衆議院

メインへスキップ



第1号 平成13年3月1日(木曜日)

会議録本文へ
本分科会は平成十三年二月二十六日(月曜日)委員会において、設置することに決した。

三月一日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      津島 雄二君    葉梨 信行君

      岩國 哲人君    白保 台一君

      谷口 隆義君    達増 拓也君

三月一日

 谷口隆義君が委員長の指名で、主査に選任された。

平成十三年三月一日(木曜日)

    午後一時開議

 出席分科員

   主査 谷口 隆義君

      津島 雄二君    葉梨 信行君

      松島みどり君    岩國 哲人君

      今野  東君    高木 義明君

      手塚 仁雄君    白保 台一君

      福島  豊君    達増 拓也君

   兼務 石井 紘基君 兼務 鈴木 康友君

   兼務 筒井 信隆君 兼務 細野 豪志君

   兼務 山井 和則君 兼務 児玉 健次君

   兼務 瀬古由起子君 兼務 金子 哲夫君

    …………………………………

   厚生労働大臣       坂口  力君

   厚生労働副大臣      増田 敏男君

   厚生労働副大臣      桝屋 敬悟君

   厚生労働大臣政務官    奥山 茂彦君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局国

   際社会協力部長)     高須 幸雄君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  伊藤 雅治君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  篠崎 英夫君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬局長)  宮島  彰君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長

   )            日比  徹君

   政府参考人

   (厚生労働省職業能力開発

   局長)          酒井 英幸君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局

   長)           真野  章君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  堤  修三君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  大塚 義治君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  辻  哲夫君

   政府参考人

   (社会保険庁運営部長)  冨岡  悟君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議

   官)           松野  仁君

   厚生労働委員会専門員   宮武 太郎君

   予算委員会専門員     大西  勉君

    ―――――――――――――

分科員の異動

三月一日

 辞任         補欠選任

  葉梨 信行君     松島みどり君

  岩國 哲人君     高木 義明君

  白保 台一君     福島  豊君

  達増 拓也君     東  祥三君

同日

 辞任         補欠選任

  松島みどり君     葉梨 信行君

  高木 義明君     手塚 仁雄君

  福島  豊君     田端 正広君

  東  祥三君     達増 拓也君

同日

 辞任         補欠選任

  手塚 仁雄君     首藤 信彦君

  田端 正広君     白保 台一君

同日

 辞任         補欠選任

  首藤 信彦君     今野  東君

同日

 辞任         補欠選任

  今野  東君     岩國 哲人君

同日

 第一分科員金子哲夫君、第二分科員筒井信隆君、第三分科員石井紘基君、鈴木康友君、第四分科員児玉健次君、瀬古由起子君、第七分科員細野豪志君及び山井和則君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十三年度一般会計予算

 平成十三年度特別会計予算

 平成十三年度政府関係機関予算

 (厚生労働省所管)




このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

谷口主査 これより予算委員会第五分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることになりました。よろしくお願い申し上げます。

 本分科会は、厚生労働省所管について審査を行うことになっております。

 平成十三年度一般会計予算、平成十三年度特別会計予算及び平成十三年度政府関係機関予算中厚生労働省所管について、政府から説明を聴取いたします。坂口厚生労働大臣。

坂口国務大臣 平成十三年度厚生労働省所管一般会計及び特別会計予算の概要について御説明を申し上げます。

 平成十三年度厚生労働省所管一般会計予算の総額は十八兆四百二十一億円であり、平成十二年度当初予算額と比較いたしますと七千七百七十六億円、四・五%の増加となっております。これは国の一般歳出の三七%を占めております。

 平成十三年度厚生労働省予算につきましては、地域の子育て支援機能の強化を初め、厚生行政と労働行政の施策の融合化を推進するとともに、メディカル・フロンティア戦略、IT化のための職業能力開発など、当面の施策課題に対応するという考え方のもとに編成したところであります。

 以下、その主要施策について御説明申し上げます。

 第一に、豊かで活力ある長寿社会に向け、働き盛りの国民の二大死因であるがん及び心筋梗塞、要介護状態の大きな原因である脳卒中、痴呆及び骨折について、地域医療との連携を重視しつつ、先端的科学の研究を重点的に振興するとともに、その成果を活用し、予防と治療成績を向上させるため、メディカル・フロンティア戦略を総合的に推進してまいります。

 第二に、医療に対する安心、信頼の確保のため、医療安全対策を総合的に推進するとともに、医療提供体制の整備に取り組んでまいります。また、国民が健康に生活できる社会を目指すための取り組みを推進してまいります。

 第三に、現下の雇用失業情勢の改善を図り、経済産業構造の転換の中で中長期的に雇用の安定を図るため、円滑な労働移動を支援するとともに、中小企業や新規・成長分野における新たな雇用機会の創出とミスマッチの解消に向けた雇用対策を積極的に推進してまいります。

 第四に、技術革新の急激な進展や産業構造の変化等に伴う労働移動の増大に対応するため、個人ごとのキャリア形成を支援するシステムを整備し、労働者の自発的な職業能力開発を促進するとともに、労働者のIT化対応を目指した総合的な職業能力開発施策を推進してまいります。

 第五に、安心して子供を産み育て、意欲を持って働くことのできる社会の実現に向けて、新エンゼルプランの着実な実施など子育て支援策を総合的に講じるとともに、家庭と仕事の両立を支援する施策を推進してまいります。また、職場における男女の均等な機会及び待遇の確保対策、児童虐待防止対策などを推進してまいります。

 第六に、本格的な高齢社会の到来を目前に控え、高齢者の知識経験を生かした雇用就業機会を確保するとともに、高齢者の社会参加の促進を図るなど、活力ある高齢社会の実現に向けた総合的な施策を推進してまいります。

 国民年金等については、現下の社会経済情勢を考慮し、平成十三年度の年金額を下げないための措置を講ずることとしております。

 第七に、介護保険制度を着実に実施していくとともに、介護サービス基盤の整備や介護予防等の関連施策を推進してまいります。

 第八に、健康で安心して快適に暮らせる生活環境を実現するため、医薬品、食品等の安全性の確保、シックハウス対策等を推進してまいります。

 第九に、働き方が複雑化する中で、簡易迅速な個別的労使紛争処理システムの整備など、安心して働ける条件整備を図るとともに、長期休暇制度の早期導入への取り組みなど、労働条件の確保改善対策を推進してまいります。

 第十に、障害者の自立と社会参加を促進するため、障害者プランの着実な推進など、障害者の保健福祉施策及び雇用就業施策を充実してまいります。また、良質な福祉サービスを提供できる人材の養成確保を図るなど、社会福祉の基盤の整備を行うとともに、地域福祉の推進に取り組んでまいります。

 以上のほか、世界保健機関や国際労働機関等の国際活動の支援や外国人労働者問題、生活衛生関係営業の振興、戦傷病者、戦没者遺族や中国残留邦人などの援護対策、原爆被爆者対策など、諸施策を推進してまいります。

 なお、委員各位のお手元に資料が配付されておりますが、一般会計及び特別会計予算の主要経費別概要につきましては、お許しを得て、説明を省略させていただきます。

 今後とも、国民生活の保障、向上と雇用の安定を図るため、厚生労働行政の進展に一層努力してまいりたいと考えておりますので、皆様のなお一層の御理解と御協力をお願い申し上げます。

 ありがとうございました。

谷口主査 この際、お諮りいたします。

 厚生労働省所管予算の主要経費別概要につきましては、その説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

谷口主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

谷口主査 以上をもちまして説明は終わりました。

    ―――――――――――――

谷口主査 この際、分科員各位に申し上げます。

 質疑時間はこれを厳守せられ、議事の進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。

 なお、政府当局に申し上げます。

 質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高木義明君。

高木(義)分科員 民主党の高木義明でございます。

 きょうは、この分科会におきまして、初代の厚生労働大臣に就任をされました坂口大臣に、長崎の原爆被爆地域の問題についてお尋ねをしてまいりたいと思います。これまでの御活躍に心から敬意を表しながら、以下お尋ねを申し上げます。

 私の手元に、「聞いて下さい!私たちの心のいたで 長崎原子爆弾被爆未指定地域証言調査報告書」こういうものがございます。この中の内容にも盛られておりますけれども、この被爆地域の拡大、是正の問題については、既に戦後五十五年余り、今なお残る、長崎県そして長崎市、香焼町、伊王島町、時津町、琴海町、多良見町、飯盛町、それぞれの地域社会の抱える課題でもございます。

 過去の被爆地域が行政区単位で指定されたことは、既に大臣も、この地図がありまして、何度もお目通しのことだろうと思っております。その後も、例えば救援活動などで爆心地に入ったり、被爆者の看護や世話をしておられた方々から、地域の是正、また、黒い雨などの当初予想しておった以上に大きかった原爆の影響に対処するために、二度の被爆地域の調整もこれまた行政区単位で行われた経過がございます。

 昭和五十五年の十二月十一日、原爆被爆者基本問題懇談会の報告書により、いわゆる基本懇ですね、これから以降の被爆地域の拡大は科学的、合理的根拠に基づくものとされました。自来、ずっと今日まで、この問題が一歩の前進もしておりません。ただ、最近になりまして、やや光が見えたかなという感じがしてまいりました。

 この行政区単位で行われました線引きに外れた区域、現に今なお原爆の影響と思われる身体の不調を訴え、また将来への不安を募らせる人々がこの未指定地域の中に多く残されております。

 長崎市を中心とし、今申し上げました隣接する町また県が協力をして、被爆体験をした方々から被爆時の状況や今日までの生活、健康状態などの生きた証言を取りまとめ、昨年の七月厚生省に提出したものが、いわゆる被爆地域の是正、拡大、いわゆる健康診断特例地域にしてほしいという要請でございます。

 この証言集の中には非常に生々しいものがございます。閃光を浴び、皮膚がはげ落ちた、爆風で吹き飛ばされた、死んだ方を海岸で焼いたなどなど、被爆時の状況が記されておるのでございます。

 そこで、今回大臣にお伺いしたいのは、この証言調査報告書の印象並びに今申し上げましたことについての御認識をこの際お伺いをしておきたいと思います。

坂口国務大臣 昨年でございましたか、あるいはもう一昨年になるかもしれませんが、時計が表紙にありますその小冊子を拝見させていただきました。長崎にお邪魔をいたしますごとに何回もその小冊子をちょうだいをいたしまして、中身も、全部読ませていただいたわけではございませんが、いろいろの御証言を拝見させていただいたところでございます。

 健康に対する不安とともに、いわゆるPTSD、心的外傷後ストレス障害などのこれまで取り上げられなかった要素についても指摘をされておりまして、大変貴重な資料であるというふうに思っております。

 また、この報告書には、原爆投下後五十年以上経過した今日におきましても、住民の方々の体験、記憶が生々しく記録されておりまして、改めて当時の状況というものに思いをいたしたところでございます。

 いずれにいたしましても、この証言調査の対象地域が被爆地域に該当するか否かについてのことを決定しなければならないわけでございまして、現在、専門家の皆さん方によりますところの検討会を続けていただいているところでございます。その検討会におきます回数も重なってきておりまして、間もなくその結論が出されるのではないかというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、こうした専門家による検討会でございますから、先ほど御指摘になりましたような科学的な整合性というものもやはり必要でございますので、この皆さん方の御意見というものを十分に踏まえながら決定されるということになるだろうというふうに思っております。

 しかし、心情的に、地元の皆さん方が本当にその当時のことを思い、そして今なお苦しみが続いているということをお述べになっているそのことに対しましては、理解ができるところでございます。ひとつ、そうしたことで今後の推移を見守りたいと思っております。

    〔主査退席、津島主査代理着席〕

高木(義)分科員 ただいま検討委員会が開催をされておりますことにつきましては、私は評価をしたいと思っております。したがって、内容については、今私がここでどうのこうのということを申し上げる気持ちは全くございません。

 この証言調査報告書の中身、そして要望書には、いわゆる被爆地域図というのがここに寄せられております。長崎に投下された原爆は、御承知のとおり、地上五百メートルで爆発をした、このようなことでございます。長崎には少なくともこれ以上高い遮へい物となる山はございません。長崎に投下された原爆はプルトニウム型原爆でございまして、その爆発したプルトニウムの約一〇%がいわゆる爆発、そして、しかしそれは広島とほぼ同規模の破壊力を持っておったと言われております。残りの九〇%が原子雲の中に散らばってほこりとして降下をした。証言の中にも、どの家の屋根にもほこりが積もっておったと言われております。

 過去のプルトニウム調査では、五十キロ先の有明海まで放射性降下物があったことが確認をされており、少なくとも爆心地から半径十二キロは同心円でございまして、閃光、爆風、放射性降下物が広がったものと私は考えております。

 当時の証言の中にも、風向きは東向きだったということからも、私は、今のこの行政区単位の線引きというのは、合理性から見ると不合理ではないか、このように思うわけでありますが、この合理性という観点に立って見たときの大臣の御所見をお聞きしておきたいと思います。

桝屋副大臣 私の方から暫時お答えをしたいと思います。

 今委員からお尋ねの話でございます。行政区を基本として南北に長い今の指定をされている現状でありますが、私も、大臣と同じく何度もこのお話を聞かせていただいて、私自身も悩んでまいりました。

 これは、今委員からもお話がありましたように、昭和三十二年の原爆医療法制定時には、原爆放射線の広がりやその人体影響に対する科学的な知見というものが蓄積をされていなかったということもあって、結果的に行政区単位で、こういうふうになってきたということでありまして、それが合理性がないのではないかという御指摘であります。私も何度も聞かせていただきました。

 そうしたことを受けて、五十五年の原爆被爆者対策基本問題懇談会、基本懇、基本懇と言われている、委員も何度もお話を聞かれていると思いますが、私も悩みながら、この基本懇、改めて確認をいたしました。

 この中で、今のような状況を踏まえながら、確かに、爆心地からの距離が比較的遠い場合であっても指定を受けている地域があるというような事実も認めた上で、「科学的・合理的な根拠に基づくことなく、ただこれまでの被爆地域との均衡を保つためという理由で被爆地域を拡大することは、関係者の間に新たに不公平感を生み出す原因となり、ただ徒らに地域の拡大を続ける結果を招来するおそれがある。」こうされたわけであります。今大臣も申し上げましたけれども、「被爆地域の指定は、科学的・合理的な根拠のある場合に限定して行うべきである。」この基本懇の結論が出たわけであります。

 この考え方は、委員も御承知のとおり、現行の被爆者援護法制定時にも、あるいはまたそのときに衆議院の厚生委員会の附帯決議にも明記をされているところであります。

 今回長崎市が中心になってまとめられました今委員がお示しの証言調査報告書、これにつきましては、大臣が今申し上げましたとおり、科学的、合理的な根拠に当たるか否かにつきまして、ただいま検討会で検討されているということでございます。

高木(義)分科員 さて、私はここで、心的外傷後ストレス障害、いわゆるPTSDについて一言触れたいと思います。

 私は、昨年の七月に東京で行われました長崎原爆被爆シンポジウムに参加をする機会がございました。

 その席で、これは長崎大学の医学部の中根教授がお話をされた中で、「原爆被爆者をめぐる精神医学的問題」と題しまして、

  広島・長崎に相次いで投下された原子爆弾は、両市の建造物や社会的共同体機能を一瞬にして破壊し、多くの被爆者は肉親や親しい人を失い、自らも身体的に大きく傷ついた。被爆当時、児童思春期・青年期にあった彼らの中には、そうした根元的な破壊と喪失体験から、それまでに獲得した自己同一性を喪失した人も多かった。

  今や原爆投下から半世紀以上を過ぎ、被爆者は平均年齢も六十歳を越え、身体的にも社会的にも大きな変化を迎え、原爆被爆を心的外傷体験とした人も、今一度自己同一性や人生の意義を確認する時期に至った。更には、老化による身体的変調や、子供の自立など家族成員の変化、退職など社会的役割の変化による新たな喪失体験も加わり、再び大きなストレス因に暴露されつつあり、メンタルヘルス・ケアのニーズは高まってきている。

このようなことを言われておりました。

 そして、

  悪性腫瘍や白血病など原爆が直接身体に及ぼす影響については、これまで多くの調査・研究がなされ、それに基づく医療福祉サービスが充実されてきたのに対して、原爆の精神的・心理的側面への影響についての調査は極めて少なく、結果的に原爆被爆者のメンタルヘルス・サービスの具体的方策も定まらなかった。

こういうふうに記載をいたしております。

 最近におきましても、阪神・淡路大震災後の兵庫県の健康課での仮設住宅に住む方々への調査、あるいはまた地下鉄サリン事件の被害者のPTSDの労災認定、こういったことが出されておりますが、医学博士の厚生大臣に釈迦に説法とは思いますけれども、この心的外傷後ストレス障害、PTSDについての御認識をお伺いしておきたいと思います。

桝屋副大臣 大臣はドクターでありまして十分理解をしていると思いますが、むしろ私の方が今の委員の御指摘を受けながら勉強しなきゃならぬわけでありまして、PTSD、心的外傷後ストレス症候群、これはフラッシュバックあるいは睡眠の障害など深刻な苦痛を伴う疾患である、このような方々に対する適切なケアは重要な課題であるというふうに認識をいたしております。

 今委員御指摘のありました阪神・淡路大震災、これを契機といたしまして、心のケアにかかわる医師あるいは保健婦等に対する研修、PTSDについての研究を進めてきているところでありますが、今後とも、委員の御指摘も踏まえて、さらにその充実に努めてまいりたい、このように考えております。

高木(義)分科員 今、御承知のとおり、被爆者の平均年齢は高齢化をしておると言われております。男性が六十六・四歳、女性が七十・三歳、あわせた平均年齢が六十八・八歳。六十歳以上が七九・六%、その中で六十五歳から七十四歳が三八・三%で最も多い。これは平成十二年三月三十一日現在でございます。被爆未指定地域の対象者も、ほぼ同じ傾向だと言われております。

 被爆者の数につきましては、昭和五十三年度がピークで十一万七百十六人、平成十一年度末が七万八千八百二十人に減少しております。特に近年の減少の度合いが多い、こういうことであります。

 対策が講じられていない未指定地域の該当者は、昭和四十九年、県と市が実施した健康診断からわかった数が二万五百八十六人でありましたが、平成十二年一月の調査では八千七百人と被爆者を上回る勢いで減少しておる、このようなことにもなっております。

 被爆者対策は今後予算的に拡大するものでは決してない、このようなことが言えると思います。委員長席にお座りの津島前厚生大臣からは昨年の八月に、被爆未指定地域の住民代表との対話の中で、二十世紀最大の悲劇を二十一世紀に残したくないという考え方は共有しておる、そういう非常に積極的な御発言がございました。

 この点について、被爆者の現状と、この未指定地域の問題についての御認識を賜っておきたいと思います。

坂口国務大臣 先ほどのPTSDにも一言触れたいと思いますが、やはり強烈な心的障害をそのときにお受けになっているのであろうというふうに思います。そのことは生涯やはり続いているものと思いますし、ただそのときに障害を受けたということだけではなくて、そのことによって全体にゆがめられたものも存在するのであろうというふうに思います。

 そうしたところを中心にして現在調査が進んでいるわけでございますし、いわゆる原爆を受けなかった皆さん方との対照と申しますかコントロールと申しますか、その方々との比較というものも今進められているとお聞きをしているわけでございます。私は必ずや、原爆をお受けになった皆さん方の心の中に残ったもの、心をゆがめてきたもの、そのものは今も大きく生き続けているのではないかと信じております一人でございます。

 さて、非常に年齢が進んでまいりまして、もう五十五年、五十六年でございますか、迎えようとしているわけでございますから、平均年齢がもう六十八歳あるいは六十九歳近くになってきているということでございますし、いずれにいたしましても、皆さん方に対する、原爆の被害を受けられた方であるかどうかということに対する結論というのはやはり早く出さなければならない問題であるという問題意識、それは先生と同じ問題意識を持っているというふうに思っていただいて差し支えないと思います。

高木(義)分科員 そこで、今、長崎の被爆地域是正を再検討するために設けられております森亘先生、日本医学会会長を座長とするこの検討会は、去る二月十五日、二回目の会合で、検討会のもとに設けられました研究班によって、証言者らを対象にした面接調査を三月中に実施することが決まっております。

 今後の検討会の進め方について、この際お考えをお聞きしておきたいと思います。

篠崎政府参考人 先生今御指摘のとおり、先月の二月十五日に開催されました第二回の検討会におきまして、この三月中旬に実施を予定しております研究班による現地調査計画の概要が了承されたところでございます。

 今後のことでございますが、ただいまは現地調査についての日程調整をしておるところでございまして、この現地調査を地元の方々の御協力を得て早急に実施をいたしまして、調査結果及び分析結果を踏まえた検討会としての御見解をなるべく早く、早期におまとめいただきたいと考えているところでございます。

高木(義)分科員 二月十五日の検討会を傍聴した伊藤長崎市長は、心のケアに関する学術的調査という国際的にも確立されていない分野への挑戦であり、長崎市としても全面的に協力したい、このように言っておられます。

 調査班の中には地元の関係者も含まれておりますが、長年この問題に取り組んでこられた地元の関係者あるいは諸団体、専門家などの意見を聞く場を設けていくべきだと私は思っておりますが、この点についての御対応についてお伺いしておきたい。

桝屋副大臣 今お話のありましたことでございますが、検討会におきましては、心理学的影響に関する面談調査及び健康状態、世帯の状況等に関する調査の結果などを科学的に評価していただくことが基本であるというふうに考えております。

 今、局長の方からもお話がありましたように、さまざまに現場の方、専門家の方とも御相談をしながら、研究班の現地調査、この計画を今検討している最中であります。今月実施予定の現地調査につきましては、結論を急ぐということもありまして、時間的な制約もあるということでございまして、広く関係者から意見を聞くことはなかなか難しいのではないかというふうに考えておりますけれども、今の委員の御指摘も踏まえまして、今後の検討会の中でそのような機会が設けられるかどうかについても御相談をしながら対応を進めてまいりたいと思います。

高木(義)分科員 ぜひ検討をいただきまして、私の申し上げた要請におこたえいただけますように、強く要望しておきたいと思います。

 そこで、大臣、この問題はもう最後にいたしますが、これまでの経過、そして今行われておる検討会、最終結論の時期を大体いつごろと考えておられるのか、この点についてぜひ前向きなお答えをお聞きしたいと思っております。

桝屋副大臣 大臣もお答えをするお気持ちかもしれませんが、結論を出すには、今申し上げましたように、科学的な観点から精査、研究をする、そのための十分な期間が必要だというふうにも思っております。

 ただ、先ほど話が出ました二月十五日の第二回の検討会でも、さらに本格的な調査の実施を求める、こういう声もあったわけであります。しかしながら、委員御指摘のように、できるだけ早期に結論をまとめていただくように大臣の方からも各委員にお願いをいたしておりまして、厚生労働省としてもそのために努力をしていきたいと考えているところでございます。

坂口国務大臣 津島前大臣から引き継ぎを受けましたときにも、できるだけ早くこの結論を出したいのだというお話がございました。そして、その当時には、大体ことしの中ごろには結論を出すようにお願いをしているのだというような話もあったわけでございます。

 若干この委員会が延びましたりいたしておりますが、そうしたことも、初めの予定も含めまして、できるだけ早く結論を出していただくように私からもお願いを申し上げているところでございます。

高木(義)分科員 ぜひことしの原爆慰霊祭、原爆の日に間に合うように、私は強く要請をしておきたいと思います。

 時間もございませんのであと一つ、被爆者の認定審査の現状についてちょっとお尋ねをいたしておきます。

 昨年の七月十八日に、長崎に投下された原爆で被爆をいたしまして右半身麻痺となった松谷英子さんが、国を相手取り原爆医療法に基づく原爆認定申請却下処分の取り消しを求めたいわゆる長崎原爆松谷訴訟が、最高裁で結審したのでございます。

 その判決の内容は、詳しくは申し上げませんけれども、今までの基準値について未解明な部分を含むものがあるのではないかということであろうかと思っております。松谷さんの障害の程度などから放射線に原因があるとの認定を導くこともできる、経験則上許されないとまでは断ずることはできないと結論づけておられます。

 そういうものがあってか、今、認定作業が昨年の八月から休止状態になっておると聞き及んでおります。その未処理の数約三百件、こういうふうなことが報道にも出ております。申請者は日一日待っておりますことを考えますと、早い処理が、審査を進めていくべきだと思っておりますが、この件についてその御対応をお聞きしたい。

篠崎政府参考人 今の御指摘でございますが、私どもといたしましては、松谷判決とは直接関係はございませんで、事務処理のおくれでこうなっておるというふうに思っております。

 ちょっと詳しく申し上げさせていただきますと、昨年の六月の審議会開催分三十八件につきましては、ことし二月十九日付で通知をいたしました。また、九月、十二月の開催分につきましては、これは全体で百四十二件の答申を受けたものでございますが、二月二十三日付で結果を通知したところでございます。

 なお、三月にもこの審査会、今は原爆の被害者医療分科会と申しますが、この分科会を開催もしていただきまして、今後とも可能な限り早急に所要の手続を進めてまいりたいと考えております。

高木(義)分科員 時間が来ましたのでこれで終わりますが、最後に一言。

 大臣、新聞報道によりますと、広島、長崎両市に建設予定の国立原爆死没者追悼平和祈念館に収蔵するために、厚生労働省として三月から大規模な原爆被爆者の遺影収集に乗り出す、こういう報道もされております。遺影とあわせて祈念館の柱となるのが被爆体験記のデータベース化、こういうことにもなっております。

 どうぞ、このような大変結構なことをされるということでございますので、同時に、私が先ほど申し上げていた課題につきましても、ぜひそのときにあわせて御回答が出るように私は強く希望しておきたいと思います。

 これで終わります。ありがとうございました。

津島主査代理 これにて高木君の質疑は終了いたしました。

 次に、山井和則君。

山井分科員 よろしくお願いいたします。

 本日は、まず最初に、このたび、医師であり、本当に弱者の問題、福祉の問題に今までから力を入れておられます公明党の坂口先生が大臣に就任されましたこと、心よりお喜び申し上げます。

 また、私も、福祉の問題に人生をかけて、この国会に初めて昨年の六月に来させていただきました。その意味で、今回は昨年の末に発覚いたしました埼玉県の朝倉病院という精神病院の問題、この問題に絞って三十分間御質問をさせていただきたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。

 まず、今お手元に資料をお配りさせていただきました。ちょっと見ていただければと思います。お手元に行く前にパネルでお示ししたいんですが、まず何が問題かということを少し、資料を含めてお話ししたいと思います。

 まず、精神保健指定医が不在のままで、この写真、このパネルにありますように、身体拘束、患者さんの腕、足、胴体を縛るという行為が行われておりました。これは、精神保健指定医の診察なくしてやることは違法行為であります。

 そして、二番目になりますが、同じく身体拘束の写真になりますが、このように犬のように縛られてしまっている。御想像にかたくないと思いますが、このようなことをされますと、当然、ショックで落ち込み、嘆き悲しみ、元気になる人がいるはずありません。そして、死期が早まるということも容易に想像できると思います。このようなことが朝倉病院で行われていたわけであります。このような違法な身体拘束。

 それともう一つは、IVH、中心静脈栄養という問題であります。口から食べられる、ある意味で中心静脈栄養が必要でない患者さんに対しても、こういう行為が行われている。報道によりますと、口から食べておられた患者さんが、このような不必要なIVHを過度に行ったせいによって、二カ月で亡くなってしまわれたという例も報道されております。二百人の精神病院の七、八割が痴呆症の高齢者、そこもそもそもおかしいわけであります。

 朝倉病院の、人権侵害のような、このような疑いの問題につきまして、どのように大臣は認識しておられるのか、まず御見解をお伺いしたいと思います。

坂口国務大臣 この朝倉病院の件につきましては、今パネルで御指摘になりましたように、違法な身体の拘束、それからIVHのお話もございましたが、いわゆる診療報酬の不正請求の疑い、こうしたものがありまして、大変遺憾だというふうに思っているわけでございます。

 私も、医療現場に何度か、何度かと申しますよりも何年もと申し上げた方がいいかもしれませんが、携わってまいりました者といたしまして、やはり、医の倫理として避けなければならない問題がある。どういう状況であろうと、しかし避けなければならない問題がある。その辺の、やはり一番根底になりますところを忘れているのではないか、そういう思いをいたしております。

 昨年、埼玉県や厚生省、現在の厚生労働省でございますが、の関係部局におきまして、医療保険でありますとかあるいは医療法、生活保護、精神保健の各法の観点から立入検査等も行ったところでございまして、精神保健福祉法による改善命令を出したところでもございますが、こういったことが全国で起こらないように、そして、また再びこうしたことがこの地域で起こらないように私たちはしていかなければならないというので、全国的にも、精神病院に対しまして、こうしたことのないように通達を出したところでございます。

山井分科員 この問題に対しまして、私たち民主党は、昨年末に朝倉病院問題調査チームをつくりまして、十二月二十五日の日に埼玉県にヒアリングに行き、また立入調査を十二月二十五日にいたしました。

 この問題に対しては、一般のほかの精神病院からも、このような事件が起こると非常に困る、誠心誠意良心的にやっている精神病院も同じように思われると。私の知り合いの精神病院に勤めておられる看護婦さんからも、必死で患者さんのために働いているのに、またこのような事件が起こると、悪いことをしているんじゃないかという白い目で見られる、許しがたいということをおっしゃっておられました。ですから、私は、そのような良心的な精神病院の関係者の名誉を回復するためにも、このような問題に取り組ませてもらいたいと思っております。

 今、不正請求の問題などの認識をお答えになりましたが、私は、このケース、常に二十人ぐらいがIVHをされていて、年間二百人中七十人ぐらいが亡くなっておられる、非常に高い確率で亡くなっておられる。口から食べられる患者さんへのIVH、もはや不必要なIVHというのは、医療行為ではなくて傷害罪ではないか。指定医不在の中で安易に、このパネルにもありますように、七点抑制して動けないようにする、これは医療行為ではなくて逮捕監禁罪に当たるのではないか。

 このような犯罪性に関してどのように認識されておられますでしょうか。単なる不正請求の問題じゃないと思うのです。

坂口国務大臣 確かに、今御指摘になりましたように、その病院の取り扱いというものが非常に行き過ぎてまいりますと、それは正常な医療範囲の枠を超えまして、そしてそれは違法性が問われることになるだろうというふうに思います。

 今見せていただきましたパネル等を拝見いたしまして、これは、どれだけそれが続いているのか、毎日毎日そういうことがあるのか、そうしたことを私は存じませんけれども、そうしたことが日常茶飯事として行われているとすれば、それは医療というものの基本を踏み外しているのではないか、そんな認識を持っております。

山井分科員 まさに日常茶飯事行われていたからこそ、思い余った職員さんが内部告発をされたわけなんですね。

 その中で、最も関係の方が心配されているのが、この問題が氷山の一角なのか、あるいは例外的なことなのかということだと思います。関係者によると、各都道府県にこういう病院は一つや二つある。どこでも受け入れてくれない生活保護の痴呆性高齢者などが入院する病院では、非常に質が低下しているというような指摘もあるわけです。

 そこで、お伺いしたいと思います。このような朝倉病院のようなケースは氷山の一角なのか、それとも例外的なケースなのか、お答えください。

桝屋副大臣 朝倉病院のような違法な行為をしているこうした医療機関でありますが、今委員からもお話がありました、ほかの病院も医療機関も大変に心痛めているという話もありましたけれども、やはり、こうした事例、全国で千六百以上の医療機関の中で、私はごく一部の事例ではないかというふうに思っているわけであります。

 精神病院につきましては、精神保健福祉行政において定期的な現地指導を実施しているほか、医療監視あるいは医療保険についての指導も行って、適正な医療の確保に努めているところであります。仮にほかにこうした病院があるということであれば、違法な行為が行われているという信頼できる情報があれば、それは必要な調査を行った上で関係法律に基づいて厳正に対処をしていきたい、このように考えておるところであります。

山井分科員 そのような意味では、今の答弁では例外的なところだということなんですが、このような悪質なケースに関しては、今調査中と聞いているんですが、今後どのような処分が考えられますでしょうか。

桝屋副大臣 先ほどからお話がありますように、地元の県とも今十分協議をしておるところでありますが、検査及び監査で確認をされた事実関係を今改めて精査をいたしております。現段階では、措置を行う時期を含めて、どのような措置を講じるかについてはお答えできる状況にないことをぜひとも御理解をいただきたいと思います。

 一般論として申し上げれば、精神保健福祉法上の措置として、医療機関に対する改善命令あるいは入院医療の提供の制限命令でありましたり、生活保護法上の措置として、都道府県知事による指定医療機関の取り消し処分でありますとか、あるいは健康保険法上の措置としては、地方社会保険事務局長によります保険医療機関の指定の取り消し、あるいは保険医の登録の取り消しということも考えられるわけでありますけれども、今申し上げましたように、法律に基づきまして、埼玉県とともに厳正に対処してまいりたい、このように考えているところであります。

