衆議院

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第2号 平成18年3月1日(水曜日)

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平成十八年三月一日(水曜日)

    午前九時開議

 出席分科員

   主査 玉沢徳一郎君

      井上 喜一君    小野 次郎君

      杉田 元司君    中川 泰宏君

      広津 素子君    福岡 資麿君

      二田 孝治君    松本 洋平君

      山本 公一君    笹木 竜三君

      松本 大輔君    阿部 知子君

      重野 安正君

   兼務 大畠 章宏君 兼務 近藤 洋介君

   兼務 鈴木 克昌君 兼務 田名部匡代君

   兼務 村井 宗明君 兼務 高橋千鶴子君

   兼務 糸川 正晃君

    …………………………………

   農林水産大臣       中川 昭一君

   環境大臣         小池百合子君

   農林水産副大臣      宮腰 光寛君

   環境副大臣        江田 康幸君

   農林水産大臣政務官    金子 恭之君

   環境大臣政務官      竹下  亘君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  大藤 俊行君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 加藤 治彦君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       松本 義幸君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         佐藤 正典君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房技術総括審議官)       染  英昭君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房政策評価審議官)       本川 一善君

   政府参考人

   (農林水産省総合食料局長)            岡島 正明君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           中川  坦君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  西川 孝一君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  井出 道雄君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            山田 修路君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局企画部長)         宮本 敏久君

   政府参考人

   (林野庁長官)      川村秀三郎君

   政府参考人

   (林野庁森林整備部長)  島田 泰助君

   政府参考人

   (水産庁長官)      小林 芳雄君

   政府参考人

   (特許庁審査業務部長)  脇本 眞也君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           高梨 雅明君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 坪香  伸君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局長)            田村 義雄君

   政府参考人

   (環境省自然環境局長)  南川 秀樹君

   農林水産委員会専門員   渡辺 力夫君

   環境委員会専門員     齊藤  正君

   予算委員会専門員     清土 恒雄君

    ―――――――――――――

分科員の異動

三月一日

 辞任         補欠選任

  井上 喜一君     杉田 元司君

  二田 孝治君     小野 次郎君

  笹木 竜三君     松本 大輔君

  阿部 知子君     照屋 寛徳君

同日

 辞任         補欠選任

  小野 次郎君     広津 素子君

  杉田 元司君     中川 泰宏君

  松本 大輔君     笹木 竜三君

  照屋 寛徳君     辻元 清美君

同日

 辞任         補欠選任

  中川 泰宏君     福岡 資麿君

  広津 素子君     松本 洋平君

  辻元 清美君     重野 安正君

同日

 辞任         補欠選任

  福岡 資麿君     井上 喜一君

  松本 洋平君     二田 孝治君

  重野 安正君     菅野 哲雄君

同日

 辞任         補欠選任

  菅野 哲雄君     阿部 知子君

同日

 辞任         補欠選任

  阿部 知子君     保坂 展人君

同日

 辞任         補欠選任

  保坂 展人君     阿部 知子君

同日

 第二分科員田名部匡代君、第三分科員大畠章宏君、第四分科員鈴木克昌君、高橋千鶴子君、第五分科員近藤洋介君、第七分科員糸川正晃君及び第八分科員村井宗明君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十八年度一般会計予算

 平成十八年度特別会計予算

 平成十八年度政府関係機関予算

 (農林水産省及び環境省所管)


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     ――――◇―――――

玉沢主査 これより予算委員会第六分科会を開会いたします。

 平成十八年度一般会計予算、平成十八年度特別会計予算及び平成十八年度政府関係機関予算中環境省所管について、昨日に引き続き質疑を行います。

 この際、分科員各位に申し上げます。

 質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力をお願いいたします。

 また、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。村井宗明君。

村井分科員 民主党の村井宗明です。

 私のホームグラウンドである環境委員会ではいつも小池大臣に質問をさせていただきますが、今回は、農林水産省とも合同で第六分科会となっています。我が郷土の誇りであります、富山の誇りであります宮腰副大臣にも質問をさせていただけることを非常に誇りに思っております。

