衆議院

メインへスキップ



第1号 平成19年2月28日(水曜日)

会議録本文へ
本分科会は平成十九年二月二十六日(月曜日)委員会において、設置することに決した。

二月二十七日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      遠藤 武彦君    大島 理森君

      倉田 雅年君    森  英介君

      岡田 克也君    丸谷 佳織君

二月二十七日

 森英介君が委員長の指名で、主査に選任された。

平成十九年二月二十八日(水曜日)

    午後三時開議

 出席分科員

   主査 森  英介君

      猪口 邦子君    遠藤 武彦君

      大島 理森君    倉田 雅年君

      矢野 隆司君    岡田 克也君

      鷲尾英一郎君    丸谷 佳織君

   兼務 高橋千鶴子君 兼務 保坂 展人君

    …………………………………

   法務大臣         長勢 甚遠君

   外務大臣         麻生 太郎君

   財務大臣         尾身 幸次君

   法務副大臣        水野 賢一君

   外務副大臣        岩屋  毅君

   財務副大臣        田中 和徳君

   外務大臣政務官      松島みどり君

   最高裁判所事務総局経理局長            小池  裕君

   最高裁判所事務総局刑事局長            小川 正持君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 梅溪 健児君

   政府参考人

   (法務省大臣官房長)   池上 政幸君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    寺田 逸郎君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    小津 博司君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  稲見 敏夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 木寺 昌人君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 草賀 純男君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 猪俣 弘司君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長)   中根  猛君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    谷崎 泰明君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 佐々木豊成君

   政府参考人

   (財務省大臣官房参事官) 香川 俊介君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         内藤 邦男君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房参事官)           原口 和夫君

   政府参考人

   (農林水産省総合食料局次長)           佐藤 和彦君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

   外務委員会専門員     前田 光政君

   財務金融委員会専門員   鈴木健次郎君

   予算委員会専門員     清土 恒雄君

    ―――――――――――――

分科員の異動

二月二十八日

 辞任         補欠選任

  遠藤 武彦君     矢野 隆司君

  大島 理森君     猪口 邦子君

  岡田 克也君     菊田真紀子君

  丸谷 佳織君     田端 正広君

同日

 辞任         補欠選任

  猪口 邦子君     大島 理森君

  矢野 隆司君     遠藤 武彦君

  菊田真紀子君     鷲尾英一郎君

  田端 正広君     古屋 範子君

同日

 辞任         補欠選任

  鷲尾英一郎君     岡田 克也君

  古屋 範子君     田端 正広君

同日

 辞任         補欠選任

  田端 正広君     古屋 範子君

同日

 辞任         補欠選任

  古屋 範子君     丸谷 佳織君

同日

 第二分科員保坂展人君及び第四分科員高橋千鶴子君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十九年度一般会計予算

 平成十九年度特別会計予算

 平成十九年度政府関係機関予算

 (法務省、外務省及び財務省所管)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

森主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることになりましたので、何とぞよろしくお願いいたします。

 本分科会は、法務省、外務省及び財務省所管について審査を行うことになっております。

 なお、各省所管事項の説明は、各省審査の冒頭に聴取いたします。

 平成十九年度一般会計予算、平成十九年度特別会計予算及び平成十九年度政府関係機関予算中法務省所管について、政府から説明を聴取いたします。長勢法務大臣。

長勢国務大臣 平成十九年度法務省所管予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 法務省は、治安、法秩序の維持確保、国民の権利保全など国の基盤的業務を遂行するとともに、司法制度改革の実現に取り組んでおり、現下の厳しい財政事情のもとではありますが、適正、円滑な法務行政を推進するため、所要の予算の確保に努めております。

 法務省所管の一般会計予算額は六千五百十一億二千百万円、登記特別会計予算額は一千六百五十九億二千六百万円、うち、一般会計からの繰入額が六百九十三億九千七百万円でありますので、その純計額は七千四百七十六億五千万円となっており、前年度当初予算額と比較いたしますと、二百五億九千三百万円の増額となります。

 何とぞよろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。

 なお、時間の関係もございますので、お手元に配付してあります印刷物を、主査におかれましては、会議録に掲載されますようお願い申し上げます。

森主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま長勢法務大臣から申し出がありましたとおり、法務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

森主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

森主査 以上をもちまして法務省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

森主査 この際、分科員各位に申し上げます。

 質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。

 なお、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。矢野隆司君。

矢野分科員 自由民主党の矢野隆司でございます。大臣、副大臣、きょうはどうも御苦労さまでございます。

 早速でございますが、昨年、我が国は教育基本法の改正、これをなすことができたわけでございますが、「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。」これが第二条で盛り込まれております。また、安倍内閣総理大臣は、「美しい国、日本」という概念を持って国のかじ取りに邁進をされておられるところでございまして、少なくとも、私は、この日本に生まれたことに感謝し、そして誇りを持って生きていかねばならない、こう思うわけでございます。

 そこで、我々は一くくりに日本、日本人という言葉を使いますが、実はいろいろな事情で日本人になられた方もおられるわけです。私の地元にもそういった方々がおられるわけですけれども、きょうは、日本人とはどんな人なのか、だれなのか。いささか哲学的な命題のように聞こえますが、そのことの一端を考えるきっかけになるような質問をさせていただきたい、こう思っております。

 すなわち、両親ともに外国人であるのに、日本で生まれた子供には一定の条件のもと日本の国籍が与えられる、こういう法の仕組みについてお尋ねをいたします。

 憲法第十条、「日本国民たる要件は、法律でこれを定める。」国籍法第一条、「日本国民たる要件は、この法律の定めるところによる。」とございまして、我が国が父母両系血統主義であるということがわかります。しかしながら、国籍法第二条三号、この中で、「日本で生まれた場合において、父母がともに知れないとき、又は国籍を有しないとき。」こういう条文がございます。きょうは、この後段部分、「国籍を有しないとき。」ということに限っていろいろと質問をいたします。

 まず最初に、端的にお尋ねしますが、この「国籍を有しないとき。」この場合はどんなことを想定して、あるいは現状があって法が整備されたのか、このことからお尋ねしたいと思います。

寺田政府参考人 お答え申し上げます。

 委員がおっしゃいましたとおり、憲法を引用されましたが、どこの国の国籍があるかどうかということは、それぞれの国の法的根拠で決める、こういうことになっております。

 したがいまして、我が国の場合は国籍法で決まるわけでございますが、大体、世界を見渡しますと、我が国のように、父母が日本人であるという、血統主義と申しておりますが、その場合にその子が日本人になるというケースと、どこで生まれたかということによって国籍を与える、これを出生地主義、生地主義などと申しておりますけれども、大きく分けましてそういう二種類になっております。これが統一されていません関係で、二重の国籍とか、あるいは全く国籍にギャップが生ずる、無国籍の場合が生じます。日本の場合で申しますと、両親がそれぞれ出生地主義をとっている国、例えばアルゼンチンのような国の子供が日本で生まれた、こういうことになりますと、そのお子さんは国籍がない、こういうことになるわけでございます。

 この無国籍者でございますが、これはどこの国にいるということについて何の権利も有しない状態になりますし、パスポートももちろんないので移動の自由もない、外交保護権にも浴しないというようないろいろな不利益がございますので、国際的な約束事といたしましては、なるべくこういうものを減らそうという傾向にございます。

 したがいまして、我が国のほかにも、今の国籍法上、二条三号のように、無国籍の場合には、生まれたということを条件といたしましてその国の国籍を与えるという国も、ヨーロッパあるいは韓国等幾つかございます。我が国もその一つ、そういう趣旨でこの規定が置かれているわけでございます。

矢野分科員 今民事局長さんの方から無国籍者という言葉が出たわけですけれども、現在我が国で、外国人登録法上での無国籍者というのはどんな人といいますか、国別というのはおかしいんでしょうが、出身地あるいは帰属分類別といいますか、どんな方が一体何人おられるのか。それから、あわせて、そういった方が年間何名ぐらい我が国に入国されているのかということをお尋ねしたいと思います。

稲見政府参考人 お答えいたします。

 外国人登録法上は、旅券などで国籍が確認できない、そういう外国人の方を無国籍者として取り扱っております。その数は、平成十七年末、ちょっと古くて恐縮でございますが、千七百六十五人でございます。

 なお、無国籍者の出身地別の内訳は統計が作成されておりませんので、大変恐縮でございますが、お答えすることができません。

 一方、入国の方でございますが、平成十八年一年間におきます無国籍者の入国者、これは千三百十人となっております。これも外国人登録同様、その出身地別の内訳という統計は作成しておりません。

 ただし、無国籍者のうち、パレスチナ暫定自治政府の発行した渡航文書、これで入国される方につきましては集計することが可能でございまして、平成十八年中の入国者は二百二名となっております。

 以上でございます。

矢野分科員 今の数字の中で、いわゆる国連のパス、レスパスというんですかね、それを持って入られた方も、その無国籍者枠というんですか、その中に含まれると考えてよろしいんでしょうか。

稲見政府参考人 委員御指摘のもの、あるいはいわゆる難民旅行証明書というようなものも、全部無国籍者扱いになります。

矢野分科員 そこで、今入管局長からパレスチナの方の数字がございましたけれども、外務省の説明によりますと、パレスチナのいわゆる難民とされる方は、二〇〇六年六月現在で四百三十九万六千人いらっしゃる。パレスチナ自治区、ヨルダン、シリア、レバノンと、厳密にパレスチナの人たちが各国に分散をして住んでおられる。特に、ヨルダンにおられるパレスチナの人たち百八十四万人については、これはヨルダンの国籍を取得できて、それらの人はヨルダンの旅券で渡航できると聞きました。残りのエリアの人たちは、日本政府が有効とみなす渡航証なりパレスチナ暫定自治政府発行の旅券を所持して来日している、こういう説明を受けましたけれども、このパレスチナの例に限れば、要するに、我が国がこの暫定自治政府を国家承認していないということから無国籍者枠でカウントされるという理解でいいんでしょうか。これは外務省なのか法務省なのか、ちょっと私はわかりませんけれども。

稲見政府参考人 御質問のパレスチナの方でございますが、パレスチナ暫定自治政府の発行する渡航文書、あるいは日本の在外公館が発行した渡航証明書、あるいは他国政府が発行する外国人旅券、これらによって入国された場合、これはもう委員御指摘のとおり無国籍者として原則として取り扱うということになります。

矢野分科員 ちなみに、この国会議事堂の近くに駐日パレスチナ常駐総代表部、いわゆるパレスチナ代表部というのがございますが、ここでお勤めの方々というのはどういう資格で在留されているんでしょうか。

稲見政府参考人 お答えいたします。

 御質問の方及びその御家族の方につきましては、法務大臣がその活動内容を個別に指定する特定活動という名称の在留資格がございますが、その在留資格で入国、在留を許可しております。

 その指定しております活動の具体的な内容でございますが、「駐日パレスチナ総代表部の職員又は当該職員と同一の世帯に属する家族の構成員としての活動」と規定しております。

 以上でございます。

矢野分科員 そこで冒頭の質問に返るわけですが、要するに、父母ともに無国籍者として日本に在留して、そこで子供が生まれた、そうすると、この国籍法の第二条三号の後段部分によってその子供さんは日本の国籍を取得できる。できるというのか付与するというのか、とにかく日本人になられるわけですね。そういう人、表現が的確かどうかわかりませんけれども、いわばパレスチナ系日本人という言葉を使っていいかどうかわかりませんが、そういう方が生まれるわけで、これは政府で把握されているかどうかわかりませんけれども、ざっとで結構ですので、何人ぐらいいらっしゃるかわかるものなのでしょうか。

寺田政府参考人 おっしゃる、パレスチナ系の方を御両親として日本で生まれて、日本の戸籍が編製されたということで市区町村から法務局に報告がありましたものは、現在までのところ十二人でございます。

矢野分科員 参考までに伺いますが、両親がパレスチナの方だといっても、先ほどちょっと質問の中で申し上げましたが、ヨルダンの方に避難されておられる方はヨルダンの国籍でヨルダンの旅券で日本に来られるわけですけれども、その場合、例えば父母の片方が無国籍で、もう片っ方がそういうヨルダンの枠といいますか旅券で日本に来られた、こういう夫婦の子供さんの場合は日本の国籍はもらえるんでしょうか。

寺田政府参考人 これは、一方の方がヨルダン国籍をお持ちだということであれば、先ほどの国籍法の二条三号の適用はございませんので、お子さんが出生によって日本国籍を取得するということはございません。

矢野分科員 そこで、国籍があるということは、国籍が付与されるというんですか、取得できるというか、ということは当然日本の戸籍があると思うんですけれども、この戸籍を作成するときの審査方法というのはどういうふうになっているのか。市町村は出生証明書の提出を受けて戸籍を作成すると思いますけれども、その際に父母が無国籍者であるということをどのように確認するのか。それから、ついでに重ねて、そういう戸籍の父母の欄には、そういうお父さんやお母さんはどのように記載されるのかということをちょっとまとめてお尋ねします。

寺田政府参考人 無国籍者を父母として日本で出生した子の出生届、これは非常に難しい問題がございますので、私どもは、市町村長から、その届け出を受理すべきかどうかについて管轄の法務局長に照会するという手続を用意いたしております。したがいまして、全部の件が法務局に上がってくるわけでございます。法務局でこれを受けまして、それから、本当に父母が無国籍者であるかどうかということを、委員も御指摘のとおり、いろいろな角度から調べるわけでございます。

 この場合は、単純にパスポート上あるいは外国人の登録上とか、いろいろな書類上無国籍者というようなことがあり得るかもしれません。しかしながら、そういうことだけで決めるわけでございませんで、それぞれの境遇をいろいろ調べまして、本当にその国の国籍上その国籍がないのかどうかということについて慎重な調査をいたします。

 その結果、やはりこれは国籍がどうしても規定上ないということで決まりました後は、日本国籍を取得するということで、出生届の父母の欄にはそのまま御両親のお名前をお書きして、出生届による戸籍の記載をするわけでございます。

矢野分科員 いろいろな角度から調査というか、間違いないかということをお調べになるということですが、そうすると、例えば法務局に上がった段階等々で、係の方がその父母の方と直接いわゆる面接のようなこともされて確認をされるんでしょうか。

寺田政府参考人 場合によってはそういうこともございます。

矢野分科員 ここでまた基本的なことを伺いますが、無国籍者の方に、日本で子供が生まれたからといって戸籍を作成しないと、何か滞在に不都合がある、あるいはふぐあいがあるのか。もしかすれば、親が無国籍者であれば生まれた子供には必ず戸籍を付与しなければならないとか、そのあたりはどういうふうになっているのでしょうか。

寺田政府参考人 まず、戸籍、国籍の観点から申し上げますと、先ほど申し上げましたように、これは国籍法は裁量の余地はございませんので、身分関係が先ほど申し上げた要件があれば、これは必ず日本国籍を付与するという形で戸籍を作成いたします。

