衆議院

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第1号 平成24年3月5日(月曜日)

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本分科会は平成二十四年三月一日(木曜日)委員会において、設置することに決した。

三月二日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      金森  正君    西村智奈美君

      鉢呂 吉雄君    花咲 宏基君

      金田 勝年君    野田  毅君

三月二日

 西村智奈美君が委員長の指名で、主査に選任された。

平成二十四年三月五日(月曜日)

    午前八時開議

 出席分科員

   主査 西村智奈美君

      井戸まさえ君    磯谷香代子君

      金森  正君    阪口 直人君

      玉城デニー君    道休誠一郎君

      鉢呂 吉雄君    花咲 宏基君

      山尾志桜里君    あべ 俊子君

      金田 勝年君    城内  実君

      野田  毅君

   兼務 玉置 公良君 兼務 橋本  勉君

   兼務 馳   浩君 兼務 遠山 清彦君

   兼務 高橋千鶴子君 兼務 渡辺 義彦君

   兼務 重野 安正君 兼務 山内 康一君

    …………………………………

   法務大臣         小川 敏夫君

   外務大臣         玄葉光一郎君

   財務大臣         安住  淳君

   外務副大臣        山口  壯君

   財務副大臣        五十嵐文彦君

   防衛副大臣        渡辺  周君

   内閣府大臣政務官     園田 康博君

   総務大臣政務官      福田 昭夫君

   法務大臣政務官      谷  博之君

   外務大臣政務官      中野  譲君

   文部科学大臣政務官    城井  崇君

   最高裁判所事務総局経理局長            林  道晴君

   最高裁判所事務総局民事局長            永野 厚郎君

   最高裁判所事務総局家庭局長            豊澤 佳弘君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    原   優君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    稲田 伸夫君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    三浦  守君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    青沼 隆之君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  高宅  茂君

   政府参考人

   (外務省大臣官房地球規模課題審議官)       平松 賢司君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 宮島 昭夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 香川 剛広君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 佐藤  地君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 新美  潤君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    伊原 純一君

   政府参考人

   (外務省国際協力局長)  越川 和彦君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    古谷 一之君

   政府参考人

   (財務省関税局長)    柴生田敦夫君

   政府参考人

   (文化庁文化部長)    大木 高仁君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           石井 淳子君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  大谷 泰夫君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           吉崎  収君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           田端  浩君

   参考人

   (日本銀行企画局長)   門間 一夫君

   法務委員会専門員     岡本  修君

   外務委員会専門員     細矢 隆義君

   財務金融委員会専門員   北村 治則君

   予算委員会専門員     春日  昇君

    ―――――――――――――

分科員の異動

三月五日

 辞任         補欠選任

  花咲 宏基君     玉城デニー君

  金田 勝年君     あべ 俊子君

  野田  毅君     城内  実君

同日

 辞任         補欠選任

  玉城デニー君     阪口 直人君

  あべ 俊子君     金田 勝年君

  城内  実君     井上 信治君

同日

 辞任         補欠選任

  阪口 直人君     道休誠一郎君

  井上 信治君     野田  毅君

同日

 辞任         補欠選任

  道休誠一郎君     磯谷香代子君

同日

 辞任         補欠選任

  磯谷香代子君     井戸まさえ君

同日

 辞任         補欠選任

  井戸まさえ君     山尾志桜里君

同日

 辞任         補欠選任

  山尾志桜里君     花咲 宏基君

同日

 第一分科員橋本勉君、第二分科員重野安正君、第四分科員玉置公良君、馳浩君、遠山清彦君、第六分科員渡辺義彦君、第七分科員高橋千鶴子君及び第八分科員山内康一君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成二十四年度一般会計予算

 平成二十四年度特別会計予算

 平成二十四年度政府関係機関予算

 (法務省、外務省及び財務省所管)


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     ――――◇―――――

西村主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることになりましたので、何とぞよろしくお願いいたします。

 本分科会は、法務省、外務省及び財務省所管について審査を行うことになっております。

 なお、各省所管事項の説明は、各省審査の冒頭に聴取いたします。

 平成二十四年度一般会計予算、平成二十四年度特別会計予算及び平成二十四年度政府関係機関予算中外務省所管について、政府から説明を聴取いたします。玄葉外務大臣。

玄葉国務大臣 おはようございます。

 平成二十四年度外務省所管予算案について、概要を説明いたします。

 平成二十四年度一般会計予算案において、外務省は六千百七十二億五千七十三万六千円を計上しています。これを前年度と比較いたしますと、一・四%の減額となっております。また、東日本大震災復興特別会計において、六億七千二百四十三万七千円を計上しています。

 他方、ODA予算は、一般会計予算案における外務省所管分として、対前年度比〇・三%の増額の四千百八十億三千二百五十万二千円となっております。また、東日本大震災復興特別会計において、一億三千百九十一万一千円を計上しています。ODA予算反転の端緒を開くことを目指した結果、このように、一般会計予算案における外務省所管ODA予算は、二年連続の増額となる予算を計上しております。

 私は、外務大臣就任以来、着実な成果を目指す結果重視の実のある外交を全力で進めてきました。平成二十四年度予算案の作成に当たっては、こうした考えのもと、以下申し上げる三つの予算上の重点項目を掲げ、めり張りをつけた上で必要な予算を計上しました。

 第一に、開かれた復興と新たな成長のための取り組みです。

 震災からの復興を日本の再生につなげるという逆転現象を実現するために、外務省としても、東日本大震災からの復興に最大限貢献するとともに、海外の成長を日本の成長につなげることを目指して、新たな成長への取り組みに注力してまいります。具体的には、開かれた復興への取り組みとして、日本ブランドの復活・強化、防災協力や人的及び文化交流を推進していきます。また、新たな成長への取り組みとして、自由な貿易・投資体制の推進、パッケージ型インフラ海外展開の促進、グリーン成長の促進、ODAを活用した中小企業の海外事業展開支援等を実施します。さらに、東京電力福島第一原子力発電所事故を踏まえた取り組みとして、原子力安全を向上させるための取り組みを強化します。

 第二に、開放的で多層的なネットワークの形成と国際社会における一層の貢献です。

 我が国の繁栄には、平和で安定した世界の構築が不可欠です。そのために、内向き傾向からの脱却を進めることも重要です。特に、アジア太平洋地域のリスクを最小化し、成長の機会を最大化するために、開放的で多層的なネットワークを地域の各国とともにつくり、アジア太平洋地域に豊かで安定した秩序を形成することが重要と考えています。そのためには、日米同盟を基軸とした盤石な安全保障体制が必要不可欠です。

 また、国際社会が直面する諸課題に、米国や近隣諸国等と協力しながら、積極的に関与してまいります。特に、アフガニスタンについては、治安、再統合、開発を三本柱とした支援を引き続き着実に実施します。また、人間の安全保障の視点に立って、ミレニアム開発目標の達成に向けた貢献を引き続き行ってまいります。

 第三に、海外における外交実施体制の強化です。

 これまで述べてきた政策を着実に実施するためには、海外における外交実施体制の強化が必要不可欠です。在外公館の整備や在外公館職員の再配置を含む体制整備を推進すると同時に、情報収集・分析能力及び情報保全を含む外交実施体制を強化します。

 以上が、平成二十四年度外務省所管予算案の概要でございます。

 詳細につきましては、お手元に「国会に対する予算説明」を配付させていただきました。主査におかれましては、これが会議録に掲載されますようお取り計らいをお願い申し上げます。

 西村主査を初め、委員各位の御支援と御協力を心からお願い申し上げます。

西村主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま玄葉外務大臣から申し出がありましたとおり、外務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

西村主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

西村主査 以上をもちまして外務省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

西村主査 この際、分科員各位に申し上げます。

 質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。

 なお、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。玉置公良君。

玉置分科員 おはようございます。和歌山の出身の衆議院議員の玉置公良でございます。

 私は、きょうは、和歌山の課題、日米通商の始まり、この歴史の事実について質問したいと思います。

 そこで、黒船、ペリーの来航よりも六十二年も早い、つまり一七九一年四月の二十八日、米国の帆船二隻が、私の地元の本州最南端の和歌山県串本の沖合にあらわれ、上陸いたしました。十一日間停泊し、通商を求めた。こういったことをアメリカの多くの歴史書には載せられております。ペリー提督の来日よりも六十二年早い一七九一年に日本へ日米通商で最初に行ったアメリカ人としてケンドリック船長の名前が、また、最初の船としてレイディー・ワシントン号の名が掲げられております。日本でも、紀州徳川家の歴史を記しました南紀徳川史などに同様の事実が記されております。

 日本の記録では実は漂着ということでありますけれども、アメリカでは、最初から日本を通商の相手国として意識をして、計画の一部に入っていた。そして、独立して間もないアメリカから、国名を名乗り、国旗を掲げて日本へやってきたのはこれが歴史上で最初。そして、アメリカでは、船の復元までして、この記念すべき船を祝っておる。この米国船とは、一七八九年、ボストンを出港した帆船、レイディー・ワシントン号。船長はジョン・ケンドリック。ラッコの毛皮を五百枚ほど積んで中国・広東に売りに行ったが、売れなかったので、一七九一年、大島へ来航して、実際は十一日間滞在をするわけですけれども、風に恵まれれば日本を去る、そういった日本の記録もございます。

 実は、ここに持ってきておるのは、西海岸のワシントン州のアバディーン市で再建造されたレイディー・ワシントン号であります。そして、この裏を見てください。これは、その当時、日本が、来てもらったものをそのまま描いた図であります。これが実は記録として残っております。

 そこで、きょうは、アメリカ側からいろいろとその歴史を調査されました、そして、こういった「わが名はケンドリック」という本を出されました佐山和夫先生も傍聴で来てもらっております。私もいろいろと勉強してきましたし、また、地元のいろいろな歴史も勉強してきたわけですけれども、これからそのことについて質問に入りたいと思います。

 そこで、一つ目の、大臣にぜひともお伺いをしたいんですけれども、我が国とアメリカとの間で、歴史上いつから日米通商につながる交流が始まったと考えておられるのか。それと、和歌山県の串本町では、二つの記念館があります。この間も、玄葉大臣にはお世話になったということで、町長からくれぐれもお礼を言っておいてくれと言われたのですけれども、トルコのエルトゥールル号の映画のプロジェクトのお礼を出していただいたと。それともう一つ、実は、日米修交記念館がございます。日米修交記念館とは何を記念しているのか御存じでしょうか。お伺いをしたいと思います。

玄葉国務大臣 玉置委員が研究されている、今の一七九一年の事案ということでございますけれども、この事案につきまして、日米双方の歴史的な資料に記録が残されている、記載されているということを私も承知しているところでございます。このことについて、ある意味、御指摘の記念館は、この事案そのものについて記念してつくられた、建てられたものだろうというふうに思います。

 今の御質問は、日米通商のいわば歴史を含めてどう考えるんだ、こういうお話でありますけれども、私もこの資料を詳細にわたってまだ勉強できているわけではありませんけれども、この歴史的資料によれば、我が国の歴史的資料を見ると、米国船は我が国に漂着した、こういう記述があるということだと思います。

 ただ、米国の歴史的資料には、いろいろまた違う記述があるということなんだろうと思いますけれども、政府としてその評価を、今、だから日米通商の歴史がここからだというふうに申し上げるということはなかなか難しいんだろうというふうに思います。

 ただ、先ほど申し上げましたように、ペリー提督の来航以前の歴史につきましては、御指摘の一七九一年の事案など、日米間の人的交流の存在を示唆する歴史的な資料が存在しているということはもう間違いないというふうに思います。

玉置分科員 ありがとうございました。

 今、大臣の方から答弁いただきましたけれども、実は、日米修交記念館は、昭和四十九年に、当時のマンスフィールド大使も出席をしていただいて、建立をして、記念式典をやったんです。その中にも詳しく書かれておりますけれども、ぜひとも一度こちらへ来ていただきまして、その事実を見ていただきたいなと思っております。

 そこで、外務省の方に、きょうは北米局長さんが見えておられると聞いておりますので、質問をしたいと思うんですけれども、実は、ペリー提督の浦賀入港の六十二年前に、串本町大島に漂流したアメリカ船が、実は、日米通商目的に初めて日本に寄港した最初のアメリカ船だという事実が確認をされて、彼らの国旗がここに翻ったのも初めてだったと。先ほどの、あの日本の、描いておるあの絵も国旗が描かれておるわけですけれども、また、漂着という意思のないことではなしに、国家的な計画であったことについて、外務省はどう思うかということをお聞きしたいと思うんです。

 その前に、今、大臣の方からも、これはなかなか難しいという話もありましたから、私の方からもうちょっと具体的に、配付資料に沿って説明をしたいと思います。

 配付資料、皆さん方のお手元に入れております。私は、一つ目は、ペリーよりも六十二年早く日本に来ていた事実をそこに添付しております。数多くあるわけですけれども、その一部です。

 図一を見てください。ケンドリックが着いた大島の樫野崎の地名が江戸よりも大きく書かれております。

 図二を見てください。一七九一年に日米通商で最初に行ったアメリカ人として、ケンドリック船長の名前が掲げられております。

 先ほども申しましたように、ワシントン州のアバディーン市では、約三億六千万円でレイディー・ワシントン号が再建造をされておる。ケンドリック船長の旧宅が、ケンドリック記念館として保存と公開をされております。そのパンフレットもここにあるわけですけれども、ここには、日本へ行った最初の船、もう一つは、アメリカ船が日本へ行ったのもこれが最初、こう書かれております。

 図五を見てください。ここでは、日米協会の副会長の一九七一年二月十六日の講演内容でありますけれども、このときには、当時のマイヤー駐日大使とかオズボーン総領事の来賓の前で、「アメリカ人による日本への最初の接触」のスピーチで、このように述べておるんです。「今述べましたこの二隻の船が、日米通商その最初であったのです……」と。

 さらに、図の十を見てください。これは、一九九四年の三月二十九日の総領事の証言です。これは、実は、和歌山県にジョン・ケンドリックの会というのがあるんですけれども、その会長宛てに公式のメッセージを寄せております。「日本の「開国」は一八五三年のウイリアム・ペリー提督によるものとされていますが、実は、それより六十年以上も早く、ケンドリック船長が和歌山県に来ていたのであります。」このように書かれておるわけです。

 もう一つは、いろいろこれから調べてもらいたいとは思うんですけれども、よく言われているのが、日本へ行く意図があったということであります。そして、これは国家計画だったということであります。

 図の四を見てください。ジョン・ケンドリック船長への要望書というのが一七八七年に実在をしておるわけですけれども、この計画は、独立して間もないときで国力もないときだったから、実は、六人のスポンサーによって、第三セクターみたいな形で、貿易船であるのですけれども、敵船への攻撃や拿捕を認めた。いわば軍艦を兼ね備えた、そして、何といってもここで重要なのは、国会が認めた公式認証状を与えておったということが歴史上明らかにされております。そして、商売でもうけるのではなくて、貿易ルートを探したい、確保したいという思いだった。

 もう一つは、初代の国務長官で、後に第三代大統領に就任いたしましたトマス・ジェファーソンによって推進されたのがこの計画でありますけれども、六人の船主がいたが、その代表のバレル氏が、ケンドリックに対する書簡にはこのように書いておるんです。日本へ行けたら行くように、アメリカの代表として行くのだから行き先の土地の人と友好を深め信頼を得るように、さらに、中国で商売をするよりも日本でする方が得策だとあなたが判断するなら日本で貿易をしたらどうかなど、ジャパンという単語が四回も記されておりまして、日本との通商を進める船主の手紙を確認しております。

 以上、はしょって今説明をさせていただきましたけれども、あと、日本側の活動もかなり活発にやられておるわけです。先ほどの日米修交記念館を初め、そこの資料にありますように、JR串本駅前にレイディー・ワシントン号の銅像をつくったり、さらには、国会に意見書まで出させております。

 こういったことを踏まえまして、質問をしていきたいと思うんですけれども、今言いましたように、このことにつきまして、北米局長にまず御見解をお伺いしたい。それと、時間もございませんから、もう一つだけ質問をつけ加えておきます。

 外務省の外交史料館では、年に一、二回ほど特別展示を行っておるのでありますけれども、実は、これを見ますと、平成十六年には、日米関係あけぼの、一八五二年から一八六六年、こうした展示がされておるわけです。この時点で、外務省では日米間の最初の交流はやはりペリー来航と捉えておりますけれども、アメリカは、ケンドリック船長の日本寄港を日米交流の始まりとして、重要な史実として捉えておるわけです。

 私は、歴史の事実とは、アメリカだけではだめである、日本だけでもだめである。両国の史実を突き合わせていくことで本当の事実がわかってくると思うんですけれども、それに対して外務省はどう考えておるのか、お伺いをしたいと思います。

伊原政府参考人 独立間もないアメリカから、このような交易と交流を求めて船が派遣されて、それが日本にもやってきた、こういう歴史的事実については、大変興味深いとともに、日本とアメリカの関係を考えますと大変重要なことだというふうに思っております。

 もっとも、国と国との関係ということについて申し上げますと、一八五三年に大統領の国書を持ってやってきたペリー提督、そしてその翌年に、初めて日本とアメリカとの関係で結ばれました日米和親条約、これが、国と国との関係でいえば日米関係の始まりということが言えるかと思います。

 しかし今、先生の方から御指摘があったとおり、日米の関係というのは、国と国との関係だけではなくて、人と人との関係が大変重要でございますので、そういう観点からは、きょう御紹介のありました一七九一年の来訪につきましても、引き続き、歴史家の方あるいはその研究者の方の研究をさらに期待して、私どもとしても、そういった研究の成果を参考にさせていただきたいというふうに思っております。

玉置分科員 ありがとうございます。

 ただ、局長、国と国との関係と言われましたけれども、これは、私も先ほどちょっと説明したように、時代が違ったんですよ。ちょうど独立をして間もないころであります。だから、そういう軍艦も、そういう戦力もかなりなかった。そういった中でも、国会の認証状を持って、きちっと日本へ行きなさいと国が示したんですよ。これは、十分これから議論、調査をしていただいて、深めていただきたいと思うんです。

 そこで、今申しましたように、例えば一千枚の、一千ピースのジグソーパズルがあるとしますね。そのうちの、私がいろいろ勉強させてもらって教えていただいたのは、やはり日本の記録というのは、一千枚の中の三枚ぐらいなんですよ。アメリカ側の記録は七百枚ぐらいあるわけですよ。従来では、日本では、日本側の史料のみを見てきました。わずか三枚ほどの史料で全てを理解しようとしたのですが、それにはやはり私は無理があると思うんです。どうしても、やはりアメリカ側の記録も見る必要がある。大事なのは、双方の記録を公平に見ることだと私は思っています。

 日本の記録だけを見るのはよくないし、アメリカの記録だけに頼るのもよくない。双方の記録を虚心坦懐に見ることが重要であって、率直な心で公平に見ることが私は肝心だと思っております。そうすれば、おのずからそこに浮かび上がってくる絵柄があるんですけれども、歴史の事実が見えてくるわけで、私たちはそれをそのまま受け取ればいいのではないか、そのように思うんです。

 そこで、最後の質問は、これまで紹介をいたしました事実関係を踏まえて、日米交流、日米通商の始まりについて、外務大臣の所見をお伺いしたいと思います。そして、関連をいたしまして、きょうは文科省からも来ていただいております。城井大臣政務官の所見もお伺いをしたいと思います。

玄葉国務大臣 まず、きょうの、一七九一年の事案について玉置委員からいろいろと御紹介いただいた、こうして委員会で質問していただいた、そのこと自体、私は貴重だというふうに思いますし、ぜひ、これは佐山先生初め、こういったことについての研究、検証というものを、まさに私も期待したいなというふうに思うんです。

 私が知っているのは、おっしゃるとおり、そんなに膨大な史料を読み込んでいるわけではございません。ここに関連する、例えば外国通航一覧とか徳川南紀史とかマサチューセッツ海軍史とか、いろいろ幾つかの抜粋を読ませていただいているというのが現状でございます。

 ただ、米国にそういう意思があったのではないかという御指摘について、私は、今回の質疑で非常に関心を持ちました。ただ一方で、では、我が国にそういう、国としてどうだったのかということも、片や一方であると思います。ただ、ここで日米の交流というのが、国と国ということかどうかは別として、少なくともこういった交流があったということが、ある意味わかったというか、そういう意味で私自身も非常に参考にさせていただきたいし、ただ、政府としてどう評価するかということになると、やはり、もっとよく歴史家の研究をしっかり踏まえて対応しなきゃいけないんだろうというふうに考えているところでございます。

 きょうはどうもありがとうございました。

城井大臣政務官 お答えを申し上げます。

 先ほど来お聞かせをいただきました御地元での歴史的事象の飽くなき探求と申しますか、その内容によって、日米交流の歴史と歩みを、我が国民が、ある意味で理解を深めていくというところに本当につながるなというふうに感じさせていただいておりまして、その取り組みと御指摘には敬意を申し上げたいというふうに思っています。

 その上で、文部科学省としての見解を申し上げたいと思います。

 まず、学校教育における学習指導要領の関係でありますけれども、江戸時代の後半の外国船の来航ということでは、小学校では、黒船の来航について調べること、そして中学校では、欧米諸国の接近などを通して江戸幕府の政治が次第に行き詰まりを見せたということを理解させるといったところが今のところあります。

 教科書という点で一言申し上げると、御指摘のアメリカ船については具体的な記述は今のところないというのは議員御承知かと思いますが、ただ、当時、ロシア船やイギリス船、アメリカ船を含めて、日本近海に相当数あらわれているということについては、多くの教科書に記述があるところであります。

 そこで、御指摘の、和歌山県串本に米国船が、レイディー・ワシントン号がという部分での話でありますけれども、文部科学省としてはということですが、このことに関する事実関係について、現時点で詳細に把握しているわけではありませんけれども、先ほどからの、アメリカ側の史料も含めて、相当に詳細にお示ししていただいた部分については重く受けとめさせていただきたいというふうに思っています。

 なお、今後ですけれども、御指摘の米国船の来航についての研究がさらに日本側も含めて進んでいって、歴史的な意義がしっかりと示される状況が出てくるならば、教科書に反映することもあり得るのではないかというふうに思っておりますけれども、現在の仕組みとして、具体的にどのように教科書で取り上げていくかというところは、教科書の発行者に委ねられているところがありまして、その点は御理解いただければというふうに思う次第であります。

 以上です。

玉置分科員 ありがとうございます。

 ぜひとも、これはどんどん議論をして、評価をつくっていただきたいと思っております。

 実は私、今なぜこういう質問をしたのかということについて、それは、やはり正しい歴史認識というのを持つことが今一番必要ではないかと思っておるんです。とりわけ、今、沖縄の普天間の問題、TPPの問題、重くのしかかっております。

 つまり、黒船のペリーの開国もおどしだったのではないかとかいろいろ議論がありますけれども、原爆で終戦になった、そういう日本の受け身ではなしに、このいわゆる一七九一年というのは、対等な、日米対等な公正な精神の交流から始まった、そのことを我々は生かしていこうやないかということを言いたかったわけです。

 危惧をするのは、日本とアメリカがこういった、先ほど申しましたような誤解や曲解をやはり深めるだけでは、私は、何ら両国の友好の進展はないと思っているんです。

 だから、私は、これを調べるうちに、私だけではありませんけれども、多くの皆さん方が、きょうは佐山先生も来ておられますけれども、このことは、やはり日米の本当の、真の公正な精神の交流、ここに我々はもっと勉強して、新たな発展につなげていくということが大事だと思って質問をさせてもらったわけなので、ぜひとも取り組みをお願いしたいと思います。

 できれば、玄葉大臣、城井政務官、串本へ来てください。大統領も来ていただきたいと思うんですけれども、その点もよろしくお願いいたしまして、時間が来ましたので、質問を終わります。

 ありがとうございました。

西村主査 これにて玉置公良委員の質疑は終了いたしました。

 次に、玉城デニー委員。

玉城分科員 おはようございます。きょうは、早朝より質問の時間をいただきまして、大変ありがとうございます。

 玄葉大臣には、殊のほか沖縄には足しげくお通いいただき、さまざまな沖縄の状況を、いろいろな方から意見を伺っていらっしゃる、そのお気持ちと行動については本当に敬意を表する次第であります。ありがとうございます。

 さて、先ほど和歌山の玉置委員からありましたが、実はペリーの来航は沖縄が大変絡んでいることは玄葉大臣よく御存じだと思います。

 一六〇九年に、それまで友好な関係にあった江戸幕府、薩摩と琉球の関係が悪化をして、いわゆる薩摩侵攻と沖縄では言われておりますが、それからは、江戸と中国、当時の清、明ですね、そことの通交の間に今度はアメリカやいろいろな海外が入ってくるというふうな流れがあります。

 実は、一八四〇年から一八五〇年代に、イギリスからは、宣教師でしかも医師であるバーナード・ジャン・ベッテルハイムという方が沖縄にやってまいります。これは布教のためなんですが、そこで、実はペリーがちょうどそのときにやってきまして、ペリーがアメリカに帰るときに、サスケハンナ号だったと思いますけれども、その船に乗ってベッテルハイムはイギリスに戻らずにアメリカに渡り、そこでまた南北戦争の軍医として従事をする。

 なぜそこまで知っているかというと、実は私、芝居でベッテルハイムをやらせていただきまして、そのときに、ああ、沖縄というのは実はもっと前から外国との通商があったということが、やはり少しずつ文献を読み込んでいくうちにはっきりしてくるわけですね。もちろん、当時のスケッチ画なども残されておりまして、本当に往時をしのぶ貴重な資料としても今博物館などでも展示されています。

 さて、そういう日本全体と沖縄との関係というのはやはり切っても切れない通商の関係にある、キーストーン・オブ・ザ・パシフィックと言われた、太平洋のかなめ石と言われた沖縄のさまざまな問題について、きょうは、その中から、地位協定とこの間の米軍再編に関係すること、大きくこの二つについてお話を聞かせていただきたいと思います。

 まず、地位協定に関しての質問をさせていただきますが、現在の日米地位協定、これは、一九五二年二月に旧日米安全保障条約第三条に基づいて締結された日米行政協定を継承し、一九六〇年の一月十九日に署名が行われ、そして六〇年の六月に効力が発効しております。いわゆる現在の日米地位協定と私たちが呼んでいる協定なんですが、この日米地位協定、いわゆる外国の、特にアメリカの軍人軍属、家族の身分や地位を保全するという目的で日米双方が協力をしようということで決められておりますが、しかし、やはり多くの米軍や軍属の方々が日本に駐留しているという関係上、これまで日米双方のいろいろな事件や事故が起こってきていることはもう御承知のことだと思います。

 そこで、お話を伺いますが、まず、日本国内あるいは私の住んでおります沖縄県におけるこれまでの米軍関係による事件、事故について、主なもので結構ですので、その経緯と、そしてその事件、事故が起こった場合の処理をどのように行ってきたかについて、まず少しお話を伺いたいと思いますので、よろしくお願いします。

玄葉国務大臣 これまでの経緯ということでございますけれども、結局、アメリカの軍人軍属等による事件、事故、当然ながら減らしていかなければならない。当然、特に被害者やその御家族の心情等を理解すれば、とにかく減らす努力をしなければならないということに尽きるというふうに思います。

 今まで、御存じのように、日米地位協定だけではなくて、例えばNATOの地位協定も米韓の地位協定も、結局、軍人軍属による事故があったときの裁判権というのは米国側にある、これは日米地位協定だけではない、公務の事件、事故ですね。米軍人軍属の公務の事件、事故は米国側にある、これはNATOも米韓も同じである。一方、それ以外の事案については日本側が裁判権を持つ。こういうことで対応してきたということでありますけれども、特に今回、一月にあった事案について、何とかしなければならない。これは一月の事案だけではありません、また沖縄だけではありません、全ての在日米軍基地がある地域のことを考えながら、今回、特に軍属の裁判権について、いわば風穴をあけたということになったわけであります。

 これは、率直に言うと、日米地位協定が他と比べるとこれによって一番接受国側に立った地位協定になってきているということでもあるというふうに思っておりまして、一つの風穴をあけることはできたのではないかというふうに考えているところであります。

 重大な、例えば死亡事案のような、一月のような事案について、我々が同意を求め、米側が好意的考慮を払うということで、事実上、日本側が裁判権を持つことになったということで、とにかく、この間の飲酒の問題もそうだったんですけれども、一つ一つ沖縄の皆様の声をお聞きすると、やはり非常にそういったことに対するフラストレーションというのが強いということを私、沖縄に行くと感じるものですから、何とかこれを風穴をあけることができないかということで、この間、努力をしてきたということでございます。

玉城分科員 さまざまな事件、事故が発生すると、それはもう直接生活の不安という大きなフラストレーションにつながっているということは、もう大臣のおっしゃるとおりであります。

 さて、そういう問題が起こったときに、基本的にどのように協議をしているか。ちょっと私も調べてみますと、日米合同委員会というのがありまして、そこでまたさまざまな分科会があり、そこで本当に細かく調査をし、協議をしているということなんですが、この日米間の正式な協議体である合同委員会、構成しているメンバーはどのようなメンバーかということについて、お伺いしたいと思います。

玄葉国務大臣 ちょっと、事実関係なものですから、やはり正確性が大事だと思いますから、できれば事前に教えてもらえればと思うんですけれども、我が方は、日米地位協定の室の者が基本的には協議を行っているということでございます。

玉城分科員 失礼いたしました。事前にお話をさせていただいてあったと思うんですが。ちょっと私の勘違いだと思いますが。

玄葉国務大臣 外務省としては、その地位協定室の者が行き、そこに防衛も入っておりますし、大使館の者も入っている、こういうことでございます。

玉城分科員 ありがとうございます。

 大臣御本人が直接、一々地位協定について事細かく行動できるというわけではないということもよく存じておりますが、その場合に、地元の、いわゆる都道府県の首長あるいは市町村の首長がどのように合同委員会にかかわっているかについて少し、その経緯などがありましたら、ぜひお聞かせいただきたいと思います。

玄葉国務大臣 結局、おっしゃるとおり、例えば刑事分野だったら刑事分野の分科会というのがあるわけですね。そこで実務者同士で協議を行うんですけれども、今回、公の催事の飲酒の問題もそうでありましたけれども、私の方から担当者に強く指示をします。同時に、それだけではなくて、例えばですけれども、いわゆる私のカウンターパートなどに直接働きかけつつ、そういった実務的な協議を行うということもあるわけであります。

 今の玉城委員の話は、地方公共団体あるいは沖縄の意見をどう酌み取っていくのか、こういうお話でありますけれども、おっしゃるとおり、日米の合同委員会そのものについては地方公共団体の代表が参加するということはございません。まさに、今申し上げたように、日米地位協定の実施に関して相互間の協議を必要とする全ての事項に関する日米政府間の協議機関として設置をしているものであります。

 その一方で、日米安保体制の円滑な運用、そして在日米軍の我が国への安定的な駐留のためには、言うまでもないことですが、地元の方々の御理解をいただきながら進めていくというのは大変重要なことでありますので、地方公共団体との間で意思疎通を図りながらこの問題について事に当たっていかなければならないだろうというふうに思っています。

 先ほど申し上げた軍属の裁判権の問題などもそうだったんですけれども、沖縄を訪問したときに地元の関係者の皆様から私に対して強い要請がありました。まさに地元の皆様との意思疎通の中で実現をしてきたという経緯もあるということは御理解いただければというふうに思います。

玉城分科員 やはり大臣の個人の思いということが、職務を超えて、たくさんの理解をしっかりとつなげていく大変な努力をなさっていらっしゃると思います。そのことについては本当に敬意を表すわけでございます。

 しかし、日米地位協定もそうですが、今回の再編、ロードマップの見直しなどについてもこれから少し質問に入らせていただきますが、やはり地元が正式に加わるかどうかというのは大変重要な問題だと思います。この間、沖縄については、政府には正式な協議会があり、その中で県知事も参加をさせていただいております。しかし、例えば日本とアメリカという二国間の話になると、なかなかそこに沖縄あるいは地元という部分が入っていけないということが、少し弊害あるいは障害になっているところがあるのではないかと思います。

 玄葉大臣が二月二十八日、政策研究大学院大学で講演をなさったお話を私も改めて読ませていただいたんですが、なるほどやはりいいお話をしていらっしゃるなというふうに思います。

 そこで、これは大臣がカンボジア大使館員の方と質疑をしたときのコメントの中に、いわゆる二〇〇六年のロードマップの合意見直しが先般二月八日に日米の報道発表ということで行われたんですが、そのことに言及をなさったときに、普天間飛行場の移設の問題と、嘉手納基地以南の返還、在沖海兵隊のグアム移転、できるところからやっていこうという話をしたと大臣はお話しなさっていらっしゃいます。現在は膠着状況にあったわけで、日本は沖縄で困難な事情があり、アメリカは対議会の関係で困難な状況にあり、それではお互いに知恵を出そうではないかと、これは大変、まさしくおっしゃるとおりだと思うんですね。その事実を大臣もお話しなさったんだと思うんです。

 ですから、そこで、日本が沖縄で困難な状況があり、アメリカは議会で困難な状況がある。そうすると、日本とアメリカで話をしようではなくて、そこに沖縄がやはり存在するというか、要するに、正三角形みたいな形で描いた方が一番わかりやすいのではないかというふうに思います。そのことが地位協定の中ではなかなか加味されていないというか、加わっていないということも問題ですし、このロードマップの再編も、その発表を読みますと、最初のコンテクストでは、やはり辺野古に基地をつくるというところからスタートしております。

 そこで、この共同報道発表に関して、まず玄葉大臣からお伺いしたいと思いますが、これまで日米間で、この見直しについて、つまり二月八日発表の見直しについて、どのような経緯でそこに至ったというか、そのあらましといいますか、流れのお話をぜ伺いたいと思います。

玄葉国務大臣 まず、日米地位協定などの運用改善を初め見直し等について、地元、特に沖縄の知事などに入っていただくことも考えるべきではないか、こういうお話でございますけれども、渉外知事会というのがございますので、その点については、米側とこれからよく相談をしてまいりたいなというふうに考えているところであります。

 それと、日米共同報道発表、二月八日、この経緯ということでございます。

 これは、外務省も、また防衛省も、それぞれ担当者は米側とまず不断に意思疎通というものを行っているところでございます。

 先ほど、かなり率直な私の説明を引用していただいたわけでありますけれども、刻々と安全保障環境は変わる、また変わっているんだと私は考えています。そういう状況の中で、お互いがお互いの事情を抱えて、そういったことに対して対応しにくい状況になっているということは、我が国の安全保障の問題を考える上でもよくないということがまずございます。

 そして、私の気持ちをまたもう一つ申し上げれば、沖縄の負担というものについて何とか先行軽減できないか。つまりは、私が沖縄に参りますと、このパッケージというものを何らかの形で外せないか、こういう要望をいただいてきた経緯があるわけであります。したがって、タイミングをはかりながら、十二月十九日の日米外相会談のときに、互いに知恵を出そうと。ただ、そのときに、やはり安全保障にすきを与えてはいけないということを踏まえながら、どこまで知恵を出せるかということで、本格的な水面下での静かな議論、だけれども本格的な静かな議論が始まったということでございます。

 二月八日の段階で、互いに方向性だけは発表しようではないかということになったものですから、外に出して、公式な議論開始をし始めましたので、今度は、まさにこれから、部隊構成、人数を初め、さまざまなそういったことについて議論が本格化してくる、あるいはしているというふうに申し上げてもよいかというふうに思います。

玉城分科員 ありがとうございます。

 まさにこれからが中身についての議論だということなんですが、ただ一方では、私がいろいろなアメリカの情報なども得ますと、グアムに移る、四千六百人、四千七百人とも言われていますし、ハワイに千人、オーストラリアに二千五百人、あるいは、今オーストラリアとはその移動の協定が結ばれて、今度はフィリピンともその協定を結ぼうというふうに、やはり刻々と変化をしている。しかも、相当な速さでアメリカは変わり続けているというふうに考えております。

 そこで、きょうは渡辺防衛副大臣にも来ていただいておりますのでお話を伺いたいのですが、この刻々と変わる変化に対して、我が国の安全保障について、まず副大臣の御所見を伺いたいと思います。

渡辺副大臣 まさにアメリカの国防戦略が大きく変化をした中の一つには、やはり西太平洋からインド洋にかかる中東への不安定の弧と言われたところ。では、果たして二十年前、ここが脅威であったか。朝鮮半島からまさかミサイルが日本列島を飛び越えてくるとは思わなかった。昨日発表になっておりましたけれども、前年度比一一%という伸びを示した中国の軍事費。非常に我が国の直面している、海を挟んで対岸にある国のいろいろな大きい懸念すべき状況がある中で、やはりこれは、先生の御地元である沖縄本島はもとより、沖縄から、宮古島のレーダーサイトがありますけれども、そこから南西諸島には防衛省の施設がない。

 それを考えますと、この現状について、アメリカとの統合運用を求められておりますが、我々日本の防衛省としても、この南西諸島を、抑止力というものをどのように今後、米軍の大きな動きの中で考えていくか、これを今、防衛省でも当然検討をしているところでございます。

玉城分科員 まさにおっしゃるとおり、副大臣、私は、これまでの歴史的な経緯についてはいろいろな見解があると思いますが、アメリカが変わろうとしている以上、日本も変わらざるを得ない。しかし、持てる防衛力が今どこまで展開できるのかということが、さきの防衛大綱と中期防の整備で、しっかり動的防衛力を整備するというふうな形で、特に南西方面への展開がしっかりうたわれているのは、私は、ある意味、沖縄の人間からすると、そうあるべきだというふうに思います。

 なぜなら、先ほど玄葉大臣がおっしゃったように、もうアメリカも変わりつつあるという状況、それから、当然その中で力の空白があってはいけない、私もそのように思いますので、今こそ、やはり日本の防衛力にしっかり芯を持たせるという意味では、私は、この米軍再編の見直しは大きな、日本にとってもアメリカにとっても本当の意味での、お互いがどこまできっちり協力するかということでの真剣な議論がまさに始まったといいますか、まさにこれから話し合いをしていくという玄葉大臣のお話にもありますとおり、日本国内でも、どのような機能を持たせ、アメリカと協力していくのかが大切になってくると思います。

 ですから、沖縄県民は、ことし復帰四十周年になりますが、四十年の間に自衛隊の存在意義というものもしっかりお示しをさせていただいておりますし、また、私の家の近くでも十一日には不発弾処理が行われます。きのうも首里で不発弾処理が行われました。これが、毎週不発弾が見つかっているというのは、まさにまだ戦後は終わっていない。しかも、不発弾の数からすると、あと七、八十年かかるんだということですね、こういうことだけが自衛隊の任務ではないんですが。

 しかし、その一方で、まだずっと戦後が終わっていない状況の中で、新たな軍事力の台頭とも思えるような不安がある。それは、やはりどうしても抑止力をどうやって示していくかということにもつながっていきます。今まではアメリカの抑止力だったかもしれません。しかし、アメリカがグアムに拠点を移そうとしている今、海兵隊だけに抑止力を頼るのではなくて、総合力で日米が協力をしていくことこそ、私は本当の、本当のと言っては言い過ぎかもしれませんが、真の日米同盟の深化の部分に寄与できるのではないかと思います。

 そこで、もう一度、玄葉外務大臣にお伺いいたします。

 この米軍の再編について、基本的に、前回は日米の共同報道という発表だったんですが、2プラス2での正式な方向性というのは、大臣の方でどのようなお見立てになっていくかということをお聞かせいただきたいと思います。

玄葉国務大臣 結論から申し上げれば、これから議論するということも先ほど申し上げましたが、一方で、もう既に議論しているということも申し上げました。本格的な議論を今しています。最終的には、結論が出ましたらば、2プラス2のような形での発表も一つの考え方であるというふうに思います。

 先ほどおっしゃったとおり、私からは、まず何より我が国の安全保障の観点、そしてアジア太平洋地域全体の安全保障の観点から、特に、抑止力に資するかどうかということをしっかりと、まず部隊構成、配置、人数の問題について議論するようにという指示をしております。

 おっしゃったとおり、力の空白があってはならないということなんですね。ですから、その中で日米の役割分担も含めて考えていかなければならないのではないか。これは私の範囲をある意味超えてしまうかもしれませんけれども、自衛隊の南西方面への緊急展開能力を高めるというのは、既に新しい防衛大綱でも書いてある話でございますので、いずれにしても、まずは我が国自身の安全保障面での努力というのが私もあるべきだと思います。そして日米同盟ということなんだと思うんですね。

 ですから、そこをしっかり考えながら、私は、今、日米の協議、あるいはこれからも不断に実は行っていきたいと思っている日米の協議というのは、やはりこれからの時代の日本と米国の責任分担のあり方、それはハードだけではなくて経済を含めたソフトも含めて、そういった分担のあり方、責任のあり方、役割分担について、不断に検討していきたいな、そう考えているところでございます。

 現時点、やはり力の空白を生じさせることはできないということでの普天間の辺野古へのコミットであるということも、御理解をいただければというふうに考えております。

玉城分科員 ありがとうございます。

 大臣のお話ではありますけれども、海兵隊は、間違いなくグアムやハワイ、オーストラリア、そしてフィリピンに展開していきます。沖縄からいなくなります。いなくなるからこそ力の空白をつくらない。全てが下がるわけではないんですが、少なくとも八千人は移すということですから、そこで、渡辺副大臣、最後にお伺いいたします。

 具体的な今の防衛力、南西方面への展開について、いま一度、どのような方向性で見ているかということをお話しください。

渡辺副大臣 二十四年度の予算の中には、与那国島への沿岸監視部隊、那覇基地の戦闘機部隊の二個飛行隊化、それぞれ二十七年度末までに整備、配備できるようにということで予算計上をしております。

 また、改めて、アメリカの戦略の変更に伴って、前方展開削減というよりも前方展開の分散ですね、それによって日本の役割、任務、能力がどう求められるかの中で、今後また必要な予算措置が出てきましたら、南西諸島の抑止力の強化のために、向上のために、不断の見直しを当然行っていくということでございます。

玉城分科員 ありがとうございました。ぜひ地元の声をしっかり組み入れて、これからも玄葉大臣、渡辺副大臣、外務、防衛、御尽力いただきたいと思います。

 きょうはどうもありがとうございました。

西村主査 これにて玉城デニー委員の質疑は終了いたしました。

 次に、あべ俊子委員。

あべ分科員 おはようございます。自由民主党、あべ俊子でございます。

 本日は、ODAに関して質問をさせていただきます。

 まず初めに、けさの朝日新聞に、緒方JICA理事長、この方が事業仕分けに対して非常に怒りの言葉を発しておりましたが、やはり、お金が幾らかかるかという形ではなく、一体私たちは何をやるべきかというところのそもそも論が私は大切なのではないかと思います。

