、同会議において検討していくことになると存じております。

 以上でございます。

岡本(充)分科員 ぜひ、私、たくさん受け入れろと言っているわけではないんですけれども、前向きな議論をしていただいて、優秀な人材が日本に来る。今ちょっとお話しさせていただきましたペルーの方も言っていた。日本に行っても、研究をして大学院を出ても、日本でなかなか就職できないじゃないか、結局は帰れと言われてしまう。こういう現状が、アメリカでは、何とか頑張れば、職を探してそこで暮らしていけるようになる。こういった将来性を見込んで、アメリカなら行ってみようと優秀な方が行く。こういうような現状になっているということを、ひとつ私は指摘をさせていただきたいと思います。

 今、最初からいろいろお話をさせていただきましたけれども、日本の国際貢献というか、日本が世界で名誉ある地位を占めたい、こういう憲法の前文があるわけですけれども、こういった地位を占める方法はいろいろあると思います。日本が今イラクやアフガニスタンで協力をしていることのみならず、今お話をさせていただきました人道支援の問題もそう、そしてまた今の教育や、そして若い人の交流を通じての日本の特徴の発揮もそうでございます。

 こういったいろいろな多岐にわたる手段を通じて、ぜひ日本が名誉ある地位を占めて、アメリカが世界の警察だというなら、こう言ってはあれですけれども、日本は世界の救急車というか、日本の、いろいろな意味での人道援助もしましょう、そしてまた、非常に困っている人がいたらそこに行きましょう。こういったような形で、日本がひとつ名誉ある地位を占めて、外務省の悲願でもございます国連の安全保障理事国のいすを確保できますように、私も強く祈念を申し上げているところでございます。

 最後に大臣から、今までの議論を通じて、総括をいただければ幸いでございます。

町村国務大臣 貴重な御意見をどうもありがとうございました。特に、この医療職の方が減っているというのは、人数がもともと少ない上に減っているというのは、今改めてびっくりしたところでございますが、やはり、世界の方々、また特に世界の若い人たちが、あの国に行ってみたい、あの国に行くと夢があるというような魅力ある日本にする努力というものは大変に必要なことだろうと思いますし、その際に制度的なバリアができるだけ少ない方がいい、私もそう思っておりました。委員の御意見に深く共鳴を覚えたところでございます。

岡本(充)分科員 どうもありがとうございました。終わります。

河村(建)主査代理 これにて岡本充功君の質疑は終了いたしました。

 次に、御法川信英君。

御法川分科員 おはようございます。自民党の御法川でございます。きょうは三十分のお時間をいただきまして、ありがとうございました。町村大臣そして逢沢副大臣初め事務方の皆様には感謝を申し上げたいと思います。

 先般、町村外務大臣そして大野防衛庁長官がアメリカに行ってこられました。2プラス2でございますけれども、非常にタイミングのいい会談であったと思うし、その内容は、文書に書かれたもの、そして文書に出てきていない部分も含めて、非常に意義深いものがあったのではないかなと私は察しております。その点についてお伺いしながら、北朝鮮、あるいは今行われているさまざまなレジーム等についての御質問をさせていただきたいな、こういうふうに思います。よろしくお願いしたいと思います。

 まずは、まさに町村外相そして大野長官がアメリカにいらっしゃったと前後して、中国の王家瑞さんですか、高官がピョンヤンに行って金正日さんと会ったということでございますけれども、これについての正式な中国の外務省あるいは中国当局からの報告というのは、日本政府に対してありますでしょうか。

齋木政府参考人 お答えいたします。

 王家瑞中国共産党対外連絡部長は十九日から二十二日まで訪朝いたしまして、北朝鮮側との間でいろいろなやりとりをして、その結果につきましては、私ども、二十三日に北京で中国政府側から大使館の方に対して説明を受けております。

御法川分科員 済みません、もう一度繰り返しますが、二十三日でよろしゅうございますか。わかりました。

 実は、それと前後しておるんですけれども、日本の新聞の方に若干の報道がございまして、私、余り報道がこうだからというような言い方をしたくないわけでございますが、タス通信の方で、これは二十三日の新聞でございますので二十二日に発表になっていると思いますけれども、「日本政府の立場が核問題を巡る六カ国協議再開に深刻な問題を作り出している」というようなことを北朝鮮側がしゃべったというようなことの報道がございますけれども、こういう発言はその中にございましたでしょうか。

齋木政府参考人 先ほど申し上げましたように、中国側から詳しい内容の説明を受けたわけでございますけれども、今委員御指摘のような金正日発言につきまして、そういう発言があったということは私どもとしては聞いておりません。

御法川分科員 そうすると、単純に言いますとこれは誤報ということになりますよね。新聞の方の誤報だということでよろしいでしょうか。

齋木政府参考人 報道で出ております内容については、私どもとしては聞いておりません。

御法川分科員 ありがとうございました。もしそういうことがあったということであれば、それに対して日本政府がどういう答えをということをちょっとお聞きしようと思いましたが、そういうことはないということでございますので、それで結構だと思います。

 そして、その後、この2プラス2におけるさまざまな公式の宣言あるいは発言等がございますので、この内容について若干お話をさせていただきたいと思います。

 まず一つ、私は、アメリカ国務省の方のホームページから外務省さんでつくっていらっしゃるものと同じものを印刷しまして、対照させていろいろ読んでいるわけでございますけれども、ほとんど問題はないわけでございますが、私は、別にこんなことを言うと嫌われる議員になってしまうと思いましていろいろ最後まで考えたのでございますが、どうしても気になる部分が一点だけございます。

 これは内容ではございません、訳の問題でございますけれども、共同発表という、「共同の取組」「共通の戦略目標」等が入っている、この中で、これは番号が振ってありますのですぐおわかりになると思いますけれども、十番、「地域における共通の戦略目標には、以下が含まれる。」ということで、ポツがついて以下箇条書きにしてある部分がございます。この中で、一番最初のところ、「日本の安全を確保し、アジア太平洋地域における平和と安定を強化するとともに、日米両国に影響を与える事態に対処するための能力を維持する。」こういうふうになっております。原文の方は、この最後の部分、「コンティンジェンシーズ アフェクティング ザ ユナイテッド ステーツ アンド ジャパン」というふうになっておりまして、これは本当に厳密な話で大変申しわけございませんけれども、「日米両国」というふうにはなっていない、アメリカと日本というふうになっているわけですが、これをこういうふうに訳した、別に深い意味はないと思いますが、これは通常こういうことでよろしいのでございましょうか。

河相政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のところ、確かに共同発表の「コモン ストラテジック オブジェクティブス」これは日本語では「地域における共通の戦略目標」、このパラ十の最初のところでございますけれども、訳としては御指摘のように最後の部分で「ツー アドレス コンティンジェンシーズ アフェクティング ザ ユナイテッド ステーツ アンド ジャパン」というところでございまして、それを御指摘のとおり日本語の方では「日米両国に影響を与える」という訳をしておりまして、御指摘のような若干ニュアンスの違いというのをお感じになるところもあろうかと思いますけれども、この点につきましては、発表文自身については日本語、英語それぞれ正文というか、それぞれ正式な文書として採択をしておりまして、私どもとしてはここについて差異はないという、きちっと同じ気持ちで同じ日米間の考え方に差異はなく表現をしているという認識でございます。

御法川分科員 ありがとうございます。本当に瑣末な問題でございますけれども、御確認だけをさせていただきました。

 それで、この日、ラムズフェルド、ライス、そして町村大臣、大野長官と四人で共同の記者会見がありまして、そのときの内容も実は全部アメリカの方のホームページでは文章化されているわけでございまして、その中には実は記者との一問一答の部分が入ってございます。これは四閣僚が御発言をなさった後に、プレスの方に質問を受け付けますと言った後の部分だと思いますけれども、ちなみにこれは大臣の方の話は通訳してというふうになっておりますので全部英語になっておるわけでございますけれども、その中で、最初にロイターの方が質問した中に、何で突然こんなにびっくりするんだ、北朝鮮が核を持っているという発言をしたことについて何でびっくりするんだというような質問をしていまして、これについてライス長官、そして町村大臣がお答えなさっています。

 二月の十日に北朝鮮が正式に、我々は核兵器を保有している、製造して保有したという発言をしたと思いますが、この二月十日の前とその後、まだ二週間しかたってないわけですが、における環境の大きな変化というのはどのようなものがあるか、教えていただきたいと思います。

河相政府参考人 お答え申し上げます。

 二月の十日、これは御指摘のとおり、北朝鮮が声明で正式に北朝鮮は核兵器を保有しているということを認めたわけでございます。この二月の十日の前に当たりましても、北朝鮮はいろいろな場で、核兵器を持っている可能性なり、いろいろな形での核兵器に対する言及があったわけでございますが、この二月の十日は正式な形で核兵器を保有しているということを明確にしたわけでございます。事態としては、時系列的には同じような、一日一日連続して動いているわけでございますが、北朝鮮がはっきりそれを正式に認めたということによって状況が変化した部分はあろうかと思います。

御法川分科員 それによって、日本の外交、対北朝鮮外交が最も変化した部分というのは何でございましょうか。

齋木政府参考人 お答えいたします。

 今北米局長の方からも御答弁がございましたけれども、北朝鮮が核兵器を保有しているということをいわば正式に公にみずから宣言した、これは極めて重大な事態であるというふうに私どもとしては受けとめております。

 いずれにしましても、そのような核兵器の廃棄、核計画の廃棄を目指して、私どもは従来から六カ国協議を通じて、早期に核問題の全面解決ということに努力を傾注してきておるわけでございますけれども、なお一層この努力に拍車をかけて核問題の解決を目指さなければいけないというふうに認識しておるわけでございます。

御法川分科員 ありがとうございます。

 それに関連するわけでございますけれども、2プラス2の、これは外務省でおつくりになった概要という内容の文書があるわけでございますが、これの一番最初が「北朝鮮」でございまして、その中で、「政府としては、六者会合の再開のことが念頭にあるので、直ちに制裁ということにはならないが、いつまでも」云々、だらだらだらとありますけれども、やはりここでも、今審議官がおっしゃったように、この六者会合、六カ国会議の方に早く戻ってもらわなくちゃ困るぞという懸念、あるいはそのことをここで表現されていると思います。これは読み方によっては、拉致問題は我慢しているから早く来なさいというようにも読めるような気もするんですが、その辺で、例えば拉致問題と六カ国会議、優劣をつけているということはございますでしょうか。

町村国務大臣 それぞれが重要な日本にとって大きな外交課題だという認識でおりまして、決してどちらが優劣ということはございません。ただ、ただいま現在の状況での判断として、今ちょうど六カ国協議再開ということで一斉に外交努力が始まっている折、万が一にも日本が仮に制裁を発動して、それを口実にして彼らが、もう何でも口実にしてしまう国でありますから、それを口実にして、だから六者協議再開に反対であるというあらぬ言いがかりをつけられないようにするという意味で、今私どもは、そういう意味では六者協議もありますのでと言っておりますが、しかし必要な、私どももいつまでも拉致についての対応が不誠実であり続ければ制裁もあり得るよということで、そのための準備は別途粛々と政府部内でやっているということでございまして、優劣をつけてやっているわけではございません。

御法川分科員 ありがとうございました。

 それでは、また先ほどの2プラス2のときの宣言の方に戻るわけでございますが、十一番、今度は「世界における共通の戦略目標」ということで、またここにポツがありまして箇条書きでいろいろなっております。この中で、三つ目のポツですね、「NPT、IAEAその他のレジーム及びPSI等のイニシアティブの信頼性及び実効性を向上させること等を通じて、大量破壊兵器及びその運搬手段の削減と不拡散を推進する。」というふうになっております。英語で読んでも全く同じことでございますので、そういうことだと思います。

 ちょっと意地悪な質問で大変申しわけないのですが、「その他のレジーム」あるいは「PSI等のイニシアティブ」となっておりますが、ほかにどういうものがありますか。もし例を、一つ二つでございますけれども、例を挙げていただければと思いますが、何かございますでしょうか。

天野政府参考人 お答えいたします。

 具体的な例といたしましては、原子力供給グループ、例えばNSGなどもございます。このような場を通じて、大量破壊兵器関連物資の拡散を阻止していきたいと考えている次第でございます。

御法川分科員 ありがとうございます。

 さまざまなレジームあるいは国際的な取り決めというのはあることは私も了解しておりますし、そういうものを通じて働きかけをしていくということは非常に大事なことと思いますけれども、例えばCTBTなんかの場合には、アメリカはこれは締約も批准もしておらない。あるいは、生物化学兵器の禁止条約等も、締約はしているけれども、まだアメリカの方が批准はたしかしていないと思ったんですけれども、そういうレジームも結構あるということで、そういう国際的なレジームにアメリカを参加させるような働きかけをするということも含めて日本がこれからやっていくという必要もあるのではないかなと私は考えますけれども、その辺についての御所見をお伺いできますでしょうか。

天野政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、アメリカは、包括的核実験禁止条約、CTBTを批准しておりません。しかしながら、我が国といたしましては、毎年国連総会に提出している核軍縮決議案におきましても、CTBTの早期発効を訴えております。また、ことしの五月に開かれますNPT運用検討会議におきましても、CTBTの早期発効を強く働きかけていきたいと考えております。

御法川分科員 このCTBTに関しては、アメリカが批准をしないと発効していかないという非常に大事な部分がありますので、ぜひ日本政府の力強い働きかけをお願いしたいな、そういうふうに思っております。

 そして、同じこの文の中にありますPSIでございます。こういうイニシアルが多いわけでございまして非常にわかりにくいんですけれども、これは、拡散に対する安全保障構想、こういう訳でよろしいのかと思いますけれども、これについて若干お話をさせていただきたいと思います。

 まず、このPSI、大体のことはわかっておりますが、一番新しい時点での、どういう働きというか役割をしているのかということについて簡単に御説明をいただきたいと思います。

天野政府参考人 お答えいたします。

 PSIにつきましては、PSIに参加する国の間で共同訓練などを数多く実施しておりまして、そのような訓練を行うことによって参加国の能力を向上させる、また、拡散の懸念のある国に対して拡散をしないように働きかけていくというような活動をしております。

御法川分科員 それで、さまざまな会議あるいは訓練をこのPSIということで行っているというふうに理解をしております。

 実は、昨年の十月、日本沖においてこの演習が行われているということでございますけれども、これについて簡単な御説明をいただけますでしょうか。

天野政府参考人 お答えいたします。

 昨年の十月、東京湾沖におきまして、合計二十二カ国の参加を得まして、PSIに関する訓練を行いました。これは、日本籍船及び米国籍船舶が大量破壊兵器関連物質の運搬をしている疑いがあるということで、日米等がそれぞれ取り締まりの協力を行ったということでございます。

御法川分科員 ありがとうございます。

 これは、もちろん、こういうシナリオをつくって、それにのっとって各参加国がいろいろな行動をしていくというふうな理解を私はしておるわけでございます。そういう演習だということだと思いますけれども、これは今回だけでなくて、日本はほかのこういう演習にも参加しているというふうに理解をしておりますけれども、過去何回ぐらい参加していらっしゃるんでしょうか。

天野政府参考人 お答えいたします。

 合計で過去十三回の訓練が行われたと承知しております。そのうち、正式に参加しましたのは、二〇〇三年九月の豪州主催の海上阻止訓練及び二〇〇四年九月のアメリカが主催いたしました机上訓練でございます。その他はオブザーバーとして参加しております。

御法川分科員 これは、私は安全保障委員会にもおりますし、実は今まで余り取り上げられていないイニシアチブだというふうに私は理解をしておりまして、ただ、この内容あるいは意義というのは非常に深いものがありますし、これは積極的に進めていくべき事業の一つではないかなと私は考えております。

 ただ、共同で、そういう形でいろいろな、これは当然、海上保安庁そして防衛庁が出てやっておるわけでございまして、素人の人がぱっと見たときに、そうするとこれは多国間で軍事演習をしているのかというような誤解を招くような危険性が若干あるのではないかなと私は懸念をいたしましたけれども、その辺についての御説明をいただけますでしょうか。

天野政府参考人 お答えいたします。

 このPSIというのは、例えば、昨年十月に日本が実施しました例で申しますと、日本国籍船及び米国籍船が大量破壊兵器を輸送していると。これは軍事行動じゃございません、その輸送という段階をとらえまして、これを阻止するために、法執行として参加国が国内法及び国際法の範囲内で活動を行うということでございます。そういう意味で、軍事訓練ということよりは、法執行の活動であるというふうにとらえております。

    〔河村(建)主査代理退席、主査着席〕

御法川分科員 これは、これからも数を重ねて、いろんな演習がありますので、いろんなシナリオがこれから考えられると思いますけれども、ぜひ、国内法あるいは国際法にのっとっているというその根拠の部分をできるだけわかりやすいように御説明いただければ、例えば、我々がこれは何なんだということを言われたときに非常に説明しやすいのではないかなと思いまして、そのようなPRといいますか、そういうこともよろしくお願いしたいな、そういうふうに思っております。

 2プラス2関連の話は大体そういうことでございますけれども、一つ、先ほど岡本先生もお触れになりましたけれども、国連の安全保障理事会改革ということに関して若干お尋ねをさせていただきたいと思います。

 ここに外務省の、十七年一月ということで、この間できたばかりのパンフレットがございまして、もちろんここには、一ページ目は町村外務大臣の「巻頭辞」ということでごあいさつが載っていますし、そのあと写真も含めていろんな説明がございまして、これは非常にぶちあけた話で申しわけございませんけれども、どれぐらいの数これをつくっていらっしゃるのかなと。要は、これは広報活動だと思うんです。そうであれば、やはりできるだけ多くの方に目に触れてもらって、それで理解を得るということだと思うんですけれども、どのような形でこれを配布されているのかということでお伺いしてよろしいでしょうか。

鶴岡政府参考人 ただいま御指摘いただきました国連安保理事会改革に関する外務省作成パンフレットでございますが、最近できたてでございまして、最初の一刷りといたしましては千部作成をいたしまして、東京におられます国会議員の方々にお届けをするとともに、関係マスコミその他のいわゆる指導層の方々に提供をさせていただいております。

 現在、既に千部はけつつありますので、増し刷りをしておるところでございまして、今後さらに広く配布をしていきたいというふうに考えております。

御法川分科員 我々が自分の地元で選挙の活動をするといってちょっとしたチラシをつくるときでも、もう二万、三万というのはつくって配布をするというのが当たり前でございまして、それも小さな選挙区の話でございます。この話というのは、日本全国あまねく知らしめて、皆さんの理解をいただくということで、最初の千が国会議員に行って、私にもこれは来たわけですから拝見いたしましたけれども、もうとてもそんなレベルじゃなくて、もっと広い段階で、そしてこれはやはり市町村あるいは民間のみんなの目に触れる部分にできるだけ置く、そういう活動というのは必要じゃないかなと思いますけれども、この点についていかがでしょうか。

鶴岡政府参考人 大変温かい励ましをいただきまして、ありがとうございます。

 役所の仕事でございますので、まず当初は千部つくらせていただきました。評価をいただきましたので、ぜひ最大限部数を増し刷りいたしまして、全国津々浦々に届くように、大臣の御指導も得て作業をさせていただきたいと思います。

御法川分科員 ぜひ、そういうことで、私、地元に帰ったら、あれ、これあるなというぐらいの配り方をしていただければ、そういうふうに思います。

 そして、内容についてですけれども、私、最後になります。大臣から、改めまして、安保理事会の常任理事国に日本が入るべきであるというこの決意、あるいはそれに対するこれからの取り組み方について御所見をいただければと存じます。

町村国務大臣 ことしは戦後六十年、国連もできて六十年、ちょうど人間に例えれば還暦であるということで、いわば原点に立ち返って国連のあり方というものを改めて問い直し、今のままでいいんだろうかということをいろいろな方々が考えて昨年の十一月に有識者の方々の報告書が出たということで、一月、二月、国連総会で数多くの国々がこれに対する考え方を述べました。それを受けて三月にアナン事務総長がみずからのレポートを出す、九月にはこれに向けてのサミット、首脳が集まるということもある。したがいまして、この一年が国連改革の重要な年で、もしことしこれを逸すると、また十年何も起こらないで過ぎ去ってしまうということではないかと思います。

 そういう意味では、私どもも全力を挙げて何としても国連改革を実現したい。その一環としての安全保障理事会の改革であるし、その中で、日本が常任理事国に入るということは、私は、日本国の利益であるばかりではなくて、世界の、国連にとっての利益になる、そういう確信を持って今それぞれ働きかけをしているところであります。

 委員からは、まことに千部ということでは少ない、これでは選挙に落選するぞという御指導をいただきまして、まことにごもっともでございまして、一千万部と言いたいところですが、それはちょっとお金が足りないでしょうが、数多くこれを印刷して、まず日本国内の多くの方々にも知っていただく。そして、これは英文のものももうできておりますから、国際的にもこれを各方面に配布をして、何とかこれを実現していきたい、最大限の努力をしていくということを約束し、また御法川委員からもお力添えを賜りたいとお願いをする次第でございます。

御法川分科員 どうもありがとうございました。これで終わります。

植竹主査 これにて御法川信英君の質疑は終了いたしました。

 次に、北村直人君。

北村(直)分科員 きょうは、私は、北方領土に限って、大臣、副大臣あるいは欧州局長の考え方を聞かせていただきたいと思います。

 私は、昨年の十一月の二十一日から、久しぶりに、四回目でございますけれども、ロシアを訪問いたしました。そのときに、多くのロシアの上院の議員ですとかあるいはそれぞれ政府の官僚の方々ともお会いをいたしましたが、私は会った方々すべてに、去年の十一月ですから、来年は日本とロシアにとっては百五十周年という記念すべき年ですねという話をしたときに、ほとんどというよりも全員が、百五十周年というのは何ですか、こういう返答でありました。

 先般、衆議院で決議をいたしました。百五十年前の二月七日、当時の日本の江戸幕府の勘定奉行川路聖謨と帝国ロシア総統のプチャーチンが、最終的に、いろいろな議論あるいは交渉を重ねて、そして国境を択捉島と得撫島の間に引くということを明確にしたわけであります。

 その後については、一八七五年には今度は樺太と千島の交換条約というのがあった。そして、第二次世界大戦までの間には、一九〇四年には日露の戦争もあった。そのときには、我が国はロシアに勝利をした。一九〇五年の一月二日には旅順が陥落をした。あるいは、その同じ年の五月の二十七日から二十八日にかけて、日本海海戦で日本の海軍が勝った。そういう事実をもとにして、同じ年の九月の五日に、ポーツマス条約で南樺太が我が国の領土になったということであります。

 その後、カイロ宣言だとかヤルタ宣言だとかいろいろあって、サンフランシスコ平和条約が結ばれたとき、そのときに、全権を持っていた吉田全権がきちっと発言をしているんですね。その当時の樺太千島交換の問題ですとか、あるいはポーツマス条約に基づく国境線等々、ロシア、当時のソビエトが言っていることは承服をすることはできないということを明確にしながら、そして、一九五六年の九月七日には、日ソ交渉に関する米国の覚書というのがあって、その中でも、ヤルタ協定というものはアメリカはこう考えているということを明確にしている。そういう史実というものがある。

 私は、昨年の十一月にロシアに久しぶりに行ったときに、ロシアの国会議員を含めてロシアの国民が、そういうきちっとした世界が認めている史実について余りにも認識をしていないということは、我が国の外交交渉の中にあって、外務省が、ロシアの国民やロシアのそういう方々に対しての史実の啓蒙ということについて一体どうしていたのかなという疑念と反省を私は持ちました。ぜひ、そのことについて、まず町村大臣から、ロシア国民、ロシアのそういう人方に対する今までの啓蒙、そして今後どういうふうに考えているのか、そのことをお聞かせいただきたいと思います。

町村国務大臣 北村委員には、常日ごろからこの北方領土問題に大変熱心にお取り組みをいただいておりますことに心から敬意を払う次第でございます。

 今御指摘のあった、日本国内では、かなり毎年の署名が集まるなど、あるいは先般の北方領土の日を含めて、日本国内にはかなりこの問題についての認識は広まっていると思います。

 他方、では、ロシアにおいてどうかというと、今委員の御指摘をいただきましたように、これも、私もつぶさに知っているわけではございませんが、決して、十分な認識をロシアの国民が持っているかどうか、確かによくわからないところがございます。

 我々としては、例えばロシアの大使館にありますホームページで北方領土問題についての資料を露文で掲載したり、あるいはロシア語でできたパンフレットをつくったり、あるいは日ロ外務省共同で作成いたしました日ロ間の領土問題の歴史に関する共同作成資料を配布するといったようなこともやってはきております。

 特に、百五十周年ということで、日露修好百五十周年に関するポスター、リーフレットというものを今作成中でございまして、これを、千部かどうかは別にいたしまして、できるだけ数多く配布をしようということもやっておりますし、また、私も、着任以来、数社のロシアのメディアに登場いたしまして、積極的にこの領土問題についてのPRもやってきたところでございます。さらに、いろいろな雑誌あるいは日ロ賢人会議、日ロフォーラム、日ロ専門家対話、こういった有識者の対話などもやっているところでございます。

 しかし、ある意味では、昨年十一月にラブロフ外務大臣がロシアのメディアに対して、実は、日ソ共同宣言があって、それに基づいて二島返還ということはあるんだという事実を述べました。これはある種の外交交渉の始まりかもしれませんが、しかし、彼らにとっても決してそれは人気のある政策ではない。不人気な政策をあえて言ったところに、私は彼らの、これをある人が称して、これはロシア側から日本に対するインビテーションカードだという説明をした人さえいました。

 本当にインビテーションかどうか、これは今後の交渉次第でありますが、そういうことをラブロフさんが言い、それをプーチンさんがよく言ったと言って称賛した、それがまたメディアに出るというようなこともあったりしまして、もちろんそれに対する反発もあるわけでありますが、私は、次第次第に、ことしがそういう意味では重要な年なんだということが認知されつつあるのではなかろうかとは思います。

 しかし、委員御指摘のように、まだまだ不十分なんだろうという反省を持ちながら、しっかり取り組みたいと考えております。

北村(直)分科員 大臣のその熱意を今後の外交の中にぜひ推進をしていただきたいと思います。

 ただ、今大臣がくしくも今後のことについて少し触れましたけれども、今まで、私は決して日本の国が弱腰外交だとは思いませんけれども、しかし、ちょっとやはり、ちょっとどころか、かなりロシアに対して弱腰であったのではないかなという思いをずっとしてまいりました。

