衆議院

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第1号 平成22年2月25日(木曜日)

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本分科会は平成二十二年二月二十三日(火曜日)委員会において、設置することに決した。

二月二十四日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      岡本 充功君    沓掛 哲男君

      中林美恵子君    伴野  豊君

      富田 茂之君

二月二十四日

 伴野豊君が委員長の指名で、主査に選任された。

平成二十二年二月二十五日(木曜日)

    午前九時二分開議

 出席分科員

   主査 伴野  豊君

      石津 政雄君    岡本 充功君

      木内 孝胤君    沓掛 哲男君

      中林美恵子君    村上 史好君

      高木美智代君    富田 茂之君

    …………………………………

   厚生労働大臣       長妻  昭君

   厚生労働副大臣      細川 律夫君

   厚生労働副大臣      長浜 博行君

   厚生労働大臣政務官    山井 和則君

   厚生労働大臣政務官    足立 信也君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          金森 越哉君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長) 熊谷  毅君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       伊岐 典子君

   厚生労働委員会専門員   佐藤  治君

   予算委員会専門員     杉若 吉彦君

    ―――――――――――――

分科員の異動

二月二十五日

 辞任         補欠選任

  沓掛 哲男君     石津 政雄君

  中林美恵子君     萩原  仁君

  富田 茂之君     高木美智代君

同日

 辞任         補欠選任

  石津 政雄君     村上 史好君

  萩原  仁君     木内 孝胤君

  高木美智代君     斉藤 鉄夫君

同日

 辞任         補欠選任

  木内 孝胤君     中林美恵子君

  村上 史好君     玉城デニー君

  斉藤 鉄夫君     竹内  譲君

同日

 辞任         補欠選任

  玉城デニー君     沓掛 哲男君

  竹内  譲君     石井 啓一君

同日

 辞任         補欠選任

  石井 啓一君     富田 茂之君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成二十二年度一般会計予算

 平成二十二年度特別会計予算

 平成二十二年度政府関係機関予算

 (厚生労働省所管)


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     ――――◇―――――

伴野主査 これより予算委員会第五分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることになりました伴野豊です。よろしくお願いいたします。

 本分科会は、厚生労働省所管について審査を行うことになっております。

 平成二十二年度一般会計予算、平成二十二年度特別会計予算及び平成二十二年度政府関係機関予算中厚生労働省所管について、政府から説明を聴取いたします。長妻厚生労働大臣。

長妻国務大臣 おはようございます。

 平成二十二年度厚生労働省所管一般会計及び特別会計予算の概要について御説明申し上げます。

 平成二十二年度厚生労働省所管一般会計予算の総額は二十七兆五千五百六十一億円であり、平成二十一年度当初予算額と比較いたしますと二兆三千九百九十二億円、九・五%の増加となっており、国の一般歳出の五一・六%を占めております。

 これは、これまでの予算を徹底的に見直し、無駄を削減するとともに、マニフェストの実現に向けて必要な経費を新たに計上したものであります。

 以下、主要施策について御説明申し上げます。

 第一に、次代の社会を担う子供一人一人の育ちを社会全体で応援するため、子ども手当の創設、父子家庭への児童扶養手当の支給、保育所待機児童の解消に向けた取り組みなど、総合的な子育て支援施策を推進してまいります。

 第二に、公的年金制度は国民の老後の安定した生活を支えるセーフティーネットであり、年金記録問題について、解決に向けた取り組みを着実に進めてまいります。このため、年金記録問題への対応を国家プロジェクトと位置づけ、平成二十二年度から集中的に取り組むとともに、二度とこうした問題を起こさない体制整備を図ってまいります。

 第三に、現下の雇用情勢は依然として厳しい状況にあり、緊急雇用対策や明日の安心と成長のための緊急経済対策の推進に全力を挙げるとともに、雇用のセーフティーネットの整備を推進するため、労働者の雇用の維持、再就職支援、貧困・困窮者支援、派遣労働者等非正規労働者への総合的対策を強化してまいります。

 また、若者、女性、高齢者、障害者等の就業実現、仕事と生活との両立支援及び地域雇用対策など、ニーズに応じたきめ細やかな支援策を強力に進めてまいります。

 第四に、診療報酬について、十年ぶりにネットプラス改定を行うとともに、医療保険の厳しい財政状況にかんがみ、各医療保険制度において、保険料の上昇を抑制するための必要な措置を講ずることにより、国民皆保険制度を守ってまいります。

 また、救急医療、周産期医療の体制整備、医師等の人材確保、地域における医療連携体制の強化などを通じ、地域医療の課題を解決し、国民に質の高い医療サービスを提供してまいります。

 第五に、新型インフルエンザ対策における医療提供体制の構築、肝炎など患者の負担が重い疾病等についての支援策の拡充、がん等の生活習慣病や難病などの各種疾病対策を進めるとともに、感染症に対する健康危機管理の強化、薬害再発防止のため、医薬品、医療機器の安全対策を強化し、有効で安全な医薬品、医療機器を迅速に提供するための対策を推進してまいります。

 また、輸入食品の安全対策、残留農薬、食品添加物、容器包装等の安全性の確保など、食品安全対策を推進してまいります。

 第六に、障害のある方が当たり前に地域で暮らし、地域の一員としてともに生活できる社会を実現するため、障がい者制度改革推進本部等における各種の制度改革の一環として、障害者福祉制度を、制度の谷間がなく、利用者の応能負担を基本とする制度に抜本的に見直していくこととあわせて、新たな制度ができるまでの間においても、障害福祉サービス等の利用者負担について、さらなる軽減を図ってまいります。

 また、良質な障害福祉サービスの確保や地域生活支援事業の着実な実施等を図るとともに、精神保健医療福祉や発達障害者等支援を推進してまいります。

 第七に、良質な介護サービスの確保のため、安心で安定的な介護保険制度運営の確保を図るとともに、地域包括ケアを提供できる体制等の整備を進めてまいります。

 第八に、国民が将来に希望を持って安心して働くことができる社会を実現するため、最低賃金の引き上げの検討や労働災害の防止、労働者の心身の健康確保のための対策等を実施してまいります。

 第九に、景気の急速な後退に伴う格差の拡大傾向、若年失業者の増大等を背景に高まっている生活不安を解消し、すべての社会保障制度における最後のセーフティーネットである生活保護制度等の社会保障の機能強化を図ってまいります。

 また、自殺対策については、地域での効果的な取り組み等を進めてまいります。

 以上のほか、世界保健機関や国際労働機関等を通じた国際協力の推進、外国人労働問題等への適切な対応、戦傷病者、戦没者遺族、中国残留邦人の援護、原爆被爆者対策等の諸施策を推進してまいります。

 なお、委員各位のお手元に資料が配付をされておりますけれども、一般会計予算の主要経費別の概要及び特別会計予算につきましては、お許しを得て、説明を省略させていただきます。

 今後とも、国民生活の保障、向上と雇用の安定を図るため、厚生労働行政の推進に一層努力してまいりますので、皆様のなお一層の御理解と御協力をお願い申し上げます。

 以上でございます。

伴野主査 この際、お諮りいたします。

 厚生労働省所管予算の主要経費別概要につきましては、その説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伴野主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

伴野主査 以上をもちまして説明は終わりました。

    ―――――――――――――

伴野主査 この際、分科員各位に申し上げます。

 質疑時間はこれを厳守され、議事の進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。

 なお、政府当局に申し上げます。

 質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中林美恵子君。

中林分科員 民主党の中林美恵子でございます。

 本日は、大変お忙しい中お時間をお割きいただきまして、大臣、そして政務三役の皆様、ありがとうございます。

 今まで厚生労働行政の中で予算が非常に少なかった分野を、民主党政権になってから拡充していくということに御尽力されていらっしゃる皆様に、まず敬意を表したいというふうに思います。

 きょうは、その中で、特に私の地元であります横浜からのいろいろな問い合わせもございますので、少し具体的にお話を伺っていきたいというふうに思っているところでございます。

 まず最初に、子ども手当についてお伺いいたします。

 この子ども手当は、子供が日本にいなくても、あるいは自分の母国などに子供がいて、そして親が仕送りをするという形でももらえる、支給対象になるというふうな報道などもされておりますし、また、児童手当というものが既にそういう制度になっているので、その延長上としてはそれを継続せざるを得ないというようなことも聞いております。

 この辺につきまして、実際に児童手当が既にそうなっているから子ども手当も今後そのような方向で法整備をしていくのかということについてひとつお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

長妻国務大臣 今御指摘をいただいた点でございますけれども、現在の児童手当については、今おっしゃられるように、外国籍の方、あるいは、お子さんが海外におられて、監護されているということがあれば支給をするということになっておりますけれども、これは、もう御存じのように、一九八一年、難民条約の加入に当たって、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約の趣旨も踏まえて、一九八一年からそういうような体制をとったというふうに承知をしております。

 ただ、平成二十三年度からは、我々、子ども手当の本格実施、全額実施ということを考え、法整備の検討も今後進めていくわけでありますので、特に諸外国の事例も参考にしながら、その点については一つの論点になると考えておりますので、今後議論を進めるということになると思います。

中林分科員 ありがとうございます。

 こういった問題については、既に指摘が多く出ているような課題ではないかというふうに感じております。

 私どもの地元の方々からもいろいろなお声をいただいている中に、書面で海外に子供がいらっしゃるということがわかれば、それでもう簡単に支給するという制度が実は抜け穴になっていて、外国の女性の方が、出産育児一時金、それから療養費、児童手当、定額給付金、失業保険で約二千七百六十万円をだまし取ったということで、既に詐欺の容疑がかけられているというニュースも二月十五日の新聞に掲載されているところでございます。

 そうしますと、子ども手当は日本の将来を担ってくれる世代を社会全体で育てるという趣旨である部分が、ある意味、悪用される可能性もなきにしもあらずというところで、実際にこういった届け出するべきものの偽造などの事件も起こって、二月にはそれが容疑として既に新聞などで取り上げられているということもかんがみますと、やはり、平成二十三年度から考えるということと、そして、今年度の一年間の立法の措置では間に合わないということの間に、またかなりの意見なども出てくる可能性があると思いますので、そこのところを一点、二十三年度の方に待たなければならないのか。

 そして、児童手当と子ども手当というものは別のものであるという考え方であるならば、新しくできる今年度の法律の中にもそれを多少加味して何らかの検討を加えることができる余地があるのかどうか、その辺をお伺いしたいと思います。

長妻国務大臣 中林委員におかれましては、アメリカ連邦議会で働く経験もあり、今後とも、世界の状況なども御指導いただきたいと思っております。

 一方で、その措置をしますと、日本人の方でお子さんが海外にいるという場合は支給が難しくなる。つまり、外国人とその国の方に差をつけるというのは基本的に社会保障の中では難しいとされておりますけれども、ただ、我々も今研究をしておりまして、海外も、いろいろな要件、いろいろな対応が、イギリス、スウェーデン、ドイツ、フランスでもいろいろ議論があったと思いますので、そういう事例も参考にしながら、この二十三年度の法案提出、本格実施に向けて一つの論点だと我々も認識しておりますので、誠意を持って取り組んでいきたいと思います。

中林分科員 大変ありがとうございます。

 〇九年十月で、届け出のあった在日外国人労働者は約五十六万二千人ということで、予算のインパクトもそれほど軽くはないという部分もございますので、どうかその辺を御留意いただけたらありがたいというふうに思います。

 それでは、次のテーマなんですけれども、昨年は、新型インフルエンザなど非常に緊急性を要する対処で厚生労働省の皆さんも大変御尽力いただいたということで大変だったと思いますが、実は、新型インフルエンザなどを契機に、新しい予防接種法を設置するということで厚生労働省の方で動いていらっしゃるというふうに伺っております。

 ことしの立法の中では、二つの段階に分けて、まずは、地方などにいろいろな権限を与えていた、どのような予防接種が必要であるかということについて、お年寄りが先なのか、それとも子供さんが先なのかといった優先順位を実は地方の現場の方に任せていたものを、中央政府が優先順位づけについて検討して、それを全国的に、指導といったらおかしいですけれども、指揮するというような措置を盛り込むというものと、そしてその後に、では、もし何か問題が起こったときに補償をどうするのかということについて、また別の形で法律を整えていくということで、二段階に分けようと考えていらっしゃるということを伺っております。

 この点について、二段階に分けなければいけない理由、そして、全体的な法整備をするのに、なぜ二つに分けなければいけないのかというところに少し疑問を感じるものですから、御説明をいただけたらありがたいというふうに思います。

