衆議院

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第2号 平成20年2月28日(木曜日)

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平成二十年二月二十八日(木曜日)

    午前九時三十分開議

 出席分科員

   主査 増原 義剛君

      臼井日出男君    小池百合子君

      鈴木 馨祐君

   兼務 赤松 正雄君 兼務 赤嶺 政賢君

    …………………………………

   外務大臣         高村 正彦君

   財務大臣         額賀福志郎君

   外務副大臣        小野寺五典君

   財務副大臣        遠藤 乙彦君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    米田  壯君

   政府参考人

   (警察庁交通局長)    末井 誠史君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    大野恒太郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 新保 雅俊君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 谷口 智彦君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 伊原 純一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 大江  博君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    西宮 伸一君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   小松 一郎君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局長)  地引 良幸君

   外務委員会専門員     清野 裕三君

   財務金融委員会専門員   首藤 忠則君

   予算委員会専門員     井上 茂男君

    ―――――――――――――

分科員の異動

二月二十八日

 辞任         補欠選任

  臼井日出男君     鈴木 馨祐君

同日

 辞任         補欠選任

  鈴木 馨祐君     臼井日出男君

同日

 第一分科員赤嶺政賢君及び第二分科員赤松正雄君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成二十年度一般会計予算

 平成二十年度特別会計予算

 平成二十年度政府関係機関予算

 (外務省及び財務省所管)


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     ――――◇―――――

増原主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。

 平成二十年度一般会計予算、平成二十年度特別会計予算及び平成二十年度政府関係機関予算中財務省所管について、政府から説明を聴取いたします。額賀財務大臣。

額賀国務大臣 平成二十年度一般会計歳入予算並びに財務省所管の一般会計歳出予算、各特別会計歳入歳出予算及び各政府関係機関収入支出予算について御説明申し上げます。

 まず、一般会計歳入予算額は八十三兆六百十三億円余となっております。

 この内訳について申し上げますと、租税及び印紙収入は五十三兆五千五百四十億円、その他収入は四兆千五百九十三億円余、公債金は二十五兆三千四百八十億円となっております。

 次に、当省所管一般会計歳出予算額は二十一兆八千二百五十五億円余となっております。

 このうち主な事項について申し上げますと、国債費は二十兆千六百三十二億円余、経済協力費は千七百四十一億円余、予備費は三千五百億円となっております。

 次に、当省所管の各特別会計の歳入歳出予算について申し上げます。

 国債整理基金特別会計におきましては、歳入二百一兆八千九百八十八億円余、歳出百八十一兆八千九百八十八億円余となっております。

 このほか、地震再保険等の各特別会計の歳入歳出予算につきましては、予算書等をごらんいただきたいと存じます。

 なお、特別会計に関する法律に基づき、財政融資資金特別会計と産業投資特別会計産業投資勘定を統合し、財政投融資特別会計を新たに設置するとともに、産業投資特別会計社会資本整備勘定を平成十九年度限りで廃止することとしております。

 最後に、当省関係の各政府関係機関の収入支出予算について申し上げます。

 国民生活金融公庫におきましては、収入九百二十八億円余、支出七百三十七億円余となっております。

 このほか、農林漁業金融公庫等の各政府関係機関の収入支出予算につきましては、予算書等をごらんいただきたいと存じます。

 以上、財務省関係の予算につきまして、その概要を御説明申し上げた次第であります。

 なお、時間の関係もございまして、お手元に配付しております印刷物をもちまして、詳細な説明にかえさせていただきますので、記録にとどめてくださるようお願いいたします。

 よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。

増原主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま額賀財務大臣から申し出がありましたとおり、財務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

増原主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

増原主査 以上をもちまして財務省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

増原主査 次に、外務省所管について政府から説明を聴取いたします。高村外務大臣。

高村国務大臣 平成二十年度外務省所管予算案について概要説明をいたします。

 平成二十年度一般会計予算において、外務省は六千七百九十三億七千二百万円を計上しております。これを前年度と比較いたしますと、一・三%の増額となっております。また、ODA予算は、外務省所管分として、対前年度比三・〇%の減額の四千四百七億二千九百万円となっております。

 外交は、中長期の観点を踏まえ、国益を確保することを目的とするものであります。我が国の国益である我が国国民の幸福及び我が国の平和と繁栄の確保は、世界の平和と繁栄の実現なくしてあり得ません。平和な世界をつくるため、平和協力国家として、我が国の外交を積極的、機動的に進めるためには、外交の基盤を整備、強化しつつ、関係国や国際機関等との協力を安定的に継続することが不可欠であります。このような考え方に基づき、平成二十年度については、以下の三つの柱から成る重点外交政策を踏まえて、予算案を作成させていただきました。

 第一の柱は、我が国の平和、安全の確保とアジア近隣諸国との協力強化であります。

 まず、日米安保体制を基盤とする日米同盟関係を基軸としつつ、中国、韓国、ロシア等、アジア近隣諸国との対話、協力を一層強化していきます。

 また、基本的価値を重視する外交を進めつつ、イラクやアフガニスタンにおける平和の構築、中南米諸国との関係強化についても積極的に取り組み、外交の地平を拡大していきます。

 第二の柱は、グローバルな課題への責任ある取り組みであります。

 議長国を務める本年の北海道洞爺湖サミットは、国際的な諸課題の解決に向けて、我が国が積極的なリーダーシップを発揮する絶好の機会であります。環境・気候変動、開発・アフリカ、保健、世界経済、不拡散を初めとする政治問題などの重要課題について、前向きなメッセージを発信していくよう取り組みます。

 また、我が国は、成長の加速化、人間の安全保障、環境・気候変動を重点項目として、第四回アフリカ開発会議を開催します。そうした取り組みの中で、ODAの効果的な活用に努めるとともに、ODA事業量の百億ドルの積み増しといった国際公約の着実な実施を初め、我が国にふさわしい国際的責任を果たしていきます。

 第三の柱は、力強い外交のための基盤強化であります。

 我が国が国際社会の諸問題に機動的かつ的確に対応し、国益を踏まえた力強い外交を展開するため、総合的な外交力の強化を図ります。特に、定員・機構については、合理化の努力を一層進めると同時に、必要な人員、体制を整えるべく、定員の九十九名の純増及び五大使館、二総領事館の新設を図ります。また、我が国のメッセージを戦略的に発信するための体制の強化を推進していきます。

 以上が、平成二十年度外務省所管予算案の概要であります。よろしく御審議のほどお願い申し上げます。

 なお、詳細につきましては、お手元に「国会に対する予算説明」を配付させていただきました。主査におかれましては、これが会議録に掲載されますようお取り計らいをお願い申し上げます。

増原主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま高村外務大臣から申し出がありましたとおり、外務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

増原主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

増原主査 以上をもちまして、外務省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

増原主査 この際、分科員各位に申し上げます。

 質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。

 なお、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。赤松正雄君。

赤松(正)分科員 おはようございます。公明党の赤松正雄でございます。

 きょうは、当分科会で、外務省、高村外務大臣を中心に御質問させていただきます。私のきょうのテーマは、核廃絶に向けた核軍縮の一連の日本の動きといいますかアクション、こういった点について若干お話をお伺いしたいと思います。

 先ほど、外務大臣がいろいろと決められたものを儀礼的に読んでおられましたけれども、その中に、国益を踏まえた力強い外交あるいはメッセージを戦略的に発信する、こういうふうな文言がお聞きしているときに耳に入ってきたわけです。

 日本が被爆国としてどういうメッセージを発信するかというのは、古くて新しいというか、極めて重要な問題であるんですけれども、いわば理想であって、なかなか現実はそうはいかない。核廃絶なんということを言うのがある種はばかられるような雰囲気もないではない。つまり、余りに高遠な理想であって、現実はそうはいかない、そんなふうなことがあるのかもしれません。こう言うと、そうじゃないと大臣が言いそうな感じがするんですけれども。

 私なんかは、昭和四十年代に大学で国際政治の一端をかじった者としますと、いわゆる核抑止論、核の抑止力というものが非常に華やかだった時代に過ごしたわけですけれども、それから約四十年がたって、かなりそういった部分では、先ほど冒頭に申し上げたように、依然として核の存在というものは国際社会の中で変わらぬ位置を占めているわけです。一方で、さまざまな動きの変化によりまして、旧来的な核抑止論というものが、少し変化の兆しというか、色あせてはいないんでしょうけれども、かなり大きくその位置の変更を迫られている、そんなふうな転換期にあるんじゃないか、そういう認識を持つんですけれども、まず、大臣、その辺の角度からのお考えを聞かせていただきたいと思います。