 つまり、言いたいことを言ってはいるんでしょうけれども、こういう史実について、いかなるときでも堂々と胸を張って言っていくべきであったと思いますし、これからも言っていかなければならない、こういうふうに思います。

 そして、それと同時に、過去もやっていただきましたが、国連への働きかけというものは重要だと思います。毎回毎回国連でそのことを明確に、史実というものをきちっと国連を通じて世界に発信していくということは大変重要なことだ、こういうふうに思っていますし、今までもやってきたけれども、それ以上にぜひ力を入れていただきたいということ。

 それから、せっかく各国に日本の大使館や領事館がずっとあるわけでありますから、そこに赴任している大使あるいは総領事を含めて職員が、きちっとした職員の意識の高揚というんですか、そのことを明確にわかっていて、そして、フランスに行っていても、南アメリカに行っていても、あるいはアフリカに行っていても、実は日本とロシアの間にはこういうことがあるんだということを会う人会う人に言っていく、それが外交官の務めではないのかな、このように思います。

 あえてその二つについては、ぜひ、大臣、副大臣の指導のもとにこれをやってもらいたい。

 そしてもう一つ、私は、四回でありますけれども、ロシア、モスクワにある日本大使館、ひどいですよね。今建てかえるというあれがあるけれども、いつも行くたびに、あれはウナギの寝床か、こういうふうに私は言っております。そのぐらいひどいところで仕事をしながら、本当にこれで日本の考え方がしっかり出るのかな、こういうような思いをちょっと持ちました。

 ですから、そういう意味で、ましてやどこにあるかわからぬ、メーンストリートの明確なところにないわけですから。どこか、それこそウナギの路地を入っていってやっとあったなんというような、それが日本のロシアに対する大使館なのかなという思いもいたしました。そのことは十二分に大臣、副大臣はわかっているわけでありますので、そのことにぜひまた力もいただきたいというふうに思います。

 それで、北方四島の水域操業の枠組み協定ができました。しかし、枠組みができている割には、あの根室海峡で、昨年もロシアのトロール船、大型船等々が入ってきて、せっかく協定があるにもかかわらず、日本側の漁網等々の被害が出る。

 それよりも、あそこの大変大切な、両国にとって大切な海の資源が枯渇をする。漁法的には、トロールなんという漁法はなくした方がいいわけでありますけれども、そのことについて、毎回毎回、大臣、副大臣にお願いをしながら、抗議をしていただいております。昨年も抗議をしていただいた。しかし、もっともっと強く抗議をしていただきたい、このように思いますが、その決意やいかん。

町村国務大臣 大変重要な問題だ、こう思っております。大型トロール船が、漁具のみならず、まさに資源そのものを枯渇させてしまうという問題が大変重要だ、私はこう思って、今までも累次にわたって強い抗議、働きかけをやっているところでございまして、ことしに入ってからも、一月の十九日にそういう被害が発生をしたということで、一月二十一日にロシア外務省それから連邦漁業庁に対しまして抗議をするとともに、再発防止のための具体的措置をとるように強く要請をしたわけでございます。

 また、さらに一月二十四日に今年二回目の被害も発生したということで、間髪を入れず、二十五日、同じように抗議をするということで、本当にどこまで届いているのかという思いもいたしますが、粘り強くこれはやはり働きかけをしていかなければいけない、こう思っておりまして、今後とも気を抜かずにこの問題に取り組んでいこう、こう思っております。

北村(直)分科員 漁具の被害等々もありますので、その補償問題等々について、本当に粘り強く、そして強力に抗議をしながら、この協定がしっかり守っていかれるような、そういう推進方もぜひまたお願いを申し上げます。

 そして、もう一つ、これは別でありますけれども、サハリン州への協力をしていくということが一つ重要な、四島の返還ということにもつながっていく、四島の帰属という問題につながっていく。ことしの予算の中にも一億五千万用意をしていただいて、計上していただいております。今後はそのことについても、ぜひ大臣、これは継続をしていくという決意はありますね。どうですか。

小松政府参考人 北村先生御指摘の、ロシア連邦のサハリン州政府に対する経済社会改革の促進を目的とする一億五千万円相当の無償技術支援でございますが、これは従来からやっておるわけでございまして、平成十七年度外務省予算の原案にも計上されているところでございます。

 先生御指摘ございましたように、我が国とサハリン州の間の企業活動や人的交流の発展に資する、こういう観点のみならず、これは御案内のとおり、操業枠組み協定とは枠外のものではございますけれども、やはりサハリン州の官民の対日理解と協力の発展というものが、間接的に、この協定に基づく我が国漁業者の方々による操業の円滑な実施にも非常に重要だと思っておりますので、その観点からも、私どもはこの協力は非常に重要なものだというふうに考えておりますので、今後とも、財政当局の理解も得まして、この予算措置を確保していきたいと思っております。

北村(直)分科員 これは陰に陽に非常に大切なサハリン州との協力関係だと思っておりますので、そのことを十二分に踏まえて、また今後の推進方をお願い申し上げます。

 さて、外務省のことしの予算の中にも、四島の島民に対する人道支援という項目もございます。私は、人道支援、いろいろな人道支援があるんだと思いますが、あそこの四島に住んでいるロシアの島民の人方が一番困ることというのは、いろいろな重症なけがや病気にかかったりする、そのことが四島に住んでいるロシアの島民の人方の一番の心配事ではないか。

 それを我々は前から口を酸っぱくして言いながら、何とか支援ができないかということで、やっと、重症な患者を受け入れて、そして治して、完治して島に帰る。島に帰れば、お茶を飲みながら、ロシア人同士が、いや、日本に行ったらこういう治療をしてもらって、こんなにうちの娘が元気になって帰ってきたとか、そういう、何にもしなくても、ロシアの島民の人方が日本に対しての非常な好感を持った話をしてくれる。

 ですから、ここはもっといろいろな面で考えていく。それを一歩前進させて、ぜひ、この北方隣接地域、一市四町となります、根室市、羅臼、標津、中標津、別海、この一市四町の北方隣接地域の中に健康センターを、私は前からそう言っているんですね。

 例えば、根室の市立病院に外務省の出先機関の一つを出して、そして健康センター。いずれにしても、四島に住んでいるロシアの島民の人方のだれを受け入れるかというのは、最終的に本省でやるわけでしょう。本省ではなくて現場、つまり、四島に隣接している根室市を含めたそういうところで、外務省の職員がそこに出向いて、分室のようなものがあって、それは例えば根室の市立病院の中にあっていいじゃないですか。

 ちょうど今、根室の市立病院を根室の市民の人方が建てかえよう、新たにして充実したものにしよう、そういうときに、私は、いずれ四島が戻ってくる、そして今いる人方を日本の医療機関が、健康管理センター、健康を管理するよというような、そういう壮大な考えで根室の隣接地域の中に外務省の分室のようなものを、これはどういうことでもいいです、そういうものをあれして現場で判断をする、そして健康センター的に島民の人方の管理をする。

 そういうことをすることによって、今度は、日本側にいる元島民の人方がなお一層、返還運動等々の中核となって頑張っていただける。そして、隣接地域に住んでいる我が国の国民の人方も、そういう充実した医療機関で、これもまた非常に有効的にできる。私は、一石何鳥にもなるのではないか、こういうふうに思っています。

 多分、このことについては、いろいろな異論もあったり、今そんなことはとかといういろいろなことがあるでしょうけれども、ぜひ、大臣、そういう非常に将来も見越した構想を私はもう十数年来ずっと言い続けてきて、やっとことしも二千数百万の予算がついて、重症患者を日本が受け入れようということになった。

 だから、受け入れるのではなくて、それを受け入れて札幌だとか違うところの病院で治すのではなくて、根室の隣接地域で患者の人方を治してあげるぐらいの充実した医療センターを含めた、一部、外務省の出先機関が出せるような、そういうことに、どうでしょうか、大臣のお考えをお聞かせいただければと。副大臣でも結構でございます。

逢沢副大臣 二月七日、北方領土の日、北村先生も御出席でございましたが、根室管内で開かれました事実上の返還要求大会、地元の大会に私も出席をさせていただき、やはりこの根室の地が、北方領土を返還する、まさに我が国の運動の原点であるということを身をもって感じさせていただきました。

 また同時に、当日は天候のぐあいもよく、遠く国後を望み、また、納沙布岬まで足を延ばさせていただき、間近に歯舞群島を視察し、確かに、双眼鏡をのぞかせていただきますと、ロシアの警備艇、また水晶島その他がどのような状況になっているかが手にとるようにわかる、そのような貴重な経験も持たせていただいたわけでございます。

 今北村先生御指摘の、ロシアとのいろいろな意味での友好を図っていく事業、これからも積極的に展開をしていかなくてはならないわけでございますが、いわゆる北方領土に住んでいらっしゃるロシア人に適切な医療を提供するこの事業、大変高い評価をいただいているというふうに承知をいたしております。これからも積極的にそれを展開していく必要性があるというふうに私ども理解をいたしております。

 平成十五年におきましては、択捉島の患者さん二名が、根室の市立病院で医療提供がなされました。また、翌年の十六年度におきましても、四名の患者さんが同様に市立根室病院でお世話になりました。そういう意味では、市立根室病院が貴重な経験を積んできた、ノウハウを蓄積しつつあるということは事実として重く受けとめ、高く評価をしていかなくてはならない、そのように理解をさせていただいております。

 そして、地元にあっても、この根室の医療機関がそういった中心的役割を果たすべきだという強い思いがあり、願いがあり、また十二分な用意があるという意思を持っていらっしゃる、またそのことを表明をいただいているということは、大変有意義な、またありがたいことであろうかというふうに思います。

 北村先生の改めての御提案、私どもとしてもしっかり受けとめながら、また、地元の皆様とよく相談をしていきながら、適切に対応してまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

北村(直)分科員 ぜひ、例えば、四島に住んでいるロシアの人方の子供さんが病気になったのなら、親御さんともども根室市に来ていただいて、子供さんが直るまでは親御さん方には根室で仕事にもついてもらう。あるいは、親御さんが病気になったのなら、子供さん方も一緒に、家族でどうぞ根室に来てくださいと。子供さん方は、根室の小中学校、高校にも入って勉強してもらえばいいんですよ、ロシア語のわかる先生もいるわけでありますから。そのときに、先ほど冒頭に言った史実というものを今度は教えてやることもできるのではないか。

 だから、そういう意味からすると、根室の市立病院というのはただ単に根室市民のものばかりではない。そのことをぜひ外務省、検討をしていただいて、地元の方々とよく協議をしていただきたいな、このように強く要請をしておきます。

 最後に、ロシアとの関係で、実は歴史的に貝殻島の昆布というのが、民間交渉の中で、一つの大きな問題としてずっとやってまいりました。一九六三年、昭和三十八年に、大日本水産会と当時のソビエトの民間交渉ができて、そこから昆布がとれるようになった。しかし、昭和五十二年に二百海里という問題があってそれがだめになって、そこから本当に交渉がなかなか難しくて、最終的に、一九八一年、昭和五十六年に、民間の協定が調印されました。

 そのときは、実は、民間の人方はもうお手上げだったんですね。そして、そのときに動いたのが、やはり政治なんです、政治家なんですね。

 あのとき、実は、私は私の父の秘書をしておりました。そして、その場面に出くわしました。当時、田中角栄さんという大変な実力のある方のところに、父と私は、もう最後はここしかない、こういうことで、そこに飛び込もう、こう言って飛び込んでいって、角栄さんにいろいろな話をしたら、わかったと。その場所から、当時の外務大臣の園田直大臣、あるいは農林水産省は亀岡高夫農林大臣、官邸には佐藤信二副長官がおられた等々で、もう一気に動いたんですね、一気に。

 そして、六月に行ったときに、そのときに田中角さんは亀岡大臣に、百億用意せい、これから何年もできなくても全部補償する、国が補償するから百億用意せいと。うちの父は、いや、そういうお金の問題じゃないんです、昆布がとりたいんですと言ったら、いやいや、このぐらい言わなかったら役所は動かないんだ、そういう言葉でありました。

 そして、園田大臣を、あのころ、やっと携帯電話の大きなものがちょうど普及になったときでしたが、その携帯電話に呼び出して、今、百億用意させた、外務大臣、しっかりやれ、こういう話でありました。

 そして、それが終わった後、私の父に、二カ月口をふさいでいろと。ちょうど六月の十日前後でした。そのとおり、二カ月、言いたかったけれども何にも言わないで黙って、八月の二十五日にこの民間の協定ができた。

 当時、全鮭連というサケ・マスの金沢専務さんとそれから歯舞の当時の中村組合長が来て、一緒に行きましたよ。何度もいろいろなことをやりながら、最後は田中角栄さんという方のところに飛び込んだ、そして政治ががあっと動かした。そういういろいろな苦しみを越えながら今の民間の貝殻島の昆布がある、そのことを今忘れかけているんですね。

 ですから、もう一度そのことをしっかり思い出しながら、民間交渉というのがなぜ必要だったか。これは政府間交渉にせいというのはありますよ。政府間交渉にすれば領土を認めたことになってしまう、こういうことがあるから、そこを棚上げしながら民間交渉にした。

 しかし、もう何十年もたって、昆布をとっているあの歯舞地域の皆さん方からすれば、何で政府が前面に出てやらないんだと。私は前面に出ろとは言いません。しかし、政府間交渉と同じような形で民間交渉をやってもらいたい。逢沢副大臣が昨年、ラブロフ外相にそこを強く言ってくれました。そのおかげで、昨年は、少しおくれたけれどもできた。

 ですから、大臣、副大臣が今回も、この日ロのサケ・マスあるいは貝殻島の昆布交渉等々をしっかり、両大臣が主導権を握ってやるぐらいの、そういう決意で望んでいただくことをお願い申し上げて、もう時間でありますので、一言、やります、それだけで結構です、それだけを聞いて質問を終わらせていただきます。

町村国務大臣 田中角栄元総理の話を含めての貴重なお話を聞かせていただきまして、どうもありがとうございました。

 委員御指摘のとおり、このサケ・マス協定、大変重要でございまして、しっかりと取り組みを、特にまた、昨年も一昨年もおくれているという大変大きな問題がありましたので、私も一月十四日、ラブロフ外相に、こんなことを毎回繰り返されたら非常に迷惑だということも申し上げておりますが、今委員御指摘のようなことで、しっかりと我々もバックアップさせていただきたいと思います。

植竹主査 これにて北村直人君の質疑は終了いたしました。

 次に、島田久君。

島田分科員 民主党・無所属クラブの島田久であります。

 国政の重要事項につきまして町村大臣に質問できること、本当に心から感謝をしたいと思っております。

 私は、在日米軍と横田基地の軍民共用についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 これは私の選挙区なものですから、横田基地が米軍に接収された時分は、私がちょうど小学生でしたから、横田基地についてはいろいろな思いがあるわけでございます。

 特に、騒音問題を初め、朝鮮戦争などにおいては相当の飛行機の離発着があって騒音問題ということも大きな問題でありましたし、特に瑞穂町というところは騒音のすぐ下なものですから、どうしても早く基地を返還してほしいという要望等も強い地域でもありますし、それらのことを考えてみたり、先ほど大臣からもお話がありましたように、六十年という還暦の大きな節目の年でありますし、これからの日本の、日米のあり方においても、ことしは重要なスタートの時期である、そんな思いをしながら質問をさせていただきたいと思うんです。

 先ほども御質問がありましたように、日米安全保障協議委員会において合意をされたというような中で、共通事項などについて合意があった、あるいは、これから実質的な米軍との再編が進もうとしている中で、この戦略的な意義というものはどういうふうに理解をしたらいいでしょうか。まず、所見をお伺いさせていただきたいと思います。

町村国務大臣 米軍にとっての意義というのは、多分アメリカなりのまたいろいろな解釈があるだろうと思います。

 ただ、アメリカの中にあっては、とにかく安全保障環境というものが非常に世界的に変わってきた。冷戦が終了した、そして新しい脅威というものが、テロあるいは大量破壊兵器の拡散といったようなものが生まれてきた、そういう中で、軍事技術あるいは輸送技術といったようなものも急速に変化をしてきたといったような大きな変化が生じている中だろうと思います。

 したがって、いわば米ソ対決という中で、大規模な進攻があるという形ではない、そういう姿の中で、どうやったらば米軍が機動的に脅威に対応できるかという観点でいろいろ考え、初めて今回のいろいろなトランスフォーメーションという議論が出てきた、こう理解をしております。

 日本もまた同様でございまして、日本の場合は、東アジア地域には、北朝鮮半島を初めとするある種の伝統的ともいうべき脅威が依然として存在をする。しかし、新しい脅威もまた発生をしているという中で、日本の自衛隊も昨年末、防衛大綱というものを決めたということで、日本自身もまたある種のトランスフォーメーションをしなければならない。

 そういう意味で、この際、日米安保条約というものに基づき、あるいは安保条約に基づかないまでも、特別立法という形でイラク、アフガン等に協力をする、そういう幅広い分野の中で、日米がどうやったらば世界の平和と安定を維持するために努力できるだろうかということを考えながら今回の議論を始めた。

 そのまず第一段階として、共通のいわば戦略目標と申しましょうか、情勢認識をまずつくっておこうではないかということで、率直な議論を繰り返す中で、先般、二月十九日ですか、これをまず第一段階にして、この後次第に具体論に入っていこう、こう思っているわけでございます。

島田分科員 今、重要な戦略的意義というものについて御指摘があったのですが、これはこれから議論を深めていかなきゃならない重要課題だと思うのですけれども、九・一一以降、アメリカの世界的な戦略も相当変わってきたというふうに思われるんですね。

 そういう中で、例えばイラクにおける戦費も予想より増大をしているんではないだろうか。そして、言われるように、アメリカの場合は双子の赤字という形で、財政的に大きな、世界的な危機と言われないまでも、相当の課題と問題点があるような気がするんですけれども、そういう中で、この世界的な規模の中で、今度のトランスフォーメーションそのものも、世界的な大きな戦略の中の再編につながっているというふうに理解をしていくと、どうしてもそれらの戦費という問題がどういう方向になっていくんだろうか、それが日本にどんな影響を与えるかということについても、ある程度この再編の中でも考えていかなきゃならない重要な問題だと私は思っているんです。

 そういう中で、例えばこれらの再編が進むに従って、思いやり予算というものが、どちらかといえば再編によって幾分削減されていくんではないかというような考えもあるようにも思われるんです。これらの状況の中で、幾分言葉が悪いかもしれないけれども、財政的なものを含めて、日本がある程度、そういう面で安全保障という観点からも幾分肩がわりをしていかなきゃならないという側面があるような感じがするんですけれども、その辺、大臣はどんな所見をお持ちでしょうか。

町村国務大臣 私も、アメリカの財政事情、あるいは米軍の軍事予算がどのくらいのものになっているか、ちょっと今直ちに、正確には認識をしておりませんけれども、かつてレーガン時代に双子の赤字と言われ、その後アメリカもずっと、九〇年代、景気がよくなって財政は一たん黒字に転換をして、また昨今ちょっと赤字に転換をしているという大きな変動があるような気がいたします。

 そういう今財政状況は厳しい中でありますが、私の記憶が正しければ、米軍は、今大統領の提案をしている予算は、軍の予算を何%か伸ばしている、こう思っております。それはなぜかといえば、ほかの予算は削っても、やはり米軍の存在というものがいかに米国民の安心あるいは世界の平和に役立っているのかという認識の上に立って、むしろ米軍の軍事予算はふやすという方向に進んでいるというふうに理解をしているところでございます。

 したがって、財政が厳しい、戦費がかかる、何とかそれを減らすために、日本に肩がわりするために今回このトランスフォーメーションがあるんだという話は、一つの解説としてはあり得るのかもしれませんが、そうではなくて、軍事予算というのはある意味で結果として出てくるものであって、今彼らがやろうとしているのは、やはり、新しい脅威に対応するため、新しい安全保障状況の変化に対応するため、先生が今言われた九・一一以降のそうした国際的なテロ等に対応するための戦略を打ち立てるために、今回のこのトランスフォーメーションがあるんだというふうに私は理解をしております。

 日本がどういう負担をしていくのか。在日米軍駐留経費は、ここのところ確かに、これは日本の財政も厳しいということもあって、年々わずかには減ってきておりまして、例えば、平成十二年度には二千七百五十五億が、十六年度には二千四百四十一億まで下がって、三百億強減らしてきている。これは、いろいろな状況はありますけれども、一つには、やはり日本の財政もとても厳しいんだということもあってのことであろう、こう思います。

 したがいまして、米軍が苦しいから日本がその分をうんと負担をふやすんだという関係には立っていないということであろうかと思います。

島田分科員 それで、先ほども質問の中に出ておられましたけれども、私の選挙区などでは、やはり今度のトランスフォーメーションそのものがその地域全体には相当な影響を与えるという意味で、例えば瑞穂町というところは、どちらかといえば、騒音があれだから反対に近い、軍民共用についても反対だというような意見もありますし、進めていかなきゃならないという議論もあったりするわけですね。

 ですから、そういう状況の中で、アメリカとの間に交渉を進められる中で、そういう面の経過などについて、地方自治体で、軍事機密とかいろいろそういう問題点はあると思いますけれども、何らかのアクションをぜひ起こしていただきたいというような思いはあるんですけれども、その辺はどんなお考えでございますでしょうか。

町村国務大臣 この基地の問題、これは今委員の言われたように、地域の自治体にとって、住民にとって大変大きなさまざまな影響を与える問題でありますから、両国政府が合意したからもうそれで自動的にやりますといって、一方的に決められる性格のものではもとよりない、こう思っております。そういう意味で、きちんと御説明をしなければならないし、また理解を得る最大限の努力もしなければいけないと思います。

 ただ、現状を申し上げますと、これはよく沖縄の普天間の話も出されますが、現実、まだ個々の、この施設をどうするか、この基地をどうするかというところまで話が実は煮詰まっていないので、提供すべき情報がまだ十分できていないわけであります。したがいまして、ある程度議論が煮詰まったところできちんきちんと提供してまいりますし、また、それで決まりというのではなくて、それぞれの地域の御意見もいただきながら、また日米間で話し合いをして、その上で日米最終合意に至れりということが必要だろうと思います。

 先ほども御答弁で申し上げましたけれども、二月に渉外知事会という基地のある知事さん方がお見えになりまして、稲嶺沖縄県知事、あるいは、今会長が松沢神奈川県知事で、東京都の理事クラスの方もお見えになっておられました。その場でも、今後も適時適切に情報提供はいたしますということで、三月には外務省、防衛庁一緒になって、自治体の方々とその時点での進捗状況を一度お話ししよう、こう思っております。

 なお、横田の軍民共用化の問題については、これは二〇〇三年五月の小泉・ブッシュ両首脳の中でこの話が小泉総理から提起をされ、ブッシュ大統領もそれは真剣に受けとめようということになっているわけでありまして、これは関係省庁と東京都の間で連絡会というものができておりまして、これまで何度か意見交換をやっているところでございます。まだ、現実に横田をどうするという話が煮詰まっていない状況でございますけれども、こうした連絡会の場で東京都からいろいろな御要請もいただいております。今後、それらを米側に伝えるなどして、できるだけいい答えを導くように努力をしてまいりたいと考えているところであります。

島田分科員 今お話しのように、なかなかまだ、特に石原知事は、国は少し交渉が遅いのではないかなというようなことで盛んに発言をされているようでありますけれども、しかし、重要な問題でありますから、その都度関係市町村に積極的な情報を教えていただいて、住民との理解が深まる中で進むということもぜひ考えていただきたいと思うわけであります。

 それで、それとの関連の中で、この間、民主党の憲法調査会で、何人かの議員で横田基地の司令部を訪ねさせていただきました。その中で、軍事面と、それから軍民共用という場合に、なかなか軍民共用という問題について米軍の方としては難しさがあるのではないかというようなことを聞いてみたら、それはそのとおりだ、しかし、政治の問題としては、ブッシュ大統領との間に、日本との間の政治的なレベルの話し合いが進んでいるんだということも知りながらも、米軍としては、それは政治問題だ、だけれども、その辺の判断について、米軍としてはなかなか軍民共用というのは難しいというようなことを言っておられました。

 今度の基地再編の中で、空軍、自衛隊が幾分、管理業務なり全体の移管の中に入ってくるというような議論が進んでいるような報道があったんですけれども、その辺はどんな状況でございますでしょうか。

河相政府参考人 最近、幾つかの報道で先生御指摘のような基地の共同使用等々の報道がございますけれども、いずれにいたしましても、先ほど大臣からも御説明申し上げましたとおり、2プラス2の会合を踏まえて、これから個々具体的な話を米側と協議していこうという状況でございまして、具体的に何かそういう進捗状況が現在あるという状況にはまだないというのが事実でございます。

島田分科員 そういう状況で、具体的に今進んでいるということはなかなか言えないと思うんですけれども、自衛隊が、空自が入るということについての中で、議題として何らかの形で挙がっているのは挙がっているのでしょうか。

河相政府参考人 先ほども御説明したことの繰り返しになってまことに恐縮でございますけれども、個々具体的な話し合いについてはこれから日米間で進めていくという状況でございまして、現時点までのところでいろいろな議題として御指摘のような点が挙がっているという状況にはまだないのが現実でございます。

町村国務大臣 現状はそういうことなんですが、これは大野長官も累次述べておりますけれども、考え方として、米軍と自衛隊による共用という考え方はありますねという答弁は、答弁というか発言は、これまでもしておられるわけでありまして、共用化することの意義、メリットというのはそれなりに確かにあるんだろうと思います。

 したがって、一般論としての共用化という話は双方から出ておりますけれども、ただ、では具体に何が、どういうふうに進めるのかとか、どういうケースがあり得るのかというところまでの煮詰めた議論にはまだ一切至っていないというのが現在の状況ということであります。

島田分科員 そうしますと、一応議題の中には挙げられて、将来の方向性でしょうけれども、そういうことも一応議題の中で議論はされているということはそのとおりでしょうか。

町村国務大臣 一般論としてはあるということでございますが、まだあくまでも一般論のそのまた総論のような段階でとどまっておりまして、どういう問題があるのか、どういう方法が可能か、それを具体に、例えばどこそこの基地に当てはめた場合にはどうかといったようなところまでにはまだ全く至っていないのが現状でございます。

