衆議院

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第1号 平成24年3月5日(月曜日)

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本分科会は平成二十四年三月一日(木曜日)委員会において、設置することに決した。

三月二日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      江端 貴子君    笹木 竜三君

      山崎  誠君    渡部 恒三君

      橘 慶一郎君    高木 陽介君

三月二日

 笹木竜三君が委員長の指名で、主査に選任された。

平成二十四年三月五日(月曜日)

    午前八時開議

 出席分科員

   主査 笹木 竜三君

      江端 貴子君    後藤 祐一君

      中林美恵子君    山崎  誠君

      河野 太郎君    橘 慶一郎君

      高木 陽介君

   兼務 湯原 俊二君 兼務 あべ 俊子君

   兼務 赤澤 亮正君 兼務 柴山 昌彦君

   兼務 赤松 正雄君 兼務 江田 康幸君

   兼務 塩川 鉄也君 兼務 中後  淳君

   兼務 服部 良一君 兼務 山内 康一君

    …………………………………

   厚生労働大臣       小宮山洋子君

   内閣府副大臣       中塚 一宏君

   厚生労働副大臣      牧  義夫君

   厚生労働副大臣      辻  泰弘君

   財務大臣政務官      三谷 光男君

   厚生労働大臣政務官    藤田 一枝君

   厚生労働大臣政務官    津田弥太郎君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 宮内  豊君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           奈良 人司君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           有松 育子君

   政府参考人

   (文部科学省研究振興局長)            吉田 大輔君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房年金管理審議官)       今別府敏雄君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           森岡 雅人君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  大谷 泰夫君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  外山 千也君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局長)            木倉 敬之君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局安全衛生部長)       宮野 甚一君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局労災補償部長)       鈴木 幸雄君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            森山  寛君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       高井 康行君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           山崎 史郎君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    岡田 太造君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  宮島 俊彦君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  外口  崇君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  榮畑  潤君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  今井  敏君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            加藤 洋一君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           井上 俊之君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局長)  山内 正和君

   厚生労働委員会専門員   佐藤  治君

   予算委員会専門員     春日  昇君

    ―――――――――――――

分科員の異動

三月五日

 辞任         補欠選任

  山崎  誠君     中林美恵子君

  渡部 恒三君     空本 誠喜君

  橘 慶一郎君     河野 太郎君

同日

 辞任         補欠選任

  空本 誠喜君     藤田 大助君

  中林美恵子君     山崎  誠君

  河野 太郎君     橘 慶一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  藤田 大助君     後藤 祐一君

同日

 辞任         補欠選任

  後藤 祐一君     向山 好一君

同日

 辞任         補欠選任

  向山 好一君     柴橋 正直君

同日

 辞任         補欠選任

  柴橋 正直君     渡部 恒三君

同日

 第二分科員赤澤亮正君、服部良一君、第三分科員あべ俊子君、第四分科員湯原俊二君、赤松正雄君、江田康幸君、第六分科員柴山昌彦君、中後淳君、第七分科員塩川鉄也君及び第八分科員山内康一君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成二十四年度一般会計予算

 平成二十四年度特別会計予算

 平成二十四年度政府関係機関予算

 (厚生労働省所管)


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     ――――◇―――――

笹木主査 これより予算委員会第五分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めさせていただきます。よろしくお願いします。

 本分科会は、厚生労働省所管について審査を行うことになっております。

 平成二十四年度一般会計予算、平成二十四年度特別会計予算及び平成二十四年度政府関係機関予算中厚生労働省所管について、政府から説明を聴取いたします。小宮山厚生労働大臣。

小宮山国務大臣 平成二十四年度厚生労働省所管一般会計及び特別会計予算の概要について説明いたします。

 平成二十四年度厚生労働省所管一般会計予算の総額は二十六兆六千八百七十三億円であり、平成二十三年度当初予算額と比較しますと二兆二千七百六十五億円、七・九%の減少となっていますが、このほか、基礎年金国庫負担割合二分の一の財源として、税制抜本改革により確保される財源を充てて償還される交付国債により、二兆四千八百七十九億円を確保しています。

 以下、主要施策について説明いたします。

 第一に、全ての子供の良質な生育環境を保障し、子供の育ちを社会全体で支援するため、子育てに係る支援策を充実させるなど、総合的な子ども・子育て支援を推進していきます。

 第二に、分厚い中間層の復活を目指し、労働市場への参加保障の理念により、できる限り多くの人が働きがいのある人間らしい仕事ができるよう、若者、女性、高齢者、障害者の就労促進を図っていきます。

 また、東日本大震災後の産業構造の変化等を踏まえた公的職業訓練の推進、就職困難者等全ての求職者の就労に向けた重層的なセーフティーネットの構築による積極的な就労・生活支援対策の展開等を行い、全員参加型社会の実現を図っていきます。

 第三に、安定的で持続可能な医療保険制度とするため、各医療保険制度に係る必要な経費の確保等を図っていきます。

 また、在宅医療・介護を支える人材の育成や基盤の整備等とともに、地域住民が住みなれた地域で必要な医療・介護サービスを継続的、一体的に受けることのできる地域包括ケアシステムの整備を推進していきます。

 さらに、医師等の確保対策を初めとした地域医療確保対策、救急医療、周産期医療の体制整備、災害医療体制の強化、安定的な介護保険制度の運営の確保、地域での介護基盤の整備、革新的な医薬品、医療機器の開発促進等により、安心で質の高い医療・介護サービスを安定的に提供していきます。

 第四に、行動計画の改定を踏まえた新型インフルエンザ対策の強化等の感染症対策、肝炎治療促進のための環境整備等の肝炎対策、小児がん対策等のがん対策、難病等の各種疾病対策、移植対策、生活習慣病対策を推進していきます。

 また、健康危機管理対策、食品中の放射性物質対策、輸入食品等の食品の安全対策、食中毒対策、医薬品、医療機器、再生医療製品の安全対策や迅速な提供等を推進していきます。

 第五に、公的年金制度は国民の老後の安定した生活を支えるセーフティーネットであり、持続可能で安心できる年金制度の構築に向け、基礎年金国庫負担二分の一を維持していきます。

 また、国家プロジェクトである年金記録問題の解決に向けた取り組みを進めていきます。

 第六に、障害があっても当たり前に地域で暮らし、地域の一員としてともに生活できる社会を実現するため、良質な障害福祉サービスの確保や地域生活支援事業の着実な実施、精神障害者や発達障害者等への支援施策の推進等を図っていきます。

 第七に、分厚い中間層の復活を目指し、就労形態にかかわらず公正に処遇され、安心して働くことができるよう、非正規労働者の働き方をめぐるルールの整備や、労働者が生涯を通じて安心、安全で健康に働くことができる労働環境の整備を推進し、働きがいのある人間らしい仕事の実現を図っていきます。

 第八に、自殺・うつ病対策を推進するとともに、子供の貧困連鎖の防止等も含む生活保護受給者の自立支援、矯正施設退所者の社会復帰や地域生活への定着の促進等により、暮らしの安心を確保していきます。

 以上のほか、ライフイノベーションの一体的な推進、世界保健機関や国際労働機関等を通じた国際協力の推進、外国人労働問題等への適切な対応、戦傷病者、戦没者遺族、中国残留邦人等の援護、原爆被爆者対策等の諸施策を推進していきます。

 なお、委員の皆様のお手元に資料が配付されていますが、一般会計予算の主要経費別の概要と特別会計予算については、お許しを得て、説明を省略させていただきます。

 今後とも、国民生活の保障、向上と雇用の安定を図るため、厚生労働行政の推進に一層努力していきますので、皆様のなお一層の御理解と御協力をお願いいたします。

笹木主査 この際、お諮りいたします。

 厚生労働省所管予算の主要経費別概要につきましては、その説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じます。御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

笹木主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

笹木主査 以上をもちまして説明は終わりました。

    ―――――――――――――

笹木主査 この際、分科員各位に申し上げます。

 質疑時間はこれを厳守され、議事の進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。

 なお、政府当局に申し上げます。

 質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河野太郎君。

河野分科員 おはようございます。自由民主党の河野太郎でございます。

 大臣、きょうは長丁場、お疲れさまでございます。よろしくお願いいたします。

 今の大臣の御発言の中にもありました年金制度でございますが、厚生年金というのは果たして持続可能なんでしょうか。厚生年金制度は現在の形で百年間維持できると大臣はお考えでしょうか。

小宮山国務大臣 厚生年金、御承知のように、五年ごとに再計算をして、今、二〇三八年までのマクロ経済スライドがかかるようになっていますが、現実には、今デフレ下で、機能しないようになっているので、今回、法案を提出して、特例水準を解消し、デフレ下でも働くように、マクロ経済スライドをぜひ党派を超えて御議論いただいて、そうした仕組みも導入をしながら、百年後まで安心できるように設計をされているものと考えています。

河野分科員 そうすると、現時点では百年間もたない、そういう御認識ですか。

小宮山国務大臣 今申し上げたのは、今のマクロ経済スライドがかかっているのは二〇三八年までですけれども、その先、代替率を五〇%、これを維持していくのにはどうしたらいいかということがございますので、それは、掛ける保険料の問題、給付水準の問題、いろいろな形、また積立金を現在は百年後に一年分になるような計算でやっていますけれども、そうしたことの組み合わせの中で、これはもたなければ困りますので、もつような制度に工夫をしていく必要があると考えています。

河野分科員 そうすると、所得代替率五〇%は今のままでは維持できないということでしょうか。

辻副大臣 委員御承知のように、平成二十一年の財政検証におきまして、五〇%の所得代替率を下回らないということを一つの政策方針としながら、有限均衡方式、百年間で財政を収支するという形で対応しているわけでありまして、そういう意味合いにおいて、現在の財政再検証で検証されておりますように、百年間、所得代替率を五〇%にしつつ、財政収支が見通されているということでございますので、現行制度において維持できるものと考えております。

小宮山国務大臣 さっき申し上げましたように、維持できるような形に、やはり五年ごとの検証の中で、将来の人口の推計ですとか、賃金の傾向ですとか、それから財政の事情とかを考えて計算をしていきますので、持続をさせていかなければならないというふうに考えています。

河野分科員 そうすると、保険料率が一八・三%で固定されるということは、変わる可能性があるわけですね。

小宮山国務大臣 それはそのときのいろいろな状況によりますけれども、今は固定される形でやっていますけれども、そこはその先の状況の中で考え得るというふうに私は思っています。

河野分科員 そうすると、一八・三%で百年間固定するというのは、変わる可能性がある、逆に言うと、変えなければ維持できない可能性がある、そういうことですね。

辻副大臣 財政再検証の中でも申し上げているわけでありますけれども、今のスキームというものは、次の財政検証までに所得代替率が五〇%を下回ると見込まれる場合には、給付水準の調整の終了その他の措置を講ずるとともに、給付及び負担のあり方について検討を行い、所要の措置を講ずるということになっておりますので、今のスキームのもとにおきましても負担のあり方について検討を行うということになっておりますから、そういった意味におきましては、今の段階で変えるつもりはございませんけれども、一八・三%についても検討するということがその時点では発生するということがあり得るということだと思います。

河野分科員 答弁は厚生大臣にお願いしておりますので、厚生大臣に答弁をお願いしたいと思います。

 年金財政の再検証というのは、最後にいつ行われたんでしょうか。

小宮山国務大臣 平成二十一年に行っています。

河野分科員 自公政権のときに、当時野党だった民主党からは、現在の年金制度についていろいろ御批判をいただきました。私は、それは非常に的確な御批判だったと思っております。

 しかし、政権交代した後、再検証は行われていないということなんでしょうか。つまり、今の民主党政権は、野党時代にいろいろとこの財政再検証について御批判をされておりました。野党時代に批判をされた財政再検証を、政権交代をした後に再度行わない、つまり、自公政権、皆さんが野党時代に批判をしていた財政再検証をそのままベースにして今政策が行われているということなんでしょうか。

小宮山国務大臣 現在は、今までに行われていたとおりの形で行っていると思っています。

 それで、やはり百年間を見通してやっていくときに、足元の、いろいろと積立金の運用状況などについても変わってまいりますし、現に、平成二十一年度、それで平成二十二年度によってプラスに乖離するときもマイナスに乖離するときもございますので、余り細かくやり過ぎても、かえって全体の見通しをつくるというのはマイナスに働く場合もございますので、そういう意味では、やはり五年に一度検証していくということでいいのではないかと私は思っています。

河野分科員 民主党政権は、当時、例えば運用利回り四・一%というのは余りに高いじゃないか、そういうことをおっしゃっていたわけですね。そうすると、別に足元の変動ではなくて、百年間四・一%の利回りで計算したときと、それを適正な水準におろしたときと、やはり違うんだろうと思います。

 その運用利回り一つとっても、当時野党の民主党はおかしいとおっしゃっていた。それが政権の座に着いたわけですから、そのおかしいとおっしゃっていたところがどれだけおかしかったのか、私なら検証するわけですが、なぜ、その検証すら行われずにきょうまで時間がたっているんでしょうか、大臣。

辻副大臣 御指摘の平成二十一年財政検証における賃金上昇率、運用利回り等、経済前提の設定につきましては、社会保障審議会年金部会のもとに、金融や経済の専門家で構成される経済前提専門委員会において、長期的な観点から議論をいただいて、客観的に設定したものでございます。

 そして、現在、社会保障審議会年金部会のもとに年金財政における経済前提と積立金運用のあり方に関する専門委員会を設置して、昨年十月から議論を行っていただいているところでございまして、この中で、これまでの検証についても行う、こういうことでございます。

小宮山国務大臣 今、副大臣からも申し上げたとおり、私どもも、確かに野党のときには、そういうやり方がおかしいというふうに批判をしてきた事実がございます。

 その中で、どういうふうに見直したらいいかということを、今専門委員会をつくりまして、そのあたりのことも含めて検討していますので、もう少し時間をいただければと思っています。

河野分科員 最初に主査から時間を無駄に使うなということを政府側に言っているわけですから、きちっとした委員会運営を主査にお願いしたいと思います。

 政権交代が起きたのは二〇〇九年の夏でございます。今や二〇一二年でございますから、これは、このままいったら、近々、三月中にもあるかもしれない総選挙で政権がかわってしまうということだってあるわけですね。そうすると、一体全体、どういうふうに改定しようか考えていますと言っているうちに政権がなくなってしまうではありませんか。

 なぜそういうことになるのかよくわからないんですが、技術的な話をさせていただきますと、今回、税と社会保障の一体改革を野田政権で行われるということで、それならば、二〇〇九年の財政再検証というのは、少なくとも二〇〇八年までは現実の数字ですが、九年以降は、仮定の数字を置いて計算をしているのが二〇〇九年ですよね。そうすると、ここで税と社会保障一体改革をやるというならば、少なくとも足元の数字までは出ているわけですから、仮想の数字でやるのではなくて、足元の数字に置きかえたらどうなるのかということを計算してくださいというふうにお願いをしたんです。そうしたら、厚生労働省は拒否をしてきました。それはなぜかというと、前提の数字を変えたら計算をするのに数カ月かかりますと。

 本当にそうなんですか。大臣、本当に今の厚労省のシステムというのは数カ月かかるようなものだと個人的に思われていますか。

小宮山国務大臣 先々の計算をするのには一定の仮定を置くとか前提を置いてやらなければいけませんけれども、そこの仮定を正しいものに置いてやっていくとか、いろいろなことを考えていきますと、やはり一定の時間は必要だ。どういうところを精査していくかによってかかる時間は違うかと思います。

河野分科員 いやいや、例えば物価上昇率、賃金上昇率、運用利回り、この三つの数字ですよね。この三つの数字はもう現実に固まった数字が出ているわけです。

 私がお願いしたのは、仮定で入れていた数字を現実の数字に置きかえてくださいということだけですから、別にどの数字を入れようなんという議論をする必要はなくて、現実に政府が発表している物価上昇率を入れればいい、長期国債の利回りを入れればいい、それだけのことなんです。それに数カ月かかりますというわけです。

 つまり、数字を入れてから答えが出るまで数カ月かかる、そういうコンピューターを今厚生労働省は本当に使っていると大臣は思いますか。

笹木主査 まず、辻厚生労働副大臣。(河野分科員「おかしいじゃないですか。聞いていないですよ、副大臣の考えなんて。大臣の思いを聞いているんじゃないですか」と呼ぶ)主査が判断します。お答えください。

辻副大臣 昨年十二月に議員の方からの御示唆をいただいて……(小宮山国務大臣「では、私が答えます」と呼ぶ)

笹木主査 小宮山厚生労働大臣。

小宮山国務大臣 委員長のあれを変えて申しわけありませんが、私の方からお答えします。

 議員からは昨年十二月に計算をという御依頼をいただいたということなんですが、やはりその時点では、新しい人口推計が一月に出るとか、あと、経済財政の中長期試算、これも一月末に出るというようなことがあったので、直近のものにしても、なるべく正しいものというか、今の実態をあらわしたものを入れて計算をしたいということで、昨年末にはちょっとすぐにはできないとお答えしたというふうに私は聞いています。

 それで、現在、数字を入れるということは可能だと思うんですが、別に厚生労働省のコンピューターの機能が悪いということではなくて、再三申し上げているように、百年後まで安心な年金にというときに、どういう形のものを入れていくのか。今いろいろな状況の中で、欧州の債務危機ですとか、東日本大震災のことですとか、今非常に景気が落ち込んでいる状況がある。ただ、これはまた来年には回復をするとか、足元だけで計算をすると、かえって先の見通しを誤るということもあるというのが、やはり五年に一度再計算をしていくということのもとにあるかと思っていますので、直近の数字で出すことが本当に将来の見通しを正しく判断できることになるのかどうかということから、やはり五年に一度ということで計算をさせていただくのが一番安定的な数字が出るのではないかと私は考えています。

河野分科員 二〇〇八年の数字をベースに計算する方が二〇一一年をベースに計算するより確実だと今大臣おっしゃったわけですよ。それは明らかにおかしいですよね。

 一月六日に素案が閣議決定されたんじゃないんですか。そうすると、今の野田政権は、閣議決定をする前に、できるだけ最新の数字で税と社会保障の一体改革を議論しようとはせずに、二〇〇八年の数字が最後だった自公政権の財政再検証をベースにこの税と社会保障の一体改革を議論する方が正しい、つまり、自分の政権のときにつくる数字よりも、自公政権でつくった数字の方がきちんとした議論ができる、大臣は本当にそう思っていらっしゃいますか。

小宮山国務大臣 それは、自公政権か今の民主党中心の政権かということとは別に、再三申し上げているように、それぞれいろいろと、景気の状況ですとか運用利回りとかは各年ごとに変動いたしますので、今の時点ですることが本当に百年先を見越すことになるのかどうかというと、確かに野党のときにはやり方に批判もいたしましたけれども、それはやはり五年に一度やっていくということの方が先を見越した安定的な数字が出ると今私は思っています。

河野分科員 別に予測を入れろと言っているわけじゃないんです。現実の数字に置きかえてください、一番確実にとれる現実の数字までに置きかえてください、そういうお願いをしたんです。

 一月の頭には閣議決定をすると言われるから、それなら幾ら何でも民主党政権も数字の検証をするでしょうと。人口は、それは多少振れるかもしれませんけれども、人口はそんなに、たくさん人が生まれたり、生まれなくなったり、急には変わりませんから。それは、確かに最新の人口推計が近々出るかもしらぬけれども、それを待つよりは、少なくとも素案の前に幾ら何でも民主党政権は数字をつくられるだろうと思ったんです。そうしたら、厚生労働省は、大臣に伺ったら、大臣がそれを拒否した、つまり、新しい数字でやってくださいというお願いをしたら、やりませんと。なぜかといったら、厚生労働大臣が拒否をしましたというのが回答だったんです。本当ですね。

小宮山国務大臣 拒否をしたというのはとり方の問題だと思いますけれども、やはり、足元の数字だけでやるよりは、五年の平均の中で、五年を経過した中でやっていくということの方が、私は安定的な先を見越した数字が出ると思いましたので、先ほど申し上げたように、十二月時点は、一月にいろいろな数字も出る手前であったということもあり、今の時点は出すことが適切でないというふうに判断をいたしました。

河野分科員 先週の木曜日から毎日推計が出るようになりました。いろいろな前提を変えてくださいというお願いをしたら、きのうなんかは数時間のうちに推計が出てくるようになりました。現実の数字に置きかえてくださいと言えば、実は厚生労働省、やれるんですね。それを今までやってこなかった。

 つまり、年金の議論をやろうというときに、こういうふうに制度を組みかえたらこうなるよねというのがすぐに出なかったら、年金の議論、できないわけですよ。これをこういうふうに変えてみたらどうなるか、コンピューターを回して、結果が出るのは数カ月後です、ああ、やはりだめだからこういうふうに変えよう、また数カ月たちましたといったら、年に三回か四回シミュレーションをやって終わっちゃいますよね。幾ら厚生労働省の年金局がひどくても、もうちょっとまともなシステムなんです。コンピューターの時代ですから。それはFORTRANを使っているかもしれませんけれども、コンピューターを使えば、計算尺よりは速く計算ができるんです。だから、やろうと思ったら、実は数時間で数字は出てくるわけですね。

 今何が問題かというと、厚生労働省がこれまで自公政権時代に出してきた数字というのは政策的に中立ではないんです。社会保障国民会議なんというのもやりましたけれども、あのときの前提は、明らかに現行制度にとっていい数字が出るような前提条件を置いて、ほかの、こうやったらどうかという制度を計算して、ああ、やっぱりだめですねという数字なんですね。それは、明らかに年金改革の議論に対して邪魔になっているのは、厚生省の将来推計なんです。

 ですから、私は、厚生省が将来推計を出すのではなくて、ちゃんとした独立な機関をつくって、そこが将来推計を出せば、政策に対してニュートラルな、政策に対して中立な数字が出てくる。みんなでその数字をベースにして計算をして、議論をして、あるいは、この前提をこういうふうに変えたらどうなるか、この制度をこういうふうに変えたらどうなるか、その機関がその数字を受けて計算をする。あるいは、そういう中立な機関がモデルを公開して、経済学者がそのモデルを使って、アサンプションを変えたらこうなりますよという計算をしやすくする。国民みんなが、年金の制度をこう変えたらこうなりますよということがわかるようにするのが、年金制度改革を透明にしていく、そういうことにつながるんじゃないかと私は思っているんです。

 今のように、何かあると数字が出されない、何かあると非常におかしな前提で数字がつくられる、これで年金は大丈夫ですよといっても、残念ながら、もう国民は信頼していないんです。それは、責任は半分以上自公政権にある、あるいは、それは公明党に申しわけないですね、自民党にあると私は思っています。

 ですから、これから先、やはり年金の議論をしようと思ったらば、きちんと政策的に中立な独立をした第三者機関が数字を出して、きちんとシミュレーションをやれる、そういう環境をつくることが大事なんだと私は思うんですが、厚生大臣、どう思いますか。

小宮山国務大臣 私は、今、厚生労働省が出しているものが中立でないとは全く思っていません。それは、多くの専門家の方に集まっていただいて、いろいろな形で検証もしながらやっていると思っています。

 それで、河野委員が言われた、こういう形でとにかく短い時間で出してくれということだったので、ごくごく粗い計算をさせていただいている。粗いというのは誤解があってはいけませんけれども、先ほどから申し上げているように、やはり年金は百年先を見越すわけですから、いろいろな前提条件でいろいろな形でやらなければいけませんけれども、とにかく一日、二日で出せという御要望だったので、そういう中で、非常に極めて簡易な方法でやった結果がお手元に届いていると思います。

 そうすると、百年後には非常に多くの赤字になってもたないということを多分おっしゃるかもしれませんけれども、これはやはりそれをもたせるように工夫をしながらやっていくので、そこでいろいろ今の現状の足元のことでつくったもので判断をするということは、私は、先ほどから繰り返して申しわけありませんが、百年先まで見越す上では、かえってそれはプラスに働かないことなのではないかというふうに思っています。もちろん、第三者機関で出すということも一つの考え方ではあるかと思います。

 ですから、そういう意味も含めて、超党派で、これはどこの政党が政権をとったって年金は持続可能でなければいけないので、議論をする場をつくって、それぞれの考え方を持ち寄って、そういうところも含めて議論をしていただければいいのではないかと私は思っています。

河野分科員 それぞれの考えを持ち寄るというのは非常に大事ですが、そのときに、きちっと同じ考えで数字がつくられなければ、自分の都合で経済前提をゆがめてしまったら議論にならないわけですね。私は利回りは四・一%だと思う、いやいや、そうは思わない、俺は三・九だといっても議論にならないわけです。つまり、制度の議論をやる前に、将来推計のところで議論がおかしくなっちゃう。

 だから、それぞれはいろいろな考えを持ち寄るけれども、モデルだけちゃんとしておけば、四・一%ならこうなるけれども三・九%ならこうだよねというのは、みんなが見られるわけです。だったら、それをきちっと公開して、みんながそこにアクセスをして、私のモデルならこういうふうになるよねということが万人がチェックできる方が、厚生省が何かモデルを抱え込んで、これはやるべきだ、これはやるべきでない、時間がないから一日で出しますみたいなふうになる今の現状よりはいいと思いませんか。

小宮山国務大臣 先ほどから何か、今、厚生労働省でつくっていることが中立でないかの前提でお話しになっていますけれども、御承知のように、二年半前に自公政権から民主党政権になりまして、民主党政権はまた将来の年金像については違った考え方を持っていますので、そういう意味でも、いろいろそれは、どちらへ偏るとか、政権もかわっているわけですから、それが、厚生労働省が頑として違う考え方に固執をしているということでは全くないというふうに私は思っています。

 あくまでも、将来の試算というのはどういう前提を置いてやるかということなので、その前提の置き方がやはりそれぞれ各党によって考え方も違うと思いますので、そこのところをしっかりとそこから議論していただければいいんじゃないかと私は思っているんですね。

 例えば、この間、民主党の新しい年金の試算というのが、これはごく一部の人たちで計算したものだという前提でお出しをしましたけれども、あの場合にも、やはりマクロ経済スライドに近いようなみなし運用利回りを掛けているだとか、二分二乗で計算をしているとか、そういう前提の置き方によって違ってくるので、コンピューターはきちんと指示どおり計算をするわけですから、その前提をどう置くかということを、ぜひまた河野委員も入って御議論をいただければいいのではないかと。

 そうした御議論も踏まえて、厚生労働省としては、百年先まで安心できるような、どういう形であってもこれはずっと持続可能な形にしなければいけませんので、そういう前提で、別に厚生労働省が何か凝り固まった形で、そのための試算をして数字を出しているということではございませんので、よりよい形のものにつくりかえていくということはもちろん考え得ることだと思っています。

河野分科員 ですから、そのモデルをみんなが公平にアクセスできるようにした方がいいと思いませんか。何も厚生省にお願いをして一々計算をしてもらうよりも、きちんとしたモデルをつくって、それを第三者機関が運営して、誰でもが自分の思った前提を入れて計算できる方が今よりいいと思いませんか。大臣、どう思いますか。

小宮山国務大臣 私の方から余り質問してはいけないのかもしれませんが、河野委員がおっしゃっている第三者機関というのはどういう形のものなのか。

 今、厚生労働省が中立でないという前提でお話しになっていますが、厚生労働省の中でも十分に専門知識をお持ちの方々に御意見をいただきながらやっていますので、それが、第三者機関でやることが、どういう仕組みをお考えになっていて、結果としてどう変わってくるかというのが、ちょっと私はいまいちわからないので、もう少しどういうお考えかを教えていただければと思います。

河野分科員 今の厚生労働省は、少なくとも現行制度がいいんだ、そういう前提なんですね。現行制度がいいという前提でいろいろな数字をつくるから、運用利回り四・一%で百年間ですみたいな数字を平気で出せるわけです。しかし、第三者機関は、別に過去の政策は関係ありませんから、本当に一番いいと思うものを出してつくることができる。

 厚生省は、今の制度がいいんです、これを否定するようなアサンプションは絶対置かない、これを否定するような数字は出してこない。それに比べると、第三者機関の方が政策的にニュートラルに将来推計をできると、大臣、思いませんか。

小宮山国務大臣 ですから、その第三者機関というのは、今、厚生労働省でお願いしている専門家の方々と、どのように違う人たちによって、どこでどういうふうにされるのかというのが、ちょっと私は余り具体的にイメージができないんですね。

 確かに、私も、昨年一年間は副大臣を、そして九月からは大臣をさせていただいて、もちろん厚生労働省の役人の皆さんはみんな真面目です、一生懸命仕事をしていますが、変えることよりも今のままを保ちたいという傾向はそれはあるのかなということは私も思いますけれども、そのことが別に公平公正でないということではなくて、厚生労働省は厚生労働省の、役人の皆さんたちも、将来まで安心できるような仕組みにするにはこれがいいというふうに信じてやっている部分があると思うんですが、そこはやはり私どもも、政務の方でも、私どもはまた、今のままの、自公政権で百年安心と言われたものとは違う考え方を将来に向けては持っていますので、そこのところはかなりニュートラルにというか、そこはそうではない、ここはこういう形でやってほしいということは、私の方からも必要に応じて年金に限らず指示はしていますので、おっしゃるように、今までのことを守るために中立でないことをやっているとは私は全く思っていません。

河野分科員 例えば、二〇〇四年の財政再計算では、二〇〇五年から二〇一〇年までの厚生年金の積立金の取り崩しは七兆九千億なんですね。ところが、実際には三十三兆五千億取り崩されています。二〇〇九年の財政再計算では、二〇〇九年から一〇年にかけての取り崩しは一兆八千億のはずなんです。ところが、いきなり八兆円取り崩されているんです。この財政再計算より現実の数字というのは相当悪くなっているわけですね。

 これで本当に今の制度がもつと、大臣、思っていますか。

小宮山国務大臣 それは、いろいろ積立金を運用する、そのほかのことからしましても、やはりリーマン・ショックがあり、いろいろ経済状況が悪い中で、今は非常に数字が悪くなっているというふうには思っています。

 ただ、長期的に見ますと、今おっしゃったように、五年間で三十一兆円のマイナスとなっていますけれども、それ以前にはプラスになっているところもありますので、そこは相殺をされていく部分もあると思っていますので、おおむね平成十六年の再計算の見通しどおりにはいっているというふうに思っていますので、長期的にこれでもたないというふうには私は思っていません。

河野分科員 二〇〇九年の財政再計算では、二〇一〇年度末の積立金が百四十二兆六千億なんですね。百四十二兆六千億あると、二一〇〇年度末の積立金が二百四十七兆、二一〇五年の積立金が百三十二兆ありますという数字なんです。

 厚労省に計算をしていただきました。これは、二〇〇九年の財政再計算では、仮定の数字で計算をすると、二〇一〇年末は百四十二兆円の積立金ですよと言うんですが、実際の積立金は、そこはないんですね、百四十兆円しかない。それだけもうスタート台が下へ下がっている。発射台が下へ下がって、あとのアサンプションは同じです。あとの経済前提を同じで計算すると、二一〇〇年にあの再検証では二百四十七兆ありますよと言っていたのが、実は現実の数字を発射台にして計算すると四十一兆円しかないんです。二一〇五年には百三十二兆円あるはずですよと言っているんですが、現実の発射台で経済前提を置くとマイナス百五十兆円になっちゃうんです。

 つまり、二〇〇九年の財政再検証では百年もちますよと言っているんですが、実は、今の現実を発射台にして計算をすると、もう百兆円単位でお金が足らなくなるんです。

 大臣、これで持続可能な年金だと思いますか。

小宮山国務大臣 冒頭から何か同じやりとりをさせていただいているように思うんですけれども、例えば積立金の問題からしましても、平成二十一年度はプラス四兆円なんですね。それで、二十二年度がマイナス二・二兆円というように、毎年度ごとに変動があるわけですよ。

 それで、五年ごとに再計算をする中で、冒頭の御質問にもお答えしたように、もつ形でそこは考えていきますので、そういう意味で、今、本当にいろいろなものが底の状態というか、非常に悪い状態のところで先がもたないだろうというのは、そこは再計算ごとにちゃんともつような形にしていくということだと思います。

 その中で、やはりこれは超党派で年金問題はぜひ御議論をいただいて、民主党は民主党の考え方を持ち、自民党あるいは公明党の皆さんはそれぞれの考え方を持って、ずっと安心する、これは本当に老後の安心の柱でございますから、そういう意味では、今回の社会保障の改革でも、年金をもたせるということ、そのために、やはりずっとツケ回しをされてきた借金体制を何とかここで一歩踏みとどまらせて、安心できるものを、後世へのツケ回しを少しでも少なくしながらやろうと考えていますので、そういう観点で、ぜひ委員のお考えも発言をしていただけるような、そういう場をつくって、これは角突き合わせてやる話では全くないと思いますので、超党派でやっていければいいというふうに思っています。

河野分科員 角突き合わせてやることではないというのは、全くそのとおりなんです。岡田さん、枝野さん、古川さん、大串さんと一緒に、我々、超党派の改革案というのも出しております。

 我々は、民主党政権になって、少し自公政権の呪縛から逃れて、現行制度からきちっとした制度変更ができるだろうと思っておったんですが、少なくともこの現行制度の持続可能性すら再検証がされないんです。二〇〇九年の八月の総選挙で政権交代が起きてから二〇一二年になるまで、現行制度の持続可能性すら検証されないんですね。

 この二〇〇四年の再検証と二〇〇九年の再検証を比べると、例えば二〇七〇年のときの積立金は、二〇〇四年の再検証では二百八十四兆円ですよ、こう言っているんですね。ところが、二〇〇九年に再計算すると五百六十兆円ですと言うわけですよ。五年間しか違わないんですよ。五年間しか違わないのに、積立金が二百八十兆円から五百六十兆円に、二〇七〇年、同じ年ですよ、倍になります、二百八十兆差額が出ます。それは幾ら何でもこんな再検証はおかしいよねと思うのは、多分私だけじゃないと思うんですね、国民の皆さんがどこまでこの数字を見ていらっしゃるかよくわかりませんが。

 少なくとも、再検証をやって、将来推計をやっていますよというと、五年たって検証したら、二百八十円が五百円になりますというお小遣いの話じゃないんですね、二百八十四兆円が、五年たって再計算したら、同じ二〇七〇年で五百六十兆円になりますという議論をしているわけですよ。それで、こういう数字に基づいて政府は議論をしているから年金は大丈夫ですよと言われても、いやいや、ちょっと待ってよというのが国民の考えだと私は思うんです。

 さっき申し上げましたように、スタート台が百四十二兆円だったのが百四十兆円になっただけで、もう既に、百兆円のプラスですよと言っているのが、百兆円のマイナスになりますよというぐらい長いスパンなんですね。

 そうすると、リーマン・ショックという非常に大きな出来事があって、残念ながら、二〇〇九年の再計算はそのリーマン・ショックを完全に吸収し切れていないわけです。

 そうすると、運用利回りが上に振れる下に振れるというのは、それはならせば一緒になっちゃうよ、それはそのとおりだと思うんですが、やはりああいうリーマン・ショックみたいなもの、百年に一度の出来事ですなんというのは、それはやはり早くから計算に入れて、その中に吸収しておかないと、ほっておいただけで、五年たつだけで二百兆と五百兆と、これだけの差が出るというのがこの計算なわけですから、あれだけのインパクトのあるものが起きたら、それはさっさと前倒しで計算をしなかったら、それはほっておいてどうにかなりますよというものでは決してないんだろうと思うんです。だから、そこがやはり感度の問題なんじゃないのかな。だから、なるべくちゃんとやるというのが大事だと思うんですね。

 それで、この百年安心プランというのは、これはもう私は全く信用していませんし、二〇〇四年の制度改正のときも、これはおかしいということをさんざん申し上げて、私は今でもこんなことはないと思っておりますが、少なくとも、百年後に一年分の積立金が残っていて、所得代替率は五〇%を下回りません、それが百年安心と言っている根拠なわけです。

 だけれども、それは、もう足元の数字に置きかえて再検証しただけで、そんなのはうそだというのがわかっているわけですね。そうすると、それだけのことで百兆円のプラスが百兆円のマイナスになりますよというものをベースにして百年安心ですなんて、これはとてもじゃないけれども言えないですよね。極端なケースを計算してみたら、ちょっとマイナスになりましたというんだったら、それでも、それは上下のぶれの範囲で吸収できるから何とかなるかもしらぬということを言えるかもしれませんけれども、二〇〇九年の計算を、少なくとも二〇一〇年の段階で現実の発射台に置きかえたら真っ赤っかですというのは、それは誤差の範囲というよりは、もともとこれは成立をしていないと私は考えざるを得ないですね。

 今大臣おっしゃったように、とにかく百年間もたせます、こうおっしゃっているわけですけれども、それは二〇〇四年の前と何ら変わらないわけですよ。つまり、二〇〇四年の前というのは何だったかというと、保険料率を再計算のたびに上げていきます、だから保険料率はどこまで上がるかわかりません、人口はどんどん減っていきます、人口はどんどん高齢化します、だから当然保険料率は上がります、場合によったら年金給付を切ります、一体全体どうなっちゃうのかよくわからぬ。

 だから、二〇〇四年は、一八・三%に固定をして、これでずっといって、百年後に積立金が一年分残っていて、所得代替率は五〇%で、これで百年安心ですという数字なわけですが、今の大臣の御発言を聞いていると、結局、一八・三%は守られないわけですね。

 百年間保たせなきゃいかぬということですから、そうすると、保険料率は計算して合わなかったら引き上げますよ、給付、合わなかったら引き下げますよ、支給開始年齢、それはだめだったら六十五歳から引き上げますよということになると、それは二〇〇四年以前と全く何ら変わらない、再計算をして合わなかったら、合うように制度を変えますという話なんですよ。今ですら、二〇一〇年の現実に置きかえてすら、積立金は、二一〇五年度百三十二兆円あるはずのところ、もう既に現実の数字に置きかえたらマイナス約百五十兆円になっちゃうわけですから。

 しかも、ここから先、この運用利回り四・一%、賃金上昇率二・五%、物価上昇率一%という前提でいくわけですから、今のデフレ下で。それは、直近はもうちょっと数字は違いますよと言うかもしれませんけれども、しばらくたったらそれでいきますと言っているわけで、このデフレ下で賃金も上がらない、国債の利回り、極めて低利ですというときにこういう状況で、二兆円発射台が違うだけでこれだけ差が出てきます。

 では、来年はもっと違いますよね。あるいは一一年度末を締めたら、積立金はもっと足らなくなります。それは、積立金をいろいろなものに流用しちゃったからですよね。

 そうすると、これで百年安心ですと言っても国民は信頼しませんよね。大臣、国民は信頼しないと思いませんか。

小宮山国務大臣 今の中でも幾つかのことをおっしゃったので、それに全部お答えできるかどうかなんですけれども。

 ですから、やはり、これから年金に入ろうとしている若い方たちにも信頼を持っていただける、そういう年金制度にするにはどうしたらいいかということで、民主党は、全ての方が一つの年金に入る制度、低所得者、無年金をなくすというところにウエートを置いたことを言っているわけです。ただ、これも、中間所得層以降では年金額が下がるとか、幾つかの問題点も、確かに課題もあるんです。

 だから、どの制度をとっていっても将来バラ色ということはあり得ない、そのことは国民の皆様にも、今、私も社会保障改革の対話集会で各地に行っても、正直に申し上げています。

 そういう中で、やはりこれは各党そして国民の皆様も含めて、これはどう考えても今の超少子高齢社会の中で、いろいろな意味で、本来なら十年前に、あるいはもっとそれ以上前にいろいろなことを改めてこなければいけなかったものが、ずっとツケが先送りされてきて、私も、百年安心と自公政権でおっしゃったときに、本当に百年安心なのかと正直思っていました。

 ただ、今私が年金をお預かりする責任者の立場になって、やはり年金というのは先々に向けて安心できるものでなければいけないので、その安心、信頼をつくるためにどうしたらいいかということを、今、厚生労働省も挙げて検討しているわけです。

 ですから、そういう中で、では、今の賦課方式ではだめだから積み立てにした方がいいかとか、税金と保険料の割合はどうしたらいいのかとか、そうしたことをいろいろな党で、またそれぞれの議員の中でお考えがあるので、それをぜひテーブルにのせて、こういう考え方だとこうです、こういう考え方だとこうですということを挙げていただいて、国民の皆様とも一緒に議論をするということだと思っています。

 安心できるものにしていくためには、もう世界で一番の超少子高齢社会になっているわけですから、保険料負担を上げるか給付を下げるか、それしかないんですよね、そういう意味では。あとは、それを保険料でやるのか税でやるのか。

 ただ、河野委員は当然御承知の上でおっしゃっていることだと思いますけれども、やはり年金制度を根本的に組みかえるというのは、時間もかかるし、相当なコンセンサスがないとできないことである中で、先を見越して提案をしながら、今の制度をどのように調整しながら維持していくかというところと、それは両面あわせてやらなければいけないので、その中では、また話が戻りますが、毎年毎年のところで細かいぶれが、先ほど申し上げたように、二十一年度と二十二年度でもプラス四兆円からマイナス二兆円までいろいろあるわけですから、そういう意味では、毎年毎年の変動の中でやるよりも、五年に一度計算する方が安定的に出るのではないかということで、今、厚生労働省はそういうやり方をとっている。

 ただ、もちろん、確かにバラ色の経済成長はないですけれども、今の政権の中でも、新しい成長戦略とか、何とかデフレを脱却することを考えていますので、今の状態のままでずっといって悲観的な将来を出すということもまた違うのではないかな、そんなふうに思っています。

河野分科員 質問通告の中に、例えば、二〇七五年に現役一人、高齢者一人という状況になったときに、積立金がなければ、厚生年金の保険料率は、年金金額、支給開始年齢を現在と同じにした場合、どれぐらいになりますかという質問通告をさせていただいておりますが、答えは、保険料率はどれぐらいになるでしょうか。

辻副大臣 今の委員の前提を置かせていただきますと、二〇七五年度に必要となる保険料率は二五%を上回るものと見込まれるということでございます。

河野分科員 今三人に一人で一八・三%ですから、一人に一人になったときに二五%を上回るどころではないんじゃないですか。質問通告していますから、正確に何%とお答えをいただきたいと思います。

辻副大臣 一定の前提を置いての試算でございますけれども、今出ている数字は二五・六%ということでございます。

河野分科員 三人に一人で一八%で、一人で一人で二五・六%なんですか。そのときには高齢化率は今よりもっと高くなっているわけですよね、当然に。それで二五・六%で、どうしてもつんですか。副大臣、その数字を渡されておかしいと思いませんか。

辻副大臣 詳しくはまた別途御説明をさせていただければと思っておりますけれども、二〇七五年度の給付費と国庫負担、そして総報酬額を照らし合わせましたときにそういった数値になるということでございます。

河野分科員 それは国庫負担が相当上がっていませんか。

辻副大臣 その時点での国庫負担、二十一年財政検証の結果では、二十二・九兆円ということでございます。

河野分科員 そこは正確な数字を後でいただきたいと思いますが、結局、一八・三%ですという約束をしていても、積立金が枯渇してしまうと、建前でも、少なくとも二五%以上になりますよ、恐らくそんな数字ではおさまらぬでしょう。

 そうすると、もう年金の保険料を払うために稼いでいるのと、今度は、自分が年金をもらう側になったときにはきっともっと年金は引き下げられることになる、それが今の年金不信を招いているわけですね。

 やはり、少子化で次の世代の人数が少ないときに賦課方式を続けるというのは、それは構造的に難しい。だから、どこかの段階で積立方式に移行して、自分の分を自分で積み立ててくださいよというふうに移行しなかったら、本当に将来年金がきちんともらえるという年金制度にはこれはならないわけですね。

 ただし、積立方式に移行したときに、賦課方式で来た人たちの財源をどうするか。これは二重の負担と言われている問題ですが、これはそんなに難しい問題ではないんですね。つまり、幾世代にもそこを分散すれば、そんなに大きな負担でもなくこの二重の負担は解消することができる。そのやり方は、事前積み立てなりなんなり、今いろいろな提案をいろいろな学者さんがされています。

 この少子高齢化の中で、賦課方式から積立方式といった、それが私はいいと思いますが、それはいろいろな考えがあるでしょうから、そういう抜本的な議論をする場をそろそろつくるべきだと思いませんか。

小宮山国務大臣 それは今、河野委員がおっしゃったように、積立方式の方がいいという考え方をお持ちの方もいらっしゃることはわかっていますので、今言われたように、そういうことも含めた場をつくってきちんと議論をし、そのことを国民の皆様にもいろいろ考えて御判断いただきたいということは冒頭から私も申し上げているとおりなので、そういう場をつくって、では、賦課方式のままでいいのか、積立方式がいいのか、特に、今おっしゃったように、積立方式に移行した場合に、今の賦課方式の部分の負担と二重負担になるというところが恐らく私も一番の問題点だと思いますから、その辺のメリット、デメリットも含めて議論をしていけばいいというふうに思うんですね。

 ただ、それは自民党さんの中でも、年金を専門にやっていらした方は、私どもが新しい年金制度と民主党の考え方を言っても、今のままで大丈夫なんだ、今のままを改善すればいいのだとおっしゃる方もたくさんいらっしゃるので、これは多分、党派を超えて、民主党の中にも積み立てがいいと思っている人もいると思いますし、そういう意味でも、今これだけ政権交代も起こる時代で、いろいろな考え方を本当に真剣に考えていらっしゃる方が多いわけですから、そういう意味では、議員全体が、いろいろ関心を持つ方がお集まりいただいて、先ほどおっしゃったように、超党派で今まで出した報告というか方向性もあるし、今現実にやっているものもあるし、いろいろなことをあわせて、とにかく議論をする場を持つということは私も賛成です。

河野分科員 自民党がやってきたことは、原発政策一つとってみても、最初はよかれと思ってやったことが、時代の変化に追いつかなくなってきたというのは幾らでもあります。野党になった今、私たちはそういうことをやはり真摯に認めて、変えるべきものは変えていかなきゃいかぬ。

 年金制度は、高度成長時代、特に人口がまだどんどんふえますよというときに、賦課方式というのは非常に安定をしたいい制度だったと思います。しかし、少子高齢化のこの時代に、これを続けていきますと言って、果たして国民の信頼を得られるかというのは非常に大きな疑問だと私は思っています。

 それは少子化対策をやって人口がふえるんです、ふえてみればそれはそうかもしれませんが、そうなるかどうかわからぬという段階で百年安心ですよと言い続けて小手先でいろいろやるよりは、やはり今の制度は今の制度できちっと守っていって、少なくともボールを落とさないようにせにゃいかぬ。それは、今の制度の中で年金をもらっていく人もいらっしゃるわけですから、その人たちに不安をあおるようなことをしてはいかぬ。だから、そこはちゃんと守る。しかし、これから年金をもらう人たちに対しては、この制度であなたたちもやりますよと言って信頼できるかというと、そこはなかなか信頼されないだろう。

 だから、どこかで切りかえをする、その切りかえた後の制度をどうするかというのをやはりきちんと議論をしていかないといけないんだと思います。政権交代のたびに年金制度を変えますというわけにはいきませんから、そこは超党派できちんとやはり議論をしていこうよと。最後は国民の皆さんに案をお示しして、こっちとこっちとどっちが信頼できると思いますかということをやはり伺わないといかぬと思うんですね。

 私は、再三申し上げているように、それをやるときに、厚労省の出している将来推計というのは決してプラスではない。だから、私は、そこは厚労省から切り離して独立したものをつくった方がいい。きょうは、民主党と自民党の理事さんがいらっしゃいますから、本当なら、例えば国会のもとにそういう将来推計をつくるような組織があって、アメリカはCBOみたいな組織がありますから、そういうところできちっとチェックをすべきだろうと思います。

 もう一つ、現在の国民年金のところも、四十年はとても払っていません、だけれども、二十五年も払っていないと支給もされません、だから十年にしてみようみたいなことをおっしゃる人が自民党の中にもいます。与党の中にもいらっしゃると思いますが。

 十年で支給しますと言ったら、六万六千円の四分の一しかもらえない。つまり、一万六千五百円なわけですね。それは、ないよりはあった方がいいかもしれませんけれども、月々一万六千五百円で生活するというのは相当大変なわけですから、恐らくそれしか収入がない方というのはほとんど生活保護になってしまうんだろうというふうに思うんです。

 そうすると、私は、基礎年金というのは、民主党も同じようにおっしゃっていますけれども、それはやはり最低限の保障はきちっとしますよ、みんなに対して最低限必要なものはきちっと出します、そのかわり、所得がある程度あるところは、もうそこは要らないでしょうから、そこはどこかで線を引いて少し切らせてくださいよというのは当然のことだと思います。

