衆議院

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第1号 平成14年3月1日(金曜日)

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本分科会は平成十四年二月二十六日(火曜日)委員会において、設置することに決した。
二月二十八日
 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。
      伊藤 公介君    衛藤征士郎君
      萩野 浩基君    池田 元久君
      岩國 哲人君    佐々木憲昭君
二月二十八日
 伊藤公介君が委員長の指名で、主査に選任された。
平成十四年三月一日(金曜日)
    午前九時開議
 出席分科員
   主査 伊藤 公介君
      衛藤征士郎君    大村 秀章君
      左藤  章君    谷田 武彦君
      萩野 浩基君
   兼務 伊藤信太郎君 兼務 青山 二三君
    …………………………………
   文部科学大臣       遠山 敦子君
   文部科学副大臣      岸田 文雄君
   文部科学大臣政務官    池坊 保子君
   政府参考人
   (文部科学省初等中等教育
   局長)          矢野 重典君
   政府参考人
   (文部科学省高等教育局長
   )            工藤 智規君
   政府参考人
   (文部科学省研究振興局長
   )            遠藤 昭雄君
   政府参考人
   (文部科学省スポーツ・青
   少年局長)        遠藤純一郎君
   政府参考人
   (文化庁次長)      銭谷 眞美君
   政府参考人
   (厚生労働省医政局指導課
   長)           石塚  栄君
   政府参考人
   (厚生労働省雇用均等・児
   童家庭局母子保健課長)  谷口  隆君
   政府参考人
   (厚生労働省社会・援護局
   障害保健福祉部精神保健福
   祉課長)         松本 義幸君
   文部科学委員会専門員   高橋 徳光君
   予算委員会専門員     大西  勉君
    ―――――――――――――
分科員の異動
三月一日
 辞任         補欠選任
  衛藤征士郎君     左藤  章君
同日
 辞任         補欠選任
  左藤  章君     谷田 武彦君
同日
 辞任         補欠選任
  谷田 武彦君     大村 秀章君
同日
 辞任         補欠選任
  大村 秀章君     衛藤征士郎君
同日
 第二分科員伊藤信太郎君及び第六分科員青山二三君が本分科兼務となった。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 平成十四年度一般会計予算
 平成十四年度特別会計予算
 平成十四年度政府関係機関予算
 (文部科学省所管)


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     ――――◇―――――
伊藤主査 これより予算委員会第四分科会を開会いたします。
 開会に先立ちまして、民主党・無所属クラブ及び日本共産党所属の本務員に御出席を要請いたしましたが、御出席が得られません。
 再度事務局をして出席を要請いたさせますので、しばらくお待ちをいただきたいと思います。
 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
伊藤主査 速記を起こしてください。
 御出席を要請いたしましたが、御出席が得られません。やむを得ず議事を進めます。
 私が本分科会の主査を務めることになりました。どうぞよろしくお願いいたします。
 本分科会は、文部科学省所管について審査を行うこととなっております。
 なお、所管事項の説明は、審査の冒頭に聴取いたします。
 平成十四年度一般会計予算、平成十四年度特別会計予算及び平成十四年度政府関係機関予算中文部科学省所管について審査を進めます。
 政府から説明を聴取いたします。遠山文部科学大臣。
遠山国務大臣 平成十四年度文部科学省関係予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 平成十四年度予算の編成に当たっては、厳しい財政状況のもとではありますが、我が国が本当の意味での豊かな国として発展し、世界の平和と繁栄に貢献していくためには、人材・教育・文化大国と科学技術創造立国を目指し、教育、科学技術・学術、文化、スポーツの振興を重点的に推進していくことが不可欠であるとの観点から、文部科学予算の充実に努めたところであります。
 文部科学省所管の一般会計予算額は六兆五千七百九十八億一千五百万円、国立学校特別会計予算額は二兆七千八百二十八億七千九百万円、電源開発促進対策特別会計予算額は一千五百三十九億五千六百万円となっております。
 以上、何とぞよろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。
 なお、これらの具体の内容につきましては、お手元に配付しております資料のとおりでありますが、時間の関係もございますので、主査におかれまして、会議録に掲載されますよう御配慮をお願い申し上げます。
伊藤主査 この際、お諮りをいたします。
 ただいま文部科学大臣から申し出がありました文部科学省所管関係予算の概要につきましては、その詳細は説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
伊藤主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
伊藤主査 以上をもちまして所管についての説明は終わりました。
    ―――――――――――――
伊藤主査 この際、分科員各位に申し上げます。
 質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願いをいたします。
 なお、政府当局におかれましては、質疑時間が極めて限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いをいたします。
 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。左藤章君。
左藤分科員 おはようございます。自由民主党の左藤章でございます。
 きょうは、平成十四年度の文部科学省の予算に関連して質問をさせていただきたいと思っております。
 先ほど遠山大臣から予算の概要を御説明いただきまして、一般会計で約十四億、それから国立学校特別会計で四百一億ほど増加になりまして、国全体の予算が非常に、二兆ほど減っている中で、しかも総理の一〇%カットというような中で、人材の問題、そして将来の子供たちの問題、そして科学技術の発展のために、このような予算を組んでいただいて、そして認められたということは、非常にありがたいことでありますし、文部省関係の各位の方々の努力に敬意を表したいと思います。
 それでは、ひとつ質問に入らせていただきたいと思います。
 この前も新聞等にも出ておったと思いますが、国の競争力、総合評価で日本の力が落ちてきたんじゃないかな、このように言われております。九二年が、日本が大体世界の中で三番目、アメリカが五番目ですが、二〇〇一年、昨年度は日本は実に二十六番目の評価になっております。ちなみに、一番目はアメリカでありまして、二番目はシンガポール、それから六番目は香港、今このようになっております。
 実は、御存じのように、一九八〇年代といいますと、アメリカは双子の赤字で非常に困っておりました。それで、どういうふうにアメリカは動いたのか、また、その他の国はどう対処をしたのかということで、やはり各国は教育、特に知識の知ですね、知の大戦争に勝利すべくいろいろ、特に理数科に注目をし、頑張ったんじゃないかなと思います。
 先ほど申し上げましたアメリカは、双子の赤字の時代に、八三年に、レーガン政権のときに、教育省から「危機に立つ国家」という文書が出ました。後で読ませていただきますけれども、その中でも、結局は教育水準に非常に警鐘を鳴らしたわけであります。
 その後、レーガンの後はブッシュ大統領になりまして、お父さんの方なんですが、二〇〇〇年の教育目標を六項目挙げまして、アメリカの生徒が理科、数学の成績で世界一になろう、このような目標を出します。
 また、その後、クリントンさんになられて、一九九四年に科学技術が国策として非常に大事だということになりまして、御存じのように、ゴア副大統領のスーパーハイウエー構想、つまり、IT国家を含めて、この時代からアメリカが大きく大きく世界に冠たる技術力を発揮したわけであります。
 九八年には、新しい国家科学政策として、技術情報化時代に理科、数学の達成度向上が必要ということで、クリントンさんは大きく出して、財界も含めて、そういう行動を開始した。
 それがアメリカの状態でありますが、イギリスはどうなっているかといいますと、九七年にブレアの政権ができまして、教育、教育そして教育という文句をブレア首相は言われて、数学能力向上作戦というのが政府主導でなされました。
 近隣の韓国、台湾、シンガポール、これも当然、理数科の強化が国の重点政策になりました。
 それと、北欧諸国、またインド、これについては、御存じのように理数科教育が非常に重視されて、ITの先端国と言われる。インドには、特にITの技術者がすばらしい者がたくさんいる、また北欧には、ノキアとか、携帯電話を含めたいろいろなすばらしい最先端の商品がある、こういう状況であります。
 そして、中国は、御存じのように、科目の科、それから教育の教、興す国、科教興国、科学技術と教育によって国を興すんだということで、一九九五年には国立大学の法人化をし、そして二一一工程、お聞きになっていると思いますが、二十一世紀には百前後の重点大学を決定して、国際競争力に勝てるすばらしい学校、技術力のある学校にしようということで、教育現場と生産現場が直結をする方向を見出しているわけです。どの大学にも校営企業、学校の校ですね、公じゃなくて、学校の校営企業が付設をされている。スピーディーな技術移転も可能になるということで、世界は技術力をもっていろいろな国の発展を遂げようとしているわけであります。
 そこで、質問でございますけれども、我が国も一九八〇年代には、実は我々JCのときには、産学連携で日本の技術をどんどんと言ってやっておりましたけれども、一時、産官学、三位一体というのは、何か癒着とかいろいろな諸悪の根元みたいなことを言われた時代がございました。一時、変なふうになってがたがたになった。
 ところが、その間、御存じのように、アメリカはどんどん、先ほど申し上げた産学の連携で非常に頑張って、世界に冠たるIT国家をつくった。日本は、それに比べて、残念なことに非常に技術力も落ちてきたんじゃないかな、このような不安もあります。
 そして、今回の予算では、約三百七十億円ほど去年から見て今年度はアップをされておられるようでございますが、日本の産官学連携、これをどのような方向で今後進めようとし、そして、先ほどの中国の二一一工程のように、トップ三十校、大学の方ですが、そういう学校をどういうぐあいに育成し、どのような予算をもって、その冠たる技術力を産と学とが、また文部科学省を中心とする人たちと連携をとっていくのかをひとつお答えいただきたいと思います。
遠藤(昭)政府参考人 お答えいたします。
 先生お話しのように、アメリカはもとよりですが、中国も大変産学官連携については一生懸命やっておりまして、したがいまして、我が国の将来の発展を考えますと、大学が、研究者の独創的な研究成果を活用して、産業界と手を結んで経済の活性化に寄与していくという産学官連携が極めて重要だというふうに認識をしております。
 これまでも、この産学官連携を推進するために、研究成果の特許化を進める技術移転機関、TLOと言っておりますが、これの承認とか、あるいは教官の兼業規制の緩和等々、かなりな取り組みをしてきております。その結果、企業との共同研究の件数も、過去十年間を比べますと五倍に伸びておりまして、大学も相当実績を積み上げてきておりますが、ほかの国と比べると、まだまだもっと頑張らなければいけないというふうに考えております。
 そこで、こういった取り組みをさらに強化するため、昨年の六月に、大学を起点とする日本経済活性化のための構造改革プランというものを発表いたしました。そこでも重要項目として取り上げております。
 十四年度の予算でございますが、二、三点申し上げますと、一つは、大学発ベンチャー創出を促進する研究助成制度、先生が何かやりたいといったときにそれを支援するという仕組みとか、あるいは、目ききと言われる、コーディネーターと言っておりますが、人材の派遣とか、あるいは日本版シリコンバレーを目指した知的クラスターの創成のための支援等々、重点的に予算を組んでいきたいということで、十四年度予算にも計上しておるところでございまして、今後とも積極的に取り組んでまいりたいというふうに考えております。
左藤分科員 今、大学発のベンチャーとか、お話がありました。
 先ほどちょっと申し上げましたけれども、トップ三十という、サーティーという大学をどうするのか、いつまでにそういうものを選定しながら、今まで出してきた予算プラスアルファで出すんだろうと思いますが、どの程度を想像し、アメリカとか中国とかそういう国に対抗するのか、その辺はひとつもう一度お答えをお願い申し上げたいと思います。
工藤政府参考人 昨年の段階で、いわゆるトップサーティーという打ち出しをしたのでございますが、心は、先生おっしゃいましたように、限られた資金を重点的に配分してトップクラスの研究教育拠点を育てていこうということでございます。
 今さら申すまでもなく、日本の研究水準の評価はいろいろございますけれども、いろいろな指標で見ますと、分野によりましては、かなり世界の国に伍しているといいましょうか、リードしているような部分もあるわけでございまして、そういう部分もさらに勢いづかせ、あるいは、いまいちというところをさらに守り立てていこうというのが趣旨でございまして、今御審議いただいております平成十四年度予算でも百八十二億の新しい予算を措置させていただいてございます。
 ただ、これがすべてではございませんで、研究振興というのは、やはり科学研究費補助金というものが千七百億余の大きな塊としてございまして、そういういろいろな研究助成あるいは大学への振興を通じまして、私ども、ここいつまでという目標値を明確に決めているわけではございませんけれども、国公私を通じて、せっかくのポテンシャルのある大学の活性化を進めて、おっしゃいますような御期待にこたえるように私どもも努力してまいりたいと思っております。
左藤分科員 そのようなことで、ひとつ大いに期待をしながら、頑張っていただきたいと思います。
 特に、そういう科学技術とか国の競争力ということになりますと、どうしても先ほどの理科、数学の力、子供たちの力というのが非常に大切であろう、教育の問題、非常に大きな問題になるんじゃないかな、このように思います。
