衆議院

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第2号 平成17年2月28日(月曜日)

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平成十七年二月二十八日(月曜日)

    午前十時開議

 出席分科員

   主査 後藤田正純君

      金子 一義君    津島 雄二君

      松島みどり君    首藤 信彦君

      高木 義明君    中津川博郷君

      村井 宗明君

   兼務 増子 輝彦君 兼務 江田 康幸君

   兼務 桝屋 敬悟君 兼務 吉井 英勝君

    …………………………………

   厚生労働大臣       尾辻 秀久君

   厚生労働副大臣      衛藤 晟一君

   厚生労働副大臣      西  博義君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長)   天野 之弥君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  田中 慶司君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局長)            阿曽沼慎司君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            青木  豊君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       伍藤 忠春君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    塩田 幸雄君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  中村 秀一君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  水田 邦雄君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

   予算委員会専門員     清土 恒雄君

    ―――――――――――――

分科員の異動

二月二十八日

 辞任         補欠選任

  津島 雄二君     松島みどり君

  辻   惠君     村井 宗明君

  中津川博郷君     高木 義明君

  照屋 寛徳君     山本喜代宏君

同日

 辞任         補欠選任

  松島みどり君     佐藤  錬君

  高木 義明君     西村智奈美君

  村井 宗明君     首藤 信彦君

  山本喜代宏君     東門美津子君

同日

 辞任         補欠選任

  佐藤  錬君     津島 雄二君

  首藤 信彦君     辻   惠君

  西村智奈美君     中津川博郷君

  東門美津子君     照屋 寛徳君

同日

 第六分科員増子輝彦君、江田康幸君、桝屋敬悟君及び第八分科員吉井英勝君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十七年度一般会計予算

 平成十七年度特別会計予算

 平成十七年度政府関係機関予算

 (厚生労働省所管)


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     ――――◇―――――

後藤田主査 これより予算委員会第五分科会を開会いたします。

 平成十七年度一般会計予算、平成十七年度特別会計予算及び平成十七年度政府関係機関予算中厚生労働省所管について、前回に引き続き質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松島みどり君。

松島分科員 自由民主党の松島みどりでございます。

 おはようございます。

 第一問でございますが、乳がん検診のマンモグラフィーの緊急整備について質問させていただきたいと思っております。

 平成十五年、一昨年ですが、がんで亡くなった女性は十二万二千六百三十一人いました。私ごとで、個人的なことで恐縮ですが、この数字の中に私の妹、二歳下の妹もリンパがんでこの年の五月に他界いたしました。四十四歳でございました。ですから、この十二万という数字が単なる数字ではなくて、その裏、その奥にその何倍もの方が今なお、十五年に亡くなった方はことし三回忌を迎えるわけですが、そういう思いを持つ、悲しみを持つ方がたくさんいるのだということを、自分の身に照らし合わせて感じる次第でございます。

 話をもとに戻します。

 がんで亡くなった女性の中で一番多いのは、胃がんでございます。次いで肺がん、そして肝臓がんと続き、乳がんは四番目で、九千八百六人が亡くなられました。しかし、病気にかかった人の数で見ますと、女性のがんで最も多いのが乳がんでございます。一番新しいデータ、罹患者のデータは少し時期がずれてしまうのですけれども、一番新しいデータでございます平成十一年、十二年、十三年の平均値という、この数字で見ますと、三万六千八百八十六人が乳がんにかかっていると推計されております。

 乳がんというのは、早期発見すれば命を落とさないで済む、そういうがんの典型的ながんでございますが、それには従来の視触診というやり方だけでは不十分というか、全然わからないわけでございます。視触診というのは、おっぱいを目で見たりさわったりして、それで検診するという検査ですが、それだけではとてもだめで、マンモグラフィーという独特なエックス線の検査が有効とされております。

 アメリカやヨーロッパの各国では、マンモグラフィーによる検査というのが基本、一般的でございまして、受診率は、北欧の場合、八割台、イギリスは五十歳代と六十歳代の方だけが対象でございますが、七五%の人が受けている。アメリカは四十歳以上の人が受けることになっていまして、七〇%の方が受診しています。

 一方、日本では、乳がんの受診率そのものが一二%と低い上に、マンモグラフィーの利用は全体の二%。女性の二%がこの検査をしている。それだけ低い数字でございます。

 これについての政策が平成十六年度と平成十七年度に画期的に進みました。マンモグラフィーの普及は、かねて私も強く主張してまいりましたし、そして平成十五年、おととしですが、自民党でいいますと安倍晋三さんが幹事長だった時代、この時代に、与党の幹事長会議の発案で、これは極めて異例なことだと思いますが、与党の幹事長会議が発案して、それが反映されて、厚生労働省は十六年度にがん検診に関する指針を出しました。

 この指針の中で、四十歳以上の女性に対してはマンモによる検査と視触診を同時に実施することを原則といたしました。マンモグラフィーを使わなければだめだということで、これは画期的な方針の転換だったと思います。ただ、十六年度は方針を出しただけで、お金の措置がつかなかった。これではなかなか実施主体である自治体はできないということで、さらに十七年度、今度四月から始まります年度に、マンモグラフィー整備事業として三十九億三千七百五十万円の予算が計上されております。

 この三十九億三千七百五十万円ですが、どのように使うかと申しますと、二分の一の補助事業で一台を上限三千万円、いろいろな値段の商品がありますけれども、上限三千万円といたしまして、二百五十台購入する。その半分を国が出す。それともう一つは研修費用。技師の方々が取り扱う、そしてまた医師の方々が読むという、そのための研修費用を足したものでございます。

 この予算をつけたということ、これは私は高く評価しております。しかしながら、これによりまして、このマンモを利用した検査の受診率がどの程度まで上昇するというふうに厚生労働省として予想しておられるのか。さらに、目標としては受診率をどの程度まで引き上げること、アメリカやヨーロッパは七割台、八割台でございますから、どの程度まで引き上げるということを目標としているのかということを質問させていただきたいと思います。

 質問をまとめて申し上げますと、このことに関しまして、自治体の中には、これは、さっき申しましたように二分の一補助でございますから、自治体の中には、半額負担に耐えられないで導入できないところもあると予想されますが、全部使い切ることができるというふうに予想できているのか、もしそうでなければ、どのような対処、どのような方法によってせっかくつけた予算をきちっと生かすように考えていくのかということを伺いたい。

 さらに、これですべてになると思いませんので、今後、十八年度以降も助成事業を進めて、日本じゅうのすべての地域で、地域差というものを生じないで、すべての地域で、希望すれば四十歳以上の女性がマンモによる検査を受けられるようにすべきだと考えますが、そのためにはどれくらいの費用が必要で、厚生労働省として取り組んでいくのか、それについて御質問させていただいた上で、ぜひ頑張っていただきたいと思っております。

中村政府参考人 先に、副大臣からお答えする前に、事実の点とか、若干技術的な点についてお話をさせていただきたいと思います。

 先生から乳がんの受診率の国際比較の低さ、日本は一二%台。それで欧米は七、八割、こういうことがございました。それで、目標はいかがか、こういう御指摘、それから、こうやって整備していくとどこまで行くのかということでございます。

 もう国際的に見まして、実は異例の低さでございます。しかも、実は一二%といっておりますけれども、本音を申し上げますと、専門家によりますと、乳がんの受診率の正確なデータは日本ではないと言われております。

 なぜかというと、これは、この事業は老人保健事業と申しまして、市町村の方が自分の対象者、自分のストライクゾーンと思う人を分母にして、分子に検診を受けられた方をやっております。そうすると、市町村の方は、例えば厚生労働省の職員の奥さんは数に入れてない。これは厚生労働省の共済でやってくれるはずだ。それから、例えば健保組合の方も対象にしない、そんなようなことがございまして、大変問題だと思っております。

 また一方、検診によって乳がんが減るためには、六割ないし七割の受診率がないと、実は科学的な根拠で減らないと言われていますので、当然、我々の目標としてはそこまで持ち上げていかなければならないというふうに考えております。

 今度のマンモグラフィーの整備で、来年度もさせていただきたいと思っておりますが、これで実は五割程度は行くと思っていますが、行くというのは、対象人口の五割はマンモグラフィーでカバーされると思っていますが、大問題なのは、それよりも、実際に受診していただけるかどうかの方が問題でございまして、予算面、そういったことについては一生懸命やってまいりたいと思いますけれども、一番大事なのは受診率を上げるということで、老人保健事業は二十年以上やってきておりますが、この程度の受診率しかございませんので、本当に進めていくためには、こういう事業のやり方でよいのか、それも含めて検討していかなければならないと思っておるところでございまして、医療制度改革の中で、一万人も女性の方が亡くなっておるわけですから、特に先生からお話がありましたように、若い世代の女性のがんの死亡では、乳がんが一番でございますし、早期発見すれば防げるわけでございますから、この受診率が上がるような医療制度改革をしていかなければならないと思っております。

西副大臣 今担当局長から既にお答え申し上げましたけれども、先生御指摘のように、乳がんは女性のがんのかかる率の中では最高という、これからのがん撲滅の政策の中では大変重要な施策だというふうに思っておりまして、この対策を徹底的にとっていくことが、特に女性に特有のがんの撲滅のために不可欠な問題だ、こういうふうに思っております。

 種々のことについては、今二百五十台新たに整備するとかいう話は先ほど先生から御指摘がありましたけれども、今後とも乳がん対策を強力に推進すべきであるという先生からの力強いお言葉がございましたが、そのことを十分体しまして、これから、先ほど局長から話がありましたように、欧米並みの受診率をまず確保するためにいかにあるべきかということを、我々としても懸命に考えていきたい、そして乳がん患者の早期発見に努めてまいる所存でございます。

松島分科員 力強いお言葉をいただきました。

 それで、提案なんですけれども、まず一つは、これはちょっと変なこだわりかもしれませんが、老人保健局とか老人保健事業と言われた途端に、私は四十八歳ですけれども、私でも嫌ですね。物すごく不愉快な名前でございます。

 もう一つ。一般に、お年寄りになっても元気でいられるための事業だということは頭では理解いたしますが、それと私が感覚的に嫌なのを別にいたしましても、がんは検診の中でも、高齢者予備軍がなる糖尿病とか高血圧とか、そういったいわゆる成人病とまた違うと思うんです。

 特に、この乳がんというのは二十代、三十代でも発症している。ただ、三十代まではマンモグラフィーが余り有効でないというようなことを伺っているので、この質問には入れませんでした。四十歳ぐらいからということでマンモのことについては申し上げましたけれども、それより若い方の検診も含めて、行きやすい環境というか、どちらかというと、余りお役所、区役所も含めて、区役所や保健所がどうこう言うよりは、不幸にも若い方でかかっている方の闘病記、有名な方、芸能人などの闘病記だとか新聞でそういうことを知って、どきっとして検査に行くとか、あるいは比較的若い方の死亡記事を読んでショックを受けて検査に行かれる方が多いと思うんです。この年代、五十歳以下、二十代、三十代、四十代の受診率を高めるという上では、やはりどちらかというと、女性雑誌などに、厚生労働省が働きかけるのは変かもしれないけれども、いろいろな情報も提供して、普通の読み物として取り上げられ、そして読まれること、これが一番なのかなという気がいたしております。

 老人保健事業という言葉だけは変えられた方が受診者の抵抗が薄いと思う、これは私だけではないと信じております。

 次の質問に移らせていただきます。

 病院の管理栄養士の問題でございます。

 管理栄養士というのは、栄養士さんの中でも国家資格を持つ方々なんですが、実際、今病院では、病院の食事、病院食というのは、直接病院の従業員の方が食事をつくっているのではなく、外部に委託して、アウトソーシングというか外部の会社に委託して、でも、会社としてはアウトだけれども実際には病院の中の厨房で働いて食事をつくっている。そして、病院における食事の意味づけというのは非常に大きい。特に、最近は入院日数を短くして早く出てもらおうということがふえていますから、早く出てもらうんだったら、出た後に引き続きこういうことを注意してくださいということが非常に大事になってくるかと思います。

 その中で、病院の中で、アウトソーシングでよその会社が病院の中で食事をつくっている。そこに管理栄養士さんという方が雇われているわけです。国家資格を持つ管理栄養士の方が献立を考えたり、そして本来ならば、個々の患者さんがどれだけ残したということを見て、こういう食物を摂取していないのはこういう問題があるとかいうことに気づいて、メニューに生かすとか、あるいは患者さんにアドバイス、注意をして、あるいは退院していくときにいろいろな指導をする、それがあるべき姿でございます。

 しかし、現実に今どうなっているかというと、病院が雇っている管理栄養士ならばそういう仕事ができる。ところが、同じように病院の中で管理栄養士の資格を持って仕事をしていても、直接病院の従業員じゃなくて、よその何とか給食サービスとか何とか食品サービスに雇われている管理栄養士さんが病院の中で働いているときにはこれができないんですね。患者さんに接することもできない、注意を、アドバイスをすることもできない。これでは、せっかく資格を持って働いている人が有効に生かすことができないと考えております。

 これは、私、数年前にもこの予算委員会の分科会で質問したことがあるんですが、そのとき、事務方は何かよくわからない理屈をいろいろ言われたんですけれども、指揮命令権が院長から及ばないからだめだとか言われたんですけれども、そんなのはちょっと指示すればいいだけで、大きな病院で院長の指揮命令権がすべての医療職の人に行き渡っているとはとても思えないので、どうも私は納得できないでしつこくかみついたら、当時の坂口大臣が、労働の働くあり方もこれからいろいろ変わってくるでしょうから、また今後の検討にすべきことだと思いますというふうに引き取っていただきました。今、厚生労働省、どのようにお考えか、伺いたいと思います。

衛藤副大臣 坂口大臣に質問されて、その間、平成十六年の三月からは、実は、管理栄養士を含めて、派遣先であるところの医療機関が派遣労働者を事前に特定できるという紹介予定派遣を導入いたしましたので、これは、雇用を前提として事前に面接等ができるということの中では、紹介予定派遣というものを導入したところでございまして、そこにおいては可能という形に検討をしたところでございますけれども、今先生がおっしゃられましたように、いわゆる指揮命令系統が管理栄養士さんに及ばない中でこれを出すということについて、やはり無理だというぐあいに考えております。

 栄養指導の業務というのは医療の一環でありますというのが建前でございまして、そしてまた、医師、看護婦、管理栄養士など、さまざまな医療スタッフが連携をして意思疎通を図ってチーム医療をするということが前提となっていますので、身分が切り離されてはやはりあり得ないという形を持っています。ここは非常に他の職種との関係もあるというのが正直なところ、この前提だというぐあいに思っております。

 説明の仕方が非常に難しいのでありますけれども、まず、医療の一環であります、それから、さまざまなスタッフが集まってチーム医療をやっています。そこにいわゆる雇用関係のない方が入るということになりますと、管理栄養士さんの行う栄養指導も医療の一環というふうにとらえられていますから、ほかの医療もそういう関係がなくても全部できるんじゃないのかという形になりますので。

 そういう意味で、ここのところは、先ほどもおっしゃいましたように、坂口大臣のときに検討いたしましたが、十六年からやりましたのは、もうその後、雇用が前提となるところの方々に関しての、いわば指揮命令系統もはっきりしている中で、いわゆる紹介予定という形で、人を、ただだれか来たというんじゃなくて、そこで医療側も事前に派遣労働者を特定できる、面接できるという形の人についてはそれが可能であるというぐあいに導入したところでございます。

松島分科員 管理栄養士というものは、食べることの現場と医療の現場とのその両方に足を置く職種だと思うんです。

 それで、今、派遣の中の紹介予定派遣という、これも制度としてよくわかるようなわからない、まあ、これはすべての業種について言えることなんでしょうけれども、将来、雇用主側と雇用される側で気持ちが意気投合したらそっちへ移ることを前提にした、何かお見合いと結婚の間の交際期間みたいな感じではございますけれども、私、こういう形で管理栄養士が来るよりは、食べ物の現場を持っているところの会社の人が管理栄養士で医療とのかかわりも持っている方が、私は適切だと思っております。

 そして、こういうことを考えるときに、医療現場における働き方のありようというのが、そしてまた雇用関係というのが、医療をめぐる職種もいろいろございます。医師、看護師、検査技師、それから、理学療法士、作業療法士、心理療法士、いろいろな新しい分野もどんどんできてきております。それぞれについてまた別の見方で、それぞれごとに特性を考えて、医療関係全部まとめて何とかでなきゃいけないというのとはまた違ってくると思いますので、今後は、患者にとってどうであるか、患者にとっては、せっかくいる管理栄養士が指導するのと、そういうわけにいかぬと言って、さっきの二本の足で立つべきところを、食の分野、つくる方のところだけにいるのと、どっちが患者にとって幸せかということを考えて、医療をめぐる職種の中も一つ一つ吟味してあり方を考えていただきたい、これをぜひ求める次第でございます。

 医療の分野というのは、職能制というか、それぞれの非常に強い意識もあるとは思いますが、いろいろ新しい分野の専門職も生まれておりますので、それぞれ個別に考えていただきたいと思うところでございます。今後、この管理栄養士について、さらなる御検討を患者の立場でお願いしたいと思います。

 次の質問に移ります。

 次は、不妊治療のことで伺いたいと思っております。さっき、マンモグラフィーが画期的と申しましたが、この不妊治療に関しても、画期的なことが今厚生労働省の政策として、やっとという感じで進んでおります。

 この不妊治療というのは、現状で申しますと、私もびっくりしたんですが、体外受精による子供が毎年一万三千人生まれて、これは、年間生まれる子供のうち、百人生まれたら一人は体外受精によるものだ、もうそんな時代になっております。

 体外受精というのは、一般的には一回三十万円ぐらいかかるとされています。そして、その中でも顕微授精という、一番行き着いた先の高度な体外受精の一つですけれども、顕微授精の場合は四十万円かかります。これは、非常に切実な思いで治療を受けられる方にとっては、何度も何度も、何十回も繰り返される、精神的にも肉体的にも強い負担がある。それに加えて、非常に経済的にも負担が大きい。これについて、いろいろな議員の方々が一生懸命動いてこられて、今年度から、平成十六年度から、特定不妊治療費助成事業というのが始まったのは評価いたします。

 特定不妊治療というのは何だろうかと思ったら、子供をつくりたいと頑張る御夫婦に対して、一回の上限十万円で、一夫婦当たり二回、一夫婦というのは、人生通じてだけれども、そのカップルである限りにおいて二回ということのようですけれども、十万円を二回を限度として出すということでございます。これは、特定不妊治療で、体外受精と顕微授精について行われるわけでございますが、私は、国がこういう政策に転換したということは非常に評価すべきことだと思っております。

 これまで、何となくマイナー、あるいは御本人たちもないしょにされていたりいろいろな、あるいは勝手にやっているんだふうなことであったのが、国がやはり大事なことだということで取り上げたことは、非常に評価に値する。

 そして、今、日本が少子高齢化、大変だ大変だと言っている中で、私、少子化対策というのはいろいろな種類があると思うんですが、例えば、結婚したくない女性に早く結婚しない方が悪いんだとか、結婚しても子供を持つ意思がない、あるいは持てないまま、それでいいんだと思っている人に対して早く子供をつくれみたいなこと、これはやっちゃいけないことだ。それに比べて、子供を持ちたいと願っている女性に対して経済的支援、あるいはこういういろいろな意味の支援をすることは非常に大事な、今女性に対してと言いましたけれども、これはちょっと言い方、間違いですね、子供を持ちたいと願っている御夫婦に対してするということは非常にすばらしい。

 ただしかし、その中で、国がせっかく温かい後押しをするという姿勢を示しているのならば、ぜひ聞いていただきたいことがあります。

 まず、所得の制限をやめるべきだ。今、夫婦合わせた所得が六百五十万円以下の方に限るということになっております。これはやはり、国の姿勢としてやるのならば、それは、たまたまそのときに所得が比較的高目にあったとしても、何十回も受けようと思ったら大変なんだし、国が後押ししてくれるという、その気持ちの持ちようという意味では、所得制限をやめるべきだと思っておりますし、一回の上限が十万円というのは余りにも低いんじゃないか。実際に三十万、四十万かかることを考えると、全額とか、あるいは半分とかまでは出してあげるべきではないかと思っております。

 それと、人生通じて二回ということですけれども、これはどこまでふやすのがいいか、何回でもいいということにすると、何回でも頑張れということになって、それはかえってまたプレッシャーにもなりますので、もうちょっと、例えば四、五回までふやすとか、どういったお考えをお持ちか、伺いたいと思っております。

尾辻国務大臣 今いろいろお話をいただきました。不妊治療につきましては、これまでも議論のあったところでございます。

 そこで、不妊治療の経済的負担の軽減を図るために、今お話しいただきましたように、本年度より、医療保険が適用されず高額の医療費がかかる配偶者間の不妊治療に要する費用の一部を助成する特定不妊治療費助成事業を実施いたしました。このことについて、松島先生がいろいろ定着のために御努力いただいておりますことに対しまして御礼申し上げたいと存じます。

 そこで、厚生労働省としては、まずはすべての都道府県、指定都市、中核市で実施され、支援が必要な夫婦が事業の恩恵を受けられるようにすることが重要であると考えております。ちなみに、実施率を申し上げますと九一・六%でございます。そのことが重要だと考えておりますので、子ども・子育て応援プランにおいても事業の推進に盛り込みました。

 さて、それから先の、今の御指摘のような制度設計等について、いろいろな見直すべきではないかという御意見がございます。一言で言いますと、今年度始めたばかりでございますから、まず様子見をさせていただいて、検討させていただきたい、こう考えております。

松島分科員 ぜひよろしくお願いしたいと思っております。

 最後に、町の零細企業、小売店や飲食店、工務店、工場などが、従業員を健康保険、厚生年金、雇用保険に加入させなければいけない。これが非常に事業主にとって負担が大きいということで、訴えをたくさん、私受けているところでございます。会社がつぶれてしまう、そういうような感じで。

