衆議院

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第2号 平成21年2月20日(金曜日)

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平成二十一年二月二十日(金曜日)

    午前九時開議

 出席分科員

   主査 根本  匠君

      伊藤 公介君    菅原 一秀君

      萩原 誠司君    矢野 隆司君

      内山  晃君    高木 義明君

      前原 誠司君    江田 康幸君

   兼務 大串 博志君 兼務 赤嶺 政賢君

    …………………………………

   厚生労働大臣       舛添 要一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 渡邉 正人君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官) 及川  桂君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  外口  崇君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  上田 博三君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局長) 高井 康行君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長) 太田 俊明君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長) 村木 厚子君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  宮島 俊彦君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  水田 邦雄君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  渡辺 芳樹君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

   予算委員会専門員     井上 茂男君

    ―――――――――――――

分科員の異動

二月二十日

 辞任         補欠選任

  伊藤 公介君     矢野 隆司君

  園田 博之君     萩原 誠司君

  前原 誠司君     高木 義明君

  江田 康幸君     田端 正広君

同日

 辞任         補欠選任

  萩原 誠司君     園田 博之君

  矢野 隆司君     伊藤 公介君

  高木 義明君     内山  晃君

  田端 正広君     江田 康幸君

同日

 辞任         補欠選任

  内山  晃君     前原 誠司君

同日

 第三分科員大串博志君及び第七分科員赤嶺政賢君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成二十一年度一般会計予算

 平成二十一年度特別会計予算

 平成二十一年度政府関係機関予算

 (厚生労働省所管)


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     ――――◇―――――

根本主査 これより予算委員会第五分科会を開会いたします。

 平成二十一年度一般会計予算、平成二十一年度特別会計予算及び平成二十一年度政府関係機関予算中厚生労働省所管について、昨日に引き続き質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。矢野隆司君。

矢野分科員 おはようございます。自由民主党の矢野隆司です。

 一年前のちょうどこの予算委員会の分科会でも、舛添大臣に水道のことについていろいろとお尋ねをいたしました。今回もまた水道行政のことについていろいろと教えていただきたい、こう思っております。

 ちょっと話はかわるんですが、皇居の北の丸公園に東京国立近代美術館という立派な建物がございます。そこで今、横山大観さんの「生々流転」という大きな作品を展示しておりますが、大臣、これは何がかかれているか御存じでございますか。

 いや、結構です。要は、これは、きょうのような天気の雨から始まって、それが小さなせせらぎとなって小川になり、やがて大きな大河となって海に注ぐ、それがまた空へ行くという、哲学的、思想的な意味はいろいろあるんでしょうけれども、私としては、まさに水の一生を描いた、そしてテーマとしてはやはり循環とか持続性とか、そういったものの意味があるのかなと思って、先日ちょっと見てまいりました。

 今、日本あるいは世界の各国で熱心に水問題についていろいろと検討や協議がされております。やはりキーワードは循環あるいは持続性、こういうことになっておりますが、そういう観点も含めて、きょうは国内のさまざまな問題あるいは海外の展開などについて伺いたいと思います。

 まず、昨年、水道ビジョンという日本の水道行政がどうあるべきかというような大きなテーマのビジョンの改訂版が出されました。そのビジョンを受けて、あるいは現下の経済情勢や景気の動向を踏まえて、平成二十年度の補正予算、あるいは現在進行中の平成二十一年度の本予算案、この中において水道というものはどういうふうに取り上げられて、どういうふうにお考えになっておるのか、そのあたりをまず大臣からお尋ねをしたいと思います。

舛添国務大臣 本当に水というのは大事で、我々の命のもとですから、特に災害なんかで、阪神の大震災のときも大変な思いをなさったわけです。

 そういう意味で、お尋ねの、まず二十一年度の水道関係予算ですけれども、さまざまな事業について計上しておりますけれども、特に耐震化率が低い水準にとどまっていることもありますので、耐震化に重点を置く、そして老朽管とか配水池などの耐震化関連事業に予算を重点計上するとともに、補助金の対象拡大をいたしております。

 また、二十年度の第二次補正予算におきましても、耐震化関係事業の補助採択基準を大幅に緩和するということで、広範な水道事業者を対象にやっていくということでありますので、水道の耐震化ということから考えても、第二次補正予算、そして本予算の一日も早い成立をお願いしたいと思います。

矢野分科員 今大臣の御答弁の中で、耐震化あるいは補助の問題が出ました。

 そこで、昨年も東北で大変大きな地震がありまして、水道管路にも甚大な被害が出たと聞いておりますが、最新の基幹管路の耐震化率、あるいは各自治体におけるその取り組み状況を教えていただきたい。それと、あわせまして、耐震化にかかわる国庫補助の効果的な活用を図るためのメニューといいますか、補助対象の事業内容には恐らく従来にも増してさまざまな工夫をされていると思うんですが、そのあたりを当局から伺いたいと思います。

上田政府参考人 ちょっと答弁が長くなりますけれども、基幹管路の耐震化率につきましては、平成十八年度末時点におきまして、総延長約十四万キロメートルのうち、耐震化が約一万六千六百キロメートルでございますので、いまだ一一・九%の耐震化率にとどまっているということでございます。

 今後の水道のあるべき姿などを示す水道ビジョンの昨年七月の改訂におきましては、このように耐震化のおくれている状況を踏まえまして、施設の耐震性評価を行い、優先度を考慮した耐震化計画を早期に策定すること、それから、取り組みがおくれている水道にあっても、最も優先して耐震化を図るべき施設について、平成二十五年度を目途に耐震化を完了するよう実施計画の具体化を行うことなどの重点取り組み項目を明らかにしたところでございます。

 一方、私どもの方で昨年十月に行いました調査によりますと、平成二十五年度までの耐震化の具体的事業量を設定しているのは四割強の水道事業者にとどまっております。引き続き耐震化への取り組みを求めていきたいと考えております。

 水道事業者の耐震化への取り組みを支援するため、国庫補助でございますが、平成二十一年度予算案におきましては、老朽化更新事業に関しまして、まず、耐震性が低い継ぎ手の、これは塩化ビニール管というものでございますが、これを取りかえることについて新たに補助対象とすること、それから、給水人口五万人以上の水道事業者が行う鋳鉄管あるいはコンクリート管の更新であって一定の場合には、平均水道料金よりも高い水道事業者に限るとする、これまでこういうふうに高い水道事業者に限ってきたんですが、それを補助採択要件を適用しないということで緩和をしたということ、このような拡充を行うこととしておりますけれども、また、平成二十年度第二次補正予算におきましても、耐震化にかかわる各種補助事業について、補助採択基準の大幅な緩和を行ったところでございます。

 このように、補助対象となる事業範囲を広げるとともに、従来以上に広範な水道事業者を対象に補助が行えるものとするなど、さまざまな水道事業者が行う多様な耐震化事業に対応して、より事業が促進できるような措置をこのたびとったところでございます。

 私どもといたしましても、これらの国庫補助の積極的な活用を図りながら、各水道事業者における耐震化事業が促進されるよう、引き続き周知、指導をしてまいりたいと考えております。

矢野分科員 ありがとうございます。

 基幹管路の耐震化、これは前回、昨年伺ったときはたしか一〇・八%、今回が一一・九%ということで、約一%強進捗した。これは、管路で直しますと、十四万キロの一%で千四百キロ。ということは、千四百キロも耐震化が進んだと見るか、千四百キロしかまだ進んでいないと見るか、これは地方の財政状況との兼ね合いもありますから、なかなか一概には評価できないと思いますけれども、やはりまだまだ道のりは遠いと言わざるを得ないと思います。どうかしっかりこの施策の推進についてはやっていただきたいと思います。

 それで、災害以外のいわゆる老朽化を原因とする水道事故も、実は、ことしは、年末年始とかけて続発をいたしました。昨年の十二月二十九日の北九州では六千戸が断水、これは五十五年前の管路からの漏水という新聞報道がございました。また、一月十六日の大分では四十二年前の管路が破損した。

 私は、やはり適切な時期に施設や管路ともに更新をする必要があるんだろうと思うんですが、この老朽化、あるいは更新すべき管路の最新のデータというものがあれば教えていただきたい。また、では、どうするんだという対応もあわせてお聞きしたいと思います。

上田政府参考人 老朽化の問題でございます。

 我が国の水道施設は、高度経済成長期に急速に面的また量的に整備拡大をされたわけでございます。水道管路の総延長約六十万キロメートルのうち、法定耐用年数でございます四十年を経過した管路は平成十八年度末現在で六%程度でございますけれども、布設後二十年を経過し一定程度老朽化した管路は全体の約四〇%を占めております。これらの管路が近い将来、順次更新の時期を迎える、こういうことになっております。

 他方、耐震性が低い石綿セメント管、これは約一万三千キロメートルございます。また鋳鉄管、これも耐震性が低いんですが、三万キロメートルございまして、これらにつきましては耐震化が急務となっておるところでございまして、老朽化が一定程度以上進行したものを初め、計画的に布設がえ、あるいは耐震化をすることが必要となっております。

 こうしたことから、水道事業者に対して、耐震化にかかわる国庫補助の活用等も図りつつ、優先度を考慮した計画的な耐震化、中長期的視野に立った計画的、効率的な施設更新への取り組みを進めるよう指導助言をしているところでございます。

矢野分科員 恐らく、一般的な管路の耐用年数を超えようが、その手前であろうが、柔軟に対応しなさい、あるいはしましょう、こういうことじゃないかと今の局長のお話は承ったわけですが、そういう事故の大きなものの一つの例として、私はどうしても、ことし元旦、まさに一月一日に起きた八戸市の断水事故というものを取り上げたいと思います。

 資料によりますと、全部で二十万人に被害が出た、こういうことですけれども、これは水源から浄水場へ水を運ぶ導水管、いわば一つの生命線ですけれども、このパイプラインが、専門用語で言うと一条というんですか、簡単に言うと一系統しかなかったために、これがアウトになって大きな事故につながった、こういうふうに聞いております。

 そこで、今回の事故事例のように、いわゆるバックアップ機能を持たない導水施設、そういったものは全国にどれくらいあるのか教えていただきたいと思います。

上田政府参考人 御指摘のバックアップを持たない導水施設につきましては、平成十八年に厚生労働大臣が認可をしております水道事業及び水道用水供給事業、これは五百九事業者ございますが、調査をいたしました。これら一千六百二十施設のうち約三〇%に当たります四百八十三施設が、こういうバックアップを持たない施設ということでございます。

矢野分科員 結構あるんだなと思って今びっくりいたしました。

 そこで、端的に伺いますが、厚労省として、これらのいわゆる一系統対策といいますか、一本しかない導水の機能、そういったものに対しまして、仮に事故が今後、発生しないとは言い切れないわけで、そういった場合の被害を最小限に食いとめる手だても必要かと思います。これは当たり前のことでしょうけれども。

 そこで、八戸の事故事案を踏まえてと言うと言い過ぎかもしれませんが、この導水施設の一系統対策について、どのように今やっておられるのか、あるいは取り組んでおられるのか、教えていただきたいと思います。

上田政府参考人 御指摘のとおり、導水管のような基幹施設で一系統のものにもし事故が発生した場合でございますが、住民に極めて大きな影響を及ぼすおそれがございます。そういうことから、事故が発生しても被害を最小限にするような措置を図ることが重要だと考えております。

 こういうことから、水道事業者及び水道用水供給事業者に対しては、施設を停止しての点検が困難で、事故発生時に断水期間が数日以上継続するおそれがある基幹施設につきましては、まず、水道水を系統間で融通できるような緊急時用の連絡管の整備をしていただくこと、それから、使用を停止して点検が可能とできるような当該施設の更新などを計画的にやっていただくように求めているところでございます。

 また、さらに、このバックアップ体制がうまく図られるように、所定の要件を満たす場合には緊急時用の連絡管の整備につきまして国庫補助の対象としているところでございますが、これらの支援措置を活用しつつ、水道事業者等に対しまして水道施設の維持管理と事故対応の徹底をさらに求めてまいりたい、このように考えているところでございます。

矢野分科員 済みません、通告していない質問で恐縮ですが、今、局長から国庫補助の話が出ましたが、その連絡管の整備等の国庫補助の割合というのは、どういうパーセントというか、今お答えできますでしょうか。

上田政府参考人 補助率というと三分の一ということになるわけでございます。

矢野分科員 もちろん三分の一だろうなとは思いましたけれども。

 これは大臣、お答えは結構ですけれども、こういう本当に八戸の場合は二十万人という大きな被害が出たわけですから、その辺のメニューの工夫の仕方もあるんじゃないかと私は思うんです。こういったことも今後ぜひ前向きに検討していただけたらなと思います。

 そこで、ちょっと目を海外に転じた質問をさせていただきますが、昨年、スペインのサラゴサという町がございまして、そこで万博が開催されました。実は私も行ってまいったんですが、まさに水がテーマの博覧会でございまして、そのパビリオンの中で一番人気の高かったものの一つが、実は我が日本館でございました。

 これはどんな展示をしておったかといいますと、浮世絵を通じて江戸時代の庶民の生活、専ら水循環システム、今風に言えば、そういうシステムを紹介して、大変浮世絵の鮮やかな色合いとともに、その仕組みの卓越した部分に外国の方は大きな称賛をされておられたというふうに聞いております。私もまたそれを見てまいりましたが、まさに日本はこの循環システムの分野では、いみじくも古くから実践をしてきたということを世界にアピールできたと思っております。

 ことし一月には、内外の水問題の解決を図る目的で、チーム水・日本という組織が立ち上がりましたり、あるいはこの組織を支えようという目的で、各界の有識者の皆さんが集まって水の安全保障戦略機構という団体が設立をされました。ここにおきましては、行政の枠を超えた機動的かつ大胆な政策提言が発信されるものと期待されているところです。

 そこで、このような動きを受けまして、水道分野の国際貢献について厚生労働省としてはどういうふうに取り組んでおられるのか。また、関係省庁間の連携も必要と思いますが、どのように対応されていくおつもりか、教えてください。

上田政府参考人 本件に関しましては、厚生労働省では、従来は、政府開発援助、いわゆるODAへの協力などにより、開発途上国における水道施設の整備並びに専門家派遣や研修等による技術協力などの国際協力を行ってきたところでございます。

 それに加え、本年度からは、水道産業国際展開推進事業費というものを計上いたしまして、東南アジア地域を対象に、国際貢献のための官民連携による新たな取り組みを開始したところでございます。本年度は、中国及びカンボジアにおいて日本の水道の技術や運営を紹介する現地セミナーを開催するとともに、現地調査を実施いたしまして、日本の水道産業の参入にかかわるケーススタディーを今行っているところでございます。

 また、中国への協力につきましては、特に、平成二十年五月に厚生労働省と中国住宅と都市農村建設部との間で覚書を締結しております。中国の地方都市における水道の施設整備に関して、日本の技術力の活用など必要な協力を行っていくこととしているところでございます。

 さらに、水分野の国際貢献にかかわる今後の取り組みについてでございますが、委員御指摘のとおり、各省庁がその所管する行政の範囲のみで対応するのではなくて、関係省庁間で連携し、総合的な視点で当たることが重要だと考えております。水の安全保障戦略機構の設立とあわせまして、水問題に関する関係省庁連絡会が設置をされたところでございます。厚生労働省といたしましても、関係省庁とこのような中で連携を図って、水問題の分野横断的な取り組みの推進に積極的に努力をしていきたいと考えております。

矢野分科員 そこで、きょうは外務省の方にもお越しをいただいておりますが、この国際貢献について、やはり海外におけるいろいろな情報収集等の強化が必要じゃないか。要するに、在外公館にこの水の問題に対して知見を有するスタッフといいますか人員を補強すべしだという提言や考え方もあるようでございますが、政府においてこのような方策はどのように検討されておられるか、お答えできる範囲で教えていただきたいと思います。

渡邉(正)政府参考人 我が国は水分野におきます最大の支援国でございまして、昨年の北海道洞爺湖サミットにおきましても積極的に水問題を取り上げるなど、国際的な議論を主導してきております。引き続き、この分野におきます国際貢献に積極的に取り組んでいく考えでございます。

