衆議院

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第2号 平成25年4月15日(月曜日)

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平成二十五年四月十五日(月曜日)

    午前九時三十分開議

 出席分科員

   主査 伊藤 達也君

      伊藤信太郎君    大野敬太郎君

      小林 鷹之君    中山 泰秀君

      藤原  崇君    保岡 興治君

      山田 賢司君    泉  健太君

      山田  宏君

   兼務 大西 健介君 兼務 今村 洋史君

   兼務 岩永 裕貴君 兼務 河野 正美君

   兼務 坂元 大輔君 兼務 國重  徹君

   兼務 中野 洋昌君 兼務 樋口 尚也君

   兼務 椎名  毅君 兼務 塩川 鉄也君

   兼務 小宮山泰子君

    …………………………………

   法務大臣         谷垣 禎一君

   外務大臣         岸田 文雄君

   総務副大臣        坂本 哲志君

   外務副大臣        鈴木 俊一君

   内閣府大臣政務官     島尻安伊子君

   法務大臣政務官      盛山 正仁君

   外務大臣政務官      あべ 俊子君

   防衛大臣政務官      佐藤 正久君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 新井  豊君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 山下 史雄君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    高綱 直良君

   政府参考人

   (警察庁刑事局組織犯罪対策部長)         室城 信之君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    高橋 清孝君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局参事官)            小野  尚君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 平嶋 彰英君

   政府参考人

   (総務省自治行政局選挙部長)           米田耕一郎君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 岩尾 信行君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          小川 秀樹君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    稲田 伸夫君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    西田  博君

   政府参考人

   (公安調査庁長官)    尾崎 道明君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   越川 和彦君

   政府参考人

   (外務省大臣官房儀典長) 草賀 純男君

   政府参考人

   (外務省大臣官房国際文化交流審議官)       芝田 政之君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 齋木 尚子君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 山崎 和之君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 新美  潤君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 山野内勘二君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 正木  靖君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 和田 充広君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 山田 滝雄君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    伊原 純一君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   福田 淳一君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           関  靖直君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           常盤  豊君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           山野 智寛君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           高島  泉君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    岡田 太造君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 唐澤  剛君

   政府参考人

   (国土交通省航空局交通管制部長)         重田 雅史君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局次長) 前田  哲君

   法務委員会専門員     岡本  修君

   外務委員会専門員     細矢 隆義君

   予算委員会専門員     石崎 貴俊君

    ―――――――――――――

分科員の異動

四月十五日

 辞任         補欠選任

  伊藤信太郎君     藤原  崇君

  保岡 興治君     赤枝 恒雄君

  前原 誠司君     渡辺  周君

同日

 辞任         補欠選任

  赤枝 恒雄君     大野敬太郎君

  藤原  崇君     小林 鷹之君

  渡辺  周君     小川 淳也君

同日

 辞任         補欠選任

  大野敬太郎君     山田 賢司君

  小林 鷹之君     伊藤信太郎君

  小川 淳也君     泉  健太君

同日

 辞任         補欠選任

  山田 賢司君     小林 史明君

  泉  健太君     吉田  泉君

同日

 辞任         補欠選任

  小林 史明君     新開 裕司君

  吉田  泉君     前原 誠司君

同日

 辞任         補欠選任

  新開 裕司君     保岡 興治君

同日

 第一分科員塩川鉄也君、第四分科員岩永裕貴君、河野正美君、國重徹君、第六分科員中野洋昌君、樋口尚也君、第七分科員今村洋史君、坂元大輔君、小宮山泰子君、第八分科員大西健介君及び椎名毅君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成二十五年度一般会計予算

 平成二十五年度特別会計予算

 平成二十五年度政府関係機関予算

 (法務省及び外務省所管)


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     ――――◇―――――

伊藤主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。

 平成二十五年度一般会計予算、平成二十五年度特別会計予算及び平成二十五年度政府関係機関予算中法務省所管について、政府から説明を聴取いたします。谷垣法務大臣。

谷垣国務大臣 平成二十五年度法務省所管等予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 法務省は、法秩序を維持し、国民の権利利益を擁護するという基本的な任務の遂行を通じて、国民が安全で安心して暮らせる社会を実現するため、法務行政の充実強化を図っており、現下の厳しい財政事情のもとではありますが、所要の予算の確保に努めております。

 法務省所管の一般会計予算額は、六千九百六十五億四千六百万円となっております。

 また、復興庁所管として計上されている法務省関係の東日本大震災復興特別会計予算額は、四十三億四千八百万円となっております。

 何とぞ、よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。

 なお、時間の関係もございますので、お手元に配付してあります印刷物を、主査におかれましては、会議録に掲載されますようお願い申し上げます。

伊藤主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま谷垣法務大臣から申し出がありましたとおり、法務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊藤主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

伊藤主査 以上をもちまして法務省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

伊藤主査 この際、分科員各位に申し上げます。

 質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。

 なお、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。藤原崇君。

藤原分科員 おはようございます。自由民主党の藤原崇です。

 本日は、法曹として、また政治家として大先輩である谷垣法務大臣に質問をさせていただくということで、大変光栄であります。まだまだふなれでありますが、どうぞよろしくお願いいたします。

 本日は、大きく分けて二点、法曹養成制度それから刑事裁判の制度についてお尋ねをさせていただきたい、そのように思っております。

 まず第一点目として、法曹養成制度、これについて御質問をさせていただきます。

 今から十年ほど前、いわゆる司法制度改革が行われ、その中で法曹人口をふやそうという試みが始まったということでございます。確かにその結果、法曹はふえましたし、一定程度司法が身近になった、このことについては私もそのとおりだというふうに思っております。

 ただ、その一方で、現在内外で、法曹の数が多いのではないか、このような議論があるところもあります。

 閣議決定によって、二〇〇二年、合格者数を三千人程度とする旨の閣議決定がなされております。しかし、これについては現時点において達成はされておらず、おおむね二千人程度で推移をしているという状況でございます。

 この三千人という数字、これの当否については今内外で議論をしておりますし、どういうあるべき法曹の姿を目指すかという非常に難しい議論だと思いますので、この三千人の当否それ自体については今回は御質問いたしません。しかしながら、二〇〇二年の閣議決定、これが達成できなかった、こういう事実についてはしっかりと考える必要があるのではないかと私の方では思っております。

 これは閣議決定事項に関することですので、なかなか難しいのかもしれないんですが、政府として、平成二十二年度ころまでに合格者数を三千人にする、この閣議決定が達成できなかったこと、このことについてどういうことが理由であるか、恐らく複数の要素が考えられたりするとは思うんですが、その点について具体的にお答えいただければと思います。

小川政府参考人 ただいま御指摘ございました司法試験の合格者の数は、これまで司法試験委員会におきまして、法曹となるべき能力の有無を判定するという観点から、適切に決定された結果であるというふうに認識しております。

 法曹人口のあり方につきましては、さまざまな考え方がありますところ、現在、内閣に設置されました法曹養成制度関係閣僚会議のもとに置かれました法曹養成制度検討会議において検討しておりまして、今般、四月九日付で中間的な取りまとめがされ、現在、パブリックコメント手続に付しております。

 中間的な取りまとめの中では、「全体としての法曹人口を引き続き増加させる必要があることに変わりはない。」としつつ、「現在の法曹養成制度を取り巻く状況に鑑みれば、現時点において、司法試験の年間合格者数を三千人程度とすることを目指すべきとの数値目標を掲げることは、現実性を欠く。」といたしまして、「現状においては、司法試験の年間合格者数の数値目標は設けないものとすることが相当である。」とされております。

 法曹養成制度検討会議におきましては、今後、パブリックコメントを受けまして引き続き議論を行う予定でありまして、政府においては、その議論、意見などを踏まえ、法曹養成制度関係閣僚会議において結論を出す予定でございます。

藤原分科員 ありがとうございました。三千人を目標にしたけれども、司法試験委員会の方で、法曹としての質、そのようなところを考慮して、現在では二千人という数字で推移をしているということでございます。

 最近、この司法制度改革の中でよく聞かれる議論として、一つ、近時、司法制度改革によって法曹の質が低下したのではないか、このような議論がよくなされているところでございます。法曹の質とは何かというふうに申し上げますと、これについては一概には言うことはできない、裁判で勝つのがいい弁護士なのか、それとも、裁判では負けるけれどもクライアントの信頼をしっかりと得ているのがいい弁護士なのか、それは裁判官でも検察官でも同じだと思うんです。

 ただ、一方で、法曹の質が低下している、こういう議論があるのも事実ではあるんですが、実際に、この法曹の質が低下しているという議論について、これに関して、政府はそのような見解についてどう考えているか、これについてお答えいただければと思います。

谷垣国務大臣 いわゆる司法制度改革で、法科大学院を中核として、司法試験、司法修習と有機的に連関させながら、質を確保して、同時に量も、今までよりも多くの法律家を養成していこうという狙いがあったわけですね。

 ところが、今、藤原さんが指摘されましたように、質が落ちたという議論を確かに当初私も聞きました。二回試験は大勢落第するんじゃないかとか、あるいは、基本法も十分わきまえていない修習生がいるとか、そういったことも耳にしなかったわけではありません。しかし、それについてはある程度改善策も打たれたんだと思いますが、最近はそういう議論を耳にすることが前よりは少なくなったような気が私はいたします。

 それで、私の認識ですが、既に藤原さんのような方がロースクールの教育を経て立派に活躍しておられる。それは藤原さんのみならず若い法律家を見ていると、なかなか頑張っておられる方がたくさん出てきているようにも思います。だから、法律家の質が一概に悪くなったという議論ではないのではないか。必要な質は確保されている、それは大勢いる中にはいろいろな方がいらっしゃるかもしれませんが、私はそういうふうに認識しております。

 いずれにせよ、量と質両方を確保する、これは、三千人を今一応数字は中間報告では削りましたけれども、従前に比べて量と質両方を確保しながら司法を充実していくという目標は、基本は変わっていないだろうと思いますし、そのための質は私は確保されつつあるのではないかと思っております。

藤原分科員 ありがとうございます。私自身が新司法試験組なので、そういう議論というかそういう話がよく耳に敏感に入ってくるだけなのかなとも思っているところでございますが、谷垣法務大臣からそういうお言葉をいただくというのは大変ありがたいことでございます。

 ただ、私の方で、この司法試験の合格者数、それと二回試験の不合格者数、これについて、旧司法試験のころから数字として一覧としてつくってみました。もちろん法曹の質、二回試験の合否だけで判断するものでないというのは重々承知なんですが、ただ、その一方で、最低限、司法実務に出す直前で、最後、これは出してはいけない、そういう人を一応落としているという建前になっているこの二回試験の不合格者数というのは、一つのメルクマールになるのではないかということで、私の方で検討をしてみました。

 確かに、新司法試験になってからふえてきてはいるんですが、それと同時に、現行試験でも、平成十年ころから、やはり十一年、十三年ころからは数字としてふえてきているということになっております。実際問題、やはり平成十三年ころからの現行試験の不合格者数という数字も、これは新司法試験の数字に見劣りがしないという言い方はちょっと語弊があるんですが、同じくらいの水準で回っているということになっております。

 そういう意味では、では一体どうして二回試験の不合格者数がふえてきたのか。私、この点についていろいろ考えてみますと、やはりある程度、人数をふやしてしまえば従来受からなかった層が入ってしまう、これはいい悪いではなくて、事実としてやはりそういうところが一つ大きな理由なのかなと思っております。

 従来であれば、五百人時代であれば入らなかった人が千人時代になれば入る、二千人時代になれば合格できなかった人が受かってしまう、そういうことが一つ理由にあるのかなという意味で、私は、新司法試験になったからといって、ロースクールで教育を受けたからといって、必ずしも質が低下するというのは直結しないのかなと思っているんです。

 ただ、その一方で、やはりこの二回試験の不合格者数、これがある程度ふえているというのは事実ですので、この点については法科大学院の教育である程度充実をさせていく必要があるのかなというふうに思うんですが、文科省の方で、この法科大学院の教育について、どのように改善をしていこう、学力向上に取り組んでいこうとお考えか、お答えいただければと思います。

常盤政府参考人 法科大学院教育の質の向上ということでお尋ねをいただきました。

 法科大学院は、プロセスとしての法曹養成制度の中核的な教育機関でございますので、その修了生には、司法試験、司法修習を経て、将来の法曹として活躍するために必要な能力を修得させるということが必要だと考えております。このため、法曹関係者の方々の御参画もいただきながら、修了生が共通に備えておくべき能力等に関する共通的な到達目標モデルを作成するという作業をいたしておりまして、それを作成し、法科大学院に対して提示をしているところでございます。

 これを踏まえて、現在、各法科大学院において、具体的な到達目標の設定あるいはカリキュラムの改善ということを継続的に進めているところでございます。

 また、学習成果の評価ということも重要でございますので、文部科学省として、各法科大学院に対しまして、厳格な成績評価、修了認定の徹底を求めますとともに、特に法学未修者教育の質の向上ということが重要でございますので、そういう観点から、法科大学院共通の客観的かつ厳格な進級判定の仕組みの検討ということも進めているところでございます。

 こういうことを通じて、今後とも引き続き法科大学院生の学力向上に取り組んでまいりたいと考えております。

藤原分科員 ありがとうございました。

 私自身が、ロースクールを修了した後もロースクールの教育のお手伝いみたいなことをしていて感じるのは、やはり私が入学した当時と今のロースクール、いろいろな変わっているのもあるんですが、やはり教育についても、かなり中身については努力をなされているなというのは私も感じるところであります。

 ただ、その一方で、入学者数、志望者数が先細りになってしまうと、そもそもの母数が大きい場合に比べて、人材の質というか、人の学力というか、そういうものについてもやはりどうしても差異が出てきてしまう。たくさんの人の中から選抜をした方が、これはある程度以上ということには考えられるという意味では、教育の内容の改善と同時に、入り口ですね、入り口で多くの人に志望してもらえる、そういう法科大学院、そういう司法制度にしていく必要があるのではないかというのはやはり私も感じております。

 先ほど政府参考人の方からプロセスとしての教育というお言葉があったんですが、最後、司法制度改革で、この点についてちょっとお尋ねをしたいんです。

 私自身が、大学の学部を出て、法科大学院を出て、司法研修所を出て、弁護士になって、ではどうやってよき法曹というのはつくられるのだろうということを考えたときに、司法試験に受かったから弁護士として仕事ができる、これはそうではないのかなと。司法研修所を終了したから弁護士として仕事ができる、ある程度まねごとみたいなことはできるんですが、ただ、一人前の法曹としてしっかりと仕事を一人でできるかといえば、やはりそうではないのではないか。

 では、どうやっていい法曹、よき法曹というのはつくられていくのかというふうに考えますと、私は、司法研修所を終わった後が非常に大事ではないかというふうに思っております。

 例えば、裁判官であれば、任官してから五年間は一応左陪席ということで、単独での裁判はできない。特例判事補ということで、おおむね五年程度がたてば単独で裁判ができる。ということは、裁判所では、五年間程度で実務をやって一人前というふうに扱われているのではないか。検察官については、ある程度の初等教育が終わった段階で一人でやるわけですが、決裁官が一応いるということでは、ある程度最終チェックがなされている。

 私は、そういう裁判官、検察官の制度を考えると、プロセスとしての法曹の養成、これでは、実務についてからの最初の期間、この期間にしっかりとした仕事をする、自分で責任を持って、たくさんのクライアント、たくさんの裁判官とやりとりをしていく、このことが非常に重要じゃないかなというふうに思っております。

 ただ、先般の中間の取りまとめ案では、法曹資格を取得した後の話というのはプロセスから外れているような記載の仕方になっているんですが、私は、法曹資格を取得した後の方がプロセスとしては非常に重要ではないかなというふうに思っているんですが、この点について御見解をいただければと思います。

谷垣国務大臣 プロセスとしての法曹養成というのが、法科大学院を入れたときの一つの理念でありました。しかし、そのとき、同時に、法曹の継続教育も必要であるということが強調されていたのではないかと思います。

 主として、当時は法科大学院にも一応、出て、実務家になった後の継続教育というのも担当させようという考え方があったんだと思いますが、しかし、それと同時に、いわゆるオン・ザ・ジョブ・トレーニングといいますか、実際に実務の中でみずからを鍛えていく、法曹として伸びていくということが必要なことは私は変わりないと思いますし、むしろ極めて重要なことだ、私もそのように認識しております。

藤原分科員 これから法曹制度はどのような仕組みになっていくか、これが議論をされていくと思うんですが、その中では、ぜひ、法曹資格を取得した後の教育についても重点を置いて制度設計をしていただければというふうに思っております。

 法曹制度についてはこれで私の質問は終わりにしまして、次には刑事裁判のお話についてお尋ねをさせていただきます。

 まず第一に、取り調べの可視化についてお尋ねをします。

 これについては、議論の仕方として二つあると思うんです。まず、取り調べの可視化を法制度にするかどうかという立法政策の話、それから、現在、実際上として取り調べの可視化はある程度運用としてなされていますので、この運用についてのお話、二つあると思うんですが、私の方では、今回、取り調べの可視化の現在進んでいる運用の方についてお尋ねをします。

 取り調べの可視化、試行段階ということなんですが、これについては、試行ということは、ある程度の段階で、現在までの試行状況がどうだったかを見て運用を見直す、あるいは改善を加える、そのようなことを考えるかと思うんですが、この点についてのスケジュールについて、どういうふうになっているか。これは検察庁と警察庁、また別々で運用しているということなので、両方に御答弁いただければと思います。

稲田政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、検察当局におきましてでございますが、現在におきましても、裁判員裁判の対象事件、知的障害によりコミュニケーション能力に問題がある被疑者などに係る事件、精神障害などにより責任能力の減退、喪失が疑われる被疑者に係る事件、いわゆる独自捜査でありまして、いずれにつきましても、被疑者の身柄を拘束している事件につきましては、その取り調べの全過程を含めまして、できる限り広範囲な録音、録画を行うなど、積極的に取り組んできているところと承知しております。

 ただ、今御指摘のございましたように、現在、法制審議会の新時代の刑事司法制度特別部会におきまして、取り調べの録音、録画制度の導入などにつきまして調査審議が行われているところでございますので、検察当局におきましては、引き続きまして、今申し上げました各種の事件について、着実かつ積極的な録音、録画への取り組みを継続していく方針であるというふうに承知しているところでございます。

高綱政府参考人 警察におきましては、裁判員裁判における自白の任意性の効果的、効率的な立証に資する方策につきまして検討いたしますため、二十一年四月からは全ての都道府県警察で試行を実施しておりましたが、二十四年、昨年四月からは、裁判員裁判対象事件につきまして、自白事件に限らず、必要に応じて否認事件等にも試行を拡大いたしますとともに、取り調べのさまざまな場面を対象に試行を実施しております。また、昨年五月からは、知的障害を有する被疑者に係る事件についても試行を開始しておるところでございます。

 警察といたしましては、今後とも、取り調べの録音、録画のあり方を検討する際の実証的資料を収集するため、数多くの試行を積み重ねる必要があることを踏まえまして、質、量ともに、一層積極的に試行に取り組んでまいる所存でございます。

藤原分科員 ありがとうございます。

 現在、一つの議論で、全件の可視化を進めるべきだという議論があるところでございます。これについてはいろいろな観点から検討する必要があると思うんですが、仮に全件可視化になった場合、検察庁あるいは警察庁でどれくらいの費用あるいは人員をこれから割いていかなければならないのか、この点について教えていただきたいと思います。

稲田政府参考人 先ほども申し上げましたように、現在、法制審議会におきまして、この可視化の問題につきまして、どのような制度導入をしていくのか調査審議中であるという状況でございますので、今後の取り調べの録音、録画のあり方につきまして、現時点においてはなかなか確定していない部分が多いということもございますので、御指摘のありましたような、例えば検察庁の全受理事件の全取り調べが録音、録画の対象となった場合ということについての事務負担や、所要の予算額についてまで把握しているところではございません。

 ただ、これまでの試行に対応するために、平成二十四年度末までに全国の地方検察庁に取り調べの録音、録画装置を既に七百九十六台配備済みでございます上、現在御審議いただいております二十五年度予算案におきましても、この録音、録画装置の整備経費として約六億八百万円が計上されておりまして、これによりまして、更新分も含めまして百九十七台の録音、録画装置が増設される予定となっております。

 今後の事務負担や予算措置などにつきましては、法制審議会の特別部会での議論の状況を見守りつつ、かつ、現在の施行状況を踏まえながら検討していかなければいけないと思っております。

高綱政府参考人 警察におきましても、録音、録画を実施するに当たりましては、録音、録画機器の整備等に要する経費など物的、人的負担が必要となるところでありまして、現行の録音、録画の試行を実施するに当たりましても、平成二十四年度末までに全警察署、一千二百五カ所でございますが、これに対して、録音、録画装置合計八百二十七式を整備すべく措置した上で、御審議いただいております平成二十五年度予算案におきましても、さらに必要な経費として約二億円が計上されているところでございます。

 いずれにいたしましても、取り調べの録音、録画の制度のあり方につきましては、現在、法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会におきまして調査審議が行われているところでありますので、その議論の推移を見守りつつ、引き続き必要な事務負担、そして予算負担につきましても検討を進めてまいる所存でございます。

藤原分科員 ありがとうございます。

 今、どのような制度がいいかということを法制審議会の方で議論をしているということでございますが、どのような議論がよいかということを判断する前提として、やはりコスト的な問題というのは前提問題として把握をしていくことが必要なのかなということで、複数の場合、ある程度の事件に絞るのか全件なのか、それでどの程度国の負担がふえるのか。このようなことは、審議の成果を見守ることも大事なんですが、それと別に、審議に対しての資料の提出という意味でも、その点についても検討してもよろしいのかなというふうに思いました。

 具体的な話に参るんですが、現段階においては、裁判員裁判、これは取り調べの可視化を入れる一つの理由になったと思うんですが、これについて、裁判員裁判だけでなく、一般の弁護士と検察官と裁判官だけの刑事事件にも、ある程度、運用として、否認事件の場合にはやはり供述の信用性、任意性というのが問題になることが多いという意味では、法曹三者の場合であってもDVDを使用するということは、刑事訴訟法の目的である事案の適正な把握、刑罰権の適正な行使に資するのではないかなというふうに思っております。そういう点で、裁判員裁判外の事件を含めるということについて、政府の御見解をいただければと思います。

谷垣国務大臣 今、藤原委員がおっしゃったように、当初、裁判員裁判、市民である裁判員に的確に供述の信用性、任意性を立証していく必要がある、これが出発したときのかなり大きな動機だったわけですね。しかし、徐々にその試行範囲を広げてきたことも、先ほどからの御答弁にあるとおりでございます。

 そこで、そういうことをやってまいりまして、これは確かに重要な意味があるということでありますが、やっていきますと、その中にはさまざまなものが含まれて、録音、録画に伴う問題点も幾つか指摘されてきている。

 例えば、緊張とかあるいは恥じらいの感情、羞恥心それから自尊心、こういったものはどなたもお持ちですから、心理的影響があって、なかなか、プライバシーとかあるいは関係者、共犯者への配慮、そういうものは録画されると話せないということもあると思います。

 それから、取り調べ官の側にも、録音、録画を意識して十分に取り調べができていないという事例もなかったわけではないと思うんですね。

 それからもう一つは、そういった問題が調書には書かれなかったけれども公判廷で録画が出てきた場合に、当事者のプライバシー、これはなかなか難しいなという事案もある。

 そういうことでございますから、そういう問題点も十分に配慮して検討していかなければいけない。ですから、今、やはりこれが必要だと思われて試行してきたわけですが、まずはそういったところを十分に取り組んで、問題点も明らかにしていくということが必要ではないかと思っております。

藤原分科員 ありがとうございます。

 おっしゃるとおり、単なる取り調べと、やはりDVDで録画されて後まで残るということは、いろいろな面でプラスマイナス、取り調べ担当者、被疑者、参考人等あると思うので、その点については慎重に御判断いただくとともに、やはり裁判での実体の真実、この点についても御配慮いただければと思っております。

 DVDの件、取り調べの可視化について、私の方で一点気になっている点について最後にお尋ねをします。

 従来の裁判というのはいわゆる供述調書を使って裁判をするということが中心であったんですが、取り調べの可視化の結果、DVDがあると、ちょっと専門的な話になるんですが、そのDVDを証拠として出してしまえば伝聞証拠としての扱いではないということになりますので、取り調べのDVDで、もう自分がやりましたとか自分がこういうことがありましたというふうに話として言ってしまえば、信用性としては争えるのかなと思うんですが、理屈からいうと、証人を呼んで調べる必要、これは必ずしもあるわけではないという考え方もできると思うんですね。

 つまり、何が言いたいかと申しますと、この取り調べの結果のDVD、これを刑事裁判に出す、しかもそれを任意性とか信用性だけではなく罪体立証そのものに使う、そのような運用がなされた場合には刑事裁判のあり方が大きく変わるのではないかなということを私は考えておりまして、それがいい悪いではなく、そういうことも想定されると思うんです。

 検察庁としては、この取り調べ録画の結果を罪体立証等についても使うことは、一件ほどあるらしいのですが、今後大きく運用としてそれをやっていくかどうかという点についてお尋ねをしたいと思います。

稲田政府参考人 お尋ねの点は、極めて実務的なところがございます。

 結論的に申し上げますと、立証責任を負う検察官において個々の事案ごとに具体的に判断すべきものということになろうかと思います。

 ただ、一般論ということで申し上げさせていただきますと、例えば、取り調べにおきまして録音、録画には応じているものの、そしてそれで供述をしているという状況はあるんですけれども、供述調書の作成を拒否している場合というようなことも考えられます。そのような場合などには、録音、録画したDVDなどを犯罪事実あるいは重要な情状の立証のために使用するという必要がある場合も想定されるのではないかというふうに考えております。

藤原分科員 まさしくそのような場合に、DVDを出すことの当否というのが問題になっているんだというふうに思っております。

 最後の質問なんですが、刑事裁判における証拠開示について、一点簡潔にお尋ねをします。

 いわゆるこの証拠開示、現行は一件記録の開示というのはなされていないんですが、こういうことも一つ検討する必要があるのではないかと思うんですが、この点について簡潔に御答弁いただければと。

稲田政府参考人 証拠開示につきましては、御案内のとおり、平成十六年の刑事訴訟法改正によりまして、相当程度拡充された改正が行われまして、現行は、その趣旨に沿った開示を行っているものというふうに考えているところでございます。

 その際、確かに、御指摘のような全面開示というような議論も平成十六年の改正時には検討対象とされましたけれども、やはり罪証隠滅のおそれでありますとか関係者の名誉、プライバシーの侵害などの弊害が生じる場合があるのではないかという問題点も指摘されたというところがございます。

 そのような観点も踏まえまして、検察当局においては、訴訟に必要なものは基本的に開示するということで、現行法制のもとで適切に対応していくものと承知しております。

藤原分科員 ありがとうございました。これで私の質問は終わります。

伊藤主査 これにて藤原崇君の質疑は終了いたしました。

 次に、樋口尚也君。

樋口分科員 おはようございます。公明党の新人の樋口尚也でございます。早朝から大変にお疲れさまでございます。

 私、きょうが人生で三回目の国会質問でありまして、当然、予算委員会の分科会では初めての質問になります。自公連立政権をお支えする、その立場で全力で取り組んでまいりたいと思っておりますので、谷垣大臣初め皆様の御指導、御鞭撻、よろしくお願いを申し上げます。

 私、昨年の十月三十一日まで建設会社の営業マンとして働いておりました。本当に営業を主としておりましたので、法務関係について専門家ではございません。ですけれども、きょうは、現場の声をお届けさせていただく、そういう趣旨で御質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 まず最初に、再犯率、これを下げていくための方策について何点かお伺いをさせていただきます。

 まず、近年の再犯率について、一般刑法犯の再犯率は、一九九七年以降、十五年連続で悪化をしております。昨年の犯罪対策閣僚会議、これによりますと、検挙人数に占める再犯者の割合、再犯率は、一九九七年の二八%から一貫して上昇を続けて、四三%に達しております。

 その再犯率を下げるための施策について、三点、お伺いをさせていただきたいと思います。

 私は、近畿ブロックの比例区でございまして、大阪市内に住んでおりますので、きょうは大阪の話題から質問を始めさせていただきたいと思います。

 まず初めに、大阪府の子どもを性犯罪から守る条例、これについてお伺いをしたいと思います。

 御承知のとおり、大阪府が十八歳未満の子供に対する性犯罪前歴者に居住地の届け出を義務づける全国初の条例が、昨年、平成二十四年の十月一日に施行されました。

 まず、この条例について、谷垣大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

谷垣国務大臣 今、樋口委員が、再犯率を下げるという観点から質問に立たれたわけですね。実は、私が法務大臣をお受けしましたときに安倍総理から特に御指示がありましたのが、再犯率を下げて、安心、安全な社会をつくるように努力せよということでありました。そして、この課題をやっていくためには、やはり犯罪を犯した人が社会復帰できるということがなければならない。それをどうしていくかというのが実は私の大きな課題でございます。

 その中で、なかなか問題が多いなと思うのが、実は性犯罪でございます。今お尋ねの大阪のその条例、これは、子供が性犯罪の被害に遭わない、その加害者をつくらない社会の実現を目指すという趣旨のもとで、十八歳未満の子供に対する性犯罪によって刑事施設に服役した者を対象にしまして、刑期終了日から五年以内に大阪府に住所を定めた場合、住所等の届け出義務をその人に課する、それから同時に、その届け出を行った者に対して社会復帰支援を行おう、こういう趣旨だと理解しております。

 そこで、大阪府から法務省も協力依頼を受けまして、もちろん、こういうことを大阪府だとやっているよということをポスターの掲示とかパンフレットの備えつけによって周知させよう。それから、受刑者の中で対象者となる可能性が高い方、つまり大阪近郊にまた行くだろう、それは個別の説明をして、こういうふうになっているよと。それから、受刑者から条例についての質問があった場合にきちっと施設としても対応しよう。それから、届け出があった者が条例の対象者であるか否か、つまり、先ほど申し上げたような性犯罪を犯した者であるか否か、大阪府から刑事施設に調査依頼があった場合に、ここから先が一つあれなんですが、いろいろプライバシー等の問題もありますから、その者が回答に同意しているときに限り書面による回答を実施しよう。そのようなことを法務省としてはやるということでございます。

樋口分科員 ありがとうございます。

 今の御答弁ともダブりますけれども、平成二十四年の七月に大阪府知事から要請をした点が二点あるというふうに伺っておりまして、一つは、国における再犯防止対策の早期確立と実施、そして二つ目には、大阪府の実施する取り組みについての支援ということの要請をしているというふうに承っております。

 この点につきまして、今の回答とダブるところはありますけれども、ぜひ、総理からもそういう再犯を下げるという御指示があったということでございますので、進捗状況についてお伺いできればというふうに思います。

谷垣国務大臣 この問題は、法務省だけで取り組めば済むというものではございません。再犯を防止するためには、政府全体を挙げて取り組む必要がありますし、特に、再犯を防止する、社会復帰ができるということのためには、社会に居場所がなきゃならないということでございます。つまり、住むところもなきゃいけないし、職もやはり得られなければいけない。そういったことを達成していくためには、役所、行政やなんかだけでできるわけではない、民間の御協力も必要であります。

 そういうことをいろいろやっていくために基本となっておりますのは、平成二十四年の七月に、性犯罪対策等を盛り込んだ再犯防止に向けた総合対策が犯罪対策閣僚会議で決定されております。それを受けまして法務省内にプロジェクトチームをつくりまして、さまざまな検討課題について協議を重ねながら再犯防止対策に取り組んでいるということでございます。

 先ほど申しましたように、関係省庁や特に民間の方々と緊密に連携しながら、具体的な取り組みを積極かつスピーディーに図っていきたい、このように考えているところでございます。

樋口分科員 ありがとうございます。

 全国初のこの大阪の条例ということでございますので、ぜひ全国にも展開をしていけるように我々も頑張ってまいりたいというふうに思っております。

 まさに、今大臣が御指摘をいただきました、関係省庁の皆様そして民間、力を合わせて、安心、安全のために、私たち大阪でよく言うのは、寄ってたかってこの再犯防止対策を推進していきたい、こういうふうに私自身も決意をしておりますので、ぜひ推進方をお願いしたいと思います。

 次も、同じ再犯率を下げるためのものについて質問をさせていただきます。次の質問は、保護司に関する問題であります。これも現場の声を聞かせていただいているところです。

 保護観察対象者や刑務所を出所した元受刑者らの社会復帰と再生を支えるこの保護司、再犯を防ぐ重要な担い手でありますけれども、御承知のとおり、近年は、地域社会の変化などにより新たな保護司の確保が困難になっている、減少しているということが指摘をされております。

 大臣の三月二十六日のブログを読ませていただきまして、大変感銘を受けました。東日本大震災被災地訪問のブログです。その中でもこう書いてありました。

 被災三県で活動されている保護司や人権擁護委員の方々と意見交換をしました。例えば、ある保護司の方は、昔扱った案件でとても難しい対象者だった人が、現在、被災地で立派にボランティアとして復興に取り組んでいると聞いて、よかったと思いましたと言っていました。また、別の保護司の方から、みずからも津波の被害に遭いながら、観察をしている対象者を必死で捜し当てて、いろいろ相談をしたと聞くと、本当に頭が下がる思いです。この保護司の皆様や人権擁護委員の方々のこのような活動に力を入れていただいている点について、本当に感謝の念にたえませんというふうに記載がございました。大変感銘を受けたところでございます。

 この保護司の実情について、減少していると言われておりますが、その定員数は全国で五万二千五百人と伺っております。その中で、今、減少している背景や今後の具体的な負担軽減策についてお伺いをしたいと思います。

谷垣国務大臣 今、私のブログも引いていただきましたが、私は、被災地へ行きまして、本当に保護司あるいは人権擁護委員といった方々の使命感といいますか献身的な働き、震災ですからもちろんインフラの復興なんかは必要ですが、それと同時に、心のケアみたいなところまでいかないとなかなかできない、そういうところを非常に頑張っていただいているなと感銘を受けたところです。

 それで、非常に大事な保護司制度なんですが、実は減少しておりまして、今、平成二十一年の一月一日には四万八千九百三十六人おられたわけですが、平成二十五年一月一日、ことしの一月では四万七千九百九十人と約千人減少しております。それで、定員に対する充足率は、今、九一・四%になった。

 リクルートもなかなか難しくなっているところはいろいろな理由があると思うんですが、社会構造、昔は名士みたいな方が中心にやっておられたけれども、昔の名士と言われるような方もだんだん少なくなってきたということもあるかもしれません。しかし、やはり大きな原因は、犯罪を犯した方を対象として保護司活動をするわけですね、そうしますと、過去に幾つか不幸な事件があったことも事実でございます。ですから、そういうことに従事することに不安を覚える、そういう事情も私はあるんだろうと思うんですね。

 そこで、保護司に安心して保護司のお仕事をしていただけるようにしなきゃいけない。そこで、対象者等から被害を受ける場合があるわけですね、物的損害なんかが起こる。典型的な事例では、対象者から家に火をつけられた、放火に遭ったという事例がかつてございました。そのときに、やはり補償制度が何もないということに改めて気づいて、これではいかぬということで補償制度を創設して、平成二十四年度から運用しております。

 それから、平成二十五年度政府予算案においては、保護司の活動拠点となる更生保護サポートセンター、これを九十カ所増設して、合計二百四十五カ所の設置をしたい。これは、先ほど名士と申しましたが、広いお宅なんかに住んでおられて、いつでも対象者を呼んで相談に乗れるというような方々ばかりではなくなってきて、家族の目も意識しながら対象者の相談に乗ることもなかなか難しい。やはり、そういう場所をつくっていく必要があるというようなことですね。

 それからもう一つは、やはりああいう人になってもらうといいんじゃないかと、それぞれの地域の事情に通じた方々から保護司適任者の情報提供をいただくような保護司候補者検討協議会というのもやることにしまして、全保護区において開催できるように今措置している、これは今年度予算に入っているわけであります。

 再犯防止には保護司の活動というのが本当に必要不可欠でございますから、今後も、負担をできるだけ軽減して、やりがいを持って活動していただけるよう工夫してまいりたいと思っております。

樋口分科員 ありがとうございます。

 公明党も一貫してこの保護司の負担の軽減や活動経費の増額をお願いしてきたところでございますけれども、今後もしっかり私どももフォローアップさせていただきたいと思いますので、また現場のお声を届けさせていただきたいと思います。

 次に、これまた再犯率の話。先ほど、社会復帰の職場の確保、このお話を大臣からも頂戴いたしました。三点目にお伺いをいたしますのは、職親プロジェクトについてお伺いをしたいと思います。

 平成二十五年の三月十八日、日本財団の笹川会長と大阪のお好み焼きの千房の社長の中井政嗣社長が大臣を訪問されております。その際に、両氏から、矯正施設出所者の再犯防止を目指す職親プロジェクト、これについての協力を求められたということでございます。

 概要、いろいろありますけれども、私も千房の中井社長とは、私、大阪ブリッジという異業種交流会をサラリーマン時代にやっておりまして、その際にも、できるやんかとか、それでええやんかというような講演もいただきまして、もう本当に感動をして、涙を流して聞かせていただいた思い出があります。

 本当に一生懸命にこういうことに取り組んでいらっしゃって、これまでもさまざまな実績を上げられておりますけれども、今回は、この職親プロジェクトというプロジェクトを立ち上げられて、大臣にその依頼というか、懇談にいらっしゃったということでありますけれども、その点について。

 この職親プロジェクトというのは、関西系の企業七社が、日本財団の支援を得て、矯正施設からの出所と同時に約半年間就労を体験させて、その後、正規雇用につなぐということを目指す民間による就労支援策ということでございますが、この点につきまして、大臣の御所見と、支援策、これからのあり方、ぜひお伺いをしたいと思います。

谷垣国務大臣 今、樋口委員からお話のありました職親プロジェクト、これは私どもにとりましても大変ありがたいお取り組みでございまして、やはり社会に居場所をつくっていくという意味から非常に大きな力を与えていただいていると思っております。

 それで、今もお話がありましたように、千房の社長の中井さんが呼びかけられて、関西系企業七社で、日本財団と一緒になって、矯正施設等から出てこられた方の就労等を支援しよう。それで、今もちょっとお話がありましたけれども、各社において半年間就労体験をさせて、その後、正規雇用につないでいこう。それから、就労体験中は社員寮等から通勤して、それぞれの会社が職場での悩みとか生活指導もしながら定期的に情報交換をしよう。こういうお取り組みですね。

 これに対して法務省としてもできる限りのお手伝いというか協力をしようということでございまして、まず、矯正施設に入っておられる方に、このプロジェクト、こういうことがあるよとよく説明して周知徹底するということが一つございます。それから、矯正施設内でそういった企業の担当者と受刑者との面接、そういった面接を円滑に実施していくということが配慮されなきゃなりません。それから、保護観察所におきまして、矯正施設入所中から、本プロジェクトに参加する受刑者等の帰住先、住まいですね、住むところ、必要に応じて保護施設等を調整して、仮釈放なんかになった場合に、各企業と連携を密にして保護観察官による指導を行う。こういったことを協力していくということを考えております。

 そして、各企業の要望等については、既に矯正施設の中で周知徹底をするように図っております。

 大変私どもも期待をしているプロジェクトでございますので、今後も可能な限り協力をしていきたいと考えております。

樋口分科員 ありがとうございます。

 これも大阪で、本当に強い意思で中井社長初め皆様がお始めになられたことでありまして、物の始まり何でも堺という言葉もありますけれども、関西地域でこういうのが始まったということ、すごいうれしくも思いますし、ぜひ支えてまいりたいというふうに思っています。

 全国へ波及をしていくような動きというのは、今のところ、もちろんないと思いますし、通告も差し上げておりませんけれども、この後やはり、私どもも民間出身ですので、民間との連携、また、これから人材不足、人手不足、特に今、国土強靱化を進めていく中でどうしても人が足りないという局面が出てくると思うときに、かなり大事な大事なプロジェクトでありまして、よく見きわめながらも進めていかなければいけない大切なことだと思います。

 例えば、民間企業さんへの呼びかけでありますとか、こういうことを周知徹底するということとか、促進を進めるために、何か御感想、御所見がありましたら大臣のお話を承りたいと思います。

谷垣国務大臣 これは非常に画期的な取り組みでございますが、同時に、就労を支援しようという企業も相当数出てきていることは間違いございません。

 それから、例えば、検察官等が、取り調べをし、いろいろ自分が知り合った、知り合ったと言うと変ですが、取り調べでの対象に、検察官が個人的な企業等の知見があって、そういうのを何とか紹介できないかと考えているような事例もございました。

 こういうのは、その検察官個人と企業との信頼関係というものもありますから、どれだけそういった知見を共有できるかどうかというのも難しいところがございますが、法務省としても、できる限り、そういった就労支援先の企業情報等を集積して、少しでも就労支援ができるような体制というのを考えていかなければならないと思います。

樋口分科員 ありがとうございます。

 私どももいろいろな情報をこれからまた集めて、これまで寄ってたかって偉大なプロジェクトが始まったわけでありますので、しっかりこれをお支えし、また広報、宣伝に努めてまいりたいというふうに思いますので、よろしくお願いをいたします。

 続きまして、離婚後の面会交流についてお伺いをしたいというふうに思います。ちょっと話がかわります。

 今月の四日から、いわゆるハーグ条約についても審議入りをしております。その趣旨は、子供の最善の利益を確保することだ、こういうふうに認識をしておりますけれども、ぜひ早期の成立を図りたい、実現をしてまいりたいという決意をしております。

 さて、国内におきましても、平成二十五年の三月の二十八日、最高裁で面会交流について画期的な判断がされております。まず、この決定の内容と、それについての大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

谷垣国務大臣 平成二十五年三月二十八日、大法廷判決がございまして、これは非常に大事な判決でございます。

 その中身は、家事調停において面会交流に関する合意が成立して、または面会交流を命ずる審判がされたにもかかわらず、その履行がされていない、つまり子供と会わせていない、そういう場合に、間接強制、つまり罰金を支払わせることによって、会わせないと罰金ですよ、こういう間接強制の手法、決定をすることができるかどうかということを判断したものでありまして、一定の要件のもとで間接強制の決定をすることができるとの判断をしまして、その要件を明確化したというふうに受けとめております。

 それで、こういった最高裁判決によりまして、面会交流についても間接強制の方法が、今までいろいろな議論があったわけですが、認められることが明確になった。

 確かに画期的なんですが、しかし、本来からしますと、たとえ離婚した両親であろうと、子供の教育に関しては両方で、双方で合意して、話し合いのもとに円滑に子供を会わせるというのが一番いい方法であるのは間違いないので、これは極端な言い方をしますと、罰金を払うから会わせないとか、金がないから、罰金を取られたって、払えないものは、ない袖は振れないというような話になってもおもしろくないわけですね。