 特に、ODAに関しましては、国益に資さない、今、景気が悪いときに、本当に日本人のためにお金を使うべきではないか、そういう議論があったわけでございますが、今回の東日本大震災、これはさまざまな、各国からの多大な御支援をいただいたわけでございます。

 そうした中にあって、やはりこのODAというものの重要性が今改めて言われているわけでございますが、このことに対して、大臣の御見解をお伺いいたします。

玄葉国務大臣 今、あべ委員から、緒方JICA理事長の発言も引用されて、ODAの重要性について御指摘がございました。私も全くそのとおりだと。つまり、日本は、むしろ国益を考えれば考えるほど、実は世界全体の利益を実現していかなければならない、もっと言えば、国際公益というものを常に重ね合わせて考えていかなければならないということだろうというふうに考えています。

 したがって、私も就任してから、内向き傾向脱却の象徴の一つだということで、ODAの予算を何とか反転できないかということで、ODAに関して、かなり概算要求の段階では厳しい要求だったんですけれども、最後に、特に二国間の無償など含めてふやすということで、結果として、外務省所管分についてはプラスにいたしました。

 これは私はODA予算の反転の端緒にしていかなきゃいけないというふうに思っていまして、この十四年間で半減したんですよね。何とか反転の端緒を開いたと思っていますので、その傾向を今度ぐっとふやしていくということにしたいというふうに考えております。

あべ分科員 反転というには数字がちょっとかわいいんじゃないかと思うわけでありますが、全体の、技術提供とかいろいろある中で、外務省に予算をふやした理由は、大臣、何ですか。

玄葉国務大臣 これは最終的に政府全体で取り組む話なわけでありますけれども、特に外務省の所管分をふやした理由ということでありますけれども、最終的に政府全体で、財務省との折衝の中で、我々はもともとこういう要望をしておりましたので、我々の外務省の関係分が認められたということだというふうに理解しています。

 つまりは、拠出金だとかさまざまあるわけですよね。あるいは、外務省以外の、経産省だとかさまざまなものがあるわけでありまして、その中で、私どもからは、とにかく、政府全体でもちろん見ていかなきゃいけないんですけれども、特に、我々が要請している、要望しているものの必要性について理解を求めて、その点について一定の理解が得られたものというふうに考えております。

あべ分科員 そうすると、発展途上国に対する支援というのはさまざまあるんだと私は思っております。例えば、インフラ整備、健康、医療、さらには教育とかありますが、各省庁につけていた予算があるわけでありますが、外務省だけに特化してつけたというのは、それはプロジェクトマネジメントとしての役割を外務省がするということなんでしょうか、大臣。

玄葉国務大臣 これは、例えばパッケージ型のインフラ海外展開などは、政府全体として会議体を持っております。そういう中で、ある意味政府全体で、積み上げとまでいかなくとも、全体としての整合性を持ちながら決めているわけでありまして、外務省だけが物事を進めていくということではないと思うんです。やはり政府全体として、いかに戦略的、効果的に進めていくか。

 おっしゃるとおり、技協をどう組み合わせていくのか、あるいはどういった地域にどのくらい力を入れていくのかということは、政府全体で戦略的に決めていかなきゃいけないということだと思います。

あべ分科員 そうすると、大臣がおっしゃったパッケージ型インフラ海外展開という会合の資料があるんですが、その部分に関して、重点分野というのはどこだとお考えですか。

越川政府参考人 いろいろ、アジア、ASEAN中心にパッケージ型のインフラの支援をさせてもらっていますが、港湾ですとか交通インフラですとかエネルギー、水関係、環境関係、非常に広範にわたってございます。一番最近では、二月に、ミャンマーについて大臣間で議論をしたと承知しております。

あべ分科員 そうすると、何かインフラに集中している感じがするのですが、この重点分野というのは、どれぐらいの割合で重点というふうに考えていらっしゃるんですか。パーセントでお答えください。

越川政府参考人 ODA全体の中での重点ということでございましょうか。インフラに限りません。大体、予算規模でいいますと、無償資金協力それから技術協力を含めまして約四千百八十億円、あと、円借款が一兆円弱ぐらい毎年供与しております。

 そういう中で、各分野別の数字はちょっと今、後ほど調べて、またお答えさせていただきたいと思います。

あべ分科員 インフラに偏ったODAに関してさまざま批判があるところはあるわけでありまして、国の支援をしていくのか、何の支援をしていくのかということが私は非常に重要なのだと思っています。

 こうした中において、特に日本の援助に対する批判があった中で、貧困者に本当に役に立っていないという批判もあるところでございますが、この貧困者に役に立っていないということに対して、大臣、このことに関しては何か御意見はございますか。

玄葉国務大臣 今、貧困者に役立っていないのではないかというお話でございますけれども、私は、人間の安全保障というのが、ある意味、日本の政府開発援助を考える上で重要な柱だというふうに思っています。

 人間の安全保障というのは、御存じのように、いわば一人一人の尊厳というものを大切にする、一人一人の人間の能力というものを最大限発揮させるということでございますので、私は、人間の安全保障という観点からいけば、当然ながら、この貧困の問題などに日本のODA、政府開発援助というものは一定程度当然充てられていかなければならないというふうに思います。

 ただ、先ほど局長が答弁したのは、恐らく、パッケージ型インフラの海外展開の会合全体を政府でやっている、その重点分野はどこかということだったんだというふうに思いますので、これは、国際機関への拠出金も含めて、そういった貧困の問題については、当然、人間の安全保障という観点から、我々としては大事にしていきたいというふうに考えております。

あべ分科員 そうしますと、やはり海外に行うときには、海外支援協力という形が、インフラに偏らない形が私は重要である。特に、お魚を差し上げるよりは、お魚のとり方を教えてあげた方がいいという話があるわけでございますが、そういう観点からいうと、もっともっと人を入れていくということも重要なのではないかと思っています。

 そういう中で、JICAが技術協力という形で出ているわけでございますが、実は私、前職は大学で教えておりまして、教え子がJICAで何人もこの青年協力隊で出ているわけでありますが、私はいつも感じるのが、本人たちが貢献したいと思っていることと本当にその現地が必要としていることとのミスマッチ、すなわち、その国が求めているものは、発展途上国であるがゆえに非常に限定的であるということであります。あくまでその国の考え方を尊重するといいながら、何を修正しなければ、その国が何をしていかなければいけないかということはやはり先進国の役割であると思いますが、そのミスマッチに関しては、大臣、いかがお考えですか。

玄葉国務大臣 そこはよく実情を調べなければいけませんが、御存じのように、国別に援助のプログラムというのはあるわけでございます。ミスマッチということが仮にあるとすれば、そういったことについて不断に見直しをしながら、よく相手方とも話し合いながら援助を行っていかなければならないだろうというふうに思います。

あべ分科員 政府の方から何かございますか。参考人の方から。

越川政府参考人 我々も、在外公館、大使館、JICAの事務所、あるいは現地でNGO、それから民間企業、もちろん相手国政府と定期的な協議をしながら、向こうの、相手国のニーズをできるだけ把握してミスマッチが起きないように努力しておりますが、今先生から御指摘があった点を踏まえて、一層ミスマッチがないように努めてまいりたいと存じます。

あべ分科員 ここは本当に志高くして、発展途上国の方々の状況、貧困を救いたいと思って行っている方が、私の教え子はみんな看護師なんでございますが、また助産師もいるわけでございますが、一病院の中のICUの中に入れられて、言語も学んで行ったのにそこで終わってしまうということは、私は、相手が幾らここが足りないから人を張りつけろと言われたといっても、本人の志と違った形でやっていくということは、もっともっとしっかりとして、日本として何を協力していかなきゃいけないかということをぜひ捉えていただきたいというふうに思っているわけであります。

 参考人の方、何かこれに関して答弁はございますか。

越川政府参考人 我々、できるだけやってきておりますが、先生の御指摘を踏まえて、一層努力して対応してまいりたいと思います。

 ミスマッチということは、専門家が行って現地でそういうことが起こるということは本当に残念なことで、そういう志の高い専門家あるいはボランティアで行かれる方がそういう思いをしないように、ミスマッチを避けるように頑張っていきたいと思います。

あべ分科員 どういう形でいつまで頑張るのか、教えてください。

越川政府参考人 できるだけ、過去と比べまして、現地で広く皆さんの、現地の人の意見も聞く、これは邦人の関係者はもちろんですが、相手国政府ともより一層そういう定期的な協議、あるいは、具体的な要請が出たときに、大使館員あるいはJICAの職員が現地に、現場に行って、本当にそこの現場でどういうニーズがあるかをきちっと把握して、その上で対応をするように努力したいと思います。

あべ分科員 努力するではなくて、それをしっかりとガイドライン上に盛り込んでいただくことはできませんでしょうか。参考人。

越川政府参考人 JICAと十分協議して、マッチングの点においてそういうミスマッチが起きないように、必要とあれば、ガイドラインといいますか、JICAあるいは外務本省の方から在外公館の方にもきちっと指示を出したいと思います。

あべ分科員 大臣、このことに対していつまで文書で出していただけますか。

玄葉国務大臣 今、あべ委員からそういう御提案がございましたので、今この場でいつまでというふうに申し上げることはできませんけれども、早急に、今答弁したのも担当局長ですけれども、検討させて、できるだけ早くお示しをできるようにしたいというふうに思います。

あべ分科員 私は、今非常に厳しい財政状況の中で、ODAが効果的に使われるということは本当に重要な課題だと思っております。ですから、近いうちにではなくて二カ月ぐらいで、局長、よろしいですか。

越川政府参考人 外務本省の方あるいはJICAの方からきちっと、すぐにでも指示を出して、ミスマッチが起きないようにしたいと思います。

あべ分科員 続きまして、ODAに関しての、タイド援助に関してちょっと質問させていただきたいと思っております。

 このタイド援助に関しましては、いろいろございますが、OECDに加盟している国はやはり制限がされるところでございますが、このことに対して、かなり日本のアンタイド率が高くなっている。そのことに関しましても、この景気の悪いときでございますから、私はこのタイド援助の部分は精いっぱい援助を伸ばしてもいいんじゃないかと思っているところでありますが、大臣、これに関してはいかがでしょうか。

山口副大臣 ODAについては、ちょうど私が外務省にいたころは、二、三十年前ですけれども、そのころはアンタイ化率、円借款に関して一〇〇%だったですかね。だけれども、ちょっと最近は、STEPとかいう、スペシャル・タームズ・フォー・エコノミック・パートナーシップとか、そういうことで、我が国のすぐれた技術やノウハウを活用して、途上国への技術移転を通じた我が国の顔の見える援助を促進するということを目的としたタイド方式の円借款もあるようです。

 現実には、援助に関する国際的なルールというのが一定の条件のもとでタイド方式の援助も許容しているわけですから、途上国から要請があったというようなこともきちっと確保しながら、国際的なルールを遵守しながら我々はやっていきたいと思っております。

あべ分科員 何か、私はタイド援助をふやすべきじゃないかと申し上げたので、ちょっとお答えが違っているんじゃないかと思うんですが。

 参考人の方で結構でございますので、今タイドの援助は、いわゆるひもつき援助と言われるものですが、どれぐらいになっているか教えてください。

越川政府参考人 お答え申し上げます。

 二〇一〇年までの資料でございますが、二〇一〇年におきましては二・四%になってございます。二〇〇九年には五・三%でございました。

あべ分科員 そうすると、これは、OECDのアレンジメントに関しての規制の理念の部分に遵守するとそれが目いっぱいの数だということでしょうか。それとも、もっと工夫の余地があるということでしょうか。

越川政府参考人 タイドをもう少しふやすべきだということ、そこは我々も、STEPを初め、パッケージ型インフラの輸出ということで、日本の企業、あるいは今、中小企業の支援というものを前面に出してやってございますので、これはできればもう少しふやせればふやしていきたいなと。ただ、結果もございますので、あるいは相手国からの要請もございますので、それを見ながら、もうちょっとふやしていければなという感じは持っております。

あべ分科員 そうすると、今、二・四%とおっしゃったものが、どれぐらいまで目標にしていらっしゃるのか。タイド援助を行うときの案件の適格性という、例えば被援助国の適格性、プロジェクトの適格性などがございますが、ここのところは全く修正ができないのか、それともある程度自分たちが幅を見ることができるものなのかを教えていただけますか。

越川政府参考人 まず、対象の国でございます。これは、OECDのルール上、後発開発途上国及び中進国、ここにはタイド、STEPローンは適用できません。それ以外の、貧困国、低所得国、中所得国、ここにはタイド借款が禁じられておりません、幾つか条件がありますが。

 あと、分野についても、幾つか日本の技術が生かせるということですが、それ以外のものについてもケース・バイ・ケースで、要請に応じて柔軟に対応していきたいと考えております。

あべ分科員 アンタイド化に関しては、昔やはり悪いことをした人もいたようでございますし、さまざまなことがあってアンタイド化がされたわけでございますが、私は、何度も申しますように、国益に資するODAということ、さらには日本のこれからの発展を考えたとき、また日本の持っている技術力も考えたときに、タイド化を進めていくということは、ある種進めていくべきだと思っております。

 それをなぜ私が申し上げているかといいますと、昨年夏に、福田元総理とスリランカに参りました。これは超党派で、与党の皆さんもいらして、六名ほどで参りましたが、そうしたら、その中山間の奥の方で、特にそこは非常に洪水の多いところでございましたので、そこにダムをつくるということで、日本の技術者が七十名ほど行っていました。本当に頑張っていらっしゃいまして、日本の旗を掲げて、この国のために頑張るぞと言って頑張ってくださっていたわけであります。

 年に二回しか日本に帰れないんだそうであります。一番何が食べたいと聞いたら、生ラーメンを食べたいとおっしゃっておりまして、何と乾麺を、乾のラーメンを買うにも車で片道四時間半かけて行かなきゃいけないところで日本のために頑張ってくださっている方がいらっしゃる。

 やはり、こういう顔の見えるODAというのが私は非常に重要だと思っておりますので、このタイドに関しては、ぜひともしっかりと、日本の国益に資するODAという観点、さらには日本の技術を皆様に提供するODAという観点から進めていただきたいと思います。

 次に、私、国際連帯税に関して質問をさせていただきたいと思います。

 この国際連帯税に関してですが、検討が外務省でもされているようでございますが、この国際開発連帯税に関して、大臣、所見をお伺いいたします。

平松政府参考人 お答えいたします。

 国際連帯税につきましては、先ほど先生から御指摘もございましたとおり、例えばミレニアム開発目標、貧困の目標というものを達成するにおいても、世界的に非常に重要なものとして議論されております。

 今、国際的な議論が、例えば二〇一〇年に、日本がリーディンググループ議長国として、開発のためのいろいろな資金調達に関する議論に参加しております。今後とも、国際的な議論に積極的に参加していく考えでございます。

 外務省といたしましても、来年度の税制改正といたしまして、国際開発連帯税の新設というものを要望しておりまして、二十四年度の税制大綱におきましても、今後、国際的な取り組みの進展を踏まえまして真摯に検討を行いますと記載されておりまして、引き続き真剣に検討してまいりたいというふうに思っております。

あべ分科員 私は、ODA予算が非常に減っていく中、どこからそのODA予算を捻出するかという観点から、航空券という考え方は非常にすっきりするのではないかと思っているんですが、これに関しては国土交通省の反対もあるみたいでございますが、大臣はいかがお考えですか。

玄葉国務大臣 これは、たしかフランスとか韓国が導入をしているというふうに承知をしています。

 私も、年末の税制改正大綱に向けて、この問題についてどう取り組んでいくかという対処方針を外務省の中で決めるときに、何とか頑張ってこの議論をするようにという話を指示したところでありますが、残念ながら現状で結論が出ているという状況ではなくて、事実上、継続検討というのが今、政府全体の状況にあるということでございます。

あべ分科員 これは、継続検討というのは我々が与党だったときもよくあったんですが、前向き継続検討なのか後ろ向き継続検討なんですか、どちらか、大臣、ちょっと感触を教えてください。

玄葉国務大臣 これは、率直に言うと、政府税調、党政調の問題だというところもあって、では、今、全体として前向きなのか後ろ向きなのかといったら、必ずしも積極的に次を見通せるかというと、残念ながらそういう状況に私は今のところないと思っています。

 ですから、相当、超党派でこの問題について議論して、そして、しかも今あべ委員がおっしゃっていただいたのは、それをまさにODAの財源などに活用するんだという話でもございます。

 その仮に導入したときに、では何に活用するんだという議論も含めて政府税調でなされていますので、これはもう現状はそんなに見通しとして甘くはないというふうに私自身は見ています。

あべ分科員 やはりどうしても、今、日本人が自分たちのことばかりの内向きになっているということも私は非常に大きな要因ではないかと思っております。

 いわゆる国益を考えるということと、さらには国際益を考えていくということがございまして、私ども、与党のときにも、党内の議論の中で、今、日本がこういう状況なのに海外の手伝いなんかしているところか、そんなものはやめてしまえという意見も実はありました。そういう中で、JICAの緒方理事長、当時も理事長でございましたが、国のレベルにはいろいろあって、日本人はやはり自分たちが戦後どうやって頑張ってこれたのかということも含めた形で国際益を考えるという国の品格があってもいいのではないかという発言をしたわけでもございます。

 しかしながら、外務関係というのはどうしても選挙のときに票になりにくいということもあって、興味のある方がいなくて、特に航空税をかけた場合には国土交通という非常に選挙に強い方々がいろいろ言われるわけでございますから、そこはしっかりと、やはり国際益を考えていくという日本国の品格をもってして取り組んでいただきたいと思うわけでありますが、大臣、ぜひこれに関しての意気込みをお願いいたします。

玄葉国務大臣 激励をありがとうございます。

 まさに、特に国際公益を考えていく品格のある日本というものを実現していくために全力を尽くしたいというふうに考えております。

 ありがとうございました。

あべ分科員 我々、東日本大震災のときには、貧しい国の方々も、私たちの金額にしてみれば本当に缶ジュースも何も買える金額でなかったけれども、発展途上国の方々にしてみれば大金を皆さんが集めて、日本のために応援しようということでさまざま寄附金も下さったわけであります。そういうことを考えたときに、困っているときには国際的に助け合うということが大切なのではないかと思います。

 最後になりますが、ODAに関して、私、人口懇談会というものの女性局という役員もさせていただいているところでありますが、そうした中でやはり今私たちがやらなきゃいけないこと、インフラ整備のお手伝いも確かでございますが、私は法整備ではないかと思っております。特にその国の法律が、また制度が整備されていないがゆえに起きている貧困、例えばそれは年金の問題かもしれない、医療保険制度かもしれない、教育の問題かもしれない、そういう法整備のお手伝いをしていくのが私は一番重要なのではないかと思っているわけであります。

 やはり、法整備のお手伝いをしていくには国会議員同士の議論が一番重要なわけでありまして、立法府にいる私ども日本の国会議員とさらには発展途上国の国会議員がしっかりと法整備の議論ができる場をつくっていかなければいけない、こう思うわけであります。しかしながら、地味な発展途上国に興味のある国会議員が余りいないわけでありまして、ここのところは、大臣、ぜひともよろしくお願いしたいと思うわけであります。

 ここに関して何か御意見ございましたら、最後によろしくお願いします。

玄葉国務大臣 私、全くおっしゃったとおりだと思うんです。ですから、ミャンマーなども、この間、アウン・サン・スー・チー氏に会ったときに、ぜひ国会議員同士の交流をもっとしたいと。今おっしゃったような観点を含めてなんです。つまりは、法整備などについて、もっと言えば政党というものについて、ガバナンスというものについてしっかり勉強したいんだ、こういうふうに言っていました。それは、ミャンマーに限らず、我々が行政官を派遣するなども含めて、そういった部分について貢献をするということはとても大事だというふうに思いますし、きょうのあべ委員の一連の御意見は大変私、参考になりました。

 フルキャストディプロマシーという言葉を最近私使うようにしていて、全てのアクター、例えばNGOにしても、中小企業にしても、大企業にしても、地方自治体にしても、政府と外交官はもちろん大事なんです、国会議員も大事なんですけれども、やはりフルキャストでより戦略的に外交というものを展開していく、特に援助などは展開をしていくということについて、特に心がけていきたいというふうに考えております。

 どうもありがとうございます。

あべ分科員 ありがとうございました。

 時間になりましたので、終わります。

西村主査 これにてあべ俊子委員の質疑は終了いたしました。

 次に、阪口直人委員。

阪口分科員 民主党の阪口直人でございます。

 本日は、特にミャンマーに対する民主化支援ということに絞りまして、玄葉大臣に質問をさせていただきたいと思います。

 私、一月の上旬にミャンマーに参りまして、そこで民主化勢力の方々と対話をしてまいりました。各政党の方々、少数民族の代表の方々、いわゆる一九八八年の学生運動の方々、一般の市民の方々、さらにアウン・サン・スー・チーさんにもお会いをしまして、約一時間意見交換をさせていただく機会がありました。ちょうど十日ぐらい前に、玄葉大臣もミャンマーに行かれて、アウン・サン・スー・チーさんとも意見交換をされたということで、大変に心強い思いで意見交換をしました。その際に、日本の貢献として、何よりも民主化のプロセスを後押しをしてほしい、その中で、特に法整備支援に力を入れてほしいということをおっしゃいました。

 実は、私は、アウン・サン・スー・チーさんとお会いするのは二回目でした。一九九五年以降、ミャンマーの視覚障害者、目が不自由な方々を支援する基金をつくりまして、現地で活動していたんですが、ちょうどそのころ、軟禁状態から最初の解放をされて、自宅前で対話集会をなさっていたんですね。私も四回ほど参加をしまして、彼女が言っていることを、当時カセットテープに録音して、日本語訳をして、それを勉強させていただいたんですが、私が大変印象的だったのは、マハトマ・ガンジーの非暴力、不服従運動の例を挙げて、我々ビルマの国民もインドの人たちに負けないような忍耐と高いモラルを持って自由と民主主義を実現しましょう、そういったお話をされていました。

 十六年がたって、今、民主化という方向に光が差してきた。私は、一人の国会議員として、また日本の市民として、何としてもこの流れを後押ししたい、そんな思いでアウン・サン・スー・チーさんとの対話に臨んだんですが、その中で強く求められた民主化支援、特に法整備支援に対して、日本ができることは何なのかということを、きょうは議論したいと思います。

 そこで、最初の質問なんですが、まず、日本の基本的な立場として、この民主化支援ということに対して、これまでどのようなスタンスでかかわってきたのか。特に、このミャンマーに対して、日本は大変独自のスタンスをとってきたと思いますが、その点について、大臣から御説明をいただければと思います。

玄葉国務大臣 これまでの日本のスタンスという御質問だったというふうに思います。

 私自身は、就任のときに、民主主義的な価値に支えられた豊かで安定した秩序をアジア太平洋につくると、あえて民主主義という言葉を最初につけているわけでございます。そういう観点でまさにミャンマーに対しても対応したいというふうに思っているんですけれども、これまでのというお話でありますから、どういうこれまでのスタンスだったかといえば、確かに一定の独自のスタンスというものを日本は持っていたんだろうと。それは、ミャンマーのいわゆる地政学的な重要性といったものに鑑みて、例えば他の西側諸国が援助から手を引いていくという状況にあってもなお、一定のコミットというか関与をミャンマーには細々とながらも続けてきた、こういう経緯があるものというふうに承知しています。

阪口分科員 私は、日本のミャンマーに対する民主化支援のスタンス、基本的な理念は必ずしも間違っていたとは思いません。欧米諸国が、例えば経済制裁なども行いながら、かなり欧米のやり方をアジアの民主主義発展のプロセスにいわば押しつけていくというスタンス、日本はこういったスタンスはとってきませんでした。また、何よりも経済発展を中心に据えて、徹底した内政不干渉を行ってきたASEANの国々とも一線を画してきた。私は、民主化を支援する方法として、国民が求める援助を行って、特に人道的な部分などにフォーカスをして援助をするという方針自体は間違っていなかったと思います。しかし、それが本当に機能できたのか。この点については、私は、反省もする、また検証して、足らないところがあればその理由を明らかにしていくということが大変に必要だと思います。

 今回、民主化勢力の方々と話をする中で、彼らは日本に対してかなりフラストレーションを感じている。日本こそは彼らが求める民主化の支援にもっと大きな役割を果たしてくれる能力があるはずなのに、実際には力強くイニシアチブをとっていくという姿勢がなかなか見られないということに対しては、必ずしも日本を評価しているとは思えないというのが私の感想でした。

 そこで、先ほどは、これまでのということで、民主化支援のスタンスについてお聞きしましたが、今後、このミャンマーの民主化に対して、日本としてどのような立場で、また戦略でかかっていくのか、お聞かせをいただきたいと思います。

玄葉国務大臣 まず冒頭、阪口委員が、まさに国会議員になられる前からさまざまな国際的な活動に従事されて体験をされてこられた、そのことをいろいろこういう形でお話をいただくということは、私としては、大変参考にさせていただきたいというふうに思います。

 これまでの支援について、必ずしも評価されていないのではないかという話がまずございましたけれども、基本的に、いわゆる民主化勢力あるいは少数民族、そういう方々の立場からすればそういうことなんだろうというふうに思うんですね。一方で、やはりアジアの中で我々はこのミャンマーに対して主導的な役割を果たしていかなければならないということを考えたときに、一定程度この間もミャンマーに対して関与してきたというのは、私はやはり、冒頭おっしゃっていただきましたけれども、よかったのではないかというふうに思うんです。

 今後、私自身も実感をしましたけれども、今の民主化、国民和解の流れというのは本物だというふうに私自身も考えているんです。ですから、やはりこれを後押しすることが大事だというふうに考えておりますので、テイン・セイン大統領にもお話をいたしましたけれども、やはり、さらなる政治犯の釈放、そしてアウン・サン・スー・チー氏の政治活動の自由というものを保障してほしい、保障しなければならないということを、はっきり私からも申し上げました。その後、さらに少数民族との和解も含めて進んでいますので、やはりこの流れを確固たるものにするための日本の支援というものを考えていかなければならないのではないかというふうに考えております。

阪口分科員 ありがとうございます。民主化の流れを確かなものにしていく、これは非常に重要なポイントだと思います。

 さて、四月一日には、ミャンマーにおいて補欠選挙が行われます。アウン・サン・スー・チーさんもヤンゴン郊外のコムー選挙区というところから立候補する予定でして、世界的にも、補欠選挙でありながら大変に大きな注目をされている選挙だと思います。

 私も、こういった選挙に対して、日本として選挙監視活動を行うというのは、主体的な民主化支援のあり方だというふうに考えておりまして、国会議員の中でぜひそういったチームを組織して貢献をしたいと思っている者の一人でございます。ところが、私も連日、現地の情報をさまざまな形で収集しているんですが、今のところ、国際的な監視チームを受け入れる方針には至っていないというのが現状でございます。

 私は、ミャンマーのこれまでの民主化への取り組みを評価している一人でございます。本当に大きなリスクがありながら、民主化という方向性に大きく踏み出した、これをサポートしたい。しかし、私は、選挙が自由で公正だと認められる大きな要因、条件として、国際的な監視チームを受け入れるということが必要だと思っていました。ところが、この方針に至っていない。私は、日本の民主化支援のあり方として、まさにフレンドリーアドバイスとして、このことを後押しすることが必要ではないかと思います。この点について、どのようにお考えでしょうか。

中野大臣政務官 先ほど大臣からお話がありましたけれども、この民主化の流れというものは、恐らく本物であるというふうに私も理解をしております。

 ただ、その上では、おっしゃるとおり、四月一日の補欠選挙、非常に大事であって、これはしっかりと公平で自由な選挙が行われないといけない、これはもうマストであると思っています。

 その中で、今、残念ながら、ミャンマー政府からは公式な見解は出ておりませんけれども、ミャンマー政府としても、選挙監視団を受け入れるということを今検討しているということでございますので、我が国としましても、その受け入れに対しましては、しっかりと働きかけていきたいと思っております。

阪口分科員 この件に関しては、私も実は外務省の担当の方に何度か強く働きかけをしてまいりました。残念ながら、先日、私が会った時点では、まだ選挙管理委員会の方にも会えていないというような、ちょっと私としては心もとない対応でありました。

 私は、ぜひ玄葉大臣にお願いをしたいんですが、テイン・セイン大統領に対して、ぜひ国際的な監視チームの受け入れを提案していただきたい。それこそが、この選挙が、ミャンマーが、そしてミャンマーの民主化への取り組みが、国際社会から認められるか否かの大変に大きなポイントであるということを、ぜひ日本として、大臣として助言をしていただきたいと思うんですが、この点についてはいかがでしょうか。

玄葉国務大臣 確かに、今の阪口委員のお話は大事な話かもしれませんね。ですから、これについては、直ちに省内で検討させて、どういうラインでどういう形で働きかけをするのがいいのか、よく検討して、働きかけたいというふうに思います。

阪口分科員 ありがとうございます。きょうはもう三月五日であります。補欠選挙の日程が四月一日。ただ、これはあくまで投票日であって、選挙というのは、キャンペーン、また、さまざまな有権者に対する教育、そしてメディアの監視、人権状況の監視など、さまざまな要因が私は選挙監視だと思います。

 そういう意味では、本当に時間がありませんし、国際的な選挙監視チームを受け入れるということであれば、当然、先方も準備が必要だと思います。この方針をなるべく早く決定できるように、ぜひ、ある意味では急いでいただいて、強い働きかけをお願いしたいと思います。

 さて、この選挙にもかかわりがありますが、国際社会は、恐らく、選挙の実施をもって、例えば、これまでの経済制裁を解除するとか、また、ODA等のさまざまな支援を拡大する、こういった方針であるようにも私は感じています。

 日本は、例えばこの四月一日の選挙の後に、何らかの立場の進展を、何らかのミャンマーに対するかかわりにおける変化を考えているのかどうか、もしそれがあるとすれば、それは具体的にはどのようなものなのか、お知らせをいただければ幸いです。

中野大臣政務官 我が国のミャンマーに対しましての政策は、二月の二十八日に玄葉大臣から政策スピーチという形で発表させていただきましたけれども、先ほど大臣からお話ありましたとおり、この民主化の流れがしっかりと着実に進んでいるという前提で、我が国としましては、円借款を本格的に再開するですとか、人的交流ですとか、文化交流ですとか、あとは経済協力、あるいは貿易・投資の促進、そういった面もしっかりと支援をしていくという方向性を打ち出しております。

 ですから、四月一日の選挙がこのまましっかりと公正公平に行われるという前提であれば、今申し上げているような政策は、変更するということではなくて、それをさらに加速していくという方針だというふうに理解をしています。

阪口分科員 ありがとうございます。

 今、中野政務官がおっしゃった、支援を加速していく、それを本当に堂々と行うためにも、やはり自由公正な選挙が行われる、それを国際社会がしっかりと監視するという条件をつくる必要があると思います。世界的に見ても、やはりこの自由公正な選挙を監視する国際監視員の受け入れというのが、さまざまな選挙後の政策の転換、あるいは支援の加速を決定する上での大きな要因になっていると思います。

 そういう意味では、我々が描いている支援をもっと力強いものにするためにも、繰り返しになりますが、この国際選挙監視チームの受け入れということを強く提案していただきたいと重ねてお願い申し上げたいと思います。

 さて、民主化支援というのはいろいろな要素があると思いますが、私はその中で、やはり経済開発を支援する。国民が豊かになって教育や医療などの機会を享受することができる、そういった中で民主主義の基盤が育ってくる、こういった側面も当然あると思います。

 私、アウン・サン・スー・チーさんとお話をしていて強く感じたことは、彼女が今後ミャンマーのリーダーになっていくのかどうか、政治的な立場はともかく、国民に対する影響力という意味では、本当に大きな期待を背負っていると思います。

 アジアの民主化のプロセスということを考えた場合に、多くの国がいわゆる開発独裁というプロセスを経て豊かになってきた、こういった現実があると思います。ただ、ミャンマーに関しては、彼女は決してそういった方向性を考えているようには思いません。最初の段階から、貧しい人々にも利益がしっかりと循環するような、また、人権や環境に対する配慮もしっかりとなされた、そういった経済政策を行っていく必要がある、このように強く感じていることを私も実感いたしました。

 私は、日本の今後の支援のあり方として、これはミャンマーだけではありませんが、こういった普遍的な価値、つまり、日本がこれまで培ってきた、その国の文化を尊重する、また、人権や民主主義、環境といったものをしっかりと後押しできるような経済政策をその国にアドバイスする、あるいは、経済政策が実施できるような基盤をつくっていくということが、日本が貢献できる大きな価値であり、我々がすべきことだと思います。

 また、こういった経済システムをつくっていくことが、ある意味、アジアの国、中国や韓国などとの競争に対して、日本がしっかりとイニシアチブをとって競争に勝っていくことができる大きな要因になっていくと思います。

 このミャンマーに対する経済政策のあり方、この点において、日本が何らかの価値を与える、何らかの貢献をする、そういった可能性があるのか、意思があるのか、この点についてもお伺いをさせていただきたいと思います。

玄葉国務大臣 今、阪口委員が言われたように、アウン・サン・スー・チー氏は、まさにそういう考えだと、私も話をしていて理解をしています。私にも直接、少数民族や貧しい方々が恩恵を受けることができるような、裨益することができるような、そういう援助を実施してほしいというお話がありました。

 私からは、先ほどもちょっと触れましたけれども、人間の安全保障という観点から、私たちはそれは大切にしますという話をいたしました。るる説明をいたしました。先ほどお話のあったインドの民主主義の話もいたしました。

 今おっしゃったことをきちっと行っていく、つまりは、少数民族とかあるいは貧しい方々に対して恩恵を与えることができるような、そういう援助、基礎生活分野への援助というものを実施しながら、あわせて、いわゆるインフラも含めた援助というものを行っていくことができるような環境を今つくろうとしているということであります。

 結局、法の支配という話をよくアウン・サン・スー・チーさんもされますけれども、やはり行政官の交流とか、そういう、今度はソフト面でのやはり支援というのが、より一層ミャンマーに対しては大事になってくるのではないだろうかというふうに思っておりますので、これは政府だけではなくて、先ほど、フルキャストディプロマシーという言い方をしましたけれども、企業だとかも含めて、そういったソフト面での支援も考えていかなければならないというふうに考えております。

阪口分科員 ありがとうございます。大変に力強いお言葉と受け取りました。

 さて、民主化支援ということに戻りましての最後の質問ですが、これまで日本は、アジア諸国に対してさまざまな民主化支援を行ってきたことも事実だと思います。私は、カンボジアに対して一番長くかかわってまいりました。その中で、民主化支援というスタンスで、一九九二年以降、さまざまなかかわりをしてまいりました。

 私は、この民主化支援を行う上で、単に選挙の民主化だけではない、先ほども少し触れましたが、議会の民主化、さらにメディアの民主化、メディアが公正に、政党また政党の活動、議会活動について報道する。さらに、そういった価値観に基づいて、人権状況などについて、本当に公正に政治活動に参加する機会が国民に与えられているのか、あるいは野党にも与えられているのか、そういったことをしっかりとチェックする機関、こういったものをつくっていくということが私は必要だと思います。

 これは私の提案なんですが、例えばミャンマーにおいて、ミャンマーの国民みずからが、今私が申し上げたような活動を行っていく、そしてそれを国際的な民主化支援のNGO、民主化支援の機関などと連携をして、そして、これから三年半後にまた総選挙がございますが、その総選挙に向けて、本当に国際社会が、投票の前後だけではなくてそのプロセスにおいても、また政治全般においても民主化が達成されたんだ、したがって、さまざまな形でミャンマーに対する支援を行える条件がしっかり整っているんだということを国際社会に対してもしっかりと伝えることができるようなそういった機関の設立、そういった後押しということも、私は、日本の今後の民主化支援のテーマとして考えていくべきではないかと思っております。

 私は、日本の民主化支援というのは、これまではどちらかというと、開発援助をすることで、長い目で見て民主化を後押しするという考え方が主流であったと思いますが、直接的に市民社会をサポートすることで民主化に向けての活動を後押しする、こういった取り組みをミャンマーに関しては考えていくべきではないかと思っています。

 この点について、個人的な考えでも構いません、玄葉大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

玄葉国務大臣 一つの考え方だというふうに思いますので参考にさせていただいて、本当に何がミャンマー全体にとって、また国民一人一人も含めて、ミャンマーの将来にとってよいのか。そのために、単に民主化だけではなくて、全体にとって何が一番よいのかということを踏まえつつ、しかし、今の御提案も参考にさせていただいて、今後考えてみたいなというふうに思います。

阪口分科員 ありがとうございました。

 きょういろいろと質問させていただいたこと、それが本当に反映されていくのかということを私なりに検証させていただきながら、今後ともこの問題については質問させていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

西村主査 これにて阪口直人委員の質疑は終了いたしました。

 次に、城内実委員。

城内分科員 自由民主党・無所属の会の城内実でございます。

 本日は、TPPの問題について、そして二つ目はODAについて、三つ目は日欧関係の今後について質問させていただきます。

 まず、TPPについてお尋ねいたします。

 政府からも既に発表されているように、TPPの交渉分野は二十一に及びます。二十一分野それぞれの交渉における懸念等も公表されているわけであります。にもかかわらず、大変残念なことに、マスコミの報道ですと何かあたかも農業者対自動車産業という感じで、あるいは開国派対鎖国派というふうに、極めて矮小化というか、歪曲化とも言っていいと思うんですけれども、されておりまして、そのたった一つの農業という分野に注目が行って、それ以外の二十分野についてどうなっているかということは、残念ながら国民は余りよく知らされておりません。

 むしろ、TPPは、今までの国際経済交渉、例えばバイの、二国間のFTAやEPAと大きく異なり、多国間で共通の取り決めをみんなで決めていくという、我が国にとってはかつてない、大いなる取り組みでありますので、そういったバイの交渉とマルチの交渉との違いということをもうちょっと国民に理解していただく必要があるんじゃないのかなと私は思います。

 そして、それ以上に問題なのが、今回の交渉相手に米国が入っている点であります。私は常々、TPPは実質的に日米FTAであるというふうに主張しておりますけれども、TPP参加予定国全体のGDPのうち八割、九割が日米で占めているということは、まさにそれを物語っているのではないかと思います。

 さて、本題に入りますが、日本のTPP協定交渉参加についてアメリカからパブリックコメントが出たというふうに伺っております。いろいろアメリカには、圧力団体というか有力な団体がロビー活動を積極的に行っておりますけれども、その中で、米国で使用されている食品添加物を日本でも使用できるよう要求しております。

 TPP協定交渉の参加に際し、アメリカ政府が、そういったアメリカの圧力団体の要求を受けて、日本の食品安全基準をもっと緩くしろ、そういうことを当然言ってくる可能性があるわけですが、もしそうなってきますと、当然、我が国の国民の健康、安全に大きな影響を及ぼす重大問題でありますから、もしそういうようなことが起きた場合、これは仮定の問題ではありますけれども、その場合は、これは大臣、はっきりと突っぱねる、拒否する、そういう御姿勢でありますか。

山口副大臣 後でまた大臣から大きなところのコメントがあるかもしれませんけれども、私の方から城内議員に答えさせていただければと思います。

 私も実は、城内議員が言われるように、アメリカからいろいろなことが確かに来るかもしれない、私は、それは非常に注意深く、バルブを慎重にあけなければいけないというふうに基本的にまず思っています。

 それから、今おっしゃった大きなところからまず言わせていただければ、確かに、貿易、それから我々は円高もあるから通貨の問題とか、大きな秩序が今問われているんじゃないかと思うんです。WTOでなかなかうまくいかないから、ある意味でアメリカも、それじゃ、気の合った者同士でやるかということが一つのTPPの流れじゃないかと思っていますけれども、おっしゃるとおり、日米の比重が物すごく大きな格好になりかねないものですから、そういう意味で、我々もアメリカがどういうふうに言ってくるかということは非常に注意深く見ています。

 今おっしゃっていただいたパブリックコメントの話、百十五出たようですね。ほとんどは大体、いわゆる好意的なコメントが多かったようなんですけれども、おっしゃったとおり、食品の安全については、科学的根拠に基づいて国際的基準を守ってほしいとか、あるいは食品添加物指定に関する制度を見直してほしいとか、それから残留農薬の検査の方も改善してほしいとか、そういうところが、食肉協会とか、あるいは生乳生産者協議会とか、あるいは乳製品輸出連盟とか、米連とかいうところから出ているのは確かです。

 でも、基本的には、こういうものは、パブリックコメント、今アメリカでは検討されているところで、まだ必ずしも具体的なものは来ていませんけれども、WTOとかSPS協定で認められたものについては、きちっとそれは我々やらせていただきますというスタンスで考えていきたいと思っております。

    〔主査退席、金森主査代理着席〕

城内分科員 今副大臣から御答弁ありましたけれども、これは牛肉の問題もそうでしたけれども、やはり食品の安全というのは我が国国民にとって非常に重要な問題ですので、そういったアメリカの圧力団体がアメリカ政府に働きかけて、交渉ベースでそういった、無理難題と私は思いますけれども、押しつけられないように、外務省としても関係省庁とよく連携していただいて、その点、頑張っていただきたいなというふうに思います。

 次の質問に移らせていただきますけれども、先ほど副大臣がおっしゃったように、農業以外の分野もあるということですが、やはり一番アメリカが関心を持っているのは金融サービスじゃないのかなと私は思います。

 特に保険でありまして、米国政府が募集したTPPの日本との協議に関するパブリックコメにおきまして、米国最大の圧力団体と言われております米国生命保険協会は、TPPの文脈における米国の日本関連主要目的は、かんぽ生命や共済に法制上または規制上の特権が与えられることのない対等な競争条件を日本の保険市場において確立することであるべき、そのように述べて、かんぽ生命、共済をやり玉に上げて、かんぽ生命と共済に関する競争歪曲的な政策、法令及び慣行を除去し、または修正することとか、かんぽ生命と米国保険事業者との間で対等な競争条件が確立されるまでは、新規商品等がかんぽ生命から提供されないことを確保すること、こういうふうに言っているんですね。

