衆議院

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第2号 平成17年2月28日(月曜日)

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平成十七年二月二十八日(月曜日)

    午前九時開議

 出席分科員

   主査 渡海紀三朗君

      奥野 信亮君    萩野 浩基君

      原田 令嗣君    大石 尚子君

      佐々木秀典君    津川 祥吾君

      中井  洽君    本多 平直君

   兼務 江藤  拓君 兼務 松島みどり君

   兼務 岡島 一正君 兼務 高木美智代君

   兼務 古屋 範子君

    …………………………………

   文部科学大臣       中山 成彬君

   文部科学副大臣      塩谷  立君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   山本信一郎君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 吉田 英法君

   政府参考人

   (総務省行政評価局長)  田村 政志君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          銭谷 眞美君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            石川  明君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局長)       有本 建男君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        素川 富司君

   政府参考人

   (文部科学省国際統括官) 井上 正幸君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課長)  苗村 光廣君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課長) 村木 厚子君

   文部科学委員会専門員   井上 茂男君

   予算委員会専門員     清土 恒雄君

    ―――――――――――――

分科員の異動

二月二十八日

 辞任         補欠選任

  福田 康夫君     原田 令嗣君

  津川 祥吾君     本多 平直君

  中井  洽君     松野 信夫君

同日

 辞任         補欠選任

  原田 令嗣君     奥野 信亮君

  本多 平直君     大石 尚子君

  松野 信夫君     肥田美代子君

同日

 辞任         補欠選任

  奥野 信亮君     福田 康夫君

  大石 尚子君     津川 祥吾君

  肥田美代子君     中井  洽君

同日

 第三分科員江藤拓君、高木美智代君、古屋範子君、第五分科員松島みどり君及び第六分科員岡島一正君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十七年度一般会計予算

 平成十七年度特別会計予算

 平成十七年度政府関係機関予算

 (文部科学省所管)


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     ――――◇―――――

萩野主査代理 これより予算委員会第四分科会を開会いたします。

 なお、主査の指名によりまして、私が主査の職務を行います。

 平成十七年度一般会計予算、平成十七年度特別会計予算及び平成十七年度政府関係機関予算中文部科学省所管について、前回に引き続き質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高木美智代さん。

高木(美)分科員 おはようございます。公明党の高木美智代でございます。本日は、よろしくお願いいたします。

 二月十四日、大変残念なことに、大阪の寝屋川市立中央小学校で、卒業生であります十七歳の少年に三人の先生方が殺傷されるという事件がありました。その際、亡くなられました鴨崎先生に対しましては、心からの哀悼の意をささげるものでございます。

 やはり近年、平成十一年、京都日野小学校、また平成十三年、大阪教育大附属池田小学校、こういう学校という最も安全であるべき場所で、私どもの想像を超える事件が起こっております。また、少年犯罪等、平成九年の神戸少年事件、そしてまた、あの佐世保での殺傷事件等、考えられない事態でございます。私ども政治家も、国の未来を担う子供たちのために、こうしたことを二度と起こさないように、学校の安全確保に総力を挙げてまいりたいと決意をしております。きょうは、その決意を込めまして質問をさせていただきます。

 まず初めに、こうした事態に対しましての大臣の御見解を伺いたいと思います。

中山国務大臣 平成十三年の池田小学校の事件以来、文部科学省としても、さまざまな取り組みをしてきたところでございますけれども、今回の寝屋川市の小学校におきます事件等を見ましても、まだまだ足りないのかなと。特に大阪府におきましては、本当にいろいろな、さまざまな取り組みをしていただいてきたわけでございますけれども、それでもああいう事件が起こったということで、本当にどうしたらいいんだろうかということに、さらに一段の対策が必要かということで、文部科学省としても、各都道府県等に対しましてお願いをしたところでございますが、今後一層、そういった取り組みを行ってまいりたいと思っていますし、また、各都道府県におきましても、さまざまな取り組みが今進められておるところでございまして、そういったことにつきましても期待しておきたいと思っているところでございます。

高木(美)分科員 どうぞよろしくお願いいたします。

 今、大臣からお話がありましたとおり、もう全国各地で、既に、学校安全対策を拡充したり、また、予算を前倒しで実施するという動きが広がっております。恐らく、国の対応につきましても、来年度予算に組み込まれてもおりますけれども、それを来年の終わりとかいうのではなくて、できるだけ早く、早急に手を打つことも大事ではないかと思っております。

 自治体の動きとしましても、大阪府では既に、大阪市を除く公立小学校七百三十三校に警備員を配置しまして、各小学校に、警察官OBの助言も得て、地域住民が通学路の警戒活動を行う子供の安全見守り隊とか、また、来年度予算にも既にもう七億円が追加計上されたと伺っております。警備員は各学校に一人配置をして、しかも、月曜から金曜まで、児童の登校時から下校時まで学校に常駐をして子供たちの安全を守る、こういう形を大阪は既に手を打ったと伺っております。

 また、今、全国で緊急対策として広がっておりますのは、例えば一つは防犯器具、さすまたであるとか催涙スプレーであるとか警棒とか、こういったものを学校に配備するとか、また、防犯カメラ、非常ボタン、門扉へのオートロック導入など監視システムを強化するとか、また、防犯訓練、学校への警察官立ち寄りなど地元警察署との連携の強化であるとか、また、学校から保護者の携帯電話への不審者情報のメールを配信する、このことを強化するなど、それぞれ考えられているところでございます。

 中でも、大田区立田園調布小学校、私は地元は東京でございますが、ここは、全校児童の世帯から一律五千円を徴収して、民間警備会社に委託を決めたと。PTAが御自分たちで警備員を雇うという、大変これは異例のことであると思っております。

 そういったことも含めまして、まず、最近の学校への不審者の侵入事例について、警察にお伺いをいたします。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 平成十六年中、課外活動を含む課業時間帯に、小学校に侵入して児童の生命、身体に危険を及ぼすおそれがあった事案として、都道府県警察から警察庁に報告があったものは十九件であります。

 その事件内容を見ますと、建造物侵入八件、傷害一件、恐喝一件、強制わいせつ一件、銃刀法違反一件などであります。

 事案発生時、門の施錠なしが十一件、一部施錠ありが四件、全部施錠ありが二件、そもそもフェンスなしが二件。また、侵入口を見ますと、正門等が十件、フェンス乗り越えが二件、工事用出入り口一件、不明が四件でありました。

 なお、平成十五年中は、二十二件について警察庁に報告がありました。

 その事件内容を見ますと、殺人未遂一件、傷害、暴行六件、強制わいせつ三件、銃刀法違反三件、建造物侵入五件などでありました。

高木(美)分科員 ありがとうございました。

 文部科学省は、こうした実態を把握していらっしゃるかと思いますけれども、それをどのように行われているか、伺いたいと思います。

素川政府参考人 文部科学省の対策といたしましては、子ども安心プロジェクトというのを平成十四年度から実施しておりまして、ハード面の安全対策、これは学校整備指針の改定でございます。それに加えまして、ソフト面の対策ということで、学校への不審者侵入時の危機管理マニュアルの作成でございますとか、防犯教室の開催を推進するなど、そういったソフト面の整備。このハード面、ソフト面の両方相まって、学校の安全確保を進めるよう対策を進めているところでございます。

高木(美)分科員 ありがとうございます。

 実は、これは二月中旬ですけれども、横浜市で市立小学校校長会が、市内三百五十四校のうち九十七校を対象に、いわゆる不審者侵入対策用に設置されております監視カメラの映像を一日何分ぐらいチェックしているか、これを調べましたと。朝八時から午後四時ぐらいまで、ちょうど子供たちが学校にいる時間ですけれども、その間、何と平均十五分しかチェックできていない、このことがわかったという報道がつい昨日ございました。最長で六十分、最短ではわずか二分という、こういう学校もありまして、職員室で監視役のはずの副校長は来客とか電話の応対に忙しい、構内巡回を強化すれば職員室が空になる。要するに、一セット百十万、百万前後の監視カメラを設置しましても、生かされていない。モニターを監視する人の手がいない、職員が不足している、こういう事態が浮き彫りになりました。今、教員の方たちも大変多忙で、残業手当もなく、中には、過重労働を強いられています、こういうお声も伺っております。

 しかしながら、こうした警備につきましては、最終的にはマンパワーによる警備体制を強化するしかない、これが多くの関係者の方たちの要望でもございます。必要な専門の配置はしなければならないのではないかと思っております。

 私の地元の東京の区市町村議員の方たちが、昨年の夏、小学校を訪れまして、ずっと聞き取りをやってくださいました。何が一番必要なのか、そういう中から我が公明党として強く主張しましたのが、学校安全体制整備推進事業ということで、スクールガード、スクールガードリーダーということでございますけれども、既に来年度予算に七億五千万円盛り込まれております。この事業、スクールガードリーダー、スクールガード、これを今後どのように推進されるおつもりなのか、また役割、そしてまた連携、機能、こうしたお考えにつきましてお伺いをさせていただきます。

中山国務大臣 公明党の御支援もございまして、平成十七年度におきまして、学校安全体制の整備を必要とする小学校等におきまして、ボランティアで学校の巡回、警備等に従事するスクールガードを活用した効果的な安全体制を整備する地域ぐるみの学校安全体制整備推進事業を実施することにしておるところでございます。

 具体的な内容といたしましては、スクールガードの養成、研修を推進するため、不審者を発見した場合の具体的な対応方法等を学ぶことができるスクールガード養成講習会を開催する。それから、警察官OB等の協力を得まして、スクールガードリーダーを千二百人委嘱し、担当エリア内の各学校を定期的に巡回して、警備のポイントや改善すべき点等について具体的に指導する。三番目に、スクールガード等を活用しつつ、地域社会全体で子供たちの安全について取り組むモデル地域を指定いたしまして、その取り組みを支援するという、この三つの内容を柱といたしまして、今御指摘ありましたように、平成十七年度におきまして七億五千万円を計上しておるところでございます。

 文部科学省といたしましては、このような事業を活用いたしまして、各学校で安全、安心の確保に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

高木(美)分科員 ありがとうございます。

 これは、例えば具体的に、各学校にスクールガードという形で、安全監視員の方ですね、このボランティアの方を配置するということでしょうか。そして、その方たちを育てるのがスクールガードリーダーという認識でよろしいでしょうか。

 ただ、たしか小学校一万校と私は認識しておりますけれども、その小学校の数の中で千二百人のスクールガードリーダー、こうなりますと、お一人が何校ぐらい担当されて、そしてどのような、要するに現場で動くような体制になるのか、もう少し具体的にお示しいただきたいと思います。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 小学校の数は二万数千校であると存じておりますけれども、このスクールガード、これは、先生お話しのように、ボランティアという形で地域の方々に、これは学校設置者の方で依頼いただくということになるわけでございます。

 それで、今回、私どもの地域ぐるみの学校安全体制整備推進事業は、このスクールガードを養成するといいますか、そういう方に知識それから経験、そういうものを踏まえていただくための養成講習会を都道府県、指定都市レベルで行っていただくというのがまず一つでございますけれども、今のお話の配置の問題につきましては、特にそのスクールガードについて、それを指導する、地域の学校に対する安全体制というものをチェックする、指導するという形のスクールガードリーダー、これはどちらかといいますと警察官のOBの方とか警備の専門職についていた方、そういったOBの方などに委嘱いたしまして、周辺の学校のスクールガードの指導、そうして学校点検のチェックをしていただくということでございます。

 予算積算上、千二百名を計上いたしておるところでございますけれども、小学校の中でも学校安全体制の整備を必要とする小学校ということでスクールガードを配置していただくということでございますので、二万数千校全部ということには直ちにはならないかもしれませんけれども、そういう関係でいきますと、スクールガードリーダーとしては、十校以上、十数校、近くの小学校を担当していただくということになろうかと思います。

 この千二百名というのは予算上の積算でございますので、この数については、実際の運用に当たっては弾力的な幅があろうかと思いますけれども、そういった形で、ある程度のより広い地域でございますけれども担当していただく、そのための委嘱費、スクールガードリーダーの委嘱費を計上しているというところでございます。

高木(美)分科員 大変具体的にいろいろお考えかと思うんですけれども、やはり漏れがありますとまたそこから第二、第三、またその先ということもございます。やはり千二百名、当然これも予算の関係で、私どもも努力いたしましたけれども、千二百名ということでございます。したがいまして、できましたらもう最初から、ここしかできないという限定ぶりではなくて、やはりこのスクールガードを養成しながら、薄く広くまず配置をしていただく。配置しながら、後は、やはりそこは学校と協議しながら、それをどう充実させていくか。また、そのスクールガードで来てくださったボランティアの方で、またいろいろな個性の方もあられると思いますし、機能とか役割とか、これからつくっていかなければいけない大事な段階だと思っております。

 ですので、先ほどモデル地域も指定してというお話等もございましたけれども、私は、これはむしろ、もう大臣が先頭に立って、ここの地域はどのようになっているのかとか、先般も学校教育の現状というのを視察されまして、私は大変すばらしい大臣の御行動だと思っております。そういう中で、やはりこうしたことにつきましても、そこの学校がどのようになっているのか。とにかく、児童の安全については全責任を持つというこちらの姿勢、これをやはり社会に示していきますことが、それが一番の私は、まず安全の第一歩ではないかと思っております。ですので、この体制につきましても、今後ぜひさらに検討していただきまして、警察ともよく協議の上で、今後どのような配置をされるのか、御検討をお願いしたいと思います。

 先ほど申し上げましたように、これも後になって準備をしながら、ことしの暮れとか、ことしの夏とかいうのではなくて、もうこの予算執行とともに、この春のうちに、四月、五月、このときにいち早く文部科学省の方たちが手を打たれた、警察の方が一緒に動かれた、やはりこの国の迅速な行動、これがどれほど多くの方たちにとっての安心につながっていくかと思っております。

 今少子化ということが言われておりますけれども、子供を産んでもこういう変な社会だから、こういう何とも言えない若い方たちの思いもあられるようです。そういったところを防ぐ意味からも、ぜひこの点を御検討いただきたいと思いますが、重ねてお願いいたします。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 先生お話しいただきましたように、この地域ぐるみの学校安全体制整備推進事業、これは、予算が成立する、速やかな執行というものが必要なわけでございます。実際には、直接その実施に当たっていただくのは都道府県、指定都市の教育委員会でございますけれども、それらの教育委員会と協議しながら、先ほど申しましたスクールガードの養成、研修等も含めまして、その円滑な実施を図ってまいりたいと存じております。

高木(美)分科員 よろしくお願いいたします。

 今のことに関連しまして、もう一つだけ。例えば、スクールガード、ボランティアの方が被害に遭われることも想定されます。そのためにも、例えば保険に加入していただくとか、またそのようなことを整備をするとか、それも必要ではないかと思われますけれども、その点につきましてはいかがでしょうか。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 学校の活動を支援するという形で、現在もさまざまな形でボランティアの方が学校活動にかかわっておられるわけでございます。その場合、保険という面でもさまざまな取り組みがなされておろうかと理解しております。

 例えば、九州のある市で取り組まれているスクールヘルパー事業という場合には、その保護者や地域の団体の関係者が、ボランティアとして教育活動とか校内や通学路の巡回といった子供の安全対策に参加しておられますけれども、その場合のボランティアの方の活動を対象といたしまして保険の手当てが講じられている。この内容といたしましては、ボランティアの方が事業に参加している間の傷害等に対する傷害保険と対人対物の賠償責任保険というものが盛り込まれていると伺っております。

 今回の事業につきましても、ボランティアで参加されている方の事業の実施に当たって、これらの点、参加される方の保険というものに対して十分配慮していただくことが必要と考えております。この事業実施に当たって、その点を都道府県、指定都市に周知してまいりたいと考えているところでございます。

高木(美)分科員 ありがとうございます。やはりボランティアの方が安心して、また誇りを持ってこうしたことに取り組めますように、ぜひよろしくお願いいたします。

 続きまして、学校と警察との連携につきましてお伺いをいたします。

 寝屋川の中央小学校では、事件が発生しましたときに、ホットラインですね、緊急通報装置、学校と消防はあったけれども、学校と警察をつなぐホットラインがなかったというふうに伺っております。こうした緊急システム、ボタン一つでつながるそういうホットラインでも構いませんし、また、緊急時につながるだけの電話でも構わないと思います。何らかの形で警察と学校と緊急時に対応できる、そうしたシステムが必要かと思っております。この御見解を伺いたいと思います。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども、学校の安全管理の立場から申しますと、やはり緊急時における緊急通報システムの整備というものは非常に重要であろうと考えておるところでございます。具体的に緊急通報システムの中には、学校との連絡、消防との連絡、それから学校の中の連絡、いろいろあるわけでございますけれども、先生が今お話しになりました学校と警察との通報システムに限って少し状況をお話しいたしますと、私ども、学校の安全管理の取り組み状況に関する調査をいたしておりますけれども、それによりますと、平成十六年の三月末現在で、警察、警備会社との連絡システムを整備している公立学校の割合、これは全体で四三・六%となっております。小学校では四五・二%、中学校で四四・五%、高等学校で二九・八%、盲・聾・養護学校で五一・六%、幼稚園で四四・〇%となっているわけでございます。

高木(美)分科員 これは今後推進をしていただけるというふうに認識してよろしいのでしょうか、重ねてお伺いいたします。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 この緊急通報システムも含めまして、学校安全体制の整備ということは非常に重要であろうかと思っています。私どもといたしましては、都道府県教育委員会等に対しまして、この緊急通報システム等の整備の充実につきまして指導をしてまいりたいと考えているところでございます。

高木(美)分科員 これも、恐れ入りますが本当に迅速にお願いをしたいと思います。やはりこうした意識が高いときにどのような手を打っていただくか、これが大事かと思っております。

 あと、重ねまして、学校と警察との連絡協議会でございますけれども、今、既に学校警察連絡協議会、これが非行防止のためということで設置をされているというふうに伺っております。これがどのような開催をされているか、実効性あるものになっているかという検証も当然必要かと思っておりますが、これは非行防止だけではなくて、やはりこうした安全体制の確立のために日常的に意見やまた情報交換をしていただくことが必要ではないかと思っております。

 このことにつきましてどのようなお考えをお持ちか伺いたいことと、あともう一つ、先ほど、地域を巻き込んでというお話がございました。冒頭に申し上げましたとおり、見守り隊とかいろいろ名称を決めてそれぞれ今動きを始めてくださっておりますけれども、そうした方たちからの要望としまして、なかなかそうした情報がボランティアの方に届かない、地域の方に届かないというお声もございます。そうした地域の連携も含めまして、これからこの協議会を中心にどのように推進をしていかれるのか、これは文部科学省と警察、それぞれにお伺いをさせていただきます。

銭谷政府参考人 学校警察連絡協議会についてお尋ねがございました。

 いわゆる学警連は、昭和三十八年から、少年の非行防止に関して学校と警察との連携を強化する目的で設置をされております。平成十六年三月現在で、全国で二千六百五十一カ所結成をされておりまして、約九六%の小中高等学校が加入をいたしております。この学校警察連絡協議会におきましては、学校と警察との間で少年の非行防止のために共同して、例えば非行防止教室の開催でございますとか、あるいは情報交換、さらには街頭補導活動、こういった活動を行ってきているところでございます。

 文部科学省といたしましては、今回の寝屋川市での事件を受けまして、学校安全確保の一層の推進を図るために、学校と警察との連携を進めるように、先般、各学校の設置者に対しまして通知を発出したところでございます。今後とも、警察庁と密接に連携をして、各学校と警察とが学校警察連絡協議会等を活用いたしまして、非行防止のみならず、先生お話のございました児童生徒の安全対策にも取り組んでいけるように、その機能の一層の充実に努めてまいりたいと思っております。

 また、学校が地域のボランティアの方々等に対しまして的確に情報を提供するということも、これも必要なことでございますので、PTA活動等を通じまして、学校の状況について地域の方に情報公開をしていくということは今後とも進めてまいりたいと思っております。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 まず、学校と警察との連絡協議会についてでありますが、今文部省からお話がありましたので簡単に申し上げますが、もともと子供を非行から守る活動を行っておりましたが、先ほど議員御指摘になりました平成十一年の京都の事件あたり以降、最近の犯罪の実態から、児童生徒の犯罪被害防止、安全確保など、子供を犯罪から守るための各種活動についても各都道府県で進められており、警察庁でもそのように推進しております。今後とも、学校警察連絡協議会が地域社会と一体となって、地域の子供を非行や犯罪から守るための活動の中核として一層機能するよう努めてまいりたいと考えております。

 次に、地域住民に対する犯罪の発生状況の情報の提供についてであります。

 子供を犯罪から守ることは、警察のみならず学校、地域社会、家庭等が共同して取り組むべき課題であると考えております。警察においては、子供への声かけ、つきまといなど、子供に対する犯罪の前兆とも見られる事案については、住民、保護者、教育委員会、学校等を通じ迅速な把握に努めているところでございます。

 また、把握した情報については、被害者のプライバシーに配慮した上で、教育委員会、学校、住民、保護者、児童等に対し、電子メール、各種チラシ等の広報媒体により提供するほか、警察のホームページにおいて犯罪発生状況を地図上で公開する府県も増加するなど、迅速かつ積極的な情報提供に努めているところでございます。

 今後とも、これらの取り組みを推進するとともに、学校とも連携しつつ、その進捗状況を点検するなどして学校の安全を確保するよう努めてまいる考えであります。

高木(美)分科員 よろしくお願いいたします。

 それでは最後に、時間が迫ってまいりましたので一点、お伺いいたします。

 こうしたことは公立の学校につきましては予算等も配分をされながら安全確保を図られているところでございますが、私学につきまして、こうした警察情報、そしてまた私学の安全確保、このことにつきまして、これをどのようにされるおつもりなのか、そのお考えをお伺いしたいと思います。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど、平成十四年から子ども安心プロジェクトを推進していると申し上げたわけでございますけれども、その中におきます、例えば危機管理マニュアルの作成、配付、そしてまた、学校における犯罪被害のための特色ある取り組みを紹介いたしました、学校の安全管理に関する取り組み事例集の作成、配付なども行っているわけでございますけれども、これは公立学校のみならず私立学校にも配付して、私立学校の安全確保についての取り組みを求めてきているところでございます。

 また、このようなことは、私立学校の主管部課長会議などにおきまして、機会あるごとに関係者に対し、取り組みを説明し、学校の安全に万全を期すようお願いしているところでございます。今後とも、さまざまな機会を通じて指導に努めてまいりたいと存じております。

高木(美)分科員 私学につきましては、先ほどありましたような緊急連絡システムとか、そういったものはどのようになっていらっしゃるのか。そしてまた、協議会等につきましても、今そういう中に私学も含まれて行われているのか、その点につきまして、最後にお伺いさせていただきます。

萩野主査代理 時間が来ておりますから、簡潔にしてください。

素川政府参考人 私どもが学校の安全管理体制につきまして調査いたしましたところによりますと、私立につきましては、通学範囲が広範囲にわたることもございますから、通学路の安全点検といった項目については公立よりやや低いという状況がございますけれども、他方、防犯監視システムの整備状況、通報システムの整備状況につきましては公立学校よりも整備が進んでいるというようなデータが出ておるところでございます。

 また、地域、家庭との間の連絡会開催状況につきましては、公立と同様の実施状況になっていると承知しているところでございます。

高木(美)分科員 ありがとうございます。

 先ほど申し上げました緊急通報システム、これもぜひ研究していただきまして、やはり私学も、先ほど通学路は遠距離であるというお話がありましたけれども、駅をおりましたら条件は同じでございますので、ぜひともそうしたことを視野に入れながらまた御検討をお願いしたいと思います。

 以上をもちまして終了いたします。ありがとうございました。

萩野主査代理 これにて高木美智代さんの質疑は終了いたしました。

 次に、本多平直君。

本多分科員 民主党の本多平直でございます。

 きょうは、薬害についての教育等のテーマで大臣に質問をさせていただきたいと思います。今までも、委員会では大臣に御答弁をいただくという形でやってきておりますので、若干具体の内容にもわたりますけれども、大臣からの御答弁をぜひよろしくお願いしたいと思います。

 まず、大臣にお伺いをしたいと思います。薬害という問題について、大臣はどのように御認識をされていらっしゃるでしょうか。

中山国務大臣 薬害エイズ問題やサリドマイド事件など、医薬品等に起因する感染症や副作用による健康被害で多くの方々が苦しまれているわけでございまして、このような悲惨な被害は繰り返してはならぬ、このように考えるところでございまして、教育を預かる文部科学省といたしましても、このような医薬品等による悲惨な被害を防止するという社会的要請にこたえるため、大学の薬学教育を初めとして、医薬関係人材の養成に関する教育の充実強化に努めていかないかぬ、このように考えているところでございます。

本多分科員 大変大きな被害が繰り返されているというところも大切なポイントだと思います。当然、大臣の御認識どおりであると思います。

 私は、当然、この問題、一義的には厚生労働省が大きな責任を持っている課題であると認識をしておりますけれども、実は、長い間被害者の皆様の声を聞いていて、最初は被害者の皆さん、被害の補償とか責任を当然求めるわけですけれども、今後薬害を起こさないということが次の本当に大きな願いになっているんですね。そのときに実は文部科学省が大変大きな役割を担っているということを、私も最初はなかなか気づかなかったんですけれども、被害者の方々から長年お話を聞いているうちに認識をするようになってまいりました。今大臣の方からも、文部科学省もしっかりこのことには責任があるんだというお話をいただきましたので、少し具体的に御質問させていただきます。

