衆議院

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第1号 平成17年2月25日(金曜日)

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本分科会は平成十七年二月二十二日(火曜日)委員会において、設置することに決した。

二月二十四日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      北村 直人君    小泉 龍司君

      玉沢徳一郎君    中塚 一宏君

      永田 寿康君    坂口  力君

二月二十四日

 小泉龍司君が委員長の指名で、主査に選任された。

平成十七年二月二十五日(金曜日)

    午前九時三十分開議

 出席分科員

   主査 小泉 龍司君

      宇野  治君    北村 直人君

      玉沢徳一郎君    葉梨 康弘君

      梶原 康弘君    中塚 一宏君

      永田 寿康君    松本 大輔君

      赤羽 一嘉君    坂口  力君

   兼務 坂本 哲志君 兼務 根本  匠君

   兼務 古川 禎久君 兼務 御法川信英君

   兼務 下条 みつ君 兼務 山内おさむ君

    …………………………………

   農林水産大臣       島村 宜伸君

   農林水産副大臣      岩永 峯一君

   農林水産大臣政務官    大口 善徳君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       外口  崇君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房長) 小林 芳雄君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         伊藤 健一君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房統計部長)          小西 孝蔵君

   政府参考人

   (農林水産省総合食料局長)            村上 秀徳君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           中川  坦君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  白須 敏朗君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  須賀田菊仁君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            川村秀三郎君

   政府参考人

   (林野庁長官)      前田 直登君

   政府参考人

   (水産庁長官)      田原 文夫君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           桑山 信也君

   政府参考人

   (国土交通省河川局次長) 土屋 彰男君

   政府参考人

   (環境省自然環境局長)  小野寺 浩君

   農林水産委員会専門員   飯田 祐弘君

   予算委員会専門員     清土 恒雄君

    ―――――――――――――

分科員の異動

二月二十五日

 辞任         補欠選任

  玉沢徳一郎君     葉梨 康弘君

  中塚 一宏君     梶原 康弘君

  永田 寿康君     中川  治君

  坂口  力君     赤羽 一嘉君

同日

 辞任         補欠選任

  葉梨 康弘君     宇野  治君

  梶原 康弘君     中根 康浩君

  中川  治君     松本 大輔君

  赤羽 一嘉君     桝屋 敬悟君

同日

 辞任         補欠選任

  宇野  治君     玉沢徳一郎君

  中根 康浩君     中塚 一宏君

  松本 大輔君     永田 寿康君

  桝屋 敬悟君     坂口  力君

同日

 第二分科員坂本哲志君、古川禎久君、第三分科員御法川信英君、第五分科員根本匠君、第七分科員下条みつ君及び山内おさむ君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十七年度一般会計予算

 平成十七年度特別会計予算

 平成十七年度政府関係機関予算

 (農林水産省所管)


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     ――――◇―――――

小泉主査 これより予算委員会第六分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることになりました。よろしくお願い申し上げます。

 本分科会は、農林水産省及び環境省所管について審査を行うことになっております。

 なお、各省所管事項の説明は、各省審査の冒頭に聴取いたします。

 平成十七年度一般会計予算、平成十七年度特別会計予算及び平成十七年度政府関係機関予算中農林水産省所管について、政府から説明を聴取いたします。島村農林水産大臣。

島村国務大臣 平成十七年度農林水産予算の概要を御説明申し上げます。

 初めに、予算の基礎となっている農林水産施策の基本方針について御説明いたします。

 昨年九月に農林水産大臣に就任して以来、農林水産分野において、消費者、生産者の視点を重視した構造改革や、WTO、EPAを初めとする国際交渉などに全力で取り組んでまいりました。

 農林水産業と農山漁村は、人間の生命の維持に欠くことができない食料の安定供給のほか、国土、自然環境の保全、良好な景観の形成、文化の伝承といった多面的な機能を有しております。このような農林水産業、農山漁村の健全な発展を図ることが、真に豊かな国民生活と我が国経済社会の繁栄の基盤になるとの信念に基づき、今後とも内外にわたる諸課題の解決に果敢に取り組んでまいる所存であります。

 次に、十七年度農林水産予算について、その枠組みを御説明いたします。

 平成十七年度一般会計予算における農林水産予算の額は、関係府省計上分を含めて、二兆九千六百七十二億円となっております。その内訳は、公共事業費が一兆三千百二十四億円、非公共事業費が一兆六千五百四十八億円となっております。

 平成十七年度の農林水産予算は、消費者重視の食料供給・消費システムの確立、農業構造改革の加速化と農業環境・資源保全対策の確立、未来志向の取り組みに対する積極的な支援を図るとともに、森林吸収源十カ年対策第二ステップの推進等の森林・林業政策や、元気が出る水産業の確立等の水産政策を展開するとの観点から、重点施策に思い切った予算配分を行うなど、新たな政策展開が図られるよう編成いたしました。

 以下、農林水産予算の重点事項につきましては、委員各位のお許しを得まして、御説明を省略させていただきたいと存じます。

 よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。

小泉主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま島村農林水産大臣から申し出がありました農林水産省関係予算の重点事項の説明につきましては、これを省略して、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小泉主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小泉主査 以上をもちまして農林水産省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

小泉主査 質疑に入るに先立ちまして、分科員各位に申し上げます。

 質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力をお願いいたします。

 また、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。葉梨康弘君。

葉梨分科員 おはようございます。大臣には、連日御苦労さまでございます。自由民主党の葉梨康弘です。

 本日は、新食料・農業・農村基本計画と食料自給率の問題について、幾つかお尋ねを申し上げたいと思います。

 一月二十六日付、もう一月前になりますが、読売新聞ですが、「農水省は二十五日、現在四〇%の食料自給率(カロリーベース)を二〇一〇年度までに四五%に引き上げる現行目標を、二〇一五年度に五年間先延ばしする方針を決めた。」とあります。昨日の企画部会でも、カロリーベース四五%、平成二十七年度までという数字が提示されたと伺っております。本日は、金額ベース自給率じゃなくてカロリーベースということで議論させていただきたいんです。

 新聞とか野党は、どうしても、こういうことをやりますと先延ばしという批判を行いがちです。でも、この問題については、私も加わって現在党内で熱心な議論が行われておりますし、私自身も、この五年間の劇的な情勢の変化の中で、やはりやむを得ない面はあるだろうと思います。ただ、このことをしっかりと国民に説明していくことが必要だと思います。

 そこで、まず第一に、現在の計画がうまくいかなくなったら先延ばしをするという論もあるけれども、私自身は、多面的機能あるいは消費者への呼びかけ等を盛り込んだ現行の計画は大いに意味があったものだというふうに思っています。現在の基本計画について、その評価を農水省から伺いたいと思います。

小林政府参考人 お話ございましたように、平成十二年三月に現在の食料・農業・農村基本計画が策定されました。これに沿いまして、四つの基本理念が示されております。食料の安定供給の確保、多面的機能の発揮、農業の持続的発展及び農村の振興、こういうような食料・農業・農村基本法の四つの理念でございます。

 こうした施策を推進してまいりましたその中で、まさに食料・農業・農村に関する政策が、食料供給や国土や自然環境の保全などを通じまして毎日の国民生活に密接に関連している、こういったことについての理解が国民の皆さんに広がりつつあるというふうに私ども考えているところでございます。

 現在、この三月に新しい計画の策定に向けて作業を進めておりますけれども、今後の政策推進の指針となる新たな基本計画につきましても、農業者だけではなくて国民全体の視点から食料・農業・農村政策の展開を図っていく、引き続きこういったことに重点を置いてまいりたいと思っております。

葉梨分科員 ありがとうございました。

 そういった意味で、いろいろと新しい施策、新しい観点を盛り込んで、私は一定の評価をできる現行の計画だと思うんですけれども、やはり押さえておかなければいけないポイントというのは、一定の評価ができるとしても、現行基本計画のままでなぜ平成二十二年度までの自給率目標の達成は困難というふうに考えられるのか、そこの理由をお聞かせ願いたいと思います。

村上政府参考人 お答えいたします。

 現行の基本計画の食料自給率目標を達成するためには、消費面では、米の消費量を維持する、それから、油脂類、肉類の消費が抑制されまして栄養バランスのとれた食生活が実現するということ、それから生産面では、米以外の品目の需要に即した生産拡大ということを前提の条件としていたわけでございます。

 しかしながら、その後の推移で、消費面では、米の消費の減少が継続いたしておりまして、栄養バランスの改善が進んでいないということがございます。それから、生産面では、基本計画策定後、麦、大豆などにつきましては目標水準を超えるまでに生産量が増加しておりますが、これら以外の品目については総じて生産量が減少しているというような状況になっております。

 こういうようなことから、こういう趨勢が継続するとすれば、平成二十二年度の食料自給率目標の達成は困難と言わざるを得ないという状況でございます。

葉梨分科員 お話を伺っていますと、やはり米の消費が問題だなという気がいたします。これは私、時々冗談でも言っているんですが、この間栄養士の方とお話をしていたら、よく最近若い方というのは、ダイエットをするときに御飯を半分ぐらい残すんです。だけれども、それよりはやはりおかずを、そもそも御飯というのは余り残しちゃいけないんですけれども、おかずを残した方が栄養学的にはいいんじゃないかということを聞いていたら、やはりそっちの方がいいと言うんです。やはり、ここら辺の消費者の意識というのはどこまで理解が深まっているかということ、ここのところはすごく大きなポイントだなというふうに思います。

 ただ、私は、新食料・農業・農村基本計画が制定された当時、消費者が実のところを言うと本気で改革を考えていたかどうか、私、まだ疑問だと思うんです。また、生産者の方も、担い手施策というのが本当にこれは村を守るために必須だという危機感があったかどうか、これもちょっと疑問で、単なる今までの大規模化、構造改革の延長だと考えていた節もないではない。ただ、その意味で、この現行計画というのは新しい観点からいろんなメニューを提示して意識づけをするという、その大きな意味はあったんだろうと思います。

 ただし、この五年間で大きな変化がございました。消費者の観点からすると、BSEの問題を初めとして、食の安全に対して大変な危機感を持つようになった。それから、生産者も、これはちょっとマイナス要素かもわかりませんけれども、農村が極めて高齢化していますから、本当にもう担い手にある程度選択と集中をしなければ、農村自体がやっていけないという危機感を持つようになってきた。そして、このWTOです。すべての国の農業政策に大きな転換をもたらすことになります。

 ですから、こういった国内的な構造改革への取り組み、それからWTOのルールをマッチングさせていくこと、これがこれからの時代の新しい計画の中では非常に大切だなという感じを持っています。

 このような諸情勢の劇的な変化の中で、日本型の直接支払い、あるいは消費者の意識改革など抜本的な施策体系を提示する必要があると思います。このような大きな改革には、やはり私はまだ十年程度の期間が必要かなという気がいたしますが、このように理解をしてよろしいのか、また、新しい計画に向けての大臣からの御決意をぜひとも伺いたいと思います。

島村国務大臣 今回策定する基本計画でございますが、現行の基本計画策定後の食料・農業・農村をめぐる大きな情勢の変化を踏まえまして、今後の農政全般にわたる改革の指針となるものであります。こうした政策の改革におきましては、新たな施策の準備や効果の発現に一定の期間を要する、このことを踏まえると、基本計画の計画期間としては、ただいま御指摘のありましたように十年程度を見通して策定することが適当であると考えております。

 一方で、スピード感を持った農政改革が求められておるわけですが、このため、基本計画で定めた施策推進の手順、施策の実施の時期と手法、達成目標などを明示した工程表を作成いたしまして、計画的かつ着実に政策改革を進めていく考えでおります。

葉梨分科員 ありがとうございます。ぜひとも着実に進めていただきたいと思います。

 一方で、私の地元でも実は動揺が広がっております。というのは、多分これからこの計画ができてきて、この計画自体は五年間先延ばしの意味しかないというふうな形で批判されるであろう民主党が昨年の五月二十六日に民主党農林漁業再生プランというのを出しました。一兆円を各戸にばらまいて、そして、必ずしも構造改革の痛みをする必要もない、そして、政権獲得後十年間で自給率を五〇%、一〇%もアップするということです。ですから、自民党は四五%と言っていて、しかも構造改革の痛みを強いている。ところが、構造改革の痛みも強いないのに、つくればつくっただけ売れて、それで、政府も多分買ってくれるんだと思いますけれども、五〇%になる。こんないいことはないと言って、私の地元でも相当動揺が広がっております。

 そこで、そこら辺のところを少し検証させていただきたいと思うんです。

 まず、つぶさにこの民主党の計画というのを見てみますと、一〇%アップさせるというのを、一番の要素は小麦なんですね。小麦を四百万トン生産すると、それだけで自給率を八%アップさせる効果がある。小麦は今日本では六百二十万トン需要されていますから、そのうちの四百万トンは自給するということなんですけれども、このなぜ四百万トンかということの根拠を聞いてみると、どうも多分これは、過去我が国が裏作などで小麦を四百万トン生産した実績があるということでその四百万トンをそのまま計上したということなんです。

 でも、それが本当に可能かどうかという問題があります。そもそも、今まで我が国は四百万トンという小麦を生産したことがあるのは事実かということ。それからもう一つは、我が国で生産される小麦は、例えば多く使用されるパンとかパスタなどに使用されるものは私は少ないと伺っているんですけれども、その理由について御教示願いたいと思います。

小西政府参考人 我が国におきまして、小麦の生産量が最も多かったのは昭和十五年の百七十九万トンでございまして、過去において小麦を四百万トン生産した事実はございません。

 なお、小麦のほかに二条大麦、六条大麦、裸麦を合わせました四麦合計で見ますと、昭和二十九年に四百十万トンの生産実績がございました。

村上政府参考人 パンやパスタ用の小麦の需要の関係について申し上げたいと思います。

 国内において、パンやパスタ用の小麦の需要量は約二百万トンございますけれども、これらの製造には、たんぱく含量の高い小麦が必要ということでございます。しかしながら、国内産小麦は、湿潤な気候の自然条件などによりまして、たんぱく含量が低いということがございます。主にうどんなどの日本めんの原料に使用されている状況にございまして、パンやパスタへの使用は非常にわずかな量にとどまっているという状況でございます。

葉梨分科員 私もびっくりしたんですけれども、四百万トンの小麦をつくったというのはうそだったわけなんです、百七十九万トン。ですから、その差は大麦、かつての戦前あるいは戦中にかけての大麦の使われ方というのはいわゆる麦ごはん、麦飯、ですから糧食ですね。ですから、お米の代替物として使われていたものがそうなんで、民主党が言っているように小麦を四百万トン使って、それで今答弁ございましたように、これを今つくっているパンとかパスタというのに使えるということは、まずほとんどあり得ないんじゃないかというような感じがいたします。

 何でこういうことを申し上げるかというと、副大臣が滋賀の出身なんですが、私は茨城でございまして、麦の質については、東の茨城、西の滋賀、大変湿潤で、うどん粉にしか向かないと言われている専ら評判の地域でございますので、そんなことをちょっと申し上げたんです。

 いずれにしても、これはちょっと大問題、相当なまやかしだろうと思います。

 さらに民主党は、最終的に六〇%の自給率を目指すために小麦は七百七十九万トンつくると言っています。これは、現在の需要量すら超えている。まず、そんなものつくれるかどうかというのが問題だし、つくったとしても、湿潤な気候でうどん粉にしか向かない。うどんを七百七十九万トンも食えるわけはないわけです。

 今現在、小麦粉は六百二十万トンしか消費されていない。では、余った麦は政府が毎年買って備蓄するんだろうか。あるいは、日本人が食べるパンあるいはパスタ向けの小麦は、これは輸入を禁止して、それで消費者に日本の麦を食べさせる、そういうような方向に日本の麦を使わせるしか、民主党のやり方ではあり得ないということになります。

 御質問ですけれども、パンとかパスタ向けの小麦の輸入を禁止して、あるいは消費者に日本の麦だけを使わせるという方策があるんだろうか、あればお聞かせ願いたいと思います。

村上政府参考人 お答えいたします。

 先生御案内のとおり、WTO協定上、国内産の麦の振興のために輸入を禁止するのは難しいわけでございますけれども、仮に、パンやパスタに適した外国産小麦の輸入を行わないで国内産小麦を使用させるということになりますと、製品の大幅な品質低下を招くことになりまして、なかなか消費者等の理解は得られないのではないかというふうに思っております。

 また、こうした場合、パンやパスタの製品輸入がむしろ増加するということが予想されまして、国内産小麦の需要拡大には直接にはつながらないのではないかということでございます。

 消費者ニーズにこたえた形で国産小麦の需要を拡大していくためには、品質管理の強化、品種改良などによってこのような品質面での課題を克服することが必要ということで、現状では、需要を大きく拡大することは難しいのではないかというふうに考えております。

葉梨分科員 麦の関係はこういうことで、一〇%のうちの八%を占める小麦についての統計的なもの、それから使用法ということで今も農水省から御答弁があったということです。これはしっかり議事録に残していただきたいというふうに思います。

 それと、あと生産で、各農家に一兆円をばらまくというかお渡しして、それで生産をする、これが直接所得補償になるというようなことを言われています。そのうちの千五百億円というのは、多分これが米の生産調整、ここから出てくるというふうに思われます。それからあと残りの八千五百億円というのは公共投資、これを削って充てるんだというようなことを言われています。公共投資ということで充てることになりますと、まず最も想定されるのは農林水産関係の公共投資、これを削るということになろうかと思います。ただ、農林水産関係の公共投資、もしもこれを削ったとしたら……(発言する者あり)いや、これはもしもの議論ですから、これはちゃんと押さえておかなきゃいけないんです。また、農村の保全あるいは生産面からも、自給率アップのためには農林水産関係の公共投資というのは必須だろうと私は思うんです。

 ですから、これを廃止した場合、どのようなことが農村において起こり得るのか、率直なところを御説明願いたいと思います。

小林政府参考人 農林水産公共事業でございますが、国の基本的な役割であります食料の安定供給、あるいは国土、環境の保全に向けた主要な施策の推進に不可欠なものでございます。

 来年度予算案におきまして、私どもの公共事業、一兆三千億円ほど計上しておりますが、その中では、基幹的水利施設の整備、更新とか、生産性の高い農地を整備する農業農村整備、こちらに約八千億円、それから森林の多面的機能の発揮を図るための森林整備でありますとか、山地災害の防止のための治山事業、こういったところに約三千百億円、さらには漁場、漁港の整備など水産物の生産供給対策、こちらに約千七百億円、こういったところが主体でございます。

 こういった役割を果たしておりますので、私どもの農林水産関係公共投資、これをすべて廃止ということになりますと、例えば生産性向上などの施策が進まずに、食料の安定的な供給に重大な支障を来します。また、台風、集中豪雨、地震などに起因した災害からの国民の生命財産の保護にも重大な支障が生じるということでございまして、私どもとしましては、引き続きコスト縮減とか事業の重点化、効率化を図りながら、こういった事業の適切な執行に努めていきたいと考えているところでございます。

葉梨分科員 どうもありがとうございました。

 私も地元でよく説明いたしまして、地元の農家に動揺が広がらないように、民主党のプランの非現実性をしっかりと説明してまいりたいというふうに思っております。

 そして、島村農水大臣にはぜひとも、新しい食料・農業・農村基本計画、これをしっかりと策定していただいて、抜本的な消費者の意識改革、農政改革を進めてほしいと思います。

 そしてまた、食料安全保障の観点から問題となるのは、やはり中国の動向でございます。そこで、一つ御質問ですが、中国がカロリーベースで食料の輸入国に転落したということは非常なショッキングな事実でございます。ただ、日本の農家もそうなんです、生産者も消費者も、広大な中国にはまだまだ天然の広大な田畑がある、そういうふうに信じている方が多いんです。

 ところが、私自身、考えてみますと、中国の生産力、これは砂漠化も進んでいますし、もともとあれだけ人口の多い国で、中原、江南、華南といった非常に狭い地域に人口が密集している。むしろ逆に、ちまちました農業を行っているんじゃないか、私はそんなような感じをいたします。

 そこで、中国の人口一人当たりの耕地面積、農地縮小、さらに中国の農業生産の問題点についてお伺いをしたいと思います。

伊藤政府参考人 お答えいたします。

 今御指摘のように、中国は、一般的には農業大国というようなイメージで見られることが多いかと思いますけれども、実は、例えば国民一人当たり経営耕地面積でいいますと〇・一ヘクタール、大変土地資源が実は乏しい国でございます。また、農家一戸当たりで見ますと〇・五ヘクタールということで、日本よりさらに零細であるという経営構造になっております。

 また、最近の動きとしましては、農地転用がかなり進んでおりまして、農地がかなり減少してきているということで、例えば、二〇〇〇年から二〇〇三年の三年間だけで六百六十五万ヘクタールが減少しているということで、日本の耕地面積よりも大きいものが減少するというような状況になっております。

 こういうこともございまして、これだけではございませんけれども、こういった要因の中で、今先生から御指摘があったような、二〇〇四年には農産物の純輸入国になっているという状況になっております。中国にとっては、農業、農村、農民問題をどうするかということが大変大きな課題になっておりまして、こういったことを今一生懸命取り組もうとしているように伺っております。

 今後とも、中国のこういった食料生産あるいは需給動向には注視していく必要があると思っております。

葉梨分科員 ありがとうございました。

 大変怖い話で、この間伊藤審議官から伺ったのは、日本では一人当たりの耕地面積は〇・〇四ヘクタール、中国は〇・一ヘクタール。二・五倍とはいいながら、水田は、ほとんど日本は水田ですが、畑地になりますと生産力が非常に落ちてくるし、また砂漠化も進んでくるということになると、一人当たり〇・一という状態が日本と相当どっこいどっこいじゃないか。

 そうなりますと、このことは日本の消費者にもしっかりと伝えていかなきゃいけないし、また中国の当局者にもWTOなんかの場で、危機感を持ってもらうようにぜひとも働きかけをお願いしたいと思うんです。

 実際問題として、今お話のあったような、本当の正確な情報というのが消費者に伝わっているのかどうか、伝わっていたとしても、本当に消費者の腹に落ちているのかどうかということを私は非常に危惧しております。

 例えば、私は、これはアイデアの段階ですけれども、デニーズだとか、ガストだとか、すかいらーくだとか、いろいろな外食産業がございます。そこの外食産業で、それぞれメニューにカロリーは表示しているんですけれども、自分のをどこから買い付けてきてだとかなんとか全部わかるわけですから、メニューにカロリーベースの自給率を表示させたらいいじゃないかぐらいの気持ちも持っているんです。

 今現在、消費者団体も、食の安全、BSEの問題からいろいろと相当理解を深めてきております。ただ、さっき申し上げましたように、御飯だけ残すといった誤ったダイエットな食生活、こういったものは容認する一方で、自給率を上げると、消費者団体の側でも、何か食生活の押しつけになるんじゃないかという意識を持っているような感じをいたします。

 ただし、そこのところは、やはり消費者にも本当に危機感を持ってもらいたい。私たちとして、正確な情報を消費者に伝え、そしてその中で、先ほど申し上げました民主党のプラン、その非現実性についてもまた訴えていく、そういったことも必要だと思います。大きく農政というのは転換して、農政が生産者重視から消費者にも軸足を移したものに変わってきております。

 そして、島村農水大臣、東京選出ですけれども、まさに象徴的な意味として、農水大臣が先頭を切って、やはり消費者、生産者両方をにらんだ農政を展開していただけるものだというふうに思っていますが、最後に、消費者に対する正確な情報提供の必要性、そして今後の消費者団体との連携方策について、島村大臣からお伺いをしたいと思います。

島村国務大臣 大変よく勉強されている御質問をいただいて、心から敬意を表します。

 国民の健全で健康的な食生活を推進するためには、消費者がみずから正しい情報に基づいた食生活を営むことが大前提になります。

 農林水産省では、食生活指針などを活用して、バランスのいい食習慣の確立、農産物や農業についての正しい知識の普及などを促進する食育の取り組みを、消費者団体のほか、食にかかわる関係者の方々と連携しつつ推進しているところであります。

 今後とも、食生活指針を具体的な行動に結びつけるフードガイドを策定、普及するなど正しい情報提供を行うことにより、米を中心とした、栄養バランスにすぐれた日本型食生活が実践されるよう努めてまいりたいと考えております。

 なお、前回、現行の食料・農業・農村基本計画では、食料自給率を平成二十二年までに四五%にしよう、こういうふうに策定してきたところでありますが、残念ながらお米の消費が四・八キロですか、ぐらい予定より減少したものですから、その一方では、日本では生産のきかない肉とかあるいは油脂類へむしろ食が進んだために、我々が意図した四五%は実現がなかなか難しくなってきて、今回、五年延長するような羽目になっているわけですが、今後も国民のこの辺の理解や協力がないことには、この我々の目標はかなえられないわけであります。

 先ほど来御指摘があるように、まさに国民によく我々は情報を提供する一方で、国民の皆さんにも、やはり国益に照らした食生活、そしてこれは同時に、御本人のためにも美容や健康のためにいいわけでありますから、ぜひ世界的なブームを、他国に全部とられるのではなくて、日本国内でむしろこれを普及させたい、こう考えているところであります。大変御指摘、いいところをついていただいたことに感謝いたしたいと思います。

葉梨分科員 ありがとうございました。

 最後に大臣がおっしゃられたのは非常に重要なポイントで、特にこの国会での食育基本法、これをぜひとも通すように私たちも努力をしなければいけないということを申し上げたいと思います。

 また、あとちょっと時間がございますので、これは質問にはありません、私ごとなんですが、今、ビジット・ジャパンのキャンペーンというのをやっていますけれども、日本の英語のガイドブックだとそうなんですが、大体ショッピングとかそんなことだけしか書いていない。

 私はインドネシアに三年間ほど大使館でおって、向こうの、特に欧米がインドネシアのガイドブックを書くと、日本のことをどう書いてあるかわからないんですが、まず歴史があって、その次に水田のエコロジーという項があるんです。ですから、その国の成り立ちとして、非常に自然科学あるいは社会科学も含めて深い理解をしながら、インドネシアという国の成り立ちをガイドブックでも書いている。ですから、そこら辺のところが、食育も含めて、我々国民というのが何かショッピングとかそんなのばかりに行ってしまっているということをやはり反省しなければいけないのかな。

 その意味で、今大臣のおっしゃられた、本当に重要なポイントですので、新しい計画をつくる中で、またそれを実行する中でぜひとも頑張っていただきたいということを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

小泉主査 これにて葉梨康弘君の質疑は終了いたしました。

 次に、根本匠君。

根本分科員 自由民主党の根本匠です。

 私は、きょう、日本の農産物の輸出の振興、そして米の値段の問題、これについて御質問をさせていただきたいと思います。

 日本農業に活力を与え、そして日本の農業の自給率を高める、自給力を高める、こういう観点からも、新たな分野として農産物の輸出振興、これが非常に重要になってきていると思います。

 十年前、私が当選したころは、日本の農産物を輸出する、こういうことは考えられておりませんでした。米が輸出できる、こういうことも想定されておりませんでした。国際化というのは国際間の厳しい競争、大競争時代。私は国際化とは一つは国際的な大競争だと思っておりますが、日本の得意わざである製造業も、一九九〇年代の後半は国内産業の空洞化があらわれて、そして日本の工場が地方からどんどん中国に工場を移転する、こんな空洞化現象が見られました。

 この製造業の競争力をいかに取り戻すか。これは、経済の構造改革、あるいは科学技術で国を興す科学技術創造立国路線。産官学の連携の強化や、あるいは基礎研究に思い切って投資をする、そして応用段階の研究開発技術も応援する、競争的な資金も導入する、こういう科学技術創造立国路線でさまざまな政策体系に取り組んでまいりましたので、今や大学発のベンチャー企業もどんどん出てくる。変わってまいりました。日本の国際的競争力、製造業の部分では、私は、力強く復活して回復してきたと。そして、最近では、日本の工場の日本回帰という現象も出てまいりました。

 農業も、海外からの輸入で、いかにして農業を守るか、こういう守りの農政、農業をやってまいりましたが、実は最近、日本からどんどん海外に工場が分散する、一方で、特に東アジアを中心に、中国を初め海外の経済力が高まってくる。経済力が高まってきますと、その反面で日本の農産物も輸出できる。海外で、高くても売れるような状況も出てまいりました。

 実は、こういう状況が出てきたというところは、当初私は、国内産業の空洞化は日本にとって非常に大変だと思って、いかにして空洞化をとめるかというところに関心を持って、製造業の科学技術創造立国路線をやってまいりましたが、一方で、逆にこれが、周辺の国の経済力を高めることによって農業に新しい光ももたらす、出てくる、これは私は重要な視点だと思います。

 最近、日本の農産物も非常に有名になりましたが、帯広の長芋が台湾に輸出される、あるいはリンゴが中国やイギリスに輸出される、米も海外に輸出される、こういう農業の非常に新しい面が出てまいりました。そして、こういう観点から、農林水産省も農産物の輸出振興に最近力を入れておりますが、農林水産省として、輸出促進に関する取り組み方針、そして目標はどうなっているか、大臣にお伺いしたいと思います。

島村国務大臣 農林水産物、食品の輸出促進についてですが、攻めの農政の重要な柱として、農業者あるいは農業団体や食品産業による取り組みを促進するための支援策を積極的に展開してまいる考えであります。

 また、関係府省、地方公共団体、関係団体などの幅広い関係者から構成されます協議会を早期に設立いたしまして、関係者一体となったいわば取り組み体制を構築するということで、今準備中であります。

 これらの点を新しい食料・農業・農村基本計画に盛り込むこととしているほか、輸出促進に向けた関係者の機運を高めるため、別途、輸出拡大目標の策定について現在検討しているところです。