矢野分科員 ということは、生まれた子供さんですから赤ちゃんでしょうから物は言えないんですけれども、では、その父母の方が望む望まないということに関係なく戸籍を作成しなければならないという理解でいいんでしょうか。

寺田政府参考人 これは、もともと出生届を出しに市町村においでにならなければこういうことは起きないわけでございますけれども、そういうことで出生届があれば、こちらの方といたしましては届けに従って戸籍を編製する、こういう扱いにしているわけでございます。

矢野分科員 わかりました。ありがとうございます。

 そうすると、それらの戸籍をもとにいろいろな身分関係の書類がつくられると思うんですけれども、そういう日本で戸籍をつくられた方で日本国のパスポートを取得している人もおられると聞きますけれども、何名ぐらいいらっしゃるのかということはわかるんでしょうか。

谷崎政府参考人 お答えいたします。

 旅券の発給においては、申請者が日本国籍を有するということは必要になっておりますけれども、その両親の国籍というのは問題にしておりません。また、我々の方の旅券申請書の中に両親の国籍を書く欄というのはございません。

 さらに、旅券の発行理由というデータを我々持っておりますけれども、その中にも両親についての情報というのは記録されていないということでございますので、今御質問にありました、無国籍者が日本国籍を取り、その人間がどれだけ旅券をとっているかというデータについては、我々把握するのが非常に困難な状況にございます。

矢野分科員 実は何人かいらっしゃるということは私は聞いておるんですけれども、これは要するに、例えば日本で生まれて戸籍がつくられてパスポートをつくるという作業なんですが、日本国籍を既に得た子ですから、出国するときにはやはり日本のパスポートをつくらなきゃいけない、こういう必要性からそういう申請になるのかどうかということ。外務省は把握されておられないということですけれども、理論上で結構ですから、ちょっと教えていただきたいと思います。

谷崎政府参考人 ただいま御質問の趣旨は、旅券発給の目的を把握しているのか、それに基づいて、ただいまの御質問の趣旨からしますと、パレスチナ等の地域に行くことが想定されるのかということだと思いますが、本件につきましては、平成元年に旅券法を改正いたしました。そのときに、一般旅券については原則数次旅券というのを発行するということになりまして、数次でございますので、その時々の目的というのは異なります。したがいまして、その段階で、旅券の渡航目的を記載することは平成元年からしていないということでございますので、我々の方からしますと、申請書の当該欄から旅行目的をあらかじめ把握するというのは困難な状況にございます。

矢野分科員 いや、私、お尋ねしたのはそういう意味じゃなくて、要するに、例えば、無国籍の父母の方がいらっしゃって、日本からパレスチナへ戻られる。そのときに、子供さんを連れて帰るわけですが、子供さんは既に日本の国籍を得ているわけですよね。ですから、今度出国するときには、その子供さんは一応日本国籍の人だから、御両親とパレスチナに帰るときでも日本の正規の旅券を取得して出るという形をとらなければならないのか。いやいや、もう別に、日本国籍があろうとパスポートがあろうと、無国籍の御両親と一緒で帰るということで、何も日本の有効な旅券は必要ないんですというのと、どっちになるのか、こういうことです。

稲見政府参考人 日本の方が、目的、理由のいかんを問わず、出国する場合には日本国の旅券が必要、それに私どもが出国の確認をさせていただく、こういうぐあいになっております。

矢野分科員 ありがとうございます。

 それで、実際に帰国をしたパレスチナ系日本人と私は勝手に言っていますけれども、そういう日本で国籍を得たパレスチナの方が、既に帰国しておられる方も数名いらっしゃると聞きますけれども、もし、この方々が海外でテロに巻き込まれたりした場合、具体的に言えば、そういういろいろな紛争が起きているわけですから、そういったものに巻き込まれたときに、これは、日本政府は、当然邦人保護という観点で何か手だてをされるのかどうかということをお聞きしたいと思います。

谷崎政府参考人 一般論で申し上げますと、日本人である以上は、在外公館として邦人保護の対象にしております。

 ただいま御質問のありました、本件の、日本旅券を有している、もともと無国籍の方で日本国籍を持った方がパレスチナ等に行った場合に、巻き込まれた場合というのは、我々の邦人保護の当然対象になります。渡航する段階であらかじめこの人間がその地域に行くというようなことはなかなか把握するのは難しい点がございますけれども、在外公館等で、その方が非常に危険な地域にいるということがわかった場合には、当然普通の日本邦人と同様な形での安全情報を提供するということを行うことになると思います。

矢野分科員 それからもう一点、これは今度逆の場合で、ちょっとお聞きづらい問題かもわかりませんが、今後は逆に、被害に巻き込まれるということではなくて、積極的、消極的を別にして、そういった紛争の一方の当事者になってしまった場合、日本政府としては、これまでそんな例がないと思いますけれども、何か手だてというものはお考えになっているのかどうか教えていただきたいと思います。

谷崎政府参考人 犯罪の類型によって我々の方の対応というのはおのずと変わると思いますが、幾つかの点で対応することになると思います。

 第一点は、領事業務的に申し上げますと、この人間がそういう犯罪にかかわったということでございますと、旅券法の中に規定がございまして、日本国の利益または公安を害する行為を行うおそれがあると認められる場合には、旅券の返納を命ずることができるということが書かれておりますので、個々具体的な事例がこの要件に該当する場合には返納を請求するということになると思います。

 また、事案によりましては、これは旅券の話ではございませんけれども、我が国の捜査当局からの要請に基づいて、この者の所在する国の政府またはその地域の関係当局に対して、その者の日本への引き渡しを要請することも理論上はあり得ると思います。

矢野分科員 ありがとうございます。

 それで、そういう紛争に遭うとか、しかけるとかいったこととは別に、そういった日本で国籍を得たパレスチナの方が現地に戻られて、要するに、どこの国かは別としても外国の方とまた結婚をされて、そこで家族を持たれて子供が生まれるという場合、この場合は、配偶者は別でしょうけれども、子供の方は原則日本国籍というものが自動的に与えられるのかどうかということを確認したいんですが。

寺田政府参考人 おっしゃるとおり、配偶者につきましては、自動的に国籍が与えられることはございませんけれども、お子様につきましては、先ほどの国籍法の二条の今度は一号でございますけれども、その根拠で与えられるということになると思います。

矢野分科員 このパレスチナの人たちの場合も含めて、もと無国籍者的な日本人の方というのは、今後一体どういうふうなぐあいでふえていって、どういうふうな形になっていくのか、コミュニティーをつくっていくのかということはわかりませんけれども、仮に現在二十人いらっしゃるといたしますと、例えば極端な話、十世代で一万人以上の日本人の人が誕生する計算になります。

 そのことだけをとらえてどうこう申し上げるつもりはありませんけれども、冒頭の国籍法の第二条は昭和二十五年の法律だと思いますけれども、さらにさかのぼれば、明治三十二年の旧国籍法第四条が初めて無国籍者の子に国籍を与えると書いた法律だったと思います。これはそもそも無国籍者の発生を防止しよう、こういうことでつくられたそうですけれども、そのオリジナルというのは、一八八九年に改正されたフランス民法典第八条二号だと言われています。

 そのフランスでも、無国籍者の人たちの扱いにつきましては二転三転をして、今はこの条項が復活しておりますけれども、長い間廃止されていた時期もあったように聞いております。さらに、平成六年の段階ですけれども、そもそも無国籍者の子供に国籍を与えないという国も、オランダとドイツ、オーストリア、この三カ国にはこういう規定がないそうであります。

 きのうも外務省の方とかなり議論をいたしましたが、無国籍あるいは無国籍者という言葉の概念、解釈については法によってさまざまなようでございまして、もちろん額面どおり、国がなくなって無国籍になる人もいると思います。近年も、トム・ハンクス主演の「ターミナル」という映画、これは、旅行中にクーデターで母国を失って、一時的にせよ行き場を失う人を主人公にした映画でしたけれども、そういう国を失う人の悲劇を避けるということはもちろんですが、一方で、例えばパレスチナの方々のように、代表部も日本にある、そして日本以外に生活の拠点となる場所があって、また小泉総理は平成十八年の七月に現地を訪問され、その前の年の平成十七年の五月にはアッバス大統領が我が国政府の招待で来日されている。

 そういった状況に対して、果たして、この国籍法の条文の立法趣旨というのは今日的なこの状況を想定していたか。はっきり申し上げて、ケースによっては、国家承認か否かという二者択一では立ち行かない状況に来ているんじゃないかと私は思っております。

 そこで、これまで政府及び法制審はこの問題について検討されてきたのか。大変悩ましい問題であることは承知で、今後どうするつもりかということをちょっとお尋ねしたいと思います。

寺田政府参考人 おっしゃるとおり、この無国籍者の扱いでございますけれども、委員も御指摘のとおり、無国籍者の前提となる国というのはどういうものかということに大きくかかわってくるわけで、普通に想定する無国籍者がいろいろな不都合があるので国籍を与えるという場面と、今、例に挙げられたパレスチナのような場合とは、やや様相を異にするのはおっしゃるとおりでございます。

 私どもも、どういうレベルに達すれば、それを国として扱い、そこの国民を国籍があるものとして扱うかということについては、なかなか難しいところでございますけれども、時代によっても、あるいは時がたつにつれて、同じケースについてもさまざまな変化が生ずるわけでございますので、十分、外務省等関係当局ともまた御相談をして、扱いについては慎重に検討してまいりたいと考えております。

矢野分科員 あえて言えば、この法律の定めのおかげで、出生届を出せば、望む望まぬを別としてと言えば言い過ぎかもしれませんが、自動的かつ簡便に国籍が取得できる人がある反面、戸籍どころか日本での在留許可をめぐって大変苦労されている外国の方もおります。さらに、我が国においては、外国籍を有する父母から生まれた子が、その父母の本国法によって父母の国籍を取得できない場合もあるように聞いております。この場合は、国籍法の第二条が適用されずに、子供は無国籍になってしまうけれども、第五条の手当てで改めて帰化申請することができるようになっているようですけれども、このことも含めて、国際情勢や世界の動向も踏まえつつ、そして人道的見地に配慮しながら、これらの諸課題といいますか、このテーマについて、しっかり論点整理を含めて、法務省としても、また外務省としてもお考えいただきたいな、こう思って、私の質疑を終わります。

 ありがとうございました。

森主査 これにて矢野隆司君の質疑は終了いたしました。

 次に、保坂展人君。

保坂(展)分科員 社民党の保坂展人です。

 法務省所管のこの分科会におきまして、委員会で三回ほど繰り返しお聞きをした裁判員制度広報費の問題について、主に裁判所から伺い、また法務大臣の所見も後ほど伺いたいと思います。

 まず、私ども予算審議に当たって、今、今年度予算におきまして、裁判所から、裁判員制度の広報関係費として十三億九千百万円の経費の要求がございます。これが現在審議中でございます。先ほど、お昼前から、とりあえず平成十七年、十八年の予算額、査定額は幾らだったんですかと。もう基本中の基本ですね、裁判所所管の裁判員制度広報関係費として平成十七年、十八年の予算額はそれぞれ幾らですかと。大体、他の省庁だと、まあ幾ら遅くても十分以内には連絡がありますが、結局、今に至るまで連絡をいただけないという大変おかしなことになっておりますが、お答えいただけるでしょうか。幾らだったんでしょうか。

小池最高裁判所長官代理者 委員から、昨晩以来、御依頼がございまして、私ども、現在の作業が専ら予算の執行の関係のことを念頭に置いておりまして、委員の御依頼の趣旨がその予算要求の資料ということに正しく理解をいたしませんで、申しわけございません、予算の要求の関係は主計課、執行の方は用度課ということでございまして、申しわけございませんでした。

保坂(展)分科員 これはちょっと、やはり予算委員会の分科会の議事録に残すのは大変恥ずかしい発言でございまして、昨年と一昨年の予算額が今言えないという役所はないわけですね。しかも、裁判所ですから。

 私がいただいた資料によると、平成十七年、十三億四千二百二十二万一千円、平成十八年、十三億五千二百十三万一千四百円、計二十六億九千四百三十五万二千四百円、このように把握していますが、間違いございませんか。

小池最高裁判所長官代理者 その総額については間違いございません。

保坂(展)分科員 間違いないということが言えるのに、今答弁できなかったというのはどういうわけですか。

小池最高裁判所長官代理者 その詳細のものと、それからあと執行の関係との連関についてという御趣旨ということでございまして、この点については、御趣旨に沿った準備を早急にさせていただきたいと存じます。

保坂(展)分科員 そうすると、この二十六億九千四百三十五万二千四百円がこの二カ年において予算要求されて、このとおり裁判所が預かった広報費としてあったということはわかりました。

 そして、本日、私、最高裁からきょう報告書が出るということで、スタッフも用意しまして、恐らく手押し車でいただくような量になるのかなと思っていたところ、こちらの厚さ三センチに満たないものが来たわけですね。こちらに私のファイルが二冊ありますけれども、これ以外に一冊あるんですけれども、すべてもういただいているものばかりなんですね。しかし、ここに記載をされている平成十七年度、十八年度の裁判員制度関係の広報費の総額は幾らになりますか。

小池最高裁判所長官代理者 この中に、総額につきましては、それぞれ、十七年度、十八年度、十一億四千万程度の金額でございますが、今回お出ししましたものは、先般来、予算委員会で、企画競争に基づく広報案件につきましていろいろ御指摘を得ましたので、そのものについて掲げてございます。そのほか、一般競争によるもので案件としては金額的に小さいものがございますが、そのものについてはこの中に入ってございません。その差でございます。

保坂(展)分科員 総額をこちらで計算すると、二十一億五千八百九十九万四千円になるんですね。二十一億余りです。先ほど申し上げたように、全体で二カ年で二十六億、まあ約二十七億円近いお金がある。そうすると、差し引き五億三千五百万円ぐらいの部分は、この報告書には載っていないんですね。その載っていないものは、例えばどういうものが載っていないんですか。

 私、先ほど質問予告で、百万円以上のものは全部こちら、以前に予算委員会の審議中にいただいた、主にこう使いましたと一覧に載っているというふうに聞いているんですね、百万円以上のものは。例えば平成十七年度だけで見ても、先ほどの予算額といただいた資料、タウンミーティング、メディアミックス、それを全部加算していきましても、二億円ぐらい少ないんですね。例えばどういう事業が抜けているんですか。

小池最高裁判所長官代理者 御指摘のように、十七年度を例にとりましても約二億ぐらいの開差があると存じます。まず、どのようなものがあるかにつきましては、ちょっと正確を期すために、確認をした上でまた御報告させていただきたいと思います。