 先生の御指摘のとおり、国際貢献を実効的に実施していくためには、海外におきます水問題に関する情報収集が重要でございます。我が国は全世界に百九十九の在外公館を有しておりまして、水問題を含めさまざまな現地情勢の把握に努めております。

 今後とも、引き続き在外公館を通じた情報収集を継続するとともに、先生御指摘の水問題の知見を有する人員を増強すべしとの提言も踏まえまして、水問題に関する情報収集の強化につきましても前向きに検討していく考えでございます。

矢野分科員 参事官、ぜひ前向きにということでよろしくお願いします。

 もう一問、外務省の参事官に伺いますが、いわゆる水分野のODAについてお尋ねをします。

 これまでは施設の建設が主体で実施をされてきた。今後は我が国のODAによって建設された施設の運転管理、メンテナンス、そういったものにも積極的に我が国がかかわって、相手国の水資源管理能力の向上に具体的な目標を持って対応すべきじゃないかという考え方も指摘をされているところですが、このことについて具体的な対応というものがあるのかどうか、教えてください。

渡邉(正)政府参考人 水分野の事業、特に水道事業につきましては、施設整備のみならず、その維持管理が継続して適切になされることが重要でございます。

 我が国といたしましては、これまでも、途上国の自助努力を尊重しつつ、ODAで供与した施設の運営、維持管理が円滑になされるよう、具体的な目標を示しつつ支援を実施しております。

 二〇〇六年には、我が国は、水、衛生分野におきます支援の基本方針と具体的な取り組みを示します水と衛生に関する拡大パートナーシップ・イニシアチブを発表しておりまして、この中では、維持管理に関する支援の重要性を訴えまして、維持管理に関する人材育成に努めることとしております。

 さらに、昨年五月のTICADにおきましては、水関連施設の適切な維持管理に関する技術指導を行います水の防衛隊構想を打ち出しまして、今後五年間で二百名の技術者などの派遣を決定しております。

 昨年十月に新JICAが発足しておりまして、円借款、無償、技術協力、三つの援助手法を効果的に組み合わせた支援が可能になっております。今後とも、この新しい体制のもとで、日本の援助が十分に効果を発現するよう、そして途上国の持続的発展に資する支援を実施するよう努めてまいる考えでございます。

矢野分科員 ありがとうございます。

 今、いみじくも水の防衛隊の話が出ました。これは福田内閣のときに創設されたものだと記憶しております。このことについていろいろ申し上げたいこともありますが、きょうはもう時間がないので、とりあえず、ぜひ私の指摘したこともよろしくお願いをしたいということで終えておきます。

 さて、今度、鉛を使った水道管について伺いたいと思います。

 鉛管というのは、現在も日本に八千二百キロほどあるというふうに聞いております。これは東京―ハノイを往復できる距離ということですが、そこで厚生労働省としては、この鉛管の問題、取りかえの必要性等についてどういうふうに認識しておられるのか、伺いたいと思います。

上田政府参考人 御指摘のように、鉛は蓄積性がございまして、摂取量が多い場合には中枢神経系に対して有害でございます。人の健康に対する影響が懸念されることから、その水質基準につきましては、昭和三十三年に初めて設定して以来、段階的に強化をしてきております。

 こういうことからも、この鉛製の給水管につきましては、より安心、安全な給水を確保する観点から、水道ビジョンにおきましても、鉛製の給水管総延長をできるだけ早期にゼロにする、こういうふうに掲げられているところでございます。早期の布設がえに向けた取り組みを推進することが重要と考えております。

 ただ、当面、布設がえまでの間、朝一番、これは最初に出したときの水が水質基準を超えるぎりぎりというようなところもあるようでございますので、そういう朝一番の開栓初期の水で鉛濃度が高くなるという可能性がございますので、飲用以外の用途にそれを用いるということが望ましいと考えておりますが、最悪の場合には、最初の一杯目は捨てていただくというようなことも、これはこういうことについての広報について水道事業者に対して求めておりますけれども、今後ともこういう取り組みを進めつつ、早期の布設がえを進めてまいりたいと考えているところでございます。

矢野分科員 蓄積すればという前提ですが、有害だという局長の御認識というか御説明ですが、では、これの取りかえを促す、促進させるもうちょっと具体的な取り組みというのは、朝一杯水を捨てるというようなことだけではないと思うので、その辺があれば教えていただきたいと思います。

上田政府参考人 鉛製の給水管でございますが、公道に埋設された配水管という太い管から分岐して各住宅等に引き込む際にも設置されているものでございます。通常、水道利用者の個人財産という性格がございますから、なかなか難しい問題もございますけれども、情報提供などを通じて、水道利用者みずからの意識の向上を図って、布設がえを促進することが必要だと考えております。

 こういうことから、私どもは、水道事業者に対しまして、鉛製の給水管の使用が特定されております住宅各戸等に対して早期布設がえの必要性等を周知していただくこと、また、使用の可能性のある住宅等を中心に使用状況の確認に努めるよう求めているところでございます。

 また、公道に布設された部分につきましては、布設がえにより漏水の解消も期待できることなどから、これは個人のものだということではなくて、水道事業者みずからが更新計画を策定して、積極的に布設がえの取り組みを要請しております。

 なお、水道メーターから宅地側に設置されている部分につきましては、布設がえに対する住民の理解を求めるよう広報を実施するとともに、水道事業者におきまして個人に対する助成金とか融資制度による支援措置を導入することを推奨しております。

 こういう取り組みを通じまして、布設がえが促進されるよう努力していきたいと考えております。

矢野分科員 今局長がいみじくも広報してというお話でしたが、やはり個人の持ち物という部分もあるわけですから、幾ら広報しても、ほっといてくれ、うちは大丈夫なんや、こう言われたらもう身もふたもない話だということを理解しつつ、そこで大臣に伺いたいんですが、実は、平成二十一年度予算の要求段階では、この鉛管の取りかえ促進事業について国庫助成も検討された、しかし、結果的に政府予算案には盛り込まれなかったという経緯があったように聞いております。

 仄聞するに、もともと個人の財産である給水管に対して財政支援を行うというのは、これは財務省的な表現でしょうが、ハードルが高い、こういうことだったと推測しておりますが、確かにそうかもしれません。しかし、今回、政府においては、生活防衛のための緊急対策の中で、太陽光発電装置を設置した場合に住宅減税を行う、あるいはハイブリッドカーを買った場合には自動車にかかる諸税を減免するといった、環境に配慮、対応した施策が対策に盛り込まれようとしております。個人のいわば財産の部分に踏み込んでいるわけですが、鉛管対策も、先ほどドクターでもある局長さんがおっしゃいましたが、蓄積すれば中枢神経系に有害だというわけですから、いわば人の体の環境にとって大切な問題であり、体のエコにもつながると言えば言い過ぎかもしれませんが、私はそういうふうに理解をしております。

 そこで、何らかの負担軽減や財政支援措置も考えられるのではないかなと思いますけれども、支援策の実現をここで大臣に明言をしていただくのはなかなか難しいと思います。思いますが、鉛管解消の促進に向けて、大臣の御所見を承りたいと存じます。

舛添国務大臣 健康の問題、今御指摘のとおりなので、一つは、個人の布設分は個人財産という難しい問題もありますけれども、その個人のそれぞれの利用者の方が健康の重要性をまずわかっていただく。それから、公道部分について、事業者の皆さんも積極的にこれはかえていただく。こういう形で取りかえをするとコストも少なくうまくいくよというような非常にモデルになるような事業者がおれば、そういうのを参考にしながら、今後とも広くこの問題、これは国民全体が関心を持たないといけませんから、きょう委員が御質問いただきましたので、そういう点も踏まえながら、さらに検討していきたいと思います。

矢野分科員 ありがとうございます。

 モデル事業なんという、ちょっと私にはない発想を大臣の方から伺いました。ぜひ前向きにまた御検討いただきたいと思います。

 実は、最後に、これは質問じゃございませんが、本年の二月に日本経団連が発表いたしました提言の中にも、国家として取り組む重点プロジェクトの事例として、水道の国際展開、あるいは国内水道の老朽化対策などが提唱されております。この鉛管問題も含めて、やはり政府には検討をお願いしたいと思います。

 そして最後に、きょうは質問いたしませんでしたが、実は水道法ができてもう五十年たっております。この法律ができた当時は、もちろん国内向けの水道に限って、しかも水道の拡張期を視野に入れた立法趣旨の法律であったかと思います。しかしながら、今、時代の要請というのは、やはり拡張の時代もほぼ終え、管理の時代に入り、さらに国際貢献というものも視野に入れた物の考え方をしなきゃならないんじゃないかと思っております。そういう意味で、また機会があれば、今度、水道法の改正問題についてまた大臣にいろいろと御意見を伺いたいと思いますので、よろしくお願いします。

 それでは、きょうの質問を終わります。ありがとうございました。

根本主査 これにて矢野隆司君の質疑は終了いたしました。

 次に、萩原誠司君。

萩原分科員 ありがとうございます。

 分科会での質問の時間をいただき、また、大変御多忙な舛添大臣の御参席を賜りました。大臣におかれましては、内閣のかなめとして引き続き御貢献をいただきますように心からお願いいたします。

 ところで、大臣のお住まいのところは、避難場所はどちらですか。

舛添国務大臣 私は世田谷に住んでおりますから、駒沢公園が避難場所になると思います。

萩原分科員 今大臣の答弁にありましたように、全国各地で、公園でありますとか小学校でありますとか避難場所が決まっているわけでありますけれども、この間うち、保育園の御父兄の方々や園長の方々と話をしているときに、災害弱者である保育園児、一体どうしたらいいんだろうか。もちろん、保育の指針その他の中に、保育園に火災が起きたりしたときにはこんな避難をするんだ、こういうことはいっぱい決まっているんですが、今話のありましたような広域避難のときに一体どうするんだということで、若干の迷いがあるようであります。

 簡単に申し上げますと、ゼロ歳から三歳までの子供たちを抱えているという点が幼稚園と違っていて、そして、幼稚園の場合にはほぼ学校、小学校と結びついているものですから、行き場所が確定をしている。ところが保育園の場合には、通勤途上に保育をお願いするということで、必ずしも地元の保育園じゃないところの保育園にお子さんがおられて、こういうように事情はさまざまに違っているものですから、広域避難の場合における保育は一体どうしたらいいんだろうかというような迷いがあるようであります。

 若干聞いておきたいんですけれども、災害時の避難場所として、いわゆる公立や私立の保育園が指定をされているケースがあるかどうかについて把握をされていますか。あるいは今申し上げたような広域における、広域避難についての保育の場合の指針なんというものをおつくりになっておられたかどうか。ちょっと事実だけお答え願います。

村木政府参考人 まず、保育所が避難場所として指定をされているかどうかという点でございます。

 厚生労働省が独自に調査をした数字はございませんけれども、全国社会福祉協議会の調査がございまして、平成二十年の五月の時点でございますが、回答をいただいた保育所一万二千カ所のうち、二五%が災害時の避難場所として場所を提供している。これは恐らく、指定されている場合も、みずから自主的にということも含まれている可能性がございますが、四つに一つが避難場所を提供しているという状況でございます。

 それから、広域避難の場合等々について、保育所にそういった指針があるかどうかということでございます。

 先生がさっき触れていただきましたように、保育所自体の建物の基準等はかなり細かく定めておりますし、それから避難訓練そのものは月一回、これは最低基準として義務づけはしておりますが、その場合に、具体的にどういう避難をするかというようなことを厚生労働省の方でマニュアル等のようなものをつくっているということはございません。各自治体や保育園、そして消防署がそれぞれにつくっていただくという形で今はやっております。

萩原分科員 ということで、いかにも把握をしているような、していないような状況になっているわけであります。

 現場で聞いてみますと、厚生労働省ないしは保育関係の行政部署から、広域避難について、保育の特殊性を考えた上で質問がされたり、議論がされたり、調査がされたりということがいまだにないようなというのが少なくとも岡山県内における実態でございまして、この点については、お金もかからないし、改善の余地は間違いなくあるというふうに思っています。

 例えば、今の御答弁にあったように、避難場所を提供しているようだとか、指定されているかもしれないとかこういうことなんですが、であれば、指定されているというときには、なぜそこが指定されているのかといったことを幾つか聞いていきますと、一定のパターンが出てくるはずであります。そのパターンは何かということを勉強していただくと、今後の全国的な指針にもなってくるわけです。

 親御さんとしては、災害が起こって広域避難というときにどこへ駆けつけたらいいかというと、やはり保育園がいいんじゃないかということを思われる方もおられますでしょうし、いずれにしても、ゼロ歳児を世田谷公園に連れていってどうするんですか。ゼロ歳児を世田谷公園に連れていって遊動円木で遊ばせるというわけにもいきませんしね。

 恐らく、いろいろな意味で、この点についてはいろいろな検討がされておくべきだろうというふうに思うんだけれども、それがされていないというのが実態でありまして、ぜひ、広範な調査をしろとは言いませんけれども、こういった問題意識の中で、各県あるいは各政令市と相談をしながら、どう考えているんだ、おまえのところはどうしているんだ、皆さんのところはどんな心配を持っているんだというようなことで調査というか勉強、研究を、大臣、していただきたいと思うんですけれども、いかがでございましょうか。

舛添国務大臣 これは保育園児のみならず、例えば御高齢の老健とか特養とかにおられている方々、例えば認知症の方々、やはり一人で避難というのは難しゅうございますから、それぞれの施設ごとにきちんとマニュアルをつくるなり、日ごろから訓練することが必要だと思いますので、我が省としても、そういうことをさらに積極的に進めるように検討したいと思います。

萩原分科員 重ねて申し上げますと、おっしゃるとおりでございまして、幾つかの福祉関係の弱者施設につきましては避難についての指針がございます。認知症については当然でございまして、認知症という特殊性を考えた上で、住民一般と少し対応を変えるべきということになっているんです。そういった例が厚生労働省の中でも幾つかある中で、保育が欠けている。保育が欠けているとは、保育そのものですけれども、こういう状況にあるということも、大臣、御認識をいただいた上で、よろしくお願いをしたいと思うんです。

 次に、薬事の関係なんですが、ことしは改正薬事法が完全施行される予定で、さまざまな動きが続いているということであります。

 御案内のとおり、改正薬事法の基本的な精神というのは、このところの薬の重要性、健康志向といったこともとらえながら、WHOか何かから出てきたセルフメディケーションという考え方、これはいろいろ議論があって難しい問題があるんですが、うまくいけば、我々薬を消費する消費者が、薬について、あるいは薬事について賢くなって、セルフディフェンスができるというぐらいしっかりとした消費者になった上で、自分の責任の中でメディケーションを行っていくんだ、こういうことであって、それを薬事法の体系でもって支援をする。セルフメディケーションができるような形に支援をしていく、こういうことでありまして、実は、この薬事法の改正というのはかなり難しい離れわざを考えているわけですね。

 独立させよう。独立させるためには、逆に、当面きちっとした支援をしていかなければいけない。その支援というのは何かというと、正しくかつ専門的な知識を消費者の方々に、あらゆる可能な場面において提供していく。そのあらゆる可能な場面の中での最大の場面というのが、いわゆる対面販売における会話、コンサルテーション、こういうふうになってきて、その基本的な主体というものが薬剤師、こういうふうに認識をするのが一番のポイントだというふうに思っています。

 ところが、今回の改正の中で、お薬について三つの区分がされて、第一類から第三類まで、簡単に言うと、一番難しいのが一類ということになっております。一類については、基本的に薬剤師関与が販売の時点で必要ということになってはいるんですが、法文を読んでみますと、販売担当の方々に薬剤師の関与のもとでやってもらっても構わないこともあるんですよというような表現があったり、あるいは、相談をしてくれば必ずそれは議論が始まるんですけれども、別にもう説明は要らぬよというようなことを消費者の方がおっしゃったときに、ひょっとしたら薬剤師の関与がない形で薬が販売をされていって、セルフメディケーションの支援ができないだけじゃなくて、全体として、例えば乱用の問題とか、幾つかの薬にまつわる陰の部分が大きく出てくる可能性がある。そのことが若干心配をされているわけです。