島田分科員 これは、まだこれから議論され、日本にとっても重要な戦略的な問題等も含まれておりますので、大臣は感想はどうだと聞かれてもなかなか答弁はできないかと思いますけれども、石原知事が相当積極的に、軍民共用、それから地域ではチャーター便を出して飛ばそうではないかというような運動も起きたり、地域の中では相当情報としては進んでいる。地元の国会議員として、その辺はどうしているんだということを聞かれますと、今は、重要な国家的な戦略であるし、自衛隊の問題とか、管理の移管、航空権の問題とか重要な問題が含まれているので、こうだということはなかなか言えないんだというようなことを言いながらも、しかし石原知事は何か国の対応がおくれているんだなんということをあちこちで発言されたりするものですから、どうしても、その辺について大臣としての現状における何か所見でもございますでしょうか。

町村国務大臣 石原知事を初め、東京都関係者あるいは地元の皆さん方からそういうお声があるということは私もよく承知をしております。私も知事に、直接、外務省はもっとしっかりやれというハッパをかけられたこともございます。

 たしか二〇〇三年の五月の日米首脳会談で出た話ですから、もう約二年近くたつということでございます。したがいまして、私どもものんびり議論に議論を重ねるつもりもございませんで、先般の合意でも、できるだけ早くまず案をつくって合意してみよう、その上で地元の皆さんにもよく御意見を聞いてみようということで、数カ月の議論は両当事者間で、両国政府でまず原案づくりに全力を挙げよう、それを加速化しようということになっております。

 したがって、全体が今そういう状況なものですから、島田委員にはまことに申しわけないのですが、横田がどうだ、こう聞かれても、横田はこうでございますというお答えをする状況には現状全くないということで、ただ私ども、事態のまとまりぐあいに応じて、自治体の皆さん、地元の議員の皆さん方にきちんと情報は提供し、御意見も求めていくというプロセスはしっかりと踏んでまいりたいと考えております。

島田分科員 今の大臣の御答弁を了として、今後、地域の中で、外務省を中心に、地域の関係機関と積極的な情報の交換をしていただくように心からお願いを申し上げたいと思います。

 そこで、少し将来の議論をする参考として、思いやり予算の今の推移状況をちょっと御説明願えますでしょうか。

土屋政府参考人 在日米軍の駐留経費の中身としましては、駐留軍従業員の労務費関係、それから提供施設の整備、光熱水料等の負担などがございますが、十七年度の予算案を含みましてここ五カ年間の当初予算額の推移を申し上げますと、平成十三年度におきましては二千五百七十三億円、平成十四年度は二千五百億円、平成十五年度は二千四百六十億円、平成十六年度は二千四百四十一億円、平成十七年度の予算案でお願いしておりますのは二千三百七十八億円という推移になっておりまして、補正後はこれと同額あるいは若干減少した金額となっております。

島田分科員 今後の議論の参考にさせていただきたいと思うんですけれども、最後に、大臣にお願いというよりも意見だけ述べさせていただきたいのです。

 実は、ことしEUと日本の市民交流年の年になっているわけですね。私も、国会議員になる前に生徒を連れて、高校生なんですけれども、オーストリアのウィーンに行って、前大使の橋本大使から、二年前に吹奏楽の演奏会に行ったものですから、ぜひまた交流に参加してほしいということで、ことしの三月九日以降に行くんですけれども、外務省の後援のための依頼のお願いやら、それからもう一つは市民交流年のロゴマークを使っていいとか、そういうことの申請をさせていただいているのですけれども、しかし、予算的なものを含めて実施団体が責任を持つんですよ、こういう、それは今の財政事情とかそういう面で無理からんことがあると思うんです。

 しかし、全体のEUの市民交流年が終わった後に、そういうものの何か交流の成果などについて、外務省として集約をしていただいたりしながら、何らかの、一番いいのは大臣から感謝状みたいなものをいただければ一番いいんでしょうけれども、それは国としてのいろいろな方向もあるのでしょうから、ぜひ、そういうお金の問題というよりも、お互いに交流されたいろいろな実例というものを促進する上でも、何らかの外務省としての意思表示なり感謝の意をあらわしていただければ幸いと思っていますので、その辺をお願いいたしまして質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

植竹主査 これにて島田久君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして外務省所管についての質疑は終了いたしました。

 午後一時に本分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

植竹主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 法務省所管について、政府から説明を聴取いたします。南野法務大臣。

南野国務大臣 平成十七年度法務省所管の予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 法務省は、治安、法秩序の維持確保及び国民の権利保全など国の基盤的業務を遂行し、適正、円滑な法務行政を推進するため、現下の厳しい財政事情のもとではありますが、所要の予算の確保に努めております。

 法務省所管の一般会計予算額は六千二百三億六千四百万円、登記特別会計予算額は千七百三十三億八千六百万円、うち、一般会計からの繰入額が七百十七億八千五百万円でありますので、その純計額は七千二百十九億六千五百万円となっており、前年度当初予算額と比較いたしますと、百十九億八千三百万円の増額となります。

 何とぞよろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。

 なお、時間の関係もございますので、お手元に配付してあります印刷物を、主査におかれましては、会議録に掲載されますようお願い申し上げます。

植竹主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま南野法務大臣から申し出がありましたとおり、法務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

植竹主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

植竹主査 以上をもちまして法務省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

植竹主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大谷信盛君。

大谷分科員 民主党・無所属クラブ、大谷信盛でございます。

 御丁寧に予算の御説明をいただきまして、ありがとうございます。せっかくでございますので、予算についてまず大臣に質問をさせていただきたいというふうに思います。

 本年の予算、去年に比べて百十一億四千万円でしたか、多いということでございましたけれども、去年に比べて、戦略的にここが大事だからここに配分したという分野があるんでしょうか。

南野国務大臣 特に行刑施設の問題が今喫緊の課題だとも思っております。そこら辺にも御配慮いただいた結果だろうと思っております。

大谷分科員 どうも予算というのは積み上げでいっているので硬直化しがちでございますが、しっかりと大臣のリーダーシップで、必要な部分に必要なものを達成できるだけの財源をつけていくというような、めり張りをつけていただきたいというふうに思っております。

 あと、残り二つの問題について質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 一つは、子供が親に、父と母に愛されているんだということをしっかりと知ってもらえる、そんな社会をつくりたいという観点から質問をさせていただく。そしてもう一つは、不法滞在の外国人がふえていく中、外国人による犯罪というものもふえてきている。そこの入り口も大切だけれども、入ってこられた方がしっかりと日本を好きになって、日本に友達をつくって、そして帰っていく、そしてまた友達に会いに来るという健全な出入国行政ができるようにするためにどのような取り組みをなされているのか。この二つについて残りの時間は議論をさせていただきたいというふうに思います。

 まずもって、我々全体が全体認識をしなければいけませんので、この国で今離婚が増加をしている、その増加している離婚、どんなふうに増加をしてきているのか、具体的な数値。その中で、お父さんとお母さんがおられて、親権というものがありますけれども、これはどっちにどれぐらいいっているのかというような最初の一般的な数字を、まずちょっと認識しているところから教えていただきたいというふうに思います。

 最初は大臣からお願いします。

南野国務大臣 先生から、本当に今一番大切な問題点についてお尋ねがございました。

 詳しい数字というものについては担当からお答えさせていただきます。

寺田政府参考人 私ども、離婚の数字を全体として把握することはちょっと難しいものでございますから、持ってございません。

 ただ、一般的な話でございますけれども、離婚が非常にふえてきておりまして、かつ、離婚した夫婦の間の子供の養育あるいは面接をめぐってトラブルがふえつつあるということは、十分認識をいたしております。

大谷分科員 大臣、数字を知らないんですか。

寺田政府参考人 申しわけございませんが、これは厚生労働省の管轄でございますので、私どもとしては責任を持った数字は承知しておりません。

大谷分科員 厚生労働省の数字によると、一千人に二・三人が離婚経験者だというような数字がありますが、かなりの割合で今増加をしてきている。

 そんな中、聞いてもなかなか出てこないんですけれども、ある民間の団体の推計によると、約三十万人ぐらいの子供が離婚に巻き込まれている。うち、両方の親に会えているのは半分いたらいいところだろう。すなわち、十五万人ぐらいの子供が、引き取られて、お母さんに引き取られたらお父さんに会えない、お父さんに引き取られたらお母さんに会えないという状態があるんですよ。

 これはどう考えても絶対に、お父さんとお母さん、幼稚園や小学生という幼少期には特に、両方の親に愛されているんだ、両方の親に会って、いい意味の影響を受けて育っていくべきだというふうに私は考える。それがもし日本でこの十五万人の子供たちにできていないとするならば、絶対に直していかなければいけない。それが厚生労働省なのか、法務省なのか、外務省なのか、そんなことはどうでもいいんですよ。我が国の政府がやらなきゃいけないんですよ。

 これについては、法務大臣はどのようにお考えですか。

南野国務大臣 そういう案件につきましては、本当に大切なことであり、子供の心をつくっていくということにおいては、親としてのあり方というものが大切になってくるだろうというふうにも思っております。

 御両親が離婚されました後も、子供が両親双方と面談しながら、双方から愛情を受けることは、子供のこれからの福祉についても大切なことであろうというふうに思っております。

大谷分科員 では、どうして十五万人の子供たちが親に会えなくなってしまうのかという分析をされておられるんでしょうか。

南野国務大臣 それにはいろいろな理由があるだろうと思っておりますので、詳しくは御説明させていただきたいと思っております。

寺田政府参考人 これも私ども余り科学的に分析する立場にございませんけれども、私どもが伺っている紛争例で申しますと、やはり離婚ということが必ずしも通常の状態でないという認識から、両親が離婚後の親について必ずしも共通の認識を持っていない、その辺が問題だろうというふうに考えております。

大谷分科員 まあ、そうとも言えますよね。

 二つ三つ指摘させていただいて、同様に二つ三つ提案をさせていただきたいんですけれども、一つは、これがいい悪いという問題じゃないんですよ、統計によると、やはり八割、お母さんの方に親権がつきます。二割、父親の方についているという団体の統計の発表がございます。

 これはなぜかというと、母性優位というのが、家庭裁判所、我が国の民法、裁判所というところで優先されていますから、お母さんにつくだろう。それからもう一つは、現状維持という考え方があって、では今、現時点で離婚をしようとしたときに、どちらと一緒に暮らしていますか、別居したとき、どちらと暮らしていますかというと、お母さんと住んでいることが多いんです。

 また反対に、こういうことがあるんですよ。離婚をしようと思っている、弁護士さんに相談をする、それで裁判になって親権を争う、その前に子供を先にとっておきなさいなんて御指導をする方もおられたりするわけなんですよ。

 何か子供というものが、一つの、離婚の中で犠牲者になっているんです。僕は、ここの部分を何か新しい概念で変えていかない限り、子供たちがどんどんどんどん犠牲になっていってしまうというふうに思っているんですけれども、そんな役目は法務省にありますよね、大臣。

寺田政府参考人 おっしゃるとおり、政府といたしましては、子供の立場というのは、その両親が普通の結婚をしている場合、あるいはそうでない場合を通して重要だというふうに考えておりますので、それについては、やはり子供を言ってみれば取り合うというような事態を避けるということは非常に重要なことだというふうに考えております。

 最近では、離婚が非常にふえてきたことの副産物でもありますけれども、離婚が一般化するにつれまして、離婚に伴って子供の養育あるいは面接についてどういうふうにするかということの取り決めをする基盤が大分できてまいりました。したがいまして、そういう奪い合うということではなくて、取り決めという合意ベースでやっていただくのが適当だろうというふうに考えておりまして、私どもも、民法を所管している立場から、それにできるだけプラスになるような考え方をとってまいりたいというふうには考えております。

大谷分科員 特にお父さんの方に親権がなくて、それで、お父さんの方というのはこれまで、どこにそんな統計があるんだと言われたら、僕もまだ主観、また専門にそういうことを仕事にされているある方の主観なんですけれども、お父さん、男性の方は離婚すると再婚率が非常に高いんです。新しい家庭をお築きになられるんです。だから、前の自分の子供にそんなに、会いたい気持ちはあったとしても、会おうという行動はされなかった。

 しかしながら、今は大分我々の文化というか価値観みたいなものが変わってきまして、新しい家庭を持ったとしても、会いたいんですよね。なぜならば、子供たちのことを考えたら、おれが捨てたんじゃない、おれがしっかりとまだ愛しているんだよということを伝えたいわけですよね。そういう権利をしっかりと認めていけていないんだったら、認めていかなきゃいけないと思うんです。

 こういう場合、面接交渉権というのがありまして、離婚するときにやるのか、離婚してからまた裁判所を通じてやるのか。局長おっしゃったように、先に当事者同士でできたらいいんですけれども、異常な事態での決別になっていますから、これは裁判所、人を介してみたいなことになるんですけれども、面接交渉権で、例えば月に何回とか年間何回、何時間みたいに決められます。それで会えるものだと思うと、会えなかったりするわけなんですよ。交渉権で権利をいただいたんですけれども、だめだと親権を持っている側が言うと会えないわけなんですよ。

 なぜだめなんだというと、いやいや、お父さんに会うと、お母さんに会うと、親権を持っている側のお子さんが精神的にプレッシャーを感じるとか非常に苦しむとか精神病になってしまうとかということで、待ってくださいとかだめですとかということを理由にして会えなくなっているんです。裁判所で決めてくれたんだけれども会えないんですけれどもと裁判所にまた言いに行きますよね。そうしたら、また、ではやりましょうということで面接交渉権というのが出てくるんです。それでこれをまたやるわけですよ。

 要するに、罰則がないし、実効が伴っていないんですよ。この辺は実効が伴うように何か変えていかなきゃいけないと思うんですけれども、そんなお気持ち、概念、そんな努力をしているようなところはございますでしょうか。

寺田政府参考人 おっしゃるように、この問題は、争いになれば、まず家事調停がございまして、さらに家事審判というような形で解決されるのが一般でございます。ただし、この家事調停あるいは家事審判で決まりましたことを、まさに御指摘のとおり強制的に履行するという道がないわけです。

 この問題は、本質的にはやはり裁判所で強制するというよりは当事者の共通の認識の上に立って行われないとスムーズにいかないということから、これまでは極力強制ということは避けてきているのが実情ではございますけれども、しかし、おっしゃるとおり、強制の道が全くないというのではやはり問題はあろうかという認識は持っております。

 家事審判の世界で申し上げますと、履行勧告という制度がございまして、裁判所の方から、決まったことはきっちりおやりになったらどうですかという勧告をまず差し上げます。それでもだめな場合どうするかというと、法律的には強制執行ができないわけではございませんで、ただ、直接手を下すということが国家権力の側からはできませんので、間接強制といいまして、その約束を守らなければお金を払う、そういうことになりますよということをもって間接的に強制するという道が残されているわけでございます。

 ただ、これも非常に難しいのは、当事者の方であらかじめこの間接強制にふさわしいような内容の取り決めなりなんなりを前提にして審判をなさるあるいは調停をなさるということになりませんと、具体的に、ただ単に、月に例えば一回会うというような程度の取り決めでは強制ができないという問題がございます。

 ただ、この問題も、次第にこういう認識が深まってくるにつれまして、約束そのもの、取り決めそのもの、あるいは審判そのものも具体的に詳しくなる傾向にございますので、私ども、そういうことを見守ってまいりたいというふうに考えております。

大谷分科員 民法の中に面接交渉権というのをしっかりと書き込んで、そういうものがあるんだよと、裁判で争ったときに、権利ですよというだけじゃなくて、しっかりと法律となって書き込まれているみたいなことは考えられませんか。

寺田政府参考人 戦後も何回か身分法と言われます民法の中の身分編について検討したことがございます。この面接交渉権につきましても、離婚後の子供の養育、面接の広いいろいろな法律問題の一環として検討された経緯はございますが、必ずしも具体的な権利として書き込むのが適当かどうかといういろいろな議論がございまして、現在のところストレートにそのことが示されているわけではございませんが、しかし観念的にはこの権利というものはあるという認識で民法が解釈されている、そういう状況にございます。

大谷分科員 時間がないので、次にもう一つ提案させてもらいます。

 共同親権、要するに結婚中は共同親権ですよね、お父さんにもお母さんにも親権がありますよね。親が別れようとも、子供にとっては親はその二人なんですから、これはやはり親子のつながりがあるんですから、これは離婚しても共同親権ということで新しい概念をつくっていくようなことを提案されている有識者がおられて、私は、ああ、なるほどな、それであったら面接交渉権だの云々かんぬんだのというような、けんかではなくて、しっかりと、会う権利も含めて、育てる義務も含めて持てるというふうに思ったんですけれども、この点についてはどのようにお考えですか。

 すべて子供に、お父さん、お母さんから愛されているんだよということを達成するという観点から答えてくださいね。法の解釈論とか法律でこうなっていますという話をしているんじゃないですから。

寺田政府参考人 おっしゃる共同での親権、共同での監護というようなことは、アメリカでも認められている制度でございまして、決してあり得ない制度ではございません。また、委員御指摘のように、本来であれば離婚後も両親が子供をそれぞれ見守っているという姿勢を示すという意味でも、一つのあり得る考え方だろうというふうには思われます。

 ただ、日本の現状を考えますと、先ほど、いろいろなトラブルがなお絶えないわけでございますけれども、離婚後も両親が、まあ離婚というのも一つの人間関係だと割り切って、その中で子供を双方でうまく守ってやれるという土壌があるかどうかというのが一つの大きな決め手になるわけでございまして、それがないまま、ただ共同親権、共同監護ということになりますと、結局は取り合いということを離婚後も持ち越してしまうというようなことになりかねないわけでございます。

 したがいまして、簡単にその制度を導入するかどうかということは問題でございますが、しかし委員の御指摘のように、これはやはり共同のある種の枠組みの中で物事を解決していくという、考え方自体は非常に重要な考え方だと思いますので、私どもも、今後もこの研究は怠りなくさせていただきたいというふうに考えております。

大谷分科員 この提案だけが、子供たちが親から、父母から愛されているということを知るための唯一の提案だとは私も思っていません。大事なことは、こんなものも含めて、何とか子供たちが離婚後親に会えないというようなことがないようなものを民法の中に織り込んでいく、そんな意識をまずしっかりと持っていただいた上で、御努力を続けていただきたい。

 この問題はずっとこれからも続けていこうというふうに思っていますので、どうぞ長いおつき合いをしていただきたいというふうに思っています。

 大臣、夫婦がいて、女性が不貞をされてそれが発覚して、それで離婚だ云々かんぬんだという話になりかけて、次の日の朝は、その女性が自分のおつき合いしている男性のところのアパートに子供を連れていく、その足で弁護士さんに駆け込む。子供は確保していますか、子供は確保しています、ではすぐやりましょうと。親権はこっちにつきます。だんなさん、男の人の方は何もしていないですよね。養育費を払っている。子供が会いたいと言ったら、これは今の日本の社会では会えないんですよ。絶対に異常だというふうに僕は思います。

 それは大人ですから、いろいろなことが人生にあるんだというふうに思います。しかしながら、子供は小学生低学年、これは、家庭裁判所で争っているうちに二年、三年、四年たっていくわけなんですよ。その間、やはり親がもめているということは見ますし、親権をとった方の親は、もしかしたら、あの人はもう他人なんだよ、あの人は君のお父さんやお母さんじゃないんだよというようなことで、捨てられたのかなと思ってしまうことも多々あるというふうに思うんですよね。

 こういうものを、大臣であるならば変えていくという、責務はもちろんですけれども、リーダーシップと意識さえあればできるので、ぜひとも最後に覚悟だけお聞かせいただきたいというふうに思っています。

南野国務大臣 私個人の考え方といたしましては、やはり両親に、人と人とどうつき合っていくか、その中に、どう子供を産み、その子供とどうつき合っていくか、いわゆる家族のあり方ということについては、法に依存する前にもっと解決するものがあるのではないかなと思っております。

 お互い人間的にどうしていくのか、両親の仲たがいというのは、特にDV法の観点からするならば、それは子供にとって一つの虐待であるということにもつながってまいります。

 そういう意味では、両親は他人同士であるかもわかりませんが、一つ大きなそこの結合体が、きずなというものがあると思いますので、その心があれば子供は後ろ姿をちゃんと見てくれるのではないか、法律がこうなっているからおまえこっちに来いこっちに来いということの前に、私は、人間的な何かがあっていいのじゃないかなと。それは、その方が持っておられる仲間からのいろいろな助け合いもあるのかもわかりません、話し合いがあるのかもわかりません。そういうことをやっていくことが真の友情であり、夫婦のきずなを強めることであり、親子のきずなを強めることになるんじゃないかなと思っております。

 私も助産婦の仕事をしておりました、看護婦の仕事をしておりました。そういう中にはバラエティーに富んだ家族がございました。その中から、これからもまた、その課題についてはしっかり学んでいこうと思っております。

大谷分科員 いや、もう学ばないでも十分人生経験豊かだし、知っていると思いますので、ぜひリーダーシップを発揮してくださいませ。

 最後に、残った時間で、不法滞在の外国人に対する我が国の対応、対策というものを少し御説明いただき、議論をしてみたいというふうに思っています。

 かなりふえてきた。表に出ている数字プラスアルファだからわからない、見えていないからわからないといろいろ言われますけれども、どう把握していて、どんな対応を今やっているのか、教えていただけますでしょうか。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘の不法滞在者でございますが、平成十六年一月現在、約二十五万人の不法滞在者がいると推定されております。そのうち二十二万人はいわゆる不法残留、オーバーステイの方でありまして、残りの約三万人が不法入国、密入国等で入ってきた人ではないか、こういうふうに考えられておるわけでございます。平成五年当時は、これが三十万人近くおったわけでありますが、順次減ってはおりますが、相変わらず高水準で推移しているという状況にございます。

 これらの不法滞在者につきましては、刑事犯罪等に走る人もかなりあるわけでございまして、治安上も非常に問題であるということから、政府といたしましては、平成十六年を初年といたしまして、五年間でこの不法滞在者二十五万人を半減させるという計画を立てておりまして、私ども入国管理局におきましては、この達成に向けて鋭意努力をいたしておるところでございます。

 いろいろな方策がございますけれども、まず不法滞在をすることとなるような人に日本に来てもらわないことが一番肝心だろうと思うのでありますが、万が一日本に来てしまった後には、これは的確に帰っていただく、こういうことを対策の基本にしております。

 入ってくるところをどういうふうに阻止するかということでございますが、これは入国に際する水際阻止ということで対策をとっておるわけでございますけれども、本来の目的と異なりまして、観光客を装って入国するというような方もございます。こういう方につきましては、上陸審査を厳格にいたしますとともに、偽変造文書、偽造旅券等を使って入るケースも多いものでございますので、こういった鑑識の強化に努めているところでございます。

 また、これまでの統計から、こういうところの地域の人は不法滞在になる可能性が高いというような統計的なものもございますし、個々の外国人につきまして、過去の日本における在留状況でございますとか各種の情報につきまして、入国管理局におきましてこれを集約してございまして、いわゆるブラックリストを持っておりますので、こういうものと入国審査の際に対照いたしまして、問題のあるものについてはそこでチェックをするというようなことをしておるところでございます。

 最終的には、疑いがあるものについては本人からよく事情を聞き、入国目的が問題であるということになりますと上陸を拒否するというような形で対処しているところでございます。

大谷分科員 御努力されているのはわかりました。これは急速にふえているわけですから、その急速にふえているものを、現時点の、今の持っている手段で抑え切れないというふうに思うんですけれども、何か新しい取り組みとか考えておられますか。

三浦政府参考人 先ほど入国の際の審査のことを御説明申し上げたわけでございますが、現に日本に不法滞在している方につきましても、速やかに帰っていただくということが一方で大事だというふうに思っております。

 この関係で御説明させていただきますと、平成十六年、本年度でございますが、東京入国管理局の管内に摘発方面隊というものを設置いたしまして、不法滞在者の摘発を専門にする職員を多数配置いたしました。これによりまして、相当多くが挙がっているものと考えております。また、このほかに、近く名古屋にもそういうものを設置していきたいというふうに考えておるところでございます。

 また、昨年の通常国会で成立させていただきました改正入管法の中に出国命令制度というものがございまして、これは、不法残留をしている方でありましても、自主的に出頭しますと、簡易な手続で帰国をしていただきまして、普通でありますと五年間は日本に入国が認められませんが、そういう手続をとった方は一年が過ぎれば日本に再入国ができるというような制度もつくりました。

 また、在留資格について、偽って在留資格を取った者についてはこれを取り消すというような制度もつくっていただきましたので、これらを有効に活用いたしまして、不法滞在者の半減に向けて努力を図ってまいりたいと思います。

 今御説明したような取り組みをいたしまして、昨年一年間で不法滞在者につきまして退去強制手続をとった者の数でございますが、これが約五万五千人に上っております。その一年前が四万五千人でございましたので、一万人の増ということで、相当の成果を上げているものと考えておるところでございます。

大谷分科員 その摘発方面隊、ぜひ、各地主要都市につくっていただきたいというふうに思いますし、まずもっては新設される部隊がしっかりと成果を上げることが大事だというふうに思いますので、ここは頑張っていただきたいというふうに思います。

 ただ、そのときに、一つ二つだけ御要望、御注意をさせていただきたいというふうに思います。人権は守ってくださいよね、人権は。外国人だってちゃんとした人間なんですから、そこのところを踏まえた上で、お帰りいただくべき人にはお帰りをいただかなければなりませんが、やはり帰ってからひどい国だったよと言われることだけはないようにしていただきたい。居心地がよくて残っている人には特にそうしてあげたいというふうに私は思っています。

 しかし、犯罪、犯罪にかかわる人、ここには思いっ切り厳しくやっていただきたいというふうに思っています。その施策については、次の機会を得てまた議論をさせていただきたいというふうに思っております。

 質問を以上で終わります。ありがとうございました。

植竹主査 これにて大谷信盛君の質疑は終了いたしました。

 次に、稲見哲男君。

稲見分科員 民主党の稲見哲男でございます。大臣、初めまして。よろしくお願いします。

 難民認定についてお尋ねをいたします。

 一月の十八日に、国連難民高等弁務官事務所、UNHCRが難民として認定をしましたトルコ国籍のクルド人父子二人が本国に退去強制される、こういうことが起こりました。驚くべき事態だというふうに思っておりますし、国内でも大きく報道されましたけれども、私自身が外国メディア二社からこれにかかわってのインタビュー取材を受けた、こういうことでございます。