 それからもう一つ、一般論として申し上げますと、これはかなりの開差がございますが、その予算額と実行額の差額につきましては、適正執行といいますか効率的執行に努めまして、その予算の科目ごとにまとめられた上で、例えば補正予算の減額修正の財源になったり、決算不用となったりするという仕組みになっております。こうした処理は、例えば今般、広報経費というのは最高裁の庁費という科目になっておるのが多うございますが、そういう科目ごとにされておりまして、今、その二億円ぐらいの開差が、それがどういう形になったかというのは、ちょっと明確な切り出しがされておらないという状況でございます。

保坂(展)分科員 ということは、残余の予算が例えば不用額として決算書に計上されて、翌年度予算のいわば前年度受け入れの剰余金という扱いになっているものもあると。その金額は言えますか。

小池最高裁判所長官代理者 今御説明申し上げましたように、仕組みとして、庁費とかあるいは下級の裁判庁費とか、そういう費目ごとになっておりますので、個別の切り出しということにはされておりません。ただ、減額修正とか、その枠の中で処理されているということでございます。

保坂(展)分科員 要するに、平成十七年度、要求したけれども使い切れなかった残余額というのはあったんですか、なかったんですか。

小池最高裁判所長官代理者 その点につきまして、確認をした上、明確な切り出し、予算の枠の中のことでございますので、冒頭申し上げましたけれども、当初の予算額、それから執行額、そこを突き合わせた上でまた整理して御報告申し上げたいと思います。

保坂(展)分科員 与野党の予算委員会各理事の皆様に御理解をいただいて、先週、こちら、五項目にわたる資料と説明の求めを出していただいています、予算委員会として。その中に、二のところで、裁判員制度広報費の事業について、契約、企画、会計にかかわる一切の資料と経緯の説明を求めたいと言ってきょうを迎えているわけです。ですから、これから調べますというのはいかにもおかしい。だから、これは、どういうふうに使ったのか明確に説明できないまま、平成十九年度予算もまた要求しているということになります。

 そこを指摘した上で、こちらの報告書にある二十一億円分、二十一億五千八百九十九万四千円分は、見るとすべて、さかのぼり契約だったりとか、契約の内容を履行した後契約をしている。つまり、契約日と契約書を作成した日はすべて違うんですね。よろしいですか。そういう扱いになっていますよ。確認させてください。

小池最高裁判所長官代理者 報告書にございますとおり、実際の記名押印をしたという契約成立の日と、そういうそごがあるということは御指摘のとおりでございます。

保坂(展)分科員 私は、裁判所の権威や信頼というものはいささかも揺らいではならないというふうに思っていますし、全国の裁判官の皆さんも、あるいは司法に救済の道を期待する多くの国民の皆さんも、最高裁判所の経理というのはあらゆる国の機関の中でも厳密かつ精緻に行われているという信頼があるものと思ってきました。今もそう思いたいです。しかし、二十一億円もの費用がすべて、期日が違う、さかのぼりだった、あるいは事後的に、契約の日と契約を実際に記名押印した日が違う、これが明らかになりました。

 そこで伺いますけれども、最高裁判所の他の例えば営繕など、どこどこの裁判所の庁舎をつくった、こういう契約についても同様のことがあったんですか。つまり、それがすべてそういうふうな、いわば最高裁判所なりのやり方でやっていたのがこの広報費にたまたま反映したということであれば、全部日が違っているというのも納得できるわけですが、そこは心配ですが、いかがですか。

小池最高裁判所長官代理者 今般御報告申し上げましたのは、裁判員広報の中でも企画競争に基づくものということでございます。

 先般来申し上げますように、その企画競争というのは大変難しゅうございまして、企画の中身を固める、そして仕様書が定まってから積算をしていくというのが大変難しゅうございます。なるべく予算額を膨らまさないようにということでいろいろ懸命にやりましたところ、契約の締結が後ろに行ったというような状況で、このような形になっております。(保坂(展)分科員「ほかはどうですか」と呼ぶ)

 ほかのものにつきましては、現時点で調査をいたしておりませんので何とも申し上げられませんけれども、私どもとしては、現在、随意契約から一般競争への移行、それから適正執行に努めるということについては総力を挙げてやっております。そういう状況であるということを御説明申し上げたいと存じます。

保坂(展)分科員 小池局長、そうすると、他の営繕などについても、調べてみないとわからないということなんですか。

小池最高裁判所長官代理者 私ども、適正執行に努めております。ただ、今般申し上げました日付と契約成立日の違いというものの中にもいろいろございます。明らかに半年以上というか、相当期間さかのぼるものもございますけれども、運用としてどの時点にとるかというような微細なものもございまして、成立日とその違いというものについてのとらえ方によるということを申し上げたいわけでございます。

保坂(展)分科員 答弁がかみ合わないんですけれども。要するに、私は、裁判所の裁判員制度の広報費についてお尋ねをし、資料をいただいて聞いています。今、局長の答弁はそれについてです。そうではなくて、他の営繕とかたくさんありますね、そういうものについては大丈夫なんでしょうねということについて、調べてみないとわからないんですかと言っているので、それははっきり答えてください。

小池最高裁判所長官代理者 適正執行に努めておりまして、そういうふうに信じておりますけれども、一個一個、では皆無かと言われますと、今のこの時点で断言的なことは申し上げられない、こういう趣旨でございます。

保坂(展)分科員 私は、何か原因があると思うんですね。裁判員制度の広報費がすべて事後的になっていた、考えられないんですが。

 例えばこの報告書、そんな大部なものではないんですけれども、契約担当者が予定価格と照らし合わせて業者の費用が適正かどうかを厳密に積算していたという表記がございます。ところが、タウンミーティング事業には予定価格はないんですね。御存じでしたか。予定価格がないのに、どうやって積算、予定価格と照らし合わせたんでしょうか。

小池最高裁判所長官代理者 予定価格はございます。公表申し上げていないだけでございます。

保坂(展)分科員 インターネットのホームページで出てくるものもみんな違うんですが、タウンミーティングの予定価格というインターネット上の表示だと、ほかのものは全部あるんですよ、六億円のものも。しかし、このタウンミーティング事業については予価がないんですよ。どうしてこれだけ公表しないんですか。

小池最高裁判所長官代理者 予定価格を公表するものには一定のルールがございます。いわば一回限りということでその予定価格ということが、連続的なものですと、それで次の契約の価格というものを推知させますので、このタウンミーティングについては連続的なものがありますので、そういう形にさせていただいているということでございます。

保坂(展)分科員 第一回目のタウンミーティングなんですが、結局、小池局長が就任される前の前局長時代の十二月二十八日ころか一月の上旬ころに契約をされたと、ころという話になっているんですね。そこで契約書が実際に作成された、しかし、日付はずっと前の九月三十日だったということなんです。

 そこで伺うんですが、これらの契約というのは、広告代理店電通と裁判所のどなたとどなたの間で契約が成立したという意思疎通が図られて、幾つもの事業が始まり出すわけですね。だれとだれが、何の覚書も受注書や発注書もなくスタートしてしまったんでしょうか。私がいただいているのは、電通に最高裁判所からあてた一通のファクスだけです。それ以外に何もないんですか。どういう方法で、業者と裁判所の側がこういう事業をスタートさせますよという合意を得たんですか。その方法は何ですか。文書でなければ口頭なんですか。それとも、それこそアイコンタクトなんですか。

小池最高裁判所長官代理者 書面という形ではございません。それで、どういう形でということになりますと、一連の準備行為の作業、それから一部履行という形に順次移っていった、こういうことでございます。

保坂(展)分科員 刑事局長に伺いますが、契約について今経理局長から答弁いただきました。私が聞いているのは、企画競争が行われた、そして契約に至らない前からずっと準備が始まったわけですね。七月の一日には、最高裁判所の名前で、こういった最高裁判所のクレジットが入った裁判員制度全国フォーラム、これは七月一日ですよ、はるか以前ですね、こういうものが出されているわけですね。これは裁判所のどなたと代理店のどなたが、どの部署の方がオーケーを交わして、というのは、これは中身は代理店の企画書なんです、見てみると。そうすると、一緒につくったんでしょう。だれとだれがやっているんですか、明快に答えてください。

小川最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 御指摘の平成十七年七月一日付の企画案書ですが、これは、電通の提案書に基づきまして、各裁判所、各地方裁判所に企画の大枠を理解してもらうために便宜作成したものでございます。それで、電通の提案内容を一部変更したほかは、基本的には提案内容のまま、表紙のクレジットを最高裁判所というふうにして、そのまま使ったということでございます。この段階で、企画内容が相当具体化していたという状況にはございませんでした。(保坂(展)分科員「具体化していますよ、これ」と呼ぶ)それを他の地方裁判所に大枠を御理解していただくためにちょっと使ったということなんです。

 それで、例えば全国の五十カ所の開催日と会場につきましても、その後、七月一日付の記載のものから大幅に変更になっておりまして、具体的に申しますと、二十七開催地で会場が……(保坂(展)分科員「それはいいです、細かくは」と呼ぶ)はい、そうでございますか。

保坂(展)分科員 このパンフレットは、それでは最高裁判所のものだということで確認していいですね。それが一点。

 二点目は、結局、契約はしていないわけですね。契約を実際したのは十二月二十八日以降なわけですよね。だけれども、もう実質的に七月一日には最高裁判所、高等裁判所、地方裁判所で、いわゆる司法行政実務の組織体としてこういうものが各地に行き、そして、各地域におけるパネリストを選出したりするわけですよね。裁判所も、いわばこの企画を成功させるために奔走されたと思うんですね、初めてのことであるので。そうやって事実上スタートした。それはもう全国の裁判所においてわかっていたということですね、七月一日以降は。

 とすると、その契約を広告代理店の相手方と意思疎通をして、文書ではなくて口頭でやりましょうね、こうやりますよというふうに確認した責任者、裁判所側の責任者はだれですか。

小川最高裁判所長官代理者 お答えします。

 最終的な責任者は刑事局長でございますが、具体的にどういう担当者がそういう意思疎通をしたかというのは今ちょっとわかりません。申しわけございません。

保坂(展)分科員 それはだめですね。きょうは本当は総務局長にも来ていただきたいということで申し上げていたんですが、お二人で十分だという話で、お二人で、経理局長さんと刑事局長さんでしっかり答えていただくということで来ていただいているわけですね。

 だってこれは、契約書が事後的につくられているということ自体、非常にこれはよくないことであって、それは小池局長も認めているとおりで、それを、形式上は刑事局長だったにしても、これは総務局あるいはどこの人が、つまり、実態として代理店側と、ゴーサインを出して、そしてこれだけの規模で走らせるということについて、いいですよと承認をしなければ動かないですね。それはだれなんですか。小池局長、答えられますか。

小池最高裁判所長官代理者 準備行為から一部履行行為という形に順次移っていった。それで、前にも御指摘があったと思いますし、本日の委員の御指摘にもございますように、覚書なりそういったものを取り交わせばよかったと存じますが、今般に当たりましては、そういう形で順次進んでいった。

 それから、これは私ども、非常にミーティングの日が限られております。準備がなかなか難しいということで、本来でしたら契約があって動くべきということですが、やはり事業のそういうものを成功したいということで、いわば会計サイドからのそういう問題があるということを企画担当の方にはお伝えしていませんでした。その意味では、企画の方ではそういう意識がなく、むしろ準備行為と一部履行行為と混然一体とした形で進めていったものと理解しております。

保坂(展)分科員 時間がないので、刑事局長、だれですか。形式上は刑事局長なんですが、実際上、事実上というか、実務上の責任者はだれですか。

小川最高裁判所長官代理者 責任者は刑事局長でございます。それで、前にも御答弁したかもしれませんが、刑事局のスタッフのほかにも総務局などのスタッフも入っておりますので、それで、個々の案件の実行、実務担当者というのはそれぞれに応じてかわりますので、今ちょっとだれというふうには、ちょっと申しわけございません。

保坂(展)分科員 以上についても、先週の時点で、こちらの予算委員会の委員長あてに、説明と資料をお願いしたい、そして、それらについてさらに明細を先週説明して、このことも予告をしています。

 重要なことについてお答えがいただけない。そして、総額、平成十七年度でも表に出ていないものについて二億円余り。その二億円余りのうち、予算を使わなかったものもあるのでしょうと。しかし、その明細については今たちどころに答弁することはできない、こういうことがわかりました。

 さらに、これ、しっかり全部出していただかなければいけないということをぜひお求めいただきたいと思います。主査にお願いします。

森主査 ただいまの件につきましては、最高裁判所において適切に措置していただくように主査から要請いたします。

保坂(展)分科員 長勢法務大臣に、法務省としても裁判員制度の広報をやっておられます。ビデオあるいはタウンミーティングもありました。なかなか裁判員制度の広報のあり方というのは、これが国民の不信を買うようなことがやはりあってはならないですね。そして、そのことにやはり私たちの税金がしっかり使われているんだと。制度自身が国民に対して、ある種、何日間、三日間になるんでしょうか、五日間になるんでしょうか、それを拘束して参加をしていただくという意義をPRするという宣伝事業ですから、これは裁判所とも、法務省とも、あるいは弁護士会ともよく相談をしていただいて、今のやり方で果たしていいんだろうか。

 なぜ裁判員制度といって、四六時中やるものが、一年じゅうやるものが、この十月の一日から一月の終わりまで集中豪雨的に予算執行されて、また要求されるという形を二年やっているわけですが、見直しも含めて、ちょっと踏み込んだお考えを聞かせていただきたいなと思います。

長勢国務大臣 広報のあり方をやはり考え直すところがあるのではないかとは思っております。

 先生、意義とかということも大事なんですけれども、差し当たり大事なことは、指名されたときに気持ちよく御参加いただくということがなければ、これはせっかく裁判員制度を始めても機能しないということになりかねませんので、そのことを重点に置いて広報というものを考えなきゃいかぬのじゃないかなと思っておりまして、そうすると、今話題になっていますフォーラムとかこういうやり方というのが果たして、一遍やったって千人かそこら集まる程度ですよね、そういうやり方だけでいいのかとか、今検討させておりますが、またお知恵もあればおかりいたしたいと思います。

保坂(展)分科員 今回、ちょっと不名誉なことに、一番の発端は、全国五十カ所のフォーラムの中で、私たちが国会で昨年、いわゆる五千円の謝礼問題ということで内閣府のタウンミーティングをめぐって議論をしていたときに、そのころに五千円を払っていわば観客を呼んでいたという事態が発覚をしたということ。これは法務省が実施したものでも一カ所ございます。これは似たような企画を、裁判所と法務省と中身は、かなり企画内容が違うんですが、これでいいのか。それから、宣伝の仕方もこれでいいのか。実際、裁判員制度が知られていくにつれて拒否感、私は御免したいなという方もふえているという現実があります。その点、いかがでしょうか。

長勢国務大臣 御指摘の点は、全くないとは言えないんじゃないかなと私も思っています。極めて意義の深い、大事な制度として設計をして、制度もできたんですけれども、やはり、どうも国民の皆さんは、アメリカの陪審制度とイメージがダブる部分があって、一種の拒否感が比較的ある。そこへ非常に難しい話をするものですから、どんどん引いていくという雰囲気が出ているのではないかという不安を私は少し持っている。