 私は、これはとんでもない要求だと思うんです。日本は当然、こんな条件はのめないと思います。

 例えば、我が国のかんぽ生命は養老保険の提供のみ認可されており、まさに成長市場である第三分野保険商品、端的に言えばがん保険ですけれども、これは認められていなくて、はっきり言うとアメリカに、どうぞこちらでやってくださいと。これはまさに、日本の生命保険会社からすると、競争歪曲的な政策云々は日本側の主張になるわけでして、特にがん保険市場について言及するとしますと、外資、アフラックとかアリコジャパンとかありますけれども、日本市場の八割を占めている、まさに寡占状態なわけですね。

 政府が介入して是正せよとまでは言いませんけれども、日本の保険会社にとって日本市場がより適正になることは、私は日本の国益に反しないというふうに思います。

 さらに、このような市場不均衡の状況下でTPPに参加すれば、既に一部の分野で寡占状況がある、例えばがん保険市場が、さらに悪い状況に進んでしまうと思うんですけれども、その点についてどのようにお考えでしょうか。

山口副大臣 私も、城内議員の懸念については十分共有させていただきたいと思います。

 まず、事実の関係だけから先に申し上げさせていただくと、確かに百十五のパブリックコメントの中で、保険分野について、かんぽ生命あるいは共済と民間保険事業者との間での対等な競争条件を確保すべきだという意見が出ているようです。

 この間、七日に局長級があり、そのときには例示的に確かに保険分野のことが話題になったようですけれども、詳しいところまではいっていません。また、二十一日、二十二日の課長級の実務者協議においても、このときには個別の事項については具体的な要請はありませんでした。

 ただし、おっしゃるとおりに、我々の仕組みについて、全国的なネットワークがあるじゃないかとか、あるいは、その株式の状況について今城内議員がおっしゃったようなことをかなり強く思っているようなので、それが出てきたときには、WTO協定を初めとする国際約束の間ではすっかり整合性ができていますということで我々は応対したいと思っています。

城内分科員 ぜひ、今副大臣おっしゃったようなことをはっきりとアメリカに申し上げていただいて、まさにWTOとの整合性についてのことも含めて、はっきりとこれは突っぱねていただきたいなと思います。

 これに関連して、これは質問じゃありませんので、ちょっと聞いていただくだけで結構です。近々発効する米韓FTAでは、変額生命保険や損害保険、退職保険などの新商品を販売してはならない、既存商品を変更するにも金融監督委員会の勧告が必要である、さらには保険商品の限度額を引き上げる場合にも金融監督委員会にお伺いを立てなければならないということになるそうであります。

 まさに私の今申し上げた懸念が、お隣の韓国という国で現実的になっているわけですよ。ですから、日本において決してこのようなことがないように、再度お願いしたいと思います。

 この米韓の関係でいいますと、米韓FTAにおいては、いわゆる大変悪評の高いISDS条項とかあるいはラチェット規定など、そういったいわゆる毒素条項などと言われているものが含まれておりまして、お隣の韓国では、後になってみて、何だ、とんでもないじゃないかと大騒ぎになっているんですけれども、これに関して大臣がどのようにお考えになっているのか、これはとんでもないというふうにお考えなのか、お答えいただきたいと思います。

山口副大臣 先に、城内議員、韓国の郵便局みたいなもの、私もあれは大分気になって調べてみたんです。そうしたら、日本の場合には、郵便局というのはいろいろな規制がほかの金融機関と同じようにかかっているけれども、韓国の場合にはそれが必ずしもかかっていないというところもあって、ちょっと弱みがあったようなんです。そういう意味では、韓国の例にならないように我々はよく気をつけていきたいなという気持ちを持っています。

 先ほどのISDSの関係です。おっしゃっていただいたこと、これも非常に気にしているんですけれども、韓国はシンガポールとかチリ等との間のFTA七本があるようですけれども、そのうちの六本はこのISDSがもう既に入っていたということだそうです。あとの一本はEUとの関係のものですけれども、これはEUのコミッションが、いわゆる投資委員会というものを設ける権限がないというところで入っていなかったようなので、基本的にはもう既に米韓の前からいろいろなものに入れているようです。

 ちなみに、私たちは、ISDSが我々の身にどういうふうに関係するかどうかというのは、いろいろな指摘もあることももちろんそうですけれども、いろいろ見てみると、我々の場合には、既に二十四の投資関連協定においてもISDSというのはもともと採用している。その中で、我が国が一九七八年以降に投資協定の中で、いろいろ入れてきた例の中で訴えられたことというのは、とりあえずまだないんですね。

 それから、アメリカがかかわったものはどうかということを見てみると、NAFTAがあるわけですけれども、NAFTAができて約十五年、その中でカナダとかメキシコがかかわっているわけですけれども、割ってみると大体年に一件ぐらいという感じのようです。したがって、ISDSができて、例えばアメリカの会社がすぐ日本の我々政府をばんばん訴えてくるかというと、どうもそうじゃないんじゃないかという気はしています。

 ただし、アメリカの方でもそういうことが頻発すると、いわゆる濫訴というんですか、みだれて訴えが起こってくるとやはり調子よくないなということで、そういうことがないようにしようというふうないろいろな配慮も今行われているようなので、我々としたら、これからもしも交渉に参加する場合には、そういうことがきちっと確保されるようにしていきたいと思っています。

城内分科員 今副大臣おっしゃったように、まさに濫訴ということはあります。アメリカはどちらかというと訴訟国家ですから、ある意味ごね得というようなことがありますので、何か一つのことをきっかけに、いちゃもんという言い方がありますけれども、文句を言って、これは協定違反じゃないかとか非関税障壁じゃないかといって仲裁裁判にかけて、それで多額の賠償金をせしめよう、そういう悪意のある濫訴が行われる可能性というのは私は十分あると思っているんですね。

 私は、さらに、ISDS条項やラチェット規定を入れたことを含めて、米韓FTAは韓国にとって大失敗だと思っているんです。現に今、大騒ぎになっています。

 一方、韓国は、米を守った、ミカンでも何とか最小限の譲歩をかち得たと言っている人もありますが、確かにセンシティブ品目である程度守ったんですが、このISDS条項やラチェット規定を入れたことで、私は基本的にこれはもう大敗北だと思います。これはある意味、女子フィギュアで金メダルをかち得たけれども、国全体としては金メダルたった一個で、ほかで全部負けている、そういうまさにトリノ五輪のような結果だと思っていますので、そうならないように、やはり全体の中で我が国の国益を考えてやっていただきたいなと思います。

 その一つが私は混合診療だと思うんですね。これは、いろいろある二十一分野の中でアメリカが一番関心を持って見ているところだと思うんですけれども、先般、アメリカが、混合診療については解禁を求めないので心配するなというふうに述べております。実は、そのこと自体、つまりアメリカが、これは多国間協定なんですよ、バイじゃないんですよ、TPP、多国間協定の交渉内容について心配するなと言っている事実こそが、TPPがまさに事実上日米FTAであり、TPPがアメリカの圧力団体の主導で動いているんじゃないかなという証左であって、アメリカ政府が、心配をするな、混合診療の解禁を求めませんと言っても、当然圧力団体である各種団体の意見で、やはり求めよう、解禁を迫ろうということに立場を変更する可能性というのは、私は十分あると思うんです。

 ですから、その点について、私の心配が杞憂であるのかあるいはどうなのかということを、大臣、ぜひお答えしていただきたいんです。

玄葉国務大臣 混合診療の方は山口副大臣から答弁してもらおうと思いますが、先ほどのISDなんですが、これは、日本企業を保護するためにも必要という側面があるということは御存じのとおりです。ただ、相手がアメリカだからというお話だと思いますので、その点については留意しなきゃいけないと私も思うんです。つまりは、これまで濫訴の傾向があったという意味で。

 ただ、たしか日本は二十四の投資協定はISD条項がありますし、世界全体にたしか三千くらい投資協定があると思いますけれども、大部分が入っていますので、では、今度仮にTPP交渉に入ったときにISDを入れないかといえば、私はやはり入れるべきなんだろうと思うんです。ただ、そのときに、公共の利益だとかそういったことに対してきちっと例外措置をとっていくとか、濫訴にならないように対応していく、そういうことについて留意が必要なんだろうというふうに思います。

 米韓FTAが完全に、我々政府として第三国間のFTAを評価するというのは控えなきゃいけないんですけれども、それだから全部敗北かというと、ちょっと私は違うのではないかという感じがするということだけは冒頭申し上げておきたいと思います。

山口副大臣 アメリカとの関係で、いろいろ局面があると思うんです。

 この間来たウェンディ・カトラーという例のUSTRの代表補、彼女とよく会話をしているんですけれども、混合診療に行く前に、まず私はよくこういうことを言っているんです。

 というのは、アメリカが、例えばオバマさんが大統領で、輸出をふやして雇用をふやしたいと。では、その輸出を吸収できるのはどこの国だと。ペルーですか、ベトナムですか、マレーシアですか、シンガポールですか、チリですか。違うでしょう。オーストラリアでも無理でしょう。日本しかないじゃないですかと。

 我々は、十年後にはこれが大きな大輪の花になることをわかっているというか確信していますけれども、ただ、最初の年、数年間においては、必ずしもスムーズにバラ色になるとは限らない。だけれども、アメリカがそういうふうにやるということを日米でもってきちっと吸収して、一足す一が三になるような、そういうTPPにしたいということを言っているわけですね。

 そういう意味で、野田総理あるいは玄葉大臣初め、そういうことを承知で、なおかつオーケーしたんだから、保険とか医療とかで余りアンリーズナブルなことを言われると、我々は非常に調子悪いよということで、かなり強く物を言っているんです。それは、カトラーを通じて向こうの政権内にもよく伝わっていると思います。

 そういう意味では、我々日本が万が一参加できないということになったら、一番困るのはアメリカじゃないかというぐらいの気持ちで私は物を言っているんです。

 混合診療については、今のところ、そういうことも受けてでしょうか、カトラーさんが、この間、三月一日に、いわゆる太平洋地域でアジア・ビジネスサミットというのをやったときに幾つか言っている中で、日本の中で、我々がまだ交渉参加していないことによっていろいろな懸念が表明されているので、順番にそれに対して直接応えていきたいという意味で言われたんだと思うんですけれども、日本の国民医療保険制度を民間ベースの医療保険制度に変更を求める、そんなことは全く考えていないとか、あるいは、混合診療に関して、日本の制度変更を求めるものではないとか、ほかにも、専門家の資格や免許の相互承認を求めるものじゃないとか、いろいろなことを順番にずっと言っているんですね。

 だから、そういう意味で、決して彼女がそういう気持ちで、気持ちというのは下心があって言ったというよりも、日本の中にある懸念を少しでも解消できれば、自分たちの真意が伝わればということで言ったように私は思っています。

 それで、混合診療に関してはこうだと思うんですね。要するに、既にもう日本の中で実は混合診療は運用ということで行われているのが、一つの例として評価療養。例えば、先進的な医療について、私の地元にテクノポリスというのがあって、そこに重粒子線治療センターというのがあるんです。それは、保険外診療で、例えば前立腺がんだとほぼ一〇〇%治るんですね。ただし、保険外診療ですから三百万円かかる。

 だから、そういうことは既に保険外診療として運用で、評価療養という形で認められているものですから、仮に、万が一、将来、カトラーさんと違うような考え方の人がこの混合診療みたいなものを議論してきたとしても、私たちは既に運用でやっているわけですから、あとはそれを一つ認めるのか二つ認めるのか、あるいは認めないのか、交渉の話になってくるものですから、そういう意味では、我々は、きちっと交渉することによって日本の国民皆保険を守るというところを基本に据えたいと思っています。

城内分科員 ちょっと、もう余り時間がないので。

 保険外診療を認めるということは、まさに国民皆保険制度を解体に導くということになりますので、やはり慎重にならなきゃいけないということと、先ほど副大臣、アンリーズナブルなことを言われないようにというふうにおっしゃいましたけれども、これまでの戦後の日米経済交渉史を見ると、そういった理不尽なことをいろいろ突きつけられながら、外務省あるいは経済産業省の交渉の前線に当たっている方、その他の省庁の方が頑張って押し戻したりしていたんですけれども、結果として押し切られたようなこともたくさんありますので、ここら辺は、やはりきちっと日本の国益を守るという観点から、むしろ外務省の関係者の皆さんに頑張っていただきたいなというふうに思います。

 次に、時間もないのでODAについてお伺いします。

 私は、ODAは我が国の国際貢献の最大の手段であると思っています。外交の最強の武器だと思っています。ところが、私は実は昔、外務省におりましたけれども、平成九年をピークにして、それが現在に至っては半減していると。とても信じられない、ゆゆしき事態であります。私は、はっきり言って、ODAはもっともっと拡大するべきだと思っておりますが、この点について大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

玄葉国務大臣 ありがとうございます。

 城内委員がおっしゃるように、私も、ODAは日本の外交の最重要ツールの一つであるというふうに思っています。ですから、私も外相になって、十四年で半減している、この状況は非常に深刻であるということで、内向き志向の脱却の象徴ということで、何としても二十四年度予算から反転させたいということで、外務省所管分は若干ではありますけれどもふやしたということで、何とか反転の端緒を開いたと思っていますので、この流れを確実なものに、しっかり上げていけるようにしたいというふうに考えております。

城内分科員 ぜひ財務省に負けないように頑張っていただきたいと思います。

 この関連で、昨年三月の震災後、二〇一一年度第一次補正予算ではODA関連予算が全体で約一割削減ということになっておりますが、あれだけ世界の国々の人たちが、それこそ開発途上国の皆さんも含めて、日本の震災、原発の事故に対していろいろな形でバックアップ、応援してくださった中で、削減というのは何かあってはならないこと、逆に、お返しでODAをふやして、ありがとうと感謝をするのが日本の国のあるべき姿だと私は思うんですが、この点について、大臣、どう思われますか。

玄葉国務大臣 あの当時、やむを得なかったんだろうというふうに思っています。私も政調会長であったわけでありますけれども、本当にこういうODA予算をここまで削っていいのかというのが率直な私の印象でありました。

 トータルとしてそういう形で決まったということでありますが、その後、三次補正とか四次補正でこのODAの関連についてふやしてきたということもございますし、やむを得ず一時的措置としてとらせていただいた先ほどの一次補正の予算も、これは、いわゆる円高というものも活用して、国際機関の拠出というものに特化していったということもあります。

 いずれにしても、私は、そういうことも含めて危機感を持ちまして、二十四年度予算から何とかふやしていくということで今やっておりますので、引き続きの御支援をお願い申し上げたいというふうに思います。

城内分科員 ぜひ大臣、お願いいたします。

 ODAの関連でもう一点、中国の対外援助についてですが、昨年、初めて中国が対外援助白書というものを発行したそうであります。ただし、今その中国が、ある意味、あるときは開発途上国、あるときはほかの開発途上国を援助する先進国のように立場を使い分けています。具体的な例を挙げると、例えば、ガバナンスが心もとない国や人権状況の劣悪な発展途上国に対しても積極的に援助をやって、親中国派をつくっているような状況なんですが、これは私は明らかに国際社会の規範、ルールに反していると思うんですけれども、この点について大臣はどうお考えでしょうか。

中野大臣政務官 今、委員御指摘のとおり、中国を含めての新興国の援助は非常に速いペースで拡大しておりまして、その中で、特に中国におきましては、委員おっしゃるとおり、不透明性というのが国際社会でも今かなり課題として出てきております。

 その中で、例えば、昨年、韓国の釜山でハイレベルフォーラムという援助会議がありました。私もその会議に出席をさせていただきましたけれども、やはりその場でも、本当に各国から、新興国、中国を含めて、もっと透明性を高めてもらいたい、説明責任はしっかりと果たしてもらいたいということが非常に中心的なテーマになっておりました。我が国としましても、そういう国際会議の場でしっかりと、中国を含めての新興国に対して、その透明性、説明責任を果たしてもらうということは訴えさせていただいております。

 また、中国とのバイの関係におきましても、例えば第三国援助に関する日中の対話ですとか、あとは日中メコン政策対話ですとか、あとは日中ハイレベル経済対話ですとか、そこに韓国も含めましたアフリカにおける日中韓の政策協議、こういった場でも、今委員御指摘の点についてはしっかりと働きかけをさせていただいておりますので、今後ともその働きかけは続けていきたいと思っております。

城内分科員 ぜひ、今政務官がおっしゃったように、透明性、説明責任をしっかり果たすように働きかけていただきたいと思います。

 最後の質問に移ります。

 アメリカ、中国ときましたので、ヨーロッパに目を向けますが、戦後、我が国はアメリカやアジアとの関係を重視してきておりましたけれども、私は、基本的価値を最も共有しているのは欧州だと思っています。国の規模、あるいは歴史、伝統を大事にするという観点から、非常に近似性があるんですね。

 今、欧州は債務危機に陥っておりますけれども、これは対岸の火事というふうに見るのではなくて、日本としても、何らかの形でバックアップ、さっきお互いさまというような話もしましたけれども、日本も震災、原発でいろいろ大変な目に遭って、世界の国から応援してもらったわけですから、やはりそういうお返しというのが大事だと思います。

 また、今、TPPを初めとする経済連携に一生懸命力を入れておりますけれども、私は、慎重、反対ですが、日・EU・EPAはもっともっと強力に推進していくべきだと思います。アジア、アメリカという太平洋の関係も大事ですけれども、やはり欧州という国との関係をもっともっと強化することが我が国のバランスのとれた外交に資するのではないかなと思いますが、その点について大臣の御所見を求めます。

玄葉国務大臣 まさに委員今おっしゃったとおり、国際社会の一つの極をEUはなしていて、基本的価値、例えば民主主義あるいは法の支配、そういったものについて、あるいは基本的人権もそうですけれども、これは共有している、まさにパートナーであるというふうに考えておりますので、一層連携を強化しなければならないというふうに思っています。

 EUとのEPAでありますけれども、これは、私もというより日本国政府としても積極的に推進している考え、方針であります。今、スコーピングをしていまして、特に非関税障壁の分野などで、政府調達初め幾つかについてまだまとまらない状況でありますけれども、このEUとのEPAにつきましてはしっかりと交渉を推進していきたいというふうに考えているところでありまして、特に、日本とEUの首脳が集まるような場で何らかの進展が得られればなというふうに思っています。

城内分科員 時間が来たのでこれで終わりますが、まず、日・EU・EPAに最初に取り組んでいただいて、実現して、TPPはいろいろな懸念がありますので、慎重に、じっくり時間をかけてやっていただきたいと申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

金森主査代理 これにて城内実君の質疑は終了いたしました。

 次に、遠山清彦君。

遠山分科員 公明党の遠山でございます。

 外務大臣、いつもお疲れさまでございます。

 きょうは、大きく分けて二点の政策課題について伺いたいと思っております。

 まず、一つ目の政策課題は、ODA予算、きょうもいろいろ他の委員から議論があったようでございます。

 日本のODA予算は昨年度の当初ベースで五千七百二十七億円ということでございますけれども、私がきょうお聞きしたいのは、NGO経由の支援及びNGOのキャパシティービルディングに使用される割合、額で申し上げますと七十三億円ということになっておりますが、結論から先に申し上げますと、このNGO向けのODA予算の割り当てをふやせないかという問題意識を持っております。

 先ほど私が申し上げた七十三億円は、事業別で見ますと、日本NGO連携無償資金協力、JICA草の根技術協力、NGO事業補助金、そして四つ目、最後ですが、NGO活動環境整備事業、この四つの事業を合わせて七十三億ということでございます。

 ただ、先ほど来議論がありますとおり、全体のODA予算、私が国会に初めて来たころは政府全体で約一兆と言われていたものが、もう五千七百二十七億まで下がっております。そうしますと、七十三億円というのは、実は、十年前と比べたらかなり増額されております。しかし、全体の中で占める割合が一・三%ということになっております。

 これは、もう外務大臣重々御承知のとおり、OECDのDAC、開発援助をしている諸国の中で、オランダがNGO向けが一五・六%、アイルランドが一三・三、ベルギーが六・七、デンマークが六・六、ニュージーランド、スウェーデンがいずれも五・七ということになっておりまして、日本のNGO向けの割合が大変低いというのが実態でございます。

 外務大臣、私も国会議員になる前、もう十二、三年前ですけれども、大学の教員をやりながらNGOのアドバイザーをやっておりまして、NGOのアドバイザーとして、大学の休みの時期に、東ティモールとか、あるいはイラク北部、クルド人自治区にも、現地に入りまして、NGOの一員として、案件形成あるいは事業実施をやりました。

 特に、東ティモールは、民兵によって虐殺が起こった後の紛争地に参りまして、南アフリカとかいろいろなところで和解をやっているので、和解を促進するために、インドネシアからの独立の賛成派と反対派の住民が和解の集会を開けるような、日本語で言うと公民館のような場所を私どもNGOが中心になってつくるということを事業化しまして、私が事業の制度設計をしたんですね。

 JICAの方も来ましたし、外務省の方もすぐ来たんですが、これは西暦二〇〇〇年の二月ぐらいの話ですけれども、なかなかお金がNGO向けには日本政府からとれませんで、結局、私たちはどこからお金をいただいたかというと、国連とUSAID、アメリカの開発庁、そこがお金をぽんと出してくれまして、実施をさせていただきました。

 ただ、十年たちまして、NGOに対する日本政府の信頼度、これはもうかなり上がっておりますし、また、日本のNGO側も、専門的なスタッフ、余談ですけれども、女性が多いんですけれども、非常に若い女性が危険な地域で日本のNGOのスタッフとして活躍をしているわけでございますが、そういうNGOの事業形成能力、実施能力も格段に上がったと私は思っております。

 最後に、実は、公明党は、そういった状況を受けまして、五、六年前からマニフェストに、ODA予算全体の大体五%をNGOに振り分けるように日本政府もすべきではないか、これは我が党の公約でございます、個人的な意見ではなくて。私の記憶では、野党時代の民主党さんもほぼそれに近いことを委員会でおっしゃっていたんじゃないかなと思うわけでございますが。

 いずれにいたしましても、確かに、NGOの全体の予算が削られている中での話ですから、絶対額でふやしていくということが厳しいというのは重々承知しておりますが、ぜひ、今、特に、NGO連携無償とジャパン・プラットフォームという仕組みがありますけれども、ここの予算を、徐々にでもいいんですけれども、五%を目指して積み増しをしていっていただきたい。これをまず一点目の御質問として伺いたいと思います。

玄葉国務大臣 貴重なお話だと思うんです。

 それで、私も、今、予算が厳しい中で、何とか、若干でありますけれども、二十四年度予算からODA予算をふやしてきたということなんですが、おっしゃるように、限られた予算の中で最大限の効果を発揮するのに、やはりNGO、企業もそうなんですけれども、NGOの役割というのは私は非常に大きいと思います。

 ですから、もう結論だけ申し上げると、二十四年度は、今まで、二十三年度が七十三億円なんですが、七十五・六億円ということで、またふやしました。これは二、三年で、たしか三、四年前はもう本当にこの半分ぐらいだったんじゃないかと。ちょっと今正確な数字を持ち合わせていないんですけれども、一気に今ふやしてきているということがあります。

 それと、たまたまですが、私が担当大臣だったんですが、いわゆるNPO、NGOの認定法人の制度を変えました。つまりは、三千円の寄附を百人集めたら、いわゆる認定NPOになれる、あるいは認定NGOになれるということで、私、寄附金を募るときにこれは非常に大きいと思っているんです。しかも、所得控除だけではなくて税額控除も認められるようにしたものですから、これは私、NGO自体にまずお金が集まりやすくなるということは、日本のNGOが世界の国々で活躍をしていく、顔の見える援助をしていくために非常に大きな活動基盤になるのではないか。そこに、今おっしゃったとおり、しっかり外務省がさらに後押ししていくための御提言として、非常に貴重な御提言をいただいたというふうに考えております。

遠山分科員 ぜひ、玄葉外務大臣のリーダーシップでNGO向けを着実にふやしていただきたいというふうに思います。

 次の質問でございますが、関連ですけれども、ODA資金を使ってNGOが開発途上国などで支援活動を行う場合に、いわゆるそのNGOの職員の人件費あるいは事務所維持費、これは間接経費とも呼ばれますし、一般的には管理費と呼ばれるわけでございますが、ODAを原資とする補助金をいただいてやる場合は、例えば先ほど言及しましたNGO連携資金協力の場合は、重点分野においてやる場合は五%の管理費を認めますと。それから、ジャパン・プラットフォームは、仄聞をするに、来年度から五%の管理費を認めるというふうに聞いておりまして、これは評価いたしております。実現するとすればですね。

 ただ、先ほど私、重点分野と申し上げましたが、一般のN連、このNGO連携無償の場合は、五%の管理費が認められていないということになりますので、仮に、例えば一億いただいて事業をやる際に、人件費等が、管理費が五%を超えると、その超えた部分は自己資金でやらざるを得ないというのが実情でございます。そうすると、NGOの方々に話を伺うと、大きな案件を手がければ手がけるほど団体の財政運営が圧迫されるという現実があるわけでございまして、これが日本のNGOの成長をやや阻害しているんですね。

 外務大臣、恐らく御存じだと思いますが、欧米のNGOが持っている事業予算の規模というのは桁外れでございます。ワールド・ビジョンとかオックスファム、あるいはセーブ・ザ・チルドレンといった、日本でも知名度がかなりある団体は、年間の予算が大体百億円以上。オックスファムは、数年前なのでもう少し上かもしれませんが、私が数年前に調べたときは、単年度予算で百六十億持っております。そして、その中に公的資金も相当入っているのが実情です。

 実は、自公政権時代に、私がNGO側に寄った質問をしたら、当時与党だったものですから、与党の幹部に呼び出されて、ノンガバメンタル・オーガニゼーションというんだから、政府から金をもらわずにやるべきだ、こういう主張を与党内でされたんです。

 ところが、私は、反証で出した書類を見せたんですが、例えばアメリカで災害救助を国際的にやっている団体は、年間予算百三十億のうち百億円が連邦政府からの資金でやっておりました。それでもNGOでございます。ですから、NGOというのは、政府の直轄運営団体ではないという意味でNGOですが、非常に公共性の高い仕事をしている。

 実は、これは民主党政権さんになって、新たな公共というコンセプトを打ち出しているわけですから、そういう意味からいうと、全くその支援をふやすことには整合性はあるわけでございまして、ぜひ、そういった意味で、この管理費の問題。

 ちょっと結論的に申し上げると、NGOの皆さんに言わせると、やはりNGOのプロジェクトも、大体、一般的に事業費全体の一割、一〇%ぐらいは事務所維持費とか人件費でかかると。最大で一五%ということなんですね。今、限定した事業について五%ということですから、一足飛びに一五パーというのは難しいのかもしれませんが、私は、少なくとも一割ぐらい、一〇%ぐらい管理費を認めてあげることを前向きに検討する段階に来ているのではないか、こう思いますけれども、いかがでしょうか。

玄葉国務大臣 かなり具体的な御提言をいただいたと思いますが、おっしゃったとおり、JPFとか幾つかは五%ということで、今検討しているということなんです。

 今の管理経費、これは二十四年度予算では五十五億円。ちなみに、平成二十一年度は二十九億円だったわけであります。二十四年度予算案では、五億円ふやしまして五十五億円ということで、ふやします。

 それで、本当に考えさせられるんですね。先ほど米国の話がございました。公的資金も相当入っているよ、こういう話でありますので、そのことにも留意をしていかなきゃいけないと思います。

 ただ、まず、寄附の集まりぐあいが、米国がたしか二十四兆ぐらいあって、日本は一兆円くらいなんですね。私、先ほどの、たまたま自分が担当していたから申し上げるわけではなくて、今回の寄附税制の抜本改革は画期的だと思っていまして、これでNGOがどのくらい募金を集められるか、寄附を集められるかということをよく見たいと思いますし、見るだけではなくて、外務省として、NGOが寄附金を募るというものを外務省を総動員して応援しよう、そういう指示を実は出しています。

 今回の改正もあった。あれはさかのぼって適用できるはずですから、そうやってどのくらい集まっていくかということを見ながら、あわせて、今具体的に提言のあった一〇パーとか一五パーとかという管理経費の話なんかも検討していければなと。

 やはり、全体の資金をNGOが集められるようにするというのは根本的にまず大事だろうというふうに思いますので、そういったことをまず頑張っていきたいというふうに思っています。

遠山分科員 外務大臣の今の御指摘、大変高く評価させていただきたいと思います。

 私もイギリスに六年住んでおりましたので、イギリスが、NGOに限らず、美術館とか博物館とかが莫大な市民からの寄附で支えられているという実態を目にいたしまして、日本との違いを非常に痛切に感じてきたわけでございます。

 昨年の東日本大震災の際に、通常は海外で活動している日本のNGOの人道支援の職員が、相当東北に入って活動しておりました。その一部は報道もされております。

 さらに私がいい意味で驚いたのは、民間企業の方々が、当然、赤十字や政府関係あるいは銀行そのものに寄附を寄せましたけれども、どうせならそういう人道支援を目に見える形でやっている団体にしたいということで、NGOの方も驚くほど寄附の申し出が実はあったということからしますと、従来から専門家からは、日本人というのは、キリスト教徒じゃないし、余りチャリティー精神がなくて寄附をなかなかしないという指摘もありますが、私は、プレゼンテーションの仕方という面もあると思うんですね。

 昨年の大震災は、まさに日本国民が被災者で、報道も多かったということもありまして、そういう資金が集まりやすい状況というのはあったのかもしれませんが、諸外国においても、相当悲惨な状況というのはまだまだあるわけでございます。日本というのは国際社会の平和と安定が前提で繁栄できる島国でございますから、そういった意味でいえば、公共性の高い人道支援をやっているNGOにもう少し寄附を集めるということは、特に外務大臣あたりが旗を振ればもっとスムーズにいく面があるかなと思いますので、ぜひお願いをしたいと思います。

 時間の関係で、次のJICAの質問は割愛をさせていただきまして、第三国定住による難民の受け入れの問題について何点か伺い、また提言もさせていただきたいと思います。

 この第三国定住は、もう外務大臣よく御承知のとおり、平成二十年の十二月十六日の閣議了解によりまして、平成二十二年度から三年間のパイロット事業として、約九十人の難民を受け入れるということで始まりました。

 公明党としても、私、いろいろな仕事をやっているんですが、難民政策プロジェクトチームの座長をしておりまして、この第三国定住の事業を開始すること自体、非常に高く評価してまいりました。そして、ことしの二月二十三日、私も含めましてこの公明党のチームで、第三国定住難民家族の第二陣を支援している支援センターを視察させていただきました。現在、ここには、タイのメーラ・キャンプで暮らしていたミャンマーのカレン族四家族十八人が定住支援のプログラムを受けておりますが、私も、日本語の授業を見学したり、また、最後には御家族の方々と直接意見交換もさせていただきました。

 その上で、ちょっと申し上げたいんですが、今申し上げたのは第二陣の御家族ですけれども、昨年の九月に、第一陣で来られた五つの家族のうち一組の夫婦が、ちょっといろいろトラブルがありまして、非常に残念な内容の記者会見を行ったわけでございます。その記者会見の後に外務大臣宛てに出されました、この夫婦の方々の弁護団というんですかね、その方々が出した申し入れ書を読んだわけでございますけれども、非常にいろいろ問題があるなというふうに思っておりまして、外務省として、第一陣で来ていろいろ問題を抱えている夫婦を初めとする家族に対してどのような改善対応をされているのか、伺いたいと思います。

宮島政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘の御夫婦につきましては、まさに一昨年の九月に第一陣として来られまして、アジア福祉教育財団の難民事業本部の定住支援プログラムを六カ月間受けられて、千葉の八街に行かれて、農業法人との関係で職業適応訓練というのをされた、それでその後、雇用契約の締結を希望されなかったということで、九月以降、民間団体の保護、支援を受けて転居して、今、職を得ておられると承知しております。

 弁護士の方を通じまして、今後も政府としても支援の用意があるというふうなことをお伝えすると同時に、今後の支援のあり方について御相談をしているところでございます。

 一方、今の一家族の方のことも含めまして、第一陣の受け入れからいろいろと得られた経験がございます。弁護士さんからの御指摘もございました。それで、それを踏まえまして、大臣の御指示もあり、NGOの方々との意見交換会を実施したり、関係省庁とともに、定住支援プログラムにおいてカリキュラムの日本語の内容を充実するとか、職業支援につきましても、日本で就労することに対する認識を深めてもらうということで、職場見学とか職場体験とかをさらにプログラムを充実するとか、そういうふうな改善を図ってはきております。

遠山分科員 今御答弁の中で言及がされたんですが、最大の問題は、私も支援センターを見てきましたので率直に申し上げられるんですけれども、やはり日本語のコミュニケーション能力の問題じゃないかなと思います。

 現地で説明を受けたんですが、百八十日間の定住促進プログラムの中で五百七十二時間の日本語教育を受ける、これはこれで大事なプログラムでございます。しかしながら、外務大臣も国際派でございますのでわかると思いますけれども、半年間だけの語学研修でいきなりその社会の職場で自由に働くというのは、誰にとってもかなり難しいですね。

 私もイギリスに、それは六年もいましたから最後は大丈夫ですけれども、最初の半年でいきなりイギリスの農家に行って働けと言われても、私、個人的なことですが、住んでいたところがヨークシャー地方というところでして、ヨークシャーテリアの産地ですけれども、物すごいなまっているんです、英語が。アップステアーズというのをウップステアーズと言うところですからね。だから、そういうところで外国人である私が半年間だけ英語研修を受けて、農家で働けと言われて、うまくいくかというと、これはちょっと厳しいんですね。

 ですから、大事なことは、文化庁に次は御答弁いただきますが、要するに、定住促進プログラムで半年やって、それで出た後ももう少し公的な形で日本語教育の支援をしてあげないと、正直言うと、ちっちゃな子供たちはぐんぐん語学力は学校で伸びていくんですが、親ですね、親が非常に大変だし、しかし、親が日本語を使って仕事をしっかりして収入を得ないと家族を支えられない、こういう状況ですから、もうちょっと強化してほしいと私は思いますが、どうですか。

大木政府参考人 お答えをいたします。

 定住支援プログラムが終わった後の継続的な日本語教育につきまして、先生の御指摘のような御懸念があるということは、私ども十分承知をいたしておるところでございます。

 そこで、文部科学省といたしましては、まず、この一月からでございますけれども、地域の日本語教室などと連携をいたしまして、日本語教育をプログラム終了後も実施する取り組みを開始しているところでございます。これとあわせまして、それに従事する指導者の研修というものも開始をいたしております。

 そのほかに、定住支援プログラムが終わった後の難民の方々から日本語学習に関するさまざまな相談に応じる取り組みを、これは定住支援施設の方でも実施をいたしておる、こういう体制にいたしてございます。

 こうしたことの成果を検証しながら、取り組みのさらなる充実を私どもといたしましては図ってまいりたいと考えております。

遠山分科員 わかりました。改善の努力をされているということなんですが、はっきり言うと、ちょっと遅いんですね。この定住促進プログラムが始まるときに、いろいろな、難民を日本の社会で支援してきた民間団体から、このままいくとうまくいかない面があるよという指摘があって、その一つが語学力の面だったんです。今、改善努力がことし一月からですから、つい最近ですね。ちょっとこれは遅いんですね。

 それで、外務大臣、一つだけちょっと覚えていただきたい点がありまして、この事業、受託をしているのがRHQという団体なんですけれども、ちょっと私も印象としては、このRHQが、外務省から第三国定住難民を支援するということで委託をして、ある意味、よく言えば責任感が強い、悪く言うとほかの関係者を余りこの定住難民に触れさせない、かかわらせないという態度がありまして、だから、悪く言うと頑迷なんですよ。だから、難民家族は私たちの言うことだけ聞きなさいと囲い込んじゃっているところがあって、それが今回の問題の背景にも実は一つあるんじゃないかと私は思っている、外務省そのものとか文化庁そのものというよりも。

 ですから、外務省は、これを委託している役所ですから、もう少し柔軟にやっていただきたいんです。

 それで、外務大臣も、ニュージーランドの関係者とお会いになることがあると思いますが、覚えていただきたいんですが、ニュージーランドは、私、難民支援の関係で一度視察に行きました。驚きました。ニュージーランドも第三国定住で毎年七百人ぐらいずうっと受け入れています。もともと移民の国ですから、日本と事情が違います。しかし、七百人規模で第三国定住を受けて、日本政府と同じように半年間ぐらいの定住促進プログラム、社会適応訓練をして、世に出すんです。

 ところが、そこから先が違うんです。リフュージー・アンド・マイグラント・サービス、RMSという大きなボランティア団体がニュージーランドにありまして、ここの団体が、当然、政府と連携しながら、一回社会に出た難民家族を毎週家庭訪問する二人一組のチームがいるんですね。この方々は、大体半年間かけて、ニュージーランド社会になれるまで通って、子供のこと、それから地域で一番安いショッピングセンターはどこかとか、あと語学力のこと、いろいろな相談に乗るんです。

 しかも、私が驚いたのは、この二人一組で難民家族を訪れて支援をするという活動をした人には、日本で言う放送大学の単位を上げるんですね。ボランティア学か何かの単位を、通信大学の一単位をその活動について付与するというやり方で、お金ではなくて、それをインセンティブにもして、そして、社会の中で広範に、第三国定住で来た人たちをニュージーランド社会になれさせるまで支援するという形でやっているんです。

 ですから、正直言うと、RHQが全部抱え込んで最後までやるという体制ではなくて、できる団体はいろいろとかかわらせていくことが大事じゃないかというふうに思うんです。

 時間がないので最後の質問になってしまうかもしれませんが、私がいただいた情報の中で、外務省と政府関係機関と難民を支援する団体の間で二回ほど改善に向けた会合が開かれた、その中で十三の難民支援団体が加盟するなんみんフォーラムから提案が政府に対してあったというふうに伺っております。

 いろいろな提案が入っているわけですが、一番大事なのは、これから第三国定住の人たちを受け入れていくときの体制については官民連携で政策立案をした方がいいんではないかという提案があったというふうに伺っておりまして、私、これは非常に大事な提案だと思っておりますので、ぜひ御検討いただきたいと思うんですが、御見解をいただきたいと思います。

玄葉国務大臣 結論から申し上げれば、今のお話について前向きにというか、第三国定住の支援のあり方については、現状、私もよろしいものではないというふうに思っているんです。ですから、これを改善していかなければならないという観点の一つの大事なポイントとしての今の御指摘について、よくそれを踏まえた検討をしていきたいと思います。

 この間、実はそこにいらっしゃる山内委員からも、まさにお二人から今のお話の御指摘をいただいているんです。私も最初にこの九月二十八日の記者会見を受けて、これはどうしたことかと担当局長を呼んで、こういう個別の話もそうですけれども、第三国定住の支援のあり方全体をもう少しよく考えた方がいいということで意見交換会を始めたので、交換しているだけではだめなので、せっかく出てきた意見を具体的に実践できるように、今の遠山委員の御指摘を踏まえてしっかりやっていきたいというふうに思います。

遠山分科員 実は、みんなの党の山内委員と私は十数年前にNGOで一緒に働いていた同僚でございまして、ですから同じ傾向の主張をすることがございます。

 もう答弁は要りません。時間がございませんので、大臣、二つだけ提案をさせていただいて終わりたいと思います。

 一つは、今の第三国定住の難民家族は、タイにあるメーラ・キャンプからだけ来ているんですね。先日、UNHCRの法務官とちょっと個人的に意見交換をしたら、メーラ・キャンプだけでやるのでどんどんどんどん希望者が減ってきたり、年によってばらつきがあると。ですから、きょうはちょっと時間がなくて済みません、法務省から答弁をいただく予定だったんですが、メーラ・キャンプ以外のキャンプからも難民を受け入れることを検討した方がいいんではないか。

 あわせて、第三国定住のプログラム、緒方貞子さんが高等弁務官をやっていた時代から日本はまだまだ開かれていないと言われながら、ようやく始まった大事なプログラムですので、そういう対象キャンプを広げることも含めて、三年たって終わらせるんではなくて、さらに継続をするという方向で大臣のリーダーシップを発揮していただきたいということをお願い申し上げまして、私の質疑を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

金森主査代理 これにて遠山清彦君の質疑は終了いたしました。

 次に、道休誠一郎君。

道休分科員 民主党の道休誠一郎でございます。

 きょうは、分科会におきましてこういう機会を与えていただきまして、ありがとうございます。実は私、個人的には外務省関係の案件というのは一番興味があるんですが、ただ、委員会は農水委員会に属しておりまして、こういう機会を与えていただいて本当に喜んでおります。ありがとうございました。

 先ほどから難民の受け入れについての問題が出ておりますので、実は私も、いろいろな質問をさせていただこうと思っておりましたけれども、流れ的には、外務省の直接の予算としてはそれほど大きな額ではないかもしれませんけれども、今、平成二十年度から外国人の看護師、介護士の候補者の受け入れというのが行われておりますね。

 これは、厚生労働省と一緒にやっていらっしゃると思うんですが、遠山議員の質問の中で、やはり難民においても定住促進が非常に問題があるというようなことも言われました。私も個人的に、たまさかこの平成二十年というのは、インドネシアでJICA関係の仕事もしておったり、あるいは民間の会社の嘱託を受けてインドネシアに行く機会も多かったものですから、いよいよこういうことが始まったんだなと思って、興味を持って見せていただいておりました。そして、実際にこの研修制度が始まって、ここへ来てなかなか先行き厳しいような状況が見えておるというのが現実ではないかと思います。

 実は私も、都内あるいは地域で候補者の受け入れ病院等も行かせていただきまして、実際、現場の方々あるいは候補者本人にも話を聞いて、いろいろな情報も仕入れさせていただいたんですが、課題が多いなと思うんです。

 まず、この研修制度そのもの、いわゆる経済連携協定による受け入れの実績等について、情報がございましたら関係者の方からお話をいただければと思います。よろしくお願いします。

新美政府参考人 官房参事官の新美でございます。

 まず、事実関係でございますので、私の方からお答えさせていただきます。

 今先生御指摘ございましたように、経済連携協定に基づきます看護師、介護福祉士の候補者の受け入れでございますけれども、まずインドネシアにつきましては、二〇〇八年から受け入れを開始いたしております。フィリピンについては、二〇〇九年から受け入れを開始する。そしてベトナムについては、今後これから、二〇一四年に恐らく受け入れが開始されるということになると思います。

 受け入れの人数につきましては、毎年もちろん変動しているわけでございますけれども、全部言うと非常に時間をとってしまいますので、例えばインドネシアでございますと、二〇一一年は百五名、二〇一〇年は百十八名の候補者の方を受けておりまして、フィリピンでございますと、二〇一一年は百三十一名、二〇一〇年は百二十八名の候補者を受け入れているわけでございます。