 日本の難民認定政策について、外国は驚きの目をもって注目をしている。私は、この問題におきましてむしろ日本の国益は大きく損なわれた、こういうふうに考えております。難民鎖国、人権後進国、こういうような批判を世界から受けているのではないか、こういうふうに感じているところでございます。

 二十三日に、法務委員会におきまして同僚の松野信夫議員がこのことについて質問をしているわけですが、この速記録も含めまして、もう一度御質問をさせていただきます。

 また、きょうは分科会ということですが、この後二時からの今野東議員、それに二時半からの藤田一枝議員、それぞれ民主党の外国人の人権プロジェクトの役員をしておりまして、そういう意味では、リレーをしながら質問をさせていただきたいと思います。

 先ほど委員部を通じまして、この本ですが、「私たち どうして人間じゃないの? 怒りと慟哭」、こういうブックレットを南野大臣にお渡しをいたしております。これはなぜ発行されたか、当然御存じでないと思いますので、少しお伝えをしたいと思います。

 当然、中を少し見ていただければわかりますが、日本政府や法務省の冷たい対応、これを日本国民にも知ってもらいたい、難民政策の誤りを正してもらいたいということが第一義の理由ではあるわけですけれども、この退去強制されました二人の父子のほかに、マンデート難民として認定されている五人の家族の方がおられます。この方々は、今こういう状況になって、あえて特定は避けますけれども、ある国へ、第三国へ出国をするという準備をされておりまして、その折衝が続いております。

 その中で、その国では難民を受け入れるについて一定の保証金というのが必要だということで、五人分で二万ドルというお金を、これまで七人の家族を支えてきた、そこにございます雨宮先生初め皆さんが、この本を売ってカンパを募ろう、こういうふうなことで発行されておるということもお伝えをしたいと思います。一冊七百円ということで、私も購入したのですが、百四十万円を集めようと思いますとどれだけ売らなければならないか、こういうふうなことでございます。御参考にお願いをしたいと思います。

 それで、具体的な質問ですが、このマンデート難民につきまして、法務省には、マンデート難民の数、うち日本政府、法務省によって難民として認定をされた数、これをお教えいただきたいと思います。外務省には、先進国あるいは難民条約の締約国でマンデート難民がUNHCRによって認定をされている国があるのかどうか、その数なり人数なりをまず教えていただきたいと思います。

南野国務大臣 お答え申し上げます。

 まず、これまでにUNHCRから通報がありましたマンデート難民認定者の数、これは七十四ケースで九十二名でございます。また、そのうち法務省が難民と認定した方は七名でありますが、難民と認定されなかったものの、人道的な理由から特に在留を認めた者が三十名となっております。

逢沢副大臣 御指摘の点でございますが、結論から申し上げますと、UNHCRによりますマンデート難民認定の判断といわゆる難民条約に基づく各国政府による難民認定の判断が異なるケースはあり得るということであります。先進国を含む幾つかの国でそのようなケースがあるというふうに申し上げておきたいと思います。

 では、一体どういう国が、自国の難民条約に基づく難民認定の判断とHCRによるマンデート難民認定の判断が違うのはどこの国であるかということのお尋ねかというふうに思うわけでありますが、各国それぞれの法令を持ち、また施行をなさっておられます。さまざまな関係国や関係機関との関係もございまして、大変恐縮でありますけれども、個別具体的な国名を挙げることは、この場では差し控えておきたいというふうに思います。御理解をいただきたいと思います。

稲見分科員 逢沢副大臣から差し控えるということだったんですが、私は、いろいろなところにお聞きをしても、やはり先進国で、しかも条約締結国で独自にUNHCRがマンデート難民を認定しているケースはない、こういうふうにお聞きをしているわけです。

 あるとするならば、なぜ個別に回答できないのかということはお聞きをしたいと思いますが、要するに、UNHCRは、これはUNHCR自身もそうですし、そこが委託をしたいろいろなNPOが相談に応じる、いろいろな事情を調べるということの結果、保護を必要とする人々について、この人は必要ですよということで日本政府に助言を与えた、こういう方たちがまず固まりとしてあります。そのうち、日本政府が認定をしていただければそれでいいわけですが、認定をしなかった場合にマンデートしているということなわけです。

 確かに、認定権というのは締約国にありますから、政府の決定を待つ。その間に、政府の手続中の方については、サーティフィケート・オブ・レジストレーションということで証明書を渡しておる。しかし、どうしても認められなかった、これは国外退去の危険もあるというふうなときには、そこで初めてUNは、アテステーションという国連としての難民認定を行う、こういう順番になっています。

 つまりは、国連が難民条約の調整をしたり、あるいは国際的な認定基準を一致させたりしていくという努力を国連みずからやっている中で、日本の難民認定基準が余りにもそことかけ離れているということは、これ自体が、先ほど申し上げたように、世界から非難をされる、日本の恥だというふうに考えているわけですけれども、その点、どうお考えでしょうか。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 難民の認定につきましては、難民認定の申請者の方が難民条約の適用を受ける難民に該当するかどうかということを、提出されました証拠や各種資料に基づいて確定するわけでございます。我が国は、これまでも慎重かつ誠実に判断をいたしまして難民認定申請を処理してきたところでございます。認定基準が厳し過ぎるということはないというふうに認識しております。

 委員御指摘のUNHCRの難民認定基準でございますけれども、これにつきましては、もちろん参考資料といたしまして十分活用させていただいておるところでございます。難民調査官に対する研修等におきましても、UNHCRの日本事務所の首席法務官に講師をお願いして講義をしていただいているところでございます。

稲見分科員 何か打ち合わせが悪くて、次の質問に対する答えをもらったような気がするんですが。

 ここに難民認定基準ハンドブックというのがあるわけですが、この位置づけなんですけれども、「日本語版への序」というところに「本書(通称「ハンドブック」)は一九五一年に採択された「難民条約」の統一的な解釈を推し進めるために、UNHCR執行委員会構成国の委託によってUNHCRが作成したものです。この「ハンドブック」は各国の難民認定手続きにおいて条約を解釈する際の国際基準として用いられているだけでなく、裁判所においても解釈の拠り所として扱われています。」というのが、日本・韓国地域代表の「日本語版への序」になっているわけです。

 恐らくこれは、法務省でも難民認定のいろいろな手続に利用され、熟読されているというふうに思うわけでありますけれども、法務省、外務省で、このブックレット、ハンドブックが公式にどういう位置づけになっているのか。これまでいろいろ議論をしてきましたら、国際的な難民認定基準というものはないんだというふうなお答えがあるわけですが、まさに今、「日本語版への序」を読みましたように、これをどう各国で共通のものにしていくのかというそれぞれの努力が行われているのではないかというふうに思っております。

 そういう意味では、この共通の認識や認定に当たっての取り扱いなど、どのような努力を日本は行っているのか、各国はどのような努力を行ってそういう統一基準をつくっていっているのか、あるいは法務省の難民認定審査官の研修などを含めて、これまでの努力を両省にお聞きをしたいと思います。

神余政府参考人 委員から御指摘のありました難民認定ハンドブックでございますけれども、これは、外務省としても条約解釈の際に尊重し解釈をしております。

 他方、もう一つの御質問ですけれども、国際的な難民認定基準に関する各国の動向、あるいは国際的な議論はどうなっているのかということでございますけれども、私どもで承知しておりますのは、欧州委員会においては難民の定義に関する共通の基準の策定について議論が行われているものと承知しておりますが、国際的に確立した難民認定基準というものは存在しないというふうに承知をしております。

 外務省としては、主要先進国の難民認定制度についての調査を行い、またUNHCRを中心として行われている難民問題に関する国際会議に積極的に参加しておりますほか、これらの結果について、関係の府省、省庁とも情報を共有しております。また、法務省においても、現在、難民審査参与員制度の導入を準備中というふうにも聞いておりまして、政府として適切に難民認定を行うための種々の努力を行っているところでございます。

三浦政府参考人 法務省の実情を御説明申し上げます。

 先ほども申し上げたところでございますが、執務の参考資料として活用させていただいているわけでございますし、また研修の教材としても使っておるところでございます。このハンドブックにつきましては、難民条約の一般的な解釈及び難民認定手続の指針を示したものというふうに理解しております。

 ただ、司法判断などを見ますと、これ自体が、各国政府に指針を与えることを目的とするものではあるけれども、必ずしも法的拘束力がそれにあるものでもない、こういう判断なども出ておるということも承知しております。

稲見分科員 次の質問に移ります。後ほどちょっとまたコメントさせていただきます。

 昨日、日本における出身国別難民申請者数と認定者数の資料を求めて、いただきました。難民条約締結以降、申請者数は三千五百四十四人、認定者は三百十三人、こういうふうなことであります。二十三日に松野議員も指摘をしておりますけれども、日本の場合、けた違いに少ないということではないかというふうに思います。

 このブックレットも、十五ページに日本の難民認定数と諸外国、G7の分が一覧表に載っておりまして、例えばカナダであれば申請が三万一千九百三十七人、そして認定が一万七千六百八十二人、アメリカは十万七千五百十四人で認定が二万四千三十六人、フランスが十万六千百九十四人で認定が一万三千百六十七人、イギリスで九万四千八百六十九人、認定一万九千七百十一人、ドイツ六万七千八百四十八人、三千百三十六人、こういうふうな数字になってございます。

 それで、このきのうもらった資料の中で、「平成十六年における難民認定者数等について」という広報資料を見ております。その中の五ページ、六ページに難民認定の過去五年間における主な国別の認定者数、こういうものがあるわけですが、そこでは、認定のところにトルコ人が全く上ってきていない。不認定のところでは、トルコの方がたくさん認定申請をしておりますので、一番で六百十四人申請をされておりますので、不認定というのは毎年載ってきておるというふうなことで、トルコの方に大変厳しい内容になっております。

 先ほど言ったのは難民の認定の全体の数。他の資料では、トルコ人に限定をしますと、フランスが七千百九十二人に対して認定が四百八十九人、ドイツが六千三百一人に対して九百七十九人、こういうふうな非常に大きな数字になっております。

 トルコ人の難民認定が認められたケースがこれまであるのかどうか、その点、お聞きをしたいと思います。

三浦政府参考人 昭和五十七年から昨年の十二月までで、委員御指摘のとおり、トルコの方は六百十四名の方が難民認定の申請をしておりますが、認定をされた方はおりません。

稲見分科員 トルコの方だけではなしに、先ほど申し上げたように、問題は国際的な難民認定基準に日本が到達をしていない、こういうことにやはり尽きるわけです。法務省の人権感覚の欠如といいますか、厳し過ぎる難民認定といいますか、あるいはUNHCRとの認定に対する基準の認識の違い、こういうものをこれまで放置してきたことが根本的な原因ではないか、基準の落差を埋められないままここまで来てしまったということではないかというふうに思っております。

 この問題を契機に、外務省、法務省、UNHCRの三者の協議をかなりの頻度で行うというふうなお話をお聞きしましたし、あらゆる課題についてここで話し合うというふうなことを担当者から聞いたわけでありますが、むしろ、今申し上げたような観点からいうと、低きに合わせるというふうな形でUNHCRと議論をするということにはならない。発想を変えて、UNHCRの基準を十分尊重するような協議、こういうものを強く求めておきたい、こういうふうに思うわけでございます。

 さて、次の質問ですが、難民条約の三十五条に「締約国の機関と国際連合との協力」というものがございます。「国際連合難民高等弁務官事務所又はこれを承継する国際連合の他の機関の任務の遂行に際し、これらの機関と協力することを約束するものとし、特に、これらの機関のこの条約の適用を監督する責務の遂行に際し、これらの機関に便宜を与える。」こういうふうなことに三十五条がなっております。

 そういう意味では、このマンデート難民を退去強制したこと、つまりは、何とかぎりぎりのところで人権を守ろうとしたUNHCRの難民を一方的に退去強制をしてしまったということは、明確にこの三十五条違反というふうに言わざるを得ない。UNHCRに対する活動協力、連携、こういうものについて、改めて外務省、法務省の方にお聞きをしたいと思います。

逢沢副大臣 先生御指摘のとおり、難民条約第三十五条の1につきましては、まさに今御指摘のようなことが明確にされているわけでございます。つまり、UNHCRの任務の遂行に際しては、締約国がUNHCRと協力することを約束するものとし、特に、UNHCRのこの条約の適用を監督する責務の遂行に際して、便宜を与えるということが定められております。

 当然、締約国として我が国はこの規定を重く受けとめているわけでございまして、UNHCRが一般的に同条約の適用を監督する責務を遂行できるように、難民認定申請事案に関する例えば情報の提供でありますとか、あるいはUNHCRとの連絡や協議、また、HCRが我が国で自由に活動することの容認、必要とされる種々の便宜を当然のことながら図っておりますし、また、これからもそのことに意を用いていかなくてはならないと思います。

 先生御指摘のように、今までも政府内で、国内の難民政策のあり方については外務省、法務省を中心に協議を行ってまいりましたが、御指摘の事案を踏まえ、法務省、外務省、そしてUNHCRがより一層緊密に協議を行いまして、この三十五条の1が十二分に日本で担保されているという状況を確保してまいりたい、意を用いてまいりたいと考えております。どうぞよろしくお願いをいたします。

南野国務大臣 法務省としてお答え申し上げますが、当省といたしましては、当省とUNHCRは、難民の保護という共通の目的のもとに連携を図っております。例えば、UNHCRから難民認定申請者に係る出身国情報等について参考情報の提供がありました場合には、当省は、当該情報を参考にしながら、難民該当性等の判断を行うことといたしております。

 なお、先生御指摘のように、先ほども申されましたように、現在、UNHCR、外務省、そして当省との三者でマンデート難民の取り扱いに関する協議を行っているところでございますが、今後ともしっかりと協力してまいりたいと思っております。

稲見分科員 十分に協議をしていただきたいと思うのです。そのために、今回退去強制された方の点について、やはり認識の違いというのを少し明らかにしたいと思うわけです。

 二十三日の松野議員の質問で、いわゆる後発難民という位置づけについて御質問をしておりますが、この点について、改めて法務省の方から御見解をいただきたいと思います。

南野国務大臣 我が国におきましては、従来より、国際的な取り決めであります難民条約、これにのっとりまして、個別に審査の上、難民と認定すべきは難民と認定してまいりました。委員お尋ねのいわゆる後発難民につきましても同様でございまして、本邦におられます間に難民となる事由が生じた者を含めまして、難民条約に該当する方であればこれは難民として認定し、保護をすることとなっております。

稲見分科員 当該のケースは、九六年に二度目の来日をされております。そして、難民申請をして、九八年に不認定、二〇〇〇年に異議申し立ても却下をされて東京地裁に提訴、こういうふうな経過がございます。

 そのときに、これまでも法務省の説明では、トルコで実際に来日前に迫害を受けたというふうな供述が高裁によってうそだったということが明らかになったということで、まさにその判決をもって難民でない、こういうふうに退去強制が実際に行われたわけです。

 しかし、問題は、今、後発難民ということからいいますと、九六年の来日までに確かに難民であったかどうかということでいうと、その点は問題がある。

 時間がないので少しはしょりますが、例えば、その虚偽についても、やはり難民として認めてほしいという場合に、少しは大げさに言う場合というのはあるわけですよね。

 しかし、例えばこのハンドブックでは、明白な矛盾について説明を求め及びその他の矛盾点を解明したり、主要な事実についての誤りや隠ぺいについての説明を見出す必要が生じることがあろう、しかし、真実と異なる陳述のみをもって難民の地位を否認する理由とすることはできず、そのような陳述をその事案のすべての事情に照らして評価するのが審査官の責任である、こういうふうな事例も細かく書いてあるわけです。

 つまり、問題は、来日されてからの彼らの日本での行動が、一つは迫害のおそれというふうにつながっていった。決定的なのは、ちょっと時間がないので後に譲りますが、法務省が現地に調査に入った。法務省が調査に入って、そして、軍隊なり警察とも連絡をとり合いながら、その出身地まで調査に行ったというようなことをもって本国にその個人情報が知られたということが一番の迫害のおそれにつながっているということです。

 時系列で言いますと、さっきのサーティフィケート・オブ・レジストレーションというのが、UNによって二〇〇三年の五月に行われております。これは、先ほども申し上げました虚偽の供述を自認した後、後なわけです。つまり、日本国内における政治活動等においてマンデートとして登録をされた。しかも、東京高裁で一審判決を取り消す判決が終わった後で、そして、二〇〇四年の法務省による本国調査の後でアテステーションが発行されている。

 まさに、裁判は九六年入国当時のことで難民かどうかということを裁きましたけれども、その後の問題でこのマンデート難民というのが生じている。この二〇〇三年、二〇〇四年というところに着目をしての国連、UNHCRの難民認定なわけです。そこの情報開示の問題。情報不開示をやはり徹底しなければならないのではないかという問題があります。

 これについては、UNHCRは明確に、申請者とその家族の安全確保と、申請者が提供した情報を保護するため、UNHCRは個別案件に関するいかなる情報も出身国に伝えてはならない、こういうふうに述べているわけですが、この後発難民、今回の問題について、本国での調査の問題、どういうふうに受けとめられておるのか。

 特に、これは今後も大きな問題になりますので、悪質な場合にやらざるを得ない、プライバシーを保護しながらも調査をやらざるを得ないというのが二月二十三日の答弁であったわけですが、もう一度この点について御答弁いただきたいということと、今回の問題、どういうふうに調査をしたのか。議事録を読んでいますから、重複は結構です。重複は結構ですけれども、警察や軍隊と一緒に出身地に行ったのかどうか、こういうところについて明らかにしていただきたいと思います。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の二〇〇四年の調査についてでございますけれども、現地調査につきましては、その国の国情も踏まえまして、申請人のプライバシーの保護、迫害の誘発のおそれなどについて十分配慮した上で実施したものでございます。

 なお、先ほど御指摘の、特定の事案をおっしゃったというふうに理解しておりますが、その事案と本件調査との関係につきましては、調査の内容等、それからUNHCRの方からの情報等を検討いたしましても、関連性はないというふうに思っております。

 なお、調査の内容でございますが……

植竹主査 時間が来ておりますので、簡潔にお願いします。

三浦政府参考人 現地に赴きまして、政府関係者等から事情を聞くなどしております。その際に、警察の方に案内をしていただいたということは事実でございます。

 なお、軍隊の方ではございませんで、トルコの警察組織と申しますと、都市部ではポリスという形で警察官が警察の職務をしているようでございますが、地方におきましては、軍隊の下部組織が平時は県知事の指揮下に入って、警察の、日本でいいますと駐在所のような仕事をしているというふうに聞いております。

稲見分科員 時間が参りましたので、次にバトンタッチをしたいと思います。

 最後に申し上げますけれども、マンデート難民で日本は国益を損なって恥をかいているんじゃないかというふうに言いましたが、今回の問題は、情報開示をした、そしてマンデート難民になった、そのマンデート難民を退去強制した、三重の恥を日本は世界に対して発信しちゃったというふうなことを僕は思っております。

 終わります。ありがとうございました。

植竹主査 これにて稲見哲男君の質疑は終了いたしました。

 次に、今野東君。

今野分科員 民主党の今野でございます。

 私も、きょうは難民についてお尋ねをしたいと思って準備をしてまいりました。これほど難民問題について多くの議員が質問をすると、こんなに難民について関心を持っている議員が多いのかと恐らく南野大臣も驚かれているのではないかと思いますけれども、私は、難民の前にもう一つ、一、二、性同一性障害の方々のことについてお尋ねをしたいと思います。

 南野大臣が法務大臣になられたときに、何であの人がという大変失礼な声が日本じゅうにわき上がりまして、私はそういう声とは別に、よかった、南野さんが法務大臣になってと思ったんです。なぜかというと、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律案については大変熱意を持ってお進めになって、そしてついに成立をさせたからでありまして、しかも、この法律には多くの問題があって、当事者の方々からさまざまな声も上がっているということは大臣も御承知だろうと思うんです。

 それで、その大臣だから、これは見直しの期間なんということは取っ払って、一日も早くよりよい法律にしていくに違いないと期待をしたものですから、ああ、南野さんでよかったと思ったんですけれども、その性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律、施行されて七カ月になりました。全国の家裁に申し立てがあるようですけれども、現在、申し立ては何件で、認容されたのは何件あって、そして却下された例はあるんでしょうか、お尋ねします。

寺田政府参考人 私どもでは、まだ数字は裁判所の方から伺っておりません。ただ、却下例はないというふうに伺っております。

今野分科員 却下例がないということは大変すばらしいことだろうと思いますけれども、これは、年度ごとに数字が出てくるんだからわからないということなんだろうと思いますけれども、大臣、しかしそんなことは言っていられない。大臣も大変関心をお持ちになって成立された法律ですから、これがどのように使われているか、どれだけ多くの方々に喜びをもたらしているかということは多分お知りになりたいはず。どうぞ大臣、その月その月でどうなったかということを興味をお持ちになって、聞いておいていただいて、数字をまとめておいていただきたいと思います。

 それで、それならばしようがないというので、これは「性同一性障害を抱える人々が、普通にくらせる社会をめざす会」の方々がまとめた数字でございます。これだから、やろうと思えば、出そうと思えばちゃんと数字を把握できるんですよ。年度ごとじゃないとわからないというのは役人の仕事ですよ、やはりこれ。法務省の中のそういうことを、大臣、ぜひ打破していきましょうよ。

 それで、この当事者の方々がまとめたのによりますと、申し立て件数は百件。これは集計が二〇〇四年の十月末日です。そして認容されたのが五十二件。審理中が四十七件。そしてみずから取り下げたのが一件というふうになっているんですね。

 これから見ますと、今却下が一件もないということで、大変結構なことだとは思うんですけれども、しかし、それだけ要件が厳しくて、それを満たされている人じゃないと申し立てをしない、そういうことなんだと思うんですよ、大臣。それで、医療機関で自分が性同一性障害ではないかと思って診断を受けた方だけでも、全国におよそ三千人いらっしゃいます。これから見ますと、今後申し立てはふえるでしょうし、このままでは多くの当事者が性別変更の適用外に残されることになる。

 特例法には、これは今さら私が言うまでもなく、南野大臣よく御存じなんですけれども、二名以上の医師の診断書、二十歳以上であること、現に婚姻していないこと、現に子供がいないこと、生殖腺の除去、外性器がほかの性のものに近似しているという要件があるわけなんですが、この中でも特に、現に子がいないという要件、これは子供のいる当事者にとっては非常に過酷で厳しい要件であります。子供がいるという事実は今さらどうにもできません。消し去ることができないんです。子供は子供で、もちろん元気に育っているわけですから。この要件について、大臣はどうお考えになっていらっしゃいますか。

南野国務大臣 その問題の前に、先生、数のことをおっしゃいましたけれども、裁判所でそれがオーケーよとなった場合に数が出てくるわけでございますけれども、そのときにやはりプライバシーがありますので、私個人としては、なかなかその数はつかみにくいということでございます。そういう意味で、仲間の方たちが今先生がおっしゃったような数を出しておられるだろうというふうに思っていますが、やはり広報されるのがどうかということだと思います。

 先生がおっしゃいました問題点、これはどんどんふえてくるだろうと思います。現に子供がいないことの要件というのは、性別の取り扱いの変更の制度が、親子関係、さらにこれは家族秩序に混乱を生じさせ、あるいは子供の福祉に影響を及ぼすことになりかねないことを懸念する議論に私たちは配慮しているわけであります。

 それを設けられたものでありますが、すなわち、現に子供がおられる場合にも性別の取り扱いの変更を認めるとなると、女である父ができる、男である母が生じる。これによって、これまで当然に前提とされてきた、父は男、母は女という概念が崩れてしまうのではないかな、そのように思いました。さらに、属性との間に不一致が生じるということにもなります。これを法あるいは社会で許容できるのかどうかということがもう一つ問題になってまいりますので、社会がどうそれを包含してくれるかという課題にもなると思います。

 また、現に子供がおられるという場合にも性別の取り扱いの変更というものを認めるようになれば、親子関係に影響を及ぼす、さらにまた子供のいじめということにも私は配慮をいたしております。

 そういう意味から、性同一性障害に対する社会の理解の現状がもっともっとよくなってくればと思いますが、この法律をつくった私の気持ちは、一つには、御病気であるからというところに一つの大きなポイントを持っております。

 以上です。

今野分科員 大臣、このごろ答弁に本当におなれになって、大変長く流れるようになりまして、ぜひ短目にお願いします。私、この後難民のことも質問しなきゃいけないので。

 それで、大臣、今子供の福祉のためとおっしゃいましたけれども、私たちが考えるように、ある日突然、お父さんがお母さんになるんじゃないんですよ、これは。いわゆるフェードインなんです。徐々にそうなっていくんです。ですから、それは法律が決めることじゃないんじゃないんでしょうか。その家庭をどうするかは、法律が決めるんじゃなくて、家庭が話し合って決めるべきで、法律はそれをサポートすればいいんです。

 おっしゃりたいことはあるでしょうけれども、ここで一つ御紹介したい作文がありまして、この方は三十八歳の方なんですけれども、佳美さんとおっしゃいます。お名前は本人の御了解を得ましたのでお名前だけ紹介しますが、この方は公務員です。もともと男性として生まれた方なんですが、体の性に適応しようと努力したんでしょう、結婚して二人のお子さんをもうけました。しかし、体の性と心の性に悩んで離婚をしまして、今は二人のお子さんの母親として暮らしています。職場でも女性として扱われている。この方には男女二人のお子さんがいて、中学校三年生の長男の作文を御紹介したいと思います。