山井分科員 今、保険医の取り消しや保険医療機関の取り消しということにもお触れになりましたけれども、どのような場合そういうことになりますでしょうか、そこまでいく場合は。

桝屋副大臣 今一等最初に申し上げましたように、個別の内容については、今までの現地調査あるいは監査等の内容を今精査しているところでありますが、個別の問題で取り消しというお尋ねがありましたけれども、なかなか簡単にお答えはできないわけであります。違法請求とか、そうした明らかに法律に違反をするというようなことであれば、そこまでの処置も必要かなと思っておりますが、ただいま内容を精査させていただいております。

山井分科員 先ほど、ほかの病院ではこのようなことは行われていないと信じるということなんですけれども、なぜそう信じられるのでしょうか。

 といいますのは、この朝倉病院でも監査などでひっかかったわけではないんですね。毎年の監査は通っているわけです。内部からの告発があって問題が発覚しているわけです。そういう意味では、この監査そのものが機能していないのではないでしょうか。少なくとも、このような行き過ぎた違法性の高い医療行為が行われていながらもこのような病院が監査をクリアしているとしたら、監査が機能していないというふうに私は思います。

 その意味では、再発防止のために、今後どのようにこの医療監視、実地指導をやっていかれるか、お答えください。

桝屋副大臣 監査が全く機能していないというお話もあったわけでありますけれども、事朝倉病院につきましては、マスコミで報道されます前に実はこうした問題も把握をしておりまして、埼玉県とも連携をしながら現地指導をずっと重ねてきた、こういう経緯もあるわけでありまして、その点も御理解いただきたいと思いますが、再発防止のためにどのような対応を行うかという委員のお尋ねであります。

 今回の事件を受けまして、都道府県、指定都市に対しましては、先ほど大臣からもお話を申し上げましたけれども、全国会議等の機会におきまして、改めて精神病院に対する指導監督の徹底を求めたところであります。

 また、精神病院に入院している患者については生活保護受給者が多いということもあるわけでありまして、福祉事務所のケースワーカーが積極的に患者にかかわる、いわゆるケース処遇上の実調といいますか、実態調査、病状調査、こうしたことを積極的にやっていただくということが極めて重要だというふうに認識をしております。

 今後さらに生活保護の患者につきまして適切な処遇の確保が図られますよう、近く開催をする全国会議においても、定期的な病院訪問による患者の実態把握の徹底及び問題が生じた場合の関係機関との連携について、各都道府県、市に周知をしてまいりたい、このように考えているところであります。

山井分科員 それでは私は再発防止になっていないような気がすると思います。

 例えば、この病院だけではなくて、報道によりますと最近大阪の精神病院でも、患者虐待、真冬にホースで水をかける暴行、あるいは数日後にはごみ箱で頭を殴られたり、あるいは院内のロビーで職員にゴルフクラブで患者が殴られて出血した。このような問題に関しても、これは行政の監査でかかってきたのではなくて、患者さんの御家族や人権センターの告発で初めて動き出しているわけですね。

 繰り返しになりますけれども、これでは何のために監査が入っているのか、本当に劣悪なケースというのが摘発できていないというふうに思います。

 あるいは、私は非常にショックを受けましたのは、御存じのように、この朝倉病院、昔は南埼病院といいましたが、今回が初めてじゃないんです。

 例えば、昭和四十一年、四十四年の記事で、薬代を水増し、医療費詐欺にもメス、不詳事件。昭和四十一年十二月一日。救いなき南埼病院、院長ら七人起訴、患者も参る過剰投薬。そして、このように議会や国会で取り上げられている。これで三度目の不祥事、ビールビンで刺す。朝倉病院事件を追及、国会でも。ということで、昭和四十一年や、その前後に報道されています。

 つまり、私、昭和三十七年生まれですから、私が四歳とか七歳のとき、三十年以上前に問題になって、それから三年じゃないですよ、三十年たったのに同じことが起こっている。それを行政がチェックできたのではなくて、内部告発で出てきた。

 具体的に言いますと、医療監視の問題なども、行って書類を見て設備や職員の方だけをチェックするだけではなく、具体的に言うと二点。やはり定期的に抜き打ちで行かないとだめなんじゃないでしょうか。それとともに、書類を見るだけじゃなくて、抜き打ちに定期的に行って、かつ病棟をしっかり見る。そういうことをやっていかないと再発防止にはならないと思います。

 御見解をお聞かせ願いたいと思います。

坂口国務大臣 そこは御指摘のとおりというふうに思います。

 各都道府県におきまして、その病院、これは精神病院だけじゃございません、たくさんの病院があるわけですから、その監査というのも定期的にやっているわけでございますが、とりわけ非常に問題が多いと思われるようなところにつきましては、やはり注意をほかの病院よりもしっかりとしていかなきゃならないことも事実でございますし、そして、そうしたところの監査というのはやはり抜き打ち的にやるといったようなことも含めてやっていかないと、やはり効果が上がらない。

 やはり、前もって言っておかなければいろいろのデータが整わないというようなこともある場面もあると思いますから、全部が全部抜き打ちでいいかといえば、それはそうでないところもあるだろうというふうに思います。しかし、そうしたことが疑われるようなところにつきましては、抜き打ちにやるといったようなことをやはり織りまぜてやっていかないことには効果が上がってこないというのは御指摘のとおりだというふうに思っております。

 したがいまして、そうしたことにつきましても今後さらに、各都道府県に対して、そういう方法も織りまぜてひとつ徹底して監視をしていくように、私たちも指導を強めていきたいと思っております。

山井分科員 繰り返しになりますが、昭和四十年代にも国会の、見て私、笑ったんですけれども、予算委員会の分科会で取り上げられているんですね、この病院の問題が。それから三十数年たって、世の中これだけ豊かになって、情報開示や医の倫理というものがどんどん向上してきているわけです。にもかかわらず、三十数年たっても同じことが繰り返されている。これはやはり政治の責任、行政の責任だと思います。

 今、私、この問題を取り上げさせてもらいましたが、また来年あるいは再来年、また同じような問題がどこかの病院で起こって、また徹底しますでは、これでは何のために厚生労働省があるのか、国会があるのかもわからないわけです。ぜひとも厳正なる対応をお願いしたいと思います。

 そのことについて、次に情報公開についてお伺いしたいと思います。

 朝倉病院は、精神保健指定医もいませんでした。また、医師や看護婦の不足も過去数年来指摘されて、改善命令が出ながらも十分に改善されてこなかった。そういう意味では、こういう事件が起こってくると、患者さんや御家族さんにしても、どこの病院がいいのやら、どこの病院が悪いのやら。先ほども言いましたように、熱心なよい精神病院にとっても、十把一からげで議論をされて非常に迷惑をこうむるわけです。

 そういう意味では、監査の結果、改善指導の結果、その指導の結果どのように回答してきたかということを公開すべきだと思います。都道府県に公開を義務づけるべきだと思います。

 そのあたりについての御見解をお願いいたします。

桝屋副大臣 山井委員から、それこそ三十年一昔、何ら変わってないではないかという厳しい御指摘もいただきました。

 私も、現場で医療を監視するようなこんな仕事もしていたわけでありますが、やはり、現場においては毎年、一年に一回、それぞれ関係の、例えば生活保護なら生活保護、医療法なら医療法、医療保険なら医療保険という、そうしたものがしっかり連携をしながら、着実に、繰り返し巻き返し現場の指導監督を続けていく、こういう努力を続けていくことが私は何よりも大事だろう、このように思っております。

 そういう意味で、そうした結果についてぜひとも情報公開をしてもらいたいという御提言でありますけれども、そうした医療法に基づく立入検査等によりまして問題のある精神病院が判明した場合には、都道府県等が文書等により適切に指導しているところでありますけれども、その際の指導文書等の開示につきましては、基本的には各都道府県の自主的な判断にゆだねられるべきものと考えております。

 ただ、本年四月に情報公開法が施行された後は、仮に、国が立入検査等を実施する特定機能病院においてこのような事案が発生した場合には、精神病院への立入検査の業務等が適正に実行されていることを国民に説明をし、的確な理解を得る観点から、原則開示することを考えているわけでありまして、大きな流れとしては情報開示という流れがあるのではないか、私はこのように思っております。

 ただし、開示に当たりましては、情報公開法に基づきまして、公にすることにより特定の個人が識別される、いわゆる個人のプライバシーに関する情報、あるいは精神病院等の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある情報は不開示とするということも必要になるのではないか、このように思っております。

 したがいまして、国としては、このような観点から必要に応じて都道府県等に今後も助言をしてまいりたい、このように思っております。

山井分科員 ちょっとわかりにくかったのですが、必要に応じてということは、このような精神病院の今言いました指導内容、それに対する回答というものは原則として公開してもらえるということですか。

桝屋副大臣 今申し上げましたのは、情報公開法が施行されますと、国においては少なくとも国の責任においてそういう方向になろうと思いますが、地方におきましては、やはり各都道府県で条例等も制定してやっているわけでありますから、基本的にはやはり地方団体において御判断をいただく問題もあろう。しかし、国がそういう方向でありますから、我々は国の立場として地方に対して適切な助言をしていかなければならぬ、これも事実だろうと思っております。

坂口国務大臣 もう地方の方がどんどんと進んできているんです、情報公開等も。国の方が後を追っているような状況でございます。地方におきましては、都道府県におきましても積極的にやっているところがございますから、私は、地方の方がかなり前に出ているというふうに思っております。まあ、中にはやっていないところもありますが。しかし、大きなそういう流れになってまいりましたし、国の方もやるということになれば、地方の方におきましてもそれは全部やらざるを得ない、そういう時代になってきているというふうに思っております。

 ですから、国の方がとにかく率先をしてやるということをやらないと、全体の流れになりませんから、我々もそこは注意をしてやっていきたいと思います。

山井分科員 今地方の方が進んでいるという話ですが、こういう精神病院について、島根県が、市民団体からの情報公開請求によって公開するというふうに島根県情報公開審査会が答弁したというふうなことがあるんですけれども、精神病院のこういう指導内容やそれに対する回答を公開している例というのはほかにあるんでしょうか。

坂口国務大臣 精神病院とかあるいは病院という形ではなくて、全体に都道府県のAならAという県が行うことについて、ほとんどすべてのことについて情報公開をする。だから、そういう監査をすれば監査の結果も発表をするという形になってきているというふうに思いますから、精神病院としてやるという限られた範囲の中でどうこうという話ではないというふうに思っております。

山井分科員 一般論としてではなく、精神病院で情報開示をしていっていただきたいと思います。

 それについては、先ほど桝屋副大臣からも、そういう流れになっている、また坂口大臣からも、そういう時代になっているという話がございましたが、平成四年に出ています医療監視のハンドブックの中に、医療監視の情報公開に関しては原則として認められないという文章がまだ残っているんですね。この本はもう廃版にはなっております。しかし、こういうのがあるから都道府県は消極的になるわけです。

 この際、そのような精神病院の監査や指導の内容やその回答に関しては、原則公開すべきであるというような通知を出していただきたいと思います。答弁お願いいたします。

桝屋副大臣 通知につきましては、先ほど申し上げましたように、情報公開法が施行されまして、国として、これから特定機能病院等に対して指導したその結果をどうディスクローズするかということを今検討している最中でありまして、今すぐ通知をいつ出すということは私もお答えはできないわけでありますが、いずれにしても、委員御指摘のように、そうした流れにあるだろうと私は思っております。

 ただ、それは、必携、事務担当職員が使う本でありますから、そうしたものにどう載せていくかということは今後検討させていただきたいと思います。

山井分科員 なぜその通知一つ出せないんですか。

 今の大臣、副大臣の答弁を聞いていたら、もう情報公開は時代の流れだと。ある意味で、お金がかかる問題でもないわけですね。通知一つ出せばよい。先ほども言ったように、三十年来放置されてきたわけです、こういう問題というのは。予算がかかるという問題でもないと思います。今回のこの問題を端緒にしないと、こういう精神病院の問題というのは向上していかないと私は思います。決断をお願いいたします。

桝屋副大臣 情報公開法のこの流れの中で、どういうふうにしていくのかということを今、国としても、さまざまな、この分野だけではありません、やはりセンシティブな情報もあるわけでありますから。

 今まで決して隠そうと思って情報を公開していないわけではないわけでありまして、やはり先ほど申し上げましたように、それぞれの医療機関の利害が絡んだり、さまざまな難しい問題があったわけでありまして、そうしたものを乗り越えまして、やっと情報公開という時代が来たわけでありますから、そうした中で、現場でどういう形が一番適切なのか十分検討していく必要があるだろうと私は思っております。

山井分科員 最後になりますが、先日ある新聞に痴呆難民という言葉が出ておりました。私、十二月二十五日にこの朝倉病院に行かせていただいて、非常にショックを受けました。約二百人の患者さんの七割、八割が痴呆性高齢者なんですね。

 私は、実はこの痴呆問題を、十年ぐらい研究調査をしております。その問題をライフワークに国会にやってきたわけです。特別養護老人ホームやグループホームの方が、軽度や中度の痴呆性の高齢者にとってはいいわけです。確かに、重度の痴呆性高齢者は、一時的に精神病院が必要だということはあると私も思っております。しかし、この朝倉病院の現状を見ると、東京からの痴呆症の高齢者が約半分、神奈川県からも来ているわけです。つまり、特別養護老人ホームがあいていない、グループホームがないから精神病院に入っているという現状があるわけです。世界各国を見てみて、軽度や中度の痴呆性高齢者を、居場所がないからといって精神病院に入院してもらっているというケースはないと思います。

 こんなあたりに関して、これから精神病院のベッドが、精神障害者の方が地域に戻られるという中から、あいてくると思います。そんな中で、安易に痴呆性高齢者をそこに入れていくということにすると、まさに患者不在になると思います。このような、痴呆難民と言われる、痴呆症の高齢者で精神病院に本来入る必要がない人を入れることがないようにしていただきたいと思います。そのことについて、答弁をお願いいたします。

坂口国務大臣 御指摘のとおりと私も思います。それは、ことしの予算におきましてもかなり組んでおりますし、昨年も大分ふえてきたところでございます。しかし、まだ足りないことも事実でございますから、これから進めていかなければならない。

 進めていきますためには、地域の皆さん方の御理解も得なければならないというふうに思います。なかなか御理解の得られないところもございまして、地域で、それぞれの市町村でやりたいというふうに声を上げていただきましても、なかなか住民の皆さん方の許可が得られないところもあったりいたしまして、大変問題になるところもありますけれども、全体に皆さん方に御理解をいただいて、これはやはり進めていかなければならない。御指摘の御意見を十分に踏まえてやっていきたいというふうに思っております。

 それから、先ほどの監査の結果の公表につきましても、我々はやらないということを言っているわけではなくて、これはやらなきゃならない、そういう方向性に進めていかなきゃならないというふうに思っておりますから、そこは手順がありますから、手順だけ踏ませてくださいということを言っているわけでありまして、御指摘のところは十分理解をいたしております。

山井分科員 ありがとうございます。

 今回犠牲になっておられる患者さんは、身寄りがなかったり、生活保護であったり、元ホームレスであったり、そういう意味では守ってくれる人がいないんです。行き場所もないんです。行き場所がないお年寄りや障害者を預かっているという中で、病院は、ちょっとぐらい質が悪くてもいいというような甘えが出てきている部分があるんです。だから、三十年間このような問題が続いてきたわけです。それをやはり二十一世紀、人権の世紀と言われる二十一世紀に断ち切るためには、言ったらなんですけれども、過去三十年間と違う取り組みを、坂口大臣を先頭に、厚生労働省でやってもらう必要があると思います。福祉や人権問題、医療の問題に長年取り組んでこられた坂口大臣が、今この時期に大臣になられた理由というのがまさしくそこにあると思います。大臣のリーダーシップ、そして厚生労働省の皆さんと一緒に私たちも頑張っていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

津島主査代理 これにて山井君の質疑は終了いたしました。

 次に、手塚仁雄君。

手塚分科員 民主党の手塚仁雄であります。よろしくお願いいたします。

 私、水の問題、水道行政に関してきょうは質問をさせていただきたいと思います。

 私もこれまで大体生活をしてきたところが集合住宅、マンションでありまして、近年水に対する国民の認識というものはすごく深くなってきていると思います。我が国はガソリンより高い水を買って飲んでいるというような形で海外からもやゆをされておりますし、おいしい水を飲みたいという国民の意識というものもますます高まっている。その中で、水道行政に対して質問させていただきたいと思うわけであります。

 現行の水道法によれば、十立方メートルを超える受水槽、高架水槽などの貯水槽に対し定期的な清掃が義務づけられております。この法の意味は、過去、貯水槽内にネズミや鳥などの小動物が入り、不潔な状態のまま放置をされたときに、これを生活用水として利用すると伝染病や人体にとって有害であるという観点から制定されたものだというふうに認識をさせていただいております。

 一方、厚生労働省は二〇〇一年度に、貯水容量の枠をなくして、すべての集合住宅、約八十八万施設だと思いますが、に貯水槽の定期的清掃を義務づける水道法の改正案を提出するという方針だと承っておりますけれども、これらの貯水槽の定期清掃義務化は、広く行われることによって、より多くのユーザーにきれいな水道水を提供するという意味からも賛成できるところであります。

 ただ、現行法、改正案のいずれもが貯水槽のみをその対象としており、実際に貯水槽間を結ぶ給水管や住戸内の給水管の汚れの清掃、洗浄については言及されておりません。実際の水道水をユーザーに供給する手段としては、ユーザーの財産である給水管がメーンの役割を果たしているわけであります。

 行政側としては、高度処理システムを浄水場に採用し、より良質な水を提供する努力をされているわけでありますが、私の持てる知識によれば、塩素でも死なない原虫や、水道水が停留することにより、配管内で微小のバクテリアなどが繁殖し、また配管継ぎ手などにさびが発生するなど、水道管を内部から汚し、閉塞に至るということもあるかと思います。

 そこで、給水管が内部からどんどん汚れているという認識をまずお持ちであるかどうか、お伺いをさせていただきたいと思います。

篠崎政府参考人 先生の御指摘でございますが、良質な水道水を得るためには、給水管を含めた給水設備全体の適正な管理が必要であると考えております。したがいまして、貯水槽や配管の管理が不十分な場合、水質が悪化する場合もあるというふうな認識を持っております。

手塚分科員 このような給水管の汚れを過去に厚生労働省として調査を実施したことがあるかどうか、お伺いいたします。

篠崎政府参考人 貯水槽水道の維持管理の状態につきましては把握をいたしておりますが、御指摘の配管内部の汚れについての実態調査は実施をしておりませんが、これはずっとつながっておるものでございますので、給水管出口での水質状況の実態は把握をいたしております。

 ちなみに、平成十年度の実態調査でございますが、これは簡易専用水道の検査実施件数十四万八千八百四十九の施設を調査いたしまして、約〇・一%の施設で色にかかわる基準を超過していたことがある、こういう状況を把握いたしております。

手塚分科員 これらのバクテリアやさびなどによる赤水が人体に有害であるかどうか、どう認識をされているか、お伺いいたします。

篠崎政府参考人 水道法に基づきまして、大腸菌数あるいは今先生が申されましたバクテリアも含めてでございますが、あるいはそのほか鉄、色などについて水質基準が設けられておりまして、それらの基準に合致していることが必要でございます。

 ちなみに、大腸菌群については、これはゼロ、あってはならないということになっております。これは大腸菌群がほかの細菌を代表して一番先に出るということからだと思いますが、大腸菌群はゼロでございます。

 その他の一般細菌につきましては一ミリリットル中百以下という基準でございますし、また、さびのもとの鉄分などにつきましても一リットル当たり〇・三ミリグラム以下、色度につきましても五度以下というような水質基準が設けられておりまして、御指摘のように、それの基準に合致していることが健康への影響をなくしているという状況でございます。

手塚分科員 私は、良質な水道水を広く国民の皆様方が享受できるようにという観点に立てば、給水管を含めた給水設備すべてを定期的に清掃、洗浄する必要性があるというふうに考えますけれども、この点、いかがでしょうか。

篠崎政府参考人 御指摘ではございますが、ただいまの水道法でございますと、第三十四条に基づきまして、簡易専用水道の管理におきましても、濁り、においなどを含めて、全部検査をすることといたしておりまして、そういう意味合いからは、貯水槽に限定して規定しているものではございません。

手塚分科員 もし給水管の定期的な洗浄により配管自体が長もちすれば、配管交換によるエンドユーザーの莫大な費用負担や、また交換した配管類の産廃処理費の当然減少、また、再生のための莫大なエネルギーの節約にも結びつくというふうに思います。そういった意味では、地球環境にとっても望ましいことではないかなというふうに思うわけであります。

 このような配管内部の汚れと定期的洗浄ということに対する見解を承りたいと思います。

篠崎政府参考人 給水管につきましての洗浄あるいはその効果についてのお尋ねと思います。

 給水管につきましても、給水設備の管理全体の中で適切にチェックを行い、衛生上の問題が生じることのないよう、適切な時期に清掃を行うことは大変重要なことと考えております。

手塚分科員 今パッケージで考えられているということかと思いますが、私が申し上げてまいりました、定期的に洗浄していくということに対して、メリットが幾つもあると思うのですが、それに対する御異論はないのでしょうか。

篠崎政府参考人 今のところは貯水槽水道につきましては、貯水槽の設置者の責任で、安全で清潔な水が供給できるようにということが義務づけられておるわけでございまして、それぞれの設置者の御判断によるところではございますが、私どもとしては、先ほど申し上げましたような、水質がきちっと管理されているものが必要でありますし、それには貯水槽のみならず、最後の蛇口の出てくるところまで一貫してきちっとした水質管理が行われるべきものというふうに考えております。

手塚分科員 水を飲む側に立つと、やはりちょっとおいしくないな、そんなことを感じたときには、水道事業者にクレームをつけるというか、おかしいんじゃないか、水がおいしくないんじゃないかということになるかと思うのですが、実際は、その建物の管理者が、こういった配水管を考えるときに指摘されると思うのですね。

 そういった意味で、この定期洗浄のメリットを御理解いただけるのであれば、これを法制化していく、そんな考え方はないか、御答弁いただければと思います。

桝屋副大臣 私の方からお答えをさせていただきたいと思います。

 手塚委員、先ほどからずっと議論を聞かせていただいておりまして、本当に、私もマンションに住んでおりますし、それからマンションの管理ということにずっと携わってまいりまして、きょうは貯水槽のみならず配管の問題も気を配っていただいて、鋭意御研究をいただいている、心から感謝を申し上げたいと思いますし、敬意を表したいと思います。

 今お話しの、給水管内も含めた定期的な洗浄について何とか法律の中で、こういうお話でございます。

 先ほどから話が出ておりますように、現在、水道法の改正について政府部内で検討いたしているところであります。現在でも、御案内のとおり、一定規模以上のものについては規制されているところでありますけれども、小規模のものも含めて貯水槽やさらに委員御指摘の配管の管理について水道事業者も指導を行えるようにすることによって安全な水道水の供給が確保されるようにしてまいりたい、このように今考えておるところであります。

    〔津島主査代理退席、主査着席〕

手塚分科員 ぜひ国民に、エンドユーザーにおいしい水を提供できるように、どうしても水道事業者に目が向いたり、あるいは貯水槽のみに目が向いたりしないように、かなりこの配水管が与える影響も大きいと思いますので、そちらにも目を向けていただいた水道行政をお願いさせていただきたいと思います。

 以上です。終わります。

坂口国務大臣 お時間があるようですから、一言だけ。

 毎日利用いたしまして、国民の健康管理にも大変重要な関係のあります水道管や水の問題をお取り上げいただいて、本当に感謝を申し上げたいと思います。

 こういう非常に重要な問題でありますけれども、非常に地味な問題でありますだけに国会におきましても取り上げられることが少なくて、ややもすれば、マスコミ受けのする問題やそうした問題ばかりが議論をされがちでございますが、本当はこうした地道な議論というものが最も大事ではないかというふうに私は考えております一人でございます。

 そうした中で、先生がきょうこの問題をお取り上げいただいて、そして大変細かく議論をしていただきましたことに感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございました。

手塚分科員 ありがとうございました。

谷口主査 これにて手塚君の質疑は終了いたしました。

 次に、細野豪志君。

細野分科員 民主党の細野豪志でございます。

 大臣そして皆さん、きょうは突然の、しかも長時間の答弁、大変御苦労さまでございます。私の方から、温泉と療養、温泉と医療、その辺のテーマについてちょっと質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 まず冒頭、坂口大臣はお医者様ということで、もともとこの分野に非常に知見がおありだというふうには思うんですが、私の方から一件、ちょっと事例を紹介させていただきたいというふうに思います。

 鹿児島県に、半農半漁地域で串良町という町がございます。この串良町というのは人口が一万三千八百人、高齢化率が二八%ですので、ある程度、地域の農村漁村というようなイメージで考えていただければいいと思います。この串良町で、平成五年度、六年度と、温泉を使った医療の実験というのが、鹿児島大学医学部リハビリテーション科の田中先生という方の手で行われております。

 この事例をちょっと紹介させていただきたいんですが、何をしたかということを申しますと、まず、この期間、温泉券というのを発行いたしまして、これは無料でとにかく町民に温泉に入っていただこうということでやりました。これだけで終わったわけではなくて、そういう温泉施設に対する無料送迎バスを出した、さらには温泉効果についての講演会もやり、パンフレットもつくり、かなりきめ細かいことまでやっておりまして、実際に事前の健診と入浴指導についても行った、そういう事例でございます。

 これを行った結果、もともと平成四年度に八億四千六万円であった国保の総医療費が、平成五年度に七億七千五百五十一万円、大体六千五百万程度削減されたという結果になっています。もちろん、無料温泉券を配ったりしておりますので、そこに予算がついておりますので、それは当然コストとみなす必要がありますが、それも合計しましても一年間で約七百八十万円ということになりますので、かなりの金額が、これによって医療費として削減されたという結果になっておるんですね。

 この田中先生という方は温泉学会にも属されておりまして、この世界ではいろいろ研究を続けられてきた方なんですが、その方にも昨日ちょっと電話でお話をしましたところ、一つは例えば保温の持続であるとか、さらには痛みの軽減、そして熟眠が得られたなどのアンケート結果も得られておって、温泉療養がある程度医療の観点から医療費の削減につながったというのが実証できたんじゃないかということでおっしゃっておられました。

 一般的な話、そしてこの事例を踏まえてということで結構なんですが、坂口大臣、この温泉と医療というものを、全体をとらえてどういう考えをお持ちであるかというのをまず初めに聞かせていただきたいのです。

坂口国務大臣 ドイツにはいわゆるクアハウスというのがございます。いわゆる温泉、温泉といいますよりもドイツの場合には水療法と申しますか温泉も含めました全体的な水による療法というものが進められておりますし、これはかなりな効果を上げていることも事実でございます。日本におきましても、今御指摘ありましたように、温泉療法というのが昔からございますし、そしてまた温泉療法医学会というのも、たしか学会までできているというふうに思っております。

 この中で、いろいろの効果というものが議論をされてまいりましたし、温泉が健康に非常に好影響を与えるということだけは間違いがない。その医学的証明と申しますか、どういうふうなメカニズムによって健康のために役立っているのかというところの整理は、まだいま一つのところも私は正直言ってあるんではないかという気がいたしますが、ドイツにおきましては、百年の歴史があって、大変学問的にも体系化されているということを聞いているわけでございます。

 こうした状況の中でございますから、この温泉療法のあり方、やはり一つ間違いますとかえって健康を害するということも中にはあるわけでございますので、例えば血圧の高い人が温泉に入りますときに、どういう温度のところでどのぐらいな程度入ったらいいのかとか、あるいは一日に何回ぐらい入ったらいいのかとか、そういったことがきちっとできておりましたら、これは非常によろしいのではないかというふうに思っております。

 だから、そういう立場でさらにこの方面の研究が進みますことを期待いたしておりますし、そういう研究が進みましたらさらに温泉地帯の開発も進むのではないか、経済的な効果も大変大きいのではないかというふうに思っております一人でございます。

細野分科員 基本的な認識として私と大臣の認識は極めて近いということを非常にありがたい話だなというふうに感じました。

 ドイツの例を出されましたので、ちょっとそこの部分を私も調べてまいりましたので報告させていただきたいんです。

 私はまだ二十代の人間ですので、歴史は本を読んだだけということなんですが、日本には湯治文化が古くからあったということが言われております。大体明治の半ばぐらいからは、お金持ちだけではなくて一般の庶民も、平和だったということもあったんですが、温泉、湯治文化に親しむというような機会があったそうです。ドイツは温泉の療養の先進地ということで確かに認知はされているんですが、実は、明治に入ってドイツから来られたベルツ博士、あの方は日本の温泉地を大変絶賛されておりまして、この湯治文化はぜひ見習うべきだというようなことまで発言されている、そういう記録も残っているんですね。

 ただ、残念なことなんですが、実際今の温泉地というのは、日本を見渡すと大体歓楽地になってしまっている。もともと日本は湯治文化があったんだけれども、むしろ、戦後それが歓楽地になることによって、また西洋医学が非常に発達することによって、それを否定してきた歴史があるんじゃないかというふうに思うんですね。

 そのベルツ博士がきっかけになったかどうかはおきまして、その後日本を一つの理想としてドイツの温泉療養というのが進んでおりまして、今ドイツがどういうことになっているかということを私もちょっと調べてまいりましたので、この場をおかりして、坂口大臣よく御存じかもしれませんけれども話をさせていただいて、大臣の所見を伺いたいと思います。

 ドイツでは、温泉療養に関しましては、通所型と入所型、通院型と入院する場合という形で区分がされておりまして、それぞれ違う形で今まで運用がされておりました。ただ、最近その統一が進んでおりまして、自己負担が一日十七マルク、十七マルクですので大体八百五十円ですか、一マルクが五十円程度ですので。それぐらい負担をすれば、温泉を、これはいわゆる社会保険の対象とするという規定になっているんです。

 これは、一見聞くと、健康な人もみんな温泉地に行って、一杯ふろを浴びてきて保険で落としてしまうんじゃないかという危惧があるわけですが、そこはいろいろな制約がありまして、例えば通所型であれば四年に一回に限定される、また、保険の給付期間が最長三週間という形でこれは区切られている、こういう制約はあるんですが、極めて幅広く使われているというのが実情です。

 もう一つ注目すべきは、通所型と入所型の区分とまた別に、予防措置としての温泉クア療養と、治療、リハビリとしての温泉療養、これが分けられているんですね。

 これは、法律もちょっと訳してみたんですが、読みますと、ああ、なるほどなと思うところがございまして、ちょっと朗読させていただきます。これは法律としては社会法典ということになるんですが、第五編の二十三条、医学的予防給付というのがございますので、予防の方をちょっと読ませていただきます。

 被保険者は、以下の目的のために、医師による治療及び医薬品、包帯、補助具及び治療法を用いた世話を請求する権利を有する。一から五ございまして、全部読むと時間がございませんので、一、遠からず病気になるかもしれない健康の衰弱を除去するためのもの、これを保険の対象にしよう。もう一つ、最近日本の事情を考えると示唆的だと思うのは四で、要介護状態になることを回避するためにそれも保険の適用をしよう、こういう規定になっておるんですね。まさに予防医療がドイツでは認められておって、それが機能しているということをよくあらわしている事例だと思います。

 他の国については十分調べる時間はなかったんですが、聞き及ぶところでは、フランスでも予防医療に対する給付が行われている、アメリカでもある程度それに似たような制度があるということでございます。

 一方、やはり比較しなければならないのが我が国の事情ということになるんですが、ここの部分、ちょっと後ほど詳しく聞きたいんですが、冒頭で大臣にぜひお伺いしたいのが、日本では温泉の療養に関してはわずかに医療費控除の対象としては認められておるという実情がございます。

 資料を皆さんにいただいたんですが、見ておりますと、非常に残念なことなんですが、その温泉療養の通所場所として認められている施設がわずか二十六カ所、そして、そこで実際に医療費控除を受けられている方の数が、九八年で八十九人、九九年百三十四人。ほとんどだれも受けることができていないという実情があるんですね。

 済みません、少し長くなりましたが、歴史の経緯を踏まえて、現状、ドイツと日本の置かれている状況というのをごらんになって、日本の場合とドイツを比較してどのような思いを持たれるかというのをちょっと、感想で結構ですので、まず大臣に冒頭お伺いしたいんですが。

坂口国務大臣 私の方にも清少納言ゆかりの名湯というのがございまして、昔からやはり温泉というのは湯治というので非常に利用されていたんだろうというふうに思います。本当に清少納言が来たかどうかはわかりませんけれども、もしも事実とすれば、千年からの昔からそのことがあったということになります。