 ことしの国会でテーマとなる容器包装リサイクル法においては、事業者負担なのかそれとも消費者負担なのか、民主党が求める拡大生産者責任とそれを否定する自民党との間で対決が予想されるわけでございますが、ところが、この里山保全の問題そしてクマの問題というのは、政党間にとらわれることなく、やはり協力して進めていかなければならない問題だと思っています。

 そういった意味で、まず一問目なんですが、平成十六年度の野生鳥獣による農作物被害及びそのうちクマの被害はどの程度になっておられますでしょうか。

本川政府参考人 平成十六年度の野生鳥獣による農作物の被害状況につきましては、被害面積で約十四万ヘクタール、被害金額で約二百六億円となっております。このうち、クマによる被害は、被害面積で二千ヘクタール、被害金額は約四億円となっております。

村井分科員 被害が今でも出ているわけです。おととしはもっとひどい被害だった、昨年は大分減った、そんな中でも、やはり、今減ったからといって油断することなく、これからもしっかりと施策をやっていかなければならない。そうしなければ、おととしのようなことがまた起きてしまうわけです。おととし、クマで日本じゅうが騒動を起こしました。我が郷土富山県でも、随分大きな問題となってしまいました。そういった意味で、今後もしっかりとそういった鳥獣害対策を強化してほしいと思っています。

 これまでどのような対策を講じていたのか、そして、さらにそういう鳥獣害対策を強化すべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

本川政府参考人 農林水産省におきましては、これまで野生鳥獣による農作物の被害を防止するために、被害防止のための技術開発、こういうものを行っております。さらには、強い農業づくり交付金などの各種補助金を活用いたしまして、各地域で取り組まれている侵入防止さくの設置でありますとか、あるいは追い払いなどの自衛体制の整備でありますとか、あるいは知識の普及、こういうことに対して支援を行ってきております。

 また、各地における取り組みを円滑に進める観点から、現場の技術指導者の方々が活用できるように、全国的に被害が大きいイノシシ、シカ、猿、こういったものの生態特性と被害対策をまとめたマニュアルを作成して、近く配布する予定であります。

 さらに、これらに加えまして、十八年度からは新たに、環境省との連携のもとで、県域をまたがるような広域の地域を拠点地域として指定をいたしまして、その地域で、地域の方々にも参加していただいて、鳥獣害の情報マップを作成し、それを活用して、総合的な防除技術体系の確立を推進する新たな事業を実施していく考えでございます。

 今後とも、環境省など関係省庁との連携を一層密にして、被害防止対策を推進してまいりたいと考えております。

竹下大臣政務官 私のところはイノシシとシカにも悩まされておるんですが、農作物に被害を与えております鳥獣につきましては、鳥獣保護法に基づきまして、都道府県知事等の許可を得て、被害防止のための捕獲が可能というふうになっております。

 また、地域において著しく増加しております鳥獣についても、この法律に基づきまして、都道府県知事が特定鳥獣保護管理計画、いわゆる特定計画というのを策定いたしまして、適正な生息数に向けて計画的に捕獲できるというふうな仕組みになっております。

 環境省では、特定計画の策定や計画に基づく対策の実施を行う都道府県を支援するために、技術マニュアルの作成や研修の実施などを行っております。それに加えまして、平成十八年度からは、県域を越えて行動するシカやクマなどの鳥獣につきまして、広域で保護管理するために必要な調査等も実施をする予定にいたしております。

 さらに、現行の狩猟規制を見直しまして、狩猟を活用した鳥獣の適切な保護管理を進めるために、鳥獣保護法の改正案を本国会に提出すべく今準備を進めておるところでございます。

