衆議院

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第2号 平成13年3月2日(金曜日)

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平成十三年三月二日(金曜日)

    午前九時開議

 出席分科員

   主査 北村 直人君

      大原 一三君    谷川 和穗君

      五十嵐文彦君    山内  功君

      渡辺  周君    佐々木憲昭君

      植田 至紀君    横光 克彦君

   兼務 後藤  斎君 兼務 津川 祥吾君

   兼務 山田 正彦君

    …………………………………

   農林水産大臣       谷津 義男君

   農林水産副大臣      松岡 利勝君

   農林水産大臣政務官    金田 英行君

   政府参考人

   (外務省経済局長事務代理

   )            本村 芳行君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房長) 田原 文夫君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  小林 芳雄君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  須賀田菊仁君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長

   )            木下 寛之君

   政府参考人

   (林野庁長官)      中須 勇雄君

   政府参考人

   (水産庁長官)      渡辺 好明君

   政府参考人

   (水産庁次長)      川本 省自君

   農林水産委員会専門員   和田 一郎君

   環境委員会専門員     澤崎 義紀君

   予算委員会専門員     大西  勉君

    ―――――――――――――

分科員の異動

三月二日

 辞任         補欠選任

  五十嵐文彦君     山内  功君

  佐々木憲昭君     塩川 鉄也君

  横光 克彦君     植田 至紀君

同日

 辞任         補欠選任

  山内  功君     渡辺  周君

  塩川 鉄也君     佐々木憲昭君

  植田 至紀君     山内 惠子君

同日

 辞任         補欠選任

  渡辺  周君     五十嵐文彦君

  山内 惠子君     日森 文尋君

同日

 辞任         補欠選任

  日森 文尋君     保坂 展人君

同日

 辞任         補欠選任

  保坂 展人君     菅野 哲雄君

同日

 辞任         補欠選任

  菅野 哲雄君     横光 克彦君

同日

 第四分科員津川祥吾君、第五分科員山田正彦君及び第八分科員後藤斎君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十三年度一般会計予算

 平成十三年度特別会計予算

 平成十三年度政府関係機関予算

 (農林水産省所管)




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     ――――◇―――――

北村主査 これより予算委員会第六分科会を開会いたします。

 平成十三年度一般会計予算、平成十三年度特別会計予算及び平成十三年度政府関係機関予算中農林水産省所管について、昨日に引き続き質疑を行います。

 この際、分科員各位に申し上げます。

 質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力をお願いいたします。

 また、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。植田至紀君。

植田分科員 社会民主党・市民連合の植田至紀です。よろしくお願いいたします。

 きょうは、森林行政及び国有林野事業にかかわりまして、この通常国会でも新たな林業基本法が予定されておりますけれども、そのことも念頭に置きながら、幾つかの点にわたってお伺いいたしたいと思います。

 一九六四年に基本法が制定されてもう三十六年、私よりも一つ年上の林業基本法でございます。今やその理念と、また現状との乖離というものがかなり深まっているというのは、御承知のような林業をめぐる諸環境の深刻な状況を見れば、これはもう明らかでございます。確かに、法制定当時はまさに木材ブーム、また、高度経済成長のもとで旺盛な木材需要が前提としてあったわけでございますので、当然、当時の基本法は経済効率性に重点が置かれていたと認識しております。そして、そもそもその当時は、産業としての林業が常に成立し得るということがまた前提になっていたことによるだろうと思うわけです。

 しかし、構造的な木材、国産材価格の低迷が、林業従事者の生産意欲の低下はもちろん、その生活を圧迫している、そしてまた林業労働者の減少、高齢化の進行によって森林整備を困難なものとしているということがこの実態にあると思います。

 現行法では、他産業との格差が是正されるように、林業の生産性の向上を通じて林業の安定的な発展を図ることと、林業従事者の所得を増大してその経済的、社会的地位の向上に資するということを政策目標にしているわけですけれども、現在のさまざまな森林整備の困難な状況の中で、また林業が産業として非常に困難な状況に陥っている中で、森林の有する多様な多面的機能というものも著しく低下させている。しかし一方で、まさに今二十一世紀になりまして、特に環境問題、特に森林資源の枯渇という問題は、何も日本に限らず国際的な、地球規模の課題になっている中で、いわゆる森林の持つ多面的機能、環境保全機能を初めとするそうした機能というものにもっともっと着目した森林行政のあり方というものがこれから追求されなければならない、そういうふうに私は考えているわけでございます。

 ですから、そういう観点から、できれば今度出されますところの林業基本法についても、そうした二十一世紀の、まさに未来構想を踏まえた、そうしたことをきちんと盛り込んだ法案であってほしいなというふうに私は願っているわけです。

 私自身の思いを申し上げますと、確かに、これまでの現行法は経済効率性に重点が置かれていたわけでございますけれども、やはり新たな基本法では、持続的な森林経営をもう一度定着し直す、その持続的な森林経営、林業の振興というものの意義というものを、単に産業としてだけでなく、その産業を育成し振興させるということが、実は地球規模の課題に対しても対応し得る産業として意義を持つものだと思いますので、やはりそうした環境保全機能等々に着目した新たな法というものを求めたいわけです。

 その意味で、一つには、そうした多様な機能を発揮させるための森林整備目標というものをやはり明確にすべきだろうと私は思いますし、また、国産材の需要拡大が森林整備を促進するわけでございますから、私は、米の自給率なんかと同様に、木材の自給率目標なんかも定めていくべきではないかと思います。現状では約二〇%というような状況です。

 ちなみに、ちょっと私ごとで恐縮でございますけれども、私の実家といいますか、私の父親は、私どもの奈良の田舎で言う腹押しという仕事でございました。

 腹押しというのはどういう仕事かといいますと、林業ではなく製材業になるんですけれども、こんな丸のこがぐっと回っているのを、丸太ん棒を腹で押しますので腹押しと。それを私の父親は、中学を卒業してから六十まで四十五年間、ずっとやってまいりました。おかげで、いまだに私は父親と腕相撲をしても勝てないのでございます。

 その私が子供時代でも既に、私の父親が勤める製材所では、吉野という林産地を控えていながら、吉野の木なんというのはまず扱っていなかったわけです。製材業が国産材を扱っていると、赤字でもう立ち行かない。結局、大阪の岸和田や京都の舞鶴から米マツやトドマツなんかを輸入して、それを製材していた。

 だから、いわゆる林産地の奈良県でも、既にもう七〇年代初頭からそんな状況でした。結局、八〇年代後半になってそこの工場も廃業いたしましたので、今はもううちの父親も年金暮らしをしておりますが、私も、私の子供時代からそうしたものをつらつら見ながらそうしたことを実感として感じてきた者として、改めて、こうした木材の自給率なりなんなりということにもやはり触れたいなと思うわけです。

 またもう一つ、林業生産活動の担い手としての労働者の確保、これをやはりきちんと確立していくという視点も必要だと思います。

 実際に今、林業労働者というのがもう十万を切って久しいわけです。先日伺いますと、もう七万人と。この七万人の人口で、林野庁さんが最近お調べになったところでは、七十五兆もの外部経済効果がある。こうした森林の公益的機能をこの頭数で支えている。しかも、ほとんど若い方々はいらっしゃらなくて、かなりお年を召した方々ばかりがそうした従事者としていらっしゃる。

 そうした高齢化が進んでいるところでは、やはり将来にわたって林業労働者の確保策というものも確立していくべきだろうと思いますし、そしてまた、こうした施策の推進に当たって、国の責務はもちろんのことですけれども、地方公共団体の責務を明確にする、そしてさまざまな支援策の方向、そしてその財政措置、法的措置のあり方についても、こうした今申し上げたようなことを法文上、やはりしっかりとこの基本法の中に改めて明記すべきではないかというふうに私は考えています。

 またさらに、冒頭申し上げましたように、林業、森林の持つ意義に着目いたしますと、例えば、貯水機能、水害防止機能でありますとか水源涵養機能、そうした公益的機能、環境保全機能等々の発揮のための森林の保全、林業の振興がなされなければならないということ、そしてそれが何も林業という産業分野に従事する人、またその周辺にいる人たちに恩恵をもたらすというだけではなくて、上下流を通じて、もっと言うと国民的に、そうした森林の保護、保全、そして林業の振興というものがやはり一人一人の暮らしにもっともっとかかわってくるんだよということで、例えば、格調高い前文なんかの中で、こうした林業なり森林行政というものが実は国民的課題なんだということもやはり触れていただいた方がいいのじゃないのかな、私はそういう思いをいたしております。

 これは、私の今の思いであり、願いであるわけです。今、基本法の策定に当たって審議中でありますので、その審議状況を伺うわけにはいかないと思うのですけれども、当然、この間の森林行政、そしてまた林業の現状を踏まえましての二十一世紀、そしてその二十一世紀はどういう時代かというそうした時代状況、その地平に立った森林行政、そして林業の課題とその意義ということについては御所見を十分お伺いできると思うので、まず、その点につきまして御見解をお伺いいたしたいと思います。

谷津国務大臣 今の植田先生からのお話、私どもが今度国会に提出しようとしております林業基本法の改正に、先生の今言われたことはほとんど盛り込まれていると言ってもいいのではないかと思います。

 今、林業の採算性が非常に悪化しているものですから、そういった面で林業生産活動が停滞しております。こういうことから、多様な森林の持つ機能というものが発揮できないような状況にもなっているわけであります。

 そういうことから、昨年の末に決定をさせていただきました林政改革大綱、それから、そのときにプログラムもつくりまして、それに基づきまして、従来の木材生産を主体とした政策から、今先生がおっしゃったように、森林の多様な機能を持続的に発揮できる、そういうものを目的とした政策に転換をするということでございます。

 ですから、多様な機能を発揮させるための森林の適切な管理がそこには必要である、それからもう一つは、森林資源の持続的な利用を担う林業、木材産業の発展を期する必要がある、それから山村の振興、これを基本にいたしまして、その施策の展開を図ることとしておるところであります。

 具体的には、林業の基本法の改正等を取りまとめまして本国会に提出することになっておりますけれども、先ほど先生がおっしゃったような森林整備の方向を明確化するとともに、機能に応じた森林施業の推進及び事業の重点化、それと地域林業の担い手の育成あるいは確保と、受託による施業、経営の集約化を図っていきたい。と同時に、関係省庁との連携による山村の定住条件の整備等をその施策の中に入れまして、これを展開していきたいというふうに考えているところであります。

植田分科員 ありがとうございます。おおむね今、言ってみれば基本法のエキスになる部分はこんなものだよということについては御説明いただきました。個々の問題については、またこの時間の中で許す限り伺いたいと思います。

 そうした中で、やはり、格調高い、先ほども申し上げましたけれども、特に今の森林の新たな機能といいますか、本来そうした機能を持っていたわけですけれども、特に日本の場合は森林国でございますので、そうしたことも十分配慮しながらいわゆる環境保全、特に、こうした問題といいますのはなかなか都市の皆様方には理解をしていただけないような部分もあろうかと思うのですけれども、こうしたところに国のお金を使うのは実は国民的な課題をしっかりとやっていくためのものなんだよということを十分、やはりこれまた周知していくことも必要じゃないかなと私は思っております。そういう意味で、その辺のところでの十分な財政措置等も望むものでございます。

 さて、そうしたことと関連いたしまして、次に、国有林野事業の再建にかかわって、この間、非常に厳しい状況の中で三兆八千億もの債務をどうするかという議論がずっとなされてきたわけです。そして今、集中改革期間ということでなされているわけですが、その点にかかわりまして幾つかお伺いしたいと思います。

 確かに、我が国の国有林野事業といった場合、かなり森林の中でも重要なポジション、これは言ってみれば国土の二割が国有林ですし、森林面積のかなりを占めているわけでございます。そして、言うまでもなく、そうした国有林野事業というものがさまざま、今も御説明ありましたけれども、農山村地域の振興であるとか、また国土の保全、そしてまた、言ってみれば自然環境の維持形成、木材の持続的な供給ということで、少なくとも七〇年代ぐらいまではそうした役割を十分に果たしてきたというふうに私は考えていますけれども、それ以降、御承知のように、赤字になって、ごろごろ坂を転げ落ちるような状況になってきている。

 しかし、改めて、さまざまな林業の持つ、また森林の持つ機能に着目したときに、この国有林野事業の再建ということについては、やはり喫緊、焦眉の課題であろうと思うわけでございます。ただ、なかなかそれがまだうまいこといっていない。この集中改革期間を見ましても、なかなか厳しい状況もあるのではないかと思いますが、少なくとも、問題は、そうしてほっておけば、いわゆるそうした多様な森林の持つ機能の発揮に著しく支障を来してしまう、そのことをどうして食いとめるかという、まさに国民的課題であるそうした問題についてどう手当てするかという大きな観点がやはり必要だと思うのです。

 その中で、採算性がとれない最大の要因というのは、言ってみれば木材価格が下落する一方だということに私は尽きると思います。そういう意味では、国有林野事業の再建の問題というのは、やはり一番大きなポイントはこの財政問題をどうしていくかだと、私はそこにやはり的が絞られていいんじゃないかと思うのです。

 最初、集中改革期間に当たって想定されました長期見通し、例えば特に林産物の価格になりますと、やはり当初の平成八年度の大体の価格で設定されていると伺っておりますので、どうも下落する傾向にある。そうなると、やはりこれはなかなか、その長期見通しの数値の実現にも支障を来すのではないかというふうに素朴に思わざるを得ないわけです。

 ですから、せんだって、九八年、関連法案の中で独立採算制を見直して、森林の公益的機能の維持増進を図っていくために一般会計からの繰り入れ措置等々も図ることになったわけですけれども、これから、それ以上に森林に対する国民の要請にこたえる、そしてまた、多面的な機能の増進、そして公益的機能の発揮のために、やはり低迷する木材価格の下支えをすることも必要だと私は考えております。その辺はそれぞれ、農水省さん、林野庁さん初め十分御努力されていることは承知いたしておりますけれども、新たな財源の確保というのは、これはやはり避けて通れない、こういう意味では、国民的理解を十分得ながら、さらなる一般会計からの投入ということをこれからますますやっていかざるを得ないと思うのですけれども、その点についてはいかがでございますでしょうか。

中須政府参考人 ただいまお話のありましたとおり、平成十年十月に国有林野事業改革二法が成立をし、いわゆる抜本改革に取り組んでいるという状況でございます。

 この抜本改革に当たっては幾つかの柱を立てているわけでございますが、一つは、先ほどから先生がお話しのとおり、国有林野事業についても、力点はやはり、木材生産から森林の持つ公益的機能を重視するというふうに転換をするんだ、こういう大きな目標の転換をする。それに伴いまして、当然、一定のルールのもとで、一般会計からの繰り入れを初め国有林野事業を国民の負担のもとに支えていただく、こういうような大きな仕組みができたわけであります。

 確かに、ただいま御指摘のとおり、材価の低迷というふうな事態が続いておりまして、必ずしも当初の計画どおりということでスムーズに進んでいるわけではありませんが、私ども、国民のさまざまな各層からの議論を経て成立した国有林野の抜本改革の方向でございます、石にかじりついてもこれを実現しなければならないということで、さまざまな努力をして今取り組んでいるということであります。その一環としては当然、例えば御指摘の一般会計からの繰り入れという問題については、基本的には改革の際のルールができているわけでございますから、それにのっとってやる。しかし、さまざまな知恵を出しながら、そういうものについても充実を図るということを含めて今取り組んでいるところでありまして、私ども、最大限の努力を今後とも傾注していきたいと思っておりますし、御支援もお願いをする次第でございます。

植田分科員 そもそもが長期見通しでございますので、私としては、その見通しが外れたからけしからぬという話には余りならないと思うのですよ。短期的な話なら別ですけれども、やはり実際は、五十年の見通しでございますから、その中でのとりあえずは集中改革期間ということですから、見通しがやはりずれてくることもある、ぶれてくることもある。それはやはり、その時々の社会状況、経済状況が反映するわけですから、そうしたときは、私は、大所高所に立って、大きな課題であるということからしてもやはり遠慮することはないなというふうに思っているところでございます。なかなかそこは全体の予算の枠組みの中で厳しいかと思いますけれども、そうした点で御努力を引き続きなさっていただければうれしいなと思っております。