 まず、今大臣のお話の中には大学教育の話があったのですけれども、そこに行く前に、初等中等教育、小学校、中学校、高校での教育についてお話を伺いたいんです。

 薬害というものがあるんだ、起こってきたんだというこの事実を、まずは知らせるという意味ですね。医学者になる人、薬剤師さんになる人だけに限らず、多くの国民にまずこういうことがあったということを知らせることというのは、私は、薬害を今後防いでいくまず第一歩だと考えています。

 ところが、教科書を見てみますと、一部の教科書が前向きに、高校の保健体育の教科書なんかには載っているんですけれども、実は、この教科書いいなと思って前の教科書と比べますと、一つ前の版には薬害エイズが載っているんだけれども、薬害エイズが今度は消えてサリドマイドとスモンだけになったりとか、いいと思っている教科書でもなかなか記述が、私から考えると大事だと思うものが消えていたり、こういうふうにまちまちですし、そしてまた、本来もっと教えてほしい小学校、中学校の方の教科書にほとんど載っていないという現状がございます。

 そうだとしますと、私は、これは学習指導要領の中にある程度薬害という問題を書き込むべきではないか、そういうふうに考えておるんですけれども、大臣のお考えはいかがでしょうか。

中山国務大臣 我々が薬を服用するとき、これはもう当然効くものだ、プラスの面しか考えないわけですけれども、薬害というマイナスのそういった作用もあるんだということは、これは小さいころから当然基本的な知識として知っておくべきだ、このように考えるわけですね。

 今、教科書の引用がありましたけれども、確かに、そのときそのときいろいろな事件が起こりますから、薬害エイズのときは薬害エイズがどうしても教科書に載りますし、次のあれが起こればまた、どうしてもそのときそのとき変わっていくことはしようがないと思いますけれども、基本的に、そういったような薬害というものがあるんだということにつきましては、これはやはり小さいころから、本当に小学校のころからきちっと教えておくべきだ、このように考えているところでございます。

 中学校や高等学校の社会科や公民科、保健などの教科書に薬害に関する記述が見られるということは御指摘のあったとおりでございますが、今、実は学習指導要領全般の見直しを中教審にお願いしているところでございますが、その中でいわゆる教科内容の充実改善等についても御審議いただくことになっているわけでございまして、具体的にどのような内容を盛り込むかということにつきましては、国民共通に指導すべき内容、どういうようなものを示すかというふうな、いわゆる国民的な観点からいろいろな御指示もいただいているわけでございまして、広く国民のいろいろな意見も伺いながら総合的に検討していく、その中でそういったことについてもできるだけ取り上げるようにしていかないかぬ、このように考えておるところでございます。

本多分科員 まず、大臣のお考えとして、小学校、中学校、高校でも薬害というものの存在をしっかり教えるべきだという大臣の御答弁、ありがとうございます。

 ちょっと大臣、今、勘違いされていませんか。小学校の社会科、中学校の公民、高校の公民なんかに載っているのは薬害の記述ではないと思います。公害が載っているという話なんです。実は私がこれから質問しようと思っていたところなんですけれども、当然、学習指導要領について、すべて何でも書き込むというわけにはなかなかいかないというのはわかっているんです。

 ただ、私が例に一つ挙げたかったのが、今大臣もちょっと間違って言われたと思うんですが、公害の件なんです。公害という問題も、日本で多くの方々が健康に被害を起こして、私も学校でしっかり習いました。四大公害病ということで、水俣病であるとかイタイイタイ病、地図とあわせて習ったことで、本当にこういう大きな問題があるんだということを認識しました。おかげと言ってはなんですけれども、公害という問題、日本では大分少なくなってきたという現状があると思っています。

 そんな観点から、公害というのはしっかり教えろということで、小学校の社会、中学校の公民、高校の公民の学習指導要領には載っているんですね。ですから、これとの横並びでも、何とか薬害というのをこの程度には指導要領に書いていただけるということを御検討いただけないかというお願いなんです。

中山国務大臣 この中学校や高校の教科書の中にも、今言われました、消費者保護とか企業の役割あるいは疾病の予防などに関する学習の中で、薬害に関する記述も見られるということのようでございます。

 それから、具体的にどのようなことを盛り込むかということにつきましては、今、諮問している段階なものですから、私が具体的に、こうします、ああしますと、まず先取りして言うのはちょっと差し控えたいと思いますけれども、そういったことは重要だと思いますし、また、そういったいろいろな御要望もあるということはしっかり認識しておるところでございます。

本多分科員 ありがとうございます。

 私も、中央教育審議会で今、これも大臣の御英断なわけですよね。ある程度、十年ぐらいは一度変えたら変えないということを、大臣は大変リーダーシップがあられて、これは大きな論争も呼んでいるテーマだと思っています。そういう大きな、例えばゆとり教育がどうであるとか、そういう大きな方向転換の話も私は大変大切だと思って、これはまたしっかり議論をしていただきたい。

 そして、教科書の中身を全部政治家の指示どおり学習指導要領で決められるというのも、これもまた中立性の観点からいっても、私も必ずしもいいとは思わないんです。

 ただ、やはりいろいろな国民の声を吸い上げて、特に数が多い皆さんではありません、薬害の被害者の皆さん。ただ、この思いというのは、私は普遍化し得る思いだと思っています。

 そしてまた、学習指導要領の作業というのは中央教育審議会でやるということは建前にはなっていますけれども、私が理解するところでは、事実上、文部科学省の官僚の皆さんも大変その下準備の段階ということはされていると承知をしております。

 ですから、大臣としても、大きな方向転換のことも示されている大変リーダーシップのある大臣だと私は思っていますので、こういう個別の課題も、あれぐらいあの若い議員も言っていたし、入れるのを研究してみろやぐらいのことを、ちょっと事務方の方に指示をするなんというお考えはございませんか。

中山国務大臣 実は、私、大臣になる前に、スティーブンス・ジョンソン症候群の方々と何度もお目にかかって、いろいろと御要望等を聞いて、それは本当に悲惨な状況等についてはよく知っているものですから、これは非常に重要なことだ、大事なことだ、こう思っております。

 そういったことを文部省の事務方がどれほど認識しているかどうかわかりませんが、聞きましたら、毎年そういった方が来られまして話を伺っているというふうに聞いていますので、そういったことはしっかり受けとめて対処していくべきものだ、このように認識しているところでございます。

本多分科員 具体的にスティーブンス・ジョンソン症のお話も挙げられて、大臣が大変薬害に御理解があるということがわかりました。

 私も、学習指導要領の改訂がまた何年も先だということでしたら、こう一生懸命言わないんですけれども、ちょうどまた大臣の御決断で一つあるわけですから、ぜひ具体的な部分についても大臣から一定の御指示、公害程度ですね、公害も本当に大きな問題でした。公害はきちんと学習指導要領に書かれていますから、公害程度の記述をどこかに出すことで、教科書会社もやはりこれは触れなきゃということで、やはり薬害をなくしていく一つの道だと思っていますので、ぜひとも前向きな御検討をお願いしたいと思っています。

 次に、大学とか専門教育の場面に移りたいと思います。

 これは、既に大臣も御答弁をいただいたとおり大変大切な分野で、これからお医者さんになる方や薬剤師、看護師になる方に薬害の話をしっかりと教えていくというのは大変大切なことだと私は思っています。

 当然、薬に副作用があるとか、そういう具体的、病理的な話というのはされなくてはいけないんですけれども、私がこれから申し上げるのは、その病理的に必ず医薬品に伴って起こってくる副作用という話とはまた別に、社会的にいろいろな要因が絡まり合って薬害ということが起こり得るということをしっかりと高等教育でも教えることが必要だと考えていますけれども、これの取り組みの現状、今大臣が把握されている現状をお答えいただければと思います。

中山国務大臣 昭和四十年ごろでしたか、私は役所に入ってすぐに水俣の海で遊んだことがあったんですけれども、そのころはまだ水俣病のことも全然知られていませんで、本当にきれいな海で泳いだのを覚えています。その後、あの水俣病が発生したわけでございまして、我々が知らないところでいろいろな、やはりその時代、時代で薬害とかいろいろな公害が出てくるものだなということをしっかり踏まえた上で、そういう医学といいますか医療、あるいは大学におきましても、きちっとそういったことも踏まえて授業といいますか教育が行われなきゃいけないということを日ごろから感じておるところでございます。

 そういった中で、今、医薬分業の進展、あるいは医療技術が高度化している状況の中で医薬品の適正な使用というものを一層進めるために、医薬品を安全、有効に活用できる人材を養成するということがこれまで以上に私は求められている、このように考えるわけでございまして、将来の医療の担い手を養成する医学、薬学教育等におきまして、薬害の防止に関する教育の充実を図ることがますます重要になってきている、このように考えているわけでございます。

 さらに、現在の医療人養成におきましては、それぞれの分野のモデルコアカリキュラム等の中に、医薬品の適正使用とかあるいは代表的な薬害の例について、その原因と社会的背景等を理解することなどが学生の到達目標として設定されているわけでございます。各大学におきましては、これらを踏まえまして、例えば薬害問題につきましては、薬理学的、医学的な観点だけではなくて、医療倫理とかあるいは人権学習的な観点からの授業を展開するなど、こういう関連する教育の充実ということについても幅広く取り組んでいるというふうに承知しておるところでございます。

本多分科員 高等教育に関しては、被害者の皆さんからの声もかなり文部科学省の皆さんしっかりと聞いていただいて、人権それから社会的な観点からの薬害というものをしっかり授業の中に取り入れている大学がふえています。

 しかし、文部科学省さんが出されている調査自体でも、まだそういう授業をしていない大学というのが調査の中でも若干残っていたりします。大学教育というのは、これまた全部を国から押しつけるわけにはいかない難しいところはあると思うんですけれども、これまでの国会答弁でも、促すという表現では御答弁いただいているんですけれども、ぜひとも今後ともしっかりとこの部分、各大学にお願いベース、もうちょっと強いところでしっかりしていただけるのかどうかというのが一点。

 もう一点。実は大事な、大変効果があるのが、被害当事者の皆さんの声を聞く授業なんです。これは私がお知り合いの薬害の被害者の皆さんも講師としていろいろな大学に行っているんですけれども、大変評判がいいそうで、来年も来てくださいという声がたくさんあるそうです。

 やはり、私もそうなんですけれども、本や新聞、テレビで見るのと、実際にその方の話をじかに聞くのは、大臣もお会いになっているということですけれども、全然違うわけで、今後、医療に従事する皆さんにはぜひともこういう経験をしてほしいと思うので、こういうことをしっかりと促していくという点、いかがでしょうか。

中山国務大臣 先ほども言いましたように、いわゆる医療倫理とか、あるいは人権学習、そういったことの観点からも幅広く授業を行うようにということは、ぜひ大学側もやっていただきたいと思いますけれども、今御指摘のように、本当に私も実際にお会いして、本当にひどいな、大変ですね、慰めの言葉がないというか、風邪薬だと思って、早く治したいから飲みますよね、だけれども失明とか、本当に長い間苦しまれる、そういった方々と直接会いまして、その事の重大性ということをもう本当に認識したわけでございます。

 これからそういう医学関係や薬学関係に進む人たちに、こういうことなんですよ、あなたたちの仕事というのは、極めて重要な、大変な、実はいいこともあれば悪いことも引き起こす可能性があるんだということをしっかり自覚した上で勉強してもらうということは本当に大事なことだ、このように考えているわけでございます。

 文部科学省といたしましては、こういった薬害問題の重要性にかんがみまして、今後とも引き続き医療人養成におきましてはこの問題に関する教育の充実が図られるように、さらにまた、全国医学部長病院長会議というようないろいろな機会がございますので、そういったところで各大学における取り組みの強化ということについてもお願いしてまいりたい、このように考えております。

本多分科員 ありがとうございます。

 一点、ちょっと具体的になってしまうんですが、大学教育には学習指導要領がございません。薬学部、医学部にはそれぞれ独自にモデルコアカリキュラムという学習指導要領のようなものがあるわけです。

 実は、細かく読んでみますと、薬学の方にはしっかり、代表的な薬害の例、その原因と社会的背景を説明し、これを回避する手段を討議するなんという、非常に私から見たらいいカリキュラムが載っているのですけれども、医学の方はもうちょっと漠然とした書き方なんですね、副作用報告と有害事象報告の意義を説明できると。

 これは個別につくっているもので、なかなかそこまで大臣にとも思うのですけれども、医学の方も全く同じ、大切だと思うので、ちょっと事務方というかこういうのを研究している方々に、医学の方もそれぐらいしっかり書いたらどうだというようなことを、大臣から検討を指示していただくお考えはありませんか。

中山国務大臣 現在、医学教育におきましては、平成十三年度に文部科学省の調査研究協力者会議が作成いたしましたモデルコアカリキュラムの中に、生物製剤の副作用とか、副作用報告と有害事象報告などの事項に基づきまして薬害問題も積極的に取り上げられているわけでございまして、各大学におきまして、薬理学等の医学的な観点だけではなくて、医療倫理や人権学習的な観点からの授業が行われているというふうに聞いておるところでございまして、御指摘の薬害問題を医学研究モデルコアカリキュラムに具体的に取り込むべきという点につきましては、今後、大学関係者等の専門家によりモデルコアカリキュラムが見直される際に、一つの重要な視点として検討されるように促してまいりたい、このように考えております。

本多分科員 ありがとうございます。

 ぜひ、そこのところしっかり、こういうのというのは、ここに書いてもさらにもう一段階、実際に大学でカリキュラムをやるところに、いい大学では強く教えてもらえるし、薄い大学では薄められちゃう可能性もあるので、最低限こういうところにはしっかりと、さっきの学習指導要領の話も一緒です、書いたから教科書が一生懸命書いてくれるとは限らないわけで、ぜひとも最低限書いていただくために努力をしていただきたいと思っています。

 最終的には国家試験でこういう問題がたくさん出ればいいと私も思っていまして、ここは所管が厚生労働省さんということですから、本当だったら厚生労働大臣に私も今度機会があればまたお話をしていきたいと思うのですけれども、所管外ですけれども、国務大臣として、国家試験でしっかりこういうことを出していくべきだという私の考え方に、どのようにお考えでしょうか。

中山国務大臣 そこのところで、きちっとそういった問題、そういったことも問われますよということであれば、学生たちもしっかり勉強すると思いますので、それはやはり本来そうなのかな、こう思いますけれども、所管外ですので余りこれ以上申し上げませんが、機会がありましたらまた大臣の方にも話したいし、また、どうか先生の方からも少し指摘していただきたいと思います。

本多分科員 ありがとうございます。

 もう一点お願いなんですけれども、実は、もう五年以上になるのかな、薬害エイズの直後からずっと、いろいろな薬害に遭われた方々が、厚生労働省には具体的に、もうちょっと薬害を具体的に防ぐため、それからその後のいろいろな医療体制の問題なんかで交渉に行っているのですね。それとあわせて文部科学省にも行っていまして、実は私も、秘書だったのですけれども、議員の付き添いということでほぼ毎年皆さんと一緒に文部科学省に伺っています。官僚の皆さんも大変一生懸命話を聞いていただいていると思っているんですけれども、やはり担当者の方がかわっていきますし、非常にリーダーシップを発揮するという意味では、やはり大臣にも一度話を聞いていただきたいというのが被害者の皆さんの思いなんです。

 実を言いますと、かなりいいところまで話がいったことが一度ありまして、役人の方が、もうある意味押し切られる形ではあったんですけれども、スケジュールが合えば調整しますよというところまでしていただいたのですけれども、ちょっとほかのいろいろな事情で大臣とお会いするチャンスがつくれないまま来ているのです。

 今、私、お話を伺っていて、大臣がスティーブンス・ジョンソン症の方と何度もお会いをしているというお話も伺いました。もうわかっていらっしゃるのかもしれないのですけれども、ほかにも多くの、スモン、サリドマイドから始まって、陣痛促進剤で奥さんを亡くされた方とか、当然、薬害エイズの方、最近の新しい薬害の被害者の方々もいます。

 厚生労働省さんですと、きちんと責任をどうするかとか、今後の補償をどうするかという非常に重いテーマですと、なかなか大臣が会いたがらない気持ちは、会うべきだと私は思いますが、そういう気持ちはわからなくない。しかし、この文部科学省さんへの交渉は、そういう過去の責任問題であるとかそういうことではなくて、今後起こさないためにぜひ会っていただきたいという非常に前向きの依頼なので、ぜひ何とか一度、短い時間でもつくって皆さんの直接の訴えを聞いていただけないかというお願いなんですけれども、いかがでしょうか。

    〔萩野主査代理退席、主査着席〕

中山国務大臣 聞きますと、本多議員がいつも同行されて全国薬害被害者団体連絡協議会から文部科学省の方に要望活動が行われているというふうに聞いておりまして、これは本当にいいことをしていらっしゃる、こう思うわけでございます。

 厚生労働省と文部科学省、ちょっと立場が違うかもしれませんが、先ほどから申し上げましたように、そういうことが起こらないように、そういう医療人を養成するんだ、そういった役割といいますか責任を担っていると思いますので、私ももう拒む気は全くございません。公務といいますか、そういうのも私は公務の一部だと思うのですけれども、いろいろな、大臣も忙しいものですから、何時の何時と言われるとなかなか御要望にこたえられない、難しいことがあるかもしれませんが、最大限時間をつくりまして、直接お目にかかる、そういったことも考えていきたいと思っております。

本多分科員 大変前向きな答弁、ありがとうございます。きちんと事務方の方と調整をさせていただいて、お忙しいことは十分わかっております、長い時間をとる話ではないようにして、ただ、一度ぜひきちんとお会いをいただくように、私も今の答弁を受けとめたいと思っています。

 私、ふだん安全保障委員会にいて、なかなか文部科学大臣に御質問する機会がございませんので、薬害の点は今のところまでにさせていただいて、一点、私の提案というか、大臣のお考えを聞かせていただければと思っています。

 刑法を小学校や中学校や高校で教えたらどうなのかなという考えなんです。

 今、非常に青少年の行動、いろいろなふうに取り上げられて、問題視されていて、例えばそれが、道徳教育がもっと必要だというようなことを言う方が非常に多くいらっしゃって、それがまたいろいろな議論を生んでいると思います。

 もちろん、こんなものは、すぐに解決策が、これが特効薬だというのはないのですけれども、実は、私は前から思っていて、大学で法学部だったので、法律というのは、憲法ぐらいは割と小中高でも教わるのですけれども、刑法とか民法とかという基本的なところでさえ大学に行って初めて条文を見るなんという人間がほとんどなんです。

 何をしていいか、何をして悪いかというのは、本来的に言えば、そんな法律でわからせるものではなくて、もっと前の段階で、道徳とか当たり前のところでやるべきだという考えもわかるのですけれども、私は、ある程度例示で、それが刑罰とともに、何をするとこれぐらい、もちろん殺人とか窃盗とか強盗ということはわかるのでしょうけれども、例えば、車の運転でも、酒を飲んで人を亡くさせちゃうとこれぐらいの懲役になるんだよとか、そういうことを教えることというのは実は効果が少しはあるんじゃないかなというふうに考えています。

 まだまだ私が研究したわけじゃないのですけれども、大臣のこういうことについてのお考えはいかがでしょうか。

中山国務大臣 規範意識といいますか、あるいは事の善悪、こういうことはしちゃいけないんだよ、こういうことはいいことなんだよというようなことを小さいころから子供たちに教えるということは、非常に大事なことだと思いますし、また一歩進んで、こういうことをすると罰せられるんだよというふうなことについても、やはり身近に教えるということが非常に大事なことじゃないか、私は個人的にはそう思っているのです。実際に学校の教科書でも、例えば、人を傷つけて国家から罰せられるのもルール違反の行為に対する責任の問われ方の一つであるというふうなことが記述されているようでございまして、そういう意味では、やはり規範意識を教えると同時に、事の善悪、さらに罰則というようなことの社会的なルール、法的なルールというようなことについても、やはりそういう視点は入っているような気がするのですけれども、それをさらに厳しくいっても、本当にこういうことを、人を殺すと死刑だよとか、そこまでいくのかどうかわかりませんが、やはり自分の行動、自分がした行動については責任をとらなきゃいけないんだ、場合によっては罰せられることもあるんだよというふうなことについては、きちっとしたものを教えるべきじゃないかな、私はそう思っております。

本多分科員 私も、その法意識とか、法律とは何かということを教えようという努力は、いろいろな文部科学省さんのレポートを見たり、学習指導要領の端々にはかいま見ることができます。例えば、民法の中では、契約ということに関して、クーリングオフの例でかなり具体的に教育をしていただいて、非常にいいことだと思っているんですけれども、概念というのは難しいんですよね。

 割と若いうちから、法律とはとか決まりとはと教えるより、逆に具体から、ちょっと殺人のところだと大変どぎついんですけれども、例えば、重過失の交通事故を起こしたときとか、普通の過失の交通事故を起こしたときとか、こういうところをしっかり教えるということは私は大切だと思うので、できれば具体から入るという観点で御指摘をさせていただいたので、ぜひ検討を、これも指導要領の見直しなどの際にしていただければと思います。

 最後に、もう一点伺いたいと思います。現代の歴史なんです。特に日本の第二次世界大戦前後の歴史、これをしっかりと教えていただきたいという観点からの質問でございます。

 政治家は、いろいろな自分の考え方に基づいて、この時期、教科書のここがいいとか悪いとかいろいろな議論をしております。私は、その議論自体、大変大切なことだと思っていて、大いにするべきだと思っていますが、最終的にはできるだけそこは価値中立にいかざるを得ないのかなという思いもあります。

 しかし、私は、それ以前に歴史教育、この部分が、どうも三学期とか一番忙しい時期に、ずっと中世とか一生懸命教えてきて、明治維新ぐらいまでは何とか一生懸命教えて、力を入れれば入れるほど時間が足りなくなって、はい、あとはプリントを配るから読んでおけとか、入試に出るのはこことここだけだからここを覚えておけとかということで、一番日本人として知っておかなければいけない部分の歴史が、価値判断どうのこうのという以前にしっかりできていない可能性があると思っているんです。

 いろいろ工夫はされてきているということは役所の方から伺いましたけれども、実際大丈夫なのかどうか。もしきちっとした調査がないのなら、私、ここを調査していただきたいんです、つまり、何月何日で大体満州事変の辺を教えているのかとか。そんなにお金のかかる調査じゃないと思うので、していただければと思うんですけれども、いかがでしょうか。

中山国務大臣 歴史、我が国の歴史、世界の歴史に学ぶというのは、これはこの世の中を生きていく中で最も大事なことだと思っています。

 その中で、私もずっと前から思っておりましたが、私の経験で、やはり近現代史の授業というのがちょっとおろそかになっていたかなと思っておりまして、実際、大臣になりましてちょっと調べてもらったんですけれども、決してそうではなくて、近現代史について、最近だろうと思うんですけれども、かなり力を入れているなということがわかりまして、安心したんです。

 何か事務方の方でも、先生の御質問があるということで、六つの都道府県についてちょっと緊急に調べたらしいんですね。それによりますと、大体これは通常第二学年までに歴史の学習を行うことになっておりまして、ほとんどすべての学校で近現代史まで終わっているというふうな結果が報告されたようでございます。まあ、そうだろうと、もっと本当に細かく調べなきゃいかぬと思いますけれども、もう昔に比べると、格段にやはりそういったことは進んでいるなと思うわけでございます。

 昨今、いろいろ竹島の問題とか尖閣列島の問題とかありますが、そういった歴史的な経緯とかそういったものを知らないと、それに対する反応がちょっとちぐはぐになってしまったり、あるいは違う方向に行っても困るわけですけれども、そういう意味で、現代に生きる我々としては、やはり、過去のことも大事です、古い昔も大事ですけれども、近現代史、少なくともこの百年ぐらいについてはしっかりとしてもっと子供たちに教えなきゃいかぬなということは日ごろから感じております。

本多分科員 きょうは薬害の問題を中心に質問させていただきましたので、ぜひ今後とも前向きな取り組み、そして、二点提案させていただきましたので、ぜひ現状の調査、歴史のところもしっかりできているのか、もうちょっと詳しくやっていただければと思います。

 質問を終わります。

渡海主査 これにて本多平直君の質疑は終了いたしました。

 次に、原田令嗣君。

原田(令)分科員 自由民主党の原田令嗣です。

 本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。まず、日本の子供たちの学力低下が懸念されている中で、総合学習、ゆとり教育の行方、あり方について伺いたいと思います。

 小泉総理は施政方針演説で、子供は社会の宝、国の宝です、学校や家庭、地域など社会全体で、新しい時代を切り開く心豊かでたくましい人材を守り育てていかなければならないと言っておられます。そして、人間力の向上と発揮を強調されています。私も、資源のない日本の将来を担うのはまさに人材であり、人材立国こそが我が国の生きる道であると考えています。

 そうした中、国際学力調査で日本の学力低下が明らかになり、衝撃を与えました。学力向上を図らねばならないのは、私も当然のことと思います。今、中山文部科学大臣の指示で、学習指導要領全体を見直す方向で検討が始まっています。気になるのは、戦後日本の画一教育、詰め込み教育の反省に立ち、創造的で多様な人材の育成を目指して総合学習を導入したゆとり教育の今後であります。ゆとりがたるみになっていないかという指摘もあります。

 これまでのゆとり教育に対する検証はどうなっているのか、また、検証の結果、失敗があるなら、なぜ失敗したのか、足りない面があったとするなら、何が足りず、これからゆとり教育をどう充実していくのか、こうした点について大臣に伺いたいと思います。

中山国務大臣 今、原田議員から、今まさに私ども文部科学省が正面から取り組んでおりますいわゆるゆとり教育の見直しといいますか、検証についての御質問があったわけでございます。