 例えば、月給二十五万円の従業員と三十万円の従業員を一人ずつ抱えていました場合、つまり二人しか社員がいないというような場合、ボーナスがないと仮定いたしましても、毎月の健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料の事業主負担を合計いたしますと、それぞれの従業員について、三万千三百九十九円と三万六千三百五十一円で、二人分の合計は六万七千七百五十円に上ります。小さい会社にとっては非常にきついことでございます。

 従業員五人未満の会社では、法人組織とはいいますものの、従業員が妻や子供など関係者ばかりだったり、あるいは会社と従業員が不況の波間に一緒に漂っている運命共同体だ、そういうのが圧倒的でございます。

 ましてや、今度株式会社をつくりやすくしているわけですけれども、つくりやすくすると、どんどん会社ができる。個人経営と変わらないようなこんな会社については、やはりそれなりの、免除というか任意に、労使が合意したならばこれから外すことができるとか、そういった工夫ができないんだろうかと、御提案し、質問させていただきたいと思っております。

西副大臣 長引く不況の中で、特に零細中小企業が大変経営的に御苦労なさっていらっしゃる。そんな中で、先生御指摘のように、保険制度、年金制度にかかわる経営者の御苦労も多いと思いますし、また、そんな中でも少しでも、老後の安定とか健康を期待する、そういう従業員の思いもよくわかるところでございます。できる限り多くの被用者の皆さんが、そういう意味では、医療保障だとか老後の保障を確保するという観点から、種々、これまでも議論が重ねられてまいりました。

 昭和六十一年度以降は、先生ももう御存じだと思いますが、五人未満の法人事業所であっても、五人以上の法人事業所の被用者との均衡を図るべきということで、適用対象ということになっているということでございます。

 ただし、御指摘のとおり、小規模の事業所に関しては、強制適用に対してさまざまな御意見、御要望があることも事実でございます。しかしながら、事業主の判断で制度から脱退するとかいうようなことになりますと、ある意味では、今度は従業員の皆さんの生活保障が後退をするということもあり、強制加入の仕組みによって確保されている今の、現在の制度の安定性、それから持続可能性、全体的なことを考えましても、若干難しい面があるのではないかというふうに考えておりまして、我々も、できるだけ大勢の皆さんに入っていただくこの制度を安定的に維持をしていきたいという意味で、今後とも、基本的には今の方向でやっていきたいというふうに考えているところでございます。

松島分科員 ただ、会社がつぶれてしまうと元も子もないんです。それで、こうした社会保障の概念というのは、もともと労働者を守るために、歴史的に労使対立概念のある大企業において、そしてまた、その大企業において終身雇用とか福利厚生とか、そういうものと一体となって発展してきた制度だと思います。したがって、家族的経営をしている、一緒に生きるか死ぬかという、会社というほどじゃない、もう本当に、たまたま法人という名前がついているだけのところへの適用はいかがかと、そう思う次第でございます。

 最後に申し上げさせていただきますけれども、一方、産業構造の変化でおかしなことが起こっております。大企業でも、例えば全国チェーンのスーパーや、そして外食産業、そういったところでは、幾らでもそういう負担に耐えられるような大企業でありながら、圧倒的にパート、アルバイトを雇うことによって、この事業主負担から逃れているわけでございます。

 この経営者、会社は強いんだ、従業員は弱いんだというその図式化ということは、やはり厚生労働省、せっかく労働も一緒にくっついたのでございますから、厚生労働省の中でももう一度考え直していただきますように、恐らく西副大臣も、御地元で経営者の顔、経営者というか、零細事業者の顔を一人一人思い浮かべられると、私と同じお考えではないかと思います。どうか、政治が中心となって、大臣、副大臣、皆さんで取り組んでいただきたいテーマでございます。よろしくお願いいたします。

後藤田主査 これにて松島みどり君の質疑は終了いたしました。

 次に、江田康幸君。

江田分科員 公明党の江田康幸でございます。

 本日は、難病対策について、主としてお伺いをさせていただきたいと思っております。

 我が国の難病対策、これは小児と成人のそれぞれ難病対策があるわけでございまして、いわゆる小児慢性特定疾患、それと特定疾患治療研究事業でございますが、本日は、この小児を対象とする難病制度と成人を対象とする制度の今後の課題について、私の方から質問をさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 その中で、まずは、小児の難病であります小児慢性特定疾患治療研究事業、これは、小児がんとか気管支ぜんそくを初めとして、五百もの疾病を対象とするものでございますが、昨年、大きな見直しを行ったところでございます。

 新制度がいよいよ本年四月からスタートすると思われますが、今まで予算措置で行っていた小児慢性特定疾患治療研究事業を児童福祉法の中に明確に位置づけることで安定した財源の確保を可能としましたし、また、対象疾患の拡大についても、重症か軽症かといった患者の重症度とか、慢性か急性かという、そういう病気の性質において一定の基準を設けて、一部の軽症疾患患者を対象から除いて対象者を重点化するということで、真に支援を必要としている多くの患者を新たに対象に加えることが可能となったわけでございます。

 これによりまして、対象疾患は、十疾患群、四百八十八疾患から、十一疾患群、五百十疾患に拡大、新たに消化器疾患を加えまして、また、通院患者で対象外となっておりました慢性腎疾患やぜんそくなどもこの対象になるわけでございます。さらには、原則十八歳とされていた対象年齢につきましても、症状が改善されなければ二十までと。

 これで、対象人数は、現在約十万人だと思いますが、それからさらに、トータルとして約六千人が拡大されるというふうに理解をしております。

 このことについては、昨年の臨時国会以来、また、それまでの中で我が公明党も非常に強く推進をさせていただきましたので、これについては、政府の、また大臣の御英断を高く評価するところでございます。

 この小児の難病対策において残された課題について質問をさせていただきます。

 小児慢性特定疾患治療研究事業と成人の特定疾患治療研究事業は、事業目的が違うということから、全くこれは独立して行われているというのはよく存じております。ごく一部の疾患は両方の制度で指定されていると思いますけれども、成人を対象とする特定疾患については対象疾病が四十五なわけでございまして、小児慢性特定疾患の対象とされているのは五百ある。

 では、二十を過ぎたらどうなるのかということなんですけれども、二十を過ぎると、国の助成制度の対象から外れて、そして急にといいますか、途端に高額療養費、高額な医療費がかかってくるわけでございます。すなわち、小児の難病と成人の難病に、一貫性、連続性、そういうものがないという問題が指摘されているわけでございますが、今回、私も、これについて御質問させていただきます。

 二十を超えても慢性の病気が続く患者は多数おられると思います。その患者と家族の負担は非常に重たいものがあるわけでございまして、まず、二十を超えても治癒しない疾病はどれだけあると把握されておりますでしょうか。また、この小児慢性の病気で苦しんでおられる方々が成人になった後にどのような支援が考えられるのか、また、されようとされているのか。さらに、両制度を連続させるということができないのか。これについて、大臣、また政府参考人、御説明をお願いいたします。

尾辻国務大臣 まず、数字についてわかっておるだけ局長から答えさせた後に、私からお答え申し上げたいと思いますから、よろしくお願い申し上げます。

伍藤政府参考人 今、さまざまな研究事業をやっておりますが、五百数種類の小児慢性疾患のうち、どの程度のものが大人になった後も病気として存続するかどうか。これは必ずしも明確なはっきりした統計等が今までございませんので、さきの児童福祉法の改正の際にもそういう御指摘を受けましたので、今、小児慢性疾患の研究事業をいろいろやっている研究班において、これから二十以降の状況についても把握しようということで、今いろいろ準備をしておるところでございます。

 こういった研究事業を通じて、こういう小児慢性疾患にかかった方々の成人後の状況を把握した上で、どういった対策が可能かどうか、これからよく関係部局とも相談をしていきたいというふうに考えております。

尾辻国務大臣 それでは、改めて私からお答えを申し上げます。

 問題の所在については既に先生がすべて整理していただいたようなところがありますけれども、改めて私からも申し上げてみたいと思います。

 まず、お触れいただいております小児慢性特定疾患治療研究事業、これは原則として十八歳までの児童を対象にしております。この十八歳までの児童を対象という意味は、十八歳までに発病をしたときに対象とする、こういう意味でございます。

 率直に申し上げるんですけれども、これまで余り、そういう疾病にかかって成人期を迎えることがなかったような重篤な疾患の方々も、医学の進歩などで成人期を迎えるようになる方が大変多くなってきた。大変いいことなのであります。

 ただ、今まで、どうも、そういう方の数というのがそう多くなかったというような事情もありまして、成人してからということの調査が不十分だった、こういうふうに思いますので、これは改めて私どもも、まずその辺をどうつなぐかという、きょうの御趣旨そのものでありますから、調査をすべきだと考えております。まず、そのことを申し上げます。

 小児慢性特定疾患事業というのは、先生がおっしゃったように、基本的に福祉で考えております。そして、今度は大人になって成人後の難病、これは医療の方でアプローチしておるものですから、福祉側でアプローチしているのと医療側でアプローチしておる、ここのところにちょっと境目を生じさせておるということも率直に私どもは、このところをどうするんだということを考えてみなきゃいけない問題だと思っておりますということも申し上げたいと思います。

 そこで、先ほど先生からも言っていただきましたように、まさに児童福祉法で対応をしておるということを今申し上げたわけでありますけれども、そして疾病も、正確には五百十四だと思いますけれども、そういう多いもの、それを今度は成人の皆さんの難病ということにどうつないでいくかということは、今申し上げたようなことが基本的にあるということを申し上げました。

 そして、さらに申し上げますと、どうしても、福祉でありますから、高額の医療費がかかる、そして長期にわたって医療費がかかる、小児の方はそういうところに着目をして制度をつくっておるということがございますということだけを、まずは申し上げておきたいと思います。ここをどうつなぐかというのが今後の課題だということは、冒頭申し上げたとおりでございます。

江田分科員 私も、調べてみますと、それこそ両制度に共通のものは、特発性血小板減少性紫斑病とか特発性拡張型心筋症、表皮水疱症、原発性免疫不全症候群、原発性肺高血圧症、亜急性硬化性全脳炎、ライソゾーム病、副腎白質ジストロフィー、八つございます。ということは、五百の中で八つは成人になってからも制度上カバーされるわけですけれども、それ以外、ほとんどですけれども、そこがカバーできない。

 大臣も今おっしゃいましたように、医療と福祉というそれぞれの制度の違い、目的の違い、そういうものもあるということでございますけれども、現実に、やはりそこは、五百から八引いて四百九十二とか、正確ではないでしょうけれども、そういうような疾病に対してどういう支援ができるのかということに関して、それは医療と福祉の制度の今後の課題ということで検討なされるということでございますので、ぜひともやっていただきたい。

 また、大臣からもありがたい言葉でございますが、成人になってからその病気の状況がどのように変わっているか、まずその調査をしていただく。それがまた、昨年の法制化に基づいて小児慢性特定疾患が拡充された、そういう意義もあると思いますので、どうぞよろしく調査を、そして、将来、両制度が連続性のあるようなものになるように、強くお願いをしておきたいと思います。

 次に、成人の難病対策について御質問をさせていただきます。

 大臣はHAMという病気を御存じでございますでしょうか。昨年十月、公明党の桝屋議員とともに、鹿児島市内で、知られざる難病と言われる全国のHAM患者友の会の皆さんと初めてお会いすることがありました。以来、十二月十八日には、患者の皆さんから大臣に陳情をさせていただきました。本当に大臣には温かく接していただきまして、ありがとうございました。ことし二月には、十五万人の署名とともに国会請願もなされておるところでございます。

 この病気はどんな病気かといいますと、人の白血球に感染するHTLV1というウイルスがあるんですね。これは私も長年研究しておりましたけれども、エイズウイルスの兄弟ウイルスでございまして、同じC型レトロウイルスでございますが、それが脊髄の神経麻痺を起こすものでございまして、発症すると、排尿障害、歩行障害、そういうさまざまな障害が出てきます。そして、徐々に進行して、重症になると、強い痛みが伴いながら、寝返りが打てない、そういう状況にもなってきます。根本治療法が見つかっていない状況では、だんだん歩けなくなって、車いす生活に移行して、いずれは寝たきりになるという自分の姿を想像して生きていかなければならない、そういう精神的な苦痛も伴う、そういう病気でございます。

 これは必ず発症するわけではございません。HTLV1のキャリアというのは、全国に何と二百二十万人いらっしゃいます。感染しているけれども潜伏している。そして、必ず発症するわけではなくて、私は九州でございますが、患者は西日本に特に多い。千五百人ぐらいHAMの患者さんはいらっしゃいます。

 これまで、多くの患者の皆さんから、その悩みや苦しみを聞かせていただきました。まれな希少難病であるために、医療機関でも知られていないんですね。適切な対応がなされずに病院を転々とされておりましたし、また、保健所でも理解されていなかった。さらに、病状が徐々に進行して、いずれは寝たきりにならなければならないという苦しみ、また高額な医療費に苦しむ、そういうさまざまなお悩みを聞きました。そして、何よりも、我が国の医療支援体制として難病指定をしていただきたい、そういう強い思いを我々は受けてまいりました。そうすれば、医療機関の適切な対応とか、さらには根本治療薬の開発が大きく進んで、医療費の負担も軽減されるとの切実な思いによるものでございました。

 成人の難病対策としては、特定疾患治療研究事業がございます。これは、原因が不明であって治療方法が確立していない難病のうちで、治療が極めて困難であり、医療費も高額である疾患について、医療の確立、普及を図るものでございますが、この対象疾患は難治性疾患克服研究事業の対象疾患百二十一の中から選ばれることになっておるわけでございまして、先ほども大臣おっしゃいましたけれども、現在、四十五疾患が指定されているところでございます。HAMは、この四十五の疾患にも、また百二十一の疾患にも指定はされておりません。

 難治性疾患克服研究事業への指定要件というのがございまして、それは四つございます。まず、希少性であるかどうか、患者数が五万人未満かどうか、そして原因不明であるかどうか、原因がわかっているかどうか、それから効果的な治療法が未確立である、そして生活面への長期にわたる支障、この四要素がすべてそろっていることが条件とされております。

 HAMがこの対象疾患に指定されないのは、原因がわかっているからとのことでございますが、HAMの発見者である、私も懇意にさせていただいておりますが、鹿児島大学医学部の納教授は、確かにこれまでの研究によりHAMの病態解明や発症関連のウイルス要因などは解明できたけれども、問題は、HTLV1ウイルスが感染しても発症するのはわずか〇・二%の人であって、なぜその人に発症するのか、発症メカニズムは全くわかっていないのが現状で、そしてさらに、根本治療法も、アルファインターフェロン等がございますけれども根治療法ではない、そういう治療法も確立されていないということから、難病指定の要件にこれは十分当てはまるんだと強く主張をされております。

 大臣、このようなHAMでございますけれども、これでも難治性疾患克服研究事業とか特定疾患治療研究事業の対象疾患にはならないのでしょうか。発症の原因もほとんどわからずに、効果的な治療法もなく、強い痛みと、歩行、排尿そして感覚障害に悩まされて、いずれは寝たきりになるというこんな病気が、原因がわかっているから難病ではないというのは、私は世間の常識ではないと思います。大臣、御見解をお伺いしたい。

尾辻国務大臣 まず、そのことにお答えする前に、先ほどのことで一点だけ補足させておいていただきたいと思いますけれども、申し上げましたように、小児慢性特定疾患患者に対する方は、これは福祉で考えておりますから、医療費がとにかくかかる、これをできるだけ助けてあげたい、こういうふうに思いますので、疾病の数も多くしてある。それと、今お触れいただいております、今度は成人になってからの難病の方とはちょっとそこで、医療と福祉ということが違うものですから、余り疾病がダブっていないということだけは御理解いただいておきたいというふうに思います。

 そこで、今、今度は大人の方になりました、成人後の難病でございます。

 これはもう先生何回も、今もお触れいただきましたから、改めて申し上げるまでもないんですけれども、根拠になっておりますのは難治性疾患克服研究事業、これは研究事業でございます、それからまた特定疾患治療研究事業、いずれも医療の方からアプローチしております研究事業でありますために、どうしても、では難病とはどういうものをいうかということになりますと、これまた先生お話しになりましたけれども、原因が不明である、治療法が確定していない、患者数が少ない、生活面で長期にわたり支障を来すという、この四つの条件を満たさないと難病といわないということにしてございます。

 そこで、この四要件、今後どうなるんだろうということになるわけでございますけれども、今、厚生科学審議会疾病対策部会難病対策委員会で検討されているんですが、基本的には、今後とも維持することが適当という判断をしておられます。ただ、適当という判断をされておるんですが、一方からは、多分今先生がおっしゃったようなことを指していると思うんですけれども、あいまいな点もある、これは委員会が言っておることなんですが、あいまいな点もあるからもう少し整理をしよう、こういうことになっておるようでございます。したがって、ここはここでどういう整理をされるのか、我々も見ておかなきゃいけないというふうには思います。

 ただ、一方、HAMの患者の皆さん方とも私もお会いしました。そして、大変お気の毒な状態だということも、これは目の当たりにさせていただいて、そう思いました。それから、同じ鹿児島でございますから、納教授のお話も伺っておりますし、今の先生の御指摘もお聞きをいたしております。

 そうした中で、先生が言われた、四条件を満たさなければ難病と言わないのか、世間の常識に比べればどうだとおっしゃると、私も、そのことについては、世間の常識からいったらどうだということでいえば、非常にそういう思いもいたします、率直に申し上げます。ただ、専門家の、医療の方からアプローチなさる先生方がお寄りになるとそういう結論が出ているということも事実でございまして、こうした中で、私どもが今後どういう対策をとるかということは、きょうの御指摘もございますので、よく考えてまいりたい、こういうふうに考えております。

江田分科員 私も時間を浪費してしまいました。大臣、丁寧な御答弁ありがとうございます。

 今大臣が申されましたように、これから、私もこの原因という部分が非常にあいまいではないかということを幾つか質問で用意していたわけでございます。しかし、大臣がお答えしていただきましたけれども、やはり専門委員会の方で、四要件というのは医学上必要であろうということですが、あいまいな点もこういう原因についてはあろう、それについては検討を要する、検討していく必要があるというお言葉でございましたので、私はそれを本当に強く要望するところでございます。

 私の考えでいけば、指定要件の原因不明というものよりも、効果的な治療法が未確立で、長期にわたる支障を来すものという要件を優先すべきだと私は思うわけでございます。これは小児慢性特定疾患の指定要件の一つでございまして、これとも整合性が合ってくるのではなかろうかと思いますし、そうでなければ、本当に支援を必要としている人が、原因不明である、ただただHTLV1というウイルスに感染した、しかし、その後のメカニズムはわからないで治療法もないのに、治療薬の開発も難しいのに、そういう病気が、真に支援を必要としている患者さんが排除されてしまうことになりかねない、何のための対策なのか、だれのための難病対策なのかと疑うものになってしまうわけでございます。

 あと、時間内に幾つか質問をさせていただきますが、問題の一つをもう一回指摘しておきますけれども、神経難病に指定されている代表的な疾患、きょうは特定の疾病の名前は出しませんけれども、そういう代表的な神経難病というものがございます。この原因につきましては、ウイルスではなくて自己免疫説というのが有力のようでございますが、私も免疫が専門でございますのでよくわかります、免疫細胞の攻撃で脳とか脊髄が破壊されるということがわかってきております。HAMの原因解明も、実はそれと同じレベルにすぎないと私は思うわけでございます。しかし、一方では特定疾患治療研究事業に指定されて、そしてHAMは指定されない、このようなことが公平な判定であろうかということを思うわけでございます。

 また、難治性疾患克服研究事業の対象疾病に指定されているもので、軽度のものが私はあると思います。今回の小児慢性特定疾患の改正は、重症化にシフトする、重度の疾患を対象とするということになっておりますけれども、その予備軍であるところの難治性疾患克服研究事業百二十一の中には、そんなにほかの疾患に比べて重篤ではなくて、生活への支障も比較的少ないものがあるわけです。そういうものがあって、重篤な、例えばこういうようなHAMを初めとする重篤な疾病が指定されないというのはおかしい、平成十五年の十月に行われた見直し、この目的からしても私はおかしいと思うのでございます。

 この難治性疾患克服研究事業の対象疾病も、重症疾患に重点化して見直して、新しいものを追加するというようなことがあってもいいんじゃないでしょうか。そのところを政府の見解をお伺いします。

田中政府参考人 大臣御説明申し上げましたように、厚生科学審議会の疾病対策部会難病対策委員会から出されました今後の難病対策のあり方、これにおいても、基本的には、今の四要件というのを踏まえて今後の難病対策を、治療研究事業を続けていきたいということではございます。

 ただ、本事業は創設から三十年以上たっておりますので、この間研究がいろいろと進んでおります。医療技術も進歩しております。対象疾患の一部には、先生も御指摘のとおり、完治に至らないまでもある程度病気の進行を抑えられるというようなものもございます。そこで、先ほど大臣から御指摘ございました懇談会でございますけれども、そこで難治性疾患克服研究事業に関しましても少し要件の明確化等について御議論を現在いただいております。それを踏まえまして、私ども、今後の対応を考えていきたいというふうに考えております。

江田分科員 私は、もうこの難病対策の抜本的な見直しをする時期に来ているのではないかということで問題提起をさせていただいているところでございます。検討を今進められるということでございますので、ぜひぜひその検討を強く進めていただきたい。

 最後でございます。

 このHTLV1ウイルスというのは古くから日本にあります。その感染キャリアというのは、先ほども言いましたように、西日本、九州、沖縄、カリブ諸島、ほとんど日本なんです。大臣のふるさと、大事な選挙区である鹿児島は一〇%もいらっしゃいます。十人に一人いらっしゃいます。沖縄、二〇%です。五人に一人です。こちら関東では少ないんですけれども、西日本というのは特別に、風土病と言われておりますけれども、HTLV1キャリアが多い。HAMだけではなくて、重篤な血液疾患であるATL、成人T細胞性白血病、大人の白血病、がんです、この引き金にもなっております。

