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第1号 平成18年2月28日(火曜日)

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本分科会は平成十八年二月二十三日(木曜日)委員会において、設置することに決した。

二月二十八日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      笹川  堯君    町村 信孝君

      茂木 敏充君    山本 幸三君

      岡田 克也君    北神 圭朗君

二月二十八日

 茂木敏充君が委員長の指名で、主査に選任された。

平成十八年二月二十八日(火曜日)

    午後二時三十七分開議

 出席分科員

   主査 茂木 敏充君

      石原 宏高君    越智 隆雄君

      木原 誠二君    笹川  堯君

      土井 真樹君    藤井 勇治君

      町村 信孝君    山本 幸三君

      北神 圭朗君    森本 哲生君

   兼務 日森 文尋君

    …………………………………

   法務大臣         杉浦 正健君

   財務大臣         谷垣 禎一君

   内閣府副大臣       櫻田 義孝君

   法務副大臣        河野 太郎君

   財務副大臣        竹本 直一君

   法務大臣政務官      三ッ林隆志君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   榊  正剛君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  竹花  豊君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局審議官)            畑中龍太郎君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局審議官)            谷口 博文君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 久元 喜造君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 岡本  保君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 深山 卓也君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    大林  宏君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    小貫 芳信君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    麻生 光洋君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   勝 栄二郎君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   鈴木 正規君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    福田  進君

   政府参考人

   (財務省理財局長)    牧野 治郎君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房総括審議官)         金子 順一君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           岡島 敦子君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           和泉 洋人君

   政府参考人

   (国土交通省航空局次長) 本田  勝君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

   財務金融委員会専門員   鈴木健次郎君

   予算委員会専門員     清土 恒雄君

    ―――――――――――――

分科員の異動

二月二十八日

 辞任         補欠選任

  笹川  堯君     木原 誠二君

  町村 信孝君     田中 良生君

  岡田 克也君     森本 哲生君

同日

 辞任         補欠選任

  木原 誠二君     橋本  岳君

  田中 良生君     土井 真樹君

  森本 哲生君     岡田 克也君

同日

 辞任         補欠選任

  土井 真樹君     石原 宏高君

  橋本  岳君     越智 隆雄君

同日

 辞任         補欠選任

  石原 宏高君     町村 信孝君

  越智 隆雄君     藤井 勇治君

同日

 辞任         補欠選任

  藤井 勇治君     笹川  堯君

同日

 第六分科員日森文尋君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十八年度一般会計予算

 平成十八年度特別会計予算

 平成十八年度政府関係機関予算

 (法務省及び財務省所管)


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     ――――◇―――――

茂木主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることになりましたので、何とぞよろしくお願いいたします。

 本分科会は、法務省、外務省及び財務省所管について審査を行うことになっております。

 なお、各省所管事項の説明は、各省審査の冒頭に聴取いたします。

 平成十八年度一般会計予算、平成十八年度特別会計予算及び平成十八年度政府関係機関予算中財務省所管について、政府から説明を聴取いたします。谷垣財務大臣。

谷垣国務大臣 平成十八年度一般会計歳入予算並びに財務省所管の一般会計歳出予算、各特別会計歳入歳出予算及び各政府関係機関収入支出予算について御説明申し上げます。

 まず、一般会計歳入予算額は七十九兆六千八百六十億円余となっております。

 この内訳について申し上げますと、租税及び印紙収入は四十五兆八千七百八十億円、その他収入は三兆八千三百五十億円余、公債金は二十九兆九千七百三十億円となっております。

 次に、当省所管一般会計歳出予算額は二十兆四千二百二十一億円余となっております。

 このうち主な事項について申し上げますと、国債費は十八兆七千六百十五億円余、政府出資は二千二十三億円余、予備費は三千五百億円となっております。

 次に、当省所管の各特別会計の歳入歳出予算について申し上げます。

 国債整理基金特別会計におきましては、歳入二百四十九兆七千三百九十八億円余、歳出二百二十四兆七千三百九十八億円余となっております。

 このほか、財政融資資金等の各特別会計の歳入歳出予算につきましては、予算書等をごらんいただきたいと存じます。

 最後に、当省関係の各政府関係機関の収入支出予算について申し上げます。

 国民生活金融公庫におきましては、収入千七百七十八億円余、支出千三百六十六億円余となっております。

 このほか、住宅金融公庫等の各政府関係機関の収入支出予算につきましては、予算書等をごらんいただきたいと存じます。

 以上、財務省関係の予算につきまして、その概要を御説明申し上げた次第でございます。

 なお、時間の関係もございまして、お手元に配付しております印刷物をもちまして、詳細な説明にかえさせていただきますので、記録にとどめてくださるようお願いいたします。

 よろしく御審議のほどお願い申し上げます。

茂木主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま谷垣財務大臣から申し出がありましたとおり、財務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

茂木主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

茂木主査 以上をもちまして財務省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

茂木主査 この際、分科員各位に申し上げます。

 質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。

 なお、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木原誠二君。

木原(誠)分科員 自由民主党の木原誠二でございます。

 先般、ライブドア、金融問題等での集中審議で予算委員会で与謝野大臣とお話をさせていただきましたが、きょうは谷垣大臣とお話しできる、議論させていただくことができるということで、大変ありがたく思っております。三十分間、どうぞよろしくお願いをいたします。

 前半は国有財産の問題につきまして、そして後半は税制改正につきましてお伺いをいたしたい、このように思っております。

 まず、国有財産についてでございますけれども、先ほどの予算の説明の中にもございましたように、依然として国の財政は大変厳しいなという印象をはっきり申し上げて持ってしまう。いまだに国債は三十兆円弱の発行が続いておりますし、国債費として十九兆円弱、十八・七兆円の国債費を計上しなければいけない大変厳しい状況になろう、このように思うわけでございます。

 そういう中で、財政再建の必要性というのはますます高まっているなというのが率直な感想でございますけれども、私も地元に帰りまして財政再建の話をいろいろな場面で話をさせていただきますが、必ず聞かれますことが、国の資産はたくさんあるじゃないか、これをもっと有効活用あるいは売却をして財政再建に役立てていくべきではないか、こういう意見あるいはおいさめの言葉を受けるわけでございます。

 まず最初に、具体論に入ります前に、大臣の財政再建を進めるに当たっての、国の資産をどのように売却あるいは活用していくか、その御所見を伺えればと思います。

谷垣国務大臣 今、木原委員が地元の方の御意見を紹介されましたように、私どもも、大変今財政状況が厳しゅうございますから、国の持っている資産を売却ないし有効活用して少しでも財政再建に役立てるというのは当然のことだろうと思っているわけでございます。

 ただ、国の資産も、貸借対照表を見ますと数字の上ではたくさんございますけれども、道路とかあるいは河川といった公共用財産、これは売却には適さないということだろうと思います。

 こういう中で、政府としては、売却可能な国有財産である約六千億円の未利用国有地、それから毎年度発生する新規の物納財産、これが大体二千億円程度でございます。それに加えまして、今後は、庁舎をより効率的に使用して不要な敷地を捻出して売却する等、その売却努力を強化していこうと考えております。そのために国有財産法等の改正をこの国会でもお願いしているところでございます。それから、国家公務員宿舎につきましても、今有識者会議をやっていただいておりまして、民間の視点からさらなる活用といいますか有効利用、そういったものが考えられないか検討していただいております。

 先ほど申しましたように、貸借対照表上はたくさん資産がございますが、実際に売却できるということになりますと、売却収入的な金額には限度があるということは申し上げなければなりませんが、政府としては、今後とも、最初に申しましたように、少しでも有効利用、その売却費用の活用ということを考えて財政再建に資するようにやっていきたいと考えているところでございます。

木原(誠)分科員 どうもありがとうございました。

 今、大臣から大変詳細に御説明をいただきました。未利用国有地あるいは物納の財産、こういったものをしっかり売却してまいりたい、こういうことだろうというふうに思います。

 他方で、まさに大臣がおっしゃったように、貸借対照表上は大変多くの国有財産があるわけでございますけれども実際に売れるものは少ないんだ。あるいは、私なんかが考えますことは、これを売っても実は一回ぽっきりの、一回だけで済んでしまう、そういう意味では、見かけ上は財政再建に資するわけでございますけれども、翌年度になってしまえばこれは持続していかない、そういう問題もあるのかな、こんなふうな印象を持っているわけでございます。

 そういう中で、私は、もちろん売れるものは売らなければいけない、こう思うわけでございますけれども、むしろ今求められていますことは、まさに大臣が今回国有財産法の改正案を出されている中にもございますように、国有地をしっかり有効活用していく、そういう観点なのかな、こんなふうに思っている次第でございます。

 そこで、特に私の地元、東京都なわけでございます。東京都の場合、私は、一つ非常に重要なことは、緑あるいはそういう潤いをしっかり保全していく、そういう豊かな社会をつくっていく、あるいは地域社会をつくっていく、こういうことだろうと思っているわけでございますけれども、地元に帰って、空き地が一カ月もしますとすぐ高層ビルあるいはマンションになってしまうというのが今の現状でございます。そういう中では、国有地を例えば緑の保全あるいは公園といったようなことでしっかり活用していただく、そんなことも考えられるのかなというふうに思っていますけれども、そういった意見に対して、大臣、何か御所見があればお伺いできればというふうに思います。

谷垣国務大臣 先ほど、売却をして財政再建のために有効に使っていくことが必要だと申し上げましたけれども、同時に、国有財産は国民共通の貴重な財産であるということがございます。

 したがって、今、緑ということをおっしゃいましたけれども、公園であるとかあるいは緑地といった公用、公共用、こういう処分を優先して今までもやってきたわけです。

 そこで、未利用国有地の売却ということになるわけですが、売却するにつきましても、地方公共団体などが公用、公共用として使いたいという要望があるものにつきましては、これはもちろん受付期間とか契約期間をつくらなきゃいけませんが、引き続きそういった自治体等に優先的に取得をしていただけるような、そういうことを可能にするように考えていきたいと思っております。

 それから、要望がないものにつきましては、速やかに一般競争入札によって売却する、こういう答申をことしの一月、財政制度等審議会でいただいておりますので、こういった方向で検討していこうというふうに考えているわけです。

木原(誠)分科員 ありがとうございました。

 大変安心をいたしました。そういう方向でぜひ国有地を、国有財産を有効活用していただければ、こう思うわけでございます。

 恐縮でございますけれども、少し私の地元の国有地のことについてお伺いをいたしたい、このように思っております。

 お手元に資料を配付させていただきました。三枚の、表紙まで入れまして四枚の資料でございますけれども、一番最初、私は清瀬市が一つの地元になってございますけれども、この清瀬市に、斜線を引いた部分でございますが、米軍の通信基地、大和田通信所というものがございます。これは、同じく私の地元の武蔵村山に横田基地がございますけれども、この横田基地と米軍の航空機の通信を担うという基地でございまして、隣に新座市、埼玉県でございますが、実はこの斜線部分は埼玉県の方にもかかっているということでございます。

 そして、実は、ここの大和田通信基地、通信所の一部、この斜線を引いた部分なんでございますが、これを利用して、今清瀬市が公園をつくりたいということで計画を立てているところでございます。

 清瀬市というところはもともと非常に緑の豊かなところでございまして、緑被率というんですか、緑で囲まれた比率、ここはもう既に五〇%近い比率を持っているわけでございますけれども、他方で、公園が実は非常に少ない地域でもございます。緑の大半が農地ということでございまして、公園をつくりたいという要望が非常に大きいわけでございます。そして、この計画自体は平成八年から既にございまして、平成八年の段階で東京防衛施設局あるいは米軍といったところと詰めてまいったところでございます。

 一定の理解を得ていたわけでございますけれども、私が承知しているところでは、関東財務局の方から、実は同じ清瀬市の中で児童センターをつくろう、これも国有地をお借りいたしまして、有償譲渡を受けて建設をするということでございましたものですから、まずは児童センターをつくりなさい、それができた段階で検討してまいりましょうということだったというふうに伺っております。

 実は、この児童センターにつきましては、昨年完成をいたしまして、いよいよこの大和田公園、仮称でございますけれども、に向けて、清瀬市として平成十八年度、今度の予算におきまして調査費も改めて計上をした、こんなような段階にございます。

 今後計画を東京防衛施設局あるいは米軍、そしてまた関東財務局といったようなところに説明に回っていくということだろうというふうに承知をしておりますけれども、平成八年の段階では計画自体には問題がない、こういうことだったというふうに承知をしておりますので、最後は国有地をどのように活用させていただくかということがキーポイントだろうというふうに思いますので、ぜひ前向きに御検討いただいて、速やかに協議をいただければ、こんなように思っている次第でございますけれども、御所見をいただければというふうに存じます。

谷垣国務大臣 今お尋ねのこの一枚目の土地の件に関しましては、平成九年から十年にかけて、東京防衛施設局から関東財務局に対して、この計画の概要について事前説明があったというふうに聞いております。

 一時棚上げになったというお話で、その間の経緯は、私、必ずしも承知していないんですが、いずれにせよ、清瀬市がこの計画を実現するためには、日米地位協定に基づいて東京防衛施設局が在日米軍から内諾を得るということがまず必要なんだろうと思います。

 その上で、防衛施設局から関東財務局に一時使用の許可について正式な協議がございましたら、財務省としても所要の手続をきちんと進めていきたいと思います。

木原(誠)分科員 どうもありがとうございました。所要の手続の中で進めさせていただければ、こんなように思う次第でございます。

 続きまして、二枚目の資料をごらんいただきたいと思いますけれども、こちらはまた同じく私の地元にございます東村山の多磨全生園でございます。多磨全生園は全国に十三ございます国立ハンセン病療養所の一つでございます。大変広大な敷地でございまして、全部で三十五万平方メートルを占める非常に大きな敷地でございます。また、非常に緑豊かな敷地なわけでございます。

 この全生園につきましては、恐らく全国の十三ある療養所は皆同じような課題を抱えているのかな、こう認識をいたしますけれども、入園者の方々、平均年齢が八十歳を超えてきている、そしてまた入所者の皆さんの人数も、例えばこの全生園の場合は、今三百七十、四百弱の方々というように認識をしておりますけれども、だんだん減ってきている。今後必ずしもふえるような状況にもないということだろうというふうに認識をしておりますけれども、入所者が少なくなっていくという状況の中で、地元では、この非常に豊かな緑を持っております全生園につきまして、一体どういうふうになってしまうのかなということについて大変大きな不安がございます。

 市民、市長あるいはまたここに入所されている方々の大きな構想としては、ここを緑豊かな人権の森として維持していきたい、こういう構想もあるわけでございますけれども、同じような問題が恐らく全国に点在していると思いますので、厚生省の方から今後の見通し、考え方を御教示いただければというふうに存じます。

岡島政府参考人 国立のハンセン病療養所の入所者の方につきましては、在園を希望される場合には、その意思に反して退所あるいは転園させることなく終生の在園を保障するとともに、社会の中で生活するのと遜色のない水準を確保するため、入所者の方の生活環境及び医療の整備を行うよう最大限努めていくということにしております。

 先生御指摘のとおり、入所者が高齢化し、減少していくわけでございますが、その中で効率的な医療や看護、介護サービスを提供していくためには、基本的には、入所者の理解を得ながらある程度施設の集約化整備を行う、そしてまた、デイケアやアメニティー機能の再配置もあわせて行っていく必要があるというふうに考えております。

 個々の施設の具体的なあり方については、当事者であります入所者の方々の意見を第一に尊重すべきというふうに考えておりまして、入所者の方々と入所者のお世話をしています施設を中心に、よく話し合っていただくこととしているところでございます。多磨全生園におきましても、入所者と施設の間で今後の方向性につきまして話し合いが進められておりまして、この話し合いの結果を第一に尊重すべきものと考えております。

 このような中で、地方自治体等から、地域のニーズにこたえるため、入所者の在園保障の目的を終えた土地の利用などにつきましての御要望がありましたならば、よくお話を伺ってまいりたいというふうに考えております。

茂木主査 しっかり話を聞くようにしてください。

木原(誠)分科員 委員長、ありがとうございます。かわりに言っていただきましたけれども、ぜひしっかり話を聞いていただきたい、こういうように思っております。入所者、そしてまた付近の住民、そして市当局、よく意見を聞いて進めていただければな、こんなふうに思う次第でございます。

 ちょっと駆け足で恐縮ですけれども、三枚目の資料、国有財産につきましては最後にさせていただきたいと思っておりますけれども、財務省にお伺いしたい、このように思っております。

 実は、同じ東村山に青葉会住宅というのがございます。これは旧陸軍の施設でございまして、築六十年を経た木造の住宅でございます。私も二、三度足を運んでおりますけれども、本当にもう木造で六十年、平屋建てでございますからコケも生い茂っておりますし、ほとんど倒れそうというのが現状でございます。

 防災上、防犯上、大変問題があるなということで、もう十年近くいろいろと市も都や国に働きかけてまいってきたわけでございますけれども、なかなか対応がうまくいっていない。私の認識しているところでは、この居住者の皆様は国と直接居住契約を結んで住まわれているということだろうと思いまして、市当局でできることも限られているというのが現状でございます。

 こちらの方も入居者の皆様の年齢が高齢化しておりまして、世帯数も大分減ってきておるわけでございます。できるだけ速やかにこの住宅につきまして対応をとっていただきたいというふうに思っておるわけでございますけれども、財務省の御見解をいただければというふうに存じます。

牧野政府参考人 お答えをいたします。

 今御指摘ございました財産は、昭和二十年に陸軍省から引き受けた旧軍財産でございまして、戦後の戦災者それから引揚者住宅として使用してまいりましたけれども、おっしゃられますように、築後六十年以上経過いたしまして老朽化が著しい、さらに、それに加えて、空室も多くて利用状況が虫食いになっているということで、防災上あるいは都市景観上の観点から極めて問題があるというように我々も認識をいたしております。

 このため、平成十六年度から入居者に対しまして、移転先となります公営住宅の紹介、物納建物等を活用した代替住宅の確保、それから移転料の支払いといった措置を講じまして、積極的に退去を求めてきておりまして、当初百十世帯ございましたが、平成十八年二月末時点では三十七世帯まで減少してきております。

 今後とも、こうした措置を講じまして、平成十九年三月を目途に退去を完了させまして、国有財産の有効活用を図っていきたいというように考えております。

木原(誠)分科員 ありがとうございました。ぜひ速やかな対応をお願いいたしたい、このように存じます。

 続きまして、十八年度税制改正につきましてお伺いをしてまいりたい、このように思っております。

 私の地元はまた、この北多摩というところは、実は中小企業の大変に多いところでございます。東京都を見ていただきますと、二十三区よりも実は多摩の方が既に商品出荷額では多くなってございますし、中小企業の数も実は多摩の方が多いというような状況でございます。そういう意味で、今回の税制改正の中で大変多くの中小企業対策をとっていただきました。交際費課税の範囲の拡大あるいは同族会社の留保金課税の見直し、中小企業投資促進税制の拡大、非常に大きな、蛮勇を振るっていただいた、このように私は理解をしておるわけでございます。

 そして、地元でもその点については一定の評価をいただいている、このように思っているわけでございますが、他方で、少し残念なことは、いわゆる特定同族会社と申すんでしょうか、あるいは特殊支配同族会社というんでしょうか、こちらの役員報酬について取り扱いが来年度から変わってくるということにつきまして、必ずしも十分な理解が当事者の皆さんになされていない。それがために、木を見て森を見ずというんでしょうか、せっかくのすばらしい中小企業対策が十分に、こちらがまた今度は評価されなくなってしまう。若干の悪循環を生じているように私は感じておるわけでございます。

 大変恐縮でございますけれども、大臣のお口から今回の役員報酬の損金算入に係る見直し、その意義、考え方といったようなことについて、わかりやすく御説明いただければと思います。

谷垣国務大臣 今木原委員から言及していただきましたように、平成十八年度の税制改正では、中小企業対策といいますか、かなり意を用いたつもりでございます。その中で、議論が依然としてございますのは、今おっしゃった特殊支配同族会社の問題でございます。

 これは、いわゆるオーナー企業、典型的には一人会社をお考えいただければ一番わかりやすいんですが、オーナーが自分の役員給与を法人段階で経費として計上する。そうすると、これは損金算入できるということになるわけですが、その一方で、今度は個人の立場で、自分が個人として受けた役員給与について個人段階で給与所得控除を受ける、これが今の税制では可能であるということになるわけであります。ところが、こういういわゆる経費の二重控除と言っているわけですが、個人事業者から見ると、課税上不公平があるじゃないかという議論が今までもございました。

 それから、不公平ということだけではなくて、オーナー企業において、どのぐらい役員給与でやるかというようなことで課税所得の操作の余地を残すというようなことで、従来から問題を指摘されていたということがございます。

 こういう中で、会社法の改正が行われまして、ことしの五月から施行されるわけでございますが、この会社法改正の中で、一人会社をつくるということが全面的に解禁になります。それから、最低資本金制度も撤廃されるということで、法人の設立が容易になる。これは、もちろんそういうふうにしていかなきゃならないという時代の要請があるわけですが、同時に、個人事業者が法人成りをするときに租税回避を目的として法人成りをしていくということに、悪用と言うとなんですが、そういったことがしやすくなる。

 ですから、法人形態と個人形態との課税上の不公平がさらに増大するおそれがあるわけでございまして、そこで、十八年度の税制改正におきましては、オーナー会社といっても全部ではないんですが、オーナーによる支配の度合いが高い、実質的には一人会社のオーナー役員への役員給与について、法人段階で給与所得控除相当部分の損金算入を原則として制限するということにしたわけでございます。

 今度の措置の導入に当たりましては、開かれた経営が行われている中小企業、あるいはオーナーの右腕的というか番頭さんのような方を役員へ登用しているような会社、あるいは従業員持ち株会の活用を通じて従業員と経営陣の一体的な関係がつくられている中小企業、そういったものはそもそも対象から除外をしております。それから、中小零細企業も適用除外とするというようなことで配慮を行いながら制度をつくったということでございます。