足立大臣政務官 なぜ二度に分けなければ、あるいは二度か三度かわかりませんけれども、その理由の説明でございます。

 まず、今年度に発生した新型インフルエンザへの対処は、これは政府全体で考えても、現行法制下で対処は難しいという形で、特別措置法が必要になったということです。その特別措置法は、昨年の四月二十八日に厚生労働大臣が定めた新型インフルエンザA、H1N1に限るものでございます。そうした場合に、次に同じ程度の病原性あるいは感染力を持つ新型インフルエンザが発生した場合には、また特別措置法で対処するのかという話になります。

 国の姿勢として、こういう病態のものが生じた場合には、きちっとした法に基づいて、国と地方の役割の分担等も含めて法にしっかりと書いておかなければならないというのが、まず必要性の分野でございます。

 それで、二度に分ける理由ということでございますけれども、昨年の十二月二十五日に予防接種部会を立ち上げました。その中で、今回の特措法あるいは新型インフルエンザ対策に対して、検証も含めいろいろ考える中で、昨年の臨時国会でも、健康被害に対する救済の問題、損失補償の問題、優先接種順位の問題等いろいろ議論があった中で、予防接種法の中にまずは落とし込まなきゃいけない部分というものを抽出して改正する必要があるであろう。そして、先ほど私が挙げた問題点は、これは広く国民の皆さんと議論をしなければ、そんなに早急に結論が得られるものではないということが議論の中で出てまいりました。

 ですから、今回は、まずは特別措置法の中で行われたことを予防接種法の中に落とし込むという作業をやるべきである。しかしながら、健康被害の救済については、さらに検討を加える必要があるという範囲にとどめる。引き続き議論を行い、先ほど申し上げたようなことはしっかりした議論を続けていく、検証も行いながら続けていくということを、先週の二月十九日、第一次提言でまとめていただいたところでございます。

中林分科員 医療機関などで聞く話ですと、新臨時接種の分類をつくることによって、保健所での接種ではなくて医療機関で接種をするということになったりですとか、その部分もまだ検討の余地があるのではないかという声が上がっていることによる私の質問になるわけですけれども、特別措置法で次回も対処するということでは非常にまずいということが今回の特別措置法でわかったというふうな理解でよろしいんでしょうか。

足立大臣政務官 今の点に限定して申し上げますと、やはり、国会を開会して特別措置法を可決、成立しなければその後の事業として始めることができないという事態を生じさせてはいけないのではないかということで、私も心穏やかではありませんが、ことしも選挙があるような事態の年でございまして、そんなときに、やはり予防接種法で、ある一定レベルのものについてはこういう方針でいくんだということを定めておくのは国の責任ではないか、行政の責任ではないか、そのように私は思っております。何か起きたときに特別措置法で対処するということを決めることは、いささか責任の範囲においては正しい選択とは言えないのではないかと私は思っております。

中林分科員 ありがとうございます。

 この辺も非常にテクニカルといいますか技術的な部分が多いものですから、恐らく厚生労働省の方にも現場の声が上がってきてこのような方向性になっているのではないかというふうに想像をする次第でございますが、特別措置法ではなくて恒久法でこれを段階的に織り込んでいくという中で、ますますいろいろな現場の声なども取り入れていただけたらありがたいというふうに感じているところでございます。

 それでは、三つ目のテーマに入らせていただきたいと思います。これは、私の事務所の方に、ある地元の市民の方から寄せられたメールやお電話などが発端となりまして、私も実際に気づかされた部分でございます。

 難治性疾患患者雇用開発助成金制度の件なんでございますけれども、先ほど長妻大臣の方からも、さまざまな障害を持たれる方も社会の一員として一緒に暮らしていく、そういう社会を目指す社会保障制度であるというお話がありました。

 私がコンタクトをいただきました方は、しばらく、十数年、事業所で仕事をして、健康に働いていたところ、体調を崩して検診を受けたら、実は難治性の病気であったということがわかり、約二年間休職をいたしました。その結果、職場復帰できるかと思いましたら、やはり見た目などの問題もあって復活できなかったということがあり、その方は、働きたい、そして社会の一員として自分もしっかりと役割を果たしていきたいという気持ちが大変強い方で、そのときにどういう制度があるのかということを御本人もお調べになりましたし、また、私どももいろいろお話を伺わせていただく中で、厚生労働省の方にもお話を伺ったところでございます。

 その中に、まさにその名前にふさわしく、難治性疾患患者雇用開発助成金制度というものができ、実は昨年の四月から施行されているということを知りました。そして、その経緯の中で、まずはハローワークなどで仕事を探している方で難治性の疾病をお持ちの方には、雇用主などに対して助成が出るという事業の形態に一応なっているということだそうです。

 そして、私が御相談をいただきました方は、残念ながら、仕事を持ちながら失職したということですので、ハローワークには行ったけれども、この不況の御時世、健康な方でも仕事を見つけるのが難しいんだよと言われて、なかなか取りつく島もないという状況で、何らかの形で雇用主の方々にインセンティブを与えるようなシステムが、もしそのギャップを埋める部分があったらなということがその方のお話でした。

 それをきっかけにいろいろ調べさせていただきましたけれども、かなりの人数、六十五万人以上と言われるような、特定疾患ということで難病の特定をされていらっしゃる方々がおいでだということも聞きました。障害手帳を持っていらっしゃる方々にはある程度制度は整いつつあるのかという側面もありますが、難治性の疾患にかかられた方々に対する制度、今どのようになっているんでしょうか。

山井大臣政務官 中林委員にお答えをいたします。

 障害者そして難病の方々の社会参加、とりわけ雇用促進というのは、厚生労働省に関しても非常に重要な分野だと思っております。

 そして、今御指摘いただきましたように、難治性疾患患者雇用開発助成金は、障害者手帳をお持ちでない難病患者の方が特定求職者雇用開発助成金の対象とならない、つまり障害者手帳がないからならないということを踏まえ、昨年の四月から、難病患者の方の雇い入れを促進し、その雇用管理上の課題やノウハウを把握するために平成二十一年度に創設した助成金でありまして、大企業に対しましては年間五十万円、中小企業に対しましては年間百三十五万円となっております。

中林分科員 ありがとうございます。

 そうしますと、まだ発足して間もない制度であるということもあるとは思いますが、現状ではどれくらいの方がこれを活用されていらっしゃるんでしょうか。

山井大臣政務官 非常に答弁しづらい面もあるんですが、現状におきましては、一月末までの支給実績は五件であります。五件というと非常に少ないなと驚かれるかと思うんですが、一つには事情がございまして、この助成金の支給申請は雇い入れ後六カ月を経過してからの申請となりまして、実際には、大体雇い入れから八カ月かかって初めて支給となることになっております。

 そして、二十一年度は五千万円の予算。しかし、私たちとしては、中林委員御指摘のように、何としても難病患者の方々の雇用促進を図りたいという思いで、来年度予算では百二十人の枠で一億二千五百万円という予算を計上しておりまして、まだこの制度を御存じでない方も多いと思いますので、これからさらに広報にも力を入れていきたいというふうに思っております。

中林分科員 ありがとうございます。ぜひとも、企業、事業主側も含めた広報にお力を入れていただきたいというふうに感じます。

 そういったことで、まだまだ活用される方が少ない制度ではありますが、この制度を説明する資料の中には、モデル事業というような言葉が入っているかと思います。もし、活用される方が非常に少ない場合には、やはり制度として縮小されてしまうような危険性もあるかと思いますので、その辺については、ぜひとも活用促進というところはことしの大きな大きな目標に挙げていただけたら本当にありがたいというふうに思います。

 また、現在就労中の難病の方の雇用継続については特に制度がないというふうに承知しておりますが、それでよろしいんでしょうか。

山井大臣政務官 長妻大臣に答弁していただく前に、一つだけ訂正したいと思いますが、先ほど、一年間で五十万円と百三十五万円と申しましたが、一年半でありました。

伴野主査 長妻厚生労働大臣、お時間が来ておりますので、簡潔にお願いいたします。

長妻国務大臣 今言われたのは、新規に雇用するときは事業主に対してそういう助成がある。障害者の方はまた別途あるんですけれども、難治性疾患で障害者じゃないという方もいらっしゃるので、もう既に雇われている方を継続して雇うインセンティブを事業主にということですが、今は残念ながらそういう仕組みがないということですので、まずはその新しい仕組みで件数をふやす中で、現状把握というのは一番重要だと私は申し上げていますので、その中で、それについてどういうことができるのか、これは検討していきたいと考えております。

中林分科員 ありがとうございます。

 かなりの人数の難治性疾患の方がいらっしゃるということも事実でございますので、ぜひともそういった救済策等も御検討いただけたらありがたいと思います。

 本日は、本当にありがとうございました。質問を終わります。

伴野主査 これにて中林美恵子君の質疑は終了いたしました。

 次に、高木美智代君。

高木(美)分科員 公明党の高木美智代でございます。

 本日、この分科会の枠をいただきまして質問させていただきます。

 まず、質問に入ります前に、大臣に質問させていただきたいのですが、昨日、我が党で取りまとめました公明党の介護総点検運動、チーム三〇〇〇で取り組ませていただきました政策提言、新・介護公明ビジョンを鳩山総理にお渡しさせていただきました。その際、鳩山総理からは、政府として大いに参考にする、具体的な内容については早速厚生労働省などに検討を促したい、こういう大変前向きなお話をちょうだいいたしました。

 中身はまた詳細をごらんいただければと思いますが、七つの視点で十二の提案、六十四の対策ということで、もう十分大臣は御承知かと思いますが、このアンケート調査、また聞き取りにつきましては、街角アンケート、それから介護認定者、当事者の方、また支える御家族、従事者、そしてまた事業者、さらには自治体の担当者に至るまで、十万件に及ぶ聞き取りをいたしまして、まとめたものでございます。

 大臣にそうした御指示が既に総理からおありになったのかどうか、そしてまた、こうした総理のお話を受けまして大臣としてどのような姿勢で臨まれるのか、まず、大臣の御決意、また所感を伺いたいと思います。

長妻国務大臣 公明党の提言を受けて、昨日、鳩山総理に呼ばれまして、その厚い公明党の冊子も渡され、十分検討してほしいという御指示をいただきました。

 私どもも、政権交代後、介護のあるべきビジョンというのを今後打ち出していこうということで省内でも取り組んでいまして、その御提言の中身も拝見しましたけれども、共感できる部分も多いわけであります。施設介護、居宅介護、そしてそれを支える介護職員の処遇改善、こういう柱の御提言と、街角アンケートなどの結果でも、やはり在宅で介護を受けたいという方もいらっしゃるし、いや、施設で介護を受けたいという方もいらっしゃるので、それを適正に選べるような仕組み、そして地域で、施設においても小規模、中規模で、なるべく近くの場所でそういう介護を受けられる、そんなような体制というのは我々も認識を同じくしておりますので、詳細も含め、今鋭意ビジョンづくりをしているというところであります。

高木(美)分科員 平野官房長官は、具体的な施策については民主党と公明党でもう少し具体的に検討していく必要がある、こういう姿勢も示されておりますが、今大臣がおっしゃったビジョンの検討といいますのは、今厚労省が既に検討をしているということでしょうか。そこにまたこうした民主と公明と具体的な検討という、今回の提言を踏まえた政策といいますか、そうしたものが反映されていくというお考えでしょうか。もう一度、御決意を伺いたいと思います。

長妻国務大臣 これは、既に公明党の方からも、いろいろな委員会でこういう御提言を個別にはいただいております。今まとめている中に、きのう総理から御指示がありましたので、その具体的提言もできる限り取り入れるということを今省内でも検討しております。

 いずれにしましても、在宅、施設、そして処遇改善、この三つの論点というのは非常に重要だというのは共有しているところです。

高木(美)分科員 ぜひ前向きに、よろしくお願いいたします。

 私は、まず、少し質問の順番を変えまして、不育症につきまして先に質問をさせていただければと思います。

 実は、先般、不育症の経験者からのお声が私のもとにも寄せられました。そこで、我が党も勉強会等をさせていただき、参議院で荒木議員が既にこの不育症につきましては質問をいたしておりますので、既に大臣は御承知の内容かと思っております。