 ゆとり教育と言われてちょっと誤解される面もあるんですけれども、単に知識を詰め込むだけじゃなくて、基礎、基本的な知識をまず与えて、身につけさせて、それをもとにして子供たちがみずから考え、判断し行動する、そういうたくましいといいますか、どういう時代になっても生き抜いていけるような人間的な力、総合力、そういったものをつけさせるという意味で、現行の学習指導要領の理念とか目標に誤りない、私はこう考えているんです。

 ただ、去年の国際的な学力調査の結果等を見まして、果たしてそういったねらいが十分に達成されているんだろうか、もっと違うことをやるべきなんじゃないかとか、そういったことについて検証する必要があるんじゃないか、こういうことを感じたわけでございまして、そういう意味で、学習指導要領の全面的な見直しをやろうじゃないかということを今御提案しているわけでございます。

 現在、私ども文部科学省に、私を含めて政治家が五人おりますけれども、事務方も合わせまして、三百校ぐらいは現場の学校を見て回ろうじゃないかということで、スクールミーティングを開きまして、学校現場の意見を聞いているところでございます。その中で、例えば、授業時数が削減されたために子供たちがじっくりと考えることができない、あるいは先生方からは、本当にもっと徹底して教えたいんだけれども時間がないというふうな話とか、あるいは、総合的な学習の時間の理念は理解しているけれども、どのような授業を行えばいいのか、悩みがあるといったような御指摘もされているわけでございます。

 総合的な学習の時間につきましては、自然体験とかあるいは社会体験といったものを学校教育に取り入れて、教科の枠を超えて課題を設定して、そしてみずから探求し、教科での学習を補充しつつ深めていくという点、あるいはまた、各学校が創意工夫を生かした教育活動に取り組むということで意義を持つものだと考えますけれども、教育課程全体の中で、各教科等のバランスの問題、もっと基礎、基本的な教科に力を入れるべきじゃないかとか、そういったことを含めて学習指導要領全体の見直しの中でよく検討する必要がある、このように考えております。

 また、現時点で、週五日制を見直すということは考えてはいないんですけれども、ただ、休みが長い。特に日本の場合は三日連休とかがありますし、ことしもありましたけれども、夏休みはどうなんだろうとか、そういう意味で、余り休みが長いと子供たちがリズムを崩すというようなこともあるものですから、土曜日とかあるいは長期休校日の扱いについてどのようにしたらいいのか、まさに地域や学校の創意工夫をそこに生かす手だてはないのか、こんなことも考えているわけでございます。

 今後、私ども、いろいろ回ってまいりますが、各界各層いろいろな方々の意見を聞きまして、例外を設けることなく全体を中央教育審議会に御審議いただきたい、こう考えておるところでございまして、まず、実態は一体どうなっているんだということを検証しながら、では、どうしたらいいんだろうかというふうに前向きに検討していって、改善すべき点は、これはもう速やかに改善していきたい、このように考えているところでございます。

原田(令)分科員 基礎学力をきっちり学ぶことと、生き方、生きる力を学ぶこと、この二つはともに重要だと思います。二者択一であってはならないと思います。どう二つを両立させていくのか。大臣がおっしゃられたように、スクールミーティングで教育現場の状況をきっちり把握していただいて、教育する側の指導力、そしてそのための体制整備を進めてほしいと考えております。

 次に、これからの日本の教育にとって欠かすことのできない職業体験教育と国際教育について伺いたいと思います。

 今日本を揺るがす大きな社会問題は、若者の中にフリーターや働く意欲のないニートが急増していることであります。フリーターは四百万人を超え、ニートは五、六十万人とも言われています。こうした日本の将来にとって憂うべき状況の原因として、若者を採用する企業側の問題も大きいと思いますが、それとともに、教育の現場において、何のために学ぶのかという基本的な目的意識、学ぶ楽しさ、そして働く大切さ、喜びがきちんと学ばれていないのではないかということも指摘できるのではないかと思います。

 昔は、おやじの背中を見て子は育つと言われましたが、今はそういう機会が少なくなっています。要は、仕事、職業とは何かということを今の子供たちが知らない点が問題だと思います。自分の好きな分野で仕事できる幸せをもっと子供たちに伝えていく努力が必要だと思います。村上龍さんの「十三歳のハローワーク」や、IBM会長の北城恪太郎さんの「経営者、十五歳に仕事を教える」が注目を集めているのも、こうした課題のあらわれだと思います。

 もう一つ、これからの柱は国際教育だと思います。OECDの調査で日本の学力低下が明らかになったとき、中山大臣は、近隣諸国の追い上げに取り残されて、日本は東洋の老いたる小さな国になってしまうと述べられました。グローバリゼーションの進展と厳しい国際競争の中で日本が生き残っていくためには、学力とともに国際的に活躍できる人材の育成が極めて重要だと考えております。

 先週、地理学会の調査で、イラクの位置を知らない大学生は四割もいると報道されました。世界の状況に対する教育が重要です。さらに、小中学生、高校生のころから海外の人々と交流し、外国の文化と日本の文化の共通点や違いを知ることも重要な課題です。国を愛する気持ち、生まれ育ったふるさとを誇りに思う気持ちを高める一番早い教育は、私は外国の文化との出会いから生まれると考えております。

 職業体験教育と国際教育の重要性、必要性について、大臣の考えをお伺いしたいと思います。

中山国務大臣 原田議員から御指摘がありましたように、フリーターとかニート、これは私は大変大きな問題、大問題だと思っています。もちろん国家社会としても、将来の経済、そして社会的な活力という面からも大変なマイナスでございますし、また個人個人の人生、一生を考えた場合に、本当に、キャリアを積むことなくその日その日で過ごしてしまう、今は親御さんの力がありますからちょっとのんびりしている、そういった面もなきにしもあらずと思いますけれども、しかし、いつかは親も年とっていきますし、逆に今度は保護しなければいけない、介護しなければいけない、そういう立場にもなるわけでございまして、そういう意味で、ニート対策、こういったことについては本当に真剣に取り組んでいかなきゃいけません。

 先ほど申し上げましたように、去年の国際的な学力調査の結果、日本の子供たちというのは勉強する時間が一番少ない、そして、何のために勉強したらいいのか、そういうふうな動機づけといいますか、学習意欲が非常に乏しいということが指摘されたわけでございまして、これはいわばニート、フリーターの予備軍になる、そういう存在ではないかと私は思うわけでございまして、ここも何とか早く手を打たないと、日本の将来、非常に危ういことになる、こう思っているわけでございます。まさに御指摘ありましたように、小さいころから、自分たちは学校を卒業したら仕事をしなきゃいけない、働かなきゃいけないんだよというしっかりとした職業観といいますか、就職観というものを植えつける、そのために勉強しなきゃいけないんだと。

 アメリカでは小学校一年生の子供たちが全部言うそうです、ツー・ゲット・ア・グッド・ジョブ、いい仕事につくために学校に入りました、こういうことを言うらしいんですけれども、日本はどうもその辺のところの動機づけがちょっと弱い。学校というのは勉強するためとなってしまっているんですが、何のために勉強するかといえば、将来しっかりとした人生を歩むために、今、若いときには勉強しなきゃいけないんだ、そういうことをしっかり教えるということが非常に大事だろう、こう思っているわけでございまして、これは文部科学省より以前に各地区でいろいろな取り組みがなされているようでございます。

 もう御存じかもしれませんが、兵庫県の地域に学ぶトライやる・ウィークや、富山県の社会に学ぶ十四歳の挑戦事業といったようなことで、中学二年生が五日間腰を据えて職業体験活動等に取り組む事業をやっているとか、そういうことを聞きまして、文部科学省といたしましても、この十七年度から、中学生を中心にしまして五日間以上の職場体験の実現に取り組む、そういった全国的な普及促進を目的としますキャリア教育実践プロジェクトを新規に実施するということにしているわけでございます。

 こういったことを通じまして、若いころからそういったことに目覚めて、もう少し日本の子供たちが学ぶ意欲を高める、そしてどういう時代、どういう社会になろうともたくましく生き抜いていける、そういう人間力を持った子供たちを育てていくということに努めていきたい、こう思っております。

 また、国際的な教育、国際的な視野を持った子供たちの教育ということについても、まさに御指摘のとおりだ、私はそう思っているわけでございまして、これからますます国際化が進んでまいります。その中で、特に近隣諸国との関係が大きくなってくると思うんですが、中国とか韓国とか東南アジアに参りますと、本当に子供たちが目を輝かせて勉強している、非常に意欲的な子供たちが育っている。そういった中で、日本の子供たちだけが、言葉は悪いんですが、のほほんと、それを幸せだというふうな、非常にぬるま湯につかっている感じがあるわけで、こういうことじゃいけないということを私たちはしっかりと子供たちに教えなきゃいけませんし、また、そういった国際的な社会の中で活躍できる人材にもならなきゃいけないという観点から、国際的な素養についてももっともっと勉強させなければいかぬ。

 この前、まさに、イラクという国を知らない大学生が四割という話を聞きまして愕然といたしましたが、いろいろな情報はいっぱい入っているはずなのに、それを我が事としてなかなかとらえられていないということではないか、こう思うわけでございます。学校教育におきましても、世界の中の日本、そしてその中で生きていかなければならない日本人、自分たちということをしっかり踏まえた上のそういった教育ということも一層力を入れていかなきゃいけない、このように考えておるところでございます。

原田(令)分科員 大臣がおっしゃられましたように、小中学校の段階から、仕事とは何か、仕事の喜びとは何かを学ぶことが大切だと思います。ぜひキャリア教育実践プロジェクトを全国的に展開していただきたいというふうに思っております。

 また、一つ提案でありますが、NHKで放送されています「課外授業 ようこそ先輩」のように、豊かな見識を持つ先輩やある分野のトップランナーを社会人教師として招く取り組みを地域中心で展開していくことも非常にすばらしいことだと思っておりますので、ぜひ、そういったことも御検討いただければというふうに思っております。

 そして、国際教育の充実には、中学や高校で行う海外への修学旅行も大きな意義があると思います。実施状況はどのようになっているのか、そして、実施に当たって障害となっていること及び推進へ向けての取り組みをどのように考えているのでしょうか。さらに、日本を訪れる外国の子供たちと日本の子供たちの交流にも積極的に取り組んでいくべきではないかと考えておりますけれども、どのような現状でしょうか。

銭谷政府参考人 まず、「ようこそ先輩」のような、学校に各分野の方にお見えいただいて、いろいろお話を伺って進路を考えるということは大変意義あることだと思っておりまして、現状を申し上げますと、中学校で約五割、高等学校で約七割の学校で社会人を招聘しての講演会などが実施をされているところでございます。先ほど大臣からお話のございました、五日間の職業体験授業、文部科学省、十七年度から全国展開しようと思っておりますけれども、そういう中でもいろいろな分野の方のお話を伺うことになろうかと思いますので、そういった面でキャリア教育の推進を進めてまいりたいと思っております。

 それから、海外の修学旅行についてのお尋ねでございます。

 まず、実態を申し上げますと、平成十四年度に海外修学旅行を実施した学校は、高等学校が九百四十一校、中学校が百三十三校となっております。私ども、海外修学旅行は、外国人との交流や外国の文化に接する機会を得て国際理解を深めるとともに、これらを通じて我が国のよさを改めて知るというよい機会としての意義もあるというふうに考えております。

 一方で、海外修学旅行の実施に当たりましては、やはり何といっても、保護者に過重な経済的な負担を強いるということがないように配慮をしていくということが必要だと思いますし、やはり安全確保に十分留意をする。特に、我が国とは社会環境や習慣、交通事情などが異なっているわけでございますので、この点、十分安全に配慮をするということが必要だと思っております。そのために、文部科学省としても、外務省とも連携をしながら、目的地の安全等に関する情報を学校側に事前に提供する体制を整備するなど安全性に配慮をし、かつ、各学校に対しましても、十分に事前学習を行うということや、事後の外国の学校との交流活動を行うことなどによりまして、真に意義深い活動となるように指導しているところでございます。

 それから、外国の学校が日本へ来て日本の子供たちと交流している状況でございますけれども、実は、一番多い形態が、外国の学校と姉妹校提携をして交流を深めるという形が多うございます。これも平成十五年の五月の調査でございますが、高等学校で八百九十四校、中学校で四百七十八校、小学校で五百十八校が、外国の学校と姉妹校提携をして交流を図っております。また、それに加えまして、修学旅行で日本を訪れた外国の学校と交流するなど、多様な国際交流活動が行われております。

 先ほど来申し上げております海外への修学旅行につきましても、実施をした学校のうち約半数の学校が現地の学校との交流を図っているということがございますので、人と人との相互理解、相互交流、これを基本として国際理解教育を、日本から外国へ行く、外国から来た外国の学生と交流するということを通じて推進をしてまいりたいと思っております。

原田(令)分科員 国際教育、国際交流、国際理解を深めるには、やはり子供たちが現代史をきちっと知っていることが重要だというふうに思います。

 先ほど本多議員からも質問がありましたけれども、学校教育において、日本人が戦後どのように世界でもたぐいまれな経済発展をなし遂げたのか、また、国民皆保険などを通じて世界一の長寿を実現したことなど、戦後の日本の発展の歴史をきちっと教えることが、日本人としての自信や誇りの回復につながると思います。日本の歴史を古代から順番に丁寧に教えていって、時間が足りなくなって第二次大戦の反省で終わってしまうことも多いとも聞いております。戦後から現代に至るまでの現代史教育が足りないように思われます。むしろ、現代から過去にさかのぼって教えるのも一つの方法ではないかと提案しまして、次の質問に移らせていただきます。

 日本の国際競争力の基礎となる科学技術の振興、そして、それを地域で展開し、地域再生につなげていく取り組みの重要性について質問したいと思います。

 これからの科学技術の振興に当たりましては、成果の利活用を含め、文部科学省だけでなく関係省庁が横断的に連携し、総合的に取り組むことが不可欠だと考えております。総理も掲げている科学技術創造立国の実現は、地域の再生とも表裏一体であるべきと考えています。これからは、科学技術がリードする地域経済の活性化を進めることが必要です。このために、地域レベルでも産学官の連携を推進することが大切だと思っております。

 私の地元の静岡は、日本一のお茶、日本一の焼津漁港、そして南アルプスの豊かな水に加え、駿河湾の海洋深層水など、海や山の資源に恵まれております。さらに、食品産業の集積も大きい。そして今、マウントフジ・エアポートと呼ばれる静岡空港も開港へ向けて建設中であります。食の産業、そして食の文化を世界へ発信できる拠点となる食のクラスターへ発展する高い可能性を秘めていると思います。

 このため、静岡県中部地域では、フードサイエンスヒルズプロジェクトとして都市エリア産学官連携促進事業に参加してきました。平成十七年度から始まる発展型の事業提案にも応募しているところです。地域クラスター形成のため、本事業はどのように地域づくりに寄与するのか、また、地域レベルの産学官の連携を目指す文部科学省の取り組みはどのように行われているのか、伺いたいと思います。

有本政府参考人 先生御指摘のように、文部科学省におきましては、科学技術駆動型で地域を活性化するということに積極的に取り組んでおりまして、御指摘の都市エリア事業あるいは知的クラスターということを非常に広範に推進をいたしてございます。特に十七年度予算におきましては、都市エリアの産学官連携推進事業というものにつきましては、十六年度で終了いたします事業のうち、特にすぐれた成果を上げておられるところにつきまして、発展型ということで、さらにそれを延長して支援をするという計画を今いたしてございます。

 それから、先生御指摘の、中央の省庁レベルにおける連携がどうなっているかということにつきましては、昨年の秋以来、関係府省の局長レベルで連絡会を設けまして、それからさらに、総合科学技術会議でも科学技術連携施策群ということでこの問題を取り上げまして、省庁横断的な取り組みをさらにしっかりやろうというふうに今取り組んでおるところでございます。

 もう一つは、地域レベルでの、それぞれの関係の組織の壁を超えた密接な連携ということが非常に大事になってまいります。私どもの今までの経験につきまして申し上げますと、地域の産学官の強いリーダーシップ、コーディネーション、それから、今御指摘の地域固有の特徴のある資源あるいは技術とか技能、これに先端的な技術が融合したところに明らかに新しい成果が見えているというふうに思ってございまして、地域の組織の壁を超えた連携というのが非常に大事になってくると思っております。

 そういう意味で、省庁レベル、それから地域の連携というものを私どもはしっかり取り組んで、この事業あるいは知的クラスター形成全体の取り組みということもしっかり取り組んでまいりたいというふうに思ってございます。

 以上でございます。

原田(令)分科員 国のレベルでは、今おっしゃられたように、省庁の垣根を取り払って科学技術創造立国に向けていろいろな施策を行われているということですが、なかなか地方にまでそれが浸透していかない。県レベルでとまってしまって市町村レベルにおりなかったり、いろいろな問題があるというふうに考えております。

 静岡には、お茶の試験場や水産試験場など、農林水産分野の研究機関や研究業績も豊富であります。こうした分野も取り込んで、総合的なクラスターづくりへ発展できるよう、文部科学省を初め国の支援をぜひお願いしたいと思います。

 最後に申し上げたいと思います。

 現在策定中であります二十一世紀ビジョンのために昨年十月に行われたアンケートを見ますと、日本の競争力強化には人材育成のための教育改革が重要だという意見が五五%と最も高く、二位の規制改革、三位の中小企業対策を上回っています。日本の教育力、科学技術力、人間力の向上のため、現場の、そして何よりも未来を担う子供たちのために、教育現場の声や実情を踏まえた長期的ビジョンに立ち、揺るぎのない総合的な文部科学政策の思い切った推進と展開をぜひ希望したいと思います。

 子供たちが失敗から学び、立ち直れるゆとりを持つ、チャレンジ、そして敗者復活ができる教育、勇気と希望の持てる教育をぜひ推進していただきたいというふうに思います。どうぞよろしくお願いいたします。一言、大臣にいただきたい。

中山国務大臣 二十一世紀、どういう時代になるのかわかりません。先ほど言いましたように、中国等がどんどん後から追い上げてまいりますが、その中におきまして日本が今以上に発展し、平和で豊かな、そういった国民生活が営めるように、今からの子供たちのことでございますから、しかしその子供たちのために教育を授ける、そして科学技術を振興する、これはまさに、そういう意味では未来への投資、これからの子供たちに対する投資だと思うわけでございます。これは大人の責任だ、こう思っています。文部科学省としても、一生懸命取り組んでまいりたい、このように考えておるところでございます。

原田(令)分科員 ぜひ頑張っていただきたいと思います。日本の子供たちの将来のために、文部科学省が中心になって、ぜひ思い切った改革と、そして施策の推進を進めていただきたいと思います。

 これで終わります。

渡海主査 これにて原田令嗣君の質疑は終了いたしました。

 次に、江藤拓君。

江藤分科員 宮崎県の江藤拓でございます。

 きょうは、同郷の大臣に質問する機会を与えていただきまして、本当にありがとうございます。結構たくさん質問事項を考えておりますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 まず、三位一体の改革にかかわる義務教育国庫負担金の問題について御質問させていただきたいと思います。

 大臣は、非常に勇気のある態度をとっていただきまして、私は本当に心強く、頼もしく思いました。小泉内閣の中であれだけ毅然な態度をとるということは、大変な覚悟が要ったことだろうと思っております。

 今回、義務教育国庫負担金のうち人件費分の約半分、四千二百五十億円を税源移譲予定特例交付金として地方に暫定的に移譲することとなったわけでありますけれども、これは私は、今後の中教審の答申を待たなければならないということでありますけれども、やはりこれからの問題としてよく考えなければならないと思っています。

 地方でできることは地方でやる、確かに、地方で教育ができないのかといえば、そうではないと私は思っています。地方でできることの中にも、中央政府、国がきちっと責任を持たなければならないことがあるということであります。地方ができることはすべて渡してしまえばいいんだというのは行き過ぎだろうというふうに私は思っております。

 そこで、私は、宮崎県の場合どのようになるかということを、同郷ですからお話をさせていただきたいんですが、非常に財政力に格差があることはみんなよく知っていることですけれども、宮崎県の当初予算案、一般会計が発表になりました。総額は六千一億円。そのうちの歳入を見ますと、自主財源が二千五億円、三三・四%、この中には繰入金が二百四十二億円も入っております。投資的経費は八・七%の減、県単事業は三〇%の減、そして県債の残高は九千億円に到達をしてしまいました。

 そして、東京都の人には申しわけないんですが、東京の場合はどうなのかなということを調べてみました。東京の場合は、何と、平成十六年度の見込みですけれども、税収分だけで二千五百八十八億円、宮崎県全体の県の単独の収入を超えている、二千五百八十八億円もふえるということであります。

 そういう状況の中で、中教審のもとに設置されました教育条件整備に関する作業部会、ここの答申によりますと、もし個人住民税として税源移譲が完全になされた場合、九つの都府県ではさらに収入がふえる。これだけ、東京都は二千五百八十八億円もほっておいても税収はふえるのに、さらに収入がふえる。そして、宮崎県を含む三十八道県では減ってしまうということが、これははっきり数字として出ております。

 宮崎県は、出生率は極めて高いんです。高いんですが、教育の条件は非常に厳しくなっています。平成元年から平成十六年までの間に廃校になった小学校は何と十八校、中学校は三校、統合された学校は四校に上っております。そして、これから、平成十七年から十八年にわたるこの一年間だけを見ても、小学校が三校廃校される予定になっておりますし、中学校も二校、廃校予定が一校。私の選挙区の南郷村渡川の中学校も廃校される予定になっております。

 統廃合や廃校が行われるとどうなるのかということは、これはわかり切ったことでありまして、通学の距離が大きく延びる。これは、教育を受ける条件が極めて不利になるということになるわけであります。

 私の選挙区の西臼杵あたり、五ケ瀬、日之影、高千穂ですけれども、学校まで十キロ離れているなんというのは当たり前なんですよ。部活動なんかやりましたら、もう夜は真っ暗です。街灯もありません。懐中電灯一個持って、とぼとぼと夜の道を歩いて家路を急ぐ。お父さん、お母さんが仕事で忙しければ迎えに行くこともできません。確かに、通学に関する助成もいただいてはおります。数字をいただきましたけれども、これでどうにかなるような問題ではありません。

 ですから、やはり義務教育というものは国がきっちりと責任を持つ。日本のどこにいても、大臣が言われるようにどこにいたってきちっとした教育水準が確保されるということをやっていただかないと、昔は、人材は山に育つというふうに言われたわけでありますけれども、山間僻地の条件不利地に行けば行くほど教育を受ける機会やそういうものが損なわれてしまうということになりかねないのではないかというふうに思います。

 まとめて質問させていただきますけれども、法律で標準法という法律がございますね。生徒四十人に対して教員を一人は配置しなければならない、そういう、法律できちっと縛られているわけであります。

 先ほど申し上げましたように、宮崎県のように財政の厳しいところ、財政再建団体転落直前なんですよ、宮崎県は。三カ年をかけて、そうならないように緊縮財政をしいております、安藤新知事の強力なリーダーシップのもとで。そういう条件のもとで、標準法で教員の数は地方の責任できちっと確保しなさいと。そうなると、教員を確保して教育水準を守るということが、ほかの行政サービスにしわ寄せをもたらす。地方は、教育水準を守ることも厳しいし、ほかの行政水準を維持することも厳しい。地方はどんどん廃れていってしまうということにもなりかねないと思うわけでありますが、大臣も同意見だと思いますけれども、私の今の意見を聞いていただきまして、大臣のお考えをぜひ聞かせていただきたいと思います。

中山国務大臣 江藤先生とこうして委員会で質疑ができるということ、本当に夢のようでございますが、お父さんの江藤隆美先生には大変お世話になりました。それこそ大変存在感のある、しっかりとした歴史観を持たれた先生でありまして、また、宮崎県、地元のためにも大変な御貢献をいただいたわけでございます。私も後輩でございますが、改めて感謝申し上げますとともに、御子息江藤拓さん、いよいよこれからだということで、幅広く活躍いただいておりますが、どうかこれからも、大きな視野を持って、日本のために、そしてふるさと宮崎のために頑張っていただきたい、このことを最初に申し上げたいと思います。

 今お話がありました義務教育国庫負担制度、これを含めた、東京といいますか富裕県と財政窮乏県との比較、本当に身につまされるわけでございます。だんだんと経済格差、財政格差が広がっていくな、そういう中で三位一体改革が進められている。そして、その中で義務教育国庫負担制度がどうなるのかという、本当に今大事な時期に差しかかっていると思うわけでございます。

 昨年末のこの論議におきましては、私は、どうしても国庫負担制度は堅持すべきだという論陣を張ったわけでございます。御承知のように、秋までに中央教育審議会で議論してもらうということになりましたが、これから議論していただく中で、私はやはり義務教育国庫負担制度というのは堅持していきたい、このように考えております。

 まさに、今御指摘がありましたように、宮崎を初め、いわゆる財政力の乏しい県におきまして、これは大変なことになる。ここ一、二年は交付税というのが確保されますからいいんですけれども、二年後からは急激に交付税というのが激減するというときに、教育をどうするんだ、これは地方にとっても大変な負担になるわけでございまして、私は安藤知事にも、本当に賛成でいいんですか、地方は大変ですよということを申し上げた。まさに江藤先生の出身であります宮崎二区、そのことを私はいつも頭に浮かべながら申し上げているんです。どんな山間僻地に生まれても、少なくとも義務教育においてはひとしく教育を受けて、そして学校を卒業する時点においては同じスタートラインでスタートさせたい、これが国の責任ではないか、このように考えるわけでございます。

 地方にできることは地方に、非常に、そういう意味では賛成ではございますが、まさに地方にできなくなるわけですね。地方ができなくなるという中で、しかし地方にできても、本来国がやるべきことがあるんじゃないか、それは、例えば外交とか国防はそうですし、私は教育だってそうじゃないか、こう思うわけでございます。