 ところが、それをやろうとすると、保険料方式ではできないわけですよね。つまり、保険料方式でやろうと思っても、払えませんでした、あるいは払わないよ、あるいは忘れちゃいました、いろいろなケースがあると思いますけれども、保険料方式でやる以上は、保険料に応じてお支払いをしますということですから、現役の所得が少なければ、そこの部分、保険料を払っていないとそこは当然満額から差し引きますということになると、結局、六万六千円が最低必要なんですといいながら、そこからどんどん今の制度だと引かれていってしまう。

 それはやはり大きな問題で、全額支給しようと思えば、そこのところは、その部分は税でやるしかないんだと思うんですね。保険料は、積立方式の部分をそれは保険料でやらざるを得ないんだろうと思いますが、少なくとも、全ての日本国民に対して最低限必要なところを保障しようというのは、これはもう税でやらざるを得ないと思うんですが、大臣はどうお考えでしょうか。

小宮山国務大臣 今委員がおっしゃったとおりだというふうに思います。

 やはり、今の年金制度が信頼されないというのは、国民年金に穴があいていると言うと言い方が悪いんですけれども、未納者がこれだけふえている中でもつのかどうかということが、国民の皆さんも信頼が持てないという一番もとだと思いますので、そういうことから、民主党でも、無年金、低年金に最大限配慮をするという意味で、税で最低保障年金をというふうに考えてきていますので、今委員がおっしゃるとおりだというふうに思っています。

河野分科員 菅内閣だったかと思いますが、与謝野大臣が、保険料方式ならこれだけのお金でできるけれども、税方式にしたらこんなに金がかかるからそんなの無理だ、こうおっしゃったんですね。

 だけれども、これをよく考えると、税方式で全ての人に必要な最低保障年金を払いますといって、これだけの金がかかりますといえば、それはそれだけの金が必要なんですね。保険料方式だと安くなりますというのはなぜかというと、この分払っていないから安くなるわけで、それは安くなりますよね。保険料方式なら穴があくから、本来払わなきゃいけない人にも、あなたは保険料を払っていませんから年金を上げませんよといって払っていない。その部分がどんどん安くなるから、保険料方式だと安いです、税方式だと高いですと。

 それは、税方式ならみんなに金を払うから高くなるのは決まっていて、だからいいですと言うけれども、年金をもらえなかった方の多くは生活保護になってしまう可能性があるわけですから、そうすると、国家財政を考えれば、それはその分出さなきゃいかぬ。今の国民年金の制度なら税負担は半分で済むところを、生活保護は全額税金ですから、むしろ厚労省年金局にしてみれば未納問題は大したことはありませんという話かもしれませんけれども、国の財政全体を考えれば、それは財政にとっては非常に負担なんだと思います。ですから、一階部分の基礎年金をどうするのかということも、これもやはり超党派でやっていかにゃいかぬというふうに思います。

 その間のつなぎで、支給を十年でやったらどうかということなんですが、私はそれが本当にいいのか。一万六千五百円もらったって、孫の小遣いにはなるかもしらぬけれども、それで生活してくださいというのはとても無理です。逆に言うと、十年で年金がもらえますということは、では、十年だけ納めればいいんですねという間違ったメッセージを出すことにもなりかねないと思うんですね。

 これは、大臣、本当に十年で一万六千五百円をお支払いしますというのがいいアイデアだと思っていらっしゃいますか。

小宮山国務大臣 それはやはり、なるべく無年金者を救済するためにどうしたらいいかと。どういう形をとったって、ちゃんと払ってきた人たちとの公平性の問題とか、問題が全部ベストな方法というのはないと思うんですね。ただ、ベターな方法として、やはり保険料を払っていただいて支給するのですよということの意義も含めて、少しでも無年金者をなくすためにベターな方向としてこれは考えてきているということなんです。

 先ほどからおっしゃっているように、やはり最低限の年金のところは税でやるというのは私も同じ考えを持っています。そのときに、お話の中でも出てきましたけれども、生活保護と今は仕組みが違いますけれども、やはり全体としてどうするのか、また働くことのインセンティブをなくさないようにするにはどうしたらいいのか、そうしたことを、しっかりとした所得を捕捉する制度をつくると同時に、制度全体にわたってそこは考えていかないといけない。

 ただ、今の国民年金は、当初つくられたときの自営業者で資産のある人ではなくて、やはり非正規の方とか仕事をしていない方とかの割合の方が多くなっているので、今の制度のままでもつというふうには考えられないという方の方が多いと思いますから、そういう意味では、さっきから再三委員がおっしゃっていただいているように、超党派で、それでまた党の中もいろいろな考え方があるので、関心のある方に集まっていただいて、ぜひいろいろな形の考え方を示して、これはもう国民の皆さんに深くかかわるので、国民全体の議論にしていくというその考え方には私も心から賛成をいたします。

河野分科員 一万六千五百円でも年金を払って無年金を解消するのが本当にいいかというと、その労力をちゃんと税方式に切りかえる議論に使う方が私は生産性があると正直思っております。

 ですから、この一万六千五百円というのはちょっとどうかなと正直思いますが、先ほどから申し上げておりますように、積立方式の二階部分と税によるきちっとした最低保障年金という制度にやはりこれからしていかなきゃいかぬというのは、いろいろな年金に詳しい経済学者の方々と話をしてきておりますが、そこのところはほぼコンセンサスだと私は思っております。違うという方もいらっしゃいますけれども、本当に年金の問題を一生懸命やっていらっしゃる方のコンセンサスというのはかなりあると思いますし、我々が岡田さん、枝野さん、古川さん、大串さんとやらせていただいた有志の改革案もそれに沿ったものになってきているんですね。ですから、大体その方向性はそういうふうに行くべきなんだろうなというふうに思っております。

 去年、東京財団がいろいろな議論の仕組みをつくって、議員に呼びかけをして、年金の話をまずやろうよ、こう言ってくれたんですが、なかなか関心がなくて、出てきてくださった議員の数が少ないという現実がありました。

 私は、本当にここで消費税を上げるならば、今こそ、その上げた消費税を基礎年金の財源にさせてくださいと。五%上げて、一%二兆五千億なら十二兆五千億ですよね。だけれども、この上げた部分を含め、消費税で基礎年金をやりますよということにすると、今の国庫負担二分の一の分が浮いてきますよね。これと六十五歳以上に出している生活保護のお金を足せば、十二兆五千億にはなりませんけれども、相当な財源が出てまいります。恐らく一兆円ぐらい少ないかもしれませんけれども、相当な金額が出てくるわけでございます。

 今こそ実はそういう議論をすべきときで、消費税を上げますよと言っているときに、むしろそういう議論をさせていただいて、税方式に切りかえる。だから、本当の意味で税と社会保障の一体改革というのをやるべきなんじゃないんでしょうか。

 今の税と社会保障の一体改革、年金はちょっとおくれます、消費税だけは先にやりますという話なんですけれども、それをやると、結局、上げた消費税で財源を賄うことに使いますということになってしまう。むしろ、これは本当に年金改革と消費税引き上げを一体にして抜本改革をやるべきときなんじゃないでしょうか。

笹木主査 小宮山厚生労働大臣、時間が来ておりますので、簡潔に。

小宮山国務大臣 おっしゃるとおり、やはり本当に今こそ超党派でこれはぜひ議論の場をつくっていただきたいし、そういうふうな形でやりたいと思っています。

 ただ、現在の、今御提示している社会保障と税の一体改革は、二〇一五年までを見越して、今これだけという形で、最初申し上げたように、ずっとツケ回しをされてきた部分の解消ということも含めてやっておりますので、そうした中で、民主党の中の新しい年金の考え方の話し合いも進んでいくと思いますから、ぜひ、御党の中でも、そういういろいろな各党の中のお考えをあわせて議論をして、国民の皆様に御判断いただく場をつくるという、その河野委員の御提案には、私も、もう心からそういうふうにしてほしいというふうに思っています。

笹木主査 これにて河野太郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、柴山昌彦君。

柴山分科員 自由民主党の柴山昌彦です。

 きょうは、厚生労働省所管の第五分科会ですので、お茶の放射性セシウムについての質問を主にさせていただく予定ですが、その前に、去る二月二十三日に、FAC三〇四九所沢通信施設、いわゆる米軍通信施設の一部土地の返還について日米合同委員会で合意された件についてお伺いいたします。

 平成十八年四月、すなわち自公政権時代に、所沢市から、今申し上げた通信施設内の東西連絡道路用地の返還の要請がなされました。その後、政権交代に至るまで、当時、私も外務大臣政務官としてかかわってまいりましたが、政権交代前までに、この所沢市からの要望に対して米側からどのような対応が引き出せたのか、お伺いしたいと思います。

山内政府参考人 お答えいたします。

 先ほど来、委員から御質問の中でございましたように、所沢市からは、平成十八年四月、当時の防衛施設庁に対しまして、東西連絡道路を建設するため、所沢通信施設の土地の一部返還について要請があり、これを受け、当時の防衛施設庁では、米側に対して返還を提案したところでございます。

 これを受け、平成十九年二月でございますが、米側からは、一部土地の返還に当たって、通信任務を妨げることがないよう東西連絡道路は半地下方式とするとともに、既存の施設の移設などを日本側において実施することを条件に用地の返還に同意するという考え方が示されたところでございます。

 これを受け、米側の返還条件案について所沢市と調整したところ、平成十九年九月、所沢市からは、半地下方式の道路とする案については、建設費の負担あるいは安全管理などの観点から、当該道路については平面方式としてほしい旨の要望がございました。このため、この所沢市の御要望を受け、米側と鋭意調整を行い、道路を平面方式とすることについて米側の了解が得られたところから、平成二十一年の六月、所沢市に対しその旨を説明したところでございます。

柴山分科員 ありがとうございました。

 いわゆる平面方式、すなわち道路を地上に通すという方式で、既に政権交代の前に米側からの方針が示された、これは本当に大きな前進だったのだなというように思います。

 そして、政権交代後も、関係各機関の御尽力によりまして、今回、土地約九千四百平方メートルの返還が合意されたとのことですが、その内容について御説明ください。

山内政府参考人 お答え申し上げます。

 本年二月二十三日、日米合同委員会において、所沢通信施設の一部土地約九千四百平方メートルを返還することが合意され、そこでは、東西連絡道路用地の返還に伴い影響を受けます既存の施設の移設などを日本側で実施することが返還の条件とされております。

 具体的には、返還予定地に所在するアンテナ、倉庫の移設、あるいは、道路用地の返還に伴い保安用地を確保するために必要となる通信局舎などの移設などについて、日本側で実施することが条件となっております。

柴山分科員 日本側で米側施設の移設を完了させた後に返還されるという御説明だったんですけれども、そうすると、実際の返還時期はおよそいつごろになるんでしょうか。

山内政府参考人 お答え申し上げます。

 今後、米側の返還条件となっている施設の移設整備について、具体的に米軍、所沢市と調整の上、個々の施設の整備を行った後、土地を返還されることとなりますが、この時期について、現時点で具体的に申し上げるということは困難なところでございます。

 いずれにいたしましても、防衛省といたしましては、できる限り早期に土地の返還が実現できるよう、今後、移設整備について努力してまいりたいというふうに考えておるところでございます。

柴山分科員 具体的にいつになるかわからないということですけれども、まだまだ、確かに幾つものステップが予定されていることは理解をいたしますが、この土地が返還されて東西連絡道路が開通するということは我々所沢市民の悲願でもありますし、またこれについて、一刻も早く、防衛省におかれまして御尽力をいただきたいなというように改めてお願い申し上げたいと思います。

 防衛省への質問は以上ですので、御退室をいただいて結構です。ありがとうございました。

 それでは、次の質問に参ります。

 私の地元は今申し上げたとおり所沢市ですが、そのほか、ふじみ野市旧大井町地区、三芳町で、狭山茶の一大産地であります。しかしながら、東京電力福島第一原発事故によるお茶からの放射性セシウムの検出によりまして、消費者の不安、そして生産者への経営の打撃が非常に大きいものとなってしまいました。

 私は、何度も厚生労働省にお伺いして、科学的な根拠があやふやな暫定基準値ではなく、信頼できる新基準値を早急に設定してほしいとお願いしてまいりました。出荷停止や風評被害による生産者等への補償問題も重要なんですけれども、きょうはこの基準の問題に絞ってお伺いいたします。

 まず、先般、二月二十四日の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会において決定された食品中の放射性物質の規格基準についてです。

 お茶は、九〇%以上が飲用茶で使用されているにもかかわらず、これまでの暫定基準値では、食品と同じように、生葉あるいは荒茶等、これをキログラム当たり五百ベクレル以下という基準を設定されてきたわけなんですね。そして、今回の答申では、ミネラルウオーターなどと同じ、飲料の状態でのキログラム当たり十ベクレルという新たな基準値ということになったわけなんですけれども、このようにされた根拠は一体何なんでしょうか。

小宮山国務大臣 今回、暫定基準値でも十分安全ではあるんですけれども、さらに安心もしていただくためということで、全体の放射性物質の量も減っていることから、厳しい基準にいたしました。

 新たな基準では、飲料水、牛乳、乳児用食品、一般食品の四区分としていますが、この中で、飲料水の基準値、これは、全ての人が摂取をして代替がきかない、摂取量が非常に大きいということがございますので、WHOが示している飲料水の水質ガイドラインにあります飲料水中の放射性物質のガイダンスレベル、これに沿いまして、一キログラム当たり十ベクレルといたしました。

 緑茶などのお茶は、飲料水との代替関係が非常に強くて、ほかの飲用される食品に比べて摂取量が極めて多いため、飲料水の区分に含めて、飲む状態で十ベクレルということを適用することにいたしました。

柴山分科員 蓮舫元消費者担当大臣は、茶葉も食べることがあるということで、前の暫定基準値、食品と同じ基準を正当化していましたけれども、私から言わせれば、合理性を欠く乾燥状態の茶葉を基準にするべきでないということを訴えておりまして、各県も同様の訴えをしていたわけなんですけれども、それを酌んで飲料としての基準を別途つくっていただいたということに関しては評価をさせていただきます。

 ただ、今、飲料水と同じようにたくさん飲むということを根拠に挙げられたんですけれども、子供が飲む牛乳がキログラム当たり五十ベクレル以下なんですよね。しかし、その一方でお茶が十ベクレルというのは不公平とは言えませんか。

小宮山国務大臣 それは、例えば七歳から十二歳の男の子の摂取量からしますと、飲料水がWHOのガイドラインに基づいて二千グラムであるのに対して、牛乳は、国民健康・栄養調査の結果ですけれども、三百八・二グラムということなので、飲料水は、やはり子供たちにとっても牛乳よりも多いということから、こういう数値を出したということです。

柴山分科員 ただ、今、飲料水について御紹介されたように、水には当然、ミネラルウオーターもありますし、あと、それ以外のスポーツドリンクですとかそういうところからも摂取をされるわけです。

 例えば給食をとって考えてみても、恐らくお茶が出る給食よりも牛乳が出る給食の方が私は多いというように思っていますので、飲量が桁が違うからということで、牛乳が五十ベクレル、お茶が十ベクレルというのは、私はやはり不公平だなということを率直に感じさせていただいております。

 次の質問に移ります。

 埼玉県茶業研究所によると、お茶の抽出液で今申し上げたように測定した場合、サンプルのとり方や抽出方法によってプラスマイナス四ベクレル程度の誤差が出るということなんですね。ただでさえ低い十ベクレルという基準にあって、四ベクレルもの誤差というのは私は致命的だと思っています。

 正確な測定のためには、かなりの数の検体をとって、手間をかけなければならなくて、円滑な生産を目指すなら、測定器をかなりふやさなければいけないということにもなると思うんですけれども、まずお伺いしたいのは、今申し上げたようなサンプリングや検体数についての基準はどのように考えておられるのか、また、測定器の購入について、国として何らかの助成を考えておられるのでしょうか。

辻副大臣 国としての助成という御指摘がございましたけれども、厚生労働省におきましては、食品中の放射性物質の検査につきましては、平成十四年に策定したマニュアルで精密検査の手法を詳細に定め、正確な測定ができるように努めさせていただいているわけであります。

 同時に、新しい基準値の施行に向けても、地方自治体の職員に対する研修の開催など、円滑な検査の実施に必要な情報提供に努めさせていただいております。

 また、各地方自治体が行う検査機器の整備につきましては、関係省庁による支援に加えて、厚生労働省としても、四月から新しい基準値の施行に向けて、ゲルマニウム半導体検出器等の導入費を補助するなど、支援を強化することにしているところでございます。

 サンプリングについての誤差というお話がございましたけれども、委員御指摘のお茶で捉えますならば、お茶に対する新しい基準値の試験では、製造、加工され、ある程度均質化された段階のものから抽出した液を試料とする予定でありまして、原料の茶葉の濃度差による誤差が影響するとは考えにくいというふうに考えております。

柴山分科員 ちょっとよくわからなかったんですけれども、まず助成についてなんですけれども、ゲルマニウム測定器というお話があったんですが、大体幾らぐらいの金額のもので、幾らぐらいの補助が出るのかということをまずお伺いしたいと思います。

辻副大臣 二千万でございます。失礼いたしました……

笹木主査 確認をしてください。

 今ちょっと確認をしているので、違う質問というか、その関連質問を先にしていただくことはできますか。

辻副大臣 失礼いたしました。

 二十四年度につきましては、ゲルマニウム半導体検出器の補助基準額は千八百三十八万一千円というふうになっておりますけれども、そのトータルとしての額は、通常の保健衛生施設等設備整備費補助金という十六億の中にメニューとして計上されているということでございます。

柴山分科員 通常、一機当たり幾らぐらいのコストがかかるものに対して国の補助が幾ら出るんですかということをお尋ねしているんです。

辻副大臣 国の補助は二分の一ということになっております。(柴山分科員「だから、一機当たりは幾らですか」と呼ぶ)千八百万円の二分の一ということでございます。

柴山分科員 測定器一機当たり一千八百万円もする。通常の農家であれば、恐らく一つの農家が買うには余りにも高い金額であって、それで、二分の一補助が出たからといって、これが本当に普及するかどうかというのは、私はなかなか難しいのかなというふうに思っています。

 それと、あと、後段の方でお答えいただいた、非常に微細な基準についてしっかりと、検体数をたくさんとって調査をしないと正確な値が出てこないんじゃないかという質問に対しては、お茶が均質化されたものについて、つまり製品化したものについて行うのだから、だから関係ないということでよろしいんですか。

辻副大臣 いろいろなお茶の葉を一緒に蒸してつくられるんだろうと思いますけれども、寄せ集めますので、均質化されるということで、そういった中で、茶葉ごとの濃度差による誤差は影響しないのではないか、こういうことでございます。

柴山分科員 そうすると、ブレンドの仕方をいろいろと生産者の方で左右して操作をすれば、この濃度というのは、例えば生産地を表示しなくてよいということになれば、幾らでも、当然、例えば地元以外のお茶をまぜて、それで薄めることをしてもいい、そういうことになるわけですか。

辻副大臣 そういった不正的なことが行われるという前提で考えるのはなんでございますけれども、いずれにいたしましても、そういったことも懸念されることもありますので、基準値に適合するかどうか、その判断のお茶の浸出方法について厚生労働省で現在検討しているところでございまして、三月中ごろまでにその方法について通知をしたい、このように考えております。

柴山分科員 今申し上げたように、製品をどういう由来のものとして捉えるのかということ、そして、私が紹介をしたように、その抽出方法、これについてはしっかりとした基準が必要じゃないかというように思っているんですね。

 お手元に配付資料をお配りしております。この資料は、私が昨年十二月二十三日に農林水産省に対して要請して、提出していただいた資料でございます。昨年六月に、厚生労働省から農林水産省に対して、茶葉から飲用茶に至る生産過程でセシウム量がどのように変化するのかということの試算を依頼したのに対する調査結果でございます。

 二ページ目の一番下、下線を引いた「注」の部分なんですが、「「飲用茶」は、十グラムの荒茶を九十度、三百ミリリットルのお湯で一分間浸出させたもの。」というふうに書かれております。ところが、実際、この方法で抽出したお茶は、日本茶インストラクター協会によると、非常に濃くなってしまうということなんですね。

 そこで、農水省にお伺いしたいと思います。この抽出方法及び数値の根拠を教えてください。

今井政府参考人 お答えいたします。

 農林水産省では、昨年、お茶から暫定規制値を超える放射性セシウムが検出された後、生葉、荒茶、飲用茶の各段階の放射性セシウム濃度の具体的な変化について調査をいたしました。

 その際、茶葉から飲用茶を浸出する方法については、一般的な煎茶の入れ方を参考に設定いたしたところでございますけれども、一般的な煎茶の入れ方が、湯量につきましては茶葉の三十倍から四十五倍、湯温については七十度から九十度、浸出時間につきましては三十秒から六十秒とされているところ、安全側に立ちまして、湯量については一番厳しい三十倍、湯温については一番熱い九十度、浸出時間については一番長い六十秒というのを条件として実験をしたところでございます。

柴山分科員 ただ、煎茶の標準的な入れ方という、ここに資料があるんですけれども、煎茶の例えばよい品質のものを入れたりするときには六グラムに対して百七十ミリリットル、そして、煎茶の並のものを入れるときには十グラムに対して四百三十ミリリットルということが書かれているんですね。

 確かに、四十五倍ということが基準となった場合に、安全を見て、すごく濃く三十倍にしたということも理解できないではないんですけれども、これだけ濃くすると、やはり私たちの基準として、消費者の方々に非常に偏った基準ということも一方では言われるかもしれないというように思うんですけれども、それについてはどういうふうにお考えでありますか。

今井政府参考人 お答えいたします。

 昨年、農林水産省が行いました実験、調査におきましては、食品安全と国民の健康を守ることを最優先という考え方のもとで、より安全側に立った数値を採用し、実験したものということでございます。いろいろな入れ方はあると思いますけれども、昨年の実験では、そういう考え方に立って行ったということでございます。

柴山分科員 消費者目線に立ってということで、それはそれで非常に納得のいく考え方ではあるかと思います。

 次の、配付資料の三ページ目をぜひごらんいただきたいと思うんですけれども、このポンチ絵の下の方で、結局、製茶を三十倍以上のお湯で入れて飲用茶にした場合、今三十倍という御説明があったんですが、これによると、もちろん、出てくる放射線、全て出てくるわけではありませんので、もとの五十分の一に放射性物質が薄まるというように書かれております。正確に言うと、農水省の担当課の方のお話によれば、五十分の一ないし五十九分の一ぐらい。今御答弁になった、より消費者目線で安全側に立てば五十分の一倍ということになろうかと思うんです。

 ただ、先ほど申し上げたとおり、飲用茶での十ベクレルという基準は、プラスマイナス四ベクレル程度の誤差というものが出てきてしまう。また、先ほど質問させていただいたとおり、測定には手間も費用もかかってしまうという指摘があることから、例えば、一案として、製茶あるいは茶葉を計測して、その数値に今申し上げたような係数を掛けて計算した方が現実的だということがまた再び言われるようになってまいりましたが、大臣は、これについてはどのようにお考えですか。

小宮山国務大臣 そういうお考え方もあるかと思いますけれども、もともと、さっき委員がおっしゃったとおり、荒茶でやるというのは現実的でないということは私も省内でずっと言ってまいりましたので、今回、口に入るところで、その状態ではかるという形をとっていますので、そういう意味では、やはりちゃんとお湯を注いで口に入る状態にしたものではかるということの方がよいのではないかというふうに私は思っています。

柴山分科員 それだったら、やはり、先ほどのサンプリングとかあるいはトレーサビリティーの問題ですとか測定方法、これについては、先ほど、一応の目安として「注」に示していただいたんですけれども、しっかりとした基準をオーソライズする必要があると私は思うんですね。

 私が当初この測定方法についてお伺いしていたのは、ことしの一月上旬から三十日間程度パブコメを募集して、二月ごろ方針を決定するということだったんですが、まだ決定されたとは伺っておりません。現状はどうなっていて、いつ決まるのか、厚労大臣に御答弁願います。

辻副大臣 先ほど委員から御指摘もございましたように、お茶の検査法のあり方についてはいろいろな御意見をいただいているところでございまして、農林水産省の考え方もあれば関係団体のお考えもあるということでございまして、現在、これらの方法の中で最も安全側に立った方法を試験方法とすることについて、業界の取りまとめを行っていただくよう農水省にお願いをしているところでございます。

 二月というふうな、ちょっとおくれているじゃないかということでございますけれども、そのような考え方のもとに、調整に少し時間を要しているということでございますけれども、いずれにいたしましても、三月中ごろまでには通知をさせていただいて、四月からの対応につなげていきたい、このように思っております。

柴山分科員 ぜひ、新茶の時期もそろそろ迫ってまいりますので、迅速に対応していただきたいというように思います。

 ただ、いかにそういった入れ方についての基準をつくっても、このように低い数字、しかも誤差の大きな基準を採用する以上、実際に十ベクレル未満の数字しか出なかった場合については、具体的な数字ではなくて、一律に十ベクレル未満という公表の仕方にするべきではないかというように私は考えるんですけれども、いかがでしょうか。

辻副大臣 いろいろなお考えもございますけれども、その公表の仕方についてもまた考えていきたいと思いますけれども、今の基準につきまして、三月中ごろまでに通知を出したいと思っておりますので、そのあたり、しっかりとお示ししたいと思います。

柴山分科員 一番最初に小宮山厚労大臣がおっしゃったように、暫定基準値の値も、これもかなり消費者の健康ということを考えた上で出された基準だということをおっしゃって、それで、さらに今回、網羅的に精査をして、より消費者目線で安全を考えて出したのが今回の基準なわけです。

 ですから、十ベクレルというのはいわばもう本当にミニマムの基準ということで、私は消費者目線に立つということを否定するつもりは全くありません。全くありませんけれども、例えば敏感な方が、やれ、あそこのお茶は四だ、あそこのお茶は五だと。誤差がプラスマイナス四なのにですよ。そういうことを考えて消費者行動をとって、本当にそれが消費者のためにプラスになるというようにお考えになるんですか。

小宮山国務大臣 やはりこれは、国内、海外を問わず、非常に放射性物質の汚染については、食品について敏感でございますので、そういう意味で、今、調査したデータを毎日正確に、迅速に公表しているということなんです。

 おっしゃったような、少しでも低いものを選びたいということが消費者の心理としてあるということは事実かと思いますけれども、いかにこの十ベクレルということが安全プラス安心な基準かということを含めて、リスクコミュニケーションといいましょうか、その内容について、今いろいろな方法で周知を図っております。

 まだまだ十分ではないかと思いますけれども、これは厚労省のみならず政府を挙げて、しっかりと皆さんにそこのちゃんとした知識を持っていただいて、そのことによって、日本の食品、お茶を含めて安心で安全だということがわかっていただくような方向で周知にも努めますので、御理解をいただければと思っています。

柴山分科員 基準の安全性についてアピールしていただくというのは当然です。

 ただ、私が申し上げたかったのは、やはり対外的な公表の仕方で、ミニマムの基準より下のものについて、しかも誤差が非常に大きいものについては、一律に十ベクレル未満という形で公表した方がかえって消費者の混乱を防ぐために有用なんじゃないんですかということの質問なんです。

小宮山国務大臣 すると、非公表のものについて、一体どれぐらいのものなのかという皆さんの心配もまた出てくるかと思いますので、そこのところは、十ベクレルを超えなければ安全だということはしっかりと周知もさせていただきますので、正確な数字をきちんと毎日公表することによって、かえって日本のお茶が安全だということを皆さんにわかっていただくことにつながるのではないかと考えています。

笹木主査 これにて柴山昌彦君の質疑は終了いたしました。

 次に、赤澤亮正君。

赤澤分科員 おはようございます。

 小宮山大臣は、予算委員会の分科会に大臣として臨まれるのは……(小宮山国務大臣「初めて」と呼ぶ)初めて。なるほど。

 ということで、僣越ながら、毎回分科会を見ていると、終わるころには各大臣がへろへろになって、ちょっと意識もうろうぎみな方も夜八時近くなるとあるので、その辺をよく、ペース配分を考えながら。

 何か閣僚の体力テストみたいなものだなと、予算委員会とか各委員会でも、それぞれ、割とほかの大臣が、あるいは副大臣が来て答えられたり、大臣に集中することはないのでありますけれども、この分科会だけは本当に、毎回、閣僚は大変だなと思って見ております。

 特に、もう一つ伺いますと、私も小宮山大臣に直接質問させていただくのも多分初めてですよね。過去なかったような感じがして、私自身は勝手に大変おめでたいことだと思ってやらせていただいておりますので、ひとつよろしくお願いをしたいと思います。

 それで、政府参考人の答弁が当然あるわけですけれども、その後に、特に大臣に聞いていただきたいことと。

 というのは、基本的な問題意識は、私も役人をやっておりましたのでよくわかるのは、大臣を操縦しようとすると言うと言い方が変かもしれませんが、役所は役所の考えがあって、大臣にそれに納得していただきたくてそういう説明をするので、その話だけ聞いているとなかなか真実が見えてこない場合がある。

 もちろん、私もそうでありましたし、厚労官僚の皆さんも、善意で、国のためを思って一生懸命やっているんだけれども、比較的、細部に神は宿るというか、あるいは、逆に言えば、細部に悪魔は住むではないですけれども、そういう面があると思うので、ぜひ、きょうの質疑も念頭に置いていただいて、今後の参考にしていただきたいと思います。

 順次伺ってまいりますが、基本的なテーマは、国立病院機構と労働者健康福祉機構の統合ということです。もっと私の地元のレベルでいえば、米子医療センターと山陰労災病院というのが極めて近い距離にあります。そういったことで、その辺も念頭に置いて、きょうお話を伺っていきたいと思っています。

 最初の質問は、これは政府参考人に伺ってから大臣ということかもしれませんが、国立病院機構と労働者健康福祉機構の統合について、そのメリットとデメリットも含めてお答えをいただきたいと思います。

鈴木政府参考人 お答えします。

 国立病院機構と労働者健康福祉機構の法人の統合については、本部の間接部門の一定の削減が図られることや、臨床研究のシナジー効果が期待できるといったメリットがあると考えております。

 一方で、国立病院と労災病院を合わせれば百七十以上ともなる多数の病院をガバナンスできるかという問題や、現在、公務員型の国立病院と設立以来民間労働者としての身分であった労災病院の労働条件を労使間でどう調整するかといった課題がございます。

 これらに関しまして、国立病院・労災病院等の在り方を考える検討会報告書では、デメリットあるいは課題は短時間で解決することが難しいことや、メリットは組織統合ではなく運用で対応することが可能であることなどから、直ちに統合することは困難であることなどが指摘され、まずは両法人間の連携方策の強化により統合と同様の効果を目指していくことが適当とされたものであります。

 また、将来の統合も視野に入れた両法人のあり方については、社会情勢の変化などを踏まえて、引き続き検討していくことが必要との見解も示されております。

 このため、厚生労働省としては、まずは両法人間の連携の推進、強化を進めるとともに、将来的な両法人のあり方について引き続き検討したいと考えております。

赤澤分科員 それで、大変役所言葉でありますし、シナジーとか身分とかいろいろなことが飛び交っていましたけれども、今のを聞いた上で、小宮山大臣がメリット、デメリットについてどのようにお考えなのか、大臣のお言葉でお話しいただけるとありがたいと思います。

小宮山国務大臣 今回もいろいろと行政スリム化するということで幾つかのことを厚生労働省でも検討したんですけれども、この国立病院機構と労働者健康福祉機構の統合については、すぐにはできない、課題が幾つかあるということで、今回はそういう形の結論にさせていただきました。

 今答弁にもありましたように、やはりメリットとしては、それは、一つにすればいろいろスリム化ができるということがあるかもしれません。ただ、それぞれがそれぞれの役割を今果たしている中で、今度は、統合することによって、その全体の一番果たすべき役割、ガバナンスも含めてできるかどうかということもあるかと思いますので、ここは実態を見て慎重に課題を検討していきたいというふうに考えています。

赤澤分科員 今のお話を聞いても、百七十病院あるとガバナンスがきかぬとか、あるいは身分の問題があるとか、ちょっと本質と離れた、聞きづらい部分の議論が多いような気がして。

 報告書をざっと私が斜め読みした感じだと、政策目標が違う、一応政策目標が違うから別々の組織であるのがしかるべきだというようなことが書いてあったと思うんですが、その辺の話ではないんですか。

小宮山国務大臣 当然、おっしゃることはあると思います。

赤澤分科員 百七十病院だとガバナンスしづらいという話は、では何病院ならできるんだとか、その辺のところも含めてちょっと後ほど改めて聞こうかと思いますが、言葉の点でちょっと私が気になったのは、メリットの部分ですね。

 医療機構を統合することのメリットの部分については、「運用で対応することが可能な部分がある」、文言で言うと、報告書にはそう書いてあります。

 素直に読めば、メリットを追求していく上で、運用ではどうしても対応することができない部分があるかのように読めるということですね。それは、どのような部分ですか。

鈴木政府参考人 運用で対応することが可能でない、困難ではないかと考えられるものとしては、両法人の統合のメリットの一つとしては管理部門の一定のスリム化が考えられますが、公務員型である国立病院と非公務員型である労災病院との給与や退職金を初めとした労働条件につきましては、なかなかこれは運用では対応することは困難である、これらを調整しない限りは人事の交流や労務などの間接部門の削減は難しいものと考えております。

 さらに、このような両法人の労働条件の調整に加えまして、経営状況の異なる病院間の財政調整を初めとする組織管理手法の一元化や各種のシステムの一元化あるいは再構築には多くの時間や費用を要し、業務の停滞も招きかねないというふうに考えております。

赤澤分科員 要は、答えのポイントがずれているんですね。

 というのは、シナジー効果とか、両機構を統合したときにメリットを生じる、考えるメリットがある、そのメリットは運用で実現できる、でも、運用では実現できないメリットがある、報告書を見るとそう読めるんですよ。そこを説明しろと私が聞いているのに、統合することには困難がある困難があるという話ばかりを繰り返して全く答えになっていないということで、ちょっと時間を無駄にしないでほしいんですが。

 同じ質問です。

鈴木政府参考人 メリットに関してはほとんど運用で解決できるものが多いと考えております。

 基本的に、やはり障害となるのは、先ほど申し上げました身分のあたりやITなどのシステムの一元化など、ある程度の、更新の年月のサイクルもありますので、それを直ちにやるというのは難しいということでございますので、メリットに関しては多くの部分は運用部分で実現することは可能であるというふうに考えております。

赤澤分科員 それが全く可能でないと私は思っているので後で話をしますが、今のはだめですよ。真面目に報告書を読んでいる人間にとっては、今みたいなことが出てくるというのは、あの報告書自体がいいかげんだということなんですよ。

 もう一回繰り返しますよ。「メリットは運用で対応することが可能な部分がある」ですよ、文言は。いいですか、「メリットは運用で対応することが可能な部分がある」ですよ。明らかに不可能な部分がある、むしろそっちの方が多いかもしれないぐらいの表現を使っているんですよ。報告書でそういう表現を使っておきながら、ほとんどできますから統合はしたくありませんというのは、役所の思惑なんだよ。だめですよ、こういうことをやっていたら。

 こんないいかげんなことをされていると、分科会でとどまらなくなるんです。私自身の問題意識がどんどん広がって、そこらじゅうでこれを聞いて歩きたくなるんだよ。これはいいかげん過ぎますよ。ちょっとこの場で答えられないんだろうけれども、真面目にちゃんと答えて、本当にこの文言を使った理由をきちっと精査して持ってきてくださいよ。全然だめだよ。

 ほとんどメリットは運用でできると今あなたは言い切りましたでしょう、ほぼ。本当かい、報告書をつくったときにそういう認識だったのかい、それでこの文言だったら本当におかしいぞということを言った上で、後ほどまた、統合しないとむしろデメリットがあるという話を私はしようと思うんです。

 もう一つ、文言に沿って聞いておきましょうか。「デメリットや仮に統合しようとする場合の懸案・課題は短時間では解消することが難しい」。では、どの程度の時間をかければ懸案、課題を解決できるのかということをちょっと聞いてみましょうか。

鈴木政府参考人 両法人統合のデメリットとしては、病院数が多くなることでの組織の肥大化によるガバナンスの低下や機動的な対応などのおくれへの懸念、あるいは、目的や成り立ちが異なる組織の統合による組織の混乱や職員の士気の低下などが指摘されております。(赤澤分科員「聞いているのは時間だよ」と呼ぶ)はい、わかりました。

 具体的には、国立病院の非公務員化への移行に加えまして、職員の給与水準、あるいは加入している社会保険制度の統一などの労使間の調整、あるいは経営管理手法の一元化、それから、それに関連する各種のシステムの一元化または再構築、これに関して時間がかかるということでございます。

 具体的には、今後検討します新法人のあり方の検討にも関連する事項でございますので、現時点で解決までに要する時間を推測し、目標を、いつまでというのを定めることは困難であるというふうに思っております。

赤澤分科員 私も役人をやっていたので、率直に今の話を聞いて感じるのは、どうも役所としてはこれは統合したくないという思いでいるように私には見えるんです。こういうときこそ、まさに政治主導をうたう民主党の大臣が登場すべきところだと私は思うんです。

 では、一番もとのところから話をしますと、大臣御自身は統合すべきだと思っておられるのか、将来的に。少なくとも、時間はかかるが、すぐにはできないが、しなきゃいけないようだという雰囲気を漂わせた報告書が出ているんですけれども、大臣御自身は、将来的な課題としては、これは統合すべきだと思ってもらえるのか。

 それであれば、私は、政治主導というには、やはり期限を切ることだと思いますよ。二年以内に統合するつもりで、あなたたちやってみなさい、問題解決できるかと。新たな問題、それでまた出てきますから。

 その辺について、大臣のお考えを伺いたいと思います。

小宮山国務大臣 それは、政府としては、なるべく行政の機構はスリム化をしていくという方向でやっておりますので、その報告書に述べられているとおりのメリット、デメリットをしっかりと検討した上で、おっしゃるように、ある程度の期限の中でその結論を出していきたいというふうに思います。

赤澤分科員 ある程度の期限とは、どれぐらいですか。

小宮山国務大臣 それが、ここの検討だけで済むものなのか、もう少し全体のことも配慮しなければいけないのかということもございますので、今ここで、いつというふうにお答えすることはちょっとできませんが、そんなに長い先では検討している間にうやむやになってしまいますので、一定の期限の中ではというふうに思います。

赤澤分科員 では、我々の任期の中ではやられると考えてよろしいですか。

小宮山国務大臣 また、私、そこのところは詳しく精査をいたしまして、どれだけでできるかを見定めたいと思っておりますが、その全体の把握をまだ細部にわたるまで私がしておりませんので、正直に申し上げて、そういう意味では、任期中にということを今お約束することは難しいかと思います。

赤澤分科員 それだとなかなか、私、いつまでたってもできないんだろうと思うんですね。

 私も、実は経験があるんです、私、旧運輸省に入省したので。

 国土交通省になってから、海事局というところに船員部があったんです。その船員部をなくそうということで議論をして、そういう大きな流れをつくった後でも、もう本当に、海事局本体と船員部では人事の仕組みが違いますとか、条件が違っておりますとか、これは大変でした。あなたはもう我々の敵だ的なことを言われて、海事局総務課の企画官をやっていたんですけれども、本当に乗り越えるのは大変でしたよ。

 それよりももっと文化が違うと思います。だから、これは大事業なんです。それ自体なし遂げたら、もうそれだけで、私は、後々、これは小宮山大臣の大きな業績だと言われるぐらい大変な話だと思います。ただ、やっていただきたいんですよ。そこは、きょうの、これから伺う中身を聞いて、しっかり大臣に決意を固めていただいて、やるべきことは、官僚の考えていることを乗り越えて、ぜひ実現をしていっていただきたいというふうに私は思っております。

 それで、あと二問ぐらいまた伺って大臣に戻りますけれども、報告書の中ですね、「将来の統合も視野に入れた両法人の在り方について、社会情勢の変化、医療ニーズの変化等を踏まえて、引き続き検討していくことが必要」、こうあるわけですけれども、「社会情勢の変化、医療ニーズの変化等」というのはどんなものを念頭に置いているのか、具体例を示してください。

鈴木政府参考人 お答えします。

 国立病院は、結核、重症心身障害、筋ジストロフィーに対する医療、あるいは心神喪失者等医療観察法に基づく医療など、他の設置主体では実施されないおそれのある医療を提供し、一方、労災病院では、労災補償政策の医療のセーフティーネット機能として、じん肺、脊損、アスベスト関連疾患、あるいはメンタルヘルス対策、作業関連疾患、過労死予防、さらに就業と治療の両立支援などに取り組むなど、それぞれの病院ネットワークを生かして、異なる政策医療を行ってきております。

 今後は、産業構造や職場環境などの社会情勢の変化に伴い、今日的課題となっておりますメンタルヘルス対策や作業関連疾患、過労死予防、あるいは就業と治療の両立支援などの医療ニーズについて、労災病院だけでなく、国立病院とも連携して取り組むことが効果的であると考えております。

 しかしながら、依然として両病院グループの政策医療には、相乗効果が見込みにくい筋ジストロフィーや振動障害なども残されていると考えております。

 両病院が担う医療につきましては、今後とも、疾病構造の変化などに対応して、固定的には捉えず、時宜に応じて検討し、対応を進めていくことが必要ということでございます。

赤澤分科員 ちょっと、問いに答える癖をつけた方がよくて、小宮山大臣と違って、普段から質問を受けていないのかもしれないからあれなんだけれども、「社会情勢の変化、医療ニーズの変化等」というのは何を念頭に置いているんだ、具体的に答えろという話をしているんです。現状この病院が何をやっていますなんて説明をしてくれと頼んだ覚えはないんですよ。

 ちょっと、先ほどからもう二回目なので、警告二回。あと一回出ると退場になるぞというところなので、真面目に答えてください。

鈴木政府参考人 例えば、過去においては重症心身障害児は国立療養所が専ら扱っていたものですが、民間の福祉施設などでも取り扱うようになるというような社会情勢の変化というのは、これまでもございました。あるいは、メンタルヘルスについても、国立療養所が機能転換していく中で扱ってまいりましたが、これも、民間の医療機関がふえてくれば、国立の役割としては相対的に減っていくものというふうに考えております。

 逆に、新たに、アスベスト関連疾患などは、これまでも扱ってまいりましたが、なかなか今後も民間では難しいですが、症例としてはむしろふえてくるような可能性もございます。

 そういったこと等、あるいは国立病院で担ってきたがんあるいは循環器の高度専門的なものも技術によっては民間で扱えるようになるというような変化が予想できますので、そういった意味で、社会情勢の変化に伴って、やはり扱う医療というのはその都度さらに進化していかなければいけないということでございます。

赤澤分科員 最初から今みたいな話であれば、まだわかりいいんですね。

 今の話を聞くと、私が受ける感じは、大臣もどんな感じを受けられたかですけれども、やはり、国立でやってきたことを民間でかなりできるようになれば、そこは国立の機能を縮小していく。将来的には、その流れの中で、両方一緒にできるといったようなことになっていかないかなと私は感じた次第です。

 個別具体の例に入ります。私の地元の例なんです。山陰労災病院と米子医療センターの統合について。

 これはもう繰り返してもらっても余り意味がないので、まず、統合しないことのデメリットというのを御当局として認識しているか。その後で大臣に伺いたいと思います。どうぞ。

鈴木政府参考人 一般的には、同規模の病院が近場に二つあれば、やはり、外来、入院患者さんのそれぞれとり合いみたいなものがあったり、一つであれば医療スタッフが集中して高度なことができるものが、どうしても、分散することで医療体制あるいは夜間救急体制も脆弱なものになりかねないというデメリットはあろうかというふうに思います。

赤澤分科員 きちっと事前の説明のときに言っておいたので、少しはかみ合った話をしてくれて、ありがとうございます。

 大臣、ここをぜひ聞いておいてほしいんです。最初、役所の方が私のところに説明に来たら、何を言ったかというと、本当にもう観念的な、机上の空論というか、地元の人にとっては病院が二つあった方が選択肢が多くていいんです、こう言ったんですね。私、それを聞いてかなりかちんときたんですよ。

 地元のお医者さんに聞いているのは何かというと、要は、米子医療センターというのは二百床台なんです。山陰労災病院は三百床台です。規模が必ずしも十分でない。地元の方たちは、五百床を超えるぐらいでないと。というのは、鳥大の附属病院が近くにあって、これは七百床近いんだと思うんですね。地域の中に七百床近い本当に立派な病院があって、全国的にも評価は高いです。西日本の病院の中でも一番、国立の附属病院では、大学の病院では一番という評価が何かの雑誌でも出ていたと思います。そういう七百床の病院がある。そこは、七対一の基準も満たして、極めて採算的にも望ましい状況でやっている。その地域に病院が二つ、分かれているんですよ。

 結果、何が起きるかというと、とり合いという表現を先ほど部長がされたけれども、まさにそのとおりで、採算上これはプラスになると思われる例えば急性期のがんの患者さんとかを、もうまさに、とり合いと言っていいか、とり合わないと、採算的に厳しい。結果、何が起きているかというと、産科とか小児科、お金がないわけですよ。もともと労災病院は産科、小児科はなかったかもしれないですけれども、国立の方からも産科の先生がいなくなりました。間もなく小児科もなくなっちゃうんじゃないかと。

 だから、先ほどの机上の空論に対して私が激しく文句を言ったのは、二つあった方が選択肢があっていいんですと、それは、両方総合病院で産科、小児科全部あって、万全な機能で二つも三つもあれば、それは患者さんにとってはいいけれども、そんなことを言っているうちに、今言ったように、採算が厳しいから科がなくなっていっちゃうんですよ。両方の病院から科がなくなって、選択肢が多い方がと、何をばかなことを言っているんだ、選択肢がなくなっているじゃないかということが私の申し上げたことなんです。

 その辺の、統合しないことによるデメリット、これを大臣は認められますか。

小宮山国務大臣 委員がおっしゃることは理解をいたしますので、実情がどうなっているかをさらに精査いたしまして、どういう対応をとったらいいかを決めたいというふうに思います。

赤澤分科員 前向きなお答えをいただけたと思っています。

 善意でやっているんですよ。だけれども、やはり、厚生官僚の皆さん方が大臣に上げることをストレートに聞いて、そこまで漫画的なことになっているかわかりませんけれども、統合しない方が選択肢が多いので、地域の患者さんたち、住民は、国民は喜んでいますよなんという話をもし大臣が真に受けてそれで判断されていると、ちょっと地に足がついていないということにこれはなってしまうんですね。

 その辺のことをぜひきょうお耳に入れたかったので、受けとめていただけたと思い、大変うれしく思います。

 次の質問ですけれども、これは、機構そのものを両方くっつけちゃうということももちろんあるんですが、やはり個々の事情をよく見ていくべきだと。

 一つは、もう大臣に御理解いただきました。地方の場合、今の特有の、患者さんが十分いない中でどうやったら採算をよくできるかという中で、分かれていると極めてよろしくない。二百床と三百床台なんというものがあれば、これはくっつけて五百床台の病院にして、そうなると、看護師さんたちも集まってくるんですね。十対一から七対一基準に移っていくこともできるわけですよ。そういうことをきちっとできるようにぜひ持っていっていただきたい。地方特有の問題だと思います。

 個々の例で見れば、これは政府参考人に伺いますけれども、両院の距離が約二キロなんですよ。全国的に見ても非常に近い。これはもう統合する価値があって、例えば、これから役割分担していくとして、急性期のがんの患者さんはこっちで診ると決めた場合に、違った方に行っても、例えばシャトルバスか何かを用意しておけば、すぐ、患者さんの場合はこちらで診ますからといって、別の建物に動いてもらっても十分行けるぐらいの距離だと思うんですよ。

 距離が近いということ自体は、特にこの二つの病院について統合のメリットを高めるところがあると思いますけれども、どう思われますか。

鈴木政府参考人 一般的に言いまして、距離が極めて近い場合には、その対象とする患者さんの特性、地域の事情など、両病院ともわかっているわけですので、統合する障害も少ないと思いますし、メリットは一般的には高くなるのではないかというふうに思います。

赤澤分科員 それで、もう一つ、山陰労災病院と米子医療センターを統合するのは、これは組織の肥大化ですかということをちょっと伺いたいんです。要は、病院に適正規模はあるのか、このあたりの質問になります。

鈴木政府参考人 この報告書で使われています組織の肥大化というのは、基本的に、両法人を合併した場合には、その傘下の病院が多くなってなかなか地方の特色を踏まえた管理が難しいというのが大きな要因でありまして、個々の病院につきましては、肥大化ということは当てはまらないのではないかというふうに思います。