 わな、網、この二つを分離いたしまして、より使い勝手がいい、そして有害鳥獣をとりやすい体制を整えていこうと思っております。

村井分科員 そういった中で、鳥獣保護法の話が出ました。おととし、このクマ問題を何度か取り上げさせていただいた中でずっと論点になっていたのが、鳥獣保護法の三十八条、つまり夜間の銃によるクマの駆除の問題が出ていました。

 今後の検討課題だというふうにおととし言って、そのままになっていたと思うんですが、まさに私たちの地元、富山県、例えば私の祖母のうちから百メートルのところでもクマが出ておるんです。宮腰先生の選挙区でございますが、そういったところでも非常にクマが出ていて、旧大山町、今、富山市なんですけれども、そういったところで非常にクマ問題が皆さん気になられた。

 そして、夜間にクマが出てきた。いや、だけれども、夜は発砲できぬのだと。見ておったら、むしゃむしゃむしゃむしゃカキの木を食い荒らす。夜、カキの木をばりばりばりばり食べているんだけれども、ぱっと駆除しようと思っても、いや、夜は銃を撃てぬからという話があったんですね。

 その辺、鳥獣保護法三十八条、銃による夜間の発砲なんかは今後の検討課題ということになっていましたけれども、その後、どうなっておられますでしょうか。

南川政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、鳥獣保護法においては、日の出前及び日没後において銃による捕獲は禁止をしております。やはり、安全確認が困難だということでございます。ただ、私どもでは、クマが出ることもあり得ると思っておりまして、その場合に、予想される場合には事前に許可を出しまして、そして、わなによる捕獲を行っていただくということが適切というのが現状の考え方でございます。

 クマは、一般に夜に山から出てくるということは非常に少ないと思います。朝夕が多いと思いますので、そういった時間を中心に銃で捕獲することも含めて対応する。夜は、わなということで対応することが適切と思っておりますし、実際に、去年は六百四十頭、おととしは二千二百三頭を捕獲しております。現状、かなりそれで対応はとれているというふうに考えております。

村井分科員 せっかくですから、地元の宮腰副大臣にも一言だけいただきたいと思うんです。我々、富山県民が悩んだおととしのクマ問題、今後も引き続き対策を講じていかなければならないと思うんですが、副大臣はどのように考えておられますでしょうか。

宮腰副大臣 御指名いただきまして、ありがとうございます。

 基本的には、やはり里山の自然が荒れてきているのではないかということとか、あるいは、人間そのものがえづけをしているのではないかというようなことが原因だと思っておりますが、やはり、今先生がおっしゃったようないろいろな対策を講じるとともに、そこに住んでおいでになる方々の意識の改革の問題もこれは長期的に見て必要であるというふうに考えておりまして、地域ぐるみで将来を見越して、しっかり取り組んでいくことが必要であるというふうに考えております。

村井分科員 ありがとうございました。

 さて、クマや猿などの野生生物が本来の生息地から人間の住む住宅地に出没する原因として、やはり緩衝地帯となっていた里山の荒廃が挙げられるわけです。維持の難しくなっている里山の保全に対して、どのような対策を講じておられるのか。特に、新規で挙げておられる里山エリア再生交付金事業とはどのような内容かをお答えください。

島田政府参考人 里山林につきましては、私どもの生活に最も身近な森林でございまして、生活環境の向上や景観形成など、森と人との豊かな関係を回復し創造する場として、その保全と整備と適切な利用を図っていくことが極めて重要な課題だというふうにして認識しているところでございます。

 このため、地域住民またNPO等の参加による保全、整備活動への支援、里山林の水土保全機能の強化を図るための森林の整備、森林環境教育の場としての活用などに取り組んでいるところでございます。

 特に、今御指摘ございました平成十八年度予算におきましては、花粉発生源対策、また竹の侵入対策、耕作放棄地や野生鳥獣害への対策など、里山エリアが抱えております課題に柔軟かつ効果的に対応するために、新たに里山エリア再生交付金を創設することといたしております。