 これまでもそういった観点から主張してまいりましたが、同県といいますか、同じ財政窮乏県の出身の議員として、どうかこの義務教育国庫負担制度は堅持して、少なくともこれからの子供たち、どこに生まれてもどこに育っても、やはり日本人として自信と誇りを持って社会に巣立つことができるような、そういう義務教育をしっかり授けるようにともに頑張っていただきたいと心からお願いする次第でございます。

江藤分科員 大変お励ましまでいただきまして、ありがとうございました。

 標準法の問題もそういうことでありますし、加配教員という制度もありますね。今回、新潟あたりで地震が起こって、メンタルケアの面でも非常に、標準を超えて教員を派遣して子供たちの心のケアをしてやろうということも、国の関与があるからこれはできることでありますので、大臣の今御答弁いただきましたように、中教審の秋の答申を待つわけでありますけれども、これはあくまでも政治が決めることです。政治が決断することでありますので、大臣の強力なリーダーシップを御期待しておりますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 それでは次に、教科書の問題について、それから学校教員の資質の問題について、二、三、質問をさせていただきます。

 私には三人の小学生の子供がおります。長男は今度中学校に入りますから、今度は公民の教科書、問題の公民の教科書もいよいよ学ぶようになるわけでありますけれども、子供を育ててみてつくづく思うことは、子供は本当に真っ白ですよ。何も色に染まらないでこの世の中に生まれてくる。子供たちの人間形成は、私たち両親であるとか学校であるとか友人であるとか、そういう社会環境の中で形成されます。特に小学生なんというものは、学校にいる時間が親と接している時間よりもはるかに長いわけでありますから、教員の資質、そして教科書の内容というものが子供の人間形成に大きな影響を与えるということは言うまでもないことだろうと思っております。

 そして、私の学校でもあるんですけれども、ああ、今回はいい先生に当たってよかった、そうすると成績はぐっと上がるわけですね。余り子供たちに好かれていない先生に当たるとびゅっと下がる。子供は正直ですよ。子供は、やはり一番のバロメーターだと思っております。

 そして、大臣に一つ聞いていただきたい話があります。これも宮崎県の例なんですけれども、児湯郡の児湯農協の青年部の木城町支部の支部長をしている小泉正浩君、私の友人ですけれども、その息子、小学校五年生、恵太郎君、学校でテストがありました。我が国の農業についての問題、これはゆとり教育の中でやったのかもしれません。

 全部読むと切りがないのであれですけれども、例えば「米づくりにかかわっている人々は、おいしい米や安心して食べられる米をつくるために、どのようなくふうをしているか書きましょう。」と。「農薬をあまり使わない」、二重マル、そのとおり、いい解答ですね。次はなかなか難しいんですけれども、「自給のわりあいが一番高いのは、米である。」頭のいい子です。正解です。我が国は「おもな食料のうち、小麦と( )の自給のわりあいが大変低い。」これも「大豆」と、見事に正解です。非常によく勉強していますね。

 次の問題です。「わが国は、食料の多くを外国からの輸入にたよっています。今後、わが国が食料を確保していくためにはどうすればよいか、」あなたの考えを下の四角に書きなさいと。今申し上げたように、お父さんは農業をされているわけです、大変御苦労をされて。去年は台風が襲って、露地野菜もハウスもめちゃめちゃにやられました、宮崎県は。そして、キャベツの値段は一個千円になりました。そうなりましたときに、外国から、前年度比七十七倍ですよ、前年度比七十七倍のキャベツが緊急輸入されて、あっという間に値段は下がってしまいました。そういう親の苦労を見た彼は、輸入品を減らし、農家の数をふやす、そう答えたんですよ。そうしましたら、驚くなかれ、大臣、バツです、バツ。

 バッテンというのも正解かもしれません、物は見方ですからね。物は見方ですよ。だけれども、農家に育っている子供が、家のこと、親の姿を見て書いた解答に対してこういう懐の狭い解答をしてしまうと、子供は傷つきますよ。

 ですから、大臣、ゆとり教育の見直しの問題も、私、「甦れ、日本!」を読ませていただきました。この時期に見直すのは時期尚早ではないか、焦り過ぎじゃないか、そんなことはないです。間違っているということを素直に認めてそれを正すということに、はばかることはありません。自己批判の精神を政治家は失ってはいけないと思います。こういうことがあるということであれば、やはり教員の免許の更新制度だとか教師の質を高めるということはとても大事だと思います。大臣の御所見を、私のこの話を聞いて、いっぱいありますので、できれば短目にお願いいたします。

中山国務大臣 いや、驚きましたね、何ですか、輸入を減らし、農家の数をふやす、これはバツなんですか。(江藤分科員「バツです。それで、問題になっているんですね」と呼ぶ)

 今、日本の国策として、自給率を高める、四五%まで高めるということを掲げているわけですから、これはやはり、そのためには、今農家がどんどん減っているのを何とか食いとめて、農家をふやさなければいかぬときでございますから、それは学校の先生方、もう少し考えてもらいたいし、特に宮崎の子供たちを教える、農家の多い学校で教える先生方としては、もう少し教え方に工夫があってもいいんじゃないかと思うんですね。やはり自分の親、地域の人たちが従事している産業に対して誇りを持つような、自信を持てるような、そういう教育をしてほしいなと思います。

江藤分科員 ありがとうございます。

 今御指摘がありましたように、今国会に自由民主党は、食育基本法を提出する予定になっております。超党派で全党で出せればよかったんですけれども、これは残念ですけれども、こういう方向で我々は進んでいるわけでありますし、これからの日本の将来のために食糧自給率の向上、これは大切なことですから、そういう観点もやはり学校の教育の場で教えていただきたい。こういうことは御当局の方に、農林省だけの問題じゃないですよ。

 それから、地球温暖化の問題もそうですよ。やはりこういうことこそ学校で教えていただきたい。もう既に経産省は、家庭から排出されるCO2の排出については目標数値を設けることはあきらめたということになっておりますけれども、こういうことを学校で教えて、地球の環境は大事なんだと。地球の温度が一度上がったら世界の農業生産は一〇%落ちるかもしれない、そういう統計も出ていますので、教育の現場のことをよく考えていただきたいと思います。

 それから、教科書の問題について、今度は歴史教科書、非常にやってほしくない話かもしれませんけれども、聞かせていただきます。

 私は、当たり前の話ですけれども、自分たちの負の歴史、自分たちの失敗や過ちについて、隠ぺいしろ、隠してしまえ、そういうようなことを言うつもりはもちろん毛頭ありません。そういうことについても正面から向き合う必要があります。しかし、バランスを欠いていることは間違っていると私は思うわけであります。

 学習指導要領の中で、どうして歴史教育を教えるのかということが書いてあります。その目途ですね。学習指導要領の中で、どうして歴史教育をやるのかと。それには、平成十年度版の改訂版の中には、「国民としての自覚を育てる。」という従来の文言に加えて、「我が国の歴史に対する愛情を深め、」という文言が加えられていますね。今の我々の日本の国で行われている教育というもの、歴史の教科書、これはこの学習指導要領にのっとった、文部科学省としてきちっとこの趣旨にのっとった検定を行った教科書だというふうに自信を持って言えますか。御当局、お願いします。

銭谷政府参考人 教科書につきましては、学習指導要領の範囲内で編さんをされるわけでございますけれども、検定に当たりましては、学説その他公正な学問的な見解に基づいて私ども検定をしている所存でございます。

江藤分科員 予想していたとおりの返事が来て非常にがっかりしているわけでありますけれども、これは、学習指導要領の範囲内ということであれば、今言った、我が国の歴史に対する愛着を深め、この趣旨から外れちゃいけないんですよ。

 歴史を学んだ子供たちが、では、どういう感想を現実に持っているかということをちょっといろいろと見てみました。例えば、おじいちゃん、おばあちゃんはひどい人たちだ、人殺しだ、おじいちゃん、おばあちゃんのことが嫌いになった。歴史の勉強をすると心が暗くなる。そしてまた、ここに非常に衝撃的なテスト問題が出てまいります、皆さん方も御存じですけれども。日中戦争について、「なぜ日中戦争がおきたのだろう。」といろいろ問題があって、そのときに「中国の人たちは、日本のことをどう思っていたと思いますか。」という設問なんですよ、大臣。解答は、日本のやつらは子供たちを殺し、女性も殺しやがった、日本人は最低だ、これが大臣、二重丸でした。

 歴史は、見る角度によって大きくその姿を変えます、言うまでもなく。もう釈迦に説法ですけれども、例えば伊藤博文公は、それは私の尊敬する政治家です、私も政治家の端くれですけれども。初代の総理大臣になられて、日本が独立国家としてこれからもやっていけるのか、それとも諸外国にのみ込まれるのか、そういう厳しいときに国会を立ち上げ憲法をつくった、まさに近代国家日本の幕あけを引いてくれた、すばらしい日本の英雄ですよ。その人は、残念ながらテロ行為によって、安重根という方によってハルピンの駅頭において殺された。

 そのことが、中国、韓国において英雄であることは間違っていると思いません。中国、韓国の人たちがこの人を英雄視することが間違っている、そういうことを言うつもりは全くない。しかし、日本の教科書で、暗殺というのはテロでしょう。今、テロという言葉は大変ポピュラーになりましたけれども、テロは許されないんですよ。それが日本の教科書によって、ヒーローだというふうに取り扱われている。そして、歴史教科書の中で私たちが当たり前に習っていた、例えば菅原道真であるとか二宮尊徳であるとか勝海舟であるとか、そういう人たちの記述はすべからく抜け落ちてしまう。別に韓国の英雄のことを言っちゃいけないというんじゃないんですよ。

 さらに言わせていただけば、まだたくさんありますよ。バランスを持って教育をしてほしいということを言いましたけれども、日本が諸外国に行ったことは全部侵略ですよね、今の日本の教育の中では。これはもうほとんど定説になりつつある。しかし、それでは蒙古が日本を襲ってきたときはどうなっているのか。今言いましたように、襲ってきたという表現が一つ、おしよせてきたという表現が一つ、遠征してきたという表現をしている教科書もありましたよ、蒙古が遠征してきたんですと。遠征といったらスポーツか何かですよ。蒙古襲来というのはスポーツの交流か何かですか。こういうことをすっぱり通してしまっている。これは、学習指導要領の範囲内できちっと検定作業をしていると私は思えません。

 そして、朝鮮戦争のことについても、三十八度線を越えてこれは南下してきたと。明らかに侵略したんでしょう、北朝鮮が三十八度線を越えて。こんなことを教育しているのは日本の教科書だけだと思いますよ。

 ですから、これからの子供たちは大変なんです。二〇二五年になれば大人二人でお年寄り一人を支えていかなきゃいけない、賦課方式を維持すれば。出生率は一・二九といってどんどん下がっていく。この資源のない国で子供たちが生きていくには、彼らが知恵を出し、そして生きる力を、生き延びる知恵、そういう意欲を子供たちに植えつけてあげるのが教育だと思うんですよ。そういうことの観点からいうと、私は歴史教科書の問題については非常に問題があると思いますが、大臣、いかがでございましょうか。

中山国務大臣 いろいろお話がありましたけれども、遠征という言葉、そういえば、世界の歴史でアレキサンダー大王の遠征という言葉があったなと、遠くから攻めてくるのを遠征というのかなと思ったりしたんですけれどもね。

 いろいろな表現はあると思いますけれども、今、検定の問題は、私も大臣になっていろいろ注意深く見ているんですけれども、やはり文部科学省も、政府の見解といいますか、そういった中で学習指導要領を定めまして、その中で検定をやっているわけでございまして、御承知のように、具体的にどのような歴史事象を取り上げて、それをどのように記述するかということは、これは民間の執筆者等の判断にゆだねられているわけでございます。その中に、現在の学説とかそういったものに照らして明らかに誤りとか著しくバランスを欠いた記述がある場合には、検定意見を付してその欠点を指摘する、こういうことになっているわけでございます。

 ずっと見ておりまして、日本の子供たちが、我が民族といいますか、歴史に自信と誇りを持って、これから予想される厳しい二十一世紀の時代を歩んでいける、そういった土台をつくってやるのが教育であるとすれば、まさにそういったこともしっかり踏まえた上で、私はこの教科書問題にも取り組んでいかなきゃいかぬな、こう思っているところでございます。

江藤分科員 ありがとうございます。

 かなり厳しく申し上げましたけれども、実は政治の責任なんですよ。もっと言ってしまえば文部科学省が悪いわけじゃないんです。昭和五十七年に日本と中韓両国の間に起きた教科書問題、官房長官談話を受けて大変有名な近隣諸国条項というものができてしまいました。これがある限りにおいては、ある意味、どうぞ、私たちは配慮します、皆さん方の御意見をきちっと踏まえた上で教科書をつくりますということを内外に宣言しちゃっているわけですから、文部科学省を余り私が厳しく叱責しても、これは仕方がない。政治の責任だろうという部分がかなり大きいと私は思っています。

 事実上、これははっきり決まってはいないといいながら、中国関係では侵略と南京事件の二項目、韓国関係では侵略、土地調査、三・一独立運動、強制連行など七項目、それに、東南アジアへの進出、西銘先生ここにおられますけれども、沖縄戦を加えた十一項目については、検定意見を付さないということに、この近隣諸国条項のためになってしまっている。付さないということになってしまえば、私たち政治家が文句を言うこと自体が大体おかしいじゃないかということにもなりかねない。しかし、これは国家の主権の一部放棄じゃないですか。

 私たちにとって一番の宝は子供たちですよ。私も、いずれ子供たちより先に死にます。その子供たちの未来を切り開くのも、自分たちの力で切り開いていかなきゃいけない。しかし、最初に申し上げたように、真っ白な、無垢な状態で生まれてくる子供たちは、無条件に与えられたものを吸収してしまう。吸収した結果、本当に国を愛し、そして世界の中で仲よく手をとり合って生きていける日本人は育つのかということはちゃんと考えなきゃいけないと思います。

 ですから、大臣は今回、この三位一体の改革の問題については本当に勇気のある行動をとっていただきました。大臣にお願いしたいのは、この近隣諸国条項をぜひ削除していただきたい。削除するのが無理なら、あるべき姿にきちっと戻していただきたい。こんなこと書かなくたって、周辺諸国と仲よくやっていけますよ、私たち若い政治家は。このことについて大臣がどのようにお考えになるか、御意見をどうぞ大臣からお願いします。

中山国務大臣 文部科学大臣としてやれること、やらなきゃいかぬこと、しっかりわきまえておりまして、私は今、義務教育といいますか教育改革に全身で取り組んでいるところでございます。この歴史認識の問題もあるわけですけれども、それよりも何よりも、本当にこれからの子供たち、いかにたくましく生きていける土台をつくってやるか、そういうことに専念しているわけでございまして、その中には、先ほども申し上げましたように、やはり日本人として自信と誇りを持てるような、そういう教育をするということが基本でございます。

 それ以上のことを言いますとまた問題になるかもしれませんので、これはもう、この辺までにとどめておきたいと思います。

江藤分科員 先ほど申し上げましたように、文部科学省は、教科書問題が起こったときには毅然とした態度をきちっととっているんですよ。できるだけ客観的な表現をとるんだ、不確実な数値を断定的には記述しない、事実を正確に表現する、きちっと反論しているんですよ、昭和五十七年当時。このときにやはり立ち戻ることが肝要だろうと私は思います。

 あと残り時間が一分少々になりましたので、最後に、ロケット打ち上げ成功、おめでとうございます。本当にありがとうございました。やはり日本が、北朝鮮の問題も考えながら、これからたくさんの衛星が後に詰まっていますので、これからさらに研究を進めていただいて、残念ながら、能力は一〇%落ちたであるとか、諸外国との打ち上げの経費では全然太刀打ちできないとか、まだ解決すべき問題はたくさんありますので、科学技術の面でもぜひ御努力いただきたい。

 そしてもう一つつけ加えるなら、今回一番ほっとしているのは、実は打ち上げが延期されなかったということです。これは、延期されると周りに漁に行けないんですよ。今一番魚がとれる時期なんですよ。一番いいときなんですよ。この時期に一日でも延期されると大変な損害ですから、今回、直前に一時間ぐらいおくれたでしょう、またこれは延期になったらどえらいぞと私はびくびくしたわけでありますけれども、やはり日程どおりにきちんと、周辺の漁業者に説明した日程どおりに、つつがなく今後日本の国産ロケットが打ち上げられますことを最後にお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

渡海主査 これにて江藤拓君の質疑は終了いたしました。

 次に、松島みどり君。

松島分科員 自由民主党の松島みどりでございます。

 先ほど、中山大臣が江藤拓委員に対して、お父様、江藤隆美先生にお世話になったことも含めて感無量とおっしゃっておられました。私自身の経験で申し上げますと、実は私、二十数年前に、大学を卒業して最初に新聞記者として赴任しました宮崎支局におきまして、中山大臣がまだ大蔵省をやめて間もなく、これから選挙に出るという記者会見を宮崎県庁で行われました。その記者会見を、私、まだ駆け出しの記者として取材して書かせていただいた、そんなことを今思い出しながら、中山先生は初志貫徹されて、当選回数を重ねられて大臣になられた。その中山大臣に対して、そのころは政治家になるなどとは思いもよらなかった私が、国会議員二回生として質問させていただく、私も、きょう、感無量でございます。

 質問させていただきます。

 中山文部科学大臣が、就任以来、子供たちの学力を高めるために、国語、算数、理科、社会の授業時間をふやすということや、あるいは全国学力テストの実施、さらに、土曜の授業容認などについて熱っぽく語っておられます。このことについて、私は、いずれも親たちの、お父さん、お母さんたちの要望に沿ったものであり、非常にすばらしい、全く同感でございます。そして、そういう観点に立ちまして私は質問させていただきたいと思っております。

 まず第一に、国語教育の充実ということについて、そして読み書きの問題について大臣に質問をさせていただきます。

 私は、国語の教育というもの、国語、日本語、母国語というものをしっかりと、特に小学校の段階で身につけさせるということは、何にも増して大事なすべての基本であると考えております。

 今、そこそこ名前をよく聞く大学の学生たち、例えば私の事務所にインターンとして来たいというような子供たち、あるいは、就職試験を受けるんだけれどもといってあいさつに来られる子供たち、学生たちの書いたものを見ますと、そういう人たちでさえ、片仮名のツとシが混同されていたり、ソとンが混同されていたり。これは、小学校の一、二年生できちっと書き順を含めた片仮名の書き方を教え込まれていない、あるいは教え方が悪かったか。教師はきちっとそれぐらいの程度については何度も繰り返し練習させて、完全にマスターするまでやって初めて教師の責任だと私は思うんですが、それがなされていないということが非常に残念に、悲しく思う次第でございます。

 そしてまた、国語ということについて申しますと、これは文部科学省も関係あります、総合初等教育研究所というところが一昨年実施した漢字の調査で非常にショックな結果が出ております。これは、小学校の二年生から六年生までと中学一年生を対象にいたしまして、一万五千人に対して、その前の学年で、例えば小学校二年生に対しては小学校一年生のときに習った漢字について問う、そういう形で調査しているんですけれども、高学年になるほどできが悪くて、六年生で学ぶ漢字を中学一年生の生徒に書かせましたら、八割の子が書けた漢字はわずか一六%しかないというショックな結果でございます。

 中学一年生の半分以上の生徒が、小学校六年生で学んだはずの字で、例えば山の頂というのをイタダキと読めないでチョウ、頂点の頂ですけれども、音読みをしてしまう。そういうふうに読んだり、仰げば尊しなどというと、もう今は歌わないんでしょうか、この「尊」という漢字を書けた中学一年生はわずか三%しかいない。あるいは間違いの例でいいますと、「尊」のかわりに「遠」という字を書いて、仰げば尊しの先生が、尊い存在じゃなくて遠い存在になっているのかよくわからないんですけれども、「遠」という字を書く子がいたりします。「落書き」というのが「楽書き」、それは落書きする人間は楽しいんでしょうけれども、そういう字になってしまったり、あるいは、「田園地帯」というのが、デンが「田」じゃなくて「電」になったり、「積乱雲」というのが、ウンが「雲」じゃなくて「運」になったり、細木数子さんなんて運命の関係で人気がある人もいますけれども、そういうことを書いたり、あるいは、家路を急ぐの「家路」が「家事」になったりする。そういうふうに漢字が、今言ったような例は中学一年生で三割ぐらい、「楽書き」「電園地帯」「積乱運」「家事」、こういった間違いの例がございます。

 これがきちっとできないと、音楽の題名にもなっていたり、あるいは社会、歴史だとか、あるいは自然現象を学ぶとか生物でも何でも学ぶということについても、基本として日本語が、漢字や片仮名、そういうものができていないと次へ進まない、私はそんな気がいたしております。小学校のときにこうした基本的な字、読み書きを頭にたたき込まないと理科も社会も音楽も始まっていかない、次へ進んでいかないと思うんです。

 無理に教えて覚えるから覚えられる。よく詰め込みがいけないと言われますけれども、掛け算の九九なんというのは、小さいときに詰め込まれなかったら絶対大人になってわかるわけない、覚えられるわけない。私は、暗記させるということは、基本においては非常に大事なことだと考えております。

 読み書きができるようになって初めて、本を読んで、私も子供のときから、例えばごんぎつねとかフランダースの犬、そういうものを読んで涙を流したり、祇園精舎の鐘の声なんという平家物語も、そこで歴史というものをいろいろ感じたりする次第でございます。それが基本にないと、心の豊かさとか、あるいは死に対する恐れとか痛みとか、そういうものを書物によって獲得するにもやはり基本は国語である、そういう考えでございます。

 私自身は、一に国語、二に国語、三、四がなくて五に算数、ずっとそう思っておりまして、最近は、一に国語、二に体育かなという気もしているんですけれども。そういう考えを持つ次第でございますが、大臣はどのようにお考えになるか伺いたい。

 そして、大学のセンター試験というのでも、国語を必須としている大学学部は六三%にすぎません。それに比べて、外国語が必須というのが二割ほど高い。恐らく、外国語というのは意識して学ばないと身につかない、それに比べて、国語はほっておいてもわかっているというふうな認識をいろいろな教育関係者が持っているんじゃないかと思いつつ、それは誤りではないかと考えております。

 自分の意見をいっぱい言い過ぎてしまいましたけれども、大臣、どのようにお考えになるか、基本として伺いたいと思っております。

中山国務大臣 また宮崎に縁のある方が出てこられました。

 思い出しますと、もう今から二十三年前になりますけれども、昭和五十七年の八月でございまして、役所をやめて政治活動に専念するということで記者会見したときのことをまだこの前のように思い出すわけでございます。あの席に松島議員がおられたということ、また、それが転身されて政治家になられて、お互いに苦労はいたしましたけれども、こうして相まみえることができたということは、本当によかったな、よく頑張りましたねとお互いに言いたい気持ちでいっぱいでございます。

 また、議員になられましてからの活躍ぶりにつきましては、本当に私はよくよくわかっているわけでございまして、また、きょう、その中でこうして国語のことを言われると、私もまさにそのとおりだと。

 日ごろからいろいろなことを申し上げているんですけれども、やはり基礎は国語だと思うんですね、国語力。これは何せ日常のコミュニケーションのもとも国語でございますし、いろいろな文化を創造し、そして発展させ、またそれを継承していくのも国語だろうと思うんですね。国語力がなくしてすべてのことは起こらないと私は思いますし、また、いろいろな教科を勉強する上でも、まず国語、読解力、これが一番私は大事なことだと思うんです。去年の暮れの、例の国際的な学力調査の結果、読解力が落ちている。今やOECDの中で真ん中ぐらいだ。これは本当に深刻に受けとめるべきじゃないか、こう思うわけでございます。

 また、先ほどツとシの話がありましたが、私も実は一つ、居酒屋でツメサバと書いてあるんです。何だろうなと思ったら、シメサバの間違いだなということがわかって、そうか、シとツを書き方がわからないんだな。この前スーパーに行きましたら、人肉ありますと書いてあるんです。人間の肉ありますと。ぞっとしたんですけれども、ニンニクのことだろうと思ったんですね。そういうことで、当て字なのか何かわかりませんが、そういう意味では、国語力といいますか、この低下というのは目を覆うべきものがある、私はそう思っているわけでございます。

 今回、学習指導要領全体の見直しということをお願いしているわけですけれども、まず国語の時間をふやしてもらいたい。余りこういうことを私が先取りして言っちゃいけないんですけれども、すべての教科の基本として国語ということを強く意識しながら諮問したんだということ、そういう意味では共通の認識を持っておるということをぜひ御理解いただきたいと思います。

松島分科員 ありがとうございます。

 今、大臣が言われましたOECDの調査で、本当にショックなことに、よく日本では、理科離れが大変だとか数学嫌いだとか言われますけれども、この調査によりますと、科学的活用能力というのは日本は二位で香港や韓国より上なんですが、そしてまた数学的な能力は、一位から落ちたとはいえまだ六位でございます。それに比べて読解力の方が韓国や香港に大分負けているという本当にショックな事態でございまして、ぜひ、今おっしゃいました、先取りはいけないけれどもと言われましたけれども、ぜひ大臣のリーダーシップというものを発揮していただいて、国語というもの、時間数をふやしてほしいことももちろんでございます、そしてまた、最初に申しましたように、きちっとそれが身についているように教えること、教師が確認していくということも加えていただきたいと思っております。

 次の質問に移ります。さっきちょっと申したんですけれども、体育、体力のことでございます。

 これも、中山大臣そしてまた塩谷副大臣にもいつも気にかけていただいている問題でございますが、大臣、ラジオ体操第一、第二、おできになるでしょうか。私はラジオ体操は第一も第二もちゃんとできるんですが、これについても、さっき申しました詰め込みというか、体に覚え込ませることというのは大事だなとつくづく思った経験がございます。