 一九八三年、先ほどのアメリカの教育省が出した「危機に立つ国家」という文書があるんですが、抜粋だけちょっと読ませていただきますと、「我々が教育水準や理想を語るとき、」いろいろ書いてあるんですが、「一貫性を欠いた、時代遅れの、しかもつぎはぎだらけの学習をしているのである。」そして、いろいろな人たちが「アメリカはいま、危機的状態にある」、一九八三年の話です。このようなときにこう言っているんですね。「アメリカにはこの危機に対処する力が必ずある。もしここに提案する事柄が、いまはじめられ、我々の推奨事項が数年ですべて実現されるならば、学校、大学の改革は実現されるだろう。 また現在の下降状態を上昇に転じることさえ夢ではない。」ちょっと今の日本の状態に似たような感じもしますが。「このひどい落ち込み状態は、他ならぬ我々の目的意識の弱さやビジョンの混乱、潜在能力の浪費、指導力の欠如に根差しているのであり、我々の能力を超えたものが原因なのではないからである。」つまり、自信を持って頑張れということも含めてなんですが、そういう教育水準をどうするかということがやはり非常に大きな問題じゃないかな、このように私は思います。
 それで、来年度の四月一日から週休二日制ということになりますが、ひょっとして子供たちの学力がどうなるんだろう。先ほど申し上げた理科、数学、算数が特に心配でありますが、ちょっと私も調べてあったんですけれども、一九七七年、ゆとり教育の提唱があって、授業時間数は一割削減、内容は二割削減になっているんです。八八年には隔週週休二日制になった。そして、小学校の理科の時間は六百二十八校時が四百二十に減った。中学の理科に関しては、四百二十から、三百十五から三百五十の間の時間数に。今度二〇〇二年、ゆとり教育の週休二日制ということになりますと、小学校の理科の時間数は三百五十ぐらいに減る。時間が二割、内容が三割削減される。そして、中学校の理科時間数は二百九十ぐらいになってしまう。こういう状況であります。
 これでどうなるのか、理科や算数の学力を非常に心配をしております。ところが、今現在どうなのかといいますと、ここ十年から二十年、理科を削減した、先ほど言いましたけれども。大体これは世界と逆行しているんじゃないかな、後でこれの根拠を申し上げますが。
 これは二月の三日に産経新聞が出しましたベネッセの調査の件なんですが、テストの平均の解答率の問題がありました。平成七年度、十三年度の比較をしております。例えば、これは高校生なんですが、数学が六〇・七が五七・一に落ちています。物理が四六・四が四一・六になっています。化学が三六・九が三三・八。総じて、理科、数学の力が落ちている。
 また、主要各国の科目別の時間比較はどうなっているんだろう。先ほど申し上げました授業時間帯ですね。調べると、先ほどは世界一位だろうというアメリカが、数学が百五十七時間ですね、それから理科が百三十七。世界の国際平均が、数学が百三十、理科が百十なんです。ところが日本は、今現在で申し上げますと、数学が百五、理科が九十六。こういうことを考えると、理科、数学、ゆとり教育して本当に大丈夫だろうか、我々は非常に心配をするわけであります。
 IEAの調査とかいろいろ見ますと、私らは昔、日本の小学校、中学校含めてですが、大体理科、数学というのは世界一位だったと思う、十五年以上前は。ところが、一九九五年なんかは、例えば数学ですと四番になって、九九年には六番目に落ちております。OECDの資料でも、同じように落ちている。理科においても、一九九五年は三番目になって、九九年には四番目に落ちている。ちなみにどこが一番かといいますと、シンガポールとか台湾とかが一、二位を争っているということでございますので、本当に日本の子供たちの基礎的数学、理科の学力がこのままだったら世界の科学技術を将来背負えるんだろうか、非常に私は不安に思っているのが今現状でございます。
 それで、こういう理科離れに対して、文部省としてはいろいろな対策を打っていると思いますが、その辺についてひとつ御説明をしていただきながら、また、四月からなる週休二日制に対するそういう問題を含めてお答えをいただければありがたいと思います。
    〔主査退席、萩野主査代理着席〕
矢野政府参考人 知的創造力が最大の資源でございます我が国にとりまして、科学技術の発展は極めて重要でございます。そういう意味合いにおきまして、学校における理科教育や数学教育の充実は大変大切なことと考えているところでございます。
 御指摘のように、昨今、子供たちの科学技術離れあるいは理科離れなどについての指摘があるわけでございますけれども、我が国の児童生徒の学力の状況、先ほど先生からも御指摘がございましたけれども、子供たちの学力の状況を見てみますと、OECDやIEA、これは国際教育到達度評価学会でございますが、IEAが実施いたしました国際比較調査の結果によりますれば、我が国の児童生徒の理科、数学の成績は、国際的に見て上位に位置しておりまして、また、過去の経年的な成績を見ましても、正答率などで各国との比較をしてみましても、成績が劣っているということはないわけでございます。そういう意味で、全体としておおむね良好であるというふうに私どもは考えておるわけでございます。
 しかし、その一方で、理科が好きであるとか将来数学を使う仕事がしたいといった者の割合や、あるいは宿題や自分の勉強をする時間が国際的に見て最低レベルであるなど、児童生徒の学びへの意欲あるいは学ぶ習慣が必ずしも十分ではない、そういう課題があるというふうに私どもは考えているところでございます。
 このため、先ほどお話がございましたけれども、新しい学習指導要領、この四月から完全実施をするわけでございますけれども、この新しい学習指導要領におきましては、こうした状況を踏まえまして、ややもすると知識を一方的に教え込みがちでございましたそれまでの教育を改め、基礎、基本を確実に身につけさせ、それをもとにしてみずから学びみずから考える力、そうした思考力、判断力などの生きる力をはぐくむことを基本的なねらいとしているわけでございます。
 特に理科につきましては、観察、実験といった方法あるいは課題学習といったような学習方法を重視いたしまして、児童生徒の学ぶ意欲、知的好奇心、さらには探求心を高めて、理科好き、算数好きな児童生徒がふえるように、そういう観点で内容の改善を図ったところでございます。
 また、中学校及び高等学校につきましては、特に選択学習の幅を一層拡大いたしまして、生徒の興味、関心あるいは能力等に応じて発展的な学習ができるようにいたしたところでございます。
 さらに、具体的な施策といたしましては、平成十四年度予算案におきましては、学力向上フロンティア事業とか、あるいは理科、数学に重点を置いて教育を行いますスーパーサイエンスハイスクールなどを盛り込みました科学技術・理科大好きプランなどの施策を新たに推進いたすこととしているところでございまして、私どもといたしましては、今後とも、こうした取り組みを通じて科学技術・理科教育の充実に努めてまいりたい、かように考えているところでございます。
左藤分科員 そういうぐあいに、しっかりとひとつ、ゆとり教育の中で理科離れがないように、そして、理科大好きプランを含めたいろいろな諸施策、そして実験等を学校でできるようにお願いを申し上げたいと思います。
 それと、今度の予算の中で、公立義務教育諸学校教職員定数改善計画で、二年次分として五千三百八十人の増加をしております。たしか五年間で二万何ぼだったと思うんですが、これで今おっしゃったようなきめ細かい教育をしたいわけですが、現実、我々の小学校の先生に聞くと、昔の子供と違って、非常にやんちゃな子が多過ぎて大変な状況が小学校の現場であるわけでありますし、そして、理科の専科の先生が少ないということもあるわけであります。
 そういう面を含めてこういう増員を図っておられると思いますけれども、これは五年計画で、それで様子を見てまたそのときに考えるということなのでしょうか。それとも、もっときちっと、十年計画で、先ほど出ておりますけれども、中学校の理科の先生が小学校で教えるとかいうことも含めて、どういう計画をなさっているのか、ちょっと簡単にひとつお答えをお願い申し上げたいと思います。
矢野政府参考人 御指摘のように、昨年法律改正をしていただきまして、十三年度から五カ年計画で、義務教育諸学校につきましてはトータルで二万六千九百人の定数改善計画をお認めいただきました。十三年度からスタートいたしまして、来年度は、その二年次分として必要な定数を計上いたしているところでございます。これによりまして、小中学校におきましては、大体主要教科につきまして二十人程度の少人数指導がすべての学校においてできるということでこの計画をつくっているところでございます。私どもといたしましては、この五年計画で着実にその計画を実現したいということがまずの目標でございます。
 それから、理科等についての専科指導のお話がございましたけれども、これにつきましては、実はきょう閣議決定をいたしまして、そういうことが可能になるような教職員免許法の改正を国会に提案をして、今度の国会で御審議をいただくことになってございますが、その中では、小学校におきましても、中学校あるいは高等学校の数学や理科の免許状を持った者が、小学校の、あるいは中学校の高学年でもそうした授業ができるようにということで、小学校レベルでの専門性の高い指導ができるような、そういう制度改正もいたしているところでございます。
 そういうことを通じて、御指摘の点について、よりきめ細かな指導を通じて、子供たちの学力向上がさらに進むようにいたしてまいりたいと考えているところでございます。
左藤分科員 ありがとうございました。
 そういうことで、しっかりとひとつ、子供たちの理科離れがないように、子供たちが興味を持つように、教育の方をお願い申し上げたいと思います。
 少子化時代と言われて、この前、子供たちの出生率を一・三九で計算しますと、二〇五〇年には、今百二十万生まれているのが六十七万人になってしまう、こういう話があります。また、我々、教育現場で公設民営という言葉も使っていろいろな話をしております、私立に任せた方がいいんじゃないかと。先ほど言いました六十七万人になりますと、もう私立が要らないか公立が要らないかというような状況になってしまうわけでありますので、この辺の考え方も、やはり五十年先という、我々は亡くなっていると思いますけれども、文部省、そういう長い目の、方針がころころ変わるんじゃなくて、公立と私立のバランスの問題、そしてどこを私立にゆだね、また公立はどの点をやるんだということを、しっかりとまた施策をつくっていただければありがたいなと思います。
 時間がないので、ライフサイエンス、ナノテクノロジーの件について質問をさせていただきたいと思います。
 実は、もう御存じのように、ITの時代はアメリカにやられてしまって、今一生懸命IPv6の技術開発をやっておりますけれども、日本が世界にまだ今から頑張ればいけるというのは、やはりライフサイエンスの技術、そしてナノテクノロジーの関係の技術だろうと思います。
 実は、私どもの地元に京阪奈学園都市というのがあるわけであります。ここに我々は都市再生の位置づけの中でもライフサイエンスの拠点を、京阪奈学園都市だけじゃありません、京都大学とか大阪大学とか、すばらしい医学部、そしてまたいろいろな、私ども大阪には道修町という、薬屋の大きな会社がたくさんあり、研究所も近くにたくさんあるわけであります。
 このライフサイエンスを本当に世界に冠たる技術として、研究施設をいろいろなところにつくりたい、これはわかるんですが、やはり私は、そういう一カ所か二カ所に集中をして、本当に資本と頭脳を集めてすばらしいものにしないと、ばらばらにやっていたんでは連携もできないし、情報もおくれてしまう、このような危機感を持っております。
 そういう面で、ぜひひとつ、ライフサイエンス、またナノテクノロジーの技術の持ち方、そして研究所の持ち方について御意見を賜りたいと思います。
遠藤(昭)政府参考人 お答えいたします。
 ライフサイエンスにつきましては、二十一世紀は生命科学の世紀だと言われておりまして、これはもう特に力を入れていかなければいけない分野だというふうに思っております。また、各国もポストゲノム研究が加速をされておりまして、私どもも重点的な分野だということで推進を図っております。
 我が省は、政府のライフサイエンス関係の約半分を担っておりまして、研究開発の中心的役割を果たしておりまして、ゲノムとか脳とか発生・再生等々の研究を、先生がおっしゃったように、ある程度拠点的に今進めております。
 十四年度、簡単に申し上げますと、幾つかの施策をやっておりますが、例えばたんぱく質の構造・機能解析について、今後五年間で約三千種、これは全体で一万あるんですけれども、それのうちの三千種の解析をやるというふうなこととか、個人に合ったテーラーメード医療の実現のための技術開発を進めようとか、そういった幾つかの点に絞って力点を置いてやっていきたいということで、十四年度も百六十億円の増額をしております。
 先生おっしゃった国際的な拠点、その点も大変大事な問題だと思っています。特に国家的、社会的な課題に対しては、達成目標をあらかじめ決めて進める必要がある研究というのは必ずあるわけでございまして、そういった場合には拠点を決めて重点的に研究を進めていくということが大事だと思います。
 具体的には、先生もおっしゃったように、昨年八月の都市再生プロジェクト第二次決定におきまして、ライフサイエンスの国際的な拠点形成ということで大阪圏が位置づけられております。十三年度の二次補正、それから十四年度の本予算、それぞれの中で、大阪を中心に、神戸とか京都も含めて連携をとって、総体的にやりましょうという予算措置を講じておりますので、こういった点もさらに充実をしていきたいというふうに考えております。
 それから、ナノも、もう簡単にしますが、これは我が国の中では比較的研究開発水準は高い、強いと言われておったんですが、どうもアメリカなどが急迫をしてきておりまして、決して今油断ができません。我が国としても、そういう国際的な視点から戦略的にもう少し力を入れていかなければいけないということで、いろいろな施策をやっているんですが、例えばナノテクノロジー総合支援プロジェクトを創設しようということで、外にいらっしゃる研究者が大型施設を使いたいといったような場合には、その場を提供する支援をしようとか、やはり結集していろいろなものが利用できて効率的にやれるという仕組みを十四年度にも講じていきたいというふうに考えておりますので、この点も充実をしていきたいと考えております。
左藤分科員 時間が参りましたので終わらせていただきたいと思いますけれども、ぜひこれは、ライフサイエンス、またナノの世界というのは非常にロングスパンの話だろうと思います。これからもしっかりと文部科学省として、予算も含めて、やはり国の将来を占う大事な大事な技術力だろうと思いますので、これがもしうまいこといけば日本は世界に冠たる科学技術立国にまた復帰ができるんじゃないか、このように思いますので、今後もひとつよろしく、予算も含めて、人材も含めてお願いを申し上げて、質問にかえさせていただきます。
萩野主査代理 大臣にはいいですか。
左藤分科員 では、大臣から一言だけお願いします。