 御指摘のありました長芋にいたしましても、そのほかホタテにいたしましても、私は、近い将来、最近の輸出、いわば運送技術の発達をとらまえて、日本のすぐれた野菜類、ちなみに世界で二百種類以上の野菜を食べているのは日本人だけですし、しかも内容のいい、新鮮さにおいても屈指のものでありますから、現在の輸送能力であればこういうことも可能であるので、これをむしろ国際市場に大いに売り出していくというような気持ちも大事なんだろう、こう考えますので、まさに御指摘の点、それらも非常に大事なことだというように考えておるところであります。

根本分科員 ぜひ強力な取り組みをお願いしたいと思います。

 今、島村大臣からも具体的な取り組みのお話がありました。私も一点申し上げておきたいのは、実は今私も、島村大臣がやっておられた自由民主党の広報本部長をやらせていただいておりまして、大変光栄に存じておりますが、実は、「自由民主」の新年号には、小泉さんにしっかりと農政を語ってもらいたいということで、農政をテーマにして生産者の声をくみ上げてもらいました。

 そこに輸出振興の話が出てまいりまして、生産者の声で、生産者が、では実際輸出を考えようと言っても、私もこれはなかなか大変だと思うんですね。今も、協議会の設置や関係団体の皆さんの機運を盛り上げるというお話もありました。生産者の方の体験に学ぶというのは、私は非常に大事だと思っております。

 多少その内容を紹介しますと、リンゴを輸出した方、これは片山さんという方が出席をしていただきました。この方は、小さなリンゴを今欧州に出しているんですね。最初は、大きいリンゴを出したら、大き過ぎて加工向けだと言われて、一番小さな王林という品種をイギリスに出しています、最近は大きいリンゴを中国向けに出しました、こうおっしゃっておりました。そして、ここが非常におもしろいんですが、どちらも日本国内では大き過ぎたり小さ過ぎたりして余り価値を認めてもらえないものを、認めてくれる国を探してみたら、輸出することができましたと。これが非常に私も、なるほどね、こう思ったんですね。

 ただ、こういうものが売れるようになるまでには試行錯誤がありまして、イギリスには小さなリンゴを輸出できるようになるまでに四回も五回もサンプルを送って、やっと七十ミリの青いリンゴを英国人は好むということがわかりました、こういうことなんですね。その片山さんに言わせますと、スカンディナビア及び英国は七十ミリぐらいの青いリンゴ、ちょっと下がってラテン民族になると、八十ミリのちょっと赤いリンゴが好まれる、こういう好みの差について情報を集めていただければと思います、こういう提言をされているんですね。

 なるほど、これは非常に大事なことで、相手国にどういうものが売れるか、こういうものを国がいろいろなチャンネルを通じて、一農業生産者あるいは農協だけでは対応できない、やはりこういう共通なものについて、国がある程度対応することが必要だと思っております。こういう点で、例えば、国が有望な輸出先についての国別の市場調査を行って、その成果を関係者が共有する、こういうことを考えてみたらどうかと思っておりますが、どのようにお考えか、聞かせていただきたいと思います。

伊藤政府参考人 お答えいたします。

 輸出の促進には一生懸命取り組んでいきたいと思っております。

 その際に、今先生から御指摘のありましたように、嗜好ですとかあるいは食生活、いわゆる市場の動向についてきちっと調査するということは大変大事だと思っております。また、このほかに、例えば検疫ですとか通関、そういった相手国の輸入制度、あるいは決済等の商慣習といった流通の仕組み、そういったものを含めまして、情報収集、分析するということは大変大事だというふうに思っております。

 こういうことで、政府としましても、こういう情報を収集あるいは分析をいたしまして、データベース化をして皆さんが利用できるようにするとか、あるいは、輸出志向がある生産者の方々に対しまして輸出促進セミナーを開く、あるいは、先ほど大臣からお話がありましたように、こういう関係者の協議会をつくりまして、そこで情報を共有する、こういった手段を通じまして、情報の共有化には努めていきたいというふうに思っております。

根本分科員 ぜひ強力にやっていただきたいと思います。

 それから、ちょっとジェトロの関係についてお伺いしたいと思います。

 ジェトロはそもそも中小企業の輸出を支援しよう、こういう役割もあって、製造業についてはさまざまな取り組みをやってきたと思いますが、新たな農産物の輸出という観点から、ジェトロがどういう取り組みをするかその取り組み、あるいは役割、これからの方向性というものについてお伺いしたいと思います。

桑山政府参考人 お答え申し上げます。

 今議員御指摘のとおり、我が国の農林水産物は大変高い品質を備えておりまして、輸出拡大に十分期待できる分野だと私どもも認識をしております。

 私ども経済産業省といたしましては、今御指摘いただきましたジェトロ、日本貿易振興機構でございますが、今まで海外市場への販路開拓に向けまして大変経験を持っておりますので、そういう知見を生かしまして、今御指摘のとおり、海外での市場調査、あるいはいろいろな海外での輸入手続の調査、そのようなことをいたしまして、あるいは、海外の見本市の出展支援というようなこともしていきたいと思っております。

 特に、今御指摘のとおり、関係者の方々との情報共有、そういうことが大変大事だと思っておりまして、今大臣のお話にもありましたけれども、農林水産ニッポンブランド輸出促進都道府県協議会というようなものが組織されておられますので、私どもも関係省庁の一機関として、あるいはジェトロも関係機関の一人としてそこに参画をさせていただいて、そういうところで、皆さんやる気のある方々がいろいろと取り組みをされることにできるだけ具体的なお手伝いをし、情報提供、情報共有をしていきたいというふうに考えております。

根本分科員 私も、輸出振興に関するジェトロの役割には大きな期待を持っておりますので、ジェトロも新たな分野として精力的に取り組んでいただきたいと思います。

 次に、先ほども御答弁がありましたが、検疫の問題について質問をさせていただきたいと思います。

 この「自由民主」での対談でも一つ指摘がありましたが、帯広の長芋、これは台湾に輸出されているわけでありますが、長芋の場合にはどうしても検疫がきつい、新鮮なものを多くの人に食べてもらうには検疫がスムーズになるのが一番だ、こういう御意見もありました。

 さらに、例えば中国では、私もまだ直近の状況は確認しておりませんが、ナシとリンゴ以外は植物検疫上輸入が禁止されている、こう聞いております。やはり、輸出先の動植物検疫など輸出をする際に障害となっているものについては、これを撤廃するための努力をする必要があるのではないかと思いますが、この点についてお尋ねしたいと思います。

伊藤政府参考人 輸出を促進していくに当たりまして、輸出しやすい環境をつくっていくという中に動植物検疫の問題が入ってくるかと思います。

 動植物検疫につきましては、まずWTOのSPS協定、こういったものに基づきまして、不当に貿易制限的でないことを条件としまして、各国が自国への疾病や病害虫の侵入を防ぐための措置が講じられるということになっておりますので、SPS協定に沿ったものである場合には、その是正を求めるというのは難しいわけでございますけれども、SPS協定に違反しているような条件を我が国に求めてきているような場合には、その是正を求めていくということをやっていきたいと思っております。

 今先生の御指摘のあった点は、こういった問題よりもちょっと離れまして、SPS協定に沿う形で、病害虫ですとか病原体が入ってこないようにということで、輸出実績がないものですとかそういったものの輸出申請があった場合に、まずリスク分析をするという制度がございまして、これは各国がやっておることでございます。

 そういうことを、例えば日本が中国に対しまして今までやってこなかったということで、今回、輸出の関心がある品目について中国側に問い合わせまして、ぜひこれを輸出したいけれどもということを問い合わせしたところ、向こう側から、リスク分析が必要である、必要なデータを出してほしいということで、今データを出して、向こうのリスク分析を受けているところでございまして、それが終われば輸出ができるということになろうかと思っております。

 こういった問題点も、これから積極的にいろいろな輸出先に働きかけをしていきたいというふうに思っております。

根本分科員 ちょっとそれに多少関連してまいりますが、FTAの交渉。FTAの交渉に際しても、農産物についてはどうしても受け身になりがちなんですが、例えば、もっと相手国の農産物の輸入規制なども研究して、日本から相手国に対して要求すべきものは要求する、私はこれが必要だと思います。

 かつて、一九九〇年代初めに日米構造協議というものがありました。SII。実は、このときも、一方的にアメリカから言われるのではなくて、日本側からもアメリカの規制を指摘しているんですね。例えばバイ・アメリカンという条項があるではないかと。要は、相手国に対してもきちんと指摘をしてやる、そういう交渉も必要だと思いますが、FTA交渉等に関しての農産物に関する交渉のあり方、これについてお伺いをしたいと思います。

伊藤政府参考人 まず、現在のEPA、FTAの交渉の概略をちょっと申し上げますと、今、タイ、フィリピン、マレーシア、韓国というアジアの国々と交渉しておりますけれども、フィリピンとの間では昨年十一月に大筋合意を見ております。また、マレーシアとの間でも、昨年末には物資所管省との間では主要な論点整理も終えておるところでございまして、我が国も、基幹作物ですとか、あるいは地域農業にとって大事な重要品目については守るべきものは守るという立場でやりますけれども、相手の関心にできるだけこたえて、譲れるものは譲るという形で交渉してきております。

 そういう攻めの姿勢で交渉をしていくということでやっておりますけれども、その中で、今先生御指摘のありましたような、貿易の障害になるような事項につきましても、あわせて交渉の対象にして、やってきております。

 ただ、先ほど申しましたように、SPS協定に違反するような検疫の問題がありましたら是正を求めていくというようなこともできますけれども、それはまた別途、FTA交渉とは別に、それぞれその問題があるごとにやっていくということで、その問題にも積極的に取り組んでいるところでございます。

根本分科員 ぜひ積極的な姿勢で取り組んでいただきたいと思います。

 最後に、ちょっと米の値段、米価の問題についてお伺いしたいと思います。

 ここ数年の米価の水準を見ますと、十五年産が収穫期に高騰して、その後大きく下落する。実は私は、これは需給実勢以上に乱高下しているように見えるんですね。これだけの規模の米の需給が、価格が例えば前の年に比較して五千円も下がるとか、これだけ乱高下するのは、市場原理の常識からすると、私はどうも腑に落ちないんですね。量がこれだけある市場ですから、それが一部が不作だ、あるいは豊作だということで価格が大きく動く、実はこれは市場原理からして、バイアスがかかり過ぎではないか、私はこう思っているんですが。

 米の価格がこれだけ乱高下した、農林水産省はどのようにその原因を分析されているのか、その点についてお伺いをしたいと思います。

村上政府参考人 お答えいたします。

 一般的に農産物の場合は、需要の価格弾性値といいますか、それが小さいということで、かなり動きが激しいという一般的な傾向はあるというふうに思っておりますけれども。

 米の件でございますが、十五年産米につきまして、冷害のために作柄が不良でございまして、作況指数が九〇ということでございました。需要量約八百七十万トン程度でございましたけれども、これに対して百七万トン程度の不足が見込まれたという状況がございます。

 そういう中で、卸売業者が前倒しで必要な数量を確保しようとしたということに対しまして、産地からは必ずしもそれに見合った出荷の促進が図られなかったということがございます。そういうことによりまして、本格的な収穫、出回りが始まりました十五年の十月後半以降価格が上昇いたしまして、十二月の入札では、前年に比べまして全銘柄の加重平均価格が五割程度高い水準、二万三千七百円程度となったところでございます。

 その後、米の価格が消費者にとって高くなり過ぎたということで、値ごろ感のある価格帯の米に対する引き合いが非常に強くなったわけでございます。他方、今申し上げましたように卸が高値でかなり手当てをした米が在庫として滞留するという状況がございました。それから、需要と生産の差を埋めるために政府の備蓄米を販売したことによりまして、米の不足感が大分解消されたということがございまして、米の高値での取引意欲がかなり減退したということで、十六年一月以降の価格が段階的に低下いたしました。十六年五月の入札では、一万八千七百円程度まで下落したということで、そういう事情の変化の中で価格が大きく動いてきたというふうに見ているところでございます。

根本分科員 米の値段が非常に乱高下するということが、実は政策不信、政治不信を招くんですね。全体で生産調整をしながら価格の安定を図っているわけですが、生産調整も大変抵抗がある、しかし、生産調整もお互いに生産調整し合わないと価格が安定しませんから、それで生産調整をするわけですよね。それだけの努力をしているのに、この流通の段階の事情でこれだけ価格が上下するというのは、これは政策的にもう少し仕組みを研究する必要があるのではないか。しかも一方で、政府は備蓄米というものを持っているんですね。ですから、価格が乱高下しそうなときはむしろ備蓄米を活用して市場の動きを和らげる、そういう政策手段を持っていながら、なぜそうなるのか。

 私は、政治不信を解消するにはこういう点を丁寧にやる必要があると思うんですね。どうも政策では、枠組みだけはつくっていますけれども、それが市場が十分に機能しない、市場が十分に機能しない結果が政策不信、政治不信を招くということですから、これは、私は徹底的に原因は追及して、勉強もしてもらいたいと思っているんですよ。だって備蓄米が一方であるんですから。

 ですからこれは、実は、つくる自由、売る自由ということで農政を大きく転換した、今確かに転換の経過期間だと思います。ただ、そのときに、売る自由といったこの市場形成、これは多分、農林水産省はこういう分野はかつてなかった分野なのでそんなに得意だとも思えないのではないかなと、実は私は大変恐縮ですが、思っているんですね。

 ですから、こういう市場を相手にする仕事ということになってきているのだということを十分認識して、もっと流通市場に対する研究と流通市場に対する対策、これをぜひやってもらいたいと思うんですね。ですから、備蓄をどう活用するかということも大事だし、価格情報を速やかに、このようなITの社会なのですから、もうそれはわかりますよね。

 問題は、私も問題点だけを指摘するのは、野党は問題点を指摘するだけでいいんですから。私は野党的立場ではありません。やはり与党というのは、責任を持ってまとめるのが与党ですから、私も私なりの多少の提案を言えば、やはり米の流通市場が、今流通革命ですよ、例えば薬の卸分野でもどんどん再編、合併ですよね、大きくなっている。それをしないと生き残れないからなっているんですね。家電業界だって、でかい家電がどんどん進出して、ここにも流通革命が起こっているんですね。

 先ほど、卸業者が高値で買う、供給が十分なされなかった、その部分、部分でですよ、要はここなんだと思うんですね。やはり私は卸売業者も、ここは十分吟味しなければわかりませんが、ほかの分野との視点で考えれば、この卸の部分の集約、再編ということも必要なのではないかなと。つまり、需給バランスをとるところが、非常にここにバイアスがかかる状況になっているんですね。

 それから、米価、米の価格を安定させるためには、個別の農協から、スーパーとか外食産業に安定した供給ルートをつくる、拡大する、これをやれば安定するわけですよね。ですから、今個別の農家でも、取引先と契約栽培してきちんとした供給をやっているところは、これは価格は下がりませんよね、もう契約価格でやりますから。

 実は私は、この流通市場の研究、そして流通市場に対する取り組み、これは真剣にやってもらいたい、こう思っているんですよ。答弁をお願いします。

村上政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、米についての流通、新しい改正食糧法の施行によりまして、基本的に最小限の規制のもとで行われるようになったということで、ある意味で過渡期の状況にあるというふうに思っているわけでございます。そういう中で、やはり流通をどういうふうに考え、よく研究し、価格の安定を図っていくかということは非常に重要だと思っております。

 そういう意味で、御指摘のとおり、我々も卸の状況、それから、これは生産団体の供給体制というようなこともあわせて非常に重要な問題であろうというふうに思いますけれども、そういう中で、我々、過去の十五年産の状況、十六年産の状況もよく研究をして、流通などの実態をよくとらえて、今後の改善に資していきたいというふうに思っております。

 特に、客観的な情報提供というのが非常に重要だというふうにその中でも思っておりまして、一つは、客観的なデータに基づく需給予測ということを行いまして、基本指針というのを年三回公表したりしております。それから、米穀安定供給確保支援機構、米穀機構におきましても、米の需給情報の提供等を実施しているところでございますが、先生御指摘のとおり、まだまだ我々もよく流通の実態等について研究をし、御指摘のような面について十分対応をしっかり図っていきたいというふうに思っているところでございます。

根本分科員 私は、この分野が非常に大事だと思っているんですね。とにかくこういうことの取り組みがおくれている結果、米の値段が下がって、それが全部政治不信、政策不信につながるわけですから、これはすべての人にかかわる話なので私は重要だと言っているんですね。

 だから、本当は、ほかの産業分野だったらこれは産業政策の観点でもありますよ。ほかの産業分野だったらもっと、ここのところが本当に大事なんだな、そう思うかどうかなんですね、その感性。ですから、専門的な人間、専門的な人間がいるかどうかは知りませんが、他分野の状況もきちんと研究して、むしろこれはプロジェクトチームぐらいつくって魂を据えてやってもらいたいと思うぐらいの話なんですよ、私は。何か、今の答弁を聞いても、本当に真剣にやる気があるのかどうか、その熱意が伝わってこないような感じがしたんですが。もう一度答弁してください。

村上政府参考人 しっかりやっていきたいと思っております。

 特に、卸の状況ということ、先ほど十五年産の買い付けとか、それから在庫の状況等についても、我々は在庫の状況を、これは定期的に情報を収集いたしておりまして、価格や、どれくらいの在庫がありどれくらい販売が行われているかというような情報も適時把握するようにしているところでございまして、そういうさまざまな取り組みの中でしっかり対応していきたいというふうに思っております。

岩永副大臣 先生から、こちらの方へ向けて、どうかという示唆がございましたので、お答えいたしたいと思いますが、ことしの三月に農政改革の基本計画の改定がございます。そして、いよいよ十七年度については農政の大転換がございます。こういうような状況の中で、米政策については大変大きな部分を占めるわけでございますので、あわせて、ひとつ改革に向けて頑張っていきたいし、また先生のいろいろな御指導、御示唆を賜れば大変ありがたいと思います。

根本分科員 では、岩永副大臣から大変強力なお話をいただきましたので、終わります。

 ありがとうございました。

小泉主査 これにて根本匠君の質疑は終了いたしました。

 次に、赤羽一嘉君。

赤羽分科員 公明党の赤羽一嘉でございます。

 きょうは三十分間でございますが、アメリカの牛肉輸入再開問題につきまして、それとまたFTA交渉について、こういう大きな二つのテーマについて質問させていただきたいと思います。

 まず、島村大臣御就任以来、農水省のホームページで大臣記者会見を読ませていただいておりまして、私みたいないわゆる農水族ではない議員がこのようなことを言うのは大変僣越でありますが、私の率直な感想として、いよいよ本当に日本の農政がよくなるのではないか、このように大きな期待を感じております。

 私、神戸市選出で、農村地域というのはほとんどないんですが、議員生活十一年余り、予算委員会、決算委員会、また農水委員会で質問に立たせていただきました。常に主張してきたのは、消費者の観点に立っての農政のあり方といったことを主張してきたつもりでございます。やはり、消費者に受け入れられないような農政ということをするということは根本的に私は間違っているんではないかと。

 率直に言いまして、農林水産委員会みたいな場は、これは自民党も公明党も共産党も民主党も、恐らく農村選出の議員でございまして、農林水産委員会の決議というものが国会の決議として何回か出てきましたが、私は率直に言って、本当言うと、そうなのかなと違和感を感じるような局面もございました。これは別に異議を唱えているわけではございませんが、そんなようなことも思いました。

 本当に消費者のサイドに立った視点で農政を進めていくという大臣の力強い記者会見での御発言等々、本当にこれから新しい時代が来るのではないか。本当に島村大臣が御就任以来、日米交渉についても、またFTAの交渉についても、農水省の取り組みがやはり具体的に前に、前向きになったのではないか。この質問を何回もやっておりますが、三年前と最近の農水省、厚生労働省の答弁、随分変わってきたんじゃないかなと前向きに、肯定的に評価させていただいている次第でございます。

 そこで、私、このBSEの問題というのをずっと取り上げて、質問を何回もしてまいりまして、繰り返しになるところもありますが、新しい大臣御就任ということもあって、重ねての質問をさせていただきたいと思います。

 BSEの問題は、私は率直に申し上げて、大変大きな問題だというのは間違いないわけでありますが、食品安全委員会のリスク評価といったものを見ても、BSE対策を講じる前の条件であっても、せいぜい見積もっても例えば一億二千万分の〇・一から〇・九以下であると。これはBSE対策を講じると、これは食品安全委員会としてまだ断定をしておりませんが、唐木先生なんかは二百兆分の一以下の確率だと。

 私も率直に申し上げて、各国の状況とか見て冷静に考えれば、限りなくゼロに近いのではないか。この食品の安全の問題でゼロリスクを求めることに、どれだけの意味があるのか。何か牛肉の部分だけはゼロリスクということを限りなく追求されているのではないか。

 日米交渉を、日米局長級会議というのが去年の四月から断続的に行われて、十月二十三日にいわゆる大枠合意というものがされて、あとは両国間の国内の手続を進めていこうと。世の中の多くの人は、とりあえず加齢二十カ月以下の部分については、SRMの除去だけで全頭検査というのは外れるんだな、こう思っておりましたが、どうも食品安全委員会プリオン委員会もきのうも行われたようですけれども、なかなか前に進まない。

 農水省の大臣の答弁は、あくまでも科学的根拠、食品安全委員会の最後の、最終答申というか、これを待っていると。これは正しいことだと思いますが、私は、プリオン委員会の議事録とかも読んでおりますと、神学論争の領域に入っているんじゃないか。これはお互いの学者のメンツにかけて、これは実態が解明されていないというところがある限り、僕はゼロリスクというのはあり得ないんだろうなと。そこを待ってやるということは、本当に私は正しいことなのかどうかということを極めて疑問に思っておるわけでございます。

 私の整理としては、平成十三年の九月、国内で初めてBSEが発生をした。これは大変な風評被害をもたらしたし、初めてのことで国民の中でもパニックが起こった。私、地元が神戸ですけれども、神戸ビーフ、食肉店なんかは前年の八割減みたいな話になって、年末のお歳暮なんというのは贈る人がいなかった。当たり前ですよね。こんな騒がれていて、牛肉を一切贈られなかった。大変なダメージで、焼き肉屋とかばたばた倒産した。こういったことが起こった。このパニック状況を静めるために全頭を検査する、こういった行政措置というのは、私は正しかったと思うんです。

 しかし、この全頭検査といったことが本当に果たして科学的な根拠があったのかないかというのは、やはり冷静に問われるべきであって、全頭検査のあり方とSRM除去というものについて明確に線を引かなかったことが、この三年余りにもわたって、なかなかこう問題をこじらせているのではないかというふうに、私はそう率直に感じておるところです。

 三年を超えて、三百五十五万頭を全頭検査した、その知見があるわけでありますから、その知見として昨年の九月、食品安全委員会の中間報告では、二十一カ月以上の牛についてはBSEプリオンの存在する可能性があるということがわかった。しかし、その二十一カ月、二十三カ月という極めて世界でもまれな感染牛の悪性プリオンは、他の感染牛の五百分の一から千分の一の微量であったということの報告があったわけですね。

 私は、問題なのは、では、その微量なところで、本当に人間に対する食品としてのリスクがどのぐらいあるのか。もうこれも限りなく天文学的に低い、極めて低い確率、他の食品だったら全くある意味では安全な範疇に入っているような話になっているんではないかなということを強く感じるわけであります。

 私は、昨年ですか、アメリカ農務省のペン次官一行が来られたときも、ちょっとミーティングをさせていただいて、アメリカの主張というのは、全頭検査はサーベイランスだ、安全性の担保ではない、安全性の担保はSRMの除去だ、こういうことで整理をしている。私は、そちらの方が極めて科学的なのではないか。安全というのは、あくまでもセーフティー・サイエンティフィカリーだ、安心というのはセーフティー・ウイズ・フィーリングだと。ここをごっちゃにせざるを得なかった国内初のパニック状況でありましたけれども、これはもう三年たった今、少し冷静に議論をして、議論は相当されていると思いますので、農政という行政の責任の立場で、リーダーシップで、やはり事を前に進めるべきではないか、私はそう感じておるんです。

 このことについて質問をしても、大臣の胸のうちはいろいろあると思いますが、なかなか公式発言はできないと思いますので、ちょっと角度を変えて質問したいと思うんですが、局長でも結構です。

 まず、何かBSEが発生しているのは日本とアメリカだけみたいに思っている方がいるんですが、二〇〇三年の記録では、例えばイギリスで四百二十五頭、アイルランドでは百八十三頭、スペインでは百六十七頭、フランスが百三十七頭、発生しているんですよね。こういった発生国というのは世界で二十五カ国ぐらいあるんだけれども、ちょっと局長、事務方で結構ですが、こういった発生国で牛肉を食することを禁止している国があるのかないのか。これが一点目。

 こんなに発生しているんだったら、一年間で百頭以上出ているんだから、全頭検査をしなきゃいけないといって実施している国があるのかないのか。これが二点目です。

 三点目は、私の認識では、フランスとかドイツなんかは、二十四カ月加齢以上は全頭検査していたのが、最近は三十カ月にしている、これはどういうことなんだ。発生が減っているわけじゃないのにこうなっているというのはどういう背景があるのか。

 この三点について、ちょっと事務方から御報告をいただけますでしょうか。

外口政府参考人 お答え申し上げます。

 BSEの発生国で、では牛肉を全部禁止しているところがあるかという最初の御質問でございますけれども、各国とも、BSE発生の後は、適切なSRM除去等の対策をとって、安全措置を講じて食しているというふうに理解しております。

 それで、検査、ほかの国はどうなのかということでございますけれども、現在も日本は全頭検査を継続しております。これは、議員御案内のように、十三年の十月当時は牛の月齢の確認が困難であったこと、あるいは、国内でのBSE感染牛が初めて発見されて、国民の間に強い不安があったこと等を勘案して開始したものであります。

 他方、ほかの国でございますけれども、米国は、御質問の中にありましたように、サーベイランス目的で検査を行っております。EUは、サーベイランス目的とあわせて、アディショナル・ヘルス・プロテクションという言葉を使っておられますけれども、そういった目的で、三十カ月以上の健康牛と二十四カ月以上のリスク牛について検査をしている。それが主なところでございます。

 それから三点目、フランス等、二十四から三十に変えたその背景でございますけれども、それはBSE対策の飼料規制そのほか、その辺を踏まえて、リスクの評価をしてそのように切りかえていったものと承知しております。

赤羽分科員 どうもありがとうございます。

 まさに、年間百頭以上発生していながら、極めて冷静に、科学的に対応されているんだなということを、特にフランスなんかの場合は私は感じました。それだけ、大臣も御発言されていますが、日本の今の措置というのは世界の中でも類例を見ないぐらい厳しい措置をしているわけですから、それについての安全性というのは数段確認されているというふうに思っております。

 ちょっと、以前の委員会でも確認をしたんですが、全頭検査とSRMの除去、これは両立てだというかつての主張の中なんですが、一昨年、アメリカで発生したのは十二月二十四日。二十三日以前に日本に到着をしていた牛、牛肉について、なぜ回収をしなかったのか、こう私は質問いたしました。そのときの答弁は、その牛については、SRM除去がされていれば、SRMの部分を回収すれば食肉の部分についてリスク低減措置として足り得る、だから回収をしなかった、このような答弁、議事録にも残っております。

 こういった考えは、二年たった今なお間違った発言ではなかったということをちょっと確認させていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

外口政府参考人 お答え申し上げます。

 食品衛生法の関係になりますので私の方からお答え申し上げますけれども、議員御指摘のとおりでございます。考えは変わっておりません。

赤羽分科員 ですから、これがまともな、サイエンティフィカリーな発言だというふうに思って、私はこの判断は正しかったというふうに思っております。

 それで、安全と安心というのをワンフレーズに使うのはおかしいということを僕は何回も言っていたんですが、大体政府の答弁は、安全と安心は確かにダブルスタンダードであっても、安全あっての安心だ、特に消費者の動向というのが大事なんだと。全国各地で行われているいろいろな審議会ですとか委員会で、消費者団体の声というのは大変厳しい、このように言われているんですね。私は、本当に消費者団体の声というのは消費者を代表する声なのか、大変疑問に感じる。牛どん屋なんか行ったことのないような上品な御婦人が出ていることが大半でして、ちょっとどうなっているのかな、こう思いました。

 先日、十一日に、吉野家が一日だけの特売セールをした。一日の売り上げが通常の二倍、百五十万食が六時間で売り切れた。二時間半で売り切れたところもあった。大阪では、車が突っ込んで大変な事故なのに、片方では行列ができていた。こういったことというのは、私はかねてからこの問題について言っているんです。

 アメリカのBSEが発生した段階で、国民の間でパニックは起きていない。これは、政治家として現場を回った感覚だ。みんなが食べたいと、閉店になるときには行列ができた。こういったことについてどう認識しているんですか、消費者の声といつも言っているけれどもといった質問については、それは牛どんが好きな人も中にはいるでしょうという答弁をされているんですよ。私は、これは余りにも直視していない。そんな危険なもの、アメリカのビーフだといって一日販売したら、そこに全国各地で行列ができる。本当にこれは男女関係なく行列ができる。まあ久しぶりに出たからといったこともあるかもしれませんが、そこにリスクを感じていたら行列なんかできないでしょう。

 こういった消費者の声というものを常に大事にすると言っていた政府の見解は、この十一日の吉野家のこういった現象を見てどのように影響があったのかということが一つと、べーカー大使の御発言だと思いますが、これは私、全く納得しておりますが、アメリカは確かに一頭発生した、しかし、毎日二億人の国民が牛肉を食べていると。

 私たちもアメリカに行けば、牛肉が出ないときなんかないわけですよ。前国会で民主党の山田さんが、全頭検査とかサーベイランスを求めているという法案が出たとき、この前山田さんと鮫島先生二人でアメリカに行ったでしょう、牛肉を食べなかったんですかと質問したら、いや、試しに食べてみたという答弁があったんですよ。