 小学校のときにラジオ体操をやっていた。それで、例えば自分の人生をとってみて、二十とか三十歳のときなんていうのはラジオ体操と無縁であった。この政治の世界に入りまして、善良な方々が朝早く起きてラジオ体操をされておりまして、私も政治活動の一環としてラジオ体操の会場へ赴く。久しぶりに、何十年かぶりにやってみて、最初はちょっと戸惑いましたけれども、音楽が途中まで来ると、もう二十年、三十年のブランクなしにできたんです。そして、それ以降もずっとできる。第一も第二もそうである。

 片や、今、みんなの体操というのが、これは小渕内閣のときにできました。ラジオ体操というのは結構それなりにきついので、高齢者の方も易しくできるようにということで、みんなの体操が小渕内閣のときにできまして、たしか八代郵政大臣が、車いすでもできるんだという見本を示しておられましたが。

 これは、私もたまに老人クラブの連合会の運動会に一年に一遍や二遍行って、あるいは二、三回どこか行ったところで出てきましても、まねしてやってみても絶対に覚えられないんですね。四十代になって、たまにちょこちょこやるぐらいでは覚えられない。事ほどさように、子供のときに覚え込むということは、身につけるということは非常に大事じゃないかと思っております。

 その中で、ラジオ体操の関係者から伺った話としまして、今、ラジオ体操を教えない学校がある。ラジオ体操の全国放送が、あれは毎日どこかでやっているんですが、自分の地域へ来たからといって、その体操の先生が、NHKの指導者がやっている周りに子供たちが取り囲んでいるけれども、できないでぽかんと見ているところがあったというような話を伺いました。また、教えないことの理由の一つに、あんなかけ声かけてやる、みんなでやる軍隊式はいかぬといって教えない学校があるという説も聞いたんです。

 そのあたり、一体実際にどうなっているでしょうかということ。ラジオ体操、どんな体操でもいいんでしょうけれども、ラジオ体操という、たまたまこれだけ知られている体操をみんながマスターしておいた方が、生涯学習として、将来、その先にも役立つと思いますので、実態と、それから大臣の御見解、及び、できるかどうかということも教えてください。

中山国務大臣 できるかできないか、できます。

 というのは、小学校、中学校のころは私はスポーツ少年でございまして、いつもみんなの前でやっていたものですから。それと、今、地元を回りますと、運動会がよくあるんですよ、あちこちで。必ず前でやらされるんですね、第一、第二。第二だと少しテンポが速いですね。だけれども、できるんですね。しかも、よくできるんです。結構やわらかく後ろまで回るんです。みんなのを見ていまして自分が一番うまいなと思うぐらい自信を思っておりますが、これは子供のころしっかり身につけたからだろうと思いますし、ラジオ体操というのは、あれは真剣にやると結構大変なんですね。しかも、柔軟といいますか、ストレッチも含めて、あれは非常にいい体操だろうと私は思います。だから、私はふだんでも時々ああいう運動をしているんです、音楽はなくてもやっているんですけれども。これは体がかたくならなくて非常にいいと私は思いますので、絶対お勧めだと思います。

 今、調べてもらったのですけれども、結構やっているのですね。学習指導要領では、小中学校において、体のやわらかさや力強い動きを高める運動などの体力を高める運動を指導することになっていますけれども、御指摘のラジオ体操は体力を高める運動の一つとなっていまして、全国ラジオ体操連盟が公立小学校を対象に行った調査によりますと、約八割の小学校が学校教育活動にラジオ体操を取り入れているということでございます。しかし、これは八割をやはり十割に、なぜ二割がやっていないのかなと、むしろそっちの方を問題にしたいと思うぐらいでございます。

 最初に言われましたが、私も、学力よりも前に最初に体力だろう。これは森前総理がいつも言われるので私も口癖になっているのですけれども、体力がなかったら勉強もできない、こう思いますので、まず体力増強ということ、そして、そのためには非常にこのラジオ体操というのが役に立つということを強くPRしたいなと思っております。

松島分科員 安心いたしました。実は、私も非常に柔軟性豊かにぺたっとついて、周りの方に称賛されているんです。

 今言われたように八割がマスターしている。そうなれば、やはり一〇〇%までいった方が、残り二割の方々は大人になったときに、何かみんなができるものをできないというのは寂しいことでございますから、ぜひこれを十割に高めていただきたいなと思う次第でございます。

 そしてまた、まさに中山大臣言われましたように、森前総理もいつも口癖ですけれども、まず体力がない、というのは、やはり体力がないと根気力も続かないし、知的好奇心もわかない。そうすると、どんな勉強もできないのじゃないかと私も思っております。その一つの過程としてラジオ体操を取り上げさせていただきました。

 次に、教育の全体論になるのですけれども、今、少子化の原因の一つとして、私、少子化対策というのは、結婚したくない人に無理やり結婚させるのはむちゃだし、子供を持つ気がない人に無理に言ってもだめだ。ただ、一人子供を持った親が、二人目が欲しいけれども産めない、あるいは二人持った人が、三人目産みたいけれども持てない。なぜかと聞くと、教育費がかかるんだ、教育費がかさむから、次の子が欲しいけれども産めないという方が随分多いのです。

 これは私は不思議に思いまして、不思議と言ったらおかしいのですけれども、実態はそうなんでしょうけれども、公立の小学校、中学校、高校と行かせたらそんなにお金がかかるものじゃない、教育費が理由で子供が持てないというほどのことにならないと思うんです。

 ただ、現実はどうかといいますと、これも地域差があるのかと思いますけれども、私のおります東京や、いわゆる都会と言われるところでは、小学校のときから塾に幾つか行かせたり、スポーツに関する教室も幾つか行かせたり、いろいろなことをやって、だからお金がかかる。あるいは、中学、高校と私立に行くのが当たり前みたいに、とにかく受験するのが当たり前みたいな、小学校四年、五年、六年の親たちはそんな感じになっている。そのために塾も行かなきゃいけないのでお金がかかる、中学は私立でお金がかかる、それで子供が持てないということになっている。

 これについて、文部行政に携わる皆さんは、大臣はその最高責任者ですが、率直に言って恥ずかしいとお思いにならないだろうか。

 私は、私立の中学や高校が非常にいい教育をやっていること、そして、それぞれの個性を持った教育をやっていることはすばらしいことだと思います。ただ、そこへ行くことが前提で、公立だけじゃ物足りないといって教育費がかさむというのはやはり情けないことだと思って、どういうふうに思われるか、御見解を伺いたいと思っております。

中山国務大臣 正直申し上げまして、私も恥ずかしいことだと思っております。

 この前も中央区の阪本小学校へ行ったのですけれども、そこで聞いた話ですけれども、子供たちは、学校に来て遊びたい、それで休みたいと言っているというのですよ。遊ぶ場でも休息の場でもないのですけれども、子供は、もう学校を相手にしていない。学校から帰ったらぱっと塾に行くわけでしょう。それで、塾で何時間も勉強するわけですね。あるいはゲームとか何かで一生懸命遊んでいる。くたびれているんだ。大体、くたびれて、遊ぶ時間もない。しかし、学校というのは本来学ぶために来ているはずなのに、遊びたいとか休みたい。本末転倒だ。それぐらい学校というものが信用されていない、当てにされていないということ。要するに公立の学校ですよね。

 だから、東京の場合はもう二五%が中学は私立でしょう。だけれども、それは中学はそういう選択肢がありますが、地方にはないわけです。ですから、私は、義務教育国庫負担制度というものは堅持すべきだ。こういうふうに経済力の差によってある県と違う県では差ができるのは問題だと思いますし、また、親の経済力によって塾に行く子と行けない子で差ができる。これは、私は、教育の機会均等という憲法の保障する義務教育、国家の責任というのを果たしていない、こう思うわけでございますから、もう少し、とにかく小中学校の義務教育でちゃんと教育しますよ、学校に行っていれば大丈夫なんだ。それ以外の外の、まあ、やっていいですよ、塾、いろいろな習い事もいいけれども、少なくとも基本教科についてぐらいは学校できちっとやりますということでないと、私は責任を果たしたことにならないんじゃないか、そういう思いもございまして、現状を何とかしなきゃいかぬということで、教育改革をとにかくスピード感を持ってやり遂げなきゃいかぬ、こういう決意で今取り組んでいるところでございます。

松島分科員 ぜひよろしくお願いいたします。

 大臣ちょうど言われましたように、東京では二五%が私立の中学に行っている、高校の場合はもう五三、四%ぐらいまでが私立の高校へ行っている、それが現実でございます。ですから、公立の学校の中身を充実させるとともに、私立に対する私学助成というものもやはりきちっと行っていただきたい、そのように思う次第でございます。

 今、二番目、三番目の子供という話をしたのですけれども、幼稚園の就園奨励金の制度のことで、私、疑問があって伺いたいと思っております。ちょっと順番が変わって申しわけありません。

 第二子、第三子に対する就園奨励費の加算というのがございます。しかしながら、これは同時に幼稚園に行っていなければいけないことになっている。そんなにうまいぐあいに五歳と四歳と三歳とか、そんな年子とか、あるいは六歳と四歳とか、上手にバランスよく子供がいると限ったものではございません。それで、これは同時に幼稚園に行っているのでなくても、上の子が小学校へ上がっちゃっても、つまり、単純に二番目の子供、三番目の子供でも同じように幼稚園の就園奨励金というものを出せないでしょうか。その質問、お願いと、もう一つは、所得制限というのがこれについてもあるようでございまして、これは所得制限を課さないで、もう少し広げてやっていただきたいと思います。

 と申しますのは、今、だんだんと高齢出産、女性が高齢だったり、あるいはお父さんも比較的高い目だったりする場合もふえて、そうしますと、例えば男親が四十五歳で子供が生まれた場合、幼稚園に行っているときは五十歳ぐらいだからたまたま所得が高いかもしれませんけれども、それはやはり子供が二十歳になるまでお金を置いておかなきゃいけないし、そういうことも考えて、その瞬間、所得が高いから外すというのは、日本の政策、いろいろなことでそういうことをやるのですけれども、これはいかがなものか、外したらどうかと思います。

 この第二子、第三子の問題と、所得制限の問題について、あわせて質問をいたします。

銭谷政府参考人 幼稚園就園奨励費について二点お尋ねがございました。

 まず、就園奨励費補助において、第二子、第三子についての負担軽減措置の問題でございますけれども、現在、第二子、第三子についての負担軽減措置を講じているわけでございますが、その条件は、先生お話がございましたように同時就園ということになっているわけでございます。これは、例えば、第一子が小学校に入りますと、小学校入学以降の子供については義務教育ということで無償となりまして保護者負担が軽くなるということをとらえて、同時就園の場合の第二子、第三子について、今、負担軽減措置を講じているということでございます。

 ただ、少子化対策を進めるという観点から、この同時就園の要件を撤廃すべきであるという御意見があることも承知いたしております。今、にわかに、そうしますというわけにはなかなかお答えできないわけでございますけれども、この制度が将来にわたり保護者負担の軽減等の機能を適切に果たせるように、よく検討してまいりたいと思っております。

 それから、二つ目、幼稚園就園奨励費における所得制限の問題でございますけれども、現在、幼稚園就園奨励金を受け取ることができる保護者は、私立幼稚園の場合でございますけれども、所得額が約六百八十万円以下の世帯を対象に補助を行っているところでございます。これは別の見方でいいますと、市町村民税の所得割課税額が十二万四千四百円以下の世帯は対象になるということでございます。これによりまして、非常にカバーとしては広範囲をカバーいたしておりまして、私立幼稚園について申し上げますと、全体の六七%の園児が就園奨励費の対象になっているという状況でございます。

 就園奨励費につきましては、幼稚園の就園機会を幅広く国民に提供するという観点から、どうしても支援の必要性が高い所得階層の保護者を対象にするということで現在実施をしております。今後とも、やはり一定の所得区分に該当する保護者を対象に実施するということになろうかと思っております。

松島分科員 今の第二子、第三子の問題につきましては、今これだけ少子化対策と言っていて、そして、先ほど申しましたように、教育費がかさむ、現実に上の子が小学校に入っていても、小学校四年生、五年生になってまた塾代がかさむだ何だかんだと言うわけですから、さっき言ったように、公立の義務教育だけで済むと思っている人が少ないんですから、第二子、第三子、せっかく、子供を産んで育てよう、そして幼稚園に行って教育をしっかりつけさせようという親に対しては、上の子が小学校に入っていてももらえるようにぜひぜひこれをやっていただきたい。それと、大体同時就園なんというのは、そんなに上手に子供をバランスよく産むわけじゃないんですから、無理です。ぜひ考えていただきたいと思っております。

 あと少しになりましたけれども、質問でございます。

 土曜日の学校の復活について。土曜日学校休みというのは、世の中、親たちあるいはおじいちゃん、おばあちゃんたちにとっても非常に評判の悪いものでございます。土曜日の学校復活についてどう考えるか。

 さらに、夏休み。今、夏休みはあんなに必要なんでしょうか。私の地元なんかは、ぜいたくと言われるかもしれませんけれども、小中学校に冷房を入れることになっています、大体入れたのかな。冷房まで入れるんだったら勉強させればいいわけですよね。学校でしっかりと、授業時間が間に合わないんだったら、学校は勉強するところだし、大体、学校が休みなものだから非行がふえるんです。中学生あたりは、九月が一番要注意の時期だと言われています。夏休みに生活が乱れて、繁華街をうろうろして、そして九月にまた、補導されるとか覚せい剤がどうとか出てきます。この長い夏休みというのは教育にとって私はいいものではないと思うんですが、どういうふうにお考えか、お願いします。

塩谷副大臣 お答え申し上げます。

 今松島委員がおっしゃったように、土曜日のことあるいは夏休みのことは、今、ゆとり教育の問題等の見直しの中でいろいろな御意見をいただいているところでございます。

 国として、平成十四年に学校五日制を制定したわけでございますが、この点につきましては、まずは学校と地域と家庭が総合的に連携しつつ、より体験活動を経験させたりして生きる力をはぐくもうということで五日制になったわけでございまして、また、先進国においてもほとんどの国が学校五日制ということになっております。

 その結果として、保護者のアンケートによりますと、一応子供との時間がとれるようになったというアンケートの結果が、約六割の親子の反応が出ております。しかしながら、時間は一緒にできたとしても、果たしてそれで結果いいのかどうなのかということは、これは一度調査をする必要があると思っております。

 最近、スクールミーティングということで、義務教育の全般の改革をするために、大臣初め文科省としては全国の学校を訪問しているわけでございますが、そういう中でも、例えば、子供たちの生活サイクルが非常に重要である中で、土曜日も休むとそれが狂ってしまうから復活させてほしいとか、あるいは、親が土曜日も家庭にいるわけではないということで、これも一つの問題といういろいろな御意見をいただいております。

 五日制につきましては、今後いろいろな検証の中で検討していかなきゃならぬと思っておりますが、当面、この問題については、社会全体のシステムと関連してきますので、中教審においても、五日制をもとに土曜日をどう活用していったらいいかということで諮問させていただいているところでございまして、義務教育のあり方の中で検討してまいりたい。

 また、夏休みの件につきましても、一応、今現在、授業日数が年間で約二百日ということになっておりまして、これは世界的にもほぼ平均的な水準になっておる。ところが、過去において六日やったときは二百四十日でございますから、そういう意味では、授業時間数も相当減っていることも事実でございまして、今後、長期休みの設定については、一応各教育委員会で設定するということになっておりますが、この点も今後検討あるいは工夫をしていく必要があると思っております。

 長期休みには、体験活動や家庭教育……

渡海主査 副大臣、時間がかなり過ぎておりますので、簡潔にまとめてください。

塩谷副大臣 はい。

 いろいろな役割があると思っていますので、そのことを踏まえながら、これについても中教審の中で本年秋までに基本的な方向性を検討してまいりたいと思っておるところでございます。

松島分科員 どうぞよろしくお願いいたします。

渡海主査 これにて松島みどり君の質疑は終了いたしました。

 次に、古屋範子君。

古屋(範)分科員 公明党の古屋範子でございます。

 昨年、通常国会におきまして、学校教育法等の一部改正法が成立し、本年四月より栄養教諭制度が開始されることになっております。そこで、本日は、この栄養教諭が担う相談指導について、また、食物アレルギーの取り扱いの問題を中心にお伺いしてまいります。

 近年、食生活の多様化が進む中で、朝食をとらない子供、また食習慣の乱れ、肥満の増加、過剰なダイエット、食物アレルギーなど、食生活を取り巻く環境は大きく変化をしてきております。

 子供たちの食生活の乱れは、文部科学省が毎年実施をしている学校保健統計調査にも数字としてあらわれております。例えば、太り過ぎの子供の割合は、二〇〇二年度調査で、小学校五年生で一〇・一%、六年生で一〇・九%、中学一年生では一一%に上り、二十年前に比べますと一・五倍になっております。反面、若い女性のやせ願望は低年齢にも浸透し、厚生労働省の調査、二〇〇二年度では、不健康にやせている女子は、中学三年生で五・五%、また高校三年生では一三・二%にも及んでおります。

 このように、子供たちの過食また絶食、偏食、このような現実を、大臣、どのようにお考えになりますでしょうか。御見解をお伺いいたします。

中山国務大臣 近年、食生活を取り巻く社会環境の変化などに伴いまして、偏食とか朝飯を食べない子供たちの食生活の乱れあるいは肥満傾向、そして過度の痩身などが見られるところでございます。豊かになったのに食生活が貧しくなっている、特に子供たちの食生活が非常に問題ではないか、そういう問題意識を私は持っていまして、これは先々、いわゆる生活習慣病にもつながっていくのではないか、このように懸念しているところでございます。

 今御指摘がありましたような数字が出てきているわけでございまして、このことにつきましては、我々、重大な関心を持って臨まなきゃいかぬ、こう思っているわけでございまして、子供たちに対しまして、食に関する正しい知識と望ましい食習慣を身につけることができるように、これは家庭においてもそうですけれども、学校においても食育ということを推進していかなければならない、このように考えておるところでございます。

古屋(範)分科員 大臣の深い御見識を伺うことができたと思います。私も、食べること、食生活というものは、やはり人間の基本、人生の基本であり、子供たちが、次、自分が子供を育てる代になって、やはりその習慣また姿勢というものが伝わっていくのではないかと思っております。

 その点で、このたび創設になります栄養教諭、社会的背景まで含んだ幅広い理解と個別の対応が求められていると思います。そして、子供が将来にわたって健康に生活していけるよう、栄養、食事のとり方、また、食の自己管理能力、望ましい食習慣を子供たちに身につけさせていくことが必要であると思います。

 今回、この栄養教諭制度を創設した意義について大臣にお伺いいたします。

中山国務大臣 学校におきましては、給食ということで、学校栄養士の先生方がメニューを中心にして仕事をしてこられたんですけれども、この先生方を含めて、学校栄養士ということで、子供たちに望ましい食習慣、食生活に関するいろいろな知識、それから食べ物の栄養とかカロリーとか、そういったものを小さいころに教えるべきじゃないか。

 私自身も、小学校三、四年のころから、食べ物に対する関心が物すごく強かったものですから、いつも毎食毎食、きょうはどういうカロリーだ、どういう栄養が足りないとか、そういうことをいつもおふくろに文句を言っていた経験があるんです。

 国会議員になりましてからも、学校栄養教諭の創設ということにつきまして取り組んできたところでございますが、今回、学校栄養教諭の制度ができる、ことしの四月から開始されるということになりまして、本当によかったな、こう思っているわけでございまして、この栄養教諭の制度を活用いたしまして、子供たちに対してしっかりとした食習慣、食べるものに対する知識、そういったものを身につけさせる。特に小学校高学年ぐらいで大体食べ物の嗜好とかそういうのはできますから、そういった一番大事な時期に、栄養教諭を活用いたしまして、学校における食育といいますか、食に対する教育が飛躍的に私は向上するということを期待しているところでございます。

古屋(範)分科員 私も大変期待をしている一人でございます。

 この栄養教諭が担う指導内容についてお伺いをしてまいります。

 栄養教諭は、子供たちに対する食に関する指導また学校給食の管理を一体的に行うというふうに私は認識をしております。そこで、食に関する指導について、具体的にこれからどういった指導をされていくのか、簡単に御説明いただきたいと思います。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 栄養教諭の重要な職務である食に関する指導といたしましては、児童生徒への個別的な相談指導、それから教科、特別活動等における指導、そして三つ目は、教職員間、家庭や地域との連絡調整役を担うこととされているところでございます。

 簡単に、個別的な相談指導につきまして触れさせていただきますと、例えば、偏食や肥満傾向のある児童生徒などへの生活習慣病予防等の観点からの相談指導や、食物アレルギーへの対応の観点からの相談指導など、いわば食のカウンセラーとしての役割を担うということでございますし、また、教科、特別活動等における指導といたしましては、給食の時間、保健体育科、家庭科等の教科や特別活動等において、食に関する領域や内容について学級担任や教科担任と連携しながら指導を行うということでございます。

古屋(範)分科員 まさに食のカウンセラーという非常に重要な役目を担っていらっしゃるということでありますので、今後、この特別活動の時間等におけますこういった栄養教育の充実が図られることを心から期待したいというふうに思っております。

 次に、栄養教諭が担う相談指導には、アレルギー指導ということを今含めていらっしゃいました。食物アレルギーがある子供への個別指導というものが含まれており、ふえ続ける食物アレルギーへの対応が非常に重要であると私は考えております。

 私は二〇〇三年総選挙におきましての初当選でございますが、その前に、このアレルギー問題に関しましては、自分自身の重要なテーマとして取り組んでまいりまして、地元神奈川県におきましてアンケート調査を行ったことがございます。約十四万五千人の方々へのアンケート調査をそのとき行いまして、その中で、それまでも三人に一人は何らかのアレルギー疾患があると言われておりましたけれども、この結果、三人に一人から大体二人に一人に近づきつつあるというような結果も出ました。風邪でもないのに、くしゃみ、鼻水、鼻詰まりが出るというような方も四〇%、体がかゆくて、たまらずかいてしまう三五%など、さまざまな原因が考えられるとは思いますが、まさにこのアレルギー、国民病である。また、ことしは非常に花粉が多いということで、もう既に花粉症で悩んでいらっしゃる方も非常に多いということであります。

 このアレルギー対策、アレルギー教育でありますけれども、本来なら栄養になるべき食べ物が原因でアレルギー症状を引き起こす食物アレルギーは、適切な医療とともに、学校給食など幅広い社会的な対応が必要であることが特徴になっております。

 文部科学省では、昨年九月、平成十六年度、食に関する指導の充実のための指導者の養成を目的とした研修が行われましたが、この研修について、次のような指摘がありました。

 この研修内容を見ますと、五日間研修、正味三十一時間でございますが、そのうち、食物アレルギー個別指導のあり方についての研修はわずか三時間しかございませんでした。

 しかも、その内容は、いわゆる学問としての栄養学の観点から専ら指導が行われ、最先端で食物アレルギーと闘っている医師などの知見が生かされていませんでした。教育現場での指導相談に役立つ実効性のある研修になっていないとの報告が受講者から寄せられております。

 アナフィラキシーショックなど命にかかわる食物アレルギーに対する認識の甘さが、個々の現場での対応の甘さとなり、事故につながる危険があります。

 食に関する指導者となる栄養教諭を養成するためには、教える側の体制、研修、この整備が重要であると考えます。その大前提として、教材や講師の選任、また内容の精査等、例えばアレルギーに精通をした専門家、専門医、栄養学の専門家、小児アレルギー学会などもぜひ協力したいという声も聞いておりますし、また、企業などのリスクマネジメントのプロなどで構成した検討会をつくり、病気の理解はもちろん、どう食材を選んで調理するか、間違いを起こさないチェックの作業手順、調理師への指導、さらに、事故が起きたときの対応などがわかる食物アレルギー対応マニュアルを作成し、それに基づきノウハウを可能な限り習得できるよう、実効性ある研修とすべきであろうと考えております。

 多少詳しい説明になりましたけれども、この実効性ある研修について御見解を伺いたいと思います。

素川政府参考人 今先生御指摘ありました、食に関する指導の充実のための指導者の養成を目的とした研修、これは、独立行政法人教員研修センターに文部科学省から指示をいたしまして、学校栄養職員や地域の教育センター等で研修の企画を担当する指導主事などを対象といたしまして行っている研修でございます。

 御指摘のように五日間のプログラムであったわけでございますけれども、三時間、これは三時間といいますのは午前中の半日のプログラムということでございますが、そこで、食物アレルギーに関する研修の企画に資するよう、研修のこまの一つとして取り上げたわけでございます。

 この場合に、その時間数それから講師等につきましていろいろ御指摘があったわけでございますけれども、私どもといたしましては、今後の学校栄養職員等を対象とする研修につきまして、食物アレルギーに対する研修のこまというものにつきまして充実をさせていくという方向で検討したいと思っております。

 なお、栄養職員ではございませんが、養護教諭を対象といたしましては、児童生徒の心身の健康問題に対応するための指導者の養成を目的とした研修というものを実施いたしております。これも、先ほどと同様、教員研修センターで、各地域の都道府県の指導者の方、養護教諭の方を対象にして行っているわけでございますけれども、この中でも、十六年度の研修の一こまといたしまして、学校におけるアレルギー疾患の管理と指導を設けたところでございます。この中におきましても、アレルギー疾患の中で食物アレルギーについても説明しておるところでございまして、これにつきましては、国立病院の院長の方に来ていただいて御指導をいただいているということでございます。