 私のもとに寄せられたお声は、これは二十五歳で結婚して、二十六歳で妊娠された方です。妊娠三カ月のときに胎児が育っていないということで流産。安静にということで一カ月の入院を余儀なくされ、当時の入院費用も数十万かかった。その後、二度の初期の流産を繰り返し、精神的にも大変つらく、悲しい思いをしました。しかし、流産を三度したときに初めて大きな病院を紹介してもらいました。

 その後、さまざま検査、またそれから薬の服用、自己注射等々を経て、この方は出産に至るわけですが、当然、出産までに、出産育児一時金以外の部分で約三十八万円、さまざま、交通費を入れますとトータルで五十万円かかった。こういうお話で、この方からは、不妊症にはさまざまな支援が行われているけれども、不育症には特に支援がありません、大変な思いは不妊も不育も同じです、どうか公的助成制度を検討いただきたいという、こうした切実なお声でございました。

 また、ほかの方からも、例えば、産院で喜びの声が響く中で、自分は流産という苦しみを味わいながら本当に泣いて泣いてという、こういう痛ましいお声も伺っております。

 私も流産を一度経験した、一度でございますけれども、そのときのつらさ、悲しさというのは今も忘れることができません。しかも、それは女性の側に何か落ち度があったのではないか、こうして自分を責める女性が多い。こういうことも踏まえまして、この不育症、余りに知られていない内容でございます。これに対して何らかの形でやはり公的助成、そして精神的なサポート、また何よりも普及促進、このことが必要ではないかと思っております。

 原因は、一定割合で発生する胎児の染色体異常ということが今言われておりまして、さまざま、研究者の方々の調査によりますと、例えば流産の経験をした方は妊産婦の四一・五%に上る。また、二回以上で不育症と見られる方は六・一%。三回以上流産を経験したという方は一・五%。不育症の患者の方は恐らく年間約八万人。これは、厚生労働科学研究等々の事例で発表されているところでございます。

 当然、検査と治療が必要で、適正な検査と治療が行われれば八五%が出産にたどり着くという、まさに御夫婦にとって本当に希望の光が差すということになるわけでございます。当然、検査と治療についても、保険適用や何らかの公的助成制度が必要と思うわけでございます。

 そこで、まず、この治療薬の保険適用につきまして、アスピリンとかヘパリンとかいろいろございますけれども、この対応につきまして大臣のお考えを伺いたいと思います。

長妻国務大臣 今御指摘のとおり、不育症については、治療について保険適用がないということでありまして、反復する流産、死産のためにお子さんが生まれることができないということであります。

 一方で、御指摘のように、不妊症にはさまざまな支援というのがあるわけでありますけれども、これも荒木委員からもかつて御質問いただいて、そのときはヘパリン注射ということだったんですけれども、これについても、今の時点では、有効性、安全性の確認が十分なされていないというところから保険適用の対象とはなっていませんけれども、我々として、保険適用の対象となるため今後どのような方策が可能なのか、専門家の意見をよく聞いて、臨床成績なども再度よく分析して判断をしていきたいというふうに考えています。

高木(美)分科員 これは、もう既に厚生労働科学研究等で事例も出ております。そうした点も踏まえて、早急な対応をお願いいたします。

 あわせまして、精神的ケアのためには、まず、不育症の認知の普及促進が急務であると思っております。当然、さまざまな部門が考えられます。産婦人科医の方たちも、三度まで流産しなければ大きな病院を紹介してもらえなかった、これはまさに認識不足と言わざるを得ません。こうした認識の促進、また、そこが精神的支援に結びつくとも思っておりますし、また精神的支援には、新たなカウンセリング等の専門的な技術を用いた支援も必要かと思っております。

 まず、この点につきまして、では、これは細川副大臣、答弁をお願いいたします。

細川副大臣 委員御指摘のとおり、治療だとかいろいろな研究成果をいろいろな専門のお医者さん方にも知っていただかなきゃいかぬ、こういうふうに私も思います。

 厚生労働省といたしましては、平成二十年から二十二年度にかけまして不育症について研究をいたしておりまして、その成果は、一部成果も出ておりまして、それについては厚生省としてはホームページなどに掲載をいたしまして、専門家の方にも、あるいは一般の方にもいろいろと知っていただこうということで進めておりますけれども、さらにその啓発などについては勉強を進めてまいりたいというふうに思います。

高木(美)分科員 できましたら、産科婦人科学会とかさまざまな学会もございますので、そこでもまた、さらに普及促進に努力をいただければと思っております。

 重ねまして、大臣、この産婦人科医に対する、まずそこできちんとお話しいただきますと、患者の方たちも不要な御苦労、また心労をしなくて済むと思いますが、この普及促進につきまして大臣はどのようにお考えでしょうか。

長妻国務大臣 これだけ深刻な問題についても、実際にそういうものがあるということを御存じない女性も多いと聞いておりますし、産婦人科の先生でもそういう御認識が不足されている方もいらっしゃるということも聞いておりますので、今細川副大臣が申し上げたように、今後、研究成果が出ますので、そこで診断、治療法の評価がさらに確定をすると思いますので、それも含めて、産婦人科の先生の、どういう組織がいいのかは別にして、そういう集まりの場でこの問題について普及啓蒙をするということを省内に指示してまいりたいと思います。

高木(美)分科員 よろしくお願いいたします。

 あわせまして、まず女性の側への普及促進ですが、私は、母子手帳等、これは厚労省所管というよりも、当然、地域の自治体がどのように対応するかということになるのかもしれませんが、母子手帳、また母親学級というのも妊婦の方には行われております。そこでこういうこともあるのだということをまずお話をいただく。そうすると、そこで、例えば流産等のつらい思いをされた場合でも、これかもしれないと妊婦さん自身が気づく。これも近道ではないかと思いますが、その点、大臣、いかがでしょうか。

長妻国務大臣 おっしゃる指摘については、先ほども研究結果というお話を申し上げましたけれども、いまだこれは、どうして不育症になるのかという要因の一部は明らかになっているんですが、多くの要因や治療法の一部の評価など未解明の部分もあるというのがこの問題でございます。我々としては、二十二年度で終わりではなくて、さらなる研究が必要だと考えております。

 母子健康手帳に記載するというのはまだ今の時点では難しいと思いますが、そういう研究成果が明らかになる段階ごとにきちっと一般の方にも、こういうことでこういう症状が出て、治療法はこうですというのをその都度発表していきたいと思います。

高木(美)分科員 続きまして文科省に、今、研究結果という大臣の答弁もございました。しかし、不妊の理由といいましても、当然それは、さまざまなアレルギーを含めまして、化学物質の影響ではないかとか、そうした研究も今多方面から行われているところでございますが、現実として不育症ということが存在するわけですので、これに対する意識の啓発ということも必要ではないかと思っております。

 高校の教科書、また、そこまで至らずとも、今、文科省でもさまざま、女性の健康教育等を行われていると承知しておりますけれども、こうした解説の際に、不妊それから不育症、こういうものが存在をするのだということをやはり取り上げていただくべきではないかと思っております。高校の教科書というのが一番望ましいわけで、これは、研究者の方たちはぜひ掲載をしてほしい、そして、多くの若い女性の皆様が自分の体のこと、そしてまた病気の存在のこと、こうしたことを知ってほしいという願いも多くございます。

 文科省の対応を伺います。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 不妊症につきましては、主に高等学校保健体育の教科書において取り上げられておりまして、あわせて習慣性流産について記述されている教科書も複数ございます。

 教科書に不育症を記述することについてのお尋ねでございますが、我が国の教科書検定制度は、民間の執筆者が学習指導要領に基づき創意工夫を生かして著作、編集した図書を、教科用図書検定調査審議会の専門的な審議を経て、文科大臣が教科書として適切かどうかを決定するものでございます。

 したがいまして、学習指導要領の範囲内で、教科書に具体的にどのような事項を取り上げ、それをどのように記述するかは、民間の執筆者にゆだねられておりまして、不育症を記述するかどうかにつきましても、執筆者にゆだねられているところでございます。

高木(美)分科員 今、文科省から習慣性流産というお話もございました。こうした点もまたさらに、不育症と研究結果が出るまでというお話もございますが、習慣性流産ということも厚労省でも取り上げていただきまして、さらなる取り組みをお願いしたいと思います。

 続きまして、障害者の就労支援につきまして、何点か質問をさせていただきます。

 実は、昨今の厳しい景気、経済の情勢を反映して、当然、今の高校卒業者、新卒予定者の中からも就労が大変厳しい状況でございます。私のもとに、特別支援学校の卒業予定者の親御さんなどから、孫の就職が決まっていないんだ、学校から就職できないと言われた、どうすればいいんですか、面倒を見てほしい、こういう切実なお電話がありました。私は、本当に返答に困りました。ハローワークに行ってくださいとも言えませんし、まず、これに対する対応、これをどのようにしていけばいいのか、また、そこにある就労支援策について伺ってまいりたいと思います。

 まず、文科省に、こうした厳しい雇用状況の中で、特別支援学校、また養護学校の就職内定状況はどのような状況なのか、簡潔に答弁を求めます。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 特別支援学校高等部を卒業した者のうち、例年、約二割強が就職している状況にあることは、私どもの調査を通じて把握をいたしておりますが、就職内定状況につきましては、生徒の進路の選択肢が、進学や就職、福祉関係施設など多様であることもございまして、就職内定状況に特化した調査は実施しておらず、その詳細については把握をいたしていないところでございます。

高木(美)分科員 これは局長、大変恐縮なんですが、今、就労と教育の連携ということで進めてくださっていることは承知しております。やはり、現状がどうなっているのかというこの把握は、地域で、例えばハローワーク、それから、ナカポツセンターと言っておりますけれども、そうした厚労省側の障害者就業・生活支援センターがどういうふうにサポートしていいのか、実態がわからなければなかなかそこは踏み切れないというものもあると思います。

 したがいまして、やはりこれからは、できましたら定期的に、どのような形で最終点を、前年度の十二月にするかどうかといういろいろやり方はあると思いますが、ある程度定期的に、例えば就労が決まった、ここの学校はだれが決まり、だれがまだ残っているのか、またそこに持っている例えば資格も、今、学校の先生方も、何とか取らせてあげたいと一生懸命頑張っている学校も多くあります。そういったものが、どういう資格が反映をされていて、また、地域に受け入れ企業が果たしてあるのかどうなのか、そこの開拓からお願いしなければいけないのか、そうした総合的なことがある程度データを明示されませんと、厚労省も動きようがないのではないかなというふうに思いますが、局長、今後の方向性も含めまして、どのようにお感じになりますでしょうか。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 就職内定状況ということになりますと、例えば、生徒の希望が一般就労なのか、あるいは福祉就労なのか、見きわめが難しいというようなこともございまして、就職内定状況に特化した調査は実施をしておらないのでございますけれども、昨今の厳しい雇用失業状況の中で、就職を希望する特別支援学校高等部卒業予定者がどういう状況に置かれているのか、その実情をどういうふうにして把握していくのかということにつきましては、いろいろな御指摘のような方法があろうかと存じますので、実態の把握をどうすればよいのか、よく検討も進めてまいりたいと考えております。

高木(美)分科員 やはり、まず状況把握がすべての始まりでございますので、ぜひ文科省にはこの状況把握、早急に、どのような方向で行うのか、取りまとめていただきまして、また、厚労省とも検討に入れますように要請をいたします。

 現実に就職が決まっていないという、切実なこの方のお声に対してどのように返答すればいいかということでございますが、厚労大臣、これはどうすればよろしいでしょうか。

長妻国務大臣 今、特別支援学校のみならず、御存じのように、高卒の方あるいは大卒の方、特に大卒の方の内定率は史上最悪になっているという、全体の雇用環境が厳しいというのがまず一点で、それの改善、成長戦略等に含めて、我々は全力で取り組んでいるところです。

 この特別支援学校につきましては、やはり我々厚生労働省としても、学校自体は文科省の所管でありますけれども、教職員の方に対しても、一般企業での就職について御理解を促進するために、地方の厚生労働省の労働局がセミナーを行って、就職に対する情報の提供ということにも取り組んでいるところであります。そして、都道府県単位で設置している広域特別支援連携協議会というのもありまして、そこで就職も含めた議論もしているという現状なんですけれども、それが本当に機能しているのか否かを現状把握をして、不十分であればさらに強化をするということにしていきたいと思います。

