衆議院

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第1号 平成13年3月1日(木曜日)

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本分科会は平成十三年二月二十六日(月曜日)委員会において、設置することに決した。

三月一日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      大原 一三君    北村 直人君

      谷川 和穗君    五十嵐文彦君

      佐々木憲昭君    横光 克彦君

三月一日

 北村直人君が委員長の指名で、主査に選任された。

平成十三年三月一日(木曜日)

    午後一時開議

 出席分科員

   主査 北村 直人君

      大原 一三君    谷川 和穗君

      山本 明彦君    阿久津幸彦君

      五十嵐文彦君    楢崎 欣弥君

      佐々木憲昭君    重野 安正君

      横光 克彦君

   兼務 西川 京子君 兼務 大谷 信盛君

   兼務 中村 哲治君 兼務 伴野  豊君

   兼務 山口  壯君 兼務 若松 謙維君

   兼務 樋高  剛君 兼務 赤嶺 政賢君

   兼務 塩川 鉄也君

    …………………………………

   農林水産大臣       谷津 義男君

   環境大臣         川口 順子君

   農林水産副大臣      松岡 利勝君

   農林水産大臣政務官    金田 英行君

   環境大臣政務官      熊谷 市雄君

   政府参考人

   (農林水産省総合食料局長

   )            西藤 久三君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  小林 芳雄君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  須賀田菊仁君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長

   )            木下 寛之君

   政府参考人

   (林野庁長官)      中須 勇雄君

   政府参考人

   (水産庁長官)      渡辺 好明君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議

   官)           広田 博士君

   政府参考人

   (国土交通省河川局次長) 平口  洋君

   政府参考人

   (国土交通省道路局次長) 峰久 幸義君

   政府参考人

   (環境省大臣官房廃棄物・

   リサイクル対策部長)   岡澤 和好君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局長

   )            中川 雅治君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局環

   境保健部長)       岩尾總一郎君

   政府参考人

   (環境省地球環境局長)  浜中 裕徳君

   政府参考人

   (環境省環境管理局長)  松本 省藏君

   政府参考人

   (環境省自然環境局長)  西尾 哲茂君

   農林水産委員会専門員   和田 一郎君

   環境委員会専門員     澤崎 義紀君

   予算委員会専門員     大西  勉君

    ―――――――――――――

分科員の異動

三月一日

 辞任         補欠選任

  谷川 和穗君     山本 明彦君

  五十嵐文彦君     阿久津幸彦君

  佐々木憲昭君     藤木 洋子君

  横光 克彦君     植田 至紀君

同日

 辞任         補欠選任

  山本 明彦君     谷川 和穗君

  阿久津幸彦君     松原  仁君

  藤木 洋子君     大森  猛君

  植田 至紀君     重野 安正君

同日

 辞任         補欠選任

  松原  仁君     楢崎 欣弥君

  大森  猛君     春名 直章君

  重野 安正君     横光 克彦君

同日

 辞任         補欠選任

  楢崎 欣弥君     五十嵐文彦君

  春名 直章君     矢島 恒夫君

同日

 辞任         補欠選任

  矢島 恒夫君     石井 郁子君

同日

 辞任         補欠選任

  石井 郁子君     佐々木憲昭君

同日

 第二分科員山口壯君、第三分科員若松謙維君、樋高剛君、第四分科員大谷信盛君、赤嶺政賢君、塩川鉄也君、第七分科員西川京子君、中村哲治君及び第八分科員伴野豊君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十三年度一般会計予算

 平成十三年度特別会計予算

 平成十三年度政府関係機関予算

 (農林水産省及び環境省所管)




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     ――――◇―――――

北村主査 これより予算委員会第六分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることになりました。どうぞよろしくお願いいたします。

 本分科会は、農林水産省及び環境省所管について審査を行うことになっております。

 なお、各省所管事項の説明は、各省審査の冒頭に聴取いたします。

 平成十三年度一般会計予算、平成十三年度特別会計予算及び平成十三年度政府関係機関予算中環境省所管について、政府から説明を聴取いたします。川口環境大臣。

川口国務大臣 平成十三年度環境省所管一般会計予算について、その概要を御説明申し上げます。

 まず、予算の基礎となっております環境政策の基本的な考え方について御説明申し上げます。

 今日の環境をめぐる状況を概観いたしますと、自動車に起因する大気汚染などのように従来から解決が求められている課題に加え、近年の科学的知見の充実や社会的関心の高まりにつれて、取り組むべき環境問題がますます広がっております。

 まず、地球温暖化は、人類の存続そのものに深刻な影響を及ぼすおそれのある重大な問題であり、既にその影響が海面上昇等の形であらわれ始めていると考えられますが、さらに、最新の科学的知見によれば、今後の気温上昇が従来の見込みよりも大幅なものになると予測されるなど、人類社会の基盤を揺るがしかねない状況が生まれつつあります。

 また、廃棄物問題に関しては、大量の廃棄物の発生が継続していることや、最終処分場等の残余容量の逼迫、不法投棄などの不適正処理の増加といった深刻な状況が生じております。

 さらに、自動車排出ガスに起因する大気汚染が大都市地域を中心に依然として深刻であることや、ダイオキシン類、環境ホルモンなどの化学物質による人の健康や生態系への影響が懸念されていることが、国民に大きな不安を与えております。

 また、自然林や干潟などの貴重な自然や里山などの身近な自然が減少しており、野生生物種の多くに絶滅のおそれが生じています。

 これらの環境問題は、いずれも大量生産、大量消費、大量廃棄という二十世紀を特徴づける社会のあり方に根差したものであります。

 このような社会のあり方を根本から見直し、二十一世紀を文字どおり環境の世紀とすべく、新たな社会を創造していかねばなりません。

 私は、この目指すべき新しい社会を、「地球と共生する「環(わ)の国」日本」と表現し、簡素で質の高い活力のある持続可能な社会の実現を目指して、百年先を見通した構造改革を進めていく決意であります。

 この世紀の節目に、国民の皆様からの期待を背負って創設された環境省は、市民、企業、自治体、さらには諸外国等とのパートナーシップのもと、さまざまな壁に挑戦する行動官庁として、「地球と共生する「環(わ)の国」日本」の創造に取り組んでまいります。

 以上のような認識のもと、「環(わ)の国」の実現に向けた第一歩として、次の施策に重点的に取り組んでまいります。

 第一に、地球温暖化問題については、京都議定書の二〇〇二年までの発効に向けて、本年開催される予定であるCOP6再開会合で確実に合意ができるよう、国際交渉をリードしていくとともに、我が国みずからが京都議定書を締結できるよう、温室効果ガスの六%削減目標を確実に達成するための総合的な国内制度の構築に向けて全力で取り組みます。

 また、来年二〇〇二年は、地球サミット後十年目に当たり、持続可能な開発に関する世界サミットが開催されることから、途上国を含む世界の環境保全への取り組みが一段と進展するよう、我が国としてもアジア太平洋環境開発有識者会議の成功を期すなどの取り組みを進めてまいります。

 第二に、循環型社会の形成については、廃棄物・リサイクル関連法の円滑な施行に最大限努力するとともに、長年処理が進まず、環境汚染の懸念が高まっているポリ塩化ビフェニル、いわゆるPCB廃棄物を確実かつ適正に処理するため、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法案及び環境事業団法の一部を改正する法律案を今国会に提出いたしております。

 さらに、廃棄物処理施設の整備を着実に推進するとともに、不法投棄監視体制の強化など不適正処理の防止に向けた総合的な取り組みを進めてまいります。

 第三に、国民の安心と安全の確保については、大気汚染対策として、自動車NOx法に、粒子状物質に係る規制を追加するとともに、自動車を使用する事業者に対する措置を強化する改正案を今国会に提出し、また、低公害車の普及を一層促進してまいります。

 ダイオキシン類や環境ホルモン等の化学物質対策については、PRTR法を本年四月から円滑に施行し、事業者による化学物質の管理の改善及び化学物質の環境リスクに対する国民の理解を促進するとともに、環境ホルモン等のリスク評価を鋭意進めてまいります。

 さらに、土壌環境保全対策のために必要な制度のあり方の検討を進めます。

 また、公害健康被害者の救済に万全を期するとともに、健康被害を予防するための施策の着実な推進を図ります。

 第四に、自然環境の保全については、地域における多様な生態系を維持回復するとともに、自然と人間の共生を確保することは、次世代の国民に対する責務であります。

 日本のさまざまな自然環境が国民の共有財産であることを国民の皆様に実感していただくため、自然環境に関する情報をITも活用してわかりやすく提供するとともに、在来種に対する影響が深刻となっている移入種の駆除対策の強化充実に取り組んでまいります。

 さらに、自然と触れ合う機会の提供やそのための施設整備の促進を図ります。

 最後に、環境省の体制については、地球環境保全に関する国際交渉に的確に対処するため事務次官級の地球環境審議官を設置するとともに、地域の環境の実態を迅速に把握するための体制の整備を図ることとしております。

 平成十三年度環境省所管一般会計予算につきましては、以上のような基本的な考え方に立って取りまとめており、その予算総額は二千七百六十九億六千七百万円であり、これを前年度の当初予算額二千五百九十一億三千三百万円と比較すると、百七十八億三千四百万円の増、六・九%の伸びとなっております。

 予算要求額の主要な事項につきましては、お手元にお配りしてある資料のとおりでありますが、委員各位のお許しを得まして、説明を省略させていただきたいと存じます。

 よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。

北村主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま川口環境大臣から申し出がありました環境省関係予算の主要事項の説明につきましては、これを省略して、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

北村主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

北村主査 以上をもちまして環境省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

北村主査 質疑に入るに先立ちまして、分科員各位に申し上げます。

 質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力をお願いいたします。

 また、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伴野豊君。

伴野分科員 民主党の伴野豊でございます。

 本日は、初代環境大臣とこうして直接お話しできることを光栄に存じます。また、関係各位、とりわけ委員長さん初め皆様方の御協力に心から感謝申し上げたいと思います。

 では、質問を始めさせていただきたいと思います。

 「沈黙の春」、もう環境大臣はよく御案内かと思いますが、レイチェル・カーソンが一九六二年に著したものでございます。私ごとで恐縮でございますけれども、私は一九六一年一月の生まれでございます。先ほどのレイチェル・カーソンが「沈黙の春」を著した前年に生まれたわけでございますけれども、私が物心ついたころには、高度成長期の遺産として、いわゆる四大公害と申しますか、私の友人にも四日市公害といいますか、ぜんそくで悩み苦しんだ者もおります。

 そうした中で、これからは環境の時代ではないか、自分の成長、あるいは物心ついた、いろいろなことを学ぶ中で、やはり地球環境に寄与する仕事をしたいな、私自身が個人的にそう思っていたところがございまして、二十一世紀の冒頭に環境庁から環境省になったということは、個人的に非常に喜んでいる一人でございます。

 そういった意味で、ぜひともきょうの質問に対しまして大臣の方から創造的な御発言が賜れれば、そのように思っております。

 では、始めさせていただきたいと思います。

 これは多分いろいろなところでお聞き合わせのことかと思いますが、改めて大臣のお口から御答弁いただきたいと思いますが、環境庁から環境省になって一体何が変わったか、何がポイントなのか、まずお聞かせいただきたいと思います。

川口国務大臣 お答えをいたします。

 大勢の方が環境庁から環境省になって何が変わったかというのを御関心をお持ちいただいていらっしゃいまして、本当にもっともな御疑問だというふうに思います。

 それで、環境省は環境庁時代と比べまして、所管という意味では、廃棄物対策を初めといたしまして、専ら環境保全を目的とする事務というのを一元的に実施するということになっております。

 それから、環境の保全を目的の一部にするような事柄、リサイクル対策ですとか、それから化学物質対策等につきましては、他の府省と共同で実施をするということになっております。そういうことで、所管事務が広がって、その分機能が強化されたということでございます。

 それから、環境政策に関しての府省横断的な総合調整機能、これを環境庁時代と同様、引き続き持っておりまして、それから環境大臣は他の府省に対しての勧告権も持っているということでございます。

 それで、こういった機能を十分に発揮することによりまして、環境省は行動する官庁、それから政策を企画立案していく官庁として、国民の皆様から寄せられた期待にこたえるようにやっていきたいと思っております。

伴野分科員 どうもありがとうございました。

 時間が結構限られておりますので、今から早口になるかと思いますが、どうぞお聞き及びいただきたいと思います。

 まさに環境庁から環境省になったということで、廃棄物の処理、これは私がまさに期待するところであるわけでございますが、非常に大ぶろしきを広げるならば、核すら廃棄物だというぐらいのことが言える日本に私はなってほしいな、そんなことを思っている一人なわけでございます。

 一方で、では住民の方が、こういう言葉が多分もう大臣のお耳にもあるかと思いますが、NIMBY、時間がありませんので申し上げますが、ノット・イン・マイ・バックヤード、要するに、非常に問題視しているけれども、住民もそういう廃棄物が自分の町内には来てほしくない、これは一つ人間の心理かと思います。

 ですから、今後気をつけていただかなければならない一つに、特にそういう産業廃棄物処理場を建設したりあるいは廃棄物処理を行っていく中で、どう住民をかかわらせていくか、もっと突っ込むならば、住民にどういう意識を持たせて管理するところまでやらせるか、これは一つ大きなポイントになってくるのではないか。そういった意味で、その前提として、私は情報開示がまさに必要になってくるのではないかと思いますが、このあたり、いかがでしょうか。

岡澤政府参考人 廃棄物の処理施設の設置に当たりまして、住民がなかなか同意してくれないということ、NIMBYというふうに言われましたけれども、全くそのとおりの状況が続いております。これは、私どもの考えでは、産業廃棄物についてかなり不法投棄とか不適正処理が横行しておりまして、そういうことが国民の不信感、不安感を招いているというふうに考えております。

 こうした不信感あるいは不安感を払拭するためには、どういう施設が立地しているのかとか、どういうふうに処理が行われているかというふうなことを含めた、産廃処理の状況についての情報開示ということが御指摘のように非常に重要だろうというふうに思います。

 実は、平成九年の廃棄物処理法の改正に当たりましても、最終処分場や焼却施設の設置に当たりまして、住民の意見等を反映させるために、設置許可申請書等の公示、縦覧、あるいは関係住民、市町村の意見聴取、専門的知識を有する者の意見聴取の手続を法定化いたしましたし、あわせてその施設運営の透明性を図るために、維持管理の状況につきましてもこれを記録して、地域住民などの求めに応じてこれを縦覧させる仕組みをつくったわけでございます。

 今後とも、こうした情報の積極的な開示につきまして、排出事業者あるいは処理業者に対して普及啓発、指導を行ってまいりますが、国としても、さまざまなメディアを使いまして、産業廃棄物の処理状況というものを国民に知らせることによりまして、国民の皆様とともに対策を考えていけるようにしたいというふうに考えております。

伴野分科員 ぜひ頑張っていただければと思うのですが、やはり最近、ここは風光明媚で自然のあふれる町だと思って土地を買った、しかし実際自分が家を建てるときに穴を掘ってみたらすごいものが出てきてしまったというようなことが、それが十年、二十年後、自分たちの子供たちや子孫のときにそういうことがあり得ますと、今を生きる我々の責任かと思います。私の地元の愛知県でも十数カ所そんなようなところがあるというふうに聞き及んでおります。全国的にどうなっているのか、そしてそれを開示していただいて、今後どういう対策をしていくのか、ぜひ総合処理計画というものをつくっていただいて、国民の一人一人が、一緒になって考える、知恵を結集するということをやっていただければ、そんなふうに思っております。ぜひともよろしくお願いいたします。

 次に行かせていただきたいと思います。

 次は、それらのいろいろな処理をしてくれば、当然お金がかかるわけでございます。そのお金の使い方、フレキシブルな使い方、とりわけ重点的な使い方が必要なのではないか、私はそんなふうに思っております。一般廃棄物の処理場の補助率、一般的に、地方では四分の一と言われておりますが、本当につくらなければいけないところにお金がなかったり、ある一定基準までは、四分の一の枠を超えて、二分の一くらい補助してやってしかるべきなところもあるのではないか、私はそんなふうに思っております。

 そのあたりの予算の柔軟な使い方につきまして、大臣、お考えがございましたら、御答弁いただければありがたいと思います。

岡澤政府参考人 一般廃棄物の処理というのは、市町村の責務で行われておるわけでございますので、施設の整備についても市町村がこれを行うということになっております。国の補助、今御指摘のように、原則四分の一という補助率でございます。他の公共事業と比べて低いのではないかという御指摘も前からいただいておりますが、これはほかの事業とのバランス、それぞれの成り立ち等によって補助率が決まっているというふうに私ども理解しております。

 ただ、平成十四年の十二月には、ダイオキシン対策特別措置法に基づく新しいダイオキシン規制が適用されることになっておりまして、各市町村とも、ダイオキシン対策を行うことが緊急の課題になっております

 そうしたことから、平成十二年度予算におきましては、ダイオキシン類削減のための施設整備に関して特別の財政措置を講ずるというふうにしまして、ダイオキシン対策に係る主要な設備につきましては、補助額を、通常四分の一のところを三分の一相当まで引き上げるというふうな、弾力的な措置を講じたところでございます。

 金額的にしましても、十三年度予算では、十二年度から始まった特別措置を十三年度も継続することといたしましたし、全体の処理施設整備費としては、十二年度に比べて一一・六%増の千九百二十四億円を確保しておりますので、今後とも必要な額の確保に努めてまいりたいというふうに考えております。

伴野分科員 いずれにしましても、今まで日本のいわゆる社会資本整備のあり方の中で、どうしても動脈的なものを優先させてきてしまった。ぜひともこれから静脈的なこともバランスよくおつくりいただく、そのためには、柔軟な発想が必要かと思いますので、ぜひともそのあたり、御理解いただけるよう、よろしくお願いいたします。

 先ほど大臣のお話にもございましたように、「環(わ)の国」日本、非常にいい言葉かなと思います。これを具現化していくことが非常に重要かと思うのですが、そういった循環型社会形成をしていく中で、ハードの問題として、確かに社会資本整備というのがあるかと思います。これはハードが伴えば、当然お金が要るものになってきます。ですから、お金が必要になってくると、多少の制限とかいろいろな計画というのが重要になってくるわけでございますけれども、しかし、お金を使わない、そういう社会形成というのもあり得るのではないか。

 一つの具体のお話をすると、国民への啓蒙といいますか、ライフスタイルの啓蒙、とりわけ子供のしつけとか教育、このあたりに関しましては、いわゆる文部科学省さんとの連携をとりながら、ぜひ学校教育あるいは地域教育の中でも、確かに今子供会とかあるいは廃品回収とか、いろいろ教える機会があるのですが、このあたりをぜひ積極的にやっていただけないか、大臣の御答弁をいただければと思います。

熊谷大臣政務官 ただいまの質問に対して、私の方からお答えをさせていただきます。

 ハード面、ソフト面、両々相まって、事業というものを、政策というものを推進していくという極めて大事なことであります。したがって、循環型社会形成推進基本法では、今委員が御指摘になられましたソフト面の対策というものを含めて、国として、循環型社会というものを形成することに関する教育なりあるいは学習なりというものの振興を図るということ、さらには広報活動の充実というものが必要だということの措置というものを基本法の中では明確に規定しているわけであります。

 したがいまして、環境省としては、国民の協力を得るためにいろいろな教育、啓蒙活動というものを講じているところでありますが、具体的には、今おっしゃいました子供たち、小学校、中学校の生徒を対象にして、ごみの減量、リサイクルの実践活動を促す「ごみゼロチャレンジ」マニュアルの作成、配付、こういうものをやっております。

 さらには、循環型社会形成に関する一連の法制度について、内容をわかりやすく説明したビデオというものを作成して、都道府県あるいは全市町村に配付をいたしております。

 さらには、非常にユニークな考え方でありますが、ミュージカルというものを上演して、循環型社会への理解というものを深めていく、市民にもいろいろ参加をしていただく。これは、劇団のメンバーが八割ぐらい、あとは一般の市民から募集して、三月二十日に上演を予定している。これを、各地方にこういった形で上演を推進してまいりたい、こんなふうに考えております。

 それから、環境事業団が設置されているわけでありますが、この中に地球環境基金というものをつくって、今基金を造成しているわけでありますけれども、循環型社会というものの形成に向けた活動というものを支援するNGOの活動というか、そういうものに支援をしていくということをやっております。

 今後とも、循環型社会形成推進基本法の趣旨というものに沿って、国民に対する適切な環境教育、啓蒙活動、ソフト面の対策でも積極的に取り組んでまいりたい、このように考えております。

伴野分科員 どうもありがとうございました。

 そういう流れとともに、今地方分権の流れもあるわけでございまして、ぜひとも環境行政の面でも地方、地域が自立していく、そういう御指導の方をよろしくお願いしたいと思います。

 では、時間がございませんので、少し地元の話題に入らせていただきたいと思います。

 御案内のように、愛知県では二〇〇五年、日本国際博覧会がございます。大臣も通産省の御出身かと伺っておりますけれども、やはりこのあたりのところも、愛知万博を循環型社会のモデルケースといいますか、具現化したケースとしてぜひ世界的に情報発信していただきたい。

 これはちょっと笑い話で申しわけないのですけれども、私は、地元なんかでは、こういう万博ができればおもしろいと言っているのです。例えば、入場者が朝いらっしゃった。入り口でトイレに入っていただく、大きいのと小さいのを出していただく、そうすると、一日ぐるぐる回ってくると、出口でそれがお土産の材料に変わっていく。大きい方はいわゆるブローチの窯業としての素材に、小さい方はインクぐらいに変わってくれると、それが実体験として、自分も含めて、自分が出すもの自体が材料なりあるいは生産品の素材になっていくんだ、リサイクルできるんだという実体験をさせることも非常に重要なことじゃないか。

 そういった意味で、ぜひとも環境省さんの知恵も英知もここの万博に結集していただいて、世界に情報発信していただければありがたいかと思うのですが、大臣のお考えをぜひともお聞かせください。

川口国務大臣 今の委員の例を伺いながら、そうすると、多分水洗ではない別な形のトイレを開発しないといけないかなと思っておりましたけれども、おっしゃるように、愛知万博は自然の叡智というのをテーマにしまして、それからまた、循環型社会という言葉もサブテーマの一つになっております。これの構築の絶好のモデルになるということを私どもとしても望んでおります。

 これから具体的な会場計画が検討されていくということでございまして、私どもといたしましても、できるだけ知恵を出して、またほかの方々の知恵もうまくつながるような形にしてやっていきたいと思っております。

伴野分科員 ありがとうございます。

 続きまして、愛知万博をきっかけにというお話もございましたが、私は、日本の持っている環境技術というのは、ここ数年のうちにブレークスルーしてくれるのではないかと、期待感とともに思っております。一ついわゆる核爆弾による世界の抑止力というのがあろうかと思いますが、私は、環境安保ということもあり得るのではないか。要するに、環境技術でどんどん国際貢献していくと、やはり日本を取り込んでいかないと、あるいは日本のサジェスチョンがなければ地球環境すら守れないということがあれば、これはすばらしいことになっていくのじゃないかと思います。

 そういった意味で、ぜひとも環境省さんに、とりわけ環境省さんを目指される若い人たち、若い技術者、今もいらっしゃる職員の方がやる気を持って生き生きと仕事をしていただける、そういう環境省内の環境づくりというものをぜひともやっていただきたいと思いますし、あるいは農水省さん、国土交通省さん、経済産業省さん、その省庁と対立するのではなくて、そことも共生していただくよう、創造していっていただければありがたいかなと。

 これもできたら、最後の質問としたいかと思いますので、ぜひとも大臣の方から創造的な御発言が賜れればと思います。

川口国務大臣 環境問題というのは、委員がおっしゃられますように、国民あるいは企業あるいはその他の省庁、自治体、さまざまな主体がかかわってやっていかなければいけない、取り組んでいかなければいけない課題だと思っております。

 それから、環境安保ということをおっしゃいましたけれども、環境問題について、日本はある意味では環境問題先進国といいますか、公害先進国といいますか、そういうことでございまして、その克服のために蓄積をしたノウハウなり政策のツールなりあるいは技術なりというのがたくさんございます。そういうものを日本がこれから世界にどんどん今まで以上に発信していって、日本が環境にいいことをやっている国だということが伝わるといいと思っておりますし、私は、行く行く、いずれは「環(わ)の国」という言葉が日本語として世界に通用するようになってほしいと思っております。

伴野分科員 私が子供のとき、今でもこの言葉はあるのじゃないかと思うのですが、末は博士か大臣か、よく私も親から言われたものでございますけれども、親が子供を見るときに、目標にしてほしいのが、一つは大臣であり、一つは博士というようなものなのかなと思います。

 やはり大臣は、子供たち、特に女の子たちから目標にされる存在だと思いますので、ぜひともますます御尽力いただきまして、お話の中にもございます「環(わ)の国」の実現を目指していただきたいな、そんなふうに思っている一人でございます。

 一九九七年には「奪われし未来」、やはり未来に対する責任というのは今を生きる我々の責任かと思います。ぜひとも環境省さんが二十一世紀に羽ばたかれるよう心から祈念いたしまして、きょうこうした有意義な時間を持たせていただきましたことにつきまして、大臣初め委員長、各委員に心から感謝いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

北村主査 これにて伴野豊君の質疑は終了いたしました。

 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺分科員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。

 ただいま川口環境大臣から日本は環境先進国というお言葉を伺いまして、本当に心強い気持ちで今この質問に臨んでおります。

 実は、私が取り上げようとしている問題は、日本列島の最南端の沖縄における環境問題です。特に、米軍基地の整理縮小ということでSACO合意が行われましたが、このSACO合意の最大の問題は、あの狭い沖縄県の中で米軍基地をたらい回しにすることでありました。そのたらい回し先で大変大きな自然に対する環境問題が起きているわけです。この点について、きょうは環境省のお考えをお聞きしたいと思います。

 昨年の十月十日にアンマンで開かれました世界自然保護会議の総会で、沖縄本島北部の名護市の沖に生息するジュゴンや、その近くの山原の森にすむノグチゲラ、ヤンバルクイナという貴重な鳥類を保護するため、日米両政府に調査と保全を求める決議が採択されました。

 このアンマンの決議の中で、特に米軍基地の移設にかかわる問題について具体的な指摘が行われています。

 例えばジュゴンについて、そのジュゴンの生息地が普天間基地の移設予定先になっていることを指摘して、そこにおける「空港建設がこの地域で実行されるとすれば、ジュゴンの重要な休息場所及び採食場所になっている辺野古沿岸のサンゴ礁と海草藻場を消滅させる危険性があり、小さな地域個体群の生存に対して重大な脅威を与える可能性があることを懸念する」と。あの海域での普天間基地の代替施設の建設がジュゴンに大きな影響を与えると、アンマンでは大変心配した決議が上がっているわけですね。

 また、近くのノグチゲラ、ヤンバルクイナについては、「アメリカ海兵隊の管轄下に残された地域における軍用機のヘリパッド七カ所とそれらを結ぶ軍用道路の建設が、残存する最も重要な自然林地域において固有種の生息地の劣化を引き起こす危険があることを懸念する」と述べています。

 その上で、日米両政府に対して、生存の確保を助ける措置を講ずることを要請しています。

 この基地の移設先の重要な二カ所に、アンマンにおける国際自然保護会議の中で対策を講ぜよという勧告が政府に対して行われているわけですが、環境省は、まずこの決議をどのように受けとめておられるのか、そして、このアンマンの決議に基づいてどのような措置をとるおつもりなのか、川口大臣にお伺いしたいと思います。

川口国務大臣 まず、アンマンにおける世界自然保全会議の決議をどう受けとめているかという点でございますけれども、これは、沖縄の希少な野生生物に対する保護についての国際的な関心のあらわれだというふうに受けとめております。

 それで、この決議を踏まえて環境省としてどういうふうに考えるかということでございますけれども、まず、ジュゴンの保護につきましては、これは普天間飛行場の移設に伴うということでございますけれども、平成十一年の十二月末に閣議決定がございまして、その閣議決定を踏まえまして、ジュゴンを含む自然環境に著しい影響を及ぼすことがないように最大限の努力をするということでございましたが、それを踏まえまして最大限の努力がなされる必要があるというふうに認識をいたしております。

 環境省といたしましては、代替施設協議会において、このジュゴンを含む自然環境の保全の観点から適切に対処をしていく所存でございます。

 それから、全般的なジュゴンの保護についてということで申しますと、現在、文化財保護法や水産資源保護法で捕獲が規制されているところでございますので、環境省としては、さらにいかなる対応が必要かについて引き続き検討してまいりたいと思います。

 山原地域の保全に関してでございますけれども、環境省といたしましては、まず、国立公園として指定すべきであろうと考えまして、そのために必要な調査を実施いたしております。世界遺産への登録ということは、その次の課題だと認識をしております。

 それから、種の保存法に基づきまして、山原地域に生息をするノグチゲラですとかヤンバルクイナの捕獲を禁止するとともに、ノグチゲラについては保護増殖のための事業計画を策定する、それから、北部訓練場のヘリパッドの移設につきましては、これは防衛施設庁におかれまして自然環境の調査を実施しているということでございまして、さらにこれは調査を継続する方針と承っておりますので、環境省としても、必要に応じまして防衛施設庁に対して助言を行っていく所存でございます。

 以上です。

赤嶺分科員 ありがとうございました。

 ジュゴンの保護のために最大限の努力を環境省としても払っていきたいという答弁でございましたし、それから、山原の、生物についても、国立公園、世界遺産に向けての作業を進めるというお話でありました。

 ところで、今大臣が御指摘になりましたように、普天間基地の代替施設協議会でジュゴンの予備的調査というものを実施しております。三月六日にはその最終報告が出るやに伺っておりますが、その予備的調査というのはたった三カ月なんですね。三カ月、空から目視をして、そして海に潜って藻場を探してということなんですが、実は、最近非常に注目すべき二つの行動がアメリカの側から起こされています。

 それは、一つは、アメリカの政府機関である海洋哺乳類委員会、MMCと呼ばれておりますが、生息環境の悪化を懸念し、徹底した環境影響評価を国防総省や国務省に勧告したと報道されています。同委員会は、移設作業、つまり普天間基地の名護市への「移設作業は日本政府が行うにしても、作戦行動はアメリカ政府の行動である、少なくともこの点に関しては、大統領令に基づくアセスを作成する必要がある」、このように強調しているわけですね。より広い、より深い環境影響評価をやれと、アメリカは、自国政府にそのMMCは求めているわけです。

 そして、こうも言っているのです。「その結果、影響が大きいと判断された場合はどのような基準で移設計画を見直すか」と、移設計画の見直しまで踏み込んでこの調査をやるべきだ、このようにアメリカの政府機関が国防総省と国務省に勧告をしているわけですね。

 それで、環境省に改めて伺いたいわけですが、ジュゴン保護に関して現在防衛施設庁が行っている予備的調査、わずか三カ月ですよね。ジュゴンは赤ちゃんを産んで次の妊娠まで三年かかると言われていますから、わずか三カ月の調査で何を調べようとしているのかというのが、今の県内で起こっている疑問であります。

 そして、そういう予備的調査だけでいいのか、環境省としてそれなりのアセスというものを実施する考えはないのかどうか、このことについてもお伺いしたいと思います。

西尾政府参考人 御説明申し上げます。

 今、防衛施設庁の予備的調査のことにつきましての御質問でございます。これは御案内のとおり、代替施設協議会の第二回会合におきまして、名護市長からの要請を受けまして、同協議会の協議に資するための予備的な調査ということで実施されておるわけでございます。したがいまして、できる限りの範囲の調査というものであろうと思っておりまして、その調査結果はもちろんこの協議会の協議に資していくということになろうと思っております。

 しかしながら、この閣議決定におきましても、実際の事業に当たりましてはきちんとした環境影響評価をやっていくということでございますので、こういう予備的調査によりまして一つ協議会の検討を進め、さらに先には、環境影響評価をきちんとやっていくという手続になるものだというふうに理解しております。

赤嶺分科員 今のMMCはそういう勧告をしたのですが、実は国防総省も、世界に米軍基地を持っているわけですが、去年の三月に、海外環境基本指針文書というものを出しております。米軍基地の問題ではありますけれども、その当事国のアメリカで、環境保護団体は、事業実施に当たっての環境アセスではなくて、独自のアセスを行うよう求めているわけですね。事業が実施された後のアセスではないのだぞということを言っているわけです。

 さらに、国防総省は、これが二つ目の文書ですが、去年の三月十五日付でまとめられた、これはインターネットを通じて手に入れたわけですが、その文書の中に、「絶滅危惧種、受け入れ国の保護種とその生息地を保護、増強するための合理的措置をとる」、国防総省はこう述べているのです。

 その絶滅危惧種のリストの中に、日本列島の南部に生息をするジュゴンというのが入っているのですよ。すなわち、アンマンの会議を受けて、アメリカの政府機関である自然保護団体も国防総省もジュゴンに注目をして、本当に環境に悪い影響を与えないかどうかということを本気になって心配し始めているのです。

 それで、予備的調査が終わり、事業実施があって環境アセスということになると、当事国である日本政府としては情けないなと思うのですよ。独自の保護対策がとれないのか。ここは、防衛施設庁がどうあれ、ジュゴンを守るために、基地をつくろうとしているアメリカでさえこれだけの動きが始まっているのに、ジュゴンを保護すべき責任を持っている日本の国が、独自の見解なり対策なり保護対策を持たないということは、防衛施設庁にお任せということになると、環境省の基本が問われているのではないかなと思うのですよ。その点、環境大臣、いかがでしょうか。

西尾政府参考人 今先生御指摘のように、ジュゴンという哺乳類は非常に大事なものである、恐らくそのことにつきましては米国でも大変な関心を持たれているということを、私どもも拳々服膺していかなければならないことだと思っております。

 ただ、物事の進め方といたしまして、平成十一年十二月末の閣議決定におきまして、環境影響評価というものはやるのだ、こういうことになっています。今、その前の段階で、代替施設協議会におきましていろいろな検討をする中で、この予備的調査というものをやりました。その予備的調査に基づきまして、これを代替施設協議会の検討に役立てようということでございますので、私どもといたしましては、この予備的調査の結果を踏まえまして必要な意見を協議会の場で言っていくということにおきまして対処してまいりたいというふうに考えております。