 ですから、我々としては、全体的に、法務省のできることもそこは限りがあるわけですが、できる限り、面会交流の方法がうまく使われていく、そっちの方が本当は大事なんだと思います。

樋口分科員 大臣、本当におっしゃるとおりだと思います。

 私も、きのう、おとといも周りで離婚された方のお話を承っていましたら、やはり皆さん悩んでいらっしゃって、親同士のコミュニケーションがもうとれなくなっているので、なかなか会えないんだと。

 なぜかと申しますと、私、披露宴の司会が趣味でございまして、サラリーマン時代、百三十件やったんです。百三十件もやらせていただくと、一部、そういう離婚をなさる方もいらっしゃいまして、その後もやはりつながっておりますので、よくお話も承っているんです。

 会わせたいけれども会えない、連絡がとりようがない、本当に悩んでいらっしゃる方がたくさんいらっしゃるなと思う中で、この最高裁の判決というのは非常に前向きな判決ですばらしかったな、こういうふうに思っております。

 この面会交流につきましては、子供を精神的に安定させて自尊心を高めて、そして、海外においては公的機関が、こういうことになった場合にですけれども、公的機関が親の間に入って調整に乗り出す、それに対して援助をする、こういう国もあるというふうに報道もされているところであります。

 また、統計ですけれども、司法統計年報によりますと、二〇一一年度に家裁が面会交流で新規に受理した調停の数は八千七百十四件で、十年前の三倍に上ったというような報道もなされております。

 ただ、私も、FPICさん、公益社団法人家庭問題情報センターさんにヒアリングをこの件でさせていただきましたけれども、公的機関による援助、厚労省さんのマターになると思うんですが、これについては東京なども、一部しか実施をされていなく、弁護士さんとかが、では、民間のこの交流機関に出したらと言うんですけれども、この民間がなかなか高くて利用ができない、費用が非常にかさんでなかなかその利用が進まないということもありますし、また、そういうニーズも多くて、やっていただいている人も足りない、こういった問題もあるというふうに承っております。

 現場の率直な声として、こういう場合の、民間もそうですし、官が入ってもそうですが、この面会交流の利用の促進、これは喫緊の課題だというふうに思っております。

 この喫緊の課題に対して、法務省として今後どのような取り組みをされていくのか、お伺いをさせていただきたいと思います。

谷垣国務大臣 今まで取り組んできたことを申し上げますと、要するに、両親、父母が離婚の際にきちっと協議をして、面会交流等について適切な取り決めをする、これを履行することが子の利益の観点から大変大事である、こういうことをまず周知徹底、今の制度を周知徹底しなければなりません。これをわかりやすく説明したパンフレットを昨年三月につくりまして、市町村等を初めとした関係機関に配付しております。

 そして、去年の四月から、離婚届の定型用紙というものがございますが、離婚届に面会交流等の取り決めの有無をチェックする欄を設ける、そういう様式の改定を行いました。それから、各地方法務局に、実際にされたチェックの数を集計して、その結果を適切に開示していこうということで、そういうことによってこの制度の利用を促していこうとしております。

 そして、今の集計でどのぐらいチェックがされているかということを申し上げますと、平成二十四年四月から十二月の集計結果で、未成年の子供がいる夫婦の離婚の場合ですが、七万二千五百三件あった中で、これが、未成年の子がいる夫婦の協議離婚届け出件数中七五%ということになります。取り決めをしているというところにチェックが付されているのが五万一千六百五十六件、これが五四%に当たります。

 ですから、それなりの効果は上がっているのかなと思いますが、さらにどういうことをすればこの利用促進が図れるか、これからもいろいろ工夫をしてまいりたいと思っております。

樋口分科員 もう一点だけ済みません。これも通告しておりませんけれども、こういう民間でやるとか、社団法人さんがいろいろ面会交流をやっておりますけれども、厚労省マターかと思いますけれども、これについて補助を進めていかなければいけないのではないかというふうに思うんです。

 この公的機関による援助、補助、何かそういうことについて、東京都は実施をされているというふうに承っておりますけれども、細かいあれですので、感想というか、済みません。

谷垣国務大臣 ちょっと今の点は私も勉強不足でございますので、これからよく勉強しまして、民間等のお取り組みでどういうことができるかも研究してまいりたいと思います。

 それから、先ほど申し上げたことで一つ、申しわけありません、大法廷判決と申しましたが、小法廷判決の間違いでございました。小法廷の決定でございます。訂正させていただきます。

樋口分科員 ありがとうございます。

 私もこれからしっかり勉強して、公的機関による援助の有無ということについては、海外では取り組みがあるというふうにも聞いておりますので、今後しっかり学んでまいります。そして、こういうニーズというのは弁護士さんも、私の友達の弁護士も非常に困っているというふうに申しておりましたので、ニーズはあるんだというふうに自覚をしております。

 今後、自公連立政権のスピーディーな対応をしっかりお支えしてまいりたいと思いまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

伊藤主査 これにて樋口尚也君の質疑は終了いたしました。

 次に、小林鷹之君。

小林(鷹)分科員 自由民主党の小林鷹之でございます。

 本日は、こうした質問の機会を賜りまして、本当に感謝をしております。また、特に当時自民党の野党時代の総裁でございました谷垣大臣におかれては、火中のクリを拾って、そして当時の厳しい状況の中で自民党を、そしてこの国の政治を引っ張ってこられた、このことに関しまして感謝を申し上げますとともに、そうした谷垣大臣に対して、国会議員として初めての質問をさせていただけることを光栄に思います。よろしくお願いいたします。

 私がそもそも国会議員を志した動機の一つには、将来世代の子供たちの声なき声を必ず拾って、それを政策という形にしていきたいというふうに思ったからです。例えば、今問題になっています財政にしても、あるいは社会保障にしても、結局は子供たちの身に直接降りかかってくる、そうした問題であるにもかかわらず、子供たちは投票権がございませんから、今、声を発することができない。そうした子供たちの声を発していきたいと思って国会議員になった次第でございます。

 そんな声を、本日は別の形で代弁させていただきたいと思います。それは、現実に今、大人に対して助けを求めている、社会に対して助けを求めている、声を発している子供たち、特に虐待を受けた子供たちへの司法のかかわり方について、まずは本日質問させていただきたいと思います。

 近ごろ、子供に対する虐待、これについては、児童相談所での対応件数がウナギ登りとなっておりまして、平成二十三年度で約六万件。二十年前に比べると、この数は五十倍を超える規模となっておりまして、児童虐待防止法が制定される前、平成十一年度と比べても、この数は五倍を超える数字になっております。

 そうした中で、一方で、児童虐待の摘発件数は平成二十三年度で三百八十四件、摘発された人数が四百九人となっております。この摘発件数や人数については、過去の統計を見ますと、これは年度ごとに今増加している傾向にございまして、このこと自体に関しては、警察、検察を含めた関係者の方々の御努力のたまものだというふうに思っているんですけれども、やはり摘発件数が児童相談所での対応件数に比べると絶対的に少ないということ、摘発件数が少ないということは、起訴件数も恐らく少ないと推測されます。海外との比較においても、こうした割合が極めて日本は低い。

 そうした中で、よく聞こえてくる見解というものの中に、児童相談所には情報が入ってきているけれども、捜査機関である警察や検察の方々の介入のタイミングがそもそも遅いんじゃないかという指摘や、あるいは児童相談所とそうした捜査機関の方々の連携が必ずしも十分ではないという声が聞こえてくるんですけれども、大臣の見解をお聞かせください。

    〔主査退席、中山(泰)主査代理着席〕

谷垣国務大臣 小林鷹之委員がこうして当選をされまして、国会で立派に論陣を張っておられる姿を拝見して、本当にうれしく思っております。どうぞ頑張ってください。

 今、児童相談所のお話がございました。いわゆる児童虐待事案、大変憂慮すべきものがありまして、私も自民党の総裁だったときに、党の女性局に児童虐待のプロジェクトチームを組んで検討するようにという指示をしたこともございます。

 それで、今のお話は、児童相談所と例えば捜査機関との連携、これが不十分なのではないかというお問いかけでございます。

 私も捜査機関を抱えている検察の上にいるわけでございますが、まず、第一次捜査機関は警察です。警察と児童相談所、これは適切に連携されているとは思うんですが、いろいろなところの連携をもっと図らなきゃならないことは私は多々あるのではないかと思います。

 例えば、法務省では、捜査機関である検察のほかに、さらに人権擁護局というのもございます。人権擁護委員がこういうことを知り得る場合も、あるいは人権擁護委員に相談のある場合もあり得るんだろうと思います。また、人権擁護局に関して、SOSミニレターというのを実施しておりますが、子供からそういう訴えが届くこともございます。

 したがいまして、それぞれの機関が連携をもっと密にとり合って、そして適切にその事案の内容を見きわめて、摘発すべきものは摘発し、起訴すべきものは起訴をしていくということは極めて必要だろうと思います。そういったことを私も督励していかなければならない、このように思っております。

小林(鷹)分科員 大臣、ありがとうございました。

 私も、こうした関係者の方々がより効果的、効率的に連携していくことが必要であると思っております。そうした中で、やはり行政がいろいろ関係者がいらっしゃる中で縦割り行政に陥っている、そういう弊害もあると思っておりまして、具体的には、子供に対する、特に虐待を受けた子供に対する聴取の仕方でまだまだ改善すべき点があるんじゃないかなというふうに思います。

 実は、先日、ある関係者の方から児童虐待のいろいろなケースを伺いまして、そのうちの一つに、十二歳のときに実際の父親から性虐待を受けた女の子が、十五歳になって勇気を振り絞ってその事実を外に告白した。もちろん、警察の方に呼ばれて、何度も何度も呼ばれて聴取をされる。そうした中で、たまたまだったかもしれませんけれども、興味本位な質問もされて、いたく傷ついた。

 また、検察の側としても不起訴にするような事件ではなかったようで、やはりその女の子を同じように連日呼ばざるを得なくて、警察で行われた質問と同じような質問を繰り返された。もちろん、子供ということと、あとは、何年か前に起こったということで記憶も薄弱になっているところがございまして、具体的な日にちや場所、こうしたものを特定するために、ある意味執拗に聴取を受けたということでございました。十九歳のときにたまたまフラッシュバックで思い出したそうなんですけれども、それまでに三人検察官がかわったということです。そうした中で、少女は、部屋の電気コードで首をくくろうとしたり、あるいはリストカットを繰り返して、自殺未遂を繰り返した。

 そういう事例を聞きまして、こうした環境のもとで聴取を何度も何度も行ってしまうと、子供の記憶がある意味汚染されて、まさに冤罪の可能性も生じてくるということ、また、被害者である子供のことを考えても、精神的なトラウマといいますか、二次的な被害も出てくるんだと思います。

 そこで、きょう紹介させていただきたいのが、私が実際勤務しましたアメリカで見てきた制度なんですけれども、フォーレンジックインタビューといいまして、司法面接と言われる制度です。

 これを簡単に申し上げますと、虐待を含む犯罪の被害者である子供、これは犯罪を目撃した子供も含むんですけれども、こうした子供たちに対して、できる限り優しい環境でインタビューを行うことによって子供のストレスをできるだけ減らしていく、また、中立的で誘導的ではない発問形式をとることによって、子供がみずから供述をする環境をつくって、できるだけ確度の高い供述を引き出していくという面接方法でございます。

 私がアメリカで見たのは、CAC、チャイルド・アドボカシー・センターと呼ばれるものがございまして、こうした組織を中心に、児童福祉の機関ですとか、捜査機関、医療機関、あるいはメンタルヘルスの方とかが一堂に会して面接を行う。

 実際に面接を担当するのは訓練を受けた面接者一人だけなんですけれども、子供の特性に配慮しながら面接をして、また、ほかの関係者は子供に見えないような形で別室に待機をしていて、その面接の経過を見守って、例えば検察の側からこうした質問も聞いてほしいということが出てくれば、その場でその面接者の方にそういう情報をインプットして、その面接者を通じて子供に対してインタビューをしていくというものでございます。

 実際、質問や供述については一応全て録画ということで、面接回数は原則一回、そして、子供が安心して話をできる環境をできるだけつくっていくということです。

 この司法面接の主な目的というのは二つございまして、一つは、その子供たちからできるだけ汚染されていないありのままの供述を引き出していくということ、もう一つは、先ほど申し上げました、トラウマなどの二次的な被害をできるだけ防止していく、この二つの目的がございます。

 こうしたいわゆる司法面接についての現時点での政府の検討状況をお聞かせいただきたいと思います。

谷垣国務大臣 今委員がおっしゃったような考え方、配慮、こういうものを持ちながら我が国の検察も活動していく必要が私は非常にあると思います。

 しかし、幾つかまた問題点もあることも事実でして、今までの取り組みで、必要に応じて、例えば事情聴取の場所を子供の自宅とか子供が保護されているような施設にするとか、それから、事情聴取の回数をできるだけ少ない回数にとどめるさまざまな工夫をする。それから、やはり大変不安になっていると思いますから、そういう子供の不安を解消するのに足るどなたか、それは場合によって違うと思いますが、御両親であったりいろいろなことが、まあ親から虐待されている場合はそうではないと思いますが、そういう子供が安心できるような方に付き添っていただいて話しやすい雰囲気をつくる。それから、発問の方法もできるだけ子供にわかりやすい工夫をする。こういったことは今までもやってきましたし、さらにその工夫もしなければならないだろうと思っております。

 それで、今の司法面接の考え方も十分我々も参考にしていかなきゃなりませんが、今の実務から見ますと、捜査や公判段階で新たな事実や証拠が出てくる場合が否定できないわけですね。そうすると、被害者から再度事情を聞く必要が起きてくるということもあります。ですから、そういったことが、聴取を一回限りとするというのも、できるだけそのように努めるとしても、なかなかそれではいかないという場合が現実にございます。

 それから、日本の訴訟で証拠能力等をどう考えるかという問題がございまして、憲法上、被疑者、被告人の反対尋問権というものが保障されているわけですね。それをまたどう考えるかというような問題も、これは制度的にもどう考えていくかということが検討されなければなりません。

 ですから、精神は酌むにしても、そういったものをどうしていくかというのは、まだ十分に答えが出ていないのが実情でございます。

小林(鷹)分科員 大臣、ありがとうございました。

 今大臣がおっしゃったとおり、証拠法上の問題ですとか、反対尋問権の話、いろいろな制約があると思います。なので、私が理解している限りでも、例えばアメリカにおいても、実際の捜査を、あるいは法廷のプロセスを、CACと呼ばれる方たちが中心となった司法面接の聴取だけで実際捜査を完結するというようなことは現実にないんだと思いますけれども、今大臣おっしゃったとおりの、そうした精神をできるだけ生かしていくということをおっしゃっていただいたことには感謝を申し上げます。

 その上で、今の関係者の方々の連携していく努力、こうした取り組みには個人的にも大変評価をさせていただいているんですけれども、さらにそうした連携というのを踏み込んでいく必要があるんじゃないかというふうにも一方で思っています。

 今申し上げたチャイルド・アドボカシー・センター、通称CACと呼ばれるものが、これは関係者を取りまとめて面接をしていくNPOであり、民間機関である場合もあると思うんですけれども、実際、これは一九八五年に、当時、アメリカの田舎の方の検察官であったロバート・クレーマーという、その後に連邦の下院議員になった方なんですけれども、この方がこうした司法面接の必要性を提唱されて、そのCACと呼ばれる機関が、現在、八百以上あるというところまで発展してきております。

 今大臣おっしゃっていただいたように、現行法のもとではさまざまな制約があると思います。ただ、そうした中でも、今申し上げた少女の例にもあったように、行政あるいは関係者の縦割りによるある意味弊害を乗り越えて、もっと連携することによって、そうした虐待を受けた子供たちに対して、より優しい環境で、効率的な聴取方法をぜひ制度として前向きに検討していただくことを心から期待を申し上げます。

 次に、法曹養成制度について質問をさせていただきたいと思います。

 先日、法曹養成制度の検討会議が中間提言のようなものを取りまとめられました。メディアの論評を見ていると、目指すべき新しい姿が見えてこないとか、あるいは、法曹養成、破れた理想、こうした非常に批判的というかネガティブな言葉が並んでおりまして、私は非常に違和感を覚えました。

 なぜかというと、今から十年ちょっと前、平成十三年に当時の司法制度改革審議会がまとめた意見書の中には、二十一世紀のあるべき司法の姿といたしまして、一つは、国民の司法アクセスを拡充していくこと、二つ目は、法曹の人的基盤を強化していくこと、そして三つ目は、国民の司法参加を促していくこと。私は、こうした理念というのは今でも生き続けているというふうに思っておりまして、その改革の提言が出されてから十年そこらしかたっていない中で、現実と当初の理念が乖離していくというのはある意味当たり前の話であって、むしろ、今考えなければいけないのは、だから改革を後戻りさせるというよりも、その現実と理想のギャップをどうやって埋めていくのか、少しずつその修正をしながら、どうやったら前に進めていけるのかというのを考えていくのが、私はあるべき姿だと思っております。

 そうした中で、司法制度改革の現在の進捗状況について、谷垣大臣の認識、見解をお聞かせいただきたいと思います。

谷垣国務大臣 これは、司法制度改革をやりまして、今までよりも質、量ともに豊富な法律家を養成していかなきゃいけない。それで、その中核は法科大学院という、要するに、司法試験という点だけではなく、法科大学院というプロセスで教育をして法律家を育てていこうという制度を十年ほど前につくったわけですね。

 要するに、この間、中間報告が出ましたけれども、十年前の考え方では年間三千人の合格者を出していこうということでした。ところが、現実には、何というんでしょうか、そのロースクール、だんだんだんだん、合格率も低いということもあったんだと思いますね、人も集まらなくなってきたし、それから、法科大学院の中にはなかなか合格者を出せないようなばらつきもあるということで、今、法科大学院の志望者もある意味では頭打ちになっている状況です。そこで、この間の中間報告もいろいろなお考えがあったわけですが、三千人というのはやや現在の段階では非現実的であるという意味では大方の合意が得られているだろうと思います。

 今、中間報告が出ましたけれども、ことしの八月二日までにパブリックコメントもやって結論を精力的に出していただこうということでやっておりますが、いずれにせよ、社会の変化に伴って質、量ともに豊富な法律家というものをつくっていかなきゃならないというところは、私は依然変わっていないんだろうと思います。

 もちろん、法律家にどういう役割を担わせるかというのも、まだ努力が足らないところがあるでしょう。しかし、そういう分野が実は確実にあるということも事実だろうと思います。現段階では、私はそのように見ているわけでございます。

小林(鷹)分科員 ありがとうございます。

 私も大臣の御認識と全く一緒でございます。

 そうした中で、私自身も今回の中間提言を拝見しておりましてやはり一番気になるのが、今大臣おっしゃった法曹人口の話でございます。ロースクールの応募でもう定員割れが続いているような状況で、法曹を目指す学生の数が絶対的に少なくなってきているというのは、やはりちまたで言われている就職難の話も大きく関係してきていると思います。そうした中で、やはり活動領域を拡大していく必要があるというのは、私は方向性としては正しいと思いますし、その必要性を強く認識しております。

 その中で、私がアメリカで生活をしている際に、あるいは仕事をしている際に常々感じてきたことは、アメリカはなぜこんなに法曹人口が多いんだということと、なぜこんなに働く場が多いんだろうということでございました。

 例えば、司法試験の資格を持っている方が、議会、政府、シンクタンク、あるいは金融機関ですとかロビイストとしていろいろなところに、本当に石を投げれば当たるほどそういう弁護士の方がいらっしゃって、そうした方々がその専門的な知識を、必ずしも法曹という立場ではなくて、いろいろな分野でその専門性を生かしながら社会に貢献されている姿は、非常に見習うべき点があるのかなというふうに思っています。

 そうした中で、一つ私が感じたというか、提案にもなるんですけれども、こうした法曹有資格者の方にもっと積極的に我が国においても立法プロセスに関与していただく、積極的に加わっていただく必要性というのがあるんじゃないかというふうに思っています。

 日本とアメリカを単純に比較することは無理があると思うんですけれども、例えば、アメリカの連邦議会を見ると、下院議員、上院議員があって、特に上院議員のオフィスなんというのは、もう四十人、五十人とスタッフがおりまして、一つの議員の事務所の中に立法部門という縦のラインがしっかり整っている。そういう中で、まさに立法府と呼ばれる名にふさわしい数の法案を各議員個人がどんどん提出していく。

 一方で、我が国においてはほとんどが政府、内閣による法案ですから、議員が法律をつくると、議員立法という言葉が特別にあるくらいですから、そういう意味で、日本の国会の立法能力というのを上げていく必要があると私は思っています。

 そうした中で、こうした法曹資格を有する方を、例えば衆参両議院の院のスタッフですとかあるいは政治家個人のスタッフとして、より登用するというか積極的に働いていただく機会をふやしていくことに対して、大臣の見解を伺いたいと思います。

谷垣国務大臣 今、小林委員のお話を聞いていまして、昔先輩から教わったことを思い出しました。私の先輩、尊敬する法律家で、弁護士から最高裁判所判事になられた方がおられまして、私が国会議員になったときに、その先輩からこう言われました。裁判をやって、どういうふうにこの法律を解釈、適用するか非常に迷うことがある、そのときに、国会では一体どういう議論をしているのかというのを参考にしたいと思って読むんだ。ところが、昔の明治のころの民法をつくったり商法を初めてつくったときの議事録を読むと大いに参考になるんだが、今の国会の議事録を読んでも、実務の参考になることはほとんど議論していないと。それが、認識が正しいかどうかわかりません。だけれども、苦言としては十分耳を傾けるべき苦言だなと私は思いました。

 ちょうどそのころ、この間の野党じゃなしに、前の細川政権で野党になっていた最中でしたので、よし、野党議員になって自分が目指すところは、政権に入って仕事をするということができないんだから、国会でしっかり質問をして、後でその問題が司法上問題になったようなときは、あのとき谷垣禎一委員のやった議事録を読めと言われるようなことをしようと考えたわけでございます。

 そのとき考えたことは、そういう分析をするには、やはり法律的訓練を受けた私の友人なんかに、おまえ、政策秘書をやってくれないかなんといって話をしていたんですが、やがて与党に返ってしまったので、それも忘れてしまって今日に至ったということがございます。

 しかし、国会で立法府としてしっかりした議論をしていくためには、法曹の訓練を受けた人を活用していくというのも私は十分に考えていかなければならないことだろうと思います。まず、小林さんが政策秘書にそういう方をお雇いになったらいかがでしょうか。

小林(鷹)分科員 大臣、貴重な御提言ありがとうございました。

 時間の関係がございますので、最後に、まず今の法曹養成の関係で申し上げれば、この中間提言に、日本の弁護士の海外展開を促進するという点がございます。この点については、これからTPPの交渉に参加すれば、いわゆるISD条項の話も出てくるでしょうし、あるいはハーグ条約、これから一問質問させていただきますが、こうしたニーズも出てくると思います。

 また、中小企業が海外に展開する際に、日本の弁護士の、やはり、単なる法曹資格を持っていないコンサルタントの方の意見よりも、弁護士がしっかりとサポートしていただければこれほど心強いことはないと思いますので、こうした具体的な取り組みをこれからもぜひ推進していただきたいと思います。

 最後に、今申し上げたハーグ条約について一点だけ触れさせていただきたいと思います。この条約の趣旨については個人的に賛同しますし、外交上の関係から、これは速やかに解決していかなければいけない問題だと思っています。

 その中で一点だけ確認させていただきたいことは、条約上、例えば日本人の奥様が子供を連れて帰ってきたときに、そのお子さんをもといた国に返還するのを拒否する事由として、幾つかありますけれども、問題となってくるのが、連れ戻されるその子供の安全をどうやって確保していくのか、その点で、安全を十分に確保できるように、過去のDV等の情報の収集を具体的にどのような体制でやっていくのか、最後に伺いたいと思います。

新美政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生御指摘されましたとおり、まさにハーグ条約に基づいて、子供を帰すか帰さないか、それを裁判所で判断する際に、もといた国において、子供がどういう扱いを受けてきたか、あるいはDVの被害を受けてきたかというような情報は非常に重要だと思います。

 他方、同時に、このような場合、今先生の御指摘があった、外国から日本に子供を例えば日本人のお母さんが連れてきた場合というのは、日本の家庭裁判所でその裁判をすることになりますので、外国でどういう状況があったかというのを調べる上で、いろいろ情報を集めるのに工夫をしなければいけない、御指摘のとおりだと思います。

 もちろん、裁判所自身が、DV被害者の本人が収集した証拠を調査するのみならず、裁判所の職権に基づいて裁判資料の収集を行うことができるわけでございますが、ハーグ条約におきましては、条約上、望ましい場合は、中央当局、これは今回日本では外務省でお願いをしておりますけれども、日本の中央当局と外国の中央当局の間で子の社会的な背景に関する情報を交換することが規定されております。

 さらに、この条約を踏まえて、今回国会にお諮りしております条約の実施法案におきましても、裁判所が子供の返還に関する審理を行うに当たりまして、例えば裁判資料の収集の一環として、まさに今御指摘がありましたような、子供がもともと居住していた国、外国におけるドメスティック・バイオレンスの実態について調査する際、それが必要と判断すれば、中央当局であります外務大臣に対して、当該国におけるDVの実態について調査の嘱託をすることが可能になっております。したがって、裁判所が中央当局たる外務省経由で外国から情報収集をする。

 最後に、さらに、在外公館、今の先生の例であれば、例えばアメリカであれば、日本の大使館あるいは総領事館が海外に在留する日本人のDVの被害者の方から御相談を受けた場合にその内容を記録、保管することになっておりまして、これは、例えば日本で今御指摘がありましたような裁判になる場合は、希望があれば相談された御本人に提供が可能でありまして、また、求めがあればそれを裁判所に提出することも可能になっております。

小林(鷹)分科員 質問を終わります。ありがとうございました。

中山(泰)主査代理 これにて小林鷹之君の質疑は終了いたしました。

 次に、岩永裕貴君。

岩永分科員 日本維新の会の岩永裕貴でございます。

 谷垣大臣には、大変遅くなりましたけれども、大臣の大変大きな重責を担われて職責につかれましたこと、心よりお祝いを申し上げます。本当におめでとうございます。

 本日は、オウム真理教のことについて少し大臣の方に質疑をさせていただきたいと考えております。

 日本維新の会は、地方分権を中心に、できるだけ今の政治、行政の枠組みの中に民間の知恵を取り入れながら、より効率的な税の使い方というところを追求していこうじゃないかというような基本理念に立たせていただいている政党ではございますけれども、このオウム真理教の問題につきましては、私の地元の平松地区また柏木地区というところに二カ所、いわゆる主流派と呼ばれる中で力を持っている二ノ宮耕一という者の住居があったりとか、それを取り囲む信徒の住居兼修行場があったりとかということで、大変長年脅威におびえている地区が二カ所ございます。

 この問題だけは、官から民へというような、いわゆるそうした定義には当てはまらない、余りにも、民間というか一般市民の皆様方が自分たちの地域の努力によってこうした脅威について日々闘っていらっしゃるという構図を何とか改善できないかというふうなことを考えて、きょうは質問に立たせていただくところでございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 一九九五年三月二十日に、大変不幸で、歴史上最も醜いというか悲惨なテロ事件が、地下鉄サリン事件が起こってしまいました。それから十八年がたちますけれども、まず、このオウム真理教による地下鉄サリン事件について、今振り返っていただいて、大臣自身がどのように思っていらっしゃるかというところの所見をお伺いさせていただければと思います。

谷垣国務大臣 岩永委員ともいろいろ御縁がございまして、岩永さんの選挙区である甲賀、すぐ隣の京都府、昔は私、中選挙区時代、選挙区だったこともございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 それで、地下鉄サリン事件ですが、あのときのことを今思い出しますと、地下鉄でサリンがまかれた日、私の娘もちょうどあの事件の起きた駅で乗りおりして高校に通っておりましたので、大変気をもんで、安否が確認できないかと心配をした、幸いに無事であったわけですが、心配をした記憶がございます。

 今顧みましても、この無差別の大量殺傷行為、極めて悪質かつ重大なテロリズムとしての犯罪行為であったと思っております。そして、オウム真理教は、現在も無差別大量殺傷行為に及ぶ危険な要素をなくしてしまったわけではないと思っております。

 平成二十四年の一月に、公安審査委員会は、公安調査庁長官の観察に付する処分の期間を更新する旨決定しております。それから、公安調査庁においては、団体規制法に基づいて、観察処分を的確かつ厳正に実施しながら、引き続き教団の組織や活動の実態をきちっと把握していく、迅速的確に把握していく、その活動を続けていかなければならないと考えております。

岩永分科員 ありがとうございます。

 おっしゃるとおりでして、当時のオウム真理教と今のいわゆる主流派、そして上祐派と呼ばれる教団の関係性というところをどのように考えていらっしゃるかということを、少しお伺いできればと思います。よろしくお願いします。

尾崎政府参考人 地下鉄サリン事件当時は、オウム真理教は、麻原彰晃を組織の頂点に位置づけ、麻原に対する絶対的帰依を標榜していたところでありますけれども、現在、教団は主流派と上祐派に分かれて活動しているものの、両派ともに依然として麻原の影響下にあるなど、当時と同一の団体であると認識しております。

岩永分科員 オウム真理教、テロ事件を起こしたオウム真理教と、主流派そして上祐派と呼ばれるところの現在の団体が同一の団体であるという御認識をいただいているというところでございました。

 当時、公安調査庁が処分請求されたいわゆる破防法というものがございました。これは結果的には棄却をされましたけれども、その経緯について、そして、棄却されたという結果について、大臣自身、どのような見解を示されているのかということをお伺いできればと思います。

谷垣国務大臣 平成九年の一月に、公安調査庁によって破防法に基づく解散処分請求をしたわけですが、委員がおっしゃったように、公安審査委員会において棄却されたということは承知をしております。このとき、公安審査委員会においては、もちろん当然のことながら、法と証拠に基づいて審査をされ、決定時においては、解散指定の要件を満たしていると認定することはできない、こう判断されたというふうに認識をしているわけです。

 しかし、その後、平成十一年十二月に、団体規制法というのが施行された。そこで、オウム真理教は、再び無差別大量殺人行為に及ぶ危険性を保持しているとして、平成十二年の二月からこの団体規制法に基づく観察処分に付されているというのが現在の段階でございます。

 公安調査庁においては、この観察処分を厳正かつ適正にやっていかなきゃいけない、そして、教団の活動状態を明らかにして、国民の恐怖感あるいは不安感、こういったものの解消、緩和に努めていかなきゃならない、こういう段階であると思っております。

岩永分科員 ありがとうございます。

 一国民としての感想というか、そして、この地域に私自身も住んでいる者の感想という部分では、なぜ、六千三百名もの負傷者を出した、そして十三人もの死者を出したこのテロ行為について破防法というものが適用されなかったということには、すごく残念ですし、大きな疑問を抱かざるを得ないというような感想を持っております。

 それで、先ほど大臣の方からも御答弁いただきましたとおり、平成十一年の十二月に団体規制法そして観察処分という法律を新たに立ち上げていただき、この団体に対して処分を今もなお実施していただいているという状況でございます。

 こちらの団体規制法、観察処分というのはどういったものなのか、そして、具体的にこの法律のもとでどのようにそれが実施されているのかというところをできるだけ詳細に御答弁いただければと思います。

尾崎政府参考人 観察処分によりまして、公安調査庁は、規制対象団体オウム真理教団から報告を受けることができる、それから、所有、管理する土地や建物、いわゆる教団施設について立入検査をすることができるということになっております。

 公安調査庁におきましては、これらの規定に基づきまして、報告徴取それから立入検査を多数回にわたって実施しております。このため、公安調査官も多数動員しております。

 これらによって教団の活動状況を明らかにするとともに、その結果を地方公共団体に提供するという定めがございますので、地方公共団体にその情報を提供し、あるいは、教団施設周辺の地域住民との意見交換会を実施するなどして、公共の安全確保と国民、特に住民の皆様の不安解消に努めているところでございます。

岩永分科員 ありがとうございます。

 警察の方の動きについて少しお伺いしてもよろしいでしょうか。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 警察としましては、オウム真理教について、その本質に変化はないことから、動向には常に重大な関心を払っているところでありまして、関係機関と連携して実態解明に努めるとともに、組織的違法行為等に対する厳正な取り締まりを推進しております。

 また、オウム真理教施設周辺の住民の方々からは、いつまたテロを起こすかわからないといった不安や、パトロールを強化してほしいといった警察への要望が寄せられていることから、その思いを十分しんしゃくしまして、必要に応じて施設周辺における警戒警備を実施しているところでありまして、今後とも的確な対応に努めてまいりたいというふうに考えております。

岩永分科員 ありがとうございます。

 先ほどございました、報告の提出を求めているというところは、三カ月に一回の報告というところと、あとは、私の地元地域でいうと、警察の皆様方が一日一回、恐らく、その施設の周辺をパトロールしてくださるというような具体的な動きをとっていただいていると思います。

 住民の皆様方からそういったお話をお伺いすると、非常にありがたいお話ですし、これは安全というものにもつながっていくし、というような感謝の気持ちを述べられているというところではあるんですけれども、住民の皆様方にとってはやはり三百六十五日、二十四時間ずっと不安がつきまとっているというところが現状でございます。

 平松地区というところでは自分たちで小さな小屋を建てて二ノ宮が住んでいる住居を定期的に自分たちの力で見張っている。小屋をつくって見張るというのは向こう方にこちらの面が割れないように、危険をできるだけ回避するために、そうしたところから、こっそりと定期的にずっと見張っているというような現状。

 そして、二ノ宮の住居の方には数十台のカメラがずっと設置をされていて、誰がこちらに目を向けているのかということも監視をされながら、非常に危険な状態がある。それで、その住居の写真を撮ろうとすると中から怒鳴り声が聞こえてきたりというような、非常に何というか一触即発というような状況の中で地域の皆様方が暮らしていらっしゃることも一方では事実であるというような状況は御報告をさせていただきたいと思います。

 そして、私の友人に精神科医がおりまして、こういった、いわゆるカルト集団に依存されている信徒の皆さん方の精神状態というのはどういうものなんだろうかなということを少しお話をさせていただいてまいりました。

 データによると、平成七年にはオウム真理教の信徒というものが一万千四百名いたというところでございます。それで、今現在は約千五百名ぐらいの信徒まで減少しているが、一方、近年ふえつつあるというような事実でありながらというところではございますけれども、当時の一万千四百名と今現在の千五百名というものの関係性について少しお伺いをさせていただきたいと思います。

 これはわかる範囲で結構なんですけれども、その精神科医の先生がおっしゃるには、一度できてしまった依存関係というものはなかなかやはり断ち切ることができないというふうなことをおっしゃっていますし、どうしても、そういう受け皿がまた見つかったときにはそこに依存してしまう傾向にある、なかなかその心の病というかマインドコントロールというのはそう簡単には解けるものではないんですよというようなことをおっしゃっております。

 すごく心配しているのは、要は、当時の一万千四百名という皆様方が、心理的依存に陥った皆さんが、今現在どのようにされているのかということも含めて、その千五百名の現在の信徒とのかかわりについてお伺いをさせていただきたいと思います。

尾崎政府参考人 委員御指摘のとおり、地下鉄サリン事件等がオウム真理教の犯行であるということが明らかになって後、信徒数は一時激減しております。しかし、ひかりの輪それからアレフ、主流派及び上祐派、いずれにも所属せずに、やはり従前どおり麻原彰晃に対する絶対的帰依を維持して独自の活動を行っている者がございます。

 これらにつきましては、公安調査庁といたしましても、その危険性等について、十分にその動向を注視しているところでございます。

岩永分科員 そのあたりの以前信徒であった者についてもそういった目を光らせているというような御答弁でございますけれども、少し聞くところによると、足立区の方で、この松本死刑囚の死刑執行がどういうふうになっていくのかということを非常に敏感に捉えていて、今信徒が足立区にすごく速い勢いで集まりつつあるというような情報も得ているところではございます。そういった状況について、何かつかんでいらっしゃる情報があればお伺いをさせていただきたいと思います。

尾崎政府参考人 足立区に新規施設を開設いたしまして、多数の信徒がそこに集まっているという情報は承知しております。

 これに関しましては、足立区にも適切に情報を提供し、住民の皆様の不安解消に努めてまいりたいと考えております。

岩永分科員 ありがとうございます。

 今おっしゃった施設というものは法的に問題のない形で取得された施設かどうか、お伺いをさせていただきます。

尾崎政府参考人 施設の取得経緯、特に資金の出所等については、現在も鋭意調査を進めているところでございます。

岩永分科員 ありがとうございます。

 お伺いをすると、不法に取得をしたというような情報もございますので、できれば厳しく少しそのあたりの経緯についてもお調べをいただいて、対応しなければならない部分については早急に対応していただきたいというふうに思います。

 なぜこの施設というところにこだわるかと申し上げますと、これも精神科医の話ではございますけれども、まず依存関係にある者がそうして集う施設というものの根絶をしていかなければ、そうしたいわゆる依存関係にあった者同士の依存が断ち切れない、まずしなければならないのは、そうした施設自体を何とかなくしていく方向に向かうべきじゃないかというようなこともおっしゃっております。

 それで、これは報道等でも広く知られていることですけれども、北海道なんかで、オウム真理教であるということを知らずに、この施設というか土地を売却されている例が全国に幾つかあるようにお伺いをしています。

 こうした施設がその地域に入ってくると、これは私の地元もそうなんですが、人口減少がいろいろある中で、特に若い人が集まっていただきたいというのが日本全国のいろいろな地域での大きな課題になっている中で、オウム真理教の関連の施設があるというだけで、入居者が全くふえない、そして土地の地価は下がっていくというようなところで、全体的に、地域全体が抱える課題というのが非常に深刻な課題を抱えていらっしゃるというところがございます。

 この土地取得に関して、事前に何かその地域の人にしっかりと知らせるとか告知をする等できるような対処法というのはないのかどうかというのを少しお伺いできればと思います。

尾崎政府参考人 公安調査庁といたしましては、団体規制法に基づいて報告を求めて、その報告内容につきましては地方公共団体に提供するという定めがございますので、それに従って提供しておりますけれども、それ以上どのようなことができるのかにつきましては、委員の御意見も踏まえまして検討してまいりたいと考えております。

岩永分科員 ありがとうございます。ぜひ前向きに、そのあたりの対応もしていただければなというふうに思います。

 本当に、これは先ほどから何度も申し上げますが、大前提として、この団体は六千五百人もの負傷者を出した、そして、十三名もの方のとうとい命を奪った団体であるということをもっともっと重く受けとめていただかないと、地域の皆さん方が、日々、現場というか、生活の状況の中で抱えていらっしゃる不安というものの大きさというのは本当にはかり知れないものがございます。

 だから、もちろん、いろいろな、平等であったり人権というような話も出てくるんでしょうが、これだけは、過去に犯した大きな罪という部分について、もっともっとシビアに国として対応をしていく必要があるんだというふうに思います。

 今、国際情勢も非常に不安定な状況で、いつこの日本の国内でも何が起こってもおかしくないような状況の中で、日本という国は、テロというものに対して、これはもう総理も谷垣大臣もおっしゃっていることですけれども、真正面からしっかりと闘うんだ、取り組んでいくんだというような象徴として、このオウム関連施設について厳しく日本として対応していくことこそが第二、第三のテロへの抑止力になるんだというふうに私は強く信じておりますので、ぜひ、そういった経緯も踏まえて、御対応を厳しくいただければというふうに思います。

 それでは、先ほども少し申し上げましたが、今現在、信徒が平成二十四年ベースで二百五十五名ぐらい、過去にはないスピードで増加をしているというようなデータもございますけれども、この要因について、その所見をお伺いさせていただければと思います。

尾崎政府参考人 委員御指摘のとおり、新規信徒が最近増加する傾向にございます。これにつきましては、いろいろな要素が考えられるだろうと思いますけれども、一つには、地下鉄サリン事件等の凶悪な事件から大分時日を経て、特に若者にはその知識が十分にないこと、オウム真理教側といたしましては、積極的な勧誘工作を行って、例えばカルトであるとか精神世界であるとかあるいはヨガであるとか、そういうものに対する興味を持っていそうな特に青年層を中心に勧誘を強めているという、そういった二つの要素があるのではないかというふうに考えております。

岩永分科員 人間形成をしていく例えば十八歳とか二十五歳ぐらいまでのすごく不安定な若者たちに対して、巧みにヨガとかいうそういう精神世界に引き込んで新しい信者をふやしていっているというのが現状だというふうに思っています。

 そして、特に近畿地方での信徒の増加というものが際立っているというふうに感じておりますが、近畿地方でなぜ信徒というものが著しく増加をしているのかという、そのあたりの分析をお伺いさせていただければと思います。

尾崎政府参考人 一つには、近畿地方は、首都圏に次ぎまして多数信徒を擁しているということがございます。それから、出家信徒、在家信徒ともに勧誘活動に積極的に取り組んでおりまして、特に勧誘能力に秀でた在家信徒が比較的多数いるというふうに認識しておりまして、これらが要因ではないかと考えております。

岩永分科員 ありがとうございます。

 先ほどから御答弁がございますとおり、まず、若者がどんどん信徒としてその教団に入っていっているという現状がございます。本当に、誘い方というのは、デジタルそしてアナログを含めて、巧みにSNSを利用したりとかいろいろな方法をもって、物すごく、変な意味での賢さを持った勧誘というものが行われているというふうにお伺いをいたしております。

 それで、具体的な金額については申し上げませんけれども、オウム関連の公安調査庁さんの予算というものについて、私はもっともっと大きく予算というものを確保していただいて、この対策を講じていただきたいということを願ってやまないんですけれども、この予算規模について、少し言いにくい部分はあろうかと思うんですが、十分だと思っていらっしゃるのかどうかというようなところ、できればもっともっとふやしてしっかりとした対策がしたいんだけれどもというようなところがもしございましたら、ちょっとそのあたりの所見についてもお伺いできればと思います。

尾崎政府参考人 公安調査庁といたしましては、オウム真理教に対する調査、これは当庁の重要施策の一つであるというふうに認識しておりまして、所要の予算確保に努めてまいったところでございます。

 平成二十五年度におきましてもこの関連の予算要求をしておりますけれども、認められた予算を最大限有効かつ適切に活用して、調査及び観察処分の適正かつ厳格な実施に取り組んでまいりたいと思います。

 今後も引き続き、委員の御指摘も踏まえまして、こうした施策に必要な予算の確保に努めてまいりたいと考えております。

岩永分科員 頑張ってください。予算の方をもっと積極的にこの部分については本当にふやしていただいて、この脅威から住民を守る、そして国民を守る、そうした姿勢を全面的に出していただいて、この国の安心、安全に対する姿勢というものを示していただければ大変ありがたいと思います。

 時間も参りましたので、最後に大臣の方に、こういったことをお伺いするのは少し生意気かもしれませんけれども、今後の心構えというか心意気について少しお伺いをさせていただきたいんです。

