衆議院

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第2号 平成19年3月1日(木曜日)

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平成十九年三月一日(木曜日)

    午前九時開議

 出席分科員

   主査 萩山 教嚴君

      井脇ノブ子君    佐藤 剛男君

      中野  清君    増原 義剛君

      武藤 容治君    岩國 哲人君

      岡本 充功君    横山 北斗君

      佐々木憲昭君

   兼務 馬淵 澄夫君

    …………………………………

   文部科学大臣       伊吹 文明君

   文部科学副大臣      池坊 保子君

   政府参考人

   (内閣官房構造改革特区推進室長)

   (内閣府構造改革特区担当室長)          大前  忠君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   真砂  靖君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          加茂川幸夫君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          銭谷 眞美君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            清水  潔君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局長)       森口 泰孝君

   政府参考人

   (文部科学省研究開発局長)            藤田 明博君

   政府参考人

   (文化庁次長)      高塩  至君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           森山  寛君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  松谷有希雄君

   文部科学委員会専門員   井上 茂男君

   予算委員会専門員     清土 恒雄君

    ―――――――――――――

分科員の異動

三月一日

 辞任         補欠選任

  佐藤 剛男君     武藤 容治君

  岩國 哲人君     前田 雄吉君

同日

 辞任         補欠選任

  武藤 容治君     井脇ノブ子君

  前田 雄吉君     岡本 充功君

同日

 辞任         補欠選任

  井脇ノブ子君     佐藤 剛男君

  岡本 充功君     横山 北斗君

同日

 辞任         補欠選任

  横山 北斗君     岩國 哲人君

同日

 第一分科員馬淵澄夫君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十九年度一般会計予算

 平成十九年度特別会計予算

 平成十九年度政府関係機関予算

 (文部科学省所管)


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     ――――◇―――――

萩山主査 これより予算委員会第四分科会を開会いたします。

 平成十九年度一般会計予算、平成十九年度特別会計予算及び平成十九年度政府関係機関予算中文部科学省所管について、昨日に引き続き質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。馬淵澄夫君。

馬淵分科員 民主党の馬淵でございます。

 予算委員会の第四分科会ということで、文部科学省並びに関係各位の方々にきょうはお越しをいただきました。

 私は、昨年もこの第四分科会、文科関係で質問させていただきましたが、ことしも引き続き、文化財の保護と活用。

 文化財というのは、かつていにしえの、我々が歴史と伝統を重んじる中でこれはしっかりと継いでいかねばならないものとして国が保護するべきものである、これは当然でございます。しかし、それも、ただ保護するだけではなく後世に伝えていく、文化財のあり方というものをしっかりと国民、市民の皆さん方の生活の中に生かしていく、これも重要な要素だというふうに思っております。

 文化財の保護と活用という観点、まず一点目は、きょうは、私の出身は奈良市でございますが、かつて小学校六年生のときに発見されて大騒ぎになった、今も記憶に鮮明に残っておりますが、高松塚古墳の問題について質問をさせていただきたいというふうに思います。

 今申し上げましたように、昭和四十七年、高松塚古墳、その中の石室に書かれた極彩色のいわゆる飛鳥美人と呼ばれる女人像あるいは男性像、さらには四神と呼ばれる神々の像、絵がかかれておった、これが発見されました。当時、このような形で壁画が、しかも極彩色、カラーで保存されてきた状況、極めてまれである、世界的な発見であると、もう本当に世界じゅうから注目されたものでもあります。まさにこれは国の宝である。かつての飛鳥時代の様式というものがうかがい知れるこうしたものに対しては、高松塚古墳そのものは特別史跡として認定され、この壁画は国宝として認定をされたということでありました。

 しかし、この国宝の壁画が劣化してしまっているということが一部の報道、一部といいますか全国の皆様方に報道に上がり、私も奈良県民の一人として大変心を痛めておったものであります。

 さて、この壁画の劣化並びに実は損傷という形で、この劣化は二点ございまして、カビの発生と一部人為的なことによる事故ということでございますが、損傷がございました。この二点につきまして、まず一点目、大量のカビ発生ということについて、この原因とそしてその責任について、まずは事務方の方から簡潔に御説明いただけますでしょうか。

高塩政府参考人 お答え申し上げます。

 カビ発生でございますけれども、カビの発生につきましては、平成十三年の二月に実施をいたしました高松塚古墳の取り合い部の天井の崩落どめ工事というのがございまして、その直後にカビが大量発生したという事実がございます。この工事につきましては、今先生から御指摘がございましたけれども、特別史跡でございます高松塚古墳を担当します私どもの記念物課と国宝である壁画を管轄いたします美術学芸課との連携が不十分であり、カビなどの情報が共有されなかったことから、十分なカビ防止対策がとられていなかったことが指摘をされているところでございます。

 このことにつきましては、文化庁におきまして、問題が起きましてから、外部の有識者から成ります調査委員会を設けまして事故当時の事実関係の検証を行いまして、昨年六月に、今申し上げました縦割り行政の弊害を指摘する報告書が取りまとめられたところでございます。このことを受けまして、当時の担当課長を初めとする関係者の処分等が行われるとともに、当時の大臣等が給与の自主返納を行ったというところでございます。

馬淵分科員 今、次長の方から説明がございましたように、石室の中に書かれた壁画、これは国宝であります。そして、古墳そのものは特別史跡となっている。

 この石室の前のいわゆる取り合い部と通称呼んでおられる場所、そこの工事をするのはこれは特別史跡の管轄であるということで、国宝を見ている課とは別のところが管轄をされている。そして、その石室内の壁画に関しては、劣化の問題というのは当然ながらに認識しているために、カビ発生防止のマニュアルを作成し、その中での作業等については十分に注意を払っていた。しかし、取り合い部の工事であるがために、壁画保護のマニュアル、例えば防護服をつけるとか、こうしたことが徹底されなかった。今次長のお話にありましたように、いわゆる縦割り行政の弊害があった、このような事故調査委員会の中での報告がございました。これは私も確認をさせていただいております。そして、当然ながら、当時ここにかかわってこられた方々、処分もなされたということであります。減給あるいは戒告、訓告、厳重注意等の処分もなされたということでございます。

 この取り合い部での工事が石室内のカビの大量発生につながったということ、ここについては、報告書の中では、断定できない、このようにしていますが、現実にはこの工事によってカビの大量発生が起きました。確かに因果関係というのは難しいかもしれませんが、この断定できないという部分、これは一〇〇%そうだと決めつけることはできないかもしれませんが、一方で、この工事の時期があって、その後に発生したということであれば、ある意味これは認めている、このように私は理解をしますが、これは断定はできないが工事によって発生したということを文化庁さんはもう認めておられるということでよろしいでしょうか。

高塩政府参考人 お答え申し上げます。

 調査報告書では、先生からも御披露がございましたけれども、三点の指摘がございまして、一点目が、工事後にわずかな期間に大量にカビが発生している、それから二番目に、発生要因については、工事の方法、温湿度、外気、作業者等による環境変化が考えられること、第三点に、これほど広範囲に発生するカビにつきましては、既に同環境の中に定着した常在カビという可能性が高いことなど、さまざまな要因が考えられまして、この取り合い部の工事そのものにお話のございました防護服を着用していなかったこと、そのことのみにカビ発生の原因を求めることはできないという報告書を受けているところでございます。

 しかしながら、私どもとしては、取り合い部の工事がカビ発生の一因になったことは否定できないというふうに考えております。

馬淵分科員 防護服の有無が直接の要因であるとは断定できない、しかし、この工事が当然ながらに今回のカビ発生の大きな要因になったことは否定しがたいとまさに認めておられるということでありますが、カビの専門家が、まさに今次長が御指摘のようにおっしゃっておられるんですね。外界から切り離された空間では、ほかの新しい微生物や栄養分が入ってこなければ、そこに常在するカビは、ある程度発育した後は活動が一時的にとまった状態になると述べています。

 つまり、カビの問題というのは、四十七年の発見当時から常にありました。発見当時、本当に、ある均一な温度、湿度、中にある常在菌も当然いたんでしょうけれども、ある一定の状態に保たれていたのが発見によって外界に触れた。この変化によって、カビというのは活動が活性化もすればあるいは活動が低下もする。こうした状況の中で、カビが常に発生をする可能性があることは、この保護の中では十分に理解をされていたと思います。その上で、今回の工事により、工事といいますか、発見したという瞬間に外界に触れるわけですから、常にこうしたリスクにさらされているということは十分に文化庁自身も理解をされているはずだと思います。

 そこで、私は、こうした変化をもたらすことというのが、取り合い部であれ、これは既に過去に盗掘の跡もあった、盗掘口から発見をしたということでありますから、これは縦割り行政という問題だけで片づけていいのだろうか、文化庁自身が、この保護というあり方の中で、なぜこの壁画をもっとある意味完全な形で残すということを検討されなかったんだろうかというところに思いが至るわけであります。

 この壁画の保護に関して、お尋ねをしたい。今、壁画の保護のためにどういう措置をなされようとしていますか。

高塩政府参考人 高松塚古墳につきましては、平成十七年六月の恒久保存委員会というものの決定がございまして、石室を解体、取り出して保存するという方針が示されたところでございます。

 したがいまして、昨年の十月からは、墳丘部の発掘調査や適切な温湿度環境の維持をするための内部の断熱覆い屋の設置等、石室解体に向けた準備を進めているところでございます。現在、作業を進めております発掘調査は、この三月末までに完了する見通しでございまして、四月上旬からは、石室の解体作業に着手する予定でございます。

 取り出しました石材につきましては、国営飛鳥歴史公園内に建設中の修理施設に搬送いたしまして、今後十年間の期間をかけまして壁画の保存修理を実施していく、こういう予定にしているところでございます。

馬淵分科員 ようやく事ここに至って、石室を解体して、保存修理を十年間かけて行う、ここまでやっと決断、重い腰を上げられたということであります。私は、こうした保護の観点でいえば、それこそ四十七年に発見当時からカビの問題もあった、これはもっと早くに手を打たなければならなかったのではないかと思うわけであります。

 そこで、もう一点の、この古墳の損傷の問題について触れたいと思います。

 実は、こうしたカビの発生はたびたび起きるということで、これについては、カビが発生をした状況の中で、適宜、防護服を着たその処理の方々が入ってカビを薬剤処理する、もちろん壁画の損傷がないようにその薬剤処理をするということを重ねてこられたわけでありますが、これが人為的に損傷したということが報告されました。これは石室西壁の人為的損傷事故ということでありますが、これも簡潔に御説明いただけますでしょうか。

高塩政府参考人 今御指摘のございました損傷事故につきましては、平成十四年一月に石室内での点検作業中に発生したものでございます。これは、石室内に入れました空気清浄機や室内灯の転倒によりまして、御指摘のございました西側の壁の男子群像の下方部分と、同群像の胸の部分の二カ所に傷が生じたものでございます。

 調査委員会の報告書におきましても、この損傷事故につきましては、石室内の作業が、狭隘で高湿度の大変厳しい環境の中で行っているものでございまして、照明器具等を転倒させることにつきましての不手際があったことは事実であるけれども、特に重大な過失があったとは認められず、現場の環境を考慮すればやむを得ないものであるというふうにされたところでございます。

 しかしながら、報告書におきましては、事故後の事実を公表しなかったことについては、いわゆる情報公開と説明責任についての認識が甘く、高松塚古墳の状況を広く正確に伝達する姿勢に欠けていたと厳しい叱責を受けているところでございます。

馬淵分科員 今御説明がありましたように、こうした非常に狭い場所での作業であったということであります。狭隘な場所ということですが、石室が、内のりで間口、これが百三・五センチ、そして高さが百十三・四センチ、奥行き二百六十五センチ。大人がかがんで一人やっと、百三センチの幅と百十三センチですから、本当にかがんでやっとですね。防護服等を着ているわけですから、それこそ、腕が当たったり背中が当たったりしないように、その中で、照明をつけ、空気清浄機をつけ、空気、湿度を一定に保ちながらということで、大変厳しい作業環境であることは、これは十分承知ができます。

 しかし、これは繰り返し申し上げますが、四十七年の発見当時からこのような環境であることはもう十分承知されながらこのカビの除去について取り組んでこられたわけでありますから、こうした中で注意が不十分ではなかったか、足りなかったのではないか、もちろん、転倒等が起こり得る、ならば転倒等の起きないような、照明器具や清浄機も含めて、もう少し配慮の行き届いた対応というものが求められたのではないかと思うんですね。

 これについては、次長、再度御答弁をお願いしたいんですが、こうしたことに対応する文化庁の姿勢としては不十分ではなかったかということについて、御答弁いただけませんか。

高塩政府参考人 今、先生御指摘のとおり、高松塚古墳につきましては、発見以来、定期的に、毎年一度の点検作業というのを狭隘な中で行ってきたものでございますけれども、先ほど御指摘のございました事故につきましては、カビの大量発生を受けて特別に実施した調査でございまして、そういう際に先生御指摘のような細心の注意が払われなかったというところは、反省すべき点は大いにあるというふうに考えております。

馬淵分科員 当時はもうカビのことで頭がいっぱいだった、このように当時の責任者の方もおっしゃっておられます。カビで頭がいっぱいだったので、カビを何とか処理しようという中で損傷が起きた。損傷が起きたことについての報告をした、しないというのも、これも当時の記憶があいまいで、それについては調査委員会の中でも厳しく指摘をされているわけであります。

 このような狭隘な状況の中で、カビが大量発生するということを繰り返し行いながら、作業環境も厳しいという状況の中で、三十五年たってやっと解体という話になるわけですね。

 さて、そこでお尋ねをしたいわけであります。

 こうした文化財、本当に重要だと思われる国宝ですよね、国の宝として。ならば、これを、今カビが発生した、人為的損傷事故が起きた、だからいよいよ解体だというのではなく、当初、四十七年、あるいは時に専門家が入りいろいろな議論をされていたわけですから、この長きにわたる中で、これを解体して恒久保存を図ろうという議論がなぜなされなかったんでしょうか。

 私、記憶があるんです、子供のときに近所まで行きました。物すごくたくさんの人が集まって、中には当然入れないわけですが、それでも、その雰囲気だけでも味わおうと両親に連れられていった記憶があります。そして、その後、この中にも、報告書等々にも保存対策についても述べられているように、空気清浄の機械も取りつけられた、石室の中ではないけれども、その取り合い部というところで完全に防護、防じん等々、カビ等が入らないようなエアシャワーも完備した。ある意味、私はこれで完全に遮断されて、大丈夫なんだと思っていました。ところが、そうではなかった。なぜこうした形で放置と言ったらおしかりをいただくかもしれないけれども、しかし、現実にはこのように損傷を起こしているわけですから、なぜこのような状態で置いてきたんでしょうか。この文化財の保護の方針について、文化庁のお考えというのをお示しいただけませんでしょうか。

高塩政府参考人 昭和四十七年に高松塚古墳が発見されました当時、我が国では初めての極彩色の壁画であるということでございまして、イタリアやフランスに学ぶということでございまして、私どもの文化庁の技術者を派遣しましたり、また、イタリアから専門家を招聘するなど、海外から学ぶということを行うとともに、当時、絵画、考古学、保存科学、生物科学などの文化財の専門家から成る調査会というものを四十七年の十二月に設置して、保存対策についての検討が行われております。