  お父さんとお母さんが別れると聞いてとても驚きました。

  ぼくと妹で反対したけど、お父さんからそのとき本当の事を聞きました。

  「父さんはね、実は、女なの。身体は、男なんだけど、どうしても自分の事を女だとしか思えないの。」

  「お母さんは、男のお父さんと結婚したのよ。その父さんが女だったら、女同士になっちゃうでしょう。だから一緒には、暮らせないの。」

  とても驚いたけど、その時、性同一性障害のことだと何となくおもいました。

  そして、どちらと暮らすかをぼくたちに二人で相談して決めるように言われました。

  妹と相談してお父さんと暮らすことにしました。

  それから女なのに「お父さん」では、変だから「佳美さん」「ヨッシー」と呼ぶようになりました。

  「ヨッシー」は、毎日外で働きながら、家で食事を作ったり洗濯をやってくれたり、ぼくたちの世話をしてくれます。

  とても感謝しています。

  家では、「ヨッシー」って呼んじゃうけど、人前では、「お母さん」いつの間にかそう呼んでいました。

  もう二年間毎日、朝早く起きてご飯を作ってお仕事にでかけ、夕方に帰ってきたらお食事を作ってくれる。

  ときどきうるさく注意してくるけど、普段は、やさしいお母さんです。

  ヨッシーの本当の名前を裁判所で変えてもらうときも、ぼくたちは賛成しました。

  だってそれまでの名前じゃ、とても変だから。

  性別だって変だと思う。

  ヨッシーは、おかあさんなのに、色々な紙には男の人になっている。

  おじいちゃんもおばあちゃんもみんなヨッシーを女の人だと認めているのに、おかしいです。

  ぼくも妹も、ヨッシーの性別を変えるべきだと思います。

  お母さんがいつまでも男と書かれているのは、絶対に変だと思います。

ということがあるわけです。

 これは、例えば保険証なんか、性の実態が違うというので、子供さんの入院に当たって混乱をしたり、それから選挙のときに名前を確認しますね。そこに男とあると、あんた男なのと言われて、地域で全部知られてしまって、かえってお子さんがいじめに遭ったり。

 大臣、子供の福祉のためとおっしゃいましたけれども、この制度があるために子供の福祉が達成できないんです。この作文を読んでどうお感じになりましたでしょうか。短くお願いします。

植竹主査 できるだけ簡潔にお願いします。

南野国務大臣 では、簡潔に申し上げますが、それは一ケースでございます。私もいろいろな方とお話ししました。同じような方ともお話ししました。でも、それが比較的多くの方々が認め合う状況になればもっといいなというふうにも思っております。そういう意味では、ここで施行後三年をめどにもう一度考えてみようという条項は中に盛り込んでございますけれども、大変難しい課題でもあります。

今野分科員 おっしゃるように、大変難しいと思います。しかし、それぞれのケースに合わせて、そうであるならばこのようなケースについては認めるということでいいんじゃないかと私は思うんですけれども。

 さっきも言いましたように、家庭のことは国が決めるんじゃない、家族が話し合って決めるということを、大臣、肝に銘じていただいて、ぜひ、わざわざ見直しの期日を待たなくてもいいですから、早くやりましょう、一緒に頑張りましょう。

 さて、それでは難民のことですけれども、これも本来は個別の案件については名前を出すべきではないんでしょうけれども、既にさまざま報道もされておりますので、この件については特異な事例ということで名前を出してお尋ねをいたします。

 一月十七日、難民認定を求めて国連大学の前で座り込みをしていた二家族のうちの二人、カザンキランさんと長男が品川入管で拘束されました。私たちはこれを知って、これは大変だというので、これを知ったから慌ててやっているわけではありませんけれども、難民の問題をこの分科会でもさまざまな方たちが質問しているわけです。

 この十七日の翌日、十八日、私も法務省に駆けつけましたが、外国に出すなという交渉中に強制送還をされてしまいました。この後も、この強制送還に関しては、党の外国人の人権と国籍問題に関するプロジェクトチームのメンバーを中心に申し入れをしておりますけれども、その都度、なぜそんなに急いで送還しなければならなかったのかと聞いても、どうもよくわからないんですね。改めてここでお尋ねしたいと思います。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの個別案件の方につきましては、UNHCRがマンデートしていたわけでございますが、御本人が提訴されました難民不認定処分の取り消し請求訴訟事件がございました。これにつきまして、東京高等裁判所におきまして、御本人は難民ではないという判断が明確に示されまして、この判決が確定したところでございます。

 さらに、その後提起されました退去強制令書の発付処分取り消し請求訴訟におきましても、東京高等裁判所において、難民でないという判断のもとに、退去強制令書の発付処分は正当である、こういう御判断がなされたわけであります。

 入管局といたしましては、このような司法の御判断を踏まえまして、この当該方につきましては、既に平成十四年の二月の段階で退去強制令書が発付されております。入管法の五十二条の規定によりますと、退去強制令書の執行は速やかにこれを行う、速やかに送還をするということになっております。この規定に基づきまして送還をしたものでございます。

今野分科員 退去強制令書は最高裁に取り消し訴訟中でございました。結果が出ておりません。その最中に帰すというのは何とも非情なことだというふうに思います。

 何度も法務省にお訪ねをしたときに、本人が難民じゃないと言ったと言うんですけれども、本当にそう言ったんですか、これは。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 御質問の趣旨を取り違えているかもしれませんが、訴訟の中で、本人の尋問といいますか本人の証言の際に、迫害を本国で受けたという従来の主張はうそでありましたという趣旨のことを述べられたというふうに理解しております。

今野分科員 迫害を受けたのはうそだと言ったことがなぜ難民ではないと言ったということになるのか、大変不思議なんですが。

 迫害を受けたというのは、確かに本人は、どうしても難民認定したくて、うそを言ったのかもしれません。しかし、これは本国では、クルド人が言語や文化を表現することを禁じている国ですから、あのトルコというのは。その国で、みずからそれに反するようなことをするわけにはいかない。だから、そこで迫害を受けるわけがないわけで、そこのところはうそなんですと本人が言ったんじゃないんでしょうか。

 あのトルコという国は、ヨーロッパ人権条約の公権力による差別を禁止した追加議定書を批准していないという、そして今も申し上げましたけれども、トルコ国内のさまざまな民族が自分たちの言語や文化を表現することを法律によって禁止している国です。迫害されているクルド人が二千万人以上も暮らしている。こういう国から出てきて、そして自分たちの言語、文化を使って暮らしたいという活動を日本に来てした、そういうことがあります。

 この事実関係について今ここで言うと時間がなくなってしまいますから、ちょっとほかのところに行きます。

 この強制送還をしてしまったことで、国際社会はさまざまな反応がありました。報道もされました。小泉首相は記者会見で、外国の報道陣から今回の対応について質問をされまして、人権の問題については国際社会から批判されることのないような対応をとっていきたいと総理は言っています。しかし、現に、国際社会から批判をされています。UNHCRは異例の声明を出しまして、迫害を受ける危険性のある領域への送還は国際難民法上禁止されており、過去に前例がなく、憂慮するとして、日本政府を強く批判しております。

 法務大臣として、南野大臣、国際社会にこれをどのように説明なさいますか。

南野国務大臣 お尋ねの方については、UNHCRがマンデートしているといたしましても、難民不認定処分の取り消し請求訴訟事件について、東京高等裁判所においては難民でないという判断が明確に示されているケースであります。そういう判決が確定しているほか、退去強制命令発付処分取り消し請求訴訟事件に関して、東京高等裁判所においても難民ではないという判断が改めて明確に示されております。

 このような裁判所の判断を踏まえまして適正な手続を進めたものである、このことを御理解いただきたいと願いますし、なお、UNHCRとの間では、今後とも十分な対話を続けていきたいと考えております。

今野分科員 私は、そこのところは時間がかかるからもういいかなと思ったんですけれども、大臣がそうおっしゃるのなら。

 退去強制令書取り消し訴訟中、最高裁に上告中ですね。最高裁の判決が出なくても、そんなもの無視してもいいんですか、大臣。上告中ですよ、結果はまだ出ていない。

南野国務大臣 この、名前が出てしまっていますが、カザンキランさんにつきましては、難民性が認められないという高等裁判所の判決が既に確定している上、退去強制命令の適正性についても、別途、東京高等裁判所の判決において認められております。

 詳細については、事務当局の方からお願いします。

今野分科員 だから、それは高裁でのことじゃないですか。退去強制令書取り消し訴訟上告、最高裁の決定はまだ出ていない。最高裁のことは無視してもいいんですか。三審制は無視するんですか。

南野国務大臣 カザンキランさんについては、難民性が認められないという高等裁判所の判決が既に確定している。その確定を重く見ます。

今野分科員 つまり、最高裁に上告中だけれども、それは無視していいということなんですね、大臣。(南野国務大臣「無視じゃない」と呼ぶ)無視じゃないですか、これ。まだ結果は出ていないのに。

南野国務大臣 無視しているわけではありません。我が国の裁判所でこのような判決が決められているというところに、我々は大きくポイントとしております。

今野分科員 無視していないのならば、なぜ途中で強制送還したんでしょうか。なぜですか。

南野国務大臣 少し時間をとってもよろしいですか。いいですか。(今野分科員「できるだけ短く」と呼ぶ)はい。

 退去強制命令の適正性をめぐる訴訟については、現在、原告側から上告されているところではあるが、民事訴訟法上、上告審は法律審、すなわち、原則として新たな事実認定は行わないものであるから、既に、訴訟上、事実関係は明らかになったものと認められる上、判例上、退去強制命令発付処分取り消し請求訴訟については、原告が国外に退去された後も訴えの利益は認められ、裁判を継続することが可能であると理解されていることから、裁判を受ける権利との関係でも何ら支障はなく、上告中に送還することは法的に問題はないということであります。

今野分科員 これは、法務大臣としては大変な発言ですよ、南野さん。だって、最高裁軽視ですから、これ。最高裁は事実認定なんかしないから、そんなものいいんだという話でしょう。それでいいんですか、法務大臣、本当に。物すごい発言、大問題ですよ、これ。いいんですか、これで。大臣、もう一度確認します、大事なことだから。(南野国務大臣「入管局長」と呼ぶ)いや、入管局長じゃなくて、大臣の見解じゃないですか、今おっしゃったのは。もう一度、いいですか。

南野国務大臣 高等裁判所の判決が既に確定しているというところに重きを置きます。

今野分科員 大臣がおっしゃることは、理解はいたしませんが、お聞きいたしまして、今、大変驚きました。日本国の法務省の法務大臣が、こんなに最高裁を軽視するなんて信じられません。しかも、そんなことを言っちゃったら、もう二度と最高裁で事実認定できなくなりますね。これまでしたことないんですか。ありますよ。まあ、それは大臣がそうおっしゃったことですから、発言に責任を持ってくださいね。

 あと、時間が余りありませんが、UNHCRが、今回のこのトルコへ強制送還したことについて、さまざまな問題があった、外務省ともいろいろな多少のそごがあった。UNHCRが見ている方向と、何となく法務省が見ている方向が違うというようなことがあって、いろいろお尋ねをしたときに、法務省、外務省、UNHCR、三者による定例会合をしようという提案、これは先ほど同僚議員も質問をしておりましたけれども、これは、定期的に月に一回開くとか、具体的に決まっていますか。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、UNHCR、外務省、法務省で、三者で協議を持ちましょうということで動き始めております。既に、一月に一度協議を持ちまして、今後、どういった頻度で進めていくかということを詰めることになっております。

今野分科員 まだ、期間や何かは、詳しいことは決まっていないということですね。

 私、ちょっと気になるのは、法務省がUNHCRの、我が国から拠出金、およそ一億ドルぐらいですか、七十六億円ほど拠出していて、そして前の、今回おやめになった難民高等弁務官が、日本は超人道大国だと言っているんだそうですね。こんな法務省の入管行政を見ただけでも人道超大国とはとても思えないんだけれども、それは、なぜそういう発言をするかというと、この多額の拠出金というのが裏側にあって、だから、日本をよいしょしているわけですね。ということは、逆に言えば、日本側からこんなにお金を出しているんだから、UNHCR、日本の法務省のやり方に合わせろというようなプレッシャーをかけるということはないということは、大臣、確約できますか。

南野国務大臣 それは当然だと思います。

今野分科員 最高裁軽視を発言した大臣ですけれども、それは大変結構な発言だと思います。

 さて、もう一点だけ。仮放免されている人に出されている就労制限についてなんですが、二〇〇四年までに、ミャンマー人難民申請者十一人が仮放免されているんですけれども、このうち六人に就労制限がつけられているんです。要するに、収容しないけれども働くなと。それでは、この方たちはどうやって生活すればいいんでしょう。お尋ねします。

植竹主査 時間が過ぎておりますので、簡潔に答弁してください。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 一般的に申しますと、仮放免というものは、被収容者などからの請求に基づきまして決定をすることになるわけでございますけれども、これに当たりましては、身元保証人による仮放免対象者に対する生活の支援ですとか、身元保証能力の確認をした上で許可するというのが一般的でございます。そういった観点からいたしますと、そういう方々にいろいろ生活の支援をしていただくということも考えられるであろうと思っております。

 そもそも、日本におきまして継続的に生活するための就労は認められないわけでございます。しかしながら、難民認定の申請をしている方で、今後日本に継続して在留しようとする方に対する生活費や住居費などの保護費の支給に関しましては、難民認定申請者緊急宿泊施設の提供などについて、外務省の委託を受けた財団法人等がいろいろな事業を行っているというふうにも承知しております。

今野分科員 時間がありませんから、質問はさっきの質問で終わりますが、収容はしないけれども働くなというのでは、余りにもこれは人道上も人権上も問題があります。就労許可あるいは生活費を、どのような形でか、方法はいろいろあると思いますけれども、すべきではないかということを申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

植竹主査 これにて今野東君の質疑は終了いたしました。

 次に、藤田一枝君。

藤田(一)分科員 民主党の藤田一枝でございます。

 本日は、入管難民行政にかかわる問題について、限られた時間でございますので、矢継ぎ早にお尋ねをしてまいりたいというふうに思っています。

 今、クルド難民の強制送還問題がずっと議論をされておりましたので、本当はそのことから入った方がいいのかなと思ったんですけれども、一応順序に従いながらお尋ねをいたします。

 最初に、元中国残留日本人の養子、継子家族の取り扱いについてお尋ねをしたいわけでございますけれども、これは昨年のこの予算委員会分科会質疑での政府の答弁なんですけれども、日本人の子や孫、家族でないことが判明して在留資格を取り消した件数が、この数年間、年間、毎年二百件ぐらい、そのうち、継子、養子を理由に上陸許可取り消し処分、退去強制令書が発付され、その取り消し訴訟が起きている数は五件六家族二十一人というお答えがございました。

 この数字にまず変化があったかどうか。変化があったら数字を教えていただきたいと思いますけれども、お答えいただけますか。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘の数字はそのとおりでございまして、その後ちょっと集計をしておりませんので、変化については把握していない実情にございます。申しわけございません。

藤田(一)分科員 この数字が余り大きくふえるということは決していいことではないというふうに思っておりますけれども、また新しい数字がわかれば後日教えていただきたいというふうに思います。

 この養子、継子家族の問題というのは、過去にもいろいろと質問があったというふうに思っておりますけれども、私も、多分この五件の中の一件であろうと思いますけれども、日本人の実子を偽装したとして訴訟になっている御家族のお話を伺うことがありました。そのときに非常に疑問に思ったことをきょうはお尋ねしてみたいと思っています。

 まず、日本人の実子を偽装したと判断する明白な根拠、偽装行為の有無の判断というものが何に基づいて行われているのかということについて簡単に御説明をいただきたいというふうに思います。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 偽装があったかなかったかというのは、事実認定の問題でございますので、どれだけの証拠があるかということに尽きるわけでございますけれども、一般的に考えられるといたしますと、例えばその方の親族関係にあるというような方が別途入管法上の申請行為などをされまして、その際に提出された書類を見たところ、どうも前の御本人の申請が虚偽であるのではないかという疑いが生じたというようなケースもあり得るかと思います。

 こういった場合には、もちろんそれだけにとどまらず、御本人からの事情を聴取すること、また関係者からもいろいろ事情を聞く、さらには物的な裏づけの資料でもあればそういうものも総合いたしまして、当初の申請が虚偽であるかどうかということを判断することになると思います。

藤田(一)分科員 一般的には、例えば家族を呼び寄せるときの手続というものがまず最初にあって、そしてそれは、書類を提出してその審査を受けて、審査に通ったということによってビザが発給をされて入国をされてくる、多分こういう手続になっていくんだと思うんですね。恐らく、今の日本の法律というか規則では、当然実子ということを前提に判断をされているということになってしまうんだろうと思って、まずそこからそごが出てしまうんだと思うんです。

 この上陸許可取り消し処分、退去強制というのはやはり大変厳しい処分だというふうに思うんですね。上陸時にさかのぼって取り消すということで、この御家族の場合も、娘さん二家族、小学生を含む子供四人も親と一緒に直ちに入管に収容されたというようないきさつがやはりあるわけです。

 もちろん、当然子供たちは学校に行っていましたから、勉強も中断をしなければいけない。その後、父親を除いて収容は解かれましたけれども、父親はそのまま収容されるというようなことで、非常に自尊心も傷つけられていく。そして、何でこうしたことになるんだろうかという思いをずっと抱くというようなことになってしまうわけですね。

 そういう意味で、判断というものを非常に慎重に行っていかなければいけない、総合的に見ていかなければいけない問題であろうというふうに思っています。

 時間がないので少し中身をはしょりますけれども、書類の手続が、最初に出された書類と、その後いろいろな事情の中で判明した状況との間で違いが出てきた、そしてそれが偽装であるというふうに指摘をされていく。そのときに一番問題になってくるのが、入国申請時の提出書類、こうした問題がよく指摘をされてくるわけですね。出生公証書とか親族関係公証書とか、あるいは身元保証書、こうしたことの記載内容というものが、日本人と血縁関係にないということを隠匿して、日本人の実子であるとの虚偽の事実をつくり出す、こんなふうによく指摘をされてしまうわけです。

 確かに、永住帰国をした元中国残留日本人の家族の中に、日本人の実子とその家族ということを偽ったケースというのがいろいろあったということも事実だというふうに思います。そのことを全部否定するものではありませんけれども、しかし、本当に偽ったのかどうなのか、そういうことはやはりきちっとした見きわめをしなければいけないのではないか。

 要するに、問題になるのは、まず、上陸許可時の判断というものがどうだったのか。それを抜きにして、後日いろいろと、書類やらいろいろな状況の中で、偽装だといって、取り消し処分、退去強制といって摘発をしていくということが果たして妥当なのかどうかというまず大きな問題があるというふうに言われています。

 なぜかといいますと、偽装と言われる書類の意図しているところというのは、実子あるいは養子、継子の区分けというものをしないで子として扱っている中国社会の家族観、あるいは中国の法制度や公証実務というものに基づいているのではないか、そのことをやはり見なければいけない。もともと書類は偽装ではなくて真正のものであったということではないか。虚偽の事実をつくり出しているわけではなくて、提出した、書類は出した、そこのところの見方の問題が一つあったのではないかなというふうに思うんですね。

 この間問題となったケースや、あるいはこういうケースで既に在留特別許可が出たケース、それから係争中になっている今のケースでも、元中国残留日本人の戸籍であるとか他の書類とかというものを比較審査すれば、実子であるかどうかということは、あるいはその疑いがあるのかどうかというのはある程度わかるはずではないかと私は思うんですね。そうでなければ、後でわかるということ自体にやはり問題がある。つまり、後で書類から判断ができたというなら、最初から必要書類ではなくて十分書類を求めるべきではないかというふうに思うんです。

 補充すべき書類というものをやはり求めていく、そういう丁寧なというか、仕事としては大変かもしれませんけれども、しっかりした判断というものをそこで最初にやるということをまずやらなければいけないのではないかと思いますが、この点、いかがでしょうか。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 具体的な事例につきましては、私ども詳細を承知しておりませんし、個別事案について言及するのは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、一般的に、入国、上陸の審査に際しまして、特に身分関係によって上陸、入国が認められるか否かというようなケースにつきましては、当然それが一番重要な事項でございますので、入国審査官におきまして必要な資料の検討を行っているはずでございます。

 その場合、今委員御指摘の場合は実子の方だということでございますので実子を例にとりますと、日本におられる方の実の子供であるかどうかということが一番大きなポイントでございますから、それを証するいろいろな資料の提出を受けたであろうと推測いたします。その上で、入国審査官が実子であるという認定をしたがゆえに上陸の許可が出たんだろうと思います。

 しかし、実子であるかないかは御本人が一番よく承知されているわけでございまして、この内容を偽った、入国審査官がそれを見抜けなかったということは、これは事実だろうと思います。ただ、それが巧妙な形で虚偽申告をされますと、見抜けないケースもあり得るであろうというふうに思います。

藤田(一)分科員 なかなかそれは難しい部分があると思いますけれども、偽ったかどうかというところの問題なんですよね。偽るために書類を出したのかどうかということだと思うんですよね。

 実子であるかどうか、初めから養子であるとかあるいは継子であるとかということに関して、先ほど言いましたように、中国の家族観というものが、そういうことを余り区別しないで、長年ずっと一緒に暮らしてきたならば、それはもう自分の子供と同様に扱っていくというケースがやはりたくさんあるだろう、そういう実態の問題があって、本人には全然その辺で、自分が養子であるのか実子であるのかという区別性がないということがあるわけですね。それに基づいて書類を出していっているということですよね。

 その辺を一概に全部がだめだというふうに切れるのかどうかというところを、書類審査だけではもちろん見抜けない問題というのもあるんだと思うんですけれども、その中でいろいろ問題になったケースについては、やはり家族の実態ということをしっかり見ていく。

 中国でどういう生活をしてきたのか、暮らしてきたのか、そしてまた日本に来てどういう暮らしをしているのかということを、家族の実態ということをしっかり見ていくということがないと、こういう問題というのは繰り返していくのではないかというふうに思いますけれども、この点、大臣、いかがでございましょうか。

南野国務大臣 身分関係などの在留資格の根幹にかかわる事実に虚実がある場合、虚偽をしたような場合、在留資格を取り消した上で退去強制手続をとるというのが原則となっておりますが、その手続の中で、人道上の配慮が必要な場合には在留特別許可を与えることもあると承知しております。

 個別の事情を判断して対応していきたいと考えておりますが、なお、昨年十二月二日に施行されました新たな在留資格取り消し制度のもとでは、在留資格を取り消すに当たって意見聴取をすることとしております。その際、日本における生活状況や家族の状況などについても聴取を行いますので、その際には個別の事情について十分に御説明を受けたい、そのように思っております。

藤田(一)分科員 新法との関係についても少し本当はお尋ねしたいんですけれども、長くなりますので。

 家族の実態ということに関してやはりきちっと着目をしていきたい。今後のケースについても、もちろん今御答弁をいただいたように、きちっとした事情聴取も行って判断をしていくということでありますけれども、今係争中の問題というのは、やはり一番そこが問われてきている部分なんですね。そういうことをきちっと見ていただきたい、そのことを強くお願いをしておきたいというふうに思います。

 次に、定住者告示の問題についてお尋ねをしたいと思います。

 養子とか継子とか、その家族が日本に定住帰国を認められない根拠というのは、一つは、日本人の配偶者等という問題、それから定住者の在留資格に該当しないという問題があるわけですね。法務省告示第百三十二号、この告示では、継子の場合は未婚、未成年、それから普通養子の場合は六歳未満であるということが要件になっています。しかし、当然、実子というのは成人や既婚者でも永住帰国が可能になるわけです。

 一方、インドシナ難民の場合には、養子には年齢制限がつけられていません。それから、継子などの血縁関係がない家族についても、人道配慮条項ということで認められる規定が設けられているわけです。

 インドシナ難民の問題というのは、日本が難民条約を批准していくことになったきっかけというか背景というか、そういう大きな政治的判断が働いたということで、そのことは十分理解できるわけでありますけれども、しかし一方、元中国残留日本人の養子、継子の場合というのは、今、他の外国人の家族の呼び寄せ基準と同列に扱われているわけであります。これはいかがなものなんだろうか。

 ようやく八〇年代になって帰国できるようになったこの中国残留日本人の呼び寄せ家族について、一般的な規定というものを当てはめるというのは少し問題があるのではないかな、私はこのように思うわけですけれども、この点はいかがでございましょうか。

三浦政府参考人 今、インドシナ難民との関連で御指摘がございましたわけでございますが、中国残留日本人の帰国に関しましては、中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律というものがございます。また、この法律の施行規則もございます。これらによりまして、円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援が図られているところでございます。

 中国残留日本人の養子であることなどを理由といたしまして、残留日本人の方に同行して一緒に我が国への入国を希望する方についても、この法律などに基づきまして厚生労働省からの協議がございます。個々の事情を考慮して人道的な配慮をしつつ対応しているところでございます。

 なお、残留邦人の方が帰国される際に、一緒ではなくて別に来られるケースもあるわけでございます。こういうケースにつきましては先ほど申し上げた法律の適用がないわけでございますが、査証の申請などがなされまして、法務省に外務省の方から協議があることもございます。そういうケースにつきましては、養子になられた時期ですとか家族状況等を踏まえまして、入国を認めるべき事情があるというケースにつきましては、個別に入国を認めることもできると思っております。

藤田(一)分科員 なかなか、それぞれの御家族の事情で一緒に帰国できないというケースも間々あるわけですね。そういうケースがこういう形でいろいろ問題になってきているということでありまして、私は、元中国残留日本人問題の歴史性とか、あるいはいわゆる政府の責任というようなものをきちっと考慮して、人道配慮条項というものを決断する必要があるのではないかというふうに思っています。

 この間認められたケースというのも、みんないわゆる大臣の裁量ということで在留許可が出ているわけですね。それはそれで、裁量ということも大事なわけですけれども、裁量という枠ではなくて、やはり一つの基準として示していく必要があるのではないか。無用なトラブルというものを回避していくためにも、この定住者告示の中でこうした配慮というものをぜひ決断していただきたい。

 特に、ことしは戦後六十年の節目の年でもありまして、中国残留日本人の方々も高齢化をして、判明率というのが今大変低くなっているというふうにも言われています。問題はやはり終わっていないんですね。そういう意味からも、ぜひ基準を明確にしていただくということが必要ではないか。この点について、ぜひ大臣の決断をお願いしたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

南野国務大臣 御存じのとおり、私も満州から引き揚げてきております。そういう意味では、一番最初に法律を変えさせていただいたのが、私の議員生活の最初でございました。そういう意味では、そういう方々について私がどれだけ熱い思いを持っているかというのはお察しいただきたいのです。

 いろいろな問題点がございます。今、法律を守らなければならない立場であります。ずっと法律は守らなきゃいけないことでございますが、個々の事情を考慮して人道的に配慮をしているところ、これは今後も続けてまいりますので、その意を酌んでいただきたいと思います。