 さて、もう一点お伺いいたしたいのですけれども、今の地球全体での森林資源ということを考えました場合、今やはり輸入材が多いということの問題は、単に国内の林業を圧迫しているという問題のみならず、東南アジアの木がどんどん伐採されているわけです。そういう意味では、要するに環境資源としての森林というものが、いわゆる自然力で再生できないような状況に世界各国が陥っている状況があると思うのです。そして、日本もそうした途上国の木材資源をどんどん入れていることは事実です。そんな中で結局、日本の森林はそのことによって林業が立ち行かなくなって荒廃してしまう、一方で東南アジアの森林はどんどん伐採されてはげ山になってしまう、そして全体としての環境が破壊されてしまうという、非常に悪循環に陥っていると思うのです。

 その意味で、先ほども申し上げましたように、自国での木材の自給率を引き上げるということは、単に産業ということだけではなくて、地球規模の問題という点からしても重要な課題だろうと思うのです。特にいわゆる林業、農業でもそうだと思いますけれども、農業も産業です、林業も産業です、しかし、産業であると同時に、その産業が持続的にずっと動いているということ、そういうのが常に活発に活動しているということが、全体としての人と自然との共生というために大きな役割を果たしているということをやはり十分見詰めなければならないのじゃないか、そう思っているわけです。

 その意味で、これは森林行政全体にも言えることですけれども、そうした産業の部分と環境の部分を分けるという発想は実は大きな間違いを犯してしまうのじゃないかと思うのです。その意味で、国有林野事業も、木材生産機能と環境保全機能をぶった切ってしまうのじゃなくて、これをやはりきちんと一元的に管理していく、そのことが全体としての産業の振興にもつながりますし、そしてそのことを通して環境保全機能がしっかり発揮されて、日本の森林が永続的に守られていくことにつながっていくと思うのです。

 その意味で、林野庁さんとして、やはりそうした二つの課題というものを一元的、一体的に管理経営をしていく、それを率先して行っていただきたい。そして、それがまた国民の要請にこたえるべき課題であろうと思うわけですけれども、その点についてお伺いいたしたいと思います。

中須政府参考人 ただいまの先生のお話、御指摘のとおりだろうと思います。

 今回の国有林野の抜本改革に当たりましては、先ほど申しましたように、森林の持つ公益的機能を十全に発揮する、それをやはり第一の大きな目標にするという意味におきまして、一つは、国有林の中を、ゾーニングと言うと大げさでございますが、森林の持つ機能別に重点化を図るということで、水土保全林あるいは国民との共生林、そういったいわゆる公益的機能を発揮すべき森林の割合を八割に設定するということで、その趣旨というか、公益的機能が十分発揮できるような施業をやっていくのだということの方針を明らかにしたわけであります。

 そういうような区域におきましては、典型的に言えば、いわゆる長伐期施業、伐期を通常の二倍程度の長期に設定をして施業を進めていく、それから複層林施業というふうな形で、一挙にすべて切ってしまうということではなくて、抜き切りをしながら複層的な森林をつくっていく、木材の生産を図る、こういうような形での森林施業というものに重点化しているわけであります。

 また、それと同時に、公益的機能という意味では、保護林の設定であるとかあるいは緑の回廊の設定、こういうようなことを含めて、野生動植物の保護管理ということにも十分意を用いているつもりでございます。

 こういった国有林の持っている公益的機能を十分発揮しながら施業していく。その中で、やはり木材供給という意味では、そういった施業の中から木材が生産されてくる、それを国民に安定的に供給していくということも当然国有林野の持っている使命でございますので、それを続ける。特に今、国有林では、ヒバであるとか木曽ヒノキであるとか、民有林からの供給が困難な材もございますので、こういうものを含めまして安定的な林産物を国民に供給する。公益的機能の発揮ということと木材生産ということを有機的に連携させながら、現在国有林野の施業、管理に努めている、こういうふうに私ども思っております。

植田分科員 今おっしゃられたようなことを実際具現化していく意味でも、新たな今の林業基本法、策定中ということでございますが、やはり国民の森林としての国有林の役割、意義、そして責務というものを基本法の中でも明示していただければと思うのですが、その点についてはいかがでしょうか。

松岡副大臣 お答えいたします。

 先ほどから先生のお話をいろいろ伺っておりまして、特に森林・林業、木材とのかかわりのお話、非常に感慨深く、感銘深く承ったところでございます。そして、お考えをお聞きしておりまして、全く同感といいますか、そのとおりだ、このように思っております。

 特に、国民の森という意味での位置づけをしっかりしろ、こういうお話でございますが、まことにそのとおりでございます。木材生産という経済的な役割はさることながら、それはそれといたしまして、水の問題にしましても、また災害を防ぐ国土保全の問題にしましても、そしてまた環境の維持といいますか、はぐくむことにいたしましても、これは本当に国民生活全般と深くかかわり合っている、そのように認識をいたしております。

 したがいまして、単なる国有林、国民の財産ということだけではなくして、そういう深いかかわりの中で、まさに国民の森という位置づけをきちっとしていく、そして特に新しい林業基本法ではそのことを基本理念としてきちんと位置づけていく、先生の御指摘のとおり私どももそのことを受けとめて、そういう位置づけをしっかりとしてまいりたい、このように思っているところでございます。

 また、ひとつ今後ともの御指導をよろしくお願いしたいと思います。

植田分科員 ありがとうございます。

 では、時間がちょっと押してきましたので……。

 いわゆる林業の持続的機能の発揮のために、やはりいろいろな支援策というものが必要になってくると思います。幾つか私は問題意識を持っておるのです。既に、食料・農業・農村基本法の制定を受けて、直接支払いというのが行われているわけでございます。農林業といいましても、当然、農業、林業のそれぞれの特性もあるわけですから、それがそのままスライドできるというものではないことは十分承知しているわけですけれども、そうした事例も踏まえながら何らかの、そうしたもののあり方についてやはり積極的に検討をすべきではないかと思っている一人でございます。

 現在も、そうした形でのいわゆる補助金というのが年間かなり計上されていると伺っているのですけれども、やはりこれからの森林の機能というものを持続的に発揮させるために重要なのは、特に、実際に山間地で林業に従事されている方々、そういう方々にどういうフォローをしていくのか、どういう支援をするのか、そういうことが必要なんじゃないのかなと思うわけでございます。林野の部分でもこうした工夫の余地は十分あると思うので、前向きにこうした直接支払いのあり方について、今の林業を取り巻く状況を踏まえて、また林業の振興の観点からも、早期にやはりそうしたものを検討して実現を期するということが私は望ましいと思うわけですけれども、その点についてお伺いいたしたいと思います。

中須政府参考人 ただいまのお話に関連いたしましてまず申し上げたいのは、私ども、森林整備のためにどのような支援をしていくかということでは、今、三つ大きな取り組みをしております。

 一つは間伐という、森林の整備の一番基本でございますが、これが大変おくれているということで、今年度から間伐の緊急五カ年計画ということで、全国で百五十万ヘクタールの森林について間伐を推進していく、こういうことで取り組みをしているという点が第一点でございます。

 それからもう一つは、来年度の予算案にお願いをしているわけでありますが、いわゆる公益的機能の発揮と森林資源の循環利用ということを考えますと、やはり一定の要件を満たす場合に、皆伐をしてしまうのではなくて、抜き切りを繰り返しながら複層林を形成していく、私ども、長期育成循環施業というふうに申しておりますが、そういうものを導入していく、こういう形に対して国からのかなり手厚い助成を行いたい、こういうことがございます。

 それから三点目には、特に公益的機能を発揮することを重視すべき保安林の区域においては、いわゆる治山事業の中におきまして、森林整備ということに実質的に資するものに取り組んでいく。

 こういうような三本柱で、森林の整備ということに国の助成なり関与という形でその推進を図りたいというふうに思っているわけであります。

 こういうような状況にございますので、ただいま先生から御指摘ありましたように、いわゆる農業の分野で、中山間地域について条件不利地域への直接支払いということが行われているわけでありますが、林業の分野では、ただいま申しましたように、治山とか植林とか造林とか間伐等の林業生産活動に対する直接の助成措置が行われているということで、かなり状況は違っているわけであります。

 しかし、そういう中において、今行っていることだけで森林の整備というものが十分進められるのかという点については、私どもも、まだなお取り組むべき課題が残っている、こういうふうに思っております。そういう意味におきましては、さらにこういった支援の方策をどう充実させていくかということと同時に、もうちょっと大きな目で言えば、既存政策との関連を十分踏まえながら、森林整備に要する社会的コストをどうみんなで負担していくのかということについて、十分検討し、成案を得ていきたい、こういうふうな強い気持ちを持って、今検討を進めているところであります。

植田分科員 いわゆる市場原理で林業も動いているわけです。農業もそうですけれども、これまではいろいろな形で価格政策というものがあったわけですが、それが成り立たなくなってきている中で、やはりこうした産業への所得政策というものの転換が必要だということを踏まえていただいて、特に現場への直接支払いというものをしっかり進めていただきたいと思います。

 時間がありませんので、最後に一点だけ。流域管理システム、そして、国民全体としての森林づくり、国民のための森づくりという観点で最後に御所見をお伺いいたしまして、質問を終えたいと思うわけです。

 既に十年前に流域管理活性化協議会というものができているわけですが、どうも我々の目からどんな活動をしているのか、なかなか見えてこない。この機能強化を図るということが一つ重要だと思います。

 そしてまた、今、森林整備といいましても、これは森だけの問題ではなくて、上流、下流にわたった一つの流域、この流域ごとにこれはどういう設定をするか、いわゆる百五十八の流域に分けるのか、それよりもっと、それにあわせて、経済的な条件、社会的な条件に見合った規模での流域を設定して、その中で、森林整備から消費地までを対象にした民有林、国有林一体の計画施業支援策というものをそこで考えていく必要があるのじゃないかと私は思っています。

 そういう意味で、流域管理システムをしっかりと構築していく必要があると思いますし、また、既に、いろいろなボランティアなりを含めまして、下流の人たちが、例えば下草刈りとか、そうしたいろいろなボランティア活動もやっておられます。ある意味では、これは都市と山村との、言ってみれば交流事業になってもいると思います。

北村主査 植田君に申し上げます。申し合わせのお時間が過ぎておりますので、御協力をお願いします。

植田分科員 では、その点だけ、そうした国民のための森づくりという点についてだけお伺いして、終わりたいと思います。

北村主査 それでは、簡潔に。

中須政府参考人 御指摘のとおり、いわゆる流域管理システム、これは森林整備だけにとどまらず、木材の生産、利用ということも通じて流域単位に管理をしていく、大変重要な考え方だということで取り組んでいるわけであります。

 先進的な事例もございますけれども、御指摘のとおりまだまだ不十分な点もございます。引き続き我々も努力をしていきたいということでありますし、そういう中の一環として、ボランティアによる森林の整備、これは単に森林の整備ということだけではなくて、森というものに都市の住民が共感を抱いていただく、そういう意味でも重要だということで、引き続き積極的に取り組んでまいりたいと思います。

北村主査 これにて植田至紀君の質疑は終了いたしました。

 次に、山内功君。

山内(功)分科員 民主党の山内功でございます。

 私の地元鳥取県西部は西日本一の白ネギの産地です。しかしながら、中国からの輸入が急増した結果、価格が大幅に低落しています。先日も、ネギ生産農家の皆さんと懇談する機会を持ちました。今年度の所得は半減している、このままの価格が続くと後継者がなくなり廃業状態となる、耕地も荒廃するなどと悲痛な叫びを上げておられます。

 鳥取の白ネギは、大阪本場でこれまで平成十年の一ケース三キロ千七百七十一円を最高に、悪くても千円を切ることはなかったのですが、平成十一年から低落し始め、秋冬ネギは平成十二年産は八百円と見込まれています。二月二十七日の時点で見ますと六百十二円、最近はこの水準が続いています。これではとても採算がとれません。中国から入ってくるネギは量販店に持ち込まれてはいますが、余った分は当然市場に回ってまいります。ひどいときには一ケース三十円から五十円になるというデータもございます。そのために国産ネギはこんな単価の水準になっているのです。

 セーフガードは、自由貿易を前提とした国際ルールとして当然認められている制度です。一刻も早く発動すべきではないかと思うのですが、大臣の所見を伺いたいと思います。

谷津国務大臣 野菜の中でネギが非常に多く増加して輸入されているということでございまして、先生御案内のように、十二月の二十二日から実態調査といいましょうか、政府の調査をやっているところです。

 そのことにつきましては、先生も御案内かと思いますが、生産者あるいは生産者団体、あるいは輸入業者、流通業者、消費者等に質問を出しまして、三月の二十二日までにその質問を取りまとめる、それから四月の二十七日までに意見を聴取するということになっているわけでありまして、この実態調査を的確に把握した上でセーフガードをかけるという方向に持っていきたいというふうに思っているところであります。

山内(功)分科員 報道によりますと、二月の二十二日、松岡副大臣は三月中の暫定措置について前向きであるかのような報道に接したのですが、報道の具体的な内容をお教えいただけませんでしょうか。

松岡副大臣 お答えいたします。

 取り組み全体としては、ただいま大臣が申し上げましたような方向でやっておるところでありますが、先ほど先生からも御指摘ありましたように、関係者からすれば、また政治、行政の立場の私どもといたしましても、一日も早くセーフガードの発動ということに向けて、そういう結果を得ていきたい、こういう思いで今調査に取り組んでいるところであります。

 そしてまた、最近のネギの事態というのが非常に、現在、目の前で昨年に比べて価格が四割もまた落ち込んでおる、そういった事態もございます。したがって、一つの節目として三月というある一定の作業の整理がつくならば、その時点で暫定発動ということも、外国はよく暫定をやるわけでありますから、そういう意味で、我が国もそういった一つの整理がつくような結果を得られないか、こういう思いを込めて、そしてその結果、要件をある程度整えているというような事態になれば、私はそういった思い切った発動に踏み切っていく、こういったことも一つの方向としてあり得る、こういう思いで今申し上げたわけであります。

山内(功)分科員 もう一度、重ねて大臣にお聞きしたいと思います。

 二月二十七日の閣議後の記者会見で、セーフガードをかけることになると思うととれるような発言が報道されております。暫定措置あるいは本発動につきましての農林水産大臣としての前向きな態度だとこちらの方は受け取ってよろしいのか、お願いします。

谷津国務大臣 二月二十七日の私の発言は、実は、日韓、日中、この二国間の協議とセーフガードとの関係について説明した際に、記者の方から質問がございました。私はこういうふうに申し上げました。二国間の協議は政府調査に何ら影響を与えるものではないということです。ですから、政府調査の結果を踏まえまして、セーフガードの発動の要件に該当するか否かを判断してかけるのであって、その二国間の協議によって、あのときの質問はセーフガードをやめるのじゃないかというような意味の質問でありましたから、全くそれは関係なく、九つの項目がありますが、それに該当してくればセーフガードをかけるというようなことを申し上げたわけであります。

山内(功)分科員 昨年末にネギ、生シイタケ及びイグサの三品目について調査を開始することを三省で決定されました。その関係者からの調査票の提出期限が二月の十三日と決められて、既に経過しておりますけれども、調査票についての回収状況はどうなんでしょうか。

小林政府参考人 ネギと畳表につきまして御説明申し上げます。

 今お話がありましたように、昨年の十二月二十二日の政府調査開始以来、生産者から輸入、流通業者、消費者、関係の皆さんに幅広く調査のお願いをしております。その中で、ネギにつきましては六千二百八十通、それから畳表につきましても四千八百六十九通と非常に多くの質問状を送っておりまして、それの回答が今返ってきております。それのチェック、集計作業を順次行っている最中でございまして、そういう意味で、この内容の方向がどうかということにつきましては、まだ現時点ではお答えできる段階には立ち至っていないということでございます。

