衆議院

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第2号 平成18年3月1日(水曜日)

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平成十八年三月一日(水曜日)

    午前九時開議

 出席分科員

   主査 実川 幸夫君

      井澤 京子君    井脇ノブ子君

      尾身 幸次君    奥野 信亮君

      加藤 勝信君    中山 成彬君

      永岡 桂子君    丹羽 秀樹君

      福田 峰之君    武藤 容治君

      岩國 哲人君    岡本 充功君

      川端 達夫君    郡  和子君

      原口 一博君    馬淵 澄夫君

      笠井  亮君    佐々木憲昭君

   兼務 大塚 高司君 兼務 中森ふくよ君

   兼務 福田 昭夫君 兼務 高木美智代君

   兼務 菅野 哲雄君

    …………………………………

   文部科学大臣       小坂 憲次君

   文部科学副大臣      馳   浩君

   文部科学大臣政務官    吉野 正芳君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   林  幹雄君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房長) 玉井日出夫君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房文教施設企画部長)      大島  寛君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          田中壮一郎君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          銭谷 眞美君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            石川  明君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局私学部長)         金森 越哉君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局長)       小田 公彦君

   政府参考人

   (文部科学省研究振興局長)            清水  潔君

   政府参考人

   (文部科学省研究開発局長)            森口 泰孝君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        素川 富司君

   政府参考人

   (文化庁次長)      加茂川幸夫君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           草野 隆彦君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            青木  豊君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           西川 泰藏君

   文部科学委員会専門員   井上 茂男君

   予算委員会専門員     清土 恒雄君

    ―――――――――――――

分科員の異動

三月一日

 辞任         補欠選任

  尾身 幸次君     福田 峰之君

  中山 成彬君     加藤 勝信君

  原口 一博君     田島 一成君

  馬淵 澄夫君     神風 英男君

  佐々木憲昭君     穀田 恵二君

同日

 辞任         補欠選任

  加藤 勝信君     武藤 容治君

  福田 峰之君     井澤 京子君

  神風 英男君     郡  和子君

  田島 一成君     川端 達夫君

  穀田 恵二君     塩川 鉄也君

同日

 辞任         補欠選任

  井澤 京子君     丹羽 秀樹君

  武藤 容治君     井脇ノブ子君

  川端 達夫君     岩國 哲人君

  郡  和子君     鈴木 克昌君

  塩川 鉄也君     吉井 英勝君

同日

 辞任         補欠選任

  井脇ノブ子君     永岡 桂子君

  丹羽 秀樹君     尾身 幸次君

  岩國 哲人君     岡本 充功君

  鈴木 克昌君     馬淵 澄夫君

  吉井 英勝君     笠井  亮君

同日

 辞任         補欠選任

  永岡 桂子君     中山 成彬君

  岡本 充功君     原口 一博君

  笠井  亮君     高橋千鶴子君

同日

 辞任         補欠選任

  高橋千鶴子君     石井 郁子君

同日

 辞任         補欠選任

  石井 郁子君     赤嶺 政賢君

同日

 辞任         補欠選任

  赤嶺 政賢君     塩川 鉄也君

同日

 辞任         補欠選任

  塩川 鉄也君     佐々木憲昭君

同日

 第五分科員大塚高司君、福田昭夫君、高木美智代君、第六分科員菅野哲雄君及び第七分科員中森ふくよ君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十八年度一般会計予算

 平成十八年度特別会計予算

 平成十八年度政府関係機関予算

 (文部科学省所管)


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     ――――◇―――――

実川主査 これより予算委員会第四分科会を開会いたします。

 平成十八年度一般会計予算、平成十八年度特別会計予算及び平成十八年度政府関係機関予算中文部科学省所管について、昨日に引き続き質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。馬淵澄夫君。

馬淵分科員 民主党の馬淵でございます。

 予算委員会第四分科会におきまして質疑の機会をいただきました。本日、早朝から、大臣にも、またきょうは文化庁の方にもお見えをいただきまして、お尋ねをさせていただきたいと思います。

 まず、私自身は奈良の出身でございまして、また、私をこの国会へとお送りいただいた選挙区、私の選挙区は奈良市が中心でございます。

 この奈良市、御案内のように、古くは平城宮跡、またその後の寺社仏閣、東大寺やあるいは興福寺、薬師寺等々多くの寺社仏閣に恵まれ、世界歴史資産としてのその価値は高く評価をされ、世界遺産登録も行われた。我が国においても大変意義のある、価値のある歴史的都市である、そのように私も郷土を誇りに思っております。

 奈良におきましては、こうした数多くの文化財が保存され、また多くの観光の方々や市民、県民、皆様方にそれらを発信しているわけでありますが、まず冒頭に、ぜひ大臣から、我が国における文化財というものに対する基本的な考え方につきまして御答弁をいただけたらというふうに思います。

小坂国務大臣 馬淵委員の御質問でございますが、御出身の奈良というのは、日本人にとりまして、まさに日本の伝統的な文化遺産の集積地であるという認識を持っておるわけでございます。

 やはり文化というのは、海外から見ますと、日本を理解する上での根源的なものといいますか、日本のアイデンティティーにおいて占める文化の力というものは非常に大きなものである。経済的に大国として認識されることはあっても、尊敬されるためには文化の力がなければならない、芸術の力がなければならないと思うわけでございます。そういう意味で、伝統的な文化が脈々と維持をされ、保存をされているということは、海外から見て日本を尊敬に値する国だという認識の上で大きな役割を担うものだと思っております。

 その意味で、文化の保存、維持というものについて、そしてまたその活用ということについて、文部科学省として今後とも力を入れて取り組んでいきたい、このように考えております。

馬淵分科員 大臣からは大変示唆に富んだお言葉をいただいたと思います。国というものが尊敬される、国家の尊厳という部分におきましては、文化の力、芸術の力というものが非常に重要である、大変力強いお言葉をいただいたわけであります。また、そうした文化の力、芸術の力、国家のアイデンティティーというものが、まさにこの私の郷里であります奈良、その町に脈々と息づいている、そう思っておるわけであります。

 さて、この奈良の町の中に、ちょうど奈良市というのは市街地と山間部がございまして、市街地は、大きくは、古くからの東大寺等々の寺社仏閣の並ぶ東部と呼ばれる町、そして一方では、さらに西寄りになる、大阪という都市部に近接する町として西部、ここは新たに開発をされたいわゆる住宅近郊都市でございます。この東部、西部と二つに分かれていくわけでありますが、ちょうど近鉄線が走るその中央に平城宮跡の原っぱがございます。原っぱと申し上げたのは、実は、私が子供のころ、それこそ平城宮跡は広大な広場として、お正月にはたこ揚げに興じ、またボールけりや家族そろってのお弁当を持ってのピクニックなど、市民の憩いの場でもございました。

 こうした原っぱが今もなおそのような状態で残っているということは、私自身、この奈良の町の中で、人口がふえてきた高度経済成長期も含めて、極めて異例のことであったなと思うわけであります。ある意味、都市の中心にそれだけの広大な土地を残すということは利便性を欠く部分もあったかもしれませんが、一方、こうした宮跡をしっかりと残してきたことについては、本当にありがたいな、今はそんな思いでございます。

 今も、逆に私は子供たちを連れて野球をしたり、それこそたこ揚げをしたりという、そうした市民にとっての憩いの場を今も大事に大事に接しているわけでありますが、こうした平城宮跡、奈良を訪れるほとんどの方々が、ここは一体どういう場所なのかということについてはなかなか御周知いただけない部分も実は一方であるのではないかなと思っております。

 しかしながら、この国の始まり、「美しい日本、はじまりの奈良」というような合い言葉を掲げて、この国の始まりであるこの平城宮跡というものをもう一度しっかり見直そうではないか、こうした機運が実は高まりつつございます。

 平城宮跡に平城京が、都が構えられたのは七一〇年。そして、この平城遷都千三百年を記念しての記念事業というものが、関西を中心に、奈良県、奈良市あるいは関西の各団体を中心に記念事業として進められようとしております。この平城宮跡、国の歴史そのものである宮跡、ここが特別史跡として文化庁において認定をされ、その特別史跡としての活用というものが今日までさまざま図られてきたわけであります。

 さて、この特別史跡としての平城宮跡は、私が子供のころ記憶に残っていた原っぱから徐々に風景を変えてまいりました。遺構等の発掘、またそれらの整備が進められ、さらには、新たな復原事業というものがスタートをしております。

 こうした、先ほど大臣がおっしゃった、文化財というもの、文化というものはそれこそ、文化の力、芸術の力として国家のアイデンティティーを支えるものなんだという力強いお言葉をいただいたわけでありますが、一方、文化財としての、財物としてのこれそのものに対してどのような考え方があるのかということ、これについて少しくお話を伺わせていただきたいというふうに思います。

 文化財保護法というのがございます。この文化財保護法を見てみますと、文化財保護法の中には、当然ながらに、国が公益との調整に留意をしながらそうした財物を守るということ、これをしっかりと掲げられておるわけでありますが、この文化財保護法の基本的な考え方について。先ほどは文化財ということについての考え方をお尋ねしたわけでありますが、文化財保護法の考え方について、端的な部分で結構ですので、これもこの分科会の場で御答弁をいただけますでしょうか。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 文化財保護法の基本理念についてでございますが、その第一条に掲げられておりますように、文化財を保存し、かつ、その活用を図ることをもって国民の文化的向上に資するとともに、世界文化の進歩にも貢献することを目的としておる、こううたい上げておりまして、文化財保護を通じて国内における文化財の意義の十分な理解に資するとともに、さらに世界にも視野を広げた目的意識が掲げられておりまして、大変重要な事業だと私どもも認識をしておるわけでございます。

馬淵分科員 文化財保護法の基本理念、一条についての御解説をいただきました。

 さて、こうした文化財、当然ながらに保存ということも重要でありますが、それをいかに活用し、国民並びに世界の方々に発信をしていくかということ、国家のアイデンティティーを高めていくためにも、保存だけではなく、活用という部分が極めて重要になるかと思われます。

 この平城宮跡でありますが、先ほど申し上げたように、奈良においては平城遷都千三百年祭というものが今積極的に進められようとしております。こうした千三百年祭に向けて、平城宮跡そのものの利用というものが一方で検討され始めているわけでありますが、文化財の保護という部分に関してどのような問題が発生するのかというところで、一つお尋ねをしていきたい部分がございます。

 文化財保護法の百五十三条二項の十四でございますが、いわゆる史跡に指定をされる、これは文部科学大臣によって史跡が指定されるわけであります。特別史跡、これなどは平城宮跡などがその指定に当たっているものであるかと思われます。こうした史跡の現状変更または保存に影響を及ぼす行為、これらに関しましては許可が必要であると、この文化財保護法に定められております。

 さて、平城宮跡を今後平城遷都千三百年祭に利用していこうという中で、朱雀門という平城宮跡の南側に位置する大門が復原事業としてつくられました。そして今日、またその平城宮跡の真ん中に大極殿が建設中でもございます。こうした復原事業と、一方で、新たに事業なりを行おうとするときの、変更または保存に影響を及ぼすという部分においては、いかなる解釈がそこにあるのかということについて言明をいただけたらというふうに思います。

加茂川政府参考人 文化財保護法に基づきます現状の変更または保存に影響を及ぼすような行為に係る対応についてのお尋ねだということでお答えを申し上げます。

 奈良の平城宮跡は、特別史跡としての指定を受けておるわけでございまして、委員御指摘のように、今申しました一定の現状変更等につきましては、文化財保護法に基づきます所定の許可が必要になってまいります。現状で、この平城宮跡を活用したどのような利用がこれから行われることになるかということにまだ具体化をしておりませんので、一般論で申し上げるしかないわけでございますが、具体に、例えば地下の遺物に影響を及ぼす、もしくは史跡としての景観に影響を及ぼすということになりましたら、その程度にもよりますけれども、この許可が必要になるわけでございまして、私どもとしては、所定の審議会にお諮りをした上で許可手続をとらなければならないという場合も考えられるわけでございます。

馬淵分科員 まだ具体的なプランというものが固まってはいないのでということで、今後審議会等々でのまた議論がということのお答えをいただきましたが、遺構の中には、地下にはまだ木簡等々が埋蔵されている可能性もあるということで、簡単には平城宮跡を使って建物などは建てられないんだ、こういうお考えだと思います。

 そうした中で、この平城宮跡を、遷都千三百年事業、この中でメーン会場として利用しようではないかといった案が上がっておるというふうに聞いております。

 さて、当然ながら、遷都千三百年ですから、その会場そのものに平城宮跡を利用するということは、極めて私は意義のあることであると思っております。この平城遷都千三百年記念会場としての、事業のメーン会場としての平城宮跡の利用についてでありますが、これについては、現時点において、文部科学省として、文化庁としてどのようなお考えをお持ちであるかということをお聞かせいただけますでしょうか。

小坂国務大臣 今、加茂川次長の方からお答え申し上げたとおり、埋蔵されております文化財に悪影響を及ぼさない範囲内において平城宮跡を利用して、まさにそこが中心でございますので、遷都千三百年記念事業として、何かパビリオンとかそういうものをつくったり、いろいろな具体的なものがこれから出てくるんだと思います。

 それにつきましては、有識者としての御見解をそれぞれお聞きする中で、文化庁として判断をさせていただく、すなわち文部科学省として最終的な判断をさせていただきます。それぞれの計画、具体的なものも決まりましたら、御相談をいただきながら、最終決定までの間に、そういった許可のあり方について御相談をさせていただければと考えております。

馬淵分科員 これについては、今後も御相談をしながらという大臣のお言葉をいただきましたが、これは地元紙でございます、ことしの二月の十一日、地元紙である奈良新聞でこのような記事が載りました。

 この千三百年記念事業で、パビリオンなどを設置するメーン会場として、文化庁が奈良公園を提案していることが十日までにわかった、このような記事でございました。この記事の中では、県などでつくる記念事業協会は平城宮跡を中心に基本計画を策定しており、特別史跡の保存と活用をめぐって駆け引きが続く格好、平城宮跡が使用できなければ事業の趣旨は根底から見直しを迫られることになる、このような報道があるわけでございます。

 さて、文化庁としては、このように、平城宮跡を利用せずに奈良公園をお使いくださいというような御提案はなされておられるんでしょうか。これについて、これは報道でございますので、具体の事実をお答えいただけたらというふうに思います。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 平城宮跡は特別史跡でございまして、先ほど来のお話にもございますように、世界遺産の構成資産でもあるわけでございます。そして、先ほど文化財保護法のことを申し上げましたけれども、利用に当たっては、そういった史跡の保存上必要な一定の許可が必要になる場合もございますし、各種の制限が生じるわけでございます。

 先生のお話にございました、記念事業をどこで行うかということにつきましては、平城宮跡のみで行った場合のさまざまな心配もあるわけでございますので、私どもとしては、例えばの案でございますが、複数の会場に事業を分散させて行う、例えばオープニングでありますとか開閉幕会場としてこの宮跡を使うということはあり得るかもしれませんけれども、それ以外のイベントにつきましては、これ以外の会場もあわせて利用するということも考えられるわけでございます。いろいろ御相談にあずかる中で、事業のありようについての一つの利用方法についてお話をする中で、先ほどの記事に結びついたのかなと思っております。

 奈良公園を特定してここでどうこうすべきだという具体の話までまだ詰めておるわけではございませんし、そのような指示をしたこともないわけでございます。これからのお話し合いで、分散方法も含めたどのような事業のありようがあり得るのか、誠意を持ってお話し合いに応じてまいりたいと思っております。

馬淵分科員 文化財、まだ埋蔵されている文化財への影響も考慮しながらということで、保存という大前提に立てば、私もそのことは十分に理解できるわけでありますが、一つ気になることがございます。

 それは、実は十八年前なんですが、奈良では、なら・シルクロード博というのが開かれました。この十八年前、また、当時は朱雀門などもなかったかに思います。その当時、なら・シルクロード博の会場は、当初はメーン会場としてこの平城宮跡が構想されておったわけでありますが、先ほどからの御指摘のように、埋蔵文化財への保護など制約が多くて、奈良公園にそのメーン会場を移した、そうした事実がございます。そして、このときは、平城宮跡の資料館や遺構展示館など既存施設を使っての宮跡説明ということでの地味な展開によって、延べ入場者数が全体の三十分の一にも満たない五十万人となってしまった、これは計画値に対してですね。こうしたことが十八年前にあったということが事実としてございます。

 そこで、今お答えをいただいた中には、複数の会場で、またオープニングやあるいはエンディングというんでしょうか、そうした場面での記念的な行事についてはそうした利用もということで、複数の会場でさまざまな場面でという、こうした文化庁さんとしての考え方の御提示であるということではありましたが、やはり遷都千三百年事業ということであれば、平城宮跡という、先ほど私申し上げた、私は実はこの原っぱが大好きなんですね、私ごとで恐縮ですが。こうした遺構、遺跡がこうした形で原形でとどまっているということについては、もちろん建物はないわけですが、原風景として、奈良に住まう者、あるいは訪れてくださる方々にぜひ知っていただきたい、そんな思いがあるわけです。

 だから、そこに、それこそ近代的なパビリオンを建てる云々という話ではないと思うんです。平城宮跡のよさ、奈良のよさということを知っていただくためには、この千三百年記念事業においては、平城宮跡のメーン会場という部分については、ここがやはり根幹として極めて重要な部分ではないかと思われます。

 先ほどのお話の中では、複数の会場も含めたさまざまな提案を協議しているところだというお答えでありましたが、もう一度お尋ねをさせていただきたいのは、やはりこうした事業において、文化財の保護、埋蔵物の保護というのは当然ながらに求められるわけでありますが、とにかく文化庁が利用を制約しているんだなどということではないということについては確認をさせていただけませんでしょうか。お願いいたします。

加茂川政府参考人 私ども、地元といろいろ相談をさせていただく中で、記念事業の意義については十分理解をいたしておりますし、大極殿正殿の復原時期につきましても、地元と十分連携をする中で、整備に努力しておりますことをまず御理解いただきたいと思っております。

 その上で、記念事業をどう展開するかということにつきましては、委員何度もおっしゃっておられますように、あの平城宮跡を文化財としての価値を損ねない範囲内でどうやってその記念事業の意義を達成していくかという調整が求められるわけでございます。大規模な構造物、例えばパビリオンを幾つも建てたときにはその重さでありますとか、建て方によりましては地下の遺物でありますとか、もしくは、あそこは史跡としては全体の景観も文化財として価値を持っておるわけでございますから、それを損ねることにならないかといった観点から、その設置場所あるいは規模について私どもは目配りをしたいと思っておりますし、これから十分打ち合わせ、検討をさせていただきたい、こう思っております。

馬淵分科員 ありがとうございます。

 重ね重ね、これは、こうした事業の成否を握る部分だと私は思います。お越しいただいた方々に、ここに奈良の都があった、つまり国の始まりがあったんだということを知っていただくことは極めて重要だと思います。

 今御指摘のように、景観という部分も含めて、春日の山々が見えるこの平城宮跡でこの事業を構築していくこと、もちろんそこに近代的な建物を建てるなどということは大前提として私は難しいなとは思っておりますが、やはり会場としての利用ということについては、ぜひ積極的な活用に対しての国家的な見地に立った御協力を心からお願いしたいというふうに思うわけであります。

 さて、もう一点、この会場についてのことでお尋ねをさせていただきたいんですが、こうした事業の成否は、交通アクセスというのが極めて重要な観点になります。安全、便利なアクセスというのはイベントの成否を握るわけであります。

 その中では、実は近鉄電車が、これは私鉄、民間なわけでありますから決定事項でも何でもないわけでありますが、現時点においては、構想として、新大宮という東側の駅と西側の大和西大寺駅、中間にあります平城宮跡の真ん中をこの電車が走っているんですが、そこに仮設駅を設けるなどという、こうした構想もあるやに聞いております。この仮設駅の設置等につきましてはどのようなお考えを今お持ちでしょうか、お聞かせいただけますでしょうか。

加茂川政府参考人 委員御指摘の仮設の駅につきましても、今地元と鋭意協議をさせていただいておる課題の一つでございます。

 この平城宮跡地内におきましては、先ほどから申しておりますけれども、貴重な遺構、木簡などがなお多く存在しておりますし、地盤のことを申し上げますと、この地盤は軟弱な場所も多いと考えられておりますので、今地元が考えておられます規模の仮駅を設置された場合にはやはり悪影響が免れないのではないかと私どもは心配をいたしておりまして、このままでは現状変更の許可を与えることは大変難しいのではないかというのが、現時点での認識でございます。

馬淵分科員 当然ながらに、駅となりますと構造物としての負荷がかかってくるわけですから、遺構に対する悪影響ということも十分考慮しなければならない、これもよく理解はできます。

 ただ、現時点で可能な場所ということをお尋ねしていくと、どうもこの特別史跡の境界外、その東側の部分になるのではないかというようなことも考え方としてはあるとお聞かせいただいているわけであります。ただ、とにかく駅をつくるのであれば協力しようというところで、ではここならいいですよという駅の場所が、本来必要とされる場所から大きく離れてしまっては、何にもなりません。

 やはりこのアクセスポイントという部分についてはしっかりとした考え方を持って、駅の設置等々も考えていかねばならないと思いますので、今お話しの点、十分理解はできますが、逆に、この部分はだめなんだということであれば、明確に示していただいて、新たな遊歩道の設置やシャトルバス等々、こういった方法も考えねばならないと思いますので、ぜひとも明確な御意見を早々に御提示いただけたらなというふうに思っておる次第でございます。

 さて、先ほど来、大極殿の整備ということでございます、このこともお話の中に上がりました。こうした事業のシンボルとして、やはり大極殿というものがその事業の中で極めて重要な位置づけになっていくのではないかと思うわけでありますが、これも復原事業ということで、これは文化財という位置づけかと思われるわけでありますが、この大極殿そのものの活用と制限について、端的に、どのようなものになるのかということをお聞かせいただけますでしょうか。

小坂国務大臣 大極殿正殿の復原事業に関しましては、平成十三年度から着手し、平城遷都千三百年の記念事業の西暦二〇一〇年、平成二十二年の完成を目指しているということでございます。

 これに合わせて、ただいま委員のおっしゃっておられました仮設駅の問題も、これは特別史跡の指定ということもさることながら、世界遺産の古都奈良の文化財の構成資産にもなっているわけですね。世界遺産の登録というのは、特定の建物等が指定されるというものではなくて、もう御存じのとおり、その周辺環境、そこに住む人々、生活文化、こういったものを全部合わせて、世界遺産の登録の際の審査基準になっております。そういう意味で、その登録に基づいて外国の皆さんが訪れたら、全然違うイメージのものがそこにあったとか、景観的にも期待を裏切られたということではならないわけでございます。そういった意味の検討もあわせていかなければならないということから、特別史跡の観点からの御相談だけでなく、そういった世界遺産としてのあり方についても御配慮いただいて、計画段階でそういったことも視野に入れて御相談をいただければと思うわけでございますし、御計画をいただきたい、こう思っているところでございます。

 また、この平成十八年度の予算において、復原事業の木材購入、加工、組み立て、こういったものの費用として二十六億八千三百万円、対前年比九億二千万の増額を計上しておるわけでございます。現在、正殿の二層目の組み立てに入っていると理解しておりまして、計画どおりにこの事業が西暦二〇一〇年までに完成するように、地元の皆さんの強い御要請もございますので、進めてまいりたい、努力をしてまいりたい、このように考えているところでございます。また御示唆をいただければ、いろいろ御質問いただければと思っております。

馬淵分科員 今計画の概要についてもお答えをいただきましたが、大極殿、これらの活用ということについてもやはり一歩踏み込んでいただきたいなというふうに思うわけであります。

 実は、朱雀門もかつてはその扉が閉じられておったわけでありますが、文化財の体感ということで、これをぜひ利用していただくというような観点から、さまざまな試みがなされるようになりました。平成十六年の四月十七日には、奈良県にお住まいのお二方がそこで結婚式も挙げられる、こうした極めて個人的な利用も含めて、ぜひこうした世界遺産に登録されている特別史跡も使ってもらおうということで、積極的活用の観点から許可がなされたというふうに伺っております。

 大極殿も、メーン会場という中での位置づけとしては、単に見る建物ということだけではなく、大極殿を積極的活用するという意味において、ぜひそうした利用を国としてもお考えいただけたらというふうに思います。

 最後にちょっとお尋ねをさせていただきたいんです。

 こうした大極殿の整備も、実は特別史跡平城宮跡保存整備基本構想というものに基づいて行われているわけであります。これが決定されたのが昭和五十三年、一九七八年のことであります。このように長きにわたって、構想に基づいて進められているわけでありますが、これは九五年までに整備ということがめどであったわけでありますが、残念ながら、まだそうはなっていない。千三百年の長い歴史の中のこの史跡を保存するという計画を三十年かけていいのかというと、私はそうではないと思う。やはり大事な税金を投入して整備をいただくわけでありますから、この基本構想については、早急なる構想の見直しと、さらなる具体的な整備というものを進めていただきたいというふうに思います。

 こうした整備というものは、一方で、政府が打ち出している観光立国政策というものに私は十分リンクしていくものだと思います。ぜひ、国としての取り組みということをこの場で力強いお言葉としていただけたらというふうに思うんですが、最後に大臣の方から一言、国家的プロジェクトとしての取り組みということをぜひこの場でお聞かせいただけたらというふうに思います。お願いいたします。

小坂国務大臣 御指摘のように、特別史跡平城宮跡の保存整備基本構想におきましては、昭和五十三年にまとめられて以来、平城宮跡が国民的な文化遺産であるということにかんがみて、遺跡博物館として段階的、計画的に整備するということにしておるわけでございます。今の段階で、土地の買い上げや中核的な施設の整備などについて、何とか二〇一〇年の計画段階までにおおむね達成できるという方向性を持って、今取り組んでいるところでございます。

 そういう中で、基本構想につきましては、当初計画よりはおくれてはいるものの、まずは現在計画的に行っている整備事業の完成にすべてを注ぐ、それに全力を尽くすということが当面の最大の私どものなすべきことと思っておりまして、そういう中で、今後のことについても取り組みを検討してまいりたい、このように考えるところでございます。

馬淵分科員 ありがとうございました。

実川主査 これにて馬淵澄夫君の質疑は終了いたしました。

 次に、加藤勝信君。

加藤(勝)分科員 おはようございます。自由民主党の加藤勝信でございます。

 きょうは、たくましい子供づくりの点、そして障害児者教育、大きくこの二点について御質問させていただきたいというふうに思います。

 まず、たくましい子供づくりという点であります。

 今までも言われておりますように、子供の教育、私も小さい子供が四人おりますけれども、学校の教育はもとよりでありますけれども、地域、家庭、ある意味ではこの三つの中で子供たちが育ってきた、また、私どもも育ってきたわけでありますけれども、私どものころと比べると、やはり随分環境も変わってきている。また、地域や家庭の教育力も低下をしてきている、あるいは地域を取り巻く状況が随分変わってきている。こういう中で、逆に言うと、そうした喪失された機能というものをまた違うところで補っていくということが、私は大変必要な点ではないかな。

 特に、今人間力あるいはたくましい子供づくりという観点からして、子供が少なくなってきている、あるいは家庭の中でも一人っ子等の状況が大きくなってきている、なかなか外でみんなで遊べない環境がある。こういう中を考えると、子供同士がぶつかり合ってみずからを高めていく、こういう機会が随分減ってきているのではないか。

 私の地元で大変お世話になっている学校の学校長、学園長をされている方が、いつも卒業式、入学式のときに必ず言うと言われた言葉の中に、自分は教育と学校というのは芋洗いの棒だと思っている。昔、芋を洗うときに、おけの中に水とジャガイモならジャガイモを入れて、それを攪拌棒で回すと芋同士がこすれ合って皮をむかれていく、まさに自分はその攪拌棒の役割だという話をされるわけでありますけれども、まさに子供同士がぶつかり合いながらお互いが皮がむけていく、こういう機会が本当になくなってきているのではないか。

 もちろん、学力の議論も一方であるわけでありますけれども、こういう機会というものをいろいろつくっていかなければならない。特に、文科省におかれても、いろいろな予算措置、モデル事業の実施等いろいろしていただいているわけでありますけれども、その中で、私、長期合宿、一週間あるいは十日、このぐらい子供同士がともに寝起きをしていく、こういう機会をこれからもどんどんつくっていったらいいんじゃないか、こういう観点からお話をさせていただきたいと思うのであります。

 今、豊かな体験活動推進事業というような事業をされている。その一環の中で、平成十六年度から長期宿泊体験の実施というメニューがスタートされているわけでありまして、平成十六、十七年には九十四校、平成十八年度からは三倍増ぐらいでスタートするという状況になっているわけであります。

 この企画も、私どもの同僚である土屋議員が、当時、武蔵野市長でおられるときに武蔵野市で積極的に取り組みをして、非常にいい効果があるということで、当時の文部大臣にいろいろ御陳情、御要請される中で、平成十六年からスタートしたというわけであります。

 実は、私の地元岡山県、今では新見市でありますが、当時は哲西町というところでも、矢神小学校、野馳小学校というところで、当初、通学合宿、要するに寝泊まりだけして学校に通う、こういうようなことで五年間実施をして、十六、十七年度はモデル事業でやらせていただいている、こんなことも今展開をされているわけであります。

 まず、今このモデル事業を含めてこうした長期合宿、全国でどの程度実施されているのか。また、その態様もいろいろあると思いますけれども、多少の事例をまず御紹介いただきたいと思います。

銭谷政府参考人 まず、全国における宿泊体験事業の状況でございますけれども、実は、修学旅行以外で、自然教室あるいは移動教室といった形で集団宿泊活動を行っている学校は多うございます。小学校では約九〇%、中学校では約七五%で実施をいたしております。

 ただ、問題は宿泊日数でございまして、ほとんどが一泊か二泊という状況でございまして、長期間宿泊して活動を行うというものは少ない状況にございます。これは、小学校、中学校とも共通の傾向でございます。

 そこで、ただいま先生からお話がございましたように、文部科学省におきましては、平成十六年度から長期宿泊体験推進校という事業を始めまして、長期間の宿泊を伴う自然体験等の体験活動を推進しているところでございます。これは、全国から応募のありました学校について、一校当たりの経費はバス代とか諸連絡経費程度でございまして、大した額は差し上げられないのでございますけれども、一校当たり約五十万程度の活動経費を委託し、実際に長期宿泊活動を行っていただいているというものでございます。

 各指定校、約九十校ございますが、その状況を見ますと、主に、夏から秋にかけて、少年自然の家などの青少年教育施設や民宿などの民間施設等に宿泊をしながら、山歩きや植物探索などの自然体験活動、史跡の清掃活動などの社会奉仕体験活動、陶芸や織物などの文化芸術体験活動といった体験活動を実施いたしております。

 宿泊日数でございますけれども、指定校では大体四泊から七泊で実施をしている学校が多うございます。ただ、宿泊を二回に分けて二回実施をしているというところもございまして、そういう学校では短目な宿泊日数になっているところでございます。

加藤(勝)分科員 今、大体わかりましたけれども、やはりそのポイントは、そんなにお金はかからない。実際、文部省、五十万ありますけれども、通学合宿だけやろうとしたら、本当に十万とか十五万とかというオーダーでできる。

 それから、やはり三日、四日ではなかなか効果が出ない、七日から十日は欲しいというのが多くの方の御意見だと思います。実際、私、地元の矢神、野馳の保護者や先生からお話を伺ったのでありますけれども、子供たちは、最初、親元から離れる寂しさ、あるいはふだん一緒にほかの子供といないので、それによるストレスとか、テレビが見られない、おやつが食べられないとか、そんなような話がいろいろ出たわけでありますが、しかし最後には、やはり終わりになると、いや、もっと長くいたいな。あるいは、卒業文集なんかに書くと大半がこの長期合宿の話である、修学旅行よりもはるかにこちらの方が印象が深かったという話も聞くわけであります。

 また、先生や保護者の視点から見ると、子供が他の子供のことを考えるきっかけになる、あるいは時間を守るようになる、自分のことは自分でする。あるいは、食事も自分でつくりますから、やはりその苦労というものを理解する、ただ、家に帰ってきてしばらくは積極的に手伝いをするけれどもなかなか持続はしないとかいう話はありましたけれども。さらには、指示待ちの子供たちも自主自立の意識に目覚めていく。さらには、実はこの二校、大変規模が小さくて、十数人という、一クラスそんな程度でありますから、女の子と男の子の数が多少、片一方が多い、片一方が少ない。同性同士が一緒に遊べる機会になるということで、非常に小規模校、特に過疎地の学校においても非常にメリットがあるというような話がありました。

 ただ、進めるに当たっては、学校の授業時間を削るという場合には、教科の学習時間が減少するという影響、また通常の学習内容をどう盛り込むかというかなり工夫が要る、こんなような指摘もいただいているわけでありますけれども。

 いずれにしましても、私はやはり、子供の自立という、まずそのメーンな目的からしても、またこれを地域が受けるということになれば、自分の地域であれば地域の他の大人との接触、ほかの地域に行くにしても、他の、東京の子供であれば第二のふるさと、あるいは他人と触れ合うきっかけになる。あるいは、先ほど申し上げました小規模校では合同でやることのメリット等々、いろいろポイントがある、メリットがある、評価できることがあるというふうに思うわけでありますけれども、文科省の方も、ここに来て三倍増ということを頑張っていただいていますけれども、この事業あるいは長期合宿というものをどのように評価しているのか、お答えいただきたいと思います。

馳副大臣 子供たちの側からは、集団で宿泊するときはチームワークが必ず必要だとわかった、仲間のことを考えて自分勝手な行動が少なくなったといった感想が上がっております。

 指定校の方からは、身の回りのことは自主的にやるようになるなど生活力に驚くほどの成長が見られた、寝食をともにすることで、お互いのよさを発見したり、相手の気持ちを考えて行動することができ、交友関係の改善、構築が見られたといった成果の報告をいただいております。

 極めて効果的な事業として評価をいただいているものと考えております。

加藤(勝)分科員 大変前向きに御評価いただいておりまして、そして今、十六、十七年度、実施された九十四校ですか、これは二カ年度ということですから平成十八年度は対象にならない。こういう学校のフォローを含めて、私は特に、これはモデル事業ですから、文科省としてもこの予算で全国を実施しようとは到底お考えになっていないというふうに思います。そういう意味では、全国で展開するということになれば、今例えば学習指導要領の議論をされておりますけれども、そういうところに盛り込むとか、そういうやはり積極的な対応が必要になってくると思いますけれども、大臣におかれまして、この長期合宿を全国に展開していく、それに対する意気込みとその施策について、お答えいただきたいと思います。

小坂国務大臣 加藤議員におかれましては、けさの新聞で知ったわけでございますが、岳父が突然の御逝去をされるという緊急の事態の中で、国民の視点に立って通告どおりに御質問を続行されていることに、まずもって敬意を表したいと思います。

 その中で、ただいまそれぞれ答弁をさせていただきましたように、豊かな体験を積むということのすばらしさは、委員も御指摘のとおりでございます。そして、このことをできるだけ多くの学校において実施できるように普及させていくことは、御指摘のとおり重要なことでございまして、そういった観点から、今馳副大臣も申し上げたように、体験者としての意見、こういったものを盛り込んで、またよい取り組みを収集した事例集のようなものを作成して、そしてそれを配付し、各取り組みの成果を発表するブロック交流会のようなものを、全国、今のところ六ブロックで開催をしたいと思っております。こういったものの開催を通じて各教育委員会や学校に情報提供することによりまして、これは学校側の取り組みも相当努力していただかなければ実現できませんので、そういった御努力をいただく中で、長期宿泊体験活動が全国で実践されるように、普及を図ってまいりたいと考えております。

 ただいま御指摘いただきましたように、十七年度の予算では九十四校でございましたが、十八年度の予算案としては、予算上二百八十二校を積算、これを目標として実施をさせていただきたいと思っておりまして、拡大の努力を進めてまいりたいと存じます。

加藤(勝)分科員 大臣、大変ありがたいお言葉、ありがとうございます。

 また、今のお話しいただいた、まだまだ本当にわずかなところでありますから、全国的な展開に向けて、ぜひとも文科省でも、また私どもも一生懸命に応援をさせていただきたいというふうに思います。

 次に、障害児者教育ということで、まず一つ、副学籍、支援籍制度について御質問をさせていただきたいと思います。

 平成十六年に公布されました障害者基本法、これは一部改正されておりますけれども、その中で、障害のある児童生徒と障害のない児童生徒との交流及び共同学習を積極的に進めることにより、その相互理解を促進しなければならない、こういう規定も入ってきているわけであります。

 今回、文科省においては、特別支援教育体制というものを新たに構築していくということで、障害者教育に対してさらに一段と取り組みを強めていただいているわけでありますが、やはりその中で、障害者あるいはその子供、障害児を持っておられる親御さんから見ると、やはり地域から浮いてしまう、特に、盲・聾・養護学校、そういう学校に行くと地域の子供たちとの触れ合う機会がない、子供の育つということもありますけれども、また地域に戻ったときに知っている人がいない、こういうこともあるわけで、交流というのは大変重要だと思っております。

 そういう中で、東京都では、特別支援教育体制の整備を進める観点から、平成十六年度、特別支援教育体制・副籍モデル事業というのをやっておりまして、私も、ちょっと三月の半ばぐらいに、そのやっている実施を、モデル事業でやっておりますから、見に行きたいと思っております。

 また、横浜市でも、盲・聾・養護学校に在籍する子供たちの副学籍というのを、学籍はその学校にあるわけでありますけれども、副学籍を、本来その障害のある子供さん方が行ったであろう小中学校に置く、そして本人や保護者のニーズに応じて、地域とのかかわり、友達との意識がとられるよう交流をしていく、こういうような取り組み。

 さらに、埼玉では支援籍制度ということでやっておられるというわけで、学籍というのは基本的に一つに置くということになっているわけでありますけれども、やはり交流をする、地域の学校にと言われても、やはりそこに何かきっかけがないとなかなか行けない。例えば、みんな来てもいいよといったときに、そこにいすがなければ、なかなかそこへ参加していけない。

 そういう意味で、私は大変、この副学籍とか支援籍という制度は交流をしていく心理的なモチベーションを高めるという意味もあるし、また、副学籍が置かれている学校に対してやはりいろいろな取り組みをお願いしていくという意味でも非常に具体的な効果があると思っておりますけれども、この点について、文科省はどのように評価されておられるのか。

銭谷政府参考人 ただいまお話がございましたように、東京都、横浜市、埼玉県などでは、副籍、副学籍といったようなことで、盲・聾・養護学校に在籍する子供の居住している学校に、いわばそういう席を設けて交流を進めようという試行的な試みを行っているわけでございます。

 私ども、盲・聾・養護学校の児童生徒と居住地校の小中学校の児童生徒との交流及び共同学習は、障害のある児童生徒が成長して、やがて自分が住んでいる地域で自立し、社会参加していくために必要な人間関係を広げるということで意義のあることと考えて、これを進めていかなければならない、こう思っております。

 その意味で、こういった東京都などの試行的な取り組みについては、その状況を十分注視して、今後の参考としていきたいというふうに考えているところでございます。

加藤(勝)分科員 ぜひ、こういう一つの交流を進めるという意味でも、具体的な措置でありますので、積極的に取り上げていただきたいというふうに思います。

 さらに、障害児者教育でありますけれども、今の義務教育、いろいろな議論があります。一般の学校でも、義務教育のあり方、ゆとり教育云々という議論があるわけでありますけれども、そういう視点で考えたときに、本来の義務教育、社会に出て、少なくともこれだけは身につけておくべきだ、それを教育されるのが義務教育であって、したがって、それをしっかりと身につける。従前は、ややちょっと量が多ければもう少し厳選して量を減らしていく、そういうことでいろいろな取り組みがなされてきた、こういうふうに私は理解をしているんです。

 それでは、障害のある子供さん、特に知的障害等、そういう障害がある子供さんにとっての義務教育というのは一体何なんだろうか、あるいは義務教育で習得すべきものといったら一体何なのか。特別支援教育の理念という意味では、児童生徒一人一人の教育的ニーズに対応して適切な指導及び必要な支援を行うこと、こういうふうに書いてあるわけでありますけれども、しかし、具体的に、個々の障害のある子供さん方にとって、義務教育で身につけるべきものは一体どういうものなのか、あるいはそこにおける義務教育とは何なんだろうか。その辺を文科省としてどう考えておられるのか、御答弁をお願いしたいと思います。

銭谷政府参考人 盲・聾・養護学校における義務教育ということでございますけれども、基本的には、小中学校における教育目標の達成に努めるとともに、児童生徒の障害に基づく種々の困難を改善、克服するために必要な知識、技能、態度、あるいは習慣を養うということになろうかと思っております。

 具体的には、盲・聾・養護学校におきましては、小中学校に準ずる教育を行うとともに、障害に基づく種々の困難を改善、克服するための指導領域、自立活動と呼んでおりますけれども、これを設けて、一人一人の障害の状態等に応じ、特別な配慮のもとに、より手厚くきめ細かな教育を行って、障害のある児童生徒について、自己の持つ能力や可能性を最大限に伸ばしてあげる、そして、自立し社会参加するための基盤としての力を培うということが義務教育段階としては大事なことではないかというふうに思っております。

加藤(勝)分科員 そういたしますと、特に障害のない子供に比べると、非常にばらつきがより大きくなるわけであります。そういう子供さんたちが、義務教育でしっかりとこれからやっていくための能力とか知識を身につけていく。ところが、今実は、小学校は六年間、中学校は三年間、義務教育九年間、こういうふうになっているわけであります。しかし、では六年間ですべてが習得できるのか、その六年間というのはどういう意味があるのか。逆に言うと、今、六年間だから卒業するという、何か時間がたったら卒業するという状況になっているわけであります。

 学校教育法の第二十二条には、保護者の就学させる義務という規定があるわけであります。基本的には、小学校の適齢期の子供は小学校に入れなさいと。しかし、ただし書きがあるわけでありまして、課程を修了しないときは、満十五歳に達する日の属する学年の終わりまでとする、こういうふうな規定になっているわけでありますから、一応少し延ばしていくことができるのではないか。ただ、もっとも、中学校の規定を読むと、小学校を卒業してから十五歳に達する日の属する学年ということでありますから、小学校に十五歳までいると、中学校の、義務ですよ、これは義務ですけれども、発生しなくなってしまう、そんな関係になっているのかなと。

 その辺の整理をしていくことも含めて、私は、まず、少なくとも障害を持っている子供さん方がまさにしっかり身につけていく、あるレベルまでは必ず。もちろん、障害の程度によってそれは違うと思いますけれども、それを身につけていく場合に、六年とか三年とか、そういう期限に必ずしもこだわらないという対応が必要ではないかと思うんですけれども、文科省はいかが考えているんでしょうか。

銭谷政府参考人 ただいま先生から御紹介もございましたけれども、いわゆる親が子供を就学させるという意味での義務というのは満十五歳までということになっておりまして、義務教育の修業年限全体としても九年間ということになっているわけでございます。このことは、盲学校、聾学校、養護学校にも小中学校のこの規定が準用されているわけでございます。

 ただいま先生からもお話がございましたけれども、各学年の修了あるいは卒業の認定は、児童生徒の平素の成績を評価して行うということではあるのでございますけれども、一般的には、我が国においては年齢主義に重きを置いた運用がなされておりまして、特別の事情がない限り卒業の認定がなされているというのが実情かと存じます。

 もう少しいろいろな自立活動の支援などをしたらもっと自立が図られるとか、いろいろなことで修業年限の延長の問題ということは、一つの考え方として私どももよくわかるわけでございますけれども、年限延長に係る教育内容をどういうふうに設定するか、延長するとした場合、どの程度の年限とするか、対象者をどうするか、財政負担をどうするか、いろいろ種々検討する課題があるのかなという感じも持っております。

加藤(勝)分科員 この問題は、障害児者ということだけではなくて、一般の障害のない子供さん方にも当てはまる、ある意味では義務教育のそもそも論にもつながっていく問題だと私は思いますけれども、その一歩という意味も含めて、さらにこの点をしっかりと御検討いただきたいというふうに思います。

 また、小中学校云々じゃなくて、障害のある子供さんを持つ親御さんといろいろお話をすると、やはり学校を卒業してから心配だと。要するに、今、中等部に行って高等部に行って、その先の専攻という、高等部専攻科というんですか、そういうものが、私立しかないんですが、全国で七校しかないんですね、岡山にももちろんありませんけれども。ぜひ専攻科をつくってくれという意見、要望も非常に強いのでありますけれども、それに対して文科省はいかが考えておられるのか。

銭谷政府参考人 高等部の専攻科は、高等部の本科の卒業生を対象として、精深な程度において、特別の事項を教授し、その研究を指導することを目的として設置されるものでございます。

 現在、盲学校と聾学校につきましては、公的な資格の取得や高度の専門的な職業能力を習得するための専攻科での教育が行われている状況でございますが、知的障害の養護学校高等部本科においては、状況はただいま先生からお話のあったような状況でございます。専攻科が、公立の場合は余り設けられていないという状況でございます。

 今後、障害のある生徒の職業的な自立を促進するために、高等部本科の生徒の実態、卒業後の進路状況等を踏まえながら、この専攻科の問題も学校の設置者において適切に検討されるべき課題ではあるというふうに認識をいたしております。

加藤(勝)分科員 今回、先ほども申し上げました学校教育法の一部を改正する法律案を提出されまして、特別支援教育の推進を図っていくということでございます。そういう意味で、いわゆる先ほどの義務教育の議論も含めて、この障害児者教育に対する大臣の意気込みをひとつお示しいただきたいと思います。

小坂国務大臣 加藤委員におかれましては、特別支援教育に温かい理解と、親御さんたちの意見を聞いてこういう御質問をしていただくなど、大変に配慮をいただいておることに敬意と感謝を申し上げたいと思うわけでございます。

 現在検討しております学校教育法の改正は、障害種別の、いわゆる盲学校、聾学校、養護学校の制度を弾力化して、複数の障害を対象とした教育を行うことができる特別支援学校ということを柱といたしておりまして、一部に、この統合的な特別支援学校というものが効率化、合理化を目指したものではないかという意見を述べられる方がいますが、私どもは、あくまでも、そうではなくて、従来からの枠組みと同様に、特別の障害をお持ちになっているそれぞれの学校の特色を基本的には維持しながら、複数の障害をお持ちの児童生徒の皆さんに対しての適切な教育を行うことを理念としているわけでございます。

 そういった意味で、障害のあるお子さんについては幼児期から就労に至るまで一貫した支援体制の充実を図ること、それから、障害のある子供の教育に当たる教員の専門性の向上のための講習を実施して、そして地域の実情や障害のある児童生徒一人一人のニーズに応じた多様な教育を実施することを進めていくことを今後とも考えてまいりたい、このように考えて、決意とさせていただきたいと思います。

加藤(勝)分科員 ぜひそういう方向で取り組んでいただきたいというふうに思います。

 最後に、施設整備の関係なんですが、耐震、対アスベストの関係で、もう時間がないので余り個々に申し上げませんけれども、先般の使用実績調査結果、去年の十一月十五日の段階で、まだ調査完了率八二・九%、石綿等の粉じんの飛散により暴露等のおそれのある部屋を有する学校三百三校というようなことも指摘をされているわけであります。