 特別手配被疑者というものが全て検挙された中で、地下鉄サリン事件の事件自体の風化というものを私はすごく心配しています。それで、今、地元で、きょう質問に立たせていただく上で、率直に大臣に対してどんなことを御要望されますかというような声を拾わせていただきましたので、何点か御紹介をさせていただきたいと思います。先ほどから申し上げている部分と重複する部分もございますけれども、少しお聞きいただければと思います。

 施設には監視カメラが十カ所ぐらい設置してある、これは主流派の住居にです。常に周囲を監視している、こちらの監視小屋にも監視カメラは置いているけれども、そうした脅威があるというようなところ。あとは、遠くから望遠カメラで写真を撮ろうとしても、向こう方からこちらの動きについてずっと監視をされているような状況があるんです。

 それで、以前、こちらの対策委員会の委員長自身も、とまっている車の写真を撮ろうとしたところ、関係者が出てきて恫喝をされた、そして先方に、誰が撮っているんだということをビデオにも撮られてしまう。そして、写真を撮られることを異常に嫌がり、過剰に反応してくる。警察の見回りは一日一回、昼間に行われているということなんですけれども、一日一回では、現状では問題はないということなんですけれども、なかなか不安は拭い切れないということでございます。

 そして、そのオウム関連施設のすぐ隣には、団地内で飲料水に使う大きな水道タンクがある。その中に何かを入れられたりするんじゃないかなという本当に大きな不安が常にありますというような状況。そして、住宅分譲地で、若い世代を中心に土地を探しに来られるが、オウム関連施設の話を聞くと、まず避けられる。土地が売れない、開発が進まないというような状況でございます。

 こういった地元の本当に深刻な声を聞いていただいて、今後、このオウムに対する大臣自身の取り組みをどのようにしていこうと考えておられるのか、また、このテロというものに対して日本国はどのように闘っていこうとしていらっしゃるのかというようなところのお話を最後にお伺いさせていただければと思います。

谷垣国務大臣 今の岩永委員の御質問も、選挙区の方々の不安、恐怖、こういうものを背中にしょっての御質問だったと思います。

 私のところにはオウム関連の施設のある地域の自治体の方々あるいは住民の方々がおいでになりまして、いろいろお話を伺っておりまして、風化と今おっしゃいましたけれども、そういった方々には強い不安感、恐怖感を与えている存在だと、私もそこは認識しているつもりでおります。

 そして、先ほど申し上げましたように、今なお危険性を持った組織であると私は考えております。きょうは公安調査庁長官も答弁をさせていただきましたが、この観察処分、厳格かつ適正にこれからも行っていって、住民の不安感の払拭に我々は全力を挙げなければいけない、このように考えております。

岩永分科員 ありがとうございます。ともに力を合わせてしっかりと闘っていきたいと思います。

 最近では、お話に聞くところによると、麻原の誕生祭をお祝いしたりとか肖像画を堂々と飾ったりとかというような、何かちょっと目に余る動きも出てきているということですので、ともにしっかりと国民の安心、安全のために闘わせていただくことをお誓い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 本日は、ありがとうございました。

中山(泰)主査代理 これにて岩永裕貴君の質疑は終了いたしました。

    〔中山(泰)主査代理退席、主査着席〕

伊藤主査 次に、小宮山泰子君。

小宮山分科員 生活の党、小宮山泰子でございます。大臣、またよろしくお願いいたします。

 さて、平成二十四年度予算においては、二十五年度もそうですけれども、復興関係また不動産関係の予算が大分見受けられます。これは自民党らしいなと思うところも多々ございますけれども。

 被災地では、国土の移動によって場所によっては数メートルずれたりしておりますし、また、東日本大震災の被災地の地盤全体が大きく動いたということで、これをもとに地図の整備が進んでおります。GPS測位などを活用した地図の修正がスムーズに行えていると法務省の方からも説明を受けておるところであります。

 地震などで地盤が動いた後も修正が速やかに行われることで、その後の復興復旧というものにも大きなスタートを切りやすくなるし、当然、地域の、町の中の計画というのもまた次の段階に早く入れることだと思っております。

 この地図作成というものは大変重要なことであると思いますし、登記事務を担っていらっしゃる法務省また法務局の役割というのはこれからも大きいと思います。この点は、被災地だけではなくて、大阪などが特に言われるところですが、大都市圏におきましても地図混乱地域というものはまだまだ整備がされていない。これによって、権利関係の問題などがあり、不動産取引の障害にもなっているとも感じております。

 私ども生活の党は、消費増税にはこのデフレ不況下では反対をしているものではございますが、これからやはり、不動産というものが動くことによって景気が動いていく、これは大変重要視しておりますので、この点に関しましては、その管轄であります法務局また法務省の事業としての、土地境界の確定をしていく、地図混乱地区を少なくしていく十四条地図の策定というものは大変重要な事業だと思っております。

 国民の財産を明確にし、守っていく基礎データを確かなものにするということにおきまして、この地図作成事業の重要性について、まずは大臣の御見解、御認識をお聞かせください。

谷垣国務大臣 小宮山委員には、日ごろから、法務行政、特にこの地図の問題は大変力を入れて研究もいただき、また御支援もいただいて、深く感謝申し上げたいと思います。

 今御指摘になりましたように、これは今回の震災に始まったことではございませんが、こういう震災を経てみますと、復興、再建をしていくに当たっても、一番、土地の権利関係というものが明確になっていないといかに事業が進捗しないかということを我々は改めて認識しているところでございまして、いろいろな法の支配を及ぼしていく、法というものが有効に活用して社会生活を円滑に実施していく上での一番の基本インフラの一つなのではないかと私は思っております。

 こういうことを長ったらしく答弁すると叱られますが、私は昔、子供のころに、戸籍と登記がしっかりしている国なんて、おまえ、そんなにないんだと父から小学生のころ教わった覚えがございます。ただ、この登記も、今おっしゃったような地図がしっかりしないとその機能を十分に発揮できないということではないかと思います。

 全国的に見ますと、このような地図の整備、被災地で移動したというところもございますが、まだまだ不十分なところ、特に大都会地でそういうことが随分ございます。また、最近では、山林のそういう権利関係も不明確であるという指摘も行われております。

 今後とも力を入れてこの問題に取り組まなければいけないと考えておりますので、どうぞよろしく御支援をお願いする次第でございます。

小宮山分科員 ぜひ整備をしていただきたいと思っておりますが、その割には地図作成事業の予算というものがどうも横ばい、もしくは、少し下がっているときも見受けられます。平成二十四年は十八億九千五百万円だったのが、二十五年度では十八億九千百万円となっております。二十二年度では十七億八千六百万円でございます。

 この重要性というもの、特に混乱をしているところが長引いてきていますと、その権利関係を調べることも難しくなっていきます。早くにこの地図整備というのを全国的に進めるべきだと思っておりますが、公共嘱託土地家屋調査士の皆様方も、ある意味、単価が非常に厳しい中でやっていただいているとも伺っております。

 法務省は、この点に関しましても、もっと強く予算に対し、特に地図関係といいますと国土交通省も測量等でやっていらっしゃいますけれども、その予算から見ますと、大変もっと頑張っていただきたいなという予算づけでもございます。これが入っていないというのも少々残念なところでもございます。

 また、離島なども含め、尖閣もそうですけれども、しっかりと地図の策定をすることによって国土も守られるんだと考えております。

 この点に関しまして、予算に関しましての御見解をお聞かせいただけますか。

谷垣国務大臣 今、小宮山委員から、もっと頑張って予算をとらなければいけないぞというお叱りを受けたわけでございます。

 私としましては、いろいろ、決してあそこにおられる主計官の代弁をするわけではありませんが、なかなか厳しい財政状況でもございます。しかし、この事業は大事でございますから、計画的に推し進めていくということが一番必要ではないかと思っております。

 そこで、平成二十一年度から平成二十八年度までの八年間で、合計約百三十平方キロメートルの地域について地図を整備するという計画をつくっております。それで、平成二十五年度では、この計画に沿いまして約十七平方キロメートルの地図を整備することを予定しておりまして、これに要する経費として、今度の予算案では十八億九千百万円計上されております。

 計画的な整備ができるようにきちっと対応してまいりたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

小宮山分科員 また、三月二十九日に、公共工事の人件費積算のもととなる平成二十五年度公共工事設計労務単価が発表されております。これまで、公共工事設計労務単価を計算し公表する仕組み自体が労務単価を低下させる原因ともなっていましたけれども、今回、計算方法を変更したことで単純平均値では一五・一%増となるなど、全国、全職種にわたって大幅上昇となると期待されております。

 これまで毎年低下してきた建設に関する人件費が上昇し、若者にとっても建設技能者となることが魅力的な就職先となる、そのきっかけになればと感じているものでもありますし、また、不動産等、こういったものの取引がふえていくこと、この中にも影響してくることだと思っております。

 なぜこの質問に触れさせていただくかといえば、地図作成に係る土地家屋調査士に支払う費用単価については、入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律第八条をもとに公表はしておりません。また、その費用単価の算出というものの根拠は法令に定められたものではございません。

 しかし、給料を上げてくださいと経済界に呼びかける安倍内閣のもと、土地整備事業の費用の単価についても連動して上昇されることは望ましいことではないかと思っておりますし、そのために何らかの形でコミットすることで、予算額全体を大きく確保していくことにつながるのではないかと思っております。

 無理なく、そして入札も含めまして安心して、そして、多くの方が地図整備をすることによってその結果というものを享受する。日本の根幹でもあります。本当に、谷垣大臣のお父様の言葉ではないけれども、この整備をされているというのは大変重要なことだと思いますので、ぜひ、この点に関しまして、大臣の御見解をあわせてお願いいたします。

谷垣国務大臣 今、こういった事業の費用単価についてお触れになったわけですが、登記上の地図整備事業の費用単価というのは、同じような事業の費用単価を参考にしながら、過去の入札の実績等も踏まえて毎年見直しを行っているところでございます。ですから、今後とも、適正な費用単価となるように随時見直しを行っていかなければならないと私どもも考えております。

 先ほど、大変長い名前の法律を引用されました。その中で、ちょうど御指摘になりましたように、事業者その他の者に予定価格そのほかの入札等に関する秘密を教示することというのは禁じられているわけでございます。先ほど御指摘になりました国土交通省が発表している案件などは、やはり全国で大量に処理をするという必要性も一方であるんだろうと思いますね。

 ただ、地図の場合には、やはりかなり個別の、それぞれによって相当事情が違うということもございますので、発表するということはこの法律から見ても難しいということでございますが、毎年、随時適切に見直していくということでやらせていただきたいと思っております。

小宮山分科員 ぜひ、これから、随時適切にという中においては、今残っている地図混乱地区というのは大変難しいところがかなり残ってきているというのも事実でございますので、その点も加味いたしまして前向きな見直しをしていただきますよう、よろしくお願いいたします。うなずいていただいて、ありがとうございます。

 さて、我が党というわけではないんですけれども、検察審査会法の改正の問題について質問させていただきたいと思います。

 私自身、冤罪問題等に携わらせていただくようになったのは、障害者政策をずっと県議時代からもさせていただきました。また、親の関係でさまざまな施設にも子供のころから行かせていただいて、本当に、生きている者それぞれに人権があり、そして生きているからにはそれぞれの理由があり、役割があるんだというふうに思っております。

 しかし、九州で起こったある交通事故の場面にたまたま居合わせた障害者の方が犯人に仕立て上げられそうになったという事案がございました。親を思ったりすることによって結局自供をしてしまうという追い込まれた状況だったというふうに記憶をしております。こういった誰でも犯人になってしまう、させられてしまうということがあるんだということをなくさなければ、司法の公正性や信頼というものは保てないということで、この関係の問題に携わることとなってまいりました。

 その中で、平成十六年法改正で、検察審査会により二度起訴すべきと判断された場合は強制起訴となる制度が導入されております。これは、市民の、民間の、国民の感覚を生かすという面で入ったというふうにも聞いておりますが、当時の採決をしたときには、ここの部分、さまざまに、審査会については余り深く、審議し損ねたといった後悔をされた議員さんの声も聞いております。

 これまで強制起訴に至った数は七件となっております。この数字自体はどう評価するものでもございませんけれども、その後、地方裁判所以上で判決が示されたもの四件のうち、三件では無罪となっております。

 残り一件、本年二月八日に、強制起訴による初の有罪判決が出ております。ある町長さんが飲食店で女性従業員に暴行したと暴行罪に問われた事件であります。ところが、有罪判決が出た後、二度にわたる強制起訴の議決、並びに、地裁有罪判決に至る証拠とされていた目撃証言、これは暴行があったとされる現場飲食店内に居合わせたほかの男性客なんですが、女性に頼まれてうその証言をしたものであったと証言者自身が表明し、控訴審の際に証人となる場合にはその旨の証言をする意思を述べております。

 不確かな証言を証拠とした、こういったこと自体が現実になっていることに私自身大変驚いていることでもあり、先ほどからも繰り返すようですけれども、誰もが被告人として社会的信用に取り返しのつかない大きな傷を与えられる可能性があること、これに大変怖さも感じております。結果、強制起訴に至ったものは皆、無罪または無罪となる可能性の高いものになってしまうのではないか。

 ともかく、不確かな証拠によってということ、また検察審査会には一人しか弁護士が入らないということも含めまして、制度上ではまだまだ見直す点があるんだと思っております。

 この存続に関しましては、今まだ制度が始まったばかりということでありますので、我が党におきましても、森ゆうこ代表代行を筆頭に、現在の審査会制度の問題点に関して質疑を重ね、また、特に、審査会審議の会議録における記載事項の法定及び全ての発言の記録、また開催状況に関する事項の公表、審査補助員の増員という改正について、法案として準備をしているところでもございます。

 同じく司法制度改革で導入された裁判員制度と比べて、不透明なことがある対比も大変大きなことになっております。

 この制度、また、私自身も過去に予算を調べておりまして、一日三万円の補助の費用が入っている、これがどういった方、どういった補助なのかわからないということもあります。夕刊紙などには、検察審査会の裏金づくりなどという記事も載せられたこともございます。

 こういった不透明さをなくすという点も司法制度改革の大きな意義だったかと思っておりますので、この法改正などの検討もまだ必要かと思いますが、ぜひ大臣の御所見もお聞かせください。

谷垣国務大臣 検察審査会法は、小宮山委員がおっしゃいましたように、裁判の中に市民的感覚も取り入れる必要があるということで導入されたものだと思っております。そして、今、その運用の現状は、まだ件数が少ないものですから、確定的な意味での評価を行うことはやや難しい段階だなと思っております。

 ですから、私としては、もう少し制度の運用を見ていろいろなことを考えたいと思っているわけですが、その過程で、今、小宮山委員がおっしゃいました議員立法等、いろいろお考えがあろうかと思います。そういうことも十分視野を、視野を広げてと言うといけません、今はまだ、あくまで全体の評価をしなければならない、見ている段階でございますが、いろいろな御意見も耳に入ってまいりますので、深く考えてまいりたいと思っております。

 そういう中で、今、具体的な事件について、判例で証拠がどうということをおっしゃいましたが、これはまさに個別具体の裁判所の判断において証拠をどう評価されたかという問題でありますから、法務大臣としては所見を差し控えるべきであろうと思います。

 それからもう一つ、透明性の問題をおっしゃいました。もちろん、この全体の司法プロセスの中で透明性というのは非常に必要なことでございますが、検察審査会は起訴前の段階ということもございまして、そこで公開をするということは、まだ起訴するに至らない方のいろいろなプライバシー、名誉というようなものも当然考えなければならないので、非公開となっていることについては私はそれなりの理由があるんだろうとは思っております。

 ただ、全体として申し上げることは、もう少しこの制度の運用を見て問題点を判断していきたい、このように考えております。

小宮山分科員 予算もそうですけれども、きちんと検証ができる記録を残すこと、これは当然必要かと思いますし、今の段階では余りにも非公開、不透明過ぎて検証することもかなわないという状況でもございますので、ぜひここは前向きに検討をお願いしたいと思います。

 さて、最近、株価等は上がってきてはおりますが、やはり現実社会の方は必ずしも景気がいい話がふえているわけではありません。当然、不景気な中、さまざまな問題が起こっております。

 そこで、物上保証による融資問題についてお伺いさせていただきたいと思います。きょうは、金融庁の方からも島尻政務官にも来ていただいておりますので、御見解をお聞かせいただきたいと思います。

 金融庁では、経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とすることにより、金融機関に指導をしております。現在、個人連帯保証をとらない抜け道問題が問題となりつつあるのではないか。また、そういった事例を耳にするようになりました。経営者本人、経営者の配偶者、経営を継承する予定の者及びみずから申し出た場合についての四通りについては求めることとされる物上保証の、四つ目であります、みずから申し出た者が問題となっております。

 個別の内容には触れませんけれども、耳にした事例によりますと、銀行の融資先企業と関係ない第三者に対して、将来性の高い上場を計画している企業だとか、事業拡大のためにさらに融資を検討しているよい企業だから問題がないというような思い込みをさせまして、役員に名を連ねることで経営状況もわかるからと促されて役員になった上で、自宅を物上保証に入れたところ、ほどなく企業の経営が行き詰まって、もともと全くの第三者であった方が返済また強制執行の憂き目に遭うというようなことが起きております。

 個人連帯保証をやめていこうという中で、このようなさまざまなやり方において、第三者がみずから申し出たという形をとって物上保証が求められるということ、このような事例が増加するべきではないと考えておりますが、この問題化の懸念について、金融庁からの御見解も伺わせていただきたいと思います。

島尻大臣政務官 お答えをさせていただきたいと思います。

 小宮山委員におかれましては、いつも弱者の目線での国会活動をなさっておられますこと、後輩の女性議員としても大変敬意を表するところでございます。

 本日、委員御指摘の物上保証の件でございます。金融庁といたしましては、融資に当たっては、いわゆる物上保証を含めて、必ずしも担保、保証に依存しないで、借り手の経営状況、資金使途、回収可能性などを総合的に判断して行うということがあくまでも健全な融資の慣行だというふうに認識をしているところでございます。

 金融庁の監督指針におきましても、事業からのキャッシュフローを重視して、担保、保証に過度に依存しない融資の促進を図る旨明記をいたしまして、金融機関に適切な対応をとるよう促しているというところでございます。

 本日、先生御指摘の物上保証、しかも、個人保証の抜け道として物上保証が利用されているのではないかという御指摘でございますけれども、この物上保証についても、金融機関は、顧客から説明を求められたときは、契約締結の客観的合理的理由について、顧客の知識、経験等に応じて、理解と納得を得るためにしっかりと説明するということが重要である旨、監督指針に明記をしているところでございます。

 具体的な説明内容といたしましては、極度額などの契約内容について、債務者との取引状況、今後の取引の見通し、あるいは、繰り返しになりますけれども、担保提供者の財産の状況を踏まえた契約締結の客観的合理的理由などを説明するということが考えられるというふうに思っております。

 こうした取り組みによって、金融機関において顧客との紛争等が未然に防止される体制が整備されることが何よりも重要だというふうに考えているところでございます。

小宮山分科員 ありがとうございます。

 また、実際では、競売になってしまっても、競売を停止しようとしましても、金融機関を相手にしますと、資本の違いが相当あり、非常にこの問題は難しいとも聞いております。

 融資の債権回収方法として、金融機関により担保物件が競売にかけられるということがあります。それ自体を問題視するものではありませんけれども、悪質と言っていいんでしょう融資事例があった場合には、競売の停止を求める仮処分を裁判所に申請することとなるのかと思っておりますが、実際にはできない。

 競売停止を求めるためには、その処分が認められる理由をしっかり示すと同時に、多額の保証金、法的に言えば担保を用意することが必要となる。また、対象の不動産の価値によって金額が変わるということでありますので、その土地の、長年住んでいたところが、当然、地価が上がっていけば上がってしまう。そして、固定資産税は払えたとしましても、そのほかは日々の生活で必要となってしまう。

 そういったことを考えますと、多額の保証金が必要となって、場合によっては何千万あるいは何億円というお金が必要になってくることがあり、実際には、土地は持っていてもそのお金が用意できないがために、仮処分申請すること自体は選択できず、泣き寝入りになる場合が起きているとも伺っております。

 こうした高額ともなる保証金が必要となることについてどのように考えるのか。これは弁護士をされていたということもあります大臣にも、やはりぜひお伺いをしたいと思います。

 また、物上保証については本当に次なる問題になってくるんだと思っております。この場合に関しても法務省では何か取り組みをされていくのか。

 日本にしか連帯保証人制度というものがないことを考えると、こういったことが、健全な利益を生んでいく、それを見て投資をするということから離れてお金の貸し借りが現実には起こってしまっているという意味では、日本の経済を弱くしていく一端でもあったのではないかと考えるところでもございますので、この点に関しまして両方から伺わせていただきたいと思います。

谷垣国務大臣 私の方は、今、民法改正、債権法改正の中で、こういう保証制度等々をどうしていくかという議論をしております。

 そして、保証というのは、もう今さら申し上げるまでもありませんが、一方で、やはり事業等々をしていくときの血液である資金を借りたいけれども自分が十分に信用がないという場合がありますから、そういう場合、その信用を補完するものとして、その一つとして保証制度が考えられてきたわけですが、他方、個人の保証人が、いろいろな事象が起こって、想定外の負担を負わざるを得なくて生活も破綻してしまうというような事例があることも事実でございます。

 そこで、法制審議会の民法部会で、こういった点を少し考える必要があるのじゃないかということで、事業者による事業資金の借り入れについての個人保証は、経営者によるものを除いて無効とすることなどを考えたらどうだという議論がございます。しかし、他方、なかなかそれは、個人保証を制限してしまうと実際金が回っていくのかという議論もありまして、実はここもまだ検討中でございます。

 そうなると、委員の御議論は、仮に保証が利用できないとなると、今度は同じことが物上保証で起こるのではないかということですね。

 物上保証は、確かにそうやって物上保証を提供した人が過大な負担に悩むということも、これはあり得るだろうと思います。他方、違いはといえば、保証の方は、要するにサインをしてしまうと保証人になってしまったということになりますが、物上保証の場合には、やはり登記等々の手続が必要でありますから、ある程度考慮をする時間があるということで違いもあると思います。

 ですから、保証も物上保証もと余り限定してしまうと、本当に資金が回っていくのかということも他方で考えていかなきゃならないということもあると思います。いずれにせよ、これはまだ債権法のところで検討中でございます。

 そこで、もう一つの問題は、悪質なことで自分の提供した担保物がいよいよ競売にかかるというような場合に、仮処分で何とかそれを抑えられないかということですね。

 仮処分は、訴訟と比べますと、簡易迅速な手続のもとで暫定的にその権利を保全していこうという制度でございますから、仮処分命令が、後から振り返ってみると、簡易迅速に判断したけれども、判断を誤っていたということもあるわけですね。

 ですから、そこでやはり、仮処分命令の発令のために必要な担保は、こういう違法あるいは不当な仮処分の執行によって債務者が受ける可能性のある損害を担保するものである、債権者と債務者の公平性を図るという観点があるのではないかと思います。ですから、その担保の額がどのぐらいかというのも実は難しい問題でございますけれども、結局、これも裁判所が裁量によって裁定をしなければならないという面が残らざるを得ないところがあるであろうと思います。

 そういうことを含めて、全体の担保制度がどうなのかということを、担保制度というか保証等々がどうあるべきかということを、今、法制審議会の民法部会で議論をしているところでございます。

島尻大臣政務官 金融庁としてのお答えを申し上げたいというふうに思っております。

 今、谷垣大臣からもいろいろと御説明がございました。今、法制審議会の方でいろいろその法律についての審議がなされているということでございまして、金融庁としては、事が起こる前、あるいは、顧客、借り手あるいは保証人になっている方が何かお困りのとき、あるいはトラブルだと感じたときに、では、それに対してどう対処していくのかというところなんだというふうに思っておりまして、金融機関による不適切な顧客への対応があった場合には、もちろんその事実関係をすぐさま確認する、直ちに確認するということ、そして、必要に応じて金融機関に対して改善指導をするということ、今、そういった対応は行わせていただいているわけでございます。

 金融庁の中には、利用者相談室ということで、いわゆるその窓口が設置されているわけでございまして、ウエブだとかファクスとか郵便とかでアクセスができるということなので、何かお困りなことがございましたら、こういったところを利用していただきたいというふうに思う次第でございます。

小宮山分科員 谷垣大臣の法解釈というのは、解釈として理解できないところはないんですが、現実問題としてはそれでは進まないことも多々ございます。

 また、今のような、保証金というのが公正なのかという点に関しましては、この解釈では公正だと私は思いません。

 特に、金融に関しましては、グラミン銀行の例を見れば、個人の保証であったりそういうものではなく、事業の計画性というものを見て融資をすることによって、今は世界に、七支社かな、ふえております。

 やはり、こういった本来金融業が見るべきもの、物上という形ではなく、事業の内容での収益率を見てお金を貸す、そして借りるという、ここの制度というものをしっかりと後押しする、そういった法律であることが公正なものだと思っておりますので、この点に関しましても、ぜひ今後、審議会等、そういったところでの審議には入れていただくことをお願いいたしまして、残余の質問はまた後日させていただくことを伝えまして、終了させていただきます。

 ありがとうございました。

伊藤主査 これにて小宮山泰子君の質疑は終了いたしました。

 午後一時に本分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時五分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

伊藤主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。中野洋昌君。

中野分科員 公明党の中野洋昌でございます。よろしくお願いいたします。

 早速でございますけれども、成年後見制度について幾つか御質問をさせていただきます。

 本年の三月十四日に、東京地裁におきまして、成年被後見人は選挙権を喪失する、この現在の制度が憲法違反である、こういった判決が出されました。我が党は、国民の基本的な権利である選挙権の侵害、これは大変に重い判決である、このように受けとめております。これに対して政府としては控訴されたわけですけれども、正直申し上げて、大変に遺憾である、このように考えております。

 与党におきまして、現在、これに対応すべく制度改正を検討しておるところでございますけれども、現在の政府のこの判決に対する、また与党の動きに対する考え方をお示しいただければと思います。

米田政府参考人 お答えいたします。

 今御指摘の三月十四日の東京地裁判決を受けまして、現在、与党を中心に早速検討をお始めいただいたというふうに私どもも承知しております。

 選挙権は、民主主義の土台となる選挙制度に関することでございますので、無用な混乱を回避しつつ、国民の代表である国会議員、各党各会派で、障害者、高齢者の財産権を保護する成年後見人制度と選挙権との調整を図る制度のあり方の検討を速やかに進めていただき、立法府として一定の方針が定まれば、その方針に従って総務省としても適切に対処してまいりたいというのが現在の考え方でございます。

中野分科員 ありがとうございます。

 大変に重要な仕組みでございますので、与党としても早急に検討してまいりたい、このように考えておりますので、政府としてもよろしくお願いいたします。

 続きまして、この成年後見制度に関してでございますが、知的障害者の方、この方々は、さまざまな場面で成年後見制度を活用することが必要になってまいります。しかし、知的障害者の皆様にお伺いをすると、成年後見制度の報酬を支払うことが大変に金銭的に困難である、こういう御要望も伺うところでございます。

 知的障害者などの方が成年後見制度を活用する場合には、国としてしっかりと支援を行っていく必要があると考えますけれども、厚生労働省の見解を伺います。

岡田政府参考人 知的障害者の方などが障害福祉サービスを利用するに当たって、必要に応じて成年後見制度を活用することは有用であり、その促進を図っているところでございます。

 厚生労働省では、成年後見人の報酬などの費用負担が困難なために利用できないという状況にならないように、障害者総合支援法の地域生活支援事業という事業がございまして、その中で、市町村が行います成年後見制度の利用を支援する事業に対して費用の助成を行ってきているところでございます。

 この事業につきましては、従来、市町村の任意の事業ということでございましたけれども、平成二十四年度から市町村の地域支援事業の必須事業と位置づけさせていただいているところでございます。

 実績でございますが、平成二十三年四月一日で七百五十一市町村で行われたものが、二十四年の四月一日には千二百四十ということで、実施する市町村も大分ふえてきているのかなというふうに思っているところでございます。

 さらに、いわゆる市民後見人というような形でそういった後見人制度を活用するということのためには、平成二十四年六月に、障害者総合支援法におきまして、市民後見などの人材育成の活用を図るための研修を市町村が行う場合に、地域生活支援事業の必須事業として新たに追加したりとか、知的障害者福祉法に、市町村の努力義務としまして、後見人などの業務を適正に行うことができる者の家庭裁判所への推薦などの措置を行うことができるような旨記載したところでございます。

 いずれもこの四月から施行されているところでございます。今後とも、さらなる成年後見の利用促進に努めてまいりたいというふうに考えております。

中野分科員 ありがとうございます。

 この四月からまた新しい制度もスタートしたということで、その普及、また利用促進に努めていっていただきたい、このように考える次第でございます。

 続きまして、司法制度について質問をさせていただきます。

 平成十四年、国民にとって身近な司法を実現する、こういった考え方の中、政府の司法制度改革推進本部においてさまざまな政策が決定をされたところでございます。その一つの大きな柱が法曹人口の大幅な増加であり、また法科大学院の設置である、このように考えております。

 しかし、近年、法曹人口と法的需要に関するバランス、これが非常に問題になってきている、このように感じます。弁護士の方からは、弁護士の資格を取ってもなかなか事務所で採用してくれない、だから、いきなり独立せざるを得ない、こういうお話もよく伺うところでございます。他方で、日本では、諸外国と異なりまして、税理士の方であるとか、あるいは司法書士、行政書士、社会保険労務士、土地家屋調査士なども含めて、いわゆる隣接法律専門職、こういう方も数多くいらっしゃるわけでございます。こうした方々からは、その職域についてももっともっと拡大をしてほしい、こういう御要望も強く出ているようなところでございます。

 こうした現在の状況に鑑み質問をさせていただきますけれども、日本の法曹人口について、現在、法的需要に対するバランスというものをどう考えるのか、そして、これからの法曹養成制度のあり方をどうするのか、これについて大臣の御見解を伺いたいと思います。

谷垣国務大臣 法曹人口のあり方についてはいろいろな考え方があるわけでありますが、十年ほど前に改革が行われまして、現在、この運用を見て、内閣に設置されました法曹養成制度関係閣僚会議の下に法曹養成制度検討会議を設けまして、そこで検討していただいております。

 そこで四月九日付で中間的取りまとめがなされまして、今、パブリックコメントにかけております。そして、八月二日までにとにかくきちっとした見解をまとめようというので、今、作業をしているわけですが、その中で、スタートしたときには法曹を毎年三千人というのを目標として、これは閣議決定もしたわけでございますが、この検討会議の中では、三千人は現実的ではないということで、いろいろな意見がございましたけれども、その認識は一致をして、三千人というのを外した形で中間報告をまとめたということでございます。

 その背景には、今おっしゃったようななかなか就職難というようなこともございましたし、あるいは、ロースクール等も、当初の考え方に比べると随分、募集して来る人員も減ってくるというようなこともありました。

 他方、国際関係の進展等々を考えますと、法曹が仕事をすべきところをもっと職域拡大を積極的にやるべきではないかとか、いろいろな考え方があるわけでございますが、いずれにせよ、この検討会議の中で、パブリックコメントを踏まえて、早急に精力的に意見をまとめていただきたいと思っております。

中野分科員 大臣、ありがとうございます。

 今でも、多くの若者が法曹の世界を目指して法科大学院に入学をされたり、また頑張っている、そういう若者が数多くいるわけでございます。こうした法曹を志す人が、引き続き高い志を持って法曹の世界で活躍ができるように、ぜひうまい制度設計をやっていただきたい、こう考えるものでございますので、どうかよろしくお願いいたします。

 続きまして、先ほどお話をした隣接法律専門職、これに関連をしてでございますけれども、私の地元の兵庫県で、社会保険労務士の皆様が学校で社会保障についての出前講座を行っている、こういうお話を伺いました。これ自体は、社会保障について、早い、若い年から理解の促進をするということは非常に重要であるというふうに考えますので、こうした取り組みは進めていくべきであろうなというふうには思うんですけれども、これを聞くと、どうも手弁当で行っておられる、余り費用負担というような形では受け取っていない、こんなお話も伺いまして、国としては何らかの形でこうした取り組みというのは支援をしていくべきではないか、このように考えるものでございます。

 本日は、学校教育のこうした関係で文部科学省、そして社会保障の理解促進という意味では厚生労働省の方に来ていただいておりますので、それぞれ御見解を伺えればというふうに思います。

関政府参考人 今お話のございました専門家を初めとした学校の外部の方々の協力を得ることにつきましては、児童生徒に実感を持って理解をさせたり、児童生徒の興味、関心を高めたりするなど、学習意欲や学習効果を高める上で有意義であると考えております。

 学習指導要領におきましても、学校の教育活動において配慮すべき事項といたしまして、地域の人々の協力を得ることや、外部の各種団体との連携を図ることなどを示しております。今お話ございましたような、社会保険労務士の方々が出前授業として学校に出向き、年金や医療、労働などの社会保障制度のわかりやすい説明を行う、そういった授業などの取り組みがあると承知をしております。

 このような活動を支援するために、文部科学省では、例えば、学校からの支援の要請と出前授業のプログラムを提供できるというような地域社会や産業界等からの支援の提供を結びつけるポータルサイトを開設したり、あるいは二十五年度の予算案におきましては、学校で多様な地域人材を活用するための経費の一部を補助する事業に係る予算を計上したりしているところでございまして、今後とも、学校における外部講師を活用した授業の支援に努めてまいりたいと考えております。

唐澤政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御指摘をいただきましたけれども、社会保険料や税を負担し、また社会保障制度を支えて守っていくのは、国民の皆様でございます。その意味で、将来の社会を担うお子さんたちに学校教育を通じて社会保障の意義を教育していただくということは大変重要なことだというふうに考えております。

 このため、厚生労働省といたしましては、平成二十三年度から有識者の検討会を設置いたしました。このメンバーには社労士の方も御参加をいただいておりますけれども、教育現場で活用するための教材などにつきまして議論を開始しております。

 具体的には、これまでに高校生向けのワークシート教材というものを作成、公表いたしまして、昨年の九月には、文部科学省の御協力をいただきまして、全国の教育委員会に周知をさせていただきました。また、作成をいたしました教材を活用して、高等学校での社会保障教育の試行事業、これは全国の高等学校の御協力をいただいておりますけれども、こうした事柄を実施しているところでございます。

 今後とも、試行事業の結果を踏まえまして、教材の改善や映像教育の施策、さらなる試行事業の実施など、文部科学省との連携のもとで、学校教育における社会保障教育の充実に取り組んでまいりたいと考えております。

中野分科員 ありがとうございました。

 文部科学省、厚生労働省、それぞれでこうした取り組みを応援しようと検討されているということで、引き続き取り組んでいただきたい、このように思います。

 続きまして、少し話題はかわりますけれども、新しい在留管理制度、外国人の在留管理制度について御質問をさせていただきたいというふうに思います。

 この制度は二〇一二年から新しく施行されているものでございまして、従来の外国人の登録証、これにかえて在留カードというものを発行する、こういう制度でございます。制度が切りかわったことに関して、在留外国人の方から少し心配の声が幾つか上がってまいりましたので、これについて質問をさせていただきます。

 一つは、従来、外国人の登録の原票におきましては、例えば中国籍の方、韓国籍の方、それぞれ母国語で使用をしていた漢字、これをそのまま記載できる、そういう状況であった。しかし、今回の在留カードでは、そうした母国語で使用している漢字を使えない。例えば中国の方であれば、いわゆる簡体字、日本の常用漢字ではない、ああいう漢字が使えない、あるいは常用漢字外の旧字体というか、もう少し難しい漢字、そういうものも使えない、こういうことでございまして、実際に名前の照合を行うときに本当に大丈夫なのか、こういう御意見があるわけでございます。

 日本人の漢字におきましても、例えば吉田の吉という漢字の下のところが長い短いとか、これによって照合が例えばできるできない、こういうこともあるわけでございまして、こうした意見について、政府としてどのように考えておられるのか、またどのように対応されるのか、御見解を伺えればと思います。

谷垣国務大臣 今、中野委員御指摘のように、新しい制度になりまして、在留カードそれから特別永住者証明書、その氏名欄は、原則として旅券上のアルファベットによるものとしております。ただ、本人が漢字氏名の表記を希望する場合は、これを併記できることにするというわけですが、その際、漢字もいろいろなものが今御指摘のようにございます。中国でいえば、いわゆる簡体字というようなものがあり、いろいろなのがあると思いますが、今回は、そういう外国で使っておられる漢字というのではなくて、日本の正字、そういうものに置きかえて表記をしております。

 そして、その正字の範囲をどのように決めているかといいますと、当該外国の漢字の字形に可能な限り配慮をしながら、コンピューター処理をし得るものにする。その上で、住民基本台帳事務において取り扱われている漢字と整合させる必要があると考えまして、それを踏まえて、法務省告示により定めました。

 法務省の入国管理局のホームページでは、漢字氏名表記の置きかえのルール、あるいは置きかえられる漢字の一覧を広報しておりますが、今後、そのホームページで、正字を検索できるシステムを掲載して、置きかえた文字を容易に確認できるようにしていこうと考えております。

 現段階で考えていることは以上でございます。

中野分科員 大臣、ありがとうございます。

 私、実はもう一点、御心配の声というものを伺っておりまして、それは、従来の外国人の登録の証明書、ここから在留カードへこれから切りかえる手続がどんどん発生をしていく、この切りかえ手続についてでございます。

 従来、外国人登録証、これも切りかえがございまして、そのときには、はがき等による通知を受けていた。今回、こうした切りかえの手続について、周知の仕組みがどうなっているのかなということで、非常に不安の声を聞くわけでございます。個々人に対して、はがき等で、切りかえの時期がいつです、切りかえの時期が来ました、こういうことが本当に通知をされるのか。あるいは、細やかな周知がなされないと、年配の方々も多くいらっしゃるわけでございます、こうした手続があることそのものを知らないままに資格が失効してしまうということもあるのではないか、こういう御心配の声を伺っておるわけですけれども、これについても、政府としてどう考えられて、どのように対応されるのか、御見解を伺いたいと思います。

谷垣国務大臣 永住者それから特別永住者の方々の多くは、平成二十七年の七月八日、このときに、在留カードまたは特別永住者証明書とみなされる外国人登録証明書の有効期間が満了する。ですから、その日までに在留カード等に切りかえていただく必要があるわけですね。

 廃止になった外国人登録制度のもとでは、多くの自治体、市区町村が、行政サービスの一環として、個々の登録者に対して切りかえの通知を行っていたと理解しております。それで、各方面から、個々の対象者への案内を行うことについて、これはぜひやってくれという要望が寄せられていることも私ども承知しております。

 それで、こういう切りかえについては積極的に広報を実施していかなきゃならないことはもちろんですが、個々の特別永住者あるいは永住者の方々に対する案内につきましては、これはまだ現在の段階では検討するとしかお答えができないわけでございます、予算措置その他もございますから。

 しかし、今のような御要望も十分踏まえて検討してまいりたいと思っております。

中野分科員 ありがとうございます。

 大臣から、二つの点について、こういう形で対応する、また現在検討している、こういうお答えをいただきまして、大変にありがとうございます。

 この制度の改正に伴って、在留外国人の方がより不便になった、こういうことがないように、また、制度の大きな切りかえでございますので、混乱が生じないように、引き続きこの状況というものをチェックしていただいて、必要な手当てをまた必要なときにとっていただければ、このように考えております。

 私といたしましても、いろいろな現場の声をしっかり聞いて、それを大臣のところにまたお届けしていきたいというふうに思いますので、どうかよろしくお願いいたします。

 続きまして、金融円滑化法について質問をさせていただきます。

 昨年度の末において金融円滑化法の期限が到来をいたしました。我が党といたしましては、景気の好転、これが中小企業、零細企業、こういうところに及んでいくにはやはり一定の時間がかかるだろう、このように考えておりまして、金融円滑化法の期限の延長というものを強く求めていたところでございますけれども、大変残念ですけれども、この延長には至りませんでした。

 しかし、中小企業の金融について、貸し剥がし等が起こらないようにさまざまな手当ては行っていく必要があるのではないか、このように考えておりますけれども、政府としてどのように対応していくのか、御見解を伺いたいと思います。

小野政府参考人 お答えいたします。

 金融機関が貸し付け条件の変更等や円滑な資金供給に努めていくことは、円滑化法の期限到来後においても何ら変わるところはございません。

 この点につきましては、今般改正いたしました金融検査マニュアル、監督指針におきまして明記しておりまして、今後、検査監督でさらに徹底していく所存でございます。

 一方、今後につきましては、中小企業等の真の経営改善等を図ることが重要と考えております。

 その際、借り手の方々の状況はさまざまでございまして、個々の借り手の方々の状況に沿ったきめ細かい支援策が必要と考えております。

 政府といたしましては、例えば、独力では経営改善計画の策定が困難な小さな中小企業等の方々に対しまして、認定支援機関による計画策定支援を行うなど、中小企業等の皆様に対するさまざまな支援策の推進に全力を尽くしているところでございます。

 また、中小企業等の皆様の声を直接聞いたり、状況をきめ細かく把握して、迅速的確に対応していくことも重要と考えております。

 その一環といたしまして、全国の財務局などの相談窓口で個別の相談等にきめ細かく対応しておりますほか、中小企業金融等のモニタリングに係る副大臣等会議におきまして、今後、関係省庁が連携して中小企業等の実態把握等を行っていくこととしております。

 このような取り組みによりまして、円滑化法の期限到来後の対応に万全を期してまいりたいと存じます。

中野分科員 ありがとうございます。

 現在、政府におきましては、アベノミクスということで三本の矢、これによる景気対策というものを行っているわけでございます。

 金融緩和において、今、日銀総裁が大変に力強い金融緩和を行っております。これによりまして、株価も上昇いたしました。円の方も安くなりまして、製造業を中心に非常に好転をしていくのではないか、こういうようなお話もございます。

 また、第二の矢ということで、公共投資をしっかりとしていく、災害に強い国土をつくるための投資をしていく、こういうものも補正予算の執行を中心に行っているところでございまして、そうしてこれから第三の矢ということで、成長戦略を力強く進めていく、そういう状況でございます。

 そんな状況におきまして、正直申し上げますと、現場に行くと、ニュースでは、やはり株価が上がった、あるいは非常に景気がよくなりそうだ、こんな声があるわけでございますけれども、現場ではなかなか、仕事がふえる、賃金が上がる、そういう状況にはまだ至っていない。私の地元尼崎では、非常に中小零細の製造業の方を中心にいろいろな会社がございますけれども、なかなか、まだ現場まで景気の影響というのが及ぶには時間がかかる、これが正直な声でございます。

 先ほどおっしゃっていただいた貸し剥がし等がないようにしっかりと監視をしていく、また、さまざまな事業再生なども含めて取り組みをされていく、こういうものをもっと力強くやっていただくとともに、これからやはり一番大事だと思いますのが、中小企業の金融等の状況について、本当に貸し剥がしが起こっていかないか、そういうものを監視していく、モニタリングしていく、これがこれから一番大事である、このように考えます。