 他方、先生御指摘になられましたように、これは候補者として受け入れましたので、そして三年後あるいは四年後に日本の中で試験を受けて、なかなかその試験が通らないという問題があることは御指摘のとおりでございまして、この合格率の低迷ということはまことに残念なことだと思っております。

道休分科員 どうもありがとうございます。

 今御説明がございましたけれども、インドネシアにおいては、初年度が二百八名、二十一年が三百六十二名、二十二年度百十六名、そして今年度が百五名というふうな状態であって、またフィリピンにおいては、初年度、二十一年が三百十名、それから百二十八名、そして今年度が百三十一名という状況になっているわけですね。

 このプログラムを最初に立ち上げられたときには、年間一千人ぐらい受け入れるんだという非常に大きなプロジェクトとして打ち出されて、私も、やはり少子高齢化社会の中にあって、こういう分野でも外国人の力がいよいよ生きてくるなと思いまして、非常に期待していたプロジェクトなんですよ。期待していただけに、私も、どういうふうな実行が行われているのかということが気になって、いろいろ訪問しているわけですけれども、やはりこの課題として、受け入れている施設の問題とか、施設の皆さんが抱えていらっしゃる問題とかを聞いてみますと、受け入れ機関が、いわゆるプライベートセクターなんだけれども、非常にコストが上がってしまうということがございます。

 これはちょっと古い数字ですけれども、日本人で資格を持っていらっしゃる介護福祉士なんかの平均年収が二百万ちょっとぐらいだという状況の中で、この候補者を受け入れる病院としては、あらゆるものを含めて考えた場合には、四百万円を超えてくるようなコストがかかってしまう。実際私がお邪魔した病院では、インドネシア人あるいはフィリピン人を受け入れるために、日本人と結婚されたインドネシアの方とかフィリピンの方を特別に通訳として雇ったり、新たなコストが発生してきているという問題もある。

 こういうことで、いろいろな問題はあると思うんですけれども、やはり私がいろいろな資料を集めてみたときに、まず第一に、この経済協定に基づく候補者の受け入れそのものが、受け入れは国際厚生事業団、JICWELSというところですけれども、ここが唯一のあっせん所になっているということ。そして年間の最大の受け入れ定数というのを決めますよと。それから、候補者は、受け入れ施設で就労しながら国家試験の合格を目指した研修に従事する。これは、仕事をした後、また新たに勉強する、あるいは語学の勉強をしなきゃいかぬ。日本語がやはりここでも一番大きなネックなんですね。それから、候補者は、滞在期間、看護の場合は三年間、介護の場合は四年間という就労、研修を行っていく。最後は、資格が取れたら、更新を続けながら永遠に日本に住むことも可能ですよということが言われているわけです。

 私は、先ほど遠山議員の方からも出ていましたが、外国人を日本の社会で受け入れて、定住していただく、あるいは定着させるというところで、日本語の問題、もう大臣、副大臣はおわかりだと思うんですけれども、やはりここの問題を日本は社会として克服しないと、国際貢献といろいろ言いながらも、どうしてもなかなかできない部分があると思います。

 この点について、恐らく改善はされていると思うんですが、どういうような日本語の対策を今実行されようとしているのか、お聞かせください。

新美政府参考人 今まさに先生がおっしゃったとおりでございまして、日本に来て、そして最終的に看護師あるいは介護士の試験を受ける上で、語学習得の問題が非常に大きなバリアといいますか、問題になっているというのは先生御指摘のとおりでございます。

 語学の研修につきましては、そもそも、EPA、経済連携協定の枠の中では訪日後に研修をするということになっておりまして、インドネシア、フィリピンにつきましては、この協定に基づいて、外務省と経産省の方で予算をとりまして、それぞれ年四億円の予算で語学研修をやっております。

 ただ、まさに御指摘のとおり、それだけではなかなかやはり言葉の問題がうまくいかないということで、さらに訪日前にインドネシア、フィリピン等において現地で研修を行う。具体的には、インドネシアについては訪日前に六カ月、フィリピンについては日本に行く前に三カ月それぞれ研修を別途行うということで、これは外務省または経産省の方で予算をいただきまして、年間四億五千万円ということでやっております。

 さらに今後、ベトナムが新しい協定でこれから入ってきますけれども、ベトナムにつきましては、訪日前に一年間きちっと語学研修をして、そして一定のある程度の語学能力がついた人を日本に連れてくるということで合格率を上げようということで、いろいろ努力はしておりますけれども、まだそれが不十分だということは先生御指摘のとおりでございます。

道休分科員 どうもありがとうございます。

 今御指摘のあった国々は昔から日本との関係も強うございまして、地域に行けば、現地に行けば日本語の達者な現地の方がたくさんいらっしゃる。加えて、やはり特殊な知識と学位等が必要になってまいりますので、人数は限定されてくるんだと思いますけれども、今おっしゃっていた訪日前の研修について、もしよければ、さらに詳しいプログラムとか、どういう形で行っていくんでしょう。そこまでございますか。もしなければ後で資料でもよろしいんですけれども。

新美政府参考人 今手元に詳しい資料がございませんので、後でまた改めて説明させていただきますが、これは、国際交流基金の方に外務省、経産省から委託してやってもらうものでございます。

 詳細については、申しわけございません、今手元に資料がございませんので、追って御説明させていただきます。

道休分科員 その点、よろしくお願い申し上げます。

 フィリピン人とかインドネシア人、ベトナム人、私もこの三カ国でもいろいろな仕事をしてきて、やはり文化的に日本人としっくりいくというところがあると思うんですね。実際に病院などを訪問させていただいて、福祉の方とかあるいは患者さんとお話ししていても、とても喜んでいらっしゃるんですよ、現場は。患者さんの方も。

 しかしながら、制度がなかなか、候補者として入ってきても、試験に受からないとまた戻らなきゃいけない。あるいは、これは例えば女性の場合に特に問題になるんでしょうけれども、結婚したり、いろいろな状況が変わってくると、仕事を続けたくても続けられないような状況も生まれてくる。

 そういう中で、やはり制度をつくっていただく上で、これも私が申し上げる必要もないですけれども、皆さんおわかりだと思うんですけれども、やはり現場は何を求めているんだと。資格のある人が必要というのはわかるんですけれども、本当に現場が求めていらっしゃる方々というのは、EPA協定前は入ってこられていた人たちがいるわけですよ。いわゆる下働きをする、資格のある看護師さんとか介護士のその下で働くような方々。こういうところに、ひょっとしたら現場が求めているものがあるのではないかなと私は個人的に思ったりもします。

 サービスを受け入れる日本人の、例えばお年寄りとか病気で困っている方、こういう方々に、インドネシア人とか外国人の介護士の、彼らは自分の祖国では大家族制というのがまだまだ続いておりますので、お年寄りを大事にしたり、あるいは社会的な弱者をみんなで助け合おうという気持ちが非常に強いですから、その辺の純粋な気持ちが制度がゆえになかなか直接伝えられない、あるいは、いわゆる候補者として来た人たちが日本の経験でとても嫌な思いをしたとかいうことになりますと、これは恐らく皆さんの本意でもないと思います。国民レベルでの感情につながるような要素もございます、先ほどの難民の問題もそうでございますけれども。

 その辺は、現場の状態を反映する形で、そしてニーズに応える形でやっていただけたらなというのが私のこの問題についての最後のお願いでございます。

 実は、ちょっと質問の順番を変えさせていただいたんですが、私、最初に御質問したかったのは、外務省の支援の問題、ODAを含む援助の問題。

 御案内のとおり、先ほどから議員さんの方からいろいろお話も出ております、昨年三月十一日の東日本大震災のいわゆる復旧復興の段階の中で、日本がこれまで国際社会でしっかり認められる貢献をどれだけしてきたかというのが恐らく示された復旧復興の支援体制が世界的な規模で確立されたということだと思うんですね。

 特に今、日本の社会、大臣、御案内のとおりに、一九九一年以降、失われた二十年、もう二十年超えてきているわけですけれども、少子高齢化、デフレ経済が続く中、そして今、ギリシャ危機に代表される欧州の金融不安の中で、我が国の援助の姿勢というのが問われていると思うんですね。

 特に、金融危機というのが、当初は日本のバブルの崩壊、そして一九九七年のタイのいわゆるアジア通貨危機、二〇〇八年のリーマン・ショック、そして現在と、こういうふうに、IMF主導型で公的な資金を投入して、しっかり財政規律をつけた上でIMFのガイダンスに従ってという、いわゆるリハビリが行われているんですけれども、同じようなケースが続いている。そろそろ、私は、旧来のあり方、救済のやり方、いわゆる公的な資金をぶち込んで金融機関をしっかりさせて、それに加えてIMFの規律を課すというようなことは、ちょっと限界に来ているのではないかなと思うんですね。

 アジア通貨危機というのを、実は、あのときは私は香港で実際経験したんですけれども、タイに始まった通貨危機がインドネシアやフィリピン、いよいよマレーシアが危ないと言われたときに、マハティールさんが実需原則ということを徹底して、世の中の評価は分かれるんですけれども、一瞬にしてアジア通貨危機をとめたという実績があるわけですね。

 そういう中で、財政規律の厳しい状況の中で今、現政権は、アジアの成長を取り込むんだ、日本再生に生かしていくんだと。私は、インド、中国、そしてASEANの中でも、いわゆる最初のオリジナルファイブ的な国々がやはりエンジンになっていると思うんですが、こういう国々に対しての日本の支援のあり方。いわゆるASEANのオリジナルメンバー、今新たに入った国々についてはいろいろな人道支援の問題とか出ておりますけれども、オリジナルのメンバーについてはどういうような支援をすべきだというふうに大臣はお考えでしょうか。

玄葉国務大臣 ASEANの重要性については、私も、外相に就任して早い段階で、シンガポール、マレーシア、インドネシアに行った、それもその重要性を思うからこそあります。

 その援助についてどう考えるかと問われれば、さまざまな角度から申し上げることはできると思いますが、今はまず、ASEANの連結性を強化するという観点で、そのマスタープランを具体化していこうではないか。そのときに、日本として存在感を発揮したいというふうに考えておりまして、そういう意味では、日本国政府だけではなくて、やはりオール・ジャパンでこのASEANの連結性強化というものを考えていくという意味で、合同委員会を設けています、ASEANとの間で。

 まずそうですし、同時に、ODAを呼び水にしながら民間の投資を行っていく、そしてアジアの活力を取り込んでいく。その意味では、ASEANというのは我が国にとっては極めて重要な地域であるというふうに考えております。

道休分科員 どうもありがとうございます。

 今、大臣おっしゃった、いわゆるアジアの連結性の強化に資するような支援の構築ということで、恐らく具体的には、いわゆるフラッグシッププロジェクトというのがございますね。それでASEAN全般に対するソフトインフラ、あるいは陸の回廊、海の回廊に対する支援ということで、幾つかプロジェクトが挙がっているんです。

 実は私、JICA関連の仕事でインドネシアの公的船舶金融支援という、これは国交省のプロジェクトだったんですけれども、それに絡んだことがございまして、数カ月ジャカルタにいながらも、例えば、ジャカルタのタンジュンプリオク港とかスラバヤの港を見せていただいたり、あるいは造船所なんかも見せていただいたんですが、今、いわゆる新しい公共、あるいは一方ではステートキャピタリズムみたいなことが起こってきて、やはり公的な資金が、まず民間の投資を引き起こすためのいわゆる導管体でないといけないというふうに思っているんですね。

 ここでちょっと質問をさせていただきたいのは、このフラッグシッププロジェクトの中に、まさに今申し上げた内航海運振興事業、これはインドネシアが対象になっているんですが、詳細というか概略説明においては、経済の発展に伴う船舶の需要、それに加えて、船の老朽化が非常に進んでおります。御案内のとおり、島嶼国家のフィリピンとかインドネシアとか、しょっちゅう船がひっくり返って、あるいは沈没したりして、たくさんの方が命をなくされる。これは、船の老朽化は当然でございますけれども、運航規定とかあるいは船のメンテをしっかりやっていないことから大きな事故になるわけです。

 例えば、この内航海運の振興事業、これはかなり長年やっていらっしゃるのではないかなと思います。私も、実際このプロジェクトで、いろいろプレゼンテーションなんかもインドネシアの海運業者とか造船業者を対象にやらせていただいたことがあるんですが、やはり現地の方から、ちょっときつい言い方かもしれませんけれども、いつまで同じことをやっているんですかというふうなお声もあるわけですよ。

 ですから、実際にプロジェクトを、さっきのプロジェクトの中でも、小さいものでもいいからまず形にしていく、スピード感を持って形にしていただくというのが本当に必要ではないかと思うんですが、もし差し支えなければ、山口副大臣、こういうようなアプローチの仕方についてはどう思われますか。

山口副大臣 アジアをどうやって、一緒に発展できるかという観点から、このフラッグシッププロジェクトを初めとして、ODAだけじゃなくて、やはり民間の資金をどういうふうに回りやすくするかだと思うんですね。JBICなんかも活用する。

 この間、総理が年末に中国へ行かれたとき、あるいはインドに行かれたときには、どうしても具体的プロジェクトを走らせていくということに我々は一つの重点を置きました。したがって、ASEANのみならずインド、中国においても、例えば中国では、曹妃甸というのをずっとやっていたんですけれども、それに加えて、連雲港というところでエコの関係、あるいは物流センターでもってレアアースなんかも製品化して輸出できるようにというようなことを、具体的プロジェクトとして形が見えるということを打ち出してもらって、温家宝総理との間に合意もしました。

 この連雲港というところからは、カザフスタンを通って、モスクワを通って、ロッテルダムまで鉄道が通っていたりして、非常に戦略的なんですね。そういうことに我々の民間の資金が、政府のある意味で精神的なサポート、ちょっとプラスアルファも入れながら、きっちりいくようにというふうに考えた次第です。

 インドについても、デリー、ムンバイのもの、相当大きなプロジェクトを走らせていますので、こういうことでもって、アジアの成長を一緒に、我々が一足す一が三になるようにということに持っていきたいというふうに思っています。

道休分科員 副大臣、どうもありがとうございます。

 おっしゃったように、今アジアは、特にASEANの地域においては経済発展が行われて、民間の資金というのも以前に比べると割と潤沢に使われるようになってきておる。ただ、今回の欧州の金融危機において、欧州系の銀行を初め、やはり足の短い、ショートの資金がどんどん出ていく。これはアジア通貨危機のときが一番典型的な例だったんですが、今回も、やはり現地ではヨーロッパ勢が引いたりしてきている。

 その間隙を縫う形で、恐らくは、JBICさんが考えていらっしゃるでしょうし、日本の民間銀行も考えているでしょうが、いわゆるその間隙、すき間を埋めていくために、中国や韓国や、地場のシンガポールのDBSとか、大手がどんどん進出している。

 やはり、そこに日本の金融機関が一緒に出ていって、資金調達、あるいは、既に貸し付けたお金が、急に返せと言われてプロジェクトが潰れてしまうようなことのないように、日本政府として、ここへ来て新しい公共という意味からも、いわゆる金融市場の育成も含めて総合的な支援というのが必要になってくると思うんです。

 そういう総合的なシステムとしてのアジア、ASEAN地域への支援というものをどういうふうに大臣は御認識されているのか、ちょっとお聞かせいただければありがたいんですけれども。

玄葉国務大臣 おっしゃるように、金融の面なども大事な話だと思うんですね。

 私も感じているのは、今、道休委員が指摘をされたように、ASEANでは、欧州危機の状況があって、欧州の投資が逃げていくという状況が懸念をされているということだと思うんですね。ですから、そういったことも踏まえながら、我々として、このASEANの支援に対する対応力というものを強化していかなければならないんだろうというふうに思っています。

 あわせて、我が国としては、ASEANプラス3におきまして、短期的な外貨資金の融通を行うメカニズムであるチェンマイ・イニシアチブ等を積極的に推進してきたわけでありますが、現在、金融危機の伝播を阻止するために、このチェンマイ・イニシアチブの強化及び地域レベルでの危機予防機能の導入の議論を進めているところでございます。

道休分科員 どうもありがとうございます。

 アジア、特に東南アジアというのは、皆さん御案内のとおりに、非常に日本との関係は深うございます。戦後でも、日本の関与というのが、まず戦後賠償の形で始まって、それから脈々と続く日本に対する関係。

 現地へ行かれるとおわかりのとおり、やはりアジアの皆さんというのは、日本に対して非常に緊密感を持っていらっしゃる。何で日本がこんなにおとなしくなってしまったの、日本の皆さん、自信を持ってやってくださいよ、日本人の方が本当にすばらしい国をつくられたのに、その日本人が自信を失ってしまった姿を見るのが自分らはつらいということまでおっしゃる方がいらっしゃるんですね。

 御案内のとおりに、実は日本は、少子高齢化とかいろいろな問題で今、世界のフロントランナーになっていっているわけですね。いわゆるバブル崩壊、まさに一九八九年末が株価的にはピークだったですね。これから長年、まだまだ日本は抜け出せていない。日本が再生するためにいろいろなことを先生方も、皆さんおっしゃっていますけれども、やはり私は、日本の原点である地方、国内的には地方の経済の再生、これは私、農水委員会にいるから言うわけじゃないんですけれども、やはり農業、一次産業の再生ということが必要になるんですね。

 日本は、農産品においても非常に高く評価されています。お聞きになったように、日本のスイカがドバイでは数万円つくとか、あるいは米もすしも、来年度ですか、日本の食文化というのを文化遺産に指定しようということで動いていただいていますけれども、それくらいすばらしいものがある。

 一方、韓国は昔、セマウル運動といって農村の開発運動があったんですが、韓国のJICAに当たるKOICAというのが、どの程度まで進んでいるかは知りませんけれども、今度、セマウル運動を世界へ広げよう、韓国式の農業を世界でやってもらおうじゃないかというような動きもしている。

 そういう中で、やはり私は、日本が得意としている分野、これは省エネもありますし、環境の問題もありますし、一方で、インフラの緻密さ、日本の設計、日本のつくったものはしっかりしているという神話がまだまだ生き続けていますので、神話と言っていいのかな、現実ですね、現実です。これが生き続けています。

 その辺を、先ほどお話に出たようにPRという面からも、もう大臣、副大臣、恐らくPRはお得意の分野の一つであると思いますので、しっかりやっていただきながら、日本のいわゆる再生に向けた努力というのを日本国民にもわかるように伝えていただきたいと思います。

 最後になりますけれども、大臣に、これからの日本の外交のあるべき姿、非常に漠然とした問いで申しわけないんですけれども、アジアに軸足を置きながらという見地から御所見を伺いたいんですが。

玄葉国務大臣 今、道休委員から御指摘がございましたけれども、やはり我が国の外交というのは、何よりまず国民の安全を確保するということだと思うんです。そして国益を最大化するために外交というのは行うんですけれども、常に国際公益と重ね合わせていって、国際社会全体の繁栄があって日本の国益も最大化できるというところがあると思います。

 ただ一方で、きょうずっと御指摘をいただきましたけれども、ステートキャピタリズムという話もありましたが、やはり国家資本主義的な動きというのが、例えば中国、ロシア等々にあるわけですね。アメリカなんかも、ジョブズ・ディプロマシー、こう言っているわけですよ。ですから、我々として、やはり、官民連携して、売り込むべきは売り込むということを戦略的に行っていくということが極めて大切だというふうに思います。

 時間がもうないと思いますので、あわせて申し上げると、やはり国力全般を上げていくということが外交にとっても非常に大切なことで、例えば、今、日本の諸課題になっている、社会保障と税の一体改革にしろ、それぞれの課題について、ある意味、課題がやってきた、それを日本は真っ先に解決してみせるということ自体が、世界に対するモデルの提示であり、世界に対する大変な貢献です。

 少子高齢化社会、それはこれから中国にも間違いなくやってくるし、韓国にも間違いなくやってくるわけで、したがって、日本が最初に解決してみせるということが極めて大切なんだろうというふうに思っておりますので、そういったことも踏まえながら外交活動を展開していきたいというふうに考えております。

道休分科員 どうもありがとうございます。

 もう時間も来てしまいましたが、最後に一言だけ。

 私、非常に申しわけないんですけれども、TPPを慎重に考える会というのに属しておりまして、実は、同僚議員がアメリカへ行ったり、私自身も韓国へ行って韓国の国会議員と話をしたりしております。非常に内容的にも不安になるような部分もございますので、これはもう改めて言う必要はないと思いますけれども、やはり国民にしっかりと説明をしていただいて、最終的な御判断をお願いするようにしたい。そういうことをお願いして、質問の終わりとさせていただきます。

 きょうは本当にありがとうございました。

金森主査代理 これにて道休誠一郎君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして外務省所管についての質疑は終了いたしました。

    〔金森主査代理退席、主査着席〕

    ―――――――――――――

西村主査 次に、財務省所管について政府から説明を聴取いたします。安住財務大臣。

安住国務大臣 平成二十四年度一般会計歳入予算並びに財務省所管の一般会計歳出予算、各特別会計歳入歳出予算及び各政府関係機関収入支出予算について御説明申し上げます。

 まず、一般会計歳入予算額は、九十兆三千三百三十九億円余となっております。

 この内訳について申し上げますと、租税及び印紙収入は四十二兆三千四百六十億円、その他収入は三兆七千四百三十九億円余、公債金は四十四兆二千四百四十億円となっております。

 次に、当省所管一般会計歳出予算額は、二十四兆九千八百三十七億円余となっております。

 このうち主な事項について申し上げますと、国債費は二十一兆九千四百四十二億円余、復興事業費等東日本大震災復興特別会計へ繰り入れは五千五百七億円余、経済危機対応・地域活性化予備費は九千百億円、予備費は三千五百億円となっております。

 次に、当省所管の各特別会計の歳入歳出予算について申し上げます。

 国債整理基金特別会計におきましては、歳入二百九兆五千九百二十一億円余、歳出百九十七兆五千九百二十一億円余となっております。

 このほか、地震再保険等の各特別会計の歳入歳出予算につきましては、予算書等をごらんいただきたいと存じます。

 最後に、当省関係の各政府関係機関の収入支出予算について申し上げます。

 株式会社日本政策金融公庫国民一般向け業務におきましては、収入二千二十二億円余、支出千二百三十六億円余となっております。

 このほか、同公庫の農林水産業者向け業務等の各業務及び沖縄振興開発金融公庫等の各政府関係機関の収入支出予算につきましては、予算書等をごらんいただきたいと存じます。

 以上、財務省関係の予算につきまして、その概要を御説明申し上げた次第でございます。

 なお、時間の関係もございまして、お手元に配付しております印刷物をもちまして詳細な説明にかえさせていただきますので、記録にとどめてくださるようお願いいたします。

 よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。

西村主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま安住財務大臣から申し出がありましたとおり、財務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

西村主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

西村主査 以上をもちまして財務省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

西村主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。重野安正委員。

重野分科員 社会民主党の重野安正でございます。

 きょうは、安住大臣、大変多くの質問を申し上げますけれども、ひとつ誠心誠意、答弁をお願いいたします。

 まず、質問の第一は、例のケイマン諸島など租税回避地問題について質問をいたします。

 きょうの主たる質問は、税制改革、税制改正を中心に質問するのでありますが、現在、AIJの問題が連日マスコミ報道されております。仄聞するところでは、非常にずさんな運営が行われていたようでありまして、監督官庁の金融庁並びに厚生年金基金の担当である厚労省の責任は重大である、このように思います。速やかな実態解明と規制、監督を強化すべきであります。

 ところで、この事件の舞台になったのはケイマン諸島であると報じられていますが、先日明らかになりましたオリンパスの巨額の損失隠しの舞台にもケイマン諸島が登場いたします。ケイマン諸島を初めとした租税回避地は、こうした事件や犯罪の温床となるばかりか、所得税、法人税脱税の舞台にもなっています。

 ケイマン諸島とは、昨年、租税協定を結んでいますが、この租税協定によって今回のAIJやオリンパスのような事件の解明が進むことは期待できるのかどうなのかということが一つ。また、そもそもこうした事件や犯罪、脱税などが租税協定によって未然に防がれることを期待できるものなのかどうなのか。まずその点について聞いておきたい。

山口副大臣 いわゆる租税回避地というところと租税協定を、例えばケイマン諸島については去年の十一月十三日発効で結んでいるわけですけれども、その目的というのが、租税に関する情報を交換するという税務当局間の協力の枠組みということで、必ずしもその意味では、事件の解明あるいは未然の防止というものを一義的な目的としたものではないということが一つあります。

 ただし、脱税あるいは国際的な租税回避行為の防止等には寄与するというふうには、そういう意義があるとは思っております。

重野分科員 そこで、ちょっと掘り下げてみたいと思うんですが、今回のこの事件というのは、そもそもこのケイマン諸島を、そのルートを使うということ自体が、今起こっているようなことを期待するという思いがあるのではないかという懸念を持つわけですね。

 つまり、そういう、我々から見ますと不法なというか、不当な行為をケイマン諸島を通すことによって正当化していく、そんなことを最初から期待してこういう手法に入っていく、そういうふうな受けとめ方を私はするんですが、どうなんですか。そんなことは全く予知できないことなんですか。

山口副大臣 まだいろいろなことは調査の段階でしょうから、私から余り推測的なことを言うべきじゃないとは思うんですけれども、こういうことじゃないでしょうかね。

 確かに、重野委員がおっしゃったような思惑のことはあるのかもしれません。他方、今回いろいろ調査でわかるんでしょうけれども、AIJとかオリンパスの人たちは、ケイマン諸島とかそういうところを使ったからああいうことが起こったというよりも、何か運用の仕方がむちゃくちゃなことをやっていたというところがあるので、それをどう隠すかというところに主眼があったのかもしれませんけれども、それはこれからの調査の進展に任せたいと思っています。

重野分科員 そこで、この事件の背景というか、そんなものを考えてみますと、一つは、この種の年金、いろいろな年金がありますけれども、それらの運用というのは今日極めて厳しい。その運用によって利益を上げるということが非常に厳しい状況になっている。したがって、どんなことをしてでも利益を上げて配当しなきゃならぬというその実を上げるためには、こういうふうなことを考えるということが一つあるのではないか。

 それから二つ目は、そもそも、この年金制度そのものが、今の少子高齢化社会においては、もうどこも厳しいんですよね。だって、年金をもらう人がうんとふえて、その原資を掛ける人が減っていくんですから、これは誰が考えたって厳しくなっていく。そうなってくると、やはり、与えられた条件の中でどう配当をよくするかということを考えれば、そんなことを考えつくということがあるのではないか。

 それから、証券取引等監視委員会が一〇年度に検査した運用業者、約二百五十社があるそうでありますが、そのうちわずか十五社しか検査できなかった、ほぼ二十年に一度しか検査が入らない、こういう現実がある。これは問題ではないか。それを検査するパワーが、要員が著しく少ない、だからできない、こういう悪循環に陥っているという問題が一つある。

 それから、金融庁の監督も、新聞報道によると甘いというふうな指摘をされている。ここも、関東財務局の例をとってみますと、担当する会社は百五十社あるんだ、ところが、この専任の担当者は十人にも満たない、こういうことなんですね。うそか本当かは知りませんよ、新聞報道ですから。これでは、やはり監督できませんよ。

 ですから、そういうふうなものが背景にあって、今日のように、これは明らかに、私に言わせれば犯罪ですよね。年金を期待した皆さんに、もしかしたら年金を支払うことができないかもしれない、あるいは大幅に減額しなきゃならぬということが起こるかもしれない。こういう犯罪を、今幾つかの例を申し上げましたけれども、そんなことを通してそれが形成されていくということについては、これは極めて問題がある。当局としても、そこら辺はきちっと整理をしなきゃならぬと思うんですが、どのようにしますか。

五十嵐副大臣 先生おっしゃるとおりの問題があると思います。

 我が国の年金の運用については、競争原理が働いているのかなというのが一つあると思うんですね。それから、やはり監視機能が十分ではないのではないかということ。二つが言えると思うんですが、今回の事件を教訓として、政府としてもいろいろな角度から検討を進めていかなければいけない、こう思っております。

重野分科員 いずれにしても、こういう不正なことがまかり通るような世の中であってはならぬというのは、これは我々政治家とは関係なしに、共通の認識だろうと思うし、行政府においても、そんなことは断固として認めない、そういうやはり決意を今回の事件について示すべきだ、このように思いますので、そこら辺をひとつ当局としてもしっかりやってもらいたい、このように思いますね。

 次に、きょうの私の質問の主題は今からでありますが、税制改正等についていろいろな議論がなされているやに聞いております。私は、まず順序からいったら、給与所得控除の上限設定についてから始まって、さらに基礎控除額の水準、あるいは基礎控除の行い方、最高税率引き上げについて、そして最高税率帯の国際比較について、さらにブラケット幅の縮小についてどうお考えかというところで質問をしますので、ひとつそこら辺をよろしくお願いいたします。

 まず、給与所得控除の上限設定について伺います。

 今年度の租特の改正案の中に、現在青天井の給与所得控除について二百四十五万円の上限を設ける、こういうふうな書き方がされております。昨年度からの積み残しの見直しが入っています。上限を設けること自体は賛成でありますが、この二百四十五万という額は、他の先進諸国に比べて依然として突出して高いと言わざるを得ません。二百四十五万円の給与所得控除は、給与収入に換算すれば一千五百万円となる。

 国税庁の〇九年の民間給与実態調査によりますと、年収が一千五百万円以上、つまり今回の給与所得控除の上限設定の対象となる人は四十五万人ほどであります。給与所得者のうち、わずか上位一%しか対象としていないということになるわけですね。もう少し範囲を広げる必要があるのではないか。例えば、さらに二十五万円引き下げて年収一千万円を上限とした場合、対象者は百三十万人ふえ、上位四%弱になるという計算になります。さらに二十万円下げて上限を年収八百万円に設定すれば八%になる。

 そこで、上限を一千万円、八百万円にした場合、全体でどの程度の税収増となるのか、その点について答弁願います。

安住国務大臣 今、重野先生からお話がありましたように、今回は、昨年なかなか法案が通りませんでしたけれども、その中で同じ一千五百万の上限を設けて、もう一回、再度法案を提出させていただきました。

 今御指摘がありました点につきましては、要するに、これをもうちょっと下げるべきであると。一千万ないしは八百万に設定をした場合どうなるかということでございますが、今、統計の数字、紹介をしていただきましたけれども、二十二年の民間給与実態統計調査、これは国税庁が行っておりますけれども、これによると、給与収入が一千五百万超の者は四十六万人でございます。給与収入が一千万円を超す者、超の者は百七十五万人。給与収入が八百万超となりますと、これは三百六十三万人となっております。

 それで、一応、一千五百万円で、今回の二百四十五万ということで計算をすると、八百四十二億になるんです。ところが、一千万、八百万については、これはちょっと、単純に計算をしたものも今のところは持っておりません。試算は可能かもしれませんが、正式にそれでどうなるかということは、統計上は出していないということですが、しかし、予想するに、この八百四十二億で一千五百万ですから、それに比例をして類推すれば、相当規模の増収は見込まれるのかなというふうには思っております。

重野分科員 今、消費税の問題が盛んに議論をされております。いわゆる税は、その税金を払う能力のある者から取る。無理をして能力のない者から取る、そういうのはもう邪道なんですね。

 そこで、この国のサラリーマンの担税力の問題を考えてみますと、この十年以上にわたって、労働者の給与というのはほとんど上がっていないと言っていいと思います。一方においては、企業の内部留保、それは確実に上昇、ふえているという数字があります。そういうふうなことからすれば、私は、今からるる申し上げていきますけれども、税制改正において、大筋、やはりその視点を見誤ってはならない。取るべきところから取るというところを、国民にわかりやすく示すべきだと。

 そういうような視点から見ますと、今言いましたように、給与所得控除の上限設定、一千万、八百万ということを申し上げましたが、それでも今言ったような数字が出てくるわけです。だから、少なくとも国民に、金持ちだろうと苦労している人だろうと関係なしに、五%の消費税を上げますよというやり方を言う前にすることがあるという私の主張に対して、安住大臣、どのように考えますか。

安住国務大臣 所得の累進性を、例えば所得課税の累進性を強めていくべきだというのは、私は一つの考えだと思っております。

 企業の内部留保は、これは企業によっては、将来の投資や、今は海外展開等やっていますから、いろいろなものに使ったりしている可能性はありますが、もっと、ある意味では、働いている人たちに広くそういうお金が広がっていけば、また消費にも喚起するし、経済にもよくなるということは、政府としても経団連等にはお願いをしています。

 それで、この後、議論があるかもしれませんが、やはり所得税というのは、一番高いときで最高税率が七〇%を超えていたわけですね、累進率が。それがフラット化をして、今は四〇%までに来たと。ですから、先生の御主張というのは、高額な収入を得ている人については、所得の再分配機能というのをもう少し考えたらどうかということだと思うんですね。

 これには歴史的な経緯等もいろいろありますけれども、私も、消費税をお願いするというのは、確かに消費税というのはある意味で平等です。小さいお子様が商店に行っておもちゃをお買いになったりアイスクリームをお買いになっても一〇%、それから、お金持ちの方が何か買っても一〇%、そういう点ではよくも悪くも平等性がありますから、それだけに依存するのではなくて、今のこの累進税率をどうするかというのはやはり大きな課題でありますので、今後、私は、各党間でぜひ議論をしていただきたいと思うんです。

 ただし、歴史を振り返ると、レーガノミックスのときは、レーガン大統領は、高額収入者に減税をすることで、経済的に非常に、言ってみればインパクトのある政策をとってアメリカ経済の発展につながったという説もありますから、さまざまな角度からぜひ議論をしていただいて、今のあるべき累進税率のありようというものを議論していただくということは重要なことだと思っております。

重野分科員 十二時までの割り当てでありますが、あともう十分ない。大変申しわけないんですが。

 次に、基礎控除額の水準について。

 日本での基礎控除、三十八万円の所得控除となっている。この水準は生活保護の水準を大幅に下回っているんだ、これはもう御案内のとおりです。ドイツでは、過去に生活保護を下回る基礎控除は違憲であるという判決が出されたというふうにも聞いているんですが、日本の基礎控除の水準についてどのように考えるか。

安住国務大臣 これは、基礎控除を生活保護の基準額並みに引き上げるべきではないかということも含めての御質問だと思いますが、税負担が生じる水準を考える上で、基礎控除の水準だけでなくて、いわゆる配偶者控除とか給与所得控除、その他の控除も含めた、ある意味で水準を比べる必要があるのかなと思っております。

 これは、社民党を含めた連立政権のときに、控除から手当へという考えでいろいろな見直しを行っているところでありますから、そうした実質的な負担が生じ始める水準とはどこら辺にあるのかということを少し着目した場合は、例えば先生、子供に係る給付を加味して実質的に負担の水準が始まるところ等を見ると、生活保護の基準額に比べ、必ずしも日本の場合は諸外国に比べても低くはないのではないかと思っております。

 ですから、トータルな意味でいえば、所得税にだけ絞れば差は出てくるかもしれません、ドイツと。しかし、トータルで見た場合は、そんなに日本のこの控除制度は悪いわけではないので、基礎控除だけを見て大幅にそれを上げるというのは、ちょっと困難ではないかなというふうに思っております。

重野分科員 次に、最高税率引き上げについてちょっと聞いておきたいんですが、今後の税制改正の課題に最高税率の引き上げがあります。最高税率を五%だけ引き上げる、しかも三千万円以上とか五千万円以上とかの報道が行われております、御案内のとおり。しかし、これでは十分な税収が確保できない。

 かつて麻生政権の時代に、当時の与謝野大臣が記者会見で、最高税率の引き上げについて、税収を確保するということに重点が置かれているのではなく、シンボリックな意味で所得税の再分配効果というものをあらわすためだ、あるいは、税収自体に大きな期待を抱いていただいても困る、それでも全体のいわゆる税に対する公平感とかそういうものに対してシンボルとしての効果があると答えております。

 日本の国民負担率は欧米に比べて低いと言われています。そして、その中で消費税だけが取り出されて消費税率アップの論拠にされているんですが、他方で、住民税も含めた所得課税も諸外国で最低だ。あの低福祉・低負担の代表であるアメリカの六割、あるいは、伝統的に間接税を中心とした税制度をとっているフランスと比べても低い。スウェーデンと比較すると四割以下だ。欧州では、確かに付加価値税の税率が高くなっていますが、所得税の負担率も高く、所得の再分配が日本よりも機能している。

 最高税率の問題は、実を伴わないシンボルとしてではなくて、ボリュームとしても考えるべきではないのかという指摘をしたいんですが、どうですか。

安住国務大臣 御指摘のように、これは歴史的に見ると、昭和六十一年で最高税率は七〇%、刻みが十五もあったんですね。私が本当に月給取りになったころはこんな感じでございましたが、今は刻みが六つで、五%から四〇%のところにあります。それで、なおかつ、実は一〇%台までの人が大体八割近いんですね。

 ですから、そういう点では、四〇%から上をどうするのかという議論は当然あるし、また一方で、やはり、全体の給与所得者のほとんどの方々が一〇%、五%の枠の中におさまっていますから、再配分機能からいっても、これをそろそろ見直すということは十分議論があって私はしかるべきだと思いますので、消費税のことだけが議論されておりますけれども、これから、本格的にこのありようについては議論をしたいというふうに思っております。

 ただ、先生、今回は消費税のお願いと、それからもう一つは、復興の特別所得税をお願いを付加しているわけですね。そういう課税が、提案をして、復興特別税についてはもう既に成立をしておりますので、そうしたことを考えると、幅広く負担増になっている状況というのは、やはり考慮しないといけないものの一つであるというふうに思いました。そこで、政府・与党全体でいろいろな議論はいたしましたけれども、とりあえずそういう点からいうと、課税所得の五千万超について、最高税率を四五%に今回はしたということでございます。

 そういう意味では、今後、これから、先生の御主張のような累進税率というものをどうするかについては、政府部内でも真剣に議論をしていきたいと思っております。

重野分科員 そういう方向で、ひとつよろしくお願いいたします。

 次に、外務副大臣に聞きます。

 民放で放映されている「運命の人」という番組があります。これは、原作は山崎豊子さんでありまして、沖縄返還時の密約事件を題材に描かれたものです。

 この中で山崎さんが語っているのに、多くの関係者が取材に非常に協力的であったと。ところが、ただ、外務省については例外として挙げているんですね。取材はお手上げに近かった、もうお手上げ状態だったと。三十年近くたっても、密約を否定したり、頭から取材拒否、国家機密を秘匿し続ける態度に怒りを覚えた、このように本の中に書いてあるんですね。これはやはり私は問題だと思います。

 そういうふうに山崎さんが指摘をされている外務省の体質について、副大臣はどのように考えておられるか、お聞かせください。

山口副大臣 外交ですから、秘密をとにかく守らなきゃいけないという基本はまずあると思うんです。

 私自身は、正直言って、例えばいろいろな交渉事について、もっともっと本当は、交渉中のものについては、記者さんに申しわけないけれども、もっとかたくなるべきだという印象を実は本当は持っています。

 秘密については、我々も若いとき、入省したときに物すごく徹底的に教わって、例えば真珠湾のときの話も教わりまして、当時、日本は、真珠湾に攻撃するのか、フィリピンのスービックに行くのかわからなかったんです。どんな情報を集めてもわからなかった。ところが、あるとき、四一年の十二月の上旬に、ある中尉クラスの人が新婚旅行に出かけたいという平の電報を国防総省に打ったそうなんです。それを見た大日本帝国海軍は、こういう中堅の幹部が新婚旅行がオーケーになるかどうかによって決まるぞということで、そうしたら、三日後に電報が来たそうなんです、オーケーだと。一行だけ。そして大日本帝国海軍は、多分アメリカの艦隊はフィリピンではなくて真珠湾に集結しているはずだということで真珠湾が決まったということも教わって、要するに、全然関係ないように見える情報でも押さえておかないとえらいことになるということを肌で、もう体の隅々にしみ込むまで教わったところなんです。

 ところが、最近、情報公開ということが非常に言われることかどうか、我々も非常に新聞記者さんには協力的にやっているわけですけれども、この歴史のものについては、昔から外交記録三十年ルールというのがあるんですけれども、特に岡田大臣のころに、平成二十二年五月には外交記録公開に関する規則というものを制定して、そして今まで五回、この委員会というものを開催しました。

 今、三十年ルールに基づくと、約二万二千件の外交記録ファイルがあるんですけれども、三千二百七件のファイルを公開している。玄葉大臣になって特に作業を加速化しているということはあるんですけれども、私的には、アメリカとかと比べたら、アメリカが十年ルールだったと思います、だから、外務省というか日本の場合、三十年ルールですけれども、もう少し早くした方がいいんじゃないのかなと。ただ、私的には、隠蔽と言われると、必ずしもそうではないなというふうな気がしています。

 ちなみに、密約については、文書がなかったということで、そういう答え方をさせていただいているように私は承知しております。

重野分科員 情報公開という一つの大きな流れがある中で、今、副大臣の答弁のように、かたくなになっていくというのは、私はもう今の時代じゃないと思いますよ。

 それから、時間も来ましたけれども、二つ、エセックスの交代とオスプレー配備について。

 今度、エセックスがボノム・リシャールという強襲揚陸艦と交代をする。そのリシャールについて、いわゆるオスプレー搭載ができるように飛行甲板の改修が行われている、こういうことなんですね。ということは、オスプレーを搭載したまま佐世保基地に入るのかということを一つ。

 それからもう一つは……

西村主査 重野さん、時間が来ていますので、簡潔にお願いします。

重野分科員 わかりました。

 今まで、エセックスの場合が十年以上たって、マラッカ海峡を越えたのは一度だけだと言われています。今回、リシャールに交代をすることによって、そういう行動範囲が変わるのかどうなのか。

 これは先般、申し入れをした折には、いずれも我々の指摘を、そうですというふうに現地の皆さんは答弁しておりましたが、外務省として。

西村主査 簡潔にお願いします。山口外務副大臣。

山口副大臣 エセックスがボノム・リシャールにかわるというのは、今春の、この春の早い時期にというふうに承知しています。

 他方、オスプレーの更新については本年の後半ということだそうなので、もしもボノム・リシャールがこの春の早い時期に来るとしたら、オスプレーを載っけてくるということにはならないだろうというふうに思います。