 インターネットでの販売についてはまた議論がありますけれども、これはきょうはおきまして、一番簡単なところ、第一類について。第一類についても薬剤師関与がなくなるような可能性が一部に心配をされているわけでありますけれども、この点について、省令上どうなっているのかについてまず局長の方からお答えをいただいた上で、大臣の思いをお聞かせいただきたいと思います。

高井政府参考人 お答え申し上げます。

 法律と省令におきまして、第一類医薬品につきましては、情報提供につきましては薬剤師みずからが、薬局または店舗内で対面で行わなければならないということにいたしております。

 情報提供した上で販売をするに当たりまして、薬剤師が直接、または先生御指摘の、薬剤師の管理、指導のもとで登録販売者もしくは一般従事者が販売をするということでございますので、まず、情報提供を必ず薬剤師がみずから行うということになっております。

 また、相談があった場合につきましては、薬剤師がその情報提供が不要か否かを判断するということでございますので、薬剤師がこれを担当するということになっているところでございます。

舛添国務大臣 基本的には、薬剤師が管理をきちんとするというもとで対面で説明するということですから、例えば、いや、もうそんな薬知っているからいいよと言う人がいても、薬剤師が判断して、これはやはりきちんと、一回二十錠飲んではいけませんよというようなことを説明しないとだめだということが趣旨ですから、薬剤師の関与がなくて、適用がルーズになって危険が生じるということであっては絶対ならないと思いますので、そこは徹底的に指導していきたい、それが第一類だということだと思っております。

萩原分科員 大変詳細かつ決意に満ちた御答弁を当局並びに大臣からいただきました。恐らくこれが伝わっていって、多少の安心感の増進になるだろうというふうに期待をさせていただいておりますし、また私の立場としても、少なくとも岡山県の薬剤師会の方々には、こういう答弁があった、こういうやりとりがあったということをお知らせすることによって周知徹底を図っていきたいというふうに思っております。

 次に、医療の関係になるんですが、レセプトのオンライン化。

 これも何か頭が妙に痛くなってきて、私も困っているんですが、昨日、私のところに、大阪府の富田林医師会というところから「「レセプトオンライン請求完全義務化(厚労省令第百十一号)」の撤廃にご協力のお願い」というものが舞い込んでまいりまして、この医師会の方々は一生懸命頑張っておられます。反対だと。

 私どもが全国の郡市区医師会を対象に実施したアンケート調査によりますと、完全義務化反対は九二%、賛成は二%でした。なお、九百四十七の郡市区医師会にアンケートを送付し、四百八十九医師会より回答、回収率は五一・六なんということも書いてあります。

 「反対理由の主なものを列挙させていただきます。」というので、IT技術が苦手な医師はこれを契機に廃業するというので、医師不足にさらに拍車がかかって地域医療の崩壊につながる、こういうのが一点。

 それから、離島や過疎地の医師は高齢の方も多く、これらの人が廃業すると無医地区がふえる。患者さんの医療を受ける権利が奪われることになる。

 三番目、個人情報の漏えいが危惧される。営利に悪用された場合の責任の所在も明らかではない。

 数百万円もするオンライン機器の購入、IT技術を持つ事務員の雇用など、過度の経済的負担を一方的に押しつける制度であり、財産権の侵害である。

 IT業界には莫大な利益をもたらし、統計数値が簡単に入手できることになる厚労省の利益は大きいが、医療側には負担がふえるだけで何のメリットもない。

 レセプト審査はベテラン医師が担当することが多いが、電子機器の取り扱いにふなれのため、紙により打ち出し、紙を見て審査するところも多いという。現在の紙レセプトの提出より、さらに手間とお金をかけることになるだけである。

 等々いろいろあって、最後は、憲法十四条の法のもとの平等に違反していると、ここまで来るんです。

 そして、一月に神奈川県で医師の方々による原告団が結成をされて、オンライン請求を行う義務がないことの確認を求める訴状が提出されている。

 ここまで来ておりまして、一つには意思疎通の問題があったのかなというふうにも思いますし、また信頼感の関係の問題があったのかなと思うし、さらには、そこで提供されている資料を見ますと、個別具体の各医師会の意見集というのがあって、最後は「撤廃のためには、民主党への政権交代をまず実現するしかない。」とか書いてあったりして、こうなってくると、もう大変なことになるわけであります。

 私としては、いろいろな問題がある中で、とりあえずはこの中の費用の問題だけに限って申し上げておきたいと思うんですが、私どもの岡山県の医師会に聞きましても二、三百万円はかかりそうだという議論があって、この論理の中の一部にありましたように、これが、そんな高い金を出すんだったらやめようかというようなことにもつながるということになっている。

 そこで、一点だけお伺いをしておきたいのは、費用の問題と技術の問題というのはかなり密接に絡んでいるわけでありまして、このところ、コンピューターの世界というのは非常なスピードで進化をしている、当然でありますけれども。

 費用をどう削減するかというのがアメリカなどでの今のカレントな流れになっている。そのカレントな流れというのは、かつてでいえば、ネットワークの上にさまざまなサービスやソフトウエアやハードの利用権というものを設定していって、そして、ユーザー側の負担、設備投資負担というのを極度に下げる形でコンピューター利用を行っていくという形。かつてはネットワーク、その次にウエブ、クモの巣ですね、になっていって、今度はそのクモの巣がうわっと重なっていくと、クラウドという概念に今なっている。クラウドの中にさまざまなものをきちっと安全に入れることによって物事を進化させていこう。

 いや、クラウドというのは危ないじゃないか、だれのものかわからないじゃないかという議論があるんですが、クラウドの発想というのは二つあって、パブリックに活用されているクラウドという概念と、そうではなくてプライベートな世界、役所をプライベートというのは変ですけれども、役所の中だけのあれとか、役所と医療業界とか薬業界だけの間のクラウド、これは限定ができるわけですね。

 だから、そういう限定をした上でやるクラウドをイントラクラウドというふうに言えばいいと思うんですけれども、そういうセキュリティーがしっかり確保されていて、利用についてのアクセス制限がきちっとできていてというようなクラウドの発想ができてくるとすれば、これは活用するに値するというふうに思っておりますし、たまたま別の世界の勉強会などで聞いていますと、税務とか登記とか、いろいろな世界で電子政府化を進めているんですけれども、そろそろクラウドの世界の考えを使ってやった方が圧倒的にいいんじゃないかというふうにみんな思い始めている。

 こういうふうな状況もある中で、なぜ厚生労働省だけは議論が進まないのかということが、厚生労働省が欠席のままに質問があって、そしてお答えを聞いていると、いや、変わった役所だからみたいな話になっていて、そんなことはないだろうと。これから、厚労省といえども、世の中の流れの中できちっと最新の技術というものを把握しながら、それを適用するために努力をするし、各省連携もしていくんじゃなかろうか、こんなふうに思われている。

 ただ、そのときに議論があったのは、そうしちゃうとまたタイミングが狂いますよという議論があるんだけれども、しかし、タイミングが若干おくれるとしても、やはりより正確に、いい形で議論をして、それこそ最近大臣が一生懸命おっしゃっているサステーナブルな形でのオンライン化ということにつなげるべきじゃなかろうかというふうに部外者の一部は最近思い始めているわけであります。

 随分説明が長くなりましたが、以上申し上げた上で質問を若干するとすれば、各省連携を含めて、新技術への取り組み、それによるコストダウンの可能性を申し上げたんですけれども、こういう考え方についての反応を御担当の局長さんからいただければというふうに思います。

水田政府参考人 クラウドコンピューティングについてのお尋ねでございますけれども、この仕組みそのものは今委員御指摘のとおりでございまして、パソコンと外部にあるサーバーを通信回線で結んで、利用者が入力した情報をサーバーに保存して処理を行うサービス、このように承知をしてございます。

 処理をサーバーの方で行うということでございますので、利用者側、つまりこの場合ですと医療機関側は、通信回線に接続できる設備とパソコンがあれば処理が可能となるということでございますので、レセプト情報の処理のためのソフトが要らない、あるいは情報を保持しておく記憶装置を自前で用意する必要がないということで、費用負担面を見ますと、レセプトコンピューターを購入するよりも安く済むというふうなメリットがあると聞いてございます。

 ただ、これは、今委員が先におっしゃられましたけれども、私ども内部で検討させていただいた段階では、レセプトの処理に用いることにつきましてはまだセキュリティー上の超えなきゃいけない問題は多々あると思っております。

 具体的に申し上げますと、私ども、医療情報システムの安全管理に関するガイドラインを設けているわけでありますけれども、特に個人情報の保護が求められる診療録等につきましては、現在、医療機関や行政機関以外の外部の場所に保存するということは原則認められていないわけでございまして、レセプトも同様に患者の医療情報が含まれるということでありますので、やはり慎重な対応が求められるということでございます。

 それからもう一つ、レセプト情報を個人が識別可能な形で大量に集積可能となるわけでございますので、漏えいでありますとか目的外使用があった場合の懸念、問題が大きくなるという懸念があるわけでございまして、勉強といいますか研究、検討はしていかなきゃいけないかと思いますけれども、私どもは、なおそういう段階にあるということでございます。

萩原分科員 今の御答弁につきましてはわかったつもりでありますけれども、局長、よくお考えになると、答弁の中に自己矛盾があるのはお気づきですか。

 これは、先ほど僕は自己矛盾になるようにイントラという概念を提供させていただきましたけれども、医師会の代行の話がありましたね。これはまさにそれに当たるんですね。あれは、紙でやるかバッチでやるかオンラインでやるかは別として、医師会であれば代行できるということがありましたね。あれが、クラウドという言葉を使うかどうかは別として、仲間内のイントラということになってきている。それであればいいというふうに厚生労働省自身が既に言ってしまっているんですよ。

 その考えを延長すれば、今私どもが申し上げているような概念は、実は既に安全対策とか、先ほどの情報のガイドラインの中に含まれている概念でお話をしているということにお気づきじゃなかった答弁だと思うんです。技術というのは、確かに小難しい情報用語が出てきたりしますけれども、基本的には普通の論理の展開の中で理解できるものです。普通の論理の展開の中で理解できるものといったら、既にやられていることなんですね。

 重要なことは何かというと、今、レセプトオンライン化の問題というものが、さっきお話をしたように憲法だとか、財産権の侵害だとか、これを変えるためには民主党に政権をとってもらうしかないとか、そういう極端な議論になっているんですけれども、そんな議論にするよりも、もう少し普通の業界、普通の世界がやっているように、技術的にあるいは制度的に煮詰めていくことによって対応が可能な分野の問題とした方がよろしいんじゃないでしょうか。

 そういう意味では、厚労省の今までの対応は、ほかの役所との比較で見ると、こういった技術論的な追求の姿勢がちょっと甘いんじゃなかろうかということを申し上げている。そのように御理解をちょうだいしたいというふうに思っています。答弁は結構でございます。

 最後の一類型でありますけれども、今度は福祉の関係ですが、これもすったもんだの末に三%、介護報酬の改定、総量でするということになって、その三%の寄与度を見ると一・七と一・三に施設と在宅で分かれている、こんな形になっております。

 それと同時並行であった議論としては、これも御案内かと思いますけれども、介護の現場で働いていらっしゃる方々の報酬というものがかなりきついねという話になっていて、そして、これは超党派の議論があったわけですけれども、介護現場における勤労者の方々の例えばキャリアパスが組めるようにするとか、あるいは、せっかく現場に来た方々がえらい早いタイミングでおやめになるような状況を繰り返すことにならないようにしようとか、あるいは介護専門職になろうとして頑張っておられる若い方々の将来をふさがないようにしようとか、さらに言うと、そういった方々を研修したり訓練をしたり協力したりする機関の応募者がいなくなってしまっているけれども、そんなことにならないようにしようとか。

 こういうことで、介護の現場における、給与問題を中心とした処遇というものが背景において随分強く意識をされた中でこの議論が行われてきたわけでありまして、誤解もあるのか、あるいはプレゼンテーションの問題もあったのかは別として、二万円上がりそうだみたいな状況が一時提供されたわけであります。

 ところが、今現場で起こっていることは、二万円上げろと言われても、この報酬改定ではいろいろな意味で難しいよと。それは、加算方式ですので、ある特定の方々には加算があるんだけれども、減算が起こるケースもあったりして、一般的に、すべての人にこれがベースアップの形でいくことはないと思ってはいましたけれども、やってみるとほとんどの現場の議論は、これは厚生労働省にだまされたのであって、決して皆さんの報酬は二万円上がることはない、悪く言うんだったら、おれたちのことじゃなくて厚生労働省を悪く言ってくれという宣伝を一生懸命せざるを得ない、そういう状況に今なっているというふうに思います。これはみんな、苦しんでいる感じが残っているんですね。

 あんなに一生懸命三%をやってみたら、みんな苦しんでいるというようなことになったんじゃ、大臣もつらいし、僕らも頑張った者としてつらいわけでありますが、まず基本的なこと、これはもう何回も答弁があった話なんですけれども、今回の介護報酬改定によって、現場の職員の方々の待遇がどのように改善され得るというふうにお考えになっておられるか、御答弁を願います。

    〔主査退席、菅原主査代理着席〕

宮島政府参考人 今委員の方から、本年四月のプラス三%の介護報酬の改定で、どういうような介護従事者の処遇改善がされ得るかという御質問でございます。

 このプラス三%の改定の中身、いろいろありますが、一番重視したところは、処遇改善につながるような改定ということで、例えば、介護福祉士の割合が多い事業所は評価するですとか、一定以上の勤続年数の割合の高い事業所は評価するですとか、常勤の職員の割合の高い事業所は評価するとか、あるいは夜勤の業務への評価を厚くする、それから重度化、認知症対応のしっかりしているところは評価するというようなことで、常勤で勤続年数が長い人たちの給与、あるいは有資格者の給与が上がることによって、介護現場で人材が定着していただけないものかということを考えて改定を行ったところです。

 今後、介護従事者の給与は、そうは言いましても事業者と介護従事者の間で決められるものでありまして、厚生労働省としては、この介護報酬だけではなくて雇用対策として、介護従事者の雇用管理に取り組む事業所に対する支援ですとか、あるいは事業者に対して、経営指標とか経営配分のモデルの作成、提示というようなことをこれからやっていきたいというふうに考えているところでございます。

萩原分科員 想定されたお話ではあるんですけれども、お話を聞いていて何を思うかというと、結局、介護の現場における雇用の質の改善というのは政策目的になり切っていない。最後はお任せの部分があって、それを意図した政策ではなかったということになる可能性があって、そうすると、それはそれでいいのかもしれません、政策目的は全く別のところなんだというふうに言ってもいいかもしれないけれども、今や、介護人材のところというのは、例えばこの雇用状況の中でもミスマッチが起こっていて、場合によっては雇用保険特会の新パターン、つまり、雇用の維持ではなくて雇用の新規開発に雇用保険を使って、こういったところの雇用を進めようみたいな話も出ているぐらい実は重要な話。

 つまり、私たちがさまざまな産業政策をやっているときに、人材そのものがターゲット、目的になるケースがあるんです。人材をどう提供し、その方々をどう育成していくか、あるいは定着させるか、そのこと自身が政策目的になるケースが今までの産業政策の歴史の中では何回かあったわけです。

 今回は、そういう問題として意識するのかしないのかということが、今後の調査をしていく中で問われてくると思うんですね。いや、結果として、これはしようがなかったんですねというふうに終わることができるかどうか、私は疑問なしとはしません。

 最後に、大臣の御感想を一言お願いします。

舛添国務大臣 これは、介護報酬改定というプロセスを通じての処遇の改善になりますから、全体の介護施設の運営ということも考えないといけない。しかし、今委員がおっしゃるように、雇用のミスマッチの解消ということも考えないといけないので、これはなかなか直接的な財政的支援ということはできません。

