衆議院

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第1号 平成21年2月19日(木曜日)

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本分科会は平成二十一年二月十七日(火曜日)委員会において、設置することに決した。

二月十九日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      臼井日出男君    衛藤征士郎君

      下村 博文君    三原 朝彦君

     吉田六左エ門君    馬淵 澄夫君

      渡部 恒三君    阿部 知子君

二月十九日

 下村博文君が委員長の指名で、主査に選任された。

平成二十一年二月十九日(木曜日)

    午後一時二分開議

 出席分科員

   主査 下村 博文君

      石原 宏高君    臼井日出男君

      衛藤征士郎君    遠藤 宣彦君

      平口  洋君    三原 朝彦君

   兼務 杉浦 正健君

    …………………………………

   法務大臣         森  英介君

   外務大臣         中曽根弘文君

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       与謝野 馨君

   内閣府副大臣       谷本 龍哉君

   法務副大臣        佐藤 剛男君

   外務副大臣        伊藤信太郎君

   財務副大臣        平田 耕一君

   法務大臣政務官      早川 忠孝君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  福島 克臣君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 石井 隆之君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 佐村 知子君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    倉吉  敬君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    大野恒太郎君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    尾崎 道明君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    坂井 文雄君

   政府参考人

   (法務省人権擁護局長)  富田 善範君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  西川 克行君

   政府参考人

   (公安調査庁調査第二部長) 景山 和彦君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   河相 周夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 中島 明彦君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 廣木 重之君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 小田 克起君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 宮川眞喜雄君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局長) 別所 浩郎君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    梅本 和義君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    深田 博史君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 永長 正士君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   真砂  靖君

   政府参考人

   (経済産業省製造産業局次長) 後藤 芳一君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官) 内田  要君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官) 又野 己知君

   政府参考人

   (海上保安庁警備救難部長) 城野  功君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  高見澤將林君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  徳地 秀士君

   法務委員会専門員     佐藤  治君

   外務委員会専門員     清野 裕三君

   財務金融委員会専門員   首藤 忠則君

   予算委員会専門員     井上 茂男君

    ―――――――――――――

分科員の異動

二月十九日

 辞任         補欠選任

  臼井日出男君     平口  洋君

 吉田六左エ門君     遠藤 宣彦君

同日

 辞任         補欠選任

  遠藤 宣彦君     石原 宏高君

  平口  洋君     臼井日出男君

同日

 辞任         補欠選任

  石原 宏高君    吉田六左エ門君

同日

 第二分科員杉浦正健君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成二十一年度一般会計予算

 平成二十一年度特別会計予算

 平成二十一年度政府関係機関予算

 〔内閣府(金融)、法務省、外務省及び財務省所管〕


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     ――――◇―――――

三原主査代理 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。

 主査が所用のため、その指名により、私が主査の職務を行います。

 本分科会は、内閣府(金融)、法務省、外務省及び財務省所管について審査を行うことになっております。

 なお、各省所管事項の説明は、各省審査の冒頭に聴取いたします。

 平成二十一年度一般会計予算、平成二十一年度特別会計予算及び平成二十一年度政府関係機関予算中内閣府(金融)所管について、政府から説明を聴取いたします。与謝野金融担当大臣。

与謝野国務大臣 平成二十一年度における内閣府所管の金融庁の歳出予算要求額について、その概要を御説明いたします。

 金融庁の平成二十一年度における歳出予算要求額は二百十六億六千七百万円となっております。

 このうち主な事項について申し上げますと、金融庁の一般行政に必要な経費といたしまして百八十四億二千八百万円、投資者等の保護に必要な経費といたしまして二十億三百万円、金融機能の安定確保に必要な経費といたしまして七億九千百万円を計上いたしております。

 以上をもちまして、平成二十一年度内閣府所管の金融庁の歳出予算要求額の概要の説明を終わります。

 よろしく御審議くださいますようお願いいたします。

三原主査代理 この際、お諮りいたします。

 ただいま与謝野金融担当大臣から申し出がありましたとおり、内閣府(金融)所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

三原主査代理 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 以上をもちまして内閣府(金融)所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

三原主査代理 次に、財務省所管について政府から説明を聴取いたします。与謝野財務大臣。

与謝野国務大臣 平成二十一年度一般会計歳入予算並びに財務省所管の一般会計歳出予算、各特別会計歳入歳出予算及び各政府関係機関の収入支出予算に関する説明を申し上げます。

 まず、一般会計歳入予算額は八十八兆五千四百八十億円余となっております。

 この内訳について申し上げますと、租税及び印紙収入は四十六兆千三十億円、その他の収入は九兆一千五百十億円余、公債金は三十三兆二千九百四十億円となっております。

 次に、当省所管一般会計歳出予算額は二十二兆九千八十三億円余となっております。

 このうち主な事項について申し上げますと、国債費は二十兆二千四百三十七億円余、経済協力費は一千五百三十七億円余、経済緊急対応予備費は一兆円、予備費は三千五百億円となっております。

 次に、当省所管の各特別会計の歳入歳出予算について申し上げます。

 国債整理基金特別会計におきましては、歳入百八十三兆三千九百三十五億円余、歳出百七十一兆三千九百三十五億円余となっております。

 このほか、地震再保険等の各特別会計の歳入歳出予算につきましては、予算書等をごらんいただきたいと存じます。

 最後に、当省関係の各政府関係機関の収入支出予算について申し上げます。

 株式会社日本政策金融公庫国民一般向け業務におきましては、収入二千三百九十四億円余、支出一千六百三十八億円余となっております。

 このほか、同公庫の農林水産業者向け業務等の各業務及び沖縄振興開発金融公庫等の各政府関係機関の収入支出予算につきましては、予算書等をごらんいただきたいと存じます。

 以上、財務省関係の予算につきまして、その概要を御説明申し上げた次第でございます。

 なお、時間の関係もございまして、お手元に配付しております印刷物をもちまして、詳細な説明にかえさせていただきたいと思いますので、御記録にとどめてくださるようお願いいたします。

 よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。

三原主査代理 この際、お諮りいたします。

 ただいま与謝野財務大臣から申し出がありましたとおり、財務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

三原主査代理 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

三原主査代理 以上をもちまして財務省所管についての説明は終わりました。

 大臣は退席なさって結構でございます。

    ―――――――――――――

三原主査代理 この際、分科員各位に申し上げます。

 質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。

 なお、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、これを許します。杉浦正健君。

杉浦分科員 自由民主党の杉浦正健でございます。

 本来、私の希望としては、予算委員会の一般質疑でやらせていただきたいと思っておった事項なんですが、さまざまな事情から一般質疑の時間をいただけませんで、分科会に回ったわけですけれども、せっかく関係省庁初め皆さんに協力をお願いして質問内容を詰め上げてきたものですから、分科会ではありますが、こういう時間をいただいたことを本当にうれしく思っておる次第でございます。

 二問あるわけでございますが、一つは、金融危機に伴うアジア地域内の景気対応策ということで、主としてアジア版のIMF、かなり以前から検討されてきております。この問題について、第一問。それから、この金融危機に対する財政出動と申しますか、財政面での対応策ということで、二問目を用意させていただいておるところでございます。

 現在の、百年に一度とか、大臣は帰られましたが、戦後最大の経済危機という表現があるわけですけれども、大変な危機的状況にあることは間違いございません。

 私どもの地元は、落差が大きいといいますか、今まで比較的よかったものですから、トヨタさんの減産体制に伴う打撃は想像を絶しておりまして、トヨタさんの下請、孫請になりますと、大体、受注が三割から七割減ですよ。もうやっていけない。三日間しか働かないというのはざらでございまして、中には、もう仕事がないから生産をやめたという、極端な場合ですけれども、そういう企業もある状況であります。

 支援してくれている社長さんたちに、大変ですねと言いますと、いや、もうどうにもしようがありません、派遣社員の方は気の毒だけれどもやめてもらった、だけれども、中小企業ですから、従業員にやめてもらうわけにいかない。つまり、今はどんどん下がっていまして、まだ急降下していますね。どこでかちんと底があるかわからないわけだけれども、車社会なんだから、いずれ売れるようになるだろう。ここで従業員を切ってしまったら、上がりかけたときにだめだから、歯を食いしばって我慢するんだ。だから、重役は、お年寄りはやめてもらう。それから従業員にも、給料半分で我慢してくれというような話をしているんです。ワークシェアリングですね。

 そういうのを皆さん、いろいろな程度の差はあれ、やっておられるという姿を見ておりますと、これは何としても、こういう状態、緊急事態ですから、政治の出番で脱出しなきゃいかぬ、選挙どころじゃないという思いを強くしております。

 余談ですけれども、九月まであと六カ月強あるわけですから、六カ月しかないと考えるのか、六カ月もあるじゃないかと考えるのかですけれども、野党の人はいませんが、政党の立場を超えて、この危機にどう対応するのか。それは民主党の諸君だって、トヨタ労連の組合員が夜勤カット、超勤カット、週休三日ですよ、金土休みだ。給料がた減りですよ。このまま推移すると、正規社員のリストラにも手をつけなきゃいかぬのかなというような雰囲気もあるわけでして、人ごとではない、こう思うわけでございます。

 ちょっと余談になりましたが、金融危機に端を発する世界の大恐慌の入り口に入っていると思うんですけれども、これに対応することは政治の責任だと思います。

 絞って、金融市場の混乱について、サブプライムから始まって、リーマン・ブラザーズの倒産に端を発したアメリカを中心とした金融市場の混乱、これが今の恐慌状態の引き金を引いたことは間違いないわけですが、これは一言で言いますと、世界を今まで席巻してきたウォール街、イギリスのシティーもそうですけれども、それに代表されるアメリカ型の金融システムというのが重大な欠陥を持っておったということが明らかになったんじゃないかと言っていいと思います。したがって、国際社会でも、G8、G7、G20等をやっていますが、こういった米欧主導型の国際金融システムを検討し、変えていかなきゃいかぬということが検討され、進められているというふうに思います。

 今まで、金融問題についてはG7とかG8といった枠組みが中心になって議論されてきたんですが、今度の金融危機は世界じゅうに広まった。新興市場国、途上国を含めて世界全体に拡大したということでございまして、検討も枠組みが広がっています。金融システム安定化のための対応を行うためには、あるいは国際金融システム改革議論を行うためには広げなきゃいかぬということで、G20ですか、十一月に第一回会合が開かれた。四月にも第二回会合が予定されているということではありますけれども、中国、インド、ブラジル、いわばBRICsといった新興諸国も参加して議論が行われるようになったということは、このこと自体、大変な前進だと言っていいと思うんです。

 ちょっと御質問に直接あれしてはいなかったんですけれども、そういった中で、例えばヘッジファンド、野放しになっていたのをチェックしなきゃいけないとか、いろいろな検討が、国際社会、そういった会議でシステム改革の議論がなされていると思うんですが、概略、どんなことが議論されているか、お答え願えますでしょうか。

永長政府参考人 お答え申し上げます。

 ヘッジファンドにつきましては、今御指摘のように、G7等の場におきまして大変活発な議論が積み重ねられてきております。

 その中身といたしましては、例えば運用担当者に対しまして、リスク管理でありますとか資産評価、それから情報開示などの実務慣行、これを見直し、かつ規制を強化する、こういったことを求めようというふうな内容になっております。現在、その着実な実施に各方面で取り組んでいるところでございます。

杉浦分科員 方向として、ヘッジファンドなるものは、タックスヘイブンと言われるバハマ諸島とか、要するに、アメリカの連銀にしても日本の日銀、通貨当局が本当に権限の及ばないところに金を集めて、やりたい放題やっていたということがあるわけでしょう。それを、ともかくIMFなりなんなりでコントロールする、チェックできるというところまでいかないと、連中、今は反省していますから、つぶれかかっているし、今は静かにしているかもしれないけれども、将来はそういうことを考えないと、また悪さをしかねないと思うんです。そういう点は留意してほしいと思います。回答は求めません。

 私が触れたいのは、冒頭申し上げましたように、このグローバルなシステムをチェックし、検討し直すことは大事だと思うんですが、それを補完するために、地域においても協力体制をしっかりつくっていく必要があるんじゃないかという点であります。ADBもその一つであります。アジアにおいては、御案内のとおり、九〇年代の通貨危機がございまして、チェンマイ・イニシアチブ、あのときは大変でした。まずやったのはタイでしたか、整えられてきておるところでございます。

 参考資料に、「チェンマイ・イニシアティブの枠組みにおける二国間通貨スワップ取極の現状」というのを配らせていただきました。日本と各国、中国と各国というふうに、取り決めでこういうネットワークがつくられているという状況でございますが、こういうふうな仕組みはどういう役割を果たしているのか、わかりやすく簡単に御説明願いたいと思います。

平田副大臣 チェンマイ・イニシアチブでございますけれども、通貨危機に直面をしましたアジア諸国に対しまして、IMFを補完する形で、二国間の通貨スワップによりまして外貨準備を融通するという仕組みであることは御承知だと思います。こうした二国間の通貨スワップ取り決め、現在十六本締結をされておりまして、合計五百八十億ドル規模となっております。

 このチェンマイ・イニシアチブは、アジア諸国に対する市場の信認を高めまして、通貨危機を未然に防ぐとともに、万が一通貨危機といった状況に陥った場合にも、危機対応力を高めるという役割を果たしていると考えられているところでございます。