 他方、あと、役割については、必ずしも運用の詳細について承知していませんけれども、エセックスと同様であるというふうに承知しています。

重野分科員 以上で終わります。

西村主査 これにて重野安正委員の質疑は終了いたしました。

 午後一時に本分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

西村主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。磯谷香代子さん。

磯谷分科員 民主党の磯谷香代子です。

 きょうは、質問の機会をいただきまして、大変ありがとうございます。財務の分科会ということで、私、少し緊張しておりますが、よろしくお願いいたします。

 今、社会保障と税の一体改革などで、日本の将来像についていろいろとみんなで意見を交わしているところですけれども、やはり国民の皆さんがよく言われるのは、将来が不安であるというようなことを、この週末も友人などと話していて私もそういう話を聞くんです。ただ、そうはいっても、お金持ちの人は実際持っていらっしゃるということもありますので、本日は、個人資産の活用についてと、資産の海外流出について、ちょっと対応などについてお聞きしたいと思っております。

 今、世間一般的に日本の個人金融資産が千四百兆円と言われているんですけれども、ただ、実感値としてその千四百兆ということがよくわからないということがありまして、本当にそんなにあるのという声も聞くんです。

 千四百兆について、日本銀行のホームページの中に「教えて!にちぎん」という教育と学習情報のページがありまして、そこにQアンドA方式の項目に「個人金融資産千四百兆円、とよく見聞きしますが、どの統計で見ることができますか?」と書いてあります。そこに載っている回答としては、読み上げますと、「資金循環勘定の金融資産・負債残高表の全体表における「家計」の「資産合計」の計数を引用したものです。ただし、この千四百兆円のなかには、(一)企業年金等に関する年金準備金、預け金(ゴルフ場預託金など)、未収金(預貯金の経過利子など)といった、一般的には個人が必ずしも金融資産として認識しないような金融商品が含まれているほか、(二)個人事業主(資金循環勘定では家計部門に含まれる)の保有する事業性の決済資金などの資産も含まれている点には留意が必要です。」となっています。

 つまり、千四百兆円といっても、全部が現金というわけじゃなく、本人が自覚していない資産も含むということではあります。とはいえ、これだけの金融資産があるのも事実ですから、そのうちの一%を活用するだけでも十四兆円になるわけです。

 そこで、まずお聞きしたいんですけれども、特に、金融資産の多くを高齢者の方々が保有しているとよく言われていますが、その活用を促すために、例えば税制上どのような工夫がされているのか、お聞きできればと思います。

五十嵐副大臣 御質問ありがとうございます。

 確かに、お金の回る社会にしなければいけないという委員のその感覚は、まさしく正解だと思っております。その保有資産を若い世代に早期に移転を促して消費拡大や経済活性化を図ろうというのは、御指摘のとおり重要な課題だと考えておりますが、幾つか問題があると思います。

 千四百兆円台なんですけれども、この中には、住宅ローンなども含まれておるというか、それを差し引かなければいけない。いわゆる純資産ということになると千百数十兆円かなと思います。

 それから一方で、これは金融機関に大部分は預けられているわけですが、その預けられた金融機関の方は、今、低金利時代で運用先がないということで国債で運用するということが多いものですから、また、日本の国がたくさんの国債を発行しておりますので、そちらに、今、一般政府の債務という形でいうと一千七十兆円を上回る額が、そういう形で、形を変えて国債になって存在をしているということがありますので、そういう意味では、これはなかなか動かしにくい部分もある。

 ただ、おっしゃるとおり、これをできるだけ活性化を図らなければいけないということで、平成十五年には、相続時に精算することを前提として贈与税を思い切って軽減する、簡素化するという相続時精算課税制度を創設いたしました。二十一年度には、経済情勢の厳しさを背景に、住宅を取得するための資金の贈与に関する贈与税について一定額まで非課税とするという思い切った措置をとり、この非課税措置については、二十四年度改正においても拡充、延長を今提案させていただいているところでございまして、なるべく若い世代に回して活用を図っていただこう。

 ただ、それだけでは解決しないものですから、先ほど言ったように、それを預かる金融機関や、あるいは一般の企業がどんどん国内に投資をして、お金を日本社会の中で回すということを、全体の活性化を図らないと、やはり一部の資金の移転だけではなかなか難しいかな、こう思っております。

磯谷分科員 ありがとうございます。

 相続税、贈与税についてもちょっとお聞きしたいと思うんです。

 相続税を実際今払っているのは四%、一部の人という話もありまして、今回、税制改正の方で少し基準が変わるかなというところなんですけれども。ただ、四%で、かつ、まずは贈与税の方、生前贈与は年間百十万円という基準と、控除になるのは二千五百万円ということもありまして、この百十万円というのが、ほとんど純粋にお金を渡すとかそういう面で、生活資金なんかを、いろいろちょっと買ってあげるというか、そういうところはまた別だよという御説明もいただいたんですけれども、この百十万円という水準がもう少し上がってもいいのではないかなとも思いますし、これは例年よく出る話だと思います。

 そういった一部持っている人だけがまた子供に優遇するというのが公平性の点で少し問題があるというお話も伺いましたけれども、ただ、そうはいっても、若い世代の方が使うことは多いので、そういう金額というのも少し緩和していってもいいのではないかなと個人的には思っているところです。

 今、副大臣の方からお話がありました住宅所得のときの優遇ですとか、そういった過去に多少の緩和なんかもあったんですけれども、過去にそういった制度で贈与促進ですとか住宅取得の促進とか行われたわけですが、これらは実際にどれぐらい効果があったのか。今後もそういった贈与の促進のために税制上の工夫をしていった方がいいのではないかと思うんですけれども、その辺について伺えればと思います。

五十嵐副大臣 ありがとうございます。お答えいたします。

 先ほど相続時精算課税制度が平成十五年に導入されたと申し上げましたけれども、果たしてそれが効果があったのかどうか検証すべきだというお話だったと思います。

 近年では、この制度を利用して、毎年八万件、贈与額でいうと約一兆円の贈与が行われております。従来の暦年課税における一件当たりの平均贈与額が約三百万円でございました。この相続時精算課税制度が始まってからは、一件当たり約千三百万円、大幅に増加をいたしております。その結果、この制度を選択する人は実は暦年課税の適用者より少ないんですけれども、先ほど申しましたように毎年一兆円程度の贈与が行われておりまして、一定の効果があったのではないかな、こう思っております。

 さらに、先生お尋ねの、さらなる贈与促進策についてはどう考えるんだという御質問だったかと思いますが、相続税の補完税であるという贈与税の役割がございます。高齢者の保有資産の早期移転による消費拡大や経済活性化の観点ということとあわせて、両方で考える必要がある。先生が御指摘のとおり、公平性の観点と、資金の塩漬けを解いて早く活性化させるという、その両面でやはりバランスを考えてやらなければいけないということだと思います。

 先ほども申し上げましたけれども、二十四年度税制改正では、新成長戦略を踏まえて、住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置について、省エネ、耐震性を備えた質のいい住宅に係る非課税限度額については引き上げをいたすことにして提案をさせていただいておりますし、また、社会保障・税一体改革大綱においても、直系卑属への贈与に係る贈与税の税率構造の緩和、あるいは相続時精算課税制度の拡充措置を盛り込んでおります。

 今までは、お父さんからお子さんに相続するときに一代飛ぶことができなかったんですが、若い人にまで直接渡せるようにしました。つまり、寿命が延びてきましたから、お父さんが九十歳代で、息子さんももう七十というような例がありますから、それだと先ほど先生の御指摘の措置に余り合わないものですから、ですから、思い切って贈与税はそういうところで緩めて、一代飛ばしで若い世代にできるようにということで、私どもは考えて、そういう措置をとらせていただいているところでございます。

磯谷分科員 どうもありがとうございます。

 やはり、平均寿命も延びていまして、六十代になって相続を受けたとしても、自分自身も長く生きる中でお金が要るかなと思うと、なかなかそれ以上の消費というのにつながりにくい面があると思いますので、そういったところをまた拡充していっていただければと思います。

 これは、事実関係というか、伺いたいんですけれども、贈与とか相続に関する諸外国の、この中ではアメリカと韓国についてお聞きできればいいんですけれども、そういった税制はどのような形になっていますでしょうか。

古谷政府参考人 お答え申し上げます。

 諸外国の贈与税制は、納税義務者ですとか、税率構造、それから控除の額等、各国さまざまでございますけれども、基本的には、先ほど副大臣から御答弁ありましたように、相続税を補完する役割を果たす税だという点では日本と同じでございます。

 ただ、この相続税を補完するという意味が日本よりも多くの外国では徹底されておりまして、贈与額を一定期間累積しまして税額を計算して、前の年までの贈与に対して支払った税額を控除するといったような累積課税方式となっております。そういう意味では、日本の相続時精算課税と考え方が似ている税制だと思います。

 その上で、アメリカと韓国について申し上げます。

 日本は贈与をもらった人が税金を払うんですが、アメリカは贈与者側に課税をされております。それで、一生涯の贈与を累積する。それで、それぞれ一年当たりの受贈者、受け取る人一人当たりの年間の控除額が一万三千ドル、約百万円になってございます。その上で、一八%から三五%の十段階の税率を適用しているということのようでございます。

 それから、韓国でございますけれども、韓国は、日本と同じように、もらった人が負担をする贈与税ですけれども、十年間の贈与を累積いたしまして、控除額は、その十年分の累積に対して、受贈者の親族との関係に応じて決まっておりまして、例えば配偶者の場合には十年分で六億ウォンということで約四千万円、それから、直系血族からもらった場合には十年分で三千万ウォンということで約二百六万円ということで、二百六万円で十年分ということですので、十分の一にすると、単年度では二十万円ぐらいの控除、そういった内容のようですが、それに一〇%から五〇%の税率を掛けて課税をしているという状況でございます。

磯谷分科員 ありがとうございます。

 国によってもちろん違いがある、払った人が払うのか、もらった人が払うのかというのはあると思うんですけれども、それぞれの国の財政状況なんかも変わってくるとは思いますが、またこういったところも参考にして、私の方も勉強させていただきたいと思っております。

 次に、今度は、個人資産の海外流出についてお聞きしたいと思います。

 一部の人たちの中には、日本の将来に期待できないのではないかという不安から、海外の銀行に自分で口座をつくる動きがあると聞いております。口座をつくること自体は別に全く問題ないんですけれども、その口座に入金するために、海外に出国するときに、関税法などに基づく申告義務が発生する百万円を超える現金を手荷物に入れて持ち出すケースがあると聞いております。これはハンドキャリーというそうなんですけれども。

 この申告を怠った場合というのは、本来、五年以下の懲役または五百万円以下の罰金という罰則も設けられているんですけれども、余り出国時に手荷物検査をしないよねということもあります。

 これは、今までに出国時に摘発されたケースというのはあるんでしょうか。

柴生田政府参考人 お答えいたします。

 百万円を超える現金等を外国へ持ち出す場合には、関税法の規定に基づきまして、書面による税関への申告が必要であります。故意に申告を行わなかった場合、また虚偽の申告が行われた場合には、関税法上の罰則の適用を含め、厳正に対処することとしております。

 なお、現金等の持ち出しにつきましては、航空機につきましては一九八七年と一九八八年に、船舶につきましては一九九七年と二〇〇八年に、未申告の現金の持ち出しを摘発してきたところでございます。

磯谷分科員 今、飛行機は一九八七年と何かという話で、結構前のお話だと思うんですけれども、船舶についても、新しい方で二〇〇八年ですか。そろそろ経済系の雑誌なんかでも、そういうのが大っぴらに記事に出てくるわけですので、取材対象者を見つけるのも割と簡単になってきちゃったのかなということも考えるわけですが、百万円というのはセンサーで見てもなかなかわからないぐらいのことになるとも思いますし、ただ、こういったことが横行しちゃっているというのも事実ですので、その辺、少し当局の方としても検討する余地があるのではないかなというのは思っています。

 あわせて、今度、これもまたお聞きしたいんですけれども、二十四年度の税制改正法案で、五千万円を超える海外資産について毎年の調書の提出を義務づけるという方向性が打ち出されたわけですが、未申告であったり虚偽記載であったりすることも考えられるので、今後それはどのように対応することになるんでしょうか。

五十嵐副大臣 今回の国外財産調書制度でございますけれども、御指摘のとおり、近年、国外財産の保有が増加傾向にございます。この中で、国外財産に係る所得税や相続税の課税漏れが増加をしてきておりますので、国外財産に係る課税の適正化というのが、おっしゃるとおり、喫緊の課題になってきております。諸外国の例も参考にしながら、納税者本人から国外財産の保有について申告を求める仕組みとして導入をすることとしたものでございます。

 御質問の、調書未提出や虚偽記載といったものにどう対応するかということでございますが、一つは、調書を提出いただく場合に、その財産に関して申告漏れが生じたときでも、ちゃんと、ちゃんとではないんですけれども、提出をしていただいた場合には加算税を五%減額するという、一種のインセンティブになるかと思いますが、逆に、調書の提出がない場合には、あるいは記載に誤りがある場合には、申告漏れが生じたときには、加算税を逆に五%加重するという重い措置をとる。

 さらに、故意に調書を不提出であったり、明らかに故意に虚偽記載をするという場合には罰則を設けることといたしまして、この罰則は一年以下の懲役または五十万円以下の罰金でございますけれども、懲役刑を科すというのは相当重いものになると思います。

 ですから、こうしたことによって、適正な提出に向けてインセンティブを与えることになると思っております。

 いずれにしても、本調書制度の創設によって、納税者に国外財産から生じる所得等の適正申告を促しまして、また、外国当局との情報交換を積極的に行っていくということとあわせて、この調書を活用していくことによって、国外財産に関する一層の課税の適正化に努めてまいりたいと思っております。

磯谷分科員 ありがとうございました。

 最後に、これは私の感想というか意見なんですけれども、もちろん、日本の将来が不安だからそういう手だてをするというのは一つの方法かもしれないんですけれども、今度、海外の銀行に大金をもし預けていた場合に、銀行自体が今後三十年間絶対に大丈夫かどうかということについてのリスクをそういう方たちは余りまだ考えていないのではないか。日本国内であっても、保険に入っていないところなんかは一千万円のペイオフはやはり関係ないですし、そういったことについての覚悟なりが本当にあるのかなと。逆に、そういったリスクというのを少し伝えた方がいいんじゃないかなと思います。

 あとは、永住するつもりで海外に出ていったつもりでも、やはり、病気になったりであるとか、どうしても言語の問題、日本語と英語のハードルなんかもありまして、結局、四、五年すると日本に戻ってくる人というのも結構いるというようなお話も聞きますので、そういったことも含めて、今不安だから海外にお金を持っていくんだというだけじゃなくて、トータルで、全体でその人自身が考えるべきかなと思います。

 今後とも、いろいろな動きがあるかとは思うんですけれども、そういったこと、海外流出と考える前に、日本自身の将来が安全であると思えることの方が大事かなと思いますので、またいろいろ私の方も勉強させていただきたいと思います。

 きょうはどうもありがとうございました。

西村主査 これにて磯谷香代子委員の質疑は終了いたしました。

 次に、橋本勉委員。

橋本(勉)分科員 岐阜二区から来ました橋本勉でございます。

 私、証券会社に勤めておりまして、マーケットの方はよく見ているんですけれども、まず、安住大臣の方にお聞きしたいと思います。

 二月十四日に、日銀さんがちょっと方向を変えていただいたんじゃないかと思うんですね。金融緩和をやっていただいて、インフレゴールみたいなもの、一%をつくってもらったということであります。これによって非常にいい成果みたいなものが生まれてきたんじゃないか。円安、ユーロに対しては六、七円ぐらい行ったんじゃないかと思いますね。ドルベースでも、七十七円から八十一円ぐらい、四円ぐらい円安に切りかわっていったと思います。株価も、私もウオッチングしておりますけれども、約六百円、五百円ですね、この上がり方は非常に尋常ではないと思います。

 そういう今回の日銀さんの政策、変更とまでは言えるかどうかわかりませんけれども、切りかわってもらった、安住大臣も見ていらっしゃると思います。今まで、安住大臣も円高は悪いということでいろいろ手を尽くされてきたと思います。為替介入もしかり、そしてもう一つは政府も円高対策のいろいろな手段を打ちましたけれども、なかなかこれほどの円安に切りかわらなかったんじゃないかと思うんですね。それが今回ここまで切りかわったことに対して、これをどのようにお考えなのか、まずお聞かせいただきたいと思います。

安住国務大臣 橋本さん御指摘のように、時宜にかなったタイミングでの金融緩和策だったと思っております。

 二月の十四日に、日銀は、中長期的な物価安定のめどを導入した上で、当面、消費者物価上昇率一%を目指して強力な金融緩和を推進するとともに、資産買い入れ等の基金をこれまでの五十五兆から十兆円増額して六十五兆にした。

 この金融緩和によって、やはり市場が日銀の強い意思というのを感じたと思うんですね。その後、今御指摘のように、為替でいえば円安、日本株の株高にこれはやはり寄与していると聞かれていると思いますので、そういう点では、やはり私も、市場に非常にいいタイミングでいいインパクトを与えてくれたのではないかと思っています。

 他方、日本の経済を見ますと、皆さんの御協力で復興の第三次補正をしっかり仕上げてもらいました。そうしたことでいえば、ことしに入ってから、内需が非常に堅調に動く素地というのはやはりできてきたと思うんです。もう一方で、第四次補正でエコカーに対する減税措置、補助金等の対策をしましたし、また、来年度の税制改正でも自動車関係諸税について見直しを行ったりしております。やはり、そうした景気への対策というものがそのまま株価にはいい影響を私は与えているのではないかなと思っております。

 ですから、結果的には、ぜひこの二十四年度の今御提案をいただいている予算を成立させて、やはりまず国内のファンダメンタルズをよくして、これは橋本さんが一番よく御存じですけれども、その上に立って、金融マーケットの中で、これは世界の経済を見ながら動いておるわけでありますから、欧州の経済危機の安定、そしてアメリカの、このところの景気統計を見ますと全ての統計が非常にいい傾向を示しております。私もメキシコでガイトナー長官とも会談をしましたが、今後のアメリカ経済への指標というのにはかなり自信を持っておられました。

 こういうものが全部折り重なって、そして二月十四日の金融緩和によって、経済の状況というのは上向きつつあるのではないかというふうに思っております。

橋本(勉)分科員 今おっしゃったように、非常にうまいタイミングというものもあったと思います。安住大臣におかれましては、そういう外国等の市場についてもいろいろとウオッチングされていらっしゃるということを知って、非常に安心しました。

 その安心した中で、例えば日銀の総裁さんと野田総理が、もう少し市場について、そしてまた野田総理が日銀に対して大幅に資金供給をふやす措置を要求するような、その場をもっともっと頻繁に持っていただいた方がいいんじゃないかと思うんですけれども、それについてお考えをお伺いしたいと思います。

安住国務大臣 日銀と政府がデフレ脱却に向けて連携をしていくのが重要ではないかという御指摘だと思いますが、私も、それはもう大変同感をいたします。

 実は、去年からことしにかけて、私も一月十七日には同席をいたしましたが、私と日銀の総裁であれば、さまざまな会合で一緒になりますので、定期的な会談というわけではないですが、適時お互いの意思疎通というのは図っております。総理も先般、二月十五日にも日銀の総裁と率直な意見交換をしたと聞いております。

 やはり日銀の独立性というのは十分尊重しなければなりませんが、他方、我が国をめぐる経済情勢というのは、共有しておかないと政策の一体性というのが出てきませんから、そういう意味では、特段の金融緩和と、それから我々が行わなければならない財政政策、こういうものをやはり密接に関連させながら、今後とも日銀と緊密な連携をとって対応していきたいと思っております。

 その点からいえば、総理もこれからも多分、あらゆる会合で意思疎通をしていると思いますけれども、さらに日銀総裁とは緊密な対応をしていただけるものだと思っております。

橋本(勉)分科員 それにつきまして、日銀総裁ということがありましたので、きょうは門間企画局長さん、日銀からわざわざおいでいただきましてありがとうございます。

 今回の十四日の大幅な金融緩和、インフレゴールの設定で、こういう円安、そして株高、本当に変わったと思います。よくやっていただいたと私はむしろ感謝したいと思いますけれども、こういった今おっしゃったような、トップ、野田総理と会見を頻繁に催す、もしくは、例えば僕なんかは携帯電話でいろいろ学者さんとホットラインを持っておりますけれども、こういったものを持ってはいかがかと思うんですが、こういうチャンスというのはないものなんでしょうか。ちょっとお答えいただきたい。

門間参考人 日本銀行総裁は、これまでも総理大臣と直接お会いする機会をいただいておりましたけれども、先ほど安住大臣からもお話がございましたように、最近では、一月十七日に続きまして二月十五日にも、総理との間で経済金融情勢などに関しまして忌憚のない意見交換をさせていただいております。

 それから、こうした直接の会合だけではなくて、政府主催の各種会合とか国際会議の場等でもお会いする機会がありますので、そういう機会を捉えまして、頻繁な意見交換を行っております。この点、形式とか頻度もさることながら、重要なことは、政府と日本銀行が率直な意見交換をしまして相互の信頼関係を深めていくことであるというふうに認識をしております。

 実際、現時点におきまして、政府と日本銀行の間で経済物価情勢に関する認識に大きな違いはないというふうに考えておりますけれども、日本銀行としましては、今後とも、これまでと同様、政府との間で連絡を密にいたしまして、十分な意思疎通を図ってまいりたいというふうに考えております。

橋本(勉)分科員 門間企画局長さんにもう一度お聞きしますけれども、今回一%のゴール、めどということで、いろいろと言われておりますけれども、これだけの効果があったと思いますが、もう少し、例えばインフレターゲットを二%にするとか、そしてまた、資金供給を十兆円と言わずにもっと大幅に、例えば四十兆というようなことで引き上げるというようなことになれば、なおさらもっと効果があるんじゃないかと思うんですね。

 今回、やっとその効果が出て一段落したところではないかなと思っておりますが、今月の日銀の政策委員会でもう一回これを、大幅な金融緩和、または二%にするなんということを言ってもらうと非常に効果絶大だと思うんですが、それについてはいかがでしょうか。

門間参考人 金融政策決定会合につきましては、毎回毎回、その時点で適切な判断をしてまいります。

 一般論として申し上げさせていただきますけれども、今回私どもが設定いたしました物価安定のめどと申しますのは、御指摘のとおり、二%以下のプラスの領域でありまして、当面は一%を目指していくということでございます。

 そして、この一%としている背景なんでございますけれども、日本のかつての物価上昇率をずっと見てまいりますと、実はデフレと言われる前から、バブル期も含めまして、諸外国に比べまして一貫して低い状態が続いてきているという実態がございます。

 やはりこうした日本の情勢というものを前提にしますと、物価が安定をしているというふうに日本の家計とか企業が考える物価上昇率は、諸外国の場合よりは若干低いのではないかというふうに判断をしております。こうした国民の物価観から離れて、一気に今御指摘の二%とか、それ以上といった近年余り経験していない物価上昇率を目指そうとしますと、家計や企業がかえって大きな不確実性に直面するという問題があり得るかと思います。

 もちろん、今後、成長力強化が進展してきまして、その結果、持続的な物価上昇率が次第に高まっていく、そういう可能性もありますので、我々、そうした日本経済の構造変化の可能性なども含めまして、今後、毎年このめどにつきましては点検をしていきたいというふうに考えております。

 それから、御指摘がございました資金の供給でございますけれども、現在、日本銀行は、今のようなめど、物価上昇率一%を目指しまして強力に金融緩和を推進しております。その結果、資金の供給量と申しますか、例えばそのベースマネーを見ましても、対名目GDP比率で見ていただきますと、他の先進国と比べましても日本の方がむしろ多いという状況になっております。

 ただし、そうしたベースマネーそのものよりも重要なことは、この間、日本の金融市場は、昨年の欧州の問題等がありました局面も含めまして、極めて安定的な状態が維持されておりまして、その結果、企業の資金調達コストも低下するなど、緩和的な金融環境が維持されてきているということでございます。

 こうした極めて緩和的な金融環境が企業とか金融機関などによって前向きの経済活動に利用されていくということが重要でありまして、そのための成長力強化に向けた取り組みが進むにつれまして、我が国はデフレから脱却していくというふうに考えております。

 もちろん、日本銀行としましては、引き続き、強力な金融緩和を推進するとともに、成長基盤の強化にも取り組みまして、デフレ脱却に全力を挙げてまいりたいというふうに考えております。

橋本(勉)分科員 今、ベースマネーのことを申されましたけれども、アメリカと日本を比べますと、この十年、十二年ぐらいをとってみますと、アメリカは四・五倍ぐらいベースマネーをふやしてきている、日本は一・五六倍というところですよね。特に、起点をどこにするか、いろいろと御説はあると思います。しかしながら、リーマン・ショック、特に二〇〇八年の八月から見ますと、日本とアメリカを比べますと、マネタリーベースでは日本は約一・三五倍ぐらいしかふやしていないのかな、アメリカの方は本当に三倍ぐらいふやしている。

 今、日銀の白川さんがよく使う論法だと、ふやしてもなかなかマネーストックに結びつかないというような論法を使われておりますけれども、アメリカは非常に、準備預金だけ見ましても、豚積みのところもありまして、ちょっと調べましたら、三十七倍ぐらいふやしているんですね。日本は準備預金はまだ四・三倍しかふやしていません。これを見ても、アメリカの積極性と日本の消極性が非常に出てきているんじゃないか。

 そのために、日本というのは、この前、三・一一のときにだけ、金融機関が非常に危ないよと言われたときだけお金を供給するのであって、デフレ対策として使っていないんじゃないか、つくっていないんじゃないか、供給していないんじゃないかというようなことが言えるのではないかなと思うんですね。

 そういう意味で、私は、デフレ対策で、今回十兆円やってもらったんですが、もっともっと思い切ったことをやってもらいたいということをお願いしたいと思っているところでございます。

 ちらっと答えていただければいいんですが。

門間参考人 私ども、先ほども申し上げましたように、物価上昇率一%を目指しまして、万全の体制で全力を挙げまして金融緩和をしていきたいというふうに考えております。

 マネタリーベースそのものにつきましてはさまざまな要因でふえたり減ったりいたしますけれども、日本の金融市場が安定を維持し、そうしたもとで成長基盤が強化されていけば、必ずこれはデフレからの脱却につながっていくというふうに信じまして金融緩和を続けていきたいというふうに考えております。

橋本(勉)分科員 ありがとうございました。

 それでは、ちょっと細かいところで申しわけありませんけれども、五十嵐副大臣にお聞きをさせていただきたいと思います。

 一つは、外為特会をちょっと調べますと、何とこれは金額ベースで一・二兆ドルぐらい外貨準備高として残っているんですね。こういったものをひとつ取り崩すことも可能なのではないか。余りにもこれは、変動相場制というのは、もともとこういったものが積み上がらない、積み上がる必要がないと言ってもいいかもしれませんね。日本は変動相場制をとっていて、こういう金額を残しておくこと自体がちょっとおかしいんじゃないかと思うんですね。

 その点で、ひとつコメントをいただけませんでしょうか。

五十嵐副大臣 外為特会の積立金が過剰に積み上がっているんではないかということでございます。

 足元の為替レート、今、一ドル八十一円台でございますけれども、この計算でいきますと、実質的な十六兆円の債務超過になっておりまして、積立金、財投預託金を取り崩すというようなことになりますと、さらに債務超過が拡大をしてまいりますし、やはり私たちは、安全ということを考えると、保守的な考え方をある意味でとらざるを得ない。また、外貨資産を売却して一般会計に繰り入れるということになりますと、これは売却時にまた円高になってしまいますし、さまざまな要素があると思いますが、慎重に考えざるを得ないということだと思っております。

橋本(勉)分科員 ならば、外為特会にある積立金が二十兆ぐらいあるんですね、これを、円建ての預金ですから財政投融資に回されておりますけれども、本来の目的というのを逸脱しているんじゃないかと思うんです。こういうことはやめるべきじゃないかと思うんですが、いかがですか。

五十嵐副大臣 これはいわば一種のサイドビジネスでございますけれども、お金を有効に活用するという意味で、金融と財政の健全性を維持しながら、許される範囲内で運用をしているということだと思います。

 おっしゃるとおり、債務超過のもとで積立金を取り崩すというだけでは、これは一般会計から外為特会への赤字のつけかえになってしまいますし、政府短期証券という資金繰り証券により調達した資金を一般会計の財源として使うということになりますと、財政制度の根幹に触れるということもございます。また、一般会計の赤字国債隠しとか、粉飾的な会計操作という批判を招くおそれもありますので、こうした財政運営への信認を失うということにならないように、私どもは慎重に運用をしているということでございます。

橋本(勉)分科員 ちょっと別の視点から、私、調べたことがあるんですが、要するに、特別会計の不用額とか一般会計の不用額というものを調べさせていただきました。

 そうしますと、不用額が極めて多いんですね。例えば、二十二年度でも二十一兆円、これは特別会計があります。こういう中で、特に財務省関連の地震再保険、それから国債整理基金、外国為替資金、財投資金、この四つの会計だけで十四兆円ぐらいを占めています。二十一兆円の十四兆を占めているというのは、不用額としてGDPの約三%近い。

 これは、政府の経済見通しを財務省がむしろ使わないでしまったということで、ある程度デフレにしているような要因にもなっているんじゃないか。むしろ、もっと使っていれば景気がよくなったはずなのにかかわらず、予算の執行不足で、税収減をもたらしてしまったんじゃないか。

 特に、調べますと、自民党時代が十一兆円だったのに対して、民主党政権になって倍増しているんですね。こういうようなことを、何でこんなに多く不用額としてもたらさなければならなかったのか。そして、民主党政権になって、なぜこういう倍増に至らしめるような形になってしまったのか。これが一点。

 もう一つは、一般会計の不用額の中で、かなり実際の金利と予算積算金利が乖離しているんじゃないか。これは一般会計での不用額の原因ですけれども、積算金利が二%、または二・三%にもかかわらず、実際の金利というのは一%ぐらいしかない。この格差が、多く、一兆円近く不用額として計上されてしまうということもあります。

 これについて、どうしてなのかということでお聞きしたいと思います。

五十嵐副大臣 まず最初に、特別会計の方の理由等でございますけれども、特別会計はそれぞれ目的がございまして区分経理をしているものですから、その目的に沿ってやはり考えなければいけないということだと思います。

 地震再保険特別会計について申しますと、再保険金の支払い請求がなかったということで、二十二年度決算では七百二十八億円の不用が出ております。国債整理基金特別会計については、政府短期証券利子等の支払いが予定を下回ったということにより、四兆四千三百三億円の不用等が生じております。また、外国為替資金特別会計につきましては、政府短期証券利子の支払いが予定を下回ったことなどにより、一兆五千四百五十五億円の不用が出ておりますし、財政投融資特別会計につきましては、財政融資資金の貸し付けについて、経済環境の改善等に伴い、貸付額が予定より減少したことなどにより、八兆一千五百六億円の不用が生じている。合計すると大体十四兆円ということで、先生の御指摘のとおりでございます。

 一方、一般会計につきましては、今御指摘のとおり、国債の発行金利等が予定を下回ったことにより二兆一千四百四十八億円の不用となっております。合計で約十六兆円になりますけれども、この発行金利につきましては、最近では毎年、御指摘のとおり、二%で予算計上をいたしております。

 これは、やはり一年間でかなり、一%程度の上昇をしたことが過去にもございます。そうした年度途中で急な上昇を受けたときに、これは予算に逆に穴があくということになりかねませんので、こうした積算金利についても、私ども政府としては保守的な計算をせざるを得ないということでございます。

 この十年間でも二%に達したことが二度ほどありますし、その前にいきますと、一九九九年の二月の五日には二・五一五%まで上がっております。こうした状況になってはいけないわけでございますけれども、万が一のときを考えて、それは二%で計算をする必要がある。かつ、そのときに、今は一%弱でございますので、当然その金利が下回ると不用額が生じるわけですけれども、その時々、今年度でいいますと補正でこれを活用させていただいているということでございます。

橋本(勉)分科員 済みません。では、今の点はまた時間があったら話を続けさせていただきたいと思います。

 吉崎審議官にお願いをしたいと思います。

 地元なんですが、鉄嶺トンネルとか冠山トンネルの事業化見通しについてと、もう一つは東海環状の西回りルート、三十二年までの完成ということで聞いておりますけれども、岐阜から大垣、また養老から三重というと、どっちを先に着手していくのかということだけ、ちょっと簡単にお知らせいただきたい。

吉崎政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、冠山トンネルでございますけれども、これは、国道四百十七号の岐阜、福井両県境に位置いたします延長四・八キロのトンネルでございまして、平成十五年度に冠山峠道路として国による直轄権限代行事業に着手したところでございます。現在、用地買収並びに一部橋梁整備を推進しているところでございます。

 また、鉄嶺トンネルは、岐阜県が管理いたします国道三百三号の幅員の狭いところ、それから線形の悪いところを解消することを目的といたしますトンネルでございまして、現在、岐阜県において、事業の必要性や投資の妥当性を検討しているところというふうに聞いております。

 国交省といたしましては、直轄事業として事業中の冠山峠道路の整備を推進いたしますとともに、岐阜県が事業主体となる鉄嶺トンネルにつきましても、地元における計画策定等がなされましたら、社会資本整備総合交付金等をもちまして支援してまいりたいというふうに考えております。

 それから、東海環状自動車道についての御質問でございます。

 岐阜県内の大垣西インターから養老ジャンクション間の五・七キロにつきましては平成二十四年度、それから三重県内の東員インターから四日市北ジャンクション間の一・七キロにつきましては平成二十七年度の供用をそれぞれ目標に、現在、既に用地買収及び工事を推進中でございます。また、残る区間につきましては、養老インターから北勢インターまでの区間を除きまして、この区間につきましては現在、調査、設計中でございますけれども、その区間を除きましては、既に用地買収を進めますとともに、一部の工事に着手しているところでございます。

 東海環状自動車道の整備促進に当たりましては、地域の皆様の御理解と御協力が不可欠でございますので、そういった御協力を得つつ、引き続き早期整備に努めてまいる所存でございますので、よろしくお願いいたします。

橋本(勉)分科員 では次に、厚労の局長ですね、質問させていただきたいと思います。

 ちょうど私の地元では、揖斐病院とか養老の病院、JAの関係ですね、ありまして、非常に陳情を受けております。お医者さんがいない、こういうことで非常に困っているというようなことも受けています。お医者さんの世界も非常に学閥が激しい世界がありまして、供給元がうまくいかないということもございます。何らかの意味で、こういう医師不足に対処できる方法、うまい方法があったら教えていただきたい。

 もう一つは、関ケ原みたいな病院があって、公立の病院ですけれども、なかなか赤字続きでありますので、そういったところも、もしいい処方箋がございましたら教えていただければと思っております。

 お願いします。

大谷政府参考人 まず、医師不足あるいは医師の偏在についての対策ということでありますけれども、これは、医師の地域偏在を解消して、あるいは、医師のキャリア形成上不安があるから地域に行かない、こういうことがあるわけで、地域枠の卒業生の医師などを活用してその不足病院に行ってもらう、こういう意味で、地域医療支援センターという新しいものを今年度から十五県発足させたところであります。岐阜県でもこれを取り入れていただいて、今、県内医療機関への医師のあっせんとか県内の医師配置状況等、あるいは医療状況を把握するための調査、こういったものを行っていただいている、あるいは医師のキャリアパスの作成を応援していただいているというところであります。

 それから、私どもの持っている地域医療再生基金というものに基づきまして、岐阜県におきましてもここ二年続けて補助をしているところでありますけれども、それに基づいて地域枠の医学生に対する修学資金の貸与、あるいは市町村が主体となって行う医師確保対策に対する支援、こういったものを行っているわけであります。

 それぞれ地域で諸事情があるということなのでありますけれども、県当局、特に今申しました岐阜県の地域医療支援センター、こういうところが間に入って関係者と調整していただくというのが今一番望ましい仕組みではないかというふうに考えております。

 それから、公立病院の赤字ということでありますけれども、これについては、総務省の方で十九年に公立病院改革ガイドラインというものを策定して、経営効率の改善を進めるということで、成果としても、平成十九年度に七五・一%の公立病院が経常損益を発生させておりましたが、二十二年度には四五・四%に減少させた、こういう成果が見られているところであります。

 それぞれの病院について、今公立病院の改革プランというものが進められているわけでありますが、また厚労省としても、例えば国保の病院については必要な助成を行うといったこともしているところであります。

 個別の公的病院の財政措置につきましては、総務省が担当していることもありますので、私ども、よく情報を交換して、必要なバックアップをしていきたいと思います。

西村主査 橋本委員、時間が終わっています。

橋本(勉)分科員 時間ですか。わかりました。

 もう一つ聞きたかったけれども、では、時間になりましたので、ここで終了させていただきます。

 きょうは本当にお忙しいところをありがとうございました。

西村主査 これにて橋本委員の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして財務省所管についての質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

西村主査 次に、法務省所管について政府から説明を聴取いたします。小川法務大臣。

小川国務大臣 平成二十四年度法務省所管予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 法務省は、法秩序を維持し、国民の権利利益を擁護するという基本的な任務を遂行するとともに、安心、安全社会の実現のため、法務行政の充実強化を図っており、現下の厳しい財政事情のもとではありますが、所要の予算の確保に努めております。

 法務省所管の一般会計予算額は、七千三百二十五億八百万円となっており、前年度当初予算額と比較いたしますと、百八十二億八千七百万円の減額となっております。

 また、法務省所管の東日本大震災復興特別会計予算額は、八十三億六千八百万円となっており、一般会計との合計額は、七千四百八億七千六百万円となっております。

 何とぞ、よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。

 なお、時間の関係もございますので、お手元に配付してあります印刷物を、主査におかれましては、会議録に掲載されますようお願い申し上げます。

西村主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま小川法務大臣から申し出がありましたとおり、法務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

西村主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

西村主査 以上をもちまして法務省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

西村主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡辺義彦委員。

渡辺(義)分科員 新党きづなの渡辺義彦でございます。

 質問の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 我が党は法務委員がおりませんので、今国会での基本的な議論になりそうなそういうテーマを、きょうは大臣に質問をさせていただきます。

 まず最初に、司法制度改革でございます。

 法曹養成制度、日本版ロースクールということで平成十六年から施行されておるわけでございますが、多くの課題を今指摘されております。新制度に移行してから志願者が減ったぞ、法曹人口もふえてないやないか、にもかかわらず、相変わらず弁護士の先生方、就職難もあるやないかというようなこととか、教員とか教育の質が確保できていないんじゃないかな、そういったことも耳にしております。

 そこで、まず最初にお伺いさせていただきます。

 そもそも、この新制度の理念でありますとか目的というもの、法曹人口だけをふやすということではなかったと思うんですけれども、その辺を簡潔に大臣からお聞きしたいと思います。

小川国務大臣 司法制度改革で法曹養成制度に取り組むその基本は、私は、国民に利用しやすい司法制度というものがあったのではないかと思います。

 そのために、法曹というものを国民が利用しやすくなるように、広く、幅広く、また地域あるいは階層に偏りなく出ていただいて、多くの国民の皆さんから利用しやすい法曹になっていただく、このような観点が基本の思想ではなかったかと思っております。

渡辺(義)分科員 おっしゃるとおりだと思います。

 ただ、冒頭申し上げましたとおり、なかなかその期待に応えられていない。その期待に応えられていないという部分、何が最初目指したものから達成されなかったのか。また、現状として予想に反した結果、期待外れの原因は一体何なんだろうというところを大臣からお聞きしたいこと、その問題点と今後に向けた具体的な改善策があれば、そのこともお教えいただけたらと思います。

小川国務大臣 私は、法曹養成制度で一番の変更点は、やはり過去、司法試験という一発試験の選考であったというものが、ロースクールという、二年の教育とトレーニングを経た上での法曹の選抜というふうに変わりました。このように、点での評価から長い期間を通しての評価ということに変わったことによって、幅広い豊かな法曹が育ってもらえるのではないか、このように期待したわけでございます。

 私は、この制度の理念そのもの、これはまだ、ロースクール制度ができて法曹が誕生し始めたばかりでございますので、その新しい制度で育った法曹がどういう評価を受けるかということによってこの制度の評価は受けるものだと思っておりますが、ロースクール制度によって育った法曹は、私は、そうした理念に沿った法曹が育っている分野もあると思いますので、この制度そのものが失敗したというふうには思っておりません。

 そうした幅広い豊かな人材が法曹に入りました。これまでですと、法学部出身者しか法曹になる道が事実上なかったといいますか、困難であったものが、幅広い社会経験を経た人が法曹になって、これから活躍していただけるのかなと思いますので、まだ失敗したというよりも、その面では成功している、いい評価をいただけるものだと私は思っております。

 ただ、実際、ロースクールの現状を見ますと、制度の理念におきましては、ロースクールを卒業すれば、修了すれば、七割から七割五分ぐらいの方が法曹になれて、そして法曹人口も三千人という数を目指して、その三千人も、司法の分野だけでなくて、企業、経済界とか地方自治とか、社会のあらゆる分野において法曹が活躍していただいて、その分野で幅広く法の精神というものを社会に浸透させていこうという制度だと思いますが、この分野におきましては、残念ながら、理念の三千人には行っておりません。三千人を試験に受からせないのではなくて、どうも、そうした法曹の資格を与えるにふさわしい実力を備えた人が残念ながら千五百人程度にしかならないという現状からしますと、ロースクールの教育が、内容が、本来の制度を設計したときの理念に合っていないという現状ではないか。

 それから、数がまだ千五百人しかなっていないのに、千五百人が例えば弁護士になった後に就職先が決まらないといったような、法曹の過剰感が出ている。これはやはり、法曹を司法だけでなくて幅広い分野にといった、分野のその理念が現実化されていない、実現化されていないということが大きな原因だというふうに思っております。

 したがって、こうした当初の理念とは離れた実態があるということは大変深刻に考えておりますので、これを改善しまして、いい法曹をしっかりと育てて、社会の幅広い分野で活躍していただいて、国民の利便性に沿うような方向にしたい。このように、一般的には、答弁でございますが、最大限努力したいというふうに思っております。

渡辺(義)分科員 お言葉ではございますが、幅広い人材、分野、社会人等からもたくさんの方が育てばということでございますが、現実には、社会人の修習生といいますか、そういう方の年々少なくなっているという現実もございますし、その辺の部分においては、今の大臣の御認識より、私はもう少し厳しいんじゃないかなという認識を持っております。