 一方で、耐震状況、昨年の四月の段階で、公立小中学校施設においての耐震診断未実施約三割、それから耐震性がない建物で未改修のもの、これが全体に占める割合が二割、全体でいえば五割近いものが耐震性があるかないかわからない、あるいは耐震性がない。こういう状況になっている中で、平成十七年度補正予算では約六百、五百八十八億、これはアスベストと耐震化対策、平成十八年度予算案では、今回は、安全・安心な学校づくり交付金を創設するとしながら予算を確保していただいておりますが、この十七年補正と十八年を通じてアスベスト対策あるいは耐震化対策はどこまで進むのか、その見通しをお示しいただきたいと思います。

大島政府参考人 では、お答え申し上げます。

 先生御指摘のように、耐震化、それからアスベスト対策、まさに喫緊の課題でございまして、文科省としても鋭意取り組んでいるところでございます。

 先生今御指摘ございましたように、平成十七年の補正予算、それから十八年度予算についても、積極的にその確保に取り組んだところでございます。

 進捗状況でございますが、まずアスベストについて申し上げますと、まず、暴露のおそれのあるもの、これについてはすべてしっかりやる、さらに、それ以外のものについてもできる限り早急に対策を講ずる、こういう姿勢で取り組んでいるところでございます。

 それから、耐震化の方ですが、これは簡単に耐震化の進捗率ということで申し上げますと、平成十七年四月現在で五一・八%の耐震化率、これを十八年度の当初予算まで含めまして全部で五八%まで持ち上げていく、こういうことで取り組んでまいりたい。

 以上でございます。

加藤(勝)分科員 ありがとうございました。

実川主査 これにて加藤勝信君の質疑は終了いたしました。

 次に、中森ふくよ君。

中森分科員 自由民主党の中森ふくよでございます。

 早速でございますが、質問に入らせていただきます。大臣初め文部科学省の皆様には、よろしくお願いを申し上げます。

 申すまでもございませんが、教育は国家の根幹をなすものでございます。小泉総理が米百俵の精神と言われたように、明治以来、食べるものを詰めてでもあすの日本のために教育費を捻出した精神が、この文盲のない、勤勉な国民性をはぐくみ、今の経済発展を支える土壌になったと考えております。

 そこで、中央教育審議会における学習指導要領の見直しに関する審議の状況についてお伺いをさせていただきます。

 まず、改訂に当たりまして、これまで行ってきたことに対する問題点を明らかにし、その上でこれを見直し、新しいプランということになると思うのでございますが、この点いかがでございましょうか、お伺いいたします。

銭谷政府参考人 中央教育審議会の初等中等教育分科会教育課程部会では、昨年の四月から学習指導要領の見直しについて検討を進めてきております。去る二月の十三日に、これまでの審議の状況を取りまとめた審議経過報告を公表したところでございます。

 ただいま先生からお話しございましたように、審議を進めるに当たりましては、まず、現行の学習指導要領のもとでの学校教育の状況と、それをしっかりと分析した上で、何が課題であるのかということを明らかにして審議を進めてきたところでございます。

 具体的には、子供の学力の状況、あるいは学習意欲の問題、子供と子供の心と体の状況、また、社会の各分野からどういう意見、要望が寄せられているのか、あるいは国民の意識の問題、そして、学校や教育行政そのものの教育課程をめぐるあり方の問題といったようなことについて検討を加えてきたところでございます。

 その結果、学力につきましては、読解力の低下、あるいは学習習慣等については、子供の学習や生活について意欲が欠けていたり不十分なところがあるのではないか、あるいは規範意識や体力の低下などの課題が見られるという整理をした上で、今後の見直しの方向性を打ち出していこうとしているものでございます。

中森分科員 ありがとうございます。

 さて、今お答えいただきました十八年の二月十三日の審議経過報告によりますと、教育の目的は、一人一人の人格形成と国家、社会の形成者の育成とし、いつの時代も変わらないものとしております。

 そこで、いわゆるゆとり教育について少々お尋ねさせていただきます。

 ゆとり教育という名前はついておりましたけれども、子供たちにとってみれば、逆に、それぞれの子供たちが塾により多く通うようになり、それが家計を圧迫いたしまして、少子化につながっている一面があるやに思います。このゆとり教育についてはどこに問題があったとお考えになっていらっしゃいますでしょうか。

 その上で、今回の改訂の本質が何であり、何を求めているのかという点についてもお考えをお聞かせいただきたく存じます。

銭谷政府参考人 現行の学習指導要領につきましては、いわゆるゆとり教育というふうに呼ばれているわけでございますけれども、その学習指導要領のねらいとしているところは、基礎的、基本的な知識、技能の確実な定着を図るとともに、みずから学びみずから考えることなど生きる力をはぐくむというところにあるわけでございますが、私は、この教育課程部会の議論を通じまして、この理念は重要だという委員の先生方の共通理解はあるというふうに受けとめております。

 ただ、国際的な学力調査などから、子供の学習習慣や学習意欲の不十分さ、あるいは、本当に学習指導要領のねらっている、みずから考える力とかみずから意欲的に学ぶ力とか、そういうところが実は育っていないんではないかという指摘がございまして、いわば現行学習指導要領の理念を実現するための具体的な手だて、例えば時間数をどうするかとか、あるいは総合的な学習の時間の活動をどういうぐあいに展開するか、そのための支援策をどう講じていくかといったような手だて、手段が十分でないというところが、やはり教育課程部会としては反省点としてあるというような報告をいただいているところでございます。

 そこで、こういった観点から、審議経過報告では、学習指導要領の見直しに当たりましては、すべての教育活動を通じてその基礎となります言葉とか体験というものを重視した学習や生活の基盤づくりが必要であるとした上で、具体的な内容としては、国語や理数教育の充実を図っていく、そして、教育課程をめぐっては、全国的な学力調査の実施など、いわゆるプラン・ドゥー・チェック・アクション、こういうPDCAサイクルによる学校教育の質の保証を重視する必要があるというふうに報告では言っているところでございます。

中森分科員 今、お答えいただきましてありがとうございます。

 実は、ゆとり教育については、これは個人的な見解なんですけれども、大人の立場から常に今までの教育を見てきてはいないだろうか、子供の意見をもう少し政策に反映させる必要があるんではないかという点から、このネーミングからして、大人のゆとりだったのではないかな、そんなふうに、大人の考えた立場ということを払拭したいという思いが実はございました。

 それで、次に、見直しの視点という意味で意見を申し上げさせていただきますけれども、人間力の育成というのが書かれております。第一番目に人間力の育成、そして学校教育の質の保証、こうなっているわけでございますが、それでは、国として一体どういう人間を育てていこうとしているのでしょうか。あるべき日本の子供たちの人間像、それを明確にしておく必要があるのではないかと思うのでございますけれども、御所見をお伺いしたく存じます。

銭谷政府参考人 大変重要な御指摘をいただいたと思っております。今回の教育課程部会の審議経過報告におきましても、「人間力の向上を図る教育内容の改善」と、先ほどちょっと申し上げました「学校教育の質の保証のためのシステムの構築」という観点から指導要領の見直しの方向性が整理されているわけでございます。

 この人間力の向上といった場合に、具体的にではどういう人間像を描くのかということになるわけでございますが、中央教育審議会としては、教育課程部会の審議の前提として、二十一世紀を切り開く心豊かでたくましい日本人を育成するというのをこの教育課程部会としての基本的な立場としているところでございます。

 これはどういうことかと申しますと、中央教育審議会の平成十五年三月二十日の答申というものがございまして、これは「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について」という答申でございますが、その中におきまして、二十一世紀を切り開く心豊かでたくましい日本人の育成ということが掲げられているわけでございます。

 具体的なその中身としては幾つかございまして、長くなって恐縮でございますが、「自己実現を目指す自立した人間」「豊かな心と健やかな体を備えた人間」「「知」の世紀をリードする創造性に富んだ人間」「新しい「公共」を創造し、二十一世紀の国家・社会の形成に主体的に参画する日本人」「日本の伝統・文化を基盤として国際社会を生きる教養ある日本人」、こういったことを総合化して、二十一世紀を切り開く心豊かでたくましい日本人ということを一つの人間像として打ち出しておりますので、そこを踏まえて今教育課程部会では議論をしているということでございます。

中森分科員 今、お話しいただきました。

 次に、義務教育についての角度からちょっとお尋ねをいたします。

 社会の中で自分を見詰め、人と共存して生きていくことのできる人を育てることは学校の大きな役割であります。さて、今いただきましたお話の中で、もう一つ欠くことのできないものがあると考えるわけでございますが、礼節でございます。衣食足りて礼節を知るとも中国で語り継がれ、また、礼節をわきまえるとも言われてまいりました。あいさつもその一部でございますが、審議経過報告にこの礼節の記述はございません。

 社会的責任、秩序ある行動、協調性、判断力を養うといった基礎のそのまた根底に流れるもの、それが礼節ではないかと考えています。だれもが住みやすい社会の構築のため、この礼節を何らかの形で学校教育に取り入れ、身につけることが必要だと思うのでございますが、御所見を伺いたく存じます。

銭谷政府参考人 先生お話しございましたように、礼儀正しく節度を守って行動できるようにするということは大変重要なことだと思います。今、御指摘ございましたが、中教審の先ほど来話題になっております審議経過報告では、確かに礼節という記述はないのでございます。ただ、記述の中に、「人間としての尊厳や健全な倫理観などの道徳性を養い、それを基盤として、主体的に判断し、適切に行動できる人間を育てることが大切である。」という記述がございまして、礼節はその重要な要素の一つだと考えております。

 現実の学校教育では、この礼節の問題については、主として道徳の時間に取り扱うということになっております。例えば、小学校三、四年の道徳の指導内容として、「礼儀の大切さを知り、だれに対しても真心をもって接する。」あるいは五、六年生になりますと、「時と場をわきまえて、礼儀正しく真心をもって接する。」といったぐあいに、礼儀について小学校の道徳の時間で指導するということにはなっております。

 今後とも、節度を守り節制に心がける、あるいは礼儀正しく行動するといった礼節について指導がきちんと行われるようにしていくということは、大変大事なことだと思っております。

中森分科員 ありがとうございます。何とか、この礼節という言葉の記述が一行入るだけでも違ってまいりますので、倫理観とかなんとかという言葉とまた別にお願いできればというふうに、御検討をお願いします。

 次に参ります。

 また、最近、教師の質が大変問題になっております。種々不適切な教師でございますけれども、結果的に学校を異動させるということで対処しておりますが、これは、実は、先ほどちょっと申し上げましたけれども、教える側、大人側の対処でありまして、子供の側から見ますと、学校の異動ということは余り好ましくないのではないか、できれば、学校間の異動ではなく、業種の異動で臨んでほしいと思うわけでございます。

 こうした観点から見てまいりますと、職場体験また就業体験というものは、生徒に限らず、教師にこそ必要ではないか、社会としてどういう教育が望まれているかを教師が知ることではないかと思うのですが、この点、いかがでございましょうか。

銭谷政府参考人 ただいまお話がございましたように、指導力が不足している先生、あるいは不適切な対応が多く見られる先生について、単に学校間の異動ということではなくて、他の職にかえていくといったようなことは必要なことだと思います。

 それで、平成十三年度に法律改正を行いまして、そういう場合に先生を他の職に転任させる道を広げるとともに、各教育委員会において、指導力不足教員の人事管理システムの構築、運用を今推進しているところでございます。そういう方向で今対応しているということがまず第一点でございます。

 それから、二つ目のお話としてございました、先生が異業種の就労体験をしたり広く社会体験を積むということについては、教員としての視野を広げる、あるいは職責の自覚を促すという意味で極めて効果的なものであるというふうに考えております。

 現在、すべての都道府県、政令市、中核市の教育委員会において、先生になったときの初任者研修というものや、十年たったときの経験者研修などの機会を通じて社会体験の研修を実施しているところでございます。

 ただ、これはそう期間が長いことございませんので、長期にわたる社会体験研修ということも実施をしているところでございまして、そういう一カ月以上にわたる長期の社会体験研修に先生が参加する場合には、そのかわりの定数措置なども措置して、学校の運営にも支障がないように配慮したりしながら、長期の社会体験研修を推進しているところでございます。

中森分科員 前向きな御答弁ありがとうございます。

 それでは、次に参ります。

 小泉総理がよく、感動した、こう言われますけれども、この感動こそがやる気教育と思うわけでございます。企業では、このやる気と能力を掛け合わせますと業績につながるということが言われておりまして、倍々の効果を発する、こういうわけでございますが、学校教育につきましても、いかにやる気を持たせるかが重要であり、このためには、感動を与える教育というものが望まれるのではないかと思うのでございます。

 かつて「スクール・ウォーズ」というテレビ番組がございまして、少年の間で大変な人気番組となったことがございます。落ちこぼれと言われ、態度が悪いとレッテルを張られた子供たちにラグビーを教え、ついに日本一の栄冠をかち取るという実話に基づくストーリーでございました。この中で、ラグビーを通して子供たちが希望を持ち、生きる上で大切な自信を取り戻していくというものでございました。子供たちが、いかに師と仰ぐ、また仰げる教師にめぐり会えるか、教育に情熱を持つ教師に接することができたか否かで、青少年期、そしてその後の人生を大きく変えることになると思うのでございます。

 したがって、例えば、野球の王選手のように、現役あるいはOBを問わず、専門職に従事してきた方々をより積極的に教育の場、各学校に招きまして、直接触れ合うことのできる機会を可能な限り多くつくっていただきたいと思うわけでございます。学校がより元気になり、子供たちの歓声が聞こえるようになることが望ましいと思うわけでございますが、こういったことの積み重ねが、荒れている学校、また、いじめの体質などを少しずつ変えていくことになると思うのでございますけれども、大臣の御所見を伺いたいと存じます。

小坂国務大臣 中森委員の御指摘のとおりであります。人に強制されても、子供たちのみならず、我々だってなかなか動きたくない。やはり、自分の中に心を揺り動かすもの、自分から考え、そして学ぶという意欲を持つことが教育では大変重要なことだと思っております。

 教育は、システムと同時に、それを行う教師、人材の質というものが非常に大きな影響を与えますから、おっしゃるとおり、師と仰げる人に人生でめぐり会うことができる人は幸せであります。また、そういった人を多くいろいろな現場で持つことがやはり教育の上で大変重要なことだと思いますから、まずもって教師がそういった資質を持つと同時に、社会の中でそういった感動を与えられるような経験を持っている人、自分で努力をして、そして、今回のトリノ・オリンピックの荒川静香選手のように、もうやめようかなと思ったときもあるけれども、それを克服して、ひたすら自分のスタイル、技術というものを磨いてきた、それが、いざ本番というときに冷静に自分の実力を発揮することができて、みんなが期待した金メダルをとった。きのうちょうど帰国されましたけれども、多くの人々がテレビにかじりつき、また、空港へあるいは沿道に集まって、一目見よう、そして、あこがれを持ってまた子供たちが荒川静香さんのようになりたいと言ってフィギュアを習いたいという子供が急激にふえたといいますし、そういった大きな影響を持つ人たちに学校現場で子供たちに会ってもらって感動を与える、それは大変重要なことだと思います。

 そういう意味で、特別免許状制度や特別非常勤講師制度などを整備してこういった人材を登用するように促しているところであり、また、御指摘のような知識、経験、技能を有する社会人を教育界で話をしていただく機会を多く設けること、こういったことを私どもも推進してまいりたいと考えております。

中森分科員 温かいお言葉、ありがとうございます。

 それでは次に、最近、産官学という言葉をよく聞きますけれども、その取り組みについてお尋ねいたします。

 本来、学業というものは人を育てることが本分であり、世の中に役立つ人を育てるために教育というものがあり、国が予算をつけていると理解しております。

 人口の減少によって私立の学校も経営が一段と厳しい環境になってまいります。そんな中でこの産官学の連携ということでございますが、さて、教育予算から、学校に企業を起こさせ、起こさせた企業に事業支援ということになりますが、そういうことになりますと、学校は教育より商売、事業に重点を置き、本来人を育てるという目的がおざなりにならないかということを心配いたします。枝葉のところで経済と結びついていいとは思っております。しかし、教育という幹の部分では、しっかりと人をつくり、それを守り通していただきたいと考えるわけでございますが、幹の部分に企業の金欲とかそういった金銭的なものが入り込んでまいりますと、本来の目的を失いまして、第二、第三の○○モンが生まれてしまうのではないかという懸念をいたします。つまり、教える側がより企業収益に走ることが懸念され、同時に、日本の教育の根幹が揺らぐことを懸念いたします。

 この点について、教育を担当する大臣の御所見を承りたく存じます。

小坂国務大臣 委員御指摘のとおり、産学官の連携を進めることは、教育現場の教育研究の活性化を図る上で大変有効な手段だと思うわけでございます。また、これらの活動を通じて収益を得ることは学校の経営基盤の強化充実に資するものと思うわけでございますが、私立学校法の第二十六条に、「学校法人は、その設置する私立学校の教育に支障のない限り、その収益を私立学校の経営に充てるため、収益を目的とする事業を行うことができる。」としておりまして、本末転倒ということにならない範囲という一つの制約があるわけですね。

 今御指摘をいただきましたように、本来の教育研究活動がおろそかにならない範囲内というその制約の中で事業を進めるように、文部科学省では、収益事業が適正に実施されるよう必要な指導を行っているところでありまして、今後とも、学校における教育研究活動のより一層の充実が図られるように支援、指導を行ってまいりたいと存じます。

中森分科員 ありがとうございました。何とも教育がすべてと思っておりますので、何とかそこのところをよろしくお願い申し上げます。

 これはちょっと通告しておりませんでしたので、お答えにならないところは結構でございますが、今、この産官学に連携いたしまして、例えば、文部省の方でおつくりいただいた奨学金制度というのがございます。奨学金は、利息はつきませんけれども、必ず回収をしているわけでございますね。

 実は、TLOという新しい産官学の方式では、文部科学省とそして経済産業省の連携でございますが、三分の二まで補助金を出すという形になるわけでございます。学業に侵食しない限り、もちろん事業をやっていいわけでございますけれども、特許申請というところがございまして、どうしてもその部分が宙に浮きまして、納税という、税金とは全く関係ない収益と、そして権利という部分が発生してまいります。

 そんな中で、奨学金制度と違って、全く見返りというか、出した国の資金にそぐう収益をちゃんと国で回収するのならよろしいんですが、出しっ放しということになりますと、人材を育てるという意味で、子供たちの経営感覚と申しますか、事業に対する収益感覚と申しますか、払うものは払い、商売するものはするという正規な教育が育たないのではないかというような懸念もあるわけでございますが、そこら辺のところをもしお答えいただければ、ありがたいと思うんです。

金森政府参考人 お答え申し上げます。

 突然のお尋ねでございますので、具体的な問題点などについて詳細に把握しているわけではございませんけれども、御指摘のございました点につきましては、どういうところに気をつけて教育活動を進めていかなければいけないのかという一つの御示唆だと考えます。具体的なケースに即して、適切に対応してまいりたいと存じます。

中森分科員 それではこれで、前向きな御答弁をたくさんいただきました。ありがとうございます。また、どうか文部科学省として、日本を託す未来の子供たちのため、教育という本来の目的をしっかり押さえてお取り組みいただきますようにお願いを申し上げて、質問を終わらせていただきます。

 本日はありがとうございました。

実川主査 これにて中森ふくよ君の質疑は終了いたしました。

 次に、武藤容治君。

武藤分科員 おはようございます。

 本日は、第四分科会、このような文科省の質問をさせていただく機会を賜りましたこと、本当に光栄でございまして、ありがとうございます。心から感謝申し上げます。また、大臣には、本当に日々、大変御苦労さまでございまして、真摯に教育に対して思いを毎日かけていらっしゃるお姿を見て、大変感銘しておりますので、またよろしくお願いを申し上げます。

 きょうも分科会でいろいろ、各先生方から教育についてのお話があろうかというふうに思っておりました。私も大変教育熱心ではございますけれども、せっかくお時間を賜りましたものですから、二月、立て続けに打ち上げに成功いたしましたH2Aロケット、衛星も順調に軌道に乗っておりますものですから、大変子供たちに夢を与え、また、私ども大人にも、大変日本の力強さを感じさせた。また、世界的にも、やはり日本の技術の底力を感じさせたというふうに判断しております。

 十八年度予算も若干増額になったというふうに伺っておりますけれども、この辺の、過去の経緯も踏まえて、これからの宇宙開発の所見についての御感想をいただければと思います。

森口政府参考人 先生御質問の平成十八年度予算について、内容を簡単に御説明申し上げます。

 平成十八年度の文部科学省の宇宙関連予算でございますけれども、今先生お話ございましたように、七年ぶりに対前年度増となっておりまして、総額千八百三億円を予算案に計上してございます。

 主な内容といたしましては、国家基幹技術の着実な推進ということで七百一億円を計上してございます。そのうち主なものとしては、いわゆるロケット等の宇宙輸送システム、これに四百九十二億円、それから、衛星を用いて地球観測等を行います統合地球観測・監視システム、これに関係するものが二百八億円でございます。

 それから、ロケット、やはり衛星につきましても信頼性の向上、これを不断に、絶えることなくやる必要がございます。そういう信頼性向上への取り組み、これが百四億円でございます。

 それから、今回の三機立て続けの成功の中にも入ってございましたが、いわゆる宇宙科学研究の推進、こういったものにつきましても二百六十億円の計上をしてございます。また、世界が協力してやっております国際宇宙ステーション、こういった計画の推進にも二百九十億円を計上してございます。

 こういう予算の中で、宇宙開発について文部科学省としてもしっかり取り組んでいきたい、そういうふうに思ってございます。

武藤分科員 大変前向きな予算を十八年度、組んでいただきまして、本当に大変ありがたいというふうに思っております。

 ただ、世界的に様子を見ておりますと、各国がそれぞれ国家戦略を持って今宇宙開発に取り組んでいるのは、御承知のとおりだというふうに思っております。特に中国は、資源外交の手段といたしまして宇宙開発を利用して、バングラデシュにいろいろなデータを供与したりということを今されております。去る二月九日ですが、今後十五年間の国家科学技術発展計画を発表されました。産学官合わせて、研究開発費がGDPに占める割合を現在の約二倍、二・五%以上に高めて、最終年度、二〇二〇年度までに、年に約十三兆円にするという発表をいたしました。その中でも、宇宙に対しての開発ということは中国は大変積極的にやってきているというふうに思っております。

 そういう意味では、今まで日本は、大変少ない打ち上げのロケットの数の中でも予算については有効的に、今まで十分技術開発をされて、実証性を高めてこられたというふうに思っておりますけれども、全体的な、やはり諸外国の科学技術振興を今それぞれ、米国もロシアもいろいろ含めて開発をされる中で、開発のおくれをとってはいけないというふうに思いますけれども、その辺については御所見はいかがでしょうか。

小坂国務大臣 御指摘のように、諸外国の状況というのを常に見ながら、我が国の国家戦略としての宇宙開発利用というものを促進していかなきゃいけないと考えているところでございます。

 国家の総合的な安全保障に密接なかかわりを持っております、我が国の持続的発展の基盤をなす基幹技術であるという認識を持っておりますので、そういった意味から、諸外国におくれをとってはならない、そういう意味で取り組んでいく重要な分野だ、こう思っているわけでございますが、平成十八年には、ロケットの打ち上げを一カ月に連続三機、ここのところ成功させていただきました。商業的なレベルに近づいて、信頼性が非常に向上したということを内外に印象づけていると思うわけでございまして、そういった意味で、我が国の着実な取り組みが実を結びつつあるという認識を持っております。

 今後とも、信頼性の一層の向上を図りながら、社会のニーズを踏まえた衛星を開発していくことなどによって、国民の期待に着実にこたえてまいりたい、このように考えております。

武藤分科員 大変心強い御見識を賜りまして、ありがとうございます。私も全く同感でございまして、安全性、安全保障というお話もございましたけれども、本当に日本の基盤でございますので、ぜひ継続してお願いしたいと思います。

 その中でも、日本は、APRSAFという世界的な協定を一部アジアの方で結んでいるというふうに伺っております。また、それに対しまして中国がAPSCOという協定を結ばれたというふうに聞いていますけれども、この辺についての御見識も教えていただければと思います。

森口政府参考人 今御指摘のございました件でございますけれども、我々といたしましては、アジア太平洋地域におきまして我が国が主導的な立場で宇宙国際協力の発展を図る、こういうことで、これまでAPRSAF、今お話ございましたアジア太平洋地域宇宙会議、こういうものを我が国が主導的に開催をしております。その中で、具体的な協力プロジェクト、こういうものを進めようということでやってきたわけでございます。

 今お話ございましたように、中国を中心にAPSCO、アジア太平洋宇宙協力機構というものが最近発足するという状況もございますが、我々としては、今申し上げましたように、具体的なプロジェクトを提案して、それでまず進めていこうということを考えております。具体的には、昨年十月にAPRSAFの会議におきまして、アジア太平洋地域における防災危機管理システムの構築、これは、津波でございますとかいろいろな災害がございます。こういったものを宇宙から監視していく、そのデータも提供していこう、こういうことで、十四の国と四つの国際機関が参加した共同プロジェクトを発足したところでございます。

 こういうことを通じまして、実績を確実に上げながら、我が国が引き続き主導的な役割を果たすということで、今後とも必要な取り組みを行ってまいりたい、そのように思っているところでございます。

武藤分科員 また心強いお話をいただきましたけれども、大体、横やりが入るとかっぱらわれるというのが国際的なお話でございまして、その辺は目じゃないよというのが文科省さんの御見識でよろしいでしょうか。ちょっと一回確認で。

森口政府参考人 我々としては、今申し上げましたように、関係各国と連携をしながら、具体的な成果が出るようなプロジェクトをしっかりとやっていくということで考えてございます。

武藤分科員 ありがとうございます。

 一部、APSCOの話は、中国の国家戦略の中のロケットに対する開発の形というのが、ある程度実用的なロケットに近いものというふうに承っておりまして、またコストも安く、そういうようなことで、日本の場合はいろいろな制約がまだございますので、その辺については多少支障があるかなというふうに思いますが、余り心配しなくてもよろしいでしょうか。

森口政府参考人 今先生お尋ねのロケットということで申し上げますと、我が国の基幹ロケットでありますH2Aでございますけれども、これは欧米諸国とほぼ同等のいわゆる価格で打ち上げられる、そういうことでございます。もちろん、中国のロケットというのは、古い技術を使ったものでございまして、また人件費等もあって、打ち上げコストは正直なところ安いわけでございますけれども、我々としては、我が国のロケットは十分基幹ロケットとして成り立つものであると思っております。

 繰り返しになりますけれども、そういうもの、それから、せんだって上げました地球観測衛星「だいち」、こういったもののデータを関係国にも提供しながら連携を深めていくということが我が国としての戦略というふうに考えてございます。

武藤分科員 ありがとうございました。

 しつこいようでございましたので、ここで、その辺についてはもうお話をさせていただきません。ありがとうございました。

 ただ、宇宙利用の一般的な利用というのは、非常にこれから成長が見込めるというふうに認識しております。通信の関係も含め、あるいはカーナビゲーション、GPSの関係、またリモートセンシングとか、いろいろとこれからも、検討されていると思いますけれども、大体市場規模はどのぐらいだというふうに見込まれていらっしゃるか、わかりますでしょうか。わかりませんですか。

森口政府参考人 具体的な数字を用意してございませんが、おおむね一兆円ぐらいというふうに考えてございます。

武藤分科員 済みません、突然の質問で申しわけなかったです。今現在おおむね一兆円ということですけれども、大変まだまだこれから伸びる、非常にまだ伸びがあるということですので、そういう意味でも、やはり国際協力の問題でも、ロケットの開発、衛星の開発については、ぜひよろしくお願いしたいなというふうに思います。

 ちょっと話が変わるわけですけれども、そういう中で発展をする中でも、やはり足かせとなっている部分があろうかというふうに思います。今まで、いわゆる科学技術開発というところに重点を置いてまいりましたけれども、これは私の所見でございますが、産業力の発展、それから安全保障、先ほど大臣もおっしゃっていただきましたけれども、その辺の三本を軸にした新しい日本の、やはり国の戦略としてのあり方というのがこれから必要になろうかというふうに思っております。これについては、いわゆる国会決議の平和利用の問題について出てくると思いますけれども、これはいろいろと今国会でも、また我々議員の中でも一生懸命また考えていかなきゃいけない部分だというふうに思っております。

 ただ、いろいろと話を伺っておりますと、いわゆる産学官の話もさっきございましたけれども、宇宙開発部門についてもこれがあるかなしかはちょっとわかりませんが、海外留学生が日本に来られて、大学で研究をされ、その中で地元へ帰られて、いわゆる日本で蓄積された研究の成果というものを、これが中国につながっているかどうかはわかりませんけれども、地元へ帰って寄与されるということがあると思います。その辺についてはどういう認識でございましょうか。

森口政府参考人 宇宙開発の分野におきまして、諸外国との間で研究者あるいは技術者の人事交流、これはかなり行われているところでございます。

 今、先生御指摘のございましたロケット技術等の宇宙開発でございますが、機微な情報、こういったものに関しまして、特にそれを有しております宇宙航空研究開発機構、JAXAでございますが、そこにおきましては、留学生等の外部の者がこうした機密情報に容易にアクセスできないように、こういう措置を講じているところでございます。いずれにしましても、情報の保全に十分慎重に配慮してまいりたい、そのように思ってございます。

武藤分科員 ということは、情報の流出はもちろんなんですけれども、例えば、日本へ来て研究をされて帰るということについては、一応管理はされている、両国間の問題ということで了解がとれているという話でよろしいですね。

森口政府参考人 今申し上げましたように、まず機微技術にアクセスできないようにするということで、具体的に、宇宙ですと宇宙航空研究開発機構がそういう機微な情報を持っておりますので、アクセスをできないということで措置をとってございます。具体的にそれが海外に、自分の国なりに戻ってどう対応するかということにつきましては、これは具体的なかなりいろいろな難しい問題もあろうかと思いますけれども、この辺につきましては、外務省とか経済産業省等の関係省庁とも連携をしながら検討していく課題だと思っておりますが、とりあえず、まずそういう機微情報にアクセスできないようにする、そういうことで今は対応しているという状況でございます。

武藤分科員 ちょっと問題の観点を変えますけれども、では、留学生の問題にちょっと入らせていただきます。

 五十八年から十万人計画ということで留学生をふやしていこうということで、これも日本の国際的な協調の中での計画だったというふうに思いますが、十七年に十二万人を達成して、計画は一応予定どおり達成された。

 私も今まで民間人でございましたので、バブル後期のときには海外から見て大変日本の人気がなくなった、なかなか留学生も来なくなったということはもう前々からよくわかっておりましたけれども、最近の伸びが多分おありになるということですので、そういう意味では高い評価をまた各国から、特に東南アジアの方からは新しく得ているのかなというふうに思いますけれども、そういう認識については間違いないでしょうか。ちょっと確認の意味でお願いいたします。

小坂国務大臣 海外留学生交流というものは、諸外国との友好関係の構築や人材養成への貢献、そしてまた大学の国際化の進展、そういったものに寄与するということから、重要な役割を果たしているわけでございます。

 日本の留学生の生活が、非常に物価が高くて困難であるとか、あるいは周囲の環境が協力的でないとか、いろいろな批判もされたことはございましたけれども、最近大分改善をされてまいりました。

 また、予算面におきまして、今後、留学生の質の確保、それから受け入れ体制の整備の充実を図り、相互交流を重視した日本人学生の海外留学支援の充実も図ること、こういったものを総合的に考えながら、平成十八年度の予算案におきまして、留学生の受け入れ体制の整備のために、国費留学生受け入れの充実ということで百人増の一万一千七百八十三人、また、私費外国人留学生に対する学習奨励費の充実という点で一万二千人ということで、これも百人増でございます。さらに、授業料減免学校法人に対する援助、それの充実ということで三十三億三千六百万、これも一千万ふえておるわけでございますが、こういった増強を図りながら留学生の受け入れの充実に努めているところでございます。

 また、日本人学生の海外留学支援という点におきましても、長期海外留学生の支援として百二十人の派遣枠、十三人減という、数としてはそんなに大きくありませんが、また、短期留学推進制度として六百六十五人の派遣、これは対前年同人数でございますが、こういった事業の推進を図っているところでございまして、今後とも留学生交流の一層の推進のための関係予算の充実、そして受け入れ体制の充実に努めていくということで、方向性としてはふやす方向で努力をしているということでございます。

武藤分科員 ありがとうございます。

 その中で、一部、国費の基準というのがあると思いますけれども、この基準についてちょっと教えていただけますでしょうか。

石川政府参考人 国費留学生についての基準といいますか、取り扱いについてのお尋ねでございます。

 国費留学生につきましては、平成十七年の五月現在、我が国の大学で学んでいる方の数は約一万人、細かく申し上げますと九千八百九十一人ということでございます。

 国費留学生の選考につきましては三通りございまして、在外公館を通じて募集を行います大使館推薦、それから大学間交流協定等に基づきまして、外国の大学の学生を受け入れる我が国の大学が推薦をするという大学推薦の形、そして、既に私費留学生として我が国においでになっている方々から優秀な方をまた選んでいくという国内採用、三つの形態があるわけでございます。

 そしてまた、国費留学生の方々に対しましては、学部レベル、学部生につきましては月額十三万五千円、大学院生につきましては月額十七万五千円の奨学金を支給するほか、授業料等の教育費負担や、渡日あるいは帰国にかかる往復航空券を発給するなど、我が国での生活に支障なく勉学に専念できるような必要十分な支援を行っているところでございます。

武藤分科員 ありがとうございます。私もなってみたいなと思うぐらいの金額ですけれども。

 ちょっと中国と韓国に集中しているようなんですけれども、今の国費基準とのデータは私も持っていないんですけれども、その辺の何か相関関係的なデータというのはありますか。一応、留学生的に中国、韓国が多いようですけれども、それと国費との関係というのが、もしわかれば。

石川政府参考人 私費等も全部交えましてシェアを見てみますと、中国、韓国そして台湾を合わせて八割を超えるというぐらいの状況でございますけれども、国費留学生につきましては、その趣旨等にかんがみまして、さまざまな国からお呼びをするというようなこととしておりまして、特別に中国だけを手厚くということにはしておりませんが、中国の割合が中でも高いことは事実でございます。

武藤分科員 全体的に多いので、その分の割合がシェアからすると大きくなるということですね。わかりました。

 先ほど大臣から細かいデータもいただきまして、大変そういう意味で、国際交流の中で留学生の交換というのは進めなきゃいけないというふうに思いますが、いろいろとお話を伺っておりますと、海外から来られる留学生の中には残留もおられるというふうに、最近ふえているということもございます。また、実際悲惨な事件も起きておりますし、ある意味で、その辺の審査等については、しっかりと守っていただきたいと思います。

 日本から出る留学生、海外から来る留学生、内容をちょっと見ると、卑近な例でございますけれども、若干日本の留学生の方がかわいそうな仕打ちを、仕打ちというんじゃないですね、支援の内容かなというふうに思うようなところもあります。国際交流という意味でいえば仕方がないところもあるかもしれませんけれども、日本から外へ出る子もやはりそれなりに大変苦労して出ているというふうに思っております。また、今既に海外にいて、ずっと長い間苦労しながら学位を取っている人たちも多いというふうにも思いますので、その辺については若干厚くこれから考えていただけたらなという思いがありますけれども、その辺はいかがですか。

石川政府参考人 先生御指摘のとおり、留学生交流といったようなことを考えますときには、受け入れもさることながら、派遣といいますか、日本人の学生さん方が外に出ていく、こういった点も大変重要でございます。

 そんなことから、私ども、日本から海外へ留学をする方々につきましても、その支援は充実を図っているところでございまして、例えば、国の方では長期あるいは短期の留学の支援制度を設けておりますし、それから日本学生支援機構の有利子奨学金の貸与制度によりまして、そういった海外留学のための支援の充実、資金の支援、こういったことも今積極的に行っているところでございまして、これらにつきましては今後とも充実を目指してまいりたい、このように考えております。

武藤分科員 今の奨学金の貸与制度ですけれども、たしか今まで十七億のものがことし三十四億になろうかというふうにデータをもらっておりますけれども、何か特筆的な思い込みのものはあるんでしょうか。その辺を教えていただければと思います。

石川政府参考人 日本学生支援機構が日本人学生の海外派遣に際して奨学金の貸与をしてございます。

 ちょっと手元に今先生がお尋ねになりました総額についてのデータはございませんですが、貸与人数といたしましては三千百三十二人分を用意してございまして、大学レベルでは三万円から十万円の範囲内で選択できることにしておりますし、また大学院レベルでは五万円から十三万円の範囲で選べるということにしております。そしてまた、海外に行く際の一時金、これは三十万円でございますけれども、こういったことにつきましても貸し付けができるというような手だてを講じているところでございます。

武藤分科員 いや、きのうの自民党の部会でたしか資料がございましたので、千七百三十二名増員ということで本年度については支援を考えられているそうですので、金額的には約倍額になっております。状況に何かありましたら、また教えていただければと思います。そういう意味で、国際交流をぜひ進めていこうと考えていただければと思います。

 余り大きなことばかり言ってもあれですので、ちょっと地元の話をさせていただきます。

 文化財の件で、いろいろ地域のまちづくりを各地区それぞれやっていらっしゃるというふうに思っております。私の地元の各務原というところでも、村国神社がございまして、これは明治からの建物でございますけれども、やはりその修復に非常に手間をかけて今やっておりまして、文化庁さんにも過去いろいろとお世話になっているというふうに伺っておりますが、今はそこで子供たちが歌舞伎をやっておりまして、これが非常に地域でもやはり地元の住民に親しまれ、地域から拡大をしていろいろな人がまた見に来られるというようなことで、昭和三十年ぐらいからやっているそうですけれども、大変そういう意味ではいいまちづくりをやっております。

 こんなのが、私の選挙区でも八市ありますけれども、いろいろなところでそれぞれ違った形での取り組み方をされておりますが、地域の文化財ということについて、いろいろとやはり文化庁さんの方でお考えになっているようですけれども、地域のまちづくりと連携した中での制度づくりというのは何か考えられているんでしょうか。ちょっとお教えいただければと思います。

小坂国務大臣 今御指摘のように、地域文化の総和が我が国の文化を形成しているわけでございますから、それぞれの地域に伝わっている文化の維持、保存ということは日本の活力につながってまいります。地域文化が衰退をした、あるときそれを再興しようとする活動が地域の再活性化に大きな役割を果たしたという事例は、各所にあると思うんですね。

 今御指摘なさいました岐阜県の場合の各務原の子供歌舞伎は、私も写真をちょっと今手元で見ておったんですが、大変にすばらしい伝統の文化であろうと思います。こういったものを推進するためには、子供たちにそれに取り組んでもらうことが必要であります。興味を持ってくれた子供たちが取り組もうとしたときに、それを推進するために何らか国としても施策を持っているべきだと思います。

 そういった意味で、今一つありますのは、伝統文化こども教室というものがございます。これは文化庁が主管をいたしておりまして、全国で平成十七年度に二千二百五十カ所というものを目途に実施しておりましたが、平成十八年度では二千六百カ所に拡大をしたい、若干でありますけれども拡大をしていく。

 これは財団法人伝統文化活性化国民協会というところに委嘱をしております、そういう事業でございます。地域の実情に応じて各種の伝統文化活動を支援していく。この実施の会場は、学校であったり、公民館であったり、文化会館あるいは体育館等であったりするわけでありますけれども、こういったものに対して、その内容を審査させていただいて、選考して適用する、こういう形でやっておるわけでございます。

 また、これはもっと大きな形でいいますと、民俗芸能文化、そのうち特に重要なものについては重要無形民俗文化財として指定をいたしまして、これらの保護団体に対して、伝承者の養成、現地公開、あるいは記録作成等の支援を行っているところでございまして、平成十八年度で一億二千百万の予算を計上いたしております。

 このほか、ふるさと文化再興事業というものを実施いたしておりまして、これは地域において守り伝えられるべき伝統文化の保護団体が実施する事業に対する支援を行っておりまして、七億二千万の予算を十八年度に計上しておるところでございます。

 今後とも、このような事業の実施等を通じまして、地域における伝統文化の保存活用と次世代への継承支援というものを行ってまいりたいと存じます。

武藤分科員 地域のまちづくりに対して文科省さんからも大変厚い御支援を賜って、子供たちがそういう形で、連携、地域の取り組みの中で非常にいい意味での、これからの教育の中で非常に大事な局面を持つかというふうに思っております。そういう意味で、各地域とも、それぞれがそういう形の御支援を受けながら、地域のまちづくりを経由して、伝統を経由しながら本当にはぐくんでいって、すばらしい子供たちに育つということを心から念じております。

 きょうは、いろいろな角度から御質問させていただいて、本当にありがとうございます。今後ともひとつお元気で、精力的に日本の教育に対して御邁進されることを心から祈念して、質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

実川主査 これにて武藤容治君の質疑は終了いたしました。

 次に、高木美智代君。

高木(美)分科員 公明党の高木美智代でございます。

 本日、私は、二点、学校の飼育動物への支援、そしてまたもう一つは、障害者自立支援法が制定をされまして、これから今国会で特別支援教育につきましても文科省から法案が提出されると伺っておりまして、障害者の視点から見た教育につきましてお伺いをさせていただきたいと思います。

 まず一点目の、学校の飼育動物への支援でございますが、昨年六月、議員立法で改正動物愛護管理法が成立をいたしました。この法の第三条に、「国及び地方公共団体は、動物の愛護と適正な飼養に関し、前条の趣旨にのつとり、相互に連携を図りつつ、学校、地域、家庭等における教育活動、広報活動等を通じて普及啓発を図るように努めなければならない。」と盛り込まれております。ここにありますとおり、学校教育における役割は大変大きいと思っております。

 心の健康教育であるとか、また、生きる力をはぐくむ教育の観点からも、なかなか、今、子供たちが人の生死というのを目の当たりにするということは、核家族化でございますので、この点はもう以前から論議のあるところでございますが、そうした機会に恵まれていないという状況もございます。身近な動物を通して命のとうとさを知っていくという、こうした、バーチャルではなくて、まさに実感のある教育が必要であると思っております。

 ただ、学校の飼育動物につきましては、学校により差があること、そしてまた、例えば鳥インフルエンザとかそうしたことが発生した場合、適正な対応が求められるという大変多角的な内容もございます。ここにつきまして、例えば学校獣医師を配置整備していただきまして、こうしたことを地域のボランティアも巻き込んで推進していただけるようなお考えがあられるのかどうか。

 まず、教育の観点の重要さ、そしてまた、それに伴います学校獣医師の配置整備、この点につきましてお考えをお伺いしたいと思います。

馳副大臣 実は、もともとは、動物の管理に関する法律、動管法と言われておりまして、それを、これはそもそも愛護という観点から改正すべきではないかということで、多分二〇〇〇年だったと思いますが、改正したときの、私、党でチームのメンバーをしておりましたので答えさせていただきます。

 とりわけ今回の改正でも重要な観点であります、学校における飼養動物、これは教育の観点から極めて重要である、しっかりと、動物愛護指導員も活用して指導していくべきである、教育のプログラムとしても重要であるということは十分に認識しておりますし、平成十五年に、全国の国公私立の全幼稚園、小学校等に対し教師用の手引を配付するなどして、望ましい動物飼育のあり方について周知してきたところでもございますけれども、今後とも、子供の豊かな心を養うという観点からも重要な観点として考えておりますので、先生の方からまた御指摘いただきたいと思います。

高木(美)分科員 それでは、重ねてお伺いしたいのですが、どうしましても、いろいろな、校長であるとか副校長の方たちの対応によりまして、鳥インフルエンザ等が発生しますと一斉に鳥を殺してしまったとか、そうした痛ましい事件も伝えられております。そうした間違った認識を防ぐ意味からも、学校獣医師の配置整備については必要ではないかと考えます。

 こうした学校獣医師の方たちが委託をされ、そして、動物の健康状態のチェックであるとか、また、年二、三回、子供たちに、動物と命というような観点から講義をしていただくとか、そのようなこともまた考えられると思います。ただ、そのときに、やはり委託契約がないと入りにくいというお話もございます。委託料も恐らく必要最低限で私はいいのではないかと個人的に考えております。

 また、重ねまして、そうした認識を変えていく意味からも、先ほど馳副大臣から、教師用の手引もつくっているというお話ございましたけれども、なかなかそのことが現場に徹底されていないという認識も漏れ伺っております。

 したがいまして、校長、副校長の研修であるとか新任教員の研修の中に学校飼養動物を入れていってはいかがかと思いますけれども、この点につきまして重ねてお伺いさせていただきます。

銭谷政府参考人 学校において動物を飼育するに当たりまして、保健衛生上の課題への対応とか適切な飼育方法の指導などのために、専門家である獣医師等と十分な連携協力を図るということが大切だと思っております。先ほど馳副大臣からお話のございました教師用の手引の中でも、学校と獣医師等との日ごろからの緊密な連携について記載をしているところでございます。

 また、このような中で、より充実した指導が可能となりますように、学校において動物を飼育するに当たって、教育委員会と獣医師会との間で委託契約等を結んで、獣医師と連携協力している地域もあると承知いたしております。私どもとしては、こういった事例を情報提供するなどして、それぞれの地域において学校と獣医師の緊密な連携が進むようにしていきたいというふうに考えております。

 それから、二つ目のお尋ねでございますけれども、校長先生等への飼養動物に対する知識を高めるための研修ということは、これも必要なことだと思っております。都道府県の教育委員会等におきまして、必要に応じて動物飼育に関する教員の研修会を開催して、そこで獣医師による飼育方法に関する演習、講習などを行っているということもございます。

 私どもといたしましては、こういった動物飼育に関する研修や講習会などを通じまして、自然や動物との接し方や生命の尊重に関する教職員、校長の資質、能力の向上が図られるように努めてまいりたいと思っております。

高木(美)分科員 先ほど鳥インフルエンザの例を申し上げました。先般も、ハトが大量に繁殖したからということで、捕獲して小さなところに閉じ込めてそれを捨てた、中には生きていたハトもいたようだという話もあります。扱い方によりましては、かえって子供たちに、そのようにしていいのだという間違った認識を与えかねないということも懸念されます。

 したがいまして、今局長からお話ございましたとおり、ぜひとも動物につきましては、これから少子高齢社会を迎え、ペットもますますふえていく、そしてまた、終生飼養ではなくて、途中でどうしても遺棄してしまう、もう面倒を見切れないから捨ててしまう。そうした子供たちのモラル、大人のモラル、この入り口がやはり学校教育という大事なところと思っておりますので、学校の中だけを視野に置かれるのではなくて、その先の、命を尊重する我が国をつくるのだ、こうした理念をぜひ堅持していただきまして、さらに取り組みをお願いしたいと思います。

 次の質問に移らせていただきます。

 障害者自立支援法が制定をされまして、本年十月からの段階的な施行に向けまして今準備が行われているところでございます。そして一方、今国会で、文科省から、特別支援教育につきましても法案が提出されると伺っております。