 その調査会におきましては、壁画をはがすことや石室を取り出すということも検討が行われておりますが、脆弱なしっくいから成る壁画をはがすことは大変危険であるということ、また、当時の保存技術からいたしまして、取り外すということは非常に困難であるということで、はがしたり取り出すということは採用されなかったということでございます。

 結果といたしまして、昭和四十八年の十月に至りまして、現地で保存することが最善の方法であると判断されまして、現地保存の方針というのが決定され、今日に至った、こういう経緯がございます。

馬淵分科員 技術的に困難だということが三十五年前にあったのかもしれない。しかし、現地保存するという方針が定められてから今日までこの三十五年間の中で、技術が進歩し、知見が進みということで、方針の変更というのは、私は図られるべきじゃなかったかなと思うわけであります。

 その現地での保存が望ましいという方針を転換する機会は果たしてなかったのか、この一点について、次長の方で簡潔にお答えいただけませんか。

高塩政府参考人 先ほども申し上げましたけれども、毎年度の定期点検というのを行っておりましたけれども、その中においては、カビ等の大量の発生がないということで、状態が維持されておる、こういう判断で三十数年間推移した、こういうことでございます。

馬淵分科員 維持されておると言いながら、結果的には、国宝を傷つけ、石室を解体して恒久保存を十年間かけて行うということで、もちろんそのコストの問題もあるかもしれませんが、私は、失ってしまったときにはもう戻らない歴史的なものですから、そこに対しては、文化庁としての意思、考え方としては、やはりそこが十分でなかったのではないかということを改めて指摘させていただきたいと思います。

 そして、この現状維持というのがやはり大方針としてあるんでしょうか。それについて、イエス・オア・ノーでお答えいただけますか。

高塩政府参考人 平成十七年の恒久保存方針によりまして、石室を解体して、取り出して修理をするということが決まっておりまして、現地において保存する方針というのは改めたということでございます。

馬淵分科員 改めたということでありますが、基本的にはこの現状維持という考え方が根底にあるんだな、私はそのように今お伺いしているわけであります。

 さて、このように、いわゆる文化財は現状維持なんだというのが根底にあるとする、しかしながら、現状維持によってこうして破損や損傷が起きる、こうしたことの中で我々はやはり考えていかないかぬ。文化財を保護し、そして活用をしていくという考え方の中で、今度は、平城遷都千三百年祭というものが企画をされている平城宮跡についてお尋ねをさせていただきたいというふうに思います。

 この平城宮跡、これは平城遷都千三百年事業というのが県の事業として行われるわけでありますが、この平城宮跡の利用について、その後の状況というのを、これも事務方の方からで結構ですが伺いたいと思います。

高塩政府参考人 平城宮跡につきましては、特別史跡に整備されまして、国としてこの地域を買い上げまして整備を行うということでございます。奈良県が中心となって進めております平城遷都千三百年記念事業というのが、西暦二〇一〇年に平城遷都千三百年を迎えますけれども、この時期に合わせまして、文化庁といたしましては、その中心的な施設でございます大極殿正殿の整備というものに今力を注いでいるところでございます。

馬淵分科員 奈良県とは協議をしながらということで進めていただいているということであります。平成十九年の一月十二日時点、「平城宮跡会場の基本的な考え方」ということで、奈良県の千三百年記念事業協会の事務局と文化庁の方で協議をしていただいているということであります。

 もちろん、現在その計画を奈良県の方で進め、さらにいわゆる使用許可願、変更届というんですか、この特別史跡を使って事業を行う場合に、現状を一部変更して行うということの申請が必要だと言われております。今、私の手元にはそうした計画、マスタープランがあるわけでございますが、まだこれは決定したものではないということであります。

 こうした計画を進める中で、私が一つ危惧するのは、かつて、奈良においてはシルクロード博というのが、これは一九八八年でありますが開催をされました。そのときには、当時、これは開催をした側の話でございますが、平城宮跡を利用しようとしたときに文化庁側が難色を示した、その結果、会場が奈良公園に移されたといった経緯がございます。今回は、まさにこれは平城京の遷都千三百年の記念事業でありますから、これが他の場所に移ったりなどということ、これはもうあってはならないと私は思うわけであります。平城宮跡の場所で行えないなどということになると、この事業そのものの意味が問われるわけであります。

 史跡であるということはよく理解をいたしますが、先ほども申し上げたように、その史跡を現状維持のまま置いておくのが文化財の保護ではありません。現状維持を図るとした上で、損失や損傷が起きてしまったのが高松塚古墳なんですね。この平城宮跡はもちろん、その地下の中にはたくさんの埋蔵されたもの、遺構、遺跡があると言われていますが、その上で仮設のパビリオンも含めさまざまな事業を行おうという、まさに平城宮跡がどういう場所なのかということを県民、全国の方々あるいは国際的に発信する機会でもあります。

 この平城宮跡を使用するということの計画、現時点では、平成十九年一月の十二日時点で奈良県からの計画書というのが出ておりますが、これはまだマスタープラン、まだキープランの段階かもしれません。

 そこで、事務的なことのお尋ねですが、千三百年は二〇一〇年ですから、一体いつまでにこうしたプランが固まらないと国としての対応は難しくなるのか、これについて端的にお答えいただけませんでしょうか。

高塩政府参考人 記念事業につきましては、国の特別史跡でございます平城宮跡を会場として実施をするということから、私ども文化庁と記念事業協会との間で平成十六年の十月から協議を進めております。既に十四回にわたりまして協議を行っておりまして、今さまざまな問題点につきましてのクリアをしておる段階でございます。

 協議を進める中で、協会側といたしましては、地盤の調査を踏まえまして、いわゆる仮設の建物の構造案を示したり、またその配置につきましても、いわゆる大極殿地区から朱雀門までの大変重要な歴史的空間については置かない計画なども提案されておるところでございます。

 私どもといたしましては、文化財保護法に基づく特別史跡の現状変更の許可というものが必要でございまして、当然、開催の年度の前年ないし前々年にはその手続をとる必要があるというふうに考えております。

馬淵分科員 できるだけ早い方がいいですね。当然ながら、ぎりぎりに迫ってしまえば、仮設でも建設なり整備に時間がかかりますから。今のお話ですと、前年度、前々年度と言っていただきました。そこがある意味、国としても許容できる範囲なのかなという御答弁を今いただいたと思うわけであります。

 さて、伊吹大臣、私ども奈良県の事業ではあります。しかし、先ほど、朱雀門あるいは大極殿といった、国の事業としてもそこには大きく大事な文化財の保護という形でかかわってはいただいております。ただ、これを県の事業だという形で、ぽんと、いや県のお話です、文化庁はただ変更届を受けるだけですという事務的な対応であっては、私はこれはなかなか前に進まないのではないか。先ほど申し上げたように、シルクロード博のような形になってしまっては、せっかくの日本の発信ということが、これは大事な機会が失われてしまうと思うわけであります。

 伊吹大臣はきっすいの京都人でおられると伺っておりますし、またいろいろな形で伊吹大臣のお話や政治家としての身のこなし、はんなりとした京都人の品がうかがえて、私などはもう到底足元にも及ばないと思うわけでありますが、しかし、地元のお話では、少しだけ奈良は京都よりも先輩、古い土地柄でございます。こうした奈良の発信、この国の始まりの発信ということで、ぜひこうした取り組みについて、国として挙げて取り組んでいくんだという姿勢を伊吹文科大臣からはしっかり発信をしていただきたい、いにしえの思いというものをお持ちであるがゆえに発信していただきたい、私はこのように思うわけですが、大臣、いかがでしょうか。

伊吹国務大臣 京都は実は奈良から都を引き継いだわけで、我々は建都千二百年というのをお祝いしたわけですが、今奈良は千三百年のお祝いをしようとしておられて、そして日本が今、日本国家の成り立ちの根本はやはり律令制にあると思いますね、ですから、奈良の平城京のいにしえに思いをいたすということは非常にいいことだと私は思いますから、できる範囲で我々も御協力をしなければいけないと思います。だからこそ、約二百億弱のお金を、国民の税金を投入して大極殿の再生を図っているわけですね。

 イベントとして平城京の史跡をお使いになるということと、先ほど来御質問のあった壁画の失敗は、ちょっと私はやはり違うと思うんですよ。壁画の部分は、今から考えると、カビや損傷をしないように、うまくはぎ取って保存をした方がよかったということでしょう、先生が御指摘のように。平城京の場合は、公共事業と言うといけませんけれども、平城京跡の上に、ある程度史跡そのものの形態を変えていく工事が行われる可能性があるわけですね。だから、国会でお決めになった文化財保護法にも、基本はやはり現状維持だという精神があるんですよ。現状を変更し、または保存に影響を及ぼす行為をしようとするときはという限定をつけて、文化庁長官の許可を得なければならない。

 ですから、私は、律令国家の成り立ちの根本である平城京をお祝いするのは、史跡の上であっても、やはり先生の御指摘のように、平城京でやった方がいいと思います。だから、折り合いをつけて。国民的な財産ですから、奈良のものだけではありません、日本のものですから、これは。そして、どこまでというのは、むしろ、地元側の事業が完全にでき上がるまでの期間から逆算すれば、ここまでで許可を出してくれということをおっしゃっていただきたいと思います。こちら側は、むしろその御意向に従って。

 それから、千二百年をお祝いした立場からいいますと、先生がおっしゃっているように、祖先の残してくれたものを一つ発信するということも大切なんですが、千三百年前の人がつくってくれたように、今先生が、今の世代が何かをおつくりになって五百年、千年後に残すべきものがあるんですね。我々は和風迎賓館というのをつくりました。

 塩野七生さんの「ローマ人の物語」というのを読んでいると、ローマ文化というのはやはりいろいろな公共工事をずっと積み重ねているんですね。カラカラ浴場のような公衆浴場、それからコロシアム、水道、何より大切なのは道路なんですよ。イタリアじゅうにローマ時代に張りめぐらされた道路がやはりイタリアのローマ文化の伝承、発達の根本なんですね。

 だから、ぜひ力を合わせて、千三百年のときに京奈和道路を完成させたい、私はそう思っているんです。それで、それが奈良から都を受け継いだ我々京都も協力すべきことだ。この千三百年のお祝いも、こんなのは先生、党派は関係ないんですよ。この前も関西のサミットは民主党さんもみんな一緒になって推進しようという会議をやったわけですから。ぜひ、民主党、自民党、公明党関係なく御相談をして、一緒に御協力しますから、何なりとおっしゃってください。

馬淵分科員 大変前向きな御意見をいただきました。また、御示唆もいただきました。今後とも、ぜひ伊吹文科大臣には、この千三百年事業も含めてしっかりとごらんいただき、この千三百年祭には文科大臣として、またそのときまでしっかり頑張っていただいて、お越しいただきたいというふうに思います。

 私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

萩山主査 これにて馬淵澄夫君の質疑は終了いたしました。

 次に、武藤容治君。

武藤分科員 ありがとうございます。岐阜三区選出の自民党の武藤容治でございます。

 私も、国会議員にさせていただきまして、早いものでもう一年半がたとうとしております。この機会に、五十九年ぶりという教育基本法の改正を初め、日本の国の根幹であるという教育の見直しの時期にこのような議員にさせていただいて、心からうれしく思いますし、また、きょうは予算委員会分科会ということで、尊敬すべき伊吹大臣の前へ出て質問させていただく機会を賜りまして、心から感謝申し上げるわけでございます。

 教育の再生というのはいろいろと時間がかかるものというふうに判断しておりますし、さまざまな議論がもう党でも既にされておりますし、今までの先輩方の皆様の真摯な御意見の積み重ねに心から敬意を申し上げるわけでございます。

 また、先般、文科省の方々に、私ども新人議員で、実は地方を語る会というものがございまして、地方再生へ向けて今いろいろと各方面から勉強をさせていただいているわけでございますけれども、その際、たくさんの方が来ていただきまして、また大変私ども不勉強を恥じましたけれども、地方再生へ向けて大変数々の、多くの予算措置あるいは政策を考えていただいているわけでございます。私ども地方の人間としましては大変心強いばかりでございまして、その中から、きょうせっかくお時間をいただきましたものですから、御質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 早速でございますけれども、六十八億という大変大きな予算をことしからつけていただきました放課後プラン、これも過去、文科省さんの中で地域子ども教室推進事業というものが前段になっていらっしゃるというふうに伺っております。地域においては教育委員会のあり方等も今いろいろと検討しておりますけれども、まずは概略から、とりあえず放課後プランについて御質問させていただいて、また地域のこともございますので、ひとつ御相談に乗っていただきたいと思いますので、まずその辺から質問させていただきます。よろしくお願いいたします。

加茂川政府参考人 放課後子どもプランについてのお尋ねでございます。

 この事業は、子供が地域社会の中で心豊かで健やかにはぐくまれるようにするためには、地域で活動しているさまざまな団体などの協力を得て取り組みを進めることが重要だという認識に基づいておるものでございます。

 具体に申し上げますと、行政関係者、学校関係者、社会教育関係者、さらには児童福祉関係者、PTA関係者等々、さまざまな方々による運営委員会を各市町村に設置いたしまして、コーディネーターを小学校区に配置するなど、必要な連携を図りながらこの事業を実施することを考えておるものでございます。

武藤分科員 今まで行われました子ども教室推進事業とのかかわり合いについてどういうところがあるのか、ちょっと教えていただければと思います。

加茂川政府参考人 基本的には、これまでの子ども教室につきましては、各団体に直接、委託事業をするという方式で、三年間の緊急事業で行ってまいりました。今回、十九年度から私ども考えております、必要な予算を計上させていただいております放課後子どもプランは、これを補助事業に改めまして、厚生省が行っております事業と一体的に緊密な連携を図って、より事業を拡大する形で実施しようとするものでございます。

 基本的な考え方は、委託事業から補助事業に変わります、また厚生労働省との連携が新しい課題となってまいりますけれども、地域で子供を安全、安心にはぐくむ、いろいろな活動機会を提供しながら子供の健全育成に役立てようという趣旨は変わっておらないところでございます。

武藤分科員 わかりました。

 ことしから厚生労働省との提携というものは始まると思いますけれども、従来いろいろな形で縦割りの中で、数年前から横割りに、こういう形で連携をしながらしっかりとした政策をつくろうということは大変いい傾向だと思いますし、ありがたいというふうに思っております。

 ただ、その縦割りの中で、やはり地方に行くと、そこら辺がなかなか浸透していくのかなという危惧が残っておりますけれども、その辺については大丈夫でしょうか。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 両省が一体的に緊密な連携のもとにこの事業を進める必要があるということから、いろいろな準備を行ってきておるわけでございます。いわゆる縦割り行政の弊害を地方レベルに引き継がない、おろさないようにするための配慮を私どもできるだけ心がけておるわけでございます。

 具体には、既に昨年九月及び本年二月におきましても、厚生労働省と合同で、都道府県等の教育委員会あるいは福祉部局の双方を対象とした合同の説明会を実施しております。

 また、本年二月一日でございますけれども、両省それぞれに窓口、名称としましては放課後子どもプラン連携推進室と言っておりますが、こういった共通の仕組みを設置いたしまして、補助金申請の窓口といった、手続を一本化しようとする試みも進んでおるわけでございます。

 さらには、今後でございますけれども、補助金の申請手続につきましても、地方で円滑に進むことができますように、交付要綱を国レベルで一本化できないか、この方向で今調整を進めておるところでございます。