高木(美)分科員 厚労省と文科省と連絡会等が学校におきましても設置されて進んでいると聞いております。

 恐らく、日常的な連携というのがうまくいっている学校と、そうでない学校がある。また、学校の意識によっても、ともかく養護学校を卒業するまで楽しく過ごしていただければいい、こういう先生方は随分減ってきたと私は承知しております。やはり、就労する、自立をしていく、そのためのサポートを政府としても、また政治として何ができるかということを検討しなければいけないところに来ていると思うのですが、いずれにしても、もう少し緊密な連携というのが必要なのではないかと思います。

 例えば、十二月、ある程度データを文科省の方で取りまとめていただきましたら、それをもとに、四者面談ですね、例えば学校で、保護者、当事者、そしてまたそこにハローワーク、また、ナカポツセンター、こういう方たちがきちんと来て、そこで必要な方には個別に面談をできるようにするとか、いろいろな柔軟な仕組みがもう必要な段階ではないかと思います。

 あわせまして、今後、就職活動の望ましい連携のあり方、それからスケジュール、また、そこには当然、事例等を踏まえた組み立てが必要かと思いますが、きめ細かくトータルとして就労へのサポートを、このように学校と厚労省と連携をしてやりますという、これを明示すべきではないか、そのような段階に来ているのではないか、地元で少しずつ進めていただいたものが総合的に行われる段階ではないかと思いますが、大臣はどのようにお考えでしょうか。

長妻国務大臣 面談ということでございますけれども、教職員の方に対する情報提供、あるいは保護者、生徒さんに対する情報提供ということで、就労支援セミナーということで、二十一年度の上半期は全国で百八回開催をして、そこに百八十八校の学校が来られたということであります。

 ただ、やはりいろいろ濃淡もあると思っておりますので、こういうセミナーの中身も含めて、それがより有効に働き、そういう面談の中でも、その情報を先生が活用して的確に保護者、生徒にアドバイスできるというようなことを、厚生労働省のみならず文科省とも連携して検討していきたいと思います。

高木(美)分科員 同じ質問で、文科省にも答弁を求めます。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 障害のある生徒の就労支援につきましては、職業教育や進路指導の充実を図りますとともに、学校と労働関係機関などが連携した個別の教育支援計画の作成を義務づけ、各都道府県教育委員会に通知するなどして、その一層の推進を図っているところでございます。

 また、平成二十一年度からは、特別支援学校と地元企業、労働関係機関などが連携したネットワークによる職域開拓や、バーコード管理を基盤として、企画、広報、接客、販売までの一連の流通サービスにかかわる経営体験など、関係機関と連携した職業教育や進路指導の改善に関する研究を進めているところでございます。

 文部科学省といたしましては、厚生労働省とも連携して、このような取り組みを通じ、障害のある生徒の就労が一層促進されるよう努めてまいりたいと考えております。

高木(美)分科員 局長、お一人お一人の障害児の方たちをどのように支援するかという、個別の段階に入っていると思っております。

 当然、個人支援計画だったでしょうか、それぞれ個別に立てるということになっておりますけれども、それを活用していただいて、小さいころは、就学するまでは厚労省、学校へ入ったら文科省、そしてその先、就労になったら厚労省、ここの切れ目のところをなくしていくための個別のサポートを今後どのように推進していくのか、その点をさらに研究していただきまして、これは文科省の方から厚労省に要請をしていくというふうにしていただきませんと、やはり学校に入りにくい、要請がなければ動けない、これがハローワーク、ナカポツセンター等のお話でございますので、ぜひその点、またさらに進めていただくことを要請いたします。

 最後に、時間も迫ってまいりましたので、今まで申し上げましたナカポツセンターなんですが、今、福祉圏域一カ所ということで懸命に増所を目指して進めていただいております。しかし、ここまで進んでまいりますと、実績評価による質の確保というのも必要ではないかと思います。

 最近よく聞くのですが、一生懸命やってくれて実績を上げているナカポツセンターと、むしろ、そうではなくて、なかなか成果を上げていない、どうもこういうことが余り上手ではないようだ、そういうナカポツセンターへの不満、またさらには、同じナカポツセンターであっても、企業に対して、障害者の受け入れ枠を増員するための、そのことがとても上手なナカポツセンターもあれば、障害者の方を相手にきっちりとやっていらっしゃるところもある。そうした箇所数の見直し、ここにそろそろ着手をすべきではないかと思います。

 一圏域一カ所だと、本当に実績を上げているところ、やりたいところが手を挙げたくても、もう既にそこに占拠されている。しかし、そこには三百人という障害者が待っている。三カ月も待たされているという、そんなに待たされたらもう就労の意欲もうせてしまう、こういうお声を、事業所から、また就労移行支援に頑張っている方たちからも聞いております。

 このナカポツセンターの質の向上、また、質が厳しければ、むしろきちんとそこに着手をして認定を取り消すとか、そうしたことにもそろそろ踏み出していただく段階ではないかと思います。

 実効性のある障害者の就労のために、このナカポツセンターの見直し、どのようにお考えか、大臣の見解を求めます。

長妻国務大臣 今おっしゃったナカポツセンターというのは、障害者就業・生活支援センターということだと思いますけれども、これはおっしゃるように、今、設置目標は全国の障害保健福祉圏域というのが三百六十カ所ありますけれども、そこに一つ設けてくださいという目標なんですけれども、実は、その目標もまだ達成されておりませんで、二百四十七カ所ということで、まずはその目標を達成するというのが重要なのは言うまでもないということであります。

 そして、その継続の要件としても、当該年度で就職件数が十件、あるいは職場実習・あっせん件数が二十件というのを最低ラインとして設定させていただいて、高い実績を上げたセンターには一名から三名の就業支援担当者の増員を認めていくというようなことで、濃淡をつけてやっているわけでありまして、まずは三百六十カ所にそれが設定されるように我々も努力していくということですけれども、同時に、実態把握ということで、具体的にいい手法があればほかのセンターでもそれを取り入れてもらう、そういうような事例の交換ということも今後取り組んでいきたいと考えています。

高木(美)分科員 今の答弁ではとても足りません。

 現実に、就労移行支援等を懸命にやっていらっしゃる事業者の方たちが、その障害者を送り込む。送り込んで、三カ月間、そこでたなざらしをされる。それではという、そういう本当にこれは切実な声でございます。

 これは車の両輪として、今大臣がおっしゃった数の確保とともに、やはり質の見直し、そして、一カ所で、もうそこで独占企業のようにやっているのではなくて、人数の多い障害者を抱えているところは競合するということも、これは当然の原理ではないかと思います。そのことを大臣に強く求めまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

伴野主査 これにて高木美智代君の質疑は終了いたしました。

 次に、石津政雄君。

石津分科員 石津政雄でございます。

 日ごろ、長妻大臣初め各政務三役の皆様方には、国民の健康、そして介護、医療等々万般にわたって御尽力をいただきまして、まことにありがとうございます。心から感謝を申し上げる次第でございます。

 私は、昨年の八月に当選させていただきましてから初めての質問でございますので、大変緊張をいたしております。どうも、こういう厳格な部屋でお話ししたことがございませんので、話が脱線するかもしれませんけれども、その辺は初心者に免じまして御容赦を賜りたいと思います。

 早速でございますが、皆様御承知のとおり、我が日本は超少子高齢化の社会に今突入をいたしております。それによりまして、社会的な問題として、医療費等々を含めた社会保障費の増嵩、そしてまた労働人口の減少ということで社会の活力が極めて低下する、こういうような非常に厳しい国内の状況にあろうかと思います。

 そういう背景を受けまして、前政権においては、平成十二年に健康日本21、国民総健康づくりということを標榜して新たな政策を立ち上げたわけでございます。それ以降、平成十九年度には、その実効性の確認ということかと思いますけれども、中間の報告がなされた、このように伺っております。

 一つの政策を追っていく上で、その政策が実効を伴うものであるかどうかという点についての評価は極めて大切かと思います。そういうような意味で、この中間の評価等々について、概略的で結構でございますので、所見をお伺いいたしたいと思います。

長妻国務大臣 石津議員におかれましては、大洋村村長として、私も印象にありますのが、本も拝見いたしましたけれども、大腰筋という筋肉を鍛えることで老後も健康で暮らせるという取り組み等で実績を上げられているということに敬意を表しております。

 健康日本21でありますけれども、これは平成十二年度から始まりまして、アメリカのヘルシーピープルという政策を一つ参考にさせていただいたわけでありますけれども、かなり細かく数値目標も設定をしております。

 その中で、数値目標で、向上しているものとそうでないものというのもあります。平成二十年度からは、食生活、運動、たばこ、この三つの分野を重点分野としてさらに推進するということになっておりますけれども、男性の喫煙率は、平成十五年の四六・八パーから平成二十年は三六・八パーということで、一〇%程度減少する。これも目標に書いてあるところであります。あるいは、習慣的に運動する男性の割合が、平成十五年は二九・三パーだったのが平成二十年は三三・三パーということで、若干上がる。ただ、過去五年間で、男性の一日当たり何歩歩くかということについては、平成十五年は七千五百歩だったものが平成二十年には七千十一歩ということで、減っているということもあります。

 いずれにしましても、これは強制的に運動をしていただくというわけにもまいりませんので、何しろ国民の皆様方が楽しく、そしてこういう運動をするとこういう効果があるというのを、本当に腹に落ちるような説明をきちっとするということが重要だと考えておりますので、これは、大洋村初め各自治体も、独自の取り組みで効果を上げているところもありますので、我々はその情報もきちっと収集をして、それを広めていくということも今後の課題としてあると考えています。

石津分科員 ありがとうございます。

 健康日本21の項目というのは、非常に多岐にわたっております。今、大臣は、運動、食事、それとたばこという三つの点に絞ってお答えいただきましたけれども、実は、私も自治体の長を経験していた感想からいいますと、どうも、総花的に問題提示あるいは目標値を設定されますと、果たして自治体としてはどこから取り組んでいいのかということで非常に迷うという点がございます。

 これは、今度の健康日本21の施策にかかわらず、今まで、概して言いますと、国から出される指針とか方針とかというものは、比較的総花的なことが多いんですね。ですから、結果として何が一番有効なのかというようなことの優先順位をつけるか、あるいはでこぼこをつけるか、それはいろいろなやり方があろうかと思いますけれども、そういうようなことをしっかりと提示した上で、市町村に取り組むべき事項の優先度をお示しするということもとても大切なことではないのかな、こういうふうに私は思います。

 その辺、大臣、いかがでしょうか。今後の見直しの後ということで。

長妻国務大臣 おっしゃられる点は、同感できる部分も多いわけであります。

 具体的に実施するのは、国が全部実施主体ではありませんので、やはりそれぞれがメニュー的に選択いただくということも重要でありまして、これだということで一つ押しつけるというのもよくないとは思いますけれども、もう少しめり張りをつけて、実施の効果も含めて御案内するということは必要だというふうに思います。

 全国の市町村の例でも、いろいろユニークな例も今非常に取り組みが活発に行われておりますので、そういう効果も見ながら、お勧めをする、メニューに入れるということも考えていきたいと思います。

石津分科員 ありがとうございます。

 次に、介護予防運動等々について進めてまいりたいと思いますが、その前に大臣にお聞きしたいんです。高齢者が一番幸せな生活のあり方、生活の仕様といいますか、これはちょっと通告がなくて大変恐縮なんですが、抽象的で結構でございますので、大臣はどのようなことを想像されておりますでしょうか。

長妻国務大臣 高齢者が幸せに生きるというのは、やはりまず一つは、選択ができる。例えば、働きたい方は働く、趣味を楽しみたい方は楽しむような、最低限度の年金が出ていく。あるいは、介護を受けざるを得ない方は、在宅で受けるかあるいは施設で受けるか選ぶことができるということはありましょうが、その根底にあるのは、健康というのがもう土台にすべてある。高齢者の方にとっては一番の、何しろ健康であるというのが非常に大きな願いではないかと思います。

石津分科員 ありがとうございます。

 私が言うのも恐縮ですが、さすがに長妻大臣だと私は思いました。といいますのは、私は、幾つになっても働きたい人はやはりしっかりと働く、いわゆる社会貢献をするということが一番幸せなことなのかな、こういうふうに考えております。

 といいますのは、特に、少子高齢化社会になってまいりますと、先ほど申し上げましたけれども、もう言わずもがなですが、労働人口が非常に減ってまいりますから、社会の活力が極めて低下するということでありますから、高齢者は社会保障の対象として社会の負担になるというような発想ではなくて、やはり有用なソースとして社会に貢献をしていただく、こういうようなことが大切だと思いますね。