高村国務大臣 我が国は、唯一の被爆国としての立場から、核兵器の廃絶は極めて重要であると認識しておりまして、そのためにも、核軍縮を含む現実的かつ着実な努力を積み重ねていく必要があると考えております。

 こうした考えのもと、我が国はこれまでも、国連決議などを通じて、すべての核兵器国に対して、核廃絶に向けた具体的な措置をとるように求めてきました。

 我が国としては、今後とも、本年四月から五月にかけて開催されるNPT第二回準備委員会を初めとするさまざまな場において、こうした措置をとるよう核兵器国に対して求めていく考えであります。

 他方、現実の国際社会においては、いまだ核戦力を含む大規模な軍事力が存在しており、また北東アジア地域は、引き続き不安定性、不確実性を内包しております。

 そのような厳しい安全保障環境のもとで我が国として安全保障に万全を期すためには、核抑止力を含む米国の抑止力に依存することが必要であると考えているわけであります。

 政府としては、国の安全保障という最重要の責務を遂行していくことと、あらゆる国に対して核軍縮、不拡散を唱えることは矛盾するものではなく、また実際、核軍縮、不拡散のため、積極的な外交を展開していきたいと考えております。

赤松(正)分科員 今のは、全然私の質問に答えてくださってなくて、外務省の担当事務方のつくられた原稿を読んでいただいただけなんです。要するに、転換期にあるんだという認識をお持ちかどうかということを聞きたかったわけです。それは、二問目の質問に答えていただくのかもしれませんが。

 去年からことしですか、キッシンジャーとかペリーとかシュルツとか、あともう一方いましたけれども、四人のアメリカの元高官が、いわゆる国際テロの時代というものを迎えて、要するに、旧来的な核抑止という部分から、拡散されて、それこそスーツケース核爆弾みたいなことも起こるかもしれない、こういった状況が起きてきている中で、おやっと思うぐらいに、かつてそういう立場に立たなかった連中が核抑止の時代の変化ということを指摘している。非常に注目される論文だと思うんですけれども、そういったものを踏まえて、時代の変化というものを感じませんかということを言っているわけです。

高村国務大臣 変化というのは確かにあるんだろうと思います。ヨーロッパ正面においては冷戦構造が崩壊した、そして今、テロの脅威というのが大きくなっている、テロリストに対する核抑止力って何だ、こういうことはおっしゃるようにあるんだろうと思います。そういう変化はある。

 ただ、この北東アジアにおいては、まだ冷戦構造が完全に崩壊したとは言えないという現実があるわけです。そして、アメリカやヨーロッパほどはテロの脅威は日本国内にはないかもしれない。そして、北朝鮮を初めとして、国家としての脅威がある。そういうことだと、この北東アジアにおいては、核抑止力という部分はまだあるのではないか。

 世界全体からいえば少しずつ変わってきてはいる、ただし、北東アジアでは変わり切っていませんねというのが私の認識でございます。

赤松(正)分科員 国際社会全体で見ればかなり大きな変化はあるけれども、この北東アジアにおいては、冷戦構造というものが引き続き牢固なものがあるので、そう簡単にはいかないよ、そんなふうに受けとめました。

 ちょっと急に聞いてみたくなったんですが、高村外務大臣は、アメリカのテレビドラマ「24」は見られたことはありますか。

高村国務大臣 残念ながら、見たことはありません。できますれば、外務大臣もそういうものを見るだけの時間の余裕が欲しいものだ、こう思っております。

赤松(正)分科員 「24」は見ましたか。いや、答えなくていいです。見たら、手を挙げてください。遠藤さんは。見てない。小池さんは。一部見た。ぜひごらんになるといいと思うんですね。今の国際社会が直面しているすべての危機管理に関する課題が全部出ているという感じがしましたね。

 私、なぜそういうことを急に言うかというと、わかっておっしゃっているんだろうと思うんですが、今やフラットな世界ということが言われていて、グローバル化と言われているときに、北東アジアとヨーロッパとを区別するということ自体が余り意味がないんじゃないのかなという感じがします。そういった意味で、ぜひとも、この国会、いつ平穏な時代になるかわかりませんが、「24」を見られることをお勧めします。全部見る必要はありませんが、半分ぐらい見られたらいいんじゃないかと思います。

 きょうの本題に入りますけれども、世界における非核兵器地帯というのが既に五つある、南極を除いて五つあるということで、非常に大きな流れになってきていると思うんですね。その流れに取り残されているのが、先ほど大臣のお言葉にもありました、冷戦構造今なおという北東アジアであるわけですけれども、その北東アジアの非核兵器地帯をつくるべく世論を喚起していくということが、さっき大臣御自身のお言葉にも、前半の方にそういうことを想起させるようなお言葉があったわけですけれども、いろいろなアクションを多重構造的に起こしていく必要があると思うんですね。

 韓国は、新しい大統領が誕生して、誕生と同時にいろいろと不都合なことが起こり始めているやに聞いておりますけれども、しかし、盧前大統領よりもより積極的にさまざまなことを動かしていこうとしているんじゃないかという期待感が持たれている、その大統領が冒頭にいわゆる朝鮮半島非核地帯ということについての積極的な姿勢を示されたというふうに私は受けとめているわけです。この韓国との間に積極的な動きを起こしていくべきだ、そういうふうなことを感じるわけです。

 まず、理念的なことはもうよくわかっておりますから、その理念に基づいて、何かのメッセージ、アクション、こういったものを起こす用意はないかということについて、大臣のお考えを聞かせていただきたいと思います。

高村国務大臣 今、六者会合でやっていること、まず北朝鮮の非核化、それを進めることがともかく一番大切なことである、こういうふうに考えております。

 一般的に言うと、非核地帯構想については、世界と当該地域の平和と安定に資するものであること、核兵器国を含むすべての関係国の同意が得られること等の適切な条件が満たされるものであれば、核拡散の防止等の目的に資するものというふうに私も考えております。

 我が国を取り巻く北東アジアにおいて、依然として不透明な要素や緊張関係が存在していること、現実に核戦力を含む大規模な軍事力が存在すること等により、非核地帯構想の実現のための現実的な環境はいまだ整っていない、こういうふうに考えているところでございます。

 李明博新大統領、韓国の新大統領も、非核・開放・三〇〇〇、非核をちゃんと北朝鮮がやって、そして開放政策をみずからとれば、韓国は協力して、国民一人当たり所得が三千ドルになるように応援していくよ、こういうことを言っている。

 今、当面やることは、北朝鮮に非核化をしてもらう、このことを関係国と協力してやっていくことだ、こういうふうに考えております。

赤松(正)分科員 それは公式的なお話で、おもしろくも何ともないお話だなというふうに思うんです。

 そういう北に対して、核計画の完全な申告と核施設に関する無能力化を六カ国協議の中で強く要求していくということは当然あるわけですけれども、そういう基本形の動きというものがしっかりあって、同時に、水面下でさまざまなアクションというかメッセージというか、いろいろなものをやっていかなくちゃいけないんじゃないのかなという感じがするわけですね。それはこういう場所でどうこう言えないということはあろうかもしれませんが、ぜひともいろいろなことをしていっていただきたい。

 例えば、きょうも朝、ラジオを聞いていたら、前からわかっていたことですが、改めて二月二十六日のアメリカのニューヨーク・フィルハーモニックの平壌での演奏という話があって、あれは米朝間の去年のある一定の時期の親密化の動きの流れを反映して決めたもので、今の関係とはちょっとばかり違うという受けとめ方もあるようですけれども、いずれにしても、シンフォニー外交というふうな言い方をする向きがあるんですけれども、これなんかも一つのおもしろい動きです。

 今私が申し上げている核廃絶、核軍縮、朝鮮半島非核兵器地帯構想というものには直接関係ないようですけれども、何かいろいろなことをやってみたらいいんじゃないかという意味では、日本から何か、歌舞伎のあれを北朝鮮に送るとか、歌舞伎をやっても余り核軍縮に関係ないかもしれませんが、北朝鮮と日本との関係を表玄関から、拉致、核、ミサイル、こういう角度で迫ったり、一方で、経済という部分をちらつかせながら、日朝正常化というものをゴールににらみながら、いろいろなことを正面からやるというだけではなくて、違うさまざまな試みがあってもおもしろいんじゃないか。