藤田(一)分科員 大臣からお気持ちを込めて御答弁はいただきましたが、そのお気持ちはぜひ今度形として、できればそういった規定を見直すということにつなげていただきたい、そのことをお願いしたいと思います。

 それでは次に、改正入管難民認定法で設けられました難民審査参与員制度についてお尋ねをしたいと思います。

 これは難民認定制度見直しの柱の一つとして設けられた制度でありまして、初めて第三者が決定過程に加わるという大事な制度だというふうに認識をしておりますので、少し具体的な中身についてお尋ねをしたいと思います。

 先日の法務委員会の質疑で、衆議院、参議院の附帯決議に基づいてUNHCRを含む関係団体に推薦依頼を行った、新年度早々選任をしたい、こういう御答弁がございました。そこでお尋ねなんですけれども、参与員の数、昨年の議論の過程では三人一組の十数名程度、こんなお話も出てまいりましたけれども、正確に何人選任されるおつもりなのか、そしてまたどういう団体に推薦依頼をされたのか、教えていただきたいと思います。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、昨年の国会で制度をつくっていただきまして、その際に衆参両院で附帯決議をいただきました。その趣旨に従いまして、現在、難民審査参与員の方々について各団体に御推薦をしていただいているところでございます。

 具体的に申し上げますと、日弁連でございますとか、UNHCR、その他NGO等を含めまして、公正中立な立場の各種団体にお願いをしておりまして、現在その選任の検討中というところでございます。人数的には、まだ今の段階で明確に申し上げるのはちょっと早いと思いますが、十数名程度を予定してございます。

 現在、各種団体に御推薦をお願いしているところでございますので、詳細はちょっと申し上げられないのは御勘弁いただきたいというふうに思います。

藤田(一)分科員 ぜひ、昨年の法改正の質疑の中で指摘された問題点というものを尊重して進めていただきたいということをお願いしておきたいというふうに思っています。

 それで、関連をいたしまして、この選任のあり方の問題ですけれども、一次認定を行う法務大臣が異議申し立て審査に関与する人選を行う、大臣が選任をするということになっているわけでございますね。そういう意味で、第三者性というものをきちっと担保するという意味から、いわゆる専門性を有する公正な団体からの推薦制度というものをきちっと確立した方がいいのではないか、このように思います。

 これも昨年の議論の中でもあったと思うんですけれども、実際に選任の作業に今入っていらっしゃるということで、改めてその点、制度化をしていく御意向というようなものをお持ちかどうか、これは大臣にぜひお聞きしたいと思います。

南野国務大臣 お答え申し上げます。

 難民審査参与員の選定に当たりましては、日本弁護士連合会などの公正中立な複数の団体からの推薦を受けて選任することといたしております。また、一つの案件を複数の難民審査参与員が担当することとして、その際には、各自直接異議申立人に対して審尋を行うことができることともしておりますので、参与員制度の公正性、独立性は十分確保されるものと思っております。

藤田(一)分科員 推薦制度というようなものをきちっと明確にされるということが一層独立性を担保できると思いますので、ぜひこれからも御検討をいただきたいというふうに思います。

 もう一つ、この参与員制度というのは、異議申し立て手続というものが非常に透明化をされていくということで期待をされるわけでありますけれども、時間がないので少しあれですけれども、実際には大臣の諮問機関であるという位置づけになっているわけですね。合議制はとらないというふうに昨年の質疑の経過の中で言われているわけですけれども、実際に参与員の意見というものがどのぐらいの規定力というか影響力、拘束力というのでしょうか、そういうものを持っているのかということ、この点はいかがでございましょうか。

南野国務大臣 難民審査参与員は、一次審査の記録を精査するとともに、申請人の意見の聴取や審尋などを直接行った上で、それぞれの専門的な学識経験に基づき客観的な立場から意見を述べられるものでありますから、私といたしましては、法務大臣として、このような難民審査参与員の意見を尊重するのは当然のことと思っております。

藤田(一)分科員 合議制はとらないということで、個々の参与員の方々がそれぞれ意見表明をされる、それを全部大臣はお聞きになって判断をするということになったときに、参与員の方々の影響力、規定力というのがどうなのかというところが非常にあいまいだという感じがするんですね。単に意見を表明するだけではやはりこの制度はだめだというふうに私は思うんです。

 そういう意味で、もう少し参与員制度というもの、審査機関の独立性あるいは専門性ということが難民認定の問題について非常に指摘をされてきているところでもあるわけでして、そういう意味でしっかりと担保しなければいけないのじゃないかというふうに思います。

 特に、難民認定をめぐる問題というのは、いろいろとこの間も指摘されていますけれども、実態的にも制度的にも問題が山積をしています。難民認定というのは、迫害を受けるおそれという最大の人権侵害に対して判断をする行為でありますから、単に出入国管理上の問題ではなくて、やはり人権尊重原理というものに立脚をして判断されていかなければいけないんだというふうに思うんですね。

 そういう意味からも、やはりきちっとした独立性あるいは公正性というものが担保されて、そしてそのことがきちっと生かされなければいけないというふうに思っています。この点、ぜひきちっと受けとめていただきたいと思いますが、もう一度大臣の御見解をお聞きしたいと思います。

南野国務大臣 ぜひそうなるように努力してまいりたいと思います。

藤田(一)分科員 これからのスタートでございますので、これからいろいろ実施に移していく過程で問題も出てくると思います。そういったところではぜひ見直しもしていただきながら、この制度をよりよいものにしていただきたい、お願いをしておきたい思います。

 残された時間がもうごくわずかになりましたけれども、最後にクルド難民の強制送還問題について少し触れさせていただきたいと思います。

 内容は先ほど来の質疑の中でいろいろと出てきておりますので、二点、私は指摘をさせていただきたいのです。

 大臣、当然、国際慣習法とも言うべきノンルフルマン原則ということを御存じだというふうに思いますが、いかがでしょうか。

南野国務大臣 存じ上げております。

藤田(一)分科員 今回のカザンキランさんの強制送還問題ということについては、先ほどからのやりとりでも、政府は政府の御見解がある、お立場の中で判断をされてやってこられたということで、その中身を今ああだこうだとはもう申しませんけれども、今大臣もノンルフルマンの原則をよくわかっていらっしゃるとおっしゃった、その上で、迫害のおそれがあるところに強制送還をした行為ということが難民条約の精神を踏みにじるものだ、そういう意味で日本政府の人権感覚というものがやはり問われているんだ、この点についてはぜひ認識をしておいていただきたい。

 いろいろな御判断のもとでの言い分はあると思います。あるいは個別の、カザンキランさんのケースということでなくても、それを外して横に置いてもいいですけれども、このことはやはり非常に大事なことだということをしっかりと御認識をいただきたいというふうに思います。これは指摘だけさせていただきます。

 それからもう一つ、カザンキランさんの問題を通して出てきたことで大事な問題は、現地調査の問題です。これもいろいろとやりとりがありましたけれども、これは、要するに情報をその当事国に与えるということの重大さに対する認識というものが少し日本政府は欠如しているのではないか。情報収集のあり方ということについて、各国、いろいろな努力をしています。難しいと思いますけれども、難民認定の申請をしているということすら、その情報が本国に伝わらないようにいろいろな形で各国はやはり配慮しているんです。その上で情報収集に当たっているという努力をやっている。そういう努力をやはり日本政府もいろいろな角度からやるべきじゃないでしょうか。外交ルートを使って、ストレートに相手国に行って調査をするということは、これは論外だというふうに私は思います。

 今回の強制送還問題を通じて浮き彫りになったこの二つの問題というのは、日本の難民認定問題というのを象徴している行為だというふうに思っています。そういう意味で、しっかりと受けとめていただいて、二度とこういうことが起きないように、これからの難民問題というものに対処していただきたい。そのことを強く要請させていただいて、お願いをして、きょうはもう質問という形はとりません。お答えいただけますか。そうですか。では、どうぞ。

南野国務大臣 ちょっとだけ言わせていただきたいと思います。

 いろいろな御質問をいただきましたが、御指摘の出張調査ということにつきましては、その国の国情も踏まえながら、申請人のプライバシーの保護及び迫害の誘発のおそれのないことなどを十分に配慮した上で実施したものであるということも御認識いただきたい。しかも、これは、現在係争中の訴訟において、その妥当性については裁判所の御理解を得られるものと我々は考えておりますので。

植竹主査 時間が来ておりますので、簡潔にしてください。

藤田(一)分科員 お答えいただかない方がよかったような話になってしまっています。私が外務省に抗議に行ったときにも、外務省も厳重に法務省に抗議をしたというふうに言っています。これは国際的に大変大きな問題でありますので、そのことはしっかり認識をしていただきたい。そのことを指摘して、質問を終わります。

植竹主査 これにて藤田一枝君の質疑は終了いたしました。

 次に、萩生田光一君。

萩生田分科員 自由民主党の萩生田光一でございます。

 私は、法務関係、特別専門的な知識を持っていないんですけれども、法をつかさどる法務省という役所のこれからのあり方について大変重要な問題だというふうに思いますので、今回時間をいただきました。大臣の誠意ある御答弁をお願いしたいというふうに思います。

 まず初めに、法務省の矯正関連施設についてお尋ねしたいというふうに思います。

 国内にある関連施設は、いずれも歴史の長い施設が非常に多いというふうに思います。近年ではPFI事業の導入などで誘致をしたいという自治体の申し出もあったというふうに関係局は胸を張りますけれども、現実は、過疎化の進む自治体や雇用を望む地域で、施設の性格を評価されてのことではないというふうに私は思います。新しい施設が立地しにくい施設であることは性格上否めないというふうに思いますけれども、どのような条件でこれらの施設は設置が決まるのか。また、その場合、地元自治体や近隣住民とはどのような協議が持たれるのか。

 あわせて、全国の刑務所や少年院など矯正施設の所在地を確認すると、約八割以上が地検または地検支部と同一の自治体に立地をしております。加えてそこには必ず法務省の職員官舎も存在をしますけれども、これら一連の施設が集中するのはなぜか、お尋ねしたいと思います。

横田政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、矯正施設をつくる場合の立地の条件はということでございますが、改築の場合にはもちろん現在地改築というのが原則でございますけれども、新設につきましては特別こうだという条件ではございませんで、やはりどのような施設をつくるかということから始まりまして、それに適合した立地を選ぶということで考えております。

 それから、地方公共団体や地域住民との間の関係でございますけれども、このような矯正施設をつくる場合には、地方公共団体、それから司法その他の関係機関及び近隣住民の方々に対しまして建設計画などを十分に御説明いたしまして、そして、そのような方々の御理解、御協力を得ながら整備を図っております。

 それから、もう一つ、矯正収容施設の所在地の近くに検察庁も多く所在しているけれども、なぜそのほかの矯正施設がその近くにあるのかということのお尋ねですけれども、矯正施設と申しましてもいろいろあります。特に、拘置所とか拘置支所、少年鑑別所といいますのは、御承知のように、裁判や審判に被収容者が出廷しなければならないという関係がございますので、裁判所や検察庁の近くに所在している場合が多いということになります。しかしながら、矯正施設の中でも刑務所とか少年院につきましては、これは裁判所や検察庁の近くにあることは必ずしも必要ではございませんので、離れている場合も少なくないという状況です。

 それから、宿舎のことですけれども、これは、施設の特質上、やはり職員がすぐ近くにいなければなりませんので、それぞれの施設のすぐそばにあるということでございます。

萩生田分科員 当然、その矯正関連施設をつくるに当たっては、地元の自治体のある意味では同意が必要でしょうし、近隣の皆さんの御理解や御協力がないとなかなか建設ができないというふうに思います。建設をするときには、法務省はこういう配慮を多分してきたんだろうと思います。

 あわせて、今御答弁ございましたけれども、拘置所が地検と同じ場所にあるのはこれは当たり前のことで、あえて申し上げれば、刑務所、少年院に関して申し上げても、これは数を見てください、八割を超えますよ。八割を超えます。すなわち、地検の所在地、地検支部の所在地と、刑務所あるいは少年院等々の所在地というのは、かなりの部分で全国的に一致をしていると言っても私は決して大げさじゃないというふうに思います。

 進みます。

 このたび、八王子市にある東京地方検察庁八王子支部が立川市に移転をされるというふうに聞きますが、これはどのような理由からか。また、移転後の規模はどのようなものを想定しているのか。あわせて、法務合同庁舎がどのような経緯で今日の八王子の場所に建設がなされたと認識をしているのか、お尋ねいたします。

小津政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、東京都の多摩地域におきましては、人口の増加や都市化に伴いまして、東京地方検察庁八王子支部等の業務が著しく増大しておりまして、その庁舎が狭隘をきわめております。多摩地域の治安を維持して、市民の方々が安心して生活できる環境を確保するとともに、今般の司法制度改革に対応いたしますためには、東京地方検察庁八王子支部等の大幅な拡充整備が必要不可欠でございます。

 また、裁判所におきましては、東京地方裁判所八王子支部等を立川基地跡地に移転する計画であると承知しておりますけれども、検察庁等は、業務の性質上、裁判所の近隣に所在する必要があるわけでございます。そこで、法務省といたしましては、立川基地跡地の国有地に検察庁等を移転、整備することを計画しているところでございます。

 次に、その計画による地検支部の規模でございますけれども、これは立川市を含む関係機関と調整中でございまして、いまだ確定しておりません。ただ、施設の狭隘及び機能不備を解消するとともに、今後の司法制度の改革等に伴う行政需要に対応できるだけの規模の拡充が必要であると考えているところでございます。

 最後に、それでは、現在検察庁も入っております八王子法務総合庁舎でございますけれども、これがどのような経緯で現在地に建てられることになったのかということでございます。

 まず、東京地検の八王子支部は、昭和三十五年四月に、それまで八王子市の台町にありました庁舎から、八王子支部の旧庁舎でございますが、現在地に移転しておりまして、昭和六十年の四月に施設の改築が終了して、現在に至っております。また、東京地裁の八王子支部は、昭和三十四年の十一月に、同じ町内にありまして、それから現在地に移転したものと承知しております。

 そういうことでございますけれども、法務省が現在保管しております文書にはそれ以上の具体的な経緯を明らかにしたものがございませんので、それ以上の詳細をお答えすることが困難である、そういう状況でございます。

萩生田分科員 今御答弁ありましたように、非常に取扱件数が多くなって、極めて狭隘な施設の中では対応がし切れないということなんですね。それは私もそのとおりだと思いますし、地裁と地検が新たな大きなものをつくるということは決して反対じゃございません。

 ただ、あえて申し上げれば、三多摩だけでも、大臣、四百万の国民が生活している。四百万といいますと、山梨県や島根県の数倍ですよ。それらの場所には地裁も地検も複数存在するわけですから、本来、法務省がそういうことが原因で新しい施設が欲しいんだということであれば、八王子の地検を残して、そして新たにもう一カ所つくるという方が極めて説得力があったんだというふうに思うんです。この点は一つ指摘をしておきたいというふうに思います。

 それから、現在の土地について、いきなり昭和三十五年の四月というお話がございました。

 八王子地検の支部は、明治九年に八王子区の裁判所に検事が置かれたことに起源をする施設だというふうに私どもは認識しています。その後、明治四十三年に市内の台町というところでございますけれども移転をして、昭和二十二年には裁判所法と検察庁法が施行され、東京地裁八王子支部に対して東京地方検察庁八王子支部、簡易裁判所に対して八王子区検察庁と位置づけがなされ、昭和三十五年に地裁の移転を追いかけるように現在の場所に移転をしました。それは、背中合わせにあった方がお互いの性格上利便性が高い、そのことは私は理解をします。

 しかし、この土地は、昭和二十五年に、国が八王子市に対して、台町の現在の土地では庁舎が狭隘で困っているので、ぜひ明神町の現在地を市の責任であっせんしてほしいという依頼を受け、市が国策だからということを理由に、地権者約二十数軒あったというふうに記録がございますけれども、一軒一軒お願いをして説得して移転していただいた、八年の年月をかけて今日の地形を得たというふうに記録がございます。

 この土地は、台町の国有地と交換をするために、昭和三十三年には八王子市議会に特別委員会が設置をされ、議会でさまざまな議論が行われ、そして議会の議決を経て、正式には昭和三十四年の九月九日に国有地と市有地の財産の交換をした、こういう土地であります。

 そして、大臣、この土地にもともと住んでいた皆さんは、ちょうど私の母親のような年代、父親のような年代。ですから、皆さん現在も実は御近所にお住まいなんです。それで、中には、庁舎の北側に移転をした方もいらっしゃいまして、今御答弁があったように、昭和六十年以前は低層化の建物でしたから、その後ろで、ああ、いい代替地があったといって生活をしたけれども、六十年に現在の高層の建物を建てたので、結果としては極めて日照に限りがあって、今日では後悔をしている方もたくさんいらっしゃるんです。そういうまさに多くの八王子市民の協力のもとに、今日の地裁や地検の土地が確保され、建設がなされたということをぜひ理解していただきたいというふうに思います。

 そして、今でこそ法務の合同庁舎と呼んでおりますけれども、交換時には、あくまで、法務省東京地方検察庁八王子支部と市議会の記録に書いてあります。すなわち、地検が移転をするということは、土地を取得したときの主たる目的を失ったという判断をされても私は仕方がないんだというふうに思うんです。

 しかも、移転の主な理由が、今御答弁があったように、裁判所の移転によるという答弁がございました。曲がりなりにも、最高裁の方は、約十年前からこの移転計画を市に明らかにして、移転候補地を市にも相談し、さまざまな場所の比較検討をした後に、結果としてやむを得ず立川の国有地への移転を決定したというプロセスがあります。地元の皆さんは、この地裁の移転そのものも決して賛成ではございませんけれども、簡易裁判所の存続ですとか、あるいは跡地利用の計画など、地元の自治体の意向を最大限に受け入れる姿勢を示しております。

 一方、法務省は、地検が移転をしても合同庁舎は自分たちの所管の建物だといって、その使い道を内部で検討しているにとどまっておりまして、しかも、私が国会議員になって初めて移転の事実を確認するまで、ただの一度もですよ、大臣、八王子市に対して移転の方針すら報告していないのが法務省の姿勢ですよ。

 この事実が明らかになったのは、以下の経緯であります。

 台町から明神町に移転をするときに、実は、法務省の所管する法務局も、移転場所を探して、市役所のすぐ近くに移転をしました。東京法務局八王子支局といいます。平成十二年に多摩ニュータウンの南大沢という駅前のビルに移転をしたんですけれども、このときにも、実は、前年に、そのビルを管理する信託会社から、どうも法務局さんがテナントとして入りたいというお話があるけれども、市は承知をしていますかということを道義的にお聞きになってきた。それを聞いた市が、法務局に、おたくは引っ越しを考えているようだけれども、利便性を考えたら市役所の近くにある方がいいんじゃないんですかということで、当時の市長さんが極めて熱心に説得をしたにもかかわらず、それを振り切って今の南大沢の地に移転をしてしまったんです。

 ところが、平成十五年になって、引っ越してみたものの、やはり利便性に問題があって機能が悪い。そして、改めて法務局の皆さんが市役所にお見えになって、市役所の東側の市有地がございます。この土地は、実は、市が将来国の合同庁舎を建設したいということで、長い間確保し、国土交通省等に申請をしている場所なんです。この土地に何とか法務局が移転ができないだろうかという相談がございました。

 この合同庁舎計画に支障を来してはいけないという判断で、市も困惑をしたんですけれども、ある意味では行政パートナーである法務局ですから、平成十六年になって、将来の合同庁舎計画に影響のないよう、単独の簡易庁舎という形だったら可能性はあるということで、法務局もそのことを強く望んでいらっしゃいました。そして、そのときの条件が、将来合同庁舎ができれば再入居することを条件に、当時の法務省に予算要求をしたという報告まで正式に八王子市は受けているんです。

 ところが、その後の十六年五月になって、地検跡に入居することになったので、法務省からそういう指示があったので、今までの話は白紙に戻してほしいという報告を受けました。

 これはもう極めて法務省としてローリングし過ぎている話じゃないかというふうに思います。そのことを聞いて、私が法務省に対して、あなた方は地検を引っ越す予定なんですかと聞いたのが公になった初めてですよ。

 すなわち、それで、引っ越す側、さっき、一番最初に、建てるときにはどういう相談をしますか、地元の自治体の合意をいただきます、近隣の皆さんの協力をいただきます。引っ越すときはいいんですか。引っ越すときはこんなに簡単に省庁一つ引っ越すことを決めていいのか。私は非常に疑問でなりません。

 そして、幾ら自分のところの所管の建物だからといって、その使い道は省内で決められるんだという、法律上は確かにそういうことなんだろうというふうに思いますけれども、道義上は、同じ法務省の関連施設だからといって、自分たちの考えでどう使おうが八王子市には関係ないなんて姿勢がもしあるとすれば、これはゆゆしき事態だと思いますよ。例えば、勝手に中身を刑務所に変えたなんということがあったら大変なことですよ、これは。

 百三十年近くお世話になった自治体に対して、礼を尽くすどころか、どちらかといえば恩をあだで返すような形でこの移転計画が今進んでいることに、私は大変憤りを感じてきょうこの場に立たせていただいているんです、大臣。

 市は既に、国交省に対しても財務省に対しても、当初希望していた合同庁舎計画は断念をして、現在、三者協議といいまして、最高裁と法務省と八王子市の間で、地検が移転をした後の建物についてはどういう活用方法があるんだろうかということをテーブルに着いて話をしましょうということになっているんですけれども、この協議会の中で、八王子市は、具体的には、八王子市の税務署ですとか、あるいは労働基準監督署ですとか、あるいはもともと皆さんの所管団体である法務局等々を入れ直して、言うならば、八王子市が目指していた合同庁舎計画を中古の建物でもいいから法務省さんの合庁の跡地を上手に使ってやろうではありませんかということを提案しております。

 ところが、法務省は、私の指摘の後、八王子市に何度か通っていますけれども、そのたびに自分たちが使いたい面積が変わるんです。ふえるんです。最初は二千五百平米程度必要だ、次会ったときには二千七百平米程度必要だ、その次会ったときには出入国管理事務所も入れる予定だ。だれがそんなことを決めたんですか。そんなことを法務省が勝手に、自分たちの建物だからといって何を入れたって構わないんだという姿勢があるとすれば、私はこれは話し合いはうまくいかないというふうに思います。

 八王子市の提案というのは極めて妥当な提案だというふうに思いますけれども、法務省は、ある意味では、一度その建物を明け渡して、そして改めて必要な面積を要求するような形の中で、誠意ある対応が必要だというふうに思いますけれども、大臣の御所見を伺いたいと思います。

南野国務大臣 先生のお話をるる聞かせていただき、いろいろな長い歴史の中でまちづくりというものはされていくんだな、その中で先生の思い入れもいっぱいその中にあるなというふうに思っております。

 御指摘の法務省の法務総合庁舎におきましては、区検察庁、それから保護観察所事務所が引き続き業務を続ける必要があることに加え、法務局支局や入国管理局出張所を入居させる必要があるというふうにも考えております。これに加えまして、八王子税務署、八王子労働基準監督署の業務に必要な面積を確保することは、これは不可能な状況にあることを御理解いただきたいと思っております。

 したがいまして、御指摘のような、地方合同庁舎とする案につきましては、現在の庁舎では面積の確保等の点で困難ではないかと考えておりますが、いずれにいたしましても、今後とも引き続き、八王子市と誠意を持って、本当に誠意を持って話し合っていきたいと考えております。

 先生のお気持ち、十分理解できるところでございます。

萩生田分科員 前段の答弁は全く納得できませんけれども、後段の大臣の思いというのは、多分、法務省の心になってくれることを期待したいというふうに思います。

 ちなみに大臣、今、多分、事務局から渡された答弁の中で出入国管理事務所という御答弁をされたんだと思いますけれども、多摩地域の出入国管理事務所というのはどこにあるか御存じですか。立川市にあるんですよ。立川市にある事務所を、立川市に新しい合同庁舎を建てるのに、大きな地検事務所を建てるのに、なぜそんなものを八王子に持ってこなきゃならないんですか。そういうところが、ある意味では、法務省が誤解を招く要因だと私は思うんですよ。立川に新しいものをつくるときに入れたらいいじゃないですか。

 それで、担当者は出入国管理事務所が町の活性化に寄与するかのようなことをおっしゃっていますけれども、ある意味では、留学生の学生さんですとか、あるいは、なかなかこれからは入ってこられなくなるんでしょうけれども、フィリピンの芸能人ですとか、そういう人たちがビザの延長のためにそこに出入りすることで、果たして町にどれだけの経済の効果があるかといったら、私は極めて疑問ですよ。

 ですから、大臣が今おっしゃったのは、法務省として使い道がこういうことがあるから、一万一千平米しかない今の建物の中で私たちが必要な面積を引くと、合同庁舎化は難しいんじゃないんですかというのが今の大臣の答えなんですよ。

 私が言っているのはそうじゃないんです。一万一千平米の建物は、地検をつくりたくて、八王子市民をどかせてまで手に入れた土地に建てた建物なんだから、主たる目的をなくした法務省は、この一万一千平米の建物をどうやって地元のために活用ができるかということを一緒に考えなきゃいけないと思うんですよ。法務省としての使い道がこれだけあるから合同庁舎は無理ですよというこの議論をしていたのなら、私はいつまでたっても問題は解決しないというふうに思います。

 もう一度言いますけれども、この場所には何十人という市民の皆さんが住んでいらっしゃったのをどかせて土地を取得した、法務省の当時の主たる目的は地方検察事務所ですよ。その本体である地検事務所がなくなるのに、うちはこういう使い道もあるし、こういう使い道もあるし、こういうのも新しく入れなきゃならないから、どう考えても合同庁舎は無理ですよと事務方が言っているんだとすれば、大臣、そんなでたらめをまともに聞いちゃだめです。もう一度、私と一緒に八王子に来て建物を見てもらうぐらいの、そういう気持ちで対応していただきたいというふうに思います。

 地検支部があったからこそ、市内には医療刑務所や多摩少年院、婦人補導院などの矯正施設が立地をすることになったということは、歴史的にも明らかだというふうに思います。しかし、八王子市や市民は、長い歴史の中で、こういった医療刑務所ですとかあるいは少年院という施設を一度たりとも邪魔にしたり、迷惑施設だなどと言ってそしったことも全くございません。