 これは、アメリカに行けば平気で食べているものを、何か日本に輸入するのは命に大変なリスクがあるみたいなことを言っていること自体、私は極めて、一般国民から見ても、常識から相当外れている神学論争になっているのではないかと。神学論争にゆだねていて、食肉についてどうするかということを、私は、げたを預けるということが本当に本当に正しいのかなと。

 それは、科学的な根拠をということの段取りというのは大事だと思いますが、農水省というのは、やはり食の供給ということも大事な仕事でありますし、何か私は、不当に上質な動物たんぱく源の食肉というものが供給されていない状況が続いていると。その陰で、先ほど申し上げましたけれども、焼き肉屋とか食肉店とか、あと牛どん屋、牛タン屋、また関西の方ですと、カレースタンドなんかもほとんど牛肉なんですね。こういったところがばたばたとつぶれている。こういったことを放置しておいて、何億分の〇・一以下みたいなところのリスクを論じているということを横目で見ているというのは、私は政治家としてやはり発言せざるを得ない。だから、毎回毎回ここに立って質問しているんです。

 こういったことも踏まえて、今私が申し上げたことについて、大臣の御見解、御所見をいただければというふうに思います。

島村国務大臣 冒頭から、大変に現実的によく勉強なさった御意見を伺っておりましたが、赤羽先生は御承知のように国土交通委員会の委員長で、私は一委員として御一緒に仕事をさせていただきましたが、大変お懐かしく承ったところです。

 また同時に、率直な私の感想を申し上げると、今のような御意見がなぜテレビで聞けないんだろうか。あるいは、新聞、週刊誌にもっとどうして出てこないんだろうか。

 と申しますのは、私自身もたくさんのいろいろな分野の方とおつき合いしていますが、もう嫌というほど、いつまで臆病風吹かしているのか、失礼だと思うくらい、そういう抗議めいた御意見も伺うわけであります。

 大臣の立場となりますと、御理解もいただいておりましたので、深く踏み込むわけにはいきませんが、私たちはあくまで安全で、国民、消費者の信頼にこたえる食の提供に万全を尽くして努力はいたしますものの、やはりおのずから、国際社会で生きていくための常識というものがあるんだろうと率直に思います。

 私、例えば先月もイギリスも行きました、フランスも行きました、ベルギーへも行きました、スイスに行きましたけれども、どこでも肉が出ました。どこの肉もおいしく食べてまいりました。しかし、内心思ったのは、日本の肉はもっとおいしいな、こう思いました。これは、あらゆる食物を食べながら、これを、もし私が今のBSEに対するような考え方で食に臨んだら、のどを通らないんじゃないのかな、こんなふうに思いました。

 そして、先ほど御指摘ありましたけれども、いわば三十カ月以上の、EUで、我々はのうのうと肉を食べて帰ってきて、これを二十一カ月以上、万が一出たらどうするということを論議していることはちょっとむなしい感じがいたします。率直にそうは思いますし、特に、例えばフランスなどは、これも御指摘ありましたが、昨年七月に、それまで二十四カ月だったものを三十カ月に延ばしたわけでありますから、世界の人たちの物の考え方というものも一応私たちは参考にしていく必要があるんだろうと思います。

 そして同時に、いまだにその結論が出ないことについてでありますが、これはルールですから、私たちはもう十月十五日に諮問という形でお預けして以来、後は、今か今かとその結論を待っているわけでございますが、いまだに結論が出ない。

 しかし、私たちは思うのは、やはりこういうことについて、本当に安全、安心ということに縛られて、これをいつまでも論議しておると、いつになったら結論が出るのかということになるし、正直申して、アメリカ側に大変いら立ったものもあって、きのうだかきょうだかですか、共同通信のあれなんかを見ましても、いわば日本に報復措置を講じようなんという動きが出てきているけれども。アメリカの側から見れば、一体日本というのは本気でこの問題に取り組んでいるのか、こういう強い批判が出てきていることも現実だろうと思います。

 それらを全部考えるのが私の立場でありますから、私は、かなり官僚の人たちははらはらしたかもしれませんが、初めから終始一貫、私なりの考えを申し述べてきましたけれども、赤羽先生とかなり通じて、ほとんど申し合わせたような話を実はやってきたんです。

 最近は、当省の担当の記者の方もかなり理解してくださるようになって、私の揚げ足をとるよりはむしろ、いろいろな意味でアドバイスをしてくださるようになってきています。やはりそういうことも必要なので、私たちも政治家ですから、公の場で早く、いわゆる世界の常識として、かくあるべしということを持つことは必要なのだろうと思います。

 そういう意味で、べーカーさんともお会いをしました。あの方、大変な紳士でして、決して居丈高ではなくて、非常に謙虚に、誠実に、自分たちの窮状をお訴えになりましたけれども、今でも心に深く焼きついているぐらい、彼の気持ちにもこたえなければいけないなと思いましたし、あの吉野家現象というのは、まさに私は、これが本当の消費者の声なんではないかな、これも担当大臣として、率直に思わせていただいたところであります。

 私は、一日も早く、こういうことが国民の中に理解されるように、マスコミの方々にも、むしろ少しく言い過ぎたのではないのか、報道に少しく行き過ぎがあったのではないのか、私は率直に自分の感想を、私的な立場としてお許しを願えるところでは申してきたところでありますが、日本人はすっかりこれにおびえてしまっているということですけれども、全頭検査というのは世界の常識ではなくて、非常識の部類でありますから、いつまでもこういう姿勢に閉じこもっていることが妥当だとは考えておりません。

赤羽分科員 大変勇気ある、率直な御答弁を本当にありがとうございます。

 加えまして、今回、日米局長級会議で、二十カ月以下は対象とはしない、加齢の問題をどう判別するかという問題で、A40だとか、こういうことが出ている。私はここの分野は、今は何か食品安全委員会にそこもまたゆだねよう、それが妥当なのかどうか、こう言われている流れみたいですけれども、私、ここは農林水産省とアメリカの農務省の中で、やはりこれは実務的に、判別できるのかどうかということで詰めていくということの方が正しいのではないか。

 これをまた食品安全委員会に投げたら、また神学論争が始まるのか。それは本当に賢明な話ではないわけで、ぜひその点については御再考願いたいということが一つと、もう一つ、やはり情報公開をちゃんとすればいいのではないか。アメリカ産の牛肉ですよと、こういったことを情報公開する。そこで嫌だという人は食べなければいいわけで、食べたいという人は食べればいいわけで、何かわからないものを黙って食べさせて云々という話が一番まずいわけでして、ここまで安全対策をとっている、グローバルスタンダードに合わせてこうします、基本的には安全性が確保されている、情報公開もする、こういった段取りを踏めば、私はそれで十分ではないかというふうに思っております。

 食肉ですと余り大騒ぎにならないんですが、石油とかをこんな輸入禁止なんかずっと続けていたら、大パニックになっているはずなんですよ。食べ物というのは、食べなければいい、我慢すればいい。牛肉が高くなったから、ちょっと我慢して豚にすればいいとか、そういうことがきくから、まだこの程度で済んでいるわけでありますが、もう一度、上質なたんぱく質を安価なものとして供給できるという供給責任がある立場としても、ぜひ御再考を願いたいということです。

 今申し上げた点について、あわせて何か御所見があれば。

島村国務大臣 私個人として、自分の良心に従って物を考えるならば、赤羽先生のお考えとほとんど同じような考えに立っています。

 ただ、今は、この責任大臣という立場におりますと、今まで決められているルールがございまして、私どものいわば立場では、もうきちんと諮問をするという形で意思表示をいたしておりますので、あとは食品安全委員会の方で御判断いただきたいことではございますが、そうかと申して、これを、では仮に極端な話が、来年まで持ち越したということになれば、日本はどういう立場に立つのか。これは国際常識に照らして逆におかしなことになるんだろうと思います。

 ただ、今まで委員の方にお願いする段階で、いわば四週間に一遍、三週間に一遍が通るままにお願いをしているわけですから、これらについては、今後はやはりもっと間を詰めてどんどん精力的に検討して結論を出す。また、リスクコミュニケーションにしてもパブリックコメントにしても、十分の期間といっても、余りに長い期間というのが国際社会で通用しないということも考えなければいけない。そういう意味では、情報公開をして、国民の、消費者の皆さんの御判断に任せるというのが一番いい、私もそう思います。

 同時に、私は世界を旅して、向こうのプールでも泳ぐわけですよ。向こうの人がどれほど衛生観念が発達しているかといったら、日本よりはるかに劣るというか雑なわけですね。フランスのあのブイヤベースなんか食べていると、もう軒先にカキも何もみんなほったらかしてあるじゃありませんか。ああいうものを平気で私たちは生で食べるんですよね、向こうへ行けば。日本へ帰って来るとこれが不潔となることでは、やはりこれからの国際化に対応していけない、こんなふうに率直に思います。

赤羽分科員 どうもありがとうございます。

 しっかりと、このことが前に進むように強く期待するものでございます。

 最後、限られた時間でございますが、FTAの交渉についてでございます。

 このFTAについても、今みどりのアジアEPA推進戦略といったものを農水省としても作成していただいて、もうまさに変われば変わるものだなと、率直に言ってびっくりしたわけでございますが。

 戦略ができることは大事ですけれども、具体的な交渉がどう決着つくかというのが大事であります。FTA交渉というのは、まさに一プラス一が両国にとって五にも十にもなる。やはり二国間で特別なルール、もちろんWTOにのっとった形の自由貿易協定というものをつくる、相互にメリットがなければいけない。しかし、当然守るべきものは守る、こういう基本原則があると思うんですね。

 今回、実は私、FTAの推進プロジェクトチームというところの事務局長をやっておりまして、フィリピンにもタイにも直接行ってまいりました。やはりASEAN各国は、日本と比べるとまだこれからの国ですから、やはり農業というのが一番主力な商品だ。人の移動ということもありますが、まず農業で少し風穴をあけていただきたい。

 やはり日本は農業を守らなければいけないということが従来的にはあった。最近では、積極的に輸出できるようにといった、小泉総理からも随分叱咤激励も出ているというふうにも聞いておりますが。

 ですから、農業交渉というのは難しいと思いますが、センシティブな品目について、生産者を守るというのは僕はいいと思うんですが、やはりそこの行き過ぎというのはいかがなものか。

 私、予算委員会でバナナの話をしまして、フィリピンのプリシマという貿易産業大臣と会ったときに、日本はバナナを生産していないのにバナナに壁をつくってけしからぬと。すごく丁寧に言ってくれたんですけれども、けしからぬと。理由を聞くと、フィリピン・バナナが入ると日本のリンゴやミカンが売れなくなるからという、こんな理由が通るかと、私、聞いていて恥ずかしいなと思いましたと質問でも発言しました。

 今回も、フィリピンは一応大筋合意していますが、いろいろな理由はあると思います。小さな種類、現地で貧農がつくっているようなものは十年間で関税撤廃。しかしながら、その他のものについてはやはり関税を残す。これは、きっとフィリピンは、半歩前進かもしれないけれども、率直に言って失望もしているという話も伝わってきております。

 タイについても、やはり鶏肉の問題というのが一番そういったラインの品目であるというふうに思いますが、私、ここは何でも裸にすればいいということは決して言いませんが、やはり両国にとってメリットがないようなFTAであれば、いわゆるレベルの低いFTAであると、それはそれによってもたらされる国益もおのずと低くなってきてしまう。

 ですから、今島村大臣のリーダーシップでこのFTA、EPA交渉についても劇的な変化をしつつあるというふうには感じておりますが、これから、フィリピンは大筋合意していますが、タイ、マレーシア、あと韓国はこれからですけれども、こういったASEAN諸国、アジア諸国との中で、ぜひ農水産省として前向きに取り組んでいただけるといった御見解を聞きたいと思いますが、そのことについての御所見を伺って、最後といたします。

島村国務大臣 守るべきは守り、譲るべきものは譲る、こういうことで来てはおりますけれども、やはり国際社会の常識を我々は常に配慮しなきゃいけないと思います。

 私は、前の大臣のときに、いわゆるOECDの閣僚会議に行きました。その二年前に、やはり食料の自給率とか農業の多面的機能を認めるということをさんざん議論して決めたにもかかわらず、もうすっかり環境が変わっていまして、もう今やボーダーレスの時代、国際分業の時代だ、だから工業でもうけている人は工業でもうければいいじゃないか、これが世論めいた雰囲気になっていました。

 ただ、私たちは、この国の抱える実情もこれあり、その点についてはかなり突っ張って、改めてまたその二つのことを認めてもらったわけではありますものの、しかし、いつまでも、今御指摘のあったようなバナナの話じゃありませんが、他の果物へのおそれ云々ということをやっていたのでは、都合のいいことだけ言いなさんなということになるわけですから、これらをよく私たちは考えなきゃいけないんだろうと思います。

 ただ、正直言って、例えば台風の常襲地帯の沖縄のサトウキビみたいな、ああいうものはやはり守らなきゃいけません。また同時に、北海道のてん菜糖もそうです。国際価格とは比較になりませんけれども、これを守りませんと、その地域に人が住めなくなるような環境もこれありですね。米とか鶏肉とか幾つかはございますが、最低限度に抑えて、可能な限りいわばこちらも門戸を開放し、国際社会の扉をこじあけていく、こういう姿勢がこれからは大事なんだろうと考えております。

赤羽分科員 どうもありがとうございます。

 まさに、一度門戸をあけることは大変厳しい試練かもしれませんが、結局、私は日本の農政、体質強化にもつながるということを信じておりますので、ぜひ今度とも積極的に取り組んでいただきたいと思います。

 ありがとうございました。

小泉主査 これにて赤羽一嘉君の質疑は終了いたしました。

 次に、梶原康弘君。

梶原分科員 民主党の梶原康弘です。

 まず、鳥インフルエンザの問題について伺いたいと思います。

 昨年、京都府丹波町で鳥インフルエンザが発生をいたしまして、私は兵庫県でありますけれども、その三十キロの移動制限区域にすっぽりとおさまってしまいました。

 それ以降、国内では発生しておりませんけれども、海外からの情報によりますと、昨年六月以降、御承知かと思いますけれども、ベトナムで二十九人、タイで十二人、カンボジアで一人、鳥インフルエンザに感染して死亡しているわけであります。ほかでも感染が確認されておって、特に、昨年の十二月には韓国でアヒルからウイルスが発見されたということであります。

 昨年の国内三カ所での発生というのは朝鮮半島から渡り鳥が運んできたのではないか、こういうことが言われておるわけでありまして、まずその感染経路について、もしわかっているならば教えていただきたいと思います。いずれにしても、国内で発生する危険性が極めて高いということが言えるのではないかというふうに思います。まず、それに対してどのように対処しておられるのか、伺いたいと思います。

中川政府参考人 お答え申し上げます。

 まず最初に、感染経路についてのお尋ねがございました。

 これは、昨年の六月三十日に、農林水産省に設置されました鳥インフルエンザの感染経路究明チームの方で報告書を取りまとめていただいております。

 それによりますと、遺伝子の分析などを通じまして、日本で発生をいたしました鳥インフルエンザのウイルスの形から推測いたしますと、朝鮮半島を経由して入った可能性が高いということでございまして、東南アジアで蔓延しているものとはタイプがかなり異なるという結論でございました。

 それから、韓国で昨年の十二月に、先生今おっしゃいましたようにアヒルの農場で鳥インフルエンザウイルス、これは血清亜型からいたしますとH5N2の弱毒タイプということでございまして、これが発生したということであります。これは、たまたまサーベイランスを韓国政府が行っているその中で確認をされたものでありまして、その発見された即座に九千羽の殺処分をして埋却したというふうなことでございます。

 私どもといたしましては、この報に接しまして、直ちに韓国からの家禽なり家禽肉の輸入の停止をいたしました。また、日韓の間ではカーフェリーがございますけれども、そういったところの全車両を対象とした消毒、あるいは韓国で養鶏場に立ち入った方が日本に入国されます際の靴底の消毒の徹底といったようなものを行っております。もちろん、各都道府県に対しましては、改めて防疫対応の徹底というものも通知したところでございます。

梶原分科員 いずれにしても、養鶏業者は大変な危機感を持っているわけであります。

 昨年の発生させた浅田農産、ここの対応が悪くて感染鶏肉あるいは鶏卵が拡散をし、人にも感染をしたということが確認されたわけであります。こうした苦い経験、浅田農産も経営的な面を心配して対応がおくれた、悪かったという側面もあったわけでありますから、そういう意味で、養鶏業者の協力が必要なわけでありまして、指導であるとか意思の疎通が図られているのかどうか、どういう形でなされているのか、伺いたいと思います。

中川政府参考人 高病原性鳥インフルエンザの蔓延防止の措置として一番大事なことは、やはり早期に発見をして、早期に摘発、淘汰することだというふうに思っておりまして、その意味で、早急に届け出をしていただくというのが何よりも大事なことでございます。

 このために、昨年の経験も踏まえまして、各都道府県や関係団体に対しまして、異常が発見された場合には早期に通報してもらえるようにということで繰り返し通知もいたしておりますし、また、家畜伝染病予防法の五十二条に報告徴求というのがございます。この規定に基づきまして、千羽以上を飼っておられるそういう養鶏業者の方々には、毎週毎週死亡羽数の届け出をしていただくようにもいたしております。

 それから、昨年の経験を踏まえて、六月に家畜伝染病予防法の改正をいたしております。この中で、届け出義務違反に対しますペナルティーの強化ですとか、あるいは、一たん発生をいたしますと一定の区域で移動制限をかけることになりますけれども、そういった移動制限に協力をしていただいた農家の方に対します助成の制度化、さらにまた、昨年の末になりますが、発生をいたしました経営の再建を支援するという立場から、家畜防疫互助基金というものも設立いたしたところでございます。

 こういった各般の措置を通じまして、ぜひ早期に通報もされ、また、適切な対応がとれるようにといった対策をとっているところでございます。

梶原分科員 昨年の浅田農産の発生について振り返ってみると、原則的に京都府任せというようなところがあって、国の対応がややおくれているのではないのかなというふうに感じたものであります。

 家畜伝染病予防法については、その防疫措置については基本的には都道府県知事の責任ということでありますけれども、伝染病という性格から県境でとどまるということはないわけでありまして、当時も、京都府、兵庫県、大阪府、あるいは、感染鶏卵、鶏肉については新潟県から島根県まで広域にわたったということもあるわけでありまして、さらにまた、ヨーロッパでは国境を越えて物すごい蔓延、こういったことを見ると、まさしく有事と言えるんではないか。国のリーダーシップが図られるべきであって、特に、専門家による迅速な判断であるとか、一体的な緊急措置であるとか、あるいは自衛隊の派遣とか、一県ではなかなか対応できない、そういった問題もあるんじゃないかと思います。

 そういったときに、ましてや東南アジアで四十数名の方がもう亡くなっているわけでありますから、国の危機管理体制というのが求められることは間違いはないと思います。その辺について、大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

島村国務大臣 御指摘ごもっともだと思います。

 当然のことに、家畜伝染病の蔓延を防止する措置というのは、現状は、それぞれの地域の畜産の実情に応じた対応をするために、基本的には都道府県がまず行って、国がいわばその取り組みに協力するという仕組みになってはおりますものの、昨年の高病原性鳥インフルエンザの発生時には、農林水産省、厚生労働省、環境省、警察庁などを構成員とする関係省庁対策会議を急遽設置いたしまして、連携して緊急総合対策を迅速に取りまとめ、その確実な実施に努めたところであります。

 このように、私どもは、ルールはルールとして、こういうものをルールどおりやっていたのでは手おくれになりますから、当然のことに即時即決の姿勢でこれらに対応していく考えでおりますし、今後もこうした体制のもとで、こういういわば高病原性鳥インフルエンザのような重大な家畜伝染病が発生した場合には、関係省庁及び関係都道府県と十分に連携し、まさに迅速、適切に対応していきたい、こう考えております。

梶原分科員 ぜひそのようにお願いしたい。養鶏家あるいは知識の乏しい自治体が安心して対応できるように、国のリーダーシップをお願いしたいと思います。

 これはちょっと通告していない問題で、あえて答弁をいただかなくてもいいかもしれませんが、先ほどの赤羽委員と大臣のお話、BSEの問題でありますが、私なりの思いを少し、準備しておりませんので理論的にお話しできないかもしれませんけれども、少し触れさせていただきたいと思います。

 私がBSEの問題を考えるときの原点なんですが、実は、平成十二年に、私の机を並べておりました同僚がクロイツフェルト・ヤコブ病で亡くなりました。発生からわずか二カ月でありまして、医者に言わせると孤発型ということでありますから、今の変異型というんでしょうか、それとは違うということではありますけれども、私はその二カ月間、もちろん植物状態になってからは一週間ぐらい行かなかったことはありますけれども、三日とあけず病院へ通いました。

 あれほど悲惨な死に方ということを見たことがありません。私は本当にそのときの思い、おかしいなと思ってからわずか数日で歩けなくなって、そういうところを見ておりましたので、それが私の原点になっております。

 これまで全部一緒にすることはできませんけれども、この問題で言っても、肉骨粉の輸入の問題であるとか、あるいは厚労省のHIVの問題もあったわけでありまして、すべて一緒にすることはできないかもしれませんが、その責任というのは大変重いものがあるということを思うわけでありまして、ぜひ慎重に対処いただきたい、このようなことをお願いしたいと思います。(島村国務大臣「どちらでですか、お亡くなりになった方は」と呼ぶ)日本人です。(島村国務大臣「どこで、場所は」と呼ぶ)兵庫県です。ただ、兵庫県の神戸の病院でありましたが、先生に言わせると、一年に一件発生している、その病院で扱っているということでした。(発言する者あり)

小泉主査 挙手をしてお願いいたします。

梶原分科員 いいえ、違います。孤発型といって、原因ははっきりわかりませんが、遺伝子なのか、百万人に一人ある、医者に言わせるとそういうことでした。ですから、実際、実は彼もヨーロッパ勤務が五年ありまして、僕らは初めはそれを疑ったわけでありますけれども、医者に言わせると孤発型ということでありまして、また詳しくぜひ別の機会に申し上げたいと思います。時間がなくなってしまいますので。

 続いて、森林の問題について御質問させていただきたいと思います。

 昨年、台風二十三号、兵庫県にも大変な被害をもたらしたわけでありまして、特に森林被害が甚大なものがありました。もう写真等でごらんになったかもしれませんけれども、倒木あるいは流木がそのまま放置されて、二次災害の危険が依然としてある、そういった状況が続いているわけでありまして、それに対してぜひ早急に対応いただきたい。どう措置いただいているのか、お願いしたいと思います。

前田政府参考人 今お話ございましたように、昨年、大変多くの台風が来襲いたしました。兵庫県におきましても、台風二十三号によりまして、被害区域面積にいたしまして二千三百ヘクタール、被害額が二十九億円に上るというような大変大規模な風倒木被害が発生したところでございます。

 この風倒木被害につきましては、特に、二次災害を防止するとともに、被害を受けた森林の有します公益的機能の確保を図るためにも、早期に被害木を伐採、搬出いたしまして跡地造林を進めるということが大変重要であります。

 台風二十三号につきましては、激甚災害に指定されまして、この激甚災害について高率の助成を行います森林災害復旧事業、あるいは、早急に防災機能の回復が必要な保安林につきまして全額公費によります復旧を行います治山事業、こういったものを実施することとしたところでございまして、早急な森林の復旧に努めているというような状況にございます。

梶原分科員 私のまさしく地元であって、災害直後その山を見て、何というんでしょうか、つまようじを机の上にばらまいたようなそんな状態でありまして、私は、自然がいよいよ人間を見放したんじゃないかな、そんな思いというか恐怖を覚えたわけでありまして、森林の整備がこれは本当に大切な問題だなということを痛感したわけであります。

 兵庫県では、県民緑税というのを創設する。今、議会に上程されたところでありますけれども、県民一人当たり八百円、ほか法人にも課税をして、総額二十一億円で森林整備なり緑化事業に取り組んでいるわけであります。

 調べてみると、高知県、岡山県で、規模は違いますけれどもそうした条例が制定をされている。さらに、ことし四月から、鳥取県、島根県、愛媛県、鹿児島県でも同様のものが導入されるということを聞いているわけであります。

 この七県、いずれも森林の多い県でもありますし、とてもお金がある自治体とも思えないようなところがこうした無理なことを、無理というか積極的な取り組みをしているわけでありますが、CO2の排出や水の利用で恩恵を受けているはずの大都市部を抱えた自治体が対応していない、これは極めて不自然な格好ではないかなというふうに思っているわけであります。

 京都議定書でも定められた六%削減達成、このためにも、全国民の理解、協力がなければ達成し得ない問題であると思いますので、環境税の問題もありますし、この問題に対する大臣の決意を伺いたいというふうに思っております。

島村国務大臣 まず、基本的なお話から申し上げますが、私は、農水省というと農林水産省と言い直していただくくらい、林業というのは大切だという認識に立っている人間であります。

 そういう意味で、まさに京都議定書の問題もさることながら、やはり、この国が健全な形を維持していくためには、この林業というものを慮外に置いて絶対にあり得ない、そう考えているわけでして、森林の果たす役割というのは極めて大きくて、なるほどCO2の吸収もありますけれども、そのほか、例えば都市部においても、その水源は森林に負うているところが極めて大きい。災害を最小限に食いとめるためにも、森林に負うているところが大きい。

 そして同時に、清浄な空気とか、あるいは、人間の本当にレクリエーションその他におけるいやしの効果とか、もうあらゆる角度であれですし、最近では漁師が山に登って山の手入れをする。これは失業だからじゃなくて、山の与える恩恵が、海にまでもそれが大きく作用して、いわば海藻が繁茂したりプランクトンが発生して、豊かな魚礁をつくる。

 事ほどさように林業は非常に大事なところですが、差し当たっての問題としては、まさに京都議定書の日本の果たすべき六%を果たす、そのうちの三・九%を森林に期待されているわけですが、現状では、今のままでいくと、少しく大きく下回るような感じになっております。

 こういうことごとも含めて、我々はこれからかなり思い切った手だてをしなければいけないという段階に今あるわけでございますが、今御指摘がありましたように、まさに高知県、岡山県はもう既に緑税を実施しておりますし、今お話があったように、鳥取、島根、愛媛、鹿児島がこの四月一日から。それから、いわば先生の県の兵庫県も、北海道も、少なくとも今検討中で、これをどんどん進めているということですから、これらについて我々はできるだけの努力をしなきゃいけないと思っているところです。

 また、農林水産省としてはどうなのかということであれば、地球温暖化防止などの森林の持つ多面的機能が十分発揮されるために、今回の予算編成に当たっても、私たちはかなりこれに対して強力に働きかけをいたしまして、平成十七年度においては、林野公共事業として三千八十億円を計上しているところであります。

 しかしながら、現状ではまだまだ十分とはとてもいきませんし、これをぐずぐずやっていくことは、今度は後で悔いを残すことにもなりますので、これからも、一般財源はもとより、環境税などの安定的な財源の確保を目指しまして、今御指摘の点については十分な対応ができるように努力をしていきたい、こう考えております。

梶原分科員 大変心強いお言葉をいただきました。ぜひ森林の再生に頑張っていただきたいと思っております。

 しかしながら、大変障害になっている問題もある。地主が、山の持ち主が森林を放置しているという現状が随所に見受けられるわけでありまして、間伐、枝打ち、下草刈り、こうした保育の作業が大変停滞をしている。それが台風災害の原因にもなって、今の状況の原因にもなっていると思うわけであります。

 そうした保育に経費がかかる、しかし、特に人工林というのは、六十年、七十年に一回しかお金にならないというところが大変障害になっているのではないかな、こういうことでありまして、不在地主、現地にいない都市で生活をしている地主さんも多いわけでありまして、これからも、そうした方々に積極的に働きかける必要があるのではないかというふうに思っております。

 間伐については、大体、個人の所有物に六割も補助金を出すなんというのは通常考えられないと思うんですが、これは森林の公共性というのを高く見ているからであって、森林所有者に森林放置の責任、森林に対する責任があるということだろうと思いますので、ぜひ働きかけていただきたい。

 ただ、それについてはいろいろな知恵が要るのではないかなというふうに思っておりまして、例えば、森林管理を全部委託を受けるとか、あるいは、六十年、七十年に一回ということですから、販売時に経費を相殺するような制度をつくるとか、あるいは、土地と樹木の所有権を分離するとか、何かそういった手だてがあるのではないかなと思うんですが、そういった知恵をぜひ出していただきたいなと思っております。

 その辺についてお話を伺いたいと思います。

前田政府参考人 確かに、今先生からお話ございましたけれども、最近の林業といいますのは、木材価格は下落の一途をたどっている。例えば、五十五年を一〇〇にいたしますと、今日、五分の一ぐらいに立ち木では値段が落ちてしまうとか、そういったことで大変採算性も悪化いたしておりますし、かてて加えて不在村化ですとか世代交代といったことも相まって、所有者の方々の施業意欲が大変低下してきているというような状況にあるわけでございます。

 そういったことから、私どもも、こういった森林所有者に対しまして積極的にとにかく施業の働きかけをやって、そしてある程度まとまった、団地化した形の中で施業の効率性といったものも進めていかなきゃいけない、また、そういったことを所有者の方々みずからにもいろいろ御理解していただかなきゃいけないと思っているわけでございます。

 私どもといたしましても、例えば市町村が森林所有者への働きかけを行う、あるいは林業事業体への施業委託の促進活動を進めるといったことに対して支援を行っているところでございますが、さらに十七年度におきましては、先進的な林業事業体、そういったところに全国的に普及していく中で森林所有者にも働きかけを強めていく、そういったことで森林整備の一層の推進に努めていきたいというように考えている次第でございます。