木原(誠)分科員 どうもありがとうございました。大変詳細に御説明いただきまして、ありがとうございました。

 今大臣のお言葉の中で、オーナー企業といってもすべてじゃないんだよ、零細企業あるいは開かれた中小企業というものについてはもともと対象にならないんだよ、こういう御説明をいただいたかというふうに思います。問題は、これが必ずしも当事者の方々に正確に認識されていない、こういうことだろうというふうに思いますので、ぜひ機会あるごとにいろいろな場面で御説明いただければ幸いかな、こんなふうに考えております。

 最後になりますけれども、一点だけ事務方に確認をさせていただきたい、このように思っております。今回の役員報酬の取り扱いの見直しというものはいつから適用されるのかということについて、お伺いをいたしたいと存じます。

福田政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の措置は、平成十八年四月一日以後に開始する事業年度について適用することとしております。

 したがいまして、決算が例えば年一回である同族会社について申し上げますと、三月末決算の同族会社の場合には、ことし、すなわち平成十八年の四月一日に開始する事業年度から適用されることになります。十二月末決算の同族会社の場合には、来年、すなわち平成十九年一月一日に開始する事業年度から適用されることになるということでございます。

木原(誠)分科員 こういうことはなかなか事務方には難しいかと思いますけれども、今お伺いした限りでは、まだ中小企業の皆様には、適用を逃れると言うとまた大変言葉に語弊があると思いますけれども、みずからの努力で開かれた会社になってこの適用をある種回避するという手段が残されているのかな、そんなふうに今理解をさせていただいたところでございます。

 本日は三十分間お時間をいただきまして、大変ありがとうございました。終わりにさせていただきます。どうもありがとうございました。

茂木主査 これにて木原誠二君の質疑は終了いたしました。

 次に、北神圭朗君。

北神分科員 民主党の北神圭朗でございます。

 本日、三十分間質問の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。また、私、この分科会の委員でもございますので、ひとつよろしくお願いしたいと思います。

 きのう財政金融委員会の方で谷垣財務大臣とも議論をさせていただきました。引き続き質問させていただきたいと思いますが、きょうは、予算委員会ということで、国家予算の話をちょっと最初にさせていただきたいと思います。

 私も小泉内閣の構造改革というものを見てきて、これを定義するのになかなか難しい部分もあると思いますが、基本的には財政再建だなというふうに思っております。これが成功しているかどうかというのは、私は、小泉内閣になってから国債発行額がふえてきたりしているのを見ると、必ずしも成功しているとは言えないと思いますが、公平に見て、公共事業の削減とか、そういった部分で努力をしたり、また、言うはやすしの世界でございまして、なかなか財政再建というのを果たすというのは難しい、そういったことも認識しているつもりでございます。

 そういった意味で、財政再建というのが大事な課題であるわけでございますが、谷垣財務大臣はその中枢におられるということであると思います。そして、財政再建というのは、いろいろな方法があると思います。歳入をふやしたり、歳出を削減したり、あるいは、余りこの内閣ではとられていない方法だと思いますが、いわゆる税収の自然増収というものを目指して、財政出動とは言わないですが、アメリカのヤング・プランとかいわゆる産業政策的な方法というのもあると思います。実際、内閣府の試算をこの前見ましたら、アメリカの八〇年代、九〇年代の財政再建の何が一番起因したか、寄与度から見ると、やはり経済成長の部分が大きいということもあったと思います。

 きのうは財政金融委員会で、増税の前に、やはり政治家や政府というものが無駄遣いというものを徹底的にやらなければなかなか納得を得られない、これは当たり前の話ですけれども、なかなか政府あるいは政治家ができない部分だというふうに思っております。

 そして、そういう意味でも、私は、今の財政再建のやり方というのは、その手順とか徹底度については必ずしも適切だというふうに思っておりませんが、きょうは、そういう全体の話というよりは、小泉内閣あるいは谷垣財務大臣の財政再建の一つの手法として、国債発行枠三十兆円、このいわばキャップ制というのか、国債発行額に限度というものを設けるという手法について質問をしたいというふうに思います。

 小泉さんは、平成十三年のとき総理になられて、そのときに三十兆円の公約というものをされた。そして、十四年度の予算において一応達成はされたものの、そのときの補正予算でそれを超えてしまった、三十兆円を超えてしまった。それについては、小泉総理は当時、そんなことは大したことはないとみずから言われたわけでございますが、それ以降数年間、この国債発行枠の話というものは影を潜めることになったわけでございます。と思いきや、今回の平成十八年度の予算において、また突然三十兆円という話が浮上してきた。

 これは、別にこの発行額の枠をはめるということ自体に反対はしないんですが、十年間、補正予算を含めて、毎年必ず三十兆円の枠を守ります、そういうことだったらまだわかるんですよ、財政再建に資するということは。ただ、こんな、五年に一回、単発で急に、まあ今年度はちょっと発行枠三十兆円にしましょうかというようなことでは、余り財政規律という意味ではそんな効果はないんじゃないか、少なくとも中期的な意味で。

 ちょっと前置きが長くなったんですが、これからが質問なんです。それに加えて、先般、平成十七年度の補正予算の審議をして、もう通過をいたしました。その中に、私も、前、質問しようと思ったんですが、ちょっと地元の大変厳しい選挙がございましてなかなか質問する機会がなかったんですが、補正予算を見ると、義務的経費、追加的な義務的経費が三千八百億円ある。

 これも、もちろんたまにこうした義務的経費の追加があるというのは、私、よくわかるんですよ、いろいろな事情変更とかあるわけですから。しかし、私が調べたところ、社会保障関係が中心なんですが、数千億単位の追加的な義務的経費というものが、これは、私が調べた感じでは少なくとも五年連続で続いている。これは、補正予算の位置づけからしてみても少し異常じゃないかというふうに思うんですが、そこの、こういう事態が生じている理由というものを教えていただければと思います。

    〔主査退席、山本(幸)主査代理着席〕

竹本副大臣 先生おっしゃるように、毎年補正で多額のお金を積み上げているではないか、おかしいじゃないか、こういう御趣旨だと思います。

 当然、当初予算を編成するときには、まず義務的経費は幾らだか、そして、これから社会情勢はどう変わっていくだろうか、一応きちっとそれは予測はしておるんですけれども、どうしても経済社会情勢の、いろいろな情勢の変化ということが必ずありまして、結果としては、先ほど三千八百億と言われましたけれども、そういった上回った額を出してしまうわけであります。

 余り自慢にならないと思われるかもしれませんが、平成十七年度補正予算で合計三千七百七十四億円の義務的経費に係る追加額を計上しておるわけですけれども、過去を振り返りますと、平成十四年度は八千八百五十七億円ございました。それに比べれば大分まともになってきたのかなというふうな感じもするわけでございますが、いずれにしても、余分な費用を見るわけにもいかないし、それは理論的には無駄を積んでいるということになりますから、ですから、きっちりと積み上げるわけですが、この義務的経費だけは、これはもう法律で義務づけられておりますので、どうしても目算と少しずれがある、こういうことでございます。

北神分科員 確かに、私も申し上げたとおり、いろいろな社会情勢の変化がある、だから必ずしも予測どおりはいかないということもわかっておりますし、確かに、五年前から比べると、だんだん額は減ってきている。

 しかし、そうはいっても、これは毎年毎年、数千億単位の、しかも大体同じ項目の話が出てきているというのは、やはりそれはおかしいんじゃないか。積算というのは必ずしも一〇〇%正確だというふうには思わないんですが、やはり、こんな毎年毎年、予測がむしろ過小に出るということは、当然その積算の方法というものを見直そうとかそういった努力があるというふうに思うんです。

 これは厚生労働省の話だと思いますが、その辺、こういった社会保障関係の義務的経費の積算の方法を見直したこととかあるんでしょうか。それを伺いたいと思います。

金子政府参考人 お答え申し上げます。

 今、議員から御指摘ございましたけれども、社会保障関係の義務的経費につきましては、これは当初予算を編成する際に、それまでの時点の医療、年金、これらの社会保障給付の伸びなどの実績ですとか、あるいは失業率などの経済雇用情勢の動向やその見通し、こういったものを踏まえまして、できる限り適正な見積もりを行うよう、これまでも努めてきているところでございます。

 医療費について申し上げますと、当初予算編成時におきまして、これは時期的に制約があるわけでございますが、その時点での利用可能な直近の医療費実績をもとにいたしまして、過去の医療費の伸びでありますとか、あるいは被保険者数の動向、こういったものを用いて積算をしてきているわけでございます。

 ただ、御指摘もございましたけれども、平成十七年度におきましては、当初予算編成段階では見込めなかった医療費の増加、あるいは、生活保護について申し上げますと、被保護者人員数が増加をしたというようなことでございまして、三千七百七十四億円を補正予算として追加してきたところでございます。

 何分、二十兆円という社会保障関係費になっております。その時々の情勢にもさまざま影響を受けるものでございますので、所要額を正確に見通すということはなかなか率直に言って難しい面もあるわけでございますが、私どもとしては、できる限り補正予算の編成を必要としないように、適正な見積もりにこれまでも努めてきたところでございますが、今後もそうしたことで努力をしていかなければならないと考えているところでございます。

 社会保障関係費に係ります義務的経費の追加額は減少してきているというところでございますが、引き続き適正な見積もりに努め、当初予算での予算額の確保、こういったことに努力してまいりたいと思っております。

北神分科員 簡単にお答えいただきたいと思うのですが、この数年間の間に、積算方法は変えられたんですか。そういうきっちりした方法があるのかどうかわからないのですが、そこは、要は、毎年毎年こんな補正で追加的な計上が上るということを受けて、これはちょっとここを変えないといけないとか、より当初予算において多目に見積もらないといけないとか、そういった努力はなされたのでしょうか。

金子政府参考人 例えば医療について申し上げますと、政管健保でございますとか国民健康保険、あるいは老人保健といったこの三制度につきまして、基本的には、伸び率をある程度見込んだ被保険者数、それに、これも伸び率を見込んだ一人当たりの単価と申しましょうか医療費、これを掛け算して見込みを立てる、こういうやり方でこれまでも来ておりますし、その限りにおいて基本的な変更というようなことはないと承知しております。

北神分科員 まあ、なかなか積算するのは難しい、特に医療とか介護とか、確かに話を聞いていると困難だということもわかります。しかし、その点についてはぜひ正確を期するように努力をしていただきたいということと、きょう申し上げたいのは、その積算根拠とかそんなことよりは、国債発行枠の三十兆円の意味合い、意義ですよね。

 要は、こんなに毎年数千億計上されるのであれば、例えば、今回、平成十八年度の予算において、発行枠三十兆円を達成しました、下回ったというふうに胸を張っておられますが、これがまた過小に義務的経費が計上されていて、また補正予算で数千億足されて三十兆円を超えてしまう、そういったことも十分あると思うのですよ、というのは、実際、十四年度の予算のときにあったわけですから。

 となれば、余り細かく言うつもりはないですが、この発行枠三十兆円というのは余り意義がないんじゃないかというふうに思うのです。というか、一種見せかけのような部分もあるんじゃないかというふうに思うのですが、ここをぜひ大臣にお聞きしたいと思います。

谷垣国務大臣 予算編成の目標をどういうところに求めるかというのは、なかなか、そのときそのときの情勢もありまして、的確な目標を定めてやはり頑張っていかなきゃならぬというのが実際の予算編成の姿だと思うのですね。

 それで、ことしは、三十兆ということ、総理からは、できるだけ近づけろ、三十兆に発行をできるだけ近づけろという御指示でしたけれども、そういう御指示をいただくと、私としては、やはりできれば三十兆の壁を越えたいということは確かにございました。そうやって孫悟空の頭にたがをはめるように、鉄の輪をはめてえいやえいやといかないと、なかなかいかないということが現実にはございます。

 ただ、一方、今申し上げましたように、確かにいろいろなことで、後で補正が積まれる。まあ、災害なんかで積まれる補正は私はやむを得ぬと思いますが、こういう今のあたりは、もう少し積算の根拠という手法も工夫して、今、北神委員は三十兆円は見せかけではないかとおっしゃいましたけれども、見せかけと言われないように、できるだけ今後その辺はきちっとまた精査をさせていただきたいと思っております。

 ただ、先ほど副大臣が申しましたように、余り緩く積んでも、結局しり抜けみたいになってしまうということもございますので、その辺はなかなか痛しかゆしだなという気もいたしております。

北神分科員 わかりました。ぜひ積算方法とかその辺をできるだけ厳しく見ていただくということだというふうに思います。

 きょうは、この論点についてはこれまでにしまして、次の質問に移りたいと思います。

 少しトーンを変えまして、きょうは分科会ということですので、先ほど、元大蔵省の後輩、木原君も一生懸命やっておりましたが、地元のことを二点ほど伺いたいというふうに思います。

 一つは、関西副首都構想の推進という話でございまして、これは、現在、御承知のように、政治とか行政とか経済の中枢機能というものが、東京あるいは皇居を中心として大体半径三キロメートルの範囲内に集積している。効率のいい部分もあるけれども、例えば、大地震とかテロとか災害とかあったときに、そういった首都機能というものが非常に喪失する可能性もある。そういったときに、やはりそれをバックアップするような、準というか副首都的な機能の地域というものを設けるのは、一つ国家の危機管理としてそういったことも十分考えられるというふうに思っているんです。

 そこで、京都府としては、関西がそれにふさわしい、国の地方機関というものもあるし、各国の総領事館というものもそこにあるし、京都には迎賓館もあるわけでございます。そういった意味で、施設とか交通網とかその辺は比較的ほかの地域に比べたら充実しているんじゃないか、したがって低コストでそういった首都機能を代替する体制を整備できるのではないかということが地元から沸き起こっている要望としてあります。

 具体的には、関西を副首都として位置づけることが一つで、もう一つは、それを踏まえて、既存の施設整備とか交通整備というものを必要最小限、これはそんな過大なことを要求することではないんですが、そういったことを要求するということであります。

 こういったものは、はっきり言えば、予算の分捕りみたいなものにかこつけて、こういった構想とかよく使われることがあると思うんですが、これは、とりようによって非常に大事な話だというふうに思っております。

 首都圏でこういった災害が起きる可能性とか、そういった首都機能が麻痺する可能性というのを、ただ乱暴にあおり立てるんじゃなくて、実際、その辺は内閣府だと思うんですが、どういうふうに政府として考えておられるのかをまず聞いて、その後にちょっと財務大臣の、財務大臣というよりは、京都、地元の選出の政治家としてお聞きをしたいというふうに思います。

榊政府参考人 お答え申し上げます。

 実は、首都圏では、大正十二年の関東地震がございました。マグニチュード八クラスの地震でございます。これは、二百年から三百年間隔で発生いたしておりますので、次のマグニチュード八クラスの地震の発生といいますと、今後百年から二百年程度の先ではないかというふうに考えられています。

 そこで、私どもの方の中央防災会議専門調査会の方でございますけれども、ではマグニチュード七クラスの地震はどうかということで見ますと、実は、二百年から三百年間隔の間に数回発生するということでございまして、ある程度の切迫性を有しているというふうに言われております。

 したがいまして、中央防災会議の専門調査会で被害想定をやりましたときには、東京湾北部を震源とするマグニチュード七・三の地震ということで被害想定をいたしております。

 この場合、最大で、建物の全壊・焼失棟数が八十五万棟、死者数が一万一千人、経済被害額百十二兆円。ライフラインの被害の復旧目標が、電力で六日、固定電話で二週間、水道で一カ月、ガスで二カ月程度を復旧目標にいたしております。

 ただ、マグニチュード八クラスではなくて七クラスの直下型地震という想定をいたしましたので、首都圏全域が壊滅的な被害をこうむるということは実は想定をしておりませんで、ただ、首都中枢機能への影響として、各省庁のバックアップデータのメーン建物が同時に被災するおそれですとか、民間企業についての事業を継続できないおそれがあるというようなことが想定されているところでございます。

谷垣国務大臣 北神委員は京都、答弁する私も京都、それから竹本副大臣は大阪で、余り利害関係者ばかりで偏った議論をしてはいけないと思いますが、今内閣府の方から御答弁がございました。

 マグニチュード七ぐらいであれば首都圏が壊滅的ということではないんだというお話でしたけれども、八というのも間隔からすると全く想定されない世界ではない。そうして、そのときに、首都圏が全く壊滅的になって中枢が麻痺してしまうというような状況は、やはりどうして回避するかということを考えておかなければいけないんじゃないかと私は思っております。

 実は、国会の中でも、この首都機能移転に関連して、国会移転ということがずっと議論をされてまいりまして、私どもは関西のほかの議員と御一緒になりまして、国会機能というものを関西に持ってくるべきじゃないかという運動を長い間やっておりましたけれども、いろいろまたこれはそれぞれほかの地域からも御意見がございまして、こういう言い方はいけないかもしれませんが、痛み分けのようなことに結果としてはなっているわけでございます。

 しかし、結局、国会の中で、国会機能を移転するときの議論の最後の座長とりまとめという中でも、今後、分散移転あるいは防災、とりわけ危機管理機能の中枢の優先移転、こういうことに調査研究をしなければならない、こういうことになっておりますので、やはりこれはやらなきゃいかぬことだろうと思います。

 その際に、北神委員に触発されて申すわけではありませんが、関西にはいろいろなものが集積していることも事実でございますので、そういったことも、私は関西出身の議員としては十分視野に入れる必要があるのではないかと思っているわけでございます。

北神分科員 ありがとうございます。

 そういう国家的な危機管理という面でも非常に重要な問題だと思いますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 もう一つ、京都府が取り組んでいる話として安心・安全なまちづくりの推進というものがございます。

 これは、御存じのように、昨年末、京都の宇治市で、学習塾の小学校六年生の女の子が講師に刺殺をされるという大変悲惨な事件がございました。これは象徴的なものだと思いますが、地域の治安維持とか、あるいはその背景にあるコミュニティーの緊密さというか、そういったものが喫緊の課題になっているというふうに思っております。

 そうした中で、今申し上げた安心・安全なまちづくりの推進という中で、警察官をやはりもっとふやさないといけないとか、交番を中核にして地域のいわゆる防犯力を向上するとか、そういった政策に支援をしてほしいという要望がございます。

 これも、まず警察庁の方に、こういった取り組みについて警察庁としてどういうふうにお考えなのかということをお聞きした上で、またこれは地元の政治家としての見解を伺いたいというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。

竹花政府参考人 京都府におきましては、平成十六年十二月に京都府犯罪のない安心・安全なまちづくり条例を制定いたしておりまして、これに基づき、府、市町村、府警察、府民等が一体となった地域における犯罪防止活動、抑止活動を推進しているものと承知をいたしております。

 府警察におきましても、府民の方々、防犯ボランティア等に対しまして、犯罪情報を積極的に提供するということに努めておりますし、また、警察官の増員や警察活動の改善等による警察基盤の充実強化を図っております。さらに、祇園、木屋町の繁華街対策にも取り組んでいるものと承知をいたしております。

 このような取り組みの結果、昨年中は、一昨年に比べまして刑法犯認知件数で九・四%の減少を見たと聞いておりますけれども、今後、さらに安全なまちづくりを進めるために、府警といたしましても重要課題として取り組んでいくと聞いております。

谷垣国務大臣 今おっしゃった点は、まず、結局、私の仕事の所管でいいますと、定員をふやして、それに見合う予算をつけていくということだろうと思います。

 実は私、財務大臣になる前は国家公安委員長をやっておりまして、そのときもやはり定員をふやしたいということでしたが、そのときは、総務大臣は片山総務大臣でいらして、谷垣、おまえ、簡単に増員ということを言うけれども、今の地方公務員の定員事情で、いかに難しいことかわかるかと、それで、おれにうんと言わせるためには、おまえ、一度頭下げに来いというようなお話があったことを今も鮮明に記憶しております。

 確かに、片山大臣、非常に苦労していただいて、増員をやってくださいましたけれども、今の地方公務員の定員をどうしていくかという計画の中で、なかなか警察官をふやしていくというのも、相当容易なことではございませんが、このところ継続的に、去年も、十七年度は三千五百名だったと思います。また、十八年度も三千五百名ということで手当てをしてきておりまして、それを有効に活用していただきたい。

 これは、実際はもういろいろな都道府県から、うちも足らない、うちも足らない、少しでもふやしてほしいというのはたくさん来ているわけでございますので、京都府だけというわけにはなかなかいきませんが、有効に活用していただきたいと思っているわけでございます。

北神分科員 ありがとうございます。

 なかなか、地方公務員がだんだん減らされているという中で難しい部分もあると思いますし、行政改革全体の流れがあると思います。

 ただ、いつも私、小泉内閣の小さな政府論で思うんですが、小泉さんは基本的に、規制緩和路線とか、官から民、つまり、これは事前規制をできるだけ取っ払うということだというふうに思うんですが、そういった世界においては、実は事後規制の方が非常に大事になってくる。例えば、ライブドアの問題とかでもそうですし、証券取引等監視委員会の人員をふやしたり、人員をふやすだけじゃなくてノウハウとか要は準司法的な機能を持たせる必要がある。

 そういった意味で、警察も同じような考えかどうかわかりませんが、小さな政府というのは、実は公務員をふやさないといけないという局面もあるというふうに私は思っておりますし、大きな意味で、やはり自由化される社会の中で、犯罪というものもふえる可能性もどんどん高まってくる。それの、一つ国家の中枢機能である危機管理とか治安維持というのは、やはり警察というのは非常に重要だという意味では、普通のそのほかの地方公務員とは同列に論ずることはできない部分もあるというふうに思います。