 今回、補正では介護保険料を上げない形でやるという形で対応できましたけれども、そうすると、介護保険料というのが片一方であれば、その点について言うと国民の負担がふえるわけですから、そのバランスをどうとりながらやるかということでありますけれども、基本的に、厚生労働省のさまざまな施策に産業政策という施策がないことは御指摘のとおりなので、今後、そういうことも含めて、さらにいい施策を練りたいと思っております。

萩原分科員 ありがとうございました。

菅原主査代理 これにて萩原誠司君の質疑は終了いたしました。

 次に、高木義明君。

高木(義)分科員 おはようございます。民主党の高木義明です。限られた時間ですが、何点かについて大臣にお尋ねを申し上げます。

 まず、原爆被爆者対策についてでございます。

 御案内のとおり、既に全国の被爆者の平均年齢は七十五歳に達しておる。毎年約七千人の方々がお亡くなりになっておるという状況にございまして、まさに高齢化が進んでおります。残された時間は少ない。何としても原爆の実相を明らかにしながら被爆者の健康を守っていくということは、まさに国の重要な責任と使命である、このように思っております。

 そういうところで、大臣も既に、八月六日、九日、広島、長崎にそれぞれ赴かれておりまして、被爆者の方々とじかに会われて声を聞いておりますが、このそれぞれの式典に参加をした感想、そして、今被爆者問題についてどのように認識をされているか、まずお尋ねをしておきたいと思います。

舛添国務大臣 広島、長崎、両方で被爆者の方々にお会いし、その中で、これは自分の娘ですよと言って、二世の方々にもお会いすることもできました。今委員も御指摘のように大変な御高齢でありますから、これは一日も早く諸問題の解決をしたいというように思っています。

 ただ、どうしてもそこで、科学的な知見であるとか専門家の意見ということをきちんと尊重していかないといけない。そういうことの絡みの中で、できるだけ原爆関係の施策を前に進める努力をやっていきたいというように思っております。

高木(義)分科員 そこで、まず初めの質問ですが、先日、一月二十三日に、原爆症認定訴訟、いわゆる認定申請を却下した国に対して、国の処分の取り消しを求める訴訟ですが、鹿児島地方裁判所において、甲状腺腫瘍と前立腺腫瘍でも、それぞれ原爆症と認めております。まさに新しい基準で認定されるべきことであることから、私どもは二月二日に、我が党の藤村修ネクスト厚生労働大臣とともに舛添大臣にお会いをいたしまして、控訴しないように、こういうお願いをいたしました。これに対しまして、厚労省としましても、翌三日の日に控訴しないという発表をされております。このことについては、私は一定の評価をしております。

 したがって、これに続く関連した訴訟について、既に国が上告をしておるものの中にも認定をされるべき方々がおられたり、あるいは新基準では当然認定できるもの、こういうものも含まれておるのではないかと思っておりますので、今、六つの高等裁判所、八事案、これについても控訴を取り下げるべきではないか、そして早期の決着を図るべきではないか、私はそのように考えております。

 この点について、いかがでしょう。

舛添国務大臣 放射線と関連するという知見がもう確立しておればこれは問題ない、認定をできるわけですけれども、そういう関連性の確立していないものは、今の段階では、残念ながら、どうしてもこれは司法の判断を仰がなければならない。

 今やっているものについては、そこにおいて地裁同士で判断が分かれているということでありますので、今の枠組みの中ではどうしてもこれは高裁の判断を仰いでいかざるを得ない、そういう判断で行っているところでございます。

高木(義)分科員 新しい審査の方針の認定基準がスタートをして、ことしで間もなく一年になろうとしておりますね。しかし、裁判の結果は何と国が十三連敗、こういう状況にもありますし、この審査の内容が不十分ということから、厚生労働省の被爆者医療分科会においても、認定対象の疾病として肝機能障害、甲状腺機能低下症を追加するかどうかという議論がスタートした、こういうことでございます。この見通しについて、どのように考えておられるのか。

 そしてまた、やはり一年たちましたから、この一年間の総括をし、そして、新しいまたステップを踏むということは極めて重要であります。この点について、今後の方針なりスケジュール、これについて明らかにしていただきたい。

上田政府参考人 甲状腺機能低下症及び肝機能障害につきましては、現在、原子爆弾被爆者医療分科会において、その取り扱いを精力的に議論していただいているところでございます。昨年の十月二十日に第一回を催しまして、今まで四回、また、来週の二十三日にも第五回目が開催されるところでございます。まずは、この専門家の議論と検討の推移を見守ってまいりたいというふうに考えております。

 また、一年たったということで、今後のことでございますけれども、やはり行政側からというよりは、専門家の良心と御判断に任せることが必要と考えておりまして、現段階で、なかなか今後のことについて、スケジュールまでは今申し上げる段階にないと考えております。

高木(義)分科員 河村官房長官が、昨年の十月三日ですが、記者会見で、次の高裁の判決が出るまでに結論を出してもらいたい、来春早々に判決が出ますから、その時点で総合的な判断ができるんではないか、このように述べておりまして、さらに、十一月の十九日、原爆症認定集団訴訟の原告団、弁護団とお会いをした中で、全国で係争中の訴訟について、来年、平成二十一年、ことしでありますが、三月に予定される東京高等裁判所判決後に一括解決をしたい、こういう意向を表明されております。

 これは、官房長官ですから、当然舛添厚労大臣もこのスタンスであるとは思うんですが、念のために、その意思疎通が十分できておられるのか、また大臣はそのようにお考えなのか、この点についていかがでしょうか。

舛添国務大臣 河村官房長官は、官房長官におなりになる前に、党の中で、この原爆症に大変熱心に、先頭になってお取り組みいただいていた方で、私も厚生労働大臣になって何度かお会いして、御要望事項もいただいております。

 そういう中で、五月の二十八日に予定されています東京高裁の判決というのは、原告の数が三十名という非常に大きな数でありますし、ここで一つの一定の見解が司法から出されるだろうということで、そういうことを見ながら、政府としても大きな判断をやるべき時期に来るんではないかという官房長官のお見通しだというふうに私も理解をしております。

 したがいまして、これは、その判決を見た上できちんと対応したいというふうに今の段階では思っております。

高木(義)分科員 新しい認定基準の骨子を改めて読んでみますと、まず一つは、原因確率を改めて、被爆者救済の立場に立った審査を行う、これは極めて重要なことであろうと思っています。二番目は、典型症例については、距離、時間、このことが記されておりまして、三番目には、典型症例はがんを初め五つの症例になっております。四つ目には、これ以外も、個別の被曝線量などを考慮して総合的に判断すると。

 被曝線量を考慮してというのは私はいかがなものかと思うんです。被曝線量を考慮したがためにこのような裁判闘争が続いておると思っておりまして、まさに原因確率を改める、こういう意味では、被爆の実相に合った総合的判断というのが極めて重要になろうと私は思っておりますが、大臣、どうですか、この点につきまして改めて早期の全面解決を目指すお考えはありますか。

舛添国務大臣 ずっと一貫して申し上げていますように、皆さん大変御高齢でありますから、一日も早い解決ということを目指したいと思います。

 専門家の分科会の皆さん方も相当頑張っていただいて新しい認定基準をつくっていく、そういう中で、どのラインを引くのかというのは皆さん御苦労なさっていると思いますが、よく専門家の方々と御相談しながら、基本的なスタンスは、一日も早く解決したい、そういうことでやっていきたいと思っております。

高木(義)分科員 また、いわゆる審査体制の見直しも大きな課題であろうと言われております。

 まさに一カ月当たり二百二十人程度、これが今の審査の状況でありますが、審査待ちの皆さん方は、昨年十一月末時点においても約七千九百人と言われておりまして、このままでは全員が審査にかけられるまででも膨大な時間がかかってくる。実際、約三年も待たなきゃならぬのではないかという声さえあります。冒頭申し上げましたように、高齢化が進み、そして年間約七千人の方々がお亡くなりになるという状況でございますので、今のこの体制ではこれはもう無理じゃないか。

 もちろん、皆さん方、体制を強化されて頑張ってはいただいておりますが、物理的に何かほかの方策も考える必要があるんじゃないか、私はそのように思っております。

 これに対しては、被爆者の皆さんが各地で行政不服審査法に基づいて不作為の異議申し立てを行っておりますが、この点について厚労省のお考えを聞いておきたいと思います。

上田政府参考人 原爆症の方の認定につきましては、昨年四月から、新しい審査の方針に基づく審査を開始いたしました。審査体制につきましても、これまでの分科会の下に四つの部会を設けるなど、審査体制を整え、現在までの十カ月間に昨年の二十倍の二千五百十五件の方が認定をされたところでございます。

 一方で、審査をお待ちいただいている件数も多数ございまして、十二月末現在で八千八十件ということでございます。そのため、不作為の異議申し立てがなされていることもそのとおりでございます。

 このような異議申し立ての方々につきましては、早期の認定を望んでおられる声と真摯に私ども受けとめて、迅速な審査に懸命に取り組んでいるところでございます。こういうこともございまして、一月には上半期の倍近い三百四十一件が認定されまして、却下を含めた処分件数が申請件数を上回るなど、迅速化の努力も出てきているということでございます。

 今後とも、鋭意迅速な審査に努めてまいりたいと考えております。

高木(義)分科員 迅速かつ適正な審査のためにいろいろなことが考えられるんですが、例えば都道府県に審査をゆだねる、こういうことも一つ考えられるんではないかと私は思うんです。この点についてはいかがでしょうか。

上田政府参考人 過去にそういう事例もあったということでちょっと調べましたが、これは事前審査という形でございまして、本審査ではないということで、結局二度手間になるんではないかということがポイントでございまして、原爆症の認定審査を行うに当たりましては、被爆者の方が罹患されました当該疾病について、原爆放射線の被曝に起因すると認められるものであること、また、それが現に医療を要する状態にあること、これらについて、高度の専門性に基づく判断が求められておりますことから、被爆者援護法の規定に基づいて、国において科学者、医学者、法曹関係者など、関連する専門領域の第一人者から成る審査会を設け、審査を行っているところでございます。

 都道府県に審査をゆだねることは、原爆症の認定や認定に基づく医療の給付について、厚生労働大臣が行うとしている被爆者援護法の趣旨から困難ではないかと考えておりますけれども、いずれにしましても、今後とも審査の迅速化に取り組んでまいりたいと考えております。

高木(義)分科員 ぜひひとつ総合的に検討されまして、やはり一日も早い全面解決を強くお願いしておきたいと思います。

 次に、被爆体験者問題について。

 私は、この被爆体験者という言葉は疑義を持っておるわけです。つまり、被爆者ではないか、被爆者であるという皆さん方の思いの中で、それぞれの要請活動も今日までやってこられております。

 その上で、被爆体験者への医療給付制度は平成十四年に開始をされました。ところが、平成十七年に判断基準が大きく変わりまして、その時点で約二千八百人の方々が被爆の記憶のないことを理由に支援事業の対象外になったということがございました。

 この件に関しまして、私は、昨年四月二十一日の決算行政監視委員会、分科会でありましたが、当面の措置として平成十四年四月の制度に戻すべきだ、こういう質問をいたしました。それに対して西山健康局長は、「引き続き、今後検討してまいりたい」、こう答弁されております。

 したがって、この答弁がどのような形で具現化されたのか、この点について明らかに示していただきたいと思います。

舛添国務大臣 委員御指摘の点ですけれども、被爆体験の記憶がなくても、ないとだめだと言っていたのを、この二十一年度予算で事業の取り扱い対象とするという形で予算が組んでございます。

 これは長崎の事業ですから、長崎市と今協議を進めまして、具体的にどういう形でやるかということを検討している状況でございます。

高木(義)分科員 ひとつ十分に被爆者の皆さん方のことを重要に考えながらやっていただきたいと思います。

 そこで、被爆体験者というのは、まさにその根源がこの被爆地域になってくるわけですね。これは南北十二キロ、東西七キロという、ある意味、いびつな線引きなんですが、これについて、今なお、例えば全国の被爆体験者協議会は、国や長崎県、長崎市を相手取りまして、被爆者としての認定、健康管理手当等の支給を求める訴訟を起こしております。

 これについて、私も、非合理なものはやはり合理的にするというのは、これはある意味で政治の課題であろうと思っておりますよ。したがって、きょうもなお、またこの問題を取り上げておるわけでございますので、まさに政治家としてこの点についてどのように考えておられるのか、前向きの御答弁をいただきたいと思います。

舛添国務大臣 一つは、これは係争中訴訟ですから、大臣がこういう方向でというような形まで踏み込んだことは残念ながら申し上げられませんけれども、昭和三十二年当時、いびつな形でと今委員がおっしゃった形で決められた。その後、いろいろな科学的知見の集積をしていって、これはやはりおかしいんだということが極めて明確に出れば、それは大きく変えられるんですけれども、今のところ、まだそこまで出ていないんですね。

 ですから、今後さらにデータを集積し、どういう形でこの問題を解決できるか、一つの大きな課題として今後とも取り組んではいきたいというふうに思っております。

高木(義)分科員 項目が多いので次に参りますが、いわゆる在外被爆者の問題。

 この点については、昨年の通常国会で、それぞれの対案を持ち寄りながら、与野党の協議によって共同修正が行われました。私は一歩前進だ、このように思っております。ただ、そのときに協議の大きな焦点となりましたことが、附則に盛られております。この附則は、いわゆる検討事項として、在外被爆者の医療に要する費用の支給について、また原爆症など認定の申請のあり方について検討を行い、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする、こういうふうに明記されております。

 これについて、せんだっても、アメリカあるいはブラジル、韓国の被爆者の皆さん方が直接こちらに出向いて、私も声を聞かせていただきました。ぜひこの点について援護法の精神にのっとった対応を速やかに行うべきだ、被爆者はどこにいても被爆者という理念をこういう方々についても適用されるということが非常に大事です。この点についてお考えをお聞かせいただきたい。

上田政府参考人 昨年十二月十五日に被爆者援護法改正法が施行されたわけでございまして、その中で、附則にございます医療費の上限につきましては、現在、年額十四万五千円を上限として助成をしているところでございますが、日本における被爆者への医療費支給額の実績がございますけれども、これを踏まえて、来年度より、まず上限を十五万三千円に引き上げる予定でございます。

 それから、海外からの原爆症認定申請でございますけれども、これは、実際に医療機関から診断書をちょうだいするとか、言語の問題とか、さまざまちょっと事務的な課題もございますけれども、今、実施に当たりまして御協力いただくことになります外務省あるいは都道府県の御意見をお聞きしながら、今後できるだけ速やかに対応できるように検討してまいりたいと考えております。

高木(義)分科員 これまたひとつ迅速な対応を求めておきます。

 次に、被爆二世の問題です。

 この問題について、今、国が行っておる被爆二世に対する唯一の施策というのは、年一回の健康診断でございます。被爆二世の方々は、三世の方々もそうでありますが、やはり健康不安が絶えない。特に、団塊の世代になりますと、今からリタイアをされて高齢化していく中で、こういう不安もやはり大きくなるのは当然だろうと思っております。

 この点につきましては、東京都、神奈川県、静岡県、三都県では、既に先進的な施策としてがん検診も行っております。がん検診を被爆二世の方々に措置できるように私は強く求めたいと思っております。その点についていかがなものかということ。

 それから、これは大臣になるかと思いますが、大臣、被爆二世の皆さん方ともぜひひとつ具体的にお会いをしていただきまして、いろいろお話をやはり聞くこと、これから政策が始まると思うんですが、この点についてのお気持ちも伺いたいと思っております。

上田政府参考人 がんとなりますと、やはり遺伝的影響ということが絡みますけれども、被爆二世の方々については、現在までの科学的知見によれば、原爆放射線による遺伝的影響は認められておらず、被爆者援護法の対象ともなっていないところでございます。また、原爆放射線によるがんなどの特定の疾患への影響もこれまで認められていないことから、がん検診などの特定の疾患に着目した検診ではなく、一般の健康診断を実施しているところでございます。そういうことで、現時点では御指摘のがん検診の追加は考えていないわけでございます。