梶原分科員 森林事業の活性化、いろいろな面でてこ入れが必要ではないかと思っております。

 例えば、伐採、特に木材の搬出というのが大変労力を要するわけでありまして、まずその前に道をつけなくてはいけないというところから始まるわけですね。大変な労力が要るわけでありまして、省力化のための技術開発、これが大変重要ではないかということが一つあると思いますし、もう一つは何といっても国産材の需要拡大、これも一つ具体的な数値目標を決めて利用していくということが必要ではないかな。ただ使ってくれ、使ってくれでは促進にならない。利用に当たって、インセンティブを与えるということが必要だろうと思います。

 そしてまた、今、林業作業者が大変高齢化をしている。主体が大体六十代ぐらいじゃないかと思うんですね。これでは将来不安もあるわけでありますし、安全面もあるわけでありますから、やはり若い人が参入できる、そういった技術の育成であるとか人材確保が大変必要ではないかな。新たな雇用開発にもなるわけでありますから、そういった総合的な取り組みを積極的に進めていっていただきたい、このように思っているわけでありますが、それぞれ何か少しコメントがあればお願いしたいと思います。

前田政府参考人 確かに、低コストで効率的な林業、あるいは森林整備を進めていくという上で、基盤整備なり機械化というのは大変大きな役割を果たしているわけであります。

 私どもも、そういった関係で、伐出を初めといたしまして、その機械の開発普及といったことに努めているわけでございまして、とりわけ高性能機械の推進導入、こういったことで努めているわけでございます。十五年度末で見ますと二千五百五十四台ということで、十年前と比較いたしまして三・五倍に保有台数がふえている、そういった関係で省力化の方にも貢献してきているのではないかというように考えている次第でございます。

 また、当然、施業が進むという上で、木材の利用拡大、こういったものは大変重要な課題であります。

 私どもも、一昨年、十五年八月でございましたけれども、農林水産省といたしまして、隗より始めよということで木材利用拡大行動計画を策定いたしまして、みずからのいろいろな補助事業とか庁舎、施設、そういったところで具体的な目標を設定いたしまして、木材の使用を広げていく。さらには、各省庁の方々にもお願いしていくという形で取り組んでいるところでございます。このほか、木材利用の普及啓発あるいはバイオマス利用、そういったことも含めまして新たな需要の拡大といったものに努めておるところでございます。さらに十七年度からは、直接消費者に訴えていこうということで、キャンペーン活動等々も含めまして利用の推進に努めているところでございます。

 また、御指摘にございました担い手の問題、確かに近年、林業労働者あるいは林業就労者が大変減少、高齢化いたしておりまして、七万人ぐらいまで減ってきているんだと思いますけれども、そういう中で何とか確保、育成していきたいということで、例えば緑の雇用といったことを通じまして就労の安定を図っていく、こういったことにも鋭意努めておるところでございます。

 今後とも、こういった問題を含めまして、全力を挙げて取り組んでまいりたいというふうに考えている次第でございます。

梶原分科員 最後に、森林環境教育に触れたいと思うんですが、国民の中に、森林に対する関心とか知識というのは本当に低いのじゃないかなと思っているわけであります。私も、田舎に住んでおりながら、子供が山に入るなんということは最近見たことがないわけでありまして、やはり子供たちも森林に親しむ、実際足を運んで親しんでいかなければいけないなということを思っているわけであります。

 また一方で、最近森林ボランティア団体というのが私どもの地元にも幾つかあって、市民が積極的に入っていこうという動きもあるわけでありますけれども、素人が入っていって事故があるなんということもあるわけであります。いずれにしても、そういった教育の促進であるとかそうした団体にぜひ支援をして、安全に森林に親しんでもらうということが必要なんじゃないかと思います。

 それについてぜひお願いしたいのと、最後に、ことしの秋、ちょうど私の選挙区である兵庫県三田市で全国育樹祭というのがやっていただけるということでありまして、大変期待をしているところでありますので、ぜひ成功のために協力をお願いしたい。最後にお答えだけお願いして、質問を終わりたいと思います。

前田政府参考人 森林の多面的な機能、こういったものに対しまして国民の理解を広めていく、あるいは国民参加の森づくりを進めていく。そういったためには大変、子供さん方を初めといたしまして、広く国民に森林に親しんでいただく、あるいはさまざまな体験が享受できるように、森林環境教育でございますとかあるいは森林ボランティア活動、こういったことを推進していくことが重要だというふうに考えております。

 そういった中で、私どもも、文部科学省の方と連携をとりながら、森の子くらぶ活動ですとか学校林の活用、整備、あるいは活動の場となります多様な森林の整備、施設の整備、こういうものを進めると同時に、特に今先生のお話にもございましたけれども、森林ボランティアの安全あるいは技術、こういうものの研修にも力を入れてきているところでございます。今後とも、関係省庁と連携を図りながら、これらの取り組み、積極的に進めていきたいというふうに考えている次第でございます。

 また、今お話にございましたけれども、全国育樹祭、まさに戦後の荒れた国土を復興していくという中で大変重要な、植樹祭と並んで重要な事業だというふうに私どもも認識いたしております。ぜひこれが成功になるように、また私どももできる限りの御支援をしていきたいというふうに考えておりますので、よろしくお願いいたします。

梶原分科員 ありがとうございました。

小泉主査 これにて梶原康弘君の質疑は終了いたしました。

 次に、宇野治君。

宇野分科員 自由民主党の宇野治でございます。

 きょうは、私の地元滋賀県、琵琶湖が抱える、今大きな問題になっております内水面漁業について、少し御質問させていただきたいなという思いでございます。

 私も常日ごろ、機会あるごとに農水省の皆さん方にはお願いをしておるわけですが、水産庁所管の水産資源のいろいろな話があると、どうしても海に囲まれた日本ということで、マグロとかサンマとかというような海水の話が主体になりまして、内水面というものについては本当に少ししか話が出てこない。白書のページ数を見ても、たった十行ぐらいしか内水面は書かれていない、今そんな状況になっていることを非常に寂しく思います。

 やはり内水面というのは、日本固有の魚をとっていただいて、それを国民が食すということになるわけでありますけれども、このアユとかフナとかコイとかというような日本固有のものを食べるという習慣が、だんだん薄れてくるのかなということも心配しております。今、食育のいろいろな話も出ておりますけれども、この食育の中でも、やはりマグロを食べるよりかはアユを食べろというぐらいになってもらいたいな、日本固有の魚というものを日本人は忘れてはいけないということにしていきたいわけであります。

 そういう中で、残念ながら、内水面漁業というのはだんだん廃れてきている、漁獲量が減ってきているというような現状があるように聞いておるので、まず、内水面漁業の今の推移というものを少し御披瀝いただき、水産庁として、どうしてそんなことになってきたのか、具体的な原因があれば教えていただきたいと思います。

田原政府参考人 お答えいたします。

 最近の河川ですとか湖沼等のいわゆる内水面漁業の漁獲量の推移ということでございますが、この十年近くということでとりまして、平成五年でございますが、全国で約九万トンの漁獲量でございました。これが一番直近ということになりますと、平成十四年でございますが、約六万トンということでございますので、三分の二ぐらいということで減少しているという状況でございます。

 この要因といいますか原因につきまして、これは学術的にはさまざまなことを言われておりますけれども、よく言われておりますのが、河川ですとか湖沼ですとか、魚類がすみます生育環境の改変、こういったことが言われますが、私ども、最近では特に、ブラックバス等の外来魚によります食害、あるいは全国的にカワウが非常に多発しているということで、カワウによります食害、さらに、内水面漁業の大宗の魚種でありますアユにつきましては冷水病が発生している、こういったこと等がいろいろ重なりまして、最近の漁獲量が減少しているのではないか、かように考えている次第でございます。

宇野分科員 まさに、平成五年から平成十五年を見たら、三分の二になってしまったということなんですが、私、実は県の方から、琵琶湖だけの漁獲量を手に入れたんですが、昭和四十九年約六千四百トンあったものが、昭和六十年に三千八百トン、先ほど言われた平成五年は三千六百トン、一番少ないときで平成十一年二千トンまで落ちているんですね。ただ、この十一年から十五年、一昨年の部分を見ますと二千四百五十トンと、若干でありますが、伸びてきている。これが琵琶湖の今の漁獲量というものの推移であります。

 この伸びてきたということは本当にうれしいことであるんですが、それは何が原因なのかなということを調べますと、県の漁連の皆さん方からお話しいただいているのは、やはり、ブラックバスを県として、また国の援助をいただきながら、昭和六十年から捕獲を始めてきた、その成果が少しずつではあるが出てきているのではないだろうかと。

 ちなみに、平成十四年の推定でありますけれども、ブラックバスが琵琶湖に生息しているのが約三千トン近くいただろう、それが平成十六年、昨年が千九百トンぐらいまで減ってきた。この約千百トン減った分、これで相当また固有魚がふえてきたのではないだろうかなということも言われるわけであります。

 一方、今お話ありましたように、カワウというのも今大変な問題を起こしているものであります。

 ちなみに、ちょっときょう写真を持ってきたんですが、ごらんいただいて、これは琵琶湖の竹生島という大きな島があるんですが、ここにコロニーを持ってカワウが生息している。もう本当に一面にいるという。あとは、ここはもう安曇川の各河口部分で、この真っ黒になっているのはこれは全部カワウです。それから、これは琵琶湖の上に泳いでいる、こういう状況になっている。こんなもの、これはまあ多い多いで済むわけなんですが。

 もう一つ見ていただきたいのは、先ほどお話ししました竹生島、これは一九七八年。大変きれいな、緑のあるきれいな島だったんです。それが一九九二年の写真、これは白くなっています。これはまさにコロニー、カワウがここにいわばこういう形ですんでいて、ふんをしたり何かをして全部枯れてしまった。こういう森に対する被害も出始めている。

 ただ、それの被害以上に、これだけの量がいる。例えば、今、大体我々が聞いている話は、琵琶湖周辺には四万羽近くいるんではないだろうか。これは飛んでいますので、なかなか正確には数えられない。一時は二万羽と言っていたんですけれども、今は四万羽に変更になったわけでありますが、こういう状況になってきているようであります。

 まず、そういう中で、私はきょうはちょっとカワウの話をさせていただきたいな。せんだってはブラックバスの話をさせていただき、有害魚指定になったということで私も喜んでおるわけで、これからブラックバスについてはどんどん対策は進むということを期待しておるわけですけれども、カワウについてお話をさせていただきたいと思います。

 後ほどお話あるかと思いますが、カワウ一匹で一日五百グラムの魚を食うということを言われています。これは四万羽いたら、計算したら大変な量になるということは、もうおわかりいただけると思うんです。

 まず環境省の方に、今の分布状況、全国のカワウがどんなふうにいて、どのくらいいるんだというような話を少しお聞かせください。

小野寺政府参考人 カワウの分布状況、集団営巣地のコロニー数でありますけれども、我々が把握している平成十六年現在の一番新しい情報では、三十都道府県七十八カ所となっております。

宇野分科員 大体の数は、何羽ぐらいというのは。

小野寺政府参考人 全数はちょっとわかりません。専門家がいろいろ推計しているところを合わせると、少な目に言って五万、多く推計するのをとると十万を超えるのではないかと思います。

宇野分科員 そういう分布になっているわけでありますけれども、少な目に見て五万と言ったら、先ほど私がお話ししました琵琶湖だけで四万と言っているので、もうほとんど入るということになってしまうんです。これはなかなか統計のとり方は難しいと思うので、そこの議論はいいと思います。

 そういうような、カワウが全国に生息しているわけでありますけれども、これを単純に早く防除したらいいじゃないかということで、狩猟の鳥獣に指定をするという話もあるわけでありますけれども、今は残念ながら狩猟鳥獣にはなっていない。一部の県では保護鳥扱いにしているというようなことで、保護鳥という名前がないようでありますけれども、希少種という形、その県のレッドデータブックに載っているというような県もあるようであります。ですから、全国でのカワウに対する感覚が、一方では有害だ、一方では保護しなきゃいけないというような、今ちょっとちぐはぐな状況になっているということになるんです。

 こういう状況にあるわけでありますが、そこでもう一つ、これは環境省にお聞かせ願いたいんですが、今この駆除の状況をどういうふうに考えられているのか。環境省にとったらこれは有害ではなく保護扱いにしたいのかどうかわかりませんけれども、そんなこともひっくるめて、カワウというものをこれからどういうふうにしていきたいと思っていらっしゃるのか。駆除をやるならやるという形で、どういう形にするのか、もし方法があれば教えていただきたい。環境省としての考え方で結構ですので、お願いします。

小野寺政府参考人 カワウの分布に御指摘のとおり極めて偏りがあります。カワウをむしろ保護すべきと考えている県が五つあって、その中では条例によって保護するというようなこともなされているところでありますが、御指摘のように滋賀県が特に多いわけでありますけれども、農林水産業被害その他をもたらしている県があることも事実であります。

 したがって、我々は鳥獣保護法という法律のもとに適正な管理を行っているところであります。ちなみに、平成十四年度現在でありますけれども、有害鳥獣駆除ということでカワウをとった全数は、一万二百二十八羽ほどとっております。

宇野分科員 環境省という立場では、カワウをどうのこうのというのはなかなか難しいのかな。この間のブラックバスの話については、これは外来魚ということだから、外から入ってきたものは日本の生態系を崩すからだめだということで、環境省もやっと腰を上げていただいたわけでありますが、カワウというのは、日本古来からというのかどうかわかりませんけれども、日本にもともと生息しているものでありますし、それがこういう悪さをしているということ、これは大変難しい状況にあることはよくわかるんです。

 ただカワウをかわいい、かわいいと言っているわけにいかないということと、先ほどからお話ししましたように、内水面漁業に対して大変に大きな打撃を与えている。こういうことを考えますと、やはり私はこれから環境省にお願いをするよりか農水省、まさに水産庁が内水面漁業を守るということでしっかりとした対策を持ってもらいたい、そういうことを願うわけであります。

 水産庁として、カワウに対して、駆除なり防除なりの研究とか対策、どのように考えているのか、まずその辺をお願いします。

田原政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、カワウの防除なり駆除の研究の問題でございますけれども、水産庁といたしましては、平成十年度から十四年度にかけまして、五年間ということで、カワウによります食害の被害調査ですとか、それから食害防止の研究ということで、どういうことで追い払えるか、こういう研究を行ってきたところであります。

 その結果でございますけれども、完全な追い払いというのはなかなか難しい。例えば、田んぼなんかでは稲を守るために目玉様の、目玉シートといいますか、ああいったものをやるというふうなものもやっていますけれども、必ずしもこういったもので効果がないとか、それから花火とか音がするようなもの、これは瞬間的にといいますか、一週間とかそういったところは結構追い払えるような効果があるようでございますけれども、それもまた戻ってくるというふうなことで、そういった物理的な方法ということでは、なかなかこれが決定的だというものはないというのが、この五年間の調査の結論といいますか、そういった格好でございます。

 基本的には、駆除、捕獲、要するに鉄砲で撃って駆除するというのが最大のあれですけれども、これも一度に何十羽と撃てるわけでもございませんので、一発あれしますとみんな逃げてしまう、それがおさまったらまた戻ってくるということで、なかなか決め手になるものがない。

 一番効果的なものは、人間が川のそばにいますと、カワウも警戒してあえて近寄ってこないということですけれども、ずっと立ちっ放しでもないということで、一応現在のところでは、駆除の方法ということではそうした限界があるということを踏まえまして、この十五年度からでございますけれども、今度、アユを放流しますとき等におきましては、こうしたカワウの習性を踏まえまして、どういう手法だったら余り捕食されないようなことになるのかという方式。

 例えば、今まで各内水面漁協は、放流しますときに、車が乗りつけやすいような場所にまとまって深場のところに放流するみたいなことだったんですけれども、そういったことをやりますとそれこそカワウの絶好のえさになるということで、分散放流といいますか、そういったことが有効ではないかということで、十五年度から十八年度までの予定でこうした放流手法の研究も行っていく、こういう段階でございます。

 いずれにいたしましても、先ほど先生が御指摘になられましたように、内水面漁業の今後のためにも、こうした面につきまして我々といたしましては研究に努めてまいりたい、かように考えている次第でございます。

宇野分科員 ありがとうございましたと言いたいんだけれども、まだまだ十分ではないなという思いであります。

 要は、追い払いをやったら、当然、鳥ですから飛んでいってしまってまた戻ってくる、こんなのは当たり前でありますし、駆除をするのに鉄砲で撃つということが今一番のオーソドックスなものになっているわけですけれども、これも、例えば百羽、こういうところにいるからということで一発撃ったら、二、三羽は撃たれますけれどもあとは全部飛んでいってしまうという感じで、なかなか効率が悪いということになってしまう。

 そういう状況で、今もちょっとお話がありましたけれども、アユの放流の話をしようということなんだけれども、これも私は琵琶湖にとって全然合わない。琵琶湖はアユを産出する地域なんですよ。放流する地域じゃないんです。

 その稚アユをカワウがどんどん食べてしまう。一時は、全国のアユと呼ばれるもの、河川にあるアユの七割近くが、琵琶湖産の稚アユを放流して、そこで育てて釣り人が楽しんでやってもらう。それだったのが、冷水病等々の問題もあり、今はたしか四割ぐらいに減ってきているというようなことも聞いております。そんなことが、今琵琶湖の漁獲量が減っている一つの原因かもわかりませんけれども、そういう少ない状況であっても稚アユを守らなければいけない、こんなことを考えているので、別のまた方策も考えていただきたいですが。

 そこで、先ほどお話ししましたように、県の方も今一生懸命駆除をやっております。大変なお金をかけて駆除をやっているわけでありますが、この駆除にかかる費用について、最近どのぐらい国としてやっていただいているのか、そしてまた、今後はどういうような形で予算措置をされるのか、教えてください。

田原政府参考人 お答えいたします。

 水産庁といたしましては、こうしたカワウの駆除、防除に係る予算でございますけれども、平成十五年度からでございますが、都道府県ですとか漁協が行います追い払いの費用ですとか、防止装置の設置、テグスですとかそういったもので防除措置をしていく、こういった設置に対する助成というのを行っておりまして、平成十五年度は全国合計で国費四千万円、これを十六年度は六千四百万円というふうなことにしておりまして、十七年度におきましてもこうした支援を継続して実施していきたいというふうに考えております。

 具体的な支援の中身でございますけれども、生息状況、飛来状況の調査のほかに、具体的な追い払いですとか、先ほど申しましたテグス等の防止施設の設置費の助成、さらには、銃器によります駆除の助成ということで、日当見合いですとかそういったことも助成の対象にするということで、私どもといたしましては、カワウ対策についての各都道府県の取り組みに積極的に支援してまいりたい、かように考えている次第でございます。

宇野分科員 具体的な金額が出なかったので残念なんですけれども、微々たるものであることは違いないと思うんですが。

 例えば、滋賀県の来年度の、十七年度の予算、これは予算で、まだ決まっていませんけれども、本当に駆除に対する予算なんというのは一千万ぐらいしかないんですね。ブラックバスに対する予算というのは約一億近くある。こんな差が出ているということで、カワウに対してはまだまだ目が向けられていない。

 ただ、カワウは本当によくアユを食べてしまうということをぜひ御認識いただいて、予算措置も十分な対応をしていただきたい。聞くところによりますと、例の三位一体の関係で交付税措置になった、切りかわってきたという話も聞いております。これでもう国はいいんだよという話にはならない。やはりそれ相応の対策ということでは、これは日本としての対策をとらなきゃいけない、地域での対策ではないということになるかと思うんです。

 そんなことで、農水省の方もいろいろ対策を打っていただいているんですが、まず環境省にとって、これまでのカワウというものをどうしたらいいんだろうという対策、具体的な方策なり、それからやはり鳥ということで、例えば滋賀県だけ、琵琶湖だけが対策を打ってもしようがない。飛んでいってしまう。

 我々が聞いているのは、滋賀県に来たのは、昔はほとんどカワウはいなかったんですけれども、どうも知多半島の方から飛来してきたものがコロニーを組んで、それがだあっと繁殖してきたというようなこともあります。

 そういうことで、広域的ないろいろなこともしていかなきゃいけないと思うんですが、まず環境省としての広域的ないろいろな取り組みのことを少しお披露目ください。

小野寺政府参考人 カワウは、生態そのものが、効果的な対策を打つ場合に極めてやっかいな性格を持っています。御指摘の滋賀県琵琶湖についても、最大時は八千羽ほど一年に捕獲したこともあるんですが、実はその効果が出たかというと、八千羽とったほどには出ていないということになっています。

 その性格を一言で言いますと、撃って散らしたときに、別のコロニーをつくって事実上生息域が拡大してしまう、そういう結果が実際の推移を見ると出ております。

 したがって、一つは、対策として捕獲圧を強くかけるということがあると思いますけれども、その場合でも、御指摘のようにかなり広域、例えば関東圏ブロック全域でありますとか、あるいは関西、西も近畿圏と言った方がいいかもわかりませんが、捕獲圧をかけたときに拡散する範囲をあらかじめ想定して、その中で実際の実数をどう調整していくか、こういうことが必要なんじゃないかというふうに思っております。

 それで、関東ブロックについては、昨年から準備会等を開きまして、広域でカワウの頭数をどうコントロールするかということに着手したところでありますし、関西、近畿圏においても、滋賀県を中心に、どういう形でカワウに対するコントロールをしていくかということを、今関係者と説明会等を開催して相談を始めたところであります。

 今後とも、なるべく早く対策が打てるように進めたいと思っております。

宇野分科員 ぜひ、生物という部分、生物は大事にしなきゃいけないのでありますけれども、このカワウというものの害も十分認識の上、環境省としての対策をよろしくお願いしたいと思います。

 それで、次は農水省なんですが、水産庁というか、農水省としての立場でこれの対応についてのお話を聞かせていただきたいんです。

 ちなみに、ちょっと最近の事例を言いますと、滋賀県もいろいろなことをやって、最近はおもしろい話が、卵に石けん液を塗ったらこれがかえらないということで、ことしはリモコンの小型ヘリで石けん水をばあっとばらまいてふ化しないようにしようかとか、ロープを張って来ないようにしようとか、いろいろなことを頑張って県ではやっているわけです。これもまさに内水面の漁業を守ろうという思いで、いろいろ水産課がやっているわけでありますので、そういうことを頭に入れながら、ぜひとも、きょうは地元の岩永副大臣もおられますので、岩永副大臣、私よりか地元のことを一番よく御承知いただいているわけでありまして、県会も、議長もおやりいただいて、もう琵琶湖のことも精通されているわけでありますので、そういう意味で、内水面漁業の振興という立場で、カワウなりブラックバスなり、例えば冷水病なりということもひっくるめて、これから内水面漁業をしっかりやっていくのだという思いをちょっと開いていただきたいな、よろしくお願いします。

岩永副大臣 きのうは農水委員会がございまして、その中では、猿だとかイノシシだとかシカだとか、まあ本当に中山間地域、至るところに鳥獣害被害が出ているということ。また、きょうは宇野先生の琵琶湖における鳥獣被害。だから、本当に日本の生態系というのはどうなってきたのかな。確かに、昔からそういう部分はあったものの、これほど大きくクローズアップはしてこなかった、このように思うわけですね。

 今お話しをいただいておりますように、私も県会議員二十年やらせていただきましたし、常に内水面漁業の振興のために精いっぱい頑張ってまいりました。

 しかし、今この十年間を見るだけでも、約十七万トンの内水面漁業が十一万トン、六〇%に落ちている。そして金額ベースでいたしましても、一千六百四十九億が一千億に落ちているということで、これもやはり大変大きな落ち込みをしているわけですね。その要因というのは鳥獣害被害ばかりではないわけでございますが、しかし、滋賀県でいいますと、カワウの問題だとかブラックバスの問題だとか冷水病の問題だとか、ともかく環境変化による部分というのも大変大きなものがあるわけでございます。

 だから、きのうの委員会の中では、ともかくどこへ行ってもここへ来ても、これだけ鳥獣害被害が多いので、これに対する具体的な振興策というものを集中的に考えていく機関を専門的にやはりつくっていかなければならぬのではないかというようなことで、きのう、生産局とも終わりましてから話をし、またそのような答弁もいたしておりました。きょう、水産庁の長官が、ここへ来るまでに、これだけ大きな落ち込みをしている内水面漁業に対する対応について、やはりこれも研究、検討等の何らかの対応をしていくべきではないかというような話を実は今していたところでございますので。

 先生のお話のように、多くの課題がございます。だから、十把一からげにこれだと言うわけにはまいりませんので、内水面漁業全体をどうしていくか。御承知のとおり、水産庁の中で本当にわずかの部分が内水面漁業でございますので、私もおりますので、その部分をちょっとでも広げていきたい。そして、やはりもとの、十年前の生産額を取り返していきたい。しかし、もうつぶれてしまってから興すわけにはまいりませんので、今種のあるうちに、それを普及振興していくというのが大事ではないか、このように思いますので、これからどうしていくかということを、先生の発言を契機に、ひとつ積極的に考えていきたい、このように思っております。

宇野分科員 もう時間がございません。ありがとうございました。

 私の思い、十分御承知いただきました。きょうは島村大臣もわざわざ聞いていただきまして、質問がなかったのにありがとうございます。ぜひ御理解をいただきまして、この内水面漁業の振興、特に昨年の末、内水面の組合の皆さん方、全国大会を東京で開いて、国会のデモまでやって、やはり何とかしたいという思いをすごく強くお持ちでございますので、この内水面漁業の振興、復活という方が正しいと私は思いますけれども、復活をぜひ農水省として頑張ってやっていただくことをお願いいたしまして、質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

小泉主査 これにて宇野治君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

小泉主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。坂本哲志君。

坂本(哲)分科員 自由民主党の坂本哲志でございます。

 今回、質問の機会を与えていただきました。心から感謝を申し上げたいと思います。

 私は、十五年間、熊本で熊本日日新聞という地方紙の記者をしてまいりました。それから十三年間弱、四期、県会議員を務めてまいりました。農政担当の記者もやりましたし、農林水産委員会等でも副委員長、委員長をさせていただきました。農業を取り巻く環境は厳しくというこのまくら言葉が、ずっともう二十年以上続いているように思います。そして、ことし、昭和でいえば八十年でありますけれども、昭和の五十年代の半ばぐらいまでは、何とか農業もそこそこの所得あるいはそこそこの経営があった。しかし、それを過ぎて、だんだんだんだん疲弊する一方である。

 最近は特に、農村部で座談会などを開きますと、もう坂本さん、農業をやっていても食えんとばいというようなことで、農産物は安い、あるいは、一年間かけて、半年かけていろいろなものをつくっても、それが一瞬のうちに天災でだめになってしまう、そういうことの繰り返しで、まさに昭和とともにといいますか、私たちの父あるいは農業の全盛期の人たちが今八十代でございますけれども、昭和五十年代まで、五十歳のころまでは、農業もまあ何とか元気があった。そういう昭和一世の方々が年老いていくと同時に、やはりいろいろな意味で農業の疲弊が進んでいる。それに対して、どうそれを転換していくか。本当に、今のこの時期が一番大事なときだなというふうに思います。

 高齢化あるいは後継者の減少、そして農地の荒廃、二重、三重、四重に、その取り巻く環境は厳しくなっております。いろいろな多面的機能を持っているとかいう言葉としては農業はわかるんでありますけれども、一方で、ライブドアの問題、ニッポン放送の問題、百億、二百億、八百億みたいなお金が平気で使われる。その中で、農業の所得、そういったものを考えると、やはりなかなか後継者が育たないのかなというふうに思っております。

 しかし、ここに来まして、農業基本法から食料・農業・農村基本法というものに変化をいたしました。やはり農業を軸として、国土もあるいは食料も、あるいは教育も集落形成もしていかなければいけないということが少しずつ根づいているような気もいたします。これからの政策展開次第では、かなりいろいろな面で農業の重要性あるいは後継者、あるいは営農体系、そういったものに元気が出てくるのかなというふうにも思っているところであります。

 その中で、新しい食料・農業・農村基本計画が大詰めを迎えております。三月末にも閣議決定をされるという見通しというふうに聞いておりますが、今回の基本計画の目玉は、担い手を明確化する。これまでみたいに、二種兼業農家も一緒にしてということではなくて、担い手を明確にし、集落を基礎とした営農組織の法人化による地域農業の再編ということが大きな目玉かというふうに思います。そして、それを前提にして、経営安定のための直接支払いというものをどういう形で、国民の皆さんたちに理解あるような形で支払っていくか、所得の補償をしていくかというようなことであろうというふうに思います。

 つまり、個人の認定農家は、法人経営することによって大規模化し、一方で、個人経営まではいかないけれども、各地に存在する担い手を明確にして、そして、集落単位で集団で経営を行うという法人経営を形成していくというようなものでございます。

 こういった集落営農法人化というのは、少なくとも自由主義社会では、これまで類を見ない農業の経営形態ではなかろうかというふうに思います。そういう意味では、非常に大きな挑戦がスタートするというふうにも思います。集落を中心に水田農業を展開してきた日本の農業だからこそ、その発想が生まれるし、今それが可能になるのだろうというふうに思います。

 社会主義では、コルホーズ、ソホーズ、あるいは人民公社、それぞれ集団経営が行われましたけれども、すべてこれは失敗をいたしました。それは、農業形態の失敗ということではなくて、社会主義そのものの責任の回避や責任の不明確さ、そういったものからくる集団経営の失敗であったろうというふうに思います。

 そういう意味でいいますならば、今回の集落営農が成功しますならば、これは日本の農業の社会に新たな経営形態なり新たな農業環境をつくると同時に、韓国を初めといたしますアジアの水田を中心とする農業形態、農家形態、こういったものにも大きな影響を与える、大変すさまじい、大変スケールの大きい政策のスタート、政策の転換であるというふうに私自身は位置づけております。