杉浦分科員 私の記憶では、タイがバーツ危機に陥って、宮沢さんが二億ドルだったか何か支援して、タイが破綻を免れたということを覚えておるわけなんですが、これは十六本、みんなで危ないときに備えようというのでつくって、その後、具体的に発動されているのはなさそうですね。予防という意味でいいことだ。こういう仕組みができているということは、もちろん各国が、あのアジア経済危機で、ともかくみんな苦労して、日本も大変だったけれども、構造改革の努力をした、みんな競ってしたわけですね。IMFにクレジットを頼んで、搾られて、がんがん言われて、みんな死ぬ思いで努力したということが、現在、通貨危機が広がっている中で、比較的、日本もアジアも安定していると言われている原因になっていると思うのでございます。

 日本は、アジア域内の協力体制を先導したわけですね。チェンマイと言っているけれども、チェンマイでやったからチェンマイなので、実質主導したのは日本なんですよね。リーダーシップをとってこういう仕組みをつくっているわけですけれども、そのリーダーシップを、この危機に際してさらに強化していくべきであるというふうに思っております。

 このチェンマイ・イニシアチブの強化について、G8だったかG7かな、G20か、麻生総理も中川前大臣も強化していくということを表明されて、アジア諸国も歓迎しているということを聞きましたが、どういう方向で強化に取り組んでいかれるお考えなのか、お伺いしたいと思います。

永長政府参考人 お答え申し上げます。

 チェンマイ・イニシアチブにつきましては、今お手元の資料のように、八カ国の間で十六本のばらばらの二国間の取り決めがあるというのが現状でございます。それを合計しますと実質で五百八十億ドル、こうなっております。

 今取り組んでおりますのは、この十六本ばらばらの取り決めを、一本の取り決めに基づく仕組みとする、マルチ化と我々呼んでおりますが、その作業を行っておるところでございます。こういう取り組みによりまして、一層機動的な対応が可能になると考えております。

 さらに、規模でございます。ただいま副大臣の御答弁にありましたように、現在五百八十億ドルでございますが、昨年のマドリッドのASEANプラス3の財務大臣会合におきまして、八百億ドルにこれを拡大しよう、こういう議論が行われました。

 御指摘の趣旨、我々もよくかみしめておりまして、さらなる規模拡大につきましても、危機予防、さらには危機対応能力の一層の強化に資するものとして、関係国とよく協議し、その際、日本としては積極的に主導的な立場をとってまいりたいと考えております。

杉浦分科員 中国も韓国もASEAN各国も、非常に協力的といいますか、望んでおられるようですから、一層努力をしていただきたいと思うんです。

 その先に、マルチ化で、一つの取り決めで各国が参加してやるんだったら、いっそのこと、アジア版のIMFをつくったらどうかという議論になってくると思うんですね。アジア版のIMF構想は、あの経済危機のときに日本がたしか言い出したと思うんですが、もうかなり前ですね。あの時点ではアメリカが猛反対した。反対してつぶれたというふうな経緯だったと思います。こうなったら、アメリカが反対するかどうかはちょっとわかりませんが、こういう機会だからこそ、そういう方向性を持って取り組むべきだというふうに思うんです。

 IMFについては、構造改革の一環としていろいろ検討されていますよね。あのクオータ制、ともかく途上国の意見が反映されない。出資割合に応じた規律があるので、途上国は少ないですから、意見が通らないという問題点がありますね。

 それから、アメリカとかに牛耳られている。総裁はアメリカ人しかなれない。世銀もそうですけれどもね。アジア開銀は別にして、日本人なんか絶対なれない。そういうふうに言われておって、執行部が大体欧米の人たちに占拠されておりまして、人によっては、あれはアメリカの、ウォール街の別働隊だ、そういうふうに酷評する人がおる状態だと思うんですね。ですから、IMFの機能は、お金を貸す機能、融通する機能と、それからチェックするサーベイランスの機能、二つあるんですか。それが、実権を握っているのはそれらの地域じゃない国際組織なんだ。アジアの意見は反映されない。

 このチェンマイ・イニシアチブでも、いろいろ集まってお互いの情報を交換したりサーベイランスをやっているようなんですが、青い目の人がやってきて厳しくやるというようなことで不評な面もあるわけで、この際、中国もどんどん発展しているし、韓国もそう、インドもそう、ASEANもすごいですね、経済的に。あらゆる意味で大きな力をつけてきたんだから、自前でお金を出し合って、IMFと同じ機能のものをつくる。もちろん、補完する意味で連携してやらなきゃいかぬですが、勝手にやることはよくないと思うんですが、しかし、アジアの国々が自主的につくって、お互いにチェックし合って必要な資金は融通し合う。このチェンマイ・イニシアチブを格上げすること、組織もつくってやるという方向でいくことが大事なんじゃないだろうか。恐らくアメリカも反対しないでしょう。そういうことを真剣に検討するべきじゃないかと思っておりますが、いかがでしょうか。

永長政府参考人 お答え申し上げます。

 今次の金融危機の混乱、これが世界的な広がりを見せておる。こういう中で、先進国のみならず途上国、さらにはIMFを初めとします国際機関が緊密に連携をする、こういったことが大切でありまして、その際には、やはりグローバルな観点からの取り組み、これが必要になってきておるわけでございます。

 IMFにつきましても、今御指摘のように、その改革ということが種々議論をされております。まずは、資金規模を今のままでいいのか、増資をするべきであると。その増資に時間がかかりますので、日本として、それまでの間のつなぎといたしまして、一千億ドルの融資をしようというようなこともしておるわけでございます。

 片や、これまた御指摘のいわゆるボイス、発言権、この見直しにつきましても、我々はずっと主張をしてきておるというところでございます。

 翻って、アジアでのお話でございます。

 現在、ただいまるる御説明いたしましたマルチ化という作業を一生懸命やっておるわけでございますが、アジア各国が協力をいたしまして金融危機対応能力を強めたい、そのためにサーベイランスも強化したい、こういう点におきましては、アジア通貨基金を設立すべきとの主張と目指すべき方向は、先生おっしゃるように、一緒のものであろう、このように考えております。

 繰り返しになりますが、このような議論におきまして、我が国としては主導的な役割を果たしてまいりたいと考えております。

杉浦分科員 今のところはそこまでしか言えないらしいです、中国やあちこちあって。わかりますが、方向を目指して努力してもらいたいと御注文申し上げておきます。

 それから、インドが外れているんですね、このチェンマイ・イニシアチブには。答弁を予定してもらっていますが、バイのスワップ協定は結んだようですけれども、インドもこの中に入ってもらうように、アジアの一員ですから、考えていただきたいと思います。

 済みません、時間がないので、次へ、第二問に進みます。

 次に、財政面の対応なんですけれども、先日発表された昨年の十―十二月期のGDP、年率で一二・七%。オイルショック以来の、それ以上の急落だというので、大変ショックを受けた、日本じゅうショックを受けたわけですが、このまま推移してまいりますと、このままの状況で次の四半期に行きますと、年率に換算して、年度を通して、一―三月期もそうだとしたら、二・何%ですか、GDPが下がることになる、下になるそうですね、一―三月期もこの調子で落ちれば。そういう非常に危機的状況。政府の見通し、日銀の見通しもはるかに下回るものだと言っていいと思うんですね。これが来年度ずっと一年続いたら十何%落ちるということで、底が抜けたような状態になるわけであります。

 我々は、今、政府・与党は、雇用対策とか中小企業への資金繰り、評判は余りよくないけれども二兆円の定額給付金とか、さまざまな総額七十五兆円の経済対策を取りまとめておるわけであります。ですから、まずは成立した二十年度第二次補正予算、関連法案を早く通して、執行する。それから、二十一年度当初予算を早く成立させて執行する。経済の底が抜けないようにするという努力が大事だと思うわけでございます。これは、七十五兆円全部執行しても、GDP換算すると二%とか三%にはならないんじゃないでしょうかね、真水は十二兆ということですから。

 まだ予算審議中にこんなことを言っちゃあれですけれども、現状を考えますと、予算成立後、その効果を見ながら、高速料金は下がる、定額給付金は交付される、中小企業対策をやる等々、政策が実現していくわけですけれども、その様子を見て、さらなる大型の財政面での対応が必要なんじゃないかというふうに私は思っておりますし、既に政府部内でも、あるいはそのほかでも議論が出始めている。二十兆とか三十兆とか景気のいい話が出ておりますが、そういう議論がなされていると思うんですけれども、真剣に考えなきゃいかぬと思っております。

 私は、今の経済の底が抜けないように、これは底が抜けたら予算が組めなくなります、国の本予算も。地方なんか、今、僕のふるさと愛知県だって、市町村だって、ことし食うのに精いっぱい。積立金を全部はたいて借金してやっているわけですから、これがあと一年続いたら来年はもうバンザイですね。国庫だってそうでしょう、法人税は下がる等々で。だから、相当思い切った対応策をしなきゃいかぬと思っております。

 もちろん、目先のといいますか、経済の底が抜けるのを防ぐということはあるわけですが、同時に、これはピンチなんですけれども、ある意味ではチャンスだと言っていいと思うんです。財政出動をどこにするかというのが大事だと思うんですね。

 時間がなくなりましたが、アメリカのことを多少述べてもいいかな、後はいないから。

 危機を突破する、これは第一条件だけれども、公共事業をやるなら、危機を突破した後に残る、例えば国際競争力の強化だとか、あるいは生活、産業基盤の整備だとか、そういうものを見据えて、きちっとめり張りをつけてやるということが大事だと思っておるんです。

 それで、私は党内で道州制の旗を振っておりまして、十年後か何かには都道府県がなくなって道州制にしなきゃいかぬと思っている一人なんですが、道州制の議論の中でも、議員の先生はみんな来て議論するんですけれども、その道州制を実行する前に、例えば九州だとか北海道だとか、その移行期間を含めて、例えば高速道路とか空港だとか港湾だとか、そういう基礎インフラをきちっと整備して、その上で渡さないと、道州制にして勝手にやれではとても困ると地方の意見は強いんですね。そういう将来を見据えた、どうせ財政出動するんだから、そういうところに重点的に配分した財政出動が必要なんじゃないかという見地から、若干意見を申させていただきたいと思うわけでございます。

 その際、参考になりますので、五分しかないんですが、アメリカはニューディールをやりましたね、予算が通りました。アメリカの、この間通過したニューディールについて、資料を配付してありますが、手短に御説明願えますでしょうか。

真砂政府参考人 アメリカにおきまして先般成立いたしました米国再生・再投資法でございます。

 先生の資料にもございますように、下院の歳出委員会資料によりますと、インフラ及び科学技術関連投資の額が千二百億ドルとされております。そのうち、ブロードバンド網あるいは公共施設の整備などのインフラ整備に約三百億ドル、それから、高速道路や公共輸送の投資などの輸送というところに四百八十億ドルというふうにされていると承知しているところでございます。

 なお、この景気対策法に基づく支出でございますが、これは単年度に支出されるものではございませんで、二〇〇九年度から二〇一九年度までに支出されるものと見込まれているというふうに私どもは承知しているところでございます。

杉浦分科員 そのとおりですね。日本は単年度主義ですからあれなんですが、向こうはそうではない。ただ、これも二年ぐらいで集中的に前倒ししてやるというふうに伺っていますが、そうですね。これと比べて、比較対照する余地が日本は少な過ぎるということではない。要するに二年と思ったらいいですね。これは二年でやると思ったらいいんでしょうね。回答は要りません。

 それで、クリーンエネルギー対策、科学技術振興、ヘルスケア、教育、失業対策等々、減税もさまざまありますが、主として公共事業に着目して質問させていただきたいんですが、アメリカの場合は道路及び橋の近代化。あそこは高速道路も古いですから、老朽化して橋がおっこったりする。それを全部リニューアルするということでしょう。それから、公共輸送機関への投資、鉄道あるいは空港等々いろいろ入っていると思いますが、ああいう整備をされた先進国ですから、下水道も入るかもしれない。そういうのをリニューアルするところに重点があるんだと思います。

 日本の場合は、まだ整備されていないのがいっぱいあるんですね。私は、公共事業について言えば、そこに重点的に財政出動をすることを検討すべきだというふうに思っておるわけでございます。ピンチはチャンスだ。景気対策的な視点と同時に、道州制をにらんだ中長期的戦略。危機が通過してみたら、高速道路もできておる、空港も港湾もきちっと整備されて、国際競争力がついているというふうにすべきだと思っているわけであります。

 私の資料を配らせていただきましたが、役所からいろいろ聞いて私がつくった勝手な試算でございますのであれですが、二十五兆円、五年ぐらいでやったらどうだと。五年で二十五兆円、一年五兆円投入しますと、これだけできるということです。道路約十七兆円となっていますが、これは東京の中央環状道路、これはまだ三分の一ぐらい未計画ですね。それから外郭環状、これもかなりの部分が未計画で、何か地下トンネルを掘ってあるらしくて、大変だということなんです。それから、圏央道は割合進んでおります。この三つの環状道路を全部完成させる、未計画の部分を含んで。これは含んでおります。

 それから、四国は八の字高速道路ということで、まだあれ、西の方は建設中ですね。未計画のところも一部ある。例えば、それを全部完成させる。

 九州は、環状道路はできていませんね。東国原さんの東側とかはできていない。それから、横断道路は一本しかできていなくて、もう一本つくることになっていますが、これももう全部つくっちゃう。地元負担なしですよ、国でつくっちゃう。