 基本的に、地域の医療ニーズを踏まえて新たな病床数を設定すれば、あとは、それがうまくいくかどうかは管理体制の質の問題かと思っております。

赤澤分科員 今の質問の答えはそういうことになるのかもしれませんが、大臣にちょっとお伺いしたかったのは、例えば地元の医療関係者の方とお話をすると、特にこの地域のこの病院について適正規模はこれぐらいとか、あるいは、米子医療センターも山陰労災病院も、先生方は基本的に鳥大医学部出身なので、郷土愛があるというか、よく意思疎通も図られているという状態で、誰と会っても大体、両方がくっついて五百床ぐらいになれば規模的にはいいのになという議論があるんですけれども、大臣のお耳には、地元の関係者とか、この山陰の例でなくていいんですけれども、病院には大体適正規模があるというような考え方というのは入っていないですか。

小宮山国務大臣 このことに限定しては私はまだ聞いていませんけれども、全体として、私も、お医者さんの、いろいろ情報を入れてくださる方もありますので、そういう適正規模という話は聞いたことはございます。

赤澤分科員 一般論として、場所にもよる、質にもよる、患者さんの実態にもよる、こういう御当局の説明で、そのとおりなんだと思うんですが、やはり、具体的な統合みたいなことを考えていこうとすると、その辺、相当踏み込んで、大臣御自身がこれぐらいの規模でというのを思い描いてリーダーシップをとっていかないと、なかなか動くものも動かないなと私自身が感じるところがありますので、その辺も、本当にお忙しい中恐縮であります、多分厚労大臣は一番忙しい閣僚の一人だと私も確信をしておりますが、ぜひよろしくお願いをしたいというふうに思います。

 次にお伺いをしたいのは、国立病院が黒字で労災病院が赤字というのは、これはもう全国的には例外はないんでしょうか。

鈴木政府参考人 国立病院機構全体では、平成十七年度以降、六期連続で黒字経営を達成しております。一方、労働者健康福祉機構は、平成二十二年度に独立行政法人移行後初の単年度黒字を計上したものの、平成二十二年度の累積欠損金は三百七十一億円に上っております。

 なお、両法人の個別病院ごとでは、平成二十二年度におきましては、国立病院では、百四十三病院中二十病院が赤字となっております。労災病院では、三十二病院中十八病院が赤字ということでございます。

赤澤分科員 具体的に、私の地元の山陰労災病院と米子医療センターについて、ちょっと情報をいただけるとありがたいです。

鈴木政府参考人 両病院とも、平成二十二年度においては黒字でございます。

赤澤分科員 そうすると、どちらかが赤字だから、くっつけるときに、うちが何でその赤字の病院をしょい込まないかぬみたいな議論もないわけですよ。殊に分科会なので、地元のことをかなり話す機会を与えていただけるということで感謝しているわけですけれども、私からすると、距離も二キロだ、両方黒字だ、しかも、政策目標の違いはあると言いながら、基本的に、働いている先生方はみんな鳥大医学部出身で、何で分かれているんだというぐらいの文化の共有度合いなんですね。

 適正規模は、両方合わせたらちょうどいいぐらいだ、そういうことでありますから、これについては、小宮山大臣、本当に、政治主導をうたう民主党政権の閣僚でいらっしゃいますので、ぜひ、きょう私が一生懸命申し上げた事実関係などを念頭に置いて、今後、一歩でも二歩でも踏み込んでいただきたいと思うんです。

 私は、厚生労働の分野、専門ではなかなかありませんので、地元からいろいろな機会に要望をいただくことを受けてきょうのお話をさせていただきましたが、恐らくは、地方の国立病院、医療センターと労災病院が同時にあるようなところについては、まず間違いなく似たような問題があるんじゃないかなと私は想像いたします。

 いろいろと調べてみれば、その病院自体、くっつける必要が強いところとそうでないところがあるので、一足飛びに両機構の統合という話から入っていくと、メリット、デメリットのふわふわした議論で、私は、役所自体はこれをどうもやりたがっていないように見えるので、終わってしまうものが、こういう個別のものをしっかりと大臣の頭に置いていただくと、その必要性というのが非常に強く見えてくると思うんです。

 その辺、大臣、きょうの質疑を踏まえていただいて、最後に一言、この問題に取り組んでいく、できればもう、小宮山大臣の辣腕で、任期内ぐらいに結論を出していただければと私は希望いたしますけれども、その辺についてのお考えを聞かせていただいて、終わりたいと思います。

笹木主査 時間が来ておりますので、小宮山厚生労働大臣、簡潔に。

小宮山国務大臣 今、委員がお取り上げいただいたケースについては、統合のメリットということも十分に聞かせていただきました。それぞれのケースがまた場所によって違うかと思いますので、それをしっかり聞かせていただいて、前向きに進んでいると思っていただけるように検討したいと思います。

赤澤分科員 終わります。

笹木主査 これにて赤澤亮正君の質疑は終了いたしました。

 次に、橘慶一郎君。

橘(慶)分科員 御苦労さまでございます。

 ちょっと大臣は外されますけれども、その間、歌を歌って、すぐ始めてまいりたいと思います。

 きょうは、冬から春になっていく歌でありまして、万葉集巻十、一千八百二十四番。

  冬ごもり春さり来らしあしひきの山にも野にもうぐひす鳴くも

 いよいよウグイスの季節でありまして、それでは、早速質問を始めさせていただきたいと思います。

 年金のことについて、最初お伺いいたします。

 紙台帳とコンピューター記録との突合作業ということで、二十四年度も六百六十億円、昨年度よりは少し落ちついてきたのか、七十六億円の減額予算でありますが、これで継続される。作業の進捗状況を、数値で現状を伺います。

今別府政府参考人 お答え申し上げます。

 この事業は、二十二年の十月から実施をしております。年齢の高い受給者を優先して作業を始めておりますが、一月までの十六カ月で二千六百万人の突き合わせ作業が完了しております。このうち、三十五万人の年金記録が回復をしております。

 男女別の平均余命を掛けて試算をいたしますと八百三十億円の年金回復額、今後ますますふえると思いますが、引き続き、作業を効率化いたしまして、二十四年度中には受給者の突き合わせ作業を終えたいというふうに考えております。

橘(慶)分科員 そうすると、来年度で一通り終わるということで、ぜひ最後までよろしくお願いしたいと思います。

 そこで、年金の記録の確認、要は、受給者あるいは今掛けておられる方々にとって、より物事をわかりやすくするためにということで、昨年、二十三年より、ねんきんネットによる年金記録の確認ということを試行的に自治体と郵便局でそれぞれ取り扱っていただいているという形になっております。それぞれについて、これまでの実績についてお伺いいたします。

今別府政府参考人 一月末の数字でございますが、まず市町村は四百五十七市町村で実施をしていただいておりまして、四千三百四十九件でございます。郵便局、二百四局、百八十三件でございます。

 郵便局の方はまだ数字が出ておりませんので、引き続き広報に努めてまいりたいと考えております。

橘(慶)分科員 実は昨年もこの場所で、この分科会で、そのときは小宮山厚生労働副大臣だったわけですが、私、自治体がこのことをされるということは、住民にいろいろなサービスを提供するということで十分理解をしているわけでありますけれども、郵便局さん、全体に二万数千というネットの中で、試行的ですから二百四局ということになるわけですけれども、そこで百八十三件ということは、一局一件にも満たない状況であります。

 契約単価について事前にお伺いしておりまして、一件三百円という数字でありますから、百八十三件というと、全体で五万四千九百円お支払いになるということであります。しかし、こういったことをやるということであれば、今まで郵便局さんでやっていない仕事でもあり、またコンプライアンスということもあるわけで、当然、事前に研修をしたり、いろいろな費用がかかるわけであります。

 もし、郵便局さんが積極的に、ちょっとこれは言い方があれですけれども、民間企業のようにこれをやりたいんだ、これをやることによって云々ということであれば、それは甲乙の契約事ですからいろいろあると思うんですが、しかし、こういう国にかかわる郵便局さんということで、どちらかというと、政策的に郵便局さんでもやってほしいということになっているとすれば、それを五万四千九百円のお支払いということでは、郵便局も株式会社でありまして、収支相償ということからいうと、ちょっとこれでは成り立たないんじゃないか。

 そういう意味では、もう少しリーズナブルな契約が、もし二十四年度にされるとすれば、必要ではないかと個人的には思うわけでありますが、御見解をお伺いいたします。

今別府政府参考人 この事業、先ほどもお答えしましたように、なかなか数字が上がっておりません。したがいまして、二十四年度も引き続き試行、トライアルという形で契約をしようと考えております。

 この中で、沖縄の郵便局でしたか、例えば年金相談会で年金記録交付サービスを活用いただいたというような実績もありますので、そういうことも踏まえて、引き続き、郵便局株式会社と契約に向けて相談をしてまいりたいと考えております。

橘(慶)分科員 日本年金機構さんと郵便局の関係、実は、大臣はちょっといらっしゃいませんでしたけれども、昨年、副大臣としてこの問題に少しお答えいただいていて、余り実績的に数字が上がっていないということと、それよりも、経済的に成り立っていないんじゃないかという心配をするわけです。

 四問目になっているわけですけれども、実は、日本年金機構さんはみずから、また当然、コスト削減ということは大事でありますから、ねんきん定期便を今度、信書、いわゆる手紙型のものからはがきに切りかえて節約をされるということなんですが、それは年金機構としては麗しいわけですけれども、日本郵政グループ側とすれば、それは減収ということになるんですね。これが、どれくらい年間節約を、逆に言うと減収ということなんですが、されようとしているのかということをお伺いしたいわけであります。

 それはなぜかといえば、先ほど申し上げた、ねんきんネットのお支払いが五万四千九百円ということであれば、何かその辺、もう少し優しさがあってもいいんじゃないかという気もするんですが、どういうふうにお考えなのか、お答えください。

    〔主査退席、江端主査代理着席〕

今別府政府参考人 今のお話でありますけれども、今のねんきん定期便は封書で送っておりますが、これをはがきに切りかえるということでございまして、郵送料を二十億円ほど節約しようというふうに考えております。もちろん、節目年齢の三十五、四十五、五十八については封書のまま残しますけれども、二十億削減する。

 その背景は、事業仕分けで予算を三割カットしろという指摘をいただきましたので、努力をしてこういうふうにしたという経緯でございます。

橘(慶)分科員 先ほどお話ししたねんきんネット五万四千九百円、節約額二十億円、それは節約は大事ですけれども、何か、甲乙という関係でいうと、余りにも極端ではないかという感じがしているわけであります。

 そこで、そうはいっても、ただお金を出すというわけにはいかないでしょうね。先ほど申し上げた、郵便局さんの方で局員の方の研修をする、そういう費用はやはりイニシャルコストとしてお支払いいただくという契約はあると思います。

 ここで一つ提案をさせていただきたいんですが、先ほど審議官もお話がありましたように、沖縄の場合は、年金相談会をされて、そこで、来られた方々にどうですかとお勧めをして、そこで調べたことを件数としてカウントするということで、三十件、四十件、件数を稼いだということであります。

 いっそのこと、この年金相談会で、来られた方々に操作をしてあげたり、あるいは、どうですかということでアプローチをされて、そして、それを件数でカウントしていくということを考えた場合に、例えば、年金相談会一回当たり、それでは、お金をお支払いして、言ってみれば、参加者にねんきんネットの使い方を教えるという形にすれば、それはそれで、厚生労働省さんなり、当初お考えになっていたことに近づいていくんじゃないかという提案であります。

 そうすれば、例えば一件一万円とか、そういうふうに定額で払うとすれば、それは、何十億円ということはないんですけれども、何百万とか何千万という世界にはなるんじゃないか、それでお互いつり合うんじゃないかという提案であります。いかがでしょうか。

今別府政府参考人 先ほどお話ししましたように、年金記録交付サービス自体は年金相談会で活用されているという実績もありますので、貴重な御指摘でございますので、郵便局とよく相談をしてまいりたいと思います。

橘(慶)分科員 私は、赤澤先輩のように全て大臣の見解をお伺いいたしませんが、大体お感じになったことをまたいろいろお考えいただければうれしいなと思っております。

 大臣には、その次の質問でありますけれども、年金記録確認第三者委員会ということで、平成十九年六月から、非常に問題が沸騰したものですから、かつ厚生労働省ではない機関の方がいいだろうということで、まさに第三者的にということで、この業務が既に五年を経過しようとしております。

 その内容あるいは最近の実態ということは全て、総務委員会の方で、実は行政評価局さんの方にお伺いいたしました。そして、総務大臣さんの方からも、そういうことになってくるとすれば、そろそろ、五年ということもありますし、もとの姿に戻していくということも含めて検討したいと。

 私、これは、今行政改革ということをテーマにされている中で、大変意義のあることであろうと。行政評価をやらなきゃいけない方々が、今、ある意味で少しお手伝いをしている。本来の業務をしていただいた方が国の業務としてはよりいいであろう。そのことによってかなり、第三者委員会といえばその運営ということも大変コストのかかる話でありますし、そこのコンプライアンスがこれでもういいということであれば、むしろ厚労省さんでお引き取りになった方がいい、このように私は思うんですが、大臣、ここは見解をお願いいたします。

小宮山国務大臣 今委員がおっしゃったとおり、年金記録確認の第三者委員会は、厚労省がやってきたことに対してちゃんとチェックをするという意味で総務省につくられたわけですけれども、五年が経過をして、本当に国民の皆さんに信頼していただけるようなチェックができるということを担保しなければいけないと思っていて、それはもちろんやらなければいけないんですけれども、そこのところは総務省の方とも丁寧に議論をしながら、なるべくそういう方向で検討していきたいというふうに思います。

橘(慶)分科員 言われたとおりなんですが、一応確認ですが、そろそろ引き取っていこうということで前向きに検討するということで受けとめてよろしいですね。はい。

 それでは、次は、年金では昨年の臨時国会からの課題が一つ残っているわけでありまして、いわゆる運用三号と言われた専業主婦の方の年金三号から一号への切りかえ漏れの救済法案ということであります。

 当初、小宮山大臣も入られて、厚生労働省さんで、民主党さんに提示される前の案では、過払い年金の方は返還というふうなこともあったわけですが、いろいろな議論の中で見送られたということであります。

 しかし、先ほど来、河野委員と小宮山大臣とのやりとり等もありまして、公平性ということは常に大事なことでありまして、ただ、みんな助けましょう助けましょうだけでは、なかなか物事の理解が進まない。ということで、結果的に、きょう現在もまだ審議されないまま、月日は一日一日、既に運用三号の課長通達を撤回してからもう一年近く、何となく毎日過ぎてしまう、これが本当にいいことなのか、この辺どうなのかということなんですね。

 このことについて、今、現状は結局どうなっていっているのか、このことについてお伺いをいたします。

榮畑政府参考人 第三号被保険者記録不整合の件につきましては、これまできちんと保険料を支払ってきていただいた方との公平や均衡というのをどう考えるか、また不整合記録が訂正されていない受給者の方の生活への配慮をどう考えるか、そういう両方から考えていく必要があるんだろうと思っております。

 そういう中で、先生御指摘の、現在継続審議となっています昨年提出いたしました主婦年金追納法案では、まさに公平とか均衡の観点では、まず追納していただいて、それで、追納していただかなければ年金を下げるということをする一方で、現に受給しておられる方の生活への配慮という観点からは、例えば、老齢基礎年金受給者については、過払い分の返還というのは講じないということにしたり、障害・遺族年金受給者については、追納していただかなくても将来分の減額をしないことにして、いわば公平という観点と生活への配慮という観点の両方を均衡をとって、その法案の内容とさせていただいたところでございまして、御案内のとおり、この法案は継続審議となっております。

 私どもといたしましては、この第三号被保険者の不整合記録問題に対処するため、法案成立をぜひともお願いしていきたいと思っております。

 また、現在、不整合記録がある方につきましては、今後、対象者を把握して、正しい記録に直していくこととしておるところでございまして、昨年十一月から、過去二年間に不整合記録を有している被保険者の方々については種別変更手続を進めているところでございまして、こういうような対策も並行的に進めているというところでございます。

    〔江端主査代理退席、主査着席〕

橘(慶)分科員 この問題は、過払いになっている方はそのまま過払いになって進んでいってしまう。だから、きょうもお支払いになっていく。それから、何とか救済されたいという方については、救済策が出てこないまま、また日が経過していくということであります。

 どこかでこういうのはやはり整理をしなきゃいけない。まして、今から社会保障一体改革ということで、まだどんどん法案が出てくるわけであります。私は前、岡田大臣にもお話ししたんですが、どうか、余りごちそうをたくさん御膳の上に乗っけて消化不良にならないように、まずこれを食べなきゃいけないというものから順番に整理をされるということはぜひお進めになって問題を解決していかないと、何か問題が錯綜して、結局全てが先送りということが一番まずいんじゃないか、このことを申し上げたいと思います。

 年金の積立金の問題。

 今回、いよいよ、二十四年度予算では、交付国債で一部交付をするという形で形をつけるということになっているんですが、この方式をとりますと、交付国債の償還というのは当分進めなくても、何せ百四十兆円とか、国民年金でも十兆円ぐらいお金がある、当分は年金積立金の今あるお金の中で回していけば、交付国債という、言ってみれば、一種の約束手形はしばらく償還しなくてもいい、こういう現象にはなるんですが、しかし、これが、今は消費税の云々ということでつながっているからいいんですけれども、仮にこういうことがずっと続いていくということはなかなか心配なことではないか。

 積立金をずっと交付国債で交付されていったら、本当に懸念されることはないのかということについて、お伺いをいたします。

小宮山国務大臣 この年金交付国債は、今言われたような、いわゆる約束手形で、そのためにはやはり、自公政権の中でも言われてきた、安定的な財源として消費税をしっかり御議論いただきたいと思っています。

 私も、おっしゃるように、これは年末、相当激しい議論を財務省、財務大臣といたしました。でも、そうした中で、基礎年金の二分の一を確保して安定させるということと、やはりツケを将来に回さないということが今回の社会保障と税一体改革の大きな柱ですので、その観点からということで、これはやはり、運用収益も含めて返してもらうので積立金が目減りしないとか、いろいろなことから、本当に苦しい中、総合的に判断をしたものでございますので、ぜひその担保としての消費税のところも御議論をいただいて、何とかきちんと財源を確保して、やりくりをしていきたい、そういうふうに考えています。

橘(慶)分科員 やはり、大臣の御苦心なさったところといいますか、多分お気持ちは一緒なんだと思うんですね。これはやはり、確かに消費税をお願いされる立場は立場ですけれども、ただ、これは本当に将来がどうなるかというのは誰も、ある意味で、未来は誰も予測できないというのは一緒なことで、先ほどのいろいろな年金の試算の話じゃありませんが。

 そうすると、やはり大臣が一番御懸念されるのは、何か問題が、決まらなくなって、先送りになったときに、結局、そこに何か約束手形がだんだん積もっていって、何のことはない、年金積立金も埋蔵金扱いで取り崩していったというようなことになると、最悪の結末になるということではないかと思います。

 まして、国民年金の法案、消費税の法案、どちらの法案も通らないと、交付国債という約束手形すら発行されないのにかかわらず、予算の中では年金積立金からしっかり年金特別会計にお金だけ払い出すということは予算上セットされているという予算案になっているわけですね。ここがやはり一番問題、懸念されるところではないか。

 そして、今懸念されたことが起こらないことが一番いいというところまでにきょうはとどめさせていただきますが、そういう認識ではないかと思います。

 医療の問題に入らせていただきます。

 臨床研修医制度によりまして、それだけが原因ではないんですが、地方の医師不足ということがいろいろ問題になりまして、この臨床研修医制度のマッチングについては、非常に毎年懸念しながら、本当に厚労省さんの方でいろいろと制度を改善されているということは大変評価をしているところでもあります。

 現在、このマッチング状況がどこまで進捗してきているのか、最近の動きについて確認をいたします。

大谷政府参考人 臨床研修制度について、都道府県別のマッチングの格差是正ということでありますが、昨年度、平成二十二年度から、研修医の募集定員について、都道府県ごとの上限を設定するということとともに、定員の算定に当たっては医師派遣の実績を考慮する、こういった見直しを行いました。

 その結果、研修医のマッチング状況について、最新の数字でありますが、本年度、二十三年度は、都市部以外の地方の割合が五三・五%と若干の改善が見られておりまして、この数字は制度導入以降では最大ということになってございます。

橘(慶)分科員 これは今、地方圏、都市圏ということで分けていただいていましたが、都市圏の方から、その都市圏の中でも一つの県の中でまたいろいろあるんですという話も聞くんですが、一応大きく捉えていただいて、都市圏、地方圏ということで、地方圏の方が改善しているというのは私どもにするとありがたい話であります。

 今後とも、格差是正の努力というのは、これは余り急激なことをやるとまた副作用も出るという問題ではありましょうし、しかし、もう少し地方圏のマッチングを上げていただきたいという気持ちもあるので、この後、二十四年度以降、どのように取り組んでいかれるか、方針をお伺いいたします。

大谷政府参考人 臨床研修制度につきましては、制度導入以降、定期的な見直しを行っております。

 現在は、二十七年度からの見直しに向けて検討しているわけでありますが、医師臨床研修制度の評価に関するワーキンググループというものを設置いたしまして検討中であります。

 このワーキンググループで、本年中、二十四年中にも制度改正見直しのための論点の取りまとめを行いまして、こういった検討を通じて格差是正についても取り組みを進めてまいりたいと思います。

橘(慶)分科員 ぜひこれはよろしくお願いいたします。

 これに関連して、大学の医学部の定員をふやしたり、いろいろなことをしているわけでありますが、余り定員ばかりふやしていると、今度は医師過剰になっても困りますし、この辺はやはり上手に、医師の需給といいますか、ニーズと供給をうまくマッチングさせていかなきゃいけない、このように思います。

 実は、最初この問題が出たとき深刻になったのは、先ほどちょっと赤澤委員も触れておられましたが、小児科のお医者さんが減ってきたとか、産科がなくなってきて非常にお産をするのが大変だ、こういう問題から始まったんですが、何か最近、お話を聞いていますと、この辺は少し状況が緩和してきているという話を伺います。

 また、一面、手術をするためにどうしても必要な麻酔医、あるいはさまざまな分野の外科医の方が逆に最近は厳しいというお話も聞くわけであります。

 厚生労働省さんにおいて把握されている現状についてお伺いいたします。

大谷政府参考人 麻酔科医あるいは外科医など、特に勤務医の負担が大きい診療科における医師不足について、この重要性は認識しておりまして、近年取り組みを進め、また、今後ともこれはしっかり取り組んでいかなければならないというふうに考えています。

 このため、厚労省として取り組んでいる対策について申し上げますと、まず、文科省とも協力しまして、地域枠といった形で医学部の入学定員枠の増員を行っておりますが、その地域枠の中で、麻酔科や外科なども含めて、勤務を条件づけるといった取り組みをしているのが一つ。

 それから、平成二十四年度の診療報酬改定におきましても、前回、二十二年度に続きまして、麻酔科医や外科医を含めた病院勤務医等の負担軽減、処遇改善の取り組みを進めております。

 これらの取り組みによって麻酔科医、外科医は近年増加傾向にはありますが、今後ともこうした取り組みを進めて確保していきたいと思います。

橘(慶)分科員 小児科、産科医は、最近は女性の方が随分進出されているということで、これはまたM字カーブの問題もあるわけですけれども、これからだんだんそういった方々が、言ってみれば、子育ても終わってくる、より戦力としてなってくるということでありまして、逆に外科医、麻酔科医、こういったところをさらに力を入れていただくということかと思います。

 もちろん、国の努力も必要でしょうけれども、地方側、いわゆる地域側の努力だってやはりこういうことについては必要であろうと思っております。どういうことをしていかなきゃいけないと考えておられるのか、省の見解をお伺いいたします。

大谷政府参考人 医師不足の解消における地域の、地方側の努力ということでありますけれども、まず、これは平成二十年度から、先ほど申しました、文部科学省と厚労省で協力しまして、地域枠を活用した医学部入学定員の増員ということを行っております。

 この地域枠につきましてちょっと御説明しますと、大学が卒業後に地域医療に従事する意志のある学生の選抜という枠を設けまして、都道府県が学生に対して奨学金を貸与して、地域医療へ一定の年限従事していただくことにより返還免除する、あるいは奨学金の貸与額や免除要件については都道府県が実情に応じて独自に設定できるという形でございます。

 また、それに加えまして、医師の地域偏在を解消するため、医師のキャリア形成上の不安を解消しながら、地域枠の医師などを活用して医師不足病院の医師の確保の支援を行うという目的から、地域医療支援センターというものを今年度予算から行っておりまして、現在、十五の都道府県で設置いただいて、運営の支援を行っているところであります。これも今後拡大していきたい。

 それから、今度は、都道府県ごとに設置する地域医療再生基金というものがございますが、この中でも都道府県が工夫して医師の確保について活用いただくということを行っております。

 こういった取り組みを重ね合わせて、地域の医師確保、地方とも協力しながら進めたいと考えております。

橘(慶)分科員 ありがとうございます。

 私の出身県でも、知事さんが医学部の学生さんに自分でお手紙を書いたとか、そういうことも含めていろいろ努力されているわけでありますが、今御答弁の中にありました、みんなで考えていく地域医療支援センターという形で今十五都道府県でやっておられて、二十四年度予算ではこれを拡充されて、一億八千万拡充の七億三千万円ということになってまいります。

 どういう形で執行されていくのか、具体的な拡充内容をお伺いいたします。

大谷政府参考人 地域医療支援センターでございますが、これは地域の医師の偏在というものを解消するために都道府県に設置いたしまして、大学と緊密な連携を図りながら、医師のキャリア形成上の不安を解消しながら、地域枠のお医者さん、さっき申しました、卒業してこられる地域枠の医師などを活用して医師不足病院の医師の確保支援を行う、こういったことをするものでありますが、これについて、平成二十四年度予算におきましても、前年度十五カ所のものに五カ所増加して、二十カ所でこの運営支援を行っていきたいと考えております。

 先行して行っていただいている地域の運営状況とか成果を幅広く周知していくことで、全ての地域医療支援センターで効率的あるいは効果的な運営が図れるようにしていきたい、また、それをさらに広域的に拡大していきたいと考えているところでございます。

橘(慶)分科員 四十七都道府県ありますので、全部ということもないでしょうけれども、もしそれがいいものであれば四十七都道府県ということになるかもしれませんし、やはりコミュニケーションということが大事でありましょうから、ぜひよろしくお願いしたいなと思うわけであります。

 きょうはずっとお話として、大臣にも、ねんきんネットのお話、郵便局との関係、交付国債の問題点、これを聞いていただいてきまして、私、最後に、基金の問題をどう考えていくかということをお伺いしたいわけですが、もう一つ、きょうお伺いしていないことが一つあったとすれば、子供の医療費の支援の割合が本当に各県各市でばらばらになっているという、この広い日本でこんなことでいいのかな、三歳から十五歳、福島の十八歳の問題もあるわけですけれども、こんなにこのことだけが違っていていいのかな。従来の厚労省さんの見解では、それは地方の自主性とおっしゃるんですが、そうかなという思いがあります。これはまた別のときに議論させていただくとして、きょうは基金事業について。

 今、地域医療再生基金というお話もありましたが、いわゆるリーマン・ショック以降、いろいろな基金が誕生してきているわけでありまして、もちろん基金でする方がいい事業もいろいろあると思います。しかし、中には、基金ではなくて、本来は制度化して、きちっと毎年当初予算で手当てした方がいいというものもあると思うんですね。これは、何度か質問主意書等でも前向きの御答弁もいただいているんですが、改めて。

 ことしは第五期介護計画、それぞれの自治体でつくっていまして、今、介護保険料などが、皆さん、どうしても今回値上げですけれども、そういう数字が出てきております。これが、二十四年度から二十六年度、三年間の事業を計画するわけであります。

 その中で、いわゆる介護基盤緊急整備等臨時特例基金と言われる、いわゆる地域包括ケアということを進めていくための施設を整備するための特例基金の方は、今回、第四次補正で延長されたものの、二十四年度一年間の延長ということであります。二十五年、二十六年、どうなるかということが、厚労省さんの姿勢とすれば頑張りますということになって、それは伝わるわけですけれども、わからない人から見ると、いや、一年目しかできないんだなんという誤解が最初ありまして、私もお話を聞いていたわけであります。

 処遇改善の方は、今回、介護報酬改定で溶け込ませたわけでありますけれども、この基金の方が残っているということについて、答えはわかってはいるんですけれども、一応、省としての今の対応、見解をお伺いいたします。

宮島政府参考人 御指摘の臨時特例の基金、これは二十一年から二十三年度の三カ年度の緊急整備ということでございました。これは、まだ執行残が残っておりまして、八割ぐらい執行したんですが、二割ぐらい残っているということで、実施期限を一年延長し、二十四年度までの支援ということで、まずこの基金に基づいた基盤整備、着実に進めていただきたいと思っております。

 ただ、介護の施設整備につきましては、もともと施設整備交付金というのがあるわけでございまして、二十五年度以降、介護基盤の整備、引き続き進めなければなりませんので、関係省庁とも相談して検討したいというふうに考えております。

橘(慶)分科員 もう一つ、妊婦健康診査の問題もあるわけですが、これは今の社会保障・税一体改革大綱の方にも書いてありますのでそうなんですけれども、最後に小宮山大臣にお伺いしたいのは、これを事務方で答弁書を書くといったらなかなか大変だと言われて、これはどちらかというと、むしろ常識的なお話としてお答えいただいた方が私はいいと思うんですね。

 というのは、例えば妊婦健康診査、十四回、国の措置で無料化して、世田谷区であろうが杉並区であろうが、お産をされようという方にはもうみんな無料化しちゃっているわけです。これ、後から突然基金が抜けちゃって、では、区とか市が、いや、今度実は五回に戻りましたということを言えないですよね、現実問題。そうすると、こういうものを基金でやりながら、来年どうなるんだろう、いや、第四次補正で何とか滑り込みましたと。そうなると、補正頼みということもこれは変な話でありまして、本来やらなきゃいけないことというのはやはりやらなきゃいけない。

 それは、もちろん予算の枠、シーリングは理解しています。でも、一般論として、雇用基金みたいなものは基金でもいいかもしれないけれども、こういう福祉関係のものというのは、どうですか、大臣、できることなら、やはり全て制度化するものは制度化して、一般のいわゆる当初予算で入れていくということが妥当だと思うんですが、ここは御見解をお伺いいたします。

笹木主査 小宮山厚労大臣。時間が来ております。簡潔にお願いします。

小宮山国務大臣 それは橘委員がおっしゃるとおりだと思います。

 ただ、おっしゃったように、予算の枠とかいろいろな事情の中で、つなぎつなぎになってしまっています。

 来年度も、介護については、処遇改善交付金でやっていたものを介護報酬に入れましたので、必要なものについては、そういう形で、少しでも多く、きちんとした安定的なものができるように努力をしていきたいと思っています。

橘(慶)分科員 よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

笹木主査 これにて橘慶一郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、あべ俊子君。

あべ分科員 おはようございます。自由民主党、あべ俊子でございます。

 きょうは大臣に幾つか質問がございまして、最初に、墓埋法について質問させてください。

 これに関しましては、日野原重明先生という、百歳におなりになる聖路加の名誉院長がいらっしゃるわけでございますが、その方は、自分は墓は要らないとおっしゃっておりまして、墓をつくれば環境を破壊する、さらには、お子さんが何人かいらっしゃるんですが、海外にもいらっしゃいまして、墓参りも、みんないろいろなところに住んで、なかなかできないだろうということで、樹木葬という、自分の焼いた遺骨を木の下に入れるということを御自分で決めていらっしゃいまして、既にその場所も決まっているんだそうでございます。日本に二カ所あるんだそうでございますが。

 それを、樹木葬を進める会をやっていまして、そういう中にありまして、墓埋法がかなり前に書かれたものであります。今回、東日本大震災に関しても、かなりいろいろな問題が起きたのではないかと思いますが、このことに関しまして、政府参考人、何かございましたら。

外山政府参考人 死者を葬る方法にはさまざまなものがあると考えておりまして、先生今御指摘の木の下に埋めるというのは、これは埋蔵になりますので、これは墓地になりますけれども、いろいろまた御質問いただきたいと思います。

あべ分科員 これに関連いたしまして、もう一度言いますが、東日本大震災で何か関連の問題が、幾つか対応しなきゃいけないことがございましたか。

外山政府参考人 東日本大震災におきましては、多くの方が犠牲になったことに加えまして、関係自治体自体が被災しておりまして埋火葬の許可事務が実施できない状況が発生したことから、死亡届を受理していない市町村でも埋火葬の許可を可能とすること、それから、市町村の埋火葬の許可がない場合でも、火葬場等の管理者が死亡診断書等を確認することにより埋火葬を許可すること、それから、これらに基づき、正式な火葬許可を得ずに火葬を行った場合でも、焼骨の埋蔵を可能とすることという墓地埋葬法上の特例措置を講じたところでございます。

 問題点としては、御遺体の数が関係自治体におきまして火葬場における火葬能力を超過したために、宮城県内の六つの自治体では土葬を実施しております。この土葬につきましては、早期の火葬を希望する御遺族等の感情を踏まえまして、順次、土葬した御遺体につきまして改葬を実施し、十一月の十九日までに全ての改葬を完了しているところでございます。

 また、火葬での対応が困難なものにつきましては、一部の自治体につきましては近県の火葬場に遺体を搬送して火葬を実施したということでございまして、東京都や千葉県からの大規模な受け入れ申し出があったわけでございまして、こういった対応を図っております。

あべ分科員 わかりました。

 その東日本のときにもさまざま問題があったわけでございますが、もう一つは、やはり、自分の最期は自分で決めたいという方が物すごくふえているんですね。さらには、ですから、本人が生きている間に自分の葬儀の方法を決めるとか、どういうお棺にするかとか、何かいろいろ決めているみたいなんですが、大臣、これは御自分でもう既に決めていらっしゃるんですか。まだまだ決めていないという段階ですか。

小宮山国務大臣 私もいろいろな人生遍歴をしてきておりますので、どういうふうに最期をするかというのは考えまして、私も以前は散骨ということも考えたんですけれども、これは何か、海の方はまいてもいいけれども山の方はどうとか何かいろいろ、実際に調べましたら、今の法律上は土葬、火葬と焼骨の埋蔵だけを規制しているので、散骨とかの規制は特にないというふうに聞いていますけれども、そのように私もいろいろと考えをめぐらせているところでございます。

あべ分科員 私も実は、我が家が分家なものでございますので、今、両親の墓も含めて考えなきゃいけないときに、いろいろ調べてみますと、散骨、この部分に関しましては、墓埋法、墓地埋葬法に抵触しないというふうに解釈はされているものの、特に環境維持の問題と農作物の風評被害、これは、平成十六年、札幌市のNPO法人の経営する会社が北海道の私有地で散骨をしたことに対して、やはり地元から、散骨なんかされたといったら農産物も売れなくなるだろうとか、そういうことで、ここの町は、さわやか環境づくり条例とかいうのをつくって、散骨禁止、違反に対する罰則もつくったわけであります。

 ですから、ここのところはもう少しきっちり整理をしていかないといけないのかなというふうに私は思っておりますし、また、遺骨を骨のままというのはやはりないわけでございまして、これを砕くときの問題が刑法百十九条との関係の中であるみたいでございますが、このことに対して、政府参考人、何か御意見はございますか。

外山政府参考人 刑法について、私どもとして直ちに述べる立場にはございませんけれども、法務省の方も、刑法百十九条じゃなくて百九十条だと思いますけれども、葬送のための祭祀として節度を持って行われる限り、遺骨遺棄罪に該当しないといった、正式な答弁はちょっとここではできませんけれども、という旨の見解を発表しているやに聞いております。

あべ分科員 やはりかなり前のことで整理をされていて、今、家族形態が変わっているということも私は一つあるなと思っておりまして、孤独死が非常にふえているとか、そういう方々、例えば、お葬式ができない、自宅から焼き場の方に直送するという方も実は結構いらっしゃるみたいでありまして、そういう中において、また、六十五歳以上では、男性の十人に一人、女性の五人に一人がひとり暮らしということでございますが、自分の葬送に関して自分で決めたいという個人化が進んでいる中、こういう問題を法律的にも私は一度整理が必要なんじゃないかと思うわけでありますが、大臣、いかがですか。

小宮山国務大臣 確かに委員がおっしゃるとおり、いろいろ家族形態も考え方も変わってきて、もともとその家に古くからある墓に入るということではないこともふえてきていますので、確かにずっと前の法律ですから、整理は必要だと思っています。

 ただ、そのときに、新たな法規制をするのかというとそういうことではないと思うので、先ほどの散骨の問題も含めて、地方自治体によってはガイドラインをつくってくれというような話もある、そのようなことも聞いていますので、少し幅広く検討をしてみる必要はあるというふうに考えています。

あべ分科員 大臣、これはぜひお願いしたいところでございまして、実は、超党派でそういう方々の御希望のお話を聞かせていただいたんですが、私は、何でもかんでも新しい法律をつくるというのは実は余り賛成ではなくて、これまでの考え方にどのように考え方を足していったり引いていったりするかということを整理していく方がいいのではないかと思っております。

 この葬送の部分全体に関して、やはり人間の最期は自分で考えたいという方がふえてきて、また、さらには御家族も、最後のお葬式というのは結構大変なものでございまして、そこの部分も含めて、こういうこともあるよということを全般的に見直すという会を、大臣、ぜひつくっていただくお約束を今いただけますか。

小宮山国務大臣 委員がそういうことでいろいろと努力をされ、実際に動いていらっしゃるということも聞いておりますので、これは、厚生労働省の方としてそういう会をつくるのかどうかを含めて、議員の皆様でお話し合いをいただいてお持ちいただくということもあるかと思いますし、あり方についてはまた検討させていただいて、委員の御意見もよく伺いながら、対応していきたいというふうに思います。

あべ分科員 ありがとうございます。

 ぜひこれはお願いしたいというふうに思います。やはり、議員だけで話し合うよりも、全体のバランスの問題でございますので、ぜひお願いしたいというふうに思います。

 次に、精神疾患に関してちょっとお尋ねしたいわけでございますが、今、実は国会の方で毎週一回、会が行われておりまして、心の健康を守る会とかいうのがございまして、毎週毎週いろいろな方々からお話を聞かせていただいているんですが、精神疾患の方々のことを私たちはもう少ししっかり考えていかなきゃいけないということを本当にいつも思わせていただくわけであります。

 特に、一番何が困っているかというと、認知症の方がふえておりまして、認知症の問題行動というんですが、いろいろな、動き回ったり、昼夜逆転、夜と昼が逆転しちゃった方とか、さらには、不潔行為といって、自分の便をいじってしまったりとか、そういう方々が一般病院で受けてもらえなくて、精神科病院の方にみんな行っちゃう。そうすると、本来の精神科疾患の方々を押し出した形でいっぱいになっちゃっているというんですね。

 特に、問題行動の中で、精神科病院の中にどういう人を入れるかというのを、自傷他害という、自分を傷つけて相手を傷つけるという人に限定してほしいという声が、先般も精神科の医師の方から出たところであります。

 ですから、以前、七万床病床を減らすとかいう話も出てまいりましたが、ただでさえ行くところが整備されていない中、認知症の方々で病棟がいっぱいになっているということは、大臣、お聞きになったことはございますか。

小宮山国務大臣 それは、いろいろな方々の御意見も、今の省内の動きについても聞いております。

 そのことでは、もちろん、方向性としては、病院よりは地域でというのはわかるんですけれども、やはり地域の方の受け皿といいましょうか、体制が整わないと行き場がなくなるということもあるというふうに考えています。

あべ分科員 それと関連しますと、やはり私は精神障害者の方々の住まいの整備をもっともっとしていかないといけないと思っておりまして、今回、報酬を介護保険で訪問の看護と介護の方はしっかりつけていただきましたが、やはり在宅という考え方が、今まで住んでいる家と今から終末のときの家というのは、私は必ずしも一緒じゃなくてもいいというのと、さらには、病院にずっと長くいた方々が出ていくための住みかといいますか、居場所づくりというのをもっとしていかなきゃいけない。

 高齢者住まい法というのがあります。これでかなり、厚生労働省と国土交通省が手をとり合って、高齢者の住まいは確保できたんですが、まだまだ精神障害の方々の住むところが足りないと私は思っておりまして、これに関して、大臣、何か方向性などもありましたら、教えてください。

岡田政府参考人 精神障害者の方々が地域で安心して生活できるようにするために、御指摘のとおり、住まいの場の確保は非常に重要だというふうに考えております。

 これまで、厚生労働省と国土交通省がこの点について連携を図りまして、二十一年の十一月には両省の連名で各自治体に対して通達を出すというような形で取り組んでいるところでございます。

 具体的には、公営住宅をグループホーム、ケアホームとして活用することを進めていくであるとか、公的賃貸住宅、それから民間の賃貸住宅へ精神障害者の方の入居を促進するような取り組みを進めていくというようなことを具体的に図るために、福祉部局と住宅部局の連携を強化するということを各自治体にお願いしているところでございます。

 今後とも、国土交通省と協力して、障害者の居住の安定に努めていきたいというふうに考えているところでございます。

あべ分科員 その住宅の確保のときに、障害者の方々の住宅を探しているときの調査の結果も幾つかあるわけでありますが、やはり受け入れたがらない話、さらには保証人の問題、やはりちょっとだけヘルプが必要な部分があるんですね。これに関しては、今どのように検討されていますか。

岡田政府参考人 これにつきましては、障害者の方がグループホームなど地域の住宅で必要とされる福祉サービスの提供、それから医療サービスの提供につきましては、これは厚生労働省の方で必要な施策を充実していくというようなことで図っているところでございます。

 一方、住宅を借りる場合に当たって、例えば保証人をどうするであるとか、それから、家賃が未払いになってしまうんじゃないかというような御懸念もあるというふうに聞いておりますので、そういう点につきましては、民間賃貸住宅への入居の円滑化という観点から、例えば、あんしん賃貸支援事業であるとか家賃債務保証制度などが国土交通省の方で講じられているということでございますので、そういうのを十分活用していきたいということで考えているところでございます。

あべ分科員 その一つ一つのサービスを総合活用というのは、ワンパッケージにはなっているんですか。それとも、自分で探していく形になっているんですか。

岡田政府参考人 個別の事例で、法律という体系ではなくて今は通達という形でいろいろと指導してやっていますので、そういう制度そのものは、厚生労働省の施策とそれから国土交通省の施策の中で行われているという状況でございます。

 自立支援法が議員立法で改正されまして、ことしの四月一日から、地域移行に当たっての相談支援につきまして個別給付という制度が新しくできるということになっておりますので、そういった制度の中で、具体的にどうした形で地域移行が進むのかということも、そういう制度を通じて普及を図っていきたいというふうに考えているところでございます。

あべ分科員 この精神疾患をお持ちの方々の住まいは本当に重要な部分なので、ワンパッケージとして、そういう方々が、やはり住むところの確保、その住むところに対しての保証、さらには、サポートの部分ということが全部セットになっていないと地域社会に出ていくことはできないので、この検討を大臣、ぜひ早く進めていただきたいのですが、いかがですか。

小宮山国務大臣 おっしゃるとおりだと思いますので、そういう方向で努めていきたいと思います。

あべ分科員 ありがとうございます。

 さらには、もう一つ言われているのが、大きい総合病院の中に精神科病棟がないというのが言われておりまして、今四割しかないんだそうであります。なぜ四割しかないかというと、精神科の診療報酬点数が採算がとれないので、病院はそこを切り離したがるということなんですね。

 ところが、精神疾患をお持ちの方々もいろいろな病気にかかります。すなわち、そういう方々を受け入れている病院が、今、医療計画の見直しがもう少しでできると思いますが、その精神疾患をお持ちの方々の治療できる場所が限られてしまうというのは、私は、この二次医療圏の中においては非常に大きな問題だと思いますが、これは医療計画の中にしっかり書き込まれる部分なのでしょうか、大臣。政府参考人でもいいです。

岡田政府参考人 御指摘のとおり、精神障害のある方が地域で生活するために適切な医療が受けられる体制を確保していくというような観点から、医療計画におきまして、従来、四疾患五事業であったものを、精神疾患を加えるというような取り組みで今進めているところでございます。

 具体的には、患者の状況に応じてどのような機能が求められるか、その機能を担う医療機関はどこか、それから、地域の中でどのような機関と連携が必要かということを明確にすることになっているところでございます。

 具体的には、予防から社会復帰、それから先生御指摘の救急の体制をどう整備するかというような、さまざまなステージに応じた機能や連携体制、それから、うつ病などの疾病ごとの医療機能について、二十四年度中に都道府県で策定をしていただくということにしているところでございます。

 厚生労働省といたしましては、各都道府県で目指すべき姿をイメージしながら医療計画が策定できるよう、十分な支援をしていきたいということで考えているところでございます。

あべ分科員 今回、その五疾病の五事業ということで精神疾患が入ったことは、私は本当に第一歩だなと思っているわけですが、医療計画に入ったからといって、採算がとれないけれどもやれよという話は、私はないのではないかと思うわけであります。総合病院、大きい病院が切り離したがっているその病棟に、今回の診療報酬でも手厚くなったということではないわけでありますから、医療計画の中で頑張れ、でも、お金は勝手に頑張れという話ではないんだと思うんですが、ここのところの支援はどのようになりますか。

岡田政府参考人 今回の診療報酬の改定におきましても、十分ではないかもしれませんが、一般病棟におきます精神科医療ニーズの高まりを踏まえまして、精神科にリエゾンチームを派遣した場合にその加算がつくであるとか、あと、救命救急入院の評価の見直しというようなことにも一部取り組んでいるところでございます。

 これにつきましては、精神科の救急、それから合併症を生じた場合の対応というようなことで、今後とも精神科救急の充実を図っていきたいというふうに考えているところでございます。

あべ分科員 そうすると、充実ということは言われていながら、点数が十分でなければ一般病院は採算が割れるとわかっていても、その病棟を抱えていくということを厚生労働省は進めていくということでいいんですか。

岡田政府参考人 今回の改定も行われましたので、その状況を見ながら、医療機関の現状をよく我々も調査いたしまして、必要な措置を講じて、適切な精神科医療体制がとれることを図っていきたいというふうに考えているところでございます。

あべ分科員 その必要な措置というのは、どれぐらいのオプションがあるのか、どういう内容か、教えてください。

岡田政府参考人 現段階でちょっと今申し上げられるような状況ではございませんが、改定の状況、それから、それをどう医療機関が使っていくのかということも見ながら考えていきたいというふうに思っております。

あべ分科員 そうすると、精神科病棟に関しては、それを持つことが必須であるという形に、義務づけの施設基準に入っていくのか、それとも努力義務になるのか、これはどちらか、教えてください。

岡田政府参考人 精神科医療の問題につきましては、別途、障害者政策の観点から、例えば、医療保護入院のあり方が適当なのかどうかというような問題もございまして、我々としては、入院制度のあり方も含めて、人員体制が十分でないんじゃないかというようなことも御指摘を受けているところでございまして、そういうことも含めて、全体がどうあるべきかということについて抜本的な検討をしていきたいというふうに考えているところでございます。

あべ分科員 私は、一般病院の中に精神科病棟と言っているときには、精神科疾患単独の話をしているわけではなく、精神科疾患を持っている方々がほかの複合的な疾病にかかったときにかかる機関が整備されなければいけないのではないかということを申し上げているわけでありますから、そこは勘違いをしないでいただきたい。

 さらには、人員不足の部分を、今、お願いしていないんですが言ってくださいましたので、医療法の中に定められている人員配置基準、特に医師の配置が、一般病棟が医師が十六対一に対して精神病床が四十八対一、看護職員が三対一に対して精神病床が四対一ということがあって、当面、五対一というふうになっているんですが、この当面、当分の間というのはいつまでなのか、ちょっと教えてください。

岡田政府参考人 当分の間というのは、具体的にいつまでということを決めているということではございません。

 先ほど申し上げましたように、精神科病床におきます人員体制の問題につきましては、先生御指摘のようなさまざまな御指摘がございますので、そういうことを踏まえて、人員体制のあり方について抜本的な検討をしていきたいというふうに考えているところでございます。

あべ分科員 では、抜本的な検討ということで、この精神科対策に対して、何か審議会が起きるとか、そういう計画が今あるということなんでしょうか。

岡田政府参考人 ちょっとまだ現段階では確定していませんが、関係の有識者などに御参加いただいて検討するようなことを、今、その体制づくりについて検討しているところでございます。

あべ分科員 時間になりましたので最後にいたしますが、大臣、ぜひ、この精神科疾患の方々、今まで本当に議論もされずに、特に、医療が非常に広い分野なものでありますから、自分たちでロビーイングもできない中、お困りの部分がありますので、これは一本立てていただきながら、特に、精神疾患の方々は、お年を召していって、非常に介護の度合いも医療の度合いも重くなっている中にありますので、それは全体像、また、認知症のいろいろな方々に押し出されてしまっているということも総合的に考えていただければと思います。