武藤分科員 連携というのもなかなか難しい問題でございますので、ひとつ最後までのフォローアップをぜひよろしくお願いしたいと思います。

 私の選挙区は七市ございまして、今、宇宙産業あるいは自動車関係で非常に景気はよくなっているところもございますが、何分にもその中でやはり格差があったりということで、いろいろな子供たちがいます。また、首長さんも大変力強い地方政策をやっておりまして、おかげさまで、そういじめもなく、目立ったこともなくきておりまして、私どもも、地方に帰りながら、いつも地域を見ておりますと、大変元気な子供が多いものですから比較的安心をしているわけでございますけれども、さればといって、その中にも、名古屋に通っていらっしゃるお父さんたち、お母さんたちが非常に多うございまして、地域の中にも格差が、やはりそこにもございます。

 こういう放課後プランで、厚生労働省さんのも十歳未満と大体お聞きしておりますけれども、いわゆる昔のかぎっ子みたいな子たちがこういう形で小学校で放課後に皆さんと集えるような、そういう地域活動が皆さんの御協力のもとにやられるということは大変いいプランであると思っておりますし、ぜひ深くまで浸透していくように改めてお願いを申し上げます。

 それと、二つ目の中で、一けた違いますけれども、約六億強の予算で、学び合い、支え合い地域活性化事業というプランがございます。これもいろいろと読ませていただきますと、どちらかというと、もうちょっとかわいそうな子供たちを対象にしているのかなという気がいたしますけれども、今、先ほど申し上げましたように、そういう地域がありますので、自治会とか、非常にクラブ活動が盛んな地域でございますので、比較的取り組みやすいのかなという思いがあります。

 ただ、幼稚園の先生なんかといろいろお話ししておりますと、家庭が大体裕福になってきているので、裕福なゆえに、幼稚園というのはおかげさまで、どちらかというと、いろいろな集いをやればお母さんも出てこられるし、場合によってはお父さんまで出てこられるということで、いいわけですけれども、保育園の関係が、やはり共稼ぎをやっている中で時間が非常にない。

 では、こういう形でその辺がどのぐらいフォローアップできるのかなということがあるわけでございますけれども、その辺についてちょっと御質問をさせていただきたいと思いますが、どうでしょうか。

加茂川政府参考人 十九年度から私ども予定をしております、「学びあい、支えあい」地域活性化推進事業についてのお尋ねでございます。

 先ほど放課後子どもプランで申し上げましたが、放課後子どもプランは、小学校区を基本としまして、小学校と学校施設の場で、子供にさまざまな体験活動、この中には学習活動も含まれるわけでございますが、さまざまな機会を提供しようというものでございました。今の学び合い、支え合いの方は、地域の教育力をどうやって活性化するかということを目指しておりまして、地域にもいろいろ事情がございますけれども、大人同士が学び合い、子供のために支え合うための活動を、地域のいろいろな知恵を出していただきながら築いていこう、再生しようとするものでございます。

 具体には、ボランティア活動あるいは家族参加の体験活動、さまざまな地域における団体、マンパワーを生かしての取り組みが考えられるわけでございますが、地域によってそれぞれ、家庭の状況、またはいわゆるさまざまな格差の状況があるわけでございますが、どういった取り組みができるかは、各地域で知恵を生かしていただくことを私どもは最大限尊重しながら、これを支援する事業展開を考えていきたいと思っておるわけでございます。

武藤分科員 これも、そういう意味では運営協議会という形をつくられてやるというふうに伺っております。

 地域に行けば、これはある意味で、協議会もあれば、また先ほどの放課後子どもプランの運営委員会もあればということで、案外これはダブるところが出てくるのかなという思いがあります。その中で、いろいろなプランニングをして、それぞれそこに出てこられる方の気の持ちようかなという思いもあるわけですけれども、いかに子供たちを幅広く、そういう意味でいろいろな形でサポートができるかという支援づくりだというふうに思っております。

 ただ、学び合いの方でちょっと申し上げますと、やはり救われない子供たちを何とかしなきゃいけないというのは、これはやはり我々政治の役目だと思いますし、例えば、少年院から出てきた子ですとか、ちょっと悪いことをして保護観察処分になっている子ですとか、あるいは知的障害でちょっと自閉症になったり、いろいろな寂しい思いをする、そんなような子たちがいるわけです。また、うちの方も、先ほど話したように、雇用がよくなり過ぎておりまして、外国人が非常にまた入ってきておりまして、外国人の子供たちという意味でも、やはりそこもちょっと枠から外れていくのかな。そういう中を、ぜひ一緒に組み入れて、対処していかなきゃいけないというふうに思っております。

 全国で大体千カ所でございますか、とりあえず始められるということでございましたけれども、その辺の、地域に合った実情を、ぜひフレキシブルな対応で地域で活用していただけるような、そういうような施策になっていただけるものと思っております。もし違えば御答弁いただければと思いますけれども、ぜひそういう形で目指していただきたいと思います。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 私どもも考えておりますのが、委員御指摘のようなさまざまな課題を、家庭においても地域においてもあるわけでございます。特に家庭におかれましては、御指摘がございました、障害を持っているお子さん、それから、語弊があるかもしれませんが、非行問題を抱えている家庭等、さまざまな困難を抱えている、そういう問題に直面している家庭があるわけでございますが、そういった家庭を支える地域であるような取り組み。

 そのためには、個々の家庭だけでなくて、関係する団体、いろいろな課題に支援する団体、NPO等もあろうかと思います、そういった団体の方々の協力やノウハウも結集しながら、地域の再生に向けた事業展開を考えていきたいと思っておりますので、方向としては委員御指摘のとおりでございます。

伊吹国務大臣 武藤先生、具体的な実施の細目等については、御注意やいろいろなことを踏まえて、間違いのないようにやらせたいと思うんですが、先生が今ずっと御質問いただいているのは、教育的には共働きの人をどうするかとかということもいろいろあると思いますが、政治家的に考えますと、やはり教育というのは、学校と御家庭と地域社会で子供を一人前にしていく。

 ところが、残念ながら三世代同居というのはなくなって、お父さんお母さんと子供さん、そしてお母さんは共働き。放課後、子供が帰ってきたときに家族がいない。それから同時に、そういう状況ですから、三世代一緒に住まないので、お昼間は地域社会というのは空洞化している。しかし、その中で、人生経験をお持ちの方も残っていらっしゃるし、昔のように、昔はもう隣近所に子供がごろごろいましたから一緒に遊んでいたわけですが、このごろは探さないとなかなか子供が遊べない。ですから、放課後、家族のかわりに放課後子どもプランで受けていく。これは、厚労省の保育あるいは児童館、それから文科省の空き教室、こういう受け皿ですね。

 それから、地域社会においても、別に障害のある方、あるいはお気の毒な方ということで限定でなくて、地域の特性に合わせて、やはり地域社会を復活させていただく。その中では、実は、怖いおじさんが出てきて、おまえ何しているんだといって怒られる、昔のような教育力を取り戻したい。

 その二つの大きな、武藤先生という政治家が、考えていただく流れをつくった。あと、運用は、これはその大きな流れに外れないように、御注意を念頭に置きながら、むしろ自治体にやらせるということを考えております。

武藤分科員 大変わかりやすい御答弁をいただきまして、ありがとうございます。

 いずれにしましても、教育再生の中で一つの大きなファクターになるだろうというふうに思いますし、ぜひ今後とも御指導をよろしくお願いしたいと思います。

 地域もいろいろと、首長さんによってはいろいろなアイデアが出てくるところとの差が随分ありますし、我々としても、一生懸命そういう意味ではサジェスチョンをしながら、地域の盛り上げに頑張らせていただきたいと思います。

 それと、その流れの中でと言ってはあれでございますけれども、幼児教育についてちょっと御質問をさせていただきたいというふうに思います。

 今、学校教育法の改正の中で、党内でもいろいろと幼稚園の扱いについて議論をしております。私は、少なくともこの改正において、順番が、やはり小学校の前にあるべきだろうというふうに思っております。その辺についてはまた大臣の御見識も伺った方がよろしいのかと思いますけれども、順序を前に持ってきて、できるならば義務教育化の中で、そこからやはり育てていくべきだろうというふうに思いますけれども、大臣の御所見をまず伺った方がよろしいかと思います。

伊吹国務大臣 三つ子の魂百までという言葉がありますが、幼児期のしつけあるいは幼児期のいろいろな体験というのは、その後の人生に大きな影響を与えるということは否定できないと思います。

 ですから、学校教育法の順番をどうするかということは、私は、結構国会のこういうやりとりを大切にしていますので、きのうもそういう御意見があったんですよ。中教審にそういう御意見がありましたということは伝えてございますので、引き続きお伝えをして、順番からいえばそうなるのかもわかりません。

 であるとすれば、問題は幼稚園だけなのか。実質的には保育も同じような、もちろん福祉的措置と教育的幼稚園とは違いますが、その辺も考えなくちゃいけない。そうすると、すべて国民をひとしく義務教育化するのかなという話になりますね。そこまでいくと、今度は財源の話になりますから、順番をどうするか、義務教育化の対象とするかどうか、その場合には財源をどうするか。

 だから、将来、税制改正が行われる場合、どうも年金とか老人対策とかということに目が向きがちですが、少子化対策、教育という見地からすると、もう一つ候補者がいるんだということは、ひとつ、先生も忘れずに、いろいろな場面でぜひ発言をしていただきたいと思っております。

武藤分科員 そのとおりだと思います。

 おととし、税調では伊吹小委員長さんには大変お世話になりまして、いろいろ御指導をいただいておりますけれども、私も税調を目指す人間として、その辺についてはしっかりとまた勉強、御指導をいただきながらやらせていただきたいというふうに思っております。もちろん、無責任な、財源的な発言はさせていただく気もありませんし、しっかりとした日本の将来を思っての形での御指導をお願いしたいと思っております。

 また、その一環の中で、ちょっとだけ。これは事務方の方にちょっと御質問したいと思います。

 いわゆる発達性障害が十五年度に認知されまして、実はこの前も、アメリカのワシントンの小学校、エレメンタリースクールですか、見させていただいたりしまして、やはり大変先駆的な取り扱いをされております。日本の場合、まだまだスタートに立ったばかりじゃないのかなという思いがします。いわゆる発達性障害の中にも、ADHDですとかLDとか、まだ人数的にも、文科省さんの方はある程度、六十万人ぐらいじゃないかというような認識をされているようでございますけれども、この子たちが本当にしっかりとした勉強の場を持てるようにやはり我々としても目を向けておかなきゃいけないし、場合によって本当に手を差し伸べていかなきゃいけないんだろうという思いがございますけれども、今の教育の一環の中で、この辺についてのお取り組みを一度お伺いしたいと思います。

銭谷政府参考人 発達障害のお子さんの問題につきましては、発達障害者支援法にも明記をされておりますけれども、早期発見、早期支援ということが本人の将来にとっても大変重要であると認識をいたしております。

 文科省では、こういう発達障害のある幼児の支援のために、これまで特別支援教育体制推進事業の中で、幼児期の早期発見、早期支援のあり方、また、実際に幼稚園に受け入れた場合の指導に関する調査研究事業の実施等を行ってきているところでございます。

 来年度からは、学校教育法の改正に伴いまして、特別支援学校が幼稚園等の要請に応じまして助言、援助を行うことが義務づけられるというか、そういうふうになったわけでございますし、そのことを踏まえて、新規事業として発達障害早期総合支援モデル事業というものを展開しようと思っておりまして、こういった事業を通じまして、発達障害のある幼児の早期発見、早期支援にさらに力を入れてまいりたいと思っております。

武藤分科員 先ほど申し上げたようなことで、ぜひそちらの方もフォローアップのほどしっかりとお願いしたいというふうに思います。よろしくお願いしたいと思います。

 お時間も余りないようでございますので、文化庁の大変ありがたいプログラムですけれども、例の、本物の舞台芸術に触れる機会をふやそう、大変ありがたい機会だというふうに思っております。

 文化庁の関係ですと、私どもの地元で、やはり村国座でありまして、修復予算をつけていただきまして、これは先代から随分わがままを言わせていただいたんじゃないかと思いますけれども、おかげさまで始まっております。そこでは一生懸命子供が子供歌舞伎を、毎年楽しみにして、地元の人あるいは周辺からもわざわざ来ていただいて、まちづくりの一つとしても、また子供の教育としても、今大変いい活動をさせていただいているわけでございますけれども、子供たちがすばらしいものを見る機会をいただくというのは、またこれ、すばらしいアイデアだと思います。

 ただ、やはりこれは全国どこでも思うようなことは一緒だと思いますし、少ない予算の中でとり合われるのかなということもあるわけですけれども、ひとつ、その辺についてのお考えを伺わせていただきまして、今後にまたつなげていただきたいと思いますけれども、ちょっとお願いいたします。

池坊副大臣 子供たちに感動の機会を与えることは、教育現場にいる人間、そして大人たちの役目ではないかと思います。文化と触れることによって、子供たちが生きる喜びを感じたら、それはいじめ対策にも結びつくし、勉強するモチベーションにもなると思います。

 まずは、すばらしい、今まで見たこともないような本物の舞台芸術に触れる。これは今八百十二公演いたしておりまして、三十三億計上しております。

 それだけでなく、例えば伝統子ども教室、これは学校だとか文化施設を拠点として、土日、子供たちに日本の工芸とか舞踊、邦楽、茶道、華道などを町の先生がお教えになる、これが結構子供たちに身近な喜びとして、新しい発見を与えているように思います。それからまた、文化芸術のまちづくりとか文化活動、その町の成功した方を呼んで、そういう話を聞く。

 さまざまな角度で子供たちが文化に触れることによって、情操教育、また生きる力、そういうものを与えていきたい。これは文化庁は一千十七億と一%増になりましたから、それにふさわしく、そうしたプログラムをつくっておりますし、また、この間、答申をいただきました文化芸術振興基本指針の中でも、子供をもっともっと文化に触れさすようにという指針がございましたので、それにこたえて、さらなるプログラムをつくっていきたいと思っております。

武藤分科員 大変心強い御答弁をいただきましてありがとうございます。

 一%の増とおっしゃられましたけれども、ぜひ五%を目指して、また今後ともひとつ御尽力を賜ればというふうに思っております。

 これ、ただ、海外との交流プログラムというのは中には入っていませんか。例えば、海外の大変すばらしい人を呼んで、お金の問題もあると思いますが。

池坊副大臣 もちろんございます。若手の有能な人間を海外に派遣する、それから海外のすばらしい人を呼んで、そして指導をしてもらうというプログラムもしっかりございます。

高塩政府参考人 ただいま池坊副大臣がお答えしたとおりでございますけれども、外国から来日型の文化交流使事業というのがございまして、来日する外国の著名な芸術家が、日本で滞在期間に学校を訪問しまして実演をするというプログラムでございます。これは必ずしも数はそう多くございませんけれども、そういうことにも意を用いたいと思っております。

武藤分科員 ありがとうございます。

 先ほどの話で、村国座もそういうこけら落としに何か大きなイベントもやってみたらいいだろうし、こんなことは余りこういう分科会で言ってはいけないのかもしれませんけれども、海外、いわゆる日韓の交流も一生懸命今やっているものですから、観光プログラムもいろいろ今国交省さんの方でやられまして、地域交流でいろいろと今あるわけですけれども、なかなか補助的な要素のバックアップが、やはりいろいろな規制が、枠がありまして難しいと思いますので、この辺については、またいろいろと今後とも御相談させていただきながら、よろしくお願いしたいなというふうに思っております。