 どちらかといえば、私たちだって、少年院の運動会に行って激励をしたり、あるいは成人式に参加したり、あるいは矯正展を全国でやっていますけれども、実際には大臣、医療刑務所の囚人の皆さんというのは矯正作業できない人たちですよ。だから、矯正展という名のただのアンテナショップなんですね。よそでつくった品物を売っているだけなんです。だけれども、近隣の皆さんもみんなそれを温かく見守って、毎年多くの皆さんが医療刑務所にお出かけいただきますよ。

 まさに地域と一体となって、今日までお互いに信頼関係を持ってこういう施設は存在をしてきました。百三十年も前から裁判所や検察庁を抱える多摩地域の司法あるいは法曹行政の中心であるというプライドを持っていたからこそ、そういうことは我慢をしたし、文句一つ言わないで今日まで来ました。

 そういう関係にあった法務省が、今回、八王子市や地域住民に何の説明責任も果たさず、もし外へ移転を決めるとするならば、その後の対応も省内の問題という姿勢を今とり続けているということを披瀝しましたけれども、この際は、せっかく地検がいなくなるんだったら関連施設も全部一緒に引っ越してくれないか、これが市民の大方の意見ですよ。圧倒的に、感情的に皆さんがなっていらっしゃる。そういう意見になるのも、私は今の法務省の姿勢をもってすればやむを得ないというふうに思いますけれども、いかが感じますか。

南野国務大臣 先生の熱い思いを聞かせていただきながら御答弁させていただきたいわけですが、検察庁支部等の今回の移転を決めるまでの経緯の中で、八王子市側と協議を重ねてきたものとお聞きいたしておりますが、今後とも、八王子市の住民の方に一層御理解を得られるよう、八王子市側と誠意を持って話し合っていきたいと思っております。

 八王子の刑務所等にもお邪魔させていただいたことがございます。先生方の御努力も聞かせていただいたことでもございます。そのように誠意を持って当たりたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

萩生田分科員 ついつい、大臣の優しい答弁を聞くと、トーンが下がってしまうんです。

 今大臣が協議を続けているとお話があったんだけれども、それはさっき僕が指摘をしたように、法務省みずからの意思で始めた協議会じゃないの。言うならば、地元の代議士である私に指摘をされ、けつをたたかれ、そして、本来は三権分立ですから、裁判所と法務省が同じテーブルに着いて移転計画を進めるというのはおかしな話なんですけれども、しかし、整合性を考えるとやはり一緒に話をするべきだといって、しかも、再三言うこの土地については、三分の二は裁判所ね、三分の一は法務省ねといって分けた土地なわけですから、そのことを考えると、やはり八王子市を含めた三者で協議を続けるべきだといって設置したのが今の協議会なんですね。

 ですから、この協議会をつくったのも、言うならば法務省の意思はない中でつくられてきたということを、これは、都合のいいことを報告するかもしれませんけれども、私の言うことを信じていただいて、ぜひ今後、厳しい目で推移を見守っていただきたいというふうに思います。

 時間が参りましたので、最後に、ある意味では市民の支柱ともいうべき地検がなくなる以上、この際、矯正関連施設について見直しを求める声があるのは当然だというふうに私は思います。

 市側の要望は、JR八王子駅南口の再開発の計画が今ございまして、五十四万都市の玄関口ですから、何とか産業の振興にも寄与したい、あるいは観光都市としてさらにグレードアップを図っていきたい、そのためには、駅の北口の整備は終わりましたけれども、南口の整備をしたいという計画を持っております。

 ところが、御承知のように、この医療刑務所は、JRの八王子駅の南口から歩いて五分のところなんですね。私の足で五分だから、十分ぐらいかかる人もいるかもしれません。ただ、いずれにしても、極めて立地のいい場所でありまして、しかも国道十六号の沿線に立地をしております。ある意味では、八王子の南の玄関口に位置していると言っても過言ではないというふうに私は思います。

 もし、この刑務所が将来にわたってこの場所で存続をする必要性があるんだったら、私も国会議員として大いにそのサポートはしたいというふうに思いますけれども、しかし、今回、地検そのものが移転をするという大きな転換期を迎えました。

 私は、この際、ある意味では、そういう矯正施設が八王子市に存在し続ける理由が一部欠落をしてきたんじゃないかというふうに思います。それは、冒頭申し上げた質疑でも明らかだというふうに思います。

 ですから、この医療刑務所につきましては、今までの経緯を含めて、市民の皆さんは、一緒に市外へ出ていってもらってくれ、こう言っていますけれども、そんな乱暴なお話は通らないというふうに私は思いますので、幸いにして、私どもの八王子市は百八十七平方キロメートルという市域を持っています、山手線の三倍の面積です。この中には、実は未利用国有地等々もたくさんございます。ですから、今までの経緯を踏まえて、将来、今すぐどうのこうのではありませんけれども、この医療刑務所が例えば改修、改築の時期を迎える時期には、今回設置をした協議会の中で、改めて市内での移転というのを市の意向に沿って考えてさしあげることは、私は、決して市の横暴な要求じゃないというふうに思います。

 まちづくりの観点からも、合同庁舎の計画と医療刑務所の移転といったたった二つの条件は、百三十年間の縁を切るには余りにも安い慰謝料じゃないかな、私はこう思っているところでございまして、ぜひ、これらにつきましては今後誠意ある対応を期待します。

 もう十分誠意ある答弁をいただいておりますけれども、改めて、私の性格をよく知る大臣が、私がここまで語気を荒くしてこの公の委員会で発言をしなきゃならなかったという経緯をよく踏まえて、最後に御感想なり、お考えを聞かせていただきたいと思います。

南野国務大臣 本当に、長い歴史というものは大切にしたいと思います。拘置所や少年鑑別所などにつきましては、検察庁などの司法機関と近接していることが業務を運営していく上で望ましい、そういう思いも先生おありだと思います。

 また、医療刑務所については、必ずしも検察庁と近接していなければならないというものではない、また、八王子医療刑務所を東京地方検察庁八王子支部にあわせて移転することということは考えてはいないのが現状でございますが、八王子市からそのような要望があると聞いておりますので、将来におきましては、八王子医療刑務所を改築する際、そういうときには、改めて八王子市と協力する必要があると考えておりますし、そのときには、萩生田先生にしっかり中心になって御指導いただきたいというふうにも思っております。

萩生田分科員 ありがとうございました。

 ぜひ、今すぐどうしろこうしろというと、いろいろ行きどまりもあるというふうに思います。せっかく、パートナーとして長い間、法務省と八王子市は信頼関係を築いて今日の町があるわけですから、この移転によって、今までの信頼がすべて損なわれるようなことのないように、引き続き、市の要望、希望というのをしっかり聞いて、そして、堂々と立川に新しい地検事務所をつくられることを望んで、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

植竹主査 これにて萩生田光一君の質疑は終了いたしました。

 次に、中山泰秀君。

中山(泰)分科員 ありがとうございます。ただいま委員長から御指名を賜りました中山泰秀でございます。

 南野大臣におかれましては、本当に、昨晩は雪が降るぐらい寒い中、そしてまた、今はインフルエンザが大変流行いたしております。一人の人間が三回違うインフルエンザを、最悪の可能性引く場合があるぐらい風邪がはやっている中で、南野大臣には日夜、国政のために御活躍をいただいておりますが、本当に心から敬意を表しますと同時に、諸先輩の先生方にも、同様の趣旨で心からお見舞いを申し上げさせていただく次第でございます。

 そしてまた、南野大臣におかれましては、就任以来、本当にたくさんの、この日本の治安を揺るがすような問題、そしてまた今まで考えられなかったような事故や事件等が多発している中で、私は大阪の北区というところで生まれ、そして育ちましたけれども、大阪のエリア的な問題はないと思うんですが、特に大阪の近県もしくは大阪府下で同様の、今まで犯罪史上、過去に見ないようないろいろな事件や事故が起きている。

 特に、一番新しい記憶では、寝屋川の先生、自分の母校にその卒業生が訪ねて、そして、そこで親切にも、職員室がどこだということを迷った卒業生に対して、善意の気持ちを持って現在の教員の方が、階段を上って案内していたところを後ろから包丁で殺傷をしてしまう、そしてまた職員室に入って、栄養士の先生、またそれ以外の女性の先生の二名にけがをさせてしまうという、本当に考えられないような事件が起きております。

 私自身も本当に心を痛めておりますと同時に、私も、実は、大阪府が太田知事主導で、大阪府下の学校等の警備を強化するため、私の母校でございます私立追手門学院小学校というところを卒業しておりますが、そこが過去から一番そういった生徒児童の警備に日本全国を見ても非常に熱心であるということで、太田知事が私の母校を取り上げていただいて、今、大阪府で、どのように学校自体を警備強化するかということをお諮りいただいている最中でございます。

 たまたま先週、現場にお邪魔をして、この件に関して、私の母校の学校の教頭先生、当時は、私が小学校三年のときの担任でございましたが、この先生にお尋ねを申しましたところ、やはり、幾らドアを閉めても、生徒に防犯ブザーを持たせても、卒業生ですと言われたら、ガードマンは門をあけないわけにはいかないんだと。

 茶髪で来られようが、パンチパーマを当てていようが、タトゥーや入れ墨が、最近のことですから入っていようが、卒業生だと言われたら、やはりあけないわけにはいかないというふうな意味で、どうやって守るかということも本当に非常に大変です。テレビカメラをつけても、意味がある部分、犯罪捜査という面では意味があるかもわかりませんけれども、まだ一〇〇%ではない。そしてまた、人間の目線でのチェックということも、そうやって抜けてしまう場合がある。

 その中で、特に、この寝屋川市の問題の以前にも、奈良県の例の小林薫容疑者によります、小学校一年生の児童が誘拐をされ、そして殺害をされ、母親に対して自分の娘の写真をメールに添付して犯人が母親に送る、これは、私も一児の父親として考えられないということ。そしてまた、安城市のイトーヨーカ堂のお店の中で起きた事件に関しましても、もう少しで一歳の誕生日を迎える子供、それを母親が抱いている最中に、母親のこの手の中で包丁を刺すという本当に考えられない事故。

 こういったものを考えておりますと、こういった実際に犯罪を実行した実行犯、特にこの安城市に関しては私と同い年の被疑者でございますから、そういった者がいて、そして今回の寝屋川市と連続でございますけれども、特に最後の寝屋川市の事件においては十七歳、十八歳ぎりぎり。そしてまた、十六歳からわずか一年しかたっていないという、少年法の適用云々という問題よりも、もう小学生でもひげが生えて、下手をしたら大学生か予備校生に見えるぐらいのこの今の時代、体力でいっても、体格的にいっても、もう大人と言ってもおかしくない。ただ、体は、肉体的には大人であっても、しかし中身が育ち切っていない。

 ところが、逆に、三十四歳というのは大人であるはずなのにもかかわらず犯罪を起こし、また仮出所中という身分であり保護下にあったわけですけれども、それでも事件や事故を起こしてしまったということを考えますと、私は、その実際お子様を亡くしてしまった、とうとい命を生み育ててきた親の気持ちに立って、これからこの少年法というものを改めて見直し、そしてまた少年AとかBとかという言い方ではなくて、はっきりとパニッシュメントというものを与えるべく、少なくとも氏名の公開というものに踏み切る時代に来ているんじゃないかということを強く申し述べたいと思いますけれども、その点に関しまして、大臣の御見解、法務省の御見解をお聞かせいただけたらありがたいと思います。

滝副大臣 ただいま先生の方から、最近のこの重大事件について、住民の皆さん方の防衛のしようのない嘆きと申しますか、そういうことも含めてお聞かせをいただきました。御指摘のように、やはり、最近の情報社会あるいは体格の変化、そういうことに応じて、少年に対する扱いあるいはそれに対する世間の考え、当然、変わってきてしかるべき問題があるだろうと思います。

 そういう意味では、平成十二年に議員立法で、少なくとも十六歳以上の少年について、重大事件があれば、それは断固、刑事処分として対象にできるような措置が講ぜられたところでございます。それによって、やはり少年といえども規範意識を、健全に育ってほしいという思いがあの立法の中にはあったと思います。そういう中で、今改めて、少年については名前を伏すんだ、こういう少年法の条文があるわけでございますけれども、こういう際には改めてそういった問題についてやはり議論をしていただく、そういう時期に来ているのかなということを、今の御指摘で考えさせられているわけでございます。

 しかし、これについては、やはり改めて、多くの皆さん方の思いというものも議論の中に入れていただいて決めていかなければいけない、そういうような感じがいたします。ぜひ、それは国会の中で議論をしていかなければならない問題だろうと思います。私ども法務省も、そういった意見の集約をぜひお願いしたいというふうに思う次第でございます。

中山(泰)分科員 今、御答弁を先生からいただいたとおりの方向性で、ぜひ御検討いただければ大変ありがたいと思います。

 特に、インターネット等でどなたかわからない方が、もしくは、恐らく母校の同窓生かと思われます、イヤーブックというか思い出アルバムからその被疑者の写真を取り抜いて、そして勝手にだれかがそれをネット上で知らしめるという行為。これに関しては、現在のルールの範囲内でいえば、かえってその方々が悪いわけで、そして同時に、しかしどうも風潮的に、その実行を、悪いことをやった犯人に対する人権の論議ばかりが前に出て進んでいってしまって、そしてまた、それがイデオロギー闘争となって法曹界等でも賛成、反対というふうに分かれてくるということ、これは私は逆に非常に悲しい問題だと思っております。

 政治的な問題ではなくて、一人間として、私たちも母親の体から生まれ、そして同じように子孫を繁栄させなければいけないという使命を帯びている。その中でしっかりとした心を律するということ、これを行っていく、しかしそれができない人間が残念ながらいるということ。

 ですから、そういった問題を犯してしまった方々に対しては、今御答弁いただいた趣旨で、しっかりとした結果から踏まえた対策というものをやる。そして同時に、先ほども申し上げたように、もしかして今、こんな遠い話のことで自分の子供にまさかそんなことが起きない、もしくは私の子供がそういうことを犯すとは考えられないという親もたくさんいらっしゃると思いますけれども、やはり災いはいきなり天から降ってくるものでございますので、そういった点を踏まえますと、そういったことを起こさない、新たな犯人を生まない教育環境づくりというものにも、文科省そしてその他の各関係省庁と連絡をおとりいただきながら、もうそろそろ実践をしていただく、議論ではない、アクションプランでやっていくという時代に入っているのではないか、そのように考える次第でございます。

 そしてまた、今回、愛知県の安城市の事件に関しましては、特にその実行犯が仮出獄の最中であった。すべてのいろいろな法務省が御用意をされた条件を満たして、そしてどちらかというと、塀の中にその被疑者の方がいらっしゃったときは模範囚としてまじめにしていらっしゃった。そして、すべての人間の目、逆に言えば何万人もの受刑者の方を見てきて、そして何万人もの仮出獄の許可を出されていた。しかし、その中にも漏れがあったということ。それは、もうそろそろそういったシステムにも限界が来ているということも考えなければいけないと思っています。

 そしてまた、同時に、その実行犯、もしくは先ほど申し上げた小林薫のような人間が性犯罪というものを、犯罪の中でも四大罪のうちの一つと言われております強姦とかそういった性にかかわる犯罪を犯し、そしてまた犯人という一つの母体を通じて、犯罪の質が連鎖をして、連続性を持っている時代でもございます。

 その中で、今、自民党の中でも法務部会の中に小委員会をつくりまして、特に幼児、児童に対する性的虐待に関して、再犯をした犯人もしくは前科を持っている方、イコールだと思いますけれども、そういった方々の居住情報なり、所在情報というものを開示していくということが議論されております。私がこの党の中の議論をここの場で申し上げるのも何でしょうけれども、しかし党の中では児童に対してということで限定をする議論になっております。私は、これは間違った方向だと思っております。

 これは、成人を迎えた女性に対しても同じように適用し、そして同じように情報公開をされるべきであると。中には、最近、セクハラの話じゃありませんけれども、例えばAというハンサムな方に声をかけられたり手を触られてもかえって不快とは思わないけれども、Bさんにやられると同じ行為でも嫌だという受け手側の問題もあります。

 大人になってくると、やはり色恋の仲で難しいこともあります。しかし同時に、子供だけと限定してしまうというのは、ちょっと考え方として私は見直すべき方向だというふうに考えておりますので、この子供を対象とする性犯罪に限るべきじゃないかということに関して、私の申し上げた意見をどのように大臣がお考え、そしてお感じになられるか、ぜひ御答弁を賜ればありがたいと思います。

南野国務大臣 本当に、先生おっしゃるとおり、新聞を見れば毎日毎日新しい事件にぶつかり、本当に重大な犯罪が広がってきていることに心を痛める毎日でございます。中でも性という問題または命という問題にかかわっていることには、本当につらい思いをしているところでございます。

 今先生がいろいろお話しになられましたその問題につきましては、子供を対象とする性犯罪に限るべきではないのではないかというお話でございます。

 警察庁とは、当初、子供を対象とする性犯罪を中心に協議をしてまいりました。しかし、その後、警察庁から性犯罪以外の受刑者の情報の提供についてもどのような取り扱いが適切か検討していただきたいとの要請もございました。

 法務省といたしましては、受刑者の改善更生に配慮しながら再犯を防止するための取り組み、それにやはり積極的に協力するという観点から、この協議の要請に応ずることといたしまして、現在、協議を続けているところでございます。

 先生の意図するところがこの中に酌まれていけば幸せだというふうに思いますが、提供する情報の具体的な範囲につきましては、今後、まず警察において、どの範囲の犯罪を中心にその再犯の防止に力点を置こうとするのか、そういった検討もなされた上で、犯罪の再犯率の高さや国民に与える不安感等の点を考慮に入れながら決められていくものと考えております。さらに十分な協議を尽くしてまいりたいと思っております。

 こういう悲しい事件を起こさないように、その当事者だけでなく、家族、その周りが大変気の毒であるというふうに思っております。

中山(泰)分科員 今南野大臣から御丁寧に御答弁を賜り、本当にありがたく存じます。特に、私の意見をお酌み取りいただき、そしてまた大臣の個人的なお心のあらわれを、そしてまた一端を申し述べていただいたことに本当に心から敬意を表させていただきます。

 特に、南野大臣におかれましては、看護婦の御職業、看護師と申さなければいけないんでしょうけれども、ナイチンゲールの精神でもって、今までいろいろなおけが、そして負傷された方々を病院でもって何人もの方を治療し、そしてまた、その方が治癒されることに御尽力をなさってこられたという中、そしてまた、特に、大臣も女性の大臣として女性の立場にお立ちいただき、これからのそういった性犯罪に対するあり方、そして最後に申し述べていただきましたような、犯人、被疑者の気持ち、被疑者の権利というものよりも、その被害に遭った人間の心、そしてもしくは最悪に強姦と致死というものが重なったとき、その方の将来、未来にこれだけ明るいものがあったものを一瞬にして消し去ってしまった、その罪の重さということを、しっかりと道徳的な考え方、精神論にのっとって御解決をしていただくということ、そしてそのシステムをお考えいただくということをぜひお願いいたしたいと思います。

 幸いなことに、日本そしてまた日本人としての心、そういったものは私は世界的に見ても本当に世界じゅうの人から称賛を受けておかしくないぐらい清らかな精神、そういったものを宿している。私の尊敬しております森喜朗前内閣総理大臣におかれましても、道徳教育、そして宗教的な情操教育というものがそろそろ日本の子供たちにも必要な時期が来ているんじゃないかと。

 私は、ちょっと道はそれますけれども、私どもの小さいときというのは、「まんが日本昔ばなし」とか、漫画でなくても日本昔話ということ、特に年末、大みそかになりますと、私はいつも「かさじぞう」なんかの話を思い出します。

 お金はないけれども、かさを編んでいる職業を営んでいる、ある農村の方が、奥さんに今から町の方に売りに行ってくるよと言ってきた。ところが、編みがさを編んだものなんかというのはなかなか町の人が見向きもしてくれない、買ってくれない。貧乏たらしく売っているから結局は売れなかった。そして、その帰り道、雪がしんしんと降る寒い中に約七体ぐらいのお地蔵さんが並んでいて、そのお地蔵さんの頭に雪が乗ったからかわいそうにといって、一つ一つ売り物であって前の晩つくったかさをかぶせてあげる。

 そして最後は、一体だけどうしてもかさが足りなかったので、自分が首に巻いていた手ぬぐいをその一番小さなお地蔵さんに巻いてあげる。家に帰ればおかみさんが待っていて、まあ全部売れたの、よかったねと言って、いや、全部売れていないんだ、こういうことがあって、こうやってお地蔵さんにかぶせてきてあげたんだよと言ったら、ああよかったよかった、これで心は清らかに年が越せるよ、ひもじい思いをしてもと。そうしたら、元旦の晩にごとごと音がして、お地蔵さんがミカンやおもちを運んできてくれるというような、本当に道徳心のあらわれのような話です。

 そういったものが今学校の教育現場では逆に話されることがなく、そしてまた指導されることもなく、ゲームだけが頻繁に行われ、人を殺傷するような、そういったゲームがすごく多くなってきて、専門家から言わせれば、前頭葉で物を考えることがない子供たちがふえているという議論もふえています。

 ですから、そういったことから、先ほど申し述べたように、教育の現場にそういった日本昔話のようなものも、道徳教育の一環として、日本のストーリーとしてどんどん広めていくことというのも必要なんじゃないかなというふうに私は考えております。

 そして同時に、イギリス、そしてまた米国という国は性犯罪の再犯率というのが高いということ。そして逆に、今申し述べたような、我が国が誇るような道徳心というものがあるおかげで、そういった性犯罪、劣悪な性犯罪というものの発生率が、今まではどちらかというと欧米各国に比べると少なかった。どちらかというと米国やヨーロッパの方が多かった。

 逆に言えば、犯罪先進国という表現はアメリカや今申し上げたヨーロッパの国々に対して非常に御無礼かもわかりませんけれども、同時に、それだけデータも豊富であるということ。そのデータを豊富に持っている欧米各国が、性犯罪者の再犯を犯した者に対して、その居住情報、所在地、そういったものを公開しております。

 実際にイギリスでは、例えば、女性があるAという町の地域に引っ越しをしたい、そしてそういうコールセンターに電話をすれば、インターネット上、もしくはコールセンターの方が、私は今度ここに引っ越すんだけれども、こういうところにこういった犯人はいないかと言ったら、氏名は申し上げられるのかどうかは別としても、いや、ここにはそういう方はおりますとか、いるいないということをはっきり情報として公開しておられる。

 そしてまた、犯人に対しては、今実験段階ではございますけれども、GPS発信機能を備えたような、大臣もよく御存じのような実験をして、そういった所在を、保護観察というか当局が把握をしようとし、そしてその犯人が新たな犯罪を犯すことをできるだけ抑止しようというシステムづくりに非常に努力をしているという中で、我が国が、受刑者の出所後の所在情報、そういったものをこれから、法務省だけにとどまらず、各行政機関と一緒になって一般市民への開示というものを広げる、そういったことも考えていかなければいけないときに来ていると思いますけれども、そういったことに対して御所見をお伺いさせていただければありがたいと思います。

滝副大臣 今、先生が「かさじぞう」のお話をお聞かせいただきました。まさに、幼児教育の原点、人間の原点に立ち返った、そういう世界が今の日本では薄らいできている、こういうような御指摘でもあろうかと思います。

 その中で、奈良の事件に端を発しまして、性犯罪者につきましては、この今回の事件にかんがみて、やはり、もともと行政機関同士、少なくとも治安の任に当たる機関は相互に情報を持っていなければいけない、こういうところから出発したわけでございますけれども、先生御指摘のように、特に性犯罪がふえてきた英国、米国においては、あのメーガン法に見られますように、居所の問題について何がしかの公開をしていく、こういうようなことはやはり日本でも検討されなければならないという御指摘でございまして、私もそのとおりだと思います。

 ただし、日本の場合には、これは欧米と違って、今降ってわいたような感じもしないわけではございませんので、スピードを持って解決しなければなりませんけれども、やはり英国の場合には、公開するにいたしましても、治安判事というクッションを、ステージを一つ置いて、そこの判断によっていろいろ考えていくというのがございます。それから、アメリカのメーガン法の場合は、それぞれの州がそれぞれ独自の方法をもってこの問題に当たるということで、その濃淡がいろいろございます。

 そういうことも含めて、私どもは、法務省、警察庁と、この問題は、かなり詳細なデータを持っているはずでございますから、そういうものをもとにして改めて部内で検討すべきだ、こういうことを申しておるわけでございます。そしてまた、国会の中でも、おかげさまで今おっしゃるように、いろいろな角度から議論していただくということが、これは日本全国に向かって、そういうことの危機意識を持ってもらうためにも何よりも必要なことだろうと思いますので、省は省として検討をそういうふうに進めてまいりたいという段階でございます。

中山(泰)分科員 ありがとうございます。

 特に、やはり、今まで被害を受けられた御家族、そして天国に召されました魂も、恐らくこの議論を一生懸命注視してお聞きいただけているのではないかと思います。と同時に、今先生のおっしゃられたような方向性でぜひお願いをしたいと思っております。

 特に、世界的にテロを見ましても、テロの原因というのは何だと言われたときに、貧富の差であるということも申されております。特に、今回のこの安城市の事件を起こしました被疑者は、出所して幾ばくかのお金は保有していたものの、実際捕まったときというのはお金も何もなかった。私は、そういったことも一つ精神的にプレッシャーを本人が感じるストレスとして、その原因にもなっているんじゃないかと思います。

 もう時間もないので端的にお伺いをさせていただきますが、そういった保護観察対象者に対して就労支援というものがいかに行われているかということを短くお答えいただければありがたいと思います。

滝副大臣 日本の場合には、もう実は明治の中ごろから、当時の監獄と言われた時代から、出所者の生活支援というものに重きをなしていわば保護という制度をやってまいりました。

 現在、御案内のとおり、犯罪者予防更生法ですか、そういうものに基づきましてやっているわけでございますけれども、基本的には、戦後四十八年ぐらいを底にして犯罪が減ってきた、そしてまた、その後のバブルのときにも犯罪がかなり減ってきた、あるいは、減らないまでも、働く場所はかなり出所者についても恵まれてきたということもございまして、実は、職業の上からも、御指摘のような保護政策というのがいわばとんざをしてきたというか必要なくなってきたという経験がございまして、今なおそういう中で必要性が急に出てきたような事情もございまして、やはりこの問題にもう少し真剣に取り組んでいくというのが最大の課題だろうというふうに考えておるわけでございます。