 ぜひとも、高村外務大臣、御就任の当時のときに、私は余りそんな派手なパフォーマンスはしないんだ、地道にしっかりやるんだという意味合いのことを言われたと私は記憶しているんですが、それはそれとして、後世、高村外交と言われるような、いろいろおもしろい試みをされたらどうかなというふうに少し挑発をしてみて、これについては終わりたいと思います。

 今申し上げた朝鮮半島非核兵器地帯構想というものは、先ほど大臣がおっしゃったように、現実難しいよということはわかるんですが、それより前段に来るべきものとして、私は非常におもしろい提案だと思うのは、いわゆる北極の非核兵器地帯構想というものですね。これは、見ようによってはより一層厳しいという見方ができるかもしれませんが、しかし、今世界の世論というものを喚起していくという観点からいくと非常に大事なテーマだ。

 というのは、いわゆる地球温暖化ということから北極海の氷が解けてしまうという、そこからくるところのさまざまな問題を含むということで、この北極という地域についての非核兵器地帯構想というものは、非常に重要な役割というか、国際世論の関心を呼ぶものであるという感じがするんですね。

 去年の七月ですか八月ですか、カナダのパグウォッシュ会議がこの北極の非核兵器地帯というものを提唱して、ことしの一月に、創価学会インタナショナル、SGIの池田大作会長が、まさにこのパグウォッシュ会議と同趣旨の北極の非核兵器地帯構想というものを提唱されているわけですね。

 そういった動きがあるということで、私自身、北東アジアの非核兵器地帯構想の前段に、むしろこの北極の非核兵器地帯構想というものを提唱していくというか呼びかけるというか、アクションを起こしていくということが非常に大事だと思うんですけれども、その辺についてはいかがでしょうか。

高村国務大臣 また公式的答弁になってまことに申しわけないんですが、非核地帯構想については、一般的に言えば、世界と当該地域の平和と安定に資するものであること、核兵器国を含むすべての関係国の同意が得られること等の適切な条件が満たされるものであれば、核拡散の防止等の目的に資するものと考えております。

 北極における非核兵器地帯を創設するに当たっても、このような条件が満たされるよう、まずは関係国が調整することが必要である、こういうふうに思っております。

 北極で非核兵器地帯ができれば大変結構なことだと私も考えますが、それはそこの関係国というのがあるわけで、そこの関係国の中から動きが出ない中で日本が呼びかけてもなかなか、どれだけの意味があるかという、やらなきゃいけないことはたくさんありますので。これは、できれば大変結構なことだと思っております。

赤松(正)分科員 それはごく当たり前のことをおっしゃったわけで、だから、日本政府が直接やるというものは限りあるにせよ、さまざまなものを使うという形もあるわけで、政府が表に出なくてやるという行き方もあるわけですし、要するにさまざまな動きを起こす必要がある。

 関係国、それはそうですよ、アメリカとロシアが直接的にかかわっている地域で、なかなか表立って動けないというのはそのとおりかもしれませんが、しかし、やはりそうであっても不断に日本がメッセージを発信していく、政府も一定のメッセージを発信し、またさまざまな民間を動かし、NGOにいろいろ働きかけるとか、先ほど、創価学会インタナショナル、SGIの話をしましたけれども、そういったところとも連携をとるようにするとか、いろいろなやり方があるんじゃないかということを私は痛切に感じます。

 地球温暖化によって海氷が減少するということで、海底資源へのアクセスがより容易になる、船舶の運航や海底資源の権利をめぐってさまざまな請求がなされる可能性がある、そういう地域の中で軍事競争というもの、核軍拡というものが起こることによって国際社会の危機が一層募っていくということを考えるならば、やることはいっぱいあるから優先度が低いということをおっしゃったわけですけれども、理想を掲げながら現実をいかに詰めていくかということだと思うんです。やはりそこにもしっかりとした目配りを持ってやっていただきたい、そんなふうに思います。

 またまた理想だと言われそうですが、実は、外務大臣は多分余り認知しておられないと思うのであえて申し上げますが、いわゆるつくらず、持たず、持ち込ませず、こういう非核三原則、自制の念、つまり自分で自分を縛る、日本というのはこういう角度でやっていますということを、我が身を縛る原則としての非核三原則というものを持っているわけですね。それは、私は一定の大きな役割を果たしていると思うんですが、同時に、他に働きかけるという側面から見ると非常に弱い。だから、私ども公明党は、数年前に、つくらせず、持たせず、そして使わせず、新非核三原則というものを提唱したんですね。ほとんど世の中には注目されませんでしたけれども。

 だから、例えば北極地帯あるいは北東アジア、こういった地域に非核兵器地帯構想というものを強く主張するという流れを、やはり間断なく、水面下にせよ何にせよ、あらゆる手だてをもって講じていくという場面でいわゆる効力を発揮してくる物の考え方というのが、私が今申し上げた新非核三原則というふうなものだろうと思うんですね。

 そういう点で、まあこれは聞いても同じような、それはできるにこしたことはない、こうおっしゃるだろうと思うのでもう聞きませんけれども、日米関係を基軸にしてやっていく、当然私もそういう立場に立っているわけですけれども、だからといって常に耳当たりのいいようなことばかりではなくて、そういう被爆国としての国民世論を背景にした、やはり言うべきは言うということも出していかなくちゃいけない。

 私は、日米関係というのは自民党と公明党の関係に似ていると、前、小泉さんに言ったことがあるんです。アメリカに対して何も言えない日本、自由民主党に対して何も言えない公明党、何だか知らないけれども、アメリカに常についていっている日本、自由民主党に常についていっている公明党、こういう関係は非常に類似した関係だというふうに思うんですが、どうですかと言ったら、そんなことないよ、公明党の言うことはいつも聞いているよと小泉さんは言っていましたけれども、何か言い分ありますか。

高村国務大臣 自由民主党は公明党の言うことをよく聞いていると思いますし、アメリカにも日本の言うことをよく聞かせている外交をやっている、こういうふうに自負しております。

赤松(正)分科員 私ども公明党も最近になって結構いろいろ自由民主党に注文しているという場面がございますので、今あえてこういうふうな言い方をすると外務大臣は心を開いてくれるんじゃないかと思って水を向けたんですが、ぜひともいろいろな角度でがんがん言い合う関係になっていっていただきたいと思います。

 それで、日本の核軍縮の関連予算の問題ですけれども、二十六億一千四百万強、そのうちの大半が国際機関の分担金で、国連軍縮フェローシップ、軍縮教育普及あるいは各種国際会議の開催、参加、CTBTの国内運用体制整備などの一般経費というのはわずか三億円余りだ、八分の一にすぎない。このあたりを増額する必要があるというふうに思うんですね。

 これは、それこそ、遠藤副大臣がいますけれども、財務省がどういうふうに査定したのかつまびらかに今の時点ではしませんけれども、どんどん、そういう国際世論、そういうものを巻き起こしていくために使えるお金というものをやはり毎年ふやしていく、こういうことが必要じゃないかと思います。

 同時に、この分野に限らず日本の外交にとって、表と裏というか、いろいろな角度で重要な役割、国際世論形成で果たしていってくれるのはNGOだろうと思うんですけれども、ODA予算におけるこういうNGOの比率というのを高めていくということを私たち公明党は主張しているわけです。大体二・五%ぐらいで、下位低迷というか、そういう観点があると思うんですが、そういうことではいけない、こういう主張に対して、大臣のお考えを聞かせていただきたいと思います。

小野寺副大臣 ただいま御指摘ありましたように、平成二十年度NGO関連予算、外務省分は約百三十一億円を計上しておりまして、これは十九年度とほぼ同水準を維持しております。

 このNGO、我が国は、開発途上国の戦後復興開発における地域住民の多様な援助需要にきめ細かく適応できるように、NGOの知見、役割を重視、評価しております。このような観点からも、今後ともNGOとの連携強化を進めていく考えでございます。