 そのHAMとATLは、日本人、納教授と、私が共同研究をしておりました元熊本大学の高月教授によって、世界で初めて発見された病気でございます。我が国はこの治療と研究を世界じゅうから期待されている状況でございますけれども、その意味で、HAMとかATLというのは日本が世界に先駆けて私は研究を推進すべき責任を有していると思っておりますが、それにもかかわらず、エイズ研究に比べると充実しているとは決して言えない。

 だからこそ、難病に指定して全国的な研究を進める意義は本当に大きいものがあると思います。もしそれができないのであれば、新しい戦略的な研究制度というものに、このHTLV1感染症研究、またHAM、ATLの研究を入れていってみてはいかがでしょうか。そのくらい世界から日本が研究開発を大きく推進する責任を負っていると私はこの病気に関しては思いますが、いかがでしょうか。

後藤田主査 質疑時間が終了しておりますので、答弁は簡潔にお願いいたします。

田中政府参考人 今先生の御指摘の鹿児島大学の納教授の研究でございます、こころの健康科学研究の中で、HAMの病態の解明、治療法の開発等に関します研究が行われて、多大な成果を残しておられるところでございます。

 こういうものをぜひ今後とも、ある程度評価も大切だとは思いますが、その評価も踏まえて、先生の御趣旨に沿うような研究の推進というようなことも進めていきたいというふうに考えているところでございます。

江田分科員 ありがとうございました。

後藤田主査 これにて江田康幸君の質疑は終了いたしました。

 次に、村井宗明君。

村井(宗)分科員 民主党の村井宗明です。

 昨年も、坂口厚生労働大臣及び厚生労働省の皆様には、小規模多機能型という介護に絞っていろいろなお願い、そしてお話をさせていただきました。そして、坂口厚生労働大臣からはいろいろな温かい御配慮をいただいたことを心から感謝するとともに、中村老健局長には、おとといも富山に来ていただいて、全国的に注目されている富山型デイサービスについていろいろと研究をしていただいていること、心から感謝を申し上げたいと思います。

 まず先に尾辻厚生労働大臣に、細かい話に入る前に、漠然とした話をお聞きしたいと思います。

 昨年も坂口厚生労働大臣に聞かせていただきました。まず、自宅で一生住み続けたいと思いますか、それとも大きな介護施設に入りたいと思いますかという質問をしたら、当然、自宅に住み続けたいとおっしゃられると思うんです。そこで、もし施設に入るとしたら、自宅に近い小規模の民間型の施設、そして子供たちも一緒にいるような自宅型の施設に住みたいのか、それとも、自宅から遠く離れた、いわゆる入院型と言われるような大規模なベッド中心の施設に住みたいと思いますか、どちらでしょうか。

尾辻国務大臣 もうまさしく答えを言っていただいたと思いますけれども、自宅か、どこか施設かと言われれば自宅の方がいいと思いますし、それから、どうしても施設ということであれば、できるだけ住みなれた、友達もいっぱいいる、近くの、そして小ぢんまりとしているとでもいいましょうか、小規模な施設で生活をしたい、こういうふうに思います。

村井(宗)分科員 私たちは一貫してこういう訴えをしてまいりました。今おっしゃられたように、限りなく自宅に近い、そして地域に密着して人間のなじみの関係がある、そして小規模だから非常に親しみやすいなじみの関係があって、さらに年齢の幅、つまり子供からお年寄りまでみんないること、そして障害の有無にかかわらず多くを受け入れること、そういった形の介護施設が理想で、そういったものを広げていきたいというふうに訴え続けました。そして、今回、富山型デイサービスそのものではないにしても、それに近い小規模多機能型の居宅介護というのが今回介護保険の改正案に入りました。

 そこで、富山型デイサービスを初め、今回小規模多機能型居宅介護を受け入れられたその理念、そういったものを漠然とお答えいただければと思います。

尾辻国務大臣 小規模多機能型居宅介護は、今お話しいただきましたこととほとんどダブると思いますけれども、通いを中心に、泊まり、訪問といった多様なサービスを、利用者と職員がなじみの関係を築く中で提供するものでございまして、要するに、居宅している、在宅している、そこから通うというものだという施設を考えておるわけでございまして、施設と言ったらまずいですね、そういうサービスを考えておるということでございます。今後の重要なサービスだというふうに考えております。

 そして、今、富山型デイサービスのお話もいただきましたけれども、まさにそうしたサービスの提供という点では趣旨を同じくしておるものだ、こう考えております。

村井(宗)分科員 ありがとうございます。

 それでは、今から詳細な話に入っていきたいと思います。

 私が今特に問題視して注目している点があります。少々細かい話になりますが、施設整備費の話です。

 今回、地域介護・福祉空間整備等交付金、仮称というものが創設されることになりました。今までのこの施設整備費について言えば、大きな問題点が一点ありました。それは、社会福祉法人とNPO法人で大きく差をつけているということです。具体的に言えば、グループホームについて言えば、社会福祉法人もNPO法人も、ちゃんと同じサービスを提供したら、施設整備費、つまりつくるための費用が出ていました。しかし、デイサービスについて言えば、全く同じサービスをしても、社会福祉法人にはお金を出す、民間のNPO法人には出さない、そういった問題点がありました。

 今回私が心配しているのは、この小規模多機能型居宅介護事業も新しく介護保険のれっきとした制度に盛り込んでいただいた中、今までのようなグループホームみたいに両方均等にするのか、それとも、デイサービスのように社会福祉法人とNPO法人を区別、いえ、差別をしてお金を出していくのか、どのように考えておられますでしょうか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま先生からお話のありました地域介護・福祉空間整備等交付金でございますが、今、国会に御提案しております十七年度の予算案でも計上されておりますし、また、厚生労働省から提出されております法案でもその提案をさせていただいているところでございます。

 具体的には、予算が成立し、また法案の成立が待たれるわけでございますけれども、施設整備費という観点から御指摘いただきました。

 この交付金は、ちょっと前提が違いまして、従来のような個々の施設に対する補助金というような位置づけではありませんが、今御指摘の小規模多機能型、そういった地域密着型のサービスにつきましては、市町村の方で計画をつくっていただきまして、そこの計画に対しまして国の方で助成をさせていただく、こういう形をとっております。したがいまして、各市町村がどのような事業者さんにそういう施設をお願いするのか、助成するのか、計画をそうやって遂行するのかは市町村にお任せしているわけでございます。

 私どもの方、施設整備費の補助金につきましては、いろいろ憲法の問題とかさまざまな経過がございまして、社会福祉法人と、御指摘のように営利法人やNPO法人と、補助対象が違うという制度でやってきたわけですが、今回の交付金につきましてはそういった問題はございませんので、市町村の方がどういう御判断をするかということでございまして、私どもの立場からいえば、設置主体によりまして、法人であることは事業の安定性からお願いをしなければなりませんが、その他につきましては、そういった意味で、社会福祉法人に限るとか、そういうような扱いはしないつもりでございます。

村井(宗)分科員 今、市町村の方の判断だというふうにおっしゃられました。ただ、一般に市町村は、国の顔色、特に国、国会、厚生労働省がどういうふうに言うのかを見て判断しているのが実態だということは、やはり御存じだと思うんです。いや、今までデイサービスはNPO法人にはだめだ、社会福祉法人だけだと言われてきた、だから、デイサービスの延長である小規模居宅介護事業についていうても、小規模多機能型の事業だいうても、多分デイサービスと同じように扱わんにゃならんがじゃないかなと思うと思うんです。

 今、NPO法人でも社会福祉法人でも規定は設けないというふうにおっしゃられましたが、だとすれば、きちんと市町村に、どっちでもいいんですよ、どちらでもお金を出してもいいんですよというふうに文章の通達をしていただければ、そこの誤解が解けると思うんですが、どうでしょうか。

中村政府参考人 今回の交付金にしろ、地域密着型サービスにしろ、基本的な考え方は、介護保険制度がもともとそうでございますけれども、より市町村の地方分権、あるいは市町村、地域において介護をつくっていく、そういう精神でやっております。

 そういう意味で、今先生具体的に通達というようなお話がありましたけれども、もちろん、決められました場合にはそういう通達もお出ししなきゃなりませんし、その際に、表現ぶりはともかくとして、また、私どもの顔色をうかがうというような時代ではないと思いますし、その根本精神が、まさにより市町村でやっていただくという精神でやっておりますから、そういうことをお話しすればわかると思いますけれども、いずれにしても、明確にしてまいりたいと思います。(発言する者あり)

後藤田主査 不規則発言はやめてください。

 村井君。

村井(宗)分科員 今のは通達を出していただけるというふうに解釈してもよろしいのでしょうか。イエスでしょうか、ノーでしょうか。

中村政府参考人 当然、法律を通していただきましたら、お出しいたします。

村井(宗)分科員 ありがとうございます。

 きっと今の言葉、多くのNPO法人の方々はしっかりと聞いていただけるというふうに思っています。市町村任せという言葉だけではなく、やはり、しっかり住民にとっていいサービスをすれば、それは社会福祉法人だろうがNPO法人だろうが一緒なんです。たくさんの天下りを受け入れていようが受け入れてなかろうが、私はいいと思うんです。住民本位に、そしてサービス本意にそういった予算をつけていただければというふうに思っております。

 さて次に、その富山型デイサービスなどと言われる、特区の番号、いわゆる事業番号九〇六号、デイサービス等における知的障害者及び障害児の受け入れ事業についてお聞きしたいと思います。

 昨年も同じように質問をさせていただきました。そうすると、特区で今調査中だ、富山やほかのいろいろな市町村で実際デイサービスに知的障害者とか障害児の受け入れ事業を始めた、そして効果があるかどうか今調べている最中だというふうにお聞きしました。

 先ほど厚生労働省の方にお聞きしたら、まだ全国展開ができるかどうかの結論は出ていないというふうにおっしゃられたんですが、そのあたり、未来志向研究プロジェクトの構造改革特区における取り組み、調査、そういったものがどのようになっておられますでしょうか。

中村政府参考人 少し経過も含めまして御報告、御説明をさせていただきたいと思います。

 元来、従来から老人福祉施設に対しまして障害者の方の御利用ができないかということで、古い話でございますが、平成三年から、身体障害の方については、六十五歳未満の身体障害者の方であっても高齢者のデイサービス等を利用することを認めております。先生御承知のとおりでございます。今、知的障害の方のお話、あるいは障害児の方の相互利用のお話がございましたけれども、平成十五年からこれが認められているところでございます。また、私どもが、名前が未来志向プロジェクトということで、これからの介護を考えた場合にどういうあり方があるかというようなことでも研究事業をさせていただいているところでございます。

 ところで、特区の方でございますが、数え方によりますけれども、二十二の地区から、さらに細かくなりますが、デイサービスにつきまして、知的障害の方、障害児の方と高齢者のデイサービスとの相互乗り入れと申しますか、そこについて特区事業をやっております。

 特区事業の方では、毎年度調査して、まさに先生、全国に広げられるかということを評価することになっておりまして、昨年、全国展開の是非につきまして特区推進本部で評価していただきました。全体としては問題がそうあるわけではない、こういう傾向でございますが、情報量の不足の問題もありますし、若干評価の中で、もう少し明らかにした方がいいとか、あるいは利用者の方の中でも、少数ではありますけれどもちょっとぐあいが悪いというような御指摘もありましたので、特区の方では、新たに認定された特区の状況も見ながら、また十七年度上半期に評価を行い、特段の問題がなければ全国展開を行う、こういうふうにされているところでございます。

 私どもも、未来志向プロジェクトの中で幾つかそういった研究もしていただいていますので、私どもとしても、この特区推進本部の評価にお役に立つように協力してまいりたいと思います。

村井(宗)分科員 私がちょっと疑問に思ったのは、ショートステイとデイサービスで、どっちが危険性が高いかといえば、やはり夜間も含むショートステイの方が高いと思うんです。そのショートステイの方で知的とか障害児も先に相乗りを受け入れながら、どうしてデイサービスだけがまだおくれてしまうのか、そういったところをしっかりとチェックしていただきたい、そして早目にそういうのを認めていただきたいというふうに思っています。また、今すぐ調査といっても、すぐ返事は出ないと思うんですが、来年までにはそういった形で全国展開を容認していただければというお願いをさせていただきたいと思います。

 そこで、私は、今おっしゃられた事例調査の中で一つ思っていることがあるんです。

 今回の介護保険の大きなコンセプトの中に、要介護度がどんどんどんどん進んでいくのを防ぐ予防介護の話が出ています。ただ、それぞれのサービスでどのぐらい要介護度が進んでいくかを、ちゃんとチェックしてほしいと思うんです。まず、富山型デイサービスなど小規模多機能のなじみのところではどれだけ要介護度が進んでいくのか。一方、いわゆる老健回り、老健を何カ月かごとにこうやって転々とした場合、どのぐらい要介護度が進んでいくのか。そしてグループホームの場合、どれだけ要介護度が進んでいくのか。それを一度チェックしていただければ、小規模多機能が本当にいいのかどうなのか、そして子供が一緒にいることで効果があるのかどうなのか、そこも一緒に調査していただければと思うんですが、いかがでしょうか。

中村政府参考人 介護保険制度がスタートしてから五年近くたちまして、その中の問題点の一つとして、施設に入所されている方、また在宅で療養されている方でも重度化していくという問題が指摘されています。また、軽度の方が大変ふえておりますけれども、軽度の方につきましても、時間の経過とともに要介護度が進むという問題点が指摘されておりまして、今回の御提案しております介護保険制度の見直しの中で、予防重視あるいは介護予防と言っていますのは、要介護状態になられないようにする、または悪化を防止するということを基本コンセプトにいたしておりますので、先生から今お話のありました、どのようなサービスをすればどういう結果になるのか、やはりアウトカム評価が大事だと思います。

 私どもも、心してそういった点についても、介護保険は幸いなことに、いろいろな意味で電子情報でやりとりされておりますので、調査というか解析は比較的容易だと思いますので、やってみたいと思います。

村井(宗)分科員 今、解析をやっていただけるという話になりました。ぜひ、来年の冒頭、もしくはことしの末ぐらいの臨時国会が行われるような場合でも、同じように聞かせていただきたいと思います。我々が主張する小規模多機能型の場合と老健回りの場合と、どちらが要介護度の悪化が進んでいくのか。そして、もし私たちが今主張している小規模多機能型の方が要介護度の悪化が少ないということがわかれば、今言ったような、特区ではなく全国的な認可というものをしていただければというふうに思います。

 さて、小規模多機能のポイントが一つあると思うんです。小規模でやる理由の一つは、それぞれの地域になじみの関係を持つということがポイントになるわけです。ところが、今心配していることがあります。介護保険で認可された、小規模のものがでかいとできた、だけれども、結局今までどおりケアマネジャーがどこかの大きな特養なんかに囲い込みをされていて、特養の職員とかがケアマネジャーをやっておる場合が少なくないわけです、そして、それぞれの地域に小規模なものがあるにしても、やっぱりこっちとかいって引っ張ったりすること。

 小規模である理由は何かといえば、でかいとつくって、たくさんつくって、そしてそれぞれの地域に一番近いところに行くということにメリットがあると思うんです。その辺、ケアマネジャーの今の囲い込みと言われている問題を解決しないと、今のこの小規模にした本当のメリットが生かされないと思うんですが、その辺どう思われますでしょうか。

中村政府参考人 ケアマネジャーさんのあり方、それと関連して、小規模型のサービスをこれからつくっていこうという提案をしているということとの関係をどういうふうに考えているかということだと思います。

 二つ、切り口があるかと思います。

 もともと、ケアマネジメントの適正化なり、さらに質をよくするということは、先ほど来申し上げている五年間の見直し、検証の中で強く指摘されていることでございまして、私ども、これからの介護保険制度のポイントの一つとして質の確保、向上がありまして、その重要な柱としてケアマネジメントの適正化がございます。ケアマネジャーさんの資質の向上と、それから今お話にありました独立性、中立性を確保していくということで、詳しくは申し上げませんが、そういったことを今回の介護保険制度の見直しでも提案させていただいております。

 もう一つは、まさに地域密着型サービスの切り口でございますが、地域密着型サービスというのは、まさに、市町村の独自性と申し上げましたが、市町村が自分のところの地域で、生活圏域も考えながら、市町村の方の御判断で市町村の責任でつくっていくということで、それを地域の皆さんの参画を得てつくっていただくということで、そういった中で当然適切な、公平な運営ができますし、地域でつくるわけですから、こういった方々がニーズがあるわけだから、そこでこういう計画でつくっていって早くその方々のサービスをしようということで、地域で見える関係になります。そういう関係の中でやれば、お言葉にありましたようなほかからの囲い込みとかそういったことに対して、言葉が適切かどうかわかりませんが、強いバリアになるのではないか、そういう思いで提案をさせていただいております。

村井(宗)分科員 中村老健局長には、おとといもわざわざ富山まで来ていただき、そして、いろいろな意味でこの問題に関心を持っていただいていること、心から感謝を申し上げるとともに、今後も御活躍をいただければと思います。

 そこで、今の議論をまとめたような形で、尾辻厚生労働大臣、この富山型デイサービスなどと呼ばれる今の小規模多機能型の新しい介護サービスについての御見解、御意見をお願いしたいと思います。我々は、縦割りではない、そうじゃない、小規模で多機能、そしていろいろな人たちが、障害の有無にかかわらず、年齢の幅にかかわらず、そして、サービスそれぞれを細かく分類するんじゃなくて、小規模多機能型を進めていきたいと思っているんですが、どのようにお考えでしょうか。

尾辻国務大臣 まず、サービスの提供、小規模多機能型にしていくということは、これは私どもの考え方と同じ考え方でございまして、今後ともそうした方向で進めていくということはまず申し上げたいと思います。

 それから、大きくおっしゃいました、まさに今度の介護保険制度の見直しについての主要な論点の一つでございました被保険者、受給者の範囲、結局ここに行くと思うのでありますけれども、これは、今回提出いたしました介護保険法等の一部を改正する法律案におきまして、被保険者、受給者の範囲については、社会保障に関する制度全般についての一体的な見直しとあわせて検討を行い、平成二十一年度を目途として所要の措置を講ずるということが附則に規定されたところでございます。

 今後、今御議論いただきましたような御議論をいただきながら、給付と負担のあり方など社会保障全般にわたる議論を行っていく中で、介護保険の被保険者、受給者の範囲についても幅広く検討を行いまして、結論を得て、平成二十一年度を目途に所要の措置が講じられるものと考えておるところでございます。

村井(宗)分科員 次に、障害者の補装具の話をさせていただきたいと思っています。

 皆さんも御存じのように、厚生年金保険の整形外科療養事業が廃止をされました。今まで、車いすだとか補聴器だとか、それからストマ、義肢、義足、そういったものは厚生年金から予算を出していました。それが今回廃止されることになりました。

 二十三億円、年間予算額を今まで使っていました。そして、一万七千件が利用されていました。いや、これ、こんなになくなるがですけれども大丈夫ですかねと厚生労働省の方に聞くと、大丈夫です、今まで厚生年金でやっていた部分、これはなくなりますが、税金でちゃんとやることになりましたというふうにお答えいただいていたのですが、今回この予算案を見ると、ふえていた予算が六億五千万。あれ、ちょっと待てよと。二十三億円削って六億五千万しかふやしていないという状態になると、そういった補装具が必要な障害者の方々が非常に困ると思うんですが、その辺の予算措置、どのようにお考えでしょうか。

塩田政府参考人 ただいま御指摘がありました厚生年金保険制度における整形外科療養事業でありますけれども、これまで厚生年金受給者などに対しまして車いす、義肢、装具などが給付されたところでありますけれども、こうした事業については、年金給付に特化するということで、当該事業の廃止が決められているところでございます。

 こうした事業が廃止された後におきましても、これまで給付を受けてこられた方がお困りになることがないよう、先生おっしゃいましたように、今後は身体障害者福祉法に基づく補装具給付制度において対応するということとしているところでございます。

 来年度の予算につきましては、こうした観点から身体障害者福祉法に基づく補装具の予算に計上しているところでございますけれども、全体で補装具給付費の予算額百八十一億円ということでありまして、御指摘がありましたように、厚生年金からの移行の方については六・五億円を見込んでいるところでございます。

 二十三億円と六・五億円の差について御懸念がおありだと思いますけれども、一つは、身体障害者福祉法に基づく制度は国と地方自治体が案分しておりますので、国の負担分が二分の一であるということでございます。それから、厚生年金に基づく事業は御本人の負担がないという制度でありますが、身体障害者福祉法に基づきましては、現行では利用者の負担が実質一割程度ございます。それから、六十五歳以上の方は介護保険制度に移行するということでございます。

 それからもう一つは、厚生年金病院で支給されている補装具などの材質と、今度の身体障害者福祉法に基づく一般施策との、材質とかいろいろな面で単価の違いがあるということでございまして、そういった要素を勘案しまして、厚生年金事業では二十三億円計上しておりましたが、身体障害者福祉法に基づく事業としては六・五億円計上したということでありまして、これによりまして一般施策として必要な伸びは確保しておりますので、十分対応できると考えております。

村井(宗)分科員 今、もちろん机の上の議論では、そういうふうにやればどうにか足りるように聞こえないこともないんですが、地方自治体が負担してくれると言われても、あれ、本当にそんな予算あるのかな。利用者負担もある、利用者も本当にそれでいいのかな。いや、材質が違うから単価が安いんだと言われても、それでそんなにサービスを減らしてもいいのかな。それでもやはり二十三億が六・五億というのは幾ら何でも少な過ぎる、きっと予算をもうちょっとつけないとまずいんじゃないかと思うんですが、大臣もしくは副大臣、どのようにお考えでしょうか。