 先般、大臣がこの基本方針を発表した三つの今後の重点の中にも、この問題を特に力を入れてやるべきだということを改めて法務省の方針として掲げさせていただいたところでございまして、御指摘のような格好で、やはりこれは大きな緊急の課題として取り組むということは省としても考えていく予定にしてございますので、いろいろまた御支援を賜りたいと思うわけでございます。

中山(泰)分科員 今、省としてのお考えを申し述べていただきました。ぜひその方向性でお考え、そしてこれからは本当に、先ほども申し上げたようにアクションプランとして行っていただければありがたいというふうに存じます。

 そして、もう時間でございますので、最後の問い二つを一つにして御質問させていただければありがたいと思いますけれども、実は、私の地元というのは五つの行政区がございまして、そのうちの一つの行政区の私の後援会の会長さんは、実は保護司会の会長でございます。

 私は、その会長さんからの御意見をいろいろ実は聞いておりまして、現実的に保護司の声として、そろそろ限界が来ている。それは何かといったら、二十四時間態勢で、法務省がわかりやすい「図説 更生保護」というものを出していらっしゃいますけれども、この中に、保護司というのは条件的に「社会的信望」そして「熱意と時間的余裕」「生活の安定」「健康」、そういった方が保護司に任命をされるということでございます。

 そういった立派な方は、当然すばらしい御家族を一緒に養っていらっしゃって、そこへ更生を受けられる方が出てきて、そしていろいろな指導を受け、また保護を受けるわけでございますけれども、その中で、そういった保護司の方々が二十四時間態勢で頑張っていらっしゃる。

 そして同時に、幾ら保護司といえども人間でございます。恐怖感、そういった心もあります。犯罪を犯された方が目の前に来ていて、その者に対して多少の恐怖は覚えながら、そろそろ限界点というか、そういった、新たな保護司の訓練、もしくは外部に委託することとか、保護司制度にかわり得る何か新しいアイデアというのも役所として御検討をいただかなければいけない時代に来ていると思いますので、その点に関して御所見を賜れればありがたいと思います。

南野国務大臣 本当に先生の優しいお心がすべての質問の中に出ているなというふうに思っております。

 御指摘のとおり、保護司は保護観察の担い手として献身的な活動に取り組んでおられます。犯罪や非行を犯した人たちの再犯防止または社会復帰を図るには、官の働きかけだけではこれは十分ではないな。人生経験豊かでそして地域の実情も詳しい民間ボランティアである保護司の方々、その温かいお力添えがあってこそ、その効果が上がるものと本当に認識いたしております。一方、その活動は地道で多くの困難が伴うものであり、まことに頭の下がる思いでございます。

 このような保護司の活動がより円滑に行われますように、法務省といたしましては、処遇に困難を伴うケースにつきまして、保護観察官の直接的関与の強化を図っていくとともに、そのようなケースに的確に対応できる知識それから技術の向上を図るための研修の充実を図っていく、また保護司の活動に対する支援の充実ということにも努めていきたいというふうに思っております。

中山(泰)分科員 保護司のネットワークというのは、本当に日本のそういった防犯、治安というものを支える大切なネットーワークでございます。そして、法務省の過去の歴代の大臣の指導を中心に今まで行ってこられたことだと思うんです。これからもぜひ南野大臣には、私の質問の趣旨をお踏まえの上、御尽力を賜りますように、諸先生、諸先輩方にも心からお願いを申し上げ、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

 本日は本当にありがとうございました。

植竹主査 これにて中山泰秀君の質疑は終了いたしました。

 次に、馬淵澄夫君。

馬淵分科員 民主党の馬淵でございます。

 本日はこの第三分科会で南野法務大臣に質疑をさせていただく機会をいただきました。三十分という短い時間でございますが、ひとつ南野大臣からはぜひとも真摯なお答えをいただきたい、このように思っております。

 私自身は、奈良の一区選出の代議士でございまして、奈良一区、これは奈良市でございます。この奈良市では、昨年、もう皆さんが御存じのように大変悲惨な事件が起きました。有山楓ちゃんという小学校一年生の女の子が誘拐をされ、そしてその犯人から楓ちゃんが持っていた携帯電話によってその姿が写されたものが母親に送りつけられてきた。そして、その晩未明に楓ちゃんの亡きがらが放置され、その後も執拗にメールが送られてきたりなどした。残念なことに奈良市という名前がこの悲惨な事件によって全国に知れ渡り、多くの皆さんが胸を痛めた事件だったというふうに思っています。

 そして何よりも、この事件は私が住む自宅から数百メートルのところの現場でありました。また私自身、六人の子供の父親でございます。五番目の子供が楓ちゃんが通うダンスクラブの友達と遊び仲間であったということで、本当に我が子のことのように、子を持つ親として本当につらい、いたたまれない気持ちになったこの事件でございました。

 この事件は、性犯罪、そしていわゆる猟奇的な事件ということで特に注目を集めたわけでありますが、その中でも地元奈良県警、その皆さん方の必死の努力によって、年末押し迫った十二月三十日に、容疑者である小林薫、この者が逮捕されました。そして、自供によってその犯罪は解決の方向へと向かっていくわけでありますが、さまざまなところでこの小林容疑者のことが報道を繰り返されました。私の地元でも小林容疑者のかつての犯歴というようなものが報道が繰り返されました。かつて一九八九年に大阪府の箕面市で幼女八人にいたずらしたとして強制わいせつで、また一九九一年大阪府の大阪市住吉区で五歳の女の子に後ろから抱きつき騒がれたために押し倒して首を絞めたとして、これは殺人未遂の容疑で逮捕されるという二つの前科があったというふうに伝えられております。

 事件は解決いたしました。しかし、こうした事件を私自身、間近に見た中で、本当にさまざまな思いが去来をしたわけであります。かつて二度の前歴があった、前科があった小林容疑者の起こした事件ではありますが、まず大臣に、こうした事件に対する所感というものをお聞かせいただけませんでしょうか。

南野国務大臣 本当に先生のお地元で起きたという事件には先生もびっくりされたと思います。滝副大臣もお地元であり、本当にびっくりしたことを我々、常々話し合っております。私にも大きなショックでございました。どうしてこういうことが起こるのだろうか、本当にあってはならないことというふうに思っております。言葉に言い尽くせないほどの惨事である。そして、御家族はどうなんだろうか、そのお心を思うと、本当に家族というものの方々に、御冥福を祈り、そして哀悼の意をささげたい、そのように思っております。

 私は、助産婦として、命または性という問題について思いをいたし、今までそれに取り組んできたところでございますが、子供の性の被害ということについて、また命を奪われるといった最近の痛ましい事件を目の当たりにしますと、このような事件を防ぐために本当に真剣に頑張らなければならない、そのように思っております。国民の皆様方の不安な気持ちも受けとめまして、このような犯罪から子供を守る、家族を守るということにどう尽くしていけばいいのかということを今真剣に取り組んでいる所存でございます。

馬淵分科員 本当に胸の痛む思いでございます。楓ちゃんの御家族は、そっとしておいてほしいというそのお気持ち、察するに余りあります。

 私も、地元選出の国会議員として、一体どのようなことができるんだろうか。事件の解決は警察にお任せして、殊さらにパフォーマンス的なことは慎むべきである、そして御遺族の気持ちを思えば本当にそっとしておいてあげる、何よりも解決を願うということ。しかし、この事件の裏に隠された、あるいは問題の本質というものがそこにあるのではないか。そしてそれをひもといて国会やあるいは行政の場で明らかにしていくこと、これが私が議員として課せられた使命である、かように考えるようになりました。

 この事件、あるいはこの事件だけではなく最近の犯罪というものを考えれば、私は大きくは三つの論点が見出せるのではないかと考えました。

 一つは、今回、携帯のメールなどを使ってということで、インターネットなどのように匿名性の高い情報がはんらんをし、そしてそうした情報によって、潜在的な犯罪を起こし得るあるいは犯罪までも考えないとしてもよからぬことを考えていた人たちが、共有する仲間がいるんだということで、むしろ本来なら潜在的におさまっていたはずの衝動が抑え切れなくなってしまう。こうしたインターネット情報、匿名性の高い、極めてアクセスが簡易な情報のはんらんというものに対してどう取り組むべきか。これも非常に重要な観点だと私自身、考えるようになりました。

 そしてもう一点は、これも既にお取り組みのところだというふうにお聞きをしておりますが、犯罪を犯した者、そして行刑施設によって受刑を終え出所してきた後に、いわゆる再犯ということを考えれば、その出所時情報などの開示。特に、こうしたものについては、米国のメーガン法に始まるさまざまな法律、この出所時情報だけでないさまざまな情報の開示というもの。これも、もちろんのこと慎重に取り扱わなければなりませんが、大事な観点として、二点目、十分な国会での議論やあるいは行政での対応というものを突き詰めていかねばならないと思うようになりました。

 そして三点目でございますが、こうした犯罪を起こす方々、残念なことに、かつて二度の犯歴があったこの小林容疑者でもありましたが、受刑のその場において、いわゆる矯正あるいは更生というその施策は本当に十分に培われているんだろうか。犯罪を起こして、そしてそれを逮捕するまでは警察です。しかし、その後罪を償うために行刑施設において受刑をする。この受刑者たちが、果たしてその年月の間に更生、矯正が十分に図れるような仕組みになっているのかどうか。今回、私がこの分科会でも問題点、あるいは大臣からぜひお聞きをしていきたいと思ったのは、この矯正、更生の点でございます。

 そこで、この矯正、更生というところに目を向けてまいりたいんですが、法務省の方から資料をいただきました。

 例えば、性犯罪においては再犯性が高いなどと巷間言われておりました。しかし、警察庁の方々にお話を伺いますと、その再犯率というデータのとり方、統計のとり方というのはされておられません。したがいまして、犯罪を犯した者が再度犯罪を犯す確率というものについては、それを同定していくということは大変難しい。法務省さんの方にお聞きをしますと、犯罪を犯したということではなくて、いわゆる受刑施設に再入所する、一般にこれは再入率と呼んでおられるそうでありますが、この再入率についてはしっかりとデータをとっておられるということでありました。

 私、きょうもお配りをしましたが、この再入率という表をいただきました。平成十五年末の時点でございますが、いわゆる全国の受刑施設、行刑施設によって得られたデータとして、一度入所した者が再度入所するという形での再入率、総数でいいますと、全罪名による再入は三二・九%、いわゆる三分の一でございます。そして、これらの中でとりわけ性犯罪というものに目を向ければ、平成十五年末の数字で二三・一%。しかしながら、同罪名、例えば性犯罪である罪を犯して受刑をした、その者がまた同じく性犯罪によって受刑をしたとなると、同罪名の再入は七・二%である。

 私は、これを見て、これは再入という数字ですから、犯罪を犯したというのはまた違うということ、これも御説明を受けました。いわゆる執行猶予などは含まれない、あるいは起訴猶予、それこそ逮捕にまで至らなかった場面等々も含めると、その犯罪全体をつかむというには難しいかもしれません。しかし、この数字、全罪名によっての再入率は三二・九%であり、そして性犯罪二三・一%、同罪名は七・二%というこの数字を見て、これを見てまず大臣はどのようにお感じでありますでしょうか、お聞かせいただけますでしょうか。

南野国務大臣 もう本当に、どのような形で刑を執行させていただいているときに矯正をどのようにすべきかというような問題点、また、どうしてこのような数になったんだろうかと、その間、その人の生活の問題点も含めながら考えていきたいところですが、ちょっとここで、我々が対策として考えていることを申し上げてよろしいでしょうか。(馬淵分科員「まずどうお感じか、どうお考えかをお答えください」と呼ぶ)

 それは今申し上げたとおりでございまして、このように再犯というような形で、一度外に出た方がまた帰ってくるという、そういう環境というものも我々考えていかなければならない。今先生が幾つかの事例を申されましたけれども、そのような問題点の中に、彼らに環境をどうつくっていかなければならなかったかということを考えております。

馬淵分科員 この再入率ですね、これを過去十年振り返った数字というのもいただきました。平成四年から、いわゆる再入率、出所年を含む三カ年の再入人員の比率ということでございますが、これを見ますと、三三・三%から、先ほど申し上げた十三年、三二・九%、若干の上下ございますが、ほぼ横ばいの数字でございます。

 こうした再入率をしっかりとっておられて、これをごらんになっていられますが、先ほど大臣がお話しかけられた、どのように更生、矯正していくかということ、これも重要な観点でございますが、私は、そこで一つお聞きをしたいのは、例えば、出所後に何人の者が入ってきたということよりも、その出所後にどのような経路を経て社会に復帰をし、どのような経路を経てそこで壁にぶち当たり、再び犯罪を犯して、そして残念ながら受刑の場に戻ってきたかという、いわゆる成り行き調査、ただ単に、出た者が帰ってきた、その数値だけをとっていくのでは何の意味もない。

 この受刑後の、更生後あるいは社会復帰した後のその成り行きというものに対して、法務省なりが、これはなかなか難しい問題かもしれません、しかし、この成り行き調査というものに法務省なりがどのように取り組んでいくかということ、私はこれは非常に重要な観点だと思っているんです。それについて、大臣のその必要性あるいはお考えをお聞かせいただけませんでしょうか。必要性の有無とお考えをお聞かせいただけませんでしょうか。

滝副大臣 先生の御指摘の点は大変重要な点だろうと思います。私どもは、結局、大臣が今後の対策として挙げている中で、最初に、そういったことも含めて調査をする、その調査は法務省の総合研究所でやる、こういうことを言っているわけでございまして、その中には当然そういうような、悉皆調査まではいきませんけれども、そういうようなことも含めて当たってみる必要があるんだろうということだと私は理解をいたしております。

馬淵分科員 それは、成り行き調査というものについて、これは今後取り組んでいかれる、こういうふうに理解してよろしいんでしょうか。

滝副大臣 総合的な調査の中では、当然それも含める。そうしませんと、今後の対策というものについて的確な方向づけがなかなか出しにくいんだろうというふうに思っております。

馬淵分科員 大変それはすばらしい取り組みであり、私はぜひとも、ただ単に、受け入れて出ていった、また帰ってきたというようなことではなく、その後の追跡というもの、なぜ行刑施設から出ても再び戻ってしまうのかという、その根本的なところに目を向けていただきたいというふうに思うわけであります。

 では、その行刑施設内でどのような形で矯正、更生というものが図られているかということをちょっとお尋ねしていきたいんですが、性犯罪あるいはその他の犯罪も含め、さまざまなプログラムというものがつくられているというふうにお聞きしました。特に、性犯罪に関しては、先ほども申し上げたように再犯性の問題というのがたびたび言われるということから、これに対して処遇類型別指導というのを実施されている。全国七十四の施設のうち十三の行刑施設においてこの処遇類型別指導というものが行われているとのことであります。

 さまざま、これもいただきました資料の中では、覚せい剤であったりあるいは性犯罪であったり、あるいはこれは贖罪教育というんですか、ここに書いてありますが、こうしたもので処遇類型別指導という形で、カウンセリングであったり教育心理であったり、さまざまな観点からの更生、矯正ということのプログラムがある、こうお聞きをしておるわけでありますが、さて、この性犯罪の処遇類型別指導をスタートされましたのはいつでございますでしょうか。

横田政府参考人 ちょっと今、手元に正確な資料がございませんけれども、平成五、六年ごろからそのような考え方がございまして、性犯罪防止に関する処遇類型別指導も始まるようになったというふうに聞いております。

馬淵分科員 これは、各現場で、その施設で行われていたものがいわゆるプログラムとしてまとまりつつある中で、この十三の施設がある意味ではティピカルな例として出てきた、こういうふうに私はお聞きをしているわけでありますが、この性犯罪の処遇類型プログラムですね。この十七年度、この一年で、十七年度初にいわゆる立ち上げを行って、そして一年間でまとめる、このようにお聞きをしているわけでありますが、それでよろしいですか。

横田政府参考人 今委員がおっしゃった御質問というのは、性犯罪防止に関する教育プログラムといいますか、その策定についてのお尋ねだと思いますが、今の御質問にもございましたように、私どもは、さまざまな類型別指導の中で性犯罪防止に関する類型別指導というものもまた行っているわけですけれども、しかし、果たしてこれまでやってきたことが、いろんなところで、各庁で試行錯誤しながらやっているわけですけれども、体系的、科学的な処遇プログラムと言えるかどうかという位置づけ、まだ必ずしもそうではないという認識がございます。

 そこで、もっと精神医学あるいは心理学その他専門家の御意見を取り入れながら、科学的、体系的な一つのプログラムをつくろうということで、これから早期に研究会のようなものを立ち上げまして、そこでさまざまな御意見を伺いながら、よりよいプログラムをつくって、そして体系的、統一的な、科学的な処遇プログラムをもってこの性犯罪防止に関する類型別指導をさらに充実強化したいということでやっているわけでございます。

馬淵分科員 そうなんですよね。その研究会の立ち上げはこの十七年度の初で、そして一年間、これはより殊さらにしっかりとやっていこうということだ、こうお聞きをしています。

 しかしながら、私はちょっとここで申し上げたいのは、こうした犯罪、平成五年からやっておられるという話でありますが、しかし、現実には、より強化してやろうとするのはこの平成十七年度であります。そしてこれは、まさに私の地元であるこの奈良の事件が契機だったというふうにお聞きしています。この奈良の事件が契機であった。しかし、振り返れば、十六年前に私たちは同じように、それこそ全国民が震撼をした宮崎勤のあの事件があったんですよ。あのときに既に、少女を誘拐し殺人をする、死体を遺棄する、この今般起きた事件とほぼ変わらぬほどの事件があった。十六年間もこの問題に対しては、実は既にあったにもかかわらず法務省としては本気の取り組みがなかったんですか。この十六年間、では何をなされていたのか。

 奈良の事件を契機としてやっていただくこと、これは大いに私は大賛成です。しかし、この十六年間、では何をなされていたのか。平成五年からやってきた指導があるけれども、施設の中でやってきたこと、それが結果としてなかなか効果が出ていないからやろうとする。では、十六年前の事件は何だったんですか。結局は、皆さん方、おっ取り刀で駆けつけてやろうとしているだけじゃないですか。私は、このことに対して、今までの取り組みに対して極めて甘かったのではないかという思いがございます。この十六年間に矯正というものにどれほどに取り組まれたかということを、私はまだ十分ではなかったのではないか、こういうふうに思うわけでありますが、一つ大臣にお尋ねをしたい。

 矯正というこの概念、私は法務省の方々に何度もお聞きをしました。矯正あるいは更生という概念、これが法務省の中で、いわゆる法体系の中で明確に示されているものはありますか。

 残念ながら、明治四十一年の監獄法、この法律の制定のときにはそうした概念が十分に盛り込まれなかった。だから、例えば、この処遇類型別指導のプログラムにおいても、現実には受刑者に対して強制することはできないんだと。その場で希望を募って、その矯正プログラムの中に参加してもらうという形でしかない。つまり、法務省の中に、そもそものこの矯正の概念というものが本当に明確にあったんでしょうか。

 私は、もちろん現場の中では大変一生懸命取り組んでいらっしゃるということも理解しているつもりです。しかし、改めて問いただしたいのは、矯正というもの、更生というものに対して法務省がどのように考えているのか。ぜひ大臣、そのトップとしての御見解をお示しいただきたいというふうに思います。

滝副大臣 大臣から見解を、考え方を申し上げる前に一言だけ申し上げておきたいと思うんです。

 今の監獄法、明治四十一年にできましたけれども、その監獄法の中には明快には言葉として表現されていませんけれども、当時の考え方は、要するに、犯罪人は日常生活においていわばふしだらな生活をしている者に多い。そのためには、やはり日常の生活をきちんとさせていく、これが基本的な矯正というか監獄における訓練の基本だということで、朝何時に起きて、何時に顔を洗って、そして掃除をして、こういうようなことでございますし、また、外を歩くときも歩調を整えて歩く、こういうことを基本にして、現在、明治四十一年以来の物の考え方でずっと来ていた。

 それ以後の問題につきましては、世界各国でいろいろな試行錯誤で、矯正についての考え、研究がされてきましたけれども、既に御案内のとおり、それについてまとまってきたものが日本としてはなかなか把握できなかった、こういうことだと思います。

 今後の問題につきましては、あるいは今先生お尋ねの矯正につきましては、そういう中での大臣の御見解を、答弁を申し上げたいと思います。

南野国務大臣 ありがとうございます。

 矯正ということは、やはりいろいろな意味もあろうかというふうに思いますけれども、教育をして、その人の考え方、それから心の持ち方、そういうものを正していく、そして適正な活動ができるように、生活ができるようにしていくという一つの大きな大義名分があるのではないかな、そのためにどういうことをやったらその方がそれに気づくのか、そして自分のあり方を正していけるのか、そういうサポートシステムもその中に含めているものだというふうに思っております。

馬淵分科員 大変大臣からすばらしい御意見をいただきました。まさに教育によって人が生まれ変わるんだという基本的な考え方があるんだ、そういう御指摘だったというふうに思います。

 大臣の矯正に対しての概念、お聞きをしたわけでありますが、私は本当にほっとし、胸をなでおろし、そしてぜひ、この更生、矯正ということについて、単に犯罪者を箱に入れて社会に出さないということではなくて、人は生まれ変わるんだという、このことを大前提にして、教育プログラムというものをより突き詰めていただきたいと思うわけであります。

 私は、実は、現場も知らないかぬ、こんな思いで、二月の十日に奈良の少年院と奈良の少年刑務所に視察に行ってまいりました。私の民主党の同じ仲間であります田尻匠県会議員、そして藤本孝幸市会議員ともども、この少年院、刑務所を視察してまいりました。

 少年院は、いわゆる受刑施設ではございません、教育施設です。当然のことながら、そこの院長先生のもと、本当に教官の方々も一生懸命に努力をされている姿を見ました。そして少年刑務所、こちらも、受刑施設ではありますが、いわゆる懲らしめて役務を課すということだけではなく、更生、社会復帰のためのスキルを身につけさせるということで、いわゆる散髪ですね、理髪の資格を取るための訓練であったり、木工であったり、本当にこれも少年たちが生き生きと頑張っている姿を見せていただいて、私は、ああ、こういったところで、日本の現場でまさに矯正、更生といったことが一生懸命培われているなと思った次第であります。

 しかしながら、私は、その後の懇談会の中で、それこそ私の仲間も含めて一同凍りつくような発言を聞いたわけであります。

 そのときに無理を言って御案内をいただきました大阪の矯正管区、友永第一部長が御一緒されていたわけでありますが、私が先ほどもお尋ねをしました再入率の問題、このことについてお尋ねをしたところ、三割、三三%、この数字をおっしゃっておりました。三人に一人、これが多いか少ないか、これは非常に難しい問題である、こうお話しをされた。そして、奈良刑務所においても再入率は独自にとっておられて、二〇%程度だということでした。

 しかし、私は、この三三%という数字がどうしても、多いか少ないか難しい問題かもしれないが、いかにこの数値を減らしていくかということ、これにどういった努力を今後されていくんでしょうかということをお聞きをしたかったわけでありますが、そのときに第一部長の発した言葉というのは、私は今も忘れません。いわゆるここに来られている人はエリート中のエリートなんだ、このようにおっしゃった。エリート中のエリート、これはエリートという言葉は、大辞林や広辞苑で調べていただいてもわかりますが、いわゆるすぐれた素質、能力の方々が指導的地位についている少数の人、いわゆる選良だという意味です。

 私は言葉の揚げ足をとるつもりはありません。しかし、その言葉を聞いて一同凍りついたんですよ。そのときの部長のお話の中では、私が先ほど申し上げたように、執行猶予になる者もいる、起訴猶予になる者もおる、不起訴になる者もいる、あるいは逮捕にならなかった者もいる、本当に多くの犯罪、非行という温床のある中で、ここに来ている者はごくわずかだ、三%だというふうにおっしゃった。そのごくわずかの者がここに戻ってくるのは仕方ないというようなニュアンスを込めてのエリート中のエリート。耳を疑いました。矯正管区の部長の言葉です。

 そして、そのような発想がこの法務省に流れているならば、どんなに一生懸命あなた方が頑張っていると言っても私はそれは信じられないと思った次第です。だから、きょう何としてでも大臣からの所見をお伺いしたかった。そして、私はその言葉を、耳を疑いたくなるような言葉を、繰り返し県会議員や市会議員にも尋ねたけれども、彼らも本当に青ざめていた。

 昨日、同じように法務省のレクを受けました。保安課長に同じく再入率の話をお聞きしました。お言葉の中に、おっしゃられた言葉は、限られた、よりすぐられた人が入っているんだ、こうおっしゃる。刑務所人口は、これは日本は少ないんだ、刑務所に入る方が少ない、こうおっしゃる。よりすぐられた方が入っているんだ、仕方がないんだ、そういう人たちは外に出ても再入するのが当たり前なんだと言わんばかりのその言葉のニュアンスの中に、私は、繰り返し申し上げるが、法務省のその根底の中に、人が生まれ変わる、更生する、矯正できるということの強い強い思いが欠如しているんじゃないですか。

 大臣、私は、今回のこの場だけではなく、引き続きこうした問題に対して取り組んでいきたいし、また、大臣の先ほどの矯正に対する立派なお考えをお聞きしました。ぜひとも矯正という場面でしっかりとしたリーダーシップをとっていただきたいというふうに思います。

 時間も参りましたが、ぜひ最後に大臣、その決意をお聞かせいただきまして、私の質疑を終わりにしたいと思います。お願いいたします。

南野国務大臣 本当に先生の熱い情熱そして真っすぐな心を私は感銘を受けて今お聞きいたしております。その心を持ちながら、どのような人であっても、一人、二人、構わないんです、自分の心を通わせながら、正しい道を歩いていける人を私は更生していってもらいたい。生まれ変わる、リボーンということが、その中で我々が少しでもお手伝いできるならば、本当にお手伝いしていきたい。それが法務省の役割、矯正の役割の一端を担っている、そのように思っています。

馬淵分科員 本当に大臣のリーダーシップを期待して、この第三分科会での私の質疑とさせていただきます。どうもありがとうございました。

植竹主査 これにて馬淵澄夫君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして法務省所管についての質疑は終了いたしました。

 次回は、来る二十八日月曜日午前九時より開会し、財務省所管についての審査を行うこととし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時三十二分散会


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