 一方、回収状況そのものでございますが、これにつきまして、かなり回収が進んでおります。特に生産者サイドの皆さんは、当然、セーフガードの要請を行っておられるという立場もあり、順調に回答が得られている、こういった状況でございます。私どもとしましては、さらにこの回収が進むように努力をしていきたい、そういった状況でございます。

山内(功)分科員 外務省の方にお聞きしたいと思います。

 セーフガードの発動を決定する場合の要件として、セーフガード協定第四条二項では、「決定は、調査が、関係産品の輸入の増加と重大な損害又はそのおそれとの間に因果関係が存在することを客観的な証拠に基づいて立証しない限り、行ってはならない。」と規定されております。これは、調査の手法についても客観的なものを求められているという理解でよろしいのでしょうか。

本村政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、WTOのセーフガード協定第四条二項の(b)には、関係産品の輸入の増加と重大な損害等との間に因果関係が存在することを客観的な証拠に基づいて立証しなければならない旨規定してございます。

 また、同協定の第四条二項の(a)というのがございまして、ここには、セーフガードに係る調査において、当局は、関係産品の輸入の増加率及び増加量、それから国内市場占拠率並びに販売、生産、生産性、操業度、損益及び雇用についての水準の変化と同規定に具体的に列挙されているものを含めまして、国内産業の状態に関係を有するすべての要因であって客観的なかつ数値化されたものについて評価する旨規定してございます。

 お尋ねの調査手法の客観性でございますけれども、調査手法の客観性につきましては、セーフガード協定上は特段の規定は置かれておらず、どのような調査手法を選択するかは、基本的には各国の国内当局の裁量に任されていると考えられます。しかしながら、いかなる手法をとるにいたしましても、冒頭申し上げましたように、関係産品の輸入の増加と重大な損害等との間の因果関係を客観的な証拠に基づいて立証する必要がございます。

 また、このセーフガード協定の第三条一というところには、調査に関しまして、輸出者その他の利害関係を有する者による証拠及び自己の見解の提出方法を確保するということが規定されておりまして、各国の国内当局がいかなる調査手法をとるにいたしましても、客観的な証拠に基づく立証が行われることを確保する趣旨になっております。

 以上でございます。

山内(功)分科員 先ほどの農水省の説明によりますと、二月十三日までの提出期限に相当程度、調査票が回収できたということをお聞きいたしました。

 しかし、例えば、今後の参考のためにもお聞きしたいんですけれども、先ほどの四条二項の関係でお聞きしますと、約六千通の調査票を出して、例えばそれが半分より少ない回収であったというような場合に、そのデータをもとに仮にセーフガードを暫定発動したり本発動した場合には、回収率が低くて客観的なデータとは言えないなどと相手国あるいはWTOから難癖をつけられたりする心配はないのかどうか。その点、教えていただきたいと思います。

本村政府参考人 先ほども申し上げましたように、調査手法の選択につきましては、基本的には各国の国内当局の裁量に任されておりますけれども、一般論で言いますと、例えば、恣意的な調査手法によりまして客観的な証拠が得られるかについては、あるいは疑問の余地はあるかと思います。

 他方、現在、ネギ、生シイタケ、イグサにつきましては調査が行われていると承知しておりますが、私ども、詳細につきましては承知しておりませんで、何とも申し上げられませんけれども、調査を行う上では、セーフガード協定の規定、趣旨に従って、客観的な証拠に基づいて立証が行われることを確保すべきであることは当然だと思います。

 以上でございます。

山内(功)分科員 先ほど、農水大臣の御発言では、二国間交渉をやっているからといってセーフガードの発動についてちゅうちょを覚えるようなことはないということでございましたが、それでは、二国間交渉の現状及び見通しなどにつきまして、この三品目につきまして主に韓国、中国とされていると思いますが、その現状と見通しについてお伺いしたいと思います。

松岡副大臣 二国間交渉の現状といいますか、経過を含めて申し上げますと、まず、先生御指摘のような形で、大変な近年の輸入の急増によりまして国内が打撃を受けております。

 ここで念のため、ちょっと私、ぜひ御理解を得る上で申し上げておきたいと思いますのは、生産地がつぶれますと、最終的には、安心で安全な国内の生産がなくなって、また消費者の安心、安全も損なわれる、こういったことでございますから、どうしても消費と生産というのは一定の安定的な関係がやはり必要である。そういった意味で国内の生産を守らなきゃならぬ、こういうことでございますが、その国内の生産が大変危機に瀕している、場所によってはつぶれかかっておる、こういったような状況でございます。

 そこで、特に輸入急増のもとであります中国と韓国、この二国に対しまして私どもはどのようにこの問題の打開を図っていくか、こういう立場で臨んでいるわけでありますが、韓国の方から昨年の暮れに在日大使館の公使がお見えになりまして、円満な問題解決を図りたい、さらにまた、ことしの一月には韓長官が谷津大臣のもとにおいでになりまして、これは輸出業者を指導して、問題のないような解決を図っていきたい、こういったようなことがございました。それらを受けまして、二月の五日に、実務レベルの協議をということで、ソウルで第一回をやった次第でございます。

 中国の方につきましては、二月の六日に、龍永図対外貿易経済合作部の副部長でありますが、日本にお見えになりまして、そこで私と会談をいたしまして、これもまた二国間でこの問題の解決を図っていきたい、こういったようなことで一致したところでございます。特に、その場合、龍副部長の方からは、八百億ドルに上る日中の貿易総量の中で野菜は七億ドル程度だ、一%以下のものでもって両国の関係をおかしくしたくない、まさに円満な解決を図りたい、こういうような御趣旨でございました。

 そこで、そういったようなお互いの合意を受けまして、事務レベルで、二月の二十、二十一日、北京に参りまして第一回目の事務協議を開催した、こういうことでございます、現状は。

 そこで、先般、二十三日の夜から二十四日にかけまして、二十四日は土曜日なんですけれども、韓国は、幸いといいますか、たまたまといいますか、まだ週休二日じゃない。そういうわけで、二十四日の土曜の午前中は向こうの役所があいておるということで、向こうの長官、次官にお会いをしてきたわけであります。

 そして、今後に向けましては、ひとつ円満な解決に向けて事務レベルで協議をして、お互い共存共栄が図れるような、そういう範囲の中での取引というか貿易、そういう姿を求めていきたい、そういった方向で一致したところであります。

 したがって、今後、実務レベルで、需給動向とかそういったことを十分お互いに情報交換し合いながら、円満な解決に向けて努力をしてまいりたい、こういったような方向で今進めておるところでございます。

 それと、先ほど大臣が申しましたように、それとセーフガードの発動とは、それはそれ、これはこれ、こういった形で、今鋭意、両方とも進めておるところであります。

山内(功)分科員 ありがとうございました。

 仮にセーフガードを発動しても、発動期間は原則四年以内、延長しても最大八年でございます。しかも、定期的、段階的に措置のレベルを下げていかなければなりません。その間に、当然国際競争力をつけるしかないのですが、そのため、生産者は構造改革、自己努力が求められてくると思います。国としても、食料自給率向上の観点から最大の支援をしていただきたいと思うのです。各地方公共団体とか各種団体からの発動についての意見書もたくさん来ております。

 最後に、どのように考えていただけるのか、答弁をいただきたいと思います。

金田大臣政務官 野菜の自給率というのは、現在八四%が自給できているわけでございます。そういった意味で、従来は、野菜というのは国内の産地間の競争というような形で行われてきた。ところが、輸送技術だとか保冷技術だとか、そういったものの発達によって、近年、本当に大変な野菜の輸入が出てきたわけでありまして、去年の十一月三十日に緊急野菜対策というのを実施させていただきました。

 そしてまた、その時点で、今までは相手の不幸は私の幸せだというような国内間の競争だった、しかし、様相はさま変わりになっているというような形で、野菜の価格安定制度、そういったものについて見直していかなきゃならないなという認識を持っております。

 いろいろな対策を講じさせていただいておりますけれども、そういった制度そのものを、これから海外の輸出攻勢に対応できるような形の中で、制度の改革に取り組んでまいりたいというふうに思っております。

山内(功)分科員 どうもありがとうございました。

 続きまして、昨年、本庄工区の干陸の問題がテーマとなりましたけれども、それに関連した事業といたしまして、中海淡水化事業の問題がございます。

 この事業を中止する場合の手続については、今後どうなるのか、教えていただきたいと思います。

木下政府参考人 お答えいたします。

 国営中海土地改良事業、干拓事業と干拓附帯の農業用用排水事業の二つの事業になっているわけでございまして、淡水化は両事業にまたがる工事でございます。したがいまして、仮に淡水化を中止するという場合には計画変更の手続が必要でございます。

 まず、干拓事業につきましては、土地改良法に基づきまして、県知事への協議、専門技術者の意見聴取を得た上で、また農業用用排水事業につきましては、県知事の協議、それから三条資格者の三分の二以上の同意、それから専門技術者の意見聴取を得た上で、変更計画を決定するという運びになります。

山内(功)分科員 弓浜半島地域は慢性的な水不足に悩まされております。弓浜、彦名の両干拓地は暫定水源のために農業用水の十分な確保ができておりません。

 鳥取県では、農家の要望を受けて当該地域の恒久水源の確保に向けて検討を始めているところですが、国においても恒久水源確保のための調査に協力をいただきたいと考えています。どう考えておられるのでしょうか。

谷津国務大臣 先生すべて御存じだからそういうふうに御質問だろうと思うのですが、実は私、公共事業の抜本見直しの座長としまして、現地に二度ほど調査のために入らせていただきました。そして、今おっしゃいましたように農業用水が非常に枯渇をしている現況にあるということで、あそこは出雲平野というのでしょうか、あそこなんかは水を還流させている、そういう装置も見させていただきました。

 そういう中で、どうしても農業用水の確保というのは各地におきまして要望が強いものでございます。ですから、そういった面につきましては、島根県あるいは鳥取県ともよく協議をいたしまして、この確保のために全力を挙げていきたいというふうに思っているところであります。

山内(功)分科員 さらに、現在淡水化事業のために設置されました中浦閘門で働く六十余名の労働者の皆さんが、淡水化事業が中止され、もし水門が撤去された場合には、職を失うことになってしまいます。国策の失敗による失職という事態になるとするならば、新たな雇用についても、やはり国も最大限の配慮をしてあげるべきじゃないかと考えます。

 そういう皆さんと一緒に、昨年の十二月に農水省にも陳情に伺いました。その場で、当時の構造改善局長も、国が知らないという話にはならないという発言もいただきましたが、大臣からその点についての決意を伺いたいと思います。

谷津国務大臣 そのときにも、両県の知事から私どもにもいろいろとその面についての話がございました。

 そういう中で、中浦水門の取り扱いについては、淡水化を中止するということがまだ決まっておるわけではございませんので、私どもではそういったことの今後のことの云々というのはここではっきり申し上げることはできないわけでありますけれども、仮に淡水化が中止になりまして、その後、中浦水門の取り扱いを検討する場合には、私は、この地域にとって不可欠な道路としても利用されているということの経緯や、今後どのような役割を果たし得るかということも十分に踏まえまして、県ともしっかりと相談をしていきたいというふうに思っておるところであります。

山内(功)分科員 日本の農業、そして雇用を守るために、大臣の力を存分に発揮して、今後とも頑張っていただきたいという願いを込めて、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

北村主査 これにて山内功君の質疑は終了いたしました。

 次に、津川祥吾君。

津川分科員 民主党の津川祥吾でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 私は、昨年の夏の衆議院選挙で当選をさせていただきまして、まだ一回生でございますが、実は昨年来農林水産委員会の方に所属をさせていただきました。

 多くの議論に私自身も勉強させていただきながら参加をさせていただいたわけでありますが、実は、農林水産の分野の中で、残念ながら、農業についての議論はなるほど盛んにはございますが、水産業あるいは林業についての議論がどうも私としては不足しているのではないかな。昨年半年だけですから、あるいは今国会からは水産あるいは林業に関しての議論も活発にしていただけるのかなというふうには思いますが、そういった感覚がございますので、特にきょうは林野行政に絞って質問をさせていただきたいと思います。

 まず、大臣にお伺いしたいわけでありますが、まさにちょうど新しい二十一世紀に入って、日本における林政あるいは森林・林業を取り巻く状況、こういったものをどのように認識されていらっしゃるのか。

 特に、昨年の暮れに農林水産省の方から林政改革大綱及び林政改革プログラムというものが発表されたというふうに思っておりますが、その概要も含めて、改めて大臣の御見解、あるいは中長期的な政策方針についてお伺いをしたいと思います。

谷津国務大臣 先生御指摘のとおり、今林業の採算性が非常に悪くなっているものですから、そういった面では、林業生産活動が停滞をしております。それがために、森林の持つ多様な機能が発揮し得ない、そういうふうな危惧もされているところであります。

 これがために、今お話がありましたとおり、昨年に決定しました林政改革大綱とプログラムに基づきまして、従来の木材生産を主体とした考え方から根本的に変えさせていただきまして、森林の多様な機能の持続的発揮を図ることを目的とする政策に転換したいというふうに考えておるところでございまして、それがために、林業基本法の改正を本国会に提出したいということを考えておるところであります。

津川分科員 ありがとうございます。

 今大臣のお話の中にございましたが、林業基本法の改正法案、提出を予定されているというふうに伺っておりますが、この法律の改正案の概要ですとか骨子ですとか、そういったものがもし具体的に決まっている部分があれば、できれば御説明をいただきたいと思います。

谷津国務大臣 具体的に申し上げますと、まず森林整備の方向を明確化して、機能に応じた森林施業の推進及び事業の重点化、それから地域林業の担い手の育成、確保と受託による施業、経営の集約化、それから関係省庁との連携による山村の定住条件の整備等の施策を展開していきたいと思っております。

津川分科員 ありがとうございました。

 そこで、平成十三年度の予算でありますが、今お話をいただきましたような大臣の所信にございましたように、政策の抜本的な方向の転換、見直しというものがこの予算の中でも当然なされているかと思われますが、この十三年度予算の中でどのような部分が具体的に変わったのかということについて、十三年度予算の中の林野庁予算にかかわる部分の特徴をお示しいただけますでしょうか。

中須政府参考人 ただいま大臣から申し上げましたとおり、私ども、林政改革に取り組むということで、基本はやはり森林の持っている多面的な機能というものを持続的に発揮できる体制、それをどうつくっていくかということが最大のポイントだというふうに考えております。したがいまして、十三年度の予算案におきましても、こうした分野について施策の充実を図るということを基本に編成に当たったということであります。

 具体的には、先ほど申しました、多様な機能の持続的発揮のためにどう森林を整備していくかということでは、新しい考え方として、長期育成循環施業というふうに名づけておりますけれども、森林の持っている公益的機能を持続的に発揮する、そして森林を循環的に利用していく、こういう形を促進するために、従来から行われておりました画一的な、皆伐というふうに言っておりますが、一斉に全部切ってしまう、そういうやり方にかえて、いわゆる抜き切りを繰り返しながら徐々に更新を図っていく、幼齢木から高齢木まで、多様な世代の森林というか、そういうものをつくり上げていく、こういう施業を推進しようというものを大きな一つの柱にしております。

 それからもう一つは、これは今年度から取り組んでいるわけでありますが、森林整備という点で大変おくれております間伐を緊急に促進をしたいということで、全国百五十万ヘクタールというものを対象にして、五年間で間伐を進めていく、これを開始しております。十三年度はその二年度目に当たるということで、この緊急間伐総合対策の充実ということでの取り組みが第二のポイントであります。

 それから三番目は、公的関与による森林整備というふうに申しておりますが、特に発揮すべき公益的機能が強い保安林等に指定されている森林でございますが、そこにおいて多様な機能が低下をしているというものを緊急に整備する、そういう意味で、保安林について、治山事業による本数調整伐であるとか、あるいは各種の森林整備というものを進めていきたい、これを三つ目の柱にしておるわけでございます。