西副大臣 先ほどからの議論につきましては、移行に伴う費用並びに負担、予算面については、部長からお答えを申し上げたところでございます。

 今後、問題は、やはりスムーズなこの制度の移行だと私は思っております。今までとまた違うところで、新たな制度のもとで発足するわけですから、窓口の相談業務をさせていただくとか、それからやはり丁寧に皆さん方にお知らせをする、例えばポスターなんかを通じてお知らせをするということで、一たんこの制度を廃止して次の新しい制度に、いわゆる身体障害者福祉法に基づく補装具給付制度を利用していただくことになりますということをきっちりお伝え申し上げるということが、まず大事な点ではないかというふうに思います。

 そんな意味では、省内の全国厚生労働関係部局長会議においても、管内の市町村へきっちり周知をしていただきたいということをお願い申し上げているところでございまして、委員の御指摘のように、制度が変わることによって利用者の皆さんがお困りになるということのないように、引き続き所要の予算の確保に努めてまいりたい、こう思っております。

村井(宗)分科員 きっちりお伝えする、窓口相談をやる、だから大丈夫だと言われても、そうじゃない、やはりお金を減らしている部分というのは私は否めないと思うんです。きっとそこの部分、私は、本当にもう一回、ことしの予算、できればきちんとつける、もしくはいろいろな形でほかの割り当ての仕方を考えていかないと、多くの障害者の方々が今不安に思っています。

 今副大臣がおっしゃられたこととかぶってしまうので、最後に大臣にお聞きしたいと思うんですが、たしか大臣は、私、障害者団体を回っていてこう言われたんですよね。いや、尾辻さんはたしか日本義肢協会の顧問か何かをやっておられたはずだ、ですから、この問題、確かに今みんな義肢の人たちは不安に思っているけれども、きっと彼ならどうにかしてくれるというふうな声をいろいろなところでお聞きしました。

 今、この補装具全体の話を聞くと副大臣の答弁と重なってしまいますので、特に義肢の方々について、大臣の方から、今後大丈夫だ、もしくはほかの予算で割り当てる、そういうような答弁をいただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 確かに大臣になります前に、今大臣になりましたからその立場を離れておりますけれども、顧問もしておりました。

 この問題は、厚生年金に対する、年金に対するいろいろな御批判があって、保険料で一切給付以外に使わない、お預かりした保険料はすべて給付に使う、給付以外のものには一銭たりとも使わないということが決まったために生じたことであります。これは、保険料の中から、厚生年金の被保険者に対してはそのぐらいのことはやるべきだという、まさに福祉事業でやっていたわけでありますが、もうそういうものを一切やらないことに決めたために起きていることでございます。そうすると、制度が全く変わってしまいますから、制度が変わると、今おっしゃったように、それぞれの持ち分、御本人にも負担してくださいというようなことが生じてしまう、このことはもうやむを得ざる処置でございます。

 したがって、私が今ここで特に何か言うと、まさにおかしなことになると思いますので、私は、淡々と、制度が変わった、もうそれしかないというふうに今は申し上げざるを得ないところでございます。

村井(宗)分科員 どうもありがとうございました。

 また、この義肢、義足、それから補装具全体の問題についても、本当にこの予算でよかったのかどうなのか、ことしはもし仮にこの予算になったとしても、来年度の予算、しっかり足りたかどうかを検証していただければと思います。また今後ともよろしくお願いします。

 ありがとうございました。

後藤田主査 これにて村井宗明君の質疑は終了いたしました。

 次に、吉井英勝君。

吉井分科員 日本共産党の吉井英勝です。

 せんだって、二月十四日に、さいたま市で東武バスの運転手の方が、運転中に急性心不全で亡くなられて、これによって交通事故が発生しました。バスの運転手の方などが勤務中にこういう急性心不全等で亡くなられたりすると、それは直接事故につながり、乗客の安全とか、そういう国民にとって大変危険が広がるという問題がありますので、私は、きょうは、バスの運転手の方の過労死の問題について伺いたいというふうに思います。

 奈良交通というところが奈良県にあるんですが、最近一年間に三人のバス運転手の方が過労死しています。

 実は、一昨年十月三十一日に、五十七歳の中井頴さんという方で、(写真を示す)この方、ちょうどお元気なときの、バスの運転席で働いておられるときの姿ですが、この方が、長時間拘束勤務の連続する中で、体調が悪いので休ませてほしいとこの十月三十一日の朝の早朝点呼のときに勤務交代を会社に申し出られたんですが、なかなか交代要員を準備していないものですから、拒否されたんですね。朝の五時四十二分の早朝点呼から十三時間五十二分の拘束勤務、もちろん、実際にバスに乗る時間はその間足していくわけですが、それで、この日、七時間乗務されて、その七時間乗務が終わった直後に、ばたんとハンドルを持ったまま倒れられて、解離性大動脈瘤破裂でお亡くなりになりました。私、やはり、これは本当に、運転中にそういうことがあったら大変なことだったと思うんですよ。

 そういうことがあったわけですが、この中井さんは、お医者さんの勧めで、健康管理を考えたら、何しろ連続勤務が続いていますから、リフレッシュ休暇というのをとる、つまり労基法上の有給休暇の届けを出すように言われて、出されたんですよ。これも拒否されたんですね。その上、数日前の勤務時間中の突発的な事故の処理にかかわって強い精神的ストレスもありまして、こういう過労死という不幸な事態になったんですが、私は、この中井さんの過労死という不幸な事件が日本でやはり最後となることを強く願って質問したいと思っているんです。

 最初に政府参考人の方に伺っておきますが、現場の奈良労働基準監督署長からは、労災認定の協議が本省の方に上がってきているというふうに伺っておりますが、このことはまず承知していらっしゃるかどうかを一言伺っておきます。

青木政府参考人 今お話にございました件につきましては、平成十五年十月三十一日に死亡なされました中井さんについては、十六年五月十一日に労災の請求がなされております。現在調査中でございます。

吉井分科員 医者の診断によると、死亡に至る前の生活習慣病というものについては、本格的な治療行為を要するというような判断を下すものではなかったということです。コレステロールを下げる薬を出すぐらいで、これはまあ、大臣にしても私も、大体そういう年齢ですからね、というところで、異常な事態に遭遇しない限り、解離性大動脈瘤破裂のような症状の急変は引き起こし得ないという指摘がなされております。つまり、本人に病気があったというものじゃないんですね。

 そうすると、なぜ早期に発症を抑える手だてが講じ得なかったんだろうか。中井さんは、死亡当日の早朝点呼のときにも、それから乗務の途中にもなんですが、会社の方に、しんどいから勤務をおろしてほしいと言っておられたんです。七時間乗務に辛うじて耐えられたんですから、だから、早朝点呼の時点で申し出どおり交代させて病院に行くことを保障しておれば、つまり、治療機会を喪失させないで治療機会を保障しておれば、不幸な過労死ではなくて、私は今も御家族と幸せに生きておられるというふうに思うわけです。

 そこで、尾辻大臣に二つのことにぜひ取り組んでいただきたいと思うんです。その一つは、やはり労働災害として早く認定してあげて、遺族の方たちの生活保障を進めていただきたいということと、もう一つは、やはり再発防止に取り組んでいくということですね。このことにぜひ大臣として頑張っていただきたいと思うんですが、大臣にお伺いします。

尾辻国務大臣 今、私は初めてお聞きをすることでございますから、よく事情をお聞きをいたしまして、適切に対応させていただきます。

吉井分科員 現場の監督署長より上がってもきておる話で、この労災認定をおろすことについては監督署長の専権事項だということもレクチャーのときにも言っておられるので、ですから、現場の監督署長より速やかに労災認定を行うように、大臣の方でも調査をし、そういう立場で臨んでいただきたいというふうに思います。

 二つ目に、治療機会の保障ということについては、これは人間の健康管理の上でも重要なことですし、だから、これからの労災認定の基準にはこの治療機会の喪失というのを加えて、つまり、本人の申告があっても業務命令が下されて、勤務中とかあるいは勤務明け直後に死亡した場合などには早く認定されるようにしてあげることが、これは御家族にとっても大事なことだと思うんです。実際、過去には治療機会の喪失で労災認定された例があります。それから、最高裁判例でも、業務過重性判断と別に、治療機会喪失事案について業務と発症との相当因果関係も認めるとする類型も示しています。

 ですから、大臣、一つは、早く労災認定してあげるように頑張っていただきたいんですが、同時にもう一つは、治療機会の喪失をやはり基準に加えることを、今この場で直ちに加えると言ってくださいと言っているんじゃないですよ、やはり、今回の例もありますから、加えることを検討していただきたい。これは大臣の方にお伺いします。

 いいですから。大臣にちゃんと伝わるように、きのうレクで言ってあります。

青木政府参考人 治療機会の喪失という極めて専門的なお話でございますので、一言申し上げたいと思います。

 治療機会の喪失という考え方につきましては、死亡当日において、業務に従事することなく直ちに入院も含めた安静、治療に専念しなければならない必要性というのが医学的、客観的に認められる、それにもかかわらずそれが困難な状況に置かれて、やむを得ず引き続き業務に従事した結果、死亡するに至った場合などにつきまして、労災の認定に必要な業務起因性、それを認める考え方として、今御紹介ありました判例によっても示されたものと理解をいたしております。行政におきましては、これらの判例の考え方に即して判断することといたしております。

 個々の事案の判断におきましては、被災者の傷病の態様とか、業務の内容とか、事業の実態を初め種々の要素を総合的に判断するということにいたしておりますので、なかなか一律の基準というものは難しいのではないかと思っておりますけれども、そういった考え方にのっとりまして判断をしているということでございます。

尾辻国務大臣 今、答えるのを聞いておりまして、判例だとかいろいろ言っておりましたので、検討すべきことは多々あるだろうと思いますけれども、少なくとも検討はさせていただきますことはお約束を申し上げます。

吉井分科員 今回の事例についてどう判断するか、どう評価するかというのは局長の答弁のとおりです。ただ、問題は、治療機会の喪失によって、現に今回の場合はお亡くなりになったわけですね。ですから、基準に加えることについて検討をしていただきたいということですので、局長の説明は私も事前によう聞いておってわかっている話ですから、今おっしゃったように、ぜひこれは検討していただきたいというふうに思います。

 奈良交通では、実は、一九九二年にも四十三歳の運転手の方が現職死亡されたことがあります。これは、国会でも実は問題になりまして、このとき代替要員をふやしたんですが、現在では、これはまた代替要員が消えてきて予備要員しかいない。だから、安全運行を保障する代替要員はいないということで、この指摘の点は改善する必要があるということを、実は私たちの方に奈良交通自身が認めている話なんです。

 今回、勤務終了後の不幸な出来事だったんですが、だから大事故にならずに、ある意味では不幸中の幸いなんですね。逆に、中井さんは、命をかけて事故を起こさないように七時間頑張り抜いてこられたというふうに思うわけです。

 運転手の過労というのは、大量輸送機関では大勢の乗客の安全にかかわる重大問題ですから、過労防止の代替要員を確保することを奈良交通のような要員不足のある企業にはやはり求めていくということが、これは大臣として取り組んでいただかなきゃならぬことだと思うんですよ。大臣に伺います。

青木政府参考人 バスの運転手等につきましては、確かに、運輸業全体が非常に全般として長時間でありましたりしておるところでございます。したがって、年次有給休暇につきましても、きちんととっていただくということが大変大切なことだと思っております。そういう意味では、今お話がありましたように、業務計画だとか要員計画だとか、そういったものをきちんと配慮して作成をするということが望ましいというふうに思っております。

 私どもとしてはこういう考え方で、ゆとり休暇推進要綱とかパンフレットなどを用いまして、集団指導を通じてそういった周知を図っているところでございます。引き続き、そういったことで周知、啓発に努めていきたいというふうに思っております。

尾辻国務大臣 まず、今のお話を聞いておりまして、やはり人間の体だとか思いというのは科学を超えたところにもありますから、大変な使命感でもってお仕事を終えられたんだろうな、そのことに敬意も表したいと思います。

 それはそれといたしまして、今度のいろいろなお話、今伺っておりますので、よくまた私なりに事情を聞かせていただき、そして個々のことでやるべきこと、それから、おっしゃるように再発防止のためにどうやるべきかというようなこと、考えてまた答えを出したいというふうに思います。

吉井分科員 どうも局長さんの方は周りのぐるぐるしたところのお話なんですが、要するに、要員不足を解消するように企業に求めるということをやらないと問題は解決しないんですから、パンフレットを印刷したのどうのというような、そんなつまらぬことを言っておっちゃだめなんだから、そこを私はずばっと聞いているんです。

 この点一点と、大臣に二つ答えておいてほしいんですけれども、中井さんは、被災前、四カ月連続して拘束時間十三時間を超える勤務だったんですが、死亡した月は十三時間を超える勤務が四五%なんです。死亡二週間前は五四・五%なんです。早朝勤務の前日に泊まり勤務だった日が四〇%なんです。

 ですから、これは二〇〇〇年労働省の改善基準告示というのを逆に使われてしまうと、十三時間までは合法だと勝手に会社が判断してしまって、十三時間ちょっと切るぐらいでずっとそういう状態が続くとなると、本当に過労ということになるんですね。ですから、この点では、労働時間短縮の立場に立って見直しを図っていくということが多くの乗客の安全につながるということになってくると思うんです。

 私は、よく研究していただくので結構ですから、やはり見直しを研究するということと、さっきの要員不足の解消ということは企業にきちっと求めていくということをやって、こういうことが二度と起こらないように大臣として取り組んでいただきたいと思うんです。どうぞ。

尾辻国務大臣 要員不足の話についていいますと、それは会社が基本的にきっちりやるべきことで、何をやっているんだろうなとつい思ったりもいたしますが、それは、先生のお話のように、制度というかいろいろな基準との絡みもあるのでございましょうから、先生言っていただきましたように、研究をさせていただきたいと存じます。

吉井分科員 次に、バスとともにタクシーも、乗客の安全のためにタクシー運転手の過労死などを防ぐことが重要な課題になってきております。

 実は、東京監察医務院部長の徳留省悟氏は、法医学の観点から、タクシー運転中の突然死というのは二三・五%で、乗用車運転中の突然死の約五十倍も多い発症頻度であると発表しておられます。交通事故で死亡した場合、多くは外傷死として処理されるため、突然死と判明するのは氷山の一角だということも言っておられるんです。また、徳留さんは、突然死は運転中の緊張による血圧や心拍の増加で起こると言われている、大事故が起こる前にきちんとした実態調査を行い、対策を立てるべきだということも言っておられます。

 そこで、大臣、私は、タクシーについても過労による突然死が大きな死亡事故、大きな交通災害を起こさないように、やはりこれは厚生労働大臣もそれから国土交通大臣もお互いによく共同して、過労死による突然死などでタクシーが大きな交通事故を起こさない、この取り組みにきっちり取り組んでいただくということが大事だと思うんです。これは大臣に伺っておきます。

尾辻国務大臣 今お話しいただきましたように、タクシーだとかバスだとかいうところの営業車の事故というのは、これは双方に被害者を出しますから大事故につながる、ぜひ防止に努めなきゃいかぬというふうに思っております。

 国土交通省とも、お話しいただきましたけれども、定期的に連絡会議を開催して連携を図っているところでございます。今後とも、そうした連携もとりながら、防止対策の徹底に努めてまいります。

吉井分科員 過労による突然死などが進んでいく要因というのを少し見ておきますと、国会の方は、附帯決議など国会で決議もしているんですが、実は、タクシーの規制緩和の問題があるわけです。

 大阪で見ますと、台数はもともとだぶついていたんですけれども、二〇〇二年を一〇〇とすると、二〇〇四年末、昨年末一一一%と、三年足らずの間に一割、このもともとだぶついているところで一割もふえているんですよ。一方、そうすれば水揚げは落ち込んできますわね。そうすると、タクシー労働者の賃金というのはどうなってくるかというと、これは、賃金構造基本統計調査報告書というのがありますが、これで最近の資料を見ますと、大阪府のタクシー労働者の場合は、二〇〇一年から二〇〇二年にかけての一年間だけでも、年収で二十八万四千五百円、八%も下がっているんですよ。そうなると、暮らしを立てようと思ったら、明け番の日に体を本当は休めてもらわなければいかぬのですが、アルバイトで安い賃金の補いをつける、あるいは水揚げをふやすために無理な走行をするということが広がっています。

 この結果、大阪府下のタクシー交通事故は、二〇〇一年の二千三百三件から、二年間で百三十八件、六%も増加するという状態で、死亡事故発生の労働者の中には、一日最大拘束時間二十一時間を超えた日が、一カ月十四回勤務する中で十一回あった。一カ月総拘束時間限度とされる二百六十二時間を二十六時間超過していたという人があります。そういう中での死亡交通事故の発生なんですね。ほかにも、一日の拘束時間を超える人が、勤務を大体十四回ぐらいとすると、三回から十回の人たちがいるというのが近畿運輸局の調査で出ております。

 企業の過剰競争から勤務時間が長くなる、運転手には無理な走行や過労がかさんでくる、これが、先ほど挙げたような徳留さんなどの突然死の心配とか交通事故の問題にかかわってくる要因となっております。

 大臣はタクシー業界のこういう実態をよく御存じだと思うんですが、問題は、乗客の安全を守るという立場と、労働者の健康とか労働基本権を守るということは、この点では政治がやはり責任を持って進める課題でもあると思うんです。それがタクシー規制緩和の法案のときに附帯決議で国会が政府に求めた立場だったと思うんですが、そういう附帯決議の立場を踏まえて取り組んでいっていただけるのか、伺っておきます。

尾辻国務大臣 今お話しのようなことにつきましては、労働時間管理につきましては、自動車運転者の労働時間等の改善のための基準を策定し、これに基づく指導をいたしておるところでございます。

 また、安全衛生管理につきましては、交通労働災害防止のためのガイドラインを策定して、これに基づく指導も行っております。こうしたものを徹底してまいりますということをお答え申し上げます。

吉井分科員 そういうガイドライン等をつくって、きちんとやっていくまじめなタクシーの経営者の方ももちろんおられますし、タクシーの経営者と労働組合とがよく話し合って進めている、そういうことを取り組んでいるというところももちろんあるんですが、私は、一九九六年の四月十七日に、当時、衆議院に規制緩和特別委員会というのがありましたが、そこで取り上げたことがあります。九州の規制緩和の先取りとして、台数調整とか需給調整というのを破っていく企業がありました。これは全国的に今知られている第一交通なんですが、九州で、小倉にしても福岡にしても、車はあふれる、労働者の水揚げは落ち込む、だから、明け番の日には博多港へ沖仲仕に行って、体を休めなければいかぬ人が沖仲仕をやるわけですから、これでタクシー事故率全国二位、最悪状態だと。これは西日本新聞が当時、そのことをシリーズで紹介しました。それが今は全国展開して、全国でこういう害悪が広がっております。

 昨年六月までで、第一交通産業グループだけで二十六件も行政処分が下されております。この行政処分、そんなに二十六件も下される前に、普通はちゃんと守るのが当たり前なんです。大臣がおっしゃったように、ガイドラインもあり、やっていくのが普通なんですね。ところが、普通じゃない。法律も処分も顧みないで無法を繰り返すということが今やられている企業です。

 実は、大阪でも企業買収はどんどんやる、事故はふやす、法律は守らない、裁判所が労基法二十四条違反で強制執行を認める決定を下すような企業なんですよ。退職の事実がなくても中小企業退職金機構に退職届を出して、脱退手続を進めて大阪検察庁から起訴されているという、こんなことまで起こっております。

 ここはちょっと政府参考人の方に伺っておきますが、中小企業退職金機構の問題というのは厚生労働省の業務ですが、労働者は実際には退職していないのに退職届が機構に提出されるというのは、これは違法なんじゃないですか。

青木政府参考人 中小企業退職金共済制度は、労働者が被共済者となって、事業主が共済契約者として契約をして共済掛金を払って、労働者が退職をしたときに退職金を支払うという制度でございます。個々の中小企業の事業主が独自では退職金を設けることがなかなか難しいということからつくっている制度であります。

 今お話がありましたように、これにはきちんと退職の手続が決められておりまして、それに基づいて退職金を支給するということをやっておりますので、そういった手続が適正に行われたか否かということは大変大切なことだと思いますし、それは、当事者の意思とかあるいは事実関係に照らしてきちんと判断されるべきものと思います。

 ただ、一般論として申し上げれば、今お話しになりました当事者の意思や事実関係に反してその手続がもし行われたとするならば、それは問題だというふうに考えております。

吉井分科員 ですから、大阪の方では、検察庁も起訴をするという立場で臨んでいるんです。

 企業が労基法違反や労務改善基準違反を繰り返すために、幾ら大臣がガイドラインを示されても言うことも聞かない、それを、そのやり方はおかしいじゃないのと批判したり抵抗する労働組合は排除し壊滅させようとする、本当に前近代的手法ですね。

 もともと、法律によってこういう前近代的手法は禁じられているんですが、こういうことが繰り返されているということになりますと、これは私は、単なる労使間の問題だとか、あるいは労働者の健康管理の問題というだけにとどまらないで、乗客の安全にも直接響いてくる問題ですから、この点では、国土交通省の交通、輸送業に対する許認可を含む指導と、厚生労働省の労働法規を守らせるやはり厳格な指導を、これは、お互いに連絡をとり合って共同して取り組むことで、乗客の安全と労働者の健康や権利を守る、このことにやはり大臣として全力を尽くして取り組んでいただきたいと思います。大臣、どうぞ。

尾辻国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、国土交通省とも定期的に連絡会議を開催しておりますし、共同して、そうした法をまず守らす、そして基準やガイドラインも徹底していくということをお約束申し上げます。