 時間になりましたので、終わります。ありがとうございました。

笹木主査 これにてあべ俊子君の質疑は終了いたしました。

 次に、赤松正雄君。

赤松(正)分科員 おはようございます。公明党の赤松正雄でございます。

 きょう、私は、厚生労働省の予算にかかわる問題で、まず小児がんの対策について取り上げたい、その後で、肝炎の全般の問題について、小宮山大臣、また辻厚生労働副大臣に御答弁をお願いしたい、そんなふうに今思います。

 まず、小児がんにつきましては、随分長きにわたって、私も、たまたま自分の親族の遠縁に当たる者が、原因不明の頭の病気だということで随分苦労いたしまして、残念ながら亡くなったんですが、後で、小児がんにまつわる一連の患者の皆さんの御要望を聞いたり、その周辺のことをいろいろ調べていくうちに、ああ、実はあの子は小児がんだったんだということがわかったというふうな、そういう経緯がございます。

 この病気については、専門の治療法というかお医者さんというか、そういう人たちがなかなか確定できないということで、もちろん得意とする方もいらっしゃるわけですけれども、地域に偏在しているということもあって、なかなか難しい、こういう問題があります。

 今、対象になっております予算の中で、厚生労働省は、がん対策推進基本計画を定めて、四億円の当面の小児がん対策の予算を組まれた、こういうことでありますけれども、まずは、今年度の予算の中でどういう問題をどういう形で取り組もうとしているか、お聞きいたしたいと思います。

辻副大臣 赤松先生御指摘いただきましたように、小児がんは、小児の病死原因の第一位でもございます。また、がん対策でも政策的におくれているという御指摘もいただいているところでございまして、重点的に、積極的に取り組んでいかなければならない、まず、そのように考えているところでございます。

 既に御承知のように、三月一日、がん対策協議会より答申もいただいた計画で、がん対策は新しい重要課題にも盛り込まれているということもあるわけでありますけれども、この点に関連しまして、小児がん拠点病院というものを平成二十四年度より指定させていただきまして、小児がん医療の質の充実を図る、晩期合併症にも対応できる長期フォローアップの体制を含む拠点病院の適切な要件を設定させていただいて、小児がん患者とその家族の方々が安心して適切な医療、支援を受けていただけるような環境整備を目指していきたい、このように考えているところでございます。

赤松(正)分科員 今、全体像を、考えておられるようなことを述べられたわけですけれども、私がまず思いますことは、後半で申し上げますけれども、私の地元であります兵庫、神戸でも、小児がん拠点病院の指定を受けたいという名乗りを早い段階で上げているわけです。そういう問題は後に回すといたしまして、ともかく、質の高い、密度の濃い、いい拠点病院をつくらないと、神戸を初めとして多くの病院が拠点病院の指定を受けたい、こういう名乗りをこれからも上げていこうかと思いますけれども、そういうことに、ただ何となく、やみくもにという言い方は余り表現はよくないでしょうけれども、指定をしていくということでは、後にいろいろ禍根を残すということになりかねない。

 今も副大臣の方からありましたけれども、小児がんというのは、がんを乗り越えた後でも、いわゆる晩期合併症、こう言われるものが後遺症と一緒に合わさって起きてくる。低身長、あるいは女性の場合なら不妊とか、さまざま、骨粗鬆症を惹起するとかいうふうな。非常に長いスパンで見ていかないと、ただ単に症状がうまく落ちついたから大丈夫だというわけにはいかない、そういう側面を持っております。そういう点で非常に質のいい拠点病院をつくらなきゃいけない。

 こういう点について、大臣、どういうふうに取り組もうとされているか、お伺いします。

小宮山国務大臣 もう委員はお詳しくていらっしゃると思いますけれども、本当に、小児がんの患者さんたち、全国に散っているので、なかなか、集中的に対応したり研究したり、今おっしゃったように、成長に伴ってどういうふうに対応するかもまとまらないというようなことがございますので、今回、がんの計画の中で、働きながらのがん対策ということとあわせて、小児がんのところを重点的にやりたいというふうに思っております。

 そういう意味では、おっしゃるように、拠点病院が質の高いものでないとリードしていくということができないので、どこにお願いするかということも含めまして、支援のあり方も含めて、しっかりと対応していきたいというふうに考えています。

赤松(正)分科員 患者の皆さんは、要するに、ようやく緒についたということで、固唾をのんでこれからの厚生労働省の取り組みに非常に期待をされている側面があると思います。そういう点で、スピードアップも必要です。質的、そして量的、またスピード感、こういうものを持って取り組んでいただきたい、このことを強く申し上げておきたいと思います。

 さて、具体例です。

 具体例で、私は兵庫県姫路生まれの神戸育ちなんですけれども、神戸ポートアイランド、ここは、近年、非常に著しい医療機関の集中、医療産業都市を目指そうということで、今着々とその実を上げている。また、一方で、スーパーコンピューター京を有するものがあったり、あるいはまた、それに類する、世界でトップレベルの技術を持ったさまざまな科学技術機関が集まっております。

 それに加えて、神戸の場合は、中央市民病院が昨年の七月にできました。二つ目は、神戸に、低侵襲がん医療センター、八十床が二月に着工するということです。また、これは重要だと思うんですけれども、小児がんなどの患者や家族を対象にした、滞在を可能にするチャイルド・ケモ・ハウス、これも着工しようとされています。さらに、神戸市須磨に今までありました県立こども病院、これがポートアイランドの方に移転をしてくる。

 今、私、四つ、神戸ポートアイランドにおける医療機関、医療産業都市、周辺に研究機関がある、あるいはまた小児がんをめぐる患者の皆さんに対するケアの施設がある、こういったものがかくほどまでに集積している地域はほかにあるでしょうかと、こういう質問です。

辻副大臣 私も兵庫県の出身でございまして、赤松先生とポートアイランドなどの会合にも御一緒させていただいている身でございますけれども、神戸における医療産業都市構想、かねてよりの大きな課題として取り組んでこられたわけでございまして、私もそのことに接しているわけでありますけれども、全国的に見ても屈指のお取り組みじゃないか、このように思っております。

赤松(正)分科員 今の答弁でいいんですか、健康局長。

外山政府参考人 私も、そのとおりだと思います。

赤松(正)分科員 済みませんね、健康局長。そういうふうにしっかりとフォローアップしていっていただかないといけないと思うんですね。

 今の四つの項目等含めて、去年のたしか十二月に、私ども神戸の市長が、大臣や副大臣に会いに行って、ぜひとも神戸に拠点病院をつくるべく努力をしているのでお願いしたい、こういうふうな要望をしたと思いますけれども、今、これで聞いても、はい、わかりましたと言うわけには当然いかない、こう思います。それをわかった上で、先ほどの、かくほどまでに集積しているところはほかにない、こういう御答弁で、私は、ひとまず安心をしました。

 もう一点、私、大臣に考え方をお聞きしたいのは、まだ少し先なんですけれども、拠点病院を選定した後、平成二十五年ですか、いわゆる拠点センター、さらに、全国に、散らばるというか、幾つか、数もあるんでしょうけれども、そうした病院を統括する小児がんセンター、これを置くんだということを厚生労働省は決めておられますけれども、この拠点センターの考え方、私は、東西に一個ずつあっていい、東京に一つだけというんではなくて、少なくとも東西に一つずつ、こういうことが必要である、そう思うんですが、どうでしょうか。

外山政府参考人 先ほどの、小児がんの全国の幾つかの拠点病院とそれから小児がん病院の中心といいますか基幹的な病院のあり方、この二つにつきまして、このたびのがん対策推進基本計画、第二次の計画が閣議決定されましたら、直ちにこういった小児がんの拠点病院とそれから中心となる病院のあり方についての検討会を開きまして、いろいろ先生からいただいた御指摘の点も踏まえまして検討したいと思っております。

 直ちに東西二つであるとか全国一カ所であるとかというふうな形には、まだ決めておりません。

赤松(正)分科員 検討がどの役所でも多いんですけれども、この問題についてももちろんこれからいろいろな角度でそれこそ検討されるんだと思いますが、先ほど申し上げたように、神戸が非常に有力なそうした背景を持っているということをしっかり念頭に置いていただいて、今申し上げた拠点病院それから小児がんセンターというものについて、ぜひ神戸をよろしくということを御要望させていただきまして、この小児がんセンターの話は終わりたいと思います。

 次に、肝炎の対策についてお聞きいたしたいと思います。

 まず第一点目、数年来、C型肝炎あるいはB型肝炎、そうした問題、薬害肝炎の問題が非常に大きくクローズアップされてまいりました。そうした焦点を浴びる肝炎とは別に、慢性的に肝炎で悩んでおられる、そういう人々ももちろん同時にいらっしゃるわけです。そうした肝炎に悩んでおられる方々からいろいろな角度で御要望をいただくんですけれども、その中から、きょうは、まず三点お聞きしたいと思います。

 第一点目は、インターフェロン治療というのが、言ってみれば、量を多く短期間にしっかりと注入するということから、大変に副作用をもたらす、極めて体が衰弱する、なかなか仕事もできない、そういうことで、いいということはわかっていても、なかなかそれができないということから、せっかくのインターフェロン治療についても、公的助成ということがスタートしたんですけれども、だんだんこれを使う人が少なくなってきているという実態が一方にあります。

 その一方で、少量を長期にわたって打つという治療、少量長期の治療というものの重要性、こういうことを指摘する向きがあります。もちろん、それに対して、少量長期というのはいろいろ問題があるという指摘があるということも知っております。

 しかし、ウイルス排除のための多量短期の治療には医療費助成があって、一方で少量長期のウイルスの活動抑制にはないというのは合点がいかない。これは一般素人の考え方ですけれども、一方でそういう大量短期の治療について公的助成がありながら、その公的助成の費用が少し余ってきているという状況の中で、少量長期の治療に対しては全くそういう公的助成の手だてがないというのは非常に合点がいかない、こういう指摘もあるわけでございます。

 そういう点で、ぜひとも一歩踏み込んで、少量長期の治療に対しても何らかの公的助成をすべきだという、こういう意見に対してどのようにお考えになるでしょうか。まず健康局長が言った後、大臣、お願いします。

外山政府参考人 現在、肝炎医療費助成事業におきましては、これらの治療が奏功すれば肝硬変、肝がんへの重篤化が予防可能であるということ、それから、投与によりウイルスの増殖作用を抑制するため二次感染予防につながる可能性があるという二つの要件を満たす治療のうち、薬事承認、保険適用がされているものを助成対象としているわけでございます。

 発がん抑制目的のインターフェロンの少量長期投与につきましては、薬事承認の適用外でもあることから、現時点では医療費助成の対象とはしていないものでございます。

 また、B型、C型肝炎ウイルスに起因する医療については、全面的に医療費助成の対象とすることは、他の病気に対する施策とのバランスから困難な面があると考えております。

 しかし、こういった肝炎患者の皆様に対しましては、医療費助成だけじゃなくて、診療体制であるとか相談体制の整備などを通じまして、各種支援に努めているところでございます。

赤松(正)分科員 今の健康局長の御答弁は、公式的な答弁であろうかと思うんですね。もちろん、患者団体の皆さんもそういうことはわかった上で、政治的な判断といいますか、大きな判断を下してほしい、こういう要望があるわけでございます。

 そういう点で、患者の皆さんに対する、先ほど最後のところで健康局長が言われた、いろいろな意味で、肝炎に対する、全国民に対するさまざまな現状、しっかり予防等に対応する、あるいはまた、今の政府の取り組み等についてしっかりと宣伝をする、そういうための予算も、二億円ですか、そういうふうな格好であるということは存じ上げておりますけれども、そういう中で、今申し上げた、少量長期の治療に対する大臣のお考え、これを聞かせていただきたいと思います。

小宮山国務大臣 委員がおっしゃるインターフェロンの少量長期療法、そこに何らかの手当てをという御趣旨は大変理解をするところでございます。

 ただ、今局長からも答弁させていただいたように、ほかのいろいろな疾病、その症状との関係とかもございますので、なるべくいいお返事をしたいところでございますけれども、全体の中で検討をさせていただいて、少しでもお役に立てるようなことができないかということを考えたいと思います。

赤松(正)分科員 先ほど来の答弁の雰囲気を見ていますと、健康局長に大臣は牛耳られているんじゃないのかという、健康局長も余り詳しそうではないなという感じもするんですが、いずれにしても、大臣、厚生労働官僚に余りいいようにされないように、大臣としての政治的判断というものをしっかり持って、ぐいぐいと引っ張っていっていただきたいと思うんですね。

 余談になってしまいますけれども、私どもの大先輩に坂口力厚生労働大臣経験者がおります。先般も、余りこういう裏話をこういうところでしていいのかどうかと思いますが、さまざまな要望を、肝炎にかかわらず、いろいろ聞いたときに、今、民主党政権の中に、厚生労働行政のことについて、野党からいうときのカウンターパートは誰なんだと。大臣、副大臣はちょっと別格にして、そういう、政権を形成している、構成している、厚生労働省の問題に詳しい政治家がいないんじゃないのかという話が両方から盛り上がりました。坂口大臣も、元大臣ですね、そうだな、相手がいないね、何だか軸になる人がいないと。長妻さんじゃないかという声もあるんですが、長妻さんはどうもそういう任たり得ない、後で申し上げますけれども。

 という問題もありますし、そのときに坂口さんが、辻君がいるじゃないか、こう言っていました。私も副大臣に期待していますから、しっかり頼みますよ。頑張って。

 余計なことを言っていると時間がなくなりますので。

 次に、この肝炎の身体障害者手帳の認定、これが肝炎患者の場合は厳し過ぎるんじゃないかという指摘も同時にいただいております。年間死亡者数が四万五千人もいながら、身体障害者手帳をいただく認定を受ける人というのは一割程度ということで、ぜひそうした部分を解消してほしい、緩和してほしい、そういう強い要望があります。

 肉体的に外から見て欠陥があるというのではなくて、肝炎の場合、外から見てなかなか判じにくいという側面があるということ、そういうことはよくわかりますけれども、実際に、それぞれ症状の厳しい人にとっては、そうした身体障害者手帳が欲しいという方も多いわけです。

 この辺の要望に対して応えてあげたい、こう思うんですけれども、いかがでしょうか。

岡田政府参考人 身体障害者福祉法に基づきます身体障害というのは、障害が永続し、かつ日常生活が著しい制限がある方を身体障害として認定するという仕組みでございます。

 肝臓機能障害の認定につきましても、この考え方に照らしまして、肝臓の専門家などにお集まりいただきました検討会で御議論して、その認定基準を策定したところであります。

 この検討会では、肝臓機能障害が重症化し、治療による症状の改善が見込めず回復困難になっているものについて、身体障害の対象になるという考え方が示されております。また、他の障害とのバランスも踏まえまして、この検討会で具体的にお示しいただいた基準に基づいて現在の基準を設定しているところでございます。

 この認定基準につきまして、肝臓機能障害を有する方に対する身体障害者手帳の交付につきましては、平成二十二年四月から実施されているということでございますので、引き続き制度の周知に努めるとともに、実施状況を踏まえまして、制度が適切に運用されるように努めていきたいというふうに考えているところでございます。

赤松(正)分科員 これは、今も岡田さんの話にあったように、まだ歴史が浅い、スタートしたばかりという側面があるということがありますね。そういう点で、劇的に転換できるように、早急にしっかりと検討を加えられて、そのあたり、患者の皆さんの要望に少しでも応えられるようにしていっていただきたい、こんなふうに思います。

 さて、もう一点、肝炎の患者の皆さんがここ数年非常に待ち望んでいる薬に、非環式レチノイドという薬を使いたい、こういう要望があります。実は、この薬をつくっているメーカーの関係者は皆さんもよく御存じでしょう。私もよく知っているので、現状を聞きました。厚生労働省に指定を受けるべく全て資料を出したんだけれども、最終的に少しばかり足らざる点があって、今、再検討するということで差し戻されているという状況は聞いております。つまり、スタンバイ直前までいっているわけですけれども。

 これは、ひたすらにそういうメーカーの方の問題で、厚生労働省にどうこうと言っても始まらない問題であろうかと思いますけれども、そういう正式な、何というか、正門から入っていく、それに対する対応はこうだ、そういうことはわかった上で、これも、一番最後に聞く問題とも絡んでくるので、薬害という問題とも絡んでくるので、なかなか厚生労働省は慎重たらざるを得ないだろうと思うんですけれども、一方で、海外においては、そういう正式な治験を経てスタートするというふうにならない段階から実験的に薬を使っていこう、そういう試みもある。

 自己責任においてそういう格好で薬を取り入れる、未承認薬を使用可能にしていく方途を開いてほしい、こういう要望も一方であります。こういう点については、どういう考え方を持っておられるでしょうか。

木倉政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のように、今挙げていただきました非環式レチノイドの使用の問題でございますけれども、これは、肝細胞がんに対する再発の治療を行う、再発を抑える薬というふうに受けとめております。この研究開発の促進、それから実際の治療薬の開発ということが非常に患者さんから望まれておるということは、我々もよく承知をしております。

 現在、世界でも初めての例として、国内の企業が、この肝細胞がんの再発抑制の治療薬、非環式レチノイドの製剤というものについて、今、私どもとも治験の相談をきちんとしていただきまして、もう最後の第三相という試験段階、たくさんの方々に対しまして有効性の問題あるいは御指摘いただきました安全性の問題をきちんと検証を加えて市販化に備えるという段階の試験をやっていただいておるというふうに承知をしております。

 この段階での治験相談、私どもともども、医薬品医療機器総合機構との間でも、技術的な相談も承りながら進めておるところでございます。

 この問題そのものにつきましては、今後、その安全性、有効性の問題、きちんとデータをそろえていただき、申請されました場合に、適切に迅速に審査を進めてまいりたいと思います。

 また、同時に御指摘いただきました、未承認の薬であっても、治験の対象患者さんというのは、治験の基準をそろえて安全性等を見ますので、やはり限定をされてしまう。これをさらに、本当に必要とされている方に拡大をして使えないかという御要望も同時にございます。

 去年、厚生科学審議会の制度改正の部会においてもその御指摘をいただいております。安全性をきちんと押さえながら、そういうきちんとした管理のもとで安全に使っていただける、より早く使っていただく仕組みづくりということをそこでも御指摘いただいておりますので、この検討を具体的に進めてまいりたいと思っております。

赤松(正)分科員 一番最後に言われたことは大事な点ですので、安全性をきちっと踏まえた上で、大胆に、スピード感を持って多くの悩んでいる患者さんに対する対応というものをしていただきたい、このように申し上げておきたいと思います。

 最後に、大臣、いわゆる薬事法の改正に向けての民主党政権に対する要望、これに対する対応というのは、今極めて注目をされております。

 薬害肝炎の問題で今まで非常に一生懸命取り組んでこられた薬害肝炎全国原告団の山口美智子さん、この人を代表とするグループと先般もお会いして、いろいろ意見交換をいたしました。

 そのときに、要するに、厚生労働省、これは舛添さんのときだったと思うんですけれども、薬害肝炎全国原告団・弁護団との基本合意に基づいて、薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会をつくって、二十三回にわたって審議を重ねて、二〇一〇年、平成二十二年、最終提言を取りまとめたと。これは長妻さんのときであります。

 この最終提言で一番かなめになるのが、第三者監視評価組織の創設を求めるということであります。これはまさに、薬害再発防止の一番重要なポイントだと思うんですね。これを長妻大臣、それからその後のバトンタッチを受けられた細川大臣、このお二方はいずれも、平成二十四年、ことしですね、平成二十四年の通常国会と、随分これは明確に年数まで出したものだなと改めて思うんですが、何かしっかりとやる算段があって出した。普通、大体そこまできちっと数字を出さないはずなのに出して、そして、みんなに期待を抱かせておきながら、今も、小宮山大臣も、皆さんと会われていますよね、会われて、そして、歴代大臣がそのようにお約束したことですからきちっと守ります、こういう意味合いのことをおっしゃっている。

 であるにもかかわらず、今、今国会に、この薬事法の改正、今申し上げた第三者監視評価組織というものをつくっていこう、そういうことを盛り込んだ薬事法改正が出されていない。こういうことは、どういうことなんでしょうか。

小宮山国務大臣 先ほどからたくさんの叱咤激励をいただいているというふうに思っています。

 第三者組織につきましては、最終提言、それを受けた検討部会からも独立性のある第三者機関というのをいただいていますので、私も、これはきちっとつくらなければいけないと考えています。

 ただ、新しいものを法的根拠を持ってしっかりつくるということには、今、審議会とかそういうものがスクラップ・アンド・ビルドでなければいけないとかいろいろなことがございまして、そういう中で今最終的な検討を進めているところでございますので、少しでも早くこの薬事法の改正案が出せるように、検討の方に私もしっかりとそこの拍車をかけていきたい、そういうふうに考えています。

赤松(正)分科員 今、大臣、重要なことをおっしゃったんですが、審議会をつくるということはスクラップ・アンド・ビルドの対象だ云々ということがありました。しかし、いわゆる通常の審議会とこれは違うと思うんですね。ですから、そういう審議会と同じ扱いでこういうものをつくるのは閣議決定もあったりしておかしいというのは、断じてはねのけていただきたい、こう思うんですが、最後にもう一回。

笹木主査 小宮山厚生労働大臣、時間が来ていますので、簡潔に。

小宮山国務大臣 はい。

 ぜひ、委員を初め関係者の皆様にもバックアップをしていただいて、何とかこれを早期につくれるように力を尽くしていきたいというふうに思います。

笹木主査 これにて赤松正雄君の質疑は終了いたしました。

 次に、山内康一君。

山内分科員 みんなの党の山内康一です。

 最初に、大学の既卒者の就職についてお尋ねをしたいと思います。

 日本では、大学四年生のときに就職活動に失敗すると、わざと単位を落として留年する学生がいます。これは、普通に考えると非常に無駄です。国際的には日本以外ではあり得ない現象だと言われております。なぜかというと、理由は簡単で、新卒しか採用しない会社が多い、それから、卒業予定者という、ある意味、ステータスが欲しいからわざと単位を落とすという極めて非合理的なことが行われてしまっております。

 そもそも、五年生というか、留年して五年生になった新卒者と、卒業して既卒の状態で就職活動している人とでは能力的には差は全くないはずです。むしろ、四年でちゃんと卒業して、四年で大学教育を受けている人の方が能力的にはあるかもしれない。それなのに、既卒者の方が差別され、新卒者が有利な立場に立っている。これを何とか変える必要があるんじゃないかと思います。

 厚労省では、三年以内の既卒者の採用拡大のための奨励金を出している、これはいいことだと思います。取り組みとしてはいいと思うんですが、ただ、抜本的な解決策に至っているかというと、難しいと思います。

 例えばですけれども、男女差別は法律で禁止しているんですから、既卒者差別もそういう規制で何か禁止することはできないんでしょうか。社会全体で見たとき、非常に非効率を生んでいるのは間違いないと思います。

 実は、先日、予算委員会の中央公聴会で経団連の方がお見えになっていたので、この問題を聞きました。経済界は努力していますと言います。一部の企業ではそういう既卒者も採るようにしていますとか通年採用をやっていますとか言うんですけれども、実際は、まだまだ新卒の方が有利で既卒者は不利であるという状況はほとんど変わっていないと思います。

 これをどうやって改善していくか、厚労省にお尋ねします。

    〔主査退席、江端主査代理着席〕

津田大臣政務官 山内議員からの御指摘、もっともな点でございます。

 既に、既卒後三年間というものについては新卒扱いとするという形で、議員おっしゃるように、そういう制度を実施いたしておるわけでございます。

 当然、今、厚生労働省として行っておりますのは、いわゆる新卒、既卒にかかわらず、卒業の時期によって大きく就職の環境が変わっている、いわゆる就職氷河期と言われるようなことが、今、第二就職氷河期と言われておるようでございますけれども、そういう時期に卒業される方というのは大変苦しい就活状況にあるという中で、やはりそういう差が本人のその後の人生に大きな影響がないように、できるだけ我々としては配慮していかなければいけない、そういう認識に立って、ジョブサポーター、今、二千三百人を配置させていただいておりますけれども、この方々を、新卒者だけではなくて、既卒者に対しても丁寧な対応をさせていただいて就職活動につなげているわけでございます。

 この取り組みによりまして、新卒採用枠で既卒者を募集した企業は約六割まで増加をしておるということでございまして、段階的ではありますけれども、既卒者に対する門戸は着実に拡大をしているというふうに思っております。

 議員がおっしゃるように、差別禁止という、ある面では、男女だけではなくて、年齢あるいは新卒、既卒の差をなくすということについての御提起があったわけでございますが、今後検討させていただきたいと考えております。

山内分科員 既卒後三年、そもそも三年という基準も本当は恣意的なもので、別に縛る必要は全くないと思います。少しずつ既卒者も採用できるようになっているということですけれども、そもそもこういう縛りがなくなれば、東大が秋入学とか言っていますけれども、何月に卒業してもよくなるわけですから、社会全体で、よりフレキシブルで、特に若い人たちに不利益になっている制度を変えるべく、ぜひ厚労省としても取り組んでいただきたいと思います。私もロストジェネレーションの一員として強く要望したいと思います。

 次に、学校あるいは行政機関の障害者の雇用についてということで、障害者雇用促進法では、教育委員会、行政機関での法定雇用率を定めております。教育委員会というところまでしか定めていなくて、教員ということは縛りになっていないんですけれども、私は、学校の先生も、障害のある方を先生として雇用していくということは非常に重要ではないかと思います。もちろん、厚労省というよりは文科省の領域になるかもしれませんが、両省で協力して、もっと学校の先生に障害を持った人を雇っていくということを推進してもらいたいと思います。

 昔、何かの新聞で読んだのですが、高校の数学の先生で車椅子の方がいらっしゃった。生徒は、先生だから、教えてくれるから当然尊敬する。それでいて、その先生が言うには、子供たちが非常に自分によくしてくれて、車椅子が動けないときは、生徒がみんなで力になってくれる、そういう例もあるそうです。

 あるいは、私の個人的な知り合いの方は、パラリンピックで水泳の選手をやって、公立中学校の先生もやっている。目が見えないけれども、子供たちと接して、しかも子供たちに尊敬される。目が見えないのに全然くじけていない、明るい。パラリンピックにも出て、日本にメダルをいっぱい持ち帰ってきている。障害のある先生を尊敬する、そういう心理が芽生えてくるんだと思うんです。

 ですから、障害者は弱い人だ、助けなきゃというよりも、むしろ障害があっても同じように生活でき、障害があっても尊敬できる、そういう先生がいたら教育現場で非常にいい効果があるんじゃないかと思います。

 そういう点では、本当は文科省の仕事かもしれませんが、障害のある先生をもっと雇っていくとか、障害のある教員を雇ったら国庫補助率をがんと上げるとか、いろいろ政策的にやれることがあるんじゃないかと思いますが、厚労省として何かアイデアがあれば、お話しいただければと思います。

    〔江端主査代理退席、主査着席〕

津田大臣政務官 山内議員のおっしゃること、極めてもっともなことで、私も大賛同であります。

 今、学校教育現場を含めた都道府県教育委員会の障害者の雇用状況、一応徐々に改善してはいるんですが、平成二十三年の実雇用率が一・七五%、法定雇用率が二%ですから、下回っているわけであります。こういう状況が現状であります。

 中身を見ますと、教員の障害者の雇用率が一・四九%、それから事務職員の障害者の雇用率が四・二八%で、平均一・七五ということで、教員になるとさらに低い障害者の雇用率というのが実態であります。

 何でこのような状況になっているかということを、幾つか事情を調べてみましたが、そもそも教員免許を所持している障害者の数が少ない、これが最大の事情で、平成二十一年度で新たに障害者で教員免許を取得された方が全国で八十八名です。こういう数字ですから、障害者の先生はマックス八十八人しかふえないわけですね。これが現状であります。

 そうすると、障害者の方々の、いわゆる教員免許を取る大学でのシステムが果たしてどうなっているのかというのが一点。それからもう一つは、教育委員会で障害者の教員を採用するという意識がどのくらい高まっているかという、その両面から迫っていかないとなかなか実現をしていかないのではないのかな。

 その背景にありますのは、やはり学校現場のバリアフリーの問題、これが一つ大きな課題になっているだろうというふうに思います。こういう状況をもっと改善していくことが障害者の教員の採用枠をふやしていく一つの取り組みになるのかな、そんなふうに考えているわけでございます。

 実際には、教育委員会によって、雇用率が高いところ、低いところ、都道府県によって差がございます。したがいまして、地道に都道府県教育委員会に対して、やはり努力をしていただくということを、これからも、直接教育長等に指導を行っていく、それから、文科省の課題でございますので、文科省からより強力に教育委員会に対して勧奨、助言を行うよう、引き続き、教育委員会に対する指導、支援を行っていきたいというふうに考えております。

山内分科員 大変おもしろいというか興味深いデータと状況を教えていただいて、ありがとうございます。事務方、後で大臣の数字を教えてもらえればと思います。私、午後に文部大臣に質問する時間があるので、早速要望してみたいと思います。

 特に、教員免許を持っている障害者の方が少ないというのは知らなかったので、非常に貴重な情報でした。ぜひ、そういう人はなるべく優先的に、例えば奨学金の枠をつくるとか、大学でのバリアフリーを進めるとか、別の取り組みも必要だということを改めて認識しました。ありがとうございました。

 続きまして、厚労省とNPOの協働ということについて。

 私も、たまたまホームページを見て、厚労省とNPOの協働というページを見ていたら、厚労省におけるNPO法人の活用についてというタイトルが出てくるんですね。「活用」、何か下請のように上から目線で、そういうタイトルのページがあるんですね。その時点でセンスがないんですね、役所の方は。

 NPOは、別に民間企業のように営利のためにやっているわけではないので、厚労省からお金をもらうのはありがたいけれども、それは自分のポッケに入れるんじゃなくて、公のために使うという意味では対等の立場で、対等の目線で行政とNPOというのが協働すべきだと思います。鳩山総理が言っていた新しい公共というのはそういうことだと思いますけれども、まずそういうメンタリティーからして、今の厚労省、若干反省すべき点があろうかと思います。

 そして、ぜひ対等の立場に立ってやっていただきたいのは、現場の事業を委託するとかそういうことだけではなくて、政策の下流だけじゃなくて上流の、企画立案の段階からもっとNPOの意見を取り入れていくということが必要だと思います。

 外務省はNGOと定期協議を十年以上前からやっています。外務省・NGO定期協議には、副大臣クラスも時々出てくるぐらい、政務三役もコミットしてNGOとの対話を行っております。環境省は国際会議の代表団にNGOの代表を入れるようになりました。

 ぜひ厚労省も、それぞれの分野のNPOと、政策の企画立案のそういう上流段階から一緒に作業をしていくという姿勢を持ってほしいと思うんですが、それについて大臣のお考えをお聞きします。

小宮山国務大臣 委員の御指摘のとおり、私も議員になる前はずっとNPO活動をしていた側でございますので、外務省のそういう取り組みをした当初のころから私もかかわっていました。

 そういう意味で、きょう御質問いただくということもあって、また改めて厚労省の方の取り組みを見たんですけれども、確かにおっしゃるように、いろいろ、介護とか子育てとか就労とか、だけれども、やはり、必要なときに力をかりる、そういう視点がまだ強いのではないかと思っています。

 ホームページで御指摘いただいた「活用」は、即刻、きょう削除をさせて、「協働」にするように指示をいたします。

 私も、もっともっといろいろな意味で、新しい公共というのも私どもも言っていることでございますし、ともにやらなければいけない。ただ、外務省とちょっと違うのは、外務省もいろいろある中でそういう大きなテーブルをつくったということも承知していますので、厚労省でもそういうようなことができないかということは、私もけさも担当者に言っていたところでございます。

 それぞれ個別の取り組みの中で、やはり、もっと向き合い方が、おっしゃるように、企画立案からというのが参画の意味でもありますので、御指摘もいただいて、私もいろいろなことを所管しなければいけないので、なかなか目が届かないところがあるんですが、しっかりと、NPOとの協働が厚労省の役所の文化としてもやっていけるように、リーダーシップをとっていきたいというふうに考えます。

山内分科員 大変前向きなお答えをいただきまして、ありがとうございます。ぜひお願いしたいと思います。

 続きまして、厚労省の職業訓練と文科省の職業教育ですね、彼らが言うには。ある意味、職訓と職業教育、同じことをやっているんですけれども、余り連携がとれていない印象というのを前から持っております。

 例えば、文科省の所管でいうと、大学がいろいろな職業に直結した教育をやっているわけですけれども、大学は夏休みとかはキャンパスもあいていますし、先生も暇だとは言いませんけれども、そういうところで短期の職業訓練に資するコースをやったりということはできると思いますね。

 僕が知っているのはイギリスの例だけですけれども、イギリスの大学や大学院では、よく夏休みに二週間、三週間のサーティフィケートを出すコースというのをやっていて、それが社会的にも認められていて、それが自分のスキルアップに非常に役に立つといったこともあります。

 ですから、雇用保険の中の教育訓練給付なんかもありますけれども、そういうものをもっとフレキシブルにして、もっと言うと、前も大臣に質問させていただきましたが、バウチャー的に、自由に、教育訓練を受ける側が選べるオプションとして、そういった大学であったり、あるいは高専もありますし、実は農業高校とか水産高校だってもしかしたら職業訓練に役に立つノウハウをたくさん持っているかもしれません。

 そういう厚労省と文科省の連携、今、予算を見ても、それなりにあるのは承知しているんですけれども、よりよい連携のあり方に向けて両省が協力していくということが必要だと思いますが、厚労省のお考えを聞きます。

津田大臣政務官 山内議員の御指摘、極めてもっともな御指摘でございます。

 職業訓練については、大学を初め多様な教育訓練機関を活用して実際には職業訓練を行っております。

 したがって、特に、経営とか法務、国際ビジネス、ホワイトカラーの職務分野を中心に大学等に訓練を委託して実施をし、本年度では四十三コース、八百六十一人が受講いたしております。

 この内容としては、中高年のホワイトカラーの方が対象になっているわけでございますが、公共職業訓練実施機関に対して、一人当たり一カ月十五万円掛ける三カ月というような内容で支給をさせていただいているわけでございます。

 今議員が御指摘になられたように、今、私が中高年を対象にということを言いましたけれども、もっと幅を広げた対象で、いわゆる講義を受ける方々がさまざまな選択肢を広げたらいいのではないかという御指摘は、ぜひ今後、文科省とも連携を図って、学校教育機関を活用した職業訓練をもっと拡大していけるように努力をしてまいりたいと思っております。

山内分科員 四十三コース、八百六十一人、やはりもっとふやす余地はあるかと思います。ぜひ拡大をしていってもらいたいと思います。

 また、最近の特に若い世代はそうですが、正社員が少なくなっていくと、日本の終身雇用的な慣行である、会社が人を育てるということができなくなってきます。そうすると、社会が人を育てる時代に変えていかなくてはいけない。

 そこで、今まで以上に厚労省の役割というのは重要だと思っております。どっちかというと、経産省がやる中小企業対策というのは企業、組織が対象ですけれども、本当は会社じゃなくて個人をターゲットにした個人向けの産業政策と言ってもいいようなものがこれからは必要じゃないかと思います。

 今どき、スターバックスに行くと、一人で会社を起業して、オフィスを構えずにネットとスタバで仕事をしている、そういう人がたくさんいるわけです。こういう人たちは、これまでの中小企業政策みたいなターゲットには全然かかってきません。会社ターゲットじゃなくて、今度は個人を対象にしたスキルアップのための戦略というのは、恐らく、厚労省、経産省、連携をしながら強化していかなくてはいけない分野ではないかと思います。

 予算を見ると、環境、エネルギーなどの成長分野は力を入れますと書いてあるんですけれども、あらゆる分野で必要だと思います。特に、日本が弱いのは製造業じゃなくてサービス業の方ですから、サービス業の生産性を高めるには何をやるか、そういった観点で、個人向けのスキルアップのための戦略というものをこれからどのようにお考えなのか、お尋ねをしたいと思います。

津田大臣政務官 職業能力開発施策を推進する上で、企業で働く労働者に対する能力開発支援は大変重要だというふうに考えております。

 労働者がみずから費用を負担して民間教育訓練機関が提供する教育訓練を受けた場合に、その費用の一部を支給する教育訓練給付制度を通じて、労働者が自発的に行う能力開発についての支援を行っています。現在は二割、上限が十万円ということで支給をいたしております。

 それから、もう一つは、労働者の申し出によって、民間教育訓練機関による教育訓練を受けるために必要な経費を負担したり、有給休暇を与える中小企業事業主に対して、キャリア形成促進助成金により、事業主が負担した経費や賃金の一部を助成する、これも、経費の二分の一、それから年間の上限が五百万円ということになっているわけであります。

 こういう施策を通じて、しっかり労働者の能力開発の支援を進めていきたいと思うんですが、現在、指定講座が七千三百四十七講座ございます。

 このベストファイブを言いますと、輸送、機械運転関係、これは大型自動車の免許とか建設機械の運転、これが二千八百九十四講座、これがベストワンです。

 二番目が、医療、社会福祉、保健衛生関係、これはヘルパーさんとか社会福祉士とか保育士、これが千四十四講座。

 ベストスリーが情報関係、これはプログラマー、CAD、ウエブデザイン、これらが七百九十三講座。

 さらにその後、社会保険労務士とか税理士、公認会計士等の専門的なサービス分野。それから、あとは、事務関係、簿記とか行政書士とか英語の検定、これらが続いているわけでございます。

 こういうところにニーズがあるというふうな認識で取り組んでいるわけでございまして、これらの取り組みをさらに拡大していきたいというふうに考えております。

山内分科員 ニーズとサプライの関係は、もしかしたらサプライがあるから応募しているだけかもしれません。今テレビでもユーキャンとか、資格のニーズというのは非常に高いんですけれども、民間に相当頼っている。民間が供給するのはいいけれども、コストの負担をある程度公でできないかなと。

 実は、一番ニーズの多い建設機械とかそういうものは、すごいコストはかかるはずです。恐らく職業訓練大学校とか雇用促進事業団がやっていたコスト、一人当たりのコストは物すごい高いと思います。それよりも、もしかしたら介護とか税務とか簿記の方がよほど一人当たり安く済んで、かつニーズもあるんじゃないかなと。

 本当に建設機械のコストが物すごい高いんですけれども、そういうのをどんどん養成したところで、今は東日本大震災の復興でニーズがあるかもしれませんが、長期的に見たら、これから先もずっと建設業が伸びるとは思えませんので、社会のニーズに合わせて分野もシフトしていくということが必要ではないかというふうに思っておりますので、今受講者が多いからそこが重要だというふうに考えずに、もう少しソフトというかサービスとかそっちの方にシフトしていっていただきたいと思います。

 最後の質問になるかと思います。厚労省としての国際貢献についてです。

 厚労省としてできる国際貢献、私は、社会福祉あるいは医療のハード、技術じゃなくて、ソフトウエアというか仕組みの部分で日本は世界に貢献できるんじゃないかと思います。

 私は前にJICAの職員をやっていたときに、十年以上前ですけれども、タイ政府が日本に要請してくる技術協力が非常に思いがけないものだったのでびっくりしたんですね。タイ政府が日本に非常に強く求めていた分野は、なぜか人事院の給与制度を知りたい、それから車検制度、警察庁の交通管制システム、こういうものをタイはすごく知りたいということを言って、ここら辺に関しては、普通は援助を受ける側というのはやらないんですけれども、タイの外務省の日本語ができる外交官を同時通訳でつけてやりますとか、自分たちでコストを負担するから研修を受けさせてくれというぐらい、当時のタイ政府は意外とそういう日本の制度面の支援を要請してきて、我々の感覚からいうと、何でこんなものに興味があるのかなというような車検制度なんかにも非常に興味を示していました。

 そういった意味では、では、日本が強いのは何かというと、高齢化社会対策、それから都市化対策です。今、途上国の二大重要テーマは、途上国における都市化と高齢化です。中国はもう日本並みか、以上のスピードでこれから少子高齢化が進むわけですけれども、そういう高齢化社会の日本の政策、ソフトウエア、そういったものを世界に紹介していって、失敗も成功も含めて、間違って失敗しちゃったところも含めてオープンに伝えていくということが大事じゃないかと思います。水俣病に関する日本の国際協力で評価されていたのは、日本は失敗も含めて正直にオープンに教えてくれるということを評価されておりました。

 だから、これからはそういう社会福祉の仕組み、年金制度、医療制度、まあ、年金制度なんかは大失敗もたくさんありました。そういう失敗も含めて、どうすれば途上国が新しい政策をつくっていけるかを教えていくということ。課題先進国と最近よく言われるようになりましたけれども、そういう意味では、日本がこれから世界に貢献できる一つの分野だと思います。そういった分野で厚労省はどういうイニシアチブをとれるのか、どういう政策がとれるのか、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

小宮山国務大臣 山内委員のJICAでの御経験に基づいておっしゃること、そのとおりだというふうに思います。

 私も、実際に大臣になってから、昨年の秋に中国と韓国の厚生労働大臣に当たる方と話したんですが、その中でも、中国は例えば年金制度、これをどうつくるのかというような話もございましたし、やはり非常に高齢化そして少子化、それへの対応を求められているということは私も肌で感じています。

 そういう中で、やはり日本はもう世界で一番の超少子高齢社会になっていますので、そういうソフトの部分というか、公共投資をするというのではなくて、そういう仕組みづくりでお手伝いできる、支援ができることはたくさんあると思います。

 これまでもASEANの場とかASEANプラス3のところでそういうハイレベルの会合とか大臣会合とかをやってまいりましたけれども、そういうような場をしっかり使うということ。それから、委員の前で申し上げるまでもないJICAでも、専門員の派遣とかあちらからの受け入れとかをしていますけれども、そうしたことも一層活用して、そういう超少子高齢社会への社会保障の仕組みづくり、そうしたことについては、都市化の部分は厚労省ではないと思いますけれども、厚生労働省でできる部分については、そこはしっかりと対応していきたいというふうに思います。

山内分科員 私、去年、中国のシンクタンクを五つぐらい回って、いろいろな人の意見を聞いてきました。彼らが問題意識を持っているのが少子化、高齢化にどう対応するか。日本はある程度豊かになった後に高齢化が来たのでソフトランディングできていると彼らは認識していると思います。他方、中国は、一人当たりGDPでいうと日本のまだ十分の一です。まだそんなに豊かでないのに少子高齢化を迎えている、この危機感たるや大きいと私は感じました。

 ぜひ日本の制度を教えて、中国が社会保障費をどんどん伸ばしてくれれば軍事費も減るかもしれません。そういったバランスを考えても、特に中国に対する日本の少子高齢化対策、都市化に関しては環境政策、公害対策で日本は貢献できます。あと、水ですね。こういった面で、中国に対しては、いわゆるODAで箱物を援助するということは要らないと思います、ノウハウ、知的な経験、失敗談、これらを一緒に考えていくということが必要ではないかと思います。

 例えば、文化大臣会合といって、日中韓の三カ国の会合というのは財務省もやっているし、文部省もやっている、いろいろな省がやっています。ぜひ厚労省も、厚生大臣会合になるかもしれません、そういう三カ国の対話の枠組み、こういったものも考えていってはいかがかなと思います。

 以上で質問を終わります。もし何かあれば。

小宮山国務大臣 今の三カ国の会合を昨年も青島でいたしましたので、そういう会合を持っています。そういう公式な場、非公式な場を含めて、大変いい御指摘をたくさんいただきましたので、しっかり取り組んでまいります。

山内分科員 ありがとうございました。

笹木主査 これにて山内康一君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から再開することとし、この際、休憩をいたします。

    午後零時四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

笹木主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。中林美恵子君。

中林分科員 ありがとうございます。小宮山厚生労働大臣、きょうは本当に朝から大変お忙しく、大変なところを、貴重なお時間をいただきまして、心から感謝申し上げます。そして、分科会の皆様にも、貴重なお時間をいただきましたこと、心から感謝をいたします。

 衆議院議員、民主党の中林美恵子でございます。

 きょうは、今世間で大変大きな問題であり、また皆さんの関心事でもあります年金の基金の問題についてお伺いしていこうと思います。

 まず最初に、消えた国民年金のお話につきまして、政権交代以降、民主党の政権が中心になりまして、多くの消えた年金の復活というものを目指してまいりました。その結果をぜひここでもう一度私どもにお示しいただき、そしてどんな進展があったのかというところを押さえさせていただきたいと思います。これは本当に国民全体の関心事でもありますので、どうぞよろしくお願いいたします。

今別府政府参考人 お答え申し上げます。

 十八年六月に五千九十五万件ありました未統合記録のうち、二十三年の十二月時点でございますけれども、千六百十五万件、人数にしまして千二百七十四万人分の記録が統合されております。

 千二百七十四万人のうち五百六十八万人は受給者でありますが、これは二十三年十二月時点の受給者でありますので、記録が統合されたときに被保険者であって、その後、年金受給に進まれた方も含まれておると思います。そういう数字でございます。

 従来、幾ら回復したのかという数字につきましては、二十年五月から二十四年一月末までの数字で、少なくとも百五十万人、一・五兆円という数字を説明させていただいております。

 以上です。

中林分科員 ありがとうございます。

 百五十万人、一・五兆円という大変大きな成果を上げているということ、まだまだ具体的に御存じでない有権者の皆様もおありかと思いますので、その辺はぜひこれからもしっかりと広報していただけますように、私からもお願いを申し上げます。

 さて、今世間を大きく騒がせている年金問題です。

 国民年金、基礎年金の部分に関しましては、今さまざま、政権与党を中心に議論をされているところでございます。これを税金で、現世代で担保していくべきかどうか、たくさんの議論がありますので、そこはぜひ、これからも与野党含めて議論を深めていっていただきたい、そういうふうに思います。

 一方で、今、マスコミ、新聞紙上をにぎわわせているのは、企業年金の方でございます。これは、言ってみれば基礎年金の部分の上に存在する基金として、いろいろな人たちが働いた成果として、老後の大事な生活の資金になっています。これが今大きな問題を抱え、実は私の地元でも、きのうもおとといも、週末だったものですから、多くの質問をいただきました。

 一つ質問がありましたのは、私は横浜、神奈川県の選出でございますから、神奈川あたりではどういう基金が実際にAIJ投資顧問に預けていたんだろうかという質問もありました。これは、厚生労働省の方にも御質問しましたら、神奈川県電設ですとか神奈川県印刷工業、神奈川県情報サービス産業、また横浜金沢、こういったところがやはりかかわっているということで、これは本当に私の地元にとりましても大変重大な問題であるということを改めて深く深く認識し、また、きょうは、その関係につきまして、全般的な質問でございますけれども、企業年金について御質問させていただきたいというふうに思った次第です。

 週末に、質問が飛んでまいりました。一つは、こういった企業年金で大きな損失が出た場合、私たちの税金で、国民のお金で補填をする、企業年金の破綻に際する補填を国がしていくようなルールや制度に今現在なっているんですかという質問が参りました。

 この点について一つ事実確認として押さえさせていただきたいと思いますが、今の制度では、国が企業年金の損失を補填する制度になっているんでしょうか、どうでしょうか。

榮畑政府参考人 現行の仕組みでは、厚生年金基金の積み立て不足につきまして、国がいわば穴埋めするような仕組みはございません。

中林分科員 そうしますと、企業年金が大きく破綻してしまうと、その年金の基金に加入している受給者、つまり本当に生活のかかっている国民がその被害をこうむるという認識でよろしいのでしょうか。

榮畑政府参考人 まず、企業年金でございますから、基本的には設立した企業が責任を持って続けていくということになりますから、先ほど申しましたように、積み立て不足が生じたときなんかも、まず第一義的には企業がその穴埋めをするということになるところでございます。

中林分科員 ありがとうございます。

 いろいろと今回のAIJの問題に関しましては、例えば金融庁などが所轄する金融の問題としての犯罪性、この辺も同時に今調査が進んでいるところというふうに認識しております。ですから、そういった金融問題については確かに所轄の監督官庁の責任も非常に大きいですし、そこをしっかり明確にしていただくことで、またこれからの議論が一方であると思います。

 そしてまた、他方で、やはり国民の年金という意味では、受給者をどうやって守っていくのか。これはやはり厚生労働省としても考えていく、そんな責務があるというふうに私は認識しております。

 そこで、どうやって受給者を守っていくのか、そして、私たちの年金、年をとって退職したときに、老後の生活をきちんと守っていけるのか、そういったところの観点から質問させていただきますが、そうしますと、やはり企業にある程度の責任もあるし、基金の方にも責任があるということで、その責任の所在のルール、そして制度についてお伺いしていきたいと思います。