赤嶺分科員 国際自然保護団体の決議というのは、指摘されている生物の生存とのかかわりで、基地の移設に関して重大な疑問や懸念を表明しているわけです。にもかかわらず、日本の政府のもとでは、既定の方針どおり、淡々とその地域に代替施設をつくる準備が進められている。三月六日には、予備的調査の結果がこの施設協議会に出されていくという点があるわけですね。

 私は環境大臣に、やはり環境保全のために、あるいは沖縄の自然環境の保護のために最大限の努力を払うということを先ほどおっしゃいましたけれども、たとえ米軍基地の問題であったにしても、環境省としての主体性を持ってジュゴンの保護の問題に臨むべきではないかなと思うのですよ。

 普天間基地の移設に関して言えば、代替施設協議会には、その構成員として環境省も参加しておられます。恐らく次の代替施設協議会で、ジュゴンの予備的調査の結果、私たちから見ればたった三カ月間の結果が報告されると思います。そのときに、環境省は、この代替施設協議会というのは自分たちの立場から積極的に物を言う場ですから、ぜひ環境省の立場を貫いて、沖縄のジュゴンの保護のために最大限の努力を払うと言われたその立場を貫いて、頑張っていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。

川口国務大臣 環境省が主体的に調査をするなりというお話がございましたけれども、調査あるいは環境影響評価ということでもそうでございますが、これは、物事の考え方といたしまして沖縄施設庁がやるということでございまして、環境省あるいは環境庁は、これに、必要に応じ適切に助言を今までしてきたところでございます。

 いずれにいたしましても、先ほど申しましたように、環境省は、平成十一年の十二月末の閣議決定に基づきまして、ジュゴンを含む自然環境に著しい影響を及ぼすことがないように最大限の努力が必要というふうに考えておりますので、このような立場から適切に対処をしていきたいと考えております。

赤嶺分科員 私は、今の日本政府の態度というのは、先進国として、一体自然環境に対してどれだけの知見を持っているからこういうやり方をするのかということが問われるのではないかと考えています。

 実は最近、IUCN海牛専門家グループの議長でありますヘレイン・マーシュさんが川口環境大臣にあてた文書というのを手に入れたのです。環境大臣も御存じだと思いますが、この中で、厳しく今の日本政府の予備的調査を批判しているのですね。このヘレイン・マーシュさんはこう言っているのです。

 「空からのジュゴンの目視調査は、」今防衛施設庁がやっているものですね。「(建設)計画に対するあなた方のアセスメントそれ自体に関して、役立つ情報を提供できるとは思われません。」無意味だと。

 私は、ジュゴンのごく僅かな数の個体群が沖縄に生息していることを証明するに十分な情報が、現在すでに得られていると信じています。かれらの生息域にはヘリポート建設予定地が含まれています。沖縄のジュゴンはおそらく世界で最も孤立した個体群です。ここでの問題は、日本人が、日本に住むこの非常に僅かな数の孤立したジュゴンの個体群の価値をどれだけ認めるかということです。

 基地に関連した生息場所の破壊は重大な影響を与える可能性がありますが、これは、包括的な環境影響アセスメントと、詳しい知識がなければ証明できません。私は、引き延ばしの方策として使われそうなジュゴンに対する局地的な調査をこれ以上続けるより、環境影響アセスメントを行うことの重要性を強く訴えたいと思います。

このように、IUCN海牛類専門家グループの議長がおっしゃっているのですね。

 つまり、ジュゴンに対して世界で一番知見のある人が、沖縄の海上基地建設に対して、ジュゴンの保全にとってどんな調査が必要かということを、川口環境大臣に意見として述べておられるわけです。

 私はぜひ、この点について受けとめて、予備的調査、そしてその後、事業開始後の環境アセスということではなくて、環境省として独自のジュゴンに対する調査を本格的に行う、そしてその種の保存について本格的な対策をとるということを、改めて要望申し上げるものですが、いかがでしょうか。

川口国務大臣 今の御質問にお答えする前に、先ほど私、防衛施設庁と申し上げたつもりで沖縄施設庁と言っていたようでございますので、訂正をさせていただきます。

 それから、今の御質問についてでございますけれども、環境影響評価というのは平成十一年十二月末の閣議決定で実施するということとされておりますので、その実施に当たりましては、環境省としても、代替施設協議会での議論を踏まえまして必要な助言を行う等をしまして、適切に対応していきたいというふうに思っております。

 それから、繰り返しになりますが、環境省としては、この閣議決定に基づいて、ジュゴンを含む自然環境に著しい影響を及ぼすことがないように最大限の努力が必要と考えておりまして、このような立場から適切に対処をしていきたいと思っております。

赤嶺分科員 私、以前にもジュゴンの問題で環境省に質問をしたことがあります。そのときの環境省の答弁は、実はジュゴンについて、特に沖縄で生息しているジュゴンについて、日本の環境省は知見は持ち合わせていないんだ、ジュゴンの民間の専門家や学者がいろいろ研究している資料はあるけれども、環境省としての知見は持ち合わせていないんだというのがお答えだったのです。

 それで、その後に三カ月間の予備的調査があるわけです。ですから、環境省として知見も持たないまま、三カ月の予備的調査で事業開始に至った場合に、これは、日本の政府は環境問題をどのように考えているんだということで世界の人たちから笑い物にされ、そして厳しい指摘を受けるだろうと。やはり私は再々度、環境省として、世界に誇れるようなジュゴンの調査を本格的にやるということを求めて、時間の関係がありますので、次の問題に移りたいと思います。

 次は、赤土汚染の問題です。

 これも沖縄本島や石垣島等で非常に深刻な問題になっておりますが、復帰後の大規模な土地改良事業、それから米軍基地などから発生する赤土の流出で、沖縄の美しい青い海、そして白い砂浜が汚染されて、大きな問題になっています。特に、沖縄本島北部地域と八重山地域では赤土汚染が深刻な問題になっています。

 赤土流出の主な原因は、沖縄の土壌や気候、地形など風土が本土と異なるのに、土地改良事業を本土と同じように、分割せず一気に行ってきたことや、赤土がU字溝に流れるような本土の設計基準で行ってきたことにあります。

 時間がありませんので質問をはしょりますけれども、実は昨日、石垣市でこの赤土対策に国営事業の導入をということで市民大会が持たれました。これは、決して赤土で海が汚されたことについて国だけが責任があるというような言い方はしていないところに特徴があります。実は石垣市だって、土地改良事業に意見を言う機会があったにもかかわらず赤土汚染をなるがままに任せてしまった、そういう悔いの念も持ちながら、そして、本格的に赤土について国、県、市で調査をする研究所をつくってほしいとか、あるいは、赤土から海を守る条例もつくられはしたんだが予算が伴わなかったためにその赤土汚染防止対策は十分ではなかった、それで、改めて石垣市などでは赤土汚染防止について国営事業を導入してほしい、きのうの市民大会でこのような決議を上げております。

 そして、もう一つは、沖縄の振興開発計画というのは、第三次がことしで終わります。ところが、沖縄の振興開発計画の中心的な産業というのは、観光・リゾート産業であるわけですね。海が赤土で汚されてしまったら、本当に、沖縄のポスト三次振計、振興開発計画の一番の目玉が崩れることになるわけですから、沖縄の振興開発に責任を持っている政府としても、これは観光・リゾートの上でも環境を守るという意味で大事な問題として位置づけていく必要があると思います。

 ですから、環境省の沖縄における赤土汚染の受けとめ、それから、政府自身も沖縄の関係者と力を合わせて総合的、抜本的な対策を、今沖縄県には防止条例があるんですが、あれでは不十分なので、抜本的な対策を特に沖縄振興開発計画の中に大きく位置づける。これは沖縄担当相もあるわけですが、そういう位置づける振興開発計画の中に、環境省としては、ぜひ赤土問題を大事な問題として、国の施策として取り入れていただくような努力をやっていただきたいなと思いますが、いかがでしょうか。

川口国務大臣 沖縄で赤土の流出の問題が非常に大きな問題になっているということは承知をしておりまして、写真も見たことがございます。これが、沖縄が自然環境を生かして観光業ですとか水産業で発展していく上で非常に問題だということはよく理解をいたしております。

 環境省は、関係府省それから沖縄県と連携をいたしまして、こうした状況にかんがみまして、平成九年度に、赤土流出の現状ですとか必要な対策についての調査報告書を取りまとめたところでございます。

 この報告書を受けまして、環境省といたしましては、内閣府や沖縄県と連携をしまして、一つは人工衛星を活用した赤土の流出状況の把握手法の開発、それから農地での赤土流出防止のための植栽の実証調査、それからモデル流域における赤土流出防止対策の効果の調査といったものを実施してまいってきております。

 赤土問題というのは大きな問題だと思っておりますので、今後とも赤土流出防止のためには鋭意取り組みをしていきたいと思っております。

赤嶺分科員 ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 それでは、もう時間がありませんので、最後の質問を……

北村主査 時間が来ておりますので、短くやってください。

赤嶺分科員 はい。

 沖縄は、二〇〇〇年の全国自治体別の面積の増加率が全国一なんです。それは、沖縄の自然海岸が埋め立てられて面積の増加率が一番になっているのです。今、沖縄市の泡瀬地域という干潟が、国の港湾開発事業の土砂の捨て場として埋め立てが始められようとしております。既に事業認可も受けているわけですが、この問題にも強い関心を持っていただいて、取り組みをお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

北村主査 これにて赤嶺政賢君の質疑は終了いたしました。

 次に、阿久津幸彦君。

阿久津分科員 本日は大臣に貴重なお時間をちょうだいいたしまして、本当にありがとうございます。私は、民主党の阿久津幸彦でございます。

 二十一世紀を迎え、今私たちは大きな歴史的転換の時期にあるというふうに考えられます。二十世紀は戦争と経済成長による環境破壊の世紀でした。公害や環境汚染、自然破壊、また歴史的文化遺産や町並みの破壊は、取り返しのつかない損失をもたらし、私たちの価値観を根本から覆しました。

 このことにいち早く気づいた欧米諸国では、現在、公共事業あるいは公共政策の概念そのものが変わりつつあります。都市の伝統のあるヨーロッパ諸国では、自然と町並みを生かした地域再生が公共政策の中心になっています。またアメリカでも、ダムを壊し、一度真っすぐにした川を再び蛇行させるなど、自然復元の事業が始まっています。まさに今、私たちは環境破壊の世紀から環境再生の世紀への転換の中にいるのです。

 私は、現在国土交通委員会に所属をしております。以上のような問題意識から、すなわち、私たちの価値観の変化に基づき日本における公共事業も全面的な再検討が必要であると常々考えております。

 今回、この予算委員会分科会で質問の機会を与えられました。そこで、川口順子環境大臣に、これからの環境行政と公共事業の関係について質問をさせていただきたいと思います。

 まず初めの質問なんですが、我が国では、今回の省庁再編に伴い環境庁が環境省として新たに出発することになりました。環境省が環境再生の世紀にふさわしい役割をこれから果たしていくことに、国民は大きな期待を寄せております。環境というものは、本来総合的な性格を持っています。これまでも環境庁は省庁間の総合調整や他省庁への勧告権といった権限を持っていました。しかし、これからは省として、ほかの省庁と少なくとも同格の立場になったわけですから、縦割り行政の弊害を克服するさらに大きな役割が期待されます。

 そこで、まず初めに、総合的な環境行政を展開していく上での大臣の決意を伺いたいと思います。

川口国務大臣 環境問題というのは、国民生活のあり方あるいは社会の仕組みにかかわる大きな問題でございまして、身近な公害問題ですとか廃棄物の問題から、地球環境、地球レベルの問題まで、さまざまな広がりを持っている問題だと思っております。

 そういった大きな広がりを持つ問題への取り組みというのはまさに総合的に行われなければいけないと思っておりまして、政府の機構が一月六日に変わった中で、多くの省庁が合併ということになった中で環境庁が環境省に格上げをしていただいたというのは、まさに国民の方々の、そういった環境問題が二十一世紀に重要であるということの認識があらわれているというふうに思っておりまして、皆様の期待に沿うように、職員一同とともに全力を挙げて取り組んでいく所存でございます。

阿久津分科員 そこで、お伺いをしたいのですが、環境庁から環境省になったということで、権限ももちろんそうですし、役割もそうですし、何よりも国民からの期待が大きくなったわけでございます。そこで問題になってくるのが、公共事業とのかかわりの問題だと思うのです。

 近年、環境保全の視点から公共事業のあり方が問題となっております。公共事業を行うに当たり、環境省が果たすべき役割とは何か、お答えいただければと思います。

川口国務大臣 環境基本法十九条では、国が環境に影響を及ぼすと認められる施策を策定、実施するに当たっては環境保全に配慮しなければならないというふうにされておりまして、公共事業の実施と環境保全上の配慮ということで申しますと、基本的には事業所管官庁が適切な環境保全上の配慮を行っていくということだと考えております。

 それで、環境省といたしましては、このような事業を行われる者による環境保全上の配慮が適切になされますように、関係の省庁に対しましては、各種の公共事業の整備計画案の協議の機会等に保全上の配慮をすることを要請いたしてきております。

 それから、規模が大きくて環境影響が非常に大きいもの、そういうことになるおそれのある各種の開発事業につきましては、環境影響評価法等に基づいて審査を行いまして、事業に係る環境の保全については適正な配慮がなされるように意見を申し上げたりということでやっております。

 今後とも、環境保全は二十一世紀にかけて非常に重要な課題であるということを認識しまして、全力で取り組んでいきたいと思っております。

阿久津分科員 今、環境影響評価法についてお話があって、これは平成九年六月に制定されて、十一年六月から実施されているのだと思うのですけれども、これ以前にもう既に行われている公共事業については、この法律は、うまく適用するみたいなことはできるのでしょうか。

川口国務大臣 法律の前には、閣議によってアセスという制度がございまして、そういうことによってやっているということでございます。さかのぼらないということです。

阿久津分科員 確かに、閣議によってやっていたのは私も存じ上げているのですけれども、環境影響評価法によって、今までの閣議によるだけのチェックとは大分違ってきたというふうに思っているのです。例えば、今までは調査の結果にしか意見を言えなかったけれども、方法についても意見が言えるようになったり、それから技術内容の部分でいえば、生態系などの部分についても評価できるようになったわけなんです。

 そうすると、もう一回再申請、例えば今行われている公共事業について、法律がないときはできなかった、閣議だけで決められて、それでは不十分で適用ができなかった部分について、環境アセスを再要求する、そういうことはできるのでしょうか。

川口国務大臣 事業認可が行われているものについては、もう始まっているということでございますので、再申請をするということはできないと思います。

阿久津分科員 そうすると、既に始まっている公共事業について、これから環境の部分で何ができるのか。これからちょっと細かく伺っていきたいと思うのですけれども、公共事業で問題があるというとまず頭に浮かぶのが、諫早湾の問題だと思います。

 有明海のノリ養殖被害は諫早湾の干拓が原因というふうに言われておりますけれども、大臣はこの問題に関してどのようにお考えでしょうか。

川口国務大臣 有明海のノリの不作の問題については、原因につきましては今さまざまな考え方が、あるいは意見があると承知をいたしております。諫早湾の干拓の問題というふうにおっしゃられる方もありますし、そうではなくて別なことであるとおっしゃっている方もいると認識をいたしております。

 いずれにいたしましても、今度のノリの不作問題につきましては、これは過去最大の非常に大きな問題でございますから、谷津農水大臣もおっしゃっていらっしゃいますように、徹底的にその原因の究明をまずするべきであるというふうに思います。予断を持たずに調査をするということが大事だと考えております。

 環境省といたしましては、現在有明海全体の水質モニタリング等を行っておりますが、それに加えて、今年度、底質や底生生物等の項目についても緊急に補足調査を始めたところでございます。

 それで、平成十三年度からは、水産庁によるノリ不作の原因究明を目的とした調査が実施されるとともに、環境省も含めまして、有明海の海域環境についての調査、これは総合的な調査が実施されるということになっておりますので、有明海の環境の保全、それから有明海の環境の改善という観点から適切に対処をしていきたいと思っております。

阿久津分科員 そうしますと、ちょっと確認なんですけれども、農林水産省と環境省、合同ではないのかもしれないんですけれども、それぞれ徹底的に究明していく、調査していくというふうに御理解してよろしいんでしょうか。

川口国務大臣 政府の関係各省が連携をいたしまして、徹底的に、予断を持たないで原因の究明を行っていくということでございます。

阿久津分科員 それで、その結果によって、その結果次第では水門をあけるという勧告を出す可能性はあるんでしょうか。

川口国務大臣 これは、谷津農水大臣と私、全く同じ意見でございます。第三者委員会というのがございまして、実はこの委員会の中のメンバーには環境省から推薦を申し上げた方も入っていらっしゃいますけれども、その委員会において、水門をあけてさらに調査をする必要があるということでございましたら、それはそういうことをする必要があると考えております。

阿久津分科員 どうもありがとうございます。

 それで、今のは、結果次第によっては水門をあけて調査をするわけですけれども、その上で、もう水門をあけてしまえという勧告を出す可能性もあるというふうに理解してよろしいんでしょうか。

川口国務大臣 まず調査の結果を見たいというふうに思います。

阿久津分科員 ありがとうございます。

 それでは、次の質問の方に移らせていただきたいと思います。

 私の地元は八王子なんですけれども、八王子には圏央道が走っておりまして、その圏央道の建設が国家プロジェクトとして進められております。多摩地域において、圏央道は南北の新たな幹線道路、いわゆるベルトウエーとして、周辺道路の渋滞緩和や利便性の向上が期待されているわけなんですけれども、一方、この圏央道建設の一環として、東京都唯一の国定公園であります高尾山に二本のトンネルを掘る計画がございます。そのため、高尾山の自然を愛する市民の皆さんからは、長年にわたって圏央道建設反対の運動が続けられてきまして、現在、工事の差しとめを求める自然の権利訴訟も行われております。

 道路建設により便利になることと、東京に残された貴重な自然を守ること、この二つをどう折り合いをつければよいのか、難しい問題がそこにあるというふうに私は思っているんですけれども、そこで、圏央道建設と高尾山の自然環境保全についてお伺いをしたいと思います。

 まず初めに、ちょっと唐突なんですけれども、大臣は高尾山に登ったことがありますでしょうか。

川口国務大臣 多分二回ぐらい登っていると思います。

阿久津分科員 大臣が登ったことがあるということで、高尾山のよさについてはよくおわかりだと思うんですが、高尾山は国定公園ということで東京都から指定されておりまして、自然環境や貴重な動植物、景観、レクリエーション、アメニティーなど、多様な価値を有する都民の財産であります。

 大臣は、この高尾山の価値をどのように考えていらっしゃいますでしょうか。

川口国務大臣 高尾山は、多分この地域、東京やその近辺で小学校時代を過ごしたことのある人間でしたら必ず登ると言っていい、非常に親しまれている山だと思います。それから、登るルートも幾つかあって、体力に合わせて選べるというようなこともありまして、そういう意味でも非常に親しみやすい山でございますし、それから、高尾山一帯がアカマツですとかイヌブナ等の天然林で覆われていて、多様な植物や昆虫が生息をしているという意味でも、いい、重要な山だというふうに思っております。

阿久津分科員 今大臣御指摘のとおり、高尾山は、わずか七百七十ヘクタールの区域に、自然林のブナを初めとする千三百種の植物、五千種の昆虫、百五十種の野鳥が生息しておりまして、ブナとかカシの樹木がすみ分けているという、世界でもまれな生態系を有している大変貴重な自然だと考えております。

 それで、東京都民にとって、もちろん八王子市民にとってもそうなんですけれども、特別な意味のある憩いの場ということで、今圏央道の部分で問題となっているのは、高尾山にトンネルを掘って果たして高尾山の自然が守られるのかどうか、そこが大きな問題になっているんです。

 そこで、高尾山と自然環境保護の部分について少し伺いたいと思うんですけれども、かつて、中央道ができたことにより、高尾山の自然や種の多様性に影響があったと言われております。例えば、これは正式なデータではないのかもしれないんですけれども、日本野鳥の会が毎週東京支部で調査を行っているんですけれども、この調査によれば、中央道ができたことによって、鳥の種類が先ほど申し上げた百五十種類から百種類ぐらいに減ったというデータもあるんですね。

 そこでちょっとお尋ねをしたいんですが、環境省として何か定量的なデータを持っていらっしゃいますでしょうか。

西尾政府参考人 御説明します。

 自然の現況につきまして、環境庁、環境省でどういうふうに把握してデータを持っているかというお尋ねでございます。

 環境庁発足後の昭和四十八年度から、おおむね五年ごとに、我が国の自然環境の基礎的資料の収集ということを目的といたしまして、自然環境保全基礎調査、これはいわゆる緑の国勢調査ということで親しまれております。これは私ども非常に基本的な調査として実施しておりますが、この中で、高尾山周辺につきましても、その植生でございますとか、それから動物の分布でございますとか、あるいは、五年ごとにやっておりますので、その間の植生などの変化状況、変化率といったようなものがどういうことかということの把握はいたしてきておるわけでございます。

 しかしながら、先生御指摘の、中央道のこの箇所が開通をいたしましたのは昭和四十三年のことでございまして、これは私どもの庁が発足して調査を始める前でございますので、これをその開通前にさかのぼって、そのときの自然はどうだったかというようなことにつきまして把握、比較するというような資料は、残念ながら持ち合わせておりません。

阿久津分科員 この基礎調査なんですけれども、これは定点調査みたいな形をとっていらっしゃるんですか。だとしたら、東京でどのぐらい調査点があるんでしょうか。大体で結構です。

西尾政府参考人 この基礎調査につきましては、いろいろな内容のものがございまして、幾つかの自然の対象について分かれておりまして、代表的なものは植生調査、今先生が御指摘になりましたように、あのところは、一方では広葉樹があって片方では落葉樹があって、そういうものが一緒になっているというふうなことでございますが、そういうものにつきましては、各五年間のクールごとに全国の植生図を全部つくっております。したがいまして、それらは、重ね合わせて変化を見ることができるような調査を実施いたしておるところでございます。

阿久津分科員 そうすると、定点数というのはわからないんですか。大体で結構なんですが、もしデータがございましたら。

西尾政府参考人 点数という表現の仕方がちょっと、うまくお答えできないので申しわけございませんが、植生につきましては全国の地図の上に落ちておりますので、全国の地図の中に、どういう種類の植生があるかというのはわかるようになっております。点というよりは、もうそれは図形で表示ができております。

 それから、動物などにつきましては、例えば、こういうところでございますと、タヌキでありますとか、そういった小動物がおります。そういうようなものは、どこにいるかということをそれぞれのときに調べて、プロットしておるというようなことでございます。

 したがいまして、そういう調査は、どこかの定点で見張っていてというよりは、メッシュに切って一定の方法で歩いてみて目視で確認をするとか、そういう専門的な方法でやっております。

 調査の大体のイメージはそういうことでございますので、点数でストレートに単純化してお答えできないことを御容赦ください。

阿久津分科員 これは、環境省さん、今一生懸命その調査をやられていると思うのです、そういうデータを集めていると思うのですけれども、もうやられているかもしれないのですが、NPOを使っていろいろなデータを集めたらいいのじゃないかというふうに私は思っております。民間とか、いろいろな専門家もいらっしゃいますので、ぜひそういう知恵を使っていただきたいな、そしてよりよい環境をウオッチングするネットワークをつくっていただきたいというふうに思っております。

 次の質問に移らせていただきます。

 大気汚染や騒音などの環境基準は、東京の都心部でも高尾山でも同一であるというふうに聞いたことがあるのです。このことは日本における環境行政の立ちおくれをあらわしているというふうに思うのですが、いかがでしょうか。

松本政府参考人 大気汚染あるいは騒音による環境基準の件でございますけれども、まず、環境基準は、環境基本法の第十六条第一項の規定に基づきまして設定をするということになっているわけですが、大気汚染の環境基準と騒音の環境基準は若干視点が違います。

 まず、大気汚染の環境基準は、人の健康を保護する上で維持することが望ましい基準ということで定められているわけでございます。したがいまして、この環境基準は、その目的に照らしましても、人が生活し得るすべての場所にむしろ一律に適用されるべきものでございます。地域によって人の健康影響に差があるというのはむしろおかしいということになるわけでございまして、全国一律の基準で大気汚染の環境基準は設定されているということでございます。

 一方、騒音に係る環境基準につきましては、生活環境を保全し、また人の健康の保護に資する上、直接的な健康保護そのものではなくて資する上で維持されることが望ましい基準ということで設定されているわけでございまして、この騒音に係る基準は、地域の居住状況などを考慮いたしまして、地域の類型ごとに基準値を設定する、こういう形になっております。そして、都道府県知事が各類型を当てはめる地域を指定する、こういう仕組みになっているわけでございます。各地域の状況に応じて人の生活環境を保全するという観点からはこういう仕組みが適当なのではないかと考えられるわけでございます。

阿久津分科員 おっしゃることはよくわかるのですけれども、いずれも、人というか人の健康というものが、精神的な部分も含めて基準になっているのだと思うのです。それはそれで結構なんですけれども、もう一歩踏み込んでいただきまして、動植物や自然環境そのものに与える影響を考慮した、より厳しい環境基準の体系を検討すべきではないかというふうに私は考えております。これは感想程度なんですけれども、今後、より厳しい環境基準を、いろいろなバランスを考えながらぜひつくっていっていただきたいというふうに考えております。

 それで、そろそろ時間が迫ってきましたので、圏央道の建設の問題について、直接の問題についてお話を伺いたいと思うのです。

 先ほども申しましたが、高尾山のトンネル工事により、大気汚染や地下水系の破壊による生態系の変化が懸念されております。現在、高尾山の隣にある八王子城跡のトンネル工事が進められていますが、この工事が行われるようになってから、八王子城跡にある古井戸の水がれが起きるようになったと聞いております。同じように、高尾山にトンネルを掘ることによって地下水位が下がり、植物に悪影響を与えるおそれがあるわけでございます。

 もちろん、工事に当たっては、国は事前に調査を行い、作業も環境に十分配慮して行っていると信じますが、しかし、自然は我々が考える以上に複雑なメカニズムを持っていますし、大変ナイーブなものだと思っております。

 かつて、私は石原慎太郎代議士の秘書をしておりました。そのとき、長良川河口堰の問題で当時の建設省からいわゆるレクがございまして、私は秘書としてそのレクを聞いたのです。もう十年以上前の話ですけれども、そのとき建設省のレクを聞いている限りでは、こんなに環境に配慮した優しい河口堰はない、お金もすごく使っている、絶対に動植物に被害は与えないんだ、魚も十分に上っていくことができる、そういう説明を受けたものですから、私は、そのような内容だから大丈夫だろうというふうに考えて、そのような報告を当時の私のボスでありました石原慎太郎代議士に上げたのです。

 私は、十年以上経て、衆議院議員に当選をさせていただいて、長良川河口堰を見に行ったのですね。実際に話を聞いてみると、やはり全然違うのです。実際に話を聞いてみると、あるいは見てみると、当時建設省が言っていた話とは全く異なって、私が見た限りでは、もうアユはこのくらい、十センチ未満にしか育っていなかったし、河口堰ができたことによってよどみができてしまって、やはり生態系を破壊してしまったのだと思うのですけれども、大きなサクラマスがもうとれなくなってしまった。当時の環境アセスとか配慮の中で、よどみについての配慮みたいなものはなかったと思うのですね。これは、私にとっては、実体験としてある意味ですごく恐ろしい部分の、環境に対してはよほど配慮しなくちゃいけないんだなという一つの経験になっているのです。

 先ほど申し上げました諫早湾の問題についても、山下さん、もう亡くなられた、反対をずっとされていた方ですけれども、山下さんはもう口が酸っぱくなるくらい、干拓が進んでしまえば干潟が失われて、海水を浄化する微生物が死んでしまう、大きな環境変化が起こる、これは大変恐ろしいことで何が起こるかわからないよと、再三農林水産省に忠告をしていたそうです。そして、大丈夫だといってやってみたら、ノリが壊滅的な被害を受けることになった。これはまだ一つの問題だと思うのですね。

 こういう経験を踏まえて、高尾山のトンネル工事についても、環境破壊の懸念を取り除くために国は万全の策を講じるべきだと思うのです。環境省としてとるべき具体的対策の内容、及び大臣としてそれに取り組む決意を伺いたいと思います。

川口国務大臣 環境保全と人間が生きていくために必要なさまざまな活動をどういうふうにバランスをとるかというのは、本当に一般論としても非常に難しい問題だというふうに思っております。

 それで、お話の圏央道建設ですけれども、これは平成元年にアセスメントの手続が終了いたしておりまして、したがいまして、アセス法以前の時代の話でございまして、事業主体である、これは国土交通省でございますけれども、ここが環境に配慮をしながら適切に工事を進めていただけるというふうに思っております。

 それから、高尾山のトンネルを含む国定公園の中、これは国定公園ですけれども、中での工事の実施に当たりましては、国土交通省から東京都に対して自然公園法に基づく協議が行われるということになっておりまして、東京都において自然公園法の趣旨に即して適切に判断をなさるというふうに認識をいたしております。

 それで、環境省は一体どうするのかという御質問でございますけれども、環境省は、自然環境を保全する、その保全を推進するという立場から、注意深く見守って、東京都から相談があれば積極的に協力をしていきたいというふうに考えております。

阿久津分科員 最後に一言だけ申し上げます。

 大臣、見守っているだけでは変わらないと思うのですね。今、庁から省になって国民が望んでいるのは、大臣が大臣に就任したときにおっしゃった、嫌なものは嫌と言える環境省を目指すという、その意気込みだと思うのですよ。それをぜひ発揮していただきたい。事業主だけに任せていたのでは、いつまでたっても環境はよくならないのです。環境省は非常に可能性のある省だと考えております。昨日も、いわゆる質問取りで、若い環境省の職員の方々が私のところに見えてくれました。話してみますと、非常に目が輝いていて、ある種期待を持ちながら、ただ不安というか、どこまでやっていいのかな、他省庁のところまで入っていっていいのかな、そういう遠慮がやはりまだあるのですね。

 私は、いいところ、悪いところがあると思うのですけれども、石原慎太郎都知事にしても田中知事にしても、ある種乱暴な部分というのが時代を先取りして変えていくには必要なんだと思うのです。三番瀬のときに、大臣がちょっと自分の意見をぴしっと言ってくださっただけで、あれだけ反響があった。ファクスも私はたくさん読ませていただきました。

北村主査 持ち時間が終了しておりますので、質疑はおとめいただきたいと思います。

阿久津分科員 そういう勇気を持って、せっかく民間から登用された大臣ですから、頑張っていただいて、環境行政をリードしていただきたいと思います。

 どうも失礼いたしました。

北村主査 これにて阿久津幸彦君の質疑は終了いたしました。

 次に、塩川鉄也君。

塩川(鉄)分科員 日本共産党の塩川鉄也です。

 私は、きょう、栃木県宇都宮市にあります大谷石の採掘跡の問題について質問をいたしたいと思います。この問題を取り上げますのは、この地域における抜本的な採掘跡の陥没対策が求められているということ、また、この採掘跡が産廃の埋め立ての場所になっているという産廃問題、こういう角度で取り上げてみるつもりであります。

 私は、現地に足を運びまして、栃木の県庁所在地の宇都宮にこんなところがあるのかと大変驚きました。やはり放置はできない、政治がふさわしい責任を果たすべきだと痛感をしたわけであります。

 大谷石というのは、栃木県宇都宮市の大谷地域特産の、火山活動によって生まれた凝灰岩でできた石材であります。やわらかくて加工がしやすく、石特有の冷たさもない、その上耐久性にもすぐれているということで、倉庫や工場などの建築用材に使われたり、また石塀や門柱、畑の土どめなどにも広く使われてまいりました。

 栃木など北関東に伺いますと、大谷石でできた立派な蔵がたくさん見受けられます。古くは奈良時代に、国分寺建立の際の土台に使われていたということで、江戸時代には既に、隅田川沿いに大谷石の問屋が十六軒もあったそうであります。旧帝国ホテルが、アメリカの建築技師ライト氏の設計により、この大谷石の使用によって建築をされて、これが関東大震災のときにその耐火性、耐震性が認められて、一躍声価を高めたと言われております。

 この大谷の地域というのは、観光地としても知られております。むき出しの白い岩肌ですとか、また垂直に切り取られた岩壁などにも特徴がありますし、ここでの日本最古の磨崖仏のある大谷観音ですとか、あるいは高さ二十七メートルの手彫りでつくられた平和観音、大谷の平和観音と言われているもの、また地下の採掘場跡を利用した大谷の資料館など、かつては遠足や修学旅行の定番コースにもなっておりました。私の住まいのある埼玉は、小学校六年生のときに日光の修学旅行の途中では必ず寄る、こういうような場所だったわけであります。

 しかし、今ではすっかり修学旅行のコースから外れてしまいました。そのきっかけとなったのが、十二年前の八九年にありました大陥没の事故であります。一九八九年二月十日、採掘場の廃坑が直径七十メートル、深さ三十メートルにわたって陥没をし、巨大な穴があいたわけであります。事故があった時刻というのは午前八時四十分で、わずか十五分前には小学校の子供たち十五人が、何も知らずにこの廃坑の上の通学路、宇都宮市の市道を通って学校に行った、そういうタイミングだったわけです。まさにあわやというところでした。

 これまで、記録に残っている一九五二年以降だけでも、六十件以上の陥没事故が発生していると聞いております。そういう中で、三十二人の方が犠牲となられております。一番最近の例では、一九六二年ということですから、一昔前ということでありますけれども、このときも三人の方が亡くなられております。その中には、お父さんにお弁当を持って運んでいく途中の中学校一年生の女子生徒もあったそうであります。

 八九年のこの大陥没以降も、九〇年、九一年と大陥没が続いて、九七年、九八年にも陥没があり、この十年間で計九回陥没事故が起こっております。特に昨年の場合は、陥没とは違って、ずれ込みと言われる、かつて穴があいたところを埋めたところ、この埋め戻したところが沈んでしまう、こういった事例というのがたくさん起こりまして、大谷というのが、昨年のこのずれ込みがテレビで広く報道もされる、改めて何か大変危ないところじゃないか、こういったことが多くの方の声にも上るような場所として定着をしてしまっております。