吉井分科員 この第一交通の問題は、これは国会でも何度も出てきている話ですが、もう十年以上になるんですね。

 これは私は、特定の企業憎しで言っているんじゃないんです。やはりこういうことを、国会で何が問題になろうが、十年以上繰り返すようなことでは、事は乗客の安全にかかわる問題ですから、国会決議に従って取り組んでいただきたいということを重ねて申し上げまして、最後に、関西電力美浜原発三号機事故の労働災害について触れたいと思います。

 原発の下請労働者の労災というのは、実は隠されてくることが多かったんです。がんとか白血病による死亡もなかなか実態が明らかにされない。私も、例えば中部電力の浜岡原発の事故があったときに入ったときに、四分たったらブザーが鳴って、出てくださいと、それぐらい放射線量が強烈なものですから。そういう中で原発下請労働者の人が作業して、四分じゃ仕事になりませんから、スイッチを切ってしまうとかそういうことでやってこういう事故があるんですが、実態がなかなかはっきりしていないんです。

 実は、直接原子炉の中じゃありませんが、しかし、二次系の冷却水喪失が一次系の炉心溶融につながるという問題で起こったのが、昨年八月の美浜原発三号機事故です。この労災に取り組むことは、これからの原発労災の解明や対策につながる重要な契機になっていくというふうに私は考えております。

 事故発生翌日の八月十日に、私、調査に入りまして、現地で被災直後の写真提供を受けました。その写真をよく見ておりますと、死亡者五名、大やけど六名の合計十一名の木内計測、ここは、木内計測の人は十一名入って、十一名全員死傷されたんですが、それ以外に、実は下請十五社の企業名と企業別の登録社員数が示されておりました。その後、実際にそこにおったのは何人ですかということを関西電力に聞いたら、下請百四人と関電社員一人の百五人が入っていましたと。事故発生時に、一階には六十人、二階には二十人、三階には二十五人いたというのが関電から私への報告です。

 問題は、下請仕事というのは企業ごとに大体固まってやるものなんですよ。そうしますと、企業別に、労働者が建屋の中のどこでどんな仕事をしていたときに事故に遭遇したかというのはわかるわけですね。

 この事故というのは、実は、委員長も聞かれたらびっくり仰天されると思うんですけれども、百四十度C、十気圧に加圧された熱水が八百トン漏れたんです。八百トンというと、二十五メートルプール、大体学校のプール三つ分が大量に一遍に漏れたんですよ。そうすると、その高温、高圧の大量の漏れ出た熱水の中に置かれた人たち、すぐ蒸気になりますから、百度を超える高温蒸気、これを吸い込んだ人はやけどを負ったり、あるいは肺を初め気管支に傷害が出るということになります。

 実際、木内計測の五人の犠牲者は、気道のやけどによる窒息死だったんですね。六人が大やけどということだったんですから、建屋内にいた全労働者がやけどとか気管支に傷害を受けていないかということを調べることが、私はこういう原発労災に取り組む初めの第一歩だと思っています。

 そういう点で、厚生労働省には事前に私、リストをお渡ししておきました。この企業、何名というリストをちゃんとお渡ししてありますので、これで登録作業員数はわかりますし、何人が何階にいたとか、皆リストを渡してありますので、きょうは、事前にそういうリストをお渡ししてあるので、労働災害の実態についてまず大臣として調査をしていただきたい。

 私、この場でこの間事務方に出しておいたこの資料の答えをもらおうとは思いませんから、調べるにも事務方も時間がかかるでしょうから、大臣として、こういうリストに出ている企業の下請作業員の方が実際何人おって、どういう傷害を受けたのか、受けていないのか、これをまず調査されることを求めておきたいと思います。

後藤田主査 質疑時間が終了しておりますので、答弁は簡潔にお願いします。

尾辻国務大臣 私も先ほどその話を聞きました。

 それで、聞きましたのは、厚生労働省としては、災害が発生した当日に現地の福井労働局に重大災害対策本部を設置して、福井労働局及び所轄の敦賀労働基準監督署により災害調査を詳細に実施した結果、そして、どういうことをやったんだと聞きましたら、多分今の下請ごとのというようなことなんでしょうけれども、リーダーへの聞き取りをして確認したと。そうしましたら、本災害において十一名以外の者については被災者がいなかった、こういうふうにさっき報告をしております。もう一回確認をいたします。

吉井分科員 もう時間が参りましたので終わりますが、これは、大体だれが考えてみても、この八百トン、学校プール三杯分の百四十度、十気圧に加圧された大量の高温水が出て、それで木内計測の十一名だけがたまたま全員が死傷して、あとはだれもけがもやけどもしない、あり得ない話ですよ。だから、きっちり調査をされることを重ねて求めまして、質問を終わります。

後藤田主査 これにて吉井英勝君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

後藤田主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。首藤信彦君。

首藤分科員 民主党の首藤信彦です。

 きょうは、尾辻厚生労働大臣に、現在の日本の社会の大きな深刻な問題である少子化の問題と、それから、それと一見関係ないようですけれども、やはり非常に大きな問題を抱えている日本の作業所の発展の状況について質問させていただきたいと思います。

 御存じのとおり、大臣とお目にかかるのはこれが初めてですけれども、私は長年、安全保障とか外交の問題で活動してきました。しかし、最近、この間いよいよ京都議定書が発効したわけですけれども、気候変動というのが現代では安全保障の非常に重要な要素である、そういうふうに考えられています。それはなぜかというと、例えばツバルとかそういう太平洋の島、あるいはバングラデシュの例を見ればわかるように、温暖化によって海面水位がちょっとでも上がると、それはもう国の領土の半分が減ってしまう、あるいは三分の一が減ってしまうということですね。それはちょうど外国から軍隊が侵入してきたのと同じだ、そういうことであります。

 同じように、少子化の問題も、人口が三分の一減ってしまう、あるいは何百万も減ってしまうというと、これは本当に、空爆が行われ、じゅうたん爆撃が行われて何百万の市民が死んだのと結果的には同じことになるんですね。ですから、私は最近、私だけが別に言い出しているわけではありませんけれども、こうした少子化の問題あるいはまた環境の悪化の問題、特に気候変動の問題は、その国にとっては安全保障上の非常に重要なテーマである、そういうふうに把握されてきていると思います。

 しかし、残念ながらそうした視点は我が国にはなくて、例えば日本の防衛白書を読んでも、あるいは外交青書を読んでも、あるいは総理が言っておられることも、そうした視点では必ずしもないのではないかなと思っているんですね。しかし、私は、長年、安全保障問題に取り組んだ者として、この問題はかなり差し迫った安全保障上の脅威である、そういうふうに考えております。

 そこで、きょうは、その取っかかりという形で尾辻大臣に幾つか質問させていただきたいと思います。

 まず最初に、少子化の問題。要するに、将来世代がだんだんだんだん縮小してくるという大きな問題ですけれども、同じように、例えば最近社会で問題になってきたニートの問題とかあるいは百万と言われる引きこもりの問題、まあもうちょっと大きくなった世代の話ですけれども、やはりそれも、一つの産業が消えてしまう、あるいは日本の技術革新が根本的に停滞してしまうということを可能性として示しているわけですね。ですから、そうした一連の流れを見ますと、この原点にある少子化問題というのは非常に大きな問題を抱えていると思うんですが、厚生労働大臣として、少子化が進んだ根本原因は何だと把握されておられるか、そこを、大臣の所見をお伺いしたいと思います。

 もちろん、それには、レクで来ていただくとこんな厚い資料をもらいまして、これとこれとこれとこれとということで何十ページにわたる問題があるわけですが、厚生労働大臣としては、これが一番のキーではないか、逆に、これをある程度正すことができればかなり問題が解決できるものがあるのではないか、そういうふうに思いますけれども、大臣としてはいかがお考えか、その所見をお述べください。

尾辻国務大臣 少子化の問題というのは、今お話しいただきましたように、まさに国力の問題でありますから、大変深刻な問題として私どもも取り組んでまいりました。その中で、今お尋ねいただきました、少子化の理由は何だ、これがもう実は一番の難しい課題でございます。一生懸命我々もその都度考えてまいりましたし、また、考えて手を打つんですけれども、少子化に歯どめがかからない、非常に難しい問題であるというふうにまずは考えております。

 そうした中で、改めての、理由は何だというお尋ねでございますけれども、今まで我々が取り組んできた中で、そしてまた取り組みながら考えてきた中で、改めて今私どもが課題だと思っておりますことを、理由だと思っておりますことを申し上げますと、一つが、やはり長時間労働の風潮が根強いなど、働き方の見直しに関する取り組みが進んでいない、要するに、労働と子育てという問題が一つどうしてもあるというふうに思います。

 それから二番目に、待機児童ゼロ作戦をとってまいりましたけれども、待機児童がまだ多数存在することなど、子育て支援サービスがどこでも十分に行き渡っているという状況にはなっていないということであります。子育て支援という問題がやはり依然としてある。

 それから三番目には、これは今お触れになりましたけれども、若年失業者の増大等、若者が自立して家庭を築くことが難しい状況となっている、こういう社会的な状況。

 この三点が今私どもが一番の課題だと思っておりますということをまず申し上げたところでございます。

首藤分科員 大臣、大変うまく三つにまとめていただきましたけれども、ですから、やはり少子化というのは、一つは、女性が子供を産みたがらないという心理的な状況と、あるいはそういう状況に追い込んできた客観的な構造というものがある、私もそのように思うんですね。

 そこで、どのように改善していくかですけれども、私自身は、横浜の郊外の都筑区というところで、すばらしい自然のあるところで、本当に子育てに最適な状況だと思うんですけれども、残念ながらやはり保育園が足りない、待機児童がいる。まだこんなに日本はおくれているのかというふうに愕然とするわけですけれども、私自身も子供を二人保育園で育てました。やはり保育園にもいろいろな問題がありますね。本当に、ある意味では子供にも迷惑をかけたなと実は思うときもあるんですよ。

 保育園の皆さんも大変努力されておりますけれども、いろいろな問題を抱えたまま今日まで至って、それが解決されていないと思うんですね。しかし同時に、保育園のシステムを考えると、日本のかつての工場労働と同じに、やはり大きく囲い込みしてそこで管理していく、そういう色彩が非常に強いと思うんですね。

 しかし、これほど人口がだんだんだんだんと減ってきて、そして若いカップルがいろいろな社会的な問題を抱えている。先ほどの長時間労働の問題もあります、長距離通勤の問題もございますよね、それから実際に、住環境の問題もある。そうした中で、またさらに、若年労働者が、若年の、比較的若い世代が失業している。あるいは、職にあっても長期的なビジョンを持てないというところから、こうした問題というのはできていると思うんです。

 そこで、発想を転換して、欧米を見ますと、働く世代というのは意外と支えられているところがあります。もちろん、発展途上国に行けば、大家族制でだれかが面倒を見ている。かつては日本もそうでした。しかし一方では、やはり中産階級以上の方が結構ベビーシッターを雇っておられるんですね。ベビーシッターというものは、それほど、昔のように大金持ちが雇うのではなくて、近所の人とかいろいろな経験者とか、そういう人を巧みに使って、そして若い夫婦が働きに行くのをサポートしている。

 というのは、長時間労働が悪い、長距離通勤が悪い、それから仕事だけ条件が急変するのが悪いといっても、これは当たり前のことなんですね。仕事というのはそういうものなんですよ。現代の仕事というのはまさにそうなんですよね。ですから、そうするとやはり、今までのように、工場労働者を中軸としまして、例えば九時から四時半ぐらいまできっちり働いていて、後はすぐ帰って子供を迎えに来てくださいみたいな、そういうのではなくて、いろいろなフレキシブルな子育ての支援が必要となってくる。

 そこで、やはりベビーシッターというものがもう一度見直されてしかるべきと思うんですが、それに対しての制度的な取り組みは十分だとお考えでしょうか、大臣。

尾辻国務大臣 今お話しいただいたような観点から、私どもも全くやっていないわけではありません。平成十三年に閣議決定したのが待機児童ゼロ作戦なんですが、そのときも保育ママというようなことも言っております。

 それから、今お話しいただきましたベビーシッターについても、利用料の一部を助成する事業はいたしております。そうしたようなことを幅広くやってはおるわけでございます。

 ただ、それが時代の流れとともに、いろいろこうしたものに対する要請も大きくなるんでしょうが、今、そことの兼ね合いがどうなっているかというのはいろいろな御意見がまたあろうかと思いますが、今私どももやってはおりますということをまず申し上げます。

首藤分科員 私は、政治家になる前は大学の教授をしていたんですが、そうした学生が、今、子育て世代にまさになっているんですね。

 いろいろな話を聞きますと、例えば、せっかくキャリアを持っていても、立派なキャリアを持った、君、いいところへ勤めたね、君みたいな人は必ず、女性の話ですけれども、君は本当に女性の社長になるかもしれないよ、こう言っていても、保育園から、お子さんが熱を出していますとかあるいはほかのいろいろな理由で、きょうは早くお帰りくださいというふうに電話がかかってきたりする。そんなことを言っても、例えば為替のディーラーであれば、一瞬で何十億お金が動くわけですから、そんなに動けないわけですね。電話に出ることさえできない。そうすると、しばらくするとまたかかってきて、早く来てください、早く来てくださいと。

 これでは、もう本当にパニックになって、子供を抱えている多くのキャリアウーマンの方が心理的にもおかしくなってきている。いつも薬を、眠れないということですね。君、そんな、よくないよとは言っているんですけれども、現実にはそうですよね。ですから、そういうふうに考えると、やはりどうしてもベビーシッターというものが必要となるわけですから、今の考えでは十分ではないという話を聞きました。

 では、これから厚生労働省としてどのように取り組んでいかれるかということですね。私は、今までの日本の政治のいろいろな問題を抱えて、やはり全部すべてが、かつての大工場時代といいますか、みんなが同じところに勤めてみんなが同じことをしているという時代に合わせてできていると思うんですよ。しかし私は、もういろいろ問題を抱えると、例の有名な「アンナ・カレーニナ」の最初の一節にあるように、幸福な家庭はどれを見ても同じだけれども、問題を抱えた家庭はみんなそれぞれに理由があるという「アンナ・カレーニナ」の最初の一節が出てくるわけですよ。

 やはり今の子育てをしながら働いている女性を支援するには、個別具体的な労働条件や生活条件や勤務状態に合わせてやらなきゃいけないし、そのためにはどうしてもベビーシッターの制度は必要だし、それに対しては、もちろん今FTAなんかで外国の方も入ってこようとかいろいろな動きがありますけれども、まず日本の中でこうした問題をきちっと枠組みをつくらないと、またさらに問題もふえてくると思うんですね。

 ですから、厚生労働省としては、ベビーシッター問題に関してどのような展望を持ち、どのように具体的な第一歩をつくられているのか、そこをお聞かせ願いたいと思います。

尾辻国務大臣 これは私がいつも言っておることなのでありますが、少子化対策として、私どもは、まず最初にエンゼルプランというのを言いました。その次に新エンゼルプランと言ったんです。今度言っていますのが、子ども・子育て応援プランという三つ目のプランになっておるわけであります。最初のプランというのは、最初に先生がお触れいただきました保育所のことを中心にやってまいりました。まさに、待機児童ゼロ作戦みたいなものがエンゼルプランであり新エンゼルプランだったわけであります。

 それで、それだけではもうとても少子化対策はとれないということを反省しまして、もっと大きく少子化対策というのをやらなきゃいけないというふうに今考えております。したがって、そういう意味でまず申し上げると、少子化対策というのはもう政府全体で取り組まなきゃいけないと思っていますし、それから社会全体でも取り組んでいただきたい、こういうふうに思っております。

 そうなりますと、保育所にただ預けるというような、もうそういう子育て支援ではないわけでありますから、もっと大きく考えなきゃいかぬなというふうには思っておりますが、今ベビーシッターというそこのお話だけいただきますと、まだやっと補助を始めたという段階でしかありませんということを申し上げざるを得ません。

首藤分科員 ですから、大臣、やはりこれは社会の動きに対して厚生労働省としての取り組みが余りにも遅いと言わざるを得ないと思うんですよ。

 それから、現実に、今は、ビジネスの方ではグローバル化といって、もう二十四時間働いていかなきゃいけない。こういうような状況に対して、まだ今までの福祉の考え方を、今までの工場生産、工場でみんな働いて、それではい終わりになってという、そして土日は休める、こういう状況を考えておられるんですよね。ですから、これはもう革命的に変革してやっていただかなきゃいけない。

 特に、エンゼルプランと新エンゼルプランをおっしゃいましたけれども、それの基本的な考え方はやはり平等ですよね、平等公正にいろいろな人のことをやらなきゃいけない。これは非常に重要なことですよ。しかし、今いろいろな人がいろいろな問題を抱えているときに、大きく、また同じことをやれば、その一見平等なことが実は不平等になっていってしまう。むしろ、個別具体的にいろいろな人のいろいろな状況に合わせてやっていかなきゃいけない。これが私は厚生労働に根本的に欠けているのじゃないか。その点の改革をぜひ急いでいただきたいということを指摘させていただきます。

 ベビーシッターの問題も、急にそこへ行くのが難しいのであれば、補助から始めて、あるいは保育園とベビーシッターを組み合わせるとか、そういうところからでも始められるので、至急この問題を進めていただきたいと思うんですね。

 そして、この世代がやがて大きくなってくるわけですが、そこで問題になってくる引きこもりとかニートの問題もあるわけです。この問題に関してもやはり根本的な対策は打たれていないわけですけれども、これも最初に戻りますが、大臣にとっては非常に酷なことかもしれませんが、どのテーマが突破口になってこの問題を解決していくべきなのか、そこを大臣としての御見解をお聞かせ願いたいと思います。

尾辻国務大臣 世の中が極めて多様化してきたというふうにまず思います。そうした多様化した中で、多様化したニーズにどう我々がこたえていくかということが今後の大きな課題であり、今ベビーシッターということで先生からも御指摘もいただいた、こういうふうに私は今お話を伺いながら理解をさせていただきました。そうした中で、できるだけそうしたことについての対応をしてまいりますということを改めて申し上げます。

 そして、今、ニートやフリーターというお話がありましたが、これがまた、まさに多様化した現象の一つの大きな象徴的なものだというふうに思っております。

 これに対してどう対応するかということでございますが、先生の御質問の趣旨にお答えすることになるかどうかわかりませんけれども、まず私がお答えしたいと思いますのは、今、私どもは、来年度予算でお願いしておりますこれに対する対策として、若者自立塾だとかいろいろ言っておりますが、基本は、丁寧に丁寧に、一対一の対応ぐらいで対応していかないと、ニートと一くくりに言いますが、フリーターと一くくりに言いますが、もうさまざまなんです。

 私は、できるだけ現場を見たいと思いまして、ボランティア、NPOとしてこういう人たちに対応している人たちのところにも行ってみまして、そういう若者たちとも話をするんですが、改めて、もう一人ずつなんだと。とても一くくりで表現できるような人たちではない。それぞれが個別の悩みを持っている。そうすると、我々ができることも、国がそこまでやるのかと言われるぐらいに一人一人に対応していくしかないのかなと思っていますということをまず申し上げます。

首藤分科員 大臣おっしゃるとおりだと思うんですね。それは方向性としては私も同感するところがあります。ですから、これから、今までのような大規模組織とか大規模な対策、あるいは均一な対策とかいうのではなくて、やはり個別具体的で、小規模で、小組織で対応していくということが本当に方向性として必要なんだと思いますね。それに日本の官庁組織というものが果たして対応できていけるのかということが、これからの大きな課題であろうと思うんです。

 今、日本の社会の変容について、長期的な構造的な問題について質問させていただきました。もう一つ、日本の社会の中におけるリスクというのは、突発的にいろいろな問題が出てきます。それにどういうふうに対応していくのかという問題も一つあると思うんですね。

 なぜこういう話をするかといいますと、私の事務所のそばに新しく作業所ができたんですよ。作業所だとは思いませんでした。そこはもともと紅茶の店、紅茶の葉っぱを売っているしゃれた店で、そこに若い人たちがたくさん急に来るようになって、きれいな事務所で、外からも見えて、そして若い女性がそれを運営していて、何をやっているかというと、クッキーか何かを袋詰めしているんですね。おかしいなと思って、何だろうと。そうしたら、その作業所の名前もナナというんですよ。ですから、何とかクラブナナと書いてあるから、そんなのがあるのかなと思って見ていたんですけれども、それが作業所なんですよ。

 それは、脳外傷といいますか、あるいは重度のいろいろな障害、精神障害を抱えた人たちが、そこで社会復帰するためにいろいろな作業をしながらやっているところなんですね。

 特に、今多いのは、交通事故による脳外傷だと言われているんですね。それ以外にももちろん、医療過誤があったり、あるいは自閉症の問題があったり、それから今のような時代だったら犯罪被害者の問題もありますよね。こういう突発性のリスク、こういうリスクは、今の若者、特にさっきから問題になっている若者世代を非常に多く打つわけですね。

 ですから、こういうものに対して、私は、作業所みたいなところがあって精神的なリハビリと心理的なリハビリを兼ねていくというのは本当にすばらしいと思って、この問題を少し勉強させていただきました。

 まず、大臣にお聞きしたいんですけれども、いろいろな障害を抱えて、身体、精神、知的とありますね、それから今は、先ほどのような交通脳外傷のような、それ以外のものとかありますけれども、こうした小規模作業所というものの法的な位置づけと、それから厚生労働省としてこの問題をどういう方向に動かそうとしているのか、その方向性について大臣の御説明をいただきたいと思います。

尾辻国務大臣 まず最初に、高次脳機能障害の方についてのお話もございました。

 私もお会いしたことがあります。そうした皆さん、交通事故なんかで障害が出ますと、そして身体的な部分が治りますと、見た目が全く障害があるように見えない。ところが、そのときに脳の障害などが生じていると、例えば、近い過去の記憶がないとか、あるいは物事の段取りを組み立てられないとか、そういう部分でひょいっとした障害が出ている。すると、はた目に見えないだけになお苦労するんだというようなお話をしておられまして、大変お気の毒だなということも考えました。そうした皆さんの作業所ができること、これは大変いいことだというふうに考えます。