遠山国務大臣 ずっと御質疑聞いておりまして、左藤委員の日本の教育に対する危機感、それから科学技術を振興しようという大変な熱意を感じまして、私ども一生懸命やっておりますが、また一段、これはしっかりやらなくてはならないというふうに思った次第でございます。
 特に最初の方の、各国がむしろ日本の成功した学校教育を目指して今物すごく一生懸命やっているんですね。これにおくれをとってはいけないというか、日本はこれまでとはまた違った、本当の意味の実力を備えた人材を養成していくということについて、私は、しっかりやらなくてはならない、そういう時期だと思っておりまして、今後とも、ぜひとも御指導、御支援をお願いしたいと思います。ありがとうございました。
左藤分科員 では、質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
萩野主査代理 これにて左藤章君の質疑は終了いたしました。
 次に、谷田武彦君。
谷田分科員 自民党の谷田武彦でございます。
 幾つかの項目につきまして、順次お尋ねをさせていただきます。まず最初に、都心部の公立小学校の統廃合についてお尋ねをいたします。
 私の地元名古屋市におきましても、最近公立小学校の統廃合の動きが出てまいりました。児童数の減少に伴い、小学校の統廃合は既に多くの都市で行われているところであります。京都市では、長年にわたって地元関係者との協議を重ね、民主的な、非常に好ましい形での統廃合が行われていると聞いております。一方、失礼な言い方になりますが、東京の千代田区では、トップダウンで機械的に進めてしまったがために、伝統校がなくなってしまうと住民から大変な反発があったと伺っております。また最近では、小学校だけではなくて、京都の中心部では中学校の統合を要望する動きも起きているようであります。
 今後、少子化が進むに従い、都心部を中心に統廃合を望む声が出てくるかと思われますが、その一方では、それぞれの学校の長年にわたる歴史や伝統、卒業生の母校に対する愛着、さらには従来の地域組織との関係等もあり、簡単には進まないと思われます。また、小規模校では小規模校としてのすばらしい、行き届いた教育が行われていることも事実でありまして、単に財政面あるいは合理性のみを重視するのもいかがかと思われます。さらに、バブルが崩壊をいたしまして、人口の都心への回帰現象も一部に見られるようになってまいりました。性急な統廃合には問題があると私は思います。
 文部科学省としては、公立小中学校の統廃合についてどのようにお考えでしょうか。基本的な御所見を大臣から承りたいと存じます。
遠山国務大臣 小中学校の統合につきましては、やはり地域の実情に沿って各設置者において適切に判断されるべきものと考えております。
 それで、学校統合を進めるに当たりましては、文部科学省としましては、また私も個人的にもそうでございますけれども、小規模校のメリットも随分あるんだと思っております。それは、教員組織やそれから施設設備等の充実を図る上で困難を伴う点が多いのではございますが、教職員と児童生徒の人間的な触れ合い等の面で教育上の利点が大変考えられます。また、御指摘のように、それぞれの地域の歴史、伝統、あるいは名門校としての誇りもございましょうし、また地域の中で十分学校の存在が行き渡っているということで、私は、小規模校のメリットも大変あるというふうに考えている一人でございます。したがいまして、統廃合につきましては、地域住民の理解と協力を十分に得ることができるように、十分な検討の上でやってもらいたいと思っているわけでございます。
 この点は、既に昭和四十八年の通知におきまして、学校規模を重視する余りに無理な学校統合をすることは避けること、また、小規模学校としての教育上の利点も考えて総合的に判断すること、それから、学校統合を計画する場合には、学校の持つ地域的意義等を踏まえて、十分に地域住民の理解と協力を得て行うように努めることなどの留意点を示しておりますので、それぞれの設置者が賢明な判断をして進めていただきたいと思います。
谷田分科員 ありがとうございました。全く同じ考えでございます。
 次に、通学区域の自由化、学校選択制度についてお尋ねをさせていただきます。
 平成九年に当時の文部省から、教育上の影響に配慮しつつ通学区域制度の弾力的運用に努めるようにとの通知が出されました。これを受けて、全国で通学区域自由化の動きが少しずつ起きております。残念ながら、私の地元の名古屋市の区役所市民課へ参りますと、その窓口には「越境入学はやめましょう」と大きく書かれておりますが、東京都の品川区や日野市で既に自由化を実施、また足立区や江東区でもこの春から自由化が決まっておるようであります。
 その形態もいろいろございまして、例えば、幾つかのブロックに分けて、そのブロックの中からどの学校を選択するかといういわゆるブロック型や、完全に自由に選択をできる完全自由形、通学区域に隣接する学校も選べるという隣接校型等々のさまざまな形態があるようであります。
 一方、東京の品川区では、区立小中学校への外部評価制度導入を発表したと聞いております。このことは保護者や子供たちにとって学校選択の材料になると思われますが、同時に、よい学校、悪い学校というように学校を色分けしてしまう危険性もはらんでいるかとも思います。
 私は、通学区域の自由化について基本的に賛成であります。学校間、教師間に適切な競争原理を入れ、それぞれが創意工夫を競い合う環境をつくることが必要であると思います。しかし、その一方では、よい学校を進学校、悪い学校を教育困難校とに二極化し、学校間格差が広がるおそれもあることも事実であります。
 このような状況にある通学区域自由化、学校選択制度を大臣はさらに推進すべきであるとお考えなのか、今日までのさまざまな試みをどのように評価していらっしゃるのか、御所見を承りたいと存じます。
遠山国務大臣 もう御承知のとおり、公立の小中学校の通学区域と申しますものは、市町村教育委員会が児童生徒が就学すべき学校の指定を行う際に、その指定の目安として、あらかじめ、地域の実情等に応じて、各市町村教育委員会の権限と責任において定めているものでございます。
 今いろいろな試みがなされておりますけれども、いわゆる学校選択制度の導入によって通学区域を自由化していくということにつきましては、メリット、デメリットがございます。まさに委員も既に整理していただきましたが、私どもとしましても、メリットとしては、一つは保護者が学校により深い関心を持つようになるという点、あるいは保護者の意向、選択、評価を通じて特色ある学校づくりが進められるという点がございます。一方、デメリットとしましては、学校の序列化でありますとか学校間格差が発生してまいります。私は、競争的な面というのも学校においても必要だとは思いますけれども、余りにも格差が生ずるという面では、いろいろなデメリットもあるかもしれません。また、学校と地域との連携意識が希薄になる可能性があるというようなことが挙げられると思います。
 文部科学省といたしましては、いわゆる学校選択制度を導入するかどうかにつきましては、こういったメリット、デメリットをそれぞれの地域に応じて十分に考慮していただきまして、その実情とか保護者の意向に即して、各自治体においてこれも主体的に十分検討の上で判断をしていただきたいというのが私どもの考え方でございます。
谷田分科員 ありがとうございました。
 東京の品川区で、区立小学校と中学校を合併させた小中一貫校の新設が検討されていると聞いております。小中一貫の公立校は、過疎地では一部導入されておるようでありますが、都市部では例がないと思います。教育の一貫性で学力の向上を目指し、生活指導上の効果を上げ、私立への流出を防ぐのがねらいのようであります。
 また、千代田区では、区立中学と都立高校との一貫校を開設する方針を決めたそうであります。まことに画期的な試みと思うわけであります。
 このような公立学校による小中一貫、中高一貫教育を目指す取り組みに対する文部科学省の基本的なお考えをお聞かせいただきたいと思います。一貫教育のメリット、デメリットを、あわせお答えをいただきたいと存じます。
遠山国務大臣 小中一貫教育など公立学校におきましてさまざまな工夫を行っていただくということは、現行制度の中で可能なものでございまして、我が省といたしましては、各自治体においてさまざまな取り組みがなされていることについては、積極的に評価しているところでございます。
 特に、中高一貫教育につきましては、既に平成十一年度から制度化されておりまして、平成十三年度現在、公立で三十三校設置されておりまして、国としましても、その設置促進に努めているところでございます。意外に私はこれが進んでいないなという感想は持っておりますが。
 このような一貫教育では、仰せのように、メリット、デメリットがございます。メリットといたしましては、計画的、継続的な指導を行うことが可能となりますし、児童生徒が落ちついた雰囲気の中で勉学をすることができるといったメリットがあると私は思います。
 他方で、デメリットといたしましては、児童生徒集団が長期間固定されるということによりまして、児童生徒の中では学習環境になじめない者も出てくるというような点も指摘することができるかと思います。
 我が省といたしましては、こういう一貫教育に取り組むかどうかについては、メリット、デメリットを十分に踏まえながら、先ほどと同じような答えになって恐縮でございますが、しかしながら、私は、いろいろな試みを各地域でやっていただいて、その目的が本当の意味の学校教育を充実していくということであれば、大いに積極的にやっていただきたいと思っているところでございます。
谷田分科員 ありがとうございました。同じような答えになってそれは当然でございますので、どうぞ御遠慮なく。
 次の質問に移らせていただきたいと思います。
 愛知県の高浜市が、今年四月より、教育委員会の職務でございました生涯学習と幼稚園教育とを市長部局へ移すということを決定したと聞いております。言うまでもなく、教育は教育委員会という独立機関が所管することによって政治からの中立性が確保されるわけでございまして、学校教育の一環である幼稚園や社会教育である生涯学習を教育委員会から切り離すのは不適切であると私は思います。
 この高浜市では、市長が教育委員会に介入し過ぎるというようなことで、今月末までに五人の教育委員全員が辞職をすることが決まっておるそうでありますが、高浜市のこの生涯学習と幼稚園教育を教育委員会から切り離すという決定に対し、文部科学省はどのようなお考えをお持ちなのか、そして、どのように対応されるのか、御所見を承りたいと思います。
 また、既に、島根県の出雲市では生涯学習分野を、そしてまた愛知県の豊田市では幼稚園教育を教育委員会から市長部局へと移していると聞きますが、これらに対しましては今日までどのように対応してこられたのか、お聞かせをいただきたいと存じます。
岸田副大臣 今先生から御指摘いただいた点ですが、愛知県教育委員会によりますと、高浜市教育委員会においては、本年四月から、現在教育委員会が行っている幼稚園教育、生涯学習、文化、スポーツなど、小中学校教育に関する事務を除いたすべての事務を市長部局に担当させる方向で今検討しているというふうに聞いております。これは、地方自治法第百八十条の七に基づき、市長部局の職員に補助執行をさせるという方向で検討しているというふうに聞いております。
 このことにつきましては、そもそも教育委員会の制度は、教育行政における中立性、安定性の確保が極めて重要であるという認識のもとに、首長から独立した合議制の執行機関を設けるというのがこの教育委員会の趣旨であります。ですから、教育行政の中立性、安定性ということを考えますときに、今検討されているという動きは、教育委員会制度の趣旨から見て適切ではないというふうに判断しております。
 この文部科学省の判断、これは愛知県教育委員会を通じて高浜市教育委員会に伝えておりまして、引き続きまして、この判断を伝えて指導をしていきたいというふうに思っております。
 そして、出雲市等他の例についても御指摘がございましたが、出雲市においても、島根県教育委員会を通じて同じような指導をしているところでありまして、引き続きまして、教育委員会制度の趣旨、そして文部科学省の判断、こういったものを的確に指導に反映していきたいというふうに思っております。
谷田分科員 ありがとうございました。
 この件は、先ほどまでの質問の答弁で、各自治体の主体性に任せるよというものではなくて、やはりこれは文部科学省がはっきりと強い形で指導すべき性格のものだと思います。
 これもちょっときつい言い方になりますが、高浜市においては、教育委員会というものが一体どういうものかという基本的な認識が私はないと思いますね。多分この市長さんに理解ができていない。ですから、これはもっと強い姿勢で臨んでいただきたい。
 それから、さっきちょっとお聞きをした出雲の事例、それから愛知県の豊田市の事例、これもちょっと失礼な言い方になって申しわけないのですが、特に豊田の事例などは、今回の高浜の問題が出てくるまでは余りよく御存じでなかった、文部科学省がよく掌握をしていらっしゃらなかったんじゃないかなということがちょっと気になるのですよ。もう一年前からやっているわけですからね。今日までそれを放置してきたということは、これは文部科学省が悪いとは言わないのだけれども、愛知県の教育委員会がもっとしっかりした情報を文部科学省に提供すべきだ。これに対して、今からでも遅くないわけでありますから、ぜひとも正しい姿に導いていただくようにお願いをしたいと思います。
 次の質問に移らせていただきます。
 私は、国会議員になる前に長いこと名古屋の市会議員を務めさせていただいておったのですが、市会議員時代に東京の中央区に視察に参りました。中学校と保育園とそれから老人福祉施設とが一体となった、たしか晴海だったと思いますが、すばらしい複合施設を拝見したことがございます。
 これは、土地の有効利用ということで、たしか地下一階、地上七階のものだったと思うのですが、そういった意味とともに、もう一つは、同じ官の中でも、それぞれ縦割り行政の批判がいろいろあるところでありますが、その縦割りの垣根を取っ払って、いろいろなところが一緒になって有効利用をしていく、まさにこれが今小泉内閣が目指している都市再生の先駆けかななんて思ったわけでありますが、すばらしいことであります。
 それとともに、また、保育所あるいは中学校と老人の皆さんの施設とを一緒にすることによって、子供たちとお年寄りとの交流も頻繁に行われまして、本当にそれぞれの家庭では今少なくなりましたそういった世代間を超えた触れ合いも行われる、これもすばらしい試みだと思うわけであります。
 このように、学校が中心となって、あるいは学校を初めとして教育関係の施設が指導的役割を果たしながら、複合施設を今後ともおつくりをいただくべきだと私は思っておりますが、いかがでございましょう。
 極端な言い方になりますが、例えば駅の前に教育委員会が中心になって図書館をつくった、そこに一緒にショッピングセンターもあるよ、これでも私はいいと思うのですね。教育委員会の施設と民間の施設とが一緒になって町づくりを考えていく、これも私は一つの行き方だと思うのでありますが、ひとつ、教育関係施設を中心とした複合施設のあり方についての御所見を承りたいと存じます。