 関係者の、学校に行かれた生徒さんでありますとか授業を受け持っておられる先生方のヒアリングをさせていただきますと、どうも、先ほども申しましたように、教育の質、指導力、力量がない方がお教えになっておられるんじゃないかと。ですから、三千人目指したけれども千五百人というのは、指導する体制に大変問題もあるんじゃないかなと私は認識もしております。

 学生さんいわく、司法試験も受けたこともない方がお教えになったりとか、教科書を読むだけであるとか、そういう実態もあるやに聞いておりますので、この辺の部分についてはもっともっと踏み込んでいってやっていただきたいなと思いますし、資格取得のために本試験に向けた基本的な補習はしてはだめですよと。監督しているのが文科省ということですから、私は、何で文科省なのかなと。学校ですから文科省の所轄なんでしょうけれども、受験指導はするな、けれども合格率は上げろと。ちょっと相矛盾した文科省さんの指導ぶりでございますので、その辺は、やはり法に携わるといいますか、法をつかさどる省庁でございますので、もっともっと法務省がイニシアチブをとってこの問題には取り組んでいただいた方が、私は、期待に外れている部分を取り返すなら、ぜひとも法務省が頑張っていただかないかぬのじゃないかな、そう思っております。

 制度全体の見直しという部分で、中央教育審議会でありますとか文科省の高等教育局等々も、出てくる書面は、目的、目標、ノルマを達成しないとその法科大学に対して補助金でありますとかそういうものをカットしますよとただお尻をたたくだけで、もっともっと内容の部分、なぜ達成できないのか、そういうところには取り組めていないんじゃないかなと。

 重ねて重ねて、今は文科省の方はおられませんので、いたら何か言いたいこともございますけれども、そういう部分におきましては、何度も申しますが、法務省がイニシアチブをとるということでいっていただきたいなと思います。

 金銭的なペナルティーの話もさせていただきましたけれども、学校に対するそういう補助金云々のことよりも、生徒さん、修習生に対する給費の制度であり、一年延長されましたけれども、その制度はどうも続けることはしないというような結論が出されております。

 私も民主党時代に法曹養成制度検討PTにも出させていただいて、最終意見取りまとめでも、多数決では、抜本的な見直しが行われるまでは存続させた方がいいんじゃないかという意見が多数でありました。また、PTの座長の試案にも、その意向を酌んで書類を上げておるんですけれども、当時の大臣も、いや、それはいかぬな、不公平であるんじゃないかなというような御意見でこういうことになったわけであります。

 現状、志願者が減少している中にも、経済的に苦しい人には大変酷な制度といいますか、改正でありますので、その辺も踏まえて、副大臣として小川大臣もこの議論には参加されておったわけでありますけれども、この給費制と貸与制については、大臣はどのようにお考えになっておられますか。

小川国務大臣 まず一点、最近の司法試験合格者が千五百人程度と申し上げましたが、二千人程度と修正させてください。

 この給費制と貸与制ですが、私自身も、振り返れば四十年前に、この給費制ということで、その恩恵をいただいたといいますか、そうした温かい配慮の中でいわば法曹に育てていただいたわけでございまして、給費を受けている身からすれば大変ありがたい制度でありますし、また、そのことによって、公に育てていただいたんだから公に奉仕しよう、こうした気持ちも芽生えてくる面もございますので、いい制度であったというふうには私は理解しております。

 ただ、昨今の厳しい我が国の財政事情の中で、この司法、法務の分野におきまして、やはり厳しい財政の中の予算をどういうふうに使うかというときに、国民の利便性を考えれば、よりそちらに回してしかるべきケースもあるのではないかと。

 今回の司法制度改革の中では、法律扶助制度、あるいは今、法テラス、これが大変に国民の皆様から広く知られて利用もふえているということで、非常によく機能して発展しておるわけでございますが、この法テラスを拡充する際の予算をどうするか、財源をどうするかというような議論もございました。そうした司法、法務の財政の中で、予算の使い道の中で、給費制の維持というものを考えたときに、法テラスの方のそうした国民の利便性に予算を使う、財源を使うということがやはり優先しているのではないかと。

 それから、修習生という個々の事情を見てみますと、修習を終えれば、判事、検事、弁護士の法曹に進むわけでございまして、修習を終えた後は経済的には特に困窮するということがない、安定した収入が得られるということを考えますと、修習しているときにまさに無給であっては困難でしょうから、修習しているときに生活を支える支援を与えればいいのではないかと。

 給費制も貸与制も、そうした意味で、修習をしているときに生活を支える給付をするということは同じでございます。ただ、給費制はもらい切り、貸与制になりますと、これを将来返すということであるわけでございますが、その苦しい、収入がないときの修習時代を経済的に支えるという観点からすれば、これは貸与制であってもその機能は果たすわけでございます。そして、法曹になった後、返済能力が十分にあると一般的には考えられますので、それはやはりお返しいただいてしかるべきではないか、そして、そうした財源を国民の利便のために、法テラス等のそうした優先度が高い方向に回していく、これもやむを得ないのではないかというふうに思っております。

 私は、財政問題がなければ、どんどんこの予算が膨らむのであれば、給費制というものは維持したいと個人的には思っておりますが、やはり厳しい状況の中で、優先度、さまざまな状況を考えますと、この貸与制に移行したということは、やむを得ない措置であったかというふうに考えております。

渡辺(義)分科員 ありがとうございます。

 安定した収入の立場になるから云々ということ、それはなってからのことではありますけれども、やはり若い方が司法の道を選んで、なりたい職業を、目指したいことで社会に貢献したいという、この職を選ぶときに制約されてしまう。経済的に苦しい方は特にそうでしょう。そういう中で、新制度が目指した、幅広く、また多くの方を司法の道へという理念からいきますと、やはりこれはちょっと選択肢を狭めているんじゃないかなという気が私はいたします。

 時間がございませんので、済みません、次の質問に移らせていただきます。

 民法制定から百十年ということで、改正ということ、見直しが考えられているようでございますけれども、私は、その中でも債権法の見直し、特に私は、日本にしかない、自分の認識ではそうなんですけれども、個人の保証、連帯保証制度、これはあしき制度だと私は思っておりますが、このことに関して、ちょっと掘り下げて質問をさせていただきたいんです。

 この保証被害といいますか、これは連帯保証ですから、第三者が被害を受けるわけでありますけれども、それによって訴訟や事件というのは今どういう状況、ふえているのか。また、経済状況を考えると、ふえているのか、余り変わらない横ばいなのか。データがあるかどうかわかりませんが、もしおわかりになれば、お教えください。

小川国務大臣 済みません。具体的な数字というものは今この場では把握しておりませんが、一つの問題点といたしまして、やはり中小企業の場合に、経営者本人あるいはその親族とか第三者が保証人になって、会社が倒産すれば、その経営者や親族あるいは協力者がもろともに破産に追い込まれてしまう、それは余りにも酷ではないかといった議論があることはよく承知しております。また、それに限らず、一般的に保証人が保証した場合に、予想外あるいは予測できないような状況があって、余りにも負担、責任を負わされて過酷なケースが生じるということがあるということは承知しております。

 したがって、そうした面について取り組む必要があるのかなという観点も含めまして、今、民法改正の、債権法の作業部会の中で議論しておるところでございますが、ただ、議論の中でそうした意見は当然交わされておるわけでございますが、まだ取り組みの内容といたしましては、案を取りまとめて公表するまでには至っておらないところでございます。

渡辺(義)分科員 ありがとうございます。

 冒頭申しました、諸外国にもこの連帯保証制度というもの、似通った制度ですか、また同じようなものがございますか。

小川国務大臣 保証制度、いわゆる人的保証制度そのものは、諸外国の立法例においても存在するようでございます。フランス、ドイツ、アメリカ合衆国、イギリス等においても存在しておるようでございます。おるようじゃなくて、おります。

渡辺(義)分科員 私も実は連帯保証制度の、被害者ということは適当ではないかもしれません、それに該当した経験を持っております。これは第三者の保証でありますから、なかなか通知が来ないというか、債務者へ直接には、例えば返済が滞っておれば通知も行くんでしょうが、保証人としてはもう全くナシのつぶて的なことで、状況が全く把握できない。

 また、お受けしたときよりも、経済状況というのはいつ変わるかもしれないという部分もございますし、例えば、自分の支払いの枠を超えるような返済額がどかっと来たら、通知が遅いということは、遅延金であるとかそういうもので元本より多くなっているときもございますので、そういう部分で、やはりこの制度というのは、どう考えても、あるべき法ではない。貸し手が大変有利であって、借り手が余り守られていない。余りというより全く守られていない、私は経験の中からそう思っております。

 今後、この連帯保証制度というものに関してどのように取り組んでいかれるか。こういうものはなくしていく方向でお考えいただいているのか、それとも、いやいや、これはなかなか、貸し手と借り手がおる中の一つの決め事であるから違う形で残すべきものなのか、その辺の御見解はいかがでございましょうか。

小川国務大臣 保証制度そのものについて、これを必要としている場合もあるわけでございます。

 例えば、個人で特に物的な財産もない方が事業を始めたいというときに、保証がなければ借り入れができない。そうしたときに、物的な担保がなければ人的保証ということで、信頼ある方に保証をいただいて進めるということの必要性もございます。あるいは個人が、学費やあるいは事故、病院等で急な資金が必要となったときに、物的担保となるものがない方が、保証がないために融資を受けられないということでは、やはり厳し過ぎるといいますか、そういう意味で、私は、人的な保証というものが全てのケースにおいて悪いということではなくて、やはりそれが生きるケースもあると思います。

 ただ、先ほども申し上げましたように、そうはいっても、保証人の立場が余りにも不利益になる、保証人に過酷なことが起きる、あるいは保証人が予期しないようなことが起こるという場合に、全て保証人に責任を負わせればいいのかということではないので、やはりそこは適正な対応をしなければならないと思っております。

 今、法制審議会の債権法部会の中でも、やはり、保証契約の締結に当たって、保証の意味とか理解が、十分な説明がない場合にはこの責任を制限してもいいのではないかとか、保証人の資力との関係で、その資力を、均衡を破るような保証の場合には効力を認めない方がいいのではないかという意見が出されております。

 まだその意見でまとまったというわけではございませんが、やはり保証人が保証したことによって思わぬ不利益、あるいは過酷な不利益をこうむることがないという意味での、そうした法的措置は必要ではないかという方向で議論をしておるところでございますが、先ほど申し上げましたように、この保証というものを廃止というところには、私は、やはり保証人にも、実際にある部分もあるものでございますから、廃止というところまでは、まだ考えるには至っておらないところであります。

渡辺(義)分科員 保証の制度、保証人というのは当然必要になってくると思いますが、連帯保証という部分では、やはりもう一歩踏み込んで御審議をいただけたらと思っております。

 時間があと五分ということでございますので、一つ実体験からでございますけれども、自分はそういう経験をしましたので、お問い合わせがよくございます。

 例えば、担保を差し出した、けれども、その担保に見合った融資を受けているわけですから、その担保物件を弁済に充てるということで、本来借金はもうそこでゼロじゃないのかというようなことをよく問い合わせられます。私も、そうだな、それに見合うということで融資をいただいた、お貸しいただいたものがなくなれば、それはそれで終わりなんじゃないかなと私は思っております。

 その辺の御見解に関してはゆっくり聞きたいんですけれども、時間がございませんので、ちょっと私見だけ言わせていただいて、次の質問に移らせていただきます。

 司法の人事交流、判検交流のことでございます。

 小川大臣は、裁判官をやって、検察官をやって、弁護士も経験する、三つともフルマークで御経験されておられるわけですけれども、自分が思うには、先輩、後輩がおって、裁判官が後輩で自分が検察官で何やかんやと言うていたら公平性が保てるのかな、担保できるのかなという部分を考えて、その辺の大臣の経験を踏まえて、制度の問題点や、こういうところはいいんだぞという部分で御所見をお伺いできたらと思います。

小川国務大臣 裁判官、検察官、それぞれの役割がありますが、やはりその職についた方が純粋にその職務に忠実であればよろしいわけでありまして、その職務につく前にどういう職にいたのか、裁判官が元検察官だったか、あるいは検察官が元裁判官だったかということを引きずらない形で職務に専念していただくことによって適正な職務が遂行できるんだと私は思います。

 一つの例としては、例えば検察審査会が強制起訴をすれば、指定弁護人として弁護士が検察役をやって、検察官としてその職務に忠実にやっておるわけでございます。ですから、私は、一人一人のその職についた方が、その職務に忠実であればよろしいのではないかというふうに理念的には考えておりますが、ただ、国民の皆さんから誤解を招かないような、そうした対応はしっかりとしていきたいと思っております。

渡辺(義)分科員 大臣、ありがとうございました。

 最後に質問をさせていただきます。

 マスコミ等々でちょっと取り上げられておりますが、検察審査員候補者名簿管理システム開発というのがありまして、それがどうも入札に関していろいろ取り沙汰されております。

 報道によりますと、大変高額で、随契的な契約であったんじゃないんだろうかというような、あくまでこれは週刊誌に書いてあることでございますので、真実のほどというのはわかりませんが、その辺のことに関して、以前からこういう契約、このソフト云々に関してはあったのかどうか。また、金額等々に関して、いや、これは正当なものであるというか、その辺のことを最高裁の事務局の方にお尋ねをさせていただきます。

西村主査 最高裁判所林経理局長。時間が来ていますので、簡潔にお願いします。

林最高裁判所長官代理者 私からお答えいたします。

 今、委員御指摘のありました検察審査員の候補者名簿管理システムの開発、あるいはその開発監理支援費用については、いずれにつきましても、会計法令に従いまして、広くインターネットの公告等を行った上で一般競争入札に付しております。システム開発については四者から入札があり、最も低額の入札者と契約を締結しておりまして、それも適正な競争が働いた結果ではないかと思います。

 このシステム開発、あるいは開発監理支援に限らず、裁判所関係のシステムにつきましては、市場の価格等、あるいは過去の実績等を踏まえました形で適正な予定価格を設定し、手続につきましても、会計法令に基づき、官報公告やインターネットを利用した調達情報の公告を行った上で一般競争入札に付しておりますので、その結果出てきた結果というのは適正なものになっているのではないかと評価しておりますし、契約の結果につきましてもインターネット上で情報を公開するなど、透明性を高める努力をしているところでありまして、今後もそのような努力を続けて、適正な入札等が行われるようにしていきたいと思っているところでございます。

渡辺(義)分科員 ありがとうございました。

 私も、こういうソフト云々開発の仕事もさせていただいておったことがございます。そのソフトの中身云々というのは、私、見ておりませんのでわかりませんけれども、確かに保守料等も含めて、いただいているペーパーの金額を見ると、大変高額だと私自身も思います。この問題につきましては、引き続き、またお聞かせをいただけたらと思います。

 本日はありがとうございました。

西村主査 これにて渡辺義彦委員の質疑は終了いたしました。

 次に、井戸まさえ委員。

井戸分科員 民主党の井戸まさえでございます。

 私は、まず、民法改正に伴います養育費の問題についてお伺いをしたいと思っています。

 昨年の通常国会におきまして、児童虐待防止のための親権制度の見直し等の民法改正が行われました。その際に、面会交流や養育費の分担についての取り決めが遵守されれば児童虐待防止にもつながるという観点から、民法七百六十六条の離婚後の子供の監護に関する事項の取り決め等に関する規定において、この面会交流、そして養育費についても明示されることになりました。

 そもそも、民法八百七十七条では、扶養義務者として養育費の支払い義務を定めており、父母は、親権の有無にかかわらず、離婚後も扶養義務者として子の養育費の支払い義務があって、家事審判法では、子供は父母に対して養育費を請求することができると規定をしています。

 ですから、明示をされなくても本来は支払い義務があったのにもかかわらず、そのことがしっかりと理解をされてこなかった。養育費の受給率の低さは、政府の取り組みが十分ではなかったということの裏返しでもあります。今、実際に、八割の方々は養育費を受け取れていないという実態もあります。

 私は、昨年四月十五日の法務委員会で、面会交流や養育費の取り決めの確保のために、離婚届け出用紙に取り決めの有無のチェック欄を設けてはどうかということを提案いたしました。いろいろ課題もあったかと思うんですけれども、二月二日には民事局長通達が出されて、ことし四月一日からはチェック欄のある離婚届の用紙が使われることになりました。

 離婚件数は年間二十五万件、つまり五十万人の方が離婚届にはサインをしているということになります。養育費の支払い義務があることをこの方々にもきちっと認識をしてもらえる最も有効な周知方法が、この離婚届け出用紙でのチェックだとも思っています。

 この届け出用紙の変更というのは大きな一歩ではありますけれども、さらに養育費が着実に支払われるためには、さらなる取り組みというものが必要だと思います。原民事局長、そして厚生労働省の石井審議官お見えですので、それぞれお取り組みの意気込みについてお聞かせください。

    〔主査退席、金森主査代理着席〕

原政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、昨年の民法改正におきまして、子の利益の観点から、離婚の際に父母が取り決めるべき子の監護について必要な事項の例示として、民法第七百六十六条に面会交流と養育費の分担を明記したわけでございます。

 この法案の審議の際に、衆議院の法務委員会において井戸先生から、この趣旨を徹底させるためには離婚届書の用紙にチェック欄を設けたらいいんじゃないかと、今御発言がありましたような御指摘がありましたので、私どもの方で検討いたしました結果、この様式改正をして、離婚届書の中で、面会交流の取り決めがあるのかどうか、それから養育費の分担について取り決めがあるのかどうかを離婚届をする当事者にチェックしていただく、それによってこの取り組みを促進していくことの一助になればというふうに考えているところでございます。

 そのほか、法務省におきましては、離婚後の養育費の分担や面会交流について、父母が協議で適切に取り決めることが子の利益の観点から非常に重要であるということを内容とするリーフレットを今作成しているところでございまして、このリーフレットを配布するなどして、引き続き今回の民法改正の趣旨について周知徹底してまいりたいと考えているところでございます。

石井政府参考人 子の利益の観点から見ましても、離婚後も適切な親子の面会交流を行われることは大変重要だというふうに認識をいたしているところでございます。

 昨年四月にも御答弁いたしましたけれども、厚生労働省では、平成十九年度から養育費相談支援センターを設置いたしまして、養育費のみならず、面会交流の相談にも応じてきているところでございます。

 加えまして、都道府県等を単位に設置されました母子家庭等就業・自立支援センターに専門の相談員を配置いたしまして、養育費や面会交流の相談支援に応じております。

 母子家庭等就業・自立支援センターの中では、いまだその専門員が設置されていないところがございますので、そこの促進を図っていくということが大変重要だと思っておりますけれども、これにあわせまして、実は平成二十四年度の予算案におきましては、母子家庭等就業・自立支援事業の新たなメニューといたしまして、取り決めのある面会交流の円滑な実施に向けた支援、相談だとか、日程の調整だとか、あるいは付き添いなども含みますけれども、そういったことを行う事業を設けることによりまして、面会交流に関する相談支援体制の充実を図ることといたしております。

井戸分科員 今はちょっと養育費の問題に集中して聞かせていただいているんです。面会交流も当然、後からまたちょっと質問をさせていただくんですけれども。

 今、養育費をそのまま受け取れている離婚後のお子さんたちというのは一九%しかいないんですけれども、この数字というのは、二十年、三十年、ほとんど変わってこなかったんですね。なぜこれが変わってこなかったんだろうということの一つの理由には、実態の調査というのがきちっとなされていなかったのではないかというふうに私は思っています。

 この離婚届の変更によって、チェック欄を設けて、取り決めをしたか、しなかったか、面会交流についてもそうですけれども、ここに関しては、当分の間は法務省の方で集計されると伺っていますけれども、この集計というのは取り決めの状況でしかないわけですよね、限られてしまいます。

 養育費の実態を把握するためには、厚生労働省の母子世帯等調査というものがあるんですけれども、この調査は五年に一度の調査で、前回は二〇〇六年のものになります。そして翌年に公表されていくということがあるので、この調査、五年後ですから、昨年たまたまされまして、二〇一一年の調査がことしの十月に発表される予定なんです。

 改正民法の施行によりまして養育費の支払い状況がどのように変わったかを把握する必要がありますけれども、これがまた五年後になりますよね。四年後に調査をして五年後に発表されるというのでは、なかなか実態というのはつかめないんじゃないか。この民法の改正によってどれほど変わったかというのがちゃんとわかるように、もうちょっときめ細かな調査というものが必要なのではないかと思いますけれども、ここについては、石井審議官、いかがでしょうか。

石井政府参考人 調査といいますのは、やはり継続的にやることによりまして比較ができるという大変重要な部分がございますので、今ここで直ちに五年ごとでできております調査を早めるとかということは難しゅうございますけれども、別の形で何か把握できないかということにつきましては考えてみたいというふうに考えております。

井戸分科員 期間について五年に一度というのもちょっとなと思うんですけれども、この内容についても私はちょっと疑問があります。

 というのは、この母子世帯等調査というのは、集計の客体の総数が、二〇〇六年の場合ですけれども、千七百四十六世帯、母子世帯は千七百十七世帯、父子世帯が百九十九世帯、養育者世帯が三十世帯と、非常に限られた数のために、これは実態というのを正確にあらわしているのかなという疑問がちょっとあります。

 その母子世帯等調査によれば、一人親世帯というのは大体百二十万世帯で、いつも使われる数字というのが百二十二万五千件という数字なんですけれども、これに対しまして、調査の対象だった千七百四十六世帯というのを比較しますと、実は全一人親世帯の〇・一四%がこの世帯の調査の対象になっているんです。これで一体実態というのは調査できているんでしょうか。

 例えば、我が党の世論調査、私たちの選挙区の中でいろいろ調査するんですけれども、大体三百サンプルで、その結果を見て、ちょっとこれは精度がどうかなと疑問に思うことがよくあるんですね。にもかかわらず、例えばこの場合でも、都道府県では母子世帯等調査は一都道府県に対して平均三十七件という数になりますよね、千七百四十六世帯を割りますと。しかも、調査してから、二千世帯以下ですよ、千七百四十六世帯に対して数字を出すのに一年がかかっていく。五年に一遍で、そしてそこからまた一年後に調査が出てくる。

 これだけの情報化社会となって、また、直近といっても、例えば前回の二〇〇六年の調査の前の二〇〇一年の調査から二〇〇六年までの間でも、母子世帯数というのは二八%余りふえている。その内容も、離婚が八割、死別が一割ちょっとというような区分だとか、母親も、今は高齢出産とかもふえていますから、その五年の間にでも、母親の平均年齢だとか、すごく大きな変化があると思うんですね。なので、こうしたところでも、見なければならない数字、押さえなければいけない数字、そしてその対象というのはいろいろ考えなければならないのではないかと思っています。

 先ほど継続性というお話もありましたけれども、この辺も含めて、これはちょっと抜本的に見直していただき、改善をしていただく必要があると思うんですけれども、もう一度、いかがでしょうか。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 サンプル数の問題その他幾つか問題点を先生から御指摘いただきましたので、どういう工夫ができるか、持ち帰って検討させていただきたいと思います。

井戸分科員 そして、あと名称もちょっと私は違和感があるんです。というのは、これは母子世帯等調査になっているんですけれども、実際には、父子家庭の方、また、ほかにも養育をなさっていらっしゃる方々の調査も入っているわけですね。となったときには、母子世帯等調査じゃなくて、やはりこれは一人親等調査に名称を変更するべきではないかと思うんですけれども、この辺はいかがでしょうか。

石井政府参考人 母子寡婦という関係でいろいろ法律もございまして、それとの並び、やはり何といいましても大半が母子家庭ということがございますので、そこに表象される問題ということで、母子家庭等総合調査ということで実施をしてきた経過がございます。

 ただ、おっしゃるとおり、児童扶養手当も父子家庭にも支給するようになったとか、最近やはり一人親という観点が強くなっている、それも事実だと思います。

 ただ、母子家庭の方の世帯のお気持ちというものもやはり一方にあるようにも思いますので、そのあたり、どういうふうに捉えたらいいのか、考えてみたいと思います。

井戸分科員 ぜひ検討していただければなと思います。大体、数を見ますと一割ぐらいはお父様がお育てになっていらっしゃる世帯もあるようですので、決してそれというのは例外ではないんですよね。やはり、そこもしっかりとやっていただかなければならないと思います。名称というのは非常に大事なところでもあると思いますので、ぜひともこれは改善をしていただけたらなというふうに思います。

 私がなぜこの養育費の問題に対してすごくこだわっていろいろと質問させていただくかというと、子供の貧困率、ここに非常にかかわってくるところがあります。

 子供の貧困率の悪化と一人親の世帯に関しては非常に関連性が高くて、最近よくニュースなんかにもなっていると思うんですけれども、二〇〇九年の厚生労働省の調査によりますと、大人が二人以上いる子供さんの貧困率、例えば御両親だとかあとは祖父母と一緒に暮らされている子供さんの貧困率は一〇・二%に対しまして、一人の場合に関しては五四・三%、実に半分以上が貧困であるという結果が出ています。これは本当にショッキングな数字として私たちは受けとめなければいけないのではないでしょうか。

 民主党は、来る三月十六、十七日に、子供の貧困問題対策キャンペーンの一環として、養育費問題ホットラインというのをやらせていただきます。ここで、たくさん悩まれていらっしゃる方たちのお声もすくい上げながら、特に今回、民法の改正によって明示をされた養育費の問題、また面会交流の問題に関しての周知に貢献をしていきたいと思いますし、法務省や厚労省さんにおかれましても、周知徹底にしっかりと取り組みを強化していただいて、また私たちも、そこを与党として、問題解決に対して大きく貢献をしていきたいと思っていますので、一緒に頑張らせていただければなと思っています。ありがとうございます。

 続きまして、婚外子相続分差別の規定の民法改正、こちらについても伺いたいと思っています。

 今回、法改正が実現した子の監護に必要な事項の定めというのは、一九九六年の法制審答申の一部でした。九六年の答申内容には、婚外子相続分差別規定の撤廃もありましたが、こちらは十六年過ぎた現在まで実現していません。子供を、嫡出である子、嫡出でない子と分け隔てるこの規定は、相続差別をするだけではなくて、社会的差別を助長するものです。子供の福祉、子供の利益のためならば、この規定こそ真っ先に改正されてしかるべきだったのではないかと思っています。

 今回、法制審でほとんど議論されてこなかった、最後にちょっと入ったんですけれども、この九六年の答申の内容、面会交流だとか養育費のところはそのままそういうふうに入ったんですけれども、簡単にできた一方で、同じ答申内容の婚外子相続分差別規定の撤廃に関しての法改正は、そのまま、ある意味ちょっと放置されたままとなっています。

 近年、高裁レベルでの違憲判断が相次いでいます。国連子どもの権利委員会は、一九九八年、二〇〇四年、二〇一〇年に、差別撤廃を勧告もしています。法務省の国会答弁では、婚外子の相続分規定を法で差別しているのは日本とフィリピンくらいだと伺っています。権威ある法制審議会の答申で立法化されていない唯一の法律案要綱とこれを聞いていますけれども、二〇一〇年の提出予定法案とされていたので、もうこれについても議論は尽くされているところでもあるとも思っています。

 チルドレンファーストを掲げる民主党の政権の中でぜひとも実現していきたいと思いますけれども、小川大臣に伺いたいと思います、何がこの改正の障害になっているんでしょうか。

小川国務大臣 法務省といたしましても、法制審議会から答申を受けたこの内容が、十六年間ですか、実現していないということは残念に思っておりますので、引き続き、法案提出に向けて努力したいと思っておりますし、また、私自身もそういう努力をしたいと思っております。

 これが実現しないのは、やはり党内、政府内あるいは国民の世論の中で、必ずしも一致していない、さまざまな意見があるという中で、困難な状況もあるということでございますが、そうしたさまざまな状況を乗り越えて、しっかりと理解をいただいて、提出できるような方向で努力していきたいと思っております。

井戸分科員 ぜひともこれはよろしくお願いしたいと思っています。やはり、子供たちが、生まれながらにして、そういったところで差別を感じてしまったり、重い荷物を背負ってしまうというのは、本当に、そういう意味では、政治が解決をしていかなければいけない問題の一つだと思いますので、ぜひともここはよろしくお願いをしたいと思っています。

 続きまして、個人通報制度について伺いたいと思っています。

 国連総会で、昨年十二月の十九日、国連子どもの権利委員会に対します個人通報制度を創設する国連子どもの権利条約の新選択議定書案が全会一致で採択をされました。日本政府は、六月の国連人権理事会、そして国連総会において、新議定書案の共同提案国となって、積極的な姿勢というものを示し、諸外国、NGOから高く評価されました。しかし、残念ながら、ことし二月二十八日の合同署名式では署名に至りませんでしたけれども、私の故郷でもあります、そして今回被災地にもなっています仙台の中学校、そして高校の生徒さんたちからの議定書に寄せたメッセージが上映されました。こちらは大変好評だったと伺っています。

 私が当選いたしました〇九年の衆議院総選挙の民主党マニフェストでは、「個人通報制度を定めている関係条約の選択議定書を批准する。」ということが盛り込まれておりまして、我が党への条約批准の期待が高まっております。

 〇九年の女性差別撤廃条約の第六次政府報告審査の前には、この選択議定書について国会でも活発に議論がなされて、問題はほぼクリアされたと伺っています。その後三年経過し、機は熟してきたのではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。谷法務大臣政務官、そして中野外務大臣政務官に伺いたいと思います。また、具体的なスケジュールも含めてお答えをいただけたらなと思います。

中野大臣政務官 ただいま委員御指摘の児童の権利条約選択議定書の件ですけれども、委員御指摘のとおり、この選択議定書を考えるときには、まず、個人通報制度自体をどのように我が国として考えていかないといけないかというところをしっかりと押さえていかないといけないと思うんですね。その中で、当然のことながら、これは人権に関する条約の実施の効果的な担保を図るという趣旨からいえば、この個人通報制度というのは、制度としては注目すべきものだというふうに認識はしているんです。

 ただ、繰り返しになりますけれども、個人通報制度全体をどのように捉えていくかというときには、当然のことながら、司法制度ですとか、または立法政策、または実施するときの実施の体制などをどのように整えていくかということも考えていかないといけないということでございますので、今回署名には至りませんでしたけれども、個人通報制度自体は私たちも真摯に検討させていただいておりますので、まず個人通報制度をどのように考えるか、その中で、方向性がきちっと決まった上で、個々の条約の署名ですとか締結について結論を出していきたいというふうに外務省としては考えております。

谷大臣政務官 今委員から御指摘をいただいた個人通報制度の問題ですけれども、これは今検討を加えているところでございますけれども、法務省だけで結論の出るということではなくて、外務省を初めとする関係省との連携をとりながら検討を加えていきたいというふうに考えているところでございます。

 特に、法務省の中では、私を座長として、この間ずっと、個人通報制度を導入する際のさまざまな課題、問題点を指摘しながら議論を進めておりまして、そう遠くないうちにそうした課題についての一定の成案を得たいというふうに考えております。

 そういうことの中で、引き続いて、今申し上げましたような、関係する省との連携の中でこの結論を出していくということになりますけれども、特に私どもが今考えておりますのは、省内で検討しておりますのは、例えば、この個人通報制度を導入したときの事務的なそういうふうな対応のあり方についてどうなのかとか、あるいはまた、この委員会からさまざまな見解が出されたときに、それらに対してどのように、例えば暫定措置の要請が出されたときとか、あるいは国内裁判所に対する委員会の見解が出されたときとか、こういういろいろな課題についても今議論を進めて、一定の方向性を出したいというふうに考えておりますので、そういうもののもろもろの検討の結果として、外務省等々とも連携しながら、早い段階で結論を出していきたいというふうに考えております。

井戸分科員 ありがとうございます。

 少しずつではありますけれども、歩みが前に進んでいる、そういった印象も受けさせていただきました。さらに鋭意頑張っていただければと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 最後に、面会交流について伺いたいと思っています。

 親との面会交流というのは、子供にとって精神の発達上とても重要であり、また、子の福祉にかなうものというのは誰もがわかっていることだと思うんですけれども、祖父母など身近な親族にも同じことが言えると思っています。実際、ドイツやフランス、またアメリカなどでは、父母以外にも、子の福祉に役立つ限りにおいてという条件つきながら、例えば兄弟姉妹、また子供と相当長期間同一世帯で暮らしてきた親族、またはステップファミリーに対しても同様に、里親さんなども含めて交流権を認めています。

 祖父母や兄弟姉妹など、これまで子を事実上監護していた者と子の面会交流については、昨年、私が法務委員会の方でまた質問させていただいたんですけれども、その折に原局長からは、我が国では小家族化、少子化が進んでおり、離婚や再婚も増加しているので、祖父母とか兄弟姉妹などが子供と面会交流をしたい、その面会交流を認める必要性があるのではないかという議論が高まっていることは承知しておりますので、この問題については、議論の行方を見ながら検討してまいりたいとの御答弁をいただきました。その後、検討の進展はありましたでしょうか。

 孫に会えない祖父母、特に、子供さんを亡くして、そのお孫さんの成長に接することができない悲しみを抱えた高齢の祖父母の皆さんというのは多くいらっしゃいます。

 今はだんだん高齢出産にもなってきているので、そうすると、当然ですけれども、四十歳でお子さんを産んだらば、そのお子さんの祖父母というのは高齢になっているので、その祖父母との交流の期間というのは限られているんですね。こういったときに、例えば、お母さんの方が早く亡くなった、お父さんの方が亡くなったとなったときには、そのお子さんから見たら祖父母と会ったり、そういった機会というものも非常に限定的になっていくので、こういったところもきっちりと改善をしていかなければいけないと思っています。

 諸外国でできている制度ですから、検討というものを加速させていただいて、これには早期に規定をつくっていく必要があるのではないかなと思っていますけれども、この辺のところはいかがでしょうか。

原政府参考人 この問題については、井戸先生から前回も御指摘をいただいて、私どもも真剣に取り組んでいかなければいけないと考えておりますが、具体的な検討状況ということになりますと、特に進展しているということではございませんので、その点では申しわけなく思っております。

 ただ、今回、民法七百六十六条が改正されまして、面会交流や養育費についての規定が加わりましたので、まずは父母と子との間でやはりこの面会交流についての取り組みがちゃんとされていくということが父母以外の者と子との面会交流についての国民の意識を高める上でも重要ではないかと思っておりますので、今回の民法の改正の趣旨について十分周知徹底をしながら、それ以外の者と子との面会交流についても引き続き検討を進めていきたいというふうに考えております。

井戸分科員 今、前提が離婚というところにあるんですけれども、実際に一人親になっている世帯の中を見ると、先ほどもちょっと言ったかどうかあれなんですけれども、離婚が七九・九%で、死別が一二%あるんですね。死別というのも、数としてもっと少ないのかなと思っていたんですけれども、一割以上が死別という形になります。

 そうすると、お子さんたちにとっては、例えばおじいちゃん、おばあちゃんと暮らしていた、お母さんと暮らしていた、それで、亡くなってしまったといったときに、このお子さんの親権は、当然ですけれども、お父さんの方に行きますよね。そうすると、今まで暮らしていたおじいちゃん、おばあちゃんとは会えなくなるというケースもあるんですね。そうすると、お子さんにとっては、お母さんも亡くした、そして今まで育っていた環境であった、おじいちゃん、おばあちゃんとも暮らせない、この二重の悲しみ、二重の喪失感を得てしまうようなことになるんですね。これではいけないのではないか。

 例えばアメリカでは、一九六六年にニューヨーク州では、最初に、祖父母の訪問権というのを規定していくんですけれども、こういったケース、子の親の一方か双方が死亡した場合に、祖父母との面会、訪問権というのを認めていくという法律をつくりました。そして、それが徐々に、二度の改正を通じて、例えば離婚した場合も、監督している親、一緒に暮らしていた親が否定をしたとしても、裁判所が祖父母との面会は子の福祉にとって資するとなれば、それは面会をさせていくというような規定に変わっています。

 そして、フランスの方でも、一九七二年に祖父母の訪問権というのを明文化して、そして二〇〇二年にはこの権利というもの、祖父母に会うというのは子供の権利であるということを強く意識した内容に改定をしてきているんですね。

 今回、離婚届の用紙の変更のところに法務省さんが、離婚届というのは、ただ単に名前を書いたりだとか、そういったところだけで、チェック欄もそうだったんですけれども、わざわざ文章を入れてくださいましたよね。ここに私はすごく法務省さんのこのことに関しての意気込みというのを感じさせていただきました。離婚届のチェック欄にはどういうふうに書いてあるかというと、決めるということに関しては、父母の協議で定めることとされています、この場合には子の利益を最も優先して考えなければならないこととされていますというふうに、本当にすばらしいです。

 私も婚姻届、離婚届に記入をした経験があるんでございますけれども、今まで、こういう届け出用紙というのは非常に無機質で、特に離婚届の場合は、書くときに何となく気が重いというようなことがあったんですけれども、初めてこの届け出用紙に血が通った文章というものが入った、これは画期的なことだと思うんです。しかも、子供さんたちのことを考えて、最優先に考えなければいけないというのは、本当にすばらしいことだと思っています。

 ここをもう一歩進めていただくというのはとても大事だと思うんですけれども、もう一度、原局長、この祖父母の面会交流に関しても、早急にこれは必要であると私は思っています。ぜひとも検討を前向きに進めていただきたいと思っていますので、もう一度ちょっと御答弁をお願いできますでしょうか。

原政府参考人 委員からの重ねての御指摘でございますので、諸外国の立法例等も調べて、前向きに検討してまいりたいと考えております。

井戸分科員 ありがとうございます。

 例えばハーグ条約なんかで、子供の連れ去りの問題ということに関しては、子育ての文化が違うのでいろいろと問題がそこで生じて、国が違えば違うというところもあるんですよね。ただ、例えばこの面会交流に関して言ったならば、祖父母が会いたいという気持ちなんというのは、国境を越えてもそれは何ら変わらないところがあると思うんです。そういったところには、もう既に諸外国がいろいろな経験を積み重ねて法改正をして、それがベストではないかもしれないけれども、今の段階でワークをするような、そうした法案をつくってやっているわけですから、そういったところをしっかりと学んでやれば、いっそ短期間でいい法律、私たちの国にもこれがあればそれぞれが幸せになっていけるような、そういった立法というものができていくと思います。

 ぜひともこれは早急にお願いしたいと重ねてお願いをしながら、また、子の養育費の問題、面会交流の問題を含めまして、法務委員会の方でもさせていただきたいと思いますので、ぜひともよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

金森主査代理 これにて井戸まさえ君の質疑は終了いたしました。

 次に、高橋千鶴子君。

高橋(千)分科員 日本共産党の高橋千鶴子です。小川大臣に初めて質問させていただきます。よろしくお願いいたします。

 国連女性差別撤廃委員会は、二〇〇九年の第六次日本報告審議において総括所見を発表し、四十八項目の懸念と勧告を発表しました。とりわけ二点、一つは、民法の差別的規定の改正、二つは、あらゆるレベルでの意思決定への女性の参加を引き上げるための数値目標とスケジュールを持った暫定的特別措置、いわゆるポジティブアクション、この二つをフォローアップ項目に指定して、二年以内に同委員会への報告を求めました。

 昨年十一月、同委員会は、八月に提出された日本政府のフォローアップに対するコメントを受けて、男女ともに婚姻年齢を十八歳に設定すること、選択的夫婦別姓、嫡出子と嫡出でない子の相続分を同等化することを内容とする民法改正法案の採択について、また、女子のみに課せられている六カ月の再婚禁止期間を廃止する諸規定について準備と採択を、これについての一年以内の再提出を求めました。一年以内ですので、その期限はことし十一月であります。そうなると、今国会での法案提出が必須条件になると思います。

 法制審議会が九六年二月に家族法の大幅見直しを含む民法改正案要綱を答申してから十六年、民主党は、私たち日本共産党ももちろんですが、野党と共同し、あるいは単独でも改正案を毎議会提出してきました。ところが、二〇〇九年の政権交代後、千葉景子法務大臣、福島みずほ男女共同参画大臣が誕生し、民法改正への期待が大きく高まる中で、提出予定法案に盛り込まれたにもかかわらず、閣議決定がされませんでした。なぜでしょうか。

 小川大臣は、超党派の提出者の一人でもあり、今国会は提出が待ったなしと思いますけれども、どうなさるのか、伺いたいと思います。

小川国務大臣 委員御指摘のとおり、平成八年に法制審議会より指摘の内容の答申をいただき、その法案提出ということの要綱案をまとめたわけでございますが、これがなかなか提出されない。御指摘のとおり、千葉元大臣が提出したいという意欲を、あるいは提出するという方針を示したこともありましたが、まだその段階でも提出できず、今も提出できないということを大変残念に思っております。

 この内容につきましては、大変にいい内容だとは思うんですが、しかし、政府の中、国会の中あるいは国民の間でさまざまな意見もございまして、全体がこれを成立させようという一つの声にはまとまっていないというのが現状でございます。

 そうした事情の中で、まだ法案提出できていない、この通常国会におきましても提出予定法案にはなっておらないのは大変残念でありますが、私としましては、提出できるよう努力をしていきたい、このように考えております。

高橋(千)分科員 今、提出できるよう努力をしていきたいとおっしゃいました。その中身なんですね。今、国会の中でさまざまな意見があるというお話がありました。

 そもそも総括所見は、〇九年の政府報告に対して、さまざまな議論があり世論の動向を注視している、こういう答弁を厳しく批判して、差別的な法規定の撤廃が進まないことの弁明に世論調査結果を用いてはならないと指摘をしたところです。

 こうした指摘を受け、二〇一〇年七月の「第三次男女共同参画基本計画策定に当たっての基本的な考え方」、いわゆる答申では、家族に関する法制について、夫婦や家族のあり方の多様化や女性差別撤廃委員会の最終見解も踏まえ、選択的夫婦別氏制度を含む民法改正が必要であると書きました。しかし、十二月の基本計画では、なぜか、引き続き検討を進めると、後退をしてしまったわけです。

 ですから、国連のたび重なる勧告に対して、政府としてまともに取り組んでいるとは到底言えないわけです。このまま十一月を迎えるのか。努力をすると先ほど言いましたが、法案を出すとおっしゃっていただけますか。

小川国務大臣 なかなか、法案を出すとなりますと、私の一存ではいかない。やはり与党の党内手続あるいは政府の手続等がございますので、この場で出すとは言えないのでありますが、私としては、何とか提出できるよう努力をしたいというふうに思っております。