 しかも、その基本に健康ということがもちろんあるわけでございますが、今、高齢者を、社会で働いていただく、あるいは、ちょっと変な言い方になりますが、利活用するといいましょうか、そういうようなシステムというものを厚労省としていま一歩踏み出してお考えになられているかどうか、ちょっとお伺いしたいんです。

長妻国務大臣 今、各自治体にも御協力いただいて、シルバー人材センター等々の事業もありまして、高齢者の方に身近なところで職を紹介する、あるいは七十歳まで働ける企業というのを生み出せないかというような取り組みも今始めておりますし、あるいは定年延長などなどの取り組みもしているところであります。

 現状でいうと、全体の雇用情勢が大変厳しい中で、ただ、いずれは我々も新成長戦略等で景気は上向いてくると考えておりますので、そういうときにやはりそういう施策もきちっと充実する必要があると考えています。

石津分科員 ありがとうございます。

 次にお伺いしたいんですが、今、健康日本21の中で、特に運動に特化して今後考えていきたいな、こういうふうに実は私は考えております。

 先ほど、いみじくもあらかじめ大臣の方から私たち大洋村のことを御紹介いただきまして、ありがとうございます。そういう経験からなんですが、きょう、足立政務官がお見えでございますが、政務官が御在職された筑波大学、そして東京大学等々のスポーツ医科学の先生方の御協力をいただいて、もろもろ研究を進めさせていただきました。

 それは別といたしまして、後でまたお話し申し上げたいと思いますが、今、いわゆる要支援、要介護というふうに言われる人たちが、平成十二年では二百十八万人。ところが、平成二十年には四百五十五万人へ倍増しておる。これは、いわゆる不活発な生活というようなもの、運動不足というようなものが原因であって、身体あるいは生活の機能といったものが極めて低下している、こういう方々に対して介護予防事業に取り組んでいるというようなことかと思います。

 この介護予防事業の実効ということを考えましたときに、全国的にこの事業の周知徹底が果たしてどこまでなされているか、あるいはその効果がどういうふうになっているか。まだまだ始まってから日が浅いわけでありますから、その効果を求めるのはちょっと酷かもしれませんけれども、そういうような視点からいいますと、この事業に参加されている方々が、いわゆる六十五歳以上の高齢者のうち、どのぐらいの方がいらっしゃるかについて、もしおわかりでしたら、御答弁願いたいんです。

長妻国務大臣 今おっしゃられたのは特定高齢者施策のお話だと思いますけれども、この施策は、要支援、要介護になる前、要支援になりそうな方というか、特定高齢者というふうにお呼びをさせていただいて、そういう方々に対するものであります。

 これは平成十八年度より実施しておりまして、参加率の目標を五%として当初始めたということでございますが、今はかなり低いです。参加率が平成二十年度で〇・五%ということで、私も、厚生労働省の課題としては、いい施策はあるけれども、それがなかなか周知されていないということで、PRについていろいろ問題点があるのではないか。いろいろな、全体のテーマとしても、今は一つ一つ改善をしておりますけれども、これについても、もう少し的確なPRをして、参加して、それによって健康を回復されて、要支援にならない、そして元気でお暮らしになるということについて、さらに改善が必要だと思いますので、取り組みたいと思います。

石津分科員 ありがとうございます。

 この特定高齢者というネーミングでございます。後期高齢者と同じくらい私は酷なネーミングではないのかなというふうに思うんですが、大臣、いかがでございましょうか。

長妻国務大臣 これは、本当に要支援になりそうな方ということで、確かにこの呼び方はよくないと思いますので、今後、この呼び方はやめて、別の呼び方に変えていきたいと思います。

石津分科員 ありがとうございます。

 ぜひ、何か高齢者が切り離されるとか、あるいはネガティブな思いにならないようなネーミングにしていただきたいと思います。

 さてそこで、今、事業の周知徹底を図るということで、それはよくわかりましたけれども、もう一点。

 今はとりあえず特定高齢者と呼びますが、特定高齢者に認定されるというハードルといいましょうかチェック項目といいましょうか、非常に多岐にわたっている、こういうふうに思います。その辺に対する、いわゆる利用率を高めるというようなことを目途としたときに、その認定の項目あるいは条件等々について、今後検討されるというような意図はおありでしょうか。いかがでございましょうか。

長妻国務大臣 まず、参加率が低いということもありますので、その対象者の方々をひょっとすると絞り込み過ぎているのか否かも含めて、再度実態把握をしていきたいと思います。

石津分科員 ありがとうございます。

 私の感想からいいますと、当時、受ける側にいたものですから、地方の方では、こういうような施策をやりますよという通達は役所の方にはとりあえずありましたけれども、自治体によっては、それがなかなか周知徹底できずに、そういう制度があることすらもわからない、あるいは、それがわかっていても、チェック項目が非常に多過ぎるために面倒くさくて行かない、こういうような人たちが相当多いやに私は感じております。

 せっかくのいい制度でございますので、こういう制度の周知徹底、ないしは、本当は参加されない方が一番いいわけですけれども、健康な方が大勢いらっしゃるのが一番いいんですけれども、しかし、要支援、要介護以前の、全くストップをかける非常に重要な、まさに予防にシフトした施策でございますので、この点についての一段の工夫をお願い申し上げたいと思います。

 それでは、ちょっと個別的なことになってまいりますけれども、高齢者が一番希望とするところは、できれば働きたい、働くために健康でいたいというようなことが一番の願いかと思いますけれども、その裏返しで、このような状態にはなりたくないというような、そういうことを大臣はお考えになったことはございますか。こういう状態にだけはなりたくないなという、もし所見がございましたら。

長妻国務大臣 やはり、健康を害して寝込んでしまうということ。あるいは、自分の立場であれば、私が連れ合いに先立たれてしまうとか孤独になってしまうとかそういうようなことや、あるいは、年金等の事情で、ひとり暮らしにもかかわらず生活がかなり厳しい、しかも、なかなか働くというわけにもいかないというようなことがあろうかと思いますけれども、やはり、健康を害するというのは一つ非常に大きなことだと思います。

石津分科員 私もそのとおりかと思います。

 それで、その点に絞り込んで言うと、高齢者にいろいろお聞きしますと、寝たきりにはなりたくない、これはやはり最大のポイントのように私は感じました。

 寝たきりになる原因ということが疾病等々いろいろありますけれども、いわば、生活体力の低下、あるいは転倒骨折等々も含めて、いろいろな要因で寝たきりになるというようなことかと思いますが、私どもの旧大洋村では、いわば運動、いわゆるスポーツと医療というような切り口でいろいろ研究をさせていただきました。その結果でいいますと、まず、寝たきりになる最大の要因は脳卒中の後遺症、次が認知症、そして転倒骨折。この三つの条件で大体六割を占めるというようなことが、これは厚労省のデータで私たちは確認できました。

 そこで、村として対応できることは何かということになりまして、二番目の認知症の予防についてはなかなか、研究も進んでおりませんし、複雑な要素が絡んでいるということでもありまして、第一番目の脳卒中の予防、そして転倒骨折の予防、これを限りなく解決できるとすれば寝たきりの約五割を解消できるのではないか、こういうような想定のもとで、先ほど大臣に御紹介いただいた、運動をベースにした健康づくりのプロジェクトが立ち上がったわけでございます。

 我々、この研究の中で、一番最初にやるべきことは何かといいますと、高齢者が姿勢を保持して少なくとも歩行ができる、これはやはり最初の条件ではないか、こういうふうに思いました。

 そこで、先ほどもお話がありましたけれども、学者の先生方、そして多くの方々の発想の中で一番ベースにあったのは、バルセロナ・オリンピックのときの四百メーター走の高野選手の大腰筋が異常に太かった。ですから、トップアスリートのそういう大腰筋というものからヒントを得て、これはやはり歩行にも相当大きく関与するのではないかと。

 もちろん、御承知のとおり、下肢、上肢分かたず、姿勢保持や歩行に関与する筋肉は複雑でありますけれども、そんなことを考えていてもなかなか研究も進みませんから、大腰筋に特化をして研究をやってみました。そうしたら、若い人たちだけが筋トレをすると筋量が増加し筋力がアップする、こういうようなことを我々は想定しておったんですが、実は高齢者も、若者ほどではありませんけれども、やはり増加する。こういうようなことを考えたわけなんです。

 ですから、これからのテーマとして、せっかく健常でいらっしゃる方々が、加齢に伴って、あるいは生活のアクシデントに伴って寝たきりにならないというようなことを目途としたときに、非常にマニアックな言い方になるかもしれませんけれども、まずは姿勢保持と歩行が十分にできるような筋トレ、こういったようなものをベースにした介護予防事業なり、あるいは健康日本21の根底に据えていただきたいな、こういうふうに考えるんですが、いかがでございましょうか。

長妻国務大臣 本当に、今言われたような筋力あるいは姿勢保持という基礎的な、やはり歩けなくなっては生活にも支障が出ますので、その重要性は私も共有するところであります。

 大洋村以外でも、高知県の高知市ではいきいき百歳体操とか、北九州市ではきたきゅう体操とか、柏崎市ではコツコツ貯筋教室、いろいろユニークな取り組みがあるわけでありますけれども、やはり我々は、楽しくないと、例えば、筋力とは直接関係ないかもしれませんけれども、ゲートボールというのはお年を召した方がいろいろな場所でやられておられるわけで、何しろポイントは、本当に楽しくて行きたくなるということが最大のポイントであると思います。

 そこが役所の発想で出てくるかどうかというのもありますけれども、我々は、そういうふうにわき上がってきたもので非常にいいものを育てていく、支援する、こういう立場で取り組んでいきたいと思います。

石津分科員 ありがとうございます。

 楽しく、しかも仲間をつくってというようなことが条件としてありませんと、おっしゃるとおり、実は、三日まではやるんですが四日目からはやめてしまう、こういうような傾向にあることは、我々も現場で確認をしておりますから、そのとおりだと思いますね。

 それで、余り時間もないんですけれども、私は、大洋村でやった、極めて稚拙な研究ではありますけれども、まず下肢を含めた筋力を高める、そして姿勢と歩行の能力をきっちりとつける、これがベースにありますと、ウオーキング等を含めた有酸素運動、こういうようなものが実は可能になります。

 そうしますと、いろいろお伺いいたしますと、適宜な有酸素運動をしますと、脳卒中の予防に限りなく寄与するだろうと。それはすなわち、動脈系のコンプライアンスが非常に高まる、そして最高血圧が下がる。これは非常に、脳卒中を引き起こす大きな要因になっているだろうと。もちろん、それ以外の複雑な要因もありますけれども、運動とかスポーツという切り口からすると、その二つに我々は特化できるだろう、こう考えております。

 でありますので、これからは、高齢者が楽しく、仲間をつくって、そして結果としていつまでも自分の思うように自分の体が動かせるというような体制を一刻も早く国としてしっかりとやっていくべきではないのかな、こう考えております。

 そのときに、実は、大臣に私が最後に聞こうと思ったことをもう既に言われてしまって、ちょっと戸惑っているのでありますが、国は、もちろん全国を、その津々浦々までを包括した施策を展開しなければならない、これは私も承知をしております。

 しかしながら、大臣おっしゃられたとおり、我々の大洋村に限らず、いろいろな地域では、それぞれの地域に合った、楽しみながらの健康づくりというようなことをやって、しかも、結果としては医療費とか介護費の削減につながっているというような自治体とか地域も相当多いように私は聞いております。

 ただ、そこで、私どもの経験からいいますと、その情報をそれぞれの自治体とかそういうことに興味を持っておられる方々が共有していない、ここが私は非常に大きな問題なんだろうと思うんですね。ですから、健康づくりに限らず、高齢者がお元気で社会参加をしているということも含めて、やはり、特徴ある地域の実績とか実態とかそういったようなものを、どこにいてもその情報が共有できる、そういう施策を国として将来やっていただければな、こういうような思いがあるんですが、いかがでございましょうか。

長妻国務大臣 まずは、できることは、先ほども紹介しましたような、各自治体で取り組んでおられる具体的な中身を我々も直接お聞きして、写真や、時によってはビデオを撮らせていただいて、ホームページ上で公開をして、いろいろな機会に、全国の自治体の課長さん会議等々ありますので、そういうところでも御紹介する、こういうことはできると思いますので、そういう広報の部分から実行して、本当に効果があり、楽しんでやれるような、そういうものがある場合は、また具体的な施策を考えていくということになると思います。