 その一点だけ申し上げるのと、もう大体時間が終わりますから、最後に、まちづくりの推進の話は、犯罪防止の背景に、地域のコミュニティーの部分もあると思います。谷垣財務大臣が総理候補の一人として、きずなということをいつも言われて、家族とか地域社会のきずなの中で、みんなで支え合うような、そういった部分が必要だ。

 私も、先ほど申し上げた自由化とか小さな政府、そういったものの中で非常に大事になってくるのは、別に鳩山さんの物まねをするつもりはないですが、フランス革命のときに、自由、平等、これは理性で考える部分ですね、自由を実現する、平等を実現する。その後に、友愛というものがやはりある。つまり、理性で割り切れない、そういった、おっしゃるようなきずなという部分が非常に大事になってくる。

 そういった意味では、ちょっと話が大きくなりましたが、京都府の言っているまちづくりの推進の話も、大臣の国家像、社会像に合致する部分があると思いますので、ひとつ強く要望をお願い申し上げて、もう時間が来ましたので、質問といたします。

 空港整備特別会計についても質問しようと思ったのですが、大変申しわけないんですが、きょうはできないということで、よろしくお願いしたいと思います。済みませんでした。

山本(幸)主査代理 これにて北神圭朗君の質疑は終了いたしました。

 次に、森本哲生君。

森本分科員 民主党・無所属クラブの森本哲生でございます。

 本日は、国の形にかかわる重要課題である三位一体改革について質疑をさせていただきます。

 少し頭の方で述べさせていただきますが、財政とは、国家が個人と社会の幸福の最大化のために必要な財力を調達、管理、使用する作用ということであります。そもそも、必要とされる財力は国民の税負担によって支えられているわけですから、国庫補助負担金と地方交付税の改革、移譲の対象となる税源の議論も、究極的には国民の利益にかなうものでなければならないというふうに考えております。細かいレベルまでは困難だといたしましても、財政立憲主義の観点から、受益と負担の関係をできるだけ明確に、適正にしていくことは、国会と内閣の共同責任であるということをまず冒頭に申し上げさせていただきます。

 そしてまた、最近は、財政の規律に関して各党の議論が盛んでございまして、昨年十月に民主党がまとめた憲法提言では、公会計や財政責任に関する規定を明確にすることをうたっておりますし、自民党新憲法草案でも、「財政の健全性の確保は、常に配慮されなければならない。」という条文を増補する案を示すなど、議論が盛んになってきております。

 公権力による財政政策は、決してフリーハンドではございませんで、厳格な規律のもとで推進されなければならないということは、共通の認識ができていると存じます。三位一体改革が、国と地方との間の資金移動や負担の押しつけ合いのような次元で論じられるとすれば、主権者である国民にとって、将来、とても不安な結末を招いていくことにもなるわけでございます。

 以上のような問題意識を前提に、それでは、国家財政と地方財政の現状について、総論、各論の質問を進めさせていただきたいと存じますが、国家財政の問題については、歳入と歳出との構造的ギャップが原因となっているというようなフレーズがよく使われます。構造的ギャップをどのように分析しておられるのか、この点にも触れて答弁をお願いいたします。

 また、地方財政につきましては、巨額の交付税特会借入金の返済見通しについて、さらには、地方団体が危惧するような交付税の大幅削減という危機感があることを前提に、地方の一般財源の総額確保をどうするのかという観点も踏まえながら、答弁をよろしくお願いいたします。

谷垣国務大臣 今、国の方も地方の方も両方、私が申し上げるわけですか。

森本分科員 では、ここは分けていただけますか。

山本(幸)主査代理 では、まず総務省からいきましょうか。

 総務省岡本大臣官房審議官。

岡本政府参考人 お答えいたします。

 地方の借り入れ、特に交付税特会のお話がございました。十八年度末におきます交付税特会の借入金残高は約五十三兆円、うち地方負担分が三十四兆円となる見込みでございます。また、これらを含めました地方の長期債務残高、トータルで約二百四兆円というふうに見込んでおります。

 このように累積いたしました借入金を償還しつつ、地方の一般財源を確保していくためには、構造改革の推進などによりまして経済の活性化を行って、地方税等の一般財源の収入増に努めるということがまず肝要だろうと思います。また、国、地方を通じました歳入歳出一体改革などの改革、さらには、行財政の簡素効率化を図ることによりまして、収支のギャップを縮小していくということが道筋ではないかと思います。

 私どもといたしましては、このような道筋を中期地方財政ビジョンというような形で策定をいたしまして、これを地方団体にもお示しいたしつつ、地方団体にも、それぞれ財政の中期的な見通しを立てていただいて、地方財政の安定的な運営を図っていただきたいというふうに考えているところでございます。

谷垣国務大臣 私からは、国家財政の現状に対する認識について申し上げたいと思います。

 平成十八年度予算、今御審議をいただいているわけでございますが、これは、私どもは、歳出改革路線を堅持して、それを強化しようという方向でつくったつもりでございまして、財政健全化に向けた歩みを一歩さらに進めて、歳出歳入一体改革の土台固めを行うことができたのではないかと思っているわけです。

 しかしながら、我が国財政は、今、ギャップということが何だというふうにおっしゃいましたけれども、高齢化が本格的に進展してまいりまして、どうしても社会保障関係費が増加をしてくる。それからもう一つは、景気が低迷しておりました。それに対応するために減税等々のいろいろな策を講じてきた。こういうことによりまして、やはり収支ギャップが、構造的と言っておりますけれども、あるような現状でございます。

 また、毎年毎年そういうギャップがあるというだけではなくて、これはもう私もしょっちゅう申し上げておるわけですが、そういうことの積み重ねの結果として、国、地方の債務残高がGDP比一五〇%を超えて、主要先進国中最悪の水準にあるというような現状でございます。

 高齢化の進展ということを申しましたけれども、社会保障関係費は、現行制度のままでは、毎年大体一兆円程度の自然増が見込まれるということでございます。それから、膨大な水準にある債務残高ということを考えますと、これは景気の回復に伴って金利が上昇していきますと、利払い費の増加ということも相当覚悟して頭に入れておかなければならないということだろうと思います。

 今後、景気が拡大していけば税収も一定の伸びが期待できることは確かでございますけれども、経済成長に伴い物価も上がっていくということを考えますと、行政サービスのためのコストの増加も見込まれる。特に、社会保障関係等は物価スライド等々がございますので、そういうことを含んでおかなければならない。それから、先ほど申し上げた金利の動向もございます。

 こうしたことを踏まえますと、自然増収が生じたとしても、それだけで財政収支の悪化に歯どめをかけることはなかなか困難だ、そういうあたりを構造的な財政支出の収支ギャップであるというふうに申し上げているところでございまして、そういう認識を踏まえて歳出歳入一体改革の道筋をつけていくことが、私どもにとりましては非常に大きな課題になっているわけでございます。

森本分科員 ありがとうございました。

 そうすると、谷垣大臣の言われる改革路線の強化は、国の方も大変だと思うんですが、地方が合併してもなかなか予算が組めないような現実の厳しさがありますが、今の話を聞いておりますと、高齢化、社会保障、そして四%の成長率があっても、いつぞや資料の方で非常にうちも苦しいんだというような、いろいろ利子とか物価スライドとか、今お話をいただきましたが、そういう面では非常に大変な時期を今地方も迎えております。

 例えば、これは総務省の関係にもなるかと思いますが、県の方で、企業が進出していただいて法人事業税等の税収が多くなっても財政はそれほど助からないんだというような現実が数字的に今、出ているわけでございますが、やはりその点については、地方と国の方の財政の現況の、非常に国も厳しいから仕方ないんだという話だけでは済まないようにも思いますので、例えば、総務省の関係もあるかと思うんですけれども、一つ例を出しますと、地域総合整備事業債でどんどん景気浮揚で事業を地方へやっていただいた時期がありました。ですから、いろんな絡みの中で、これから国と地方の関係をどうしていくんだということが肝心でございますので、思いのたけを少し聞かせていただけたら大変ありがたいと思っております。よろしくお願いします。

谷垣国務大臣 思いのたけというといろいろなことがあるわけでございますが、この間の三位一体の議論で、これは地方六団体も参加していろいろな議論がなされました。総じて、私の印象は、国と地方とどっちが貧乏なんだという、どっちが金持ちなんだという自慢のし合いだったらやるかいがあるんですけれども、どっちが貧乏なんだというその主張の連続だったと思うんですね。これは甚だ情けないことだと思っております。

 やはり、これからの財政再建の道筋をつける上では、私どもは、とかく国の財政だけがすぐ視野に入ってくるわけですけれども、まさに、私どもの目的も国、地方合わせて二〇一〇年代初頭にプライマリーバランスを回復していくというところにあるわけでございますから、国と地方がお互いに補完し合って財政状況を改善していくという方向になければうまくいかないだろうというふうに私は思っているわけでございます。そういうことを通じて、どっちが貧乏なんだと競争し合う状況に早く終止符を打ちたいというのが私の基本的な考え方でございます。

森本分科員 ありがとうございます。通告もしておりませんので、余分なことを聞かせていただいたわけでございますが、ありがとうございます。ただ、国と地方が信頼関係を失わないような、その点について特にお願いをしておいて、あとたくさん聞かせていただきたいことがございますので、この問題については終わらせていただき、次に進ませていただきます。

 昨年の三月二十九日にいわゆる新地方行革指針が各自治体に通知をされております。計画的な行政改革の推進と住民に対する説明責任が課されておるわけでございます。平成十七年度から五カ年の集中改革プランがどのように推進されていくかが、今後の地方行政改革のキーポイントになると認識をさせていただいております。

 この問題は、地方財政の悪化の原因がどこにあるかという、かつて経済財政諮問会議でも有名になった論点が背景にあると思いますが、本日は総務省のみの通告ということで、谷垣大臣には大変申しわけないんですが、まず、地方行政改革でどのような各論、政策で実行され、どのような成果を上げているのか、また成果を上げていないのか、進捗状況、実績等についてお願いをいたします。

久元政府参考人 地方行政改革の現状と考え方につきましてお答えを申し上げます。

 具体的な指標で申し上げますが、まず地方公務員の数でございます。この十一年間、連続して減少しておりまして、累積で二十四万人以上の純減ということになっております。特に直近を見ますと、平成十七年は、対前年比で過去最大の四万一千人以上の純減というふうになっております。

 次に、給与ですけれども、給与は通常、国家公務員との比較をラスパイレス指数で見るわけですが、全地方公共団体の平均で九八・〇ということで、一〇〇を割っております。既に全国の九二%の団体が一〇〇未満ということになっております。

 あと、行政改革で、私ども、民間委託を進めるということを重視しておりますが、例えば、都道府県で見ますと、本庁舎の清掃は一〇〇%、また道路の維持、補修、清掃といったものは九四%が既に民間委託になっておりまして、公の施設につきましても指定管理者制度の導入を積極的に進めているところであります。

 このように、地方公共団体の行政改革は着実に進捗しているというふうに考えておりますが、決してこれで十分であるとは考えておりません。今、委員御指摘のとおり、この集中改革プランを私どもとしては全地方公共団体に本年の三月までにつくって公表するようにお願いをしておりまして、不断に行政改革に取り組むよう各地方公共団体に要請をしております。今後とも、地方行革の推進に全力で取り組んでまいる所存であります。

森本分科員 ありがとうございます。

 お聞かせいただきまして、成果が非常に上がっておるというようなことでございますが、どうも県の方でも、ややもすると弱いところから進められておる、現業とかいろんな単純労務の関係とか。ですから、そういった弱いところがより厳しい環境になっていかないような、そうした気持ちで改革をやっていただかないと大変なことになるというふうに、やはりこれは全体社会の問題ですから、私、そのことを少し要望させていただいて、次の質問に移らせていただきます。

 地方交付税改革の議論の前置きとして国と地方の関係を論じる場合に、先ほども少し申し上げたかわかりませんが、国の財政状況を考慮すべきかどうかという議論の典型的な出発点があります。財政制度審議会と地方財政審議会の検討経緯から明らかな幾つかの論点について順に質問させていただきますと、まず、地方財政計画と決算の乖離に関する問題でございます。

 地方財政計画は、民間企業の経営計画に相当するわけでございますが、これが事業部のトータルコストと大きく乖離しているとするならば、当該取締役の経営責任が問われることになるわけでございます。いわゆる主要三経費、すなわち、給与、一般行政経費、普通建設事業費には実質ベースで大きな乖離が見られると思います。

 地方財政要覧によりますと、給与関係経費がプラス一兆三千八百六十八億円、一般行政経費がプラス六兆八千七百九億円で、普通建設事業費がマイナス五兆三千百七十二億円でございますが、過大計上された分が使い回しされているという批判もあります。

 そして、この大幅な決算乖離をどのように是正しようとしていかれるのか、お伺いをさせていただきます。

岡本政府参考人 お答えをいたします。

 地方財政計画と決算の乖離の状況でございますが、十五年度決算で見てみますと、一般財源のベースで、投資単独事業では計画額が約二・五兆円下回っております。また、逆に、一般行政経費では、計画額を決算が三兆円上回っているという状況にあるわけでございます。

 これは、いろいろな機会でお話しさせていただいておりますが、地方財政計画でハードからソフトへというものと、実際の地方の現場でのハードからソフトへというものとのスピードのずれが若干あったことに起因をしているものというふうに基本的には考えております。

 このため、平成十七年度の地方財政対策から、財務省当局と私どもと、この決算乖離をどのように是正していくのかという議論を進めまして、平成十七年度に一般財源ベースで三千五百億円投資的経費を減額し、一般行政経費を増額するという一体的な乖離是正に着手したところでございます。平成十八年度におきましては、これをさらに大幅に進めるという観点に立ちまして、一般財源ベースで一兆円の一体的な是正を行ったところでございます。

 これらの是正によりまして、乖離額は大幅に減少しているというふうに考えておりますが、今後とも、平成十六年度以降の乖離の状況等もきちんと精査をいたしまして、それを踏まえながら、着実に是正をしてまいりたいというふうに考えております。

森本分科員 ありがとうございます。

 それでは、例えば三年後の計画とか、そういう見通しはあるわけですか、計画は。

岡本政府参考人 今申し上げましたように、着実に是正を図っていきたいというふうに、毎年毎年の地方財政対策の中で、財務省当局と私どもで議論をさせていただいて、早期の解消に努めていきたいということでございます。

森本分科員 わかりました。ありがとうございます。

 それでは、行政改革のインセンティブの算定について、次に進ませていただきます。

 この制度が、自治体の主体的な取り組みを促進するものとして、基本的な評価をされるべき制度だとは思っております。具体的には、どのような成果が得られた場合、もしくは努力が積み重なった場合、インセンティブが与えられるのか。さらに、インセンティブの算定の総額そのものをもっと拡充していくべきではないかと考えますが、その辺についてお伺いをさせていただきます。

岡本政府参考人 地方交付税の行革のインセンティブについてのお尋ねでございます。

 委員御案内のように、地方交付税は、教育でございますとか福祉でございますとか、それぞれの分野ごとにその標準的な経費を積み上げて計算しているものでございますから、交付税の算定上において標準的な経費と想定している以上の行革努力を行われた団体におきましては、その経費を節減できるわけでございますので、基本的にはその浮いた分は他の施策に財源を確保できるという仕組みになっているわけでございます。

 ただ、このような基本的な仕組みに加えまして、より行革のインセンティブを促進すべきではないかという御意見が強くございますので、十七年度からは、より徹底した行革の推進が求められるということも踏まえまして、行革努力に応じて、それらの努力をしている団体はいわばそれだけ行革のためのいろいろな費用もかかっているだろうということから、例えばそういう行革努力のためのいろいろな、ITの導入でございますとか、あるいは税の徴収努力に要している経費でございますとか、そういうようなものを割り増して算定をしたという考え方をやりました。

 さらにこれを積極的に進めようということで、十八年度におきましては、行政改革をする団体は、単にそれをカットするということだけではなくて、その行政改革を通じて捻出した財源を活用して、住民サービスのより向上に努めるということが地方団体の本来のいわば目的でいらっしゃるわけでございますから、そういう各地方団体の地域振興施策の展開にも、行革を努力している団体は、より頑張っておられるんだろうということを踏まえまして、その行革努力の経費に着目して、地域振興のためのいろいろな財政需要というものに反映をさせようということを、今年度、十八年度の地方交付税の算定から導入したいと考えておりまして、よりその拡充に努めていきたいというふうに考えております。

森本分科員 ありがとうございます。

 実は、交付税の算入の基礎、これは地方からすると、随分いろいろなものが算入にどんどん組み込まれていって、わけがわからぬというような状況を言われることもあるんですね。というのは、いろいろなところへ交付税算入しますよ、算入しますよと言いながら、交付税の額はどんどん減っていくというようなことで、交付税に算入されて、インセンティブの算定の中にいろいろなものが入ってくると、果たして、明確にこれが実績として評価いただけるのかな、これは私も正直、疑問でございます。

 この面については、確かに交付税算入ですよということで明確にされると思うんですけれども、これと関連して、つけ足しのような質問にもなるんですけれども、いろいろな意味でちょっと不確定過ぎるんじゃないかなという気がするんです。その辺につきましてちょっとお考えを、そうではないんだと言われるんでしょうけれども、それなら聞くなということなんですけれども、よろしくお願いします。

岡本政府参考人 交付税の算定一般に当たりまして、例えば単位費用の計算でございますとか、特に、今回いろいろな議論がございましたのは、三位一体の改革を受けまして補助金が廃止をされた、その補助金の廃止をされたことに伴う、いわば税源移譲が満たない、税と補助金改革とが見合わない団体がたくさんおありになるわけでございます。特に、市町村の中の財政力の弱い団体ではそういうものが多いわけでございますので、そういうためにも、交付税の基準財政需要額にきちんとそれが反映されているのかということが、随分議論をいただきました。

 私ども、そういうことに特に意を用いまして、例えば、二年前の、公立保育所が一般財源化をされました際に、できるだけ公立保育所の実態にふさわしいような経費を入れて、それを見えるような形で交付税算定をさせていただきまして、市長会、町村会等でもそういう具体的な御説明をさせていただきました。

 私どもとしましては、そういう意味で、今回のような、いわば三位一体改革がきちんと回っていくというためにも、そういう経費はきちんと明示的に入れるということもございます。できるだけそういうふうにやりたいと思っております。片一方で、しかし、交付税の算定をできるだけ簡素化して、人口や面積でできるだけわかりやすく計算しろというような御指摘もございます。

 私どもとすれば、いわばそういう両方の主張の中でできるだけ合理的な算定に努めているということでございますので、いろいろ、そういう交付税の算定に関する御批判をできるだけ真摯に受けとめて、皆様方に御理解をいただけるような体系に持っていきたいというふうに思っております。

森本分科員 ありがとうございます。

 地方の代表の方と信頼関係が損なわれないような、そういう真摯な態度ということでも聞かせていただきましたので、ぜひよろしくお願いをいたします。

 財政関係につきましては、大臣お見えになりますが、非常に財務の方でいろいろ厳しい状況というものも聞いておりますので、その中でまた地方の配分というふうなことで、いろいろ知恵を出していただくことになると思うんですけれども、先般も大臣とちょっと会わせていただいて、声をかけていただいて、余り大臣にきついことも言いにくいなという格好できょうもお邪魔をしたんですが、ぜひ、やはり、財政はありますけれども、そういう信頼関係が損なわれないようなことのためのきちっとした制度は明確にしていっていただきませんと、例えば今言われた、人口だけでなしにまた面積もというふうなことも言われましたから、そういったいろいろなことを考えながらこれから取り組みをしていただきたいと思います。

 財政の交付税だけでなしに、介護保険の問題でも、どんどんこれから人が中心部へ流れるようになっていくということが、またこれは違うところでお話しさせていただきますが、いろいろな要素が地方にありますから、その辺も踏まえて御検討をいただくことを切に要望させていただいて、次に進ませていただきます。

 例えば、この交付税の、ちょっと時間がもうあと四分ぐらいになってきましたので少し飛ばさせていただきますが、不交付団体の増加というようなことで、この点についてもお聞かせいただきたいと思うんですけれども、三位一体改革の終局的目標として重要であるという認識を、不交付団体の割合の拡大に向けた改革というところでは認識をしておりますが、不交付団体の数を基準に考えていくのか、人口割合を基準に考えるのか、目標設定のメルクマールが定まらないようでは今後の議論が迷走するおそれがあるというふうに感じております。

 かつて、麻生総務大臣が、二〇一〇年代の初頭に不交付団体の人口割合を三分の一程度にするという見解を二〇〇四年の十一月十五日の経済財政諮問会議で述べておられるんですけれども、これを具体的な数値目標と考えていいのかということをお聞かせいただきたいと思います。

岡本政府参考人 不交付団体の割合についてのお尋ねでございます。

 委員御指摘のように、地方分権のいわば地方の自立を高めていくということから、不交付団体の割合をできるだけ高めていくというふうに、これまで総務省といたしましても、諮問会議等いろいろな場で御説明をさせていただいております。また、骨太二〇〇五でも、不交付団体の、市町村ベースでございますが、「人口の割合を大幅に高めていく。」というふうに明記をされております。

 現在の平成十七年度の交付税の算定におきましては、不交付団体の人口は約二千三百三十三万人でございまして、全国に占める割合は約一八・四%ということになっております。これを、二〇一〇年代初頭には人口割合を三分の一程度にするということを総務省としては目標にやってまいりたいというふうに考えております。

森本分科員 それでは最後に、ちょっと簡単に触れさせていただきます。

 地方六団体案では第二期改革の問題が重要視されておるんですけれども、十九年度以降については第二期改革が位置づけられておるようなおらないようなということなんですけれども、この見解についてどのような見解、先般の私どもの福田昭夫委員の質問で竹中大臣が答えていただいておるのはもう省略いたしますが、その点について少しお考えを聞かせていただけませんか、後の第二期。