 私は、これはよく御家庭の方たちから言われることですけれども、例えば、御両親が、赤ちゃんが生まれ、障害児という宣告を受けてから、そこからどのように受容していくか。その事実を受けとめて、その子供と一緒に生きていこうという決意を固められ、そしてそれを地域で支援し、ここは厚労省の世界であると思っております、その先の、今度は就労、自立に至るまでの一貫した支援というものがどうしても必要なのではないかと思います。

 今回、特別支援教育の意義につきまして、特別支援学校、これは仮称と伺っております、そのセンター機能について、小中学校等の教員への支援につきまして、障害のある児童生徒に対する個別の指導内容、方法について助言を行う。そういう特別支援学校がセンターとなって、そこから小中学校に対して、個別に児童生徒に対してどのような指導助言を行えばいいか、こういうシステムをつくりますという、これは大変高く評価を申し上げたい点と思っております。

 一方、アメリカでは、IEPという個別教育計画、有名でございますけれども、児童に対して、そのお子さんが、生まれてから、まさに自立し、そしてまたその先までもその子の成長に合ったプログラムが用意される、こういうシステムも整っております。私は、ぜひともここに限りなく近づけていけるような厚労省とまた文科省の連携を望むものでございます。

 実は、障害者自立支援法の最後の大きな焦点といいますのは、障害者の方たちの所得保障をどのようにしていくか。要するに、一割負担といいましても、どうしても所得自体が少ない、これを、働ける社会をどのようにつくっていくかということが大きな課題として残ったわけでございます。

 税金の投入を受ける側ではなくてタックスペイヤーに、このように言われて久しい歴史があるわけですけれども、義務教育の時期におきましてもぜひともその視点でお取り組みをいただきたいと思っております。

 その上で、まず、これも仮称というふうに伺いましたが、今回の認定こども園、今の幼稚園そして保育所、この機能をあわせ持った総合施設、今回は認定こども園ということで仮称で発表になっておりますけれども、ここにおきましては障害児の受け入れはどのようになりますのか、その点につきましてお伺いをいたします。

銭谷政府参考人 まず、私の方から、認定こども園における障害児の受け入れについて御説明を申し上げます。

 ただいま先生からお話ございましたように、認定こども園につきましては、幼稚園と保育所と同様の適切な幼児教育、保育の機会を一体的に提供する新たな枠組みということで、その制度化のための法案をこの国会に今提出すべく準備中でございます。

 この認定こども園に関しましては、平成十六年の十二月に、文部科学省の中央教育審議会幼児教育部会と厚生労働省の社会保障審議会児童部会の合同の検討会議が、報告書、審議のまとめというものを出しておりまして、その中で、「障害児への対応についても配慮することが適当である。」との提言をいただいているところでございます。

 文部科学省としては、これまでの幼稚園における障害のある幼児の受け入れの取り組み、現在実施をしております幼稚園における実践的な調査研究の成果なども踏まえながら、認定こども園における障害のある幼児の受け入れについても、厚生労働省と連携しつつ、適切に受け入れることができるように対処してまいる所存でございます。

小坂国務大臣 ただいまの認定こども園における幼児の環境整備にあわせて、今御指摘がありましたように、生まれてから、そして社会に出て自立し、タックスペイヤーになれるような障害者の社会づくりというものを目指して、今、アメリカのIEPの御紹介もありましたけれども、それぞれインディペンデントな個々の指導、計画というものが大変重要だという御指摘でございます。高木委員は、日ごろから、障害者の視点に立った施策の充実について御提言も賜っておりまして、敬意を表するところでございます。

 障害のある子供たちについて、乳幼児期から学校卒業後までの一貫した支援を行う、そういったことを、障害者基本法に基づく障害者基本計画において、障害者の子供たちの発達段階に応じた関係機関の適切な役割分担、そして一人一人のニーズに対応した適切な支援を行う計画の策定、こういったことを効果的な支援体制として整備するようにしておるわけでございまして、文部科学省といたしましては、この基本計画に基づく新障害者プランの中で、盲・聾・養護学校においての教育、福祉、医療、労働の関係機関との連携による個別の教育支援計画を、本年、平成十七年度末までに策定することといたしております。

 今後とも、一人一人のニーズに応じた支援計画の策定によって、障害者に対する教育支援が充実したものになるようにさらに努めてまいりたいと存じます。

高木(美)分科員 大臣から大変深い御決意の御答弁をいただきまして、感謝いたします。

 この障害者の分野でございますけれども、もう歴史も十分御存じのとおり、今までは、どちらかというと働かざる者食うべからず、どうしてもそういった思想がずっと根強くございます。まだまだ社会におきましても、障害者とともに生きる、まさにノーマライゼーションといいますのは、これからもっともっと日本が足を踏み出さなければいけない大事な点であると思っております。大臣には、今後とも、ぜひともお取り組み、またお力添えを心よりお願い申し上げる次第でございます。

 さらに質問でございますけれども、今、地域の学校に、小中学校でございますが、在籍をされている児童生徒の数について伺いたいと思います。

 中には、就学前健診をきちんと経て、そして就学指導委員会の検討を経て就学した児童、またもう一方、就学指導委員会を経ずに一般通知で就学した児童、それぞれいらっしゃるようでございます。この数につきましてお伺いをさせていただきます。

銭谷政府参考人 昨年、私どもにおいて調査をした結果によりますと、これは平成十七年度の小学一年生についての調査でございますけれども、認定就学者を含めまして、市町村教育委員会の就学指導委員会が、盲・聾・養護学校への就学が適当であると判断をした六千二百五十三名のうち、千百七十八名の児童が小学校の特殊学級に、それから二百三十一名の児童が小学校の通常学級に在籍をしております。これは、六千二百五十三名のうち、合わせますと千四百九名でございますので、二二・五%になります。

 以上は、市町村教育委員会の就学指導委員会の判断結果を活用することによって把握が可能になったものでございますけれども、先生御指摘の一般通知での就学、すなわち、就学指導を経ずに通知によって就学しているケースについては、こうした判断がなされていないわけでございますので正確な把握が困難な面がございまして、現時点では把握をしていないということでございます。

高木(美)分科員 これは、特別支援教育を始められるに当たりまして、どういうお子さんが対象で、現実、人数的にいらっしゃるのか、まずこの実態把握が大事であると思われます。

 したがいまして、今のこの就学指導委員会を経た千百七十八名というお子さんプラス一般通知で入学された方がどのぐらいいらっしゃるのか、総合的な数値をぜひとも御認識いただきまして、その上で、特別支援教育がどのようなボリュームでできるのかという、そこが精査されるべきではないかと思われます。ぜひ実態調査をお願いしたいと思いますが、この点につきまして、局長、いかがでしょうか。

銭谷政府参考人 就学指導委員会でいろいろと判断をし、また保護者の方といろいろと御相談したケースは、その子がどういう障害をお持ちなのかということがわかるわけでございますけれども、就学指導委員会を経ずに一般通知で就学した場合に、小中学校の通常のクラスに在籍している子供がどういう障害を持っているのかということを調べなければいけないわけでございますので、その把握が本当にできるのかどうか含めて、方法等をちょっと研究させていただきたいと思っております。

高木(美)分科員 ぜひとも研究をお願いしたいと思います。

 こうした新たな特別支援教育がスタートをされるわけでございますので、どの学校にどういう支援が必要なのか、また、恐らく、一般通知で就学した御家庭とか、やはりそこを、現実、今の学校の教員の方たちは受けとめていらっしゃると思います。ですので、このトータルのボリュームをぜひ把握を、お願いを重ねてさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 それにちなんでですけれども、実はこういうお話を伺いました。

 あるお子さんがいらっしゃいまして、下肢に障害がある。車いすは当然放せない。しかし、大変賢いお子さんで、普通の児童と同じように勉強させたいと親御さんは思い、地域の学校を希望しました。学校また教育委員会に何度も通いまして、やっと認められたわけですけれども、条件として、親が送り迎えをしなさい、可能な限り、ほとんど終日ですけれども、付き添いなさいという条件です。やがてこのお母さんという方は胃がんの宣告を受けまして、自分が入院してしまうと、お子さんの車いすを押して学校まで連れていくのは病気がちのおばあ様しかいらっしゃらないということで、可能な限り通院で治療し、そして結局亡くなられたという大変残念なことを伺いました。お子さんのために我が身を犠牲にするという母親の痛ましい心情を考えますと、本当に痛ましい思いが込み上げてまいります。

 この就学指導委員会でございますけれども、どのような基準でこうした検討がなされているのか、また、許可された際の通学の配慮です。今回成立しました障害者自立支援法におきましても、通勤通学ではそうした医療支援等のサービスは使えない、こういうふうになっているわけでございますけれども、中には、夫婦でお子さんの障害を受容できずに、結局は離婚して母子家庭になっている、経済的にも大変苦しい中で頑張っていらっしゃる、こういうケースも多く伺っております。

 この就学指導委員会の基準、そしてまた通学への配慮、この点につきましてお伺いをいたします。

銭谷政府参考人 まず、児童生徒の就学先の決定における就学指導委員会の役割及び判断基準でございますけれども、障害を持つお子さんの就学先の決定につきましては、専門家の意見と保護者の意見、これを聞きながら、最終的に、総合的に教育委員会が判断していくということになるわけでございます。

 専門家からの意見聴取として、市町村の教育委員会に就学指導委員会というものが設置をされているわけでございますけれども、この就学指導委員会は、通常、医学あるいは心理学、教育学等、それぞれの分野に専門的な知見を有する方がメンバーとなりまして、学校教育法施行令の二十二条の三に定める障害の種類及び程度に照らして、そのお子さんが今どういう状況にあるのかということを判断していくわけでございます。

 もちろん、学校の配置の状況でございますとか、あるいは学校の条件がどういうぐあいに整っているのか、そういったことも考慮し、かつ保護者の方の意見を聞いて、最終的な就学先について総合的に判断していくということになるわけでございます。

 なお、通常の小学校、中学校に就学いたしました障害を持つ児童生徒の通学につきましては、一般的なことを申し上げるのはなかなか難しいわけでございますけれども、それぞれの受け入れております市町村において適切な配慮がなされるべきだというふうに私は思っております。

高木(美)分科員 私は、デンマークのように、一時期、普通学校で、通常学校で教育すべきだというふうに障害者を全部入れて、そして結局障害者の方たちもぼろぼろになってしまったという愚を繰り返す必要はないかと思いますけれども、やはり、お子さんが将来就職するまで、自立するまでという視点に立った就学指導委員会の判断を、ぜひそうした長期展望に立ちまして、学校、当然、受け入れられる、受け入れられない状況もあられるかと思いますけれども、そこに照準を置きながら、このお子さんは将来きちんと勉強すれば障害者をリードできるような人材になっていくとか、そこをしっかりまた見きわめていただいた上で御判断をお願いしたいということを重ねて申し上げさせていただきたいと思います。

 もう一つ、今のお話にちなみまして、ちょっと時間がなくなってまいりましたので簡潔な答弁で構わないんですが、今回、交通バリアフリー法、ハートビル法を改正しまして、今国会で新バリアフリー法が提出される予定でございます。

 学校のバリアフリー化につきましては大変おくれた状況があると伺っております。今それどころではない、耐震化でいっぱいだというお声もあられるかと思いますけれども、耐震化の際に、アスベスト除去、それもあわせてやろうと。そのときに、あわせてこのバリアフリー化に対する措置を盛り込むべきではないかと思います。その点につきまして御答弁をお願いいたします。

大島政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘ございましたように、公立学校施設におけるバリアフリー、大変重要な課題だと認識しているところでございます。

 文部科学省といたしましても、これまで、公立学校施設のバリアフリー化を推進するために、施設の新増改築ですとか、今おっしゃった耐震補強、大規模改造事業、こういったものを実施する際には、スロープや障害者トイレ等の整備に対して補助をしてきたところでございます。

 また、バリアフリー化を推進するための指針、これを平成十六年三月に定めておりますが、この策定した中におきましても、耐震化に係る整備等とあわせて、バリアフリー化に関する整備を実施する有効性、こういったものについて盛り込んでいるところでございます。

 引き続きバリアフリー化の推進に努めてまいりたいと存じます。

高木(美)分科員 ぜひとも早急の整備をお願いいたします。

 最後の質問になってしまうかと思いますが、発達障害のことに関してでございます。

 今回、特別支援学校のセンター的機能を通じ、小中学校等に在籍する発達障害のある児童生徒等への支援の充実を図るとされておりますけれども、特別支援学校の方には、これから御検討になるところでございますけれども、三障害についてのノウハウの蓄積は大変すばらしいものがあられましても、発達障害へのノウハウの蓄積は少ないのではないかと懸念がされます。

 これからまだまだつくっていただかなければいけない発達支援センター、東京でもまだ一カ所で、これから都議会とも連携をとりまして進めていきたいと思っておりますが、この発達支援センターとの連携がどうしても必要になるのではないかと思います。このことにつきましてお願いをいたします。

小坂国務大臣 おっしゃるとおり、盲・聾・養それぞれ、三障害については知見を蓄積しているところでございますけれども、発達障害については必ずしも同一の対応ではいけないわけでございますので、研修等を通じての資質の向上というものを図っていく必要があるという認識は持っておるところでございます。

 発達障害を含めた障害ある児童生徒への適切な教育を行うため、校長や教頭等のリーダーシップのもとに、教職員全員がこれらの障害の特性や対応の仕方についての専門的な知識あるいは指導方法を学ぶ、習得していくことが大変重要であると認識いたしておりまして、国におきましても、国立特殊教育総合研究所や教員研修センターにおいて、各教育委員会の指導主事や小中学校の校長、教頭等を対象にした研修を実施しているところでございまして、その中に、発達障害に関する理解と指導方法について、これも盛り込んでおるところでございます。

 今後とも、専門性を高めるための施策のさらなる充実に努めて、児童生徒一人一人のニーズに適応した適切な指導が行えるような体制整備に努めてまいりたいと存じます。

高木(美)分科員 最後に、これから大学も全入時代を迎えてまいります。高校の進学率も九八%と伺っております。今度はまた、高校での支援の窓口、大学でのそうした支援の窓口、ここも一貫してぜひともこの際整備していただきたいことを要望いたしまして、私の質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

実川主査 これにて高木美智代君の質疑は終了いたしました。

 次に、川端達夫君。

川端分科員 民主党の川端です。大臣、副大臣、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 教育は、申すまでもなく、国の将来の命運を左右する根幹の大事業でございます。その部分に大臣、副大臣、以下文科省の皆さん、御担当いただいている責任は大変重いと思いますし、期待も大きいと思いますので、ぜひとも御健闘を期待いたしたいと思っております。

 そこで、最近、子供に関しまして、いわゆる学校の安全、予算委員会でもいろいろ議論になりましたが、学校の安全あるいは学力の水準、そして家庭の問題等々、最近の子供を取り巻く状況というのにいろいろな問題が提起をされているということは、御案内のとおりでございます。

 そういう中で、かなり個人的な話ですが、今の子供と我々、大臣もそんなに年が変わりませんから、我々の子供のときと随分違うなというふうに私は非常に感じるんですけれども、大臣が今のこういう子供を取り巻く状況を見たときに、振り返られて、自分の子供時代はこんなのだったなとかいうことを含めて、何かお感じがありましたらお伺いしたいのと同時に、最近、御自身の卒業アルバムとか文集とか、ごらんになったこともありますか、そういうことを含めてお尋ねします。

小坂国務大臣 川端委員御指摘のように、委員と比較的近い世代ということで申し上げますと、私どもの子供のころには、家もこんなに立て込んでおりませんでしたし、地域に畑やいろいろな工事現場があったり、刺激がいっぱいあったですね。そして、農業と接するという接点も、帰り道に、ジャガイモを収穫した後の小芋がくっついたものが山積みにされていたり、お百姓さんに言うと、それ、持っていってもいいよなんて言われて、喜んでそれを持って帰って食べた経験もあります。こういった道草を食った覚えがある。ところが今の子供たちは、そういう道草を食うことすら許されない。

 学校、通学路の安全ということを考えますと、スクールガードリーダーの皆さんが付き添ってくださることは大変ありがたい。私は、過日、記者さんの質問にお答えしたこともあるんですが、これは無理かもしれない、大変忙しい中でボランティアとしての時間を割いていただく方に無理なお願いかもしれないけれども、一緒に道草を食ってくださるようなスクールガードリーダーになっていただけたら子供たちはもっとうれしいだろうと。無理な考えかもしれませんが、そういう希望すら持ちたくなる。

 すなわち、自分の周辺に興味をそそるものがたくさんあって、好奇心が育ち、その好奇心が勉強する意欲につながり、そして、みずから学ぶ、みずから考えるという、今まさに教育指導要領の中で取り組むべき課題というものが自然に達成をされていた環境が身近にあった。そういう意味では、今の子供たちはかわいそうだなと思う面もあります。道路でも遊べない。

 一方、今おっしゃったような卒業アルバムや卒業文集、見たことがあるかと言われると戸惑ってしまいますが、今どこに入っているか、さっぱりわかりません。残念ながら、私、全く見ておりません。選挙になっても余り活用することもできませんので、使っていないわけでございますが、最近は、そういったものに対しても個人情報保護という一つの枠があって、なかなか難しい時代になったな、こういう実感を持っております。

川端分科員 ありがとうございました。

 安全の問題、お触れをいただきまして私も本当に同感でありますが、同時に、いわゆる学力水準の問題や家庭の問題を含めて、やはり、我々の子供のときと随分変わってしまったな。子供の安全を守るという前に、どうしてこういうふうに変化したんだろうか。そういう意味では、別に懐古趣味じゃなくて、我々の若いころはまた昔の人から見たらというふうに変化をしているのは当然なんですが、昔はどういう状況であったかということを検証することは、現在の問題解決のためにも非常に大事な視点ではないかというふうに私かねがね思っております。

 そういうときに、例えば、何でもお金さえあったらいいみたいな風潮に今なっているけれども、我々が子供のときはそんなに、そういうことではなかったな、あるいは、親とか兄弟とか友達とかいうものの大事さというのが随分希薄になってきているな、そして、地域、先ほど言われた農家の、御近所の皆さんとかいうものも希薄になってきたなというのは事実だと思うんですね。

 そういうものを検証して、これからの社会あるいは教育のあり方をいろいろ検討するときに、昔はどうしてこういうことだったんだろう、今、それがいいものとして継承できないのだろうかということを調べるときに、実は、今大臣いみじくもお触れになりました個人情報保護法というのが学校現場でどういう状況になっているのかというのが、若干疑問に思うことがあります。

 私は、数年前に、近所の人が、ごみ出しで、紙料、古雑誌とかいうので、どかっと向かいの家から出てきたのを何げなく見たら文集だった、見たら、あんたの子供のときの年代みたいやから、友達同士の親でしたから、よその家のごみだけれども、これ、捨てるのと言ったら、捨てると言ったからもらってきたから、要るのがあったら探しいと言われて、探したら、小学校のときの作文で、お巡りさんは毎日みんなを守ってくれてありがとうみたいな作文が出てきて、非常に何か、懐かしいというより、書いた覚えは全くありませんから、子供のときはこんなことを考えていたんだなというふうに思いました。

 そこで、個人情報について若干お尋ねしたいんですが、法律で、個人情報保護法、三本立てであるんですが、学校が管理する個人情報というものはどういう位置づけで定義されているのかをまずお伺いしたいと思います。

小坂国務大臣 御指摘の個人情報の保護に関する法律におきましては、「「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの」と規定しております。各学校が保有する名簿を初めとして、卒業アルバムや文集なども個人情報に該当すると考えられております。

 文部科学省では、学校における個人情報の取り扱いの適正化を図るために、個人情報保護法の適用対象となる私立学校法人向けの指針、ガイドラインを策定するとともに、当該指針の解説において基本的な考え方や想定される参考事例などを示して、どういったものが該当するであろうということを示しているわけでございます。

 また、本指針の解説につきまして、本年の二月に見直しまして、学校における緊急連絡網の作成だとか配付に当たっての必要となる具体的な手続及び留意点、こういったものを明確にするなど、学校における個人情報の適切な取り扱いということを指導しているところでございます。

 そういったように、どれが個人情報になるのかと言われると、若干まだ、取り扱い方法ややり方によってなったりならなかったりという部分もありますが、概略、今申し上げたような範囲だと思っております。

川端分科員 現状はそういうことだと思います。今、氏名、生年月日等、個人が特定できる生存者の情報ということは法の基本的な概念でありますし、学校において、名簿とか云々の中に卒業アルバムも最近加えられたということは承知をしております。その名簿をいろいろな部分で、商売の目的も含めて、非常な迷惑をこうむるという事例が多発している部分からいって、ここを厳格に管理しなければならないということはそのとおりだと思っております。

 今、大臣、文集もおっしゃいました、先ほど私が文集と聞いたので、文集はその対象に入っているということは、ちょっと探しても事例としては言葉としてないんですが、それはそれでよろしいんでしょうか。

小坂国務大臣 文集が入るか入らないかについて、このガイドラインを策定しております現場の方からまずコメントをさせていただきたいと思います。

玉井政府参考人 私どもの法解釈としては、文集も入り得る、こう考えておりますが、今回のガイドラインといいますか、私どもの参考事例の中では、特に主なものを挙げてきておりますので、文集は入っておりません。緊急連絡網等も入っていなかった、あるいはアルバム等も入っていなかったものですから、今回、見直して入れてまいりました。

川端分科員 言われるように、私、いろいろ調べてみたんですが、文集という言葉は書いていないんですよ。それで、今、何点か問題があるんです。

 一つは、大臣が言われたように、個人情報保護法の基本理念、責務、それから施策、国がとるべきものは決めて、それが民間と独立行政法人と地方自治体という部分で、独立行政法人と地方自治体に関してはそれぞれの法律及び条例で策定する、民間は国がということになっていますから、ここはある種の縦割りの世界ですね。

 教育現場ということでいえば、例えば私立の学校もあれば、国立、これは独立行政法人になる、そして公立は地方自治体になるというときに、教育現場として一つの考え方で管理されるべきだと私は思うんですが、仕組みとして、先ほど言われた指針というのは民間の私立にだけ出されるものであって、独法である国立というのはそちらの法律でやりなさい、そしてもう一つは、公立に関しては地方の条例でやりなさい。調べてみると、やっているところもあればやっていないところもある。そして、民間に対する、私学に対する指針の中では、これに沿って地方自治体もやられることが望まれますみたいな文章だけ書いてある。

 そうすると、私は、法体系も一度見直すべきだと思いますと同時に、教育現場を所掌される皆さんとしては、やはりきちっと一本に指針が示されるようにされるべきだという視点で、ぜひともにこれからの御検討をお願いしたい、これがまず要望の一点目でありますが、それに対していかがでしょうか。

小坂国務大臣 同一世代ということで、考え方も似てしまうのかもしれません。

 私も実は、この指針がどのように現場に伝わっていくかということを、この職につきまして、こういった分科会等の機会を通じて見直してみまして、これはよほど私立学校に対する国としてのガイドラインが詳細にわかりやすく記述されていないと、それを参考にして地方自治体あるいは教育委員会等が作成される、独立行政法人等が作成するガイドラインが同じようなものになってこないだろう、それぞれの独自の考えが入ってしまって、伝言ゲームのようになってしまうのではないかという懸念も持っておりまして、現場に対しても、できるだけ詳細に、わかりやすく記述するように、こういう指導、指示を行っているところでございます。

 おっしゃったように、こういったもののあり方については問題意識を持って私も取り組んでまいりたいと存じます。

川端分科員 民でできることは民でというのはよく聞く言葉でありますが、教育という一つの問題、分野として見れば、この法律の仕組みが非常になじまない。そして、おっしゃるように、私学は私学で、やはり建学の精神とか含めて、いろいろなものの多様な価値観、特別の価値観に重きを置くということをやっておりますので、指針はそこまで触れていませんが、ガイドラインとしてもう少し指導をきっちりとされるという部分で前向きに御検討いただく御答弁でありましたので、ぜひともよろしくお願いしたいと思います。

 その中で、先ほど、官房長の御答弁を含めて、文集も一応は入るという認識をお聞かせいただきました。文集は何が個人情報なんですか。保護すべきものは何なんでしょう。

小坂国務大臣 現場としての意見を先ほど官房長から聞いていただきましたが、もう一度官房長からお答えしてもよろしいでしょうか。(川端分科員「はい」と呼ぶ)

玉井政府参考人 文集にはやはり個人名が載っておりますので、まさに、特定された、先ほど申し上げた定義に当たってくるわけでございます。そういう意味でございます。

川端分科員 確かに、私であれば、昭和三十何年何とか小学校卒業で、これで年齢がわかるんですね。そして川端達夫という名前がわかる。川端達夫はこの学校を何年に出た幾つのやつだというのがわかるという意味では個人情報だということで、文集も個人情報であるというふうにお役所はお考えになっているんですよ。

 そうしますと、個人情報は保護期間というのがある、保管期間。十五条で、利用目的をできる限り特定する必要があるということでいうと、文集の利用目的というのは何なのか、そして、利用目的達成後に、個人データは第三者、第三者というのは法律的に言えば子供あるいは親です、に提供した場合、第三者への提供に関して、利用目的達成後に個人データは返却または提供先における廃棄、削除というのが指針です、法律です。

 ということは、文集を配って、利用目的は何なのか、そして、利用後の保管期間はどういうものなのか、上記目的の達成が終わったら返してもらうか破って捨ててくださいという指示をするということが、文集を適用すればその範疇に入るということですが、利用目的と保管期間と、廃棄するということでいいのか、お尋ねをしたい。

玉井政府参考人 文集の目的そのものは、まさに児童生徒の教育活動への成果をまとめたものでございまして、これはまた、児童生徒に配付するために作成するものであるわけでございます。これが本来でございます。

 ただ、委員御指摘のとおり、そこで、個人情報そのものになっているわけでございますから、それがその利用目的外に利用ということも当然あり得るものでございますから、そういうときに、個人情報の保護に関する適切な対応ということがやはり求められてしまうということでございます。

川端分科員 大臣、官房長の御答弁は、文集は子供の教育の部分だけなんですよ。

 お尋ねしたいんです。例えば、その時代に大臣や私や副大臣がお書きになった作文が文集で出てきたとしますね。あるいは年代、この年代の子供は今の子供に比べてしっかりした文章を書いているなというのか、いいかげんな文章なのかなというのがあるとか、漢字をこんなに使っているというふうな教育水準、あるいは、そこに出てくる親子の、兄弟の情愛とか、近所の話とか、いろいろな人への感謝の気持ちとか、働くことの喜びとかいうことが書いてあるのかないのか。今の子供と比べると、ニート、フリーター、職に対する意識、金に対する意識、家族に対する意識とかいうのも、学術的にも教育上も大変大事な私は財産だと思う。

 子供がこんな能力があるというのを集めて文集にして、その目的だけだから、その期間が過ぎたらもうほかしなさいよということではないのではないかと思うんですが、大臣に、この文集というものの価値についてお尋ねをしたい。

小坂国務大臣 川端委員の御指摘の問題意識のポイントは私も理解できます。

 しかし、個人情報保護法の目指すところは、本人の意思というものを大切にするということが一つあるんですね。それからもう一つは、社会通念上認められる範囲内のものは認めていこうということがないと、これは非常にぎすぎすした社会になってしまいますから、そこの視点も忘れてはならない。

 したがって、個人情報保護法の二十三条第一項に規定されている例外規定、すなわち本人の同意を得ないで提供できる場合に該当しない場合には、第三者に提供することはできない。したがって、同意する者の範囲内でこれを作成し配付するなど、適切に対処する必要がある、こういうふうになっているわけです。

 では、文集というものはそういうものなのかどうなのか。こういうことになりますと、人によっては、小さいころは自分はいろいろな考えを持っていて、天真らんまんにそれを書いてみた、今考えてみると、余り公表してほしくないなという部分もあるわけですね。また一方、結婚式等へ行きますとよくある話ではありますけれども、担任の先生を呼んだら、担任の先生が、実はきょう引き出しをひっくり返して何々ちゃんの作文を持ってきました、ここで読み上げますと言って、許可も得ないでいきなり読まれて、新郎新婦が泡を食うという場合もあるわけです。それがすばらしいものであればいいけれども、自分としては公表されたくなかったものである場合、本人は必ずしも気持ちよくないでしょうし、困る場合があるでしょう。

 そういうことも考えますと、法律で規定されているから一概にこうだといって、規定したものはそのとおりに廃棄されなきゃいかぬという性質のものでもないし、また、廃棄されない場合に、その利用目的の範囲というのがどこまでだったか、最初は想定されていないものも、ある意味では類推して認められるというふうに考えられる場合もありますから、しゃくし定規に、これは一定期間、その目的外になったから廃棄するというものでもないんだろう。やはり文集というのは、後々にお互いに友達同士が読み返して、あいつはこんなことを言っていたなということを思い返す、そういうものも目的の中に入ったと考えれば、廃棄する必要はない。ただし、公表するときには本人の了解を得るというのは個人情報保護法の精神だということを留意しながら取り扱えばよいのではないかと私は考えますが、いかがでしょうか。

川端分科員 公表云々という個人情報の部分は非常に気をつけなければいけないことは、おっしゃるとおりだと思います。

 私がお尋ねしたのは、友達同士とか懐かしいなということ以上に、教育という視点から見ても、私、先ほども、繰り返しませんが、教育の水準やそのときの社会状況や物の考え方、価値観というものが変遷していくという貴重な財産であると同時に、例えばある人が、川端康成さんはお亡くなりになりましたから個人情報の保護の対象でないんでしょうが、これもおかしいですね、亡くなった者はいいけれども生きている者はだめだというのも私は変だと思うんですが、例えば大江健三郎さんがノーベル文学賞を受賞された、子供のときの作文は文学的財産だと私は思いますよ。

 ノーベル賞をもらった人が小学校のときにこういう文を、作家で物を書くのが御職業ですから、本人の同意を得るといったら同意されるんであろうと思いますけれども、おれは子供のときはみっともないから嫌だと言われるかもしれない。逆に、亡くなった瞬間に、学校の先生が山盛り倉庫から引っ張り出して、これが大江健三郎さんの自筆の作文だから、例え話ですよ、名前を出して恐縮ですが、めったに文学賞の方がおられないので、自筆の小学校の作文だといったら、これは文化財的価値があるものなんです。

 ということも含めて、保護法はおいておいて、慎重に判断する、運用するというのはおいておいて、こういう価値があるものだと思われませんかと聞いているんです。

小坂国務大臣 今いみじくもおっしゃいました、本人が望まないという場合もあるかもしれない、そこがポイントだと思うんですね。もう一つのポイントは、生存する個人に関する情報と言っていることがポイントであります。

 したがって、生存している限り、その本人の同意を得てくださいと。個人情報保護に該当するものだから、その使用目的外、その使用目的を達成した後は廃棄しなさいという廃棄の基準は、先ほど申し上げたように、後々思い返す、見返すということもその中に入っているとすれば、直ちに廃棄すべきものではないので、その保存期間については特に特定しないということになりますから、そういうものが保存されることはそれなりに認められると思いますし、川端委員のように文化財的な価値がある可能性もあるということを考えれば、多分皆さん保存されるんだと思います。

 ただ、それを公表するときには、やはり個人の考え方を尊重して個人の許可を得るべき、個人が死んだ場合には許可が得られませんから、個人情報保護の対象にもなっておりませんので、これは適宜取り扱われるべきものとして判断をされるだろうと私は考えております。

川端分科員 ちょっと御答弁がずれておりまして、御承知の上でお答えになっているんだと思いますが、私は、個人情報というものをどうして保護するかということは大変大事なことだ、しかし一方で、個人の思い出という意味ではなくて、大変貴重な財産としての価値があるものであるということを認識しておられるかどうかを聞いているんですよ。どうですか。

小坂国務大臣 川端委員の文集に対する思い入れ、またその可能性についての評価というものは、それなりに理解はできます。

 しかし、その考え方をすべてに適用してそういう固定的な観念を持つべきだと言われても、私は、やはり文集というものはそれぞれに、その価値及び思いというのは、つくった人も、またそれを読む人も、また保存する人も、それぞれの考え方がやはり存在してしまうと思います。

 そういう意味で、おっしゃるように、文化的な価値があるんだからという画一的な評価をしろと言われても、必ずしもそうは言えないだろうということを申し上げているわけであります。

川端分科員 余計な文化的価値まで言ってしまったから、そこの御答弁をされていますけれども、この件に関しては御答弁はいいです、御承知の上でお答えになっているのはわかっていますが、これは文科省としての教育のあり方に関してでも大変貴重な財産なんですよ、私はそう思いますよ。

 そして、今のように個人情報の保護を最優先に物を考えている部分で言うたら、それが二の次になっているんですよ。そして、現実に何が起こるか。言われたようにしていたら、可能な限り残さない方がいいということなんですよ。捨てろと言っているのが基本なんですよ。ひょっとしたらと思うから残そうかなんて奇特なことを考える人はいませんよ。そして、もしも何かあってといったら、あんな文集、おれの恥ずかしい作文、おまえが出したのかと学校に言われたら困るから、持っていない方がいいんですよ、保管する場所をとるから。だから、どんどん捨てるという傾向が今ある。私は、その流れは逆ではないかと。

 個人情報の保護という制約はあって、大変大事にしなければいけないけれども、いろいろな学術的、そして文化的な財産の宝であるということから見たら、可能な限り残そうよという方針をメッセージとして出してほしいと私は言っている。どうですか。

小坂国務大臣 重ねて申し上げますが、川端委員の文集に対する思い入れそのものは私なりに理解はできます。しかし、その評価を画一的なものとして指示を出すということになりますと、慎重に検討する必要があると思っております。今、川端委員が御指摘なさいましたその趣旨も私なりに受けとめまして、今後のそういった判断の指針の中で、私のできる範囲内において、そういったものを指導してまいりたい。

 ただ、今御質問をいただいたから、指示を改めて、変更して、新たなそういう視点に立った指示を出し直すということを今ここで明確に御答弁するにはちょっと早過ぎると思いますので、検討させていただくという程度にとどめさせていただいて、答弁とさせていただきます。

川端分科員 こういう法律ができて、あつものに懲りてなますを吹くか、角を矯めて牛を殺すか知りませんが、今、日本が物的に豊かになったけれども、心寂しい、薄ら寒い世の中になってきているというときの、心が大事だと口ではよく言われます。そのときに、何を大事にしているかという物差しを、私は、政治家たるもの、示していくべきだと。

 そういう基本的な精神がない中で、法律だけが走ると、今の法律では、私が個人的に文集が大事だと言っているのではないということも、御答弁では、御理解をいただいているのかいただいていないのかはよくわからない御答弁でありましたが、きっとわかっていただいているんだろうと思います。そういうものが、法律が決まっているからということだけで、スタンスとして明確に、捨てるのが原則ですよということは私はあってはいけないという価値観を持って、現実にいろいろ対応するのが難しいことがいっぱいあるのは承知しているんだけれども、そういう価値観を大事にしようという姿勢でやっていただきたい。

 そのことを特にお願いして、時間が来ましたので終わりにしたいというふうに思いますが、せっかくですから、学校の教育現場におられた馳さん、何か一言あったら、通告していませんが、御感想でも、特に個人的でも結構でございます。

馳副大臣 先ほどから大変含蓄のある御質問だなと、私も教壇に立っておった経験から思っておりました。

 文化的な価値ということで焦点になっていましたけれども、私は、いわば教師という立場からすれば、教育的な価値とか、あるいは、こういう言葉があるかどうかわかりませんが、子供にとっての思い出的な価値というのか、やはり思い出を大切にしながら生きるというのは生きがいになるんですね。いろいろな観点から判断がされていくのがよいだろうなというふうに思って伺っておりました。

 以上です。

川端分科員 ぜひともいろいろな角度からまた御検討の中に、ひとつどこかの頭に、こんなことを言うておったやつがおったと思っていてください。よろしくお願いします。

 終わります。ありがとうございました。

実川主査 これにて川端達夫君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時五分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

実川主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。福田峰之君。

福田(峰)分科員 福田峰之でございます。よろしくお願いいたします。

 きょうは、学校の情報公開、特にホームページ上におきます学校のさまざまな情報の公開についてお伺いさせていただきたいと思います。

 今、子供たち個人の情報についてはしっかりと保護をしなければならないという側面がある一方で、やはり学校が開かれた学校を目指す、あるいはさまざまな情報を父兄や、将来父兄になる人たちや、あるいはまた地域の方々にしっかりと伝えて、そして地域で、みんなで学校を守り立てていこうという社会をつくっていかなければならないという方向性があると思います。こうした中で、例えば自分の通わせている学校が、あるいは、特にこれから父兄になる親の人たちが、自分が行く学校は一体どういうところなのかというのを知りたいと思うのは、当然、親の親心かなというふうに思います。

 例えば、私は横浜に住んでおりますが、私の住んでいる横浜の青葉区という町は、マンションや家を売るときに、ここのマンションは何とか小学校の学区ですから皆さん買いませんかとか、そういうマンションの売りになるほど、どこの学校に行くかということが大きな意味をもたらしていると思います。それは、学校選択制がしかれているような東京の学校では特にそういう情報が必要ですし、あるいは私のところは、横浜は選択制ではありませんが、随分と弾力的な運用がなされる中におきましては、それぞれの学校が特徴ある学校をつくればつくるほど、どんなことをやっているんだということを開示する必要性があると思います。

 そこで、まずちょっとお伺いしたいのは、学校が持っているさまざまな情報を開示するということに際しまして、私、事前に文科省に話を聞きましたら、学校が提供すべき情報というのは設置基準の中に、こんなものを出したら望ましいということが書かれておりまして、私も設置基準を見させていただきました。こうした設置基準の中に、ではどんなものが、学校の情報として公開をした方がいいかということで書いてあるのは何かといえば、例えば、学校の概要とか教育目標、教育課程、教育活動の状況などが提供すべき情報として考えられるということが、設置基準の制定等についての文科省の事務次官通知で各市町村に流れているんです。

 まず、例えばとして列記されているこの提供すべき情報と、例えば地域住民の皆さんやあるいは父兄の方や、これから父兄になる方々を含めて、自分はこんなことを知りたいという情報の間に乖離があるんではないかな、知りたい情報はほかにもあるんじゃないかなと私は思うんですが、まず、求める情報とここで言われている提供される情報のギャップみたいなものをお感じになられたりとか、あるいはいろいろな方から指摘をされたりとか、そういうことはあるのかどうか、まず伺いたいと思います。

馳副大臣 教育に関して、国と都道府県と設置者である市区町村と、それぞれに権限があり役割があるということは、もう先刻御承知だと思います。

 そんな中で、地域の住民やあるいは子供を通わせることになる保護者として、その学校がどんな学校なのであるかということを、できる限り情報を知りたいというのは当たり前ですし、それを提供するというのも当たり前だと思います。そんな中で、全国の市町村ではそれぞれが基準を設けて、学校情報を公開すべきであり、私の住んでおります金沢市ではすべての小中学校にホームページの設置を指示しております。

 しかし、その内容となると、実は諸々の問題があるんです、例えば組合の反対とか。つまり、教員が、私はどういう研修をした、こういうことを指導するのは得意であるとか、あるいは、校長、教頭がどういう学校経営方針を持って地域と協力しながらやっていくか、それぞれあるんですけれども、やはり千差万別であるということがわかってまいりました。

 細かいことはまた局長の方から答弁していただきますけれども、基本的には、学校選択制もあるこの時代でありますから、選ばれる側ができる限りの情報を、とりわけ教員個々に関しては、個人情報保護の問題もありますが、できる限りの情報を提供していくことが親切なあり方ではないかというふうに思っております。

銭谷政府参考人 学校の情報公開の基本的な考え方については、ただいま馳副大臣の方からお話があったわけでございます。

 平成十四年に小学校設置基準等を制定した際の通知におきまして、今先生からお話ございましたように、各学校が提供すべき情報の例として、学校の概要、教育目標、教育課程、教育活動の状況などを示しているわけでございますけれども、具体的な提供項目の設定は各学校の判断にゆだねられているわけでございます。

 実態としてどうかということでございますが、文部科学省が平成十六年に実施をした調査によりますと、多くの学校で提供されている情報といたしましては、第一が学校の教育目標、第二が年間の行事計画、第三が学校安全に関する取り組み状況といったようなことが挙げられております。基本的には、通知で示しているいわば基本的な情報というものを学校は提供している、公開をしているということが言えるかと思います。

 そこで、親や地域の方が望んでいる情報と乖離はないかというお尋ねでございましたが、この点につきましては、PTA全国協議会がやはり平成十六年度に、親を対象に意識調査を実施いたしております。この調査の実施方法や項目は、先ほど申し上げました文部省の調査とは異なりますので、単純に比較はできないわけでございますが、保護者の方が情報提供をもう少し充実してほしいなという内容としては、学校の課題や解決すべき問題点、具体的な教育活動や生徒指導の内容、方法、授業の充実方策といったようなことが挙げられております。

 基本的には、学校が主として提供しております基本的情報に加えて、保護者の間からは、具体的な活動状況をさらにきめ細かく提供してほしいという要望があるというふうに認識をいたしております。

福田(峰)分科員 よくわかりました。

 それで、やはりこの内容を、大切なのはホームページをつくることではなくて、なおかつ学校側が伝えたい情報を一方的に伝えることではなくて、受けたいと思う側が必要としている情報、コンテンツをしっかりと伝えていくことが、まずもってホームページをつくる意味なわけです。

 こうした中で、そこに掲載されていない情報で、例えば今言ったみたいな生徒指導の手法とか、いろいろな内容があると思うんですが、それを父兄が知りたいと思ったときに、では、現況ではどうやってこれを知ることができるのか、今どうなっているのか教えていただきたいと思います。

銭谷政府参考人 基本的に、子供が学校に通っている場合には、通常、子供を通して学校の様子を聞くというのが最も一般的な話ではないかと思います。それに加えて、学校では保護者会とか授業公開とかそういうものがございますので、そういう機会をとらまえて学校の情報を把握するということがあろうかと思います。

 ただ、これに対して、学校の方がある程度計画的に情報を提供する、そういう情報を手に入れるということがあるわけでございますけれども、平成十六年度における状況を私どもの調査で見てみますと、親などが手に入れられる情報としては、一番多いのが学校便りの配布ということで、これが学校全体では八六%ぐらいでございます。それからホームページへの掲載、これが四一%でございます。それから学校要覧の配布というのが二五%、大体こういった状況になっております。

小坂国務大臣 ただいま局長の方から答弁申し上げたような形で学校としても情報を、学校便り、ホームページ、学校要覧等で開示はしているわけですが、今委員が御質問になりましたように、特定の情報、これが知りたいんだ、これはどこを見ても書いていない、こういう場合は、原則はやはり学校に直接聞いていただくということになるんだと思います。

 そういうことはなかなかやりにくいという方のために、実際には、アンケート等をしていただいて、そしてそのアンケートを通じて、父兄が求められている、保護者が求められている情報を把握して、そして、それについて積極的に公示するという努力をすることも必要だと考えております。

 今年度中に策定いたします学校評価のガイドラインの中で、学校の情報提供の方法、内容等について示していく予定でございまして、適切な情報提供がなされるように各学校の取り組みを促してまいりたい、このように考えております。

福田(峰)分科員 これは多分、私はもともと横浜の市会議員でしたから、この時代に横浜市の場合は設置基準を、通達を受けた後に横浜市で各学校向けに指標をつくったんですね。横浜市学校情報公開指標みたいなものをつくって、そこから直接各学校に対してしっかりやりなさいということを、指標をつくって実はやらせた部分があります。ただ、納得できるようなものが全部まだでき上がっていないのも事実なんですが、そこまで実は踏み込んでやり始めているんです。

 各教育委員会の自主性という部分はあったとしても、例えばこの情報公開指標みたいな、名前はいろいろあると思うんですが、こういうものをつくって、各単体の教育委員会が学校に対して、しっかりやらなきゃだめだということを言っている教育委員会というのは一体どれぐらいあるのか教えてください。

銭谷政府参考人 今先生お話がございましたように、横浜市は、学校情報公開指標を策定して、各学校に情報公開を求めているわけでございます。この横浜市を含みます、全部で六十一の都道府県と政令市についてどういう状況になっているかという調査でございますが、六十一のうち三十九の県や市におきまして、学校の情報提供に関する手引などを作成して学校に配付しているという状況がございます。

福田(峰)分科員 これはやはり、こういう指標をつくって単体の学校にしっかりと伝えていかないと、先ほど副大臣お答えいただきましたように、千差万別になってしまったり、やっているところはしっかりやっているんだけれども、やっていないところはしっかりやっていないという、非常に格差が出てきてしまいますので。

 私は、こうした部分も、少なくとも設置基準を明記し、やった方がいいよ、なおかつ、例えば指標みたいのをつくってしっかりやりなさいというようなことも文科省の方から各教育委員会の方に話をして、そして現場にその心が伝わるようにしないと、こちらで求めていることと、現場、先ほど組合の問題とかいろいろ話がありましたが、そこのところがしっかりと伝わっていかないと、気持ちはあっても結局提供されないということでは非常に寂しい状況になってしまいますので、その点は、三十九にとどまらず、少なくとも、どこもみんな同じような形でできるように指導すべきではないかなと私は思います。

 そこで、この情報公開の指標の中には、先ほどの学校便りだとかそうした紙媒体のものもありますし、いろいろな形はあるんですが、紙媒体は、その地域に住んでいる人だとか保護者だとか、一部の人にしか実はこれは行き渡らないんですね。例えば、私があるときに引っ越しをする、それで、四月からその学校に行くんだけれどもという人には、当然それはまず渡らないし、あるいは、先ほど大臣おっしゃいましたように、父兄が学校に電話をかけて聞くというのは相当勇気が要るんですね。やはりそうなると、その情報をだれしもが気軽に遠くにいても見られるということになれば、ホームページにしっかり情報提供するという、先ほど四十数%というお話でありましたが、そこを充実するというのが非常に必要なことなのかなと思います。

 そこで、この設置基準の中には、ホームページ以外に学校便りとか、そういう幾つかの併記の中で、ホームページも使って情報公開をした方がいいという形で書かれていまして、ホームページもあくまで、学校便りとかそういうもののワン・オブ・ゼムに実はなっているんですね。私は、ホームページは、これだけ社会の中に広がっている中で、特にホームページはみんなが見やすいわけですから、そこのところを一つでも取り立てて、より一層充実させていくべきではないか。そして、地域の人とか、学校に直接行かせていない人たちにも情報が伝わる伝達としては、これはすぐれた手法なわけですから。

 こうした点、なぜ、このホームページによる情報提供をよりあっせんするという形で、こうした中で明記されていないのか。これからどうなるのかも含めて所見を伺いたいんですが。

銭谷政府参考人 今先生からお話がございましたように、小学校設置基準等においては、保護者に対する情報提供を積極的に行うことを各学校に義務づけるとともに、その情報提供のやり方については幾つかの例示を通知でお示ししている、その中の一つにホームページ、インターネットの利用ということが挙げられているわけでございます。

 これは基本的には、どういう情報提供の仕方をするかは、またどういう内容を情報提供するかは、最終的にはやはり各学校の責任においてやっていただくものだということから、こういうことにしているわけでございます。