 被爆二世の調査に関しましては、放影研が多因子疾患の遺伝的影響について調査した被爆二世健康影響調査におきましても、被爆二世に親の放射線被曝に関連したリスクの増加があることを示す十分な証拠が得られていないところでございます。

 このような中で、被爆二世の全体像の調査とか、あるいはがん検診の問題につきましては、今後さらに、放射線影響研究所が実施しております被爆二世健康影響調査、こういうものの推移を見て検討してまいることとなると考えております。

舛添国務大臣 これまでも二世の方、何人かにお会いしましたけれども、今後とも、直接お声を聞いて施策に反映させたいと思っております。

高木(義)分科員 そのようにぜひ御努力をお願いしたいと思います。

 最後、時間もありませんので、一つ、ちょっと話題がかわりますけれども、この際ですから。実は、地域医療における医師確保の問題なんです。これは、私の居住の長崎市におきましても非常に深刻な問題が寄せられる、特に勤務医の皆さん方でございます。

 厚労省では、つい先日、臨床研修制度のあり方等に関する検討会が開催をされて、一定の方向づけが出されたやに聞いております。しかし、現場では、これではやはり厳しいという意見が多いですよ。したがって、私は、やはり医療従事者の勤務条件の改善など公的支援をもっと踏み込んで行う、そういうことが一番当面する課題ではないかな、このように思っております。時期が時期ですから、ぜひこの際、特に地方の医師確保について、舛添大臣の御所見、決意を聞いておきたいと思います。

舛添国務大臣 これまで、お医者さんは余っている、偏在しているだけだという話であったのを、やはり全体が足りないからこういうことになるんだというので、十一年ぶりに閣議決定を変えました。そして、ふやすということで、この四月から入学定員を約七百名ふやしますので、十年後には医師が一・五倍になるぐらいの大きなビジョンを描いておりますので、例えば産科なんかでも、学生がなかなか来なかったのが、頭打ちになって、今伸び始めていますので、少しそういう大きなビジョンの影響はあると思います。

 ただ、大臣がやっているのは長期的なことだ、短期はどうするんだ、中期はどうするんだということでありますから、そういういろいろな検討をやっていて、例えば救急医の皆さん方への支援体制、それから、どう女性医師を助けるか。院内保育所をつくる。それから、特に勤務医の待遇改善ということをやる。その中で、新しい研修医制度、これを、二年でやるわけですけれども、それが大学病院の医師派遣機能を失わせたんじゃないかということで、極端な方は、一年に減らしちゃえ、そうすると一年間で八千人お医者さんがふえるじゃないかということもありましたから、これはいろいろな意見を聞かないといけないということで、今までそういう例はなかったんですけれども、文部科学大臣とともに、十二月にこの検討会を開きまして、全く賛否両論、全く違う意見が両方出てきたのを一つの提言としておまとめいただいたので、これですべてとは思っておりません。ですから、医師研修制度も含めて、一次補正、二次補正、本予算で相当な医師確保対策をやっておりますので、そういう形で引き続きこの研修制度も含めて議論をし、地域の医師不足に対して効果的な手を打ちたいと思っております。

高木(義)分科員 終わります。ありがとうございました。

菅原主査代理 これにて高木義明君の質疑は終了いたしました。

 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺分科員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 私も被爆者問題、中でも、被爆体験者という括弧つきですが、この問題について最初に伺っていきたいと思います。

 長崎県の被爆地域拡大連絡会は、長崎県、長崎市とともに、数次にわたり被爆体験者支援事業の抜本的な改善を厚生労働省に要請をしてきました。被爆体験者は、この事業が創設された二〇〇二年の制度に戻してほしいというのが当面の切実な要求であります。

 二〇〇六年の改定によって、被爆体験の記憶がない者は対象としないと、約三千人が医療受給者証を取り上げられてしまいました。

 厚生労働省は、二〇〇九年度から、被爆体験者精神影響等調査研究事業について、先ほど大臣の答弁もありましたが、記憶がないと却下したものについて、これは見直すということであるわけですね。そういう理解でよろしいですね。

上田政府参考人 そのとおりでございまして、今、先ほど大臣がお答えいたしましたように、被爆体験の記憶がない場合に対象としないこととする取り扱いを改めることとして、二十一年度予算案において必要な予算を確保したところでございます。

赤嶺分科員 それでは念のために確認しておきたいんですが、こういう措置をとることにしました根拠と理由、これについて聞かせていただけますか。

上田政府参考人 まず、本事業は、原爆投下時、被爆者援護法に定める区域外にあったが、原爆の光あるいは爆風などを体験した方に対して、精神疾患及びその合併症の治療費を支給することを目的として平成十四年に創設したものでございます。

 しかし、経緯をちょっと申し上げますと、感染症など対象外の疾患にまで医療費が負担をされている、あるいは運用に問題が見られたということから、平成十七年度に事業の適正化を図り、その際、事業の性格上、被爆体験の記憶が必要である旨を明確化したわけでございます。これは一定の科学的な議論を踏まえてこのようにしたわけでございますが、その後、昨年四月に、長崎県・市より、被爆体験の記憶の有無にかかわらず、被爆体験に基づく不安を抱きながら精神疾患に悩んでいる方も本事業の対象とすべき旨の報告書の提出があったわけでございます。

 この報告書を踏まえ、また、私どもも専門家の意見を聞き、そういう中で今回このような取り扱いに改めることにしたところでございます。

赤嶺分科員 私もその報告書を持ってまいりましたけれども、被爆地域拡大に係る事業検討会報告書、これでよろしいわけですね。

上田政府参考人 そのとおりでございます。

赤嶺分科員 そうしますと、当然のことでありますが、二〇〇六年の改定で却下されたすべての方に医療受給者証が確実に交付されるようにすべきだと思いますが、その点、大臣、いかがですか。

舛添国務大臣 基本的に、新しいこの方針にのっとりまして、そのとおりに、この新しい方針の精神にのっとって実行していくということでございます。

赤嶺分科員 二〇〇六年の改定というのは、この点に限るものではないんですね。幾つか問題点がありますが、あと一つ伺いますが、それは、医療受給者証更新時の精神科医の意見書を、三年に一回から毎年に変更されているわけです。精神科医師の事務もふくそうし、一般患者の治療にも影響を来し、さらに何よりも被爆体験者に、被爆者ですが、経済的、身体的負担を強いており、更新を辞退する方も出ておられます。

 これについても、制度をつくったときと同じように、精神科の医師の診断を三年に一回にする方向で検討している、こういう理解でよろしいでしょうか。

上田政府参考人 御指摘の精神科医の意見書を毎年添付することについては、平成十六年の検討会報告書を踏まえ、精神科医師が継続的に関与することを通じて、本事業の本来の目的である精神疾患や合併する身体症状等の治癒を図るため実施することとしたものでございます。

 しかしながら、現在、地元からの御要望もございます。制度の趣旨を踏まえつつ、対象者の方々の負担軽減の観点から、意見書の添付の取り扱いについてどのような対応が可能かということを、先生今御指摘の点も含めて検討しているところでございます。

赤嶺分科員 これはもう被爆者の方々、むしろ被爆体験者と言われていることでさえも義憤を持っていらっしゃる方々が、なおその制度について手続が大変な負担になって、その制度さえも手続をとれないでいる。これが毎年の更新にかかわって出ていることですから、ぜひ三年に一回、これはもとに戻すだけの話ですから、ぜひもとに戻していただきたいと思います。

 二〇〇二年につくられたこの被爆体験者支援事業は、先ほども議論がありましたけれども、未指定地域の住民にとっては放射線の被害の影響はないとして、原爆を直接体験した住民、被爆体験者にとって最も深刻であるがん、これが医療給付対象から除外されているわけです。これは私は被爆体験者の被爆の実相を全く無視したものだと考えております。

 被爆の実相を踏まえて、最も深刻ながんを対象疾患とすることを早急に検討すべきだと思いますが、いかがですか。

上田政府参考人 現行の事業は、原爆投下時、法令に定める区域外にいて放射線の影響は認められないが、原爆の光を目撃するなどの体験によって各種の不安などを抱えておられる方々に対して、その特定の精神疾患の治療等に係る医療費の支給を行う、こういう性格のものでございます。

 こうした趣旨にかんがみますと、給付の対象となる疾患を不安に基づく特定の精神疾患及びそれにかかわるような高血圧や胃潰瘍など当該精神疾患に起因する合併症としているものであり、感染症とか外傷は精神的な要因により発症するという医学的知見がないということから対象となっていないわけでございまして、御質問のございましたがんにつきましても、感染症や外傷と同様、精神的な要因により発症するものではないということから対象疾患に加えることは適当ではないと考えているところでございます。

赤嶺分科員 大臣、これは苦肉の策としてつくられた制度ですから、被爆の実相と違うことがあらわれていると思うんですよ。

 私、被爆体験者のSさんの手記を地元でいただいてまいりました。長い手記ですが、ちょっと要約して読み上げてみたいんですが、この方は、医療受給者証を交付され、そして、この間、胃潰瘍を繰り返し、一九九二年には出血性胃潰瘍で胃を切除しておられます。二〇〇四年に胃痛、胃部不快感、食欲不振のため精密検査をした結果、残胃がんで、膵臓、肝臓に転移が認められ、入院、治療をされた方であります。

 ところが、胃がんと診断されたことで、医療受給者証の対象から除外されてしまったわけですね。入院後の医療費の負担が重く、受診も中断せざるを得ず、経済的にも追い込まれて、壮絶な闘病生活を強いられ、六十四歳で亡くなられた方であります。

 胃潰瘍を繰り返して、胃がんと診断されたら医療受給者証の交付は受けられないというのは、明らかにおかしいと思うんですよね、同じ人が。こうした事例はもう無数にあるわけです。

 なぜがんを対象にしないのか。これは大臣、やはり現地に行かれて、被爆体験者という方々の声に耳を傾けて、被爆者の実相に照らして、がんをこの事業の対象にしないのはおかしいというような決断が求められていると思うんですが、大臣はいかがでしょうか。

舛添国務大臣 これは、今の例でいうと、胃潰瘍と胃がんとの関係が医学的にどうなのかというようなことを含めてのいろいろな検討が必要だと思いますから、いろいろな声には耳を傾けますが、医学的な知見をやはりきちんとする必要があると思いますので、今の先生の御意見もきちんと念頭に置いた上で、どういうことができるか検討させていただきたいと思います。

赤嶺分科員 こういう事例というのは、たまたま起こったことではなくて、無数にあるわけです。

 長崎の被爆地域が爆心地から南北に十二キロ、東西七キロの区域に限定され、被爆未指定地域の住民は長年にわたって、爆心地から半径十二キロ以内を被爆地域にすることを求めて運動を続けてまいりました。被爆の実相を直視していったら、被爆体験者と言われている方々も被爆者であります。国は、被爆体験者を被爆者と認定して、被爆者援護法を適用すべきである、このことを強く要求しておきたいと思います。

 そこでもう一つ、今度は脳脊髄液減少症に関する問題であります。

 これは、スポーツや交通事故などの衝撃が原因で脳脊髄液が漏れ、激しい頭痛や目まいなどに襲われる。脳脊髄液減少症の患者は全国で三十万人とも言われ、これまで脳脊髄液減少症患者支援の会などの関係団体や四十七都道府県の議会は、国に対して、脳脊髄液減少症の研究、治療の促進、脳脊髄液減少症に対するブラッドパッチ治療法の保険適用を求める要望書や意見書を上げて、現在、三十七万七千人もの署名が全国から提出されております。

 昨年の二月に舛添大臣も患者と面会をされておりまして、患者の要望について、しっかり受けとめて、できることをやっていきたいと約束をされております。

 病気の症状に加え、この病気に対する社会的認識の低さから、怠け者病あるいは精神的なものなどと診断されたりして、患者や家族の肉体的、精神的苦痛ははかり知れないものがあります。

 患者の皆さんとの面会から一年たったわけですが、大臣は、この問題、どのように取り組んでこられたでしょうか。

舛添国務大臣 この脳脊髄液減少症の方々、今委員おっしゃったように、直接お会いしましたし、ブラッドパッチを打ってこんなによくなったよという話もそのときにもお伺いしております。その後も何度か、患者の皆さん、支援する皆さん方とも協議を重ねています。

 そういう中で、全体的な大きな話として、やはりこれを含めて難病対策をしっかりするべきだということで、この研究の二十五億円という予算を四倍増の百億円ということで今お願いをしているところでありますので、これでさらに進めたいというふうに思っています。

 ただ、具体的に、山形大学の嘉山医学部長を中心に研究をなさっていますが、その詳細、どういうところまで進んでいるかは、ちょっと健康局長に答えさせたいと思います。

赤嶺分科員 進めている、進めるんだというお話でありましたが、具体的な事例に入っていきますけれども、ただ、その前にやはり、今大臣もおっしゃられたブラッドパッチという治療法ですね。この脳脊髄液減少症に極めて効果が上がる。全国で百近くの病院で三千人以上の治療が行われて、約七割の例で、七割が症状の改善が得られた。これを保険適用してほしいと、切実であるわけですが、全国でも病院が限られている。患者がその限られた病院に押しかけて、治療に至るまでに一年も二年も待たされている。こういう非常に患者にとっては切実な現在があるわけですね。

 きょうあすにも治したいというのがあるわけですが、やはりブラッドパッチの治療法で成果が生まれているという、この成果を早く生かしていくべきではないかというぐあいに考えているんですが、この点からよろしくお願いします。

上田政府参考人 いわゆる脳脊髄液減少症につきましては、患者さんの方々からさまざまな御要望もいただいております。また、大変御苦労されているというふうに私どもも認識をしております。しかしながら、非常に症状についても多種多様な側面がございまして、その診断、治療に関しては、専門家の間にも幅広い意見があるというふうに承知をしております。

 ブラッドパッチについては成果があるというふうなことも私ども聞いてはおりますけれども、まずはこの脳脊髄液減少症についての診断法あるいは治療法が標準的に確立をされなければ、どういうケースの患者様にブラッドパッチを適用するか、そういうことがなかなか確立しない中で直ちに保険適用というのは難しいということで、限られた患者さんにまず効果があったということはそのとおりではございますけれども、そういう確立をすることがまず必要だということで、脳神経外科あるいは整形外科、放射線科など、さまざまな関係学会の専門家が今参加をして、疾病概念や標準的な診断、治療法の確立に向けて研究を行っているところでございますが、この保険適用の是非につきましては、現在行われている研究の成果が出た段階では検討することになる、このように考えているところでございます。

赤嶺分科員 今、研究会を立ち上げている、保険適用はその成果、結論が出てからだというお話であったように伺ったわけですが、それではその研究会の進捗状況はいかがですか。

上田政府参考人 この研究会の名前でございますが、脳脊髄液減少症の診断・治療の確立に関する研究班でございますが、これに関しましては、平成十九年四月より、厚生労働科学研究費補助金、こころの健康科学研究事業におきまして、山形大学医学部長をされております嘉山孝正先生を主任研究者とする研究班が、現在のところ三年計画で研究を実施しております。

 これまで、症例収集のための共通の評価項目を取りまとめ、現在では、研究班員の所属する複数の医療機関におきまして、検査結果や症状あるいは治療の状況などの情報収集をしていると聞いているところでございます。

赤嶺分科員 研究の情報を収集していると。

 私が伺ったところによりますと、研究のかなめである症例数は、二百五十例予定症例を集めたいということですが、現在はどのくらい集まっているんでしょうか。

上田政府参考人 これは、疾病概念を確立し、標準的な診断法、治療法を確立するということではある程度の症例数が必要でございまして、そういう点からは、二百五十例ぐらいを集めることが適当ではないか、こんなふうに研究班でも判断をされているところなんですが、現時点での症例数は二十二例となっているところでございます。

赤嶺分科員 二十二例といいますと、この研究会は結論を出すのは大体いつごろを予定しているんですか。

上田政府参考人 これにつきましては、三年計画でやっているわけでございますけれども、現在二十二例、十九年四月からですからことしが二年目、三年目ということになるんですが、そういう中で二十二例ということであれば確かに症例数としては非常にまだ十分ではないということでございます。