 そこで、大きく、ではどういう仕組みになっているかというお話でございましたので、改めてまず申し上げますと、今の作業所の仕分けというのは三つになっていまして、今言われたような小規模作業所というのが一つございます。それから、授産施設というのがもう一つございます。それからもう一つ、小規模通所授産施設というのがあります。

 これについていろいろ御説明申し上げてもいいんですが、実は今度法律を変えまして、この考え方を私たちは変えようと思っております。ですから、変わる方ですから、余り今のものをそう御説明申し上げても、しょせん変わるものだとも言えますから、そちらは今だけの御説明に申し上げます。

 では、今後どういうサービスで考えるかというと、介護給付というものと訓練等給付というような、大きく今度はそういう仕分けで考えたいと思っておりまして、介護給付というのがよく言われるホームヘルプだとかショートステイとかといったような給付の話でありまして、そして、訓練等給付の中に、今お話しいただいたような就労移行支援と就労継続支援、こういうふうに考えております。

 そうしたものの中で、今お話しのような小規模作業所とかいったようなものを、今後新しい形で皆さんの自立支援をやっていく施設として考えておりますというのを、まずざっと申し上げます。

首藤分科員 よくわかりました。

 そういう方向で、ぜひ積極果敢に進めていただきたいと思うんです。

 しかし、大臣、私は長年、経済学と経営学などを教えていたんですけれども、つくづく思うのは、そういう作業所を回って、いろいろな方がいろいろな努力をされていろいろなものをつくっております。例えば、いろいろ布きれを提供していただいて、いろいろなものをつくったりしていますね。しかし、そういう経営学や経済学を学んだ考え方からしますと、やはり、販路はどうなんですか、マーケティングはどうされていますか、こういう質問が当然出ますね。

 しかしながら、例えば販路といっても、それはなかなか売れないですよ。今、スウェーデンとかそういう先進国でも苦労しておりますけれども、やはり発展途上国から物すごい安いものが、しかもすごい一流のデザイナーがつくったものが大量に流れ込んでいる中で、なかなか売れない。ならば、どうして市町村の自治体で一定量を購入しないのかとか、そうした問題があると思うんです。

 そうしたマーケティング支援とかあるいは作業所の経営支援、こういうところまで踏み込んで今のような方向性をお考えか、それをお聞かせ願いたいと思います。

尾辻国務大臣 今の御指摘は、大変重要な御指摘でございます。

 そして、民間団体等において、作業所に対して、授産した、そういうところでできた製品の仕入れの方法だとか、作業所を経営するためのノウハウを提供するセミナーの開催などの取り組みを行っておられるところも実はございます。

 そうしたことがございますので、平成十七年度予算案において、小規模作業所の質の向上など、その充実強化を図るための事業を全国で実施することとしておりますが、そうした中で、ぜひ今の御指摘のようなこと、これはもう大変重要なことだと思っておりますので、考えるつもりでおります。

首藤分科員 ありがとうございます。

 ぜひ考えていただいて、やはりある意味で、こういうところにも経験を持った女性とか、そういうある意味で資格にもなるテーマだと思うんですよね。ですから、いろいろな取り組みでぜひ進めていただきたいと思うんです。

 同じように、知的障害の方など、見た目には全然、外見は変わらないし、能力的にも実は余り変わらない。ただ、ちょっと不安定であるとか八割の効率しかないとか、そうした問題があって、今、派遣されているところでも、会社でも非常に重宝されている方もおられる。

 しかし、それでもいろいろな突発的な問題があるので、そういう突発的な問題をやったり、あるいは会社との調整をする、いわゆるジョブコーチという制度なんかございますよね。私は、それは今は日本もだんだん進歩してきたんだなと思いまして、やはりそういう人間が行って見ていると、それは確かに、そこへついていれば本当にちゃんとした仕事ができるなと思うんですね。

 それから、私の事務所のそばのでは、エンクレーブといって、これは、例えば三人ぐらい派遣するんだったら、三人ジョブコーチがつくのではなくて、一人へついて、ある意味でそこで何か出張所みたいな形で運営していく、事務所の飛び地のような形で何人かを面倒見て、そして非常に高い効率と安定性をもたらしているという研究と実験があるらしいんですが、そうした方向性については厚生労働省はどのように評価されているでしょうか。

尾辻国務大臣 まず、ジョブコーチ、これは平成十四年度から実施しておるところでございますが、評価をしていただきましてありがとうございます。こうしたことは今後とも進めていきたいと思います。

 そこで、今度、エンクレーブについてのお話でございます。これも、こうした考え方というのは大変必要な考え方というか、いいやり方だと思っておりまして、私どもはこれは進めておるところでございます。中身については先生もよく御存じのところでございますから、私どもが今、こうしたもの、研究を進めておるということだけをまず申し上げたいと思います。

首藤分科員 大臣、本当に進めていっていただきたいと思います。これは壮烈な社会的な実験であると同時に、社会的な革新だと思うんですよね。ですから、スピードアップしてぜひ進めていただいて、もし来年同じような機会で質問することがありましたら、大臣よくやっていただいた、そういうふうにぜひ私にも言わせていただきたいと思います。

 時間がだんだんなくなってきましたけれども、そこで、私、作業所を何カ所か回らせていただいて愕然としたことは、そこへ多くの若者のボランティアが働いているということなんですね。いろいろ指導したり、それからコーチみたいなことをしたり、それから自分も一生懸命作業をしたりしている。

 それがよく聞くと、その方自体が引きこもりであったり、自閉症であったり、人づき合いが嫌だったり、会社をともかくやめちゃってぶらぶらしていたりするわけですね。ですが、こんなに生き生きとして働いているのはどうしてそうなのかなと思ったら、やはりそういうのが向いている人もたくさんいると思うんですよ。

 しかし、そういう人は、では、すばらしいから、それこそ一種のコーチだなといって給料をもらっているんですかというと、それはもう本当に何もなくて、ほとんど一カ月働いて一万円にもならないわけですよ。しかし一方では、これは例えば一般のサラリーマンの六割とか五割とか、あるいは四割でも給料をもらっていてもおかしくないと思うのですよ。

 ですから、そういう形で、さまざまな形で若者を、いろいろ社会的な不整合、不適合を抱えた若者をボランティアとしてもう一度そこへ入れて、しかも、そこである程度の給料を得て、そしてまた復帰していくというような方向性。あるいは、そこでボランティアとして障害を抱えた人とのジョイント役を果たす、こういう役割を実はできるのではないか、制度的にも、多少の補助金があれば。

 そういう発想に関しては、大臣はどのように評価されておられるでしょうか。

尾辻国務大臣 今御指摘の点でまず申し上げますと、この労賃、彼らがもらっております工賃水準というのは、これはもうまさにばらばらでございまして、月千円未満という人もいますし、一方では三十万以上という人もおります。特に、福祉工場というのがありまして、ここらあたりは結構高い水準になるのですが、ばらつきがあるということでございます。

 今おっしゃるように、そうしたところでボランティアの人たちが働いていたり、まさにおっしゃったような、自分も引きこもっていたりした人が出てきて生き生きと、まさにコーチをしているというような形で働いていたりする姿を私もよく見て、いいなと思うのですが、そうした形がどんどんどんどん進んでいけば一番望ましいし、そしてまた、そうした中で皆さんの工賃も上がっていけば大変いいと思います。

 途中で先生ちらっと言われたようなことに関して言いますと、実は、厚生労働省の下にもスワンというパン屋さんがありまして、そして、そういう人たちがつくったパンをそういう人たちが売ってくれているのですが、実に生き生きとしてやってくれている。しかも、おいしいパンをつくっていますから、ちゃんとした値段で売れているし、相当な賃金にもきっとはね返っているんだろうなと思います。

 そうした姿がどんどんふえていくことが一番いいと思っておりまして、今国会にお願いしております障害者自立支援法案がまさにそれを広くお願いしておるわけでございまして、今後の取り組みも進めていきたいと思っております。

首藤分科員 時間が来ましたので終わりますが、大臣、ぜひ積極果敢に進めていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

後藤田主査 これにて首藤信彦君の質疑は終了いたしました。

 次に、高木義明君。

高木(義)分科員 民主党の高木義明でございます。

 私は、被爆者対策を中心として、限られた時間でありますけれども、大臣初め政府関係者にお尋ねをしてまいりたいと思います。

 これまで被爆者対策につきましては、歴代の総理初め担当大臣を先頭にされまして、政府において一定の施策が講じられ、被爆者の皆さん方からも評価をされておることを私はまず申し上げておきたいと思います。敬意を表したいと思います。しかし、問題がすべてなくなったわけでもございません。時代とともにまた新たな問題も提起をされておりますので、そういう意味合いも含めて、この機会に私は諸問題について触れさせていただきたいと思います。

 御承知のとおり、昭和二十年八月六日には広島市、八月九日には長崎市、人類史上最初の核兵器が使用されました。この被害は、熱線、爆風、放射能、他の戦争被害には類を見ない大変莫大なものでございましたし、その年だけでも両市合わせて約二十万以上の方が亡くなり、十五万人以上の方が負傷をされております。

 私どもは、原子爆弾という、まさに非人道的な大量殺りく兵器の一日も早い地球上からの廃絶を求めておりますし、とりわけ、非戦闘地域を巻き込んですべてを焼き尽くす、こういう兵器の恐ろしさ、そういったことについて、かねてから国際司法裁判所でも、国際法違反だ、そういう勧告も出されておる実情でございます。

 そういう意味で、ことしは戦後六十年の節目に当たりまして、同時に、被爆六十周年という年にも当たるわけです。少なくとも、十年前、被爆五十周年の平成七年に、いわゆるこれまでありました原爆被爆者特別措置法、そして原爆医療法、この二法が一つになりまして、新しい今の原爆援護法が制定をされたのは御承知のとおりでございます。そういう意味で、この原爆援護法の議論をしたときにも、国家補償の精神、国家補償の見地、こういった議論がございましたけれども、今御案内のとおりの援護法になっておるわけです。

 改めて、私はその趣旨についてここで述べてみたいと思います。

 被爆後五十年のときを迎えるに当たり、我らは、核兵器の究極的廃絶に向けての決意を新たにし、原子爆弾の惨禍が繰り返されることのないよう、恒久の平和を念願するとともに、国の責任において、原子爆弾の投下の結果として生じた放射能に起因する健康被害が他の戦争被害とは異なる特殊の被害であることにかんがみ、高齢化の進行している被爆者に対する保健、医療及び福祉にわたる総合的な援護対策を講じ、あわせて、国として原子爆弾による死没者の尊い犠牲を銘記するため、この法律を制定する。

こういうことでございました。

 これまでを振り返り、とりわけこの十年を総括する意味において、厚生労働大臣に、まず、これまでの取り組みについてどのように認識をされておるのか、この点についてまずお尋ねをしておきたいと思います。

尾辻国務大臣 今るるお話しになったことを重ねて申し上げることにもなりますけれども、お尋ねでございますから改めて申し上げたいと存じます。

 被爆者対策につきましては、原子爆弾の放射能による健康被害が他の戦争被害とは異なる、今お話しになったとおりでありまして、特殊な被害であることを踏まえまして、被爆者の方々の健康の保持及び増進並びに福祉を図るということで、昭和三十二年には原子爆弾被爆者の医療等に関する法律をつくりましたし、昭和四十三年には原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律が、それぞれ制定をされておりましたけれども、これらの法律に基づき、健康診断、医療の給付、医療特別手当等の各種手当の支給を初めとする各般の施策が講じられてまいりました。

 それを、これまたお話しいただきましたように、平成六年には、これらの法律を一本化して、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律が制定をされ、以後、この被爆者援護法に基づいて、保健、医療、福祉にわたる総合的な援護施策を確実に実施してきたところでございます。

 この法律の趣旨は先生お述べになったとおりでありますし、私どもの悲惨な体験というのを、私どもは世界に向けてメッセージとして送り続けてきた、そして、二度とこんなことがあってはならない、こういう爆弾が投下されるというようなことがあってはならないということを言ってきた、世界に私どもは大きな役割を果たしてきたというふうに考えております。

 そして、今、予算規模を申し上げますと、毎年約千五百億円の予算を計上しておりまして、今なお被爆者の方々への支えにはなっておるだろう、こういうふうに考えておるところでございます。

高木(義)分科員 ところで、今の被爆者援護法の趣旨の一つの中に、いわゆる核廃絶ということがあります。被爆者を絶対つくってはならない、こういう決意でございます。

 そういう意味で、きょうは外務省にも来ていただいておりますが、ことしの五月にニューヨークにおいてNPT再検討会議が、五年に一度開催をされます。二〇〇〇年には、核兵器廃絶への明確な約束という合意がなされております。

 しかし、最近の国際情勢は極めて深刻であります。インド、パキスタンの核実験、あるいは北朝鮮のNPT脱退宣言、そしてアメリカ・ブッシュ政権の外交・安全保障政策の変化、具体的に言いますと、例えば、使いやすい核兵器、いわゆる小型の核兵器の開発、こういったことが出ております一方で、核兵器のいわゆる拡散、核のやみ市場という状況も訴えられております。

 そういう中で、このNPT体制、そして今回の再検討会議、私どもはその実効ある前進を期待したいわけでありますけれども、これについてどのように認識をされておるのか、この点についてお伺いをします。

天野政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、本年五月に、二〇〇五年核兵器不拡散条約、NPT運用検討会議が開催されます。この会議は、カーンの地下ネットワークによる核の拡散、北朝鮮やイランの核問題、アメリカによる包括的核実験禁止条約、CTBTの批准の拒否の問題といった核軍縮、不拡散をめぐります非常に厳しい情勢の中で開催されるものと認識しております。

 我が国といたしましては、非核兵器国であり、NPT体制を基礎とする軍縮、不拡散体制が維持強化されることが非常に重要だと考えておりまして、この二〇〇五年の会議をそのような場にするように努力したいと思っております。

 NPTは、核軍縮、核不拡散、原子力の平和利用、この三つの目標を掲げておりますが、私どもといたしましては、この三つの側面すべてにつきましてバランスよく主張を行い、進捗が図られることが重要である、このように考えております。

高木(義)分科員 このような重要な会議を、大きな力を持って、まさに日本が主導的役割を果たすべきだと思っております。

 過日、広島、長崎の両市長が政府にも要請をいたしております。被爆国として先導的役割を果たしてほしい、こういう要請が出ておりますけれども、我が国として、具体的にはどのように物を言い、そして行動をとっていくのか、この点について明らかにしていただきたい。

天野政府参考人 お答えいたします。

 まず、核軍縮の分野でございますけれども、我が国は、唯一の被爆国といたしまして、核兵器のない平和で安全な世界を一日も早く実現するために、現実的な措置を一つ一つ重ねていくことが重要という立場をとっております。

 このような考え方に基づきまして、一九九四年以来毎年、核廃絶に関する決議案を国連総会に提出し、国際社会の圧倒的な支持を得まして採択されてきております。また、昨年九月には、CTBTのフレンズ外相会合を共催いたしまして、すべてのCTBTの未署名国、未批准国に対して、早期に批准、署名するように求めてまいりました。

 核不拡散の分野では、国際原子力機関、IAEAの保障措置体制が国際的な核不拡散体制を確保する上で非常に重要だと考えております。そのために、国際的な核不拡散体制の強化のために最も現実的で重要な措置であるIAEAの追加議定書の普遍化を、積極的に推進していきたいと考えております。

 また、原子力供給国グループ、NSGを初めとするいろいろな枠組みにおきまして、核関連の機材、技術の輸出を制限する取り組みにも貢献していきたいというふうに考えております。

高木(義)分科員 私は、もっと核兵器の悲惨さを、核保有国あるいは非核保有国に強く求めていくべきだと。非常に何かその積極性が見当たらない、こういう感じがしてなりません。とりわけ、そういった国々の仲介役、そして同盟国であるアメリカに対して自制を促す、そういったメッセージを国民の前に示していく、これも大事なことだと思っておりますが、この点、どうですか。

天野政府参考人 一点だけ申し上げますが、先ほど申しました核廃絶決議の中でございますけれども、その中にCTBTの早期発効というのをうたっておりますが、アメリカはこの点について反対しております。この決議案については、昨年は、賛成百六十五票、反対二票、棄権十六票でございますが、その反対の中の、二票の一票はアメリカでございます。

 このように、アメリカは大変重要な同盟国ではありますが、CTBTの発効促進というような重要な問題につきましては、アメリカに対しても厳しく早期発効を求めているというような状況でございます。

高木(義)分科員 強い取り組みを重ねて要請しておきたいと思います。

 では、被爆者対策の問題に移りますけれども、まず、被爆体験者精神影響等調査研究事業についてお尋ねいたします。

 平成十四年四月に、被爆地域、いわゆる爆心地から半径十二キロ以内の全域に拡大をされました。まさにこのときも、居住地で線引きをされる根拠は全くないにもかかわらず、居住地によって線引きがなされておったわけですが、地元関係者の御努力、そして政府の対応も含めて、それが見直しになるという動きがございます。この点について、いつ、どのような形で対応されるのか、まずお聞きをしておきたいと思います。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、被爆体験者精神影響等調査研究事業の在り方に関する検討会の報告書というのが出されまして、それをもとにして本調査研究事業の見直し作業を進めているところでございます。

 居住要件の変更につきましても、この見直し作業の中で盛り込むこととしているところでございます。実際にどういうふうなスクリーニング検査が必要なのか、あるいは精神科医の診断など、実施体制の整備とか準備が必要なことでございまして、現在、長崎県あるいは市と御相談申し上げているところでございます。

 新しい取り扱いにつきましては、こうした準備が整い次第実施に移したいというふうに考えておりまして、平成十七年度のなるべく早い時期を目指してやっているところでございます。

高木(義)分科員 この支援事業は、健康診断、医療費の助成、こういうことになっております。本事業に対しては、私は、財政状況が厳しいのは重々承知をいたしておりますが、財政の側面からでそのような対策を切り詰めてはならない、適切に対応すべきだと思っておりますが、十分な予算措置についてのお考えを聞いておきたいと思います。

田中政府参考人 本事業の実施でございますけれども、もう既に、創設後二年ほど時間がたっているところでございます。実施状況がだんだん明らかになってまいりまして、そして、調査結果も長崎県・市の方から出てまいりまして、それを受けて、検討会もこの制度について見直し作業というのをいただいておりまして、先ほどの制度の改正、見直しというのが行われてきたところでございます。

 予算の方でございますけれども、これまでの事業実績を踏まえつつ、十七年度におきましては一応九・四億円を計上しておりまして、ほぼ実際の所要の経費については確保できているというふうに考えているところでございます。

高木(義)分科員 この予算措置については、制度の後退のないように十分に配慮をしていただきたいと強く求めておきます。

 また、このような措置、平成十七年の早い機会に所要の措置を済ませて実施をするということについては評価をいたしますが、同時に、新たな問題点としては、既に御承知のとおり、県外の被爆体験者についても対象にすべきではないか、このような強い声がございます。在外被爆者に対する対策において引用されますが、いわゆる大阪高裁の、被爆者はどこにいても被爆者なんだ、こういう、ごく当たり前、当然の論理によって我が国の政府も善処をされました。まさに、被爆体験者、八月九日のあの惨状を体験した被爆体験者は、どこにいても被爆体験者だと私は思っております。したがって、区域、居住要件で線引きすることは、これは私は大きく問題があると思っております。

 この点についていかがなものか。この点についてよろしくお願いします。

田中政府参考人 今の制度見直しの調査検討会が行われまして、基本的な姿勢でございますけれども、科学的根拠に基づいて、それがきちっと説明できる範囲で、ぜひ制度としてPTSD対策を実施したいというふうに考えているところでございます。

 実際に検証作業を行いました結果、今の段階では、やはり、長崎県外に転出した者まで対象者に含めることを是とする科学的な、合理的な根拠というのは必ずしも存在しないというような結論が得られたところでございます。

高木(義)分科員 科学的、合理的根拠という言葉は何度も被爆者対策で政府から聞いてきた言葉でございますが、それを乗り越えていわゆる被爆体験者への事業が始まったわけでございますので、私は、ぜひその辺についても十分に頭に入れていただきたいということを重ねて要求をいたします。

 そこで、時間もございませんので、関連する問題として、被爆二世、三世の問題をお尋ねいたします。

 子供、孫への影響について、かねて、昭和五十年の国会、衆議院社労委員会においての森井忠良委員の質問に対して、放射能と遺伝との関係については、佐分利政府委員は「あると思います。」このような答弁をされております。また、「遺伝的な影響というのはいろんな形であらわれますよね。」これに対して、佐分利政府委員は「そのことは認めます。」こういうことがございました。

 原爆により起こったこの事案、遺伝的影響は全くないと言えない以上、私は国が責任を持って対応すべきだと思っております。特に、今、将来不安に大変深刻な状況が出ておりますので、健康診断、特にがん検診、こういったものを追加すべきではないか、私はそのように思っておりますので、この点についての御所見を賜っておきたいと思います。

 また、重ねて申し上げますと、援護法が十年前できましたときにも、衆議院の委員会において附帯決議もなされておることは御承知のとおりでございます。これを受けまして、政府の前向きな御答弁をお願いしたいと思います。

田中政府参考人 いわゆる被爆二世の方々の健康影響の問題でございますけれども、放射線影響研究所がかつて八本ほどその影響について調査しておりますけれども、あるいはその他科学的な知見をあわせまして、現在のところ、原爆放射線による遺伝的影響はないというふうに私どもは考えているところでございます。