 先ほど、ホームページによる情報提供は四〇%台というふうに申し上げましたが、学校におけるホームページの開設状況自体は、小学校が六九・七%、中学校で六八・六%でございます。ホームページを開設しているのに、ホームページを利用した情報提供を行っていない、そういう学校が三〇%近くあるというのは、ありていに言えば、そのホームページ自体、開設はしたものの、更新その他積極的な活用をまだされていないんじゃないかなという感じがいたします。

 いずれにいたしましても、先ほど大臣の方からもお話がございましたように、文部科学省としては、今年度中に策定をする学校評価ガイドラインの中で、学校の情報提供の方法や内容等についても示す予定でございまして、適切な情報提供がなされるように、よくこのガイドラインの中で検討していきたいというふうに思っております。

馳副大臣 これは、やはり保護者の皆さんと、教員を初め学校経営者の信頼関係が一つまず大前提にあると思うんですよ。国が余り高圧的に、やれというふうな筋合いよりも、ホームページをまず開設していただくことが、やはり学校の情報公開、学校評価につながりますよと。

 では、どういう情報をホームページで公開したらよいのか。先ほど申したように、個人情報保護法のことがありますから、余りにも特定できるようなものはやはりよくないでしょうし、そういったときに、自主的に、教職員やあるいは子供たちも参加をしてホームページ上に公開できる情報というこのあり方を、また、できれば横浜市のように、市町村、責任を持って設置者と教育委員会、その現場が協力しながら進められるように促していくのが文部科学省の役割ではないかなと考えております。

福田(峰)分科員 これで情報公開をしていくというのは、父兄の方々にこの学校がどんなふうになっているのかということを当然知ってもらうという側面があると思うんですが、もう一つは、そこに、例えば学校の目標だとか、教育目標だとか、あるいは一年間こういう形で子供たちを育てていくとか、ある意味、目標が掲げられるわけです。

 目標が掲げられてしまうと、一年たった後に振り返ったときに、そのとおりになったのかならないのか、当然これは学校評価の話とリンクしますが、なったのかならなかったのか、ならなかったとしたら、何が問題だから、こういうふうに展開をしていくんだということをそうしたホームページに明らかにしていくことによって、これは学校もやらざるを得ない状況に、ある意味では追い込まれてしまう。

 逆に言えば、そこまでしっかりと担保をしないと、言い方は悪いですが、やらなくてもとりあえずいいだろうみたいな、そういうふうになってしまうとこれは困るわけで、私は、そういう意味においては、この情報公開によってその後の学校自体の、先生の努力とか、これは父兄の努力もありますが、そこにつなげていけないと、情報提供するだけではまたこれは意味がなくなってしまうのかなというふうに思います。

 そこで、この学校情報公開をしていく中で、例えばホームページだとかの情報提供が今言ったみたいに学校運営に大きな影響を与え、教師もやる気を出してもらわなきゃいけませんから、そういうことを含めて、これが充実していくと、例えばどんなふうに学校の運営が変わるということを考えられているのか教えてください。

馳副大臣 これは、福田先生の非常に重要な指摘だと私は思っているんですよ。

 憲法で保障された義務教育の三原則がありますね。まず基本的な条件整備、それから教育の質の維持向上、そして無償制度。国は、学習指導要領をつくり、検定制度により、また校舎とか教職員の配置、こういったところに責任を持ってやっておりますが、では、その成果はどのように上がっているのかということは、その成果が、まさしく質の維持向上という観点からいって、やはり万人に評価されるものでなくてはならないというのが前提にあると思うんですね。

 そうなったときの指標となるものが、まさしく現場の情報の公開だと思うんです。ただし、ではと言って、テストの点数を出せばいいのか、そんな問題でもまたないでしょうし、教員がどういう勤務状態でやっているのかということを事細かく出すのも、これが一概にいいとも私は思いません。

 そういったところで、教育の成果が上がっているのか上がっていないのか、むしろ、そういった評価に資するような内容は何なのかといった観点から情報公開がされていくこと、そしてそれが活用されること、それによって質の維持向上が図られることが一番重要なことだと考えています。

福田(峰)分科員 先ほどの情報の内容については、多分もしかすると、設置者である市町村であったりだとか、あるいは現場の学校、先ほど言いましたように父兄とか、それぞれが三者三様に、求めたいもの、提供したいものが今の段階ではまだ一致していないんではないかと思うんですね。これを一致させないと欲しいものが手に入らない。でも、これは提供してしまうと子供の教育環境にとってよくないことが実はあったりするとか、そこのところがまだある意味では、始まったばかりですから、そこは精査をされていないのかなと。

 私もいろいろなホームページを今回見させていただきまして、よくわかりました。できているところは本当によくできているし、できていないところは本当にだめですね。先ほど、教育はどこの学校に行っても一定の水準のものを得られる、これは大前提なんだけれども、例えば情報提供に余りに格差があると、この学校で何やっているか、この学校で何やっているか、まずわからないし、本当にそれが同じ水準になっているかといっても、これはだれもわからない形になってしまいますから、私は、そこの点はしっかりと情報を、知りたいものを出す。

 しかし、影響が出ないような形で、いい形で出さなけりゃいけませんから、その辺をこれから精査して、ぜひとも、各学校の中で意味のあるホームページがつくられて、しっかり更新されて提供されて、父兄の方々や何かも、しっかりとそれがわかって学校にも協力し、あるいは、自分たちはその学校にどうしても入れたいんだというふうな思いにつながれば、当然、学校に対する協力を親もせざるを得ないところに追い込まれていくわけですから、私はそうした部分を充実させていただきたいなというふうに思います。

 そこで、これは、内容についてはいろいろあると思います。先ほど言いましたように、例えば評価の中で絶対評価と相対評価の話がありましたけれども、これは絶対評価になってしまうと、私も市議会議員のときに、いろいろな学校の絶対評価というのはどのぐらいの分布で評点が変わっているのかというのを全部調べたんですが、これは学校によって随分違っていましたし、そういうものは、例えばその学校の中のホームページや何かにはなかなか出していない。でも、そういうところがないと、一体自分の学校はどういうところを視点として評点をかけているかとか、そういうこともよくわからない。これでは、本当に機会均等になっているのかと問われたときに、ううん、それはわかりませんねということになってしまうと、非常に私は困ると思います。

 そこで、これは先ほど大臣からも積極的な御発言がありましたけれども、これは現場の学校が、特にホームページを通じまして、地域、保護者、潜在的な保護者を含めてしっかりと情報提供ができる、なおかつ、それの内容についてももう一度、PTAの意見もありましたし、学校サイドの意見もありましたし、特にコンテンツについては、指標でつくりなさいと言うだけではなくて、コンテンツについてはもうちょっと、本当に何の情報を提供していくことが必要かということを改めて検討していただいて、どうせつくるなら意味のある形のものをおつくりをいただいて、子供たちの学校がどうなっているかということをみんなで見て、育てていくという社会をつくっていけたらいいなと思っているのですが、最後に、大臣の所感をお伺いしたいと思います。

小坂国務大臣 委員御指摘のように、教育現場におけるICT、インフォメーション・コミュニケーション・テクノロジーの活用というのがまだ十分に行われておりません。コンテンツの充実を図り、そのコンテンツを、先生方がいろいろな努力でつくっていらっしゃいます。ところが、すばらしいコンテンツをつくっていても他の学校で利用されない、あるいは、その情報をデータベースのようにして蓄積して、こういったものを教えたいが、どこかにだれかそういうものをつくっている人がいないかなと探せばすぐ出てくるような、そういった仕組みも考えなきゃいかぬ。それから、せっかく高速インターネットを引いても、校内LANが整備されていない結果、特定の場所でしか使えない。これも困ります。

 そういう意味で、この三月に、ICT利活用の促進キャンペーンをやろうと思っております。そういうものを通じて、ホームページのつくり方、あるいは学校における高速LANの整備、そして地域への情報提供も含めて、そういったことの知見を広めていただく。

 教育現場での利活用のための模擬授業なんというものも導入して、実際に先生方が、ICTというものを利用すると自分たちも楽になる、わかりやすい授業ができる、そして子供たちも、学校を離れても、うちからアクセスすることによってまたさらに補習的な授業もできる、こういう環境を整備するようなことを考えておりますので、その中の一環として、各学校のいいホームページの例とかそういうのも紹介をしながら、今御指摘のようなことを推進するような努力も重ねていきたい、このように考えております。

福田(峰)分科員 ぜひお願いしたいと思います。

 文科省の方から、今、小学校でホームページをつくる全日本小学校ホームページ大賞みたいなものを慶応の村井先生が中心にやっているんだと。いや、これは私も不勉強で、ああ、こんなことをやっているんだと思って見ると、神奈川県の代表で横浜の学校があったり、自分も不見識だったなと思うところがあるのですが、こういうところを通じて、やはりいいものをつくっていかなきゃならないと思います。

 その内容がいいものでないと、私もホームページをつくっていますが、とかく余りにこだわり過ぎて、化粧見ばえは非常にいいんだけれども、実はその中身が何にもなかったり、あるいは趣味に近い性格に入っていってしまって、趣味としては立派なんだけれども、本来提供すべきものは何なんだかよくわからなくなってしまうホームページというのは、これは学校だけじゃなくて、よくあるわけです。

 そういうふうになってしまうと実質的なものではなくなってしまいますから、私は、これは学校ですから実質本位であるべきだし、内容をしっかりと提供して、学校の先生も子供たちも情報を共有しながら、いい学校をつくるというところに踏み込んでいただきたいなというふうに思います。

 これで質問を終わらせていただきたいと思います。

実川主査 これにて福田峰之君の質疑は終了いたしました。

 次に、笠井亮君。

笠井分科員 日本共産党の笠井亮です。

 小泉内閣の五年、規制緩和政策が全面的に進められる中で、雇用労働分野で非正規雇用が増大しております。フリーターと呼ばれるアルバイト、そしてパート、派遣、請負、契約社員などが二十四歳以下では二人に一人、こういう状況になっている。

 実は、昨日朝、NHKの「生活ほっとモーニング」という番組で「年収二百万円で暮らす 広がる格差社会」という特集がありまして、その数が一千万人以上になっていると。特に、青年のフリーターの低賃金、不安定な雇用関係で、食べるのもやっと、そして、ホームレスと紙一重ということで結婚もできない、こういう、文字どおり青年が使い捨てにされるという深刻な実態と、それに立ち向かうということで、個人加盟の青年ユニオンの組合活動を紹介しておりました。視聴者は、青年の雇用問題ということで、その解決、改善は日本社会にとって喫緊の政治課題であると感じたというふうに私は思うんです。

 そこでまず文部科学省に伺いたいんですけれども、私、この首都圏青年ユニオンというところの組合を訪問しました。そこでの話なんですが、フリーターの青年から持ち込まれる相談の中で、慢性化しているサービス残業や、あるいは有給休暇が一日もとれない、労働基準法に幾つも違反している職場の実態が明らかになってまいります。そこで、どうしてこんな無法なことになっているのかと私が伺いますと、憲法や基準法で労働者が守られていることとか権利があるということについて若い人たちが全く知らなかった、ほかの社員も知らないので黙っている、それで、世の中はこんなものか、自分は能力がないので仕方がない、こうも思っていたんだという話もありました。労働基準法も、学校では単語としては確かに覚えた、記憶にあるんだけれども、内容は全然知らなかったという話もありまして、そういうケースがほとんどだということでありました。

 このようなことから、相談を受けた担当者から、せめて高等学校の公民の教育の中で、もう少し労働者といいますか働く者の権利について、せめてきちんとした教育をすべきじゃないかという意見を聞いてまいりました。

 そこで文部科学省にお伺いしますが、高校の公民の教科書で実際にはどのようにこの労働者の権利ということについて教えられているのか、簡潔にお答えいただきたいと思います。よろしくお願いします。

銭谷政府参考人 高等学校の公民科では、中学校での学習の上に立って、基本的人権の保障や雇用と労働問題などについて学習をするわけでございます。その中で、労働基本権など労働者の権利についても指導されております。

 一例を申し上げますと、例えば現代社会の教科書の例でございますが、日本国憲法において、労働三権、すなわち、労働者が団結して労働組合をつくる権利、組合が賃金その他の労働条件の改善を求めて使用者と交渉する権利、要求が通らないときにはストライキなど団体行動を行う権利、この三つの権利が労働者の基本的権利として認められているといったような記述が見られるところでございます。

笠井分科員 学校ではそういう形で教えられるんだけれども、働くという自分の問題との関係でいうと、実感として学ぶことはなかなか難しいのかなというところがあって、その辺が大いに工夫が要るところだと思うんです。そこで私、一週間前の二月二十一日になりますが、小坂大臣の地元である長野県に伺いまして、県庁の社会部労政課に伺って話を聞いてきました。

 長野県では、高校生や専門学校、短大生に対して、就職する前に知っておくべき労働関係の基礎知識を労政事務所の職員が高校に出向いていっていわば出前の講座をするということで、新社会人ワーキングセミナーという授業をやっていると。伺いますと、東京オリンピックのあった昭和三十九年、一九六四年からずっとやっているという話でありまして、なるほどと思ったんです。学校側からの要請に応じる形で、ロングホームルームの時間などを使って、ここに持ってきたんですが、大臣にお渡ししてよろしいでしょうか。

 「職場で必要なルールブック」ということで六十二ページの小冊子なんですが、これを配付して一時間余り講義をするということでありました。この冒頭に「はじめに」とあるんですが、「みなさんが社会人として最低限心得ておくべきマナー、」そして、「職場での権利や義務のことが定められた労働法のうち、自分の賃金や労働時間などの労働条件で直接関係してくる労働基準法を中心とした基礎知識、」そして、「最近若者の間でも増えているパートタイム労働者や派遣社員として働くときに知っておきたいことについてまとめた」「ぜひ、このパンフレットを手元において、職場に入ってからも、時には取り出してみてください。」そして、困ったときには相談にどうぞということで、労政事務所が案内されております。

 私、これはいいものができているなと思ったんです。労働法とはどういうものか、労働者とは何ですかということから、女性労働者のどのような保護をされているかという問題、セクハラの問題を含めて多面的に書かれております。

 伺いますと、昨年度、平成十六年度の実績では、高等学校と技術専門学校等の合計三十七校に対して出向いていって講義をした。前年度に比べると七百二十七人多い二千七百四十五人という若い人たちに話をした。それと別に、この小冊子のみを提供ということも三十五校あって、それで五千三百六十九部が活用されているということでありました。

 そこで、小坂大臣、地元の長野県でこんな生きた教育が四十年以上も前からやられているということで、今も続けられているということを御存じだったかどうか。そして、御感想があれば伺いたいと思うんですが、いかがでしょうか。

小坂国務大臣 笠井委員の御指摘でございますが、この「職場で必要なルールブック」、この本体は、実は、今お渡しいただいて初めて目にしました。社会人ワーキングセミナーを行っていること、そういう活動そのものは知っておりますが、具体的にこういうブックを配って、そして、今おっしゃったような人数が受講している、たまたま、御質問いただいた中で資料は手持ちで全部持っておりますけれども、ただ、御指摘の部分については今回そういう認識を新たにしたところで、四十年の長きにわたってこういうことを続けているというのは非常にいいことだなと思いますし、これによって、社会人になってからも迷わないで、社会人としての基礎的な知識を身につけて、そして就職をしているという方がふえているんだろうと思いますから、いい活動だと思いますね。

笠井分科員 今、大臣言われましたけれども、長野県ではこうやって学校当局と行政の労政課が連携してこういうことをやられている。このような取り組みがほかの県でもあるんだろうかということで、もし文部科学省でつかんでいることがあれば伺いたいんです。

 そして大臣には、このような生きた教育がもっと広がって全国的にもやられる必要があると思うんですけれども、見解を伺えればと思うんですが、いかがでしょうか。

小坂国務大臣 生徒の皆さんが社会に出るときに、社会を支えてくれる人材として自立した活動を行えるようなそういう資質や能力を身につけるということは大変重要なことでございますから、単に教科で学んだことだけでなく、こういった社会人としての知識を得られる機会をふやすということは大変重要なことだと思います。

 そういった観点に立ちますと、地域や生徒の実態に応じた指導の工夫、そういうことが学校においては行われているわけですが、もう既に社会人になって活躍されている外部の皆さんを招いて話を聞かせるような活動とか、あるいは今、こういった労政課の人に来てもらって、こういうブックのような教材も、教材といいますか副読本みたいなものも使いながらその実を上げるということはいいことだと思います。

 全国的にも普及させるべきと思いますけれども、その点につきましては、各都道府県の指導主事を集めた協議会のような場を通じて御指摘のあったような事例を紹介するなど、取り組みについての情報提供を行えれば、こう考えております。

笠井分科員 関連して厚生労働省に伺いたいと思うんですけれども、私、この首都圏青年ユニオンやあるいは東京の青年たちに話を聞きに行きながら、この日本の企業社会というのが、ある意味、十九世紀にタイムスリップしたんじゃないかと錯覚するほどの大変ひどい状況も幾つも聞いてまいりました。各地で、青年の中で、そういう状況をまとめた黒書を出したりもしております。

 幾つか紹介しますと、印刷関係の会社で月百時間以上の残業、体を壊したら退職強要を受けて、結局解雇された。それから、年商十八億円の企業なんですけれども、そういう企業が、うちは江戸時代創業の伝統があり、うちのやり方がある、残業代を払って四十時間制にするとつぶれてしまうと言われちゃったと。常勤パートで週三十時間以上働いているのに、厚生年金、健康保険に加入させてくれない。あるいは、就業時間は九時から十七時、週休二日で就職したけれども、実際は八時半から深夜零時過ぎまで働かされて、休みは月一回しかとれない。上司に言うと、自分の力で契約をとったら休んでもいいと言われた。体が続かなくなって会社をやめるときに、過去のサービス残業代をぜひ下さいと請求したら、あなたはやくざのようだ、この世界では二度と働かせなくしてやるというふうにおどかされたというような、たくさんの事例がありました。

 そうしたほとんどは、労働基準法などの現行法や、それから労働裁判で既に確立している判例に照らして違反するものばかりというふうに言えると思うんです。そしてそれ以外にも、相談にも来れずに、一人悩んで引きこもりという方がたくさんいるということでありました。

 厚生労働省も、労働基準監督署や労働者相談コーナーにさまざまな青年の労働者から労働相談が持ち込まれていると思うんです。きょうは青木局長お見えですけれども、それらの相談の主な内容も、同じように、現行法、労働基準法などに違反するようなものが多いんじゃないかと思うんですけれども、何らかの指標があれば、それも含めて現状についてお答えいただきたいと思います。

青木政府参考人 今、委員お話しになりました総合労働相談でございますけれども、各都道府県労働局でありますとか監督署の中、あるいは駅の近くのビル、そういった中に合わせて全国で約三百カ所ぐらい、そういう労働に関するあらゆる相談を受けようということで設置いたしております。

 ここに平成十六年の実績でございますが、平成十六年で総合労働相談の件数というのが八十二万三千件以上ございます。この相談件数の内訳でございますけれども、事項としては、解雇にかかわるものでありますのが五万件弱、退職勧奨なども含めますと五万件を超えるというような状況でございます。そのほか、労働条件の引き下げというような問題などが多いということでございます。ただ、このうち、法違反にかかわるものかどうかというのは、そういう集計をしておりませんのでわかりません。

 しかし、労働基準法関係の法違反に関しましては、労働基準法上、労働基準監督署に申告をすることができるということになっておりますので、その申告の件数ということで見ますと、平成十六年には、新規に申告受理をしたという件数は全国で三万六千六百二十八件ということになっております。

笠井分科員 首都圏の青年ユニオンの話では、フリーターの青年からの相談内容というのは、労働基準法を初めとして労働安全衛生法など現行法の違反がほとんどなので、勇気を出して、職場でおかしいことはおかしいということで会社と団体の交渉をすれば、残業代を三百万円払わせることができたという台東区の青年の例等を初めとして、その大部分、九割以上、九九%が解決できるという話でありました。青年労働者自身が労働法の知識がないばかりか、団交の相手である会社側も、八割ぐらいが労働法の知識を十分持っていないということもあるということでありました。

 労働基準法などのルールはあっても、労働者はよく知らない。そして、使用者側も知らなかったり、知っていても守らないという現実があって、その結果、いわゆるルールなき資本主義と私たち言っていますけれども、そういう事態を生み出している。放置してはならないというふうに思うんです。

 それで、日本じゅうの使用者にも労働者にも労働基準法などをあまねく周知して遵守をさせる、このことは労働行政でいえば最も大事な仕事だと思うんですが、その点はそういうことでよろしいですよね。青木局長、お願いします。

青木政府参考人 今、委員がお話しになりましたように、労働基準関係法令というのは、これは最低基準を定めるものということでありますので、そういう意味では、私どもこれを施行する者からいえば、まずもって、おっしゃったような関係する人たち、労働者だけではなくて使用者の方々ともどもこういったものをよく知るということが大事だ、基本だというふうに思っております。

笠井分科員 そこで、ここに持ってまいりましたが、東京都では「ポケット労働法」という冊子を出しております。東京都が出しておりまして、厚生労働省はお持ちだと思うんですが、大臣にちょっとまたこれも。

 これもまた長野と同じような形で、やはりわかりやすくということだと思うんですが、その「はじめに」というところにありますけれども、

 平成十六年度の労働相談件数は四万四千七百三十七件となっており、相談内容をみると、「解雇」や「賃金未払い」をはじめとする深刻な内容が多く寄せられています。

  しかし、これらの相談の中には、もしかしたら労働法の知識はあればトラブルにならずにすんだのではないか、また、これほどの不利益を受けずにすんだのではないかと思われるものも少なくありません。

  そこで、東京都では、労働法を始めて勉強する労働者あるいは使用者の方を対象に、職場の中でいかに労働法が身近で、大切なものであるのかということを知っていただくために本冊子を作成しました。

と、その趣旨が書いてあります。

 そのほかに東京都では、青年向けに「派遣労働Q&A」という冊子なんかも出したりしておりますけれども、私は、これも非常に大事な取り組みだなと思います。これを青年も求めながら、東京の区段階で増刷をする、あるいは成人式のときに配るということも取り組みが始まっております。残念なことに部数が少ないんですけれども、青年労働者の中では大変評判がよくて、なるほど、自分たちはこういう権利を持っていたんだということを、改めてというか、初めて知ったということが多いわけであります。青年ユニオンによりますと、この「ポケット労働法」を活用して団体交渉というか話し合いをやって、さまざまな問題を労使間で解決しております。

 憲法二十七条に基づく最低労働条件としての労働基準法、そして憲法二十八条の団結権、団交権、団体行動権の保障としての労働組合法などの周知というのは、今、局長からもありましたけれども、厚生労働省あるいは政府としても重要な業務であると思います。労働法の初歩的、基礎的な知識が労使双方に広がっていくことは、ルールある企業社会をつくっていく、日本社会をつくる上での基礎的条件だと思うんです。

 そこで、こうしたものが、一方では、求人のときに、駅頭とかそれからコンビニのところで求人誌が無料紙を含めて今いっぱいあります。こういうものもあわせて同じところにあるというのは、本当に大事じゃないかという声も上がっております。

 そこで厚生労働省に伺いたいんですが、長野県や東京都がつくっているこうしたパンフレット、小冊子のようなものを、厚労省としてはつくっているのかどうか。

 それから、毎年これは法改正がありますよね、労働法関係は。いろいろな改悪とか私たちも指摘させてもらう問題もありますが、そういう点では、法律自身が変わるという点でいいますと、厚生労働省がまずひな形、版下をつくって、みずから発行して、地方自治体にも版権は無償で提供するということも一つあると思うんです。地方自治体への補助金ももっと充実して、全国どこの県でも発行できるように推奨するとか、こういうことができないかと思うんですが、いかがでしょうか。

青木政府参考人 今お示しになりましたような、働くことにかかわるさまざまな関係法令等々についてまとめた小冊子のようなものを私どもとしてつくっていることはありません。労働基準法でありますとか派遣法でありますとか、それぞれではパンフレット等をたくさんつくっているわけでありますし、お話にありましたように、法律の改正などの折には、そういったことを十分周知するためにさまざまな周知を行っております。

 現在でも、各都道府県労働局あるいは労働基準監督署の窓口におきまして、そういったさまざまなパンフレットを備え置きまして、そういったものを配布する。あるいは、事業主の方々に一堂に集まっていただきまして集団指導をする。そういう場合に、十分現在の法令等を説明する。あるいは、労働基準監督署から監督官が事業場に、臨検監督と言っておりますけれども、立ち入りをいたしまして監督指導を行っているわけであります。年間十七万件ぐらいありましょうか、そういった際には、十分そういったことを周知するための指導をする。あるいは、さまざまな労働関係団体、これは事業主の団体も数多くありますが、そういったところでセミナーなども開催をされる、その際にも十分周知をするというようなこともやっておりますし、最初に申し上げましたような総合労働相談コーナー、そういったところでの周知にも努めているところでございます。

 先ほど申し上げましたように、基本的な関係法令の周知というのは、私どもとしても大変大切だと思っておりますので、そういったようなことで今後とも努力をしていきたいというふうに考えております。

笠井分科員 今お話がありましたが、労働基準監督署が行っている、事業所を対象にした臨検して監督する定期監督というのは、私が承知しているところでは、一年間で事業所の四%程度だと思うんです。二十五年に一度しか監督できないのが現状だと思います。

 さらに、労働組合の組織率というのが年々低下している。加えて、派遣や請負などの不安定雇用がふえている中で、最低労働条件を使用者に守らせるためにも、さらにはまた労働者がみずからの法的権利を行使できるようにするためにも、国としても、東京や長野の例も参考にしながら、ぜひ、「ポケット労働法」のようなものを発行するということで、まとまった形でやることを検討してもらいたいと思います。

 次に、就業規則について伺いたいと思うんです。これも厚生労働省ですが、これも青年ユニオンから聞いた話なんですけれども、就業規則というのが、社内にはあるけれども、経営者の前の机の上に置かれていたり、あるいは閲覧しにくい。社長の真ん前で見なきゃいけない。コピーをとろうとしたら断られて、昼休みに何回か分けて、自分で社長のというか経営者の面前で書き写したというので、私、これ、ちょっとそのコピーを預かってきましたけれども、こういうふうにしながら自分がどういう就業規則にあるかということを知るようになっているということでありました。

 それで厚生労働省に伺いたいんですが、就業規則の閲覧などについて労働基準法ではどういうふうに規定をされているでしょうか。

青木政府参考人 労働基準法第百六条におきましてこの就業規則についての定めがございまして、労働基準法及びこの法律に基づく命令の要旨、就業規則、あるいは三六協定、そういった各労使協定を、常時各作業場の見やすい場所に掲示し、または備えつけること、書面を交付することその他厚生労働省令で定める方法によって労働者に周知することを使用者に義務づけております。

笠井分科員 そこで、今のを二点ほど伺いたいんですが、今言われた点に関連してですが、社長や経営者の前の机というのは、条文が言う見やすい場所と言えるのかどうか。

 それからもう一つは、書面を交付するというふうに今条文でありましたけれども、労働者の側がコピーをさせてほしい、コピーをとりたいと言ったら、当然それは許可すべき規定ではないかと思うんですけれども、見えやすい場所というのと、書面交付、コピーという問題について、どういうふうに考えたらいいのか、答弁を求めたいと思います。

青木政府参考人 まず、先ほど申し上げました見やすい場所でございますが、これは施行規則で定めているわけでありますけれども、一般的には、労働者が常時就業する場所で、就業規則等を容易に閲覧し得る場所ということになっております。

 今お話しになりましたケースというのは、個々具体的に判断をしないといけないと思いますけれども、極めて典型的なケースでいえば、真ん前で頑張っていたらなかなか見やすい場所とは言えないだろうと思います。そのケース、ケースで考えなければいけない、実態判断をしなければいけないとは思いますが、そうだろうと思います。

 それから、書面を交付するというのは、就業規則であれば、印刷物あるいは複写したものを労働者に手渡すということであります。これは、平成十年の労働基準法の改正におきまして、就業規則等が労働者に確実に周知されるようにということでつくられた規定でありまして、見やすい場所への掲示あるいは書面の交付のほかに、例えば、磁気テープや磁気ディスクなどに記録した内容をコンピューターなどによって労働者が常時確認できる、そういうような場合でもいいんだということを言っていますので、必ずしも交付しなくちゃいかぬ、それをやらなくちゃいかぬということではありません。そういうことできちんと労働者にわかるようにしなさいという趣旨でございます。

笠井分科員 社長の前は難しいだろうという話と、それから、コピーはいいし、磁気テープやディスクでもいいという話なので、私は、現場ではなかなかそうなっていないので、今の局長の答弁というのは、今後、行政通達などにも生かしていただきたいと思います。

 最後になりますが、大臣、今、大臣に冒頭伺った後、厚生労働省ともやりとりをさせてもらいました、聞いていただいたと思うんですけれども、若い人たちがどんな生き方でも人間らしく生活できることを目指すというのは、当然だと思います。就職を前にした高校生や専門学校生、大学生に最小限必要な労働法の知識を身につけてもらうことは、本人のためにもなりますが、これは、今後の日本の社会がきちんとして、やはりルールの上に築かれていくためにも、さらには、年金制度や社会保障制度の維持発展の上でもどうしても必要だというふうに私は思うんです。

 政府は、平成十五年の四月に若者自立・挑戦戦略会議というのを設置されて、文部科学大臣、厚生労働大臣を初めとして関係大臣を構成員にして、若者自立・挑戦プランというのをつくられて、改訂版もことしまた一月出されました。私、これを拝見しまして、来年度予算で七百六十一億円という相当の額、それなりの額がついていますが、このプランの中では、若者への労働法の普及の重要性、今申し上げた点については明確になっていないんじゃないかと率直に思うんです。

 今のプランの中で、間もなくこれは終了しますけれども、次の期間ということになると思うんですが、次の立案のときには、大臣の方から、関係省庁の大臣を初めとして戦略会議の場で積極的に問題提起をしていただいて、長野県にはこういう経験がある、あるいは東京都にもこういうものがあるということで紹介もいただいて、政府としても発行するとか、地方自治体にも推奨して、労働者の権利、労働法について周知するための手だてをぜひ提案していただきたいと思うんですが、そのことを最後に伺いたいと思います。

小坂国務大臣 御指摘のように、若者自立・挑戦プランにおきましては、勤労観、職業観の育成を図るということを目的に掲げておりますし、学校教育の活動全体を通じまして、系統的なキャリア教育というものを推進しているところでございます。

 文部科学省としては、これまでも、またこれに基づき、各学校段階を通じたキャリア教育を推進するための取り組みを実施しておりますけれども、今御指摘のような視点も踏まえる中で、労働法や労働者の権利について、キャリアの積み上げの上で必要な最低限の知識、こういった意味で、現在も中学校の社会科や高等学校の公民科などにおいて指導しているところでございます。また大学においては、法学部などにおいて、より専門的かつ高度な観点からの労働法や労働者の権利に関する授業科目が設定をされております。

 今御指摘のように、今後の自立プラン推進に当たっては、そういった視点も踏まえて取り組んでほしいという御要請でございますので、今までにもやっておりますそのことでございますけれども、もう一度そういった目でチェックをしてみて検討させていただきたい、こう思っております。

笠井分科員 終わります。

実川主査 これにて笠井亮君の質疑は終了いたしました。

    〔主査退席、奥野主査代理着席〕

奥野主査代理 次に、岩國哲人君。

岩國分科員 小坂文部大臣に初めて質問をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 大臣もおっしゃっておられますし、私もかねがね、海外から日本という国を見て、これからの日本の将来というものを考えるに当たって、日本は石油とか石炭、そういう資源に恵まれない、しかし、たった一つ恵まれている資源は人間という資源だ、そういうことを訴えてまいりましたし、その最も大切な日本の未来の資源づくり、人間づくりを担当される小坂大臣に我々も大いに期待しております。その角度から御答弁をいただきたいと思います。

 まず最初に、世界の先進国と言われるアメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、そういうところと比べて、日本の学校教育にかける予算、GDPのどれぐらいの比率で、どれぐらい劣っているのか、この点を端的にお答えいただけますでしょうか。

玉井政府参考人 諸外国と比べまして、GDPで比べますと、二〇〇二年がこれは今一番新しいものですから二〇〇二年で見ますと、公財政支出の割合で、学生への生活補助を除いたもので比較しますと、日本が三・五、アメリカが五・三、イギリス五・〇、フランス五・七、ドイツ四・四という数字でございます。

岩國分科員 大臣、お聞きになりましたか。今三・五、よその国は五・五。仮に、二%日本の比率を上げるとすれば五・五%。あと二%上げるためには、GDPの二%を上げるためには、何兆円のお金を積み立てれば外国並みの五・五%になりますか。そんな難しい計算じゃないと思いますから。いやいや、大臣、副大臣ですぐ。馳副大臣、答えてください。今、頭ひねっていらっしゃっております。

 いいですか。GDP五百兆円とすれば、GDPで三・五%の日本が五・五%にするためには、あと何兆円のお金をこの学校教育予算にかければいいかということです。簡単な掛け算と割り算だけでしょう。

馳副大臣 今頭をひねっておりましたが、わかりやすくいえば、あと十兆円はその余力があるはずだということになります。

岩國分科員 いいですか、小坂大臣。あと十兆円。要するに、よその国並みに日本の子供たちのためにお金をかけるとすれば、あと十兆円我々は必要としている。

 その十兆円を国がかけないで、今だれが負担しているのか。父兄ですよ。父兄が十兆円を負担しているということは、消費税で換算すれば、日本は教育という目的消費税を何%かけられているということになりますか。消費税一%は二兆円。十兆円ということは、教育目的税五%を背負いながらやっているのが、これは日本の父兄ですよ。しかも、子供を持たない家庭にそれが集中的に負担させられているということは、子供のいる家庭に換算すれば、大ざっぱに言えば、隠れた教育目的税が一〇%ぐらい負担させられてやっているのが日本の現状じゃないでしょうか。

 外国で子供を育てるか、日本で子供を育てるか。日本で一〇%の教育目的税を負担しながら子供を教育する父兄と、教育目的税のない国で子供を育てるのと、この大きな格差について、小坂大臣、どうお考えになりますか。

小坂国務大臣 岩國委員独特の手法で、外国と国内との教育環境の違いを御説明されましたけれども、我が国のGDPに占める公財政の教育支出の割合という点からしますと、やはり我が国の場合には、大学の場合、私学が多い。それから、公財政支出のGDPに占める割合というもの、その全体が少ない。すなわち、小さな政府を目指している。共産主義国のような形ではない。また、高福祉といえどもその体系が違うということもありまして、先ほど引かれた、また、うちの官房長から説明を申し上げた、OECDのGDP対比のパーセンテージを紹介したものが、そのまま我が国の教育の取り組みの姿勢というものに直接的に反映したものではないということは御理解いただいていると思うわけでございます。

 そういう前提をお互いに認識した上で、それでは、今の岩國委員の計算をそのまま、ある意味で仮定として、前提、前置きをしたとすると、そういった格差を民間が支出をしているんだ、すなわち家庭がその負担をしているんだと。これは国がもっと幅広い税金の中から支出してはどうかという御提言なのかもしれません。

 我が国の教育水準というのは、同じようにOECDの比較の中でいいますと、教育水準そのものは先進国の中でも低い方ではなくて、むしろ高い方にある。そういうことを考えますと、これから公的な負担をもっとふやして、そしてもっと充実を図るべきだという主張もあるかもしれませんが、今の形の中でかなり効率的にやっているという見方も、逆に言えばできるという評価もあるわけでございます。

 ただ、生活費、それから生活の豊かさというものをどう実感するかという点の内外比較をしますと、お互いに海外に住んだ経験等を持ちますと、何となく海外の方が生活しやすいなと思うこともあります。しかし、これは国民性といいますか、最近感じることは、だんだん年をとってくると、日本というのはいいところだな、こうも思うわけでございまして、一概に数字の上で比較をし、また、こうすべきだというものに直結するような格差というものを、私自身は今の中で、それは改めるべき点はたくさんありますよ、ありますけれども、今のような数字の上で、あと十兆円、これをどういうふうにしますかという点で方向性を申し上げるとするならば、今の中での効率性を向上させ、国民負担をできるだけ抑えながらやる方向性は努力をいたしますが、消費税を上げるということをおっしゃっているんじゃないと思いますが、別の税金で賄えと言われても、なかなか今の財政状況では難しいんではないかな、こういう印象を持っております。

岩國分科員 いろいろな国や国情というのもありますし、それから、先進国に至るそういう近代化の過程が違っているということもあると思います。一概に比較するのは無理があっても、互いに比較しながら、今、よその国との教育競争というところに来ているんじゃないでしょうか。

 国際化、グローバリゼーションというのは、それぞれの国の人材をどれだけ多く、それぞれの国の教育力、学力をどれだけ高くするかということによって、これは為替レートの競争とはちょっと違いますけれども、学力競争の時代に今入っているときに、今までは日本は効率よく、よその国がまだおくれているときにはそれでよかったかもしれない。しかし、今まで教育にお金をかけられなかったような国がどんどん今追いついてきています。もう追い抜いてきています。だからこそ、もっと、大臣のおっしゃる日本の唯一の資源は人間だというそのキャッチフレーズを名実ともに数字の上で、予算の上で上げていかなきゃいかぬと思う。

 小泉内閣が誕生して、米百俵の精神を高らかにうたわれました。恐らく日本の父兄の方も教育関係者の方も大いに期待したと思います。小泉内閣が誕生したその年の予算における学校予算、先ほど御紹介いただきました。それから何兆円ぐらいふえましたか。五年間にふえた金額をおっしゃってください。

玉井政府参考人 平成十八年度予算案、文部科学省一般会計予算案は五兆一千三百二十四億円でございますので、平成十三年度と比べますと一兆四千四百六十億円の減となりますが、この間の傾向につきましては、この間、三位一体改革におきまして補助金改革が行われました。一般財源化、税源移譲が行われました。また、人事院勧告でマイナスの影響額がございます。これらを計算いたしますと一兆五千七百十八億円がその影響額でございますので、それを除きますと、逆に一千二百五十八億円の増という計算になるわけでございます。

岩國分科員 かけ声の割にはほとんどふえなかったということですね。まあ大臣も副大臣も苦い顔をしていらっしゃっている、そのお気持ちはよくわかります。あのかけ声の大きさに比べて何たることか、そういう思いでいらっしゃると思いますし、私も残念に思います。

 まあこの点は、この場所で議論するというよりも、またこれは別の場で議論をしなきゃならないことと思いますから、次の点に移ります。

 三位一体というお言葉が先ほど出ましたけれども、三位一体、これはいい面もありますし悪い面もあります。私も地方の行政を担当した立場からいって、教育におけるこの三位一体というのは、私ははっきり言って反対であります。まあここでは議論を尽くすだけの時間がありませんから。

 これからの教育の地方分権というのは、これはよほど慎重でなければならない。それは江戸、明治以来、日本のいろいろな町村が努力してまいりました。しかし、町村の経済格差がだんだん激しくなってきている。また家庭の所得格差が激しくなってきている。この二つの格差の影響をもろに受けるのは教育なんですね。教育費の支出を一番最初にその対象にする、やり玉に上がるということではありませんけれども、結果的にそうなる場合が残念ながら非常に多いわけです。

 江戸、明治のころに、そのころの日本で一番教育に熱心だったところはどこだったか。限られた私の知識ですけれども、そのころは長州藩、それから信州。信州教育、長州教育、この二つは当時から日本の教育界の一つのお手本として、小坂大臣、選挙区は長野県ですから、そのことはよく御存じだと思います。これこそお手本にすべきだと。それ以外のところは全くだめということはありませんけれども。

 信州教育、長州教育、この二つは何が特徴だったのか。信州教育と言われて、長野県は非常に教育に力を入れてきました。隣の石川県、愛知県というと、余り石川教育とか愛知教育というのは聞いたことがない。まあその辺でかなり格差があったようですけれども。大臣、信州教育の特徴は何だったのか。それを支えてきたものは何だったのか。支えてきた要素が三つあるとすれば、端的にこれとこれとこれとおっしゃっていただけますか。

小坂国務大臣 御指摘の信州教育、私ども、信州出身だということを申し上げますと、ああ教育県ですね、こう言われる。長野県は教育県だという認識が一般にあるわけでございますが、現実は最近は、共通一次が学力をそのままはかる尺度だということを是認するつもりもありませんが、一つの指標とするならば、沖縄に次いで下から数えた方が早いというのが最近の信州教育の現実だというのは、信州に住む者みんながやゆしながら言っていることでございます。

 その立場からすると、過去の信州教育のよさ、どういう点にその評価を求めるか。なかなか難しいところでありますが、一つは、信濃教育会というものが設立をされる中で、教員らの自主的な研究教育活動が非常に盛んであったということ。それから、信州人の気質。新しいものに対して果敢に取り組む、そういう気質があるということ。そしてまた、そういったものを基礎として、文武両道にわたって非常に熱心な取り組みが明治以前からも行われていた。そういう基盤があって、その上に図書の編さんやいろいろな自主活動が行われて、そして信州教育そのものを高めてきた。こういった下地があったと思うわけであります。

 そういう意味では、現状をいろいろ振り返る中で、これからしっかりやっていかにゃいかぬな。信州教育を再生するというのも、私のこれからの長い政治活動、まあこれから長いといってもそんなに長くありませんが、そういう中で取り組んでいく課題の一つだと認識をいたしております。

岩國分科員 ありがとうございました。

 今、小坂大臣がいらっしゃるからこそ、私はこの信州教育を取り上げたい、また価値があると思ってきょうお話ししておりますけれども。

 教育の地方分権ということがうたわれる。一方では教育の国際競争ということがうたわれる。そして日本の未来、やはり人間というものをもう一回資源としてとらえる。いろいろな角度から、私は、こういう特徴のある信州教育のよさというものを再発見するということが我々にいい教訓を与えてくれるんじゃないかと思います。

 私も、外国にいるときから、日本のいろいろな国を見ながら少しは勉強しましたけれども、私が市長を務めた島根県、江戸時代、明治時代から出雲教育、島根教育と言われたことは一遍もなし。それどころか、各県の比較の中で、文をせず、武もせず、わずかにお茶心あるのみと言われているのが島根県。学問もしない、武道もしない、毎日お茶ばかり飲んでいる、そういうふうにやゆされるところと、この信州教育、島根の隣の長州教育、うらやましい限り。

 信州教育を支えてきたのは、私が読んだ文献の中でも、信州人の三つの気性、一つは情熱的、二番目に辛抱強い、三番目に理詰めである、この三つが教育のために必要だと。四番目、あえて四番目のところに書いてあったのは、一番大切なことは、教育にはお金に糸目をつけないこと。なるほどと私は思いました。だからこそ私は、今の日本の学校予算というものに対して警告を発したいわけです。

 さらに、いろいろな要素の中に、能勢栄という方がいらっしゃったんでしょうか。この人は、留学して世界の先進国の教育のあり方をつぶさに見て、そしてふるさと信州でしっかりとしたその信州教育の原点を築いた。そういう具体的なリーダーがいるということ、これもやはり必要だったんだな、そのように思いました。

 そこで、この留学生制度についてお伺いしたいと思います。

 今、日本から外国へという留学生は数も随分ふえました。私費であるいは公費でたくさんの留学生が出かけました。問題は受け入れる側。特に近隣アジア諸国との関係において、もっともっと留学生にこの日本の中で勉強してもらいたい、そして日本のいい友人となって帰ってもらいたい。それがまさに、外交はお金ではなくて、外交は人である、その人の基礎をつくるのは、まさに留学生の交流ではないかと私は思います。

 数は、皆さんの努力、日本の予算のつけ方によって順調にふえてきておりますけれども、今、小泉政権だけが悪いわけではありませんけれども、いろいろな不幸な出来事も重なり、そして外交方針の食い違いもあって、残念ながら、アジアの中で日本は孤立化の道を歩みつつあると思います。だからこそ、私は、もっともっと留学生の数がふえて、お互いの相互理解を深めていく、そして両方に留学生仲間がいて、日本がアジアから孤立しないようなしっかりとした貢献をしてもらいたい、そのように思います。

 小坂大臣、この留学生制度についてどういう方針を持っていらっしゃるか、大づかみのところで結構です。今のままで満足していらっしゃるか、それとも、ODAの予算もJICAの予算もいろいろな予算ももっともっととってきて、留学生の枠をもっと広げたいという具体的な抱負を持っていらっしゃるか、お答えいただきたいと思います。

小坂国務大臣 留学生交流というのは、今さらに申すまでもなく、諸外国との友好関係を築く上で大変重要なものでありますし、お互いに人によってつくられている国でございますから、その国の構成員たる人、人間同士がお互いに交流をし、理解をするということが、国際平和そして国際協調の中での相互の国の発展において非常に重要なことであります。その意味で、今日まで我が国が行ってきた対外援助の中で、物による援助よりもこれからは人材の支援に重点を移すべきだという一つの方向性を私も考えておりますし、委員もその辺を御指摘なんだと思っております。

 今日、私どもの予算の規模は、平成十八年度の予算案では、大変厳しい財政状況のもとでありますけれども、留学生の受け入れ体制を整備するために、国費留学生受け入れの充実という観点から百人増、数字としては少ないなとおっしゃるかもしれぬが一万一千七百八十三人、これを決めるとともに、私費外国人留学生に対する学習奨励費の充実という観点で一万二千人、これも百人増、授業料減免学校法人の援助の充実という観点から三十三億三千六百万、これは一千万増ということで、いずれも、少なくとも方向性は、各予算が査定の中で厳しく切り込まれる中でプラスを得ているということは、私どもの努力の方向性は少なくとも御理解をいただけるだろうと思っております。

 また、これと同時に、各大学における英語による授業の実施、また教育指導体制の工夫を図って、留学生の宿舎の確保、整備に取り組んでいるということを御理解いただいて、今後とも留学生交流の一層の推進のために私どもも関係予算の充実に努力をする、こういうことを申し上げて、私の考え方の基本だけ御理解をいただきたいと思います。

岩國分科員 御努力はよくわかりますけれども、ただ、努力のスケールが一けた私は違うんじゃないかと思うんですね。やはりこれだけアジア外交ということに一般国民までが靖国神社のおかげで最近は関心を持っています、まあ皮肉を言っておりますけれども。

 そういう国民までがアジア外交、大丈夫かということで心配を持っているときに、やはり小坂大臣のこの方針で、アジア外交は人から始めるんだと。日本の文化も、昔は遣唐使その他の留学生が外国から文化を持って帰って、日本の文化を、歴史をつくってきたじゃありませんか。それと同じように、アジアの日本から見れば経済規模の小さい国も、それぞれの国を立派につくりたいと思っているに違いありません。

 だからこそ、そういう国に対して思い切った留学生制度の方針というのを打ち出すことによって、日本は発想を転換してきたと。今までは経済外交、何とか外交、窓口がいろいろあって、ちょびちょびやっているけれども、人の交流というのは全部それを、そこの予算もたくさんに使って今までとは全く発想が変わってきたと言われるような新しい時代を、ぜひ小坂大臣にはつくっていただきたいと思います。