石津分科員 そういうようなことも、もちろん実効性を高めるために大切かと思いますから、それはお願いしたいと思いますが、もう一つ、日常的に、それぞれの自治体が問題意識を持ち、かつ興味を持ったときに、そのデータあるいは情報がとれるというようなことで、ホームページ等々で開示できる、あるいは紹介できるというような体制にしていただければ大変ありがたい、このように感じておりますので、お願いを申し上げたいと思います。

 丁寧な御答弁、本当にありがとうございました。

 終わります。

伴野主査 これにて石津政雄君の質疑は終了いたしました。

 午後三時から再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十時三十四分休憩

     ――――◇―――――

    午後七時五十八分開議

岡本(充)主査代理 休憩前に引き続き会議を開きます。

 主査が所用のため、その指名により、私が主査の職務を行います。

 質疑を続行いたします。木内孝胤君。

木内分科員 民主党の木内孝胤でございます。

 本日は、初めての質問をさせていただきます。尊敬申し上げる長妻厚生労働大臣に初めての質問ということで、大変光栄に存じております。どうぞよろしくお願いいたします。

 政権交代をしましてから、約六カ月がたとうとしております。地元に戻りますと、景気対策ですとか子ども手当、いろいろなことを聞かれますけれども、やはり、六カ月振り返ってどうかというような質問が多うございます。その際に、国民の皆様が何を一番期待していたのか、いろいろ思い返すところであるんですけれども、やはり、なぜ政権交代できたのかと思うところ、長妻大臣が当時、消えた年金問題を追及した。これによって、政治を国民の手に取り戻す、こういうことを実現できたから、こうして政権交代ができたのではないか。

 交代後、この年金につきまして私が思っておりますところについて質問させていただきたいと思います。

 とりわけ、GPIF、年金の運用についての質問でございますけれども、実は私、二十年間、金融機関に勤めておりました。銀行や証券に勤めておりましたので、かねてからこの問題について強い関心を持っておりました。

 それで、昨年の十一月三十日から、年金の運用についての検討委員会というのも開かれております。私の理解ですと四回開かれ、私もいろいろ資料などにも目を通させていただいているわけです。

 いろいろ批判的な意見もあったり、建設的な意見もあったり、それに対するいろいろな反論の意見もあったりということでございますけれども、議論の中の論点整理の中で、ちょっとおかしいなと思っていることが幾つかございまして、実績についてどういうふうに考えるのかというのが一つあるんですけれども、期間のとり方、例えば昨年、九兆円年金基金が減ったという批判が新聞にたくさん出ております。

 それだけ見ると、一体何をしているんだ、そんなふうにとらえられる可能性もあるかと思いますけれども、よくよく考えてみますと、世界じゅうの年金基金、例えば、有名なところですとアメリカのカルパースなんかは二〇%以上マイナスであったり、そういうような状況でございます。

 こうした中で、期間を一年間だけとれば、日本は実は健闘していた。あるいは、四年間とれば悪くなかったのではないか、八年とったらよかったのではないか、いろいろございますけれども、やはり期間のとり方というのが年金は非常に難しい。

 なぜならば、お金を掛けてから、掛金を支払ってからそれを受け取るまで四十七年という期間がございますので、これはまさに哲学論争みたいな運用の仕方になっている。

 ですから、何がいい、悪いとか、私も運用をずっとやっていましたのでわかるんですけれども、運用実績がよかったときにはだれも褒めてくれない。一方で、悪かったときには非常に怒られるというのは、投資の世界で当たり前というか、非常に難しいところでございます。

 こういうことを踏まえた上で、やはり私が幾つか気になっている点、結構不当な批判も中にはあるかと思っているんですけれども、私はあくまでも建設的な形でいろいろ提案を述べさせていただきたいと思っております。

 今のGPIFの組織、ガバナンスですね。運用委員会と、権限と責任が不明確ではなかろうかなと思っております。

 これはどういうことかといいますと、理事長がいて、理事がいて、そしてその中で運用委員会というのがございます。運用委員会のメンバーは非常に立派な方が大勢いらっしゃいますし、こうした中で、運用委員会のメンバーのアドバイスを得て今のポートフォリオを決めていたりとなっているわけですけれども、よくよく見ると、権限と責任があいまいな中で、我々の大事なお金、百二十二兆円のお金を運用されている。

 私は、これは国民の考え方が必ずしも正しく反映されているような運営のされ方ではないのではないかというふうに考えておるんですけれども、今のガバナンスについて、長妻厚生労働大臣にお伺いしたいと思います。

長妻国務大臣 木内委員におかれましては、金融のプロとして、今後ともアドバイスをいただきたいと思います。

 初質問が異例の夜八時ということで、一生忘れられない、私も初質問の相手は忘れられないと思っていますので、精いっぱい答弁したいと思います。

 独立行政法人全体に言えることだと思うんですが、ガバナンスの見直しすべき点というのは多々あるということで、今御指摘の検討会においても、運用委員会の権限、位置づけはどうあるべきか。あるいは、特に透明性、選ぶ信託銀行等々の機関の成績評価とか手数料水準とか、いろいろなものが国民の皆さんに本当にきちっと説明されているのかどうかなどなど、いろいろな論点、改善点はあるというふうに考えております。

 当然、最終的な責任者というのはトップである理事長と、本当に最終的な責任者はその所管である厚生労働大臣という形になるというふうに思います。運用委員会については、中期計画等の審議とか法人の業務の監査などを行うこととされておりますけれども、この位置づけ等についても、改善すべき点があれば改善をする必要があるというふうに考えています。

木内分科員 ありがとうございます。

 ガバナンスの中で一番気をつけなければいけないかなと思っておりますのは、今、年金の制度設計をまさに長妻大臣のもとで設計中という理解でございます。年金の制度設計の中には、やはり積立金をどういうふうに運用するのかということが、当然のことながらパッケージとなってされるわけでございます。

 ただ、年金の制度設計そのものができていない中で、今、三月末までに中期目標を決めるということが果たして適当なのかなという疑問を実は強く持っております。

 例えばですけれども、想定の運用利回りは今四・一%となっております。大半といいますか、七割程度が国債で運用されている。それも一・三%で運用されている中で、これはちょっと達成が困難ではなかろうか。これは検討委員会の中でも似たような指摘は出ているというふうに理解しておりますけれども、今、こういう状況の中で、三月末までに中期目標を最終決定することが果たして適当かどうかということに関して私は強い疑問を持っておりまして、これを九月末とか、一たん延期することは可能かということをお伺いしたいと思います。

長妻国務大臣 これに関しましては、御指摘のように、五年ごとの財政再計算のときに中期目標というのを厚生労働大臣が指示をするということになっておりますけれども、我々、新しい政権では、四年後に国会に新しい年金制度を法案として提出するということにしておりまして、四年後の時点以降に、おっしゃられるように、再度、新しい設計とともに、財政再計算的な作業というのは不可欠になるというふうに考えておりますので、その時点でこの問題についても新たな見直しということが発生すると思います。

 今、中期目標をまさに策定中なんです。そういうことも見越した上で、我々、どういう中期目標が示せるかというようなことについても今考えているところであります。

木内分科員 先ほど説明責任、透明性という話がございました。百二十二兆円を運用するGPIFさんが、例えば株式を五%減らす、あるいはふやす、どういうコメントをしても市場には非常に大きなインパクトがあるわけで、議論の細かい内容を開示するというのは非常に難しいというふうには理解しております。

 しかしながら、我々が一生懸命ためたお金、国民の皆様が一生懸命ためた積立金がどういうふうに運用されているのか。これは、要するに、何だ、アメリカの株式、海外の株式に十兆円も投資しているのか、海外の債券に十兆円も投資しているのか、実は日本の株式にも十兆円以上投資されているんだ。本当に安全な形で運用されているのかと国民の皆様は思っているところで、実はかなり多くの金額がそれなりに高いリスクの資産に運用されている、私はそのように思っております。

 私は、そういう業界におりましたので、投資の怖さをわかっているつもりです。本当に投資するというのは怖いことです。ですから、以前、新聞の記事で拝見しただけですけれども、全額を日本の国債に投資するべきではないか、そういう意見もあるというふうに理解しております。

 私は、これだけ額に汗して積み立てた皆様のお金を、リスクのある形で、ばくち的な投資というのは絶対よくない、そのような考えを持っております。

 しかしながら、今、運用で非常に難しいのは何か。昔であれば、日本国債に運用していればリスクフリーとまで言われておりました。リスクがゼロ。それが今は、中国の国債も上回るリスクプレミアムがついているような状況でございます。したがいまして、日本国債中心の運用ということ自体は、私は何ら違和感はございませんけれども、やはり資産の多様化を図るというのは非常に急務な話だと思っております。

 実は、似たような議論の中でゆうちょ銀行の話がございます。ゆうちょ銀行は百七十七兆円の預金のうち、百五十五兆円を日本国債で運用しております。いわゆるALM管理をしている人間の立場からすると、これは余りにも日本国債に偏り過ぎている、非常に危険な状態ではないかというふうに感じている人もいるようでございます。

 ですから、よくこの年金の議論をしていると私感じますのは、日本の国債にさえ投資していれば、リスクフリーで安全な資産なんだ、そういうふうに皆さんは認識されているようなんですけれども、先ほど言った話と相反する部分ではございますけれども、株に投資するのも危ない、外国に投資するのも危ない、しかしながら、日本の国債に投資するのも決して安全というわけではない、こういう認識を私は強く持っているんです。

 国債に対するリスクについて、大臣のお考えをお伺いさせてください。

長妻国務大臣 国債については、仮に今言われたようなことがあれば、これは、年金のみならず日本経済全体の大きな問題だということで、あってはならないわけでありますけれども、やはり政府全体できちっとそういう財政の再建についても道筋を示していくということで、我々も今、国家戦略局等を中心にそのフレームを検討中だということであります。今言われたようなことはあってはならないという前提でありますけれども、当然、長期金利の金利水準というのは、かつてバブル期には、御存じのようにかなり高い水準。今は大体一・三パー程度で推移して、そう変動はないわけであります。

 いずれにしても、株を個別銘柄で買うというのに比べれば、もちろん国債というのは安全性は高いという認識をしております。

木内分科員 今後、非常に厳しい判断、これは年金基金のみならず、ゆうちょ銀行さん、かんぽ生命、いろいろ迫られると思っておりますのは、御案内のとおり、今、公的債務は八百六十五兆円程度と言われております。年末に経済成長戦略が発表されたわけでございますけれども、これを肉づけしていく上で何が必要なのかと考えたときに、日本の千四百兆円の個人の金融資産をいかに運用するのか、どのように使っていくのか。

 今まではどうなっていたかというと、こういうものから年金基金あるいは郵貯、簡保にお金が流れ、そこからほとんどが国債に回る。国債から、正しい使われ方をしていればいいんですが、必ずしも全部が賢い使われ方をせずに、要らない空港ですとか橋ですとか、そういう形で使われていた。

 年末に発表された経済成長戦略の中身を実現するためには、例えば中堅・中小企業の成長のための資金、あるいは介護、医療、こうした分野も同様でございます。あるいは環境もそうです。すべてのこうした成長分野を実現するためには何が必要か。成長資金が必要なんです。

 昔は、国がこういう分野にお金を入れたりしていた部分がございます。あるいは、金融機関もそういう役割を果たしていたということでございますけれども、今体力が弱っている中で、資本性の資金をこうした中堅・中小企業あるいは成長分野に流す。これは、国家戦略として絶対に必要な戦略だと私は確信をしております。

 今、せっかく三十兆円ものお金が年金基金の中で、国債に比べれば高い分野に使われているのであれば、もうちょっとその使い道についても、年金基金として哲学を持って投資をしてほしい、私はそのように考えております。

 今、外国にお金が行って、外国の企業が成長すればいい、それはそれで結構なことだと思います。ただ、外国の中でも、もしかしたら今から新興国に投資をすると大やけどを負うかもしれません。でも、そういうことをきちんと検討した形跡があるかどうかというのも、いろいろ過去の資料なんかを見ていると、本当に検討されたのかどうか、やや疑問に思うところでございます。

 ですから、このリスク性の資産、既に三十兆円あるんです。逆に、この三十兆円を本当に国債に戻すのであれば戻すということも必要ですし、これを、金額は変えなくても、中身を入れかえるということは十分にできることだと私は思っておりますし、あるいは必要なことだと思っておりますので、ぜひともこうした中身の、ポートフォリオの入れかえ、これについて御検討していただきたい、そのように思っております。