 いずれにしても、そういうすばらしいものを見る、また自分で演ずる、そういうことでたくましく子供たちが生き抜くことを心から頑張って我々も応援したいと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 それから、時間がもうそろそろなくなってまいりましたので、今の学校教育の問題、本質的な問題も含めて、いろいろな議論はされてきておりますけれども、私は、少なくとも大学の受験制度がやはり根底をなして、いろいろな、さまざまな、弊害といってはあれかもしれませんけれども、そういう形で、教育という問題についてやはり大きなファクターになっているのは間違いないというふうに思っております。いじめや陰湿な傾向が、数はそう多くないにしてもやはり目立ってくる昨今でございまして、そういうところは、そういう受験制度の中から落ちこぼれになった子供たちをどうやってこれから救っていけばいいのか、その辺を考慮しておかなきゃいけないと思っております。

 教育再生会議でも、一部、そういうような議論があったことを読ませていただきましたけれども、最後に大臣の御所見を伺って、今後の教育のあり方についての根本的なことだと思いますので、ひとつ御指導いただけましたらありがたいと思っています。

伊吹国務大臣 これは先生、昔でもやはり厳しい受験戦争というのはあったんです、受験競争というのは。おたくのお父さんの時代でも、旧制高校に入るというのはすごい競争があったんですよ。と同時に、中学校、こういう表現はいけませんが、各地におけるナンバースクール、一中、二中、三中、これに入るというのは大変だったんです。

 しかし、同時に、そのときにいろいろ教えていたことは、我々が、今様の言葉で言えば、自由競争原理を中心として社会を動かしていく限りは結果はいろいろ出てくる、しかし勝った者はおごらず、負けた者は無気力にならず、そして再チャレンジをしながらいくんだという、一種の生き方みたいなものを教えていたわけですね。今、それがなくて、結局、いい大学に入るというよりも、むしろ、いい大学に入ることによって金銭的に保障された将来をつかむんだということを親が子供に勧め過ぎていると私は思いますね。

 ですから、もちろん入試に問題があるということは、私、否定しませんが、人間として生きていくために大切なものをもう少し教育の過程の中で教えるべきじゃないか。それが、先般皆さんに御協力をいただいてできた改正教育基本法。今、それに従って何を教え、そしてどういう学校であるべきかということを中教審にお願いしておりますので、法案として出ましたら国権の最高機関としての院の御議論をいただきたいし、また、きょうここでいろいろ、ここだけじゃなくて、国会でお話をいただいていることは私あるいは事務局を通じて中教審等へインプットしておりますので、どうぞ国会というものを大切に、これからもひとつ御意見をいただきたいと思います。

武藤分科員 大変貴重なお時間を賜りましてありがとうございました。

 大臣おっしゃられるように、私も親御さんの問題が非常に大きいかと思っております。我々、地域の先ほどからのプログラムを合わせて、いかに自立をさせるように子供たちを育てていくかというようなことで一生懸命精進していきたいと思っておりますので、よろしく今後ともの御指導をお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

萩山主査 これにて武藤容治君の質疑は終了いたしました。

 次に、岡本充功君。

岡本(充)分科員 きょうは、予算委員会の第四分科会の中で私、教育の問題、とりわけ高等教育について少し御質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 先ほどからのお話を聞いておりますと、政府としての中教審を通じたさまざまな議論としての取り組み、また教育再生会議を含めたいろいろな議論の中で、初等中等教育については報道等でもかなり議論をされているんだろうということを実感するわけでありますが、大臣、まずもって大臣の、現在の高等教育、特に大学、大学院教育のあり方について、問題意識また御見識がありましたらまず御所見をお伺いしたいと思います。

伊吹国務大臣 大学教育については随分実は再生会議でも意見が出ておりましたし、今中教審でもやっております。しかし、当面、一番学校現場が大変荒れておること、いじめがあること、未履修等があること等々を考えると、公教育というか普通教育というんでしょうか、小中高に議論がどうしても今偏りがちであるというのは先生御指摘のとおりだと思います。再生会議も、これは私の所管ではありませんけれども、いずれ高等教育についてのきちっとしたお考えをお出しになるための議論がこれから始まると思います。

 私が高等教育について持っておる感覚というのはまさに改正教育基本法に書いてあることに尽きると思いますが、わざわざ大学という項目、条項があって、そこに改正基本法では何を書かれたかというと、やはり教育の場であること、研究の場であること、そしてその成果を社会に還元すべき場であること、この三つのことが改正教育基本法には旧教育基本法と違って明記されております。

 一番大切なのは、単に専門的な知識を得るのが高等教育ではなくて、広い文化的素養、常識、歴史その他に裏づけられたリベラルアーツというんでしょうか、専門以外の知識に裏づけられた知的エリートをつくり出す、これが大学、高等教育の一つの大きな教育目標、それから研究機関としての成果を出すこと、そして、その人材と教育の研究の成果を社会に還元して日本全体あるいは人類全体の発展に寄与していく組織であるべきこと、私はそんなイメージを持っております。

岡本(充)分科員 今大臣くしくもおっしゃいましたが、社会へ還元する高等教育であるべきだという観点できょうはひとつ大きな論議をさせていただきたい、一つ目の話であります。

 その中で、かねてより、私、指摘をさせていただいております、平成十八年三月一日の予算委員会第四分科会、まさにここでしたけれども、それと同じく、社会への貢献のあり方の一つとして、医師不足の地域に対する医師の派遣というのがある意味貢献の一つであるということは私は論をまたないとは思うわけであります。

 そういう中で、地域医療に関する関係省庁の連絡会議、通称三省庁連絡会議というものが立ち上がり、またそれを受けて地域における医療対策協議会というものができておる中で、残念ながら、まだまだ地域での医師不足の状況が続いています。きょうは松谷医政局長にもおいでをいただいておりますので、今の各会議また協議会の運営状況、その実績等をお話しいただきたいと思っています。

 聞くところによりますと、三省庁連絡会議は昨年九月一日以降、一回も開かれていないやに聞いておるわけでありますけれども、そういうことであって本当にいいのかという疑問も感じておるわけであります。御答弁をいただきたい。

松谷政府参考人 医師の確保が困難な地域における医療の確保を推進するための諸課題につきまして、関係省庁が十分に連携、調整し、具体的な取り組みを推進するために、厚生労働省、総務省、文部科学省におきましては地域医療に関する関係省庁連絡会議を設置いたしまして、直近では、先生御指摘のとおり、昨年八月三十一日に開催をして、新医師確保総合対策を取りまとめたところでございます。その一年前には、医師確保総合対策をやはりこの連絡会議において取りまとめております。

 関係省庁におきましては、現在、当該総合対策に係る各案の具体化を進めてございまして、昨年十二月二十一日には、今申し上げました三省に加えまして、全国的な病院ネットワークを有する公的医療機関の代表等から成る地域医療支援中央会議を設置、開催するなど、密接に連携しながら取り組んでいるところでございます。

 新医師確保総合対策を昨年取りまとめたわけでございますけれども、その中身について、各省庁それぞれ今連携をとって、例えば、今審議をお願いしております十九年度予算の医師確保の関係につきましても、総務省それから文部科学省と緊密な連携をとって予算の確保に努めておったところでございます。

 今後とも、必要に応じまして、地域医療に関する関係省庁連絡会議も開催することとなると考えております。

岡本(充)分科員 予算の確保が目的じゃないんですよね、局長。今の御答弁では、予算の確保に努めております、こういう御答弁でありましたよ。大臣、それが社会への貢献ではないことは明らかでありますね。

 そういう意味で、改めて実績を御答弁いただきたい。

松谷政府参考人 三省の連絡会議は今申し上げたとおりでございますけれども、各県におきまして地域医療対策協議会というものを設置すべく、昨年の医療法改正の中でことしの四月からこれを義務づけたところでございます。各県におかれましては、地域医療対策協議会を既にこの法律の施行を待たずに設置しているところが大部分でございまして、十一月末に調査をいたした段階で、各都道府県で既に設置が完了しているという状況にございます。

 各県の地域医療対策協議会の活動の内容は各県によってまだまだ濃淡がございますけれども、今後、各地域の医療の状況、それぞれ厳しいところもございますので、それに応じて私どもも助言等を先ほど申し上げました中央会議等を通じながらしてまいりたいと考えております。

岡本(充)分科員 まだ地域医療対策協議会が整っていない都道府県もあるわけなんですよね。平成十七年の六月時点では四十一都道府県にとどまるというふうに私は聞いております。そういう意味では、まだそれすら整っていないところがあるし、また、とりわけ私の地元愛知県においてどういう実績があるのか調査をしてきょう答弁をいただきたいと通告しておりますが、それについてお答えをいただけますでしょうか。

松谷政府参考人 各県の地域医療対策協議会につきましては、一昨年の状況は今委員御指摘のとおりでございますけれども、昨年、十八年十一月末現在では各都道府県に既にすべて設置されているという状況でございます。

 お尋ねの愛知県の状況でございますが、愛知県に確認いたしましたところ、地域医療対策協議会のメンバーは、学識経験者六名、医師、歯科医師または薬剤師五名、及び医療を受ける立場の者三名の計十四名から構成されたものが既に設置されて運営されているということでございます。開催実績は、平成十六年度末に設置されて年に二回程度開催され、現在までに四回実施されていると伺っております。

 地域医療対策協議会で決定され実施されている主な施策といたしましては、愛知県でございますが、医師を求める病院と就職する病院を求める医師の仲介、職業紹介を行うドクターバンクの事業、それから、現場を離れていたお医者さんが円滑な職場復帰を図れるよう、就職先の医療機関が行う現場研修に必要な経費を補助する現場研修補助事業などが挙げられております。ドクターバンク事業の実績といたしましては、今までに五名の登録がありまして、そのうち三名の医師の採用がこの二月現在で行われたと伺っております。

 国民が地域で安心して必要な医療を受けられるようにするためには、従来医師派遣機能を担ってきた大学病院の医局にかわりまして、国と都道府県が協力をいたしまして、地域の医療関係者の理解を得ながら、医師が集まる拠点病院から医師が不足する病院へ医師を派遣するなど地域医療に必要な医師を配置する体制を構築するということは重要でございまして、これに向けて地域医療協議会の重要性というのはますます大きくなるものと考えております。

岡本(充)分科員 もう二年たって、三名の医師を派遣したということを誇らなければいけないという実績であっては、これは大変寂しい限りであるわけですね。これが本当に昨年の法改正を受けてもっとアクティブに機能するかどうかということについては、また私、機会を見てこの問題を取り上げていきます。きょうは時間の関係もありますので、この話はこの辺にさせていただきます。

 続いて、大学病院におけますさまざまな取り組みがあるわけでありますが、医師確保が難しくなっている原因の一つとして、やはり大学病院での業務分担のあり方があるのではないかとかねてより私は指摘をさせていただいております。昨年もまたこの場で同じくお話をさせていただいて、全く同じ話をするわけでありますが、実は文部科学省において調査をしていただいたデータがありまして、もちろん大臣もお目にされていると思います。

 平成十八年の四月に、昨年の私の質問を受けて、大学病院における静脈注射の実施状況、また、さまざまな保険への学生、大学院生、研究生の加入状況等を調査していただきました。それはこの場でお約束をいただいて調査をしていただいたわけでありますけれども、この調査を見ますると、実際には無給である、もしくは学費を払っている大学院生、研究生が静脈注射、静脈注射というのは点滴をするときに行う手技でありますけれども、これは場合によってはウイルス感染等の医学的な労災発生の可能性があるわけであります。また、そういう労災に対しての加入がない中でリスクのある手技をやらなければいけないというのは、単なる労働契約のあり方、もしくは最低賃金が守られていないのではないかという疑いだけではなくて、その場における危険と向かい合う大学院生の保障という意味でも本当に大きな問題だというふうに私は認識をさせていただき、指摘をさせてもらいました。

 これを受けて、各種会議で要請を出してきているという話も実は聞いてはおります。とりわけ、私が行わせていただいた昨年六月六日の決算行政監視委員会の第二分科会において、当時の馳副大臣が、「静脈注射については、大学院生等を含む医師がその業務を担っていることが多いが、だれが静脈注射を実施するかは、大学院生等の負担などの観点も含め、大学病院の診療体制や業務の実態等に応じて適切に判断されるものである」というふうにしており、そしてその中で、適切な対応をするように、国立大学医学部長会議や、国公私立大学の医学部長及び病院長で組織する全国医学部長病院長会議定例総会などで周知をしてきておる、こういうふうに言われています。

 また、「雇用関係がなく診療に従事する大学院生等が相当数いることから、大学院生等の診療の目的や診療行為の実態を勘案し、その実態によっては雇用契約による対応も検討する必要があること。診療に従事する大学院生等に対する安全管理、確保が必ずしも十分ではない実態が見受けられることから、大学院生等が保険に加入していないような場合には何らかの保険に加入させる」、何らかの保険ではいけないと思いますよ、労災だと思います、私は。「適切な対応を行う必要があることなどについて説明をし、要請をしている」、こういうふうに答弁をされました。

 これを受けてどのように変わったのか、まず御答弁を事務方からいただきたい。

清水政府参考人 委員御指摘のように、再三いろいろな形の会議で指導してきているところでありますけれども、具体的なデータ的な把握というものはいたしておりません。

岡本(充)分科員 改めて大臣、この資料を多分ごらんになられたことがあると思います。どのように変わってきたかを再度調査いただきたいと思うわけでありますけれども、それについてお答えいただけませんでしょうか。

伊吹国務大臣 これは先生、ずっと医師免許を取って大学院の御経験があるからもう私がるる申し上げるまでもありませんが、六年を終え、そして臨床の実地を経て、医師試験に合格をして大学院へ行く。そして、大学院へ行った場合の、医師免許を持っているわけですから、医療に従事する場合、病院の診療業務の一部を自分の大学院の研究あるいは臨床の実態として行っている場合と、多分先生が御指摘になっているように、夜勤などは大学院の君に頼むよといって、その人が専担的に、病院業務をむしろ雇用契約が本来あるべき形でやらされているケースと、二つあると思いますね。

 ですから、前の方は、やはり研究というか、大学院生としての博士課程の一部としてやっている。しかし、後の方のことについて、率直に言えば、先生のおっしゃっていることは当を得ていることだなと私は思いますから、その辺の、どの程度が本来の大学院の研究あるいは体験ではなく医事、本来の病院の診療業務に携わっており、その人たちの身分保障という、労災その他がどうなっているかというのは、それは調べさせましょう。ただし、そこはきっちり分けて調べないといけないと思います。

岡本(充)分科員 大学院生の雇用関係の問題もさることながら、私は、医師不足の原因の一つに、大臣も、きょうは副大臣もお見えでありますが、政治家として地元を回られて言われる話に、公立病院の先生が、もしくは民間病院の先生もそうですけれども、新しい研修医制度が始まったがゆえに大学に引き揚げさせられてしまったという声を聞かれると思うんですね。

 私は、これには幾つかの違和感を感じるわけなんです。つまり、これは前回のこの場でも御説明をさせていただいたんですが、実態としては、大学病院で医者が静脈注射もしている。