 むしろ、表現はおかしいんですけれども、もっと気楽に、行っても大丈夫なんだよと、ちょっと言い過ぎですけれども、というぐらいの話で御理解いただくようにしていくべきではないかなと私個人は思っていますが、ちょっと私の言ったことは少し乱暴なところがあることは重々承知をしていますので、そういうことも含めて、裁判所、日弁連さんとも、直せるところは直して、より効果的な広報のあり方を考えていきたいと思っています。

保坂(展)分科員 最後に、先ほど主査からお求めがございました、小池経理局長に確認をしたいんですね。

 平成十七年度、十八年度、こうして予算要求をされた裁判員制度広報費について、相当部分、こう使いましたというのをいただきましたが、いまだにいただいていない部分がございます。それは、十七年に限れば二億円余りわからない。翌年も、今執行中ですけれども、わからないものがある。それはすべて、こういうふうにやっています、予算要求した額はこのように、つまり、不明点が二億ではなくて、全部こうなっていますというふうに説明していただけますか。これは速やかに出していただかないと、八割ぐらい出たけれども、二割わからなかったじゃ、これは済まないですね。いかがですか。

小池最高裁判所長官代理者 お求めの趣旨は十分御理解いたしました。確認した上で、そういう準備を進めさせていただきます。

保坂(展)分科員 では、終わります。

森主査 これにて保坂展人君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして法務省所管についての質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

森主査 次に、外務省所管について政府から説明を聴取いたします。麻生外務大臣。

麻生国務大臣 平成十九年度外務省所管予算案について、概要を説明させていただきます。

 平成十九年度一般会計予算において、外務省は六千七百九億二千七百万円を計上いたしております。これを前年度と比較いたしますと、マイナス二・九%となっております。また、このうち、ODA関連予算は、外務省所管分として、対前年度比マイナス四・〇%の四千五百四十三億五千九百万円となっております。

 外交は、中長期の観点から、我が国の国益を確保することを目的とするものであります。今日、この目的を我が国単独で達成することは困難であり、関係国や国際機関等との協力を安定的に継続することが不可欠だと存じます。このような考え方に基づきまして、平成十九年度につきましては、以下の四つの柱から成る重点外交政策を踏まえて、予算案を作成いたしております。

 第一の柱は、日本外交の基礎体力の強化であります。

 まず、外交実施体制の強化に向けて、外務本省及び在外公館の体制強化や、NGO、地方自治体との連携の強化等を図ります。特に、外務省の定員・機構につきましては、定員合理化の努力を一層進めると同時に、主張する外交に必要な人員、体制を整えるべく、定員の五十一人の純増及び六大使館の新設を図ります。

 また、国際貢献等を担う人材の層を拡充するために、平和構築分野の人材育成や、国際機関における邦人職員の増強に必要な予算を計上させていただいております。

 さらに、外交の重要な基盤であります情報収集・分析体制の強化に引き続き取り組む一方、我が方の情報防護体制の強化に向け、不断の努力を行ってまいります。

 第二の柱は、国民の安全の確保と繁栄の促進であります。

 まず、日本国民の安全、安心を確保するために、日米同盟を基軸とする安全保障政策に係る予算や、在留邦人へのサービス向上及び邦人保護体制の強化といった領事政策に係る予算を計上させていただいております。

 また、我が国が経済成長を達成していくために、EPA戦略の推進やエネルギーの安定供給確保のための取り組みを強化してまいります。

 第三の柱は、アジア外交の強化と望ましい国際環境の確保であります。

 まず、地域協力、青少年交流等を通じて、近隣アジア諸国との関係強化を積極的に推進していきます。同時に、アジアとの連携を礎として、国際協力の幅の拡大を図ってまいります。

 また、国際社会で主要な責任を担う一員として、テロ対策、人間の安全保障等のグローバルな課題に対し、ODA等を活用して積極的に取り組んでまいります。

 第四の柱は、日本の魅力とメッセージの積極発信であります。

 外交を行う上で、我が国に対するよいイメージが浸透しているかどうかは極めて重要であります。さまざまなメディアを通じて攻めの広報を行うとともに、伝統的な日本文化のみならず、ポップカルチャーをも活用した文化外交を積極的に展開していきたいと考えております。

 以上が、平成十九年度外務省所管予算案の概要であります。よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。

 なお、詳細につきましては、お手元に「国会に対する予算説明」を配付させていただきました。主査におかれましては、これが会議録に掲載されますようお取り計らいをお願い申し上げます。

森主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま麻生外務大臣から申し出がありましたとおり、外務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

森主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

森主査 以上をもちまして外務省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

森主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高橋千鶴子君。

高橋分科員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 本日は、主に日豪のFTA、EPA問題に関連してお伺いしたいと思います。

 初めに、農水省が、二十六日、日本がWTOやEPAなどの国際交渉で関税などの農産物の国境措置を全面撤廃した場合、国内の農業生産額が約四割に当たる三兆六千億円減るとの試算を経済財政諮問会議の作業部会に発表したと報道されました。二十七日の農業新聞の一面に、食料自給率は一二%になる、この見出しが躍り、大変衝撃を受けました。

 まず、農林水産省に伺いますが、今回の試算がどういう背景でされたのか、また、その数字の根拠について伺います。

内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の試算は、昨年十一月の経済財政諮問会議におきまして、EPAの推進の是非についての議論に関連して、国境措置を撤廃した場合の国内農業への影響に関する試算を早急に公表すべきとの要請があったことから作成したものでございます。

 この試算は、一定の前提を置いて行ったものでございます。具体的には、すべての国に対し、すべての農産物、農産物加工品等についての国境措置を撤廃する、何らの追加的な対策を行わない、国内の農産物需要量は増加しない、我が国の輸入増大が世界の農産物需給、価格に影響を与えないなどの前提を置いて、我が国の農産物や農産物加工品等の品質、価格、輸出国の事情等を詳細に分析し、品目ごとに影響の程度を積み上げるという考え方で作成したものでございます。

高橋分科員 そこで、その試算の中身を見ますと、例えば、対象品目の総合で七割の減だ、甘味資源作物などは一〇〇%の減、これは製糖工場など、生産と加工が一体となっている産業は壊滅であろうと思われます。北海道、沖縄はもちろんのこと、地域全体がもたないところも出てくるのではないかと思います。関連産業九兆円との試算もございますが、これは産業連関表に基づく単純計算にすぎないので、影響はもっとあるのではないか、大きさははかり知れないのではないかという印象があります。もちろん、農業一産業の問題ではないと考えます。

 そこで、麻生大臣に、こうした影響について率直に感想を伺いたいと思います。

麻生国務大臣 まず最初に、御指摘のありました試算につきましては、今述べておられたとおり、すべての農産物の関税を全面的に撤廃した場合の数値というように承知をいたしております。全面的に撤廃したなんという例はありませんから、そういった話で、やはりこの種の話はある程度悲観的に立てないかぬということで全面撤廃というような例を引かれて、その前提として書かれたのだと思っております。

 EPAの交渉をいろいろこれまでやってきておりますけれども、日本の食料安全保障を確保して、また、日本の農林水産業が今構造改革などの努力をしておられますけれども、そういったものに悪影響を与えないように、幾ら農業改革をやったってこれじゃお話にならぬというような感じで農民の労働意欲が阻害される、減退するというようなことにはならないようにやらねばならぬところで、十分に留意をしてきたところでもあります。

 今後とも、このEPAの交渉に当たりまして、食料自給率への影響とか、また、国内の農業、日本の農業に与えます影響というものを十分踏まえて、今ある程度農産物の輸出もいろいろな形で始まっております、日本の農産物は高いけれども、うまい、安全、そしてきれい等々、いろいろな評価も出てきておりますので、そういった意味では、攻めるべきは攻め、守るべきは守るとの姿勢で、日本としての最大限の利益というものを確保できますよう、国益を確保できますよう、政府としては一体となって交渉を進めてまいる、これが基本的な姿勢であります。

高橋分科員 今のお答えですけれども、全面撤廃した場合は非常に悲観的な想定になるだろうというふうな前提のもとにお話をされたと思うんですけれども、これは、経済財政諮問会議の中から、全面撤廃した場合の試算を出せと言われて農水省が示したわけですから、それが念頭にあるということはやはり否めないと思うんですね。

 ですから、国内の影響がないように、最大限国益を守りとおっしゃいましたけれども、逆に言うと、私が聞いたことは、もし仮に全面撤廃などということがあったら農業は守れないんだということになるかと思うんですが、その点をもう一度。

麻生国務大臣 全面撤廃を仮にいたしました場合、これは世界じゅう皆するということになろうと思いますが、アメリカは、農業輸出補助金等々、膨大な金を投入しておりますので、そういったものも全部なくなるという前提になりますと、これはアメリカの農業も極めて難しいことになるというのははっきりいたしておると思っております。

 そういう意味では、日本だけが撤廃してほかの国が撤廃しないなんということは交渉じゃございませんので、ほかの国もみんなそこそこ農業問題というのは、豪州でもアメリカでも、もちろんヨーロッパの国々も皆抱えておりますので、自国のこの部分はいいけれどもこの部分は絶対だめというのはみんなありますので、そういったものは、いわゆる通称ガッチャマンと言うんですけれども、ガットにずっといるやつのことをガッチャマンと言うんですが、そればかりやっているのが外務省にも何十人もおりますけれども、そういうのが長い間積み上げてきた話でありますので、丸々なくなっちゃうということは、とてもじゃないけれどもということが現実かと存じます。

高橋分科員 よろしいかと思います。

 それで、この試算はほとんどあり得ない試算だろう、諸外国との関係もこれありということだったと思うんですけれども、ただ、あえてこういう問題が提起をされているということに、非常に私は危機感を持っております。国会での論議や省庁の方針の枠を超えた、いわゆる経済界、学識経験者らのまとめた案が、経済財政諮問会議ですので、いずれ閣議決定となり、財政運営全般を縛り、この国のあり方を決めてしまう、そういう成り立ちはやはりおかしいのではないかと私は強く指摘をしたいと思っているんです。

 そこで、内閣府にも伺いたいと思うのですが、経済財政諮問会議は、EPA・農業問題を、金融問題と並んで二つワーキンググループを設置したわけですけれども、一体、諮問会議において農業問題がどういう位置づけなのか、また、ともかくスピードという議論が聞こえておりますが、いつまでに何を決めようとしているのか伺います。

梅溪政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国の潜在成長率を高めていくためには、グローバル化のメリットを最大限活用する国内体制づくりが必要であると考えております。このため、経済財政諮問会議令に基づき、平成十八年十一月二日の経済財政諮問会議において、グローバル化改革専門調査会が同会議のもとに設置されることが決定され、EPA、FTA、農業及び金融資本市場について、課題の整理と具体策の検討を行っていくこととされました。

 さらに、同専門調査会では、これらの専門的事項の効率的な調査に資するため、EPA・農業ワーキンググループを設置して調査を進めているところでございます。

 なお、グローバル化改革専門調査会は、ワーキンググループによる調査を踏まえつつ、本年春までに、経済財政諮問会議に対して中間的な報告を行うことといたしております。

高橋分科員 本年春までに中間的な報告というお話でしたけれども、かなり踏み込んだ議論がされているのではないかということで、先ほど述べた危惧をしているというところに戻るんですけれども、そこで私は、農水省がどういうスタンスに立つのかが今問われているのではないかと思っています。

 内閣府が昨年十二月に発表した、食料の供給に関する特別世論調査、外国産より高くても、食料はコストを引き下げながらできるだけ国内でつくる方がよいとする人が四二・三%。六年前より三・九ポイントふえておりますが、外国産より高くても、少なくとも主食となる食糧は国内でとする人は四四・五%で、合わせると八六・八%に上っております。

 松岡大臣も、昨日の記者会見で、こうした世論調査を示しながら食料安保という観点を強調され、国境措置は日本だけではなくどこの国でもやられていると主張をされているところです。

 私は、この農水省の立場は基本的には後押ししたい、もっと頑張れと言いたいと思っております。しかし、問題は、交渉入りを既に決めているオーストラリアとの協定、これが今後の行方を占うかぎになるのではないかと思っているんです。オーストラリアは、比較にならない輸出大国であります。完全自由化へ大きな一歩を踏み出す局面となるのは間違いないと思いますが、外務省に、この日豪EPAに対しての考えを伺いたいと思います。

麻生国務大臣 外務省としてどういう態度でこの日豪EPAに臨むかという御質問だと存じますけれども、基本的には、豪州というのは、日本と基本的な価値観、いわゆる法の支配とか人権とか、よく私どもが申し上げる共通の価値観を持っております国として戦略的な関係は強化をしていかねばならぬところだと思っております。そういった意味では、このEPAというのは、仮に何らかの形で双方妥協できるところで結果として一定の合意ができれば、それはそれなりのメリットがあろうと存じております。

 しかし、私どもも、いろいろ問題でありますというのは最初からはっきりわかっておりますので、この間予備交渉をするときも、我々は非常にセンシティブな問題を抱えておるということで、この交渉でセンシティブという単語を十六回使っておると思いますが、向こうはもうわかっておると言うぐらい、これが一番問題というのをやたら強調しておりますので、向こう側も十分にわかっておると思っております。

 ただ、向こう側も、例えば関税が仮に自由化されますと、あそこにあります自動車工場などというものは、日本から輸出した方が安いということになって閉鎖に追い込まれかねないというような問題を抱えておりますので、それは同時に大量の失業者を意味します。それは、豪州側としても攻めばかりではないということがはっきりしておりますので、そういったところは双方の利益、国益に沿わなければ意味がありませんので、そういった意味では、やれるところ、やれないところ、私どもははっきりしておりますので、そこらのところはきっちり申し上げてきた、今後ともその姿勢は変わらないところだと思っております。

高橋分科員 私も、〇四年に農林水産委員会の視察でケアンズ・グループを訪問しようということになりまして、オーストラリアやニュージーランド、タイなどを訪問する機会を得ました。オーストラリアは、国土は日本の二十倍、人口は七分の一という状況で、まさにあり余る資源がある中で、食料自給率が二三〇%、だから、食料を輸出したい、どんどん拡大したいと思うのは当然のことなんだろうなと思ったわけです。

 そして同時に、では日本はどうかというと、自給率が四割、国民の食料を四割しか賄えないような状態で、また、資源を持たない、その国がやはり対等にテーブルに着くというのはかなり無謀なのではないか、こういう印象を持っているわけです。

 それで、日豪のEPAについては、衆参の農林水産委員会の決議もあり、松岡大臣が、米、小麦、牛肉、乳製品、砂糖など重要品目については除外または再協議の対象となるよう交渉すると主張されてきたと思います。ただ、これらの品目は、オーストラリアにとっても大変関心の高い品目として一致していると思うんですね。特に砂糖などはアメリカとのEPAでは除外された、そういうふうないろいろな問題があって、これらを抜きにした交渉は考えにくいとなってしまうのではないかなという危惧がございますけれども、その点、いかがでしょうか。農水省に。