岡本政府参考人 第二期改革についてでございますが、昨年の政府・与党合意におきましても、地方分権に向けた改革に終わりはないというふうに認識がされているわけでございまして、私どもといたしましても、平成十八年度までの改革の成果を踏まえつつ、さらに地方分権を推進し、真に地方の自立と責任を確立するための取り組みを行っていきたいというふうに考えているわけでございます。

 そのような大臣のお考え方のもとに、地方分権の二十一世紀ビジョン懇談会というのを先般設置されておりまして、現在、有識者の方々でさまざまな角度から議論をいただいておりますが、その一つの主な観点は、地方の自由度を拡大して責任を明確化するという中で、地方分権の将来のあるべき姿というのをまずきちんと議論いたしましょう、そういう基本的な方向、姿を見据えた中で、国と地方の役割分担の抜本的な見直しでありますとか、自由度の拡大、国の関与の縮小などといったものを議論し、それらを踏まえた地方税財政制度のあり方を議論し、その具体的な道筋を進めていきたいという検討をしているところでございますので、これらの議論も踏まえて、さらなる地方分権の推進に努めてまいりたいというふうに考えております。

森本分科員 終わりますが、中途半端な分権でなしに、真の地方分権を目指すような議論をしていただくことをお願いして、終わります。

 ありがとうございました。

山本(幸)主査代理 これにて森本哲生君の質疑は終了いたしました。

 次に、土井真樹君。

土井(真)分科員 自民党の土井真樹でございます。よろしくお願いします。

 まず、今大臣が、歳入歳出一体の改革ということで、一生懸命財政の健全化に向けて努力されていることはよく存じているわけなんですけれども、歳入歳出改革について、その考え方のところでまず質問をしたいと思います。

 まず、歳出についてなんですけれども、いずれこういう歳出を削減していくときに、一般の国民の皆さんが、まじめに額に汗して働いている人たちが不公平感を抱かないような、公平な財政であるというふうに感じられるような改革をしていかなければならないのではないかというふうに考えております。

 その中で、特に社会保障とか地方交付税交付金とか幾つか大きな支出があるんですけれども、少し具体的に話をさせていただきます。

 例えば社会保障費について、いろいろ項目はあるんですけれども、生活保護、先日の新聞では百万世帯を超えたということで、今非常にふえている状況であります。景気が回復しているという状況の中にあっても生活保護世帯がふえているということは、少しゆゆしきことではあると思うんですけれども、と同時に、生活保護世帯ではなくて、一生懸命働いていても、職種によっては、朝から晩まで働いても実質手取りが、手取り収入が生活保護を受ける収入より少ないような方もたくさんいらっしゃいまして、例えば生活保護を受けてパチンコをして遊んでいるとか、そんなようなことをよくいろいろ聞いたりします。実際、私は見ているわけじゃないですけれども。

 そういうような一種の不公平感について、それをこの歳出の削減に当たって見直していかなければならないのではないかというふうに思うんですけれども、そういう不公平感についていかがお考えか、御見解をお願いします。

    〔山本(幸)主査代理退席、主査着席〕

竹本副大臣 先生おっしゃるように、生活保護世帯が非常に多くて、そのための費用が過大である。例えば、私は大阪ですけれども、大阪市なんかは年間二千億を超える費用がそのために使われている。しかも、そのお金を受け取っている人が、朝からパチンコに並んでいる人が結構いるという話でございます。そういったことから、大変な不公平感があるというふうに言われておるわけです。

 そういうことはございますけれども、国民にとっての真の安心を確保していくためには、この制度を将来にわたって持続可能なものとしておく必要が非常に大事でございまして、年金制度改革、介護保険制度改革等に順次取り組んで、十八年度においては医療制度改革、診療報酬改定の引き下げ等を行うこととしているところでございます。

 しかしながら、国の一般歳出において、社会保障関係費が占める割合は既に四割を超えておりまして、平成十八年度予算では二十兆五千七百三十九億円となっております。今後につきましても、社会保障関係費は、高齢化の進展等に伴いまして、毎年一兆円程度の自然増が見込まれるところでございます。

 したがって、今後とも持続可能性を確保する観点から、国民の負担にも目を配りながら、給付について不断の見直しを行い、無駄を省き、重点化、効率化に努めていくとともに、必要な給付に対する負担については、将来世代に先送りすることがないよう、安定的な財源を確保することを通じて給付と負担のバランスを確保していくことが重要と考えております。

 先ほど言いました生活保護につきましては、最近は伸びの鈍化が全国的には見られるものの、なお増大を続けておりまして、先般の三位一体改革の中でも大変議論を呼んだところでございます。これまでも老齢加算の段階的廃止や自立支援の強化等に取り組んでいるところでございますけれども、いずれにいたしましても、今後さらに国及び地方が協力してこの問題の適正化に努めていく必要がある、そのように考えておる次第であります。

土井(真)分科員 今、歳出の方、歳出の削減についてのお考えをお聞きしましたけれども、次は歳入の方、税制の方です。

 税制についてもいろいろと議論があるところなんですけれども、先ほど申し上げた不公平感ですか、一生懸命働く人とそうでない人の差は、そこでもちゃんとめり張りがついていないと国民の皆さんが非常に不公平感を感じるのではないかということで、所得税についてお聞きします。

 所得税は、かなり複雑にはなっているんですけれども、その中でもいろいろな控除制度がございます。控除制度の中の扶養控除についてなんですけれども、本来、扶養控除というのは、子供を扶養する、扶養義務者がいる中で、親の負担を軽減するためにこういう控除制度を設けているというふうに考えるわけなんです。

 今現在、二十を超えて、もう十分社会的に働くことが可能な一般の社会人においても、通常ニートとかフリーターとか言われている人たち、働きもしないで家にいる人たちが非常にたくさんふえている、一種の社会問題になっているかと思うんですけれども、ふえているということです。

 こういう人たちが、果たして、本来扶養義務者になるのかどうか、扶養控除の対象者になるのかということについて甚だ疑問を感じるわけでございまして、二十以上の一般社会人を御家庭に抱えている方、息子さんとかが一生懸命働いている家庭は、扶養控除の対象者じゃないですから、その分税負担が重くなる、逆に、家で遊んでいる人間を抱えている家はその分税負担が軽くなるということで、そこにおいても、一生懸命働いている方が税負担がふえてしまうという矛盾というか不公平感を感じることがあるのではないかというふうに考えるんですけれども、その辺の不公平感を見直すということについてどのようにお考えか、お聞かせ願えますでしょうか。

竹本副大臣 先生おっしゃるように、成人はみずから就労し所得を稼得し、みずからに基礎控除を適用する可能性があることを踏まえますと、現行の扶養控除制度が、年齢のいかんにかかわらず、単に対象者の所得が一定水準以下にとどまることを理由に一律に取り扱っていることには確かに問題がある、したがって、その対象者に年齢制限を導入すべきだという指摘もなされております。

 いずれにしろ、扶養控除を含めた諸控除のあり方については、所得税が家族のあり方や人々の働き方といった人の生き方や価値観に密接にかかわる税であることに加え、その見直しが税負担の変動を伴うものであることから、税制全体における負担水準のあり方や少子化対策全体の議論も念頭に置きながら、より幅広い観点から国民的な議論を尽くしていくことが不可欠だと考えております。

 今後は、税体系のあり方につきましては、こういったもろもろの点を踏まえて検討していきたい、そのように思っている次第でございます。

土井(真)分科員 歳入歳出改革については以上でございまして、次に、大臣がよく今までおっしゃっていた財政の赤字について、プライマリーバランスについてなんですけれども、プライマリーバランスを二〇一〇年初頭には黒字化に持っていきたい、赤字を次の世代に負担させないようにしたいということを常々おっしゃっております。

 その二〇一〇年初頭、何年かというのを含めて、プライマリーバランスを黒字化するに当たって、今現在の歳入歳出バランスを考えますと、かなり巨額な赤字がございまして、このまま歳出を削減するだけでは、通常考えると、とても黒字に持っていくことは難しいのではないかというふうに感じるぐらいの大きな赤字と感じるんです。

 では、このまま歳出を削減するだけで二〇一〇年初頭にプライマリーバランスを黒字にできるかどうか。それについて、例えば消費税について、現行の消費税の税率をアップして、消費税の増額を含めてプライマリーバランスを黒字化しようと考えていらっしゃるのか、その黒字化するに当たって、消費税の増税、増税というか税率を増額することも含めているのかどうか、どのようにお考えか、お聞かせ願えますでしょうか。

谷垣国務大臣 今、土井委員がおっしゃいましたように、財政を改善していく目標、二〇一〇年代初頭にいわゆる基礎的財政収支をバランスさせて、その年いただいた税金でその年の政策を担っていこう、そういう形でツケを先送りしない形に持っていこうというのが目標でございます。

 それで、実はそれをどうやって運んでいくかという手法の問題と、もう一つ、プライマリーバランスを回復してもまだ膨大な借金が残って、その借金は同時に利払いが必要なわけでございますから、国債発行残高はふえ続けていくという問題がございますので、次の目標、プライマリーバランス回復後の目標というものも考える必要があるのかどうか、目標と手段にそれぞれ検討しなきゃならない問題があるわけでございます。

 それで、手段の問題としては、まず、おっしゃったように無駄な歳出を徹底的にカットしていかなきゃならぬ、そのためにあらゆる努力をしていく必要があるということは、そのとおりだと私も思っているわけです。

 そのときにやらなければならないことは、大きな歳出項目である、先ほど不公平をおっしゃいましたけれども、社会保障体系であるとか国と地方の関係を合理化、見直していくというようなことが、これはどうしても避けて通れない。聖域なきと言っておりますが、やはり大きいところができないようではなかなかいかないということもあるでしょう。

 それから、国民の目からすると、要するに、政府の中の無駄というようなものに十分目が向いているかどうかという強いまなざしもございますから、そういうあたりも、なるほど、ここまで頑張ったのかというだけのものをこれからやっていかなきゃいかぬだろうというふうに思います。

 しかし、それだけでできるかというと、まさに土井委員がおっしゃいましたように、もうストックも、国、地方を合わせるとGDPの一五〇%を超えた公債を抱えているわけでございますし、十八年度予算で公債依存率が三七・六%という状況である。これは歳出カットだけではなかなかいかないわけでございますので、そこで歳入歳出一体改革という議論になってくるわけでございます。

 そこで、では、その中で特に社会保障負担が非常に大きいわけですから、社会保障等々もどれだけこれから給付が必要なのか、それに見合う負担はどうするのかという議論をしていきますと、どうしても、広く公平に負担を分かち合うという観点から、消費税というものをどうしていくかという議論は避けて通れないだろうと思います。

 しかし、議論していかなきゃならないのは消費税だけではなくて、国の税体系全体を見据えながら、その中で消費税をどう位置づけていくかという議論でなければならないだろうと思うんです。

 では、それはいつからなのかとか、税率はどのぐらいなのかとか、いろいろな議論がございますが、まだ財務大臣としてそれを明確にお答えするだけの議論には、率直に言って、なっておりません。

 ただ、それを考えていくときに、幾つか、これだけは考えておかなきゃ、頭に入れて問題を整理しなきゃならないだろうということがございます。

 一つは、先ほどから御議論になっておりますように、社会保障が毎年一兆円ぐらいの自然増がある、それはどう抑えられるのか抑えられないのかということもございますが、それをどうしていくのか。

 それから、GDP比で一五〇%公債を持っておりますと、景気が回復して金利が上昇していったときの金利のリスクというのは相当頭に入れておかなければならないことだろうと思います。

 それから、既に議論が進んでいることで、年金改革をやってまいりまして、二年前でしたか、法案も通していただいたわけですが、その中に、基礎年金は今三分の一税を入れておりますけれども、二分の一の税負担にする。それをやりますと、二・六兆円ぐらい初年度で多分かかるだろうというふうに思います。これが、平成と西暦がありますとごっちゃになってついつい舌がもつれるんですが、平成十九年度に税制の改革をして、平成二十一年度にその基礎年金の国庫負担を二分の一に持っていけと法律に書いてございます。

 そういうようなことを、だから、いろいろな方程式がございまして、その方程式をどうやって解いていくかということが必要でございます。

 それで、歳出歳入一体改革の議論の中では、ことしの年半ばまでに選択肢を示し、そして工程表も明らかにしながら、国民的な議論を高めていくということになっております。私どもは、毎年毎年、年末になりますとその次の年の予算編成や税制改革を議論していかなければなりませんので、歳出歳入一体改革で議論したものはできるだけ来年の税制や予算編成の中に生かしていきたいと考えているわけです。

 しかし、タイミングの問題もさることながら、大きな税制の改正ということになりますと、政治の中で議論をしたら事足れり、行政の中で議論をしたら事足れりというわけにはいかないだろうと思います。やはり大きく国民的な議論を喚起していって、そういう中で、なるほど、これが必要だというふうにかなりの国民に思っていただかないと事柄は進まないということがございますので、歳出歳入一体改革の中では、先ほど申し上げたような多元的な方程式も頭に置きながら、できるだけ議論を具体的にして、選択肢も具体的な選択肢を示して、国民的な議論を喚起していくというのが今一番大切なことなのではないかと考えているところでございます。

土井(真)分科員 今、消費税のタイミング等については議論をということですけれども、今大臣のお話の中で、プライマリーバランスを黒字化、収支とんとんにするという目標と、その次に、先ほどおっしゃった、対GDP比一五〇%のストックの部分をどうするかというお話もございました。私も実は非常にそこのところがお聞きしたいところなんですけれども、収支とんとんにしてもまだストックがそれだけ残っている、借金は利払いがあってどんどん雪だるまのようにふえていくということで、では、次の目標として、そのストックをどの程度まで圧縮するか。

 要するに、単純な比較でいうと、対GDP比何%ぐらいまでを目標として削減していくのか、また、それはどのぐらいの期間を目指してやっていくのか。その辺について、何かお考えがございましたら。

谷垣国務大臣 これは経済財政諮問会議の歳出歳入一体改革の議論の中でこれから詰めていかなければならないことでございますので、まだ私の立場としてこういう結論だと言えることはないんですが、常識的に言うと、これから長期国債のGDP比をだんだん抑えていくということが当面の目標ではないかなというふうに思ってはいるわけでございます。

 こう考えるゆえんは、プライマリーバランスを回復いたしますと、金利と名目成長率が同じであれば、GDPの中に占める国債残高というのはふえていかないわけですけれども、だからそうなれば、もしずっとそのままの状態が続けば、国債は塩漬けにしておけばいいという横着な議論もあり得るのかもしれません。まして、長期金利よりも名目成長率の方が高いということになれば、だんだん小さくなっていくわけですから、極端な言い方をすると、国債を返さなくてもどんどん小さくなっていくよという議論になっていく可能性もございます。

 しかし、なかなかそういうことは望めることではありませんし、政策的にそういうことが実現できるのかどうかということも、いろいろな議論がございますけれども、そういうことを考えて財政再建を構想すべきではないのではないかというのが私の考え方でございますので、少しでもプライマリーバランスを黒字にして、そしてそのできた黒字を国債のパーセンテージの圧縮に持っていくということが、次に掲げる目標のあらあらの姿はそんなところではないかなと思っているわけであります。

土井(真)分科員 私も今のお話はそのとおりだと思うんですけれども、現実、先進国の諸外国ですと、やはり対GDP比五〇%を切っているぐらいのレベルの国が多数でございまして、通常そのぐらいまでが許される範囲ではないかな、ツケを次世代に残さないための許される範囲ではないかなというふうに思いますので、ぜひそういう目標を、ある程度大ざっぱでも目標の数字と期間を提示されて、今おっしゃった歳入歳出の一体化に取り組んでいくことが、国民の皆さんにわかりやすく、納得していただけるのではないかなというふうに思います。

 消費税については、あともう一点だけお聞きしたいのは、これは大臣がおっしゃっているわけではないんですけれども、いろいろな方がおっしゃっている中で、今、消費税を、先ほどあった社会保障とか、何らかの形の目的税にすれば納得してもらえるんじゃないかという意見がございますが、それについて大臣はどのようにお考えでしょうか。

谷垣国務大臣 現実に、消費税、国が使う分は予算総則で社会保障等々に充てるというふうに書き込んでございますので、現実にはそういうふうに使われておりますし、しかし、実際には消費税よりもそれに必要な経費の方が多いわけでございますから、オーバーフローのような現象が生じているわけではないんですね。

 それで、今後目的税にしていくのがどうかというのは、私自身もまだ定見を持っているわけではないんです。ただ、財務大臣として申しますと、消費税というのは非常に基幹的な税であります。日本の税制の中で極めて重要な柱でありますから、そういうものは、本来であれば、目的税にしておくよりも一般財源として、そのときそのときの財政需要で自由に、自由にといいますかフレキシブルに使える一般財源にすべきものだ、そのように思います。

 ただ、税の場合は国民の理解をいただくということも大事でございますから、何に使うんだという議論になって、ああ、それは高齢化が進んで社会保障のために使うのはやむを得ないなということで納得していただきやすいとすれば、そういう選択肢もあり得るのかなというぐらいがまだ今の考えでございまして、これでという決め打ちの考え方は今持っているわけではありません。

土井(真)分科員 ありがとうございます。

 それでは、次の質問の方に移らせていただきます。

 今、政府の方は、政策金融改革が佳境に、今やっていらっしゃるかと思いますが、確かに、政策金融を構造改革の一環としてまとめて小さくしていく、小さな政府と同時に小さな組織としていくという大きな方向は私も大いに賛成ではございますが、とはいえ、やはりどうしても必要な部分はあるのではないかなということで、特に、バブルの後に貸しはがしが社会問題になったころに、中小企業向けの、たしか二十兆か三十兆だったと記憶、覚えていないんですけれども、信用保証枠をやって大きく融資を出した。ああいう一種の金融危機、国内的な金融危機のときに、やはりそういう政策金融というのが、非常に社会を救うというか、安定化させたのではないかと。

 さらに、その何年後かだったと思うんですけれども、アジアの通貨危機のときも、日本がかなり融資をしてその危機を救ったということがございます。

 金融というのは、平時は通常の民間金融で十分事足れるとは思うんですけれども、常に、何か発生したときというのは一番、そういう意味でいうとしっぺ返しも強い世界でございますので、どうしてもそこで緩衝材となる政策金融というのも必要だと思うんです。特に金融危機に対してそういう政策金融が必要だというふうに考えるんですけれども、これについて大臣はその必要性等をどのようにお考えか、お聞かせ願えますでしょうか。

谷垣国務大臣 今おっしゃった貸し渋り対策とかあるいはアジア通貨危機に見舞われたときの危機対応、こういった点で我が国の政策金融機関は大きな役割を果たしてきたと思っております。

 ですから、政策金融機関をできるだけスリム化して、本当にやらなくてもいいところまで肥大化するようなことはやめようじゃないかということでやってまいりました。それはそのとおりだと思いますが、今まで、そういう中小零細のところに対応してきたところや通貨危機といったような危機管理、こういったものの機能は今後とも発揮できるように残していかなければならないんだろうと思っております。

 昨年の十二月二十四日に行政改革の重要方針を閣議決定していただきましたが、その中でも、金融危機、国際通貨危機、大災害、テロ、疾病といった危機に対応できる体制を整備することが政策金融改革の基本原則の一つに掲げられておりますので、詳細な制度設計はこれからでございますけれども、今申し上げた点はきちっと念頭に置いて制度をつくっていかなければいけないと思っております。

土井(真)分科員 さらに、今、政策金融改革の中で、国際協力銀行についてなんですけれども、前に輸銀と政策金融が一緒になって、また今回分離して、たしか政府の閣議決定では、特に国際金融の方が金融機関の方に分離して、新JICAというんですか、ODAの方と分離されて運営、経営されるということの案を見ているんです。

 やはり日本という国は、常に世界と貿易なりやりとりの中で生きていく。また、資源のない国が生きていくに当たって、国際協力とか、ODAも含めてなんですけれども、国際金融というのは非常に重要だと思うんですが、このように分離してしまって、特にそういうODA等と全く分離した形で単なる金融としてやっていくようなイメージをあの表では感じたんですけれども、そういう形にして国際経済協力に対して支障を来すことがないかどうか、その辺を、ちょっと大臣のお考えをお聞かせ願いたいと思います。

谷垣国務大臣 今まで、国際協力銀行、いわゆるJBICとそれからJICAという機関がございまして、国際的にも、JICAにせよJBICにせよ、その名前は相当浸透して、国際的な信用も大きかったし、日本に対する信頼をつないでいく大きな装置だったというふうに私は考えているわけであります。

 今度JBICを、いわば解体と言うとちょっと言い過ぎかもしれませんが、ODAにつながる円借款はJICAに、そして、今まで技術協力はJICAがやってきたわけですが、技術協力と、それから外務省が直轄していた無償というODAの手法、三つをJICAに統合するということになりまして、そしてそのJICAの上に総理中心に閣僚会議をつくって、大きな意味でのODAの戦略的方向を定めていこう、それでJICAにその実施機関をやっていただこうということになりました。これはこれで、ODAのあり方としてはすっきりしたものになりましたので、その方向で、すっきりしたODA、戦略的に動けるODAというのをやっていただかなければいけないんだろうというふうに思います。

 JBICの残る機能、国際金融ですが、これは新しい政策金融機関の中に統合されることになったわけですが、今回の原田座長がやっておられる検討会の中でも、先ほど申し上げたようなJBICの国際ブランドというのは非常に高く評価されて、これを無にしてしまうのは非常に残念であると。やはり国際的に、なるほど、JBICが乗り出してきたぞと、例えばエネルギー資源を確保するというような、パイプラインを敷くか敷かないか、こういうようなときでも、JBICが出たことによって全体がスムーズにいくというようなことがあると思います。そういうような意味で、JBICのブランドはこれから活用していこうじゃないかということを整理していっていただいている。