 そういう中で、私どもとしては、研究班の先生方とよく相談をして、症例の収集にもっと努力をしていただくことと、場合によっては研究期間の延長を図るというようなことをして早急に必要な症例数を集めていただき、標準的な治療法、診断法を確立していただきたい、このように要請をしたいと考えているところでございます。

赤嶺分科員 その研究班が、私ちょっと理解に苦しむんですが、二十二例しか集まらない。その原因は何でしょうか。

上田政府参考人 まず、これは臨床研究ということになりますので、各研究機関の倫理審査委員会がありますけれども、そこでの承認、この研究をするための承認が必要でございます。

 それからもう一つ、研究に参加される患者さんの同意が必要だということで、実はこの二十二例も、母数は八十例の方をまず候補に挙げてやっていったわけなんですが、諸事情それから同意が得られないというようなこともございまして最終的に二十二例になったということでございまして、この辺の手続のスムーズ化というのは必要ではないかと考えているところでございます。

赤嶺分科員 研究班というのは、期間内に結論を出す上でどんな推進体制をとっているんですか。研究班の集まりというのは、ことし、今年度ですか、何回持たれたんですか。

上田政府参考人 ことしは一回ということでございます。

赤嶺分科員 大臣もお会いになって、患者から直接ブラッドパッチの効果についてもお聞きになって、早く標準的な診断基準、治療基準を決めていきたいとして研究班をつくって予算もふやした。しかし実態は、一回しか集まりが持てていなくて、その研究の成果を出す上で一番大事な症例についても八十人にしか当たっていなくてわずか二十二例ということになってくると、今何か延期というお話もありましたけれども、これは努力を尽くされた上でそういう結果になっているのか、それとも別の要因があってそういうぐあいになっているのか、本当に努力されていたんですかということを伺いたくなるんですが、この点、いかがでしょうか。

上田政府参考人 研究の性格というのは、もちろんこの問題については私ども非常に重要な問題だと考えてはいるんですが、研究の主体は先生方にあるということと、先ほどから申し上げてございますように、患者様の御同意が得られないケースがあり、また、なかなか倫理審査委員会での判断というものに手間取るというようなこともございまして、現在こういう状況でございます。

 確かに御指摘の、おくれているといった点はそのように私どもも考えますので、私どもとしましても、研究班の先生方とよく連絡をとって今後のあり方についてよく相談をさせていただきたい、このように考えております。

赤嶺分科員 研究班の会合が一度しか持たれなかったというのは、これは研究を進めていく上でどのように理解されておりますか。

上田政府参考人 これにつきましては、現在症例の対象になる方々を収集しているということでございますので、必ずしも研究班の先生方が一堂に会することが必要だというわけではないとは思うんですけれども、確かに一回というのは少ないというのはそのとおりでございます。

 ただ、さまざまなメール等の連絡によって、一定の患者様を集めるルールが決まればそれに基づいて一斉に走り出すということでございますので、そういう点で何か支障があるということであれば、私どもとしても、その辺は明確にして先生方と一緒に考えていきたい、このように考えているところでございます。

赤嶺分科員 医学の分野で科学的な知見をお持ちの先生方が研究を進めているということは理解できます。しかし、一斉に走り出すといっても、お互いに、症例が集まってくるのが少ない、遅い、どうしようかというのはやるべきじゃないですか。それはやって当然だと思いますが、いかがですか。

上田政府参考人 もちろん倫理審査委員会の迅速化、それから、私ども聞いておりますのは、症例を集めるために患者様に御協力をいただく、症例を集める対象の医療機関の数をふやすということを今研究班の方でも検討されているということでございますので、そういうものを促進しながら、できるだけ早く適切な症例数を集めたい、このように考えているところでございます。

赤嶺分科員 ぜひ促進方をお願いしたいんです。

 大臣、私も先日、二〇〇三年当時、中学二年生の女性の方、この方は学校の体育館でほかの生徒のけった硬球バレーボールが頭部に当たり、その場に倒れて、治療に苦しんだという女性にお会いすることができました。

 この方が手記の中で、「激しい頭痛と、強烈な吐き気がアタシの体をおそった。目の前の視界が一気に変わり、声にできないほどの痛みは、治ることなく、耳鳴りと共にどんどん激しくなっていった。」「まるで、首の据わらない赤ちゃんみたいで、ナイフで突き刺されたような激しい痛みが、アタシの頭をおそう。」「私の体は全く違う体とすり替えられたように変わっていった。食事も出来ず、昼夜を問わず、激しい頭痛と吐き気が治まらず、不眠の日が続いた。」「手に力が入らず、箸を持つこともままならなかった。」「今まで、何度も神様に祈った。アタシを元の体に戻してください・・」「アタシの人生は、このボール一つからガラガラと音を立てて崩れていった。」このようにつづっておられます。

 学校の中での事故を原因とするものも多いんですね。だから文部科学省も冊子を出して注意を喚起している。

 この方はことし二十歳を迎えました。思春期、青春をこの病気で苦しみ抜いていて、その後、ブラッドパッチ療法を受けて、この間は飛行機で大分県から国会にまで来られるというぐらいまで回復したんですね。その方がおっしゃった言葉がとても印象的でした。なぜ患者がいるのに病気として認められないのか。この患者さんは、自分はこんなによくなっている、自分は病気だったんだ、何でそれを政府は認めないんだ、このようにおっしゃっているわけですよ。

 ブラッドパッチの治療を受けて少なくない患者が回復してきておりますが、この治療費は一回で二十万から四十万、三回受けなきゃいけない。非常に高額なため治療を断念する、こういう方もいらっしゃるわけですね。ですから、研究を促進していくための国の手だて、ブラッドパッチ治療の保険適用、患者救済のためになお一層努力すべきだと考えますが、大臣の決意を伺いたいと思います。

舛添国務大臣 この疾病以外にもたくさん難病の方が来られる、例えばこの薬を一刻も早く承認してくださいと。ただ、そこで常に問題が起こるのは、これが薬害を引き起こしたらどうするかという副作用の問題がありますので、安全性と有効性をきちんと確立しないといけない、そのための臨床研究があるわけですね。

 ですから、臨床研究体制をさらに推進し、それから患者の皆さんの御協力も、全国に散っておられますから、いただいて、できるだけ早く症例を集める。そして、こういう承認をするPMDAという医薬品医療機器総合機構、この承認をする人員体制も一気にふやしてこれを迅速化する。今まで新薬について例えば四年かかっていたのをアメリカ並みに五カ年計画で一年半にする、そういう大きな政策の中で、この問題についてもさらに進めることができるかどうか。しっかりと患者の皆さんのことを念頭に置いて、さらに前に進めたいと思っております。

赤嶺分科員 国としてきちんと責任を果たしていただくことを申し上げて、質問を終わります。

菅原主査代理 これにて赤嶺政賢君の質疑は終了いたしました。

 次に、内山晃君。

内山分科員 民主党の内山晃です。

 きょうは二点ほどお尋ねをいたします。

 まず初めに、国民年金基金の年金受給口座についてお尋ねをしたいと思います。

 ある国民年金基金では、年金受給口座を郵便局のみとした年金裁定請求書を使用し、郵便局に口座をお持ちでない方は口座を開設してほしいという旨の案内を同封している、こう聞きました。

 本来、年金受給口座というのは本人の自由意思で、利便性の高い金融機関で受けるのが筋だと思いますけれども、このような国民年金基金の行為というのは適正でしょうか、まずお尋ねをしたいと思います。

渡辺(芳)政府参考人 御承知のとおり、国民年金基金は、国民年金の第一号被保険者の方が、地域あるいは職域における共助の精神に立って、高齢期の所得確保に自主的に取り組むため設立、運営されているものであります。ただ、公的年金の付加年金部分を代行しているということから、公的な制度としての側面も有しているわけであります。

 そうした国民年金基金の運営事務は、基本的には各国民年金基金の判断により行うべきものではあるものの、御指摘については、まず関係者からよく事情を聴取する必要があるのではないかと考えます。

 御指摘のお話が、仮にも、個別の実態として、本人の意思にかかわらず一方的に年金の受取金融機関を限定しているということであるとすれば、加入員の希望する金融機関を選択できるとする権利を阻害することとなり、いかがなものかと考えております。

 いずれにしても、厚生労働省として、加入員の権利を損なうことがないよう、必要に応じ国民年金基金を指導してまいりたいと考えております。

内山分科員 郵便局のみしかないという向こうの指示のとおりに、既に郵便局だけで口座を開設して年金を受給されている方がいらっしゃるとすれば、その人たちに対してこの年金基金から、それは今後、他の金融機関にも口座をかえることができますよという文書の通知を発送するような指示を与えますか、どうでしょうか。

渡辺(芳)政府参考人 個別の事例に即して考えるべき点もあるのかと思いますけれども、私ども、両者といいますか、加入員の方々のお声それから運営している側の声、両方をきちっと明らかにした上で、御指摘のとおり、法令上は希望するところ、こうなっておるのですから、そこをきちっと担保できるように指導してまいりたいと思います。

内山分科員 それでは、この基金の関係はもう一歩、ちょっと大臣に聞きたいのです。

 なぜ国民年金基金はこういうことを行ったのかというと、払込手数料が郵便局は三十円、一般の銀行が八百四十円なんですよ。やはり基金に対して払込手数料の負担が大きいと思うんですね。こういうことを大臣はどんなふうにお考えになりますか。

舛添国務大臣 郵便局も株式会社化されて、民営化されているわけですから、そういう意味では、ある意味で自由な競争。例えば我々が諸機関、金融機関に払い込むときも、インターネットを使うとかいろいろな方法で安くする手段があるので、ある程度の自由な選択肢はあると思いますけれども、今おっしゃるのはちょっと極端に過ぎるかなと思います。

 だから、そういうところを何でもかんでも規制すればいいというものじゃないと思いますけれども、何らかの形の、公共的なお金の授受についてはある程度の、差が余り大きくできないようなことがあった方がいいかなという感じがしますけれども、今後の検討課題にさせていただきます。

内山分科員 それでは、質問をかえまして、戦没者の遺骨収集についてお尋ねをしたいと思います。

 昨年十一月十六日、琉球新聞が、糸満・荒崎海岸でNPO団体が二十七遺体を収集したと報じています。

 当日は、午前九時半から午後三時ごろまでの六時間で、余り広くない範囲で遺骨を見つけた。戦後六十三年、亡くなってそのままの姿で風雨にさらされ続けていた。しかも、海外ではなく日本国内での出来事であるわけでありまして、今まで国は一体何をやっていたんだろうか。私は、岩の間や岩陰などの地表に遺骨がある写真を見て、強いショックと怒りを感じました。大変悲しい出来事がまだ終わっていない。心がすごく痛みます。

 佐賀県にあるNPO法人が、戦没者を遺族のもとへと活動されています。きょうは、このNPO法人が発行した冊子をもとに質問をさせていただきたいと思います。

 大臣、こんな写真なんですよ。地表遺骨なんですね。そのまま埋まることもなく、亡くなったままの姿で地表に横たわっている。これは物すごいショックだったですね。何でこんなことになっているんだろう。

 戦後六十三年が経過した戦没者の遺骨収集について、国は積極的に遺骨収集活動を行っていないとの指摘がございます。なぜ、今、積極的に遺骨収集を行っていないのか、その理由をお尋ねしたいと思います。

及川政府参考人 お答え申し上げます。

 遺骨収集につきましては、戦後、昭和二十七年から順次、積極的に実施してきているところでございます。当初におきましては、戦友の情報ですとか当方で所持しております戦史に関する書類といったものに基づいて、網羅的に各戦域、主要な戦域を網羅したということでございます。

 その後につきましては、それまでなかなかできなかった地域、あるいは新しい情報等に基づいて積極的に収集してきたところでございますけれども、何分、戦後六十年が経過して、戦友の方々の高齢化、新しい情報が少ないという状況の中で、最近におきましては、平成十八年度から当面三年間というふうな期間を区切りまして、情報収集事業ということで民間の団体に委託いたしまして、集中的な情報の収集ということで、フィリピン、東部ニューギニア、ビスマーク・ソロモンといった戦没者の方々が多い地域を中心に実施してきているということで、こういったことも含めて、積極的に遺骨収集に取り組んでいく姿勢でやっているところでございます。

内山分科員 戦没者の情報収集ということで、政府は、戦没者収容をいつまでもだらだらやっても仕方がないと、今話されましたけれども三年間で区切りをつけると、尾辻厚生労働大臣の時代に調査予算を二千九百万円出されたわけですね。

 この十八年度の二千九百万円、一体どのような成果が得られたのか、具体的に御説明をしていただきたいと思います。

及川政府参考人 情報収集事業の成果でございますけれども、平成十八年度から三年間の中で、方法としましては、現地の住民の方々、コンタクトパーソン等にいろいろなことをお願いして、あるいはテレビ、ラジオ、新聞といった広報も含めまして情報収集に努めた、そういった中で、三年間を通じまして、これらの地域で三百六十三柱の遺骨を収集するということで、一定の成果が得られたというように考えております。

 しかしながら、より多くの成果を上げることができないかという観点も含めて、これまでの事業の問題点を見直して、二十一年度以降さらに、この事業の見直しも含めて、予算的にも拡充をお願いして進めていきたいというように考えているところでございます。

内山分科員 具体的には何か施策はありますか。

及川政府参考人 具体的な方策でございますけれども、これまでの三年間の経過を振り返りまして、コンタクトパーソンをお願いする方々に対しまして、もう少し手厚く、調査員として常時一定の期間を雇い上げるという形で、恒常的に情報収集に当たってもらうことができるような体制をつくる。

 あるいは、民間団体の方々が情報収集、調査に現地に赴くわけですが、それも、短期間ではなくてある程度長期間現地に行って、現地調査員の方々と密接な連携をとるような対応ができる予算措置を講ずる。

 あるいは、政府といたしましても、対象となる地域に対しまして、外交ルートを通じて、環境整備に努めるといったことも含めて改善を図っていきたいというように考えているところでございます。

内山分科員 アメリカ国立公文書館に、米軍の対日戦の戦闘報告書、諜報報告書、無線傍受記録、捕虜尋問書などの、戦闘や日本軍がとった作戦が詳細に記録されていて、これらの記録を細かく分析すれば、二百四十万人の戦没者が、いつ、どこで、どのようにして戦死したかが明らかになる重要な資料をNPOの団体が自費で調査をしています。

 本来、日本政府がやるべき仕事と考えますけれども、政府は、このアメリカ国立公文書館の調査に対してどのように対応するか考えていますか。

及川政府参考人 御指摘ございましたアメリカの資料につきましては、率直に申し上げまして、これまで本格的に政府として対応してきていなかった部分でございます。

 これにつきましては、平成二十一年度予算の中で、新たに、アメリカの国立公文書館に当面重点を置きたいと考えてございますけれども、そこで保有しております部隊日誌等の資料を調査するというふうに取り組んでいきたいというように考えております。

内山分科員 大臣、今私が申し上げましたアメリカの国立公文書館の資料なんですよ、これは訳してありますけれども、ガダルカナルでどういう戦闘が行われて、どこで何年何月、どこの丘で何人亡くなっている、こんな資料があるんですよ。こういう資料を入手すればもっと的確に遺骨収集ができるんだろうと思うんですね。これはやはり国として早急にやらなきゃいけないんですよ。一NPO団体の尽力や経費ではとても解決できない。

 ぜひ大臣、そこはしっかりと力を入れていただきたいんですけれども、大臣からの所見をお願いいたします。

舛添国務大臣 ぜひ、そういう形で調査研究をさせたいと思います。

内山分科員 それでは、沖縄のことでお尋ねをしたいと思います。

 沖縄首里城下の三十二軍司令部ごうの発掘調査について、この司令部ごうでは多くの負傷兵が、戦闘が激しくなり司令部を撤退するときに、実は青酸カリや手りゅう弾で自害をしている。こういう世界遺産でもある首里城下の地下が、現在、戦没者の墓場状態になっているんだ、こういうことが書かれているわけでありますけれども、その実態は把握をされているでしょうか。