 しかし、それを個別具体的にいろいろ見てみますと、どの規模で法人化していくのか、あるいは、担い手をどういう形で、どういう手法で明確化していくかということにつきましては、非常に難しい問題が山積をしております。各地域に行って農業法人形態を説明しても、あるいは、担い手はこういうものですよというようなことを農家に対して集落に行って説明しても、なかなかそういうものにどこまで理解が得られて協力を得られるかということは、各集落に行けば非常に難しい問題かなというふうにも思います。

 そういう中で、スタートは平成十九年の一月というふうになっております。あと二年間しかありません。二年足らずであります。その中で、市町村あるいはJA、そして農業委員会、あるいは議会、そういった地域社会も含めて、さまざまな理解を得るための努力、説明、そういったものをしていかなければいけない。説明する本人がまたわかっていなければ、これはいろいろな質問が出てますます混乱するばかりでありますので、その辺の持っていき方、説明の仕方、あるいは集落営農への転換の過程、こういったものが非常にやはり大きなウエートを占めてくる大事な問題であるだろうというふうに思います。

 そこで、御質問をいたしたいと思いますけれども、今後、JA、それから市町村、そして農業委員会などで協議会をつくって、そして、その中でこの一連の作業が進められていくというふうに思いますけれども、まず、期間的にどのくらいをめどに、そして、どういう順序で説明をして、一応の仕切り、区切り、そういったものを取りまとめられていくのか。十九年の一月に向けての、あるいはそれ以前に向けての具体的なスケジュールを、あるいはその手法をお示しいただきたいというふうに思います。

 それから、二問目でございますけれども、これは一部の新聞に、集落営農組織は小規模農家を三十戸前後ずつまとめ、そして、二万から四万の組織にするというふうに報道をされましたが、集落営農組織としての規模や構成というものにつきましては、もう一つイメージとして私たちのところに伝わってきません。

 私たちとして、イメージとして伝わってきませんので、農家の方がこれまで一生懸命、自分の土地で自分が耕して自分が作物をつくってやる、だから農業なんだ、だから言いたいことを言えるんだというふうに育って、そして働いてこられた方々を、集落営農あるいは法人化ということで、どういうふうなことで説明をされていかれるのか。そして、その集落営農のイメージがどういうものか、いま一つ不明確なところもございますので、このことについて御説明、御見解をお伺いしたいというふうに思います。

須賀田政府参考人 二つ御質問でございました。

 品目横断経営安定対策、先生おっしゃいますように、十九年産から導入を予定しております。そして、その対象となる経営は、認定農業者を基本といたしまして、経営体の実体を有する集落営農も対象にするということまでは決まっております。

 残念ながら、その集落営農、あるいは認定農業者、まだまだ全国で数が足りません。そういうこともございまして、農業団体の方では、全国担い手育成総合支援協議会というものをつくって運動を進める、また農林水産省の方では、岩永副大臣を本部長といたします地域で考える担い手創成プロジェクトチームというのをつくりまして、農業団体とともに全国運動を展開する、現在展開中でございます。

 その全国運動の中では、一つは認定農業者というものをできるだけ多くつくっていくということが一つでございます。それから、集落営農経営といったものをできる限り組織化をしていきたい、こういう内容になっておりまして、一応本年の夏、一区切りをつけまして、本年の夏以降、この経営安定対策の対象となる経営の要件というのを議論していただきたい、そして、来年度はその十九年産からの導入に向けたいろいろな制度化を図っていきたい、このようなスケジュールで十九年を迎えたいというふうに考えているわけでございます。

 それから、集落営農のイメージいかんという御質問がございました。集落営農、先生いみじくもおっしゃられましたコルホーズ、ソホーズのような、上から強制的につくる、あるいは上からノルマを課すというものではなくて、現在、耕作放棄地が三十四万ヘクタールに及んでおりまして、少子高齢化というのも進んでおりまして、どうも農業の担い手が全般的に脆弱化しているという中で、地域の農業はどうやって存続させていきますかというようなことから、集落の農業は集落でやろうじゃないかという自然発生的な声が出てきまして、滋賀県とかあるいは富山県を中心に、集落営農組織が数多く組織化をされているわけでございます。

 その中のイメージでございますが、やはり集落の相当部分の農地をその組織体が受ける、そして規約を定めまして、役割分担を決めまして、あなたはこういう役割、あなたはこういう役割、主として担うのはあなたですよ、こういう役割分担を決めて、収益はこのように分配したいという規約を決めまして、そのための経理をやります。農産物はこういうふうに販売して、収入はこうでコストはこうで、収益はこうなのでこういうふうに分けます、そういう経理を決めまして、それで、主たる従事者の所得目標、こういうものを決めていただきまして、あと、将来どのように発展させていくかという構想を決めていただく、こういうふうなことで、集落営農というものをともかくつくってほしい、今のところ規模は問いませんということで全国運動を展開することとしております。

 なお、私どもが昨日お示しをいたしました、二万から四万で一個三十戸あたりというのは将来の姿でございまして、主たる従事者が他産業並みの所得を上げ得るような集落営農が、平成二十七年時点では二万から四万できれば、我が国の農業構造の相当部分をいわゆる担い手という人によって占めることができるという将来のモデルとして示したものでございまして、現在取り組んでおりますのは、ともかく集落営農の組織化というものをちゃんとやってほしいということで運動しているわけでございます。

坂本(哲)分科員 ぜひスムーズなそういった集落体制への移行が望まれるわけですけれども、正月、農協の職員あるいはJAの担当理事あたりと一緒にお酒を飲んだりしていますと、やはり農村部というのは、これまでお互いが競争であり、または共同作業であったわけですよ。隣が米を六十俵つくるなら、うちは六十五俵つくる。隣がこれだけのトラクターを買えば、うちはこれだけのトラクターを買う。あるいは、そういった競争の中で、集落が競争しながら、それでいて農作業は集団でやるというようなことで、非常に競争と協調の中で来たわけですので、説明もなかなか難しい。

 農協職員あたりによると、やはり一家言持った人が多くて、それはずけずけ言ってくるし、それに対してどう説明していったらいいか立ち往生してしまうというようなことでもございましたので、JAの職員だけではなくて、財務諸表を含めて、損益計算書も含めて、経営面できちっと説明できる方もやはりグループに入れながら、今後の集落営農移行、そういう移行へスムーズにいけるように努力していただきたいというふうに思います。

 まずそれが前提になって、そうして所得を直接に補てんするという品目横断的な農業の経営安定対策というのが施行されるわけであります。これは農業以外の国民から見れば、なぜ農家だけ経営安定対策なんだ、なぜ農家だけ、その集落だけ、あるいは法人だけ所得補てんなんだ、直接支払いなんだというような問題あたりも必ず起きてくるように思います。

 ですから、十九年産から導入することを目指して検討が進められております品目横断的な経営安定対策につきましては、まさに法人化、あるいはこれからの農業形態を前提として、そして今後の農業形態のあり方に対処していくために、土地利用型農業の構造改革に資するような形でそれがスムーズに導入、スムーズというのは、ほかの国民皆さんたちの御理解を得て導入されていかなければいけないというふうに思います。

 非常に、その辺のところは難しいとも思いますけれども、これは非常に政治的なものも絡んでまいるかというふうに思います。できれば副大臣の御答弁をお願いいたしたいというふうに思います。

岩永副大臣 先生、これから五十年で世界の人口は六十三億から九十億になる、約三十億ふえるわけですね。そして、なおかつ日本の自給率が四〇%、本当に我々の子供や孫たちが食にありつけるかどうかというようなことを考えますと、私は、日本の食に対する大変大事な喫緊の課題がもう目前に迫ってきている、こういうような状況の中から、効率的な農業を安定的に持続できるようにしていかなきゃならぬのではないかということで、今回の基本計画の見直しが始まったわけでございます。三月に向けて、今先生がおっしゃったように、大変精力的に、国民注視の中で、今この改革案に取り組んでおりますし、今坂本先生からお話をいただいたように、大きな期待を持って、本当にやる気があるんだなというお気持ちで見ていただいていることを大変うれしく思うわけでございます。

 それで、今一般の産業の労働賃金の平均が五百三十万、だから、これに見合うような体制というものをやはりきちっと農業でも最低つくり上げなきゃならぬというようなことでございますので、今まで、国が、俗に言うばらまきと言われていたような金の配分ではなしに、集中して専業農家に、また土地も、その集落の土地を、今までは品目的に対応していたのを、今度は品目横断的に対応しながら、一〇〇%、むしろ昔のように一〇〇%以上の土地の利用ができるようにしていこうというのが、実は今回の大きな課題でございます。

 そのことのために、一つは担い手農家、専業農家をきちっと育成しながら、そこへ金も土地も集中していく。しかし、やはり一般の農家の皆さん方が、我々は農業したい、しかしながら、持ち得る土地というのは三反、五反で、到底農業に参画できるだけの土地が与えられていないんじゃないかというのを、集落という形でくくりながら、そこでみんなが参画していく、なおかつ土地も一〇〇%利用していく、こういうことでございまして、この間も、須賀田局長初め皆さん方、滋賀県に来られたわけでございますが、滋賀県も約四百ほどの集落が営々と今その準備をしておりますし、また、富山県あたりでも四百ほどの集落がその準備をしているところでございます。

 こういうような状況の中で、本当に日本の農業が安いコストで、そして多くの生産を上げる、そして次の世代にきちっとやはり食料を供給していけるようにしていかなきゃならぬ。だから、四五%、五〇%以上という目標を将来的に掲げますが、それでも限られた土地の中で、私は半分以上の食料を外国から輸入しなきゃならぬというようなことで、WTOだとかいろいろな外国との交渉、世界関係を見ながら対応していかなきゃならぬ、そういう状況になっているのではないか。

 だから、ことしは腹を据えて、日本農業転換のときだということで、島村大臣を中心に我々全国を駆けめぐりまして、この新しい農業転換の方針、気持ちというのを国民に訴え、生産者に訴えながら御協力をいただいていく、こういうような気持ちで今強い決意と意気込みを持って対応していきたい、こんな思いを持っているところでございます。

坂本(哲)分科員 副大臣の力強い言葉、ありがとうございました。大臣あるいは政務官ともども、これから半年、まず半年、一番胸突き八丁、正念場であるだろうというふうに思います。ぜひ、新たな農業の経営形態展開のために御尽力いただきたいというふうに思いますし、私は、やはり今言われましたように、麦をつくれば七万、大豆をつくれば七万、そういった個別的なものよりも品目横断的な経営安定対策、やはり一歩前進だろうというふうに思いますし、これを国民の皆さんにも十分理解してもらわなければならないし、理解してもらったときに農業への新たな消費者の方々の理解ができるだろうというふうに思いますので、その辺の品目横断的な安定対策についてのさまざまな理解をするための方策もよろしくお願いいたしたいというふうに思います。

 続きまして、先ほどもちょっと出ましたけれども、耕作放棄地の問題についてお伺いいたしたいと思います。

 現在三十四万ヘクタールということでございますので、これは四百万ヘクタールの農地からすればもう一割弱、一〇%弱が何もされない荒れ地になっているということでございます。苦労して圃場整備をして、あるいはいろいろな開墾をして、そして畑をつくり上げた、田んぼをつくり上げた、いろいろなものをつくり上げた。しかし、耕作者がいなくてそのままになっている。特に農振地域などで、都市部に近いところあたりはそういう傾向が多く見られます。これをこのままほうっておけば国土の荒廃になることはもちろんでございます。山間部の耕作放棄地の場合と、やはり平地の耕作放棄地の場合にはその持つ意味合いというものが全然変わってまいります。ですので、特に平野部においてあるいは都市近郊においての耕作放棄地の問題というのをいかに処理していくか、いかにそこに新たな耕作者をつくり上げていくかということは大事な問題であるというふうに思います。

 今般、農水省におきまして、耕作放棄地の発生防止、解消についての対策を盛り込んだ農業経営基盤強化促進法の一部を改正する法律案が提出されたというふうに聞いております。この法案においては、具体的にどのような耕作放棄地対策が講じられていることになるのか、その内容について御説明をいただきたいというふうに思います。

 また、制度改正によりまして、新たな耕作放棄地対策を講じることとした場合におきましても、現場においてその対策がきちんと実施されるかどうかというのが成否のかぎを握っております。いろいろ法律をつくっても、制度を整備しても、やはり現場に行って、現場がそれを応用しなければ何にもなりません。そこで、農水省としては、現場において、法案に盛り込まれた対策が円滑に実施されるようにするためにどのように取り組みを行っていかれるのか。現場に合わせた指導、このこともあわせて御答弁いただきたいというふうに思います。

須賀田政府参考人 先生おっしゃいますように、耕作放棄地三十四万ヘクタールと増加傾向にございます。高齢化が今後進展していくということを考えますと、さらに増加することが懸念されるわけでございます。農地は食料生産のかけがえのない生産手段でございますから、可能な限り農業上の利用を確保したいというふうに考えております。

 そこで、今般国会に提出させていただきました農業経営基盤強化促進法の一部改正におきまして、まず、市町村がそういう耕作放棄地、遊休農地を調べまして、プランをつくりまして振り分けます。農業上の利用を図ることができないものは山林等へ転換をしていく。今後、農業上の利用を図るべきものは、そういうことで農業上の利用を図るべき農地として、まず利用すべきであるということを指導いたしまして、指導を聞かない場合には、最終的には裁定という強制的な手法で市町村等が賃借権を強制的に設定する、こういうことで耕作放棄地を解消するという仕組みを一つつくりました。

 それからもう一つは、耕作放棄をいたしまして、病害虫が周辺の農地に飛ぶとか、あるいは土砂が埋まりまして水利施設が隣の農地へ機能しなくなる、こういったような農地がございます場合には、市町村長が、ちゃんと管理しなさい、支障になる行為を除去しなさいという命令を出しまして、言うことを聞かない場合には代執行をする。これは、所有者が不明の場合でも一定の公告手続を経てそういう代執行をする、こういう体系的な耕作放棄地対策を盛り込んでいるところでございます。

 さらに、こういう対策が現場で実効を上げますように、耕作放棄地の実態の調査、あるいは耕作放棄地のそういう情報をインターネット等によって公開する、あるいは農業委員会が耕作放棄地の解消に向けて指導をする、こういうことに対する所要の予算というものを盛り込ませていただいているわけでございます。

坂本(哲)分科員 強制力を伴って、そして耕作放棄地対策をやるということで、ぜひ期待をしたいというふうに思います。

 しかし、強制力だけでやれるものでもありませんし、農業従事者というものに対していろいろな法的な規制もかかっております。そういう場合には、NPO法人とかあるいは株式会社とかさまざまな形態の農業経営体がその耕作放棄地の農業に従事するというようなことも出てくるだろうというふうに思います。これは、特に現在、リース特区制度というのがございますので、この特区をやはり全国に広げていくということも必要ではなかろうかというふうに思いますけれども、いかがですか。

須賀田政府参考人 現在、先生おっしゃられました構造改革特区制度の導入によりまして、耕作放棄地などが相当程度存在する地域において、市町村と協定を結びまして、株式会社とかNPOとかこういう法人がリース方式で農業に参入できるようにする、そして耕作放棄地をなくす、こういう仕組みがとられておりまして、現在、六十八法人が参入をしてきております。中にはNPOもございます。我々、これは地元と何か紛争があるかというふうに見ておりましたけれども、地元と紛争もないようでございまして、今般の法律改正、先ほど申し上げました農業経営基盤強化促進法の一部改正の中で、この仕組みをそっくり取り入れまして全国展開をするというふうに考えているところでございます。

坂本(哲)分科員 やはり、必要とするところに必要なものは、これは特区制度を全国展開してもやっていかなければいけないというふうに思います。

 座談会なんかに行きますと、農家の厳しさ、農産物の安さ、所得の低さ、そのことを本当に訴えられます。それを何とか集団の力で、そして集落の知恵で、そしてやはり、農耕民族という私たちのこの日本民族の知恵で何とか解消していかなければならない。そういう意味では、今回の基本法の計画の見直し、これから大きな日本の農業や日本の国土保全の方向性を示すものであるというふうに私自身思いますので、どうか大臣以下一丸となって、今後の農政のために、日本の国土のために、あるいは子供たちのために、後継者のために、ぜひ御奮闘いただきますようにお願いをいたしまして、質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

小泉主査 これにて坂本哲志君の質疑は終了いたしました。

 次に、古川禎久君。

古川(禎)分科員 自由民主党の古川禎久でございます。

 本日は、こういう機会をいただきまして、ありがとうございます。私の考えを披瀝させていただきますとともに、大きな視点からやりとりをさせていただく、ちょっと面持ちの違うやりとりをさせていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 まず、申し上げますが、あの天才物理学者、アルバート・アインシュタイン博士が、大正十一年に初めて我が国を訪れました際に、感動しまして、手記でこういう言葉を残しております。

  近代日本の発達ほど世界を驚かしたものはない。世界は進むだけ進んでその間、幾度も闘争が繰り返され、最後に闘争に疲れるときが来るだろう。そのとき、人類はまことの平和を求めて、世界の盟主をあげねばならぬ時が来るに違いない。この世界の盟主になるものは、武力や金力ではなく、あらゆる国の歴史を超越した最も古く、また尊い家柄でなくてはならぬ。世界の文化はアジアに始まってアジアに帰り、それはアジアの高峰である日本に立ち戻らねばならない。われわれは神に心から感謝する。天がわれわれ人類に日本という尊い国を作っておいてくれたことを。

という言葉がございます。私は、このアインシュタイン博士の言葉は、予言ではなくて現実味を帯びた予測であったというふうに思います。

 そう感ずることは、例えば一つエピソードを引きますと、我が自衛隊が、今、インド洋ですとかゴラン高原、イラクのサマワ等で活躍をいただいておりますけれども、第一次先遣隊でイラクに行かれました佐藤正久一佐が、エピソードとしてこういうことを教えてくださいました。

 すなわち、あの宿営地の周囲に安全のために、防御のために有刺鉄線で鉄条網を建設した。そのときに、自衛官二名と現地のイラク人八名で、十人一チームを組みまして、そして区間を決めて設営したんだそうです。

 そのときに、有刺鉄線ですので、針金がひっかかります。もつれてしまいます。それを何と日本の自衛官が、あれ、おかしいなということで潜り込みまして、もう傷だらけになりながら、服を破りながら一生懸命やる姿、それをイラク人が見て感動するわけですね。ほかの外国の部隊であれば恐らくそうではないんだろうと思うんです。率先して一生懸命汗かき、血を流しながらやっている日本の自衛官を見て、よし、おれたちもやろうと、その十人のチームが心が一つになりました。そして、夕方五時なんでしょうか、一応時間が来るんですけれども、いや、隣のチームに負けないようにもうちょっと頑張ろうよというようなことで、あっという間にその設営が完了したというエピソードをお聞きしました。

 まさにこれが日本の精神文明をあらわしているのではないかというふうに思ったわけでして、こういうところにもこのアインシュタイン博士の予測というものがあらわれつつあるのではないかと感じておるわけでございます。

 日本文明といいますと、この四季折々、恵まれた日本の国土、この中で大自然と共生する知恵、生活観、循環型農業、こういったものに根差した我が国民族の死生観なり価値観というものがございます。

 あるいはまた、わび、さび、物の哀れといいますような美意識、そういう美を大自然の中からつかみ出すといいますか、このような美意識ですとか、あるいは和をもってとうとしとなせという言葉にあらわれていますように、協調、調和という価値観、原理、こういったもので言いあらわすことができると私は思っております。

 その日本文明、日本文化なるものをもっと探りたいという思いがありまして、実は私、このお正月に古事記を読みました。口語訳のものがありますので。これを読んで改めて認識した部分がございますので、申し上げます。

 これは戦前の教科書などには必ず載っておったそうなんですが、神勅というものがございます。これは、アマテラスオオミカミが孫のニニギノミコトを高天原から下したもうときに、要は命令を出すわけですけれども、有名な言葉です。「豊葦原の千五百秋の瑞穂国は、是れ吾が子孫の王たるべき地なり。宜しく爾皇孫就きて治せ。さきくませ。宝祚の隆へまさむこと、当に天壌と窮りなかるべし」という言葉があります。

 これは、その統治の正統性をあらわす文章であると同時に、私は、農業立国宣言であるというふうに読みます。

 そしてまた、これは日本書紀の方にございますが、例えば、スサノオ。これはアマテラスの弟ということになっていますが、スサノオは、海の向こうから我が国に帰ってきたときに、日本のこの緑の山、島、緑に覆われた美しい島に大変感激をするわけです。そして、からくにには金銀という宝があるけれども、我が国には木という宝があるじゃないかということをはっきり言っております。つまり、スサノオは木の神ということになっております。このような神話を見ますときに、我が国の文明、精神文化というものの核心は、やはり農、林、漁業という営み、そしてこの四季折々の風情に恵まれた国土、こういうものが核心になっているのではないかということを確信したわけでございます。

 この日本文化、日本文明を私たち日本人がもう一回再認識をして、きっちりとそれを取り戻すことができるならば、これはすなわち、その瞬間において既に人類社会に対して貢献し得るのではないか。この協調、調和という原理を日本人がその日々の日常の暮らしの中で体現することを取り戻すことによって、イラクの例に見られたような、そういうメッセージを世界に対して発することができるのではないかと。

 つまり、ただ単に産業振興策として農業、林業、水産業を論議する前に、文明史的あるいは人類史的な意味で、これをもう一度とらえ直してみるべきではないかというような思いをいたしておるところです。

 その意味では、この日本文化、日本文明の核心たる部分を最前線におきまして総指揮をとっていただいております島村農林水産大臣におかれましては、どうぞ今後とも御奮闘、御精励をいただきたいと心より御期待申し上げる次第でございます。

 さて、今申し上げました木の文化ということでございますが、一口で申しまして、私どもの日常生活を見回しますときに、木というものが相当失われてきておるなと思っております。

 先日、製材所から、安くちゃぶ台を求めてまいりました、杉の無垢材ですけれども。私はふるさとで小さな子供たちが三人おりますけれども、一緒に食事をする機会はほとんどありません。けれども、朝晩に、できればこの木のぬくもりの伝わるような、値段は安いけれども杉の無垢材のちゃぶ台で御飯を食べさせてあげたいという思いがあって、生活の中に少しでも木を置きたいというような思いから求めたわけでございます。

 実は大臣、私がふだん使っております名刺でございますが、これは地元の杉材を利用しました木の名刺でございます。こっちは間伐材パルプを使った名刺でございまして、ふだんから、これをごあいさつするときに差し出します際に、これは間伐材でつくった名刺ですと言ってお渡しするように心がけております。特に、都会の方は間伐材とは何ですかとおっしゃるものですから、御説明を申し上げます。山をしっかり手を入れて守って初めて川下では水が飲めますよ、田舎がしっかりしておって初めて都会の人はおなかいっぱい御飯も食べられますよ、だから、都会も田舎も一つでまとまって初めて日本国でありますというようなことを申し上げておるわけです。

 残念ながら、八二%は海外から取り寄せておるという残念な状況の中で、一方でまた、森林は荒れ、林業、林産業というものも大変苦しい状況に置かれておりますけれども、林野庁におかれましても、可能な限りいろいろな努力をしていただいておると承知いたしております。例えば、木材利用拡大アクションプログラムですか、そういうものですとか、公共事業、公共調達にしましても、公共施設等におきましても、できるだけ木材を使ってというような努力を関係部署等でやっていただいておるということはよく承知をいたしております。

 例えば、農林水産省、林野庁、水産庁の職員の皆さんの使っておられる名刺は間伐材パルプの名刺だと思います。農林水産省、林野庁、水産庁の使っておられる封筒、これも間伐材パルプの使用だというふうに思います。残念ながら、ほかの省庁を見ますときに、再生紙使用というものはありますけれども、間伐材というこのグリーンの丸いマークの入ったものはございません。

 ですから、大臣、今度閣議のときに、ほかの大臣の方々にぜひ協力をお呼びかけいただきたいと思います。よろしくお願いします。

 それから、私は今、間伐材というふうに申しましたけれども、間伐材という言葉が悪いという御意見もあります。つまり、間伐ですから、何かむだなものを取り除くといいますか、間引くというようなことですから、もっとやはり山を守るという積極的な意味を込めて、環境材とかグリーン材とか、もっと違う呼び方があるんじゃないかという御意見もいただくことがあります。

 例えば、全国にこの新しい名前を公募して、いろいろな方々からアイデアを出していただく、そのようなことを通じて、コンテスト、公募を通じて、山があって川下があるんだというようなことを広くやはり認知していただくような、そういう試みができないかなと思っておるところでございます。林野庁もしくは関係団体でも結構なんですが、そのような試みに対して、どうか応援をしていただきたいというふうに思う次第でございます。

 それからもう一点は、私の地元宮崎県でございますけれども、宮崎県西諸県郡須木村というところがございます。須木村というのは、那須与一の須という字に木材の木、須木と書きます。すなわち、木をもってすべしというそのものの名前でございまして、実際、面積の九割方が国有林ということになっております。

 そして、この須木村では、将来の村づくりを見通したときに、一つのグリーンツーリズムということを考えておりまして、できる限り、杉、ヒノキの人工植林を何とか広葉樹にかえていきたい、もちろん常緑の。こういうことで村づくりをしていきたいということで頑張っておられるんですが、いろいろな制度上の問題があったりしてなかなか明るい見通しが持てないということでございました。

 いろいろな目的を達するための手法というものは、いろいろな知恵を出していただく中で可能になるものだと思っております。いずれにしましても、この須木村という村が、森林、この緑の宝を自分のふるさとの宝として村を建設していきたいという思いを持っていることに対しまして、どうか大臣、林野庁長官からも激励をいただきたいと思いますし、また、可能な限りの応援、御指導をいただきたいと思っておるところでございます。

 この点につきまして、林野庁長官に、一言、温かいお言葉をいただきたいと思いますが、よろしくお願い申し上げます。

前田政府参考人 大変ありがたいお話、ありがとうございます。私も当然名刺は、おっしゃられました間伐材の名刺を率先して、またいろいろな方にも勧めて使っておりますし、ぜひこういった形で木を、とりわけ間伐材、こういったものの製品を使っていただいて、それがやはり間伐が進み、そして日本の山づくりが進んでいくということの大きな一歩になってくれることを願っているわけであります。

 とりわけ、先生の御地元の宮崎県、日本でも有数の杉の一大産地でございます。そういう意味でも、やはり宮崎県須木村、そちらの方が元気になってほしい、私どももそういう面から、いろいろな基盤整備はもとより、木材の利活用あるいは施業の推進、こういった面につきましても、でき得る限りの御支援を申し上げながらともに頑張っていきたい、そんな思いでございます。

古川(禎)分科員 ありがとうございます。

 次に、違法伐採について大臣にお尋ねいたします。

 二〇〇〇年の九州・沖縄サミット以降、我が国政府もさまざまな国際会議の場等でこの違法伐採問題については積極的に発言をいただいております。また、この七月に開催されます予定のサミット、今度はイギリスで行われますが、テーマが環境とアフリカということで、環境問題の中でまたこの違法伐採の問題を取り上げるのではないかという見通しだというふうに聞いておるところでございます。

 残念ながら、日本も、例えばインドネシアとの間でいろいろな取り組みもいただいておりますけれども、現実問題、いろいろな形で、姿を変え、形を変え、八二%ですか、大きな量が外から入ってきておる。その結果、地元の産業も振るわず、日本の山も荒れてなかなか手が入らないというのが残念ながら現実かと思います。

 外から入れるなと言って済めばいいわけですけれども、それはWTOその他国際規約がありまして、今の国際社会においてはそういうことができないというところがございますけれども、しかし、事は地球の環境ですとか大変大きな問題を内包するテーマでございますから、それにはそれで大きな視点で、新たな秩序をつくるんだ、国際間のルールを新たにつくるんだ、日本が中心になってつくろうじゃないかというような、そういう場面に今立ち至っておるのではないか、私はこう思います。

 例えば、水産業の世界で、来月にも中西部太平洋のマグロ条約、WCPFCですね、これを我が国でも承認をしまして正式加入ということだと聞いております。結局これも、限られた水産資源を守るに当たって、IUU、ポジティブリストだというようなことで現実規制をかけていくわけですけれども、ガットの二十条の(g)だったでしょうか、天然有限資源ということで、水産物の場合はそういう形で何でもかんでもフリートレードではないんだというようなことが可能になるというふうに私は承知いたしております。

 このような大きな視点から、ただ単に技術的に貿易のルールに反する反しないというような次元の話ではなくて、もっと大きな見地からこの木材、違法伐採という切り口にしてやっていけないものか、新たな構想ができないかというふうに思っておるわけであります。これは、未知の世界、これから国際社会の英知を結集してつくっていかなきゃいけないというぐらいの大きな問題だとは思います。

 しかしながら、どうか、先ほどのアインシュタイン博士の言葉ではありませんけれども、日本人の感性、精神文化が人類を救う。その体現者である日本国農林水産大臣として、やはり今まだ芽が出かかった程度でございますけれども、違法伐採の問題、これに対して、新しい秩序を世界に示すのだというような気概をぜひ示していただきたいというふうに思っておるわけですが、簡単に、大臣のこの点についての御所見をお伺いできればと思います。

島村国務大臣 大変広範な御質問に対して簡単にと、こういうことでございますが、さはさりながら、大変に視野の広い、また非常によく掘り下げた勉強をなさっている若い人の意見を聞いて、心強く感じました。

 確かに違法伐採の問題は、御承知のように、それぞれ、伐採を受けた地域の自然を破壊し、結果的に住民に被害をもたらすという面もございますし、地球全体で考えれば、我が国の農地面積をはるかに超える面積が年々砂漠化している、こういう現象にもつながっている。人口の将来的な急増を考えますと、食料難をわざわざ引き起こしているような形でありますから、その元凶が我が国であってはならないと率直に考えます。

 そういう意味で、我々は地球規模での環境保全とか、あるいは持続可能な森林経営の推進等、これらにとって極めて重要な問題である違法伐採については厳しく対処していく必要があるし、違法な伐採による木材というものは一切使ってはならないということにもいたしているところでございます。