 医政局の局長通知というのが出ているんですね。平成十四年の九月三十日、ここに書いてあるんですけれども、「静脈注射は、保健師助産師看護師法第五条に規定する診療の補助行為の範疇として取り扱うものとする。」というふうに書いてある。つまりは、静脈注射はほとんどの病院では看護師さんがやっている。ところが、大学病院だと医師がやることになると、夜、点滴が漏れましたといったら、だれが呼ばれるんですか。大学院生が呼ばれるわけです。

 私は、ある意味こういう実態を医師不足の原因の一つにしていて、それぞれの資格に応じた仕事を担っていただく。例えば、カルテに検査結果を張りつけるのは大学病院では医者がやっているんです。これでは、そりゃ何人医者がいても足りませんよ。どんどん医者を集めなきゃいけない。これは事務職員にやってもらう、ここは看護師にやってもらう、その職域に応じて分担をするべきだ。こうすることで、若干ではあるけれども、先ほどの三人だなんという話じゃなくて、もっと多くの医師が外で働くことができるようになれば、これは医師不足に対する一つの大きな対応策となり得るという観点で、この静脈注射の問題を取り上げているわけであります。

 そういう意味で、この問題はぜひ早急に改めて調査をしていただく必要があるし、経年、私はこれを指摘し続けておるわけでありまして、要請を出している、要請を出しているということでは、今こんな状態になっている。医者がカルテにのり張りをしているのは大学病院だけですよ。よその民間病院でそんなことをしている病院があるなら、私は知りたい。なぜかといったら、人件費が一番安いからですよ、大臣。

 私は、これは最低賃金の問題、雇用の問題とも、厚生労働省、きょうはまた別段で森山審議官に来ていただいておりますのでお答えをいただきたいと思いますが、この実態、厚生労働省の方でも、前回、個別のケースによると言われてしまいましたので、それでは、個別のケースをお調べいただけるのか。今お話をさせていただいたように、また議事録等でお読みをいただいているとおり、労働性を帯びるのかどうかも含めてここで答弁されるか、それとも実態を調査いただけるのか。御答弁をいただきたいと思います。

森山政府参考人 労働基準法の労働者性、これはもう先生十分御案内のとおり、最終的にはやはり個別の判断、指揮監督のもとにおいて行われているかとか、その報奨の意味合い等々については、やはり個別判断をしなければいけないわけでございますが、先ほど来お話がございますように、現在、文部科学省の方でそういう要請を行われているというふうにお聞きをしております。今後とも、文科省の方とも十分御相談させていただきながら対応してまいりたいというふうに考えているところでございます。

岡本(充)分科員 いや、私が指摘をしているのは、個別の例でというのであれば、それぞれの大学病院の実態がどうなっているのか一度お調べいただけますか。つまりは、医師の資格があるからというだけで、みずから診療させてくださいと紙に書いて、診療従事届というのを出させて診療している。こういう状況では、やはり最低賃金法違反になるんじゃないかという疑念、また、さまざまな意味での、場合によっては強制労働に当たるのではないかという疑いすら私は持っているわけであります。

 私、去年の議論で大変驚いたのは、労働という定義はどうやらこの国には存在をしないそうでありまして、労働者という定義はあるそうでありますけれども、労働という定義はないそうであります。私、使用従属性に対する判断基準というのをあのときの議論でも少し出させていただきました。

 労働基準法の解釈によりますと、ここで釈迦に説法でありますけれども、使用者の具体的な仕事の依頼、業務従事の指示等があるかないか、また、拒否する自由を有しない場合は、指揮監督関係を確認させる重要な要素となる。また、業務内容の遂行について、使用者の具体的な指揮命令を受けていることは、指揮監督関係の基本的かつ重要な要素である。さらに、拘束性の有無という意味でいえば、勤務場所及び勤務時間が指定され、管理されていることは、一般的には、指揮監督関係の基本的な要素である。こういうふうになっている。

 勤務場所は大学病院に決まっているわけでありますし、また、そこに指揮監督があるかどうか。大学の教授がそのまま診療科に行けば診療科の科長でありますから、こういうふうに考えれば、同一人物が隣の建物に行くだけの話ですから、普通に考えれば、そこの間には指揮監督があると考えるのが当然であろうと私は指摘をしているわけです。

 それを、個別の例を見なければわからないと言われるのであれば、では、どうぞ個別の例を見に来ていただきたい、そういうふうにお願いをしているわけでありまして、見に来ていただけるかどうか、簡潔にお答えをいただきます。

森山政府参考人 まさに、労働者性の判断につきましては、先生今御指摘されたとおりでございまして、そういう問題を含めて、実際その方が労働者なのかどうかについては、最終的にはそういうものの実態を踏まえて判断をしていかなければならぬというふうに思っております。

 繰り返しになりますけれども、今現在、そういうことで文部科学省の方では、そういう診療行為の実態等によっては雇用契約による対応を検討するよう大学等に要請をしているというふうにお聞きをしておりますので、私ども、そういう状況を踏まえ、また文科省とも今後とも連携をとって対応してまいりたいと思っていますし、もちろん、労使の方から個別の大学病院等においてそういう問題があるということであるならば、それはもちろん適切に対応してまいりたいというふうに考えております。

岡本(充)分科員 どうしてこういうふうに労働当局がこれほどまでに足が重いのか。文科省に何か遠慮しているんじゃないかという思いすら持つわけでありますけれども、私は、この問題はまたこれからも指摘をさせていただきたいと思うし、改善が進んでいないのであれば、この問題は今後とも取り上げていきたいというふうに思っています。

 時間の関係で、ちょっと最後になってしまいましたけれども、もう一点、国立大学法人というものが実際に始まり、運営費交付金というお金をいただきながら、しかし、これは毎年減り続けるという大変厳しい財政状況の中で、各大学は運営をされております。こういった中で、そろそろ、大学院大学の役割を含め、これから先のビジョンをどのように設定していくのか。

 また、とりわけ大学院大学の中でも、定員の充足がなかなかままならない、そういう大学もありますし、私が先ほど指摘をしておりました医科系の大学院においてはある程度の充足ができているというのは、ある意味、市中病院から大学院生を集めている、そういう部分もあるわけであります。またその一方、文科系の大学院は苦しい事情もあると聞いております。こういった問題。

 さらに問題点を指摘させていただきますと、例えば、大学の中での自治の問題。地方分権の話になりますけれども、お金を渡し、そして、ひもつきの交付金じゃない、こういうお金を出そうじゃないかという提案をしておりますけれども、今の運営費交付金の中ではなかなか、例えば、助手二人をやめて助教授一人のポストにするだとか、助教授のポストを一つ廃止して助手のポストを三人つくろうだとか、こういうような大学の中での人事、人件費に関する自由度が少ないというふうにも聞きますし、その一方、科研費で人件費に充てられるという話にはなってはおっても、例えばそれが三年という枠がついていたりと、なかなかこの自由度が上がっていないのではないかという声も聞くわけであります。

 今後の大学院大学のあり方、とりわけ国立大学法人の行く末についての御答弁をいただきたいと思います。

清水政府参考人 たくさんの御指摘をいただいたわけでございますけれども、まず国立大学の法人化に関連してお答え申し上げますと、基本的に言えば、それぞれの単位となるような学部でありますとか、そういう組織を除きまして、内部の組織編制、あるいは人事、あるいは任期制の導入等々はまさに各大学法人の自由度にゆだねたということでございます。実際上、法人化以前でできなかったものとして、例えば、特別な給与での一流研究者の任用でありますとか、年俸制の導入でありますとか、あるいは裁量労働制の導入でありますとか、外国人の幹部への登用でありますとか、ある意味での予算執行の自由化と同時に、そういう意味で柔軟な組織編制はシステムとしては可能になったわけでありますし、また、今申し上げたのはすべてそういう取り組みがなされているということでございます。

 そういう意味で、いろいろな例えば新しい組織編制あるいは学部、研究科への取り組みというのも今なされつつある。歩みは遅々として遅い部分もあるかもしれませんけれども、それぞれにされているというふうに思っております。

 それで、もう一点。大学院については法人化とは別な問題、課題というのがございます。御案内のように、大学院をいわば学部の従属物としてではなくてそれぞれ独立した組織体として、きちんとしたカリキュラム、課程のもとにどう実施していくか。それは私どもの、医学系のみならずすべての大学院についての課題でございます。大学院大学は、いわばそういう意味で学部と一つ区分けして、もっと大学院の主体的な、実質的な形を実現していこう、こういう考え方で今進めているということでございます。

岡本(充)分科員 助教授のポストを一つ廃止して助手を三人にしようとか、だれを採用するかは、それは裁量権がありますけれども、そういうポストの設置についても自由度を認めているという答弁をいただきたいと思います。

清水政府参考人 まさにおっしゃるとおりでございます。当然、法人でございます。

萩山主査 もう約束の時間が参りましたので。

岡本(充)分科員 これで終わります。ありがとうございました。

萩山主査 これにて岡本充功君の質疑は終了いたしました。

 次に、井脇ノブ子君。

井脇分科員 おはようございます。自由民主党の井脇ノブ子でございます。

 予算委員会の第四分科会での質問は、昨年に続いて二回目になります。よろしくお願いいたします。

 伊吹文部大臣のすばらしいリーダーシップのもと、教育基本法が六十年ぶりに可決いたしました。この努力と教育にかける情熱に私は大変感銘を受けて、この実現に、本当に心から歴史に残る大偉業をなされたと大変感動しておるものでございます。御苦労さまでした。ありがとうございました。今後、まだ教育三法、たくさんありますけれども、大臣、力いっぱい頑張っていただきたいと思います。私たちも一生懸命に頑張っていきたいと思っております。

 本日は、私は教員に関する質問をさせていただきたいと思います。

 安倍総理の施政方針演説と伊吹文部科学大臣の所信表明演説で述べられましたように、教育再生のかぎは教員であるということ、全く同感でございます。

 私、これまでの三十六年間、学校を三つほど経営し、学校長として青少年の教育をいたしました。この経験から、やはり教育にはすぐれた指導者が必要であり、教育は魂の伝達であり、感動しなければ、また国を興し、世を清め、社会改革ができるような人物づくりに、教員の質の向上をしていかなければならないと大きくいつも考えているものでございます。

 現在、中教審と教育再生会議では、教員の質の向上を図るために、一つの方策として教員免許状に十年更新制を導入するということが議論されております。

 そこで、まず、現在法制化が進められている教員免許状更新制の導入がどのような制度として検討されているのでしょうか、お願いいたします。

銭谷政府参考人 お尋ねのございました教員免許更新制は、教員がその時々で必要な資質、能力を確実に保持していけるように、定期的に知識や技能の刷新を図る方策として提言をされているものでございます。教育再生会議の第一次報告においても、教員が時代の変化や要請に合わせた教育を行える能力や資質を確保するための方策として、この教員免許更新制の導入が提言をされております。

 こうした基本的な考え方に立ちまして、現在検討を進めておりますのは、第一に、教員免許状に十年間の有効期間を付す、第二に、更新に当たりましては、免許状の更新講習を受講し、修了するということを必要とすること、第三に、講習を修了できないなど、更新要件を満たさない場合には免許状は失効すること、第四に、既に免許状を持っている現職の教員につきましても同様の講習を義務づけること、こういったことについて検討をしているところでございます。

 これらの内容を含む教職員免許法等の改正法案について、この国会にお諮りをし、御審議をいただきたいと考えているところでございます。

井脇分科員 ありがとうございました。

 講習の内容が、三十時間の実習ということが言われておるんですけれども、そのような三十時間の講習をいただけるようになるのでしょうか。

銭谷政府参考人 現在検討を進めている中では、免許の更新講習はおおむね三十時間程度の講習時間ということを考えております。

井脇分科員 教育における課題は、先ほどお答えいただきましたけれども、その時代の社会状況に影響を受けて絶えず変化をしているものであります。当然、教員に求められるものも変わっていくものではないかと思います。定期的に知識、技能を刷新するということにとても賛成しております。

 更新条件として、免許状更新講習は第三者機関を使って開設するとも言われております。十年ごとに三十時間の免許状更新講習を受講、修了することで更新されるということであれば、講習がしっかりとしたものであることが最も重要であると思います。文部科学省としては、そのことについて、内容を具体的にどのようにお考えになっておりますでしょうか、お聞きしたいと思います。

銭谷政府参考人 ただいま先生からお話がございましたように、免許更新制を意味のあるものとするためには、免許状の更新講習の内容の充実ということが必要であろうかと思っております。

 そのために、私どもが今検討しておりますのは、第一に、免許状の更新講習を開設する人がだれであるかということでございまして、これは教員養成課程の認定を受けている大学や、そうした大学と連携協力のもとで都道府県の教育委員会等が開設をするということ。そして第二に、講習の内容や方法等につきまして、国があらかじめ免許状更新講習の認定基準を定めておきまして、講習会の開設者からの申請に基づいて国が認定を行うシステムを採用してはどうかということでございます。そして第三に、その免許状の更新講習の認定後も、定期的に認定基準を満たしているかどうかのチェックを行うということ。そして第四に、実施の内容、形態として、講義とかだけではなくて、事例研究とか場面指導とか、さまざまな工夫を行っていくようにしてもらってはどうかといったようなことを検討しているところでございます。

 こういった内容につきまして、各方面からの御意見も伺いつつ、実効性のある免許状の更新講習の内容となりますように検討を深めていきたいと思っております。

井脇分科員 ありがとうございました。

 だれが開設するか、また認定の大学の、第三者機関のところで受けるということ、そしてまた、国の認定基準をしっかり定めるということで、教育委員会も入って、また認定後も満たしているかどうかという確認をしていく、事例の研究、先生たちがそういうものを入れながら、実質的に効果のある教員の免許状、十年の更新制をしていく、新たな気持ちでそれに取り組んで、教員の皆さんの質の向上が図られるならば、大変立派ないい免許状の十年ごとの見直しをしたなと言われるような政策である、制度であると私は大変うれしく思います。

 そこで、教員の質の向上を図っていくためには、こうした教員免許状の制度の改革も含めて、さまざまな施策を進めていくことが必要であると考えます。大臣のお考えをひとつお聞かせ願いたいと思います。

伊吹国務大臣 先生は、教育者としても、また教育施設の経営者としても大変経験を重ねてこられたと思いますので、人がどうすればやる気を持って動くかということは、いろいろな御経験をなさっていると思うんですね。

 まず、叱咤激励しなくちゃだめですよ、基本的には。同時に、もし努力を怠ったりなんかしたときは注意しなければならない。しかし、それだけでは人は動かないんですね。やはり、うまい結果を出したときには、それを褒めて、そしてその人が安心して働けるような気持ちを持ってもらわないといけません。

 先ほど来御質問いただいているのは、児童生徒、保護者、納税者に対して教師として果たしていく義務を担保してもらうために免許だとか更新とかはやっているわけです。しかし同時に、その上に立って、しっかりやってくれた先生には、ありがとうという気持ちをやはりあらわさなければいかぬですよね。

 ですから、私は、今までなぜこういうことが起こっていなかったのかと思うんですが、ことし初めて優秀教員を全国から表彰いたしました。安倍総理が出てこられて、皆さんのおかげで授業、教育は成り立っているからありがとうございますというあいさつをされました。

 それから、やはり人間、食べていかなければいけませんから、給与をしっかりしたものにしてあげなくちゃいかぬですね。今、一般公務員よりいいと言われているのをカットするという動きがありまして、去年の予算編成では、安倍内閣では教育を最優先課題とするのに、それはちょっとひどいじゃないかというので、私は一年待ってもらったんです。ことしの暮れの予算編成は、先生もぜひ手伝ってもらいたいんだけれども、めり張りをつけた、しっかりやっている教員には報いていく給与体系をつくるんだということですね。