 今必要なことは、国民の命と安全を守る対策をとることであり、そのためにも、この鉱山、廃坑跡をきちんと埋め戻す対策をとることが必要だと思います。これは、大谷の石材組合の理事長さん自身も、今一番求められているのは埋め戻し対策だと強調をしているわけです。何よりも、この現場の危険性の認識というのが現状打開の出発点だと思います。その点で、今の私の訴えをお聞きいただいての大臣の率直な感想を、まず最初にお聞きしたいと思います。

川口国務大臣 私は現地に行っておりませんので、今委員がおっしゃったお話を伺ってということですけれども、これは、所管からいえば環境省の所管ではないので、申し上げるのは環境大臣としてのコメントではないということで申し上げさせていただければ、地元の方にとっては、本当に一刻も早く安全の確保ということが大事だと思われるであろうというふうに思いました。

塩川(鉄)分科員 この間の陥没の問題について、政府としてどのように考えているのか、一言お願いしたいと思います。

広田政府参考人 平成元年に起きました陥没事故を契機といたしまして、栃木県の方で大谷石採取跡地陥没事故対策委員会が設置をされました。私どもも、当時は通産省でございましたけれども、参加をいたしまして、その後の対策について検討を一緒に行ったところでございます。

 その結果、まず何はともあれ実態を県と調査することが必要であるということでございまして、国におきましても、岩石資源調査という調査を実施してきたところでございます。また、県のこの問題への対応を円滑に図るため、大谷石採取場跡地安全基金という一つの対策の基金が設けられることとなりまして、当時の通産省でございますが、この県の基金の出捐に対し約七億五千万の補助を行う等、対処してきたところでございます。

 こうした措置を通じ、地元の自治体の危険の排除の取り組みを私どもは支援してまいったところでございますけれども、現在も、関係の自治体の方々それから学識経験者の方々の参加によりまして、大谷石採取場跡地安全対策協議会というのが開催されております。これには、私ども経済産業省の方も、地元の経済産業局あるいは本省の担当課が参加をするということで、地元の自治体と連携をとりながらこの問題に対応しているところでございます。

塩川(鉄)分科員 私は、この間、国の皆さんのお話もお伺いしましたし、県や市や業者の方からもお話を伺って、率直に言って、国も県も業者も、いわばこの責任の所在をあいまいにするような状況にあるのじゃないか、そのもとで今までこういう現状が放置をされてきたのじゃないか、こういう思いを大変強くしております。

 大谷石など採石業を扱う採石法、この法律では、一九五〇年の法制定以前についての責任の所在があいまいであります。また、この採石法自体が、前提として露天掘りを想定した体系であって、大谷石のように坑内掘り、立て坑でさらに横に掘っていく、こういった掘り方を想定していないという問題もあると思います。大谷石の採掘跡の埋め戻し対策について、より踏み込んだ対応が必要ではないかと思います。

 その点で、炭鉱や金属鉱山などの対策が参考になるのではないか。例えば、金属鉱山に係る休廃止鉱山に必要な鉱害防止事業、こういうものがありますけれども、これでは、既に廃止された鉱山で業者がいないような場合に、坑口、鉱山の入り口をふさぐといった対策に国が補助金を出して地方自治体が実施をする、こういった取り組みもあります。また、臨時石炭鉱害復旧法に基づき、沈下の鉱害や局所的な陥没鉱害に対して、地盤のかさ上げや埋め戻し対策を行っております。こういう事例に学んで積極的な対策がとれないか、この点についての政府の見解をお伺いします。

広田政府参考人 現行の採石法では、これはもう先生にはある意味では釈迦に説法でございますけれども、業者の登録あるいは採取計画の認可に際しまして、いろいろな問題が生じないように所要の措置を講じているところでございます。

 そこで、先生の御指摘は、この法律の制定以前の問題ということでございますけれども、過去の採掘に関しましては、採石法による採石が、土地所有者またはこの土地所有者との契約により採石権を設定した者により行われる、こういう基本的な考え方に立ちまして、土地所有者等の当事者がその責任において対応するものというふうに理解をいたしております。

 今先生が具体的に御指摘のございました臨時石炭鉱害復旧法あるいは金属鉱山にかかわる休廃止鉱山の鉱害防止の補助金でございますけれども、これらはいずれも、土地の所有権とは別に、国によりまして鉱業権というものを設定し、その鉱業権が設定された地下の上の部分といいますか、土地の所有権とは別にそういった権利が認められているものでございまして、採石権とは性格を異にするものというふうに考えております。

塩川(鉄)分科員 性格を異にしているのを前提としての質問ですけれども、私は、現状としてそういう枠組みが不十分なためにこういう実態が長らく放置をされているのではないか、そのために必要な対策に知恵を出すべきじゃないか、このことをぜひとも訴えたいと思うのです。

 何よりも大切なことは、国民の命と健康、財産をしっかりと守ることでありますし、この立場での取り組みを強めることであります。改めてこの機会にこの検討とか研究をする、こういう立場での取り組みをお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

広田政府参考人 先ほどのお答えの中でも少し触れましたけれども、平成元年の陥没事故を契機といたしまして、直ちにこの対応をするということで、県の方でも安全基金を設立されたわけでございまして、それに対して、平成元年の国からの支援ということで、当時の通商産業省も県に対する補助金を交付したところでございます。

 こうした基金を利用いたしまして、この地域の危険予知に関するいろいろな観測システム、こういったものも今整備されております。そうしたシステムを通じながら、この危険に対応していくことが必要であるというふうに考えております。

塩川(鉄)分科員 私、改めて対策が必要だと思いましたのは、昨年一年間でのずれ込みの問題なんです。一度埋め戻したところが沈み込んでしまう、こういう事例が相次ぎました。例えば、民家の庭先に、東西十二メートル、南北八メートル、深さ十メートルの穴が突然あいてしまうわけですね。また、ずれ込みのあった場所というのは、資材置き場として使われていたり、民家の庭先だったりしているわけです。巡回点検をする消防や県や市の車を駐車していたそういうスペースがずれ込んで、二十メートルも沈んでしまった、こんなことが相次いでいたわけです。

 こういう場所というのは、かつて鉱山として掘った場所です。埋め戻してあるわけです。三十年前、五十年前に埋め戻したところがこのように沈んでしまうわけです。改めてしっかりとした安全対策が必要ではないか。こういう立て坑、縦の穴、廃坑になっているものだけでも二百七十カ所もあるそうです。

 今お話にあったように、基金などを活用して地震計の設置によりまして、陥没の事故についてはかなり事前に予測がつくような、こういう取り組みが行われているそうであります。しかし、このずれ込みについては事前に把握をすることはできませんでした。新たな観測体制の強化が必要じゃないか。

 また、採石法に基づく指導に生かしていく採石技術指導指針というのがありますが、この中では、採掘終了後における人に対する危害を防止するため、立入禁止さくを設けるよう指示していますが、このような立場で、例えばフェンスなどを設置するような指導を行うべきではないか、このことをお聞きしたいと思います。

広田政府参考人 今先生も御指摘ございましたけれども、陥没につきましては、地震計などを用いたいろいろな監視システム、こういう監視体制が整備をされているわけでございます。

 それで、いわゆるずれ込みというものでございますけれども、岩石の破壊である種のノイズが生じて、それを感知して観測するものと違いまして、ずれ込みは、確かに現在の観測技術ではなかなかこれを予測することは難しいという部分もあるというふうに聞いております。

 したがいまして、こうしたものに対する対応といたしましては、市による立入禁止や立ち入り制限措置、あるいは消防によるパトロールの実施、こうした可能な限りの安全対策が講じられているというふうに認識をしておりますけれども、必要で、できることにつきましては、また地元の県や市と密接な連携を図りながら、これに努めていきたいというふうに考えております。

塩川(鉄)分科員 私は、こういう現場の実情をお聞きした中で改めて大切だと思いましたのが情報の開示だと思います。

 大谷平和観音のすぐ近くの旅館の経営者の方にお聞きしましたところ、この場所そのものは穴を掘っていないから安全で、大いに来てもらいたいんだけれども、しかし、陥没やずれ込みがあるたびに、テレビの取材で、ヘリコプターでこの陥没場所を映す、そのときに、必ずパンして、カメラで大谷の平和観音を映していくというわけですね。そうしますと、見た人はもう、陥没、ずれ込みのあった場所と平和観音のある場所をまさに一体のものとして見ている、ですから、この地域自体が全部危ないものという受けとめになってしまう、こういうことを嘆いていらっしゃいました。

 危険度の高い地域を特定する、このことが安全な場所を明らかにすることにもつながります。その危険度に応じて優先的に対策をとることにもつながります。そういう意味でも、危険度のマップ、ハザードマップなどをつくるべきではないか。少なくとも、廃坑跡の埋め戻し場所の地図、ずれ込みの対象となるような地図は、ぜひとも、ずれ込み対策として直ちに行うべきではないかと思うのですが、その点いかがでしょうか。

広田政府参考人 栃木県におきまして、先ほども少し申し上げましたような実態調査という一環で、平成元年度から十年度にかけて大谷石採取場跡地実態調査、それから平成十年度から十二年度にかけて採石場跡地の安定度評価というのを実施されたというふうに聞いておりまして、今年度中にその報告がなされるというふうに承知をいたしております。

 今後のその情報の開示につきましては、現在、その時期を県の方で検討中であるというふうに聞いておりますので、私どもはその検討の結果を見守ってまいりたいと思っております。

塩川(鉄)分科員 先ほど説明の中で、国の予算としての岩石資源調査という話を伺いました。国の予算の岩石資源調査費というのは、大陥没のあった年の翌年、一九九〇年から、毎年千七百万円の予算を計上して、栃木県の大谷の陥没対策に活用されてまいりました。九〇年から九九年までずっと千七百万円の予算だったものが、今年度は千二百万円に減り、来年度は五百万円に減らされるというふうに伺っております。

 先ほど申し上げたような、昨年大きな問題となったずれ込みという、新たな対策が求められているときに、現状把握の基礎的な調査予算が削られるのでは、逆行しているのではないか、減らすどころかふやすべきではないか、このように思いますが、いかがでしょうか。

広田政府参考人 岩石資源調査につきましては、県の要請を受けまして、直ちに平成二年度から実施をしてきておりまして、平成十年度に一通りの調査が終わり、その調査報告書を取りまとめたところでございます。その後も県から補足的な調査実施の要請がございましたので、十一年度、十二年度、それから、ただいま十三年度の予算を政府の方から出させていただいておりますけれども、その中でも所要の予算額を確保して、継続的に実施しているところでございます。

 なお、平成十三年度の予算のお願いしております額は、五百万円ではなくて一千万円でございます。確かに、先生御指摘のように、これまでの額から比べれば、その額は減額をされておるわけでございますけれども、それは、今申し上げましたように対象地域の調査が一通り終わったということ、それからいろいろな、財政的な予算的な非常に厳しいというような状況も踏まえながら、私どもとしては所要の額を確保してきたというふうに考えております。

塩川(鉄)分科員 私は、なぜこの予算がつけられたかというのを、国会の質疑を通じて確認してみました。

 平成二年の国会の質疑の中で、政府側が、平成二年度の予算千七百万円で、県が行っている実態調査を支援していこうという姿勢、やり方をしている、県の計画的に進められる調査の一環みたいな格好で、通産省としても実質的に御支援していくと述べております。つまり、県としてのいろいろな要望があれば、これにこたえていこうじゃないか、こういう支援の取り組みをやろうじゃないかというのがこの趣旨だと思うのです。

 先ほど申し上げたように、ずれ込みという新たな現状、対策が求められているときですから、もし県の方からこういう点での積極的な要望があれば、この予算について積極的に対応していく、こういう立場でよろしいのでしょうか。

広田政府参考人 今後とも、県とは密接な連携を図りながら、調査について御要請があれば、適切な予算措置を講じるように努めてまいりたいと考えております。

塩川(鉄)分科員 次に、産廃の問題について伺います。

 大谷石の廃坑跡が産廃処分場となっていることが地元の大きな問題となっております。国分解体工業という産廃業者が自社の処分場として大谷の廃坑跡地に産廃を捨てていたところ、深い穴ですから、底も見えないわけですが、その穴から突如火柱が上がって、五十メートルから六十メートルに及ぶ黒煙が舞い上がる、消防車が来て大量の放水をしても火が消えない、土砂をかけても一年以上にわたってくすぶり続けた、こういった状況だったといいます。今でも季節によると悪臭が鼻をつくといいます。さらに、業者側の調査でも、環境基準以上のカドミウムが検出されたといいます。

 安定五品目というけれども、何が埋められているかわからない、深い穴なので確認のしようもない。業者は、現在休止中ですけれども、住民の疑問ややめてほしいという要望にも真摯にこたえることなく、事業の再開を求めているそうです。

 こういった、いわば何を捨てられているかわからない深い穴を産廃処分場にすること自体が問題じゃないか。また、ぜひともこういう実態について、環境省としての調査もお願いをしたい。ぜひ大臣にお伺いしたいと思います。

川口国務大臣 制度から申しますと、産業廃棄物の処理の指導監督というのは、廃棄物処理法に基づきまして、都道府県それから保健所設置市が行うということになっております。したがいまして、この件につきましても、宇都宮市において事業者を指導するといった対処がなされるべき話ということでございます。

 環境省といたしましては、宇都宮市に対して、必要に応じて指導助言を行っていくという立場でございますので、そういったことで適切に対応したいと思っております。

塩川(鉄)分科員 そういう住民の皆さんの、自治会挙げての思いを、ぜひともお酌み取りいただきたいと思うのです。

 同じような産廃問題で、栃木を初めとして、北関東の各地で心配の声を聞きます。国は、不法投棄の撤去の取り組みとして、産業廃棄物適正処理センター制度を活用して、平成十年六月以降の不法投棄について、国の補助金と産業界からの拠出により、都道府県などの原状回復措置に対し、その費用の四分の三を支援しております。また、平成十年以前の不法投棄についても、補助額は三分の一でありますが、補正予算で対応しているというふうに伺っております。

 ついては、栃木県の中で馬頭町というところで、やはり不法投棄の問題があります。この撤去について、補正予算などで対応することができないだろうか。

 同時に、この制度への国の補助金額が、昨年度二億円、今年度二億円でありますが、来年度は一億六千万円だそうです。このように伺っております。産廃の不法投棄が全国で問題となっているときだからこそ、減らすのではなく、ふさわしく増額をすべきではないか。また、平成十年度以前の不法投棄についても、事態の打開のために、ふさわしく予算措置をとるべきではないか。この点についての大臣のお話をお伺いしたいと思います。

岡澤政府参考人 ただいま御指摘のありましたように、平成十年の六月以前の不法投棄につきましては、補正予算によりまして三分の一の補助、それから平成十年の六月以降につきましては、処理センターによって四分の三の助成というふうな仕組みで、原状回復に対する支援を行ってきております。

 御指摘の馬頭町のケースでは、これは平成二年に不法投棄があったケースでございますので、補正予算による三分の一の補助というのが該当する案件ではないかと思います。

 ただ、栃木県の方からお話を聞きますと、現在この事例につきまして、代執行によって原状回復するというのではなくて、県は、町からの要請がそういうことであるようでございますけれども、県営の最終処分場を現場近くに設置して、そこに放置されている産業廃棄物を新たに設置した最終処分場に搬入することで問題の解決を図ろうというふうに考えているようでございます。

 この解決方法につきましては、いずれにしても、栃木県と地元の馬頭町が相談して適切な方法を見つけるということだと思いますが、私どもとしてはその状況を見守っていきたい、必要に応じて助言等を行っていきたいというふうに思います。

 また、処理センターの基金でございますが、確かに、御指摘のように来年度は一億六千万円の計上でございます。ただ、これは平成十年から国として基金を積み上げているわけでございまして、平成十年では一億円、平成十一年で二億円、平成十二年で同じく二億円、それから平成十三年では一億六千万という予算になっております。

 ただ、現実にこの処理センターの基金を取り崩して行っている事業というのは、平成十二年度までの取り崩し額が五億八千万円でございまして、先ほど申し上げました数字は国からの拠出金ですが、それ以外に産業界からの出捐もございますので、基金の額と実際に使用した額との関係で見ますと十分対応できるというふうに考えております。

 いずれにしても、必要な事業量がふえてくればその資金の額については確保する方向で考えたいと思っております。

塩川(鉄)分科員 馬頭町の場合は地域住民の方が、とにかくこの産廃を撤去してもらいたい、そう思っていたら、新たな産廃処分場を持ってくるという話でなおさら怒っていらっしゃるわけです。そういう思いをぜひともお酌み取りいただきたいと思うのです。

 このような大谷の問題で、埋め戻し対策をしっかりと行うということが国民の命と安全を守る土台でもあり、また住民からの強い要望である産廃問題を解決する方法でもあり、さらに大谷石材業への信頼回復、観光地大谷のイメージ回復の力となる、このことをしっかりと受けとめていただいて行政に当たっていただきたい、その点で、大臣、全体を通しての御意見、御感想をお伺いしたいと思います。

北村主査 時間が参っておりますので、これにて塩川鉄也君の質疑は終了いたしました。

 次に、樋高剛君。

樋高分科員 自由党の樋高剛でございます。

 まず、きょうは発言の機会をいただきまして、委員長さん初め大臣、そして大臣政務官、本当にありがとうございます。どうかよろしくお願いをいたします。

 一昨日も環境委員会で質問させていただきました。きょうも大臣おっしゃっておいでですけれども、環境先進国を目指されると。私自身も、環境大国と申しましょうか環境立国、そして環境先進国をぜひ目指すべきではないかという考えを持って尽力していきたいと思っております議員の一人であります。

 そもそも二十一世紀は本当に環境の世紀であると思うわけであります。この環境の問題を何としてもクリアしなくては新しい時代を迎えることができないのではないかと思うわけであります。やはり人と自然の調和ある発展、また言葉といたしましては例えば循環型社会、つまり循環を基調とする社会及び産業構造への転換というのが大変多くの方々から言われている。私は今、新しい二十一世紀を迎えて、日本社会の経済構造を見直して、本当に思い切って見直して、そして、環境保全のための産業の育成、資源再利用の促進などによって資源の循環型社会を何とか目指していきたいというふうに考えているわけであります。

 二十一世紀の日本の環境、そして地球の環境をよりよい状態で将来の世代に引き継いでいくことは、今に生きる私たちの大変重要な責任である、責務であるというふうに考えております。大臣はこのために、目指すべき我が国のあり方として、何度も申しますけれども、「地球と共生する「環(わ)の国」日本」というすばらしい言葉で表現されております。では、具体的にどのような社会づくりを目指していかれるおつもりであるのか。そして、政府といたしましても二十一世紀「環(わ)の国」づくり会議をいよいよ開催すると伺っておりますけれども、では、具体的にどのような議論を行って、そしてその成果をどういう方向にどういうふうにつなげていくというお考えでしょうか。

川口国務大臣 「環(わ)の国」日本づくりの第一回の会合がきょう五時半から開かれるということになっております。

 「環(わ)の国」といいますのは、日本、大和の和(わ)ということでもありますし、環境の環(わ)でもございますし、循環の環(わ)でもございますし、人と人がともに働く、協働する環(わ)でもございますし、人と生物の環(わ)ということでもございますし、日本とほかの国の環(わ)、いろいろな意味がある言葉だというふうに考えております。

 具体的なイメージとしては、今までの二十世紀の大量生産、大量消費、大量廃棄ということではなくて、簡素で質が高い国というのが具体的なイメージでございまして、きょう御参加の皆様がどういう御議論を展開なさるかということは私も大いに期待をさせていただいているのですけれども、日本がこれから二十一世紀、「環(わ)の国」を目指していくときに、基本的にどういう考え方でいくべきなのか。

 それから、環境というのはすべての主体が行動していかなければいけない、参加をし行動をしていかなければいけない。国民も企業も地方公共団体も国もということですから、そこでの議論がいろいろな主体の行動に今後反映されていくような、あるいは政府の施策に反映されていくような、そういう議論がなされるということを私としては期待をいたしております。

 環境省といたしましても、その会議で大胆に自由に議論がなされまして、その成果を今後の政策につなげていきたいと考えております。

樋高分科員 ぜひ活発な議論をいただきまして、環境の問題、よく言われますのは経済と環境を両立させる、さまざまな、本当に難しい現実の問題にぶつかったりいたします。しかし、その枠を思い切って本当に乗り越えていただいて、ぜひ大臣を初めとする皆様方に、私も一緒に汗をかきます、一緒に汗をかいていきたいと思いますので、ぜひ両立を、経済発展と環境施策の推進、そして本当に世界の見本となる環境大国、環境立国を、ぜひ頑張って目指していただきたいと本当に純粋に思っております。強く要望させていただきます。

 そもそも二十一世紀を環境の世紀とするために、先ほどおっしゃいました、大量生産、大量消費、大量廃棄の社会にかわる新しい社会をつくらなければならない、そしてその新しい社会づくりに向けて、環境を守るために必要な規制などを進めていくことはもちろん重要であります。しかし、それだけではなくて、社会のあり方全体を変革していくということが必要ではないかと思うわけであります。

 従来のような規制だけではなくて、また一方では、議論で出ておりますけれども、もちろん情報公開、そして市民の参加、また環境省そして地方自治体の役割と権限の強化、そして企業の自主的取り組みの促進、経済的措置による誘導などによりまして、環境政策が、日本の政治、行政、企業が、国民に理解、信頼され、また国際競争力を持つために、何としても必要であると思うわけであります。つまり、環境保全を目的とした施策だけではなくて、産業構造や経済政策あるいは社会資本整備などが環境配慮型になるということが望ましい姿ではないかと思うのですが、大臣、いかがでしょうか。

熊谷大臣政務官 ただいまの質問に対して私の方からお答えさせていただきます。大変大きなテーマでございますので、漠然としたお答えになるかもしれませんが、お許しをいただきたいと思います。

 基本的には、今委員がおっしゃったことと私は全く同感でございます。今まで、物づくりというか、そういうものを中心にして日本の経済を高め、社会全体がそういう形で回ってきたわけであります。したがって、そこには大きな負の、負債というか、地球環境というものを壊してしまった、このままでは人類の生存基盤というものにかかわってくる、さあ、どうしようかというのがまさにこれからの時代であると思うのです。

 したがって、環境省といたしましても、今まで大臣がいろいろお答えになられたように、環境配慮型の社会というものをどうつくるかということで、昨年十二月に策定をした新しい環境基本計画、この中にも「あらゆる場面における環境配慮の織り込み」というものを記述しているわけであります。

 さらにまた、簡素で質の高い活力ある持続的な社会というものを目指していくために、地球と共生する「環(わ)の国」日本というもの、表現のとおり、こういう国づくりに向かって進めていく、そのリーダーシップを担っていかなければならない、このように認識をさせていただきますし、そういう取り組みというものをこれから積極的に展開してまいりたい、このように考えております。

樋高分科員 我が国を環境配慮型の社会にするというお話でありましたけれども、そのためには、まず政府が率先して取り組む姿勢を見せる必要があるのではないかと思うわけであります。

 環境に優しい製品などを国が購入する、これを促進するグリーン購入法がことし四月から、いよいよ来月から全面的に施行されます。その旗振り役の環境省におかれましては、このグリーン購入を具体的にどのように進めていかれるおつもりなのか。また、環境省だけではなくて、ほかの省庁、また地方自治体にはどういうふうに働きかけをなさっていくおつもりでしょうか。

熊谷大臣政務官 おっしゃるように、この四月からグリーン購入法が全面的に施行される、そういうことになるわけであります。これは、広く国民全体、あらゆる事業所、そういうものに呼びかけをしながら協力をいただかなくちゃならない、こういうことになるわけでありますが、その前に、まず政府自体が、あるいは自治体も含めるわけでありますが、そういう行政機関、これらが国民に対して率先した姿勢というものを展開していくべきじゃないかということで、今度、新たに政府の内部ででも、品目も十四分類百一品目という形で、各省庁ごとに自主的に、どれぐらいの実績というか、目標を定めていくかというものを出していただく、そして、その目標に向かって一年間どういう取り組みをして、どういう実績を上げるような形になったかというものを公表する、そういう仕組みにさせていただいて、この間、私も政務官会議で、各省庁ぜひ積極的に取り組みをしていただきたいという要望などもさせていただいたところであります。

 さらに、いろいろ自治体がこれに取り組むということに当たっては、やはりその内容というものを十分周知徹底する必要があるということで、全国十二カ所で説明会を開催、二月から三月の間でありますから、今盛んにやっているところでありますが、そのように積極的に普及啓発というものをやってまいりたい、このように考えております。

 さらには、事業者なり国民の皆さん方に対しても、雑誌であるとかそういうものを利用しながら、グリーン購入法の推進というものに十分理解をいただきながら積極的に進めてまいりたい、このように考えております。

樋高分科員 環境省がリーダーシップをとって、ぜひともしっかりと進めていただきたいと思います。環境庁と違うな、さすが環境省になった、やはり中身の部分でも変わったんだな、ただ単なる看板のかけかえじゃないんだなというところをぜひ国民の皆様がわかるような形でお進めをいただきたいと思います。

 次の話題に入りたいと思います。自動車排出ガス対策についてであります。

 大臣、このパンフレットをごらんになったことがありますでしょうか。自工会さんで出している、いわゆるクリーンエネルギー車、電気自動車ですとかハイブリッドカーとかが書かれたパンフレットであります。

 私ごとで恐縮でありますけれども、やはり環境についてはとても大切な問題である、これは日本国だけではなくて世界を巻き込んだ最も重要な問題であるということで、まず身近なところから始めなくちゃいけないということで、今から約二年前に、トヨタのハイブリッドカーであるプリウスという車を、別に車の宣伝をしているわけではないのでありますけれども、購入いたしました。自分なりにまず身近なところから環境対策をやりたいということで、今愛用をしているところであります。

 一方で、私は、ことしに入りましてから、党の配慮によりまして、環境委員会の委員と理事にさせていただいて、地元の方でさまざまお話ししておりますと、では環境大臣もちゃんと公用車は環境に配慮した車に当然乗っているよねと実は言われたわけであります。しかし、まだ私聞いておりませんので、きょうは、大臣がふだん乗っていらっしゃる車、やはり環境庁から環境省になられたわけでありますから、大臣の公用車は、みずから当然模範となって、身近なところからこういうクリーンエネルギー車に乗っていらっしゃると思うのですが、いかがでしょうか。

川口国務大臣 公用車といたしましては、CNG車を使っております。それで、単に乗っているだけではほかの方に余りわかりませんので、大きくステッカーを張りまして、CNG車であるということを宣伝しながら走っております。

 ついでに申し上げますと、個人的には、私は車を持たないということで協力をいたしておりますので、プリウスを買うということができません。

樋高分科員 CNG車に乗られている、さすが大臣と思ったのでありますけれども、環境省さんだけではだめだと思うわけであります。今後環境のことを考えるのであれば、先ほどグリーン購入法の話もありましたが、少なくとも中央のお役所、国会に出入りしている車もすべて、模範となると先ほどおっしゃっておいででありましたから、みずからをもってその車に乗って、そしてそのことをアピールし、またその中で、自分が乗って、あっ、これはこんなに振動が少ないな、こんなにやはり音が静かだな、これだけエネルギーのことを考えている車だなということをみずからもって経験する、体験する必要があるのではないかと思うのでありますけれども、そのことにつきましての大臣のお考えを伺いたいと思います。

 すべての国会に関係する、もしくは中央の役所に関係する車、別にこの車の宣伝をしているわけではないのでありますけれども、これからはこのクリーンエネルギー車にする必要があるのではないかと私は思うわけであります。確かに今の技術水準では価格も高かったり走る航続の距離が短かったりしますけれども、それに乗って、ではこういうところを改良しなくちゃいけないとそれぞれが意識し、思うところからスタートをしなくてはいけないのではないかと私は思うわけであります。いかがでしょうか。

川口国務大臣 全くおっしゃるとおりだと思います。

 政府でも閣議決定がございまして、これによりますと、各省庁の、たしか一〇%だったと記憶しているのですけれども、低公害車をその比率にするということで、昨年の暮れだったと思うのですけれども調査をいたしまして、まだまだその基準を満たしていないところがございましたので、実は、閣議の後の閣僚懇談会において、ベストスリーはどこの省庁で、ワーストスリーはどこの省庁であるというふうに申し上げさせていただきました。

 それから、当然、グリーン購入法によりまして、低公害車というのはその品目の一つに入っておりまして、これに基づいて、政府機関だけではなくて、国の機関全部、国会も含めましてグリーン購入を高めていただきたいと思っております。

 樋高委員はプリウスにお乗りでいらっしゃるということでございますので満たしていらっしゃいますけれども、ほかの委員の方においてもぜひお願いを申し上げたいと思っております。

樋高分科員 やはり具体的なその数値をまず、今一割という話でありましたけれども、余りに私はちょっと、五割、六割の話なのかなと思ったら、今一割という数字を聞いて本当にびっくりしてしまったのであります。そんなんで本当に大丈夫なのだろうかと私は心配になってくるわけであります。

 やはりそのパーセンテージを上げていただきますように、ぜひとも強力に、環境省さんはすべての役所を超えていろいろと率直に具申をできるお役所だ、そして、大臣におかれましては、民間出身でしがらみのない、そして正論でどんどんおっしゃっていただけるすばらしい大臣であるというふうに私は認識をいたしている次第でありますけれども、具体的な数字の目標、そしてその期限、その結果、また、私は環境委員会でありますから今後も定期的に伺ってまいりたいと思いますけれども、いかがお考えでしょうか。

川口国務大臣 実は大変に残念ながら、一〇%という数字でございますけれども、これは目標値でございまして、平均いたしますと、各省庁、これは十一年度末の時点でございますけれども、ということは十二年三月ですが、とてもそれには至っていないということでございます。

 ただ、その閣僚懇談会で各省庁の成績発表をいたしましたら、各閣僚は非常に御関心をお持ちになられまして、多分これから急速にその数値が上がっていくだろうと思っております。

 グリーン購入法もございまして、各省庁努力をするということになっておりますので、引き続き成績発表をする等の努力をいたしまして、各省庁及び政府以外の、政府以外のというか省庁以外の国の機関、あるいは裁判所、国会等においても同じような数字を発表させていただけたらいいのではないかというふうに思っております。

樋高分科員 みずから見本を示すということは当然重要なことでありますけれども、そもそも都市部において自動車からの排出ガスを削減するためには、やはり低公害車の普及が有効である。政府においても、来年度、まさしく先ほどおっしゃっております自動車税のグリーン化と言われる税制改正を行う予定でありますけれども、では、これによりまして具体的にどの程度の低公害車の普及を見込んでいらっしゃるのか、また、対策としてこれで本当に十分であるというふうにお考えでしょうか。

熊谷大臣政務官 今御指摘のように、平成十三年度地方税法改正案というものに自動車税のグリーン化が盛り込まれたわけでございます。したがいまして、このグリーン化は単なる規制的な措置ではなくて、環境負荷の大きさに応じて自動車の購入、保有に伴う経済的負担に差をつける新たな経済的措置でありまして、その効果というものを期待しているところであります。

 なお、低公害車については、その他、これらの導入に対する補助であるとかあるいは融資の施策、そういうものも進めているところでございます。

 今回新たに設けた自動車税のグリーン化あるいは自動車メーカーによる自主的な努力、そういうものと相まって、平成十三年度、十四年度で合わせて百六十万台の低公害車や低排出ガス車の普及が見込まれているというところでございます。

 今後とも、環境省としては、こうした施策の充実強化を含めて、低公害車の大量の普及に積極的に取り組んでまいりたいと思っております。

樋高分科員 きょうたくさん質問事項を用意してきたのですけれども、こういう話で、私はまことに残念でならないわけであります。

 例えば、郵政省さんでも配達の車、本当にたくさんの車があると思います。また、先ほどパンフレットがありましたけれども、電動式のバイクなんかも今物すごくコストが抑えられてきつつあるわけであります。また一方で、地方の自治体、市役所さん、県庁さん、それぞれ大変たくさんの車を抱えていらっしゃるわけであります。また、大蔵省さんでも数十台以上の車を抱えていらっしゃるということでありますけれども、先ほど来、これからグリーン購入法によりまして進めていかれるという話を伺いましたけれども、では、今具体的にどのような数値目標を考えていらっしゃいますでしょうか。

川口国務大臣 政府の場合は、確かに車はたくさんありますけれども、まだ買いかえの時期に来ていない車を一遍に買いかえるということはできないわけでございます。数年間、これは十年くらいなんでしょうか、ちょっと数字ははっきりいたしませんが、それぐらいの期間がたって買いかえるときに初めて低公害車を買うということが可能になるわけでございます。数字が一遍に上がらないというのは、残念ながらといいますか、予算上そうでなければ、むだ遣いをするということは許されませんので、そういうことで数字が一遍に上がらないということにもなるわけでございます。

 ただ、国の機関全部にそういう努力をしていただきたいと思っておりますし、そのための働きかけはありとあらゆる手だてを講じてやっていくつもりでございますので、数字は近い将来ぐっと上がるというふうに思っております。

樋高分科員 要は、約束をしていただきたいのであります。その議論はもう五年も十年も前から、私は今から十年前に小沢一郎党首の自宅に住み込んで、秘書として国会に出入りして、いろいろな先生方の話もずっと聞いてきました。そして、環境委員会での議論も過去十年ずっと聞いてまいりました。ずっと昔から、とうに言われていることなのであります。

 その間、仮に買いかえの時期が三年ごとなのか五年ごとなのかわかりませんけれども、当然買いかえの時期が来ていたはずであります。これが本当になし崩し的に、なあなあでどんどん先送りされている。これはまさしく日本の行政の、また日本の社会のシステムとしての本当に悪い部分だと思うわけであります。だからこそ、環境省さんに、そして環境大臣にしっかりと号令をかけていただいて、着実にやっていただきたいのであります。いかがでしょうか。

川口国務大臣 グリーン購入というのは、リサイクル社会をつくっていく際に、リサイクルをしたものに対しての需要が生まれるという意味で非常に重要だと思っております。需要がふえればふえるほど、それが供給増加にはね返って、スケールメリットがありますから価格が下がって、その結果としてさらに買いやすくなるというふうな好循環が生ずるわけでございまして、そういう意味で、国の機関の持っている役割というのは非常に大きいと思っております。グリーン購入をもっともっとふやしたいということにつきましては、私は、樋高委員と全く同じ考えを持っております。