 今、ドイツを中心としたヨーロッパでのお話が出ましたけれども、ヨーロッパの場合のクアハウス、あるいは、正式には何療法というんですか、正式の療法の名前はちょっとわかりませんが、クア療法とかなんとか言っていると思うんですが、この場合には、いわゆる温泉を初めとした水療法などと、それから、それを選びますところは非常に環境に恵まれたところを選んでいる。何年もさかのぼってそこから発生する、例えば霧が多いとか少ないとか、降雨量がどのぐらいあるとか、それからもちろん空気の汚れはないとか、水がきれいだとかといったような、非常に自然環境に恵まれたところにつくるといったことが前提条件としてありまして、もしそこが空気が汚れ、水が汚れというようなことが起こってまいりますと、もうそこは許可の対象から外されるということを聞いております。そんな前提条件がございまして、日本のいわゆる温泉療養というのとはいささか趣を異にしているという気がいたします。

 そこで、かなり予防的な意味でもそれが使われているということを聞いておりますが、今先生が御指摘になりましたように、遠からず病気になる可能性のある人というのはなかなか言い得て妙だなと思いながら聞かせていただいたわけでございます。若い、ぴんぴんしておる、そういう人は抜きにして、このままでいけば例えばもう完全に糖尿病になってしまうとか、このままでいけば高血圧症になってしまうとか、あるいは心筋梗塞や脳梗塞なんかを起こしやすいような状況になるとかいうような人たち、だから、今のうちに治療しておけばそういうことを免れるであろうと思われるような人たちを対象にして、それを行う社会保険の対象にしているということではないかなという気がいたします、今お聞きをいたしまして。

 その辺のところは、日本の場合にも何か症状があればそれはその保険が適用になるわけでございますが、症状の出る前、しかし、ほっておけばいろいろの問題が起こりますよというようなところでの保険の適用というところが少し違うんではないかなというふうに思って、今聞かせていただいたところでございます。

細野分科員 今大臣がおっしゃったのは、保険の適用も温泉療養についてあるという、そこはほとんど日本の場合ないんじゃないかという認識を私持っておったんですが、ちょっと事実確認なんでございますが、その部分、いかがなんでしょうか。

坂口国務大臣 そこは私も完全に知っているわけではありませんが、例えば非常に肩が凝るというような症状があれば、それは血圧との関係があるのではないか、何々との関係があるのではないかというようなことで、それは医療保険で受けることができ得る。しかし、何ら症状はないけれども、しかし医学的に検査をしたら、それはやはりこのままいくとあなたはこういう病気の方に発展をしていきますよという可能性のある人がいるのではないか。病気ではないがその一歩手前のそういう人まで健康保険で診られるかというと、日本の場合、そこは疑わしいところがある。その辺が違うのではないかという気がいたしました。

細野分科員 日本の場合は、もちろん温泉病院というのがございますので一部そういう形で行われているのだと思うのですが、中心は、恐らく医療費控除という形で認められているということだと思いますが、そこの部分についてちょっと細かい質問をさせていただきたいというふうに思います。

 その前に一点だけ、先ほど、ドイツの例でございましたので一つだけ指摘させていただきますと、実は先ほど二項目だけ紹介いたしましたが、二つ目の項目には、子供の健全な育成の阻害を防止するためという項目もございまして、まさにドイツでは、若い方も含めて、温泉を予防医療的に使う土壌ができているということは、恐らく、法文を見る限り間違いないだろう。ここには日本の学ぶべきところが非常にあるのではないかというふうに思っております。

 ここから、ちょっと篠崎局長の方にお伺いしたいのですが、私が今関心を持っておりますのが、厚生労働省さんの方でやられております温泉利用型健康増進施設の問題についてでございます。この問題に関しては、そもそもその指定が現在二十六カ所しかされていないということ。そして、実際にそこにかかって実際に医療費控除をしている人が、先ほども申し上げましたけれども毎年大体百人前後しかいない。二つの問題があると思っておりまして、一つは、そもそもなぜ二十六カ所しか存在しないのかという点について、まずお伺いさせていただきたいと思います。

 この温泉利用型健康増進施設、この二十六カ所の要件を見ておりますと、いや、何とも非常に厳しいなという印象を持つわけでございます。まず一つ御指摘したいのが、この施設が運動施設も兼ね備えなければならないという要件がある部分なのですね。具体的に言いますと、トレーニングジムであるとか、運動フロアであるとか、プールである。これを備えていないと温泉療養の増進施設としては認められない。

 もう一つ言うと、運動指導者を配備しておかなければならない。これもまさにいわゆるトレーニングジムを意識した規定であって、そもそも温泉を利用した健康増進施設として、果たしてこの枠をはめることが適切かどうかというところに私は大きな疑問を持っているということをまず指摘させていただくと同時に、実際、申請をためらわれている方に私はいろいろ話を聞いたのですが、ここは大きな申請の制約になっているということも御指摘させていただいて、この部分の規制の枠を広げる可能性についてお答えいただきたいのです。

篠崎政府参考人 今の御質問についてでございますが、背景は、今までのその経緯は別にいたしまして、温泉療養よりも温泉を活用した健康増進の場として認定されるということでその要件があったわけでございまして、御指摘のようなジム等の運動関係の施設の要件もそこで設けておるということでございます。

 また、温泉の利用に当たりましては、その温泉の泉質ですとか温度ですとか、あるいはそれを受けられる個人の健康状態、あるいは目的等もあるのかもしれませんが、それぞれのものによりまして、温泉浴の望ましいあり方というものが非常に多様でございまして、逆にその多様なニーズにこたえるために、いろいろな設備を設けることがまた要件になって、今御指摘のように、数が少ないということが起きているのではないかと思っております。

 それから、先ほど来先生からドイツの方のことについても御指摘をいただきました。私どもといたしましては、平成七年度の厚生科学研究というのがございまして、これは先ほどの鹿児島大学の先生のことと時期を同じくしておりますので、きっとこの鹿児島大学の先生の御意見等も反映されている上でのことではないかと推察をいたしますが、そこでの結果を申し上げますと、入院や外来通院中に医師の管理下で治療を受けるいわゆる狭義の温泉療法につきましては、臨床医学的に有効性が認められている疾患があるということでございます。

 ただ、二番目といたしましては、先ほどちょっとお話が出てまいりました健康人や半健康人、私どもそう呼んでおりますが、健康人や半健康人を対象とする、つまり予防医学的な温泉保養地療法については、今後の研究課題であるという報告を受けておるところでございます。

 私どもといたしましては、今後とも、御指摘のような事例についても参考にしながら、現在、健康日本21をまさにスタートさせたところでございまして、地方計画も、御指摘のような市町村におきましてつくっていただくようにお願いをしておるわけでございますが、そういうことを通して、健康づくり対策の検討をしながら、さらに前に進めていきたい、このように考えております。

細野分科員 もうちょっと具体的に答えていただきたいのですが、運動施設と運動指導員等の配備については、医療費控除の対象として認めている、ある程度医療の対象として範囲を限定した規定だというふうに私は理解しておるのですが、それは、もう絶対必要で外せないという御理解なのかどうかというところに絞ってちょっと答弁をいただきたいのです。

篠崎政府参考人 医療費控除の要件がございまして、これは主治医の温泉療養指示書を定めておりまして、利用者の病状、それから温泉療法の必要性などについて、その主治医が適当と判断したものによるものでございます。

 ジムがあるとか健康増進施設の要件につきましては、先ほど申し上げました多様なニーズに対応するためにかなり細かなものがありまして、経緯を申し上げました。

 今の御指摘、これを緩めるかどうかということでございましょうか。これにつきましては、今までの経緯がございますので、先ほど来申し上げていますように、専門の先生方の御意見を踏まえて、このような形態をとっておるわけでございますが、健康日本21もスタートしたばかりでございますので、そういう対策を進めていく中で、必要とあらば事務的に検討はさせていただきたいと思っております。

細野分科員 あと、これは指摘だけにとどめさせていただきますが、温泉利用のための設備と称しまして、実は五種類温泉を用意しておかなければならない。

 かぶり湯から始まって、部分浴槽、寝ながら入れるお湯がなければならない、気泡がなければならない、サウナがなければならない。それぞれ一長一短があるんだと思うのですが、これをすべてそろえないといけないというのは結構大変なことでして、こういうたび重なる要件が、実際のお医者さんがこういう施設をつくる場合、非常に制約になっているということをぜひ御理解いただいて、温泉学会の方でも最近そういう議論が出ているようですので、ぜひ御検討いただきたいなというふうに思います。

 加えまして、先ほど予防医療に関してはなかなか証明できないという話がございましたけれども、昨日もその先生に伺ったところ、もちろん温泉というのはそういう具体的な効果もあるんだけれども、いわゆる精神的な部分でのケアにもつながるということを一点指摘されました。

 もう一つ言うと、医療費が七%下がった、この結果は、実はお年寄りが病院に行かなくなった。要は、医療費削減にはもしかしたらそれが一番寄与したかもしれないというようなこともおっしゃっていたのですね。これは、医学的には余り正しくないかもしれないけれども、社会学的には極めて正しい問題ではないかというふうに私は思っておりまして、医療費というものを考えたときに、厚生労働省さん、健康日本21ということでやられているわけですから、ちょっと一歩踏み込んだ政策をぜひつくっていただきたいなというふうなことを要望させていただきます。

 あと、これはまた大臣の方にお伺いしたいのですが、そこで、ちょっと今私が申し上げたことに対しまして、局長に一言いただいてもよろしいでしょうか。

篠崎政府参考人 大変貴重な御提言をありがとうございます。

 先生の御提言を踏まえまして、私ども、今進めております、ちょうど今年度からスタートいたしました一次予防に重点を置いた健康日本21の推進に向けて頑張っていきたいと思っております。

細野分科員 ありがとうございました。

 あと、大臣の方に、温泉をめぐる医療とも関係ある部分なんですが、行政の縦割りの問題についてちょっと指摘をさせていただきまして、御答弁を願いたいなというふうに思います。

 先ほども申し上げましたとおり、温泉療養に関しては、これは全体の枠組みとしては厚生労働省さんが主管をされていて、そして施設についても厚生労働省さんの方の所管の中で行われる社団法人によって認可がされているという経緯がございます。

 ただ、ドイツの例にありますとおり、温泉地というのは、総合的な、自然環境も踏まえた、まさに湯治文化が問われるところでございます。では、そこの部分をどこが指定しているかというのを見ますと、実は、環境省の方が国民保健温泉地というのを指定しておりまして、これが全国で今八十九カ所あるそうなんですね。古くからの湯治文化を守っているような地域を指定しているという説明をいただいたのですが、この縦割りが、温泉の療養をめぐる行政のあり方についてかなり障害になっている部分があるのじゃないかということを感じました。

 また、具体的に、厚生労働省さんの方では、健康文化都市ですか、これを百二十六カ所指定されている、それに取り組まれる都市に関しては一定の補助をしていこうというようなこともやられているということを伺っております。一方で、また環境省は環境省でして、ふれあい・やすらぎ温泉地整備事業ということで補助金を出すというのをやっておりまして、私から見ると、ここの部分での整合性がとれれば、より効果的ではないかというふうに思うのですが、大臣の御所見を伺いたいと思います。

坂口国務大臣 環境省とも全然相談をせずの話でございますから、あるいは行き過ぎがあるかもしれません。

 最初にもお話を申し上げましたとおり、ドイツにおきましては、まず環境が整っているということが大事でありまして、その環境が破壊をされましたら、そこは保養地としてあるいはクア療法を行う場所としてもう許可をしないということになるぐらいでありますから、かなり厳しい条件がついているというふうに思います。

 日本の場合には、温泉は温泉、しかし周辺のところは何の規制もないものでございますから、いかがわしいところができましたり、あるいはたくさんの看板ができましたりというようなことで、非常に環境が破壊をされていくというのが現状ではないかというふうに思っております。そういう意味では、私も、水、空気その他を含めましてきれいな環境と、そしてそこにあります温泉の、医学的と申しますか予防及び健康、治療に対する施設というものとがマッチしていかないといけないのではないかというふうに思っております。

 せっかく先生もこうしてお取り上げをいただいたわけでございますから、一遍、これは環境省の方とも相談をさせていただいて、そうした方向のところをモデル地域として全国の中に何カ所かできていけば、私は、大変進歩するのではないかという気もいたします。検討させてください。

細野分科員 ぜひ、環境省の方ともいろいろ研究して、一緒にやっていただきたいなというふうに思います。

 実は、私は自分の地元が伊豆半島でございます。まさに温泉場で全部占められている地域でございまして、この問題は非常に切実なところとしてとらえております。

 ただ一方で、私が考えておりますのは、この温泉療養をめぐる問題が温泉場のエゴであってはならない、国民全体にとって有効利用につながらないと、ここにお金を落としてもらったらそれで事足れりということであっては決してならないというふうに思っておりまして、そういう観点から、これからもこの政策を進めていきたいというふうに思っております。

 これは蛇足ではございますけれども、私、超党派で全国温泉振興議員連盟というのをつくっております。先生方百九人に入っていただいて、冬柴幹事長にも呼びかけ人及び副会長になってやっていただいておりますので、ぜひ、坂口厚生大臣にもいろいろ御協力をいただいて、一緒にこういう問題について考える力をかしていただきたいということを最後にお願いさせていただきます。

 ありがとうございました。

坂口国務大臣 ドイツにおきましても、一マルク使って医療費を三マルク削減するというようなことを目標にして、それが可能だというようなことでやっているそうでございますから、日本におきましても可能なことではないかという気がいたします。

 ありがとうございました。

細野分科員 ありがとうございました。

谷口主査 これにて細野君の質疑は終了いたしました。

 次に、瀬古由起子君。

瀬古分科員 日本共産党の瀬古由起子でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 全国で、大都市を中心に、三万人を超えると言われております深刻な事態になっている野宿生活者、ホームレスについて質問いたします。

 日本共産党は、一月の二十六日ですけれども、この野宿生活者の生命と健康を守り、生活保障と仕事の確保を求める緊急申し入れをいたしました。私も、この冬、地元の名古屋市を中心に、野宿生活者が住んでいるテントを訪ねさせていただいたり、献身的なボランティアによる炊き出し活動を見せていただいたりしてまいりました。長い間、行政の手も差し伸べられることもなく、苦しんでいる野宿者の姿も見せていただきました。

 今この瞬間にも、寒い冬空で、そしてきょうも雨が降っておりますけれども、そういう中で、食事もまともにとれないで、体力の低下と衰えから凍死する、亡くなるという事態もあちこちで続出をしているわけです。そういう点でも、私は、緊急の対策が今求められていると思っております。

 きょうは、ここに、「一九九九 名古屋野宿者聞き取り報告書」というのを持ってまいりました。ここに、調査されたいろいろな資料が載っております。

 この一端を御紹介してみますと、野宿開始年、野宿歴から見ますと、一九九二年の不況から野宿者が圧倒的に多くなって、さらに景気が悪くなりました一九九八年から野宿者が急増しているということが指摘されております。そして、野宿の方法は、四割近くの人が段ボールや新聞紙で寝ているだけ、昼間は生活空間もないという状態がある厳しい状況でございます。それから食事の状況ですが、一日二回以下しかとれないという方が六五%。健康状態は、自覚症状がある人は六割以上にも上っています。嫌がらせとか危険な目に遭った経験のあるという方が四割にもなっている。こういう深刻な実態がございます。

 以下、その点で質問をしてまいりたいと思います。

 昨年の十二月八日に、社会的な援助を要する人々に対する社会福祉のあり方に関する検討会の報告書が出されております。野宿生活者についての基本的な考え方として、こういうふうに書いてあるのですね。

 ホームレスについては、多くの者が道路、公園、河川敷といった公共の用地で暮らしており、住まいの確保が最優先の課題である。また、自立のためには、就業あっせんや職業訓練など、労働部局との連携が重要である。これについては、国、地方公共団体が連携して、一時避難所や自立支援センターなどの確保、提供を進め、道路、公園等の公共用地での野宿の解消を早急に図ることが必要である。また、地域にオンサイトの相談場所があることが有効であり、既存の幾つかの相談所、相談員の連携協力を得て、参加型のサービスを提供することが考えられる。

 このように述べています。

 この立場は、私は、野宿生活者の問題を考える場合に、厚生労働省としても基本的な立場として据えるべきではないかというふうに思うのですけれども、その点、大臣の御所見を伺いたいと思います。

坂口国務大臣 ホームレスの問題、大変大きな問題になってまいりました。

 今まで、ホームレスの問題は大きく取り上げられてこなかったということもございまして、どういう理由でホームレスがふえてきたのかというようなこと、あるいはまた、そこにホームレスとして生活をしておみえになります皆さん方が今何をお考えになっているのか、将来どういうふうにしようとお思いになっているのかということにつきましてもわからないままで、何となく困ったことだというような感じでこれを取り上げてきた可能性がなきにしもあらずでございます。

 しかし、今御指摘になりましたように、それにはそれなりの理由があってこのホームレスの状況が起こってきているということや、あるいはまた現実の非常に厳しい生活の状況等がだんだんと把握されるに及びまして、どういう手の差し伸べ方をしていったらいいのかということが次第に共通認識としてできつつあるのが現状ではないかというふうに思っております。

 先ほど御指摘いただきましたように、社会的な援助を要する人々に対する社会福祉のあり方に関する検討会報告書、ここにもそうしたことがるる述べられているというふうに思っております。

 これができましたときに十分それが認識されていたかといえば、まだ十分でなかった点もあるのではないかという気もいたします。しかし、今までのことを思いますと、かなりまとまった意見として取り上げられたというふうに認識をしているところでございます。

瀬古分科員 外務省に来ていただいているので、お聞きしたいと思います。

 一九七九年、日本政府が批准いたしました国連人権規約は、各国政府に、効力発生時から二年以内に第一回の報告書、二回目以降は五年ごとに報告書の提出を義務づけております。この人権規約にある社会権規約十一条では、適切な居住の権利というものを定めているわけですね。この居住の権利について、この報告書の形式と内容というのはガイドラインに基づくことになっておりますが、その主なポイントを述べていただきたいと思います。

高須政府参考人 お答え申し上げます。

 御質問の適切な居住の権利というものを国際的な条約で定めたものが、お尋ねの、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約というものでございます。これは国際的にはA規約と呼ばれております。

 この規約につきましては、私ども日本政府は一九七九年に批准いたしまして、その後第一回の政府報告というのは、分けまして、一九八一年、八四年、八六年と三度にわたって第一回の政府報告書を提出した次第でございます。

 第二回の政府報告書というものは、一九九八年になりましたけれども提出いたしまして、ことしの八月にこれが国際人権委員会で審査されるということになっておるわけでございます。

 お尋ねのA規約人権委員会がつくりますガイドラインにつきましては、このA規約の主要点に基づきまして、できるだけ各国の前進的進展を図っている状態がわかるような具体的な情報を提供するということがガイドラインで定められておりまして、外務省といたしましては、このガイドライン等を参考といたしまして、関係省庁の御協力を得まして、できる限り充実した報告書の作成に努めるということに努めております。

 これを通じまして、政府全体がA規約の中に決められているいろいろな義務をきちっと誠実に遵守するというために、引き続き真剣に取り組んでまいりたいと思います。

瀬古分科員 今お聞きしたのは、ガイドラインはどういうポイントが載っていますかということ。おっしゃっていただけますか。

高須政府参考人 お答え申し上げます。

 ガイドラインにつきましては、このA規約の主要権利、例えばの話としまして、今のものにつきましては十一条、相当な住居についての権利ということにつきまして、非常に詳しいガイドラインがございます。

 一例を申しますと、貴国の、例えば日本の話ですけれども、住居状況に関する詳細な統計情報を提供すること。貴国社会、具体的には日本社会でございますけれども、における、住居に関して脆弱で恵まれないグループに関する詳細な情報を提供すること、とりわけ、次の事項を示すこと。一、ホームレスの個人及び世帯数、二、現在、相当な住居に恵まれず、また、水道、暖房、廃棄物処理、衛生設備、電気、郵便等の基本設備が手近に備わっていない個人及び世帯の数等々、その他非常に詳しいガイドラインがございます。

瀬古分科員 今言っていただいたように、大変詳しいガイドラインがあって、それに基づいて報告しなきゃならないということになっています。

 ところが、日本政府は、この間何回か報告書を出しているわけですけれども、もともと期限もきちっと守っていないという問題もございますし、同時に、中身も私は見させていただきましたが、例えば第一回の報告書などでは、制度を紹介している程度なんですね、日本の今の住宅の制度がどうなっているのかという。今御紹介あったように、かなり詳しいものが求められているわけです。

 それから、第二回の報告書では、例えばホームレス、違法居住者及び追い立てに関する統計的なデータはない、それをわざわざ書いているのですね。そういうものをきちんと調べて報告しなさいと言っているのに、ありません、こういう報告になっているわけです。

 そういうお答えに間違いありませんか。

高須政府参考人 お答え申し上げます。

 一九九八年に第二回政府報告書というものを提出させていただきました。その時点で報告いたしました中には、お話しになりましたように、ホームレスの人々のデータについてはないということを記載した事実はございます。どうしてかと申しますと、報告書をまとめたその当時には、全国的に包括的な統計データが十分なかったということがあったわけでございますけれども、その後、統計も整備されてきております。

 その上で、私ども、ことしの八月に具体的な第二回の政府報告書の審査が行われるわけでございますけれども、それに先駆けまして、それに間に合うように追加的な情報を文書の形で提出するようにということを言われておりますので、その時点で私ども政府の持っております統計資料を提出するという方向で前向きに検討している次第でございます。

瀬古分科員 八月に追加で報告される、そこはしっかりやるんだというお話なんですけれども、それはそれでやっていただいていいのです。ただ、報告を義務づける目的とは何かというのがきちんと明確にされているわけです。単なる統計をとって報告すればいいということじゃないんですね。

 ここには明確に、その国の実情を国際水準に照らし合わせて評価して、人権実現のための勧告やアドバイスをすること、そして加盟国自身にも自国内で人権の実現状況を見直す機会を与えることです、加盟国には報告に必要な情報や統計を積極的に得ようとする努力が求められていると。

 ですから、単に報告をすればいいというのではなくて、これを機会に、自分のところの居住する権利が一体どのようになっているのか、どのように国民にとって侵害されるのかということをちゃんと分析して出さなきゃならない。

 その点では、国際的に出す今までの報告書は大変お粗末な内容になっているという点はしっかり反省していただいて、そしてきちっと今度の報告書に反映していただきたい。そしてみずからも、今の国際水準に比べてどうなのかという点でも解明して、明らかにしていくということが必要だと思うのですけれども、その点の決意はいかがでしょう。

高須政府参考人 お答え申し上げます。

 おっしゃられますように、このA規約、経済的、社会的、文化的権利の国際規約というものは、まさしく各国の政府がどのように国として積極的な政策をとっていくか、そして社会権を確保していくかという目標がありまして、そのために前進的に実現すべきだという考え方に基づいておるわけでございます。

 そういう意味では、この政府報告書というものは非常に重要な手続でございまして、この報告書を作成するという過程を通じて、政府全体がA規約に盛られております権利を誠実に実施し、実現していくという方向にそれを活用していくということだと思います。ですから、今後、引き続き真剣に取り組んでいきたいと思います。

瀬古分科員 一九九六年、第二回国連人間居住会議も、住居は基本的人権の基礎である、各国政府は居住の権利を完全かつ前進的に実現する義務を負う、このことを居住の権利宣言として採択しているわけです。そして、憲法二十五条の生存権は、居住保障を抜きにしてはあり得ないと私は思うのですね。その点において、ホームレス問題の取り組みというのは大変重要だと私は思っていますが、具体的に聞いてまいりたいと思います。

 先ほど私が紹介いたしました検討会報告書でも指摘しておりますように、何よりも住居の確保は緊急課題だと思うのです。

 大阪などでは、例えば簡易宿泊所を福祉マンションに変えて、そういうホームレスの方々が入りやすいような仕組みにしている御努力もされていると聞いております。名古屋など、そういう簡易宿泊所みたいなところが余りないところはもう本当に大変で、基本的には、公営住宅に優先入居する取り組みが必要だというふうに私は思っています。ところが、大都市部では、公営住宅の空き家というのがなかなかなくて、大変な状態になっているというふうに聞いているのですけれども、特に、ひとり暮らしで高齢者の方が入居できるというところがなかなかないのですね。

 その点、現在、大都市の公営住宅の空き家、これがどういうようになっているのか、今年度の建設計画というのはどのようになっているでしょうか。国土交通省にお伺いいたします。

松野政府参考人 お答えいたします。

 三大都市圏、これは一都二府六県でございますが、公営住宅の空き家は、入居者の募集を行っているものでなおかつ一年以上空き家となっているものが、平成十二年三月末現在で約七千戸、管理戸数約百一万戸に対しまして〇・七%となっております。

 また、十二年度の公営住宅の整備につきまして、公共団体からの要望をもとに国費の配分を行っておりますが、現時点では、三大都市圏におきまして約一万七千戸、全国の約三万四千戸の四八・五%の配分を行っているところでございます。

瀬古分科員 今、空き家の状況を見ましても、大変厳しい状況だということはおわかりいただけると思うのです。

 私、具体的に調べてみましたら、例えば東京都の都営住宅ですけれども、昨年の十二月の応募倍率なんですが、高齢者の単身者向けは十九倍です。一般向けが十二・三倍。それから、愛知県ですけれども、二〇〇一年の二月ですけれども、高齢単身者向けが十倍です。一般向けが四・六倍。もうかなり高齢単身者向けというのは高くてほとんど入れないという状態ですね。それから、名古屋市でも、二〇〇〇年の八月、去年ですけれども、これは一般的な入居なんですが、五割の団地が全体で応募率が十倍以上、四分の一の団地が二十五倍以上。とても公営住宅に入れる状況でない。

 そういう点で私は、公営住宅の建設という問題について、入居という問題について、特に、当面家がないという人たちについてもっと真剣に国としては対策を講ずるべきだ、公営住宅の建設に責任を持つべきだと思うのですけれども、その点、いかがでしょうか。

松野政府参考人 その点につきましては、私どもも、公営住宅の整備につきまして今後とも努力してまいる所存でございます。

 特に高齢者向けのものにつきまして、今国会でも予定をしておりますが、公営住宅とは別途、高齢者向けの賃貸住宅の供給促進の観点からの法律も予定させていただいているところでございます。

瀬古分科員 では、具体的な内容でさらにお話ししたいと思うのですが、公営住宅の入居申請では、住民票がなければ申し込みができないという自治体がございます。名古屋市なんかがそうなんですね。住民票がないという理由で、ないから大体ホームレスになっているわけで、そういう人は市営住宅の申し込みができない。これは何という矛盾といいますか、住宅に困窮していることが明らかですよね。こういう方については当然入居できるという条件にするべきだと思うのです。

 実際には、公営住宅法には、住宅が困窮している人には、当然資格外というか、住民票がない人はだめなんて書いていないわけで、この点はきちんと、こういう住宅が困窮しているホームレスの人たちに住民票がないという理由で入居資格を奪うのは明らかに公営住宅法の目的からの逸脱ではないかと思うのですが、その点、いかがでしょうか。

松野政府参考人 お答えいたします。

 公営住宅は、住宅に困窮いたします低額所得者のための賃貸住宅制度でございます。公営住宅法上、収入が一定金額以下であること、また現に住宅に困窮していること等を入居者資格としてございますが、さらに、公営住宅の事業主体である地方公共団体の判断によって入居者資格を付加することも許容されております。

 例えば、公営住宅の事業主体の判断によりまして、当該地方公共団体の区域内に住所または勤務場所があること等の条件を付加し、その確認のために住民票の提出を求めている場合がございます。これは、公営住宅が、地方公共団体によりましてその区域内の住宅事情の緩和を図るため供給されるというものでありますことから、公営住宅法上はその条件の付加が許容されているものではないかと考えております。

瀬古分科員 そうしますと、名古屋市の場合は条例でそういう住民票を求めるということがあるわけですが、実際にこれが公営住宅法で、本当に住宅に困窮しているという人についての規定でいえば、当然こういう人たちが一番真っ先に確保しなきゃならない責任もあるわけですね。その点、国としてはどのように考えていますか。

 住民票がないからという理由で、それで条例があるからという理由で排除していいものなんでしょうか。法律というものがそのためにあるんじゃないですか。その点、いかがでしょう。

松野政府参考人 今おっしゃっていましたようなケースの場合に、よく住民票を提出させてもらうということがあるわけです。これは、ただいま申し上げましたような、その市にあるいは県に居住地を持っている方にその公共団体は公営住宅を供給するということを、いわば制限を付加しているということです。

 もう一つは、そういう方々が、公営住宅はやはり家賃を払っていただくことが原則でございますので、生活保護を受けていただくなりなんなりして、家賃分を生活保護を受けてそれで公営住宅に入居していただくということが可能なわけでございまして、そういった手続をとっていただければ、ホームレスの方であっても入居資格があるということであれば入居できるのではないかというふうに思います。

瀬古分科員 今のは、住民票がなくてもやれるということですか。ホームレスの方の場合はまだ生活保護を受けられない、後でお話ししますけれども、それこそ住民票がないから生活保護も受けられない、そして入居もできない。どこを見ても、何も助けるところがないという状況なんです。一たん市営住宅に入ったりしますと、そこに居住があって生活保護も受けられるのに、初めから入居も阻んでしまう、こんなひどいことが許されていいでしょうか。

 これは公営住宅法でいえば、この法律は国と地方自治体が協力して本当に健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を整備し、これに困窮する低所得者に対して低廉な家賃で賃貸し、こういう趣旨がきちっとうたわれていて、そして困窮者については、困窮していることが明らかなものであるという場合は当然この法の精神からいって、住民票があるないにかかわらず、真っ先に手を打たなきゃならないものだと思うんですね。

 その点では、何が何でも条例があるからだめだなんという、こういう地方自治体に対して国は、どうぞどうぞやってください、こんな姿勢でいいのでしょうか。いかがでしょう。

松野政府参考人 そこはやはり、公営住宅法の、低額所得者の方で住宅に困窮する方ではありましても、そこを居住の場として住んでいただいて、適切な維持管理も入居者として義務を果たしていただいて、なおかつ家賃も払っていただくという前提の制度でございますから、そこは、生活保護を受けるようなことをしていただいて家賃も払える状態にしていただいて入居していただくというのが、やはり考え方の基本だと思っております。

瀬古分科員 そこに入ることによって生活保護を受ける条件ができる、そしてなおかつ家賃も払うことができるという方の場合は、当然入居の資格としてあるというふうに適用されるということでよろしいですか。

松野政府参考人 通常、やはり生活保護を受けられる方は、恐らくそこの自治体で住民登録がどこにあるかというような手続をとるんだと思います。そういう手続はその自治体によって違うかもしれませんが、そのしかるべき手続で生活保護なりなんなりを受けていただいて家賃も払っていただけるような状態になっていただくということが、やはり必要なのではないかと思います。

瀬古分科員 それは、公営住宅法の精神からいって、やはりもっとホームレスの人たちをどう考えるかということをきちっと考えるべきだと思いますよ、憲法の精神からいっても。もともとでいえば、ホームレスという住宅がなくて困っていらっしゃる方がある意味では入れないという状態は、もっと改善すべきだと思います。

 時間がないので次に進めたいと思うのですけれども、韓国などでは、野宿の生活者の生活を立て直すまでにさまざまな段階に応じた援助を提供して、野宿生活者の制度をつくっています。野宿生活者は、今までの厳しい生活体験とか、生活を初めから自分一人でなかなかできなくなっている場合、それから、大集団の生活になじめない状態になっている場合、身も心も傷ついた多くの人たちがいる。韓国などでは、そういう実情に応じた、人の配置も含めたグループホームみたいなものもつくって、自立できるような援助もしているのです。

 そういう段階的な援助の方法なども検討すべきじゃないかと思うのですが、その点、大臣、いかがでしょうか。

真野政府参考人 先生御指摘の、いわゆるホームレスの方々はさまざまでございまして、それへの対応をどうしていくかというのは、地方自治体を初めといたしましていろいろな形で取り組んでいただいております。

 今お話しのグループホームでございますけれども、私ども、東京都下におきまして、民間のNPOが中心になりまして数カ所の施設を運営されている、そして、この施設の利用者というのは、必要に応じまして生活保護の適用を受けながら、共同生活を通じて自立に向けた努力をしておりまして、その活動につきまして都の方でも評価をしているというふうに聞いております。

 そういうような、一人一人の異なる状況に対してさまざまな取り組みが必要だというふうに考えておりまして、こういうホームレス個々の状況に応じた多様な取り組みということにつきましても、国も自治体も協力して取り組んでいきたいというふうに思っております。

    〔主査退席、白保主査代理着席〕

瀬古分科員 大臣にお聞きしたいと思うのですけれども、昨日、我が党の小沢議員が、住民票がないという理由で生活保護法の適用を受けられない、そういう自治体がたくさんあるわけです。