高橋(千)分科員 きょうは、やはりその努力の中身について少しずつ聞いていきたいなと思うんです。

 例えば、国連女性差別撤廃委員会委員のドゥブラブカ・シモノビッチさんは、二〇一〇年の九月に来日をされまして、国会内でも、また各地でも講演をされました。そのときに指摘をされたことは、重要なことは女性差別撤廃条約を法的拘束力を持つ国際文書として認識することだと訴えたわけです。つまり、日本政府の認識が、そもそも国際文書だ、法的拘束力を持っているという認識はないということを指摘された、大変恥ずかしいことなわけですね。

 日本国憲法九十八条第二項には、批准、公布された条約が日本の国内法の一部として法的効力を持つと規定をしています。国内法の一部、そういう扱いなんだ、まずその認識はあるでしょうか。一言で。

小川国務大臣 条約は法的拘束力を有するものと認識しております。

高橋(千)分科員 認識をしているというお答えでありました。

 二〇〇六年に新設された国連人権理事会、日本はこの創設当初から理事国をされています。昨年九月三十日、「世界の人権保護促進への日本の貢献」、この中で、こういうことをおっしゃっています。「日本は、基本的人権を尊重する憲法の理念を踏まえ、民主的政治制度を発展させ、普遍的価値としての人権及び基本的自由を擁護・促進する政策を推進。人権は国際社会の正当な関心事項であり、特に重大な人権侵害について適切に対応する。」と宣言をして、「締結した主要人権条約を誠実に実施していく。」その中に、今言った女性差別撤廃条約も明確に位置づけているわけですね。

 ですから、民法改正に限らず、今、認識も認めました、条約を誠実に履行できないということは、やはり国際社会の一員として、また人権理事会の理事国としても恥ずべきことになるわけです。この点についても自覚はおありですか。

小川国務大臣 なかなか、法的拘束力は当然あるのでございますが、少し形式論になって恐縮なのでありますが、差別をしてはいけないという点は、これは日本政府としても当然受け入れなければならないわけでございますが、具体的に差別かどうかという、その具体的な個々の内容につきましては、この条約の内容に盛り込まれていないものでございますから、その禁止されている差別について、これは、我が国の状況、習慣、慣習とか、さまざまな状況の中で、具体的にこの条約に違反する差別が現にあるという違法状態にあるとまでは言えないのではないかという解釈でございます。

 ただ、そうした解釈論とは別にいたしまして、法務省としましては、平成八年にいただいた答申の内容の事項につきまして法案要綱をまとめた、これにつきましては、やはり法案として提出したいという努力は引き続き継続していきたいと思っております。

高橋(千)分科員 ちょっと今、重大な答弁をされたかと思うんですね。国際条約の法的拘束力について認識はしているとお答えになったけれども、では、個々の、つまり今の民法の改正の中身について、差別とまで言えるのかどうか、そういう趣旨のことをおっしゃったのではないかなと。これは、これまでの積み上げてきた議論がちょっとがらがらとなってしまうような、大変な認識ではないかなと思います。

 では、一つ具体的に伺いますけれども、例えば選択的夫婦別姓の問題について。

 婚姻するとき、男女どちらかの姓を届けなければならない、これが義務づけられている。このこと自体が差別であること、人権問題であるという、この認識はございますか。

小川国務大臣 これも、形式的に過ぎるのではないかというお叱りをいただくような不安も抱いておるのでございますが、婚姻時に姓を統一するというのは、女性が男性の姓に合わせる、男性の氏を名乗るというふうに一方的に決められているわけではなくて、男性が女性の氏を称するということも、双方向で決められておるわけでございます。

 そうすると、双方向で決められておるわけですから、女性にだけ負担を強いたという意味では、そうではないというような解釈論になりますので、女性であるがゆえに差別しているとまでは言えないのではないか、このような解釈論になるわけでございます。

高橋(千)分科員 私は先ほど質問したときに言葉をちゃんと選んでおりまして、女性差別でありという表現をわざとしませんでした。差別であり人権問題。

 一般的に、どちらかを選ぶとなると、圧倒的に、九割以上が女性が男性の姓を名乗っている、このこと自体が女性差別の実態をあらわしているんです。でも、それを乗り越えてさらに、男性だって女性の姓を名乗らざるを得ない場合もあるわけですよね。例えば農村部ですとか、さまざまなことはあるわけです。

 そういうことを含めて、どちらかを選べるといっても、一つの姓を名乗らなければならない、そのこと自体が人権問題であり、差別ではありませんかと言っています。

小川国務大臣 さまざまな御意見があるということは重々承知しておるわけでございますが、国民の世論を調査してみますと、国民の大多数がということではなくて、大ざっぱに言いますと、半々といいますか、賛成、反対に分かれるというような、こういう現実もございます。

 また、我が国としては、やはり夫婦は同一姓というのが、この近世以降、定着した慣習でもございます。社会としてそれが認知されているといいますか、そういう状況であり、それを国民は受けとめてきたという歴史的な事情もあるわけでございます。

 そうしたことを踏まえますと、結婚するとどちらかが姓を変えなくてはいけないということが、直ちに人権問題であり、直ちにこの条約違反になるのかというと、なかなか、そうした解釈論では、直ちには人権侵害とは言えないのではないか、このように答弁させていただきます。

高橋(千)分科員 二つ質問します。

 まず、日本が例外的な国であるということは、要するに、どちらかの姓に決めなければならない、そういう国が今でも多数派なんですか、あるいは幾つかあるんですか。そのことが一つです。

 それから、国会の中で、熱心な民法改正を求める発言がある一方、家族制度を壊す、通称が使用できるからよいではないか、そういった反対の声も根強いです。しかし、先ほど言ったように、強制的にどちらかの姓を届け出ることを法律で決めている日本は、極めて例外的であります。別姓を認めている諸外国において、家族のきずなが軽視されている、そういう事実は聞いたことがありません。だって、国際結婚の場合だったら同じ日本人でも夫婦別姓が認められているわけですからね。そもそも、では国際結婚の人たちは家族が壊れていますかといったら、もうそれだけで理屈は通らないわけです。

 こうした議論に対して、何らかの根拠、政府としてありますか。

小川国務大臣 先ほど述べましたように、近世以降の我が国の社会ではそうした夫婦同一姓が受け入れられてきたという状況を、やはり一つの重い事実じゃないかと思っております。

 また、平成十八年に行いました世論調査につきまして、家族の名字が違っても家族の一体感には影響がないという方が五六%で、過半数を超えておりますが、一方で、一体感が弱まると思うというふうに考える方も三九・八%という、決して無視できない数があるわけでございまして、そうした状況を考えますと、なかなかここは、直ちにこれは人権侵害だからとは言いがたいのではないかというふうに答弁させていただきます。

高橋(千)分科員 あえて大臣がその調査を使うとは思ってもみませんでした。内閣府の調査で、家族の名字が違っても一体感には影響がないと答えている人が六割近くいる、そのことの方が大きいじゃないですか。わずかに、いや、それは困ると言っている人が四割いるからといって、だから無視できないというのは、全く逆行していますよ、発想が。そういう立場に立たなければならない。根拠も全く答えられなかったのではないかと思うんですね。

 夫婦別姓、しかも選択的ですからね、強制しろと言っているわけじゃないんです。そう訴えている人たちの声には、やはりみずからの歴史、アイデンティティーを認めてほしいという気持ちがもちろんありますが、それだけではなく、いろいろな不利益をこうむっている、そうしたこともこれまでも挙げてきたわけです。通称使用や事実婚では、保育所や学校に提出する書類、貯金通帳や生命保険の受け取りに至るまで、さまざまな場面で不利益が生じている、そういうことを言われてまいりました。

 例えば、二〇一〇年二月の新日本婦人の会のアンケートには、事実婚をされている方の声が出されています。正しくない結婚として扱われ、私たち夫婦のことをきちんとした関係でないものとして見られることがあります。夫に対しては責任感のない夫、私に対しては従順じゃない妻、そういうレッテルを張られているなと思うことがあり、非常に心外ですと。三十八歳の女性は、夫婦としての証明に使うのは住民票を使うことが多いのですが、未届けの夫、妻と記載されている、公的な書類であるのに何が未届けなんでしょう、そういう思いをしているんです、私は違法なことをしているんですか、そういうことを訴えられています。

 ですから、こうした問題を客観的に調査をして、さっき努力をすると言いましたが、その中身なんですよ。そういう努力をしてきたのか、あるいはすべきではないですか。

小川国務大臣 委員の御指摘ももっともでございまして、法務省としましては、そうした趣旨で法律案要綱もまとめて、これを提出したいと思っておるわけでございますが、さまざまな政治の状況、国会の中の状況、さまざまな状況で提出できないということは残念に思っておりますが、これからも、そうした提出できない事情となっている状況につきましては、なるべく多くの方に理解をいただいて提出できるよう、提出してさらに成立することが望ましいわけですから、そうした努力はしっかりとしていきたいというふうに思っております。

高橋(千)分科員 二〇一〇年十月の一般勧告二十八号パラグラフ二十九は、女性差別撤廃条約の第二条「遅滞なく」、この表現について、「締約国がすべての適切な手段を利用して政策を推進する義務が差し迫った性質であることを明確に表している。」として、「遅滞は、政治、社会、文化、宗教、経済、財源やその他留意事項、または締約国内における制約を含め、いかなる理由でも正当化することができない。」と指摘しています。大変厳しい指摘です。

 小川大臣は、読売新聞の一月二十五日付インタビューで、「選択的夫婦別姓制度は、個人的には賛成だが、連立を組む政党に強い反対がある。関係を壊してまで(導入)は難しいと思う。」と述べています。今も答弁も似たようなことを言っておりました。ですけれども、与党内の不一致という、さっき一番最初に出てきた「政治」です、政治的理由、こういうものが許されないということはわかっていらっしゃいますか。

小川国務大臣 そうした委員の御指摘を真摯に受けとめて、与党内あるいは国会の中で理解を得られるよう努力をしていきたいと思っております。

高橋(千)分科員 私の指摘、私が今指摘をしましたが、国連の指摘ですからね、これをちょっと曲解しないように。国連に向けてまさかそんな答弁はできないでしょう。そういう立場に立たなければならないと思います。

 きょうは福田政務官にもおいでいただいているので、一言伺いたいと思うんです。

 例えば、選挙では通称利用が認められておりますよね。私は、余り疑問を持たずに夫の姓名を届け出したのですけれども、初めて選挙に出たときには旧姓を括弧にして書きました。実は教員をやっていたので、教え子も元同僚も全く私だと気づかないわけです、当然ながら。それで、とにかく旧姓を書いてくれということになった。でも、これは、まして議員になって結婚した方にとってはもう大変な問題なわけですよね、ここにも当事者がいらっしゃいますけれども。ですから、そういう点で、当然通称は認められています。

 だけれども、当選証書はやはり戸籍名が書かれる。この名前で戦って、この名前で投票してもらったのに、その当選のあかしが戸籍名で書かれる。これは何か、本当にこれまでの頑張りが否定されたような気持ちになってしまうわけですよね。

 そこで、仙台市の超党派の女性議員らが繰り返し申し入れを行ってきました。市の選管は、当選証書には戸籍簿に記載された氏名のみを記載するとした政府の見解があるとして、認められないと主張してきたんですね。付与式では通称で読み上げたのに、証書には残念ながら戸籍名を書いている。だから、これでは納得いかないということで十名の女性議員が申し入れをして、総務省に問い合わせをして、そうしたら併記でも構わないというふうな返答があったということがございました。

 ですから、戸籍簿に記載された氏名のみを記載するとあるのは、昭和五十六年の部長通知でありまして、法律ではないわけですよね。ですから、自治体の裁量によって通称の併記あるいは通称のみでも構わないということになるのではないでしょうか、いかがでしょうか。

福田大臣政務官 お答えを申し上げます。

 先生御指摘のとおりでございますので、後段の方だけお話し申し上げますが、当選証書における取り扱いについては、御指摘のとおり、当選証書が当選人としての身分を公証する公文書であることから、記載する氏名については、立候補の届け出書の場合と同様、戸籍簿に記載された本名を記載することとしておりますが、当選証書において戸籍簿に記載された本名が記載されていれば、その上で追加情報として通称を付記することについては、各選挙管理委員会の判断によって行うことも差し支えないと解されているところでございます。

高橋(千)分科員 付記でなくてもいいのかなということをきょう思い切って質問してみましたが、まだそこまでは踏み込めないということでしょうか、地方分権ですので。

福田大臣政務官 そこは、今後もう少しの検討が必要だと思いますが、ぜひそういう方向は、個人的には望ましいと思っております。

高橋(千)分科員 個人的には望ましいということでございました。

 改めて小川大臣に聞きたいと思うんですが、こうした各地の取り組み、女性たちの思い、やはり本当に現場で頑張っているわけですね。政府に対しても何度も申し入れをしてきました。そうした声に応えて民法改正へ踏み出すべきだと思います。

 世論調査でも、今はもう賛成が反対を大きく上回っている。特に毎日の調査などでは、二十代の賛成が五七%、三十代が五二%という形で、結婚年齢の世代、こうしたところで高いし、前回の調査に比べても倍近く伸びているんですよね。ですから、社会が何かと思っているようなことではないと。

 ですから、意識は変わってきている。そして、まだ残っている意識、差別や偏見があるのだとすれば、それを解くために政府が努力をするべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

小川国務大臣 さらに広く理解をいただいて法案提出できるよう、これが提出した後、法律が成立して実現できるよう、しっかり努力していきたいと思います。

高橋(千)分科員 お願いいたします。

 そこで、関連するんですが、きょう、もう一つテーマがございます。

 二〇一〇年十二月十七日閣議決定の第三次男女共同参画基本計画を踏まえた、社会のあらゆる分野において二〇二〇年までに指導的地位に女性が占める割合が少なくとも三〇%程度という目標の達成に向けて、ことし二月に、基本問題・影響調査専門調査会の報告書が出されました。

 その中の政治分野についてですけれども、参議院は一八・六%まで来たけれども、衆議院における女性の割合は一〇・九%、IPU、列国議会同盟の調査では百八十七カ国中百二十二位にとどまっており、この格差は拡大する傾向にあると指摘をされております。

 その上でこう書かれているんですね。「一般に死票が多くなる小選挙区制より中選挙区制・大選挙区制や比例代表制の下での方が多様な民意が反映されやすく、女性議員の割合が高くなる傾向が見られる。」これは大事な評価だと思いますが、具体的にどのような検討をされてきたのか、伺います。

園田大臣政務官 お答えを申し上げます。

 先生御指摘のように、ただいま第三次の男女共同参画基本計画の推進に向けて、私ども内閣府としても、しっかりと踏まえて行わせていただいているところでございます。

 今御指摘いただきました基本問題・影響調査専門調査会、ここの調査におきますと、先生のきょうの提出資料にもございますけれども、まず衆議院の選挙制度につきましては、御案内のとおり、第四十一回の衆議院選挙から小選挙区比例代表並立制が導入されております。ここの中において過去五回にわたって実施された選挙においては、当選者に占める女性の割合を拝見させていただきますと、いずれも、選挙区より比例区の方が高くなっているという調査が出ているところでございます。

 また、同調査におきますと、都道府県の県議会議員選挙、この選挙区の定数と女性議員の割合についても言及がございます。

 これでいきますと、平成二十三年三月、昨年の三月末の時点で比較をさせていただきますと、一人区では女性議員の割合は三%台でございます。これに対しまして、四人区では一一%台、そして六人区ではさらに二二%台と、選挙区における定数が多いほど当選者に占める女性議員の割合が高くなっているという傾向がデータとして出てきております。

 専門調査会におきましては、これらのデータに基づいてこのような傾向について述べている、御指摘がされているものであるというふうに承知をいたしているところでございます。

高橋(千)分科員 ありがとうございました。

 内閣府の方から、今提出している資料をつくっていただいたわけです、バックデータをぜひ欲しいということで。

 今、園田政務官がお話をしてくださったように、やはり比例代表並立制になってから女性の当選者の割合がふえているということと、その上と下を見ていただくと、候補者に占める女性の割合というのは、選挙区と比例区を比べてそんなに違いはないですよね。四十五回でいいますと、選挙区が一六・二%で、比例区は一四・四%。むしろ選挙区の方が多いわけでありますけれども、当選者の割合で見ますと、選挙区が八%に対して比例区が一六・七%という形に、倍以上になっている。それをずっとたどってみても、過去の選挙でも二倍から三倍近い違いがあるということが見てとれるかなと思っております。

 そういう点で、今回こうした分析をされたわけですが、先ほど紹介したこの報告の次にこのようなことを書いていらっしゃいます。「政治分野における女性の参画の拡大は、民主主義の在り方や今後の経済社会の活性化に不可欠な男女共同参画の在り方に密接にかかわる問題であり、選挙制度の在り方の検討において重要な論点として考慮されなければならないことを強調しておきたい。」この指摘は大変重要だと私は思うんですね。

 文字どおり、今、選挙制度が争点になっております。衆議院の比例定数八十の削減などを民主党さんが公約として掲げていらっしゃる。しかし、四割以上も比例を削減することは、この報告書の趣旨からいうと、大きく後退することになる。せっかく、女性の政治参画が進んできたよねと言っている、しかも、やはり比例代表は女性の参画にとっても大きな意義があるねということを言っていながら、後退することになるかなと思いますけれども、どのようにお考えでしょうか。

園田大臣政務官 先生御指摘のように、ポジティブアクションというものの推進、これは大変重要なものであるというふうに私どもも考えておるところでございます。そういった意味では、今、第三次基本計画にのっとりまして、女性における、政治の分野あるいは行政の分野、雇用の分野、そして科学技術・学術の分野、こうした四分野を重点的に推進していこうという形でこのポジティブアクションというものをつくってまいりたいというふうに考えております。

 その中の一つとして、きょう先生から御指摘をいただきました政治の分野でございますけれども、今、やはり政党においてこのポジティブアクションの導入を検討していただくといったことに、このデータが大変参考になるものではないかなというふうに私どもとしても考えておるところでございます。

 その上で、さまざまな諸外国の事例も取り上げさせていただきまして、例えば韓国でありますとか、イギリスなども、クオータ制度を各政党の中においては導入していただいているというところも、この報告書の中においては指摘をさせていただいているところでございます。御案内のとおり、民主主義のあり方であるとか、あるいは男女共同参画のあり方につきまして密接にかかわる問題であるという観点から、こういったデータの考慮が必要であるという形で指摘をさせていただきました。

 政治分野における女性の参画の拡大、これは大変重要な論点であるし、課題であるというふうに考えておりますし、また一方では、選挙制度のあり方というものは、この報告書にも書かせていただいておるところでございますけれども、女性の参画の拡大のみならず、政治の安定性であるとか、健全な政権交代であるとか、あるいは一票の重み、こういったところのさまざま観点をしっかりと各党派各会派でも御議論いただきたいというふうに考えているところでございます。

高橋(千)分科員 せっかくの重要な報告を与党内でぜひ生かしていただきますようにお願いして、終わります。

金森主査代理 これにて高橋千鶴子君の質疑は終了いたしました。

 次に、馳浩君。

馳分科員 自由民主党の馳浩です。

 一時に再開されて、二時間半が過ぎました。大臣、お手洗いへ行って、一服してきて結構ですよ。

 きょうは、直接強制による子供の引き渡しの問題ということで、法務省の見解をいろいろとお伺いしたいと思います。

 まず最初に、子供のいる夫婦の離婚はここ五年は約十五万件で横ばいですが、親権を主張し、子供の引き渡しを求める審判の申し立てはこの十年で四・五倍の千二百件にもなっていると伺っておりますが、これは事実でしょうか。

豊澤最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 子の引き渡しの審判の新受件数は、平成十二年には二百六十七件でございましたが、平成二十二年には、その約四・五倍の一千二百三件となっております。

馳分科員 どうして子供の引き渡しを求める審判が、この十年で四・五倍、こんなにふえてしまったのか、その原因をどのように分析しておられますか。

原政府参考人 お答えいたします。

 子の引き渡しの審判の申し立て件数が増加していることにつきましては、さまざまな原因があろうかと思われますが、子の監護についての国民の意識の変化等を背景といたしまして、子の監護に関する紛争が裁判所に持ち込まれるケースが増加していることも、その原因の一つになっているのではないかと考えております。

 例えば、離婚について見てみますと、御指摘のとおり、最近の十年間では、協議離婚を含む離婚件数全体には大きな変化がないわけでございますが、家庭裁判所で取り扱われた離婚事件の数を見てみますと、平成十二年には五万八千八百三十八件となっており、平成二十二年には六万九千六百八十四件にまで増加しております。

 このように、離婚時のトラブルの増加、これに伴う家庭裁判所での離婚事件数の増加によりまして、子の引き渡し審判の申し立て件数も増加しているのではないかと考えております。

馳分科員 離婚にはいろいろなトラブルがつきもので、私も一回離婚したんですが、私の場合には、逆に子供ができなくて、それが原因で離婚に発展してしまったという、なかなかお互いにとってつらい一面を持っております。

 大臣も離婚の経験はおありでしょうか。これは答えなくて結構です。そういうことを聞くわけではありません。つまり、千差万別なんですね。本当にいろいろな事情がございます。

 そこで、本題に戻ります。

 この審判の増加を、子供の最善の利益という観点から見て、好ましいと見ているのか、これはよくないというふうに判断しているのか、法務省の見解をお伺いします。

原政府参考人 夫婦のいずれが離婚後に子を監護するかにつきましては、夫婦間の話し合いによりまして円満に取り決められることが、子の利益の観点から望ましいものと考えております。また、夫婦間で子の親権や監護権の帰属をめぐって裁判になった場合でありましても、子の引き渡しの強制執行にまで至るという事態はできる限り生じないようにすることが望ましいものと考えられます。

 このように、子の引き渡しの審判の申し立ての増加は、子の利益の観点からは決して好ましいものではないと考えております。

馳分科員 当然だと思います。

 そこで、しっかりと原因分析をした上で、子の引き渡しを求めるような審判がふえないような施策を前向きに打っていくべきではないでしょうか。いかがですか。

原政府参考人 先ほど御答弁させていただきましたが、子の引き渡しの審判の申し立てが増加している原因につきましてはさまざまなものがあろうかと思われますが、夫婦間で子の引き渡しを求めるトラブルが生じないようにするためには、離婚の際に、子の監護に関する事項について十分な話し合いがされまして、適切な取り決めがされることが重要であるというふうに考えております。

 この点に関連いたしましては、昨年、民法改正が行われまして、離婚の際の面会交流の取り決めや養育費の分担についての取り決めをしなさいということを法律上明記したわけでございます。

 そこで、法務省といたしましては、この民法改正の趣旨を踏まえまして、離婚の際に夫婦間で子の監護に関する事項について適切な取り決めがされるように広報に努めているところでございますが、今後も、この点についてより一層の周知に努めてまいりたいと考えております。

馳分科員 そこで、審判の申し立てがあり、家裁で子供の引き渡し命令が出される割合はどのくらいでしょうか。

豊澤最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 平成二十三年の速報値によりますと、子の引き渡しの審判の既済件数は千三百三十六件、そのうち認容された件数は二百四十九件でございまして、既済件数に占める認容件数の割合は約一八・六%となっております。

馳分科員 引き渡し命令に応じないで、民事執行法による直接強制で子供の引き渡しがなされたケースは直近でどのくらいでしょうか。また、ここ十年で直接強制はふえているのでしょうか。どういう傾向にあるか、お示しをいただきたいと思います。

永野最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 子の引き渡しの直接強制につきましては、平成二十二年以降の統計しかございませんので、過去十年の傾向は明らかではございませんけれども、平成二十二年に終了した事件は全国で百二十件でございます。

馳分科員 一月九日の読売新聞朝刊によりますと、直接強制は十年前まではほとんど行われておらず、一九九四年には札幌地裁は、物と幼児は同一視できないとして、これを違法と決定しております。にもかかわらず、二〇一〇年、百二十件も直接強制が実施されたのは、法的に許されてのことでしょうか。また、どんな法解釈のもと、判例で許容されているのでしょうか。

原政府参考人 現行法上、子の引き渡しの直接強制について定めた明文規定がございませんので、これが法的に許容されるか否かは裁判所の解釈に委ねられているものと考えております。

 この点、今委員から御指摘の平成六年七月八日の札幌地裁決定がございまして、この決定では、子の引き渡しの直接強制は許容されないという判示がされております。

 他方で、家庭裁判所におきまして、引き渡しが子の福祉にかなうと判断されたにもかかわらず、直接的にこれを実行することができないものといたしますと、裁判の実効性がないのではないかとの指摘もあったところでございます。

 そこで、子の引き渡しの直接強制を許容した裁判例もあるところでございます。例えば、東京地裁の立川支部の平成二十一年四月二十八日の決定は、執行当時七歳九カ月の児童を対象とした子の引き渡しの強制執行につきまして、子の人格や情操面に最大限配慮した方法をとるべきであるとしつつも、動産の引き渡しの強制執行について定めた民事執行法第百六十九条の類推適用によりまして、直接強制を行うことが許される旨、判示しているところでございます。

馳分科員 直接強制が行われる前の実務として、間接強制が一般的だったと思いますが、二〇一〇年の百二十件のうち、間接強制が先行している事例は幾つあったでしょうか。

永野最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 先ほどお答えいたしました百二十件の執行事件のうち、間接強制が先行している事例については把握しておりませんので、お答えしかねます。

 ただ、子の引き渡しを目的とする間接強制について、平成二十三年四月から十二月までの九カ月間に、全国の家庭裁判所で認容、一部認容決定がされた件数は十件でございます。

馳分科員 私の素人としての類推でしゃべりますので、間違っていたら指摘してくださいね。

 子の直接強制が執行される前の手続として、多分、人身保護命令のような形で相手方に通知が行くと思われるんですが、そういった事前手続というのはどうなっていますか。

永野最高裁判所長官代理者 人身保護請求をする事例と、それから家裁の審判等によって子の引き渡しを求める事例と、これは申立人が選択をするし、またその要件も異なりますので、必ずしも人身保護請求が先行しているという関係にはございません。

馳分科員 私も今、お話を伺いながら思ったんですね。いきなり直接強制で乗り込んでくるという前に、つまり、子供を現状保護している親に対して、何らかの通知また連絡等があって当然だと思うんですよね。

 そういった手続を踏んだ上でも直接強制が行われるというふうには思っているんですが、段階を踏んだ中で、やはり夫婦間のことですから、お互いにエスカレートしていくじゃないですか。エスカレートしないように対応を踏むのがやはり家裁の方々の配慮事項じゃないかなと思うのですが、そういったことは何か配慮されていることがないんですか。

豊澤最高裁判所長官代理者 家庭裁判所で子の引き渡しを求める審判事件が係属がありますと、必要に応じて、双方からの事情の聴取のほか、家庭裁判所調査官による子の監護状況その他さまざまな事柄についての調査を行った上で、子供の福祉の観点から、どちらの引き渡し請求、引き渡しを認めるべきか否か、そのあたりは、十分に審理を行った上で引き渡しを命ずる、あるいは申し立てを却下する、そういう判断はいたしておるところでございます。

馳分科員 今のお話を伺った限りでは、実際に直接執行が百二十件も行われているということは、随分とこじれた事情があるんだろうなということを容易に察することができます。そこを放置しておいてはいけないなと私は思ったので、きょう、こういうふうな質問をさせていただいております。

 先に進みます。

 百二十件の直接強制で、子供が引き渡されたケースは何件で、執行がうまくいかずに引き渡しができなかったケースは何件でしょうか。

永野最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 百二十件のうち、五十八件については子の引き渡しがなされました。残りの六十二件のうち、四十三件については子の引き渡しができないまま事件が終了しております。さらに、残りの、六十二件中の十九件については、申し立てが途中で取り下げられたということになっております。

馳分科員 大臣、ここからはちょっと政治家同士のやりとりになるかなと思うんですが、今の数字を聞いただけで、執行する現場がいかに修羅場と化しているか、また子供に大変な心の傷を残しているか、想像にかたくありません。元執行官や専門家の方々もそのことを指摘しております。

 そこで、強制執行可能な子供の年齢、執行すべき時間や場所の限定、児童心理に詳しい専門家の同行による執行など、しっかりとした指針づくりあるいは立法化を早急に行うべきだと思っております。

 このように提案したいと思いますが、いかがでしょうか。

小川国務大臣 確かに、子供に悪影響を与えるような方法はよくないというふうに思っておりますが、動産執行が準用されて強制執行されるといいますと、ほとんど意思能力がないといいますか、意思表明もできない、あるいは、まだ世間の物事の状況も判断できない本当の乳児あるいはそれに近い子供に限られるというふうに思っております。

 しかし、具体的に何歳までとかそういう基準があるわけではございませんので、確かに委員が御心配されるように、子供の心理に悪影響を与えるようなことは、これは好ましくないわけでございますから、ちょっと今すぐに立法化ということまでは言えないのでありますが、やはり委員が指摘されるような問題点も踏まえて、このあり方についてよく検討を加えていきたいというふうに思います。

馳分科員 勝手な私の方の提案ですから、お聞きいただければと思いますが、指針づくりで参考になるのが、先日出されたハーグ条約の国内担保法に関する要綱案であります。そこには、一、十六歳未満の子供に限り、二、間接強制を前提とし、三、場所は親子が一緒にいる場合に限定し、原則自宅で執行するとしております。これはハーグ条約対象外の国内離婚事案についても参考にすべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

原政府参考人 今委員から御指摘のとおり、法制審議会の要綱で提案されましたのは、ハーグ条約が適用される国際的な子の引き渡し事案についてのものでございます。

 国内における子の引き渡し事案においても同様の規律を設けるべきかどうかにつきましては、さまざまな観点、委員が御心配になっているようなことも含めて、慎重な検討をしていく必要があろうというふうに考えております。

馳分科員 子供の引き渡しを求める審判や直接強制の事例は、少ないにこしたことはありません。このような案件を防止するためには、離婚後の面会交流が離婚前に十分担保されておれば、相当程度防止できると考えます。この点、どのように認識しておられますか。

小川国務大臣 やはり、離婚した場合であっても、母親も父親も子の親でありますし、子供から見れば両方親であります。子供の幸せ、あるいは子供の健全な成長のためには、母性に触れること、父性に触れること、ともに大切でございます。

 監護の問題は、どちらか一方に監護権をということになりますが、やはり委員が御指摘されるように、面会交流というものは子供の幸せのためにより拡大していくことが望ましいのではないか、このように考えております。

馳分科員 昨年の民法改正で面会交流の規定を設けた趣旨を、当時の江田大臣はしっかりと答弁しておられましたが、小川大臣はいかがでしょうか。

小川国務大臣 基本的には、今申し上げましたように、子供から見て両方親である、母性に触れること、父性に触れること、その愛情を感じること、そうしたことが子供にとって必要であるという考えのもとに、面会交流、一方は監護権がありますけれども、監護権を持たない方についても、面会交流というものをやはり子供の幸せのためにしっかりと認めていくべきだと私は思っております。

馳分科員 そこで、面会交流を支援するシステムを構築すべきではないかと思います。特に、面会交流を調整する人というか民間機関を育成していく、そのための公的支援も行っていくべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 子の利益の観点からも、離婚後も適切な親子の面会交流が行われることは重要だと思っております。養育費が経済的支援とすれば、恐らく面会交流は精神的支援にも該当するのではないかと思うわけでございます。

 厚生労働省では、平成十九年度から養育費相談支援センターを設置いたしまして、養育費のみならず、面会交流の相談にも応じて、その実績は上がってきております。また、都道府県などを単位に設置されました母子家庭等就業・自立支援センターに専門の相談員を配置いたしまして、養育費や面会交流の相談支援に応じておりまして、こちらも件数は上がってきているところでございます。

 今後、専門の相談員を配置していない母子家庭等就業・自立支援センターに、これまで配置されていないところに配置をしっかり進めるとともに、相談員の人材養成、資質向上のための研修や関係機関との連携など、面会交流に関する支援体制をしっかり図っていく必要があると思っております。

 ちなみに、平成二十四年度の予算案でございますけれども、母子家庭等就業・自立支援事業の新たなメニューといたしまして、取り決めのある面会交流の円滑な実施に向けた支援、相談もあれば、日程調整、場所のあっせん、あるいは付き添いなども含まれますけれども、そうした支援を行う事業を設けることによりまして、面会交流に関する相談支援体制の充実を図ることにいたしております。

 面会交流は、子供の健やかな成長にとって好ましいものでありますし、養育費を支払う意欲にもつながってくるものと考えておりますので、こうした観点を踏まえまして、関係省庁と十分連携を図りながら取り組んでまいりたいと思っております。

馳分科員 こういったモデル事業をスタートしたことは、昨年の民法改正以降、やはり十分に行政側も認識をされての対応だと思いますので、よかったと思います。

 ただし、面会交流の取り決めができない高葛藤離婚夫婦については、公的には家庭問題情報センター等による個別対応しかないのは非常に残念です。ここの公的支援ができなければ、家裁の実務で先進国並みの面会交流の決定はなかなかできません。

 厚労省として早急に検討すべき今後の課題だと思いますが、いかがでしょうか。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど詳しくは申し上げなかったのでございますが、養育費相談支援センターや母子家庭等就業・自立支援センターでは、面会交流の取り決めがない場合につきましても、当事者の合意が図られるよう相談を受けたり、あるいは、さらに一部では、取り決めのために家庭裁判所等へ訪れる際の同行支援なども実施をしているところでございます。

 厚生労働省としては、今後もこれらの事業の推進を図りまして、養育費やあるいは面会交流の取り組みの支援についても取り組んでまいりたい、かように考えております。

馳分科員 面会交流のほかに、アメリカや韓国でも行われております親教育プログラムの開発と、その受講を離婚前に義務づけることも大事ではないかと思っています。

 親教育プログラムは、離婚後も、親子の頻繁かつ継続的接触、ひいては共同養育をしていくことが子供の最善の利益であり、親の責任であることを自覚させるプログラムであり、これを実施していけば、子供の引き渡しを求める審判や直接強制による引き渡しが減少するのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

小川国務大臣 確かに、面会交流、これは子供の幸せのためにという観点からでございますが、親の立場からしても、これは親の権利であると同時に、子供に対する義務でもあると思います。私は、そうしたことで、この親子面会をさらに充実したものにしていきたいというふうに思っております。

 委員の御指摘の背景には、監護権を得た者の方がいわば子供を独占してしまって、離婚した前配偶者に対して会わせないということが問題意識として背景にあるんだというふうに思っております。ですから、子供は離婚した後も両方が育てていくんだということをしっかりとその両方の親に教育するということは非常に重要だというふうに思っておりますし、有意義だと思っております。

 ただ、これを離婚の条件というふうにいたしますと、ではこれが整わなければ離婚できないのかということにもなりますので、離婚の条件、いわば義務化するのは難しいのではないかとちょっと感じております。ただ、そうした離婚する際の両方の親に対して、子供の幸せのために両方が取り組むべき課題だということをきちんと認識させるということは、大変に有意義で重要なことだと思っております。

馳分科員 棚瀬一代さんという方の御本「離婚で壊れる子どもたち 心理臨床家からの警告」、二〇一〇年二月二十日に光文社から出版されました。この本の中の一節をちょっと引用いたしますが、「韓国では、二〇〇七年の法改正によって、未成年の子どもがいて離婚を考えているすべての夫婦に、離婚協議書を提出する前に、親教育プログラム受講が義務づけられるようになった。こうした法改正の背後には、離婚の急増に対する危機感と、子どもに与える影響に対する懸念の気持ちがある。」、このような指摘がされております。

 当然、小川大臣の御指摘された点、ではそういった条件をクリアしないと離婚できないのかということがまた逆に離婚協議をこじれさせる要因になるという考えは私もわかります。しかしながら、直接強制が年間百二十件行われている、今後も何となくふえそうな社会的な実情を考えた場合に、一定の合理性のもとで、未成年の子供、あるいはある一定年齢の子供がいるのにもかかわらず、離婚する、離婚せざるを得ない、離婚したい御夫婦に対する何らかの支援、システム的なバックアップ、そして、離婚後の子供の面会交流を義務づけるというか、できるだけ継続的に別居親とも交流することができる、こういう取り決めはやはり必要なのではないかと、私は今回の直接強制の事案を拝見して思うのですが、大臣、いかがでしょうか。

小川国務大臣 私も、離婚の条件にするということについて、それがために離婚できないということでということで少し消極的な考えを述べたのでありますが、離婚の際に、そうした認識を両方の親に持っていただくということ、子供の幸せを考えるということで取り組んでいただくことを両親に認識してもらうということは、大変に重要なことだというふうに思っております。

 ですから、離婚の条件ということではなくて、離婚の際に、そうした啓蒙活動なり教育を行うというようなことはあってもいいのかなとも思います。これは、関係省庁、関係機関ともよく協議して、しっかりと取り組む課題だなというふうに認識しております。

馳分科員 答弁は求めませんが、子供を直接強制により引き渡す今回の問題について、民事執行法は子供を動産とみなしており、けしからぬとよく言われますが、このような紛争に巻き込んでいる夫婦こそ、我が子を動産扱いにしていることを深く自覚し、反省すべきである、このことを申し上げて、私はきょうの質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

金森主査代理 これにて馳浩君の質疑は終了いたしました。

 次に、山内康一君。

山内分科員 みんなの党の山内康一です。

 最初に、法務省に質問をさせていただきます。

 最近発表されました二〇一一年の難民動向によれば、難民申請者数は史上最高を更新しました。一方で、難民の認定はわずか二十一名、それから人道的配慮による滞在許可も三百人以下と、ここ数年ではちょっと数字が下がっております。国連からも懸念をあらわされております、二重基準とも言えるミャンマーに偏った認定というのも問題ではないかと思います。今回、難民認定二十一名ですけれども、そのうち十八名がミャンマー関係ということで、余りにも特定の国に偏っているということもあろうかと思います。

 昨年の十一月に超党派の国会決議で、難民保護をさらに充実していきましょうということをうたいました。にもかかわらず、難民の認定数が余りふえていない。この現状について法務大臣はどのようにお考えでしょうか。

小川国務大臣 やはり、我が国も国際社会の一員として難民の問題にしっかり取り組まなくてはいけない、人道的な対応で難民を受け入れるということは非常に重要なことであると思っておりますし、また、衆議院、参議院での決議もそうした点にあると思います。そういった点をしっかりと踏まえて、この難民問題、人道的視点に立って、しっかりと取り組んでいかなくてはいけないな、このような感覚でおります。

    〔金森主査代理退席、主査着席〕

山内分科員 次に、難民の申請に当たっては、濫用者というのがどうしても一定数発生するということは理解ができます。しかし、その濫用者を防ぐためにも、難民の認定あるいは人道配慮の基準というものを難民申請者にわかりやすく示すべきではないかと思います。どこからが濫用でどこからが濫用じゃないかというのをある程度明確に示した基準があれば、濫用者を減らすことにもつながるかと思います。これまでも多くの有識者やNGOから、難民認定の基準をもっとオープンにすべきだということを言われてきました。それに対して政府はどのようにお考えなんでしょうか。

高宅政府参考人 お答えいたします。

 難民の認定の基準につきましては、難民の地位に関する条約等、これに規定されている難民の定義というものによっております。具体的には、政治的意見などを理由に迫害を受ける十分に根拠があるおそれが存在することなどであります。

 しかし、この基準の問題とは別にしまして、実際に迫害の存在の有無を判断するという場合には、難民の出身国の事情、それから個別事案の正確な認定が必要となるわけでございまして、当局としては、これにつきましてUNHCR等と連携協力しまして、出身国情報あるいは国際情勢の基礎資料の収集、あるいは難民調査官の調査技術、専門知識の向上のための研修の充実を図っているというところでございます。

山内分科員 そこら辺の基準が、条約だけだと結構ざっくり書いてあるんじゃないかと思いますが、そういう国別の事情も含めて認定基準をより明確にしていくことが必要ではないかと思います。

 実は、政権交代後、民主党政権になってから、難民問題に関しては非常に前に進んでいる部分が多いと思います。特に、前の千葉大臣は大変理解を示されていたというふうに思っていますので、余り注目されていないテーマでありますが、政権交代後よくなっている部分をさらによくしていただきたいと思います。

 次に、難民申請者の就労許可、就労ビザというんでしょうか、についてお尋ねします。

 ちょっと前に、新聞で、難民申請者が保護費を詐取している、外務省の関係の保護費というのが出ていますけれども、それをだまし取っていたというような事件が報道されました。

 それはそれで問題なんですけれども、その背景には、働くことが許されていない、難民申請をしている間は働けない、働けない間、外務省の保護費がちゃんともらえていればいいんですけれども、場合によってはもらえないこともある、あるいは保護費の水準が余りにも低いので働かないと食っていけない、そういう事情もあろうかと思います。

 そういった意味では、難民申請している間の就労の許可ということを認めるべきではないかということをここ何年もこの委員会でも言ってきたんですけれども、改めて政府の御見解をお聞きします。

高宅政府参考人 難民認定申請中の者全てが働けないということはございませんで、六割以上の方、この方は在留資格を有している間に申請を行っております。このような場合には、その人が持っている資格が、例えば短期滞在等、働けない資格であった場合でありましても、一定期間を経過すれば原則として働けるようにしている、そういう就労可能な在留資格を認めているという状況でございます。

 他方、不法滞在者、在留資格を有していない人からの申請につきましては、その就労を認めるということはしておりません。この点につきましては、在留資格を有していない外国人の方に就労を認める措置を講ずることになりますと、やはり不法就労目的の者による難民認定制度の悪用を誘発するおそれが多いということで認めていないところでございます。

 対応といたしましては、この問題につきましては、難民認定すべき者あるいは人道配慮すべき方を適切に庇護する上でも、また制度の悪用を防止する上でも、早期に結論を出すということが必要であると我々は考えておりまして、実際に、平成二十二年七月に難民認定申請案件の標準処理期間を六カ月ということで設定しまして、二十三年三月末には同目標をほぼ達成しております。現在、平均処理期間は、最近は六カ月未満を維持しているというところでございます。

山内分科員 実際に政治的な迫害を受けている人というのは必ずしも正式なドキュメントをそろえられないということもありますので、余りしゃくし定規に考えずに、ぜひ人道的な配慮等を考えていただきたいと思います。

 今お話のあった、難民の認定の審査が非常に速くなった、六カ月以内になったということは大変高く評価できると思います。私が何年か前に質問したときは二年以上かかっていました。それが、千葉大臣が特に一生懸命やっていただいたと思いますが、六カ月以内になりました。これは評価しております。ただ、そのかわりというか、そのせいと言ってもいいかもしれませんが、異議申し立てというのがふえて、その異議申し立ての審査というのが長くなっているということがあるようです。