 ということでございまして、先ほど申しましたように、情報の公開というのもございますし、新しいグリーンの商品が生まれたときに、なかなかそれが世の中に知られないという意味では、情報を伝えるということも大事でございますし、それから、実際に使ってみた人の経験談を知らせるということも大事でございますし、国会は例えば三〇%低公害車であるというような情報を伝えることも大事でございますし、ありとあらゆる手段を講じてグリーン購入を進めていきたいというのは、委員と全く同じ意見を持っております。

樋高分科員 大臣が記者会見で、バトル・アンド・エボリューション、闘ってそして進化するんだということでありました。ぜひともしっかりと頑張っていただきたい。そのことを最後に強く要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

北村主査 これにて樋高剛君の質疑は終了いたしました。

 次に、中村哲治君。

中村(哲)分科員 民主党・無所属クラブの中村哲治です。

 合併式浄化槽についてお聞きしたいと思います。

 二〇〇一年、二十一世紀初めにこの合併式浄化槽というものが環境省の所管に移ってきたということに関しまして、非常に大きな意味を感じております。下水道の補完的な施設であるというものから、いや、そうではないんだ、人口密度が低いところには非常に大きな意味のある施設設備なのだということを言い続けられたということは、非常にすばらしいことだと感じております。

 さて、二十一世紀を水の世紀としていくためにも、この合併式浄化槽を今後どのようにきちんと機能させていくシステムをつくっていくのか、維持していくのかということが必要だと感じております。

 私は、地元を回るときに、地元の声をよく聞かせていただいております。その中で、こういう声がありました。年三回、浄化槽管理士の保守点検があり、それで十分だと思うのだけれども、年一回、また県からも検査がある。また、余り使っていなくても年一回業者が来て、浄化槽法で決まっているからといって汚泥を引き抜いて帰る、そういう不満の声があるのですね。話を聞くと、制度はかなり複雑なようなので、調べてみました。

 年三回の保守点検というのは、浄化槽法十条一項による浄化槽の保守点検と言われるもので、その括弧書きに基づく環境省令の六条の二項の表が適用され、年三回ということになっている。そして、年一回の検査というのは、浄化槽法十一条の指定検査機関による水質に関する検査ということがわかりました。ちなみに、奈良県の場合は、社団法人奈良県環境保全協会が指定検査機関となっているそうです。また、年一回の清掃というのは、浄化槽法十条一項、三項による浄化槽清掃業者による浄化槽の清掃ということだと思います。

 そこで、お聞きします。簡単にお答えください。

 年三回の保守点検で、年一回の水質に関する検査ということは兼ねることはできないのでしょうか。

岡澤政府参考人 浄化槽の管理の適正化を期するために、今御指摘がありましたように、浄化槽の保守点検、清掃、それから検査というふうな仕組みを設けているわけでございます。

 保守点検につきましては、浄化槽の機能の維持のために必要な回数を定めているわけでございまして、施設の設計の方も、その点検の回数を前提として設計されておりますので、点検と設備の構造とは一体のものというふうに考えられております。

 それから、清掃は、これも汚泥の引き抜き等を年一回行いませんと、浄化槽の機能が維持できないということがございます。これも構造との一体的なものでございます。

 それから、最後の検査につきましては、かつて行政検査で行っていたものについて、アウトソーシングという観点から、需要者みずからが検査を受けるというふうに制度が変えられたわけでございまして、これは、機能がうまく果たされているかどうかについて第三者機関からチェックを受ける、そういう性格のものでございます。

中村(哲)分科員 もう一度お聞きしたいのですけれども、保守点検と検査との関係をもう一度お聞きしたいのです。

岡澤政府参考人 保守点検というのは、浄化槽が適切に機能しているかどうか、それは構造面、それからいろいろな状態について点検を受けるということでございまして、機器の調整等もその中に含まれます。

 それから、検査というのは、浄化槽が結果として水質基準に適合しているかどうか、適合した水を供給できるような機能を果たしているかどうかという、結果についての検査でございまして、これは先ほど申し上げましたように、ある意味では行政的なチェック、第三者によるチェックという意味でございます。

中村(哲)分科員 つまり、保守点検というのは、きちんと物が動いているかどうかということを判断するものであって、検査というのは、その結果、きちんと動いているのが証明されているかどうかということを示すものであって、二つは全く違うものであると。だから二つともきちんと受けてもらわなければ困るということでしょうか。

岡澤政府参考人 保守点検と検査については、それぞれ目的とするところが違いますので、やっている中身も厳密に言うと違いますので、それは別々に受けていただくということだと思います。

中村(哲)分科員 それでは次に、浄化槽の清掃は、機械的にと申しますか、年一回と決まっておるのですけれども、これを浄化槽管理士による保守点検と組み合わせることでもっと弾力的な運営をするように法律を改正できないのかなと思うのです。その方が住民のニーズに合い、かつ適切なメンテナンスにつながるのではないかと思います。

 と申しますのは、近年、少子化も進んでおります。七人槽や十人槽というところに夫婦二人で住んでいるようなケースも多いということを聞きます。そういうところでは、本当に一年一回の清掃、汚泥の引き抜きが必要なのかどうかということを思うのです。年三回、浄化槽管理士による保守点検がなされるわけですから、そのときに浄化槽管理士が、もうそろそろ浄化槽の清掃をすべきではないかな、そう判断したときに、その建物の持ち主などの浄化槽管理者が清掃しなくてはならない、そういうふうに規定を変えることをしても、何ら不都合はないはずだと思うのです。

 このように浄化槽法の十条の文言を変えれば、汚泥がたまったときに清掃をすればいいということになりますから、住民のニーズに合ったものとなると思うのですけれども、その点に対してはいかがでしょうか。

岡澤政府参考人 確かに浄化槽の保守点検と清掃というのは、同じ浄化槽の維持管理を担うという意味で、密接に関係するものでございます。

 しかし、先ほど申し上げましたように、浄化槽の構造自体が、一定の調整をするとか、汚泥の引き抜きを一定の頻度で行うということを前提として設計、施工されておりますので、今の段階で申し上げれば、保守点検と清掃をうまく連携して合理的にやるという運用面での工夫ができるかなという感じはいたしますけれども、構造面との関係がございますので、制度的な見直しについては、そうしたものとの絡みも含めて、少し時間をかけて検討していくべき問題だというふうに考えております。

中村(哲)分科員 条文には、第四十八条の二項のところで、保守点検を業とする者の登録制度の中には、四号として「浄化槽清掃業者との連絡に関する事項」ということも挙げられております。連絡を密にしているということがこの制度の前提だと私は考えますので、検討をよろしくお願いしたいと思います。

 それから、昨年出されました、基準認証制度及び業務独占資格等に係る見直し状況の中間公表についてという文書の中でも、このような制度の見直しを今後やっていくという検討がされるということが書かれております。ここに書かれておりましたように、十二年度秋ごろをめどにというふうなことは、結局これは先延ばしになっているということをお聞きしましたけれども、引き続き検討していただきまして、実効ある、そして住民のニーズに合った法制度の改正をお願いしたいと思います。

 それでは、もう少し細かいところをお聞きしたいと思います。

 今、業者が複数でないところなどでは、独占的な状況になってしまい、引き抜き料が高くなってしまうという声があるのですけれども、その点に対してはどのようにお考えでしょうか。

岡澤政府参考人 清掃業の清掃の料金のことだと思いますけれども、これは特に公定料金が定まっているわけではございませんで、それぞれの事業者がみずからのコストとの兼ね合いで料金を設定しているということでございます。

 また地域も、特定地域で業者を指定しているということではございませんので、複数の業者の中から選定できるようになっているはずでございます。もしそういう御指摘のような点があれば、それは調べてみますけれども、いずれにしても、これは民間の業として営んでいるわけでございますので、当然、自由競争の中でやっていただくということだというふうに考えております。

中村(哲)分科員 今の答弁をお聞きしまして理解しましたのは、一つの業者しかないところというのは、それだけ需要がないということでしょうか。つまり、複数の業者が競争できないような、それぐらいの需要がない地域だから、一社しか三十五条によって許可を受けていないというふうに理解すればよろしいのでしょうか。

岡澤政府参考人 これは市の許可制度になっているわけですが、市の方が許可を制限しているというわけではなくて、申請があれば、一定の要件を満たしている場合には許可しなければならないわけでございますので、もしそういうことがあるとすれば、業者としてそこの地域で、その市町村の区域のことになりますけれども、その市町村の区域では参入するメリットがないというふうに考えて申請を出さないということは、考えられるかと思います。

中村(哲)分科員 繰り返しますけれども、一社しか参入している業者がないという市町村においては、メリットがないから複数の企業が入っていない、そういうことでよろしいんですね。

岡澤政府参考人 仕事にならないということかと思います。

中村(哲)分科員 了解いたしました。

 繰り返しますけれども、年に一回というのは、なぜそういうふうなことを設けられて、年三回の浄化槽管理士による検査の結果ではだめなんだということを、もう一度確認させていただきたいのです。

岡澤政府参考人 管理士の行う点検と申しますのは、先ほど申し上げましたように、要するに、機能がうまくいっているかどうか、設備がちゃんと機能しているかどうかということに関して点検するわけでございまして、その結果、確かに汚泥がたまり過ぎているとか、機器がちょっとぐあいが悪いものがあるとか、そういうことになるわけでございます。

 点検の結果、清掃が必要になるという場合もありますけれども、浄化槽の構造というのはほぼユニホームな構造になっていますので、こういう設備のものについて見れば、大体このぐらいたつと機器はこうなるとか、設備がこういうふうになるというようなことがある程度わかっていますから、そうした実績をもとにして、例えば汚泥の引き抜きであれば、最低一年に一遍引き抜かないと浄化槽が機能しない、それから機器の調整等も、年に三回ぐらいやらないと設備がうまく機能するような状態に保持できないということから定めているものでございます。

中村(哲)分科員 年一回というのが絶対的な基準ではないということを理解しまして、次に移りたいと思います。

 ここからは大臣にお聞きしたいと思います。

 環境庁が環境省に変わって、一番どういうところがお変わりになったのでしょうか。

川口国務大臣 何ができるかできないかということからいきますと、環境庁は、環境省になった段階で、旧厚生省から廃棄物対策を引き継ぎました。したがいまして、廃棄物対策は環境省が一元的に実施をするということになりました。

 それから、一つの政策はいろいろな側面を持っているということですけれども、例えば環境保全と貿易とか、そういう幾つかの面を持っていますが、そういうことでいいますと、環境庁が環境省になりましたときに、リサイクル対策ですとか化学物質対策といったようなことが、すなわち環境保全というのを一面として持ち合わせている仕事については、環境省がほかの省庁と共管で、一緒に連携をしてその仕事をするということになります。そういう意味で、権限的には拡充をした、それだけ機能が高まったということになります。

 それから、従来から持っている機能として、調整をするとか勧告をするとか、そういった機能がありますが、それは、環境庁が環境省になって同じように存在をしております。

中村(哲)分科員 非常に頼もしい御答弁だったと思います。

 私は、さらに一歩進めて、生態系ということを考えると、環境省というのは農水省と一緒の省になった方がいいんじゃないかというふうに考えております。

 我が党の方針としても、ネクスト大臣は、民主党の場合は環境省と農水省が一体となってやっていくということを前提に活動しております。この予算委員会の分科会の構成も、環境省と農水省と一緒の分科会でやっておりますから、そういう視点で考えることもできるんじゃないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。

川口国務大臣 省庁の再編成の結果、環境庁が環境省になったわけですけれども、その過程でさまざまな議論があって、その一つとして、例えば林野庁が環境省と一緒になるべきではないかといった議論もあったというふうに聞いております。

 ただ、そういったさまざまな議論が行われた結果として現在の省庁の姿があるということでございますので、一応議論を尽くされた結果が今あるわけですから、今の時点で、私としては、こうあるべきであるとかどう思うとかいうことを申し上げる立場にはないというふうに思っております。

 それから、一般論でございますけれども、委員がおっしゃられましたように、自然の保全という観点からいきますと、農業と環境の保全というのは非常に密接な関係を持っている、あるいは森と環境というのは非常に密接な関連を持っているというのは事実でございまして、したがいまして、環境省は農林水産省と連携をいたしまして仕事をしていきたい、それで環境保全をやっていきたいというふうに思っております。

中村(哲)分科員 今後農水省の皆さんとしっかり連携をとってやっていかれるということで、次に進めていきたいと思います。

 公害が盛んであったという言葉はよくないかもしれませんけれども、激しかったときに、日本の公害対策技術というのは世界一であった。しかし、今になって、環境対策技術というのがどんどんほかの国に抜かれるような状況になってきているのではないかという声をよく聞きます。特にヨーロッパの方と比べると、日本の環境技術というのがどんどん追い抜かれていってしまっているのではないか。私は、二十一世紀は、日本という国はやはり環境の技術で世界をリードしていくような国になっていかないといけないと思います。

 このあたりの事実の御認識と今後のあるべき方向について、大臣の見解をお聞きします。

中川政府参考人 環境分野の科学技術水準の国際比較につきましては、平成十二年三月に科学技術庁科学技術政策研究所と日本総合研究所で行いました我が国の研究開発水準に関する調査というのがございまして、そこにおきまして、全般的状況として、我が国の水準は米国よりわずかに低く、欧州よりやや低い、環境対策技術全般では欧米と同等の水準であると記述されております。

 個別の環境技術の欧州との比較ということについて見ますと、例えば風力発電技術のように欧州の方がすぐれているものもございますし、あるいは、ダイオキシン類を排出しないごみ焼却技術とか高性能の合併式浄化槽のように、我が国で開発され世界に普及しているものもございまして、さまざまであると思います。

 いずれにしましても、昨年末に閣議決定いたしました環境基本計画におきましては、幅広い観点から環境技術の振興に戦略的に取り組むこととしているところでございまして、環境省としては、省の重要政策として関係省庁と連携を図りつつ環境技術の開発普及に努めてまいりたいと考えているところでございます。

中村(哲)分科員 リサイクルについてお聞きします。

 今後、リサイクルというのも、リヒューズ、リデュース、リユース、つまり、ごみを減らすために、使わない、減らす、再使用するという視点から見直していかなくてはならないのではないでしょうか。そういう意味で、デポジット制については積極的に推進していくべきだと考えますが、いかがでしょうか。

岡澤政府参考人 私ども、リデュース、リユース、リサイクルの三Rということを申し上げていますけれども、今先生御指摘のように、リデュースという考え方は、廃棄物をできるだけ出さないという観点からは大変重要な御指摘だろうと思います。

 また、デポジット制度についてのお尋ねでございますけれども、昨年制定されました循環型社会形成推進法におきましても、経済的措置についての調査研究を行うというふうな規定がございます。このデポジット制度については、空き缶などの回収率を高めるための有効な手段の一つというふうに考えられておりますけれども、全体としてより効率的なリサイクルシステムのあり方を検討していく中で、こうした経済的措置についても考えてまいりたいというふうに考えております。

中村(哲)分科員 御確認させていただきますけれども、再使用するためにデポジット制度を導入するというのは、容器を使うという観点から見て、環境に負荷をかけないという非常に大きな意味があると思うんですけれども、いかがでしょうか。

岡澤政府参考人 御指摘のとおりだと思います。

中村(哲)分科員 環境循環型社会のためには、今後、エネルギーというのはバイオマスを中心に考えていくべきではないかと私は思います。しかし、報道によりますと、例えば建築廃材がリサイクルされても、木質のバイオマスがエネルギー源としての需要がなかなかない、そういう現状にあるとお聞きします。そのため、市場価格がほとんどゼロになってしまって、お金を払って引き取りに来てもらわないといけないような状況になってしまって、せっかくのリサイクルがむだになってしまっているという報道を聞きました。

 今後、積極的にバイオマスというのをエネルギー源として利用していかなくてはならないと思うんですけれども、いかがでしょうか。

岡澤政府参考人 建設系の廃棄物、大変量が多いわけでございまして、産廃の最終処分量の四割は建設系から出てくる廃棄物でございます。こうした建設系廃棄物の減量化を促すために、昨年の五月には建設廃棄物リサイクル法の制定をして、公布後二年以内に施行するという予定で今準備を進めております。

 この法律では、建設廃棄物の相当部分を占める木材、コンクリート、アスファルトについて、木質ボードや路盤材としてのリサイクルを行って、廃棄物の減量化や資源化、有効利用を促進するということを目的としています。

 このうち、木材につきましては、原材料として利用することのほか、燃料チップとしての利用を促進するというふうにしておりまして、木材のリサイクルを一層促進するためには、発電用の燃料、あるいは再生木質マルチング材等への新たな用途開発を行うということが必要だろうというふうに認識しております。ですから、これは燃料だけではなくて物としてもリサイクルできるというふうに考えているわけでございます。

 いずれにしても、関係省庁と連携をとりながら、技術開発支援等の施策を含めて建設廃棄物のリサイクル、多用途、いろいろな用途があると思いますけれども、そうしたリサイクルを進めるのに支援をしてまいりたいというふうに考えております。

中村(哲)分科員 御答弁を聞いていると、リサイクルしてきたはいいけれども、そこから先がどうもできないという御答弁だと思います。

 先ほど、容器のリサイクルのことも申させていただきました。デポジット制について、再使用するためのデポジット制がいい、そのとおりだとおっしゃいました。そしてまた、このバイオマスのことでも、回収をしてきているけれども、そこが問題だ、今後関係省庁と話し合って方針を決めていきたいというお話でした。

 私は、今後これを本当に環境に負荷をかけない形でやっていくのかどうか、その意気込みを聞きたいんですけれども、大臣、お願いいたします。

岡澤政府参考人 バイオマスへの利用も含めて、廃木材等についての利用を進めてまいるということでございます。

川口国務大臣 環境省は、二十一世紀を環境にいい、地球と共生できる国にしていくために可能なことを、関係省庁と連携をしながら、それから国民の皆さん、あるいは事業者、地方公共団体の皆さんの意見を聞きながら、極力前向きに進めていきたいと思っておりますし、いくべきだと思っております。

中村(哲)分科員 次に、オゾン層の破壊についてお聞きします。

 オゾン層の破壊は、この十年でどれぐらい進んだんでしょうか。一説によると、先進国が集中している北半球が一番オゾン層が破壊されているという声も聞きますけれども、いかがでしょうか。

浜中政府参考人 お尋ねのオゾン層の破壊でございますけれども、例えば南極のオゾン層のオゾンホールでございますが、この面積で見てまいりますと、一九九〇年で約二千万平方キロメートルでございましたが、二〇〇〇年は南極大陸の二倍以上の約三千万平方キロということで、過去最大規模を記録しております。

 国連環境計画、UNEPの報告によりますと、この十年間のオゾン層破壊は、先生ただいま御指摘の北半球中緯度地域よりも、やはり南北両半球の高緯度地域、つまり北極や南極に近い方、そういうところで一番大きい、こういうことでございます。

中村(哲)分科員 オゾン層の破壊にはフロンが非常に大きな影響を及ぼしているということが言われていますけれども、フロン回収について、やはり特別な立法が必要なんだと思います。

 しかし、今その回収、破壊する費用の徴収方法が問題とされております。基金方式、前払い方式、後払い方式とあると言われていますけれども、大臣はどの方式が一番適切だとお考えでしょうか。

川口国務大臣 フロンといいますのは、オゾン層破壊という観点からも、それから地球温暖化という観点からも回収を進めていかなければいけない物質だと思っております。

 今法律が各党によって御議論をいただいているところでございますので、私といたしましては、おっしゃった費用の徴収法も含めまして、実効性のある制度ということが大事だと思っております。

中村(哲)分科員 実効性のある制度としては、どの方式が一番実効性があるとお考えでしょうか。

川口国務大臣 繰り返しになりますけれども、実効性というのは仕組み全体で考えるべき話でございまして、今の時点では、私どもといたしましては実効性のある制度というふうに申し上げたいと思います。

中村(哲)分科員 あと、コンクリート建造物における外断熱工法というものが省エネにとって非常に大きな意味を持つと言われていますけれども、その点についてはいかがお考えでしょうか。

浜中政府参考人 ただいま御指摘のコンクリートの外断熱工法でございますけれども、これは、我が国ではこれまで、主に構造体の内側に断熱材を使用する内断熱工法が用いられてきたわけでございますが、最近は、結露の防止というような点で効果がある、あるいは断熱性能にすぐれているということで、構造体の外側に断熱材を使用する外断熱工法が注目されているということは承知をしております。

 私ども、地球温暖化防止というような観点から考えておりますので、建築物の断熱化の方法には、このほかに、外壁の断熱でございますとか、出入り口扉、開口部の断熱性、機密性の向上などのさまざまな手法がございます。私どもでは、御指摘の外断熱工法も含めまして、各種対策技術について温室効果ガスの排出削減効果を評価しているところでございます。

 その結果を踏まえて、有効な対策技術だというふうに判明いたしましたものにつきましては、私どもが設置をしております地球温暖化防止活動推進センター、市民活動、市民の取り組みを促進する、そういうセンターでございますが、そういったところを通じまして、広く国民に情報を提供することによって普及に努めていきたい、このように考えております。

中村(哲)分科員 時間が参りました。これで質疑を終わらせていただきます。ありがとうございました。

北村主査 これにて中村哲治君の質疑は終了いたしました。

 次に、大谷信盛君。

大谷分科員 民主党、大谷信盛、大阪選出でございます。僕の選挙区には、いわゆる能勢、ダイオキシンという地域も含まれておりまして、ごみ行政を中心に、ぜひとも、環境庁から環境省になった初代大臣にお伺いをしていきたいというふうに思います。

 まず最初に、庁から省に変わりました。ごみの行政というものも環境省でやっていくというふうになりました。大きく何かが変わったというふうに思うのですが、その辺、どんな方針、気構えで臨んでおられるのか、ぜひとも直球を打っていただきたいなというふうに思います。お願いいたします。

川口国務大臣 政策を企画立案する官庁、それから、廃棄物行政のように、実際に実施をし、行動する官庁として全力を尽くしたいと思っております。

大谷分科員 具体的にお聞きしたいのですが、御存じのとおり、この地球上に焼却場がたくさんございますが、うち三分の二が日本にございます。ごみは燃やすものというふうに僕は小学校のときに学んだような気がいたします。要は、掃除の時間があって、その後、出たごみを学校内の焼却場に持っていって燃やしていたのが僕の小学校時代の経験でございます。

 ごみはこれからも燃やし続けるのか。今、リサイクル、リユースと言われていますけれども、それをどういうふうに変えていこうとしているのか、そんな理念というか、信念というようなものをぜひとも語っていただけたら、気構え、姿勢というものをお教えいただけたらというふうに思います。

川口国務大臣 廃棄物行政が厚生省から環境省に移ったときの廃棄物に対する考え方の大きな違いといいますのは、厚生省においては、処理をするところの環境の衛生上の観点からやっていたということでございまして、環境省に移ったということは、これが循環型社会の一環としまして扱われるという観点から取り組まれるということが一番大きな違いだと思います。

大谷分科員 全く私もそのとおりだと思いますし、その移っていく中で、いろいろな行政の改革、今、中村議員の方からも質問があったとおりだというふうに思いますし、技術革新も必要になってくる。技術は、市場でできるものもあれば、市場でできず、国がしっかりとある意味、財政や技術的な支援というものをしていかなければいけないものがあるというふうに思います。ぜひとも、しっかりと初代大臣にはその道筋というものを立てていただきたいというふうに思うのです。

 僕はどうしても、能勢のダイオキシンという地域で選出をさせていただいておりますので、ごみのことが頭から離れません。特に、今も言ったように、子供のころからごみは燃やすもの、それも、自分の地域で出たごみは必ず自分で始末しろというような教えでございましたから、小さな自治体の中で処理をしなければいけないということで、山から町の景色を見ると必ずぴかぴか光った煙突があるのです。それがみんなごみの焼却場なんです。何とかこの光景を早く直していきたいなというふうにずっと思っていました。

 そんなときにダイオキシンという単語を覚えたわけなんですけれども、私、このダイオキシンの問題もそうでしたけれども、ドイツが、十年かけて百分の一ぐらいに減らそうじゃないか、そんな国家プロジェクトで臨んだ結果、国民も、リサイクル、リユース、ごみの減量ということで、大きく意識が広まったというふうに思うのです。

 そんなリーダーシップをぜひとも日本もだれかがとらなければいけないというふうに思うのですが、大臣はそんな気構えについて、ございましたら、ぜひとも自分の意欲というものをお伝えいただけたらというふうに思います。

川口国務大臣 全力で取り組みます。

大谷分科員 御理解いただけてうれしいというふうに思いますし、また、同じ気持ちであることが確認できたことをとてもうれしく思います。

 ちょっと能勢のダイオキシン、これはごみではなくして、ごみを処理していたところの処理場の処理ということにちょっと話を移させていただきたいというふうに思うのですが、個別にちょっと御説明させていただきますと、平成十年に、補正予算から六億三千万円いただきまして、能勢のごみ焼却施設、いわゆる能勢町と豊能町が一緒に組合をつくってやっている施設からダイオキシン、高濃度が出た、処理場が汚染されているので、それを技術でもって中和をして、安全にして、解体した後処理しようじゃないかということで、場所を探したのですが、いろいろと住民、地域の不安、また安心への疑問というようなことがあって、どうしても、この予算が最高まで延ばせる十三年、ことしの三月中までには解体のめどがつかないというような今状況でございます。

 そんな中、もちろんその施設を運営していた組合、そしてそこの地方行政が二つある、そして大阪府がある、国がある、そんな中での今やりとりをしているのですけれども、これは実際、国の役割というのは一体何なんだろうなというふうに僕はずっと考えるのです。

 というのは、これはある意味国内で最初と言われていますけれども、僕の感覚からいえば世界で初めて、高濃度に汚染された処理物を百トン近くも毒を抜くというような作業をしていく、これというのは、僕はほかでは例がないというふうに思うのですね。それは実験段階であったり、もっと百トンよりか少ないところでやったりしたことはあると思うのですけれども、百トンクラスでやったというのはないと思うのです。ある意味世界最初だというふうに思うのです。

 国としてこれは、いやもうそんなもの、処理だから、解体して補正予算を組んでやったらいいという考え方なのか、要は、早く安全に解決したらいいという姿勢でおられるのか、それとも安全に早くなのか、この違い、どっちが先に来るんでしょうか。その方針というか、かかわり合い方の姿勢というものをちょっと教えていただけたらというふうに思うのです。

岡澤政府参考人 豊能郡の環境施設組合の焼却炉の解体物の処理の問題なんですが、これについては、今先生御説明あったとおり、平成十年の補正予算によって国が補助することにしたわけでございます。

 これは、本来的にはこうしたものは補助対象になっておりませんで、国が補助することにしましたのは、恐らく世界的に見ても非常にまれな高濃度のダイオキシンを処理しなきゃならないケースであるということ、そういう初めてのケースだということから、国としても技術的、財政的支援を行っていく必要があるというふうに考えたことからこういう措置をとったわけでございます。

 同時に、府の方で行われました検討会につきましても、国の方から専門家を派遣するなどして技術的な支援を行っているわけでございまして、まさしくおっしゃったとおり、非常にまれな最初のケース、本来であれば地方自治体の問題かもしれないけれども、それに対して、地方自治体に任せておけない、国としても積極的な支援が必要だというふうに考えたからでございます。

大谷分科員 本当に、地元に住む一市民として、この国のかかわり方、この補正予算からある意味実証実験というようなことも含まれ、予算の出し方によっていろいろと名目が違うのでしょうけれども、国が積極的に財政的にも技術的にもかかわっていただいているということ、心から地域住民にかわってお礼したいというふうに思います。感謝の気持ちをお伝えしたいというふうに思います。

 それで、一つお願いなんですが、今、早く、安全にでは、もちろん一日も早くというのは私も同じ気持ちなんですが、安全と早くでどっちを先につけるかというと、ぜひとも安全にを先につけて解決していきたいなというふうに思っている。

 それと同時に、これから、神戸の震災以降ボランティア社会と日本が言われるようになってきた。いわゆる町づくりに市民参加をしていく、町のトラブル解決に市民参加をしていく。そんな状況の中、僕がこのダイオキシンの高濃度汚染物の処理施設、どこにつくってどうやって解決していくんだということを見たとき、ある意味最初は行政主導で始まった。それは行政の方が一番知識もある、そんな中でやっていくんですけれども、地域の方の不安、また地域の方にスペシャリストがおられる、また環境のスペシャリストであったりするようなNPOの方々がいろいろな知恵を出し合う、そんな形で、今どうやって解決していこうか、能勢のダイオキシン、悪い意味で有名になった能勢の町を、能勢、ダイオキシンに勝った町というふうに変えたいという気持ちで、今一生懸命地方行政、組合の役員さん、そして議会人、そして地域住民また一般市民というふうに頑張ってやっているのです。

 ぜひとも私お願いをしたいのは、温かい気持ちで見ていただきたいな、予算をくっつけてあげたのに何で早くやらないんだというような姿勢でなく、少し時間がかかるのかもしれませんが、今町づくりに合意をする過程の中にあることを御理解いただいて、温かい目でぜひとも見ていただきたいというふうに思うのです。

 汚染してしまったものをさっさと処理しようというのとは違って、ある意味、その裏では、この二十一世紀に求められている地域主権的な市民参加意識というものが、この問題を境にして、災い幸に転じるような形で今生まれていますので、その辺の部分は、大臣、問題を科学的に処理するのではなく、そんなこともあるんだなというような温かい気持ちでぜひとも見ていただきたいというふうに思うのです。

 それで、ここから質問にひとつ入りたいのですが、世界最初だというふうに思っていただけるならば、安全面であったり、また財政的なものも含めて、ある意味実験的に国でやっていくような、技術立国、環境立国になっていこうと言っている日本の中で、ひとつ技術革新を起こすようなつもりで、国家プロジェクトとしてこのダイオキシンの高濃度の処理というものを考えてもいいんじゃないかなというふうに思うのですが、その辺に対してはどんなふうにお考えですか。

 例えばPCBの処理をしていくのに、全国に三カ所から五カ所ぐらい場所をつくっていこうというような計画もあるわけですから、同じように、高濃度のダイオキシンに汚染された廃棄物というものを国の力でもってやっていくということも考えられるんじゃないかなということですが、その辺の整合性はいかがなものなんでしょうか。

岡澤政府参考人 ダイオキシン、PCBと二つの化学物質の例が出ましたけれども、ダイオキシンにしてもPCBにしても、技術的に見れば、処理技術については、これまでの世界的な、民間も含めた研究開発によりまして、ほぼ確立されているというふうに認識しております。

 その処理については、申し上げるまでもないのですが、排出者責任ということが原則になっておりますので、排出事業者自身が行う、あるいは排出事業者の委託を受けた民間の処理業者が処理するということが基本になろうと思います。

 PCBについて、国が中心になって処理体制を整備しようと言っておりますのは、これは、国の政策として三十年間事業者に保管させてきた、しかもPCBというのは、中小の事業者も含めて非常に多くの、何十万台というトランスコンデンサーが保管されておるという状況から、それぞれの事業者ごとに処理させるということは非常に効率的でもないし、また国としての過去の経緯も含めて、国がやはりしっかり関与した形でやることが望ましいというふうに考えたからでございます。

 こういうダイオキシンに汚染された解体廃棄物につきましては、件数的に見ても、全国的にそう多いとは思いません。それぞれしっかりした自治体等がございますので、技術的な支援あるいは財政的な支援という面では、国としてはできるだけのことはしていきたいと思っておりますが、原則としては、それぞれの地域でそれぞれの地域に応じた対策、処理というものを講じていくことが適切ではないかというふうに考えております。

大谷分科員 技術的、財政的にも支援を十分前向きに考えているから地域でやれよということであったというふうに理解していいかというふうに思います。

 ただ、僕の質問は、それはもちろん地域の人もそのつもりで、自己責任という気持ちを大切にして頑張っておられるのですが、このジオメルトより、もしかしたら新しい、もっともっとすばらしい方法を日本が生み出せるかもしれない、そんな希望を持って何か国家的プロジェクトをしてみるような気があるのかないのか、そんな思いで質問をさっきさせていただいたような次第でございますが、いかがでしょうか。

岡澤政府参考人 PCBそれからダイオキシン、似たような処理方法になると思いますけれども、それぞれ世界的に見ると、実績もかなりあるものもありますし、ある程度技術は開発されているんだと思います。もちろん私ども、それの応用だとか、うまくいけばさらにすぐれた技術の開発ということも目指して調査研究はしておりますけれども、今の段階で新たな技術を開発して対応しなきゃならないということではなくて、今既にある技術をもっても対応できるのではないかということですので、とりあえずはまず今の既存の技術を活用したい。引き続き、いろいろなこういう難分解性のものについての処理技術については調査研究を進めてまいりたいと思っております。

大谷分科員 現実的なこととして、それは全く僕も理解できますけれども、経済産業省だけが技術を担っているんじゃない、環境省もこれから日本の環境技術を高めていく役割を持っているんだということを、ぜひとも心構えをしっかりと持っていただきたいというふうに思います。

 次、保管の仕方についてちょっと教えていただきたいのですが、ドイツでは、ごみもそうなんですけれども、廃棄物というものを岩塩の中に埋めて保管をしている。こういうすばらしい、すばらしいのかどうなのかわかりませんが、ジオメルト法という、安心、安全だと言われる手法がありながら、かの国においては、そうやって処理をせずに、そのまままだ置いている。

 いろいろなことを聞きます。ジオメルト法であったり、今あるような処理技術というものがまだまだ未完成だからというようなことも聞きますし、コスト的にまだまだ高いからコストが安くなるまで置いておくんだ、あるいは、置いているのは膨大な量で、少々今からやり始めたってすごい経済的効率が低いので、そのまま置いているんだと。

 いろいろなことを聞きますが、その辺をどんなふうに我が国のごみ行政をつかさどる環境省としては分析されておるのか、教えていただけますでしょうか。

岡澤政府参考人 有害な化学物質については、できるだけ早く無害化して環境中から排除するということが望ましいと思います。

 しかし、そのためには一定の処理というふうな行為を行わなければならないわけでして、そうすると、地域、特に日本は非常に国土が狭いし、人の住んでいないところというのは余りありませんので、実際には周辺の方々の御理解が得られるような技術あるいは方法でなければ処理はできないというふうに思います。そこのところは、早くやらなきゃならないからといって強行するということは避けるべきだろうと思います。