岸田副大臣 まず、基本的な考え方といたしまして、学校施設と社会福祉施設の複合化、これは大変結構なことだというふうに認識しております。
 先生御指摘になられましたように、高齢者を初めとする地域の方々と児童生徒が交流をするというようなこと、さらには生涯教育における拠点となる、こういった期待も持てるということ等々を考えますときに、ぜひこうした複合化は進めるべきだというふうに思っております。
 従来から、例えば平成五年度からは学校施設複合化推進事業を実施しておりまして、平成十年度からは文教施設に福祉施設を追加するなど、こうした複合化対象施設の拡充を図ってきているところでありますし、また、平成十四年度予算におきましても、地域・学校連携施設整備事業といたしまして、これは十億一千三百万円の予算をお願いしているところであります。その中の三類型の中に、複合化推進型ということで複合化を推進する事業を盛り込んでいるところであります。
 今後とも、こういった姿勢で複合化に努めていきたいと思っております。
谷田分科員 ありがとうございました。
 今副大臣からお答えをいただきましたのは、学校施設と社会福祉施設というのが主たるものであったのですが、もっとその枠を超えて、本当に民との共同開発、これもやっていただけたらなと思います。あくまでも要望にとどめたいと思います。
 次に移りますが、私は名古屋の中区という都心部に住んでおりますけれども、最近、外国人の皆さんがどんどんふえてまいりました。当然、子供さんもいらっしゃるわけでございまして、私の地元の小学校、中学校では、そういった外国人の子供さんをどんどん受け入れる、こういった状況が出てまいりました。
 そういたしますと、現場の先生方の御苦労というのは大変でございまして、我々はすぐ外国の皆さんというと英語が通じるかなんて思うんですが、本人はもちろん親御さんも全然英語もわからない。子供というのは比較的すぐ環境になじんでくれまして、早い時期に日本語を覚えてくれるんですが、親の方はなかなかそうはいかないわけでございまして、現場の先生は大変な御苦労をなさっているわけでございます。名古屋の場合でも、特別に教員を余分に配置をしていただいて対応するなど、いろいろしていらっしゃるわけでありますが、これは本当に、人をふやせばそれで済むという話でもないんで、大変な御苦労がございます。
 まさにこれが今日の国際化の一つの現象かと思うわけでございまして、避けて通れない問題でありますが、教育委員会といたしまして、こういった外国人の子供さんの増加に伴う対応、これはどのようになっているのか、お聞かせをいただきたいと思います。
矢野政府参考人 平成十三年九月、昨年の九月現在では、我が国の公立学校に在籍する日本語指導が必要な外国人児童生徒数一万九千二百五十人となっておりまして、過去最大になったわけでございます。このような状況の中で、外国人児童生徒の受け入れ体制の強化ということは、今後ますます大事になるわけでございます。
 私どもといたしましては、外国人児童生徒ができる限り早く我が国の学校生活に適応できますように、日本語指導の充実を図ることを中心といたしまして、そのために、先ほどお話がございましたけれども、日本語指導教員の加配措置、全国で約千名弱の加配措置をいたしているわけでございますが、また教育相談員の派遣、さらには担当教員研修会の開催、そして日本語指導教材や指導資料の作成、配布など、必要な施策を進めてまいってきているところでございます。
 さらに、受け入れ体制の強化を支援する一環といたしまして、今年度から新たに、教科学習に対応した日本語カリキュラムを作成するため、外国人のための日本語カリキュラム開発を行っているところでございまして、外国人児童生徒の増加に対しましては、私どもといたしましては、今後とも、その受け入れ体制強化のための先ほど申し上げましたような諸施策を講じてまいりますとともに、一般の児童生徒との相互理解を通じて、国際理解教育の一層の推進にも努めてまいりたいと考えておるところでございます。
谷田分科員 ありがとうございました。
 最後の質問でございます。細かいことで恐縮でございますけれども、今お手元にお許しをいただいて資料をお配りさせていただきましたが、名古屋城のお堀にかかわる急傾斜地問題についてでございます。
 御承知のように、この名古屋城というのは国の特別史跡に指定をされておりますが、今、ペーパーの二枚目、一番下の方の簡単な図面と申しますか絵を見ていただければと思いますが、これはちょっと古いもので文部省なんて書いてあるんですけれども、こちらの方はお城、名古屋城でございまして、真ん中のへこんだところがいわゆるお堀でございます。もちろん水はありません。かつて、ここには瀬戸電といって、名鉄電車がここを走っておったわけであります。そして、そののり面、境界のところに、これが民有地になっておりまして、おうちが幾つか建っておるわけであります。
 このお堀の深さが現在六メーターございまして、傾斜の角度が四十度でございます。これは実は急傾斜地崩壊危険地域というものに指定をされておるわけでございまして、まとまった雨が降る、例えば、一時間で五十ミリ、そしてなおかつ二時間で百ミリ降った場合というようなことになりますと、これは二年前の東海豪雨で大変つらい思いをした地域でございますから、非常に敏感でございまして、すぐに避難勧告準備情報が発表され、続いて避難勧告というような形になっていくわけでございまして、雨が降りますと本当にすぐ情報が発表されて、住民の皆さんは近くの避難場所に避難をしなければならない、こういったことが何回か続いたんですよ。余り頻繁に続くんで、それこそオオカミ少年になってしまって、本当に大変なときはどうなるのかなと思うわけでありますが、事実、このお堀ののり面というのは過去に何回か崩壊をした、崩壊と言うと大げさですが、崩れたこともあったわけであります。
 そこで、地元の皆さんにしてみれば、何とかひとつ抜本的な対応をしてもらえないか、こういった要望がかねてから出ておりました。お配りをいたしましたペーパーも、以前こんなことがあったよということでの参考の意味でお配りをさせていただいたわけでありますが、抜本的な対応といってもなかなか難しゅうございまして、一番大変なのは、この名古屋城の外堀、お堀が特別史跡であるがために、どうしても形を簡単に変えてしまうわけにいかない。現状の変更が大変難しいというのが最大のネックになっております。
 そしてまた、これも本当に珍しいことかと思うんですが、こういった史跡であるお堀を私企業の名古屋鉄道株式会社が所有をしておる。さっき申しましたように、かつてそこを電車が走っておりまして、その後、市が買い上げるとかそういうことなしにそのまま名鉄が保有をしておるということもあるわけでありますが、名鉄の立場に立ってみると、それを持っていたところで何も生み出さないわけでありますから、大変つらいお荷物を抱えたことになっておるかなと思うわけでありますが、これもやはり一つのネックになっております。
 それからもう一つ、この名鉄の所有をしておるところと隣接をする民有地、おうちが建っておるところの境界がちょっと不明確、もっと言うならば不法物件も、民地の方ですよ、不法物件も大分あるようでございまして、なかなかにそのあたりも難しい話になっておるわけであります。したがって、もし名鉄が名古屋市に買ってくれといっても、そういった支障物件、不法物件を抱えたまま買うということもできないし、大変難しい事態が起きておるわけであります。
 ただ、ここに住んでいらっしゃる皆さんにしてみれば、これもちょっと極端な言い方になるかもしれませんが、特別史跡が大切なのか、我々の人命が大切なのか、こういった話になってしまうんですね。
 したがって、これは本当に史跡を守っていかなければならないということは痛いほどわかっておるわけでありますが、なおかつ、やはりここは柔軟な対応をしていかないと、この問題はずっといつまでたっても解決をせずに続いて、そしてあるとき本当に人命にかかわるような大事故が起きる危険性があるわけであります。
 大変細かいお尋ねで恐縮でありますが、この問題についての今日までの対応、そしてこれからどのようにしていこうとしていらっしゃるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
銭谷政府参考人 ただいまお尋ねがございました特別史跡名古屋城跡の急傾斜地問題につきましては、先生から今お話がございましたようにるる経緯のある話でございますが、文化庁といたしましては、愛知県教育委員会等と随時連絡をとり、現在指導を行っているところでございます。
 現時点におきましては、名鉄が保護工事計画を作成してその保護工事を始めようという考え方を示しているわけでございますが、県教委の方から私どもが受けている報告は、次のような内容となっております。
 まず、お話のございました外堀南東の危険部分につきましては、いわゆる底部、底の部分と、のり面、斜面に盛り土を実施いたしまして、比高、高さ五メートル以下、傾斜三十度以下の基準内におさめられないかどうか、そしてそのことによって急傾斜地崩壊危険区域の基準を外れる運用にしたいというふうに考えているということでございます。
 ただ、その北側の部分につきましては、お堀の地下を名鉄の瀬戸線が通過をしておって、盛り土の荷重に耐えられるかどうか、ちょっと技術的に難しい点があるという話も伺っております。
 文化庁といたしましては、こういったお話を受けまして、まず大切なことは、先ほどのお話にもございましたけれども、住宅と名鉄の境界を明確にする必要があるだろうということで、その境界の画定につきまして、強く県を通じまして市に指導を行っているところでございます。
 そういったことを前提にいたしまして、私どもといたしましては、史跡の保存を踏まえた適切な工法内容を採用するということであれば、崩落の可能性があり、また修理の緊急度が高いのり面について、盛り土をし、その遺構部分を地下に埋設するといったようなやり方によりまして、住民生活の危険度が減じられるような保存修理を柔軟に行って差し支えない旨、県を通じまして市に趣旨の徹底を図っているところでございます。
谷田分科員 時間が参りましたのでこれ以上申し上げませんが、今の答弁の最後のところ、まさに、柔軟に対応するというところに大いなる期待を寄せさせていただきます。よろしくお願いをいたします。
 以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。
萩野主査代理 これにて谷田武彦君の質疑は終了いたしました。
 次に、青山二三さん。
青山(二)分科員 公明党の青山二三でございます。
 きょうは、先日の予算委員会でも質問いたしましたけれども、注意欠陥多動性障害、いわゆるADHDの問題につきまして、質問をいろいろ詳しくさせていただきたいと思っております。
 この数年、注意欠陥多動性障害が注目を浴びているわけでございますが、しかし、もう十年ほど前から、落ちつきがない、また集中力が乏しい、キレやすいという子供がたくさんおりまして、話題になっておりました。最近では、小学校の低学年でございますが、それを中心にいたしまして、授業中に集団行動がとれなくて、先生が注意をしても注意をしても効果がない、効き目がないということでございまして、こういう中には注意欠陥多動性障害の子がいるのではないかと推測もされておりまして、マスコミなどでは、学級崩壊の原因になっているのではないか、このような指摘もされているところでございます。また、先生の方からは、とても扱いにくい生徒だということで、現場の教師の皆様にもよく理解されているとは言いがたい現状があるわけでございます。
 外見的にはっきりと障害がわからないということですから、社会的理解が得られるまでには時間がかかるわけでございます。このように周囲から理解が得られない障害こそ、本人とか、また家族にとりましては大変悩みも深いものでございます。こうした児童の気持ちを酌み、対応をわかりやすく教え、個性を発見して伸ばしてあげることができれば、そういう子供たちが自信を取り戻して、時には思いがけない才能を発揮する場合もあるということでございます。
 このように、注意欠陥多動性障害を持った子供たちへの対応を、過日の予算委員会でも申し上げましたけれども、国を挙げて取り組む必要がある、このように思っているわけでございます。
 まず初めに、遠山文部科学大臣にこのADHDに対する御認識を伺いたいと思います。
遠山国務大臣 今御指摘の点は、私どもとしても、その個人にとりましても学校の運営にとりましても、大変大切な問題と考えております。
 物事に集中できない、じっと座っていられない、あるいは順番が待てずに衝動的に発言や行動をするADHD児に対しましては、この人たちは通常の学級に在籍することが多うございまして、教師は、前に座らせてみたりあるいは注意を促すなど、指導上の配慮あるいはチームティーチングによる指導を行うなどいたしまして、それぞれのところで大変配慮して指導をしていると承知しております。また、情緒障害があります場合には、特殊学級や通級による指導によりまして必要な指導を受けている場合もございます。
 しかしながら、ADHD児への対応につきましては、まだ幾つかの課題があると考えております。一つは、その実態がまだ必ずしも十分に解明されていない点、それから二つには、判断基準やあるいは指導方法が確立していない点、三つ目には、医療機関等との連携を図ることも必要でございますが、その点もまだ十分に確立されていないなどの問題があると思っております。
 このために、昨年一月、二十一世紀の特殊教育の在り方に関する調査研究協力者会議の最終報告が出まして、そこにおいて、ADHD児や学習障害児等についての全国的な実態を把握し、判断基準や指導方法の確立を図るとともに、幅広い理解啓発に努めることと提言されたところでございます。
 私どもといたしましては、この報告を踏まえて、本年度から、ADHD児などへの教育的対応のあり方について、調査研究協力者会議を設置して検討を開始したところでございまして、本年秋ごろをめどにして報告を取りまとめる予定でございます。今後、その報告を待ちまして、この問題について必要な対策を講じてまいりたいと考えております。
    〔萩野主査代理退席、衛藤主査代理着席〕
青山(二)分科員 今大臣の方から文部科学省の取り組みをお伺いしたわけでございますけれども、お話がありましたように、ADHDの特徴は、不注意で、また衝動的で多動性、三つの要素を含んでいるということでございまして、本当に病気なのか、またその子の性格なのかということがあいまいでございまして、ADHDの子供を正しく理解するための本格的な調査研究が必要であると思うわけでございます。文部科学省ではそのような調査を始めたということでございますけれども、病気なのか性格なのかわからないということで、どうしても厚生労働省との連携を密にしていろいろと調査をしていただきたい。
 その文部科学省、また厚生労働省の調査のスケジュールと、またADHDに対する正しい普及ということもあわせてお願いしたいと思いますけれども、厚生労働省と文部科学省に、簡単でございますので、両省から御説明いただければありがたいと思います。
岸田副大臣 この問題における重要性を考えますときに、先生におかれましては深くそして熱心に取り組んでおられますこと、心から敬意を表し申し上げます。