 名古屋もそうなんですけれども、ホームレスの場合、生活保護はちゃんと居住していないとということで、これは厚生労働省としては、そんな、住民票がないから生活保護を受けられないなんという対応はしていないというふうにお聞きしているわけですが、名古屋市は頑として、先ほどの入居もそうなんですけれども、大臣、聞いていただいてわかると思うのですが、ともかく家がなくて市営住宅も申し込めない。生活保護を受ければいいでしょうというけれども、居住がなければ生活保護も受けさせないということで、結局、病気になって倒れて入院するか、亡くなったときにようやく葬祭費で生活保護費が出るかという、こんなひどい状態なんですね。

 私は、一般的には厚生労働省としては住民票がなくてもその人が困窮していれば当然認めると言うのだけれども、実際には現場ではそうなっていないという状況をぜひ改善してもらいたいと思うのですけれども、その点、大臣、いかがでしょうか。

坂口国務大臣 きのうも、小沢議員からでございましたか御質問がございまして、お答えをさせていただいたところでございますが、ホームレスの皆さん方の中にも、ホームレスになられた理由というのはいろいろあるのだろうというふうに思います。先生が御指摘になりますように、住宅を求められ、あるいはまた、一時期生活保護を求められるというような方もございますし、なかなか名前すらも明らかにしていただけない、そして、そういうシェルター等をつくりましても、そのことを拒まれる皆さんもおみえになるわけでございまして、なかなか一律にはいきにくいなという気がいたしております。

 しかし、必要な皆さん方があります以上、その皆さん方に対して生活保護というのはその入り口でもございますしいたしますから、そこからスタートをして、雇用の問題にも相談に乗り、そして立ち上がっていただくというそのきっかけをつくるという意味で必要な場合があるというふうに思います。

 事務当局にも昨日、その辺大丈夫かということを聞いたわけでございますが、いわゆる国としては、厚生労働省としては、なかったとしても生活保護は受けられるということでございますから、そこは市町村にも次の機会に十分理解をしてもらえるようにしたいというふうに思っております。

瀬古分科員 最後の一点だけなんですが、同時に今、稼働年齢を理由に六十五歳未満の野宿生活者は生活保護の適用から排除されるという事態が起きているわけです。六十五歳だから働けるだろうというけれども、もう本当に仕事がほとんどないという職安の実態でございますね。そういう場合には、やはり六十五歳以下であっても生活保護法の精神からいって適用しなければならないという場合が当然あるわけで、一律に六十五歳以下はだめというやり方はやはり乱暴だと思うのです。

 その辺はどのようにお考えでしょうか、最後に伺います。

坂口国務大臣 いろいろと検討させていただきたいというふうに思っておりますが、とにかく、先ほど申しましたように、ホームレスになられた理由もさまざまなものでございますから、一律にはなかなかいかないのだろうというふうに思います。

 フリーターとホームレスのことをわからなければ一人前でないと最近言われまして、私も勉強中でございますが、なかなか一筋縄ではいかないところのあることも事実でございますが、その内容をよく吟味させていただいて、そして……(瀬古分科員「一律で切っちゃうという問題はどうですか」と呼ぶ)いや、内容が一律でありませんから一律にはいかないというふうに思いますが、我々の方もできるだけ柔軟に対応できるようにしたいと思っております。

    〔白保主査代理退席、主査着席〕

瀬古分科員 どうもありがとうございました。

谷口主査 これにて瀬古君の質疑は終了いたしました。

 次に、石井紘基君。

石井(紘)分科員 どうぞよろしくお願いします。私は、主としてものつくり大学についてお伺いをしたいと思います。

 そもそも私は、このものつくり大学というものは要らなかったものだというふうに思っているのです。多くの皆さんの議論を聞いておりますと、名前に引かれて、これは必要ないいものだ、だけれども、というような言われ方がしておりますけれども、実は、これは全く要らなかったものですね。この点を、私、今政府委員の皆さんにいろいろとお聞きしてまいりますので、大臣ひとつ、賢明な御答弁を繰り返しておられる大臣でございますので、どうぞひとつじっくり聞いていただいて、後で御所見を賜りたいと思うわけでございます。

 まず最初に伺いますのは、ものつくり大学というものが、労働省がそもそも最初に発想したものではなかったということですね。ということは、いろいろな労働行政を担当しておられる中で、こうしたものの必要性というものを特に感じていなかったということがあると思うのです。現に、当初のいろいろなやりとりの経過を見聞きしておりますと、むしろ、労働省側は、当初は、私立大学なんてとてもできるものではない、それは職業能力開発大学校というものがあるのだからそこでやったらどうかということを言っておられるわけですね。現に、職業能力開発関係の大学等々の施設というものは相当広範に、相当充実してございます。

 伺いますが、どういうふうな状況になっておりますでしょうか。職業能力開発大学校とか短期大学校とか、そうした施設の主な名称、それから数、学生定員、それから教員、指導員等の数、いかがでしょうか。

酒井政府参考人 現在、先生今御指摘のものでいえば、職業能力開発大学校、これが施設で七カ所でございます。短期大学校、雇用・能力開発機構で行っておりますのは十、都道府県で行っておりますのは七。それから職業能力開発促進センター、六十。それから職業能力開発校、都道府県でございますが、二百十四。それから障害者の方のための職業能力開発校、これが国で十三、都道府県六。それから職業訓練を担当する指導員の養成を行う、高度な職業訓練を総合的に実施するものとして一校、職業能力開発総合大学校等でございます。

石井(紘)分科員 学生の定員等は言われなかったわけですが、例えば職業能力開発大学校、これは全国に七つあって、私もこれに限らず、ポリテクセンターだとか、いろいろなこうした施設にたびたび、数回これまでも訪れて視察をしております。これらの施設は大変、教授陣といいますか教員や指導員等も充実をしておって、各分野の高度な技能、知識を備えた先生方が、立派な先生方がたくさんおられます。それから大学そのものの敷地や施設、そうしたものも、もちろん現場でやっておられる皆さんはいろいろと不都合もおありかと思いますが、しかし、それなりにかなり立派なものでございます。

 そういう中で、例えば職業能力開発大学校、七つございますが、それの定員と、それから短期大学校の定員というものはどのぐらいございますか。それから職業能力開発校、これは都道府県がやっておりますが、これは何人ぐらい収容というか受け入れることができるのですか。

酒井政府参考人 先生、大変恐縮でございます。ただいま数字を手元に忘れてまいりまして、ちょっと問い合わせをしたいと思います。

石井(紘)分科員 多分、職業能力開発大学校というのはそれぞれがかなり大規模なものでございます。大体、全体で一万五千人ぐらいは受講できる。これは二年制プラス二年ということで、四年間学ぶことができるわけですね。それから、職業能力開発短期大学校というのも一万何千人か許容できる。これが以前の雇用促進事業団の分だけで十校あるわけです。これを近々のうちに、平成十三年度までに三校レベルアップしまして、職業能力開発大学校に事実上移行をさせようという構想だそうですね。そして三校ふやすということにもなっておるというようなぐあいで、旧事業団とそれからまた都道府県がやっておるこれらの、いわゆる技術を磨くための、あるいは指導員を養成するための施設、学校というものが全国に三百十八あるわけであります。そして教員、指導員の数も、旧事業団に三千人近くおる、それからまた都道府県にも三千人前後おる、こういうことでございまして、これこそまさに物づくりのための施設、学校ということであるわけですね。

 そこで、その上にさらに、無理やりものつくり大学というものが発想されてきた。これは、これまであらわれてきた膨大な事実関係からいいまして、まさに利権のためにつくられたもの、それ以外の何物でもないということははっきり言えるだろうと思うわけです。

 このものつくり大学というのは、目的は、あえて言ってもらいましょうか。目的はこの職業能力開発と全く同じのはずですが、何かあえて違うというところがあったら言ってください。

酒井政府参考人 ものつくり大学は、違いということで申し上げますと、建設、製造業、こういう物づくりを担う人材として、技術、技能双方に通じ、かつマネジメントもできる新しいタイプの人材を育成する教育機関である、こういうことでございます。

 職業能力開発大学校と若干の比較をいたしますれば、職業能力開発大学校の場合は、先生がおっしゃいましたように、生産現場で高度な技能、技術を有する人材を育成するわけでございますが、ものつくり大学の場合の目的は、技術、技能の双方に通じてマネジメントもできる人材、そういうこともございますものですから、産学連携によって現場の実習、インターンシップと言っておりますが、実習に加えまして現場実習というものを、長くて九カ月、四年間の間に九カ月行うといったようなこと等、経営的なこともわかるような起業家、そういうような人たちを育成していくということで、従来の職業能力開発大学校とは違った側面を持つものであるというふうに理解しているところでございます。

石井(紘)分科員 今のを聞いているとますます、全く同じだなという気がするわけでございます。技術とか技能とかと言いますけれども、それは当たり前のことで、新しい人材とか言いますけれども、それはみんな、これまでの能開の方に入っていることです。技術や技能を磨くというのは当たり前のことですね。新しい人材の養成、当たり前のことだ。それから高度なと言うけれども、高度か低度かというのは、そんなに低い能力しか養成しないのか。

 一方では、ものつくり大学というのは学士を与えるというようなことを言っているわけですね。では、大工さんとか、管工事とか、そうした技能者といいますか、そういう人たちというのは、四年間もものつくり大学へ行って何を修得できるのか。そういう人たちはこれまでの、自分の働いているところのいろいろな、先輩やら何やらのさまざまな技術を磨くシステムというのは、これまで伝統的に、歴史的にできているわけです。そんなことはへ理屈にすぎない。

 あるいは、経営がわかる起業家を育成すると。そんな、起業家を育成するなんというものは、全国何百という大学の経済学部とか商学部とか、あるいは経営学科とか、そういうところで経営者を育成しているのですよ。何を言っているのですか。

 そういうこじつけとしか思えないような理屈をつけて、無理やりこのものつくり大学なんというようなことを出してきたんだということ、今の答弁を聞きますと、これは要らなかったんだということははっきりと言えるんじゃありませんか、逆に。

酒井政府参考人 先生、若干補足させていただきますと、確かに経営を教えている大学は多々ある、これは当然のことでございますが、既存の工科系の大学におきましては、ざっくばらんに言いますと、むしろ学理の追求というものが重視されて、技術を、知識について教授をされるということは当然あるわけでございますが、物づくりの現場において必要なものをつくる実践的な技能教育、さらにはマネジメント教育といったことは必ずしも重視されていなかったのではないか。そういう点で、通常の経営のノウハウ、マネジメントを教えるという大学とは、そういう技能面のことを踏まえた上でのマネジメント、マネジメントができるテクノロジストをつくるんだというのが一つのキーワードになっておるわけですけれども、そういうことで従来のものとは違ったものでございまして、そういうものを教えることの結果、現場の統括をして、先ほども申し上げました、新しく起業を行う、あるいは事業承継等を担える企業的センスを持ちながらそういう物づくりに携われるような人材をつくるということでは、従来の大学あるいは職業能力大学校と異なった側面を持つものであるというふうに理解したということでございます。

石井(紘)分科員 もう時間もないから、そういうへ理屈はいいかげんにしてもらいたい。これは明らかに、もし能開の方のシステムの中にまだ不十分な点があったとしたら、そんな少々のことは幾らでもこっちへ入れられるわけですから、こんなもの。あなたが今言ったようなことは、民間の大学でもっともっと、それよりも何倍も何百倍も深く分析して、企画してやっていますよ。そんなことを、何も労働省が素人考えでやる必要は全くないことなんです。これだけの、三百十八の施設があり、大学校というものだけでも四年制が七つもあって、短期大学校も十もある。さらに三つふやすというような中で、幾らでもできるのです。敷地もかなりある、あるいは施設もかなり整っておるというわけですから。

 そこで、ひとつ率直に言って、大臣、これは私が申し上げますように、必ずしもこれを国で、ほとんど九十数%金を出したわけですから、まだ払っていないのもありますけれども、それほどまでして一応私学だ、国がほとんど丸抱えで金を出しておいて私学だと。今後もこれを維持していこうとしたら、相当莫大な金もかかる。ここまでして新たにこういうものをつくる必要があったかどうかという点について、率直に感想をお述べいただきたいと思います。

坂口国務大臣 昨日は児童虐待について先生にさまざまな角度から教えていただきまして、大変勉強をさせていただいたわけでございますが、きょうはものつくり大学についての先生の御見識をお伺いしたわけでございます。

 今、私の方の局長が申し述べましたとおり、詳細に見れば違いはやはりそれはあるのだろうと私も思っております。ただ、この時点で、この大学がなければ日本が立ち行かなかったかといえば、それはそんなこともなかっただろうというふうに思います。しかし、その時点のところで、日本が非常に円高や何かで大変な状況になってくる、そして日本の企業がどんどんと外国へ出ていって、さあこれで日本の中の企業が大丈夫かという、大変そうした日本の国内における心配、悲鳴といったものが満ちあふれていた時代であったことも時代背景としてはあっただろうというふうに思っております。

 そんな背景の中で、今までにもあるけれども、ひとつもう少し毛色の変わったものをつくろうという話が起こったのではないか。私はその場におりませんでしたので、これは想像でございますが、そう思っているわけでございまして、とりわけこの話が起こりましたのは一九九〇年、私もずっと歴史的経緯を見ておりますが、一九九〇年にSSF、サイト・スペシャルズ・フォーラムという、これは、どちらかといえば建設なんかのことをやっておみえになります学者あるいは現場の皆さん、そしてまた製造業に携わっておみえになります皆さん、そうした皆さんがかなり危機感を持って、何か職人大学というのをつくっていこうというふうに思われたのは事実でございまして、そこがスタートであったことも事実であります。

 その職人大学なるものと、今でき上がりつつありますものつくり大学とが同一の方向のものなのか、若干は違った方向に来たものなのかということは、私も十分に存じ上げることはできません。しかし、その辺の現場の皆さん方がかなり危機感を持って、そしてやろうということでスタートされたということだけは間違いがないわけでありまして、途中で、一九九四年ぐらいにKSDの古関さんにちょっと手伝ってくれということを言ったところから話がややこしくなったということでありまして、それまでの純粋な意味での、大学の先生や、あるいは現場の設計家や、そうした皆さん方が危機感を、今までの状況ではそこが埋まらない、今までの大学ではそこは埋まっていかない、あるいはまた今まで労働省がやっているところではそこが埋まっていかないという危機感を持たれたことだけは間違いないのではないか、そんなふうに認識をいたしております。

石井(紘)分科員 大臣、大変結構な御答弁をいただいたと思うのです。それがなければ立ち行かないということはなかったということは、必要なかったということだと私は理解するわけですね。現に、必要であれば民間からも金も集まるだろうし、需要があればそれはできるはずなわけですから、それが、民間からの寄附というのがほとんど数えるほども集まらなかったという、それによって国、労働省が一方的にざぶざぶ金をつぎ込んできたというわけですから。

 それで、労働省が八十五億という金を出して、さらに地方公共団体は六十億ということ。寄附金は五億円だけれども、これもKSDがそのうちの一億か二億。だから、本体の方は国際技能振興財団という、KGSですか、これは一億か二億しかつくれない。だから、ほとんど莫大な金というのは労働省が世話した。

 それで、今年度、平成十二年度の七十一億三千万円の予算額のうちの三十六億八千万は、KSDルートを通してもう出したのですか。まだ出していないのが直接厚生省から出す予定の三十四億五千万ですか、これはまだ出していないのですか。そして、出していないとしたら、十三年度の予算もやめたわけですから、予算から削ったわけでしょう、この十三年度の補助金予定のやつを。だから、それもやめたわけですから、これもやめたらどうですか。

酒井政府参考人 先生がおっしゃった三十六億余につきましては、KGS、KSDではなくて、KGSを通じてものつくり準備財団に助成をしておるわけでございますが、御案内の、昨年末の大学設置審議会の御指摘を受けまして、残りの三十四億五千万につきましては、今度はKGSではなくて直接……(石井(紘)分科員「それは出すのですか、出さないのですか。やめないの」と呼ぶ)それは出さなければならないというふうに思っております。といいますのは、これに基づきまして今大学開学までに向けまして諸施設の建設工事が進んでいるわけでございまして、これを出さねば開学できない、こういうことでございますので、出す予定になっております。

石井(紘)分科員 平成十三年度、予算を組んでおった十四億六千万というのは出さないことにしたわけですね。それは根拠があって、理由があって出さないことにしたわけですから、このまだ出していない平成十二年度の三十四億五千万も出すべきではないということを私は申し上げる。

 そうやって、ずるずると労働省はものつくり大学の意義についても、何か取り繕って、いろいろと弁解がましい理屈をつけておるわけですが、そういうことをやっているとどこまでも労働省の責任というものはどんどん深みにはまっていくわけです。このものつくり大学というのは成功するわけはないのです。将来ともこれに補助金をずっとつぎ込んで、相当の補助金をつぎ込んでいかなければ成り立たないと私は思うのですね。

 労働省がつくったのか知らないけれども、この将来の収支の予定見通しによりますと、平成十六年度、三年目にこれが黒字になることになっている、採算が合うことになっているのですね。これ、もし三年目に、平成十六年度でもって採算が合わなかったら、どういう責任をとりますか。

酒井政府参考人 これは私学でございますので、大学の学校法人の方でこの経営については責任を持って運営していただくことになるわけでございますけれども、今先生がおっしゃったようなことのないようにこれはぜひとも運営して、立派な人間を出してもらわなければならないというのが私どもの今の考えでございます。

石井(紘)分科員 あなた、金をまだこれからも出すのでしょう、莫大な金を。それで、私学でございますので後は知りませんというようなことで済む問題ではないでしょう。だめですよ、あなた。そういう態度だと、そういう答弁だとあなたの責任は非常に重くなります。

 そこで、この構想、計画ができた段階及びこれに予算をつけてスタート、いよいよものつくり大学の構想というものがスタートした段階、これが大体、いつごろですか、平成九年八月の概算要求で初めて予算がついたのですか、このころの責任者はだれですか。時間がないから名前だけでいいです。

酒井政府参考人 局長……(石井(紘)分科員「はい。局長が責任者ですから」と呼ぶ)担当局長は山中という者でございますが、今先生、そのときに概算要求を出した、こういうことでございまして、平成九年の八月に概算要求を出しました。そのときの局長が山中ということでございます。(石井(紘)分科員「いや、だから、計画、構想を決めて、そして概算要求を出した」と呼ぶ)

谷口主査 石井君、発言を求めて、許可を求めてやってください。

酒井政府参考人 よろしいでしょうか。(石井(紘)分科員「山中さんでいいの」と呼ぶ)予算の概算要求を出しましたときは山中でございます。十年度の概算要求を出しましたときは。

石井(紘)分科員 ちょっと答弁が、私の聞いていることに答弁しないで、逆に質問したりしている。

 私は、構想を決定して、そして予算を出すまでに時間がかかっているわけだ、そのときの責任者はだれかと言っているわけです。

酒井政府参考人 九年に私どもとしては支援をするように決めましたものですから、そのときは山中でございます。

石井(紘)分科員 では、今私が言った質問に対する答弁は、山中秀樹さんだということだと思います。

 そこで、山中さんは今何をやっていますか。

酒井政府参考人 産業医科大学の理事長でございます。

石井(紘)分科員 その産業医科大学というのはどういう学校ですか。

日比政府参考人 産業医科大学、まさに私立大学の医科大学でございますが、産業医を育成するということをねらいとしたものでございます。

石井(紘)分科員 あなたはそんなことでごまかそうとしているけれども、これはまさにこのものつくり大学と全く同じ、あるいはそれ以上の、ものつくり大学の見本のような学校なのではないですか。

 労働省が設立当時に出したお金は幾らですか。昭和四十九年から五十二年くらいまでですかね。

日比政府参考人 昭和四十九年度から五十二年度までの間で、施設整備費と準備経費、込みにしまして二百十九億円でございます。

石井(紘)分科員 二百十九億円、労働省が出してつくった。それでその後、補助金もずっと出しているわけでしょう。

 これはその後、補助金のトータルは幾らになりますか。

日比政府参考人 昭和五十三年度から平成十二年度、十二年度は予算の額でございますが、すべて合計で約二千五十六億円でございます。

石井(紘)分科員 そうすると、約二千五十六億円も昭和五十三年度からずっと出して、それで最初に二百十九億円出した。トータルすると、二千三百億円近い、二千二百八十億円。こんなお金を出してきた。

 そこに山中さんは行って、今何をやっているのですか。理事長をやっているのですか。

 それで、その大学へ労働省から天下った役員というのは、これまで何人くらいいるのですか。

日比政府参考人 昭和五十三年から現在まで、すべて合計、役員に就任した者、合計で二十九人でございます。

谷口主査 石井君に申し上げます。

 質問時間が終了いたしておりますので、よろしくお願いいたします。

石井(紘)分科員 二十九人。

 そうすると、現在は山中さんが理事長で、それ以外に労働省から行っている人はだれですか。

日比政府参考人 理事長山中以外の氏名はちょっと……(石井(紘)分科員「役職は何ですか」と呼ぶ)理事長以外で専務理事、常務理事、監事、それぞれ一名ずつ労働省出身で……

谷口主査 石井君に申し上げます。

 もう時間が終了いたしておりますので。

石井(紘)分科員 ではこれで終わりますが、このものつくり大学をつくった一番責任者だと労働省が言っている山中さんという人は、ものつくり大学よりもっと先にあった先輩ものつくり大学に今行って、こうやってやっておる。これも莫大な国民の税金をつぎ込んで天下り先にしておる。

 給料は恐らく、どのくらいもらっているのかあれですけれども、事前にもらってある表によりますと、産業医科大学の理事長の報酬は年額……

谷口主査 石井君に申し上げます。質問時間が終了いたしております。

石井(紘)分科員 二千二百万円だ、こういうことですね。こういうことで、大臣、ひとつ十分、ものつくり大学とか産業医科大学、こうしたものについて、これを早急に廃止するなりなんなりという、やはり断固とした毅然たる措置をとらなければ、厚生労働省はえらいことになるだろうということを申し上げたいと思いますが、何か御答弁がございましたら。

 では、以上で終わります。

谷口主査 これにて石井君の質疑は終了いたしました。

 次に、今野東君。

今野分科員 民主党の今野東でございます。

 まず、厚生労働大臣にお伺いしたいのですが、連日のように、医療ミスによる死亡事例を初めとしましていろいろな事故が報道されております。病院に、医療機関にかかる患者が安心して診療、治療を受けられるようにするのは国の役割だと思うのですが、これまでその点については放置してきたと言ってもいいほど国は対策を講じていなかったと思います。

 こうした医療事故について大臣はどうお考えなのでしょうか、御所見を伺います。

坂口国務大臣 確かに、御指摘を受けますように毎日のようにマスコミに医療事故の問題が出まして、大変心を痛めておる次第でございます。

 一体これをどう解決していったらいいのか。さまざまな医療機関の人たちにも意見を求め、そしてまた、医療事故防止のために一生懸命取り組んでおみえになります病院を訪問いたしたりいたしまして、この解決のために何が一番必要なのかということをいろいろと検討してきたところでございます。

 そこで、いろいろと浮かんでまいりましたのは、一つは、人と人との信頼関係。あるいはまた、人には、一生懸命取り組んではいるのだけれどもミスというものは皆無にはならない。だから、お互いのチェックをし合うというような機構をどうつくるかというような体制の問題もあります。

 それから、薬にいたしましてもあるいは機械器具にいたしましても、同じような色合い、同じような大きさ、非常によく似ておりまして、そして間違いやすいようなものが存在をする。それらをどうなくするかというような問題もあるといったようなことが今のところ浮かび上がってまいっております。

 そうしたことをなくしていくには、ただ単に医療関係者だけではいけないし、いたしますので、そういう医療器具をつくっている人あるいは製薬会社等も含めました幅広い人々の意見の集約というのが大事でありまして、そうしたことから、医療安全対策検討会議というのをつくろうということで、今その準備を進めているところでございます。まだ完全にでき上がったわけではございません、今それに取り組んでいる真っ最中でございますが、そうしたものをつくって、一刻も早く医療ミスゼロの時代をつくり上げたい、そんなふうに意気込んでいるところでございます。

今野分科員 大臣はそうおっしゃっているのですが、しかし、こんなに大きく問題視されるまで、問題があるということは認識しておられるようですが実際に医療の分野でのセーフティーネットが張られていなかった。これはなぜだとお考えでしょうか。

坂口国務大臣 その原因は、今申しましたようにいろいろあると私は思います。中には、人的配置が足りないのではないかというふうにおっしゃる方もございます。しかし、人的配置が足りているところでも医療ミスが起こっている、そういう場所もあるわけでございます。したがいまして、お互いにチェックをし合うという、その体制が一にも二にも大事、そうした体制をそれぞれの職場でどう確立していくかということが大事でございます。

 今までは、医師が、あるいは看護婦が、あるいは薬剤師が、自分の分担をするところは一人で一から十までずっとやってきた。ところが、チーム医療がだんだんと発達をしてまいりまして、多くの人がかかわり合いながら一人の患者さんを診ていくという時代になってまいりました。そういたしますと、チーム医療となりましたときに、そのお互いの連携をどう保っていくか、誤りなきようにそこをどうするかということが非常に大事になってきておりますので、その辺の対策を十分につけないといけないというふうに思っております。

今野分科員 今度の十三年度の予算で、医療安全対策のための予算というのが四億六千万円とられております。これは私はそれなりに評価したいと思います。

 この四億六千万円の中で、医療の安全確保のための日常診療における事例の収集、分析及び改善策に一億九千万円つけられております。そしてその中で、医療の安全確保のための日常診療における事例の整備というものに七千二百万円ついています。

 これはこれでいいのでしょうか。これらの情報収集の対象が特定機能病院それから国立病院・療養所となっております。対象範囲はこれだけでいいのですか、お尋ねします。

伊藤政府参考人 ヒューマンエラー等の医療のインシデントの事例についての情報収集の対象病院が特定機能病院、国立病院だけでよいのかということでございます。

 これにつきましては、私どもといたしましては、平成十三年度から初めて始める事業でございますし、また現場に大変御苦労をおかけするということもありまして、まず、当面、院内報告制度の整備されている特定機能病院と国立病院・療養所を対象に継続的な情報収集を行いまして、その後、この実績を評価、検討いたしまして、これを拡大するかどうかということについて判断をさせていただきたいと考えているところでございます。

 と申しますのも、報告をお願いするには、院内のいわゆるインシデント事例の報告体制が整っているということがまず前提になりますので、当面、この十三年度におきましては、今申し上げたような対応をさせていただきたいと考えているところでございます。

今野分科員 始めるばかりなんだから、これからスタートをするんだから、これぐらいでいいのじゃないかというようなお話だと思うのですが、私は、これから始めるからこそ、幅広くいろいろなところから情報を収集しなければ本当の意味の情報を集めたということにはならないのじゃないかと思います。

 それでは、情報収集の対象範囲をこれから拡大するということは考えていらっしゃいますか。

伊藤政府参考人 十三年度、申し上げましたように、国立病院・療養所それから特定機能病院からスタートいたしますが、その実績を評価、検討いたしまして、再度判断をさせていただきたいと思います。

今野分科員 私は、国会に来る前、議員になる前に放送の世界で仕事をしておりました。ある医療事故に遭った方、被害者の方をずっと追いかけたことがありました。この方の事故が起きたのは、この特定機能病院、国立病院・療養所から外れております。

 私がその放送の中で追いかけた人というのは、胃の全摘手術をしまして、そしてその後、手術は成功だったのですが、点滴、高カロリー輸液の中にビタミンが入っていなかった。ビタミンが入っていなかったために、ウェルニッケ脳症、記憶を重ねられなくなってしまった。幸い死亡事例というふうには至らなかったのですけれども、小さい子供がいるその男性は、家族とともに同じさまざまな経験を重ねていくことができなくなったのであります。

 これは、この病院の中から外れております。これは、大きな病院で手術をし、そして術後の面倒まで見るような大きな病院が、こういう形で漏れている。そして、そういうところで悲惨な事故が起きている、市民生活を脅かすような事故が起きている。そういうことがある中で、そこは外れていってしまうというのは、情報として果たして、高度といいますか、密度の高いものになるのだろうか。情報としての精度というのは、それではこの場合、どうお考えですか。

伊藤政府参考人 インシデントを集めまして、そしてこれを専門家によりまして集計、解析をいたしまして、先ほど大臣からも御答弁いたしました医療安全対策検討会議で、それらをもとに再発防止対策を検討していただき、それを現場に還元していくということが、この全体のシステムでございます。

 したがいまして、当面、特定機能病院と国立病院から集まるインシデント事例によりまして、ほぼ必要な分析対象事例が集まるというふうに判断をしておりまして、私どもといたしましては、一番事故安全対策で重要なことはそういう事例なり経験を共有するということでございますので、それらの分析結果をもとに、再発防止対策をすべての病院に還元をしていくということによって、当面対応させていただきたいと考えているところでございます。

今野分科員 医療事故というのは、先ほど大臣がおっしゃいましたように、医師と患者の信頼関係、それから薬あるいは器具が似通っている云々、いろいろなところで起きているわけです。ですから、どんなにその情報の収集の範囲を広げても広げ過ぎたということは私はないと思いますので、ぜひ情報収集の対象範囲を拡大していただきたいというお願いをしたいと思います。

 それで、今までのところは医療行為を行う側からの情報収集体制、不十分ながら始めようとしているということはわかりました。それでは、医療を受ける側からの情報、つまり患者の声というのはどうやって集めるのですか。

伊藤政府参考人 私どもはもう既に、昭和五十五年でございますが、各都道府県に対しまして、医療相談室というものを県が設置するように、局長の連名通知を出しているところでございます。

 当時はまだ、医療に対する患者さんの声を医療現場に反映させる、そういう考え方の中に医療事故、医療安全対策に対する認識は今日ほどではなかったと思いますが、現在の医療相談窓口の設置の要綱を読み返してみましても、県庁の中におきます医務関係、薬務関係、医療保険関係、関係部局を網羅いたしまして、そしてそこに医師を初め専門職種の参加も得て、患者さんの相談を受けとめて、そしてそれを当該関係医療機関にフィードバックして善後策を講ずるように、こういう制度が既にあるわけでございます。

 いま一度この制度を、私どもといたしましては、現在の医療事故の多発にかんがみ、これをどうやって再活性化していくかという観点から考えると同時に、またいろいろ日常の保健所におきます医療監視の結果等も踏まえて、患者さんの声を医療現場に反映させるようなことに取り組んでいきたいと考えているところでございます。

今野分科員 この四億六千万円の医療の安全確保のための対策ですけれども、この中に、医療行為を受ける側の情報も入れるのだ、体裁だけじゃなくて、実際にその病院にかかっている人たちの声もきちんと取り入れていくのだという文言も、ぜひ入れていただきたいと思います。

 それでは、もう一つお尋ねしますが、医療事故の報告の義務についてでありますが、現行法では、医療事故があっても、死者が出ない限り報告義務はありません。航空法では、機長に事故報告義務を課して、報告がなかった場合には刑事罰を含む罰則を設けています。医療事故の報告義務づけは、全国の病院に事故の原因分析、防止策を広めるためにも必要な制度だと思います。

 アメリカでは、クリントン前大統領が昨年の四月に、全米の医療機関に対して重大な医療事故のすべてを州に報告するよう義務づける方針を発表しました。これらの情報は、検討の上、原則公開されるということになっておりますが、厚生労働省では、このような医療事故報告義務づけをどう考えていらっしゃいますでしょうか。

伊藤政府参考人 いわゆるインシデントではない医療事故の義務的な報告制度につきましては、医療安全対策の大きな論点の一つであるという認識をしております。

 現行法におきましては、医師法におきまして、医師が異状死体を発見したときには警察に届けるという規定がございます。しかし、これはあくまでも法医学的な観点から、死体が通常の死に方でない、つまり法医学的に何らかの問題を疑ったときの規定でございまして、これは必ずしも医療事故を想定したものではないわけでございます。

 そこで、医療事故につきまして行政に対しまして報告義務を課すことにつきましては、刑法上の責任を問われかねない医療事故につきまして、果たしてその当事者である医師から正確な報告を求めることができるかどうかという点でございますとか、届け出を義務づける医療事故の範囲をどのように定義づけるか、さらに、患者のプライバシーにかかわる問題をどのように考えるか、そして、捜査権を持たない厚生労働省が、届け出の内容の正確性をどのように確保すればよいかといった多岐にわたる検討課題がございまして、今後、総合的な医療安全対策の検討の中で、慎重に検討してまいりたいと考えているところでございます。

今野分科員 ぜひこの問題についても、この場所だけで、慎重に考えているということだけではなくて、行動で後々お示しいただきたいというふうに思います。

 先ほど私がちょっと申し上げました、私の放送の中で仕事をしていた事例の方ですが、この方は結局病院を訴えて、そして一億以上に上る賠償をするようにという判決をいただきました。勝訴でありましたけれども、しかし、その夫婦二人の顔には喜びの表情は見えませんでした。私たちはこの一億を上回るお金が欲しいのではない、病院側からの冷静な、本当に心からの謝罪が欲しいのだということを放送の中では言っておりました。