 今だからこそやらなきゃならないし、今だからこそ私は国民の理解とそして賛同が大いに得られる、予算のつけ方はここだと思うんです。歳出削減がいかに叫ばれていても、そのことを一般の人はよく理解しながら、ここにだけは、教育にだけはお金をつける、そして留学生の受け入れはもっとしっかりお金をつける。それが、自分たちの次の時代、子供の時代、孫の時代に日本が孤立しないための一つの日本の未来への投資。日本の安全保障体制は、こういう留学生のそこにも生きてきているんだ。そういうものをぜひわかりやすい言葉で、そしてこれからの予算のつけ方で必ずやっていただきたい、そのように思います。

 それから、大臣及び関係の担当の局長さん、課長さんにもお願いがありますけれども、こういう留学生の受け入れ窓口あるいは交流の窓口は、いろいろな国によって日本の出先はばらばらである。大使館の中でも文部省から派遣されている人のある大使館もあれば、ない大使館もある。それは予算的に無理でしょう。しかし、たとえない場合であっても、文部省関係の学術交流会とかあるいはその他の文化交流団体、あるいは経済産業省の出先機関がまたいろいろある。この辺は、人の交流の面、文化交流の面は窓口をもう少し絞って、円滑に、そして効率的な運営を外国においてされるべきだと思うんです。

 何か今年度においてそういうふうな具体的な改良がなされるかどうか、例があるならば一つか二つ、説明してください。

石川政府参考人 そういった出先、外国における留学生関係の窓口については、常に幅広い情報提供、そして向こうにいらっしゃる学生さんの御相談にも応じるような体制を整えておりますけれども、今先生が御指摘になったような具体的な改善あるいは統合のようなケース、ちょっと私、今手元に資料もなく思い浮かびませんけれども、それぞれいろいろな形で、諸外国には学術関係も含め出先機関がございます。そういったものの連携もとりながら、きちっとした情報提供、そして、日本への理解そして愛情を持った留学生さんがたくさん来ていただけるように、そういった努力をしていきたいと思っております。

岩國分科員 それでは、現状はどうなっているのか。主な留学生受け入れの国ですね、それは十五か二十ぐらいしかないと思いますけれども。それぞれの窓口、現状はどうなっているのか、それをどういうふうに改良し、改善しようとしているのか。資料をぜひこの委員会の方にも出していただきたい、そのように要望しておきます。

 次に、最後の質問になりそうですけれども、小坂大臣、高校、中学校の教科書に靖国の問題はどのように説明されているか、ごらんになったことはありますか。

 小坂大臣自身は、靖国神社に参拝する会の議員連盟のメンバーになっておられるかどうか。二番目に、小坂大臣も靖国に参拝されたことがあるのか。三番目に、高校、中学の教科書にこの靖国神社についての説明はあるのかないのか。以上三点、お願いします。

小坂国務大臣 靖国についてのお尋ねでございますが、質問通告もない話でございますから私の感ずるところで述べさせていただきますが、御質問の内容にありました靖国神社に参拝する国会議員の会に私は所属をいたしております。また、靖国神社にもたびたび参拝をいたしております。

 それは、日本の過去行われたいろいろな戦争の中で、国のために命をささげた若い人たちが、本来自分として生き長らえて、いろいろやりたい目標もあったでしょう、いろいろな思いがあったと思います。そういう人たちの気持ちを自分としてそれを映して、そして慰霊をするとともに、自分に対してもまた勇気を与えるという意味で参拝をしてまいりました。大臣就任をいたしましてからは、私は、現在までは、考えるところがありまして参拝をいたしておりません。

 そういう状況であることだけ申し上げまして、現在の教科書における記述等につきましては、正確を期す意味で、担当の方から御答弁をさせていただきます。

銭谷政府参考人 突然のお尋ねでございますが、中学校、高等学校の公民等の教科書で取り扱っているものはございますけれども、具体的な内容については後ほど御報告をさせていただきます。

岩國分科員 突然の質問とおっしゃいますけれども、国会の質問は突然が原則なんですね。通告はむしろ例外じゃないかと思います。

 ましてや靖国の問題、これはことしほど、この一年間、随分話題になったでしょう。とすれば、初等中等教育局長としては、学校の教科書にどういうふうに書かれているか気になりませんか。日本の二十一世紀を支えていく、近隣のアジアの国とつき合っていかなきゃならない、そういう人間、そういう教育をしていかなきゃならぬときに、中学校では何を教えているのか、高校では何を教えているのか、どういう方向で書いてあるのか、書いてないのか。私は、そういうことにもっと関心を持つべきじゃないかと思うんです。

 靖国に関心を持っているのは政治家だけだ、そんなことはありません。あれだけ新聞に書かれているんですから。ぜひ、教科書にもう少し目を向けて、書いてある教科書はどういう書き方をしているのか、書いてない教科書はなぜ書かれていないのか、もう少しそういった点については関心を持っていただきたい。

 ただ、関心を持ち過ぎてあれこれ指導しますと、これがまたあらぬことを横から言われるということで、大変その点は慎重になさっていらっしゃると思います。しかし、事実は事実として知るということに対しては遠慮してはならない、私はそのように思います。

 そのことをお願いして、私の質問を終わらせていただきます。

小坂国務大臣 岩國委員の御質問の趣旨はそれなりに理解はいたしますが、一つ、事実関係だけ確認をしておきたいと思っております。

 まず、先ほど御要求いただきました資料につきましては、分科会でございます。本委員会の方の理事会で協議をしていただいて決定をさせていただくということで主査にお願いをいたしたいと存じます。

 それからもう一点は、質問は通告しないのが原則だというお話でございますが、もうこれは釈迦に説法でございますが、国会の運営につきましては国会法の規定がございますし、また、その運営の実質につきましては、議院運営委員会がその全体を統括して決めるようになっております。議院運営委員会では、質問は通告を前提とするということになっておりますので、その辺の御了解をお願いしておきたいと思います。

奥野主査代理 岩國君の御要求の資料については、別途、資料要求につきましては、政府におきましてしかるべく措置願います。

 これにて岩國哲人君の質疑は終了いたしました。

 次に、福田昭夫君。

福田(昭)分科員 民主党の福田昭夫でございます。

 私は、本日は、義務教育の振興について小坂文部大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

 まず、その前に、教育の重要性に対してどういう認識をされているか、お伺いをしたいと思います。

 今第百六十四回国会における大臣の所信表明を読ませていただきますと、「人材こそ国の宝であり、教育はこの国の将来を左右する国政上の重要課題であります。」と表明されておりますけれども、改めてお考えをお伺いしたいと思います。

小坂国務大臣 今御指摘を賜りました所信における私の考え方というのは、そのままでございまして、天然資源に恵まれない我が国は、人材こそ国の宝であり、教育はこの国の将来を左右する国政上の重要課題であるという認識を持っている。そのもとにおいて、文部科学省で人間力向上のための教育改革を推進している、こう申し上げたのは、今の文部科学省の方針でありまして、小泉内閣の基本的な考え方でございます。

 平成十八年一月に取りまとめました教育改革のための重点行動計画におきましても、国際社会の中で活躍できる心豊かでたくましい人材の育成を目指し、義務教育の構造改革、活力ある人材を育てるための教育の充実、充実した教育を支える環境の整備、家庭・地域の教育力の向上、これらに取り組んで教育改革をさらに進める、こう考えているところでございまして、具体的なものにつきましては、それぞれ御質問を賜ればまたお答えを申し上げたいと存じます。

福田(昭)分科員 ありがとうございました。

 そこで、小坂大臣にお願いいたしたいのは、私は、教育は重要課題よりももっと重要で、最重要課題だと思っているのですね。したがって、米百俵の精神をうたわれた小泉総理にはちょっと無理ですから、小坂大臣、ぜひとも、イギリスのブレア首相じゃありませんけれども、一に教育、二に教育、三、四がなくて五に教育、そういう気持ちでこれは文科大臣に当たっていただかないと日本の教育はよくならない、そう考えておりますので、どうぞ、さらに強い思いで取り組んでいただきたいな、そのように思っております。

 次に、学習指導要領等の見直しの状況についてお伺いをいたします。

 まず、基礎学力の具体的な定義についてお伺いをいたします。

 現在、中央教育審議会の教育課程部会で見直しが進められているようでございますけれども、文部大臣も所信表明の中で、確かな学力の育成を言われておりますけれども、その確かな学力の基本となる基礎的学力の具体的な定義、文部科学省がどのように位置づけているのか、それをお伺いしたいと思います。

小坂国務大臣 私どもが申し上げている確かな学力というのは、学力というのはやはりみずから学ぶ気にならないと身につきません。ですから、押しつけるものではなくて、みずから学ぶという意欲を涵養することが必要だと思っているわけですが、知識や技術に加えて、自分で課題を見つけて課題解決型の力をつける、そのために、みずから学び、主体的に判断をして行動し、よりよく問題を解決する資質や能力を身につける、こういったことが確かな学力に結びついていく、こう考えております。

 今まで、具体的にどういう表現を使っているかにつきましては、担当の銭谷局長の方から答弁をさせていただきます。

銭谷政府参考人 現在、学力につきましては、文部科学省として、確かな学力の育成ということでその定着を図ろうとしているわけでございます。

 この内容としては、ただいま大臣から申し上げましたように、基礎的、基本的な知識、技能と、自分で課題を見つけ、みずから学び、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力という、大きくはこの二つから成っているというふうに考えております。

 この基礎的、基本的な知識や技能というものにつきましては、具体的には、社会的に自立をしていくために実生活において不可欠であり、常に活用できるようになっていることが望ましい知識や技能、これが一つの内容としてあると思っております。

 それからもう一つは、義務教育及びそれ以降のさまざまな専門分野の学習を進めていく上で、共通の基盤として習得しておくことが望ましい知識、技能といったようなものがあると考えております。

福田(昭)分科員 ありがとうございました。

 ただいま説明を聞きましたけれども、やはりもう少し具体的な定義が必要だと思うのですね。

 例えば昔からよく言われますのが、読み書きそろばん、こう言われておりますが、読みについてはどの程度までしっかりと基礎学力として定着させるんだ、書く方についてもどこまでさせるんだ、またそろばんについても、計算も、今まで日本では九九の掛け算は教えておりましたが、十の位の掛け算は教えていないわけですよね。インドあたりでは十の位の掛け算も教えている。

 そんなことを考えれば、やはり基礎的な学力というのはここまで教えるんだということをしっかりと文部科学省で考えるべきだと思いますし、それから、この読み書きそろばんのほかに、私は、あと二つつけ加えた方がいいと思っているのですよ。ぜひ検討してほしいと思います。

 一つは、科学的な基礎知識ですね。今の世の中、大変科学が進歩して、いろいろな不安な材料がたくさんあります。それこそダイオキシンの問題から、いろいろ不安な材料はたくさんあります。しかし、どれが正しいんだと判断する能力が国民に、市民にないと私は思います。だから、そういう意味で、科学的な基礎知識というのをやはりある程度身につける、それも基礎学力の一つとして、私はちゃんと子供たちに教えるべきだと思います。

 それからもう一つは、社会に対する基礎知識ですね。社会の中で自分がどういう立場にいるんだ、社会の中に自分はどう存在しているんだということを、やはりしっかりと教えるべきだと思うんですね。品川区では、市民科というような科目をつくって教えているようでありますし、スウェーデンでは「あなた自身の社会」という社会科の教科書をつくって、自分がどういう立場にいるかというのをしっかりと教えているわけであります。

 日本では、もしかすると大人にもそれを教えなくちゃならないのかもしれないんですが、やはり読み書きそろばんのほかに、科学的な基礎知識あるいは社会に関する基礎知識、そういったものを基礎学力としてしっかりと定着させるということが必要じゃないかと考えておりまして、ぜひ御検討いただければありがたいな、そのように思っております。

 次に、心の教育の具体策についてお伺いをいたします。

 大臣は表明の中で、子供たちに、命を大切にする心、道徳教育の充実などをうたわれておりますけれども、具体的に、この心の教育をどう進めていこうとしているのか。その辺を、文部科学大臣の考え方をお伺いいたします。

小坂国務大臣 心の教育の具体的なやり方ということでございますが、その前提となる、教育、子供たちに対する私の考え方ですけれども、やはり社会の構成員として共生をしていくということですね。自分一人で生きているんじゃない、人によって生かされている我々でありますから、そういったことを基本にしながら、人に対しては優しい心を持つ、相手の考え、相手の身になって物を考える、そういった資質もやはり涵養していきたい。こういうような意味から、今御指摘の心の教育という点についても取り組んでいるわけでございます。

 心の教育につきましては、小中学生すべてに「心のノート」というものを配付して、また、道徳教育の指導法や教材に関する実践研究を進める中で、こういったものに取り組んできているところでございまして、小学校一年・二年用、三年・四年用、五・六年用、そしてまた中学校用の四種類の「心のノート」というものを制作し、十八年度予算で二億五千六百万確保して、これを推進しているところでございます。

 また、道徳教育につきましては、道徳の時間というものを各学年三十五時間、小学校一年生だけちょっと短くなりますが、三十四時間。ですが、九年間で三百十四時間を割いて道徳の時間としているほか、各教科や特別活動、こういった中で、道徳的な心情や態度を養うということをお願いしているところでございます。

 このほか、今おっしゃっていただきましたように、私は、命の大切さということをやはり子供たちに学んでもらいたい。そういう意味で、自然体験教育、あるいは教室で花を育てたり、動物の飼育やあるいは水生生物の観察とかいろいろなもので、形があるもの、目に見えないけれどもよく見ると生きている、こういったものに対しても、その命というものを感じてもらう。そういったことをいろいろな場を通じていくことが、今委員がおっしゃった科学的基礎知識の中にも入ってくるかもしれない。

 理数が最近弱いと言われる今日でありますけれども、そういった理科に対する興味、そこを通じての命というものに対する認識、そういうものもあわせて行ってもらいたい、そういう希望を持ち、そういう気持ちで取り組んでいきたいと思っております。

福田(昭)分科員 ありがとうございました。

 ぜひとも私は、文部科学省で、心の教育についてもう少し体系化をされたらいかがかな、こう思っているんですね。

 それは、読書とかあるいはテレビとかの視聴、そういったものを見て間接的に体験をしながら心の教育をやる場面というのと、それから今大臣が言われたように、自然に触れて、直接体験をして心の教育をする、やはりそういう両面から必要だと思うんですね。そういったものを、ぜひ体系づけて心の教育が推進できるようなことを図っていただいた方がありがたいのかなと思っております。

 私、栃木県の知事時代は、教育委員会にお話をして、先ほど「心のノート」の話がございましたが、県独自で道徳の教科書をつくってもらったり、あるいは子供たちに、全部の小学校に実は学校農園を設置して、そこで実際、自然体験といいますか、あるいは農作業体験を通した心の教育をやろうというようなことで、体系化をしてもらいながら進めておりましたが、ぜひ、そんなことを考えていただけたらというふうに思っております。

 次に、いわゆるゆとり教育に対する評価についてお伺いをしたいと思います。

 ゆとり教育といいますと、中身は、授業時間を削減する、週五日制を実施する、そして教科書の内容も削減する、それがゆとり教育の中身だという話でございますが、これに対する大臣の評価をお願いしたいと思います。

小坂国務大臣 今、福田委員が最後に御指摘になった時間数の削減とか、そういったものは決してゆとり教育の中身、目的ではないわけでありまして、それは十分に委員が御存じのとおりでございます。

 ゆとり教育として目指そうとしたものは、教科では単純に割り切れない、教科にまたがる、福祉とかあるいは環境とか今日的課題について、そういうものを学ぶ時間を設けて、そして、そういった教科にとらわれない教育を推進していこうというのが基本的な考え方であり、また、それを学校教育の中でどのようにやっていくかということで、その時間を割いてつくっていこうと、授業時間としての三時間を割り当てて取り組んでいる、こういうことなんでございます。

 この評価については、いろいろな評価をいただいております。時間数を削減した結果、基礎的な学力がなくなったのはゆとり教育のせいだと言う方もいらっしゃる。あるいは、ゆとり教育というものは、一体具体的に何をやったらいいのかよくわからなくて、こういったものを導入することは全体的な混乱を来すということをおっしゃる方もいらっしゃる。

 私は、このゆとり教育の基本的な考え方、その趣旨は間違いではない、間違ってはいないと思っております。こうした現行の学習指導要領の理念、私は、この実現に向かって今後とも取り組んでいくべきと思いますが、その具体的な取り組み方法は少し考えた方がいい。というのは、これを導入したときの目的が、今検証してみますと、必ずしもそれが成果としてあらわれていないという評価が出ているわけですね、皆さんの中にそういう気持ちがあるわけですから。

 そういった点で、今後の取り組みについては学習指導要領の見直しの中で、すぐれた取り組みや具体的な事例というものを皆さんに伝えて、こういう取り組みをやっていただくと本来の効果が出てくるのではないでしょうか、こういう方もいらっしゃいます、こういう先生もいますよというようなヒントを与えながら、今後の学習指導要領全体の進め方の中で、すべての教育活動を通じての、言葉や体験を重視した学習や生活の基礎づくり、そしてまた国語や理数科教育の充実、全国的な学力調査などを実施して、プラン・ドゥー・チェック・アクションという、PDCAのサイクルによる学校教育の質の保障をしていく。こういう中で初めて、ゆとり教育全体に対する皆さんの御理解も出てくるし、その実も上がる、こう考えておりますので、頑張っていきたいと思っております。

福田(昭)分科員 ゆとり教育の趣旨は確かに悪くないかもしれないんですが、私は、それは頭のいい人が考えた話だと思うんですよ。私みたいに勉強が嫌いな人間にとっては、ゆとり教育は緩み教育になっちゃうんですね、ゆとり教育じゃなくて。ですから、やはり中程度の人に合わせて教育の中身というのは考えていくべきだと思うんですね。

 そこで、私は、結論から先に申し上げますが、授業時間を削減することは反対です。ですから、もとに戻した方がいいと思います。授業時間をもとに戻せば、まず、教科書の中身を削減したのももとに戻せますね。ですから、授業時間の削減をもとに戻して、教科書の内容も分量ももとに戻す。そして、週五日制は、時代の流れだからいたし方がないのかなと思っております。結論から申し上げますと、いわゆるゆとり教育に対する是正措置を私はそう考えておりまして、ぜひ、そういった方向でこれから検討されることを望みたいと思っています。そのことを、次のことで提案したいと思います。

 次に、小中学校の総授業時間数の三十年間の推移と確保に対する考えをお伺いいたします。

 三十年前と現在の授業時間を比べてみますと、先日文科省から資料をいただきましたが、昭和五十年代と現在を比較してみますと、小学校が五千七百八十五単位時間から五千三百六十七単位時間となりまして、四百十八時間減っております。それから中学校が、三千百五十単位時間から二千九百四十時間ということで、二百十時間減っております。これを一日六時間の授業として計算しますと、小学校で約六十九日、六学年で割ってみますと約十二日なんですね。中学校も全く同じです。これを六時間で割ってみますと三十五日、そしてこれを三学年で割ってみますとちょうど十二日です。したがって、授業の日数が十二日間減ったのかな、こう推測できるわけであります。

 そんなことを考えますと、これは簡単に戻せるじゃないか、週五日制を実施しながらも、ちゃんと総授業時間数も確保できるし、教科書の内容も、ちゃんともとの分量どおりやれるじゃないか、私はそういう考えに至りました。

 どうすればできるかという話でございますが、それは長期休暇であります。夏休み四十日、冬休み、春休みとあるわけでありますね。ですから、その中から十二日ひねり出せばいいわけですよね。仙台で始まった二学期制なんという中途半端なことをやらずに、しっかりと三学期制のまま、ちゃんと授業時間数は確保できますから。そのためには、夏休み、今四十日も休んだら、かえって保護者は困っているんじゃないですか。今いろいろな問題があって、文部科学省では居場所づくりなんということで、学校の中に子供が、帰るまでいられるような場所をつくろうなんという予算までつけているぐらいですから、四十日なんという休みがあったら保護者は困るわけですよね。

 そんなことを考えたら、長期休暇を十二日間ぐらい短縮することはいとも簡単ですから、これをやはり文部科学省はしっかりと踏まえて、週五日制でも総授業時間数は減らさない、授業の内容も減らさない、分量も減らさない、そういう方針を打ち出すべきだ、こう考えておりますので、中央教育審議会、それこそ教育課程審議会にもしっかりとその辺の情報も提供して、審議をしていただいて、文部科学大臣の英断を持ってぜひ実施をしていただきたい。

 お考えをお伺いいたします。

小坂国務大臣 十分にお説のポイントというところは把握させていただくように聞かせていただいたんですが、総合的な学習の時間を設けた趣旨を先ほども御説明申し上げましたように、今日の社会において、環境教育、また福祉ということについて、やはり子供たちに学んでもらう機会が必要だと思っております。そのやり方をどうするかということの中で、この総合的な学習の時間というのを設けておるわけでございます。

 全く全部もとに戻してしまうと、これもなくなってしまうものですから、まあそこまでおっしゃっているわけではないと思って考えるわけですが、また同時に、週五日制というものも委員は、これは今の一つの時代の中だから、こうおっしゃっていただいて、そこまで戻そうとするともっと難しくなるんですが、そこはお認めいただいているわけです。

 では、その中で何をするかということですが、御指摘の、中央教育審議会の審議経過報告が過日なされまして、その中で、授業時間数のあり方については、国語や理数教育などの授業時間数については充実の方向ということ、国語や理数の強化が打ち出され、また、時間数については充実ということが指摘をされておりますので、充実する方向はあるわけですが、具体的には今後の審議の中でさらに詰めていただく、深めていただくことになっておりますので、そこは、私は今ここでは申し上げません。

 しかし、まだ学校教育の中にどこか、やり方、工夫等で余裕が出てくるだろう。余裕と言うと現場の先生に怒られちゃいます。現場の先生は大変に忙しい中で必死の努力をされています。何とか努力をしていただける余地がないか、そこもまた考えていきたい。小学校低学年の内容の見直しとか、あるいは教科にまたがる内容を教科の中で消化していただく。国語の授業の中で、理科に対する興味をわかせるようなそういう小説やら文を読んでいただいて、命について考えるとか、あるいは生命について考える、科学について考える、社会、歴史について読み物として勉強する、そういうことも可能なわけですから、そういった工夫も交えながら充実をしていくことが必要だ。

 このような中で、委員の御指摘の点についても、教育審議会の方では御検討いただけるものと思っているわけでございます。

福田(昭)分科員 ぜひ検討していただきたいと思いますし、総合的な学習時間ということでは、私は、心の教育を含めたり、あるいは夢のある教育、子供たちが自分の夢、将来、科学者になりたいな、宮大工になりたいな、そういう夢を持つような時間というのをつくったらいいんじゃないかと思っています。

 そういった意味では、戦前は修身という教科書がありましたけれども、戦後は道徳ということですが、これがなかなか定着しなかった。そうした中で、私は、自己教育科という科をつくったらいいのかなと思っているんですよ。やはり教育の本質は自己教育なんですね。自分で自分を教育するというのが教育の基本ですから、そういった意味で、小中学校の中に自己教育科という科目をつくって、その中で、総合的な学習も含めて、心の教育から、自分が将来何になりたいかと夢を抱くような時間をつくる。私は、そういう科目をつくってやっていったらいいんじゃないかなというふうに思っておりまして、そんなことも検討していただければありがたい、こう思っております。

 それから次に、だんだん時間がなくなってきちゃったので急いでやりますけれども、品川区で導入が始まって、文科省でも研究校を指定して始まっているようでありますが、小中一貫校の導入についてお考えをお伺いしたいと思います。

 私は、この品川区の研究の中身を見てみますと、すばらしい中身で、ぜひ、いい成果が出ることを期待しているところでございます。

 そこで、ただ一つ、品川区の研究テーマの中で一つ足りないなと思ったのは、実は、小中一貫教育で、もしかするといじめや不登校を減らすことができるんじゃないかというふうに私は思っているんです。それは、いじめの件数、不登校の件数を見てみますと、保育園、幼稚園から小学一年生に上がったときにふえるんですね。それで、だんだん少なくなっていって、今度六年生から中学一年生に上がったときにまたふえるんです。ですから、学校といいますか、教育施設なり保育施設を移動するときに実はスムーズに行われていない、そこでいじめや不登校がふえているというのがはっきりあらわれているんです。

 そんなことを考えますと、小中学校は設置者が全く同じですから、ぜひとも、そういった意味では、この公立学校における小中一貫校をできるだけ早く導入すべきだというふうに私は思いますけれども、大臣の御所見をお伺いいたしたいと思います。

小坂国務大臣 御指摘のように、小中学校の接続のあり方ということについては、スムーズなという表現をお使いいただきましたように、新しい環境への移行が円滑に行われないことによって、それがいじめや不登校の一つの背景になっているという御指摘もあることは事実でございます。身体の発達のスピードも速まっておりますし、そういう意味では、個人差もある中で、小学校高学年に対する指導に限界が出ているとの指摘もあります。

 こういったことを考えますと、いろいろな接続の仕方があるわけでございまして、推薦してスムーズに移行するという方法、また、併設をしてお互いによく見えるようにして、その中で連携を図っていく方法、一体として九年接続をしていくという考え方、いろいろな考え方があると思うんですね。

 昨年の十月にいただきました中央教育審議会の答申の中においても、九年制の義務教育学校の設置の可能性を含む、小中連携を改善するための仕組みについて、今後議論すべき課題というふうにされておりまして、今後、さらに検討を進めてまいりたいと考えております。

福田(昭)分科員 ぜひとも、早い検討をお願いしたいなというふうに思います。

 それでは次に、優秀な教員の確保ということですけれども、時間がなくなってきましたので簡潔に申し上げますが、私は、一つの方法として、採用方法を見直したらよろしいんじゃないかなというふうに思っております。それからもう一つは、戦前の師範学校じゃないですけれども、やはり教師としての自覚、あるいはしっかりとした教授方法まで教えるような義務教育専門の教員養成学科、あるいは教員養成大学というものを、今の大学などを使いながら、中身を充実したらよろしいのかなというふうに思っております。それで、今やっております初任者研修制度はなくす。

 ですから、そういった意味では、まず、どういう仕事であっても少なくとも一年以上、社会体験、仕事に従事した、あるいはNPOとかNGO活動に一年以上しっかりと従事した人間に、初めて義務教育の教員の試験を受ける資格を与える、そういうような仕組みをつくるとか、あるいは、それこそ一番いい先生は何といってもやる気がある先生ですから、子供の心に火をつける先生、これにまさる先生はないわけでありますから、しっかりとした教員になるんだ、教師になるんだ、そういう気構えを持った教員を養成するということが、やはりいい教育をする上で最大のことだと思いますので、そういう御努力もお願いを申し上げたいと思っております。この答えは要りません、時間がありませんので。

 それで、最後に申し上げたいのは、義務教育国庫負担制度の充実についてでございます。

 今回、数合わせの三位一体改革で、残念ながら国の負担が二分の一から三分の一に減ってしまいましたけれども、私は、これは少なくとも二分の一にすぐ戻すべきだと思っていますし、できれば将来は二分の一じゃなくて、もしかすると、民主党政権が誕生したときは全額になるかもしれませんけれども、ぜひとも私は、義務教育国庫負担制度は、しっかりと、まずもとに戻す努力をすべきじゃないかというふうに思っておりますので、文科大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

小坂国務大臣 福田委員におかれましては、栃木県知事でそのままいていただいたら、あのような知事会の意見も出なかったんじゃないか。三位一体改革における地方の御要求というものは大変厳しいものでございました。

 私も就任して真っ先に取り組んだのがこれでございまして、三位一体改革を推進するという一つの小泉内閣の方向性の中で、また先輩の文部科学大臣を初めとして、中央教育審議会の答申の中にも、今日の義務教育費国庫負担制度につきましては二分の一というものを維持する方向で検討せよ、そういう方向性もいただいておりました。

 閣僚としての立場、また答申を真摯に受けとめるという、その姿勢の中で大変に悩みましたけれども、一つの結論として、答申の中にあります義務教育費国庫負担制度の堅持という部分にしっかりと力点を置いて、そしてまた三位一体改革の推進という観点から、国庫負担の割合を三分の一にすることによって、なかなか御理解を得にくい環境ではありましたが、多くの皆さんの意見に耳を傾け、国民の皆さんの意見にも耳を傾ける中で、義務教育の構造改革を推進し、また義務教育に対する国の責任をしっかり果たせる枠組みは何かと考えた中で、教職員給与費の全額を保障するという現行制度、これを維持しよう、そのかたい決意のもとにあの三分の一という結論を出させていただいて、政府・与党の合意というものができたわけでございます。

 委員の御指摘のように、今後どういうふうになるのかということでございますが、今日、そういった制度を堅持することが必要であるということを私として決断させていただいたところでございます。

福田(昭)分科員 今後、小坂大臣の努力を期待させていただきますし、民主党政権の前に小坂総理大臣が誕生したときには、ぜひとも実現できるように頑張っていただきたいと思います。

 それでは、時間がなくなりましたので、要望して終わらせていただきます。

 今、残念ながら、全国各地で幼い犠牲者がたくさん出ておりまして、大変残念に思っているところでございます。私の地元、今市でも大変不幸な事件が起きまして、残念ながらまだ解決に至っておりません。被害に遭われたお子さんの御両親、関係者、まだまだ無念が晴らせないわけでございます。そうした中で、PTAの皆さんや地域の皆さんの努力というものも大変長期化しておりまして、だんだんお疲れも見えているような、そういう状況でございます。

 ぜひとも、文部科学省におきましても、安全な学校づくりにつきましては最善の努力をされるということでございますが、より有効な手が打てるようにお願いをして、私の質問を終わります。どうぞよろしくお願いいたします。

奥野主査代理 これにて福田昭夫君の質疑は終了いたしました。

 次に、郡和子君。

郡分科員 民主党の郡和子でございます。

 私は、二十六年半、放送の現場におりました。障害福祉の分野は特にこだわりを持って取材を続けてまいりました。障害を持つお子さんの保育また就学の問題では、取材でおつき合いの始まりましたお母さんたちと同じ親の立場で運動をしてまいりました。そうした経験から、あらゆる差別をなくしてともに生きる社会を目指したいと、今この場にこうして立たせていただいているわけでございます。

 障害に対して無関心や無知というのでは、差別の根絶にはつながりません。小さなうちからともに過ごすことによってお互いを理解し合える、このことが無知、無関心をなくしていって、障害差別の問題を解決に導くのだろう、そういうふうに思っております。

 そこで、きょうは、障害を持っているお子さん、持っていないお子さんがともに学ぶということについて質問させていただきたいと思います。

 先週の二十四日、文部科学委員会で御答弁がございました。盲・聾・養護学校そして特殊学級に通うべきだと判断されたお子さんのうち、通常学級に通う子供さんの数、一年生から三年生までの数でしたけれども、七千八百四十二人というふうにお答えになっていらっしゃいました。この数から推計いたしますと、現在、小中学校で、およそ二万人のお子さんが、盲・聾・養護学校あるいは特殊学級で学ぶべきだけれども通常学級で学んでいるということになろうかと思います。このお子さんたちについて特に集中的に質問させていただきたいと思います。

 まず初めに、参議院の附帯決議、障害者基本法の一部を改正する法律案の附帯決議でございます。平成十六年の五月二十七日、これは障害者の権利を明確にしたものでございます。もちろん大臣、御存じのことと思いますが、読み上げさせていただきます。

 一、障害者が、「あらゆる分野の活動に、分け隔てられることなく参加できるようにすることを基本とする」、そして五、「障害のある児童・生徒と障害のない児童・生徒が共に育ち学ぶ教育を受けることのできる環境整備を行うこと。」とございます。これについて大臣はどういうふうにとらえていらっしゃるのか。

 そしてまた、同じ二十四日の委員会で御答弁にございました、ともに学ぶということについて足早に環境整備を進めていって、理想の形に向け努力してまいりたいという御答弁でございました。

 この附帯決議をどういうふうにとらえていらっしゃるのかと、その理想の形の実現に向けて、大臣の御決意のほどをまず伺わせていただきたいと思います。

小坂国務大臣 郡委員にお答えを申し上げます。

 今、足早にということがありましたけれども、足早にではなくて、着実に進めるというふうに申し上げたつもりでございます。

 ともに育ち学ぶということ、共生社会の実現のためには、おっしゃったように、できるだけ幼児教育の段階から、児童生徒がともに学ぶ環境が実現できることが理想であろうと思っております。

 障害のある児童生徒の教育について、将来の自立及び社会参加を支援するという観点から、一人一人の教育的ニーズを踏まえた適切な教育を実施することが必要であります。

 また同時に、障害のある児童生徒と障害のない児童生徒がともに育ち学ぶ教育を受けて、共生社会の実現に向けて環境整備を進めるということが必要だということで、参議院の審議においても、先ほど、若干附帯決議の内容を省略されて、そのエッセンスの部分を御指摘いただいたわけでございますが、そういった決議をいただいておりますので、それを尊重して、御指摘のように、着実な実現に向けて努力をいたしたいと考えております。

郡分科員 大臣、着実にということでおっしゃったというふうなことですけれども、議事録を読ませていただきますと、一歩を二歩、三歩と足早に進めさせていただいてというふうにはっきりおっしゃっております。

 今のお話、確かに、ともに学ぶということについて大変御理解をいただいているんだろうと思ってうれしく思いますので、ぜひ理想の形の実現に向け、足早に進めていただきたいと思います。よろしくお願いをいたします。

 ところで、ともに学ぶということにつきまして、文部科学省の方針よりも一足早い共生社会ということをうたっているのが政府にございます。内閣府に共生社会政策統括官が設置されております。政府における共生社会政策統括官の役割とはどんなものなのか、きょうは統括官をお呼びしておりますので、お答え願いたいと思います。

林政府参考人 現在、内閣府の共生社会政策統括官は、少子化対策、青少年育成、高齢社会対策、障害者施策、犯罪被害者等施策など、社会生活にかかわります広範な分野について各府省の連携の確保を保っているところでございます。これらの各分野の施策の推進によりまして、国民皆で子供や若者を育成、支援し、年齢や障害の有無にかかわりなく安心して暮らせる共生社会の実現を目指してまいる、そういう仕事でございます。

郡分科員 ありがとうございます。

 共生社会形成促進のための政策研究会というところが、昨年の六月に「「共に生きる新たな結び合い」の提唱」、こういう提言をおまとめになっていらっしゃいます。これは政府ではどのように扱われているんでしょうか。統括官、お願いをいたします。

林政府参考人 統括官としては先ほどのような所管をしておるわけでございますが、これらの分野の施策を推進する上で、我が国が目指すべき社会の姿について有識者に御議論いただくべく、共生社会形成促進のための政策研究会を開催し、昨年六月に、今委員がお示しされた研究会の報告書が取りまとめられたわけでございます。

 この報告書におきましては、地縁、血縁に基づくつながりが弱くなっております最近の現代社会におきまして、それにかわるボランティア活動など、新しい人と人との関係により結びつけられる社会を共生社会として位置づけるということのほか、目指すべき社会像について幾つかの横断的な視点が整理されているところでございます。

 内閣府におきましては、この報告に示されました社会像や視点は貴重な御提言と受けとめておりまして、これらを参考にしつつ、今後、各分野の施策の推進に努めてまいりたいと考えております。

郡分科員 ありがとうございます。

 これは、つまりは共生社会が我が国の目指すべき姿であるということだろうと思います。

 この中に本当にすばらしいことがたくさん書かれているんですが、文部科学大臣、ここに教育のことにも触れられております。「障害者との共生に関する指標」なんですけれども、「障害のある子どももない子どももともに学び、また、障害の有無にかかわらず就労を希望する人は企業に就職し、あるいは起業する。」というふうに書かれております。

 この提唱について、文部科学省ではどのように取り扱われているんでしょうか。

銭谷政府参考人 文部科学省といたしましては、ただいまのお話のようなことを受けまして、障害のある方、ない方、共生をしていく社会を目指して、教育の分野で取り組みをしているわけでございます。

 基本的には、障害のあるお子さん、ないお子さん、そういう方の交流教育、共同学習、交流活動を積極的に推進する。そのために、教育界の、教職員等に対する必要な研修等の実施、あるいは、就学相談における就学前からのきめ細かい相談の実施といったようなことを心がけて実施しているところでございます。

小坂国務大臣 今局長の方からお答え申し上げましたけれども、ともに学ぶということは、障害者基本法の第十四条第三項、これは平成十六年に障害者基本法に追加をされた条項でございますが、ここによって規定されていることでございます。

 この規定の交流及び共同学習ということを、学校の内外を問わずに、障害のある児童生徒と障害のない児童生徒が一緒に参加する活動や、学習の場に一緒に参加することを意味していると理解いたしまして、我が省としては、障害のある児童生徒の障害の状況や、学校、地域の実情に応じて、障害のある児童生徒及び障害のない児童生徒との交流及び共同学習を推進するように努めてまいっているところでございまして、さらにその推進に努力をいたしたいと思っております。

郡分科員 今お答えになられました共同及び交流学習、これは特別支援教育のことをおっしゃっているんだと思うんですけれども、私が伺ったのはそういうことではございませんで、一緒に学ぶのだと。区別されている、振り分けられているのを時々交流させるということではありません。ともに学ぶということについてお伺いしているわけでございます。

 私の地元宮城のことをお話しさせていただきたいと思います。

 宮城は、共生社会の第一歩を国に先んじて取り組んでいるというふうに言っていいだろうと思います。状況を既に大臣も御存じのことと思いますけれども、基本理念、障害の有無によらず、すべての子供が地域の小中学校で学ぶ教育を子供や保護者の希望を尊重して展開するというふうに掲げております。そして、平成十七年度からは、ともに学ぶ学習システム整備モデル事業、これに一億二千万円を投じまして、十九校に二十三人の補助員を配置いたしました。さらに、十カ年計画を策定しております、障害児教育将来構想というものでございます。ともに学ぶ、そういう地域を県下全体に広げていこう、そういう将来構想でございます。さかのぼって、平成十一年、重い障害を持った子供さんたちも通常の学級に通学させるモデル事業を開始いたしました。そして、その実績を積み上げてきたわけでございます。

 きょう御紹介いたしますのは、こちらの写真、御両親の了解を得てお示しするものでございます。

 宮城県の登米市石越町に住んでいる中村繭ちゃんといいます。十三歳。ちょっと前の写真なんですけれども、彼女は、話すこともできません、歩くこともできません、寝返りを打つこともできません、さらに、医療的なケアが必要な重度のお子さんです。彼女が地元の小学校に入学を決意いたしまして、これがその小学校入学当時の写真でございます。何とほほ笑ましいでしょうか。お隣の女の子が、しゃべれないんですけれども、繭ちゃんに何か話しかけていて、声が聞こえてくるような、大変ほほ笑ましい写真でございます。

 お母さんは、当時、この周りのお子さんたちに繭ちゃんのことをどういうふうに説明したらわかってもらえるんだろうと、いろいろな本を読んで、子供たちに障害を理解させるために説明するのに準備をされたそうです。ところが、教室に入って、お子さんたちの繭ちゃんに対する質問は何だったと思いますか。繭ちゃん、お誕生日はいつですか、繭ちゃん、おうちはどこですかという質問だったそうです。つまり、どんなに重い障害を持っていても、子供たちは当たり前の仲よしの一人として迎えてくれたんだとお母さんはおっしゃっていました。

 障害に対してマイナスイメージを持っているのは、障害を持つ人とともに暮らしてこなかった私たち大人の責任である。大人は、そう育ってこなかったからマイナスイメージを持ってしまっているのかもしれない。子供たちの反応に大変感動したとおっしゃっています。

 これはまた子供たちと一緒の写真です。見てください、とてもいい笑顔をしています。私も、実は先週の土曜日、久しぶりに繭ちゃんに会いに参りました。大変発育をしているので、感動いたしました。自己表現もできなかったのですけれども、目でしっかりと意思表示をする。そしてまた、うれしいことには笑顔を見せる、嫌なことにはぶうっと言う。そしてまた、お母さんのお話では、数に対して大変興味を持って、数学の勉強にも意欲的に取り組んでいるということでございます。

 本人、繭ちゃんの発育、成長ぶりもさることながら、この周りの子供たち、これも大変いい顔をして繭ちゃんの周りを囲んでいますけれども、大変成長しております。皆さん、この子供たちは、繭ちゃんがかわいそうだから手助けをしてやるという思いやりではないんですね。繭ちゃんが障害によって困難なことを解決するのは、自分たち、友達である自分たちの必然である、そういう思いやりなんです。この違い、おわかりになりますでしょうか。自分たちの必然で繭ちゃんの障害の困難を解決していくんだ、こういうことを学び取っているんです。大変すばらしいことだと思います。

 ぜひ大臣、副大臣、宮城でこの状況をごらんいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

馳副大臣 一人一人のお子さんにとっての障害の状況、またその学校の状況、当然、設置者である市町村、また指導をする立場にあるでしょう都道府県の判断というものは、やはり宮城県モデルといったらいいんでしょうか、非常にうまく理解をし合って、そういった繭ちゃんの学校における状況があるんだろうということを今拝聴いたしました。よく参考にさせていただきます。

小坂国務大臣 今御指摘をいただきました繭ちゃんの事例は、ある意味で理想的な経路をたどっているんではないかと思います。それぞれの障害を持っていらっしゃるお子さんの環境はそれぞれまちまちであります。設置者のあり方も、現在では多様性があると思っております。

 それを、こういった事例を参考にして、できるだけ一つの方向性を持ってほしいという、御質問をいただいている趣旨はそれなりに理解いたしますけれども、しかし、障害を持っていらっしゃるお子さんの保護者の方の御意見も、またいろいろなパターンがございます。私もいろいろな場面で、障害をお持ちの保護者の方々と接してもまいります。そういう中で、今委員が御指摘になったのは一つの考え方であることは私も認めますし、それがこのように結実していることは大変すばらしいことだとも思います。

 しかし、この事例をすべての現場に当てはめて、通学環境やいろいろな環境が異なるところで同じようにできるということをすぐに判断するわけにはなかなかいかぬと思うんですね。この繭ちゃんの場合、通学環境等も、こうやって周りにいらっしゃるお子さんたちが協力して多分そういった環境を実現しているんだと思いますし、また、毎日通学をされているのか、あるいはどういう環境なのか、その辺の詳細はまだわかりませんので、またそういった参考事例として研究をさせていただきたいと思っております。

郡分科員 時間が余りなくなりましたので、先をどんどん進ませていただきます。

 今国会に学校教育法の改正案が出されるというふうに伺っております。その骨子をいただきました。「特別支援学校制度の創設」というところで、「障害による学習上又は生活上の困難を克服し自立を図るために必要な知識技能を授けることを目的とする。」というふうに書いてございます。これは、障害というのは個性である、そして社会がともに生きられる形に変えていかなきゃならないという共生社会の理念とは大変かけ離れたものになっているかと思うんですが、この表現について統括官に伺いたいと思います。

 今世界の流れは、教育の現場でインクルージョンということが言われているようですけれども、このインクルージョンということについて御説明をいただけませんでしょうか。

林政府参考人 今の御質問でございますが、我が国におきまして、インクルージョン社会という言葉につきまして必ずしも共通の見解がまだ定まっているとは思いませんが、政府におきましては、年齢や障害の有無にかかわりなく安心して暮らせる共生社会の実現を目指すということで取り組んでおるところでございます。

 この考え方は、障害者基本計画の中で「基本的な方針」ということで、「二十一世紀に我が国が目指すべき社会は、障害の有無にかかわらず、国民誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合う共生社会とする必要がある。」というようなことで規定されておるところでございます。

郡分科員 WHOの障害についてのモデル、これを持ってまいりました。障害とは、医学モデルでいいますと、日本はこの考え方に偏っているわけですけれども、異常というふうに見られていますが、社会モデルでは個性であるとしっかり定義されております。そして、社会保障の課題については、これは人権問題であるということです。障害というのは、その人個人個人の問題ではなく、その人の周りの環境によってつくり出されるものである。簡単に、さらに進めて言えば、障害という問題は、一口で言えば政治問題であるというふうにされているわけなんですね。

 そこで、副大臣、障害というのは本人の問題でしょうか、責任なんでしょうか。

馳副大臣 本人の問題というのは、ちょっと設問の趣旨を私十分理解、それはまた言っていただければいいんですけれども、それは生まれながらにしてのいわゆる本人の状況……(郡分科員「責任なんでしょうかということです」と呼ぶ)本人の責任じゃないでしょう。生まれながらのそういった状況であるというふうに判断するのが妥当ではないかと思います。

郡分科員 であれば、この学校教育法の改正に出てくる文言なんですけれども、「障害による学習上又は生活上の困難を克服し」、「克服し」というのは、その本人が克服しということにはなりませんか。これは大変な差別的な表現で、これによって傷つく方々が大勢いるということをしっかりと認識いただきたいと思うんです。

 これは、先ほど私申しました、繭ちゃんの周りの子供たち、繭ちゃんが障害を持っていながら、それを支えるのは、その困難、障害による困難を解決し、解決する、それはみずからも、あるいは周りもということでございます。この文言を、「学習上又は生活上の困難を解決し自立を図るために必要な知識技能を授けることを目的とする。」こういうふうに書き改めることはできませんか。こういう差別的な表現というのはぜひやめていただきたいと思います。いかがでしょう。

馳副大臣 御指摘の「障害による学習上又は生活上の困難を克服し自立を図るために必要な知識技能を授けることを目的とする。」等の表現は、特別支援学校の目的規定として検討中のものの一部であり、具体的には、例えば視覚障害児における点字の習得等を想定しております。

 この規定は、児童生徒に障害があることの責任がどこにあるかを規定しているものではなく、教育機関である学校として、障害のある児童生徒等を対象にどのような教育的な対応、支援を行うかを定めようとするものであります。

郡分科員 今お話を伺っておりましても、その克服という言葉がどこにかかってくるのかということもあるのかもしれませんけれども、これによって大変傷つき、また差別的な見解にとられていく、これがかえって逆の方向に向いていくということも認識していただきたいと思うんです。文言を、解決するというふうに変えるだけで、随分と違ってまいります。御検討いただけませんでしょうか。

 予算について伺わせていただきます。

 政府は、平成十三年から、緊急雇用対策の一環として、学校いきいきプランを予算化いたしました。障害児の指導にも活用できるとして、平成十六年度には、十一の県、四百四十五の市町村に二十八億円の予算を投じまして、二千三百人を超える補助員が小中学校に配置されました。宮城県でも、十六年度、三十八の市町村が補助員を百六十人配置しております。

 しかし、この対策は緊急対策ですから、十七年度はございませんでした。十七年度、宮城県の場合はぐんと減りまして、三十市町村で八十五人を自治体が独自予算で組みました。これは、市町村、そしてまた知事会も、ぜひ障害を持っているお子さんたちの教育のために予算をつけてくれないかというふうに予算要望を出しております。

 大臣も、もちろん副大臣も御承知のことと思いますけれども、これがないために、子供たちがせっかく通常学級で学べていたものが、また、特殊学級やら盲学校、聾学校、養護学校に引き戻されてしまったというケースもあるんです。子供たちの教育環境をこんなふうに、変化しているような不安定な状況に置いてよろしいんでしょうか。ぜひ、文部科学省として、責任を持って教育環境を整えていただきたいというふうに思います。