 そういう中で、一定の住民の理解が得られるまでの間、暫定的に保管する、安全な形で保管するということは一つのオプションであろうというふうに考えています。

大谷分科員 能勢町におきましても、きのう、施設組合の方で議会がございまして、やっと保管する場所が川尻という地域でどうだということが決まった、いや、それで決めようかと思っているというような議題が、川尻という地域名まで出てきたわけですけれども、そんな状態になっているんです。そこに廃棄物を保管していく、もしかしたら川尻じゃなくて別のところになるのかもしれませんが。

 そんな中、これは今ドラム缶に詰めているわけですよね。ドラム缶だって、そんなもの、さびてきて古くなるんだから早くしなければということだというふうに思うんですが、この保管についての安全性ということは、技術的にいって大丈夫なんでしょうか。これもやはり世界で初めて、今の計画ですと、プレハブの仮の倉庫をつくって置いておくというようなことは僕はしないと思うんですが、何らかの厳重なものになるかと思うんですが、そこにもやはり技術的支援、財政的支援という国の役割も必要なんじゃないかなと思ったりするんですが、とりあえずその前に、安全性についてちょっと教えていただけますでしょうか。

岡澤政府参考人 有害廃棄物の保管につきましては、廃棄物処理法によりまして保管の基準が定められておりまして、一般的に申し上げれば、外界、外の環境との隔絶をちゃんとして漏れ出さないようにするということでございまして、例えばPCBでも、倉庫なり、雨に濡れないような状況で、一定の容器に入れたものをそこにしまっておくということになると思います。

 ですから、ダイオキシン、この解体廃棄物につきましても、具体的にどういうふうな形で保管されるか、詳細、まだ把握しておりませんけれども、そこについては十分相談に乗って、安全に保管できるようにさせていきたいと思います。

大谷分科員 ぜひとも、これはもう大臣のリーダーシップで、世界初めて、我が国にとって初めて大量に保管するわけですから、技術的それから財政的支援も含めて、安全上必要だなと思うことがあったらお助けいただきたいというふうに思っておるんですが、それはそういうことでよろしいんでしょうか。

岡澤政府参考人 保管の話は、けさの新聞でしたか、載っていたばかりで、どういう形でどういうふうにされるのか、詳細はまだ把握しておりませんが、いずれにしても、私どもとしてどういう支援ができるのか検討して、できるだけのことはしてまいりたいと思います。

大谷分科員 何回も言いますが、我が国初の試みでございますので、その組合だけでできる話でございませんので、人を送るということから始まって、技術、財政の支援をぜひとも考えて、安全性を高めていただき、また、地域住民の不安というものを消し去っていただき、いい意味での前例を我が国においてつくっていただきますよう心からお願いをしたいというふうに思います。

 もう一つだけ、僕ちょっと技術的に教えてほしいことがあるんですが、ジオメルト法を使って、和歌山県の橋本市では約一トンぐらいの高濃度の廃棄物を処理するというふうになっているんですけれども、能勢の方では百トンですよね。この手法でもって、百倍、物量的に差があるのですけれども、それは安全面からいって可能なんでしょうか。

岡澤政府参考人 実は、和歌山県の橋本市で処理しようとするものと全く同じというわけではないんですが、このジオメルト法という技術は、ダイオキシンにも使えるということで、ほかのものでも使っておる実績もありますし、濃度もあるいは量もさまざまなレベルで使われております。そうしたものを専門家のレビュー等を経て、能勢のケースに適用できるというふうに専門家から確証を得たということでございます。

大谷分科員 技術的なものはわかりました。

 一つだけ違いを感じておるんですが、世の中、人間のやることに完全なんということはないわけです、人間が完全でない限り。

 この橋本の方の処理、予定されている地域というのは人が近くに住んでいませんよね。能勢の方ですと、もちろん廃棄物の解体する場所というのは今全然決まっていないわけですけれども、環境省になる前の話ですと、環境庁と厚生とで分かれていましたので、汚染された土の方は厚生だということで、その現場に、オンサイト、建物くっつけて、このジオメルト法で処理をするという計画で一致したんです。

 去年の委員会では、社民党の中川議員が同じように御質問をされておるんですが、その焼却施設のすぐそばというのは能勢の園芸高校がございます。そして、何よりも、ことしの四月からは汚染されたクリ林を使って授業を再開するということになっているんですが、まさにここから隣の本会議場ぐらいの距離しか離れていない、そんな目の前で子供たちが授業をしているところで、ジオメルト法が技術的に幾ら安心だといえども、これは人間がコントロールするわけでありまして、人的なミスがあっての事故もあるかもしれない。その場合、ちょっと考えなきゃいけないんじゃないかなと僕は不安を感じるんですが、その辺はいかがなんでしょうか。

岡澤政府参考人 恐らくすぐに処理をされるということではないと思うんですが、先ほどの御質問にありました橋本市のケースの方が恐らく先行する可能性が強いと思います。そして、こうした橋本市の実例等で、これは、恐らくしっかりと処理の状況とか周辺に対する影響とかいろいろなものをモニターして、技術としては大体これでいけるということなんですが、より安全に処理するためにはどういう措置を講ずべきかということもだんだんわかってくると思います。

 そうした橋本の実績、それからまたさらに、もうちょっと時間がたてば、私ども、環境事業団を使ってPCBの処理をやろうとしていますし、また、民間で一部の民間企業がPCBの処理を先行的にスタートするというふうなこともありますので、そうした類似の化学物質の無害化の実績というものが積み上がってまいりますので、そうしたものも参考にして、能勢の方でも万全を期した安全対策というものを講じながら処理ができるのではないかというふうに考えております。

大谷分科員 まだまだ多分時間的には、まだまだというのはそんな何年もというわけにはいきませんが、少し時間があると思いますので、ぜひともよき御指導と御支援というものをいただきながらやっていきたいというふうに思います。

 私自身も、地元選出の国会議員としての役割を果たしていきたいですし、ぜひとも大臣また部長、ごみ行政をつかさどる皆さんにおかれましても、世界初めての試みだということをきょうから焼きつけていただいて、技術的、財政的支援を、あわせてよき御指導をいただきながら、お互い、役割を一二〇%達成して、解決していきたいという思いを持とう、共有しようと提案をさせていただいて、質問を終わりたいというふうに思います。

 ありがとうございました。

北村主査 これにて大谷信盛君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして環境省所管についての質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

北村主査 次に、農林水産省所管について政府から説明を聴取いたします。谷津農林水産大臣。

谷津国務大臣 それでは、平成十三年度の農林水産予算の概要を御説明申し上げます。

 初めに、予算の基礎となっている農林水産施策の基本方針について御説明いたします。

 我が国農林水産業と農山漁村は、食料の安定供給はもとより、国土や自然環境の保全、良好な景観の形成、文化の伝承等の多面的な機能を有しております。とりわけ、健康で充実した生活の基礎となる食料について、新鮮で安全なものを安定的に供給することは、国の基本的な責務であります。

 こうした役割を担う農林水産業と農山漁村について、生産と消費との共生という考えのもとに、その健全な発展を図ることは、将来にわたり国民が安心して暮らせる豊かな社会を築いていく上で不可欠であると確信しております。

 このため、二十一世紀における我が国農林水産業及び農山漁村が、希望にあふれ、活力に満ちたものとなるよう、各般の施策を積極的に展開してまいります。

 次に、平成十三年度農林水産予算について、その枠組みから御説明いたします。

 平成十三年度一般会計予算における農林水産予算の額は、関係府省計上分を含めて、三兆四千三億円となっております。その内訳は、公共事業費が一兆七千四百億円、非公共事業のうちの一般事業費が九千六百五十一億円、食料安定供給関係費が六千九百五十二億円となっております。

 平成十三年度の農林水産予算は、新たな基本法に基づく食料・農業・農村基本計画を受けた初年度予算であるとともに、林野、水産分野においても新たな基本政策の具体化を図るための予算であることを踏まえ、食料自給率向上対策等に思い切った予算配分を行うなど、新たな政策展開に即して編成いたしました。

 以下、農林水産予算の重点事項につきましては、委員各位のお許しを得まして、御説明を省略させていただきたいと存じます。

 よろしく御審議くださいまするようお願い申し上げます。

北村主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま谷津農林水産大臣から申し出がありました農林水産省関係予算の重点事項の説明につきましては、これを省略して、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

北村主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

北村主査 以上をもちまして農林水産省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

北村主査 質疑に入るに先立ちまして、政府当局に申し上げます。

 質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山口壯君。

山口(壯)分科員 私は民主党・無所属クラブの、無所属クラブの山口壯と申します。よろしくお願いします。

 今、谷津農水大臣からいろいろ予算のことについての話を伺ったわけなんですけれども、私自身は、この間、谷農水大臣のときだったのですけれども、例の殺虫性のトウモロコシ、スターリンクというもの、これは虫が食ったらその虫が死んでしまう、こういうものは本来認められていないのに日本に入ってきているということがわかったものですから、アメリカでも大騒ぎになって、日本でも大騒ぎになって、したがって、こういうことがないように、いかに検査体制を充実強化させていくことが必要であるかということを、谷大臣と一緒にいろいろと議論させていただいたわけなんです。これから谷津農水大臣とも、ぜひともこの遺伝子組み換え作物全般について、我が国がどういうふうに取り組むべきかをめぐっていろいろと議論させていただければと思います。

 まず、このスターリンク、遺伝子組み換えの殺虫性トウモロコシですね、これを契機に、検査体制の充実強化ということを農水省としてどういうふうにこの予算の中で考えておられるのか、そこからお聞かせいただけますでしょうか。

金田大臣政務官 山口先生御指摘のとおり、スターリンクの問題については、農林水産省としても一生懸命取り組ませていただいております。

 検査体制の充実等々も図ってまいっておりますが、十二年度におきましては、六十検体についてやる検査量を百検体にするという形で拡充強化してまいっております。

 また、検査体制の充実、今東京でやっておるわけですが、大阪でもやれるようにというような形で、いろいろな機器なんかの整備も必要でございます。例えばPCR法に必要な機材、現在二つあるわけでありますが、これについてももう二つ増量するというふうに考えておりますし、また、エライザ法につきましても、現有一機しか検査機がないわけでありますが、十三年度でもう一台増設して検査体制を充実してまいりたいというふうに考えております。

山口(壯)分科員 今伺った、これから充実強化させていくということをぜひともお願いしたいと思いますけれども、大臣、それでよろしいでしょうか。

谷津国務大臣 そのとおりです。

山口(壯)分科員 これから特にWTOの中で大きな議論がなされると思うのです。特に、この遺伝子組み換えというのはアメリカが一生懸命やっているということで、特にアメリカとヨーロッパとの間で見方の違いもあるんじゃないかという気もするわけなんです。

 やはり最大の農業輸出国というのはアメリカだと思いますけれども、そのアメリカと、自分の農家を守りたいヨーロッパと、いろいろな意味で見方の違いがあろうかと思うのですけれども、これから我々がかかわるに際して、アメリカの見方あるいはヨーロッパの見方についてどういうふうに御認識いただいているのか、その辺、伺ってよろしいでしょうか。

谷津国務大臣 実は、WTO交渉におきましては、米国とEUの提案では、遺伝子組み換えの農作物に関するものについてはちょっと違うところがあります。

 実は、一月の十四日からEUに行きまして、フィシュラー農業委員、これは水産の方も今度は兼ねることになったのですが、フィシュラー委員と意見の交換をいたしましたときに、実はこの件についての説明がございまして、その中で、非常にアメリカと違う考えを持っているというのがよくわかったわけであります。それがまた提案をされているということもわかりました。

 我が国は、遺伝子組み換えの技術につきまして、先生ももう御案内かと思いますけれども、この技術の持つ可能性については正当に評価することということが一つあります。それから、最新の科学的知見に基づきまして、環境や健康等への影響についての十分な評価が行われる必要があること、それからまた、消費者が関心を持っておりますから、それに的確にこたえる必要があること、これが、我が国として、その提案の中にしっかりと含まれているところなんです。

 そして、WTO交渉の日本提案においては、これらの消費者や市民社会の関心に対応していく、そういう観点からも、安全な食生活の確保という立場に立ちまして、貿易ルールの検討に当たっては、食品の安全性の確保、それを第一義に考える。そしてまた、UR合意後に生じた新たな課題については、現行協定の問題点の有無の検証を行うこととしているところでございまして、我が国としては、日本の提案をしっかりと、交渉については、この提案がきちっと通るようにといいましょうか、理解されるように臨んでいきたいと思っているところであります。

山口(壯)分科員 今、ヨーロッパとアメリカとで若干スタンスの違いがあるということを大臣よく御認識いただいているようなんですけれども、ヨーロッパが、やはり自分の農業を守りたい、自分の農家を守りたい、そのためにはアメリカが安全を証明できなければそれを入れないということを言っていることに対して、我々日本というのは、そこに外交上つけ入るすきがあると思うのです。

 このことについてどうでしょうか。そういう意味で、日本は、必ずしも科学的にオーケーだというふうに科学者が言っているんだったら丸にするというのじゃなくて、政治家として、日本の農業を守る立場の者として、この遺伝子組み換えに対してはむしろ厳しい態度で取り組んでいくというところを重視していただきたいと思うのですけれども、その点はいかがでしょうか。

谷津国務大臣 EUの提案の中で、ポイントとして説明を受けた中では、食品の製造あるいは流通、販売、貿易等を制限するということなんですね。

 我が国といたしましても、この点については、科学的な証拠が不十分だと判断された場合、そういう場合には、環境や健康への被害発生のおそれがあると考えられる合理的な理由がある場合は適切な措置をすることができると書いてあるのですが、適切な措置とはEUと同じように制限するというふうに思っているわけであります。

山口(壯)分科員 ぜひともそういう観点は大事にしていただきたいと思います。

 このスターリンク、依然として検出されているというように私は聞いているわけなんですけれども、その点で、私は幾つかポイントになることがあると思うのです。

 それは、例えばアメリカ側で検査をするという場合に、果たしてどういう人が検査しているのだろうか。農務省のいわゆる係官の人がすべて検査しているのか、あるいはここには輸出業者みたいなものが、どうしても人手が足りなくてそこに入っていて、それがどうも違いを生んでいるのではないのかという気がするのです。

 それからもう一つは、一体何粒、二千四百粒というふうに私は聞いているわけですけれども、二千四百粒検査して一粒でもだめであれば、それは輸出、あるいはこちらからいったら輸入を認めないということになるのか。

 そういう意味で、順番にいきますと、まずスターリンクが依然として検出されているという事実に対してどういうふうにお考えか、その辺、お伺いさせていただけますか。

小林政府参考人 昨年のモニタリングの状況についてまず御説明させていただきたいと思いますけれども、昨年の四月―六月からサンプルの調査を始めております。四月―六月は十五検体中十検体ありました。その次の七―九月では十五検体中十検体。十―十二月になりまして四十二検体中二十六検体。

 ちなみに言いますと、この中のスターリンクの混入率でございますが、これは四―六月の〇・五三から十月―十二月には〇・一九と、そちらの方は減ってきているということが一つございます。

 それからもう一つ、私ども、昨年の十二月にアメリカとの間で、どういった形で輸出前の検査をやってもらうかということを協議いたしまして、合意をいたしました。この合意の後に船積みされてから来るものは、まだ私どももチェックしておりません。

 今申し上げましたのは、合意前のものというふうに伺ったわけでございまして、そういう意味で、昨年の合意に基づくチェックをこれからいかに的確にやっていけるか、これが一つのポイントだと思っております。この二月にも私どもの検査職員を米国に派遣しまして、我々の合意に基づく検査体制なりチェックをちゃんとやっておられるかどうかということを十分確認している、そういった状況でございます。

山口(壯)分科員 ということは、日米の合意の後は、まだ検査が、どういうふうな結果になっているかということは我々はわからないわけですね。

小林政府参考人 モニタリング検査の対象にしたもので、合意後のものはまだ向こうからこっちへ届いておりません。向こうの検査後、まだ船で輸送されている途中でして、そういう意味でのお話です。ただ、私どもの合意に基づく検査というのは、その合意ができた後、アメリカの方で既にやっております。それを私どもの職員が二月にチェックに行った、そういう意味であります。

山口(壯)分科員 先ほどの、検査するのはすべて農務省の係官なりいわゆる役人の方でしょうか。

小林政府参考人 アメリカの農務省もしくは農務省の基準に基づいて実施できる者、そういう扱いになっております。したがって、農務省が直接やる場合と、直接ではなくても、農務省の基準に基づいて適正にやっているというふうに承知しております。

山口(壯)分科員 ということは、民間の業者がそこにかかわっているということですね。

小林政府参考人 そういうケースもありますが、ただ、あくまでもアメリカ農務省の基準に基づいて適正にやっているということでございます。

山口(壯)分科員 ちなみに、いわゆるトレランスはいかがですか。二千四百粒検査して一粒でもだめであれば、これは輸出を向こうからしてこない、あるいは日本からいえば輸入をお断りするということとして理解してよろしいですか。

小林政府参考人 向こうの輸出前の検査でそうしたチェックの結果、入っておれば、それは日本の方に来ない、そういうルールでございます。

山口(壯)分科員 ゼロトレランスという言葉もありますけれども、要するに、疑わしいものはとにかく入れないというふうに私は理解しているわけなんです。そういうことでないと、この遺伝子組み換えの話に対しては、日本の農業、特にこれから稲の問題が始まると思いますけれども、日本の米づくり、これを守っていくためにはどうしてもこの遺伝子組み換えに対して厳しい態度で臨まなければいけないと思うわけなんです。したがって、このゼロトレランスの話というのはぜひとも守っていただきたいと思うのです。この点について、谷津大臣、お聞かせいただけますか。

谷津国務大臣 これは先生おっしゃるとおりでありまして、しっかりその辺はやっていかなければいかぬと思っております。

山口(壯)分科員 スターリンクというのはトウモロコシの話なんですけれども、日本の米づくりが年間生産量が九百万トンであるとすれば、アメリカから入っている輸入トウモロコシの量というのは千六百万トンもあるわけなんです。したがって、日本で一年間にとれるお米の量の二倍弱がアメリカからどんと入ってきているということで、アメリカにとっては非常に大事な輸出品目です。それに対して、変なものが入っていたということであれば、日本はもっともっと筋を通した物の言い方をしてもいいと私は思うのです。いろいろアメリカと日本との間には難しい関係もありますけれども、これは日本がきちっと物を言っていくべきだと思うのです。このことについてお聞かせください。

谷津国務大臣 それは昨年の十二月十八日に日米合意ができまして、米国でスターリンクが検出されたものは輸出をしない、日本国内からいえば輸入をさせない、こういうことになるわけでありまして、この辺のことはしっかりやりますから大丈夫だと思っております。

山口(壯)分科員 ちなみに、アベンティスという会社がこのスターリンクを開発したわけなんですけれども、アベンティスもえらいものを抱え込んでしまったなと思っているようなんです。この開発した、どうもアベンティス・クロップサイエンスというような子会社みたいですけれども、もうアベンティスの方は十一月十五日に、こういうものはお荷物で要らないというようなことも決めているわけなんです。

 他方、アベンティスの日本支社が日本に対して、スターリンクを認めてくれないかというような話があるやに聞いておるのですけれども、その辺の事実関係はいかがでしょうか。

谷津国務大臣 今先生御指摘のとおり、アベンティス・クロップサイエンス・ジャパンという会社、これは子会社というふうに御指摘があったわけでありますが、本年の二月十九日に、安全性確認申請が出てまいりました。そういう中で、今後、組換え体利用飼料の安全性評価指針に基づきまして、農業資材審議会において科学的見地から御審議をいただくこととしておるところでありますけれども、仮に安全性の確認がなされれば、これは通常の飼料と同様に輸入を認められることになるわけであります。

山口(壯)分科員 今、谷津大臣は安全性が認められればというふうにおっしゃったわけですけれども、それは日本側が認めるわけですか。

谷津国務大臣 そのとおりです。

山口(壯)分科員 この問題について私は今、ちょっとおかしいポイントが含まれていたと思うのです。それは、例えばヨーロッパの場合、アメリカが安全性を確認、証明できなければ、要するに挙証責任はアメリカにあるわけです、アメリカがそういう安全を証明できなければ輸入しないというきつい立場をとっておるわけなんです。どうして日本がそんなものを証明しなければいけないわけですか。

谷津国務大臣 これは、アメリカが輸出する前にそういうふうなものを調査して、入っていれば日本は輸入しませんよということになっておるわけですね。

 ですけれども、もう一つ、政府としては、農水省としては、国内でももう一回きちっとその辺を証明するために審査をするというのは、これは大事な要素ではなかろうかと思うのですよ。もしそれが入っているということであるならば、こちらから輸入をしないということになるわけでありますから、これは今先生がおっしゃるのと同じように、きちっとやっていくということになりますので、その辺のところは御理解いただきたいと思います。

山口(壯)分科員 アメリカでもって非常に大変な騒ぎになった、特に飼料としてしかアメリカは認めていなかったわけです。ところが、食品のタコスから出てきた。日本では飼料としても認めていなかったものが、例えば食品のコーンミールから出てきたという意味で、一つ道を開けばどんどん食品への道が近くなってしまうという意味で、これは既にアメリカで非常に問題になっているわけですから、ほかのものと同列に淡々と科学的に扱うのはいかがなものかと思うのです。むしろ、政治的な観点をそこに入れるべきだと思うのですけれども、この点、いかがでしょうか。

谷津国務大臣 やはり科学的にきちっと調査をするということは大事だろうと私は思うのです。ですから、その前に政治的に云々するというのは、ちょっと違うのではなかろうかなと私は思うのですけれども。

山口(壯)分科員 これは局長から伺わせていただければと思いますけれども、アメリカで今スターリンクの扱いはどういうふうになっていますか。

小林政府参考人 先生今御指摘ありましたように、食品としての見地からは認められておりませんが、えさとしての利用については認められているということでございます。

山口(壯)分科員 アベンティス社に何かアメリカが回収を命じたというような話もあるかと思うのですけれども、その辺とこの話とのつながりはどういうふうになっていますでしょうか。

小林政府参考人 アメリカの方の状況はちょっと私どもつまびらかには承知しておりませんが、ただ、先ほど先生の御指摘があり、大臣からも御答弁しましたように、結局、まず食品というものとえさの利用とをどういうように見るかということで、そこは当然分けてチェックをし、その安全性を確認するわけでございます。その上で、今先生のおっしゃったような、流通するときに、えさの方はいいけれども食品としてはだめだということがあれば、そこの分別技術といいますか、そういうところをいかにきちんとやっていけるかということも、私ども、あわせて検討しなければいけないというふうに考えております。

山口(壯)分科員 アメリカの流通の実態を見ればすぐわかることなんですけれども、サイロがいっぱいありますね。そのサイロは、飼料用、食品用と分かれていないわけです。その中には、いっぱいいろいろなトウモロコシが入ってくる。例えば、きのうまで普通のトウモロコシ用のサイロだったものにスターリンクがどんとまざるということは大いにあり得る、むしろそれが実態だと思うのです。

 例えば、農家でお父さんと十七歳のトム君が一緒に仕事をしていて、おい、トムよ、きょうはAのサイロに普通のトウモロコシを入れろと。トムがわかったよと言っていたのに、ついスターリンクを入れてしまった。こんなことはよくあることですね、多分。あるいは、栽培しているところにおいても、刈り取るときにそんなに、ここから向こうはスターリンク、ここから向こうは普通のトウモロコシというふうにきれいに分かれていないわけです。二百メートルの緩衝地帯はあったにせよ、どんどん取ってくるということは大いにあり得ると思うのです。

 そういう意味では、これは食品だから、これは飼料だからというふうに、きちっと分別するというのは実態上は非常に難しいと思うのですけれども、それはいかがでしょうか。

小林政府参考人 確かに、分別流通をどういうふうにやっていくか。

 一つは、輸出前の、向こうで船に積むまで、主としてはしけで運ぶわけですけれども、はしけに積み込む時点でのチェックということがあるかと思っております。私ども、現在、スターリンクの検査は、輸出用の船舶に荷積みする前の適切な場所でやるわけですね。そういったところですべてのはしけからサンプルを採取して検査を行っている。そこでスターリンクが検出されているかどうかということをチェックして、スターリンクが入っていないはしけをえさ用として日本に持ってくるというような検査を既にやっているわけであります。

 したがって、まず、アメリカから輸出されるときに、そういった分別流通の一番ベースになるところをどういうふうにチェックしていくかというようなことが一つのポイントではないかと思っております。

山口(壯)分科員 ここで、私が先ほどお聞きした、輸出業者がどこまでこういう、いわゆるIPハンドリングにかかわっているか。農務省がきちっとハンドリングしているんじゃなくて、輸出業者が、実態からいって大変だ、もうこれぐらいで勘弁してくれという人たちがそこにかかわっているのであれば、どうしてもそのIPハンドリングというのは、これは丸、これはバツというふうに分けられないと思うんです。それが一つあります。

 私はそれを指摘させていただくだけにしておいて、ちょっと大臣に伺わさせていただければと思うんですけれども、今、日本の中でスターリンクを飼料として認めてほしいというアベンティス社の安全確認申請、これに対して大臣は、科学的にそれがオーケーであれば認めるということにならざるを得ぬのじゃないかというようなお答えなわけですけれども、飼料として認めてしまうということがさらに食品としてスターリンクが混入するということにもなりかねないというのが、私の危惧なんです。

 ちなみに、食品としてスターリンクの安全度を見た場合に、アメリカのいわゆる環境保護局というのがあるわけですけれども、このEPA、エパの報告書の中で、どうも中程度の危険はあるようだという報告があるんですけれども、このことについては、どうでしょうか、御存じでしょうか。

金田大臣政務官 米国の環境保護庁の調査で、アレルギーに関してどうかということで二点指摘されております。そのことは承知いたしておりますが、スターリンクが産生するクライ9cというタンパク質がアレルギーを誘発する蓋然性というのはほぼ中ぐらいだろうというふうなことが一点でございます。また二点目で、クライ9cのタンパク質の食品としての暴露量みたいなことをあわせて検討したところ、アレルギーを発する蓋然性というのは極めて少ないものであろうというふうに言われている報告については承知してございます。

 先生のおっしゃりたいことはよく我々理解させていただいておりますが、日本の立場としまして、組換え体利用飼料の安全性評価指針というのをつくっておりまして、それに基づきまして、我々の農業資材審議会において、相当厳しくやらせていただきたいと思いますが、科学的な見地から安全性の審査が行われることになっておりまして、この中で、これらの情報も踏まえて畜産物の安全性についてもこれから十分に検討してまいりたいというふうに思っております。

山口(壯)分科員 今御認識いただいているように、要するに一〇〇%安全じゃないわけです。そこに、ゼロ以上のリスクが伴っているわけですね。

 特に、この遺伝子組み換えあるいは人間のアレルギー反応というものは、時間の経過とともに予想しなかったようなことも起こり得るというところが一つのみそだと思うのです。

 しかも、この一つのポイントとともに、もう一つのポイントは、私がさっき言ったように、科学的な見地とはもう少し別に政治的な、政治家としての発想があり得るだろう、特に日本の農業を守るという立場の者としての発想があり得るだろうというところをしっかり、私はその評価報告書をお読みいただくときにもあわせ持っていただきたいと思うのです。それは、中程度の、ミディアムの危険性があるということをアメリカの中でも既に言っているわけですから、我々は別にそこで真っ白けの状態でオーケーと言う必要は必ずしもないと思うのです。

 この点について、いかがでしょうか。

松岡副大臣 山口先生、大変重要なといいますか、大事なポイントを御指摘になっておられると思っております。特に、我が国の農業、農家を守る、こういったお言葉は含蓄の深いものでありまして、私ども、そこは十分拳々服膺して、腹に入れながら、今おっしゃった政治的な立場からの判断というものもすべしということについては、これは非常に大事な御指摘だ、こう受けとめたいと思っております。

 したがいまして、安全性というのは、どこまで追求しても確実ということの結果に至るまでは必要なことでありますから、そういった観点に立って、私どもは大臣のもとで、副大臣・政務官会議というのも農林省は持っておりますから、きょうの御指摘を受けて、さらにいろいろそういった点の論議というのはきちっとやっていきたい、こう思っております。

山口(壯)分科員 きょうは予算の審議ということで、特に充実強化していただきたい検査体制、このことについては認識は一致していると思いますので、それはぜひともそういうふうにやっていただきたいと思うんです。

 なお、遺伝子組み換え作物一般について、特に私が先ほど申しましたような稲、これが例えばモンサントという会社から入ってこようとしている。あるいは、ほかの会社も研究しているし、日本の中でもいろいろな意味での遺伝子組み換えの作物は稲も含めてやっているわけですけれども、アメリカが今本気になっているわけですね。

 特に日本に向けて、遺伝子組み換え食品は安全だという意識をつくるための広報費用まで、えらいお金を用意している。一説によると、五十五億ドル用意している。五十五億ドルということは、日本円に直して六千億円です。これはもう異常な額です。だけれども、アメリカはそれほど本気なわけです。しかも、その根底にある、日本の食料市場をコントロールしたいという気持ちが、私には見てとれるわけなんです。

 それに対して、我々政治家は、科学的見地だけでは対抗できないと思うんです。それは、その魂胆を見抜いて、アメリカがどういうふうなつもりなのか、我々は食料の自給体制をアップさせていくという非常に大事な使命も帯びているわけですから、このことについては、科学的見地でオーケーだからといって必ずしもオーケーにならないということを、もう一度私は谷津大臣からお考えをお聞かせいただきたい。

谷津国務大臣 アメリカが戦略としてそういうようなことを考えておるということは、実は私も聞いておるわけであります。そういうことで、私どもは、科学的な見地においてもう問題ないということであるならば輸入する、先ほど輸入することもできるというふうに申し上げたわけでありますが、またそれ以上に、そういったアメリカの戦略の中において、これをやらぬということであるならば、我々も政治的にはそのときには判断をしていかなきゃならない点があるというふうに考えております。

山口(壯)分科員 きょうは、遺伝子組み換えの作物、特にスターリンクに焦点を当てさせていただいて、非常に有益な議論をさせていただいたと思うんです。

 我々は、特に日本の農業を守っていくために、この遺伝子組み換えの作物に対してむしろ警戒的に物を見ていく、そのことが日本の米づくりを中心とした農業を守っていくことになるというふうに思いますので、その辺、これからもよろしくお願いします。

 きょうはどうもありがとうございました。

北村主査 これにて山口壯君の質疑は終了いたしました。

 次に、山本明彦君。

山本(明)分科員 自由民主党の山本明彦であります。

 私は、農業者にとりましてまさに画期的な対策であります経営所得安定対策についてお伺いをまずしたいというふうに思います。

 新基本法の立て役者でありました木村尚三郎先生のお言葉に、新農業基本法は農業のためだけのものでもなければ、農業者のためだけでもない、まず第一に国民の安心と安全をいかに確保するか、第二にそのために日本の農業、農村をいかに活性化させるか、これが新基本法の目指す世界だ、こういうふうに木村尚三郎先生は言ってみえます。

 この言葉からいたしますと、逆に、日本の農業、農村が活性化しないと国民の安心と安全は買えない、こんなふうに判断をするところであります。その農業を活性化させるために、農業者、そして農業後継者がやる気を起こすようにしなければならない。農業後継者にやる気を起こさせるためには、まず農業の経営が安定しなければならない、こんな理屈になっていくというふうに思います。

 まず自分自身が自助努力をするのが一番でありますけれども、今のこの日本の農業の時代に、あなた頑張ってくださいよ、自分でやってくださいよ、こんなことではとても自立ができないというのは申し上げるまでもないわけであります。そうしたことで、今度経営所得安定対策が検討されているところでありますけれども、今後のこの検討方向について、副大臣の御所見をまずお伺いしたいと思います。

    〔主査退席、大原主査代理着席〕

松岡副大臣 山本先生、これからの農政にとって一番重要な、また基本的なポイントを今御指摘いただきました。

 御指摘のとおりでありまして、私ども、農業は弱いから守るとか、だから助けるとかそういうことではなくて、農業というものが国民生活全般にわたってどのような必要不可欠な役割を果たしているか、まずそこのところの位置づけが一番ポイントになるわけであります。食料はもちろんでありますが、それ以外に、これは多面的機能と一言では言いますが、国民生活にとって、水を蓄え守ったり、災害を防いだり、そしてまた緑を確保したり、環境を維持したり守ったり、大変重要な大事な、なくてはならない働きをいたしております。

 だから農業の存立が大事なわけでありまして、そのためには、担い手といいますか、農業従事者がしっかりと意欲を持って農業をやっていける、こういうことになりますと、どうしても所得の安定というものが大事なわけであります。やはりどうしても他産業並みの所得、そういったもの、そしてそれもまた他産業と同じような労働時間で達成できる、こういったようなことがどうしても必要でございます。

 したがって、党と一体の中で議論を進めておるわけでありますが、私どもといたしましても、この夏ぐらいまでには役所側としての大綱をきちんと組み立て、整理をしていく。そして、なるべく早く、来年の通常国会に向けて最大の取り組みができますように、まさに農業者にとって本当に頑張ろうという意欲が持てるような指針を所得の上できちんと示す、そして守るということが大事でありますから、今言ったようなスケジュールを念頭に置いて積極的に大車輪で作業を進めてまいりたい、今こう思っておるところであります。

山本(明)分科員 ありがとうございます。まさに本当にそのとおりでありますので、ぜひすばらしい対策を考えていただきたいというふうに思います。

 私も今地元へ帰りましてこの話をいつもしておるわけでありますけれども、もちろん農業をやってみえる方はぜひお願いしますという言葉が返ってくるんでありますけれども、都市部へ行きますとやはり大分反応が違うわけでありまして、特に女性の方は、まずどうしてと言うわけです。そしてまた中小企業の方たちも、そんなもの、中小企業は一生懸命やっておるけれどもなかなかだれも補償してくれぬぞという言葉が返ってくるわけであります。

 そのときに私が申し上げるのは、まず、食料安保というんですか、今四〇%しかない自給率をだれが保障してくれる、これからどんどん世界じゅうの人口がふえてくるときだれが保障してくれる、やはりこの日本の農業をしっかり今のうちに守っておかないかぬ。アメリカやカナダやEUでもそうだよ、日本より強い農業国でもこういったことをやっておるんだから、補償しておるんだから、弱い日本は絶対もっとやらないかぬと言うと、ああ、そうですかと言って納得をしてくれるわけです。