 それから第二東名、これも平成三十二年に完成とかなんとか言っているので、こんなのはもう五年でつくっちゃう。(平田副大臣「東海環状は入っていませんね」と呼ぶ)入っていません。ちょっと待ってください、それは後で言いますから。ともかく、目立つところだけやってしまう。これで約十七兆円でございます。

 鉄道、整備新幹線ですが、これは今やっている、ごたごたもめていますね、知事が、負担するとか。北は札幌までつくっちゃう、全部国費で。北陸新幹線も、敦賀はおろか、米原までつないじゃう。景気いいでしょう。長崎新幹線をやったら地元負担なし。それでたった三兆円です。たったと言うとおかしい、三兆円もの巨費がかかるわけですが、投ずればできるということです。

 港湾、約一兆円。コンテナターミナル、十六メーター級、一本つくると大体一千億だそうですが、今三本しかない。東京、名古屋、神戸。北九州にもつくる、四国にもつくる等々、ふやす。あるいは、バルクのターミナルも専用しかないから、東西に一個ぐらい、鉄鉱石とか石炭とか。今はバルクを釜山に持っていって、そこから小分けして日本に持ってくるというような、そんな非効率なことをやっているらしいですから、こんなのもつくる。金がかかるんじゃないかと思ったら、一兆円でできるそうです。全部国費。

 空港、これも羽田、今やっている新規、これは来年できますから、さらに今の滑走路を少し延ばすとか、改良する。中部国際空港、あと一本つくるとか、計画中ですが。福岡も、今三千メーターか何か、もう少し長くして拡張するとか。那覇、これも一本増設するというのがあるそうですが、とりあえずこの四つで約一・五兆円。

 その他約二・五兆と言ったのは、東海環状とかいろいろありますので、入るだろうということで二・五兆を加えまして、丸く二十五兆円、こうしたわけであります。こういうもの、つまり国際競争力の強化、産業基盤の整備、こういうものができると工場が立地するんですよ。平田先生、東海環状ができたら、そこへトヨタ関係の企業が、インターチェンジがずっと立地して、売れ残っていた工業団地が即売り切れて、どんどん団地ができて、早く三重の方まで引っ張って、あれをぐるっとやれば先生のところもよくなる、こういうことでありましょう。

 あれ、そんなにかからないですよ。東海環状の残は一兆円ぐらいでできちゃうと思うんですけれども、そういうのを、例えば近畿の環状道路はどうかとか、仙台のところはどうかとか、そういうのを検討していって重点的にやったらいいというふうな考えで、一応試算してみたわけでございます。

 これは将来を見据えた投資なんですけれども、例えば、システムの改善でできることもあると思うんです。

 もう終わりですね。終了いたしました。数分いいですかね。

三原主査代理 継続で。

杉浦分科員 時間が欲しいですね。

 こういった財政出動はさまざまな分野であり得ると思うんです。例えば、太陽光発電を普及するとか、規制緩和して遊休農地にパネルを張ることができる、農地法を改正してさまざまなシステムを変える。例えば、県営住宅とか市営住宅、いっぱい年寄りが住んでいますけれども、それを民活で二百年住宅、マンションをつくるとか、いろいろシステム、やり方を変えることによって民間のお金を活用させる。

 個人の金融資産が千五百兆あって、そして四割貯金だというじゃないですか。その民間の人が退職金をはたいて、ドイツみたいに太陽光発電所をつくったら、五年で償却して、あとは左うちわで老後ができるというような、あれは相当システムを変えないとできませんね。そういうことをやっていけば明るい将来が見えてくると思うので、そういう呼び水として、ともかく財政出動をどんどんやっていくということが大事だと思っております。こういうような戦略的なインフラ整備について、まず国土交通省に御意見をお伺いし、財務省に財政面での対策を聞かなきゃいけません。これはお金が要りますから。

 例えば、いわゆる埋蔵金の活用とか、あるいは今までいろいろ議論されている政府紙幣の発行、あるいは国債を発行して、高橋是清がやったように、金解禁をやめて政府の国債を日銀に買い取らせる、それで財政出動したとか、そういうことを含めて、大胆な対応が必要だと思うんです。今までの観念にとらわれない、トラウマにとらわれない。

 日銀なんか、本当は一般質疑をやったら総裁を呼んでやりたかったんですけれども、インフレとばかり闘ってきてデフレと闘ったことがないから、何かやるとすぐインフレになるとか、何とかかんとかおっしゃるんだけれども、僕らみたいに、戦後あのハイパーインフレに悩まされ、預金封鎖までやって、新円まで発行したあの時代を知っていたら、今なんかある程度発行したってインフレになんかならないですよ。

 そういうトラウマも取り除いて、この危機的対応をどうするかということを真剣に考えてほしいという期待も込めて、財務当局の御意見をお伺いして終わりたいと思います。

内田政府参考人 お答え申し上げます。

 国土交通省といたしましても、我が国の成長力の強化、地域の自立の活性化等を図るという観点から、主要都市の環状道路、高規格幹線道路、また大都市圏の拠点空港でございますとかスーパー中枢港湾、さらには広域的な地域間の交流、連携を強化する幹線鉄道というものを重点的に進める必要があると考えているところでございまして、ハード、ソフト両面から迅速かつ円滑な人流、物流体系の実現を図ってまいる必要があると考えております。

 なお、現在、国土形成計画はブロックの計画でございます。広域地方計画の策定作業中でございますが、さまざまな関係地方公共団体、地元経済界と連携を図りまして、国と地方との共同による広域ブロックの戦略的な社会資本の整備、こういうものを進めてまいりたいと考えているところでございます。

 以上でございます。

真砂政府参考人 先生の壮大な構想を聞かせていただきました。私どもも、将来の成長に必要なところに重点的に投資するという考え方は、先生御指摘のとおりだろうと思っております。

 現在、二十一年度当初予算を御審議いただいているところでございますので、まずは一次補正、二次補正、二十一年度当初予算、これを切れ目なく執行していくことが現下の経済情勢のもとで何よりも大切だというふうに私ども考えているところでございます。

杉浦分科員 大変超過しまして、失礼いたしました。

 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

三原主査代理 これにて杉浦正健君の質疑は終了いたしました。

 午後三時に本分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後一時四十九分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時開議

下村主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 法務省所管について、政府から説明を聴取いたします。森法務大臣。

森国務大臣 平成二十一年度法務省所管予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 法務省は、治安、法秩序の維持確保、国民の権利保全など国の基盤的業務を遂行するとともに、司法制度改革の推進に取り組んでおり、現下の厳しい財政事情のもとではありますが、適正、円滑な法務行政を推進するため、所要の予算の確保に努めております。

 法務省所管の一般会計予算額は六千七百二十一億四千七百万円、登記特別会計予算額は一千七百三十二億九千九百万円、うち、一般会計からの繰入額が六百八十四億四千五百万円でありますので、その純計額は七千七百七十億百万円となっており、前年度当初予算額と比較いたしますと、百七十七億一千四百万円の増額となります。

 何とぞよろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。

 なお、時間の都合もございますので、主査におかれましては、お手元に配付してあります印刷物を会議録に掲載されますようお願い申し上げます。

下村主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま森法務大臣から申し出がありましたとおり、法務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

下村主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

下村主査 以上をもちまして法務省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

下村主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、これを許します。遠藤宣彦君。

遠藤(宣)分科員 福岡一区の遠藤宣彦でございます。

 きょうは御質問の機会をいただきましてありがとうございます。私は常任委員会に何と四つ、特別委員会に一つ入っているものですから、ぜひ法務省にいろいろ御質問したいなと機会をずっとうかがっていたんですが、なかなか今までありませんでした。満を持して法務省にいろいろお伺いをしたいと思っておりますので、どうかよろしくお願いいたします。

 法務省所管のものというのは、一見地味に見えますけれども、さかのぼってみますと、司法省が内閣の中でも極めて序列が高い。つまり、これは何を意味しているかといいますと、国家の中枢、つまり、国の形を決める、国のあり方を決めるというそもそもの役所がこの法務省だと私は認識しております。ですから、国家を対象としたさまざまな憲法にまつわる問題、憲法訴訟の対象、こういった問題で登場するのが恐らく法務省だと思います。

 きょうは、そういった国家を形づくる、国の根幹をつかさどっておられるという意味においての法務省、そしてもう一つは、国が与えるさまざまな資格についてという二本の柱で御質問させていただこうと思っております。

 まず一番初めに、昨今いろいろと問題になりました国籍法についてお尋ねをしたいと思います。

 私のところにもメールがすさまじい数が来まして、これはどうなのかなということで、私自身、結論から言うと欠席をさせていただいたんですけれども、国家の根幹、国籍の問題というのはすごく重要だと思うんですね。

 日本の特徴というのは、平たく言ってしまうと、国籍を取得することによる負担よりもメリットの方が私は大きいと思います、この日本という国は。例えば、具体的に言うと、徴兵がありませんから、兵役がない。国籍を取ることによって国家から受けるサービスの方が大きいですから、日本人になりたいという人は世界の中でもかなり多いんじゃないかなというふうに思っています。

 そんな中で、国への忠誠心を試される場面というのが日本は比較的少ない。日の丸・君が代でさえいろいろな議論があるような国ですから、国家への忠誠心というのは試される場面がないけれども、国籍を取得すると非常にメリットの大きい国ということで、それゆえ国籍法の扱いというものがすごく議論になったと思います。

 しかし、あの当時、国会では解散風が吹き荒れていたものですから、さして余り課題にならなかった。しかしながら、冒頭申し上げたように、法務省そして国籍法の問題というのは、これは国家の根幹にかかわる話でございますので、これを機会に一度整理をしておいた方がいいのかなと。

 この国籍法にまつわる問題点、指摘されている問題点と、そこに対してどのような対策をとられたのかだけ、まずお伺いをしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

森国務大臣 今遠藤委員からまことに本質的な御指摘、お尋ねをいただいたわけでございますけれども、国籍法の改正につきましては、去年の国会において慎重に御審議をいただいた上で、最高裁の違憲判決状態を解消する改正がなされたところでございますが、その過程でもって各方面からさまざまな御指摘、御意見がございました。

 この改正をめぐる御議論の中では、日本人の男性が真実の親子関係がないのに虚偽の認知の届け出をして、不正に国籍取得届がされるおそれがあるとの御指摘が相当数ございました。衆議院及び参議院の各法務委員会において、その御指摘を受けまして、虚偽の届け出を防止するために必要な措置を講ずることなどを内容とする附帯決議がなされております。これを受けまして、法務省ではそのような不正を防止するための対策をいろいろと講じているところであります。

 具体的には、届け出の際の添付書類として、認知に至った経緯などを記載した父母の陳述書や子を懐胎した時期の父母の渡航履歴を証する書面などを求めることを省令に明記いたしましたほか、届け出を審査する法務局などにおいて父母双方から事情を聴取するなどして、認知が虚偽でないかどうかについて慎重に判断することといたしております。

 また、警察や入国管理局とも連携の上、偽装認知に関する情報を共有するための具体的な方法について協議し、順次実施しているところでございます。

 御参考までに、改正法は本年一月一日から施行されていますが、施行から約一カ月半が経過した二月十三日現在、七十三件の届け出がありました。そのうち約半数の三十八件が、改正により新たに届け出が可能になった、父母が婚姻していない方であると報告を受けているところでございまして、これまでのところ、問題があるケースについての報告はございません。

 なお、参議院の法務委員会においては、当分の間、半年ごとに施行状況を報告するとの附帯決議がなされておりますので、それに対応いたしますとともに、今後とも改正法の適正な運用に努めてまいります。

遠藤(宣)分科員 ありがとうございました。

 世の中は法律で縛ることももちろんなんですけれども、悪用されないようにするためには、我々がこの一番大事な根幹について常に意識して、監視をするというか、注意を払っているという姿勢が非常に重要だと思います。世の中、お役所とかよりも悪知恵を持っている人がいるので犯罪が後を絶たないので、常時これを監視した上で、その都度その都度チェックを入れていただきたいというふうに思います。

 先ほど申し上げましたように、法務省に関しては、外国人の人権とかいろいろな問題が出てきます。人権という言葉は、これはもう侵しちゃいけないということなので、非常にデリケートな問題はあると思うんですが、やはり同じように、憲法違反じゃないかとか、いろいろな問題が出てきたものが人権擁護法案という話だと思います。

 これはかなりデリケートな話だとは思うんですが、ネーミング自体が余り中立的ではないと思うんですね。ところが、鳥取県で条例がつくられて施行が停止されている。何か施行をためらわせる重大な問題点を内包しているからだと聞きますけれども、私自身は、国家や憲法の基本にかかわる問題でありますので、国籍法同様、慎重に取り計らっていただきたいと思いますが、今の時点でどのような問題が指摘されているのか、そこについてちょっとお尋ねをしたいと思います。

森国務大臣 今の御質問にありました人権擁護法案については、平成十四年に国会に提出した際や、また、その後、再提出を目指した際に、人権侵害の定義、新たな人権救済機関のあり方、人権擁護委員の資格要件等についてさまざまな御議論があったところでございます。