 本交付金におきましては、地域の裁量を大幅に拡大いたしまして、居住地周辺の森林整備、鳥獣害防止施設等の整備や防竹帯整備などの居住地森林の整備、また、用排水施設整備、集落内防災安全施設整備などの居住環境基盤整備、またその他、事業実施主体が提案する地域の創造力を生かした整備によりまして、居住地周辺の森林や居住基盤に関する整備を総合的に実施いたしまして、個性的で魅力ある里山エリアの再生を支援することといたしているところでございます。

村井分科員 その里山の荒廃を防ごうと、現在では、地域住民に加えて、都市住民のボランティアやNPOなども保全のための活動をしています。

 また、もう一つ今お話ししたいなと思うのは、やはりそういった里山のエリア、それから地方にもお金がおりていくように、特に私は、グリーンツーリズムというものをもっともっとやっていかにゃならぬと思うんです。例えば新幹線ができたとする、地方の若者が東京へ何かを買いに来てお金だけ落として帰っていく、これはもちろんあると思うんです。それだけじゃなくて、やはり、都会の人が地方に来て、そういった旅行をしたり、グリーンツーリズムなどで観光してもらう、私はそういったものをしっかり支援することが必要だと思うんですが、そういったグリーンツーリズムに対してどのような理解、支援をしているのか、お答えください。

宮本政府参考人 お答え申し上げます。

 グリーンツーリズムにつきましては、都市住民の方々には、自然が豊かで魅力ある農山漁村を訪れまして、ゆとりと安らぎを享受していただく。一方、農山漁村におきましては、今議員の方も御指摘いただきましたけれども、都市住民との交流を通じまして、地域の活性化を図る、あるいは地域の伝統文化を保全していく。そういう面で、都市と農山漁村双方にメリットのある取り組みだろうというふうに考えております。

 このような中で、政府におきましても、昨年三月に閣議決定されました食料・農業・農村基本計画に、農村振興の重要な施策の一つといたしまして、このグリーンツーリズムを位置づけているところであります。

 このため、農林水産省といたしましては、各省と連携しまして、農山漁村における受け入れ施設として重要な役割を担っております農家民宿に関連する規制緩和、あるいは、地域資源を生かした各地域の創意工夫ある取り組みを進めていくため、元気な地域づくり交付金等によります交流拠点の整備、あるいは、ホームページを活用した都市住民への情報発信、グリーンツーリズムに取り組む人材の育成、このような各種の支援策を講じているところでございます。

村井分科員 そういった中で、今ちょっとお話が出た交流拠点についてお話ししたいと思うんです。

 それは何かといいますと、例えば、いいところ、本当に立派なところに行った場合、例えば東京とかに行った場合は、立派なホテルであればあるほど、豪華であればあるほど、集客能力が高まると思うんです。ところが、グリーンツーリズムは別だと思うんですね。自然の雰囲気だとか、そういったものを求めて来ているわけですから、そんな中にきらびやかで豪華などーんというホテルがあったら、これは来た人たちが求めておるものと違うものを提示してしまうわけです。

 そういった意味で、例えば農家への宿泊、それから、人が少なくなって廃校になってしまった学校などをもっともっと有効活用していくべきだと私は考えるんですが、その辺どのようにお考えでしょうか。

宮本政府参考人 お答え申し上げます。

 まさに今議員御指摘のように、農山漁村におきましては、農山漁村らしい宿泊施設というのが重要であろうというふうに考えております。

 先ほども申し上げましたように、農家民宿につきましては、関係各省の御協力もいただきまして、消防法でありますとか、いろいろな各種法制面での規制緩和等の措置にも取り組んでいるところでございます。

 また、廃校など地域に密着した施設、これを都市住民との交流拠点として活用することも極めて有効な手段であろうというふうに考えております。一つには、新たな施設に比べましてコストが安いという面がございます。また、議員御指摘のように、古い木造校舎を利用することで、農山漁村の雰囲気をより味わうことができるのではないかというふうにも考えております。