 それからもう一つ、ちょっと森林整備ということではないわけでありますが、現在、我が国の木材価格が低迷をしているその一つの要因として、外材との間で、乾燥の程度が違うということで、それが価格というか競争力の点で劣っている、こういう動向が、事象がある程度顕著にあらわれつつあります。そのために、今、緊急に乾燥材の供給体制を整備するということで、そういう事業に新たに約二十四億投入するとか、そういったところを重点事項として予算案の編成に当たったところでございます。

津川分科員 ありがとうございました。

 実は私どもの民主党の中にも農林水産部会というものがございました。このたび党内の組織の見直しがございまして、それまで別組織でありました環境部会というものと統合いたしまして、環境・農林水産部会というものに変わりました。農林水産と環境というものは特に密接な関係がある問題が多いということで、私どもの発想の中にそういったものがあったわけでございますが、今言っていただいたような予算案あるいは大臣の所見というものは、まさしく私どもと問題意識あるいはその考え方を同一にするものであるなというふうに感じているところでございます。その改革の方向性は高く評価をさせていただきたいと思いますが、また、さらに実効性のある政策を早急にとっていただきたいというふうに思います。

 ただ、若干、現状認識につきまして、私自身、私見でございますが、私と大臣を初め皆様方との違いがあるのかなというふうに思うところがございますので、幾つか質問させていただきます。

 先ほどお話の中にもございましたが、持続可能な林業経営の推進ですとか、あるいは林業の振興、あるいは木材産業の振興というお話がございます。この木材産業というのは当然国産材ということだと思いますが、ただ、私は、この林業というものは、国内は実はかなり危機的な状況にある。端的に申せば、何が危機的かと申しますと、採算性の悪化であり、担い手不足であるというふうに言えるかと思いますが、その危険の度合いがかなり深刻ではないか。

 例えば、振興というよりも、もう復興と表現しなければならないほど重要なところまでいってしまっている。あるいは、持続可能というよりも、もう既に崩壊しつつある林業をどうやって立て直すのか、そういった視点に立たなければならないのではないかというふうに思います。

 この平成十三年度予算を見せていただいても、確かに政府の危機感というものは伝わってまいります。ただ、まだまだ足りないのではないかというふうに考えているところでございますが、この林業の危機感というものについて、大臣にちょっともう一度お伺いしたいと思いますが、どうでしょうか。

谷津国務大臣 今先生おっしゃるとおり、非常に生産も停滞しておる、先生の御指摘のように、価格の問題というのは大きな要因の一つになっているだろうというふうに思っているわけであります。

 しかしながら、一方で、今環境のお話をなされたけれども、日本の国土の六八%は森林でございまして、ついこの間、COP6の会議が十一月ですか、ハーグで行われました。このときに、御案内のとおりこのシンクの問題が出てまいりまして、このとき日本の提案よりも、その後むしろ三・五ぐらいの吸収能力というふうなものを、どうも決まりそうになったんですが、環境大臣にお話を聞きますと、あと一日あればそれが決まったというようなことをおっしゃっておったわけでありますが、この五月か六月にまたこれが開かれるということになってまいりました。そうなってまいりますと、私は、多分その三・五というのがあるいは確保されるのではなかろうかなというふうに思うんです。

 御案内のとおり、一九九〇年のマイナス六%というのが京都の会議のときに決められたわけでありますけれども、これは一方では、一九九〇年から今日までには既に一〇%近くもオーバーしているわけでありますから、それにマイナス六ということになると一五、六%削減をしなきゃならぬという、これは大変重いことになってくるだろうというふうに思うんです。

 そういう中で、六%のうちの三・五%が森林で吸収源として認められるということになりますと、これは大きな森林の持つ機能というのが認識をされるわけでありますから、そういった面で、今先生のおっしゃった環境との関係というのが、まさに地球温暖化の問題で大きくクローズアップされてくるわけでありまして、そういった面でしっかりとその辺のところをやっていかなきゃならぬ。しかし、この吸収源を完全に機能を発揮させるためには、やはり下刈りをやるとか間伐をやるとか、こういうことは非常に大事な要素にもなってくるわけでありますから、そういった面にはしっかりと予算措置もしていかなければならない。

 また、もう一つは、私はこれから多分決められるであろうというふうに思う環境税といいますか、炭素税といいますか、そういうものがあったときに、私は、その税の中から相当部分がこういう森林の保全のためにも使われてくるんではなかろうか、使うことができるんではないかというふうな期待もしているわけでありまして、そういう中から、私は非常に厳しい状況にあるものを打開していきたいというふうにも考えているところであります。

津川分科員 ありがとうございました。

 私が直接林家の方ですとか林業の現場の方々にお伺いした限りでは、先ほど述べたように、この林業の危機感というものは他の、例えば農業ですとか水産業、品目によってはかなり厳しいところがございますが、そういったものに比べても、さらに一段強い危機感をお持ちであるというふうに私は肌で感じるところでございますから、あえて強調させていただいたわけでございます。

 今価格のお話がございましたが、特に国産材の価格が下落をしている。輸入材に比べて特にここ数年国産材の方が安い状況になってしまっているというふうになってございますが、その状況についてどのように分析をされていらっしゃるか、その見解をいただきたいと思います。

中須政府参考人 我が国の木材の価格の状況でございますが、大量に輸入される外材との競争のもとにあるという意味において、近年、価格低下が著しいというのが率直な実情だろうというふうに思っております。

 ただ、その中で、今先生御指摘がありましたように、外材よりもさらに安いというふうな部分があるのではないかという御指摘だろうと思います。もちろん木材価格というのは、それぞれの樹種だとか長さだとかあるいはその径、大きさとか、そういうことによって異なるという意味において、なかなか単純な比較というのは難しいわけでありますけれども、我が国の最も代表的な樹種である杉ということで申しますと、いわゆる杉の正角、それとほぼ匹敵するというか、輸入の米ツガ材、そしてまた集成材、これは主としてヨーロッパから輸入される材を原料にしている集成材ということでありますが、例えばこの三つの価格を比較してみますと、我が国の杉が一立米当たり四万六千四百円、米ツガですと四万九千二百円、集成材でございますと五万二千五百円、こういうような数字になっているということでありまして、杉が他の材に比較してやや低位にあるのではないか、こういうような実態がございます。

 この原因としましてはいろいろなことがあり得るわけでありますが、一つは、先ほどもちょっと触れましたように、我が国の特に杉につきましては、乾燥の程度、含有水分量がかなり高いということで、未乾燥な状態であるということだとかなり買いたたかれる、こういうことがございます。特に、住宅の品質加工法が施行されて、十年間瑕疵担保責任というか、そういうものが追及されるという状況でございまして、そういう傾向が強まっているというのが現状だろうと思います。そういうことを含めまして、そういう品質面の問題がありましょう。

 それからもう一つは、どの段階での価格かということによりますが、我が国の国内生産される材というものが、量とか、品質というか、なかなかそろわない。それに対して外国材は、大量に運ばれてきて港において貯留されているという形で、使いやすさといいましょうか、そういうことが総合的に反映されてこういう価格になっているのではないかというふうに思われます。

 そういう意味では、流通とか取引の改善ということも重要でありますし、何よりも品質という点では、乾燥材、特に杉についてでありますが、しっかりとした乾燥過程を経て優良な材として出荷をしていく、これが重要だというふうに考えております。

津川分科員 ただ、一般的に、例えば農産物とか工業製品で申しますと、国産品というのは高い、輸入品は安い、そういう傾向がございまして、だからこそ国際競争市場において厳しい戦いを強いられている。しかし、そんな中で、木材に関しては国産材の方が安いにもかかわらず国際競争力がないのはなぜか。先ほどおっしゃったように、ロットの問題とか品質の問題は確かにあるかと思いますが、実は私は、現在の国産材価格の低迷というのは、マーケットそのものが崩壊しつつあるということを示しているのではないかなというふうに判断をしております。

 一般的には、教科書的で恐縮でございますが、需要が減って価格が下がれば、供給も減少し価格が戻る。あるいは需要がふえて価格が上がれば、供給も増加してまた価格が戻る。そういったことによりまして需要と供給のバランスがとれることになるわけでありますが、木材市場の場合は、仮に需要がふえて価格が上がったとしても、すぐに増産できるわけではないというように、供給側の価格弾力性の低さという特徴がございます。

 また、供給過剰により価格が下がることも市場では当然ございますが、いきなり国産材の供給が過剰になって下がったわけではないということから判断すれば、現在の価格低迷というのは、国産材の供給側の問題というよりも、むしろ需要そのものが減少しているのではないかというふうに私は判断をいたします。

 厳密な分析は省略いたしますが、したがって、林業の振興ですとかあるいは担い手云々ということももちろん重要でありますが、国産材のマーケットそのものに対して直接何らかの働きかけをする必要があるのではないかというふうに考えますが、大臣、そういった御決断はいただけますでしょうか。

中須政府参考人 御指摘のとおり、我が国の国産材が置かれている状況というのは、片方で、実に調整可能な外材というものが需要に応じて幾らでも入ってくるし、あるいは量を減らすこともできる。そういう中にさらされているわけでありまして、やはり基本的に、私ども、国産材の市場、どういうところに国産材のしっかりとした需要をつくっていくか、これが重要だというのは御指摘のとおりだろうというふうに思っております。

 そのために、もちろん、まず政府、隗より始めよということではございませんが、私ども自体が国産材を積極的に使っていくということと同時に、政府部内でも木材需要拡大のための政府の連絡会議というものをつくっておりまして、各省庁のさまざまな調達、政府調達の分野におきまして、地域材、木材というものを積極的に活用していただく、そういう取り組みをしているところであります。

 昨日もこの場でお話し申し上げたわけでありますが、例えば、学校の校舎にその地域の材を使っていただくとか、あるいは、最近私どもも随分手広くやっているわけでありますが、各種の治山工事とか林道の事業、こういう中で、土どめとかそういうものに間伐材を使っていく、そういうことを含めて、地域の木材というものを積極的に有効に活用していく、しっかりとしたマーケットをつくっていく、大変大きな課題として今取り組んでいるつもりでございます。

津川分科員 確かに、マーケットに直接てこ入れをするといっても、価格をそのまま直接操作するには大変な弊害がございますから、今おっしゃったような方向になるのかなと思いますが、実はそれだけではなくて、例えば、これからいろいろ議論も必要なものになるかと思いますが、国内の建築物に関して国産材比率を定めて徹底させるとか、あるいは、そこまでしないにしても国産材比率を明示させる、そういったことを義務化させるということもあるいは消費者の選択というところで大きく影響してくるのではないかなというふうに思いますので、できればそういった具体的な方法も考えていただきたいと思います。

 ただ、もう一方の手法がございまして、ある意味では完全にマーケットに任せるというやり方でございます。

 もちろん、先ほど私が述べたような認識に近いような状況であるとするならば、国産材市場というのは崩壊をする。つまり、極論ですが、マーケットに任せるということは、国内の林業をあきらめる。しかし、森林の持つ多様な公益性を維持するために、国の予算により国が責任を持って管理するという手法が一方であるのか。国民が森林から享受をする公益性の大きさから考えれば、先ほど大臣のお話の中にもございましたが、環境税あるいは炭素税といったものを使って森林を整備、管理するということに対して納税者の同意は得られるのではないかなというふうに私は考えているところでございます。

 こうして森林の適切な維持さえもし保証できるのであるならば、後々国産材市場が仮に復活した場合でも、それに対応することが可能です。そして何よりも、森林の維持管理をする担い手を間接的であれ国が雇用するということになるならば、森林を維持管理する技術、担い手というものの技術が断絶することを防止できるというメリットもあるのかなというふうに思います。

 この方法は必ずしもべストではないかもしれませんが、実は、冒頭御説明をいただきました大臣のお考えあるいは今後の方針というのは、どちらかというと、こちらに近いのではないかなというふうに私は判断をしております。なるべく林業の復興といいましょうか、これからの維持、継続的に発展することを目指す、サポートするというお話がございましたが、もしそれができないのであるならば国がそれを直接サポートするというお話がございますから、どちらかというと、こちらに近いのかなというふうに思います。

 私はそういうふうに判断していますが、それでよろしいでしょうか。ちょっと御確認をしたいのですが、どうでしょうか。

中須政府参考人 純粋に理屈の上では先生御指摘のような考え方があり得るということ自体はわかりますが、やはり森林が本来持っている多様な機能というものを十全に発揮する意味でも、どうしても整備というか、手入れは欠かせません。そういう活動の中から必然的に一定量の木材というものは生産されるわけでありまして、それを国民が使っていくということは、いわゆる文化とかそういうことを含めて極めて自然の姿であって、そのことを放棄するというのはやはり私どもとして忍びないというか、適切な方法ではないのではないかというふうに思います。

 そういう意味において、今、林業の現状はかなりのサポートが必要だということは紛れもないわけでありますが、だからといって、林業活動というものをあきらめてしまうということではなくて、やはり正常な林業活動が行われ、一定の木材が出てくる、その木材をやはり国民が使っていく、そういう形を実現するためにどうサポートしていけばいいのか、こういう考え方でやはり取り組むべきだというのが私どもの今基本的な考え方でございます。

津川分科員 恐らくそういうお答えをされるだろうなというふうには思いました。

 確かに、私は別に、林業を全く放棄して、国産材を全く出さないというわけでは当然ございませんが、いわゆるマーケット、市場によってそれを維持できないのであるならば、言ってみれば公共事業のような形で出す、そのものに対して有効利用するのは当然でありますが、目的としては、森林の保全というものに十分にしっかりとシフトした方がかえってよいのではないか。

 例えば、今のお考えの中でお伺いしたいのですが、今のようなお話の中で、果たしてどうやって担い手を確保することができるのか、どのような具体的な政策をお持ちか、お答えいただきたいと思います。

中須政府参考人 今、林業の担い手の確保という意味では二つの方向があろうかと思います。

 一つは、やはりある程度規模の大きい林業経営というものを育てていく、こういうことがもともとの本筋の話として一つございますし、ただ、それがさまざまな困難に直面しているという中で、特に今後追求していかなければならないのは、一つの事業体が森林の施業ということを多くの所有者から委託を受けて、その方が、専門的にというか集中して、でき得れば大きな団地の中でそういう施業が行える、そういう体制をつくって担い手として育成をしていく、そういう二つの大きな道があろうかと思います。

 幾つか典型的な例というか、具体的な例もあるわけでございますが、例えば、愛知県のある林家のお話を聞きましたら、御本人自体は二十六ヘクタール程度の山林を持っているにすぎないわけでありますけれども、その方お一人なのですけれども、周辺の多くの森林所有者から森林の施業を任されて、いわゆる間伐だとかそういうものに取り組んでいる。そういう過程で、お一人で、林業所得でいって年間約五百万、所得を上げておられる。そういうふうな例もございます。

 そういう形で、所有者が、その所有者単位で林業経営をやっていくということだけではなくて、もっと幅広い多くの、特に不在村の山林所有者もふえております。そういう方々から委託を受けて、効率的な、団地的な森林施業を行っていく、そういう姿をぜひ確保していきたいというのが一つのこれからの大きな方向ではないかというふうに思っております。

津川分科員 林業経営の大規模化ということで今具体的な例を一つ挙げていただきました。確かに私もそういった方のお話を伺っておりますが、ただ、そういった方が一人しかいらっしゃらない。その方がもしやめるときにはどうするのですか。

 それから、事業体でやるというお話もございましたが、林家であろうが、個人であろうが、事業体であろうが、もうからない限りマーケットというのは機能しないわけですよ。そこで、マーケットにもうかるように直接てこ入れをするか、あるいは完全な公共事業として国が管理する以外に、私は活路は見い出せないと思うわけです。