 そういう意味で、二国間協力として、日本とインドネシアの間における森林状況や伐採状況の把握など、違法伐採対策の協力を我々は進めているところでありまして、地域間協力としては、アジア森林パートナーシップを通じた合法性の基準や木材追跡システムの開発、あるいは多国間協力として、国際熱帯木材機関を通じた違法木材取引の把握などのプロジェクトの支援などの取り組みを行っているところであります。

 違法伐採問題については、これまでもG8サミットなどでも取り上げられてきたところでありますが、今後とも、今委員が指摘されたようなことごとに思いをいたして、我々も万全を期して努力をしていきたい、こう思います。

古川(禎)分科員 ありがとうございました。

 それでは次に、視点を変えまして、太陽発電ということについてお尋ねしたいのです。

 視点は変えますけれども、本質は同じだと私は思っております。実は、先月、つくばに視察に行ってまいりまして、環境省所管の技術研究の施設、農林水産省所管の施設、研究機関、そして経済産業省所管の研究機関、種類が幾つかございましたけれども、いろいろな環境技術と申しますか、いろいろなものを見せていただきまして、まさに夢の技術が現実のものになりつつあるのだなと。中には、これが汎用化される一歩手前というところまで来ているものもありまして、大変心強く思った次第でございます。

 その際、太陽光発電のパネル等、開発をしている機関がありまして、恐らくあれは経済産業省所管の施設だったと思いますが、私は、農林水産省の方でやってもらってもいいのではないかというふうに感じたわけです。

 と申しますのは、私はかねてから思うのですが、農業あるいは林業というものは、そもそもおてんとうさまの恵みを、食べ物であるとか木材という価値、富に変換するという営み、同じようにおてんとうさまの恵みをエネルギーというものに変換するという意味におきますと、農業も太陽光発電も実は同じではないかというような、ちょっとこじつけかもしれませんが、そういう気がしております。

 そして、これは昨年のことでございます。昨年はあまたの台風が我が列島を襲いました。十六号だったと思いますけれども、私の地元は大変畜産の盛んなところでございまして、ちょっと山合いに参りますと、牛舎、豚舎、鶏舎、それこそいっぱいあるわけですが、今の農業は、畜産業は、もう御案内のとおり、電気なしにはやっていけない。それが台風で、風倒木によりまして電線が遮断、数百カ所で遮断されまして、悪いところではもう三日も四日も停電したままというところがございました。

 このときに、酪農家なんかは特に大変だったのです。搾乳しないと乳房炎になってしまうということで、もう青ざめて心配しておられます。そこに地元の建設業の方なんかがユニック車に発電機を積んで、一生懸命農場を回って助けていただいておりましたけれども、私も台風の中、ずっと回りまして、そういう場面にいっぱい出くわしました。

 そのときに、牛舎あるいは豚舎、鶏舎、この屋根の上に、今薄いもの、シートみたいなものができていますので、あんなものを乗せれば、電線が切れてもへっちゃらとまでは言いませんけれども、スペースがあるわけですからいいのではないかと単純に思うわけです。

 シートを張ってしまえば、例えば夏、家畜というものは暑さに弱いわけですけれども、非常に快適で、いろいろな意味で、家畜の事故も減るだろうし、これは何かできないものかなと思うわけです。農林水産省におかれては、公共、非公共、さまざまな事業をやっていただいておりますけれども、この中で、何とかこの太陽パネルの敷設というものを何か応援するような、そういう施策を今後御検討いただきたいなというふうにお願いを申し上げておきます。

 もういただいた時間が短くなってまいりまして、申し上げたいことがいっぱいあるのですけれども、終わらねばなりませんが、「願はくは花の下にて春死なむそのきさらぎの望月のころ」、これは西行法師ですね。あるいは「敷島の大和心を人問はば朝日に匂う山桜花」、これは本居宣長です。

 やはり四季折々の風情であったり風土、こういうものに根差した日本の文化、精神文化、これをもう一回見直すことが、我が国国民がもう一回幸せを取り戻して、そして、とりもなおさずそれがその瞬間に世界の人類のために貢献できるのだということを私は強く思っておりまして、そういうことを最後に申し上げたいと思うのです。

 みずからの民族に対する自信と誇り、これをしっかり確認して、そしてその古きよき伝統なり、価値観なり、感性なり、こういうものを守り、維持していくこと、これが保守主義の核心だというふうに私は思っております。

 したがいまして、その守るべきすばらしい伝統文化の核心が農林漁業というような営みであり、あるいは木の文化とかいうものであるとするならば、そういうものをもう一回、我々保守政治家として腹のど真ん中に据えて、その上で農林水産業の行政に対しても当たっていかなければならないのではないかというふうに思っております。

 私は新人議員ですけれども、この一年間、政治の流れをいろいろ拝見しておりまして、どうもいわゆる競争原理、市場経済至上主義と申しますか、アメリカン・スタンダードと申しますか、こういうものが余りに重用されまして、日本古来の調和、協調といいますか、和をもってとうとしとなせという言葉に代表されるような、そういう日本人らしさが軽視されているのではないかというような思いがいたしてなりません。

 その意味では、小泉総理の本懐と私古川の本懐というものは多少違うのだなということを思っておりますけれども、そこは日本人の自信と誇りというものを大事にして、日本国の国会議員としての矜持を持って、今後とも勉強していきたいと思っておりますので、御指導をよろしくお願い申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。

小泉主査 これにて古川禎久君の質疑は終了いたしました。

 次に、御法川信英君。

御法川分科員 ただいまの同僚議員であります古川禎久先生の大変格調の高い御質問、アインシュタインから始まり本居宣長までと、本当に私の及びもつかない大変すばらしい質問でございました。その後でございまして、甚だ素人の質問でございますが、どうか大臣を初め皆様、よろしくお願いしたいと思います。

 まず、平成十七年度予算の大きな特徴として、これはもちろん小泉総理が言っておられるわけですけれども、地方の自主性あるいは地方の裁量、こういうものを最大限重視して、これを十分に発揮させるということで、補助金の改革に取り組み始めた、まずこういうことだと思います。それが交付金化ということで、さまざまな施策について交付金化でもって対応していくというのが、これは農政に限らず、基本的な線ではないかなと思います。

 古川先生は宮崎、日本一の杉の産地ということでございました。私、秋田でございまして、秋田も美人だけではなくて杉も大変有名な地域でございまして、そういう意味で、きょう私も初めに少し林業関係の話をさせていただきたいなと思っております。

 林業分野において、この交付金の一環として、森林づくり交付金という制度をつくられた。これは、森林の有する地球温暖化防止等の多面的機能の確保、そして山村の再生を図るという御説明になっておるわけでございますが、これについて、それでは具体的にどういうことに対してこの交付金が施行されるのかという点について、まずはお伺いしたいと思います。

前田政府参考人 御指摘にございましたように、農林水産省におきましては、地方公共団体向けの補助金につきまして、使いやすく、自主性、裁量性が十分に発揮できるよう、そういった仕組みに転換することといたしまして、七つの骨太な目的に沿って交付金化を行うことにいたしております。

 この中で、今お話にございました森林づくり交付金につきましてはハードとソフトに大きく分かれておりまして、このハードの方の事業といたしましては、例えば間伐を促進するための作業道ですとか、あるいは都市と山村との交流施設、あるいは森林体験活動のための施設の整備、そういったものを想定いたしております。

 また、ソフト事業の方につきましては、森林整備に関します合意形成のための普及啓発ですとか、病害虫などによります森林被害の防止、あるいは森林ボランティア活動への応援、そういったものを一体的に推進することによりまして、森林の持っています多面的な機能の発揮、山村の再生、こういったことに資していくというようなことで考えているところでございます。

 なお、これらを補完する地域独自の提案につきましても、一定の範囲内で支援を行うというようにしているところでございます。

 こういったものとあわせまして、一方で、公共事業としての造林事業といいますか森林整備事業、こういったものが両々相まって進めていくということがいいのかなというふうに考えておる次第でございます。

御法川分科員 ありがとうございます。

 今御説明いただいた各種の事業のソフト面の方の一つになると思います。若干細かい話になりますけれども、松くい虫あるいは野生鳥獣の防除、被害対策等の推進という一項がございまして、この中に、特に東北地方等の松くい虫被害先端地域においては国の主導により防除対策を重点的に推進するという文言が含まれておりました。

 私の地元秋田は、実はこの問題が三年前あるいは四年前ぐらいに一番大きな問題になりまして、当時、亡くなった私の父がまだ国会議員でありましたけれども、非常にこの松くい虫の被害が広がっていくということを心配いたしまして、国あるいは県に働きかけて何とかこれを食いとめるようにということでやったのが、たしか三年ぐらい前だったと思います。

 そのかいなく、実は、今秋田の海岸線というのはもう壊滅状態でございます。もう松がほとんど枯れてしまっております。これに加えて、去年のあの台風の後、沿岸地方、秋田の場合は塩害というのがございまして、これで田んぼはもうススキの原のようになってしまい、林はそういう形で松くい虫によってもうぼろぼろになっているという、非常に見るにたえない光景が秋田の海岸線をずっと覆ってしまったというのが現状でございます。

 実は、防除対策を重点的に推進してももう遅いというのが現状でございまして、むしろ被害対策の方に重点を置いていただかなければならないというのが実情じゃないかなと思っておりますけれども、この点についての御所見をお願いできますでしょうか。

前田政府参考人 確かに松くい虫被害、かつては、それこそ昭和五十年代の初めごろには全国で二百万立方を超えるというような物すごい被害が出ておりました。それに比べますと現在は相当減少してきておりまして、近年はピーク時の三分の一程度にまで減ってきているところでございます。

 ただ、しかしながら、この松くい虫被害、西の方からどんどん北上いたしておりまして、今御指摘にございましたように、東北地方の民有林の被害量につきましては、近年、逆に増加傾向にあるというような状況にございます。平成十五年度の被害量でございますけれども、全国被害量の約三割を占めるというような状況に至っておるところでございまして、さらにその被害が北上、拡大していくということを懸念しているところでありまして、現在、たしか青森県との境の村へまで進んできているというような状況にございます。

 このため、寒冷地の多い東北地方におきまして効果的な防除対策といたしましては、薫蒸型の伐倒駆除、伐倒駆除いたしましてそれをビニール等で包んで薫蒸するのでありますが、そういったものですとか、特別伐倒駆除、それは、伐倒しましてそれをチップにしたりあるいは焼却したりということで完全徹底駆除をやるものでありますが、そういったものを重点的に行いますと同時に、跡地につきまして、森林整備事業あるいは治山事業によりまして被害跡地の復旧対策を進めているところでございます。

 平成十七年度の予算案におきましては、実はこの薫蒸型伐倒駆除あるいは特別伐倒駆除の拡充を図りますと同時に、被害先端地域におきまして、未被害松林への被害拡大を防止するということから、森林病害虫等防除法に基づく農林水産大臣命令、いわば国営防除ともいうべきものでありますが、これを発動いたしまして、徹底した防除の実施を行うことといたしているところでございます。

 東北地方の被害先端地域の対策、大変重要な課題であることから、今後とも防除対策の着実な推進を進めますと同時に、被害跡地の早期復旧に向けまして、国と県が連携を図りながら、より一層の推進に努めていきたいというように考えている次第でございます。

御法川分科員 大変ありがとうございました。

 今の御説明にありますように、まず、これから食いとめるということ、これに全力を尽くしていただきたい。そして、先ほどの繰り返しになりますけれども、既に被害に遭ってしまった部分に関しては、もう秋田の方も山形の方も、新しい、松くい虫に強い木を植え始めておるわけですけれども、こういうことに関して、ぜひ国の方からのお力添えをよろしくお願いしたいと思います。

 そして、ちょっと内容が変わりますけれども、今、既存の事業の中に地域林業経営体を育成するために助成金を交付するという制度があるんですけれども、これが今年度で終わりで、来年からは新規採択はしないというように私の方では理解しているんですが、これでよろしいでしょうか。

前田政府参考人 先生のお話にございましたのは、恐らく地域林業経営体等育成支援事業のことではないかと思いますが、これは実は今年度で、事業そのものは残るんですが、新規採択は終了するということになっております。

 これにつきましては、実は、内容を若干御説明申し上げますと、地域林業経営体等育成支援事業ということで、林業経営基盤強化に関する暫定措置法で認定されました事業体がほかの林地を取得する、そしてそういったものに対しまして、ヘクタール当たり例えば十万とか五万とか、こういった金を五年間ぐらい出していく制度なんです。一方で、実は、活性化交付金、いわゆる交付金、ヘクタール当たり一万円ずつ管理とか調査のために出している新制度が誕生いたしております。

 それで、それと実はバッティングといいますか類似、重複しているということで、新たなる採択につきましては停止いたしまして、地域活動支援交付金事業の方に乗り移っていくというような形で対応していくというようなことにいたしておるところでございます。よろしくお願いいたします。

御法川分科員 ありがとうございます。

 荒れた山をそうでなくするための大きな施策というか、一つは、林業関係者の方々、実はやはり山を買って自分でこれに投資をして育てたい、山に関してどんどん事業を伸ばしていきたいという方々がいらっしゃいます。

 片方で、山は持っているんだけれども私はこの山に関して全く興味がない、実はもう売ってしまいたいんだという方々というのは、自分の土地であるわけでございますけれども、概して、管理を全くしないために非常に荒れた形で山が残っている。こういう現状がございまして、この山林の流動化を図るための制度として、今ありました助成金の制度というのは非常に便利なというか有効な施策だったというふうに私は考えております。

 これを使って現実的には山がよみがえってきている、そういう地域がございますので、新しくできるこの交付金で、これがバッティングするという、全く違うものではないということだと私は理解をしますけれども、そういう流動性を高めるような、それに資するような施策を引き続きしていただきたい。そういうことでございますけれども、こういう理解でよろしいわけでございましょうか。

前田政府参考人 おっしゃられるように、この地域活動交付金につきましては、林地を所有している、そこでいろいろな形の管理なり調査なりをやっていく、そういったものに対しましては定額として直接払いをしていくという制度でございますので、そういった形の中で御活用をぜひお願いしたいというふうに思います。

御法川分科員 ありがとうございました。

 もう一つ、この林業関係の部分で私おもしろいなと思った部分がありまして、お伺いをしたいと思います。

 保安林の指定と適切な管理を推進していくという部分がございますが、この中で、衛星デジタル画像データを活用して保安林の適切な管理を推進するというふうになっておりまして、この分だけで、説明が詳しいものはなかったものですから、この辺についてもう少し具体的に、どういう形でどういうふうにしてやっていくんだ。これは予算的にも結構、二億以上ついている部分だったと思いますので、ぜひ御説明を願いたいと思います。

前田政府参考人 御案内のように、保安林は、水源の涵養ですとかあるいは災害の防備等、そういった特定の公共目的を達成するために、公益的機能の発揮が特に必要な森林につきまして指定されているものでございます。そういった関係から、伐採あるいは開発行為といったものが許可を要するというような規制が講じられているところでございます。

 このために、保安林におきまして、例えば違法な伐採あるいは開発行為、こういったものが行われた場合には、指定目的でございます公益的機能の発揮に支障を及ぼすということになるわけでありまして、その管理を適切かつ効率的に行うことがぜひとも必要であります。

 実は、先生のお話にありました事業、平成十七年度から農林水産大臣が指定いたしました一級河川等の重要流域、そういったものの保安林につきまして、撮影時点の異なる衛星デジタル画像データ、例えば、一年前に撮ったデジタル画像と二年後に撮った衛星デジタル画像を重ね合わせますと、その間に伐採して穴があいてしまうと、重ね合わせると、ここが違法に切られたとかそういったことが一目瞭然に解析できる、わかるということで、そういった解析を行って、無許可での伐採ですとか開発行為が行われた箇所、こういったものを効果的かつ早期に把握するということにいたしているところでございます。

 これによりまして、復旧ですとか跡地植林、こういったものに必要な是正措置を円滑に講じていくことができるのではないかというようなことで考えているところでございます。

御法川分科員 この保安林、今御説明なさったような形で全国、調査しながらやっていくということだと思いますが、これは具体的に、例えば何ヘクタールぐらいになるとか何カ所になるとか、そういう目安みたいなものというのはございますでしょうか。

前田政府参考人 基本的には、民有林の全保安林を対象にいたしております。国有林の方は、みずから森林管理署とか森林事務所を持って把握できますので、民有林の方につきましてはなかなか把握できない。それで、時系列で若干タイムラグはございますけれども、北日本と西日本を分けましてすべて網羅していく、こういうことで考えておるところでございます。

御法川分科員 ありがとうございます。

 それと、これは農林水産行政にかかわらず、すべてのことに関することになってくるわけでございますが、いろいろな施策、非常におもしろい、新しい施策が数々生まれながらも、PR不足のためになかなか国民の理解が得られずにうまくいかない、そういうことというのは往々にしてあるわけでございますので、農林水産省あるいは林野庁、水産庁におかれましては、そういう部分もぜひ御考慮の上、施策を講じていただきたいな、そういうふうに思っております。

 次に、BSEの問題について若干お尋ねを申し上げたいと思います。これに関しましては、予算委員会はもとより農林水産委員会等でも細かい議論百出しておるところだと思いますので、大きなことだけを聞いていきたいと思います。

 私個人といたしましては、今とりわけ課題になっているのは、米国産牛肉の輸入の再開、これをどうするんだ、いつになるのか、あるいはどういう形で再開されるのかということを国内の消費者あるいは国民一般、非常に心配しているところではないかなと思います。私個人は、これはやはり慎重に対処していただきたいなと思っておりますけれども、この点につきまして政府の御所見をお伺いしたいと思います。

島村国務大臣 私たちは、安全、安心の食の安定的供給ということを重大な責務として担っているわけでありますが、この基本的な姿勢は、私たちは全く変わりがございません。あくまで、国民が安心していわば食していただける食材を安定的に供給するということであります。

 また同時に、今、日米関係ということがありましたけれども、いわば、米国産の牛肉についていろいろな検討をいたしました結果、農林水産省としては、一応十月十五日に食品安全委員会に諮問をいたしました。これについて現在鋭意御検討をいただいているところでございますが、日本とアメリカと、それぞれ感覚的にもいろいろな違いがありますから、何か日本が殊さらに検討を引き延ばしているような、あるいは誠実さに欠けるかのような受け取り方をしている向きもないではありませんで、今までも陰に陽にそういうことは聞こえてきているところであります。

 その一方で、国内では、あくまでBSEに対して慎重にやってほしいという声は当然ございますが、その一方では、一体いつになったら牛どんを食べさせてくれるのか、何か私が妨害して私が横着を決め込んでおるかのような非難を受けることすら正直言ってございまして、やはりこれが意外に数が多うございます。

 しかし、今は、日本のマスコミ報道ですっかり国民はおびえて、非常に恐怖心を持っておりますから、こういうことを払拭し、安全である、安心であるということが御納得いただけるような結論を得た上で、初めて我々の対応ができるということだと思います。

 そういう意味では、私たちは、従前から申しているように、あくまで科学的知見に基づいて、それで、いわば食の安全、安心の確保を大前提にこの問題の結論を得ていく。一方で、アメリカ側も当初は、私が就任当初の先方のいわばお使いの方や、自由な立場での政治家の発言などでは、かなり安直に考えていた向きがないではありません。

 しかし、私はその点については、あなた方と日本人とは感覚的に違いもあるし、環境的な、あるいは歴史的な違いもあるんだから、日本に持ち込む肉に関してはやはり日本の国内措置と同等の措置を講じてほしい、加えて、我々は科学的知見に基づく安全、安心を大前提にしているということをよく理解してほしい、そういうところを申したところでありまして、その点では私どもはあなたと同じ考えに立っておると。

 ただ、私は正直言って、少しく誤解を受けやすいかもしれませんが、少なくとも日本人が国際社会でこれからも活躍していくわけでございますから、やはり国際的な常識といいましょうか、世間並みの常識といいましょうか、そういうことも一応は考えてみる必要があるというように考えております。

御法川分科員 大臣、ありがとうございました。

 国内の消費者あるいは流通業者から見ると、非常に心強いお言葉だったのではないかなと考えております。

 その中で、いま一つ、いろいろな論点はあるわけでございますけれども、月齢判別法という部分、どうやって牛の年齢を見分けるかという部分、これは今、若干課題というか問題になっている部分ではないかなと思います。

 いろいろな報道あるいは政府からの情報を総合すると、肉質ではかる、あるいは骨の成長度合い、あるいはかたさというか、こういうものを見て行うA40とかA幾つ、そういう格付方法というのが一つの判断の基準になり得るのかなということもございます。

 アメリカ農務省の方の書類では、やはり一番確実なのは出生証明書があることだと。これは当たり前の話でございまして、そうでないものについては、歯の成長ぐあいですとか、あるいは、ここにあるような、私が今述べましたようなこと、こういうことを使って判断するんだと。これがいわゆる、先ほど大臣がおっしゃった科学的知見に基づく月齢の判定法ということだと思いますけれども。

 一つ私が心配しております部分というのは、科学的知見に裏づいて、このとおりこのことをやってくだされば全く問題がないという話なんですが、運用の場面において、実際に輸入をするということになると、アメリカにおいて、生産農家がありまして屠殺場があって検査官がいて、そこで危険部位を取り除いているかどうかとか、あとは年齢が幾つかということをちゃんと最終的に判断するということになると思いますが、この現場において、アメリカの内部で今、若干問題があるんだと。決して、科学的知見に基づいて、そのままそれが行われていないということで、若干の議論があるというふうに私は承知しております。

 この辺をちゃんと担保しないと、こうだからと言っている基準に結局見合わないものが輸入されてきてしまうということになれば、これはもう、せっかくの科学的知見がどぶに捨てられてしまうという大変残念な結果になってしまうと思います。この辺を担保することが非常に大事になってくるのではないかなと思いますけれども、この点についての御所見を伺えますでしょうか。

島村国務大臣 詳しくは、今、中川局長が来ておりますので。彼は局長会議その他に全部出ております。私より詳しいので、彼から具体的な話はさせますが。

 我々は、今、食品安全委員会に諮問をいたしております。これは、従前、全頭検査ということでずっと走ってきたものを、今度はいわば二十カ月以内にというようなことで今諮問をしているわけですね。この結論を待って、これはよしとなれば、これは初めて再開の道が開けるということのまず大前提になります。

 しかし、その一方で、私が申し上げたのは、確かに、私もきょうテレビでちらっと見ましたけれども、その関係の一人が何か少しく証言に立って云々というようなこともありますし、週刊誌などを見ると、おどろおどろしいような記事がよく躍るわけでありますが、これをどこまで我々はしんしゃくしたらいいのか、そこが本当に大事なところなんだろうと思います。

 私は、それらについてはあくまで慎重に、農林水産省がよしと言った、厚生労働省がよしと言った、そこに坂口前大臣お見えですが、そういういろいろな角度の中で、最終的には食品安全委員会の御判断がよしとなれば、これはもう文句なしということになろうと思いますが、詳しい点については中川局長から御答弁いたさせます。

中川政府参考人 お答え申し上げます。

 二月の八日に取りまとめられました、日本人の専門家によります牛の月齢判別に関する検討会の報告書、これによりますと、A40という格付の基準を用いて、二十一カ月齢以上の牛の枝肉を排除する基準としてこれを採用する場合の留意点が、その最後の方に記されているわけでございます。

 それによりますと、格付を決定するポイントの明確化、これは、牛の腰骨のあたり、腰椎の突起部の先端のところの骨化を見る、そういうことになっておりますけれども、そこをきちっと明確にするということ、それから、格付検査官への周知徹底、さらにまた、評価結果の記録と保存が必要である、こういう点が留意事項として指摘をされております。

 こういった留意事項につきましては、A40という格付基準のより精度の高い格付を確保する観点から指摘されたものでありまして、大変大事な点でございますから、これを月齢判別の方法として採用します場合には、アメリカ側におきましてこうしたことがきちっと行われるように、その的確な実施を求めていきたいというふうに思っております。

御法川分科員 ありがとうございました。

 私も早く牛どんを食べたいと思っている一人でございますので、ぜひ、安全な牛肉が入るような施策をよろしくお願いしたいな、そういうふうに思います。

 時間がなくなってまいりましたけれども、一つ、今の政府の目玉であるところの攻めの農業という部分について、若干お伺いをしたいと思います。

 この攻めの農業、いみじくも小泉総理大臣が、もういろいろなところで、今、日本のリンゴは一個二千円で中国では売れているんだよということをお話しされるわけでございますが、本当に、新しい、中国という大きな市場に対して日本が攻めの農業をやっていくんだという、その証拠の一つが、輸出促進のための来年度の予算、今計上されている額でいきますと六億五千六百万ぐらいということで、前年度の一・五倍以上という金額を計上されているということで、まさに本気になっているんだなという部分がこれで見受けられるわけでございます。

 リンゴといえば津軽リンゴの青森が一番有名ですけれども、秋田も、非常に大きいリンゴ農家というのがたくさんございまして、彼らも、ぜひそういうところでリンゴを売ってみたいなという希望を持って、今、政府の施策を見守っているところだと思います。

 さて、この六億何がしの予算、ことしはこの攻めの農業という、具体的にどういう形でお使いになられるのか、御説明を願えますでしょうか。

伊藤政府参考人 お答えいたします。

 御案内のとおり、今、日本食ブームが世界で起こっておりますし、また、特にアジア諸国で経済発展に伴いまして富裕層が大変ふえているということで、農産物の輸出の好機が到来しているというふうに考えております。実際に、各地で取り組みも非常にふえております。

 ですから、私ども農水省としましても、そういう民間での取り組みを総合的に支援していきたいということで、十六年度から実施しておりますけれども、今御指摘のとおり、十七年度はさらに予算を拡充して実施していきたいと思っております。

 実際に今やっておりますことを御紹介いたしますと、輸出相談窓口でそういう取り組みたいという方にいろいろな情報を提供したり、それから輸出促進セミナーを開いてやはりそういう情報提供をしたり、また、実際に輸出先国で展示会や商談会などを開いておりますけれども、特に来年度におきましては、通年型で、一過性で展示会で終わってしまうのではなくて通年的に販売できる場所を確保して、そこに日本からいろいろなものをリレー的に展示して売っていくというようなことも強化していきたいと思っております。また、現地の料理店を活用しまして、日本の食文化も含めたPRをしていくといったようなことも含めまして、大幅に拡充して実施していきたいというふうに考えております。

御法川分科員 時間がございませんのでもう終わりますけれども、リンゴ、ナシについては、中国の市場に関してはもう既に審査が終わっていて、どこからでも輸出ができるということでございまして、ことしはそれにプラスして、十品目以上今審査の途中だということでございます。

 いろいろな果樹あるいは作物があるわけでございますが、ぜひこの攻めの農業、成功するように、私も一生懸命応援させていただきますけれども、政府におかれましてはぜひ一層の御努力をお願い申し上げまして、私の質問にかえさせていただきます。ありがとうございました。

小泉主査 これにて御法川信英君の質疑は終了いたしました。

 次に、松本大輔君。

松本(大)分科員 民主党の松本大輔です。どうぞよろしくお願いします。

 先日、確定申告のために税務署に行きましたら、「この社会あなたの税がいきている」という標語が目につきました。このおなじみの確定申告の手引にも書いてあるとおりでございます。私も、書類の記入を済ませまして、提出のために順番待ちをしておりましたところ、一人の男性が私のそばを通りまして、この標語を声に出して読まれた後、うそつけと言いながら帰っていかれました。

 きょうは、予算委員会の分科会です。確定申告と重なるこの時期、また定率減税の縮減が大きな議論を呼んでいる中、この審議中継をインターネットでごらんになられている納税者の皆さんのためにも、果たして「この社会あなたの税がいきている」と本当に胸張って言えるような予算なのかどうか。そのことを、私の地元広島二区で行われようとしております幹線林道事業を題材にきょうは検証させていただきたい、このように思います。

 この幹線林道事業、お手元に新聞記事の方も配付させていただきましたが、実施主体は緑資源機構でございます。昨年、そちらにいらっしゃる前田長官にも御答弁をいただいたわけですけれども、計画事業費は九十六億円。三分の二は国の補助金、残り三分の一の大半、およそ三十億円近くは地元の広島県も最終的には負担をしなければならない。私も、広島県民の一人として大変強い関心を寄せているところであります。

 本日は、まず費用対効果の検証から入っていきたいと思いますが、まずは林野庁長官にお伺いいたします。

 緑資源幹線林道大朝鹿野線、戸河内―吉和区間のうち未着工区間について、平成十七年度予算額と今後必要な建設費をお聞かせください。

    〔主査退席、北村(直)主査代理着席〕

前田政府参考人 実は、御指摘の区間につきましては、平成十二年度の再評価におきまして、渓畔林部分について、環境保全に十分配慮して事業を実施する必要があるというふうにされたわけでございます。御案内のとおりだと思います。これを踏まえまして、緑資源機構の方では、環境保全調査検討委員会を設けまして、林道工事の実施に伴います影響の予測評価及びその保全措置を専門的かつ学術的な見地から検討というふうに承知いたしております。

 それで、当該区間の事業を引き続き実施する場合には、地域の理解を得る上でも、緑資源機構が自主的に費用対効果分析を行いまして、当該事業の有効性、効率性について検証を行っていくことが重要ではないかというふうに実は考えている次第でございます。現在、まだそこのところは、当時着手したときにはそういった形のもので動いていなかったということもございまして、今申し上げましたような形でやることが重要ではないかというふうに考えている次第でございます。

 なお、二軒小屋―吉和西工事区間の整備に必要な事業費でございますが、現在実施されています環境保全調査検討委員会の検討結果を踏まえまして、緑資源機構において、詳細な線形あるいは幅員あるいは工種、工法、こういった規格構造が定められた後で試算するということになろうかと思います。