 先ほど来話に出ておりますように、このADHD児につきましては、その実態が完全に明らかになっていないというようなこと、あるいは判断基準、指導方法が確立していないというようなこと、また、国民の、また教員の理解等も十分と言えないということ、こういったあたりが現状であります。
 そういったことから、先ほど大臣の方からも御紹介させていただきましたように、昨年十月、調査研究協力者会議、これは学校関係者、特殊教育団体あるいは医学分野の専門家、こういった方々に参加をいただきましてこうした会議を設置いたしました。そして、定義とか判断基準を明らかにする、あるいは教育的対応のあり方について検討をする、そしてさらには、御指摘がありました全国的な実態調査を開始する、こういったことを今検討し、そして進めているところであります。
 そして、タイムスケジュールでありますが、こうした検討を進めまして、この実態調査、その公表まで、ぜひことしの秋までにはこぎつけたいというふうに考えているところであります。
 そして、こうした調査研究の成果も踏まえまして、文部科学省としましては、指導用の冊子あるいは理解啓発用のパンフレット、こういったものも作成しなければいけないというふうに考えております。
 こうした方法によりまして、ぜひ理解が幅広く進むよう努力をしていきたいというふうに考えております。
松本政府参考人 近年、いわゆるキレると言われるような児童、思春期の青少年の衝動的行動が社会問題となっておりまして、その適切な対応が求められているということは、先生御指摘のとおりでございます。この衝動的行動を示す青少年の中には、ADHDとの関係を指摘されている例も見られるところでございます。
 こうした状況にかんがみまして、その実態調査ということで、平成十二年度厚生科学研究、思春期における暴力行為の原因究明と対策に関する研究におきまして、学校の養護教諭、小児科医、精神科医を対象といたしまして、ADHDの実態に関する基礎的な調査が実施されたところでございます。
 その結果の概要について申し上げます。
 回答の寄せられました五百六十三校、これは、地域的な偏りをなくすために無作為抽出で全国から千校選びまして、そこにアンケートを送りまして回答のあったところが五百六十三校ということでございますが、そこの児童千人当たりの状況について申し上げれば、医師の確定診断がついてADHDという診断のついた児童の数が、児童千人当たり一・二人、学校一校当たりにしますと〇・四二人ということで出ております。
 次に、医療機関における状況について申し上げますと、調査対象となりました小児科基幹病院三百五施設から回答が寄せられまして、そのうち患者さんが来ていないというところが四十七施設ありましたので、二百五十八施設にADHDとして新規の患者さんがいらっしゃいまして、その数が総数が千八百六十名であったということで、一施設当たり平均七・二人であったということです。
 また、調査対象となりました大学病院精神科五十一施設から回答がございましたけれども、その患者さんが来なかったというところが十一施設ございまして、四十施設ございますけれども、そこの一年間のADHDの新規の患者さんが総数で六百五十二名、平均で十六・三人であったということです。
 それと、その調査のときに、その感想として、最近三年間、ADHDの患者さんはふえていると感じますかという増加傾向について尋ねておりますけれども、増加傾向にあると答えた医師は、小児科医で二八・九%、精神科医で四五・一%であったということでございます。
 厚生労働省といたしましては、こうした調査結果も踏まえつつ、今後とも文部科学省と十分に連携をとりながら、今後の対応のあり方につきまして検討を進めてまいりたいと考えております。
青山(二)分科員 今御説明いただきましたように、大変ふえてきているというようなことでございます。
 このADHD児を持つ親御さんというのは、やはり大変な悩みを抱えているわけでございます。これは私の育て方が悪かったのではないかなどということで落ち込んでしまって大変悩んでいる、こういう話を聞くわけでございます。
 ですから、こういうお母さんたちがたくさんいらっしゃるということで、厚生労働省としては、この治療と診断のガイドラインですか、こういうものを早くつくっていただきまして、教育現場でそういうお母さんたちの悩みにもこたえてあげられるようにしていただきたい、このように思いますけれども、いかがでございますか。
    〔衛藤主査代理退席、萩野主査代理着席〕
松本政府参考人 厚生労働省におきましては、先生御指摘のように、その診断、治療のガイドラインの作成が必要というぐあいに考えておりまして、現在、精神・神経疾患研究委託費によりまして、注意欠陥・多動性障害の診断・治療ガイドライン作成とその実証的研究という班を設けまして研究を進めておるところでございます。
 この研究では、多くの施設に共通のプロトコルによりまして、行動測定、心理測定、医学的所見、治療方法とその経過などの客観的データを集めまして、それらをもとにADHDの診断、治療のガイドラインを確立していきたいと考えておりまして、この研究成果を有効に活用していきたいと考えております。
青山(二)分科員 ところで、現在の小児科の医療体制を見てみますと、小児科医そのものが数が激減いたしているようでございます。子供の救急医療にも支障を来しているのが現状でございます。これはやはり近年の少子化を反映しているものでございますけれども、子供の医療に対する診療報酬が極めて低い、こういう事情もあるようでございます。
 そこで、我が党といたしましては、これまで小児医療に対する診療報酬の改定を求めてまいりましたところ、厚生労働省は、十四年の診療報酬の改定では、診療報酬の引き下げが決まっている中でも、この小児医療の部門に対しましては報酬が引き上げられることになりましたことは大変うれしいことでございまして、私どもの声を反映していただけたものと評価しているわけでございます。
 本当に安心して子育てできる環境の整備のためには、児童の心身の健康維持に対してこれまで以上にコストを払う必要があると私は考えております。児童・思春期精神医療につきましては、手厚い医療体制が望まれるところでございます。今回の改定によりまして小児医療の転落に歯どめがかかることが期待はされているわけでございますけれども、この小児科の不採算性が改善されるにはまだまだほど遠いという声もあるのも事実でございます。ですから、さらにこの小児医療の充実に取り組んでいただきたい、このように思っているわけでございます。
 そして、もう一点は、子供の心の問題を扱う保健医療体制の確立、そして母子保健と学校保健とのネットワークの形成が必要であると考えておりますけれども、この点について、厚生労働省にお考えを伺いたいと思います。
谷口政府参考人 お答えを申し上げます。
 御指摘のように、子供の健康につきましては、母子保健と、それから学校の分野のいわゆる学校保健、こういった両分野が緊密に連携をいたしまして進めていくことが緊要であるというふうに考えておりまして、私どもといたしましても、二十一世紀の母子保健の国民運動計画でございます健やか親子21というのがございますが、その健やか親子21におきましても、学校保健との連携を重視する方向性というものを打ち出しているところでございます。
 御質問の子供の心の問題につきましては、母子保健対策におきまして、これまでも乳幼児健診、特に三歳児健診におきまして、幼児の情緒でございますとか、それから行動等の問題、こういったものを早期に発見いたしまして、保健医療従事者によります経過観察、それから発達相談及び指導、こういったものを迅速に行うことによりまして、その後の学齢期における対応につなげるように努力をしておるところでございます。
 こうした対応をさらに向上させますために、ADHDを含めます発達障害に対する適切な保健指導のあり方や、また学校保健との連携というものを強化するという観点から、学齢期における保健指導のあり方につきましても、それぞれ専門家に研究をお願いしておるところでございます。
 したがいまして、こういった研究成果というものも活用しつつ、今後とも、文部科学省と連携をとりながら子供の心の問題について適切に対応してまいりたいと考えておりますし、さらに、最初におっしゃいました医療機関における採算性の問題等につきましても、省としても十分に考えてまいりたい、かように考えております。
青山(二)分科員 そのようにしっかりと取り組んでいただきたいと思います。
 それから、我が国では、児童精神医学の専門医が極めて少ない、こういうことが指摘されております。精神医学の専門の講座がある大学は、本当に全国でも数えるほどであると言われておりますけれども、この実態はこのように認識してよろしいのでしょうか。また、こういう実態では、児童精神医学の専門家の数が少ないということで、養成をする大学講座も充実していただかなければ、こういう大切な問題に対しましてなかなか対応ができないというふうに思うわけでございます。そういう児童精神科医をたくさん養成いたしましてその活躍の場を整備する、広げるということも大切であろうかと思いますけれども、この点はいかがでございましょうか。文部科学省にお伺いいたします。
岸田副大臣 児童精神医学の専門家の養成の話ですが、全国に七十九ある国公私立大学医学部及び同附属病院には、現在、そのすべてに精神科、神経科領域が開設当初から設置されております。
 そして、内容におきましても、精神科を対象とする医療の重要性にかんがみて、文部科学省としましても、医学教育カリキュラムにおける精神科学の充実など、各医科大学あるいは医学部における精神科医の養成に努めているところであります。昨年八月、国立大学医学部における児童精神医学の授業の実施状況、これを特別に調査いたしました。この調査を見ます限り、四十二大学中三十九大学、つまり九三%の大学におきまして児童精神医学の授業が実施されているということであります。
 また、児童の心のケアを担当する精神保健福祉士につきましても、平成十三年度現在、五十一の国公私立大学において資格取得のための教育が実施されているということでありまして、平成十四年度予算におきましても、信州大学において子どものこころ診療部、あるいは名古屋大学におきまして親と子どもの心療部を整備するというような予算を盛り込んでいるところであります。
 こうした現状の体制でありますが、こうした専門家の数、その養成につきましては、やはり社会のニーズにこたえていかなければいけないと思いますので、これからも引き続きこの養成の充実に一層努力をしていかなければいけないという問題意識は持っております。
青山(二)分科員 大変努力をする意識を持っているということでございますが、この分野は本当に全力で取り組んでいただきたい、このように重ねて要望させていただきます。
 精神科医から現場の教師たちがADHDに対応できる実践的な研修が受けられる、そういう体制づくり、それから専門指導員の養成など、きめ細かな対応をしていただきまして、困っているお母さん、家族の皆さんが相談できる、そういう体制、相談窓口のようなものができないかと思うわけでございますけれども、この点はいかがでしょうか。
岸田副大臣 こうした問題における窓口ができないかという御指摘でありますが、現状、ADHDを初めとする児童生徒の心の問題ですが、一義的には、教職員が児童生徒の心の問題を理解し、適切に対応すること、これがまず第一歩であります。ですから、児童精神科医を初めとする専門家が教職員に指導助言をするということ、これをぜひお願いしたいと思っておりますし、こうした方向は、ぜひ環境整備を進めていきたいというふうに思っております。
 また、学校の心の問題への対応を支援するために、心の健康問題を有する児童生徒がいる学校に対して、都道府県あるいは指定都市教育委員会から、精神科医を初めとする専門家を派遣する事業、これを平成十三年度から始めたところであります。
 さらには、教師の研修体制、こうしたものも充実させていかなければいけないということで、国立特殊教育総合研究所あるいは都道府県におきましても、それぞれ研究を進めているところであります。
 そういったことで、まずは教職員の理解、そしてこうしたものに対する対応の充実、こういったことから学校における窓口を充実していきたいというのが今の方向性であります。
青山(二)分科員 時間がだんだん迫ってまいりました。これで最後の質問にしたいと思いますけれども、これまで、私、さまざまな要望を申し上げてまいりましたが、やはり私の思いは、そういう子供たちの人権が尊重される教育、社会の形成が必要であるということでございます。その基本には、教師あるいは医師、臨床心理士らが正しい診断や評価を行いまして、それに基づいて一人一人の個性を発見し、それぞれの子供たちが最適な教育が受けられる、そういう環境をつくることが必要であろうかと思います。
 注意欠陥多動性障害の増加が著しくなっておりまして、学級崩壊にもつながっているという問題があるわけでございますが、本当にこの問題をなおざりにすることはもう許されないと思っております。そのためには、十分な予算の確保が必要でもありますし、ADHDの情緒障害を持つ子供たちであれ、またどんな子供であっても、漏れなく安心して教育を受けられるという、その教育環境の整備、また、普通のクラスにいる児童生徒に対する特別支援なども急がれるところでございます。
 こうしたことに対しまして、最後に文部科学大臣の御決意をお伺いしまして、質問を終わりたいと思います。
遠山国務大臣 本日、本当に先生、御熱心に御意見をお述べいただきました。
 障害のある児童生徒につきましては、それぞれが持っている可能性を最大限に伸ばして、そしてその子たちがきちんと自立をして社会参加していくために必要な力を培うように、学校教育の場でもきちんと対応していかなくてはならないと思います。そのためには、一人一人の障害の状況に応じて、特別な配慮のもとに、手厚くきめ細かな、行き届いた教育をやっていく必要があると思います。
 そのためには、各学校の教員がまずADHD児などの障害を持つ子供についての理解を深めることが必要でございますし、学校全体として対応していくということが大事でございますし、また、教育委員会やあるいは盲、聾、養の学校が専門家を各学校に派遣していくということも大事でございましょうし、あるいは医療機関等との連携が大事であろうかと思っております。
 私どもは、先ほど来いろいろな角度から御答弁申し上げてまいりましたように、まず、実態をきちっと把握して研究を深める、同時に、専門的な指導者の養成を行っていく。また、調査研究の報告の結果を見て、それに応じて着実に、しかし必要なことについてはしっかりと対応していく必要があろうと思っておりまして、殊に、厚生労働省との連携も大変重要な分野であろうと思っております。そういうことを通じて、必要な教育環境の醸成に努めてまいりたいと考えます。
青山(二)分科員 大臣からのすばらしい御決意をお聞きいたしましたので、これが実現されますことを心から期待を申し上げまして、質問を終わらせていただきます。大変ありがとうございました。
萩野主査代理 これにて青山二三さんの質疑は終了いたしました。
 次に、伊藤信太郎君。