赤松(正)分科員 最後に、赤嶺委員が隣に座られたから急に思い出したわけじゃありませんが、沖縄における米軍人の少女暴行事件について聞こうかと思いましたが、もう時間が過ぎますので、多分赤嶺さんがやると思いますので、別にバトンタッチするわけじゃありませんけれども、私の質問をこれで終わります。

 ありがとうございました。

増原主査 これにて赤松正雄君の質疑は終了いたしました。

 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺分科員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 今、赤松委員からもお話がありましたが、米軍犯罪の問題について聞きます。

 女子中学生暴行事件が発生してから二十日になろうとしております。まず警察庁に確認をいたしますけれども、捜査状況は今どうなっているんですか。

米田政府参考人 二月十日夜に発生いたしました日本人女子中学生に対する強姦容疑事件でございますけれども、被害者からの親告を受けて沖縄県警察は所要の捜査を行いまして、二月十一日未明、当該米海兵隊員を強姦容疑で緊急逮捕したものでございます。

 現在、全容解明に向けて所要の捜査を進めているところでございます。

赤嶺分科員 前回、私は十八日の予算委員会でこの問題を質問いたしました。それ以降も、フィリピン女性の暴行事件が発覚しています。事件が繰り返され、本当に県民ははらわたが煮えくり返る思いでありますが、警察庁、このフィリピン女性に対する暴行事件について、その内容を説明していただけますか。

米田政府参考人 お尋ねの事件は、二月十八日にフィリピン国籍の女性が沖縄市内のホテルにおいて米軍人の男性に強姦され、けがをした旨を親告している事件でございまして、被害者から事情聴取を行い、告訴状の提出も受け、米軍人の事情聴取を行うなど、全容解明に向けた捜査を慎重に進めているところでございます。

赤嶺分科員 親告も受け、被害者の事情聴取もしていると。

 それで、容疑者の身柄は今米軍の手中に置かれているということですが、身柄の引き渡しは要求したんですか。

米田政府参考人 それはまた、捜査の進展に応じまして判断をされるということになろうかと思います。

赤嶺分科員 容疑は強姦なんですね。それで、被害者からの親告もあった。そうである以上、身柄を拘束して取り調べを行うのが当然じゃないですか。日本人の場合であれば、当然そうなるんじゃないですか。

米田政府参考人 事実関係の全容を慎重に解明した上で、捜査の必要性があればそのように行いたいと思いますけれども、現在まだ解明中でございます。

赤嶺分科員 捜査の必要があれば身柄の引き渡しを要求するということですが、それはどういう場合ですか。

米田政府参考人 いずれにいたしましても、その事実関係を慎重に見きわめないと、これをどのように判断するかというところにはまだ至りません。現在、そういう段階でございまして、その容疑が強まり、そして身柄を我が方に持ってきた方がいいという判断をすれば、それはアメリカ側に要求して、しかるべき手続を踏んでこちらに身柄を移すということになろうかと思います。

 いずれにいたしましても、米軍当局からは必要な協力は得られておりまして、現在のところ、それで捜査に支障を来しているということは全くございません。

赤嶺分科員 それでは、ちょっと違う角度から聞いていきたいと思うんです。

 昨年の十月十四日、岩国基地所属の米海兵隊四名が未成年の女性に対して集団で暴行するという事件が起きました。この事件に対して、日本の警察は犯人の身柄引き渡しを要求せず捜査を行いましたけれども、広島地検はこれを不起訴といたしました。

 ところが、容疑者の海兵隊四人は、米軍が、統一軍事裁判法違反の罪で予備審問が行われている。何でこんなことになるんですか。

米田政府参考人 警察といたしましては、必要な捜査を行い、そして広島地方検察庁に送致をしたものでございます。

 米軍が、そのような手続を今進めているということについては、私どもでお答えすることではないと考えております。

赤嶺分科員 何でこの事件で身柄の引き渡しを求めなかったんですか。

米田政府参考人 この事件、被害者からの親告を受けまして、集団強姦容疑ということで、起訴前の身柄の引き渡しも視野に置いて捜査を進めました。ただ、捜査の過程で明らかになった事実を踏まえ、これは任意捜査により慎重に捜査を進めることが相当であるというように判断をしたものでございます。

赤嶺分科員 その結果、不起訴になったわけですね。何で不起訴になったんですか。

米田政府参考人 起訴、不起訴の判断につきましては、警察としてお答えする立場にはございません。

赤嶺分科員 米側で行われているのは、予備審問だということですけれども、米側でそれが正式に起訴されるということになれば重大だと私は思うんです。今、この事件は米側でどうなっているんですか。

大野政府参考人 お尋ねの件でございますけれども、現在米軍当局におきまして、関係した米軍人四名について、性的暴行、窃盗、命令不服従等で訴追するかどうかの捜査を行っている。そして先日、公訴を提起するか否かを判断するための予備審問手続が行われたというように承知しております。

 我が国の裁判と申しましょうか公判に相当する軍事裁判が開かれるか否かについては、まだ決定されていないというように承知しております。

 以上でございます。

赤嶺分科員 私は、やはりこの事件の経過を見ていても、身柄が日本側の警察になかった、捜査に支障はないと言うけれども、証拠が固められないで不起訴になったのではないか。

 もう一度聞きますが、今のような場合、考える上で参考にしたいんですけれども、これまで日本が第一次裁判権を持ちながら不起訴になり、同じ事件がアメリカ側では軍事裁判で起訴になった事例はあるんですか。

大野政府参考人 ただいまお尋ねの、日本側が公訴を提起しなかった事件で米側が第二次的な裁判権を行使した事案といたしまして、当局が現時点で把握しておりますのは、平成十九年中の事件ということになるわけでございます。

 平成十九年中に米側から通知を受けるわけでありますけれども、四件ございます。平成十六年から十九年に発生した事案がその内容になるわけでありますが、合衆国軍隊構成員等によります、罪名といたしましては業務上過失傷害一件と窃盗罪三件、これが日本側で不起訴になっているわけであります。

 米側では、この業務上過失傷害罪につきましては傷害罪で起訴されまして、これは無罪になっているということでございます。それから、日本側が窃盗罪で不起訴にした三件につきましては、米側で、窃盗罪、それ以外に若干の罪名がくっついているものもございますけれども、裁判が行われ、これらはいずれも有罪になっているということでございます。

赤嶺分科員 日本側では不起訴になっているけれども、同じ罪名で軍事裁判ではこの一年間の間で裁判にかけられて、四件あり、そのうち三件は有罪だということなんですね。

 やはり私、ちょっとこういうあり方というのは疑問であります。何でこれはこんなことになるんでしょうか。やはりおかしいんじゃないですか。

大野政府参考人 個別の事件につきましてのお答えは差し控えさせていただきたいというふうに思うわけでありますけれども、一般論として申し上げますと、検察当局は、それぞれの事案の法と証拠に基づきまして適切に起訴、不起訴の判断をして処理したものというように承知しております。

赤嶺分科員 同じ罪名ですよ。日本側では裁き切れなくて米側で裁いている。やはりこの根っこに、私は地位協定の問題があると思います。

 米軍犯罪について取り決めた日米地位協定十七条五項(a)、これは何と書いてありますか。十七条五項(a)を説明するだけでいいですよ。

西宮政府参考人 読み上げさせていただきます。

 十七条五項(a)でございますが、「日本国の当局及び合衆国の軍当局は、日本国の領域内における合衆国軍隊の構成員若しくは軍属又はそれらの家族の逮捕及び前諸項の規定に従つて裁判権を行使すべき当局へのそれらの者の引渡しについて、相互に援助しなければならない。」。

赤嶺分科員 日米間は相互に援助すべき、このように地位協定に書かれているわけですね。

 それでは、十七条五項(c)、これには何と書いてあるんですか。

西宮政府参考人 十七条五項(c)でございますが、「日本国が裁判権を行使すべき合衆国軍隊の構成員又は軍属たる被疑者の拘禁は、その者の身柄が合衆国の手中にあるときは、日本国により公訴が提起されるまでの間、合衆国が引き続き行なうものとする。」。

 以上でございます。

赤嶺分科員 五項(a)では、日米が相互に協力するといいながら、十七条五項(c)では、公訴前は身柄は引き渡さない、こういう内容になっているというわけですが、それはなぜですか。矛盾した内容じゃないですか。外務省。