 このため、費用対効果分析の実施にはなお時間を要するものというふうに考えているところでございますが、適切に対応するよう緑資源機構を指導してまいりたいというように考えている次第でございます。

松本(大)分科員 長い御説明、詳しい御説明をいただいたんですけれども、要約すれば、検討委員会の答申が出るまでは予算額がわからない、こういうことではないかと思います。本当に把握していないのかなというのは、私は驚きであります。来月末の補助金の締め切りまでに資源機構から申請があった場合は、ではどういうふうに対応されるのか。一方で、緑資源幹線林道分の補助金についてはしっかりと平成十七年度予算分に盛り込まれているはずですよね。では一体、緑資源幹線林道分の補助金の適正規模というのはどうやって算出なさっているのか、非常に摩訶不思議な感想を抱くわけであります。

 先ほど、費用対効果分析はこれからだとおっしゃいますけれども、ちなみに、この未着工区間が完成した暁には地元の廿日市市に移管されるということになると思うんですが、この林道の引き受け手である廿日市市が負担するであろう維持管理費について、では教えてください。

前田政府参考人 御指摘の通常、幹線林道が完成いたしまして、それを地元の市町村等に移管するということになりますと、今度は、地方自治体の方でその維修費等を負担していくということになるわけでございまして、そこのところまでは、私どもとして、幾らかかっていくのかというところまでは精細には掌握していないというような状況でございます。

松本(大)分科員 今お手元にお配りした新聞記事、後で言及しようと思っていますが、引き受け予定の地元廿日市市は、まさにこの維持管理費が大変気にかかっていて引き受けに難色を示しているという状況があらわれていまして、ちょうど今月の末にもまた再度検討委員会が開かれる予定なんですが、この期に及んでなお、維持管理費は承知していない、補助金を把握されている監督官庁が維持管理費について把握していないということで本当にいいのかなと。建設予定額も建設費用もわからなければ維持管理費もわかりませんと。先ほど費用対効果の分析もこれからですとおっしゃいました。つまり、この未着工区間については、完成後に見込まれる木材生産上の効果というのは、金額的には示されていない、把握されていない、こういう御理解でよろしいですか。

前田政府参考人 そういう意味では、おっしゃるとおりであります。

松本(大)分科員 正直言って、今までの御答弁を伺っていると、この幹線林道事業については、建設費用も検討委員会の結果が出るまではわかりません、完成後引き受け手となる自治体が負担するような維持管理費についてもわかりません。完成した暁には、これは林道ですよ。林道が完成した暁に、木材生産上の効果についても金額的にも把握していないということなんですが、これは、少なくとも予算案の審議が終わるまでにはわかるんでしょうか。

前田政府参考人 予算の立て方といいますか仕組みといたしまして、維持管理費あるいは修繕費等、これにつきましては、基本的には交付税の方で措置されていくということになっておりまして、その具体的な額について、私どもは詳細には承知していないというような状況にございます。

松本(大)分科員 あえて維持管理費にしか今コメントされなかったと思うんですが、建設費用と木材生産上の効果についても、予算の審議が終わるまでにはわかるんですか。

前田政府参考人 今お話にございました費用対効果分析の関係で、いわゆる費用の部分につきまして、先ほど申し上げましたように、そこの路線について、どういう工法で、どのくらいの幅員で、そしてどのような規格でやっていくのか、それが確定していない段階でございますので、私どもとしてはそこまでは掌握していない、計算していないというのが実情でございます。

松本(大)分科員 驚くべき答弁だと言わざるを得ません。

 その幹線林道事業につける予定の補助金の総額自体は平成十七年度予算には盛り込まれているはずでして、この予算委員会というのは、要するに、政府がつくった予算をチェックするために開かれているんじゃないか、私はそのように把握しているんです。ただ、チェックするのに際して、判断材料というのがなければチェックしようがないわけですけれども、費用もわからなければ木材生産上の効果もわからない。

 これは幾ら何でも無理がありませんか、長官。予算委員会の審議で、補助金も盛り込まれて、その補助金がつけられる予定地の林道事業について、建設費もわからなければ木材生産上の効果もわからない。これは審議しろという方が無理がありませんか。

前田政府参考人 確かに、幹線林道全体の予算規模、これにつきましては御案内のように予算書の中に出てくるわけであります。

 ただ、それは百数十億の予算規模があるわけでありますが、実際にそれは、どういう路線にどれだけ配分していくかということにつきましては、予算が成立した段階で、実施計画が策定される、その段階で配分するという構造になっておりまして、現時点で、それぞれの路線ごとの数値、あるいはさらにその細部であります区間、さらには工事区間、そこまで全部張りついているという状況の積算の方式にはなっていないということであります。

松本(大)分科員 今の御答弁は、要するに、補助金行政というのは決算でしかチェックしようがない、予算の段階では垂れ流されるままだということではないかと思いますが、質問の仕方を変えます。

 計画延長二十五・五キロのうち、既に完成した距離と未着工区間の距離をお聞かせください。これは平成十六年度末見込みで構いません。

前田政府参考人 現在、十五年度末実績で把握しておりますのは、総延長が二十五・五キロ、そのうち十五年度末実績で約十一キロというように承知いたしております。

松本(大)分科員 きのう質問取りにいらっしゃいまして、そちらにいらっしゃる方も同席されていたわけなんですが、何でこんなことになるのかわかりません。

 では、既に完成した区間について、投下した事業費、同じように見込みで構いませんので、教えてください。

前田政府参考人 七十七億でございます。

松本(大)分科員 十一・一キロで七十七億円ということなんですが、財政が厳しい割には大変派手に使ったなという印象を受けざるを得ません。

 ちなみに、昨年、私、同じこの分科会で、同じ前田長官に御質問をさせていただいたところ、御答弁では計画事業費が約九十六億というふうにおっしゃっていました。これから先ほどおっしゃった七十七億円を引くと、残りは十九億ということになろうと思うんですが、十一・一キロで七十七億をかけた、残り十四・四キロで、本当に残る十九億で建設ができるんでしょうか。長官、いかがでしょうか。

前田政府参考人 この計画自体は、全体計画が相当以前につくられているということで、その時点での将来の大まかな見通し、そういったもので百、九十何億だったと思いましたけれども、その額というのは当時想定されていたわけであります。

 そして、その中で実際にやってきた工事、そういった中で、実行過程では当然変わってくるのが一つと、もう一つは、今までの路線、基本は幹線林道の場合、全幅七メートルであります。したがいまして、メートル当たり単価は相当大きな額になるわけでありますが、今後の新しいところにつきましては、先生御案内のように、相当今度は縮小する、幅員も縮小する、そういった形になってきますので、若干そこは異なってくるのではないかなというような形に考えております。

 したがいまして、今後の額につきましては、当然、実行の見通しが立った段階で、どのくらいになっていくのか、これは改めてもう一回見通しを固めていく、そういうことになろうかというふうに理解いたしております。

松本(大)分科員 長官、九十六億というのは、わずか一年前に私の質問に対して長官御自身が御答弁された金額なんですよ。それが、わずか一年の間で、いや、随分前に立てた計画ですから、それは計画は変わり得るんですという御答弁をされている。同じ責任者のもとで行われている事業が、一年たったらあっさりと覆されることが当たり前のように御答弁をされている。さらには、現段階ではその総額が幾らになるかすらわかっていらっしゃらない。恐ろしくずさんな予算管理だと言わざるを得ません。計画事業費九十六億という計画は何のためにあるのか、全くこれではわからないわけであります。

 大臣にぜひお伺いしたいと思いますが、所管する補助金事業がこんなずさんな管理をされていてよいのでしょうか。

島村国務大臣 全国規模にわたって林業に関することをつかさどる長官の立場で、全部の地域に事細やかにすべてを承知しているとは私たちも理解しませんが、しかし、私は、平素の前田長官の対応を見ていますと、これだけ細やかに、誠実にやって、さぞかし疲れるだろうなと思っているくらい、私はむしろ彼を大いに評価している人間です。

松本(大)分科員 私は長官御自身の人格を否定しているわけではございませんで、補助金事業として予算管理が余りにもずさんではないのですかということを申し上げたいわけでございます。

 昨年のこの分科会での私の質問に対して、当時の木村大臣政務官が次のように答弁されました。「戸河内―吉和区間の整備によりまして、間伐等の森林整備が進みまして、」中略「皆さんの林業経営の効率化にも期待できるというふうに私ども考えております。」というふうに御答弁をされています。

 今までの御答弁では、林業経営の効率化の効果、すなわち木材生産上の効果というのはわからないということなんですが、では、せめて間伐等の森林整備が進むのかどうかというところをぜひ検証したいと思うんです。

 十六年四月、今回の開通区間を管轄する広島森林管理署が国有林野施業実施計画を改定しています。これは五カ年計画でして、伐採や造林の箇所別の事業量が記載されているということなんですが、当然、今回の林道の開通を見越した伐採、造林計画が盛り込まれているはずだと思います。

 そこで、長官にお伺いします。

 林道開通によって伐採や造林の事業量がどのようにふえるのか、具体的な数値でお示しください。

前田政府参考人 御指摘にございました広島森林管理署の国有林の当該区域の事業量の関係でございますけれども、ここにつきましては、当面、いわゆる伐採、当然それに伴います造林につきましては当分の間はまだ計画は立てておりません。

 ただ、これにつきましては、人工林の部分におきまして相当間伐の適齢期のものがありますのと、現地の状況から判断いたしまして間伐が必要なものが相当あるということで、十六年四月から有効な五年間の今お話ございました新しい施業実施計画、この中では、三百二十四ヘクタールの間伐を今後五年間で実施したいということで、計画をつくっているところでございます。

松本(大)分科員 済みません、それは今までと比べてどのようにふえるんですか。林道開通前と後と、どのように変わるんですか。

前田政府参考人 前計画におきましては、同じく十一年の四月一日から十六年の三月三十一日まででございますが、当時、七十六ヘクタールを計画いたしておりました。これが、今回また現地を精査いたしまして、これは林道の開通、そういったものも頭に置きながら、三百二十四ヘクタールということで計画を予定しているということでございます。

松本(大)分科員 ちょっと確認させていただきたいんですが、それは森林管理署が管理する三万ヘクタールの部分ではなくて、この林道の周辺地域ということかどうかがまず一点目。

 それから、間伐に必要な人的な手当てについてもその施業実施計画に入っているのかどうかを確認させてください。

前田政府参考人 今申し上げましたのは、できるかできないかはちょっと別にしまして、今度実施できるであろう林道の受益区間、利用区間内の間伐の数量であります。森林管理署全体の管轄ではなくて、当該林道に係る利用区域、そこにおきます実施量であります。

 それと、人的な問題につきましては、具体的に何人をどうするという形の計画にはなっておりませんで、国有林につきましては、御案内のように、抜本改革以降、直営直用でやっていた作業を基本的には全面的に民間委託に切りかえるという形、あるいは売り払い等によって行うという形に切りかえておりまして、これにつきましては、近隣の林業事業体あるいは森林組合、あるいは製材、場合によったら素材生産関係の方々、そういったところで担っていくということになろうかというふうに考えております。

松本(大)分科員 引き受け手があらわれるのかどうか、そこに対してどのぐらいのコストが見込まれているのかというところもちょっと聞いてみたいところではあるんですが、ちょっと時間の都合で、金銭的なコストに加えて環境負荷、環境コストの問題についても取り上げさせていただきたいと思います。

 今回の林道は、細見谷渓畔林と呼ばれている地域を通ります。こちらについては、日本生態学会からも、大変希少な生態系を残している地域だとして、本件の工事の中止を求める総会決議というものが一昨年、環境大臣、農水大臣の両大臣に提出をされています。

 当該地域の自然の貴重さについては農水省さんも御承知されているようで、十二年の再評価の結果、環境保全に十分配慮した上で着工するんだということで、検討委員会というものが昨年の六月に立ち上げられたわけでございます。

 その環境保全調査検討委員会、随時公開をされているんですが、そこで、本日お配りした二月十九日付の新聞記事になるんですが、地元の廿日市市が環境保全案に対して難色を示す文書を送ったという記事であります。環境保全のために一部を舗装せず砂利道としたことに対して、敷き砂利工法としたことに対して、維持管理費の確保が難しい、引き受けが難しいというふうに明言をしているというふうにあります。実際、市長名の要望書というのは私見せていただいたんです。

 こうなってきますと、昨年の本分科会で長官がおっしゃられました、「地元の要望を踏まえ、環境保全に十分配慮しつつ、事業を実施してまいりたい、」という御答弁の地元の要望なるものと環境保全の両方が真っ向から対立している状況ではないか。地元の要望を満たすということと環境保全上の要請を満たすということが両立できないような状況が今まさにあらわれているのではないかと思います。

 そこで、大臣にぜひお伺いしたいんですが、先ほども申しましたとおり、地元の要望を踏まえ、環境保全に十分配慮するという長官の答弁を実際に実施することが難しくなっている現状ではないでしょうか。いかがですか。

前田政府参考人 私の方から事務的なことも含めましてちょっと説明させていただきたいと思います。

 先生の方がよく御存じだと思いますが、この緑資源機構の方に設けました環境保全調査検討委員会、こちらの方におきましては、当該区間につきまして、当初の構想ですと、全幅五メートルで来て、渓畔部分につきましては車道幅員三メートルぐらい、そしてその後がまた五メートルという計画であったわけであります。

 それにつきまして、環境保全上のいろいろな問題も懸念される点もあるということから、渓畔林部分につきましては三メートル、現状の形を基本にいたしまして、そこに透水性の舗装を行う。その際、一部、自然環境保全上非常にセンシティブな部分、ここにつきましては敷き砂利のままにしておく、舗装しないという形の検討会としての意見が出ているわけであります。それともう一つ、左側の、左といいますか西側の方につきましては、全幅五メートルにつきまして、そこも幅員を縮小いたしまして四メートルにしたいというのがこの環境検討委員会の素案だったわけであります。

 それに対しまして、パブリックコメントをやった段階で、地元の廿日市市の方からは、そういった形で幅員を小さくされると非常に効率性が落ちる、だから、環境保全に配慮しているのは評価するけれども、そういった幅員を縮小することについては見直していただけないのか。それから、そういった渓畔林という環境保全上重要なところについて、一部現状の砂利道のまま残すということがあるわけでありますが、それは管理維持上いろいろなコストもかかるし、全面的にやはり舗装していただきたいというような意見で、まさに、確かに先生がおっしゃられますように、一方で環境的な面からのアプローチ、それと、地元の方とすれば、もっと効率的な形でこの道を早くつくってほしい、そういったところでぶつかっているわけであります。

 そういったいろいろなパブコメの意見も受けながら、検討委員会の方で、どうあれば一番いいのか、そういったことをさらに検討を詰めて、その上で最終的な報告を取りまとめるというように承知しているわけであります。それを受けて、緑資源機構としては、その実施方式あるいは内容、それにつきまして固めて対応していくということで、私どもといたしましては、そういったものにつきましては適切な対応になるように指導していきたいというふうに考えている次第であります。

松本(大)分科員 今の長官の御答弁に私は少し違和感を感じます。というのは、環境保全調査検討委員会というのは、純粋に学術的な見地から環境への影響とか保全策というのを論じるところであって、地元の要望がどうだとか、財政的な負担がどうだとか、林業事業、林道を通すことによる事業の是非そのものを判断したりするところではないというふうには思うんですけれども、地元の要望、財政的な負担がかかるからやはり幅員広げてよとか、管理が難しいからやはり舗装してよということをなぜ生態学の専門家の専門委員会で検討しなければいけないんですか。それはおかしくないですか。

前田政府参考人 それは確かに、先生御指摘のように、この検討委員会自身は専門的あるいは学術的なものを主体に検討していく、そういったことを旨として実施しているものでありますけれども、さらに実際の報告、そういったものを取りまとめるに当たりましては、幅広くいろいろな形の意見、各分野の意見、そういったものも踏まえ、参考にした上で最終的な結論を出していくということで、何も地元だけではなくて、当然、自然保護派関係の方々の意見も、さらにはそこの森林組合等々の方の恐らく出ているだろうそういった意見も、いろいろなことを踏まえまして、その中で、では、専門的な立場あるいは環境の観点、そういったものも踏まえながら、どういう形が望ましいのか、そういったことを最終的な報告書として取りまとめていくというように理解いたしております。

松本(大)分科員 私は、よもや調査検討委員会が、地元の要望だからやはり幅員を広げましょうかとか、いや、やはりアスファルト舗装にしましょうというような、環境保全の見地を台なしにしてしまうような、そんな翻意をするとは思えないんですよ。

 ですから、検討委員会が今月末そして来月開かれたとしても、どう考えても早期着工が見込める状況にはないというふうに思います。費用対効果の分析もはっきりしていない。森林整備の人的手当ての計画も具体的ではない。おまけに、ここに来て地元の要望と環境保全上の要請が相入れなくなってきている。

 大臣、ぜひお伺いしたいんですが、少なくともこの検討委員会だけでも第五回以降も継続して、そもそもどのような調査が必要かというところも含めて、もっと十分な時間をとって議論をやり直すべきときが来ているというふうに考えますが、大臣、いかがですか。

島村国務大臣 私には土地カンが全くありませんが、少なくも本件については環境保全調査検討委員会が専門的かつ学術的な見地から種々検討し、進めてきているところでありまして、この委員会の最終結果を踏まえ、緑資源機構が林道実施計画について適切に対処するよう指導してまいりたい、これだけは申し上げておきたいと思います。

松本(大)分科員 時間がやってきてしまったのでこれで終わりますけれども、申し上げたいことは、一度始めたことは絶対にやめない頑迷固陋の官僚機構と拙速な環境影響評価、そして煮詰まっていない議論によって失われた自然は二度と戻ってくることはありません。

 島村大臣は御自身のホームページで、「子供たちに確かな日本を残そう」というキャッチフレーズを掲げていらっしゃいます。私も全く同感であります。しかしながら、子供に残すべきは、アスファルト舗装の道路と借金ではなくて、過ちを改むるにはばかることなかれという、人としての道でございます。

 ぜひとも三十三年前のカビくさい計画に対する妄執を断ち切る、大臣の勇気とそして政治的決断力に強い期待をあらわしまして、私の質問を終わります。

北村(直)主査代理 これにて松本大輔君の質疑は終了いたしました。

 次に、山内おさむ君。

山内分科員 民主党の山内おさむでございます。

 国営中海土地改良事業が計画変更されたことに伴う原状回復の問題を中心としてお尋ねをいたします。

 大臣、そもそも中海という全国でも数少ない汽水湖の自然としての価値について、政府としてどのような認識を持っておられるのか、まずお聞きしたいと思います。

    〔北村(直)主査代理退席、主査着席〕

島村国務大臣 中海は特殊な、いわば歴史の経過あるいはまた内容を内蔵しておって、私たち、遠くにありながら、非常に興味を持って見てきたところであります。

 そういう意味で、周辺から流入する河川水と、いわば境水道を通じて日本海から流入する海水がまざる汽水湖でありまして、塩分濃度の違いに適応した多様な動植物が生息する自然環境と理解いたしております。

山内分科員 私は、二十世紀という世紀は開発の世紀だったと思います。中海干拓事業の計画変更の反省を通じて、大臣として、二十一世紀にふさわしい公共事業を進めるに当たって、二十世紀型の公共事業をどのように改めるべきだとお考えでしょうか。

島村国務大臣 農業の構造改革をまずは推進する必要があろうと思います。持続的な発展を図るためには、その基礎となる農地あるいは農業水利施設など、生産基盤の整備、保全が重要であります。

 これまで約三百二十万ヘクタールの生産性の高い農地や、約四万五千キロメートルに及ぶ安定的な用排水機能を備えた基幹的農業水路などを整備したところでありまして、今後は、既に整備した施設の有効活用を基本として、経営体育成や農地の利用集積を図る農地整備や農業水利施設の更新、整備など、効果的かつ効率的な施策に重点化し、農業生産基盤の整備、保全を推進してまいりたいと思っております。

山内分科員 大臣、次の質問は、質問通告したときに、参考人に答えさせてくれと言われたのですが、ちょっと一般的なお話ですので、ぜひ大臣から一言、確認答弁をいただきたいのです。

 大型の国営の事業を途中までやって途中で断念するという場合には、そこまでつくってきたものをできるだけもとにあった状態に戻して、しかもその戻す費用は、国がやはりその費用については負担をする、こういうことは国のあり方として原則的なありようだと思うのですが、どうでしょうか。

島村国務大臣 確かに、いろいろな条件が変わってくる場合に、従前から決まったものだからそのままやるのだということは、私は適切でないと思います。

 その場合に、それぞれ地方自治体が絡んでもいることですから、今回の周辺の関係については、島根県の側からも、鳥取県の側からも、私はかなり長い期間にわたっていろいろな陳情を受け、またお手伝いした経緯もございます。そういう意味からすれば、私たちは当然に、いわばそれぞれの地域の実情に照らし、またその後の状況の変化等も踏まえて、やはり柔軟にこれに対応するということは非常に必要なことなのだろうと思います。

 その場合に、やはりそれぞれの地域の特殊性と、いわばそれぞれの官庁で、中央でいろいろ考える話とは、おのずからずれが出てくることは当然あり得るわけでありまして、その点については弾力的に対応するということを基本として我々は考えているつもりであります。

山内分科員 原状回復といいましても、単に堤防を開削すればいいというものではなくて、もとあった自然に近い状態に戻す必要があると考えます。まず、いろいろなところを掘削したりしておりますので、浅場とか遠浅のなぎさを回復しなければならないと思いますし、干拓以前にあった、大根島を中心とする反時計回りの水の流れも回復しなければ、原状回復とは言えないと思います。

 そして、撤去が決まっている中浦閘門の付近を含め、干拓事業に伴いしゅんせつ工事も行われましたが、そういうくぼ地の埋め戻しも必要だと思います。これらについて農水省の見解をお願いします。

川村政府参考人 中海の土地改良事業につきましては、農業情勢あるいは関係県、地元の意向を踏まえまして、本庄工区の干陸及び中海・宍道湖の淡水化の中止を決定いたしまして、先ごろ計画の変更等を行ったところでございます。

 今後どうするかにつきましては、基本的には、この干拓中止等に伴います、中海に関する諸問題、これは中海に関する協議会で協議を行ってまいるということにしておりますが、今具体的にお尋ねのありましたことにつきまして基本的な考え方を若干申し上げたいと思います。

 一つ、浅場の造成あるいは遠浅の浜の回復ということで御質問がありましたけれども、基本的にこういったものは水産振興の見地からなされるもので、土地改良事業の範疇ということではないものですから、この仕組み上、なかなか対応が困難ではないかというふうにまず考えております。

 それからまた、反時計回りの水の流れということでございますが、これにつきましては、御案内のとおり、堤防の開削が必要になります。ただ、堤防の開削につきましては、地元の要望によりまして、森山堤防あるいは大海崎堤防は既に道路として利用されておりまして、かなりの交通量があるということから、この開削というものは非常に困難であるというふうに考えております。

 それからまた、しゅんせつくぼ地の埋め戻しにつきましても、このしゅんせつ自体は、河川法に基づきまして適正に実施をしたものでございます。貧酸素水塊の拡大の原因ではないかという御指摘もあるわけでございますが、私どもはそういうことはないのではないかと考えておりまして、埋め戻すということは考えておらないところでございます。

 以上でございます。

山内分科員 先ほどの大臣の、できるだけあった状態に戻すというような発言と随分、ちょっと答弁の内容が私にとって不十分に聞こえる。つまり、今、もとにあった状態に戻すことについては、何かすべての点で否定されたような気がするんですけれども、そうなんでしょうか。

川村政府参考人 今私が申しましたことは、この事業の計画の見直しに伴う幾つかの諸点でございまして、これ以外の問題も当然あるわけでございます。

 恐らく、大臣も地元の状況、その後の状況等十分踏まえて対応するということでございますので、こういった、例えば開削の問題につきましても地元の要望が分かれておったりいろいろありますから、そういうことを十分踏まえて対応していくということを申されたというふうに理解しております。

山内分科員 というと、今の局長が答弁したことは、地元の皆さんの考えによっては変更可能であるということと聞いていいんですね。

川村政府参考人 中止に伴いましていろんなことを対応する必要がありますが、これは基本的には、先ほど冒頭申し上げましたとおり、関係県でいえば島根県、鳥取県、それから役所といたしましては国土交通省、私ども農林水産省が入りました協議会、ここでいろんなことを、対応を協議するということになっておりますので、その中で十分話をしていきたいということでございます。

 もちろん、いろんな実情を踏まえることも必要ですし、また非常に科学的な根拠も必要なものもあるでしょうし、そういったものをすべて考慮しながら一番適正な対応をしていくということが基本でございます。

山内分科員 昨年の三月に分科会でこの問題を取り上げましたときに、既に干拓が終了している農地については、後背地のため池や近くの用水路から導水する水利施設の整備を行う旨、当時の太田局長が答弁をしています。干拓地においては、事業見直しのための土地改良法に基づく手続が終了した後、平成十六年度より工事に着手すると聞いておりますけれども、現在の進捗状況を教えてください。

川村政府参考人 ただいま委員の方から御指摘ございましたとおり、中海の土地改良事業では、揖屋地区、安来地区、弓浜、彦名の四つの干拓地が既に竣工してございます。

 こうした干拓地の農業用水対策は本事業で行うということでしておりまして、計画変更を行って、それに基づいて、ため池でありますとかあるいは近傍用水路を水源とした水利施設を整備するということにしております。

山内分科員 また、こういう問題が現在起こっています。

 米子市、境港市にまたがる弓浜半島の既耕地については、地下水がかなり上昇していて、農作物が根腐れするケースが地元の農家の皆さんから多数報告されております。本庄工区が堤防締め切りになる前は水はけのいい農地だった。だのに、それ以降は、大雨のときに塩水が入らないように水門を閉めると陸側で水浸しになり、夏ならニンジン、ネギなどが根腐れを起こすということがふえたそうでございます。また、かつてはニンジンを平たんな畑に植えても根が二十センチ以上伸びたのに、本庄工区の堤防締め切り以後は高い畝をつくってニンジンを植えないとだめで、それでもニンジンの根が十五センチしか伸びないとも言っておられます。

 農水省は、地下水の上昇原因を何と考えていますか。

川村政府参考人 今委員の方からお尋ねがありました弓浜半島におきます既耕地での地下水の上昇、これが見られるということは私ども承知をしております。

 この原因でございますが、中海の水位が日本海に面しました境観測所の水位と連動して上昇傾向にございます。気象庁によりますと、日本沿岸の海面水位というものは一九八〇年代の半ば以降上昇傾向、そして地球温暖化の影響が懸念されているといったような見解を出されております。そういうことで、私どもも、この地下水位の上昇は日本海の水位と連動いたしました中海の水位上昇ではないか、こういうふうに考えておるところでございます。

山内分科員 地元の不安にこたえて、農水省として、既耕地の地下水位の状況調査、堤防締め切りと地下水水位上昇との因果関係の調査、そして、客土、暗渠排水といった地下水対策を責任を持って行うべきと考えますが、見解はどうですか。

川村政府参考人 この排水の不良の問題等につきましては、国営の中海土地改良事業の中での対応は困難だと思いますが、干拓地以外の農地ということにつきましては、一般的に、排水改良等が必要な場合は、一定の要件を満たしますと農家等の申請によりまして事業が実施できるという制度がございますので、そういった御要請なりあるいは農地の状況等を踏まえまして、具体的な御要請があれば、また検討してまいりたいと思っておるところでございます。

山内分科員 農水省は、かねがね中海の今後のあり方については、鳥取県、島根県、国交省、農水省の四者協議を尊重すると聞いております。

 昨年十二月に鳥取県、島根県両知事の間で、森山堤の開削、西部承水路堤の撤去について両者で合意をしましたが、この二者での合意は、四者協議あるいは農水省に対してどの程度の拘束力があるのでしょうか。

川村政府参考人 四者協議につきましては、先般の二月十日に六回目の協議が行われております。

 その場におきまして、今委員御指摘がございました問題の提起もあったわけでございます。森山堤の開削の問題も提起がございまして、それについて、森山堤の開削についてのシミュレーションを実施してくれという要請もございました。これを踏まえまして、我々としては、まずはそのシミュレーション等を実施して、科学的な検討を行うということを考えておるところでございます。

山内分科員 そうすると、そのシミュレーション、いろんな考え方をすることの前提としての合意でしかならず、四者協議や農水省に対して拘束力を持つというようなものではないと聞いていいんですか。

川村政府参考人 当事者でございます島根県と鳥取県が内容的におおむね合意されたということは一つの大きな要素ではあると思いますが、それが直ちに私どもの、あるいは四者協議の結果を拘束するものではないというふうに思っております。

山内分科員 森山堤の一部開削について、島根県がその根拠として、西部承水路堤の撤去で流れ込む汚れた水を外部に逃がすためというんですかね、そのために森山堤の一部を開削する必要があるんだと主張しておりますけれども、承水路堤だけでも百五十メートルあります。それから、西部承水路堤のところにある大海崎橋だけでも百メートルあります。そこから水が流れ込むわけですから、出口である森山堤の開削の幅についても最低同じ幅がないと水の流れとしておかしいと思うんですが、どうですか。

川村政府参考人 この開削の問題につきましては、既に大海崎堤、それから森山堤をそれぞれ二百メートル開削するということでのシミュレーションを実施しております。その結果は、ほとんど水質の改善については効果がないといいますか変化がないという結果が出ております。

 今回、島根県の方から、森山堤のみお筋のところを五十メーター開削した場合のシミュレーションを行ってくれという御要請がありましたので、片方だけ切るシミュレーションはしておりませんので、しかも幅につきましてはそういう御要請でございましたので、それに基づいて、今後シミュレーションをするということでございます。