伊藤(信)分科員 自由民主党の伊藤信太郎です。
 二十一世紀に入りまして、知のパラダイムというのが大きく変化してきたということは、大臣も常日ごろお考えだと思うんですね。その中で、高等教育、とりわけ大学のパラダイムが今のままでいいのか。日本はよく文系、理系なんという言い方をするんですけれども、その文系、理系という分け方自体が二十一世紀のパラダイムではもう陳腐化しているんじゃないか、そういう考え方もあるわけですね。
 そういう中において、特に国立大学、今後独立行政法人化するという方向に行っているわけですけれども、再編成する場合に、単に大学を統合するという考え方じゃなくて、学部の組み方のあり方、あるいはそれぞれの講座なり科目のあり方自体を見直す、そういうことに関して大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
遠山国務大臣 今お話しのように、国立大学、これからの法人化に向けていろいろな努力が行われていくところでございますけれども、単に大学を統合していくということではなくて、私どものねらいとしておりますのは、本来あるべき教育研究機能がしっかりと充実していくということ、そして社会貢献、その研究成果、教育成果を通じて社会に貢献してもらうこと、と同時に、国際的な競争力も持つ、本当の将来の知の世紀を担ってもらうような大学になってもらいたいというふうな強い期待を持っているところでございます。
 先生御指摘のような新たなパラダイムを考えていくということも大変大事だと思っております。既に、それぞれの大学におきましては、大学院レベルでございますが、ちょっと例で申させていただきますと、環境学や情報学など、文系、理系という伝統的な学問区分を超える総合科学でありますとか、金融工学などの新分野、あるいは工学系の学生が将来起業していく際に必要な経営管理能力の育成に重点を置いた教育など、新たなニーズに応じた人材の養成も行おうとしておりますし、また、研究の分野では、学問的な既存の分野を超えて学際的な研究もどんどん進められている、そういう段階であろうと思いますが、私どもは、各大学における自主的な取り組みを前提としながらも、新たな方向に向けての努力をさらに促すような形でこの法人化の問題等について取り組んでまいりたいと思っております。
伊藤(信)分科員 大臣がおっしゃられたように、そういう学際性を持った、あるいは文理融合のアプローチが文部科学省の方でもなされるということで私も大変うれしく思うわけです。
 大学のレーゾンデートルといいますか、存在理由は幾つかあると思いますけれども、近年、日本においては、やはり大学の研究成果が実社会で十分に生かされていないんじゃないか。特に今は、文理融合といって、また、こんなことを言うとおかしいですけれども、科学技術といいますか、理系の研究成果というものが実際の商品開発であるとか起業に生きていないというようなことが欧米に比較して言われているわけですね。その幾つかの理由の一つとして、やはり人事の問題があるんだろうと思うんですね。
 例えば私の留学していたアメリカにおいては、大学の教員が、あるときは起業をしてベンチャーのCAをしたりCFをしたりCTをしたり、そしてまたその大学の教授に戻れる、あるいは国務長官をしてまた大学の教員に戻ったり、あるいはローファームのリーガルプラクティスといいますか、法律業務についてまた戻ったり、そういう人事の水平的なものがあるわけですね。それから、大学の教員も、日本のように当然終身雇用ではございませんで、日本も最近導入しておりますけれども、任期制というよりは、むしろ毎年、テニュアを取るまでは、ジョブマーケットみたいなのがありまして、その研究成果であるとか教育業績によって俸給なりポジションも変わってくるというようなことがあるわけですね。
 ですから、今後、国立大学を独立行政法人化するに当たり、もし非公務員ということであるなら、大学の教官、研究者がぜひ実社会に行きやすいように、また、実社会に行った人間がまた大学に入りやすいような、そういう人事措置というのは必要だと思いますが、その件についての大臣のお考えをお聞かせください。
遠山国務大臣 大学は、研究者といいますか、知恵を持った人の集団でございまして、その人材を活用しないということは国としても大変大きな損失であろうかと思っております。そういう意味で、今御指摘のように、大学人であっても、一定期間、外のいろいろな組織で働いていただくとか、あるいは兼業、兼職というようなものを柔軟に取り扱っていくというのは、まさに時代の要請であろうかと思っております。
 昨年の九月二十七日に取りまとめられました「新しい「国立大学法人」像について」、これは中間報告でございますけれども、ここにおきましても、このような観点から、教員の社会的貢献のための学外活動を広く認めることとして、兼業、兼職に関する規制を緩和すべきであると提言されているところでございます。
 私どもといたしましては、本年度中に取りまとめられる予定の最終報告を踏まえまして、法人化後の大学の研究成果がこれまで以上に社会に還元されるように努力してまいりたいと思っております。
 それと、平成十二年度以降は、かなりいろいろなことで規制緩和を行っておりまして、国立大学の教員でも技術移転事業者の役員兼業がしやすいようにする、あるいは国立大学教員等が研究成果を活用する企業の役員等との兼業がしやすくする、あるいは株式会社等の監査役との兼業も認めていくというような規制緩和に踏み切っておりますが、一段とそのような面についても配慮しながら、法人化の目的が達成されるように、私どもとしてもこの問題について十分検討してまいりたいと思っております。
伊藤(信)分科員 ありがとうございました。
 理系の研究成果がなかなか実際の商品あるいは起業に結びつかないもう一つの理由として、どうも今まで、大学の研究成果というものをそういった目的で使うことが旧来の考えでは余り望ましくない、またそれに対する予算措置であるとか組織にはなっていないという部分があるわけですね。
 ですから、一部、最近、TLO、TMOの動きもありましたけれども、どんなすぐれた研究成果であっても、それが実社会で生きるためには、やはりマーケティングの費用なりマーケティングをする部分が必要だと思うので、今後、国立大学の独立行政法人化に伴って、ぜひそういうことについても御配慮をいただければありがたいと思います。
工藤政府参考人 おっしゃいますように、大学の研究成果を社会に還元する、特に技術移転で経済の活性化に資するというのは大変大事なシステムでございまして、アメリカでバイ・ドール法ができましたのが一九八〇年、残念ながら、日本で同じような仕組みができましたのは約十年おくれでございますけれども、今、TLOの設立も含めて、その仕組みの問題、それからその立ち上げへの資金あるいは税制なども含めた環境整備の問題も含めて、十分措置をしているところでございますが、大学の意識改革も含めまして、御指摘のような方向で私どもも支援してまいりたいと思っております。
伊藤(信)分科員 ありがとうございました。
 大学の構造変化のもう一つのものとして、遠隔教育ということがあると思うのですね。ですから、もちろんキャンパスを持った大学というものもこれからあると思いますが、キャンパスを持たない大学といいますか、どちらかというと教育のポータルサイトとしての大学ということも出てくると思うのですね。
 私も大学教授なのですけれども、実際、フェース・ツー・フェースで学生を教えるときでもなかなか難しいものがあるというのは、例えば百人くらいの学生がいますと、理解度とかバックグラウンドが違いますね。そうすると、私は一通りしかしゃべれないわけで、真ん中の上くらいを目がけて話すわけですけれども、上の方の十人くらいは退屈してあくびをしている、下の方の六十人くらいはわからなくてほかのことを考えている、あるいは何かぺちゃくちゃしているということもあるわけです。
 遠隔教育になりますと、このことがもっと極大化した状態で起きるわけですね。つまり、遠隔教育で例えば一千人を相手にした場合に、それぞれ違う環境で、また学生のすそ野も広がりますから、そうなってくると、単に高速インターネットでつないだから遠隔教育ができるというわけではなくて、遠隔教育にふさわしい教育テクノロジーであるとか、あるいはマルチレーヤーなコンテンツ作成技術であるとか、あるいはフリークエント・アスク・クエスチョンに対してはTAやあるいはコンピューターレベルで答えるような、そういうシステムの開発が必要だと思うのですね。
 アメリカは遠隔教育が進んでいるのですけれども、アメリカのそういうフォーマットをそのまま日本に導入することは、文化の差異や国の独立性からいって余り望ましくないと私は思っているので、こういうものはなかなか商業ベースでは開発し切れないものがあるので、ぜひ文部科学省の方で何らかの音頭をとって、日本じゅうのあらゆる教育機関が使いやすいようなそういうフォーマットなりノウハウというものを開発する、あるいは開発することに対するエンカレッジをするというようなことを望むわけですけれども、そのことに対しての御所見をお伺いします。
工藤政府参考人 教育上の品質保証というのは、それぞれの大学の自覚と御努力にまつ部分があるのでございますが、御指摘ありましたようないわゆるIT、情報通信技術の発達は目覚ましいものがございますので、その活用を図りながら、かつ、品質をどう維持向上させていくかというのは大変大事な視点でございます。
 そのために、特にインターネットなど、あるいは衛星通信を利用した遠隔教育が日本でも盛んになってございますが、私どもも、授業に導入するに当たりまして、品質保証の一つの枠組みとしまして、対面授業と同じような取り扱いをするためには、一つには、同時かつ双方向で教える側と学ぶ側がレスポンスできるような仕掛けが必要であるということ、あるいは毎回の授業ごとの設問解答あるいは質疑応答等に対応できるようにするようなこと、あるいは学生からの意見交換の機会を確保するような仕組みなども大学に求めているところでございます。
 それとともに、今御指摘ありましたようなこういう遠隔授業の効果を達成するための支援ということで、例えばそれぞれの学生の理解度などを判定するために、授業評価の実験でございますとか、あるいはレスポンスアナライザーというような装置、受講者の反応を分析、判定するような装置を導入して、このあたりの実験あるいは効果性を向上するようなことの取り組み、さらには教材制作を支援するための支援システムの開発につきましても私ども御支援を申し上げながら、各大学の御活用を促しておるところでございます。
伊藤(信)分科員 ありがとうございました。
 今度はちょっと初等中等教育に関してお伺いいたします。
 今度、新学習指導要領というものが出まして、学校が五日制、別の言い方をすると週休二日と言われているのですが、私は週休二日ということに対して反対はないのですね。ゆとりというのは遊ぶという意味ではなくて、そこで個性に合った創造性なり可能性を伸ばすという意味で使うべきだろうと思うのです。ですから、ぜひ土曜日に、日本の戦後教育でいろいろなものが問題だと私は思いますけれども、つまり、歴史教育あるいは道徳教育というものも非常に大きな問題だろうと思うのです。
 そこで、やはり歴史観というのは多様なものだろうと私は思うので、歴史の先生ではない方が、それぞれの自分の歴史というものを通じて、地域性あるいはそれぞれの社会にあった歴史に関する所見を述べてそれを子供が聞くという機会は、多様な歴史観というものを理解するという意味で大変重要だと思うので、ぜひ土曜日にそういうことが可能なような措置がとれないものかというふうに考えているわけですけれども、その件についての大臣の御所見をお伺いしたいと思うのです。
遠山国務大臣 四月から実施されます学習指導要領、新しい学習指導要領のねらいは、週五日制にすることによって、土日を単に無為に過ごしていくということではなくて、その週末の時間を利用して、もちろんゆとりを持ちながらも、いろいろな体験活動でありますとか親子の触れ合いでありますとか今先生御指摘のように、地元の人たちの御努力によって、子供たちにみずからの人生観なりあるいは歴史観なりそういったものを伝えてもらうような場にしていくことは、まさに今回の指導要領のねらいであると考えております。
 このことが実際にうまく、効果的に各地で行われますように、これまで何年もかけて、我が省といたしましてもいろいろな充実のための施策を推進してまいりました。いよいよ四月からそのことが実施に移されるわけでございますけれども、今先生御指摘のような点を各地の教育委員会なり学校なり、あるいは地域の関係者なりがいろいろ自覚していただいて、ぜひともそのようなアイデアも取り入れながら充実した週末を過ごしてもらいたいと思っております。
 同時に、週五日の間でも、総合的な学習の時間ないし道徳の時間なども通じまして、日本人として必要な歴史観でありますとか生き方の問題、そういったことも大事に取り扱ってもらって、新しい指導要領の実施が、そういう面についても、本当の意味の、子供たちに実り多い教育が展開されていくことを私ども期待しておりますし、いろいろな方途でそのことが実現されますように努力していきたいと考えております。
伊藤(信)分科員 もう一つの問題として、やはり都市部の生徒といいますか、それと非都市、農村、漁村あるいは森林地帯の意識の乖離、あるいは学校教育環境の差異というものがある意味では問題になっていると思うのです。ですから、このゆとり教育の中で、都市部の生徒と非都市の学校に行かれている生徒が一定期間、国内留学といいますか、交換するような制度というものをとれないのか。それによってその間の意識の乖離であるとか、あるいは都市部の生徒にとっては一次産業に対する実態的な理解、あるいは非都市の学童にとっては都市生活のいろいろな危険性とか刺激とか、そういったものを健康な形で体験できるのではないかなと思うので、その考え方についての副大臣の所見をお伺いしたいと思うのです。
岸田副大臣 今先生御指摘になられましたように、子供たちが自然とか、それからふだんと異なった社会環境、こういったところに出かけていって現地の子供たちと交流する、あるいはふだん経験できない体験をするということ、これは子供たちにとりましても、人間関係を広めたり、あるいは新しい体験をしたり、さらには広い視野とか多様な価値観をはぐくむ、こういったことから大変重要なことだとまず認識しております。
 そういったことから、従来も、地域ですとかあるいは学校の工夫の中で、都市部の子供たちが自然に恵まれた地域に長期滞在して交流をするというような事業、さらには都市と農村、それぞれの子供たちが互いに交流してそれぞれホームステイをするというような事業が行われてきたわけであります。
 しかし、これから学校週五日制、そして新しい学習指導要領がスタートする。新しい体制の中で、平成十四年度からの予算の中にも、まず学校の中でこうした体験活動に取り組むということから、豊かな体験活動推進事業、こうした事業を盛り込んでいるところでありますし、また、学校外におきましても、自然体験活動を通じた地域の青少年との交流活動などを行う青少年長期自然体験活動推進事業、こういったものを実施するという予算を盛り込んでおります。