古屋(範)分科員 今講師の選定なども再考されているということでございますので、ぜひともこの研修、充実を図っていただきたいと思っております。

 アレルギーと申しますのは、一般的な知識で、例えば、子供が体力がだんだんついていけばアレルギーはなくなるのではないかとか、外で鍛えれば強くなるとか、あるいは、食べ物も少しずつならして食べさせていけばそのうち治るものだ、そういうような一般論というものがございますが、専門家の知識からいたしますと決してそうではない場合も多いわけでして、そういった、経験とか、あいまいなものからくる指導というのは大変危険があるわけでございます。

 私は、専門医を招いての研修など、日本小児アレルギー学会の食物アレルギー委員会との連携は欠かすことができないと考えております。そのためには、厚生労働省への協力依頼など環境整備が必要であると考えますが、この点はいかがでございましょうか。

 また、自治体の研修においても同様のことが言えると思います。自治体によってアレルギー専門医がいない地域もあることを考えて、この学会のアレルギー委員会との連携をとり、質の向上を確保すべきと考えております。文部科学省として各都道府県にこのような趣旨の通達を出すべきであると考えますが、この点はいかがでしょうか。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 食物アレルギー対策に対します医師等の専門家との協力のお尋ねでございます。

 先ほど、養護教諭を対象とする研修の場で国立病院の小児アレルギーの専門家の先生に講師に来ていただいているというお話を申し上げたわけでございますけれども、食物アレルギーを含みますアレルギー対策につきましては、今年度よりアレルギー疾患に関する調査研究というのを行っておるわけでございます。この中におきましては、厚生労働科学研究費補助金等で研究を実施しておられる研究者の方でございますとか国立医療機関の専門医の方などに参画していただきまして、今後の学校におけるアレルギー対策のための支援方法についての助言をいただくことにいたしております。

 文部科学省としても、今、日常的に厚生労働省と情報交換などもしているわけでございますけれども、今後も連携しながら学校におけるアレルギー疾患の対策に努めてまいりたいと考えております。

 また、地方自治体が食物アレルギー対策に関するいろいろな事業をやっておられるということでございます。これに対しましても、私ども、その研修の中核になるような方々の研修会というものを実施するのが国の役割ではないかとも考えておるわけでございますけれども、さらに加えまして、研修に参考になるような情報の提供等を行っていくというのも重要な役割ではないかと考えておるところでございます。

 私どもといたしましては、例えば、食に関する個別指導の実践の事例集というようなことを昨年作成いたしまして配付いたしましたけれども、その中でも食物アレルギーを取り上げて、個別指導のあり方、実践事例というものを紹介しているわけでございます。

 このようなことで、各地域、学校におきまして研修を行う際の参考資料として活用していただきたいと考えておりますし、今後とも各種指導参考資料を作成するということになっておりますので、その中におきましても十分留意してまいりたいと考えているところでございます。

古屋(範)分科員 今のお答えとも多少重なる部分がございますが、私の地元の神奈川県におきまして、公明党神奈川県の主張が実りまして、いち早く県内公立小中学校の食物アレルギー実態調査を実施し、一昨年、二〇〇三年三月に結果報告を出しております。それには、食物アレルギーに対する認識と対応が学校ごとにばらばらであるという実態が浮き彫りになりました。

 指導的立場になる栄養教諭はもちろん、担任や校長、養護教諭、当事者等多くの関係者が食物アレルギーについて深い認識ができるよう、また、正しい知識、理解を持つ場をふやす、こうした関係者の適切な研修が急務であると考えます。

 神奈川県では、全国に先駆けて二〇〇三年度から、保健師、栄養士などに対しましてアレルギー研修を行っており、昨年も、三日間十七時間かけて、保健、医療、福祉関係の職員と学校関係者を対象に、食物アレルギー研修の集中講座を行いました。大変反響がございました。ほかの自治体でもこうした取り組みが必要なのではないかというふうに考えております。

 そこで、このような研修制度に対して地域ごとの対策が進むよう、国として自治体の取り組みを後押しするような、財政支援の面からも強力に取り組むべきであると考えますけれども、いかがでございましょうか。

中山国務大臣 学校給食に直接に携わります栄養教諭や学校栄養士のみならず、学校の教職員が食物アレルギーに関しまして正しい知識等を身につけることが重要である。御指摘のとおりでございまして、各都道府県教育委員会や市町村教育委員会等におきまして、学校の教職員に対して、食物アレルギーに対する研修を積極的に実施していくことが望ましいわけでございます。

 文部科学省では、各地域の学校関係者への研修の充実のために中核的な教職員や指導者を養成することが重要であると認識しておりまして、独立行政法人教員研修センターに指示いたしまして、それらの者を養成するための研修会を実施しているところでございます。また、それらの研修会におきましては、研修項目の一つとして食物アレルギーに対しても取り上げまして、各地域における食物アレルギーに関する研修の充実への支援を図っているところでございます。

 今後とも、これらの取り組みを推進いたしまして、各地域での学校の教職員を対象とした食物アレルギーに関する研修が充実されるように努めてまいりたいと考えております。

古屋(範)分科員 親たちも大変悩んでおりますアレルギー、大臣の方からも強力な御答弁をちょうだいいたしました。ぜひとも今後、この研修等への推進もよろしくお願いしたいと思っております。

 次に、学校給食への対応についてお伺いをしてまいります。

 食物アレルギーに悩む子供に楽しい給食をと、長野県の松本市が五年ほど前から実施している対応給食というものが、今全国から注目を浴びております。私もちょうど、NHKの「クローズアップ現代」という番組で取り上げておりまして、見ておりました。

 松本市内の小学校二十一校分の給食をつくっている西部学校給食センターには、ほかの調理室から隔離をされ、十二畳ほどの広さのアレルギー室というものが設けられ、食物アレルギーを持つ児童生徒、十六校四十四人のためにアレルギー対応食というものをつくっております。もちろん調理器具も別ですし、食材も除去されたものを使う。そしてまた、見た目も余り違わないように、ほかの食材を使いながら似たようなものをつくる。非常に心がこもっているといいますか、丹念な調理をされている。そのような根気と知恵と情熱がこもったといいますか、そういう工夫をされている地方自治体がございます。

 この学校給食を見学した前市長が、以前、一人だけお弁当を食べている、学校給食を食べることができない、その児童の姿を目にして大変胸を痛めて、それを契機にして、学校給食アレルギー対応食提供事業として一九九九年一月にスタートをさせました。児童の入学前から約十カ月に及ぶ事前の準備も大変ですが、アレルギー室の光熱費や栄養士の人件費など、一般給食の倍の費用がかかるということであります。

 子供のアレルギー症状は、適切な対応を続けることによって成長とともに改善する傾向はありますが、安心、安全な食事だけでなく、級友と同じ料理を食べるという給食本来の楽しさも子供たちに提供しているアレルギー対応給食の実施に関しましては、大変学ぶべきところがあるわけでございます。

 それを見ていまして、恐らく、大きな学校であるとか大きな自治体で行うには、これは大変な作業であるということは私も実感をするわけでありますが、この一つの事例につきまして、学校給食、大臣はどのようにお考えになるか。この取り組みを行っている自治体に国としても何らかの支援を考える、またこれを広げていく、このようなことに関して御見解をお伺いいたします。

中山国務大臣 長野県の松本市におきまして、アレルギー専用の調理室を設けて代替食を提供しているという話は伺っているわけでございます。

 実を申し上げますと、私の弟の子供がアレルギーでございまして、母親が非常に苦労していたのを目の当たりに見てきたわけでございます。こういう個々の児童生徒に対して適切に対応できれば、本当に親も助かるし、また子供も助かるんだがな、こういうふうな思いがあるわけでございます。

 現在、各学校におきまして、児童生徒の食物アレルギーの状況について、保護者や主治医等と十分な連携をとりまして、まず学校給食からの原因食物の除去、それから、別の食物で調理した代替食の提供、家庭からの弁当持参、いろいろ個々に応じた弾力的な対応をとることが重要であるということで、文部科学省といたしましては、学校給食指導の手引、通知あるいは学校栄養職員等を対象とした研修等の場において指導してきているところでございまして、今後とも、個々の子供たちの健康状態等に応じた学校給食が実施されるように努めてまいりたいと考えております。

古屋(範)分科員 やはり、クラスにいる一人、二人のお子さんのアレルギーをみんなで考える、このような温かな教育、そして、給食で何を食べたかというものは、恐らく一生涯子供の心に残っていくと考えます。さらに御検討をよろしくお願い申し上げます。

 質問は以上でございますが、子供たちにとってアレルギーというものは命にもかかわることでございます。学校現場において、ぜひこの教育の充実をお願いしたいというふうに考えております。

 先日も、二月の十日でありましたけれども、国立成育医療センター、アレルギーの専門医師である赤澤晃医師にお会いしまして、学校教育におけるさまざまな問題点を伺ってまいりましたけれども、神奈川県下の小学校また高校の養護教諭に調査を行いましたところ、教育実施状況はどのようなものかといいますと、教育者向けには八割が行っていない、また子供向けには九割近くが教育は行っていないと答えているのが現状でございます。

 さらに、こうした子供たち、アレルギーがあって、あるいはぜんそくが重症である、そのようなお子さんは学校に行くことができない。そういったお子さんが、次第に不登校になったり、あるいはクラスからいじめを受ける。また、アトピーの皮膚炎、外観から見てもいじめを受けるというような非常に大切な問題であります。

 学校における教育、お願いをしたいと思いますことと、また、赤澤医師がおっしゃっていた要望でございますけれども、気管支ぜんそくの有病率に関する全国調査をこれから行っていき、こうした意味で、ぜんそくが日本の中で地域差が考えられる。また、年齢別にもぜんそくの有病率というものも調査をしてみなければ実態がつかめない。これも国際的な基準にのっとった調査を行いたいということで、文部科学省の協力を得て、既に要請しているということでありますが、二〇〇五年五月にこの調査用紙を配付し、各学校での調査をお願いしたい、そういった要請がございます。

 こういったことも、アレルギー対策、アレルギー根治への大きな調査の基礎になるものだと思いますので、こうした調査の要請に対しまして、文部科学省におかれましても、ぜひ協力をよろしくお願いしたいというふうに思っております。

 今後、学校における栄養教育またアレルギー対策の充実を求めまして、以上で質問を終わらせていただきます。

中山国務大臣 古屋先生、当選以来、ずっと小児医療、アレルギー対策に党の責任者として取り組んでこられたということは承知しておるわけでございます。

 どうかこれからもよろしくお願い申し上げたいと思いますし、また文部科学省としても、このようなアレルギー疾患に悩む子供たちのためにも全力をもって取り組んでいかなきゃいけない、このように考えているところでございます。よろしくお願い申し上げます。

古屋(範)分科員 どうもありがとうございました。

渡海主査 これにて古屋範子君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

渡海主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。奥野信亮君。

奥野分科員 自由民主党の奥野信亮でございます。

 四十年近く民間で働いた後この業界に入りまして、まだまだ面食らっているところでありますけれども、私は、民間企業にいたときに、現場に目を向けて、三現主義というものを大事にしてきたんです。現場、現物、現実というものでありますけれども。そういったことを踏まえて、少し、私自身まだ、義務教育とか、あるいは高等教育、大学教育を含めて、私自身の経験しかなくて、新しい現実の教育現場というのをまだ見ていないので、余り正しいことが言えるかどうかわかりませんけれども、できるだけ皆さん方に私の考え方を御理解いただければな、こういうふうに思っております。

 今さっき申し上げたとおり、一年ちょっとしかたっておりませんので、間違ったことを言ったら、いや、おまえ間違っているというふうに言っていただければな、こう思います。

 そして、そんなことを考えていたものですから、分科会というものの機能も余り私は十分理解していないので、そういう意味でも外れた質問になるかもしれませんが、御容赦をいただきたいと思います。

 日本は今、まあ前々からでありますけれども、資源のない国でありまして、どちらかというと、人材が一番日本の国の資源だろうと思います。したがって、大変有能な、国際的に通用する人材を育てるということが日本の国の使命だろうと思っておるわけであります。そして、平成十二年に教育改革国民会議というものを実行して、それで一つのまとまったものができて、今はそれに基づいて進んでいるというふうに私は理解しております。

 また、河村前大臣の離職される直前に、義務教育についての私見を述べられたように解釈しておりますし、また中山大臣も、着任早々、「甦れ、日本!」ということで、これからの抱負を述べられたように私は理解しておりまして、なかなか両大臣とも意欲満々であったのかな、こんなことを感じておる次第であります。

 しかしながら、今ほど、子供たちあるいは若者を取り巻く教育制度への話題というのが非常に豊富であろう、こういうふうに感じておるわけであります。小さい子供さんあるいは若者の犯罪の問題とか、あるいは学力低下の問題、あるいは日本に生まれて祖国を愛する心が欠落しているんじゃないかとか、あるいは権利と義務とか自由と責任への無理解だとか、最近はゆとり教育が失敗だったんじゃないかとか、いろいろな御意見が出ているわけでありまして、今やはり、教育に対する改革意識というのは、国民の中には大変盛り上がった雰囲気ができ上がっているんではないかと思います。

 それに対して、教育制度というのは、戦後間もなくつくられた制度がそのまま維持されているということでよく言われるわけでありますけれども、制度疲労を来していて、全面的な見直しが必要なんじゃないかという声もあるやに私は理解しております。

 そうしたときに、一方で、小泉さんが郵政民営化、郵政民営化とおっしゃるんですが、なかなかこれは逆に盛り上がりを見せないわけでありますが、こうしたときに、やはり教育制度の改革というのは国家プロジェクトなのであって、スピーディーにこれを仕上げなくちゃいけないじゃないかという意味合いから、もう少し、小泉さんが自分で教育改革をやろうよというふうに号令をかけるというようなのも一つのやり方じゃないかと思うんです。そして、やはりスピーディーに教育改革を仕上げていくきっかけになればなと思っているんですが、中山大臣はそういうやり方についてはいかがお感じかな、これをまず最初にお尋ねしたいと思います。

    〔主査退席、萩野主査代理着席〕

中山国務大臣 奥野議員、文部大臣まで務められたお父さんの後を継いで議会に出てこられたんですけれども、民間で四十年、いろいろな仕事をしてこられて成功されたわけでございますが、それこそ今、学校現場でも校長先生に外から来ていただこうというふうな機運もあるわけでございまして、そういう意味で、国会におきましても、奥野先生のような、本当に実社会、実際の経済で経験を積んで、そして成功された方が入ってこられて、国会審議に活を入れていただくということはすばらしいことだと思いますので、これからもひとつ御活躍いただきたいなと心からエールを送りたい、こう思っております。

 その上で、今御指摘ありましたように、日本の現状、教育の現状でございますが、まさに御指摘のように、人材こそが日本の資源である、私はずっとそういうように教えられてきたんですけれども、どうも戦後の教育が、経済成長がうまくいきまして、欲しいものは何でも手に入るようになって、どうもその辺の原点が忘れられているんじゃないかなという気がいたします。

 ゆとり教育というと、勉強しなくてもいいんだというような感じ、あるいは先生方も、これだけ教えればいいんだ、何となくぬるま湯につかっているような状況でございますけれども、周りを見渡しますと、中国を初め、本当に近隣諸国が大変な勢いで今伸びてきているわけでございまして、うろうろしていると日本は本当にあっという間に取り残されてしまうんではないか、そういうふうな危惧も持ちまして、私も、教育改革というものをどうしてもスピーディーにやらなきゃいけない、こう考えておるところでございます。

 私も、今まで経済関係の仕事をしてまいりまして、文部科学大臣になりましたので、そういうような経済的な感覚から、このままではいけないということで、「甦れ、日本!」と題する私の教育改革案を公表いたしました。また、それを持って小泉総理のところに行きまして、郵政民営化も大事だけれども、教育改革もやろうじゃないですか、こういうことで説得というかお話ししたんですけれども、いや、おれは米百俵の精神ということを言っているじゃないか、あれに自分の教育改革に関する情熱を込めたつもりだ、こう言われる。

 それ以上なかなか進まないものですから、これは文部科学大臣が先頭に立ってやるしかないな、こう考えておるところでございますが、しかし所信表明等を見ますと、新しい時代の国づくりの基盤は人材であるとか、今度の所信表明でも、子供は社会の宝、国の宝だ、こういうふうに高らかにうたっていただいているわけでございまして、教育というものに対して小泉総理が関心がないということではない、むしろ、教育改革は中山文科大臣に任せる、こういうことでやっていただいているんじゃないか、そう思いまして、それだけに私は、また責任重大だということで一生懸命頑張っておるところでございます。

奥野分科員 実は、私もこの間、小泉総理に会って同じことを言ったんですけれども、あなたが号令をかけてくださいよということを言ったんですが、なかなか乗らないですね。

 ただ、民間企業では、やはり社長が号令をかけると早いんですよね。こういうことがやはり民間との違いを感じる一つのことだったんであります。

 それから次に、教育における国と地方の役割ということを、少し私なりの考え方を申し上げてみたいと思うんです。

 文科省が今こうしているから、ああしているからということを言っているわけではないんですけれども、やはり教育というのは、基本的には二十歳までの間に人づくりをするというのが前提になると思います。そうすると、年齢と、その年齢に応じて備えるべき人格、知力、教養といったものはどういう水準なんだ、年齢別にある種のターゲットをつくりまして、それを本当に実行できているか実行できていないかということを管理するのが僕は文部科学省じゃないかなというふうに感じるわけでありまして、求める人材が本当にこの学校はつくり出せたのか出せなかったのか、あるいはこの県は、この市はという形でそれを管理していくのが文部科学省なのかなというふうに感じているんです。

 具体的にどういうことかといいますと、やはり、地方はいろいろなソフトを開発して、その目標到達に向けたいろいろな実行、実現力を駆使していくということだろうと思いますし、文部科学省の方は、その目標を国家目標ととらえて、その国家目標に対して、国家目標が実態はどういう形で実現できているのかというのを管理していく、そういうマネジメントというのがあるといいのかなというふうな気が私はしているんです。もちろんその過程では、地域の役割とか家庭の役割、学校の役割というものも整理をしなくてはいけないと思いますけれども、やはりそういった大枠での管理をお役所にやってもらうのが妥当ではないかなという気がしております。

 特に、この間、予算の関係で、義務教育の国庫負担制度を国がやるのか、あるいは地方に任せていいのかというような議論をしていましたけれども、あれは財政論で議論する問題ではなくてやはり教育論で議論すべきものであって、それは、国がいろいろ目標値を設定し管理をしていくということに対する担保ではないか、こう感じるわけでありますけれども、中山大臣、私のような考え方というのはあり得るものなのかあり得ないものか、少し教えていただければなと思います。

中山国務大臣 教えてもらうというよりも、まさに奥野議員の仰せのとおりだと私は思っているわけでございます。国というのは、国家目標として、どういう子供たちを育てるんだという基本をしっかり定めて、そして私は、実際の教育というのは、現場、現場で、その地区、地区におきましていろいろな風土、特色がありますから、そういったものを十分創意工夫しながら、その地域にふさわしい、子供たちを自分たちの力で育てるんだ、そういう地域ぐるみの子育てというのが大事だろう、こう思うわけでございます。

 ですから、今文部科学省は、できるだけ現場に任せよう、現場の校長先生、市町村に任せよう、そういう方針のもとに、ただ、やはりそれにかかる費用というもの、これは義務教育国庫負担制度というものがございますから、やはり全部というわけにいかない、本当は全額やっている国もあるのでそういった方向もあるとは思うんですが、現実には今、十兆円かかる義務教育費のうちの三割、三兆円しか持っていないんですけれども、しかしそういったものはしっかりと維持した上で、自由にといいますか、やってもらう。そのかわり、ちゃんとやっているかどうかということについてはきちっと評価するといいますか、そういうシステムをつくっていくということが大事だろうと思うわけでございます。

 今現在でも、学校教育法におきまして各学校段階ごとに教育の目標を定め、そして学習指導要領において各教科ごとの指導目標というのを定めている、そして教育課程の実施状況を調査しているわけでございまして、また、学校の教育指導や管理運営などにつきましても、必要に応じて地方公共団体に対して指導助言を行っているということでございます。

奥野分科員 最近、よく、六・三制の義務教育がいいだ悪いだ、あるいは五・四にしたらいいんじゃないかとか、あるいは中高一貫にしたらいいんじゃないか、こういう手段の議論ばかりあって、どちらかというと、要するに、二十歳までの間で何歳までにどういう人間をつくり上げるんだ、それが国の役割なんだ、こういう議論をしていくのが妥当であって、その手段として、では例えば十五歳までが義務教育なんだということになれば、そういう学校運営を考えればいいんであって、どうも手段が先といいましょうか、六・三制だとか五・四制だとかそういうことばかり議論されて、本来の人づくりのターゲットみたいなものが余り議論されていないように思っているわけでありまして、ぜひ、そういったところは、今大臣がおっしゃったような形でさらにそういう考え方を推進していただければな、こういうことを感じている次第であります。

 次は、人と組織の問題を少し、私も余り詳しくないんですが、大臣あるいは局長にお尋ねしたいと思うんです。

 やはり人づくりの原点といいますか、人づくりに最大影響するのは教員だろうと思います。そうすると、質の高い教員を確保することと、その質の高さを維持していくということがやはり非常に大事なことだろうと思うんです。

 質の高い教員の確保という面から見ますと、大学の学士ですぐ教師になれる、あるいは短大を出ても一部教師になれる。やはり将来を担う子供たちの育成ですから、どっちかというと、もう少し人間力をつけた上で現場へ出ていく方がいいんではないかな、私はそういうふうに感じます。今のカリキュラムでいっても、学士を取った後で、もちろん学士を取る過程で専門教育をもう少し徹底的にやってもらって、そしてまた、時間が許すならば社会へ出て勉強してもらう。そういうぐらいのことを経た人を初めて教師として認め、あるいは今、「甦れ、日本!」の中でも書かれているかと思いますけれども、教員免許の更新制ということも当然考えてもいいんじゃないのかな、こんなことを一つ感じます。

 そして、その高い質を維持していくということは、これはどこが管理するかは私自身まだわかりませんが、教員の評価をするということが大事なことだろうと思うんです。教員に対して、今、給与が大体六兆円ぐらい出ていると思います。公務員の総額給与が三十兆を超えるレベルですから、約二割は教員に使われている。けさの新聞なんかでは、年金を見ると教員が一番高いというような話もあるわけであります。これは人材確保法案のせいかもしれませんけれども。

 私は、やはり教師の評価というものに対して、もっと前向きに取り組んでいかなくちゃいけないんじゃないか。私は別のところで公務員制度改革というものに旗を振っておるわけでありますけれども、やはり民間企業なんかを見てみますと、正しく評価をして、その評価が本人も納得する評価を得て、そしてしっかり働いてもらう。よくできる教師にはたくさん給与を、できない教師には少なく、これが当たり前のことであるんですけれども、今、見てみますと、だれでも高い給与をもらっている。こういったところを少し変えていく必要があると思うんですが、いかがかなと思います。

銭谷政府参考人 今、奥野先生から質の高い教員の確保と、その質の高さの維持ということについて幾つか御提案があったわけでございます。私どもも、本当に、教育は人なりというふうに、教育界に人を得るということはとても大事なことだと思っております。

 質の高い教員の確保の方から申し上げますと、これは教員養成と教員採用というところが非常にかかわってくるわけでございますけれども、教員養成の段階では、できるだけ教員に、その教科の専門的知識に加えて、いわば人間力といいましょうか、あるいは教育に対する情熱、使命感といったような教職に関する知識というものもしっかり身につけてもらうように、教員養成のカリキュラムの改善を進めてきているところでございます。最近の例でいいますと、必ず、免許を取る前に、養成段階で社会福祉施設などにおける七日間の介護等の体験を義務づけるといったような制度改正も行っているところでございます。

 それから、採用段階につきましては、例えばボランティアなどの社会体験を評価したり、採用選考試験の受験年齢を緩和したり、あるいは、民間企業などの経験者を対象とした特別選考、これは今十七県で行っておりますけれども、そういった採用上の工夫を講じているところでございます。私ども、できるだけ教職に幅広い経験を持った方が採用されるということは非常に大事だと思っておりますので、今後とも、教員養成、採用の工夫ということは努力していきたいと思っております。

 それから二つ目の、質の高い教員をそのまま維持していくという問題でございますが、これも、一つは研修の充実ということがあろうかと思いますので、初任者研修や十年経験者研修などを積極的に、これは法定の研修でございますけれども、実施をするということや、その研修内容に民間企業における体験研修を取り入れたり、特に長期の社会体験研修、こういうものを積極的に実施することを支援しているところでございます。

 それから、免許の更新制の問題についても、昨年の十月に中教審に中山大臣の方から諮問していただきまして、今、教員免許制度の改革の中での免許更新制の導入について御審議をいただいているところでございます。

 それから最後に、教員の評価の問題ということが非常に大事だという御指摘がございました。これは全く私どももそのように考えておりまして、教員の能力や実績をきちんと評価をして、その評価結果を配置や処遇等に適切に反映をしていくということが大事だと思っております。

 平成十五年度から十七年度までの予定で、すべての都道府県で今、実は各教育委員会でこの評価のあり方を研究していただいておりまして、私ども、この研究をさらに推進していきたいと思っております。具体的には、既に東京都の教育委員会などで能力開発型の人事考課制度を導入しておりまして、都の場合は十七年度からはそれを処遇に反映するというふうにも承知をしているところでございます。

 いずれにいたしましても、学校教育におきまして質の高い教員の確保、維持ということは大変大きな課題でございますし、私どもとしてもそういう方向でしっかり努力していきたいと思っております。