 それから、もう一つ土井委員がおっしゃった論点は、国際金融とそれからODA、ODAの中でも円借款ですね、円借款というものが連携して使われる部分が今までもあったと。

 例えば、本当に発展の段階がまだまだ十分でないところでは、円借款を出していろいろなインフラなどをつくりやすいようにする、もうちょっと発展してくれば、今度は国際金融業務の方で融資をしてやっていくというような連携が可能だったわけでありますが、切り離されたことによってそういう連携ができなくなるのは非常に残念だねというようなことで、新しいJICAとそれから新しい政策金融機関の中でそういうものが十分連携できるようなことをつくろうということも特記事項にしていただいているというふうに承知しております。

 恐らくきょう結論が出されるのではないかと思いますが、ぜひそういう整理を踏まえて、新しい組織が有効に働くようになってほしいと期待をしているわけであります。

土井(真)分科員 以上です。どうもありがとうございました。

茂木主査 これにて土井真樹君の質疑は終了いたしました。

 次に、越智隆雄君。

越智分科員 自由民主党の越智隆雄でございます。

 本日は、初めてこの予算委員会の分科会に参加をさせていただくわけですが、独特な雰囲気でございますけれども、三十分間じっくりと、谷垣大臣初め皆様と財政改革について御議論をさせていただければというふうに思います。

 谷垣大臣は財政改革に最も熱心なリーダーのお一人だというふうに思っておりまして、先週の財務金融委員会でも、大臣初め皆様と御議論をさせていただきました。きょうもまたその続きという形で御議論させていただければというふうに思うんですが、先日は、プライマリーバランスの黒字化と国債管理ということについてお伺いをいたしました。

 一つ目のプライマリーバランスについては、毎年の収支をどうするかということでございますので、いかに借金をつくらないかという話だと思いますし、国債管理ということは、できてしまった借金について、国債をどうやって発行するかということと、発行された国債をどう管理するかという話だというふうに思います。

 そんな中で特に印象的だったのは、谷垣大臣が、財政改革の要諦は、いかに国の信認を国民や投資家の皆様から受けるかということをおっしゃっておられました。私もそのとおりだというふうに思うんですが、皆さんが、財政は絶対よくなるんだという希望といいますか、期待を持っていただけるということが大事なことだというふうに思います。

 きょうは、国有資産の有効利用について御質問してまいりたいというふうに思います。

 プライマリーバランスは企業でいえば収支の部分、PLの部分で、先日の、国債管理の部分がBSの債務の部分で、きょうは、その資産サイドのお話をさせていただければというふうに思っております。

 まず、そのお話を始める前に前段として、公会計制度が、政府の御努力でここ五年間ぐらいしっかりできてきたというふうに思います。去年の秋には、一般会計、特別会計、また独法を含めたバランスシートができてきたというふうに思うんですけれども、このバランスシートの一般会計、特別会計の合算のものを、きょう資料としてお配りをさせていただきました。もう何度も見られた資料だと思うんですけれども、きょうは、ぜひ大臣の御所見を伺いたいと思って、資料として持ってまいりました。

 この資料がいろいろな形で議論に上りますけれども、総資産あるいは総負債といいますか、約七百兆円。一方で、当時、これは平成十五年ですから、公債残高は約五百兆円。ですけれども、負債合計が九百四十一兆円あるということで、ありていに言えば、国債の残高は総資産で賄えるけれども、それ以外の負債を入れると債務超過の状態になるということだと思うんです。ただ、この資料ができたおかげで、資産改革についてはわかりやすい議論ができるようになったというふうに思います。

 このバランスシートを見られて、財政改革に取り組んでいこうという中で、まずは、大臣の印象といいますか御所見を伺えればというふうに思います。

谷垣国務大臣 国の財務書類をつくるのは、私も話を聞いてみますと、相当いろいろ苦心をしたようでございます。

 平成十年度分の決算から国の貸借対照表試案というのをつくりまして、ストックの財務情報を開示してきた。それからフローの財務情報を含む省庁別の財務書類というのをつくって、これを基礎として、さらに平成十五年度決算分の国の財務書類という形にたどり着いた。

 これをどう分析して、実際の財政運営にどう役に立てていくかというのは、実は、これから大いに国会でも議論をしていただきたいと思っておりますし、学者にもその辺を、十分使っていただいて御提言もいただきたいと私どもは思っているところでございます。

 先ほど、なかなか苦労したというのは、こういう貸借対照表を見ましても、我々の見なれているのは例えば資本の部というのがあるわけですけれども、国の場合は資本の部というようなものがございませんし、ここから何を読み取っていくのかというのも実はいろいろあるんだろうと思うんですね。

 ただ、今おっしゃいましたように、資産、負債の差額というのが二百四十五兆、厳然として存在するというわけでありますが、他方、資産の部を見ましても、普通の企業であれば、いざとなれば全部売っ払っちゃうということができるのかもしれませんが、国の場合は、なかなか社会資本のようなものを全部売っ払うというわけにはまいらないということもございます。

 ということを考えると、二百四十五兆ということになっているんですけれども、我々の負っている返さなきゃならぬものは、本当はそれより多いということになるのかな、それだけやはり将来世代に負担を先送りしているものが、本当はこの数字で、差額で出てきている数よりも大きいのかな、こんなふうに思っているわけであります。

越智分科員 どうもありがとうございました。谷垣大臣の慎重なスタンスというのをお伺いできたというふうに思います。

 また、この財務諸表の使い道をこれから考えていくということでございますが、海外の公会計制度におけるバランスシートと日本のものを比べるといった議論もありまして、対GDP比で見るとどうなるかとかいった議論がさまざま出ています。まだその辺の議論の集約はできていないようでありますけれども、この辺はやはり、何か基準を決めるなり解釈を決めて、比較可能な形にしていかなければならないんじゃないかなというふうに思っております。

 ただ、きょうはその話をするつもりはございませんで、大臣がまさにおっしゃったように、これをベースにこれからどうやって議論するかというところなんですが、きょう、資料の二枚目、「国の資産の状況」という数字を持ってまいりました。

 資産改革については、昨年の十一月の経済財政諮問会議、それを受けての十二月の行政改革の重要方針、一方で、一月になってからは、財政制度等審議会で「今後の国有財産の制度及び管理処分のあり方について」という立派な答申が出ておりますので、そういう意味では、政府部内でかなり今急速に議論が高まっているところだというふうに思います。

 きょうお配りさせていただいたこの資料は、一応財務省作成と書いてあるんですけれども、多分、谷垣大臣がつくられた資料で、十一月二十九日の経済財政諮問会議の参考資料で出されたものの中身だというふうに思っておるんです。

 ここでちょっと考えていきたいのが、対名目GDP比で、今後十年間で半減させるようなイメージでこれから政府の資産の改革に取り組んでいくということなんですけれども、七百兆円をどうとらえて半減させるというのか、どこの項目を処理するとそういうことになっていくのかということについて、改めて大臣のお考えをお伺いしたいというふうに思います。

竹本副大臣 約七百兆円の資産があるということなんですが、GDP比の比較で見ますと、例えばアメリカなんかはGDPが日本の約倍ありますから、その中で、資産の割合というのは非常に低いんですよね。

 両国を比べますと、例えば国有財産に相当する道路が余りない、日本の場合は国道が非常に多い、アメリカの場合は州でやっている、こういうようなこともございまして、一概にこの比較がいいのかどうかという問題も実はあるんですけれども、そういうことは別といたしまして、GDP比半減という一つの目標を立てているんですけれども、その中で、政府資産の圧縮の対象にならないものが結構あるということは一つ考えなきゃいけないことであります。

 例えば外為資金でございますけれども、外国為替相場の安定という政策目標のために保有しているものでございますが、それ以外の目的で売却することはもちろん適当ではございません。また、国民からの預かり資産でございます年金資金の運用資産、これは日本は非常に大きいわけでございますが、これもずっと蓄えておかなきゃならないものであります。さらに、道路、河川等の公共用財産、これも売却することはできない、こういうことでございます。

 そういうことでございまして、公共用財産は、その施設の管理上の必要性からいろいろな行為制限を受けておりまして、公共用財産の中にもひょっとしたら売れるものがあるんじゃないかというお考えもあるかと思いますが、大抵の場合は行政上の行為制限を受けておりますから、民間に売ってそれをリースバックするというわけにもいかない。したがって、結果としては、売れそうであるけれども売れない、こういうようなことでございます。

 どの程度売れるかということでございますが、現在、国有財産売却の規模につきまして、三月末までに数値目標を明確化いたしまして、財政再建への寄与をどのくらい見込めるのかという点を経済財政諮問会議に対して報告できるよう、作業を進めているところでございます。

越智分科員 ありがとうございました。

 今、副大臣からいろいろと御説明をいただきました。ここでちょっと、改めてになりますけれども、今のを受けて二つ。

 一つ目は、今、処分ができる資産の種類というお話をいただいたと思うんですけれども、そこで、るる御説明をいろいろな形でされている中で、多分、一番焦点に当たっているのが、いわゆる国有財産四十一・九兆円と出資金三十六・一兆円。これをどうするかという議論は出てまいりますが、それ以外の、今副大臣から御説明あった河川や道路というもの、これについては経済財政諮問会議でも閣議決定でも、対象としないような旨の注記が入ってございました。

 ただ、これは本当に処分できないのか。過去につくった道路とか橋とか港湾とか、それは全部公共の財産として使わなきゃならないんだということであれば、処分できないという結論になるんでしょうけれども、必ずしもそうなのかということについて私は疑問を持っておりますので、その辺について大臣どうお考えかということ。

 あと、半減させるということについて、三百五十兆円というのはどこから出てくるのか、その辺のイメージを大臣お持ちでしたら、今御検討中なんだと思いますけれども、現時点でのお考えをちょっとお聞かせいただければというふうに思います。

谷垣国務大臣 確かに、河川、道路、港湾、海岸、全部国で持っていなければならないものかどうかというのは、まだ議論の余地はあるのかもしれません。ただ、先ほど竹本副大臣がおっしゃいましたように、現状の法律制度ではそこにいろいろな制限等を設けておりますので、そこまでいくとなると相当徹底的に社会資本についての物の考え方を整理しないと、売るぞというわけにはなかなかいかないんだろうと思っております。

 まだそこらは、むしろ認識としては、本当に売れるものがあるんじゃないかということでありますが、現状の法体系を前提として、まだそこまで議論はいっていないというのが現段階ではないかと思います。

 それで、そうはいったって、半減というと前途遼遠で、できるのかねと。実は、ごらんになった諮問会議の文章もなかなかデリケートな書き方に率直に言うとなっておりまして、要するに、竹本副大臣が御答弁申し上げましたように、では、これから何が実際にできるのかというあたりについては、もう少し詰めていかないと確定的な御返事がしにくいのが現状ではないかと思っております。

越智分科員 ありがとうございました。

 そういう意味では、今後十年ということでございますから、その間に議論を詰めていくという話だと思いますが、ぜひ、その抜本的な国有財産の取り扱いの変更といいますか処分といいますか、そういったことを検討していっていただきたいというふうに思います。

 一点、とても細かい質問をしたいんですけれども、この七百兆円の資産なんですけれども、企業でいいますと、バランスシートにのっけるときに、そのものの簿価と時価が違うことがよくあるわけなんです。簿価と時価がある程度同じであれば想定範囲外のことは起こらないと思うんですけれども、簿価に比べて時価が余りにも低かったり、あるいは余りにも大きかったという場合には、このバランスシートについてなかなか使い道が難しくなってくると思うんですけれども、その辺について教えていただければというふうに思います。

牧野政府参考人 今先生御指摘の件でございますが、国有財産の台帳価格につきましては、国有財産法施行令第二十三条に基づきまして、五年ごとに価格改定を行うこととされておりまして、直近では平成十三年三月三十一日に改定を行っております。

 その基準でございますが、平成十一年六月十八日の国有財産中央審議会の報告において、土地については相続税路線価に基づく評価を行うことにより、時価を一層反映させることが必要であるという提言がございまして、これを踏まえて、原則として相続税評価方式により価格改定を行っております。

 一方、国有財産を売却する場合の価格でございますが、これは入札による場合、あるいは随意契約の場合は不動産鑑定士の鑑定評価などを勘案いたしました売却時点の時価によるということになっております。

 このように、台帳価格の改定時期と売却時期の時点の違い、それから価格決定方式に差異はございますけれども、今申し上げたような時価に基本的には基づいておりますので、台帳価格と時価との間に大幅な開差は生じないと考えております。

越智分科員 ありがとうございました。

 そうしますと、次の改定は平成十八年三月三十一日ということでよろしいんでしょうか。

牧野政府参考人 はい、さようでございます。

越智分科員 ありがとうございました。

 そうしますと、通常、企業の場合、土地の簿価の洗いがえというのは恐らくそうはしないというふうに思っておるんですが、国のバランスシートの場合は五年置きにして、地価が変動すると、そのたびにバランスシートの金額もその分ずれるというふうに考えればよろしいんでしょうか。

牧野政府参考人 先生のおっしゃるとおりでございます。

越智分科員 ありがとうございました。そういう意味では、地価の変動とあわせて、このバランスシートも状況が変わってくるということもあわせて、この財政改革について考えなければならないということだと思いますので、私も留意してまいりたいというふうに思います。

 それでは、ちょっと次の話題ですけれども、三枚目の資料で、いわゆる国有の不動産の現在額というところで、「その他(一般庁舎等)」というのが十兆円ぐらいあるわけなんです。それと、あと普通財産の未利用国有地六千億円、これは相続税等の物納物件が多いというふうに聞いております。この二つがよく議論の対象になるわけなんですけれども、これ以外のところで、今後、処分ですとかあるいは証券化とか、そういうことを御検討される部分があるのかどうか教えていただきたいというふうに思います。

牧野政府参考人 お答えをいたします。

 今先生おっしゃられましたように、基本的には、先生の資料の中の、その他一般庁舎九兆六千九百二十億円、これは国会、それから国の庁舎、それから公務員宿舎、全部含んでおりますが、これをできるだけ効率的な使い方をして、不用な部分をひねり出して、それを売っていくというのが一つでございます。それから、おっしゃられますように、未利用国有地六千三百二十四億ございますが、これはもう当然売ってまいりますし、それから、今後も入ってまいります物納財産については売っていくということでございます。

 ただ、これ以外のものについては、先生見ていただくとおわかりだと思うんですが、極めて売却になじみにくいものが大半でございます。そういう意味では、これ以外のものから、唯一例外を申し上げますと、上から三段目の社会保険事務所、厚生年金病院・会館というのがございまして、これは既に売却するという方向で手続が進められていると承知しておりますが、それを除きますと、非常に売却になじまないものが多いというように考えております。

越智分科員 ありがとうございました。

 その他は売却になじまないということですが、例えば刑務所とかあるいは空港施設とか、何らかのやり方はあるんじゃないかなという気はしておりますので、今後また議論させていただきたいというふうに思います。

 きょうはその中の、まさに、その他一般庁舎等の中で、小泉首相からも去年の十一月二十九日に、都心部の公務員宿舎について売却可能性を検討するようにというお話があったというふうに聞いております。この行政財産の中でも、都市部、特に都心部に所在する宿舎の敷地については、その経済的なポテンシャルは極めて高くて、国としても、持っていて、その有効活用を最大限図るべきじゃないかというふうに思っておるわけなんです。

 ここでちょっとお伺いしたいんですが、二十三区内所在の宿舎について、今の有効利用状況をお伺いしたいんです。できれば、法定容積率に対して利用容積率がどのぐらいかという充足率でお答えいただけるとありがたいです。

竹本副大臣 公務員宿舎につきましては、その周辺の文教施設や近隣住民への配慮を行いながら、法規制の範囲内で最大限、容積率の活用に努めております。

 昭和三十年代から四十年代に建設された宿舎がございますけれども、高層化が図られていないために法定容積率が十分活用されていないものもたくさんあるわけでございまして、財務省が所管する合同宿舎の法定容積率に対する利用率につきましては、全体で五七%となっております。

 ちょっと具体の例を挙げますと、昨年からPFI方式を取り入れましたけれども、これで公務員宿舎の建てかえをやっておりますが、こういう合同宿舎では、例えば赤羽住宅、目黒東山住宅、三宿第二住宅、私もいたところでございますが、それが今現在一〇〇%になっておる、こういうことでございます。

 こういった状況を踏まえまして、二十三区内における国家公務員宿舎のあり方につきましては、民間の視点から、都心部からの移転に伴う跡地の売却を促進し、都市再生や土地の高度利用等に供するために有識者会議を開いておりまして、この会議で六月をめどに結論をお願いしているところでございます。

越智分科員 竹本副大臣、ありがとうございました。

 今、合同宿舎の平均利用率が五七だというお話がございました。私も数字を前に見せていただいたところでは、昔のものは四〇%台、今御指摘あったとおり、昔はその利用率が低かったわけですけれども、最近十年以内に建てたものでも、利用率が七三・一%という数字がございます。ですから、昔のものは昔の世の中でしたからそれでよかったと思うんですけれども、最近のものについても七〇%台というのは、いわゆる民間感覚でいうと余りにも低過ぎるといいますか、有効利用が進んでいないという印象を持たざるを得ないわけであります。

 国有財産であるこういった宿舎が十分に使われていないということは、国民的に言うと遺失利益でありまして、これをもし建てていれば、賃貸すればまた収入が入るわけですし、それが事業性のものであれば税収にもつながるということなので、ここはやはりフルに利用することがいいんじゃないかというふうに思っておるんですが、そういった考えについての財務大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

谷垣国務大臣 今御議論のとおり、建設年次の古い庁舎、宿舎、新しいものにもそういうものがあるのかもしれませんが、高層化が図られていないために、十分土地の高度利用ということになっていない。こういう中で、余剰容積率についてはやはりそれをきちっと使っていく、高層化等を考えて使っていくということが基本ではないかと考えております。

 財政審等々でも答申をいただいているんですが、都市再開発等々、庁舎等を含めて一体的な整備を行う場合に、将来の庁舎等の改築などに支障が生じないよう十分配慮を行った上で、その余剰の部分を有償で民間に利用していただくということもあり得るだろうなと思っております。

 それから二十三区内の宿舎については、先ほど来、有識者会議というのをやっていると申しましたが、その中で、より民間の視点も入れて、有効な使い方というのがあり得るのかどうか、今検討していただいているところでございます。

 ただ、先ほど竹本副大臣が、PFIでつくった公務員宿舎、ああいう中にもなかなかやはり、国が宿舎の容積率を一〇〇%使ってやろうといたしますと、近隣住民等の反対等もございまして、よくよくそういうところは話し合いもして、高度利用に努めていかなきゃいかぬなと思っているところでございます。

越智分科員 ありがとうございました。

 大臣は財政演説の中で、三つの過剰、雇用と設備と債務、これは解消したと。四つ目の過剰、これが政府の債務だ、これに取り組まなければならないという演説をされておりました。

 振り返ってみますと、バブルの後、日本の企業は過剰な資産を抱えて、債務も多くて、それを一生懸命削減する中で、資産の売却、証券化、流動化、そういったオフバランス化をずっと図ってまいりました。法制面でも、資産流動化法などが制定されました。

 ですから、小泉改革の五年間で民間の過剰は解消されたわけですけれども、まさに、いよいよ今が政府の資産、債務を圧縮するチャンスといいますか、そういう時期だというふうに思っていまして、極めて積極的に取り組まなければならないと思っています。そんな問題意識から恐らく国有財産法の改正案というものが、先ほどの、政府決定、また答申を受けて今国会に提出されているんだというふうに思っております。

 この改正案の十八条で、行政財産の処分等の制限の例外規定が大幅に緩和されまして、庁舎や宿舎といった行政財産の有効利用の道がかなり幅広く開かれてくることになるんだというふうに思うんですけれども、ここで、とても細かい質問を一つだけさせていただきます。

 先ほど大臣から、容積率を目いっぱい使うと近隣住民から文句が出ることもあるというお話がございましたけれども、ここでちょっと空中権の質問をさせていただきたいんですが、都市再生の流れの中で、民間事業者による都市開発事業については空中権の設定が日常化していて、具体的には、二つ以上の敷地の間で連担建築物設計制度というのがありまして、そこで容積率を移転したり、街区が一つの場合は特例容積率適用区域制度というのを使って移転したりするわけなんですね。

 この空中権を売るということは、国有財産としては低い建物でも、その上の部分について、隣の建物を建てさせてあげるということになりますので、そういう意味では近隣調整の一つの大きな手段にもなると思いますし、また一方で、国庫収入を得ることにもなってくるんだというふうに思うんです。

 この空中権の設定については、一般的には地役権や区分地上権などが設定されていると聞いているんですけれども、今回の国有財産法の改正においては、公益事業者でなくても、純粋の民間の事業者でもこの空中権の設定のために地役権とか区分地上権を設定できるようになるのかどうか、そのぐらい使い勝手がよくなるのかどうか。ちょっと細かい質問ですけれども、一つだけさせていただきます。

牧野政府参考人 お答えをいたします。

 先ほど大臣からも御答弁いただいたわけでございますが、余剰の容積率がありました場合には、国がみずから隣接庁舎等を高層化することで有効利用するというのが基本でございますが、ただ、財政制度審議会からも御答申をいただきまして、都市再開発事業において、庁舎等を含めて一体的な整備を行う場合に、将来の庁舎等の改築等に支障が生じない、そういう場合には、その余剰容積率を有償で民間に活用していただくことも考えるべきだという答申をいただいておりまして、その方向で検討をいたしております。

越智分科員 ありがとうございました。

 時間もあと二分ぐらいになりましたので、最後の質問をさせていただきます。

 きょうは、バランスシート、国有財産の有効利用について議論をさせていただいてまいりました。今後十年間で半減ということで、その十年間でさまざまな取り組みをしなければならないし、それを期待していきたいというふうに思っておりますけれども、一方、金額的にどうかと言われたときに、まだ限定的なような印象を持たざるを得ません。ただ一方で、国有不動産というものは国民の皆様の目の前にあるもので、何か変わったときにすぐ国民の皆様にわかっていただける、そういう特殊性といいますか、メリットがあるというふうに思います。