山内分科員 現地にあります専門の業界紙によりますと、森山堤と大海崎堤の二カ所について二つの橋をつくる、二つの橋は約六十メートルの長さとする、そしてその費用等について、その基本設計を日化エンジニアリングが行うという記事に接しましたけれども、こういうところまで話は進んでいるのですね。

川村政府参考人 まだ、先ほど申し上げましたように開削の議論を開始したばかりでございます、そういった意味での、新しい提案での開削にしたものでございます。そういう意味で、基本的な設計とかそういうことに着手したということはございません。

山内分科員 しかし、日化エンジニアリングで開削部に係る基本設計に着手したのは間違いないんじゃないんですか。

川村政府参考人 実際の事業実施ということではなくて、あくまで今後の議論を進めるための参考というための発注でございます。

山内分科員 だとすると、農水省も、大海崎堤の開削についても六十メートル幅なら検討してみるという余地を持ってのこういう発注、日化エンジニアリングには発注と聞いてよろしいんですか。

川村政府参考人 そういった予断を持って行うものでは決してございません。

山内分科員 開削をおよそ考えていないところなら、こういう業者に基本設計料を払って検討をする、あるいは進めるということはむだな支出ではないのですか。

川村政府参考人 私どもとして、基本的に必要な、あくまで基礎の基礎の資料としてのものでございまして、これは応用のきくものでございますので、むだではないというふうに考えております。

山内分科員 この問題については、今後いろいろなところで協議をさせていただきます。

 大臣、中浦水門に閘門のあけ閉めの関係でまだ職員の方がたくさんおられるんです。その再雇用の対策について、農水省はハローワークあるいは再就職支援連絡会を通じて支援を行っていると聞いてはおりますけれども、成果がなかなか見えてまいりません。もっと踏み込んで、国の行う事業で直接雇い入れるなど具体的な雇用、就業先を国として確保すべきと考えるのですが、大臣の御所見を伺いたいと思います。

島村国務大臣 雇用問題については、やはりこれは労使間でいわばいろいろ解決することが基本であると、まず考えております。

 さはさりながら、農林水産省といたしましても、鳥取県あるいは島根県及びハローワークなどと連携をいたしまして、いわば皆さんの再就職に向けて、情報の提供やあっせんに努めているところであります。

 また、昨年十一月に新たな、国、会社、労働組合をメンバーとし、再就職に関する話し合いを行う再就職支援連絡会を設置するとともに、専門家によるカウンセリングの実施など再就職の支援に努めているところであります。

 今後とも、従業員の再雇用についてできる限り努力をしていきたい、こう考えております。

山内分科員 大臣、よろしくお願いします。

 それから、中海の水産振興につきまして、島根県は、まだまだ実証段階ではありますけれども、魚礁の造成やシマエビの放流による栽培漁業ができないかと研究をしております。

 水産庁としては、このような自治体の動きをどのように評価し、支援していくつもりでしょうか。

田原政府参考人 お答えいたします。

 水産振興の観点からこの中海をどのように位置づけていくかということにつきましては、島根県及び鳥取県におきまして協議が始められていると私どもも承知いたしております。また、ただいま先生が御指摘されましたように、島根県におきましては、既に水産資源の保護、培養のための水質ですとか生態の調査、あるいは魚礁の効果調査、こういったことを実施しておられると伺っております。

 今後、我々といたしましては、この島根、鳥取両県の協議が調いまして水産振興の方向が定まれば、私どもといたしましても、両県と十分協議させてもらいながら適切に対応してまいりたい、かように考えている次第でございます。

山内分科員 中海の水位については、大橋川の拡幅についての問題もつきまとう問題なんですが、ぜひとも地元住民の合意を絶対条件としていただきたいと思います。

 現状では、大橋川拡幅の地元合意についてはどこまで進み、これからどのように合意を取りつけていく方向性なのでしょうか。

土屋政府参考人 大橋川の改修についてでございますけれども、中海・宍道湖の淡水化中止や中浦水門の全面撤去の方針決定、本庄工区の干陸中止を踏まえまして、昨年の十二月一日に大橋川改修の具体的内容を公表したところでございます。

 十二月一日以降、島根県及び鳥取県の関係行政機関、あるいは両県の関係住民に対しまして、現在までに五十回を超える説明会等を実施してきたところであり、引き続き関係者への説明を実施していくこととしております。

 大橋川の改修に当たっては、治水と環境とまちづくりが調和する改修を進めたいと考えており、地域の皆様の御意見を聞きつつ、関係機関とも協力して早期に計画を確定してまいりたいと考えております。

山内分科員 平成十二年の河川審議会の中間答申では、ダムや築堤に加えて、宅地のかさ上げ、河川と下水道の連携強化、貯留施設による流水抑制対策、ハザードマップの作成、公表など治水対策のメニューの多様化が述べられています。

 これを受けて、国交省としても斐伊川水系の治水事業として、昭和五十年に、物すごい昔に考えたようなダムと放水路の整備と大橋川の拡幅という三点セット、これに拘泥することなく、例えば、ダムと放水路の整備、それから宍道湖の佐陀川水門の拡幅など、それをまず十分な工事をして、大橋川の拡幅については考えなくてもいいような工事を考えるとか、多様な選択肢の中から住民とともに治水対策を選び取る姿勢が求められていると考えますが、どうでしょうか。

土屋政府参考人 斐伊川の治水計画についてのお尋ねでございますけれども、斐伊川水系は土砂流出が多く、平野部では天井川となっております。また、下流部は宍道湖の水位の影響を受けまして、宍道湖周辺及び大橋川沿川を含め、昭和四十七年七月洪水を初めとしてたびたび洪水被害が発生しております。このような河川の特性を踏まえまして、上流部でのダムの建設、中流部の放水路の建設、下流部の河川改修等のさまざまな手法を組み合わせて治水対策に取り組んでおります。

 なお、斐伊川水系は島根、鳥取の二県にまたがり、例えば宍道湖と中海を結ぶ大橋川の改修計画の策定に当たりましては、島根、鳥取両県を初め地元と調整を図りながら進めているところでございます。

山内分科員 大橋川の拡幅の工事によって、大雨が降った際には、中海周辺の地域の浸水や高潮の被害がふえるのではないか、そして、弓浜半島の地下水位の上昇という問題もありますし、住民の中に不安が募っております。これについての国交省の見解を伺いたいと思います。

土屋政府参考人 大橋川改修に伴う中海への影響についてのお尋ねでございますけれども、斐伊川水系では、流域の浸水被害を軽減するため、上流の志津見ダム、尾原ダム、中流の斐伊川放水路、下流の大橋川改修のいわゆる三点セットで事業を進めてきています。

 中海への影響については、上流部のダム群での洪水調節、それから、中流部の斐伊川放水路での斐伊川本川の神戸川への分流により、宍道湖への洪水の流入量を調節するということをしておりますので、中海の浸水被害を助長するものではないと考えているところでございます。

 なお、中海の湖岸堤の整備についても、今後、関係する管理者と連携を図りながら、計画的に整備を進めていくこととしております。

山内分科員 中海の自然の再生のために、森山堤、そして西部承水路堤の開削だけではなくて、大海崎堤の開削も強く求めます。

 農水省と国交省に対して再考を求め、質問を終わります。ありがとうございました。

小泉主査 これにて山内おさむ君の質疑は終了いたしました。

 次に、下条みつ君。

下条分科員 民主党の下条みつでございます。

 大臣含め、きょうは朝からお疲れさまでございます。最終バッターなので、もう三十分の御辛抱でございますので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。

 私の方は、この農林については、私の地元が長野県であるということで、農業、そして自然について、非常に近い位置で育ってまいりました。ただ、私は、今、日本が農業で求められているものは、要は日本の自給率をアップしていかなくてはいけないということだと思います。

 そこで、もうかなり私どもの方から申し上げていると思うんですが、今の日本の食料自給率はカロリーベースで四〇%以下です。そして、現在、世界はいろいろな紛争状態にあったり、異常気象がある。その中で、もし、日本が飼料を含めて相当な部分を輸入している中でいろいろなことが起き、その危険性がある中で、もう釈迦に説法でございますけれども、先進国でアメリカでは自給率がもう一一九%、フランス一三〇、カナダ一二〇、オーストラリア二三〇の中で、これは今から三年前の数字でございますが、非常に日本としては自給率をやはり大きな課題に持ってこないといけないなという感じがいたします。

 そこで、何でこれだけ、日本だけ自給率が諸外国、先進国の中でほぼ最低ですというのかというと、やはり日本が今まで、経済を含め、加工貿易を含め、求めた問題と、政策の方向感だと思います。それは、いい悪いは私はこの場では申し上げません、これから歴史がいろいろ決めることだと思いますので。諸外国の中で自給率がアップした理由として幾つかあると僕は思うんですが、その中でいいものはこれから日本の農業の政策として持ってくればいいと私は思います。

 そこで、切り口として、一番手に自給率を上げるということで持ってきますと、二つだけ、大きく申し上げて御意見をいただきたいというふうに思っています。

 まず、私は地元でも思うんですが、やはりお金の部分ではないかなと思うんですね。つまり、農家の方に直接的にお金が入る率が多ければ、私も農業を少し、二反歩ほどやっておりますけれども、やはりやる気になってくれるし、若い人たちも安定してくるということだと思うんです。

 そこで、今地元で私が一番多く相談を受けているのが、後継者がなかなかつかないんだ、田んぼや畑が守れなくて困っているんだ、こういう話でございます。担い手の育成についても、若い人は、特に自分の生活として、お嫁に来る人たちの気持ちを考えたときに、やはり最後は所得だと私は思います。

 そこで、農業所得に占める直接支払いの部分のお話なんですけれども、イギリスでは七一%、フランスで五二、ドイツで五〇%、アメリカでさえ四六%と。

 日本は、現在では、大臣、皆さんのおかげで中山間地域についていろいろ御配慮いただいているというふうに思います。しかし、それ以外に認められていない。しかも、海外とは違って、直接支払いといっても、集落に支払われる形になっていて、農家の山田一郎さんという方がいたら、その口座に直接お金がぼんと入るわけじゃないということだと思うんですね。そこら辺が、やはり諸外国と比べて随分薄まっているなと。せっかく補助金を国の方で出していても、直接なかなか行かないので薄まっている、ここが僕は問題ではないかなと思うんですね。

 そこで、所得に占める直接支払いの率を最低で三〇%以上にすることができれば僕は理想だと思うんですけれども、私どもの試算によれば、日本の現在の補助金を一兆円の直接支払いに変えれば、この割合については約三〇%直接支払い率が上がってくる。つまり、簡単に言えば、農家の方の口座に直接にお金が入っていくということだと思うんですね。

 これが実現できれば、大臣とかは江戸川区、葛西とか、あっちですから、すごい土地持ちの人は大変大きな家の端っこの方で農業をやっていたりすると思うんですけれども、そういう都会ではなく、情報源もなく、遠いところにお住まいだったり、日本はほとんどそっちの方が多いんです。

 そういう意味で、直接支払いを、今申し上げた率で、もう少し枠をはみ出て、中山間地域だけじゃなくて、もっと枠を少し膨らませた形でお支払いになり、また、その対象は、例えば大農家の四ヘクタール等々だけではなくて、やる気のある人にはどんどんやっていいじゃないかというふうに進めていっていただければ、諸外国と比べて、平均的に農家が持っている農地は随分低いです。これはもう釈迦に説法です、数字は申し上げませんが。

 そういう形で、日本に合った農業の育成と、そして、担い手に対する温かさというんですかね、この部分について、最初に、自給率アップの方向感のうちの一つとして、もしよろしければ大臣に御意見をいただければというふうに思います。

島村国務大臣 そちらもよく御存じのようですから釈迦に説法かもしれませんが、少なくも、我が国は直接支払い制度というのを取り入れていませんね。それはなぜかといえば、やはり、我が国農業の特殊性に根差すと思うんです。

 これは、要するに、専業農家、あるいは一種、二種の兼業農家、いろいろありますが、いわば専業の方がはるかに少なくなってきていて、農家によって全くさまざまな農業形態をとっている。これを直接支払いでやるとなると、かえって過不足が生じたりして、不公平を生んだりすることも起きないではないので、そこで、それぞれの地域の実情を把握しているいわば組織に我々はお金を出して、そこから公平公正に配付されるようなことをして、てこ入れをしているわけですね。

 それと同時に、何しろ中山間地域四二%、農家でいうと四三%ですから、こういういわば農家あるいは農業者に対して、直接支払いで果たして公平さが維持できるかどうか。そういうことも考えますと、諸外国と同じように考えるということはなかなか難しい。先ほどから、下条委員から御指摘ありましたけれども、農家一戸当たりの面積も一・五ヘクタール、それも北海道を含めての話ですから。要するに、本州なんかで見れば完全に一ヘクタールを割るわけです。そういうことを考えますと、やはり農業のいわば特異性といいますかそういうものに対して考えれば、今まで長い歴史の中でいろいろ試行錯誤を繰り返す中に生まれてきた現状なんだろうと思います。

 食料の自給率について申し上げることはあれですけれども、またいろいろ御質問があろうかと思いますので、その点につれてお答えしたいと思います。

下条分科員 ちょっと最初の御質問として事前に申し上げていなかったと思って恐縮でございますが、お答えいただきましてありがとうございました。

 ただ、大臣、やはり物は、確かにおっしゃったような形態が多い。それを把握できないので、集落形態というのもわかるんですが、ただ私がいろいろ歩いていて、やはり最後は私は所得、お金なんだなと思うんですよね。兼業が多い中で、またお子さんたちがいろいろな、お嫁さんをもらえない状態の中で確定して、絶対倒れない国がこれだけのお金を渡してあげるから農業はできるんだよということが、やはり自分たちが息子に言える、また婿に言える、もしくは自分たち自身もそれで隣近所の人に言っていけるその自信と安心に僕はつながると思うんです。したがって、きょうこの場ですぐそれが変更できるとは思いませんし、これからのお話の中で、諸外国と比べてなぜこれほどまでに低くなってしまったかの要因の一つとして、大臣もぜひ頭の隅に入れておいていただければというふうに思います。よろしくお願いします。

 最初は所得の部分なんですが、次に農地の面からの切り口でちょっと御質問させていただきたいと思います。

 担い手への農地の利用集積を推進するということで、法律としては農業経営基盤強化促進法が平成五年に農用地利用増進法の改正によって生まれた。この中に、そこの利用権の設定の促進のための特例が認められている、利用権の設定のためですね。この特例での利用権の設定はどの程度進んでいるかというのをいろいろな数字で調べさせていただきました。ちなみに、平成十三年には九万八千ヘクタール、平成十四年には十万二千ヘクタールです。少しはふえてきていると思うんですが、農地全体から比べれば二%強しかありません。時系列でいえば、いただいた手元の資料では平成十一年はほぼ横ばいに、この利用権の設定のヘクタールになっているということだと思います。

 そこで、もしわかればですが、利用権の設定というのは、今農地として使っている場所は、腰が痛いと言っておばあちゃんがお一人になってできないのでだれかに、農業委員会含めて申告して、許可をもらってやる場合もありましょうし、一年以上農地として使わなくて荒廃地になっちゃった。荒廃地になっても申告すればできるんですが、これだけ自給率のことを言われて担い手をいろいろ育成しなきゃいけない、農業をやる人を探さなきゃいけないという中で、なぜずっと横ばいになっていたかという中で、私は、遊休地とか耕作放棄地の利用部分が何かちょっとひっかかってきています。

 そこで、もし今お手元の資料で、耕作放棄地等々に利用権を設定した割合のヘクタールがわかれば、政府委員の方含めて、数字をいただければというふうに思いますが、いかがでございますか。

須賀田政府参考人 耕作放棄地にどのぐらい利用権が設定されたか、ちょっと統計がございません。なお、今まで累積で農用地に賃借権等が設定されましたのは二百二十五万ヘクタールございます。

下条分科員 きょう、この場ではあれだと思います。ただ、私は、一たん耕作放棄地になったところは、もうずっと売買で農地に戻ってこないのではないかなと思うので、こういう御質問をさせていただいたんですが、また別の機会に御提出いただければというふうに思います。

 そこで、利用権の設定というのは、事前に農地を貸したいという人を募ったり、関係権利者の意向を取りまとめる必要がある。こうした仕組みの中に利用権設定ということがやりにくいような障害があるんじゃないかと僕は思うんですね、やりにくいんじゃないかと。だからなかなか伸びていかないということだと思います。今までは十万ヘクタールずつで来ていますが、もっとやはり飛躍的に伸ばしていけば、自給率の部分で、少しでも今現在のやり方の中で寄与できるというふうに思います。

 そこで、こういう仕組みを知らずに農地を遊ばせている人がたくさんいるんじゃないかと僕は思うんですよ。例えば、地元に帰ってみますと、農地を持っていても、主な生活拠点が、息子たちが都会へ出ていっちゃっていて、次男、三男は全然わからない。そこで一年たってしまうとすぐ荒廃地になっちゃって、荒れれば荒れるほどもとに戻すのはもっと大変ですね。坂を下っているのに坂のもとに戻すのは時間がかかるのと同じでございます。荒廃地になったときに早目に手を打てば、また農地はもとの状態に、生き生きしたもとの状態に早く戻れると思います。それがどんどん下っていけばいくほど荒廃地からもとに戻すのは時間がかかるから、みんなギブアップしちゃう、こう思うんですね。

 そこで、このままでいけば、もっともっと農用地が減っていくのは必然じゃないか。したがって、自給率はもっと減っていくんじゃないかというふうに私は思います。そこで、こうした遊休地や耕作放棄地を再び有効に利用していくにはどうしたらいいかという中で、農振法の第十四条に、勧告権という、僕らも悪い頭でよく探したなと思われるかもしれませんが、この振興の部分を探すのはなかなか大変でございまして、細かいところから引っ張ってまいりました。農振法第十四条、勧告権は、要するにほったらかしの土地に対して、ある程度、おまえ、これはしっかりやれやという勧告権でありますよね。

 ただ、これは私に言わせてもらうと、では、どの程度きちっと勧告できるのか。例えば、郵送物をぽんと送るだけか。市町村からきちっと行くのか。それとも、そこの土地の持ち主であれば、住民票が大阪とか東京に行っていても、そこの人には何とかやったらいいじゃないかということになっているのか。それから、あとは、私に言わせてもらうと、やはり物をやるには、これはもう何といっても人間は動物であります。したがって、ワンちゃんでさえ、イルカさんでさえ、お魚と食べ物をやらなきゃやらないんです。人間は、私は、やはりある程度メリットがあると、その勧告の中に、これをやったら、おいおい、今度は固定資産税をもっと下げるぞ、所得があってもそっちをちょっと差っ引いてあげるよ、そういう部分のメリットがあれば、その人たちは、それだったら、おい、じゃ、何かいい方法はないんですか、いや、利用権というのがあるだよ、それは物を頼めばいいんですよという順番にもなってくると思うんですよ。

 ただ、勧告で、おい、やれよと。いや、おれはもう冗談じゃない、三LDKでも、父ちゃんと母ちゃんと別れて自分で住んでいて、娘は今度は幼稚園受験だよとかなっちゃうと、とてもじゃないけれども、そっちの方はやっていられないということだと思うんですよ。

 私は、この勧告権という部分にもうちょっと何か、アイデアですよ、今までが悪いと言っているのじゃないんです。これからどうしろという話です。だから、色をつけてやってあげれば、例えばそこに、村、町、市、県、国が組織的に何か伝えるものがあれば、ホームページ含めて、これをするとこれだけメリットがあるよとあれば、Iターンで戻ってきたい人、そして週末だけ、また二週間に一遍だけ地元のお母さんの面倒を見に戻ってきた人たち、農地はあります。でも、どうするかわからない。でも、勧告権がある程度来て、勧告権以上のことを僕は求めているんですけれども、これについては何とかちょっとやってくれやというふうに市町村が頼まれれば、もともと農業の血が流れている人たちですから、じゃ、それだったら何かいい方法はないですかという部分になると思うんですよ。

 ところが、今は、私がきょうお聞きしているのは、勧告権、ぽんと通知が行くだけ、もしくは声をかけられるだけで、とてもじゃないけれども、週末戻ってお母さんのケアをしながらでは、ちょっとなかなか難しいということだと思うんですね。

 そこで、この部分について、私はあくまでも現在ある部分に色をつけながら、それでなるべく現在農業をやっている人の、可能性を持っている人に広げてあげるということで、この勧告権について、もう一つ色をつけていただくような方向がないのか、また今どの程度にその効力があるのか、もしおわかりになれば教えていただきたいと思います。

須賀田政府参考人 市町村、農業委員会が実務をしていますけれども、耕作をしていない人に対して、まず指導をして、勧告をして、自分でだめなら、またあっせんをする、このようなことをしておりました。

 それで、メリットなんですけれども、実は、そういう手続で農地を売買すれば、譲渡所得の特例、税法上の特例がございました。

 また、かつて私ども、そういうことで農地を出す、賃借権を設定するといった場合に、その出し手に対して反当たり幾らというお金を出したこともございました。ただ、これは後でばらまきじゃないかという強い批判を受けまして、やめざるを得なかったわけでございます。

 ただ、今、農用地利用改善だったら集落でございますけれども、ここが農地を兼業農家とか小規模な人から担い手の方へあっせんして移すといった場合に、その集落に対して十アール当たり二万円ほどお出しするという事業はございます。

 そういう事業はあるんですけれども、なかなかこれが進まないという理由の一つに、やはり、安心して、自分が入り用なときにはちゃんと戻ってくる、それから信頼できる人に貸したい、そういう不安が農家の方の中にあるんじゃないかということで、私どもは、その間に公的な機関、例えば農地保有合理化法人。それで、一定期間たてば必ず戻ってくる。あるいは、先ほど先生言われました集団的な農用地利用増進事業と言われるようなものは、あれは集落が間に入って市町村が認定しますので、集落の中での調整によって確実に何年か後には返ってくる、そういう安心感のもとに、集落機能をもとにして仕組んだ事業ということで、先ほど十万ヘクタール程度で横ばいだと。十万ヘクタールでも過去に比べると随分伸びた面積でございます。

 私ども、今後これが非常に大事だということで、今国会に経営基盤強化促進法の一部改正というのを出しております。これは、耕作放棄地を解消するために一歩進めまして、指導に従わぬ場合には最終的には裁定行為、都道府県知事の裁定ということで、市町村等が強制的に賃借権を設定する、こういう仕組みの制度を中に入れて耕作放棄地対策ということをしておりますし、また、構造改善特区ということでの、いわゆる株式会社でもリース方式で耕作放棄地になりそうなところを取得できる、こういう仕組みも全国展開する、こういうことで耕作放棄地の解消というものに努めるということにしております。

下条分科員 御丁寧な説明、ありがとうございました。

 いろいろな部分で、今のポイントは、やはり宣伝効果の方はもうちょっと必要かなと私は思うんですが、一方で、貸しちゃった後の、戻ってくるかなという部分の、安心の部分が、今おっしゃった部分だと思います。

 私も、その部分が農業委員会であるし、集落単位でのいろいろな支払い部分につながってくるんだと思うんですけれども、これをもう少し自立性というんですか、農家をもう少し少数単位に移していっても僕はいいんじゃないかと思うんですよ。

 ただし、そこの部分は、市町村にしろ経営体を指示した指導者たちが、その間の行き来に対する、貸しちゃって全く戻ってこなかったりするのは、どうしてもやはり農家の方というのはいろいろ、言いにくいですけれども、契約書上の、法律上の問題、いろいろ絡むことに対して僕はそれほどお強くないと思いますので、その辺はさらにもう少し温かさと重厚度さを出していただけたらなという感じはいたします。

 そして、あとは、やはり知らない人が多いんですよ、利用権については。だから、もっともっとプロパガンダ、宣伝の部分を、ぜひ、私は地元ではさせていただきますが、国をもってもう少しそこの部分は色づけしていただきたいというふうに思います。

 余り時間がなくなってきちゃってあれなんですが、そこでもう一つ利用権のことなんですけれども、利用権の設定を受ける資格というのが、もう本当に御存じのように、農用地のすべてについて耕作または養蓄の事業を行うこと、必要な農作業に常時従事すること、利用権の設定を受ける農用地を効率的に利用して耕作または養蓄の事業を行うことの三つの要件を最低持っていなきゃいけない。

 この条件では、例えば兼業農家の方はこの設定を受けることがほとんどできないということになりますよね、今申し上げた中で言えば。そこで、例えば自分たちでやっていきたいという人は、ただ、こういう御時世です、米が安く入ってきて、いろいろなものが安く入ってきている中で、また子供たちの少子化の中で、相手のお嬢さんもわがままになって、こういう言い方は悪いんですけれども、自分の息子もいろいろある、お父ちゃんの言うことを聞かなくなったという中で、何とかその要件を、もうちょっと兼業でもできるように取得要件を緩和してあげる、利用権について。その利用権の農地取得要件についての緩和をしてあげることに、例えば今言った兼業農家等あれば、兼業農家の方もそれだったら利用権を設定できるというふうになると思うんですが、この辺、大臣、何とか少し前向きにお答えいただけたらなというふうに思いますが、いかがでございましょうか。

島村国務大臣 なるほど、今おっしゃることも私はよくわかるんです。

 ただ、今までの農業に対しては、やはり手厚いいわば保護といいますか、現状をかなり肯定してそれを動かさないという基本に立ってきたけれども、最近、急速に進んでいる高齢化を踏まえまして、若い方たちが定着せずに、みんなどんどん都市部へ出ていってしまう。特にお気の毒だと思うのは、お嫁さんが来ないから、やはり一回出ていって、そのまま帰ってこない。

 そういう実情をいろいろ考えますと、やはり農家は農家なりに御自分のお仕事に自信と誇りを持って、自立する農業といいますか、競争力を身につけて、いわば一般の産業と対抗できるような、そういう取り組みを持つということが必要なんだろうと思っているんです。

 しからば株式会社へ、こういう話もありますが、これはそのまま、仮に土地を売ってしまいますと、株式会社は自分の方の採算で常に動きますから、あるいは株主の意向で動きますから、せっかく農地でいわば売ったはずの土地を別に利用されても、一たん所有権が移ってしまうとこれは勝手なことはできない。そういうことをいろいろ考えまして、いわば強制的にといいましょうか、ある程度の規模を持っていただくような方向に持っていく。したがって、規模の小さい方はいわば集落の農業を営んでいただくという方向に持っていくというふうになってきている、こう思うんですね。

 これも、私たちが勝手にこうあるべきだと考えているんじゃなくて、御承知のように、いわば農業関係者、団体も個人も、いろいろな方々も委員に入っていただいて食料・農業・農村基本計画を出している。今回は、がらりさま変わりしたように、実に大胆な線を打ち出してきておりますが、これも決して農家の声に耳を傾けずにやってきたことではないんだということは御理解いただきたいと思います。

 いずれにせよ、一番幸せなことというのは、結局は自分のいわば知恵と力で動いていくという自立心がある人が一番安心感と勇気を持てる、そういうことでありますから、何かがあったら助けてもらおうという感覚ぐらい人間を臆病にするものはないんだろうと思いますし、私は、自分の日常生活でも、人間が一番意気地がなくなるのは頭を抱えてしゃがみ込むときだ、何より何くそと向かっていくときというのは怖いものはないんだ、そんなことで生きてきた人間ですが、やはり農業もそういう姿勢がある意味で大事なんじゃないでしょうか、時代の転換期に立っているわけですから。農業者が本当のいわば自負とこれからの生き方というものを持つような機会を我々は精いっぱい努力をして用意していく、こんなふうに考えるのがこれから我々のとるべき攻めの農業の基本ではないか、こんなふうに思います。

 ただし、これは私の全く今感じているままを申したことで、あらかじめお話があったことではありませんから、一応そんなふうに考えていることを申し上げたいと思います。

須賀田政府参考人 基本的な考え方は、大臣の御答弁のとおりでございます。

 今先生おっしゃられました、兼業農家でも農地を取得できるようにすべきではないか。

 先生おっしゃられましたような要件、全部従事するだとか、必要な作業をちゃんとやるだとか、これは兼業農家でもクリアできる要件である。問題は、権利取得後五十アール以上という要件が今ございまして、これがなかなか難しい点だろうと思うんです。

 例えば、今後兼業農家が、ほとんどの自分の土地は担い手に出すけれども少しは生きがいのために別のところから取得したいといったような場合に、五十アール条項がありますとなかなか取得できない。あるいは、耕作放棄地を解消するためにだれか来たい、でも五十アールないとだめだというようなときにもなかなかこれが邪魔になる。こういうことがございますので、そういう場合に備えて、今般、運用の面ですけれども、その下限面積要件を最低十アールにまで市町村長がその事情を勘案して下げられるというようなこともあわせて検討したいというふうに考えてございます。

下条分科員 ありがとうございます。また、大臣からも御所見ありがとうございました。

 もう質疑が終わっちゃうよというのが来ましたので、最後に私のあれだけさせていただいて終わらせていただきたいと思います。

 物事は何でも、筋肉やアキレス腱と同じで急にやれば切れてしまいますので、今までのに反省しながら、また、諸外国と比べて低い理由は何かをやはり議論していくことは、僕は建設的な意見が必要だと思います。そういう意味で、今、所有面積について少し下げていただくというのは非常にいいお話ですし、今後もこの利用権の設定の緩和が今ある法律の中で非常に農地の利用度をふやし、またそれが生産性につながるということであると僕は思いますので、都会の大臣でございますけれども、ぜひこれからの御議論の中で、田舎者の私でございますけれども、いろいろ郡部の方で苦労している方々のお気持ちを酌んでいただいて、法案作成をまたさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。

 きょうはお時間をいただきましてありがとうございました。

小泉主査 これにて下条みつ君の質疑は終了いたしました。

 次回は、来る二十八日月曜日午前九時より開会し、環境省及び農林水産省所管について審査を行うこととし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時三分散会


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