 ただ、被爆二世の平均年齢は今四十歳を超えてきているところでございます。また、最近は新しいヒト遺伝子に関する解明というのが進んできているところでございまして、これを踏まえまして、放射線影響研究所におきまして、平成十四年度から被爆二世の健康影響調査というのを行っているところでございまして、その結果を見てまいりたいと思っております。

 また、被爆二世の方々につきましては、原爆放射線による遺伝的影響はないというふうにはされているわけでございますけれども、健康不安、これはございまして、その解消を図るという観点から、国費による健康診断を実施しているところでございます。

高木(義)分科員 今出ましたけれども、放射線影響研究所、いわゆる放影研についてお尋ねをしてまいりたいと思います。

 この放影研は、これはもう人類の保健の向上、そして放射線医療にとっても、私は、大変なこれまでのデータの蓄積があると思っております。こういった貴重な財産、これはまさに我が国がこれからの時代に向けて大切にすべきものだと思っております。

 これまでは、ABCC、米国と日本の共同折半という形で運営がされておりましたが、米国の事情もいろいろあるようでございますが、まさに私は、米国頼みではなくて、我が国としてまずこれの機能を強化していくことが大事ではないか、そのように思っております。

 したがって、放影研の中長期の目標あるいは構想、こういったものも示しながら、与えられた使命に対してこたえていく、この強化について当局のお考えを示していただきたい、このように思います。

田中政府参考人 先生御指摘のとおり、昭和五十年に放射線影響研究所が財団法人として設立されまして、日米両国政府による交換公文に位置づけられたということでございます。非常に特殊な、特別な位置づけを持った法人でございまして、その性格に応じまして、米国政府からも我が国からも、原則は折半ということで財政措置が行われてきたところでございます。

 今後のことでございますけれども、基本的にはその枠組みを継承して、やはりアメリカ側にもそれなりの負担をしていただきながら、今後は、どういうあり方がいいのかというようなことにつきましては、少し中長期的な展望を考えるということで、何らかの格好で検討を始めないといけないのではないかというふうに考えているところでございます。

高木(義)分科員 ぜひ前向きな検討を要請しておきます。

 次に、在外被爆者に対する問題について一点お尋ねしますが、平成十四年十二月大阪高裁の判決を受けまして、我が国として前向きに取り組んでこられたことは評価をいたします。

 そこで、これからどうするかということでありますが、やはり私は、被爆者援護法を在外被爆者の方にも適用していくということが大事ではないか、このように思っておりますが、この点についてどのようにお考えであるのか。ぜひそのようにしていただきたいと思います。

田中政府参考人 議員の御指摘が、もし、被爆者援護法に定められましたさまざまな援護措置を、すべての国外の被爆者に対しましても同様に受けられるようにすべきであるという趣旨であるというふうに理解してお答えをすれば、なかなか難しいことがあるのではないかというふうに考えております。

 例えば、医療の給付につきましても、厚生大臣あるいは都道府県知事が国外の病院等を指定して所要の監督を行う、あるいは、日本政府の主権が及ばない国外の病院に対してこういうようなことを行うということについてはさまざまな問題があると思いますし、また、各国の医療水準とかあるいは制度の仕組みというのもさまざまでございますので、一律に、現在の国内の被爆者と同様の援護措置を在外被爆者に適用するというのは困難かなというふうに考えているところでございます。

高木(義)分科員 十分検討してください。あらゆる角度から、被爆者という現実に照らし合わせて、私は知恵を絞っていただきたいと思います。

 最後に、時間が参りましたので、尾辻厚生労働大臣に決意をお伺いしたいと思います。

 先ほども被爆者予算が述べられましたけれども、この十年間、大体千五百億から千六百億、平成十三年度には千六百五十八億、それから十四年、十五年、十六年、そして来年度予算、いわゆる減額に、わずかながらも減額という傾向にございます。

 私は、まさに先ほど申し上げましたように、他の戦争被害とは比べ物にならないこの原爆被害という実態を照らし合わせると、これまでの行政の経過はありますけれども、なお残された問題もあります。特に、被爆体験者の居住要件の撤廃等、あるいは二世、三世対策、また放射線影響研究所の機能強化など多くの課題がございますので、どうかひとつ、その点についてこれまで以上の強力な対策をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 被爆後六十年を迎える今なお、原子爆弾の放射能による健康被害に苦しんでおられる被爆者の方々がおられることに改めて思いをいたし、こうした方々の健康や福祉の増進を図るため、今後とも総合的な援護策を着実に推進してまいります。

高木(義)分科員 これで終わります。ありがとうございました。

後藤田主査 これにて高木義明君の質疑は終了いたしました。

 次に、増子輝彦君。

増子分科員 民主党の増子輝彦でございます。

 尾辻大臣、そして衛藤副大臣、御苦労さまでございます。もう少しですから、頑張っていただきたいと思います。

 本日、私は二点についてお話を伺いたいと思っております。

 昨年も同じように御質問申し上げたんですが、臓器移植法についての点が一つ。それから、介護保険法の改正に伴う諸問題について幾つかの質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いをいたしたいと思います。

 まず最初に、臓器移植法でございます。

 一九九七年十月に、脳死での臓器提供を認める、臓器の移植に関する法律が施行されました。それ以来、臓器移植をしたいという多くの方々にとっては光が見えたということで、実は大変喜んでおられたわけでございます。しかし、その後、なかなか現実的にはそれほどの移植がなされないということの問題点があるわけであります。

 臓器移植、これに伴う諸費用の問題、あるいは脳死という問題を初め幾つかの問題点があることは私も承知をいたしております。国会議員の中でも、あるいは、あらゆる分野においてこの問題について賛否両論があることも承知をいたしております。

 しかし、私自身は、やはり臓器の提供を待っている多くの方々がいらっしゃるという事実もあるわけでありますから、この問題は避けては通れないのではないだろうかというふうに思っているわけであります。昨年、坂口厚生大臣も、この件について質問させていただきましたけれども、もうそろそろ改正の時期が来たのではないか、坂口当時厚生大臣はそのようにおっしゃっておられました。

 この問題、非常にデリケートな問題もございますが、私自身としては積極的にこの法改正については取り組んでいきたいというふうにも思っておりますし、また、国の責任の中で避けて通ることのできない問題だと私は思っております。

 この件について、厚生大臣の御所見をお伺いいたしたいと思います。

尾辻国務大臣 臓器移植法施行後、現在まで七年余りの間に三十四件の脳死下での臓器提供が行われておりまして、これにより百三十二人の方に移植が行われました。

 この臓器移植法につきましては、今、議員立法での法改正の動きがございまして、改正案の今国会提出に向けた検討が行われておりますことは私も承知をいたしておるところでございます。

 ただ、この問題は、人の生死にかかわる個人の倫理観に基づき判断されるべきものであること、また、現行法の成立のときにも、超党派で提出され、議員一人一人の判断にゆだねられる形で採決が行われました。いうところの党議拘束がかからなかったということでございます。そうしたもろもろのことがございますので、今後、各党や国会等での御論議を見定めさせていただきたいというふうに考えておるところでございます。

 いずれにいたしましても、厚生労働省といたしましては、移植医療について国民の理解を深めていく等を通じて、移植医療の一層の推進を図っていきたいと考えております。

増子分科員 大臣のおっしゃること、よく私も承知をいたしております。

 と同時に、やはり日本医療全体を考えますと、毎年毎年医療費も高騰しておりますし、これが国家財政の破綻につながるということの心配もあるわけであります。先ほど申し上げましたとおり、臓器の提供を待っている方々という問題点、あるいは諸費用の問題点等々考えていくと、やはり臓器移植というのは、私自身は積極的にできるだけ早く進めていくべきものではないのかなというふうに思っております。

 今の大臣の御所見の中に含まれている点を我々もよく承知しながら、できるだけ超党派で、議員立法という形が一番よろしいんでしょうけれども、これについては、厚生労働省という立場の大臣としてでも、より積極的に進めていただくような御努力をいただきたいと思っているわけであります。

 臓器移植、本当に、ある意味では待ったなしのような気持ちを私は持っておりますので、これについて積極的に今後とも取り組んでいただきたいことをお願い申し上げておきたいと思います。

 次に、介護関連について御質問をさせていただきたいと思います。

 今回、介護保険法の改正という大きなことになってきているわけであります。実は、私どもの福島県内のそれぞれの市町村長さんのアンケートを見ますと、今回の介護保険法改正が閣議決定された後、私ども九十市町村の市町村長さんの九割以上が、介護保険制度の将来に大変不安を抱いているということが新聞社のアンケートの中に明らかになっているわけでございます。

 やはりこれは、地方自治体がしっかりと介護保険の問題については取り組んでいかなければなりません。そういう観点から、今回の介護保険法の改正という基本的な考え方を大臣にお伺いをいたしたいと思います。

尾辻国務大臣 今度の介護保険の改正につきましては、五年前に私どもは初めて介護保険制度というのを導入いたしました。

 そのときもいろいろな議論をいたしましたけれども、率直に言って、まずはやってみなきゃわからぬということも多うございました。そこで、とにかくやってみて、五年間しっかり検証して、五年後の検証の結果でまた見直すべきは見直そうということを法律にも書いたところでございます。その五年目が来ましたので、今度しっかり見直そう、こういうことでございます。

 したがいまして、この五年間に私どもがいろいろ実施をしてきたその検証の結果を今度の法律の中に盛り込んだということでございまして、その大きな部分は、まず予防ということを言っております。

 この予防も二段階あるだろう。まずは、まだ介護の対象になっていない人たち、介護以前の人たち、この人たちが介護という状態にならないようにという予防。それから、今度は、軽度の人が重度にならないという予防。まずそうした予防ということが見直しの一つの大きなポイントになっておるということでございます。

 それからもう一つは、施設に入っておる方と自宅におられる方、この間の方々の不公平感というようなものがないようにしよう、ここのところを見直そうということでございます。

 この大きな二点が今度の改正のポイントである、こういうふうにまず申し上げます。

増子分科員 今、大臣の方から予防という観点についての考え方が示されました。

 実は、私は、昨年、この予防ということについても質問をさせていただきました。その際に、極めて重要な予防の一つとして筋力向上トレーニングがあるということを申し上げました。実は、それはパワーリハビリにもなっていくわけでありますけれども、今回の、大臣が今おっしゃいました介護予防というサービスの点についてお尋ねを申し上げたいと思うんですが、介護予防給付における筋力向上トレーニング、これについては具体的にどのような内容で実施をされていかれるのか、お答えを願いたいと思います。

中村政府参考人 ただいま大臣からも御答弁申し上げましたように、予防を重視していく、その中で軽度の方に対して、先生から御指摘ございましたように、予防の給付をする。従来からいろいろサービスをやっておりますが、特に、いろいろな研究者あるいは医療関係者の調査がございまして、その中で、いわば根拠があって明確に効果があるものとして、先生御指摘の筋力向上のメニューがあるというふうに言われています。

 具体的に、これをどういうふうに取り組んでいくかにつきましては、施設やサービス提供の基準、それから介護報酬といったことで考えていかなければなりませんので、これから具体化の作業を詰めさせていただきますが、一つのあり方としては、現在、デイサービスや通所リハビリテーション施設に軽度の方も通ってきておられます。

 そういった中のプログラムに位置づけてやっていただくということはまず確実なことではないかと思っておりますので、そういったことを中心にしながら、ほかにどういう展開の仕方があるのか、その辺については識者の意見もお聞きしながら具体化を進めてまいりたいと思います。

増子分科員 そのプログラムを、やはりできるだけ早く具体的につくり上げていかないといけないと思うんですね。ですから、これについては、それぞれの施設あるいは介護という問題について不安を抱いている地方自治体の皆さんにとっても、具体的にどういう内容になっていくのだろうということは極めて大きな関心であり、また重要なファクターになってまいりますから、私は速やかにプログラムをつくり上げていただきたいなというふうに思っているわけであります。

 その中で、もう一つ大事なことは、高齢者の筋力向上トレーニング以外に、栄養改善あるいは口腔ケアというものが明確に打ち出されているわけでありますけれども、この栄養改善、口腔ケアは、具体的に、どのような施設でだれが行っていくのか。これもやはりこれからの大きな課題だと思っています。これについてはどういうお考えをお持ちになっているんでしょうか。

中村政府参考人 先生から御指摘のありました栄養改善、口腔ケアは、先ほど御説明申し上げました筋力向上と並んで、適切に行えば効果があるサービスだというふうに言われています。

 栄養改善や口腔機能の向上、口腔ケアを具体的にどうしていくかということでございますが、今、それも含めまして、全国七十の市町村にお願いをいたしまして、昨年度、今年度も含めましてモデル事業も行っておりますので、そのモデル事業の成果も見させていただきながら実施してまいりたいと思います。

 軽度の方に対する口腔ケアでございますので、基本的には、やはり通っていただく場所などがイメージになるのではないかと思いますし、栄養改善につきましては、もちろん介護保険の中で果たす役割も多いと思いますが、その前に、地域でいろいろなネットワークをつくっていただいて、ボランティアの方々の御参加もいただいた事業立ち上げというふうなことも必要になると思いますので、予防の給付でやる部分と、それから地域で市町村の事業として行っていただく部分、これも地域支援事業として介護保険制度の中で、法案で御提案しておりますものですから、そういったことにつきましてモデル事業の成果を得て考えさせていただきたいと思います。

増子分科員 今のお話のとおり、やはり地域に負うところが大きいんですね。そういう意味では、先ほど申し上げたとおり、福島県の市町村長さんのそういう不安というものは、これはもう全国同じだと思うんです。ですから、できるだけ早くこれらの問題についてはしっかりとしたものを提示すべきだろうというふうに私は思っているわけでございます。

 と同時に、今お話しの中にもありましたけれども、施設サービスについて、ちょっとまた御質問させていただきたいと思います。

 この施設サービスの中で、介護施設の職員というのが極めて重要になってまいります。当然マンパワーという形の人たちも必要になってくるわけであります。

 私自身は、前回のときも申し上げたんですが、一生懸命介護を軽減した、しかし、それによって、逆に収入が減ってくるという問題が、実は、前回も当局から、そういう問題があるんだ、ここが当初から介護保険法の問題として十分考えられて、憂慮してきた点だという答弁もございました。やはりここのところが今後の介護保険法の改正の中で大変重要な問題になってくると私は思うんです。

 改めてお聞きいたしますが、介護施設の努力によって入所者の要介護度が下がって、どんどん下がっていけば、実はそれだけ介護費用が軽減されるということはあるんですね。ところが、それに対して、一生懸命やったところが施設収入が減っていくということはやはり大きな問題だと私は思っているわけです。

 昨年もお聞きしたら、そのとおりだと言うんですが、その後、この精神は、こういう矛盾点は、どういう形の中で今回の改正の中に織り込まれてくるのか、そのお考えをお聞きしたいと思います。

中村政府参考人 昨年も先生から、大変重要な御指摘であり、私どもも制度創設当初からその問題にチャレンジしたいと思って議論をしてきて、なかなか解が見出せないという御答弁をさせていただいたところでございます。

 解決の機会としては、やはり次回の介護報酬、これは法律が通った後、十八年四月に行わせていただくというような予定で私ども行っておりますが、そこでチャレンジをさせていただきたいと思っております。

 一つは、やはりそういう成果を上げられたところに対して、評価の指標を、もちろん要介護度が下がるというと、今は要介護度が重い人を多くお預かりすると介護報酬が高くなるようになっていますので、そうしますと、改善すると報酬面では不利になるということがありますので、何か評価の指標を入れてそこのところの調整ができないか、ここは私どもも、昨年来の御指摘でございますので、今、私ども介護報酬の議論をしているときに、別途の、いわば改善したというアウトカム評価を入れて調整をするということをチャレンジしてみたいと思っております。うまくいくかどうか、またおしかりを受けるようなことにならなければいいなと思っておりますが、本当にまじめにやらせていただきたいと思います。

増子分科員 うまくいくかどうかわからないということではなくて、必ずやる、そういうやはり力強い答弁を私は期待しておりましたので、ぜひそういう精神で頑張っていただきたいと思うんです。

 当然、この要介護度を下げていくということは、人の力、マンパワーが極めて重要なんですね。これは、また本番のときに厚生労働委員会でもいろいろ、もっともっと細かく具体的にやっていきたいと思いますが、きょうは時間がありませんので、幾つかの重立った点だけさらに質問させていただきます。

 昨年の質問の中でも申し上げたんですが、日本の場合は、非常にこのマンパワーの不足というのが大きな私は介護の問題にあるのではないかというふうに思っているわけであります。

 改めて申し上げますが、デンマークと実は日本の比較という点からいたしますと、デンマークとほぼ同じ人口構成を持つのが兵庫県なんですね。わかりやすくいえば、デンマークと兵庫県のデータで比較いたしますと、お医者さんの数は大体同じなんです、兵庫県とデンマークは。ところが、今度はそこにかかわるマンパワーが極めて我が国の場合は不足いたしておりまして、あるデータによると、十分の一以下だというようなことも実は出ているんですね、日本とデンマークと比較いたしますと。兵庫県を見ていただくとよくわかるんですが。そういう意味で、私は、特に今後のこの施設高齢者の介護において非常に大事なマンパワーというものが必要になってくると思うんです。そういう意味で、マンパワーの数をさらに私はふやす努力、またそういうものの基準というものをしっかりとつくり上げていくことがこの介護の不安を取り除く大きな要因の一つではないかと思っておりますが、この件についてはいかがでしょうか。

中村政府参考人 やはり、介護なり医療なり、人によるところが大きいと思いますので、そういう支える人たちの配置の問題、従事する方の問題、あるかと思います。先生からデンマークのお話がありまして、デンマークも含め、北欧はかなり手厚いサービス供給体制でやっているということは、私どもも勉強させていただいておりまして、そういうことは感じておりますが、これはトータルに考えなければまいりませんので、社会の構造なり人々の暮らし方も相当違うというような点もあるかと思います。

 介護保険、スタートいたしましてからまだ二〇〇二年までの統計しかありませんが、百万人くらいであった介護従事者が百三十万人ということで、丸二年で三割ぐらい従事者も増加いたしております。直近までもし統計があればかなりふえているということでございますので、そういった意味では、介護保険制度を入れましてからサービスの量というものはふえているということでございますので、先生の理想からするとまだまだかもしれませんけれども、他方、保険料や税を負担していただいている方々とのバランスもございますので、その辺を考えながら、しかし必要なところには重点的に介護の職員の方が投入できるように、施策を進めてまいりたいと思っております。

増子分科員 実は、私の父親も先般九十歳で亡くなりましたけれども、施設に入っておりました。やはりそのとき、大事なのは、マンパワーの不足というのを私は痛感いたしました。数少ない方々が一生懸命やっているんですね。お一人で何人もの介護を受ける方々をお世話している。この負担は想像以上のものなんですね。それから、介護を受ける側の方々も、やはりそういう人手があればもっともっと改善されていくことは間違いないんです。

 先ほど百三十万人というような話をされておりましたが、これはやはり欧米並みにこのマンパワーというものをふやしていくということになれば、私はこの経済効果も雇用促進も、極めて我が国にとっては大きなものに実はなってくると思うんです。建設業業界が、あれだけの税金を使って、雇用八百万人とも七百万人とも言われておりますが、私はこのマンパワーの数をどんどんふやすことによって、この介護というものをしっかりとしたものにしていけば、まさに、雇用、経済、こういったものに対して大変大きな効果があるのではないかというふうに思っているわけであります。

 そういう中で、実は今のマンパワーということもずっと申し上げていきますが、入所者への自立支援を目的とした、例えば歩行介助関与、これなどは実は本当に極めて必要なんですね。そういう意味では、現場の方ではこの関与不足が大きなネックになっていて、なかなか自立するということに、大変なんだという現場の声も実は出ているわけであります。この件についてはどういうふうに認識されておりますか。

中村政府参考人 私どもも、今回の介護保険の見直しで、自立支援、それは、つまり介護予防は自立支援につながるものだ、こういうことで御提案しておりますし、それから、やはり介護保険の分野は、医療の世界でいいますとリハビリテーションの大変お世話になっておりますので、リハビリテーションのあり方がどうかということも研究させていただきました。

 その中で、やはり訓練なりそういう手をかけてやっていただくことが効果があるというのが一つと、もう一つは、訓練室だけで訓練するのでは足りなくて、日ごろの生活の中で、ベッドから起きるところから、顔を洗って、歯を磨く、着がえる、そういうところの訓練をすることが大事、これは医療の世界でも回復期リハビリテーションなどでOT、PTの人がベッドサイドに行くというようなことが行われておりますが、介護の方もそういう意識改革が必要なんじゃないかというふうに考えております。

 そこで、そうするためには、やはり日常生活らしいしつらえも必要になりますので、先生もお聞き及びと思いますが、生活の場をつくっていく、そういう中で介護をする、そうすると人手も要りますので、そういった施設につきましては、人手も従来の施設よりも多く配置するというような努力をしているところでございますが、この点につきましても、よく介護予防、それからリハビリテーションという観点から、うまくいきますように考えてまいりたいと思います。

 ただし、費用もかかりますので、それとの見合いを厳しく考えていかなければならないと思っております。

増子分科員 今の局長の答弁の中にありましたように、まさに生活機能という点からいきましても、これは非常に重要なんですね。医療機関、これは医療と介護の両立が不可欠なんですね。そういう意味で、マンパワーの不足ということが、この生活機能の向上を阻害しているということが言われていることも事実であり、現実そうなんだと思うんです。ですから、今の答弁にあったとおり、生活機能、これをよりよいものにしていくためにも、どうしてもこのマンパワーというものの配置が極めて重要になってくると思います。