 このモニタリングについてどのように対応されていくのか、もう少し詳しくお聞かせいただければというふうに思います。

小野政府参考人 お答え申し上げます。

 まさに議員御指摘のとおり、円滑化法の期限到来後における金融機関の対応というものをしっかりとモニタリングし、迅速かつ的確に対応していくことが重要と考えています。

 具体的には、先ほど申し上げました、今般改正いたしました金融検査マニュアル、監督指針におきまして、検査におきまして金融円滑化を遂行するための金融機関の体制の状況をしっかりと検証いたしますとともに、定期的な金融機関に対するヒアリング等によりまして、金融機関による中小企業、小規模事業者への円滑な資金供給に向けた積極的な取り組みを確認していくこととしてございます。また、金融機関に対しまして、貸し付け条件の変更等の申し込み状況、実施状況につきまして定期的に報告を求め、金融庁におきまして取りまとめ、公表することといたしております。

 これに加えまして、先般、内閣府令等を改正いたしまして、金融機関が中小企業、小規模事業者の経営支援に係る取り組み状況を定期的に公表するように義務づけております。

 さらに、先ほど申し上げましたとおり、全国の財務局等の相談窓口に寄せられました金融機関の対応等に関する情報を今後の検査監督に活用していくほか、先月設置されました中小企業金融等のモニタリングに係る副大臣等会議におきまして、今後、借り手からのヒアリング等を通じまして金融機関の対応について把握するなど、関係省庁が連携してきめ細かく実態把握していくこととしております。

 このような一連の取り組みによりまして、金融機関が適切に金融仲介機能を発揮するよう、しっかりとモニタリングしてまいりたいと存じます。

中野分科員 ありがとうございます。

 金融庁からの大変に力強いお言葉をいただきまして、大変心強い思いでございますけれども、やはり中小企業が元気にならないと日本の景気は本当に回復はしていかない、私はこのように思いますので、しっかり中小企業金融の対策について今後とも対策を講じていただきたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。

 最後になりますけれども、一問、会計法について御質問をさせていただきたい、このように思います。

 なぜかと申しますと、現在、政府においてデフレ脱却に向けて力強い政策を進めているところでございます。これは公共投資、公共事業の分野におきましても同様でございまして、やはり受注価格が年々落ちてきている、こういう御指摘があったところでございます。

 先般、太田大臣のもとで公共工事の労務単価というものを大幅に引き上げをいたしました。やはり公共事業の分野もデフレを脱却していかないといけない、実勢価格に近づけないといけないということで、こうした取り組みもなされているところでございます。

 しかし、建設業界からよくお話を伺いますのは、会計法において予定価格という仕組みがある、政府が積算をした予定価格、もしこれを上回る金額の申し込みをしたとしても落札ができない、こういう会計法上の仕組みになっておりまして、予定価格には上限拘束性がある、このように言われております。このために落札価格の低下を招いている、公共調達における入札においてデフレスパイラルに陥っているんじゃないか、こういう御意見もあるところでございます。

 この予定価格の上限拘束性の問題について、政府としてどのように考えているのか、御見解を伺いたいというふうに思います。

福田政府参考人 御指摘の予定価格につきましては、会計法二十九条の六におきまして、契約の目的に応じて、予定価格の制限の範囲内で最低の価格をもって申し込んだ者を契約の相手方とするものと規定しております。

 これは、国の支出原因契約は国会の議決を得た歳出予算あるいは国庫債務負担行為等の債務負担権限に基づいて行わなければならないことから、定められた予定価格の範囲内で契約を締結することが予算の範囲内で年度内の支出が行われることを統制するために必要不可欠であるという考え方に立つものでございます。また、国民の税金等を原資とする予算を適正かつ効率的に使用するという会計法の趣旨に照らしても、このような制度は必要だろうと考えております。

 ただし、この予定価格自体は、予決令の中で取引の実例価格などなどを考慮して適正に定めなさいというふうに定めておりまして、取引の実例価格を直ちに反映させろという規定にはなっておりません。要は、適正なコストを反映しろという定めになっておりまして、御指摘の国土交通省の対応もこの法令に従ってなされたものと認識しております。

中野分科員 ありがとうございます。

 きょうは時間がございませんのでこの一問だけでございますけれども、やはり公共工事の入札の仕組み、さまざまな課題があるんじゃないか、こういう御指摘はあるところでございます。また今後議論を深めてまいりたい、このように考えておりますので、どうかよろしくお願いいたします。

 以上で質問を終わらせていただきます。大変にありがとうございました。

伊藤主査 これにて中野洋昌君の質疑は終了いたしました。

 次に、河野正美君。

河野(正)分科員 日本維新の会、比例九州選出の河野正美でございます。よろしくお願いいたします。

 本日は、私のふるさとでもあります福岡県の抱えている喫緊の課題を中心にお尋ねしてまいりたいと思います。

 早速質問に入ります。

 福岡県は、アジアの玄関口として、観光にも大変に力を入れているところでございます。しかしながら、平成二十三年の発砲件数が十八件ということで、全国ワースト一位でございます。また、我が国には指定暴力団と呼ばれる団体が三月現在で二十一団体あるというふうに聞いておりますけれども、そのうちの五団体が福岡県にあるということで、これもまた日本最多でございます。

 こういったことから、非常に危ないというイメージを福岡県に持つ方も少なくないと聞いております。福岡県の方には、観光に限らず、企業進出に関してもちゅうちょされるということで問い合わせが来る場合もあるというようなことも伺っております。

 そういった観点から、昨年十一月、福岡県知事、福岡県公安委員長、福岡市長、北九州市長の四名が連記で、暴力団壊滅のための抜本的法的措置に関する要請書というものを提出しております。これに沿って、法務省ほかの御見解をお尋ねしたいと考えております。

 まず、暴力団犯罪の根絶という観点から、通信傍受の要件緩和やおとり捜査など、通常とはいささか異なる新たな捜査手段の導入により、しっかりと、かつ速やかに暴力団犯罪に対応していくべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。これについて法務大臣の御見解を伺いたいと思います。

谷垣国務大臣 河野委員の御質問にお答えしたいと存じます。

 昨年十一月、御指摘のように、福岡県知事あるいは福岡市長、こういった方々から要請書をいただきました。そして、その中では、工藤会等々の暴力団犯罪に的確に対応しなきゃいかぬという観点から、一つは、通信傍受、こういったものの要件緩和を考える必要があるのじゃないか、そういう新たな捜査手段というものを早期に導入する必要があるのではないかということですね。それからもう一つは、暴力団犯罪を、取り調べの録音、録画制度、今試行を行っておりますが、そういう対象から外すべきではないかといった要請をいただいたわけであります。

 こういった要請に関連する制度については、時代に即応した刑事司法制度を構築するための法整備の一環として、今、法制審議会で新時代の刑事司法制度特別部会を設けまして、調査審議が進められております。特別部会では、ことしの一月に、中間的に基本構想というのを取りまとめました。そこにおきましても、それぞれ、今後具体的な検討を行うべき事項であると今の問題が位置づけられております。

 それから、特別部会においては、これまでの調査審議の過程におきまして、北九州等々に視察に行っていただきました。それで暴力団犯罪の実情等についての説明を聴取する等々のことをやってきたところでもございまして、こういった視察やあるいは御指摘のような御要請も踏まえて、さらに具体的な議論、検討が進められることになると考えております。

 私としては、法制審議会で調査審議をお願いしている立場にございますので、私としての結論めいたことをまだ申し上げられる段階ではございません。その審議が充実したものになるよう努めるとともに、その審議の状況を見守ってまいりたいと思っております。

河野(正)分科員 ありがとうございました。

 昨今、取り調べの可視化ということで、先ほどからありますように、取り調べに際し録音や録画を行おうということが検討されております。一方で、今ありましたように、法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会の報告では、被疑者が組織や共犯者などについて供述しづらくなるのではないかという懸念が指摘されております。

 これらの制度は裁判員裁判対象事件を念頭に考えられていると思うんですが、暴力団犯罪について実際に録音、録画を試行した事例があるのか、警察庁の方に、実例があればということでお伺いしたいと思います。

室城政府参考人 取り調べの録音、録画につきましては、今委員御指摘のとおり、被疑者が報復等を恐れて共犯者に係る供述をしなくなるなど、暴力団犯罪を初めとする組織犯罪等の解明に支障を来すといった懸念もあるところであります。

 取り調べの可視化についても、現在、法制審議会において、特別部会において調査審議が行われているところでありますが、この問題は警察捜査や治安そのものに大きくかかわる極めて重要なものであるところから、警察においては、今申し上げたような懸念も踏まえ、第一次捜査機関としての責務を全うするという観点から、特別部会においてしっかりと議論を行うとともに、取り調べの録音、録画のあり方について引き続き検討を進めてまいる所存でございます。

 お尋ねのございました試行につきましては警察も当然やっておるところでありますが、中にはやはりそういう報復等を恐れて録音、録画することを拒むというケースもあるのは事実でございます。

河野(正)分科員 ありがとうございます。しっかりと実情を踏まえて、よりよい方法を見つけていただければと考えております。

 要望に関しましては、暴力団犯罪に関して可視化を除外するということが挙げられております。除外規定を設けていく考えがおありなのかどうか、法務大臣の御見解をいただきたいと思います。

谷垣国務大臣 先ほど申しましたように、私として、今、法制審議会に御審議をお願いしております。ですから、まだ私としての確定的な見解を申し上げるわけにはまいらないわけでございますが、先ほど申し上げた基本構想の中では、取り調べの録音、録画制度のあり方に関して、一定の例外事由を定めながら、原則として被疑者取り調べの全過程についての録音、録画を義務づけるという考え方と、録音、録画の対象とする範囲を取り調べ官の一定の裁量に委ねるものとするという制度案、この二つの考え方を念頭に置いて具体的な検討を行うこととされておりまして、今御指摘の点についても、こういった二つの制度案についての具体的な検討がなされる中で、さらに論議、検討がなされていくというふうに考えております。

河野(正)分科員 次に移りますが、今度、逆に暴力団の資金源ということで、所得調査であるとか暴力団関係企業、団体に対する税務調査を徹底して、暴力団の不当な財産を徹底的に剥奪するなど、資金面から対応する必要もあるというふうに指摘しておるところでございますけれども、これについていかがかという点をお聞きしたいと思います。

 若干所管の違う点もあるとは思いますけれども、具体策が検討されていれば、わかる範囲で、法務大臣ですか、お答えいただきたいと思います。

室城政府参考人 暴力団員や暴力団関係企業に対して適切な課税が行われるということは、暴力団の資金源に打撃を与えるという観点からも重要であると認識をしております。

 警察は従来から、捜査の過程において暴力団の不正な所得を認知した場合には、その内容を税務当局に通報するなどして、税務当局に対して積極的に協力をしているところであります。

 今後も、課税の徹底を図るべく、税務当局との連携を強化してまいります。

河野(正)分科員 法務大臣も同じような御見解でございますでしょうか。

谷垣国務大臣 当然、暴力団を押し込んでいくためにはこの面の検討は極めて大事だと思いますから、連携をよく図ってまいりたいと思います。

河野(正)分科員 ありがとうございます。

 暴力団及び密接な関係がある事業者を徹底して排除していくために、事業等に係る各省庁の許認可がございますが、暴力団排除規定の整備を行う必要があるのじゃないかということもこの要請書の中で指摘されているところでございます。これに関しては、別途、全国知事会からも要望を出しているということでございますが、これについてどのように考えていらっしゃるかということをお聞きしたいと思います。

 また、我々日本維新の会は、近い将来の道州制というプロジェクトを推進しているところでございますので、国の根幹にかかわること、外交、防衛であるとか、年金、マクロ経済などは、しっかりと国が行う。一方で、地方に任せた方が地域の実情に合って速やかに対応できるという問題については、地方自治体に委任していくべきではないかなというふうに思っております。

 既に、地方分権一括法により、基準が条例委任された福祉関係の許認可では暴力団等の排除措置が設けられております。暴力団排除に関しまして、旅館業法、建設業法、宅地建物取引業法、採石法については全国知事会を通じて要請中というふうに伺っております。さらに、不動産の鑑定評価に関する法律、浄化槽法、建設工事に係る資材の再資源化に関する法律、いわゆる解体工事等に関しても条例委任していくのが適当ではないかと考えておりますけれども、これについて、内閣府の方のお考えはいかがでございますでしょうか。

新井政府参考人 お尋ねの件につきましては、義務づけ、枠づけの第四次見直しにおける全国知事会からの提案といたしまして、建設業や児童福祉施設等の運営から暴力団等を排除する観点から、これに係る許認可や取り消しについて必要な基準を条例で付加できるようにするなど、地方の裁量を高めるべきとの提案があったものでございます。

 この条例委任の提案に対しましては、各府省より、特定の業から排除することについては、重要な私権の制限であり、憲法やそれぞれの個別の法の目的等との関係において慎重な検討が必要であり、また、規制は条例委任ではなく国会審議を経る法律で行うことが適切である旨回答があったところでございます。

 このため、建設業や宅地取引業法に係る許認可や取り消しについては、暴力団対策の観点から、法改正の機会を捉えて、法律で欠格要件等に暴力団員等を加える方向で検討することとなったものでございます。

 また、御指摘もございましたが、福祉サービス等の許認可、指定等については、地方公共団体が国の基準を参酌して、条例で定める施設、サービスの設備及び運営に関する基準において、暴力団排除等の規定を設けることにより、地域の実情に応じた許認可、指定等をすることが現行法において既に可能であり、第四次見直しの閣議決定にその旨明記したところでございます。

 以上でございます。

河野(正)分科員 今おっしゃいましたように、現状では、これらは国が法改正の機会を捉えて、法律で欠格要件等に暴力団員等を加える方向で検討するというふうに内閣府の方のお考えだということでありますけれども、それであれば、いつやっていただけるのか、また、早期に本気で取り組んでいく、法改正等についてやっていくお気持ちがあるのかどうか、改めて内閣府の御見解をお聞きしたいと思います。

新井政府参考人 この改正につきましては、先ほども申し上げましたとおり、暴力団対策の観点でございますので、内閣府の方で一括法の取りまとめをするのはなかなか困難なところがございます。

 したがいまして、建設業、宅地取引業法、これらにつきましては、所管の省庁において最も近い法改正の時期において措置していただくよう、我々としても留意してまいりたいと思います。

河野(正)分科員 そういったことで、国がしないならば、それであれば速やかに地方に任せてはいかがかなと思いますし、条例委任じゃなくて国の法律を変えていくということであれば、法律を変える方を各法について速やかに検討していただかなければならないなと思いますが、これについて谷垣法務大臣、コメントをいただけたらと思います。

谷垣国務大臣 これは私の所管というわけではございませんので、所管外のことに余り介入してはいかぬと思っております。

河野(正)分科員 わかりました。法律改正というスタンスであれば、ぜひとも、それに伴ってスピード感を持ってやっていただきたいなと思います。

 次に、警察官の増員に関してですけれども、今般、福岡県では警察官の大幅な増員がされました。平成二十五年度では、全国五百四十五名のうち福岡県に百名ということで、非常にこういった要請を受けてやっていただいているのかなと思っておるところでございます。

 公務員削減の風潮などがある中で、今後も必要であればこういったふうに増員を行っていただけるということなのか、あるいはまた県を越えた支援ということ、実際、実態があるのでしょうか。そういったことについてお聞きしたいと思います。

室城政府参考人 平成二十五年度の地方警察官の増員につきましては、暴力団対策の強化等の喫緊の課題に対処するため、合計五百四十五人の増員が政府予算案に盛り込まれたところであります。そのうち福岡県については、今ございましたとおり、合計百人の増員を措置する方針でございます。

 また、福岡県における厳しい暴力団情勢を踏まえ、現在十三の都県警察から二十二人の捜査員を福岡県警察に派遣して、暴力団犯罪捜査に従事をさせているところでありますが、今後、さらに体制を強化するため、警視庁等四都府県警察から合計五十人の捜査員を福岡県に応援派遣することとしているところであります。このほか、現在、全国から約三百人の機動隊を福岡県に派遣し、警戒に当たらせているところであります。

 今後は、これらの体制の強化が十分に効果を発揮するよう、暴力団の壊滅に向けた各種対策をさらに進めてまいりたいと考えておりますが、長期的な体制のあり方につきまして、現時点でその見通しをお答えすることは困難でございます。福岡県等の厳しい暴力団情勢を踏まえ、その状況に応じて適切に対応してまいりたいと考えております。

河野(正)分科員 ありがとうございます。多数の応援をいただいているということで、うれしいやら複雑な心境ではございます。

 今、最後の方で触れていただきましたけれども、やはり地域に根づいた採用をしていかないと、長期的に地域でしっかりと福岡県の実情をよく知っている方が勤務していくというのが大切じゃないかなと思いますので、その点についてはいかがでしょうか。もう一度お願いいたします。

室城政府参考人 長期的な体制のあり方につきましては、今申し上げたとおり、柔軟に、かつ適切に対応してまいりたいと思います。

 警察の組織は、都道府県警察がその主体でございますので、あくまでも地域に根づいた活動として対策を立てていきたいというふうに考えております。

河野(正)分科員 ありがとうございます。

 昨年夏以降、福岡県では、飲食店経営者が刃物で襲われるなどの事例が散見されております。そういった暴力団犯罪等から市民を守るための緊急対策として、街頭防犯カメラの設置を考えている自治体もあると聞いております。

 また、北九州は一億二千万円かけて飲食店街にカメラを設置するということで、実際三月から運用しているようでございますが、こういったことについて、福岡県に限らない問題だと思いますが、国として支援していくおつもりはありますでしょうか。警察庁の御意見を聞きたいと思います。

室城政府参考人 御指摘の防犯カメラにつきましては、暴力団員による違法行為を抑止する効果が期待できるほか、事件捜査においても重要な証拠となり得るものであり、暴力団対策上、極めて有効なものであると認識をしております。

 福岡県及び北九州市においては、厳しい暴力団情勢を踏まえ、合計で百八十八台の防犯カメラを北九州市内に設置することとしておりまして、その一部は既に運用が開始されているものと承知をしております。

 また、昨年度の補正予算により、暴力団捜査や保護対策のための監視カメラを国費で整備することとしているところでありますが、福岡県の厳しい暴力団情勢を踏まえ、その多くを福岡県警察に配備することとしているところであります。

 今後は、福岡県知事等の要望を踏まえまして、防犯カメラの整備に対する国の支援方策について、関係省庁と連携を図りながら、福岡県以外につきましても対象となるということだと思いますので、検討してまいりたいというふうに考えております。

河野(正)分科員 ありがとうございました。

 福岡県では、暴力団排除条例というものを設けまして、暴排標章というものを導入しております。昨年八月にスタートしたこの制度は、パチンコ店や飲食店の入り口に、県の公安委員会が作成した暴力団員立入禁止の標章を掲げるものでございます。

 掲示している飲食店の経営者が襲われるなどの問題も生じており、これは条例による取り組みでございますので、国会の場でということはそぐわないかもしれませんが、国としては、今後こういった取り組みを全国に展開していく、同様にやっていくおつもりがあるか。またあるいは、こういった条例を支援、促進していく考えはおありでしょうか。また、他県でも福岡県と同様にこういった取り組みがあるのであれば、それについてもお聞かせ願いたいと思います。

室城政府参考人 御指摘の暴力団排除標章の制度は、福岡県暴力団排除条例によって定められているものでありまして、暴力団排除特別強化地域に所在する飲食店等の申し出によりまして、福岡県公安委員会がその飲食店等に標章を掲示し、標章が掲示された飲食店等について暴力団員の立ち入りが禁止されるという制度でございます。

 昨年八月以降、北九州市を中心としまして、標章を掲示した飲食店の経営者等に対する襲撃事件や脅迫事件が連続して発生したところであり、警察としても、このような事態を深刻に受けとめているところであります。

 現在、先ほども申し上げましたが、全国警察から機動隊員及び捜査員を福岡県に派遣するなど、国としても体制の強化を図っているところでありますが、今後とも、事件捜査及び警戒活動の徹底を図り、関係者の安全確保のために全力を尽くしてまいりたいと考えております。

 なお、他県の暴力団排除条例でありますが、一定の地域における暴力団事務所の開設禁止や、事業者が暴力団の活動を助長するような利益を供与する行為の禁止など、多くの条例におおむね共通に見られる規制とともに、各地域における暴力団情勢の実情を踏まえた特徴的な規定も見られます。暴力団排除標章の制度もその一つでありますが、福岡県のほか、熊本県において同様の制度が整備されておりますが、そのほかにも、例えば暴力団の事務所に青少年を立ち入らせることを禁止するなどの規制を設けているものと承知をしているところであります。

河野(正)分科員 本日、福岡県の要望を中心にお尋ねしてまいりましたが、福岡県だけがたくさん応援をいただいて体制を強化していくということになれば、福岡県の暴力団が一定の力を低下させることになれば、当然ながら、他県から福岡県に進出してくるという可能性もあるでしょうし、またあるいは一方で、福岡県から他県に移動していくということもあるかと思います。また、アジアとの玄関口という観点から見ますと、いわゆる中国や韓国などから同様のそういった勢力が海を越えて進出してくるという可能性もあるやに思います。

 これは大変難しい問題だと思いますけれども、全国的な見地からどのようにお考えかということを、できますれば内閣の重鎮でもあられます谷垣法務大臣の御見解としてお伺いできればと思います。

谷垣国務大臣 今御議論がありましたように、福岡県内では、暴力団によると思われる発砲事件等が相次いで発生して、大変な不安感を与えているわけですね。福岡県のみならず、福岡県の周辺の市町村も、そういったものの波及を相当恐れておられる。私も、市長さん等々からそういったお話も伺っております。

 ですから、福岡県の地理的特性あるいは同県内の暴力団の特性、現在、相当強烈な活動を展開していると思われます。そういった特性も十分留意しながら、警察等関係機関と連携して、関係法令も積極的に活用して、あらゆる捜査手法を駆使して暴力団犯罪に対して厳正に対処していかなければならない、このように思っております。

河野(正)分科員 ありがとうございました。

 時間も余りありませんので、次に移りたいと思います。

 国際ゲートウエー機能の強化ということで、いわゆるCIQ業務体制についてお尋ねしたいと思います。

 先ほど来述べておりますように、福岡県はアジアの玄関口ということで、外国人観光客の受け入れ、そしてそれに伴う外貨獲得ということで日本をリードしていくべき立場にあるのかなと思っております。

 実際、博多港は、平成二十三年のデータでは、国際乗降客数が六十六万人、十九年連続日本一であります。同じく物流も、全国第六位のコンテナ取扱量を誇っております。私も常々目にしておりますけれども、アジアからの大型クルーズ船、総乗客定員が三千八百四十人というのがたびたび入港しております。年間約八十六回ほど入ってきている。これに伴う経済効果は八十億円とも言われております。

 こういうふうに非常に外貨を積極的に獲得しているところなんですが、さらなる活性化のためにも、CIQ業務のさらなる迅速化というのが求められております。早朝に到着しているにもかかわらず、スムースな入国がかなわず、買い物時間が減ってしまうというような声も聞かれているようです。経済効果の減少を防ぐという面からも喫緊の課題と思いますが、どのように対応されているのでしょうか。

谷垣国務大臣 今、河野委員おっしゃいましたように、大変クルーズ船も大型化してきまして、そして、これが一回寄港すると経済効果も非常に大きなものがある、だから円滑な入国審査をしていくことが大事だと。これは全国あちこちの港を抱えた首長の方々から御陳情がございますが、博多のございます福岡市長からも大変熱心にいろいろなお話を承っております。

 そこで、入国管理局では、クルーズ船に対する上陸審査を迅速化させなきゃいけない。大きなのが来るときは、常に張りつけておくわけにはいきませんが、全国からの審査要員の応援体制をしっかり組んで、博多なら博多に持っていくということが必要でございます。

 それから、昨年六月から、寄港地上陸許可、これは従来の許可に比べると簡易な手続を、許可方式をつくりまして、個人識別情報の取得を最小限化する。今までは顔写真も要る、指紋も要るということにしておりましたけれども、指紋だけでいいようにしようとか、そういういろいろな工夫をしまして審査の合理化を図っているところでございます。

 それから、平成二十四年度の補正予算で、博多港等々への出入国審査機器の増配備が実現しました。それに加えまして、今御審議をいただいている二十五年度の予算案でも、福岡入国管理局への増員、それから、全国的な審査要員の応援派遣のための旅費等々を計上していただきました。

 今後も、博多港、もちろん博多港だけではないんですが、博多港は大変重要なところでございますので、クルーズ船の乗客に対する円滑な出入国審査にさらに意を用いてまいりたいと思っております。

河野(正)分科員 ありがとうございました。

 また、福岡空港、こちらの方もたくさん課題がございます。

 現在、滑走路が一本の空港では国内第一位の年間発着回数ということで、滑走路の早期増設等々が課題でございますが、またこれは別の機会ということでございまして、福岡空港の方でも大変努力されていると思いますが、早朝到着便において、やはり乗客の方が、まだそういう業務が始まっていないということで入国できずに機内にとめ置かれるという例もございますので、ぜひとも円滑な運用、開始時間の繰り上げなども検討していただけたらなと思っております。

 時間がほとんどなくなりましたので、最後に一点だけ。

 平成二十一年の四月に九州大学の六本松キャンパスが移転した後に、跡地では南側に裁判所、検察庁等の司法機関を立地するというまちづくりが予定されております。そして、裁判員裁判などを導入いたしまして、それに伴って、司法を身近に感じていただくということで、裁判所等を含めた明るいまちづくりということが企画されているところでございますけれども、それを早期に実現していただくということで、どういったお考えか、現状どういうふうになっているのか、法務省のお考えをお聞きしたいと思います。

盛山大臣政務官 今、河野委員お尋ねの件でございますけれども、福岡市によりまして、元九州大学の六本松キャンパス、この跡地の利用ということで、我々の福岡高等検察庁ほか四庁、つまり合計五庁でございますが、これが入居いたします福岡第二法務総合庁舎の整備を今計画しているところでございます。今年度の予算案におきまして調査費を計上しているところであります。

 来年度、平成二十六年度以降、所要の設計、工事を進める予定でございます。

河野(正)分科員 時間が参りましたので、これで終わります。ありがとうございました。

伊藤主査 これにて河野正美君の質疑は終了いたしました。

 次に、泉健太君。

泉分科員 民主党の泉健太でございます。

 本日は予算分科会ということで、谷垣法務大臣に御質問させていただきます。また、総務省からもお越しをいただいていることを感謝申し上げます。

 早速本題に入らせていただきますけれども、もう恐らく法務や総務の分野では、各委員なり各会派の方々から数多く質問が寄せられているのではないかと思います。三月十四日、東京地裁判決がありました。成年後見制度を利用した方、被後見者の選挙権が失われるということについては、かねてから多くの国民も疑問を持ち、また多くの立法府の構成員も疑問を持ちながら、しかし、制度が続いてきているという現状がありました。いよいよ東京地裁で、選挙権を有しないというのはおかしいというような判決が出たわけであります。

 そして、その判決以降も、各党各会派においては、責任ある立場の方がこれはおかしいと。これは、政権与党の方々からも数多くそのような声が上がってきております。

 私が今、大変不思議なのは、自民党の幹部や公明党の幹部の方からも、公選法は改正をして、成年後見を利用している方にも選挙権の道を開くべきだという声が今もなお上がっております。そして、PTができて、その中でも検討が進んでいるという時期でありながら、政府は控訴をする。まさに同じ政党で構成をしているはずの与党と政府とで見解が大きく違っているということはなぜなのか、これはどういう解釈に基づいているのか、どういう統一的な考え方に基づいているのかということが全く意味不明であります。

 原告の名児耶さんという女性の方を見ていただいてもわかるとおり、これまでずっと長らく投票に行かれていた、そういう方が、本当に、親心も含めて、成年後見制度を子供に利用してもらって将来安心して生活をしてもらいたい、特に金銭管理ということにおいて安心して生活をしてもらいたいがために利用した成年後見制度で、なぜ参政権まで奪われてしまうのかということについて、大きな疑問を持たれているし、残念な思いも持たれているし、それは多くの国民の皆さんも思っている。

 改めて、そのことについて政府が控訴をしたということは極めて残念だというふうに考えております。大臣、なぜ控訴をされたのか、御説明いただけますか。

谷垣国務大臣 泉委員とは同じ京都選出でございますが、こうやって国会で議論をするのは初めてじゃないかと思います。

 それで、今、成年後見制度について御議論がございました。法務大臣は、国を当事者とする訴訟全て、国を代表して訴訟を担当する立場にございます。したがいまして、この案件でも私が、法務大臣が当事者でございますが、これはもちろん法務省だけの判断でやるわけにはまいりません。関係機関とのさまざまな議論を踏まえまして、いろいろ熟慮いたしました。そして、今回は、選挙制度の根幹にかかわる法令を違憲とした初めての一審判決でありますので、同種訴訟も係属していることもありまして、控訴することとしたという次第であります。

泉分科員 今のは明快なお答えとは私は言えないというふうに思っております。

 まさに、確かに、札幌、さいたま、そして、分科会といえば地元の案件が多いわけですが、そういうことではないですけれども、京都でもこういった訴訟が今行われている最中ということであります。

 そして、確かに、大臣おっしゃられるように、国が控訴した一つの理由は、他の判決も見たいということもあるようですが、国の控訴がなければ恐らく夏の参議院選挙にも投票ができたであろうと言われる原告の名児耶さん、この参議院選挙、国が控訴をしたことによってこの投票ができないのではないでしょうか。大臣、いかがですか。

坂本副大臣 一般的に、我が国における判決の効力につきましては、その当該事件に限って効力を持つ、いわば個別的効力説というふうに解されております。

 今回の東京地裁の判決におきましては、原告が次回の衆議院選挙及び参議院選挙において投票することができる地位の確認をしたものでありますことから、仮に政府が控訴せずに東京地裁における違法判決が確定していれば、原告のことしの夏の参議院通常選挙における選挙権は認められることになったものと考えられます。

 しかし、原告の方以外の選挙権行使を望む成年被後見人の方々に選挙権を付与するということにはなりません。また、原告の方も、依然として地方選挙につきましては投票することができません。

 全国各地で毎週行われております地方選挙などの地方の現場で、全国で十三万人いらっしゃる成年被後見人の方々の取り扱いをめぐって混乱が生ずるおそれがあるということもあわせて考えなければいけないというふうに思ったところであります。

泉分科員 その見解も確かに少し漏れ聞こえているところでありますが、法務大臣もぜひお聞きいただきたいんですが、果たしてそういうことで国民の基本的な、根本的な権利が制約されるということが、今、総務副大臣はおっしゃったわけですよ、混乱があるから認められないと。選挙権をですよ。あり得ますか、そんな議論が。我が国の統治のために、あるいは地方行政の混乱回避のために選挙権を制約させる、これはあり得るんですか、我が国の憲法上。

谷垣国務大臣 これは選挙制度の判断でございますから、法務大臣が直接御答弁申し上げることではないと思います。

泉分科員 しかし、私は、目の前におられるこの内閣を構成されている大臣のお心に、この言葉を届けたいというふうに思います。やはり、今の政府の中で行われている論理というのはおかしいのではないかということは、それは省庁を超えて私は御認識をいただきたいというふうに思います。

 さて、その東京地裁判決の中では、今ほど総務副大臣からは、本人、原告のみに利益が与えられて、その原告は国政選挙の地位の保全ということを訴えているということでありまして、地方選挙は投票権がないというようにおっしゃいましたけれども、東京地裁判決では、被後見人の中にも選挙をする能力を有する人がいる、こういうような判決をしているわけであります。被後見人の中、先ほどおっしゃった十三万六千人の中にも選挙をする能力を有する人がいる、こういう見解に立っているわけですね。

 さて、政府は、この被後見人の中に選挙をする能力を有する人がいるというふうな見解に立たれますか、そうではありませんか、いかがですか。

坂本副大臣 成年被後見人につきましては、その法律上の要件が「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」とされておりまして、行政上の行為をほとんど期待できず、選挙時に個別に能力を審査することも困難であるということから、選挙権及び被選挙権を認めないこととされているところであります。

 今回の訴訟におきまして、国としては、このような選挙権の行使に最低限必要な判断力を有していない方に選挙権を付与しないとする立法目的には合理性がある等の理由によりまして、現行の公職選挙法十一条の制度は違憲とは言えないとの主張を私たちはしてきたところでありますが、東京地裁においては、原告の主張を認め、国の主張は認められなかったということであります。

泉分科員 国の主張が認められなかったわけです。国は、引き続きその主張を続けられるということですか。

坂本副大臣 私たちは、制度の問題として、それを控訴する、争っていくということであります。

泉分科員 改めて、十三万六千人の方々に選挙をする能力があるのかないのかというところで、そもそも、禁治産者制度から成年後見に変わる際も、法務省の方から各省庁に対していろいろな意味での照会がなされているわけですね。制度も変わる、であるならば、できる限りその権利の制約的なものはなくしていくべきだという観点に立って各省庁に照会がなされている。

 そして、その中で、我々に聞こえてくるのは、総務省の側では、先ほど言った混乱ということを理由に、あるいは、一律に審査ができないからというようなことを理由にされて、残念ながら選挙権の付与がなされなかったというふうに伺っております。

 改めて、私は、そういう一律に選挙をする能力がないということでは全くないというふうに思うわけであります。だからこそ、能力によって判断する、しないの話で本当によいのかということをもう一度考えていただきたいと思うんですね。

 かつて、平成十年に、いろいろと各省庁に対して法務省民事局参事官室というところから照会文書が出ているわけですが、その中でも、「資格制限」というところがその補足説明の中にありまして、「各種法令は、一定の資格を有する者がその資格に相応しい判断能力を備えた者であることを制度的に担保するために、資格審査の手続として、任免、選任・監督、資格試験、登録の付与・取消し等の手続を定めているのが通常である。」というふうに書いてあります。

 しかし、選挙権というのは、選挙権が与えられるにおいて何か資格試験があるわけでもありませんし、何かしら審査があるわけでもございません。そういった意味では、やはりあまねくこの選挙権が与えられるというところからスタートをしているのであって、他の資格とは異質なものであるというふうに私はやはり考えるわけです。

 そういった意味では、まず、全ての国民に、一定の要件、これは年齢の要件を果たせば選挙権が与えられるものであるというところがイの一番のスタートであるはずだと思います。

 そういう中で、成年後見ということで被後見人の選挙権を剥奪してしまうということであれば、どんな能力があれば選挙権があって、どんな能力を欠いているから選挙権がないということになってしまうのか。

 もう一度改めてお伺いしたいんですが、何の能力がこの選挙においては必要なのか、明快にお答えください。

坂本副大臣 何回も繰り返しになるかと思いますけれども、平成十一年の民法改正によりまして、禁治産者は成年被後見人と呼称が変わりました。その定義は「心神喪失ノ常況ニ在ル者」から「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」というふうに改められましたけれども、先ほども申し上げましたように、禁治産者と成年被後見人の対象者は一致するものというふうにされてきたところであります。

 改正に当たりまして、各種法令中の禁治産者に係る欠格事項の見直しが行われ、全省的な取り扱いとして、個別的な能力審査手続が定められていないものや、あるいは、実務的に大量の書面審査を要するために欠格事項による画一的な審査が必要なものについては、欠格事項として残すこととされてきたものと私たちは承知をしております。

 禁治産者につきましては選挙権及び被選挙権を有しないこととしていた公選法第十一条につきましても、個別的な能力審査手続が定められていないということから、全省的な取り扱いによりまして、それまでの禁治産者から呼称が変わった成年被後見人につきましても、選挙権及び被選挙権を有しないことというふうにされたものと承知しております。

泉分科員 そうされたものではなくて、個別の審査が定められていない、だからといって、選挙権を与えてこなかったわけですけれども、それがおかしいと言っているんです。それはおかしいと思いませんか。今の見解をお聞かせください。

坂本副大臣 私たちは、今述べましたように、個別の審査云々ということよりも、禁治産者が成年被後見人に呼称が変わったこと、そして、それにより、制度としてそういう制度に移行したということから、そういう判断をしてきたところであります。

泉分科員 いや、最初からボタンがかけ違っていたり、おかしいとされるものを、制度が変わってそのまま引き継いでいるわけなんです。おかしいと思いませんか、副大臣。

 もっとも、一番最初のころからこの禁治産、準禁治産の制度の中で選挙権が与えられてこなかったことそのものがおかしいという時代になっているんじゃありませんか。だから、過去そうだったから今も継続してそう考えますということではなくて、今変えなければいけないんじゃないですか。いかがですか。

坂本副大臣 今回の東京の判決を受けまして、障害者、高齢者の財産権を保護する成年後見人制度と選挙権との調整を図るためにどのような立法措置を講じていけばいいのか、これは、今委員おっしゃいましたように、与党を中心に早速検討が始められているところであります。

 選挙権は、民主主義の土台となる選挙制度に関することでありまして、無用な混乱を回避しつつ、国民の代表である国会議員、各党会派で、障害者、高齢者の財産権を保護する成年後見人制度と選挙権との調整を図る制度のあり方の検討を速やかに進めていただきまして、立法府として一定の方針が出れば、その方針に総務省としても従い、適切に対処してまいりたいと思っているところです。

泉分科員 なぜそこだけ立法府に委ねるんですか。なぜ政府はみずから動かないんですか。同じ与党でありながら、なぜそういうダブルスタンダードを今も続けられるんですか。それを聞いているんですよ。大臣、これはダブルスタンダードじゃないですか、違いますか。

 政府・与党で決められたらそれに従います、しかし、政府はみずから控訴もし、そして何も取り組まない。見解は変えませんと今も言っているわけですよ、同じ政治家が統治をする、与党と政府が。副大臣。

坂本副大臣 総務省としては、選挙制度でいいますならば、選挙を円滑に執行する、このことをまず考えていかなければなりません。そのような中で、仮に今回の違法判決だけが確定する、そういうふうになりますと、全国各地で毎週行われております地方選挙、これは四月の任期満了で百五十七団体、百九十三の選挙があります、こういった地方の現場での成年被後見人の方々の取り扱いに直ちに混乱を生じるおそれがあるということで、私たちは、地方における混乱などを回避することなどの理由から、やはりこれを控訴し、そして今後、立法府の裁断にまつというふうなことにしているわけであります。

泉分科員 きっと恐らく、皆さんも同じ政治家でありますから、心の中で考えられていることというのはいろいろあるんだというふうに私は理解をいたしたいと思います。特段追及をするためにやっているわけではありませんので、あえて前向きに進めていきたいというふうに思います。

 やはり、先ほどから出ているような能力論みたいなものは、果たして我々がとっていくべきものなのかどうなのか。例えば、寝たきりの方々あるいは痴呆になってしまっている方々、これは審査がなければ選挙権を持ち続ける。恐らく障害者の方々もそうですね。成年後見の制度さえ利用しなければ、選挙権を持ち続けるわけであります。そして、大方がやはり財産管理を目的としてこの成年後見の制度を活用したいという方々であるときに、あくまで家庭裁判所に申し立てがあった際には金銭管理能力ということを判断されているわけです。

 今まで、総務省なりも、金銭管理能力と事理弁識能力が一致をすると言い続けてきたわけであります。しかし、家庭裁判所では選挙をできる能力を有するかどうかということを直接的に審査されているわけではないわけですよね。そこに違いがありませんか。今言ったように、家庭裁判所では、成年後見制度を利用する際、申し立てがあった際、あくまでこれは金銭管理能力ということについて審査をしているのであって、その方が選挙権を行使できる能力を有するかどうかということを審査されていないんじゃないですか。家裁の話ですから、法務省でも構いません。

谷垣国務大臣 今まで泉さんの議論を聞いておりまして、能力論は否定すると多分おっしゃったんだと思うんです。

 ただ、私は、選挙法そのものは私の所管ではございませんが、基本法を所管する立場から申しますと、あらゆる法律制度の背景には一定の能力というものを要求していると思います。

 それは刑法でも、赤ん坊が同じことをやっても罪にはなりません。それから民法、これは先ほど委員が御指摘のように、財産管理を主として考えているわけですが、意思能力のない方が行為をして、後で取り消したり、あるいは相手にされなかったりしてもぐあいが悪いということで、ここも能力を前提としていろいろな制度を設けているわけですね。それで、選挙制度の場合にも、そのあらわれは、今いろいろ議論がございますが、成人になったら選挙権を与えるという制度は、一定の能力を前提としているという基本法の考え方のあらわれだろうと私は思います。

 ですから、原則は、みんな自治能力を持っているから、刑法でも責任能力を持ち、民法でも自分の財産を管理する能力を持ち、それから選挙法も本来人はみんな持っているんですね。ただ、今度は、前提がそれで、しかし、能力がない場合にはそれを制限するという構造になっているんだと私は思います。

 そこで、先ほどからの委員の提起された問題は、成年後見制度は財産を管理する能力の制度でしょう、それを直ちに選挙法に援用するというのは根拠があるんですかないんですかという議論を多分泉さんはされているんだと思います。そこはひとつ議論がある、大いに議論があるところだろうと思いますね。

 今回も、裁判所は、一定の能力を前提とすること自体は東京地裁は不合理ではないという判決をしております。ただ、成年後見制度をもって全部それを判断しているのは憲法違反である、こういうふうにおっしゃっているんだろうと思います。

 そうすると、どういう仕組みをつくるかという問題が残ってくるなと私は思います。そこはなかなか、実際、先ほどから坂本副大臣が御答弁のように、制度のつくり方としてはかなり難しいところもあるだろうなと思っております。ただ、そこまで行きますと、選挙法を所管しているわけではない私の答弁としてはやや踏み込み過ぎかなと思って、ここでとめさせていただきたいと思います。

泉分科員 私の言う能力論というのも、先ほど大臣がおっしゃられたように、当然ながら一定の能力で選挙権を制限する、それが年齢制限にもつながっているわけですので、これはあるというふうに思います。

 しかし、逆に言えば、その年齢制限を超えた段階で全ての国民が選挙権を付与されるというのが今の我が国でありまして、それ以上に個々個別の成人の能力を審査できるのかといえば、おっしゃるように、できないわけですよ、そんなことは。そんなことはできないわけです。ですから、幾ら十年間寝たきりであろうが、幾ら要介護度が五で、そしてもうほとんど言葉も交わせないような状態であっても、その方の選挙権を剥奪はしていないわけです、あくまで。

 では、そのときに、めぐりめぐって同じことになりますが、成年後見の制度を利用することによって選挙権まで剥奪をしてしまうということが果たして理にかなっているのかということが今問われているわけで、これはやはり、違う能力というか、全ての方を一律に制限するということにはならないというふうに思いますし、私は、逆に言えば、全ての方を個別に判断するということにもならないのではないか、やはり援用するという考え方に立つ必要はないのではないかというふうに思います。