 学校の中、そして学校の外を問わず、都市と農村の間の交流活動、こういったものを進めていくということは大変重要だと思っておりますし、ぜひしっかりと支援をしていきたいと考えております。
伊藤(信)分科員 ありがとうございました。
 私も教員だったのですけれども、大部分の人は学校を出て教員にならないわけですね。経験よりまさる教師というか教育は私はないと思うんです。そういう意味で、教員としての社会体験しか持たない方が教員にならない人を教えているということにはある程度限界がある。
 そういう意味で、教員が社会体験をするということが少し進められているようですけれども、もう少し大胆な発想で教員免許というものを考えるべきじゃないか。それから、人事交流の面でも、一度教員外の人がもう一度公立学校に戻れるようなシステムをもう少し大胆にもたらせないかということをお聞きしたいと思います。
矢野政府参考人 先生の今のお話は、例えば教員免許の更新制といったような提案につながるお話だと思うわけでございますけれども、教員の免許更新制につきましては、御案内のように、平成十二年でございますが、教育改革国民会議の報告の中で、その可能性を検討するようにという報告を受けまして、それを受けて、平成十三年の四月に、私どもの中央教育審議会で今後の教員免許制度のあり方について諮問をいたしまして、つい先日でございますが、二月の二十一日に答申をいただいたところでございます。
 この中教審の答申におきましては、教員免許更新制の導入の可能性につきまして、教員の適格性の確保、そして教員の専門性向上、この二つの観点から検討が行われまして、その結論といたしましては、現時点における制度上の制約などに加え、その政策的有効性についても十分検討を進めたところ、導入には中央教育審議会としてはなお慎重にならざるを得ない、そういう結論をいただいたところでございます。
 しかし、一方、答申では、この適格性の確保や専門性の向上を図る、そういう観点で、いわば免許更新制にかわる施策といたしまして、教職十年を経験した教員に対する新たな研修の構築などの御提言をいただいたところでございまして、これらを実現するために、本日でございますけれども、教育職員免許法等の改正案が閣議決定されまして、今国会において御審議をお願いするということにいたしているところでございます。
 なお、教員の社会体験ということについての重要性の御指摘はそのとおりでございまして、そのためには、大学での養成段階において介護等の体験でございますとか、教員の採用におきましてボランティア等の社会体験について適切な評価を実施するといったようなこと、さらには、教員になってからでございますけれども、企業等におきまして長期、短期の社会体験研修の実施などに努めているところでございまして、私どもといたしましては、こうした施策を通じ、さまざまな社会体験を持った教員の確保に引き続き努めてまいりたいと考えているところでございます。
伊藤(信)分科員 それで、社会体験という意味では、逆に、その道にたけた人の話というのは非常に説得力があるわけですね。ただ、その道にたけた人というのは、なかなか自分の仕事が忙しくて教室に行けないという場合がある。ここで、逆の発想で、そういう人たちが、例えば社長だったら社長室から、アーティストだったらアトリエから中継して小中学校で教えるということも、今の情報通信手段を使えば可能だと思うので、ぜひその辺の施策についてのお考えをお聞かせください。
矢野政府参考人 これからの学校教育活動におきましては、各学校の実態に応じまして、保護者を初めとする地域の専門家など幅広い人材を活用して学習活動の幅を広げていくことが大変重要であるわけでございまして、その際には、インターネットなどの情報通信ネットワークの機能を活用することによって、学習の対象を広げ、また興味や関心を掘り起こし、他の地域、学校さえも超えたそういう交流が行えるということが、これからの多様な教育活動を展開する上で可能になると考えているわけでございます。
 私どもとしては、既にそういう観点から、高速回線を用いた教育方法に関する研究開発事業等を行っているわけでございまして、そういう意味で、今後とも、私どもといたしましては、新しい学習指導要領、先ほど来申し上げてございますけれども、生きる力をはぐくむことをねらいとする学習指導要領、そのねらいをより実現する意味で外部人材の活用ということは大変大事であるわけでございますので、これからもさまざまな手段を通じてそれを進めてまいりたいと考えているところでございます。
伊藤(信)分科員 今、スーパーサイエンスハイスクールの構想があるわけですけれども、私は、スーパーサイエンスハイスクールだからといって、理科だけを教える、あるいは理系だけを教えるということは非常に問題だと思うのですね。
 ユダヤ人の中で科学者がすごく多いのです。これは幾つかの理由があると思いますけれども、私は、その大きな理由の一つとして、ユダヤ人が、多くの場合、小さいころから複数言語の環境で育っているということがあると思うのです。人間というのは、やはり言語で現象を認識して関連づけて分析していくわけですね。ですから、複数言語を学ぶということは、要するに現象に対する複数のアプローチをできる、そういう知的な能力をはぐくむわけです。
 ですから、私は、スーパーサイエンスハイスクールの中でも、ぜひ複数の言語教育というものを忘れずにやっていただきたいと思うのですけれども、その件に関する副大臣の御所見をお伺いします。
岸田副大臣 御指摘のスーパーサイエンスハイスクールですが、例えば学習指導要領によらない教育課程の編成実施等により、理科、数学に重点を置いたカリキュラムを開発するとか、大学や研究機関との連携ですとか、あるいは論理的思考力、創造力、あるいは独創性を高める指導方法、こういったものを研究するとか、あるいはさまざまな第一線の研究者との交流とか、こういったものを想定しておりますが、まず、基本としまして、生徒の興味、関心に応じて学校や教員の創意工夫を生かした取り組み、こういった取り組みが尊重されなければいけないというふうに思っております。
 ですから、こうした取り組みの具体的な形として、例えば、学校において創意工夫をし、その結果として複数言語を使用した授業を行うということは考えられるというふうに思っています。
 いずれにしましても、そういったスーパーサイエンスハイスクールの大きな目的を実現するために、さまざまな工夫をし、それを尊重していくという姿勢、これは大切だと考えております。
伊藤(信)分科員 これから日本が世界の中で尊敬され、また十分な国際貢献をしていくためには、やはり異文化コミュニケーションということが非常に重要だと思うんですね。
 異文化コミュニケーションというと、英語ができればいいのかとか、あるいは中国語ができればいいとか、そういう短絡的な議論に陥りがちですけれども、やはり異文化コミュニケーションをする意味においても、自国の伝統文化に対する理解あるいは愛情というものは非常に私は大事だと思うのですが、この件に関する政務官の御所見をお伺いしたいと思います。
池坊大臣政務官 委員がおっしゃいますように、私も常日ごろ、国際社会の中で日本人が尊敬と愛情で見詰められるためには、まず自国の伝統文化への認識と深い愛情がなければならないと思います。そういうものに立って初めて、他国の文化を理解し、愛情を持つことができるのだと思います。
 その点におきまして学校教育が果たす役割が大であるとは思っておりますので、例えば道徳においては、我が国のすぐれた伝統を継承し、新しい文化の創造に貢献するとともに、諸外国の文化を尊重する態度をはぐくむよう教えております。また、十四年度から小学校、中学校において心のノートというのを生徒に配付いたしますけれども、その中にも、伝統文化への認識、また愛情を持つことの大切さを述べております。また、社会科においては地域に残る文化財や年中行事について調べたり、また音楽科においては邦楽に触れたり、また中学校においては必ず和楽器に一つは触れるようにというふうに指導いたしております。また、総合的な学習の時間においても、地域に関する課題を設定して、文化や芸術に触れる体験活動を通して体で伝統文化のすばらしさを体得するように指導しているところでございます。
伊藤(信)分科員 言葉をかえれば、感性を大事にした教育というものをやはり二十一世紀の中では重要視しなければならないことだと思います。
 質問に対して丁寧な御回答、どうもありがとうございました。これで質問を終わります。
萩野主査代理 これにて伊藤信太郎君の質疑は終了いたしました。
 次に、大村秀章君。
大村分科員 自由民主党の大村秀章でございます。
 きょうと四日ということで、分科会、大変御苦労さまでございます。まだスタートしたばかりでございますが、場合によっては私がラストバッターになるかもしれないという状況でございますけれども、御答弁の方、よろしくお願い申し上げたいと思います。
 私は、手短にといいますか、簡潔にやらせていただきたいと思います。特に、高校入試につきましてお聞きをしたいというふうに思いまして、きょうはこちらに参りました。
 改めて申し上げるまでもなく、日本で一番の資源というのは人材でございます。明治以降、驚異的な復興、また戦後の荒廃の中からよみがえってきた日本の活力はまさしく人材によるものであるということは、だれもが認めているところだと思います。その背景は、やはり教育が、この百年、そして戦後五十年、大変大きな役割を果たしてきたということも事実だと思っております。
 そういう意味で、明治以来、そしてまた戦後の教育制度、基本的には文部省の教育政策は成功してきたというふうに私は思うわけであります。また、評価をするわけでありますけれども、そういう中で、今日本をめぐる状況を見ますと、これからもそれでいいのかということはなかなか言えないような時期になってきたのではないかと思うわけでございます。経済のグローバル化、また環境の問題、それから少子高齢化、いろいろな課題がございます。これまでの成功体験がなかなか通用しない、そういう時代になってきたのではないかというふうにも思います。
 そういう意味で、これからは、優秀な人材はもちろんでありますけれども、より創造性にあふれて、また、国際性、それから自分で問題を設定して自分で解決をしていくという能力、そういったものも要求をされてくると思いますし、また、コミュニケーション能力といいますか、いろいろな方と交渉、話をしながら問題を解決していく、そういう能力も要求されてくると思います。
 そういう意味で、これは私が改めて申し上げるまでもないわけでありますけれども、知識を重視するだけではなくて、それぞれの子供たち、それぞれの生徒の個性をより尊重するような教育がやはり求められているのではないかと思うわけでございます。そういう意味で、文部省御当局の方も、中教審の答申を初め、いろいろなところでそういうことを問いかけ、そして課題を設定し、取り組んでこられたわけでありまして、また、小、中、高、大学、それぞれの課程でやらなければいけない課題がたくさんあると思うわけであります。
 私は、その中でも特にきょうは、冒頭申し上げましたように、ほとんどすべての子が今高校まで行かれるという状況の中で、もちろん大学というのは、社会に出ていく上においてレベルの高い教育をするということで大変重要であるわけでありますが、いわゆる小中と大学を結ぶ、ある意味で人間の個性といいますか、感性といいますか、一番多感な時期にその人の人間を決めるのが高校時代だろうと私は思うのですね。ですから、その大事な高校の入学者を選抜するこの試験制度というのは、ある意味で大学入試よりもはるかに社会的な影響が大きい、そして、その人間の一生を決めていく本当に大きなポイントじゃないかなというふうに思っております。
 そういう意味で、まずこれは遠山大臣にお伺いしたいわけでありますけれども、高校入試につきましては、これまでも中央教育審議会答申が累次出されてまいりましたけれども、その中で特に、子供たちにゆとりを与え、生きる力を育成するということで、過度の受験競争の緩和が必要だということがるる触れられております。その観点から、高校入試につきましても改善を求められているということが言われているわけでありまして、そういうものを踏まえまして、平成五年、そしてまた平成九年と、累次の文部省の御当局の局長通達が出されてきたわけでございます。一番最近は平成九年十一月の辻村初等中等教育局長名での通達でございますけれども、その中でも、選抜方法の多極化、また評価尺度の多元化といった観点に立った入学者選抜の改善を一層進めていく必要がある、こういうふうに触れられておるわけでございます。
 これに基づいて、全国各県で、各県の教育委員会御当局が御努力をされていろいろな改善をされてこられたということは、私自身も幾つか耳にするわけでありますけれども、この点につきまして、文部省御当局におかれましてこれまで講じてきた施策と現在の状況、そして今後の対応方策、進め方といいますか、それにつきまして、まず大臣の方から御所見をお伺いできればと思います。
遠山国務大臣 高校生の時代はまさに多感な時期でございまして、しかも、現在ではほとんどの子供たちが高校に進学するというような状況でございます。義務教育段階とは違いまして、さまざまな生徒の能力なりあるいは興味の持ち方、そういったものに対応した高校教育をすることによってその持てる潜在的な能力をどんどん伸ばしていく、そのようなことが大変大事な時代であると思います。
 高校の入学者選抜につきましては、そういった生徒の多様性、あるいは各学校、学科の特色に応じまして、選抜方法を多様化すること、そして評価尺度の多元化をしていくことが大事ということで、御指摘のようなさまざまな指導を行ってまいったところでございます。
 そのようなことを受けまして、現在、各都道府県におきましても、公立高等学校入学者選抜の改善が随分進んでおりまして、例えば推薦入学、これは四十五の都道府県でやっておりますし、実技検査の実施、これも四十五都道府県でやっております。そのほか、受験機会の複数化でありますとか小論文、作文の実施、あるいは面接における自己表現等の実施、こういったことを通じまして、それぞれの学校の特色を踏まえた上で、生徒の多様な能力、適性、意欲、あるいは中学校生活における諸活動の成果などについて、さまざまな観点からいろいろな長所を積極的に評価していくというような角度で入試のあり方の改善が進んでいると思っておりますし、今後ともそのような方向でぜひとも進めていただきたいと思っておるところでございます。
大村分科員 今最後に大臣、それぞれの子供たちといいますか、生徒さんの長所を積極的に評価するというお言葉をいただきましたけれども、まさしくそのとおりじゃないかなと思います。ですから、たくさんの方が受けられますし、全部、一人一人すべて見ていくというのはなかなか難しいところがあると思いますけれども、ぜひその姿勢で取り組みをお願いしたいというふうに思っております。
 そこで、実は、私の地元の愛知県の高校入試制度につきまして御所見をお伺いできればというふうに思うわけでございます。
 私、自分自身も愛知県で高校入試を二十何年前受けた者として、当時は、私が受けたのは学校群制度というのが始まってすぐのときでございまして、一体どこの高校を受けたらいいのかなということで、相当何か混乱をしていた時期だったような気がいたしますけれども、それが十数年たって、また、十三年前に今の複合選抜制度という形に高校入試が改められたわけでありますが、それにつきまして、私、前からいろいろ、ちょっとどうかなという思いもございました。