西宮政府参考人 五項(a)では、一般的な協力ということを規定したものであるというふうに理解しております。

赤嶺分科員 一般的な協力を規定して、具体的な話になると矛盾した内容が書かれている、それはなぜかと聞いているんです。

西宮政府参考人 我々としては、両項が矛盾しているとは考えておりません。

赤嶺分科員 地位協定の説明について、外務省のマニュアル、これは過去にも国会等で私も取り上げたことがありますが、「日米地位協定の考え方」というのがあります。そして、それの増補版というもの、これは沖縄のメディアでも取り上げられ大問題になったんですが、この中で、地位協定の十七条五項(c)、何で五項(a)と矛盾した内容が入っているかということで、外務大臣、外務省の考え方ではこのように説明しているんですよ。専ら米国との政治的妥協の産物であると。

 つまり、米国の兵士が海外においてその国の司法で裁かれることをできる限り防ぐために、アメリカの議会において米国が第一次裁判権を放棄する範囲が多過ぎる、こういう議論があって、これに対抗するために、身柄の拘束に関して米側の権利を広くしようとした、こういうことが外務省の「日米地位協定の考え方」の中に書いてあるんです。そういうことじゃないですか。その結果、十七条五項(c)が入ったということじゃないですか。

西宮政府参考人 御指摘の文書につきましては、増補版ということであれば存在はございますけれども、中身につきましてはコメントを差し控えさせていただいております。

赤嶺分科員 中身に対して差し控えさせていただいていますといって、私たちは本物の増補版のコピーを持っているんです。マル秘、無期限、「日米地位協定の考え方」と書いて。

 ですから、十七条五項(c)というのは、よくグローバルスタンダードというけれども、米側の兵士が海外で犯罪を起こしたときに、その国の司法のもとに置かれる第一次裁判権の行使をできるだけ狭めようとする、少なくともそういう米側の権利を広くしようとしたこと、その際に、外務省の文書の中では、さっき警察庁が答弁したのと同じ文言を使っているんですよ。そうではあっても、取り調べ上は支障はないということですね。こんなことを繰り返しているんですよ。結果として米側の権利を広くして、国民には、いや、取り調べ上は支障がないと。ところが、同じその文書の中に、説得力ある説明は必ずしも容易ではない、こういうぐあいに外務省書いてあるんですね。

 だから、十七条五項(c)というのは、やはり米軍兵士の権利というか、犯罪を犯した米軍兵士ができるだけ第一次裁判権にひっかからないようにしていこう、こんな考え方のもとで日米間が協定を結んでいる、不平等、不公平、特権が保障されている、こういうことになっているんじゃありませんか。だからそれが、地位協定の抜本見直しの、沖縄側から出てくる根拠になっているんじゃありませんか。外務大臣いかがですか。

高村国務大臣 地位協定というのは日本とアメリカの間にだけあるわけではなくて、軍隊を派遣する国と受け入れる国があれば、そこで地位協定は大抵の場合結ばれるわけであります。そして、アメリカというのはいろいろな国に軍隊を派遣しておりますから、それぞれの受け入れ国との間で地位協定を結んでいるわけであります。

 そして、そのアメリカのスタンダードからいえば、NATO諸国とも、まさに(c)の条項そのものと同じような規定があるわけですね。それは、主権国家は主権をできるだけそのまましたいと思うし、そして、その国を守るために若者を派遣している国はできるだけ、アメリカ側からすればできるだけその権利の保護というのをしようと思うし、そこは必ず受け入れ国と派遣国というのはぶつかりがあるわけで、そして地位協定を結ぶ。そして、その地位協定を結んでいる内容からいえば、NATO諸国が結んでいるものと同じである。

 日本の自衛隊が海外に行くことだってあるわけであります。これはPKOで参ります。PKOで行く場合には、国連と受け入れ国の間で、まさに地位協定を結ぶ場合が多いわけでありますから、その場合のスタンダードは、刑事裁判自体の裁判権は受け入れ国にない、こういう状況で我々は自衛隊を派遣している。

 そういうのに比べればはるかに、受け入れ国としての立場は、日本よりこの問題についていい国はない、こういうふうに私は認識をしております。もし違ったら教えていただければ、よく勉強したいと思いますが、私は今のところ認識しております。

赤嶺分科員 戦後六十年余り、アメリカの若者が血を流す覚悟で沖縄と日本を守るためにやってきているんだ、そういう若者が踏み外した行動をやる、大目に見て当然じゃないか、こういうことを繰り返しアメリカは言ってきたんですよ。言ってきたんですよ。私は、それはアメリカだけの言い分かと思ったら、日米双方で、いわば第一次裁判権ができるだけ行使できなくなるように、アメリカ側の権利を幅広く認めるような地位協定の十七条五項(c)を入れていた。外務省の考え方の中にも、これはなかなか説得力のある説明はできないんだけれども、捜査に支障がないからいいじゃないか、こんな説明文書が出ている。それは、警察庁のさっきの説明と同じ。そして、そういうことが岩国の事件でも、たった一年の間で、日本側では無罪になった同じ犯罪が、米側の裁判で有罪になっている。米側の軍事裁判にかけたら日本の司法よりも、それは米側としては、できるだけ軍隊は、いわゆる軍隊の行動について支障がないような範囲の司法の判断を行う、そういう疑問を持つのは当然じゃないですか。

 私は、外務大臣の考え方は根本から間違っていると思います。私は、外務大臣と一緒にイラクに視察、調査にも行ったことがありますが、あそこでもやはり外国の軍隊がその国に駐留して、その国を民主化などできるはずはないと思っていました。外国の軍隊の駐留というのは、矛盾とあつれきしか生まないんです。そして、それが沖縄で象徴的に起こっている。だから、地位協定の抜本的見直しを求めている、そのことを申し上げておきたいと思います。

 先週政府が出しました再発防止策、これについて聞いていきます。

 再発防止策というのも、戦後六十三年間、事件、事故に苦しめられてきた私たちからすれば、全く信用できるものではありません。これは私が特別に言っているのではなくて、沖縄の県民の声であることは既に外務大臣も承知していると思います。

 具体的に聞きますが、この中で、地元警察がアメリカ側の協力を得て、共同パトロールを導入できるよう、日米間で共同パトロール時の警察権限の行使などについて必要な調整を行うとしております。何を調整するんですか。

西宮政府参考人 お尋ねのいわゆる共同パトロール時の件でございますけれども、日米地位協定上、米軍は米軍構成員等に対し裁判管轄権を有するが、公務外の犯罪に関しては、日本側が第一次裁判管轄権を有しております。また、施設・区域外の米軍の警察権は、合衆国軍隊の構成員の間の規律及び秩序の維持のために必要な範囲内に限定されております。

 したがって、施設・区域外における司法警察活動は、第一義的には日本側当局が行うべきものと考えておりまして、このような前提に立って、共同パトロール時の米側の参加要員、警察権等のあり方につき、日米間で必要な確認を行っていくこととしております。

赤嶺分科員 共同パトロールについて、県警は何と言っているんですか。

米田政府参考人 この辺は、県警あるいは県民感情等を踏まえまして検討されるべき事項であるというように考えております。

赤嶺分科員 沖縄県警本部長は、先週の沖縄県議会で、共同パトロールについて、日米地位協定の規定で身柄は米軍に引き渡され、起訴まで米軍側が身柄を拘束することから、容認していないと。先ほど私が言った、やはり米側は第一次裁判権をできるだけ放棄させて自分たちでやろうとするというのが現場では根っこにあると思いますが、容認していないと言っているんです。

 現場の地元の警察が求めていないことを、何で再発防止策として政府はやろうとしているんですか。

西宮政府参考人 二十二日に発表されました再発防止策についての当面の措置でございますけれども、これまで沖縄において行われた米軍人による巡回指導を参考にして、地元沖縄県及び地元自治体の要望を踏まえて、地元警察が米軍の協力を得て共同パトロールを導入できるよう、日米間で警察権限の行使等について必要な調整を行うということでございまして、現に嘉手納周辺などで行われておると承知しておりますが、米軍人による巡回指導を参考にするということを出発点として考えております。

赤嶺分科員 県警本部長は米軍人による巡回指導でも同じ問題が起きる、こう言っているんですよ。米軍犯罪を取り扱ってきた沖縄県警の経験者は異口同音に、こんなことができるか、いつでも米軍は身柄を自分たちのところに持っていこうとしていると。これは沖縄だけじゃないですよ、外務大臣。