 そして、放送を終えた後、その男性の奥さんは、本当は私たちが欲しいのは別のものです。それは何ですかと私がお尋ねしましたら、何もない日常ですと。何もない日常、子供が当たり前に学校に行き、帰ってきて、自分がつくった御飯を食べ、おいしいね、これはどうしたのという話をし、夫が勤め先から帰ってきて、そしてまた当たり前のように出ていく、何も起きない日常、これを私は欲しいのです、そう言っていました。

 何も起きない日常、これが国民の安全であります。そのためにこの四億六千万円を有効にお使いいただきまして、これは大臣にぜひお願いしたいのですが、この予算を執行するために、どうなるかまだわからないそうですけれども、ぜひしっかりした医療事故防止対策室をおつくりいただきたい、これは私のお願いであります。よろしくお願いいたします。

坂口国務大臣 つくることだけは間違いございません。そして、それをつくるからには立派な形にして役に立つものにしたいというので、今検討を進めさせていただいているところでございます。

 先ほど、大きい病院だけで小さいのをほっておくのかというようなお話もございましたが、とにかく大きいところからまず始めさせていただきたいというふうに思います。それは、やはり高度医療は大きい病院で集中して行われるものでございますから、見ておりましても、医療事故というのは大きいところで起こりがちになっている。これは非常に残念なことでございますけれどもやはりそういう傾向がございますので、とりあえず大きいところでやらせていただいて、しかし、大きいところは大きいところ、小さな病院は小さな病院、それぞれ起こり方も違うのかもしれない、それは先生御指摘のとおりだろうというふうに思いますから、決して捨てていくつもりはございませんが、まず大きいところからスタートをさせていただきたいというふうに思います。

 病院が大きかったら起こらないかといえばそうではない、また、院長だったら過ちを犯さないかといえばそうでもない、大学の教授だからミスを犯さないかといえばそうでもない、ことし出たばかりの先生だから起こしやすいかといえばそうでもない、そこに医療ミスの非常に難しいところがあるわけであります。

 そうした点を勘案しながら、十分に、医療ミスというものが起こらない体制を制度としてどうつくり上げていくか、人の配置としてどうつくり上げていったらいいか、あるいはまた薬剤や医療器具の問題をどうしていったらいいか、今先生がお話しになりましたような、本当に普通でない御家庭というものができないように、私たちは全力を挙げていきたいと考えております。

今野分科員 それでは、医療事故に関しての質問はこれぐらいにいたします。

 余り時間がありませんが、続いて、年金の問題についてちょっとお尋ねいたします。

 女性の年金問題なんですが、結婚している女性は、国民年金の第三号被保険者となりますが、夫が職を失う、あるいは年収百三十万円以上の仕事に本人がつくと、これは届け出によってさらに別の号の被保険者になっていくわけなんですけれども、去年の秋に、この六十億円の徴収漏れがあったというニュースがありました。これについてどのように対処していらっしゃるのでしょうか。お尋ねします。

冨岡政府参考人 ただいまの点についてお答え申し上げます。

 年収百三十万円以上になりますと、厚生年金の二号被保険者、被用者保険の被保険者の方の被扶養者にならないということで第一号被保険者になるということで、保険料を納付する必要が出てまいります。

 ところで、この場合に、年収百三十万円以上であるかどうかということが実はポイントになるわけなんですが、これは御本人の申告によりまして把握するということになっておりまして、そういった点から、御本人の申告でなかなか確認しがたい点があるものでございますから、御指摘のようなことが生じたと会計検査院からも御指摘を受けたということでございます。

 ただ、こういったことにつきまして、制度を厳正に運用して信用性を高めるためには、やはりできるだけいろいろな手段を通じて把握しまして、適正に納めていただく、そういうことが非常に重要なものでございますから、私どもといたしましては、この報告を受けまして実務の実態を洗い直しまして、どうすればこういったことが少しでも防ぎ得るのか今検討しておりまして、こういったことの厳正な適用につきまして本当に努力してまいりたい、努力中ということでございます。

今野分科員 今度は別のケースですが、夫が転職など再就職をした場合、あるいは妻である本人が年収百三十万円以上の仕事をやめた場合、再び第三号被保険者としての資格ができるわけですが、社会保険事務所に再登録しなければいけないことを知らなかったために、受給資格が回復してから再登録するまでの空白期間というのがしばしば生じますね。特例の救済措置で二年はさかのぼって支払いを受けることができるようになっておりますが、それ以上の場合の救済措置についてはどのようにお考えなんでしょうか。

坂口国務大臣 先ほどからお話ございますように、厚生年金保険に短期間適用されていたことについて認識がなかった場合、それから今お話しの第二号被保険者である配偶者の転職あるいは退職を知らされていなかったといったこと、こうした理由によりましてこの問題が起こっているというふうに思っております。

 それで、一部の社会保険事務所におきましては、二年を超え、さかのぼって納付済み期間と認める取り扱いを行っているところもあるというふうなこともございまして、これをどういうふうにしていったらいいか。すべてそれを認めるのか、それとも一応整理をして、その中で認めるべきものは認めるようにするのか、こういったことについて現在検討を進めている。これはやはり法律事項になってくる可能性もあるわけでございまして、それならば法律を改正しなければなりません。そのこともあわせて今検討させていただいておるところでございます。早く結論を出したいと思っております。

今野分科員 現行の制度ですと、離婚した女性には、前の夫との間での年金分割制度、あるいは未亡人には夫が死亡した場合の遺族年金受給の権利がありません。アメリカでは、十年以上結婚した夫婦が離婚をして再婚していない場合、前夫の年金受給額の半分、五割、また、十年以上夫婦だった夫が死亡して再婚していない場合というのは、前の夫の受給額の十割を受けられるようになっておりますが、こうした制度を参考にして、制度を変更するという予定はいかがでしょうか。

桝屋副大臣 私の方からお答えをしたいと思います。

 今野委員御指摘の女性の年金の問題でありますけれども、一つは、我が国の場合、今アメリカの例がお話がありましたけれども、基礎年金について申し上げますと、妻自身が国民年金の第一号被保険者あるいは厚生年金の被保険者として保険料を納付してきた期間については、それを根拠に年金が計算をされる。そして、妻が国民年金の第三号の被保険者であった期間については、離婚しましても、離婚後も保険料納付期間としての取り扱いは変更されず、これを根拠に年金が計算をされるものであります。

 したがいまして、今野委員、六十年の年金改正で、我が国は、基礎年金の部分については女性の年金権というのはかなり整理されたのだろう、こういうふうに私は思っているのですが、今、離婚の増加というお話もありました。個人の年金権の確立という観点から、基礎年金に加えて二階部分も例えば年金権を分割すべきではないか、こういう御意見もあるわけでありますけれども、この年金権の分割については、我が国においては、夫婦の結婚期間中に取得した財産の半分は妻のものだという考え方がなかなか定着しているとは言えない、それから、現行民法は夫婦別産制をとっておりまして、妻の財産権は個別の事情に応じて司法手続を通じて調整をされるというようなこともあるわけでありまして、なかなか難しい問題があるわけであります。

 そんなことも含めまして、委員御指摘の女性の年金権ということで、ただいま女性のライフスタイルの変化等に対応した年金の在り方に関する検討会をやっておりまして、ここでしっかりと議論をさせていただこう、このように考えております。

今野分科員 時間がありませんので、ここでお願いをして質問を終わりたいと思いますが、女性が働いている夫の附属物であるかのような第三号被保険者というこの制度、どうも時代にもう合わないのではないかという気がしております。ぜひ、女性を女性として認めるという意味でも、これら年金制度のよい方への改革をひとつ検討をお願いして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

谷口主査 これにて今野君の質疑は終了いたしました。

 次に、金子哲夫君。

金子(哲)分科員 社会民主党・市民連合の金子でございます。

 きょうは、一九五四年の三月一日にビキニで被災をされて四十七年目、いわば広島、長崎から、日本における三番目の被爆の日であります。ちょうどこの日に被爆者問題について質問させていただくことも、何かの縁だというふうに思っております。私は、広島で原水禁運動を長くやっておりまして、そういう観点から、被爆者問題について幾つか御質問をさせていただきたいと思います。

 御承知のように、一九九四年に国会で、原爆被爆者の援護等に関する法律、いわゆる被爆者援護法が制定をされました。労働大臣も、当時、国会議員としてこの援護法の制定には賛成の立場であったというふうにお伺いをしておりますけれども、残念なことですけれども、この援護法には国家補償というものが盛り込まれませんでした。

 特に私が問題だと思っておりますのは、その際に、特別葬祭給付金が支給されたわけでありますけれども、支給が被爆者に限定をされた、こういうことがありまして、例えば学童疎開中のために親兄弟すべてを失った、そういういわば原爆孤児と言われる人たち、また、戦争に行って外地に行ったために当時被爆をしなかった、だけれども家族は全部失った、そういう人たちがこの給付を受けることができない。そういう立場の人たちは、家族が被爆死をしながらも、その遺族に対して一切の給付金も支払われていないのが現状であります。

 私は、そこに、国家補償というものが欠落をした援護法の大きな問題があるというふうに考えておりますけれども、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

坂口国務大臣 原爆問題について熱心にお取り組みをいただいておりますことに敬意を表したいと思います。

 前回の法律ができますときに私も一生懸命やらせていただきまして、そのときはそちら側に座っておりまして、国家補償をきちっとすべきだと私も一緒に言っていた一人でございますが、いろいろそのときにお考えをいただきましたけれども、しかしそこまでは至らなかった、それにはそれなりの理由があるというふうに思っているわけでございます。

 ただいまも、国家補償という観点が欠けているがゆえにいろいろの問題が起こっているというお話がございました。すべてがそうかどうかというところまで私も整理ができてはおりませんけれども、しかし、今御指摘になりましたような、当時疎開をしておみえになりました皆さん方が、その留守の間にと申しますか疎開中に、おうちでお父さんやお母さんを亡くされるというようなケースも、これはやはり現実問題として多くあったのだろうというふうに思います。それは想像にかたくありません。

 そうしたときに、本当に心情的には、その皆さんもなぜ同じにしてあげられないんだという思い、心情的なものは私も委員と同じような思いをするわけでございますが、しかし、片や原爆以外の戦争犠牲者との間に著しい不均衡を生じるものであってはならないという、基礎にそういう考え方があるわけでございまして、その考え方からいきますと、なかなかその部分だけに光を当ててということがいきにくいことになっているわけでございます。

 心情的には、本当に御一緒にしてあげたらという気はいたしますけれども、越えるに越えられない一線がそこにありまして現状の状態になっておりますことを、ひとつ御理解もいただきたいというふうに思います。

 もう五十五年という歳月が流れてまいりましたし、きょうは長崎の方の原爆のお話も最初に出たところでございますが、そうした意味で、風化させないで、もう一度また見直しを行おうという機運になってくる可能性もあるわけでございまして、これからまた、そうした問題も含めて、検討はやはり続けていかなければならないと思っているところでございます。

金子(哲)分科員 ぜひ検討していただきたいと思いますけれども、何といいましても、重ねて申し上げるようでありますけれども、死没者に対してやはり弔意があらわされていないというところに一番大きな問題がありまして、またその上に、家族すべてを失って、子供の時代に学童疎開ですべての人を失い、一人で戦後を生きてきた人、そして、この援護法ができたときに、実はその特別葬祭給付金で両親のお墓を建てたい、そんな思いを持ち続けられた方がいらっしゃるということをぜひ胸に刻んでいただいて、そういう方向で、そういう死没者に対しての弔意があらわせる方法というものをぜひ今後も検討していただきたいということをお願いしておきたいと思います。

 そこで、次にお聞きしたいことは、いわゆる原爆症の認定の問題についてであります。

 昨年の七月に、いわゆる松谷訴訟の判決が出まして、そしてまた十一月七日には京都の原爆訴訟の判決も出されております。いずれも認定審査会では認定されなかったものが、この裁判では覆されるという結果になっております。

 その判決を受けて、当時の篠崎保健医療局長も、判決の内容をよく検討して今後の認定行政に生かしていきたい、これはマスコミの質問に答えて答弁をなさっております。いわば国のこれまでの根拠となっておりましたのは、DS86に基づいて、機械的とは言いませんけれども、そういう基準でやられてきたことに対して、裁判を通じて一定の判例が出たわけであります。その問題について、厚生省の中ではそれを受けてどのように検討をされ、どのようにその後の認定行政に生かされているか、お聞きしたいと思います。

篠崎政府参考人 御指摘のこの判決におきましては、原爆症の認定要件でございます原爆放射能の証明の程度について、相当程度の蓋然性の証明では足りず、高度の蓋然性を証明することが必要と判示しておりまして、これまで行ってきた原爆症認定のあり方そのものを覆すものではないというふうに認識をいたしております。

 しかしながら、今回の判決を踏まえ、個々の被爆状況をより詳細に把握しながら、より適切な認定が行われるよう配慮する必要があると考えておりまして、今後の認定のあり方につきましては、原爆被爆者医療分科会の委員の御意見も伺いながら、その改善に向けて検討してまいりたいと考えております。

金子(哲)分科員 いずれにしましても、今局長もおっしゃいましたように、それは確かに高度の蓋然性とかいろいろなことも補足されておりますが、審査会で認定されたものが覆ったという事実はあるわけでありまして、そこにはやはり何かの問題があったから覆ったわけでありまして、そのことは十分に認識をして認定行政を行っていただかなければならないというふうに考えております。

 そのことと関連しまして、原爆症の認定にかかわる審査においては、大体毎年三百件ぐらいの認定審査が出ているというふうに私はお聞きをしております。

 多くとは言いませんけれども、これは数字があればお答えをいただきたいと思いますが、認定を受ける人と認定をされない、却下をされる場合とが、大体半々ぐらいではないかというような意見もありますし、私の身近の方の場合にはほとんど却下をされておりまして、非常に不満が多いわけでありますけれども、そのことはいろいろ審査をされた上の結果ですので、とりあえずおきましても、問題なことは、この認定審査会の中で判断基準というものが公にされていない。ですから、申請を出す被爆者にとって、何が基準になって、一体、どういうケースとどういうケースがだめで、どのケースはオーケーだということが、自分自身で納得がいかないケースの方がほとんどであります。

 私は、やはり労災の認定でもそうでありますけれども、一定の基準がありまして、皆さんが納得のできる基準の上にそういう審査が行われるのが普通であると思いますけれども、これまで私が知る限りにおきましては、この判定基準というものが、少なくとも被爆者の皆さんに明らかにされたということは聞いておりません。

 そこで、一体、今この審査会ではどのような判定基準があって判定を行われているのか、そのことをまずお答えいただきたいことと、同時に、この判定基準は透明性を増すということからも公開をするのが当然のことだというふうに考えておりますけれども、今の状況を含めましてお話をいただきたいと思います。

坂口国務大臣 局長から具体的な話をいたします前に、私から一言だけ申し上げておきたいという気がいたします。

 先ほどの松谷訴訟におきましての判決、これは詳細に読めばいろいろなことがあるんだろうというふうに思いますが、一つは、今までのように、例えば爆心地からの距離ですとか、一律な見方というのはだめですよ、もう少し、言葉は難しいですが、相当程度の蓋然性の証明では足りない、高度の蓋然性を証明することが必要だ。いわゆる個々の被爆状況をより詳細に把握をして決めなきゃいかぬ。個々には、距離は同じでも、そのときのおりました位置だとか、体のそのときの位置だとか、あるいは建物との関係だとか、さまざまなことがあるんでしょう、その個々のことをよく見ながら決めなきゃいけませんよということが、この松谷訴訟の一つの意見ではないかという気がいたします。

 そういたしますと、そこに、一つでの判断基準ということはなかなか難しいことになってくるのかなと。基礎的なことでのある面での共通した判断基準というものは、これは必要だと思いますけれども、それにプラスして、その個々の、固有の状況というものを十分に判断してくださいよということなんだろうと思いますから、そこはかなり複雑になってくる可能性があるということを思っておりまして、そうしたことがあることを御理解いただいた上で、その基礎的なことの判断基準、局長の方から少し御意見を申し述べたい。

篠崎政府参考人 今大臣が申されたとおりでございまして、私は、そのほかの御質問の中で認定の率のことのお問い合わせがございましたが、毎年違うのでございますけれども、平成十一年度、直近の数字で申し上げますと、審査件数三百六十で認定件数が百八十七、約五二%、却下が百七十三、四八%ということでございます。

 それからもう一つ、公開の問題の御質問がございましたけれども、これは、個別の認定申請者につきまして、医学的なものあるいは環境条件等を個別に審査をいたすものでございますので、私どもとしては、公開にはなじまないのではないかと思っております。

金子(哲)分科員 大臣それから局長がお話しになりましたので、本当は質問の中に入れておりませんでしたけれども、それでは申し上げますが、今、五十五年たって、五十五年前のそのような細かい状況が本当につぶさに検証できるのでありましょうか。

 私は、例えば今、私の先輩の認定申請書を手に持っておりますけれども、建物の陰であったとかそんなことまで、あの当時の状況の中で、どの建物が壊れ、どの建物が残っていたかもできない状況の中で、そういう判断基準をおっしゃるということは、被害者にそれを証明しろということは到底難しいと私は思うのですね。

 ですから私は、そうであるならば、もっと被爆者の立場に立って、そもそもこの援護法というのは、被爆者、被爆という特異性にかんがみてもともと出発した法律であるわけですから、被爆者に対して、被爆者の立場に立った認定審査というものがあっていいのではないかというふうに思っております。

 そして、あえて申し上げれば、例えばこの方だって、お医者の診断書を出しているわけですね。ここで広島の医者が原爆との関係を明確に言っているわけです。じゃ、それを否定できるほどのものがあるとするならば、やはり一定の基準というものが明らかになっていないと、それは被爆者にとっては納得いかないというふうに私は思うのです。それも、今おっしゃったように、半分が却下をされているわけでありまして、そのことをもっと考えていただきたい。

 しかも、さっきの、もとに戻れば、松谷訴訟で現実的に厚生省は負けたわけですから、裁判で。そういう事例があるわけですからね。そのことを本当に真剣に受けとめてやっていかないと、私は、五十五年前のあの記憶の状態で、しかも混乱した状態の中で、あの建物の陰であったとかどうとか、例えばの話ですよ、そんなことがこの認定の申請書の中に記載されることは到底不可能なんですよ。

 私は、その点で、もっと心のある、そういう被爆者の認定作業というものをやっていただきたい。そして、一定程度の基準づくりというものをやはりこの際進めていって、そしてそういう方向性を、今すぐ出せないということでありますけれども、しかし、これは今情報公開の時代になっておりまして、自分がどういう判断の基準に基づいて判定されたかもわからないような時代というのはあり得ないわけでして、自分の命にかかわる問題を申請しているわけなんで、その点について、新しい判定基準というか、あの裁判も受けた上で、ぜひそういう作業を進めて、もっと被爆者に対して納得のいくような認定行政を進めていただきたいと思うのです。

坂口国務大臣 委員のお気持ちとそんなに違わないというふうに思っています。私の例の挙げ方が悪かったのかもしれません。

 高度の蓋然性というのがどういうことを意味しているのかということをもう少し慎重に私たちも分析をしなければならないというふうに思いますが、例えばの話で、みんな同じように見てはいけませんよ、その人はその人の状況というものを十分にやはり尊重しなければいけませんよということを言っているのではないだろうかという気がするわけですね。

 それで、そういう意味で、例えばの話で私の足りない知識の中で挙げた例ですから、あるいはそれはかえって失礼であったかもしれませんけれども、そういうその人その人固有のそのときの状況というものも十分に尊重をしながら、もう少し真剣に一つ一つを検討しなければなりませんよ、距離やそのことだけで、ただ十把一からげにここだからだめだとかなんとかいうようなことではいけませんよという趣旨ではないかというふうに考えますが、あるいはもっと高度な何かの意味合いがこの中に含まれているとすれば、それは私たちももう少し勉強をさせていただきたいというふうに思っております。

金子(哲)分科員 私の思いは先ほど申し上げましたので、大臣の方もそれは受けとめていただいていらっしゃると思います。ただ、私自身も、この認定作業が非常に困難な作業だということは十分認識をしております。でも、なおかつ、やはり被爆者の皆さんの気持ちを思うときに、このことはぜひ明らかにしていただきたいという思いで申し上げておりますので、そういうことを含めて、ぜひ今後も検討していただきたいというふうに思っております。

 この認定の問題でもう一つお伺いしたいのは、実は、申請から認定が出るまでの期間の問題でございます。

 私が聞いておりますのは、大体、申請が出されてから半年以上、場合によれば一年かかるケースもあるというふうにお聞きをしております。何といいましても、被爆五十五年も過ぎまして、被爆者、出される皆さんは非常に高齢化が進んでおります。まず最初に、今、認定審査が、申し出から審査判定が行われるまで大体どれぐらいかかっているか、ちょっとお答えいただけますか。

篠崎政府参考人 詳しい数字は持ち合わせておりませんが、担当の者から聞いておりますところによりますと、申請して、途中で照会等がなかった場合でございますが、六カ月以上一年未満ぐらいのところがおおよその数字だろうというふうに言っております。

金子(哲)分科員 わかりました。私が認識していることと同じぐらいの期間だと思います。

 先ほど言いましたように、被爆者の皆さんが非常に高齢化をしていらっしゃいますものですから、とにかくこの時間をできるだけ短縮してほしいということが私の思いであります。今回、昨年の九月―十二月とちょっと省庁再編もありまして認定作業がおくれたようでありますけれども、そのことはとりあえずおきますけれども、大体、申請をされて判定が出る間に何人かの方がやはり亡くなられるんですね。認定審査決定が亡くなられた方に届くというケースがやはりあるわけです。特に最近の高齢化のことを考えてみますと、今、この時間短縮というのは私は本当に急がれると思っております。

 私は、一つの節目としては、ことしの八月六日、総理または厚生労働大臣、広島にまたお見えになると思いますけれども、その際には、こんなことで、出されたら二、三カ月で必ず認定しますよというようなことが御返事できるようにぜひ努力していただきたいと思いますが、どうでしょうか。

篠崎政府参考人 私どもも、認定審査の効率化につきましては全力を尽くしたいと思っておりますし、今よりいっときも早く申請から通知まで行けるように努力をしたいと思っております。

坂口国務大臣 努力をいたします。

金子(哲)分科員 ぜひ、坂口厚生労働大臣、八・六にもしお見えになりましたら、その際は努力の結果が出ますようによろしくお願いをいたしたいと思います。

 それでは、もう一つ、次に在外被爆者問題について御質問させていただきたいと思います。

 毎年八月六日、先ほど申し上げましたように、総理並びに厚生労働大臣が広島、長崎にお見えになって、被爆者の代表からの要望を聞く会というものが開催をされております。昨年の広島における要望を聞く会において、この在外被爆者問題が出てまいりました。

 その際、森総理が、この件については、日本に来られれば適用される、だけれども、行けない家庭、経済的な事情もあるかもしれない。行く金がない、それは自分で考えてつくりなさいというのでは不親切だと思う。何ができ得るかということ、どのような援助が可能なのかということを検討したいというお話がありまして、それを受けて当時の厚生大臣も、検討してみたいということをお話しになりました。

 あれから半年以上たちましたので、その検討の状況についてお聞かせを願いたいと思います。

篠崎政府参考人 在外被爆者の方々の支援につきましては、これまで、韓国の被爆者に対する渡日治療の実施や、あるいは、外務省におきまして人道的な基金拠出を行っておりますほか、北米、南米の被爆者の方々に対します健康診断の実施など、それぞれの国々における被爆者の実態などに応じて、可能な限り必要な援護策を講じてきたところでございます。これらの国々のほかには、在北朝鮮被爆者に対する支援の要望もございますが、現在、どのような措置が可能であるか、外務省を中心に検討をしているところでございます。

 なお、全体として在外被爆者の渡航費用についての支援ができないかというお尋ねもございましたが、その費用の性格上、一義的には御本人に負担していただくものというふうに考えております。

金子(哲)分科員 渡航費用などは聞いておりませんで、今答弁なさったことは今までの厚生省が答弁されたことと同じことをおっしゃっているわけで、そういうことを聞いているわけでなくて、森総理は、そういう現状も踏まえながら、そういう問題がありますね、じゃ、それは大変なことですから、そのことについて検討しましょうということをおっしゃっているわけで、今までこんなことをしましたということは私も百も承知していますよ。その上で質問しているんですよ。今の答弁では何のことかさっぱりわかりません。何を検討されたんですか。

 大臣のお答えをお願いします。

坂口国務大臣 森総理がそういう御答弁をしておみえになるということでございますから、森総理がどういうことをおっしゃったのかということも検討しなければなりませんが、これは見ました。森総理の御発言も見たところでございますが、日本と北朝鮮という、外交関係のない国のことでもございますから、外務省ともよく相談をしながら決めていかなければならないというふうに思っております。これはしかし、総理がおっしゃったことを私たちも重視をしていかなければならないわけで、十分に検討させていただきたいと思います。

金子(哲)分科員 ちょっと認識が違うと思うんです。私は、あと次のことで、いわば北朝鮮、在朝の被爆者の問題をお聞きしたいと思いますけれども、そのように外務省と相談をして、今、調査が、どういうことが可能か検討されているということでは前に進んでいただきたいと思いますが、この森総理の発言は、北朝鮮の問題ではなくて、在韓の被爆者を含めた在外被爆者の問題として質問が出たことに対してお答えになったのであって、北朝鮮に今国交がなくて非常に困難な問題があることは、私も二度も北朝鮮へ行って在朝の被爆者問題を調査してまいっておりますので、重々承知をしております。

 そのことではないのでありまして、今、例えば日本に渡日をして手帳を持って帰られた方が再び来ようと思う、前に手帳を持っていらっしゃった方が帰国をされた、そういう人たちに対して、在韓の被爆者に対してどうかということがあの要望を聞く会では問題になったのであって、北朝鮮の問題ではないということ、その上で答弁してください。

坂口国務大臣 わかりました。そういうことであれば、そのように私たちも考えなければならないというふうに思いますが、韓国の方からは、むしろ、もう日本にわざわざ行かなくても、こちらでも医療が発達をしてきて、こちらでも十分にやれるようになったから、そうしたこちらでやれる体制のことも考えてほしいといったようなお話があるやに聞いたこともございます。

 そうしたことも考えていかなければならないだろうと思いますが、北朝鮮の場合にはそういう状態にはまだなっていないのではないかという、これも、いやいやそんなことはない、もっと北朝鮮は医療も発達してきているんだというふうなことであればそれは別でございますけれども、私の認識では、北朝鮮は韓国ほどではないのではないかという気もいたしますから、その辺のところをどうするかということを韓国との問題も含めまして考えたいと思います。

金子(哲)分科員 時間もありませんのであれですけれども、ぜひ、在朝の被爆者問題については、私は、まず急ぐべきは在朝の被爆者の実態を把握することが一番大事だと思います。幸いにして一九九五年に北朝鮮にも被爆者協会ができまして、被爆者が今組織されておりますので、そういう組織などを含めて調査が可能ですので、ぜひやっていただきたい。そして、韓国の場合は既に被爆者協会はできておりまして、かなり被爆者の状況は詳しいです。

 ただ、最近の医療の問題をおっしゃいましたけれども、最後の質問なりお願いになるわけですけれども、一番今韓国の被爆者の皆さんが望んでいらっしゃることは、在外の被爆者の皆さんが望んでいらっしゃることは、被爆者健康手帳を日本に来て取得した、それが、帰った際、国外に出た際に効力を失って役に立たなくなっているこの現状について、実はいろいろなところで裁判も含めて起きております。

 先ほど言いましたように、被爆者の皆さんが、それは日本だけでなくて在外の被爆者も含めて、高齢化が進んでいるわけでありまして、この問題の経過の中には、厚生省の局長通達が出されて、この問題について非常に難しい困難な状況になっているということも、私も過去の経過としては知っております。しかし、これほど強く在外の被爆者の皆さんが、昨年も秋に厚生省にお見えになってこのことをお願いされたと思いますけれども、そういう人道的な立場を含めて、この被爆者健康手帳の適用を含めた被爆者救援というものをぜひ進めていただきたい。

 そして、北朝鮮については、残念なことですけれども今までほとんど実態がつかめていませんでしたので、この実態把握をまず早急にやっていただいて、北朝鮮とはまた、今の国交の問題もあってなかなか困難な状況もありますので、必ずしも同じレベルで進むとは私も考えておりませんけれども、そのことも忘れずに、在外の被爆者、北米、南米も含めまして、ぜひ援護法の適用ができるように前向きに検討していただきたいということを申し上げて、もし大臣の見解があればお聞きをしたいと思います。

桝屋副大臣 先ほどから金子委員のお話をずっと伺っておりまして、敬意を表したいと思います。私も山口でございますから。

 それで、先ほどからのお隣の国との被爆者の取り扱いの問題、ずっと主張を聞かせていただいておりますが、森総理のお話もさることながら、決して何も検討してないわけではないのでありますが、南と北の情勢もあって、今までの経緯もあって、なかなか難しいということもひとつ御理解をいただきたいと思います。

 御指摘の、まずは北の実態調査、これについては、外交がないということは十分御承知の上でのお話でありますので、今後とも外務省を中心に検討をしていきたいというふうに思っておりますが、現時点では、御指摘の実態調査を含めて、いつ何ができるかということについてはまだ申し上げられる段階ではありませんけれども、引き続き厚生労働省としては外務省に対して必要な協力を行っていきたいというふうに思っているところであります。

 それからもう一点、被爆者援護法の適用の問題。これも、私も前の法改正のときにも随分悩んだ問題でありますけれども、やはり現時点では、今の制度は日本国内に居住または滞在をしているということが要件である、これは十分おわかりだろうと思います。ここを何とかしろ、こういうお話でございますが、この被爆者援護法の給付が公的財源で賄われているということ、それから他の制度との均衡、大変冷たい言い方になるかもしれませんが、やはり考慮をせざるを得ないということがございます。

 したがって、国内に居住、滞在していない在外被爆者に対して被爆者援護法に基づく給付を行うことはなかなか難しい。これは委員、訴訟でも争われていることでありまして、こうした国の主張をしているところでありますので、どうぞ御理解をいただきたいと思います。

金子(哲)分科員 ありがとうございました。

 最後の、援護法の適用については、今までの経過は経過として十分承知しておりますが、今おっしゃっていただきましたように、被爆者が高齢化している現状を考えて、人道的な問題も含めまして、ぜひこれからその問題についてできる限りの検討をしていただきますように、最後にお願いをして、質問を終わりたいと思います。

谷口主査 これにて金子君の質疑は終了いたしました。

 次に、鈴木康友君。

鈴木(康)分科員 民主党の鈴木康友でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。まず初めに、少し大きな視点から御質問をしたいと思うのです。

 昨日、皆さんも御存じのとおり、株価が一万三千円を割り込みました。本日も、最終引け値で一万二千六百八十一円、さらに値が下がったわけであります。昨日、また日銀が緊急の異例の連続利下げを行うということで、公定歩合が〇・一%下がりまして〇・二五%となりました。これに関しては、私は余り効果がないと思うわけであります。一方、先日、景気は緩やかな回復基調にあるという発表がなされたわけでありますが、これが全くでたらめなジャッジであったということは、今の状況を見れば明らかであると思うわけであります。

 こうした中で、既に百兆円を超える景気対策が行われているわけですが、全くその効果があらわれてこない。一方で、景気回復のかなめだというふうに言われている個人消費、これが落ち込んだままであるわけですが、その一方で貯蓄は異常にこの国で伸びている。こうした状況をいろいろかんがみますと、やはりこの日本には相当強い将来的な不安というものが渦巻いているのではないかというふうに思うわけであります。それを分析しますと、一つは、年度末に六百六十六兆円というふうに言われていますこの国が抱える借金に対する恐怖、もう一つは、一向に将来像が見えてこない社会保障制度に対する不安であるというふうに思うわけであります。

 そういう意味で、この不安を取り除くためには、財政再建への道筋を示すことと社会保障の明確な将来ビジョンを提示することだろうというふうに思うのですけれども、冒頭、大臣に、この点についての御所見をお伺いしたいというふうに思います。

坂口国務大臣 ことしのお正月に各地域ごあいさつに回りましたときに、経済界にお邪魔をいたしましても、あるいは連合にお邪魔をいたしましても、どこにお邪魔をいたしましても、現在の景気を回復させるためには社会保障を確立しなければなりませんね、現在のこの景気の低迷、それは消費者物価の低迷にありますね、この消費者物価の低迷は、やはり社会保障のところに原因がありますね、こういうお話をどこへ行きましても全部聞きました。私は、そのとき、正直申しまして、それはそのとおり、大いに関係はしているというふうには思っておりましたが、それほど各団体からそういうお話が出るとは思わなかったわけであります。