 同法案は、人権擁護推進審議会の答申を踏まえたものでありますが、同答申を最大限に尊重すべきとした人権擁護施策推進法の附帯決議の趣旨に照らし、人権侵害による被害者の実効的な救済等を目的とする法案の国会への提出を目指すべきものと基本的には考えております。

 しかしながら、与党内においてもさまざまな御意見があることから、与党を初めとする各般の御意見を承りながら、引き続き真摯に検討を進めてまいりたいと思います。

遠藤(宣)分科員 国籍法にしてもこちらの法案にしても、やってみたけれども失敗でしたという話は絶対許されない話ですので、ぜひとも慎重に取り扱っていただきたいというふうに思います。

 さて、きょうの新聞にも載っておりましたけれども、入国管理の問題です。

 記事によりますと、日本から強制送還されていた韓国人の女性が指紋照合で身元を確認するバイオ審査をくぐり抜けて日本に再入国していたという事件が、きょうの読売の一面にも載っていましたけれども、指紋を変造するための特殊なテープなどが流通をしているということであります。

 私の選挙区は、福岡市の博多区と東区というところで、博多港があります。古来、常に外国に接していて、外からいろいろなものが入ってくる。もちろん、いいものを取り入れて発展をしてきたんですが、同時に悪いものを入れないようにしなきゃいけない、まさにそういう峻別をしなきゃいけない最前線にあると思います。

 私は、内閣委員会に属しているので警察の話もやるんですけれども、言うまでもなく、外国人による治安の悪化というものが極めてふえている。不法滞在もふえている。一方において、世界を見渡しますと、九・一一のテロ以降、皆さんも経験されたことがあると思いますけれども、空港で靴まで脱がされるというぐらい、国家の安全にかかわる話というものは厳しくやることが主権国家の当然の姿勢だと思います。

 まず、入国管理の実態と、そして今の世界の流れの中で、外国人の扱い、そして治安をどうやって保っていくか、これはぜひ法務省の方からもお話を伺いたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

森国務大臣 今、御指摘の中にもありましたように、悪い外国人は断固として入国させないようにしなきゃなりませんし、一方、観光目的などでいい外国人はどんどん来ていただきたい、こういった二つのことがあるわけでございまして、法務省においては、円滑な入国審査に努める一方で、外国人テロリストあるいは犯罪者や不法滞在をもくろむ者などの入国を水際で阻止するために、従来から偽変造文書対策を強化するなどいたしまして、厳格な入国審査に努めてきたところです。

 これに加えまして、平成十九年十一月からは、指紋あるいは写真の個人識別情報を活用した入国審査を開始いたしておりまして、過去に退去強制歴のある多数の外国人の入国を阻止するなど、相当の効果を上げてきております。

 しかしながら一方、けさの新聞にも出ておりましたし、また、さきにも、年初に報道されましたけれども、指紋を偽装して入国を図ろうとする事案が発生をしておりまして、これは、提供された指紋の品質値などにつきましてより厳格な基準を設け、それが一定程度以下の場合には入国審査官において指の状態を目視で確認し、指紋に偽装がないか確実に確かめるよう指示したところであります。

 また、今、指紋の状態を窓口においてディスプレーで確認できないという状況でございますので、それが確認できるようにするなど、システムの改善にも努めたいというふうに思っております。

 いずれにしても、指紋の加工や偽装に対してはこれまでも対策を講じておりますが、韓国当局とも緊密な連携を図りまして、新たな手口にも適切に対処してまいりたいと考えております。

遠藤(宣)分科員 ありがとうございます。

 余計なことかもしれませんけれども、私は、きのうレクに来た方にも申し上げたんですけれども、多分、将来的には社会保障カードが国民のIDカードになって、そして外国人にも日本人にもIDカードを持たすという形になっていくんじゃないかなと思います。

 よく、プライバシーに入り過ぎだとか、個人情報がどうのこうのという話とか、あるいは監視社会になるという話がありますけれども、これだけいろいろな問題が出てきますと、やはりそういったことも視野に入れながら、十年先、二十年先を見据えながら外国人ともつき合っていく、いい外国人、悪い外国人を分けながら、きちっと峻別できるようなものをそろそろ考えていく時期じゃないかなというふうに思います。

 さて、この外国人犯罪で、なぜ日本において外国人の犯罪が多いのかということに関係しまして、一つ指摘をしたいと思います。

 これは明らかに、日本においては、言ってみれば刑務所の居心地がそんなに悪くないというんですね。これは日本人にとっても、聞いた話ですが、例えば尾道とかああいう刑務所。高齢者が刑務所に戻ってきたい、つまり、ブルーシートにくるまって寝ているよりも刑務所の方がよっぽどいいというわけですね。お医者さんもいる、歯医者さんもいる、食事もちゃんと出る、道で野たれ死ぬくらいだったら犯罪を犯して行った方がいい。あるいは、外国人犯罪についていえば、日本の場合には本当に加害者でも人権をすごく大事にしてくれる国ですから、ある国であればむち打ちの刑であるけれども、まずは大事に護送してくれるということになります。

 つまり、何を申し上げたいかといいますと、本来の刑罰の機能、犯罪抑止能力という機能、ここについて今改めて考え直さなきゃいけない時期じゃないかなと思います。ひどいものになりますと、死刑にしてほしかったから人を殺したとか、刑務所に行きたいから犯罪を犯したという人たちが出てくる。刑罰のあり方、本来持っている機能というのはどういうものなのかということを今改めて考えていかなければならない。

 そしてもう一つ、私の持論ですけれども、一番守るべき人権というのは、加害者の人権も大事ですけれども、それよりも被害者の人権、そして被害者の人権よりも普通に生活をしている一般の人たちの人権というものが守られなければ、これは、法治国家というか安定した国家とはほど遠くなってしまいますので、この優先順位を間違えないようにしなければならないと思います。

 きょうは、抑止能力としての死刑制度とか、そこまで踏み込みませんけれども、私も大学のときに法律をやった人間ですから多少のことはわかっているつもりでありますけれども、刑の機能、矯正してもう一度ちゃんとやっていこうという教育刑の機能もありますけれども、やはり被害者感情を考慮した応報刑主義、個人が個人でかたき討ちをしちゃいけないから刑罰権を国家が独占している、こういうような話がありました。しかし、昨今のいろいろな事件とか裁判のあり方とか、もろもろを見ていると、どうも一般の人権よりも加害者の人権を大事にしているんじゃないかなと思えるような話がいっぱい出てきております。

 きのうも報道がいっぱいありましたけれども、江東区でのあの事件、検察が死刑を求刑して、本人も死刑を望んでいたけれども、無期懲役になった。ここは立法府と行政府ですから、裁判についてのコメントは求めませんけれども、裁判員制度というものがもう目の前に迫っている。ですから、裁判とか刑罰とかあるいは刑務所のあり方というものが本来の世の中の安心と安全のためにどう使われるかということをいま一度原点に立ち戻って考えていく時期に来ていると思いますけれども、この点についての大臣の御所見、お考えを伺えればなというふうに思います。

森国務大臣 日本の刑務所が快適過ぎて、したがって犯罪者がまた出戻ってくる傾向が強いという御指摘ですけれども、これは私も随分いろいろなところを視察いたしましたけれども、確かに、ひところよりは随分よくなっているところもありますけれども、自由を拘束されて、そして所定の作業につくというのは、やはり入っている者にとってはかなり過酷なんだと思うんですね。

 ただ、高齢者なんかの場合は、三食つきで雨露しのげるだけでも、ある意味で彼らにとってメリットがあるというようなこともあると思いますので、それはそれで、出所した後の、どういうふうな処遇をするかということまで含めた考えをしていかないと、出戻りというのは、再犯というのは防げないと思います。ですから、そういったことをやはり総合的に考えていかなきゃならないということをまず申し上げたいと思います。

 それから、刑罰の本質については、釈迦に説法でありますけれども、さまざまな考え方があると思われますけれども、一般に、応報の原理に基づくもの、すなわち、過去の犯罪行為に対する報いとして科せられるものと解する立場を前提としながら、犯罪を予防することをも目的にしているものというふうに解されていると受けとめております。

 犯罪の予防につきましては、一般に、犯人に刑罰を科することによって一般社会に警鐘を鳴らして将来における犯罪を予防しようとする一般予防としての機能と、また、特定の当該犯人が将来再び犯罪に陥ることを予防しようとする特別予防としての機能があると解されているものと承知をしておりますが、いずれにしても、刑罰のあり方については、このような種々の観点を踏まえつつ、社会情勢の変化なども見据えながら、必要な検討を行っていくべきものというふうに考えております。

遠藤(宣)分科員 ありがとうございます。

 私は、北海道の網走刑務所も、前のところと現在のところと両方行きましたけれども、山県有朋がかつてこういうことを言っています。二度とここには戻ってきたくないという場所でなければ犯罪は抑止できぬと。これは今でも当たっていると思います。

 私は、府中刑務所も、実際に刑罰を受けている方のところもずっと回ってきましたけれども、それはもちろん、我々の日常生活からすると決して居心地がいいとは言えませんけれども、少年犯罪にしても一般の犯罪にしても、いわゆるしゃばに出てきたときに、あんなところには二度と戻るものじゃねえという気持ちをやはり植えつけるような形にしていかなきゃいけない。ごくごく当たり前の問題だと思いますけれども、その部分で、これは外国人犯罪にしても、今の刑が余り抑止力を持たないというところが、実は一般市民の感覚からすると関係があるのではないかなというふうに思います。

 繰り返して申し上げますけれども、私自身は、守るべきは加害者の人権より被害者の人権、そして被害者の人権以上に、普通に暮らしている方々が、こういうような事件というのはあり得ないということにしないとやはり厳しい。もちろん、最終的な責任は政治のあり方、行政のあり方ということになりますけれども、いま一度その原点を確認する必要があろうかと思います。

 さて、次の質問に参りますけれども、今、もう一本の柱であります国家による資格の問題というのがございます。

 世の中にはいろいろな資格がございます。そしてまた、私自身、地域を回っていると、いろいろな立場でやっている方がいる。正確に資格と言えるのかどうかわかりませんけれども、民生委員とか保護司という方々がいらっしゃる。

 きょう話すのは二つありますけれども、まず、地域で一生懸命やっている方がいる。民生委員はこちらの所管ではないんですが、前に内閣委員会で、公務員改革に際して大臣にこういう質問をしました。公務員改革をやる前に、一番大切なことは、正式の意味の公務員ではないけれども、公務員以上に公務を一生懸命やっている人たちがいっぱいいる。今申し上げたように民生委員、保護司あるいは消防団、こういう方々をまず大事にするような姿勢でやらないと、公務員改革以前の話だと思いますよ、なり手がいなくなったらもっともっと公務員をふやさなきゃいけない、まず公務員改革の第一歩は、こういった方々を大切にすることじゃないですかということを質問したことがございます。

 民生委員なんというのは厚生労働委員会の所管ですけれども、法務省関係、保護司、この保護司はもっと大変なんですね。民生委員は、地元をずっと回っていて、あの人はあそこのところを面倒を見てあげているのよ、大変ね、周りで頑張ってねという励ましの声をいただく。しかし、保護司の場合には、おれはこんな犯罪を犯しているやつの面倒を見ているんだとは言えませんから、より自分自身が世の中の役に立っているんだということを強く思っている方じゃないと務まらない仕事なんですね。そしてまた、より神経を使う仕事だと思います。

 しかし、こういう話があります。ある市で、これは市の名前は挙げられませんけれども、市長が保護司の方々と面会した。ところで保護司って何やっている方ですかと聞いて、保護司の方々が怒ったというんですね。当たり前です。

 人間は、自分を褒めてもらいたくてやっているわけではないけれども、やはりそういう公務を実際にやっている方に対して、一つは、社会的なレピュテーションというか評価をきちっと周りが、私たちは常に感謝しているんですよという姿勢、そしてもう一つは最低限の待遇というものがなければ、これはやり手がいなくなっちゃうんじゃないかなというふうに思います。

 聞くところによると、私の福岡市の弥生校区というところの方なんですけれども、そこから新潟へ行くのに旅費も出ない、そして、会ったら御飯も食べさせなきゃいけないけれども、実際にそのお金はやはり自腹になっちゃう、おれだったら我慢するけれども、この後、なり手がいるのかなという心配をしておられます。

 そういった意味で、私は、社会の重要な公務を行っている保護司の位置づけと、そしてこれからの待遇、これについてぜひ改善をしていただきたいと思っているんですけれども、そのあたりについての御所見をお伺いしたいと思います。

森国務大臣 詳しいことは後で事務方から答弁させますけれども、おっしゃるとおり、私も、保護司の方々の献身的な御活動、ある意味で命がけの場合もあるわけでございますので、本当にただただ頭の下がる思いであります。

 全国約四万九千人、今いらっしゃるわけでございますけれども、保護司の方々には、今おっしゃられたとおり給与は支給されませんけれども、その職務を行うに要する費用の全部または一部を保護司実費弁償金として支給しております。

 また、法務省としては、保護司の方々の負担を少しでも軽減すべく、その保護司実費弁償金予算の拡充を図ってきたところでございますが、それにしても、やはりボランティア率がすごく高いということは十分承知しておりまして、私の立場では、ただただ感謝を申し上げたいと思います。