原口政府参考人 お答え申し上げます。

 豪州から輸入されます農産物の多くは、我が国農業にとって重要な品目であります。したがいまして、仮に日豪EPAによりこれらの品目が関税撤廃されるということになれば、我が国の農業に大きな影響が及ぶと認識してございます。

 日豪EPAにおきましては、政府間共同研究の報告書がまとめられております。その中で、EPA交渉が開始されれば、段階的削減のみならず、除外及び再協議を含むすべての柔軟性の選択肢を用いられ得るという枠組みが取りまとめられたところであります。

 豪州との交渉に当たりましては、これを土台として、国内農業への影響を十分踏まえ、守るべきものはしっかりと守るという方針のもとに取り組んでまいりたいというふうに考えております。

高橋分科員 今の表現は、柔軟な対応ということがよく言われているんですけれども、いわゆる日本側が今言っている除外だとかそういうことも含めて、一定の合意が得られているという意味でしょうか。

原口政府参考人 EPAの交渉においてどのような措置を講ずるかという選択肢の中に、段階的削減だけではなくて、まさにその除外なり再協議というものが選択肢としてあるというふうに理解しております。

高橋分科員 ありがとうございます。これ以上は、交渉事だときっと言われるでしょうから。

 そこで、昨年十二月に出された日豪経済関係強化のための共同研究、この最終報告書がありますけれども、三十二パラグラフの中で、「EPA/FTAは、食料貿易の関係を強化することに寄与し、世界的に食料供給不足が生じた場合も含め、日本が食料安全保障の目的を実現することに資する。」と書き込まれております。

 これは、今後地球温暖化など、世界的な食料危機が叫ばれる中で、オーストラリアが日本の食料安定供給を保障するという意味だろうか。非常に考えにくい提案ですけれども、伺いたいと思います。

原口政府参考人 国民に対する食料の安定的な供給、これにつきましては、国内生産の増大を図るということを基本にいたしまして、これに輸入と備蓄を適切に組み合わせるということが重要であるというふうに考えてございます。

 このような観点から、共同研究におきましては、食料供給に関する日豪間の関係を強化し、その安定性と信頼性を高める措置といたしまして、例えば我が国への農産物の輸出を禁止または制限するような措置をとらないとか、輸出税の禁止などを検討することが有益であるというふうにその報告書の中で結論づけられたところでございます。

 今後の交渉におきましては、こういう共同研究の成果というものを十分活用いたしまして、我が国の国内農業への影響なり食料供給への影響というものを十分踏まえて検討していきたいというふうに考えております。

高橋分科員 これはかなり思い切った表現だと思うんですね。過去にこういうことがあったのかということもあわせて聞きたいんですけれども、オーストラリアは国土の大部分が砂漠の国であり、干ばつに悩まされてきた国でもあります。年間降雨量六百ミリメートル以下の地域が国土面積の八割を占める、五割の地域が三百ミリ以下と聞いております。やはり安定的ではないということが特にあると思うんですね。

 そうすると、例えば二〇〇〇年以降で、米が最大とれた年は何年で、幾らだったか。それに対して、最少だった年は何年で、幾らか。これをちょっと示していただきたい。それで一体、水の問題とか、あるいは不作のときとか、それも含めて食料を確保する、そこまで踏み込んでいるんだろうか、伺いたいと思います。

佐藤政府参考人 オーストラリアにおきます米の生産量のお問い合わせでございます。

 私どもの持っております統計データによれば、二〇〇〇年以降で一番米がとれた年、百二十六万トン、これは二〇〇〇年四月から二〇〇一年三月までの穀物年度でございます。それから、最も少なかった年、二十三万トン、これは二〇〇四年、二〇〇五年にまたがります穀物年度で二十三万トンという数字がございます。

 なお、今シーズンでございます。これはまだ収穫が始まった時期だというふうに承知しておりますけれども、現時点の見込みといたしまして九万トン、前年度比約九割減、深刻な干ばつの影響であるというふうに言われているところでございます。

高橋分科員 今年度の見込みが九万トン、二〇〇〇年が百二十六万トンということで、大変に振り幅が大きいわけですよね。これは小麦についても同じようなデータがあるかと思います。そういう中で、安定供給を約束するというのはやはり言い過ぎだろうと思うんですね。

 では、それは供給できないときはよそから持ってきてでも供給すると言っているのか、そういうことになるかと思うんですよね。どうなんでしょうか。

原口政府参考人 農産物の貿易につきましては、基本的には民間取引も多うございまして、食料の安定供給としてどのような措置がとれるかということは、まさに今後交渉の中で検討していくことだと思っております。

 ただ、報告書の中でありましたように、その措置としましては、先ほど申しましたように、例えば豪州側が輸出制限的な措置をとらないとか、あと、例えば供給不足時にあらかじめ連絡調整なり協議の仕組みを設けるとかいうようなことは考えられるのではないかということで、共同研究報告書の中でこの食料の安定供給について一項を設けて記載しているところでございます。

高橋分科員 この点は、やはり納得のいく答えは得られないと思うんですね。

 いろいろなお話を伺う中で、例えば水を輸入するんじゃないかとか、海の水を使うんじゃないかとか、あるいはいざというときはよそから輸入するんじゃないかとか、いろいろなことが言われているわけですけれども、あるいはオーストラリアで足りない場合は、その後に控えている日中、日米、そういう関係もあるのかなと。いずれにしても、私は、こうした記述が盛り込まれたことは、やはり外国頼みの食料安保という新たな段階に日本が移行するのではないかと非常に強い危惧を持たざるを得ない。これは指摘にとどめたいと思います。

 そこで、農水省が二十六日に出した影響試算の資料の中に、こういう記述があります。「意欲ある農業者や優良な農地等の生産資源が現に存在し、国内で十分に農業生産を行えるにもかかわらず、それを放棄し、あえて特定の農産物輸出国に国民の食料の大半を委ねている国はない。」この認識は非常に重要であり、私も共感できます。あえてこうした書き込みをした農水省の決意を伺いたいと思います。

内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども、国民へ食料を安定的に供給するというのは、国の重要な責務と考えております。その場合は、当然国内の生産を基本とし、それに輸入と備蓄を組み合わせていくという基本的な考え方で行っているところから、今委員が言及されました記述については、その考え方から当然出てくることでございます。

高橋分科員 ぜひその立場を堅持していただきたいと思うんですね。

 では、構造改革を進めて、農水省の言う意欲と能力のある担い手に七割から八割の土地を集中する、支援策も集中するということをやっていくとしたとして、農水省が描く農業構造というのが、いわゆる完全自由化と見合うのだろうか。関税撤廃されてもやっていける、国際競争力のある農家とは、一体どういう農家なんだろう。具体的に、米の値段がどこまで下がれば実際勝っていけるのか、あるいは農地がどのくらい集積すればできるのか。これは具体的に描くことができますか。

内藤政府参考人 二十六日の資料でも私ども示しておりますけれども、私ども、現在、農業生産コストの大幅な低減を目指しまして、担い手の規模拡大などの施策を重点的に推進しているところでございます。こうした施策によりまして、経営展望で示されました経営規模を実現し、稲作の生産コストを低減していく、大体現在の約六割、六十キログラム当たり大体一万一千円という水準にまで引き下げたとしても、米国等諸外国の生産コストと比べれば、依然として大きな格差があるというふうに考えております。

    〔主査退席、倉田主査代理着席〕

高橋分科員 依然として大きな格差があるので、国境措置がない中では、やはり国際競争力というのはあり得ないだろうということではないのかなと思いました。

 私は、やはり基本的に、世界の貿易が完全自由化という方向に進もうとするのであれば、幾ら構造改革を進めても、あるいはスピードアップしたとしても、やはり農業壊滅への通過点にすぎないのではないか、このように思っております。

 〇六年十一月二日の第二十四回経済財政諮問会議では、伊藤隆敏会長より、岩盤のように非常に改革がおくれている分野として、二年間でEPAの締約国を三倍にするべきだなどと強力に求められた経緯がございます。そして、この場で松岡大臣は、農水省としても、国境措置に頼らない、補助金に頼らない農業の確立を目指すことについては、基本的に全く同じ気持ちであると述べております。その中で、いろいろな議論がされるんですけれども、建設業者に入っていただいて、機械や組織を利用して農地を集約して農業をやってもらう、そして、どんどん推進役を果たして、画期的に変わった政策をやると述べていらっしゃいます。

 私は、この発言は、前段の発言とあわせて、オーストラリアのように農業が工業になる、アメリカのように家族経営が株式会社に変わる、そういう方向を農水省は目指しているのかなという印象を受けますが、いかがですか。

内藤政府参考人 私ども、今、担い手を育てるということで、担い手への施策の集中、重点化という施策を推進しているところでございます。しかしながら、担い手がいない地域もあるわけでございまして、そういう地域では、やはり担い手にかわる者として、企業の方に、例えば建設業とかそういった方に頑張っていただくということも必要と思っております。

 そういう意味で、私ども、リース方式というのを、特区から全国展開を今しておりますけれども、そういったリース方式を活用いたしまして、そういう企業が地域の農地を有効活用し、そして地域の雇用あるいは地域の農業の活性化に役立てていただけるのではないかという趣旨から、そういう施策の方向をとっているところでございます。

高橋分科員 今の御答弁は、ワーキンググループが進めている方向とはかなり遠慮がちな、それは既にリース方式に入っているわけですから、もうそういうレベルの話ではなくなっているわけです。これは、また別の機会に述べたいと思います。

 最後に、どうしても大臣に一言伺いたいと思っております。

 十一月のその会議で、御手洗経団連の会長がこういうふうに述べているんですね。本当の人、物、金がスムーズに動く状況をつくることは、理論的には国土面積がふえるのと同じ効果がある。まさに、目指しているグローバル経済というのはそういうことなのかなと思っておりますけれども、そういうときに、農業はかたい岩盤だと言われているわけで、本間副会長などは、食料の安全保障を確保するために国内生産に頼ることがベストではないというふうにまで述べております。つまり、外国に国民の食料をゆだねて、安定供給を図れればそれでもよしとする議論が一方ではある。

 私は、そこまでいってしまうとやはり主権の問題ではないかと思うんですね。最後に、食料主権をどう考えているのか、麻生大臣にお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 高橋先生は青森県なので、そういったことにお詳しいのだと存じますけれども、基本的には私はこんなぐあいに、農業にそんなに詳しいわけじゃないんですが、かたい岩盤というのは別に農業だけじゃないんですよ、はっきり言って。医療関係とか、いろいろやっていましたからわかりますけれども、かたい岩盤というのはほかにもある。

 そういう中にあって、農業の場合を例に引きますと、日本の米というのは実は、ちょっとつまらない例で恐縮ですけれども、今、すしがはやりましたでしょう。すしというのは、一回炊いた米を酢をかけて冷やすわけです。酢をかけて冷やした米を食べたこと、外米でやったことがあるかというと、多分おありにならぬと思うんですけれども、私、海外に住んでいましたのでやったことがありますが、とてもまずくて食えるものではない。したがって、今、海外で食べられているすしの米は、あれは全部日本から持っていっているお米ですから。これだけ海外ですしがはやり始めると、あのお米は間違いなく海外で売られております。しかも、キロ千円で売られたり、ラスベガスなんかに行くと、キロ千六百円だとか千七百円で売られております。これが現実としてあります。

 そういった意味では、日本の場合は、今六十キロ標準米で一万四、五千円。だから、キロに換算すれば六十分の一ですから、それは日本の場合よりはるかに高く向こうで売れている現実というのを見ますと、やはり日本のものでも、いいものは高くても売れる。安全だから、うまいから、きれいだからというような部分ができ上がりつつあるというのは事実だと思っております。

 したがって、米というものの、何となく今ディフェンスばかりで主にできてきておりますけれども、そういったところも含めた上で考えないかぬというのが一点。

 もう一つは、後継者の話ですけれども、私のところにも農家がないわけじゃありませんので聞いてみますけれども、農家で後継ぎのあるところの共通点は一つです。みんなもうかっている農家です。もうかっている農家は後継ぎがいる、もうかっていない農家が後継ぎがいないというのが現実のように思いますので、どのようにすればもうかる農業になるのかという観点からこの問題は国内的には考えなければいかぬのではないか。

 ただし、基本として、食料というものは最も大事な、いわゆる戦略産業とも言えるべきものですから、こういったものはきちんと、この核の部分だけは守らねばいかぬという部分が必ずどこの国でもあるものだと思っております。

高橋分科員 残念ながら時間が参りました。いいものは高くても売れることにはもちろん賛成ですが、しかし、最後におっしゃった、守らなきゃならないものがあるんだということ、主権の問題なんだということをぜひ押さえていただきたいと思っております。

 以上です。ありがとうございました。

倉田主査代理 これにて高橋千鶴子君の質疑は終了いたしました。

 次に、猪口邦子君。

猪口分科員 本日、この質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 本日、私は、日中関係、国連安保理改革関係、外交力の基盤整備の関係、あるいは外務省におきます女性の活躍等についてお伺いしたいと思います。

 まず、その前に、麻生外務大臣におかれまして、非常に積極的に、そして成功裏に外交を主導されていますこと、大変心強く感じておりますことをお伝え申し上げます。

 例えば、自由と繁栄の弧という日本発の外交理念の推進。日本が大きなパラダイム的な発言をすることについて、遠慮をする時代も長かったと思いますけれども、大臣はこれを積極的に推進し、また具体的に外交的な成果をおさめつつありますので、そういうところを大変心強く思います。

 また、北朝鮮の核実験に対します国連安保理決議の成立、それから続きまして六者協議におきます核不拡散外交と申しますか、そういうものの展開、あわせて我が国の人道的な懸念事項への国際的理解の取りつけということをしてくださっていますし、日中関係におきましては、もちろんその再構築に向けて非常に積極的な動きがございます。

 それから、さらに私が重要だと思いますのは、長期的な我が国の外交基盤の整備に向けました本格的な、これは国内調整を必要とすることでございますが、そういうところについて非常に積極的でいらっしゃいますこと、本当に率直に敬服申し上げたいと思っております。

 それから、外からの私の漠とした印象のようなものなんですけれども、外務省の職員の皆様は、ひときわ積極的で前向きな雰囲気で仕事をされているという感じを持っています。外務大臣は経営者としての才もおありであって、やはり我が国は外交にかかわる職員の数が非常に少ないので、それぞれの能力を適材適所で広く柔軟に発揮できる体制が総合力的な我が国の外交力を高める上で非常に重要だと思っておりますので、恐らくそういうことが非常にお上手なのではないかと感じております。