 それから、こう言うとおしかりをいただくかもしれませんが、やはり余り悠長なことは言っていられない。この担い手の問題をお話ししますと、決断が若干でもおくれますと、仮に一時的であったとしても、先ほど述べました技術的な断絶というものが起こる危険性があるし、しかも、その危険性といいましょうか、その断絶が起こる時期というものがかなり近くにまで迫ってきているのではないかというふうに思います。

 ですから、ぜひこれは早い段階での御決断をいただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

谷津国務大臣 確かに、今お話のありましたとおり、そういう危惧される面があるわけでありますから、それには万全を期していきたいと思っております。

津川分科員 ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 もう時間がありませんから、最後に一言申し上げますが、実は、私の地元の話でございますが、静岡県の中部でして、大井川流域でございます。大井川流域というのは、御存じのとおり、かつて林業が盛んで、今までお話をしておりましたとおり、同様にかなり厳しい状況でございます。ただ、その中で、地元でいろいろと復興のための努力をしていきたいというお話が出てきております。

 先ほど、社民党の植田議員からもお話がございましたが、流域連携のお話も当然この地域でもやっております。それから、財源確保のために、例えば下流域の水道に一円上乗せをする、あるいは、先ほどの税金のお話というものも検討しているようであります。

 それに加えまして、今言いました担い手の確保というのはまさに可及的速やかに緊急的に行わなければならない問題ですが、それプラス、子供の教育の一環で、森林の役割ですとかあるいは重要性を理解してもらうために、下流域の子供たちに上流に来てもらって、言ってみれば体験学習のようなものをしてもらったらどうかというお話も出ております。

 つまり、中長期的に見れば、林業というものは一代だけでできるものではございません。ぜひ将来の担い手というものの育成についても、先ほど関係省庁との連携ということがございましたが、文部科学省等とも連携をして、ぜひ農水省としても積極的に取り組んでいただきたい、それをお願い申し上げますが、大臣、いかがでしょう。

谷津国務大臣 その件につきましては、もう大分前から文部科学省とも相談をしておりまして、今積極的にそういうふうなものを進めていくという方向でいろいろ対応しているところであります。

津川分科員 ありがとうございました。終わります。

北村主査 これにて津川祥吾君の質疑は終了いたしました。

 次に、山田正彦君。

山田(正)分科員 自由党の山田正彦でございます。

 農水大臣にお聞きしたいと思いますが、先般、予算委員会の一般質問で、途中で終わりましたけれども、大臣として、いわゆるセーフガードをすぐに、暫定措置を適用するについては九種類についての調査が終わっていない、だから、という意向でした。私は、あの後、暫定的なセーフガード措置の条文をもう一回読ませていただきましたが、この協定に関する限りでは、ただ、生産者に対して重大な損害を与えるおそれがある場合と書いているだけですから、条約上は。

 ともあれ、いわゆる今の輸入の動向の指数、例えば先月の分、これはもうきょうでもすぐにわかっているはずですから、それと、いわゆる市場の価格の動向、何カ月分か、それもすぐ、今にでもわかるはずですから、そういったたぐいを見れば、暫定措置、いわゆる緊急措置、それはすぐにでもできるのじゃないか。

 あとはこれ以上言っても議論になりますので、ひとつぜひお願いいたします。

谷津国務大臣 今、三月二十二日までに、資料というのでしょうか、それを取りそろえているところであります。そういった中で、仮にこの暫定措置をかけられるとするならば、もう今の資料の中で、当然そういうふうな損害が明らかに与えられるという状況が出てくるおそれが出てきた場合には、暫定措置がかけられます。ですから、できるだけ早く可能な限り私はやるつもりでいます。

山田(正)分科員 実は私は、ちょうど五年前の二十二日ですね、農水委員会で野菜のセーフガードを聞いております。そのときに、ニンジンの話とシイタケの話を聞いているのですね。今になって、私、データを見てみましたら、当時シイタケが、一九九三年に一万五千トンしか輸入されていなかったのです。ところが、その翌年には二万四千トン、そして、今や三万一千トンぐらい輸入されております。あのとき、私が質問した九六年、私も激しく迫ったのです、なぜシイタケをやらないのかと。それを農水省はやらなかった。そして、結果どうなったかといったら、対馬ではほとんどの人がシイタケ栽培をやめてしまいました。調べてみればわかります。いわゆる全滅に近い状態に陥ったのです。そして、ニンジンとかカブ等も、そのころ急激に輸入が進んでおります。それもそのまま放置されております。タマネギもしかり。

 こうして見ますと、アスパラとか、本当にセーフガードとして適用しなければならない品目というのはまだまだ数多くあります。大臣、そういったことも十分調べて、そしてそれだけの措置を早急にお願いしたい。二度とこの前のようなことは、私が五年前に聞いた、そのとき何の対応もできなかった、その責任は大きい、これは十分に自覚していただきたい、そう思っております。

谷津国務大臣 ですから、先生、今私どもは監視対象にしておりまして、それでこのセーフガードのかけられるような要件が出てきた場合においては、直ちに財務省あるいは経済産業省と相談しまして、そこでセーフガードをかけられるような調査に入るというふうに準備をいつもしているわけであります。

山田(正)分科員 野菜のことはそれでいいのですが、実は漁業関係も、私は野菜農家も漁業の生産者もよく回っているのですが、今大変な状況にありまして、御承知かと思いますが、もう輸入の魚が市場にあふれている。

 長崎の例でいいますと、長崎の魚市場は、漁師の皆さん方が言っているのは、長崎魚市場そのものが中国の支店ではないかと。中国から七割も八割も輸入の魚が来て、それを売っている。その中で、どんどん魚の値崩れがしてきて、実際、かつての十年前の大体半値ぐらいになっている。これは全部平均してです、私が正確に統計をとっているわけではありませんが。漁師の皆さんがおっしゃっているのでは、そういう話なんだと。それでやっていけるわけがないじゃないか、そういうのが実情です。

 当然、魚についてもいわゆるセーフガード、これについて、一応モニタリング品目にカツオとかワカメとかウナギとかを入れてもらったようですが、それだけではなく、今どんどん入ってくる輸入のものがまだまだありますので、次回、時間があったら少し丁寧に私も聞いてみたいと思いますが、ぜひ検討をいただきたい、そう思います。

 それより、実は私はけさ、ちょっと対馬の方に電話してみたのですが、一体イカは今どれくらいしているのかと聞いたら、きょう現在、キロ当たり二百円を割っているのではないかという状況です。かつて私が行っていたとき、漁船に乗り込んでイカをとっていた連中が、今はもうかなりやめてきている。それも、いわゆるもう老齢化して漁業をやめるとかいうものではなく、まだ若いけれども、イカをとっても値がしないからやめていっている。昨年か一昨年でしたか、豊漁だったのですが、そのときにも大変な輸入量、約十一万トン近い輸入量が来ている。これは御承知のとおり、輸入貿易管理令では、イカ、アジ、サバとかタラとかニシンとか、いわゆる輸入割り当て制になっていますね。その輸入割り当て制というものはどういうものなんでしょうか。

谷津国務大臣 このIQにつきましては、WTOの基準の中で我が国だけがとっている措置でございます。これは周辺の漁場のいわゆる大変な枯渇等もございまして、もしこのIQをなくすということになりますと、中国を初め韓国等の漁船がもう一斉にそれをとり出しまして、ますます資源が枯渇をしてくるということから、輸入を、ある意味では制限といいましょうか、そういうものを踏まえるために、IQ制度をとっているわけでございまして、この件は、何といっても周辺のいわゆる漁場が枯渇するのを避けなければならぬということから、我が国はそういう措置をとっているところでございます。

山田(正)分科員 IQ措置、輸入割り当て制をとっているということは、いわゆる資源保護と、そして今言った、それでどんどん輸入されたのでは、周辺の漁民の皆さん方が漁業をやっていけなくなるという趣旨もあるわけですね。

谷津国務大臣 それは国内の漁場、漁民を守るというふうなものは暗黙の中にあるわけでありますけれども、それを余りにもばんと出していきますと、WTOの方でまた指摘をされる。そのことを今既にEUあたりから強く指摘をされていまして、これをなくせ、なくせと今言われておりますので、それをここでは申し上げられませんが、腹の中ではそういうことがあるということであります。

山田(正)分科員 いわゆる、今言われました輸入割り当て制というのは、原則として、私どもが調べた限り、貿易管理令その他の条文等でも、いわゆる不足分を自由に輸入するのではなくて、水産庁、あるいは、これは最終的には通産省、輸入割り当てですから通産省になるかと思いますが、不足分だけをいわゆる輸入割り当てするんだ、そう解していいわけですよね。そうでないかどうか、そこだけをはっきりさせてもらえれば、それがそうでないということであったら、私もこれは徹底的に闘いますから。

谷津国務大臣 実はそこが今大議論になっているところでありまして、ですから、IQの本当の話は、とにかく資源の枯渇を防ぐというふうな形から、もしIQをなくしますと、他国の船が日本近海においてもじゃんじゃんとるわけでありますから、そうなると資源が枯渇される。それをみんな日本に持ち込んでくるということになりますものですから、日本に持ち込むことを前提にとっている国が圧倒的に多いわけでありますから、それを防がなければならぬということでIQの制度をとっているわけであります。

 ですから、今のお話のように、不足分を入れるのだということだけに限定して話をしますと、また、WTOの中でいろいろな問題を起こしてきます。実は今、一番私どもが懸念しているのは、林業の林と水産の水というのは鉱工品と同じ扱いにされているのですよ。そういう中で、今度のWTOにおいて我々が提案をしようとしているのは、この問題についてはどこまでもIQを守るということが、私どもの大きなテーマの一つでございますので、その辺のところは御理解いただきたいと思うのです。

山田(正)分科員 どうも大臣の発言ははっきりしないのですが、暗にという言い方をされましたが、ただはっきりと答えてもらえばいいのですよ。当然、資源保護という形はあると思います。ただ、IQというのは、自由に入れていってもいいものではないのだ。水産庁と経済産業省が認めた分だけ、逆に言えば水産庁がいいという分だけ入れていく、入れていく場合は国内で不足分だけを入れるんだ。そうかそうでないか。例えば今EUでいろいろな問題が出されているとかは別ですよ。それはその次に聞いていきますから。それは、僕は平成八年に当時の農水大臣からきちんと聞いているのです。ここにあるのですよ、その資料は。どうぞ、答えてください。大臣に、私はきょうはお答えいただきたい。

谷津国務大臣 私どもは今そのことで、IQの問題で、正直言うと、闘っていると言ってはなんですけれども、日本一国になってしまって、韓国なんかはもうIQをやめてしまったものですから、そういったことでやっているもので……

山田(正)分科員 私の質問に答えておりません。私の質問は、いわゆる不足分だけ輸入できる、そうなっているのかなっていないのかと聞いているので、EUで守るとか守らないとかという問題ではないのです。

北村主査 それでは、条約なり、あれですから、水産庁川本次長から説明を受けます。(山田(正)分科員「いやいや、大臣に聞いているんでしょう」と呼ぶ)

 では、谷津農林水産大臣。

谷津国務大臣 零細な漁業者の保護も含まれているということは間違いのない事実なんですよ、それは。ですけれども、では、必要なものだけしか入れないのだというふうなことを言えということになりますと、これはもっと違う面で考えなきゃならぬ点であります。

山田(正)分科員 これはいつまで話していてもこれ以上進まないようですので、この件についてはまた改めて、前のときの議事録も含めて、いろいろ調べてお話ししようと思いますが、EUから言われるからとてもじゃないけれども今はそれを守れないのだ、そういう趣旨かのように聞こえますけれども。今現在、日本の漁業者は、けさ私が電話したけれども、イカ釣り漁業者、これはイカ釣りだけじゃないと思うのですが、今ほとんどの漁業者というのは食べられなくなってきている。これを守るのが農水省であり、水産庁であり、農水大臣である、それを本気でよく考えてもらいたい、そう思っております。

谷津国務大臣 それは先生、十分に認識しております。

山田(正)分科員 先ほどお話がありました林業、今、日本の林業は、御承知のとおり北海道から九州までほとんど壊滅に近い状況じゃないか、ほとんど食べられなくなってきているという状況は、農業より、漁業より深刻だと思います。林業、木材の輸入、これは昭和四十七年ぐらいから急激に入ってきているようですが、今や遅きに失したという感はあるのですが、それについて大臣の所見をお伺いします。

谷津国務大臣 林業の問題でありますけれども、先生御案内のとおり、今、林業生産は非常に停滞をしております。これは、非常な安価というふうなこともございまして、そういう状況にあるのですが、それを踏まえまして、今までやっておりました林業基本法の法律を一部改正させていただきまして、今度は、そういった面で森林の持つ機能が発揮をできるような、そういうふうに大転換をさせていただくわけであります。そういう中で、林業の位置づけもしっかりやっていきたいというふうに考えているところであります。

山田(正)分科員 農水産業の中で、真珠についてちょっと大臣にお話ししたいと思うのです。

 実は真珠は、長崎県とか愛媛とか三重とか、日本ではその辺で大きく生産しているところです。特に長崎県は、今まで、対馬を中心としてかなり幅広くやってまいりました。言ってみれば、対馬の地域のいわゆる主たる漁業というか、真珠だけで今もっている、そういう事業だと考えていただければいいと思うのです。

 ところが、実はことしの二月の入札、二月の十七日からだったと思うのですが、当時私も対馬におりまして、入札のときにちょうど居合わせたわけですが、大変な暴落といいますか、なかなか売れない。その中で実は、昨年度の売り上げが三十八億だったのが、ことしはざっと二十二億、いわゆる四割減という状況に陥りました。

 その結果、私が聞いたところでは、もう三軒の真珠養殖業者が廃業する。そして、九十幾つか業者がいるんですが、約十軒ぐらいが縮小する。私もよく回るのでわかるのですが、大体、一つの真珠養殖業者が七、八人ぐらいは雇っているわけなんです。そういった人たちが全部、廃業すれば解雇される。縮小すれば解雇される。これは大きな地域の問題になってきているわけです。

 なぜこのようになったのか。今、水産庁も県も、私が状況を尋ねますと、どうしてこうなったかということを調査中であるというふうに言っております。

 確かに、そうでありましょう。ただ、私が地元の真珠業者から聞く限りでは、中国産の六ミリ玉がどんどん入ってきて、今や、今度の対馬の市場では、いわゆる真珠の競り市場みたいなのがあるのですが、大手の田崎さんとかいろいろなところが買いに来て、ここの半分ぐらいの大きさのところで競りをやっています。私も二、三回見に行ったことがありますが、そこでの話ですと、六ミリ玉がほとんど売れなかった、それでこんなになってしまった。地元の業者の話だと、中国産の輸入によるものじゃないか、そう言われておりますが、大臣はどうお考えですか。

谷津国務大臣 真珠は、我が国にとりましては重要な輸出品目であります。最近五年間でも、数字を見ますと、順調な伸びを示しておるということであります。一方、我が国に輸入される真珠というのは、私どもが調べました資料では、一九九六年以来大きな変動がないというふうになっているところであります。

 ですから、そういった面で、中国産が今大量に入ってきておるということでございますが、六ミリ玉というのは、私はちょっとその辺のところはわからないのですけれども、六ミリ玉というのは一番ポピュラーなというのでしょうか、そういうふうに理解させていただくとするならば、それが大きな打撃を受けているということであるならば、私ども、しっかりとその辺のところは調査をさせていただきまして、後日報告をさせていただきたいと思います。

山田(正)分科員 これは私の手元の資料では、第一回の対馬の入札会ですが、一番多いのは七ミリ玉、その次が六ミリ玉ですね。ほとんど変わらない。もっと下の五ミリ玉というのはあるのですが、いわゆる主力が七ミリ、六ミリと思えばいいと思うのですね。それがほとんど、安値かあるいは売れ行きがなかった。