坂井政府参考人 保護司の方々の待遇の実情について御説明申し上げます。

 保護司の方々の御負担を軽減させていただくために、これまでも保護司実費弁償金の増額を図るなどの措置を講じてまいりましたが、例えば平成二十一年度の予算案におきましても、その活動基盤を強化する観点から、更生保護活動サポートセンターを増設する経費などを含めまして、保護司実費弁償金について、対前年度比約三千八百万円増の約五十九万円を計上させていただいているところでございます。

 このほかにも、地域の有識者の協力を得て、保護司候補者を発掘するための保護司候補者検討協議会の経費等として、対前年度比約一千百万円増の四千六百万円を計上しております。

 また、保護司の皆様方の御労苦に少しでも報いさせていただこうということで、法務大臣表彰などの表彰を行うなど、保護司の方々の業績について広く社会に知っていただくよう努めさせていただいているところでございます。

 今後とも、保護司の方々の活動を支援してその御労苦に少しでも報いる観点から、保護司実費弁償金や表彰等の充実、活動しやすい環境の整備について、その必要性を十分検討してまいりたいと思っております。

 先ほどちょっと言い間違えまして、五十九億円でございます。失礼しました。

遠藤(宣)分科員 ありがとうございます。

 ぜひとも、本当にそういった地道にやっている方々がばかを見ないように、そして常に意識して、感謝しているんですよということを形にしてあらわすような努力というものが日本のこの社会をしっかり支えるものだと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。

 では、最後の質問になると思いますけれども、もう一つの資格というものが、今度はちょっと別の形で、司法書士とか行政書士あるいは土地家屋調査士という、いわゆる業務に絡んでの資格というものでございます。

 社会経済の変動で、今いわゆる資格職業というものが大きな波にのまれています。士職、何々士と書く職業ですね、これの業務範囲というものが大きく変動している。早川政務官なんかは弁護士ですからおわかりになると思いますけれども、例えば、日本では弁護士は五万人ぐらいですね。アメリカでは百万人ですから、聞くところによると、食えない弁護士が、救急車が走っているのを見て、それを追っかけていって一生懸命事件にしようとする、こういうことがあるわけですね。

 この失われた十年の中で、就職氷河期を迎えて、資格へのあこがれが高まって、一生懸命資格を取った方々がいっぱいいる。そういう意味で、今資格職業のあり方がすごく問われている時代になっていると思います。

 こんな中で、それぞれの所管している資格というのが幾つかありますけれども、いわゆる業際といいますか、その境目をめぐって、いろいろなもめごとがある。例えば司法書士と行政書士、これは随分もめているという話を聞きます。さらに、土地家屋調査士なんかは、もめるというよりも、私自身、国土交通委員会に入っているんですが、これから、権利関係が複雑で調査が難しい都市部なんかで土地家屋調査士の専門知識を活用していかなきゃいけないというニーズが非常にある。つまり、新たなニーズが生じている。しかしながら、さまざまなところであつれきが生じている。

 今、社会経済の変動を踏まえた上でこれをどう整理していくか。特に、省庁にまたがる話あるいは新たに発生した業務、こういったものをどうするかということがすごく重要だと思うんですが、今回取り上げた司法書士と行政書士の位置づけと今後について、そしてまた、土地家屋調査士なんかの業務範囲をきちっとして、どういう形でそれを役に立てていただくか。もっともっと持っている専門知識を社会に役立てて、そして無用な争いがないようにするためにどうすればいいのかということを最後にちょっと御質問させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

森国務大臣 今、司法書士と行政書士の業務の境とかそういうことについてのお尋ねがあったのでございますけれども、言うまでもなく、司法書士の業務というのは、主として不動産登記や商業登記の申請の代理、あるいは裁判所等に提出する書類の作成などがあります。

 このような業務については、司法書士法により原則として司法書士でない者は行ってはならないということになっておりまして、法務省としましては、司法書士制度の適正な運用のため、司法書士法の所管官庁として、同法の適正かつ円滑な執行に今後とも意を用いてまいりたいと考えております。

 ただ、いろいろな業務範囲は、時代につれまた世の中につれ、やはり必ずしも固定的なことではないと思いますから、やはりそこで相克が生じないように、所管官庁としてはしっかりとした検討を今後とも行ってまいりたいと思います。

遠藤(宣)分科員 ありがとうございます。

 ぜひとも、専門知識を社会のために、無用なあつれきなく生かせるような整理を、省庁をまたがった課題も含めて取り組んでいただきますようお願いを申し上げたいと思います。

 最後に、法務省、冒頭申し上げましたように、内閣の中でなぜ法務大臣の席次が高いか。これは国家の根幹をつかさどっているからにほかなりません。そして、きょう御質問申し上げたように、国のあり方、国籍のあり方から、地元で一生懸命やっていらっしゃる保護司の方々、あるいは土地家屋調査士とか、さまざまなところまで目配りをされなければならないお役所でありますので、法務省、そして法務大臣におかれましては、今大きな社会の変動期にあって、ぜひともしっかりとした行政を行っていただきますよう心からお願いを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

下村主査 これにて遠藤宣彦君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

下村主査 次に、外務省所管について、政府から説明を聴取いたします。中曽根外務大臣。

中曽根国務大臣 平成二十一年度外務省所管予算案について概要を説明いたします。

 平成二十一年度一般会計予算において、外務省は六千六百九十九億六千六百五十万円を計上しています。これを前年度と比較いたしますと、一・四%の減額となっております。また、ODA予算は、外務省所管分として、対前年度比一・〇%の減額の四千三百六十三億二千百二十五万円となっております。

 外交は、中長期の観点を踏まえ、国益を確保することを目的とするものであります。我が国の国益、すなわち我が国の安全と繁栄及び我が国国民の生命財産の確保は、世界の平和と繁栄の実現なくしてあり得ません。このような考え方に基づき、平成二十一年度については、以下の三つの柱から成る重点外交政策を踏まえて、予算案を作成させていただきました。

 第一の柱は、オール・ジャパンの総力を結集した機動的外交であります。

 まず、クールアース・パートナーシップその他の環境・気候変動問題への取り組み、対アフリカODAの倍増等、昨年議長国を務めたG8北海道洞爺湖サミットと第四回アフリカ開発会議、TICAD4の成果を着実にフォローアップし、ODAの戦略的拡充と国際競争力をつけるための援助効率のさらなる向上に向けた取り組みを強化していきます。また、経済上の国益の確保、増進、タイミングをとらえた機動的外交、海外の邦人や日本人社会の安全と安心の実現、知的交流の抜本的強化についても積極的に取り組んでいきます。

 第二の柱は、平和協力国家として、国際社会の平和と発展への一層の貢献であります。

 我が国の安全及び国際社会の平和と発展に向け、アフガニスタンの安定と復興のための支援、国際平和協力活動への協力や平和構築分野の人材育成に取り組みます。また、日米同盟とアジア近隣諸国との関係の強化や領土問題等諸懸案の解決に取り組みます。さらに、国連等における積極的貢献、軍縮、不拡散、原子力の平和利用及び科学技術分野での国際協力についても積極的に推進いたします。

 第三の柱は、外交力の基盤強化であります。

 我が国が国際社会の諸問題に機動的かつ的確に対応し、国益を踏まえた力強い外交を展開するため、外交実施体制の強化を中心とする総合的な外交力の強化を図ります。特に、定員・機構については、合理化の努力を一層進めると同時に、必要な人員、体制を整えるべく、定員の百名の純増及び五大使館の新設を図ります。また、我が国のメッセージを戦略的に発信するための体制の強化や、情報収集・分析機能の強化、情報防護のための基盤整備を推進していきます。

 以上が、平成二十一年度外務省所管予算案の概要でございます。よろしく御審議のほどお願い申し上げます。

 なお、詳細につきましては、お手元に「国会に対する予算説明」を配付させていただきました。主査におかれましては、これが会議録に掲載されますようお取り計らいをお願い申し上げます。

 以上でございます。

下村主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま中曽根外務大臣から申し出がありましたとおり、外務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

下村主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

下村主査 以上をもちまして外務省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

下村主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。平口洋君。

平口分科員 自由民主党の平口洋でございます。

 きょうは、分科会で質問をする機会を与えていただきまして、ありがとうございました。

 私は、現在問題になっております海賊対策、それと関連してテロ対策について、政府側の方の考え方をただしたいと思っております。

 今までインド洋上で日本の海上自衛隊が給油活動、補給活動をいたしておりました。それとの関連で話題に出ておりましたが、インド洋の西側の方、アフリカのソマリア沖で海賊が出没するということでございまして、これが結構深刻な問題になっているということで、今、政府の方で、海上自衛隊に行ってもらって日本の船舶を警護する、このようなこと、もちろん海上保安庁とともにですけれども、そのように聞いております。

 そこで、外務大臣にお伺いをしたいんですけれども、世界の海賊に対して日本の外務省としてどのような対応策を講じてこられたか、お伺いしたいと思います。

中曽根国務大臣 海賊対策のためには、言うまでもありませんけれども、沿岸各国の海賊対策の能力の向上と、関係国間での情報共有を通じた協力が重要でございます。

 我が国は、この考えに基づきまして、東南アジア諸国の海賊対策能力の強化を支援するために、海上保安機関の取り締まり能力向上のための無償資金協力や、各国海上保安機関の人材育成のための技術協力を行ってきております。

 また、情報共有の強化につきましては、海上保安機関長官級会合を開催いたしましたりして、各国の海上保安機関間の連携強化に努めるとともに、アジア域内の協力の法的な枠組みでありますアジア海賊対策地域協力協定、これはReCAAPと申しますけれども、これの作成及び実施を主導してまいりました。

 現在、協定に基づきまして、シンガポールに設置をされた情報共有センターを通じて、締約国間で情報共有を通じたさまざまな協力が行われておるところでございます。アジアの海賊対策において大変大きな役割を果たしている、そういうふうに思っています。

 東南アジアにおける海賊事案は、最近、幸いなことに、また努力もありまして、大幅に減少いたしております。

 ちなみに、数字を申し上げますと、二〇〇〇年には二百四十一件、海賊発生件数がございました。これは、当時の世界全体の約半分がこの地域であったわけでありますが、それが昨年、二〇〇八年は五十四件。二百四十一が五十四まで、これは世界全体の二割弱でありますけれども、減少しております。

 これは、先ほど申し上げました二〇〇六年の九月に発効いたしましたReCAAPの有効活用による情報の共有、それから海上保安機関長官級会合を初めとする二〇〇〇年来開催をしてまいりました各種の会合を通じた連携の強化、それから各国の個別による取り組みの強化が功を奏したもの、そういうふうに思っておりまして、我が国としてもあの地域の海賊対策に大きな貢献を果たしてきた、そういうふうに考えております。

平口分科員 相当な成果を上げてこられたということについて評価をしたいと思います。

 次に、国土交通省の方にお伺いしたいんですけれども、国土交通省の方のこれまでの海賊対策の状況、これについてお伺いしたいと思います。

又野政府参考人 お答えいたします。

 私の後に海上保安庁の方からも御説明があると思いますが、国土交通省といたしましては、保安庁と連携して、海事行政、外航海運行政の観点からも海賊対策に取り組んできておりまして、今外務大臣がお答えになったように、東南アジアで非常に効果を上げていると認識いたしております。

 具体的な対策といたしましては、我が国固有の情報連絡体制として、二十四時間の体制をとって、日本関係船舶が被害に遭った場合には直ちに情報を政府部内に伝達する、あるいはほかの船会社に伝達して注意喚起するというような体制を組んでおります。また、船会社自身の自主警備の体制づくりというのも非常に大切な話でありますので、いわゆる海賊のリスク管理評価というのを行いまして、かなりきめ細かな、施錠の対策ですとか具体的な対策内容を船会社にお示しして、その体制をとっていただいておるということであります。

 さらに、一番最近の対策といたしましては、今IMOが世界全体の海賊対策についてリーダーシップをとっていろいろな地域体制とかを組んでくれておりますけれども、海事行政の観点からも、東南アジアでの成功事例というのをソマリア周辺の諸国にも水平移転するというか、御教示申し上げるということでセミナーを開催したりしておるところであります。

 これからも、こういう幅広いさまざまな施策を講じてまいりたいと思っております。

城野政府参考人 お答えします。

 海上保安庁のとっております東南アジア海域での海賊対策についてお答えをいたします。

 東南アジア海域で発生いたします海賊事件の多くは沿岸国の領海内で発生しておりまして、領海内における海上犯罪の取り締まりにつきましては、沿岸国がそれぞれの国家主権に基づいて実施するものでありますことから、関係国が連携協力して沿岸国の取り締まり能力を向上させるということが重要であるというふうに考えてございます。

 このため、海上保安庁といたしましては、平成十二年に我が国で開催されました海賊対策国際会議を契機といたしまして、東南アジア海域沿岸国に対する取り締まり能力の向上支援や、これら国との連携協力体制の構築を中心としたさまざまな海賊対策を推進してございます。

 具体的には、JICAスキームによる研修の実施、巡視船の派遣による海上法執行機関との海賊対策連携訓練の実施、あるいは海賊対策分野の専門家の派遣、さらにはアジア海賊対策地域協力協定に基づいて設置されました情報共有センターへの職員の派遣等の対策を実施しているところでございます。