 私、二〇〇五年の七月の外務委員会でも取り上げたんですが、佐世保で相浦署が業務上過失傷害の現行犯で米兵を逮捕した事件があります。逮捕して、逮捕した後に米軍の憲兵隊が現場に来て、身柄を米側に引き渡せ、容疑者はけがをしているとかなんとかと言いながら、日本側の警察から強制的にこの容疑者を奪って基地の中に連れていったんですよ。相浦署の署長は、MPが米兵を強引に基地に連れていった、こう言っているんですよ。現場で捜査に当たった警察官は、MP数人で抱えるようにして連れていった、MPの行為は公務執行妨害に当たる、このように言っているんです。

 結局、現場ではこういう問題が起きているんですよ。起きているにもかかわらず、共同パトロールという。これはまさに、机上の空論としか思えないんですが、外務大臣、いかがですか。

高村国務大臣 現実にやっている地域もあります。そして、それなりの効果も上がっていると聞いております。それから、沖縄の方からもそういう要望が、この委員会の中でも沖縄選出の議員の中からありました。そして、私も、沖縄の警察の人が身柄を自分たちが確保すべきときに米側に持っていかれちゃうのではないかと危惧を持っていることは承知しております、そういう危惧があることは承知しております。ですから、そういうことがないように、警察権限の行使等についてアメリカ側との必要な調整を行う、こういうことを書いてあるわけであります。

 委員がおっしゃっているような危惧もある、別の沖縄選出の議員から、これは物すごくきくからやってくれという要望もある、そういう中で、それでは警察権限の行使等の必要な調整を行った上でやる、こういうことを申し上げている、こういうことでございます。

赤嶺分科員 時間がなくなりましたけれども、これは、だれが要望しているか、だれが反対しているかという議論じゃないんです。なぜそういうことが起きるか。これは、地位協定十七条に基づいて、刑事裁判管轄に関する日米合意文書というのがあるんです。共同で逮捕した場合には米側が持っていく、そういう合意文書があるんですよ。

 では、調整すると言いますけれども、この合意文書を見直すんですね。見直さないと解決しないですよ、いかがですか。

高村国務大臣 必要な調整を行うということであります。

赤嶺分科員 終わります。

増原主査 これにて赤嶺政賢君の質疑は終了いたしました。

 次に、鈴木馨祐君。

鈴木(馨)分科員 自由民主党の鈴木馨祐でございます。

 きょうは、予算委員会の第三分科会、外務省所管の事項につきまして質疑を進めさせていただきます。よろしくお願い申し上げます。

 まず、ことし一年という年は、夏に洞爺湖サミットもございますし、年末のCOP13から、恐らくポスト京都議定書の議論に向けて非常に大事な一年になるのであろうということが言われている一年でございます。そんな中で、日本というものが、環境技術の強みだとかいろいろなことも言われておりますけれども、やはり次のポスト京都議定書においても大きなそれなりの役割というものを果たしていく必要性がある。

 また同時に、ある意味で、日本の強みの環境技術のいわゆるエネルギー効率性というものは、今後、地球環境問題全体の解決ということで考えても、恐らく非常に大事な問題でありますし、これは日本の国益ということだけではなくて、地球環境問題、温暖化問題の解決という意味でも、これをいかにプロモートしていくか、そんなことが大事なことではないかというふうに思っているところでございます。

 そういうことを考えたときに、やはり外務省の日本外交のツールとして、対外的な支援、援助というところも非常に大きなツールとしてあるわけでございまして、例えば何か実現したい政策課題があった場合に、日本国としてそれにどうやって有効にツールというものを戦略的に使っていくか、そういったことが非常に大事なのだというふうに思っております。

 高村外務大臣、これまでもアフリカを初め開発援助の世界では非常に御知見を、高い御経験を有されている方でございますので、こういったところについて、具体的に申し上げれば、ポスト議定書の交渉に向けて実際ODAというものをどうやって戦略的に今後使っていくのか、あるいは、これからどんな形でポスト京都に向けてODAというものを絡めていくような取り組みがなされていくのか、その点についてお伺いできればと思っております。

高村国務大臣 福田総理は、本年一月のダボス会議におきまして、地球温暖化問題への対応としてクールアース推進構想を表明して、すべての主要排出国が参加する枠組みづくり等に関する決意を表されました。同時に、ODA及びそれ以外の公的資金、民間資金を活用した総額百億ドル規模の資金メカニズムを用いて、途上国との間でクールアース・パートナーシップを構築する旨、説明したわけであります。

 具体的に申しますと、途上国との間で政策協議を行い、排出削減と経済成長の両立など気候変動問題に係る考え方につき、基本的な合意を得た上で、途上国自身による地球温暖化対策の立案を支援するとともに、温室効果ガスの排出削減、気候変動の悪影響への対応及びクリーンなエネルギーの利用促進の三分野の取り組みを積極的に支援していく考えでございます。

 既に、我が国は、インドネシアを初め数カ国との間でこのクールアース・パートナーシップを推進中であり、今後も他の途上国に対して積極的に支援を行っていくことによって、二〇一三年以降の実効性ある枠組み構築へ向けた交渉を促進していきたいと考えております。

 例えば、インドネシアなんかとは、バリ会議の前からこういう構想を話し合っている。それと関係あるか関係ないかはともかくとして、議長国であるインドネシアは、そのとき日本に対して大変好意的に配慮をしたというふうに考えております。

鈴木(馨)分科員 ありがとうございます。

 ポスト京都議定書、今おっしゃっていたバリ会合を初め、ずっと議論が続いているわけでございますけれども、これは恐らくもう世界じゅうでコンセンサスがある話だと思いますが、実効的な取り組みを実際に行っていくためには、いかにして今、排出量が非常にふえている新興国というものをその枠組みに取り込んでいくか。これは、すぐにということになるのか、将来的にコミットメントをしてもらうということになるのかというのはいろいろ議論が分かれるところだと思いますが、そのことが恐らく非常に大事なのだろうというふうに思っております。実際、もとの京都議定書でカバーしている範囲というのは半分にも満たないわけでございまして、それが恐らく一番大事なことになってくるのではないかと思います。

 そんな中で、やはり今、戦略的に考えて一番大事なことというのは、恐らく新興国というものは傾向として、時として、やはり途上国側だから排出をしばらく猶予してくれとか、あるいはあるときにはそうではない立場を使うとか、いろいろ立場の使い分けというものをやられるわけでありますけれども、いかにして、新興国というものとその他の途上国というものをここできちんとした線引きをして、違う、異なる責任というか、共通だが差異ある責任という言葉がありましたけれども、そんな中で、きちんと差異がある責任というものを明確化していくかということが、実態上もあるいは形式上も必要になってくるのではないかというふうに思っております。

 そんな中で、いろいろ話を聞いていきますと、やはり、実際に温暖化によって影響を受ける、これは疫病だとか海面の上昇とかいろいろな問題がありますけれども、受けるであろう例えばアフリカの諸国であるとか太平洋の島嶼国、こういったところというものをいかにしてうまく取り込んでいくか、そんなことが大事なのではないかというふうに思っております。

 特に、ことしは五月に横浜でTICADが行われるわけでありまして、また、二〇一〇年のFIFAのワールドカップが南アフリカで行われますけれども、実際この大きなスポンサーシップをしているのが日本のソニーであったりとか、そういう意味で、これから先、日本とのかかわりというものはいろいろな意味で深まっていくのかという気がしています。

 今、現実問題として、外務省の方で、ポスト京都に向けて、こうしたアフリカ諸国であるとか島嶼国と具体的にどういった外交的な連携をされているのか、あるいは、どうやってそれを深化させて拡大させていくような取り組みというものを進められているのか、そんなことについて現状を教えていただければと思っております。

高村国務大臣 気候変動問題の解決には、すべての主要排出国が参加する枠組みを構築することが、おっしゃるように不可欠だと思っております。

 こうした我が国の基本的立場については、先月のダボス会議においても、福田総理より、クールアース推進構想として表明されているところでございます。この構想の実現のためにも、アフリカ諸国や島嶼国との間で、次期枠組みづくりに関する基本的立場について共通理解を持つことが重要であります。五月には第四回アフリカ開発会議が横浜で開催される予定であり、その機会には、我が国の立場に理解と賛成を求めていく考えでございます。