 そういう中で、昨年十二月に地元紙で、「高校入試はいま」ということで特集記事が組まれました。これを読ませていただいて、まさしく自分の思っていたとおりのことがそこに書いてあるなということで、やはりこの点についてこれからいろいろ関係者の皆さんとお話をしていきたいなというふうに今思っているところなのです。
 そこで、まずお伺いしたいのは、この地元紙の記事にも冒頭触れられておりますけれども、高校の中に指導困難校というものがあるというふうに言われております。私も、現場の学校の先生からそういう言葉を何年も前に、もう早い段階からお聞きをいたしました。この地元紙の記事にもこの特集が組まれております。この指導困難校という言葉、この言葉について御存じかどうか、お伺いさせていただきます。
矢野政府参考人 お尋ねの指導困難校という言葉につきましては、もちろん明確な定義があるものではないと思うわけでございますが、一般的には、教科指導や生徒指導などの面でさまざまな困難を抱えている学校、そういう意味で用いられていることが多いのではないかと思っております。地域によっては、教育困難校といったような言い方、あるいはそういう表現をするところもあろうかと思います。
大村分科員 まさに、今局長言われたとおりなんです。要は、この記事にも書いてあるんですけれども、少し申し上げますと、とある学校の先生が、褒められたことがない子ばかりが集まっている、成績ももちろんですけれども、十五年間の人生で達成感というものを味わったことがないという、そういうような表現もされております。また、やればできるという自信を身につける機会がなかった、そういった子供たちばかりが集まっている。それが、結果、子供たちの中に、成績でのみ子供たちを評価してきた大人への不信感というものが根深いということも、この記事には触れられております。
 そういったものの原因が愛知県の高校入試の複合選抜制にあるという声が実はあるわけでございます。これは、生徒を大競争の渦に巻き込み、また、学力でのいわゆる敗者が集まる。
 要は、愛知県の高校入試というのは、尾張と三河と地域で分けて、A日程、B日程と分けて、二回受けられるのですけれども、全部、二回とも同じ、試験と内申でやる。それでがっちゃんこしますから、あとは、だあっと成績順で全部出てきて、あんたここ、あんたここと割り振る、こういう制度なのですね。いろいろ工夫はされていると思うのですけれども、そういう学力だけで輪切りをするという側面がはっきりと出てくるというのがこの制度でございます。
 それと、現場の先生に僕、聞いたのですけれども、いわゆる不本意入学、本当はここに行きたかったのだけれども、第二志望にどんどん回されて、ある高校なんか、第二志望で回された子が七割とか八割という高校もあるというふうにもお聞きをいたします。そういうことになると、その子は一生劣等感を引きずっていくんですね。なかなか、高校を盛り上げようといっても意気が上がらないということも言われております。
 また、この記事にもありますけれども、ある学習塾が県内の県立、私立高校を全部偏差値でどうっとランクづけをする、現場の中学校の先生も生徒さんもそれを進学の目安にするというふうにもお聞きをいたしております。
 こういう愛知県の高校入試の現状ということについて、いかがお感じでございますか。
矢野政府参考人 愛知県の高等学校入学者選抜は、全日制普通科につきましては、高等学校の通学区域を県内二学区に分け、いわゆる複合選抜と呼ばれる方法によって行われるというふうに聞いているところでございます。
 複合選抜につきましては、先生もう御承知のとおりでございますが、改めて申し上げますと、先ほどお話ございましたそれまでの学校群制度が、二校の高校を群として、合格しても、群を組んでいる高校のどちらの学校に振り分けられるかについては本人の希望とは無関係に決まるために、希望する高校に入学できないといった問題点、あるいは特色ある学校づくりの理念と矛盾するという問題点などが指摘されるようになって、そして、そういう問題点を踏まえて、愛知県教育委員会におきまして、生徒、保護者、それから教育委員会関係者の意向を踏まえ、検討を行った結果、平成元年度から導入されたというふうに聞いているところでございます。
 この複合選抜の導入によりまして、生徒が自分の属する学区の高校から、先ほどお話ございましたけれども、第一志望それから第二志望の二つの高校を受験できることとなって、そういう意味では、生徒の学校選択の自由が拡大し、生徒の希望校へのチャレンジ意欲を高める、そういう意味があるという反面、これも先ほどお話がございましたけれども、特定校への志願者の集中といったような問題もある、そういう指摘もあるというふうに私どもお聞きいたしているところでございます。
大村分科員 複数機会を与えるというのは、私は、悪くないといいますか、これはいいことだと思うのですね。ただ、問題は、その尺度をすべて成績にしてしまうというところは、私はいかがなものかなという感じがいたします。
 ですから、例えば、僕は地元の例をよく出すのですけれども、とある地域で、新たに普通科高校をつくって地域で一生懸命盛り上げようとしていた、いい生徒もぼちぼち集まってきたといったところ、この制度が始まった途端に、やはり昔の旧制中学みたいなところにどどどんと行っちゃってもう全然だめになっちゃったということとか、要は、完全に序列化されちゃったとか、あと、例えば、とある地域は、あるスポーツが強かった、そのスポーツで何年かに一回は全国大会に出ていたんだけれども、完全に成績だけで決めるからそういう生徒は全然集まらなくなってしまったということもよく聞くのですね。いずれにしても、高校の序列化を進めた。
 また、生徒のチャレンジ意欲といっても、そんなことを言ってはあれですけれども、中学生が本当に、僕はこの高校はこういう校風があるから行きたいんだというところまで考えて行かれるのかどうか。ある意味で、やはり成績がこのくらいだからここだというようなことでやると、要は、地元じゃなくても、一時間、二時間かかっても行くんだ、行った方がいいというような、そういう遠距離通学を助長したり、また、同じような成績で輪切りにしちゃいますと、高校の時代は本当にいろいろな個性を持った子供たちが集まってきてやるのが私はいいと思うので、そういう多様性も抑える。また、例えば、地元にそういう進学校がないとかいろいろなことがあったらよそに行っちゃう、そうすると地元に対する郷土愛も生まれないというようないろいろな声を地元で、現場で聞くのです。
 そういう意味で、私は、この複合選抜が始まって十三年、やはり今こそ抜本的に見直すべきだと思っておりまして、愛知県とか地元でもそういう声を上げていきたい。私の意見に賛同してくれる県議さんとか市長さんはたくさんおりますので、これからそういう働きかけをしっかりやっていきたいと思います。
 文部省も、こういう平成九年の通達とか、多様性とか、先ほど大臣も言われた生徒の長所をできるだけ見てあげるようなそういう選抜制度なりがいいんじゃないかということを言われておるのですから、こういうことについて、私はこの際、そこは少し愛知県に対して、そういう見直しも含めて指導されたらいかがかというふうに思うのですけれども、いかがでございますか。
矢野政府参考人 愛知県の入学者選抜につきましては、地域の生徒や保護者等の意向も踏まえながら、先ほど申し上げましたように、過去からさまざまな取り組みが行われてきた、そういう経緯があるわけでございまして、それを、先ほど来いろいろ先生の御指摘がございましたけれども、国としてこれをどう評価するかというのはなかなか難しい面があるということについては御理解をいただきたいわけでございます。
 いずれにいたしましても、公立高等学校の入学者選抜のあり方につきましては、先ほど申し上げましたように、評価尺度の多元化ということ、それから選抜方法の多様化、そういう観点から、地域の実情に応じてよりよい制度となるように改善が進められ、またそのための努力をしていただくことが大切であると考えているわけでございまして、こうした点を考慮しながら、それぞれの県において適切に判断をしていただくことを私どもとしては期待を申し上げたいわけでございます。
大村分科員 そういう御答弁だろうと思いますけれども、この問題になるとだんだん野党的に追及的になってくるんで、この辺にしておこうかなと思います。
 いずれにしても、私は、制度というのはこれでいいというのはないと思うんですね。例えは違いますけれども、選挙制度だって、これが一番いいんだというのはないんですね。だから、やはり、よりよい制度を目指して常に五年、十年のタームで見直していく、改善をしていくというその姿勢が大事だと思うんですね。
 特に、この高校入試の制度は、僕は正直言って、愛知県の制度は、何か人為的に、言葉は悪いですがこねくり回したような感じがあって、やはりちょっとわかりにくいといいますか、ちょっと手をかけ過ぎというか、いじり過ぎじゃないかな。だから、そういう意味では私は、それはもう十三年ですから、やはり時代も変わるし、そろそろ見直すちょうどいい時期じゃないかなと思いますので、それはまた地元でもしっかり声を上げていきたいと思います。
 がらっと話題を変えまして、最後に一つ、せっかく池坊政務官お見えでございますので、御専門の御所見をお伺いしたいと思います。
 学校教育におきまして、昨年、学校教育法と社会教育法でございますか、改正をされて、体験学習とかボランティアとかそういったものを大変重視するという方向を打ち出されたわけでございますが、これは大変いいことだと思います。そういう意味で、ボランティア体験でありますとか自然体験、また、それと並んで我が国の伝統文化に触れる、そういった体験活動、学習が、デスクワークだけじゃなくて、私は大変大事かなというふうに思うんであります。
 そういう意味で、私なんかも、素人というかあれでありますけれども、例えば、絵を見たり、政務官御専門の花を見たり、やはりきれいなもの、美しいもの、本物を見るとなるほどなと、何となしに、基礎的な知識とかそういうベースはなくても、やはり本物とかきれいなもの、美しいものは万人を感動させるというものがあると思うんですね。ぜひ子供の時代からそういう体験をしていただいて、そして、今委員長が言われた感性を磨くというのは、私はそれ以後の長い長い人生において大変大事じゃないかなというふうに思うわけでございます。
 そういう意味で、子供たちの感性を高める情操教育も含めて、この点、まさしく御専門というか、造詣の深い池坊政務官に御所見をお伺いできればと思います。
池坊大臣政務官 大村委員がおっしゃいましたように、私は、議員になります前、日本の伝統文化の一つである生け花の発展、育成に努めてまいりました。
 伝統文化は、ただ単にその形を学ぶだけでなくて、形を通して、人間の生きる姿勢、あるいは何が価値あるか、そのようなものを学んでいくことでございます。そしてまた、この間の中教審の答申にございました教養教育のあり方の中にも、礼儀作法ということに触れられておりましたが、知らない間に礼儀作法なども身につけてまいります。
 例えば、私が向かい合っておりました生け花は、花を通して命の大切さ、命を慈しむこと、そのようなことを自然に学んでいく。私は、言葉ではなくて、肌で受けとめていくということが大変大切なのではないかと思っております。もちろん、それは家庭教育にあってもなされなければなりませんが、学校教育の中にあっても私はそのようなことが二十一世紀は大切だというふうに思っております。
 ノーベル賞をおとりになりました野依教授は、美しいものを美しいと思う心がなければ科学者の資格がないと言っていらっしゃいます。ただ物をつくり、そしてそれを売る時代は終わりました。二十一世紀は、みずみずしい発想の中で、いかに感性あふれる独創的な自分の考えを持つかということが大切になってまいります中にあって、私は、学校教育の中で、情操、感性、そういうものを培う教育をしていかなければならないと思っております。
 そのような観点から、昨年教育改革が行われ、学校教育法が一部改正になりまして、体験活動が重視されるようになってまいりました。私は、さまざまな体験活動を通して、子供たちが、ただ言葉や教科書ではなくて、本当に納得して自分で肌で感じることが長い人生で大きな有益になっていくと信じております。
 平成十四年度の予算案の中には、例えば、百地域の中八百校をモデル校といたしまして小、中、高で体験活動の普及に努めておりまして、三億五千七百万計上いたしておりますし、また、一般的な学校内外を通じた奉仕活動、体験活動の中には、一千百地域、八億四千九百万計上いたしておりますし、また、三年間に五万人の社会人を登用いたしますいきいきプラン、私はぜひこういう中でも、今まで一筋に例えば生け花をやってきた、剣道をやってきた、あるいは地域の文化を守ってきた、そういう方々の声とかわざとか、そういうものを学校教育の中で生かしていってほしいというふうに願っております。
 今私見ておりますと、三十代、四十代の若い親の世代が割と伝統文化に対しての認識がございません。これは、団塊の世代で、多分学校教育の中でもこういうことをされてこなかった結果なのではないかと私は思っております。小、中、高を通じて伝統文化の体験活動をいたしましたら、その子たちが大きくなる社会はきっとすばらしい社会になっていくと信じております。
大村分科員 ありがとうございました。
 まさしくそうですね。美しいものを美しいと思う心というのは大変大事だと思いますし、そういった心を生かす、また、今政務官が、人間の生きる姿勢というふうにも言われました。やはり、生きる力をつけるということも、中教審の答申にも書かれておりますし、いろいろこれからの教育の方向ではないかと思うわけであります。ぜひ、御専門を生かしていただいて教育行政を進めていただければというふうに思う次第でございます。
 私も子供がたくさんおります。一番上は今度中学になりまして、一番下はまだ二歳なんですけれども、四人おりまして、これから後十年、二十年ぐらいまだ子育てをやらなきゃいかぬものですから、一人の親として、小、中、高それぞれのステージでやはり学校が、そして地域がどういうふうに子供たちの教育に携わっていくのか、本当に自分のこととして関心を持っております。そういう意味で、きょうは大臣初め局長にも、先ほどもちょっといろいろ申し上げましたけれども、よりよいものをつくっていただくように、ぜひぜひお願いを申し上げたいと思います。
 そんなことで、ちょっと時間がありますけれども、以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。
萩野主査代理 これにて大森秀章君の質疑は終了いたしました。
 この際、暫時休憩いたします。
    午前十一時三十八分休憩
     ――――◇―――――
    〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕


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