奥野分科員 私も実は会社の会長をしているものですから、従業員の給料というのは上がったり下がったりするようにしてあるんです。役所の方に下がるよという話をすると、そんなのはあり得ない、こうなるんですが、やはり民間は、自分で自己研さんを積んで自分で能力を伸ばしている人にはたくさん上げて、それを励みにまた伸ばしていただく、逆に、少なくなった人はこれではいかぬのだということで自分で磨いていただく。そういうようなシステムがつくれればなというふうに感じておりますが、今すぐそういうことはできませんので、また、公務員制度改革の中でも議論しておりますけれども、そんなことも将来は考えたらいいのかなというふうに私は考えております。

 また一方、校長先生の方なんですが、校長先生というのは、私はやはり、簡単に言ってしまうと、教員上がりの校長先生に何で経営ができるんだ、マネジメントができるんだ、端的に言うとそういう理屈なんです。

 今、民間企業で、下からずんずん上がっていって社長になるような会社がいっぱいあるんですけれども、これはだめなんですよ。要するに、社長の器というものをどこかにプールしておいて、それで、この会社ならこの社長候補者を持っていこうというようなやり方をしているのが今の新しい企業なんです。

 そういう意味合いからいうと、校長先生もどうもそのやり方の方がいいんじゃないのかなというような気がしておりまして、特に、さっき大臣が、民間からも校長先生を使っているよと。私は日産自動車育ちでありますけれども、日産の人もどこか、埼玉県か何かで使っていただいていると思いますけれども、あれも現場の人じゃないんです。やはり、マネジメントを最初から、会社へ入ったときからトレーニングされてきた人間だ、私はそう解釈しております。そういう意味で、もう少し、校長先生になる人については別建ての考え方ができないかなというふうなことを感じております。

 それで、校長先生と横になるものですから、教育委員会のお話をさせていただきたいんです。

 教育委員会の委員というのが、非常に大ざっぱに言いますと、どうも学校あるいは校長先生との距離が遠いというふうな感じを持っております。そしてまた、教育委員会は余り教育ソフトのことに口を出していないな、こういうような感じがしております。校長先生というのが経営をつかさどっているというふうに考えれば、もう少し教育委員会との距離を近づけて、教育委員会が積極的に新しい地域の学校づくりに貢献してくれるようなことを考えられないかなと思っておるんですが、大臣、いかがなものかなと思います。

中山国務大臣 御指摘のように、いい教師必ずしもいい校長ならずといいますか、やはり、教師として教えること、子供たちを指導する技量、能力というものと、校長先生として引っ張っていく、マネジメントといいますか、管理運営能力というのは、両方兼ね備えた方もいらっしゃるでしょうし、どちらかの方が得意という方もいらっしゃると思うんですよね。そういう意味で、校長先生というのは学校上がりじゃない方がいいんじゃないかという奥野先生の御見識ももっともだと思う点もあるわけでございまして、そこのところをどのようにやっていくかというのが今、実は教育改革の中でも大きなテーマだ、このように考えているわけでございます。

 校長に登用する場合も、ペーパーテストの成績だけではなくて、面接を取り入れたりしまして、より人物を重視した、しかも年功序列にとらわれない、そういった積極的な人材登用が求められているわけでございまして、各教育委員会におきましても、このような観点に立って、よりよい、より人物本位の採用方法の工夫改善が行われることを期待しておるところでございます。また、マネジメント研修なども、組織運営能力とか幅広い経験を積む、身につけるという意味でそういった研修とか、あるいは社会体験研修の実施なども推進していかなければいけない、このように思っているところでございます。

 そういった中で、平成十二年に校長等の資格要件を緩和いたしまして、これによりまして、各教育委員会におきまして、現在七十九名のいわゆる民間人校長の登用がなされているわけでございまして、幅広い人材確保の取り組みが進んでおるところでございます。

 また、このような校長先生になっても、その校長先生方が自分の力量を十分発揮できなければ何にもならぬわけでございまして、そういう意味で、学校の裁量を拡大していくということが重要である、このように考えております。今、文部科学省では、教育課程の基準の大綱化、弾力化とか、あるいは人事に関する校長の意見の一層の反映を進めるとともに、各教育委員会に対しまして、学校に対する教育委員会の関与の縮減とかあるいは予算に関する学校の裁量拡大の取り組みなどを推進してきたところでございます。こういった中で、まさに御指摘ありましたように、教育委員会のあり方ということもやはり大きな問題だろうということでございまして、現在、中央教育審議会におきまして、教育委員会の見直しについても検討いただいているところでございます。

 そういったことを含めまして、現場主義というものを徹底する、徹底した教育改革に精力的に取り組んで、校長先生が力量を発揮して、そしてそれぞれが創意工夫をして特色ある学校づくりに取り組む。そのことによりまして、本当に子供本位といいますか、子供にとってよりよい教育ができるように、校長先生、学校、そして教育委員会、地域一体となって、総力を挙げて取り組んでいくという体制にしていきたいと思っております。

奥野分科員 今、地方分権が叫ばれる中で、教育委員会の機能、役割については少し変えた方がいいんじゃないかとか、あるいは学校評議会というものに変えた方がいい、あるいはそういうものをつくった方がいいんじゃないかとか、いろいろな意見がございます。

 一方で、教育委員会は幾つあるんだといいますと、地方団体の数より多いんだそうでありまして、やはり地方分権そして合併を推進している中では、合併に至らなくても、もう少し教育委員会というのは広域行政にして、本当にふさわしい人を選んで、校長先生と、あるいは学校と距離を近づけていくという必要性はあるのかなという感じがします。

 今、例えば小学校は二万校ぐらいあると思います。それが今合併で地方団体を千ぐらいにしようとしますと、小学校が、千で割りますと二十、中学校が十、それから高等学校が五ぐらいになるんです。それから、教員の数でいいましても、小学校が千で割りますと四百人ぐらいの単位、中学校が二百五十人ぐらいの単位。管理の大きさとしては非常にいいスタイルになるものですから、合併に至らないそういう地方団体については、もう少し広域行政を推進していった方がいいんではないのかなというような感じがしております。これは私の勝手な意見ですからそれだけ申し上げさせていただきますが。

 今、大臣から中央教育審議会の話が出ましたので、ちょっと私は、余計なことかもしれませんが、中央教育審議会だけじゃなくて審議会方式というのは、何か聞きますと、軍国主義時代にできた制度だそうですね。昭和十年ごろにできた制度だそうでありまして、その時代はどちらかというと中央統制色が強いわけですから、役所が考えていることを全国に展開するのには、そのとおりやれよと。それで役所が考えている考え方を審議会に結論として出させる、そういうことだったろうと思います。

 やはりこれから民主的に、学校もあるいは教育も開かれた形にしていこうということであるならば、中央教育審議会というもの、文部相の諮問機関だろうと思いますが、それはやはりもう少しオープンで、いろいろな方が参加し、なおかつ自由に物が言えるような審議会に変えていかれた方が、早く新しい教育制度にたどり着くのではないか、こう私は思っているんですが、そのところだけちょっと、もし大臣の御意見がありましたら。

中山国務大臣 実は昼間、中央教育審議会の中に義務教育に関する特別部会というのをつくりまして、三十名、あと三名、地方代表の方が推薦されるのを待っているところでございますが、その名簿を見させていただきまして、本当に幅広く、各界各層の、それこそ第一線で活躍しておられる方々が網羅されているなということを感じたわけでございます。

 審議会のあり方については、いろいろな御意見、御批判もあるかもしれませんが、あの審議会のメンバーを見る限り、これは本当に開かれた審議会といいますか、文部省の枠にとらわれない、幅広い各層の方々をよくぞ集めたという感じの委員構成になっておりますことに安心もしたわけでございまして、やはり教育に関係のある審議会というのはこうでなきゃいかぬな、学校関係者だけで集まって議論して決めるんじゃなくて、幅広い国民の声というのが反映できるような、そういう審議会じゃなきゃいかぬということでございますが、まさにそのとおりになっているということは御理解いただきたいと思っております。

奥野分科員 私も、議員でなかったらそれに入れてもらいたいんですが。

 それはそれとして、ちょうど時間になりましたので、終わりたいと思います。きょうはありがとうございました。

萩野主査代理 これにて奥野信亮君の質疑は終了いたしました。

 次に、岡島一正君。

    〔萩野主査代理退席、主査着席〕

岡島分科員 それでは、きょうは、この四月から施行されるという発達障害者支援法にかんがみての、文部省や厚生労働省など関係省庁の今の状況などについてお伺いしたい。

 まず、文部大臣にお伺いいたすわけでありますが、この四月から施行される発達障害を持つ人への支援法といったものは、私も文部省からいただきまして、発達障害を起こす脳機能の障害を持つ方々への理解や支援などがうたわれているという法律だろうと思います。学校から成人の社会まで、各単位での支援や理解、取り組みが必要なんだろうと思います。

 ただ、きょう私は、そういった支援を必要とする方々の中でも、早期発見や治療といったことを考えれば、小学校などにおける発達障害を持つ人、子供たち、あるいはそれを取り巻く教師、親、社会といったことについての質問をしていきたいと思っております。

 まず、通常の学級において、学習面や行動面などで、多動性であったり自閉症であったり、さまざまに団体行動の中で困難を持つと言われている子供たちが、これは文部省からいただいた資料などによると、六%いると書かれております。その対応が早急の課題であるということの取り組みだろうと思いますが、この六%という数字は何を根拠にされているのか、お答えいただけますか。もし大臣が答えられれば、お願いしたいと思います。

銭谷政府参考人 今の、お尋ねございました六%という数字でございますけれども、これは、平成十四年に文部科学省が実施をいたしました、通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する全国実態調査の結果でございます。

 この調査によりますと、小中学校の通常の学級に在籍するLD、ADHD、高機能自閉症により学習や生活の面で特別な教育的支援を必要とする児童生徒数について、その可能性のある児童生徒が約六%程度の割合で在籍をしているということが示されてございます。

 この調査は、担任の教師が自分のクラスを見まして、発達障害により学習や生活に支障がある、こう判断をした数を回答いたしておりますので、医師などの診断を経たものではないというものでございます。したがって、六%が、医師等の診断を経た障害の割合だということではないということでございます。

岡島分科員 ということは、学校現場の教師の判断によるということだろうと思います。ということは、実態としては、もしかすると多いか、少ないか、ぴったりか、どれかであります。ということは、この法律が施行されるに当たっては、そういったものの実態の把握といったものも、施行後取り組むということの意味もあるかもしれませんが、きちんと法律の中身を運用するためにはこの実態の把握というのがベースになるんだろうと私は思うわけであります。これについては、また後で厚生労働省の方にもお聞きしなければならないだろうと思っています。

 いずれにしましても、では、文部科学省が文部省当時から、こういう法律のできる前から、こういった発達障害と見られる子供たちの実態を、学校サイド、文部省サイドとしてどのように把握していたのか教えていただきたいんです。例えば十年ぐらい前、あるいはわかる範囲で、こういった子供たちは近年ふえてきたのか、昔から数字は変わらないのか、あるいは、こういったものが実態として把握できるようになったのは、つい、この法律ができるという話ができてからなのかなどについて教えていただければと思います。

銭谷政府参考人 実は、調査を行ったのは、この平成十四年度が初めてでございます。

 先ほど申し上げましたように、この調査は、学習面や行動面で著しい困難を示すと担任教師が回答した児童生徒の割合ということでございまして、もう少し詳しく申し上げますと、学習面で著しい困難を伴う子供というのが四・五%、それから行動面で著しい困難を伴う子供というのが二・九%、これを足しますと六%を上回るわけでございますけれども、学習面及び行動面の双方で著しい困難を生じている子供の割合が一・二%ということで、その部分は重なっているわけでございます。

 なぜこのような調査を行ったかということでございますが、実は、かなり前から、通常の学級に在籍をする子供の中で、特に学習障害児、ふだん、多くの学習は特に問題はないんだけれども、例えば算数の計算とか国語の読みとか書きとか、特定分野の理解がほかの子供に比べて著しく障害があるという子供の報告が私どもの方にも随分寄せられておりまして、そういう学習障害の子供についてどういう指導をしたらいいのか、それから、ADHDの子供も大分前からその指導について課題となっておりましたので、この発達障害者支援法ができるからということではなくて、というよりはむしろ、学校の教育活動をしていく中でよく考えなければいけない課題だということが指摘がございまして、私ども、こういう調査を行ったということでございます。

岡島分科員 いずれにしても、学校教育現場で判断をされたということであります。それで、統計的には最近の数字が出てきていると。

 問題は、同じものを判断するのでも、文部省としてこういった発達障害についての全国的、統一的な基準を設けて、教師に伝達、指導をしてきたという経緯は平成十四年までの段階であったんでしょうか。それとも、各教育現場に問い合わせた結果がそうだったということなんでしょうか。同一基準で行ったのかどうか、その六%の数字について。

銭谷政府参考人 調査自体は、私ども、学習面や行動面で著しい困難を示すと判断をした子供を回答していただきたいということでやっておりますので、ある意味では全国的に同じ基準で御判断をいただいているということになろうかと思います。

岡島分科員 ただ、ある意味では非常に緩やかな基準でありますので、ある意味で、私がどこで子供を見てもみんなかわいいと思う、あるいはみんなはちょっといたずらっ子だと思う、その基準は難しいところがあります。発達障害というのは今回の場合疾病に分類されるというふうにも伺っていますが、となると、学校現場だけでの判断で子供たちをこの支援法に該当する子供としての理解、支援を進めるというわけにはいかなくなるだろうと思います。そういった意味では、文部省はこれに該当する子供たちの調査を今後はどういう基準でするんでしょうか。

銭谷政府参考人 文部科学省はやはり教育の現場を預かっている役所でございまして、実際最も大切なのは、それぞれの学級において担任の先生なりが子供の指導を行っていくというのが最も大切な私どもがかかわっている仕事でございます。したがって、私どもとしては、やはり基本的には学級の担任なり学校の先生なりが、非常にこの子は教育上課題がある、こういうふうに判断をするというのがまず第一義的な判断になろうかと思います。

 そういう観点から、実は、この十四年度の調査の後、昨年の一月でございますけれども、小学校、中学校における学習障害児あるいはADHDの子供、高機能自閉症の子供たちへの教育支援体制の整備のためのガイドラインという指導資料を、これは試案でございますけれども、つくって、今各学校にお示しをして、指導に当たっていただいているところでございます。

岡島分科員 私が聞いているのは、どういう対応をするかということじゃなくて、つまり、私が読んだ、いただいた資料によるとこの法律は、ブリーフィングしたときも文部省の方がおっしゃったのは、その発達障害そのものは八割は基本的に厚生労働省の話ですとおっしゃった。これはどうでもいいんですが、大事なことは、疾病に分類されるということになっているわけですよね。それは違いますか。とすれば、文部科学省が厚生労働省との協力なしに、取り組みますという答えだけができるというのはおかしいと思うんですが、いかがでしょうか。

銭谷政府参考人 もちろん、今先生お話がございましたように、例えば教育委員会が健康診断を行って発達障害の早期発見に努めるとか、そういったことがあるわけでございますので、発達障害の発見といいましょうか、こういう疾病の発見をする場合には、地元のそれぞれのお医者さんなり保健所なり、そういうところと密接に連携協力をして学校の方も対応していかなければならないということはおっしゃるとおりだと思っております。

岡島分科員 現場でそういう実態論が起こるだろうという話は、それはそうなんですね。だけれども、これは基本的に、新たに一つの疾病とされる症候群を持つ人たちを支援する法律が初めてできたわけですから、その法律というのは国の取り組みとしてあるわけですから、その法律に基づく子供たち、対象者の基準が文部科学省だけで判断できない疾病に分類されている以上は、その現場、お医者さんがとか健康診断がじゃなくて、国としてきちんと厚生労働省と連携を持った上での取り組みが必要だと私は思います。

 大臣、これはいかがでしょうか。いや、大臣の方がこれはいいと思います。

銭谷政府参考人 それは先生、今私が最前からお答えしているのは、現場でのお話をお尋ねだったと思ってお答えをしたわけでございますけれども、もちろん、発達障害者支援法ができて四月から施行されるわけでございますので、今後、国の段階での施策を進めるに当たりましては、私ども、厚生労働省等と緊密な連携協力を図りながら施策を進めていきたい、こう思っているところでございます。現に、十七年度予算におきましても、厚生労働省と連携共同のもとに特別支援教育体制推進事業といったようなことを実施しながら、この問題に対応していきたいと思っているところでございます。

岡島分科員 わかりました。

 また、要するに、今回のこの発達障害とか、やはり社会において、どんな疾病であれ、周りの人にもいろんな影響を与えるんではないかと思われるような疾病が認知される場合、さまざまに人権問題にも絡んでくることが後々起きることが間々ありました。そういった観点から、そういった認知、認識というか、これは障害じゃないから認定とは言いませんでしょうけれども、判断が子供の人権にもかかわるだろうと僕は思っているんです。だから、その基準が大事だと申し上げたかった、それには厚生労働省との連携が必ずや必要だろうと私は思うということなんであります。

 では、厚生労働省の方がいらっしゃると思いますけれども、お伺いします。

 まず、この発達障害とはいかなる病気と、病気というか疾病として分類されておられると思いますが、ものと認知されておられるのか、教えていただきたい。そして、現在、全国にどれだけの、小学校に限っても結構、あるいは社会全体でも結構ですが、発達に関して支援を必要とすると見られる障害を持つ人がどれだけいると把握されておられるのか、教えていただきたいと思います。

村木政府参考人 まず発達障害の定義でございますが、発達障害者支援法の定義、「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」ということで私どもも定義をしております。

 それで、大変恥ずかしいことでございますけれども、この発達障害者の数あるいは出現率について、私ども厚生労働省としてきちんとした正確な実態把握というのはできておりません。私ども目安にしますのは、文部科学省さんが先ほど御説明をされたあの六・三%というのをやはり私どもも一つの目安にしておりまして、それに加えまして、欧米等諸外国のデータの中で、例えば自閉症の有病率が一万人に二ないし五人であるとか、あるいは注意欠陥多動性障害の方が学齢期の三ないし五%であるとか、あるいは学習障害が生徒の五%であるとか、そういった諸外国のデータを勉強させていただいて、かなり発現の頻度の大きい障害だという認識を持っております。

 今後、私ども、厚生労働科学研究という枠組みがございまして、そこで少し定量的な把握をしっかりやりたいというふうに思っております。生まれたときから学齢期あるいは就職の支援のところまでかなり幅が広うございますので、ある程度エリアを定めて、そこを深くしっかり実態把握をしていって、定量的な把握ができないかということを今検討しているところでございます。

岡島分科員 今課長の方でおっしゃった、実態は実は把握できていないと。それを責めるどうのこうのというつもりはありません。が、いずれにしても、四月から施行をされるということは、そういった調査も含めてだと最初は申し上げました。多分その観点もあるでしょうが、実際の支援を履行するということも社会的には当然求められてくるわけであります。とすると、数字の実態が把握できなければ対応はできないということで、きょう午前中不法投棄の質問をしましたが、中間業者がだれが捨てているかわけわからぬから対応できないと答えた方もいらっしゃいました。つまり、把握できないものに対応できないというのは当たり前のことであります。とするならば、やはりその数字の把握が急がれると思います。

 そういうことはもう認識されていると思いますが、では、全国の医師の中で、今日本は小児科医が少ないということが非常に問題になっております。疾病を判断できるのは小児科医と限らないかもしれません、内科医であろうと脳外科医であろうと脳神経だろうとできるのかもしれませんが、いずれにしても、発達障害といったものを診断できる医師というものは全国でどれだけいると把握されておられますか。

苗村政府参考人 現在、発達障害を支援するためには、その診断を行える専門的な知識を有する人材の確保というものが重要でございますけれども、我が国におきまして、発達障害など子供とその親の心の問題に対応できる専門的な技能を持つ児童精神科医そしてまた小児科医は極めて少ない現状にあるということで認識をしております。

 例えば、一例を申し上げますと、日本児童青年精神医学会の認定医の数が現在百六名ということでございまして、それ以外に、小児科の分野では小児神経科の先生方も取り組んでおられるとは聞いておりますけれども、まだその数に関して把握をしておらないようなところでございます。

岡島分科員 そうすると、人口が減ってくるといっても一億二千万以上いるわけでありまして、百六名で各社会単位の発達障害の方を見ることは全く不可能である。また、小中学校、あるいは小学校だけに限っても、百六名の方が全国を、四十七都道府県を走り回ってもなかなかできないと思います。

 とすると、厚生労働省として、そういった医師をきちんと養成する、あるいは教育をするという、言葉が適切かどうかわかりませんが、講習を行うのか、そういったことができる医師をふやす施策が必要だろうと私は思うのです。

 つまり、これは誤った判断をする。基準があいまいで判断すると、先生によっては治る子供、もしあの先生なら言うことを聞かない、でも彼だったら言うことを聞くという、僕らが子供のときはよくありました。先生に、担任によって、きのうの暴れん坊が、優等生とは言いませんが、いい仲間になりました。

 つまり、最初、局長がおっしゃった、先生の基準、判断、ある意味であいまいです。先生を信頼していると言われればそれまでですが、しかし、人権にかかわります。つまり、一つの障害を持つと言われたときに、今の日本社会でその子供たちが受けるダメージ、イメージがありますね。悲しいことに、現実はあります。まだまだあります。とすれば、やはり科学的にきちんとするということは大事だろうと私は思います。

 そういった意味で、医療面でのことも対応が急がれると思いますが、それについてはもう一言いかがですか。

苗村政府参考人 今御指摘のこと、子どもの心の問題に対応できる専門の医師の養成、確保に関しましては、非常に重要な課題ということで考えておりまして、私どもの方といたしましては、まず一つは、来年度におきまして、そういった専門の方々のための研修会を持たせていただくということで考えておるような次第でございまして、現在、国立精神・神経センターにおきまして精神保健に関する技術研修というものを行っておりますけれども、その中で、本年の七月におきまして、「発達障害の診断・治療に関する最新の知見と支援の実際」と題しまして、全国から五十名程度の方々、特に病院、保健所、発達障害支援センター等に勤務されておられましてこういった発達障害に関心を有しておられます医師、特に指導的な立場にある方々の研修をまず行っていただくということで考えております。

 さらに、私どもの方といたしまして、こういった方々を確保いたしますために、昨年策定いたしました子ども・子育て応援プランにおきまして、子供の心の問題に対応できる医師の確保の必要性に関して記載するとともに、本年三月中旬を目途に、この分野の専門家に参集していただきまして、子供の心の診療に携わる専門の医師の養成に関する検討会というものを立ち上げ、小児科及び児童精神科などの領域における専門の医師の確保に関しまして具体的に検討を行ってまいりたいと考えております。

岡島分科員 いずれにしても、四月から始まることは、調査を始めるということも私は理解できますが、実態として、起きている事象にどう対応するかということはできないということを今厚生労働省の医療分野からは認めたというか、その実情だということをおっしゃっていたと私は受けとめております。ですから、一刻も早く対応しなければ、数字があいまいな基準の中で子供たちの障害が判断されていく、とんでもないことが起きると思います。

 それで、文部省の方にまたお伺いいたしますが、例えば、そういう科学的な根拠、医療的な根拠が、まだ現状では十分対応できないと厚生労働省はおっしゃいました。これは大臣にお答えいただきたいのですが、そういう中で、現場教師にそういう子供たちは判断をゆだねるということについてのさまざまな懸念が生まれると思いますが、大臣はその辺についてはいかがでしょうか。発達障害をいかに判断するかということについて、今の科学的根拠はまだしっかりできないという状況で、現場の教師にそういった子供をゆだねて対応していくということは、ある意味、人権などを絡めて危険性もあると私は思うのですが、大臣の所見を伺います。

中山国務大臣 今、岡島議員から御指摘ありましたように、まさに四月から始まるに当たりまして、一体どれぐらいの人がいるのか、実態調査から始めなければいかぬということでございますから、これはまず最初が非常に肝心だ、このように思うわけでございまして、そういう意味で、文部科学省としても責任を持ってやっていかなければいかぬわけでございますが、国におきましては、国立特殊教育総合研究所におきまして、発達障害の児童生徒への対応に指導的役割を果たす教員等を対象としたリーダー養成研修を実施しておりまして、すべての都道府県教育委員会におきまして、国のリーダー養成研修を踏まえて、域内の教員を対象とした研修が実施されているわけでございます。

 また、独立行政法人教員研修センターにおきましては、各教育委員会の指導主事等や小中学校の校長、教頭を対象にした研修において、発達障害に関する内容の理解と指導方法についての研修を盛り込んでおります。

 都道府県におきましても、初任者研修や十年経験者研修を初めとする教員研修において発達障害への対応を盛り込むなど、研修の充実が図られているところでございます。

 なお、小中学校等の教員養成課程におきましては、教育の基礎理論に関する科目の中で、障害のある幼児、児童及び生徒の心身の発達及び学習の過程を含めて取り扱うことになっておりまして、これに基づいて、各大学におきまして発達障害に関する内容を適宜取り扱っているところでございます。

 さらに、現在、中央教育審議会初等中等教育分科会教員養成部会のもとに置かれております特殊教育免許の総合化に関するワーキンググループにおきまして、発達障害への教員養成課程における対応や特別支援教育を担う教員の専門性の向上はもとより、特殊教育免許のあり方について幅広く御議論をいただいているところでございます。

 今後とも、関係機関と連携しながら、教員等の専門性の向上を支援するための取り組みに努めてまいりたいと考えております。

岡島分科員 今後の取り組みについては、現状がそういった中で、すべきことはそうだということは、僕はそのとおりだと思います。また、それは本当にもっと具体的に急がれると思います。