 このため、農林水産省としましては、廃校の有効活用という観点から、文部科学省の御協力もいただきまして、地域の実情に応じまして、元気な地域づくり交付金等によりまして、地域の廃校を交流拠点として活用する取り組みに対しても支援をしているところでございます。

村井分科員 そこで、宮腰副大臣に御質問申し上げます。

 そういった中で、私は、都市の人たちと地方の人たちがもっともっと地域間交流を活発にしていかにゃならぬと思うんです。例えば、ある地域では、新幹線ができたとして、本当にそれを有効活用するためには、都会の人に地方へ来てもらう、そういったものをどんどん活発にしていかなければならない。そして、相互理解を深めることが非常に重要だと思いますが、副大臣はどのように考えておられますでしょうか。

宮腰副大臣 御指摘のとおり、都市と農山漁村の交流は、都市と農山漁村に住む双方の人々の交流を活発化いたしまして、ゆとりある生活や地域の活性化を図るものであり、都市住民、農山漁村の双方にとりましてとても大きな意義がある、同時に時代の要請でもあるというふうに考えております。

 昨年七月には、都市と農山漁村の共生・対流に関する副大臣プロジェクトチームにおきまして、共生・対流の一層の推進についての提言を取りまとめたところでありまして、農林水産省といたしましても、関係省と連携しながら、提言の実現に向けて積極的に取り組んでいるところであります。

 具体的には、例えば、今ほど答弁にもありましたけれども、農家民宿における調理場の要件の緩和、これは、家族の方の調理場とそれからお客さんのための調理場と別々にしておく必要があるというものについて、一つでいいというふうに緩和をしていただきましたし、あるいは、文部科学省においてもセカンドスクールといったような仕組みを検討していただく、あるいは、経済産業省におきましては、企業において長期有給休暇をとりやすくするといったような取り組みも進めているところであります。

 先月十六日には、第十二回目となる副大臣プロジェクトチームを開催いたしまして、内閣府が昨年十一月に実施いたしました世論調査で、団塊の世代を含む五十代の二地域居住、デュアルライフでありますけれども、その願望、あるいは共生・対流への関心がほかの年代と比べて極めて高いという結果が得られたことなどを参考にいたしまして、今後の強化策を検討していくこととなったところであります。

 また、自治体あるいは企業、NPO法人などが協力をいたしまして、共生・対流に関する社会実験を行うということにいたしておりまして、オーライ!ニッポン会議あるいは経団連などと協力をいたしまして、四十四の地域あるいは企業から共生・対流の社会実験に手が挙がったところでありますが、そのうち、富山市を含む十一の地域あるいは企業で、社会実験の候補地とするということを決めたところであります。

 農林水産省といたしましても、この副大臣プロジェクトチームでの検討を踏まえながら、今後とも共生・対流の一層の推進に努めてまいる所存であります。

 とりわけ、今ほど申し上げましたけれども、二〇〇七年から三年間で団塊の世代約六百八十万人がリタイアをするという見込みになっておりまして、それらの世代のニーズにこたえていくということが政府の責任でもあるというふうに考えておりまして、しっかり取り組んでまいりたいと考えております。

村井分科員 これからも、宮腰副大臣には、ぜひ郷土の代表として、それだけではなくて、日本海側を代表する副大臣として、ますます活躍していただけることを御期待申し上げております。

 さて、次に、大臣にお聞きします。

 最近、ロハス、ライフスタイルズ・オブ・ヘルス・アンド・サステーナビリティーという、健康と持続可能な社会に配慮したライフスタイルが女性中心に広まっております。こういった世の中の流れを環境省は把握しておられますでしょうか。

小池国務大臣 ロハスでございますが、昨年、クールビズで流行語大賞をちょうだいしたんですが、そのうちのまた別の候補としてロハスがもう既に挙がっておりました。

 女性を中心に広がっているということでございますが、そもそもロハスの考え方というのは、アメリカ、特に西海岸だと思いますけれども、ここで生まれた概念として、環境に関心が高いということだけでなくて、ちゃんとその行動も伴うというような意味で広がっていると聞いております。また、民間の調査によりますと、日本人の約三割がロハス層に当たるという結果が出ているようでございまして、単に女性だけでなくて、男性にもこの考え方は広がっている。