 今回のAIJ投資顧問の問題ですけれども、受託者の責任という意味で、受託者責任を問う制度にはどのようなものが日本には存在しているのでしょうか、そこを教えてください。

榮畑政府参考人 企業年金の理事等につきまして、我が国の現行法制上明確に定めておりますのは、善管注意義務と忠実義務というのがございます。

 善管注意義務につきましては、民法の規定に基づきまして、「委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。」との規定がございます。また、忠実義務につきましては、厚生年金保険法や確定給付企業年金法におきまして、「基金のため忠実にその職務を遂行しなければならない。」という規定がございます。

 こういうふうに、先生御指摘のいわば受託者責任というのが明らかにされておるところでございまして、これはまた、私どもとしては、これまで各企業年金に示しているガイドラインを通じてこうした受託者責任の周知を図ってきたところでございます。

 ただ、このガイドライン自体が平成九年につくられたところでございまして、先生御案内のように、資金運用の手法がその後、多様化、複雑化し、資産運用のリスクも高まってきていることもあり、そしてまた、今回のAIJ事件のようなことも起こったところでございますから、私ども、今回の事件、この事態を深刻に受けとめまして、時代の変化に対応して、このガイドライン、現在ございますが、これを初めとする資産運用のあり方につきまして、今後さらに改めていくべく検討していかなければならないと思っておるところでございます。

 以上でございます。

中林分科員 ありがとうございます。

 ただいま、大変大切なことを厚生労働省の方からも逆に先に御指摘してもらったというふうな感覚が私はしております。

 今回の事件というのは、やはり受託者責任という問題も問われなければいけない、そんな大きな事件であると思いますし、年金の運用担当者も受託者責任のうちに入ります。また、生命保険の会社、こういったところも受託者責任を問われなければいけないし、または信託、これもそうですし、コンサルタントの人たちも受託者責任を問われなければいけないということで、もし、今までの受託者責任の法制度やルールが機能していたとしたら、今回のAIJのような事件は起こっていなかったはずでございます。

 それが、やはりこういった形で起こったということは、一部の新聞報道やマスコミ報道によれば、天下りがとかいろいろな指摘もあります。ただし、それで全てではないと私は思っております。というのは、やはり受託者責任というものを法律的にしっかり、そしてルールとして打ち立てておくことが実は根本的な解決に最も重要なことであると思うんです。

 例えば、私が長く仕事をしておりましたアメリカ、予算委員会というところで予算編成を約十年ほど担わせていただきました。そのアメリカでは、運用者の受託者責任というものがはっきりしておりまして、ERISA法ですとかプルーデントマン・ルール、そういったもので非常に明確化されております。特にこれは、例えば企業側の責任と厚生労働省のような受給者を守るための分野が分かれていなくて、ERISA法といったもので一括して全てを見ましょうというような法体系もあります。

 必ずしもそれが日本に合致するかどうかはわかりません。しかし、日本の文化や歴史や日本の制度の中できっちりと機能するようなものをこれから打ち立てていかなければならないということは、まさに今、時代がそれを要求している状況ではないかと思うんです。

 小宮山大臣にお伺いいたします。今後、受給者を守っていくために、私たちが制度やそういったものをもう一回、今あるものを検証し、そしてよいものに変えていく必要があるかどうかをぜひお伺いしたいと思います。

小宮山国務大臣 おっしゃるとおりだというふうに思います。

 今、厚生労働省としては企業年金について指導監督をするということで、金融庁が管轄をし、また証券等監視委員会が監視をしているという形になっていますので、おっしゃったように、アメリカのように一つの形にはなっていない。そういう中で受給者を、受給権をどうやって保護するかということは、今のままでは機能しなかったということが明らかになってきているわけですので、これはしっかりと検討しなければいけない。

 ですから、起こったときから私もお話ししているのは、十五年ぐらい前までは法で規制してあったものが、金融緩和とかいろいろな規制緩和の中で動かされてきて、その中で、厚生労働省はガイドラインで今指導監督をしているわけなんですが、このガイドラインを少なくとも強化しなければいけないと考えています。

 そういう意味で、当面、どうなっているかの実態の調査を、きょう、年金局長をトップに省の中にプロジェクトチームをつくって、天下りの実態とかそうしたことを厚労省としても検討したいと思っていますし、また、金融庁や監視委員会の方でも調査をされていますので、そうしたことを受けて、有識者の皆さんにお集まりいただいて、六月ぐらいをめどにそのガイドライン強化の方向性をまとめたいと考えています。

中林分科員 ありがとうございます。

 六月ごろをめどにというタイムラインの部分もお示しいただきました。これは本当に緊急の課題になっておりますし、私たちの年金です。受給者の皆さんがしっかり老後を迎えることができるような、そんなルールづくりをぜひともよろしくお願いいたします。

 そして、いよいよそのルールづくりの面につきまして、ここは私の私見も交えましてまたお尋ねをしてまいりたいというふうに思うところでございます。きょう、資料をお渡しさせていただきました。裏と表の両面になっております。白黒のコピーでございます。

 最初に、「参考:海外の有力公的年金と日本の年金の運用資産比較」というものをごらんいただきたいと思います。いろいろな年金の基金の存在が世界じゅうにありますけれども、そのうちの幾つかだけを、日本のものも含めまして、御参考までにということで、見つかった資料だけで急遽つくったものなんですけれども、御紹介させていただきます。

 一つは、アメリカのカルパースというものです。そしてカナダのCPPIB、そして日本のGPIF、この三つをとりあえず並べさせていただきました。注目点は、資産がどれくらいあるかということです。日本の資産、これは企業年金というふうな今回のテーマで必ずしも一貫性を持ったものではなくて、私がここから申し上げたいのは、その運用についての基本的な考え方にどんな一側面があるかということを指摘させていただく目的でございます。

 したがいまして、日本はGPIFを挙げさせていただきましたけれども、百十六兆円あるにもかかわらず、運用するための人員が八十人しかいない。ほかの国の基金に比べまして非常に少ないということが一目瞭然でごらんいただけると思うんです。ここにも、やはり何か議論の土台にすべき要素はあるのではないかと思いますし、さらに言いますと、運用成績、〇八年、一〇年、そして過去五年の平均というものがございます。日本は全てが三角印がつきまして、マイナスになっております。

 きょうの新聞報道にもありましたけれども、やはりもう時代的にプラスというのは非常に難しい、ヨーロッパも金融危機で苦しんでいる、いろいろな問題が起こっております。これを考えますと、どのように運用していったらいいのかというのは、日本の運用につきましてプロを育てるという視点も必要ですし、それから、小さな中小企業の年金が大変な問題になっているという報道がきょうの日経新聞の中にもございました。

 こういった小さなものは、例えば一つに統合して、そしてプロを雇えるような幅を持たせるとかいろいろな方法をとらないと。何といいましても、これは、タクシーの運転手さんやトラックの運転手さんや、もう本当に中小の人たちが一生懸命仕事をして、汗水垂らして働いた、その後の年金でございます。何としても老後に年金を確保していただきたいんです。そのためにどうしたらいいかという視点をぜひとも一番の最優先事項に据えて、これからのルールや制度の議論をしていただきたいというのが私の何よりのお願いでございます。

 また、その文脈で、裏側をちょっとごらんいただきたいんですけれども、一九九〇年代、アメリカの繁栄の構造というのは、この図にさせていただきましたとおりに、会社の利益を上げていくことによって、企業年金を運用していく場合にそこできっちりと利益を上げていくための構図があった。

 これが全てではないかもしれませんし、必ずしも日本に適用されるものではありません。しかし、御参考までに、こういった構図があったということもぜひ考慮に入れていただいて、やはり日本が成長していかないと、私たちの一生懸命汗水垂らして働いた年金が枯渇していき、先細り、そして中小企業年金の基金がもう今危機に際している。そして、私がきのう、おととい、地元でたくさん質問をいただきました、国のお金で、あるいは私たちの税金で破綻してしまう企業年金は救うのですかという質問にもつながっていく。

 そう考えますと、やはり私たちは、日本全体がどんどんどんどん先細りしてしまうようなことを知りながら見過ごすわけにはいかないんだと思うんです。

 そのためにどうしたらいいかということは、実は世界じゅうが既に悩んで、経験し、初めから例えばERISA法とかそういった法律があったわけではないんですね。苦しんで、どうやって私たちの、受給者の権利や、そして働いた掛金を豊かに老後、戻していくかということを基本にして考えられた法律がたくさん世界にはあります。

 そして、その経験に基づいた、先ほどの一九九〇年代、アメリカの繁栄の構造というものの中にも含めさせていただきましたように、じゃ、今度は企業とどういうふうに共存していくのか、そして企業の利益というものをどういうふうに伸ばしていくのかということ以外に、私たちの年金を確保する方法がほかにどこにあるのかということを探して探して探しまくって、それがもしかしたら税金かもしれないけれども、税金もやはり働く人が一生懸命仕事にありつかなければ納められないことになる。どこにあるんだろうということをやはり世界じゅうが探しまくったという過去があるんだろうと私は思います。

 表側の表にもありますように、確かにリーマン・ショックが起こったようなときは、アメリカのカルパースの基金も、二〇〇八年にかなりマイナスを記録しました。しかしながら、過去五年間を平均すると三・一のプラスになっています。ですから、上がり下がりの怖さというのはありますけれども、でも、その理念や運用の仕方に学ぶところはきっとあるのだろうというふうに思います。

 そういう部分で、いわゆるマネーゲーム、金融工学に基づいた、何かいかにもローリスク・ハイリターン、五・五%のリターン、運用利益を保証しますというような、今この社会の中であり得ない五・五%を約束してしまって、AIJのような問題が起こったわけですね。ですから、それだったら、もう金融工学のようなものにごまかされるのはやめましょう。つまり、言ってみれば、ローリスク・ハイリターンをうたっているものは疑いましょうよ。そして、デリバティブだとか、ヘッジファンドだとか、不動産ファンドだとか、サブプライムローンだとか、そういったものに手を染めるから、あたかも五・五%、あり得ないようなものを保証してしまうことになるわけですね。

 ですから、そういうものはもうやめて、本当に企業が成長できる、いろいろな企業がきちっと実際の実体経済の中に投資していくようなものによってきちんと大きな経済成長をすることによって私たちの年金受給が担保される、そんな社会にできるような制度を実際の中に含めて六月までに考えていっていただきたいと思うんです。

 小宮山大臣、この辺の考え方、受給者を守る、そして何とかマネーゲームをやめるための一つの方策を考えるというような制度設計についてはどのようにお考えでいらっしゃるか、御意見をお伺いできたらと思います。

小宮山国務大臣 六月までにと申し上げたのは、そのガイドラインの見直しをということなので、この運用の仕方のところまでは、なかなか六月までにということにはいかないと思うんです。

 この年金の積立金の運用の仕方については、これまでも各党、各議員からいろいろな御意見もあります。ただ、その中で、やはりローリスク・ハイリターンはあり得ないというのはおっしゃったとおりで、ローリスク・ローリターン過ぎるという御批判をさんざん今までもいただいていますが、やはりこれは、この積立金というのは大事にちゃんと安定的に守らなければいけないという意味で、国債を中心に今日本ではやっているんですね。

 ただ、そこのところにもっと工夫が要るんじゃないかということはしばしば御指摘もいただいているので、これからまた、もっとそこのところは議論をしていかなければいけないというふうに思います。

 ただ、やはり安定性という、何としてもこの積立金の場合は、百年後までも何とかもたせようという形でやっているわけですから、そういう視点を置きながら、どういう工夫ができるかということは、また知恵を集めて考えていく必要があると思います。

中林分科員 大変ありがとうございます。

 六月のことはガイドラインということで認識いたしました。当然でございます。大変恐縮でございます。

 その先のルールづくりですから、多少時間は必要だとは認識しておりますが、何分にも、やはり企業も体力が痩せ細っております。特に中小企業は直近の問題ですし、大企業であっても、今二・五%ぐらいの利回りということを約束しながらも、結局マイナス〇・五%しか得られていない。そして、企業がそれを自分で補填しているというような現状ですから、これがずっと続いていくとはとても思えない次第でございます。

 そうしますと、やはり心配なのは、私の地元などで、今まで汗水流して働いたそのお金が自分たちの退職後にもらえるのかという受給者の皆様の心配でございます。という意味で、安定的に運用できるということは、今小宮山大臣がおっしゃったとおり、本当に一番の肝ではないかと思うんです。

 そこで、安定的に運用できるというものを担保するには、また、運用の利益を上げながら、老後にしっかりと受給者のお金を守っていくにはどんな方法があると、今のところですけれども、これからまだ研究がされると思いますが、どんなふうな方向感覚を小宮山大臣はお持ちでいらっしゃいますか。

榮畑政府参考人 先ほど大臣もお答えさせていただきましたけれども、ガイドラインをどういうふうに改めていくかというのをまず当面やらなければならないところだろうと思っています。

 先ほども申しましたけれども、平成九年につくられてから後、資産運用の手法も多様化、複雑化し、また、さまざまな意味で、今回のAIJ問題みたいな事態も起こってきておるところでございます。そうすると、先ほども出ました、厚生年金基金等の企業年金基金の受託者責任をきちんと徹底させていく手法というのはどういうふうにするべきか、また、資金運用の決定というのをより慎重に行う観点からどういうふうな手続過程をきちんと進めていけばいいか、そういうふうな点など、幾つかやはり改めるべき点があろうかと思っております。

 私どもといたしましては、まず現在のガイドラインを改めるということも当然やらなければなりませんし、そのほかまた、企業年金の資産運用のあり方そのものについてもいろいろな検討というのをしていかなければならないところだろうと思っておりまして、各方面の御意見も頂戴しながら、六月ごろまでには成案を得ていきたいと思っておるところでございます。

中林分科員 大変ありがとうございます。

 投資の仕方、運用の仕方について慎重を期さなければいけないということなんですけれども、どうしても、今新聞紙上に躍っている中小企業の年金基金ですとか、大企業も将来先細っていくというのを考えますと、どうやって慎重にしていったらその先細りや倒れていく企業を救うことができるのかというのに本当に心を悩ませますし、それこそ両方を達成しなければいけないということで、八方塞がりという新聞のタイトルもきょうは躍っておりました。

 これを慎重という言葉でどこまで担保できるのか、その慎重の意味を少し補足していただけたらありがたいと思いますが、よろしくお願いします。

榮畑政府参考人 先ほど私が慎重にと申し上げましたのは、資金運用の意思決定をやっていく手続過程というのを慎重に行うというような観点も必要ではないかと。これは実は、企業年金基金の資金運用がどういうふうな実情、現状で、どういうふうなことをここでやられていたかということも含めて、これから精力的に調査もしていかなければならないと思っております。

 そういう中で、今回のAIJの事件の反省を踏まえれば、その運用の意思決定過程というのが適切に行われていたかどうかということ自体もきちんと検証して、改めるべきことがあれば当然改めていかなければならないという点でお答えさせていただいたところでございます。

 また、それと、今度は資金運用の中身をどういうふうにしていくか。先ほど申しました善管注意義務なり忠実義務なりという受託者責任を果たす中で、その資金運用の中身そのものをどう考えていくか。これはこれで、当然のことながら、おのおのの基金につきまして、さまざまな情報を集めながら適切に御判断いただかなければならないし、その過程を、先ほど申しましたように、いろいろな方からの御意見を聞きながら、より慎重に行うという意味での手続過程をきちんと定めていくというのをガイドラインでやっていきたいと思っておるところでございます。

中林分科員 ありがとうございます。非常にこれから議論になる部分についてどういう方向性かということをお答えいただいて、ありがたかった次第です。

 まずは、やはり何より受給者の老後を守っていただくということをどうしても外していただきたくない、そこを肝に議論をしていっていただきたい。何度も繰り返しますけれども、そこをどうかよろしくお願いいたします。

 そして、そのためには、年金コンサルタントを含めて受託者責任というものをしっかりと確立するためのルールづくりをしていただきたい。また、親会社と利益相反がある投資顧問会社だとか運用会社の存在があること自体が、やはり牽制が行われない、見えない、わからないところで投資の内容さえも引きずられてしまうという問題も残っておりますので、こういったものが起こらないルールづくりをしていただくことによって、受給者の老後を守っていただきたいということが一つです。

 そして、先ほどアメリカの例も挙げさせていただきました。このルールが例えば余りにも慎重になることによって、ハイリスク・ハイリターンのものをごく一%さえも入れられなくなってしまう。先ほど表でごらんいただきましたアメリカ・カルパースやカナダですね、こういったところのプラスのリターン、過去五年間を平均するとプラスが出ているんです。これは、必ずハイリスク・ハイリターンのものも少し入れているわけですね。その芽さえも潰してしまうと、私たちの運用成績がどんどんどんどん先細りしてしまいます。

 今のところ、日本がどうしてマイナスの運用利益しか出ていないかというと、それこそ二・五%、五・五%という縛りのゆえに、本当に利益を得られるものに何もしない、逆にそれぐらいいけばいい、そういう方向性が原因で、実際的には結果的に利益が得られていない、結果的に受給者の年金の権利を守れていないということになっているわけです。

 これは、ルールをつくるときに、海外のものもしっかりと考慮に入れていただいて、運用利益がきちんと出るように、ハイリスク・ハイリターンのものも、ほんの少しのパーセンテージでもいいからしっかりと入るようにしないと受給者の利益が守れないというところを御認識いただきたいというふうに、私の私見ではありますけれども、切にお願いをして、私の質問時間が参りました。

 本当に貴重な時間をありがとうございました。よろしくお願いします。

笹木主査 これにて中林美恵子君の質疑は終了いたしました。

 次に、後藤祐一君。

後藤(祐)分科員 民主党の後藤祐一でございます。

 本日は、安心できる社会保障をつくるためにはこれから持続できる社会保障にしていかなくてはならない、この観点から、手を差し伸べるべき方には優しく、一方で、無駄遣いや不正に対しては厳しくという、めり張りのついた社会保障をつくっていく観点から御質問申し上げたいと思います。

 まず、不育症についてお伺いしたいと思います。

 いわゆる不育症というのは、妊娠をされながら二回以上流産されてしまったような方を指すわけでございますけれども、厚生労働省の研究班の推計によりますと、妊娠経験者の約四・二%、百四十万人程度の方が不育症の可能性があるというような推計もございます。

 このような中で、そもそもこの存在を知らない方がいらっしゃるんじゃないか。こういう方にきちんと知らせて、必要な場合は検査に行っていただく必要があるんじゃないか。あとは、非常に悩んでおられる方もおられます。こういった方に対して、カウンセリング、あるいは正確な情報をきちっと与えていくべきではないか。

 このような観点から、今まで以上に対応が必要だというふうに感じておりますけれども、厚生労働省としてどのような対応をしていくつもりでしょうか。お答えいただければと思います。

高井政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の、二回以上流産、死産を繰り返すいわゆる不育症につきましてですけれども、流産や死産を繰り返す苦しみなどの相談に対応する、また、原因や対応方法について正確な情報を提供することが重要と認識しているところでございます。

 このため、二十四年度予算案におきましては、各都道府県等で不育症の方々の悩みに対応するとともに、正確な情報を提供する相談体制の充実を図る事業を予定しているところでございます。

 また、この相談事業のために、平成二十三年度、今年度、厚生労働科学研究におきまして、不育症の相談対応に関するマニュアルを作成いたしまして、自治体に配付することといたしております。

後藤(祐)分科員 ぜひ、これまでなかった事業だと思いますので、現場で回るような、そんな対応をしていただければなというふうに思います。

 不育症については、これまでも、一部の、抗リン脂質抗体が陽性の方については、要は血がとまっちゃうような体質の方には、ヘパリン自己注射という、自分で注射をされて血を柔らかくするような、そういった対応をされていたんですが、これが、保険がきかなくて大変困っていらっしゃる方がいっぱいおられましたが、二十四年の一月から保険の対象になったということで、この方々は大変喜んでおります。非常に進んでいるところもあるということで、ぜひこういったところは進めていっていただければなというふうに思います。

 あと、そもそもこの不育症のことを知らない方がいらっしゃるということへの対応としては、今度、母子手帳の中に「二回以上流産を繰り返す場合は、検査や治療が必要な場合があります。」と新たに記述されるようになるというふうにも伺っておりますので、これからもぜひいろいろな対応をしていっていただければなというふうに思います。

 続きまして、妊婦健診でございますけれども、これも大変充実をされまして、これまで五回までしかできなかったものが十四回できるようになったということで、格段の進歩があるわけでございます。

 この財源についてちょっとお伺いしたいんですが、これまでは補正予算で対応されてまいりました。この二十三年度の補正予算で何とか二十四年度分までは確保されているのでございますけれども、二十五年度以降も当然これはやっていかなくてはなりません。できれば、これは補正ではなくて通常予算の中で対応していくべきだというふうに思っているわけでございますけれども、これについて、次の次の予算のことですからなかなかすぐ決められる話ではないと思いますが、厚生労働省としてどのようにお考えでしょうか。

高井政府参考人 妊婦健康診査についてでございます。

 妊婦の方が、健診費用の心配をせずに必要な回数の妊婦健診を受けられるようにすることは、安心、安全に出産できる体制づくりを進める上で重要であると認識いたしております。

 御指摘のように、平成二十三年度第四次補正予算で妊婦健康診査支援基金を積み増して、二十四年度でも公費助成を継続することとしたところでございます。

 御質問にございました平成二十五年度以降でございますけれども、この妊婦健診の重要性に鑑み、実施主体である市町村での妊婦健診の実施状況を踏まえつつ、今後検討していきたいと考えております。

後藤(祐)分科員 実は、二十五年度から子ども・子育て新システムが始まる予定でございます。これから法案がかかりますけれども、二十五年度からは、子供に関するお金というのは、市町村に一括して渡して、その中で市町村が選んで使えるようになります。場合によっては、二十五年度からの予算というのは、この子ども・子育て新システムに基づいて行われる交付金の中でこういったものに対応することもあり得るかと思いますが、そのときに、きちっと妊婦健診なんかについてもお金が行くように、ぜひ御配慮をいただければというふうに思っております。

 それでは、続きまして、障害者の関係についてお伺いをしたいと思います。

 今、障害者総合支援法について、与野党協議、最後の段階だというふうに伺っておりますけれども、私、実は、この週末、地元の、割かし重度の障害者を抱える施設と、その施設の近くで、普通のお宅をちょっと改造して五人とか三人とか住まわれる、要は地域で自立できるような、ケアホームと言われるようなものを先進的にやられているところを幾つか見てきたんです。

 ずっと施設の中におられるだけではなくて、できるだけ通常の生活に近いような、そんな地域自立型の生活支援ということで、去年の十月から月一万円補助がされるということになっておりますけれども、これは実は大変好評でございます。実際、障害者が月にもらえるお金ではぎりぎりのところなんですね。このケアホームをつくっていらっしゃるところ、家賃をかなり下げて対応されているのが現実で、この一万円というのは大変役に立つという現場での声もありました。

 その中で、政権交代前、平成二十一年度から比べると、今の話も含めて、相当充実してきているところが障害者関係はあると思うんですね。こういったところは、しっかりやれているところはやれているということを言っていかなきゃいけないと思うんですけれども、二十一年度時点と今とを比べまして、特に障害者を抱えておられる世帯がどのぐらい自己負担をしなきゃいけないかというのを、かなり改善していると思うんですが、この数字について、ちょっと教えていただければと思います。

津田大臣政務官 後藤議員の御指摘の家賃の助成の点も含めまして、この障害サービスの利用者負担、平成二十二年四月から、例えば、市町村民税非課税世帯の負担上限月額をこれまでは三千円だったのを無料にするなど、低所得の障害者の利用者負担を無料としたことで、実質的に応能負担にしているわけでございます。

 今の御質問の中で言いますと、障害福祉サービスを無料で利用している方の割合、これが、平成二十一年度末では一一%であったのが、平成二十三年の十月、約一年半後ですが、八五・五%になっております。

 それから、給付費に対する利用者負担の割合、これが、平成二十一年度末では一・九%、約二十億円だったのが、二十三年十月では〇・三八%、約四億円。二十億円から四億円に減っているということでございます。

 それから、平成二十二年十二月に議員立法で成立をしました障害者自立支援法等の一部改正によって、障害サービスは応能負担となることが法律上も明確にされ、それから障害サービスと補装具、義足とか義手とか、そういう補装具の利用者負担を合算して負担を軽減する仕組み、これまでは別々だったものですからほとんど有料だったんですが、こういうものが導入されたことにより、さらに負担が減額をされているという状況でございます。

後藤(祐)分科員 政務官、ありがとうございます。

 今までの成果ということでございますけれども、それでは、これからはどうなるんでしょうか。今、障害者総合支援法、この検討中でございますが、来年度以降、理念がどう変わるかという話はいろいろなところで喧伝されているんですけれども、具体的に、現場で例えばこういう方がよくなるんですよというようなものを、できれば一つ二つ具体例を挙げていただければと思います。

津田大臣政務官 ありがとうございます。

 マニフェストに掲げられております、制度の谷間のない支援、この、制度の谷間のない支援ということを提供する観点から、障害者の定義、これはそもそも論のところに入るわけでございますが、ここに今まで入っておらなかった難病の方々を新たに含めることにしたわけでありまして、そうした方々を法に基づく給付の対象というふうにしたことが一点。

 それから、障害福祉サービスのうち、重度訪問介護の対象者、これは、これまでは重度の肢体不自由者に限られていたわけでございます。この訪問介護、これを今度は、重度の知的障害、それから精神障害の方々にも適用する。これは大変大きな変化でございます。肢体不自由者だけであったのが、知的や精神の方々にも全て同じように適用するということになった点。

 それから、先ほど後藤議員から御指摘がありました、グループホーム、ケアホームを一元化する。これは、利用者の利便性を高める上では大変重要な点だというふうに思っております。

 今申し上げた具体的な三点などが、見直しを行うことによって、例えば障害者あるいは難病の方々にとって、地域社会で安心して暮らすことができる、そういう環境をつくりつつあるのではないのかな、何とかこの法案を通していただいて、そういう状況をさらにしっかりさせていきたいなというふうに思っているところでございます。

 それから、障害福祉サービス、それから障害程度区分の認定を含む支給決定のあり方、これもさまざまな議論がいっぱいあったわけでございます。これは少し時間がかかるということで、今回の法律の中では、法施行後三年を目途に見直しをするということを明確に附則で書かせていただく。その検討に当たっては、障害者や家族の方々の意見を反映するということもしっかり書かせていただいたわけでございます。

 この新法では、厚生労働部門、民主党の障がい者ワーキングチームで御議論をいただいて、先週の二十九日に部門会議で了承されたというふうに承知をいたしておりますので、今国会への法案提出に向けて、今作業を進めているところでございます。

後藤(祐)分科員 ありがとうございます。

 マニフェストの中には、「障がい者等が当たり前に地域で暮らし、地域の一員としてともに生活できる社会をつくる。」こう書いてあるわけですね。着実に進んでいるところもありますし、今度の支援法でぜひともこれが現場で実際に進むように、我々としても、いろいろなお声を聞きながら、これからも引き続きお願いをしてまいりたいというふうに思っております。

 それでは、続きまして、社会保険診療報酬、医療に関係する消費税について御質問申し上げたいと思います。

 これについては、今まで、特に医療機関がいろいろな仕入れをされるわけですね、薬もそうですし、いろいろな大きな機械なんかもそうですが、ところが、仕入れをするときには消費税を当然お支払いするわけですが、その後、社会保険診療報酬でその分の消費税というのは実際に賄えているのだろうか、あれっ、実は取りっぱぐれているんじゃないか、こういう御疑問が常に言われてまいりました。

 このたびの社会保障・税一体改革大綱の中で、これについては比較的はっきりした結論が書いてあります。仕入れに伴う消費税は診療報酬で対応するとした上で、二つに分けておられまして、医療機関等が行う高額の投資に係る消費税負担、つまり、例えばMRIを買ったりですとか、あるいは建物そのものもそうなのかもしれませんが、こういった高額投資については区分して手当てをすると。つまり、社会保険診療報酬の広く薄くどこかに消えてしまう形ではなくて、何らかの形で高額投資したものの消費税分は戻ってくるような仕組みを考えようということだと思います。

 この一つ目の固まりと、もう一固まりとして、この高額投資以外の仕入れに係る消費税については診療報酬など医療保険制度において手当てするというふうに大綱に書いてありますけれども、これだけだと現場の医療機関から見てもちょっとどうなるのかなかなかわからないんだよなということを、私も年末年始、いろいろな方にも言われてきております。

 ぜひ、この二つ、それぞれの具体的な内容を御説明いただければと思います。

外口政府参考人 まず、区分して手当ての意味でございますが、今までの消費税への診療報酬の対応は、仕入れに係る消費税負担が大きいと考えられる点数を重点的に引き上げる方法でございました。しかしながら、例えば病院の建てかえなど、特に高額な投資を行っている場合の負担は大きいとの指摘がありました。

 区分して手当てというのは、高額な投資に係る消費税負担については、医療保険制度の枠組みの中で、従来の点数引き上げの方法だけでなく、別の対応を検討していくということでございます。

後藤(祐)分科員 これができるだけ、高額投資した場合の、例えば一億円の設備を買ったときに、一〇%だったら一千万円の消費税がかかってしまうわけですけれども、この一千万円分が何らかの形で保険から支払われるような、そんな仕組みになることを多分期待していると思いますので、これから検討していくことになると思いますが、そこをもう少し具体化していけるように、ぜひ政務官も督励していただいて、このわかりやすさを待っておりますので、御検討いただければなというふうに思います。

 その際にも、高額投資とは何かというところの区分が大変問題になってくると思いますので、ここについても、実際に消費税引き上げのタイミングが押し迫る前に、できるだけ早く検討を具体化していっていただけるようお願い申し上げたいというふうに思います。

 それでは、引き続きまして、今度は、どちらかというと、無駄遣いや不正には厳しくという方に入っていきたいと思いますが、生活保護の適正化について御質問申し上げたいと思います。

 もちろん、大多数の生活保護受給者の方というのは真面目にされている方がほとんどだと思うんですが、一部そうでない方がおられる。

 今、生活保護というのは三兆円です。二百九万人の方が受給されておられます。特に、この三兆円のうち、半分の一・五兆円は医療費です。生活をしていく上の費用の半分が医療費というのは、これは異常な事態でございまして、特にこの医療扶助の適正化、これをしていかなきゃいけないというふうに考えております。

 今度、電子レセプト、つまり、医療機関がどういう保険を請求しているかということを全部電子的に積み上げて、その中で、例えば、この特定の生活保護の方に何度も何度もこのお医者さんが同じようなことをしている、大阪市から出た例ですと、一月に十二回訪問診療をしている、これは何をしに行っているんでしょうかねとか、こういったものをピックアップしてチェックしていこうと。

 これは、厚生労働省もこういう方針だというふうに伺っておりますが、これから、電子的に検索をしておかしなものが見つかりましたといったときに、医療機関に対して、あなた、ちょっとおかしいんじゃないんですか、過剰に診療していませんかと。例えば、要らない検査みたいなものを生活保護の方とお医者さんが結託してやってしまえば、お医者さんにお金が入ってくるわけですよね。そういうことをやっていませんかということを調べて、適正化対象選定の基準をつくるというように伺っておりますけれども、お医者さんだけだとちょっと足りないんではないかというふうに思うんですね。

 つまり、いろいろなお医者さんに生活保護の受給者の方がばらばらに行って、例えば同じようなお薬をいただきに行く。よく聞く話は、睡眠薬ですとかそういったものをお願いに行くとすると、一つ一つのお医者さんじゃわからないわけですね。

 悪意を持った受給者に対して、でも、これも、保険からどれぐらい払われているかというのを見ればわかるはずですので、ぜひともこの悪意を持った不正な医療に対しては、お医者さんだけではなくて、受給者に対してもチェックするという必要があるというふうに考えますけれども、いかがお考えでしょうか。

津田大臣政務官 生活保護受給者に適正な受診を行っていただく、適正な受診、これは大変重要であるというふうに考えております。

 このために、これまでも医療機関への通院の頻度、先ほど一カ月に十日も十五回もとおっしゃったんですが、こういう部分に着目をして、不適切な受診行動を行っている受給者に対しては、福祉事務所において、対象者を把握し、主治医等に病状の確認を行った上で、指導を行っているということでございます。

 御指摘の点は、受給者にも何らかの行動をとったらどうかということでございます。

 平成二十四年度には、電子レセプトシステムを活用して、レセプト点検を強化するということにあわせて、指導対象となり得る者を選定する基準を策定する。一体どのくらいの人をちょっと問題ありというふうに見るのかという、そこはいろいろ技術が要るわけでございます。そういうことをしているわけですが、その際には、不適切な受診行動を行う生活保護受給者も対象とするということを検討していきたいというふうに考えております。

後藤(祐)分科員 政務官、ありがとうございます。

 まさに、そこの最後のところの、受給者も対象とすることを検討というのはすばらしい御判断だと思いますので、ぜひともこの具体化を進めていっていただければというふうに思います。

 今の関係で薬剤師さんの方々といろいろお話をしたら、明らかにこの人、睡眠薬こんなに必要ないのに、たくさんとっているなというのがわかる場合があるそうなんですね。ただ、複数の薬剤師さんのところに行ってお薬をもらう場合というのは、なかなかチェックできない。これから電子レセプトでチェックしていくというのはあると思うんですが。

 今、お薬手帳というのがございます。その方がいただいたお薬というのを全部累積して書いていくものですけれども、生活保護を受けられている方にはお薬手帳を必ず持っていただいて、それをきちんと提出すると、例えばほかのところで睡眠薬をたくさんもらっていたような方には、あなた、ちょっとこれ、おかしいんじゃないですかというようなチェックができると思うんです。実際、現場の薬剤師の方々からは、そうすれば全部チェックできるし、我々そんな、本当に、もらうべきでない人に対して処方してもうけようなんていうつもりは全くないと。

 そういうようなものをチェックするためにお薬手帳があると思いますので、これを生かしてはどうかというのは、これはまさに現場の薬剤師さんの提案なんですけれども、いかがお考えでしょうか。

津田大臣政務官 御指摘のお薬手帳、これは義務づけはしておりません。これは、御本人の健康維持のために、どんな医療機関でどんな薬を供与されているかということを確認する意味では、科が違う病院で、薬の、言ってみれば相性が悪いとか、そういうことを見ていただく点では大変重要だということで、このお薬手帳をできるだけ使っていただくということは大変重要であるというふうに思っております。

 それを、ある面で、過度な薬、特に向精神薬等々だと思うんですが、その場合に何とか使えないかという、義務づけをするということなんですが、生活保護受給者に限って義務づけをするというのは、かなりこれは厳しいことだというふうに思っております。

 効果としては、実は、お薬手帳はできるだけ持っていただくというような取り組みが一部の自治体で行われておるんですね。これは強制とか義務づけではないんですが、そういうことを意識してやっていただくということによって、ある面では、問題のある薬の必要以上な供与をさせないという意味では大変重要なので、そういう点では、やり方は、そういう自治体のやり方を参考にしながら、義務づけというのはかなり厳しいんですけれども、何らかの前に進んだ取り組みができないかということについては、もちろんこれからさらに検討を深めてまいりたいと思っております。

後藤(祐)分科員 政務官の前向きな答弁、本当にありがとうございます。

 生活保護の水準については、国民年金でいただいているよりも高いお金をいただいているですとか、こういう御批判はもう日々車座集会なんかをやっても必ず来る質問の一つなんですが、この水準について、ちょっとまとめて幾つか質問申し上げたいと思います。

 現在の生活保護の水準というのは、非常に簡単に言うと、所得の少ない方から多い方まで並べて、その、下十分の一、第一・十分位というそうですが、そこの消費支出額の平均値をとるということで、それと並べるそうなんですけれども、そのやり方を仮に是とした場合に、これについても議論はあると思いますが、これを前提とした場合に、それでもおかしいなと思うところが幾つかあります。

 一つは、今、この比較というのが、単身世帯と、あとは、夫婦子一人、三人世帯で比べていらっしゃる。ところが、夫婦二人という世帯では比べていないんですね。じゃ、この夫婦二人の生活保護水準はどうやって決めているかというと、夫婦子一人の三人世帯から子供に使う消費支出分を引くという作業をしているんですね。

 なぜそうしているんでしょうか。つまり、夫婦二人の世帯というのはいっぱいいらっしゃるわけですから、そこでの消費支出がどうなっているかということをきちっと調べてその水準との比較をすればいいというふうに思いますし、そうすべきじゃないかというのがまず一つ目の御質問なんです。

 二つ目は、食費をどうやって計算するかというときに、三人家族までは単純に人数倍しているんですね。ところが、もう皆さん、皮膚感でわかると思いますが、おうちで御飯をつくるときというのは、二人いた場合に食費は二倍になりません。一・四倍か五倍かわかりませんけれども、御飯を炊くというのは、二人で炊いた方が安く上がるわけです。ところが、三人までは単純に人数倍になっているというこの試算というのはちょっとおかしいんじゃないかというのが二つ目の問いでございます。

 三つ目は、同じ単身世帯あるいは夫婦二人世帯であっても、お年がかなり上の方と非常に若い方では、当然、食べるものも違いますし、お金の使い方が違います。たくさんの数を調べていらっしゃるはずなので、例えば、非常に年の上の方の単身世帯、あるいは年の若い方の単身世帯、きめ細かくそこは調べた数字同士を比較して生活保護水準を決めるべきではないかというふうに考えますが、いかがお考えでしょうか。

津田大臣政務官 非常にきめ細かな御質問をいただきました。

 御指摘のように、スケールメリットの問題、つまり、一人で生活をする方の食費のかかり方、二人で一緒に食事をする場合、三人、四人、これは倍々ゲームではないだろうという御指摘、これは私も理解できます。当然、それぞれ家族をお持ちの方のことを考えれば、一人で生活されている方の食費が例えば月三万円だとすれば、二人の人は六万円になるか、三人の人は九万円になるかといったら、ならないわけですね。お米の消費量はどうかわかりませんけれども、例えば、調味料だとかいろいろなものの使い方は違いますし、フライパンだって、三人で使おうが一人で使おうがこれは一つで済むわけでありますし、いろいろな意味でスケールメリットというのは当然あるわけでございます。

 厚生労働省の算定の仕方ということについて、現在、御指摘がありましたように、生活扶助については、世帯構成の異なる個々の世帯について、できる限り合理的な基準となるように、先ほどお年寄りの方と若い方というお話がありましたが、栄養の所要量や一般低所得世帯の消費実態、これを参考に設定をしているわけでございます。そのうち、食費とか被服費などの個人単位で必要となる額については、三人世帯までは、先ほど御指摘がありましたように、人数倍して算出をしているということでございます。

 しかし、御指摘のように、世帯人員増に伴うスケールメリットを考慮するということは、現在も全くやっていないわけではないんですが、非常に微々たるものでございまして、これはもう少し実態に合わせる必要があるのではないかという、これは大変重要な御指摘であるというふうに考えておりまして、今後、御指摘の点を踏まえながら、生活保護基準部会、ここでしっかり検証をしていかなければならない、検証するように指示をしてまいりたいと思っております。

 ありがとうございます。

後藤(祐)分科員 ありがとうございます。

 ぜひ、基準改定に向けて、そのような取り組みをしていただければなというふうに思います。

 それでは、時間が参りましたので、最後の質問に行きたいと思います。

 生活保護の方でも、何とかここから脱却したいと思われている方、おられます。ただ、仕事に何とか復帰しても、そうなると突然、医療費はかかる、保険料は払わなきゃいけないということで、その後大変なんですね。一方で、少し働き始めた場合というのは、生活保護費、いただける額が、勤労控除といって減らされちゃいます。

 少し提案なんですが、これは実際いろいろな自治体からも提案が出ているんですが、勤労控除として働いた給与分が控除されちゃう、全額ではないんですけれども、この分を積み立てておいて、生活保護から脱却した後、最初が大変ですから、そのときに返ってくる、全額でないにしても、例えば半分返ってくる、このような仕組みというのをもしつくれれば、むしろ脱却する人は応援しようという仕組みになると思うんですが、いかがお考えでしょうか。

津田大臣政務官 今、後藤議員が御指摘になりました勤労控除は、一応、八千円までは全く収入として認定しない、生活扶助を減額しない、三万三千百九十円が上限になっているようでございます。つまり、そこまでは働いたらその分プラスになる、それ以上になると生活扶助費が減額になっていく、そういう仕組みになっているわけでございます。

 御指摘のように、生活保護というのは、ある面では、入りやすく出やすいということが大変大事だ、出やすいという部分が現在の制度上ではなかなか難しい状況にあるのではないかという御指摘があちこちからされていることも承知をいたしております。

 その点、今、議員から御指摘にあったような積み立てということについて、自立助長に効果的な仕組みであるかどうかということ、ここはしっかり、指定都市の市長会の提言や、それから生活保護制度に関する国と地方の協議に係る中間取りまとめという場におきましても御指摘を受けていることでございます。

 私どもとしましても、生活保護受給者の自立に向けたインセンティブ、まさにインセンティブだというふうに思うんですが、大変重要な課題だということでございますので、こういった仕組みを含めて検討していきたいというふうに思っております。

 以上です。

笹木主査 これにて後藤祐一君の質疑は終了いたしました。

 次に、湯原俊二君。

湯原分科員 お疲れさまです。

 湯原です。よろしくお願い申し上げます。

 きょうは、社会的養護、要保護児童対策について質問をさせていただきたいと思います。

 私、地方議員をやっていましたけれども、その当時からの自分の思い、持論でありますけれども、社会にたまったストレスというのは弱い方に弱い方に流れていくんじゃないかなと思っておりまして、職場でも弱い方の方にストレスが流れていく。学校でも、クラスでも、いじめという形であらわれるのかなと思いますけれども、弱い立場の子供たちへ流れていく。家庭の中でも弱い方の子供たちへそのストレスというのが流されていって、社会全体のたまったストレスを最終的に受けるのは、私が危惧しているのは、弱い立場の子供たちがそのストレスを受けているんじゃないかなというふうに思っているところであります。

 現在、日本で児童養護施設に入所している人数は三万人を超えております。三万人であります。乳児院に入所している児童数は三千人を超えている。これが我々が住んでいる日本の実態であろうかと思っております。全国の児童相談所における相談件数、皆さん方は御案内のとおりでありますけれども、平成二十二年度で五万五千件を超えました。十年間で約五倍にふえていっている、こういう状況であります。ストレスが弱い方に弱い方に流れていっているのかなというふうに危惧をしているところであります。また、児童養護施設では、御案内のように、入所している子供たちの半数が児童虐待を受けたという統計も出ている状況であります。

 それから、近年、ちょっと語弊があったら申しわけないんですが、早い話、私なりに言わせると、親に殺される子供の数、心中も合わせてでありますけれども、統計を見ますと、平成十五年、途中で、第一次報告ですけれども、二十五人という人数から始まって、十六年では五十八人にふえ、平成十七年では八十六人、平成十八年では百二十六人。第五次報告の平成十九年が、これは年度に変わるところで若干ふえますけれども、これでも、平成十九年一月一日から翌二十年三月三十一日、年度がわりにしますので、百四十二人。その後、第六次報告で、平成二十年度、平成二十年四月一日から二十一年三月三十一日で百二十八人。第七次報告では、平成二十一年四月一日から二十二年三月三十一日、つまり平成二十一年度で八十八人。つまり、百人前後の子供たちが、心中も含めてでありますけれども、親に殺されていっているという状況であります。

 私、児童虐待はもちろん、これから要保護児童対策のことをお伺いするんですけれども、当然、子育ての保護者への支援策、つまり親を孤立化させない支援策もこれは一方で必要であります。きょうはあえて触れませんけれども、それをしながら、一方で、その後の、子供たちをいかにフォローしていくかということを、国あるいは自治体がネットを広げていかなければならないんじゃないかなというふうに思っています。

 まとめで言おうと思っていますけれども、冒頭、言いたいことだけ言っておきますけれども、どんなに軍事力がある国だろうと、どんなに経済力がある国だろうと、こうした、親に子供が殺されていって、放置している国、放置というのは語弊がありますけれども、あるいは子供のことを置き去りにしていっている国というのは、どう考えても尊敬に値しない国だと私は思っておりますので、頑張っていきたいなというふうに思っております。

 それでは、実際の質問に入らせていただきたいなと思っています。

 小宮山大臣が副大臣当初から、この問題に関心があって、児童養護施設等の社会的養護の課題に関する検討委員会を立ち上げられました。その取りまとめに基づいて来年度の当初予算がつくられて、来年度の当初予算は、まず、例年ですと大体二十数億円上積みが近年の経過であったのが、来年度当初予算、五十八億円の増になりまして、トータルで八百九十三億円、九百億円弱というふうな予算規模になっています。私は敬意と感謝を申し上げたいなと思っていますけれども、その上で、幾つかの点で具体的に質問をさせていただければなというふうに思っております。

 まず、児童福祉施設の職員の配置基準であります。

 これは三十年間、配置基準が変わっていなかったものを、来年度、上積みといいますか、配置基準を多くするわけでありますけれども、私は、認識として、これはあくまでも一里塚であってほしい、まだまだ、三十年間放置されたものがやっと一歩を踏み出したという状況であってほしいなと思いますけれども、より一層の充実を私は求めたいと思いますけれども、この点について御所見をいただきたいと思います。

藤田大臣政務官 湯原委員におかれては、社会的養護が必要な子供たちの問題について日ごろから大変熱心にお取り組みをいただいているということで、私もいつも共感をさせていただいているところでございます。

 今お尋ねがございました児童養護施設の配置基準の問題でございますけれども、昭和五十一年以来、三十年ぶりに今般引き上げるということになりまして、来年度予算で、委員の方から御紹介がございましたように、大幅な予算増の中で人員配置増を実施するということでございます。

 具体的には、児童養護施設は現行六対一から五・五対一に、乳児院は一・七対一から一・六対一に、そしてまた情緒障害児短期治療施設及び児童自立支援施設は五対一から四・五対一に、そして十世帯以上の母子生活支援施設は一人増に、こういう改定となっております。

 これによって、予算上の標準的な定員規模の施設では人員配置が確実に一人ふえていくということで、子供のケアの充実というものが期待をできると考えておりますけれども、委員が御指摘されましたように、これはまさに第一歩でございまして、昨年七月に取りまとめた社会的養護の課題と将来像の人員配置の目標水準、例えば児童養護施設であれば、今回六対一から五・五対一ですが、それをさらに四対一へと引き上げていくその第一歩であるというふうに認識をしておりまして、今後とも必要な予算を確保した上で取り組んでまいりたい、このように考えております。

湯原分科員 ありがとうございます。

 ぜひ、認識としてあるように、三十年間放置されたものが第一歩ということで、これから我々の政権でもっともっと上積みになっていくことを期待申し上げたいと思います。

 二つ目の質問でありますけれども、施設整備の支援策についてお伺いしたいと思っています。

 先ほどお話がありましたように、将来像でもそうでありますけれども、今までは、児童養護施設、どちらかというと、大規模で多人数の子供たちを施設で預かる、これからだんだんにそれが小規模の施設に、あるいは、ファミリーホームと言っていますが、できるだけ家庭に近い方に、こういうふうに段階を踏んで進めていくということを挙げておられます。

 その先には、もちろん、里親という制度もあるわけでありますけれども、できるだけ子供たちを家庭的な環境に近い、そういうところでするための施設整備であろうかと思いますけれども、大規模施設から小規模施設、あるいはファミリーホームに進めていく上で、現場の皆さん方の声を聞くと、財源がやはり不足しているんじゃないかということを言われます。当然、社会的養護のこの施設は、何十年もこの施策をやっておりますので、施設自体も今老朽化している状況であります。一方で、どういった人たちがこういったものを運営されているかというと、大体九割方が民間の方々がこういった施設を運営されている状況であります。

 国の将来像に示されるように、大きな流れは大規模から小規模へ、当然、小規模になる段階には戸数がふえる、棟数がふえますから、財政的な支援が必要でありますし、老朽化している状況、運営は九割が民間という状況でありますので、この点を踏まえると、今でも上積みはなっておりますけれども、この財政的支援、一層上積みしないと、なかなか、今のこの九割の民間の運営されている方々、この小規模化、あるいは老朽化を新しくする、このことが二の足を踏むんじゃないかなと思いますけれども、この点について御所見を求めたいと思います。

高井政府参考人 御指摘いただきました施設の小規模化あるいは家庭的養護の推進についてでございますけれども、昨年七月に取りまとめました社会的養護の課題と将来像では、この方向で進めるということにしております。

 このために、二十四年度の次世代育成支援対策施設整備交付金、施設整備の交付金でございますけれども、本体施設を小規模グループケアの構造にするものでありますとか、定員の小さい施設あるいは老朽度の高い施設を優先することにいたしておるところでございます。