 それから、学校現場で、教える以外の事務負担が非常にふえているということを伺いますので、事務負担を軽減して子供たちと向かい合える時間をとっていく。

 やはり、そういうことを総合的にやって教師に期待するということをやらないと私はいけないと思って、もちろん、税金を負担していただく国民の負担には限度がありますから、その中でやらなければならないことですが、今申し上げたようなことを念頭に置いて、文科省として対応させていきたいと思っております。

井脇分科員 ありがとうございました。

 ことし、本当に、伊吹文科大臣になりまして、教員の表彰を七百六十八名ほどしたことは大変すばらしいことで、それが励みになって、教員の皆さんの質の向上にも一役買う、大変すばらしい、喜ばしいことだなと思いました。今までかつて、そういうことが本当になかったのであります。今までは、教員の給与体系、それと人事、大学出、大学院出、号数と等級、それだけで全部決定しておりまして、皆同等でございました。そういうことでそういうめり張りがつくものなら、もっと教員が張り切って、子供に立ち向かって、子供たちと一生懸命やれるのではないか。

 それは、手を抜いておったわけではありません。毎日の事務量が、学校は分科会というものがありまして、それに対して、もう本当に毎日、授業が終わったら子供と向き合う時間がないくらいの文書量です。県に出すものからすべてのもの、そして呼ばれること、教育委員会に出すもの、本当にもうたくさんの量があるんです。でも、そういうものもあわせまして、先ほど文書量を考えるということになって、子供と向き合える時間が、たくさん放課後でもできるような時間が、また残り勉強もできるような時間ができる。

 前、遠山敦子先生が文部大臣のときに通達が学校に来ました。放課後も、できない子を残して一人ずつ徹底的に教えなさいという通達があったんです。私は、物すごくすばらしいなと思って、全教員に、そうしようじゃないかということで、みんなで立ち上がったことがあります。これは、言わなくてもそうしなければならないことでございますけれども。

 小学校、中学校、高校と合わせて、私は今まで三十六年間、五万六千人を教育してまいりましたが、本当に教員のあるべき姿、質の向上というのは大変なものでございます。伊吹文部大臣になりまして、現場の教員はすごくやる気になって今一生懸命頑張っておりますので、本当に、これから期待をし、また、この教育改革、教育再生に大きな力を発揮していきたいと思っております。

 続きまして、ゆとり教育について質問をしたいと思います。

 先般、教育再生会議の第一次報告が取りまとめられました。その中で、ゆとり教育を見直し、学力を向上するとありましたが、このような指摘の背景には、今の子供たちは十分な学力がついていないこと、社会の決まりを守るといった規範意識が身についていない、保護者や社会の不安がとてもこのことに対してあります。次の時代を担う子供たちが、持っている力を伸ばし、しっかりとした学力を身につけるとともに、人間として、また社会人として必要な規範意識をきちんと養う必要があると思います。

 私は、三十六年間こういうことを教えてきました。今もなお続けております。

 一つ、国の恩、一つ、親の恩、一つ、衆生の恩、一、誇りを持て、二、奉仕の心を持て、三、感謝の心を持て、四、協力の精神を持て、五、責任感を持て、六、勇気を持て、七、礼儀正しくあれ、八、思いやりの心を持て、九、根性を養え、十、積極的であれという、三恩と十徳ということを五万六千人に徹底して、三十六年間、規範意識を身につけるということで教えてまいりました。

 しかし、規範意識は、今、公教育の中ではこういうことはできません。これは私学だからできるのでありまして、公教育にはできないと思います。心のノートという、ゆとり教育の中で、一年生から全部のノートを見てみました。これは、余りにもゆとりの教育が、一生懸命やっている学校もありますけれども、ちょっといいかげんな心のノートがなされておるということが、実際に回ってみてよくわかっておることでございました。

 そういうことで、このゆとり教育をどのように見直すべきか、ぜひとも大臣の御見解をひとつお願いしたいと思います。

伊吹国務大臣 先生、文部科学行政上は、ゆとり教育という言葉は使っていないんですよね。この言葉は、マスコミ等がいろいろな意味でお使いになっていると思いますが、一つは、基礎学力を身につけさせた上で、それを現実に応用させる時間として総合学習という時間を、カリキュラム上、学習指導要領上とった。

 この総合学習というのは、実は評点がないわけですね。そのためにこの時間が、今まさに御指摘になったように、本当に教育目的のために使われているのか、基礎学力を十分つけないまま何か無駄な時間になっているんじゃないか、これがゆとり教育に対する一つの批判です。それからもう一つは、授業時間がそのために足りなくなったんじゃないか。土曜日も週休二日制にしちゃったじゃないかという時間数の問題と、何かみんなごっちゃになっていろいろな人が話しているように思います。

 安倍総理は、国会でも施政方針演説で申し上げたように、自分の内閣の最優先課題は、百年の計である教育の再生に置くんだ、そして、そのねらうところは、基礎学力を身につけさせることと、先生がおっしゃった、規範意識を十分身につけた国民を育てることにある、こういうことを言っているわけですね。ですから、教育基本法を改正していただいたので、あの教育の目的のところに合うように、今、中教審で学校教育法の内容を審査していただいております。

 いずれ、お考えが私のところに来ると思います。これを法案化いたしまして、国会にお諮りをいたします。それで国会がお認めをいただければ、それに従って学校現場で何を教えるかという学習指導要領を少し手直ししていきたい。大切なことは変える必要はありません、立派なことは変える必要はありませんが、その中で、授業時間、基礎学力のあり方等に若干手を入れていきたい。

 必ずしも授業時間をふやしたから学力が上がるかどうかは、国際的にもいろいろな研究があります。しかし、総合学習の時間をどう使うかについては、大いに反省があるのは、先生が今御指摘になったとおりだと理解しております。

井脇分科員 今、総合学習のゆとりの教育をもう一度見直してもらえるようにカリキュラムを、学習指導要領を体系づけて考えていただくということで、これから大変すばらしいものになっていくと思います。

 前は、土日を抜いて二百二十日間授業日数があったんですが、今は、文部省の最低基準で百八十日以上でいいというんです。前は二百日以上授業を展開しなければならないということで通達が来ておりましたが、今は百八十日。それから高校でも、単位なんか、私、最初のときなんか九十七単位取っておったのに、今は七十八単位以上ということになったんですね。随分単位の数も、また授業日数も、文部省からの通達の中ではそういうようになってくるんですけれども、こういうことがやはり、学力の低下もあわせて、いろいろなことに影響をしているんではないか。

 だから、最低でも、土曜日でも、休みだけれども授業して、二百日以上とれるような、私のところは七十八単位以上というのを九十三単位にしているんですけれども、それぐらいでいいよという通達がよく今文部省から来るんですけれども、文部省、どうなんでしょうか。

銭谷政府参考人 先ほど大臣からもお話がありましたけれども、文科省はゆとり教育という言葉は使っていないわけでありまして、基本的には基礎、基本をしっかり教えた上で、それを活用していく力を育てようということで教育課程は編成されていくべきだと私ども思っております。

 実際の授業の日数でございますけれども、今、標準的には年間大体二百日授業日はあるわけでございます。ただ、そのうち、学校行事とかそういうのに使われる日にちもあったりしますので、今先生がお話しになったような状況の学校もあろうかと思います。

 いずれにいたしましても、今回、私どもも一つ反省しておりますのは、こういう基礎、基本をしっかり教えて、それを活用する力を身につけるということで今の学習指導要領を編成しているわけでありますけれども、学校週五日制の導入とか、あるいは総合的学習時間の導入などを通じまして、何か勉強しなくてもいいんだというようなメッセージがもし現場に伝わっているとすれば、それはもう全く間違っているわけであります。私どもは、時間数は少なくなったけれどもしっかり勉強してほしい、そして自分で考えるような活動も行った上で力をつけてもらいたいということで指導してきたつもりでございます。

 その点も含めて、先ほど大臣から御答弁ございましたように、学校教育法を教育基本法に基づいて、目的、目標を各学校ごとに見直して、それを踏まえて学習指導要領の見直しを行いまして、また、今私どもが本当にねらっている教育が実現できますようにいろいろと検討を加えていきたい、こう思っております。

井脇分科員 よくわかりました。これから一生懸命に学校教育法にのっとって頑張っていきます。

 続きまして、ある株式会社立大学についてのことでございますが、学校教育法に基づく勧告を行ったと聞いておりますけれども、大学からはどのような報告が提出されたのでしょうか。また、これを受けて、文部科学省は今後どのような対応を行いますか。

 この株式会社立大学ですけれども、学校をつくるときには大学設置基準というのがありまして、また大学をつくるのに、普通、大変な御努力で創設をするわけでありますけれども、大学設置基準にのっとって株式会社立はしたのでしょうか。

 そして、前回、私は質問をしたのであります。その質問に対しまして回答が来ておりますが、専任教員の教授なんかは、本当にとても難しい審査を受けて大学教授になるんですけれども、百七十三名いて、三十五名が本物の大学教授であった。あとは予備校の先生で兼務していた。全専任教授が授業科目を担当し、オフィスアワーを設定し、また二百四十万円の年額支給は全教授にしておった。そしてまた、塾のお金ももらって、また大学のももらっておるわけでありますけれども、先生がいなくて、ビデオ授業を中心とした授業をやっておった。これを改革していくということ。塾と大学が同じフロアで、先生もそれを一緒に使っておった。

 また、一本部があったら、学校の本部から、十四のキャンパスというか、ビルの中に、新宿、千代田区、何区と、そういうところに十四キャンパスを、小さな運動場とかもない、学校というようなものじゃない、ビルの中にキャンパスをつくって、何か知らぬけれども、大学設置基準はそんなものではないのに、どうしてこういうことが認可できたのか。その認可の株式会社立、幾ら規制緩和で、大学をやってみようかと、大学設置基準も、どういうような設置基準でしたのか。

 そしてまた、私たち、学校をつくるときには、寄附行為の、書類をもう山のごとく出して、大学教授でも、一人の認定が、こんなに論文を出して認定を受けて大学教授になるのに、百七十三名が教授であるのか、そして教えられるのか、もうびっくりすることばかりで、私はこのことに対して、本当に怒り心頭というか、文部省はどういう認定で大学設置基準をしてこれを通したのか。物すごく、今でも頭がパニックになるぐらいに思うんですけれども、どうか、ちょっと教えていただけませんでしょうか。

萩山主査 清水高等教育局長、時間がありませんので。

清水政府参考人 まず、お尋ねとして、先生の方から勧告あるいはその前の現状についての御指摘もございましたように、要は、勧告に対する報告として、資格試験予備校と同一化している現状を改めて、大学として固有の体制をつくるということの一点にかかるわけでございます。

 それで、お尋ねもございました、当時、設置審査との関係でどうかということでございます。

 カリキュラムに関しましては、設置計画上のカリキュラムと実施されたカリキュラムとが、計画上で具体的に、授業時間はどうする、テキストはどう使う、シラバスはというのはわかりません。計画上のところでは、いわば、いわゆるそこの中での当時の審査基準に基づいて、計画として出されたものについて判断、審査させていただいたということでございますが、今申し上げましたように、例えばカリキュラムの実際あるいは専任教員の他の業務の状況、給与の状況等々について十分資料をとらなかったということで、認可後にそういう問題点が出てきているということでございまして、今となってみれば、当時の設置審査について不十分な点があったということであろうと思いますし、今後、私どもとしては、そういうものを踏まえて、設置基準あるいは設置の審査のあり方というものも見直していきたい、こういうふうに考えております。

井脇分科員 時間になりましたので、終わります。ありがとうございました。

萩山主査 これにて井脇ノブ子君の質疑は終了いたしました。

 次に、横山北斗君。

横山分科員 民主党の横山北斗です。

 二十七日の火曜日にITER、国際熱核融合実験炉に関しての閣議決定がなされました。私は、きょうはその関係で、ITER計画に代表されます我が国の核融合研究について、幾つかお尋ねをしていきたいと思います。

 まず、原子力エネルギーは、現在、電力供給の約三割を賄っております。今後も電力供給のベースロードとして極めて重要なポジションを占めていくだろう。また、CO2を排出しないという環境保護の観点からも、アメリカを初めドイツなどでも見直しの機運が出てきております。

 一九八九年ごろでしたか、まだヨーロッパの方で原子力の方をもうやめようというような動きが主流だったときに、イギリスのサッチャー首相が、いや、原子力というのは地球温暖化に結びつかないんだからどんどん進めるべきだと言って、当時はサッチャー首相だからこんなことを言うんだろうなと思ってみんなびっくりしたんですが、今はそういう考え方の方が本当に主流になってきたのかなというようなものを私も感じております。

 しかし、核分裂型の原子力エネルギーについては成功してきていますが、核融合型の原子力エネルギー、ITER計画というのは核融合型のエネルギー利用ですので、これはまだ研究はスタートしたばかりである。この核融合型の原子力エネルギーを実際に利用できる、発電炉として利用することができるようになる見通しについて、まずお尋ねいたします。

藤田政府参考人 御説明申し上げます。

 先生御指摘のとおり、核融合につきましては、将来のエネルギー源の有望な候補の一つではございますけれども、まだ実験の段階ということで、基礎的な段階にあるというふうに考えております。したがいまして、現時点で本格的な実用化について確たる時期を申し上げることはできないわけでございますけれども、各国の専門家の見解などを踏まえますと、今世紀後半以降には実用化できるのではないかという期待を持っているところでございます。

 そのような目標に向けまして、ITER計画それから核融合の将来の幅広いアプローチ活動を初めといたしまして、核融合研究開発を着実に進めてまいりたいと考えております。

横山分科員 わかりました。

 今世紀末というと、今世紀は始まったばかりですから、まだその実現までには極めて大きな課題が横たわっているんだなということだと思います。

 では、そうした今の現状の中で、それでも、いろいろほかにもエネルギーがあるわけですけれども、特に核融合ということに関して、推進していく必要性、また、これまでのエネルギー源、特に現在用いられている核分裂反応を用いた発電方式と比較した場合の、なぜ核融合なのかという利点についてもう少し詳しくお聞かせ願えないでしょうか。

藤田政府参考人 御説明申し上げます。

 途上国を中心といたしまして、世界的に人口がどんどんこれから増加していくというふうなことも言われておりますし、また、エネルギーも大量に消費されるというふうなことから、エネルギー資源が枯渇するのではないかという懸念でございますとか、それから、先日のIPCCの報告にもございましたように、地球規模での環境問題を引き起こすということで、深刻な問題になっているというふうな状況にございます。

 そういう意味から、環境と調和をし、豊富で安全なエネルギーの安定確保というのが、我が国のみならず人類全体にとって重要な課題ではないかというふうに認識をしております。

 それで、核融合エネルギーにつきましては、燃料となります重水素などが海水中に豊富に存在するということ、それから、発電の過程におきまして、地球温暖化の原因となります二酸化炭素を発生させないということなどの利点を持っているわけでございます。

 また、特に核分裂との比較において申し上げますと、核融合は、強い磁場で高温のプラズマを閉じ込めるということでもって初めて核融合反応が起こるということでございますので、磁場が維持できなければ自然に反応がとまってしまうということから、安全対策が比較的容易にできるという特徴を持っているということでございます。