 そして、過去四年間、ポートフォリオ、細かいところではいろいろ入れかえはしているのかもしれませんけれども、基本ポートフォリオの入れかえをした形跡がないんです。私は、今のGPIFさんの体制ですと、基本ポートフォリオの入れかえをするだけの経験を積んでいらっしゃるのか、やや疑問に思うところがございます。

 一方で、運用の経験者を一生懸命採用したり、非常に努力された跡もありますし、あるいは、今回も検討委員会をきちっとやり、いろいろ外部の意見を聞いたり、それを踏まえていろいろ改善されているのは承知しております。しかしながら、百二十二兆円というのは決して小さい金額ではございません。

 ですから、こうした我々の大事なお金を運用するのに、もう少し、例えばWBCの野球をするときに、イチローを呼び、松井を呼び、松坂を呼び、ドリームチームで戦うのが普通だと思います。海外に比べれば、運用担当、金融は弱いんじゃないかと言われているようですけれども、実はこの人は天才じゃないかというような人も日本にはたくさんいるわけです。必ずしもそういう人たちをGPIFさんの中に正式に採用しなくても、そういう方を、アドバイザリーボードなのか運用委員会なのか検討委員会なのかわかりませんが、組織の中に絡める形で運用の強化というのはできると私は思っております。

 そこについて、組織の運用の仕方、外部の方の登用の仕方について御意見を伺わせてください。

長妻国務大臣 まず、ポートフォリオ、基本ポートフォリオの変更であります。これについては、年金の財政再計算ごとに見直しをするということでありますけれども、今おっしゃられたように、これを大幅に変えるとなると、それだけではなくて市場にも大きな影響を与えるということにもつながりかねないので、やはり大幅な見直しというのは、これは慎重であるべきというのがまず大前提である。

 そして、成長戦略分野への、ある意味では投資のようなイメージのお話ですけれども、御存じのように、もちろんこのお金というのは、どこかのファンドとは違いまして、投資をして運用してほしいということで集めたお金ではございませんで、強制的に国が義務として保険料を徴収して、老後のためということであります。であるからこそ、財政再計算で、年金に必要な、不可欠な利回りの目標ということで設定をしているところであります。

 ただ、今おっしゃられたようなドリームチームかどうかは別にいたしまして、そういう外部の方々の御意見なども真摯に取り入れるということは重要だと思います。いろいろそういう本当の専門家という方も、それはかなりハイリスク・ハイリターンで勝負する方もいらっしゃるわけでありまして、やはり前提としては、このお金は国民の皆さんのあくまでも預かり金、まずそういう基本的な理解が必要だ。

 ただ、透明性も必要で、例えば、一年間で何兆円損をした、けしからぬという議論があるのも、そのプロセスをきちっと国民の皆さんに全部お示しをしていれば、そういう御批判も少なくなるのではないか。こういう反省もありますので、透明性も同時に高めていくということで、改善すべきところは改善していくということであります。

木内分科員 ありがとうございます。

 今、ポートフォリオの入れかえをすると市場へのインパクトがあるという話でございましたけれども、例えば、国内株式のポートフォリオを高めますと何が起こるか。これは、一つには、恐らく日経平均の株価というのは上昇すると思います。

 これは健全な上昇の仕方かどうかといういろいろな議論はあるかもしれませんけれども、やはりせっかく百二十兆円という大きな資産があるわけですから、それは国家戦略として、株式市場をより活性化させる意味で、繰り返しになりますけれども、市場の怖さを知っているからこそ、より慎重にという意味では申し上げているのですけれども、私は、株式であるならば日本の国内市場にできるだけお金を流したい、あるいは、外為特別会計の方にある海外の百兆円の資産、これもできるだけ日本に戻したい、そういうような思いもございます。

 一方で、海外でもう既に運用されているのであれば、どうも中身を見ていますと、どちらかというと先進国向けの資産が非常に多くなっておりますので、その中身は、せめて新興国に一部入れるとか、あるいは、入れる入れないは別にしても、私は、どうもきちっと検証されていないのではないかというような気になってしまうプロセスになっております。冒頭のガバナンスの話と重なりますけれども、我々国民の声、中には、もうちょっとリスクをとった方がいいんじゃないかという考えもありますし、あるいは、一〇〇%国債にするという議論だってあっても全然おかしくないと思っております。

 私は、ここの議論が、議論の過程の透明性が完全に欠如している、市場の関係者ですら、どういう運用のされ方をしているのか本当にわかっていない。これで、九兆円損した、六兆円損したと言われれば、他国に比べれば実はましなんだということを私も一生懸命説明はしていますけれども、これでは全く納得感は得られないということでございます。

 私は、民主党政権として、この年金に限らず、透明性、説明責任というのが一番大事というふうに話しておりますので、ここの点について、改めてその開示体制、もちろん、先ほどの市場へのインパクトというのはありますけれども、これは工夫次第であろうかと思いますので、ぜひお願いしたいと思います。

長妻国務大臣 これはもちろん、今言われたような、説明を尽くしていくということは重要でありますし、この年金の利回り、運用の目標というのも、百年という超長期であります。それは、人の一生の掛け金をお預けして、そこで運用するという超長期のスパンで物事を見なきゃいけないということがあるわけであります。

 国家公務員にも共済年金の積立金というのがありますけれども、これについては、今の議論の国民年金、厚生年金の積立金のポートフォリオに比べて、株のポートフォリオが非常に低いというか小さいのですね、株への投資の比率が。理由を聞くと、安全運用だということであります。

 いろいろな状況も見ながら、我々として、まずは透明性を高めていくということが重要で、今のこの年金積立金についても、かなりの、数十兆のお金が株に投資をされておりますので、その不断のポートフォリオの見直しというのは重要だと思いますが、その前提となる透明性、説明責任ということも、我々も繰り返し省内でも申し上げ、この独立行政法人にも申し上げ、改善をこれからしていきたいというふうに考えています。

木内分科員 アメリカのソーシャルセキュリティー、アメリカの公的年金は約二百兆円を超える年金がございますけれども、これは御案内のとおり、一〇〇%米国債という形で運用されております。

 しかしながら、アメリカのソーシャルセキュリティーの場合、実は中身が、いわゆる退職者年金の部分とそれ以外の年金、あるいは、日本でいえば福祉に相当する部分がたくさん入っておりますし、これが、途中で足りなくなった場合、米国政府が資金を必ず入れるというような仕組みがあって、他国の公的年金と比較したリストの中に米国の公的年金ということで入っています。

 公的年金であるということでは誤りはないのですけれども、非常にこれはミスリーディングだなと思っておりまして、ここの米国の事例を使われるというのはちょっと恣意的なんじゃないかなということでございますので、米国のモデルはモデルとして結構でございますけれども、やはり他国の例を参考に、今後も効率的な運用ということでお考えいただければと思います。

 最後に、やはり三月末にこの中期目標を一回セットしてしまいますと、こういう運用というのは、答えのない哲学論争的な議論だと思うのです。ですから、どういう角度から説明しても実は解がない世界ということでございます。それで中期目標を今のタイミングで設定するのは、やはりいろいろ問題があるのではないか。ここはじっくり一回仕切り直して、三月末から九月末まで延期して、その半年間の中でもう一回見直す可能性があるというような注釈を入れるべきというのが、私は落としどころではないか。

 こんな短期間に、百二十兆円の運用方針を四回の検討委員会で決定づけられるとは私は思っておりませんし、途中経過を見ておりますと、今のままこの中期目標が決められた場合、私は、民主党として極めて誤ったことを裏書きしてしまうリスクが大きいというふうに考えております。

 ですから、ここについてはいま一度、もう来週から三月です、三月末まで一カ月間しかございませんけれども、私は、ぜひ中期目標の設定時期については再検討いただければと思っております。

 長妻大臣に初めての質問ということで、本当に感謝をしております。きょうはありがとうございます。

岡本(充)主査代理 これにて木内孝胤君の質疑は終了いたしました。

 次に、村上史好君。

村上(史)分科員 民主党の村上史好でございます。

 私も、初めての質問となります。どうぞよろしくお願いを申し上げたいと思います。きょうも長時間の審議になっておりますけれども、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 私は、生活保護制度の全般について、あらゆる角度から御質問をさせていただきたいと思います。特に、地元の声を代弁する形で質問をさせていただきたいと思います。

 私は、大阪第六区という選挙区でございまして、御存じない方もいらっしゃると思いますが、守口市とか門真市、また大阪市の一部が私の選挙区でございます。この守口市、門真市、また大阪市というのは、全国でも保護率の高い地域、全国でも一、二、三位を占めるというのが、たまたま私の選挙区でございます。

 そういう地元の事情の中で、特にリーマン・ブラザーズの破綻以降大量の失業者が出て、そしてそれが生活保護の急増につながっている。そういう背景の中で、地元の自治体では、財源が大変厳しい状況になっている。これは既に御承知のとおりだと思います。

 特に、大阪市の例を申し上げますと、生活保護費の当初予算よりも大幅に上回るということで、二千七百億円も保護費に費やさなければならない。本年度の生活保護費の予算は二兆二千億円だと思いますが、一割を超える額が大阪市の中で保護費に使われている。その結果、二百四十億円の補正予算を組まなければならない、そういう状況に陥っております。

 これは、単に大阪市だけの問題ではなくて、先般、新聞でも調査がされておりますけれども、特に大都市圏を中心にこういう傾向が出ているということで、補正予算は四倍になっている、またその額も千三百億円になんなんとしているということで、各自治体がその財政負担ということで大変厳しい状況に置かれておる。その結果、本来やらなければならない行政サービスにしわ寄せが来るのではないか、市民もまた行政側も大変心配をしている、そういう状況でございます。

 このような生活保護をめぐる状況、大臣はどのような御認識をお持ちでしょうか。まずお伺いをいたしたいと思います。

長妻国務大臣 村上委員におかれましては、大阪市御出身ということで、市議会議員時代にも福祉、教育問題に取り組まれ、今いろいろ的確な御指摘をいただいたところであります。

 生活保護、大阪市は保護率が非常に高いところでありまして、私自身も、よく申し上げているのは、第二のセーフティーネットが日本ではおくれているのではないのかということで、つまり、失業して、失業保険が切れたらば生活保護というような状況にならないように、その間を埋める整備がおくれてはいないかという認識を持っておりまして、住宅手当とか求職者支援とか、いろいろな施策をしているところであります。

 ただ、いずれにしましても、生活保護の急増、増加というのは経済の状況とは無縁ではもちろんないわけでありますので、何しろ、景気を立て直していくということと、第二のセーフティーネットを張りめぐらしていくということ、あるいは生活保護になった方も、就労支援員というのをかなり今度ふやさせていただいて、地方自治体に配備をいただく人たちでありますけれども、就職の支援を生活保護になった方に対して、ハローワークへのつなぎとか、そういうことも充実をさせていく必要があると考えております。

村上(史)分科員 ありがとうございます。

 本来保護が必要な方にきっちりとその保護、支給がされるというのが本来の目的であり、趣旨だと思うんですけれども、やや実態的な話、現実の話をさせていただきたいんですけれども、この制度は本当に困った方のためなんですが、この制度を、悪用とまでは言いませんけれども、それをうまく使って不正受給やあるいは不正請求、これが横行していることも事実なんですね。

 こういう事実を一般市民もよく御存じで、おかしいじゃないか、あの人たちは保護をもらうような人ではないというような声がやはり地域にもたくさん出ています。

 現実に、大阪市の例で申し上げますと、平成二十年度には、千八百九十件、額にして十億円の不正受給があり、返還を求めたということになっております。しかし現実は、見えない部分がその数倍あるであろうというふうに言われております。

 これも皆さん笑われるかもしれませんけれども、どういうわけか母子家庭が多い、離婚が多い地域が、ある面ではラップしている部分がございまして、これはあえてそういうことをしているんじゃないかという声が市民の中に大きくなってきている。その結果、生活保護制度に対する信頼も損なわれてきている、それが今の現状だと思います。

 まさに、モラルハザードが生じている、起こってくることによって、本来必要なところに支給すべきその財源が確保できなくなってくる可能性があるということで、これは見過ごすことができない問題であるというふうに私は思っております。

 そういう面で、生活保護の趣旨からいっても、やはり認定基準の厳格化、あるいは実施機関の権限を強化することによってそういう不正を正していく、このことも必要だと思っています。