 私の方で、真珠の主要国別輸入実績というのを見せていただきました。これによりますと、中国からの輸入が九八年から始まっております。この統計では、例えば加工品、真珠製品も入っておりますので、真珠の玉そのものがどれだけかということはわかりませんが、そういう状況でかなり入ってきている、入りつつあるという現実を認識して、ワカメとかカツオ同様、真珠も、場合によったら監視品目として、モニタリング品目として、ひとつ御検討いただければと思います。

谷津国務大臣 先ほど申しましたとおり、真珠の輸入というのが、一九九六年が三万七千九百六十二キログラム、それから二〇〇〇年で三万七千九百三十キログラムと、実は総体的には大きな変動をしていないのですね。したがって、現時点では、真珠をセーフガードの監視品目に加える状況にはない状況でありますが、今先生の御指摘は非常に重要でありますから、再度、私どもで調査をさせていただきたいと思います。

山田(正)分科員 漁業の問題で、二百海里、いわゆるEEZ内での漁業というのが、日中、そして韓国との間に一応取り決めができてきた。ところが、中国との間の協定の中において、対馬とか壱岐とか五島の十二海里まで、まき網、底びき船が二百隻とか百五十隻とか入れるような協定になっている。御承知ですね。

 今、沿岸漁民が一番困っているのは、国内のまき網業者が三マイル、五マイル、九マイルというところまでとってくる。例えば一本釣りでブリとかヨコワとか、クロマグロの子なんかをとっているのに、網でどっとやられて、そしてその次の日から一匹も釣れなくなる。

 おとといも私に電話があったのですが、まき網が入ってきたら、もうあしたから食べられなくなる、今自分たちが釣っているところにまき網が来ている、どうしようもない、もう自分たちが実力でまき網の船に突っ込もうか、それでよろしいかと私に電話があるわけです。法治国家ですから、私としては、弁護士でもあって、そんなことをしていいと言うわけにはいきません。しかし、その彼らの真剣さというのは、これはひしひしとわかるわけです。

 国内のまき網の問題もまだまだいろいろありますけれども、これ以上申し上げるつもりはありませんが、それよりも、ことし一月から中国のまき網漁船がまさに雲霞のごとく入ってきたら一体どうなるんだと。沿岸漁民は全く漁ができなくなる、食べられなくなる。なぜこのような、いわゆる対馬沖と五島沖と壱岐沖だけがこういう犠牲になったのか、その交渉のいきさつをお聞きしたいと思います。

谷津国務大臣 これは昨年の日中漁業交渉のことをおっしゃっているのではないかと思うのですけれども、我が国の水域における資源の確保と我が国の漁船の操業の安定を図るために、最も影響が大きいのは中国の底びきというように言われているわけでありまして、その規制に重点を置いたということが事実であります。

 その後、中国のまき網漁船については、二〇〇一年には一定の操業を認めることにしたことを今御指摘なさっているんだろうというふうに思うわけであります。

 二〇〇一年の中国まき網漁船の漁獲割り当て量や操業期間等につきましては、二〇〇一年の双方の水域における操業条件交渉の中で協議しておりますけれども、いまだ合意に至っておりません。そして、現在のところ、中国のまき網漁船は我が国の水域で操業をすることは、いわゆる漁業をやることはできないということになっておりまして、今後とも協議に当たっては、我が国の漁業者の意向を踏まえまして、適切に処理していかなければならないというふうに考えております。

山田(正)分科員 大臣に私が聞きたいのは、本来二百海里は、我々の領海である二百海里、EEZ内は、対馬とか壱岐とかその周辺、五島沖でもそうですが、沿岸の皆さんの生活の場であり、そこで魚をとる。その場に大型の中国の底びき、まき網が二百隻も百五十隻も入ってくるということはどういうことを意味するか。

 私が聞きたいのは、なぜそういう条約を結んだのか。これは漁民は全くだれも知らなかったのです。漁協も知らなかったのです、そういう条約になったのは。そのいきさつを、当時私は議席を外しておりましたのでよくわからないのですが、谷津大臣は御存じじゃないか。それを少し説明いただきたい。

谷津国務大臣 ただいま申し上げましたとおり、中国の底びき漁船の規制に重点を置いたということは御案内のとおりです。

 ですから、今のところ、日中漁業交渉につきましては、連続で七回やっているのですけれども、まだ合意に達していない。合意されない間は操業は行えないということになっていますが、それが入ってきているということですね。

山田(正)分科員 いや、そうではない。それが交渉中であって、まだ妥結していないから入ってきていないということは、私は何度も確認いたしております。

 私が聞きたいのは、なぜ、対馬とか五島とか壱岐沖だけ、漁民に何の相談もなく十二海里内にいわゆる中国漁船を、底びき、まき網を入れることにしたのか。大臣の話では、中国の底びき、そういったものを入れないようにしようと思って漁業交渉はやってきたんだと。ところが、現に、対馬とか壱岐とか、その十二海里のところまで入ってくるという条約になっているわけでしょう。そんなばかなことはないでしょう。なぜこういう条約をしたのか、そのいきさつ。私はいろいろ聞いております。

谷津国務大臣 経緯のことですから、任に当たった者に答弁させますけれども、よろしいでしょうか。(山田(正)分科員「はい」と呼ぶ)

川本政府参考人 お答え申し上げます。

 これは、日中の新しい協定に関しましては長年の懸案でございまして、当然、我が国の漁船も中国側に入るわけでございますし、それから当然中国側の漁船も我が国のEEZ水域に入るということがございまして、双方のバランスをとりながら、そういう形で協定を結んだということでございます。

山田(正)分科員 では、同様に川本次長にお聞きします。

 我が国の漁船が中国の沿岸に入る、日本のまき網が中国の沿岸で操業する、では、中国のまき網が日本の沿岸でも操業することを認めろという趣旨であるかと今お聞きいたしましたが、もしそうであったら、これは大変大事なことですが、日本のまき網が中国の沿岸での操業を放棄するとなったら、当然、中国も対馬とか壱岐とか五島沖での操業をやめるということができるわけですか。

川本政府参考人 これはまだ仮定の問題と申しますか、そういう、日本のまき網業界が中国のEEZ水域の中で操業する必要なしというふうな意思を今のところ表明したことはございませんので、それは何とも申しがたいと思います。

 それで、恐らく、それはやはり全体のバランスの中でございましょうから、そういう交渉の場でやってみないと、こっちがこっちだからこっちはこっちだという、非常にストレートな話にはならないのじゃないかと思っております。

北村主査 山田分科員に申し上げますが、申し合わせの時間が過ぎておりますので、御協力をお願いします。

谷津国務大臣 一点だけ。

 今の先生のお話というのは十分にわかりましたから、これから交渉がまだ続いていくわけでありますから、そういう面はこの交渉の中で、きちっと地元の要望も踏まえて、しっかりと交渉していきたいと思います。

山田(正)分科員 時間が過ぎたのに大変申しわけないのですが、実は大臣に、MHLC……

北村主査 山田分科員に申し上げますが、時間が過ぎておりますので、やめてください。皆さんこの三十分の中できちっとやっておりますので、ひとつ御協力をお願いします。

山田(正)分科員 それでは、大臣、ぜひそのMHLCについても御配慮をお願いします。また改めて質問の機会を持ちたいと思っております。

北村主査 これにて山田正彦君の質疑は終了いたしました。

 次に、渡辺周君。

渡辺(周)分科員 民主党の渡辺周でございます。

 私は、三十分の質問時間の中で、諫早湾の干拓から有明海のノリ問題に至るまでのこの一連の、またきのうきょうまでのことも含めまして、谷津大臣に御質問をしたい、ここへ立たせていただいたわけでございます。

 まず、昨日、福岡県の有明海漁連、百三十名ほどの方が農水省で大臣と面会をされたということでございます。ノリの色落ちの問題から、さまざまな漁民の方々が、原因は諫早湾の干拓事業にある。いわゆる四年前、もう四年になりますが、ギロチンが諫早湾を締め切って以来、赤潮の発生でありますとか、あるいはアサリの激減でありますとか、そういった幾つかの影響が出てきた。その中で、今回、まさに生活の糧でもありますノリ漁業者の方々には大変な問題が今ここでこうして起きたわけであります。

 この面会を受けて、大臣は、決して皆さんを見殺しにはしないというようなことをおっしゃられたわけでございまして、そういう意味では、大変な今回の問題の現状を、昨日、漁業者の方々とどんな話し合いがされたのか、まずその点についてお尋ねをしたいと思います。

谷津国務大臣 きのうの要請は、まず、工事の中止をして、それから水門をあけてくれということが一点です。それから、有明海の海を、宝の海と言われている海でございますから、それをまた、調査をしっかりやって、宝の海のようなそういうものに戻してほしいという旨の要請でございました。

 その中で、工事を中止してくれ、そして水門をあけてくれというふうな要請がございました。これにつきましては、第三者委員会があす開かれるわけでございますから、そこで、調査のために水門をあける必要があるということであるならば、私は、その水門もあけて調査をしていただきます、そしてもう一つは、工事を中断して調査をしたいということであるならば、その工事も中断をして、そして調査に当たってほしいというようなことを申し上げたわけであります。

 ただ、この問題につきましては、先生も御案内かと思いますが、長崎県の方は、水門をあけてはならぬ、それから工事は中止してはならぬ、これは何回も注意、要望が来ているわけであります。ですから、第三者委員会の方でそういうふうに、水門をあけて調査したい、あるいはまた工事も中断をして調査をしたいということであるならば、私は直ちに長崎県に行きまして、そこで了解をとらなければならぬということがございますものですから、そういう旨の回答をさせていただきました。

渡辺(周)分科員 今大変お悩みだとは思うんです。例えば、昨日、上京してこられた方々が福岡県の有明海漁連、そしてまた佐賀県の方からも、大変なこうした問題について、何かきょうですか、二日、上京をされて……(谷津国務大臣「もう来ています」と呼ぶ)そうですか、ということだというふうに伺っておりまして、大分、テレビ等で報道されましても、工事の中止を求めて実力行動をとっていらっしゃる方々、それから農政局の中に、責任者とのやりとり、かなり厳しいやりとりがあったということも報道されております。

 そんな中で、大臣、この第三者委員会、ある意味では、この干拓事業に慎重派の学者も入れて、予断を入れずにこの委員会の委員を入れるべきだということを発言された旨も聞いております。きょうおいでの農水副大臣の松岡副大臣が、かつて自民党の農林部会長をやっていらっしゃったときに、自民党がある限りは水門をあけないというようなことをかつてはおっしゃっていたわけでありますが、そのときを思うと、大変にある意味では柔軟に前進をされているんじゃないか。一部そういう報道も、大変肯定的にとらえているところもございました。

 そんな中で、昨日、その後、有明海漁連の方々が自民党本部に行かれて、自民党本部の古賀幹事長に会われた。これは報道の引用でございますので、これが事実かどうかちょっと確認したいわけでありますけれども、古賀幹事長は、あす開かれるこの第三者委員会の最初の会合で干拓工事の中止と水門開放を決めていただきたいということを言ったということが報道されているわけでありますね。

 農水省の第三者委員会に対して古賀幹事長がこういう形で発言をされているということ、これはけさの朝日新聞でございます。報道を引用して申しわけないんですが、これが事実かどうかわかりませんが、「三日の委員会で水門開放と工事中断を了承してもらう」、与党の幹事長という実力者がこういうことを発言された、言及されたということは、ある意味ではかなり権限を越えた発言だと私は思うわけでありますけれども、この幹事長の発言ということが、この第三者委員会、あした会合があるということですが、どういう影響を与えるのかな、まずその点についてお尋ねをしたいと思います。

谷津国務大臣 実は、これにはちょっと前提があるんです。私も松岡副大臣も一緒に出ていたのでありますが、実はその中に、第三者委員会の委員に、荒牧さん、来られて要請をされた方が実際その委員に入っているんです。ですから、その荒牧さんに対しましても、あなたは委員なんだから、その場で中断あるいは水門を開くことをあなたから提案してくれということを実は申し上げました、はっきり申し上げまして。

 そういうふうなことで、この委員は、我が省で選んだんじゃありません、四県の推薦あるいは漁業団体等の推薦を受けて委員というのを構成しておりますから、そういうわけで各漁連の会長さんが四名入っておるわけであります。そういった方々が、長崎を除いては水門をあけろということを多分申し上げると思いますし、私は、荒牧さんはこれだけ要請しているんだから、あなたはそういうことを委員会で申し上げてくれということも実は逆にお願いをしたぐらいであります。

 そういう中で、水門をあけて調査ということになるということを多分古賀幹事長は聞いたんではなかろうかというふうに思います。そういうことでああいう発言になったんだろうというふうに思いまして、何も権限を越えていろいろ差し出をしているというふうなことではございません。

松岡副大臣 今渡辺先生御指摘の点でありますが、自民党の幹事長の立場でそういうことを言うのは、権限を越えた、ある意味では圧力的なことじゃないかというような御指摘かと思います。

 実は古賀幹事長は、この有明海ノリ不作問題の自由民主党の、我が党の対策本部の本部長でございまして、そういうお立場、それから与党三党でこの問題に取り組む立場も、これは両方兼ねておられまして、そういったお立場で、自分としての希望なり、あり方についての気持ちをおっしゃった、こういうことだと思いますので、決して権限を越えてとかそういったことではないというふうに私どもは思っております。

    〔主査退席、谷川主査代理着席〕

渡辺(周)分科員 もちろん、ある意味では、政治主導という我々が求めている一つの政策決定、意思決定のシステムの中で、政治家が一つの決断を下してその方向に持っていくということは、私は決して否定して言っているわけじゃございませんが、この第三者委員会があした開かれるとなって、第一回目の会合でも直ちにということであるのならば、今お話がありました諫早湾内のたしか四漁協の方々は、例えばもし水門をあけるようなことになれば、堤防の外側のところの方々は恐らく大変なダメージを受けるであろう。あるいは、いわゆる言われているような防災目的だということを前提にするのであれば、肝心かなめの地元は反対している。

 もっと言っちゃうと、なぜ福岡県や佐賀県の方から言われて、最も自分たち、いろいろな漁業補償を受けて、漁協を解散したりしながらこの事業を認めてきた方々にすると、ある意味では納得がいかないんじゃないだろうかと思うわけですね。もっと言えば、諫早漁協の方々も、これから恐らく、どういう形で被害をこうむるのかわかりませんが、そういうことが出てくるわけです。それでもある意味で意思決定というのは、多数決で決められるのかどうかわかりませんが、あす、もしそういうことになれば、どのような形で御判断、その意思決定のプロセスはどうなるのか、教えていただきたいと思います。

谷津国務大臣 私は、調査をするのに多数決ということはないときのうも申し上げたわけなんです。というのは、いろいろな研究をなされている学者の先生もいらっしゃいます。それから、肌身であそこの状況を知っておる、そういう漁民の代表者の方もいるわけであります。ですから、その中で、いろいろな専門の立場から、水門をあけて、そして潮流とか何かを調べてみたいというふうな意向があるならば、私はそれを多数決で決定するとは、委員会の中ではないというふうに思うんです。そうすれば、私は、当然調査をしなければならぬというふうに考えているわけであります。

 一方、今お話がありましたように、長崎県の方たちはこれに強く反対をしていることも事実でございます。ですから、第三者委員会でそういうふうに決められた場合においては、私は早速長崎に行きまして、その実情もお話を申し上げまして、その調査にぜひ協力をしてもらいたいということでのお願いもしなければならぬというふうに考えているところであります。

渡辺(周)分科員 多数決で、例えば十五人の委員で八対七で決まるとか、九対六で決まるとか、そういうことではないと。今の答弁を聞いていまして、この議論の中でそういう意見が、漁連の荒牧さんですか、この方も委員で入っていらっしゃるということであるならば、我々としては、水門をあけるということが恐らく結果として、あけて調査をすべきだということが出てくるんだろうというふうに認識をするわけであります。