 では、なぜ政府が今までそういう立場に立ってきたかというと、先ほどから総務副大臣がおっしゃられるように、全国で毎週選挙が行われていて、実務の方が大変になる。いわゆる不正投票のおそれがあるのではないかというようなことも言われているわけですが、どんな不正投票を想定されているのか、改めて。例えば、代理投票を活用しなければならないから不正投票につながっていくんだとか、具体的にお答えいただけますか。何が今予想される弊害なのでしょうか。

坂本副大臣 今、泉委員おっしゃいますように、選挙制度は民主主義の根幹をなすものであり、選挙人の自由意思に基づいて公正な選挙の執行の確保が図られること、これが極めて重要なことであり、それを遂行することが我々の責務であると考えております。

 御指摘の点につきましては、三月十四日の東京地裁判決におきましても、選挙権を行使するに足りる能力を有しない者に選挙権を与えると、第三者が特定の候補者に投票をするように不正な働きかけを行ったり、あるいは白票や候補者名以外の氏名を記載した票を投じたりして、不公正、不適正な投票が行われることがあり得るという旨が述べられているもの、そういったものが不正投票あるいは不適正投票につながっていくというふうに考えております。

泉分科員 副大臣、これは大事なところなんですけれども、白票というのは不適切投票なんでしょうか。

坂本副大臣 本人の認識、意識がないままに白票や候補者名以外の氏名を記載した票を投じるということになりますと、本人の意思で投票する白票とそれ以外の白票と、また違った意味があるというふうにも思います。

泉分科員 今、通常というか平時、多くの国民が投票されているわけですが、それが本人の意思によるものかそうでないものか、そういうものは判断し得ないのではないでしょうか。もっと言えば、人の言うことを聞いて投票する方は一般の方々にごまんとおられるわけでありますし、そして、今言ったように、白票や他事記載もそれは意思という一つのあらわれでもあると思います。

 その不正投票ということも、果たして何を想定しているのか。例えば、先ほどの原告の名児耶さんという方はずっと投票にも行っておられた方でありますが、そこには不正の入る余地というのがあるんでしょうか。人から言われて投票所で何かを記載したのであれば、しかしそれも本人の意思ということではないのかなというふうに思いますし、先ほども言いましたように、やはり人から言われて投票する一般の方々は幾らでもおられるわけです。人の言うことを聞いて、自分の意思は余りなく投票される一般の方々も自然におられる。

 そうすると、自分の意思によらずというものは何をもって証明するんでしょうか。

坂本副大臣 私が今申し上げましたことは、地裁の判決の中で、第三者が特定の候補者に投票するように不正な働きかけを行ったり、あるいは白票や候補者名以外の氏名を記載した票を投じたりして、不公正、不適正な投票が行われることがあり得るということがこの地裁の判決の中で述べられているということであります。

泉分科員 この裁判の中では、どちらかというと、そういう方々が選挙権を行使しても選挙の公正を害するとは認められないというような判決になっていると思うんです。ですから、事実上の弊害というものは、今現在何かが起こっているわけでもありませんし、今も、いわゆる成年後見の制度は利用していないけれども非常に重い障害を持った方々が投票に行かれている事実もあるわけでして、そこで何か混乱が起こっているというような話ではないというふうに思います。そういった意味でも、事実上、具体的な弊害があるとは到底思えないわけであります。

 そういったことからも、ぜひ、改めてでありますが、政府・与党で一体で仕事をしていただいているわけでして、与党の方で考えられております。政府の方は、毎週地方選挙があるから、とても混乱が大きいのでちょっと待ってくれ、そういう形で個人の権利を、国民の権利を、根本的な権利を制限されているということの状態であれば、これは本当にけしからぬことだというふうに私は思います。

 そういった意味では、ぜひ早々の状況の変化というものを立法府でもつくってまいりたい。そういった意味では、党派を超えて私たちもそういった取り組みには協力をしてまいりたいと思います。

 大臣、最後に一つだけ、全く別件のことで恐縮ですけれども、お願いをしたいことがあります。

 亀岡の交通事故、これはもう詳細には申しませんが、多くの児童、お母さん等が巻き込まれたという事故であります。これは、無免許運転で大変ひどい状態で事故が起こってしまったわけですが、危険運転致死傷罪の問題も言われております。今、道交法の改正なり、刑法から分離をするということも徐々に取り組んではいると思うんですが、一つだけお願いであります。

 四月の二十三日にまたその御遺族の方々が集会を開かれるということになっております。そういった交通安全のことでいえば警察庁になりますけれども、無免許運転ですとか危険運転の制度的な改正についても目指しながら御遺族の方々が集会を開かれるということでありますので、ぜひとも、大臣におかれましては、何かしらメッセージですとか一言をその御遺族の方々の集会にお届けいただければということをお願いさせていただきたいと思います。もし御答弁があればお願いします。

谷垣国務大臣 亀岡は泉さんの選挙区でございますが、昔、私の選挙区でもございました。

 それで、個別の事件について私が法務大臣として申し上げることは差し控えますが、確かに御遺族の感情はよくわかるんですね。無免許で、しかも夜中、夜通し運転するようなことをして事故を起こして、何だというお気持ちはよくわかります。したがいまして、そういうお気持ちに応えられる仕組みは何だろうかということも我々はよく考えていかなければいけないと思います。

 ただ、やはり刑法は安定性というものも必要でございますから、従前組み立ててきた考え方と全く違う考え方で処罰をする、刑罰権を発動するということは差し控えなければならない場合も多々ございます。

 その辺のこともございますが、どうやったら交通事故を、一番ぴったりした法であるかということは常に問い続けていかなければいけないと思っております。

泉分科員 終わります。

伊藤主査 これにて泉健太君の質疑は終了いたしました。

 次に、國重徹君。

國重分科員 公明党の新人の、大阪五区選出の國重徹です。谷垣大臣と同じく弁護士出身でございます。大臣、きょうは、長時間の御答弁、本当にお疲れさまです。私が大臣のいらっしゃる時間帯のラストバッターになりますので、どうかよろしくお願いいたします。

 本日は、大きく二点、一点目に国選付添人制度の対象事件の拡大で、二点目に刑事施設にかかわる諸問題、この二点について質疑させていただきたいと思っております。

 まず、谷垣大臣も御存じのとおり、被疑者国選弁護人制度の対象事件と、国選付添人制度の対象事件は違います。少年が逮捕されたときについていた国選弁護人である弁護士が、少年が家庭裁判所に送られて少年鑑別所に収容された段階で、重大事件を除いて、国選付添人として活動することができなくなってしまうというような現状があります。

 身柄拘束されて不安な中で、頼りにしていた弁護士が、突然、少年の前からいなくなるんです。国選付添人の選任率は、少年鑑別所に収容された少年の四%前後にすぎません。

 これではあんまりだ、少年の更生を害してしまう。そこで、日弁連は、付添人の費用が払えない少年や保護者の援助をする制度を実施しています。その原資は一体何なのかといいますと、これは全国の弁護士から徴収した特別会費によって賄われています。

 しかし、大臣、付添援助制度というのは、本来、弁護士が自腹を切って負担すべきものではなくて、国が費用負担すべきものです。

 私も、弁護士として数多くの少年事件をやってまいりました。付添人の仕事というのは、何も少年審判だけにはとどまりません。非行や犯罪に走る少年というのは、親子関係というのが崩壊しているケースも少なくありません。そういう場合には、親子の間に入って家族関係を修復していきます。また、退学の危険がある場合には、学校の先生にかけ合うこともあります。また、仕事を探すために奔走することもあります。また、被害者やその御家族とお会いして、謝罪して、被害弁償を進めます。また、その被害者の苦しさ、つらさ、痛みというのを少年に伝えて、少年の反省を促すこともします。

 つまり、付添人というのは少年の環境調整の多くを担っている、これが付添人の実際の仕事であります。

 私の経験上も、付添人がつくことによって少年というのは変わります。もう本当に、目を見張るように、見る見る変わっていきます。成人の大人の変わりようとは段違いです。

 例えば、お父さんがアルコール依存症で、家庭内暴力を振るっている、お母さんが覚醒剤を使っちゃって刑務所に入っている、学校に行っても、おまえ、やる気がないと言われて、学校の先生からも叱られ続けている、そういうような環境にある少年であったとしても、信頼できる大人が一人いれば、少年のために本気になって動く大人が一人でもいれば、少年は必ず変わります。

 少年の再犯防止、改善更生は、少年本人のためのみならず、少年の周囲の人たち、また、ひいては社会、日本のためにもなります。

 本年二月八日、法制審議会は、国選付添人制度の対象事件を被疑者国選弁護人制度の対象事件と同じ事件にまで拡大することを盛り込んだ改正案の要綱を決定して、谷垣大臣に答申として提出しました。

 そこで、谷垣大臣にお伺いします。この答申を受けて、直ちに国選付添人制度の対象事件を拡大すべきだと考えますが、法案提出の時期を含めた、大臣の見解と決意をお伺いします。

谷垣国務大臣 国選付添人制度の意義については、今委員からお話がございました。そういう制度を進めるために今まで頑張ってこられたことに心から敬意を表したいと思います。

 そこで、今お話しのとおりに、対象事件の範囲拡大をせよということで、ことし二月八日に、少年法改正の案につきまして法制審議会から答申をいただきました。

 ポイントは、先ほど委員がおっしゃいましたように、被疑者国選と同じ基準に持っていこうというのが一つのポイントでございます。だから、できるだけこれを早く国会に提出しなきゃならない。

 ただ、ここから先は多少愚痴めきますが、今、この国会で一番多く法案を提出しているのが我が法務省でございます。何とかこれを早期に処理をして次のこれに取りかかりたい、このように思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

國重分科員 大臣、ありがとうございます。どうかよろしくお願いいたします。私も精いっぱい頑張ってまいります。

 次に、将来罪を犯すおそれがある少年、いわゆる虞犯少年ですけれども、虞犯少年に対しては、先ほどの答申の改正案においても、国選付添人が選任されることにはなっておりません。罪を犯していないにもかかわらず虞犯少年を保護処分の対象にするのは、その少年の家庭環境が極めて劣悪で保護の必要性が高いというような点に基づいています。

 虞犯少年が家庭裁判所に送られた後は、犯罪少年と同じ手続で観護措置がとられます。また、少年院送致などの重大な処分が下されることもあります。平成二十三年度に観護措置をとられて保護処分に付された虞犯少年が少年院あるいは児童自立支援施設に送られた割合というのは、五割、半数を超えます。このようなことからして、適正手続を徹底する点からも、また少年の環境調整の必要性の高さの点からも、虞犯少年にもぜひとも国選付添人をつけるべきだというふうに考えております。

 どんな子供であったとしても、幸せになる権利があります。やり直す権利があります。全ての子供たち、これは日本の将来にとっての宝です。大変な環境にある子供にこそ予算を使っていただきたい。長期的に見た場合、この使った予算というのは何倍にもなって国に返ってくるというふうに私は確信しております。

 そこで、大臣にお伺いします。虞犯少年にも、仮に今すぐではなかったとしても、将来的に国選付添人制度の対象に含めるべきだというふうに考えますが、いかがでしょうか。

谷垣国務大臣 今、國重委員がおっしゃいましたように、虞犯事件の中には、保護環境が非常に難しいこと、そういう子がたくさんおります。この間、私がある少年院に行きましたときいろいろ伺いました話の中では、特に女の子の場合、男の子もいろいろ厳しい環境なんだろうけれども、女の子なんかの場合にはとりわけ悲惨な環境の子も多いというお話を伺いまして、付添人による活動が極めて効力を発揮するというのは、おっしゃるとおりだと思います。

 ただ、残念ながら、今度の法制審議会の答申では、これを国選にするということにはならなかったわけですね。それには幾つか理由があるんだと思います。要するに、虞犯事件は、犯罪に結びつくような問題行動はあるんだけれども、要保護性は高いが犯罪に至らなかった。だから、こういう言い方をするとやや誤解を招くかもしれませんが、社会的な重要度は、まず犯罪に結びつくようなところに重点を置くべきじゃないかということが一つあったと思いますね。それからもう一つは、少年が観護措置をとった場合の少年院収容率も余り高くない。こういうことで今回は見送られたわけです。

 それともう一つ、こういう問題に現実に予算を確保しなければならない立場として常に思いますのは、果たして予算が確保できるだろうかと。これについては、やはり、今委員のような熱心な御議論をあちこちでやっていただいて、その理解を深めていく運動をやらないと、なかなか、今の財政事情で右から左に予算をつけるわけにもいかない、そういう苦しさも持っているわけでございます。

 ぜひ、その辺の議論は、私どもも活発にやっていきたいと思っております。

國重分科員 大臣、誠実な回答をありがとうございました。

 私も、ここのところは、やはりコスト面で見ても、先ほども申し上げましたけれども、長期的に見て、これが国のためになるんだ、何倍にもなってそれが国に返ってくるんだというようなことを、また議論の中でしっかりとしながら推し進めてまいりたいと思います。ありがとうございます。

 次に、刑事施設の諸問題について質疑をさせていただきます。

 先日、ある刑事施設の視察委員会の委員長とお話しする機会がございました。その際に、刑事施設の刑務官が大変不足している、残業、また休日出勤せざるを得ない、年次休暇、そんなものはとれない、このような刑務官が多いというような話を聞きました。欧米に比べても、日本の刑務官というのは非常に少ないというふうにも聞いております。

 そこで、刑務官の不足の現状はどうなっているのか、お伺いします。

西田政府参考人 お答えいたします。

 刑事施設におきましては、一時の被収容者の急激な増加というのは少し落ちついておるんですけれども、相当な施設におきまして、まだ高率収容という状況にございます。また、高齢受刑者とか、精神疾患とか、知的障害を持つ、いわゆる処遇に特に留意を要するような受刑者もふえている状況でございます。

 そういった観点から、刑務官の勤務の負担というのは決して軽減されておりません。そんなことがございまして、現場施設におきましては、超過勤務とか休日出勤を命じて、何とかやりくりしている状況でございます。

 先ほどお話がございましたので具体的に申し上げますと、年次休暇の取得日数も、平成二十三年度で申し上げますと、刑務官、交代制職員、いわゆる受刑者の処遇に直接タッチする職員の年間の年次休暇の取得日数は四・七日でございます。これは、国家公務員の平均であります十二・九日から比べますと、相当下回っている状況にございます。

 また、四週八休制、いわゆる週休二日制があるわけでございますけれども、全国の刑事施設七十七庁のうち五十五庁で四週八休制がとれないといった状況にもございます。

 そんなことがございまして、身体に不調を来したり、また精神疾患に罹患する職員も少なくございませんので、刑務官の士気をいかに維持、高揚するかというのは非常に悩ましい問題というところでございます。

 以上でございます。

國重分科員 今御説明いただいたように、刑務官が不足して、その労働条件というのは過酷なものになっております。刑務官に過剰なストレスがかかれば、刑務官も当然生身の人間ですから、そのストレスのはけ口が被収容者にぶつけられるということも十分に考えられます。現に、刑務官による人権侵害の事件というのも、残念ながら起きております。

 被収容者の円滑な社会復帰、改善更生を促すためには、刑務官の増員というのはやはり必要なんだというふうに思います。これがひいては再犯防止につながるというふうにも確信しております。何でもかんでも公務員を減らせばいいというようなものではないと思っております。ちゃんと必要なところには必要な人をやはり配置しないといけないというふうに考えております。

 この刑務官の増員について、谷垣大臣の見解をお伺いします。

谷垣国務大臣 今おっしゃったように、刑事施設というのは、結局、きちっと収容することによって国民の安心、安全を確保するということと、それから、再犯を防止するために適切な処遇をやって、再犯の防止につなげていくという役割を担っているわけですね。いろいろ政策経費が行ったりなんかするけれども、結局のところ、矯正というのは人だと私は思います。

 そこで、今おっしゃったように、何でも削ればいいわけじゃない、私もそのとおりだと思います。ただ、現実には、政府全体の定員管理というものがあるわけでございますので、そういったことも全く無視するわけにはいきません。そういう中でいかにして人員を確保していくか。私もさらに努力を重ねたいと思っております。

國重分科員 大臣、またどうかよろしくお願いいたします。

 次に、お配りした資料の二枚目をごらんいただけますでしょうか。二〇一三年の三月二十二日付の産経ニュースの記事です。

 ここには、東京拘置所に収容されていた際に、元看守部長、この方は有罪確定を受けております、元看守部長に暴行を受けたとして都内の男性が提訴した国家賠償請求事件、これについて、本年三月二十二日に、拘置所長が謝罪して、和解金二百三十万円を支払う内容で和解が成立しました。和解条項には、職員による暴行の再発を防ぐため、外部有識者による研修を実施する、こうした事案が発生した場合に別の職員が上司に報告しても不利益な扱いを受けない体制づくり、このようなことが盛り込まれております。

 この事件のような暴行というのは、いじめ問題と同じで、東京拘置所だけに限ったものではないと思います。刑事施設における人権侵害を根絶するためにも、外部有識者による研修、また、より一層の体制づくりが、東京拘置所だけではなくて、全国の刑事施設において必要である、強化すべきであるというふうに考えますが、大臣の見解をお伺いします。

谷垣国務大臣 やはり、こういう施設でいろいろな問題が生じてきておりまして、そういった不祥事は根絶しなきゃならない、そのとおりだと思います。

 そういう中で、今おっしゃったように、刑務官に対するいろいろな研修、なかんずく人権研修、これは極めて大事なところでございますし、法律の上でも、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律、この第十三条第三項でこういうことが要請されているわけでございます。

 そこで、矯正研修所あるいは各刑事施設における各種研修プログラムで、被収容者の人権尊重を図る観点から、憲法あるいは人権に関する諸条約を踏まえた講義、あるいは、法律の講義というだけではなく、行動科学的な視点を踏まえた研修等を実施しているところでございます。

 それから、なかんずく難しいのは、精神的問題を抱えた被収容者への配慮でございます。これは、精神医学に係る研修科目を設けまして、精神保健あるいは精神障害者福祉に関する基礎的な知識をやはり身につけなきゃいけない。被収容者の適切な処遇方法等に関する技能をそういう中でより習得させていくということをやっていかなきゃいけないし、今そういうことをやっているわけでございますが、今後とも、そういったことには力を入れてやっていく必要があると考えております。

國重分科員 今大臣がおっしゃったように、全国各地で今、研修が行われていると思います。そのような研修があるんだけれども、やはり、先ほどの人数不足とか、さまざま、刑務官の方、ストレスがかかるお仕事だと思います。その上でこのような事態が生じていますので、また大臣の強いリーダーシップで、より一層の、強化した研修また体制づくり、よろしくお願いいたします。

 次に、資料の一枚目をごらんいただけますでしょうか。平成二十四年十二月二十七日付の読売新聞、こちらの方をごらんいただいて、「刑務所医師足りない」ということ、「求人広告効果なし」「受刑者死亡の例も」ということで書いておりますけれども、ここにもあるとおり、刑事施設の常勤医が今不足していて、医師不在のために診察がおくれて、受刑者が死亡するケースも出ているというふうに聞いております。

 常勤医不足の現状が今どうなっているのか、これについてお伺いします。

西田政府参考人 お答えいたします。

 刑事施設の常勤医師につきましては、二百二十六名の定員があるところ、本年、平成二十五年二月一日現在で申しますと、百八十三名が勤務しておりまして、四十三名、約二割の者が欠員の状況にございます。

 以上でございます。

國重分科員 今、二割が欠員ということでお聞きしました。これは結構な割合だというふうに思っております。

 この常勤不足の現状というもの、先ほどの新聞にも載っていましたけれども、広告をしてもなかなか集まらない。これは、努力はされていると思うんです。でも、今、実際にお医者さんがいなくて死亡するケースが出ている。これはもう本当にとんでもないことだというふうにも思いますので、ぜひともこの状況を深刻に受けとめて、これを解消するために、これまでも外部委託とかいうこともやっていると思いますけれども、より以上の外部委託を含めた積極的な解消措置というのを講じていくべきだというふうに考えますが、これについての大臣の見解と決意をお伺いします。

谷垣国務大臣 私も、法務省に参りまして、改めて、今委員の指摘された、きちっとした医師を確保することが極めて大きな問題になっているということを認識したわけであります。いろいろな手だてを講じなきゃなりません。

 それで、今おっしゃった外部委託、一部の刑事施設においては、旧構造改革特区法、そういったものの活用によりまして、地元の自治体等に医療行為を委託するというようなことをやっておりまして、こういう方策は、関係機関との良好な関係があれば一定の成果が上げられるだろうと思います。

 しかし、委託先といいますか、そういう関係機関の御理解を得ることがなかなか容易ではありません。

 いろいろな事情があると思います。刑事施設が非常に不便なところにあって、生活環境としても余り良好ではないとか、あるいは、お医者様の側にも、患者との良好な人間関係を結べるかどうかといったような観点も私はあるんだろうと思いますが、やはり委託契約を結ぶ相手方と我々矯正に携わっている立場の者が、良好な、いろいろな理解を得るという努力をしないと、簡単に外部委託といってもなかなかできない。そこのところは、さらに一層努力をする必要があると私は思います。

 そのほかにも、いろいろ考えて、できることはみんな試みていかなければならない状況ではないかというふうに感じております。

國重分科員 ぜひともよろしくお願いいたします。

 次に、刑事施設において毎年一回定期健康診断がされていますけれども、血液検査は医師の判断で省略が可能となっております。現実には、問診と身体測定だけで、血液検査はほとんどされていないんじゃないかというような声も一部お聞きしております。

 そこで、ちょっとこれは通告の内容から一歩踏み込んだ内容になるんですけれども、法務省の方にお伺いしたいんですけれども、刑事施設における健康診断において血液検査がどの程度省略されているのか、把握されているでしょうか。もし、現段階でわからなければ、大事なことですので、今後追って調査していただきたいと思うんですけれども、よろしいでしょうか。

西田政府参考人 お答えいたします。

 一般的な、入所した際の健康診断ですとか、あるいは定期的な健康診断につきましては、法律によって義務づけられておりまして、それ以外の先ほどおっしゃいました血液検査等につきましては、いろいろな事情がございまして、医師の判断で、必要があればやる、必要がなければ省略してもいいというような取り扱いになっております。

 ほかにもいろいろあるんですけれども、血液検査につきましては、先ほど申しましたように、医師が、本人のこれまでの診療録ですとか病気ですとか、そんなことを考えて必要ないという場合には省略できるという扱いになっております。

國重分科員 今、抽象的なことはお答えいただきました。ありがとうございます。

 質問通告にありませんでしたので、現状がどの程度数として血液検査がなされているか、これはわからないですよね、今現時点では。追ってまた調べていただければと思います。よろしくお願いします。

 社会一般で、例えば、これまで弁護士会とかで年に二回ぐらい健康診断があって、私もサボって、毎年一回ぐらいは受けておったんですけれども、そのときに、健康診断において血液検査を受けるということは基本中の基本だというふうに思います。

 刑事被収容者処遇法五十六条で、社会一般と同質、同水準の医療は受刑者の身柄を拘束している国の責務であるということが明文化されております。社会一般と同質、同水準の医療をするために、血液検査はぜひとも実施していただきたいというふうに思います。そうすることがかえって国の医療費を抑えることになる、国民の皆さんの大切な税金を無駄遣いしないで済むというふうにも思っております。

 そこで、定期健康診断における血液検査を必須のものとする、そのために刑事施設処遇規則二十九条を改正すべきだというふうに私は考えますが、これについての大臣の見解をお伺いします。

谷垣国務大臣 さっきおっしゃいました刑事収容施設法五十六条で、社会一般の医療と匹敵するものを、水準に照らして適切な措置を講じろということになっております。そして、実際の血液検査に関しては、先ほど局長が答弁いたしましたように、医師の裁量ということになっているわけですね。

 ただ、現実には、実務におきましては、定期健康診断というだけではなくて、四十歳以上の受刑者に対しては肝機能検査やあるいは血中脂質検査といったものも実施するといったように、いろいろなことを考えてやっているんだろうと思います。そこらをどうしていくか、私どももさらに検討を加えていきたいと思っております。

國重分科員 私自身は、医師の判断で血液検査を省略できるというのは、これは私個人の見解、ばかげた規定だと思っているんです。一見、問診とか身体測定ではわからないから血液検査をして、ああ、こういう状態になっているんだということが初めてわかるのであって、社会一般と同質、同水準の医療であれば、やはりこれはぜひとも進めていくべきだ、これが先ほど申し上げました医療費の抑制にもつながるというふうに思っておりますので、また大臣の強いリーダーシップでよろしくお願いいたします。

 では、最後の質問をさせていただきます。

 今、受刑者の診療録は、受刑に関する情報ということで情報公開の対象にならず、本人が希望、承認しても開示されないということになっていると思います。診療録を開示したところで、保安上の問題はなく、受刑者本人が承諾していればプライバシーの問題もなく、開示を拒む正当な理由はないと思います。また、各施設の視察委員会に関しては開示されるということもちょっと聞いてはおりますけれども、例えば、今、刑事施設でいろいろな問題があって、そのときに弁護士会の人権擁護委員会とかがカルテをしっかりと見ようと思っても、それが開示されないというような現状があるとも聞いております。

 受刑者の、被収容者の身体の安全とか、より適切な医療、これをしていくためにも、透明化した行刑をしていく上でも、やはり受刑者の診療録は開示していくべきだというふうに考えますが、これについての大臣の見解をお伺いします。

谷垣国務大臣 この開示の問題では、二つの法律の適用を受けております。一つは、行政機関の保有する情報の公開に関する法律、それからもう一つは、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律、これによって規律されておりまして、もう委員も御承知のところでございますが、情報公開法による場合には、診療録記載の内容については、一部不開示の決定、あるいは診療録の存否を含めて開示請求を拒否する決定がなされるということになっております。それから、個人情報保護法によりますと、本人による診療録の開示請求がなされた場合には、刑もしくは保護処分の執行に当たることから、適用除外として開示されないというのが、二つの法律でございます。

 しかし、刑事施設で保有している診療録については関係法令によってこのように定められているわけですが、当該診療の記録だけではなしに、処遇情報等、刑の執行に関する内容も含まれておりまして、その性質上、開示になじまない点もあるのも事実でございます。

 ただ、被収容者の釈放に当たって、必要に応じて診療情報提供書というようなものを当該被収容者に交付して、要するに、今まで刑事施設で受けてきた医療と外に出た場合の医療をつないでいかなきゃならない、こういうことも考えていかなければならない。現実にそれは行っているわけでありますが。現状はそういうことでございます。

國重分科員 ありがとうございます。

 受刑情報と直接関係しないカルテの開示、また、カルテにそのような受刑情報を書かないように少し工夫して、今大臣がおっしゃったように、出所した後にうまく外部の医療機関につないでいけるシステムをまたつくっていただきたいというふうに思います。

 きょうは、大臣、本当に長時間の答弁、ありがとうございました。私も、きょうの答弁、本当に誠実に答えていただきましたので、日本再建のためにしっかりとまた頑張ってまいります。

 きょうは本当にありがとうございました。

伊藤主査 これにて國重徹君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして法務省所管についての質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

伊藤主査 次に、外務省所管について政府から説明を聴取いたします。岸田外務大臣。

岸田国務大臣 平成二十五年度外務省所管予算案について概要を説明いたします。

 平成二十五年度一般会計予算案において、外務省は六千八十二億五千九百五十一万九千円を計上しています。これを前年度と比較いたしますと、一・五%の減額となっております。

 他方、ODA予算は、外務省所管分として、対前年度比〇・七%の増額の四千二百十一億五千六百八十五万一千円となっております。一般会計予算案における外務省所管ODA予算は、三年連続の増額となる予算を計上しております。

 私は、外交の責任者として、日本と世界の平和と安定を脅かす危機や脅威から我が国を守り、平和と繁栄を確保していく外交を推し進めていくとともに、基本的価値に立脚した戦略的外交を展開し、日本の考え方や信念を世界に発信し、信頼をかち得ていく所存です。

 平成二十五年度予算案の作成に当たっては、こうした考えを踏まえつつ、以下申し上げる二つの予算上の重点項目を掲げ、めり張りをつけた上で必要な予算を計上いたしました。

 第一に、普遍的価値に基づく戦略的外交のダイナミックな展開です。この重点項目のもとに、日米同盟の強化や近隣諸国との関係強化、協力推進のための経費を計上しました。

 現下の地域の厳しい安全保障環境や世界じゅうのさまざまな脅威に対処するためには、我が国の外交、安全保障の基軸たる日米同盟の強化が不可欠です。また、近隣諸国との関係を重視し、大局的、戦略的視点を持って協力を推進することが重要です。さらには、領土保全等への対応、平和で安全な国際環境の構築、地球規模の課題への取り組み強化、人間の安全保障の推進、対外発信の強化についても注力していきます。

 第二に、成長と経済基盤の強化に資する外交です。

 世界経済のグローバル化が加速する中、我が国の経済の再生に取り組むことは、我が国の国力を強化し、世界のさらなる発展に貢献する道でもあります。そのため、日本経済再生に資する経済外交を強化する所存です。

 具体的には、成長するアジア経済圏等の新興国や途上国の活力を取り込んでいくため、ODAや在外公館をも活用しつつ、地域の中小企業も含めた日本企業や自治体の海外展開を積極的に支援します。また、戦略的な海外投資と経済連携を推進するとともに、日本経済の存立の基盤であるエネルギー、鉱物資源、食料等の安定的かつ安価な確保のため、資源外交を強化します。

 以上述べてきた政策を着実に実施するためには、外交実施体制の抜本的強化が焦眉の課題です。在外公館の整備や在外公館職員の再配置を含む体制整備を推進すると同時に、情報収集・分析能力及び情報保全を含む外交実施体制を強化します。

 以上が、平成二十五年度外務省所管予算案の概要でございます。

 詳細につきましては、お手元に「国会に対する予算説明」を配付させていただきました。主査におかれましては、これが会議録に掲載されますようお取り計らいをお願い申し上げます。

 伊藤主査を初め、委員各位の御支援と御協力を心からお願い申し上げます。

 以上です。

伊藤主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま岸田外務大臣から申し出がありましたとおり、外務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊藤主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

伊藤主査 以上をもちまして外務省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

伊藤主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大野敬太郎君。

大野分科員 自由民主党の大野敬太郎と申します。

 きょうは、北朝鮮のミサイル事案等々を含めまして、本当に外交問題、多難な時代でありますけれども、そんな中、対応、本当にお疲れさまでございます。と同時に、大変お忙しい中、こうやって御出席を賜りました。大臣、本当にありがとうございます。また、あべ政務官、佐藤政務官も、本当に、御公務御多忙の中、御出席を賜りましたこと、厚く御礼を申し上げたいと思います。

 外交というのは日本の国益という観点からすると本当に重要な問題であると思いまして、この外務省所管の分科会、私も、まず第一番目に外務省だと言って、ここを選択させていただいたわけであります。

 この中で、きのうとはもう国際情勢も違う、一カ月前とはまたちょっと違う、そして一年前とはかなり違う、十年前なんて全然違う、こういう状況になっているわけでありまして、本当に外交というのは常に常に対処していかなくちゃいけない。と同時に、対処だけじゃなくて、外交というのはやはり、戦略的と先ほど大臣もおっしゃられましたけれども、想像力を豊かにして、次の一手、その次の一手というのを常に考えていかなくちゃいけないんじゃないか。

 そんな思いを含めて、きょうは二点ほど質問をさせていただきますが、一点目は中国との外交、二点目は情報の管理、この二点について主に質問をさせていただきたいと思います。

 先ほど、大臣、予算の概要の説明を承りましたけれども、その中で、一番目の項目、普遍的価値に基づく戦略的外交のダイナミックな展開について、こういうことでございましたけれども、このワーディング、普遍的価値、戦略的、そしてダイナミック、何かすごく積極的な印象を受けるわけでありますけれども、この具体的な意味についてまず大臣に御説明を賜れればと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

岸田国務大臣 まず、普遍的価値に基づく戦略的外交のダイナミックな展開につきまして、この意味という御質問をいただきました。

 今、アジア太平洋地域のみならず、国際的な外交環境、戦略環境、大変不透明なものを感じています。その中にあって、我が国の外交を進めるに当たって、普遍的な価値、民主主義ですとか市場原理ですとかあるいは法の支配ですとか、こうした価値観を共有する国々との連携が大変重要だと考えております。

 そして、こういった国々と戦略的な外交を進めなければならない。さまざまな地域があり、さまざまな連携の枠組みがあります。こうしたものをにらみながら、一対一の二国間関係だけではなくして、国際的な社会全体を俯瞰して戦略的な外交を進めなければいけない。こうしたダイナミックな見方をしていかなければいけない。こういった思いを、普遍的価値に基づく戦略的外交のダイナミックな展開、この言葉に込めさせていただいた次第でございます。

大野分科員 ありがとうございます。

 普遍的価値を共有するということは、必ずしも価値を共有できない国との対応というのは、ある種除外してしまうんじゃないか、こういう印象も何となく受けるわけでありまして、もちろん、そういって囲い込むというところも外交戦略にとって一つの非常に重要な部分、戦略だと思うんです。

 そこで、まず第一番目の質問に入らせていただきますけれども、中国に対しての外交の基本方針について質問させていただきたいと思います。

 特にTPPについてでありますけれども、外交上、中国という国、あるいは北朝鮮なんか特にそうだと思うんですけれども、まず基本的には毅然とした態度をとらなくちゃいけないんだ、例えば尖閣とかそういった問題には断固として対処していかなくちゃいけない、これは当然のことだと思いますけれども、一方で、囲い込んで先鋭化させ過ぎないこと、強硬な姿勢にならせないこと、さらには挑発し過ぎないこと、こういった観点も外交上は非常に大切だ、こんなふうに思っています。

 そこで、TPPについてでありますが、先般、十二日でございますけれども、TPP交渉、日米合意に至った、こういう中で総理がコメントを残されています。TPPは、経済的メリットだけではなくて、同盟国のアメリカを初め、自由、民主主義、法の支配、先ほど大臣おっしゃっていただきましたけれども、普遍的価値を共有する国々とのルールづくりであるから安全保障にとっても大変重要な課題なんだ、こういうことを総理はおっしゃっておられますけれども、先ほどの、囲い込まない、そして挑発しない、こういう観点からすると、TPPというのは当然中国は入っていないわけでありますので、TPPということに関しましてはある種中国を囲い込んでしまうんじゃないか、先鋭化してしまうんじゃないか、こういう意見もあるわけでありまして、ここについて大臣はどのようにお考えか。つまり、TPPというものが安全保障上重要だ、その意味を含めまして御答弁賜れればと思います。よろしくお願いします。

岸田国務大臣 まず、日中関係は、我が国にとりまして最も大切な二国間関係のうちの一つだと認識をしています。日本と中国、二つの経済大国の関係が安定しているということは、二つの国の国民にとって利益であるのみならず、この地域の平和と繁栄に大きな影響をもたらすという意味で、この二つの国は大きな責任を地域にも担っている、こうした関係だと思っています。

 ですから、日中二つの国の間には尖閣諸島を初め大変難しい課題が存在をします、大変難しい局面が存在するわけですが、こうした個別の問題が二国間全体に影響を及ぼさないように、大局的な見地から戦略的に対応していかなければならない、このように基本的に考えております。

 そして、その中にあってのTPPについて御質問いただきましたが、TPPにつきましては、中国を含むAPECエコノミー全てに開かれたものだと考えています。また、逆に中国も、TPP協定についてどう考えるのか質問をされた際に、中国商務部の定例記者会見の場でありますが、TPPにつきましては、全ての地域経済統合の目標実現に尽力する協力に開放的かつ包容的な態度であると、中国側もそのように捉えているということであります。ですから、TPPが対中国包囲網になるとは考えてはおりません。

 また、TPPによってつくられる新しい経済秩序というのは、単にTPPのルールをつくるだけではなくして、より大きな構想である、例えばアジア太平洋自由貿易圏、FTAAPといったルールづくりにおいてもたたき台になる、こうしたルールづくりであると思っています。

 TPPのみならず、日中韓FTA、あるいは、東アジア包括的経済連携、RCEP、こうした経済連携につきましても二〇一二年十一月に交渉立ち上げ宣言が行われているところであり、こうした経済連携とも相互に刺激し合い、そしてダイナミズムが働いていく、こうした経済連携を戦略的に考えていく、これが、こうした経済連携に対する我が国の方針でございます。

 中国との関係については先ほど申し上げたとおりでありますし、TPPの意味という意味においては、今言ったように、こうした対中国包囲網というのではなくして、今後、この地域においてより大きな経済連携を考える際のルールづくりのたたき台になる大切な議論である、このように位置づけております。

大野分科員 ありがとうございました。TPPは必ずしも包囲網ではない、こういう御答弁でございました。

 私、おっしゃるとおり、TPPが将来的にFTAAPに発展する、あるいはRCEPを喚起する、こういった意味ではすごく重要な、あるいは必要な課題ではあると思っていますけれども、TPPだけだと、TPPに将来中国が入ってくるというのがなかなか想像しにくいなというふうに考えているんです。そういった意味では、ひょっとしたら囲い込んでしまうことになりはしないか、こういう懸念を持っています。

 一方で、RCEPとか、あるいは日中韓FTAという枠組みが同時並行的に進むことができるのであれば、日本から見て左側の扇形としては日中韓あるいはASEAN諸国との連携、右の扇形で見ればTPPの枠組み、その中心に日本がいられるんだ、こういった観点からは、同時並行にできるのだったら物すごく大切な枠組みである。一方で、片っ方だけが推進してしまう、TPPだけが随分先行してしまう、こういうことになったら、ひょっとしたら囲い込んでしまうようなことになってしまいはしないか。

 こういう観点で、このままTPPの交渉に入るということでございますので、ぜひともRCEPとかあるいは日中韓も真剣に取り組んでいただいて、そして同時並行的に進むような形になればと思っておりますので、ぜひお願いしたいんですけれども、この見通しについては何かございましたら御答弁賜りたいと思います。

岸田国務大臣 日中韓FTA、それからRCEPにつきましては、先ほどちょっと触れさせていただきましたが、昨年十一月に交渉立ち上げ宣言をしております。また、三月には、日中韓FTA、これは第一回目の交渉が開催をされました。いずれの協定についても、包括的かつ高いレベルの協定を目指し、精力的に交渉を進めていきたいと思っております。

 こうしたアジア太平洋地域におけるさまざまな取り組み、さらには、日・EU間におきましてもEPA交渉を開始するというようなことが合意されております。さまざまな経済連携を並行的に進めることによって、お互いが刺激をし合う、そしてすべてが活性化していく、こうしたダイナミズムを働かせていく、こうした考え方は大切だと思います。御指摘は大変重要な点だと認識をしています。

大野分科員 ありがとうございます。

 意外と時間がたってしまったので、次に移りたいと思います。

 もう一つ、中国との外交の中で、衝突防止策について、ちょっと細かい議論になりますけれども、ぜひお願いしたいと思うんです。それは何かというと、排他的経済水域、いわゆるEEZの中における非沿岸国、これの軍事活動についての取り組みというか、認識についてであります。

 もちろん、EEZを含めて、公海の自由というのは国際ルールでは守られなければならない、こういった課題でありますけれども、よくよく考えてみますと、日本が日本のEEZの中で、ほかの外国の船舶、特にここでは中国の軍艦、これを専ら議論させていただきたいと思います。

 尖閣諸島近辺に最近軍艦がよく出没する、こんな事案が発生しております。これ自体が必ずしも国際ルールを無視したということではないと思います。これは無害通航権が確保されているかと思います。ただ、こうした尖閣に近いEEZなり、あるいは接続水域なり、領海へ入ってきたら問題ですけれども、例えばそういった中での航行というのは軍事活動に当たるのではないか、そういう認識もできなくはない、つまり武力による威嚇と捉えられなくもない、そんなことだと思うんです。

 そこで、まず第一番目に、先般レーダー照射事件が発生いたしましたけれども、先般、小野寺防衛大臣が、ここの発生した場所というのは日中中間線のちょっと内側、こういう御答弁をされていたかと思います。ということは、ここはEEZの中であったということで理解をしておりますけれども、政務官、いかがでございましょうか。

佐藤(正)大臣政務官 お答えさせていただきます。

 小野寺大臣が答弁させていただきましたのは、一月三十日午前十時ごろ、日中中間線の日本側の東シナ海において、中国海軍ジャンウェイ2級フリゲート一隻から護衛艦「ゆうだち」が火器管制レーダーを照射されたということ、及び一月十九日午後五時ごろにも、日中中間線の日本側の東シナ海において、中国海軍ジャンカイ1級フリゲート一隻から護衛艦「おおなみ」搭載ヘリコプターに対する火器管制レーダーの照射が疑われる事案が発生したということを受けて答弁されたものだというふうに認識しております。

 その地域については当然日本側の排他的経済水域ということでありますけれども、中国にとっては、中国がどこからどこまでが自分の排他的経済水域であるかということは明言しておりません。そういう中で今回の事案が起きたというふうに認識しております。

大野分科員 ありがとうございます。

 これはつまり、日本側の主張としては、EEZの中でありますし、照射を受けたということは既に軍事活動がほぼ始まったと予想できるということでありますけれども、これについて日本側は特にその活動については何も抗議をしていない。これは当たり前の話でありまして、自由航行が認められている、無害だ、こういうことでありますので、恐らく何もおっしゃらない。

 一方で、中国が中国のEEZの中でどのような態度をとっているかということをちょっと申し上げさせていただきたいんですけれども、数年前に米韓の軍事訓練が予定をされておりました。これは中国のEEZの中でございましたけれども、これはあくまで報道ベースでありますので正確なところは私も承知はしておりませんけれども、これに対して中国は物すごく厳重な抗議をされておるやに報道では承っております。

 ということは、中国にとってみれば、自分のところは自分のところ、相手のところも自分のところだ、そんな印象を受けるわけでありまして、お互いにちょっと非対称な関係にあるんじゃないか、そんな感覚も受けるわけです。一般的な国際法上のルールからすると、当然自由航行にしようよ、こういうことになっておりますので、中国の言い分というのはちょっといかがなものかな、こんなふうに思うんです。

 そこで、まず第一番目には、日本が、日本のEEZの中で発生する軍事活動、あるいは軍事活動と認識できるような、あるいは予測できるような事案について、日本政府として事前に明確に基準を定めておいた方が衝突も起きにくいんじゃないか、こういう議論ができると思うんですけれども、その点に関して、外務大臣、もし何か御所見がありましたら御答弁を賜れればと思います。

岸田国務大臣 まず、海洋の平和と安定というのは、貿易立国であり海洋国家である日本にとりまして大変重要な課題であります。ぜひ、力ではなくして、法の支配に基づいてルールづくりが行われなければならない、このように思っています。

 今御指摘の点についても、まずは法の支配に基づいてしっかりルールづくりがされなければいけない。国際法等に基づいて、しっかりとしたルールに基づいて我が国は対応し、そして我が国の国益をしっかり主張していく、これが基本的な立場かと思います。

 御指摘の点について、ちょっといま一度詳細につきましては確認をしたいと思いますが、基本的に、我が国は、法の支配に基づいて海洋の平和と安定を守っていく、この姿勢をしっかり打ち出しながら、国際法の遵守、さまざまな関係法令の遵守を中国初め関係国にしっかり訴えていかなければならないと考えています。