 確かに、頭数がふえれば経費の問題が出てまいります。しかし、日本の医療費全体の中から見れば、この医療費をどう下げていくのか、それはただ単に診療報酬を下げるということだけでは解決しないという大きな課題をこの国は抱えているんですね。今後ますます高齢社会になって、人口構成がこれは逆ピラミッド形になっていけば、支える人がいなくなっていく。そうすれば、どうやってこの医療費を削減していくか。それは、投資をして、多少のお金がかかっても、それに対しての減額が、逆に効果としてあらわれれば、これは医療費全体がかなり私は抑制されて、むしろ正常な形になっていくんだろうと。こういう例えがいいのかどうかわかりませんが、損して得とれ、とにかく投資をして利益をばんばん出すというような形のものが、私は、今後の介護の問題や日本の医療費問題全体について極めて重要なことになってくるのではないかというふうに思っているわけです。そういう意味で、今後のマンパワーの問題、ぜひこれはもっともっと真剣に検討すべき重要課題だと思っているわけです。

 次にお聞きいたしますが、今もちょっとお話がございましたが、介護保険福祉施設、特養等のところでございますが、ここにおけるリハビリテーション専門職の配置がやはり不十分なんですね。この専門職の方々が不十分だということによって、本当にこの介護の軽減化ということも実は阻害されていることもあるわけであります。

 これは逆に、このところに訪問リハビリテーションあるいは通所リハビリテーションが受けられる体制をとることによってこの問題が大分変わっていくのではないか、私はそこがやはり非常に重要な課題の一つだと思っているんです。この件についてはどういうふうにお考えですか。

中村政府参考人 介護保険、今特別養護老人ホームについてのお話がございました。先生から先ほど病院のお話も出ましたし、介護保険は、そのほか老人保健施設と、三施設あって、それぞれ沿革もあり、それぞれ得意とするところもあるということで、特別養護老人ホームは老人ホームの方から沿革的に言うと発達してきましたので、どちらかというと生活支援ということ、老人保健施設は家に帰すということで生まれてきましたのでリハビリ重視、医療の方は医療と介護と二刀流でやる病院、こういうふうに位置づけられてきましたので、それぞれ特色がありますが、リハビリテーションという目で見ると弱い施設もあるということで、その弱いところでリハビリを一生懸命やるために職員の人を多く置くのか、それとも先生お話のように外部から応援を求めるのか、その問題があると思います。

 医療についても、特別養護老人ホーム、お医者さんは事実上常駐しておられませんので、病気になったときにどうするかという問題は指摘されておりますので、そのときに、みんなお医者さんを置くことにするのか、外からの支援を求めるのかというような考えを迫られているところでございますので、そういう他の機能をどうやって導入するかという問題の一つとして考えさせていただきたいと思います。

増子分科員 これは私は組み合わせだと思うんですね。一つだけですべてが解決するということにはなり得ないと思います。

 ですから、そこのところをよく組み合わせをしっかりとやっていく。また、そういうバリアフリーといいますか、すべてのものを取り除いて自由に行き来するというようなプログラムをつくっていきませんと、数だけふやしてもだめということになってくるんですね。

 ですから、私は、ここのところを今後の課題として十分頭の中に入れておいていただいて、よりここの部分については今後とも議論していかなければならない部分だと思っております。

 そういう意味で、利用者という立場からすれば、利用者の自由選択として、この人員の配置基準を看護基準のように段階化して、実際の質の向上を図れないんでしょうか。ここのところ、非常に重要な問題なんですね。この件についてはどうでしょうか、大臣。

中村政府参考人 先生のお話がありましたのは、方法の問題で、例えば昔、診療報酬の、医療の方の点数表では、看護配置によって特二とか特一とか、そういう看護基準によって差をつけるというようなやり方もございました。

 頭数でそういう評価をするのか、ほかに方法があるのかという問題もあると思います。そういったことも含め、現在も、介護施設の中では配置によって介護報酬が事実上違うところがありますが、なかなかそれは利用者の方から見えにくいという問題もあります。いろいろな方法が考えられると思いますし、先ほどの外部からサービスを入れるというような問題につきましても、方法の問題でございますのでよく考えさせていただきたいと思います。

 ただし、そういうことをやることによって、保険料なりそういうものを払う側からいいますと、ダブルで経費が、特別養護老人ホームの費用を払って、またその外部サービスに対して払うということになると、トータルでふえてしまうという問題もありまして、そこのところ、ふえるのはやむを得ない部分もあるかもしれませんが、できるだけ節約してほしいというのも費用負担をされている方々の意向でもあると思いますので、そのバランスを兼ね合いながら、支払い側の方と、それから実際にもっとよりよいサービスをと考えておられる方たちの意見の集約も図らせていただいて、考えさせていただきたいと思います。

増子分科員 時間が来ましたので、最後にもう一点だけお聞きしたいと思います。

 これは今の御答弁のところに、答弁として関係してくるんですが、施設入所者が、シミュレーションとして在宅へ、いわゆる自宅へ帰る外泊の場合、これはやはり同じようなことが実は出てくるんですね。そういう場合に、在宅サービスが受けられず、家族のみが支援をするというような状況になっているわけであります。そのときに、在宅の引き離しになっている、このことがやはり家族にとっては大変な負担にもなってきますし、また、在宅復帰ができない原因に実はなってくるんですね。

 そこにいろいろなものを組み合わせていけば、かなりの部分で施設から在宅へという移行ができる可能性が出てくるんですね。ここのところを今の答弁と同じように考えていかないと、これから、多少ダブりの部分があり、多少経費増の部分はあっても、施設から出ていかれて在宅でお世話ができるというような形にしていけば、それだけ経費は結果的には下がっていくということになってくるんだろうと思うんです。

 考え方によっては、私は、今後いろいろな形の中で小規模多機能の考え方をこの中に織り込んでいかないと、ますます介護に対する負担が多くなってくるのではないだろうかと。例えば、介護保険料の年齢引き下げ、これは今回残念ながらできなかったようでありますけれども、当然これは避けて通れない問題になってくると思うんです。ですから、こういう点を含めまして、多少の経費が一時的には増額になったとしても、結果的には、全体的な介護保険というもの、医療費全体というものからすればこれが軽減されていくというプログラムなり、そういった介護保険改正をしていかなければ、日本は一体どうなってしまうんだろう。

 それでなくても国と地方の借金が間もなく七百五十兆円を超すというような事態になってきて、医療費のこの増額というのは本当に大変な国家危機につながってくるわけでありますから、大臣、最後に一言、この介護保険法改正に伴っての我が国の介護のあり方についての決意、覚悟のほどを一言御答弁をいただいて、この質問を終わりたいと思います。

尾辻国務大臣 まず、一番大きくいいますと、今、社会保障の一体的見直しをいたしておりますから、そういった中で、介護を含めて医療、年金、こうしたことをきっちりと見直していきたいというふうに思っております。

 その中で、介護についてもいろいろな御指摘もございました。一番最後の御指摘の、施設入所者が家に帰った場合の、外泊した場合の話なども、その間も施設の方に金を払ってありますからなんという理屈を言えば理屈で、いろいろ私どもとしてもまた申し上げるところもありますけれども、そんな一つずつの理屈は置いておいて、やはり利用者本位のものにしていかなきゃいけないということもありますし、また、そうした中で、できるだけ情報も、今度の改正の中で情報を出そう。そうすると各施設、やはりたくさんのマンパワーを入れているということを情報で出せば、それだけまた利用してくれる人も多くなるとか、いろいろなことが出てくると思いますので。

 最後に申し上げたいことは、御指摘いただきましたように、利用される皆さんのためのしっかりした介護制度ということをつくり上げていきたい、こういうふうに考えます。

増子分科員 ありがとうございました。

後藤田主査 これにて増子輝彦君の質疑は終了いたしました。

 次に、桝屋敬悟君。

桝屋分科員 公明党の桝屋敬悟でございます。

 予算委員会の第五分科会、三十分ほど議論させていただきたいと思います。

 大臣、副大臣におかれましては、朝から大変御苦労さまでございます。とりわけ、午前中は我が党の江田議員がまたHAMの問題でしつこく議論をさせていただいて、おつき合いをいただいたようでございまして、感謝申し上げたいと思います。

 私は、この部分では、社会保険労務士の業務について議論をさせていただきたいと思います。

 社会保険労務士の業務につきましては、この国会でもさまざまに法改正が予定されている。一つは、ADRの分野におきまして新たに代理業務が加わりまして、弁護士法第七十二条の特例として、和解交渉の代理でありますとか和解契約の締結などの道筋が開かれようとしているわけであります。法律が予定をされております。

 さらには、e―Japan計画、きょうは実はそっちの分野の議論をしたいのでありますが、e―Japan計画の分野でも、行政手続オンラインや、とりわけ公的認証制度の中で、社会保険労務士あるいは連合会の位置づけが明らかにされようとしている。いわゆる署名確認者制度でありましたり、あるいは団体署名の検証者制度、こうしたものが動き出そうとしているわけでありまして、e―Japan計画、なかなか電子政府構想は簡単なことでない。大体考え方はできましたけれども、後は実行の段階に今入っている、こう思っているわけであります。そうした中で、社会保険労務士の役割というものも見直されようとしている、大いに結構なことだと思っております。

 こうした中で、電子政府構築に向けて、労働・社会保険関係の手続の電子申請、このサービスは既に開始されているというふうに理解をしておりますが、問題は、労働・社会保険関係で、電子申請をする場合に社会保険労務士さんは代理で行うわけであります。事業主にかわって電子申請を行う、こういうことが考えられるわけでありますが、そうしたことを想定して社会保険労務士会は、政府のe―Japan計画の推進を見越して既に特定認証業務認定認証局を構築いたしまして、自分たちの努力で準備を進められているという状況でございます。

 労働・社会保険の手続で、事業主、その他従業員であります被保険者、あるいは市区町村、場合によっては民生委員さんまで含めて、手続のときに複数の届け出印であるとかあるいは証明印が必要になってくる、こういうことが当然あるわけであります。ここがなかなか難しいところでありまして、したがって、例えば社会保険労務士が認証を受けて、労務士自身は個人認証を受けて電子申請に乗っかろう、こういたしましても、これら手続上印鑑を必要とするような方々についても全員認証を受けなきゃならぬ、こういうことになるわけでありまして、なかなかここが悩ましい話であるわけであります。

 こうした事態に対応して、政府の電子政府構築計画におきましても、オンライン利用の促進を図るために代理人による手続への対応を図るなど、利用者の利便を向上するためにさまざまな措置を講じよう、こうされているわけであります。

 私は、実はこの分野、厚生労働省と社会保険労務士会連合会の中で議論が進められて、今申し上げたような労務士の電子申請による代理の申請におきましても、例えば複数署名の省略であるとか、こうした問題について何らかの手当てが行われて新しい段階に進むのではないか、こう理解をしておったわけでありますが、なかなか困難な問題もあるようでありまして、現状をまず局長さんからでも御報告をいただきたいと思います。

青木政府参考人 御指摘の、社会保険労務士が事業主にかわって電子申請を行う場合の事業主の電子署名について、これを省略するということについては、一つは、事業主と社会保険労務士の間の委任関係を明確にする方法が電子署名とは別に何か用意されて、あるいはまたもう一つには、申請書の記載内容が労働者の権利に影響を及ぼすおそれがないと判断できる、そういったものについては事業主の電子署名を省略することが可能であるというふうに考えておりまして、お話のように、鋭意検討を行ってきたところであります。

 労働保険の保険料申告につきましては、その申告書の記載内容が労働者の権利に影響を及ぼすおそれがないというふうに考えられますし、後は、事業主と社会保険労務士の委任関係を確認する他の方法を検討、調整した上で事業主の電子署名の省略を実施することは可能であるというふうに考えているところでございます。

桝屋分科員 今の局長さんのお答えは、そうはいっても、労務士さんが申請書を電子申請するという場合でも、やはり、一つは委任の関係の確認、それからもう一つは労働者の権利義務に直接影響を与える、そういう事例があるだろう。そこをなかなか省略するというのは、これはどうでしょうか、こういう一つ悩ましい問題がある。労働者が全員あるいは事業主が全員電子署名をする時代が来ればこれはみやすいんだろうと思いますが、御案内のとおり、電子申請というのはなかなかまだ進んでいないわけでありまして、そうしてそういう状況の中で、今局長さんのお答えは、それでも例えば労働保険の保険料申告等であれば方法もあるのではないか、こういうお答えであったと思うんですが、具体的にはいつからどうするかということは、連合会とは話し合いは進んでいるのか。

 正直に申し上げますと、この四月からできるんじゃないかというので、私の地元の連合会も、県の社労士会も準備をされて、相当、会議、研修もし、いよいよこれからITの時代だ、e―Japanの時代だ、電子政府だということで準備をしてきたのだけれども、ちょっと時期が難しくなったということも聞いておりまして、その辺の具体的なことをいま一度お答えいただきたいと思います。

青木政府参考人 確かに、できるのではないかということでずっと検討してきておるわけですけれども、この四月というのも、現状ではなかなか難しいのではないかなというふうに思っております。

 その理由ですけれども、事業主と社会保険労務士の間の委任関係を確認する方法につきまして最終的な調整を行う必要がありますし、それについて社会保険労務士会連合会とも十分意見調整、意見交換をしなければならないというふうに思っております。

 また、もう一つには、仮にそういったことである程度システム、仕組みができ上がったとしても、その業務を実際に地方支分部局の方に十分熟知させて、それを受けるときに実際の窓口で混乱がないようにスムーズにいくようにしなければならないというふうに思っておりますので、そういったことについての周知、あるいは具体的な我々のサイドの対応の体制、そういったものを検討してつくらなければいけないというふうに思っています。

 同様に、今連合会ともお話はしてきておりますけれども、社会保険労務士会連合会を通じまして、各都道府県の社会保険労務士会あるいは社会保険労務士の皆さんに対してもそういったものを十分周知、熟知してやっていただかないといけないというようなことがありますものですから、ちょっと時間が間に合わなくなっているかなと思っております。

 いずれにしても、そういう方向で検討をしてまいりましたものですから、早急に連合会ともお話をして、我々の対策もきちんと詰めて、できるだけ早急に実施をしていきたいというふうに思っております。

桝屋分科員 きょう、私がこれを申し上げているのは、私は公明党でありますが、与党におかれては、自民党の中でもこうした方向について議論されてきたというふうに聞いておりまして、やはり与党挙げてこの問題については関心を持っているわけであります。労働・社会保険の関係で実際に電子申請がどう進むかというのは、大変、まさにこれから浮上するところでありまして、これから伸ばさなきゃいかぬところでありまして、やはり、今回の公的認証制度でも、社会保険労務士あるいは社会保険労務士会連合会の位置づけを公的認証制度で明らかにして、明確にして法の中に位置づけて取り組もう、こういうふうにしているわけでありますから、私は、確かに法の改正の作業等、さまざまに作業があったと思いますけれども、ここはぜひ積極的な取り組みをお願いしておきたい。

 ちなみに、今お話があった労働保険の保険料申告だけでもどのぐらいの件数があるのか、総量としてどのぐらいあるのか、もし状況があればお示しをいただきたいと思いますが、どうでしょうか。

青木政府参考人 ちょっと正確な数字を今持ち合わせておりませんけれども、労働保険関係の申請、届け出というのは、年間の件数、一つにつき十万件以上あるものだけを取り上げてみますと、全体で恐らく二千万件以上になると思うんですけれども、平成十六年度上半期だけで電子申請件数は千二百九件ということになっております。パーセンテージはとても計算できないぐらいの残念な状況であります。

 それから、例えば労働保険の適用、徴収関係につきましては、全体の件数が年間大体四百万件ございますが、電子申請で行われた件数は五百三十九件という状況になっております。

桝屋分科員 まさに実態はそうだろうと思います。電子政府構想、電子申請、政府全体としてまだそういう状況、まさにこれからでありますので、私はこれはぜひ大臣にも状況を理解いただきたいと思います。

 それからもう一点。業務と、それからもう一つの悩みは添付書類ですね。やはり、さまざまに届け出や申請をするときの添付書類が、電子申請する場合に添付書類の省略というのはなかなか難しいと思うんですね。ここをどうするかなんですが、中途半端なやり方をしますとそれこそ、とりあえず電子申請をして、そして後は添付書類をまとめて送るということになりますと、まさに二度手間になりまして、そんなばかなことはできないよということで、電子申請の進捗がなかなか進まないということにもなるんだろうと思うんですが、あわせて署名の省略の検討。

 それからもう一つは添付書類の検討ですね。私は、住民票等についてはこれから住基ネットを活用してできるようになると思うんですが、あるいは本人の失効確認、本人の有効性の確認というのは相当進んでいるんだろうと思うんですが、その他の添付書類等についても、ぜひこれは検討をお願いしたいなと思いますが、重ねて、局長、いかがでしょうか。

青木政府参考人 まさにおっしゃるとおりだと思います。添付書類は、いろいろな申請書、届け出書の中にはさまざまございまして、例えば、実際に保険料を払う場合でありますと、賃金の状況というのが必要でありますから、賃金台帳でありますとか、そういったようなものまでチェックをしなければいけないということになりますと、なかなか添付書類をなくすという方向にも行きませんし、おっしゃったような電子申請になじむようなものについてはこれから検討することも随分できると思うんですけれども、これはそういう制約がやはりあるというふうに思います。

 しかし、そういう意味では、申請書、届け出書の添付書類についても、申請、届け出をなされる事業主の負担を軽減するためにはできるだけ、おっしゃいますように、電子申請でできるものはやっていくということではないかと思っております。例えば、労働保険の適用、徴収関係の手続については、今添付書類はないという状況になっております。ですから、こういったものについては電子申請がやりやすくなるということだというふうに思っております。そういったことも含めまして、さらなる対応の可能性についても十分検討していきたいと思っています。

桝屋分科員 後は大臣や副大臣とお話をしたいんですが、衛藤副大臣も多分内容は十分御承知だろうと思います。私どもがあえてきょうこの話題を申し上げますのは、やはり社会保険労務士さんがお世話している事業所というのはほとんどが中小零細の企業でありまして、そういう方々に電子申請は、もちろん、今ごろコンピューターがない事務所はほとんどないのでありますけれども、しかし、そうはいってもなかなか理解が進まない。これからいよいよe―Japan計画を進めようというときに、私は、ここは特段のお取り組みをお願いしたい。衛藤副大臣には、いつぐらいからできるのか、見通しをお示しいただきたいと思います。

 それから大臣には、大臣、私は厚生労働省に籍も置いたことがありますが、やはりITについては厚生労働省はなかなかかたい。本当に私、社会保険庁が住基ネットを活用するについて随分議論しましたけれども、できない理由をお述べになるのはまことに理路整然と、随分説明を受けました。しかし、結果的にはやるようになっているわけで、やれば相当の利便性があるわけであります。

 私は、ここは、何もこの問題だけではなくて、やはり電子申請についても国民の利便性という観点から思い切った発想の転換をして、もちろん権利義務を明確にするということは外してはなりませんけれども、行政行為でありますから、行政処分にあっていいかげんなことがあってはなりませんが、相当な発想の転換をして取り組まない限り進みませんよ、特に厚生労働省においてはそうでありますよということを申し上げて、厚生労働省挙げての取り組みについて大臣にお訴えを申し上げたい、大臣のお考えを聞きたいと思います。

 お二人の御意見を伺いたいと思います。

衛藤副大臣 e―Japan構想、御承知のとおり、私は厚生労働省全体として進めるということは極めて重要だと思います。カルテからレセプト、医療、労働全体にかけて、これが極めておくれているということは、今社会保険庁の問題等においても大変御指摘いただいているところでございまして、そういう全般を入れて本気で取り組まなければいけないというふうに思います。

 また、これは本気で取り組めば非常に大きな効果が出てくる分野でもありまして、国民一人一人に対しましても、今後もまた社会保険番号全体も労働も入れて取り組むとか、そんなことを本気で、抜本的にやる必要があるんじゃないのかということで、今省内においても提案しながら進めているところでございます。

 社会保険労務士の問題につきまして、電子申請につきましても、時期は明示できませんけれども、一緒に、与党挙げて取り組まなければいけないと思っておりますので、どうぞ逆に御協力の方をお願い申し上げたいというふうに思っている次第でございます。よろしくお願いします。

尾辻国務大臣 先日も政府の中にありますIT戦略本部の会議がありまして、私も出席をいたしました。正直に言いまして、かなり肩身の狭い思いをいたしました。電子カルテの問題だとか、レセプトのことだとか、非常に、当初目標にして私どもが述べた数字にとても今及んでいない、かなり低いところでとまっておる、そういう実態でございます。そして、その理由は理由であるんですが、先生おっしゃったように、できない理由はちゃんと整然と述べられるわけでありますけれども、しかし、それはしょせん言いわけでしかないということでございます。

 そうした中で、私ども厚生労働省がきっちりした、こうした電子政府構築に向けてやっていかなければならない課題が多くございますので、一つずつ取り組んでまいりたいと考えております。

桝屋分科員 先ほどの衛藤副大臣と大臣のお答えで了としたいと思うんですが、私、この問題については、帰りまして社労士の会の皆さんに御報告をしなきゃならぬものでありますから、衛藤副大臣、重ねて伺いますが、時期は明示できないということは、できるようになったらやる、自転車に乗れるようになったら乗るということではなくて、乗るための作業を可及的速やかにお取り組みになるというふうに理解してよろしいですか。再度、重ねて。

尾辻国務大臣 それでは、私から改めて、今のお話ございましたから申し上げたいと思いますけれども、年金受給権者の現況届、これも話題になりましたけれども、平成十八年度中に住基ネットを活用することとしておりますから、ほか、労働保険の保険料の申告における事業主の電子署名の省略については、先生の御指摘もございました。そうしたものを踏まえつつ、検討を早急に進めて、必要な措置を行った上で実施に移してまいりますことを改めて申し上げます。

桝屋分科員 どうぞよろしくお願いを申し上げます。ありがとうございました。

後藤田主査 これにて桝屋敬悟君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして本分科会の審査はすべて終了いたしました。

 これにて散会いたします。

    午後三時一分散会


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