 また、安心こども基金というものも進めておりますけれども、小規模グループケア等を設置する場合に、既存建物の改修整備に必要な費用等を補助しているところでございます。

 さらに、児童入所施設措置費の中では、グループホーム等を賃貸物件を活用して実施する場合に、月額十万円を限度に賃借料を算定できるように、これは平成二十四年度予算案に盛り込んでいるところでございまして、こうしたことによりまして、小規模化の推進の支援を図ってまいりたいと考えております。

湯原分科員 前向きな答弁は、もちろんありがとうございます。ただ、先ほど申し上げたように、九割が民間の運営団体ということであります。

 冒頭申し上げたように、施設に入っている子供たちが三万三千人を超える、こういう社会的な状況になってくる中ですので、運営主体から見ると、やはり財政的に厳しいから、やはりお金がないから、なかなかそういった小規模化あるいはファミリーホームなどが前に進まないという、お金の問題があって進まないということのないように、ぜひお願いを申し上げたいなというふうに思っております。

 次に、三点目でありますけれども、施策推進の財源問題について御所見を求めたいと思います。

 社会保障と税の一体改革でも、あるいは子ども・子育て支援のところでも、基金は市町村の基金ということを私は理解しているところでありますけれども、実際、現場の話を聞くと、社会的養護の要保護児童対策、厳しい状況に置かれている子供たちを助ける、支援するこのネットワークを見ると、都道府県の児童相談所がやはり中心になっている。これは人的にも蓄積が、今までのものが当然あるわけです。

 市町村へということで、だんだん今ネットワークは移りつつありますけれども、市町村では自治体の大小もありますし、人材の蓄積、ノウハウの蓄積から見れば、やはりメーンになるのは都道府県における児童相談所ではないかなというふうに思っているところであります。現場の皆さん方の声を聞いても、そういう状況であります。

 ただ、一方で、先ほど申し上げたように、基金の積まれるところは市町村がメーンになるというところでありまして、この辺のところで、社会的養護のための財源が都道府県にスムーズに、児童相談所だけではいけませんけれども、ネットワークを維持しなければいけませんけれども、ここにスムーズに入るように考えなきゃいけないと思いますけれども、この点について御所見をいただければと思います。

高井政府参考人 御指摘いただきました、都道府県でのというお話でございます。

 実は、三月二日に、少子化社会対策会議で、子ども・子育て新システムの基本制度についてという決定がなされておりますけれども、これまでやっております都道府県、指定都市及び児童相談所設置市におきまして、社会的養護などの専門性の高い施策を引き続き担うということにしておりまして、現在の、御指摘いただきました、都道府県等が担っている児童相談所を中心とした体制あるいは措置制度を維持するということにしております。

 あわせまして、社会的養護の施設についての現行の措置費は、子ども・子育て包括交付金という市町村に行く交付金の中には含まれずに、これまでどおりの制度を維持するということにいたしているところでございます。

藤田大臣政務官 今局長の方から御答弁申し上げましたように、社会的養護にかかわる都道府県の役割というのはこれから非常に重要になってくるというふうに思っています。人材育成も含めて、都道府県でしっかりやっていただかなければいけないと考えておりますので、今回は、子ども・子育て包括交付金の中には入れずに、別でということでございますが、そこをしっかりと確保して取り組んでいきたいと思っております。

湯原分科員 ありがとうございます。

 三月二日に決まったということで、大変ありがとうございます。非常に心配しておりましたけれども、これで都道府県の児童相談所関係の方々も安心されるのかなと思っていますし、今、藤田さんからもありますように、これを堅持していただいて、要保護児童対策地域協議会、要対協のやはり中心、中心と言うと言葉はあれですけれども、市町村と児童相談所、各機関が手を携えて連携をしていかなきゃいけませんので、この辺のところも踏まえて、ぜひ児相に対する資金の流れも堅持していただければなというふうに思っております。

 四点目が、ちょっと関係いたしますけれども、地方自治体間の格差について是正をお願いしたいわけであります。

 民主党政権は地域主権ということを訴えておりますので、どこまでということも相反するのかなと思いつつ、ただ、一方で、冒頭申し上げたように、子供たちが厳しい状況でありますので、ぜひこの点も注視していただきたいなということで質問させていただきたいと思います。

 虐待を受けた児童への対応として、先ほどの、児相あるいは自治体、警察、学校などによる要保護児童対策地域協議会、いわゆる要対協と言っていますけれども、あるわけでありますけれども、近年の、子供を助けることができなかった、支援することができなかった死亡事例などを見ると、現場の皆さん方の声を聞くと、そこの要対協のネットがうまく機能していたかどうかというのが、後で思われるといいますか、よく出るわけであります。

 これによって言えるのは、自治体間によってやはり差があるんじゃないか。制度としてのネットはあるんだけれども、モチベーションとかやり方とか、いろいろなことがあるんじゃないか。その結果が、ひいては、先ほどの悲しい状況が生まれてくる、つながっていっているんじゃないかなというふうに考えているところであります。

 当然、児童が住んでいる場所によって要対協というネットが違うということはやはり残念なことでありますので、国として、地域主権の考え方もありますけれども、モチベーションの高いといいますか、先進的なといいますか、要対協の先進事例などを、一つのガイドラインというものを設けて、参考事例ということでいいと思いますけれども、全国の要対協あるいは児相とか、このネットワークに関係するところに御提示いただいて、自治体間の格差をできるだけ是正して、悲しい状況が生まれないようにしていただきたいなと思いますけれども、この点について御所見を賜れればと思います。

高井政府参考人 御指摘いただきました要保護児童対策地域協議会でございますけれども、平成十七年度に法定化されて、その円滑な設置、運営のために要保護児童対策地域協議会設置・運営指針を作成いたしまして、各自治体にお示ししているところでございます。

 さらに、自治体の体制強化ということでございますけれども、市町村が実施する、協議会の実務担当職員や協議会に参加する関係者の専門性を高めるための研修、あるいは、都道府県が実施する、市町村職員向けの児童福祉司の任用資格取得のための研修に補助を行うなどの強化に努めているところでございます。

 今回御指摘いただきました点、現在、協議会を積極的に活用している自治体に対しまして、協議会を効果的に運用するための方法や工夫について聞き取り調査を行っているところでございまして、七月ごろを目途に、先進事例でありますとか参考事例を各自治体に情報提供する予定にいたしております。

 こうした取り組みによりまして、虐待対応の充実を図ってまいりたいと考えております。

湯原分科員 聞き取り調査ということで、夏までにということで、ただ一方で、当然、我々が考えなきゃいけないのは、先ほど親に殺される子供の人数を申し上げましたけれども、百人前後ということは、一週間に何人というのは推して知るべしでありまして、一人ないし二人ということでありますので、できるだけ早くしていただくことが、片一方で数字を見ながらしていただくことが、一人でも子供たちを支援できる、ネットでサポートしていける、あるいは、当事者の親御さんも、そこに支援をすることによって孤立化を防ぐことによって、悲しい状況が生まれないように防ぐことができますので、ぜひ、片一方でこの時間のところも見ながら、できるだけ早くということで、七月ということで前向きだということは了としますけれども、お願いしたいと思います。

 次に、要保護児童生徒の進学支援についてであります。

 これは小宮山大臣が、この間、予算委員会で私も質問させていただいたときに、質問はしませんでしたけれども、若干、震災の被災児童の話をしたときも、当然、親御さんが職を失っている方がまだまだ多くて、進学の問題も厳しい。公的にも進学の支援をしていくわけでありますし、もちろん両親を亡くした二百四十人もそうでありますけれども、千数百人の片親を亡くした子供たちもそうであります。当然、弔慰金も出ますし、保険も出るわけでありますし、民間の奨学金を出すいろいろな方々の団体もあるわけでありますけれども、ここでも、進学、夢を震災によって断たれないようにしなきゃいけないなという思いは持つわけであります。

 この要保護児童も同じことが言えまして、高校進学率は、施設の子供たちが高校進学だと九三・六%、全国の一般の子供たちは九八%。五%ぐらいの違いであります。ところが、大学への進学となりますと、全国の高卒者が五四・三%であります。一方で、児童養護施設の大学進学率はというと一一・九%。ですから、五割強と一割の違いがあるわけであります。

 この問題を考えるときに、当然、では全国の一般の子供たちでも五割の子供たちが、いろいろな理由によって、自分で道を選んで就職の道もありますし、いろいろな理由があるわけでありますので一概には言えないかとは思いますが、ただ、親の状況、環境によって結果的に進学を諦めざるを得ないという状況が生まれるとするならば、私はこれは直していかなきゃいけないというふうに思っています。

 民主党では給付型の奨学金を掲げておりまして、今年度から一部の形で歩み始めてはおりますけれども、こうした子供たちへの進学支援についての対応策があれば、また御所見をいただけたらと思います。

奈良政府参考人 意欲それから能力のある学生等が経済的理由により修学を断念するというようなことはないように、経済的支援策の充実を図るということは、委員御指摘のとおり、非常に重要なことと認識しております。

 文科省としても、これまで、経済的支援策といたしまして、奨学金事業の拡充、それから、各大学が実施しておりますけれども、授業料減免措置等の拡充について取り組んできたところでございます。

 特に、平成二十四年度の政府原案につきましては、家計の厳しい学生等が、将来、返済に負担を懸念して、それでもって修学を断念することがないように、そのような学生等を対象に、卒業後に一定の収入を得るまでの間、返済を猶予する所得連動返済型の無利子奨学金制度を新設し、また、無利子奨学金の大幅拡充、事実上過去最大と言っていいと思うんですけれども、拡充する。また、各大学等が実施する授業料の減免措置等についても支援を行うということをしておりまして、引き続き拡充したいというふうに考えております。

 今後とも、要保護生徒を含め、意欲と能力のある者が大学等への進学や修学を断念することがないよう、奨学金事業を初め教育費の負担軽減に努めてまいりたいというふうに考えておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

湯原分科員 非常に前向きな答弁で、ありがとうございます。

 結果として、数字が、現時点で五割強と一割強でありますが、これが、できるだけ一割強がどんどん上がっていくことを御期待申し上げたいと思います。

 大臣に所見は求めませんが、ただ、先ほど、大臣が副大臣のときに、この要保護児童対策、社会的養護で検討会を立ち上げて、今年度も五十八億円の上積みで九百億円弱になったことを、敬意と評価をということを一言申し上げておりましたので、実際に大臣に一言だけそれを申し上げておきますので。

 次は、時間の関係もありますけれども、先ほどの要対協、要保護児童対策地域協議会の中で、いろいろな機関にネットワークにできるだけ入ってもらいたいということがあるわけであります。

 ところが、現場の話を聞きますと、個人情報になるわけでありまして、やはり開業医の皆さん方がちょっと二の足を踏んでいらっしゃる。ここはもしかして虐待を受けているかなと思いつつも、やはり個人情報ということがあって、このネットワークに入る、あるいは入ったとしても言う言わないのことで、このネットワークは、本当は個人情報を共有したらもっともっと強くなるのになというのがあるんですけれども、なかなかうまくいっていないという話もあります。

 後々の問題で裁判所のことも出るわけでありますけれども、現場の声を聞くと、裁判所なども本当は要対協のレベルから情報を共有したらまた違ってくるのになということがあるわけであります。当然ここは縦割りの部分がどうしても出てきまして、学校であれば文科省でありますし、厚生労働省の分野もありますし、警察だと警察庁の問題とか、いろいろな問題があるわけでありますけれども、この個人情報の共有というものについて、やはりもっと前に進めるべきじゃないかという現場の声があるわけであります。

 可能な部分、不可能な部分もあろうかと思いますけれども、この情報の共有について、御所見があれば求めたいと思います。

高井政府参考人 要保護児童対策地域協議会におきます守秘義務を課しているという状況でございますけれども、個人情報保護の要請に応えつつ、関係機関が要保護児童の支援のために必要な情報の共有ができるようにしよう、これは大事なことだと思っております。

 昨年通達を発しまして、御指摘のような民間医療機関、産科、新生児科、小児科の方に、医療機関に働きかけまして、早期に養育支援が必要である場合には、必要な情報の共有が行われる体制を整備するよう自治体に依頼をしているところでございますけれども、御指摘の民間医療機関を初めとして医療機関に幅広く協議会に参画していただくことは重要と考えておりますので、引き続き自治体に参画を促してまいりたいと考えております。

 ただ一点、家庭裁判所でございますけれども、現在、司法機関としての公正中立性に配慮してということで、あくまでもオブザーバーとして構成員となっている例があるというような状況でございます。今後の対応についても、この面で慎重に対応せざるを得ないと考えているところでございます。

湯原分科員 開業医の皆さん方への積極的な参画をぜひお願いしたいのと、裁判所の件はおっしゃるとおりで、中立性の問題がありますので、ただ、オブザーバーとしてぜひ参加をいただければなというふうに私からもお願いを申し上げたいと思います。

 最後の質問になりますけれども、先般も予算委員会で、小宮山大臣にも若干震災に関連して申し上げたんですけれども、やはり日本の今までの政治行政が、子供たちの心のケアに対する人材養成をいかに怠ってきたか。私は三年前までの政権のことをああだこうだとは申し上げませんけれども、これは日本の政治行政全ての責任であろうかと思います。

 この間も、フィンランド、人口五百万人で児童精神科医が二百人。五百万人の人口で二百人いる。日本は一億二千万人いても百七十四人しかいない。一億二千万人の日本の人口に比べて、アメリカは二億ちょっとで倍でありますけれども児童精神科医は六千人もいる。六千人もというか、それが当たり前なのかもしれない。日本は百七十四人しかいない。これが今までの日本の政治行政がつくってきた子供たちの心のケアを担当する専門的な児童精神科医の育成の結果だったというふうに言えるんじゃないかなと思っています。

 いろいろな分野で児童精神科医の皆さん方に頑張っていただかなければならないというふうに思いますけれども、これは二〇〇五年の資料に基づいて民間の新聞が書いたものでありますので、データ的に定かかどうかはちょっと疑問な部分もありますので、ただ参考事例という言い方で申し上げたいと思いますけれども、児童精神科にかかる初診までに、その新聞では一年とか、長くて二年ぐらいかかる子供たちも全国にはいるというふうに書かれておりました。また、一つには、先ほど来出ている児童相談所、全国に二百弱あるわけでありますけれども、常駐の児童精神科医がある児童相談所というのは十ちょっとしかない、こういう状況であります。

 先ほど要対協で中心になるのは児童相談所、そこにはやはり児童精神科医の皆さん方がいらっしゃるのが一番いいんじゃないかなというふうに思うわけであります。切り口は違っても結果的に同じ質問になってしまいますけれども、この児童精神科医の養成について、この間も大臣にもお願い申し上げましたけれども、改めてでありますけれども、もっともっと前向きに頑張っていただきたいなと思います。

 三十分で質問を終わりたいと思いますので、最後、御答弁いただいて、私の質問を終わりたいと思います。

高井政府参考人 子供の心の問題に対応できる医師の養成あるいは診療体制の構築が重要だと認識いたしております。

 厚生労働省では、これまで小児科医等を対象として、子供の心の診療に関する研修会を開催するといった取り組みを進めてきております。

 また、各都道府県で拠点となる病院を中核として、関係機関の連携体制をつくり、子供の心の診療に専門的に携わる医師の養成を行う事業、これは平成二十三年度から本格実施をいたしているところでございまして、このような取り組みによりまして、心の診療を行う医師の養成、診療体制の整備に努めてまいりたいと考えております。

湯原分科員 終わります。

笹木主査 これにて湯原俊二君の質疑は終了いたしました。

 次に、江端貴子君。

江端分科員 民主党の江端貴子でございます。

 このたびは、厚生労働省所管の分科会での質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。本日は、地元の方とお話をしていて非常に関心の高い年金、介護、医療の幾つかの課題について質問したいと思います。

 先日、私の地元におられる、印刷会社を経営されている方からこんな御相談を受けました。中小の印刷会社が加入している企業年金基金、いわゆる総合型に入っているのだが、掛金の引き上げと給付水準の引き下げを通告された。掛金は三%上がり、その上、支給される年金額は四割減るということで、不況で売り上げも落ちているし、社員の了解も得なければならない。

 そういった給付水準の引き下げの場合に、また脱会する社員が出てくると、それまでに積み立ててきた費用も払い戻さなければならない。一方で、この基金自体から会社ごと脱会しようとしたら、これまでの積立金は返却できないと言われた。まさに、残るも地獄、やめるも地獄、ここ一、二年ぐらいは何とかなるかもしれないけれども、同じ悩みを抱えている経営者は多い、そういった御相談でした。

 こういった御相談を受けて、いろいろと調べているところに、今回、AIJの投資顧問による企業年金運用損失事件が起きました。

 先ほど中林議員が受託者の責任というようなことも御質問されていましたけれども、私はもうちょっと大きな観点から、この問題の管轄官庁は、企業年金の指導監督という面では厚生労働省であり、基金運用の面では金融庁になるんだとは思いますけれども、このAIJの投資顧問問題、今どう受けとめて、どのような対策をとろうとされているのか、それぞれ、厚生労働大臣と内閣府金融担当大臣にお伺いしたいと思います。

小宮山国務大臣 先ほどの御質問にもお答えをさせていただいたんですけれども、十五年前までは法規制をしていたものが、金融緩和、規制緩和ということで、厚生労働省は企業年金ということについては指導監督の権限を持っていますが、ガイドラインで指導するという形になっています。

 その中でも、当然、なるべく一カ所に固まらないように分割投資をするようにですとか、それから運用の意思決定はより慎重に行うようにというようなことは言ってきたわけなんですけれども、それでもこのような、多いところは五〇%以上もAIJに頼んでいたというような実態がある中で、先ほどもお答えしましたけれども、まずは、厚生労働省としては、可能な範囲で実態を調査いたしまして、それは今月中ぐらいには、天下りと御指摘を受けている点なども含めて調査結果を明らかにした上で、そういう調査結果をもとにして有識者の方々にお集まりいただき、このガイドラインをさらに強化する必要があると考えていますので、その方向性というか、めどを六月ぐらいに持つ形で、ガイドラインの強化ということで、少しでも被害を受ける方がないように努めていきたいと思っています。

中塚副大臣 二つお尋ねがあったと思うんですけれども、まず、今般このような事態が起こってしまったことは、本当に遺憾に思っておるところでございます。

 今後どのような対策をとり、また制度を考えているのかというお尋ねがございました。

 今、厚生労働大臣からもお話ございました、調査されているということでありますけれども、私ども金融庁といたしましても、まずは、この二月二十四日金曜日付で、AIJ投資顧問に対しましては業務停止命令を発出いたしました。即日、全ての投資一任業者、二百六十五社ございます、一斉調査を実施するということを表明いたしまして、二十九日付で報告徴求命令を発出したということでございます。

 それで、やはり実態調査が欠かせない、そういうふうに思っております。今般このような事態に立ち至った経緯の中で、もちろん、その投資一任契約を受けていた投資顧問業に問題があるということであるならば、それは、それこそ、許認可、登録の問題なのか、あるいは検査監督の問題なのかということもあると思います。さらには、やはり受託者としての責任ということもあるやもしれません。

 いずれにしても、実態をちゃんと調査し、把握した上で、一切の予断を持たずに、きちんとした制度改正を行うべく努めてまいりたい、このように思っております。

江端分科員 ありがとうございます。

 厚生労働大臣のお話によりますと、ガイドラインを強化するということで、それを六月をめどにというお話でございました。

 また、中塚金融担当副大臣からは、今まずは実態調査ということでございますけれども、この実態調査の暁に、やはり必要であれば何か規制を強化するというような方向に進むのでしょうか。

中塚副大臣 まず、これは第一次調査ということで、調査は二段に分けて行うつもりなのでありますけれども、二段目を絞り込むために第一次の調査というものを行います。その上で第二次調査を行っていくということになるわけなのでありますが、その上で、先ほども申し上げましたけれども、一切の予断を持たず検討をしてまいりたい。その中には、当然、必要であれば法律の改正等も含まれる、このように思っております。

江端分科員 ありがとうございます。

 今回の事件によって、特に中小企業の方々は、非常に御心配というか懸念、このことが起きるんだと、本当にうちは大丈夫なんだろうかというようなこともあるかと思います。

 しかし、現状では、冒頭で申し上げたように、残るのも地獄、脱会するのも地獄というような状況がある中に、先ほど、企業年金に関してはガイドラインで指導監督するということにとどまっているというようなお話はございましたけれども、この中小企業の今実際に直面している実態をお聞きになって、厚生労働大臣政務官に伺いたいんですけれども、どのような対策を考えられておるのか、ちょっとお聞きしたいと思います。

藤田大臣政務官 今、委員の方から御指摘がありましたように、財政状況が厳しい基金からの脱退というのは、これはいろいろ要件もございましてなかなか難しいというのも現状でございますし、積立金の積み立て不足というものを一括して基金に支払わなければいけない、それができないという現状があって、まさに委員がおっしゃられたような状況であるということでございます。

 それに対して、厚労省としては、この間、基金の財政健全化あるいは安定化ということのために、積み立て水準が著しく低い厚生年金基金に対しては指定を行いまして、現在は八十一基金を指定しておりますけれども、財政の健全化計画を作成していただく、あるいは、予定利率と運用実績との間に過度に乖離のある基金に対してはこの予定利率というものの引き下げをしていただく、こういう取り組みを進めてまいりました。

 また、ことしの一月には、予定利率を引き下げた場合に今度は掛金を引き上げなければいけないという問題が出てまいりますので、その引き上げの開始時期というものを一年間おくらせることができる特例措置というものも設けたところでございます。

 また一方では、積み立て不足によって解散できない基金への対応として、昨年夏に成立いたしました年金確保支援法によりまして、不足分を分割納付、これは最長十五年間ということですけれども、分割納付できる特例制度を導入したところでございます。

 今後も、こうした特例措置の活用を含めて、適切に対応していきたいと考えております。

江端分科員 先ほど、脱会はせずに踏みとどまる場合も、給付水準を下げる場合に、その条件が非常に厳しいというお声があります。現状では、厚生労働大臣の認可を受けるために加入者の三分の二以上の同意とそれから労働組合の同意が要る、このハードルが非常に厳しいということで、これを緩めるというのはなかなか難しいんだとは思うんですけれども、この点についてはどのようにお考えでしょうか。

藤田大臣政務官 これも今委員がお話ございましたような、厳しいというお声があるということも事実でございます。しかし、この条件については、労使双方の代表も参加する審議会であるとかあるいは研究会で約三年間かけて大変丁寧な議論を重ねて、平成九年に策定をしたところでございます。

 また、NTTの企業年金の減額訴訟というのがございまして、この訴訟の段階でも、この条件というのは妥当である旨の最高裁判決というものが下されております。

 企業年金の給付減額のための条件を緩和するということは、こうした経緯であるとか、あるいは何といっても受給権保護の観点ということを十分に踏まえて、慎重に検討していかなければいけない課題だ、このように考えているところでございます。

江端分科員 厚生年金について、もう一点伺います。

 今非常に議論になっているところだと思うんですけれども、いわゆる厚生年金の適用拡大、非正規で働く方、パートタイマーの方たちの厚生年金加入の枠を広げるということでございます。

 週三十時間以上働く方たちに適用していたものを週二十時間ということで、非常に非正規の方たちにとっては朗報とも思えますけれども、一方で、中小企業の方たちの負担が重くなるがゆえに、逆に、非正規切り、あるいは二十時間に仕事が押し込められてしまうんじゃないか、こういった懸念もあります。この点についてどのようにお考えでしょうか。

藤田大臣政務官 短時間労働者に対して、被用者にふさわしい年金あるいは医療保障を実現していくということは、働き方に中立的な制度を目指すとともに、格差是正を図っていく観点から、早急に取り組むべき重要な課題だと認識をいたしているところでございます。

 短時間労働者への社会保険適用拡大については、社会保障と税の一体改革大綱にも盛り込まれているところでございまして、現在、社会保障審議会の特別部会で、適用拡大の具体的制度設計に向けた論点に関する議論や、関係団体からのヒアリングを行うなどしてきているところでございますし、また、民主党でも議論をいただいているところでございます。

 しかし、一方では、この適用拡大に伴って、今御指摘がありましたように、企業にも影響が及ぶということでございまして、とりわけ、短時間労働者を多く雇用する企業に新たに保険料負担が発生をする、あるいは、あわせて健康保険組合で高齢者支援金とか介護納付金の拠出、こういったものが増加をしてまいりますので、保険料率を引き上げる必要が出てくる、こういう影響が生じる可能性があるということでございます。

 この影響をどう緩和していくのかということが非常に大事な点でございまして、今引き続き、各方面から丁寧に御意見を伺いながら、成案を取りまとめて今国会に法案を提出できるように努力をいたしているところでございます。

江端分科員 今お話がありましたように、労使で折半になっているがゆえに、円高、それからデフレ、それからさらには電気の問題、いろいろな問題を抱えている中で、中小企業は本当に厳しい、全てのものが上がっていくという、そういった御懸念を抱えているんだと思いますけれども、この点についてどのような対策をとられているのか、中小企業庁の方にお伺いしたいと思います。

加藤政府参考人 社会保険の適用拡大に対しまして中小企業の負担がふえる、それに対する支援策でございますけれども、これはまず、具体的な制度設計に応じまして議論をしていくべきことではなかろうかと思っております。

 その制度設計につきましては、現在、社会保障・税一体改革大綱に基づきまして、厚生労働省におきまして鋭意検討がなされているものと承知をしてございます。

 私ども経済産業省といたしましては、短時間労働者が多く就業する企業あるいは中小企業の経営、労働者への影響等に配慮した検討が行われる必要があるというふうに考えております。また、中小企業に対しましては、資金繰り支援その他を含めまして、できる限りの措置を引き続き継続して、できる限り影響がないように配慮をしてまいりたい、こういうふうに考えております。

江端分科員 今回、平成二十三年度の四次補正でも中小企業支援策ということで七千億円を積んでいただいたということもございますけれども、本当に日本の産業の九割を支えている中小企業を制度面でもしっかりと支援をしていただきたいというふうに思います。

 それから、このAIJの投資顧問の問題も次から次といろいろな問題が出てきておりまして、非常に悪質なケースだというふうには思いますけれども、普遍的な問題も有しているかというふうに思いますので、徹底的な調査をし、問題点を洗い出していただきたいと思います。

 そういった意味で、年金受給者をしっかりと守る一方で、中小企業経営者の方々の支援もやってほしいということをお願いして、次の質問に移りたいと思います。

 中塚副大臣、それから中小企業庁の方は、ここで質問は終わりでございますので、御退席いただいて結構でございます。ありがとうございました。

 それでは次に、介護の問題に移りたいと思います。

 私自身、政治家になったきっかけは私の母親の介護ということでございまして、そのときに、介護制度が今の家庭の状況あるいは社会の変化といったものにまだまだ対応し切れていないな、そういった問題意識から政治家を目指して、今、ここにおります。

 そういった意味で、きょうは藤田一枝厚生労働大臣政務官がおられますけれども、ともに介護制度改革ワーキングチームで一緒に仕事をさせていただき、大変ありがたく思っております。まだまだ改革途上ではございますけれども、今回の介護保険制度の改革におきまして、いわゆる地域包括ケアの充実ということで、二十四時間の巡回介護サービスが始まります。昨年モデル事業でということを、今回から一般的にということになるかと思うんです。

 介護を家族だけでなく社会で、あるいは地域で支え合うということで、このサービスに大変大きな期待をしておりますし、私の地元の豊島区でも、一部の地域で、自治体それから町会、商店会、地域の方々が協力して、ひとり暮らしの高齢者の方に買い物代行あるいは見守りのサービスをするといったようなことも始まっているところでございます。

 では、この二十四時間の定期巡回・随時対応サービスというものが具体的にどのようなサービスとなり、どのような成果を期待されているのかをお聞きしたいと思います。

藤田大臣政務官 住みなれた地域で安心して暮らしていくために、地域包括ケアの推進ということがこれから非常に重要になってこようかと思っております。

 その中で、今回、定期巡回・随時対応サービスというものを一般化させていくということになるわけでありますけれども、このサービスは、委員も御承知のとおり、日中、夜間を通じて、訪問介護と訪問看護が密接に連携しながら、定期巡回型の訪問と随時の対応を行うサービス、こういう中身となっております。

 いずれにしても、このサービスの創設によって、日常生活圏域で、医療と介護が連携しながら、ニーズに応じたサービスが柔軟に提供されるようになり、重度者を初めとした要介護者が住みなれた地域で生活を続けていくことを支援することができるようになる、このように考えているところでございます。

江端分科員 期待されるサービスであり、特に需要もかなりあるのではないかと思いますけれども、サービスを提供する側にやはり課題があるのではないか。今、私の地元の方の介護事業者の方々からも、幾つかの心配事項といいますか、そういったことが上がってきております。

 一つは、利用者が集中しないと採算がとれないので、都会型のサービスに限定されてしまい、逆に地域間格差が広がるのではないかといった御懸念。それから、訪問回数にかかわらず、一カ月単位で報酬が決まる、あるいは移動距離が長いと効率が悪い、それからガソリン代も自腹となって二の足を踏むなどの理由から、過疎地では供給ができないのではないかといった心配もございます。また、東京でも、夜間対応となると、車やドライバーの確保、あるいはその担い手の確保も大変なので、結局は大手の介護事業者しかサービスが提供できないのではないか。

 せっかく今根づこうとしている地元の中小の介護事業者やあるいはNPOの方たちから、こういった指摘がされているわけなんです。

 地域密着の事業者によって支えられることが本来のこのサービスの理念からいうと私は望ましいというふうに考えているんですけれども、こうした点についてお考えをお聞かせいただければと思います。

宮島政府参考人 定期巡回・随時対応サービスですが、やはり地域の実情に応じて、既存の地域の方々を生かしながら事業展開を可能としたいという考えでございます。

 そのための工夫ですが、例えば、一つの事業者が余り大きくなければ、事業の一部をほかの訪問介護事業所に委託して、提携して事業を展開する、あるいは、三つの事業者が夜間、深夜、早朝などの随時対応サービスを分担して一体提供する、そういうような、事業所間で協力しながらこのサービスを提供するということも、今回の本格実施に当たっては可能にしているところでございます。

 それから、事業を始めるに当たっては、やはり事務所が必要だとか、あるいはオペレーションセンターというものがどうしても必要になりますから、電話配線ですとかICTとか、テレビ電話なんかが一番望ましいんですけれども、そういうものの必要な備品の経費、これは二千万円の支援というようなことも行うこととしています。

 今の五十三の市町村のモデル事業、そして今回の本格実施、その実施の状況も見ながら、また地域の実情に合ったいろいろなサービス提供が可能となるように支援していきたいというふうに思っております。

江端分科員 ありがとうございます。

 今回、介護報酬の改定の中で、非常に財政の厳しい中も、今まで外枠でついていた介護職の処遇改善交付金も報酬の中に取り込むということで、一・二%のアップを実現することもできています。

 そういった中で、今ちょっとやはり事業者の方から心配が上がっているのが、生活支援の時間単位の区分が、今まで三十分以上六十分未満と六十分以上だったものが四十五分で区切られてしまうということで、その四十五分という限られた時間で、本当に洗濯機を回して干すところまでいけるのか、あるいは本当に買い物に行けるのか、こういったこともちょっと御不満が出ているといった状況でございます。

 私は、やはり介護というのは、私の経験からしても、介護をする側が安心して、安定して介護を提供できない限り、介護を受ける方の安心した、安定した生活も望めないというふうに思いますので、その点をしっかりと念頭に置かれて介護制度の改革を行っていただきたい、そのように思います。

 次に、医療の問題に移ります。

 私の地元が一部練馬区が入っているんですけれども、実は、練馬区の日大光が丘病院の撤退に伴いまして、非常に今、地域の医療が揺れています。

 地域医療振興協会が受け皿となって、新病院への引き継ぎの協議が今進められているところなんですけれども、この日大光が丘病院というのは、東京の西北地域の医療を中心で担ってきておりまして、特に小児救急では、なくてはならない病院でございます。年間の外来患者数が二十二万人、それで小児の休日、夜間の診療数がほかの病院と比べて非常に多く、平成二十一年度では千四人、平成二十二年度では千百十三人となっております。また、小児救急の搬送数も年間一万人前後と極めて高い数字となっています。

 ところが、この日大光が丘病院の医師が、二〇一一年末で百二十一人なんですけれども、新病院で確保できたとされる医師数は四十九人にすぎず、そのうち常勤の小児科医師はたったの二人、産科に至ってはいまだゼロという状況になっております。

 今、練馬区は、人口約七十一万人と、まだどんどんふえておりまして、出生数も毎年約六千人いるんですけれども、地域の中核病院がこのような状況になることによって、練馬区を含む西北地域の子供に対する医療がとても危惧されているという状況でございます。

 個別の病院をどうするかということについては、これは東京都、練馬区、あるいは実際のこの病院の課題だということになるかと思うんですけれども、政府と民主党は、安心して子供を産み育てることができる、そういった医療サービスを充実させたいということで施策を実施してまいりました。例えば、政権交代後の診療報酬改定においても、救急、小児、あるいは産婦人科といった分野を手厚くしてまいりました。この点について、私も大いに評価をしております。

 ただ、現実として、足元でやはり先ほどのような問題が起きてしまっているということで、今後、厚生労働省として、こういった小児の救急などの分野にどのような施策を打っていくつもりなのか、教えていただければと思います。

大谷政府参考人 地域で安心して子供を産み育てることができるように、小児あるいは周産期医療体制の整備を図っていくことは大変重要な課題であります。

 厚生労働省としては、これは全国的な展開ということでありますけれども、医師確保対策として、文部科学省と協力しまして、産科、小児科なども含めた医師不足の診療科で勤務を条件づけるといったことのできる地域枠という形で、医学部の入学定員の増員に取り組んできているところであります。

 また、今御指摘がありましたけれども、予算や診療報酬面で、例えば、新生児医療や産科を担当する勤務医の手当とか、地域の診療所等と連携する周産期母子医療センターに対する財政支援、こういったものを行っておりまして、二十四年度予算でもこういった取り組みを計上しているところであります。

 それから、診療報酬の方でありますが、平成二十二年度の診療報酬改定では、リスクの高いお産を行う妊産婦の方の入院、またリスクの高い新生児に対する集中治療、こういったものを高く評価したわけでありますが、続く今回の平成二十四年度の診療報酬改定におきましても、リスクの高いお産を行う妊産婦の方の入院、あるいは小児の特定集中治療室、こういったものの評価の充実を行うということに取り組むこととしております。

 予算やこういった診療報酬、また医師確保対策、万般講じて、全力で取り組んでまいりたいと思います。

江端分科員 安心して子供を産み育てることができる医療サービスの充実というのは、やはり少子化に歯どめをかけるためにも大変大事だと思いますし、また、少子化に歯どめをかけるためには、医療だけでなく、子育て環境、さらには若い方たちの雇用、あるいは経済状況を向上させることなど、非常に総合的な対策が必要だと思います。私は、そこにまさに厚生省と労働省が一体となった意味があるというふうに思いますので、引き続きのサービスの充実に向けて私も尽力をしていきたいと申し上げまして、私からの質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

笹木主査 これにて江端貴子君の質疑は終了いたしました。

 次に、山崎誠君。

山崎(誠)分科員 民主党の山崎誠でございます。

 お時間をいただきまして、ありがとうございます。

 今国会、少子化国会と呼んでもいいんじゃないかなと私は思っています。本当に、人口の問題、人口減少、少子化の問題、これが、例えば社会保障、年金の話、あるいは経済成長、全てに絡んでいる。今私たちはここに焦点を当てて議論をしているということがすごく重要であろうというふうに認識をしております。

 例えば、人口動態のグラフも、これは国交省がつくったグラフですけれども、何度も出てまいりました。百数十年の間に人口規模が三倍に膨れ上がって、今は一億二千万人を超えている、でも、これが百年後には、また、がくっと同じペースでおりていくというようなグラフを見て、我々は、いろいろ驚愕をしながら政策を考えているところ。

 でも、一つ重要なことは、このグラフを所与のものとして考えるのではなくて、このグラフをどうつくり上げていくかというのを私たちは考えなければいけないんではないか。

 もちろん、傾向として、それを簡単に戻すことはなかなかできない、ある程度減少していくのは仕方がないかもしれません。でも、これをどういうスピードで、どこに落としていくのかというのは、私たちが今考えるべき課題であろうと思っております。

 そういった意味で、少子化対策というのを本当に国の柱にしっかりと位置づけて、できる施策をとにかく徹底的に今打っていくというのは重要であろう、そのように考えるところでございます。

 私は、きょうは、周産期医療の充実という、やはり子供に関する施策、厚労省もたくさん抱えていらっしゃるんですが、その中でも、その出発点であります周産期医療の充実ということについて、まず触れさせていただきたいと思います。

 今お話ししたことと関係して、少子化対策として周産期医療の充実が必要と考えます。大きなテーマですが、まず所見をお伺いしたいと思います。副大臣でしょうか。

辻副大臣 御指摘のように、地域で安心して子供を産み育てることができるよう、周産期医療体制の整備が大変重要な課題になっている、このように認識しているところでございます。

 このため、平成二十二年一月に閣議決定をいたしました子ども・子育てビジョンにおきまして、新生児集中治療室、NICUでございますけれども、これにつきまして、平成二十六年度までに出生一万人当たり二十五から三十床を目標に整備することにしているところでございます。

 そして、平成二十四年度予算におきましても、周産期母子医療センターのNICUやその後方病床の運営費等に対する補助を計上させていただいて、周産期医療の充実を図っているところでございます。

 また、診療報酬におきましても、二十二年度改定においても点数の評価をさせていただきましたけれども、今次の二十四年度診療報酬改定におきましても、リスクの高いお産を行う妊産婦の方々に対する入院の評価の充実を行うことにさせていただいているところでございます。

 今後とも、委員の御意見も踏まえさせていただきつつ、周産期医療の体制の確保に取り組んでいきたいと思っております。

山崎(誠)分科員 ありがとうございます。

 次の質問の答えをお聞きしたような気もするんですが、私がここでお聞きしたかったのは、周産期医療とか出産にまつわる関係のこと、生まれる前から、それから生まれた後も、これは本当に少子化対策としての視点できちっと見ていかなければいけないよ、そういう大きい視点を持っていただきたいなと思っておりました。

 私も、これまで、小宮山大臣にもお力をいただいて、例えば、タンデムマススクリーニングによる新生児のマススクリーニングの全国実施に向けた取り組みとか、あるいは最近は、母子健康手帳の改正で、赤ちゃんの便の異常を察知するためのカラーカードの導入等、いろいろと地域の皆様にも要望をいただいて、一つ一つ実現に向けて取り組ませていただきました。

 そういった意味で、一つ一つは細かな小さなことかもしれない、でも、私は、これは大きなメッセージだと思うんです。子供たちを育てる、そして子育てを育てる、出産を、本当に国が、安全で安心で、そして、こういう子供たちの危険、リスクを回避するために全力を挙げているという姿勢を示すこと、私は、これが全体の少子化対策に大きくつながっていくものと思いますので、こういった取り組みをぜひ今後も積み重ねていただきたいと思います。

 先ほどもNICUの話など出たんですが、もう一つ、産科、それから産婦人科医の不足の現状、これについてもお聞きをしたいと思います。参考人の方でお願いします。

大谷政府参考人 産科医の不足についてであります。

 確かに、産科医について不足があるという認識をしておりまして、さっき副大臣から答弁申しましたNICUの整備などとあわせて、この周産期医療の確保対策としてしっかり取り組んでいくことが重要と考えております。

 この産科医不足に対しまして、産科医などの医師不足の診療科で勤務を条件づけることのできる地域枠、こういったものを活用した医学部の入学定員の増員、これは全国、総体として行っているところであります。

 また、産科を担当する勤務医等の手当に対する補助金などを行っておりまして、二十四年度もこうした取り組みを予算計上させていただいております。

 こうした取り組みによりまして、近年、産科医あるいは小児科医も増加傾向にあるということは確かでありますけれども、これをさらに定着させていかなければならないというふうに思います。

山崎(誠)分科員 グラフを見せていただくと、上がってはいるんですけれども、やはり、その水準は、全体からいくとまだまだ低いものがあります。これは地域の格差などもあるので、さっき言った地域枠のような活用というのは大いに推進をしていただきたい。それに、こういった産婦人科の皆さん、産科の皆さんがうまく当てはめられる、制度が生きるような、そういう御指導をぜひお願いしたいと思う次第です。

 それで、今お話をした周産期の医療の話なんですが、もう少し焦点を絞りまして、早産とか低体重児の出産、これにちょっと光を当てたいと思うんです。

 今、こういう早産とか低体重児の出産がふえているというふうにお聞きをしております。グラフ等を見ても、確かにふえる傾向にある。これは、元気な子供をふやしていくという点では、やはりマイナスの要因でございます。こういったものの現状をどういうふうに捉えているか、そしてその原因等について、あるいは対策について、お聞きをしたいと思います。

大谷政府参考人 日本の周産期医療の現状でありますが、これまでは、周産期母子医療センターの整備等を進めることによって、例えば新生児の死亡率も低位で推移するなど国際的にもすぐれた水準となっておりますが、一方で、今御指摘のありました、例えば早産児の出生割合は、平成二年に四・五%であったものが二十二年には五・七%へと増加、また低出生体重児の出生割合も、平成二年に六・三%であったものが二十二年には九・六%、こういうふうに増加しているわけであります。

 これによりましてどういうことが起きたかというと、例えば新生児の集中治療室、NICUが恒常的に満床に近い状態になっており、周産期の救急患者の受け入れを困難にしている要因の一つとして指摘されているところでありまして、そのために、二十四年度予算案におきましても、周産期母子医療センターのNICUや、それから、その後方となる病床、後方病床の運営費等に対する補助を計上して、周産期医療の充実、バックアップを図っているところであります。

 こういった対策によって、安心して子供を産み育てることができる環境整備に努めたいと考えております。

山崎(誠)分科員 ありがとうございます。

 この低体重児出産あるいは早産、やはりさまざまな原因が絡んでいて、例えばスタイルを気にして、今はスリムな方がいいというので、そういった若い女性がふえて、そういうようなものも絡む。あるいは、たばこだとか生活習慣だとかいろいろなものが絡む。そういう原因もあるというのはわかりますし、そういうことが大きな要因であろう。

 また、今私がお聞きをしているのが、歯医者さんからお聞きをしていて、歯周病と早産あるいは低体重児出産の関係が実はあるんだよというような研究報告が幾つか出ております。

 本当に、重度の歯周病が早産や低体重児出産の確率を七・五倍にもする要因になっているとか、東京医科歯科大学の先生のグループの研究成果などを見ても、歯周病があって治療がない場合は低体重児出産は七九%に及ぶ、歯周病があっても治療をしっかりしていれば七・五%で済んだ、健康な場合は四・一%だというような、これは一つの研究データです。

 こういう話を実はさせていただいて、厚労省の担当者の皆さんは、まだデータの蓄積が足りなくて、実証的にこれが本当にそういう低体重児出産の原因だとはなかなか言えないということで、難しい面があるというのはわかります。

 こういったことに注目をして、例えば秋田県であるとか、それから熊本県、熊本県の事例は、歯科、産科が連携した早産予防事業というのがありまして、これが全国知事会の先進政策バンク優秀政策に選定されたということで、もう実際に、歯科と産科が連携をして周産期の妊婦の皆さんに歯周病の対策を打っていくことで大きく成果を上げているということが出ておりました。こういった事例は先進事例でどんどん進んでいる。

 多分、国もこういったところをこれから考えていっていただかないといけないし、考えていただけるものと思います。

 もっと広く言うと、これは一般的なお話になってくるかもしれませんが、妊産婦の歯科保健医療の意義というのは、今の低体重児出産だけではなくて、例えば、ホルモンの異常だとかつわり等で、いろいろ衛生面だとか生活の変化で虫歯だとか歯周病を起こしやすくなってしまうとか、あるいは、私がおもしろいなと思ったのは、お母さんが妊婦のときに歯を大事にすると、健康に対する意識が家族全体に広がって、それが健康な家族をつくる大きなきっかけになるんだよ、そういうような効果もあるということをお聞きをしています。

 多分、これが一般的になって、それで母子健康手帳には歯科のページが入っているわけですね。だから、そういったことをもっと宣伝していくこと、これがやはり重要ではないかなと思います。

 最後に、このテーマで要望させていただきたいんですが、平成二十三年の八月の十日に、歯科口腔保健の推進に関する法律が成立をいたしました。今、この法律に基づいて作成している基本的事項、これを議論をして決めているところと聞きました。妊産婦に対する口腔ケアの普及の啓発や情報提供などについて、地域の事情に合わせた取り組みが推進されるように、要望させていただきたいと思います。ぜひ、こういった点、前に進めていただければと思います。

 それでは、次のテーマに移らせていただきます。この委員会の質問の中でも何回か出てきました精神疾患についてお伺いをしたいと存じます。

 今、本当に、心の病というのは恐らく日本にとって大変大きなテーマになっている。今、四十人に一人以上の方が精神科を受診する。その最悪のケースとして、自殺が毎年三万人。もう平成十年からと言われています。本当に、命をなくす方がいるほど、やはり心が今病んでいる。

 そういう状況があって、平成二十三年の七月、厚労省は、四大疾病と位置づけてきたがん、脳卒中、心臓病、糖尿病に、今度は精神疾患も加えて五大疾病とする方針を決めたと言われています。そういった意味で、これはこの厳しい状況にとても対応した措置だと思います。

 これは副大臣にお伺いしたいんですが、精神疾患の現状をどのように認識されているか。

岡田政府参考人 精神疾患の患者さんの数でございますけれども、患者調査によりますと、精神疾患で医療機関にかかっている患者数は、平成二十年に三百二十三万人となっておりまして、平成八年の二百十八万人から一・五倍に増加しているという現状でございます。

 がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病の患者さん、四大疾病と従来言われてきておりましたけれども、その四大疾病よりも精神疾患に罹患している患者さんの方が多いというのが現状となっているという状況でございます。とりわけ、うつ病などの気分障害の患者さんにつきましては、百万人を超えるというような、非常に急激に増加しているという状況でございます。

 そうした中で、先生からも御指摘がありましたように、医療計画に記載すべき疾患といたしまして、従来の四疾患五事業に加えまして、新たに精神疾患を加えるというようなことになっております。

 都道府県で医療計画を策定していただくわけですが、予防から社会復帰までのさまざまなステージに応じた機能や連携体制、うつ病などの疾病ごとの医療機関の機能体制について計画を立てていただきまして、厚生労働省としても、具体的な計画が立てられるよう、適切な指導を行っていきたいというふうに思っております。

山崎(誠)分科員 ありがとうございます。

 私、昨年六月に、障害者基本法の改正の質問にも立たせていただきました。その中でも触れたんですが、精神疾患の方々というのは本当に難しいいろいろな課題を抱えている。社会の偏見だとか、社会的なそういう壁もあるし、病院にかかりたくてもなかなか病院にすら連れていけないというようなことがあって、本当に難しい。それで、それが今広がっている。

 これは、誰もがその可能性がある。本当に、うつのようなお話は、どこでどういうストレスを受けてそういう病に入っていくかわからないということだと思います。その数がふえているという現状、これに何とかしっかり対応していかなければいけない。

 まず、医療上の課題について、これもちょっと整理をしていただきたいと思います。今も質問がほかでもありましたが、医療上のさまざまな課題解決のため、どういうふうに取り組まれているのか、お聞きをしたいと思います。

岡田政府参考人 先生御指摘のように、障害者政策の中で精神障害者の問題というのは非常に大きく取り上げられて、障がい者制度改革推進会議などでも大変な御議論が行われているところでございます。

 基本的には、障害保健医療福祉政策の基本的理念といたしましては、入院医療中心から地域生活を中心にと、それをどう支えていくかということを基本の理念として取り組んでいるところでございます。

 障がい者制度改革推進会議でさまざまな議論がありましたのを踏まえまして二十二年の六月二十九日に閣議決定がされました障害者制度改革の推進のための基本的方向というものがございますが、その中で、精神障害者の医療について、大きく三つの点を記載しているところでございます。

 一点目は、社会的入院を解消するため、精神障害者に対する退院支援、それから地域生活における医療、生活の支援に係る体制を整備するということにつきまして、平成二十三年内にその結論を得るということ。

 二番目といたしましては、精神障害者に対する強制入院、強制医療介入などについて、いわゆる保護者制度の見直しなども含め、そのあり方を検討し、平成二十四年内を目途にその結論を得る。

 三番目といたしまして、精神科医療現場におけます医師や看護婦などの人員体制の充実のための具体的方策について、平成二十四年内を目途に結論を得るというようなこととされております。