 そういうことで私は理解をするわけでありますが、私どもはこれまでも、この排水門をあけて、今でもあけて、当然、干満差を利用してこの堤防内部のものを排出しているわけです。例えば、海水を入れて干潟を保全すればと、当初、四年前、たしか旧民主党時代のときでございましたが、何度か現地に行きまして、何度もこの議論を学者の方も入れて我々も考えてきたときに、排水門をあけるということが非常に構造的に無理なんだということが実は言われました。といいますのは、非常に狭いこの排水門をあけることによって、潮の流れというものは大変速いから、構造的にまず耐えられないのじゃないのかということが一つ言われたわけであります。

 それからもう一つは、そもそも農業、農地造成ということを前提にやっているわけでありますから、調整池が淡水化しているものが海水を入れてしまったら、そもそもの事業目的からして変わってしまうというようなことが理由にあった。常時開放しないまでも海水を入れながら、干潟を保全しながらこの諫早湾の問題は時間をかけて議論するべきだということは、我々はずっと言ってきたわけであります。

 それを考えますと、今回、では、この第三者委員会で排水門をあけるんだということになった場合、まず一つには、今進めている淡水化事業がどうなるのか。それともう一つは、構造的にどういう、当初から皆様方が、特に農水省の方々がかたくなにできない理由として挙げてこられたこの問題を考えたときに、整合性というか矛盾が起きると思うのですけれども、その点についていかがですか。

松岡副大臣 お答え申し上げます。

 先生、今までの経過はよく御存じのとおりで、今御指摘のあったとおりかと思います。そういう状況の中で、私ども、ベストとして望ましい姿としては、あそこは、とにかく大水害、災害から守っていく、まさに防災干拓としてこれはやろうということになって、そしてあわせて農地も造成、こういうことになったわけであります。

 先生の御指摘のように、構造上の問題もあり、また農地との関連もあり、そしてまた大水害が後背地から出てきたときには、それは当然のことながら一定の洗面器みたいな形で受け皿にしておいて、そこで受けとめる、こういったこともあって、今日まで説明をしてまいったようなことで位置づけておったわけでありますが、今回は、とにかく有明海の漁業全体また漁民の皆様方が大変な被害を受けておられる、そして有明海全体の問題としてこれをとらえなきゃならぬ。

 そこで、我々としては、それでは、構造上の問題も踏まえながら、また農地との関係も踏まえながらも、徹底した調査のために、今言いましたような可能な限り最大限の対応をしていくということの全体的な兼ね合わせの中でこれは決断をしよう、こういうことでございまして、第三者委員会と言われます調査委員会でその方向が出れば、そこは即座に、大臣として決断をして、長崎県の皆様方に御納得をいただくような、そういう御協力をいただいて、そういう努力をしてやっていく、こういうことでございます。今はそういうような、まさに大所高所からそういう判断に立った。そして、今いろいろシミュレーションもある程度やっております。そういう中で、堤防の構造上の問題等を十分踏まえた上で最大限の対応をする、こういうことであります。

木下政府参考人 私の方から、技術上の問題につきまして補足をいたしたいというふうに思っております。

 先生御案内のとおり、ゲートは調整池の中から外に排水をするという構造になっているわけでございます。したがいまして、外から中に海水を入れる場合には、ゲートの底面の形状から、ゲートがその過程で振動する可能性があるというふうに思っているわけでございまして、その振動によりまして、ゲートにつきましては二本のワイヤで上下をさせているという状況にございますので、その振動がワイヤの振動につながる可能性があるということでございますので、そういうふうな振動も十分監視をしながら操作する必要があるというふうに考えております。

渡辺(周)分科員 それは、構造上のことでは可能だというふうに考えていいのでしょうか。当初は堤防の構造上、耐えられないのじゃないかという話がございましたが、それでは、まずあけるということを前提に考えれば、それは可能であるということですね。

 それともう一つ、さっきまだお答えいただいていないのですが、淡水化してきたところに海水を入れたら、そもそもの事業の根底自体が変わってしまうのじゃないか、根底から崩れるのじゃないかと思うわけですが、その点はどうなっているのですか。

木下政府参考人 先ほどのゲートの開閉の問題でございますけれども、私ども、可能かどうかということにつきましては、申し上げましたように中から外に出すという構造でございます。したがいまして、外から中に入れる場合には、上下する過程で振動が起こり得る。その振動によりまして、水門をつり上げているワイヤに予測できないような影響を与えるかどうかについては懸念をしているところでございます。いずれにいたしましても、どの程度の振動が起こるかということにつきまして常時監視をしながら、一定の振動の範囲内にとどめるような工夫もしながら、水門の開閉につきまして検討をする必要があるだろうというふうに思っております。

 したがいまして、繰り返しになりますけれども、中から外に出す場合には、そのような振動がないわけでございますので、そのような常時の監視体制というのは不必要だろうというふうに思っております。

 それから、淡水化の問題でございます。現在、相当程度、淡水化が進んでおるわけでございまして、私ども、その淡水の水につきまして農業用水にも利用していきたいというふうに考えているところでございます。したがいまして、先生御指摘のように、今回調査で海水を入れました場合には、そのような淡水化の過程がもう一回ある程度、どの程度もとに戻るのかということにつきましては期間なり量によりまして予測がつきませんけれども、淡水化そのものにつきましては時間がまたかかるだろうというふうに予測をいたしております。

渡辺(周)分科員 となりますと、今のゲートの問題については、懸念があるけれども、常時監視しながらその振動に耐えられる、どれぐらいのスピードであけていくのかわかりませんが、やっていくということで、何とかその懸念はクリアされるのかな。懸念はしながらもやれるということと理解しました。

 それで、予測はつかないけれどもと、今もう一つございましたけれども、この淡水化です。そうしますと、せっかくここまで淡水化をしてきた、それで海水を入れる。それによってどういう結果が、どれぐらいの時間がかかって調査結果が出てくるのかちょっとわからないわけでありますが、これは実際、事業自体がまたかなりおくれるのではないのかなというふうに私どもは当然考えるわけです。

 事業自体が一度ひょっとしたら根底から変わるということで、例えば昨日ちょっと農水省の方から聞いたところでは、もう既に営農を希望する方が、予想される干拓地面積を上回るほど希望者が来ているということであります。しかし、事業自体はかなりおくれるわけでありますね。しかも、平成十三年度予算では、たしかこの内部堤防と農地の造成に百億円の予算がついているかと思いますが、そうしますと、この予算の執行というものがどうなるのか、その点について。

松岡副大臣 私ども、諫早湾のこの干拓を当初の目的どおりの、ほかに問題がない形で進めるときは、堤防も排水門もあけずに、そして淡水化も一番早い形で、そして農地もつくれていく、こういうことを思っておったわけでありますが、一方に大変な有明海全体の大問題、こういったことが起きたわけでありますから、この構造上の問題、危険性の問題等も、今先生も御理解いただきましたように、すべてそれを最大限の範囲でクリアできる、監視しながらとおっしゃっていただきましたが、全くそのとおりでありますが、そういう形で最大限これをやっていく。

 そして、淡水化についても、農地との関係ではある程度目的とした時期がおくれても、また多少の支障が出ても、それはもうやむを得ない。この全体的な問題解決のためにはあえてそれはやむを得ない、こういうような判断をしたところであります。

 そして、今おっしゃいましたように、こういったことがない場合として予定をしておりました十三年度の予算につきましても、これは当然、やはり今後の調査委員会の調査との兼ね合わせの中でそれがおくれることがあってももうやむを得ない、私はそういう判断をしたところでありますから、推移を見ながら、そこはまた改めて決断をしていくことになると思います。

渡辺(周)分科員 やむを得ないというような言葉が何回も出ました。そうすると、ちょっとまだ御答弁いただいていないのですが、平成十三年度の予算の執行はどうなるのでしょうか。例えば、これを調査費に織り込むことができるのかどうなのか、それともこの造成事業それから内部堤防の工事はそのまま進めるのか、それとも今回の水門をあけるという決断になれば、これを何らかの形で転用できる手続がとれるのかどうか、あるいはそのお考えがあるのか、その点についてお尋ねしたいと思います。

松岡副大臣 考え方といたしましては、状況を見ながら、その都度私どもは的確に判断をしていきたいと思っておりますが、今、では予算措置の具体的な、事務的な取り扱いについてどうなるかということでありますから、それは事務当局の方から答えさせます。

木下政府参考人 干拓事業の予算案でございますけれども、この事業につきましては、先生御案内のとおりの内部堤防を初めとする建設事業費でございますので、建設事業費につきまして使用できない場合には、翌年度に繰り越しということになろうかと思います。

 それからもう一点御質問の、この予算案百億でございますけれども、例えば調査費に転用できるのかというお尋ねでございますけれども、事業費でございますので、その転用はできないというふうに考えております。

渡辺(周)分科員 時間が残念ながらもう残りわずかになりましたけれども、我々は大変この問題について、四年前あのギロチンというものが、鉄鋼板が海に次々に落とされた。それによって、あのときに、この事業自体が余りにも目的を失っているじゃないか、先ほど来お話のあった例えば防災というのならば、なぜ農水省が防災目的で干拓をやるのだと。しかも、この事業自体が幾つか戦後目的を変えながら今日まで来た。

 そして、我々もさまざまな地元の方々と一緒に運動をし、いろいろな専門家の方々に意見をいただいて運動をしたわけでありますが、そのときに、ある意味では生態系に恐らく変化があらわれるだろうということは指摘をされていました。しかし、現実問題、ノリが色落ちするということ、こういう形で生態系に影響があらわれたということは、正直、今回初めて我々もこういうことであったかと思った次第であります。

 その点に対して、ある意味では四年前のこの手術が、有明海というところに対して行った何か人為的な手術が、人間でいえばどこかに影響が四年近くになってやはりあらわれてきた。その点を考えたときに、やはり生態系からの一種のしっぺ返しなんだろうなと我々は思うわけでありまして、だとすれば、生態系の中に埋め込んだ金属装置といいましょうか、人為的に行ってきたことをやはり一度予断を挟まずに取り除くことを本当にしていかなければならないと思うわけであります。

 いずれにしても、今回のこの問題についてはぜひとも、かつてのことを思いますと、大臣含めてかなり今政治主導で前進をした、私はそう受け取るわけでありますが、大臣、この問題について今回どういう率直な御感想をお持ちであるのか。

 そして、これからこの調査が進んでいっても、またことしの冬になって、来年度以降、地元の方々にしてみれば、本当に生活の基盤である漁がもう一回できるのかどうか。結論が出たとはいえ、どのような調査がこの秋口までされるとしても、結果として自分たちが改めて業者としてやっていけるのかどうなのかということについて恐らく大変不安に思っているわけでありますが、その辺について大臣はどうお考えなのかということ。それと、長崎県の方々、諫早の方々の理解を得る見通し、どのような御決断で長崎県と交渉されるのか。その二点についてお尋ねして、多分終わりになるかと思いますが、御答弁いただきたいと思います。

谷津国務大臣 私、最初にこの問題が起きてきたときの調査については、予断を持たないで調査をする必要がある。ですから、水門は関係ないのだという方がいらっしゃいましたが、私はそれも予断だと申し上げました。また、水門をあけろ、あれが原因だ、水門が原因だと言われる方にも、私はそれが予断だというふうに申し上げました。ですから、予断を持たないで総合的に調査をする必要がある。それにはほかの要因もあるかもしれない。そして私は、最終的には、あそこの宝の海と言われた有明海を早く取り戻すことだ、これが私の最大の目標であるというふうに考えているわけでありますから、そういった面でしっかりと調査をしていただきたい。

 また、網入れが十月ということで聞いておりますから、私は一月二十九日に行ったときにもそういう話をしました。しかも、準備はもっと前からするのだから、できるだけ早く、中間取りまとめと言ってはなんですが、そういうようなものを出してほしいということもございまして、そういうことから、初めは十三年度からというふうに言われておったのですが、二月のうちに委員を決めさせていただきまして、三月の三日に第一回目の委員会を開かせてその調査に入るということについては、そういう意味で、できるだけ早く結果を見させていただいて、そして安心して網入れができるようにしていかなきゃならぬという考えで急がせているところであります。

 なお、長崎県の件でございますけれども、何人もの方が私どもに陳情に参られました。それは、あけてはならぬ、工事は中止してはならぬ、こういうふうな話でありましたが、その都度、実は私は、調査であけさせてもらいたいという話が出たときには、ぜひそのことはお願いをいたしますよというようなことも何度となく申しております。ですから、もし正式にそれが決まったならば、改めてまた参りましてよくお願いをしていきたいというふうに思っております。

渡辺(周)分科員 この諫早湾の干拓事業、いずれまた再評価というときには、今回のこの出来事をぜひ踏まえて、また改めての評価をしていただければなと思います。またこの問題については改めて別の場で御質問したいと思います。ありがとうございました。終わります。

谷川主査代理 これにて渡辺周君の質疑は終了いたしました。

 次に、後藤斎君。

後藤(斎)分科員 民主党の後藤斎でございます。

 今諫早湾の問題がありましたが、私は、最近の農業、農村そして林業者が持ついろいろな悩み、そしてこれからの農政のあり方についてお尋ね申し上げます。

 まず、現在、新しい食料・農業・農村基本法の中で、いろいろな基本計画がつくられ、プログラムが策定されております。昨年の十二月の二十五日には、農水省の方から、新しい経営を単位とした農業経営所得安定対策の今後の検討方針ということで、ペーパーもいただきました。

 それ以降、いろいろな形で、省庁再編の中で局も変わり、仕事のいろいろな割り振りも変わったというふうに思いますが、私は、昨年の農地法の改正に見られるような新しい武器をできるだけ農業や農業者の方に送り込んでいきたいという意思がまだまだ現場には伝わっていないというふうに考えております。

 二〇〇〇年農林業センサスの結果概要を見ても、五年前に比べて農家数では三十二万戸も減少し、そして、農業就業者に占める六十五歳以上の割合も四四%から五五%に上昇をしております。担い手の高齢化ということだけではなく、新規就農者も、特に若い方の就農者数は大変少ないものになっております。

 これは、もう一点つけ加えて言えば、農業集落の数も五千も減って十三万五千集落ということで、農業者のみならず農村も崩壊の危機に瀕していると言わざるを得ません。

 そんな中で、経営を単位とした農業経営所得安定対策ということで、従来の価格政策から所得政策へと、移行の方向性は私は正しいと思うんですが、なぜ若い方が農業に魅力を持たないか、そして就農者が少ないかといえば、それは単なる経営の不安定ということではなく、現行で言えば、長時間労働、そして所得不安定、なおかつ生涯所得も少ないということに私は起因しているというふうに思っております。

 冒頭、大臣の方から、この経営所得安定対策の方向性を進める中で、私は、生涯所得をどう見て、その中に経営安定対策を位置づけるかというふうな中で制度設計を行うべきだというふうに思うんですが、その点いかがでしょうか。

谷津国務大臣 先生おっしゃるとおり、生涯所得ということになりますれば、他産業並みの生涯所得、二億七千万前後というのを一つの目途にしまして考えておるところであります。

 そういう中から、経営所得安定対策というものを私どもは検討しているところでありますが、これは、農業の持続的な発展を図る上においては、その主たる従事者が地域における他産業並みの所得を得るということは非常に大きなことでございまして、そういう点から、効率的かつ安定的な農業経営を形成し得るというふうに思っているところでございます。ですから、そういうふうな農業構造を実現していくこと、これが必要であるというふうに思うところであります。

 これがために、効率的かつ安定的な農業経営を育てていかなければならない、そういう観点から、育成すべき農業の経営に対しまして、諸施策を重点的に、そしてこれはまた集中的に講じる必要があるというふうに考えておりまして、これらの諸施策を見直しまして再編を検討していくということにしているところでございます。

 また、その一方では、その一環といたしまして、育成すべき農業経営、経営全体ですね、この点をとらえまして、農産物の価格の変動に伴う農家の収入または所得の変動を緩和する仕組み等につきましても、我が国の品目別の価格政策の見直しあるいはまた経営安定対策の実施の状況、そしてまた農業災害補償制度との関連等も勘案をしながら、今検討を進めているところであります。