 気候変動の悪影響に脆弱なこれら諸国にとって、適応の問題は差し迫った重要な課題であります。我が国は、クールアース推進構想の中で、途上国の気候変動対策支援として、総額百億ドル規模のクールアース・パートナーシップの構築を表明いたしました。既にインドネシアを初め数カ国との間でパートナーシップを推進中であり、引き続き、支援の実施に向けて、途上国と政策協議を順次行っていく考えであります。

 我が国としても、こうした場も我が国の立場への支持と賛同を得ていく機会として積極的に活用していきたい、こう考えております。

鈴木(馨)分科員 非常に前向きな御答弁をいただきまして、ありがとうございます。

 ポスト京都に向けては、恐らく今後いろいろと非常に厳しい交渉があると思いますので、時間的な制約もございますけれども、二国間でやる、そういったバイの交渉というものもいろいろと進めていっていただければというふうに思っております。

 次に、若干テーマをかえまして、国際的にどうやって日本というものを発信していくのかという観点から質問をさせていただきたいと思います。

 今、国際テレビ放送の問題というものが議論をされております。そこで、NHKの海外放送を強化していく、そういったことがメーンの柱の一つとしてあるわけでありますけれども、実際、私もいろいろと海外に駐在して仕事をしたりとか、いろいろ外国の人間と話をしている中で、そのNHKの海外放送というものを、確かにそれも大事なことであるんですが、そこの有効性というものも一度考えた方がいいのかなという感覚を何となくは持っております。

 というのは、NHKの海外放送のチャンネルがあっても、現地の人が実際にそれを見るかというと、そこは、見ないケースが意外と多いんだと思うんですね。実際に日本発の情報なり日本のプログラムというものを、どうやったら自然に現地の方々にごらんいただくか。そのためには、例えば現地の既にあるチャンネルにプログラムを買ってもらって、ある程度日本の枠として放送してもらう。

 あるいは、例えばニュースにしても、これは考えてみればわかると思うんですけれども、例えば湾岸戦争のとき、あの映像というものは、CNNであったり、そういったアメリカのメディアからの情報というものを日本の放送局が受けて、日本のテレビのニュースの中で放映をしていた、そういう中でコメントがあることもあった、そういう状況があったと思うんです。

 それを考えれば、例えば東アジア地域でのニュースだとか、いろいろな出来事については、例えば日本のメディアの報道というものがある程度その国のチャンネルの中で、ニュースチャンネルの中で使われる、そういったことをどうやって実現していくかということに向けての取り組みを行っていくことも、日本としてのチャンネル自体をつくることと同様か、それ以上に大事なのではないかと率直なところ思うところであります。

 そこのところについて、何か御所見があればお伺いをできればと思っております。

高村国務大臣 テレビ国際放送は、CNNやBBCワールドの例を出すまでもなく、現在では、国際世論の形成に大きな影響を及ぼす存在となっているわけであります。我が国としても、対外発信強化の観点から、テレビ国際放送を抜本的に拡充する必要があると考えております。

 委員御指摘の現地放送局の活用の重要性にかんがみ、外務省としても、これまでも、途上国の放送局に対する番組提供や外国放送局関係者の訪日招待を通じた日本関連番組の作成、放映支援等の取り組みを行っているわけであります。

 他方、政治経済、伝統文化、ポップカルチャー、歴史等、我が国に関するさまざまな情報をより総合的に発信する手段として、NHK国際放送の活用は不可欠であり、その大幅な拡充の必要性については、平成十八年六月の通信・放送の在り方に関する政府与党合意や、本年二月の海外交流審議会答申「我が国の発信力強化のための施策と体制」においても指摘されているところでございます。

 このため、外務省としては、平成二十年度中に開始を目指すNHK及び子会社による国際放送が真に魅力的で効果的なものとなるよう、NHK及び総務省とも連携して協力してまいります。また、現在外務省として、米国ワシントンの放送局によるNHK国際放送の配信を支援しており、このような受信環境整備を通じ、効率的な発信が確保されるよう協力してまいります。

 あの湾岸戦争のとき、CNNが日本の放送の中でも随分テレビでされて、それが影響力を持ったと言われるのはそのとおりでありますが、それはCNNというもとがあったからそういうふうに使われたわけで、やはり日本の発信として、そのもとのものをつくることも大切である、こういうふうに考えております。

鈴木(馨)分科員 どうもありがとうございます。

 まさにおっしゃるとおりで、外国の方が見たいと思うもの、あるいはそういったクオリティーの確保というものも大事ですし、そして実際、現実問題として、やはり予算というものは有限であります。そういった中で、どういうふうにして最大の効果を出していくのか。特に、在外の日本人向けというものと同時に、対外的な発信という意味では、現地の方にどうやって見ていただくか。現地の方にどうやって、日本の考え方とか、あるいは日本の見方というものをわかっていただくか。そういった観点も大事かと思いますので、ぜひとも引き続き厳しく御指導いただければと思っております。

 予算という話から若干ずれるんですけれども、今、東シナ海でガス田をめぐる交渉がありまして、実際、胡錦濤国家主席が今度来日をされるということに絡めていろいろな話もございましたが、そのことについては触れることはありませんが、一回ここで問題の整理をぜひともさせていただきたいというふうに思っております。

 これは若干形式的な議論になりますけれども、まず最初に、このガス田を含めて、東シナ海の地域でのいろいろな問題が起こっている大きな理由として、もちろん幾つも理由はあると思いますけれども、大きな理由として、やはりそれぞれの国の、日中両国のEEZが不幸にしてかぶっている。要は、余りにも日中間の距離が短いためにこれがかぶっているというところに一番の原因があるのかな、そもそもの根本の原因というのはそこにあるのかというふうに思いますが、その点についていかがお考えでしょうか。それで正しいのかということをお答えいただければと思います。

伊原政府参考人 東シナ海の資源開発問題につきましては、日中両国間において排他的経済水域及び大陸棚の境界が画定されていないということが根本的な原因となっております。このような状況のもとで、中国が境界未画定になっている海域において一方的な開発活動を行っているというところに問題の所在があるというふうに考えております。

 ただ一方で、日中両首脳は、東シナ海を平和、協力、友好の海とするために、この問題を共同開発により一刻も早く解決する、そういう断固たる決意のもとで協議を継続していくことで一致しておりまして、この首脳間の共通認識を踏まえて、早期解決に向けて引き続き全力を尽くしているというところでございます。

鈴木(馨)分科員 ありがとうございます。

 こうした問題は世界じゅう各地で起こっている問題でございまして、そのためにも、例えば国際的な司法だとか、ある意味、そういった最終的な行き先というものもいろいろあるわけであります。そういったところへの働きかけというものを今どういう形でされているのか。

 あるいは、日本側の主張としては、日中の中間線という議論がよくされるところでありますけれども、その中間線というものが、これまでそういった国際司法の場で判例上どのようなスタンスにあるのか、そういったことを御説明いただけますでしょうか。

伊原政府参考人 この件で、国際裁判に訴えるということを日本から提起したということはございません。

 中間線については、別途、国際法局長からお答えします。

小松政府参考人 基礎的なところでございますので恐縮でございますけれども、国連海洋法条約というところに、七十四条、これが排他的経済水域、八十三条に大陸棚、これは、境界が画定されていないところにどのように境界を画定するのかということについて、ほぼ同様の規定がございます。

 そのエッセンスを申し上げますと、日中のようにお互いに向かい合っているという国の間において排他的経済水域、大陸棚の境界を画定する必要があるという場合に、この画定はどのように行うのかということにつきましては、中間線というようなことが書いてあるということではございませんで、書いてあることは、衡平な解決を達成するために、国際法に基づいて合意により行うということだけが書いてございます。

 その上で、この境界画定について、国際司法裁判所でございますとか、それから、当事者の間でその都度裁判官を選任しましてつくります仲裁裁判とか、かなりの数の判決が出ておりまして、そこで、八〇年代以降の、最近の国際判例の主要な傾向はどうかということを申し上げますと、この衡平な解決を達成するためには、手法として、両国の、向かい合っている国の海岸線の間に、暫定的に中間線をまず引いてみなさいと。その上で、中間線そのものが必ずしも境界と言っているわけではございませんで、この暫定的な中間線を衡平な解決という観点から修正させる要素があるかどうかということを検討してみなさいと。