 これらが精神障害者の医療についての検討すべき課題だというふうに認識しているところでございます。

 こうした問題に対しまして、厚生労働省といたしましては、政務官を主担当といたしまして、現場の関係者、それから有識者、当事者、家族などで構成されます新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チームをつくりまして、そこで検討を進めてきたところでございます。

 その結果、平成二十四年度から始まります都道府県の第三期障害福祉計画で、病院からの退院に関する明確な目標を設定するというような取り組みを行うほか、訪問して行われますアウトリーチの充実、精神科救急医療の体制整備、それから先ほどの、医療計画への取り組みというようなものについて取り組んでいるところでございます。

 また、今後の課題としましては、保護者制度、入院制度をどう変えていくかというようなこと、それから、精神医療現場におけます人員体制の充実のための方策についても、現在検討を進めているところでございます。

山崎(誠)分科員 ありがとうございます。かなりいろいろな政策が前進していると。期待をしております。

 こころの健康政策構想会議というのも設置をされて、提言なども出ていて、読ませていただきました。すばらしい内容で、現場のニーズにも合っていると思いますので、そういったものを踏まえた今後の展開に期待をしたいと思います。

 次に、今、医療上の課題をお聞きしたんですが、福祉上の課題についてもお聞きをしたいと思います。

 今、障害者総合支援法のような議論が進められていますが、どういうふうに扱われているのか。

岡田政府参考人 精神障害者の方が病院から退院して地域に移行した場合にその地域における生活をどう支えていくかということが、精神障害者に対する福祉施策の大きな課題だというふうに考えております。

 具体的には、一昨年十二月に議員立法で成立させていただきました改正障害者自立支援法の施行によりまして、本年四月から、相談支援を充実させるということで、特に、入院患者が地域生活に移行するために、その移行を支援するための地域移行支援、それから、在宅の障害者の緊急時の支援などを行って地域に定着をしていただくための支援というのが、この法律に基づきます個別給付として新しく制度化されたところでございます。その運用をこれからもしっかり図っていきたいと思っています。

 それから、精神障害者の地域生活におきます訓練とあわせて、短期の入所事業が実施できますように、宿泊型自立訓練というのがございますが、その規制を緩和して短期入所が実施できるような形にしているところでございます。

 それから、グループホーム、ケアホームの整備を促進するなどの取り組みも行ってきたところでございます。

 それから、今国会に提出を予定しています法案におきましては、特に、共同生活を行う住居でのケアが柔軟に対応できるようなことで、従来はケアホームとグループホームを分けていたわけですが、今回は、ケアホームをグループホームに統合することによって、ケアがより適切に行えるような体制づくりを図っていきたいということで、今検討しているところでございます。

山崎(誠)分科員 ありがとうございます。

 この項目、最後になるんですが、今、こういった状況の中で、施策としては、医療、福祉それぞれが非常に充実をしてきているんだと思います。

 私は、心の健康というのは、医療も福祉も一体になって家族を支えるような、そういう地域づくりだとか、あるいは社会全体の認識の共有みたいなところから始まって、恐らく、どちらかというと今までなかなか手が届かなかった、そういう精神障害の皆さん、今こそこれをしっかりと支えるべきときが来て、そういった準備がさまざま今進められているというふうに考えます。

 ちょうど、二月なんですが、横浜の市会議員、私、横浜出身で、市会議員出身ですので、昔の仲間が意見書を提出いたしました。「こころの健康を守り推進する基本法(仮称)」の法制化を求める意見書の提出ということで、まさに今我々が議論してきた問題点、そして課題、それを解決するための方策、こういったものを基本法という形でぜひまとめるべきだということで意見を出されております。

 私は、本当に、精神疾患の方々を支える社会をつくるためには重要な提案だと考えますが、所見をお伺いしたいと思います。副大臣、お願いします。

牧副大臣 ありがとうございます。

 私どもも山崎委員と認識は全く同じでございますし、先ほど来お話に出ておりますように、精神疾患、全国で三百二十三万人ですか、四大疾病を上回るという、いわば国民病とも言える病であるという現状に鑑みて、基本的な施策というものは当然必要になってくると思います。

 医療計画に記載すべき疾病に精神疾患も追加をされておりますし、引き続いて国家的に取り組んでいかなければならない課題であるという認識は、しっかりさせていただいております。

 今お話にありました提言というのは、市町村の精神保健機能体制の充実や国家戦略としての総合的な精神疾患対策の必要性から、こころの健康基本法を制定すべきという御提言だと認識をしておりますけれども、厚生労働省としては、例えば、うつ病への対応として、早期発見、早期対応のための取り組みや、認知行動療法の普及などの施策を進めるとともに、省内に政務官を主担任とする検討チームを設け、訪問支援の充実など、地域精神保健医療体制の充実に向けた検討を行っているところであります。

 ただ、基本法というお話でございますけれども、もう既にスタートいたしております障害者基本法というのもございますし、また、今国会で御議論をいただく自立支援法にかわる新たな障害者施策との整合性も考えながら、議員の皆さんでよくお話を詰めていただければと思っております。

 以上でございます。

山崎(誠)分科員 ありがとうございます。

 今、最後にお話があって、ぜひこういうものがまた、議員の中でも議論をして、議員立法等でも御提案をできたらと思います。

 これはやはり、例えば先ほど言いました患者数を見れば、がん対策基本法があれば心の健康の対策基本法があってもおかしくないし、特殊性と言うとあれですけれども、今まで議論してきた難しさもあります。そういった意味では、ぜひこういったものを進めるように私も全力を尽くしたいと思います。

 それでは、残り時間わずかですが、最後に一点だけ、地域包括ケアシステムについて。

 私は以前から、この新しい、在宅で認知症の高齢者の方々、あるいはさまざま在宅でお暮らしにならなきゃいけないお年寄りを支える仕組み、これからこのケアシステムが進むことを大変期待しています。

 このシステムを支えるために、私はICTの活用というのが不可欠であろうというふうに考えています。情報共有をして、例えば介護者の方、病院の先生、薬剤師の方、あるいは地域の皆さん、民生委員の方とか、さまざまな方々が見守る社会をつくっていく、それがこの地域包括支援システムだと思います。そのために、情報をいかに共有するか、これをうまく、ただ集めるだけではなくて、分析をして活用するか、そういったことを考えなければいけない。

 今、恐らくさまざま提案があって、クラウドコンピューティングだとか新しい技術を使って、すばらしい分析ができる、あるいは情報共有ができるという提案があると思います。こういったものをぜひこの地域包括ケアシステムの一部としてきちっと位置づけていただきたいというふうに考えている次第です。

 ぜひ、この分野のICTの活用状況、今後の見通し等も含めてお伺いできればと思います。

辻副大臣 委員御指摘のとおり、地域の医療、地域の福祉を前進させる上で、IT化というのも非常に大事な課題だと思っておりまして、その見地から取り組みをさせていただいているところでございます。

 とりわけ、高齢者の安心した在宅生活を支える地域包括ケア、御指摘もいただきましたけれども、その実現のためには、医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスが有機的に連携をすることが重要である、そのためにはICT技術等の活用が有効な手段となる、このように考えているところでございます。

 四月の介護保険法改正により新設される定期巡回・随時対応サービス、いわゆる二十四時間対応サービスですけれども、そのサービスにおきましては、介護職員や看護職員が利用者の心身の状況について直近の情報を共有したり、利用者が必要なときにコールを行い介護職員等が適切に対応できるようにするために、ケアコール端末やテレビ電話などのICT技術を活用することを前提として取り組ませていただいたところでございます。

 御指摘のような課題をしっかりと受けとめさせていただきまして、介護におけるIT化、医療、介護共通のものがあると思いますけれども、情報の連携などにも取り組んでいきたい、このように考えております。

山崎(誠)分科員 ありがとうございました。

 時間ですので終わりますが、一言だけ。ICT、データベースが大事ですので、通信とかネットワークだけではありません。データベースをどうつくっていくか、ぜひ私もいろいろ提案をしたいと思います。

 以上です。ありがとうございました。

笹木主査 これにて山崎誠君の質疑は終了いたしました。

 次に、中後淳君。

中後分科員 新党きづなの中後淳でございます。

 この第五分科会で質問させていただくことを本当に心から感謝いたします。昨年も、予算委員会の分科会はこの厚生労働省所管の第五分科会で質問させていただきました。二年続けてこの分科会で質問することになります。

 昨年は、地域の医療のことを中心に取り上げて、医療崩壊ですとか看護師不足だとかということについてお話ししましたが、今回は、もっとテーマとしては大きくなると思いますけれども、今の現行制度、いろいろなところの社会矛盾等について、政府としてどのように考えているのかということを中心に伺っていきたいと思います。

 まず、私は新党に移った身でありますが、政権交代当時の民主党に期待されていたことに一度立ち返りたいと思っております。

 まずは、統治機構の抜本的な改革、それと、社会構造が大きく変わっていく中で、その変化に対応した基盤の整備ということが求められていたんだろうと私なりには理解しております。

 一つ目の統治機構の抜本的改革というのは、政治主導だったり、利権構造の断絶だったり、地域主権改革だったり、そういったこと、天下り、わたりの全面禁止だとか随意契約を一掃しましょうとか、ひもつき補助金の廃止だったり、企業・団体献金の話だったり、ほかにもさまざまそういう項目が挙げられておるわけです。

 もう片方の方は、最低保障年金であったり、子ども手当だったり、高校無償化だったり、後期高齢者医療制度の廃止等、戦後からずっと続けられてきた、高度経済成長時代につくられてきた所得再配分の仕組みを少子高齢化の成熟社会に合わせて抜本的につくりかえる、その第一歩をどうやって進めましょうかということだったというふうに理解しております。

 このたび、社会保障・税一体改革の大綱が示されました。この中には、この理念の延長線上にあるものも見受けられると私も思っておりますが、総じて言うと、現行制度の延長線上の改善というふうに見えるというのが正直な感想です。

 また、消費税の議論等については税率と開始年度がしっかりと示されている中で、社会保障については、検討しますということを非常に多く並べていて、具体的な記述というのはほとんどされていないというのが現状です。

 私たち新党きづなとしての基本理念としては、「日本社会全体の底上げを目指す「協和と公」を尊重する政治が必要」であるとうたっておりますし、また、綱領の中の「協同社会」にも「公平感のある負担配分により、社会の底上げを目指すことを基本姿勢とする」としてあります。また、基本政策にも「共生型の社会基盤の創造!」ということでさまざま書いてあるわけです。

 今回は、社会保障の現行制度の具体的な社会矛盾だったり、改善が必要な項目を挙げながら、納税と勤労の意欲の湧く体制だったり、簡素、公平、明確な税体系だったり、社会保障の質の充実と不公平の解消について、国民の義務と権利、国民が納得できる共生・協同型社会基盤というのを念頭に置いて質問させていただきます。

 まず、具体的なお話になりますけれども、生活保護について質問いたします。

 生活保護と、年金もちょっとお聞きしますが、生活保護と年金に対する国費の投入額と不正受給の推移について、まずは伺います。

山崎政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、生活保護でございますが、生活保護に関します国庫負担金は、平成二十一年度は二兆二千五百五十四億円、二十二年度が二兆四千九百七十二億円に上ってございます。

 この不正受給でございますが、二十一年度で約百二億、二十二年度で百二十九億となっておりまして、生活保護の事業費全体に占める割合は、二十一年度では約〇・三四%、二十二年度では〇・三九%となってございます。

 一方、年金でございますが、国民年金、厚生年金に係る国庫負担は、二十一年度の実績で九兆八千五百七十六億円、二十二年度の実績が十兆一千二百五十億円。

 また、年金の不正受給でございますが、統計的なデータを把握してございませんが、平成二十二年に問題になりました年金受給者の死後の不正受給でございますが、これに関しましては、平成二十二年度実績額で〇・二億円、こういうふうになっている次第でございます。

中後分科員 大変な金額が社会保障に使われているわけですが、今お聞きをした生活保護の中で、医療扶助というのが非常に大きな割合を占めております。医療扶助も、これはいろいろなところで問題として取り上げられるようになってきました。不正な受給をしているのではないかとか、必要がないのに病院を回っている方、これは一部だと私は思っておりますが、社会問題となりつつあります。

 そういったものの割合ですとか不正受給の防止策について、どの程度把握しているのかということと、その現状について、どのような調査によって、把握し切っていると思っているのかどうかということについて伺いたいと思います。

 医療扶助の割合は全体の半分近く、四七・二%というふうに私は聞いておりますので、大変大きな割合を占めている状況になっておりますので、ぜひともお答えをお願いします。

津田大臣政務官 中後議員、どうもお久しぶりでございます。

 議員から御指摘がありましたように、生活保護費全体に占める医療扶助の割合が平成二十二年度実績で四七・二%ということになっているわけで、大変大きな金額になっている。当然、その適正化というのは大変重要な課題であるというふうに考えております。

 この医療扶助につきましては、レセプト点検の徹底、これで適正化を図ってきているわけでございまして、平成二十四年度には、電子レセプトのシステムを活用して、レセプト点検を徹底的に強化するということにあわせて、指導対象となり得る者を選定する基準を策定する。つまり、レセプト点検を強化するに当たって、どういう方のところに問題認識をするかということですね。

 それは、分析をしているかという御質問の中にも関連することでございますけれども、例えば月に十回以上、同じ薬を幾つかの薬局に請求するとか、それはどう考えてもちょっとおかしいんじゃないのということになるわけで、どういう場合が問題なのかということをしっかり分析した上でチェックして上げて、そこはしっかり徹底的に調査をしていって、問題追及をしていくというようなことをやらなければいけない。

 それから、看護師や保健師など専門知識を有する医療扶助相談・指導員を自治体にしっかり配置する。つまり、専門知識を持っている方が見ないと、何が問題かというのがなかなかよくわからないということがあるわけでございますから、こういう取り組みをして効果的な指導や適正化を行っていきたい、そのように考えております。

中後分科員 今お話のあった電子レセプトの方の点検の強化ですとか、医療扶助相談・指導員を強化するということについては、今のできる範囲内ではもうそれが精いっぱいというか、そこを強化する。また、その基準をどのように引くかということでスクリーニングがどうかかっていくかということにかかわってきますので、ぜひ、どういう条件かということについてしっかりと御検討いただきたいなと思います。薬をネットで転売するなんという話も聞いておりますし、病院を自分の家のように使っている方がいるような話も聞いたりしております。

 それで、一つ大きな問題提起として、生活保護を受けられているという方の中には、健康状態、さまざまな方がいらっしゃいます。そこを、ある意味、十把一からげにして生活保護という仕組みをつくっていることが問題の源、根源なのではないかなというふうに私は思っております。

 憲法では、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障しているわけですが、この健康と文化的なというのを一緒くたに扱ったことがいろいろな今の問題につながっているところがあるのかなと思っておりまして、生活保護と医療扶助というのを切り離すべきなのではないかと思っております。

 医療費については、それぞれの方について、それは生活保護を受けている方も受けていない方も、それぞれの生活の環境に合わせてどのような自己負担をしていただくのかという検討をすべきなのではないかというふうに考えているんですが、その点について、お考えをお聞きしたいと思います。

    〔主査退席、江端主査代理着席〕

津田大臣政務官 御案内のように、生活保護受給者に適正な受診を行っていただく、これは、切り分けるかどうかということはちょっとおいておいても、大変重要なことであるというふうに認識をしているんです。

 一部自己負担というような問題提起がされていることも十分承知をいたしておるわけですが、ここで我々が問題認識を持つのは、本当に困っている方々が医療抑制をするということがあってはならないんだと思うんですね。

 やはり、一部自己負担ということをやった場合に、問題がある人の、必要以上に薬をたくさん出してくれとか、そういう人たちの抑制ができることはいいことなんですが、一方で、本当に必要としている方、本当に困っている方に対して抑制をさせるということになれば、これは命に直結することになり得るわけですから、果たしてそこの区分けをどういう形でできるのかなというのは大変悩ましい点ではないのかなというふうに考えているわけでございます。

 例えば、自己負担分を事後的に償還払いというような提案もあるわけでございますけれども、生活保護受給者が一定額を事前に立てかえるということになるわけでありまして、お金がないということ、そして生活する手段が今のところどうしても難しいという方が生活保護を受けるわけでありますから、そう考えると、どうなのかということを我々は考えざるを得ない。

 一方で、こういう方法をとりますと、福祉事務所の手間も非常にふえてくるということもあるわけで、そこも考えておかなきゃいけないのではないのかとか、幾つか課題があるだろうな。

 やはり、適正化については、電子レセプトの効果的な活用、それから後発医薬品、これの使用を促進する、こういうような取り組みによって強化を図っていきたいなというふうに現在のところは考えておるわけでございます。

中後分科員 これは繰り返しになりますけれども、先ほどお話ししたとおり、今おっしゃられたとおり、本当に困っている人が抑制されて命にかかわるということは避けなきゃいけないわけです。しかし、生活保護というカテゴリーに入っている方々はいろいろな健康状態の方がいらっしゃいます。その方々に対して、同じ、全て医療についても無料ですよということをしていることが問題なのではないのかなということなので、問題提起として受け取っていただければなと思います。

 次に、今、生活するのに立てかえがどうこうというお話もありましたが、そこに関係してくるお話になると思いますが、年金と生活保護の逆転現象だったり、最低賃金と生活保護の逆転現象が起きているなんということも報道されています。

 これは、制度そのものの理念とかということが違うということを踏まえたとしても、やはり一般の方には、社会矛盾として、おかしい、許される話ではないし、制度として変えなければならない点だと。

 これは恐らく誰に聞いても、真面目にこつこつ年金を積んできた人よりも、そんなこと関係ないという生活をしながら老後に生活保護に入っている方の方が受給が多くなるなんということになれば、制度そのものの根幹にかかわる話ですし、賃金についても同じです。最低賃金、働かない方がお金がたくさんもらえるというところにいる人たちであれば、どちらを選択するかといえば、やはり働かない方を選択するといえば、これは勤労の義務に反するような方向になるわけです。

 どのような逆転現象が起こるのかということについて、具体的な事例がわかれば教えていただきたいということと、逆転現象に対する問題認識と対応策を伺いたいと思います。

山崎政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、年金と生活保護支給のいわゆる逆転現象でございますが、まず基礎年金の方でございますが、平成二十三年度、月額で満額で六万五千七百四十一円でございます。

 一方、生活保護の生活扶助基準でございますが、これも二十三年度で見ますと、これは地域によって違ってございます。いわゆる郡部の三級地二におきましては六万二千六百四十円でございますが、一方、例えば東京都の二十三区、これは一級地一と呼んでございますが、都市部におきましては八万八百二十円となってございまして、基礎年金額を上回る、こういう状況でございます。

中後分科員 最低賃金のことについてもお聞きしたかったんですけれども、ちょっと時間がありませんので、逆転している状況が統計的にあらわれている都道府県があるということをお聞きしております。

 あと、年金の場合は満額六万五千幾らという話がありましたけれども、実際に六万五千円に満たない方というのがたくさんいるわけです。私の祖母も、確定申告の時期ですので、私の扶養になっておりますので見てみましたら、とてもそんな金額にはなっていないような状況にあります。

 とにかく、先ほども言いましたように、年金と生活保護というのは、これは文化的で最低限度の生活を支える制度という意味では一緒のお話だと思います。年をとって、働く、勤労するということが難しくなった方々に対する保障で、これを健康と切り分けるということをベースにして、文化的な最低限度の生活というのを支える制度として年金と生活保護を一本化するというのは、最低保障年金七万円の考え方の延長線上としてあるのではないかなと。大変な国民の理解を必要とする仕事になると思いますけれども、一言で感想をお聞きしたいなと思います。

津田大臣政務官 生活保護というのは、御指摘のように、基礎年金のみの収入の方を含めて、全ての収入や資産だけでは生活の維持や必要な医療を受けることができない、こういう人に対して、最低生活費から収入を差し引いた差額分の支給あるいは医療給付を行うということになっているわけですから、例えば基礎年金だけの方、基礎年金だけだと最高額が六万五千七百幾らということでございますが、そうすると、それでは生活ができない方は、その差額が生活保護から支給をされるというシステムになるわけです。

 ですから、生活保護を申請するかどうかという問題はまた別にあるわけですけれども、今度、最低保障年金ということであるならば、この七万円というのが一つの水準になって、何十年か後には全ての人に保障がされるということになるならば、そこがベースになって、それでいて足りない分というものが生活保護費として支給をされるという考え方で考えているわけでございます。

中後分科員 年金生活をしている方の中には、今言った生活保護の最低基準に満たない金額でも申請をしていない方というのはいらっしゃると思います。その方々に生活保護の申請をしてくださいと言うことそのものが、何か方向として、ひずみというか、ゆがんでいるような気が少しします。

 それと、最低賃金についても、逆転現象は大変な問題ですよね。勤労、納税に直接かかわるお話になる、大きな社会矛盾と考えております。働いた人より働かない人が生活費が得られるというような状態は解消しなきゃなりません。勤労者とか納税者は少なくとも最低限度以上の生活が得られるということが大前提になると思いますし、その上で、文化的な最低限度の生活としての年金、生活保護制度を組んでいく必要があるんだろうと思います。

 さらに言えば、勤労だとか、ある意味、社会保障というのを年齢で切り分けるということそのものについても考え直す時期、個々人によってさまざまな状況がある中で、今のように単一的に本当に年齢で切り分けるとかということについても踏み込んで考えていく必要があるのかなというふうに思っておりますので、ぜひとも御検討いただきたいなと思います。

 次の質問に行きますが、次に、年金の世代別負担と給付の格差ということで質問しているんですが、実は、日経新聞の二月六日の記事で、内閣府経済社会総合研究所の試算、年金保険料支払いと年金受給額について、一九五五年生まれ、現在五十七歳の方以降は、支払いと受給の逆転現象が起きると。

 六十二歳の方は、支払った額より受取額の方が五百二万円多くなる。五十七歳の方は、支払った金額が千八百七十六万円、受け取る金額が千八百七十七万円で、数千円のプラスだと。それ以降の方は少しずつ支払い金額の方が多い段階になっていって、二十七歳では、千九百七十八万円納めて千二百六十五万円しか戻ってこない。差額で七百十二万円、これは月換算すると三万円ずつ二十年分という、年換算すると三十六万円掛ける二十年分、そのまま丸ごと損をしてしまうというようなお話の記事が載っておりました。

 これまでの厚生労働省の関係の試算では、大体自己負担で年金の計算をして、大体支払った金額の二・三倍ぐらいが返ってくるというふうに言われておったわけですが、この内閣府の試算は、企業の負担を入れて計算をしてあります。それで試算をした結果として、受け取る金額の方が少なくなるということが書いてあるわけです。

 何でこのタイミングで企業負担を、今までと全然考え方が違う。私、ちょっと前に質問したことがあるんですが、自己負担分で計算しています、企業負担分というのは別の考え方なのでということだったんですが、それを入れて計算するという、なぜそういう計算に置きかわってしまったのかということがよくわかりません。しかも、この記事は、後半の方に進むとようやく、この計算は企業負担分も含めて計算しましたよということが載っているんですが、よく読まないと、そのことすらわかりません。

 恐らく一般の方は、自分が納めた年金の掛金が戻ってこないと錯覚を起こすような、世論誘導が行われるようなやり方をしていて、僕は、この内閣府の出し方というのは非常に疑問を感じております。世論誘導ですね、ある意味。年金を払っても損しますよと。年金受給者を減らすような方向であったり、これから増税について理解をしてくださいということを世論誘導しているように感じました。

 厚生労働省として、今紹介したような調査結果、内閣府の経済社会総合研究所の試算が公表されていることについて、感想を伺いたいと思います。

    〔江端主査代理退席、主査着席〕

榮畑政府参考人 御指摘の試算でございますが、内閣府の経済社会総合研究所の研究員のグループの方々が、この研究所のいわばディスカッションペーパーとして、個人の見解として公表されたというようなことで私ども承知しております。

 私ども厚生労働省で、従来から、年金の保険料と給付との関係というのをどう計算するかにつきましては、まさに先ほど先生おっしゃられたように、事業主負担を入れずに御本人負担だけで私どもその計算をさせていただいて、それで、先生先ほど御紹介いただきましたけれども、一番若い世代で、サラリーマン世代で二・三倍というような試算もさせていただいておるところでございます。

 私どもとしては、給付と負担の関係を考えるに当たっては、やはり事業主負担を入れずに本人負担ということで考えるということが、私どものやり方というのが、いろいろな考え方もございますけれども、やはり個人の負担ということから着眼したら、そちらの方がいいんじゃないかと思っています。

 私どもも、実はこの内閣府の、個人の見解として公表されたものを新聞で拝見いたしまして、ちょっと驚いたところでございますけれども、私どもといたしましては、従来からやっているような試算ということをさらに御説明させていただいて、保険料の負担と年金の給付額だけで年金の損得というのを論ずること自体についての是非はございますけれども、少なくとも、それでやっても損することはないんだというようなことについても、さらにいろいろなところでも御紹介させていただければと思っております。

中後分科員 今の記事は、日経新聞だけではなくて、その前の段階で、朝日新聞だったり読売新聞とかいろいろなところで出ていて、急に、年金について何でこういう記事が出ているんだろうと物すごく不思議に感じたところなんですが、余りいい傾向ではないし、もし試算のベースを変えるのであれば、そのことはしっかりと頭に書かなければおかしい。何で今まで二・三が急に〇・幾つになってしまうのか。そんなことはあり得ないわけですから、そこについてしっかり書いていただきたいということなど、そういう指導等も含めて、大臣に感想を含めてお聞きしたいと思います。

小宮山国務大臣 委員が御心配いただいたとおりですので、そこのところは、今局長も御答弁させていただいたように、しっかりとそういう前提が違うということを周知して、私どもも、事業主が払っているところでは二・三倍、自営業者でも一・五倍ということで、本人の掛金分以上は必ず戻ってくるということはしっかり周知をしたいと思っておりますし、こういう時期にちょっとこういう違ったものが出ると本当に議論が混乱いたしますので、そのあたりは内閣府の方ともしっかり話をしていきたいと思います。

中後分科員 これは、とる人によっては本当に嫌な世論誘導をされているなというふうに受け取ると思いますので、しっかりと対応していただきたいなと思います。

 いずれにしても、企業の負担分を個人に渡して、その人に運用してもらった方が得になる仕組みに今現在なっているということになりますよね。その人がちゃんと運用できるか、使っちゃうか使っちゃわないかは別にして、別の機関がしっかりと運用した方がいいという仕組みになっていて、これもある意味、社会矛盾と言えるのかなというふうに思います。

 よく野田総理が、胴上げ型社会から騎馬戦型社会、そしてこれから肩車になるよというところで、賦課方式と積立方式、どちらがいいんだみたいな議論もされておるわけですが、運用さえうまくいくのであれば、基礎的な部分は国がしっかりと、最低保障年金の延長線上、先ほど私が申し上げたように、生活保護と一体的に組みかえる。積み立て部分というのは、ある意味、国がやる、また民間に任せる、それぞれの方々の判断で行ってもらうということも選択してもいいのかなという気はしております。

 それとまた、あわせて、きのうも少しテレビ報道などでやっていましたけれども、ベーシックインカム制度というのが随分注目をされて表に出てくるようになりました。それを聞くに当たって、ちょっと時間がないので少し飛ばしますが、今確定申告の時期です。私も確定申告をするんですが、いろいろな控除があります。サラリーマンには給与所得控除があって、普通の方々は、基礎控除、配偶者控除、扶養控除、社会保険料控除、寄附金控除、さまざまあるわけですが、これは、その控除された金額に税率を掛けて還付をするという、雑駁に言うとそういう仕組みになっていると思います。

 これは非常に逆進性が強い、ある意味、ばらまきの状態です。所得のある人にも大きなお金を返す、税金を返すというお話になっていますので、ばらまき状態。私は、子ども手当よりこっちの方がばらまきとしてはずっと質が悪いというふうに当初から思っておりました。所得の再配分を考えるんだったら、控除全体を見直して、ある意味、給付制という方に切りかえていくというのが進むべき方向なのかな、日本らしい方法だと私は思っております。

 ですから、控除で還付をする、控除がない場合に得られるであろう税収から実際に得られている税収の差額分だったり、あと、年金の国庫負担分だったり、生活保護に充てているお金だったり、そういったものをベーシックインカム的な発想で所得の再配分に回していく。

 私は、ベーシックインカムとよく一般的に言われている制度そのものをそのまま活用するということには余り賛成ではなくて、それを日本らしい形で、その考え方をヒントにしながら新しい仕組みを、これからの少子高齢化にたえられるような仕組みをつくっていくべきだというふうに考えております。

 ある意味、民主党が政権交代時に掲げた最低保障年金七万円の考え方と生活保護の考え方とを抜本的に見直して、文化的で最低限度の生活を営む権利を保障する制度として、働き方や年齢によらない所得比例減額配分方式の給付制度のような、現実的で、国民の得られるような日本らしい制度に進化させるということについて、余り固定的に考えずに、どうしたら本当に社会の底が上がるだろうかということをベースに考え直してもいいのかなというふうに思います、今の制度というのをなしにして。

 それから、それを組み上げた後に、どうやってそこに移行するかということについて真剣に考えていくというステップを踏む。先にどう移行し得るかということを考えてしまうと、どうしてもブレーキになってしまうので、何としてもそこに行き着くんだという形をとった上で、そういう形をとるべきだと思っているんですが、お考えをお聞きして、私の質問を終わりにしたいと思います。

小宮山国務大臣 予定されていた答弁ではないんですけれども、ベーシックインカムは、橋下市長なども提起をされまして今話題になっていますけれども、では、勤労意欲とどう考えるのかとか、幾つかの論点があるので、今委員も、そのままではなくて、所得の再配分の考え方としてと言うのは、私も、大きな考え方をいろいろ議論する中にはそういう考え方もあっていいと思います。

 だから、年金の仕組みを含めて、どういう社会保障制度がいいかということは、これは御党も含めて、超党派でしっかりとベースを議論する場を持てばいいのではないかというふうに考えています。

中後分科員 いずれにしても、今の制度そのままの延長線上ではないところに答えがあると私は思っておりますので、幅の広い考え方をさせていただきたいと思います。

 あと、医療保険、特に国民健康保険税等についての格差の問題、偏在の問題等についてですとか、窓口と保険者の問題ですとかそういったこと、また、三世代同居家族の推進施策とかということも通告しておりましたが、また機会がありましたらぜひとも議論させていただきたいなということで、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

笹木主査 これにて中後淳君の質疑は終了いたしました。

 次に、塩川鉄也君。

塩川分科員 日本共産党の塩川鉄也です。

 最初に、一点要望だけさせていただきます。

 前に小宮山大臣にお聞きしましたけれども、被災者の被用者保険の方の医療窓口負担免除措置の件ですけれども、原発事故の警戒区域内に事業所が所在をするある健保組合が、原発事故に伴う避難者も含めて、被災者向け自己負担免除措置を二月末で打ち切ったということがあります。この組合は、原発事故による影響を直接受けて、保険料が減少し、免除対象者の多いことがありますが、国の支援の枠組みが夏ごろまで示されないことが背景にあります。

 財源措置の枠組みを早期に示して、免除措置の再開や、三月一日にさかのぼっての自己負担の還付など、被災者の不利益とならないような措置を求めるべきだと考えています。また、ほかにも同様の事例がないか、しっかりとした調査を求めておくものであります。

 では、一言、済みません。

小宮山国務大臣 お求めだけなので、受けとめればいいのかもしれませんけれども、今、手元にいろいろな材料を持っておりませんので、御指摘も受けて、困られる方がないようにどうしたらいいかということは検討をさせていただきたいと思います。

塩川分科員 お願いいたします。

 それでは、きょう質問をいたします雇用促進住宅の関係であります。

 私は、昨年の七月以来、被災者に提供されています雇用促進住宅、またUR賃貸住宅など、独立行政法人が所管をする公的な住宅について、応急仮設住宅として扱われていないことを指摘してきました。

 本来、公的な住宅は、真っ先に被災者を受け入れて、そのためのいろいろな附帯設備も設置をする。夏場の暑いときにはエアコンなどは当然あってしかるべきものですし、冬場の寒いときには給湯器があってしかるべきであります。そういった対策をしっかりと公的住宅が最優先で行うべきであり、この雇用促進住宅やあるいはUR賃貸住宅について、応急仮設住宅として扱うことを求めてきたところであります。

 そこで、厚生労働省にお尋ねいたしますが、この被災者に提供されている雇用促進住宅やUR賃貸住宅について、応急仮設住宅としての借り上げの手続は今どのように対応されておられるのか、この点について確認をいたします。

森山政府参考人 お答え申し上げます。

 今、先生御指摘されましたように、被災者の方々に雇用促進住宅あるいはUR賃貸住宅を提供しているところでございますけれども、災害救助法上、救助の実施主体でございます都道府県等が雇用促進住宅あるいはUR賃貸住宅を借り上げて、災害救助法による応急仮設住宅として被災者の方々に提供した場合は、エアコン等の附帯設備等に係る費用について国庫負担の対象になるところでございます。

 このために、雇用促進住宅等を応急仮設住宅として借り上げていただくよう都道府県と協議を行ってきたところでございますけれども、従来の一戸ごとの個別の借り上げ方式では、都道府県の事務処理が膨大になること等から今進んでいないところでございます。

 このようなことから、借り上げ手続の事務処理を大幅に簡素化するために、当該住戸を一括して借り上げることで協議を進めまして、今般、岩手県、宮城県、福島県との間で、被災県による借り上げが行われる方向で合意がなされましたことから、厚生労働省としましては、当該借り上げ手続について早急に進めてまいりたいと考えているところでございます。

塩川分科員 一括借り上げという形で借り上げ住宅の扱いをするというお話がありました。

 雇用促進住宅ですけれども、UR賃貸もどうなんでしょうか。

井上政府参考人 お答え申し上げます。

 被災者向けに提供していますUR賃貸住宅の入居戸数は、二月の二十四日段階で五百四十八戸でございます。これらにつきまして、ことしの三月三十一日までURが無償で御提供する旨、昨年の八月に居住者の方々にお知らせをしました。

 また、応急仮設住宅としての借り上げについて、国交省及びURにおいて、被災者の避難先の地方公共団体との間で協議を行ってまいりました。これによりまして、現在、借り上げが実施されているのは、三県四市で八十一戸でございます。

 厚労省から、被災県による借り上げも可能だという見解も示されたことを受けまして、厚労省を通じまして被災三県と要請をしてまいりました。これを受けて、今般、被災三県から、借り上げる旨の合意がなされまして、UR賃貸住宅の被災県による借り上げが行われる方向になったところでございます。

 以上でございます。

塩川分科員 今まで借り上げの扱いとなっていなかった雇用促進住宅及びUR賃貸住宅が、一括借り上げという形で災害救助法上の応急仮設住宅として扱われるという対応だということであります。この間、被災県と厚生労働省など関係機関が協議をした。そういう結果として、いわば一括借り上げという形で行われることになったことは、非常に重要であります。ただ、遅過ぎるという問題があります。

 そこで、雇用促進住宅の件についてお尋ねしますが、被災者が入居をしている雇用促進住宅が応急仮設住宅となった場合に、かつての雇用・能力開発機構、今、高齢・障害・求職者雇用支援機構にとって何が変わり、何よりも、入居している被災者の皆さんにとって何が変わるのか、この点についてお答えいただけますか。

森山政府参考人 お答えいたします。

 都道府県が雇用促進住宅を借り上げて応急仮設住宅となった場合には、まず、高齢・障害・求職者雇用支援機構におきましては、設置費用の求償は可能になります。

 また、被災者におきましては、エアコンなどの附帯設備、これが無償で設備されることになりますので、応急仮設住宅と同様の支援が受けられることになります。

塩川分科員 機構とすれば、附帯設備の設置費用を求償できるということになる。あわせて、被災者にとってみれば、エアコン等の設備が無償で提供されるということですけれども、実際に、もう既に暑い夏も通り過ぎているわけであります。

 雇用促進住宅に入居した被災者の方は、夏の暑いときに、仮設住宅であればエアコンはあったんです、借り上げの場合も含めて。それなのに、雇用促進住宅に入ったがために、エアコンが設置されない中で住まざるを得なかった。そのために、自腹を切ってエアコンを設置したという人もありました。その後、雇用促進住宅としてエアコン設置というふうに動きましたけれども、では、立てかえ払いをした人にその分払ってくれるのかといったら、そうはならないままで、自腹を切ったままだと。

 冬の寒いときに給湯器もなかった。それについて、寒い中での洗い物も大変だからということで、結局、自腹で給湯器を設置した。その後、雇用促進住宅としても給湯器を設置すると動きましたけれども、では、払った分を立てかえてくれるんですかといったら、そうはならなかった。これでは何にもいいことがないという話にもなるわけであります。

 あわせて、UR賃貸についても同様の点を確認したいんですが、よろしくお願いします。

井上政府参考人 お答え申し上げます。

 基本的に、UR賃貸住宅についても同様でございます。URにおきましては、家賃等の求償が可能になるということになると思います。

 また、被災者の方々にとりましては、応急仮設住宅と同様の支援を受けるということで、家賃負担の免除の継続、それからURの場合は、給湯器等は、これは団地によっても異なりますけれども、基本的にはついていると思いますが、エアコンについては設置が可能になるということでございます。

塩川分科員 雇用促進住宅は遅きに失しましたけれども、後からエアコンとか給湯器をつけましたが、UR賃貸の場合はエアコンはつけてないんですよ。ですから、自腹を切ってつけた人以外は、いまだに被災者の方はエアコンがないままですから、応急仮設住宅となれば、この暑い夏に向けては、当然のことながらエアコン設置ということになるわけで、しかし、一年間放置してきたということ自身が問題だということであります。

 こういった、本来、応急仮設住宅であれば標準装備されている附帯設備が、雇用促進住宅にもUR賃貸にも設置をされていなかったという点で借り上げの要望というのがあったわけですが、実際にはその対応が遅きに失した。もう一年ですからね。なぜこんなに遅かったのか。この点について、ぜひお聞きしたいのですが。

小宮山国務大臣 なるべく迅速に対応という形はとりたいと思っているんですけれども、いろいろな制度ですとか各省間のこととかいろいろなことがあって、当事者の方にとっては遅い対応というお叱りをいただいていますが、御要望いただいたことが調整がつき次第、なるべく早くやりたいという気持ちではやっております。

塩川分科員 この間、ずっとやりとりを見てきて、被災県の方も大変ですよね。受け入れる県の方も大変なんです。その事務処理にやはり大変に大きな手間がかかるということで、この雇用促進やURというのは国がやっているんだから、国が仮設と同様に扱ってほしい、被災県や受け入れ県の手間はとらせないでくれというのがもともとの趣旨だったわけで、私は、この点で、災害救助法の仕組みそのものに見直しが必要なんじゃないのかというのがこの間、実感をしているところであります。

 災害救助法は、被災自治体が被災住民の救助を行い、国が被災自治体を支援するという仕組みですけれども、しかし、自治体が丸ごと被災をする、自治体の丸ごと避難のような広域災害、広域避難では通用しないわけで、この間、民間借り上げの話をずっと国会でやりとりもしてきて、実際に民間借り上げを実施しようと思っても、受け入れた自治体による被災者支援については、被災県からの要請を受けるということが前提にあるわけですね。どうしても要請待ちになるから一歩出おくれるということにもなりますし、また、要請がない限りは踏み出せないということにもなります。

 あわせて、その受け入れ県としても予算措置が必要になってくるんですよ。補正を組むという話になるんですね。そうすると、その補正の時期ということでまたさらにおくれるということもあって、二重三重にこの対応がおくれざるを得ないというのが今の災害救助法の仕組みとなっている。

 この点で、広域災害、広域避難についてふさわしい措置というのが求められているということで、これは既に福島県が昨年の四月三日の要望書でも出されております。「全国的な広域応援や被災者受入れが全国に広がっている状況を踏まえ、災害救助費用については、応援自治体が被災自治体に求償するのではなく、応援自治体が国に直接請求する仕組みとすること。」を国に求めております。

 大臣、こういった求償制度の見直しを求める要望をどのように受けとめておられますか。

小宮山国務大臣 今の仕組みは、委員が御指摘いただいたように、受け入れ県から被災県に求償する仕組みになっていますが、今回、その事務的な手続も大変ということで、東日本大震災に際しては、その求償事務を厚生労働省が代行しています。

 ただ、直接やるとなると、今度、被災県が、みずからの県民に対するつながりが薄れる、県民の皆さんもやはり自分の県とのつながりを持ちたいということもあるということも、今福島からの要望をおっしゃいましたけれども、福島の方も、そういう言い方をされている方もあるんですね。

 ですから、今後どうするかにつきましては、今、防災対策推進検討会議で、やはり一番必要なのは基礎自治体がいろいろなことをできることじゃないかということも含めて検討していますので、これからのあり方については、また関係者の皆さんや有識者の皆さんの御意見も伺いながら検討していきたいというふうに考えます。

塩川分科員 全国知事会の要望も七月で出されているわけであります。その点では同趣旨であるわけで、「被災地以外の自治体が救助に要する費用を支弁した場合、直接、国に請求し、支払いされるよう制度変更を行うこと。」

 だから、被災者の把握をその避難元の自治体がしっかりやりたいというのは当然の思いであって、それに応えるような事務手続はしっかりやる。同時に、現に避難をされている方々を受け入れている自治体にとって、そういった避難者の方の支援をしっかりやれる。

 これをつくってこそ、まさに避難元の自治体の皆さんにとっても、自分たちの住民の方の避難先での生活が保障されるということですから、そういう点でも、今言った直接求償できる仕組みというのをやはりもう一歩踏み込んで考えるべきで、防災対策推進検討会議での検討といっても、どの程度のものなのかということも率直に思っているんですが、求償制度の見直しを含めて、踏み込んだ対応をぜひ出していただきたい。

 この点について改めてお聞きいたします。

小宮山国務大臣 これは、私もこの検討会議のメンバーですので、今の委員のような御指摘もいただいておりますから、そうしたことも含めて、私の方からも問題提起もしたいと思います。

塩川分科員 ぜひ、こういう方向で、新たな広域災害が起こった場合に迅速に対応できる、そういう仕組みこそ必要だということでの対応方を要請しておきます。

 次に、雇用促進住宅に入居されている避難者の方々からは、入居期間の延長というのが強い要望となっております。雇用促進住宅に入居している避難者は、入居の期限が入居から原則二年というお話で、来年の四月だったら四月、五月だったら五月という時期になっているわけです。

 この雇用促進住宅についての譲渡、廃止をめぐる経緯というのがあるわけですけれども、これについて、簡単にで結構ですから、説明していただけますか。

森山政府参考人 雇用促進住宅につきましては、平成十九年の規制改革推進のための三カ年計画の閣議決定によりまして、平成三十三年度までに譲渡、廃止が完了するということにされているところでございます。

 それで、今先生ちょっとお話しになりました、入居者の関係、退去期限の関係でございますけれども、このために、平成二十年十月より入居者説明会を開催いたしまして、順次入居者の退去を求めていくこととしていましたけれども、リーマン・ショックの影響によりまして、平成二十年末に、解雇等に伴い住居を喪失した求職者に対して雇用促進住宅を活用することとしたために、平成二十一年一月以降の退去を求める入居者説明会は中止いたしました。

 また、既存の入居者の退去が同時に行われることのないように、二十一年四月以降、少なくとも三年間は退去促進の取り組みを延期することとしておりました。

 さらにまた、今回の東日本大震災の被災者に対しまして、平成二十五年三月末まで提供することとしたことに伴いまして、退去促進の取り組みも一年間、ですから二十五年の三月末まで延期することとしているところでございます。

塩川分科員 今お話がありましたように、廃止決定をされた雇用促進住宅があります。そこでの退去手続の開始というのは、当初平成二十一年の四月だったのが、派遣切りなどの住居を失った方々への住居提供ということで二十四年三月末まで延び、さらに東日本大震災の被災者を受け入れるということで、二十五年三月末まで退去手続を実施しないということになりました。これは廃止決定住宅との関係でありますけれども。

 この上で、現在の雇用促進住宅への入居戸数が幾つか、それから、そのうち、緊急一時入居戸数、いわゆる派遣切りなどで住居を失った方たちの数は幾つか、及び東日本大震災に係る被災入居の戸数は幾つか、この数字を教えてください。

森山政府参考人 お答えいたします。

 雇用促進住宅における平成二十四年一月三十一日現在の入居状況でございますけれども、入居総数は六万六千五百九戸でございます。そのうち、今先生おっしゃいました、いわゆる解雇等の緊急一時入居戸数、これは四千百四十六戸、そして被災者の方々、被災入居戸数が五千三十一戸というふうになってございます。

塩川分科員 派遣切りなどの方が四千世帯ぐらいあって、被災者、避難者の方が、五千戸を上回る方たちが入居されておられます。全体の数にしても大きな割合を占めるのが、雇用促進住宅へのこれらの入居者の方となっています。

 先ほど言いましたように、特に被災者、避難者の方の一番の不安は、廃止決定の住宅であれば来年三月末までという期限であり、あわせて、その他の方も二年間ということでの期限というのが示されているわけで、こういった雇用促進住宅への被災者の方の入居期間について、もっと延ばしてほしいという要望にはどのように対応されるんでしょうか。お答えいただけますか。

小宮山国務大臣 御指摘のように、二年間は原則無償で貸与をする、入居期限は来年三月の末までというふうになっているわけですけれども、これは、仮設住宅の状況ですとか、それから復興住宅の状況とかを見なければなりませんし、やはり被災自治体のお考えもあるかと思いますので、いろいろな状況を聞いて、しっかりとその状況を踏まえた上で検討をしていきたいというふうに思っています。そこでただ期日が来たから切りますという話にはならないようにしていきたいと思います。

塩川分科員 期日が来たから切るという対応じゃないという話でありました。

 その点で、今お話にもありましたように、被災自治体などの考えなど十分踏まえてということで、さきの福島の県議会でも、県の答弁として、民間借り上げ住宅の入居期間については、災害救助法に基づき、契約日から二年間とされているが、本県の実情を踏まえ、期間の延長を国に要望している、県外の借り上げ住宅の期間の延長について、国に要望していきたいと述べておられます。

 こういうのをしっかりと踏まえるということでよろしいでしょうか。確認で。

小宮山国務大臣 被災自治体のお考えはしっかりと受けとめていきたいと思います。

塩川分科員 それと、復興住宅の建設状況という話もございました。

 これは、岩手や宮城などでの災害公営住宅、復興住宅の建設計画などが大分進んでいる。今度の復興交付金でもそういった事業計画がかなり出されているわけですけれども、福島県の場合はなかなかそこまで至っていないという状況ということで、区域の再編が三月末で行われるということを踏まえて、実際に、では、公営住宅、復興住宅はどうしようか、県としてこの被災市町村の要望などの取りまとめも行うという話を聞いております。

 もちろん、相馬市でしたか、先になされているようなところもありますが、津波被害のところなどでの対応ということで、原発事故の関係でいえば、多くの自治体が対応はこれからということでいっても、やはり、来年ということでは、とても受け皿の公営住宅すらままならないというのははっきりしている状況ですよね。であれば、被災者、避難者の方に、来年三月、四月とか言いません、受け皿ができるまで、こういった公営住宅など、しっかりと住宅の復興状況が整わない限り、ずっと住んでいてもいいですよ、こういうメッセージこそ必要なんじゃないでしょうか。

小宮山国務大臣 ずっと無期限にというのがどうかというのはありますけれども、それはやはり、岩手、宮城とまた福島が違う事情だということは十分わかっておりますので、そういう意味では、福島の方のそれぞれの被災自治体、そこでの住民の皆さんのお考えになるべく沿う形で、どこの段階でそれが言えるかというのはまた検討させていただきたいと思いますけれども、もう来年三月でだめだという不安を抱きながらお住まいになることがないように、可能な限りの対応をしたいというふうには思います。

塩川分科員 こういった被災者、避難者が安心してもとに戻れるまでの期間、しっかり入居を保証するという姿勢で臨んでいくことが必要だと思います。

 そこで、お尋ねしたいのが、先ほど言った雇用促進住宅の、廃止決定の住宅の問題があります。もちろん、廃止決定の住宅にお住まいの福島などからの被災者、避難者の方を、環境も整わないのに追い出すということはしないというお話であります。であれば、当然のことながら、この廃止決定住宅に入居をしている派遣切りなどでお住まいの方々や、また、既存の、これまでお住まいになっていた方々についても、当然、追い出すということはしないということになると思うんですが、そういうことでよろしいですか。

森山政府参考人 先ほど申し上げましたように、この退去期間につきましては、いろいろな事情を考慮しながら今まで延ばしてきているところでございます。

 先ほど申し上げましたように、最初三年間であったものを、今度、東日本の震災等を踏まえまして、また一年間延ばす、そういうことでやっているところでございまして、今後とも、こういう雇用の状況、それからまた、被災者につきましては、先ほどのいろいろな住宅の状況等を踏まえまして、また対応してまいりたいと考えているところでございます。