後藤(斎)分科員 今のお答えの中で私はぜひ対応していっていただきたいと思うんですが、ただ、一点、懸念せざるを得ないものがございます。

 昨年の三月に、農水省の方で、新しい食料・農業・農村基本法に基づいて「農業経営の展望」という冊子を出されております。この中で、大臣がおっしゃられたような効率的かつ安定的な農業経営という中で、農業構造の確立を目指すという、幾つかの農業経営の展望を踏まえて、農業経営類型、経営形態別に所得のあり方や労働時間のあり方についてかなり前向きな目標が設定をされております。まさに、地域ごとの他産業と遜色のない水準を生涯所得にしても確保する。具体的に言えば、おおよそ生涯所得を二・二億円から二・八億円に設定をし、そして、労働時間についても千八百時間を原則としながら二千時間を上限とするというふうな目標もございます。

 ただ、これは、細かく展望の概要を見ていきますと、現行の農業の構造から考えると大変目標が高いというか、大変難しい。それを下支えするには、まず、農業経営者の方が本当に経営拡大、規模拡大や生産性効率に向かって設備投資や、そして家族の方も含めた家族経営のあり方を考え、また法人化を考えていくということ、いろいろメニューをつけ加えていかなければならないと思うんです。

 私は、これからの経営単位の所得対策を考えるときにも、新規就農が十八ないし二十歳で行われる、そして一番、四十代、五十代というのが子供も大きくなりお金もかかるわけですから、それと、御議論をこれから進めていく農業者年金みたいなもののあり方、ライフステージごとにどんなメニューが具体的にあるかというのが、正直言って、いろいろな新規就農の支援センターとか市町村の役場や、そして農林省はもちろんですが、いろいろなメニューがあるということを、新しく入っていく方、そして、自治体の職員ですら、今、先ほども冒頭お話ししたような農業就業人口が少なくなり、そして地域によっては農業生産額が地域の産業の中で大変低くなるという中で、産業化という中でも兼任をして対応しているような状況まで落ち込んでいます。

 ぜひとも、そんな点で、私は、昨年の三月の「農業経営の展望」について、ちょうど一年弱たった中で、今農林省はこれをどう評価し、そして昨年十二月に打ち出された経営を単位とした農業経営所得安定対策の今後の検討方針を進めていかれるのか、お尋ねをしたいと思います。

須賀田政府参考人 先生御指摘のように、昨年三月に公表をいたしました「農業経営の展望」の中では、ライフステージに応じていろいろな施策を集中する、その方に努力もしてもらうということで、担い手の現役時代は農業所得の向上をだんだん図れるような展望をしておるところでございます。

 具体的には、五十五歳から六十歳ぐらいになったときに農業所得のピークが来るというふうに展望をしておるところでございます。また、リタイアをした後は、先ほどまさに先生御指摘のように、補助的な作業による農業所得とあわせまして、年金による所得確保ということを展望しております。

 まさに、これから、そういう展望の実現に向けて、自主努力も促しながら我々の施策も集中をしていきたいというふうに考えているところでございます。

後藤(斎)分科員 私は、十一月の農林水産委員会のときにもお尋ねをした点が一点ございました。

 そのときには、まだ、経営所得安定対策の全体的な大きな進めというのは、当時、御議論の中では農水省の正式な見解というのはなかったのですが、今熱心に進められているということです。

 そして、私が幾つかその中で勉強させていただいたもので、フランスに、一九九九年のフランスの新農業基本法に基づいた経営に関する国土契約、いわゆるCTEという制度がつくられております。これは、食料・農業・農村基本法の概念にもあります、農業の多面的機能、持続的発展、国土整備、いろいろな環境問題も含めて位置づけをされております。私は、今いろいろな形で御検討なさっている中に、ぜひこの新しい、フランスで導入をされたCTEのあり方も含めて検討の素材にのせていただきたいというふうに思う次第でございます。

 もちろんフランスは、農産物といえば大輸出国でございますし、また地理的環境も我が国とは違うことは重々承知しておりますが、やはり私は、これから農業や農村を考えるときに、新規就農者の方、そして今農村に、集落と言われているところに住んでいる方も含めて、そこに定住をしたいというふうに思う中で、農村の活性化や、そしてひいては新規就農者がふえ農業が産業として活力を再び取り戻すということで、フランスは大変きれいな農村を持つ、景観にも大変伝統的に配慮をする政策をとっている国の一つでございますので、その点につきまして、フランスのCTEについて今農水省としてどのような御評価をなさって、経営所得安定対策に取り入れていくことをお考えになっているのか、お尋ねしたいと思います。

田原政府参考人 お答えいたします。

 フランスのCTE、いわゆる経営に関する国土契約ということでございますけれども、中身的には二つの事項、すなわち一つ目は、生産物の品質向上でございますとか雇用の維持、創出、こういった経済的な事項、それから二番目は、地域管理でございますとか環境保全といったいわば国土、環境的な事項、こういったことを中身として国と農家の方の間で契約を結んでいただくというものでございます。

 この評価ということでございますけれども、非常に大ざっぱに、漠として申し上げますと、例えば、労働時間にゆとりがあるような、これまで兼業的にやっているような中小規模の経営、こういったところでありますと、そういった新しい事項にもある程度対応できるということで、所得確保という点ではそれなりの効果があるのではないかと見られています一方、大規模な農家あるいは労働集約的な農家、そういったところでは、そういった対応が、ゆとりができないというような面があるのではないかというのが一般的に考えられているところでございます。

 ただ、これは一九九九年から始まったということでございまして、フランスの基本法ができましたときに、フランスの大臣はたしか、このCTEは全国で五万件、こういったことを目指すというところだったようでございますけれども、昨年末の実績が三千七百件余りということでございまして、そういったフランスの実態自体を我々は十分に検証する必要があるのではないかというふうに考えている次第でございます。

 そういったフランスのCTEと、私どもがこれから始めております経営所得安定対策との関係でございますが、先ほど大臣の方からもお答え申し上げましたけれども、私どもが経営所得安定対策を考えていく場合には、まず、我が国の品目別の価格政策の見直しでございますとか、個別の経営安定対策の実施の状況、こういったことを十分に検証する必要がございますし、また同時に、こうしたCTEを初めといたしました諸外国の同じような機能を有すると見られます諸事例、こういったものも十分調査研究していきながら、よりよいものをつくり上げていくという姿勢で対応していきたい、かように考えている次第でございます。

後藤(斎)分科員 今お答えいただいたように、私もこのフランスの制度が一番いいということは決して思っておりませんで、お答えの中にもありましたように、いろいろな国の制度、そしてそれはなぜかといえば、大きく今までの農業政策の目標というか主眼を大転換しながら、担い手を育成し、そして食料・農業基本法をきちっと進めていくということだと思いますので、巷間言われるようないろいろな旅費の問題とか含めて、私は、そういうところに予算をきちっと使っていただいて、よりよいものをつくっていただくような御努力をぜひお願いしたいと思います。

 そして、先ほど若干触れました、新しい経営所得安定対策の一連の流れの中で、将来の農業者の年金の問題ということで、今年金法が国会に上程をされようとしております。

 私は、この農業者年金というのは、もちろん今まで果たしてきた政策的な役割、そしてこれからもそうであろうという中で、「農業経営の展望」の中にあります二・二億円から二・八億円というふうな生涯所得を確保する中で、どんな位置づけを持ち、そしてこれから農業者年金制度を他産業並みの生涯所得の確保という観点から位置づけていかれるのか、お尋ねを申し上げます。

須賀田政府参考人 先ほど来議論をされております、農業経営の担い手の主たる従事者といいますか、これが他産業従事者と遜色のない生涯所得を確保するという基本的な考え方の中には、リタイアした後は年金による所得確保というのが重要な要素として織り込まれておるところでございます。

 現在御提案を申し上げております農業者年金制度の改正におきましては、受給者、加入者に対して適切な経過措置というものを講じて、財政的に破綻をいたしました現行制度を処理するという一方で、担い手の確保が農政上の重要課題というものになっていることを踏まえまして、担い手に老後の安心を展望しながら農業経営を行っていただけるよう、現行制度にかわる新たな農業者年金制度を措置するということにしております。

 そういう意味で、今回の改正は、他産業並みの生涯所得の確保に資するという位置づけをなし得るものというふうに考えているところでございます。

後藤(斎)分科員 大きく変わる制度の中でございますので、いろいろな角度、そして海外の諸制度も含めた検討をぜひお願いしながら、真に農業者が自信を持って農業生産活動を営み、そして農村が発展できるような施策を講じていただけるように心からお願いを申し上げます。

 次の質問に移らせていただきます。

 今、山村が置かれている現状は、農村が置かれている現状よりもはるかに危機的な状況になっております。

 昭和五十年には十八万人いた林業就業者の方が、平成七年の統計では九万人と、さらに落ち込んでいるはずですが、半減をしております。そして、二十数年前では九割を木材の産出で林業収入を得ていた方たちが、今特用林産物が逆にかなり上昇をし、総収入の四割を得ているというふうなことです。

 今林業が持ついろいろな問題を、平成十三年度の林野庁の一般会計予算で公共事業が三千九百六十三億円、非公共で千四十六億円、トータルで五千九億円計上をしております。もちろん、今お話をしたような、木材生産を主体とした政策を抜本的に見直し、森林の多様的な機能、持続的な発展ということの施策の再構築、充実というものに沿った予算だというふうに思っています。

 ただ、これが現場に行くと、山村に住み、これからその地域で産業活動を営んでいくという方にとっては、まだまだ十二分な政策になっていないのかなというふうに私は思っています。

 私がよくお話をする方に、日蓮宗総本山の久遠寺のある身延という町があるんですが、そこで身延竹炭企業組合という、平均年齢が七十歳くらい、いわゆる高齢者の就農の方が企業組合をつくって、出資を一人一万円、今出資金が一昨年から五万円になって対応しているんですが、いろいろな諸制度を使いながら、窯をつくり、竹炭をつくり、それが今徐々にですが軌道に乗りつつあります。そういうふうな方たちをどう行政的に支援していくかということがこれからもっともっと重要になってくると私は思いますし、先ほどもお話ししましたように、特用林産物の今の林業総収入に占める割合というのが大変多くなっていきますし、これからも多くなっていくはずです。

 一方で、こういう竹炭も含めた木炭類、炭類の輸入も大変ふえ、素材の製造工程も違っていて、やはり輸入品が急増してくると、一生懸命木炭や竹炭をつくっている方々も大変価格的にダメージを受けるということがございます。

 今、このように、山村の中で、林業者の方の中で、特用林産物の振興を農林水産省が今後どういうふうに考え、そしてどんな体制整備を行ってくれるかということに大変関心がございます。その点について、農林省の方からお答えをもらいます。

中須政府参考人 ただいまお話のございました竹炭あるいは木炭などを含めまして、いわゆる特用林産物、一つは資源の有効利用ということもございますし、お話のとおり、農山村地域における収入源の一つでございます。また、大変雇用の場の狭い山村地域における雇用の創出ということもございまして、私ども、林業とともに特用林産物の振興を図っていかなければならない、こういうふうに思っております。

 特に、今お話のございました竹炭を含む木炭につきましては、最近の傾向として用途が非常に広がってきているということがございます。もとは御承知のとおり燃料用ということであったわけでありますが、今さまざまな形で多様な用途が広がっている、こういうことでありまして、そういう意味では、用途に応じた品質の向上とか性質の安定化、そういうものを推進しなければならない、こういうような状況にあるというふうに承知しております。

 従来から、林業構造改善事業等によりまして、こういった木炭の加工流通施設等の基盤整備、これを助成対象にしてきたわけでありますが、そういった状況に応じまして、これから、特に品質の向上というか、消費者の動向に合わせて物を供給していくという観点から、規格化に取り組みたいという関係者の意向がございます。ぜひ私ども、これを後押しをして規格化というものを成功させて、より需要の拡大ということが図れるように努力をしていきたい、こういうふうに思っております。

後藤(斎)分科員 今お答えをいただきましたように、いろいろな形で施策が充実していることは事実であります。私は、その施策を対応していただくときに、先ほども御答弁の中にありましたように、大変少ない就業機会の中で、なおかつ高齢者の方が多い。この身延の竹炭企業組合も、最高年齢の方は八十歳を超えんとする年齢でございます。そして、およそ非常勤の方を含めると五十人近い方が、リタイアをした人がメーン、最低でも四十六歳ぐらいの方が、生き生きとして生涯現役ということで対応なさっています。私は、単なる産業振興という観点だけではなく、高齢者そして就業機会のあり方の中でもぜひ御配慮を賜りたいと思っています。

 今ここにお持ちしたのは、その身延竹炭企業組合の最新作で、竹炭パワーシートというものでございます。これはまさに今、環境問題、シックハウスの問題、いろいろ話題になっているもので、消臭効果、除菌効果、清浄効果ということで、これは竹炭組合と旭化成が共同開発したものでございます。こんな形で、少しずつですが、私は、それぞれの企業努力の中で、いろいろな関係者の御努力で今までの炭という一つのものを踏み越えて、環境や地球に優しい、そしてなおかつ一番重要なことは、新しいものをつくっていくということが年齢を問わず対応されているという、その御努力を評価しながら、それに対してもっとその振興を図っていただければというふうに思います。

 ぜひ大臣、その中で、一つのきっかけになるかもしれませんが、山村そして竹炭ということにとらわれず、林業就業者、その地域の方がこれから自信を持ってこんな新製品の開発をしたりするものを後押ししていただけるように、大臣の方からも御答弁を一言お願い申し上げます。

谷津国務大臣 国としましても、これらのすぐれた機能を有する竹炭あるいは木炭の製造につきましては、多分需要の拡大がこれからも相当見込まれるというふうに思いますので、しっかりと支援をしていきたいというふうに思っております。

後藤(斎)分科員 時間もそろそろあれですので、最後に、私は、これから新しい食料・農業・農村基本計画、そして先ほど来の御答弁の中にありました経営所得安定対策を含めて、いろいろな政策がこれから進められようとしています。それは真に国民の視点からも御理解をいただけるような形でなければならないということはもちろんですが、私は、その中で、どんな制度がきちっと出てくるかというのは、働く方が本当に意欲を持って対応するような下支えが必要だというふうに思っています。

 労働環境が不安定であり、そして将来自分の職場がなくなってしまうんだというふうなことにおびえおののいていると、私は、いい仕事が決してできない。もちろん、大きな国の施策の中で、行政改革大綱という、できるだけ効率的にやることは必要なのかもしれませんが、私は、現場職員の能力を最大限出すような職場環境にしていっていただかなければいけないと思っています。

 特に、独立行政法人になる農林省関係の組織の方々もそうでございます。そして今、行政監察やいろいろな、民営化というふうに対応なさっている組織の方々も含めて、これから職員が意欲を持って働ける労働条件の整備についてもぜひ御検討し、その中で徹底していっていただきたいと思いますが、最後に大臣の御決意のほどをお願い申し上げます。

谷津国務大臣 農林水産省におきましては、本年の四月から試験研究機関などについては十七の独立法人に移行することになっておりまして、このすべての職員が国家公務員の身分、いわゆる公務員型の特定独立法人になるわけでございます。

 これらの独立法人の職員の給与等あるいは労働条件につきましては、その独立法人の長、いわゆる理事長が定めることになっているわけでございますけれども、その事務や事業の効率的なあるいは効果的な運営が図られるためには、各法人が労働条件をきちっと整備していかなきゃならない、そういう必要があるというふうに私は考えているところでありまして、このようなことを通しまして、働く職員が安心して熱意を持ってその任に当たれるように、私どもは適切に対処していかなきゃいかぬというふうに考えております。

後藤(斎)分科員 ありがとうございます。以上で質問を終わります。

谷川主査代理 これにて後藤斎君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして農林水産省所管についての質疑は終了いたしました。

 これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつ申し上げます。

 分科員各位の御協力によりまして、本分科会の議事を滞りなく終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午後零時一分散会




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