 ぜひ、この要望について、どうとらえていらっしゃるのか、それを伺わせていただきたいと思うんです。

馳副大臣 そもそも、厚生労働省と協力をして、緊急地域雇用創出特別交付金という形で、三年間で恐らく総枠千五百億だったと思いますけれども、それで創出した中で、学校における特別非常勤講師とかボランティア等を活用してとか、本来であれば半年のはずなんですが、一年間にかけて雇用することができるという形で導入された。

 そして、当初から、三年間だけれども、継続して、またその方々、そして三年間の事業でやる、学校においては一年ずつということで、雇用を創出してくださいよということから始まった事業ですが、先生おっしゃるように、極めて効果的でありますし、三年で終わっちゃうのというような声、何とかしてくれないかという声は、たくさん伺っております。

 そもそも、終わった後も継続的に雇用できるような工夫を自治体でもしていただきたいという通知はもちろんしているのですが、おっしゃることも伺いまして、何とか継続してできるようにならないかという、より一層の対応もしていきたいと思っております。

郡分科員 しかも、これは厚労省の予算でして、文科省の予算ではないわけですから、ぜひそこのところをよろしくお願いいたします。

 冒頭申し上げました、小中学校で学んでいる二万人のお子さんたちなんですけれども、これは盲・聾・養護学校に通う児童生徒の数、九万人強ということでしたけれども、特別教育を受けている子供たちの一人当たりの予算というのはお幾らになりますでしょうか。そしてまた、この二万人の子供たち、盲・聾・養、特殊学級に通うべきだというふうに言われているわけですけれども、それがそのまま盲・聾・養護学校に行った場合、幾ら増額されるのか、この数字をお示しいただきたいと思うんです。

銭谷政府参考人 現在、公立の盲・聾・養護学校の在学者一人当たりの教育費を計算いたしますと、年間約九百万円でございます。正確に申し上げますと九百十二万九千百六十五円、これは平成十五会計年度でございます。

 なお、就学指導の過程で通常の小学校、中学校に就学をされた障害を持つお子さんがいるというお話は今先生からあったわけでございますけれども、そのお子さんたちが公立の盲・聾・養護学校へ通った場合にどのぐらいの経費がかかるかというのは、これはまた、単純に計算することはもちろんできるわけですけれども、クラス編制とかいろいろございますので、それぞれの学校種ごとに、どういうクラス編制のもとに入っていったかというようなことがいろいろかかわってまいりますので、ごく単純に、プラスで幾らかかるかというのは、今のところ、すぐ計算は出ない状況でございます。

郡分科員 いずれにしても、かなりの額かかるわけですよ。その額をこの子たちが節約しているということになります。それは、裏返せば、この子たちが放置されているということも言えるのだろうと思います。

 時間がないということなんですけれども、就学指導委員会についてだけ述べさせていただきたいと思います。

 これは中教審で検討課題となっていますけれども、通常学級を希望する保護者に対しまして、指導委員会が何度も呼び出して、養護学校に行った方がいい、あるいは通常学級には迷惑がかかるんだ、また、どうしても通常学級にいたいんだったら親がついていきなさい、こういう、指導という名のもとに差別的な言動が行われ、強制が行われている実態、本当に困ったものです。

 先ほどのお母さんの話なんですけれども、何度も何度も就学指導を受けて、吐き気や目まいや不眠に悩んだということなんです。就学指導委員会が始まるのは秋口からですから、ずっと長いこと、春先まで続くわけです。こういったようなことはぜひやめていただきたい。これが施行令の二十二条の三によって振り分けられるという実態があるからでございます。これをぜひ見直していただきたいというお願いをしたいと思います。これについてお答えください。

奥野主査代理 時間が来ていますから、なるべく短くお願いします。

馳副大臣 そういう差別的な対応があったとすれば、まことにけしからぬことであり、人権問題でありますので、そういったような事例があれば、折々に訴えていただきたいと思います。

 それから、最後の問題でありますけれども、中教審でも検討中のことでありますので、引き続き検討させていただきます。

郡分科員 ぜひスピードを緩めずにお願いをいたします。

 最後に、申しわけありません、これだけ。

奥野主査代理 短くしてください、本当に。

郡分科員 はい。先ほどの繭ちゃんのお母さんのお話なんですけれども、ぜひ聞いていただきたい。

 重度障害児が普通校で十分な教育が受けられるのかと懸念する(非難する)声を聞きます。しかし、障害児にとって成長、発達や、また健常児にとっての思いやりの心を育てるなど、教育のメリットを強調しがちですが、繭と健常な子供たちとの自然なかかわりを見て、いろいろな子がいて当たり前だ、本当はただそれだけのことだと思っています。ともに育つ子供たちの成長をとても楽しみにしております。

 まさにこれが共生社会だと思います。

 長くなりました。どうもありがとうございました。

奥野主査代理 これにて郡和子君の質疑は終了いたしました。

    〔奥野主査代理退席、主査着席〕

実川主査 次に、岡本充功君。

岡本(充)分科員 きょうは、医療制度改革が訴えられている昨今でありますので、文部科学行政の中でも医療に関する学問、特に医学教育について御質問をさせていただきたいというふうに思っています。

 大臣も、恐らく、私のきのうの質問の趣旨をお聞きになられていると思いますけれども、今現状で、医師の数の問題、また地域の格差、それからまた医学教育のあり方など、文部科学行政にもかかわる懸案、課題というのは多々あるわけであります。

 その中で、私は、順次お伺いしていくんですが、まずは地域における医師の偏在、これが一つ話題になっております。

 実際に医学部の学生が医師となり、そして地域の病院に就職をする、もしくは大都市の病院に就職する、また大学病院に就職する。いろいろな道がある。また、もちろん教育者としての道を進む人も見えますが、こういった学生が卒後研修をする中で、自分が例えば何科になろう、そしてどこの病院に行こう、こういうことを決めていくのは、まさにこの卒後研修の中でということが多いと私は思うわけですね。

 まず第一番目に、地域間の格差を是正するために、地方の病院、また、先ほども別の場で質問をしてまいりましたけれども、地方の公立病院の医師不足、勤務医不足は極めて深刻でありまして、こういった病院に就職してもらうためのある意味での推進策、こういったものはお考えなのか、またこれまでとってこられたのか、お答えをいただきたいと思います。

小坂国務大臣 岡本委員は医師出身ということで、医療に関しては専門家でいらっしゃいます。

 私の地元でも病院の医師不足、特に小児科、産婦人科、あるいは放射線技師等々非常に深刻な状態にあるわけでございますが、今まで供給をしていただいていた大学にお願いをすると、最近出てくる事項は、一つは、教授が一生懸命勧めても、遠い地域は行きたくないという学生さんがふえたという回答もありました。

 こういう人たちに対するインセンティブというのはなかなか難しいんですね、自分の今いるところから離れたくない、そういう意向でありますから。医師としての使命感とかそういったものを除いて、そういう意向で行き先を決めたり自分の診療科を決めるということになりますと、リスクの多い診療科目はなるべく避けるとかそういうことになって、勤務地もそういう観点で選ぶということになります。

 どういう対策を講じているかというと、各大学に対して、地域医療採用枠を設けてほしいとか、そういったお願いをしているのが現実でありますけれども、枠を設けても、その枠に入った人が一定期間を終了するとまた去ってしまうということで、また医師不足が復活する。なかなかイタチごっこのようで難しい問題でございますし、また同時に、タイムラグというものがありますね。今、小児科が不足しているからといって一生懸命充実を図っていると、今度状況がまた変化してくる。

 そういったこともありますので、診療科目を専門研修の段階で選択をされて、どちらかの方向性を推奨しても、またその先で別の状況が起こってくるというのがなかなか難しい状況でありますが、現状としては、今申し上げたように地域採用枠等をとりながら、医師としての使命感に訴えて、そして地域医療に貢献をしていただくようにお願いをしているというのが現状だと思っております。

岡本(充)分科員 大臣、くしくも先の質問までお答えいただいたわけですけれども、私は、診療科の偏在ということももちろん指摘をさせていただきたいと思っているわけですね。

 それで、職業選択の自由がありますから、強制をするわけにはいかないのは事実でありますし、勤務地についても希望の中で決めていくというあり方は、医局においての勤務地希望を採用するというのは、ある意味、合理性があるとは思いますが、その一方で、今大臣がおっしゃられたやりがいとか、医師としての責務を感じるような医学生を育てていくということも非常に重要である。

 例えば、地域医療に関しての魅力、その取り組みについての重要性を認識してもらうような医学教育をしていくべきだ。知識をただ単に詰め込むというだけでは、残念ながら、最先端の治療にのみ興味、関心を示す医師になると、必然的に中央病院、センター病院等に人が集まっていく、大学病院に人が集まっていくという傾向に拍車がかかるだけだというふうに思うわけでありますね。

 やりがいとまさに言われましたけれども、やりがいや、その責務について認識が持てるような医学教育をやっていくべきだというふうに考えるんですが、それについて御答弁をいただきたいと思います。

石川政府参考人 医師のやりがいのある、そういった気持ちを持たせるような教育、大変大事だと思っておりまして、先ほどの大臣の御答弁に幾つか補足をさせていただくような形でお答えを申し上げたいと思っております。

 大学の医学教育におきましても、委員既に御案内と思いますけれども、関係者の間でモデル・コア・カリキュラムといったようなものをつくりまして、それぞれの医学教育の到達目標を定めて教育の改善充実を図っております。その中でも、地域医療といったような項目をしっかり設けまして、これについては、すべての医学部で地域医療に関する教育を実施し、またその改善に努めているところでございます。

 また、文部科学省といたしましては、平成十七年度から、地域医療等社会的ニーズに対応した質の高い医療人養成推進プログラムといったようなものを起こしまして、地域医療等を担う医療人養成に関する大学のすぐれた取り組みを応募していただきまして、これに対して積極的に支援をするというようなことをいたしております。平成十七年度は七億五千万円ほどの予算でございましたが、十八年度では十二億九千万円の予定にしてございます。

 こういった支援を、今後ともしっかりと行っていきたい、こんなふうに考えております。

岡本(充)分科員 今のモデル・コア・カリキュラムというのをいただきました。平成十三年三月二十七日、医学・歯学教育の在り方に関する調査研究協力者会議、このペーパーでいいわけですね。

 この中で、地域医療の機能と体制を説明できるというのがコアになっているんですよね。それは説明はできるでしょう。ただ、その魅力だとか、その重要性、責務だとか、こういったことについての認識をモデル・コアにしていないじゃないですか、これじゃ。そういう意味で、地域医療の重要性について、もっと医学生の皆さんに知っていただくべきだと思うわけです。その検討をしていくという御答弁をいただけますか。

石川政府参考人 十三年の三月に医学教育のモデル・コア・カリキュラムが設定をされたわけでございますが、ただいま現在、私どもの方でも、また再び医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議といったものを起こしまして、地域医療の問題の解消ですとか、あるいは医学教育万般の充実に関する検討を行っております。

 こうした中で今委員が御指摘になりましたようなモデル・コア・カリキュラムのあり方なども議論をしておりまして、そういった中でこれからの改善の方向等も検討されていくと思いますし、私どももそれを進めていきたい、こう思っております。

岡本(充)分科員 続いて、同じくその偏在を解消するための一つの施策として、省庁そして都道府県連携で、地域における医療対策協議会というものを設立しています。

 愛知県も設立されておりまして、協議がされているという話は聞きますが、ここから医師を派遣されたという話はとんと聞いたことがないわけでありまして、大学の学部長や病院長なども出席をし、大学の医局の人事の差配のあり方についても当然協議の対象になっているはずだと思いますが、残念ながら、今、運用実績が芳しくないというふうに私は認識しています。

 そんな中で、医療制度改革の中で厚労省が、これを活用して地域への医師の配分をさらに加速化するんだという話をしていますが、文部科学省としては、地域における医療対策協議会は今後どうあるべきだ、それから、どのように改善をしていくのか、それについての御決意をいただきたいと思います。

石川政府参考人 地域における医療対策協議会の開催についてのお尋ねでございます。

 これにつきましては、平成十五年の十一月に、厚生労働省それから総務省と私ども、連携をいたしまして、地域医療に関する関係省庁の連絡会議、通称三省庁連絡会議と呼んでおりますけれども、これを設けて、平成十六年二月に取り組むべき課題を取りまとめて、その中の一つとして掲げられていることでございます。

 地域における医療対策協議会につきましては、平成十七年の六月現在、私どもが承知しているところでは、四十七都道府県中四十一都道府県で設置をされておるというふうに聞いております。大学病院、それから都道府県、市町村、そしてその他の病院関係者の間で、そういった関係者が寄り集まって、地域医療の充実あるいは医師の偏在等も含めて、そういったことを積極的に話し合っていこう、こういう場だと認識しております。

 委員の御指摘ですと、まだなかなかその活動状況が活発じゃないじゃないかというお話がございました。個々の活動状況をつぶさに把握しているわけではございませんけれども、この形はまだ発足したばかりでございます。私どもとしても、こういった場が積極的に活用され、また、ここでさまざまな積極的な議論、相談が行われるということを期待しております。

岡本(充)分科員 それは把握するべきじゃないですか。もう二年以上たっているわけですね。成果を出さなきゃいけない、医療制度改革でこれを使うだなんと政府は言っているわけで、この協議会の制度を使うんだと言っているわけですから、その現状を把握もしない中で、それぞれの都道府県がどうなっているかわかりませんけれども、医療制度改革の中で、これは地域の医師不足解消の切り札として挙げられるわけだから、その三省庁の間できちっと把握をするべきだ。どのくらい開催されているか、それぞれの都道府県、御存じだと思いますけれども本当に間遠ですよ。こんな間隔で開いていたんでは、病院長は頼みに行けませんよ。もっと積極的に開くように、文部科学省、リードされてみてはどうですか。

石川政府参考人 地域における医療対策協議会、先ほども御紹介申し上げましたように、三省庁で協議をした結果、設定しました一つの姿でございます。

 三省庁間で協議、相談をして、先生の御趣旨に沿うような形でやってまいりたいと思っております。

岡本(充)分科員 三すくみという言葉がありますから、そうならないようにしていただかなければなりません。

 続いて私が指摘をしたい話は、今、同じく医学教育の中で、新たに共用試験というものが実施をされるに至ったというふうに聞いております。

 今後、この共用試験は、今でも大分普及しているようですけれども、さらに普及をしていくという話を聞いていますし、大学によっては、この共用試験の結果によって進級の有無が決まるところがあると聞いています。手前みそで恐縮ですけれども、私の出身大学である名古屋大学は、これが進級に必須だというふうに聞いておりますね。もちろん、その一方で、進級に必須でない大学もあるというふうになっている。

 文部科学省としては、この試験は将来的には全大学共通の、ある程度、基本的な医学知識を確認する試験として進級に必須なもの、ベッドサイドティーチングという、前にも言っておりましたけれども、いわゆる病院実習に移る際には必須のものというふうにしていくおつもりであるのか。それとも、これは、それぞれ大学の自主運用に任せていくという御方針なのか。その点、時間がないので簡潔にお願いします。

石川政府参考人 お話のありました共用試験でございますけれども、これにつきましては、臨床実習の開始年次、いわゆる五年生でございますけれども、これへの進級前に、医学生が当該実習に参加するに足る十分な医学的な知識や診察の技能を有しているかということを適切に評価するために行われるというものでございまして、昨年の十二月からそれぞれの大学で導入が始まっております。

 今、全国にあります七十九大学におきましては、この共用試験にそれぞれすべて参加をするという姿勢でいるところでございます。そしてまた、この結果の扱いでございますけれども、各大学におきましては、この試験によって得られた評価結果と各大学独自の成績評価等、こういったものを組み合わせることによりまして学生の適切な進級判定が行われるもの、このように私どもは考えておるところでございます。

岡本(充)分科員 ということであれば、必須の試験になっていくという認識でよろしいわけですね。うなずかれていますね。

 そういった中で、この試験の費用ですけれども、およそ一人当たり二万八千円かかるというお話でした。この二万八千円の費用というのは、今どうなんでしょうか。現状、学生に負担が行っているのか、それとも大学の方でその費用を負担しているのか、その現状についてお知らせいただけますか。

石川政府参考人 共用試験の費用のことでございますけれども、共用試験は、社団法人の医療系大学間共用試験実施評価機構が主体となりまして、各大学の協力を得ながら実施をされているわけでございます。

 試験の実施に伴う費用につきましては、受験者数に応じた受験料相当分を各大学が機構に対してお支払いすることとされておると承知をしております。

 この場合に、受験料相当分につきまして、受験する学生から別途徴収するということも考えられるわけでございますけれども、通常の教育課程ではなく、別途実費が必要となる試験であるということから、その費用についてあらかじめ学生に対して明確に示した上であれば、学生側から徴収するというようなことも可能であろうかと思っておりますし、今現在は、各大学によってその辺の負担の仕方、あるいはその大学が負担するとか、やり方、対応はまちまちのようでございます。

岡本(充)分科員 例えば国立大学に限っても、国公立大学でも結構です。進級に必要な試験なのに別途その試験料を徴収する。それぞれの進級に必要な単位を取るための試験で、別途試験料を徴収している例がほかにあるんですか。

石川政府参考人 これに類似したほかの例については、恐縮でございますが、ちょっと今承知しておらないところでございます。

岡本(充)分科員 ということは、大臣、聞いてください。進級に必須の試験でありながら二万八千円の金額を学生に負担してもらうということは、ほかの試験ではあり得ない話なんですね。これを受けなければ進級できないわけです。

 例えば、ほかのさまざまな資格試験や技能試験はあると思います。それがなくても進級ができる試験、これはどうぞ、御自分の経済的負担で受験をしてください、結構だと思います。また、卒業後の国家試験、それぞれ資格を得るための試験として受ける、これもどうぞ、実費で御自身でお出しください。それはそうでしょう。しかし、学内における進級に必要な必須の試験になろうとしている試験が、それぞれの大学において今運用に差があるとは言われておりましたが、実費を学生に負担させるというのは私はおかしいんじゃないかと思うわけなんですが、これは、大臣、どのようにお考えになられますか。

石川政府参考人 具体の話ですので、私の方からまた最初にお答えをさせていただくことをお許しいただきたいと存じます。

 確かに、今委員がいみじくもおっしゃいましたように、これから必須になろうとしている。言葉が私、ちょっと不十分であったかもしれませんけれども、今現在、必須の試験として課されているということでは必ずしもございませんで、それぞれ全部の大学が参加してこれからやろうとしている、あるいはやりつつある試験という位置づけかと思っております。

 そういった意味で、この試験自体、どういう位置づけにするか、どうとらえるかということがあろうかと思いますけれども、先ほど私ちょっと申し上げましたけれども、通常の教育課程ではなく、別途実費が必要となる試験であるというような観点からは、受験をする方に御負担をいただくという考え方もあるのではないかということを申し上げたわけでございます。

岡本(充)分科員 それではカリキュラムの中に入らないじゃないですか。先ほど言われたように、卒業をするために必要、進級をするために必要、もう既にそういう大学があるんですよ。そういう状況になっていて、例えばそこの学生が別途費用を負担しなければいけないという話になったら、これは、医学部だけが特別に別途費用が発生するのはおかしいという論を私は張っているわけなんです。

 大臣、別に局長からのレクを受けてみえないかもしれませんが、この私の主張、どうお感じになられるか、率直にお答えいただきたいと思います。

小坂国務大臣 これが発生して、今日まで積み上げられてきた経緯というものがあると思うんですね、共用試験の。当該実習に参加する、それに足る十分な医学的な知識や診察技能を有しているかどうかを適切に評価するためにこの試験が導入され、そしてトライアルを重ねる中で、昨年の十二月以降、逐次、本格実施に向かっているという状況をかんがみれば、本格実施になったところでは、それをひとつ取り込んだ形の中で対策がとられるべきではないかなという気もいたします。

 しかし、それぞれの大学の事情もあり、また横断的に見れば、実施していない、そういうところがまだ残っているわけですので、そことのバランスということを考えて、必須というような性格を持ちながらも、別途費用のかかるものでありますから、費用を徴収するということになっているのは、ある意味で、過渡的なものとしてやむを得ない部分があるのかもしれません。

 御指摘のように、私、この分野ははっきり言って、今質問者の発言を聞きながら勉強しているような実情でございますので、もう少し実態を把握して、担当からの説明を聞いた上で判断をいたしたいと存じます。

岡本(充)分科員 ほかにはこういう試験がないということも、今局長が答弁されたとおりでありますから、ぜひ一度御検討をいただいて、この試験だけ進級に必要で、二万八千円、どうぞ皆さん払ってくださいという話はおかしいという話を私はしている。しかも、これが今後多くの、ほとんどの大学で実施をされるか、もしくは全大学で実施をされるという予定であるわけですから、なお一層対策を考えていただきたいということです。

 その次に、残された時間が少ないんですが、大学病院の実態について少し御質問しておきたいと思います。

 大学病院で診療している人は、基本的には非常勤医員また大学の教官、こういう話になっていると思いますが、実際には、医師免許を持つ大学院生や研究生、こういった方々も診療行為に当たられている。この実情については、文部科学省、当然把握をされていますね。

石川政府参考人 大学病院では、ただいまお話ありましたように、大学院生、研究生など教員や医員ではない医師が、自身の診療技術向上等を目的として診療に従事しているということは承知をしております。

岡本(充)分科員 こういった皆さん方は自発的にやっているというふうにお考えなんですか。自分の技術を磨きたいから、自発的な意思でやっているというふうにお考えなんでしょうか。

石川政府参考人 そういった診療行為なり診療に参加をしたということが、その病院の活動、あるいはまた医師としての診療として大いに役立つということはもちろんあるわけでございますけれども、基本的な理由といいましょうか、そこで診療をしているということにつきましては、院生あるいは研究生のような方々については、御自身の診療技術向上あるいは研究面での御自分の蓄積というような観点からおやりになっているという位置づけであろうというふうに理解しております。

岡本(充)分科員 まず、そもそも、その位置づけが私は大変現実と違っていると思うんですね。ということであれば、指揮命令系統はなく、自主的にやっているという話になってしまうんじゃないですか。例えば、だれそれさんの患者さんを診てください、だれそれさんの担当をお願いします、こういうふうな指揮命令系統があれば、それは自発的な自分の技術の向上じゃないんですね。それは、ある意味、上からの指令によって患者さんがあてがわれるわけです。

 局長は、自分がこういう患者さんを診たい、技能を磨きたいから、この人を診させてくださいという形でやっているという位置づけですと言われますけれども、それでは実態とかけ離れているという認識はないんでしょうか。

石川政府参考人 こういった大学院生の方あるいは研究生の方々は、大学病院において診療行為をする場合には、大学病院の方から診療従事許可を得て行っておる。こういった方々から別途書面で、病院長に対して診療許可の願いというものを出すことになっておりまして、基本的には、そういった病院長あるいはその病院の管理下における活動として位置づけられている、このように理解しております。

岡本(充)分科員 では、その大学院生、研究生が、万一、医療的な手技等によってウイルス感染症等に感染した場合はどういった責任の所在となり、その人に対する費用やさまざまな意味での補償はなされるのか、それについて御答弁いただきたいと思います。

石川政府参考人 このような医師の方々にある種の被害が及んだ場合というお尋ねかと理解しておりますけれども、そういった場合について、その及んだことについて、例えば病院側あるいはその管理をしている側、そういったところに瑕疵あるいは問題があるとすれば、例えば病院側の方はそれ相応の責任を負担するという形になろうかと思います。

岡本(充)分科員 いや、具体的な話で申しわけないけれども、例えば、あるウイルス感染症の患者さんに点滴を刺す。過って自分の手に刺してしまった。

 この場合、病院で正職員として働いている看護師さんには、当然、労災での補償がなされると認識をしているわけですが、その一方、大学院生や研究生はそういう補償が全くない。後は、どうぞ自己責任で病院へ行って、治療費を払って治してください、こういう話になっているんじゃないかと指摘をしているんです。

 これについて局長はどのようにお考えですか。

石川政府参考人 率直に申し上げまして、どういった形、あるいはそれぞれの医師の方々が、例えば保険とかそういったものに加入しているような形もあろうかと思いますけれども、その辺の実態あるいは実情につきましては、現時点で、私、ちょっと不分明でございます。きっちり調べて、またお返事をさせていただきたいと思います。

岡本(充)分科員 いや、実情は今お話をしたとおりですよ。

 もう一つ指摘をしたいのは、何で大学病院の看護師さんは点滴をとらないかということが、一つやはり私は大きな疑問なんですね。

 大学病院、各地の病院で言われていることですが、看護師さんはこう言われます。看護業務をするために、点滴を刺すのは医師の仕事であると。静脈に点滴を刺すときは医師がやるんですね、大学病院は。そんな病院はほかにはないんですよ、私はいろいろ勤めたけれども。それで結局、医師の数がたくさん要る。だから、大学院生は刺しに行ってちょうだいと言われる。

 私は、刺しに行く、そのときにいつも思ったわけですよ。これで私は、もし間違って自分の指を刺して、変な話、そのウイルスに感染しても、後はどうぞ自分で治すなり、さっきも言われた、自分で保険に入ってくださいじゃないでしょう。やはり実施させている、刺せという指令が来て刺しに行っているんだから、これは自分で好き勝手に刺しに行っているわけじゃないんだから、この人たちへの補償を文部科学省はしっかり考えてもらわないと困りますよ。私もそれをずっとやってきた。やってきて、常に疑問に思っていた。結局、医師確保を大学病院が一生懸命するが余り、地域の病院に医者が行かないんですよ。

 看護業務ももちろん重要だけれども、看護師さんに持続点滴のルート確保をしていただく、注射を看護師さんにもしてもらえる。ほかの病院ではしているわけだから、文部科学省の所管している、もしくは、独立行政法人になりましたけれども、大学病院においてもこれを積極的に検討するべきだと私は指摘をしたいんですが、局長の御答弁をいただきたい。

石川政府参考人 先ほども申し上げましたけれども、その辺の実態もよく把握をした上で検討させていただきたいと思います。

岡本(充)分科員 では、はっきりお答えください。それを検討して私のところにきちっと、どういう実態か、今お話をさせていただいた持続点滴のルート確保の問題、注射の問題、看護師さんが実施をしない大学病院がかなりある、私はそう思っています。もちろん、やっているところもあるかもしれない。その一方で、大学院生、研究生が点滴をとるためだけにずっと外来に張りついている、そんな病院もあるんですよ。そういう実態をきちっと調査して、私のところに報告に来ていただけますね。

石川政府参考人 できるだけの対応をさせていただきます。

馳副大臣 先ほどから伺っておりましたが、現場におられた岡本先生の御指摘でありますので、基本的にはまず実態をしっかり把握した上で、どう対応すべきか、検討の内容を含めて、先生に報告するようにいたします。

岡本(充)分科員 今でも、そういう大変危険な感染症と隣り合わせで、全く補償もない中で点滴や注射をしている、そういう医師がいる。その医師が大学病院に囲われているからだけではないけれども、囲われているその結果、残念ながら、地域への医師の配分ができない、こういう話もあるということを、大臣もお耳に入れていただいたと思いますので、ぜひ御検討いただき、そして、対応策を含めて御報告をいただけるようお待ちしております。

 どうもありがとうございました。大臣、お願いします。

小坂国務大臣 岡本委員が、実体験に基づく御意見として提起をされました。

 病院におけるそういった実態、また公的な職場において、警察官、消防士初めいろいろな公的な仕事につく方々が、住民の保護のために、いろいろな危険な現場に隣り合わせにありながら、それぞれに努力をされている。

 その中で、それらは保険によってカバーされたり、あるいは責任体制という中でそれが一つの賠償の形態を、道筋をつけてもらうようなことが行われているわけですが、医療現場においては、今、従事のための申請書というのがあるとおっしゃいましたが、その中には担当部長その他の承認のサインもあるわけですから、そういった責任体制の中で、事故の場合の責任をどのようにするかというのは、また個々の病院においてもやはり検討していただかなきゃいけない部分もあると思うんですね。

 文部科学省としてどの範囲でやるべきことなのか、また、厚生労働省等と協議をする中で、全体的な医療現場におけるそういった事象について、もう少し研究をする必要があるかな、こういう印象を持ちましたので、早急に調べて回答をくれと言われても、なかなかそう簡単にいくものではないと思いますが、そういう認識を持たせていただいたということだけ、とりあえずお伝えをしたいと思います。

岡本(充)分科員 ありがとうございました。

実川主査 これにて岡本充功君の質疑は終了いたしました。

 次に、菅野哲雄君。

菅野分科員 社会民主党の菅野哲雄でございます。

 二点について、少し私見を交えて質問させていただきたいと思います。

 一つは、今、国立大学の前期試験が始まっていますけれども、その前段に行われる共通一次試験、大学入試センター試験と言われている試験についてです。

 私は宮城県の気仙沼出身で、仙台まで車でも二時間半、三時間という地域に住んでおります。隣の岩手県は四国四県を合わせた面積があって、そこは盛岡を中心にした地域でしか受験できない。地理的ハンディキャップを持ったこの地域をどうカバーしていくのか。私は、それぞれ自分の志望する大学を目指して受験をする場合は、それはその人の選択ですから、地理的ハンディキャップというのは乗り越えなけりゃならない課題だと思うんですが、全国一律に行われる入試センター試験というのは試験の受験の機会が均等でなければならないという基本的な考えを持っているわけです。このことに文部科学省としてどう対応していくのか。

 今までこの議論はなされなかったというふうに思うんですけれども、この際、考えておられることを大臣に答弁願いたいというふうに思っています。

小坂国務大臣 なかなか難しい問題の御提起でございますが、個々の大学受験において、それは自分の選択だから、遠隔地であっても受けに行くのは自分の自己負担、また、そういった環境を受忍しなきゃいかぬとおっしゃいますが、それとても考えようなんですね。だから、共通の場合にはすべてが共通なんだから同じ条件でなきゃならない、これもまた一つの考えですよ。

 だけれども、自分で選択した大学が希望どおりにすべて入れるわけではないし、それによって三カ所も四カ所も回って受けなきゃいかぬときには、三倍、四倍の負担になりますね。それを一回の試験で、共通の試験でそのチャンスを均等にするという、そういう負担を受忍するというのはある程度やむを得ないことなのかな。やむを得ないと言っては言い過ぎかもしれませんが、できるだけ場所を選んで均等になるように配慮することも必要でしょうが、すべて均等にはならないということは、これは試験場の設定ということにも範囲があるわけですから、その大学が近隣の可能な施設を使う場合もあるでしょうし、そういった配慮はなされるわけですけれども、それがすべてにおいて均等になされるかといえば、それはやはり地理的なものは越えることができない部分がありますので、できるだけ配慮するということであと御理解をいただくというのが現実的な選択かなというふうにも感じますが、いかがでしょうか。

菅野分科員 大臣、勘違いしているんですが、前期試験、後期試験というのは、あと、私立の大学がそれぞれ入試をやるという部分は、それは言及していません。ただし、この共通一次試験という部分は、これは全国一斉に行われるわけですね。そういう共通一次試験に限定して、そのときに、この地理的ハンディキャップを持った地域にも配慮できないのかという問題提起なんです。

 というのは、二日間かけて行われます。そうすると、前の日の金曜日の晩に泊まって、土曜日の晩に泊まって、日曜日に試験が終わっても、帰れる地域はいいんですけれども、その日も泊まってという、三泊四日とかという状況が生み出されます。

 それじゃ、そこを乗り越える手だてはないのかといえば、それは、日帰りができるエリアというものを選択して、その地域に大学がないとすれば、高校の協力も得ながらそのハンディキャップというのを少しでも縮小するような対応というのは、文部科学省としても私は考えていいんじゃないのかなというふうに思うんです。これは大学入試センター試験ですから、大学入試センターで考える事項だというふうに言ってしまえばそれまでですけれども、やはり受験機会均等という、この共通一次試験に限ってそういうことは文部科学省として話し合う余地があるんじゃないのかなというふうに思うんですけれども、担当でも構いませんから、もう一度。

小坂国務大臣 いや、私が勘違いしているのかもしれませんが、私が申し上げたのは、共通一次という制度がなければ、一次も二次も各大学がそれぞれに実施するという昔々のそういう時代もあったわけですよ。そういうときには、それぞれのところへ行って、そこが受からなければまた別のところへ行ってあちこち受けるわけですよ。今でもセンター試験の後は同じ状況になりますけれども。

 だけれども、センター試験という制度は、どこでもという形になれば、それは今度は管理の上で大変な負担が出てまいりますよね、試験場の管理という点からすれば。ですから、それをどちら側が、センター側が全部そういうことを手配して、身近なところに、それぞれの地域に住む人に均等の距離のところに試験場が来るように配慮をしてできるかといえば、それは現実的に難しいだろうということを申し上げているわけですよ。

 担当の方からまた説明してもらいます。

石川政府参考人 ただいま大臣がお答えを申し上げたとおりでございますけれども、大学入試センター試験、多くの大学が参加をして、基本的な知識を確認するという試験として、今や受験生の間でも大きな存在になっているわけです。

 この大学入試センター試験の試験場につきましては、都道府県単位の試験地区ごとに、地区内の参加大学の協議によりまして設定をしております。原則として参加大学の施設を充てることになっているわけでございます。ただ、やむを得ない場合には、近隣の高等学校等の教育施設を使うということもこれまたあるわけでございます。

 また一方で、一部の試験地区におきましては、受験生の便宜等を考慮いたしまして、地域の関係者等のもちろんこれは協力が必要でございますが、その協力を得て、参加大学の所在地の外、そこから離れたところに高等学校等の教育施設をお借りして、そこに試験場を設定するというようなこともやっておるわけでございます。

 ただ、これにつきましては、やはりその大学から離れたところに試験場を設定するということになりますと、実施をする大学の人的な負担といった問題が出てまいります。それから、試験実施にかかるコストの増加ですとか、あるいは試験問題を輸送する管理の安全性とか、こんな問題も出てまいりますので、基本的には、そういった方法あるいはそういった設定をするかどうかは、それぞれの大学の責任において、もともと試験会場として予定されている大学の責任において判断をされる、こういう格好になっているわけでございますけれども、委員が御指摘の件、あるいは念頭に置いておられるのは、多分そういった措置がなされていない地域のことかなと思っております。

 ただ、先ほど来大臣が御答弁申し上げておりますように、やはり完全な平等とか完全な公平というのは、なかなかその実現というのはこれは無理でございます。できるだけのその可能な範囲での配慮をするということに私も尽きると思っておりまして、文部科学省といたしましても、それぞれ大学入試センター試験に参加する大学に対しまして、遠隔地等に居住する受験生にも十分配慮しながら試験場の設定に努めるように、こんな声をかけていくのかな、こんなふうに思っているところでございます。

菅野分科員 大体半径五十キロ圏内が日帰り圏、五十キロを超えても日帰り圏だというふうに私は思うんです。そういうことを念頭に置いて地域を限定すれば、例えば、無数にという形でなくて、隣の県と合わせても、私は宮城と岩手の例を出すんですが、例えば一関という地域にもう一つ会場を設ければそれはクリアできるとか、あるいは三陸地域の宮古地域にもう一つつくればそこは本当にクリアできるとか、参加大学に限定するんじゃなくて、そういうところの高校の協力を得て私は実現可能だというふうに思っています。

 高校の方でも、そういうことの協力要請があれば、子供たちのことを考えて協力することもやぶさかじゃない、こういう状況にもあるわけですから、そこは入試センターの方とそちらの方と十分協議して、実現に努力していただきたい、そして、文部科学省としてもそこは指導性を発揮していただきたいというふうに心から要望いたしまして、この件は終わらせていただきたいというふうに思います。

 そして次に、実は義務教育が小学校、中学校なんですが、もうほとんど高校は義務教育と言っても過言じゃないというふうに思うんですね。ただ、実際に、今日の経済社会情勢の中で、高校を経済的な理由であきらめざるを得ないというか、入っても途中で退学せざるを得ないという状況が私は顕在化してきているというふうに思っています。

 文部科学省としてこの実態をどのように把握しているのか、この点についてまずお聞きしておきたいというふうに思います。

銭谷政府参考人 まず私の方から、データを御報告申し上げたいと存じます。

 平成十六年度の公立、私立の高等学校の中途退学の状況でございますけれども、中途退学者数は約七万八千人でございます。これは、前年度、十五年度に比べまして約四千人減っております。それから、在学生に占める中途退学者の割合でございますけれども、これは二・一%でございます。これは、対前年度に比べまして〇・一ポイント減になっております。中途退学者数それから中退率ともに、四年連続で減少しております。

 それから、中途退学の理由でございますけれども、これは学校の方に、中途退学した人は主にどういう理由で退学したのか、こう聞いているわけでございますけれども、最も多い中途退学の理由は、いわゆる学校生活や学業不適応と呼ばれる理由でございます。次いで進路変更という理由が多いわけで、この二つの理由が大半を占めているわけでございます。

 経済的理由を主たる理由にする中途退学者もいるわけでございますけれども、データ上の話でございますが、前年度と比較して、人数、構成比ともに若干減少しております。数で申しますと、経済的理由を主たる理由とする中途退学者は約二千九百人でございまして、中途退学者全体に占める構成比は三・七%ということでございます。

菅野分科員 私は、進路変更とかという、学校ではそういうふうに報告するんですけれども、その裏には経済的な理由というものが存在するととらえているんです。だから、表面にあらわれた数字というのは確かに今述べられたとおり。表にはあらわれない部分というのが存在しているというふうに思います。現実に私も経験していますけれども、そういう子供たちが、高校生、この十五歳から十八歳までの間にそういうことを経験した人が、そういうことをばねにして生活の糧にする人もあれば、そこで挫折するという状況も出てくるわけです。

 私が言いたいのは、なぜこれを取り上げたのかというと、何としても今の奨学金制度を充実させていく、このことなしには、今の制度からいって、これへの対応というのが難しいんじゃないのかというふうに思っています、高校の場合は。

 だから、ぜひ文部科学省として、減少しているからいいというんじゃなくて、一人でも二人でもそういうことが出ないような方途をどのように考えておられるのか、これまでどういうふうな制度をやってきて、これからどのようにしていかれようとしているのか、その件をお聞きしておきたいと思います。

小坂国務大臣 菅野委員は、市議等で、市民の皆さんの実態、それから生の声を聞いて、ごらんになっているから、おわかりになった上での御質問だと思いますが、今おっしゃるとおり、うちの局長も、今、数字の上でございますがとこうつけたように、進路変更という理由が三四・三%となっておりますが、ではこれは本当に進路変更なのかと聞かれれば、大学へ行って、それから社会に出ようと思ったけれども、もう高校の段階で大学進学はあきらめて社会に行こうと思う、すなわち、経済的な理由で高卒で就職したいとなれば、二年でもうやめて早く入った方がいい、その就職先の条件として大卒がないんだからということになれば、これは事由は進路変更ですけれども、そのもとは経済的な理由だ、こういうことは当然あるわけです。そういった意味からすれば、この対策は何かといえば、奨学金制度の充実だと私も思います。

 特に外国の事例等を引きますと、企業が寄附する場合に、奨学金の制度をつくって、そして寄附する場合に、税額の控除だとかあるいは経費としての算定だとかいろいろな施策がありますけれども、日本の場合、そういう意味ではもっと拡充する余地はあるかなと私自身も考えています。そういう意味で、だれもが平等に、学びたいという人がしっかり学べる環境をつくってあげるというのがやはり本当は社会のあり方だと思いますから、御指摘の考え方には私も賛成をいたします。

 今後どのように具体的に奨学金制度を充実するかについては、まだまだ検討が必要でございますが、そういう方向性を持って取り組んでいく、そういう社会的要請があるなという認識は持っているつもりでございます。

菅野分科員 大臣のその思いはしっかり実現していただきたいんですが、実際に今奨学金の制度をめぐる状況というのは、大臣が今答弁しているような状況じゃないんです。私も、この奨学金というのを借りて、そしてやっと返し終わったという状況ですから、本当に、書類審査等も含めて厳しい状況を経なければ奨学金というのは借りられないというのが実情なんですから、だから、それを例えば申請すれば、そして所得状況をしっかり申請して簡単に受けられるという状況は、制度として私はつくる必要があるんだということを申し述べているんですね。

 だから、そういうことを真剣になって、今の奨学金制度をめぐる状況を私はここで申し上げません、つかんでいるつもりなんです。今私が提起しているのはそれと逆の方向を提起しているわけですから、その決意を大臣、もう一回、担当でいいですから、答弁願いたいと思います。

銭谷政府参考人 ただいま大臣の方から、やはり奨学金事業の充実が必要であるというお話がございまして、先生の方からもそういう思いが話されたわけでございます。

 実は、今、高校生に対する奨学金事業については、従来、旧日本育英会、現在の独立行政法人日本学生支援機構が行っておりました高校奨学金事業を、順次、平成十七年度以降の入学者から都道府県に移管をいたしております。

 問題は、その奨学金の貸与の規模ということになろうかと思いますけれども、平成十六年度の実績が、この育英会等合わせまして十七万一千人の規模で行ってきたわけでございますが、平成十七年度につきましては、その数を十九万六千人ということで、予算的には数を拡大いたしまして、御要請にこたえられるように各都道府県において御努力をいただいているところでございます。

 なお、もう一つ、公立の高等学校につきましては授業料の減免制度というのもございますので、こちらの方も、各都道府県において条例あるいは教育委員会規則等で授業料等の減免制度を定めて、授業料自体を減免しているということはやっているわけでございます。

菅野分科員 本当に、入学した人が最後まで卒業できるという状況を、文部科学省としても都道府県としっかりと議論し合って体制をつくっていただきたいというふうに思っています。

 それで最後になりますけれども、義務教育の中の問題を取り上げて質問いたします。

 昨日、私どもの社民党の阿部知子議員が予算委員会でこのことを取り上げました。私は非常にこのことでびっくりしているんですが、二〇〇五年から、自治体が独自で準要保護への援助に対する資格要件を定めて、自治体の責任でこれは対処しなさいということで補助金は打ち切られたというふうな中身になっていますね。そして実際に、二〇〇六年度あるいは来年も、そういう状況の中でこの準要保護という基準をどんどん縮めていっているという現状が出てきているというふうに私は言わなければなりません。

 それは、三位一体改革で地方自治体は非常に財政的に厳しい状況になっています。当初予算も組めないという状況の中で、どこを削るかというときに、こういうところを削らざるを得ないという状況が、今日、本当に全国の市町村を取り巻く状況であるというふうに思います。

 小坂大臣の予算委員会での答弁を聞いていて、こういう努力している地方自治体もあるというふうな答弁がなされていましたけれども、それは本当に特殊な自治体であって、全国を見渡したときに、逆に、財政的に厳しくて市町村合併もせざるを得ないという状況の中で、要保護基準を厳しくするという状況は私は許せないと思っているんですけれども、このことに対してこれからどう取り組んでいくのか。そして、文部科学省として、本当にこの補助金をなくすということが正しい選択だったのか、このことも含めて答弁願いたいというふうに思います。

銭谷政府参考人 いわゆる義務教育諸学校の就学援助の問題について、国庫補助の方は、三位一体の改革の中で、平成十六年度で準要保護については終わりにいたしまして、十七年度から一般財源でもって措置をしていただいているわけでございます。

 平成十七年度の各市町村の準要保護の認定基準につきましては、現在精査中でございますけれども、昨日、大臣の方からも予算委員会でお話がございましたが、市町村合併に伴う改正でございますとか、あるいは生活保護基準額の改定に伴う準要保護者の認定基準額の改正でございますとか、こういった理由によりまして、準要保護者の認定基準につきまして引き上げや引き下げが行われているということは承知をいたしております。これらを含めまして、準要保護者の認定基準につきましては、各市町村が地域の実情に応じて適切に判断しているものでございます。

 私どもといたしましては、義務教育の機会均等を図る観点から、適切に就学援助が実施されますように、今後とも就学援助に係る市町村の取り組み状況の把握に努めて、必要に応じて指導してまいりたいというふうに考えております。

小坂国務大臣 阿部委員の御質問にお答えしたことも同じことでございますが、すなわち、今、局長から答弁させていただきましたように、基準を緩和しているところが秋田県とか北海道にありますよというお話をして、一方で、市町村合併に伴う改正をした静岡の例を申し上げたのですが、これは、町村合併をしたときに、町が三つ一緒になったら一番低いところに合わせたと。これは、現実的にどこを基準にするか、それを緩和するのは個々の事例によってまた配慮もあると思いますが、そういったもの。それから、生活保護基準が改定されたから準要保護も改定されたというところはありますよというお話をしたのであって、本来、保護を受けられるべき人が受けられなかった事例がふえたということとは違うんですよ。

 それから、準要保護が平成十二年から十六年までの間に四〇%ふえたという御指摘もあって、数字の上でもそれは確認できますが、それは、困窮者が全体的にふえているのではないかという推量もできるわけですね。しかしそれについても、統計ですから、見方は、どちらから見るかによって、適用を申請する人がふえたんだと言う人もいます。

 ですから、そういう意味では、私も、やはり社会が厳しくなっていることはあるだろうと思っておりますからそれは認めますが、そういう見方もあるということを披瀝しながら、受けられるべき人が申請したけれども断られちゃったという事例ではないということだけ御理解いただきたい。

菅野分科員 なぜこの問題を取り上げているのかというもう一つの大きな理由は、三位一体改革で、義務教育の部分においてもこういう状況が生み出されてきているという具体的中身なんです。そして、義務教育の部分も各自治体の裁量で行いなさいという形で、義務教育の部分も含めて各自治体間格差が生じているところにこれからもまた三位一体改革と称して地方にゆだねる政策がとられていったならば、私は、国が責任を負わなければならない大事な義務教育という部分を、こういう形で虫食い状態に徐々に徐々に機会均等が脅かされている、このことに危機感を持っているわけです。

 大臣、本気になって、義務教育は国の責任で行われなけりゃならないんだ、こういう細部にわたっても国の責任において行われなけりゃならないという態度を私は貫いていただきたいと思うんですけれども、決意のほどをお聞きしておきたいと思います。

小坂国務大臣 義務教育の機会均等、無償性というものは、これは保障されなきゃいけないと思っております。その付随的な部分で、給食支援を初めとした、こういった要保護それから準要保護にどう対応するかということにおいて、それぞれ地方で、その地域の実情に合わせて、市民の方の実情をしっかり把握できるところでそれを実施していただくというのが基本的な考え方でございます。それが地方分権の考え方でございまして、決して、委員御指摘のように、地方分権で地方にゆだねられたら、財源不足から切り捨てられるのが当然なんだ、そういう一方的な判断というのは、それは私どもはとらないところでございまして、そういうことがとられないように私どもは指導してまいりたいし、また、地方自治団体もそういう努力をしていただけると期待をしておるわけでございまして、そういう中で、困窮者が申請をしたけれども受けられないという状況にならないように配慮をしながら対応していくことが重要だと考えております。