    〔主査退席、伊藤(信)主査代理着席〕

大野分科員 ありがとうございます。

 ちょっとマニアックな質問だったかもしれませんけれども、つまり、国連海洋法条約の中ではEEZの中の軍事活動とかそういうものについては全く規定をされていない、全く無法とは言わないですけれども、そういう状態になっているかと思います。そういった意味で、各国それぞれの権益、国益を主張されて、EEZはどういうふうに扱うんだということを各国それぞれが主張されておりまして、ばらばら、ルールづくりがないという現状でありますので、国連海洋法条約の交渉の中でこのEEZの中の軍事活動等々の取り扱いについて議論がされますように、ぜひ外務大臣からも働きかけをしていただきたいな、こんな思いであります。

 まだまだちょっとここの部分については突っ込みたいところではありますけれども、ちょっと時間もないので次に移らせていただきたいと思います。

 次に、情報についてであります。

 それは何かというと、尖閣とか竹島とか北方領土、こういった問題、今物すごく国民的な関心が強いわけでありまして、私自身、香川県が地元でありますけれども、香川県の農家のおっちゃん、おばちゃんたちも、あれはどうなっているんだろう、こんなことをおっしゃっておられます。

 そこで、一つ物すごく思うことが、例えば尖閣問題とかが起きたときに、まずはすぐに国際世論に訴えかけていくこと、国際世論づくりをしていくこと、こんなことを相手国はやっているんだよ、日本はこういう立場なんだよ、こういうことを訴えていくというのは非常に重要なことだと思うんですけれども、まず一番目に、どんな取り組みをされているんだろうか。

 つまり、例えば、そんな事件が起きたときに、外務大臣が全国に派遣されておられる大使の皆さんを一回呼び集めて、こういう説明をしてください、特に現地国の一般人とかあるいは議会の人とかそういった方々にお訴えをしてください、こういうようなことを働きかけてもいいんじゃないかと物すごく思うわけでありますけれども、その点について、取り組みについて一つお尋ねしたいと思います。

岸田国務大臣 御指摘のように、対外情報発信、大変重要だと考えております。

 外務省としましても、領土保全ですとかあるいは北朝鮮による拉致問題を初めとする重要案件につきましては、我が国の立場に対する正しい理解を広めるべく、例えば、私自身、外国メディアによるインタビューを積極的に受けるとか、あるいはホームページ等において広報を行うとか、あるいは在外公館を通じて各国の有識者あるいはメディアに対してしっかり発信をしていくとか、こうしたさまざまな手段を講じてきているところです。

 二十五年度予算の中においても、領土保全対策の予算として八・一億円を計上しております。北方領土問題の解決のための啓発事業、竹島関連の啓発宣伝資料作成予算、これは既存の事業でありますが、これらに加えまして、有識者を活用した調査研究、対外発信のための事業を新たに計上しています。

 これ以外にも、内閣府において五億円の予算を計上して、米国を中心に、アジア等、各国における対日理解、好感度を向上させる広報戦略を推進するための経費、こうした予算も二十五年度予算に計上させていただいております。

 ぜひ、こうした予算を活用しながら、関係者とも連携しながら、しっかりと情報発信に努めていきたいと考えています。

大野分科員 ありがとうございます。もっともっと積極的に対外情報発信をしていただきたいなと思うんです。

 先般、シカゴ大学の学生たちが国会の中に見学にやってまいったんです。私と同僚の武部新先生と一緒に対応させていただいたんですけれども、私の方から実は北朝鮮のアブダクションについて、拉致の問題について発言をさせていただいたら、何だそれと言っておられました。全然状況を把握していないんだなとびっくりしました。ただ、外国にとっては全然知らない案件なのかな、そんな思いがありましたので、ぜひお願いしたいと思います。

 と同時に、国民に対してもぜひ説明していただきたいなというのが、例えば、尖閣がなぜ日本の固有の領土なんだというのを実は説明できる国民というのは、一億二千万のうちに、赤ちゃんはできないでしょうけれども、一体どのぐらいいらっしゃるんだろうかと思うと、甚だ心もとないなというか、甚だ不安だなというのを物すごく思うんです。地元に帰りましても、ほとんどそういったことが説明できない。

 つまり、国内に対しての説明の努力も、外交については非常に重要だな。一億人がみんな日本のための外交官になれるわけですから、広報マンになれるわけですから、ぜひお願いしたいなと思っております。

 それから、もう時間がなくなりましたので、最後に一点だけ、情報の保全についてであります。

 よく情報がリークされます。これは、外交上、本当に問題じゃないかと思っております。例えば、大臣、日米同盟の強化というのを最初に重要項目として挙げられておりますけれども、アメリカ側からしましたら本当にこれはゆゆしき問題でありまして、情報をリークするような国となかなか交渉もできないよね、こんなことになってしまいかねない問題であります。

 ぜひ、最後に、どんな取り組みをされているのか、時間はオーバーしていますけれども、できれば防衛省とともにお答え賜れれば大変ありがたいなと思います。

伊藤(信)主査代理 質疑時間が過ぎておりますので、簡潔にお願いいたします。

あべ大臣政務官 ありがとうございます。

 情報保全の体制を確保すること、委員がおっしゃるとおりでございまして、各国との信頼関係の上でも非常に重要であることは言うまでもございません。

 外務省といたしましては、その職務上、さまざまな秘密情報を扱っていることから、意識面、制度面など多面にわたる取り扱いを行い、情報保全を徹底しているところでございます。

 そうした中にありまして、今後とも情報保全対策にしっかりと取り組んでまいりますので、よろしくお願いいたします。

佐藤(正)大臣政務官 大野委員にお答えします。

 当然、情報管理、情報保全というのは、安全保障に直結する重要なものだと思っております。そういう観点から、人的保全、物的保全にかかわるさまざまな取り組みを推進して、遺漏なきよう取り組んでおります。

 以上です。

大野分科員 どうもありがとうございました。以上で質問を終わらせていただきます。

伊藤(信)主査代理 これにて大野敬太郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、塩川鉄也君。

塩川分科員 日本共産党の塩川鉄也です。お世話になります。

 きょうは、群馬県上空及び島根・広島・山口県境上空の米軍機の飛行訓練問題について質問をいたします。

 沖縄普天間基地へのオスプレイ配備をきっかけに、米軍は、米軍機の低空飛行訓練ルートを明らかにいたしました。実際、三月に本土で訓練飛行を行ったオスプレイは、オレンジルート周辺を飛行しておりました。私は、予算委員会の基本的質疑でも、住民生活の頭の上で横暴勝手に米軍機が低空飛行している問題について中止を求めましたが、きょうは、いわゆる低空飛行訓練ルートとは別に、本土上空で米軍機の訓練飛行が住民生活に多大な被害をもたらしている問題について取り上げたいと思います。

 その場所の一つが、冒頭申し上げましたように、島根・広島・山口県境の上空で、地元では米軍の呼称を使ってエリア567などと呼ばれております。もう一つが、前橋市や渋川市、高崎市など群馬中央の上空で、ホテルエリアなどと呼ばれております。

 この間、私、それぞれの地域での現地調査も行ってまいりました。

 資料をお配りしたんですけれども、一枚めくっていただいて、ページが下に打ってある一のところです。

 左側が群馬県がつくった資料です。「米軍機等の騒音・飛行に係る苦情件数について」ということで、群馬県が住民の方、県民の方から受けた件数ですけれども、下の方、平成二十二年度から見ますと五百二十六件、二十三年度には六百件、平成二十四年度には千二十六件と、一年間で大変多くの騒音被害があるという苦情が県に寄せられている。

 右側の方が島根県の作成した資料ですけれども、「米軍機等の目撃等件数」ということで、平成二十二年度、二十三年度、二十四年度と見ますと、下から二つ目の欄が件数ですけれども、二十二年度では二百九件、二十三年度では二百四十件、二十四年度では五百六十二件となっています。

 もう一枚めくっていただいて、二ページのところが、これは広島県の「米軍機低空飛行目撃情報について」の集計表です。ちょっと字が小さ過ぎるので読み取れないんですけれども、二十二年度、二十三年度、二十四年度の上半期の数字を見ますと、二十二年度が一千四百七十九件、二十三年度が二千四十八件、二十四年度の上半期が一千十二件、こういう件数が、目撃情報あるいは騒音被害の苦情という形でそれぞれの県に寄せられている件数であります。

 広島の場合には、特に県西部の廿日市市や北広島町に集中しているということも、この市町村別の一覧表から見ていただけると思います。

 こういう苦情というのは、防衛省にも直接寄せられているわけですね。防衛省が作成をしております米軍機の飛行に係る苦情等受付状況表というのがあります。これは資料にはつけておりませんけれども、その中では、例えば苦情の件数について、各地方防衛局に住民から直接寄せられた米軍機飛行に関する苦情を記録したものです。それぞれ、防衛省が、米軍機かどうか米軍に問い合わせをして確認しております。

 これは、防衛省の地方防衛局とか防衛事務所だとか、あるいは基地、駐屯地に寄せられた苦情を集計しているという形になっておりますので、例えば外務省とか、あるいは市町村とか都道府県とかに寄せられた苦情というのは集計されていないんですね。ですから、防衛省の出先などに直接寄せられたものを集計した件数ですから、市町村、都道府県の集計の件数というのは、そこでの大きな差があるということも見ていただければと思います。

 そこで、防衛省にお尋ねしますが、この防衛省作成の苦情等受付状況表において、群馬県における苦情件数、二〇〇八年度から二〇一二年度までの各年度の苦情受け付け件数が群馬県において何件かということをお示しください。

前田政府参考人 お答えいたします。

 防衛省におきましては、今先生お話しのとおり、米軍機の飛行に伴う地方自治体あるいは住民の皆さんからの苦情をお受けいたしました場合には、米軍に対してまずその内容を通知いたします。それから、飛行の有無等の事実関係の問い合わせというのをいたします。その結果について、地方自治体等に情報提供をしているところでございます。

 お尋ねのございました、私ども防衛省が把握いたしております群馬県における苦情件数について申しますと、二〇〇八年度、平成二十年度に百三十七件、二〇〇九年度、平成二十一年度に百六十四件、二〇一〇年度、平成二十二年度は百五十八件、二〇一一年度、平成二十三年度が百九十三件、最後に二〇一二年度、平成二十四年度でございますが、これは、三月の集計がまだ出てございませんので二月末までの集計なんでございますが、二百三十六件、こういう数字になってございます。

塩川分科員 年々ふえている件数、そういう意味では、苦情として受けとめている住民の方が非常にふえてきているということが見てとれます。

 これは、群馬県の集計と違うのが、群馬県は個々に、一件一件数え上げるんですけれども、防衛省の場合は、例えば、群馬県から百件の苦情がまとめられてきた場合には、一件というカウント、つまり、県から寄せられた苦情の件数ということですから、それが一件ということで、そういう点では防衛省の件数としては非常に少なくならざるを得ないんですけれども、これはこれとして防衛省の集計のあり方ですけれども、率直に言って、実態を反映していると言えないんじゃないかなということを言わざるを得ません。

 それで、そういった苦情について、住民の方からの具体的な声も苦情等受付状況表には書いてあります。

 その中では、例えば、二〇一一年二月十五日の群馬県から寄せられた苦情受け付けにおいては、群馬県からのコメントがそこに記載されているんです。そこでは、昼夜を問わず、長時間にわたり、県民の不安をあおるような飛行を行っていることは極めて遺憾である、本日も県内公立高校の入試日である、昨日も相当な苦情を受けたため、特に配慮していただくよう重ねてお願いをする。

 つまり、ここにあるのは、県立高校の入試日に米軍機が飛んでいた、その大きな騒音被害で受験生が大変困った、保護者の方からも、こういうのはやめてくれ、こういう声が殺到したということを群馬県が訴えているという中身であります。

 また、島根県でも同様の苦情が防衛省に多数寄せられておりますけれども、島根県経由で浜田市から出された声として、あさひ子ども園、幼稚園と保育園が一緒になっているところですけれども、このあさひ子ども園では、子供は給食中に飛行機の騒音に驚き、恐怖の余り泣き出し、しばらく給食が食べられなかった、午後のお昼寝の時間に昼寝もできなかった。これが実態なんです。

 ですから、大臣にお尋ねしますけれども、このように、県立高校の入試の日に飛んで回る、ヒアリングなどそれこそ集中しなければいけないときに爆音が響く、こんなことはあってはならないと思いますし、子供が泣き出すようなこういう爆音被害というのは許されない、余りにもひどい被害ではないかと思いますが、大臣の率直なお気持ちをお聞かせください。

岸田国務大臣 まず、今委員の方から、調査あるいは集計の実態につきましてお話をいただきましたが、いずれにしましても、私ども、地方の方々から多くの、そしてさまざまな苦情が寄せられているということについては当然承知をしておりますし、こうした問題は、地方にお住まいの方々にとって大変な問題であるという認識を持っております。

 こうした認識のもとに、米軍機による飛行訓練ですが、日米安保条約の目的達成のために不可欠な訓練であるという前提を体しつつ、政府としては、米軍の飛行訓練に際しましては、安全面に最大限の考慮を払うとともに、地元住民に与える影響を最小限にとどめるよう、引き続き、安全面への最大限の配慮を日米合同委員会等さまざまな場面を通じましてしっかり申し入れていかなければならない、このように認識をしております。

塩川分科員 地元からの苦情は承知をしている、大変な問題だということは認識をしておられる、そうであれば、ぜひ調査をやっていただきたいんですね。

 というのは、それぞれの当該の県や市町村にしてみると、被害が大変大きい、こういう実態について国がきちっと受けとめてくれていないんじゃないのかという強い思いがあるわけです。だからこそ、今、島根県などは九カ所に騒音測定器を設置する。それに先駆けて、浜田市も独自に騒音測定器を設置する。群馬県も前橋市、渋川市に騒音測定器を設置する。これは、記録で客観的に騒音被害があるんだということを明らかにして、国にぜひとも対応してもらいたい、国としても調査をしてもらいたい、そういう声として上がっているものです。

 浜田市などの島根県西部の五市町が対策協議会を立ち上げましたけれども、それもぜひ国に動いてほしいという趣旨で行われているわけですから、こういう米軍機の被害の問題について実態調査をぜひやっていただきたい、防衛省などとも連携してやっていただきたいと思うんですが、その点はいかがでしょうか。

岸田国務大臣 先ほども申し上げましたように、こうした問題は地元にとって大変大きな問題であると認識をしております。

 そして、実態把握のために調査をすべきだという御指摘をいただきましたが、この御指摘、ぜひ御提案として受けとめたいと存じます。

 いずれにしましても、防衛省ともよく連携いたしまして、適切に対応していきたいと考えています。

塩川分科員 実態把握、提案として受けとめたいというお話ですから、ぜひ具体的に実施をしていただきたい、このことを申し上げ、こういった被害の実態がどんなことで行われているのかについて少しお聞きもしたいわけです。

 こういう米軍機による被害が集中している空域の特徴が何なのかということであります。

 資料の三ページの左側に、これは防衛省からいただいた自衛隊の訓練空域の範囲及び空域図についてであります。これで見ていただくと、特に白抜きの部分が高高度の訓練空域ですけれども、多くは海上に設定されております。

 防衛省に確認でお聞きしますが、本土の陸上部分で自衛隊高高度訓練空域と低高度の訓練空域が重なっているのは、先ほど紹介した島根・広島・山口県境の高高度の訓練空域のQ、ケベックと通称していますけれども、及び低高度の7、同様に、群馬上空の場合であれば、H、ホテルエリアとエリア3に該当する、その二カ所だけだと思いますが、この点はいかがでしょうか。

佐藤(正)大臣政務官 塩川委員御指摘のとおり、本土の陸上部分において、自衛隊高高度訓練・試験空域と自衛隊低高度訓練・試験空域が上下に重なっているのは、エリアQとエリア7及びエリアHとエリア3の二カ所であります。

塩川分科員 確認いたしました。

 下の部分が低高度で上が高高度になる。そうすると、地表面から上、約二万三千フィート、七千メートルの高さまで一体的に訓練で使えるような、そういう地域となっているということが見ていただけると思います。

 次に国交省にお尋ねしますが、今言ったQと7、Hと3がそれぞれ重なる空域というのは、それぞれ米軍の進入管制空域に対応している、その空域の中にそのほとんどがあると思いますが、それぞれどこの進入管制空域かをお答えください。

重田政府参考人 お答えします。

 御指摘のエリアQとエリア7が重なる空域につきましては、一部を除き、米軍が岩国で進入管制業務を行っております岩国進入管制空域の中にございます。

 一方、エリアHとエリア3が重なる空域につきましては、米軍が横田で進入管制業務を行っております横田進入管制空域の中にございます。

塩川分科員 今確認しましたように、資料の四ページ、五ページに地図があります。四ページの方が群馬上空ですけれども、濃いグレーの線が横田の進入管制空域です。オレンジの部分というのが高高度の訓練空域、そして赤が低高度の訓練空域。つまり、高高度と低高度が重なるところ、オレンジと赤で囲まれた部分というのは、すっぽり横田の進入管制空域に入っております。

 同じように、五ページの方で見ていただきますと、これは島根・広島・山口県境のところですけれども、一番外側の枠、濃いグレーのところが岩国の進入管制空域で、その中に、赤のところが低高度の訓練空域、オレンジのところが高高度の訓練空域に対応していますので、両方重なっている部分というのが赤で囲まれた部分ということになります。

 実際に現地に行きますと、ここの重なっている部分において訓練飛行が集中しているということが実態としてよくわかりました。

 ですから、このように、米軍の進入管制空域があって、その中に高高度と低高度の訓練空域が二階建てであって、そこの部分で訓練飛行が集中をしていることが共通しているということが見ていただけると思います。

 そこで防衛省にお尋ねしますが、我が党の井上哲士参議院議員が、AIP、航空路誌に基づく自衛隊の訓練空域に対しての米軍の使用に当たっての調整の実績のデータを出していただきました。

 そこで、この自衛隊の訓練空域、エリアQ、エリア7、エリアH、エリア3におけるAIPに基づく米軍機使用に係る調整実績がどうなっているかを、二〇一二年三月から二〇一三年二月までの一年間についてお示しいただきたいと思います。

佐藤(正)大臣政務官 お答えいたします。

 国土交通省が公示しております航空路誌に示されているとおり、米軍機が自衛隊の訓練空域を使用する際には、使用統制機関として指定された自衛隊の部隊が米軍からの調整を受けております。

 御質問の平成二十四年三月から平成二十五年二月までの一年間について、米軍からの調整実績は、資料により確認できた範囲で空域ごとに申し上げれば、次の日数となっております。

 エリアQ、二百十八日間。エリア7、二百十八日間。エリアH、六十九日間。エリア3、六十五日間。このうち、エリアQ及びエリア7については、平成二十四年三月及び四月の調整実績が不明であるため、同年五月から平成二十五年二月までの十カ月間に調整を受けた実績を申し上げております。

塩川分科員 お答えいただきましたように、エリアQ、エリア7については三月、四月分が不明ということですので、実際には飛んでいるでしょうから、もっと日数が多いんですよね。つまり、一年間をとってみると、エリアQ、エリア7においては二百十八日間プラスアルファということですから、大変多くの日数ですし、群馬上空のエリアHまたエリア3についても、重なるのが六十五日間。

 いずれにしても、これは全部、上下で使っている日が対応関係にあるんですよ。つまり、エリアQとエリア7、二百十八日ずつなんですけれども、全部同じ日なんです。つまり、同じ日に上下とも使っているということがこの調整実績でも見てとれますし、同様のことは群馬の上空でも言えるわけであります。

 これはそういうことだと思うんですが、わかりますか。

佐藤(正)大臣政務官 お答えいたします。

 先般、自衛隊の訓練空域、試験空域を米軍が使用する際の調整実績を提出させていただき、今説明させていただいたところでありますが、御指摘のとおり、エリアQ、エリア7については、米軍からの自衛隊側に対する空域使用調整があった日は同一の日にちであり、エリアH及びエリア3についても、四日間を除いて同じ日ということは認識しております。

塩川分科員 ですから、米軍の方はもう一体的に高高度、低高度を一緒に使っているということがこういう調整実績でも見てとれるわけです。それは資料の三ページの右側に書いたとおりであります。特定の訓練空域で、高い頻度で米軍が使用しております。

 そこで防衛省にお尋ねしますが、つまり、自衛隊訓練空域において米軍機が飛行する日程というのは事前に調整が行われています。何日前かというのはわかりませんけれども、事前に調整が行われているということであれば、地元自治体の方からすれば、いつ飛ぶんだと。いや、試験日は困るとか、大事な日があるとかいうことについては、そもそもやめてくれと言うのが基本ですけれども、少なくともいつ飛ぶのかは事前に教えてほしいという強い要望があるわけです。

 ですから、自衛隊として、米軍が飛ぶ日について調整しているわけですから事前にわかるわけで、こういった米軍機の訓練飛行の日程については地元自治体に事前に連絡する、そういうことというのはこれまで行っているんでしょうか。

佐藤(正)大臣政務官 お答えいたします。

 米軍の訓練空域の使用につきましては、米軍の運用に関する情報であり、これを事前に公表することは差し控えさせていただいております。

 なお、一般論として、当時の天候などさまざまな要因によって、事前の調整の内容と実際の訓練の実績は必ずしも一致するものではないというふうに承知をしております。

塩川分科員 事前調整したけれども飛ばなかったという日があるかもしれないけれども、しかし、事前に飛ぶとわかっているわけだから、だったら運用云々じゃなくて、そもそも住民の皆さんから、地元自治体から、事前にはせめて教えてくれという要望があるわけですから、これに応えることこそ今国がやるべき第一の仕事じゃありませんか。

 そういう点でも、今後、地元自治体から事前に教えてくれという要望があったら、それに応えていついつ飛びますということを連絡する、そういうことはできないんですか。

佐藤(正)大臣政務官 繰り返しになりますが、運用に係る事項につきましては、これまでどおり、事前の公表というものは差し控えさせていただきたいと思っております。

塩川分科員 いや、実害がもたらされているんですよ。それこそ県立高校の入試の日だとか、子供たちが泣き叫ぶようなこととか、ガラスが壊れるとか土蔵が壊れるようなことも低空飛行のルートでありましたけれども、こういった空域において実害が生じているわけですから、やめてくれと言うのが当然の要求だと思いますけれども、少なくともいつ飛ぶのかということを明らかにするのは最低限の仕事じゃないのか、このことを強く申し上げておくものであります。事前に日程がわかっていても地元自治体には連絡をしない、こういう姿勢では、そもそもこういう自治体の理解が得られないというのは当然のことであります。

 このような空域において、実際、米軍の場合、どこの部隊のどのような機種の米軍機が飛んでいるのか。エリアQ、エリア7を主に使用しているのはどこの部隊のどのような機種の米軍機でしょうか。また、エリアH、エリア3を使用しているのはどこの部隊のどのような機種の米軍機でしょうか。お答えください。

前田政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほども少し申し上げましたが、防衛省におきましては、米軍機の飛行に伴って自治体あるいは住民の方々から苦情をお受けしました場合に、米軍に対してその内容を通知いたしますとともに、飛行の有無の事実関係を問い合わせてございます。その結果については自治体等に情報提供させていただいているところでございますが、他方で、防衛省の問い合わせに対する米軍の回答につきましては、所属部隊や機種が含まれている場合もございますけれども、飛行の有無のみ、すなわち、飛んだ飛ばないということだけの場合も多々ございます。

 このようなことから、防衛省として、米軍機の所属部隊や機種について全てを把握することはなかなか難しいということを御理解願いたいと思います。

塩川分科員 わかっているところで教えてください。

前田政府参考人 繰り返しになりますが、所属部隊や機種等については米軍の運用にかかわることでございまして、防衛省として全てを把握することが難しいということをぜひ御理解いただきたいと思います。

塩川分科員 例えば防衛省が取りまとめている苦情等受付状況表の中でも、米海兵隊岩国基地からの回答として、当基地の所属機だ、こういう回答というのは寄せられているわけですよね。

前田政府参考人 先ほどもお答えいたしましたけれども、所属部隊あるいは機種を通知してもらうこともございます。今先生おっしゃいましたように、例えば一例を申しますと、岩国基地の所属のFA18戦闘機二機である、こういった通報がなされることもございますが、なされないことも多々ある、こういうことでございます。

塩川分科員 ですから、群馬上空についても、米空母艦載機、そういう回答は地元自治体にもしていますよね。

前田政府参考人 群馬県のケースにつきましては、所属部隊あるいは基地の情報が寄せられたという事実を承知いたしておりません。

塩川分科員 現場ではそういう説明も行われているわけで、それすらわからないというか、それすら説明しないということ自身が自治体の不信になっているんですよ。それを重く受けとめなくちゃいけない。

 このエリアQと7、それからエリアHと3の訓練空域において、今、自衛隊戦闘機の訓練飛行というのは行われているんでしょうか。

佐藤(正)大臣政務官 お答えいたします。

 御指摘のエリアQと7、あるいはエリアH及び3、この四つの訓練空域においては、現在、航空自衛隊の戦闘機は訓練飛行を行っておりません。

塩川分科員 ですから、一九七一年の雫石の自衛隊機と民間航空機の衝突事故によって、民間航空路線と自衛隊の訓練空域は完全に分離をするということで、多くの自衛隊の戦闘機の訓練空域は海上に出ました。陸上に残っているというのはほとんどなかった。それすら本来の趣旨からいったら問題があった。こういう中で、自衛隊の戦闘機は訓練をしていないのに米軍機だけが行っているということであります。

 大臣にお尋ねしますけれども、多くの住民の方々が生活をしているその頭の上で米軍機の訓練が行われている、自衛隊の戦闘機の訓練さえ行っていないのに米軍機の訓練飛行を容認しているというのは余りにもおかしいんじゃないですか。中止ということを強く求めるべきだと思いますが、認識、対応をお聞きしたいと思います。

岸田国務大臣 一般的に、米軍が訓練を通じてパイロットの技能の維持及び向上を図るということは、即応態勢という軍隊の機能を維持する上で不可欠な要素であり、日米安全保障条約の目的達成のために極めて重要であると考えます。

 この日米安全保障条約が、我が国の安全並びに極東の平和及び安全の維持に寄与するため、米軍の我が国への駐留を認めているということは、米軍が低空飛行訓練も含む軍隊としての機能に属する諸活動を一般的に行うこと、これを前提としていると考えています。

 ただし、だからといって、米軍が全く自由に飛行訓練を行ってよいというわけではありません。我が国において公共の安全に妥当な考慮を払って活動すべきものであるということ、これは言うまでもないことであります。

 政府としては、米軍の飛行訓練に際して、安全面に最大限の考慮を払うとともに、地元住民に与える影響を最小限にとどめるよう、これまでも申し入れは行っておりますが、引き続き、安全面への最大限の配慮を日米合同委員会等さまざまな場を通じてしっかりと申し入れていかなければならない、このように認識をしております。

塩川分科員 安全面で対策をとる、配慮するといいながら、実際には具体的に何も現場では行われていないんですよ。好き勝手に、横暴勝手に飛んでいるわけですから。こういうことに対して、おかしい、待ったをかける、こういうことこそ日本政府の代表として行うべきことじゃないですか。

 実際に、AIPの調整実績で、例えば二百十八日間飛んでいるといっても、それ以外の日も飛んでいたりするんですよ。防衛省が取りまとめている苦情等受付状況表なんかを見ると、例えば去年の八月の二十一日とか二十二日には苦情が来ていて、これは米軍が飛んだということを米軍側に確認しているんですよ。でも、その日は調整実績のない日なんですよ。それこそ本当に好き勝手に飛んでいるというのが今の米軍機の実態であって、こういうことを放置していていいのかということがまさに問われるんじゃないでしょうか。

 この米軍の進入管制空域も自衛隊の訓練空域というのも、基本は空の安全を確保する、空の交通整理の仕組みであります。これはこれで当然必要な措置ではありましょうが、しかし、そのもとで暮らしている住民の皆さんに対しての安全確保の仕組みというのはこういう空域設定の中にはないわけですから、こういうことのままで、飛ぶ方だけは大いにやってもらうような、容認するような姿勢ということは認められない。

 こういった訓練飛行の中止と同時に、こういう空域設定そのものも撤廃をすべきだ、こういうことを強く思いますが、最後にお聞きして、終わりにします。

岸田国務大臣 まず、御指摘の点は、地方の住民の皆様方にとってこれは大変な問題であるという認識を持っております。

 そして、その中で、先ほど委員の方からもこの実態把握について御指摘がありました。ぜひ、防衛省とも連携しながら適切に対応したいと思っておりますが、そうした実態を把握した上で、米国側にはさまざまなルートを通じて申し入れを行っていかなければいけない、御指摘を受けて改めて強く感じております。

塩川分科員 終わります。

伊藤(信)主査代理 これにて塩川鉄也君の質疑は終了いたしました。

 次に、大西健介君。

大西(健)分科員 民主党の大西でございます。

 きょうは、この分科会の質疑の機会を賜り、ありがとうございます。

 私は、ふだんは厚生労働委員会や予算委員会で主に活動しておりますので、外務省所管の質問というのはなかなか機会がないわけでありますけれども、きょうは大所高所の外交政策というよりかは、この分科会でなければなかなかお聞きしにくいことについてお聞きをしたいというふうに思います。また、地元にかかわることについても若干お聞きをさせていただきたいなというふうに思っております。

 まず最初に、昨年の九月、中国で大規模な反日の抗議行動が暴徒化をして、そして日本大使館や日系企業のガラスが割られたり、焼き討ちに遭ったりというような、甚大な被害をこうむりました。改めて、罪のない邦人の安全やその財産を脅かす暴力行為に対しては、これを断じて許さない、強い怒りと抗議の意を表して、それを確認させていただきたいというふうに思います。

 本件に関して、たしか中国側が賠償や原状回復に応じる可能性というのを示唆していたように記憶をしているんですけれども、その後、補償等がどのように行われているのかについてお伺いをしたいと思っております。

 ちなみに、二〇〇五年、同様の事案では、中国側が大使館や総領事館に関しては補修費用を負担して原状回復を行った、日系の企業については、それぞれ意向というのを確認した上で、個別に一部補償が行われたというふうにお聞きをしております。

 昨年のこの暴動に関して中国側がどのような対応をとったのか、また、政府からは、中国側に対して、本件に関してどのような申し入れを行っているのかについて御説明をお願いいたします。

岸田国務大臣 御指摘のように、昨年九月、中国各地で発生したデモ活動において、一部が暴徒化し、日本企業や我が方の一部在外公館に対する破壊行為が発生したこと、まず、極めて遺憾なことであります。いかなる理由であれ、暴力的行為は決して許されるものではないと認識をしております。

 そして、被害に遭われた日本企業ですが、対応はさまざまでありまして、中国側に賠償の補償を請求している企業もあり、また損害保険で対応している企業もあり、また、救済を求めずに再発防止のみを要請する企業もあり、対応はさまざまですが、現時点で中国側が補償を行ったという事実は確認されておりません。

 これら日本企業に対して、それぞれの意向に基づき、現地の中国側関係当局とやりとりを行っているところですが、政府としましては、個別の日本企業の意向を踏まえて、まず一つは再発防止、二つ目として不法行為者の迅速な捜査及び厳正な処罰、三つ目として中国国内法に基づく適切、公正かつ迅速な救済を累次中国側に申し入れております。

 また、我が方の在外公館に生じた被害についても、ウィーン外交関係条約あるいは日中領事協定上の接受国としての義務を踏まえて、中国に対して適切な対応を求めているところであります。

 御指摘のように、二〇〇五年の事案におきましては、中国側が一部の日本企業に対して見舞金を支払ったということを承知しております。また、在外公館の被害については、中国側の費用負担によって修復されたということであります。

 こうした前例はありますが、今回の事案につきましては、今現在、補償を行ったという事実は確認されておりませんので、引き続きまして中国側にしっかり申し入れを行っていきたい、このように考えております。

大西(健)分科員 大臣からは、いかなる理由であっても暴力は許されないということも言っていただきましたし、九月からだと半年以上たっているわけですから、これは、法にのっとった救済というのをしっかりと、今後もフォローアップをしていただきたいなというふうに思います。

 次に、いわゆる大使館カジノという問題についてお聞きをしたいというふうに思います。

 過去には、二〇一〇年、駐日コートジボワール大使館の元外交官が都心に借りたビルの一室を賭博店に貸して報酬を得ていたとして、賭博開張図利幇助容疑で逮捕されたという例があります。

 三月二十三日付の朝日新聞の報道というのを私は読んだんですけれども、欧州のある国の外交官名義で借りられていた赤坂の雑居ビルにおいてカジノ店が営業されていた。この記事によりますと、警視庁も内偵調査をしていた、しかし、昨年の十一月に、カジノは突如として営業をやめて、そして賃貸契約も解除されて、実態解明がされないまま、この捜査については幕引きをしたということが報じられております。

 個別の案件については、お聞きをしてもお答えをいただけないというふうに思いますので、一般論として結構でございます。

 外交特権をかさに着たこのような違法なカジノ営業の疑いがある、こういう情報が仮に寄せられた場合には、外務省としては、事実関係を確認して、必要であれば、当該大使館に是正を申し入れるなど、厳正な対処をするということでよろしいでしょうか。また、警察も、外務省と連携協力をしながら必要な捜査を行うということでよろしいか。

 これは、それぞれ、外務省と警察庁にお答えいただきたいと思います。

鈴木副大臣 大使館員の犯罪の疑惑がある場合の外務省の対応、こういうお尋ねでございます。

 国際法上、大使館の職員は、外交関係に関するウィーン条約に基づきまして、先生御指摘のように、特権・免除を享有しております。それによって、大使館の関連施設、大使館事務所でありますとか大使公邸、それから館員の住居、これは不可侵とされているところでございます。

 一方において、大使館員は、接受国の法令を尊重する義務を負っておりますので、そのような者が我が国の法令に違反する行為を行っている疑いがある場合は、外務省として厳正に対処してきているところでございます。

 具体的には、警察とも密接に連携をしつつ、まずは外交ルートを通じて事実関係の確認を行った上で、法令違反の事実が確認された場合には是正させるなど、外務省として厳正に対処してきているところであります。

山下政府参考人 お答えをいたします。

 一般論として申し上げれば、お尋ねのような場合も含めまして、大使館職員が我が国の刑罰法令に触れる行為を行ったと疑われるようなケースにつきましては、警察として、外務省に必要事項を照会するなどして適切に捜査を行うこととしております。

大西(健)分科員 先ほどの事例では、本当に雑居ビルの一室に大使館というような張り紙がしてあったというような話でありますし、そういう事例が繰り返されないように、ぜひ厳正な対処をしていただきたいというふうに思います。

 次に、私の地元にかかわる問題について少しお聞きをしたいというふうに思うんですが、私の地元に、皆さん新幹線に乗られると、もうすぐ名古屋、今、時間どおり三河安城を通過しましたという、安城という町があります。実は韓国の京畿道にはアンソンという町があるんですけれども、これは漢字で書くと安城と書きます。

 私も日韓議員連盟に所属をしているんですけれども、韓国のアンソン市を選挙区とするハンナラ党の金學容議員とこの日韓議員連盟で知り合いになりまして、金學容議員がわざわざ私の地元の安城を訪ねてきてくれました。そのことがきっかけになって、昨年の八月、安城七夕まつりという祭りが毎年あるんですけれども、そこに、アンソン市から綱渡りや踊りを披露するナムサダンという皆さんが、本当に手弁当で来ていただきました。

 私もその場におりましたけれども、綱渡りをする女性が、私が今立っているのは韓国のアンソン市です、綱の向こうは日本の安城市です、私が今からこの綱を渡って安城とアンソンのきずなを結びますというスピーチをして綱渡りをしてくれたんですけれども、非常に感動的な場面でありました。その後も、このことがきっかけになって市民同士の交流というのが始まっております。

 自治体間のこうした交流の支援について、先日、外務省の方に説明をお願いしたところ、こういう自治体間の交流については、総務省の関係の自治体国際化協会、CLAIRで行っておられるということでありましたけれども、私が申し上げたいのは、こうした草の根の地域間交流、国と国との関係が難しいこういう時期だからこそ、これをもっと日韓関係の改善にうまく活用すべきではないかということであります。

 私も以前、在外公館にお世話になっていたことがあるんですけれども、ワシントンの大使館にいたとき、議会を担当しておりました。議会班の重要なミッションというのは、その国の知日派議員だとかスタッフの中に日本に関心を持ってもらう議会スタッフを発掘していくというのが重要な役割だったんですけれども、そういうことでいえば、ハンナラ党で朴槿恵大統領にも非常に近いという金學容議員が安城に来たことがあるとか、安城とアンソンでそういう交流をやっているという情報というのは、私は外務省にとっても有益な情報ではないかというふうに思いますけれども、こういった情報の活用についてどのように思われておられるかということについて、お答えいただきたいと思います。

鈴木副大臣 地方自治体等の交流の大切さ、それは外務省も認識をしているところでございます。

 地方自治体の国際交流の取り組み、これは大変幅広いものがありますし、活発に行われております。その観点から、外務省は、地方を外交を推進していく上での重要なパートナー、このように位置づけておりまして、地方自治体などとのさまざまな連携策を実施しているところでございます。

 その一環といたしまして、姉妹都市交流等の自治体間交流活動も積極的に支援をいたしております。昨年七月には、長崎県の大村市と米国のサンカルロス市との姉妹都市締結を仲介いたしたところであります。

 また、地方自治体からの照会、相談窓口として、全ての在外公館に地方連携担当官を配置しているほか、在外公館員による任地内の地方出張、自治体等の国際交流事業関係者との意見交換、こういったものも随時実施をしているところでございます。

 さらに、地方の魅力発信プロジェクトといたしまして、在外公館の施設を利用して、地方の物産、観光等をプロモーションする活動を実施いたしております。

 在外での支援に加えて、日本国内におきましても、在外公館長による一時帰国時の地方訪問等を通じて、日本の自治体の国際交流活動を支援しているところであります。

 先生御指摘のように、地方自治体のいろいろな外国との交流というのは大切でございますので、我が国と海外の地方自治体間の交流活動を今後とも支援してまいりたいと思っています。

大西(健)分科員 副大臣、ありがとうございました。姉妹関係といっても名前だけになってしまっている部分もあると思いますので、そうではなくて、実質的な行き来、ぜひそういう情報を活用していただければというふうに思います。

 その点に関して、もう一つ御質問したいというふうに思います。

 きょう儀典長もいらっしゃいますけれども、私も、儀典長がちょうどワシントンにいらっしゃったころに在米大にお世話になったんですけれども、ワシントンにも日本から贈られた桜が毎年満開の花を咲かせます。これは東京市が寄贈したものでありますけれども、当時の尾崎行雄東京市長の命を受けて苗木を準備したのが、当時の農商務省の農事試験場園芸部の技師をしていた熊谷八十三氏であります。熊谷氏はその後、私の地元にある安城農林高校の初代教頭を務められました。

 御存じのように、日本から贈られた桜は、昨年百周年を迎えました。私も百周年のバッジをきょうしてきたんですけれども。そのお礼に、新たな友好のあかしとして、ハナミズキの木を三千本いただけるということになりました。私も実は在京米大にもお願いをして、そのうち何本かをゆかりのある安城にいただけないかというお願いをしました。ちょっと地元に週末確認したところ、既にもう二十本来るということが決まっているみたいです。

 ただ、これについては、被災地に贈る、また、もともと東京市が贈ったものですから、東京でもということをお聞きしておりますけれども、外務省として、米国政府からこのハナミズキの贈呈先についてどのような説明を受けておられるのか、御説明をいただければと思います。

伊原政府参考人 今先生御質問の三千本のハナミズキでございますけれども、昨年の秋に代々木公園に百本植樹いたしまして、これまでに、神奈川県の川崎市、横浜市、兵庫県の伊丹市に合わせて百二十六本が寄贈されております。つい先日といいますか、昨日、二子玉川の公園に五十三本寄贈されたというふうに伺っております。

 これはアメリカ側が行っている寄贈計画でございますけれども、国務省と日米交流財団が協力いたしまして、日米交流財団のウエブサイトでもどういうふうに申請すればいいかということを公表しておりますが、申請を出していただければ、米側の方でこれを審査の上、順次寄贈先を決定していくというふうに聞いております。

大西(健)分科員 たまたま、私、きょう、この委員室に来まして、歴代議長の肖像画がかかっておりますけれども、歴代議長はたしかさくらの会の会長を務められているというふうに思いますので、議長もごらんになっておりますので、いただいたハナミズキを大切に育てていきたいというふうに思います。

 それでは、国酒についてお伺いします。

 古川国家戦略担当大臣のときに「ENJOY JAPANESE KOKUSHU」プロジェクトというのが立ち上がりました。私も予算委員会で国酒について質問したことがあるんですけれども、我が党でも議連を立ち上げて、国酒を推進しようということを今進めております。

 私が先ほど申し上げたように在米大で議会を担当していたときに、たしかアイルランドの大使館がアメリカ議会の近くのバーを貸し切ってアイルランド・モルトウイスキーの試飲会というのをやっていて、若い議会スタッフが詰めかけて大変盛況だったのを見たことがあります。

 外務省には、在外公館でのレセプション等では日本酒で乾杯することはもちろんのこと、在外公館には高級ワインがたくさんあるということが言われておりますけれども、おいしい日本酒もぜひ常備をしていただいて、試飲会などのイベントも積極的に行っていただきたいというふうに思います。既に外務省としてはさまざまな取り組みをいただいているというふうに聞いておりますけれども、国酒推進に向けた外務省としての取り組みについて御説明いただきたいと思います。

越川政府参考人 ただいま先生から御指摘あったように、国酒については積極的に外務省としてプロモーションを行っております。

 日本酒の魅力を世界各国に伝えるため、在外公館長の公邸における会食での日本酒の提供、あるいは天皇陛下の天皇誕生日祝賀レセプション等の大規模行事での日本酒での乾杯、こういうものを奨励してございます。日本酒を積極的にアピールして、参加者からも非常に高い評価を得ているところでございます。

 さらに、在外公館を活用しながら、日本酒の、先ほどお話ありましたけれども、試飲会等のPRイベントあるいは説明会等も実施してございます。特に東日本大震災後は被災地産の日本酒に対する風評被害等がございますので、その払拭のためにも、日本酒を含む日本産品の安全性を直接知ってもらうために、被災地産品あるいは被災地のお酒を提供する機会も設けてございます。

 先生の御指摘も踏まえまして、今後とも、外務省として、海外での日本酒告知のPR活動に積極的に対応していきたいというふうに思っております。

大西(健)分科員 今、大臣みずから手を挙げてお答えをいただこうという積極姿勢を見せていただきましたので、ぜひとも大臣、先頭に立って、日本酒推進、広島にも恐らくおいしいお酒があるというふうに思いますので、お願いしたいというふうに思います。