 ただ、問題は、これが一つの疾病という分類をされるということと、そして障害を持つということ。それで、子供が、ほかの子供や社会に迷惑をかけてしまう子もいるかもしれないというふうな見方をされる疾病である。ということは、少なくとも、あいまいであれ、文部省としては教師を信頼して出した六%余りの数字といったものについて、この子たちは今現在、四月からその疾病の分類の中で、発達支援に該当する可能性が高いわけですね。とするならば、その百六名とおっしゃった、厚生労働省の専門家がいるとおっしゃった、先生、医師。この子たちは専門の医師とこういった発達支援法の枠内で連携して、学校現場と連携して認定された六%余りではないわけですね。でも、発達支援法が施行されれば、その範囲の子供と社会で認知されるわけですね。基準が全国統一されていない、科学的根拠が薄い、先生の判断にゆだねているということになれば、そこにはおのずと、判断された子供の実際の状態は違いが出てくるわけですね。そこには人権問題も絡んできます。

 ですから、例えば百六名いらっしゃるなら、今わかっている数字に関しては六%余りであるならば、厚生労働省の百六名がきちんと対応して、疾病に分類されるこの発達障害というものについて、健診をするとか、まず早急な取り組みをこそやることによって、今後に間違ったことを残さないで済むと僕は思うんです。

 大臣、そういった意味で、厚生労働省と連携して、そういった対応をまずは取り組んでみる、検討するが進んでいる間に毎日子供たちは生きているわけですね。いかがでしょうか。

中山国務大臣 まさにこの制度の出発点においてそういうふうなところに区別されるということ、これは本当にそういう意味では人権問題にもかかわることでございますから、これは相当慎重にしなきゃいけないし、しかし、せっかくこういう制度ができて、そういった方向でそういった子供たちについてはしっかり見ていこうということであれば、それはそれでちゃんと認定してやっていかなきゃいかぬ。非常に難しい問題だと思いますけれども、まさに御指摘のように、厚生労働省とも密接な連携をとりながらこれは取り組んでいくべき問題だな、このように考えております。

岡島分科員 私は、大臣のスタンス、方向性は間違っているとは全然思いません。取り組まなきゃいけない問題なんです。

 でも、さっき言ったように、今そうと見られる子供たち六%余りは、学校の現場の先生の判断にゆだねられていて、そこは統一の科学的根拠もないと認めておられる。厚生労働省もこれまで対応していないとおっしゃっておられるわけですから。でも、百六名いらっしゃる。早急にきちんとこの子供たちに対応することによって、具体的に健診などすることによって、いや、発達障害じゃなくても、そういう分類をしなくても、もう一回、先生によってはきちんとできるという学校があるかもしれない。そういう対応をまずは試みてみないことには、スタートから基準があいまいであった、あるいは、今後整備されていった子供と、整備される前に文部省だけで何となく認定した六%の子供が同じ疾病に分類されるというのはいかがなものかと私は思うのです。それについてはいかがでしょうか。

中山国務大臣 まさに、御指摘されるまでもなく、最初においてそういう認定をするかしないか、された後本当にどうなるんだというようなことは大問題ですね。ですから、まさにこれは文科省だけではできない仕事でございますから、厚生労働省とも密接な連携をとりながら慎重にやっていかなきゃいかぬなということを改めて感じたところでございます。

岡島分科員 もう時間があれですから、最後に一つだけ。

 要するに、私は急を要すると思っているわけであります。いずれにしても、文部省だけで何とかしてくださいという話でないこともわかっております。ですから、厚生労働省や文部省、あるいは内閣府の皆さんにも本当はきちんと質問したかったのでありますが、社会的な啓蒙活動も必要でしょう。

 と同時に、今度、県の行政、教育委員会、現場の市の先生たち、つまり縦の中の関係、そして横の省庁横断的な関係、その縦横のコーディネーションがなければこの問題に取り組めないと私は思います。文部大臣として、厚生労働大臣や、あるいは総務省の大臣なのか、内閣府あるいは各役人の方にそれぞれ呼びかけて、あるいは地方等呼びかけて、やはり縦横に、縦の関係、横の関係で横断、縦断的にこういった問題は取り組むべきだと私は思います。

 そういう中、機関なり協議会なり一つのセンターなり、何かそういう仕組みが必要だと私は思うんですね。大臣はいかがでしょうか。そういったものが提唱できないでしょうか。もしできれば大臣のお考えを聞いてから、具体的にそっちは答えてください。お願いします。

中山国務大臣 何度もお答えいたしましたけれども、まさに厚生労働省との連携も大事だし、御指摘のように、これは現場におりていって、都道府県の教育委員会とかそういったところ、それから学校関係、すべて縦の連携と横の連携をつなぎながらこれはやっていかないといかぬ、慎重にやっていかないといかぬと思いますし、もし必要があるとすれば、省庁、関係あるところで集まってやるとか、そういったことも含めて考えていかないといかぬ。

 いずれにしても、もう始まるわけでございますから、急を要する、こう思っています。

渡海主査 時間がありません。端的に。

銭谷政府参考人 この四月からの発達障害者支援法を踏まえまして、まず文部科学省と厚生労働省がよく連携いたしまして、特別支援教育体制推進事業ということを実施することにいたしております。

 また、都道府県委員会のレベルにおきましても、これまでも特別支援教育推進体制モデル事業というものを実施しておりましたけれども、それをさらに拡充して、学校と医師などの専門家、それから医師等を中心とした巡回相談、こういったものがスムーズに運営できるように、私ども努力をしてまいりたいと思っております。

岡島分科員 では最後に、とにかく疾病というものに分類されるということも含めて、やはりその判断によって子供たちの人権、これまでもさまざまな疾病という中でいろいろな人権問題が起きました。その子供たちを救うためにも、教育を進めるためにも必要ですが、やはり社会の人権のありようとして、ぜひそういった問題に早急に取り組んでいただきたいとお願い申し上げて、私の質問にかえます。

 ありがとうございました。

渡海主査 これにて岡島一正君の質疑は終了いたしました。

 次に、大石尚子君。

大石分科員 民主党の大石尚子でございます。

 中山文部科学大臣におかれましては、先般予算委員会で、質問の冒頭、義務教育の教員養成について話し合いをさせていただきました。きょうはその続きでございます。義務教育の教員養成の課題と、そして、教育も地方分権の流れの中で、地域に密着したいい教育の地方分権を推進していくという立場から、きょうは大臣のお気持ちを含めて、お考えをぜひ聞かせていただきたいと思っております。

 その前に、実はここのところ新聞紙上をにぎわせておりましたことに、例えばことしの二月十七日の朝日新聞、「教員養成抑制撤廃へ 二十年ぶりに文科省転換 大量退職に備え」、文部科学省は今年度中にも告示をして抑制を撤廃する方針というような記事が出ておりました。それから、二月の二十一日の産経新聞、「教育学部定員抑制撤廃 少子化でも教員不足 数年後退職者ピーク/質低下に歯止め」というような見出しで同じような記事を載せておりました。

 そこで、まず初めに伺いたいのでございますが、従来から国立大学の統廃合に伴う教員養成に関する学部の再編というような課題を追っかけてこられたと思います。それで、その設置状況について、私の理解では、統廃合に伴って教員養成を目的とした学部が新たに設置された国立大学はないと理解いたしております。

 なお、国立の教員養成大学・学部の再編統合について、これは鳥取大学と島根大学の間で、島根大学教育学部の教員養成を強化する一方、鳥取大学教育地域科学部を地域学部に改組する形での再編が平成十六年度に実現した、こういうお話をいただいておりますが、これ以外に設置状況の変化はなかったのかどうか、これが一点。

 それから、今、現実問題として、国立大学が法人化されてまいりました。そういう中で、教員養成の定員数、それはだれがどこでどうやって決めているのか、これもちょっと教えていただきたいと思います。

 それから、これはどういう状況なのでございましょうか、平成十六年の統計を見ますと、「国立の教員養成大学・学部新規卒業者の教員就職状況」という中で、正規採用と臨時的任用の表があるのでございますが、平成十六年の段階では、正規採用が二千六百人くらい、それから臨時的任用が三千人くらいで、臨時任用の方が多くなってしまっているんです。この実態というのは、どうしてこういうふうになっているのかということ、これはどなたがお答えくださっても、大臣でなくても結構でございます。

 それからもう一つ、ついでに伺いたいのですけれども、きょうは、総務省の行政評価局長、田村さんにお越しいただいております。

 これは、平成十五年十二月十一日付で、総務省行政評価局から文部科学省の方へ、「教員の養成、資質向上等に関する行政評価・監視結果に基づく通知」というのがございまして、その中身が、一が「教員養成の中長期予測の策定」、二が「教員の資質向上に係る情報提供の充実」、三が「指導力不足教員への速やかな対応」と、一、二、三と分かれているのですが、この一について、この言わんとされていることはどういうことであるのか、この点について、まずお答えいただきたいと思います。

    〔主査退席、萩野主査代理着席〕

石川政府参考人 幾つか先生からお尋ねがあったわけでございますけれども、最初の、鳥取大学と島根大学の再編統合に関係しまして、整理統合の現状でございますけれども、これにつきましては、先生からお話がございましたように、具体的な整理統合という形で日の目を見ましたのは、この島根大学と鳥取大学の件でございます。

 そのほかに、教員養成関係の定数が動いたものでどんなものがあるかというようなお話があったかと存じます。

 これは、十六年度まではございませんけれども、十七年度の四月から予定をいたしておりますものといたしましては、例えば、山形大学では、教員養成課程、これまで百二十人ございましたものを、従来の新課程と一緒にいたしまして、地域教育文化学部という形で発足をすることになっております。また、福島大学におきましても、教員養成課程、二百二十人あったわけでございますけれども、これらを新しい形で、人間発達文化学類ということでスタートをするという予定にしてございます。

 また、もう一つお尋ねのございました、教員養成の定数をどういうふうにして決めているのかというようなお話でございますけれども、これにつきましては、先生御案内のように、これまで教員養成の数というものは、ほかの、医師、歯科医師等々の分野と同じように、基本的に抑制をするということでやってまいりましたので、ふやしてはきておりませんでした。そういったこともございまして、もう一方で、国立大学の法人化になりましてからは、国立大学法人の中期計画というところにきちっと定員というものを示しながらやっていくということになっておりまして、これに従って、各大学がその定員で教育をやっていく、こういう形になっておるところでございます。

    〔萩野主査代理退席、主査着席〕

銭谷政府参考人 最近の教員の採用の状況で、大学の学部を卒業してすぐ正規採用になる人に比べて、いわゆる臨時的な任用の人が多いのではないかというお尋ねでございました。

 今ちょっと手元に具体の数字を持っておらないのでございますけれども、採用数自体の変化もございますが、実際に、採用、正式に任用される人が、学部を卒業してすぐというよりは、一度講師とか非常勤を経験した方とか、あるいは民間の企業などで働いた方とかが最近ふえる傾向がございまして、学部を卒業してすぐ正規採用になる人の数が、ここ数年はそれほど多くないという実態があるのは事実でございます。

田村政府参考人 教員養成の中長期予測の策定についてのお尋ねにお答えをいたします。

 この趣旨ということでございますが、児童生徒数の減少、それから定年退職する教員の方が増加していくということが将来的に見込まれるわけでございます。しかも、それが非常に地域的なアンバランスを伴いながらこれから進んでいくということが、まず中長期的に考えられるということが一つの背景でございます。

 そういった中で、各大学で教員養成課程の定員、入学者数を決める際に、私どもの調査しましたところによりますと、各県の教育委員会といろいろ意見交換をしている実態はあるのでございますけれども、それが必ずしも全国的な展望を持った上での意見交換あるいは将来予測になっていないといったような実態が認められましたものですから、今後、全国的な規模で、中長期にわたって計画的な教員養成を進めていくということが、質と量の確保という観点から非常に重要でございます。そういったことで、文部科学省の方で全国的規模での中長期予測の策定が必要であるということで意見を通知したところでございます。

大石分科員 田村局長にお尋ねしたいのでございますが、そうすると、中長期的な推計がなされていないために養成数が足りなくなるのではないかという危惧を持っておいでになったわけでございますか。

田村政府参考人 私どもの調査では、養成数が足りる、足りないというところの判断ではございませんで、やはりある程度の中長期的な見通しを国の方で示すことによって、各大学、各教育委員会もそれに対応した形で進んでいくのではなかろうかということで、そういう趣旨で中長期見通しを示すことが必要ではなかろうか、こういうふうな意見の考え方でございます。

大石分科員 文科省側とされましては、文科省なりに中長期的な教員養成、必要養成数の推移というものをつかんでおられたのではないのでしょうか。

石川政府参考人 ただいまの総務省の方からの行政評価・監視結果の通知の件でございますけれども、私ども、この総務省からの通知を受けまして、昨年四月に、各都道府県の教育委員会に対しまして、今後五年間の教員採用見込み数というものの調査をいたしたところでございまして、この調査結果を踏まえまして、全国的な規模での中長期予測の策定といったことに向けまして検討をしていくということとしていたところでございます。

 しかしながら、本年一月の中央教育審議会の答申「我が国の高等教育の将来像」といったようなものが出されまして、その中で、国の役割としては、高等教育計画の策定と各種規制という流れから、将来像の提示と政策誘導といったような時代に移行しておる、それからまた、大学等の設置認可等に係る抑制方針が、平成十五年度以降、原則として撤廃をされたわけでございますけれども、その例外として残っておりました教員等五分野についても、抑制の必要性について個別に検討する必要がある、こういった御指摘がなされたところでございます。

 また、教員需要につきましては、先生も御承知かと存じますけれども、教員の年齢構成を見たときに、近い将来、定年退職者の大幅な増加が見込まれているというようなこと、それから、一部地域、特に大阪、京都、首都圏等でございますけれども、そういったところでは教員需要の急速な高まりが見られる。こんなような状況もございまして、私どもといたしましては、先生から冒頭に御紹介がございました有識者の検討会議といったようなものをお願いいたしまして、教員養成分野の入学定員のあり方について検討を行っていただいておるところでございまして、文部科学省といたしましても、この検討結果を踏まえて適切な対応をしていきたい、このように考えているところでございます。

大石分科員 私は、この問題に関しては、去年もおととしも、去年は予算の分科会で、また、おととしは文部科学委員会で取り上げさせていただいてきておりますけれども、ここ一、二年の間でも、大変理解に苦しむことがございました。

 例えばどういうことかと申しますと、今、これは文科省がお出しになられている、整理されてお示しになられている二つの資料でございます。

 この右のブルーのこれは、文部科学省初等中等教育局が所管されておりまして、「教員養成等における大学と教育委員会の連携の促進に向けて」、「手を結ぼう、大学・学校・教育委員会」というサブタイトルがついております。この趣旨は、中に大変いいことが書いてございまして、私もこれにあと地域社会をつけたいと思うくらいでございますが、教育も地方分権を進めていくときに、教員の養成過程で、地域社会と大学、それから教育委員会、その地域の学校、それから地域社会全般、そこいら辺の協力のもとに、教員の養成に対していろいろな力を発揮し合うということ、これは大変大事なことだろうと思っております。

 それから片や、ピンクのこれは、高等教育局がお世話をしていらっしゃる、「今後の国立の教員養成系大学・学部の在り方について 国立の教員養成系大学・学部の在り方に関する懇談会報告書」、在り方懇と言ってよろしいのでございましょうか、この双方とも、平成十三年、ブルーの方、初等中等教育局の方が八月、それから高等教育局の方が十一月に出された資料でございます。これがどうも整合性がないような気がします。

 それで、片やそのころ、大学の法人化という問題が大変議論されておりました。こちらは、教員養成学部等を整理統合していこう、とにかく、ある程度の規模でないと維持しにくいから、整理統合していこうという趣旨の報告書でございます。「この報告書を踏まえ、早急に改革に取り組まれることを期待する。」そういうふうに書かれておりまして、この中では、とにかく、教員養成課程の入学定員数が減少してきて、また養成数も少なくなっていく、それから、交通網の発達等、情報通信技術の発展に伴って遠隔教育もできるから、何も地域に教員養成大学はなくてもいいだろうという考え方でございます。次第に教員養成数を削減していって、三年間に五千人の削減を行い、現在、一万人の規模となっている。これが平成十三年のことでございます。

 それで、統合のモデルとして、こういう形がいいというようなことをおっしゃる反面、いわゆるベビーブーム時代の先生方、それから何年ぐらいになるとどれくらいの先生がおやめになるか、そういう資料もついているにもかかわらず、こちらは整理統合派でございます。

 こちらのブルーの方は、地域と力を合わせていい教員を養成していきましょうという方針の報告書だと思うのです。ここら辺の整合性が大変理解に苦しみまして、どういうことになっているのか。

 特に、私は神奈川県に住んでおりますので、横浜国立大学の例を申しますと、当時、横浜国立大学が学芸大学に統合という方針が出されて、そして、神奈川県民の方から、地域に義務教育の教員養成課程がなくなるということは大変困ると。私もまさにそう思いました。

 やはりその地域の風土とか文化とか、それから、神奈川県というくくりがいいかどうかは別問題として、その文化圏の中で、その大地の中で育った先生、その地域の、それこそ教育委員会も地域社会も、みんなが一緒になって先生になる方をお育てする、そしてその方々が、その地域の教員として、大学を卒業した後、頑張ってくださる、そういういい関係をつくろうとしているんだと思うのです、このブルーの冊子の方は。

 ですけれども、こちらはそうはいかない。採算ベースに合わないから整理統合しましょうと。

 ここいら辺のところの整合性はどういうふうに考えていったらよろしいのか。私は随分苦しんだのでございますけれども、大臣はどのようにお考えになっていらっしゃいますでしょうか。

中山国務大臣 今、大石先生の話を聞きながら、私も、地元宮崎の宮崎大学のことで、ここ二十年ぐらいずっと悩み続けてきた問題だったものですから、身につまされたわけでございます。

 宮崎の場合には、何とか人文系の学科が欲しい、学部が欲しいということで、教育学部を改編してそういったものができないのかということでずっとやってまいりましたが、地元の人たちの要望をなかなか大学が聞いてくれない。大学の自治という問題がありましたものですから、何とか自主的に大学がやってくれないかなということで、ずっと悩み悩みしつつきたわけでございますが、そういった中で、人文社会系、そういったものを教育学部の中に入れてつくってもらって、定員をそっちの方に振り向けるとか、いろいろしたわけです。

 というのは、そのころは、教育学部を出てもなかなか、先生になれる人が少なかったものですから、それならば、もうちょっと違う学部・学科があってもいいんじゃないか、こういうことだったわけでございます。

 今、二つの小冊子を見比べながら御質問いただいたんですけれども、確かに、一方の方から見れば、私が言いました、教育学部を出ても先生になれない方がいる。しかし、質のいい先生方を確保したい。ある意味では、定員の確保の問題は、どっちかというと大学が主体的に決める問題でございますが、一方の方では、そういった教育学部を含めた学部全体、大学の再編をどうするか、そういうふうなことの中からいろいろ検討された。

 そういう意味では、同じ文部科学省の中にありましても、時には相矛盾するものがあったのかもしれませんが、先ほど言いましたように、抑制方針の撤廃というのは、それぞれの大学の判断で、主体的にかつ柔軟にやっていこうというふうな方向でございますし、先ほども言いました、学部あるいは大学の再編統合の問題というのは、これは定員だけじゃなくて、まさに国立大学における、個々の大学の枠組みを超えた、そういう教員養成機能を強化しよう、こういう観点だったというふうに御理解をいただけばいいんじゃないかな、こう思っております。

 しかし、いずれにしましても、先ほど答弁がありましたように、特にこれから大量にやめる方がふえるという中で、一部においては足りなくなるというような状況もあるわけでございますから、それについてまた対応していかなきゃいけません。

 先ほど、横浜国立大学のお話がございました。神奈川県で教えてもらう先生方は横浜国立大学で、やはり地元のこともよく勉強した人になってもらいたい、これはもう当然そのとおりだろう、こう思うわけでございます。このことは神奈川県の教育委員会でお決めになることでございますけれども、もし教育委員会でそういったことでやるというのならそれでいいのでしょうけれども、やはりそれぞれの採用方針というのがあるでしょうから、全国から集めましょう、もっと視野の広い、いろいろな経験を持った人を集めましょうということならば、神奈川は横浜国立大学だけじゃなくて全国に目を向けられるでしょうし、それはやはり各教育委員会で御判断される問題ではないかな、このように考えております。

大石分科員 この在り方懇の方の報告書でございますけれども、この中には、これは十三年ですから、そんなに昔のことではないわけでございます。「小学校教員が不足するのではないかとの意見がある。」ということが書いてあって、それで、飛ばしまして、「教員の確保に支障が生じるようなことにはならないと考えられる。」それを否定しているわけでございます。ですから、私は、この在り方懇の中身については、何か妥当性がないのではないかと思っておりました。

 それで、これに対して、当時の、これは十四年の遠山大臣の答弁の中には、「個別の問題につきましては、」「地元の意見あるいは各大学の意見を尊重しながら、しかし、あるべき方向に向かって一緒に私どもは考えていくべき時代に入った」と。あるべき方向というのは、やはりこのピンクの報告書のあるべき方向だろうと思います。

 それで、ちょうど去年のこの分科会で、今度は河村大臣にお尋ねいたしましたときは、「国立大学の教員養成学部をきちっと位置づけていくという考え方はしなきゃなりません。」それで、「私自身としては、教員養成のあり方は抜本的にこの際考える必要があると思います。」そこで、この間お話しいたしました、「例えば、六年制にすべきだという声もあります。」「これからの教員養成のあり方をしっかり考えてまいりたい」、これは河村大臣の御発言でございます。

 とにかく地域で先生になっていただく、これは、例えば、神奈川県で先生方が大変不足いたしまして、神奈川県の教育委員会が全国的に先生を探しに出たことがあるのでございます。そのときに、どんな優秀な先生でも、地方から来ていただいた方に小学校一年生の担任をしていただきましたときに、イントネーション、それからアクセント、方言がちょっと入りますので、子供たちはそれを素直に笑ってしまって、それで、一種の学級崩壊でございますね。

 単なる言葉遣いの問題でなかなか子供となじめなかったという例もあるくらいでございますので、やはり、教員の養成と採用、それからなっていただいた後の研修、これは学生がその大学に入学した時点から地域社会とのかかわり合いを持って、そして、この間も御指摘いたしましたように、人間関係がうまくいかない子供たちが多いだけではなく、先生方も大変多くなってきている。それは、先生自体が豊かな人間関係のもとに育ってきていない。それだったら、スタートから地域社会との人間関係の中に先生方を養成していけるようなカリキュラムをつくっていったらいい、私はしきりとそういうことを考えるのでございます。

 大臣、これからの取り組みに対して、大臣はどちらかというと、四年制の課程に、後、専門職大学院を乗っけて、そこで専門的に教育させたらいいのではないかというお考えではなかろうかと思うのですけれども、これからの教員養成に対して、特に地域社会の中で先生を養成することの重要性、私は大変重要なことだと思っておりますが、中山大臣はどのようにお考えでございましょうか。

中山国務大臣 大学を出た段階で、その大学、横浜国大卒の人を採用するという話でありますが、その横浜国立大学には実は地方の高校からもいっぱい来ているわけでございますね。その人たちはどうするんだという話もあるとは思うのです。また、そういうふうに制限することが本当にいいのか、全国から集めた方が、いろいろな多様な人材が集まった方がいいんじゃないかというようなことも考えます。

 一方でまた、私は宮崎ですけれども、宮崎には、県警とかああいったところにも実はたくさん地方の人も行っているわけでございますね。

 だから、学校だけが、子供たちから笑われるから、まあ、私も方言はなくさないようにと日ごろから思っておるんですけれども、やはりいろいろな方が来てもいいんじゃないかと思うわけでございまして、何か非常に、身内だけで、神奈川に生まれた人が横浜国立大学へ行って、その人たちに先生になってもらって、地元の子供たちを教えてもらう、これも一つの方法でしょうし、違うところから来ていただいて、いろいろなにおいや空気を持った先生方が外の空気も持ちながらやるのもまたいいんじゃないか、こう思いますし、これはもう一にかかって神奈川の教育委員会の方で、どういう先生方を集めたいんだという方針のもとにやっていただければいいんじゃないか。

 これについて私ども文部科学省が余り口出しするのはよくないと思いますけれども、先ほど言われました大学院大学のことにつきましても、今、中央教育審議会に諮問しているところでございますから、余り私の方からああだこうだと言わない方がいいのではないか、こう思っておりますので、これ以上の発言は差し控えた方がいいかなと思っております。

大石分科員 済みません、時間がなくなってしまっておりまして恐縮ですが、それでは、この在り方懇の方針というのは、これからもまだ生かされていくわけでございますか。それだけお答えください。

石川政府参考人 先ほど大臣の方からも御答弁申し上げましたように、この在り方懇の考え方と申しますのは、国立大学の教員養成学部における教育力を強化しようという観点でまとめられたものと私どもも理解をいたしておりまして、その考え方自体は、今でも、またこれからも生きておるもの、このように理解をいたしております。

大石分科員 ありがとうございました。

 統廃合が進まないということは、それだけ地域が要求しているから進まないのだろうと思います。ですから、どうか、本来、義務教育の教員の養成というのは何が望ましいかということを、原点に立ち返って、この際、いろいろと考え合わせていただきたいと思います。

 それで、方針はなるべくあっちこっちにならないように、統合失調省にならないように、いろいろと御見解を示していただければと思いますが、要は、地域社会、地方分権の時代でございますので、地域にほとんど任せて、そして、いい教員養成が実現していきますようにお願いしたいと思います。

 どうもありがとうございました。

渡海主査 これにて大石尚子君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして本分科会の審査はすべて終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつを申し上げます。

 分科員各位の御協力を賜りまして、本分科会の議事を無事に終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午後二時三十九分散会


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