塩川分科員 その点をはっきり答えてほしいのは、要するに、今言ったように、廃止決定の雇用促進住宅に入居している福島などからの避難者の方々が、戻れる状況にありません、つまり、退去する状況にありませんということで、その期限が延びた場合に、当然のことながら、その廃止決定の雇用促進住宅にお住まいの方々についても、退去ということを求めることはしませんよねという問いなんですが、それでオーケーということでいいですか。

森山政府参考人 全体的には、先ほど言いました閣議決定で、三十三年度までに雇用促進住宅を廃止、そして譲渡をしていくということでございまして、その間につきましては、先ほど大臣の方からお答えいただきましたように、いろいろな状況を踏まえまして、その退去期間につきましては、今後ともまた考えていくということでございます。

塩川分科員 ですから、大臣がお答えになったように、期限が来たからといってむげに追い出すということじゃないよという話ですから、そのことをとれば、同じ住宅に住んでいる方々についても、当然のことながら、追い出すという話にはならないでしょうということなんですが。

小宮山国務大臣 それは、リーマン・ショックなどがあって、その閣議決定を延ばして今やっているところですが、そこに対しても、もちろん困られないような対応は必要ですけれども、それは福島から避難されている方の場合とはまたちょっと違うと思いますよ、そこは。もちろん、その方たちが困られないようにすることは、また考えなきゃいけない。すぐやらないと言っているんじゃありません。ただ、ケースが違いますので、それぞれに検討させていただくということだというふうに思っています。

塩川分科員 いや、もともと、派遣切りなどで住まいを失った方々が入居されてからは、三年間というので延長しました。それが平成二十四年の三月末だったものを、さらにそこに加えて、東日本大震災が発災をして、二十五年の三月末まで延長するということですから、そういう意味では、そもそも、派遣切りなどの入居の方々について言えば、経済状況あるいはその後の雇用失業状況を勘案してということではなく、今の状況でいえば、東日本大震災での被災者の受け入れということで期限を切っているわけです。

 だとしたら、その期限の延長ということであれば、今お話しになったような、派遣切りなどの方々について、事情は違うというのではなくて、そもそも、受け皿としての雇用促進住宅は引き続き入居を続けるということですから、追い出すという話には当然ならないですよねということなんですが。

小宮山国務大臣 派遣切りの方などに対しては、また求職者支援制度とかいろいろな制度を使って、なるべくまたきちんと自立して労働ができるようにということを、最善の努力をさせていただきますので、そういう状況もいろいろ見ながらということと、また、戻れない福島の場合とはケースが違うでしょうということを申し上げているので、それぞれにきちんと対応をさせていただきたいと思っています。

塩川分科員 いや、廃止決定をした雇用促進住宅にもともと入居されている方がいるわけですよね。これは、機構の立場でいっても、入居されている方について、当然のことながら、入っている以上は一定の環境も整えるわけで、いろいろな意味での家賃収入などが以前から住んでいる方などから得られるのであれば、避難者、被災者の方が入居している住宅そのものを残す以上は、家賃収入などが見込めるような人たちをそのまま置いておくというのは矛盾がないことなんじゃないのかなというふうに考えているわけです。

 そういう点でも、もう一回戻りますけれども、改めて、こういった被災者、避難者のために廃止決定の雇用促進住宅について入居期間を延長するのであれば、実際にそこに残っている方々の期限の延長ということについても、ぜひ前向きに対応を考えていただきたいと思うんですが、いかがですか。

小宮山国務大臣 繰り返しになりますが、それは、それぞれそこにお住まいの事情が違いますので、そのそれぞれの事情の中で、入っていらっしゃる方が困られないような対応をさせていただきたいと思っています。

塩川分科員 こういう議論をするというのも、そもそも、閣議決定で、前倒しで雇用促進住宅を廃止するというのが大もとにあるわけですよね。七百八十四の住宅については廃止決定をしたというのが、それこそ前倒しで性急に行われたことに対して、入居された方々からは、それは困るという声が上がった。

 それが、実際には、リーマン・ショックなどを機に、延長という形で実質的には居住が確保されるということになったわけですけれども、こういったハウジングレスのような方々に対して住居を提供するというのは、そもそもの雇用促進住宅の趣旨からいってもかなったものであるわけで、私は、こういった七百八十四の住宅の廃止決定をした閣議決定そのものを見直すべきだ、このことを、担当の厚生労働大臣からぜひ対応していただきたいと思うんですが、この点、いかがでしょうか。

笹木主査 時間が来ておりますので、簡潔に。

小宮山国務大臣 それはやはり、閣議決定は閣議決定でございますので、その後、実際にそこに入っていらっしゃる方の実情を勘案して今の措置をとらせていただいていますので、先ほどから繰り返しになりますが、それぞれの事情の中で、入っていらっしゃる方の身になって対応するということだというふうに考えています。

塩川分科員 ありがとうございました。

笹木主査 これにて塩川鉄也君の質疑は終了いたしました。

 次に、江田康幸君。

江田(康)分科員 大臣、御苦労さまでございます。

 本日は、私の方からは、HTLV1の総合対策とアレルギー疾患対策等について質問をさせていただきます。

 まず、私も参加しました官邸の特命チームで決定したHTLV1総合対策について質問をさせていただきます。

 大臣、HTLV1という白血病ウイルスを御存じでしょうか。このウイルスは、血液のがんである成人T細胞白血病、ATLや、神経難病である脊髄疾患、HAMを引き起こします。これらの病気は、私の地元の九州、沖縄に多いんです。風土病と言われて、差別また偏見も生んできたウイルスであります。

 国内の感染者は百万人以上、その数は、大臣御存じのように、B型、C型肝炎にも匹敵するものであります。ATLでは年間一千人以上が命を落とされているし、またHAMの患者さんは、激痛や両足麻痺、また排尿障害等に苦しんでおられます。一度感染すると体外に排除することができないウイルスなんですね。いまだに根本治療はありません。

 主な感染経路でありますけれども、これは母乳を介して母親から子供に感染する母子間感染と、性交渉による感染で、その六割以上を母子感染が占めています。

 このウイルスの悲惨さでありますけれども、これは発症するまで四十年以上かかります。ですから、母親は自分が感染しているとは知らずに、赤ちゃんを母乳で育てて、そして数十年後に自分が発症して初めて、我が子に感染させたのは自分であったと気づくことであります。このときの母親の苦悩というのは、言葉では言いあらわせません。子供に感染させてしまったと一生後悔していかなければならないわけであります。

 患者の多い長崎県では、二十年前から妊婦健診時に公費による抗体検査を導入して、陽性が判明した妊婦の方には、赤ちゃんを母乳でなくて人工乳で育てていただく、これで母子感染を予防してきたんですね。これで感染率は二〇%から二%まで低くなっているわけであります。

 にもかかわらず、当時の厚生労働省は、九州、沖縄に多い風土病であり自然に減少する、全国一律の検査や対策は必要ないとして、二十年間も自治体任せにしてまいりました。その結果、HTLV1は、関東を初め全国に拡大したと思われるわけであります。これは国の重大な判断ミスではないですか。

 私は、七年前からこの問題を取り上げました。患者団体と二人三脚で、HAMの難病認定とともに、全国一律の妊婦の抗体検査を初めとする総合対策が重要だということを、再三にわたって国会質問や大臣申し入れで政府の見解をただしてきたわけであります。しかし、厚生労働省の姿勢は消極的でございまして、ようやく、今回の特命チームの政治判断で初めて、全国的な母子感染予防対策を初めとするHTLV1総合対策の実施を決定したわけです。

 そこで、大臣に質問をいたします。

 この二十年間に母子感染した赤ちゃんは何人いるかわかりますか。また、母子感染対策をやっていたら、何人の赤ちゃんが感染せずに済んだかわかりますでしょうか。さらに、何人がATLやHAMにならなくて済んだかわかりますでしょうか。大臣、お答えいただきたいと思います。

 あわせて、菅総理は、この特命チームの初会合で、二十年前にATLやHTLV1を一部地域の風土病と位置づけて、地方に対策を委ねたことについて、防げたかもしれない感染が広がった、過去の失敗や間違いがあったと認められました。

 なぜ、大臣、厚生労働省は二十年以上にわたって全国的な感染防止対策をとってこなかったのか、残念であります。その責任をどのように受けとめておられるのか。さらに、今回の特命チームの決定を踏まえて、今後どのように対応する決意か、大臣にお伺いをいたします。

小宮山国務大臣 それは、菅元総理も、対応がおくれたことは申しわけないという趣旨のことを申し上げたのかと思いますけれども、私からもやはり、厚生労働省が、地域の風土病ということで地域に任せて、国として対応をとらなかった、対応が非常に遅かったということは大変申しわけないことだったというふうに思っています。

 お尋ねの件ですが、最近二十年間で、十代後半のHTLV1感染率は減少傾向にありまして、若年キャリア、五十歳未満ですけれども、ここは母子感染の予防や性感染の予防ということが一定の効果を上げているというふうに考えています。

 ただ、この間に、全国的な対策を講じることで防ぐことができた母子感染やATLの感染人数につきましては、妊婦の感染状況ですとか母子感染対策の状況について、各地域のデータがないこと、また、栄養法の違いによる母子感染予防対策の効果の違いがわかっていないことなどから、お尋ねの数をお答えするということは難しいというふうに考えています。

 そして、最後におっしゃいました、昨年度に官邸特命チームが取りまとめたHTLV1総合対策を踏まえまして、妊婦健康診査でのHTLV1の抗体検査の実施ですとか、都道府県のHTLV1母子感染事業を確実に実施していくということはお約束をしたいと思います。

江田(康)分科員 そういう意味で、このHTLV1の総合対策というのが大変重要になってくるわけであります。この苦しみを次の世代に残しては絶対になりません。

 このHTLV1の感染の六割以上は母乳による母子感染でありまして、人工乳によって赤ちゃんへの感染を防止できるものでありますから、公費による全国一律の妊婦健診でHTLV1抗体検査を実施して、その結果に基づいて適切な保健指導、またカウンセリングを行うことを特命チームでは決定したわけであります。これによって、全国の自治体で妊婦健診による抗体検査が始まりました。各自治体における抗体検査の実施がどこまで進んでいるのか、お聞きをいたします。

 また、長崎県における長年の取り組みから立証されますように、都道府県にHTLV1母子感染対策協議会が設置されました。効果的な母子感染予防対策が講じられることになりますが、現在、この協議会の設置がどこまで進んでいるのか、あわせてお聞きします。

 さらに、医療関係者がHTLV1に関する正しい知識を身につける必要があります。医師の間でもHTLV1感染症のことが知られていない現状が実はあるんです。この告知やカウンセリング技術もまた大事になってきます。したがって、産婦人科医や小児科医を初めとして、看護師、保健師など医療関係者へのHTLV1感染症に関する専門的な教育やカウンセリング研修が必須であります。母子感染予防に関する相談の手引やマニュアルの作成と周知徹底も必要となってきますが、これらの対応についてどのように進めているのか、お聞きをいたします。

 さらに、感染を告知された母親はさまざまな悩みを抱えます。相談対応のまずさによる医療機関への不信、また母乳を与えないことへの罪悪感、家族の無理解、子供に感染させてしまった自責の念、自分が発症するかもしれないという不安。こういった悩みに対して十分に応えられる相談体制、母子感染相談窓口を全国に整備しなければならないということも主張してまいりましたが、これらについても、現在どこまで進めようとしているのか、お答えをいただきたいと思います。

藤田大臣政務官 対策の現状について御質問をいただきました。

 HTLV1母子感染対策事業に今年度中に取り組む都道府県の数は、平成二十三年十一月一日時点で、まず、母子感染対策協議会については三十三、母子感染関係者研修事業については四十二、母子感染普及啓発については三十九となっております。また、平成二十三年四月一日時点で、検査項目を受診券に明示する全ての市区町村でHTLV1抗体検査を実施してきたところでございます。

 それから、厚生労働省の取り組みでございますけれども、昨年度、相談体制の充実のために、母子感染予防の医師向けマニュアル、母子感染予防の保健指導マニュアル、HTLV1感染者の相談対応のマニュアル、こうしたものを作成いたしまして、自治体や医療機関に配付をし、内容の普及啓発、相談支援の充実のための研修を行ってきたところでございます。

 そして、HTLV1感染者や、ATLやHAMの患者さん、母子感染の相談対応窓口についてでございますけれども、これは平成二十三年五月三十一日時点で、全国千三百八十七カ所に整備をされたところでございます。

 今後とも引き続き対策の充実に努めてまいりたい、このように考えております。

江田(康)分科員 その体制が着実に進んでいるということであろうかと思っております。

 またもう一つ、私がお聞きしなければならないのは、大臣にお聞きいたします。

 HTLV1を撲滅していく、そのためには、患者、家族を初めとして、国民がこの病気を正しく理解していくことが大変重要になってまいります。全国で全妊婦の抗体検査を実施する場合、最大の課題は、実は、検査で感染が判明した母乳制限を、家族で受け入れられるかどうかであります。母親自身はもちろん、夫やしゅうととの関係もございます。また、母乳のすばらしさが浸透している中で、長崎のようにATLがある程度認知されている地域ですら、その心理負担は深刻でありまして、医者や看護師さえも不十分な認識のところでは、混乱が起きるかもしれないわけであります。

 また、九州、沖縄に限定された風土病と言われて、母子感染で感染することから、家系や離島などの閉鎖的社会で引き継がれて、さまざまな偏見や差別を生んできたことも事実であります。差別や偏見を恐れて声を上げることができなかったというのは、ハンセン病や水俣病とよく似ていると私は思います。さらに、職場や地域においても、エイズや肝炎の場合と同じように、いわれなき偏見や差別を受けて、退職せざるを得ない事例もあります。

 HTLV1を撲滅していくためには、風土病ではなくて、これは感染症なんだ、そして日常の生活では感染はしないということなど、家族、患者を初め、国民が正しく理解していくことが欠かせないと思います。

 HTLV1総合対策においては、この件について、患者、家族や妊婦に対する情報提供とともに、国民への正しい知識の普及を図るということを盛り込んだわけでありますが、並大抵のことでは国民の意識を変えることはできないと私は思います。二十年以上も放置してきたわけでありますから、国が前面に出て、効果的、継続的な普及啓発を図るべきと主張したい。メディア等も使った積極的な情報発信も検討して、患者団体やボランティアによるシンポジウムなどの広報活動も支援していくべきであると考えますけれども、いかがでしょうか。

小宮山国務大臣 この問題にずっと取り組んでこられた委員からの積極的な御提言、しっかりと受けとめさせていただきたいと思います。

 やはり、おっしゃるように、国民の正しい知識がないと、患者の皆さんとかが非常につらい思いをされるということは本当に事実だと思いますので、何とか正しい知識を普及するために、最新の医療情報などを提供するための、厚生労働省のホームページにHTLV1ポータルサイトを設置いたしまして、いろいろな情報ですとか相談先の窓口とか、かなりきめ細かにそこのところで情報提供をしているということ。

 それからまた、パソコンをお使いになられる方ばかりではございませんので、HTLV1の抗体検査の普及啓発のためのポスターですとか、あるいは妊婦さん向けのリーフレットを作成して配付すること、また、四月から、いろいろな御提言を御党からもいただいて、母子健康手帳を新しい様式にしましたけれども、その中にもHTLV1抗体検査の記録欄を設けるというようなこともしています。

 引き続き、おっしゃるように、患者団体の皆さんあるいはNPOの皆さん、いろいろな御協力もいただいたシンポジウムとかメディアなども最大限活用して、御意見もまたしっかりといただきたいと思っていますが、積極的な広報活動に努めていきたいと思います。

江田(康)分科員 大臣、ありがとうございました。

 さらに私が質問をしなければならないことは、研究開発の推進でございます。

 この治療法の研究開発の推進というのは、感染予防対策とともに、HTLV1総合対策の重要な二本柱であります。患者の皆さんは、画期的な新薬、治療薬の開発を強く望んでおられます。また、抗体検査の実施とともに、ATLやHAMの発症予防法や治療法が開発されなければ、多くの感染者が検査をためらうことになって、感染を潜伏させてしまうことになり、HTLV1の撲滅はできないわけであります。

 今こそ、国を挙げてHTLV1の研究開発を大きく進めるべきであり、そのためには、エイズや肝炎対策と同じ規模で研究開発体制を整えていくんだということを強く主張してまいりました。

 このHTLV1総合対策においては、これを受けて、HTLV1関連疾患研究領域を設け、そして、研究費を大幅に拡充するとされました。本年度予算として、これまでの五倍の十億円が計上されたわけであります。

 また、治療法、薬の研究開発を効果的、戦略的に進めるための総括的な班会議も設置をいたしました。

 そこで、この二十三年度に採択された研究テーマの戦略性についても伺いたいと思うんです。

 今回の研究テーマでは、HTLV1感染症、ATL分野に比べて、HAMの研究が少ないような実感もいたします。総括的なこの班会議による戦略的研究というものがどのようになされたのか、また、今後どのようにそれを図っていくつもりなのか、厚生労働省の見解をお伺いいたします。

藤田大臣政務官 ただいま委員の方からお話がございましたように、来年度の予算では十億円を計上いたしまして、戦略的に研究を進めていかなければいけない、このように認識をいたしているところでございます。

 そして、研究班の合同班会議というものも開催をいたしまして、研究の進捗状況の共有などを現在行っているところでございます。

 また、新たな研究課題の設定に当たっては、この合同班の会議での討論を踏まえまして、また、有識者の御意見も伺いながら、ATLやHAMに対する新規治療法の開発のため、有望な治療法に関する臨床研究を積極的に進めるとともに、新たな発想での研究を奨励するための若手育成型の公募を積極的に行っていこうということで、研究を戦略的に推進していく努力をしているところでございます。

 今後とも、治療法の開発を目指して、合同班会議などを活用しながら進めてまいりたい、このように考えております。

江田(康)分科員 きょうは時間が制限されておりますので、ここまででありますけれども、我々が決定したHTLV1総合対策、この実現に向けて、厚生労働省は邁進してもらいたいと思います。大臣、その先頭でリーダーシップを発揮していただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 次に、私は、アレルギー対策について質問をさせていただきたいと思います。

 花粉症は、今から多くなってまいります。アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、何らかのアレルギー疾患に悩む人は、今や国民の三分の一を超えて、国民病とも言われております。特に食物アレルギーでございますが、これは増加の一途を子供たちの間ではたどっていて、重症化するとアナフィラキシーというショック症状を起こして、命に重大な危険を及ぼします。

 昨年九月、この食物アレルギーなどによるアナフィラキシーショックを和らげるアドレナリン自己注射薬、エピペンの保険適用が実現いたしました。エピペンは、患者が太ももに押し当てるだけで薬が投与されて、命を脅かすアナフィラキシーショックから解放されます。しかし、これまでのエピペンは、一本一万円以上なんですね。そういう高額さ、また有効期限も短かった、こういうことから、処方をためらう保護者がおりました。家庭の経済的負担の重さがずっと問題だったわけです。

 公明党は、この問題を取り上げて、国会質問や再三にわたる厚生労働省との協議を進めさせていただきましたが、この保険適用の必要性を強く訴えてまいりました。今般、ようやくエピペンの保険適用が実現して、患者、家族の負担が軽減をされました。

 このように、今、アレルギー疾患を持つ子供たちがふえています。こうした子供たちが安心して快適に学校生活を送れるようにとの公明党の主張を受けて、平成二十年四月には、学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン、これが全国の公立学校に配付されました。大変画期的で、内容も充実したものと高く評価をしております。

 一方で、子供が幼児期を過ごすのは学校や幼稚園だけではありません。やはり保育所もありますことから、公明党は、この保育所版をつくるべきだと申し上げてまいりました。昨年三月、これは、保育所におけるアレルギー対応ガイドラインということで完成し、全国の保育所に配付されることになりました。

 そこで、質問をさせていただきます。

 まず、文部科学省、学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドラインを配付したときに起こった問題について、質問をいたします。

 このガイドラインは、食物アレルギーのアナフィラキシーショックを持つ子供に対して、先ほどのエピペンをできるだけ早期に注射することが効果的だと書かれております。そして、そのアナフィラキシーの救急の現場に居合わせた教職員が、自分では注射できない児童生徒にかわって注射することは、医師法違反にも、そのほかの民事、刑事責任も問われないと明記されているわけであります。

 これまで、多くの学校では、教職員はエピペンを打てないと言われておりました。目の前でアナフィラキシーショックを起こして、自分でエピペンを打てなくてそのまま死に至る、こういう子供たちを見ても教職員は手を出せない、こういうふうに考えられていたわけですけれども、今回のこのガイドラインによって、これで子供たちは教職員の人たちにも打ってもらえる、支えてもらえると親は大変安心したわけであります。

 ところが、これを受け取ったある県では、ガイドラインにきちんとした定義がない、教員の責任は問われないものと考えられるとの表現は曖昧過ぎる、これでは県は動けないという声もあったと聞きます。また、一昨年、福岡市内で、小学校に入学するエピペンを持った児童が、校長から養護学校に行ってほしいと言われて、親が大変困った事例もありました。等々でありますけれども、まず、文科省にお聞きしたい。

 このように、ガイドラインの趣旨を全く理解していない事例が起こっております。これらの事例に対して文科省はどのような対応をしてきたのか、また同意書が要るのか、ガイドラインで書かれた責任を問われないというのは何を意味しているか、ここではっきりとお答えしていただきたいと思います。

 アナフィラキシーを起こした子供が目の前で苦しんでいるときに、教職員はエピペンを打たなくていいのか、打つべきなのか、はっきりと明確にして、周知徹底をされたのか、お聞きをいたします。

有松政府参考人 学校のアレルギー対策に関する御質問でございます。

 御指摘のとおり、アナフィラキシーショックによりまして生命が危険な状態にある児童生徒に対しまして、教職員が児童生徒にかわってエピペンを注射することにつきましては、人命救助の観点からやむを得ず行った行為であると認められる場合には、関係法令の規定によって責任が問われないものと考えられますことから、その旨は、先生御紹介いただきました、学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドラインに明記をしているところでございますし、また、それにつきまして、やや不明確だというような御指摘等も踏まえまして、その後、平成二十一年には、医師法違反に当たらないことについて厚生労働省にも御確認をいただき、その旨を再度通知したところでございます。

 また、このガイドラインにおきましては、児童生徒等のエピペンの携帯に当たりまして、同意書を作成するということは求めておりません。

 また、加えまして、QアンドAの対応といたしまして、財団法人の日本学校保健会のホームページにおきまして、具体的に、教職員がエピペンを使用するのは緊急時の対応なので、事前の依頼書ですとか同意書の作成は必要ないということを明記して解説をしているところでございます。

 こうしたことを周知徹底いたしますために、文部科学省におきましては、エピペンの打ち方についても、具体的に触れます教職員等を対象とした講習会をやっておりまして、今年度は全国六カ所、来年度でも六カ所、実施する予定でございます。

 今後とも周知の徹底を図ってまいりたいというふうに思っております。

江田(康)分科員 次に、厚生労働大臣にお聞きをいたします。

 保育所において同様の事例が起こる可能性はあるわけで、乳幼児の場合は、自分でエピペンを打てないことが多いわけです。幼稚園、また学校よりもそこは厳しいと思いますよ。このような学校における事例を参考に、文科省と連携して、保育所へのガイドラインの趣旨の周知徹底を図るべきだと思いますが、いかがでしょうか。

 また、この保育所ガイドラインは、自治体や保育団体に約三千冊配付されただけで、保育現場には届いていないという声もまだあるんです。自治体ごとにばらつきもあって、最近、東京都で、関係者を集めてエピペンの打ち方やタイミング、そして子供たちへの対応の研修会を開いて大変に好評だと伺っておりますが、こういう東京や神奈川などのように研修会を開いているところもあれば、冊子を配っただけのところもある。

 学校におけるアレルギー疾患ガイドラインのときと同じように、保育所への周知徹底が極めて重要でありますが、この件についていかがか、お伺いをさせていただきたいと思います。

 では、まず簡単にお答えください。

小宮山国務大臣 保育所のアレルギー対応ガイドラインの中でも、職員が緊急時にエピペンを本人にかわって注射することは医師法違反ではないということ、その場合には速やかに注射する必要があるということを明記していますので、この点は、また文部科学省とも連携をしながら、現場にとにかく趣旨を伝えていきたいというふうに思っています。

 それからまた、御党の御努力もあってつくらせていただいたこの保育所のガイドラインについては、確かに、研修会を多く行っているところとそうでない地域があることも承知をしていますので、今回、研修会の開催などで、自治体が行うことに対する経費を、二十三年度の四次補正で積み増し、延長した安心こども基金、これを活用できるということも含めて周知をして、全国的に行えるようにしていきたいと思います。

江田(康)分科員 ありがとうございます、大臣。

 最後に、アレルギー疾患対策基本法についてお伺いをしたいと思っております。

 今や国民の三人に一人が何らかのアレルギーに苦しんでいて、子供たちの間では急増している。また、この十年間、我々はこのアレルギー対策を大きく前進してまいりました。先ほど申されてきたようなことでございます。

 しかし、治療研究等も進む一方で、また、そういう個別の対策が進む一方で、地域においては、適切なアレルギー医療が受けられる体制がなかなか進められていないということであります。そのため、アレルギーは、適切な医療と生活環境の改善によって自己コントロールができる疾患であるにもかかわらず、情報が少ないために、どの医療機関にかかればよいのかわからず、間違った民間療法、アトピー商法とかさまざまありますが、そういうようなもので悪化している場合も多いんです。

 住んでいる地域にかかわらず、正しいアレルギー医療が受けられて、学校などあらゆる場面で生活の質を高める支援が受けられる総合的なアレルギー疾患対策を推進することが今まさに私は求められている。これが、公明党の十年間にわたるアレルギー対策における結論であります。このために、我々は今国会にアレルギー疾患対策基本法案を提出しております。

 全国どこでも適切な医療と相談が受けられる、また、アレルギー疾患の治療法や薬の研究開発を推進する、そういう総合的なアレルギー対策を整備することを基本理念としておりますが、この法案が成立することで、学校、社会教育などによってアレルギー疾患の理解が広がります。また、社会全体として対策を推進することが可能となります。

 大臣、今国会での法案の成立を図ってまいりたい、民主党の皆様方にもそのように申し上げたいと思いますが、このアレルギー疾患対策基本法に対する大臣の見解を伺いたいと思います。

小宮山国務大臣 厚生労働省では、平成二十三年八月のリウマチ・アレルギー対策委員会報告書、これを踏まえまして、「アレルギー疾患対策の方向性等」を都道府県に通知して、医療の提供、相談体制、研究開発などに総合的に対策を講じていただくようお願いをしています。

 基本法につきましては、御党が提出をされているということは承知をしていますので、これはぜひ国会の中で議論を進めていただければというふうに思います。

江田(康)分科員 大臣、ありがとうございました。

笹木主査 これにて江田康幸君の質疑は終了いたしました。

 次に、服部良一君。

服部分科員 社民党の服部良一です。

 どうも私が最後の質問のようですので、お疲れのことだとは思いますけれども、よろしくお願いをしたいと思います。

 今、税と社会保障の一体改革の議論になっているわけですけれども、私は、やはり再分配がきちんと機能しているのか、生活再建ということで政権交代もあったわけですけれども、貧困率が拡大していないのか、あるいは本当に国民の生活の格差が縮まる方向に向かっているのか、そこが非常に大きな関心事であるわけなんです。

 先日の民主党の西村議員あるいは私の予算委員会での議論の中で、子ども手当とか高校無償化等の施策によって、低所得者のいわゆる可処分所得というものは若干増加しているという御答弁もあったわけなんです。

 幾つかの類型に分けていろいろ試算をされているのはわかるんですが、私、先日の予算委員会でも言ったんですけれども、例えば、年収二百万の派遣労働者であるとか、あるいはシングルマザーとか、そういう家族構成、年齢、雇用形態などで、もっときめ細かに検証をする必要があるというふうに思うんですけれども、具体的なそういったきめ細かい検証というのはなされているんでしょうか。

小宮山国務大臣 先日も予算委員会で質疑をさせていただいて、再分配機能が今の税、社会保障の中で果たされていないという認識は私も同じように持っています。そのためには、おっしゃったような、類型別のデータというのもチェックする必要があると思いますけれども、今は細かく、一つ一つがとれるような形にはなっていないのではないかと思います。

 ただ、類型別に答えてほしいというお話があったので、今回、私どもは社会保障と税の一体改革という言い方をしておりますけれども、例えば単身の非正規労働者の場合に、消費税の負担額、消費税五%引き上げによって、負担額はおよそ五万円程度増加をするということが見込まれる。

 ただ一方で、一体改革を実施することによって、今行おうとしている短時間労働者に対する厚生年金、被用者保険の適用拡大によって、例えば年額八・二万円程度の年金保険料の軽減が期待をされ、将来の年金額の増加も期待をされるということ。

 また、被用者保険に入れない方については、国民健康保険の保険料軽減等の拡充、これは二千二百億円程度を使いたいと思っていますが、そうしたことのメリットもあるということ。

 また、就労支援、非正規雇用対策の強化によって、もし正規労働者に転換できると、平均的におよそ六十万円の収入増が期待されるというように、五%の消費税による御負担に対して、今回の改革が実現をすることになりますと、相当メリットもあるということが例えば単身の非正規労働者については言えるというふうに考えています。

 また、もう一つ、時間がよろしければ、一人親世帯の場合も申し上げますか。(服部分科員「はい」と呼ぶ)

 一人親世帯の場合は、消費税負担額は、五%の引き上げにより、一人当たりの負担額はおよそ三・五万円程度増加することが見込まれます。

 一方で、これも一体改革を実施することによって、子ども・子育て新システム、これは七千億円ぐらいを投じたいと思っていますが、これで保育の拡充が図られるために、女性の皆さんが就労を促進され、正規労働者への転換を通じた収入増ということも、なかなか難しいとは思いますが、期待をされる方向になると思っています。

 また、先ほどの単身の非正規労働者と同様に、短時間労働者に対する厚生年金、被用者保険の適用拡大により、やはり、年額八・二万円程度の年金保険料の軽減が期待され、将来の年金額の増加も期待をされるということ。

 それから、国民健康保険の保険料軽減についても、先ほどと同じように、二千二百億投じた結果、御負担が軽くなる。

 このような試算はさせていただいているところです。

服部分科員 どうもありがとうございます。

 私の問題意識の論点が二つありまして、例えば、政策検証じゃないですけれども、子ども手当であるとか、あるいは高校授業料無償化とか、そういう今までの中で具体的な検証がどうだったのかという論点と、それから、今後のいわゆる一体改革の中で、消費税増税あるいは社会保障制度の改革の中で、どういう試算になるのかという、今数字をいろいろ御紹介いただきましてありがとうございました。

 この点については、何か厚生労働省として、まとめた形で発表をされるものというのは今あるんでしょうか。

小宮山国務大臣 将来の社会保障の負担については、昨年六月に、社会保障改革の議論の参考としまして、社会保障に係る費用の将来推計をお示しいたしまして、その中で保険料も含めた国民負担の全体像を推計しています。

 この推計では、改革のうち、例えば医療、介護のサービス改革を行う、この医療、介護を充実させる、地域包括ケアですとか、あるいは急性期のところの人員をふやすとか、そうしたことの効果というのは反映しているんですけれども、ここでは、医療保険や介護保険、年金の制度改革の効果というのは反映していないという。その医療の改革の部分については反映しているんですが、それ以外の今申し上げたところは反映されていない。

 御指摘いただきましたように、保険者ごとの保険料負担ですとか個々人の保険料負担の将来推計を行うに当たりましては、やはり今回の改革がどう進むかということが見通せないと、なかなか正確な個々人のものが出せない。

 例えば、国保ですとか介護保険料の低所得者への支援、それから先ほどから申し上げている短時間労働者への社会保険の適用拡大、また今回はそこまでたどり着いていない介護納付金などでの総報酬割の導入、こうした個別の改革がどのように議論が進んで、いつから具体化するかによってその数字が変わってきますので、そういう細かい形での各それぞれの人の負担ということは、残念ながら、今お出しができていないという状況でございます。

服部分科員 特に、貧困率の削減になっていない人たちがいらっしゃるわけで、やはりそういったところにきちんと焦点を当てて、ぜひちょっと試算をしていただければと。それはもちろん、いつから実施するとか、いろいろ技術的な問題があるのは承知しておりますけれども、そういう意味で、改めてぜひまた発表というか、我々にお示しをいただければというふうに思います。

 先日の議論の中で、非正規労働者がふえていると。派遣切りであれだけ大きな問題になり、生活再建ということを掲げて政権交代も実現され、少しは減ったんだったら、ああ、やはりよかったなという思いに至るわけですけれども、結果的にはふえているわけです。

 これについては、先日の予算委員会でも総理から、思いは一緒だという答弁はいただいたんですけれども、もっと具体的に政権として、今、例えば三五パーとか八パーとかいう数字になっていますけれども、数年後には三〇%以下にするんだとか、そういう具体的な数値目標を掲げて、やはり広く国民あるいは企業も含めて協力いただく、そういったことが私は必要だというふうに思うんですけれども、その点、どうですか。具体的に数値目標を掲げるおつもりはありませんか。

津田大臣政務官 非正規雇用を少しでも減らせという御指摘でございます。

 この非正規雇用に関する取り組みというのは、平成二十二年六月の新成長戦略で、二〇二〇年までに若者のフリーター数を百二十四万人にすると。今現在が百七十六万人ですから、八年で五十万人減らすという数値目標を設定しているわけでございます。

 その工程表に基づいて、ハローワークによるフリーターの正社員化への支援、あるいは雇用保険の適用範囲の拡大の着実な実施、それから求職者支援制度の創設によるセーフティーネットの拡充、さらに今国会で提出をさせていただいております労働者派遣法の改正、これなどの取り組みを進めてきたわけでございます。

 したがいまして、これらの取り組みの成果がまだ出ていないという点は、服部議員御指摘のとおりの状況でございますけれども、これらをセットで進めていくことによって、非正規労働者を少しでも減らしていく方向につながっていくのではないかなというふうに考えております。

 同時に、今国会におきましては、有期労働契約法制の見直し、これを今検討させていただいております。

 この有期労働者の問題は、労働契約法の改正という形で考えておりまして、いわゆる半年とか一年とかということで契約を繰り返していく、これがいつまでたってもそういう半年とか一年という契約が続くということはいかがなものか、どこかの時点でそれは期限の定めのない無期雇用にすべきではないかという考え方に転換をしていこうということでございます。これも実現をしていけば、さらに非正規労働は減少していく、そのように考えているわけでございます。

 また、若者の厳しい就職環境を踏まえて、日本再生の基本戦略に盛り込みました若者の雇用に関する戦略を、政府と産業界、労働界との対話を通じて、ことし半ばまでに策定することにしておるわけでございまして、こうした取り組みを通じて、できるだけ多くの方々が正社員に移行できるように強力に進めてまいりたいと考えております。

服部分科員 いろいろおっしゃるんですけれども、数字がふえていると言っているわけですよ。派遣村は、政権交代は二〇〇九年の八月でしたから、その年の一月ですよ、年末年始だったですよ。それからいきますと、もう三年以上たっているわけですね。

 だから、いろいろやりました、少し減りましたというんだったらわかるんだけれども、ふえているので、そこはもっと性根を入れてやっていただかないといけないし、そういう意味では、大きなマクロ的な目標も持ちながら、例えば三年後には三〇%以下にするんだというぐらいのかたい決意でいくぐらいでないと、私はどうも、なかなか進んでいないというふうに思います。ぜひ、その取り組みをお願いしたいと思います。

 次に、福島の第一原子力発電所の関係で、まず、今の福島の第一原子力発電所の作業員の現状、人数等についてちょっと教えていただけませんか。

宮野政府参考人 お答えをいたします。

 東電福島第一原発の作業員の状況でございますけれども、まず、延べでこれまで第一原発で働いた方、合わせまして約二万人になっております。

 それから、そのうち、請負の状況でございますけれども、これにつきましては、昨年の六月から、毎月、請負事業者に対して報告を求める形で把握をいたしております。

 その報告によりますと、作業に従事する事業者、それから労働者の数につきましては、日により変動がございますけれども、本年の一月三十一日当日に作業に従事をした事業者、その労働者の数で申しますと、元請の事業者二十七社で労働者五百八十二人、その下請四百九十二社で二千二百九十人となっております。

服部分科員 下請の状況、雇用条件、それから社会保険の適用状況だとか被曝管理だとか、そういったことは一応国としてもきちんと把握をされているという理解でよろしゅうございますか。

宮野政府参考人 ただいまお答えを申しましたとおり、元請事業者に対して、下請の事業者数、それから労働者数、あるいは安全衛生教育の実施状況、健康診断等々につきましては、私どもとして毎月報告を求めております。

 また、個別の賃金等々については、全体、全てを私どもとして状況を把握しているわけではもちろんございませんけれども、現場事務所に対しまして立入調査等々を行った折には、例えば、雇い入れ通知書等々の関係書類により確認を行っているところでございます。

服部分科員 いわゆる緊急作業従事者の健康の保持増進のための指針というのが出されているわけですけれども、これが五十ミリシーベルトで線切りといいますか、されているわけですね。例えば、「被ばく線量が五十ミリシーベルトを超える者は、被ばく線量等が記載された手帳の交付を受けることができる。」こうなっているわけです。

 この五十ミリシーベルトの被曝線量の判断が、例えばJヴィレッジと東電の福島とを移動する間の線量は含まれているけれども、実際にその生活圏、例えばいわき市あたりにいっぱい宿を借りて仕事をされているわけです。そういう実際に比較的線量の高いところで、長い間そこに寝泊まりをして作業をされている。あるいは、福島の前にほかの原発で作業をされて来られている。あるいは、その後、福島からまたどこかに移られる。そういったトータル的な生活圏も含めた線量として見るべきだというふうに私は思うんですけれども、どうも国の方はそうお考えになっていないみたいなんです。

 そういった生活、トータルとして五十ミリシーベルトということを考えていかないとだめだというふうに私は思いますが、その点はどうでしょうか。

宮野政府参考人 原発作業員の被曝線量管理の方法についてでございますけれども、これは私どもとして、ICRP、国際放射線防護委員会の勧告に基づいて行っております。具体的には、ICRPでは、被曝を作業者の職業被曝、住民の公衆被曝、患者の医療被曝の三つに分類をした上で、それぞれの被曝を合理的に達成できる限り低く保つ必要があるというふうにしております。

 この場合、被曝を引き下げるための防護の手段につきましては、作業者、住民、患者、それぞれで異なりますために、その防護については、それぞれ異なる手段によって達成をされるということになります。したがいまして、ICRPにおきましては、職業、公衆、医療のそれぞれの被曝については、別々にこれを扱うということになっております。

 このため、労働安全衛生法におきましても、緊急作業従事者の被曝については、使用者の管理責任と合理的にみなすことができる範囲、つまり、仕事上で受ける放射線被曝の範囲を管理しているということになっております。

 なお、原発作業につきましては、福島だけではなくてほかの原発で作業した場合についても、これは通算をして管理するということになっております。

服部分科員 でも、事故が起きたわけじゃないですか。それで地域全体が汚染されている現状があって、その中に住まわれて、そしてJヴィレッジに行かれて、そこから原発の作業へ行かれておるわけでしょう。それを、Jヴィレッジと原発の通勤途上の線量は加算するけれどもそのほかは知らないというのは、ちょっと私、理解しがたいんですけれども、もう一回ちょっと、その点はどうですか。

宮野政府参考人 これは、繰り返しになりますが、今申しましたとおり、ICRPの考え方に基づきまして、それぞれ管理をするということになっております。

 ただ、それは当然ながら、それぞれにおいて、先ほども申しましたとおり、被曝を合理的に達成できる限り低く保つ必要があるということで、もちろん職業被曝につきましても、住民の被曝につきましても、それぞれできる限り低く保つような形で、政府として取り組みを行う。具体的に、例えば住民の被曝については、現在行っておりますような形で除染等々の作業を進めているということでございます。

服部分科員 いや、それは、地域の線量を除染で進めるのは当たり前の話なんですよ。ただ、その労働者が、その被曝線量を測定するのに、そういう切り方でいいんですかということを私は申し上げているわけで、これは大臣、国としても、結局こういう放射能の影響というのは、すぐ出るんじゃなくて、五年後に出るかもしれない、十年後に出るかもしれない。この健康被害というのは、働いておる労働者にとってみたら大変重大な問題なわけじゃないですか。

 何か今の話を聞いていて、何となくおかしいと思われませんでしたか、大臣。ちょっと御意見を。

小宮山国務大臣 これは、私が責任者をしております厚生労働省で、ICRPの基準に基づいて、仕事は仕事上のところで的確に管理をするというやり方でやっているので、私はおかしいとは思っていません。

 確かに、作業にかかわっていただいた方については、生涯にわたってちゃんとその被曝線量を管理し、必要な健康チェックをしなければいけないということで、これは、その職場を離れられても、生涯、データベースで管理をするような仕組みを今つくっていますので、そういう形で、そこで作業をされた方については生涯にわたってちゃんと健康管理をさせていただくということで、やらせていただいているところです。

服部分科員 大臣、この指針を見ると、線量が五十ミリシーベルトを超える人については手帳の交付を受けることができるということなんですよ。ですから、例えば自分がいわき市内の民宿や旅館で生活している、そのときに一定程度の被曝をする、そういったことも含めてトータルで五十ミリということを算定していただかないとだめじゃないですかということを私は申し上げているわけで、ちょっと論点がずれているような気がするんですけれども。

 いずれにしても、こればかりやるわけにいかぬので、ちょっと問題提起をしておきますので、ぜひ御検討ください。

 それから、この健康被害の問題なんですけれども、国としては、こういう答弁がございます。「復興までの道のりが仮に長いものであったとしても、最後の最後まで、国が前面に立ち責任を持って対応してまいります。」と。これは、原子力被災者に対する取り組みについて、昨年の五月十七日にそういう答弁がされているわけですけれども、健康を国の責任でしっかりと守る、厚生労働省はまさにその立場なんですけれども、その基本的な考え方については間違いないですね。どうですか、大臣。

藤田大臣政務官 今委員の方から御指摘がありました基本的な考え方、これは政府としてそのように今回の事故に対して向かっているわけでございますので、しっかりと厚労省としても認識をしているところでございます。

服部分科員 それで、福島の例の十八歳以下の医療費無料化の問題で、国の答弁といいますか、いろいろやりとりをしていますと、国の医療制度全体の根幹に影響を与えるなどの課題もあり、関係閣僚の中で熟慮を重ねたがと、こういうことになっておるんですけれども、結局、これはどういう問題があるということなんですか。

小宮山国務大臣 本当にこれは、やはり知事からも直接御要請を受けましたし、福島で安心して子供が育てられるようにしないと子供が戻ってきてくれないという痛切な御意見も伺いまして、本当に熟慮、いろいろな検討をいたしました。

 ただ、福島でおっしゃっているのは、今の医療保険の制度というのは、病気になった場合に対応するんですけれども、病気になったからということではないんですね。ですから、そういうことからして、今の医療保険制度の仕組みのその目的と違うというのが一つ。

 それからもう一つは、やはり福島県下だけ全部といっても、被曝線量からいくと、今度は県を越えて、宮城とか茨城でもあるわけですね。それを福島県の、ほかの県のある場所よりも低い人たちまで全部やるということは他県との公平性からどうかとか、幾つかのことから、福島県だからということで医療費を全部無料化するというのはどうしても難しかったんです。

 そういう意味で、今、福島県が基金でされるということなので、その基金にはもちろん東電からの賠償も入りますし、いろいろな形でありますけれども、そこの基金の方でなさることを可能な限りバックアップする。国としてできることについては、例えば外で遊べない方たちのために遊び場をつくるとか、幾つか国としてできる施策は官房長官のもとでセットでお示しをして、それで福島県の方でもそれで納得をして、御了解をいただいているというふうに考えています。

服部分科員 それならば、例えばそういう被害者に対して援護法をつくるということだったら、これは原爆被害者であれ水俣であれ、援護法としてあるわけですから、そういう方法だってあると思いますけれども、そういう方法だったらいいんじゃないでしょうか。

藤田大臣政務官 これも委員よく御存じであろうというふうに思いますけれども、被爆者援護法というのは、原子爆弾の投下の結果として生じた放射能に起因する健康被害が他の戦争被害と異なる特殊な被害である、そのことに鑑みて、国の責任で、被爆者の方々に対して保健、医療、福祉にわたる総合的な援護対策を講じているわけでございます。

 こうした趣旨によって、原爆被爆者の医療費の無料化というものが図られているわけでありますけれども、今回の原発事故に伴う被曝線量の評価であるとか健康管理については、原子力災害の事後対策として、今は、国としては経済産業省が中心となって対応しておりまして、そこで支援策を講じておりますので、厚労省としては、まずは原子力災害対策本部のもとで、関係省庁と連携して必要な対応を行っていくということが必要だというふうに考えているところでございます。

 委員の御指摘、お気持ちというのはわかるわけでございますけれども、まずはしっかりと今の対策をやっていくということに集中をしていくことが必要だというふうに考えております。

服部分科員 しかし、大臣、将来的に、そういう援護法的な考え方も選択としてあるなとは思われませんか。

小宮山国務大臣 考え方として否定をするものではございませんが、やはり広島、長崎とはまた違うということを福島の方もおっしゃっていらっしゃいますので、そういう中で、どういうあり方がいいかというのは、いろいろな選択肢を排除せずに検討していく必要があるというふうには思います。

服部分科員 わかりました。もちろん、広島、長崎と同じだと思って言っているわけではなくて、排除せずに、検討の余地はあるやの答弁だったと思いますので、その点はぜひ、今後引き続きお願いをしたいと思います。

 最後になりますけれども、空襲被害者に対する救済の問題をちょっとお聞きいたします。

 昨年の八月の十日に外務委員会で、当時の大塚副大臣とのやりとりの中で、厚生労働省という立場で判断できるものではないので、政府全体で広く国民的な合意を要する課題だと。要するに、空襲被害者に全然補償の光が当たっていないという問題なんですけれども、ただ、同時におっしゃったのは、この問題に対する数十年間の政府のあり方が本当にこれでいいのかということについては、個人的に思うところが若干ある、そういう答弁をされたんですね。

 それで、今、これは御党の、民主党の首藤さんが会長になられて、法案化をしようということで、私も副会長の末席に連ねさせていただいて、何とか補償の問題を実現したいというふうに思っているんですけれども、大臣、この件について、少し汗をかいてみたいというような思いはございませんか。

津田大臣政務官 空襲被害者、あるいは沖縄戦もそうでございますし、あるいは船舶が沈没したことによる一般人がお亡くなりになった、さまざまなケースがたくさんあったわけでございます。

 戦傷病者戦没者遺族等援護法では、国と雇用または雇用類似の関係にあった軍人軍属、準軍属が、公務等の傷病により、障害の状態になり、または死亡した場合に、使用者の立場から補償を行うという考え方でございます。したがって、この考え方でいきますと、こうした事情にない空襲あるいは沖縄戦で被害を受けた一般の戦災者は、対象にしていないということになるわけでございます。

 昨年八月に、服部議員が当時の大塚副大臣にそうした質問をされたということも承知をいたしておるわけでございます。したがいまして、空襲等で被害を受けた一般戦災者への援護あるいは実態調査というのは、これまでの取り組みとは全く新しい世界、別の枠組みになるということであります。

 したがいまして、これは、大塚副大臣も当時答弁させていただいておりますけれども、厚生労働省というレベルで取り組める課題ではなくて、政府全体としてどうするのかということになろうかというふうに思います。

服部分科員 軍人軍属だけが、遺族年金というような形を含めて、物すごいお金をもらっていて、結局国が始めた戦争ですから、民間人が全く放置されているというのは本当に私はおかしいと思いますので、時間が来ていますけれども、ぜひ大臣、一言お願いします。

小宮山国務大臣 委員の問題意識は共有をするところもございます。

 それで、今おっしゃったように、国会内で今議論が始まったということですので、ぜひ御議論をいただいて、そこでまた御提起をいただければ、これは、今政務官が御答弁したように、厚労省一つでできるわけではないので、政府としても、皆さんの御意見、またそれに対する国民の皆さんの広い御意見も必要かと思いますので、そうしたことを注目をさせていただいて、受けとめるべきところは受けとめさせていただきたいというふうに思います。

服部分科員 ありがとうございました。

笹木主査 これにて服部良一君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして本分科会の審査は全て終了いたしました。

 分科員各位の御協力によりまして、本分科会の議事を滞りなく終了することができました。厚く御礼を申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午後五時三十分散会


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