 さて、先日、自民党の石原宏高衆議院議員が昨年の総選挙で大手遊技機器メーカーの社員に選挙運動をさせていたということが公職選挙法違反に当たるのではないかという報道がありました。また、石原議員の親族会社がその会社とコンサルティング契約を結んで、多額の報酬を受け取っていたということも報じられております。

 この遊技機器メーカー、フィリピンでのカジノリゾート開発をめぐって、カジノ免許を発行するフィリピン賭博公社高官らに接待を行ったということが賄賂に当たるのではないかということで、フィリピンの国家警察捜査局が調査をしている、また、フィリピンの議会でも取り上げられているということがロイター通信等でも報じられております。地元メディアの報道ぶりや、捜査当局、議会の動向について、本省にどのような報告が上がっているか、お伺いをしたいと思います。

 私も大使館におりましたけれども、日本の企業がその国の議会で問題になっている、あるいは地元メディアで大きく取り上げられているということになれば、当然、情報収集をして、公電で本省に報告しているはずだというふうに思いますが、いかがでしょうか。

山野内政府参考人 お答え申し上げます。

 フィリピンにおいては、マニラ湾沿いに建設予定の大型カジノ施設、エンターテインメントシティーと呼ぶらしいですが、それをめぐって疑惑が報じられております。

 報道によれば、その運営許可の取得、さらには法人税免税の優遇措置を目的として、日本の企業ユニバーサルエンターテインメント社からフィリピンの娯楽ゲーム公社幹部に対して、マカオでの総額十一万ドルに及ぶ接待、あるいは、米国、香港の子会社を経由した不明朗な巨額送金等があるというふうに報じられております。こうした疑惑の報道に関して、フィリピン捜査当局が既に捜査を開始したという報道もございます。

 さらに、議会での動きでございますけれども、上院では、疑惑を明らかにすべきということで決議が提出されております。下院では、複数の委員会において疑惑の解明に向けた関係者からの聴取等が行われているというふうに承知しております。

 さらに、米国の連邦捜査局、FBIも調査に乗り出しているという報道も承知しております。

 あと、在フィリピンの日本大使館がどういう状況かということでございますけれども、現地の報道などを随時フォローしております。

 ただ、本件は既にフィリピンの捜査当局による個別の刑事事件にかかわるということでございますので、日本政府としてこれ以上のコメントをすることは控えさせていただきたいと思います。

大西(健)分科員 ありがとうございます。

 私の予想よりも詳しく御答弁をいただいたというふうに思っております。また必要であれば、ぜひ現地の情報についてもお尋ねをさせていただきたいというふうに思います。

 次に、報道によりますと、外務省から出向中の加賀美内閣情報調査室参事官が自殺をされたということが報じられております。まずは御冥福をお祈りしたいというふうに思います。

 参事官は、外務省においても国際情報官を務められていたインテリジェンスコミュニティーの一員だというふうに思っておりますけれども、そういう方が亡くなった場合には、何か仕事上のトラブルがあったんじゃないかという臆測がどうしても出るところでありますけれども、この点について、外務省から御説明をいただきたいというふうに思います。

越川政府参考人 ただいま先生から御質問のありました加賀美正人君の死因等、その具体的状況につきましては、個人のプライバシーにかかわることでございまして、お答えを差し控えさせていただきたいと思いますが、出向先の内閣情報調査室からは、現時点において、個人の死去に業務が関係していたということを示すような事実は把握していないというふうに伺っております。

大西(健)分科員 確かに、プライバシーにかかわることですから、なかなかお答えにくいというふうに思います。

 ただ、もう一点気になるのは、加賀美参事官については、長期欠勤していることについて、平成二十年の一月に鈴木宗男議員から質問主意書が出ておりまして、私はこれを読ませていただきましたけれども、北方四島訪問団に同行した際に「鈴木宗男衆議院議員から加賀美氏が殴打されたという事実はあるか。」との質問に対して、「外務省としては、御指摘の事実があったと考えている。」という答弁書を提出されていますけれども、このことと加賀美参事官の自殺には関係ありますか。

越川政府参考人 御質問についての関係について、私は承知してございません。

大西(健)分科員 閣議決定されている質問主意書の答弁書に書いてありますので、この関係というのは今すぐお聞きしてもお答えいただけないかもしれませんけれども、私も非常に気になるところでありますので、また後刻、もしわかれば教えていただきたいというふうに思います。

 最後に、外務省は、当然のことですけれども、海外出張することが多いと思います。そこで、飛行機を利用する場合のマイレージについてお尋ねをしたいというふうに思います。

 これはほかの省庁も一緒のことでありますけれども、外務省では、公用マイレージを私的なものと明確に区別をして、公費節減の観点から有効活用することとしているというふうにお聞きをしました。

 一つのエアラインでは、日本の例えばJALさんとかANAさんとかですね、一枚しかマイレージカードというのは発行してもらえないというふうに聞いておりますけれども、この公用マイレージを私的マイレージと明確に区別するというのはどのような管理をしておられるのか、また、公費節減の観点から有効活用するというのは具体的にはどのようなことをしておられるのかについて、御説明をいただければと思います。

越川政府参考人 先生御指摘のマイレージに関しましては、御案内のとおり、平成二十一年一月一日より以降の出張について、公用マイレージ制度を適用してございます。

 具体的には、対象者ごとに公用マイレージカードを作成して、マイレージポイントを蓄積、活用してきているということで、これはグループごとに、ワンワールド、スターアライアンス、スカイチームというのがございますので、こういうチームを活用して公用マイレージを取得しているということでございます。このようなマイレージを利用しまして、無料航空券の取得、あるいは旅費法で定められた範囲内でのアップグレード得点の取得等を行ってございます。

 それから、どのように管理かという点につきましては、公用マイレージの管理は、国民の信頼確保の観点から、私的なマイレージとしっかり区別して管理をしてございます。出張等につきましても、公用マイレージにつきましては、どれだけポイントが残っているかというのを、本人だけではなく、各担当課の方でも把握しているところでございます。

大西(健)分科員 私も御説明をお伺いして、想像以上に大変しっかりと管理をされているなというふうに感心をしました。ぜひ、またそこのところは襟を正してやっていただきたいというふうに思います。

 きょうは、最初に申し上げましたように、余り大所高所の外交政策ではなくて、ふだんなかなかお聞きしにくいことについてお聞きをさせていただくことができたというふうに思います。

 大臣初め皆さんには真摯な御答弁をいただいたことを感謝申し上げまして、少し早いですけれども、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

伊藤(信)主査代理 これにて大西健介君の質疑は終了いたしました。

    〔伊藤(信)主査代理退席、主査着席〕

伊藤主査 次に、今村洋史君。

今村(洋)分科員 日本維新の会の今村でございます。きょうはよろしくお願いいたします。

 では、まず、日米地位協定に基づく東京都内の米軍基地問題についてお聞きいたします。

 まずは、日本国内の在日米軍施設・区域については、一層の整理縮小、返還がなされるべきであり、特に、首都圏に存在する多摩サービス補助施設や赤坂プレスセンターについては早期の返還が求められるべきというふうに考えておりますけれども、そのこともお聞きしつつ、私が述べたいことは、アジア太平洋地域の安全保障に日米安保は欠かさざるべきものというふうに考えますけれども、一方、防衛上の必要性、地域への影響の視点から、基地の整理縮小、返還も検討されるべきだというふうに思います。

 特に、多摩サービス補助施設は、中身はゴルフ場やキャンプ場、約六十万坪という広大な敷地が、多摩市、それから、あちら側だから鎌倉街道の方へ向かって、大きな山林といいますか、丘陵を占めているわけですけれども、そういうところこそ都民のために開かれて活用されるべきだろうというふうに思います。時々、都民を招いて、キャンプ場を何か使える時期もあるやに聞いておりますけれども、在日アメリカ軍がゴルフ場を有しているとか、軍属軍人家族のためにそういったところを、日本のそれも広大な敷地を首都に属する地域において占められているというのはいかがなものかというふうに考えております。

 それともう一つ、もっと、これはもう首都そのものというか、都心にある赤坂プレスセンター、これが八千百六十二坪あります。これも一部返還されましたが、約二年間、その返還された部分が放置といいますか、置かれたままになっており、ようやく、このところ、都の方へ返還、防衛省から、今どこへ移ったんですかね、所管が移ってという話になっております。

 それと、最も大きな問題として横田基地があります。横田基地は日本の航空主権を、管制を大きく奪っておりまして、羽田に行き来する民間航空機が大きく迂回せざるを得ないというような状況に至っております。

 こういったことも羽田のハブ空港化への阻害の一要因というふうになっておると思いますし、もしここが軍と民間と少なくとも共用ということになれば、アクセスはJRの八高線であるとか都市モノレール、そういったところが近接しておりますし、何より大都市圏といいますか、新宿から約三十キロメートル、それと高速道路としては圏央道、中央道、そういったところが近接しておりますし、そういう利用を含めますと、北関東からの需要も見込まれるというふうになっております。

 ただ、先ほど空域についても、一部返還なされましたけれども、これもほんのわずかの空間が戻ってきただけで、相変わらず、羽田に行き来する航空路としては隘路、狭い道だというふうになっており、依然として大きな壁が、見えない壁が航空機にとって立ちはだかっているということには変わりがありません。

 米国は、日本に対して、首都圏に大きな空間、土地、赤坂も含めて占めておるわけですけれども、この必須な理由というものを、米国に対して、米軍に対してはっきりさせたいというふうに私は思っておりますが、実のところは、さしたる理由がない。横田基地にしても兵たん基地であるということで、必ずしも米軍にとって必須なものではないのではないか。これは米軍に聞くと、必須である、そこは必要である、安保上も必要であるという話になると思いますけれども、実は日本に対しての首根っこを押さえておくといったような意味合いが強いのではないかというふうに考えております。

 私がこの問題についていろいろ調べた限りにおいては、敗戦後、あれはニューヨーク・タイムズでしたか、におきまして、我が党の代表の石原慎太郎が述べておりますとおり、この醜い怪物の牙を抜いて解体してしまうまでは我々は安心できない、ドイツとは違うといったような社説が堂々と載っておったようです。これに基づくと、その怪物たる日本の首根っこを押さえておくために、都心の赤坂であるとか、あとは首都そのものの広大な土地を占める横田、多摩、そういったところに、首根っこを押さえておくという意味で相変わらず基地を置いているのではないかというふうに考えるところです。

 米軍の高官の言葉に、横田は太平洋戦争、これは私どもにとって大東亜戦争ですけれども、太平洋戦争の遺産だ、我々の戦利品だという言い方であるとか、あとは、二〇〇五年に返還計画の中で、これはもう名前もはっきりしていますけれども、アメリカのリチャード・ローレス国防副次官が、再編計画がまとまったときに、日本側がこれは中間報告である、この先があるというふうな表現をしたところ、その先はない、つまりこれ以上の進展はないと。その中間報告と言われるものの骨子という中に、横田基地に府中の航空自衛隊航空司令部を移し、日米の共同統合運用調整所を設ける、これは実際にそういうふうに近年なりましたけれども、これ以上の進展がないとアメリカ側は言っておるわけです。

 そういったことも踏まえて、これは、外務省においては、この地位協定に基づいた在日米軍基地といったものをどういうふうにお考えになっているのか、お聞かせください。

伊原政府参考人 在日米軍の施設・区域、特にその返還、統合につきましては、政府といたしましては、地元からの要望等を勘案しつつ、これまで取り組んでまいりました。首都圏におきましても、これまで統合計画を進めて、その結果として現在都内の施設・区域については八つの施設・区域に集約されてきているということでございます。

 今先生から御指摘がありました赤坂プレスセンター、それから多摩サービス補助施設でございますけれども、まず赤坂プレスセンターについては、今先生からも御指摘があったとおり、一昨年、一部の土地が返還されたということでございますが、この施設は、在日米軍にとって、都心における唯一の人員輸送の拠点としての重要性を持っておりまして、そういう意味で、この施設の全面的な返還は困難だというふうに考えております。それから、多摩サービス補助施設につきましては、これは米軍人等の保養のための福利厚生施設として重要な役割を果たしているというふうに承知をしております。

 私どもとしては、今後とも、日米安保体制の目的の達成という観点を踏まえながら、個々の施設・区域の実情を踏まえて適切な対応を行っていきたいというふうに考えております。

 それから、横田飛行場についてでございますけれども、この軍民共用化については、これまでも外務省としては、官邸その他関係省庁とよく連携をとりながら、日米間のスタディーグループを開催するなど、さまざまな議論を行ってきたところでございます。

 横田飛行場については、平時においては、言っても余り戦闘部隊は置いていないじゃないかとか、閑散としているというふうな御指摘はありますけれども、米軍にとっては、まず、今先生も御指摘あったように、在日米軍司令部などが置かれているという意味での主要基地であるとともに、平時から輸送拠点として使用されておりまして、特に有事においては極東地域全体の兵たん基地となるというふうに想定されている重要な施設だというふうに理解をしております。

 したがいまして、現状としては、アメリカ政府からは、横田飛行場の返還あるいは軍民共用化については大変難しいという厳しい反応が示されているところでございます。

 本件については、日米双方に受け入れ可能な形で進めるために、さらに調整が必要だというふうに考えておりまして、今後の進め方につきましては、引き続き、官邸それから関係省庁と相談しながらよく連携をとってやってまいりたいというふうに考えております。

今村(洋)分科員 外務省におかれては、以前、前国防総省日本部長のポール・ジアラに対して、横田基地問題は日本としては関心事ではないというふうにお答えになったというかそういう話が伝わって、我が党の石原慎太郎が民主党の前原誠司に対してどういうつもりだというふうに問い詰めたやに聞いておりますけれども、外務省の方は、そういった事実があるのかどうか。

 あと、今おっしゃったように、米軍側が難色を示しているからこれ以上この問題は進展しないというところで、終わらないとは思いますけれども、どのようにお考えになっているか、もう一度お聞かせください。

伊原政府参考人 私どもの立場は、先ほど申し上げたとおり、この横田の共用化につきましては日米双方に受け入れ可能な形で進める必要があるということで、引き続き、その進め方について官邸や関係省庁とよく連携をして、相談しながらやっていきたいというのが私どもの立場でございます。

今村(洋)分科員 では、実際に横田基地があることによって東京都民がどれほどいろいろな迷惑といいますか、そういったものをこうむっているか。これは沖縄の問題と通底するところがあって、我々国民は、自国の防衛軍であれば許容できるところを、やはり自国ではない軍隊というものが駐留することにおいての不満といったものも、これは現実に感情の問題としてあるんだろうというふうに考えております。

 そこで、いろいろな問題がある中に、基地周辺住民の生活環境の保全や安全確保の観点から日本政府としてしかるべき対策がとれるよう、在日米軍施設・区域に対しても日本の関連法令を適用できる旨を日米地位協定にも明記すべきと考えるが、このことについてお答えください。

岸田国務大臣 日米地位協定につきましては、これまでも運用において改善が図られているわけですが、まず、現実的、具体的な運用の改善を積み重ねることが重要だと考えております。

 具体的には、例えば、事件、事故の防止であるならば、米側は、新たな勤務時間外行動の指針を導入したと承知しております。実効性が重要であり、引き続き協議を重ね、積極的に取り組んでいかなければいけないと思っています。

 また、騒音につきましては、航空機騒音規制に関する日米合同委員会合意の遵守を繰り返し求めてきております。

 そして、環境に関しましても、日米の関連法令のうち、より厳しい基準を選択するとの基本的考えのもとに作成される日本環境管理基準、JEGSに従って適切な措置がとられるよう働きかけております。

 要は、実効性が重要であるということで、地位協定につきましては運用改善を積み重ねているわけですが、引き続き、この環境の問題も含めまして、一つ一つの問題をこうした形で解決していくべく、最大限努力をしていくというのが基本的な考え方でございます。

今村(洋)分科員 今、大臣は実効性が大切と、確かにそのとおりでございますけれども、現に横田基地の滑走路延長上にある地域において、これは三カ所、八王子市、瑞穂町、昭島市といったところにおいて既定の騒音を超えているという事実がございます。

 このことが改善はこの数年間にわたってされておらないんですけれども、実効性というところから鑑みてどのようにお考えになるのか、お聞かせください。

岸田国務大臣 地元の皆様方がどのように受けとめておられるのか、こうした苦情につきましては大変重たく受けとめなければならないと存じます。

 こうした声に真摯に耳を傾けながら、どうあるべきなのか、日米合同委員会等、さまざまな場で、我が国としても地元の声をしっかりと踏まえて議論していかなければいけない、協議をしていかなければいけない、引き続き努力していかなければいけない課題だと思っています。

今村(洋)分科員 わかりました。

 例えば、赤坂プレスセンターの一部返還された土地について、約二年間置いておったわけですけれども、よくある話で、返還された土地にPCBなどの有害物質が土壌に含まれているという話が聞かれます。

 赤坂プレスセンターの返還されたところは公園に附属しておるものですから、そのまま公園として緑化して用いられるやに聞いております。土地の土壌とかそういったことは非常に大きな問題だと思いますが、その辺のところはお調べになったんでしょうか。所管の官庁からお答えください。

前田政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘の赤坂プレスセンターの一部土地につきましては、平成二十三年の七月に米側から日本側に返還をされてございます。その後、防衛省の方で一旦預かりまして、返還地内に残置をされていたガソリンスタンド等の工作物の撤去工事といったものを実施しております。

 それからもう一つは、今先生御指摘がありましたが、土壌汚染調査というものも、これは平成二十三年度に実施をいたしております。

 これらを終えた上で、平成二十五年の二月に財務省に引き渡しを行ったというところでございます。

今村(洋)分科員 では、調査されて、土壌は改良を要したわけですか。そこをお聞かせください。

前田政府参考人 お答えいたします。

 土壌汚染調査の実施を行いまして、問題がないということで財務省の方に引き渡しをしたというふうに承知をしております。

今村(洋)分科員 わかりました。では、早急に、そこは返還された土地ですから、都民のために有効利用、そういうふうにしていただきたいというふうに思います。

 基地周辺の生活環境の保全及び安全の確保という観点から、大気汚染防止法、水質汚濁防止法、廃棄物の処理及び清掃に関する法律、ダイオキシン類対策特別措置法、こういった国内法令を施設及び区域に適用する旨を日米地位協定上明記するということは、今はなされていないと思いますが、それは可能なんでしょうか。

伊原政府参考人 先ほども岸田大臣の方から答弁申し上げましたとおり、環境にかかわる問題につきましては、日米間においては、二〇〇〇年九月の2プラス2におきまして、環境原則に関する共同発表というのを出しております。

 これは、環境保護の重要性が高まっているという共通の認識のもとに、この共同発表におきましては、在日米軍による環境保護及び安全のための取り組みとして、日米の関係法令のうち、より厳しい基準を選択するという基本的考えのもとに日本環境管理基準、JEGSというのを作成して、これを更新してきております。

 今は二〇一二年版のJEGSというのが公表されて、米側はこれに従って環境への取り組みをしているということでございます。

 それから、政府といたしましては、これまでも在日米軍施設・区域における環境問題について、必要に応じて日米合同委員会、あるいはその下に分科会として環境分科委員会というのを設けておりますので、こういった枠組みを通じて協議し、必要な対処をしてきているところでございます。

 引き続き米側に対して、環境保護及び安全の取り組みについては適切に米側が実施するように働きかけていきたいというふうに考えております。

今村(洋)分科員 現実に、平成五年には一万八千ガロンの燃料漏れ、それから平成十九年には千四百八十ガロンの燃料漏れ等々、平成十一年から平成十八年の間に約九十件の有害物質漏れ等があります。

 こうした事故や汚染物質の排出は、周辺住民の生命、健康に重大な影響を与える可能性があるため、具体的な情報提供や適切な環境対策を講じる必要があるというふうに考えますけれども、この点については、今おっしゃった法案といいますか、覚書によってなされているんでしょうか。お願いします。

伊原政府参考人 今先生御指摘の個別の事案について詳細な情報を私持っておりませんけれども、いずれにしましても、こういった米軍の基地に関連します環境問題につきましては、合同委員会の場等を通じまして、今後とも適切に対処していきたいというふうに思っております。

今村(洋)分科員 昨今、中国で鳥インフルエンザが発生しております。

 合同委員会への覚書という中に、これは二〇一三年一月二十四日ですから、ことしの一月二十四日なんですけれども、件名は「在日米軍と日本国の衛生当局間における情報交換について」という文書があります。

 この中に、「2.」として、「日本国政府及び合衆国政府は、参照1.a.及び1.b.に含まれた取決めの成立以降の感染症に関する状況の変化を反映するため、前記の取決めを次のとおり改めることを決定した。」という中に「a. 日本国政府及び合衆国政府は、在日米軍の各病院又は各動物診療所の指揮官及び当該病院又は動物診療所が所在する地域を管轄する日本国の保健所長が、この覚書の別添1に特定する感染症につき、相互に通報することを確保する。当該通報は、この覚書の別添1に特定する手続に従って行われる。この覚書の別添1の修正が必要となった場合には、いずれの政府も、当該修正を合同委員会に対して提案し、その承認を求めることができる。」等々ありますけれども、この中に鳥インフルエンザという項目が当然感染症として挙げられておりまして、その鳥インフルエンザ、H5N1、つまりA属インフルエンザAウイルスということになると疑似症患者についても速やかに通報するというふうになっております。

 今、日本の空港においてもサーモグラフィー等々によって発熱した患者さんというものをチェックしておるわけですけれども、在日米軍において、これは特に横田、そういったところは出入りが自由なわけですから、そういったところから入ってくる人たち、出ていく人たちに関して、出ていくのは心配ないかもしれませんけれども、入ってくる人間に対して感染症のチェックというものがどのように行われているのか、それを把握されているのか、お聞かせください。

高島政府参考人 基地周辺におきまして感染症の発生それから蔓延を防止するために日米が協力することは大変重要なことだと思っております。

 今委員御指摘のように、ことし一月に見直しをしたところですが、昭和四十一年に日米合同委員会の覚書の中で、日米地位協定に基づきまして在日米軍側と覚書を結んでおります。それは二十六種類の感染症について患者などの情報を交換するということと、広範な防疫措置が必要となった場合には在日米軍の病院と管轄の保健所が密接に協力して必要な措置をとることということで運用してまいりました。

 先ほどありましたように、一月に見直しをいたしまして、最近の感染症の発生状況とか関連制度の見直しなどを踏まえまして、対象とする疾患につきまして倍以上にふやしたところであります。

 基本的には国内の措置と同じようにするということで、感染症法で直ちに報告をするよう国内で義務づけている感染症、これにつきまして、米軍の方としても同様の取り組みを含めまして相互に情報交換する対象としております。広域的措置が必要となった場合にはお互いに情報交換しながら、話をしながら当該必要な措置をとっていくということにしております。

 今後とも、協力をしながら基地周辺の感染症対策にしっかり取り組んでまいりたい、このように考えております。

今村(洋)分科員 わかりました。

 パンデミック、爆発的に感染症が広がるという可能性も否定できない、人から人へうつるということも可能性としてはあり得るとWHOが発表したばかりですから、その件について合同委員会等できちんと在日米軍の方へ促すという形で取り上げていただきたいというふうに考えます。

 最後に、私、先ほど申し上げましたように、在日米軍と特に都心部における赤坂プレスセンター、そういったところに土地が、土地がというか、占拠された状態というのは、しつこく申し上げますが、やはり米軍の日本へ対する、首根っこを押さえておきたいという思いの発露の結果が、いまだに返還がなされぬ、それと、中間報告と日本側が主張したことに対して、これは最終的な文書であるといったようなことを米軍側が主張するという事態になっておるものと思います。

 究極的には、自分の国は自分で守る、安保条約はもちろん大切ですけれども、自分の力で自立した日本になるためには、やはりそういったところに他国の軍隊が駐留するといったことを何とか努力してそれを退けていくといったような意思が必要じゃないかと考えております。

 最後に、その件について、大臣が来られていますので、お気持ちといいますか感想をお聞かせいただければというふうに思います。

岸田国務大臣 在日米軍の施設・区域の整理とか縮小とか返還、こういったことにつきましては、今後とも、我が国としてしっかり実態を把握した上で、日米双方で受け入れ可能な形で進めるための調整を行っていく必要があると考えています。

 今後とも、その進め方につきまして、引き続き官邸ですとか関係省庁とも相談しつつ、連携して進めていくべき課題だと認識をしています。

今村(洋)分科員 何とぞ、この国のために、この国の自立のためによろしくお願いいたします。

 これで質問を終わります。

伊藤主査 これにて今村洋史君の質疑は終了いたしました。

 次に、椎名毅君。

椎名分科員 みんなの党の椎名毅でございます。

 昨年の十二月の総選挙におきまして、比例南関東ブロックから初めて議席を賜ることができました。本日は、予算委員会の分科会ということで、外務省関係に関して質疑を行う機会を頂戴いたしました。まことに感謝を申し上げたいというふうに存じております。新人でなれないところもございましょうけれども、何とぞ御容赦いただければというふうに思っております。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 早速ですが、質問に入ってまいりたいと思っております。

 本日は、ポスト冷戦期の後の、ポスト・ポスト冷戦期という表現をする人もいるかと思いますけれども、このポスト冷戦期の後の外交戦略、特に安倍政権の外交戦略について質問をしてまいりたいというふうに考えております。

 日本の今後三十年それから五十年の国家のあり方、それから立ち位置といったものを考えていくに当たって、国の外交戦略ということをきちんと定めていくということ、それ自体は非常に重要なことなんだろうというふうに私自身は認識しております。

 冷戦期において、国力の全てを第二次世界大戦後の経済復興に当てている、国防は米国に担わせるといういわゆる吉田ドクトリンという基本的な考え方をベースに、日本の外交戦略というものが築き上げられてきたんだろうというふうに考えています。こういった意味で、米国にバンドワゴンをし、そして安全保障よりも経済に重きを置いた外交戦略というものをとってきたというのが今までの日本だったと思います。

 しかし、二十年前、一九八〇年代後半から九〇年代の前半にかけて冷戦が終結して以降、日本を取り巻く国際情勢というのは非常に変化をしているんだというふうに認識をしております。

 米ソ二極対立というところから、米国一国の、唯一の超大国という形で呼ばれていたかと思いますけれども、米国の世界に対する一極支配という考え方、それに対して、米国に挑戦する国々の台頭、それから地域の統合といったようなものが行われて多極化する、こういった流れがそれぞれあったかというふうに思います。

 それからさらに、近時には、非国家主体である例えばアルカイダであるとか、そういったような非国家主体の存在というのも国際関係に関して与える影響力というのが非常に大きくなってきておるところでございますし、冷戦期直後には余り大きな影響力を及ぼしていなかったような国々、中国やら東南アジアの国々やら、こういった国々が影響力を大きくしてきているというような形で、また世界情勢が変化しているんだろうという形で思っております。

 こんな中で、日本の外交戦略的な、それから安全保障戦略的な立ち位置が何かわかりづらいような状況になっているのではないかなというところで、改めて、この安倍政権の外交、安全保障に関する戦略を伺っていければというふうに思っております。

 まず、安倍総理が、就任直後の昨年の十二月の二十七日付で、国際NPO団体のプロジェクトシンジケートというところに対して投稿した論文に、「アジアズ・デモクラティック・セキュリティー・ダイヤモンド」というのがございますが、まず、外務大臣、この論文の存在は御存じでいらっしゃるでしょうか。そして、これを読まれていらっしゃるでしょうか。

岸田国務大臣 お尋ねの論文、安倍総理が総理就任前に寄稿された論文だと承知しております。

 この論文について、概略を読ませていただきました。

椎名分科員 編集の準備その他もろもろ、いろいろ考えたとしても、恐らく、選挙直前から選挙直後ぐらいに寄稿されたというレベル感ではなかろうかというふうに思います。

 これを、選挙直前から直後にかけて大変お忙しい中、安倍総理が寄稿されたということなんでしょうか。それとも、外務省の方々が下書きをして、安倍総理の名前で寄稿されたということなんでしょうか。教えていただければと思います。

山崎政府参考人 お答え申し上げます。

 今大臣から説明申し上げましたとおり、この寄稿は十二月二十六日に提出されたというふうに承知しております。

 この時期は安倍総理はまだ御就任前でございますので、外務省といたしましては、この提出に当たっては関与はしておりません。

椎名分科員 わかりました。ありがとうございます。

 この論文におきましては、そうしますと、安倍総理がみずから寄稿されたということなんでしょうね。

 この論文におきましては、明示的に、中国を名指しで脅威というふうに指摘しているように読むことができます。

 南シナ海が北京の湖になっていくかのように見えます、オホーツク海がソ連の内海になったように、同じく南シナ海も中国の内海となるだろう、南シナ海は、核弾頭搭載ミサイルを発射可能な中国海軍の原潜が基地とするに十分な深さがあり、間もなく中国海軍の新型空母がよく見かけられるようになるだろう、中国の隣国を恐れさせるに十分であると。

 これこそ、中国政府が東シナ海の尖閣諸島周辺で毎日繰り返す演習に日本が屈してはならない理由であるというようなことを指摘した上で、もし日本が屈すれば、南シナ海はさらに要塞化されるであろう、こういった中で、日本は成熟した海洋民主国家であって、その親密なパートナーもこの事実を反映すべきである、私が描く戦略については、オーストラリア、インド、日本、米国ハワイによって、インド洋地域から西太平洋に広がる海洋権益を保護するダイヤモンドを形成することにあるというようなことが書かれているわけでございます。

 まさに、中国に対する安全保障上の包囲網のように見えているわけでございます。こういった考えを総理は寄稿されているわけでございます。

 外務省が関与されていないということでございますが、安倍政権の外交戦略そのものをつかさどるような、そういった考えなのだというふうに理解をしてよろしいんでしょうか。こういった考えに基づいて、我が国の外交方針それから今後の安全保障戦略について策定されていく御予定なんでしょうか。お答えいただければと思います。

岸田国務大臣 お尋ねの論文ですが、先ほども申し上げましたように、安倍総理が総理就任前に寄稿されたものであります。ですから、内容的にもちろん重なる部分がありますが、あくまでも政府の外交方針は、就任後、累次の演説等で示しているとおりございます。

 その上で申し上げれば、緊密な日米関係を基軸として、豪州、インド、ASEAN諸国などの海洋アジア諸国との連携を深めていくといった点については、安倍総理の施政方針演説でも述べられているとおりでございます。こうした考えを踏まえまして、二国間のみならず、アジア太平洋地域における日米印あるいは日米豪といった三国間の関係ですとか、東アジア首脳会議あるいはASEAN地域フォーラム、こういった多国間の枠組みも活用した外交を展開していく、これが我が政府の基本的な外交方針であります。

椎名分科員 ありがとうございます。

 まさに、累次の演説等でということでございました。多国間の枠組みを活用していくということでございましたので、引き続き、その累次の演説についてお話をさせていただきたいと思います。

 特に、一月の十八日の首相官邸のホームページに掲載されているものとして、「開かれた、海の恵み 日本外交の新たな五原則」という構想が発表されております。これ自体も、今、岸田外務大臣がおっしゃったようなところと十分に重なる部分がある、安倍総理の大きな外交方針をつかさどっているものなのではなかろうかというふうに考えております。

 本来的に、インドネシア御訪問のときにジャカルタで発表予定であったというふうに仄聞しておりますけれども、あのアルジェリアの人質の事件、不幸な事件がございまして、発表することができなかったということでございます。明らかにこれは内閣総理大臣としてのものでございまして、我が国の外交方針それから外交原則を公式に表明したものだというふうに理解しております。

 そうした上で、この五原則というものについて改めて伺っていきます。多国間の枠組みというところについては後ほど伺わせていただきたいと思います。まず、その背景となる日本の外交に関する戦略的な考え方という意味で、ここでおっしゃっております外交の五原則とおっしゃるものについて伺っていきたいということでございます。

 まず第一に、人類の普遍的価値である思想、表現、言論の自由、それから法とルールの支配、さらには第三に自由でオープンな経済、そして文化のつながり、第五に未来を担う世代間の交流というところについて原則的に強調していくということでございます。

 先ほどの総理論文でもございましたけれども、日本外交は民主主義、法の支配、人権尊重に根差しているべきである、さらには、アジア太平洋地域における将来の繁栄もこれらの価値の上にあるべきであると確信しているというふうにおっしゃっております。まさに同じような考え方ということだと思います。この外交の五原則というのは、まさに原則と言っているからには、全ての日本の外交政策をつかさどる大きな基本的な指針になっているというふうに理解しております。

 そういう意味で、対中国というところについて伺わせていただきたいんです。

 そして、ここで外務大臣にお伺いしますが、この五原則との関係で、中国はどのように位置づけられているというふうに外務省の中で認識しているんでしょうか。この第一、第二、そして第三、第四、第五について、その要件をきちんと充足しているかどうか、それからこの要件についてどの程度の状況にあるか、そういったところについてどういう分析をしており、中国についてどのような認識をされていらっしゃるんでしょうか。

岸田国務大臣 まず、先ほどの論文と御指摘の外交五原則、これは先ほど申し上げたように直接関係するものではありません。そして、これは、中国を初め特定の国を牽制するとか、特定の国を想定してこうした原則が打ち出されたものではないと考えております。

 緊密な日米関係を基軸として、ASEAN諸国などの海洋アジア諸国との連携を深めていくという点については、論文と外交五原則、これは共通する部分がある、このようにも考えています。

 いずれにしても、こうした原則を踏まえて外交を、二国間だけではなくして、世界全体を俯瞰する視点で戦略的に展開していく必要があると考えています。こうした戦略的な外交展開においてこの普遍的価値がより広く世界で共有されるよう、これらの価値を共有する国々と協力を強化していくとか、あるいは法とルールの支配の強化の重要性を機会あるごとに強調するなど、この外交五原則を積極的に推進していくというのが政府の基本的な考え方です。

椎名分科員 ありがとうございます。

 原則とおっしゃっている割には、基本的には特定の国についてターゲットにしているわけではないということでございました。

 私自身も、戦略コンサルタントという仕事をしておりましたので、戦略それから原則というものがどういった意味で組織体をつかさどる形になっていくのかというのは、少しは理解をしているつもりでございます。そうしますと、どうもこの原則というものが、特定の国との関係で一対一対応できちんと分析されているわけではなく、より広い意味でお題目として挙げているだけという状況にいまいちぴんとこないところが正直ございます。

 もちろん、外交的に見て、特定の国を名指しで脅威であるという表現をすることができないのは理解はしているつもりでございますので、政治的に言えないという話と内部的に分析をしているという話は決してイコールではないはずだというふうに私自身は理解をしています。

 政治的に言えないだけであれば、別に私自身は特段問題視をするつもりもないんですけれども、ただ単に原則というものを挙げた上で、この原則に沿っている国についてどういう対応をする、沿っていない国についてどう対応をするというところが明確に定められていないのであれば、やはりちょっとぴんとこないというのが正直なところでございます。

 そういった意味で、もう少し深く伺いたいんですけれども、内部的には、この一原則、二原則、三原則、四原則といったところについてきちんと分析した上で、これこれの国はこういう立ち位置である、この原則から考えてこういう立ち位置にある、だから、我が国の戦略的な関係としてはこういう戦略をとるべきであるみたいな割り振りというのを内部的にしているんでしょうか。

岸田国務大臣 こうした原則をしっかり明らかにして外交に臨むということ、まずこれは大切なことだと思っています。

 ただ、一方で、委員も先ほど御指摘になられましたように、このアジア太平洋地域を含む国際情勢は刻々と変化をしています。そして、地域においてもさまざまな動きが発生をしています。

 こうした現実を前にして、原則は大事にしながら、我が国として、その原則に基づいて、個々の国との関係、あるいは地域においてどういった対応を行っていくのか、これは、現実的に、そして戦略的に、したたかに考えていかなければいけない、これは当然のことだと思っています。この原則を大事にしながらも、こうした戦略的な外交を進めていく、こういった姿勢はこれからもぜひ大事にしていきたいと考えています。

椎名分科員 済みません、ありがとうございます。

 言葉の問題で遊んでいるつもりはないんですけれども、ちょっとごめんなさい、大臣のおっしゃっていることが、いまいち、わかったようでわからないので、教えていただければと思います。

 そこでおっしゃっているその戦略的外交というものと原則の関係というのはどういう関係にあるのかということと、そこでおっしゃっている戦略的ということの意味はどういった意味なのか、教えていただければと思います。

岸田国務大臣 まず、この原則につきましては、我が国の外交方針としてこうした方針で臨みたい、これを国際社会にしっかりと明らかにすることによって我が国の外交姿勢に対する理解を求める、そして、我が国の立場ですとか戦略環境の中で置かれている状況、こういったものをしっかり理解してもらう、こうしたことで大事だというふうに思っています。

 そして、戦略的と申し上げたのは、先ほど言ったように、状況が刻々と変化していく、そして、地域の中にあっても、二国間のみならず、やはり多国間、三国間、さまざまな組み合わせの中にあって我々は国益を守っていかなければなりません。国民の生命財産、安心、安全を守り、そして国益を守るためにどのような外交を展開していくのか、この現実の対応について戦略的な外交というふうに申し上げた次第であります。

 とりあえず、説明としては以上です。

椎名分科員 ありがとうございます。

 済みません、つまらない質問だったら大変恐縮でございます。

 私自身も戦略コンサルタントというものを仕事としてやっておりまして、戦略というのは、企業の動き方そのものをつかさどる大きな大きな方向性のようなものだというふうに思っております。この方向性をディテールに落とし込んでいき、そして企業の各部署の動き方というものが規律されていく、一番基礎的な考え方だというふうに理解をしています。そして、この戦略に基づいて落とされた各部署の計画、プランといったものに従って、一年間ないし二年間、三年間といった形で企業が動いていくというのが、大体、戦略コンサルタントのやるべき仕事でございます。

 そういった考え方からすると、どうしても、やはり戦略的な外交というと、基本的には、大きな目標となる考え方があり、この目的を達成するがために、我が国がその目的を達成するような形で、その目的を外交をつかさどる各部署が共有した上でそれぞれ動いていくようなものなのかなと思ったので、原則とそれから戦略ということを聞かせていただいたわけでございます。

 企業における戦略という考え方と外交における戦略という考え方がどうも一致していないように理解されました。

 私自身、今伺っていた限りにおいて、原則というものが必ずしも外交のあり方全てを規律しているわけではなく、むしろ、どうも状況に応じて場当たり的に対応しているように聞こえてしまったわけでございますけれども、そうなってしまうと、原則を設ける意味というのに少し違和感を感じたわけでございます。

 そういった点について、もし御所見というか、教えていただければ幸いでございます。

岸田国務大臣 済みません、今、質問の趣旨を十分把握できなかったんですが。ちょっと、簡潔にもう一度お願いできませんか。

椎名分科員 済みません。

 原則が必ずしも組織内に統一して、組織自体の行動を規律するような形で働いていないのであれば、そもそも原則を設けることの意味というのがいまいちぴんとこなくなってしまうというところでありまして、この原則が企業をつかさどっている戦略とは少し違うものであるとすると、この原則を設ける意味というのをもう一回教えていただければというふうに思います。

岸田国務大臣 今、企業を例に挙げられましたが、外務省なりの組織の中で、いろいろな部署があります、いろいろな課題があります、それを考える際に一つの原則があるというのは、意思疎通を図り、そして理解を得るために、これは大切なことだと思っています。ですから、原則というもの、基本的なものが存在するというのはやはり意義あることだと思っています。

 しかし、現実の対応の中には、さまざまな国々があり、さまざまなケースがある。先ほど委員が御指摘されたとおりであります。原則は大事にしながらも、先ほど説明した戦略的な考え方を適用しながら目の前にある現実に対応していく、こういった考え方で組織を動かしていくということであるならば、原則とそして戦略的な対応、それぞれ意味があるのではないかと私は思っております。

椎名分科員 わかりました。ありがとうございます。

 済みません、言葉遊びをしているつもりは毛頭ございませんが、どうやらその言葉遊びの域に入ってきてしまいそうになったので、次に参ります。

 現実の外交問題というところで申し上げますと、東南アジア、それから周辺海域、特に南シナ海でございますけれども、こういったところで領土、領海紛争が発生するというリスクが高いわけでございますけれども、その際、我が国、日本という国はどういうふうに対応していくべきなのか。

 先ほどの総理論文では、繰り返しになりますけれども、オーストラリア、インド、日本、それからハワイ、こういったところによって、インド洋地域から西太平洋に広がる海洋権益を保護するダイヤモンドを形成するというふうに言っておりますけれども、この南シナ海において、今現状でも、領土、領海の権益、こういったものに対する争いがあるわけです。

 先ほどおっしゃっていたような多国間の枠組みという意味で申し上げますと、例えばアジア版のNATOと呼べるような集団的な安全保障の枠組みといったところまで念頭に入れてそういったことをおっしゃっているのか、それとも、あくまでもバイないし三カ国で締結する多国間の枠組みを幾つも幾つも重ねて適用しようとするということなんでしょうか。

岸田国務大臣 南シナ海をめぐる問題については、地域の平和と安定に直結しますし、我が国を含む国際社会全体の関心事項であると考えています。

 我が国として、南シナ海島嶼の領有権をめぐる紛争に介入する意図はありませんが、全ての関係国が一方的な行動を慎むことを含め関連国際法を遵守すること、このことが大変重要だと思っています。領有権をめぐる紛争については、関係当事者の国際法に基づいた平和的解決の努力を我が国としては支持していく、こうした方針はしっかり示していかなければなりません。

 東南アジア地域において、現在、集団安全保障を目的とした地域的な機構は存在するとは承知しておりませんが、東アジア首脳会議とかASEAN地域フォーラムといった、地域の政治、安全保障も含め議論する枠組みが幾つか存在いたします。こうした場でも、この南シナ海をめぐる問題について、国際法に基づいた平和的な解決の重要性等について議論が行われてきているということですし、これを我が国としてもしっかり支援していく、こうした方針でございます。

椎名分科員 ありがとうございます。

 国際法に基づいた平和的な解決を促すように努力をしていくということでございますけれども、具体的に、スプラトリー諸島とか、日本語で言うと西沙諸島とか南沙諸島とかそういうふうに呼ばれるところでございますけれども、そういったところについて、具体的に、中国とベトナム、それから中国とフィリピンといったところでいろいろな領土に関する問題が起きているわけでございます。国際法にのっとった解決をといっても、なかなかその解決が促されないような状況であるわけでございます。その背景にあるのは、やはり、あの南シナ海の海域のところにある天然資源といったことも結構大きな問題になってくるかと思います。

 そういった中で、国際法に基づいた平和的な解決をといって、我々が外野でそういうふうに応援していくというだけでなく、主導的に我が国が解決を促していくために働くということはできるんでしょうか。

岸田国務大臣 貿易立国でもあり海洋国であります我が国にとりまして、海洋の平和と安定、これは極めて重要な課題であり、その際に、やはり、今指摘されているような力による現状変更、こういったものは決して認めてはならないと思います。やはり、法の支配に基づいてルールが確定され、そのルールに基づいて海洋の平和と安定が保たれる、こうした考え方をまずしっかりと訴えていかなければなりません。