 私は、関係はしているけれども、ほかにも原因はあるでしょうと。日経連に行きましたら、もう少しそれは皆さん方の方の労働収益性を高めていただくということをやってもらわないといけないのじゃないですか、すべてを社会保障にかぶせていただくのは年金も少しかわいそうですね、こんな話も実は申し上げたわけでございます。しかし、皆さん方がそういうふうに御指摘になるお気持ちというのは、十分に私も理解をしているつもりでございます。

 先ほどもお述べになりましたように、だんだんと貯蓄率が上がっていくという状況を考えましたときに、やはり年金なり医療なりというところをもう一遍精査をして、システムとして安心できるものにしなければならないのではないか。将来どれだけの年金の額があるかとか、あるいは医療に対してどれだけの割合で見てもらえるかといったようなことだけではなくて、本当に安心できる制度かどうかという、そのシステムのところに私は最も大きな問題があるのではないか、そんなふうに今考えているところでございます。

鈴木(康)分科員 今大臣の御所見をお伺いしまして、基本的には私も同じような思いを持っていますので、そういう問題意識を持っていただいているというふうに理解をしたいと思います。

 特に、今大臣もおっしゃられましたが、社会保障制度の中でも、やはり年金の問題というのは将来に対する不安と非常に直接的に結びついているだろうと思います。特に、その中でも、基礎年金として国民年金、これが非常に私は重要だと思うのですが、残念ながら、今その国民年金の加入状況を見てみますと、そうした不安やこの制度に対する不満というものがその状況にあらわれているのだろうと思います。

 現在の国民年金への未加入者、あるいは加入はしているけれども保険料を払っていない未納者、そしてまた免除者、この人数がどうなっているかを御質問したいと思います。

冨岡政府参考人 国民皆年金のもとで、平成十一年三月末現在で公的年金の被保険者数は七千五十万人となっておりますが、このうち、自営業者等から成ります第一号被保険者数は二千四十三万人でございます。

 お尋ねの国年の保険料免除者数は四百万人となっております。また、未加入者でございますが、調査結果によりますと、未加入者数は平成十年十月現在で九十九万人という調査結果がございます。それから、未納者でございますが、現時点でとらえられております調査結果では、平成八年三月末現在の未納者数は百七十二万人、このような結果が出ております。

 以上でございます。

鈴木(康)分科員 総体としての七千五十万人のうちのサラリーマンの人たちは半ば強制的に保険料を徴収されているわけですから、この第一号被保険者の問題というのは大きいと思うのですね。これは、足してみますと六百七十万人ぐらいですか、約三分の一ぐらいが保険料を払っていないということになるわけでありまして、これがよく言われる空洞化という問題だというふうに思います。

 ますます空洞化というものが進んでいるわけでありますが、こうした未加入者あるいは未納者に対して、それを是正するという対策は、どのような対策をとられているのか、御質問をしたいというふうに思います。

冨岡政府参考人 まず、未加入者の問題につきましては、適用を進める努力をかなり進めておりまして、例えば、二十になったときに届け出がない方につきましても、住民基本台帳に基づきまして年金手帳を送りまして、それでもう被保険者として適用するといった努力は続けられておりまして、未加入者自体は減少傾向にあるというのが現状でございます。

 一方、未納者でございますが、この問題は、私ども、制度を厳正に運営し安心した制度とするために大変重要なことと認識しておりまして、従来から、例えば、未納が続きますと年金権に結びつかない、こういった極めて重要な情報につきましての広報、それから中学生、高校生に対します年金教育、それから口座振替の促進、こういったことを奨励してきております。

 さらに、実は、十四年四月からこの徴収が、市町村が行っていたものが、地方分権の実施によりまして社会保険事務所が行うことになります。こういったこともありまして、私どもきっちりとした体制を組みたいと思っておりまして、いろいろな対策を講じてまいりたいと思っております。

 例を申し上げますと、従来、納付窓口は、現在大半が金融機関の払い込みが多いわけでございますが、市町村が指定する金融機関だけでございましたが、これからはこれをもっと広げまして、郵便局、これは全国対象になるわけでございます、それから農協や漁協、信用組合にも広げる、こういった納めやすい環境をつくってまいりたいと思いますし、それから、やはり口座振替の勧奨をかなり定期的に進めてまいりたいと思っております。

 それから、制度的には、被保険者の負担能力への配慮を細かくするということから、平成十四年度から国民年金保険料の半額免除制度が創設されます。半額で年金権に結びつけやすくしようということでございまして、こういった制度、これもまた広報、普及いたしまして、大事な将来の年金権に少しでも結びつくように努力し、制度の安定的な運営に努めてまいりたい。

 以上でございます。

鈴木(康)分科員 今お話の中にありました年金事務が今度市町村から社会保険事務所へかわる、これは、市町村から社会保険事務所へすべて事務が移行されるというふうに理解してよろしいのでしょうか。

冨岡政府参考人 お答えいたします。

 十二年三月までにおきましては、国民年金の事務は基本的に市町村が実施しておりました。十二年三月まで社会保険事務所が実施しておりましたのは、過年度保険料と申しますか、その年に納められなかった保険料を徴収するという事務が社会保険事務所でございましたが、十二年四月には地方分権によりまして、適用関係では、年金手帳の交付それから年金証書の交付といった事務が社会保険事務所に移っております。そして、来年四月、十四年四月には、これが、適用関係を除きまして社会保険事務所が実施することになります。

 そういうことで、一号被保険者の届け出、それからそういった方の年金の裁定、これに伴います広報といったものを含みますが、そういったものは市町村の事務として残りますが、保険料の徴収といった事務は基本的に社会保険事務所が実施する、このようになります。

鈴木(康)分科員 今御答弁いただいた部分が実は大変に重要だと私は思います。

 私は浜松の出身なんですが、この前、市の担当者の方とこの問題についてお話をしました。実は、今現場の方たちは非常に危機感を持っております。先ほど、未加入者に対する勧奨や未納者に対する指導をやってきたということをおっしゃられましたが、これはすべて今まで市町村にお勤めの方がこれに携わってきたわけでありまして、かなりきめの細かな作業をしてこられたわけであります。

 例えば、浜松の場合は、今、市に二十三名の職員と十五名の推進委員という非常勤勤務の方がおられまして、これで約五十八万人の市民の年金事務を預かっているわけであります。未加入者の方には勧奨はがきを送り、状況を把握した後、例えば四十歳以下の人は自動的に職権で加入をさせる。あるいは、これが問題なんですが、未納者の方は、短期、中期、長期と分けて、例えば、短期の方に関しては、電話をかけてまず納付指導を行う。あるいは、中期、長期の未納者の方に対しては、文書、電話で納付指導をした後、それでも難しい場合は、戸別訪問して直接いろいろ事情を聞きながら、例えば低所得者で保険料が払われないような場合には納付免除の手続をしてもらうとか、そういう実はかなりきめ細かな対応をしてきたという経緯があります。

 そういう中で、実は今、浜松は検認率八七・二%、これは人口二十万以上の都市では全国一だということでありますが、これが今度社会保険事務所に移りますとどうなるかと申しますと、今、浜松にあります西部社会保険事務所というところで年金事務を扱っている方はたった五名であります、今まで三十八名で一生懸命やっていたものがこれから五名で行わなければいけない。しかも、その所管するエリアは浜松市を含む二市六町、恐らく人口にして大体七十万から八十万のエリアに広がるだろうというふうに思います。そうしますと、今まで三十八名でも細かなフォローをするのが大変だったということでありますけれども、これから五名でどういうふうにこれをやっていくんだろうということを非常に市の職員の方たちは危惧されております。その点についてどういうふうにお考えなのか、まずそのお考えをお伺いしたいというふうに思います。

冨岡政府参考人 ただいまの点につきまして、現在の市町村が行っております事務の適用といった国民年金の基本的な部分については従前どおり市町村が行う、そういう点については先ほど申し上げたところではありますが、保険料の徴収につきましては、先生御指摘のような点があるわけでございます。

 それで、私どもとしては、現在市町村が行っておりますようなこういったサービスとの連続性をどうして保つか、それからその質を落とさないようにする、こういったことは非常に重大な使命だということで、この実施に向けて準備を進めてきております。そういうことで、市町村ともできるだけ連携をとりながら、また新しい事務につきまして説明をしながら、円滑な分担それから移行を進めてまいりたいと思っております。

 それで、先ほど申し上げたような改革も行うということを視野に入れておりますが、これに加えまして、現在市町村が御努力されておるような、例えば納付組織の活用とか、それから徴収員の方についてどういったふうに円滑に引き継げるかなといった点も踏まえて検討いたしております。

 それからあと、私どもとしては、とにかく大変重要な業務でございますものですから、やはりその機械化、いろいろな事務の合理化、それからアウトソーシングも含めまして、とにかく事務的な部分の質を落とさないということを、現在大変重要な事務だということで鋭意検討いたしております。

鈴木(康)分科員 事務の省力化と機械化等々のことは、これは私も異論はないところであります。

 ただ、年金の、例えば保険料の未納者の問題というのは、百人いれば百様の事情があるわけであります。そうした人たちに対して、やはり細かく事情を聞きながら適切な指導を行っていくというのは、これはどうしてもマンパワーが要るわけでありますね。この点について、マンパワーが必要だということに対してどういう対策を立てていらっしゃるのか、その点についてお伺いをしたいというふうに思います。

    〔主査退席、津島主査代理着席〕

冨岡政府参考人 先ほどと一部重複になりますが、現在市町村で徴収に当たっておられる職員といった方もおりますし、そういった方につきましては、やはりどういうふうに円滑に新たな体制のもとで活躍していく道があるかといった点。それから、大変大量に処理する事務的な問題があります。例えば納付書、毎年一冊にしてそれぞれの被保険者の方にお送りしておりますが、こういったものにつきましては、かなり集中的に機械化処理するといったこと。

 そういったことで、なかなか単純に、私どもの方の職員数を純増ということはなかなか難しいわけでございますが、そういった中でいかに工夫をしながらということで、今、来年の四月に向けて努力しているところでございます。

鈴木(康)分科員 まだ私が納得できるようなお答えはいただいていないわけであります。

 市町村の方でも、この事務についてきちっと今までやってきたわけですから、依頼があれば、例えば継続して収納事務について市町村がやっていく、そういう心構えもあるということなんですが、実際に、今まだそれについて何らの、では今後どうしていくかということも、市町村にはその対策等についてできていないということなんですね。ですから、やはりどうしても私は、これは当然機械化は必要だろうと思うのですが、未納者などの細かな対応についてはマンパワーが必要であるわけでありますから、当然、今おっしゃられましたような推進委員のような、今までやってきた相談員の方は引き継いでもらう。それについても、まだ何らのアプローチが市の方にはないわけであります。

 ですから、その辺のことをどういうふうにお考えなのか。例えば、市町村がこれを引き受けるという覚悟があれば、その収納事務に関して市町村に任せるというようなことは考えられないのかどうか、その点についてちょっと御意見をお伺いしたいと思います。

冨岡政府参考人 収納事務そのものを市町村にお任せするということ自体は法制度的にできないわけでございます。

 そういうことではなくて、例えば事務的な、今までのやっていた事務のノウハウを活用するといった点の御趣旨じゃないかと思ってお聞きしたのですが、そういった点につきましては、私ども、市町村に具体的に私どもの方からこれこれをやってくれというふうに強制するわけにはもちろんまいりませんが、どのようなことで折り合いをつけられるかということで会議を持ちまして、現在その準備も進めている状況でございまして、そういうことで御相談に入りたいと思っております。

 そういった場合につきましては、例えば、そういたしますと、それに関しまして経費もかかるわけでございますが、そういった経費の点も含めて御相談申し上げていくことになろうかと思っております。

 以上でございます。

鈴木(康)分科員 ということは、例えば市町村から前向きな御提案等があれば、それについては社会保険庁としても前向きに検討する余地があるというふうに理解してよろしいでしょうか。

冨岡政府参考人 市町村、それぞれいろいろな御事情がありましょうし、実態があるかと思っておりますので、その辺はよく御相談いたしまして、現時点で解決できる道を探ってまいりたいと思っております。

 以上でございます。

鈴木(康)分科員 この問題というのは、本当にこのまま空洞化が進めば、将来、無年金者がふえて、当然生活保護でその人たちの面倒を見なければいけないということにもなりかねないわけでありますから、市町村も非常に積極的にこの点に関しては危機感も持っていますし、やる気もございますので、ぜひ、よく調整をして前向きに検討していただきたいというふうに思います。

 では、ちょっと角度を変えまして、今度、基礎年金につきましてのこれからについてお伺いしたいと思います。

 昨年の国会で年金法が改正をされました。平成十六年までに国庫負担の割合が二分の一に引き上げられるということが決まりましたけれども、この引き上げのめどがいつになるのか御答弁いただきたいというふうに思います。

坂口国務大臣 今お話をいただきましたとおり、平成十六年という期限を切っていただいたわけでございますが、私は、医療制度の改革もございますし、そうしたことを考えますと、医療や介護の問題を改革していきます場合に、やはり一番中心になっております年金がどうなっているかということが非常に大きな影響を与えるというふうに思っております。やはり社会保障の中の一番の柱は年金ではないか、これは先生と同じ問題意識でございます。

 そして、基礎年金のところがやはり一番きちっとしていないといけない。その基礎年金のところを、現在国庫負担が三分の一のところを二分の一にするというのは、これは二〇〇四年と言わずに、ここは前倒しをしなければならないのではないかという思いを私はいたしておりますが、しかし、二兆四千億からの財源をどうするかという問題がここに存在することも十分に存じております。これらの問題を、ことし秋までの間にぜひ具体化をして、どうするかということを決定していきたい、そんなふうに思っております。

鈴木(康)分科員 財源の問題が当然これは絡んでくることでありますから、今の御答弁のとおりだと思いますけれども、ぜひ、早期に実施をしていただきたいというふうに思います。ただ、二分の一という負担の問題でありますけれども、まだまだこれは中途半端であります。

 時間がもうございませんのでこれは最後にしたいと思うのですが、今の社会保険方式というものを今後も継続していくというのは、私は、これはどこかで限界が来るだろうというふうに思います。先ほどの未加入者や保険料の未納者の問題、あるいは保険料の徴収に非常にコストがかかる問題、あるいは今問題になっています専業主婦の方の問題、あるいは学生さんの問題、こうしたことを解決して安定的な年金というものを確立しようと思ったら、やはり基礎年金は全額税方式にすべきではないかというふうに思うわけでありますが、その点について最後に御所見をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。

坂口国務大臣 私は、そこまでなかなか決断をするだけの勇気がございませんで、とにかく一日も早く二分の一まで、こう思っているわけでございます。あそこで財務省がにらんでおりますから、私もそれを気にしながら言っているわけでございますが、財源をどうするかという問題とあわせて、まずは二分の一、そして二分の一にした後、皆さん方の御意見も十分に拝聴しながら、その後はどうするかということを考えていかなければならない。まずは二分の一、その辺が一つの現在の限界ではないかというのが私の考え方でございます。

鈴木(康)分科員 これで最後にしますが、当然、財源の問題というのは考えておかなきゃいけない。これについては、私は、やはり福祉目的で、このための消費税の上積み分を設ければそんなに難しいことではないというふうに思います。きちっと負担と給付の関係を明確にすれば、これは国民の皆様の御理解を得られると思いますので、ぜひ、難しいかもしれませんが、これも検討課題として前向きに御検討いただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

津島主査代理 これにて鈴木君の質疑は終了いたしました。

 次に、筒井信隆君。

筒井分科員 今の鈴木先生と問題意識が共通する点の質問になるかと思いますが、医療、年金、介護、いずれにしても極めて重要な問題で、大きな改革が必要であると同時に、その改革の方向として、わかりやすくすっきりしたものにしなければいけないというふうに思っております。介護保険の導入自体は賛成ですが、これも何かいろいろな政治的な配慮から、いろいろなわかりにくい点を入れているのではないか、その点からまずお聞きをしたいと思います。

 介護保険制度の趣旨は、よく言われていることですが、介護はプロに、家族は愛情を、介護の社会化、介護労働というのを家族から引き離す、こういう趣旨でつくられたことは間違いないですね。

坂口国務大臣 それは私もそのとおりだと思います。やはり介護というのは、介護の社会化ということがその背景にあったというふうに思っております。

筒井分科員 そうしますと、家族介護に慰労金を出すという仕組みが導入されましたが、これは介護保険の制度と矛盾するのじゃないでしょうか。

堤政府参考人 一昨年十月の与党三党の申し入れを受けまして、家族介護慰労金の支給事業が創設をされたわけでございますが、これは、家族が肉親を家庭で介護されたことに対し御慰労申し上げる、こういう趣旨で行われるものでございます。市町村が、地域の実情に応じて、市町村の判断でこの事業を実施されるという場合に、国も補助をするということでございます。

 この家族介護への支援のあり方につきましては、さまざまな議論がございましたけれども、介護保険の基本理念に反しないよう、重度でかつ低所得の方が、かつ過去一年間介護保険サービスを利用しなかった場合に年間十万円までを限度に支給する、こういう限定をつけております。介護の対価という位置づけではなくて、あくまでも慰労の気持ちをあらわす、こういう趣旨のものでございます。

 いずれにいたしましても、家族介護への支援のあり方については、引き続き、法律の施行状況などを見ながら、検討が必要であるということでございまして、そういう検討の中でも、家族の介護負担をどういうふうに和らげるかという観点から検討していきたいと考えております。

筒井分科員 介護の対価として出したら介護保険制度の趣旨に反するという今の答弁というふうにお聞きしてよろしいでしょうか。

堤政府参考人 家族介護に対する対価として支払うのではなくて、大変な御苦労をされながら家庭の中で介護をされている、そういう御苦労を御慰労申し上げる、こういう趣旨でございます。

筒井分科員 家族を介護から解放するという趣旨から見たら、たとえ慰労金でも、望ましい方向でないことは確かですね。これは解消に向かって進むべきものではないですか。

坂口国務大臣 介護の問題をいろいろと議論しましたその経緯におきまして、家族介護というものを一体どうするかというのが非常に大きな問題になりました。

 審議会におきましても、家族を介護に結びつけるということは、女性を家庭に縛りつけることになるという御意見があったことも事実でございます。しかし、そうはいうものの、やはり家族に見てもらいたい、あるいは家族が見たいという家族まで、その権利を取り上げるのはいかがなものかという御意見があって、そこは意見が相半ばしたというふうにお聞きをいたしております。

 しかし、介護そのものは、介護の社会化ということに間違いはございませんが、介護の社会化ということと、そして家族が一部そうして見るということ、そのこととは必ずしも矛盾をすることではないというふうに私は思っております。

筒井分科員 今話が出ていました審議会では、家族介護に関しては支給しないという決定になったのじゃないですか。それが、平成十一年十月時点で、与党三党からの申し入れで、急遽、直前になって家族介護の慰労金を出すということが決まった、そういう経過ではないですか。

坂口国務大臣 それはそのとおりでございます。

 その以前のお話として、審議会の中で、家族が見るといった場合に家族に対してどうするか、家族に対しましても何らかの措置をするかどうかということで大きな議論になったというふうにお聞きをしております。最終的には、それはないということになったわけでございますけれども、しかし、途中経過としては議論が伯仲したというふうにお聞きをしております。

筒井分科員 審議会でもそういう結論を出して、その方向で歩もうとしていた。そして、平成十二年から始まろうとしていた直前に、こういう新しい制度というか、突然それまでの方向性と違うものが出されて、ますますわかりにくくしているというふうに思いますので、お聞きをしました。

 それと同じような問題ですが、介護保険料の減免についての問題をお聞きいたします。

 厚生労働省としては、保険料をきちんと支払ってもらう、負担をしていただく、そのことは、この介護保険制度存立の基本的前提であるというふうに考えておられるのではないですか。

坂口国務大臣 それはそのとおりというふうに思います。

 やはり保険制度でございますから、その額の多い少ないは別にいたしまして、皆さんにお支払いをいただくというのが一つの原則であるというふうに考えております。

筒井分科員 半年間保険料免除、その後半額、こういう決定も直前になってなされましたが、これも介護保険制度の基本的前提と矛盾する行動ではないですか。

坂口国務大臣 それは経過的措置でございまして、とにかくスタートするときに、それではサービスが全部整っているかといえば、サービスが全部整っていない市町村もかなり多かったわけでございます。いざスタートするというときに、保険料だけは満額いただきますよ、しかしサービスは全然できておりませんよというのでは、皆さん方に対して申しわけがない。

 いずれにいたしましても、スタートを混乱なくやっていこうということで、まずは半年おくれから、そして半額を負担していただくということを一年間続けて、そしてその後正規の保険料をお払いをいただくということに徐々にしていこう、それは経過措置の問題でございまして、何ら制度の問題とは関係ないと思います。

筒井分科員 制度の基本的存立条件であるけれども経過措置ならば構わない、今こういう回答でしたが、そうしたら、今度半年過ぎて半額取ることになりましたが、これを各市町村が経過措置として免除したりなんかすることも構わないということになりますか。

堤政府参考人 制度がスタートをする、そういう段階で新しい制度になれていただくということでこの特別対策が講じられたわけでありますので、一年半経過をして本来的な実施の段階に入りますと、やはり保険制度の基本的な考え方を守っていただきたいということで、市町村がいろいろ単独で保険料を軽減されるという動きがございますけれども、それについては、基本的な考え方として、保険料を全くゼロにするというのはいかがなものか。それから、収入という一つの指標だけで判断するのはどうだろうか、資産とかそういうものも総合的に見るべきではないか。そして最後に、保険料を軽減した分を一般会計で補てんするということは、みんなの保険料で助け合うという趣旨からいってどうだろうか。この三つの基本的な考え方をお示しして、こういう考え方に沿って対応していただきたいということを申し上げております。

筒井分科員 市町村が経過措置として、例えば減免、ゼロにするのでも半額にするのもだめだと言っているでしょう、厚生省は。市町村が経過措置として減免することは、これは制度の存立の前提を崩すことだからだめだと言っていながら、ではなぜ、国の方で決めた経過措置としての半年免除、一年間半額、これはいいんですか。どこにそういう違いがあるんですか。

坂口国務大臣 それはスタートのときに、徐々にそれをスタートさせるということでしたわけでありまして、一年あるいは一年半経過をいたしましてそれが軌道に乗るということになれば、本来の制度に戻してもらうというのがやはり順当なことだというふうに思います。

筒井分科員 その関係で、今大臣と厚生省の方の答え方がちょっと微妙に違ったんですが、そういうふうに経過措置をつくった理由なんですが、国民が手続になれていないからというふうなことを今そちら側が言って、大臣の方は介護の給付がまだ完全にできないからだという説明をされましたが、これは理由としてはどっちなんでしょうか。

坂口国務大臣 両方ともそれはあるんだろうというふうに思いますが、しかし、そこはやはりまだ十分になれていない、各市町村ともにサービスの方が完全に整っていないということはあったわけでありまして、各市町村の中からは、十分にまだ人材が整わない、あるいは制度がきちっとできないからもう少し何とかならないかという意見もあったことは事実でございます。

筒井分科員 両方という答えなんですが、手続にまだなれていない、それから介護給付が完全にはできていない、この理由は今も続いているんじゃないですか。

坂口国務大臣 しかし、大分それは皆さんなれてきたというふうに思います。大枠で見ればそんな大きな問題なく回り始めていることは事実でありまして、そういう意味では、この介護保険制度というのは、これで約一年でございますか、大分各市町村に定着をしてきたというふうに思っております。

筒井分科員 それは始めたときよりは大分たっていますから少しなれてきたと思いますが、今言った、手続に完全になれた、介護の適正な給付が完全にできる、一〇〇%そういう状況じゃないことはまだ確かだと思うので、またいろいろな調査結果が出されておりますが、まだなれていないのに対応した部分、適正な介護の給付が完全にできない部分の、ゼロにするのがおかしいとしてもある程度減額をすること、これは当初の考え方から見たら許されることになるんじゃないでしょうか。

坂口国務大臣 それはそのとおりと思います。したがって、それは市町村にも認めているわけでございます。

堤政府参考人 若干補足をさせていただきますと、市町村におけるいろいろなサービスの状況でございますけれども、制度のスタート後、急速にふえてきております。しかし、もちろん市町村によっては、一部まだ不十分だ、あるいは施設が不足をしているといったような事態がございます。

 そういうことではありますけれども、特に低所得の方についてやはり保険料の負担がきついというようなお話がございまして、先ほど申し上げましたような基本的な考え方をお示しした上で市町村が単独の保険料の軽減措置を講ずることにつきましては、私どもは、市町村の一つの判断として基本的な考え方を守っていただく範囲内ではあり得るというふうに考えております。

筒井分科員 そもそも、保険料の額や何かは各市町村で決定する、そういう法制度になっていると思うんです。本来全部任すべきで、だから厚生省が今度出した文書も、指導とか何かよりもあれは単なる意見として出しているんだろうと思うんですが、本来市町村に全部任すべきで、それをこの前の法制度の直前になって半年免除とか一年間半額とかしたこと自体が、市町村に全部任すという法律の趣旨に反するんじゃないでしょうか。

坂口国務大臣 全部お任せをしているわけではございません。

 金額の決定につきましては、一つのルールを決めまして、そして五段階に分類をしていただくということをしているわけでございまして、そのルールは全国一律でお示しをしながらおやりをいただくということをお願いしているわけでございます。

筒井分科員 いずれにしろ、介護保険に関してもすっきりした形で、いろいろな政治的な配慮から、選挙を含めたいろいろな配慮からわかりにくい制度にはしないでいただきたいことをお願いして、次に医療保険の方にお聞きします。

 高齢者医療を含めた四本柱の改革、特に高齢者医療に関しては二〇〇〇年度から改革を実施するという約束になっていたし、財政構造改革法は一応凍結されましたが、そこでもそういうふうに規定されておりました。これが現在に至るもされていなくて二〇〇二年度に先送りされている、これは一体どうしてでしょうか。

大塚政府参考人 医療保険制度全般に関する改革につきましては、これまでも薬価制度の見直しでありますとか診療報酬体系の見直しでありますとか、あるいは前国会で健康保険法の改正を行うといったような改革を進めてきたわけでございます。

 前回の健保法の改正の中におきましても、高齢者の定率一割負担の導入といったような内容も盛り込んでおるわけでございますが、高齢者医療制度全般の見直しにつきまして、これも全体の医療保険制度改革の重要な柱であることは申すまでもございませんけれども、御案内のとおり、各保険者の負担のあり方でありますとか、高齢者の対象の範囲でありますとか、費用負担のあり方でありますとか、さまざまな観点から大変多くの意見がございまして、関係者の間でも意見が分かれておったわけでございます。鋭意議論を進め、また関係審議会などでも長期にわたり御議論をいただきましたけれども、関係者の意見を一つに集約するまでには、到底これまでの状況では至らなかったというのが今日に至る事情でございます。

 平成十四年度、二〇〇二年には、今日の医療保険財政の極めて厳しい状況ということを考えますと、高齢者医療制度を含む医療保険全体の改革が私どもにとっても待ったなしというふうに考えておりまして、大臣からも日々強い御指示で、その作業に取り組み、十四年度には何としても関連の法案を提出するという前提で今作業を進めている、こういう状況でございます。

筒井分科員 今も言われましたが、今年度中に二割の健康保険組合が解散して八割は赤字になるというふうな見通しもあるほど、もう本当に待ったなしの状況ですから、厚生労働省の方で、あるいは政治、大臣の方でもう明確に提言をして、積極的に指導していかなければいけない状況ではないか。今、主に医師会の独立案と健康保険組合連合会の突き抜け型ですか、この二つが対立しているので、七十五歳以上は独立型にして、七十五歳以下は突き抜け型にして、必要な制度間の調整をするとか、厚生省の方で、政治の方でこういう具体的な提起をして、積極的に指導していくべき時点になっているんじゃないでしょうか。

坂口国務大臣 今まで審議会でも何回か御議論をいただきました。それぞれの代表の皆さん方にお集まりをいただいておるものでございますから、いろいろの貴重な御意見は出していただくわけでございますが、一つにまとまるということがなかなか難しいということが続いてまいりました。

 御指摘をいただきますように、やはり厚生省が一つの案を示すというときが来ているのかもしれません。政府全体といたしましても、有識者会議の結論を踏まえまして、社会保障全体のあり方というものを政府・与党で今進めておりますが、そうした中におきましても医療の一つの位置づけというものは示されるのであろうというふうに思っております。それらも踏まえまして、厚生労働省といたしましても、一つの案というものをやはりお示しする、そういうときが来るのかもしれません。しかし、これはこれからもう少し積み上げないといけないわけでございますが、積み上げるまでの時間がそんなに長いわけではありません。そのことを自覚しながら、やり方も含めて結論を出していきたいと思っております。

筒井分科員 今の大臣の姿勢でぜひお願いをしたいと思います。大臣も専門家ですし、委員長もその専門家というふうにお聞きしていますので、ぜひお願いしたいと思うんです。

 その中で、何か厚生労働次官近藤さんが、この医療改革は二〇〇二年度までに完結しない、約束しているんだけれどもせいぜいこれは現行制度の修正程度で、抜本改革は難しいという医師会の会長の発言を認めるような発言をなされているようなんですが、これはちょっと本来おかしい。こういう姿勢だったら、今の大臣の姿勢とはまさに矛盾するんじゃないでしょうか。

大塚政府参考人 私が御答弁申し上げるのが適当かどうかわかりませんけれども。

 事務次官の発言がマスコミなどに報道されました。私はその真意が十分伝わっていないと考えております。前任の担当の局長でもございますし、二〇〇二年、平成十四年度の改革は不可避ということは常々私どもに対しても厳しく指示をしているわけでございまして、いささか適切なマスコミ報道ではないというのが私の認識でございます。

筒井分科員 年金に関しては、厚生労働省は抜本改革の必要性さえ認めていない立場のようですが。

 ただ、今度、国民年金保険料未納者には民間保険会社の個人年金保険料の所得控除を認めないという税制要望を厚生省は出されて、何か拒否されたらしいですが、こういう要望を出さざるを得ないという状況をどう考えておられるのか。今現在でも三分の一の国庫補助があるんですから、本来ならば国民年金の方が有利なことははっきりしている。だけれども、それを払わないで民間の保険の方に入っている。これは公的年金に対する物すごい不信のあらわれではないかと思いますが、どうでしょうか。

辻政府参考人 国民年金の財政についてさまざまな不安があるということについてのお尋ねと思いますが、基本的に、国民年金の財政方式についてまず御説明を申し上げたいと思います。

 結論から申しますと、国民年金は世代と世代で支え合う、いわば長い長い長期にわたりまして実質的な水準の年金を保障するためには、私的な年金では難しい、世代間扶養でなければできない、これが根本でございます。

 このような考え方によって、世代とともに保険料は上がる仕組みになっておりますけれども、しかし、これについては考え方をよく国民に御理解いただくとともに、さきの改正では、きめ細かな納付をいただくように、一定所得以下の方につきましては半額免除、半額納付といったような仕組みを来年四月施行で導入させていただきましたり、それからまた基礎年金につきましては、さきの改正の際の附則に、十六年までの間に安定した財源を確保して、国庫負担の割合の二分の一への引き上げを図るものとするといった附則が設けられておりまして、このような課題に取り組みながら、国民の御理解を得て、より健全な運営ができるように努めたいと思います。

筒井分科員 だから、今年金が厳しくて、今度も、既受領者ではありませんが、厚生年金五%カットしたり、あるいは賃金スライドを凍結したり、あるいは支給年齢を引き上げたりして、どんどん条件を悪くしているわけでございます。しかも、現在四十歳ぐらいの人以下は、例えば労使折半で払った保険料の総額よりも低い金額しか支給されない。使用者側が負担した保険料の額は、これは実質上、経済的には賃金と同視すべきものですから、それを含めて、やはりそれ以上の年金が支給されない限りは、それはますます不信感が出てくるのが当たり前だと思うんです。

 この厚生年金五%カットとか賃金スライドの凍結とか、これは法律によって政府が国民に約束していたことをその後一方的に変えるわけですから、合意を一方的に破棄してしまうわけですから、合意違反、契約違反であるし、財産権の侵害でもあると思いますが、その点はどう考えておられるでしょうか。

坂口国務大臣 年金全体の考え方といたしましては、若い皆さん方に大変不満が多いことは御指摘のとおりでございます。これは、世代間の比較をしましたときに、やはり若い者の方が不利だというお考えがかなり働いているのではないかというふうに私は理解をいたしております。