 しかし、我々がそう言って納得していただける方に話をすることができればいいんですけれども、できない方がやはり多いわけでありますので、本当に、いわゆる都市住民の方にいかに我々がこれから、そういった意味で理解をしていっていただくか、これが一番大事ではないかなとまず一つ思います。

 もう一つは、農業の方へいきましても、兼業と専業の方があるわけであります。原則的にはやはり担い手農家の方が対象になっていくんではないかというふうに予想されるわけでありますけれども、兼業をしてみえる方も、お年寄りが多いわけでありますけれども、やはりその方たちが一体となって集落が成り立っておるわけでありますから、もし一部の人だけ補償して隣におる人が補償がないとなると、今度はせっかくのその農業政策が、農業者同士の中で、あいつのところはいいけれどもおれのところはだめなのかという話になってくると、せっかくのいい政策がそこで摩擦が起こったんではやはり我々としても大変寂しい。そんな気がいたしますので、ぜひそこら辺もしっかりとこれからの検討課題として加えていっていただきたいな、そんなふうに思うところであります。

 やはり考えなければいけないのは、自由主義経済でありますから、それぞれが、担い手の方が頑張っていただいて、自助努力をしていただくわけでありますけれども、もし所得補償という言葉が出ちゃいますと、感覚的に、ああ、我々の所得が補償されるんだな、そう思いますと、これは自由主義経済の中で、まあ、のんびりしちゃえやという気持ちになってはやはりいかぬわけでありまして、勝ち残る者は勝ち残るという気持ちだけは、これはぜひなければいかぬというふうに思います。

 それで、ここの中には所得補償という言葉はないんですけれども、我々もそうですけれども、どうも所得補償という言葉が出ちゃうんです。所得補償という言葉よりも、やはり所得補償というと、働かぬでも何となく補償してもらえるのかな、こんなイメージが出ますので、特に、今言った都市型の方からはすぐそういった気持ちが出てくると思いますので、名称だけは絶対、所得補償というような名称を使わずに、奨励金だとか安定対策、何でも結構ですけれども、ぜひそういった形で進めていっていただきたいな、そんな御意見だけ申し上げさせていただきたい。

 ちょっと御感想があればいただきたいと思います。

松岡副大臣 先生御指摘のとおりでありまして、そのとおりと思っております。

 一番目の点、国民の皆さんの御理解を、やはり都市の人たちにも、わかった、こういう理解をいただかなきゃいかぬわけであります。そのために、農業の持っている多面的機能、定性的にはこんな働きがあるじゃないかというのはいろいろ言われているんですが、昨年の暮れに谷津大臣から、日本学術会議法に基づきまして諮問をいたしまして、これを定量的に、例えば水を守る面では、災害を防ぐ面では、なるほどこれだけのことがやはり下流がそのことによって守られておる。そのことといいますのは農業の営みによって守られておる。そういった因果関係、そして、やはり自分たちの生活との直接の関係、こういったことをはっきりと示すことが理解を深めるのに一番大事だろうと私は思うわけでありまして、今、日本学術会議という最高の学術権威といいますか、そういったところでその整理をしていただいている。だから、それを明らかにすることによってやはり理解を得ていこう。これは大きな一つの課題だと思っております。

 二つ目の点。同じ農業内部で、隣はもらっておれはもらえない。これは非常に悩ましい問題でありまして、それじゃ、例えば役場でもどこでもいいんですが、勤めていて、そこで給料はもらいながら土曜、日曜、ちょっと農業をする。その人も一緒に、ただ農業だけで頑張っている人と一緒に守るのか。これはまた、一方からするといろいろな問題がやはりあるわけでありまして、この辺は非常に、どこで線を引くかというのは極めて難しい問題であります。御指摘のとおりでありまして、私ども、先生御指摘の点も趣旨も十分踏まえながら、また、先生もぜひ御一緒になっていただいてその辺の検討は整理をしていきたいな、こう思っておるところでございます。

 それから、三つ目の点でありますが、一言で言いますなら、大臣と同時に、そのとおりだ、こういうふうに今思っていたところでありまして、本当にいい御指摘をいただきました。私どももしっかり踏まえながら頑張っていきたいと思っております。

山本(明)分科員 ありがとうございました。

 皆さん方の反対の意見もしっかり出していただいて、最初に言いましたように、当事者じゃない方たちは何でという言葉が出てくるわけでありますから、ぜひそうしたことをどんどん言っていただいてストレスをなくしていただいて、それで実行していっていただきたい、そんなふうに思いますので、よろしくお願いいたします。

 次に、セーフガードのことでお話をさせていただきたいというふうに思います。

 皆さん方、多くの方が見られたと思いますが、私もあのNHKテレビを見まして、まずびっくりしましたのは、ハウスのでかさにびっくりいたしました。私どもは愛知県の十五区というところでありまして、豊橋、渥美なんですけれども、大変大きなハウスがたくさんあるのですが、その渥美の人たちも行ってびっくりするぐらい、野球場が二つ入る、それが十五棟もあるという、大変なハウスがあるというので、まず大きさにびっくりいたしました。中に出てこられました女性の経営者が、いわゆるやり手経営者という感じの方が頑張ってみえましたけれども、それも全く日本の嗜好に合わせた形で、甘みもしっかり合わせる、びっくりしたのはトマトの皮のかたさまでしっかりはかって合わせる、日本人の嗜好に合わせるということで、本当によく研究をしておるなということを思いました。

 それはいいのですけれども、もう一つの場面で、金大中大統領が演説をしてみえるところがありました。農業者の方を前にして、巨大な日本市場こそ韓国に明るい未来をもたらすのです、こういう演説をしてみえました。私は、あれを見てびっくりいたしまして、大統領が、日本をターゲットにしてそれで政策をしているんだよ、韓国の農業を育てておるんだよ、これを陣頭指揮でやっておるのを見てびっくりいたしました。まさに日本がねらい撃ちをされておるな、そんな感じがいたしました。

 このテレビ、見られたと思いますので、ちょっとその御感想をいただければと思いますが、お願いいたします。

松岡副大臣 実は私、先般の金曜日、二十三日の夜から二十四日、韓国に行ってまいりました。何で行ったかというと、この野菜の問題で行ってきたわけでございます。

 感想ということでありますけれども、本当に私どもも同じ思いであったと思います。びっくりし、驚き、そして、これはとんでもない話である、こういう思いであります。

 ただ、大事な点は、ポイントを一つ整理しておかなきゃいかぬと思うのですが、そういうことで国内の生産を守るということを言いますと、生産を守って、では消費の方は高いものを買わせるのか、こういうような形にすぐ論理がとられやすい。決して私どもはそうではなくて、生産が打撃を受けるということは、いずれ生産がつぶれてしまう、そうすれば安心で安全な、本当に身近なところにある野菜というものがなくなってしまう。そういった意味で、いずれは消費者の皆さんもそのことによって大変いろいろな打撃を受ける。

 だから、消費と生産両方を守るためには、やはり消費と生産の安定した関係が必要でありまして、そういう観点から、私どもは、余りにも急激な輸入によって国内が打撃を受けるということには、国際的に認められた法制度にのっとってセーフガードの問題、こういったことがあるわけで、既にセーフガードに三品目を発動に向けて調査に入っております。

 そういった事態を踏まえて、また韓国の、NHKでの報道のそのことも踏まえて、私は、向こうの大臣、副大臣にお会いをいたしてまいりました。

 お伝えしたことは、とにかく両国の友好、協調の関係にとってこれはやはり好ましくない、そして、お互い共存共栄が図れるような、そういう範囲の中で貿易というか輸出輸入というのもあるべきである。

 そして、指摘してまいりましたのは、韓国は今、農業協定上は途上国扱いですから、そういう輸出助成的なことは認められているわけです。しかし、特定の国だけを相手にした輸出助成というものがあるとするならば、これはWTOに反するのではないか、一般性ということに対しまして。もしそうだとするなら、我々はそれを輸入しなきゃいけない義務はないし、逆に言うと、そのことをもって輸入をとめるということだってあるわけであるという危惧の念もお伝えしながら、そうすると、セーフガードの発動とあわせて、またそちらの政府さんも、そちらの輸出業者もこれはお困りになるわけですから、そこはお互いが協調できる、共存共栄が図れる範囲内ですよ、そういうことも強く言ってまいった次第でございます。

 そこで、今後に向けてでありますけれども、そういったことをきちんとやっていくために、事務レベルで、需給動向とかそういったものをお互い情報交換しながら、きちんと整然とある一定の範囲内で、お互いが成り立っていくような範囲内でやれるような努力をしよう。

 韓長官からは、谷津大臣をことしの一月訪問されたときもあわせて、今回もそうですが、輸出業者をよく指導しながら、そして円満に解決ができるようにやってまいりたい、こういうような答えをいただいておりますので、私どももぜひそういった、お互い確認を持ちながら、確認したことを踏まえながらしっかり対応していきたい、こういうふうに思っております。

山本(明)分科員 ぜひよろしくお願いいたします。

 大統領がああいった形で陣頭指揮をとっておりますので、三〇%とか五〇%の施設建設費の補助金もあるというような話も聞いておりまして、そういったことを我々の地元の人も視察に行きまして、おい、向こうの方はえらい補助もらっているけれども、とてもこれじゃ勝てぬわなということで、大変危機感を抱いておりましたので、ぜひその点もあわせてよろしくお願いしたいと思います。

 そうしたことで、大変な時代でありますから、ぜひセーフガードを発動していただいて、三年、四年の間に巻き返しを図っていくべきだ、こんなふうに思うところであります。

 したがって、ちょっとそのセーフガードの日程等についてお伺いをしたいというふうに思いますけれども、三月二十二日までに利害関係者からの証拠提出及び証言の期限、四月二十七日が証拠等の閲覧、利害関係者からの意見表明の期限、こうあるわけでありますけれども、今、別に政府調査、三品目について政府の方で調査をされておるわけでありますけれども、この調査が今どのような状況になっているのか、そして調査結果の回収状況と最終取りまとめが一体いつごろになるのか、こういった点についてお伺いをしたいと思います。

金田大臣政務官 三品について調査に入っておりまして、今先生が言われたような作業状態になっております。

 最終的には、四月の二十七日まで利害関係者からの意見表明の機会を設けるということにしておりまして、それを取りまとめて、輸入の動向、国内のセーフガードができる状態になるのかならないのか、そこいら辺を検討しながら実施してまいりたいというふうに考えております。

 セーフガードと簡単に言いますけれども、なかなか、ジュネーブに呼ばれていろいろな因果関係を詳細に説明しないと、舌をかむような説明をしておると、結局パネルで日本のセーフガードは何だということに相なりますので、こういったセーフガードをもう少し機動的に発動できるような、そういったことも貿易ルールで直してまいりたいということで、このセーフガードの機動的な発動についても日本提案ということでやっておりますけれども、現状のセーフガードがやたらに難しい、面倒くさい仕組みになっておりますけれども、何とかそういった中でやらせていただきたいというふうに思っております。

山本(明)分科員 初めてのことだと思いますので大変だと思いますが、ぜひよろしくお願いをいたします。

 それから、三品目以外の緊急監視対象品目、監視対象品目でありますけれども、これもそれぞれ生産者の方は、何とか政府調査に入れてもらいたいなといって恐らく願っておるというふうに思いますけれども、この二点につきまして、両方につきまして大体今どんなふうな状況になっておるのか、ぜひお伺いをしたいというふうに思います。

金田大臣政務官 いろいろな要望、それからいろいろな資料を集めておりまして、三品のほかに十一品目について調査対象にさせていただいて、モニタリング調査をやっているわけでございます。

 レベル1ということで、市場の動向だとか輸入動向だとか、そういったのを四半期に一遍ずつ調査する、モニタリングするというレベル1という監視状況にしているものが、ニンニク、ナス、合板、干しシイタケ、ワカメ、ウナギ、カツオ、これらをレベル1と監視品目に、モニタリング体制をとらせていただいております。

 また、レベル2ということで、毎月毎月調査しよう、点検しようというもので、ネギ、生シイタケ、畳表、これは調査に入っておりますが、そのほかに、トマト、ピーマン、タマネギ、木材をレベル2の監視品目にさせていただいて、今一生懸命モニタリング、監視体制をとらせていただいている状況でございます。

山本(明)分科員 今、四半期ごととか一カ月ごとという話でありますけれども、たまたまきょう、ウナギの産地のある先生のお話がありましたけれども、四半期ごとだ、一カ月ごとだと言っておるうちに、どんどん今養鰻業者つぶれちゃっているんだから、二、三年前と比べると半分しかいない、早くしてもらわなければ困るということを大分言ってみえました。調査も、大変だとは思いますけれども、少しでも早くしていただいて、政府調査品目に入れるものはぜひ入れていただきたい、こんなふうに思うところであります。

 そして、私の地元に関係が深いわけで申しわけないわけでありますけれども、先ほど言いました地域でありますから、ミニトマト、先ほどの、韓国から直接の打撃を受けておる産地なんであります。ミニトマトを我々の地方で三十年代から始めまして、大分長い間かかりましてここまで来たわけでありますけれども、それを本当に数年の間にあんなに韓国に攻撃をされて、今まで努力をしてきた方は大分困ってみえるわけであります。

 資料として、東京都の中央卸売市場の資料で申しわけないんですが、ここにおきます輸入ミニトマトの年次別推移がちょっとありますので申し上げたいと思いますが、平成九年がほとんど始まりで一トンです。平成十年が百三十四トン、平成十一年が四百九十五トン、平成十二年が千三百六十トン。まさにもうウナギ登りなんというものではない、これは本当に大変な激増であります。

 ところがミニトマトは、ミニトマトとして種別になっておるのではなくて、トマトの中へ入っております。ミニトマトはたしかトマトの中の一割ぐらいしかまだありませんので、そういった意味で、ウナギ登りに上っておっても、大玉の普通のトマトは余り輸入がありませんから、そんなにトマト全体としては影響がないということで今回、政府調査品目に入らなかったのではないかなと思います。もしこのミニトマトとトマトとを分けて調査してくれておれば、間違いなく入ったんだがな、何でミニトマトが入らなかったんだといって、大分地元の方も憤慨をしてみえました。

 トマトとミニトマトがはっきり分かれるかどうかという問題もあると思いますけれども、私らから見れば間違いなく違いますので、歴然とわかるわけでありますから、そういった意味で、どうしてミニトマトを分けてもらえなかったのか、ぜひその点を御説明いただきたいと思います。

小林政府参考人 今、先生の御指摘がありましたように、トマトということで見た場合とミニトマトということで見た場合とで確かに状況は違ってまいります。

 ただ、御承知のように、政府調査を開始するに当たりましては、輸入の増加と、それからこれが国内に影響を与えている、その因果関係、そこを証明しなくちゃいけないんですけれども、そこで、トマトでやると輸入の占拠率といいますか、輸入割合が非常に低いわけですね。そういった難点がございます。

 じゃ、それをミニトマトという形で分割して考えたらどうかという今の御指摘でございますが、ここもまた一つのハードルがございまして、といいますのは、トマト、ミニトマト、これが、WTO協定上は、同種の産品であるとかあるいは直接競合する産品、そういうもので比べていきなさいというルールがございまして、これを一体どういうふうに見るのかということが政府の中でも相当な議論になっていることは確かでございます。

 それからもう一つは、これは、ミニトマトで見たときの輸入は、確かに先ほど先生おっしゃったように急増しているわけですね。ところが一方で、国内の方もそんなに落ちていない、多少増加しているというようなことがございまして、こういった状況を今のWTOルールのいろいろな要件に照らしてどうやってハードルを乗り越えるのかということが、私どもの率直な悩みの状況でございます。

 したがいまして、今申し上げました、先ほど政務官からもお答えしましたような調査を続ける中で、こういったところをどういうふうにさらにチェックしていくのかというふうな形で取り進めている状況でございます。

 いずれにしましても、これからどんどんそういった情報収集なり調査を深めまして、それで必要な事態に立ち至ればまた対応していきたいということでございます。

松岡副大臣 先生、これは大変大事なポイントでありまして、今、制度的には局長が答えたような仕切りで、それは分けなかった、一緒に扱ってやった。だから、トータルですると全体の中では余りふえていない。しかし、ミニトマトだけ見ると物すごくふえている。

 だから、私どもも、季節によって、地域によってこれを分けなきゃ全く問題は埋没してしまうのではないか、こういう意識は内部的にも非常に持っておりまして、これはもうそんな議論をしているんですが、いかんせん、WTOの協定の取り決めはそうですよと、ここから来るものですから、じゃ、それについてどういうふうに私どもはそこを穴抜きをするか。

 だから、ミニトマトとトマトは同種か同種でないか。これは、じゃ、だれが判断するんだ、判定するんだということにつきましても、私ども農林省ですが、これは財務省、経済産業省とやるわけですね。そういったところの方にも先生、何といいますか、強く言っていただきまして、私どもとしてはそれは分けたいぐらいの気持ちで今やっているんですが、なかなか客観的には、果たしてそんなこと言えるんですか、こういうことなものですから、気持ちは一緒でありますので、農林省以外のところにもまたひとつ、先生のところからも強い働きかけをお願いしたいなと思っているところであります。

大原主査代理 委員長からも、今の問題、ぜひお願いしたいと思います。

山本(明)分科員 大変な応援をいただきまして、本当に心強く思っております。ぜひよろしくお願いをしたいと思います。

 二月の二十三日の新聞で、「野菜セーフガード 暫定発動を検討 松岡副大臣 三月中にも」という記事がございました。さすがに副大臣、手際がいいなと思って感心をして新聞を読ませていただきました。この暫定措置について見通しをお聞かせいただきたいと思います。

松岡副大臣 私どもは、谷津大臣初め金田政務官もそうでありますが、今、衆議院側の方のスタッフを言ったんですけれども、まさにこれは農林コンビではないかと言われております。

 そういう状況の中で、私どもは、谷津大臣の指示のもとに副大臣・政務官会議をつくって、そこで徹底していろいろな議論をしているんですが、とにかく、外国のやり方を見ておりますと、まず暫定をかける、すぱっと。そして、後、いろいろな調査はそれからしっかりやって、本格的というか正式なものに持っていく。こういうやり方がどうも外国は常道のようでありまして、だとするなら我々も、ある一定の段階でそれがやれないかというのを今私ども徹底して督励をいたしておるわけであります。関係の役所にもそのことをあらゆるチャンネルでお願いをいたしておるところであります。

 たまたまきょうの農業新聞にも、ネギは前年の四割安、そんなようなことも出ておるわけであります。おっしゃるとおり、調査しているうちにどんどんやられている。そういうことを考えますと、それはもうまさに、そういった事態を踏まえて発動ということだって考えられないかと、今非常に督励をいたしておるところであります。

 だから、三月と言ったのは、年度も三月で終わるわけで、せめてそれくらいまでには一つの区切りがつかないか、やはりこういう思いでそこに、新聞にも出ましたような強い督励と指示をしておるということでございまして、そういった形に持っていければというのを思いながらやっておるところであります。

山本(明)分科員 いろいろと本当に御苦労いただいておりまして、ありがとうございます。

 生鮮野菜につきましては、先ほど金田政務官からお話があった点だと思いますけれども、ぜひ自動発動ができるようなそうしたシステムの変更を御検討いただければありがたい、申し込んでいただきたいな、そんなふうに思うところであります。

 セーフガードは以上にさせていただきまして、今、日本がこうした形で大分外国から侵食をされております。こうした日本がこれから生きていくためには、日本の農業が生きていくためには、自然農法、有機食品、こうしたものがどうしても必要だ。より安くて、よりおいしいと言っていいかどうかわかりませんけれども、よりおいしいものも今入ってきておるわけでありますから、より安全なものをこれから日本の食品としては、農業としては考えるべきだ、こんなふうに思っておるところであります。

 この有機農業につきまして、私はしっかりとこれから自分も応援していきたいと思うわけでありますけれども、この点につきまして、お考えがありましたら御意見をいただければありがたいと思います。

金田大臣政務官 先生の御指摘のように、農林水産省としても有機農法について積極的に取り進めさせていただいております。

 大きな考え方として、有機農業の振興というのがまず第一にあるわけですが、もう一つ、JAS法に基づく有機農産物であるという表示制度、この二つを車の両輪として、有機農法の推進というか強化をしてまいります。幸い、一昨年、持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律という法律をつくらせていただきまして、有機農法、それからそういった形の持続的な農業、永続的な農業、そういったものに真剣に今農林省としても取り組まさせていただいております。よろしく御指導賜ります。

山本(明)分科員 ありがとうございました。

大原主査代理 これで山本明彦君の質疑は終了いたしました。

 次に、楢崎欣弥君。

楢崎分科員 民主党の楢崎欣弥です。

 私も福岡の人間としまして、どうしても有明海問題を素通りするわけにはいきません。谷津大臣も、また地元の松岡副大臣も、何度も同じ質問を受け、何度も同じ答弁をして大変お疲れになっているであろうと思います。しかし、それだけ事は深刻であるということで御理解をいただきたいと思います。

 きょう福岡県有明海漁連の方々が上京されたという報道がありました。大臣、副大臣も陳情を受けられたと思いますが、それぞれ御感想をまずお聞きしたいと思います。

谷津国務大臣 本日、福岡県の有明海の漁連から要請を受けました。その要請の内容は、諫早干拓工事のところの水門の開放と工事の中断を求める要請でございました。

 私も一月の二十九日に現地を訪れまして、ノリの被害状況というのを見させていただきましたけれども、非常にこれはひどいなというのが私の実感でございます。そういうことから、きょう陳情されました皆さん方、私は、目線を同じくして一緒になって考えなければならぬというふうに思っておりましたものですから、その要請の一つ一つが胸に本当にどしんとくるものがございました。

 そういうことから、第三者委員会を早く立ち上げて、そこで調査に入ってもらいたいということから、実は三月三日に、これは土曜日でありますけれども、第三者委員会を開くことになっております。そこでこの水門をあけろ、そして調査したいということであるならば、私は、直ちに水門をあけて調査をしていただきたいと思っておりますし、また、そこで工事を中断してそしてまた調査をしたいということであるならば、私は、工事の中断もやるというふうに考えているところであります。

 ただ、この件については、先生御案内かと思いますけれども、長崎県からは、工事を中断しないでほしい、そしてまた水門をあけないでほしいという要請も何回も来ているわけでありますから、もしそこで水門をあけるというふうな調査委員会の方の決定がなされた場合には、私は直ちに長崎県に飛びまして、長崎県の方たちにこのことを説明申し上げまして、そしてあけるということについての要請をさせてもらいたいと私は思っておりますし、ぜひそういうことで調査に入らせてもらいたいというふうに考えているところであります。

松岡副大臣 大臣とともに私にも、きょう有明の皆様とお会いした感想はどうかということでございました。

 まず、その前に、楢崎先生も福岡県というお立場で、本当に御心配いただき、大変御苦労いただいておる、敬意を申し上げたいと思います。

 私も熊本でございまして、選挙区が制度によって変わりましたけれども、選挙区制度が変わる前は荒尾まで私の選挙区でございました。したがって、大変身近な形でおつき合いしている方々もいるわけでありまして、現地に参りましたときも、その壊滅的な状態に、これはもう言葉で言いようのないような大変さというものを身をもって感じてきたわけであります。そしてまた、そこにおける漁民の皆様方、またノリの関係、生産とあわせて、製造、流通の方々もおられるわけでありまして、この人たちの大変さというものも、本当に大変なことであるなという認識を持って帰りました。

 そして、きょう、改めまして、わざわざ東京まであれだけの方々がお見えになって、そしてその中で、将来に悲観をしてみずから命を絶たれた方々もある、こういったようなことも聞きましたときに、私ども、大臣と一緒に、金田政務官も田中副大臣また国井政務官も一緒でありましたが、本当に皆様の窮状といいますか、その実情に接しまして、これは私ども、一日も早くきちんとした対応をして、問題解決、そういったことができるように、すべてを尽くしてやっていかなければならないという思いを強くいたしたところでございます。

楢崎分科員 わかりました。

 昨年の十一月、政界を揺るがしたある出来事がありましたけれども、このときに政治家の言葉の軽さというものが話題になりました。しかし、私は、この有明海問題に対する大臣の真摯な答弁を信頼したいと思います。

 それで、大臣は、先ほども言われましたように、調査の結果いかんでは水門をあける、また場合によっては干拓事業そのもののストップも考えると言っておられたのですが、今のお話の中では、これから第三者委員会を開いて調査をするということですか。今日までどうしておったのでしょうか。

谷津国務大臣 実は、私は、大臣に就任したときに一番最初に言ったのは、このノリの問題があるぞということを申し上げた。できれば早く調査に入ってくれないかという話をしました。そういうことから、一月の二十三日に緊急調査に入りました。そしてまた二月の二十三日には海流、潮流の調査に入っているところであります。

 今先生おっしゃいましたが、結果によってはではありません。調査をするために開くのでありますから、全然次元が違う話でありまして、もっと早く、しかも私は、これは役所の方とも、私もそのうちの人間なんですが、話し合いの中で、雨季が来ると、あそこは水門の問題というのはまた別な問題が起こってきますから、災害の問題がありますから、もっと前に開いて調査をする必要があるんじゃないかということを言っておるのでありまして、三日にもしあそこの水門を開いて調査するというふうに決まったら、直ちに開くという考えであります。

楢崎分科員 よくわかりました。

 地元出身ということで、松岡副大臣も大変苦慮してあると思います。松岡副大臣はもともと諫早干拓の重要性というものを強く訴えておられたのですが、今回現場を見て、その悲惨な姿を見て、早急に対応したいということを言われました。

 平成九年の四月、潮受け堤防の水門が閉め切られて、それから、これは御承知のことと思いますけれども、この三年半の間に底生生物がやはり七分の一に激減したという報告もあるわけですね。

 私は、諫早干拓で得るものがないとはもちろん言いません。だけど、失うものの方が余りに大きいのではなかろうかと思うのですが、そのように思われませんか。これは松岡副大臣。

松岡副大臣 当時私は推進者であったというふうに御指摘をいただいたわけでありますが、当時の議論は、私どもとしては、あの諫早が、有史以来というか、有史以前もそうだったのでしょうが、とにかく地形的なまた気象的な、そして海の状況等からして、いつもいつも大水害、諫早水害というのは代名詞になっているぐらい大変な被害をこうむってきた。この地域をどうやって災害から守るのか。

 そのときに、方法として、例えば堤防をつくるというのも一つの方法でした。しかし、これはまた何百キロ、何十キロですか、ちょっと単位を失念いたしましたが、そういう状況の中で堤防を仮につくったとしても、物すごいお金もかかる。しかしそれは、海の方からは堤防で守れるかもしれないが、後ろから来る、山からあっという間に下りおりてくる洪水、これは防ぎようがない。逆に、堤防でとめられて、また町の中に充満してしまう。こういったようなことから、前からの高潮やそういったものと、後ろからの洪水を両方同時に解決する方法として、あの干拓堤防しかないんだ、こういうような結論に達したと聞いております。

 これは西岡武夫先生からも当時言われたのですが、うちのおやじが知事のときもそういう考え方だったし、そのとおりなんだ、だからぜひこれはしっかりやってくれよと逆に言われたような次第なのです。ですから、そういった状況の中で、あのときはムツゴロウを守るということと人の生命財産を守るということとどちらが大事かというような観点から、私は、推進というか、そういうふうな立場だったわけであります、必ず必要だと。

 しかし、今回は諫早の人たちとあわせて、さらに有明海の漁業、漁民の皆様方、この人たちをどう守るかという大命題を、また両方あわせて、諫早の人たちの生命財産の安全も守りながら、また有明海の漁業、漁民の皆様方の生業も守っていかなければならない。

 こういう中で、今大臣が言いましたように、一日も早く、原因をとにかく徹底して究明して、あらゆる方法、手段を駆使して究明して、そしてその上に立った総合的な、全体的な対策を立てていくべきだ、私は今はこのような立場でございます。

楢崎分科員 松岡副大臣にお願いしたいのですけれども、一方、地元の漁協の方々、水門をあけることによって新たな漁業災害が起きる可能性もあるという話もあります。しかし、やはり海はすごいですよね。皮肉を言うわけではありませんけれども、どこかの政党と違って自浄能力がすごい。

 先日、私、あるテレビの報道を見ました。「諫早の先例 韓国の“死んだ海”水門開けてどうなったか」。これは一九九四年に締め切られた韓国の始華干拓事業、結局これも周辺漁場で深刻な影響が出てきたということであけたのですね。しかし、地元の関係者は反対した、かえって被害がふえると。実際に、海は真っ黒になってしまった、対岸まで。ところが、そこにまた海の強さというのが出てきて、今は干潟も生き返りつつあるし、漁獲量もまたもとの五割ぐらいに戻ってきた。僕は、ぜひこれを一度視察していただきたいな、このように思います。

 今ここに昭和六十二年九月二十六日に取り交わされました諫早湾干拓事業に関する確認書があるのですけれども、これは福岡、佐賀、熊本、各有明海漁連と当時の九州農政局長との間に取り交わされたものですけれども、今被害を受けた漁民の方々が抗議行動なり陳情行動をされているのは、つまりこの確認書の第三項をよりどころにしてある。

 この三項にはこのように書いてあります。「諫早湾干拓事業に起因し有明海水産業に予測し得なかった新たな被害又は支障が万一生じた場合には、乙は」つまり九州農政局長です、「誠意をもって甲」これは各漁連ですね、「に協議し、解決するよう努めるものとする。」

 私、思うのです。メンツを重んじる役所がこの確認書を取り交わしたこと自体、将来、今度のような被害が出ることも否定し得ない、否定できない、そういう認識を持っておられたあかしではなかろうかと思うのです。そうだとすれば、これはやはり国の失政ではないかなと思うのですけれども、いかがでしょうか。

松岡副大臣 ちょっと、役所の方から答えます前に、先生先ほどの御指摘の点につきまして、私へお願いということでありましたから、お答えしたいと思うのです。

 私ども、大臣ともども、全く、一切ニュートラルで取り組む、こういうスタンスを今とっておりまして、先ほど韓国の例もございました、それも私どもは大いに参考にしながら、まず調査委員会で、専門家の方々があらゆる角度から検討して原因を究明し、その結果が出たときは、あらゆる例をすべて参考にして、それこそ万全の総合的な解決策をとっていく、こういう考えでおりますので、まずこの点を御理解いただきたいと思います。

木下政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども、諫早湾干拓事業の実施に当たりましては、長崎県の要綱に基づきまして、環境影響評価委員会での検討を経て、昭和六十一年度に環境影響評価を取りまとめ、また平成三年度にも現在の環境影響評価書を取りまとめるなど、環境に対して十分配慮してきているところでございます。これらの環境影響評価に基づきまして、諫早湾干拓事業の施工に伴い、当時予見し得る漁業上の影響等の損失につきましては、関係漁連とも交渉の上、御理解をいただいた上で交渉を行ったところでございます。

 なお、御指摘の諫早湾干拓事業に関する確認書、記の3でございますけれども、その当時、予見し得る漁業被害につきましては補償を行うという前提のもとで、確認的に、将来、予測し得ない新たな被害が生じた場合には、事業者がこれら漁連と誠意を持って協議をし、解決に努めるということを定めたものでございます。

楢崎分科員 ちょっと今の説明、よくわからなかったのですが、これは確認書を取り交わした、そのときの状況を言っておられるのですか。

木下政府参考人 私どもは諫早湾干拓事業を実施するに際しまして、環境影響評価をしたわけでございますけれども、その中で、当時知見し得る影響につきましては補償を行った上で事業に着手をしたところでございます。

 なお、先生御指摘の、確認書の記の3でございますけれども、私ども、当時の知見のもとでは、将来、予測し得なかった新たな被害が仮に生じた場合、私ども、国でございますけれども、それと三漁連の間で誠意を持って協議をしようということを決めたものでございまして、そういうような内容のものと理解をいたしております。

楢崎分科員 まさに今、万が一支障が生じた、新たな被害が出たということになっておると思うのですが、誠意を持って対応しておられますか。

木下政府参考人 今回のノリの被害でございます。私ども常々申し上げているとおり、現時点では明らかでないということでございまして、そういう意味で早々にこれまでも調査をしてまいりましたし、第三者委員会でも検討をお願いするということでございます。

楢崎分科員 そうしたら、共産党議員の方が有明海被害問題に対する質問主意書を出されたのですけれども、一月二十三日付の政府答弁では、潮受け堤防の締め切りが漁業に対して影響を及ぼしているとは判断できない、漁業補償をする考えがないと明言されておるようです。

 やはり現実を直視しようとはしない政府の無責任な姿勢がここにあらわれていると私ども思うのですけれども、大臣、この考えは今変わっているのですか、変わっていないのですか。

谷津国務大臣 今第三項の話が出たわけでありますけれども、私どもとしましては、有明海そのものが漁獲量が減ってきている、ノリの生産が減ってきているというのは、数字の上の中で、農水省が持っている数字の中でも確かに見受けられるのですよ。それは、私はしっかりと直視しなければならぬというふうに思っているのです。

 そういう中から、今回の調査に当たるにつきましては、予見を持たないでと私は最初申し上げたのですが、実は正直な話を申し上げますと、いやいや、あそこの水門については関係ないんですよという話も私のところへありました。それは予見だと私は申し上げたわけであります。ですから、あけて調査をする、あるいはあけっ放しにしておく、こういうふうなものも時によっては予見ということも言えるかもしれない。だから、私は予見を持たないでやりなさいと。

 ですから、第三者委員会の中で早くやってほしいということでありまして、実は、十三年度からという話がありましたが、それじゃ遅いと。私は、それで、実は三日の委員会ももっと遅くやるというから、だめだというふうに申し上げまして、それで早目にさせてもらいまして、そういう中から調査をした結果、これが水門に関係してくる、あるいはあそこの工事に関係してくるという結果が出てくる場合もあり得るというふうなことも、私は頭の中に入れているんです。

 しかし、実際、有明の全体を考えた場合に、必ずしもそういうものではないよという意見の人たちもいるんです。学者の先生方もいるんです。ですから、予見なく調べてもらいまして、そういう中から、もしいろいろな対策が必要であるということであるならば、これは農水省だけではなくして環境省も、あるいはまた国土交通省も、場合によっては経済産業省もかかわってくるだろうというふうに思うんです。

 要するに、先生、有明海をもとに戻しましょうよ、そういうことで、私どもは全力を挙げてやらなきゃならぬということになるのではないかというふうに思っているんです。

楢崎分科員 谷津大臣それから松岡副大臣、それぞれに答弁に迫力がある、説得力がある、力強く思います。とにかくやはり有明海をもとに戻す、この原点に返って対処方をお願いしたいと思います。