菅野分科員 終わります。ありがとうございました。

実川主査 これにて菅野哲雄君の質疑は終了いたしました。

 次に、井脇ノブ子君。

井脇分科員 自由民主党の井脇ノブ子です。

 さきの日曜日には、大臣、ありがとうございました。枚方においてタウンミーティングを行っていただきまして、大変町の皆さんが喜んで、また、ニートの問題に対しましてすばらしい案をいただきましたことを御礼申し上げたいと思います。

 私は、きょうは五つのことについてお聞きしたいと思っております。優秀な教員の確保について、中高一貫教育について、株式会社立大学について、個性を伸ばす教育について、道徳教育について、これだけのことについて、時間がありますかどうかわかりませんが、やってみたいと思います。

 教育は人なりと言われるように、教育の成否は、直接学校で子供たちに指導しております教員の資質と能力に負うところであります。特に教員には、まず教育者としての使命感、子供たちに対する教育的愛情、広く豊かな教養、教科等に関する専門的知識などが求められます。私は、生徒は先生を信頼し尊敬する、先生は生徒を信頼し愛情を持って指導する、保護者は先生に対し信頼し尊敬するという敬、愛、信の教育がとても大切で、今までそのように日本は行われてきたと思います。

 我が国の教育は世界からも認められてきました。誇りでもあります。それを支えてきたのが、長きにわたり確立された教員養成課程を経て、志を持って学校に送り出される教員であります。しかし、残念ながら、昨今の一部の教員の中には子供たちにわいせつ行為等をする者など、社会的評価は決してよいものではありません。また、平成十六年度においては、全国に五百六十六名の指導力不足教員も認定されています。子供たちとの適切な関係を築くことができないなどの指導力が不足している教員の存在は、子供たちに大きな影響を与えるだけでなく、保護者等の学校に対する信頼を大きく損なうものでございます。

 このような教員が存在することはどこに問題があるか。文科大臣、お答え願いたいと思います。

小坂国務大臣 井脇委員は学校法人の理事長として、日ごろから教育の充実、また人づくりに大きな御貢献をいただくとともに、見識を持ってお取り組みをいただいていると理解をいたしております。また、伺わせていただきました枚方市というのは、大学、高校、中学含めて非常に学校の多い地域でございまして、学園都市ということで、多くの学生さんにもタウンミーティングに参加をしていただきまして、若い人の意見も聞かせていただきました。

 教育に携わる人材の質の問題は、今日の教育の大きな課題であります。委員は、理事長としての教育現場における実態を見られ、またそれを横断的に比較をされて検証する中で、今の御指摘があったような、新聞に、あるいは雑誌等に掲載されるような、本来あってはならない教員の行動というものが現実に存在することも事実でございまして、そういったものを二度となくすためには、教員養成の段階から、教員が倫理観を持って、教育者としての使命感を持って取り組んでいくことが必要だ、このように考えておりまして、そういった人材の育成のために今後とも施策の充実を図ってまいりたいと考えております。

井脇分科員 ありがとうございました。

 次に、これは社会状況や学校教育をめぐる環境の変化等に教員が追いついていけない、余裕がないということも原因として考えられることだと思いますが、それ以前に、現在の教員養成のあり方に、大臣、限界があるのではないでしょうかと私は考えております。

 そこで、教員を志す者に対して、教育実習等を通じて、指導力はあるのか、適格性はあるのかといった教員としての資質能力について、大学や大学院等の教員養成機関が責任を持って保証した上で免許状を授与するシステムを構築し直す必要があると思います。なぜならば、現在、大学を出るとき、百二十四単位で大学は出ますが、教員の免許を取るには二十六単位で取得できます。それでは余りにも教育実習など時間数が少なく、実習も少なく、非常にその資質の向上が期待できないのであります。

 そこで、私は、そのことについて、システム構築を素早くしてほしい、免許状を授与するためにもそれをしてほしいと願っておるものでありますが、その点について御見解をお願いいたします。

銭谷政府参考人 先生お話しのように、教員養成課程で将来の教壇に立たれる先生方の養成をしっかりと行うということは、これからの教育を考えた上で大変重要な課題だと思っております。

 今、教員免許状を取得するためには、例えば一種免許状の場合でございますと、大学において、教科に関する科目、教職に関する科目、合わせて六十七単位修得することが必要でございます。この六十七単位の修得のための実際の教職課程の授業改善ということが今後大事なことだと私ども思っております。

 そのために、教員養成課程を有する大学の組織的な取り組みを促すための各大学における教員養成カリキュラム委員会、仮称でございますけれども、こういったことの設置を検討するとか、あるいは中央教育審議会の先般の教員養成に関する中間報告では、いわば教職課程を履修した学生が教科指導や生徒指導等を実践できる資質能力を身につけていることを確認した上で免許状を授与するというために、教職実践演習といったような新しい必修科目を課すことなどの提案もなされております。

 こういったことを踏まえまして、大学の教職課程の質の保証をするための取り組みを真剣に検討し、実施をしていきたいというふうに私ども思っているところでございます。

井脇分科員 ありがとうございました。

 大変よくわかりました。これが成功して六十七単位の履修ができるようになり、また先ほども銭谷局長さん、演習もする、実践もするというような、そこで養成機関が認定をしていくようになっていきますと、大変資質の立派な人材ができてくると、とてもうれしく思います。

 また、教員の採用試験にもう一つつけ加えてほしいんでありますが、合格いたしましたら採用されてすぐに教壇に立つんではなくて、一応六十七単位で、かなりのことを大学でやるといっておりますけれども、一年間を海外協力隊やボランティア活動や会社等において社会体験、研修を経て、人の心、人の悲しみ、喜び、愁い、そういうものを身につけて、みずから人間力、教育力を身につけて、自信と勇気と教育に対する情熱、理念、教壇に立つだけの力をはぐくんで、そして教員としてほしい。

 このことについて、合格してから一年間の海外協力隊やボランティア活動や会社等においてのカリキュラムはいかがでしょうかと思いますが、文部大臣の見解をお聞かせ願いたいと思います。

小坂国務大臣 今御質問をいただいている井脇議員の質問のトーンからしても、いかに情熱を燃やしているかというのは実感をするわけでございます。

 教育に情熱を持って取り組む教職員というものが多ければ多いほど日本の教育は充実する、これは間違いのない事実でございます。教職課程を経た後に社会的な体験を積むということが、学生に対して職業観、勤労観をはぐくむ上で、やはり指導者としてその資質がなければ指導できませんので、非常に重要なことだと思っております。教員が企業や社会福祉施設、あるいは学校以外の施設において多様な経験を積むこと、教員個々の対人関係の能力や指導力の向上のみならず、教員としての職責の自覚や社会的視野の拡大を図る上で非常に効果的だと私も思います。

 このような観点から、現在、すべての都道府県、政令市、中核市の教育委員会において、初任者研修や十年経験者研修の機会等を通じて企業や社会福祉施設等における社会体験研修を実施しておるわけでございまして、短いもので一カ月未満、長期一カ月以上、それぞれの取り組みがあります。平成十六年度の実績を申し上げれば、短期一カ月未満というものは四万二千四百八十七名、また一カ月以上は一千二百九十三名、私も実績を見て思うことは、まだまだだなと思います。もっともっと充実しなきゃいかぬ。

 そしてまた、もっと長期に、井脇委員は一年間とおっしゃいました。一年間が適当かどうかということはいろいろ議論もあるかもしれませんが、相当長期の社会体験研修を実施することは私も有効であろうと思います。そしてまた、教職員のみならず、社会人としてボランティアそして奉仕活動に従事するということは、これは企業に勤めている人たちにとっても必要なことでありますし、教員のみならず社会全体がそういったものに理解をし、積極的に取り組む、そういう社会の実現、そのためにも、まずは教員からということもあります。そういった取り組みを推進することに、今後とも、いろいろな場を通じて私も訴えてまいりたいと存じます。

 また、文部科学省では、外務省、JICA、教育委員会等と連携した青年海外協力隊について現職教員の特別参加制度を設けておりまして、平成十八年度には現職教員で八十八名の派遣が予定されているところでございます。

 今後とも、多くの教員が多様な社会体験を積んで資質、能力の向上に努めることができるように、各教育委員会の取り組みを支援してまいりたいと存じます。

井脇分科員 大変ありがとうございました。

 次に、中高一貫教育についてお伺いしたいと思います。

 中高一貫教育は、従来の中学校、高等学校の制度に加えて、生徒や保護者が六年間の一貫した教育課程や学習環境のもとで学ぶ機会をも選択できるようにすることにより、中等教育の一層の多様化を推進し、生徒一人一人の個性をより重視した教育の実現を目指すものとして、平成十一年四月から中高一貫教育校の設置が可能となっております。現在、全国に百七十五校設置されていますが、中高一貫教育に対する生徒、保護者の反応、評価についてお伺いしたいと思います。

銭谷政府参考人 中高一貫校は現在全国で百七十三校設置をされているところでございますが、その教育活動に関する評価としては、やはり六年間を見通した特色あるカリキュラム編成が可能になっている、それから一貫した指導体制によりまして、中学生が高校に入学したときつまずく例が多いわけでございますけれども、そういうつまずきをなくすことができる、それから中学生、高校生の段階の生徒間の交流を通じて好ましい人間関係や社会性を培うことができる、さらにはそれぞれの得意の分野、そういうものを六年間じっくり伸ばすことができるといったようなメリットが報告をされているところでございます。

 一方で、やはり六年間同じ仲間で学ぶというケースもあるわけでございますから、人間関係の固定化による弊害の克服が必要だとか、あるいは中だるみがちょっと生ずるとかという課題もあるということを報告している学校もございます。

 ただ、文部科学省としては、中高一貫教育につきましては、学ぶ機会の多様化という観点から多くは一定の評価を受けている、こう考えておりまして、実は、中高一貫教育が制度化されて六年が経過をして、昨年の三月に初めて卒業生が出た、六年間学んだ卒業生が出たということもありますので、今後とも、中高一貫教育の成果を注目し、その充実に努めてまいりたいと思っております。

井脇分科員 今、平成十一年でしたから、平成十六年度に卒業生が出たと言っております。その成果を、どれぐらいの大学にみんな行き、どういうようなというようなことを文部省としては把握していると思うんですが、私はちょっとそこまで調べなかったんであります。

 この中高一貫教育を今後、教育改革プログラムとして文部省は五百校ほど整備目標を示しておりますけれども、この目標は、生徒や保護者にとって実質的に中高一貫教育を行う学校を選択することを可能とするために当面の必要な数を示したものであると思いますが、都道府県においては今後の設置計画についてどこまで行っているでしょうか。そこをお聞かせ願いたいと思います。

銭谷政府参考人 先ほど、平成十七年度現在、全国百七十三校設置をされていると申しましたが、現時点で把握しております十八年度以降の設置予定は新たに四十九校というふうに承知をいたしているところでございます。高等学校の通学範囲に少なくとも一校整備、全体で五百校ということを一つの目標にしておりますので、引き続き、その設置の促進を図ってまいりたいと思っております。

井脇分科員 中高一貫が成功するように、すばらしい学校制度で、今後とも成績が、子供たちが、人材が、養成が立派になりますようにお願いをいたしております。

 私は、今まで三十六年間教育の現場におりまして、文部省や県に、私学振興室に六十八回も足を運んで学校を三つほどつくったわけでありますけれども、株式会社立大学、高校もあるんですけれども、これについて、ちょっと不思議でならぬので質問をさせていただきます。

 株式会社による大学の設立が構造改革特別区域法により可能となったことで、平成十六年四月に二校が開校されたのを皮切りに、現在三校が開校しております。株式会社立大学については、その検討時から、株式会社の経営が悪化した場合、大学の経営が不安定になるのではないか、あるいは、専任教授が少ない、図書館等の教育研究設備が貧弱である、こういう懸念が示されていました。

 実際に、株式会社立大学の設立後には幾つかの問題点が明らかになっております。例えば、ある大手司法試験予備校が運営している大学では、司法試験等合格者数を水増しして学生募集のパンフレットを配布したり、また昨年の大学設置審議会では、複数の株式会社立大学が、申請書類の虚偽の内容や設備不足等を理由に設置不認可、保留、あるいはみずから申請を取りやめた結果となりました。

 株式会社立の学校の存在する理由はどこにあるかと私はいつも考えて、何とかこれはと思っております。また、その目的は学校法人立大学では果たせないものか。このことについて、今まだ三校しか大学はできておりませんけれども、ぜひともお聞かせ願いたいと思います。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 株式会社につきましては、学校法人のような教学と経営の調和を図る組織体制は必ずしも備えておらず、また学校教育以外の授業も自由に行うことができ、不採算による学校経営からの撤退なども考えられるなど、学校法人に比べて公共性や継続性、安定性の面で懸念もあるのは御指摘のとおりでございます。しかしながら、その一方で、株式会社では学校法人にはない多様な手段による資金調達が可能となり、状況の変化などに迅速に対応した教育の実施や効率的な経営を期待できる面もございます。

 こうした観点を踏まえまして、株式会社立大学につきましては、構造改革特区におきまして、地域の特性を生かした教育の実施や地域産業を担う人材の育成など特別なニーズがある場合に限り、学校経営に必要な資産の確保や情報公開の実施、セーフティーネットの構築などを条件として、その設置を認めることとしたものでございます。

井脇分科員 今理由がわかりましたのですが、少子化に伴って、大学、短大の志願者数が入学定員と一致する大学全入時代を控えて、大学の定員確保は一層困難となり、破綻する学校法人も予見されております。会社の経営状況に左右されがちな株式会社立大学は、学生保護等の視点から問題があるのではないでしょうかと私は思うのであります。

 それは、今言ったように監査をして、できる、間違いないんだというようなことでございますが、学校法人立ではなくて株式会社立大学、このことについてもう一度、会社の経営状況に左右されがちな株式会社立大学、それは絶対ないのか、それはわからない。学生保護を本当にできるのか、そういう問題がある。そうしたら学校法人でも同じじゃないかと言われる可能性があるとは思いますけれども、このことについてもう一度局長さん、このことを心配しておりますけれども、どうでしょうか。

 大臣、お願いします。

小坂国務大臣 私の方からお答えを申し上げ、また補充をしてもらおうと思いますが、井脇委員の御懸念は、学校経営に日ごろから大変苦心をされながら、その困難を克服して経営を続けていらっしゃる、そういうお立場からの生の意見だと思って耳を傾けておったところでございます。

 株式会社立大学のことにつきましては、特区における取り組みの状況を十分に検証して、その上で継続性、安定性の確保の面から慎重な検討を行う必要があると考えておりまして、そういったものを踏まえて、果たしてこれを全国化するのかどうか、こういったことについても検討を進めていかなきゃいかぬ。

 去る二月十五日の政府の構造改革特区推進本部の決定におきまして、株式会社立大学に係る特区事業については引き続き評価を行うこととされておりまして、いきなり全国化を推進するというよりは、引き続き評価、こういうことになっております。学校設置者については、公共性、継続性、安定性の確保が不可欠でありまして、文部科学省としては、このような観点から、特区における取り組み状況の調査と、御指摘にありましたような不適切な事例等をしっかり研究する中で、適切に対応してまいりたいと存じます。

井脇分科員 よろしくお願いします。

 今大臣から、株式会社立の学校についての継続性、安定性、公共性、こういうことを言われて、それが継続できるようにということを、安定性もということでお聞きいたしました。また、全国化するというのは今まだまだだという、検証をするということで少し安心をいたしたものでございます。株式会社による学校設置の全国化あるいは存続、廃止等、今後の方向についてもよくわかりまして、本当にありがとうございました。このことについては、これで私は終わります。

 次に、個性を伸ばす教育についてと道徳教育について、もう二、三分しかありませんので素早く行っていきたいと思います。

 平成十四年四月から、全国の小中学校で現行の学習指導要領が実施されています。現行学習指導要領では、教育内容の厳選、個に応じた指導の充実等がそのねらいとされています。教育内容の厳選については、今までさまざまなところで議論がなされております。今さら触れるほどのことでもないと思います。

 そこでお尋ねしますが、個に応じた指導とはどういうものか、改めて確認をしたいと思いますが、局長さん、お願いをいたしたいと思います。

銭谷政府参考人 いわゆる個に応じた指導というのは、子供たち一人一人の学習状況に応じたきめ細かな指導というふうに使っております。

 具体的には、少人数指導、習熟度別指導、チームティーチング、理解が進んだ子供に対する発展的な学習、学習がおくれがちな子供に対する補充的な学習など、こういった学習活動を取り入れた指導というものを指して個に応じた指導と呼んでおります。

井脇分科員 学習指導要領に示す内容が十分身についていない子供には基礎や基本を繰り返し指導を行って、十分習得ができている子供にはさらに進んだ内容を学ぶことも可能となります。

 そこでお尋ねいたしますが、十分習得できている子供について、今日、教育に対してニーズが大きく多様化しております。このような優秀な子供たち、特に、伸びて伸びて伸びる子供、そして伸ばす教育、つまりエリート教育が重要である。私は、習熟度別をしますと特にそういうように思うのですが、今まで以上に耳を傾ける必要があるのではないか。

 ちょうど団塊の世代、私たちのときに、習熟度別にしまして、京王プラザから飛びおりた自殺事件がありました。それ以来、文部省は、そこからかどうかわかりませんけれども、平均化するようにしていったわけであります。

 今後、日本が技術立国、すばらしい人間の教育力、人間力、そういうものを伸ばしていくためには、エリート教育のニーズに対してどのように大臣はお考えでしょうか。

小坂国務大臣 御指摘のように、習熟度別指導というのは、学習のカリキュラムについていけない、そういったお子さんたちに対しても個別指導を行う中で学力を回復していただく、回復していただくといいますか、スピードに追いついていただくような措置をとると同時に、現在の学習指導要領の中で発展的な学習というものを認めているように、いわば先取りの指導ということも可能にしているわけでございます。

 今日、産業界の要請は、御指摘のように、科学技術あるいは技術教育、そういった面で秀でた人材を育成したいという企業側の要請もあって、いわゆる大量生産に適した標準型の人間よりは、時代のリーダーとなるような、そういう人材養成ということがありまして、最近、卑近な例では、名前は似ておりますけれども、海陽学園というものが産業界によって設立をされたという経緯もあるわけでございます。

 そういう意味で、時代の要請と産業界の要請はそのような方向にあるという部分も認識はいたしておりますが、しかし、教育全般を見渡す中では、やはり変化に対応できる心豊かなたくましい人材の育成ということに主眼を置いて、余り格差の生じない中で人材育成を行っていくべきと、基本方針のもとでまた特徴ある人材の育成に対応していく、このことが必要だと認識をいたしております。

井脇分科員 時間となりました。

 まだ五つほどあったんですが、時間がありませんので、またこの次に大臣にお伺いしたいと思います。ありがとうございました。

実川主査 これにて井脇ノブ子君の質疑は終了いたしました。

 次に、井澤京子君。

井澤分科員 自由民主党の井澤京子でございます。本日は、この予算委員会第四分科会において質問の機会を与えていただきました。ありがとうございます。

 きょうは、子供の安心、安全、防犯対策という問題を中心に質問いたします。どうぞよろしくお願いいたします。

 昨年十一月からことしにかけて、広島、栃木、京都、滋賀の各府県において、小さな子供が殺害されるという悲惨な事件が相次いで起きております。

 私の地元、京都府第六選挙区内にある宇治市では、昨年十二月に、学習塾の教室で塾の講師により小学六年生の生徒が刺殺されるという大変痛ましい事件が起こり、先週二十日には初公判が開かれました。

 その後も、子供たちが不審者に声をかけられたり、名簿を出すよう要求する電話が自宅にまでかかったりと、地域住民が不安に駆られる事案も増加傾向にございます。

 振り返れば、平成十五年十二月、宇治小学校に刃物を持った不審者が侵入し、小学一年生の児童二名が学校内でけがをするという事件があり、そのため宇治市では、学校、保護者、教育委員会、PTA、行政及び地域住民が一緒になって、子供たちの安全対策について緊急の予算措置をとるなど、さまざまな施策を展開してまいりました。

 実は、文部科学省からは、平成十六年度、地域ぐるみの学校安全モデル事業の委託を受けており、学校、PTA、地域団体、警察関係、消防関係、行政関係で推進組織もでき、こちらにございますような報告書が平成十七年三月に宇治市教育委員会から出ております。

 一年間の取り組みを通じて、子供の健全な育成と、子供の安全は学校だけでは守られず、学校、家庭、地域や関係機関との密接な連携や協力なしにはなし得ないのと同様に、安全、安心な学校づくり及び安全、安心な地域づくりも、地域ぐるみの取り組みが必要であると報告がまとめられました。

 このように、宇治小学校の事件を受け、危機意識が高く、全国に先駆けてさまざまな取り組みを行っていたにもかかわらず、再び事件は起きました。

 将来を担う子供たちのとうとい命を奪う事件がこれだけ相次ぐと、いつ、どこで、だれが被害に遭うかわからず、安心して子供を学校に行かせることも、育てることさえもできなくなります。

 まずは、平成十四年以降、宇治市を含めた全国の学校安全のためのモデル地域においてどのような取り組みがなされているのか、文部科学省にお伺いいたします。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 先生今御指摘の地域ぐるみの学校安全推進モデル事業、これは、平成十四年度から十六年度まで、地域との連携を重視した学校安全に関するモデル地域を指定いたしまして、実践的な調査研究を行うという目的で実施しているものでございます。

 このモデル事業は、先ほども申し上げましたけれども、地域社会との連携協力を図りながら、児童生徒の安全を地域社会全体で見守る体制整備というのを先進的に行っていただくというものでございまして、平成十七年度、今年度から開始いたしました地域ぐるみの学校安全体制整備推進事業の一部でございますモデル地域での取り組み、これに引き継がれているものでございます。

 御指摘の宇治市につきましては、先生御指摘のように、十六年度の取り組みとして実施されたものでございますけれども、例えば、市教委によります二種類の危機管理マニュアルの作成でございますとか、また有償ボランティアでありますスクールサポーターの学校への配置、また地域の関係団体から構成されます学校安全管理委員会の設置など、学校、家庭、地域、行政が一体となった特色ある取り組みが行われたものと評価しているところでございます。

 また、その他の全国各地のモデル地域におきましても、地域を含めた安全教室、防犯訓練の実施でございますとか、子ども一一〇番の家との連携強化、さらには、警察、消防署、防犯協会等地域の団体との連携活動の実施などについてもさまざまな工夫を凝らした取り組みが行われているところでございまして、このモデル地域での取り組みは、全国学校安全フォーラムにおいて実践報告をしていただくとともに、実践結果につきましては取りまとめて全国に周知いたしているところでございます。

 こういったことで、地域全体で子供の安全を見守る体制の整備に大きな役割を果たしたものと考えているところでございます。

井澤分科員 ありがとうございました。

 全国各地のモデル地域の取り組み、その効果についてさらに検証を進めていただいて、地域のそれぞれの実情に合った対策を、モデル地域だけではなく、全国的に引き続き推進していただきたいとお願い申し上げます。

 では次に、小坂文部科学大臣にお伺いいたします。

 小坂大臣は、文部科学委員会における所信表明演説で、充実した教育を支える教育環境の整備という項目で、安全、安心な学校、地域づくりについて述べられています。学校や通学路において大変痛ましい事件が続発していることを重く受けとめ、ハード及びソフトの両面から組織的、継続的な対策に取り組む子ども安心プロジェクトを推進し、学校の安全、安心の確保、学校安全ボランティアへの参加など、国民の皆様に積極的な御協力をいただきながら、政府一丸となって、地域ぐるみの安全確保のための取り組みを強力に進めていくとおっしゃられていらっしゃいます。

 また、昨日の本会議でも、警察等と連携をとり、国民の協力を得ながら再発防止に努めると強い決意をあらわされました。

 また、昨年十二月に相次いで起きた事件を受け、自由民主党は、犯罪から子どもを守る緊急対策本部を設置し、私も議論に参加いたしましたが、六つの緊急提言を取りまとめ、政府や自治体に対し、実効ある対策を打ち出すよう求めてまいりました。

 今後、事件の再発防止に向けた取り組みや、関係各省どのような連携が必要かなど、改めて小坂大臣の子供の安全に対する御所見をお伺いしたいと思います。

小坂国務大臣 御指摘をいただきましたように、私の所信表明の中でも申し上げておりますとおり、地域ぐるみで安全を確保するということは、今、井澤委員が御指摘をされましたように、学習塾の中におっても被害に遭う、全く問題ないはずである、安全な環境であるはずの学校の中にまた侵入者が来る、また、地域の目が行き届いていたはずの通学路で被害に遭う。一体どこが安全なんだろうということになってまいりますので、この安全、安心な通学環境、学校の環境を維持するためには、地域ぐるみで、そして今御指摘のような、警察、消防を初めとした地域の組織を挙げて取り組んでいくことが必要であるという時期になってきていると思っております。

 そのための子ども安心プロジェクトを推進しているわけでございますけれども、まず地域ぐるみの中で、具体的に申し上げれば、子供が大人と接触している場合に、そこの近所の方が通りかかって、何々ちゃん、親戚の方なのと声をかけるとか、何をしているのと声をかけるだけで、その声かけをしていただくだけで大変大きな抑止効果になるわけでございます。

 そういった具体的な対策に結びつくように、文部科学省としては、今年度より、各学校を巡回して学校安全ボランティアの指導等を行うスクールガードリーダーの委嘱等を行う事業を開始いたしているわけでございます。平成十八年度の予算案においては、全国展開を図るため、その拡充に必要な経費として、十七年度の七億五千万の約倍の十四億を計上いたしているところでございまして、地域ぐるみの学校安全体制整備推進事業としてこの予算を活用してまいりたいと思っております。

 具体的には、学校で巡回警備に従事する学校安全ボランティア、スクールガードの養成研修、また、防犯の専門家や警察OB等の協力のもとに、スクールガードリーダーによる各学校の巡回指導と評価、モデル地域における実践的な取り組みの実施という三つの柱から構成をいたしております。十八年度は、このスクールガードリーダーの全国展開を図るために、全国の小学校を中心に巡回していただけるように、スクールガードリーダーを二千四百名増員するための経費を計上しております。

 このように、携帯電話やパソコン等のITを活用したり、また、学識経験者の協力を得てモデル推進地域での成果を分析して、そこから得られた知見を他の地域での参考になるように事項を取りまとめたり、各般にわたる対策を推進してまいりますので、委員におかれましても、日ごろからこの分野、問題について大変積極的なお取り組みをいただいておりますが、引き続き御協力をお願いする次第でございます。

井澤分科員 ありがとうございます。

 大臣みずから、力強い、具体的に声かけが抑止効果になるなど、御答弁いただきました。子供の安全を守るという立場から、この子どもプロジェクトを、大臣、さらに先頭に立ち、その上で地域ごとの取り組みや保護者の声に耳を傾けていただきたいとお願い申し上げます。

 では、今お話がありました、平成十四年度からスタートしております子ども安心プロジェクトの具体的な内容についてお伺いいたします。

 今お話もございましたが、平成十八年度の予算要求額は約二十五億九千二百万円と、前年度の予算額と比べ十五億円もふえ、約二・五倍の増加となっております。新たに三項目が追加され、また継続項目の中でも、今大臣から御答弁ございました地域ぐるみの学校安全体制整備推進事業が重点的に予算要望されております。政府全体でこの問題に取り組んでいくという決意のあらわれだと思いますが、では、その新規項目、継続項目の具体的な中身や特徴について御説明をお願いいたします。

素川政府参考人 この子ども安心プロジェクト、かなり項目の数が多うございますので、幾つか主な点を拾い出して御説明させていただきたいと思います。

 金額的に一番大きいのは、地域ぐるみの学校安全体制整備推進事業でございますけれども、これにつきましては今大臣から御説明申し上げましたので省略いたしまして、新規の、子どもの安全に関する情報の効果的な共有システムに関する調査研究について御説明いたします。

 これは、例えば携帯電話でございますとかパソコンなどのITを活用いたしまして、子供の安全に関する情報を保護者や教職員などの間で共有する、そういう取り組みを、四十七のモデル地域を予定しておりますけれども、こういうところで推進していこうとするのが一つの柱でございます。そして、学識経験者の協力を得ましてこのモデル推進地域での成果を分析するとともに、その中から、他の地域でも参考となるような事例といいますか事項を抽出いたしまして、事例分析協力者会議を設置し、検討を行うこと、そしてさらには、この検討結果を広く生かすために、実践事例の発表会を開催いたしまして、広く関係者に周知いたしたいとするものでございます。

 それから、もう一つ新規のもので、子ども待機スペース交流活動推進事業というのがございます。これは、子供たちを一人で下校させない体制づくり、こういうことを進めるとともに、地域のいわば子供たちを見守る目というものをふやしていこうとするためのものでございまして、全市町村の半分程度ということで千百五十市町村を念頭に置いて考えておりますけれども、そういった規模で、主に学校の余裕教室などを活用いたしまして、保護者や高学年の子供たちと集団で下校できるまで、小学校の低学年の子供たち、こういった子供たちが待機できるスペースづくりを地域住民の方々等の協力を得てやっていこうとするものでございます。これは、そういった地域住民のボランティアの方々等の協力によりまして交流事業をしていこうというのがその中身でございます。

 そのほか、新規事業といたしまして、地域で子どもを見守る全国ネットワークシステムということで、全国各地で実施されている子供たちを見守る活動につきまして、都道府県別やその方策別に、インターネットを活用いたしまして検索、閲覧ができる全国ネットワークシステムを構築するということも新規の項目に入っているところでございます。

井澤分科員 ありがとうございました。

 ただいまいろいろと施策について御答弁いただきましたが、ITの活用や子供待機スペースの確保、スクールガードの養成など、地域ぐるみで取り組まなければならない重要な施策ばかりだと思います。ぜひ、さらに実践して、実践事例を通じながら、全国的に子供の安全を守るために予算や施策についても取り組んでいただきたいと思っております。日本の将来を担う子供の命の大切さを胸に、私どもも精いっぱい取り組んでまいりたいと思います。

 次に、学習塾について、主務官庁であります経済産業省にお伺いいたします。

 昨年末の宇治市での学習塾事件以降、内閣府、警察庁、文部科学省、経済産業省の四省庁で会議を持たれたと聞いております。その会議の経過や内容を含め、政府ではどのように取り組んでこられたのかをお教えください。

 また、学習塾の全国的団体である全国学習塾協会において、ガイドラインの策定や安全確保実態調査、またセミナーを順次開催するなどとも伺っております。現時点でのガイドラインの骨子や、それを広く普及させるために今後どのように取り組まれるのか、あわせてお伺いいたします。

西川政府参考人 お答え申し上げます。

 経済産業省では、学習塾におけます子供の安全を確保するために、昨年の十二月十二日に、当省が所管いたしております社団法人全国学習塾協会に対しまして、通塾時におけます安全の確保、二点目は教職員の資質の向上、及び三点目、学習塾における安全を重視した学習環境の整備、以上三点につきまして、詳細なガイドラインを定めて、万全の対策を早急に講じるように指導したところでございます。

 お尋ねの、学習塾に通う子供の安全対策に関する四省庁局長会議の設置の趣旨についてございますが、これは、このガイドラインの策定等に当たりまして、関係省庁の知見を踏まえるために、私どもの二階経済産業大臣の御指示によりまして、内閣府、警察庁、文部科学省及び経済産業省の四省庁の局長級の対策会議を設置することとしたものでございまして、昨年十二月二十七日に第一回目の会合を開催いたしております。

 全国学習塾協会におきましては、これらの指導及び要請を受けまして、ガイドラインを策定するための委員会を設置いたしまして、本年一月十六日に第一回、二月十五日に第二回の委員会を開催いたしております。

 本ガイドラインにつきましては、本年三月中旬、今月の中旬を目途に策定すべく、当委員会におきまして目下鋭意作業中でございます。ガイドラインがまとまり次第、関係省庁とも連携しつつ、本年三月十九日には京都で、二十日には東京におきましてセミナーを開催することといたしております。そういったことを通じまして、ガイドラインを広く周知徹底を図ってまいる所存でございます。

井澤分科員 ありがとうございます。

 積極的に取り組まれていらっしゃるということをお伺いいたしました。三月十九日には、場所を変えて、私の地元の京都においてもセミナーが開催されるということです。私もぜひ出席しまして、参加者の方の議論や声を聞いてまいりたいと思います。やはりこのようなガイドライン、保護者にとっては非常に重要なことにもなります、ぜひ広く周知徹底していただくことをお願い申し上げます。

 では、もう時間も少なくなってまいりましたので、最後の質問に移らせていただきます。

 路線バスをスクールバスに活用ということについてでございます。

 昨年十二月に政府が取りまとめました犯罪から子どもを守るための対策の中で、路線バスを活用した通学時の安全確保について緊急提言いたしましたが、先日十七日、文部科学省は、児童生徒の登下校時の安全確保のため路線バスをスクールバスに活用するための基本的考え方、取り組み方をまとめて、都道府県、指定都市教育長に通知をされ、また警察庁、総務省及び国土交通省とも検討をされていると伺っております。

 路線バス等をスクールバスとして活用することは、登下校時における児童生徒の安全確保のためにも大変意義があり、取り組めることだと私も思います。他方、実際導入となると、地方公共団体においては、その財源はどうなるのかということが一番の問題になるのではないかと思います。

 運営方法は、地域の実情を踏まえ、各地域で協議するとも聞いておりますが、財源問題も含め、具体的な取り組み方、あるいはどのような路線バスのスクールバス活用というイメージでいればいいのか、具体的に文部科学省にお伺いいたします。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘いただきましたように、昨年十二月に政府がまとめました犯罪から子どもを守るための対策におきまして、路線バス等を活用した対策というものが掲げられたわけでございます。今御指摘いただきましたように、文部科学省におきましては、警察庁、総務省、国土交通省の関係省庁と検討を進め、二月十七日付で、教育委員会及び関係機関等に対して、それぞれの省庁において通知を発出したところでございます。

 この通知におきましては、地域の路線バスなどをスクールバスとして活用するために迅速な対応が可能となりますように、地方公共団体が地域の関係者が集まる協議会を設置することによりましてその合意の形成を促進するとともに、協議会におきます合意事項につきましては必要な諸手続の処理の迅速化を図るということといたしておりまして、教育委員会等に対しまして、地域の実情を踏まえた検討を依頼しているところでございます。

 また、財源についてのお尋ねがございましたけれども、現在、スクールバスにつきましては、地方自治体で小中学校の児童生徒の運行の用に供するためのスクールバスを運行しているという場合には、その実態に応じた維持運営費につきまして地方交付税措置がされているところでございます。

 路線バス等をスクールバスとして活用する方法としましては、今お尋ねがありましたのでお答えいたしますと、例えば既存の路線バスを活用して、路線を変更する、時間帯を追加する等によりまして登下校時に児童生徒が通学に利用する場合でございますとか、路線バス会社に委託して、車両をスクールバスとして運用する方法など、いろいろ工夫できるところでございます。

 これらにつきましての地方財政措置についても、地域の具体的な取り組みを踏まえて検討されるものと承知しているところでございます。

井澤分科員 ありがとうございました。

 協議会が設置され、具体的に今動きつつあるとお伺いいたしました。どうぞ、さらに進めて、一日も早く、保護者が安心して子供を学校に送り、そして帰ってきてもらえるように取り組んでいただきたいと思います。

 政府でも、緊急を要する施策として位置づけられております。その重要性から見ても、地方公共団体や地域住民、地域ぐるみで喜んで利用していただけるようなことでございます。積極的に御配慮いただきたいと思います。お願い申し上げます。

 これまで、子供の安全、安心対策について質問をしてまいりました。やはり、地元宇治から数々の声が上がっております。ぜひとも、国として、子供の安全、安心を確保できるように、スクールサポーターと言われる学校支援員などの雇用への支援、不審者等校内に侵入した場合の緊急通報システムの導入や、防犯カメラ、センサーなどの防犯対策の施設設備について、ハード面の充実、ソフト面での支援をお願いしたいと強い要望がございます。恐らくこれは、私の地元宇治市だけの要望ではないと思います。

 先ほどからいろいろ御答弁いただきましたが、今後とも、それぞれの地域性を十分に考慮しながら、それぞれの要望にできるだけ沿った形で、この子ども安心プロジェクトが全国的に、安全のレベルの差がなく均一に展開され、子供が安心できる社会を築いていただきたいと思います。

 私ごとですが、私の地元事務所は、子ども一一〇番の家に登録し、子供たちに何か起きたときにはすぐに駆け込めるように開放しております。まず取り組めることは取り組み、もう二度と地元宇治では事件が起きてはならない、いや、もう子供の事件は全国で起きてはならないものと、まず私みずから取り組もうと思っております。

 今後とも、どうぞ、以上今御答弁いただきましたことに積極的に取り組んでいただけますように、以上をもちまして私の質問を終わらせていただきたいと思います。

小坂国務大臣 井澤委員、とうとうと述べていただきましたように、大変熱心にお取り組みをいただいて、具体的に子供安心の家の登録もされているということでございます。

 今後とも、子供の安全な環境づくりに、いろいろなアイデア、そして議員活動を通じて各地で見識を深められたことをまた御提供いただきまして、全国的な安全環境の充実に御努力を賜りたいと存じます。

 本日はありがとうございました。

井澤分科員 ありがとうございました。

実川主査 これにて井澤京子君の質疑は終了いたしました。

 次に、永岡桂子君。

永岡分科員 自由民主党の永岡桂子でございます。

 本日は、予算委員会の分科会で発言の機会をいただきましたこと、感謝申し上げます。また、委員長、そして大臣、副大臣、政務官、そして文科省の皆様、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 私は、茨城県の第七選挙区を選挙地盤としております。この第七選挙区は、利根川を挟みまして埼玉、千葉、栃木、群馬に接します茨城県の県西地域でございます。通常でございますと、車で一時間半で国会に来ることができます。都心に近い割には緑に恵まれておりまして、大変いい地域でございます。

 したがいまして、百聞は一見にしかずと申しますが、小学校六年生が、学校の教科書で学んだことを確かめるために、社会科教育の一環といたしまして、この国会にも多数見学に来ております。子供たちは元気ではつらつとしておりまして、礼儀正しくて、本当にいい子供たちでございます。

 けれども、最近、私は気になることがございました。それは、子供がお弁当を持ってきていないので、どうしたのと聞いてみましたところ、お昼はホテルのバイキング、そういう答えが返ってまいりました。私は大変唖然といたしました。子供は、小学生ですから、毎日給食ですね。お母さんの手づくりのお弁当を食べるという機会は年に数回と少なくなっております。校外授業のときぐらいは、朝早くても、お母さんも大変だとは思いますが、愛情のこもった手づくりのお弁当が子供の校外授業には最もふさわしいと思います。子供たちは、お母さんの手づくりのお弁当を食べて、心の奥でお母さんの愛情に感謝すると思います。これが教育、家庭教育の基本だと思います。

 ホテルの食事のマナーの習得は、これも後々のために必要とは思いますけれども、そういうことはいつでも後でできることでございますし、小学校六年の子供にはこれが最後の校外授業になるわけでございますので、お弁当が最もふさわしいのではないかと思っております。文部科学省が発信地でございます食育の面からしても、ちょっと納得がいかないわけでございます。

 どうしてこうなったのか、学校の意向なのか御父兄の意向なのか定かではございませんが、お母さんたちが、お弁当は大変だからホテルでの食事がいいわと希望されても、学校の先生が、子供たちのためにも手づくりのお弁当でお願いいたしますと父兄になぜ言えなかったのか。これは家庭においても学校においても、子供たちに対する責任感と申しましょうか、教育に対する基本が欠けてしまっているのではないかと感じたわけでございます。

 大臣のお考えはいかがなものか、ぜひお聞かせいただけたら幸いでございます。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生のお話の中でホテルでのバイキングというお話があったわけでございますけれども、実は学校給食の一つの方式としてバイキング方式の給食というのもございまして、このような方式につきましては、子供たちに、栄養とか食事のとり方など、みずから選択して管理する能力や食事のマナーを身につけさせる、そういった教育的な効果もあるというふうに認識はしておるところではございます。一方で、先生御指摘のありましたように、親が心を込めてつくるお弁当、これは親の愛情を子供に伝えるという非常にいい機会であるということも事実でございます。

 小学校の校外活動におきましてどのような方式で昼食をとらせるか、各学校におきまして、教育効果を十分に考慮して取り組んでいただければと存じているところでございます。

小坂国務大臣 今答弁申し上げましたように、事務的といいますか、原則的にいろいろな機会をつくっていくということで、バイキング方式、カフェテリア方式の導入も、学校給食指導の手引の中では、そういった食事環境の改善の中で、自分で選んで食べる方式の工夫というような中に述べられているわけでございます。しかし一方で、永岡委員が御指摘のように、家族の愛情を感じる、そういった機会にもなるお弁当を推進したいというお気持ちがあることもわかるわけであります。

 今日、家庭環境が多様化する中で、お弁当を持ってこられる子、こられない子、そういった実態も踏まえながら、いろいろな個別の対応が必要とは思いますが、委員が御指摘のように、ちょっと手を加えるだけでお弁当になります。コンビニのお弁当を買ってきても、それをちょっと手を加えてあげると立派なお弁当になるかもしれません。

 そういったことも踏まえながら、昼食をできるだけお弁当形式にという御意見は御意見として受けとめさせていただきます。遠足程度はやはりお弁当をあける楽しみがありますが、修学旅行のようになって、課外授業も遠くへ行くと、今度はまた時間的な問題もあるでしょう。そういったものを適切に踏まえながら、今後とも、そういった教育効果、それから家庭環境に配慮した対応というものを推進してまいりたいと存じます。

永岡分科員 どうも御答弁ありがとうございます。家庭環境に留意した教育効果、大変勉強になりました。いろいろな観点から見まして、私も、一方的な私の考えを押しつけるのではなく、これから他方の見方を養わなければいけないとつくづく感じたわけでございます。

 次に移ります。

 一昨日、トリノで開催されていました冬季オリンピックが終わりました。日本選手たちも一生懸命頑張りました。国民の期待を一身に担って、プレッシャーの中でよく頑張ったと思います。厳しくてつらい練習を乗り越え、狭きオリンピックの代表という栄光の座をつかんだ方ばかりでございますが、本当に御苦労さまでございましたという気持ちでございます。

 しかし、今回は、国民の期待するような成果が必ずしも上がったとは思えませんでした。最後の最後になりまして、女子フィギュアスケートの荒川静香選手が念願の金メダルを獲得いたしました。皆さんも寝不足になったのではないかと思います。日本選手団の不振を吹き飛ばす快挙でございました。表彰台でのその姿も大変立派で、多くの国民にも感動を与えていただきました。

 会場がしいんと静まり返る中、日の丸が揚がり、同時に流れる君が代、厳かな中で君が代を口ずさむ荒川選手の姿が大きくテレビで映し出されました。その姿は、日本を愛し、日本を誇りに思う気持ちが十二分ににじみ出ていたような気がいたしました。私は、荒川選手が国歌を口ずさむ姿を見て大変感激いたしまして、思わず胸がいっぱいになり、涙で目が潤むのをとめることができませんでした。多くの皆様がそうではなかったかと思っております。

 国際社会において名誉ある地位を占めております我が国といたしましては、国民が、自然に素直に国旗・国歌を尊重し、愛着を覚え、同時に諸外国の国旗・国歌を尊重するような教育をさらに推進する必要があるかと思いますが、お考えはいかがでございましょうか。

小坂国務大臣 永岡委員、恐らく私と同じような時間に同じように思っていらっしゃったということを今確認させていただいたと思っております。

 私も涙が出ましたですね。そして、もうちょっとでメダルに手が届くのに残念だという皆川選手のように、多くの選手が努力された今回のオリンピックでありました。最後にメダルに手が届くか届かないかは〇・〇一秒等の本当にわずかの差でありましたし、それぞれの選手は、練習の成果を発揮して最善の努力をされていたと思います。それが私どもに感動として伝わってきたと思いますが、そのピークになったのは、やはり荒川選手のフィギュアのあの金メダルだと思っております。

 荒川選手がきのう戻られまして、大臣室を訪問されました。そのときに私も、今、永岡さんのおっしゃったように、表彰台での荒川選手の立派な態度が国民の多くに感動を与えた、そう思うわけで、どんな気持ちでしたとお聞きしましたら、誇らしく思いましたとおっしゃっていました。やはりその思いは私どもと共通だなと思ったわけでございます。

 学校における国旗・国歌の指導は、児童生徒に我が国の国旗・国歌の意義を理解させ、そしてこれを尊重する態度を育てるとともに、諸外国の国旗・国歌も同様に尊重する態度を育てるために行っているものであります。具体的には、小中学校において、社会科で、国旗・国歌の意義を理解させ、諸外国の国旗・国歌を含めて、それらを尊重する態度を育成するように努め、また音楽の授業では、小学校のいずれの学年においても国歌君が代を指導するように、また入学式や卒業式などでは、国旗を掲揚し、国歌を斉唱するよう指導することとしているところでございます。

 文部科学省としては、今後とも、子供たちに、国家、社会の形成者として資質が十分にはぐくまれるように、国旗・国歌の取り扱いについて適切な指導が各学校において行われるよう努めてまいりたいと存じます。

永岡分科員 大臣、本当に細かくお返事いただきましてありがとうございます。同じ時間に同じように朝の支度をしながら荒川選手の表彰台の様子を見ていたこと、数日前のことですが、思い浮かべることができました。本当にありがとうございました。

 次に、幼稚園の保育料についてお尋ね申し上げます。

 今から二十数年前、私はまだ若いお母さんでございましたが、子供が幼稚園に上がる年になったときのことでございます。近所に通園できる幼稚園は、私立が複数校あり、公立が一つ、どの幼稚園を選ぶかは保護者の選択でございました。公立は月謝が安く、先生方もしっかりとした印象でしたので、私はぜひ入園させたいと思っておりましたが、応募者が多く、くじ引きではねられてしまいました。そこで、私立の近所の幼稚園に入園させたわけでございますが、当時三十歳前半の国家公務員の夫の給料にとりましては、家計に響くほどの高い月謝でございました。経済的負担が大変大きかった記憶がございます。

 ちなみに、月謝は大体月一万五千円ぐらいだったと覚えております。二十年前は約十二万円ほどの格差でございましたが、昨年、十七年度の私立幼稚園と公立幼稚園の保育料の格差を見ますと、年額平均二十万円以上の差がございます。広がっております。この格差は、幼稚園の就園補助金を上乗せいたしましてもまだまだ大きな格差があるわけでございます。

 小学校に上がる前の幼児教育は、その子供の発達、情操教育、団体生活を経験するとても大切なところでございます。現在でも、公立の幼稚園の数は少なく、多くの子供たちが私立の幼稚園に通うのが当たり前になっております。若い親の経済的負担を軽くすることは、今本当に深刻でございます少子化の流れにも少しは歯どめがかかるのではないかという思いもございます。この格差をなくしていただきたい、少しでも縮めていただきたいと思うのですが、お考えをお聞かせいただきます。

銭谷政府参考人 公立の幼稚園と私立幼稚園の保育料の格差の問題についてでございますが、地方公共団体が公費によって運営をする公立幼稚園と学校法人等が経費を負担する私立幼稚園とでは、今お話ございましたように、保護者負担に約二十万ほどの格差が生じております。