 ぜひ、元気の出る外交は元気の出る外務省からですから、元気の出る外相からですから、そういう元気の出る外交を志していただきたい、リードしていただきたいということをまず述べまして、では、日中関係について質問させていただきます。

 言うまでもなく、安倍総理大臣によります昨年十月の訪中が成功をおさめたことを受けまして、ことしは、未来志向の戦略的互恵関係、安倍総理が主張されている外交理念でございますけれども、この具体的なプロセスを構築していくことが課題でございます。

 これは、政府も、また与党においてもその課題を抱えておりまして、さきに、二月十五日から十七日まで李肇星外交部長が外務省の賓客として来日するなど、積極的な努力もうかがえますけれども、今後、具体的なプロセスを成功させていくに当たりまして、どのような考え方のもとでどういう計画を立てていらっしゃるのか、ここをまずお伺いしたいと思います。

    〔倉田主査代理退席、主査着席〕

麻生国務大臣 小泉内閣五年半の間に、日中関係というのは、少なくとも政治レベルではかなり冷えたものがあった、これはよく言われるところでありますけれども、事情は中国側にとりましても結構深刻だったと存じます。

 結果として、昨年三月の第六回の全人代、全国人民代表者大会での温家宝総理の発言、またその後の胡錦濤国家主席の会見等々の部分をよく読みますと、中国側から対日政策に対して明らかな変化が見られたと私どもは判断しましたので、四月に李肇星外交部長と、カタールのドーハというところで会議が行われたときにバイの会談をさせていただいたのが皮切りになりました。

 それから今日まで、何回だかちょっと忘れましたけれども、いろいろな会合で会った結果、いろいろな形が変わってきたと思いますが、七月の北朝鮮のミサイル実験と十月の核実験の二つを比べてみますと、十月の核実験のときの交渉と七月当時の交渉との差というのは、それはミサイルと核という差はありましたけれども、もう一つは、やはり、安倍総理が訪中されて、帰りに韓国に寄られたその日に原爆実験ですから、そういった意味では、いわゆる安倍・胡錦濤会談がなされた後ということもあったんだと思いますが、少なくとも日中関係のコミュニケーションは三カ月前のミサイルのときとはもう全く違ったものだったと私どもも感じました。結果として、国連の安保理決議は、ミサイルのときは十一日間かかりましたけれども、核のときはたしか六日で結論が出たと思っております。

 したがって、そういった意味では、中国が日米側に寄ってきたというのが大きなところだと思いますが、それは、間違いなく安倍訪中の成果というのも出ておりますし、どっといろいろな方がここのところ中国に訪問をしていらっしゃいますし、また、李肇星が東京に来たのは何年ぶりでしょうね、四、五年来たことはないと思いますね。そういった意味では、温家宝総理の訪日も、これは、江沢民以来ですから結構長い時間だと思いますので、そういった人間の往来が出てくるというのは非常に大事なところだと存じます。

 ただ、商売というかビジネスというのがすごく大事な国だと存じます。したがって、日本からの対中投資が去年は対前年比マイナス三〇%ぐらいになっていると思いますので、そういった意味では、こういった政が冷えると経も結果として冷えてくるというのが数字の上で出てきておりますので、中国側もその点は政策の大きな変更をしてきているというように私どもは思っております。今後とも引き続き、民間のレベルとかハイレベルとかいろいろな表現はあろうと思いますけれども、そういったところのレベルをやってまいりたいと存じます。

 では、具体的にというので申し上げれば、今回、補正予算で予算をいただいておりますので、青年の交流をぜひやりたいということで、私どもはそういったものが、非常に大きなものが出てくるだろうなと思いましたのは、昨年第一回目をやらせていただいたんですが、ショートステイでたった二週間ぐらいのステイをやって、何百人かを散らしたんですけれども、高校生ぐらい。

 やはり、見てきた話、教わってきた話と自分で実際を見るというのは、百聞は一見にしかずというように、日本は軍国主義だと言われて来たけれども、東京にいた間、日本にいた間二週間、軍服を着た人は一人も見なかったと。これぐらいわかりやすい、非常にすぽっと入りやすい、こういったものは極めて大きいし、軍国神社と言われて行ったけれども、一人も軍服を着た人が立っていなかったというような話も、これは物すごく我々と違う観点から見てきて、それが報告に上がってきますので、見せるというのは、しかも若いうちに見せるというのは非常に大事なんであって、そういったようなことも、大変ローキーというか、余り派手な話じゃありませんけれども、着実にそういったことで進めていくという手間暇を、丁寧にこちらもやっていく必要があろうと思っております。

猪口分科員 大変丁寧にありがとうございます。

 世代を超えて、ランクも超えて、国境も越えてというような長期的な視野に立った交流を具体的に、特にことし前半期には強化してやっていただければと思います。

 そういう流れの中なんですけれども、中国の人工衛星破壊実験がありました。これは、弾道ミサイル発射によりますそのような実験で、いろいろコメントがありますけれども、我が国として重要なのは、今後こういうことがなされないということではないかと思いますけれども、一般的にもうしないというコメントは発出されているようにも思いますが、政府間で、今後は行わないというような中国の政治的な意思というのは確認できていらっしゃるんでしょうか。

麻生国務大臣 御指摘の点はすごく大事なところだと存じますが、これは、直ちに私どもの方から向こうに対して、安全保障上の懸念というのを申し上げております。

 自分たちの実験で何でおまえらに関係あるのかという態度なんだと思いますけれども、あれは破壊しますとデブリといって破片がいっぱい飛びますので、それが他の衛星に当たる確率は高くなりますので、冗談言うなという話で、中国側について説明を求めておりますけれども、実験を一回行ったという説明はありましたけれども、それ以後の詳しい説明はあっておりません。

 それから、政治的な意思については、過日、二月十二日に国防部長と前の大臣、国防大臣をしておられた額賀福志郎先生との間で会談が行われておりますけれども、今後実験を行う気はないという話をされておられます。しかし、これは、外交ルートを通じた政府間の正式なやりとりではありませんので、私どもに対してそのような正式な回答を今得られた、正式に向こうの政府として回答を得られたという事実はございません。

 したがって、日本に限らず、国際社会の懸念を払拭できていないことははっきりしておりますので、透明性のある答えというものを今後ともさらに求めていくべきものだと思っております。

猪口分科員 ぜひ、そのようによろしくお願いしたいと思います。

 この実験につきまして、これは事務方からの回答でも結構なんですけれども、私は軍縮会議に大使として赴任していたこともありますので、ちょっとお伺いしたいんです。

 この軍縮会議等で、当然ながら、公式のチャンネルで、マルチのチャンネルでいろいろな意見を表明します。日本の意見は、アメリカほかNATO諸国と比べて十分に踏み込んだ懸念表明をしていたかどうか、どういうふうにみずからの政府コメントというものを比較的に評価しているかということ。

 あと、宇宙条約との抵触関係ですけれども、四条には必ずしも抵触しないという解釈が成立する余地はあると思いますけれども、例えば九条におきます、他のすべての当事国の対応する利益に妥当な考慮を払うべきだという考え方でありますが、今大臣がお答えくださいましたようないろいろなケースがありますけれども、例えば、デブリが発生しますということが、妥当な考慮を払っていないというような考え方も法解釈としてはあり得るかもしれないというようなこと等、踏み込んで議論する必要もあり、我が国の政府のこういう宇宙条約との関係におきます理解、それから中国の政府の理解との間におきます一致の程度、あるいは必ずしも一致していないというのであれば、そのことについてお知らせいただきたいと思います。

麻生国務大臣 先生御存じのように、ジュネーブの軍縮会議、CD、コンファレンス・オン・ディスアーマメントという会議において、二月十三日に、例の、長い名前でしたが、宇宙空間における軍備競争の防止、通称PAROS、プリベンション・オブ・アン・アームズ・レース・イン・アウター・スペース、略してPAROSというのがございますけれども、このところにおいて中国の衛星破壊実験が主題として取り上げられております。

 この会議において、日本としては、この衛星破壊の話に対しては懸念をきちんと表明いたして、直ちに情報提供を出せ、どういうあれなんだという情報提供を求めて、それから、軍事活動の一環ということに十分なり得る話で、これは宇宙における軍拡競争の一環になり得ますので、そういった意味では、透明性というものが大事だというのを向こうに求めております。

 また、中国は、CD、コンファレンス・オン・ディスアーマメントで、宇宙に配置された物体に対する武力行使と威嚇の禁止を含む条約草案というのをおまえらは提案しているけれども、やっていることと言っていることが違うじゃないか、矛盾しておるという指摘をその場でさせております。

 他国でいえば、例えばアメリカとか、中国は、自国の体制、兵器活動を禁止することはしない、そして自国の行動が引き起こすことによって得られるおそれについては何ら対処しないで、それで軍備管理の取り決めだけ訴えているというのは、何だこれはというのは当然出てくる話なので、EUともども、この実験に対して極めて懸念というものを述べております。

 今言われましたように、第九条というところが出てくるのは、宇宙条約の第九条で「妥当な考慮を払つて、」ということに違反しているわけですから、そういった意味では、こういったものに関しては、その他のいろいろな、CDに限らず、国連宇宙空間平和利用委員会等々、いずれもこの問題に関しては懸念を表明して、中国に説明をしろという話の要求はしておるというのが現状でございます。

猪口分科員 どうもありがとうございました。

 政府にはいろいろなチャンネルがありますでしょうけれども、そのような多国間外交のチャンネルにおいても、正式な表明は非常に注目されます。また、日本がどういうことを言うか、これは、軍縮不拡散の旗手としての我が国の国是もありますので、よろしくお願いしたいと思います。

 では、国連安保理常任理事国入りにつきましてお伺いしたいと思います。

 さまざまな外交努力、多大な外交努力をしていただきましたけれども、なかなかその見通しは楽観できない。そこで、せっかくの私にとっての機会ですので、この立論を再考する必要があるのではないかという観点から、手短にですけれども、議論させていただきます。

 まず、現在の常任理事国五カ国の共通の点は二つありまして、一つは、さきの大戦の主要戦勝国であるということと、それからその後、NPTの核兵器国、ウエポンステーツになっているということであります。

 それで、安保理改革の方向性、これは、国連のいろいろな改革の方向性のときに常に出てくるのが、地域バランス、リージョナルバランスという考え方ですね。ところが、この地域バランスという考え方は、一つの組織の多様性を確保するときに議論される観点なんですけれども、極めて二十世紀的ではないか。つまり、地理的に一定のメンバーを入れることによって全体のバランスがとれているでしょうという言い方は、極めて二十世紀的だという感じがいたしております。

 そういう地理的なカテゴリーのほかに、機能的なカテゴリーというのがあると思います。安保理につきましては、今のメンバーが核兵器国でありますから、安保理改革において、より多様性、違った観点から発言できる、あるいは考えを持つかもしれない国を含めようとするならば、当然、NPT上の非核兵器国が常任理事国入りする必要があると思うんですね。

 では、どういう非核兵器国、ノンウエポンステーツが入るべきかと考えますと、その範疇を象徴することができる国、代表することができる国はまさに日本であると主張すべきではないか。それは、幾つも理由を挙げることができますけれども、主として二つです。

 まず、我が国は、これは大臣みずからリードしてやってくださっていることですけれども、国連総会におきまして核廃絶決議案を毎年提出して、最近は、圧倒的な加盟国の多数の支持を得て採択されているわけです。そういうことを毎年毎年やり続けている、こういう国であるということです。ですから、まさに、非核兵器国を代表する立場にあるんだということです。たくさんのコースポンサーはつきますけれども、日本提出の決議案であります。

 それから二つ目には、我が国は無資源国であって、原子力の平和利用が必要である、そういう国としてIAEAの保障措置に対する模範的な対応を長年かけてやっているということで、その範疇を構成する代表者は日本であるということを主張して、ぜひ常任理事国入りを実現していただきたいと思っています。

 今日では、大量破壊兵器の非国家主体への流出が大きな懸念であります。ですから、国家はみんなそういうことについてまとまるべきであって、核兵器国だけまとまるのではなくて、非核兵器国も入って、国家対非国家主体であるというような立論をして、そのような多様性が安保理にもたらす政治的な資源、ポリティカルリソースの多様化あるいは豊富になるということを主張して、これは、日本のような軍縮不拡散外交の旗手であり、模範的な非核兵器国が常任理事国入りすることが現在の常任理事国に対する利益を高めることでもあるということを核兵器国に認めてもらうということでお願いしたいと思うんです。

 それからさらに、この立論ですと、中国の日本の常任理事国入り支持を取りつけることができるのではないかと考えますけれども、大臣、いかがお考えでしょう。

麻生国務大臣 今のはいい御指摘だと存じます。

 基本的には、日本というのは、つくれるけれどもつくらない、持てるけれども持たないということなのであって、今一生懸命持とうというのとレベルが全然違います。宇宙衛星をちゃんと四つ上げられるレベルがありますので、そういった技術的な、搬送技術は間違いない。また、原子力発電というものをこれだけやっておる国でもありますので、そういった意味では、間違いなく、いろいろな意味で技術的また能力的なものもあろうと存じますし、これまでの姿勢として今言われたとおりのことだと存じます。

 加えて、猪口先生、一カ国で国連の分担金のほぼ二割払っているんですからね。百九十二国のうち、日本だけで約二〇%弱を払っておるという国で、敵国条項をくっつけられてという状況というのは、どう考えたって二十世紀どころかもう大分前の話で、とてもじゃないということに関しては、多くの国が賛成を認めるところなんです。

 そうすると、日本だけ入れてという話はなかなか難しいものですから、これは、日本からは言いにくい、ほかのはだめだから僕だけ入れてなんという話はなかなか世間の常識でも通る話ではありませんので、どこかの国から言っていただくか何かしない限りは、ちょっと日本としては、私のような控え目な性格はとても言いにくいので、ちょっと難しいのが今の現状なんです。それが一点。

 もう一点は、中国のお話がありましたけれども、これはおかげさまで、安倍訪中以後だと存じますけれども、随分、中国の対日関係に言わせますと、この間、李肇星と話をしましたときにも、この点に関しましては今までとは随分違ったものになってきておりまして、安保理常任理事国入りすることの中国側の理解というのは、かなり前回と違って、いわゆる反対、アジアはおれだけという態度ではなくなってきつつあるのは、一連の会議ではっきりしてきております。李肇星外務大臣の過日会いましたときの発言も、その点に関しましては前のときとは随分変わってきたというのだけははっきりしておりまして、さらに努力は続けてまいりたいと思っております。

猪口分科員 外務大臣、ありがとうございました。ぜひ引き続き、成功裏に、一歩一歩理解をとりつけるようよろしくお願いいたします。

 次に、外交の基盤整備についてお伺いいたしたいと思います。

 もちろん、財政制約の中でいろいろと節約しなければならないので、スクラップしなければならない在外公館もあるということはわかります。そして、総領事館についていろいろと整理の対象になっている、議論がなされているということも承知しているんですけれども、ここで、せっかくの機会ですので、ちょっとまた考えを述べさせていただきます。