 次に移ります。

 全国農業者農政運動組織協議会、いわゆる農政協と農協系統との関係についてですが、この農政協は、農協系統組織の事実上の政治団体としてさまざまな政治活動を行っておられると見受けるんですが、どうも、今問題になっていますKSDとその政治団体の豊政連、これと私は同様の関係であると判断するんですが、どのように思われますか、見解をお聞かせいただきたいと思います。

松岡副大臣 農政協というのは、もう先生御案内のとおりだと思いますが、いわゆる農業的な立場の人たちが組織をしておられる政治団体であります。これは、法の定めるところに従って政治活動というのが、当然認められた範囲で行われておると私どもは認識しております。

 そして、今、KSD等との関係も御指摘をされましたが、それは、法に反するいろいろな行為がその関連の人たちの中にあった、こういうことでありまして、私は、これはどんな場合でも、法に反する行為があればけしからぬ、いかぬことであると思いますけれども、農政連にあってその同様なことがあったとは、またあるとは私ども承知いたしておりません。

 したがって、そこは根本的に、基本的に、先生の御指摘のこととはおのずと違うのではないか、こう思っております。

楢崎分科員 昨年の総選挙で、全中の原田会長が選挙応援のためにかなりの数の県を訪れていると聞いています。やはり、国から補助金を受けている全中の会長が選挙の応援を行うということは、これは法律違反のおそれがあるんじゃないでしょうか。

松岡副大臣 先ほども申し上げたわけでありますが、その場合は、私は、農政連という、まさに政治的な活動をする、そういうふうな立場で認められた範囲においてされたものというふうに理解をいたしております。

 法人というのは、一般的に、定款で定められた目的の範囲内において活動の権利能力を有しているわけであります。したがって、そういった意味では、公職選挙法なり政治資金規正法等に逸脱しない範囲でやるという分については、当然私はその認められた立場に立ってなされたんだろうと思います。

 一々事の詳細は承知いたしておりませんが、例えば公務員というのも、公務員の立場では中立ということでありますから、当然のことながら政治活動というのは禁じられております。しかし一方、公務員の人たちも、労働組合という立場になれば、それは、その範囲の中で一定の政治活動というのは労働組合という立場で認められているわけでありますから、私は、それと同じような整理でとらえていいのじゃないかな、こう思います。

楢崎分科員 この問題については、今度農協改革の法案が出るものですから、農協の使命は何なのか、農協はだれのためにあるのか、やはり農協系統は設立の原点に返るべきであろうと思ってこの件をやりましたけれども、これはまた別の機会でやりたいと思います。

 金田政務官はおられますか。せっかくですので、ちょっとお聞きしたいと思います。中山間地域対策についての問題です。

 中山間地域等直接支払交付金ですけれども、その制度創設の趣旨には、私はおおむね賛成です。しかし、施策設立の趣旨である国土と環境の保全、これをさらに前進させるためには、やはり活動、労働の意義を国民の皆さんに周知徹底させる、担い手の増加を図ることが急務であろうと私は思います。

 そこで、そのためには、社会貢献という意義を持つこの交付金の性格を、所得補償から、活動あるいは労働に対する当然の対価といいますか、そういう性格のものに発展させる必要があると私は考えるんですが、見解を問います。

金田大臣政務官 中山間地の直接支払い補償の意味、意義について御質問がありましたけれども、我々、条件不利地域というのが現実にあるわけでありまして、段々畑だとかそういったところにちゃんと農家の人が張りついて農業を営んでいっていただきたい。そういった条件が不利な地域で農業をやっていただける方が市場で競争するといっても、競争で不利な点が出てくるわけでありまして、その不利さについて直接支払いをやらせていただくというのがこの制度の趣旨でありまして、またヨーロッパ等々でもやられているというような考え方がありまして、こういったことを初めて日本で今年度から導入させていただいているものでございます。

 また、これについて先生がいろいろなお考えをお持ちだと思いますけれども、農林水産省としては、そういう立場で今これについて取り組ませていただいているのでございます。

楢崎分科員 最後になりますけれども、一つの事例があるんですが、きょうはそれは申しませんけれども、中山間地域振興策としてさまざまな財政措置がとられている。ところが、その目的を外れて、建設業者、ディベロッパー等を潤わせるだけで、事業収支割れを招く。そこにとどまらず、これはもう大変なことなんですが、自然破壊、そして農村破壊をもたらすというおそれがあります。

 このように、そういう業者の人たちを潤すにとどまるような箱物、この建設ラッシュを招かないためにも、この目的を外れたお金の使い方がされるおそれがないように、大体どのような処方を持っておられるか、お聞かせいただいて、私の質問を終わりたいと思います。

金田大臣政務官 楢崎先生の御指摘、そういった地域破壊とか村落、集落の破壊みたいなことがこの中山間地の直接支払い制度によってもたらされるということはないと思いますけれども、もしそういう危険があるんであれば御指摘賜りたいというふうに思います。

 集落協定というのをつくらせていただきまして、集落の皆さん方が相寄り合って、我々の集落をどうやって守っていこうかという集落協定というものを地域全体でやって、金の取り扱いについて、集落の皆さん方が相談し合いながら市町村とやっているわけでございまして、多分そんなことは、あったら御指摘いただきたいんですが、そういうことのないように一生懸命頑張ってまいりたいと思います。

楢崎分科員 終わります。

大原主査代理 これにて楢崎欣弥君の質疑は終了いたしました。

 次に、若松謙維君。

若松分科員 公明党の若松謙維です。

 江川という、いきなりかなり具体的な話に入りますが、谷津農林大臣に初めて質問させていただきますので、よろしくお願いいたします。

 いつもGLOBEで一生懸命地球環境のために頑張っておられますが、農水の立場でもよろしくお願いしたいと思います。

 パネル、ちょっと遠くて恐縮なんですけれども、実は江川というのは荒川に入る本当に小さな、昔ですと農業用水とまでもいかないで、本当に小川だったんですけれども、それが、鴻巣、北本、桶川、そして上尾ということで、広くても二、三メートル、そういったところなんです。

 これが普通の田んぼなんです。ちょっとわかりにくいんですけれども、実は、この江川の周りは農地がずっとあるんです。これがいわゆる保水機能があって、それで、こっちの側ですね、上の方は実は土盛りされております。土盛りされて、土盛りの受け取り料を農家の方は得られる。それで、田んぼになっております。こちらの下の方は水田。まさにこれが保水機能が従来どおり保たれている。ちょっと段差が見えにくいんですけれども、かなり、高さ一メートル以上差があります。

 それで、この江川の雰囲気は、こういうふうに緑がずっと続いている。これが、大体十キロ、十数キロあるんです。これが最近土盛りによりまして、この江川の近隣に例えばこういうような開発業者がいわゆる土盛りをするんですね、これをすぐ受け入れてしまう。やはり、それによってお金をもらえるからでしょうね。

 この図になりますと、もう山なんですけれども、実はもっとすごいのがあります。富士山みたいなのがこういうところに二つ、三つできています。きれいな土ならいいんですけれども、ひどいものになりますとやはり建設産廃物を置くのもあるわけなんですね。

 それで、御存じのように、今やはり温暖化が進んでおります。埼玉も、いわゆる亜熱帯化というんでしょうかね、御存じのように今集中豪雨がふえています。かつ、先ほどのこういうような極めてのどかな田んぼが、ちょっと雨が降るとすぐこうやって洪水になってしまう。これも実は、先ほど申し上げました、土盛りしております、もう二メートルぐらい。上は田んぼなんでしょうけれども、これがちょっと雨が降るとこうやって洪水になってしまう、そういうことですね。

 これも、道路なんですけれども、普通は両わきとも、田んぼですか、これが本来の保水機能なんですけれども、先ほど申し上げましたように、土盛りがどんどん行われている。そうすると、農地の保水機能が減っちゃう。かつ、この図でもわかりますが、ここの近隣にいわゆる新興住宅地がどんどんふえております。

 今回、この江川問題、小さな二十キロ弱の川なんですけれども、今まで数年に二、三回しかいわゆる洪水で県道が遮断されなかったのに、今はちょっとした雨で年に二、三回洪水で遮断される。この根本原因は何なのかというと、決して一方的な見方では解決できないというのを私も現場を見て考えさせられたんです。

 一級河川です、この江川というのは。そういうことでとにかく地元では、この改修につきまして、当然、その流域の市が協議会を設置して埼玉県とも連携してやっているわけですけれども、結局これだけ雨の降り方も大きく変わってきましたし、かつ、宅地開発も進んでおります。ということで、農地の保水機能は土盛りで減っている、宅地開発があれば当然雨水とか生活雑排水がそちらへ流れる、河川の改修は間に合わない、結果的にちょっとした雨、集中豪雨ですぐ洪水になってしまう。ですから、これをやはり複合水害というんですか、そういうことだと思うんです。

 ということで、まず、いろいろと聞くと、やはり農家が一番悪い、安易に土盛りを許してしまう農家が悪い、こういう言い方が、ある意味で農家の方でも大方の意見だと思うんです。

 そこで大臣にお聞きしたいんですけれども、まさに農地改良と称していわゆる産廃を投棄するような、いわゆる違反転用というんですかね、ここら辺が違反かどうかというのは非常にグレーなところなんですけれども、いずれにしても浸水地域が拡大している。これを例えば農地法の問題としてとらえて、水害を拡大させるような行為を禁止するか、または是正するような措置を講じられないか、こういったことが切なる願いとしてあるわけですけれども、いかがでしょうか。

谷津国務大臣 まず、先生、これは一つ大事なことは、産業土というんですか、工事用の廃土を積んでいるということですか。

若松分科員 これも良心的なところはきれいな土を盛っております。そうじゃないところは何かわけのわからない土もある。産廃でもいろいろありまして、まさに宅地開発をやったきれいな土を持ってくるところもあるし、本当にいろいろなものが入っている。工場というかそこら辺のものもある。そういう状況です。

谷津国務大臣 これは実は農業委員会に転用の申請をしなければなりませんね、これは三条申請、それをやらなきゃいかぬですが、その申請をしないままやったとするならば、それはもう完全な違法ですね、それは違法です。仮に三条申請をしてそれで土を持ってきているということであるならば、これは合法的でありますけれども、今お話しのように、それがために水はけが悪くなる、そしてまた、今言った写真を見させていただきますと、もう真っ白な水になっていますね。これは大変な被害にも通ずると私は思うんですよ。

 だから、そういうことにつきましては、これは当然農水省としても指導しなければならない点がありますけれども、まず地元ですね。そこでどういうふうに判断なされるかというのが第一点でありますけれども、今の状況から見ますと、これは何らかの対策を打たなきゃならぬということがはっきりわかるところでありますから、ぜひ先生、きょうと限らず、ちょっと後でお話をひとつしていただきたいと思います。

    〔大原主査代理退席、主査着席〕

若松分科員 具体的には、やはり一番の問題はこの農地改良。先ほどの水田ですと、いわゆる農道ですか、それから下がって、どうしても耕運機等が入らない。だから、上げると称して結果的に保水機能をなくしている。

 いい土が盛られていればいいんですよ。それはそれでいいんですけれども、基本的には保水機能は減少している。それを市としてはとめたいんですね。だけれども、そのとめる権利が市としてもない。結果的にどんどん土盛りができてきて、いい土を前提としてですけれども、結局、農地改良ということで保水機能がどんどんなくなっている。これを何とか市の行政なりもしくは何かの規制措置を設けられないかということがこちらの問題意識なんですね。

谷津国務大臣 ちょっと今のお話を承っておりますと、農地改良というか土地改良でやろうということで、そこが土地改良区の中へ入っておりまして、それでその土盛りがされているということであれば、そんな土地改良はないですよ、私が見て。

 それからもう一つは、畑地造成というふうな制度がありますから、そういうものでやっているかどうかわかりませんけれども、いずれにしましても、今先生がおっしゃっている話をそのまままともに受けるとするならば、これはむしろ畑地造成でもなければあるいは土地改良でもないと私は言わざるを得ない。ですから、先生、いま少し後で詳しくその辺のところをお知らせいただきたいと思うのです。

若松分科員 では、せっかく質問通告しているので後でお伺いしますけれども、後で局長等にも追加説明をいただいてもいいのですけれども、特に桶川が、一番江川の下流で、かつ水害を受けているところです。ここで土盛りをやめさせるための奨励金を農家に払っている。例えば一年間に一平米十四円とか、これは結構数百万から一千万を超えて市の負担になっております。ですから、これについて、何か国の支援措置とかそういうこともできないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。

木下政府参考人 御説明申し上げたいと思います。

 先生御指摘の事例は、恐らく桶川市の中のいろいろな事例をおっしゃっているんだろうというふうに思っております。

 私ども、桶川市の件の中で、一つの例で申しまして、農地転用の許可を受けておりますけれどもそのような条件に従わずに、いわば農地改良と称して産業廃棄物を投棄をしている例、これは相当問題でございます。これにつきましては、私ども、農地法に違反する転用であろうというふうに思っております。現に埼玉県では、そのような農地法に違反する転用につきまして是正勧告をし、是正計画の提出を求めているというような状況でございます。

 一例でございますけれども、そのような県の是正勧告の中で、廃棄物でございますごみ等の搬出が既に昨年十一月に終了いたしておりますし、また、汚泥等につきましては、三月下旬までには除去を行うというようなことも聞いております。

 いずれにいたしましても、農地法に違反をして転用したというような場合につきましては、私ども農地法の中で是正命令等をかけ得るというふうに考えているところでございます。

若松分科員 ところが、県に行きますと、是正措置といいながら、これはやはり農地改良であって、さっきの、土盛りをして高くする、それについては県として何もできないという答えなんですね。結果的に土盛りが進行されて保水機能がどんどん減っているということなので、局長の答弁と現場とは違うのですよ。

木下政府参考人 お答えしたいと思います。

 先生御指摘のように農地改良と称して行われている例が多々あるというのは、私どもも報告を受けてございます。したがいまして、特に農地のかさ上げの事案でございますけれども、本当の意味でのかさ上げなのか、いわばかさ上げを名目にして例えば産業廃棄物の廃棄を行う例なのかという点につきまして、私ども、慎重に見きわめるように都道府県に指導しているところでございます。

 今後とも、そういうような問題事例につきまして、きっちりと現場の事情をよく見ながら指導するよう、私どもとしても都道府県を指導していきたいというふうに考えております。

若松分科員 県の対応は、先ほど言いましたように、問題がない農地改良と言っているのです。だから県としても何もできない。ですから、そこらはしっかりと国の立場からもう一度埼玉県に対してチェックなり指導していただきたいと思います。

 あわせて、さっきの、桶川市が結果的に負担しているわけですよ、その水害をなくすために何とか土盛りをやめさせようと。そこら辺に対する何か措置というのはないんですかね。

木下政府参考人 私ども、現場の桶川市の中で大変大きな問題であろうというふうに思っておりますけれども、そういうような緊急的な財政負担ということにつきましては、私どもとしては、地方交付税あるいは特別交付税の中で対処すべき課題でないかなというふうに考えております。

若松分科員 それは農水省管轄ですか、それとも国土交通省ですか、どっちになりますかね。

木下政府参考人 私ども、いわば農地法の中の世界であれば私どもの問題でございますけれども、まさに先生おっしゃっているように、ある意味では、私どもの世界と国土交通省の河川行政の世界の中の、非常にグレーゾーンじゃないかなというふうに思っておりますけれども、私ども農政の中で取り上げるのはなかなか難しいのではないかなというふうに考えております。

若松分科員 そうすると、国土交通省の方、来ていらっしゃると思うのですけれども、では、こういった観点についても、農水省と一緒になって何らかの措置を講じていただけるように検討していただけますか。

平口政府参考人 御指摘の問題でございますが、現在、水田等に利用されている低平地での遊水機能の確保というのを私どもも大変重要な課題であるというふうに考えております。

 このため、当地域では、国と地元、つまり国土交通省と埼玉県と桶川市と上尾市、北本市、鴻巣市から成ります江川づくり協議会というのを平成十二年九月に発足いたしたところでございます。この協議会の中で、やはり遊水機能を保全するためにいろいろな方策を検討してまいりたいというふうに考えてございます。

若松分科員 何か、歴史を披露していただいただけで、答えていただいたのかなというのが全く伝わらないのですけれども、まさにこの現場、本当に複合水害というんですか、ちょうど川田谷とか日出谷というところ、随分地元の話をして恐縮なんですけれども、そのときに紹介していただいた白子議員とか砂川議員とか市川議員という地元の市議会議員、一生懸命になって実態を私に伝えてくれました。

 では、ちょっと国土交通省ですけれども、結局、先ほどのいわゆる期成同盟とかそういう協議会を通して、先ほどの農水省がおっしゃったような、特にこの場合は、四市ありながらも桶川が一番の被害者なんですよ、極めて一市の問題なんですね。ですから、さっきの協議体ともちょっと違うのかな、いや、かなり違うのかなと思うのですね。ですから、いわゆる被害地としての何らかの対策を講じていただきたいという要請なんですけれども、いかがですか。

平口政府参考人 お答えをいたします。

 現在、私ども、平成六年度から、地元の桶川市が主体となりまして、国と県で支援いたします都市基盤河川改修事業というのを行っておりまして、計画的に予算を配分し、相当程度進めているところでございます。この事業をできるだけ早い機会に完成させたいということが一つでございます。

 それともう一つは、私ども、河川だけじゃなくて、やはり人々が住んでいる土地を含めました流域全体での治水対策というものを今後の非常に重要な課題ではないかというふうに認識をいたしておりまして、その一環として、今後水防法などの改正も予定しておりまして、洪水ハザードマップといったようなものを公表したりするような施策を展開したいというふうに思っております。いずれにしても、浸水被害に対して強い町づくりということを心がけてまいりたいというふうに思っております。

 今後とも、流域内での流出の抑制を図るため、農水省さんとも協議しながら、さまざまな検討をしてまいりたいというふうに考えております。

若松分科員 それと、さらに、水害の加害者というか、原因というのですか、宅地開発、これが数規模ある。いわゆる千五百平米かな、三千平米とか、そういう規制がかからないところですね、そういったところの規模が一番多いんですよ。そういったところが、いわゆる先ほど言った雨水とか生活雑排水が入ってくる。これに対しても、やはり当事者なので、何らかの負担というか、関与というか、規制というか、これが必要じゃないかと思うのですけれども、これはやはり国土交通省ですね。

平口政府参考人 現在、ある程度の規模に至っております開発につきましては、開発指導要綱等でいろいろ負担金等の制度があるのでございますけれども、なかなかそのレベルまで達しない五戸あるいは十戸といったような開発行為につきましては、非常に難しい面があるわけでございます。

 先生の御指摘されたところを十分私どもも認識しながらやってまいりたいと思いますが、いずれにしても、現在のところでは、先ほど申しましたように、流域全体での治水対策ということで検討をしてまいりたいというふうに考えております。

若松分科員 そうしますと、これも質問通告しておりますが、ちょうどこの地域は、川田谷なんですけれども、上尾道路という、いわゆる高規格ですね、それと圏央道、まさに高速道路が交わるところで、それらの道路の整備に伴ってまた違った環境になって、流水量が増加するとかあると思うのですけれども、こういったことも含めながら対応していただける、そういう理解でよろしいわけですか。

峰久政府参考人 御指摘の桶川市内の圏央道の道路排水の件でございますけれども、河川へ負荷をかけないように、圏央道の高架の下に、道路予算で、つまり道路事業者において調整池を設置して、一時貯留した後江川へ排水する計画としておりまして、この件について河川管理者と協議が調った次第でございます。

 それから、先ほどのは圏央道でございますけれども、上尾道路につきましても、現在圏央道の場合と同様の考え方で河川管理者の県と協議を進めているところでございます。

 いずれにしましても、河川改修と調整を図りながら、両道路の整備に努めていきたいと思っております。

若松分科員 もう一つ、先ほどの、住宅地域でとにかく雨水が地下に浸透する、そういった事業とか、あとは樋管地点でのポンプ車ですね。埼玉県にたしか二台とか、水かさがふえた場合のポンプ車ですね、行って荒川に水を流す、そんな車があるのですけれども、ぜひそういった面も検討していただきたいわけですけれども、それについては、国土交通省、いかがでしょうか。

平口政府参考人 洪水時における排水ポンプ車の問題についての御指摘でございますが、現在、私どもの出先機関として荒川上流工事事務所が川越市にございまして、ここに一台、排水ポンプ車を配置しております。それが最も近い位置にございますが、洪水時には、地元の市町村の方から要請があれば、このほかにも関東地方整備局等で排水ポンプ車を配置しておりますので、これらを動員、派遣することによりまして、当該地域において積極的に活用していくということにいたしてございます。

若松分科員 いずれにしても、これは国土交通省になろうかと思いますが、河川局ですかね。要は、先ほども言いましたように、この水害の原因には、農家、そして上尾道路とか圏央道路という大きなプロジェクト、そして宅地開発、さらには河川の改修ですね。先ほどの河川改修については早期完成を願いたいというところですけれども、具体的にどういうふうに早期改修してくれるのですか。それを聞いてこの質問を終わりたいのですけれども、いかがですか。

平口政府参考人 先ほど申し上げましたとおり、平成六年度から都市基盤河川改修事業というのを実施いたしておりまして、用地が大体八割程度、現在終了いたしてございます。

 この事業をできるだけ早い機会に完成するということでございまして、現在、この事業は県の方の負担と市の方の負担とございますので、そういったような自治体の方の意向も踏まえまして、よく調整しながら計画的に進めているところでございます。早期の完成を図りたいと考えております。

若松分科員 ぜひよろしくお願いいたします。

 そういうことで、いずれにしても、この水害の問題は複合だということを、大臣、ぜひ御認識いただいて、また個別に説明に上がらせていただきますので、よろしくお願いいたします。

 それと続きまして、鴻巣の花卉市場の合併がありまして、これができますと、今、たしか豊橋でしょうか、日本最大の花卉市場があるわけですけれども、それに次ぐ日本で二番か三番目の量になる花卉市場ができるのですね。これについて、なかなかやはり予算が出ないわけですけれども、県も頑張りまして、補助をつけるということなんです。これは、県がつけますと、県がついて国が出るという構造になっていますから。ところが、まだ国は書いていただいていないということなんですけれども、それについてはいかがですか。

西藤政府参考人 現在、先生御指摘のとおり、埼玉県鴻巣市内に二つの花卉市場がありまして、いずれも年々取扱数量が増加している状況にあります。これら市場の現状の施設規模に限界があるものですから、二つの花卉市場を第三セクター方式によって統合して新たな卸売市場を整備するという計画がありまして、現在、十四年度中に開業することを目指して施設整備が行われる予定であるというふうに聞いております。

 私ども、地方卸売市場の施設整備につきましては、卸売市場施設整備事業費補助金により支援しているところでございます。御指摘の案件につきまして、本年度、平成十二年度において実施設計費に対し、約一千三百万円でございますが、所要の補助を行ったところでございます。

 十四年度中の開業ということでございますので、平成十三年度から十四年度につきましては、まさに卸売売り場、仲卸業者売り場等の施設を順次整備していくという予定だというふうに聞いておりますが、いずれにしましても、私ども、今後、埼玉県及び鴻巣市からの要望を踏まえながら、内容を精査の上、その取り扱いを検討し、適切に対処していきたいというふうに思っております。

若松分科員 ぜひよろしくお願いします。これは県が出さないと国が出さない、何かお互いに逃げっこしているので、今は透明性の時代、逃げ場はありませんので、県はかなり努力しましたということで、ぜひ引き続き国の御努力をお願いして、最後の質問に移ります。

 これは、全国会議員の先生方に関係するのですけれども、若干自己宣伝になりますけれども、九九年の七月一日に、私どもの事務所、上尾事務所と国会事務所ですけれども、政治家事務所として世界で初めてISO14001を取得しました。

 そこで、この認証を取得するために、ずっとここ三年ぐらい、いろいろな環境負荷に対する情報を収集してまいりました。特に国会事務所には、御存じのようにいろいろな資料がいっぱい来ますよね。ほとんど見られない、ほとんどごみになるということで、では、年間どのくらいそういった法案とか官報とかが来るのかと調べたところ、うちの事務所では、九九年の暦年で四百五十キロ、そして昨年が三百五十キロということで……(「要らない」と呼ぶ者あり)要らないのですよね、おっしゃったように。宿舎もそうなんですよ。ということで、まさに皆様同じ意識を持っていただいたと思うのですけれども、結果的にそれを仕分けして、リサイクルしているのもあるし、ごみにしている。これは本当に要らないのですよ。

 ということなので、これは環境省、来ていると思うのですけれども、まさに今はIT時代ですから、これらの配るものはITで配ったということで配付したことにする、こういった形で、これらのむだな資源というのですかね、この浪費は削減すべきではないかと思いますが、環境省としてはいかがでしょうか。

岡澤政府参考人 環境省だけで決められる問題ではないと思いますけれども、廃棄物・リサイクル行政を担当する立場から申し上げますと、現在、国会事務所、各省庁においても電子文書の利用など、電子化の取り組みが進められておるわけでございますけれども、こうした取り組みの進展は、廃棄物の排出抑制という観点から非常に望ましいというふうに考えております。

若松分科員 ですから、環境省としては、各省庁並びに衆議院、参議院事務局にも、こういった意向を伝えていただけますか。

岡澤政府参考人 どういうやり方があるか、ちょっと検討してまいります。

若松分科員 検討するということは、ちゃんと後で報告してくださいね。

 いつも地球環境国際議員連盟、GLOBEで日本事務総長として、最近は閣僚になられたのでお忙しくてちょっとあれなんでしょうけれども、ぜひ、谷津大臣におかれましても、一閣僚として、各省庁並びに衆議院事務局、参議院事務局等に、今言った、まさに読まない書類、これを縮減するように大臣のお立場としても御努力いただきたいことをお願いして、それに対して、もし御決意なりいただければと思います。

谷津国務大臣 正直申し上げまして、私のところにも相当書類が来るのですけれども、これでいいのかなというふうに私も実はかねがね思っておったところであります。先生、ISO14001をお取りになりまして、そういった面では、いろいろ積極的に行動をなされている方であります。私も、閣僚懇談会の席でぜひ発言をさせていただきまして、各閣僚にも諮ってみたいと思います。

若松分科員 時間が終わりましたので終わりますけれども、実は、こういう環境提言をしないと、私どものISO14001の認証は消されてしまいます。そういうプログラム、それがまさにISO14001の厳しさ、いわゆる入学試験はあっても卒業試験がないということで、ぜひ先生方もこのISO14001の取得に挑戦されることを願って、質問を終わります。

 ありがとうございました。

北村主査 これにて若松謙維君の質疑は終了いたしました。

 次に、重野安正君。

重野分科員 重野安正です。

 初めてここに立たせていただきました。まだまだふなれな部分がありますが、どうぞよろしくお願いをいたします。

 林業と農業について、それぞれ項目ごとに質問していきます。

 まず、林業について質問しますが、この質問に当たりまして、国有林野事業のこの間の経過を調べてみました。平成九年から平成十一年まで、収入がどうなり支出がどうなっておるのかな。例えば収入を見ますと、平成九年が五千五百四億円あったのが、平成十一年には二千五百四十九億円、こういうことになっています。その間、累積債務二兆八千億円を一般会計に回して、国有林の会計を助けておるわけですね。

 これに象徴されるように、日本の林業は、どうも縮小均衡の方に動いておるのではないかというふうな感じがするわけです。私は、日本のように急峻な地形を持つ国土を守っていく、そういう観点からすると、だけれども山は大事にしなきゃならぬという結論に達するわけです。

 そういう現状認識を持ちながら、日本の林業の今後の基本的な位置づけ、そしてどういう方向に持っていくのか、そういう点について大臣の答弁をお願いします。

谷津国務大臣 今先生御指摘のとおり、最近、林業生産活動が非常に停滞しておるということでありますけれども、それに増して、また、森林に対する国民の要請が多様化する、あるいは高度化しておりまして、そういった面から、森林の多様な機能の発揮に支障が生じないようにと思うのですけれども、最近、ちょっと私は危惧をしているところでもございます。

 そういった中で、昨年末に決定いたしました林政改革大綱それからプログラムに基づきまして、従来の木材生産を主体とした政策から、今度、森林の多様な機能の持続的発揮、これを図ることを目的とする政策に転換をさせていただきまして、多様な機能の持続的発揮のための森林の適切な管理、森林資源の持続的利用を担う林業、木材産業の発展、そしてまた山村の振興を基本として、施策の展開を図ることが大事ではないかというふうに思っているところであります。

 そういったことから、具体的には、林業基本法の改正法案等を取りまとめまして、本国会に提出したいと考えているところであります。

 それには、森林整備の方向を明確化させていただきまして、そして機能に応じた森林施業の推進あるいは事業の重点化、そしてまた地域林業の担い手の育成あるいは確保、それから受託によるところの施業、経営の集約化、また、関係省庁との連携によりまして山村の定住条件の整備等を図っていきたいというふうに考えておりまして、こういったものの施策を展開していくつもりでございます。

重野分科員 積極的な答弁をいただきました。

 そこで、やはり山は木材を生産する場所であります。植林をして育てるだけの一方通行ではうまくいかない。育った木材が、七十年八十年、伐期が来た、切って搬出する、そしてその後には間違いなくまた植林をしていく、こういう循環がないと地域の活性化はないわけであります。

 そういう観点から、国有林、民有林ともに、大体どういうふうな伐採がされて、伐採した後は必ず植林をしておるのか。切ったら切りっ放しで、後は放置しておく、こういう姿があるのではないかと私は危惧をするのですが、そこら辺はどういうふうな状況にありますか。

中須政府参考人 若干数字的に御説明申し上げますと、年間の伐採面積、これは国有林、民有林を通じてでございますが、近年減少傾向で推移しておりまして、平成十年度で約十万八千ヘクタール、こういう数字でございます。国有林が四万三千、民有林は六万五千ヘクタール。他方、今御指摘のございました人工造林面積ということでございますが、これも同様に減少傾向にありまして、平成十一年度で見ますと、約三万四千ヘクタールというような数字になっております。

 ただ、この数字は、伐採面積の方は、いわゆる皆伐だけではなくて択伐、選んで切っていく、そういう面積も入っておりますので、直ちに比較することは、性格上、若干困難がございます。

 そういったことから、実は全然別の観点で、民有林における、伐採後三年以上経過しても植栽が行われていない人工林の伐採跡地というのがどのくらいあるかというのを調べたことがございます。平成十一年の三月現在で、全国で約二万二千ヘクタール程度存在する、こういうことでございました。

 時系列のデータが必ずしもございませんので、これがふえているか減っているかということを直ちには推測できないわけでありますが、御指摘のとおり、最近の林業活動というものが大変停滞しているという中で、このような伐採後植栽が行われない森林が今後一層増大していくのではないか、そういう危惧を抱いているというのが率直な私どもの現状認識でございます。

重野分科員 そういう危惧の念を持っておる、ではどうするの、こういうことを次に聞かなきゃならぬわけですね。

 短期的、長期的、重層的にやっていかなければ、そう簡単にはいかないと思うのですが、その辺の構想と申しますか、考え方を明らかにしてください。

中須政府参考人 先ほど大臣からお話し申し上げましたように、私ども、林政の抜本的改革に取り組もう、こういうつもりでいろいろ検討しているわけでありますが、特に、森林の持つ多様な機能というものを持続的に発揮していく、そういう観点を重視して、造林を初めとする森林の整備を推進することが重要であります。

 実は、そういう観点から、先ほど基本法の話を大臣から申し上げましたけれども、この国会に森林法の改正案もあわせて提出をしよう、これによりまして、森林の公益的機能ということに配慮した森林施業の的確な実施、こういうことを促進するシステムをつくりたいということがございますし、一方、各種予算等の措置をいたしまして造林事業の推進あるいは保安林等における治山事業による森林整備というものに積極的に取り組んでいきたい、こういうふうに思っております。

重野分科員 そういう構想をより早く具体化していくということが求められますので、そこら辺は積極的な対応をお願いします。

 問題は、これは農業にも共通して言えるのですが、一次産業の将来の担い手の問題ですね。

 私は大分の三十一戸しかない集落におるのでありますが、本当言って、ほとんどいないのですね、跡取りはいません。農業は、園芸なんかやっておるところは比較的後継者が頑張っているのですが、林業という業としてのていをなしていないというのが実態なんですね。大規模林家の場合には当然労働力を確保しなきゃならぬわけですけれども、現実、森林組合も班を編成してやるのですが、大変苦労しているというのが実態。

 林業を支える林家あるいは林業労働者、これをどう確保していくのか、あるいはそれにかわる何かいい方法が、もって林業の衰退を防ぐことができるのか、そういう点についてはどういう対策が講じられているのですか。

中須政府参考人 ただいま御指摘がございましたとおり、例えば森林所有者という面から見ますと、かなり大きい、五十ヘクタール以上持っておられる林家は約一万戸ございます。ところが、この一万戸のうち、林業による家計充足率が四割を超えているという林家は残念ながら千七百戸、こういうような状況でありまして、かなりの森林所有林家においても林業に依存する割合が大変低くなっている、こういう状況がございます。

 一方、労働力という点から申しますと、林業就業者数、昭和五十年の二十二万人から平成十二年は七万人、こういう数字になっております。ただ、率直に申しまして、現在の林業生産活動が停滞した状態で、深刻な就業者不足だということにはなっていないという状況でございます。

 ただ、この七万人も、六十五歳以上の方が既に約三割を占めているという状況であります。ですから、今後、高齢化の問題を含めて大幅な林業就業者の減少が見込まれるということでございますので、中長期的に見て担い手の確保、育成をどう図っていくか、大変大きな課題だというふうに思っております。

 このために我々焦点を当てていきたいのは、一つは、言うまでもなく、林家が効率的、安定的に林業を行う、意欲を持って行う林業経営体というのを育てるのと同時に、先ほどお話が出ました森林組合等というような形も含めて、施業とか経営をそういう方々に委託して、そういうところがまとめて実質的な林業の担い手として活躍をしていく、いわゆる林業事業体と呼んでおりますが、そういうものに焦点を当てて担い手の育成、確保を図っていくということが重要ではないか、こういうふうに思っております。