 私立幼稚園は、園児の八割が就園をするなど、我が国における幼児教育において大変重要な役割を果たしております。こうした実態を踏まえまして、私ども、私立幼稚園に就園させる保護者の経済的負担の軽減等に資するために、幼稚園児の保護者の所得に応じて市町村が行う就園奨励費の支給事業に対する補助事業の充実を心がけてまいってきております。

 年々改善はしているわけでございますけれども、引き続き、公私立幼稚園間の保育料の格差の実態を踏まえまして、私立幼稚園に対する就園奨励費、さらに経常費助成の充実に努めてまいりたいと考えております。

永岡分科員 どうもありがとうございます。格差の是正につきまして、これからも御努力をお願い申し上げます。

 次に、学校運営協議会制度についてお尋ねいたします。

 保護者や地域住民が学校運営に参加いたします学校運営協議会、いわゆるコミュニティ・スクールが平成十六年九月から設置可能になりました。現在は、東京、京都を中心にいたしまして三十九校が指定され、今後の予定も含めますと、近々二百校を超える学校が指定を見込まれると伺っております。

 まだ発足して間もないので、効果などについては今後を待つしかないのかなとは思いますが、現時点で、この点はすばらしいとか、この点は改善の余地があるとか、何か都道府県から情報はございますでしょうか。

 この制度は、学校評議員制度と違いまして、校長の策定いたします学校運営の基本的な方針を承認する権限や、教職員の任用に関しまして意見を述べる権限を持つなど、大きな力を持っております。運用のいかんによりましては、一部の方々の意見に左右されるという危険性もはらんでいると思いますので、文部科学省の見解をお伺いいたします。

銭谷政府参考人 学校運営協議会制度は、平成十六年九月に導入された制度でございます。いわゆるコミュニティ・スクールでございまして、校長が作成する学校運営の基本方針を承認する権限、任命権者でございます教育委員会に人事に関する意見を言う権限など、一定の権限を持って学校運営に参画する仕組みをつくったわけでございます。地域住民や保護者のニーズを学校運営に的確に反映させるということでこういう制度が設けられたわけでございますけれども、その委員につきましては、地域の住民や保護者その他教育委員会が必要と認める者について、教育委員会が任命をするということになっております。

 これまでつくられました学校運営協議会の様子を見ますと、設置をしております教育委員会において、その委員に、地域住民の方や保護者の意向も広く反映できるような適切な方が任命をされておって、運営は、比較的、一部の方の意見に左右されるといったようなことではなく、適正に行われているというふうに私どもは受けとめております。

 今後とも、この学校運営協議会の趣旨に即した、地域と学校が連携協力した取り組みが各コミュニティ・スクールにおいて行われるように、私どももこの制度を運用してまいりたいというふうに思っております。

永岡分科員 保護者、地域住民、そして学校と、みんなが、学校のために、子供のために車の両輪となって、適正化に向けて学校運営協議会が営まれますことを、私もこれから一生懸命見てまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 次に、教員評価制度についてお伺いいたします。

 教員評価につきましては、平成十五年度から平成十七年度までの三カ年、都道府県と政令指定都市の教育委員会に委嘱して行われ、ことし十八年度からは、全国で本格実施されると聞いております。

 教育は人なりと言われておりますように、先生は、教育に対する熱い情熱、教育の専門家としての確かな力量や総合的な人間力を持った人でなければならないと思っております。けれども、現実は、先生にもいろいろあるわけでございます。したがいまして、教師のやる気や意欲を引き出すためには、高い指導力やすぐれた実績のある教師をきちんと評価するということが必要だと思います。けれども、校長先生、教頭先生が一般教師を評価するという場合に、客観的尺度はないに等しいのではないかと思うわけでございます。どうしても主観性や恣意性が入り込む余地があるのではないかと思っております。

 この評価制度によりまして、先生方は五段階のいずれかのランクにランクづけされるわけでございまして、低くランクづけされますと、昇給のストップなどという経済的な面にも影響を及ぼしてくるということでございます。もちろん、やる気がない先生は、ランクが低くても昇給ストップでも当然でございますけれども、ちゃんとやっている先生が、校長や教頭の好き嫌いでほかの先生と違うランクにされてしまうということがあると思います。こうなりますと、毎日同じ教員室で机を並べて頑張っていらっしゃいます先生方同士の関係も悪くなるのかなというおそれもあるかと思います。

 したがいまして、教師の評価は、信頼される教師の養成確保には必要でございますが、こういう実態が少しでもなくなるよう、より客観性のある尺度での評価をお願いするものでございます。

 また、教員の採用に際しましては、これまで以上の厳正な審査が必要であると思います。さらに、採用の一年後の本採用に当たりましては、条件つき任用期間中の対応を十分見きわめることが重要と思っております。

 これまでの三年間のモデル実施を踏まえまして、十八年度からの本格実施をされるわけでございますが、文部省の考え方をお聞かせいただきたいと思います。

銭谷政府参考人 教育の改善充実のために、教員の能力や実績をきちんと評価するということは重要なことであると考えております。

 先生お話ございましたように、平成十五年度から十七年度までの間に、教員の評価に関する調査研究を各都道府県で実施していただきました。これを受けて、本年度中には、九割以上の教育委員会において新たな評価システムに取り組むことになってございます。

 ただ、今先生からお話ございましたように、この教員評価については、主観性や恣意性を排除し、客観性を持たせることが重要であり、教師の権限と責任を明確にして、それに基づいて行うことが効果的であると考えております。昨年十月の中教審の答申の中でも、実はこういうことが言われております。

 具体の新しい教員評価は、先生方が目標を立てて、それに即して教育活動を行って、それを自分で自己評価しながら、校長先生等がそれをさらにチェックしていくといったようなシステムが多いと思いますけれども、客観性を持った評価となりますように、私どもも指導してまいりたいと思っております。

 それから、教員採用につきましては、厳正な教員採用が行われるべきことは当然でございますので、また、しっかりした方に教員になっていただく必要がございますので、面接試験の工夫でございますとか、あるいは社会経験を総合的かつ適切に評価するとか、人物を重視した選考を近年実施しているところでございます。特に面接について、民間人を起用したり、臨床心理士の方などを起用したりして、客観性の確保に努めている県が多くなってきております。

永岡分科員 銭谷局長、本当に御丁寧なお返事、ありがとうございました。ちょっと心配になりまして、主観的なことばかり今質問させていただきましたが、この制度が本当にうまく運用できるよう、私も確信ができたわけでございます。どうぞこれからもきちんとした運用ができるように、御指導よろしくお願いいたします。

 次に、時間がないので、一つ、私、地元でございます、茨城県にございますJ―PARCということについてお伺いしたいと思います。

 現在、茨城県の東海村におきましては、日本原子力研究開発機構と高エネルギー加速器研究機構の共同で、物質、生命化学、原子核、素粒子物理学などの世界的な研究拠点として、基礎から産業応用に至るまで広範な分野におきまして革新的な研究手段の提供が期待されます大強度陽子加速器施設、いわゆるJ―PARCの建設が進められております。

 完成の暁には、我が国といたしまして世界に誇れる最先端の科学技術の研究施設となりまして、世界各国の研究者にも利用され、難病克服の新薬の開発や新産業の創出など、ノーベル賞級の研究成果が期待されております。茨城県でもこの関連施設を建設中でございますし、早期完成を強く希望しております。

 J―PARCは、平成十三年度に建設着工以来、平成二十年度の運用開始に向けまして着々と進行していると聞いておりますが、ぜひ予定どおり施設が完成できるよう、文部科学省の財政的支援をお願いいたします。私も茨城が地元でございますので、ぜひ、このJ―PARCから、世界に向けまして研究結果をなるべく早い機会に発信できますように御協力をお願い申し上げますが、どうぞよろしくお願いいたします。

清水政府参考人 先生御指摘のとおり、大強度陽子加速器の計画につきましては、私ども、この上ない期待を抱いているところでございます。

 御指摘のとおり、十三年の建設着手以来、着々と計画どおりに進めておるというふうに思っておりまして、ぜひとも二十年のビーム供用開始に向けて頑張りたいと思っております。どうぞよろしく御支援、お願いいたします。

小坂国務大臣 永岡委員、大変熱心に科学技術の分野においてもお取り組みをいただけるということでございまして、期待をいたしたいと存じます。

 御指摘の大強度陽子加速器施設、ジャパン・プロトン・アクセラレーター・リサーチ・コンプレックスということでございます、このJ―PARCの推進につきましては、今局長から答弁をさせていただきましたように、予定どおりの建設が進むように、地元対策にまたお力をおかしいただく中で、私どももしっかり対策を進めてまいりますので、よろしく御協力のほどお願いを申し上げたいと思います。

永岡分科員 どうもありがとうございます。

 大変力強く御支援いただきます。私も、この計画につきまして、推進できますように一生懸命頑張りますので、文科省の方でも、大臣もどうぞひとつよろしくお願いいたします。

 きょうはどうもありがとうございました。

実川主査 これにて永岡桂子君の質疑は終了いたしました。

 次に、丹羽秀樹君。

丹羽(秀)分科員 愛知六区選出の丹羽秀樹でございます。

 本日は、予算分科会の第四分科会におきましてこのような質問をさせていただきますことを、本当に心から感謝申し上げます。委員長、本当にありがとうございます。そしてまた、この質問に対しまして、大臣、副大臣、大臣政務官、政府の高官の皆様方、よろしくお願いいたします。

 まず、私は、教育におきまして非常に関心が深いのが、この日本の国の国家百年の大計であります教育というものの重要性を非常に考えております。本日は、二〇〇七年から実施予定の全国学力テストについて質問をさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。

 まず、二〇〇四年十二月七日、OECD、経済協力開発機構が二〇〇三年に実施した国際的な学習到達度調査、PISAの結果が公表されました。この調査は、二〇〇〇年に最初の本調査が行われており、そのときは三十二カ国が参加されましたが、今回、二〇〇三年は、四十一カ国・地域から十五歳の生徒が二十七万六千人参加いたしました。

 このテストにおきます日本の順位は、読解力が八位から十四位へ、数学的能力、リテラシーが一位から六位へと下がり、科学的能力につきましては二位のまま変わらず、今回導入されました問題解決力は四位という結果でございました。

 今の教育状況というのは、ずっと受験を契機としての勉強を組織してきた現場が、少子化の影響で受験圧力が有効に機能しないことによって起きていると私は考えております。それはむしろ、受験勉強などという無意味な勉強ではなく、生涯に役立つ勉強を組織するのに絶好のチャンスなんだから、何とかしてこの競争を復活させたいという人たちが私の周りにもたくさんいらっしゃいます。

 ですから、今回、全国学力テストを実施することは私も非常に共感が持てます。全国的な学力テストを実施し、その結果がまたわかるともなれば、県や市、また学校単位でも、そして親たちも、かなりの部分は、よい結果を出すために一生懸命しゃかりきになると考えております。どういった結果や効果があるのかはまだわかりませんが、もし今回学力テストを導入しなければ、今までの教育、勉強から変わろうとするせっかくのチャンスを捨てることになると考えております。

 過去のゆとりが正しかったかどうかは別といたしまして、受験学力とは違うものを目指している文部科学省の政策は間違っていなかったはずでございます。しかし、このPISAショックの揺り戻しは、かなり大きな力となって現在の文部行政を動かしているとも推察いたします。ですから、今回の学力テストには非常に重要な役割がかかっていると言っても過言ではないと私は考えております。そのためにも、まずこの学力テスト、テストありきという考えで導入するのではなく、今後の教育のあり方を考える立場で導入を検討していただきたいと思います。

 この経緯につきまして御質問させていただきます。

 まず、導入の経緯でございますが、文部科学省が学力テストを実施することに決めたことについて、さまざまいろいろな議論がなされております。その目的が、ただの競争原理の導入といったことだけではないはずであります。現在の教育状況打破の仕方の一つの選択肢であることは間違いないと考えております。過去において、この学力テストが廃止されたという事実もあったと思いますが、今回導入するに当たり、この導入の経緯を教えていただきたいと思います。お願いします。

銭谷政府参考人 今回実施を予定いたしております全国的な学力調査の実施の経緯、背景についての御質問でございますが、全国的な義務教育の機会均等や水準の維持向上を保障して、国家社会の存立基盤である教育が揺らぐことのないようにするということは、私ども、国の重要な責務であると考えております。

 義務教育について、今、国では、プラン・ドゥー・チェック・アクションといいましょうか、きちんと国が目標を設定し、基盤整備をし、実際の教育は各学校に自由度を高めて実施をしていただいて、その結果をきちんと検証し、改善につなげていくという義務教育の構造改革を進めようとしております。全国的な学力調査は、その一つ、チェックに当たる部分でございまして、このことを通じて義務教育の質の保障をしていきたいということがまず第一点ございます。

 それと、子供たちの学力に関して、ただいま先生からお話がありましたようなさまざまな課題がある、その課題を明らかにし、克服をしていきたいという思いがございます。

 また、昨年六月、義務教育に関するいろいろな意識調査もしたのでございますが、保護者の方や関係者の方でこういう学力テストを望んでいる、まさに子供たちの学力水準の保障に対する社会的な関心や要請が高まっているということもあろうかと思っております。

 こういった状況の中で、昨年の六月に、骨太の方針二〇〇五においてこの学力調査の実施について御決定をいただきまして、昨年十月二十六日の中央教育審議会の答申におきましても、全国的な調査を実施することが適当であるという答申をいただいたところでございます。

 こういったことを踏まえまして、私ども、平成十九年度に全国的な学力調査を実施しよう、こういうふうに決めたところでございます。

丹羽(秀)分科員 銭谷局長、ありがとうございます。

 まず、この全国学力テストの目的でございますが、先ほどお話ございました義務教育の水準の向上もあると思いますが、例えば、今文部科学省が挙げておられます確かな学力、つまり、知識や技能はもちろんのこと、これに加えて、学ぶ意欲や、自分で課題を見つけ、みずから学び、主体的に判断し、行動し、よりよく問題解決する資質や能力の向上にどのようにつなげていくのか、これまた、もしお答えいただけたらありがたいと思います。

銭谷政府参考人 今回の全国的な学力調査の目的、趣旨のようなものでございますけれども、一つは、国が児童生徒の学習到達度、理解度を把握することによりまして、教育施策の成果と課題を全国規模で検証したいということがございます。また、地域における教育水準の達成状況をきめ細かく把握することなど、国として果たすべき一定水準以上の教育水準を確保するための結果の検証ということになろうかと思います。

 また、教育委員会や学校も、この調査を通じまして、全国的な状況との関係の中においてみずからの状況を知って、その特徴や課題を把握することによりまして、先生からお話がございましたように、私どもが目指しております確かな学力の向上も含めまして、主体的に指導改善につなげていきたいというふうに考えているところでございます。

 こういったことを趣旨、目的として実施をしていきたいというふうに思っているところでございます。

丹羽(秀)分科員 ありがとうございます。

 またちょっと同じような質問になるかもしれませんけれども、この全国学力テストを導入する、調査結果が出た場合、今後どのようにその調査結果を活用していくのか、その辺についてもお答えいただきたいと思います。お願いします。

銭谷政府参考人 繰り返しの御説明になるかもしれませんが、まず国レベルでは、全国的な教育施策の成果と課題を全国規模で検証するということができるわけでございますので、今後の国の政策にそれを反映していきたいというふうに思っております。具体的には、指導要領の改訂等にもやがてつながっていくことになろうかと思います。

 それから、私ども、教育委員会を初めとする学校などの教育現場へ結果をきちんとフィードバックしたいなと思っております。

 具体的に教育現場でその結果をどう活用していただくかということになりますけれども、個々の児童生徒のつまずきの把握などを通じまして、各学校における授業改善の手だてとして活用していただけますし、指導計画の見直しにも活用していただけることになろうかと思います。

 また、各教育委員会におきましては、課題のある学校にいろいろな支援をする際の有力な資料としても活用していただけるのではないかというふうに思っております。

丹羽(秀)分科員 このテストの調査結果は、ぜひともこれをフィードバックしていただいて、今後の学力向上のために役立てていただきたいと思っております。

 続きまして、導入のスケジュールでございますが、十九年導入、実施に当たり、二学期制を取り入れている各自治体や各学校の授業の進捗状況、もしくは学校のスケジュール状況によっては、随分調査結果に差異が生じてくるのではないか、私はそういった懸念もしております。ぜひ、この実施時期を含めましたスケジュールについてもお教えいただければありがたいと思います。

銭谷政府参考人 この全国的な学力調査は、小学校六年生の国語、算数と中学校三年生の国語、数学について平成十九年度に実施をしたいと思っておりますが、具体的な実施時期につきましては、その調査結果をその後の教育指導の改善充実に活用できるような観点から、平成十九年度の早い時期、具体的には一学期を考えたいというふうに思っているところでございます。そのための準備を平成十八年度に進めてまいりたい、こう思っているところでございます。

 今、専門家による検討会議を開いておりまして、その検討会議の議論をことしの春ごろに一度整理いたしまして、また関係者の御意見をいただいて、国として具体的な実施要項を作成し、関係者の協力、理解を求めていきたいというふうに思っているところでございます。

丹羽(秀)分科員 ありがとうございます。

 この学力テストの内容でございますが、内容によっては、また結果について随分差異が出てくると思います。例えば、PISA型は導入するのか、そしてマークシート方式で行うのか。テスト内容についても、国語、算数、数学だけの内容で行うのか。また、もしくはその他の方法を考えているのでしたら、それについてもお教えいただきたいということと、私の考えでございますが、基礎、基本学力はテストだけでもある程度評価できるのですが、真の学力については、単純なテストだけではなかなか評価できない部分があると思います。そしてまた、本当の学力とはどういったことかという議論をもう少ししていただきたいと思います。お願いします。

銭谷政府参考人 ただいま先生からお話がございましたように、学力というものは、ペーパーテストではかれる部分と、はかれない、よく見えない学力とかという言い方もする方がいらっしゃいますけれども、いわば総合力といいましょうか、そういうところもあるわけでございますので、学力調査万能という考え方にとらわれることがあってはならないというふうに、私ども、みずからを戒めているところでございます。

 具体的な調査問題の内容につきましては、今、先ほど申し上げました専門家による検討会議で御検討いただいているところでございますが、やはり基礎的、基本的な、これまでの学年で習った学習内容について問う、いわば知識、理解中心の問題、これが一つ考えられるわけでございます。もう一つは、PISA型の、そういう知識、技能をさまざまな場面に活用できる力、いわゆるリテラシーにかかわる内容、こういうこともぜひ調査問題として考えたいという意見がございます。この辺をどう調整していくか。さらに、いわゆるマークシート的なものだけじゃなくて記述式の回答も求めるようなこともやりたいと、いろいろ夢を持ちながら、今議論しているところでございます。

丹羽(秀)分科員 ぜひ、この内容については、検討をさらに深めていただいて、すばらしい内容で、全国平均がきちんととれるような、そういった内容にしていただきたいと思いますので、今後とも御尽力いただきますよう、よろしくお願いします。

 続きまして、こちらは大臣の方に質問なのでございますが、この学力テスト導入による弊害についてです。

 まず第一に、学力テストありきでこの調査を行おうとすると、現在、地方の特色である教育活動が阻害されるのではないかといった問題や、テストを行うと結果を知りたくなる、そういった親御さんたちの気持ち、常識など、また問題が生じてくる。さらには、各自治体や学校間での競争が激化してしまい、その辺でも問題が生じ、また、今回のような画一的な学力調査では、子供の成長、発達をとらえられないと思っております。

 そして、このテストの実施には強制力はないと聞いておりますが、参加は最終的に自治体の判断と言われております。そのようなやり方ですと、全国的なレベルがはかれないのではないかと私は考えております。

 この辺、大臣の御意見をお聞かせいただきたいと思います。

小坂国務大臣 丹羽委員には、この学力調査について関心をお持ちいただきまして、これから御理解をいただく中で、ともに推進をしていただきたいと期待もいたしておるわけでございます。

 全国的な学力調査の実施の必要性については、先ほど述べていただきまして、それをやることについては前向きな御見解だと思っております。ただ、そのやり方については、十分慎重にやりなさいということ、それから実態が把握できるような方法を十分に検討してほしい、こういう御意見もお持ちだと思っております。

 イギリスにおける学力調査というものを私も見てまいりましたけれども、イギリスの場合、教育の到達度をしっかり把握できるように、そしてまた学校評価、教員評価、そして個々の学力が把握できるような、そういった各方面における配慮をしながらこのテストを実施しているところでございまして、私どもも、やはり全国的な学力調査の結果として、都道府県や市町村にそれを伝える中で、全国的な児童生徒の学力状況をしっかり把握して、そして横断的な比較ができるような形をとりたいと思います。

 しかし同時に、過去にあった学力調査における意見として、自校の成績を上げるために学力の差のある生徒に対して受けさせないというような事例が生じたりという弊害が過去指摘をされたこともあります。そういったことに十分配慮をいたしまして、それぞれに積極的にお取り組みいただけるようにするためには、調査の趣旨や、それから私どもが考えている配慮を十分にお伝えして、理解を得て、そして自主的に、積極的に参加していただく、そういう環境づくりが非常に重要だと思っております。

 そのことにまず心を砕きながら、今専門家の検討会議を組織して検討していただいておりまして、具体的な実施の枠組みについてはそこの結論を待っていきたいと思っております。

 全国的に、学力、生徒の学習理解度などを十分把握できる、そして検証できるということ、それから各学校における教育指導や児童生徒の学習の改善に役立つようなものにすること、そういった意味で、調査の実施方法、結果の取り扱い、公表の仕方、ここが非常にポイントだと思っているんです。

 特に公表の仕方、どこへどう戻すのかというフィードバックのレベルについては、私どもも、少なくとも学校の公表に当たっては、全国的に見た中で大まかな感覚がつかめるように、余り個別的なものを公表するということになりますと弊害が生じることも懸念されますので、専門家の御意見を聞きながら、その辺には十分に配慮をしたい。

 それから、知識だけでなくて実生活での活用力をはかるような方式にする、それから序列化につながらないように配慮をすること、こういった点を検討して、実施要項に向かって詰めていきたい、こう考えております。

 各教育委員会においてこの考え方を御理解いただいて、漏れなく参加していただけるように努力をしてまいりたいと存じます。

丹羽(秀)分科員 ありがとうございます。

 先ほど調査結果のフィードバックの話も大臣の方からいただきましたが、これは、フィードバックするだけではなくて、ぜひアフターフォローの方も、地域によって学力の差が出てしまった場合、この辺の、全国的に平均するようなアフターフォローもまたしていただけると大変ありがたいと思っております。

 この学力調査の導入の方法についてですが、先ほど局長の方からお話がございましたが、対象が、全国の小学六年生と中学三年生で行った場合、おおむね約二百四十万人と推定されます。この調査結果の集計等による作業量、これが本当に膨大な量になってくると考えております。もしこの実施の主体が、現在、国立教育政策研究所だけで行おうとした場合、その分の費用もこれまた随分かかるのではないかと考えております。

 我々、小泉改革でさきの選挙でも当選させていただきましたが、小さな政府を目指す中で、民間業者への委託等はどのようにお考えなのか、またお答えいただきたいと思います。

銭谷政府参考人 調査の実施体制についてのお尋ねでございますが、今考えておりますのは、専門家会議も大体そういう意向でございますが、調査全般の企画立案や調査問題の作成など、調査を実施するための根幹となる部分については、文部科学省国立教育政策研究所みずからが担う必要があるだろうと思っております。

 一方、調査問題の印刷、調査結果を集計するためのシステム開発、こういったようなことは、民間を活用できる業務でございますので、できるだけ民間機関へ委託をするという考え方に基づいて体制を考えていきたいというふうに思っております。

 もちろん、調査結果の集計システムの開発などの部分につきましては、個人情報の確実な保護、公平かつ透明な選定方法などに十分配慮した上で、民間機関への委託をしていかなければいけないというふうに思っているところでございます。

丹羽(秀)分科員 今局長の方からもお話ございましたが、この調査結果、特に個人情報に当たる内容が随分多いと思います。ぜひともその辺、今個人情報保護法で言われておりますので、御注意いただいて、導入の方、システム開発等、御尽力いただきたいと思っております。

 さきの、文部科学省が行いました教育課程実施状況調査によりますと、実施時期が平成十四年一月、二月で、対象が小中学校の四十五万人の調査の中で、アンケート調査で、全般的に勉強が好きだと思う、またどちらかといえば好きだと思うという問いに答えた小学六年生が約三四%、中学三年生では約一八%という回答が出ております。また、学校の授業がよくわかる、大体わかるという問いに答えた小学六年生は約五九%、中学三年生では約四六%という回答も出ております。

 真の教育ということは、学力をはかるのだけではなくて、学ぶ力、学ぶことが好きになる教育というのが、私は、真の学力であると思っております。ぜひともこのテストに、この辺、どういったお考えがあるのか、また局長の方にお答えいただきたいと思います。

銭谷政府参考人 子供たちが意欲を持って学ぶ、そして勉強している教科、科目が好きになる、あるいはその教科、科目で得た知識をこれからの社会生活に生かしていきたいと思うようになる、こういった学習習慣、学習意欲ということがやはり学習においては基本にあるんだろうと思っております。

 今回の全国的な学力調査の中でも、そういう子供たちの個人的な学習意欲とか、さまざまな属性と子供たちの学力の関係などについてもわかるような、そういう調査を工夫してみたいというふうに思っているところでございます。

丹羽(秀)分科員 ありがとうございます。

 勉強というのは、私も中学校社会科の教員免許を持っておりまして、学生時代そして社会人のときに家庭教師等をやっておりました。子供というのは、教わることも好きな子供もいますし、自分で学ぶことが好きな子供、特に私が感じたのは、自分で学ぶことが好きな子供の方こそ、将来的な学力が伸びる、そしてまた学んだ知識を生涯において使うことができると考えております。

 言葉でもございます、腑に落ちる、自分を納得させる、そういったすばらしい言葉がございます。ぜひとも、今後の学力テストの結果等をそういった言葉につなげていただいて、国家百年の大計でございます教育問題におきましても、この学力調査の結果を生かしていただきたいと思っております。

 これで質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

実川主査 これにて丹羽秀樹君の質疑は終了いたしました。

 次に、大塚高司君。

大塚(高)分科員 自由民主党の大塚高司でございます。

 本日は、質問の機会をお与えいただきまして、まことにありがとうございます。私で最後でございますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 子供の登下校時をねらった犯罪や学校内、学習塾での犯行など、子供の日常生活環境は多様な危険にさらされており、今極めて深刻な状況にあるわけであります。

 私は大阪でございまして、二〇〇一年六月に大阪教育大学附属池田小学校で起きた児童殺傷事件、七人の死者、十人の重軽傷者を出した事件で、私の多くの友人の子供が被害に遭い、そのうちの一人が最悪の結果となりました。本当に許すことのできない事件でありました。

 その当時の二年生百九人が、この三月十五日、卒業式を迎えることになっております。私は、一日も早く、事件に立ち向かう力と、そして深い傷をいやしてくれた周囲の皆さん方の本当に温かさ、そして命のとうとさを再認識してくれるものと信じておる一人であるわけであります。

 二月十四日、青少年問題に関する特別委員会で、私は、参考人に対し質問をさせていただきました。子供たちの安全確保のため何をすべきかということについて、防犯カメラの設置また安全マップの作成など、ハード、ソフト面など、いろいろ御意見を伺いました。自治体のみならず、広く国民にそれぞれの立場で積極的な協力が求められ、教育現場を預かる人の御苦労を感じた体験でありました。

 そこで、子供たちの安全、安心教育について御質問をさせていただきます。

 子供の安全教育に関してはどのような指導をされておられるのか、お伺いいたします。

小坂国務大臣 大塚委員には、ただいまお述べいただきましたように、悲惨な犯行現場にも赴いて、実態的な調査を踏まえた上での御意見を御披露いただきました。

 学校現場の安全というものについては、危険がどのようなところに潜んでいるか、しっかりそれを把握して、子供たちに、みずからそういった危険を回避する、また危険を予測できる、そういった教育を施すことが必要だと思っております。委員の御指摘の、それぞれの場におけるお取り組みを私どももこれからさらに一層推進しようと思っているところでございます。

 具体的に申し上げますと、子供が犯罪に巻き込まれないようにするために、さまざまな機会を通じて子供みずからに参加していただいて、危険予測能力や危険回避能力を身につけてもらう。みずから実感を持って危険箇所を認識することができるように、通学安全マップをみずから参加してつくっていくとか、あるいは、カメラの設置等においても、登下校の状況が確認できる、そういった有効な場所に把握をしていく。また、警察官OBや防犯の専門家等の協力を得て実践的な対処方法を身につけさせる防犯教室等の推進などについて具体的な指導を行ってまいりたいと思います。

 また、スクールガードリーダーの養成やボランティアの皆さんの力をかりる中で、地域ぐるみ、学校、家庭、地域が一体となった子供たちの安全環境の育成、安全教育の推進に取り組んでまいるところでございます。

大塚(高)分科員 ありがとうございます。

 そういった面に関しましても、本当にこれからもお力添えを賜りたく存じます。

 それでは、子供たちに悲劇が起きるたびに、学校と保護者との緊急集会というような報道をよくテレビ等で拝見するわけでございますけれども、その中で、文部科学省では、安全や非行対策に対する会合が本当に定期的にきちんと行われているんでしょうか。質問させていただきます。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 やはり学校と家庭との情報の共有、これは非常に重要なことであろうと思います。

 保護者会、PTAなどの機会をとらえて情報交換を行うとか、学校便りなどを通じて情報提供を進めるとか、そういったことは非常に大事なことだと思っていますし、今先生御指摘のように、保護者と学校が定期的に会合を持つ、これこそ本当に有効な方策だと思っております。

 私ども、定期的な会合を持っているかどうかということにつきましての正確なデータは持ち合わせておりませんけれども、今先生の御指摘、非常に有効な手段だというふうに認識しております。

大塚(高)分科員 本当にそういったことは大切であるというふうに思っておりますので、またいろいろな形での御指導をよろしくお願い申し上げます。

 それから、文部科学省が今進めている安全な居場所づくり政策とはどのようなものでしょうか。お尋ねいたします。

田中政府参考人 安全な居場所づくりについてのお尋ねでございますけれども、文部科学省では、子供たちが放課後あるいは休日に安全でかつ安心して多様な活動が行えるような居場所づくりを推進しているところでございまして、平成十六年度から緊急三カ年計画といたしまして、地域子ども教室推進事業に取り組んでおるところでございます。

 地域の方々の連携協力によりまして、平成十六年度では全国で約五千四百カ所、本年度、平成十七年度では約八千カ所でこの教室が開催されておるところでございます。来年度、平成十八年度にはこれを一万カ所に拡充したいと考えておるところでございます。

 また、来年度におきましては、授業が早い時間に終了いたします小学校の低学年の子供たちを対象といたしまして、学校の余裕教室等を活用して、保護者あるいは高学年のお兄ちゃん、お姉ちゃんが一緒に帰れるまでその学校で待機できる、いろいろな活動をしながら待機できるスペースを確保するという子ども待機スペース交流活動推進事業も実施させていただきたいというふうに考えておるところでございます。

大塚(高)分科員 本当に今、そういった安全な場所がなかなかないというような状況でございますので、そういったスペース確保のためにもまた御尽力いただきますようにお願いを申し上げます。

 それから、先般の青少年問題に関する特別委員会でいろいろと話があったわけでございますけれども、あらゆる暴力に対応して子供ができることの基本はノー、ゴー、テルという特別な叫び声だそうでありまして、ソフトがアメリカで開発され、CAPプログラムとして、日本でも教育現場に今取り入れられているというふうな話を聞いたわけでございますけれども、文部科学省ではどのような認識をされておられるでしょうか。

素川政府参考人 子供たちが犯罪に巻き込まれないようにするために、危険予測能力、危険回避能力、これらの能力を身につけさせるということは非常に重要だと思っております。

 具体的な手段としては、防犯教室の機会を通じて、万が一の事態が起こった場合の実践的な対処方法、こういったものを身につけさせるということが重要であろうと考えているところでございます。今先生御指摘のCAPプログラムを初めといたしまして、我が国ではいろいろな手法が行われているところでございますけれども、具体的にどのような手法を用いるかにつきましては、各学校の状況に応じ判断していただくことが適当と思います。

 いずれにいたしましても、先ほど申しました危機予測能力、回避能力、これを身につけさせる具体的な、実践的な訓練、これが求められていると思っております。

大塚(高)分科員 私の友人の子供が教育大附属池田小学校で被害に遭い、そのお子さんがそのCAPを体験したということで、本当によかったということも聞いておりますので、また参考にしていただいたらというふうに思っております。

 次に、私学振興について御質問させていただきます。

 平成十八年度文部科学省の「私学の現状について」によれば、学校法人の充実強化のための方策について調査研究を行うとともに、私学助成の一層の充実や税制上の優遇措置等、私学振興施策の推進に努めるというふうにありますが、今後ともこの方針に変わりはありませんか。お尋ねいたします。

小坂国務大臣 独自の建学精神に基づいて個性豊かな教育研究活動を展開している私立学校は我が国の学校教育の振興に重要な役割を果たしておるわけでございまして、文部科学省といたしましても、私立学校の重要性にかんがみ、平成十八年度の予算において、私立大学や私立高等学校への経常費補助金として総額四千三百五十一億円を計上するなど、私学助成の充実に努めているところでございます。

 また、私立学校におきましては、収益事業を除いて法人税や事業税が非課税となるなど、種々の税制上の優遇措置が設けられておりますけれども、平成十八年度税制改正においては、寄附金控除に係る適用下限額を現行の一万円から五千円に引き下げる、そのような措置をとったところでございまして、現在この法案が審議中でございます。

 このように、文部科学省としても、今後とも私学振興のための諸施策の推進に取り組んでまいりたいと存じます。

大塚(高)分科員 ありがとうございます。

 今の大臣の答弁を聞いて、本当に勇気が出てくる私学の方々、たくさんおられるというふうに思っております。

 これから少子化の時代がどんどんと進んでいく中、本当に私学の方々は大変であるというふうに思っておりますが、個々の向上のために本当に必死になって努力を重ねておられます。私学助成についてもまた御尽力いただきたいというふうに思っております。

 次に、近畿私立中学校は、受験者の立場を考慮した上で受験日の解禁を一月十四日以降としております。一方、一部の国立大学附属中学校の試験日がそれ以前に行われています。公私間の格差是正からも、他の国立大学附属中学校と同様に、私立学校受験日以降にすべきだと私は考えておりますが、文部科学省のお考えはいかがでしょうか。

石川政府参考人 近畿地区におきます中学校の入試日程についてのお尋ねでございます。

 近畿二府四県の私立中学校では、ことしから入学試験の開始日を一月の十四日に統一したというふうに聞いているところでございます。そういった中で、近畿地区の国立大学附属中学校のうち、大阪教育大学の附属天王寺中学校、恐らく先生がおっしゃっているのはここであろうかと思っておりますが、ここが、ことしから入学者選抜の期日を早めまして、一月七日に試験を実施した、このように承知しているところでございます。

 これにつきましては、私学団体の方から同中学校に対しまして、実施日を一月十四日以降におくらせることができないかとの申し入れがありまして、話し合いが持たれたそうでございますが、既にホームページで日程を公表済みであったこと等から、日程の変更は行わなかったとのことでございます。

 国立大学の附属中学校の入学者選抜につきましては、設置目的等に照らしてそれぞれの学校で適切に判断すべきものでございますけれども、一方で、中学校の入学者選抜というのは義務教育段階の児童を対象とするものでございますから、小学校教育への影響ですとかあるいは他の中学校の動向にも十分に配慮していかなければならないということは当然のことだろうと考えております。

 今回、先生から国会の場でこのような御指摘をいただいたこと、このことを学校関係者にも伝えまして、今後は事前に地域の関係者ともよく話し合った上で適切な日程を検討するように促してまいりたい、このように考えております。

大塚(高)分科員 ありがとうございます。その辺を十分に考慮していただきたいというふうに思っております。

 次に、厚生労働省から今国会に職業能力開発促進法を改正して職業能力開発促進法及び中小企業労働力確保法の一部を改正する法律案が提出される予定になっております。

 法案では、若者を現場の中核となる実践的な技能を備えた職業人に育てるために、新規学校卒者を主たる対象としたとありますが、現在、全国専修学校、各種学校で約七十万の生徒が学んでおります。平成十年に職業能力開発施設のあり方について、文部省、労働省の間で、学校教育と混同されないよう、公共職業能力開発施設においては、在職者等の受け入れが主であり、新規学校卒業者のみを対象としたものではないとの合意がなされております。

 今回の改正に当たり、厚生労働省のお考えはいかがでしょうか。

草野政府参考人 お話がございましたように、今後、今国会におきまして、職業能力開発促進法の改正案を提出することを予定しております。

 この内容でございますが、若者の実践的能力開発をするシステムの立ち上げと、技能継承を進めて現場力の強化を図ろうということでございまして、具体的には、実践的能力開発システムとして、実習併用職業訓練制度というものを創設したいと考えております。

 この制度は、高卒者を対象といたしまして、企業が主体となって、専修学校等における理論面での学習と企業における実習、これを組み合わせた訓練を一定期間実施いたしまして、実践力をつけようというねらいのものでございます。実施主体は、理論面での学習につきましては専修学校等の民間教育訓練機関、企業の実習につきましては個別の企業等を予定しておるところでございまして、いわば民と民との組み合わせを基本といたしまして、民間教育訓練機関を積極的に活用していこうという内容でございます。

 したがいまして、これまでの仕分けでありました、公共職業訓練と民間の教育機関の教育、これの重複がないようにという法律の趣旨あるいはお約束の趣旨でございますね、これに何ら変更があるものではございません。仮にこの法案が通りました暁には、こうした制度の趣旨について、都道府県や関係団体に周知を徹底するとともに、制度の適正な運営を図ってまいりたいと考えておりますので、よろしく御指導願いたいと存じます。

大塚(高)分科員 ありがとうございます。

 本当に、この法律改正により、都道府県の解釈の違いというのがまたいろいろ出てくるような気がするわけでございますので、そういった解釈の違いがないように、よろしく御配慮の方をお願い申し上げます。

 続きまして、小中学校のアスベスト対策についてお尋ねをさせていただきます。

 都市部においては、非常に多くの義務教育施設があります。私の豊中市の場合、平成八年度までに建設された対象施設は、五十九の小中学校を含め二百六十八施設に及びます。そのうち、三十八施設、小中学校十三校にアスベストの含有が確認されております。

 しかしながら、公と民を通じて対象物件が非常に多いことから、検査機関が飽和状態に陥り、結果の判明までに三カ月以上も要するというようなところがまだまだあるわけであります。また、アスベスト含有の有無の確認に時間を要し、まだ結果が出てきていない施設もまだまだあるわけであります。また、同じく公と民の業務が集中したことにより、設計及び工事業者の業務が錯綜し、業者決定に時日を要することなどから、平成十七年度内に補助申請が困難なケースも存在しております。また、維持補修の段階でアスベストが使用されたことなどにより、発見がおくれるケースも考えられます。

 このような状況ですから、一律に平成十八年度の補助は対象外というふうに聞いておりますが、いかがでしょうか。

 また、対象が吹きつけアスベストに限られているということも聞いております。確かに、飛散の危険性を考えますと、吹きつけアスベストを最初の対象にされたことは本当に理解ができるわけでございますけれども、実際の場合には、アスベストを含有した防音シートですとか、石綿含有バーミキュライトとかいうものは対象外となるというようなことも聞いております。しかしながら、これらは固形化された非飛散性のものとは異なり、飛散の可能性もあるわけですから、補助の対象としていただきたいというふうに考えておりますけれども、文部科学省の御見解はいかがでしょうか。

大島政府参考人 お答え申し上げます。

 先生今御指摘のように、アスベストの有無の実態調査につきましては、一気にいろいろなものが重なったことから大変手間取ったということは事実でございますが、それぞれ地方自治体におきましては、一生懸命努力を重ねまして、それなりの調査結果が出てきたところでございます。特に今先生が御指摘の豊中市につきましては、全小学校五十九校、これについて二月十日までに調査が完了したというふうに聞いておるところでございます。

 これらのものについて、私どもも平成十七年度補正予算で予算を獲得しております。アスベスト対策費として公立学校関係は二百八十一億という予算を確保したところでございまして、まずはこの活用をしっかりしていただきたいということで、場合によっては、年度内、期限的に厳しいというようなケースもあろうかとは思いますが、まずはこの予算の活用をしっかりとお願いしたいというふうに考えておるところでございます。

 それから、さまざまいろいろな事業が、今のような問題とか、困難なこともあろうかと思いますが、この辺については、私ども、引き続き、豊中市を初めとして各設置者に対してきめ細やかに指導、支援を行って、安全対策に遺漏のないように、万全を期してまいりたいと考えております。

 それから、先ほどの吹きつけアスベストという中には、吹きつけアスベストそのものだけではなくて、アスベストを含有する吹きつけ剤、こういったものも対象として考えておるところでございますので、その辺についてはまた設置者側ともよく御相談させていただきながら、取り組みたいと思いますので、よろしくどうぞお願いしたいと思います。

大塚(高)分科員 ありがとうございます。

 将来のある小中学生が毎日過ごすところでございます。アスベスト対策については、本当にこれからもまた御配慮いただきたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いを申し上げます。

 次は、耐震化率の推進についてお尋ねを申し上げます。

 近い将来、大きな地震が起きるのではと本当に多くの専門家が予測をしておりますが、学校施設の耐震化推進は非常におくれております。

 平成十七年四月の公立学校施設の耐震改修状況調査によれば、公立小中学校施設は、昭和五十六年以前の建物が全体の六三・九%、昭和五十七年以降の建物が三六・一%との報告があります。このような危険性を伴う建物で耐震診断が実施されている施設は、昭和五十六年以前、五十七年以降を合わせても五六・三%で、約半数が未調査のままになっております。

 私の大阪府下の公立学校の耐震化率は四九・〇%で、未調査は約三〇%でありますが、地元の豊中市の小中学校の耐震化率は、平成十八年度には何と一六%、平成二十五年度でも四〇・五%、半分にも至らないんです。都道府県、市町村によって耐震化率が大きく異なっているわけであります。

 補強工事、改築工事に莫大な費用、予算を必要とすることも本当に理解はできるわけでありますが、子供たちの将来、災害時の市民の避難場所などを考えれば、他の予算を転用してでも耐震化を進めるべきだというふうに私は思っておりますが、文部科学省の方向はいかがでしょうか、お尋ねいたします。

大島政府参考人 お答え申し上げます。

 耐震化の推進、まさしく喫緊の課題ということで、文部科学省においても重く受けとめて必死に現在取り組んでいるという状況でございます。

 そういった中で、まさしく地域間の格差、非常に大きいものがございまして、これの是正、特におくれているところの取り進め方というものについては、私どもも鋭意、それぞれの設置者側とも話もしながら積極的な取り組みを今求めているという状況にございます。

 そういった中で、これまで国の財政、極めて厳しいという状況の中でも、最大限の努力ということで予算の確保を目指してきたところでありますが、特にこの平成十七年におきましては、これも先ほどのアスベストと同様に補正予算を計上しております。公立学校で申し上げますと二百七十七億円計上しているところでございまして、これも、先ほどのアスベスト対策と同様、積極的に各設置者側に活用していただいて、リスクの高いものから積極的な取り組みを進めて、耐震化の推進というものに取り組んでいただきたい、かように考えているところでございます。

大塚(高)分科員 同様の趣旨でありますけれども、公立学校において今お話をお聞きしたとおりであるわけでございますけれども、今度は、私立学校においても同様にあるわけでございます。

 平成十六年度十二月の報告でありますが、大阪府の私立学校施設耐震改修状況によれば、昭和五十六年以前の施設の耐震診断率は、小学校三三・三%、中学校六四%、高等学校三〇・一%で、改修率は、小学校が二二・七%、中学校が五六・〇%、高等学校一〇・二%となっております。

 公立、私立を問わず、子供が安心して教育を受けるためにも、耐震診断に関して国、地方自治体で行うことはできないんでしょうか。文部科学省の御意見をちょうだいしたいと思います。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 学校施設の耐震診断につきましては、施設管理に要する経費として、基本的には設置者の責任において対応することとなっておりますことから、私立学校の場合には設置者である学校法人が耐震診断を行うわけでございます。

 ただ、御指摘のございましたように、学校施設の耐震性の向上は、公立、私立を問わず、児童生徒の安全の確保を図る上で大変重要なことと考えております。

 文部科学省におきましては、私立学校につきましても、公立学校施設に対する補助制度に準じて、従来より、私立学校がその施設について耐震化工事を行う際、耐震診断もあわせて行う場合には、工事費とともに耐震診断経費についても三分の一を補助しているところでございます。今後とも、これらの支援を通じて、私立学校における施設の耐震化が図れるよう推進してまいりたいと存じます。

大塚(高)分科員 ありがとうございます。

 そんな意味でこれからもまた御協力の方をよろしくお願い申し上げます。

 続きまして、学校給食についてお尋ねをさせていただきます。

 私の豊中市では、先般、四十一の小学校の給食に生産されたお米が、地元の農作物を食べて食生活の大切さを学んでもらおうということで初めて登場しました。そのお米は、市内の学校給食の調理くずや生ごみからつくった土壌改良材「とよっぴー」というものがございまして、それで生産したお米も含まれておりました。児童たちは、おいしい、やわらかいと地元産のお米や野菜をうれしそうに口に運んでいたという記事も地元紙では出ております。

 そんな意味におきまして、昨年、食育基本法が制定されたこの機会に、小中学校の学校給食への地元のお米、野菜等の導入をもっともっと推奨していただきたいのでありますが、大臣、もしよければ御見解をよろしくお願い申し上げます。

小坂国務大臣 大塚委員の方から地元のお取り組みを御紹介いただきました。すばらしいですね。

 食育の推進、昨年の七月、食育基本法を施行させていただきまして、本年は特別推進月間も設ける中で取り組みを一層加速したい、このように考えている中で、学校給食につきましては、自校方式、センター方式を通じて地元の農産物を活用していただく。地場産推進、地産地消を推進していくことは、今御紹介いただきましたように、身近な食材に対する理解を促進し、また、地元の食材の安全性に対する正しい認識を持っていただく、またさらに、地元の食文化を通じて地域文化に対する理解を深めていただく、大変多くの教育的効果もある、このように認識いたしております。

 今後とも、地元の産物を積極的に取り入れていただくように、児童生徒の食生活、学習教材という観点から、また教師の皆さんにも、地場産物の活用事例集等を作成して各学校に配付する、そういった活動も通じる中で、文部科学省としても、各種の施策を通じて学校給食における地産地消の推進を図ってまいりたいと存じます。大塚委員におかれましても、なお一層の食育推進にお力を賜りますようお願いを申し上げます。

大塚(高)分科員 ありがとうございます。

 本当にいろいろな意味で皆さん方が取り組んでいただいておりますことに感謝を申し上げ、最後に、子供たちが笑顔で伸び伸びと安心して過ごせる環境づくりに全力でこれからも取り組んでいただきますことをお願い申し上げ、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

実川主査 これにて大塚高司君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして本分科会の審査はすべて終了いたしました。

 これにて散会いたします。

    午後七時八分散会


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