 そういう性質を踏まえまして、核融合につきましては、安全性とともに、地球規模のエネルギー問題、それから環境問題を同時に解決できる可能性を持っておるということから、人類究極のエネルギー源とも言われておりますので、その研究開発を着実に進めてまいりたいというふうなことで考えているところでございます。

横山分科員 ITER計画というのは地上に太陽をつくるというような計画ですから、確かにそういう夢のエネルギー源ということだとも思います。

 また、そういうものをどうやって閉じ込めていくのかということを考えたときに、いわゆる放射性物質とか何かを閉じ込めておくような上でも、その製品の開発の過程でさまざまな別途波及していくものも考えられると思いますので、そういう点でのプラス効果も次回以降の質問でお聞かせ願えればなと、科学技術振興の中で考えております。

 今のお答えは、どうもありがとうございました。

 続きまして、先ほど申したとおり、二十七日火曜日にブローダーアプローチ協定、これは、ITER計画の実施に向けた両国の責任を果たすというようなことなんでしょうか、この準備は進んでいるんですが、今まで核融合に関しては、トカマクとかヘリカルとかレーザー型とか、大体、ざっと数えただけでも三十以上の大学で研究が進められております。

 ITER計画につきましては、JT60という大型トカマクを改造して、貢献が期待されているんですけれども、今までいろいろ各学校あるいは研究施設で進められてきたような核融合研究については、今後どういう方針をお考えなのか。特に、トカマク型以外への予算配分など、どういう措置を考えておられるのか。

藤田政府参考人 御説明を申し上げます。

 我が国の核融合の研究開発につきましては、原子力委員会が取りまとめをいたしました平成十七年の今後の核融合研究開発の推進方策という報告に基づきまして、推進がされているところでございます。

 具体的には、先生御指摘のトカマク型につきましては、技術的に、実験炉ITERを建設するという、非常にほかの方式と比べて研究が進展しているというふうな方式でございますので、我が国として、ITERそれからブローダーアプローチを通じまして、トカマク型の核融合研究を積極的に推進していくというふうなことでございます。

 他方、それ以外の方式、例えばヘリカル型、これは日本が独自のアイデアで生み出した方式でございますし、またレーザー方式というほかの方式とは全く異なる方式など、大学を中心に学術研究、非常に基礎的な研究として進められているわけでございますが、そういった分野につきましても、核融合エネルギーの選択肢を広げるという観点から、それぞれの特色を生かしながら相互補完的に基礎研究を進めていくということで、核融合分野の科学的、学術的な基礎をきちっと確立していくということが重要であるというふうに指摘がされていることでございます。

 そういった研究開発を通じることによりまして、いろいろなアイデアが積み重なって、核融合の実用化の早期実現に資するということも指摘がされているところでございます。

横山分科員 特別このITERに特化されて重点を移すとかいうことではなく、今後もそれぞれの研究成果を融合していくということで理解いたしました。

 では、次の質問に移らせていただきます。

 このITER計画というのは国際的なプロジェクトですから、その計画の推進に際しまして、何年までには幾ら幾らというような財政支出というものも、国際約束として避けられない問題であります。この点、国際的な約束を果たすための予算確保の方策といいますか、充実した研究環境を整備するための施策について、どういうお考えなのか。とりわけ巨額な費用を要する国際協力については、財務省についても同じ質問をいたしたいと思いますので、まず文科省の方からお答え願えないでしょうか。

藤田政府参考人 先生の方から非常に厳しい御指摘かと思いますけれども、先生御指摘のとおり、ITER計画それから幅広いアプローチ、これは、国際約束に基づく、言ってみれば日本としての公的な約束に基づく事業でございますし、また第三期の科学技術基本計画におきましても、ITER計画などにつきましては、戦略重点科学技術の一つとして重点的に資金を投入するというふうなことで位置づけられているところでございます。

 それから、我が国の財政事情、非常に厳しいところではございますけれども、近年、政府の研究開発投資につきましては、ほかの経費を抑制する中で、科学技術は重要だということで、必要な経費が着実に確保されてきているところでございます。

 先ほど申し上げましたITERなどの重要性、位置づけや、それから科学技術予算を取り巻くこのような状況を十分踏まえながら、必要な経費をきちんと確保するというふうなことで、毎年度の予算編成、努力をしてまいりたいと考えてございますので、先生におかれましても、ぜひとも御支援のほどをお願い申し上げます。

真砂政府参考人 先生のお尋ね、大規模な国際協力プロジェクトに対する予算措置についてのお尋ねでございますが、私ども、大規模なプロジェクトであれ通常の予算要求であれ、その必要性について一つ一つ吟味させていただいて、それで科学技術開発として国として取り組むべきと判断されるものについて必要な予算を確保していく、こんな基本的な考え方で臨んでいるところでございます。

 同時に、先生御指摘のように、こうしたプロジェクト、多額の費用を伴うものですから、まさに選択と集中という観点から、他の施策の徹底した合理化あるいは効率化を行うことで財源の確保を図ってまいりたいというふうに考えているところでございます。

 その上で、こういう国際協力プロジェクトについて、積極的に参加すべきと判断される案件につきましては、我が国が応分の負担をしつつ、画期的な成果を世界として目指していくということは科学技術先進国として意義のあることだ、こういうふうに考えているところでございます。

横山分科員 ただいまの質問に関連して一言お答えいただきたいんですが、国際プロジェクトですから、政府と政府がお金を出し合うわけですね。地元負担というのは、これは求めないものなわけですね。その点、はっきりと確認させていただきたく、お願いします。

藤田政府参考人 先生御指摘のとおり、ITER計画それから幅広いアプローチの協力活動につきましては、国際約束に基づく活動でございますので、これに必要な直接的な経費等は国がきちんと措置をするというふうなことでございます。

横山分科員 ありがとうございました。

 それでは、今、ITERの建設地としては、日本では青森県の六ケ所村がその場所になっております。また、茨城も部分的にはそうなんですが、そこへの地元負担をこの開発推進に関して求めていかないという御答弁をいただきました。

 ただ、ITER計画の中では、本来、日本かフランスかと言われていたのが、日本は誘致競争に負けてフランスのカダラッシュの方に建設が決まったんですが、改めまして、大臣、この原因はどこにあったのか、答えにくいかもしれませんが、ちょっとお話を聞かせてください。

伊吹国務大臣 いや、それは先生、そう答えにくいことではないと思うんです。

 当時、中山成彬さんが大臣だったと思いますが、いろいろ話を聞いてみたんですけれども、結局、このプロジェクトに参加しているEU以外の五カ国、EUを含めて六カ国の間で、フランスにするか六ケ所村にするか、三対三に分かれたということは御承知のとおりなんですね。結果的には、日本は、研究拠点は日本に置くということを前提に折り合ったということ。

 折り合わずに最後まで頑張るという手はあったと思うんですが、頑張れば日本はいろいろな面で負担を強いられるということですから、どこかで国家としての意思決定は、負担と誘致の間のバランスをとらないと、これは現実的な解決はできませんから。ありていに言えば、これ以上金を五カ国に取られてまで日本に持ってくるというのは国益に反するという判断をしたんだと思います。

横山分科員 わかりました。

 それでは、次の質問に移らせていただきます。

 今大臣御説明のとおり、ITERの本体はフランスのカダラッシュに建設される。我が国では、六ケ所の方には、その関連施設であるITERの遠隔実験センターあるいは核融合計算機シミュレーションセンターなどが設置されるということになっておりますけれども、この他の設備も含めて、こういう関連施設をつくるということになると、常に、安全性とかいうことが地元では非常に問題になろうかと思います。

 原子力の利用では、「もんじゅ」の問題でも大きな事故を発生した経緯や、あるいは電力会社による数値の操作とか、独立行政法人の検査員による検査漏れ等、施設の安全性が問われているところでもあるわけですけれども、ITERのような核融合施設の安全性について、従来の核分裂反応を用いて発電を行う施設と比べてどういう評価をしているのか、安全規制についてはどういう規制体系になっているのか、特に六ケ所なんかの場合にはそういう心配が要らないのかどうか、お答え願えればと思います。

森口政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、安全性の評価の件でございますけれども、これは冒頭にも御答弁があったと思いますけれども、規制サイドからその安全性についてどう評価しているかということでお答え申し上げたいと思います。

 原子力安全委員会、これが平成十四年の六月に報告書を取りまとめております。「ITERの安全規制のあり方について」というものでございますけれども、その中で、核融合の安全性に関しましては、核分裂のような連鎖反応ではなく、固有の安全性を有する、それから、核分裂生成物のような高放射性物質を生じない、こういうことで、核分裂炉と比べますと異常な事象の事故への進展性は小さい、このようにされているところでございます。

 それから、安全規制でございますけれども、現在、国内の核融合研究施設、幾つもございますけれども、これらについてはすべて、核融合反応を大規模に継続して行う、そういう施設はございません。言ってみれば、放射線発生装置あるいは放射性同位元素を用いる、そういったものがそういう中で幾つかあるということでございまして、現在の規制体系としては、放射線障害防止法、こういう法律がございまして、これによって規制をされてございます。

 御質問のブローダーアプローチ、幅広いアプローチでございますけれども、これは御承知のとおり青森と茨城と二カ所で活動があるわけでございますけれども、これらにつきましても、今申し上げました放射線障害防止法、この範囲の規制で扱われるものの施設が予定されている、そのように考えているところでございます。

横山分科員 わかりました。

 それでは次に、ITERというのは実験炉ですよね、今世紀末にならないとという話もございましたけれども、完成しても発電できるものではありません。このITER計画が成功した後には、今度はその実用化に向けて実証炉、発電炉へと研究開発を進めていくわけですけれども、そのかなり先のことになりますけれども、エネルギー資源の乏しい我が国にあって、これからITER計画が終わった後に、今度は国際協力じゃなくて、こういう世界的なプロジェクトを我が国独自でやっていく、そういう意気込みも必要かなと思うんですけれども、現段階において文科省としてどういうお考えをお持ちなのか、お聞かせ願えればと思います。

藤田政府参考人 御説明申し上げます。

 御指摘のとおり、ITER計画では発電実証は行いませんので、核融合エネルギーを実用化するためには、ITER計画の次の段階といたしまして、核融合によって発電を実証する、原型炉と我々呼んでございますけれども、これを建設、運転して経験を蓄積するということが必要でございます。ただ、先生、原型炉を実現するためには、まずはITERが成功して、さらにITERと同時に核融合の幅広いアプローチの活動をきちっとやっていくということが必要でございますので、まずはこの両事業を着実に進めて成果をきちっと上げていきたいというふうに考えております。

 それから、現時点では、原型炉をどのような枠組みで建設するかということについてはまだ決まっておりませんけれども、幅広いアプローチの活動の中では原型炉の設計研究などを実施することになっておりますので、我が国といたしましては、原型炉の実現に向けて、国際的にもそういう面からは非常に技術的に有利な状況に立てるというふうに考えてございますので、このような優位性を十分に活用しながら、我が国として、原型炉の実現に向け、技術を着実に蓄積してまいりたいというふうに考えているところでございます。

横山分科員 ありがとうございました。

 それでは、次の質問ですが、ITERの計画に関しまして、平成十九年度予算、これは額も昨年度に比べて増額されておりますが、ITER計画のような新規性の高いプロジェクトにおきましては、必ずしも成功が約束されているわけではありません。こういうプロジェクトを財務省はどういうふうに評価しているのか。

 私は、前回の文部科学委員会におきまして安倍政権のイノベーションの取り組みについてお聞きした際、財務省主計局の次長の方に、成功しなかったプロジェクトの予算的な評価は納税者に対して説明責任を果たす必要があると当然の御答弁をいただいたわけですけれども、ITERプロジェクトが失敗した場合、こういうリスクの高いプロジェクトに対する査定について、改めて財務省の方にお尋ねしたいと思います。

真砂政府参考人 今始まったばかりのプロジェクトでございますので、余り失敗の話をさせていただくのは気兼ねしますけれども、御質問でございますので、仮に不幸にして所期の成果が得られないと判断された場合、先日、先生からの御質問で私、納税者に対してしっかり説明責任を果たすということを申し上げたわけでございますが、具体的には、やはり失敗を繰り返さないという意味で、失敗に至った経緯でございますとかあるいはその原因、それから、繰り返さないための将来に向けた課題、対策、こんなものを納税者に執行者からきちっと説明をしていただいて、いわゆるプラン・ドゥー・チェック・アクションでございますが、このサイクルの中で将来の予算編成に生かしていただく必要があるというふうに考えているところでございます。

 いずれにしましても、財政当局としましても、このプロジェクトが人類にとっていい成果が上がるということを大いに期待しているところでございます。

横山分科員 それでは最後に、ただいま、今から失敗のことをという話もございましたけれども、ITERというのは小さな太陽と呼ばれる新しいエネルギー源ですが、実現が困難であるという言われ方もされております。また、この計画の推進をめぐっては、ノーベル賞学者である小柴先生なんかが新聞紙上で、こういうものはつくれないよということを書いてあったのを私は読んだことがございますけれども、こういうものの計画に関しまして、大臣の御決意を最後にお聞かせ願って、私の質問を終わりたいと思います。

伊吹国務大臣 人間の歴史を振り返ると、人類のために役に立っている発明、発見、研究開発というのは、多くの失敗の積み重ねの上に、確率的には極めて低い確率で光り輝いているというのが真実だと思いますね。ですから、要はバランス論で、これは本来、そんなに成功するのなら、もうけ仕事でみんな市場経済の中でやるわけなんですよ。ところが、確率的に極めて低いからというので基幹プロジェクトとして国民の税金でやっているわけですから。

 今主計局が説明したように、国民にやはりそういうことを納得してもらう努力をするということは必要だと思いますけれども、可能性が少ないからやめておくということは、特に、海水の中に無尽蔵と言っていいほど核融合の燃料になる重水素はあるわけですし、環境的にも極めて優しいものですから、大成功したら主計局の担当者は先見の明があったなと言って褒められるし、失敗したら何をやったんだと言われますが。

 研究者は、失敗があるから何をしてもいいという気持ちだけは持たずにやってもらう、そのかわり、こちらも、やはり政治家は、失敗はあるけれども成功した暁には大きな光り輝くものになるんだという気概を失わずに取り組む、そういうことのバランスの上にあるんじゃないでしょうか。

横山分科員 いい話を聞かせていただきまして、ありがとうございました。

 財政の方につきましては地元負担を求めない、安全性を徹底してやっていただくという点は、何とぞよろしくお願いをいたします。

 私の質問を終わりといたします。

萩山主査 これにて横山北斗君の質疑は終了いたしました。

 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)分科員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 最初に、伊吹大臣にお聞きをしておきたい。

 基本的な考え方です。公益法人は、国からの補助金を受給し、税制面でも優遇されております。したがって、運営の上で、不正とかあるいは疑惑とか、そういうものを生じてはならないと思うんです。文科省、文化庁は、所管のもとにある公益法人に仮に問題があれば、それを指摘し是正させる、そういう監督権限というものが当然あると思うんですが、いかがでしょうか。

伊吹国務大臣 先生、これは補助金をもらっているもらっていないにかかわらず、日本の諸法人というのは基本法として民法によって規制されているわけですから、民法によって、主務官庁は法人に対して監督上必要な命令をすることができるということがまずあります。

 その上に立って、公益法人の設立許可及び指導監督基準に基づいて指導監督を行い、職権による検査や監督上必要な命令を発する権限は当然持っておりますから、公益に反すること、失敗をすることについては、先生の御指摘は全くそのとおりだと思います。