及川政府参考人 御指摘がございました首里城の地下ごうでございます。

 これにつきましては、国土交通省と農林水産省が、この地下ごうの安全面という考慮から調査を沖縄県に依頼して実施してございまして、平成十七年度特殊地下壕実態調査といったものが沖縄県から提出されているということで承知しておりますが、それによりますと、首里城地下に所在するごうにつきましては、現在、入り口が完全に封鎖されていて、ごう内に入れないという報告がなされていると承知しております。

 私どもも、その後沖縄県の担当者に確認してございますけれども、ごう内に入るためには、いろいろな保安措置も含めまして、その工事につきましては技術的に相当困難が伴うというように聞いているところでございます。

内山分科員 ということは、調査をされないんですか。

及川政府参考人 現状におきましては、今後、沖縄県と相談していく必要もあるというようには考えておりますけれども、当該ごうにつきまして、これまでのところ、遺骨が存在するという具体的な情報をまだ得ていないということもございまして、現時点ですぐに遺骨収集を行うということは予定していないところでございます。

内山分科員 この冊子によりますと、沖縄県の大田知事が、今なら体験者も遺族もおられるのだから、一日も早く戦没者の収容をしてほしい、こう語られているんですよ。やはりそういう事実があるということがこの冊子にも出ていますから、ぜひ早急に検討すべきだと思いますけれども、もう一度、今後どうされるか。

及川政府参考人 具体的な情報につきまして、NPO法人の方々とも意見交換を行ったり、あるいは必要に応じて沖縄県の方とも相談して、さらに状況を把握するように努めてみたいというように考えます。

内山分科員 続きまして、沖縄糸満市の不明、埋没ごうの調査について、NPO団体の調査では、二百四十ごうのうち、手つかずのまま未確認ごうが百五十カ所も判明したとございます。国はこの実態を把握していますでしょうか。

及川政府参考人 お答えに入ります前に、全般的な概況につきまして説明させていただきますと、沖縄における戦没者数につきましては、私どもとしまして約十八万六千五百人と推計してございます。これに対しまして、これまで、民間の方々による遺骨収集も含めて、国、沖縄県におきまして収集いたしました遺骨が十八万六千百四十二柱ということで把握してございます。

 そういった中で、今御指摘ございました地下ごうでございますけれども、ガマですが、県内に二百四十八カ所の築造された地下ごうが存在していて、糸満市に三十七カ所あるという報告が、先ほど申し上げました、沖縄県が国土交通省等に提出した資料の中に触れられているというように承知しております。

内山分科員 こういう資料では、ガマの二百四十の所在地が一覧となっているわけですね。そういう資料がありますから、これはやはり手つかずのままということであってはならないと思います。

 さらには、この埋没ごうを探査する手法としては、電気探査による空洞調査というのがありまして、これで何かこう電気的にやる、磁気的にやると下の空洞がわかる。こういう手法を使えば、より効率的にわかるんだということを書かれていますけれども、こういう手段を使って、国が積極的に未確認ごうの発掘調査をする意向はありますか、どうでしょうか。

及川政府参考人 御指摘ございましたごうでございますけれども、ごうの中にはさまざまな形態のものがございまして、地すべり等の危険があるもの、あるいは史跡に指定されているもの、私有地であって地権者からの掘削許可が必要といったさまざまなものがございます。他方でまた、遺骨が存在するという確たる情報がないというふうな状況も多くございます。

 したがいまして、きょう御議論ございますNPO団体の方々との連携といったことも含めて、情報がありました場合には、国として必要な調査、遺骨収集といった対応に努めてまいりたいというように考えております。

内山分科員 今度は、フィリピンのレイテ島の埋葬日本兵調査についてお尋ねをしたいと思います。

 タクロバン市パロ町には、米軍が日本兵千九百二十四人を埋葬したという記録がありながら、日本政府は全く今まで手をつけていないという状況があるようでありますけれども、この点についてお尋ねをします。

及川政府参考人 御指摘ございましたレイテ島のパロでございます。

 この件につきましては、今お話ございました点につきまして、今月に入りまして、このNPO団体の方から私ども社会・援護局の方に、活動状況の説明をお聞きしております。

 埋葬地図を入手して、具体的に、そのパロの町役場の横の空き地に日本軍兵士の遺体を埋めたという現地住民の証言が得られているので、同法人として近く試掘を行いたいという報告を受けてございます。

 したがいまして、私どもとしまして、この試掘の結果をまたお話しいただいて、その上でその状況に基づいた対応を、国として必要な対応をしていきたいというように考えております。

内山分科員 パラオ共和国のペリリュー島の件でちょっとお尋ねしたいんですけれども、ここの遺骨収集がおくれているという理由をお聞かせいただきたいんですが。

及川政府参考人 お答えします。

 ちょっと質問通告がなかったもので、具体的に把握しておりませんけれども、それぞれの地域におきまして、やはり現地政府との間でいろいろな環境整備といった面が必要ということが一般にございます。

 ペリリュー島につきましては、今ちょっと確認しましたところ、遺骨の鑑定といったことも含めて、その実施方法につきまして現地政府との間でなおその交渉の必要がある、事故があったりといったことも含めて、環境整備が必要な状況があるというふうに聞いております。

内山分科員 今、交渉中ということで了解してよろしいんでしょうかね。はい。

 次に、硫黄島の滑走路移設ということについてお尋ねをしたいんですけれども、現在、防衛省は、滑走路下の遺骨を収集するために、滑走路の移設のための資料収集と現地調査費用として二十一年度予算に約一億円を計上しています。

 厚生労働省として、防衛省と遺骨収集のために今後どのような協議をしていくのか、対応するのか。何かありましたら聞かせていただきたいんですけれども。

及川政府参考人 お答え申し上げます。

 硫黄島につきましては、これまで長い年月をかけて、鋭意遺骨収集に取り組んできましたけれども、まだ約四〇%の遺骨しか収集できていないという状況でございます。

 そういった中で、これまでやり残した対応といたしまして、島のほぼ中央部を占めております、防衛省、アメリカ軍が使用している滑走路、ここの地下については収集をこれまで行っていないということがございます。そういった中で、防衛省の方で、滑走路の補修に合わせて、滑走路を移転した上で対応するということを現在検討しているというように聞いております。具体的には、防衛省といたしましては、二十一年度においてこの移設に関する環境現況調査を実施するということで聞いてございます。

 厚生労働省といたしましては、防衛省の検討に合わせてこの滑走路地区の遺骨収集を進めていくという方針で対応したいというふうに考えておりまして、具体的には、二十一年度におきましては、滑走路を移設するとした場合の移設候補地の周辺につきまして、地下ごうの状況がどうなっているか、空洞調査を地表から行うという対応を行いたいというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、二十二年度以降につきましても、この滑走路移設の問題についての防衛省の対応方針と合わせながら、遺骨収集の対応方針を検討していくという姿勢で対応してまいります。

内山分科員 しっかりと連携をとってやっていただきたい、こうお願い申し上げます。

 大臣、戦後六十三年もたって、いまだにこういう地表に遺骨が転がっているなんということは、あってはならないと思うんですよ。だらだらやってはならないということで、尾辻大臣のときにも、三年で区切るよといってもやはり区切りはつかないわけでありまして、ここはもう本当に、戦没者を安らかに埋葬するというのは国の責務です。国の責任でもっと積極的に、もっと急いで対応すべきだと私は思いますけれども、大臣の決意とその辺の所感をお尋ねします。

舛添国務大臣 委員から、各地の今の遺骨収集状況についてお話がありました。私のところにもたくさんNPOの方々が来られて、本当に御苦労で、こういう方々のお力は大変大きいということで、ぜひ今後とも協力してくださいということを申し上げております。

 国としても、今年度も予算を三千二百万円までふやす。それから、その中でもとりわけ情報収集、今まで二千九百万でしたのを六千二百万にふやすということで、情報収集のための予算を置いておりますので、いつまでもだらだらということではなくて、やはりある程度の区切りはつけないといけないと思います。

 先ほどの、首里城の下にそういうのがあるのかなというのを、今初めてお聞きするので、私もしょっちゅう沖縄に行ってこういう問題にかかわっていたつもりなんですけれども、ですから、新たな情報が出てくれば、またきちんとやっていきたいというふうに思っております。

 先ほど、ちょっと私が数字を間違って申しまして、遺骨収集関連予算が全体で二億四千万、それを三億二千百万までふやすということで、そして、収集事業は二千九百万から六千二百万で間違いありません。ちょっとけたを言い間違えておりました。訂正させていただきたいと思います。

 ただ、本当にこの遺骨収集、これは粘り強くやっていくこともありながら、しかし、これが終わらなければ本当は戦後が終わらない、そういう思いで、今後ともしっかりと取り組んでまいりたいと思っております。

内山分科員 時間の前ですけれども、これで終わります。ありがとうございました。

菅原主査代理 これにて内山晃君の質疑は終了いたしました。

 次に、大串博志君。

大串分科員 ありがとうございます。民主党の大串博志でございます。

 きょうは、予算委員会分科会でのお時間をいただきました。

 まず冒頭に、大臣、今、内山委員の質疑も私聞いておりまして、この遺骨収集、NPO法人をつくられている方、佐賀の方でいらっしゃいます。私の地元近くの方でもいらっしゃって、私も会にも何度も参加させていただいて、その御苦労、そして遺族の方の思い、私自身も、インドネシアの大使館勤務を二年間して、そこで実は、厚生労働省からいらっしゃっている方、本当に大変な思いでやられている現場も見せていただきました。ぜひ、倍旧の取り組みをいただけたらということを私からもお願い申し上げておきたいというふうに思います。

 さて、きょうは私、雇用促進住宅の問題に関して、大臣に御質問させていただきたいというふうに思います。

 私の地元の方でも、雇用促進住宅の見直しの議論が現実に起こっております。これは全国的なことでございますけれども、雇用問題が非常に先鋭化する中で、雇用促進住宅のあり方をどうしていくのかというのは、職を失った方々あるいは非常に所得の低い皆さん等も含めて、社会政策的な色彩の非常に強いものでございますので、真剣に国としても取り組んでいかなければならないというふうに思います。

 まず大臣に、雇用促進住宅の意義といいますか、機能、役割、これについてどうお考えなのか、御所見を問いたいと思います。

舛添国務大臣 これは、委員御承知のように、もともとは大きな産業構造の変化、例えば石炭から石油へ、こういうことに伴うときに、やはり住居の問題をしっかりしないと産業構造の変化にも対応できない。

 今は、移転就職者や、配置転換または出向等のため、住居の移転を余儀なくされたこと等に伴い職業の安定を図るために宿舎の確保が必要であると公共職業安定所長が認める者を対象としてこういうことをやっているわけですから、やはり働く人たちの住宅の確保がなければ、職業選択の自由ということにもかかわってくるわけですから、私は非常に重要な意義を持っていると思っております。

大串分科員 それでは、事実関係を少したどらせていただきたいというふうに思います。

 雇用促進住宅に関しては、今、譲渡・廃止という流れの中での議論が進んでいるわけでございますけれども、きょうはこの進め方について少し議論させていただきたいと思いますが、これまでの譲渡・廃止に向けた取り組み、経緯、進め方、この事実関係について御説明いただきたいというふうに思います。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 雇用促進住宅につきましては、行政改革等の観点から、これまで累次の閣議決定等によりまして、譲渡・廃止の方針が打ち出されてきたところでございます。

 具体的に申し上げますと、平成十九年六月の規制改革推進のための三カ年計画におきまして、平成三十三年度までにすべての処理を完了するとされているところでございまして、さらに、同年十二月の独立行政法人整理合理化計画におきまして、全住宅数の二分の一程度に前倒しして廃止決定するなど、売却の具体的方策を速やかに講ずる旨が閣議決定されているところでございます。

 これらの政府全体としての方針に基づきまして、全国におきまして、平成二十年四月一日までに、全住宅の約半数に当たる七百八十四住宅を廃止決定したところでございます。

 こういった方針を踏まえた上で、転居先の確保に困難を伴う入居者につきましては、退去期限の猶予ということで、平成二十二年十一月まで猶予、延ばしておるというようなこと、さらには、住宅が所在する地方公共団体に対しまして、譲り受けの要請や、公共住宅への入居に関する地元自治体への働きかけ、こういった入居者への配慮を十分に行いながら、独立行政法人の雇用・能力開発機構におきまして、住宅の譲渡・廃止を進めているという状況でございます。

大串分科員 ありがとうございます。

 今、譲渡・廃止に向けた取り組み、経緯の事実関係を教えていただきましたけれども、ちょっと質問の順番を変えて、事実関係のところをもう二カ所ほど確認させていただければと思います。

 先ほど大臣がおっしゃったように、この雇用促進住宅は、職業移転の間にきちんとした住居の確保があって初めて職業選択の自由もあるということで行われて、職と住居、この連関性において非常に重要性を持っているものでございますけれども、今回、景気が非常に悪化する中で、急速に派遣切り等々で職を失われた方がいらっしゃいます。その中で、緊急対策として、雇用促進住宅への緊急的な受け入れもやっていただいております。

 これは今どの程度進んでおるのか、事実関係を教えていただければと思います。

太田政府参考人 いわゆる非正規労働者に対する緊急的な受け入れの実績でございますけれども、二月十八日現在における入居決定件数が四千百二十六件でございます。

大串分科員 四千百二十六件に及ぶ方々が今回職を失って、その中で、住居の手当てを雇用促進住宅に受けながら、職の安定を目指して頑張っていらっしゃるということでございます。

 それと、もう一つ事実関係をちょっとお尋ねさせていただきたいんですが、先ほど大臣からも答弁があったように、職が移転する、そこの間に安定的な住居を確保することによって職業選択の自由を確保していくということでございます。

 今回、この雇用促進住宅にこれまでずっと入っていらっしゃった方で、今回の景気悪化の中で、景気深刻化の中で雇用を失ってしまったという方もいらっしゃるんじゃないかと私は思うんです。まさに、そういう側面の方々に対しては、この雇用促進住宅に住むということが、職業移転の間の住居の確保という本来の役割じゃないかと思うんですが、こういう方がどのくらいいらっしゃるのか、調査されていらっしゃるのかを教えていただければと思います。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 雇用促進住宅の入居者の職業等につきましては、住宅の賃貸借契約を締結する時点におきましては把握しておるところでございますけれども、入居した以降につきましては、継続的な把握はしていないという状況でございます。

大串分科員 その点は、私も、そのように伺ったときに、本当にそれでいいんだろうかというふうに思いました。

 雇用促進住宅に住んでいて職を失ってしまった場合、まさにそこに住んでいることが一つの安全弁となって、次の職を探すことの安定的なブリッジになるわけです。ところが、そういうふうな方が幾らいらっしゃるかが調査もされていない。わかっていないままに譲渡・廃止の手続が進もうとしている。これはいかがなものかなというふうに思う次第でございます。

 そこで、この譲渡・廃止のあり方について問わせていただきたいというふうに思います。

 私は、今回の経緯をきちんと事実関係も含めて確認させていただく中で、この譲渡・廃止のこれまでの取り組みが、住民の方々にとってみると、やはり非常に厳しい側面があったんじゃないかなという気がします。

 まず一つには、先ほど、住民の方への配意ということで、地元自治体への受け入れも含めて頑張っておるということをおっしゃいましたけれども、いろいろな確認をさせていただくと、地元自治体に買い取りの意思がありますかというふうな問いかけをされたのは、この意向調査票というのを自治体に送られていらっしゃいます。十七年の夏に、「雇用促進住宅の購入等に係る意向調査のお願いについて」ということで、紙で投げられて、ファクスで返してください、こういうふうな問いかけなんです。そのときには、金額の提示も何もありません。雇用促進住宅の購入の意向がありますか、一、購入したい、二、購入を検討したい、三、価格によっては購入の検討の余地がある等々、ぱっと送られてきているわけですね。これで返答してくださいということ。