 そこで、ちょっとお伺いしたいのが、霞が関とか永田町、ここは東京の中でもまさに一等地でございまして、ここの一等地が、政府がコントロールしている一等地が本当に有効活用されていなければ、国民としても、やはりこれは政府が本気かどうかというのがなかなかわかりづらいというふうに思うんですけれども、今のこの活用状況について大臣がどうお思いか。

 そこで、最後の質問のついでに、財務省の建物。これは財務省の公表資料で見たんですけれども、国有財産一件別情報。財務省本省庁舎の容積率は五〇〇%、今利用されているのは一六七%。これは、本省庁舎単体で見ると、充足率が先ほどの公務員宿舎よりも低い三三%ということなんですけれども、この事実も踏まえて、この点どうお考えか御所見をお伺いして、質疑を終わらせていただきたいというふうに思います。

茂木主査 時間が来ておりますので、簡潔にお願いします。

谷垣国務大臣 国有財産の有効活用という中で、霞が関においても、一〇〇%使っているところは結構多いんです。多いんですが、まだ有効に使われていないところを今後きちっと有効に使っていくというのは大事な方向だと思っております。

 それで、今、文部科学省のところなんかがやり出しているわけですが、財務省の建物が後になっておりますのは、多分、最初に自分で予算をつけて建てかえて新しいところに住むのは、なかなかやりづらいということもあったんじゃないかと思いますが、やはりきちっと有効利用していくという方向で考えていかなければいけないんだと思っております。

越智分科員 ありがとうございました。これで質問を終わらせていただきます。

茂木主査 これにて越智隆雄君の質疑は終了いたしました。

 次に、石原宏高君。

石原(宏)分科員 自由民主党の石原宏高でございます。

 谷垣大臣、本日は予算委員会の分科会の質疑、長時間、本当に御苦労さまでございます。財務省関係の質疑は、本日は私が最後になりますので、どうかもう三十分ほどおつき合いをいただければと思います。

 私、この分科会で三点ほど質問をさせていただきたいと思います。

 先ほど土井委員からもちょっとお話がありましたが、第一は、財政の健全化の指標についてどういうふうに考えるか。そして第二は、平成十八年度の税制改正の中身も踏まえて、今後の税制改正についてちょっとお話を聞きたいと思います。そして三点目は、地震保険の再保険制度についてちょっとお話を伺いたいと思います。

 私は、常日ごろ、日本の喫緊の最重要課題は財政の健全化を図っていくことであるというふうに主張しておりますが、しかし、財政の健全化のために安易な増税というのは行うべきではないというふうに考えております。財政の効率化、経済の活性化を通じて税収を引き上げて、そして財政の健全化を図っていくべきだというふうに主張しております。

 その観点から、今政府が検討されております、六月にお示しになられる歳入歳出改革案については大変興味を持っております。この歳入歳出案の中で財政の健全化を図っていくことをお示しになるということだと思いますけれども、この前提となる、財政が健全と言える状況というのはどのような状況なのか。例えば、いろいろな論文なんかを読んでいると、英語のサステーナビリティー、持続性があるかないかといった言い方をしますけれども、谷垣大臣は、現在の日本の財政は持続性があられる、それとも、ないのではないか、どちらのふうに考えていらっしゃるか、まず最初に質問をさせていただきたいと思います。

谷垣国務大臣 健全化というときに、今おっしゃったサステーナビリティー、持続性、これでやっていけるんだというのは確かに大事な点だと思うんですね。

 では、何が持続可能かというと、なかなかこれはぴりっとした答えは難しくて、債務残高のGDP比、どのぐらいまで大丈夫なんだ、どのぐらいまで借金できるんだという議論も常にございます。それから、国債を出したときに、まだ売れるじゃないか、金利も低いじゃないかというような御議論もあって、安定的に消化できるかどうかというのも一つの持続可能性の判断かもしれませんし、それから、プライマリーバランスとの比較で言われます、要するに、そこで後の世代にツケを先送りしなくなれば、金利と名目成長率の関係で、発散しない状況があり得るとすれば、発散しないというのが一つの持続可能性かもしれないとか、いろいろな議論があると思うんですが、これ一つで決め打ちするのはなかなか難しいだろうと思います。

 そういう中で、我が国の財政を見ますと、これもよく言われている数字でありますが、GDP比、長期国債が国、地方合わせて一五〇%を超えている、その上で、社会保障関係費等々の自然増があるとかいうことになりますと、私の意識としては、やはり、国債に対する信認をどう取りつけるか、リスクプレミアムをどう抑えていくかというのが常に念頭にあるわけでございます。つまり、金利が上がっていったときのリスクに非常に弱い体質を日本財政は持っていると言わざるを得ない。それは、私の口からサステーナビリティーがないとはなかなか国会で申し上げられませんけれども、常にそういうところにぴりぴり、ナーバスでなければいけないというのは、より一層体質を健全化しなきゃしようがないということを端的に意味しているのではないかなと思っております。

 そういうことを考えますと、二〇一〇年代のプライマリーバランスの回復、さらにそれを超えた目標は何なのかということをきちっと示して取り組んでいく必要があると考えているわけでございます。

石原(宏)分科員 また同じような質問になってしまうかもしれないんですけれども、まさに今大臣が言われたような指標がありまして、財務省が財政が悪化しているというような形で言うときに、先ほど大臣が言われた、国と地方の総債務残高のGDP比の国際比較というのがあると思います。EUは六〇%を上限として抑えているということでありますけれども、ただ、その一方で、純債務残高、要するに、資産を引いたもので見ると、財務省の数字が出ておりますけれども、イタリアよりも日本の数字はいいというような数字が出ております。

 ちょっと繰り返しになってしまうんですけれども、これから歳出歳入改革案を示す中で、やはり政府として財政の健全化の指標、持続性の指標といったことを、どれを選ぶかなかなか難しいという御答弁ではありますけれども、何かしら、何通りかを常に継続的に示していくような形で、国民から見てもその数値の悪化というものがわかるような、例えばさっき言われたようなことを三つぐらい並べていくというような形で示していく必要があるのではないかと思います。

 そこで、財務省としての、財政再建の目標を立てる上で、どのような財政指標を今後用いられていくか、お話をいただければと思います。

竹本副大臣 先生おっしゃったように、EUは、債務残高がGDP比で六〇%、それから財政収支、対GDP比でマイナス三%、こういった指標を持っております。日本は、そういう数字的なものを、ずばり全く同じものを持っているかというと、今のところそういうことは言えないわけでございますが、少なくとも、債務残高が平成十八年度末でGDP比一五〇%を超えておりますので、これは、数字としては主要先進国中最悪の水準にある。

 そこで、政府としては、二〇一〇年代初頭に国、地方を合わせた基礎的財政収支を黒字化する、政策的な支出を、新たな借金に頼らずに、その年度の税収等で賄えることを目指して、いわゆるプライマリーバランス・ゼロ達成を目指しておるわけであります。

 財政健全化の目標を立てる上で、どのような指標を用いるかについては、いろいろな考え方があると承知いたしておりますが、持続的な経済活性化を実現していく上で、財政が少なくともその足かせとならないようにするためには、基礎的財政収支の黒字化を実現した後の目標として、例えば、膨大な水準にある債務残高をGDP比で引き下げていくことをも視野に入れるべきだと考えております。つまり、絶対額を下げるのはなかなか大変だろうけれども、比率で下げることを一つの目標にしたらどうか、こういう考え方でございます。

石原(宏)分科員 どうもありがとうございます。

 またその関連なんですが、実は、コロンビア大学のデビット・ワインシュタインさんという方が、昨年、大変おもしろい論文を発表しておりまして、「日本の財政の持続可能性の評価、陰鬱な科学による楽観的予測」という題の論文ですけれども、この中で、ワインシュタイン教授は、財政の持続性を検証する上でのモデル式みたいなものを書かれていて、そして分析をしているんですけれども、結論としては、現時点での日本政府の純債務残高を見ると、危険というほどのレベルには達していないというふうに評価をして、日本の税率が、多くの高所得国、これはヨーロッパの国々ということだと思うんですが、に見られるような税率より高くする必要はないというふうに断言をされております。

 財務省の方なんかは、多分調査の方は読まれていると思うんですけれども、ワインシュタイン教授のこの結論、また、モデル式というものについてどういう認識を持たれているか、御見解を聞かせていただければと思います。

谷垣国務大臣 ワインシュタインさんの御本は、本屋で置いてあるのは見かけましたが、私は日経新聞でワインシュタインさんが投稿されたのしか読んでおりませんので。私どものスタッフは勉強していると思いますが。

 純債務で見るか、それとも総債務で見るかという議論があるわけですが、OECD発表の数値によりますと、二〇〇四年末の日本のグロス債務残高はGDP比で約一六〇%だ。それで、そこから政府の保有します金融資産を差し引いたネット、純債務残高はGDP比約八〇%。ワインシュタインさんも、そのOECDの数字を一つ根拠にして議論されていると思うんですが、ただ、このネット債務残高を計算するに当たっては、年金積立金についても政府の保有する金融資産として差っ引いておられるわけですね。

 それで、我が国は完全な賦課方式で公的年金を運営している国々とは異なっているところがあることは御承知のとおりですが、政府が将来の年金給付のために保険料を財源とした年金積立金を持っている。これはGDP比約四〇%ぐらいでございますが、これは将来の年金給付のために取り崩すということがもう決まっているわけでありまして、したがって、年金積立金を国債や地方債等の利払いとか償還の財源に充てるということはできないわけですから、つまり、これを差し引いたネット債務残高という見方だけでは、抱えている国債や地方債を日本はちゃんと返していくことができるのか、債務の履行能力を判断する指標としては必ずしも適切でないところが私はあるんだろうと思います。

 もちろん、ネットで見ていけという議論は、それはそれで私は全く理由のない議論ではないと思うんですが、ネットだけで見て大したことでないという議論は、私はくみすることができないのではないかと思っております。

石原(宏)分科員 ちょっと、この本の中に書いていて、質問の当初の予定の中に入れてなかったんですけれども、金利の問題を大変心配されていて、経済成長率が金利を上回っている、一年一年はマイナス成長のときもありましたので、長期的に見ると、こういうワインシュタインさんの考え方だと、平均的な長期金利が経済成長率よりも下回っていればどんどん債務残高がふえても問題ないというような考え方もあられるわけで、やはりそういういろいろな複合的な要因によって持続性というのはいろいろと見方が変わってくると思うんですけれども、何通りかのこういう考え方に基づいた数値みたいなものを常に国民に提示していくような形で議論をしていくことが私は望ましいのではないかというふうに思います。

 済みません、質問を二つ目の質問に変えさせていただきます。

 平成十八年度税制改正と今後の税制改革について質問させていただきます。

 まず、十八年度の改正において、本格的な国から地方への財源移譲の中で、所得税においては三兆円の減税を行いつつ、所得税の最高税率が三七%から四〇%に上がるなど、一部累進性を強化するような形になりました。こうした改正は、今まで長年にわたるフラット化の歴史の中では初めてだと思うんですけれども、その基本的な考え方を伺うとともに、今後の所得税をどのように見直していくのか、大臣の御見解を聞かせていただければと思います。

谷垣国務大臣 ことしの税制改正、三位一体の中で、基幹税から税源移譲をやっていく、それで、所得税から地方の住民税へ三兆円ということをやりましたが、その際の基本的な考え方としては、この改革の前後で個々人の税負担というものを極力変えないようにするということを一つの考え方といたしました。

 それと同時に、そうやって移譲していく場合に、地方住民税と所得税の役割分担というものもよく考えていかなきゃいかぬ。それで、個人住民税では、応益性とかあるいは偏在度を縮小していくという観点から、税率を一〇%でフラット化していこうという考え方を取り入れたわけでございます。

 そして、所得税では、こちらの方はフラットというよりも、そっちがフラットにしていくなら所得再分配機能を適切に発揮させるようにしよう、そういうことで、最低税率は五%に引き下げて、それと同時に最高税率は三七%から四〇%に上げよう、そういうことでより累進的な税率構造をつくろうというようなことで今度の案をまとめたわけでございます。

 それで、今後、個人所得課税を見直していくに当たってはどういうことを考えていくか。公正で活力ある社会というものに対応した税制ということでございますが、これから消費税体系を含めた全体を議論していかなきゃならないわけでありますが、やはり、家族のあり方とか働き方、こういった変化は非常に出てきておりますので、そういうことに対応できるような所得税制というものを今後考えていく必要があるんだろうと思います。

 それから、やはり、国民にどういう税負担を求めていくことが今後の社会のあり方として妥当なのかということももちろん考えなければならないと思いますが、ことしはそういう累進を強くしていったわけですが、今後考えなきゃいけないのは、そういう人々の働き方、社会のあり方の変化に伴ってさらに何を考えていったらいいかという観点ではないかと思っております。

石原(宏)分科員 どうもありがとうございます。

 かつての所得税の最高税率の七五%というのは、努力した方がやる気を失ってしまうと思いますので、今の、地方税と所得税と合わせて五〇%ぐらいというのが、私はやる気のある、元気が出る社会ではないかと思います。

 そうすると、なかなか所得税を、最高税率を上げられないという中で、将来的には消費税について考えていかなければいけないと思うんですけれども、消費税は、これはよく共産党とか野党の方々が言われますけれども、逆進性があるという中で、消費税率について、食品等への軽減税率、もしくはぜいたく品への割り増し税率というものを検討することができないのか、御見解を伺えればと思います。

竹本副大臣 食料品に対して軽減税率を適用したらいいんじゃないかという意見、よく消費税率の論議の中で出てくるわけでございます。今、日本は五%ですけれども、ヨーロッパとか並みに二〇パー、二五パー、いわゆる二けた税率になりますと、食べるものぐらいは、必需品ぐらいは低い税率でやれ、こういう話が必ず出てくるわけでございますが、いろいろ問題がございまして、食料品等その生活必需品の範囲をどうするかということ、それから、仕分けのために非常に事務手続がかかるわけで、そのコストが非常に膨大であるという問題があります。それから、要するに、片方で二〇パー、片方で五パーとなりますと、その減った一五%分を埋めるために、ある程度消費税の率を高くしなきゃいけない、こういう問題もあります。

 それから、金額的に見ますと、高額所得者ほど大きな恩恵を受けているというのがこの消費税の特質であるわけでありまして、いろいろなことを考えますと、単一税の方が望ましいというふうに考えているわけであります。

 それから、奢侈品、ぜいたく品への割り増し税率でございますけれども、これは、その範囲をどうするか、ゴルフのクラブなんかはぜいたく品なのかどうか、こういう話になってきまして、先ほど申し上げました食料品と同じような、範囲をどうするか、手数料、コストがかかる、こういう問題がございます。

 そもそも、考えますと、昔は物品税というのがございましたですね。物品税でいろいろやってきたけれども、非常に物品が多くなり、消費生活が多様化してきたので、とてもそんな仕分けできない、だから一律の消費税でいこう、こういう時代の流れがあるわけでございまして、これは十分考えておかなきゃいけないことだろうと思っております。

石原(宏)分科員 副大臣、どうもありがとうございます。

 例えば、今ぜいたく品について、一億円以上の船とか建物とか、多分、お金持ちの方は、一億円を出す方は、消費税が五%でも一〇%でも、例えば金額で一億円以上の、それは金額でもいろいろな品を合計して一億円だとかという話になってしまうかもしれませんけれども、一回限り一億円以上みたいな、金額でそういう割り増し税率を考えるというようなことは、これもなかなか難しいものでしょうか。

竹本副大臣 そういう話も実は聞いたことがあるんですけれども、いろいろそういった理屈というか考え方も含めて検討していかなきゃいけないだろうとは思いますが、なかなか大変な議論のある問題ではあると思います。

石原(宏)分科員 では、済みません、最後の質問をさせていただきたいと思います。

 地震保険の再保険制度について御質問をさせていただきます。

 平成十八年度の税制改正において地震保険の控除が創設されることになりました。関東、東海地方に大きな地震がいつ起こってもおかしくないと言われる昨今、国民の財産を守るために、地震保険の拡充を図る観点から地震保険の控除を創設することは大変意義のあることだというふうに考えております。

 そこで、ちょっとお伺いしたいんですけれども、平成十四年か、年度がちょっと正確ではないんですが、国が負担する地震再保険金支払いのための責任額というのが四・五兆円から五兆円に拡張されたというふうに聞いておりますけれども、その経緯と趣旨についてちょっと御説明をいただけますでしょうか。

竹本副大臣 地震再保険事業は、巨大地震発生のときに民間の損害保険会社だけでは地震保険金の支払いが困難になるために、損害額が一定の額を超過した場合には、その超過部分について政府が再保険金の支払いを担保するものでございます。

 これによって、地震被害に遭った被災者の生活の安定に寄与することを目的としている、これは地震保険に関する法律の第一条に書いてある条文でございますが、一地震当たりの総支払い限度額は官民一体での保険金支払いに応じる最大限を定めたものでございまして、過去最大の被害をもたらした関東大震災程度の規模の地震が再来した場合においても、保険金削減といった事態を招かないよう、契約の実態に即して、おおむね二、三年の周期で適宜見直しをしてきておりまして、平成十七年においてもその一環として引き上げを図っております。

 なお、平成十七年度改定の際は、平成十五年に宮城県、北海道十勝、釧路方面で震度五強の地震が連続発生したことに加えまして、昨今の地震災害に対する防災意識の高揚等から地震保険契約が大幅に増加いたしまして、それに伴い予想される最大保険金支払い額も増大した、こういったことを主な要因といたしまして、先ほどお話ありました四兆五千億から五千億円引き上げ、五兆円に改定したものでございます。

石原(宏)分科員 少し関連した同じような質問になってしまうんですけれども、この平成十八年度税制改正で地震保険料の控除制度が創設されれば、実質的に保険料負担が軽減されることから、地震保険の普及率の上昇が予想されるのではないかと思います。この結果、総支払い限度額が大幅に増加して、ひいては地震があったとき国が負担する地震再保険支払いのための責任額が大幅に増加するようなことを事前に考えて、今の五兆円を、さらに保険控除が導入されることをもとに再度拡張するというか、また拡張をするタイミングみたいなものがあるのかどうかというのをちょっと教えていただければと思います。

竹本副大臣 今回の控除制度がどんどん普及していきますと政府の責任額も上昇傾向となるのは確かに事実でございますけれども、地震保険事業は、超長期において収支が相償うという考え方に基づいて設計されております。

 さらに、最近の普及率の推移を見ますと、首都圏よりも比較的地震発生リスクの低いと言われている地域を中心に上昇しており、政府が負います責任額の大幅な増加には必ずしも直接的に結びつくものではないというふうに思っております。先般の神戸の大震災でも、それほどの額ではなかったということでございます。

石原(宏)分科員 残り五分ぐらいになりましたので、ちょっと最後の質問をさせていただきたいと思います。

 ちょっと予断的になってしまうんですが、再保険制度をちょっと考えて、今耐震偽造の問題から、国土交通省にて、分譲マンション等の建設に当たって、ディベロッパーが瑕疵担保責任を果たせるように、瑕疵担保責任に対する損害保険への加入を義務づけられることが検討されているというふうに報道されておりますけれども、もしこのことが実現をしたときに、損害保険会社が、今回のヒューザーの問題なんかが、もう一度起こっちゃいけないんですが、もし起こってしまったときに、大きな負担を負うことになるのではないか。

 そのときに、地震保険のように、瑕疵担保責任に対する保険について、国の再保険制度というようなものを設けるようなことを私自身はもしかすれば必要ではないかというふうに感じているんですけれども、制度的に、また、この地震制度を入れたときの考え方を含めて、そういうことが考え得るのか、その点について御見解を伺えればと思います。

和泉政府参考人 住宅取得者等の保護の観点から、住宅事業者がしっかりと瑕疵担保責任を図るということが大事だと思います。

 社会資本整備審議会におきまして、先生御指摘の耐震偽装問題の発生を踏まえまして、建築物の安全性確保のための建築行政のあり方について御議論いただきまして、去る二月二十四日に中間報告が取りまとめられました。その中で、住宅取得者を保護する観点から、住宅売り主等の瑕疵担保責任の加入などにより、瑕疵担保責任履行の実効を確保するための措置を講ずる必要があることの御指摘を賜っております。

 この中間報告を踏まえまして、現在、保険制度に限定せず、銀行保証とか供託等の多様な手法を活用して、この瑕疵担保責任履行のための賠償資力の確保策をいろいろ検討しているところでございます。

 このうち、保険につきましては、現在でも既に任意制度として財団法人住宅保証機構が運営する住宅性能保証制度がございます。これは、故意、重過失は対象にしてございませんが、そういった制度がございます。政府再保険は現在特段設置されておりませんが、その中で、平成十六年度には民間事業者による同様のサービスとあわせまして、新築住宅の約一三%、十六年度ベースで十五万戸程度ございますが、これらの制度を利用しているという実績がございます。

 加えて、今回は保険に限らず、多様な瑕疵担保責任履行のための方策を活用することを検討していることや、モラルハザードの問題等があることから、政府再保険が必要とは現時点では考えておりませんが、いずれにせよ、この瑕疵担保責任履行のための賠償資力の確保策につきましては、保険制度活用を図る上での課題、すなわち、繰り返しになりますが、事業者のモラルハザードの問題とか、事業者の故意、重過失への対応の問題などとともに、今後、保険制度のみならず、他の保証とあわせた瑕疵担保責任履行のための効果的な仕組みを検討する過程において、関係業界とも十分調整して慎重に検討してまいりたい、こう考えております。