 多くの国がありますが、その中で、その国の国家としての成立の経緯、それから構造、これをよく見詰めた上で、総領事館の役割なども丁寧に議論して、今後、我が国の外交基盤強化の体制をどうするかを考えていただきたい。

 具体的には、例えばアメリカあるいはドイツのような連邦国家の場合を考えますと、それは、首都にあります大使館にて集約できる政務情報とは非常に別の観点からの政務情報をそういう総領事館において取得できることもあるのではないか。そういう地方自治の段階が高度に進んだ国家構造をしているような場合におきましては、総領事館の役割について特別の丁寧な議論が必要なのではないかと考えます。

 もちろん、国内政治プロセスの中で、大臣筆頭に副大臣、それから大臣政務官、いろいろと御努力いただいていると思いますが、ぜひ長期的な視点に立って、一たんスクラップした総領事館を復活させることは非常に難しいこともありますので、総合的な基盤整備の強化の方向に向けて御努力いただきたいところです。

 今の私の主張に対しまして、では、副大臣にお願いできればと思います。総領事館のことですので、よろしくお願いいたします。

岩屋副大臣 猪口先生にはいつも、政府や党あるいは麻生大臣中心に進めております外交力強化につきまして、温かい御理解と力強い御支援をいただいておりまして、心から厚く御礼を申し上げたいと思います。

 今御指摘の総領事館の件は、先生おっしゃるとおり、非常に重要な役割をこれまでも果たしてきているわけでございまして、アメリカなんというのは一番大事な同盟国でございますから、変な話、五十州全部に置きたいのはやまやまでございますが、なかなか厳しい財政状況の中でやりくりをしているというところでございます。

 やはりどうしても、当地で活躍する日本人あるいは日系企業、あるいは日本からの対外投資がどのぐらいになっているかということも勘案しながら配置を決めていかなきゃいけないと思っているんですけれども、先生が今おっしゃった観点、つまり、その国の成り立ちによって総領事館を置くことの意味合いがまた違ってくるということも我々認識しておりまして、このたび、ようやく在外公館がふやせるようになってきたということでございますので、今後、総領事館の配置のあり方の検討に当たっては、今申し上げた邦人の数とか日本企業進出の状況と同時に、先生御指摘の相手国の国家体制の特質も踏まえて配置を考えていきたいというふうに思っております。

猪口分科員 副大臣、どうもありがとうございました。

 それでは、私、ぜひ大臣政務官にお伺いしたいと思っておりますことがございます。それは、女性の大臣政務官として、松島先生、大変御活躍いただきまして、僣越ながら、大変心強く思っております。

 外交の分野、女性の活躍する余地は多いとはいえ、なかなか難しい面もあろうかと思います。各国では女性外交官が急増していまして、我が国でも、男女共同参画の観点もあわせて、外交分野での女性職業人が広く、多様性のある機会を得て活動できることが、私は非常に重要だと思います。

 女性の大臣政務官として、御自身の活躍について、大変なことがありますればそれについても、またどういう志を持って活躍されているかお伺いしたいと思いますし、外務省におきます女性の職員の今後の活躍を確実にしていくために、女性のリーダーとしてどういうことを心がけてくださっているか、そこをお伺いしたいと思います。

松島大臣政務官 まず最初に、外交に携わる女性ということで申し上げますと、猪口委員御自身が、平成十四年から二年間、軍縮大使としてジュネーブで活躍されまして、そしてその際に、第一回国連小型武器中間会合の議長として本当に大車輪の活躍をされました。当時、私は単なる一回生議員にすぎませんでしたけれども、本当にほれぼれする思いで拝見させていただいておりましたことをまず申し上げたいと思います。

 そして、私自身、昨年九月に外務大臣政務官、これは本当になりたくてなったポストにつかせていただきまして、そして、例えば、ことしの一月には、中米のニカラグアの大統領就任式に特派大使として派遣していただきました。また、ボスニア・ヘルツェゴビナの復興を目の当たりにするという、ODAの橋の引き渡し式に昨年参ったり、あるいはストラスブール、欧州評議会、ここは議員外交の活発な場所でございますけれども、外務省の政治家の幹部としては初めて伺って、そこで、委員もお触れいただきました、我が国の、自由と繁栄の弧、これは本当にすばらしいテーマだと思って、私自身はまっているんですけれども、それもストラスブールの欧州評議会で、先方に、日本がヨーロッパの中でも旧東欧圏の国々にこういうかかわりを持って仕事をしているんだということも申し上げてくる機会に恵まれることができました。

 そして、後段、もっと申し上げたいのは、我が外務省における女性の活動ぶり、活躍ぶりについて、本当にうれしい御報告の場を与えていただいたと思っております。

 もちろん外務省には1種とか専門職とかいろいろな職種がございますけれども、例えばことしの四月に入省予定の1種について見ますと、二十九人中、何と女性が七人、四分の一に達しております。これは、平成十六年入省ごろから、六人、六人、五人、こういうふうにふえてきて七人ということになっておりまして、私も、そしてまた猪口委員も、お互い男女雇用機会均等法以前に社会人になった、非常に就職探しが厳しかった時代、自分の半世紀前を振り返ってみますと、もう隔世の感がございまして、ここまで来たかなという思いに感動している次第でございます。

 これだけではございませんで、例えば、特定地域の言語にすぐれたり、専門性を持っている職員というのは、最近の採用では半分ぐらいが女性、そんなふうになっております。

 そして、私自身、先ほど申し上げましたニカラグアの大統領就任式に参りましたときに、これは、女性であれ男性であれ、仕事をすることは一緒でございますけれども、若い女性の書記官、スペイン語のプロの人が、私たちは外での就任式が四時ごろからずっと夜十一時過ぎまでありまして、その後さらに大使公邸で、夜十一時からいろいろな方をお招きしてのディナーを予定しておりました、私どもは会食しておりましても、その通訳の彼女は、十八時間ぐらい、本当に食事もなしで、ずっとつきっきりで、いろいろな場面ですべてを説明してくれた。私は感動した次第でございます。

 そしてまた、どの国におきましてもそういった女性が活躍していまして、それは大使とか政務官とかいうトップの役割だけでございませんで、派遣される先、外務省は、女性がこれだけふえてきますと、例えば女性だけ先進国にということはとてもできません。

 そういった適材適所の人材配置の中で、中東・イスラム諸国では、女性もヨルダンやアフガニスタン、そしてまたアフリカでも、スーダンやリビア、ナイジェリアなど、そういったところの在外公館で女性職員が男性と同じようにしっかり働いているということは、本当にここまで日本が来た、ここまで外務省が来たということをとてもうれしく思っている次第でございます。

 そして、その体制をバックアップするために、結婚や出産、猪口委員もこれまで大臣としてお務めいただきましたけれども、最大三年とれる育児休業、これは、何カ月とるかは人によって差がありますけれども、出産した女性はほとんどとっている、そういう環境に外務省もなっております。

 さらに、外務省の女性職員の声を生かす形で、女性職員の休憩室というのを設けまして、育児期、休業は終えたけれども出勤している女性が、私は子供を産んだことがないのでよくわからないんですけれども、お乳を搾って冷凍とか冷蔵することができるような冷蔵庫も置く、そういった配慮。

 あるいは、育児休業あるいは産前産後の休暇をとっているときに、職場との気持ちをずっと持ち続けるため、疎外感を味わわないために、例えばメールで職場の人事異動や訃報や講演会のお知らせというものを、家庭の自分のパソコンでもそういう情報を得られる、あるいは育児から復帰した女性たちの交換のメールリストなど、そういった整備もすることによってバックアップ体制をとっている。

 ほかの役所のことを全部知っているわけじゃないですけれども、外務省はそういう意味で一歩進んだことができているんじゃないか、それは本当に誇りに思って、私もまた激励してまいりたいと思っております。

猪口分科員 大変心強いお話をいただきまして、これをもって私の質問を終わります。

 委員長、どうもありがとうございました。

森主査 これにて猪口邦子君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして外務省所管についての質疑は終了いたしました。

 午後五時三十分に本分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後五時十三分休憩

     ――――◇―――――

    午後五時三十分開議

森主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 財務省所管について政府から説明を聴取いたします。尾身財務大臣。

尾身国務大臣 平成十九年度一般会計歳入予算並びに財務省所管の一般会計歳出予算、各特別会計歳入歳出予算及び各政府関係機関収入支出予算について御説明申し上げます。

 まず、一般会計歳入予算額は八十二兆九千八十八億円余となっております。

 この内訳について申し上げますと、租税及び印紙収入は五十三兆四千六百七十億円、その他収入は四兆九十八億円余、公債金は二十五兆四千三百二十億円となっております。

 次に、当省所管の一般会計歳出予算額は二十二兆六千五百四十億円余となっております。

 このうち主な事項について申し上げますと、国債費は二十兆九千九百八十八億円余、政府出資は千九百十四億円余、予備費は三千五百億円となっております。

 次に、当省所管の各特別会計の歳入歳出予算について申し上げます。

 国債整理基金特別会計におきましては、歳入百九十九兆二百三十六億円余、歳出百七十九兆二百三十六億円余となっております。

 このほか、地震再保険等の各特別会計の歳入歳出予算につきましては、予算書等をごらんいただきたいと存じます。

 最後に、当省関係の各政府関係機関の収入支出予算について申し上げます。

 国民生活金融公庫におきましては、収入千八百八十四億円余、支出千四百六十二億円余となっております。

 このほか、農林漁業金融公庫等の各政府関係機関の収入支出予算につきましては、予算書等をごらんいただきたいと存じます。

 以上、財務省関係の予算につきまして、その概要を御説明申し上げた次第でございます。

 なお、時間の関係もございまして、お手元に配付しております印刷物をもちまして、詳細な説明にかえさせていただきますので、記録にとどめてくださるようお願いいたします。

 よろしく御審議のほどお願い申し上げます。

森主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま尾身財務大臣から申し出がありましたとおり、財務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

森主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

森主査 以上をもちまして財務省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

森主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、これを許します。鷲尾英一郎君。

鷲尾分科員 民主党の鷲尾英一郎でございます。

 本日は、税制に対する質問を一つ、そして今後、日本政策投資銀行が民営化される年に当たりますので、その点についての御質問をさせていただきたいと思います。

 まず初めに、今般の税制改正におきまして、特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入制度、これが適用されます会社が、前年度が所得基準額八百万円、今年度で一千六百万円と改正される運びとなりました。この制度については、前通常国会におきましていろいろ導入の是非を大臣と議論させていただきまして、その結果、私の方からは、八百万円では適用対象の企業がかなり広範囲にわたるのではないか、そういう中で、そもそも導入の是非を含めて再検討すべきであるという旨申し上げた次第でございますが、私の方で力足らず、そしてまた財務省さんの方でも導入の大義名分があったということで、八百万ということで導入が成ったわけでございますが、平成十八年度に導入した制度で、所得基準額が八百万円。ところが、今年度になりまして、その所得基準額が一千六百万円に引き上げられたということでございます。

 この点につきまして、当然、一年間で基準額を引き上げるというのは実務上大変な混乱も及ぼすわけでございまして、このことを導入当初なぜ織り込めなかったのか。なぜ今年度そのような引き上げが行われたのか。この理由につきまして、大臣にお伺いしたいと思います。

尾身国務大臣 個人事業主がいわゆる法人成りを行うことによりまして、法人段階で、オーナーの給与が損金算入される一方で、そのオーナー給与にさらに給与所得控除が適用されるといういわゆる経費の二重控除が発生するわけでございますが、御質問のオーナー役員給与の損金算入制限措置は、これに対応して、個人事業主との負担の公平を図るための課税の適正化措置として、十八年度税制改正において導入されたものでございます。

 本措置の導入に当たりましては、昨年五月施行の新たな会社法において資本金一円でも株式会社の設立が可能となり、法人設立が容易となることを踏まえ、個人事業主の節税目的の法人成りのインセンティブを抑制する必要がある場合に基本的に本制度が適用されるよう制度設計を行ったものでございます。

 具体的には、個人所得課税と法人課税の税率構造上、個人事業者の所得課税が累進税率である一方で、法人課税の税率は基本的に定率であることから、所得水準がおおむね七百万円程度以下の場合には所得税率が低いため、個人事業主が法人成りしても節税メリットが発生しないことを基本的な考慮要素とし、さらに、中小零細企業への配慮の観点も加味した上で、法人所得とオーナー給与の合計が八百万円以下の場合に本措置の適用対象から除外することとしたものであります。

 一方で、今般の改正においては、従来、会社の利益とオーナーの給与との合計額が八百万円以下となる場合にこの損金算入制限措置の適用除外をしていたものを、中小企業活性化に重点を置いた平成十九年度税制改正の一環として、千六百万円に引き上げることにしております。

 これは、本年の見直しにおきましては、昨年七月の経済成長戦略大綱において、「構造改革の中で、経済状況や成長力の回復に遅れが見られる地域や中小企業の活性化に思い切って取り組むことが重要である。」との指摘がなされていること等も勘案し、中小企業の活性化に重点を置いた平成十九年度改正の一環として、起業のさらなる促進や活力ある中小企業の負担軽減の観点をより重視した結果であります。

 また、千六百万円という水準は、一人オーナー企業において節税メリットが発生したとしても、法人所得とオーナーへの給与の合計が黒字中小企業の平均的な水準に達するまでには本措置の適用対象から除外するという考え方をとることとし、資本金二千万円以下の黒字中小企業の平均の法人所得とオーナー給与の合計額が約千五百七十万円であること等を勘案して設定したものでございます。

鷲尾分科員 大臣、私も税理士の資格を持っておりますので、法の導入の趣旨は大変よく理解できておりますので、ぜひ質問に対してお答えいただきたいと思うんです。

 私が申し上げたいのは、平成十八年度の確定申告というのはこれからでございます。つまり、平成十八年度に制度を導入した、その結果が、まだどれぐらい、要するに適用対象になっているかわからない。そういう状況がわからない中で、今年度は中小企業活性化によってこの制度の所得基準を引き上げる、これは正直申し上げましてどういう意味なのかわからない、そういう趣旨の私の質問でございまして、去年八百万円で導入しました、ことしはその結果がわからないけれども中小企業活性化だから千六百万円に引き上げました、これは大臣、どう考えても、我々一般の側から見れば朝令暮改も甚だしいことでございまして、なぜ制度導入時にこの点も含めて勘案できなかったのか。

 今るるおっしゃっておりました。まだ要するに中小企業は景気の回復が見られない、そういう地域もある、そういうことも勘案しながら、そしてまた黒字法人の数なども勘案しながら、制度をことし千六百万円に改正したと。それはなぜ制度導入時にできなかったのかというのが私の質問の内容でございまして、大臣、その点をお答えいただきたいと思います。