 ただ、今御指摘になりましたように、十年ないし二十年前に、あるいは三十年前にお約束をした年金の制度が事ここに至ってその制度を変えることは、それは約束違反ではないかという御指摘がございますが、しかし、このままでいきますと破綻の道を歩まざるを得ないということがあるわけであります。これは予想以上に高齢化が急激に進んだと申しますか、少子化が急激に進んだというふうに言った方がいいのかもしれませんけれども、そういう状況の中で改革をしなければならない。そのときに、やはり保険料が余り高くなり過ぎては若い世代の皆さん方に御迷惑をかける。保険料を極力上げないという形の中で、それでは高齢者の皆さん方にもらってもらう給付の額をどうしていくかということを決める、こういう考え方に立って改正が行われているわけでございまして、その考え方には多くの皆さん方が御賛同をいただいているというふうに思っております。

筒井分科員 現在の制度を前提にすれば、このままだったら破綻してしまう、まさに言われるとおりだと思うんですが、ただ、今度の改正をしたところで、やはりまたこれも破綻するんじゃないか。今度の改正の前提条件としては、運用の予定利回りを平均四%に見ている。これはそもそも無理じゃないか。それから、出生率も一・六一に回復することを前提に計算されておられると思うのですが、これはそもそも前提条件が無理なので、今度の改正によって変更したものでもまた将来的には必ず破綻してしまうのではないか、この可能性が強いと思いますが、どうでしょうか。

坂口国務大臣 御指摘をいただきますように、現在の計算をしております基礎になりますデータで、やはり将来それをどうするかということを考えなければならない点があることは事実でございます。

 合計特殊出生率が一・六一というふうに今御指摘になりましたが、大体そのぐらいの値で計算がされているのではないかというふうに思いますが、現在のような状況からいきますと、そこまで回復するのはなかなか厳しいだろうと思わざるを得ないわけでございまして、そういたしますと、次の年金のことを考えますときには、そうした点も十分に勘案しながら国民の皆さん方の御理解を得ていくという、やはり情報公開、その辺のところはきちっと皆さん方に御理解をいただくということがなければならないのではないかというふうに思っております。

筒井分科員 時間がありませんので、最後、提案に少し、もっと時間をかけようと思ったのですが、そういうふうな状況ですから、私はもう年金も含めて抜本改革が必要だ。基礎年金と介護の費用と高齢者の医療は、これは最低限度の生活保障、福祉原理ということで、先ほども言われていましたが、すべて税方式に変えるべきではないか。

 その場合に、もちろん財源が必要になってまいりますが、財源としては、一つは消費税がある。ただ、消費税の場合に、食料品課税等の複数税率、それからインボイスを導入したことによる益税の解消、これらを前提にして、消費税を一つの財源とする。それからもう一つは、やはり累進課税が可能な所得税も財源として考えるべきである。その場合に、現在いろいろな分離課税があるわけですが、総合課税をすべて徹底する。納税者番号制度も導入してはっきり把握をする。それからもう一つは、今所得控除が物すごくたくさんあるわけですが、所得控除は高額納税者に有利で、しかも財源をいっぱい必要とする。これを税額控除の方に変更する。

 これらの形を財源として、もう一度申し上げますが、基礎年金、介護、高齢者医療は全額税方式に変える、こういう方向性を考えるべきだと思います。そして、逆に、二階建て部分以上の年金とか一般医療保険は、これは保険方式でもう徹底する、こういうふうにはっきり分けるべきだというふうに思うのですが、その点最後にお聞きしたいと思います。

坂口国務大臣 一つの御意見として拝聴させていただきたいと思います。

 私たちも、基礎年金の部分の三分の一から二分の一へは主張しているわけでございまして、全体として、後期高齢者医療、そしてまたこの基礎年金、それに介護保険、まずこの半分は国庫負担で、こういうところまでは大体来ているわけでございますが、そこから先、今御指摘になりますように、全額税で、それは税のあり方はいろいろあろうかというふうに思いますが、そこまでいきますと、税に対する負担が非常に大きくなり過ぎるといったようなこともございまして、そこまでは我々はいく勇気がなかなかないというのが現状でございます。

筒井分科員 ありがとうございました。終わります。

津島主査代理 これにて筒井君の質疑は終了いたしました。

 次に、児玉健次君。

児玉分科員 日本共産党の児玉健次です。

 乳がんや子宮がん等への手術が行われた後、リンパ浮腫が発症するケースが非常に多い。専門家は、現在全国的に患者の数が数万人に上るだろう、このように推定をしております。

 癌研究会附属病院では、三年前から下肢リンパ浮腫に対するむくみの指導を始めています。これまでの調査、そして努力の結果を見ました。

 一九九六年から九九年までの三年間、子宮の全摘手術、そしてリンパ節郭清、これを行った三百十八例のうち、下肢リンパ浮腫の発症は五十二例、一六・四%ですね。かなりの率に達する。そして、発症の時期は、一番頻度が高いのが術後五カ月であって、二年以内の発症が九五%である。御苦労なさっているお医者さんたちは、このリンパ浮腫に対する対処は早ければ早いほどいいというふうに今おっしゃっている。

 私は、昨年もこの問題を厚生委員会の場で取り上げましたが、そのとき、乳がんや子宮がんの手術を行う、リンパ節の郭清を行う、このリンパ浮腫が発症する可能性があるということをきちんとインフォームド・コンセントする、そして、その後しっかりと追跡して指導、治療を行う、この点での努力を厚生省に求めました。

 大臣、お手元にあると思うのですが、これが原本ですね。癌研究会附属病院婦人科外来でつくっている。これは改訂版で、二〇〇〇年四月に改訂されたものですね。読んでみて、非常によく心配りがされているのに私は驚きました。

 リンパ浮腫がどのようなメカニズムで起きるのかというところから始まって、予防する、その点での日常の注意事項は何か、そして弾性ストッキングの役割、そういったものをずっと述べていって、最後に四カ条を書いていますね。一番最後のページです。「根気良くケアを続ける事。早く結果を求めない。あきらめず、自分のペースに合った自己管理を。」二点目が、「自分に合った弾性ストッキングを選んでむくみを増強させないように維持しましょう。」ちょっと省きますが、最後に「むくみと上手におつきあいしましょう。」これは泣かせますね。

 こういう懇切な術前のインフォームド・コンセントと、そして術後の指導、必要な場合の治療、ここのところを厚生省として全国の医療機関にさらに拡大、定着させるための努力を思い切って強めていただきたい、こう考えるのですが、大臣、いかがでしょうか。

坂口国務大臣 リンパ浮腫につきましては、特に外科系の病院におきまして、これは大変大きな課題に昔からなってきた問題でございます。

 とりわけ、がんがふえてまいりまして、がんの手術を行いますときに、やはりリンパ節の問題をどうするか。その近くのリンパ節をきれいにするといったようなことを行えば行うほどこうしたリンパ浮腫というのが起こってくるというようなことがございまして、大きな問題になっていることは事実でございます。それぞれ熱心に、それぞれの病院で、あるいはまた外科学会でといったような場所でお取り組みをいただいていることも事実だというふうに思います。

 しかし、癌研究会附属病院でこういうふうにきちっとまとめてパンフレットをおつくりになってお示しをいただいているということは、大変敬意を表したいというふうに思います。

 厚生省としてこれを具体的にどういうふうにしているかということは、私、十分に存じておりませんので、後で局長の方からこれはお話をさせていただきたいというふうに思いますが、やはり、できるだけリンパ浮腫というものを少なくするような手術方法は何かとか、あるいは治療方法はどういうことがあるのかといったようなことをもう少し研究を重ねなければならないのだろうというふうに思っております。

 ちょっと具体的なことを局長の方からお願いいたします。

篠崎政府参考人 今、先生からの御指摘でもございますので、私ども、各医療機関でいろいろ対応はしているものと思っておりますけれども、実情を把握いたしまして、必要な対策を考えてみたいと思っております。

児玉分科員 昨年、国立がんセンターがホームページで、このアクセスをしてくる部分に対する情報の提供をしているというお話でしたから、早速、三月の質問の後、アクセスをして拝見したのですが、なかなか懇切なものではあるけれども、一つは、リンパ浮腫についてまだ十分医療上の経験のないドクターだとか、そして患者の方たちにとっては、幾らか一般的過ぎはしないか。

 そして、私が求めたいのは、かつてHIVの問題が大きく全国的に取り上げられたとき、一部の医療機関や学校などで、罹患した方に対する極端な、例えば個室にするとか、食器については携帯用にして終わったらすぐ捨ててしまうだとか、そういう対応があって、このとき私は厚生省に、全国的に医療機関にそういうことをやらない点での趣旨の徹底をしていただきたいと言ったら、その後なかなか見事な冊子をつくられて、全国の医療機関、学校に配付されましたね。

 今度は、患者の数は数万人ですけれども、やはりインフォームド・コンセンサスが不可欠であることと、術後の管理、指導、治療、そのことについて、今到達しているレベルでの努力を全国の医療機関に広げる。この点で私は大臣に一段の努力をお願いしたいと思うのですが、重ねてお答えいただきたいと思います。

坂口国務大臣 インフォームド・コンセントが大事だということは、もうそれは私も十分に理解するところでございまして、そうしなければならないというふうに思いますし、そしてまた、いろいろの情報につきましては早く全国の病院に公開をして、新しい、いい治療方法があれば、こういうふうなことがありますよということをお知らせすることも大事なことではないかというふうに思います。したがいまして、御提案をいただきましたこの点につきまして、もし仮に全国の病院がこういうことを知らないということであれば、お知らせをする方法を考えなければならないのではないかというふうに思います。

 ただ、いろいろの学会やそういうふうなところからこういったものが出回っておりまして、何だ今ごろ、こんなこともうみんなわかっているよといって、おしかりを受けるようなことであってもいけないしいたしますから、現状を一遍調査させていただきまして、やはりまだ徹底していないということでありましたならば、これは徹底をさせていただくようにしたいと思います。

児玉分科員 その努力を期待したいと思います。やはり、この癌研究会の、これですね、これなんかは見事なサンプルになるだろうと思うので、努力をお願いします。

 次の問題です。

 今、医師でいらっしゃる大臣から、リンパ浮腫の治療についてのお話がちょっとありました。外科的な治療をする分野、そして薬物に頼る分野、そして保存的な療法に頼る分野、大体この三つに今大別されていると思うのですが、その中で、特にここ数年間の顕著な前進的変化としていえば、保存的療法がすべての療法の中で最もベーシックである、そこのところと他の治療が結びつくときに効果を発揮する、こういう知見が広がっています。

 私は具体的に申しますけれども、ドイツでは、もう既に保存療法が健康保険の対象になっています。それからアメリカでは、アメリカは日本のような公的保険制度がありませんから、全く別の仕組みですが、しかし、リムフェデマセラピー、弾性ストッキングの着用や包帯、そしてマッサージなどをする医療機関が、州ごとに設置をされている。

 そういう動きの中で、一九九五年に国際リンパ学会実行委員会は統一見解を発表した。リンパ浮腫の診断と治療に関する統一見解、コンセンサスドキュメント、これを発表した。その中心をなす部分は何かというと、現時点でのリンパ浮腫に対する手術治療はいまだに不十分であって、強力に施行された保存的治療には及ばない。これが国際リンパ学会の統一見解ですね。

 厚生省は、世界の医学界におけるこのリンパ浮腫の診断、治療に関する最近の動向をどのようにつかんでいらっしゃるか、お答えいただきたいと思います。

    〔津島主査代理退席、主査着席〕

篠崎政府参考人 今先生の御指摘になられましたことにつきましては、私ども、不明にして存じておりません。

児玉分科員 これはもう皆さんと事前のお話し合いのときに、それがどういう雑誌の何という号に出ているかということをお示ししましたので、局長としてもぜひそれを読んでいただきたい、こう思います。

 それで、国際的に言えば、保存療法をベースにして、それと組み合わせて進めていくという流れが今定着してきている。日本の国内でも、この保存療法について、何しろリンパ浮腫の患者さんの苦しみというのは、筆舌に尽くしがたいと思いますね。私は何人かの方にお会いしました。両腕、そして両下肢、下腹部、そういうところに顕著なむくみが出て、そして本当に日常の起居に大変な困難を生み出す。

 それで、国際的なそういった流れを今日本の国内でも、あえて言いますけれども、ここ一両年と言っていいでしょうね。全国各地に保存療法、複合的理学療法を系統的に、最新のレベルで患者さんに保障する専門的医療機関が開設されるようになりました。患者さんの範囲は、文字どおり全国的です。

 さっき言った全国で数万人の患者さんたちの中で、リンパの会というのが開設されまして、非常に粘り強い努力をなさっています。これがその会報です。「ながれ」という。気持ちがわかりますね。この中に、これは一九九九年の会報ですが、ある患者さんが、日本では保存療法をきちんと受けられないから、ドイツのデュッセルドルフに四年間通った。そして、そこでこうおっしゃっているのですね。

 一年に一カ月入院するわけですが、帰国の前ぐらいは足も大分細くなってくるのですが、帰国後は何カ月かたつともとに戻ってしまいます。この繰り返しで四年続けましたが、結果は余りよくなっていないようです。

 そして、このデュッセルドルフの医療施設に多くの方が来る。ドイツ人は保険で来ています。ドイツ以外のヨーロッパの方は、これまた保険を利用して来ていることを私は知りました。こう書いていらっしゃるのです。

 大臣、この方が、去年はデュッセルドルフでなく、四国に新しく開設された専門のクリニックに入院をされているのですね。そういう変化が起きていることを、私は大臣に御承知いただきたい。そして、そういったことについては医学的にいろいろな知見が出てきていますけれども、委員長、お許しを得て、ちょっと大臣に見ていただきたいのですが、これは日本医事新報の最新刊です。この中で、国立金沢病院心臓血管外科の何人かのドクターが、「リンパ浮腫に対する合併圧迫療法と患者指導」。それから、これは出版文化賞をとった「「リンパ浮腫」知って!」という専売病院の広田彰男先生の著書ですが、その中で、先ほどの保存療法がどのような顕著な効果を発揮するか。失礼します。(資料を示す)

 そこで、大臣にも、そして副大臣にもごらんいただいたわけですが、そういう保存療法の中で中心的な役割を果たすのがこの弾力ストッキング、ないしは弾力スリーブです。これは五千三百円です。ドイツ製ですね。そしてこちらはかなり高価で、二万八百円です。日常的にお使いになるから、洗わなければいけない。常時二組必要です。患者さんによっては一年間の負担が十万円を超す方もいらっしゃるのです。そして、両下肢にあらわれたり片一方だけという方もいらっしゃる。片一方だけの方が着用されるストッキングがこれです。

 私は、大臣に端的に聞きたいのですが、このようなストッキングを着用されることを、審美的な目的のために着用するなんて言えるでしょうか。スリムになり美しくなるために、審美的な観点からこのストッキングを着用するなどと言う人がいますけれども、私は、それは患者さんの苦しみを全く理解しない考えだと思うのですね。大臣のお考えを聞きたいと思います。

坂口国務大臣 今初めてこのストッキングは拝見させていただきました。

 患者さんにとりましては大変な苦しみであることは存じ上げておりますし、そうしたストッキングで改善をされるということであれば、それは、ストッキングというのはただ単に、普通にはきますところのストッキングではないというふうに思います。

児玉分科員 まさにそこのところが肝心なんですね。さっき見ていただいた、これほどの、男性の胴回りぐらいまで膨れた下肢や、そしてどちらかの手、国立金沢の皆さんのその写真にもありますが。

 今、リンパ浮腫のことについて長い臨床経験と大変な御苦労によって、どのように治療、指導することが適切かということを踏まえていらっしゃる数多くの医師にとっては、このストッキングとそしてリンパ浮腫のためのマッサージ、ドイツなどではドレナージという言葉を使っているようですが、それが治療の基礎になる。そしてこれは、いわゆる対症療法ではありません。リンパ浮腫は、残念ながら今の段階では根治療法がありませんから。

 それで、ともかく日常の生活といいますか、今ごろ厚生省がよくお使いになるクオリティー・オブ・ライフ、これを必要最小限度のレベルで維持する上で、なくてはならないものなのですね。その重要性について厚生省はどうお考えか、改めてもう一回聞きたいと思います。局長、どうでしょう。

篠崎政府参考人 今御指摘のように、特にがんの患者さん等についてのQOLの向上は大変重要と考えておりまして、厚生省のいろいろな研究においても、そういうことの研究を推進しているところでございます。

児玉分科員 その厚生省のいろいろな研究ですが、これは写しですが、一九八〇年度の系統的脈管障害調査研究班、班長は東京医科歯科大学の第二外科の三島好雄先生です。もう今から十四年前ですね。この段階で、厚生省はリンパ浮腫の患者さんたち二千二百八十六名を把握されて、そしてスクリーニングを経て、第二次調査で病態、治療、予後などを調べたのがリンパ浮腫五百七十七例です。

 最も広範に実施されていた治療方法は何かといえば、保存療法です。四百四十二で七六・六%です。薬物療法は二百四十八例、四三・〇%。外科療法は六十九例、一一・一%。もちろん大臣すぐお気づきのように、これは重複しています。結局、保存療法がベーシックだからこうなるのです。十三年前でもこのレベルです。今はそれがどんどん変わってきている。

 ところが、どうでしょうか。公的健康保険制度で適用外になっているのはこの保存療法だけなんです。もちろん、外科療法、薬物療法に公的保険制度は適用されなければいけません、ますます手厚く適用されなければならないけれども、なぜ、最も広範で最もベーシックな保存療法に健康保険が適用されないのか。何とかその点での前進を実現させてほしい、これが患者さんの皆さんの切実な願いです。この願いにこたえていただきたい、私はそのように考えます。大臣、いかがでしょうか。

坂口国務大臣 久しぶりに医学の勉強をさせていただいたような気がいたしますが、以前にも、ここにお見えになっている福島先生からこのお話を聞いたことがございました。私も系統的に勉強したことがございませんで、今、順を追ってのお話を初めてお伺いしたわけでございます。

 日本の医療保険、そしてその点数のあり方を見ておりますと、こういうマッサージでありますとか、あるいはまたストッキングを使っての治療だとか、治療と言えるかどうか、治療でしょうね、というようなことは、比較的今まではそうした問題は取り上げてこなかったことも事実でございます。この分野だけではなくて、他の疾病の分野におきましても取り上げていないのが現実ではないかというふうに思います。

 日本の医学界の一つの流れとして、医学界において、このストッキングの着用やあるいはまたマッサージといったようなことがどのように評価されているのか、あるいはこれからされるのかといったことが重要なポイントになってくるというふうに私は思います。

 今、一九八〇年とおっしゃいましたでしょうか、かなり前の論文をお示しをいただいたわけでございますから、一九八〇年というともう二十年前になりますが、そういう論文をお示しをいただいたわけでございますから、専門分野の先生方の御意見を十分に拝聴させていただきまして、そして誤りなきを期したい、そんなふうに思います。

児玉分科員 昨年議論をしましたときに、いろいろなやりとりがありましたが、最終的に、「普及性であるとか有効性であるとか効率性であるとか、こういった観点から内部で十分に検討をしていきたい」こういうふうに私は答弁をもらっています。

 今、坂口大臣は、一九八七年のこの論文……(坂口国務大臣「八七年でしたか」と呼ぶ)ええ。この段階でさえ先ほどのような状況だということをお示しするために挙げたので、例えば、もうこれは先生にとってはある意味では非常に基礎的な書物だと思いますけれども、血管外科の教程書的なものですね。その中で、これは一九九四年が初版本ですけれども、先ほどの保存療法について、それが最も基礎的で、そしてさまざまな治療の言ってみれば土台をなすものだということについて、見事にさまざまな臨床例を含めて示されています。

 そうなりますと、私は、健康保険の適用という点で、一般論ではなく、弾力スリーブ、弾力ストッキング、弾力包帯などの圧迫補助具、そしてマッサージ、そういったものに対する健康保険の適用と、そして医師の治療、指導の診療報酬における適切な評価、この二つを中心にして、積極的に厚生省としては実現の方向で努力をしていただきたいと思うんです。いかがでしょうか。

坂口国務大臣 先ほども申しましたとおり、日本の医療保険体系というのは一つのでき上がったものがございますが、そこにはさまざまな要素が入っておりますが、入っていないものもあるわけです。今までの保険体系の中で考えると、今お示しになりました問題というのはなかなか入りにくいんだろう。率直に言って、今入っていないということは、入りにくいんだろうというふうに思います。

 今までの保険体系の考え方と、そして、そうはいうけれどもしかしこれ以外に方法がないではないかという、そうした医学界の一つの意見というものとを、どう調和するかということが今後大事になってくるんだろうというふうに思います。

 そこは、私よりももっと頭のいい局長がどう考えてくれるかでございますが、ぜひとも、その辺のところは検討課題に入れながら、学会の意見もひとつ十分に検討の課題の中に入れるということになるのではないか。どうですかね。――済みません、局長はきょうは発言者になっていないそうでございますから、発言できないそうでございますので、きょうの先生の御指摘を御指摘として、私も十分に勉強させていただきたいと思います。

児玉分科員 今のわずか三十分の議論の中で、一つはっきり、ある意味では坂口大臣と私との間で共通認識になっているのは、日本の診療報酬では、どちらかといえばベーシックな部分については軽視されてきて、そうでない部分については案外身軽に動く。そして、この保存療法というのは最もベーシックであって、そしてそのことについての医学界の見解というのは今急速に確立しつつありますから。

 その中で、私は、端的に言いますが、来年四月の診療報酬の改定に向けて厚生省として真剣にこの課題に取り組んでいただきたい。そのことを強く申し上げて、きょうの質問を終わります。ありがとうございました。

谷口主査 これにて児玉君の質疑は終了いたしました。

 次に、福島豊君。

福島分科員 大臣そしてまた副大臣、政務官の皆様、長時間にわたりまして大変に御苦労さまでございます。

 私は、本日は二つの事柄についてお尋ねをしたいと思っております。一つは、がんの治療につきましてのお尋ね、そして二つ目は、アイバンクの推進ということについてお尋ねをしたいと思っております。

 まず初めに、がんの治療についてでございますけれども、平成十三年度の予算の中にはメディカル・フロンティアということが盛り込まれたわけでございます。これは、五年間でがんの治癒率を二〇%改善させるという大変大きな目標というものを持っております。現在、一年間で二十九万人の方ががんで亡くなっているのが日本でございます。増加の一途をたどっておる。このような状況の中で、治癒率を二〇%改善させるということは、国民にとりましても大変大きな福音となる計画であろうというふうに私は思っております。厚生労働省としましても、この目標の達成のために全力を尽くしていただきたいと思っております。

 この二〇%の改善ということでございますけれども、どのような形でこれを達成するのかということにつきまして、基本的な考え方をお聞かせいただきたいと思います。

奥山大臣政務官 大臣また副大臣がおられる中で御指名をいただきまして、本当にありがとうございます。前に福島先生とは厚生委員会で御一緒させていただきまして、本当にありがとうございます。

 お答えを申し上げたいと思います。

 今日、我が国は世界で最も長寿の国となっているわけでありますけれども、これは健康保険制度など医療基盤が整ってきているからであります。しかしながら、これからは、ただ長寿ということだけではなくして、健康で長寿な社会づくりということが望まれるわけであります。厚生労働省としても、そのための限りない挑戦、技術的な挑戦をしていかなければならないわけでありますけれども、二〇〇五年までに、五カ年でもってこのメディカル・フロンティア戦略を推進していくという予定になっております。

 この中で、特に働き盛りの国民にとって最大の死因であるがんについては、その五年生存率、いわゆる治癒率を二〇%改善することを目標にしておりまして、その実現のために、質の高いがん医療の全国的な均てんを推進することとしております。

 そこで、具体的には、がんのより効果的かつ効率的な予防、それから、診断、治療、リハビリ等の確立に関する調査研究を推進するとともに、都道府県ごとに地域がん拠点病院を設けて、その病院を中心に地域のがん診療機関と連絡協議体制を整備することによって、先端的な研究成果の共有や、がんの診療と研究を担う医師の育成を推進することとしております。

 以上です。

福島分科員 テーミスという雑誌がございますが、その二月号に、国立がんセンターの名誉総長の杉村先生を初めとする皆様の座談会が載っておりました。

 その中で、このメディカル・フロンティア戦略のことにつきましても若干の御説明がありまして、現在、国立がんセンターの技術であれば治癒率が六〇%である、そして平均的な数字が四〇%であるのに比較すると二〇%の差がある。この国立がんセンターの持っている治療水準というものを全国に均てんすることによって、日本全体のがんに対しての治療というものを、成績を改善させることができるんだという考え方がこの中でも述べられております。

 私もまさにそのとおりだと思います。全国各地で、がんセンターと同じような水準の治療というものを一日も早く達成をすべきであろうというふうに思っております。

 一方で、先日私は、癌と共に生きる会という会がございまして、そこから要請をちょうだいいたしました。実は、この会は二月の二十七日に厚生労働大臣あてに緊急措置請求というものを発出いたしまして、大臣のお手元に現時点で届いているかどうか確認をいたしておりませんけれども、その中でこのようなことを訴えておるわけでございます。ちなみに、この会の代表は新山義昭さんという方でございます。

 欧米先進諸国で現在標準的に使われている抗がん剤及び副作用防止剤のうち、日本においてまだまだ未承認のもの、そしてまた保険適用でないものがあるために、日本のがん治療というものが限られた水準になっているということが書かれておりまして、その状況というものを一日も早く改めてほしいということがこの要望の中身でございます。

 この方はホームページも持っておりまして、ホームページの中でも、みずからが膵臓がんにかかられて、この膵臓がんの摘出手術を受けた後に抗がん剤の化学療法を受けて延命をしておられるということが書かれております。

 この方は、平岩さんという先生から治療を受けているわけでございますが、この平岩先生の紹介というのがテレビでも二度ほどございまして、その中でどのようなことが述べられているかというと、世界的な水準から見た場合に、日本の化学療法というのがそのトップレベルというところにまでまだまだ達していないのではないか、それは使う薬剤の問題、そしてまた使う量の問題、がんの専門医の存在という問題、こういう問題があるということがその中で触れられておりますけれども、その方から治療を受けられた方でございます。そして、みずからの体験をもって、日本のがん治療、とりわけ抗がん剤による化学療法というのは改善し得る余地があるのではないかということを訴えておられるのだというふうに思います。

 私もこの会の方に直接お会いをいたしました。この方は女性の方で、御主人が同じく末期のがんになられて、そして化学療法を受けられて一年ほど延命されたということで、ぜひともみずからの体験を伝えたいと。ちなみに、この方は、地元の公立病院で治療を受けたときには、ああもう末期ですね、施すすべがありません、仕方がありません、あきらめてくださいというふうに説明をされたわけでございます。しかしながら、この平岩さんという先生のところに行きましたら、あきらめるということではなくて、まだまだできることがあるということで、化学療法を受けられて一年ほど延命された。

 これは、先ほど申しましたように、化学療法というのが、日本の場合には全国的に見てどのような水準で行われているのか問題があるということが一つあると思います。ちなみに、先ほど御紹介いたしましたテーミスの座談会でもこんなことが述べられておりまして、これは国立がんセンターの名誉総長の杉村先生でございますけれども、意外と進歩しないのが化学療法であるというようなことが述べられております。

 二つあると思います。一つは、どのような抗がん剤を今現在日本で使うことができるのかということがまず一つ。これは、単に抗がん剤だけにとどまらずに、さまざまな副作用が当然抗がん剤の使用とともに起こってまいりますから、それを防ぐための治療薬をどれだけ使うことができるのか。そして、もう一つの視点は、そうした抗がん剤というものの力をフルに使いこなすことができるような専門医がどれだけいるのだろうかという、二つの視点があるのではないかと思います。

 後の方の視点につきましては、がんセンターの持つ高い水準を全国的に均てんするということの中で私は十分対応できると思うし、またそういう対応をぜひともしていっていただきたい、そのように思っております。

 一方は、まだまだ日本で承認をされていない、そして欧米の先進国では使われている薬があるではないかという指摘については、これは謙虚に受けとめて、これもさまざまな状況があるのだと思います。日本で先に開発された薬もあるでしょうし、そしてまたヨーロッパやアメリカで先に開発された薬もあるでしょうし、さまざまな状況があると思いますけれども、できるだけ、実際にがんになられた末期の方は、その人にとっては今こそが大切なわけでございますから、今何が使えるかということが最大の問題ですから、一日も早く認めてほしい、日本で使えるようになってほしいと思うということは当然な心理だと私も思います。

 その問題に関しまして、具体的な事柄の確認ということで、抗がん剤の承認また保険適用の状況というのは欧米諸国と比較してどのような状況になっているのか、その概略について御説明いただければと思います。

宮島政府参考人 抗がん剤の承認状況についてでございますが、欧米諸国と比較いたしますと、承認申請に当たりまして、開発企業におきますところの必要な治験データ等の整備がおくれましたり、あるいは必要なデータが一部の効能のものしか集められない、こういったような理由などによりまして、今御指摘のように、欧米諸国で既に承認されている抗がん剤が、我が国ではまだ未承認であるとか、あるいは承認される効能が一部に限られる、こういった状況にあることは御指摘のとおりでございます。

 また、医薬品の保険適用につきましては、欧米諸国と公的医療保険制度の仕組みが異なりますので、単純な比較は難しいかというふうに思いますけれども、我が国では原則として薬事法により承認された効能が保険給付の対象となるということになっておりますので、承認における状況とほぼ同様の状況が保険適用になっているというふうに思います。

福島分科員 保険適用におきましても、どのような形で申請をし、また、どのような適応症に対してその承認を求めるのかということで制約を受けざるを得ない。これは制度の問題ですから、なかなかそれを直ちに改めるということにはならない、また難しい問題だろうというふうにも思います。ただ、申請され、そしてまた承認を求める場合に、できるだけ迅速にこれを承認してほしいと思うのは、家族そしてまた患者さんの願いであろうというふうに思います。

 近年、国際的なハーモナイゼーションということで、承認に関しても、そのプロセスにおいて改善が行われていると思いますけれども、その状況についても御説明いただければと思います。

宮島政府参考人 まず、御指摘の新薬の承認の迅速化についてのことでございますけれども、平成九年に医薬品医療機器審査センターを新たに設置いたしまして、審査官等も倍増するというような形で、承認審査体制の強化を図りまして、平成十二年四月以降申請の新薬につきましては、標準的事務処理期間を、それまでは十八カ月でございましたが、これを約半年縮めまして、欧米並みの十二カ月に短縮いたしました。

 また、いわゆる希少疾病用医薬品、オーファンドラッグその他の医療上特にその必要性が高いと認められる医薬品につきましては、承認審査を他の医薬品に先駆けまして優先して行う、こういうこともやってきております。

 それから、もう一つの、国際的医薬品規制のいわゆるハーモナイゼーションのための措置ということでございますが、日本とアメリカとEUの間で医薬品規制調和国際会議、いわゆるICHという会議を行っておりまして、その会議での合意に基づきまして、外国臨床試験成績がある場合には承認申請資料として利用し、必要最小限の国内臨床試験データにより承認申請を行うことを、平成十年八月から認めているところでございます。

 さらに、一たん承認されました医薬品につきまして、承認時の効能、効果以外に、その後、効能、効果を追加したいといったような場合ですけれども、その効能、効果につきまして、外国において既に広くその適応症が認められまして、さらに内外における医学、薬学上の評価が確立しているという場合には、改めて新たな臨床試験を求めるということはなく承認審査を行う仕組みを、平成十一年二月から行っているところでございます。

 今申し上げましたような取り組みによりまして、最近では、外国臨床試験成績を利用し、必要最小限の国内臨床成績により短期間に承認されている抗がん剤の例も出てきておるところでございます。

 今後とも速やかに、医療上必要の高い有用な新医薬品が早期に導入されるよう努めてまいりたいというふうに思っております。

福島分科員 ぜひ精力的に作業を進めていただきたいと思います。

 そしてまた、先ほど御紹介いただきました座談会の中で、山口先生がこんなこともおっしゃっておられます。「白血病の中でも十人に一人ぐらいの特殊な白血病によく効く、レチノイン酸という特効薬が出来ています。乳がんでも二〇%ぐらいの人に、ハーセプチンという、治癒まではいかないけれど、効く薬が出来ています。」中略いたしますが、「そこで起きていく問題は、製薬会社がそんな薬は儲からないから」、一部の人にしか効かないということですね。ただ、一部の人には非常によく効く。「作ろうとしないということです。」ということが述べられております。このような薬剤も大切にしなければいけないと思います。

 現在、オーファンドラッグの制度がございまして、支援の制度がございますが、この制度を活用して、積極的にその利用に結びつけるべきであると思います。現在の制度利用の状況、また新薬の開発における寄与はどのようになっているのかについて御説明いただきたいと思います。

伊藤政府参考人 医療上の必要性が高いにもかかわらず、患者数が少なく、研究開発が進まない医薬品等に対しまして、この開発を促進するために、いわゆるオーファンドラッグ制度につきましては、平成五年度に創設したわけでございます。

 この制度の指定を受けますと、医薬品等につきまして、助成金の交付、試験研究費の税額控除、優先審査等の措置を講ずるわけでございますが、これまで、平成五年以降、この制度の指定を受けたものが百五十五品目ございまして、そのうち、七十五品目が承認を受けているわけでございます。指定された全品目及び承認された品目の約六割が、本制度により研究開発助成金を受けているわけでございます。