 また、大阪の特有の問題かもしれませんけれども、生活保護費をピンはねをする無料の低額宿泊事業者、これがたくさんあります。いわゆる貧困ビジネスによってそういう保護費を商売にしている、こういう実態もあります。しかし、この貧困ビジネスそのものは法の規制の枠の外にありますので、どうしてもそれがまかり通っている、そういう状況だと思っています。

 そういう面では、不正受給を正す、そういう権限の強化やあるいは実態調査を進めていくと同時に、このような業者を取り締まっていくことが必要ではないかな、法整備が必要だろう、そのように思いますが、御見解をお伺いしたいと思います。

細川副大臣 村上委員にお答えをいたします。

 生活保護の不正受給というのは、先ほど大阪のことを言われましたけれども、全国的にはちょうど大阪の十倍の件数、一万八千六百二十三件、二十年度であります。そして、その不正受給額は百六億円にも達しているというような状況で、こういう不正受給はしっかりとさせないようなことをやっていかなきゃいかぬというふうに思っております。

 そういうことで、生活保護の適正な支給認定に当たっては、法に基づいて各自治体が実態調査、しっかりと家庭訪問などをいたしまして、まず実態を把握すること、それから、課税調査あるいは資産調査などの調査を徹底することがまず一番だろうというふうに思います。

 それから、保護の申請のときとかあるいは受給中に、いろいろな機会をとらえて、収入についてはしっかりとした申告義務があるとか、そういうふうなことを本人にいろいろ伝えながら不正受給を防いでいくというようなこと。あるいはまた、不正受給がわかりましたら、それはきちっと取り戻すといいますか、徴収をする。それから次に、悪質な場合には、これは刑事告訴ということで、そこはしっかりと徹底して不正受給を防ぐようにやっていくということが大事だろうというふうに思います。そういう意味では、厚生労働省として、各自治体にそういうことを徹底してやるようにしていきたいというふうに思います。

 それから、無料低額宿泊施設、あるいは届け出のない施設についてのお話もございました。

 これについては、昨年実態調査をいたしておりまして、その実態調査に基づいて、各自治体などにいろいろ改善の措置を指示いたしております。例えば訪問調査の徹底、あるいは悪質な施設からの転居支援だとか、あるいは、生活保護費は間違いなく本人に渡すというようなことを自治体の方に改善措置として連絡をいたしております。

 さらに、そういう指示をしたことが実際にいかになされているかということについてのフォローアップを今現在調査しているところでございます。そして、厚生労働省の中には、山井政務官が主査になりましてこれの検討チームもつくっておりまして、入所者とかあるいは自治体の方からいろいろなヒアリングなどもいたしておりまして、その検討の結果、法規制をするかどうかということも含めて、今検討をしていただいているということでございます。

 そのほかいろいろな予算措置もいたしまして、無料低額施設に対しては、就労支援をするような、そういう支援をする職員を置いた場合には予算的な措置をするとか、そういうようなこともやっております。

村上(史)分科員 ありがとうございます。

 調査権があるということは存じ上げておりますけれども、調査をしても回答の義務がない場合もございます。やはり回答義務もあわせて設定をしていくということも今後の検討に入れていただきたい、そのように要望をさせていただきたいと思います。

 次に、医療扶助についてお尋ねをいたします。

 高齢化という背景もございますけれども、生活保護費の中で医療扶助というのが半分近く占めております。国レベルでおおよそ一兆円を超えるという状況になっております。

 もちろん、医療を必要とする方には手厚くそれを扶助するのは当然でございますけれども、一方では、抑制という面でも、医療扶助が適正に支給されているかどうか、それを検討していく、取り組んでいく、それも大変重要なことだと思います。

 例えば、私は思うんですけれども、過剰な医療をしているんじゃないか、そういう疑いもある部分もございます。そういうチェックをするためには、やはり公的な位置づけの中で、あるいは法的な位置づけの審査機関を設置する、そのことによって過剰な医療費のチェックをすることができるんじゃないか。そのことに対してはどのように検討をされているか、お尋ねをいたします。

細川副大臣 委員御指摘のとおり、生活保護費の受給者の方が必要な医療を受けられる、それを適切に実施するということは、これはもう当然でありますけれども、しかし、指摘されるような過剰診療や不正請求などがあるということに対しては、しっかりと対策をとって医療扶助の適正化を進めていかなければならないというふうに思っております。

 そこで、この医療扶助の適正化につきましては、一つは、医療費の審査、支払いについては、社会保険診療報酬支払基金法に基づく審査委員会などで的確にレセプト審査をしっかりやっていくこと、それから二つ目は、各自治体におきまして、レセプト点検の外部委託なども通じまして適切なレセプトのチェックに取り組むこと、さらには、地方厚生局が来年からやりますけれども、自治体に対して、障害者の方が本来利用可能な自立支援医療の優先適用がなされているかどうかというようなことも指導監査を行うということにいたしております。

 そこで、先ほど、過剰診療とかそういうようなことも御指摘がありました。頻繁に通院をしているような方とか、あるいは長期入院をしている方で保護を受けている方、そういうことについては、これは慎重な調査も必要だと思いますけれども、ケースワーカーなどが、そういう診療が必要かどうかということを十分に検討していただいて、かかっているお医者さんとも相談をして、適切な受診がなされるような、そういう指導もしていくということにしております。

 今後とも、いろいろな取り組みを通じて医療扶助の適正化に向けてやっていきたいというふうに思っております。

村上(史)分科員 ありがとうございます。

 なかなか立ち入りにくい問題もあろうかと思いますけれども、どうぞ、この抑制についても真剣に御検討いただきますよう、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 次に、生活保護費の抑制という視点からお尋ねをしたいと思います。

 今は、受給実態の問題について私の方から質問をさせていただきましたけれども、問題は、生活保護に至らないようにする、先ほど、冒頭に大臣がおっしゃいましたように、生活保護に至らない、その手前でそれをケアしていく、セーフティーネットを働かせていく、そのことが大事だということもおっしゃっていただきました。まさに生活保護者になる前に行政として第二のセーフティーネットを張る、これは、これからの生活保護施策についても大変重要な要素だと思います。

 しかし、残念ながら、この制度、施策について余り知られておりませんし、また、どのように利用していいのか、また条件がどうなのか、それを受けにくいのか、そういうところもなかなか見えてこない。そういう面では、もっとこういう視点に立って国民に、あるいは行政として積極的に展開をしていく、それが必要ではないかなというふうに思いますけれども、その点、いかがでしょうか。

細川副大臣 委員御指摘のように、仕事を失った方が生活保護に陥らないように、その前に、生活保護を受ける前に第二のセーフティーネットをしっかり張らなければいけないというようなことは、先ほど、大臣の方からも御答弁があったところでございます。

 そういう意味で、施策といたしましては、新政権が発足した昨年の十月から、住居のない人には家賃を手当てする、こういう施策を始めております。

 しかし、せっかくの制度も、使い勝手がさらにいいような形にして、利用者の視点に立った形で改善もしていかなければというようなことで、来年度からは、今は六カ月が最長なんですけれども、それをさらに三カ月延長するとか、あるいは収入要件を緩和するとか、そういうようなことで改善をしていこう、こういうことでございます。

 さらには、地方自治体に配置をいたしております住宅確保・就労支援員というのが、今千二百五十名なんですけれども、これを来年度からは倍にいたしまして、二千五百名にいたしまして、就労支援を強化していく、こういうことも予定をいたしております。

 それからさらに、今、緊急人材育成支援事業というのをやっておりまして、これは先ほど大臣もお答えになりましたけれども、失業しても雇用保険が受けられない、あるいは失業保険が終わったけれども就職できていない、そういうような人に対して、職業訓練を受けながら生活支援もしていく。現在、十万円の支給をいたしておりますけれども、そういう制度も今ある、やっているということでございます。この制度については、二十三年度からは恒久的な制度として求職者支援制度というのをつくるということを予定いたしております。

 そんなことで、第二のセーフティーネットをしっかり張るということでありますけれども、しかし、せっかくやっておりましても、それが一般の方に知られていない、あるいは必要とする人に知られていないということも御指摘のとおりでありますから、その点につきましては広報の強化にしっかりと努めていくということで、この住宅手当を初めとする第二のセーフティーネットは、みんなに知られるようなことにもしっかり努めていきたいというふうに思っております。

村上(史)分科員 ありがとうございます。

 この施策は自立に直結する施策になると思いますので、どうぞ強力に推進をしていただきたいなと要望をさせていただきたいと思います。

 時間の方も残り少なくなってまいりましたのでちょっと急ぎますけれども、今、大阪市で特に抱えている問題が、いわゆる追い込みということでございまして、これは他都市、他の自治体から送り込まれてくるということで、大阪市にどんどん流入してくるという状況が、大阪市としては大変負担を強いられている。どうしても、現実にそういう方が来てしまわれるとやはり保護を打たなければならない、そういうことの繰り返しによって保護費がますますかさんでくるということで、地元の自治体からは、これはもう、指導をきっちりしてほしいと。現在地保護という観点から、本来、自治体ですべて窓口とならなければいけないものを他の自治体にたらい回しをしていく、そういう実態が今なおある。

 もちろん、政府としても各自治体に指導されたというふうには聞いておりますけれども、しかし、なかなかそれが改善されないという現実がございますので、ぜひ実効ある指導を重ねてお願いしたいというふうに思います。これはお答えいただきたいんですけれども、ちょっと時間がないものですから、要望という形で質問にかえさせていただきたいと思います。

 それでは、最後の質問をさせていただきます。制度改革についてでございます。

 御承知のように、生活保護制度というのは、昭和二十五年に施行をされました。生活保護制度の趣旨は、憲法二十五条に照らしても普遍なものがあることは事実だと思います。

 しかし、その背景というものは、二十五年当時からおよそ六十年たった現在、社会的にも経済的にも大きな変化を生じていると思っています。

 そういう中で、生活保護の増加の原因は、現下の厳しい経済情勢にあることも当然でございますけれども、制度そのものにも大きな問題があるのではないか。

 といいますのは、当時は、終身雇用制度もありましたし、旧来の家族制度というものもありました。家族の中で何とか解決していくというような社会的な背景もあったと思うんですけれども、そのことを前提に雇用やあるいは年金の制度が成り立ってきたというのも事実です。ところが、時代の変化、状況の変化によって、それが現実とずれが出てきた。そういう失業者あるいは生活困窮者を生活保護に直結させるような状況になってきたのは、やはり制度そのものにも問題があるのではないか、そのように私は思っています。

 そういう面で、生活保護制度の目的でもあります国民生活の最低限度の保障を行うナショナルミニマムを安定して実施するためにも、この問題は、社会保障全体の問題として議論を進めて、そして保護制度の改革につなげていく、それが不可欠だと思います。保護制度を抜本的に変えていく。これは保護制度だけで問題が解決するわけではない。やはり社会全体、社会保障全体の枠の中でそれを位置づけていく、それが何よりもこれから必要なことではないか、そのように思っています。

 この制度改革について、最後に大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

長妻国務大臣 冒頭言われました、いわゆる送り込みということについては、昨年三月も厚生労働省保護課長名で通知も出して、相談者の意に反して他の自治体への移動を勧めることなく、相談を受けた所在地、現在地の自治体が必要な支援を行うということを指導していくということでありまして、これからもそれをいろいろな機会に続けていきたいと思います。

 そして、生活保護制度についてというお話であります。

 まさにおっしゃられたようなナショナルミニマムを、憲法二十五条、維持するための一つの重要な制度でありますけれども、やはりそこは、第二のセーフティーネットもありましょう、今後、年金の制度改革、我々は申し上げておりますけれども、最低保障年金との兼ね合いというのもありましょう。

 おっしゃられたように、終身雇用、年功序列が崩れ、地縁、血縁も、単身世帯がふえて、地域の支え合いも崩れて、まさに個人単位で考えなければいけない時代に来たなというふうに思っております。その意味で、社会保障全体の中で、生活保護というのを積極的に位置づけて、生活保護に一たんなっても、そこから本当に仕事をしていただくような支援体制も万全に整えていく。こういう、ある意味ではトランポリン的な政策で、そこからまた仕事についていただく、こういうような一体的な考え方が必要だということであります。単体だけで考えるのではなくて、全体の整合性、連結性、連動性の中で考えていく必要があるというふうに思います。

村上(史)分科員 ありがとうございました。

岡本(充)主査代理 これにて村上史好君の質疑は終了いたしました。

 この際、暫時休憩いたします。

    午後九時休憩

     ――――◇―――――

    〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕


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