尾身国務大臣 今般の改正は、中小企業の活性化をより重視するという政策のもとで本制度の適用除外基準を見直したものでございまして、確かに昨年創設したものでございますが、昨年の制度創設時におきましては、成案を得る段階で、中小企業庁において、実際に課税を受ける側を代表する中小企業団体に説明をいたしまして、協議の上、中小企業関係税制全体の中で受け入れ可能と判断していただいたものでございます。

 したがいまして、制度導入時のプロセスに問題があったとは私どもは考えておりません。

鷲尾分科員 大臣、制度導入時のプロセスが問題なかったと今おっしゃっておりました。それは、関係団体といろいろ協議の上なされたことも当然考えられるところではあります。

 ただ、なぜ、八百万円で導入したにもかかわらず、そしてその実績が出ていないにもかかわらず、一千六百万という基準に引き上げたことをもって、では中小企業活性化と言うのか。何を根拠に中小企業活性化と言っているのか、正直言って、そこがわからないわけでございまして、大臣、どう思われますか。

 実績も出ていないのに活性化と言っている。では、すべての政策は何を根拠としてやられておるのでしょうか。まずもって、実績をもって、この分だと、この場合だと、例えば影響が出るのは広範囲過ぎる、広範囲に過ぎるから、これはちょっと制度としては厳し過ぎるから、だから今度ちょっと制度を改正しましょうよというのが普通の法律のあり方だというふうに私は考えます。ですから、当然、制度の改善、要するに法律の改正には、例えば五年間ちゃんと様子を見るよという附則を、大体の場合、付したりするものでございます。

 それなしに、実績もなしに、なぜ急激に所得金額を引き上げられたのか。ここが私の質問のポイントでございまして、この点を話していると、この後の質問が大変詰まりますので、この質問はまた後日、財務金融委員会の方でさせていただくといたしまして、とりあえず次の質問にさせていただこうと思います。

 まだ税制改正の問題をやりますが、私が思いますのは、このような八百万から一千六百万への変更、こういうような、いわゆる朝令暮改のようなことが起こってしまうのは、先ほど大臣は、中小企業団体等との協議を含めてプロセスには瑕疵がなかったというふうにおっしゃっていましたが、現実として、このような朝令暮改と言わざるを得ないような結果があらわれてきているわけですから、この点、要するに、制度、税制改正のプロセスもある程度改善が必要なのではないかというふうに思いますが、大臣、どう思われますか。

尾身国務大臣 昨年、私は、この制度をつくるときに、いわゆる商工関係の代表というのはおかしいですけれども、そういうことに非常に関心を持ってこれに関係をしておりました。そのときに、いわゆる中小企業団体の皆さんはこの制度に反対はしない、こういうことで制度を導入したわけでございますが、その後、いろいろな方からこの制度の問題点も指摘をされたところでもあり、かつ、安倍政権になりましてから、中小企業の活性化ということは非常に大事な課題でもあるということで、八百万円を千六百万円に直したというところでございます。

鷲尾分科員 政権がかわって制度改変が行われるというのは当然あってしかるべきだと思いますが、何分この制度については、導入して、それから一年もたたぬうちの改正でございます。

 この点について、要するに最初の導入時点における、例えば関係者のヒアリングですとか、統計数字のとり方ですとか、この点も、去年、私は財務金融委員会で大分詰めたのでございますが、その当時の谷垣財務大臣が、私はその数字をもって納得したというふうにおっしゃったから、私も、そうですか、わかりましたというふうに引き下がったわけでございます。ところが、その一年後に、内閣がかわったから、根拠数字のとり方も含めて、何も検討されないままに制度の改変がなされるというのは、正直申し上げて納得できないわけでございます。

 ですから、実際こういうことが起こっているわけですから、税制改正のプロセスも含めまして、どういう点を改善しなきゃいけないのかということの検討も含めて必要だと思いますが、大臣、どう思われますか。

尾身国務大臣 確かに、おっしゃるとおり、最初に八百万円控除をするという制度を導入して、その後でこれを千六百万円にしたわけでございますが、やはり中小企業の活性化というのは大変大事でございまして、そういう意味で、実情に合わせて控除の額を上げた、こういうことでございますので、ぜひ御理解をいただきたいと思います。

鷲尾分科員 大臣、申しわけございません。今大臣がおっしゃっていた、実情に合わせての実情が、まだ制度適用初年度で実績として出ておらないのでございまして、その実情がわからないうちに金額を引き上げるというのが、わけわからぬ改正をわけわからぬ根拠のままずるずるとやっていく、これは許しがたいことでございます。

 ですから、税制改正時点におきましてこの点を、今ある税制改正のプロセスからさらに改善して、関係者ヒアリング、各省庁の統計数字の糾合を含めまして考えていかなければならないということが、現象として今あらわれているのじゃないか。その点、大臣はどう思われるかお聞きしたいのですが、いかがですか、大臣。

尾身国務大臣 今般の改正は、中小企業の活性化をより重視するという政策のもとに本制度の適用除外基準を見直すものでございまして、制度の影響度合いについて、昨年の見込みが誤っていたから改正を行うというものではございません。

鷲尾分科員 昨年の根拠数字が誤っていないというのは、それはそれでそう言わざるを得ない部分があるのでございましょう。

 ただ、制度導入時点においてそのような、誤っていたかどうかは別として、もうちょっと税制改正のプロセスにおいて幅広く意見をとるとか、そういうことをしていれば、たった一年で法改正をするような事態は免れたんじゃないかなという思いがございます。この点について大臣はどのように思われますでしょうか。今、私の言葉を聞いて、大臣、どうですか。

尾身国務大臣 これは、昨年の導入時におきましては、中小企業庁を通じて中小企業団体と相談をして、その御賛同も得て導入をしたわけであります。

 今般は、またいろいろな方々からの御意見もあり、かつ、中小企業の活性化が大変大事であるということで、八百万円を千六百万円に上げるということを決めたわけでございまして、昨年の見込みが誤っていたから改正を行うというものではございません。

鷲尾分科員 大臣、この点、議論していても、恐らく時間が幾らあっても足りませんので、では、続いて次の質問に移らせていただきますが、そもそもこの導入時点にやはり問題があったという部分は、大臣も恐らくお考えになっているとは思います。ですから、この点、またいろいろ議論の上で改善させていくのが日本の税制の改正のあり方について非常に真っ当であるというふうに、私自身、考える次第です。

 では、次の質問に移らせていただきます。

 日本政策投資銀行についての質問をさせていただきます。

 この日本政策投資銀行は、民営化が決まっております。民営化後の政策投資銀行のあり方について、大臣はどのようにお考えでしょうか。

尾身国務大臣 政策投資銀行につきましては、簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律におきまして完全民営化することとされております。そのため、平成二十年度において新たに株式会社を設立すること並びに移行期間中に当該会社の業務等を定める株式会社日本政策投資銀行法案を今国会に提出したところであります。

 移行期間中の新たな会社の目的は、長期の事業資金に係る投融資機能の根幹を維持して、資金供給の円滑化及び金融機能の高度化に寄与するということにしております。

 完全民営化後のあり方でございますが、これは、政策金融改革に係る制度設計におきまして、中長期の投融資機能を提供することがイメージされており、いずれにいたしましても、具体的には移行期間における実際の業務運営等を踏まえて新会社を中心に検討をされていくものと考えております。

鷲尾分科員 今この政策投資銀行の話を申し上げましたのは、政策投資銀行は、今、日本航空、JALの大口の債権者になっているわけでございまして、大臣御存じだと思うんですが、政投銀がJALに対してどれぐらい貸し出しがあるのか、大臣、ちょっと教えていただけますでしょうか。

尾身国務大臣 政策投資銀行のJALに対する融資残高は三千三百七十二億円と聞いております。

鷲尾分科員 ありがとうございます。

 この二月に、JALの中期経営計画の発表を受けまして、政策投資銀行は他行と合わせまして六百億円の追加融資を決めたというふうにされております。この六百億円の追加融資のうち、私の聞きますところ、政策投資銀行は四百五十億融資するということを決定したとされているわけでございますが、そうしますと、今おっしゃった大臣の金額と合わせまして、約四千億の融資を政策投資銀行からJALの方にするという格好になっているわけでございます。

 まず問題なのは、民営化するに当たりまして、政策投資銀行というのは一民間銀行になっていくわけでございますから、当然民営化後に、いわゆる不良債権等含めまして、こういうものが多額に上ってしまっては、要するに大変まずいわけです。そこは大臣、おわかりになっているとは思うんですが。

 そう考えますと、このJALの中期経営計画に至る過程におきまして、航空業界は今原油高で経営状況がかなり圧迫されているという問題もあります。そしてまた、JALの経営内部におきまして人事権をめぐった派閥抗争もありました。一昨年の整備不良の多発、こういったものもございました。そういうことがないまぜになりまして、大変今資金調達が困難であるというふうな状況であるわけです。

 今後の見通しを含めまして中期経営計画が出されているわけですけれども、この四百五十億政策投資銀行が融資を決定したということ、これが本当に経営計画を含めた厳正なる審査がされておるのか、この点に私は一抹の不安を覚えるところでございまして、大臣、この点についてはどのようにお考えになっておりますでしょうか。

尾身国務大臣 政策金融機関が行う個別の融資案件につきましては、財務大臣としてお答えする立場にないということを御理解いただきたいと思います。

鷲尾分科員 大臣、では個別の話ではなくて、一般的に話をさせていただきたいんですが、政策投資銀行がこれから一般的に会社に融資をしますよ、一般的に、ある会社に融資をしようとしたときに、その会社が大変経営難に陥っているという段階にあって、経営計画を新たに発表しました。その発表した経営計画について、大臣は、政策投資銀行が例えば厳正なる審査をしっかりとしているかどうか、そこは大臣として政策投資銀行にどういう審査を期待されるでしょうか。その点についてちょっとお伺いしたいんですが。

尾身国務大臣 政策投資銀行は、主務大臣が作成した三年間の中期の政策に関する方針に従って貸し付け等を行わなければならないということになっておりまして、政策投資銀行は、主務大臣の中期政策方針の作成に当たりまして主務大臣に意見を述べることができるということになっているわけでございます。

 しかしながら、政策投資銀行が行う個別の融資につきましては、政策投資銀行法の定めるところによりまして、同行の融資判断により行うということになっておりまして、財務省といたしましては、基本的に個別の融資に関与する立場にはなく、この点についてのお答えは差し控えさせていただかざるを得ないということでございます。

鷲尾分科員 別に関与するわけではないと思うんです。どういう融資姿勢を望むかというところでございまして、この点、いろいろな計画があるというふうに大臣はおっしゃいましたが、通常、一般の民間の金融機関であれば、経営難、特に市場関係者から資金調達に難ありと言われている会社に対して、審査するに当たってはよほど厳正な審査がなされているというふうに思うわけです。

 大臣、では、そういう会社に対して融資されたということは、資産査定含めまして、経営環境の調査、中期経営計画の審査も含めまして、これはよほど厳格なものがなされているだろうというふうに期待しているかどうか、そこだけでもお答えできますか。

尾身国務大臣 現在の政策投資銀行法の二十条二項におきまして、資金の貸し付け等は償還等が確実である場合に限り行うことができる旨が規定されているところでございます。政策投資銀行による融資案件については、この規定に沿って政策投資銀行において適切に判断されるものと承知をしております。

鷲尾分科員 今、回収可能であれば貸すというお話がなされました。では大臣、この四百五十億融資される見通しである、そしてまた今三千三百七十億融資済みである、これについての回収可能性は、これはもう間違いない、政策投資銀行が融資している以上は間違いないとお考えであるということでよろしかったでしょうか。

尾身国務大臣 政策投資銀行法の二十条で、「前項に規定する資金の貸付け、債務の保証、社債の取得、債権の譲受け又は出資は、当該貸付けに係る資金の償還、当該保証に係る債務の履行、当該取得に係る社債の償還、当該譲受けに係る債権の回収又は当該出資に係る事業からの配当の支払を可能とする利益の発生が確実であると認められる場合に限り、行うことができる。」という規定があるわけでございまして、この規定に沿って、政策投資銀行の融資案件につきましては、政策投資銀行において適切に判断されるものと承知をしております。

鷲尾分科員 大臣、政策投資銀行において適切に判断されると大臣はおっしゃいましたけれども、私も適切に判断されてほしいと思う一人でございます。

 大臣は御存じかどうかわかりませんが、昨年十一月にJALの、とある社内報が発行されたわけですね、特別版として。その社内報に社長みずからこういうことを載せておるわけです。航空運送事業の営業損益が二〇〇三年以降実力ベースで一度も黒字になっていない、これを資金調達の面からとらえれば当社に返済能力がないことを意味し、この状態がこれ以上長く続くと金融機関から当社への貸し付けが停止する可能性がある、こういうことを社内報で社長がおっしゃっているわけです、昨年の十一月の時点で。

 二〇〇三年以降ですから、ちょうどJALとJASが合併してからずっとということになると思うんですけれども、この間、営業損益で実力ベースでいったら黒字になっていない、これは社長みずからおっしゃっているんですよ。こういうことを含めて本当に適切に審査されているのかどうか、そこが私、大分懸念がございます。

 大臣、どうですか、私のこの言葉を聞いてどのように思われますか。

尾身国務大臣 先ほどから申し上げておりますとおり、政策投資銀行が行う個別の融資につきましては、政策投資銀行法の定めるところによりまして、同行の融資判断により行うということになっているわけでございます。したがいまして、財務省としては、基本的に個別の融資に関与する立場になく、そういう意味でお答えは差し支えさせていただきたいと思います。

鷲尾分科員 では、個別の融資に対するコメントは結構でございますが、経営難の会社、これに対する回収可能性がまだちょっとわからないよ、一般の人間からすると回収可能性が疑われるものについて、マスコミ等の発表では融資するということがなされている。一般的に言って、一般の方々が見てちょっと危険だなというところで、ところが銀行さんはオーケーだと言っている、その銀行さんは政策投資銀行である。政策投資銀行は、回収可能性、返済能力そして営業損益を含めて、ある程度基準がない限りは当然融資しないということでございますから、大臣、普通に考えたら、当然、その回収可能性、営業損益を含めた厳正なる審査が行われているということでよろしいですよね。

尾身国務大臣 政策投資銀行法の二十条二項におきまして、先ほど申し上げましたように、資金の貸し付け等は償還等が確実である場合に限り行うことができる旨が規定されているところでございます。したがいまして、財務省としては、政策投資銀行による融資案件につきましては、当該規定に沿って日本政策投資銀行において適切に判断されるものと承知しております。

鷲尾分科員 融資案件については、この件についても当然含まれまして判断されたということであろうというふうに大臣のお言葉からいただいたというふうにいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

森主査 これにて鷲尾英一郎君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明三月一日木曜日午前九時より開会し、財務省所管についての審査を行うこととし、本日は、これにて散会いたします。

    午後六時四分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.