 オーファンドラッグの研究開発助成金につきましては、近年、申請金額が増加しているため、現在御審議をいただいております平成十三年度予算案におきましては、十二年度当初予算の五億円から七・五億円に増額をお願いしているところでございまして、今後ともオーファンドラッグ制度の拡充に努めてまいりたいと考えております。

福島分科員 こうしたさまざまな形での取り組みが相まって、メディカル・フロンティア戦略に盛り込まれておりますこの二〇%の治癒率の改善ということにも結びついていくのではないかと思いますので、何とぞ今後とも御努力をよろしくお願いいたしたいと思います。

 引き続きまして、時間も限られておりますので、次に、アイバンクの話をさせていただきたいと思います。

 先般、私は、大阪のアイバンク友の会の事務局の方にお会いをしてまいりました。そして、要望書をちょうだいいたしました。これもまた、後ほどといいますか、大臣にお届けをすることになろうかというふうに思いますが、このようなことが書かれております。「平成十二年末現在におきましても全国で五千五百人余りの方々が、角膜移植手術を待ち続ける現状にあり、手術の申し込みをしてから三年から五年も待機しなければならない状況は、この十数年来改善の兆しすらありません。」

 臓器移植法が施行されたわけでございますけれども、しかし、そういう中にありましても、このアイバンクの状況というのはなかなか変わっておらない。インターネットで調べますと、このような数字が出されております。アメリカと日本のアイバンクの比較でございますけれども、手術件数、九四年の数字を挙げますと、日本では千四百九十九、米国では四万三千七百四十三。日本の手術件数は米国の三十分の一である。人口が二対一でございますから、同じ人口とすれば十五分の一にしかすぎない。そしてまた、献眼者はどのような状況になっているかといいますと、日本の場合には、九五年で登録者数が五万四千八百六十九でございますけれども、実際にその中で献眼をしていただいた方は九百三十一、登録者の〇・一以下であるというのが現状でございます。このような状況は十数年続いていて、何も変わっていないではないかという御指摘をいただきました。

 この現状を何としても改めていただきたいというお願いがございましたけれども、まずお尋ねをいたしたいことは、この角膜移植の現状について、厚生労働省としてどのように認識しておられるのか。そしてまた、十数年変わっていないという指摘がございますけれども、その改善のために近年どのような取り組みをしておられるのか。特に、変わっておらないというか、逆に登録者が減っているという現状があるようでございまして、それについては、平成九年に臓器移植法が成立をいたしましたけれども、その施行に伴って一般の臓器移植のためのドナーカードが普及を見たことがかえってさまざまな誤解を生んで、アイバンクへの登録というものが進まない一つの理由になっているのではないかというような御指摘もありました。

 こうした現状認識について御説明をいただきたいと思います。

奥山大臣政務官 お答え申し上げます。

 確かに、おっしゃるように、臓器移植のドナーカードができましてから、かえってアイバンクに関しましてはその登録が最近は非常に停滞しておるようでありまして、私も地元でその世話を一時させてもらったけれども、なかなか進まないわけでありますから、自分が率先してやらなければと思ってやってまいりました。

 ところで、角膜の移植件数は、平成九年で千七百四十八件に達しております。十一年は千五百九十一件となっておりまして、臓器移植法施行後、減少傾向に確かにあります。このように角膜移植が減少傾向にある要因として、国民や医療従事者が、心停止後の角膜の提供は遺族の承諾のみに基づいて行うことができないといった誤解が生じているものと思います。

 このために、厚生労働省としては、本年二月十三日、都道府県や関係団体に通知を出しまして、改めて国民や関係医療機関の医療従事者に対して臓器移植法の正しい知識を啓発するとともに、心停止後の角膜等の提供に対する医療機関の一層の理解及び協力が得られるように協力依頼を行ったところであります。

 今後とも、国民や医療従事者への普及啓発にさらに力を入れて進めてまいりたいと思います。

福島分科員 ぜひ万全の周知徹底を図っていただきたいと思っております。

 そしてまた、一方では、臓器移植ネットワークというものが臓器移植法の施行とともにスタートいたしまして、さまざまな形で移植のあっせんということを行っております。その中で角膜移植もあっせんされるということがあるというふうにお聞きいたしておりますけれども、その点についての現状はいかがでございましょうか。

篠崎政府参考人 臓器移植法施行から本年一月三十一日まで、三千二百五十三人の方から角膜が提供されておりまして、そのうち、臓器提供意思表示カードによりまして、日本臓器移植ネットワークを介してアイバンクに連絡がなされ角膜を提供された方は百四十一人でございます。

福島分科員 ということは、いずれにしましても、現状の、今までのアイバンクの登録、そしてまた摘出のプロセスというのは極めてまだ大切であるということだろうというふうに私は思います。

 現在、全国にアイバンクが存在いたしますけれども、地域によって、その登録者数も含めて、活動状況というのは非常に差があるわけでございます。この差があるということが、一つは、なかなか献眼が進まないということの要素になっているのではないか、そのように私は思いますけれども、このアイバンクの地域における統合ですとか、その体制の見直しというようなことを図ることによって活性化を進めるべきではないか、そのようにも思いますけれども、御認識をお聞きしたいと思います。

奥山大臣政務官 確かに、地域的に非常に偏っているわけでありますので、このために、本年一月末に開催されました全国の健康関係主管課長会議におきまして、移植件数の少ない地域における取り組みの活性化を図るために、都道府県移植コーディネーターが臓器提供に協力をしていただいている施設などを定期的に巡回いたします。さらにまた、施設から臓器提供に対する一層の理解、協力を得られるように指導徹底を図っているところであります。

 なお、アイバンクの統合等による新たな体制の構築については、地域での自助努力が報われなければならないものと指摘していることにまた留意をしてまいりたいと思っております。

福島分科員 確かに、自助努力というのは大切でございます。そして、その自助努力を支えるネットワークということも極めて大切だというふうに思います。ことし、そのような形で対応されたということを踏まえて、今後の推移ということを見守らせていただきたいと思いますけれども、その推移を見守っていく中で、どうすれば活性化することができるのかということを改めて問い直さなければならない事態が継続する場合には、積極的にその見直しをすることが必要ではないかというふうに私は思います。

 そしてまた、一方では、コーディネーターということが今政務官からお話ございました。アメリカでは、コーディネーターの存在が角膜移植というものを大きく推進しているというふうに伺っております。そしてまた、日本におけるアイバンクの中にも、独自にコーディネーターというものを雇用することによって角膜の移植というものの実績を大きく伸ばしているところもあるというふうに私は伺っております。アイバンク間でかなり差があるということでございます。

 現在の臓器移植ネットワークにおきますコーディネーターを活用するということも一つの考え方であろうかと思いますけれども、角膜移植というものについて、ある意味では特化したような形でコーディネーターということを考える必要もあるのではないか、そのような思いもいたします。これは当然財政的な問題もございますし、予算面でどうするのかという考え方もあろうかと思います。

 先ほどのアイバンクの全国的な展開の体制、これをどうするのかということもございますけれども、コーディネーターの問題も含めてこれは検討を進めていただければ、そのように私自身は思っておりますし、そしてまた、先ほどの友の会の方も同じような思いであろうかというふうに私は思っておりますが、この点につきましても、政務官の御見解をお聞かせいただければと思います。

奥山大臣政務官 確かに、おっしゃるように、今、コーディネーターをいかにして活用するかということが非常に大事なことであろうかと思います。今、全国でたしか五十七名コーディネーターがおられるんですが、まだまだそれが十分活用できるところまで体制は整っておらないところもあります。

 そこで、移植件数の増加を図るために、他の臓器も含めて、都道府県の移植コーディネーターの果たす役割が重要であります。今後とも都道府県コーディネーターに対する研修事業の推進に特に努めてまいりたいと思いますし、また、関係学会において、アイバンクにおけるコーディネーターのあり方について検討が行われていることと承知をしておりますので、その結果を踏まえて、必要な対応を検討してまいりたいと思います。

福島分科員 さまざまに取り組みをしていただいているということは、政務官の御答弁で私もよく理解をさせていただきました。

 また改めまして大臣に、先ほども申し上げました癌と共に生きる会、アイバンク友の会、がん治療の問題、そしてまた角膜移植の問題、悩んでおられる方々が直接にお話を申し上げたい、そのようにも申しておりました。大臣も大変お忙しい御日程でございますけれども、またお時間をちょうだいいたしまして、お話をさせていただければと思っております。そのように最後に要望させていただきまして、私の質問を終わります。

 大変ありがとうございました。

谷口主査 これにて福島君の質疑は終了いたしました。

 次に、松島みどり君。

松島分科員 予算委員会で初めて質問させていただきます自由民主党の松島みどりでございます。

 まず最初に、年金積立金のことしの四月から始まります自主運用のことについてお伺いしたいと思っております。大きく分けて二つ、危険なんじゃないかという、その部分のことについては局長さんで結構なんですけれども、責任のとり方とか、どういう方が担当されるのか、そのあたりはできれば大臣にお答えいただきたいと思っております。

 それで、この自主運用、これまで、財務省の資金運用部に預託されて、財政投融資の原資として使われてまいりました厚生年金と国民年金の年金積立金ですけれども、ことしの四月から、厚生労働省が全額金融マーケットで自主運用することになりました。厚生保険特別会計によりますと、平成十二年度末におきまして、資金運用部に預金、現金で預託してありますのが、百三十六兆八千二百八十六億円でございます。この預託は期間七年でございますから、順次七年かけてこれが毎年戻ってくる、七年後に全部自主運用ということになるんだと思います。

 この二月二十七日に社会保障審議会が答申をされました。厚生年金保険及び国民年金の積立金の運用に関する基本答申という答申が出ているんですけれども、これによりますと、七年後、平成二十年度の資産配分が基本ポートフォリオという形で目標値が定められております。

 これで見ますと、もちろんそれぞれについて許容される乖離幅が示されてはいるんですけれども、一応の基準といたしまして、国債や財投債など国内債券が六八%、そして国内株式が一二%、外国債券七%、外国株式八%、こういったような基本の数字が示されております。

 この中で、年金給付に使う資金でありますことを考えますと、国内外の株式と外国債券に三割近くを充てるということは、この運用は大丈夫なんだろうかと素朴な疑問を感じる次第でございます。運用がうまくいくかどうかというよりは、最低限、安全確実な運用となるんだろうか、そういうようなことを非常に危惧しております。

 そこで、幾つか質問があるんですが、この答申の方には基本ポートフォリオが載っていまして、そして目標の利回りを全体で四・五%とするという形しか載っていないんですが、何らかの形で発表がされましたのか、朝日新聞のきのうの記事によりますと、それぞれの期待収益率というのを出されております。委員の方も、若杉分科会長もそれを大体認められているようなので、これにのっとって質問させていただきます。

 例えば、国内債券の期待収益率を四・〇%というふうにしています。これは過去二十七年間の実績をもとに計算しているとこうなるということなんですが、現在の十年の長期国債の利回りは一・四%程度だと思いますので、余りにも差が大きい、こんなふうに大きく見積もって安全なんだろうか、そういうふうに思えて仕方がありません。全体できちっと運用結果が目標四・五%にならなきゃいけないという前提のもとに組み合わせて数字をつくり上げたポートフォリオじゃないか、そういう気がして、非常に危険なことを私は思っている次第でございます。

 そしてまた、年金資金運用分科会の若杉会長は、国債も償還時までずっと持っておくのじゃなくて、ずっと持っておきましたらそれはそれなりに安全なんですが、そうじゃなくて、市場原理を活用して売買もするべきものである、財投改革というのはそういうものだ、そういうふうにおっしゃっています。これはやはりちょっと危険なんじゃないかなというふうに思うわけでございます。

 もちろん運用の話は、単に厚生労働省だけの問題じゃなくて、これまで財投という経緯があるわけですから財務省、さらには簡保の運用とか、総務省のこととか、いろいろ広がる問題ではございますけれども、年金の基金のことだけで伺わせていただきますと、やはり年金積立金の運用というのは絶対にハイリスク・ハイリターンであってはいけない、安全確実なものでないと国民全体の将来にかかわってくるものだ、そのように考えております。

 その中におきまして、国内の株式というのは、長く持っていれば株が上がるというのはこれまでの幻想であったことは、この何日か、今の現状を見ていると明らかでございます。そして外国の債券、これは米国債などはもちろん為替のリスクもございます。そして外国の株式に至りましては、為替リスクプラス株価が上がった、下がったのリスクがある。こういうものを合わせて三割近くポートフォリオを持つということは正しいんだろうか、そういうことが非常に心配になる次第でございます。

 アメリカでは二年ほど前に、一九九九年の初めに、クリントン大統領が公的年金積立金の株式運用の解禁を提案されました。それについていろいろな議論が起こりまして、FRBの議長ですがグリーンスパンさんが、政府が市場に介入するのは好ましくない、また株価が下落すれば年金財政が不安定になるというふうに反対して、結局見送られた経緯があります。

 例えての例でございますけれども、自分の老後に置いておくお金がぎりぎりでかつかつで、絶対安全でなければいけないと思う個人の場合に、三割近くも国内の株だとか外国の債券、外国の株式に充てないのじゃないか、国債だとか国内の電力債だとかそういう安全なものにしか使わないのじゃないだろうか、私はそんなふうに思います。これは、年金の運用について、こういう経済学者の市場原理を大事にする理論にのっとったままでいいのだろうかという疑問でございます。

 これと関係があるのですけれども、今回の審議会の答申の中にも、責任体制の明確化、そしてまた情報公開の徹底、この二つの項目があります。これについてですが、責任体制に関しては、「運用に関わるすべての者について、受託者責任(忠実義務及び善良なる管理者としての注意義務の遵守)を徹底する」というふうになっております。

 厚生労働省の職員の方、公務員でございまして、善良な方だとは私も信頼しておりますし、義務に対して忠実な方だとも信頼しているのですが、厚生労働省におきまして、優秀な、有能なファンドマネジャーなどという方が養成されているのでしょうか。これだけ莫大な資金の運用というのをどういう方が担当されて、どんな判断と責任でなされるのでしょうか。

 これは厚生労働省の人が全部やるのじゃなくて、民間の金融機関に投資信託とかいろいろな形で任せられるというのかもしれません。その場合は、どういう基準でこの会社が安全だとかそういうことの見きわめを立てられるのか。これまでと異質な、何といいましても公的な部分がこういう運用をするわけですから、そのあたりの担い手というものが非常に気になりまして、質問させていただきたいと思います。

 そして、この情報公開、これも大事だと答申は述べているのですが、情報公開というのは、どういう投資をして利回りはどうだったのか、目標に対して許容される範囲だったのかというようなことは、どれぐらいの頻度、つまり年に一回とか半年に一遍とか、どういう頻度でどういうような方法で公開、ディスクロージャーされるのでしょうか。

 そしてまた、損失が出た場合には、これは国民全体の損失になるわけですけれども、どなたがどういう形で責任をとられるのか。民間の会社ですと、恐らく特に外資系はそうですけれども、こういうファンドを取り扱う方は、これが非常にもうかれば、ボーナスも上がるし非常にいい処遇を受ける。一方、さんざんなできばえだったら、左遷されるとか降格されるとかボーナスがほとんど出ないとか、会社自体も危なくなるし、本人も危なくなります。ずっとプロの先生が隣にいらっしゃるのですけれども、そういうことになると思います。

 それを考えましたときに、厚生労働省の役人の方がどういう形で責任を持ってなさるのか、そのあたりのことを伺いたい、かように思います。

辻政府参考人 幅の広い御質問でございまして、少し長くなりますけれども、一つ一つお答えしたいと思います。

 まず、基本ポートフォリオが楽観的ではないかという一点目の御指摘でございますが、長期的に、このたびの審議会から御答申をいただいた基本ポートフォリオは四・五%という収益率でございます。これは実は、賃金上昇率二・五%を前提といたしておりまして、公的年金は賃金スライドで水準がコントロールされますので、すなわち賃金スライドを上回る二%をとれるかどうかというところがポイントでございます。賃金上昇率が低ければ、逆に収益率は四・五でなくてもよいわけでございます。

 このような観点から、例えば国内債券、国内債券がメーンでございますけれども、国内債券については、確かに国債は近年利率が下降傾向にありますけれども、一方におきまして、債券収益率は、利率が下がれば債券価格が上がるという面がございますので、平成七年度から十一年度までの直近のデータでは、国内債券の平均収益率は四・五%でございます。例えばこのような五年平均を見ましたとき、五年平均の賃金上昇率は〇・八%程度でありまして、実質的な利回りの差は三・七はとれている、必要な二・〇を抜いているということでございます。

 ただ、金利が反転しますれば、今度は金利収入はとれますけれども価格が下がるということになりますので、これで手放しに言えるわけではありませんけれども、例えば債券が低いといってもそのような収益がありまして、あくまでも年金の資産は、超長期、二十年、三十年といったような資産運用をする場合に、長期的な見方といたしましては、私ども、賃金上昇率の差二%ということは十分可能であるというふうに考えております。

 次に、国内株式等を運用対象に繰り入れることについてでございますけれども、基本的には、いわばハイリスク・ハイリターンと言われますように、株式は、短期的な価格変動は大きいという意味ではハイリスクがございますけれども、長期的な収益率を見ますれば、いわば超長期の運用を考える場合に、実質経済成長率がある限り、株は債券収益率を上回る、理論的にも実質的にも歴史的にもそうでございます。そのような観点から、そういう株を一部、たくさん入れるということは私は問題だと思いますけれども、この程度組み入れるということは、むしろ超長期の運用を前提とする場合妥当であると考えております。

 現に、米国の例がございましたけれども、私どもが聞いておりますのは、米国で、国の年金における運用が株式運用をしない最大の理由は、やはり政府により株式運用を行うことが企業活動や市場の価格形成をゆがめるおそれがあるというのが実態で、むしろ年金資金運用の先進国である欧米の資産運用におきましては、米国以外の国の一部でもやっておりますし、いわゆる大きな年金基金は株式を含む複数の資産で運用することがむしろ通常となっておりますし、相当高い組み入れ率を示しております。

 それから、専門性の確保ということでございますけれども、専門的な能力があるかということでございますが、基本的に、まず年金資金運用基金におきましては、自家運用を行う債券の一部を除きましては、基本的には、株とかそういうものは民間運用機関に委託をし、運用をしていただきます。その場合の基準というのは非常に重要でございますけれども、今までの欧米の経験におきましても、運用委託をするときの基準が、定性評価、定量評価、その組み合わせといった、相当評価基準が確立してきておりまして、私どもは、それをしっかりと守って委託をしていただくように、そしてまた、基金自体におきましては、金融資産運用の高度な専門的知識を有する、これはいわゆる内部からの者ではございませんで、外部から投資専門委員という専門家に入っていただくことにしております。

 それから、ディスクローズでございますけれども、私どもこれが最も大切なことだと思います。基本的には、運用の基本方針の策定そのものが審議会では専門家のもとでかんかんがくがくでチェックをいただきました。そして、そのようなところで決めていただいた基本方針、このたび基本方針を決めていただきましたけれども、それに基づいて、そのもとで管理運用方針を決めて運用をする。そして、そのプロセスにつきましては常に審議会に報告いたしますと同時に、運用の結果につきましては、毎年度厚生労働省が報告を作成して審議会に提出するとともに公表する。そして、年金資金運用基金は年金資金の時価による運用状況を必ず公表する。こういった形で、常に身をさらしながら説明責任を果たしていくということによって運用の適正化を図りたいと思います。

 その場合に、もう私どもも、大変な資産でございますので、いわば身の震える思いで真剣に取り組んできておりますが、基本的には、運用の考え方、運用プロセス、それから運用結果やその分析と評価、これを国民各層に十分説明して、徹底した情報公開を行う。この透明性を確保することを通じて責任を果たしてまいりたいと考えております。

 以上でございます。

松島分科員 今局長に伺って、ちょっと詳しく知りたいのが、投資専門委員という方を外部から招く、これはどういう仕組みになるのかということ。

 それから、先ほどおっしゃいました、欧米のやり方を見習って、どこに任せるか、民間運用機関ですけれども、定性、定量評価。今金融機関もどんどん合併していますし、そうすると、また比べるのも、どこがいいかというのも非常に難しいのじゃないかなとつい思ってしまいました。

 それともう一つ、ちょっと戻るのですが、超長期のという言葉がございました。超長期のということは、では、国債の場合はできるだけ売買しないでずっと持っておくという考えでいくということなのかというのが一つ。

 そして、ディスクロージャーの中で透明性の高さが非常に大事だとおっしゃいました。そうしますと、民間運用機関を通じてどの会社の株をどれぐらい買っているかということも明らかにされるわけですか。ディスクロージャー、透明性という意味では非常に大事だと思うのですけれども、長期の運用が必要な政府が、つまり厚生労働省が、この会社の株なら安心して買っている、やはりこういう会社の株は入らないなということまで外に見えてくるものなのか、ちょっと教えてください。

辻政府参考人 まず専門委員でございますけれども、「経済又は金融に関して高い識見を有する者その他の学識経験を有する者」ということで、人事はこれからでございますけれども、私が察しますに、いわば民間の生え抜きの投資の専門家、こういう方がこういうポストに入られるというふうに伺っております。

 それから、評価基準でございますけれども、これは、私も実は二年間年金福祉事業団で資金運用事業部長で担当させていただきましたが、アメリカで評価のルールが相当確立、確立というか、試行錯誤でございますけれども、ございまして、本当にいろいろな、ベンチマークとかそういうものを使いながらいわば客観的に評価できるように努力する、そういう作業が常に進んでおります。

 私ども、そういうものを適用すると同時に、会社がどんどん動いておりますけれども、率直に言いまして、現在は資産管理と運用というものはおおむね分離されましたので、成績の悪いところはかえる。かつては難しゅうございました。それができるようになるということで、そこの点は、本当に実績主義で運用するように、またそれをごらんいただくようにしたいと思います。

 それから、資産でございますけれども、基本的に、どこのものを幾らという、もう膨大な資産ですからこれは公表いたすことをしておりません。ただ、基本的な運用方針はいわゆるインデックス運用というものでございまして、いわば経済を買う、要するに日本が成長する限り収益が確保できるという考え方で、いわば、例えばTOPIXならTOPIXの連動した株を持っていただくというのが基本で、それを少しでもずらすときは相当な勇気が要る。それについては、極めてみずからを戒めてそれをやるといったような考え方が既に関係審議会でも示されております。

 そういう意味で、何か非常に不明朗な株がたくさん入るというような運用は、これはあり得ないという前提で私どもは考えております。以上でございます。

松島分科員 投資専門委員の方というのは何人ぐらいで、常駐されていらっしゃるのか、それともこういう答申を出すような審議会のメンバーみたいな感覚でいらっしゃるのか。

辻政府参考人 常勤、常駐でございまして、それで、この三名の方が、理事会、これは理事長及び二人の理事でございますけれども、理事会メンバーと一緒に、これは投資理事会と通称することといたしておりますけれども、そこで責任を持って常駐で作業を行う、そのボードが全責任を負う。そして、それについては厚生大臣が責任を持ち、関係審議会に、私どもがポイント、ポイントで御報告を行って、評価いただくというふうにしたいと思います。

松島分科員 国民のかけがえのない年金の原資でございますので、十分本当に気をつけて頑張っていただきたいなと思います。

 次の質問に入ります。

 次の質問、これは私にとりまして非常に身近な問題で、そして極めて腹も立っている問題なんですけれども、質問させていただきます。

 国民健康保険証のことなんですけれども、背景を申し上げますと、私は夫と二人暮らしでございまして、私自身は、国会議員はみんな大体そうだと思うんですけれども、国民健康保険に入っております。そして、夫は会社の保険、つまり社会保険に加入しているんです。

 これは、見えないでしょうから読み上げますけれども、私が持っています東京都の墨田区が発行している私の保険証でございます。こっちは、納付書兼領収書というのが毎月参ります、それでございます。ところが、これはどこにも私の松島みどりという名前は記載がございません。

 実は松島というのは私自身が旧姓を使用しておりまして、これの解決は私の政治課題の一つでございます選択的夫婦別姓制度が実現しないとだめなので、ちょっとこれはおいておきまして、私の戸籍名は馬場みどりというんですけれども、それもこの保険証で最後のページにちらっとあるだけなんです。表のページは何かというと、この国民健康保険証は私の国民健康保険証であり、かかるのは私だけ、お金を払うのも私だけですけれども、夫の名前が一面に、フロント面にあるんですね、表紙に。私は最後のページに「この証で療養給付を受けることができる被保険者の氏名」、つけたりなんですよね。

 非常に気分が悪くて、こっちの請求書と領収書に至りましては、私の名前はどこにもない。私の夫の馬場学様あてで、私がお金を払っても領収書はこの人間あてなんですね。私は毎月不払い運動を起こしたい気持ちを必死でとめて払っている、そういう状況なのでございます。

 これは私だけの問題じゃないはずでございまして、私が居住する区だけの問題でもございません。どういうことかといいますと、妻が夫の扶養家族でなくて、夫も妻も例えば別々の会社員である場合はこれは大丈夫なんです。私も会社勤めしているときは私の保険証がありました。私の名前が一番最初に書いてありました。そうじゃなくて、夫が会社の社会保険で妻が個人で仕事をしているために国民健康保険に入っている、こういう場合にこういう状況になっているようなんですよね。

 坂口大臣、こういうのを御存じでしたか。

坂口国務大臣 いや、全然、全然と言ったら申しわけありませんけれども、そこまで知りませんでした。

 きょう、先生が質問していただくというので、初めて私も聞かせていただいたわけでございますが、こういう問題は、先日来ちらちら実は出ているわけであります。それは、社会保障全体を考えますときに、年金でも三号被保険者の問題だとかいろいろの面で、一体社会保障は世帯単位なのか個人単位なのかということが先日来ちらちら出てきたわけでございますが、一つの家族の中でこういうことが起こっているということは、ここまで私は実は存じませんでした。初めて聞かせていただいたわけです。

松島分科員 私自身も、自分が国民健康保険になるまで知りませんでした。知らなくてびっくりしちゃったわけなんですけれども。

 家族単位でとらえるか個人でとらえるかというのは、確かにある問題だと思うんですね。ですから、私も、区役所から来る国民年金の方は自分あてでございますから、こっちは気持ちよく払っております。家族単位であるかどうかというのが、それがそれで一つの基準ならまだ我慢ができるんです、妻も社会保険、会社の保険だったらその相手で来るわけですから。

 こういうケースだけどうなっているのかと考えると、これはおかしいんじゃないかと。私は、男女共同参画社会なんという難しい言葉を持ち出すまでもなく、非常に理不尽じゃないかと感じておりまして、私思いますのに、坂口大臣は差別される立場の、差別というのは大げさかもしれませんけれども、そういう立場の人間の痛みをよくおわかりになっていらっしゃる方だと信じておりますので、どうか大臣のお力で御指導をいただきまして、これはだれにも迷惑をかけませんので、本人の名前でこれが出るように、何とぞよろしくお願いいたします。

坂口国務大臣 今、松島先生の御家族のお話が出たわけでございますが、お二人だということでございますけれども、もしも、例えばお嬢さんならお嬢さんがあったといったようなときには、お嬢さんの名前というのは、お嬢さんが掛金をされましても、そうすると、お嬢さんが例えば大学生で、そしていよいよ保険料を払わなきゃならないといったときに、それじゃ、それを本当に払ってくれるのね、その責任はだれがとってくれるのということになると、やはり御主人の名前になってくるんではないかという気が、そこはいたします。

 しかし、御主人と奥さんの場合にどうなのかというふうに言われますと、私も甚だ心もとなくなってくるわけでございますが、ケースは、私今申しましたようにいろいろあると思うんですね。例えば、お子さんが学生で、そして払うといったようになってまいりましたときに、それじゃそれは一体どうなるのか、じゃ、本当に払ってくれる人の責任はだれがとってくれるのかというなら、やはりそれは御主人が、世帯主がとってくれるということになるんだろう、そのときにはやはり御主人の名前にしなきゃならぬのかなという気がするわけですが、先生のような場合に一体どうなのかというのはなかなか難しいですが、ちょっとだれか説明してもらえますかね。

松島分科員 学生の保険料を払う、もし、それでどうしても必要だったら、世帯主を附属品みたいに最後のページに書けばいいじゃないですか、もし本人が払えない場合はこの人が必ず払う義務があるとかいって、世帯主を最後に書けばいいと私は思います。

坂口国務大臣 それでは、これはちょっと宿題にさせてください。

松島分科員 もう大臣がしっかりと受けとめていただきましたので、今後に期待させていただきます。

 あと、ちょっと普通の質問をさせていただきます。これは、私自身もそれほど詳しくないテーマで、しかし関心を持っています小児科のお医者さんの緊急医療体制の問題でございます。

 平成十一年十二月の新エンゼルプランによりますと、小児救急医療支援事業の推進というのがございまして、平成十一年度で百十八地区、平成十三年度には三百六十地区を目標として掲げています。しかしながら、現在のところ、今もう平成十二年度も終わろうとしていますけれども、まだ五十一地区しか実現していない。

 この小児科医の、特に救急医療の問題はしばしば新聞その他でも出るところでございますけれども、これは非常に、夜中とか日曜日に子供がけいれんを起こした、熱を出した、それで、飛び込んだけれども救急車でたらい回しにされる。ただ、これは病院が冷たいのじゃなくて、小児科医の方が減っているし、小児科医の方が夜勤、夜勤で頑張っても頑張ってもやっていけないぐらいの状況であるということを耳にしております。このあたりはどういうふうに対処していかれるのか。少子化対策といって、せっかく生まれた子供がこういうことで死んじゃったら大変だ、病気になったら大変だと思います。

 これについて、例えば、小児科医が足りないということが、これは手間暇かかる割にもうからない商売だからということでしたら、診療報酬の中で、薬はちょっとだけ出すのでも、小児科医は間違えやすいし面倒だし大変だからといってばんとお金をつけるとか、そういうことを考慮していただきまして頑張っていただきたいのですが、どんな状況でございましょうか。

坂口国務大臣 私ごとを申し上げて恐縮でございますが、私は最初小児科を目指しておりまして、しばらく小児科の医局におりました。したがいまして、私の同僚あるいは後輩は小児科がほとんどでございます。

 それらの意見を聞きますと、今御指摘になりましたように、小児科というのは安い、こう言うわけでございますが、それは、耳鼻科に聞けば耳鼻科は安いと申しますし、眼科は眼科で安いと言いますから、小児科が安いというのも私は一〇〇%聞いてはいないわけでございますけれども、しかし、最近、大学におきましても、小児科に入る人は非常に少なくなってきた。眼科ですとか耳鼻科ですとか皮膚科に入る人が非常に多いということだそうでございます。我々のときには、内科とか外科とか小児科というのは花形でございまして、一生懸命入ったわけでございますが、最近は、皮膚科だとか眼科だとか耳鼻科というのは夜起こされるということがないものですから、そういうところに集中をするということだそうでございます。

 先日も、局長さんに、小児科は減っていないかといって聞きましたら、現在登録をされている人数からいきますとそんなに、ふえてはいないけれども減っているということはない、こういう話でございますので、ちょっと安心はしたところでございます。しかし、最近はかなり入る人が減ってきている。

 それで、救急医療をどうしていくかなんですが、開業医の先生方だけにお願いをしておりましても、きょうはあなたの当直にしてくださいよといいましても、当直料や点数というのはそんなに多くないわけでございますから、これはなかなか、地域によってはまとまらないところもあるわけでございます。

 それで、私は、国立病院だとか自治体の病院というのがもっと積極的に関与をしてくれないといけないと思うのですね、そういうところはたくさん小児科の先生がお見えになるわけでございますから。ところが、こういう言い方をするといいかどうかわかりませんけれども、組合との関係がございまして、それで、国立大学だとか赤十字でございますとか済生会でございますとかあるいは自治体病院というところは、救急医療に対しては甚だ冷たい面があるわけでございます。こういう言い方をするとしかられると思いますけれども、あえて私申し上げているわけでございます。

 しかし、小児科の場合は、こういうところにお勤めの先生方もお手伝いをいただいて、開業医の先生方とタイアップをして、そして地域地域で盛り上げていくということがなければ私は不可能なことだという気がいたしております。

 そういう意味で、そういう体制ができないのかどうか一遍研究してほしいということを言っておりますし、必要ならば公立病院の組合員の皆さん方等と話をしてでも何とかならないか、そんなふうに思っている次第でございます。

松島分科員 プロでいらっしゃる坂口大臣、ドクターとは存じていましたけれども、最初小児科医をされたということまで私存じなかったもので、本当にぜひ指導力を発揮してこの問題解決に向かっていっていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

谷口主査 これにて松島君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明二日金曜日午前九時より本分科会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後七時三十六分散会




このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.