 以上でございます。

平口分科員 わかりました。

 外務省そしてまた国土交通省、海上保安庁とも、この海賊対策をかなりきめ細かく今までやってこられておって、特に東南アジアにおける海賊対策、この地域は、特にマラッカ海峡、非常に狭い海峡なんですけれども、この海峡を毎日毎日、日本の国に運ぶタンカーが行ったり来たりしておりまして、日本の石油エネルギーの九割ぐらいこれに依存した形で我が国が成り立っておるんです。そのタンカーが海賊から守られて安全に航行できるように大変努力をしなきゃいけない地域だろう、このように思いますけれども、こういったような地域に特に力を入れてやってこられたということはまず評価をしたいと思いますし、この経験をぜひとも、多分これからできると思うんですけれども、ソマリア沖の海賊対策の方に生かしていただきたい、このように思います。

 そこで、外務省の方にもう少し突っ込んだ質問をさせていただきたいんです。

 大臣の方から御説明がございましたアジア海賊対策地域協力協定、いわゆるReCAAPなんですけれども、ここで、情報共有センター、ISCというのが設立されて、これが中心的な役割を果たしてこられたということでございますが、この情報共有センター、ISCについて、どのような設立の経緯があったのか、あるいはまた、設立後、どういったような活動を具体的にしてこられたのか、お伺いしたいと思います。

別所政府参考人 お答え申し上げます。

 アジア海賊対策地域協力協定でございますが、平成十三年に、当時の小泉総理から、むしろアジアに向かいまして地域協力をしっかりとやっていくことが海賊対策で重要であるということで、そのための法的な枠組みをつくるべきであろうということを提案したところが出発点でございますけれども、その後、我が国がその作成について主導いたしまして、平成十八年に発効したわけでございます。そして、その発効直後にはシンガポールに情報共有センターが設置されて、活動を開始しております。

 具体的に、その活動の内容でございますが、アジア地域で海賊事案が発生した際には、この情報共有センターを通じて直ちに締約国間に関連情報が共有されるということになっております。そうすることによって、締約国が迅速に、かつ適切な海賊対策をとるということで、非常に重要な役割を果たしているわけでございます。

 このセンター自体、スタッフは十四人という決して大きな組織ではございませんけれども、事務局長は日本人が務めております。伊藤という方でございますが、この方々の大変な精力的な努力がございまして、国際的にも高い評価を得ているところでございます。

 少し具体的にそのイメージを申し上げさせていただきますと、情報を共有することによって協力体制ができるわけでございますが、例えば、容疑者、被害者あるいは被害船舶の発見、容疑者の逮捕、容疑船舶の拿捕、被害者の救助といったことについて、情報共有を速やかにすることによって迅速に、かつ円滑に進むということができているわけでございます。

 我が国といたしましては、この情報共有センターがアジアの海賊対策に果たしている役割というのを非常に高く評価しておりまして、今後ともこのセンターの活動を全面的に支援していきたいと思っております。

 それからまた、先ほど先生からも御指摘ございましたように、アフリカ地域において今海賊が非常に問題になっておりますけれども、このアジアでの経験というものを生かして、それをモデルとした形で、アフリカの方でも地域協力の枠組みづくりを進めようとしているというふうに承知しております。

平口分科員 ありがとうございました。

 このアジア海賊対策地域協力協定、そしてまた情報共有センター、これを日本の政府が中心になって協定を締結し、またセンターを設立し運営してきたということについて、本当に高い評価をしたいと思います。

 お話にもありましたが、今度はソマリア沖の方は自衛隊の方も参画していただけるようなので、このノウハウをぜひともソマリア沖の海賊対策についても応用していただいて、アフリカの方の海賊がふえておりますので、これがぜひとも減少するなりゼロになるなり、御努力をお願いしたいと思います。

 続いて、ソマリア沖の海賊問題について、IMO、つまり国際海事機関のジブチ会合というものが開催をされておりますけれども、この国際海事機関、IMOではどのような対策が検討されているのか、お伺いしたいと思います。

宮川政府参考人 国際海事機関、IMOのジブチ会合についてお答え申し上げます。

 一月二十六日から二十九日まで、ジブチにおいてIMO主催によりますソマリア周辺海域海賊対策地域会合が開催されまして、西インド洋及びアデン湾地域における海賊及び武装強盗の抑止に関する行動指針が、ソマリア海域の周辺十六カ国とソマリア暫定連邦政府によって採択されました。

 今回採択されました行動指針は、これに参加する周辺諸国が、国際法及び国内法にのっとって海賊対策、具体的には、海賊行為を行った者の逮捕や処罰、疑わしい船舶の拿捕などのために最大限の協力を行うことを規定しております。また、アジア海賊対策地域協力協定の枠組みを参考とした海賊情報共有センターをイエメン、ケニア、タンザニアに設置すること等を規定しております。

 さらに、本件会合では、この行動指針と並びまして、ジブチに訓練センターを設置するために、IMO事務局長が適切な措置をとることを勧告するという決議も採択されております。

 以上です。

平口分科員 ぜひとも、国際海事機関においても日本政府がリーダーシップを発揮して、本当にソマリア沖の海賊が撲滅されるように御努力をいただきたいと思います。

 ちょっと話が飛ぶんですが、去年の九月でございますけれども、エチオピアで日本の女医さん、女性の医師が誘拐をされまして、幸いなことに、ことしの一月七日にソマリアで無事解放されたという報道がございました。

 この女医さんである赤羽桂子さんの誘拐事件について、多分、誘拐事件の解決ですから、いろいろな方がいろいろな立場でいろいろな努力をされて、場合によっては金品も渡ったかもしれないと思うんですけれども、この事件解決に向けて外務省としてはどのように努力をされたのか、お伺いしたいと思います。

深田政府参考人 御指摘の事件、昨年の九月二十二日にエチオピア東部のソマリ州というところで、赤羽桂子さんと、それからもう一人はオランダ人の看護師がおったわけですが、この二人が拉致されて、直ちにソマリアの方に連れていかれ、三カ月半近く拘束されていた、こういうことでございます。

 その連れていかれたソマリアが、まさに御存じのとおり、中央政府というのが実質上存在しないということで、政府を通しての対応がなかなか困難であったということ。それから、赤羽桂子さんは、世界の医療団という、これは世界的に展開している国際的な人道支援の団体であるわけですけれども、赤羽桂子さんが所属しているこの世界の医療団が、事件発生直後から主体的に自分たちが対応するという意向を有していた。こうした事情から、犯人側との交渉等につきましては、世界の医療団を中心に行ってもらう、そして政府としてはそうした対応を側面的に支援をする、こういう形でやってきたわけでございます。

 具体的に、外務省では、事件発生直後から現地の大使館に対策本部を設け、また本省の領事局には連絡室をそれぞれ設置いたしまして、被害者の早期無事解放のため、世界の医療団はもちろん、オランダ政府を初めとした内外の関係各方面と緊密に連携を保つとともに、事件の解決に資すると思われる情報を在外公館等を通じて収集するといったような対応を行ってきた、こういうことでございます。

 また同時に、本邦在住の御家族に対しましても、事件や地域の状況を随時説明するといったような必要な対応を行ってきたということでございます。

平口分科員 この赤羽さんの事件は解決して大変よかったと思いますし、いろいろと難しい局面に遭遇されたと思うんですけれども、ぜひともこのときのノウハウなんかを生かして、誘拐事件なんかはあってはならないんですけれども、その前には、アフガニスタンあるいはイランの辺で、横浜国大の中村さんという学生さんが拉致、誘拐されたこともあります。誘拐事件というのはやはりあるものですから、これを今後ともきちっと解決していくというのは大きな役割になろうかと思います。ぜひともこの経験を生かして、今後ともこういうことが発生しないように、また、発生した場合にはきちっと解決するようにお願いしたいと思います。

 それで、海賊というのはいわゆる物取りでございます、暴力でもって物をとるということなんですが、同じように暴力を振るうものとして、やはり国際テロリストがあると思います。

 国際テロリストの問題で思い浮かぶのは、今から七年余り前ですか、平成十三年の九月十一日に、アメリカ合衆国のニューヨーク、ワシントンほかで実行されたイスラム原理主義者によるテロ事件がありまして、この世のものとも思えないような光景が展開された、世界貿易センタービルが、北棟、南棟ともに、ハイジャックされた航空機の激突で爆発、炎上したということでございます。日本人も二十数名犠牲になっております。

 この国際テロリストの活動というのは、やはりブッシュ政権にも相当大きな打撃を与えて、こういったようなことが原因となって、結局、米軍も、今までの配置体制を改めて、いわゆるトランスフォーメーションというのを実行してきていることは御案内のとおりでございます。

 これについて、私自身もちょっと経験がありまして、実は、今から十三年ぐらい前に私も秋田県で警察本部長をやりまして、平成七年から九年なんですけれども。たしか平成七年だったと思うんですが、大阪でAPECの首脳会議がございまして、そのときに秋田県の警察に飛んできた指令が、もちろん機動隊が行って現地を助けるようにということはあったんですけれども、秋田空港をきちっと警備するようにという指令が飛んできましたので、私も本部長として、大阪で開かれる会合を、何で秋田空港の辺を警備するというのに日曜日も返上してやらなきゃいけないのかと質問をしたら、当時の答えは、結局、今世界じゅうで最も恐ろしいのはイスラム原理主義によるテロなんだ、そのテロは飛行機を通じて必ず入ってきて、飛行機を通して実行されるという特徴がある、こういう分析なので、秋田空港とはいえ、やはりテロリストの通過地域になる可能性があるからきちっと警備するようにというふうな答えがありました。

 それから約五年後の平成十三年九月十一日の事件になったわけで、私も当時を思い返してみて、五年前だったんだけれども、警察庁の方の分析はかなり正しかったなという認識を持っております。

 ニューヨークの貿易センタービルのような事件が日本の国で起こる可能性がどの程度あるのか、これはだれもわかりませんけれども、可能性が全くないわけじゃないわけでございますので、こういったような国際テロに平素からきちっとした対応をしていかなくちゃいけない、このように思います。そのために、各省、いろいろな省庁が絡むと思いますけれども、それぞれ人員をきちっと配置して、予算をきちんと計上して、平素から情報収集活動あるいは水際対策のための訓練、こういったようなことをしていただきたいと思うわけであります。

 そういう意味で、テロ対策としてそれぞれの省庁がどのような対応をしてこられたのか、ちょっと省庁の数が多いんですが、まず外務省、次に警察庁、次に公安調査庁、最後に防衛省、そっちの方からお伺いしたいと思います。

別所政府参考人 テロでございますけれども、先生御指摘のとおり、いつどこで襲ってくるかもわからないという緊張感を持って対応しなければいけないというふうに思っております。

 外務省におきましては、在外公館が各国にございます、また外務本省でも関係部局が幾つかございますけれども、さまざまなレベルで、特に各国の政府等の関係機関との意見交換などを通じまして、国際テロ情勢に関する情報の収集を行っているところでございます。

 また、特に外務省の仕事といたしまして、邦人保護、それから国際テロ対策についての国際的な協力の枠組みなどについての担当があるわけでございまして、収集しました情報につきましては、関係者に共有するわけでございますけれども、特に、今申し上げましたような国際テロ対策についての国際的な枠組みの中での日本の取り組み、あるいは邦人保護といったところで、特に政策の企画、立案について応用しているところでございます。

石井政府参考人 警察の取り組みにつきましてお答えを申し上げます。

 平成十三年の米国における同時多発テロ事件以降、各国政府がテロ対策を強化し、一定の成果を上げているものの、昨年十一月、インド・ムンバイにおいて死者百数十名に上る同時多発テロが発生するなど、依然として世界各地でイスラム過激派等による大規模、無差別テロが続発しており、国際テロ情勢は予断を許さない状態にございます。

 こうした中、我が国は、ビンラディンのものとされる声明等で攻撃対象として名指しをされていること、また、アルカイーダ関係者が我が国に不法に入出国を繰り返していたこと、我が国にはイスラム過激派がテロの対象としてきた米国関連施設が多数存在することなどから、我が国にも大規模、無差別テロの脅威が存在していると言わざるを得ない状況にあると考えております。

 こうした状況を踏まえまして、警察としては、平成十六年四月、警察庁警備局に外事情報部を設置して、外事情報部長を先頭に海外の治安機関とのハイレベルで質の高い情報交換に努めているほか、都道府県警察におきましても、国内における不審人物、組織に対する情報収集に全力を挙げるとともに、テロリストの入国を防ぐための関係省庁と連携した水際対策や、重要施設、公共交通機関等の警戒警備を推進しているところでございます。

 今後とも、国内外の関係機関との一層の連携を図るとともに、この種取り組みを強化し、国際テロ対策に万全を期してまいりたいと考えております。

景山政府参考人 お答えいたします。

 公安調査庁におきましては、テロの未然防止を目的にいたしまして、国際テロ特別調査本部を設置するとともに、国内における国際テロに関する動向について調査分析を担当する専従部門を設けるなどいたしまして、国内外における国際テロ関連情報の収集、分析、評価の体制また機能の強化を図ってきたところでございます。

 具体的に申しますと、必要な情報を有するような国内外の関係者からの人的情報の収集、入手、国内外の関係機関からの関連情報の入手など、さまざまな方法によりまして関連情報の入手に努めているところでございます。