 自治体にとって、金額の提示もなくて、いきなり紙が送られてきて、答えてください。これで、私の地元にある小城市の方々は、今のところは購入は検討はしていません、これは事実ですから、購入を検討していないというのは事実でしょうから、そういうふうにお答えされています。これだけで本当にしっかりした確認になっているのかということが一つ。

 もう一つ。廃止決定がなされて以降、いよいよ機構の方から自治体の方には、額を示した上で、買い取りの意思はありませんかという問いかけがなされています。しかし、去年の夏です。本当に自治体が安定的にこの譲り受けを受けるのであれば、二十一年度自治体予算の中でこの予算を飲み込んでいかなければならない。ところが、二十一年度予算を検討する秋冬はもう目の前という段階になって、いきなりぽんと金額を提示されて、どうですか、こういうふうに言われている。これは、地方公共団体にしても、しっかり検討するのは極めて難しい状況ではなかったかというふうに思います。

 ですから、こういうふうな手続の問題もあったんではないかというふうに思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

舛添国務大臣 恐らく、委員がおっしゃるようなそういう手続上の問題もあると思いますし、最初に価格を提示しないでやったというのは、こんなに早く譲渡・廃止の期限が来るということではなかったからだろうと思うんです。十数年かけてやろうと思った。それが一気に行政改革ということでやってきた。

 ただ、いずれにしても、譲渡されるというのを例えば小城市が決められても、例えば予算執行をすぐ翌年じゃなくて再来年にしてください、そういう柔軟なことは十分対応させるようにしたいと思います。

 いずれにしても、こういうときの問題は、地元の自治体ときちんと日ごろからよく協議するということが必要なので、私は、若干そういうところが欠けていたんじゃないかなという気がしますので、今後はよく協議するように、そして、それぞれ事情がありますから柔軟に対応するように、そういう方向で指導したいと思っております。

大串分科員 自治体とよく協議していただくように、そして柔軟に対応するようにということですけれども、その関連で一つお問い合わせさせていただきます。

 住民の皆さんへの説明会が行われております。これは自治体ともよく協議をしていただかなければならないですけれども、もちろん住民の皆さんともよく協議をしていただかなければならない。その地元の住民の皆さんへの説明会において、住民の皆さん以外はこの説明会には参加してもらっては困りますというようなことも事実として言われたことがあるようであります。

 ところが、この地域は地域です。この住宅以外の地域も含めて、この地域には自治会長さんもいらっしゃり、あるいは地方議員の皆さんもいらっしゃる。みんなでこの地域を守っていこうというふうに思っていらっしゃる。その方々が入ってはだめです、住民の方しかだめですと。それで、情報も隔離されたまま説明会が行われる。こういうことはないようにぜひ努めていただきたいんですが、いかがでしょうか。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 個々の事例につきましては全部把握しているわけではございませんけれども、住宅の入居者に対する説明会につきましては、これは賃貸人である独立行政法人の雇用・能力開発機構と賃借人でございます入居者との契約当事者間の関係において行われるものでございますので、原則としては入居者を対象としていると聞いているところでございます。

 しかしながら、今お話ございましたように、入居者以外の方であっても、例えば住宅の所在する市町村等の職員など、立ち会うことに入居者全体の理解や要請等がある場合につきましては認めることとしているところでございますので、個別具体的には、今お話のあったことも含めまして、必要な場合には説明会に参加していただくという方向でやらせていただきたいと考えているところでございます。

大串分科員 ぜひそうしていただきたいというふうに思います。多くの地域では、周囲の方も含めて参加されているみたいなんですね。そして、その方々も含めて地域の問題として取り扱っていくという対応がなされるのが筋だと私は思いますので、ぜひそこはよろしくお願いしたいというふうに思います。

 そして、先ほどの譲渡・廃止に向けてのあり方ですけれども、住民の皆さんの目線からすると、今の退去に向けたスケジュールは非常に急に思われているんじゃないかと思うんですね。先ほど、譲渡・廃止に向けた閣議決定等々の規制改革の流れを教えていただきましたけれども、住民の皆さんがどういうふうにそれを告知されていったかということを丹念に追ってみると、かなり実は急なんですね。

 私の地元の例で言うと、一番最初に住民の皆さんに知らされてきたのは、ここに紙を全部いただいていますけれども、十八年の七月。ここで書かれていることは、廃止のことはほとんど触れられていないんです。地方公共団体等に譲渡等を行っていくことが求められていますので、それをやっていきますので、皆さんと相談させていただきたい、こういうふうな文書なんです。多分、これを読まれた入居者の皆さんは、ああ、そうか、地方公共団体に譲渡されていくのかというイメージを十八年七月に持たれていたんだろうというふうに思います。

 ところが、十九年の三月には、このときは、いわゆる機構の中期計画ができて、三分の一を二十三年度までに譲渡・廃止していくというふうな仕組みになったときでありますけれども、ここに、「入居者の皆様へ」ということで、十九年三月、譲渡・廃止ということを行っていきますというのが知らされています。ただ、このときでも住民の皆さんは、譲渡・廃止かというふうなイメージをお持ちになりながらも、約十五年で譲渡・廃止していくということが書かれているので、自分たちの住宅がそうなるというところは認識を当然されないわけですね。十九年三月です。ああ、そうかという感じだった。

 ところが、今度、二十年六月、これは実際に独立行政法人整理合理化計画によって二分の一の住宅に関して前倒しで廃止決定をするということを決められて以降のことですけれども、二十年六月に、このときに初めて二分の一程度に前倒し云々のことが明らかにされて、あなたのところも含めて、あなたのところも譲渡・廃止なんですよということが言われてきている。二十年六月に初めてこう言われて、えっ、私のところが譲渡・廃止ですかと。

 二十年六月に来て、そして、もともとのタイムスケジュールでいうと、いつ退去しなきゃならないか、二十年十二月末ですよ、契約が切れていくのは。六月に言われて半年後には契約が切れていくというようなことを言われて驚かない人はいないですよね。もちろん、十二月末に契約が切れていくというこのやり方については、去年の九月に延期され、先ほどおっしゃったように二十二年の十一月末までに退去してくださいということになりました。なりましたけれども、それでも、二十年六月に、あなたの住宅は譲渡・廃止ですよ、こういうふうに言われて、二年しか時間がない。この住民の皆さんの驚き、これはやはり相当なものだったろうというふうに思うわけであります。ですから、やはりやり方も考えていただきたい。

 二十二年末までにということ、これは、今決まっているのは、二分の一を廃止決定しなさいというのが決まっている、そして、二十三年度末までにおおむね三分の一の住宅について譲渡・廃止をしなさいというのが決まっている、これだけなんですね。

 ところが、世の中に起こっているのは何かというと、二分の一廃止決定されたものすべてに関して退去してくださいというメッセージが発せられているので、二分の一の住宅の皆さんに関してはすべて退去という重い言葉が頭に入ってきているわけです。もともと目標とされている三分の一を二十三年度までにというのよりはるかに厳しい、三分の一を超えた二分の一という人、かつ、二十三年度末ではなくて二十二年の十一月末、その両面においてはるかに厳しい取り組みになっている。恐らくこれは、機構の方で二十三年度末までにおおむね三分の一を譲渡・廃止し切るということを確実に達成するという観点から余裕を見てやられているんだろうと思うんですけれども、余裕を見るには余りに入居者の方々に対してはきついのではないかというふうな気がするわけであります。

 ですから、この点についてはぜひ大臣に再考いただきたい。これだと、今のこの経済の状況ですから、正直言って、皆さん、違う住居、違う人生を考えていくいとまがないと思います。ぜひ大臣には再考いただきたいんですが、いかがでしょうか。

舛添国務大臣 片一方で非正規の人に、先ほどの数字だと四千件以上、住宅をあっせんしているわけですから、こういうことも考えて、今委員御指摘の経済情勢ということも考えて、この点は検討させていただきたいと思います。

大串分科員 もう少し、大臣、お願いします。というのは、地元の方々は、きょう、あすのことで悩んでいらっしゃるわけです。二十二年の十一月というと、かなり近い状況になってきている。そこで出ていかなければならないのか、こういうことに直面されている。

 今おっしゃった、片方で四千件近い方々を職を失われた方ということで今回受け入れられている、その片方で退去してくださいというのはいかがなものか、私もそのとおりだと思います。ですから、検討していきますというふうにおっしゃっていますけれども、この検討をぜひ急いでいただきたいし、ぜひ具体的に、より受容可能なものにしていっていただきたいと思います。その辺、大臣、いかがですか、もう一声いただけますか。

舛添国務大臣 検討を加速化させて、今の委員の御要請にこたえられるように努力をしたいと思います。

大串分科員 大臣、皆さん、もうせっぱ詰まっていらっしゃいます。本当に自分の生活がどうなるんだろうかということを日々悩み、悩み、悩んでいらっしゃる状況でありますので、ぜひ検討を加速化させてやっていっていただきたいというふうに思いますし、よい答えをぜひ期待させていただきたいというふうに思います。

 もう一つ事実関係をちょっとお尋ねさせていただきたいんですけれども、実際住んでいらっしゃる方が非常に緊張して思い悩んでいらっしゃることは、実際に自分の代替の住む場所が見つからないままに二十二年十一月末を迎えてしまった場合、自分たちはどうなるんだろうかと。代替の住みかはない、しかし二十二年十一月の末が来てしまった、そのときに、国から、出ていってください、こういうふうに言われるんだろうか、強制的に退去してくださいと言われるんだろうか。あるいは、住居を維持するメンテナンス、いろいろなことも今やられていますけれども、こういうメンテナンスも全部ぱったりとまってしまって、もう日に日に住めないような住居と化していって、いてもいられないような状況になってしまうのか、そうやって事実上出ていかざるを得ないような状況に追い込まれていくんだろうか、自分たちはどうなるんだろうかというふうに思われているのが現実の姿なんです。

 今の状況で二十二年の十一月末が来た場合に、政府はこの方々を強制的に退去させる、こういうことになるんでしょうか。大臣、いかがでしょうか。

舛添国務大臣 退去の促進というのは片一方でやりますが、そのときに、では、どこに次入居するか、このあっせんについてもきちんと責任を持ってやりたいと思っていますので、とりわけ各地の自治体の皆さん方と協力して、まさにセーフティーネットの一つの大きな根幹でありますから、そういう点で努力をしたいと思っております。

大串分科員 本当に住むところがあるかないかは、今回の雇用の悪化の中で職を失われた皆さんが住むところもなくされた、これは連続的な変化ではなくて、断崖絶壁から落ちるような断続的な変化、非常に厳しい状況になるということが明らかになったわけでございますので、ぜひ大臣、非常に機械的に、しゃくし定規的に、二十二年十一月になったからもう強制退去よということがないように。

 今、大臣からもお言葉をいただきました。住むところを確保できるようなセーフティーネットをきちんと張りめぐらせるようにしたいというふうに大臣からの御答弁もいただきましたので、ぜひ、住むところがないというような状況に皆さんが直面されないようにお願いしたいというふうに思いますし、重ねて、先ほどの、今のこの退去、譲渡・廃止に向けた枠組みの見直しの方を加速化してやっていただきますように、よろしくお願いしたいというふうに思います。

 さて、雇用促進住宅に関しては繰り返しお願いをさせていただいたということで終わらせていただきまして、最後に一つだけ、年金制度でございます。

 私も、過去、年金制度に関しては、自分自身予算委員会等々でも取り上げ、この制度の問題に対処してきました。細かい問題はきょうは申し上げませんけれども、先般、十二月の末に、私も含めて与野党の超党派の議員で、年金抜本改革策というのを発表させていただきました。見ていただいていると思いますけれども、基礎年金部分に関して税でこれを賄い、それに対して積立金比例の二階部分を乗せていく、こういう考え方でございます。

 今の年金制度、未納の問題、あるいは働き方が大きく変化してきている問題、あるいは長期的な持続可能性の問題等々を考えると、私は、年金制度の抜本的改革はもう待ったなしだというふうに思います。過去の経緯にとらわれず抜本的に改革していくのが今いかようにも必要だというふうに思っておりますけれども、大臣のこの案についての御所見と、そして、ぜひ抜本改革をしていただきたいという願いに対しての大臣の御所見をいただきたいと思います。

舛添国務大臣 私も、政治家になる前から、どういう年金制度がいいのかなと。確かに、賦課方式というのは、これはまさに世代間の協力の仕方、共助の仕方であるわけですから、そういうものがありながら、やはりポータブルな自分の年金だということをやるために一つの積立方式があるだろうと。

 それから、税なのか掛金なのかということで、これはそれぞれにやはり一長一短があると思います。ただ、私が今、年金の記録問題で非常に苦労していますけれども、徴収漏れなどということは、これは税方式にすればなくなります。

 そういう中で、今、委員含めて与野党の有志の方々が、一階部分は全額税方式とするということ、それから二階部分は積み立てだと。これは一つの前向きな提案として、十分議論に値すると思います。

 ただ、いつもそこでぶつかるのは、財源。全部税方式にしたときに、その時々の経済情勢にもよりけりでありますけれども、やはり年金だけじゃなくて、医療、介護、全体の社会保障をサステーナブル、持続可能なようにするためにはどれだけの負担が必要なのか。もちろん無駄は排さないといけないですけれども、やはり、一つは、この一階部分についての財源議論をきちんとやる。

 そして、選挙があるとどうしても増税なんという話ができなくなりますけれども、これはもう与野党を超えて、将来像としてどうするんだという議論をするべきときに来ているというふうに思います。

 それから、二階部分について、拠出の部分をきちんと確定するとすれば、それもまた財源の問題も入ってきますし、積立方式もプラスマイナスはある。

 それと、私が最大に思っているのは移行期間。新制度の設計にもよりけりですけれども、現制度と大きな乖離を持つような制度にした場合に、トランジションピリオドというか、移行期間についてのさまざまな不満が、マイナスになる方が現役あるいは受給者で出てくる。そういうことも含めて、移行期間の問題。

 それは、例えば三十五年くらいかけてやるなら問題ないですけれども、そういうわけにいきません。そのときに、世代間の不公平、さまざまなカテゴリーによる不公平、それをどうやって埋めるのかなというのは、やはり政治の知恵として一つやっておかないといかぬのかなというような感じがしますので、そこはまさに一番難しい問題かなというふうに思っています。

 ただ、何とか、年金の記録問題、すぐに全部ではないですけれども、かなりの部分片づいてきていますから、そういうことで、最終的にはソーシャル・セキュリティー・ナンバーのようなものを入れて、二度と年金記録のミスのような問題が起こらないように片一方でしながら、長期的に持続可能な年金制度、そして世代間の公平のバランスがとれる制度、そして移行期間についてさまざまな不満、不平がそれぞれのカテゴリーから生まれないような制度、そういうことを目指さないといけないというふうに思っています。

 実を言うと、私は、例えば民主党が提案しているような年金制度と今の現行制度だって全く完璧に乖離しているのではなくて、議論をしていけば相当収れんできるような感じがしておりますので、ある意味でそういう一つの収れん案としては非常に意義があるというふうに思っています。

 これはなかなか委員会の場で言い尽くせないので、また機会を見て、学問的にも、また委員といろいろ検討をさせていただければありがたいというふうに思っております。

大串分科員 ありがとうございます。

 私自身は政策マンとして仕事をしてきて、年金の問題はイデオロギーの問題でも何でもなくて、技術的に内容を詰めていけばある一定の選択肢が出てきて、あとは、政治の側の責任と決断と、国民の皆さんとの対話の中で、これでどうですかというふうに決めていくという手順の問題だと思っています。ですから、もう非常に冷静な議論、理性的な議論でいける余地もあるんじゃないかと私は思っているので、ぜひそういうふうな議論を今後も発展させていかせていただきたいと思いますし、最後に、済みません、繰り返しになって恐縮ですが、雇用促進住宅の件はぜひひとつよろしくお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

菅原主査代理 これにて大串博志君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして本分科会の審査はすべて終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつを申し上げます。

 分科員各位の御協力によりまして、本分科会の議事を滞りなく終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午前十一時五十八分散会


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