石原(宏)分科員 どうもありがとうございました。ぜひとも関係業界とじっくりと打ち合わせをしていただいて、方向性を決めていただければというふうに思います。

 時間がちょっと余っておりますけれども、私の質問をこれで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

茂木主査 これにて石原宏高君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして財務省所管についての質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

茂木主査 次に、法務省所管について、政府から説明を聴取いたします。杉浦法務大臣。

杉浦国務大臣 平成十八年度法務省所管の予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 法務省は、治安、法秩序の維持確保、国民の権利保全など国の基盤的業務を遂行するとともに、司法制度改革の実現に取り組んでおり、現下の厳しい財政事情のもとではありますが、適正、円滑な法務行政を推進するため、所要の予算の確保に努めておるところでございます。

 法務省所管の一般会計予算額は六千二百七十九億五千万円、登記特別会計予算額は一千六百九十七億七千八百万円、うち、一般会計からの繰入額が七百六億七千百万円でございますので、その純計額は七千二百七十億五千六百万円となっており、前年度当初予算額と比較いたしますと、五十億九千二百万円の増額となります。

 何とぞよろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。

 なお、時間の関係もございますので、主査におかれましては、お手元に配付してあります印刷物を会議録に掲載されますようお願い申し上げます。

茂木主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま杉浦法務大臣から申し出がありましたとおり、法務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

茂木主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

茂木主査 以上をもちまして法務省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

茂木主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。藤井勇治君。

藤井分科員 自民党の藤井勇治と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず最初に、我が国の治安は、ここ十数年ほど前まで世界一安全な国と言われてきました。ところが、国内では犯罪の低年齢化が進み、また家族間の事件も増加しています。先般、私の地元であります滋賀県長浜市で幼稚園児二人が同級生の母親に殺害されるという大変痛ましい事件も起きました。さらに、全国各地で外国人による凶悪な犯罪も多発し、出入国手続の問題も指摘されています。

 こうした治安の悪化について、大臣はどのようなお考えをお持ちでしょうか。以前のような安全で安心できる社会環境を取り戻すために具体的な方策をお持ちなのか、大臣の所見をぜひお聞かせをお願いいたします。

杉浦国務大臣 先生の御地元で園児二人が殺害されるというまことに痛ましい事件が起こったわけであります。被害に遭われた家族の方々には何と申し上げていいか、言葉もないことでございます。

 先生御指摘のように、日本の治安は、かつては世界一安心、安全な国だという評価があったわけです、そんなに遠い過去ではございませんが。それがこのところ悪化いたしておりまして、私は、危険水域にある、この二年ぐらい犯罪件数は下がり、検挙率は上がっておりますけれども、しかし、御指摘のような凶悪事件は後を絶っておりませんで、まだまだ危険水域を脱していない、赤信号が点滅していると言ってよろしい状況だと思います。

 国民の皆さんの体に感じる治安というものは、むしろ悪化していると言ってもよろしいんじゃないかと思います。各種世論調査を見ましても、治安を何とかしてほしい、犯罪を少なくしてほしい、安心して生活できるようにしてほしいという国民の要望は景気とともに断然高いという状態が続いておることは御案内のとおりでございます。

 政府としてもさまざまやっております。法務大臣就任に際して、小泉総理からは、世界一安全、安心な国、安全神話を取り戻してほしいという強い指示があったところでございまして、その総理の御指示もございまして、ことしの法務省の年頭の幹部職員に対する訓示でも、また、ついこの間やりました全国検察官会同におきましても、ことしをともかく治安回復元年にしよう、治安が悪くなったについては要因がたくさんございますから、一筋縄にはいきませんが、法務省職員五万一千人、力を合わせて、後々、治安回復した暁において、ことしが治安回復元年だったと言われるような年にしようという訓示をいたしたところでございます。

 政府としての方策といたしましては、平成十五年、一昨々年になりますが、十二月、犯罪対策閣僚会議におきまして、犯罪に強い社会の実現のための行動計画が策定されておりまして、法務省としても総合的な犯罪対策に取り組んでいるところでございます。

 少し具体的なことを申し上げた方がよろしいですね。

 私ども法務省としても、安心、安全な社会の再生というのは法務省に課せられた最重要課題と受けとめておりまして、先ほど申しました国民の治安回復の要請に確実にこたえていくために、検察、矯正保護、入管、公安調査庁といった治安を支える各組織職員の充実強化を図り、心を一つにして頑張っていこうと考えております。

 現在、刑務所では、矯正の方ですが、過剰収容が深刻な問題となっております。PFI手法の活用も含めまして、刑務所の増設、収容、処遇能力の強化を図っておりますほか、再犯防止に向けて処遇プログラムの充実等に努めているところでございます。私を長といたしまして過剰収容対策のプロジェクトチームを立ち上げまして、これら各般の諸問題について省内で精力的に検討をしておるところでございます。

 先ごろ保護観察中の者の再犯が相次いだことが社会問題になったことは御案内のとおりですが、更生保護制度全般について検討するために、更生保護のあり方を考える有識者会議を立ち上げて検討いただいております。この会議における議論を踏まえながら、更生保護制度をより実効性の高いものにしてまいりたいと考えております。

 外国人犯罪の温床となっていると指摘されている不法滞在者、外国人の問題につきましては、先ほどの計画で、五年内に半減という目標を決めておるところでございまして、そのために、入国審査及び在留資格審査の厳格化、不法滞在者の摘発強化と退去強制の効率化、かなり成功してきておりますが、それらの方策を講じてまいりたいと考えております。

 加えまして、組織犯罪、ハイテク犯罪等、治安を脅かす犯罪に適切に対処するため、所要の法整備を早急に行うとともに、組織的犯罪処罰法等、これらの犯罪に効果的に対処するための各種の法律を積極的に活用していく必要があると考えております。

 これら諸施策につきまして、関係機関と連携しつつ総合的に取り組むことによりまして、安全で安心して暮らせる社会の実現のために最大限の努力をしてまいりたいと考えておる次第でございます。

茂木主査 質疑者の方も質問をたくさん用意していると思いますので、答弁の方もできる限り簡潔にお願いいたします。

 藤井君。

藤井分科員 どうもありがとうございました。治安回復に向けて、政府も全力を挙げていただきますようにお願いいたします。

 もう一点、ちょっと大臣にお伺いいたします。

 去る二月二日でございますが、大変長年にわたり激しい議論が交わされてきました代用監獄制度について、未決拘禁者の処遇に関する有識者会議は、このような提言を出されております。

 今回の法整備に当たってはという限定をつけておられますが、代用監獄の存続を認めた上で、未決勾留者の処遇改善策を考えるべきであると結論をつけています。代用監獄制度は、自白強要などの違法捜査が行われやすく、冤罪の温床にもなるとも批判が出ておりました。人権問題としても取り上げられてまいりました。このたびの有識者会議の提言について、現在の大臣の思いやお考えをぜひお聞かせください。

杉浦国務大臣 先生御指摘の代用監獄の問題を含む未決拘禁者に対する問題は、昨年の監獄法改正で積み残しになった部分でございます。

 非常に長い歴史がございまして、私がまだ政治の道に入る前から、もう二十年以上前から問題になっていることでありますが、ようやく、法曹三者を含めました有識者会議で御議論いただいて結論を得たということでございますので、その結論を踏まえまして、今国会で未決についての監獄法改正を御提案して、御審議いただき決しようと思っております。

 内容は、先生おっしゃったとおり、いわゆる代用監獄についてはこれを存続させることを前提といたしております。と同時に、その改善をも図るための措置を講じようとしておるものでございます。

 現在提出準備を進めております法案では、未決拘禁者等の人権を尊重しながら適切な処遇を行うために、その権利義務の範囲を明らかにするほか、代用監獄の制度に関しまして、留置施設視察委員会を設けることなどを予定しております。

藤井分科員 ありがとうございました。

 先ほどの治安回復と人権の擁護は、どちらも重要な課題であると思います。一方、二十一世紀は環境と人権の世紀とも言われます。どうぞ、杉浦大臣のリーダーシップのもとで司法改革を進め、治安の回復、人権をより尊重した捜査が今後行われるよう強く望みたいと思います。

 次に、私は、先般、名古屋、旭川、網走などの刑務所を見学する機会がございました。非常に建物は立派になりましたし、外観からは近代的な印象を受ける施設もございました。しかし、そこで働く刑務官ら職員の皆さんの仕事は、大変、想像以上なものだと痛感をいたしました。過剰収容状態の中での被収容者の人権問題、また保護観察官の人員不足など課題は多いとお聞きしました。

 今国会で法務省、警察庁から関連法案も提出されるようでございますが、きょうは、刑事施設、刑務官、保護観察官の現状について質問をさせていただきます。

 まず、一つは、刑事施設と刑務官の数についてでございます。

 刑務所、拘置所及び警察の留置場の被収容者、受刑者、被告人、被疑者の数が近年大幅に増加しているにもかかわらず、収容定員が追いつかず、被収容者の過剰収容状態が続いているとお聞きいたしております。そのため、施設内における生活環境が大変悪化し、単独室に複数の者を収容させたり、雑居房に定数を超えて収容しているのが実態とお聞きいたしました。

 さらに、警察留置場に収容されている未決拘禁者の数も大幅に増加して、被勾留者の九八%の被疑者が留置され、捜査が終了し起訴された被告人の多くは留置場に収容されているというお話も伺いました。

 これらの者の収容施設は本来拘置所であるはずでございますが、収容力がないために、勾留されている被疑者、被告人を収容できないという状況が続いておるわけであります。

 また、拘置所でも、刑事裁判で刑が確定した者は刑務所に収容されるべきなのに、受け入れる刑務所が確保できずに、拘置所に滞留している状態がある。

 これら刑事施設の現状と対策について、何点か質問をさせていただきます。

 一点目は、拘置所及び刑務所における過剰収容により、今どのような問題が発生しているのか、お聞かせ願いたい。

 また、二番目に、過剰収容問題を解決するための具体的な方策をお聞かせいただきたい。拘置所及び刑務所の数を増設する計画なんかはあるんでしょうか。また、被勾留者を減少させるための具体的な方法を何か考えておられるのか。受刑者の収容数を減らすための方策はあるんでしょうか。

 とりあえず、以上についての御答弁をお願いいたします。

小貫政府参考人 まず、過剰収容の状況でございますが、平成十年以降の刑務所等の収容人員、これは急激に増加しております。特に、受刑者等の既決被収容者にありましては、平成十七年末現在、約六万八千三百人という数字を数えておりまして、収容率にいたしますと一一六%という状況でございまして、その収容状況は極めて厳しい状況にございます。

 これは、物的施設ばかりではなくて、人員面でも多くの不足を抱えているところでございまして、これがゆえに現在刑務所等ではどういうことが起こっているかと申し上げますと、委員も御指摘のとおり、受刑者の居住環境が非常に悪い、こういうことから、緊張感あるいは圧迫感からくるストレスが高じまして、受刑者間のトラブルや職員に対する暴行傷害事案が多発しております。

 昨年一年間で職員等に対する暴行傷害事案は一千件をついに超えました。さらには、刑務所の役割としては改善更生と社会復帰ということが重要な責務であるわけですけれども、そういった実情にあるために、個々の受刑者の特性に見合った処遇というのがなかなかできがたい状況にございます。

 そういうことで、この過剰収容対策でいろいろお骨折りをいただきまして、施設の充実、拡充、さらには人的体制の整備というのを行ってまいりました。

 その一端だけ申し上げますと、ここ平成十三年以降、十七年当初予算までの既存の刑務所の増設あるいは新設、まだ新設はできていないものもございますけれども、約二万人分の収容能力の拡大に努めてまいりました。ただ、現状では、これでも足りないという状況でございまして、十八年度予算でさらなる増加をお願いしている、こういうことでございます。

 一方、職員の定数の関係でございますが、平成十三年度末には刑務所等の行刑施設で働く職員数の定員が一万七千十一人でございました。これがその後、いろいろ御理解をいただきまして、純増を重ねてまいりまして、平成十七年度は一万七千六百四十五人という数字に達しておりまして、約六百三十四人の増ということでございます。

 しかしながら、実態を見ますと、職員一人当たりの負担数、被収容者の割合はさらに増加している、こういうことでございまして、十七年末現在の一人当たりの収容者の数は四・五人でございます。これは、アメリカ、イギリス等、他の諸国と比べましても非常に高い数字でございます。ちなみに、アメリカにおいては三・〇、イギリスにおいては一・六という数字が報告されているところでございます。

 今後は、こういった物的施設及び人的な体制の整備に、さらに収容動向を見つつ努力してまいりたい、このように考えている次第でございます。

 以上でございます。

藤井分科員 ありがとうございました。あらゆる方策を講じて、過剰収容問題に対応していく必要があると思います。

 次に、刑務官の職員の職務についてお尋ねをしたいと思います。

 被収容者の増加に対応した刑務官などは、職員数も不足し、有給休暇の取得率は国家公務員の中でも最低の水準である、年間三・九日と聞いておりますが、残業がふえてもこれに見合う手当がつかない。こういう状態が続きますと、刑務官らの待遇は悪化し、職場環境も悪くなれば、今後、情熱を持った誠実な刑務官らを採用するに悪影響を及ぼすのではないでしょうか。

 我が国の治安を安定させるためにも、被疑者、被告人、受刑者に対し、その地位に応じた適正な処遇をすることが重要であると思います。未決拘禁者に対する適正な刑事手続の保障、受刑者の矯正と社会復帰及び再犯防止のための適正な方策をとることは急務と考えられます。

 このような認識のもとで、次の何点かについてお尋ねをさせていただきます。

 刑務官ら職員の増員の必要性と増員計画をどうお持ちでございますか。刑務官も、政府の方針である公務員の五%削減の対象になっているんでしょうか。また、刑務官ら職員の有給休暇の取得状況、そして残業勤務の実態と残業代の支払い状況はどうなっていましょうか。また、これは一つ提案なんですが、警察官はOBを採用して交番などに配置しているという合理的な方法をとっておられますが、刑務官不足で、刑務官OBの採用なんかをして対応するという考えはいかがなものでしょうか。

 以上、三点について御答弁をお願いいたします。

小貫政府参考人 刑務官の勤務条件が非常に厳しい状況にあるということは、委員御指摘のとおりでございます。忙しい施設においては年休消化が〇・九日というところも伺っているところでございまして、幹部の私としては、大変心苦しい仕事をお願いしているという状況にございます。

 先ほどの残業手当、ちょっと確認してまいりませんでしたので、その点はまた別途報告させていただきますが、週休の点から申し上げますと、四週八休というのが通常の公務員の勤務形態でございますけれども、四週七休とかそういう状況で、この四週八休を実施できていない庁が七十四庁の刑務所のうち六十五庁に上っております。

 さらには、OBの過去に培ってきた能力の、スキルの活用ということでございますが、数字はちょっと手元に持ち合わせておりませんけれども、一部OBの方に嘱託でお願いしているところもございます。一方で、若い刑務官になられる方、非常に厳しい勤務条件ではあるけれども、現在では希望者が今でもいてくれるというありがたい状況にございまして、今後は、OBの力と若い力、これのバランスをとりながら考えていくべきかな、こんなふうに思っている次第でございます。

 以上です。

藤井分科員 ありがとうございました。

 刑務官が厳しい現場の一線で活動をいたしておりますので、それらの処遇についてもよろしくお願いをしておきたいと思います。

 次に、更生保護について質問をさせていただきます。

 昨年、保護観察中の重大再犯事件が何件か発生したことを機会に、更生保護のあり方を考える有識者会議が法務省に設置されました。更生保護制度については、戦後六十年間手をつけられなかったものであり、抜本的な見直しが来ている時期だと思われます。

 更生保護は、成人に関して言えば、刑務所を仮出所した者に対する保護観察と、保護観察つき執行猶予の言い渡しを受けた者に対する保護観察や、更生保護施設における出所者に対する援助等であるわけであります。

 更生保護は、犯罪者に対して行うものであり、犯罪者の更生を目的としております。犯罪者が更生できれば、世の中から再犯が減ることになります。すなわち、犯罪被害の発生が減少します。

 例えば、一人の性犯罪者を更生させることができれば、同一人による何件かの性犯罪事件の発生が防止できるということになります。犯罪者が更生できて犯罪が減れば、裁判コストや刑務所のコストも減り、先ほど申し上げた過剰収容問題も改善できるということになります。

 犯罪が起きてから犯罪者の処罰や被害者救済のためのコストをかけるよりも、犯罪を防止するためのコストをかける方が、国家経済的にも安上がりで、国民の全体の利益にもなるのではなかろうかと思います。

 以上のような見地から考えれば、更生保護を充実させて、犯罪者を一人でも多く更生させることが、国家国民の見地からいっても非常に重要なことだと言えると思います。

 以上のような観点から、次の質問をさせていただきます。

 現在の保護観察制度の問題点はどのようなものがあるのでしょうか、教えていただきます。

 また二番目に、保護観察官について、現場で保護観察に当たっている保護観察官は六百三十人と聞いております。それに対して、保護観察の対象者は六万人いる。およそ一人当たり百人の対象者を持っているということで理解してよろしいでしょうか。

 次に、もしこの数字が正しいということであれば、一人で百人を担当するということは余りにも負担が多過ぎないでしょうか。保護司の方は五万人とのことですが、この連携はどのような仕組みになっているんでしょうか。

 次に、現在国家公務員の五%以上の純減が叫ばれていますが、法務大臣が例外として増員を要望しておられる刑務官のような矯正職員だけでなく、保護観察官の抜本的増員が必要ではないでしょうか。それにより、効果的な保護観察を実施することができますし、再犯が減少して国民の利益になるのではないかと思います。

 保護観察官は、現在は一般の公務員の中から登用していると聞いていますが、家庭裁判所の調査官や刑務官のように、独自の採用試験とした方が、更生保護に関心のある適格者が集まり、更生保護を充実するためにいいのではないでしょうか。

 以上の四点について、御答弁をお願いいたします。

茂木主査 時間が迫っておりますので、簡潔にお願いします。

麻生政府参考人 はい。

 保護観察制度につきましては、社会情勢等の変化に十分対応できていないことから、保護観察対象者の改善更生を図ることが困難になってきている部分もあると承知いたしております。そのため、再犯防止が十分に機能していないのではないか、こういう御指摘もいただいているところでございます。

 それから、先生御指摘の約六百三十名の保護観察官が一人当たり百件程度担当しているということは、この数字は間違いございません。

 そこで、御指摘のとおり、全国に約四万九千名の保護司さんが現在いらっしゃいます。その保護司さんと保護観察官が協働体制で保護観察を実施しているというのが我が国の特徴でございます。

 保護司さんは地域の実情にも詳しく、その豊かな人生経験を持って保護観察対象者の日常の相談に応じてきめ細かく指導助言をいただいております。保護観察官の員数には限りがございますので、保護司さんの日常的な御協力を得まして保護観察を実施し、対象となる者一人一人の改善更生を図ってまいりたいと考えております。

 それから、平成十八年度の予算案につきましては、治安回復を図るためには、保護観察中の者による再犯防止対策を緊急に進める必要があることから、四十五人の保護観察官の増員を計上させていただいているところでございます。

 簡素で効率的な政府の実現が求められておりますので、更生保護官署におきましてもできる限りの業務の効率化を図っているところでございますけれども、保護観察の充実強化は我が国の安全、安心な社会の実現に必要不可欠なものでございますので、今後とも人的体制の充実強化に努めてまいりたいと考えております。

藤井分科員 ありがとうございます。

 それでは、最後に保護観察についてお聞きします。

 保護観察の期間についてですが、仮釈放は、刑務所等の施設からいきなり社会に戻すのではなくて、満期前に釈放し、満期に至るまでの間、社会内にあって適切な保護観察を受けることによって、更生させ、ひとり立ちできるようにするための制度と理解していますが、その仮釈放者の平均保護観察期間はどのくらいでしょうか。

 私は半年前後と聞いておりますが、これでは十分ではなく、十分な更生保護が実施できるのでしょうか。保護観察期間をもう少し長くするために、軽い事件の受刑者はもとよりのこと、仮釈放に適した受刑者については早期に仮釈放してはどうでしょうか。その方が充実した更生保護を実施でき、犯罪者の更生を図ることができ、犯罪も減るのではないでしょうか。より早期に仮釈放すれば、刑務所人口も減って過剰収容問題も解決できるのではないでしょうか。

 もう一点、保護観察の内容について、現在の保護観察の内容はどうなっているでしょうか。保護観察を充実させ、犯罪者を更生させて再犯を減らすためには、保護観察の内容をどのようにしたらいいのでしょうか。また、性犯罪対策や薬物離脱のプログラムを設けて、そのような犯罪を行った保護対象者に受講義務を負わせるようなことを考えてはいかがでしょうか。

 以上、締めくくりの質問とさせていただきますが、御答弁をお願いいたします。

茂木主査 時間が終わっておりますので、極めて簡潔にお願いします。

麻生政府参考人 はい。

 仮出獄の平均期間は五カ月余りでございますけれども、対象者の特性に応じた適切な仮釈放を認めてまいりたい、今後、そのようにいたしたいと思っております。

 それから、対象者に対します処遇でございますけれども、これは矯正局と共同で性犯罪者に対しますプログラムを開発いたしておりますので、今後ともそのようなプログラムを開発して適切な処遇を行ってまいりたいと考えております。

藤井分科員 ありがとうございました。

茂木主査 これにて藤井勇治君の質疑は終了いたしました。

 次に、日森文尋君。

日森分科員 社民党の日森文尋でございます。

 前回に引き続いて、消費者金融の問題について政府のお考えをお伺いしたいと思います。

 御案内のとおり、一月十三日に画期的な最高裁の判決が出されました。ちょっと触れておきますと、弁済受領時の交付書面の記載方法について、貸金業規制法施行規則では、契約年月日にかえて契約番号、これで結構だと認めているのは、法の委任の範囲を超えた違法な規定であるというふうに述べて、これは無効だということを明確にいたしました。