 林業事業体等で働く林業労働者につきましては、就業希望者への就業の円滑化、あるいは事業体の経営の改善等を促進しておりまして、特に具体的に、各都道府県に設置しております林業労働力確保支援センター、これを通じまして、就業相談であるとか新規就業者の就業準備のための低利の資金の貸し付けであるとか林業就業者に対する研修、こういうことに取り組んでいるわけであります。こういうことを通じて若い方々を含めた実質的な林業の担い手を確保していきたい、こういうふうに考えております。

重野分科員 次に、ちょっと視点を変えて、私は、日本の林業を再興していく精神というか背骨と申しますか背景と申しますか、それは、やはり水問題それから地球温暖化の問題、そういう面での林業の持つ機能というものをどう国民的合意形成していくかということが日本林業の復興の決め手になるのじゃないか。

 我が国は、梅雨があって雨がたくさん降ります。飲み水がないなんて言ったら本当に信じられない。しかし、今世界に目を転ずれば、安全な飲み水を確保できないという人が十億人おるというのですね。二〇二五年にはそういう状態に陥るのが、世界人口の三分の二まではそういう飲み水にも、いい飲み水ですよ、事欠くということになっていくというのですね。

 私は、そういうときに、この緑豊かな自然の中からはぐくまれる水というものを持つ我々日本人は本当に幸せだと思うのですね。そういうことを日本人の老若男女すべての目的意識に植え込んでいくということ、そして、やはり山というものに対する国民の理解というものをどう高めていくかということに最後は落ちつくのではないか。

 地球温暖化の問題で、政府代表は、日本の森林のことを物すごくよう言うておるのですね、だから日本は炭酸ガスを吸収しておるんだと。しかし、日本の山に対してそれだけ金を投資するということは言っていないのですね。ああいう国際外交の舞台で日本の山ということを言う以上は、やはり本当にそれにふさわしい機能というものを持ち合わせる豊かな山にしていかなければならない。そういう発想が今求められていると思うのですが、それについてどのようにお考えでしょうか。

中須政府参考人 基本的には、ただいまの先生の御指摘のとおりというか、私どもも同じような気持ちを持っているわけであります。

 我が国の国土の七割を森林が占めておりますが、その果たしている機能というのは、水資源の涵養、国土の保全、そういった従来から言われている問題のほか、昨年のCOP6で大きく取り上げられましたように、地球温暖化の防止に森林がどういう役割を果たしているか、大変大きな議論になりました。やはり、いわゆる二十一世紀循環型社会というのをつくっていく上で、森林の機能というのは欠かせない役割を果たしている、こういうことだろうと思います。

 そういうわけで、そういうことに関して国民的な関心を高め、あるいは、では全体としてのコスト負担を国民全体でどう考えていくのか、こういうことの契機にしていきたいということでありますが、同時に、私ども森林・林業の側からすれば、そういった多面的な機能を十分森林が発揮できるように、その機能に応じた森林施業のあり方も含めて対応していく必要がある、こういうふうに思っているわけであります。

 先ほどちょっと森林法の改正の話について触れましたが、今回の森林法の改正では、森林が持っている公益的機能に応じて、それに適した施業のやり方というものをある程度大きく示して、各林業家の方々、林業に従事される方々に、そういった方向での取り組み、機能を最大限発揮できるような形で施業を行う。例えば、ダム等の上流の水源林については、皆伐ということは控えて、いわゆる複層林化をしていく、そういうことによって水資源の涵養という機能を十二分に発揮できるようにする、そういうようなこともございます。

 また、温暖化防止の問題に関連しては、そのときの政府部内での決定というか考え方として、ちょうどことしから始めております緊急間伐五カ年対策ということで、五年間で百五十万ヘクタールの間伐を緊急に実施しよう。これをやることによって、森がまたよみがえるというか、豊かになって炭酸ガスを一層吸収するという意味において、木材生産のみならずそういった地球温暖化の防止という面でも大きな機能を及ぼす。こういったことにやはり森林・林業の側でも積極的に取り組んでいく、そういうことを国民に評価していただく、そういうこともまた重要だということで取り組んでいるところでございます。

重野分科員 ありがとうございました。

 それでは次に、農業について大臣にお伺いします。

 この間、ガット・ウルグアイ・ラウンド関係でどのくらい農業にお金を使ったか調べたら、平成十三年度まで六兆百億円という数字がありました。六兆百億、これは小さな金ではありませんが、しかし、それでもなおかつ、二十一世紀、日本農業をどうするというのがなかなか見えてこないというのが現実だと思いますね。

 そこで、二十一世紀の幕あけでありますが、日本農業の展望をどういうふうに語られますか、お聞かせください。

谷津国務大臣 我が国の農業につきましては、また農村も同じでありますけれども、食料の安定供給ということが非常に大事なものでありますし、また一方、国土の自然環境の保全や良好な景観の形成、それから文化もございます、そういうようなものを伝承するといういわゆる多面的な機能を有しておると考えておるところであります。とりわけ、健康で充実した生活の基礎となる食料、これを新鮮で安全なものを安定的に供給することが国の基本的な責務であるというふうに私は考えておるわけでございます。

 そういうことから、この役割を担うのが実は農業と農村でございますから、生産と消費との共生、これを私はいつも申し上げるのでありますけれども、そういう考え方のもとに、その健全な発展を図ることが将来にわたり国民が安心して暮らせる社会を築く上で不可欠であるというふうに考えておるところであります。

 このために、二十一世紀における我が国の農業それから農村が希望にあふれ、そしてまた活力に満ちたものにしていかなければならないというふうに考えておるところでありまして、それには、食料・農業・農村基本法に基づきまして、食料自給率の目標達成に向けた取り組みを初めといたしまして、望ましい農業構造の確立を図るためにも総合的な経営対策、あるいはまた農村の総合的な振興を図るための施策を着実に推進していくことが大事であるというふうに考えているところであります。

重野分科員 次に、私の選挙区も本当に山間部でありますから、いわゆる棚田が多いのですね。今度選挙で全部回るわけですが、水田が荒れておる、耕作放棄水田が非常に目につくわけですね。

 やはり棚田が持つ機能というのは、単に米を生産する場だけではなしに、あの地形の中に段々の水田があるということがどれほど自然を守る上で役割を果たしているかという点について、これをどう国民的合意に持っていくかというのは農政の責任者にとっては大変大事なことだ。いわゆる棚田に対する認識と、これをどう生かそうとしているのか、お聞かせください。

木下政府参考人 棚田地帯でございますけれども、先生御指摘のとおり、生産性の面では低いわけでございますけれども、洪水防止あるいは美しい景観の提供など、私ども多面的機能を有しているというふうに思っておりまして、このことにつきまして、国民的な理解、関心も高まっている、あるいは高まるための努力をしなければいかぬというふうに思っているところでございます。

 ただ、一方で、棚田地域でございますけれども、農業生産基盤あるいは生活環境基盤の整備がおくれている、あるいは高齢化あるいは過疎化の進行がある、こういうような点が懸念されているわけでございますけれども、棚田を都市部を含めた国民全体の貴重な財産として、都市との交流を含めました地域全体の振興に生かしていきたいというふうに考えているところでございます。

 こういうような点を踏まえまして、営農の継続を通じました多面的機能を図るため、地域の実情に即した簡易な基盤整備を行うとか、各種の補助的な政策を行うほか、私ども本年度から実施をいたしております中山間地に対します直接支払いという点も活用しながら、全体として振興を図っていきたいというふうに考えているところでございます。

重野分科員 積極的な取り組みをお願いしておきます。

 次に、担い手対策であります。

 今、二次産業、三次産業における就業構造が物すごく変わってきています。この機をとらえて、農業、一次産業がそういう労働力を吸収し得る、そういうふうなことが大事ではないか、そういう意味でのチャンスではないか、私はこのように思うのですが、これに対する考えをお聞かせください。

須賀田政府参考人 近年の大変厳しい雇用環境を背景といたしまして、農外から農業へ新規参入をされる方々、あるいは中高年の方々で離職して就農される方々、近年とみにふえております。私どもとしては、こういう新たに就農する意思を固めた方々に対しまして、都道府県農業会議に置いてあります新規就農ガイドセンターにおいて、ハローワークとの連携のもとに常時就農に必要な農地等の情報の提供をしております。

 また、主要都市におきまして、就農希望者の相談に応じます就農フェアとかファーマーズフェアとかを開催しておりまして、十二年度におきましては、東京、大阪のほかに、緊急雇用対策ということで、地方の主要六都市におきまして、まさに今実施をしておるところでございます。また、十三年度におきましても、全国八都市で実施することを予定しております。

 研修でございますとか融資でございますとかの具体的な就農支援策と相まちまして、今後とも、他産業を離職され就農を希望される、そういう希望をお持ちの方々のための円滑な就農策に取り組んでいきたいというふうに考えております。

重野分科員 次に、外国農産物の輸入激増、これは大変大きな問題であります。

 私の地元においても、白ネギの産地があるのですが、もう本当に泣いております。もうお手上げですね。出荷すればするほど赤字がかさむというので、もう放棄しておるのですね。なぜこんなことになっていくのか。これは間違いなく、大分県の農政の中でやれと言って僕らもいいよいいよと言ったのですよ。ところが今そうなっておる。外国の農産物が洪水みたいに入ってきておるというが、入れておるのは日本の商社なのですね。私は、やはりこれはちょっと問題だと思う。

 それは確かに今はフリーな時代ですから何をしてもいいのですが、しかし、そういう形で日本の農業がどんどん追い詰められていくということを黙って見ていていいのか、こういう非常に激しい思いがあるわけです。やはりこれに対して何らかの手を打たないと、これはもう本当にやる気のある野菜農家がなくなってしまう。そういう点について、農林水産省はどういうふうな考えとどういう対応をしようとしているのですか、お聞かせください。

松岡副大臣 今重野先生から御指摘ございましたが、全く私どもも先生と思いは同じでありまして、今御指摘のとおりでありますが、近年、外国からの、特に中国、韓国からの野菜の急増ということで、国内の野菜農家が大打撃を受けておる、こういう実態にございます。

 先生今、大分の地元の例を出されましたが、私も隣の熊本でありまして、昔から肥後と豊後は兄弟仲と言われますが、そういう仲でありますけれども、とにかく、私どものところは、例えば私の選挙区に植木町というのがあって、そこのスイカ、日本一のスイカ産地と言われているんですが、おととしは町で八十二億のスイカの所得がありましたけれども、去年は六十二億と実に二十億も減ってしまった。もうこれじゃやっていられないし、やっていけない、そんな状況であります。

 そういう状況の中で、どこもそうなんだと思うんですが、私どもは、昨年十二月の二十二日から、その中でも特に著しい状態になっております、今先生おっしゃいましたネギそれから畳表、そういった三品目につきまして、セーフガードの発動に向けて今調査に入っているところでございます。そして、日本ではなかなかやったことがないものですから、なかなかそれなりの進み方ができなかったんですが、やっと今腰も定まってまいりまして、関係の役所も発動に向けて相連携して一生懸命取り組んでおる、こういう実態であります。

 ここで注意しなきゃならないのは、生産を守るというと、では消費はいいのか、高いものを買わせられるのか、こう思うんですが、そうじゃなくて、やはり安心で安全ないいものを、国内産をぜひ食べたいというのが世論調査でも八割を超えているわけであります。そういう国民世論でありますから、そういったような意味において、国内の産地がつぶれれば、いずれは消費者の方々が安心で安全でいいものがやはり手に入らなくなる、また消費者の利益も損なわれるわけでありますので、消費と生産を安定的にやっていくという意味で、セーフガードを発動してとめるべきものはとめる、今そういう手続に入っておるところであります。

 それと、それはそれとして二国間でも、中国、韓国との間におきまして、円満な、やはりお互いのそれぞれ農業、農村、また農家が共存共栄を図っていけるような範囲の中で、ひとつ友好的に共存共栄を図っていける範囲の中でやろうじゃないかと。向こうも、全くそれはそのとおりだという認識、一緒になっておりまして、今はそういう形の中で二国間においても協議を進めておる、こういう状態でございます。

 私ども、国内の農家を守って、産地を守って、そしてまた国内の消費者に安心で安全な農産物を供給する、そういったことを守っていくということは一生懸命やりたいと思いますので、また逆に御指導方もよろしくお願いしたいと思います。

重野分科員 実は、あと農村における社会資本の整備等について聞こうと思っておったんですが、もう時間が来ましたので、それは後刻に回すことにいたします。

 ありがとうございました。

北村主査 これにて重野安正君の質疑は終了いたしました。

 次に、西川京子君。

西川(京)分科員 西川京子でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 今、重野議員が私の質問をほとんどおっしゃっていただいて、かなり問題点がはっきりしてまいりまして、どう質問の切り口を変えていこうか悩んでおりますが、私も、山林、森林、林業について、ぜひ農林大臣、農林副大臣に御質問をお願い申し上げたいと思います。

 我が国の山林は、恐らく、いわゆる原生林は別として、人の手が入って、手入れをしながら、自然環境とうまく調和して、その中で、山を中心にして、有機的に、いろいろな動物もそこで普通に住んでいたし、そういう感じで、まさに循環型の林業経営というのが本当にいい形で千年以上の歴史を持ってやってこられたんだろうと思うんですね。

 そういう中で、戦後の戦災の後の復興期に木材需要が大量に出てきた中で、昭和三十八年に、一つの時代の要請ではあったと思うんですが、完全自由化ということが行われました。その後のいわゆる林業家の惨状、これは本当に大変なものがあったと思いますが、それとともに、山林が本当に荒廃していった現実、これはもう私が今さら申し上げるまでもなく、皆様の周知の事実でございますけれども、そういう中で、ある意味では、農業というのは一年ごとの作物である、そして、その被害が出たときにも非常にわかりやすい。しかし、林業というのが、何十年のスパンで営々と手入れをして努力してきた結果が、ちょうどいい伐期になったころには全く値段にならない。

 そういう厳しい中で、ある意味で、林業経営者というのは、本当にたくさん持っている大規模か、あるいは農業との兼業であるがゆえに、林業というのが成り立たなくなっても、はっきり言えば圧力団体とならなかったという実態があると思うんですね。大規模のところはそれなりのいろいろな蓄財もあったでしょうし、何とかなった。そして、小規模の人たちは、それが生活全体を支えているわけではなくて、ある意味では緊急の収入を得るときに切る、そういうことであったがために、なくても何となく農業の方で生活できたとか、そういう実態があったがゆえに、この林業というのが、本当に長い間、ある意味では政治の力が入っていかないで見過ごされてしまった現実というのがあったと思うんですね。ここに来て、もう今、日本の山はこれ以上はほっておけないよというこの状況になって初めて、これは大変だということになったのが私は実態じゃないかと思っております。

 そういう中で、先ほどの重野先生の御質問で大臣の方からもお答えがあったと思いますけれども、その点を踏まえた大臣の林業の今の荒廃に対する思い、これからの展開方向なりをぜひお伺いしたいと思います。

谷津国務大臣 今先生御指摘のとおり、木材等の採算性の悪化によりまして、非常に、林業の生産活動と申しましょうか、そういうものが停滞してきております。それがために森林の持つ多様な機能が発揮できない、支障を来しているというふうに私は考えているところであります。それがために、私どもは、具体的には林業基本法の改正を取りまとめまして、今度の国会に出そうというふうに考えているところであります。

 一方、先ほどもお話が出ましたけれども、この間、COP6で、これはハーグで行われたのでありますけれども、もう一つ森林の大きな機能として、吸収、いわゆるシンクの問題が出たわけなんです。これは御案内のとおり、一九九〇年の時点から六%減らせということなんですね。ところが、一九九〇年から見ますと、今日までには九%以上実は悪化しているわけなんです。それにマイナス六%というと、実質一五%ぐらい炭酸ガスを削減しなきゃならない、そういう状況なんです。

 そこで、森林の持つ機能というのがクローズアップされてきまして、あの会議でも大きな議論になったわけでありますけれども、私が聞いた話では、その六%のうちの三・五%を森林のいわゆるシンクの中で賄おうというふうな話が具体的に出てまいりました。

 ただ、これは決定はされなかったんですが、この三・五の持つ意義というのは私は非常に大きいというふうに考えておるところでありまして、この五月にまたCOP6が再開されるやに聞いておるわけでありますけれども、もしここで三・五が認められれば、これは私は森林の持つ機能が発揮される大きな根拠になるというふうに思っているわけでありますから、今先生御指摘のとおり、そういった面では、日本の国土の六八%は森林でございますから、これはしっかりと政策の中で打ち出していかなければならぬというふうに考えておるところでありまして、これからもぜひ先生の御指導をいただきながら私どももやっていきたいと思いますので、よろしくお願いをいたしたいと思っております。

西川(京)分科員 ありがとうございました。

 今のまさに森林の持つ多面的要素、それをアピールすることによって、少しでも林業経営の一つの方向性というのを出していきたいと思いますが、そうはいいましても、現実の林業の厳しさというのを何とかしなければならないわけです。

 先ほど、担い手の問題なり事業体の整備なりが、林野庁の長官の方からお話がありましたけれども、それともう一つ、今、重野議員の野菜の方のセーフガードの問題が出ましたが、私はぜひ、第一次産業は基本的に保護すべきものだというこの認識をやはり日本政府は持つべきだと思うんですね。貿易自由化といういわゆる工業製品と全く同じレベルで話す問題ではない。そういう意味でも、保護すべきものとしての認識ということで、ネギ、シイタケ、イグサを、今、松岡先生がやっていらっしゃいますけれども、木材に対するセーフガードというお考えはないんでしょうか、よろしくお願いします。

松岡副大臣 結論から言いますと、もう大いに持っておるわけでありまして、昔は山持ちは金持ちだと言われましたが、今はもう、山持ちはただ苦しみだ、こんな状況であります。何ゆえかということは、輸入が八割もあって、国産材は本当に細々とやっと生きている、こんな状況でありますから。

 そこで、私も、もともと、木材に対しましてセーフガードをかけられないかと一番先に言ったのですが、近年特に伸びたわけじゃない、急増したわけじゃない、というのはもっと前から七割、八割ですから、セーフガードの論理でいいますと該当しない。逆に私は、今西川先生おっしゃいましたように、農産物は一年の生育期間、木材は五十年とか七十年とかそんな話ですから、生育期間でいうなら五十年、七十年を一年と見て、そういうことでへ理屈でもいいから何か論理はつくれないかとまで言ったのですが、なかなか難しいということであります。

 しかし、製材品、集成材、こういったことにつきましては、今、セーフガードを発動できないかどうかという、三省の中でそのことをぎりぎりの協議をやっておりまして、なるべく早く結論を出して、そして皆様方から、やはりあそこまでちゃんとできるかということに向かって、今努力をしているところでございます。

 それからもう一つ、木材につきましても、これを監視品目に加えまして、そして、とにかくセーフガード発動へ向けた対応ができないか、今そういう取り組みをいたしておるところであります。

 それともう二つ、私は大事なことはあると思っていますが、これは今、副大臣・政務官会議で、谷津大臣のもとで、御下命いただいて私ども作業しているのですが、一つは、違法伐採。今、大臣の方からCOP6の話をされました。今、地球環境、ところが、不法伐採、違法伐採というのがあって、これがどんどん森林を破壊しながら、そして、それが日本からすれば輸入材として入ってきておるという指摘があります。実態がどうかということはまだはっきり確認しておりませんが、そういう指摘があります。

 したがって、そういった可能性、疑いのあるものは、これは輸入側もきちんと対処すべきじゃないか、そして、地球の環境を守るという側にちゃんと役割を果たすべきじゃないか、こういうことで、私は今、違法伐採につきましても不法伐採についても、これに対するきちんとした措置がとれないか、それを事務的にしっかり議論、検討するようにやっておるところでありまして、そこで何らかの対応がとれないかと思っております。

 もう一つは、国内のある程度の林業活動を維持していくためには、国内の森林の多面的機能を守っていくためには、どうしても林業の行為が必要でありますから、最低限必要な、ナショナルミニマム的な、それはどれくらいの市場の占有率がないと林業活動ができないのか、それをちょっと計算しろと今言っているわけであります。難しい計算はいろいろ時間がかかりますけれども、大ざっぱな計算でいいから早く出してくれ、三月いっぱいぐらいにと。

 そうすると、相手に対して、日本の森林の機能を維持し、そして国民生活を守っていくために、これだけは日本として国内材が必要だ、それ以上のものは輸入できないと、相手が認めるかどうかは、それは交渉事ですけれども、やはり主張できる根拠を持とう、そして国内の山を守ろう、今こういったことも私ども取り組んでおるところでありまして、ぜひまた先生の方からもそういった後押しをお願いしたいなと思う次第であります。

西川(京)分科員 ありがとうございました。

 大変力強い御答弁で、大いに気を大きく持つ次第ですけれども、特に、日本の企業が、ある意味では、野菜に関しても木材に関してもですが、自分の国の第一次産業を全部壊しているという実態、これは、幾ら自由経済とはいいながら、政府なりなんなりが、少なくとも要望なり指導なりを産業界にすべきだと私は思います。また、産業界の人たちも、言うなれば愛国心という言葉は余りに大仰かもしれませんが、自分の国の成り立つもとに対して、自分たちがどれだけのことができるのかできないのか、その辺のもう少し良識を持った商活動をしていただきたい、そのことを私は非常に思います。

 そして、それとともに、今、では政府サイドでできることは何かといいましたら、国産材の需要拡大をいかに自由貿易の中でやっていくかということだと思うのですが、そういう中で、公共施設に対して、国産材をなるべく使ってほしいというような指導なり、税制法上あるいは補助金の上積みなりなんなり、そういうことを特にお考えであったらちょっとお聞かせいただきたいのです。

 特に、学校の教育関係なんかにおいては、私は、近ごろ少しこの辺が皆さんの認識が出てきて、私の地元の方でも玉名市あるいは八代市、天草あたりで小学校が木造の学校をつくり出しておりますけれども、これはある意味で、文部科学省と一緒になって、木の廊下を思い切りぞうきんでみんなでばっとふくとか、そういうことは、教育効果という意味でも、何となくのぬくもりという意味でも本当に大事なことだと思いますが、これはできると思うのですね、一つの政策として。

 ぜひこの辺のところの取り組みを、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。

中須政府参考人 ただいまお話しのとおり、大変な苦境にございます我が国の林業、木材産業をしっかりと支えていく、そういう意味からも、国産材を中心とした木材の利用を促進するということは大変大きな課題だと私ども思っております。

 このために、公共施設に木材を使っていただく、その利用促進を図るということで、もちろん私ども自身もいろいろな面で努力をいたしておりますが、関係省庁に呼びかけまして、木材利用促進のための連絡会議というものを設け、各省それぞれ積極的な利用ということをお願いしているわけであります。

 今、例えば学校のお話が出ましたけれども、学校施設の木造化ということで文部科学省にいろいろお取り組みをいただいておりますが、数字的に申しますと、昭和六十年度に建設された木造学校施設は一年間に十八校、これが、木造学校施設の補助単価の引き上げ等をしていただきまして、六十一年度から平成十一年度までの十四年間ということを見ますと、年平均でいえば五十七校木造学校が建設されているということで、大変ふえてきておるわけでございます。

 あと、私どもの事業もそうでありますが、河川とか砂防事業に間伐材を使うとか、あるいは、総務省の郵政事業庁にお願いをしているわけでございますが、郵便局の局舎を木造化するとか、そういったさまざまな取り組みをお願いしているわけであります。

 こういった取り組みをさらに促進するということで、実は、平成十二年度に補正予算を活用いたしまして約九十五億円計上いたしまして、各種の公共施設の木造化ということで、特に、やはり地域においてシンボルとなるような木造の公共施設の整備、あるいは内装の木質化を進めていこうということで取り組みをしているところでございます。大変これは各地で好評でございまして、いろいろな取り組みが行われているというふうな状況にございます。

 学校のことに関しましては、平成十三年度の予算案におきましては、文部科学省と私どもの連携という形で、学校関連施設についても木材利用の推進を図る、あるいは耐火性の向上など先駆性のある公共施設の木造化の支援、そういった観点で、これは十一億円ほどでございますが、新しい経費も計上しているということでございます。

 先生からも御指摘ありましたとおり、木材利用の促進というのは大変重要な課題だ、こういう認識に立って、今後とも、関係省庁、地方公共団体とも十分連携をとりながら、我々も努力をしていきたいというふうに思っております。

西川(京)分科員 ありがとうございました。

 ぜひその予算をどんどんふやすように私も頑張りたいと思いますので、応援させていただきます。

 もう一つ、山が成り立たないということで、一番今山林が荒れている原因が、間伐がほとんどできていないという問題だと思うのですね。

 これは本当に、間伐してある山としていない山を見ると一目瞭然でして、していない真っ暗な山というのは、一切、草木一本生えていません。当然、下草が生えていないので、全部土が流れてしまう。ただ、ごろごろした石ばかり。そうすると、ちょっとした台風なりなんなりが来たときに倒れる。これがあちこちで山の崩落というのが、私なども地方に帰ると目の当たりに見ることがあります。

 この間伐をきちんととにかくさせるというのは、ある意味で国税で、国の一つの方向としてやっていかなければ、もうどうしようもないと思うのですね。各民有の方々にはその力がないわけですから、間伐材が少なくともペイすればやるのですけれども、むしろ突っ込まなければできないという状況の中では本当にこれは厳しいもので、ある具体的な例として、割合年配の御夫婦が台風で倒れた木材を間伐して、それを三カ月ぐらいかかって、人夫を使っては成り立たないので、自分たちで全部集めて、山からおろして、トラック一台市場に持っていったら五千円になったという。だから、その間の何カ月間の彼らの人夫代は一切ただなわけですから、これは人を使ったらもう大赤字で、結局その現実があるためにもう全くできないということがあります。

 この間伐に関しての問題で、一つは、ちょっと違った視点から申し上げますと、今ちょうどそろそろこの三月ぐらいになると皆さんが悩むあの花粉症という、杉花粉症の問題がありますけれども、これはまさに荒れた山ほど花粉を散らすという現実がはっきりわかっております、科学的にも。山に対する、森林に対する国民的合意を得る一つの手段として考えても、間伐をすると花粉アレルギーの量が少しでも違う、そういう意味で、国民的合意を得る一つのアピールの仕方としても、間伐をするコンセンサスの一つの方法として、このアレルギー問題に対する林野庁の取り組み、PRの仕方もあると思うのですね。

 きのう、私たちは、ハクション議連といって、アレルギーで苦しんでいらっしゃる国会議員の先生方が五年間活動してきた中で、私もちょっと身内がいるものですから、その中に入っていただいて、シンポジウムを初めていたしまして、いろいろな御意見をいただいたのですが、その中で、本当に花粉症に悩んでいらっしゃる方は、杉の木をもう憎たらしい存在というふうに思っているのですね。そういう中で、国民的にみんなが思っている山に対する思いというのがむしろマイナスのイメージでとらえられてしまうという問題があると思います。

 ですから、これはぜひ、国税を入れてこれから少し間伐をきちんとしていかなければいけない現状の中で、こういう一つのPRの仕方、花粉症対策にもぜひしていく、そういう方向があると思うのですが、そのことについてちょっと御意見を聞かせてください。

中須政府参考人 花粉症の問題、大変全国的に多数の方々が花粉症に悩むということで、私ども森林・林業を所管する立場からも、できる限りの対策に努めなければならない、こういうふうに思っているわけでございます。

 ただ、原因究明とか、予防、治療とか、あるいは発生源に関する対策とか、総合的に進めなければならないということで、現在、私どものほか、環境省、厚生労働省、気象庁から成るスギ花粉症に関する連絡会議というものを設けて、それぞれ分担しながら対応しているという状況であります。

 特に、林野庁として何ができるかということで現在取り組んでおりますのは、一つは、花粉を発生するのが少ない杉というのを開発して、これは率直に言って大変時間のかかる話でありますので、すぐということではないわけでありますが、これに取り組もうということであります。平成九年に十五品種を選抜いたしまして、ことし、つい先日でございますが、さらに四十二品種を追加いたしました。これら五十七品種というのは、これまでのデータ等によれば、通常の杉に比べて一%以下というような大変花粉の発生量の少ない杉でございまして、これを林木育種センターから各県に配布する体制をとっているところでございます。

 ただ、先ほども申しましたように、そういう木から、原種から実際の苗木がつくられるまでに時間がかかりますし、その苗木を植えて花粉の発生時期というのを迎えるのはかなり時間がかかるということでございますが、そういうことが一つの取り組み。

 それから二点目は、まさに先生がおっしゃったとおり、間伐の促進でございます。これは、花粉症ということももちろんでありますが、やはり山が荒れている、その最たるものが間伐のおくれということだ、こういうふうに認識をしております。このため、平成十二年度から緊急五カ年の間伐対策ということを実施しておりまして、五カ年間で百五十万ヘクタール、おくれている間伐を促進しようということで現在取り組んでいるところであります。これに取り組むことは、山を整備する、立派な山にしていくということと同時に、まさに御指摘のとおり、花粉の発生抑制ということにも大変資するわけでありまして、この着実な展開を図ってまいりたいというふうに思っております。

 それから、あとは地味な話でございますが、どういう形で花粉が発生していくのか、このメカニズムというか発生予測というような調査研究、これも私ども取り組んでおりまして、気象協会が毎年発表することしの花粉の飛来量の予測、あれは、私どもの研究機関と気象協会で共同して開発した、去年の夏の花芽の形成状況、そういうものから推計をしているということでございまして、そういった対策をとっているわけでございます。

 いずれにいたしましても、先生の御指摘のとおり、そういった形で森林・林業の側からも花粉症に対して取り組んでいるという姿勢をやはりアピールしていく、その重要性、御指摘のとおりだと思います。引き続き、そういうことで、花粉症対策に私どもとしても努力をしていきたいと思います。

西川(京)分科員 ありがとうございました。

 今のアレルギーに関しては、今度、中央理化学研究所免疫・アレルギー科学総合研究センターというのが、二十五億円ぐらいの予算がついて、その問題を世界に先駆けて先進的にあらゆる問題を研究しようというのができることになりましたので、ぜひそこに林野庁の方も入っていただいて、一緒に協力していただけたらと思います。

 そしてもう一つ、山の持つ機能の中で一番ある意味では大事なのが水の問題だと思いますけれども、結局山が、上方が荒れると、水資源が枯渇するという問題。それと海の状況も悪くなる。そういうことは、もう皆さんこのごろ十分、国民の皆様もわかってきている中で、昔水源税というのが大分考えられましたけれども、産業界あたりの反対があったのでしょうか、何となく立ち消えになってしまった中で、県単位で幾つかもう設けているところもありますが、そういう一つの国民の森林に対する、山に対する思いを向かせるという意味で、環境、目的税みたいな、水源税のような、名前はともかくとして、そういうものをお考えになるお気持ちはおありになりませんか。

中須政府参考人 私も、個人的なことを申しますと、少し前までは海というか水産を所管しておりまして、そういう意味から、今先生がおっしゃいましたように、「森は海の恋人」というスローガンのもとに、漁民が山に登って木を植える、それが豊かな海をつくっていくのだ、こういう話も、私どもも随分取り組むというか、漁業者の皆さんとお話をしたことがございます。

 やはり、森林の整備を図るということは、大変大きな、広い意味での循環型、自然の循環機能を十分に生かしていくという意味におきましても重要な意味を持っている、こういうふうに思うわけであります。そういうことでございますので、私ども、森林の整備を進めていくという場合には、国民あるいは地域住民の理解と協力のもとに進めていく、こういう気持ちをまず基本的に大切にしたいというふうに思っております。

 そのための具体的な話としては、最近大変ふえてまいったのでございますけれども、例えば、森林整備のためのボランティアの活動、都会の皆さんが隊を組んで山に行って下草刈りをしていただくとか、そういった活動、こういうのもお互いに森の大切さを知るというふうな意味を含めてぜひ推進を図っていきたいなと思っております。

 先ほどお話がございました水源税の問題について、税という形では断念をしたときに、新たなやり方として、上流、下流が協力をして共通して取り組んで森林の整備を進めていく、そういった枠組みが地域ごとに設けられている、基金等がございまして、それが森林整備に活用されている、こういうものを進めていくということが今後とも必要だろうというふうに思っております。

 そしてまた、将来の話としては、昨年十二月に林政改革大綱というものをお示ししたということを先ほど大臣から申し上げましたけれども、その中でも触れているわけでありますが、森林の持つ公益的機能の発揮のための社会的なコスト負担のあり方、これについても今後検討していく必要があるという項目がその中に盛り込まれているわけでありまして、こういった観点から、私ども、昨年末に、森林整備に関する新たな国民支援の推進手法に関する研究会ということで、学識経験者等にお集まりをいただきまして、幅広い観点から、特に最近議論になっておりますのは、お話ございましたように、環境税であるとか地方における法定外目的税、こういう動きがございます。

 そういった動向も踏まえながら、幅広い観点から検討を進めていきたい、こういうふうに思っております。

西川(京)分科員 ありがとうございます。

 私の質問は一応これで終わりなんですが、まだ少々残っておりますので、そちらの方に申し上げてない質問になりますけれども、申し上げさせていただきます。

 もう一つの大事な問題点として、相続税の問題があると思うのですね。森林が荒廃している大きな要因になっていると思います。特に、均分相続で、都会に住んでいる子供が相続した場合、これが完全に不在者地主であるがゆえに全く山の現状も知らない、その中で過重な相続税を払うために、とにかく山を切らなければお金にならないということで、今、まして山が全く価値がないがゆえに、現物支給も認められないというような現実もあるようですので、この相続税の軽減ということ、これは農地に比べても決して安くないわけで、山林所有者がなぜここまで痛めつけられなければいけないのかという問題をつくづく感じます。

 現実に、本当に国土保全という大きな責任を果たしている山に対して、もう少し国の理解のある態度というのは必要だと思うのですけれども、この相続税の問題について一言、大臣でもどちらでも。

谷津国務大臣 実は、山林の相続税につきましては、私どもも税調で随分主張をしているところであります。これは、そういうこともありますし、今お話がありましたようなことも十分認識をしているものですから、ぜひ次の税調に私どもは出して、何とかこれを確保していきたいというふうに考えております。

西川(京)分科員 ありがとうございました。

 これで質問を終わります。

北村主査 これにて西川京子君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明二日金曜日午前九時より開会し、引き続き農林水産省所管について審査を行うこととし、本日は、これにて散会いたします。

    午後七時三十二分散会




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