佐々木(憲)分科員 そこで、具体的な事例でお聞きをしたいと思います。

 きょう取り上げますのは、日本美術刀剣保存協会でございます。文化庁は、平成十三年八月三十日に、この協会に対して実地検査を行いました。その目的、それからその結果どのような問題が明らかになったか、報告をいただきたいと思います。

高塩政府参考人 財団法人日本美術刀剣保存協会に対しましては、公益法人の指導監督としての定期検査、並びにその直前にございました投書の内容の事実確認のために、平成十三年八月三十日に実地検査を行ったところでございます。

 その実地検査を踏まえまして、協会側と十分な打ち合わせを行った上で、平成十三年十月十六日付で、刀剣及び刀装具の審査については今後、財団の役員、職員並びにその親族は申請できないように改善していただきたいことなどを内容とする通知を行い、指導を行ったところでございます。

佐々木(憲)分科員 その内容が、お配りした資料の右下に一と書いてありますが、こういう形で実地検査の結果に基づいた指導というものが行われたわけです。そこには、今紹介がありましたように、「今後は財団の役員、職員ならびにその親族は申請できないように改善して頂きたい。」と指摘しているわけです。

 なぜ、役員、職員、その親族が申請をしてはならないのか。その理由、確認をしておきたいと思います。

高塩政府参考人 財団法人日本美術刀剣保存協会は、刀剣を審査し、鑑定、指定を行うことをその業務といたしておりまして、協会内に審査会を設けまして審査を行っております。このため、刀剣審査の公正性を担保し、審査に対して疑義を挟まれることのないよう、同財団の役員、職員、その他の親族等が申請できないよう、自主規制による改善を指導したということでございます。

佐々木(憲)分科員 公正性を担保するためということであります。

 それで、この十月十六日付の改善・注意、この指摘に対して、協会側から回答がいつ、どのような形でありましたでしょうか。

高塩政府参考人 私ども文化庁の指導を受けまして、平成十三年十一月七日に、協会の方から、刀剣等の審査に関し、協会の役職員及びその親族並びに刀剣等の審査の審査員が審査を申請できないようにすることなどの改善措置を講じたとの報告を受けたところでございます。

佐々木(憲)分科員 それが、その次のページに資料で配付させていただいております。

 ここでは、今言われましたように、「今後は審査の透明性を確保するうえでご指摘のとおり、役員、職員並びにその親族と審査員を含め、それぞれの立場を考え、内部規律として審査申請が出来ないようにするとともに、チェック機能として審査日前までに申請書の点検を行うことといたしました。」こういうふうに書かれていまして、内部規律「職員については服務心得の一つとして、本人及び親族を含めて厳守するよう徹底する。 2役員については、役員の立場として本人及び親族を含めて厳守するよう徹底する。」こういうふうに書いていますね。「平成十三年十二月一日より実施」と。

 こういう回答が協会側からあって、当然これは改善されていなければならないはずでございます。しかし、実態はどうなのか。その実地検査以降の違反件数、これを報告していただきたいと思います。

高塩政府参考人 平成十三年十一月七日の協会の報告に係ります業務改善措置に反する刀剣等の審査の申請につきましては、去る一月に協会から報告を受けたところでございます。

 その報告によりますと、審査申請者の内訳は、先生御承知のように、刀剣につきましては四段階のものがございますけれども、そのうち、重要刀剣というものにつきましては、理事三名、職員の親族二名により合計で三十九件。さらに、特別重要刀剣につきましては、理事二名、職員の親族二名、審査員二名により合計で二十件でございます。また、これは重要刀剣の前の段階でございますけれども、保存刀剣及び特別保存刀剣につきましては、理事二名、職員親族二名により合計で五百二十七件であるとの報告を受けているところでございます。

佐々木(憲)分科員 これは、問題あり、こう改善しなさいというふうに指導をし、このようにいたしますと回答をしているにもかかわらず、公正性を担保するというところが崩れているわけです。現実にこういうことが実施されていないということになるわけであって、何のための回答だったかということが問われるわけです。

 もうちょっと具体的に聞きますが、現職の理事で違反件数というのはどのぐらいあるんですか。

高塩政府参考人 現職の理事でございましても、理事の就任日以前のものは該当しないということで考えますと、現職の理事に関する審査件数は、重要刀剣、特別重要刀剣で、理事二名につきまして十五件、それから、保存刀剣、特別保存刀剣につきましては、同じく理事二名で十二件というふうに承知しております。

佐々木(憲)分科員 今報告ありましたように、現職の理事もこういうことをやっている。私はこれを聞いてびっくりしたわけですけれども、例えば、刀剣美術という雑誌がありまして、二〇〇五年十一月号で、第五十一回重要刀剣等指定品発表というのが行われておりますが、そこには現職の理事の名前が堂々と掲載されておりまして、森政雄という方なんですが、この人は現職理事ですか。

高塩政府参考人 現職の理事と伺っております。

佐々木(憲)分科員 平成十三年の時点で重大な問題があるということで改善するように指摘をしたはずなのに、このように全く改善されていないんです。

 伊吹大臣、このような実態にあるわけですが、どのようにお感じでしょうか。

伊吹国務大臣 この問題については、何度か国会で御答弁を申し上げておるように、私も先生と同じ感慨というか気持ちを持っております。

 それで、率直に言って、一人の理事が申請をする数にしては多過ぎますよね、ありていに言えば。こんなにたくさんの刀剣を持っておられるかという気もします。ですから、何度も文化庁の方も、審査に対する透明性、公正性を確保することは重要であって、先生が御指摘になったような返答をしておるじゃないかということを言っているわけです。

 それで、先生が御提出いただいた資料の中にも、返答するについて決裁をとっているという、これは証拠のようなものなんだと思いますが、しかし同時に、後にまた資料をちょうだいしている文化庁とのやりとり云々を見ると、これは公式文書じゃないみたいな話にもなっているわけです。ですから、これは、ありていに言うと、当該法人の内部の統治のあり方、それから意思決定の仕組み、こういうところまで大いに疑義があると私は思うんですね。

 ですから、文化庁の担当者には、向こうとよく対話をして、そして、おかしなことがあれば民法の規定を使って改善命令も出さなくちゃいけません。しかし、そこへ行くまでにもう少しよく話し合ってみろということを言っているところです。

佐々木(憲)分科員 この事態、改善されていないだけではなくて、今、伊吹大臣が私の提出資料について御指摘がありましたように、協会執行部の方々が開き直っているわけです、簡単に言いますと。

 例えば、配付した資料の五枚目以降にそれがあるんですけれども、「文化庁とのやりとりについて」という、これは二月二十六日付ですから、つい三日ほど前の文書であります。理事各位、評議員各位というふうにあて先が書かれておりますけれども、この中身を見まして、言いたい放題なんですよ。例えば、三ページのところの上の方に、「理事やその親族の申請を排除したりするのは弊害あって実利なし」と書いてある。排除しなきゃならぬというのが指導であり、また回答であったのに、全くそれに反する、排除してはならないと逆の立場を書いているわけです。改善内容を真っ向から否定するものであります。

 それから、六ページのところを見ていただければ、六ページの上の方に(4)というのがありまして、いろいろなことがその前に書いてありまして、「以上を総合すると、平成十三年十月十六日に文化庁の方から具体的な「改善内容」の文書を一方的に押しつけたのは、鈴木氏個人」これは事務局長だったわけですが、「と文化庁担当者との一種の合意により、刀剣申請を巡る騒ぎを沈静化するといった側面が強くあったもので、その意味では、この文書は文化庁としての監督権行使として出された案ではなく、鈴木氏との間で事態の沈静化に向けて作成された政治的な合意文書にすぎなかった」こういう、まさに独断に基づいた書き方でありまして、本当にこんなことを考えているのかというふうに私は驚くわけであります。

 配付資料の下に三と書いてありますところを見ていただきたいんですか、これは判こは黒塗りにしてありますが、平成十三年十一月七日付で協会から出された報告書、つまり回答。このことについて、そこに、「指摘された改善事項および注意事項について下記のとおり別紙文書(業務の改善措置結果報告について)を以て回答してよろしいか伺います。」と稟議書がつくられているわけですね。稟議書がつけられて、先ほど御紹介のあった回答が文化庁に提出をされたわけですね。

 この稟議書は、伊吹大臣も御指摘がありましたが、会長、専務理事、事務局長、部長というふうに、ずっとすべて回っているわけです、全部判こが押されておりますし。したがって、これは何か個人が勝手に回答をつくったのではなくて、協会としての組織的な検討を経て、その上で回答が行われていたということだと思うんです。この点は、もう一度確認していただきたいと思います。

高塩政府参考人 今御指摘の、平成十三年の日本美術刀剣保存協会、平成十三年十一月七日でございますから、出されました改善報告につきましては、職印が押印されました文書でございまして、当然、私どもとしては、組織として提出されたというふうに考えているところでございます。

佐々木(憲)分科員 手続を踏んで組織的に協会の側も回答し、当然、文化庁の方も個人プレーでやっているわけではもちろんないわけであって、一定の見解に基づいて調査をし、客観的な事実を踏まえて改善の指導をされているわけであります。どうもこの文書は、それを真っ向から否定をするというものになっております。

 そもそも、刀剣審査のあり方がいろいろ不透明だというふうに指摘をされておりまして、本来、きちっとやらなきゃならぬわけでありますが、いろいろな疑惑が指摘されているわけです。

 例えば、現職理事がほかの者の名前で申請しているとか、あるいは、特定の刀剣商などの業者あるいは学芸部幹部と親しい者が審査期間が過ぎてからでも受け付けてもらっているとか、文化庁からいただいた資料を私も見せていただきましたが、重要、特重について受け付け台帳を作成していない、第一段階審査の審査結果の一覧表が作成されていないとか、受け付けの全体を一覧で知ることができないという状態にある。私は、本当にこんなことがあるのかと驚くわけです。

 だから、第一段階の審査について検証することができない、特定の業者、会員により受け付けている状況は不公平である、こういうふうな指摘があるわけです。これは文化庁の資料でも、そういうものは出ているわけですね。

 こういう事実は実際にいろいろな形で発見されていると思いますけれども、実態はいかがなんでしょうか。

高塩政府参考人 今、申請台帳のお話がございましたけれども、私どもも逐次この日本美術刀剣保存協会には指導を行ってまいりましたけれども、そういった事実を知ったのはつい最近でございます。

佐々木(憲)分科員 これは実務的なミスではなくて、本当にずさんなやり方が横行していると言わざるを得ないですね。

 審査規程に照らしても非常に不正常な状態にありまして、審査規程第九条三項というのを見ますと、第一次審査では、審査職員により、それぞれの物件の可否を決定投票し、その集計により過半数の可を得たものが第二次審査に付議される。また第四項では、第一次審査で否となった物件について、第二次審査員から審査の経過及び物件について求めがあった場合、閲覧させることができる、こういうふうに規定されているわけです。しかし、審査結果の一覧表も作成していないわけですから、閲覧のしようがないわけでございます。

 しかも、特定の業者によるもの、あるいは非会員からの申請というのが際立って多いわけです。内規によると、重要とか特別重要というのは会員でないと申請できないというふうに定めがあるらしいですが、それがどうも守られていないということでございます。

 特に、特定の業者と言いましたけれども、真玄堂それから霜剣堂というんですか、この二つの業者が全体の五七%を占めている、これは癒着じゃないかと。つまり、その特定の刀剣商からの申請が際立って目立つわけであります。

 私は、こういう事態はきちっと調査をさらに行って、実態がどうなのかということを単に報告させるだけじゃだめだと思うんですね。直接現地に行き、そして書類も調べ、どうなっているのかということを把握する。対応を考える場合、実態の把握というのは非常に大事だと思うんですが、いかがでしょうか。

高塩政府参考人 この刀剣審査につきましては、財団法人の日本美術刀剣保存協会が独自の考え方に沿って審査を行い、その認定を行うということになっております。そういった認定の方式については私どもは団体の方式を尊重したいというふうに考えておりますけれども、公益法人としてのやはり客観性、透明性ということは求められておりますので、ただいま大臣からもお話がございましたけれども、団体の方と話し合いを行っておりますので、さらに努力をしたいというふうに考えております。

佐々木(憲)分科員 伊吹大臣は、昨年十月二十日の文部科学委員会でも御答弁がありました。「一つしかない機関がインサイダーだとか行為規範というのと同じ疑いを差し挟まれないように厳正に行動していただくという原点が確立されれば一番いいわけですから、その方向で文化庁が努力をすると思います。」と前向きの答弁がなされましたし、先ほどもきちっとしなきゃいかぬという意思表明がございました。

 私は、改善の方向へ向いているのならまだ話し合って何とかという話もわかりますけれども、しかし、改善どころか、指摘されたことに対してそれを否定し、事実もねじ曲げ、そして開き直ってしまう、こういう状況は極めて重大な事態だと思うんです。これは具体的にどのように改善するかが今問われていると思います。話し合いはもちろん大事です。しかし、その話し合いが、今までずっとやってきているわけですから、どうもらちが明かないわけです。もうちょっと踏み込んだ対応策というものが必要ではないかと思うんです。

 その点、具体的にどういうことを考えておられるか、お聞きをしたいと思います。

伊吹国務大臣 佐々木先生、これは先生や御党だけではなく、各党からも同じような指摘をちょうだいいたしております。ですから、国会の場で、もちろん日本共産党を含めて、各党からいろいろな御指摘をちょうだいしているんだということも相手によく伝え、そして、公益法人改革ということが今言われている中で、やはりきちっと国民の信頼を得ていかないと当該団体自体も困るわけですから。

 私の率直な印象を言うと、相手の中が一枚岩じゃなくて、どうも統治の流れがきちっとしていないような印象も受けますので、担当者に粘り強く、国会の御指摘も受けて話をさせて、その上で我が省としての判断はどこかではしないといけない、いつまでもこういうことはほっておけませんから。しばらく、きょうの御指摘もあったよということも伝えて、粘り強く話し合いをさせてみたいと思っております。

佐々木(憲)分科員 きちっとやっていただきたいと思うんですね。私は考えますに、こういう状況になっておりますので、これはやはり責任が問われていると思います、相手側の責任が。

 やはり違反を繰り返しているわけですから、それに対しての一定の処分とか、きちっとなさる必要があると思いますし、例えば審査制度というもの全般についてもう一度見直し、情報公開もきちっと、だれからも疑惑を持たれないような形で公開するとか、あるいは審査基準は果たしてどうなのかということについても検討する、あるいは審査員名簿自身もきちっと提出をさせる、あるいは審査経過の記録の作成、開示、こういうことをやっていれば当然そういうものはそろっていなければ本来おかしなわけであって、そういうこともそろっていないような状況というのは全く不自然な、また公正を欠くやり方だと思っております。

 こういう具体的なことも念頭に置いて、ぜひ前向きに対応していただきたい。最後に、その点についてもう一度確認をしたいと思います。

伊吹国務大臣 先ほど先生の御質問にお答えしたとおりの気持ちで、公益をやはり一番大切に話をさせたいと思っております。

佐々木(憲)分科員 以上で終わります。ありがとうございます。

萩山主査 これにて佐々木憲昭君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして本分科会の審査はすべて終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつを申し上げます。

 分科員各位の御協力を賜りまして、本分科会の議事を無事に終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午前十一時五十九分散会


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