 そして、それをしっかり示す場として、先ほど御指摘をさせていただきましたが、EASとかARFとかこうした枠組み、これを活用して我が国が議論をリードしていく、指導力を発揮していく、こうした姿勢が大事なのではないかと思います。

 力でなく、法の支配、ルールに基づいてこうした地域の平和と安定を守っていく、この平和的な解決の手段を我が国が先頭に立ってリードしていく、こういったことは大事にしていきたいと思っています。

椎名分科員 ありがとうございます。

 時間もないので、次を最後として質問させていただきたいと思います。

 対中国というスタンスの問題で申し上げますと、先ほどの安全保障分野という点に関しましては、中国を脅威と呼ぶかどうかはさておき、この五原則との関係でも、中国と提携をしていくという発想は基本的にはないんだろうというふうに思いますが、他方で、経済分野におきましては、APECやら日中韓経済連携協定やら、緊密化の方向で進んでいるというふうに思っています。

 この日中間の経済的なリンケージが高まっていくと、安全保障外交と経済外交というところにある程度スタンスの違いが出てくるということについてはいたし方ないことなのかなというふうに思っておりますが、そんな中で、中国との関係で、戦略的互恵関係というふうに経済関係については呼んでおりますけれども、戦略的互恵関係と経済関係については表現をし、五原則との関係でいうと中国と関係を緊密化させていくという考えは基本的にはないだろうということでございますが、こういったスタンスの違いというところについて御説明いただければと思います。

岸田国務大臣 まず、日中関係は我が国にとって最も大切な二国間関係のうちの一つであり、我が国としても日中関係を重視しております。そして、両国はこの地域の平和と発展にも責任を負っているわけですし、ぜひ大局的な観点からこの関係を推進していかなければいけない、このように思っています。

 そして、その中にあって、中国と日本、だから世界第二と第三の経済大国です、この経済大国同士の関係は世界経済に大きな影響を及ぼすことになります。こうした二つの国が国際社会あるいは世界経済にも大きな責任を担っていくことを考えますと、経済面においても両国の経済関係を発展させていかなければならないと考えていますし、現在、APECですとかあるいは日中韓FTAですとか、こうした議論の中で実際協力を進めているというのが現状であります。

 戦略的互恵関係という言葉は、二〇〇六年に安倍総理が初めて使った言葉です。そして二〇〇八年の日中共同声明において初めて文書になった、こういった言葉ですが、戦略的互恵関係、日中両国が将来にわたり、二国間、地域、国際社会等さまざまなレベルで互恵協力を全面的に発展させ、両国、アジア及び世界のためにともに貢献する中で共通利益を拡大し、それによって両国関係を新たな高みへと発展させていく関係ということでございます。この戦略的互恵関係に基づいて両国の関係を進めていかなければならないと思っています。

 確かに個別の難しい問題は存在いたしますが、これが全体の二国間関係に影響を及ぼさない、これこそ戦略的互恵関係という考え方の原点だと思っております。そういった姿勢で中国との関係を考えていきたいと思っています。

椎名分科員 どうもありがとうございます。時間になりましたので、質問を終了させていただければと思います。

 ありがとうございます。

伊藤主査 これにて椎名毅君の質疑は終了いたしました。

 次に、坂元大輔君。

坂元分科員 日本維新の会の坂元大輔でございます。

 実は、岸田外務大臣とは同じ広島県選出の議員でございまして、あと、あべ政務官とは、同じといいますか、私が選出の福山市というのは文化圏的には備後圏でございますので、岡山ということでお隣のあべ政務官ということで、本日、お二人にも御質問をさせていただくということで、若干緊張ぎみでございますが、どうぞよろしくお願いいたします。先ほどの椎名議員からは非常に抽象的な難しい御質問が多かったと私は感じましたが、私からはいろいろと具体的な御質問をさせていただければというふうに考えております。よろしくお願いいたします。

 私は、実は、日本の大学というものに行かずに、海外、アメリカの大学に入学して卒業をしたという、完全留学という形でアメリカの大学を出ているという経歴を持っておりまして、自身の経験からも、日本の留学生に対する支援制度、それは送り出す側としても受け入れる側としても支援制度というものに個人的に非常に興味を持っておりまして、きょうは、留学支援制度という観点から見た近隣諸国との関係のあり方について、いろいろと御質問をさせていただければというふうに思っております。

 まず最初に、最近あったことからお話をさせていただくと、先日、実は台北の駐日文化代表処、つまり台湾の駐日代表の方といろいろとお話しする機会がございまして、東日本大震災の際に、御存じのとおり、台湾からは物心両面にわたる多大なる御支援をいただきまして、寄附金の総額だけでも二百億円という、海外からは最大の支援をいただいておりました。私も東北にボランティア等々に行っていた経験もありまして、そのお礼を台湾の駐日代表の方にお伝えさせていただきました。

 先ほどの椎名議員からの質問にもありましたが、中国との関係ということも非常に大事な二国間関係ではございますが、台湾との関係、特に両国、日本も台湾も地震大国でございます。台湾との関係の中で、特に大災害時の連携というところに関して、私は積極的に相互支援関係というものを築いていくべきだというふうに考えておりますが、その点に関して外務大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 まず台湾ですが、これは我が国との間で緊密な経済関係とそして人的往来を有する重要なパートナーだと認識をしています。

 近年、日本側の公益財団法人交流協会と台湾側の亜東関係協会との間でさまざまな互恵協力の枠組みがつくられており、日台間の実務的協力関係、着実に進展をしていると認識をしております。

 そして、御指摘の地震等大規模災害時の連携ですが、こうした連携につきましても、積極的な相互協力関係を構築すべく、先ほどの両協会間で二〇一〇年に覚書が作成されたものと承知しております。その中で、両協会間で、防災・災害復興の経験を共有するとともに、防災対策、被害の軽減、突発事件への対応、また災害復興等の分野の専門家間の協力が強化されるよう努力する、こういったことが確認をされております。

 台湾各界からは、御指摘のように、東日本大震災に際しまして、心温まる、また破格の御支援をいただいております。日本政府として深く感謝しておりますし、また、こうした日台間の深い友情とかたいきずなの基礎に立って、双方間の災害対策に係る取り組みが一層推進され、防災面における協力関係がさらに強化されること、こうしたことをぜひ期待したいと考えております。

坂元分科員 ありがとうございます。

 大臣今おっしゃったとおり、近年、特に経済的な関係ですとか人的な交流も深まっておりますし、災害時の連携に関してもいろいろと具体的に進めていっていただければなというふうに考えております。

 それでは、本題の留学に関する御質問に入らせていただきます。

 先ほども申し上げたとおり、私自身が日本から海外に出た留学生だった、留学経験をしているということもあって、日本の留学制度というものに非常に関心を持っております。

 まず、基礎的なことではございますが、留学ということに関して、所管としては外務省と文科省両方だというふうに捉えておりますが、その所管の区分けに関してお伺いをさせていただきたいと思います。お願いします。

芝田政府参考人 国費の外国人留学生奨学金制度における外務省、文部科学省の分担についてお答えいたします。

 国費外国人留学生の奨学金の給付など、我が国における留学生の受け入れ環境の充実、これは基本的に文部科学省の予算により実施されております。

 一方、外務省は、文部科学省と連携しながら、在外公館におきまして、外国人学生を対象とした留学生の説明会、あるいはインターネットを通じた広報、それから留学関連情報の提供を行うとともに、国費の外国人留学生の奨学金制度につきましては、募集、選考のための筆記、面接試験を実施するなどの取り組みを行っております。

 また、留学生が帰られた後の、全世界にもう既に二百十二ある帰国留学生会というのがございまして、留学生が帰られた後のケアにつきまして、その支援などを通じてフォローアップを行っている、これは外務省の分担でございます。

 以上でございます。

坂元分科員 ありがとうございました。

 今でも十分連携をとっていただいていると思うんですけれども、今から御質問させていただく日本からの留学生が特に減少していっているという現状があると思うんですが、その点についても、二つの省庁でよく連携をとっていただいて促進をしていっていただければというふうに考えております。

 それでは、ここからは先ほどの区分でいいますと文科省の所管に入っていくと思うんですが、先ほど私が申し上げました、今、海外に留学する日本人が非常に減少しているというふうに伺っております。近年の状況に関して数字をお伺いできればと思います。よろしくお願いします。

山野政府参考人 御説明いたします。

 日本から海外への留学生についてでございますが、トータルでいいますと、二〇〇四年にピークがございまして、その時点では約八万三千人でございました。それ以前は増加傾向だったわけですが、その後は実は減少傾向に変わってきてございまして、最新の二〇一〇年のデータでは約五万八千人と、そこまで減ってきたというような状況がございます。

 特にまた、一言付言させていただきますと、最大の派遣国というのはアメリカだったわけなんですが、そこの減少が非常に顕著でございまして、一時は、二〇〇〇年の真ん中ぐらいまでは四万人を超える規模だったんですが、現在ではやはり二万人ぐらいの、半減ぐらいの状況になっている、それを大きな問題として我々も考えておるところでございます。

坂元分科員 ありがとうございます。

 先ほども申し上げたように、実は私自身が行っていたところがアメリカでございまして、私が行ったのは二〇〇三年ですのでちょうどピークごろだったんですけれども、確かに、そこから数年たって、ハーバードだとかイエールだとかそういういわゆる有名大学に入る日本人と、中国人ですとか韓国人の方、アジアの近隣各国と比較した中で、かなり差がついてきているという現状を実際に私も感じておりましたので、今の具体的な数字をお聞きして、これは非常に、これから世界の中で戦っていかなければならない日本人としては、世界に若いうちから出ていくという経験をする方が減っていっているというのは憂慮すべき事態なのかなというふうに考えております。

 続いて、その点に関してなんですけれども、今非常に減っているという現状がある中で、日本人の海外留学推進に関して、具体的な策として推進策はどのようなものを設けておられるのか、あとは、日本国政府として、留学に行く側、送り出す側として奨学金の制度等々は設けておられるのか、そのあたりについてお伺いをさせていただきます。

山野政府参考人 委員御指摘のように、世の中、経済であるとか社会がグローバル化していっているという中において、我が国の若者もそういうグローバル社会の中できちんと活躍できる人になっていくことが必要ということで、今、グローバル人材と言われていますけれども、その養成が非常に重要な状況になってきてございます。

 確かに、日本から行く留学生が減ってきている。いろいろな要因があるわけでございますが、そのためにいろいろな手を打ってきている。それでもまだ不十分だというところがあるんだと思います。

 例えば、奨学金の話が出ましたので、そこでいいますと、委員も恐らく理解できると思うんですけれども、今、アメリカの大学とかでは、私立大学にしろ州立大学にしろ、非常に学費が上がってきてございます。そういう中で、日本の家計の状況は、ここ何年かは減少傾向でございます。まず、そのような経済的問題が一つの要因として大きくあるということでございます。そこに対する対策といたしましては、日本の中でも奨学金制度を用意してございます。今御審議いただいてございます二十五年度の予算案の中でも、三十五億円程度の奨学金が用意されてございます。

 そのほかにもやはり行かなくなった阻害要因がいろいろあるわけでございますが、詳しくは述べませんが、例えば、留学に行くことによって今の就職活動のタイミングを失するんじゃないかという議論があります。そこは、アメリカの場合ですと、大体帰ってくると、卒業すると六月ぐらいになるわけですが、今の日本の就職戦線は、三年生の十二月に広報が始まって、実際上の採用活動は四年の四月からということですから、そこらについては今見直す方向で関係団体とかと議論しておるようなところでございます。

 そのほかにも、やはり学生の英語力の問題とか、日本の大学の国際化が進んだ、いろいろあります。そういうところについて、いろいろな対策でてこ入れをしているところでございます。

坂元分科員 ありがとうございます。

 今おっしゃっておられた就職問題、私自身も実体験をした経験がございまして、やはり、日本の一般の就活、就職活動の中になかなか留学帰り、いわゆる帰国子女が入っていきにくい、門が狭くなってしまうという現状は実際問題あると思っております。今おっしゃっておられたとおり、例えば日本も秋スタートに大学を変更するとか、いろいろな議論がされていると思いますが、奨学金の制度ももちろん含めてでございますが、とにかく若いうちに世界に出ていきやすい環境というのをいろいろな面で整備していっていただければというふうに考えております。

 続いて、転じて、今度は受け入れる側の制度に関しての御質問に移らせていただきます。

 当然、日本国政府として外国から日本にやってくる外国人留学生に対する奨学金の制度というものも設けておられるというふうに思いますが、その詳細を教えていただければというふうに考えております。お願いします。

山野政府参考人 外国人留学生の受け入れに関する奨学金といたしましては、日本の中で、大きく言いまして三つ制度がございます。

 第一の制度が、いわゆる一番支援が高いレベルのものなんですが、国費外国人留学生制度という制度でございまして、これは日本国が政府として、外務省の在外公館なんかも活用して、我が国の大学に来ていただきたいというような外国人を募集しまして、それを選定した上で、その人に対して奨学金であるとか授業料なんかについて支援するもの、それがまず第一の制度でございます。

 二点目の制度は、文部科学省外国人留学生学習奨励費という名称になってございますが、これは、かなりの留学生は実は私費で来ているという留学生で、既に日本に来ているという留学生がいるわけなんですが、その人が日本での学業が非常にすぐれているとか経済環境がちょっと苦しくなっておるとか、そういうことを勘案して、そういう人に対して奨学金を支給する制度、これが二点目でございます。

 三点目の制度は、留学生交流支援制度ということで、我が国の大学と外国の大学が留学生の交換の協定を結んでいるというケースが多々あるわけなんですが、そういう協定に基づきまして、我が国に来ている留学生に対して一定の要件で支援する制度。

 その三つの制度で支援しているところでございます。

坂元分科員 ありがとうございます。

 制度の御説明は今おっしゃっていただいた三つだと思うんですけれども、簡単にで構わないので、奨学金ですので、その奨学金の中身、金額も教えていただければと思います。お願いします。

山野政府参考人 若干細かく言いますと、いろいろなバラエティーがあるんですが、今の第一の制度、国費留学生の場合には、例えば一番多額に払っています例でいいますと、博士課程に来ておられる留学生に対しては月当たり十四万五千円を支給している。当然、学部になるともう少し安くなるということなんです。

 二番目の制度の、私費で来ている人に対する学習奨励費という意味では、例えば大学院レベルですと六万五千円、学部レベルですと四万八千円、それぐらいのレベルでございます。

 三つ目の、留学生の交流制度に基づいておるものにつきましては、月当たり八万円、それぐらいの額でございます。

坂元分科員 ありがとうございます。

 それとは別に、別プログラムとして、グローバル30という、二〇二〇年までに留学生受け入れ三十万人を目指すというプログラムに基づいて、指定の大学に予算づけが別枠でされているというふうにも伺っております。

 個別には難しいと思いますので、その予算総額を教えていただければと思います。お願いします。

山野政府参考人 御説明いたします。

 グローバル30というプログラムは、直接的に留学生への奨学金を出すとか、そういうプログラムではございませんで、日本の大学の国際化を進めるということで、当然その中には優秀な外国人留学生も受け入れを促進するとかということで、国際化を進めるためを目的とした事業でございます。

 額的には、この事業につきましては、委員御指摘のように、二十一年度に公募をして、十三大学が選ばれたということでございます。大体、事業規模としましては、二十五年度の予算案の中では二十三億円ということですから、二十一年度からの累計でいいますと、百四十六億円ぐらいの事業規模でございます。

 その内容は、留学生への奨学金というよりも、この十三大学の中で、今三年ぐらい経過しているわけなんですが、ちょっと成果を二、三言わせていただきますと、例えば、英語だけで単位が取れる、学位が取れるというようなコースが、その十三大学で百五十コース以上今できてきているとか、外国人教員が、その十三大学でなんですが、五百人以上増加しているとか、そのような活動、あと、海外から留学生を呼び込むために、ワンストップでいろいろな手続をするような大学の海外事務所の設置なんかも、今八カ所で事務所が設置されるとか、そのような活動を支援しているという事業でございます。

坂元分科員 つまり、そのグローバル30プログラムにつけられている予算の中で、奨学金として幾ら振り分けられているかというのは数字としては出せないということでよろしいんでしょうか。

山野政府参考人 今私が説明いたしました、例えば今年度の予算の中で二十三億円ということを言いましたが、その中には奨学金の事業費は入ってございません。奨学金のことにつきましては、私が今さっき説明しました、三つ制度があると言いましたが、そちらの制度と連動して、一部優先的にその十三大学にある程度の額を割り振って、来る留学生に対する奨学金についてはそちらの方で手当てしているということでございます。それで、グローバル30の事業費そのものの中には、来る留学生に対する奨学金は含まれてございません。

坂元分科員 済みません、もう一回確認をさせていただきたいんですが、つまり、先ほど御説明いただいた三つの奨学金制度を、その指定の十三大学にある程度優先して振り分けている。つまり、その十三大学に対して追加で奨学金の予算をつけているわけではないという理解でよろしいんでしょうか。

山野政府参考人 そのとおりでございます。

坂元分科員 理解いたしました。ありがとうございます。

 それでは、先ほどもしかしたら数字を挙げていただいていたかもしれないんですが、最初に御質問をいたしました、日本から出ていく、日本から海外に留学していく、つまり、日本人が対象になるとは思うんですが、日本から海外に留学する学生に対する奨学金制度の予算総額と、今度は受け入れる方ですね、日本に受け入れる外国人留学生に対する奨学金制度の予算総額を比較して教えていただければというふうに思います。お願いします。

山野政府参考人 お答えいたします。

 二十五年度の予算案の中でのレベルで申しますと、海外へ留学するという日本人に対する奨学金の予算額といたしましては、トータルで三十六億円でございます。また、逆に、外国人留学生の受け入れに対する奨学金に関する予算としましては、二百九十四億円でございます。

坂元分科員 ありがとうございます。

 素人の印象なのかもしれないですけれども、非常に、送り出す側と受け入れる側の予算のつけ方にかなりの差があるなというふうにどうしても感じてしまうわけでございます。

 先ほどの数字にもありましたように、日本から海外に出ていく学生の数というのも激減していっている現状の中で、この予算措置というのは私は見直していかなければならないのではないかなというふうに考えておりますので、この点は引き続き別の機会にでも取り上げていきたいなというふうに考えております。

 それでは、その受け入れる側の方でございますが、日本にやってくる、日本で受け入れている外国人留学生の国別の内訳について、隣国であります中国人と韓国人の人数とその全体における割合について教えていただきたいと思います。

山野政府参考人 お答えいたします。

 昨年の五月時点の人数でございますが、我が国に来ていただいている外国人留学生のトータルは約十三万八千人でございます。そのうち中国からの留学生は八万六千人ということで、割合からいいますと約六三%でございます。第二位が韓国からの留学生でございまして、人数は約一万七千人ということで、割合といたしましては約一二%という状況でございます。

坂元分科員 ありがとうございました。

 もちろん、こちらは受け入れる側ですので、どの国から学生がどのくらいやってきていただくかというのは当然相手側に委ねられておりますので、こちらからその割合というものを意図的に操作はなかなかできない部分であるというのは十分に理解をしております。とはいえ、これだけの国費、予算を投じて支援制度を設けている、奨学金制度を設けている中で、中国からの割合が六割以上、韓国の方も含めると、二国の留学生が四分の三を占めているという現状でございます。

 そして、昨今、領土問題ですとか、いろいろなことでさまざまな外交圧力をかけてきているのもこの両国、中国と韓国であるということも紛れもない事実でございます。

 対して、一番最初に御質問をさせていただきました、あえて隣国というふうに呼ばせていただきますが、非常に親日国である台湾からの留学生に関しては、実は、昭和四十七年の日台の国交断絶後、それまでの台湾留学生に対する国費留学生制度というものが継続できなくなってしまったという関係で、交流協会奨学金留学生制度というものを別枠で設けて、翌年、昭和四十八年度から、ほぼ同じ制度ではありますけれども、別枠で設けて奨学金制度をつくっているという現状がございます。

 金額であったり中身というのはほとんど変わらないじゃないかという御意見もあるかもしれませんが、正式な制度ではなく別枠として用意されているという現状があるというふうに伺っている中で、さまざまな外交圧力を受けながら、緊張関係と呼んでもいい関係にある韓国、中国と、震災時の物心両面の多大なる御支援からもわかるとおり、非常に親日で通っている台湾という、さまざまな隣国に囲まれている我が国の現状というところで、近隣諸国との外交関係というものを外務大臣としてどのように捉えていらっしゃるのかということを私から質問させていただきたいと思っております。

岸田国務大臣 まず、国費外国人留学生制度、それから奨学金制度ですが、次世代の若者の交流ですとか、あるいは日本に対する理解の促進ですとか、諸外国との友好促進に貢献する人材育成等の観点から、我が国の外交にとってもこれは大変重要なツールの一つであると認識をしています。

 中国、韓国からの留学生が相対的に多いことは事実であり、ただいま御指摘になられたとおりだと思っていますが、ただ、その内容は、大半が私費留学生ということもあり、国費の外国人留学生奨学金制度という制度においては、その配分が特定の国とか地域に著しく偏っているということでもない、そのように考えております。

 また、台湾の留学生に対する交流協会留学生制度ですが、御指摘のように、国費留学生奨学金制度と同様に、学部生、学院生に奨学金が支給されております。

 いずれにしましても、こうした外国人の留学生奨学金制度ですが、文部科学省とも連携しながら、今後適切に運用していくように、そうした現状もしっかり踏まえた上で努めていきたいと考えております。

坂元分科員 岸田外務大臣、ありがとうございました。

 留学制度というか、行く方もそうですし、迎え入れる方もそうですけれども、そういう留学も含めた人的交流というのは外交のツールの一つだというふうに御発言がございました。本当にそのとおりだというふうに思っております。

 古来から、相手国と友好関係を結ぶには、その国の若者を自国に招き入れたり、逆に派遣したり、そういう、昔で言う留学制度というようなものを使って親密な関係を築いていくというものもたくさんあったというふうに、歴史を見てもある中で、この留学制度というものをもっと戦略的に外交ツールとして生かしていくというのも一つの手段なのかなというふうに私も考えております。

 時間が参りましたのでこれで終わらせていただきますが、今後とも、留学制度もそうですし、近隣諸国との外交関係に関しても、引き続き私からもいろいろと御提言も含めてさせていただければというふうに思っております。

 どうもありがとうございました。

伊藤主査 これにて坂元大輔君の質疑は終了いたしました。

 次に、山田賢司君。

山田(賢)分科員 岸田外務大臣そして皆様、本日は、質問の機会を頂戴しまして、まことにありがとうございます。

 兵庫七区、西宮、芦屋選出の山田賢司と申します。本日はよろしくお願いいたします。

 さて、自由民主党は、日本を取り戻すというスローガンのもと、選挙戦を戦ってまいりました。私自身も、日本の誇りと自信を取り戻し、世界と堂々と渡り合える、強くて豊かな日本を復活させる、このことを皆様に訴えて国政へ送り出していただきました。その意味で、国民の命はもちろん、日本の領土、そして日本の心、誇りを守ること、このことに真っ正面から取り組んでいきたいと思っております。

 そこで、本日の質問ですが、まず最初に、領土問題で、尖閣問題についてお尋ねしたいと思っております。

 言うまでもなく、尖閣諸島は我が国固有の領土でございます。今般国有地となりました魚釣島に例えば国会議員が視察に行くということについて、大臣はどのようにお考えでしょうか。

岸田国務大臣 政府としましては、原則として政府関係者を除き何人も尖閣諸島への上陸を認めないという方針を現在とっております。

 その上で、政府方針の例外として上陸を認めるか否かについては、尖閣諸島及び周辺海域の安定的な維持管理、こういった目的を踏まえて、個々のケースに応じて、その必要性ですとか尖閣諸島をめぐる状況等を総合的に勘案して判断することとしているということであります。

 いずれにしましても、尖閣諸島は歴史的にも国際法上も我が国固有の領土であり、自国の領域を守るという断固たる意思を持って対処していきたいと存じますが、今御質問にありました尖閣諸島への具体的な上陸ということにつきましては、今申し上げました考え方に基づいて総合的に勘案し判断する、これが政府の方針でございます。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 先ほど大臣は周辺の安全な維持管理ということをおっしゃいましたけれども、安全な維持管理という意味では、やはり近隣の、具体的には中国なんかが領海をいろいろ侵犯してきておりますので、安全な維持管理という観点からいうと、むしろ構築物をつくるなり実効支配を強める方が我が国の安定的維持管理に資するのではないか、このように考えますが、いかがでございましょうか。

岸田国務大臣 尖閣諸島及び周辺海域の安定的な維持管理を行うために具体的にどう対応するか、これはいろいろな議論が存在いたします。そして、状況は刻々と変化しているわけですので、そうした状況、そしてさまざまな判断に基づいて、総合的にどのように対応していくのか、政府として責任を持って判断していくということになるわけです。

 ですから、今、この現状においては、そういった考え方のもとにおいてどうあるべきなのか、政府としては適切に対応していきたいと考えています。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。適切な御判断ということでございます。

 例えば、実務的に、これは事務方の方にお尋ねした方がいいと思うんですけれども、国有地に関しては財務省理財局の管轄なんでしょうけれども、財務省の理財局に問い合わせましたところ、これは官房総務課に聞いてくれということを言われました。これは、政府の方針ということを判断するに当たって、特に外務省としてはコメントする立場にはないという理解でよろしいでしょうか。

山野内政府参考人 先ほど大臣から申し上げましたとおり、政府としての基本的な考え方は、原則として政府関係者を除き何人も尖閣諸島への上陸を認めない、こういう方針をとっているということでございまして、その方針の例外ということがあり得るとするならば、そのときは、尖閣諸島及び周辺海域の安定的な維持管理、こういう目的を踏まえて総合的に判断するということでございますので、外務省としてはこの政府の判断に従うということでございます。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 それでは次に、日韓関係についてお尋ねをしたいと思います。

 まず、韓国というのは我が国にとってどういう存在であるか、大臣のお考えをお聞かせいただきます。

岸田国務大臣 まず、韓国は、我が国にとりまして、民主主義ですとか市場原理ですとかあるいは法の支配といった基本的な価値、さらには利益とか責任を共有する最も大切な隣国であると考えております。

 日韓間には大変難しい問題も存在いたしますが、今、日本においても新しい政権が昨年末スタートしました。また、先日、韓国においても新しい政権がスタートしました。こうした日韓双方で新政権が成立したこの機会をしっかり生かして、二十一世紀にふさわしい未来志向の関係を韓国政府とともに構築していくために努力をしていかなければならないと考えております。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 私も全く同感でございまして、いたずらに隣国を刺激したり、たたき出せとか、そんな過激な議論を申し上げるつもりは全くございません。むしろ、価値観を共有して隣国としてともに発展していくべきである、このように考えております。

 しかしながら、真の信頼関係の構築のためには、相手の顔色をうかがいながら、言いたいことも言えず、間違っていることを間違っているとも言えず、遠慮しながらつき合うのではなく、事実を正しく認識して、お互いに言い合って、その上での信頼関係を構築すべきと考えておりますが、いかがでございましょうか。

岸田国務大臣 おっしゃるように、我が国としての考え方、立場、これはしっかりと伝えていかなければならないと思っています。

 竹島の問題につきましても、我が国として、受け入れられないものについては受け入れられないということを、韓国側にしっかり、今日までも伝えてきましたが、これからもしっかりと伝えていく、適切に対応していきたいと考えています。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 これはむしろ事務方の方にお尋ねしたいんですけれども、例えば反日教育や反日政策ということを公然と韓国なんかでは言われておるんですけれども、これに対して外務省としてはどういった抗議ないしはやめさせる手だてを行ってこられたのか、教えてください。

山野内政府参考人 今先生御指摘のいわゆる反日政策、反日教育ということでございますけれども、一般論として申し上げますならば、国家が自国民に対してどのような教育を行うかということについては、それぞれの国の裁量があるということであろうと思います。

 ただ、日本政府としては、竹島問題を初め、明らかに我が国政府の立場と異なる事案、これについては韓国政府に適切に申し入れを行ってきております。

 例えば、本年三月、韓国の教育科学技術部が、韓国の独自の観点からでございますけれども、竹島に関連する教育のための拠点として小中高校を選定したということがございまして、これに関しては在韓国日本大使館から韓国の外交部に申し入れを行っておりますが、そういう事例があるときには、すかさず、適宜適切に申し入れ、抗議を行っているところでございます。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 そういう意味では、どこまでの強制力があるかといえば、それはお互いの主権があることでございますので、日本からこういうふうに教育しろということまでは言えないと思うんですが、真の友好関係という意味では、自主的にもっと、国民にとって、親日になるように、あるいは日本と価値観を共有できるような教育をしてくれ、あるいはそういう政策をとってくれということをお互い言い合うことは可能ではないか、このように考えておる次第でございます。

 続きまして、韓国なんかでよく言われる、行事のたびに我が国の国旗を燃やす、大変無礼な行為だとは思うんですけれども、外務省としてはこういった行為に対して抗議を行っているのでしょうか、教えてください。

山野内政府参考人 国旗を燃やすというようなことに関してでございますけれども、例えばでございますけれども、一昨年八月、ソウルで、我が国の国旗を著しく侮辱する内容の演劇が開催されたというようなことがありました。この際も、在韓国日本大使館から、韓国外交通商部に対して遺憾の意を伝えた上で、適切な対応を検討するように求めたということがございます。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 今、遺憾の意という言葉をおっしゃいまして、私、民間出身でございまして、この遺憾の意という言葉が全くわからなくて、これはちょっと通告していなかったんですが、外交上、遺憾の意というのは普通に使われる言葉かもしれないですが、遺憾の意というのはどういう意味か、教えていただけますでしょうか。

山野内政府参考人 今、手元に辞書等はありませんけれども、外交的に遺憾の意を表するときというのは、その行われた行為もしくは表現ということが、我が国の基本的な立場からして到底受け入れがたい、極めて不適切である、極めて残念であるというようなことを込めた言葉でございまして、これは、外交的な申し入れ、もしくは外交的抗議をするときに使われる言葉でございます。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 遺憾という言葉を辞書で引くと、今おっしゃられた、残念ということだと思うんですけれども、我が国の国旗を燃やされて、残念ということではないと思うんですね。何をやっておるんだ、いいかげんにしろと怒らないといけないと思うんですけれども、こういうときの外交用語みたいなものというのはあるんでしょうか。

山野内政府参考人 今先生がおっしゃった、例えば我が国の国旗が燃やされて、それに対して外交的な抗議をするときに、そういう強い思いを込めて使うときも、遺憾の意ということで伝えておるところでございます。

山田(賢)分科員 残念というのが抗議ということ、そういう理解でよろしいでしょうか。

山野内政府参考人 いえいえ、辞書的な意味で遺憾という中に残念というのがあろうかとは思いますけれども、外交的な場で、先生御指摘のような事例で遺憾の意を表するというのは、単に残念ということを超えた、非常に強い気持ちがこもった言葉でございます。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 きょうは法務省の方にも来ていただいていると思うんですが、外国人が我が国において国旗を損壊する行為、これに対して処罰は可能でしょうか。

岩尾政府参考人 犯罪の成否につきましては、具体的事案において収集されました証拠に基づいて最終的に判断される事柄ではございますが、一般論として申し上げれば、我が国の国旗そのものを客体とする罪はございませんが、当該国旗が他人のものである場合には、これを損壊する行為は器物損壊罪に当たり得るものと考えられます。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 では、韓国において、例えば国旗を燃やす行為、損壊する行為に対してどういう刑罰があるか、また、それは外国国旗も対象となっているか、わかる範囲で教えていただければと思います。

岩尾政府参考人 韓国におきましては、韓国から見た自国ですね、自国の国旗について、大韓民国を侮辱する目的で国旗等を損傷するなどした者については、五年以下の懲役もしくは禁錮、十年以下の資格停止または七百万ウォン以下の罰金に処する旨の規定が刑法百五条にございます。

 さらに、外国の国旗については、刑法百九条におきまして、外国を侮辱する目的でその国の公用に供する国旗等を損傷するなどした者について、二年以下の懲役もしくは禁錮または三百万ウォン以下の罰金に処する旨の規定があると承知しております。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 ということは、韓国国内において日本国旗、我が国の日章旗を燃やす行為もこの規定に該当するという理解でよろしいでしょうか。一般論で結構です。

岩尾政府参考人 外国における犯罪の適用の問題でございますので、なかなかちょっと、法務省として一概にお答えするのは困難であると承知しております。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 外国の法規なので、まさに日本の政府がどうこう言うことではないと思うんですが、このように、韓国においても、国旗を損壊する行為、これに対する罪はあります。ですので、先ほどの教育の事例と同じで、日本からこれを罰しろとかどうこう言うことはできないにしても、韓国の中でも、これはやってはいけない行為だということ、この普通の認識があるはずなんですね。

 ということであれば、強制する云々は別としまして、こんな行為をさせるなということを、外交ルートを通じて、国民に、韓国の国内において国旗を燃やすような、他国を侮辱するような行為はやめろと抗議するべきではないかと思うんですが、いかがでございましょうか。外務省、お願いします。

山野内政府参考人 先生おっしゃるとおりでございまして、一般国際法上も、国旗や国章、これはその国の威厳の象徴ということでございますので、外国においても相当の敬意を持って取り扱われるべきものという考え方でございます。また、外交関係に関するウィーン条約上もそういうことでございます。

 ただし、実際、どのような場合に国家責任が生じるかというようなことについては、その国家の実行、学説、なかなか定まらないところでございますけれども、その具体的な事例に即して、日本としてしっかり申し入れをすべきであるということはまさにおっしゃるとおりであろうと思います。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 では、そのように、また時期に触れて、抗議なり要請なんかをしていっていただきたいと思っております。

 次の質問に移らせていただきます。

 日韓基本条約に基づいて、我が国は過去いろいろな有償、無償の資金協力ですとかを行ってきたと思うんですが、また、日韓基本条約の締結の際、朝鮮半島における資産なんかを放棄したと思うんですけれども、それらの額を、概算で結構ですので、わかる範囲で教えていただければと思います。

山野内政府参考人 今御指摘の点に関しましては、終戦当時朝鮮半島に所在した我が国の資産等を含めたことに関しての日韓国交正常化の際の議論、これの詳細については、今後あり得べき日朝間の協議に影響を与える可能性があるということでございますので、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。

山田(賢)分科員 一部では、これはインターネット上だと幾らかという金額が出ているんですけれども、それは今後の日朝交渉において非常に機微に触れる問題なので外務省として正式にお答えできないということも理解しております。

 では、外務省なんかも公表されております有償、無償の資金協力、この金額というのは幾らか教えていただけますでしょうか。

山野内政府参考人 一九六五年の日韓国交正常化の際に、日韓基本条約、それから日韓請求権・経済協力協定が締結されております。その協定で、無償三億ドル、有償二億ドルの経済協力が実施されることになっておりました。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 有償の資金協力というのは返還してもらえるものという理解をしておるんですけれども、この有償で行った資金協力というのは返還されたのでしょうか、教えてください。

山野内政府参考人 されております。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 では、次の質問に移らせていただきます。

 日本の敗戦後、武装解除している段階で、竹島の問題ですけれども、韓国が李承晩ラインと称して、漁民を殺害し、竹島を一方的に奪った行為というのは、これは武力による領土侵略であり、国際法上も違法であるという認識をしておりますが、この認識でよろしいでしょうか。

岸田国務大臣 一九五二年一月ですが、李承晩大統領は海洋主権宣言を行って、いわゆる李承晩ラインを国際法に反して一方的に設定し、そのライン内に竹島を取り込みました。

 国際法上の侵略の定義は必ずしも明確ではないと承知しておりますが、いずれにしましても、韓国は、我が国巡視船に対する銃撃等により、力をもって竹島を不法占拠したことは事実であり、我が国として受け入れられるものでは全くないと考えております。

 ただ、我が国は、この竹島の領有権をめぐる問題について、あくまでも外交ルートを通じた話し合いと平和的手段によって解決を図る考えであり、大局的観点に立って粘り強く対応していきたいと考えております。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 粘り強く交渉ということなんですが、具体的に、返せとか出ていけということ、退去なり返還ということを申し入れたことはあるのでしょうか。どちらでも結構です。

山野内政府参考人 竹島に関しては、国際法上も歴史的にも我が国固有の領土でございますので、そういう立場から韓国政府に対してその返還等々についてはしっかり申し入れているところでございます。

山田(賢)分科員 確認ですが、返還を申し入れているということですか。

山野内政府参考人 そのとおりであります。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 また、漁民を殺害するなり銃撃して領土を奪ったこの不法行為に対して、補償を求めたりということはしているのでしょうか。

山野内政府参考人 先生御指摘の事例は、いわゆる李承晩ラインによって生じた拿捕、さらにはそれに関連する事例の請求権でございますけれども、これについての請求権は、一九六五年の日韓請求権協定によって、日本から放棄しているところでございます。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 島根県が竹島の日という式典を一生懸命やっておられます。私も参加させていただいたんですが、この式典の開催、この式典を行うことに対して、韓国政府あるいは韓国の国会議員、韓国人が中止を要求している、こんな式典をやるなということを言っているんですが、これは単に外交問題ということではなくて、我が国における集会の自由という重大な人権の侵害だと思うんですね。

 これに対して、我が日本国民の人権侵害であり、重大な主権侵害だと考えるんですが、政府はこれに対して抗議をしたのでしょうか。

岸田国務大臣 二月二十二日、韓国外交通商部から在韓国日本大使館に、今回の島根県竹島の日式典の中止を求める旨の抗議がありましたが、我が方からは、竹島問題に関する我が国政府の立場に鑑み、韓国側の抗議は受け入れられない旨回答をさせていただいています。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 抗議が受け入れられない旨を伝えたということなんですけれども、もちろん、それはそのとおりなんですけれども、いつも日韓の交渉なんかを見ていますと、向こうが言ってきたことに、それは受け入れられない、これは当然のことなんですけれども、何か受け身な感じがするんですね。そうやって、受け入れられないと言うだけじゃなくて、そんなことを言うなとか、それは日本の主権侵害だという抗議、こういったことは言えないものなんでしょうか。

山野内政府参考人 今御指摘の集会の自由ということについては、これは憲法で保障された基本的人権の一つであって、最大限尊重されるべきものであることは言うまでもございません。

 ただ、この竹島の件に関して言えば、これはもうこの集会の自由という関係を云々する以前の問題として、我が国固有の領土であるわけでございまして、それが不法占拠されているということでございます。

 そもそも韓国政府は、竹島の日を、そういう式典をやるべきではないとか、そういう抗議をする立場にはないというふうに認識しておりまして、そういうことを言われたことに関して、日本側からそれに対して抗議をしたということでございます。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 これは例えは悪いんですけれども、ばかなことを言ってくるやつに一々かかわり合うとこっちまでレベルが下がる、こういう考え方は一つあるんですけれども、余りにひどい場合は、がつんと言わないと目が覚めないんじゃないかな、このように思うわけです。

 それは国家と国家のやりとりですので、人間同士のやりとりとは違うかもしれないんですけれども、これはおっかなびっくりやっているからそうなだけで、意外と、がんと言えば、向こうも次からは言わなくなるんじゃないかなと。例えば、向こうが独島の日だとか何かいろいろなことをやっているのをけしからぬと言うとか、そういう抗議はできないものなのかなと思うんですが、多分、お答えしにくいんでしょうから、答弁は結構でございます。私の個人的な感想にとどめておきます。

 引き続きまして、日本は韓国に対していろいろいいこともやってきたと思うんですね。経済発展、漢江の奇跡とか言われているものも、結局、日本の資金協力、こういったものがあって発展したんですが、これだけいいことをやったということを国内でもアピールしてくれ、韓国の中でも韓国国民にもっと知らせてくれというような、こういうことは申し入れできないものなんでしょうか。

岸田国務大臣 我が国は、かつて多くの国々、とりわけアジアの国々の人々に対して多大な被害と苦痛を与えました。この認識は、安倍内閣においても歴代内閣の立場と同じであります。

 朝鮮半島の植民地支配については、さまざまな評価があることは当然承知をしておりますが、一般論として、歴史にかかわる事柄についての評価は、歴史家、有識者の議論に委ねるべきであるというのが政府の考え方であります。

 いずれにしましても、政府としましては、日韓間には難しい問題はありますが、日韓双方で、新政権成立の機会も生かしながら、二十一世紀にふさわしい未来志向の関係を韓国政府とともに構築していくためにぜひ努力をしていきたいと考えております。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 最後の質問に移らせていただきます。

 朴槿恵大統領が、就任のとき、あるいは大統領就任式に出席した麻生副総理のもとで、歴史を直視しなければならないという趣旨のことをおっしゃっておられました。これはほかの機会でも、例えば独立運動記念式典なんかでも言われております。これに対する我が国の見解というのはどういうものでしょうか。

山野内政府参考人 二月二十五日の就任式の際ですけれども、朴槿恵大統領から、日韓の未来志向の協力のためにも歴史認識が重要である、若い世代が未来志向で前進できるよう今の世代が協力していきたいという話があったところでございます。その際、麻生副総理から、お互いの立場を理解することが重要であり、そのため双方の政治家として努力していきたいというような話がございました。

 歴史の問題ということについては、そういうような観点から対処していくということになろうかと思います。

山田(賢)分科員 私は、逆に、朴大統領は大変いいことをおっしゃってくれたと思っているんですね。よく言ってくれました、両国でそのようにしましょう、事実と証拠と国際法に基づいて正しい歴史認識を共有しましょうと堂々と日本政府は言うべきではないか、このように思っているんですね。

 我々自民党の幹事長であります石破茂幹事長が常々おっしゃるのが、政治家の役割とは勇気と真心を持って真実を語ることだ、このように言っています。真実とは何かというのは、いろいろな側面がある、時には有権者にとって耳の痛い話、聞きたくない話なんかもあります、でも、それを真心をもって相手に伝える、このことが重要だと常々おっしゃっておられます。私は、全くそのとおりだと思っています。国民を信頼しない者が国民から信頼されるわけがないということもおっしゃっておられます。

 外交関係においても同じで、相手が間違っている、これを言うと相手が怒るんじゃないかな、相手が機嫌を損ねるんじゃないかな、こんなことを考えて言いたいことも言わないのではなく、先ほど言いました、事実と証拠と国際法に基づいて、あなたの主張は間違っている、正しい歴史認識をもう一度お互いに見詰め直そう、こういうことを堂々と言うことで真の未来関係が構築できるのではないか、このように思っております。

 どうか、政府におかれましても、そういう考えを取り入れていただいて、堂々と日本の主張をしていただければと思います。

 私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございます。

伊藤主査 これにて山田賢司君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして外務省所管についての質疑は終了いたしました。

 これにて本分科会所管の審査は全て終了いたしました。

 この際、一言御挨拶申し上げます。

 分科員各位の御協力によりまして、本分科会の議事を終了することができました。ここに厚く御礼申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午後六時三十九分散会


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