 なお、当庁が入手いたしましたテロの関連情報や、またその分析結果につきましては、必要に応じまして適時適切に政府の関係機関に提供をしているところでございます。

 以上でございます。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 防衛省の取り組みでございますけれども、基本的に重要な点は四点ほどあると思います。

 一つは、先ほど来答弁がございますように、情報収集でございまして、防衛省のあらゆるセンサーをやって集める、そして直ちに情報を共有する、そしてまた各国の国防機関との関係を重視しております。

 二点目は、平素からの訓練ということでございまして、都道府県本部、四十七都道府県すべてと自衛隊で共同訓練をやっておりまして、そういったことを積み重ねていくということではないかというふうに思っております。

 三点目は、今までも実際にいろいろな、ムンバイ等でもテロがありますので、そういったケースをよく分析して教訓を身につけていくということではないかというふうに思っております。

 それから、いずれにしましても、特定の情報が入ったときには、やはりそれなりの関係省庁間の体制をとるということで、ここでは内閣官房が音頭をとって非常にきちっとやれる体制になっているというふうに理解をしております。

平口分科員 海上保安庁も、もしあれば答えてください。

城野政府参考人 お答え申し上げます。

 海上保安庁では、平成十三年九月の米国同時多発テロを背景に、海上保安庁長官を本部長といたします国際テロ警備本部を設置し、全庁的体制でテロ対策に取り組んでいるところでございます。

 特に、テロ関連情報の収集等につきましては、外国船舶や国内外の関係機関等を通じまして情報収集を実施いたしますとともに、平成二十年四月には本庁警備救難部に警備情報課を新設するなどして、情報収集・分析体制を強化しておるところでございます。

 このような情報体制のもとで、国内の重要警備対象施設に対する巡視船艇、航空機による監視警戒、あるいは外航船舶への立入検査等のテロ警戒を実施いたしますとともに、テロ等の発生危険海域等を航行する船舶に対しまして航行警報を実施しております。また、枢要な国際港湾等に設置されました港湾危機管理官等に海上保安部署長等を充てまして、これらを中心に、各港湾におきまして関係機関との情報交換、監視警戒、テロ事案を想定した合同訓練の実施等を行い、水際対策を適切に実施しているところでございます。

 今後とも、国内外関係機関との連携及びテロ関連情報の収集・分析体制につきまして一層その強化を図り、テロ対策に万全を期してまいることとしております。

 以上でございます。

平口分科員 時間が来ましたので最後の問いにしたいと思うんです。

 関係省庁が数多く、そしてそれぞれが大変努力をされているということはよくわかりましたので、この流れできちっと今後ともやっていただきたいと思いますが、いずれにしても、外務省、警察庁、公安調査庁、防衛省、海上保安庁、それぞれあるわけでございまして、これらの間できちんとした情報の交流と、そしてまたまとまった水際対策のようなことがやはり必要になるんじゃないかというふうに思います。その前提として、やはりきちんとした人員そして予算というものを確保しなければいけない、このように思います。

 こういう観点から、最後に、取りまとめに当たられる内閣官房の方のお考えをお伺いしたいと思います。

下村主査 内閣官房福島内閣審議官、時間が過ぎていますので簡潔にお願いします。

福島政府参考人 お答えいたします。

 テロ対策において何よりも重要なことは、テロを未然に防止するということでございます。政府全体としてのテロの未然防止対策を推進いたしますため、平成十六年十二月、内閣官房長官を長とする国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部におきましてテロの未然防止に関する行動計画を策定し、これに基づきまして、各省庁が連携して諸対策に当たってまいりました。

 具体的には、テロリストを入国させないための水際対策の強化といたしまして、出入国管理及び難民認定法の改正等によりまして、テロリストに対する入国規制や入国審査時における外国人の指紋採取を実施、また、テロに使用されるおそれのある物質の管理の強化の一環といたしまして、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律の改正により病原性微生物の管理を強化する等といった諸対策を講じておりまして、人員や予算の確保を含めて、その着実な推進に取り組んでいるところでございます。

 また、議員御指摘のとおり、テロ対策におきましては情報共有体制の構築が非常に重要な問題でありますが、内閣官房長官を議長とする内閣情報会議及び事務の内閣官房副長官を議長とする合同情報会議の強化に努め、関係省庁間の情報共有を図りますとともに、内閣情報分析官を置き、総合的かつ高度な評価、分析を行っているところであります。

 依然としてテロ情勢は厳しいことから、昨年十二月、内閣総理大臣が主宰し全閣僚を構成員とする犯罪対策閣僚会議におきまして決定されました犯罪に強い社会の実現のための行動計画二〇〇八の中にもテロ対策を盛り込んでおります。今後とも、関係省庁の緊密な連携のもと、これらを早急かつ強力に措置していくこととしております。

 以上でございます。

平口分科員 以上で私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

下村主査 これにて平口洋君の質疑は終了いたしました。

 次に、石原宏高君。

石原(宏)分科員 自由民主党の石原宏高でございます。

 本日は、予算委員会の第三分科会で外務大臣、外務省そして警察庁の方々に御質問をさせていただく機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 まず初めに、ホットな話題でありますけれども、今週来日をされました米国のクリントン国務長官来日の成果についてお伺いいたします。

中曽根国務大臣 一昨日、十七日ですけれども、クリントン国務長官が来日をされたわけです。御案内のとおり、今回の国務長官の来日というのは国務長官就任後初の海外訪問ということでありますけれども、その訪問先として我が国を訪問されました。また、これも既に発表されておりますけれども、オバマ大統領が最初にホワイトハウスに招待する外国の首脳として麻生総理に声をかけられているわけでありまして、これはもう、オバマ政権の日本重視、日米同盟重視のあらわれである、そういうふうに思っております。

 国務長官は、就任前から、公聴会の場等におきまして、繰り返して日米同盟の重要性を強調されておられました。今回訪日の際にも、やはり日米同盟は米国の海外政策の礎である、そういうふうに述べておられるわけです。

 私とクリントン国務長官との会談におきましては、まず、在日米軍再編の着実な実施などを通じた日米同盟の一層の強化、これで一致をいたしました。またさらに、北朝鮮及び中国等のアジア太平洋地域の情勢、またアフガニスタン、それから、国際的な今課題であります気候変動やエネルギーの問題、さらに、これも大きな課題であります金融、世界経済の問題、そしてアフリカ開発など、こういうグローバルないろいろな課題についての意見交換を行い、また、相互の考え方をお互いに理解を深めることができた、そういうふうに思っております。

 また、大変我が国にとっても大事な北朝鮮問題でございますけれども、これにつきましては、長官との間で、拉致と核とミサイルと、この諸懸案の包括的な解決が重要であるということ、それから、核の問題では、検証可能な形で完全な非核化を実現すべく、日米、さらには日本とアメリカと韓国で緊密に連携していくということでも確認をいたしました。

 さらに、非常に長官は拉致問題についても思いを寄せておられまして、米国のこれは懸案事項でもあります、そういうふうに述べられるとともに、これも御承知のとおり、拉致被害者の御家族と面会されたということも私たちは高く評価をしているところでございます。

 さらに、在沖縄海兵隊のグアム移転に係る協定の署名が行われました。これもクリントン国務長官来日の成果である、私はそういうふうに考えております。

石原(宏)分科員 本当に幅広く中曽根外務大臣とクリントン長官は意見交換をされたということで、大変すばらしい会談だったのではないかと思います。

 ただ、ちょっと残念なことは、今のマスコミが与党批判が大変厳しいものですから、きょうも、昼の番組を見ていたら何を言っていたかというと、今最後にお話をされたグアム移転協定に関して、経費負担が日本の負担が六割だ、多い、すべて日本が負担するのかという批判と、普天間基地の移転について、義務を負わされて日本政府がアメリカと沖縄県の板挟みになっているというような意地悪なコメントが多いわけでありますけれども、外務省の方に事前にちょっとお伺いをしたら、六割というのは、実は貸付金も含まれていて六割ということで、日本政府が負担をするのは三割弱ということで、これはしっかりとどこかの場面で説明をしていく必要があると思います。それで、貸しているお金は、アメリカが思いやり予算から返していくわけではなくて、アメリカの財政の中で返していくという話も聞きましたので。

 あともう一つ、普天間基地の移転をグアム移転の協定の中で約束をしているというふうな報道がありますけれども、これは事実なんでしょうか。

中曽根国務大臣 最初の委員のお話についてもちょっと述べさせていただきたいと思うんですけれども、大変重要な御指摘をいただきました。

 我が国がアメリカの海兵隊のグアム移転に係る経費については、おっしゃいましたとおり二十八億ドルでありまして、六十億ドルの中の二十八億ドル、残りの部分は融資等でございます。その点は我々もしっかりとこれから国民の皆さんにも御説明しなければいけない、そういうふうに思っております。

 それから、もう一つは普天間基地のお話でありますけれども、これについては、普天間基地のどういうあれでしたか、最後の。

石原(宏)分科員 普天間基地の移転も、グアム移転の協定の中に実行するんだということを再度約束して、アメリカと沖縄の板挟みになっているという報道もされているんですけれども、それは認識は事実でしょうか。

中曽根国務大臣 失礼いたしました。

 今回の署名は、先ほど申し上げましたように、海兵隊のグアム移転に係る署名であります。これの内容は、あくまでグアム移転事業の実施のあり方について規定をしたものでありまして、普天間飛行場の代替施設の建設につきましては、これは、従来からのといいますか、二〇〇六年の五月のロードマップ、これの内容を改めて確認したものにすぎないわけでありまして、何ら新しいものを規定しているわけではございません。

 この点に関しましては、沖縄県の仲井真知事も先日、今回署名された協定はあくまでも日米両政府のロードマップの内容を再確認したものとの認識である、そういうコメントを発出されているわけでございます。

 現在の普天間基地の代替施設に関する政府案というのは、これは十分いろいろな調査を行った上で計画がなされているものでありまして、今回のグアム移転のものとはまた別個のものでありますが、これは米軍再編の中の一つでございます。

石原(宏)分科員 よくわかりました。ちょっとマスコミがやはり意地悪な報道をしているんじゃないかなというような印象を受けました。

 続きまして、ODA関係について質問をさせていただきたいと思います。

 ODAは日本外交にとって大変重要な手段であります。現在の状況を考えると、金融経済危機への対応を含む国益の確保のために、ODAを有効的に活用していく必要があるというふうに考えますけれども、特に、途上国の内需拡大を図り、ひいては日本経済に貢献するためにも、ODAを効率的に活用して途上国のインフラ整備を進めるとともに、そこに日本企業が深く関与をして利益を上げていくような形でのODAを積極的に進めるべきではないかと私は思うんですが、ある意味、海外公共投資と言うと語弊があるかもしれませんが、そういうことについて外務省の御見解をお聞かせください。

中曽根国務大臣 開発途上国の貧困対策、これの解決のためには、削減のためには、いわゆる貧困対策ということだけじゃなくて、その国の経済発展を支援するということが大変大事なわけでございます。そういう意味では、我が国は、開発途上国の経済成長を促進する、従来からインフラ整備への支援を大変重視してやってきております。

 現下のこの経済危機、こういう状況下におきましては、アジアの地域が、開かれた成長センターとして世界経済の再生に貢献するということが大事だろう、そういうふうに思っておりまして、そういう観点から、我が国は、先般の一月に行われましたダボス会議、この機会にも、アジア自身の成長力の強化と、それから内需拡大の推進に向けて、我が国はODAについては総額一兆五千億円以上の支援を行う用意がある、そういうふうに表明をしたところでございます。

 今後は、先ほど申し上げましたようなインフラの整備も含めまして、支援の具体化に努めていきたい、そういうふうに思っております。

 なお、ちょっと長くなって恐縮でございますが、アジアのみならず、当然のことながらアフリカへの支援というものも行っておるわけでございますが、昨年のTICAD4、我が国で行いましたTICAD4におきましても、アフリカにおける成長加速化を促進するために、道路網とかあるいは送配電線に焦点を当てた広域インフラの整備にも積極的に取り組んでいくということを表明しております。来月三月には、ボツワナでこのTICAD4の閣僚級のフォローアップ会合を開催することになっておりまして、今後とも支援の具体化に努めていきたいと思います。

 なお、委員から、日本の企業の関与等も必要じゃないか、そういうお話がありますけれども、我が国は大変すぐれたいろいろな技術があります。省エネ技術、環境技術といろいろなものがあります。そういう技術とかノウハウを活用いたしまして、そういう途上国への技術移転などを通じて、我が国のいわゆる顔の見える援助を促進するということも大事でありますし、また、我が国の企業が積極的に、民間企業、そういうところで技術を生かして地域の発展に貢献するということは大変大事なことでありますので、そういう点もよく配慮しながら途上国支援を行っていきたいと思っております。

石原(宏)分科員 外務大臣、ありがとうございました。

 やはり、日本は環境技術も含めてすべての技術において大変先進的な国でありますから、そういう技術をまさに発展途上国のために、ODAを介してフル活用していくということが、今大臣が言われたように、世界の発展のためにも重要ではないかというふうに思います。

 経産省の方に来ていただいているんですけれども、私は大変興味を持っているんですが、日本の国産機YS11以来、三菱重工がMRJ、三菱リージョナルジェットというものを開発しようとしておりますけれども、その海外販売に対して政府としての積極的な支援をするべきではないかと私は思っているんですが、実際にどういうことをされているのか、お聞かせいただけますでしょうか。

後藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 航空機の産業は、これから中長期的に大きな成長が見込まれております。また同時に、部品ですとか素材という技術がかなり高い技術を用いますもので、これが技術的な波及効果をほかの産業分野にも及ぼしてまいります。こうした観点から、我が国の産業の今後の発展にも大変大事な分野だと思っております。

 今先生から御指摘の三菱リージョナルジェット、いわゆるMRJのプロジェクトでございますが、御指摘のとおりに、かつてのYS11からほぼ半世紀を経て、日本で機体全体を取りまとめようというプロジェクトでございます。我が国産業界が現在開発を進めておりますが、こうした観点から、とても大切なプロジェクトだと思っております。

 御指摘の、できました機体をどのように販売促進をしていくかという点でございますが、政府としましても、これを支援してまいることは大変大事であると思っております。

 具体的には、例えば、我が国の総理でございますとか大臣が海外の要人と会われます際の機会を通じまして、日本にもこういうすばらしい機体がこれからあるよというようなことを紹介いただいているということでありますとか、あるいは外務省とも協力をいたしまして、海外でエアショー、いわゆる航空ショーでございますが、こういうのが開かれます際には、在外日本大使館におきましてMRJのレセプションを開催するということも実際に行っております。

 あと、実際にこの機材が売れてまいるということからまいりますと、最後は金融の面が大事になりますが、日本貿易保険、いわゆるNEXI、ネクシーと申しますが、これらを通じまして輸出信用を補完いたしまして、こうした支援を通じまして、引き続きMRJのプロジェクトの販売の促進ということを進めてまいりたいと思っております。

石原(宏)分科員 本当に半世紀ぶりの日本の航空機製造、MRJに大変私は期待しておりますので、なかなかトップセールスというふうには政府は言いづらいところがあると思いますけれども、いろいろな形でぜひともバックアップの方をよろしくお願いしたいと思います。

 ちょっと似たような観点なんですけれども、次に、原子力発電所の普及についてお伺いをしたいと思います。

 ちょうど二年前ぐらいでありますが、みずほコーポレート銀行の齋藤頭取が、私の昔の上司なんですけれども、日本は原子力発電所の周辺機器の技術というものが非常にあって、それがないと世界の原子力発電所はできない、一回話を聞いてみなさいということで、ちょうど去年、党で、四月から六月にかけて、私は日本の活力創造特命委員会に参加をさせていただきまして、その中でも、委員の方に来ていただいて、みずほコーポレート銀行の産業調査部の人にも来てもらって、日本の原子力発電所の技術について説明をしてもらいました。

 それで、私は、一九八三年にフィリピンでアキノ上院議員が暗殺された年に、実はアキノさんのところに居候でおりまして、アキノさんが突然帰って、マニラ空港で暗殺をされたんですが、今はその息子さんがフィリピンの上院議員になっておられます。

 実はフィリピンの大使なんかともよく会ってお話をするんですが、大分よくなってきてはいるんですけれども、フィリピンはまだまだ電力事情が悪くて、原子力発電所を日本の技術、そして日本の資金で、日本がつくってくれたのなら大ウエルカムだというふうに大使も言われていて、ただ、恐らく、アジアの諸国で環境を考えたときに、やはり石炭や石油の発電よりも原子力というものに注目が高まっているのではないかと思いますけれども、原子力発電の導入に関心を持っている国に対して外務省がいかなる支援を行われているのか、お聞かせを願えますでしょうか。

伊藤副大臣 原子力発電を導入するにはいろいろな要件が必要なんですけれども、導入を企画する国にとっては、原子力エネルギーの特性というものがありますので、核不拡散、また原子力安全及び核セキュリティーを確保するための基盤というものを整備するということが必要となってくるわけであります。

 外務省としては、原子力発電の導入に関心を持っているアジアの諸国の基盤整備を促進するために、国際原子力機関、IAEAとともにセミナーを開催するなどの支援を行っております。

 今後とも、このような支援を継続して行っていくという考えでございます。

石原(宏)分科員 ぜひとも積極的に取り組んでいただきたいと思います。

 説明を聞いたら、大体三千億円ぐらい、建設に六年ぐらいかかるので、均等につくっていくと年間五百億円ぐらい、利ざやがどのぐらいかわかりませんけれども、昔は建設だと二割ぐらいもうかった。一割もうかったと仮定しても五十億ですから、結構いい、商売と言うと余りよくないですけれども、いい商売であります。もちろん、安全は、基盤整備はしっかりやらなければいけないんですが、私は、環境対策、環境立国を福田総理のときに掲げていたわけでありますから、ぜひとも原子力発電所の普及について、外務省でも引き続き御支援をいただきたいと思います。

 ちょっとその関連でお伺いしたいんですけれども、アメリカのブッシュ前大統領がインドと原子力に対する協定を結んだような話を聞いたのですが、インドはNPTに入っていない。そういう中で、日本としてインドとの原子力協力というのはあり得るのかどうか、御見解をお聞かせ願えますでしょうか。

伊藤副大臣 現時点においては、インドとの間で原子力協定の締結交渉を行う具体的な予定はないわけであります。

 将来的にインドとの原子力協定を行うかどうかについては、核実験モラトリアムの継続を含む約束と行動の実施など、さまざまな要素を考慮して判断する必要があるというふうに考えております。

石原(宏)分科員 ありがとうございます。

 インドはなかなか難しいかもしれませんが、基盤整備をして、そして安全に原子力発電所が世界に普及していくことを日本がバックアップしていくということは、日本の経済にとってもプラスになりますし、まさに温暖化を食いとめるためにも私は本当に有効な手段だと思いますので、引き続きの御尽力を深くお願い申し上げる次第であります。

 次に、国際機関への拠出金関係についてお伺いさせていただきたいと思います。

 日本が国際機関に対して拠出金、分担金等を出しておりますけれども、外交上どのような政策効果が期待できるのか、外務省の見解をお伺いいたします。

中曽根国務大臣 今、国際社会においては、委員御案内のとおり、気候変動の問題とかテロの問題とかいろいろな課題があるわけでありまして、そういうことを考えますと、我が国としては、二国間の外交だけでなくて多国間の外交も十二分に活用していくということが大事である、言うまでもございません。

 国際機関は、国際社会の縮図としての普遍的性格を有しておると思います。加盟各国が協調しながら、さっき申し上げましたような地球規模の問題に対応して、そしてかつ我が国の政策を国際的に推進していく、また指導力を発揮していく。そういう意味で、国際機関を活用するということは極めて重要なことであると思っております。

 国際機関に対する拠出とかあるいは出資につきましては、まずは世界に占める我が国の経済力を踏まえまして、我が国が重視する外交政策に即していなければならないということ、それから、かつ我が国と当該国際機関との関係、またその当該国際機関における邦人の職員がどれぐらい、どういう活動をしているか、そういうような状況など総合的に勘案をして、現在、拠出の内容というものを決定しているところでございます。

 このようにして決定されました国際機関への拠出金というものは、地球規模の問題の解決あるいは国際社会における我が国の政策を実施、実現していく上で重要な意義を有している、そういうふうに思っております。

石原(宏)分科員 ありがとうございます。よくわかりました。

 拠出金を出しているんですけれども、国際機関における政策決定のラインに邦人職員が少ないんじゃないか、だったらやめろとか、そういう議論がよくあります。なるべくそういう国際機関に日本人が働くということはいいことだと思うんですけれども、少ないからやめるという話では直接はないとは思いますが、国連を初めとする国際機関で働く邦人職員をふやすための、拠出金なんかも使っていらっしゃるのかもしれませんが、その他外務省としての取り組みについてお聞かせをいただけますでしょうか。

廣木政府参考人 お答え申し上げます。

 外務省としては、国連を初めとする国際機関の意思決定に我が国の立場や考え方を適切に反映させるため、これらの国際機関に幹部職員を含む邦人を送り込むことが重要と考えております。このため、国際機関就職に係る各種支援に取り組んでおります。

 先生の方から御指摘のございました、外務省として具体的にどのように取り組んでおるかということでございますが、それにつきましては、例えば、将来国際機関で勤務を希望する三十五歳以下の若手邦人を対象に我が国の費用負担で国際機関に派遣して国際機関への就職に必要な経験を積んでもらうジュニア・プロフェッショナル・オフィサーなどの派遣制度を実施しております。

 こういった制度による国際機関への邦人職員の派遣人数、累計で一千二百五十九名になっております。本年度の新規派遣予定人数、四十二名となっておりますけれども、こういった方々、約六割近くがその後就職しております。

 また、総理、大臣を初めとしまして、幹部級のクラスに、日本人職員が勤務できるように強い働きかけをしていただいております。そうした結果ですけれども、松浦ユネスコ事務局長を初めとしまして、幹部職員、例えば中満PKO政策部長、こういった方々が就職につながっているといったこともございます。

 今後もこうした派遣制度を初め、国際機関就職に係る各種情報の周知、広報や選考状況のフォローアップ、国際機関人事担当への働きかけ等、必要な支援措置を積極的に行ってまいりたい、かように考えております。

石原(宏)分科員 済みません、ちょっと通知をしていないんですけれども、今の関連で、ジュニア・プロフェッショナル・オフィサーですか、大変いい制度だというふうに思うんです。これは宣伝というか、私も、勉強不足なのかもしれませんけれども、この質疑があるということで初めて知ったんですけれども、これはすごく大々的にコマーシャルというか、ホームページにも大々的に載せて、例えば活躍している人たちのインタビューか何かを載せると、日本人の若い人たちに夢を与えると思うんです。

 ぜひともそういうことをやっていただきたいというお願いと、ちょっと事前に説明を受けている中で、これは答えられたら答えてほしいんですが、例えば、国際機関の幹部職員になると、国際機関のメンバーの国々が投票をして決めなければいけないような地位があると思うんですが、こういう人を外務省を含め各省庁の官房の人が人選をしても選挙に勝つかどうかわからない、そういうときは、これは天下りというふうに言うんでしょうか。

廣木政府参考人 お答えを申し上げます。

 ただいまジュニア・プロフェッショナル・オフィサー、JPOの制度について非常に心強い御支援のお言葉をいただきまして、ありがとうございます。私どもも、有能な若い日本の方々がこれに応募して、かつ国際社会で存分に働いていただくということをぜひ積極的に応援していきたいと思っておりますし、広報にも努めたいと思います。

 それから、今先生の方から御指摘ございましたように、外務省を初め、日本人で国際的にいろいろな経験を積んだ方が国際機関の長としてふさわしいということで選挙などに立っておられる方もいるわけで、そういった方々についてはできるだけ応援していきたいと思っておりますが、当然、選挙でございますので、なかなか厳しい戦いでございます。そういった中で勝ち抜いたものをわたりと言うかどうかについては私ども……(石原(宏)分科員「天下り」と呼ぶ)失礼しました。天下りと言うかどうかは、私ども、ちょっと判断する立場にないと思っております。

中曽根国務大臣 今のお話でございますけれども、先ほどからお話ししておりますように、国際機関を通じて我が国が国際社会の発展に貢献するというのは大変大事なことでありまして、何よりも適材適所で、またそのポストにふさわしい人を送り込むということが大事でございますので、前職なりかつての仕事がどういうものか、ありますけれども、また、特に選挙等を通じて選ばれるということでもあれば、私は、これは天下りということではない。むしろ積極的にいい人材を前職とかそういうのにこだわらないで送るということが私は大事だと思っております。

石原(宏)分科員 時間が来ましたので、最後にぜひとも中曽根外務大臣にちょっと記憶に残しておいていただければと思うんですが、去年の五月ぐらいから、自民党の中の無駄遣い撲滅プロジェクトチームというのを園田政調会長のもと立ち上げまして、私、河野太郎主査のもとのチームで実は外務省の担当をしておりました。

 庁費をいろいろとチェックをしている中で、幾つかの省庁でタクシー券を自前で、自前というのは税金を使って印刷をしている省庁がありました。外務省と財務省と、済みません、もう一つ、ちょっと忘れちゃったんですが、三省、我々のチームの中でありました。

 この取り扱い、ないようにしようということでお約束をいただいたんですけれども、結果としてどうなったか、事務方の方から御報告いただきますとともに、そういうものを、これはもう大臣のあれではないですけれども、政務官とかの方にぜひ細かく常に気をつけていただいて、こういう無駄は今の時代も無駄じゃないかと思いますので、ぜひとも注意を払うように部下の方に徹底をしていただければと思います。

 済みません、結果だけ教えてください。

河相政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生から御指摘がございましたように、自民党での活発な御議論、経費削減、無駄撲滅という御議論をいただき、いろいろな御指摘をいただいたわけでございます。

 これを踏まえまして、今言及のございましたタクシー券の印刷、これは確かに、二十年度は我が方、外務省が印刷を発注して、我が方の負担で行っていたわけでございますが、二十一年度につきましては、今後公募で契約相手を決めるわけですけれども、タクシー会社がそのタクシー券を印刷をする、そういう券を利用することで経費の削減に努めるということで今進めているところでございます。

石原(宏)分科員 時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。

 外務大臣、外務省、経済産業省の皆さん、ありがとうございました。

下村主査 これにて石原宏高君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明二十日金曜日午前十時より開会し、財務省及び外務省所管についての審査を行うこととし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時四十六分散会


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