 新しくできた制度として難民認定の参与員制度というものがありまして、民間の有識者等に参与員というのになってもらって認定してもらうということだと思うんですが、この参与員制度、参与員の人の数とか知識、そういった問題でなかなか、滞ってしまう理由の一つとして、参与員制度の今の運用があるんじゃないかという意見も一部にあります。

 それについて、今の参与員制度をこれからどうやっていくのか、現状維持なのか、あるいは変えていくのか、その点についてお尋ねします。

高宅政府参考人 異議申し立て期間が非常に長くなっているということにつきましては、難民申請そのものの増加、それから第一次難民認定手続の処理促進ということで異議申し立て件数が非常に増加しているということで、処理に時間を要しているということは認識しております。

 その上で、難民審査参与員でございますが、入管法で、「人格が高潔であつて、」難民不認定処分などの異議申し立てに関し「公正な判断をすることができ、かつ、法律又は国際情勢に関する学識経験を有する者」ということで定められておりまして、実際には、事実認定を正確に行えるという意味で、経験豊富な法曹実務家の方、あるいは地域情勢や国際問題に明るい外交官や国連の勤務経験者の方、あるいは国際法学者等の方から選任しております。難民審査参与員は、そういう意味で非常に的確な意見を述べるための素養を備えておられるわけでございます。

 当局といたしましては、難民の審査の迅速効率化を図るために、出身国情報の把握、収集などに努めておりまして、一方、難民審査参与員の方にもちろんこれを御提供するとともに、難民審査参与員の方はいろいろ専門がございますので、その間でも意見交換できる場所、あるいは難民審査参与員の方に対して有識者による国際情勢に関する講演等も実施して、審査について迅速に処理できるような形での御提供をしているところでございます。

山内分科員 今、最後の方である程度説明がありましたが、参与員というのは専門家なんですけれども、例えば法律の専門家は恐らくトルコのクルド人の状況をそんなに知らない人もいるかもしれない、あるいはトルコの地域研究者は国際法をそんなに知らないかもしれない。そういった意味では、それぞれの分野の専門家が選ばれているんですけれども、何人か、三人のチームで認定するんでしたっけ、それにしても、それぞれの専門家が、それぞれ自分の専門外の知識もある程度身につけないと適切な審査ができないと思うんです。

 ですから、法律のプロにはミャンマーの政情とかトルコのクルド人の置かれている状況とかを知ってもらわなきゃいけない。他方で、地域研究者には国際法の知識を知ってもらわなきゃいけない。そういった意味では、参与員への情報提供と研修というのは非常に重要だと思います。

 今そういったことをやっているというお話がありましたけれども、具体的にどのようにやっているのか、もう少し詳しくお話を聞きたいと思います。

高宅政府参考人 定期的に参与員の方に集まっていただきまして、その際に、参与員の方同士の意見交換をする、あるいは有識者の方を呼びまして講演をしていただくなどという形で、一つは参与員の方の情報の把握というか、情報を共有するような体制をつくっております。そのほかに、もちろん、当方が収集しております各国際情勢の情報等は、適宜文書として提供しているところでございます。

山内分科員 私も衆議院議員になって大体六年半、ずっと難民の問題のことを質問してきましたが、少しずつ前に進んでいると思います。第三国定住なんという制度は前はありませんでした。自公政権のときも、民主党政権になってからも、少しずつ前に進んでいるし、法務省も努力していただいているのは承知しておりますが、さらによりよいものをつくるために引き続き頑張っていただきたいと思います。

 以上で法務省への質問は終わります。

 次は、外務省にお尋ねをしたいと思います。

 まず最初に、外務省の予算の中でシンクタンクへの委託というのがあります。シンクタンクというと、事業仕分けで結構ばっさばっさと切られた方ですけれども、私は、日本の外交の基礎体力という意味では非常に重要だと思っております。

 ことしの予算が三億九千四百万円、それから来年度予算、今回審議している予算が三億六千五百万円と、予算は毎年のように減少している傾向にあるんですけれども、今後、外務省として、シンクタンクをどのように活用していくのか、どう考えているのか。これからも減らすつもりなのか、あるいはもう少し見直してシンクタンクへの調査委託などをふやしていく方向なのか、どちらの方向に向かっているのか。それと、シンクタンクを外務省としてどう位置づけているのか。お尋ねします。

山口副大臣 今、日本国際問題研究所に対する補助金等は、山内議員がおっしゃったとおりに徐々に減っているわけですけれども、現実には、賃借料という格好で、昔霞が関ビルに入っていたのが虎ノ門の方に移って、そういうことも合わせて約六千八百万円削減したというところが数字として出ているというところだと思います。

 ただ、言われたように、予算の形として、日本国際問題研究所補助金という形は平成二十二年度で廃止されて、今三つの部分から成る国際問題調査研究事業費等補助金という格好でやっているところです。一つは研究・提言事業費補助金、それから二つ目は対話・交流促進事業費等補助金、そして三つ目に運営支援補助金。

 多分、今、山内議員おっしゃったのは、ネットワークづくり等については、このトラック2としてのシンクタンクが非常に役に立つんじゃないかということをおっしゃったんだと思いますし、私も全くそのとおりだと思います。

 今、例えば太平洋では、TPPなんという話でもって、どっちかというと、何かアメリカの存在を私なんかもすごく気にしながら、どうやってうまくはね返していこうかなと頭を悩ませているんですけれども、もう一つは、例えば将来、日本海を中心にこういう経済連携をする。特に、プーチンさんが大統領になったのであれば、これは領土問題を言ってきたときに、どういうふうにうまくこれに取っかかっていくかというのは、例えば日本海を囲む、韓国、中国、ロシア、日本、それにモンゴルを入れるなり、アメリカがどうしても入りたいと言ったら入ってもらってもいいんだけれども、こういう最初のやり口はどうもシンクタンクというところが一番いいんだと思うんです。

 だから、そういう意味では、これをどういうふうに活用していくかということを今省内でも議論しているところなんです。数字の上ではこういう格好になっていますけれども、我々が置いている重点というのは、山内議員おっしゃったとおりに、物すごく大事な役割をこれからも果たしてもらいたいと思っています。

山内分科員 そういう認識を山口副大臣がお持ちなのは大変心強いんですけれども、世界のシンクタンクのランキングなどを見ると、アジアで二番と誇っているんですけれども、世界では物すごい低いレベルで、世界第三に落ちましたけれども、世界第三の経済大国日本としては恥ずかしいぐらい、この外交分野のシンクタンクが余り活躍していないということがあります。こういう知的なインフラをしっかり持っていないと、そもそも戦略も出てこないし、国際社会に打って出るときの、今はやりの言葉で言うと、ソフトパワー的なものの源泉としてシンクタンクというのは非常に重視すべきものだと思います。

 そういった意味では、三億何千万円というのは、決して多くないどころか、まだ二倍、三倍にしても足りないぐらいじゃないかと思いますので、事業仕分けの仕分け人にたたかれてもくじけずに、一律で何でもカットするんじゃなくて、必要なところはしっかり予算をつけていくという方向で、ぜひシンクタンクを重視していただきたいと思います。

 もし何かあれば。

山口副大臣 このシンクタンクの問題については、いわゆる裾野の問題として、どういうふうに日本が寄附金のシステムというものもこれから将来整えるかとか、いろいろ大きい問題があると思うんです。

 例えば、いろいろなアメリカの大学の関係のシンクタンク的なもの、それを見ても、何か寄附でうまくやっているところもあると思うんですね。それは、日本と違って、寄附に対する控除の感覚とかが大分違うのかもしれませんけれども、そういう大きな制度面も含めて、このシンクタンクが育っていくようにやっていかなきゃいけないと思っています。

 私も、特に中国の方とかかわっていると、中国の方でのシンクタンクの活躍がすごいものがありますから、やはりこれは日本としても、我々の知的な部分をもっともっと生かせるように育てていかなければいけないと思っています。

山内分科員 ぜひよろしくお願いします。

 次に、日本語教育についてお尋ねします。

 この十年ほど、海外における日本語教育熱というのが大変高まっておりまして、交流基金のレポートによると、一九七九年に外国人で日本語を勉強してきた人が十二万人、一九九〇年の段階で九十八万人、それから二〇〇九年の段階で三百六十五万人。日本経済は余り調子がよくないにもかかわらず、日本語を学習する外国人は物すごい勢いでふえているということがあります。せっかく日本語を勉強したいと思ってくれている外国人が急速にふえている割には、日本語教育へのサポートというのは、予算もそんなにふえていない、減っている状況にあります。

 そういった意味では、交流基金の役割というのは重要だと思うんですけれども、ぜひ日本語教育の充実のためにやっていただきたいことがあります。ブリティッシュカウンシルみたいに直営で語学学校をやると、お金がかかってしようがないと思います。むしろ、既にある民間の日本語学校、これは、フィリピンとかインドネシアとかベトナムに行くと、日本語学校、結構たくさん民間であるんですね。そういうところに対するサポートというのをやっていくことが重要じゃないか。

 今もやっていますけれども、例えば、特に優秀な日本語学校には、ミシュランの星じゃないですけれども、認定制度というか認証制度みたいものをつくって、質の高い教育をやっている日本語学校には、特に交流基金から、何か保証というか、質を保証するような、JISマークみたいなもの、エコマークみたいのもの、そういうものを出していくとか、そういう形で民間の語学学校をサポートする体制を強化した方が安上がりで、より効果的ではないかと思います。

 よく言われる中国の孔子学院というのも、世界にもう何百カ所と急速にふえているんですけれども、あれは直営じゃなくて、例えば早稲田大学孔子学院みたいに、既にある大学の中国語コースにぽんと講座をくっつけて、運営費もその大学持ちみたいな形でやっているから、安くたくさんふやすことができるんですけれども、そういった意味では、そういう既にある民間の語学学校あるいは大学の日本語コース、そういったものを交流基金が何らかの形で質の保証をしていくという仕組み、こういう仕組みづくりについてどのようにお考えでしょうか。

山口副大臣 山内議員のおっしゃっているポイントが非常によくわかりました。

 確かに、私もこの数字を見て、七九年の十二万人から二〇〇九年の三百六十五万人、よく三十倍もふえたものだなと思いました。他方、日本のGDPが二位から中国と三位がくるっとひっくり返ったのがその若干直後だから、今もふえていればいいなとは思っているんです。

 だけれども、今おっしゃった孔子学院のものを私もちょっと見てみましたら、本当に多いですね。日本の国際交流基金が、語学講座で学習者数というのが、一つの数字が九千五百人なんですけれども、孔子学院は、おっしゃったとおり、いろいろな活用をしながら三十六万人。いや、これはすごいな。ほかのところは、フランスとかイギリスとかドイツとか、言葉として割とポピュラーなものだから日本に比べて相当多いんですけれども、中国、話す人が多いとはいえ、ここまで頑張られると、やはり日本も相当頑張らなきゃいけないと思っています。

 今おっしゃった、直営じゃなくて活用したらという話の中では、多分当てはまるのは、一つ、国際交流基金の方で、海外の大学を中心に、ジャパンファウンデーションにほんごネットワーク、通称さくらネットワークというのを世界百カ所以上に展開して日本語教育支援に努めているというのが少し当てはまりそうなんですけれども、基本的には、おっしゃったとおり、今まで国際交流基金の方では、日本語の専門家派遣あるいは日本語教師の訪日研修とか、あるいは教材の開発、寄贈とか、あるいは在外公館で弁論大会を開催するとか、いろいろなことで直接やってきたように思います。

 直営講座の観点で、二十四年度の予算で二・三億円も計上したり、あるいは、直営講座的なものとは少し違いますけれども、受講料として日本語能力試験についてやっているとかいうこともあるので、山内議員のおっしゃっていただいたようなことも参考にして、またさらに拡充できるように検討させてください。

山内分科員 交流基金が大学の日本語講座を支援しているというのは非常に成果を上げておりまして、中国外務省の日本語セクションの人なんかはそういう交流基金の支援した大学で学んだ人がかなり多いので、確実に成果は上げていると思うんですが、大学に頼むと数も絞られるので、むしろ、東南アジアを中心に民間の語学学校はたくさんありますから、そういうところに、補助金を出せとは言いません。ただ、エコマークじゃないけれども、認証するだけ。金はかからない。それで、ああ、この学校はちゃんとした学校だなというある程度の質の保証、日本語教育の質の保証ができるという意味ではそういうやり方も一つ考えていいんじゃないかなと思いますので、お金をかけずに、他人のふんどしで土俵をとるみたいに日本語教育の質を高めていくことは十分考えられると思うので、検討していただきたいと思います。

 続きまして、日本の軍縮に対するアピールと今後の日本の軍縮についてお尋ねしたいと思います。

 まず一つに、防衛省の予算をずっと見ていて思ったんですが、この十年ほどの間、日本はかなりの割合で軍縮を進めております、我が国の自衛隊は。意図せざる部分が多いとは思いますけれども、通常兵器をこれだけ日本は着実に減らしている、あるいは減らさざるを得なかったにもかかわらず、いまだに近隣国は、近隣国というか、中国なんかは、日本が軍事大国だというイメージを持っている人が結構多いと思うんですね。

 私は去年、中国のシンクタンクを五つぐらい回って意見交換をしてきたんですけれども、中国の国防大学というところにも行きました。中国の人たちはいまだに、日本が非常に軍事大国になるんじゃないかというおそれを抱いています。実際には、そんなおそれどころか、どんどんどんどん防衛費が減っている状況にあります。しかし、知られていない。このことをもう少しアピールしてもいいんじゃないか。積極的にアピールするというよりは、少なくともオピニオンリーダークラスの中国とか、そういう近隣国の影響力のある人たちには、実は、日本は軍拡どころか、これだけ軍備を減らしているんですよということは、知ってもらって損はないと思うんですね。

 そういう誤ったイメージを正すための努力というのは必要ではないかと思うんですけれども、この点について、外務省はどのようにお考えでしょうか。

山口副大臣 中国は、きのうの新聞等で、国防予算が前年実質比で一一・二%増加したとかいろいろある中で、確かに日本はどんどんどんどん減っているんですね。

 私は、一番の根っこというのは、お互いが何を考えているかということがよくわかり合っているということだと思うんです。今、山内議員おっしゃったように、やはり中国の方で、日本がまだまだ何かそんなことをするんじゃないかというふうに思っているとしたら、そこは我々の考え方として、そういうことはないんですよということをよく伝えるべきだし、あるいは、我々が中国に対して一番懸念を持っているのは透明性の欠如だと思うんですね。

 ヨーロッパの歴史を見てみても、フランスとドイツが何百年も戦争し合った中で、今、必ずしもというか、誰もフランスとドイツの間で戦争するなんて思っていない中には、信頼醸成措置というものがしっかりできてきたということだと思うので、私は、額の問題も一つ大きなポイントとしてあると同時に、考え方について、我々がしっかり、お互いに知らせ合うというか共有し合うということが大事だと思います。

 今おっしゃっていただいた広報については、防衛白書等を通じて、我々国内外に広報しているところなんですけれども、他方、我々、国の守りもしっかりしているぞというところも非常に大事な部分ですから、そういう意味では、我々の考え方がほかの国を攻めていくということでは絶対ありませんよというところをきちっと伝えることが大事だと思っています。

山内分科員 その点、日本は全く攻め込む気なんかないんだよということは、ある程度知識人の間でも意外とそういう認識を持たれていないと中国に行って何となく感じましたので、ぜひ積極的に交流をしてほしいと思いますし、我々政治家も、日中のそういうオピニオンリーダーに対する働きかけをやっていかなくてはいけないというふうに思っております。

 次に、通告していなかったんですが、きのう、ふと思いついたことを山口副大臣に申し上げて、感想をお聞かせいただければと思います。

 これまで、軍縮というと、日本は、核の拡散防止と核軍縮は非常に熱心に伝統的にやってきました。それから、通常兵器の軍縮に関しても、クラスター爆弾とか対人地雷はやってきました。

 しかし、化学兵器とか生物兵器もそうですけれども、そういう特定の兵器の軍縮だけじゃなくて、通常兵器、通常兵力一般の軍縮ということも、アフリカとか中近東とか、そういった開発途上国では必要じゃないかと。特に、紛争、今でも国同士で戦争しかねないところというと、大体、アフリカ、中近東、こういう比較的貧しい国が多いわけですけれども、そういう国が、貧しい財政にもかかわらず、教育や保健よりも軍事費の方にお金を割いている。

 これは非常に悲惨な状況であり、不幸なことだと思いますので、日本も中心になって、通常兵器の削減のイニシアチブ、それもクラスター爆弾、対人地雷みたいな特定の武器に限らず、一般論として、二つの国の間に立って、両国の間の国境の兵力をお互い削減しませんか、そういう調停を、日本一国では難しいかもしれませんけれども、地域の共同体、AUかもしれませんしARFかもしれません、いろいろなメカニズムと連携しながら、日本がイニシアチブをとって通常兵器の削減交渉をやっていく。ちょっと夢物語か単なる理想論のように聞こえるかもしれませんが、そういうイニシアチブをとってはいかがかなと思うんですね。

 クラスター爆弾も対人地雷も、最初は誰もできると思っていなかったと思います。はっきり言って、軍人とか専門家からすると、対人地雷の禁止なんてあり得ない、クラスター爆弾の禁止なんかあり得ないと最初は言われていたと思うんです。それが、NGOの頑張りとか国際世論の後押しで、気づいたら対人地雷もクラスター爆弾もなくなりました。

 恐らく、振り返ってみたら自然なように感じますけれども、クラスター爆弾、対人地雷に関しては、最初に誰かが言い出したときは、あほか、おまえ、そういう感覚だったんじゃないかと思います。しかし、世論が動くと、世の中の流れが動くと現実になるということを考えると、日本は、アフリカや中近東、そういった国々の、隣り合う二国間の通常兵器の削減とか通常兵力の軍縮ということに力を入れて、例えば、もし二つの国が両方軍縮したら、それと同じ額だけODAを出してあげるよとか、あめもちらつかせることが日本の場合はできるわけです。

 そういういろいろな道具を使いながら、地域の他国とも連携しながら軍縮を進めていく、核以外の軍縮にもっと力を入れていくことが必要ではないかと思いますが、もしよろしかったら感想だけでもお聞かせをいただければ。

山口副大臣 クラスター爆弾については、たしか、私も今思えば、当時、山内さんと同じ時期にいて、猪口さんと私で衆議院から派遣されて、それでウィーンの方に、いわゆる各国の国会議員が集まって、クラスター爆弾の禁止に向けて頑張ろうじゃないかという集まりに行ったことが一つのきっかけになって、それからいわゆる国会議員の議連をつくり、私も最初、議連をつくってどうなるのかなという気もしていたんですけれども、実は、あそこに絵がかかっている当時の河野議長のところへ手足がなくなられたいわゆる犠牲者の人が訪ねてこられて、それで、非常に私も感じるところが多かったですね。多かった。

 それで、河野議長も非常にそこは心を動かされて、河野議長は当時、本当に思い切った発言をされました。要するに、日本としてはこれはもうどうしてもやらなきゃいけないと自分は思うということをはっきり言われて、その後、参議院の議長をされていた江田さんのところにも行かれて、江田さんも同じように非常に強いメッセージを出されました。そのことが、衆参合わせた議長同士でそういう空気ができたものですから、結局、その議連がある意味で引き金になって、そしてクラスター爆弾の言ってみれば禁止というところまで日本はこぎつけたわけですけれども。

 そういう意味で、どういうふうにみんながその悲しみを共有できるのか。兵器については、いわゆる難しいところがいっぱいあると思うのは、例えば武器商人というのが活躍したりしてなかなか一筋縄ではいかない面もあるものですから、そういう意味では簡単にはいかないとは思うんですけれども、しかし、日本がこれからどういうふうに、どんな世界を望むのか、どんな世界を願っているのかというときの一つには、大きなキーワードは平和ということがありますから、そういう意味では、ぜひ、この通常兵器の部分も含めて、日本が今例えばジュネーブの方で頑張っている、そういう軍縮代表部の方で頑張っているようなことをさらに一層頑張っていきたいなと思っています。

 他方、核の問題について、言ってみれば、日本が核を持たないというだけではなかなか話もこれは一筋縄ではいかないんですけれども、でも、さっき山内議員、ODAとリンクするということも言われて、いや、なかなかこれは相当な発想なんですけれども、ぜひちょっと一回考えさせてください。余りどぎつくやると向こうの反発を食らうけれども、でも、これをうまく、実際に対話するときの道具には必ずなると思います。

 私も、パキスタンで勤務したり中国で勤務したときに、やはり、途上国という言い方はおかしいけれども、ODAというのが物すごく大きな、ある意味で唯一の道具という気もしたぐらいですから、そこをうまく使いながらやっていくということはさらに検討させてください。

山内分科員 時間が来ましたので、最後に一言だけ。

 きょうの朝の朝日新聞に、緒方貞子さんのコメントが出ておりました。事業仕分けでODAをどんどん切れ切れと言う仕分け人ばかりだったということがありましたけれども、やはり今後の日本の役割を考えると、ODAをそんなに削ってはいけないし、日本語教育もシンクタンクもすぐには成果が出ないかもしれませんけれども、十年、二十年後の日本の外交のために、必要なところにはしっかり予算を確保していただきたいと思います。

 以上で質問を終わります。

西村主査 これにて山内康一委員の質疑は終了いたしました。

 次に、山尾志桜里さん。

山尾分科員 民主党の山尾志桜里です。

 本日は、法務大臣への質問という貴重な機会をちょうだいして、ありがとうございます。法曹の大先輩であります小川大臣と議論ができることを、きょうは、緊張しながらですけれども、非常に楽しみにしてまいりました。どうぞよろしくお願いします。

 三十分という持ち時間の中でありますので、きょうは、一番のテーマは一部執行猶予法案を基軸に、観点としましては、社会内処遇の充実、これは議論は非常にされているんですけれども、その前提としての施設内処遇の充実を軽んじないでほしい、そしてまた、社会内処遇の充実を議論する際には、保護司さんを初めとした現場の第一線の方の声をできるだけ酌み取っていただきたい、こういう観点で質問をしていきたいというふうに思っています。

 もし時間がありましたらば、少年院法の関係、あるいは、選挙年齢の引き下げとの関係で民法の成年年齢と少年法の少年の年齢、ここについても議論ができたらいいなというふうに思っています。

 まず最初ですけれども、犯罪者の処遇が語られるときに、施設内処遇から社会内処遇へという言葉がよく聞かれます。最初の質問は、大臣はこの言葉をどういうふうに理解をされて評価をされているでしょうかという質問なんです。

 観点をはっきりさせるために私の意見を先に恐縮ながら申し上げますと、これが施設内から社会内への連携を強化する、こういう意味合いであれば私は賛成です。あるいは、施設内を充実させた上で社会内も充実させていくんだ、こういうことであれば、これも賛成です。でも、施設内から社会内に負担を移転していくんだ、重点を移していくんだ、こういう流れを意図的につくっていくというか、そういう意味合いの言葉であれば、これは私としては非常に賛成をしかねるんですね。

 理由を二つ申し上げます。

 一つは、施設内でしか果たせない応報とか贖罪とか、やはりこういう機能を安易に軽んじてはならない、こういう私自身の信念があるからです。罪を犯すと、その報いとして一定期間服役をするんだ、そのことによって罪を償うんだ、こういう制度の根幹が安易にぐらつくと、結局、非常に精密に構築されてきている我が国の刑事司法の抑止力、これも揺らぐと思うし、ひいては、この国の安全、安心ということに対する国民の信頼も非常に揺らぐ、これが一点です。

 二つ目は、再犯防止の機能という観点からも、やはり施設の中でしっかり再犯防止策がとられてこそ、初めて社会内としての再犯防止策も機能できる。地域の社会がリスクを負担する前提として、刑務所の中で再犯防止がしっかりなされている、こういう信頼が絶対に必要だというふうに思っています。

 翻って、最初の質問に戻りますが、大臣から、この施設内処遇から社会内処遇へというフレーズをどのように理解され、評価されているか、お聞かせください。

小川国務大臣 まず、大枠だけ申し上げさせていただきますと、施設内処遇、これは大変重要でありますから、これを軽くするという考えは持っておりません。

 ただ、刑務所の施設内処遇というものが、懲らしめだけでなくて、社会に出て社会人として生活する、もっと具体的に言えば、再犯を起こさないで、犯罪を、被害者を少しでも少なくするという機能がありますので、これはやはり施設内処遇というものを軽んじる気は全くないわけでございます。

 ただ一方で、再犯防止に役立つ、有意義であるというのであれば、社会の中において一つの矯正というものを試みるということも、これもあっていいのではないか。ですから、施設内処遇を否定して社会内処遇ということではなくて、施設内処遇というものをしっかりとやった上で、なおかつプラスの面として社会処遇というものがあってもいいのではないか、このように考えております。

山尾分科員 ありがとうございます。

 私も、施設内処遇においての再犯防止機能というのも非常に重要なことだと思っています。

 この施設内から社会内へというような言葉が聞こえ始めたのが、いわゆる刑務所の過剰収容問題が浮上してきたころと重なるように思うんですね。実際、この一部執行猶予法案ですけれども、この法案が提言されたのは、法制審議会、平成十八年に諮問されて、平成二十二年に答申がなされています。この諮問の文言なんですけれども、私はちょっとこの文言はいかがなものかと思っています。

 平成十三年度以降、刑事施設における過剰収容の状態が続いていることを契機として、被収容人員の適正化を図るとともに、犯罪者の再犯防止及び社会復帰を促進するという観点から、刑事施設に収容しないで行う処遇のあり方等を諮問すると。

 何度も読んだんですけれども、どう読んでも、要するに、刑務所が満杯、過剰なので、刑務所に入れない処遇のあり方を考えてくれ、これが本筋、そこに被収容人員の適正化とかという言葉をちりばめているというふうに私は受けとめました。もちろん、この諮問がなされたのは政権交代前の時代でありますので、小川大臣であれば、もっと筋のよい諮問をされたのではないか、私は勝手にこう思っております。

 私は、そもそも、刑務所が満杯、過剰であれば、その解決策はまず刑務所インフラを整備するというのが本筋であって、刑務所から早期に出すというのは筋違い、お門違いだと思っています。要するに、コストがかかる刑務所、施設内よりも、ボランティアで頑張ってくださるそういう保護司さんとかに転嫁をしていくというか甘えていくというか、国として非常に無責任な考えだと思うんです。しかも、過剰収容というのは、実は、もう既に事情が変わっているのではないか。

 事務方に質問しますが、収容率のピークが平成何年で、何%なのか、そして、現在、直近で統計がとれている、平成二十三年があれば何%か、教えてください。

三浦政府参考人 お答えいたします。

 刑事施設におけます年末の収容率で申しますと、過去、直近のピークは平成十四年でございます。収容率は一〇六・五%でございました。また、直近の年末収容率ということで、平成二十三年速報値でございますが、年末の収容率は七七・二%でございます。

山尾分科員 ありがとうございます。十四年のピークから、今や七七・二まで収容率は下がっている。もう諮問の前提条件が完全に変わっているということだと思います。

 大臣からお伺いしたいのは、議論の契機はともあれ、この法の趣旨に、過剰収容の解消、これはもう含まれないんだ、過剰収容解決のために早期に社会に移行してもらうんだ、こういう狙いはもうないということをここで明確にしていただきたい。その上で、この一部執行猶予法案の狙いを簡潔に御説明いただければと思います。

小川国務大臣 確かに、過剰収容を契機としてという諮問があるわけですから、そう契機となったのかもしれませんが、それが契機であったとしても、しかし、結果として再犯防止のために有意義な仕組みというものが導入できるのであれば、私はその有意義な仕組みを導入した方がいいというふうに思っております。

 したがいまして、過剰収容というものが契機ということ、それは余り好ましくないきっかけではあったかもしれませんが、しかし、結果としてでき上がった仕組みといたしまして、被収容者が社会に復帰して再犯を犯さない、社会の一員として復活できるという意味で、非常にいい意味を持った制度ができたのであれば、私はそれは、きっかけというものを抜きにして、やはりそういう制度はしっかりと社会に定着させていきたいというふうに思っております。

 ですから、今回の刑の一部執行猶予制度というもの、過剰収容が解消したから不要なものだということではなくて、やはり刑の一部執行猶予によって、刑の一部を社会内に処遇して、社会の中の監督のもとで、また社会になじむという経験を経ながら、社会の一員として復帰してもらう矯正、更生の意味を果たすということで、私は十分役割が期待できる制度であるというふうに思っております。

山尾分科員 私も、成り立ちにおいて筋がいいとは言えないものの、この法案の運用を通じて、今大臣がおっしゃった再犯防止のために有意義な制度に育てていくんだということであれば、微力ながら努力もしたいというふうに思っているんです。

 その運用の観点で、ちょっと一つ確認をしたいんですけれども、この法案というのは、今まであった全部実刑、全部執行猶予、これに加えて、一部実刑一部執行猶予という新たな選択肢を広げるものであって、刑を重くするためのものでもないし、軽くするためのものでもないんだ、こういう理解を私は今しましたけれども、そういう理解でよろしいんでしょうか。

小川国務大臣 まず、刑そのものを全く変更するわけではなくて、裁判官の範囲で、更生のために社会内処遇が有意義だというふうに認められるものについて、一部の執行猶予を認めることができる、採用することができるという新たな制度、選択肢を広げたということでございます。

山尾分科員 それでは、この法案の中で特出しされている薬物事犯に話を進めたいと思います。

 最初の質問は、施設内の処遇に関して、前進してきた取り組み、あるいは今後さらに努力していく取り組みというのをお話しいただきたいというのが質問です。

 それにちょっと前提として、少し問題意識をお話しします。

 この法案ですけれども、薬物以外の一般は刑務所への初入者を対象としている。例外として、薬物については再入者も対象として、必要的保護観察に付す、こういうたてつけだと思います。ただ、これを一般の方がぱっと聞いたときには、不安になるんじゃないかというふうに思うんです。

 薬物というのは、反社会的な組織の財源にもなるわけだし、薬理作用で全く不特定多数の市民に危害が及び得るという罪種でありますし、一般の市民に広くリスクを負わせる罪種という面があると思うんです。この薬物事犯について、特出しをして、一般の罪種よりも対象を広げて、でも、社会内の保護観察を必要的にすることで、社会内の処遇による改善更生とか再犯防止とか、そういうものを期待するという趣旨だと思うんです。それ自体に反対はしておりません。

 ただ、改めてその前提として、薬物について施設内処遇もこんなふうに強化をしているんだよと、それを広く一般の皆さんにも広報して、そのことによって、リスクを背負っていく一般の市民の皆さんの理解とか、あるいは保護観察を現場で担っていく保護司さんを含めたいろいろな関係者の方、こういう皆さんの理解を得るということは非常に大事なのではないかなと思っています。

 法制審の議論とか法務省の説明なんかを聞くと、薬物の誘惑があるところで処遇をする方が再犯防止になるというような表現ぶりが結構散見されるというか、耳にしたり目にしたりするんですね。言いたいことはわからないではないんですけれども、でも、やはり一般の方からすると、薬物の誘惑がない受刑中にちゃんと薬物依存離脱の指導をやってくれよと。誘惑がある場所で処遇をするという、こういう表現は、私は余り好ましくないんじゃないかなと、私見として感じています。理解を得るという意味でもですね。

 このことも踏まえて、薬物事犯の施設内処遇について、こんなふうに強化をしてきて、しかもこれからもこういうふうに努力していく、そういうお取り組みを、一般の方にという意味も込めて、教えていただけないでしょうか。

小川国務大臣 まず、施設内で、薬物事犯を犯した受刑者に対して、薬物からの離脱のための取り組みはこれまでもしてきておるところでありますし、これを軽んじるという考えは全くございません。

 具体的には、薬物依存者に対しては、一単元五十分、これを十二単元を標準として、三カ月から六カ月のプログラムを組んで、薬物の依存による弊害というものをしっかりと教育しているということ。あるいは、グループワークという自主的な薬物離脱を助ける民間のグループがあるわけでございますが、そうした人の協力もいただいて、面接をしたりして、施設内においても教育はしっかりやっておるところでございます。

 ただ、やはり薬物依存を離脱するというためには、どうしても本人の意思が強く確固たるものでなくてはならない。そうすると、施設の中にいれば、本人の意思とは無関係に薬物に触れることができないわけでございます。したがいまして、施設の中でしっかり教育することはもちろん大事だけれども、やはり、社会の中にあって、いわば自分の意思でやめてもらうということ、これをしっかり周りが助ける、それを支えるという取り組みも、これは有意義なのかなというふうに思います。

 そうした観点から、薬物事犯につきましては、やはり特出しで、再犯であってもそうした取り組みを新たに設けたというような趣旨であると思っております。

山尾分科員 私も、施設内のそういう薬物依存からの離脱の指導というのが随分前進しているなということは感じているんです。ぜひ私も積極的に、そういうことも現場の方にもお知らせをしていきたいというふうに思っています。

 では今度、社会内の薬物の処遇の方なんですけれども、今、薬物処遇研究会というところで議論が進んでいて、三月末にも報告が出るというふうに聞いております。この議論の論点、テーマあるいは進捗、こういったところを簡潔にお知らせいただけないでしょうか。事務方からで結構です。

青沼政府参考人 委員御指摘のとおり、ただいま、精神科医等の薬物依存専門家や民間の自助グループであるダルクの指導者などを構成員といたしまして、薬物処遇研究会を開催しております。

 この中では、施設内処遇と社会内処遇の一貫性を考慮いたしました規制薬物全般に対応可能な薬物処遇のプログラムの開発を行っております。それとともに、保護観察所と地域の医療や保健福祉関係機関等との連携を図るための地域支援ガイドライン、これの作成を進めております。

 これまでに十回開催しておりまして、ただいま申し上げました、それぞれのガイドライン案の最終的な調整を行っている段階でございまして、この四月、来年度以降につきましては、それぞれのガイドラインに基づいた試行を行い、その検証結果を踏まえつつ、法案の施行までの間にさらなる検討を進めていく、こういう予定にしております。

山尾分科員 ありがとうございます。

 そういった新しいプログラムや連携の強化で前に進んでいただいていることに感謝申し上げます。

 ただ、ちょっと一点、この研究会に現場の方というのは余りメンバーに入っていないんですね。社会に出て、それこそ薬物の誘惑から対象者を守っていく保護司さんたちを初め、そういう現場の方をぜひこういう会合の主体に入れていただきたいんです。

 今後、四月以降、試行と検証ということにステップを進めていくというお話が今ございました。できればそういう中に、現場の保護司さんを初めとする方々の意見を取り入れていく、主体としてかかわっていただく、こういうことを検討いただけないでしょうか。

小川国務大臣 実際に社会内処遇で保護観察中、保護司さんにお世話になるわけですから、保護司さんのこれから実際に取り扱っていただく経験というものは大変に重要だと思いますし、その意見というものを反映することは大変に重要なことだと思っておりますので、そうした方向で進めていきたいと思います。

山尾分科員 ありがとうございます。

 では、私の方から少し現場の声をお伝えしていきたいと思います。

 この一部執行猶予法案とあわせて、特別遵守事項の類型に社会貢献を入れていくという提案がなされています。私、一概に反対はしません。こういう選択肢ができるということ自体は悪くないと思います。ただ、現場の声、これをちょっと本当に大臣にお知らせしたくて。

 要するに、保護司さんは、対象者の仕事を探したり、探した仕事を続けさせたり、大変な苦労をされています。受け入れる企業というのは、いわゆる立派な大企業というよりは、その地域の小さな工場とか自営の方で、保護司さんに言われて、よっしゃ、あんたに言われるなら一肌脱ぐか、こういうふうに受け入れてくださる方、こういう方が結構多いんですよね。

 とすると、現場の仕事というのは、必ずしも、月から金が仕事で土日が休みとか、そういうペースが決まっている仕事に限らないわけです。景気とか天気とか工事の進捗とか、こういうことで日々状況が変わって、そういう対象者の方も含めた本当に少人数で仕事を回していく。こういうときに、例えば、きょうは社会貢献活動ですからちょっと仕事ができませんとか、これを破ると遵守事項違反になってしまう、こういうことがたくさん起きるのが本当にいいことなのかという懸念がやはり現場にはあるということ。

 ボランティアで介護したり掃除したり、得るものはあると思うんですけれども、でも、やはりそれ以上に一番大事なのは、しっかり仕事をして、それを続けて、仕事の中に自分の役割を見出して、役に立っているという喜びを知る。これをクリアできて、さらにボランティアまでしっかり約束を守っていく、これができれば、一般の方からしてもなかなか立派な人ではないかというふうにちょっと思うところがあるんですね。

 こういう現場の声を聞いて、何かコメントがあればお願いします。

小川国務大臣 やはり、再犯をしないという消極的な見方ではなくて、社会の一員として役に立っていただく、社会の一員として社会に貢献していただくという観点からは、私は、社会活動というものは非常に有意義な一つだと思います。

山尾分科員 もう一つ聞いていただきたいのは、昔から議論されていることですけれども、出所時に支給される作業賞与金が少な過ぎるのではないか、こういう議論であります。

 お伺いします。

 出所時に支給される作業賞与金の総額の平均が現在幾らであって、また、ここ数年の推移がわかるような資料があれば教えてください。どなたでも結構です。

小川国務大臣 受刑者一人当たりの釈放時支給額、これは二十一カ月在所したということを平均として、予算上、平成二十四年度予算案では六万八千九百五十四円というものを想定しております。

 ただ、一人一人は在所期間あるいは作業の内容によってやはり異なっておりますが、大体そのような内容でございます。

山尾分科員 ここ数年、その賞与金というのは少しずつではあるが増額をしているんだという説明も受けているんですけれども、その点、いかがでしょうか。

小川国務大臣 今の二十一カ月在所という点から申し上げますと、二十一年度が六万一千六百五十七円、二十二年度が六万三千九百四円、二十三年度が六万六千七百九円でございますので、少しずつというよりは、普通の給与の上昇率よりもいい上昇率で上がっているとは思います、絶対金額は低いですが。

山尾分科員 ぜひ、そういう増額の努力も皆さんに知っていただいて、今後とも御努力いただければというふうに思います。

 あと五分となりましたので、ちょっとその前に、ごめんなさい、このテーマの最後に大臣の方から、保護司さんや更生保護女性会、BBSの方、あるいは協力雇用主の方へのメッセージをいただけないでしょうか。

小川国務大臣 それはもう、いわば入所者の社会への立ち直りのために本当に御努力をいただいておりますし、また、多くはボランティア精神、実質ボランティアという中で御努力をいただいておるわけでございまして、一言で言えば、本当に感謝しておりますし、大変に深い敬意をあらわさせていただきます。

山尾分科員 ありがとうございます。

 がらっと話題がかわって、選挙権の年齢引き下げと民法上の成年年齢引き下げのことをお聞きします。

 私自身は、選挙権を十八歳に引き下げるのであれば民法上の成年年齢も引き下げるべきだし、それは同時にすべきだという考えを持っております。

 大臣は、二月二十八日の会見で、ちょっと正確に読みますが、引き下げは、一緒であってもよいですけれども、成年年齢の引き下げがない限り選挙権年齢の引き下げもないという絶対的な関係ではないとおっしゃっています。

 そこで質問です。少し踏み込んで、選挙年齢と成年年齢は、時期はともあれ、一致すべきだとお考えか否か。一致すべきだとお考えであるのであれば、同時と先行と、どちらが望ましいとお考えでしょうか。

小川国務大臣 自分自身で社会の一員としてしっかりとした判断ができるというふうに考えて、それが十八歳でできるということであれば、選挙権も民法上の成人としての地位も同じであるようにも思うんです。

 ただ、選挙権の場合には、いわばかなり観念的な部分で自分の考え、意思の表明だと思うんですが、民法の成人年齢というものは、いわば少年を保護するという趣旨がございます。すなわち、さまざまな社会の中の、契約自由の原則の中で、まだ十分な経験のない少年が軽い気持ちで契約をしてしまって大変な不利益をこうむる、悪徳商法にひっかかるというようなことがあってはならないから、やはりそうしたことの判断あるいは経験を積むまで少年を保護する必要があるのではないかというふうに思います。

 現実の問題として、今、十八歳といいますと高校を卒業した年代で、高校へ行かない人もいますけれども、多くは高校を卒業した段階で十八歳と思うんですが、そうすると、高校を出ただけで、社会に出た瞬間に、いきなり、既に十八歳だから契約自由の中に入って、もう契約したから拘束されて、思わぬ不利益があってもいいんだろうか。

 もっと深く言えば、文科省から何か言われるかもしれないけれども、高校の教育の中で、十八歳になって社会に出たら、すぐ社会の一員として、自分にどんな不利益があっても、こうした契約というものは大変に大事だし、守らなくてはいけないんだというような社会教育あるいは法教育というものが十分になされているんだろうか。そうしたことがないまま、選挙権は十八歳だから、成人年齢も十八歳で、もう十八歳を過ぎたから、少し経験が浅い中で少年に不利益な契約をしても、契約自由で、自分の判断でしたんだからもう保護に値しないというのでは、ちょっと少年の保護に欠けるかなと。

 ですから、私は、一人の人間として判断力を持つという視点から、大きな意味では十八歳で選挙権も成人年齢も同じでいいという総論的な考え方はあるんですが、しかし、今言った民法の少年の保護ということを考えますと、絶対的に一致しなくてはいけないというものではなくて、やはり、少年の保護を考えた民法の趣旨が生かされるということをしっかりと担保した上で、民法の成人年齢の十八歳引き下げというものがなされるべきだなと。そうすると、選挙権が下がるのと絶対に一致しなくてはならないというものでもないなと思っております。

西村主査 山尾さん、時間が終了していますので、まとめていただければ。

山尾分科員 はい、最後の質問にします。

 私も、社会教育、法教育の必要性に関しては全く同視でございます。

 一つだけ、少年法についてなんですけれども、この議論は、専門的な知識を含んだ重い議論が必要だと思っていますので、このことについて大臣のもとで有識者会議を立ち上げるというようなことは御検討いただけないでしょうか。これを最後にいたします。

小川国務大臣 では、簡単に。

 これも大変重い課題でございますので、十分考えたいと思います。

山尾分科員 ありがとうございました。

西村主査 これにて山尾志桜里委員の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして法務省所管についての質疑は終了いたしました。

 分科員の皆様の御協力により、無事終了いたしました。ありがとうございます。

 これにて本分科会所管の審査は全て終了いたしました。

 これにて散会いたします。

    午後四時五十九分散会


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