 そういう思想で一部修正したという境界を定めているものも多くございまして、ただ、中間線との関係からいえば、手法として、まず暫定的に等距離線を引いてみて、その上で衡平の要素を勘案して考えなさい、こういうことがほぼ確立していると私どもは考えております。

鈴木(馨)分科員 ありがとうございます。

 今回のガス田をめぐるいろいろな協議の中で、これはいろいろな表現方法があると思いますが、いわゆる係争海域というか、今のお話ですとまだ境界が決着をしていない海域、恐らくはその範囲内での資源開発をという話だと思うんですけれども、日本政府として今係争中の海域というふうに認識をされている海域というのは、日本側の主張の中間線と中国側の主張する大陸棚ラインの間なのか、あるいはそもそも双方のEEZのかぶっていないところ以外のところ、要は、それぞれのEEZの両方に囲まれている、厳密に言えば中間線の両側ということになると思うんですけれども、どちらというふうに今現状では御判断をされているのか、お答えいただければと思います。

小松政府参考人 お答え申し上げます。

 国連海洋法条約の関連規定に基づきまして、一言で申しますと、大陸棚それから排他的経済水域につきましては、境界が画定していないという状況のもとでは、二百海里まではそれぞれの沿岸国に権原がある。権原というのは、英語でタイトルという言葉を訳したものでございますが、権利主張の根拠というようなことに理解をしております。

 したがいまして、日本政府といたしましては、この境界画定が行われていないという現状のもとにおいて、大陸棚にいたしましても、排他的経済水域につきましても、日本が権原、タイトルを持っております二百海里のところまでは日本の権利主張の根拠があるんだと。中国側も、その根拠があるということは認めざるを得ませんので、まさにそういう意味で、双方の基線からはかって二百海里、これは四百海里未満でございますので重複してございますので、その間が係争水域というふうに日本政府としては考えてございます。

鈴木(馨)分科員 まさにそれが今の現状なんだというふうに思っております。その海域の中でいろいろと資源の話が出てきている。いろいろな話が出てきているものですから、物がこんがらかっている。どうしたらそこがうまく、双方が完全に納得するのは難しいかもしれませんけれども、ある程度フェアな形で話し合いができるかというのが非常に大事な問題なのかなというふうに思っております。

 そんな中で、実際に今その海域での営業を一部行っている国、あるいは中間線の境界にかかる可能性があるところですら試掘段階よりある程度先に行っている国がある一方で、我が国としては余りまだ手をつけていないという状況が今の現実の事実の列挙なのかなと思っております。

 一つここで事実関係ということで確認をしたいんですけれども、一部の報道で、昨年の十一月十四日の局長級の協議が日中で行われた際に、中国側が、ガス田、今言ったいわゆる日本の権利を主張し得る海域のガス田だと思うんですが、そのガス田で日本側が試掘を行えば、これは恐らく先方にも、日本側が試掘を行いたいと言っているのは中間線よりも日本側ということは伝わっていることなんだと思いますけれども、試掘を行えば軍艦を出すというような、そんな旨の発言をしたというような報道があるんですけれども、ここのところの事実関係はどのようになっているのか、御説明いただければと思います。

伊原政府参考人 今委員御指摘の報道については承知しておりますけれども、報道されているような事実は全くございません。

鈴木(馨)分科員 ありがとうございます。

 そういうことであれば、きちんと双方がある程度冷静な話し合いをこれから行っていくということが一番大事なのかなというふうな感がございます。その中で、双方がお互いに歩み寄っていくためには、お互いが自分の権利だけを主張するんではなくて、ある程度双方がのみ得る形のものを、お互いがちょっとずつ距離を縮めていくということが重要なのかなと思っております。

 そんな中で、日本側としては、国際判例上、最初に引きなさいと言われている中間線、一般的と言われているその中間線の日本側でも、条件次第だと思いますけれども、場合によっては共同開発というものをしても構わぬという話をある程度出しているように聞いていますけれども、この中間線の中国側について、中国側からある程度これに応じ得るような、今は全くそういう状況じゃないと思いますけれども、そんな動きというものが何らかの形で出てきているのか、あるいは出てき得るのか、そんなところについて御説明をいただければと思います。

伊原政府参考人 交渉のまさに中身にかかわることでございますので、コメントを差し控えさせていただきたいというふうに思います。

鈴木(馨)分科員 それが現状なんだと思います。ただ、物事は、まさに今何も決まっていない、これから何かを決めていかなくてはいけないという状況にあるわけであります。

 現実問題として、いわゆる白樺についてはまだCNOOCはそこまで踏み込んでいない状況にあると思いますけれども、例えば天外天であるとか、中国側のガス田については相当開発を進めてきている。白樺についても、試掘は終えて実際にプラットホームが立っている状況になっているというのは、私もあの海域に一回行きまして見たところであります。そういう状況で、向こうはある意味蛇口を回せばすぐにでも営業ができる状況にある、そして日本側としては何もそうではない状況にあるわけでありますけれども、こうした状況で、果たして交渉の結果と意味できちんとイコールフッティングな状況というものが今できているのかといえば、そこはどうなのかなということを感じざるを得ないわけであります。

 そういうことを考えると、日本側としても、すぐに開発をし得るんだ、そういった形の準備というものは少なくともしておくべきであるし、例えば中間線よりも手前側、実質日本側の、今哨戒なりなんなりで権威がある程度及んでいるところというふうに認識をしておりますが、そういったところについては、ある程度の試掘なりなんなりというものを実際にすることも選択肢の一つなのかなというふうに考えております。

 先ほどいろいろ、これは帝国石油の判断だと言われますけれども、そういった中で、さっき軍艦を出すという話も特にないというふうなお話がありました。こういう意味では、先般、海洋構築物に関する法律というものを日本側でも整備したところでありますし、実際に試掘というものを行っていくことも可能性としては大いに考えるべきであるというふうに私は考えるんですけれども、そこについて、何らかの御判断なり御所見があれば伺えればと思います。

伊原政府参考人 政府として試掘を行わないという決定を行ったということはございません。今後試掘を実施するか否かについては、鉱業権者である、この場合ですと帝国石油の御判断によるというふうに考えております。経済産業省が鉱業権の設定を許可した際に、試掘する場合には前もってよく政府と相談するというように帝国石油に求めたと承知しておりますけれども、現時点では試掘に関する具体的計画は提出されていないというふうに承知をしております。

 なお、その試掘実施についての相談がある場合には、その時点での状況を踏まえて、政府として適切に対処してまいりたいというふうに考えております。

鈴木(馨)分科員 これは仮定の話になりますが、現時点で仮に試掘に関するものが提出をされた場合に、今るる状況の説明はしていただいたところでありますけれども、現時点において相談を受けた場合に、ここは、当然権利者はあなただから全く問題ないよというような形で許可をし得る状況なのかどうかについては、いかがでしょうか。

伊原政府参考人 申し上げましたとおり、現時点では具体的計画は提出されておりませんし、仮定の御質問についてはお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。

鈴木(馨)分科員 そういうことであれば、恐らく、実際に提出されてからいろいろなやりとりがなされるのかなという気がしております。

 最後に一点、これは政府のスタンスとして伺いたいんですけれども、言葉の定義というのはいろいろ難しゅうございまして、例えば共同開発という言葉にしても、恐らく、日本側が思っている共同開発と中国側が思っている共同開発というのは、ちょっと今はまだずれがあったりとか、いろいろと海域も含めてずれということがあると思いますけれども、一つここで、東シナ海ガス田をめぐる問題の解決、解決というのはなかなか判断が難しい言葉でありますけれども、今、日本国政府としては、もちろん交渉次第ということはありますけれども、最終的にどこに落ちるかじゃなくて、どこを目指すのか、どういった状況をもって目指す先というふうに考えられているのかについて、御所見を伺えればと思っております。

高村国務大臣 これは日中両首脳ではっきりしていることでありますが、東シナ海を平和、協力、友好の海とするために共同開発を行っていく、こういうことであります。その条件をどうするのかということで、今具体的に詰めているところでございます。

鈴木(馨)分科員 時間が参りましたので、終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

増原主査 これにて鈴木馨祐君の質疑は終了いたしました。

 これにて本分科会所管の審査はすべて終了いたしました。

 これにて散会いたします。

    午前十一時十一分散会


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