 これを受けて金融庁は、一つは、貸金業施行規則の十五条の二項を削除しようということが一点。もう一つは、加えて、利息制限法の上限金利を超える利息については支払わなくても期限の利益を喪失しないということを契約の際の交付書面に記載するようにこの規則を改正するという流れになっているようです。

 これは、グレーゾーン金利、今まで問題になってきたわけで、みなし弁済に関する一連の最高裁判決、特に去年から何回も出されているわけですが、これは当然の措置だろうというふうに思っています。

 一月十九日の最高裁の判決では、債務者が、利息制限法の制限超過部分、利息制限法を超えて支払った利息、これを自己の自由な意思によって支払ったか否かは、金銭消費貸借契約証書や貸付契約説明書の文言、契約締結及び督促の際の貸金業者の債務者に対する説明内容など、具体的事情に基づき総合的に判断されるべきであるというふうに最高裁判決は述べました。

 今回の金融庁の貸金業施行規則の改正は、この文言だけに限ったものじゃないかという思いがあるんです。そうすると、最高裁判決の趣旨を踏まえているとはなかなか言いがたいというふうに私どもは思っているんですが、これについて金融庁の所見をお伺いしたい。

 それからまた、加えて、最高裁判決のこの部分について、現時点でどう受けとめているのか、最初にこれについてお伺いをしたいと思います。

畑中政府参考人 お答え申し上げます。

 一月十九日の最高裁判決におきましては、期限の利益喪失特約が付されている場合、利息制限法の上限金利を超える部分の利息については無効であり、特段の事情のない限り、みなし弁済の要件とされている支払いの任意性が否定されると判示されているところでございます。御指摘のとおりでございます。

 今回の判決は、貸金業法四十三条のいわゆるみなし弁済についての判断を示したものでございまして、金融庁としても重く受けとめているところでございます。

 なお、御指摘のございました、本判決に先立つ一月十三日の最高裁判決におきまして、支払いの任意性についての判断とともに、貸金業者が契約時に交付する書面の記載事項について定めた貸金業法施行規則十五条二項の規定が、法律の十八条の委任を超え、違法であるとされたことから、同規定を削除することといたしました。

 この措置にあわせて、御指摘にございましたように、資金需要者、すなわち借り手が、期限の利益喪失特約の適用に関して、利息制限法の上限金利を超える部分の利息についても有効であると誤認をし、トラブルが生じることを防止することが適切であると考えたところでございまして、このため、期限の利益喪失特約につきましては、利息制限法の上限金利を超えない範囲においてのみ効力を有する旨の記載を義務づけることとし、その旨の内閣府令改正案をパブリックコメントに付したところでございます。

 いずれにいたしましても、十九日の最高裁判決につきましては、金融庁としても重く受けとめているところでございます。

日森分科員 重大に受けとめているということについては、私どももそういう立場でしっかりやっていただきたいと思うんですが、監督官庁なわけですから、先ほど引用しましたけれども、契約の締結及び督促の際の貸金業者の債務者に対する説明内容など、具体的事情に基づき総合的に判断されるべきであるという最高裁判決。これは、金融庁は、利息制限法の上限を超える利息を自由意思に基づいて支払ったと判断するには、貸金業者が具体的にどのような説明を行うべきだというふうに監督官庁として考えていらっしゃるのか。これはちょっと具体的にお答えいただきたいと思います。

畑中政府参考人 繰り返しになりますが、十九日の最高裁判決は、貸金業規制法四十三条のみなし弁済についての判断を示したものでございます。

 ただ、このみなし弁済規定における任意性の判断について、今後の司法判断に予断を与えるようなコメントをすることは差し控えさせていただきたいと存じます。

 なお、繰り返しになりますが、金融庁といたしましては、本判決に関連いたしまして、借り手が期限の利益喪失特約の適用について誤認をし、トラブルが生じることを防止することが適切であると考えまして、期限の利益を喪失するという特約については、利息制限法の上限金利を超えない範囲において効力を有する旨の記載を義務づけることとし、本改正案をパブリックコメントに付したところでございます。

 このパブリックコメントの内容も踏まえまして、内閣府令の改正を行った上で、これを適切に執行してまいりたいと考えております。

日森分科員 次の質問に移りたいと思います。

 現在、商工ローン、かつて問題になりました、大変大騒ぎになったんですが、ここでは、超過利息、利息制限法を超えて利息を払わなければ、保証人を立てているわけなんで、保証人に請求が行くというのが常態化している、こう言われているんです。実態調査をされているかどうかわかりませんが。そうすると、事業者が多いんですが、保証人に迷惑をかけたくないという思いで自己破産できない、そういう方もたくさんいらっしゃるというふうに聞いていますし、そして、それ以上ちょっと悲惨なのは、保証人に多額の迷惑が及ぶということを大変心配して自殺をする債務者もかなりいらっしゃるということを聞いているんです。

 さきの、消費者金融白書委員会というのがあるようなんですが、ここがまとめました消費者金融白書、これは平成十六年になりますが、この十六年版によると、与信管理面の強化策として、今後ということだと思いますが、約半数の消費者金融会社が、保証をつけるというふうに回答しています。

 これは、この保証をつけるということは、実は、心配しているんですが、超過利息の強制につながりかねないというふうに私どもは思っていまして、この消費者金融の保証人制度というのはいかがなものか。できたら禁止というか、これはやっちゃいかぬというふうにすべきではないのかという思いがあるんですが、現段階での金融庁の御見解についてお伺いしたいと思います。

櫻田副大臣 貸金業規制法上、消費者金融業者が貸し付けを行う場合には、まずは資金需要者等の資力または信用、借り入れの状況、返済計画等について調査し、その者の返済能力を超えると認められる貸し付けの契約を締結してはならないこととされているところでございます。

 また、保証契約を締結しようとする場合には、保証金額、保証期間などを記載した書面を保証人になろうとする者に対して交付をしなければならないこととし、安易な保証が行われないよう配慮しているところでございます。

 これに加えて、消費者金融について保証を禁止することについては、保証による信用補完がなくなることにより、資金需要者への貸し付けが滞る可能性もあることから、慎重に検討すべきであると考えているところであります。

 いずれにせよ、金融庁といたしましては、ただいま申し上げました貸金業規制法の趣旨を踏まえ、適切な貸し付けがされるよう努めているところでございます。

日森分科員 ぜひ積極的な御検討を続けていただきたいということなんですが、去年の八月十日の東京高裁の判決でも、ローンに関して、保証人を立てられたことによって、保証人が、実は実態としては債務者がどういう状態にあるのか知らされないまま保証人にならされているというふうな事態もあるわけですよ、現実問題。ですから、その辺も含めて、ぜひ具体的な検討を加えていただきたいということをお願い申し上げておきたいと思うんです。

 これはさきの予算委員会でも触れたんですが、消費者金融、この利用者の年代別の構成を見てみると、既存の顧客で、二十歳代、三十歳代が五一・六%、新規契約者になると六八%になっている。二十代、三十代が消費者金融の利用者が圧倒的に多いんです。そういう彼らの若い世代のライフサイクルがそうなっているということも一つあるかもしれませんが、一方では、テレビ等を通じてかなり大々的な宣伝が行われている。

 ある大手の消費者金融会社では、宣伝費は、平成十六年に百三十七億円、物すごい膨大な宣伝費を使っていて、さらに十七年度では百五十億円だと。来年度はさらに宣伝費をプラス三十億円増加するというふうなことが、実態としてあるわけです。

 実は、こういう宣伝によって、御利用は計画的にということは宣伝では言っているけれども、それ以上触れていないわけで、ぽっと町の何とかに行けばすぐお金が借りられるような状態になっているわけで、ちょっと心配しているんです。

 同時に、これまた最高裁判決ばかりで申しわけないんですが、昨年の平成十七年の十二月十五日の最高裁判決。完済までの期間がわからない、これはどこでも今消費者金融はやっているんですが、消費者金融のリボルビング払い。何度でも借りられるわけですよ、一定の額の中で。これは債務者に債務者の負担の大きさを認識させないものであって、返済期間などを書かない書面は違法であるというふうに最高裁が明確にしました。

 しかし一方で、最高裁判決はみなし弁済等について厳格な運用を求めているわけですが、他方、消費者金融が宣伝活動を行って、若い世代が負担の大きさを理解しないままリボルビング払い方式で消費者金融を利用している、こういう事態があるわけです。

 この事態についてどのようにお考えになっているのか。私どもから言うと、何らかの対応が必要なのではないかというふうに思いますが、これについて金融庁の御見解をお聞かせいただきたいと思います。

櫻田副大臣 消費者金融業者による広告がその安易な利用を促しているとの指摘があることにつきましては、十分承知しているところでございます。

 また、こうした観点から、貸金業規制法においては、貸金業者の広告について、借り入れが容易であることを過度に強調することにより、資金需要者の借り入れ意欲をそそるような表示はしてはならない、資金需要者等の返済能力を超える貸し付けの防止に配慮するとともに、その広告が過度にわたることがないように努めなければならない等の規定がなされているところであり、当局としても、これに基づき適切な監督に努めているところでございます。

 また、借り手である利用者側においても、節度ある合理的な利用がなされていることが必要であり、金融庁では、従来から、ホームページ等を通じて消費者啓発のための広報活動を行ってきたところであり、特に青少年については、中高生向けの副教材や、高校卒業生を対象とするパンフレットを作成するなど、金融経済教育の取り組みに努めているところでございます。

 消費者金融業者の広告のあり方や、消費者の金融経済教育のあり方を含め、貸金業をめぐる諸問題につきましては、貸金業制度等に関する懇談会において議論を深めてまいりたいと考えております。

日森分科員 これは質問通告をしていないんですが、ちょっと今思いまして、それだけ宣伝を目にしない日はないですよ。物すごいですよね。

 これはちょっと余談になりますけれども、フォーブスというアメリカの雑誌が、去年かおととしか、日本の資産家十傑というのを出しました。第一位は、言っちゃっていいのかな、サントリーの人なんですが、第二位、第三位、これは消費者金融の創業者ですよね。第四位はちょっと違うんですけれども、第五位もそうですよ。六千二百億円とかいう資産を持っているわけですね。

 それが悪いと言っているのではないんですが、そういう宣伝をどんどんやっている。しかし一方で、政府広報とよく出てくるんだけれども、その政府広報で、例えば最高裁が言っているように、利息制限法を超えた超過利息分、みなし弁済は払わなくてもいいんですよということぐらい広報をしたらどうかと思うんですよ。みんな結構知らないでこれは払っていますよ。受け取る側は、これは任意でもらっている、良心的に払ってもらって、任意で払った利息なんだからいいじゃないかということがあるわけなので、それはどうですかね。

 今、ちょっと思いつきみたいな話だけれども、そんな政府広報を流すと、借りる側ももう少ししっかりするんじゃないかという気がしますけれども、副大臣、どうでしょうか。

櫻田副大臣 それは業界の問題として取り扱うべきだなと思いまして、政府の方から積極的にそういうことを広報活動するということについては、一業者の利益を妨害するような行為と受け取られかねないかもしれませんので、現在、積極的にそういうことをやるということについては考えておりません。

日森分科員 これはいい案だと思ったんですが、残念ですね。

 ぜひ、これから被害が大きくなるような事態も、だって、今、多重債務者、正確な数はわかりませんが、二百万人とか言われているんでしょう。これは大変な数なので、これを少し何とかしなきゃいけないという思いがあるならば、ちょっと考えてみてください。

 それから、先日の一部の報道で、要するにグレーゾーン、灰色の金利撤廃へ、金融庁方針、債務者救済図るというふうに報道されていました。その報道を見て、最高裁の判決の流れを見ていけば、これは当然だなというふうに思いました。

 その記事の中で述べられているんですが、グレーゾーン、この金利を撤廃するには二通りの方法が考えられると。第一に、貸金業規制法、このみなし弁済規定を廃止すること。これは記事の中ですよ。第二に、利息制限法の上限金利と出資法、二九・二%、この出資法の上限利率を一致させる方法もある、こう言っているんです。一致させて、利息制限法の利息を上げられちゃったらこれは全然意味がないわけで、そこはちょっと考えていただきたいと思うんですが。

 この灰色金利を撤廃するというのは、私どもは当然だというふうに思っていますが、現行の利息制限法の上限金利、これが本当に妥当なのかどうかということもしっかり検討する必要があるんじゃないかと思っておるんです。

 ちなみに、現在の上限金利、一五から二〇%ですよね、額によって三段階になっていますが。これが決められた一九五四年、昭和二十九年、それから翌年の一九五五年、公定歩合は七・三〇%ですよ。現在の公定歩合は、もう御存じのとおりです、〇・一〇%と言われています。

 この推移を見てみると、現在の上限金利、利息制限法で決められた金利、これはちょっと高いんじゃないかというふうに私たちは思うんですよ。一五から二〇でしょう、公定歩合はこんなに下がっちゃった。これは連動するとかいうことは全然ないわけですから、ちょっと上限金利が高いんじゃないか、こう考えるのがいわば常識的な見方ではないのかというふうに思うんですが、法務大臣は、なかなか答えづらいお話かもしれませんが、ちょっと思いのたけを語っていただけたらと思います。

深山政府参考人 私の方からお答えをさせていただきます。

 今の御指摘の、公定歩合の大きな差があるということと、利息制限法の定める現在の上限金利との関係でございますけれども、利息制限法における上限金利の規制といいますのは、これはあくまでも民事の一般法でございますので、貸し手が金融機関であるか貸金業者であるかといったことや、借り手が消費者であるかあるいは事業者であるか、こういうことを問わず、一律に適用されるルールでございます。

 このため、利息制限法上の上限金利を定める上では、確かに、議員御指摘のように、公定歩合のような金融機関の調達金利の指標というものも考慮要素として大きなファクターを占めるということはそうでしょうけれども、貸金業者等による融資が、そのときそのときの現在の社会金融情勢の中でどの程度の役割を果たしているかとか、あるいは、無担保融資をした際の貸し倒れのリスクがそのときそのときにどの程度あるかという実情といったような点も十分考慮して、総合的に検討する必要があると考えておりますので、公定歩合の推移は、確かに御指摘のとおり随分大きな推移なんですけれども、この点だけから、直ちに今の利息制限法の上限金利が高過ぎて失当であるというところまで一気に行くのはなかなか難しいと思います。

 さはさりながら、今言ったような公定歩合の大きな変動があるということも一つの背景事情として、現在の利息制限法上の上限金利規制のあり方につきましては、さまざまな御意見があるものと承知しておりますので、この点につきましては、貸金業者に対する貸金業法における規制、それから出資法による刑罰の対象となる金利規制といったものとの役割分担に留意しながら、その見直しの要否について検討していくべきだと考えております。

日森分科員 以前、南野法務大臣が、検討に値するんじゃないかというような答弁を国会でされたことがあると思うんですよ。これはやはり、そういう今おっしゃったようなことが念頭にあって、そういう乖離があることを承知の上でいつまでも放置しておくことはいかがなものかという思いがあるのではないかとこちらは推測をしているんです。そういう意味で、今おっしゃられたようなことも含めて、ぜひ検討していただきたいと思うんです。

 確かに、消費者金融の関係、ずっと、貸し倒れのための積立金みたいなものが物すごくふえていることは事実なんですよね。実際にそういうことにもなっているわけなので、その辺も考慮が必要なのかもしれませんが、しかし、実際の公定歩合との乖離みたいなことをやはり基本に据えて、ぜひ御検討いただきたいと思っています。

 これはちょっと、次は、できたら大臣にお聞かせをいただきたいと思うんですが、どうも、消費者金融の問題は、単なる金利問題とかいうことにとどまらないで、大変大きな格差問題ではないかというふうに思っているんです。

 これは、御存じのとおり、この前も予算委員会でちょっと申し上げたんですが、貯蓄ゼロが二三・八%ですよね。一人の世帯だと四〇%を超えていて、そういう状態になっていますよ。貯蓄ゼロ世帯がもう二割を超えている。二人の世帯で二三・八%が貯蓄ゼロだ。多分、高齢の方々もいらっしゃると思うんですね。

 この方々は、何かあったときは、銀行はお金を貸してくれません、そうすると、どこから借りるかというと、もちろん若い人もそうかもしれませんが、こういう消費者金融ですね、そういうところで、保険証一枚あれば貸していただけますということで、借りていかざるを得ない。

 それから、例えば男子労働者でも、非正規の労働者は、年収二百万以下という人がもう二〇%に達しようとしていますよ、二〇%。女性だともっと低いですよね。もちろん扶養の関係があるというのもあるんですが、百万程度になっている。

 こういう方々が、何かあったときにここに駆け込んでいって、そして物すごい、利息制限法を超える利息を払いながら、やはり何とかしていかなきゃいけないということになっているわけですよ。そうすると、これは本当に社会問題だというふうに考えていかなければいけないのではないかという思いがあるんです。

 自殺している方もたくさんいらっしゃるわけですよ。年間三万人を超える人たちが自殺をなさっている。先ほど商工ローンのときに申し上げましたけれども、こういう理由で命を絶っている方々がたくさんいらっしゃるし、それから、学校の子供たちの費用が払えなくなっちゃったとか、病院にも行けないなんという方がたくさんいらっしゃるという話も伺っています。

 こういう社会問題なので、本当に国民の命の問題、それから安心、安全な生活、これをしっかりと政治が責任を持ってやっていくということと今の消費者金融の問題は全く無関係ではないというふうに思っているんですが、大臣、見解がございましたらお聞かせいただきたいと思います。

杉浦国務大臣 先生は消費者金融問題に大変御関心を示されて、活躍されておりますが、敬意を表する次第でございます。

 確かに、この消費者金融問題は経済問題であり、社会問題であり、格差につながる問題だ、そういう側面を有していることは間違いないところだと思います。

 一方で、やみ金融という、実態がよく把握できない社会悪があって、これから社会を守らなきゃならないという問題もあるわけです。先ほどおっしゃられたサラリーローンなんというのは、これはやみ金融じゃないわけですね。ですから、上限金利以上は刑罰で、しかも、そういうところはやくざと組んでいるところも多いわけですけれども、五菱会なんというのは有名な例ですけれども。

 そういう社会悪を撲滅しなきゃいかぬという目的から、我々自民党も、下げてきたわけです。下げることによってやみ金融がふえるじゃないかという批判もありますが、追い出すことによってやみ金融と組織犯罪を撲滅しようというねらいもこれありまして、非常に難しいところなんですが、政治としては考えなきゃならない問題ではないかと思います。

 一方において、需要があるわけですね。先生おっしゃったように、さまざまな、借り主があるからこういう問題が起こるわけで、先ほど御指摘になった、利息制限法の上限金利と出資法を一致させたらどうか、これも一つの考え方ではあると思うんですね。

 例えば、サラ金の経営者の方と話をしますと、裁判が起こる、最高裁判例も揺れていますから、訴訟費用がかかる、それから貸し倒れがある、そのリスクを見込んで、二五%ぐらいですか、あの方々は、あの前後に設定していると思うんですが、もしそれが完全になければ数%下げられるというんですね、貸出金利を。そういうような問題もございます。

 さまざまな考え方があり、検討しなきゃならない問題もあると認識しております。

日森分科員 もう時間がなくなりましたので、最後にちょっと問題提起を含めた質問をして終わりたいと思います。

 今大臣おっしゃったとおり、出資法の金利を三回ぐらいにわたって下げてきましたよね。その前には金利が物すごく高くて一〇〇%なんというときもあったという話も聞いているんですが、今二九・二%になっている。その貸金業の規制、出資法の利率について議員立法でやってきた。利息制限法もある。出資法については法務省の担当ですよね、大臣のところの担当。もう一方で、クレジットカードなどの割賦販売法、これについては経済産業省なんだと。これもちょっといろいろな問題があるんですが、割賦販売法は経済産業省、それで貸金業規制法は金融庁という縦割りになっていて、今実際に貸金業の規制措置がとられているわけです。

 それで、これは世間ではいわゆるクレサラ問題というふうに言われていますけれども、大分今のような大きな社会問題になった現実から、これを一本化して統一消費者信用法、これは弁護士会なども言っていますが、仮称になりますけれども、名称はともかくとして、統一をして統一消費者信用法という、要するに、消費者の側の権利や保護をしっかりと定めていくような、そういう法整備をしていくことも必要なのではないかという思いがあるんです。

 ここはぜひ法務大臣、法務省がイニシアチブをとって、そしてこういう一体化について進めていくべきではないのかという思いがあるんですが、これについて大臣か、ちょっとわかりませんが、御答弁いただきたいと思います。

深山政府参考人 議員の御指摘の、統一消費者信用法というものを制定すべきだという御意見があることは我々も承知しております。

 この提言は、債務者が消費者である場合に限定して、各方面の施策をまとめて統一的に法規制をしようというものですので、消費者という点に着目しているということ、その点だけを重視しますと、民事、刑事の基本法や一般法を所管しております法務省がイニシアチブをとるのがいいのかどうか、ここについてはいろいろな御意見があろうかと思います。

 いずれにしましても、御指摘のとおり、法務省は現時点で利息制限法、出資法を所管しておりますので、こういった法律の金利規制のあり方を見直すべきかどうかといった問題につきましては、先ほどもちょっと話に出ました、現在、金融庁の方で貸金業制度等に関する懇談会が開かれておりまして、法務省からも民事、刑事の担当官が出席をして議論に参画しておりますが、この場を通じて関係省庁とも協議しながら、引き続き検討したいと思っております。

日森分科員 時間です。どうもありがとうございました。

茂木主査 これにて日森文尋君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明三月一日水曜日午前九時より開会し、法務省及び外務省所管についての審査を行うこととし、本日は、これにて散会いたします。

    午後六時四十四分散会


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