 そういった背景を受けまして、環境に配慮した生活を求める人がふえていくということは、環境省としても、持続可能な社会を築くためにはとても重要であるという観点から、現在、第三次環境基本計画を策定中でございますけれども、そういった価値観に基づく取り組みを参考にしながら、個人が主体となって持続可能な社会の担い手となるといったような取り組みを促進していくことが必要だというふうに、そんなことも盛り込ませていただきたいと考えております。

村井分科員 また、森林・林業の担い手が減少しているという現状の中、心配されるのは、前に挙げました、えさ不足になったクマの民家への出没、自然災害の原因にもなるということです。林野庁として、森林・林業担い手対策についてどのような施策を講じておられますでしょうか。

島田政府参考人 林業就業者の減少と高齢化が進む中で、今後、森林整備を着実に推進していくためには、担い手の確保ですとかその育成を図っていくことは、私どもも極めて重要な課題だというふうに考えているところでございます。

 こうしたことから、平成十四年度の補正予算からでございますけれども、現地で実践的な研修を行っていくというような内容となっております緑の雇用担い手育成対策事業というものを実施しておりまして、担い手の確保や育成に積極的に取り組んでいるところでございます。

 また、平成十八年度予算案におきましては、現行の緑の雇用育成対策事業に引き続く新しい事業といたしまして、若者などを対象に、林業就業に必要な技術に関する研修を行うとともに、あわせて、かかり木の処理ですとか、そういうより高度な技術に関する研修を行っていく緑の雇用担い手対策事業というものを実施することといたしております。

 今後とも、森林整備を担う林業就業者の確保、また育成を図るため、本事業等を着実に推進してまいりたいというふうに考えているところでございます。

    〔主査退席、山本(公)主査代理着席〕

村井分科員 また、環境保全でも重要である森林ですが、環境教育の中でどのような施策を講じておられますでしょうか。

島田政府参考人 地球温暖化防止を初めとする森林の多面的機能に対する国民の皆さんの理解を深めまして、国民参加の森づくりを推進していくためには、森林環境教育の機会をできるだけ多くの国民の皆さんに提供していくことが私ども重要であるというふうに考えております。

 こうしたことのために、体験学習の場となる多様な森林や施設の整備、また、関係省庁との連携によります子供たちのさまざまな森林体験活動への支援ですとか、学校林の整備、活用の推進、そして全国シンポジウムの開催等による普及啓発などの施策を講じてきたところでございます。

 今後とも、環境省や文部科学省など関係省庁とも十分に連携を図りながら、森林環境教育の推進に努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

村井分科員 最後に御質問申し上げます。

 多くの希少生物の生息するところでもある里地里山、そういった生き物すべてが生息する空間を守り、生き物と人間が共生する環境をつくっていくのが私たち人類の使命であると考えます。里地里山保全に対する広報活動及び環境教育に積極的に取り組むべきと考えますが、いかがでしょうか。江田環境副大臣にお聞きします。

江田副大臣 私の郷土、九州・熊本もまた多くの里地里山を有しておりまして、人々の生活の場、また環境保全の場として非常に重要であると考えております。

 里地里山は、農林業などにかかわる方々が長年にわたってつくり上げてきていただいたことによって特有の環境が維持形成されてきたところでございます。それは、身近な野生生物の宝庫であり、また生物多様性の保全上、さらには身近な自然との触れ合いの場として大変重要であると認識しております。

 里地里山は、人間に活用されることを通じて維持されてまいりました。このため、環境省では、平成十六年度から、全国四カ所のモデル地域で、地元自治体、住民、NPO、専門家や農林水産省、国土交通省と連携をしまして、農林業のほか、環境学習の場としての活用に向けた里地里山保全再生モデル事業を実施しております。

 また、全国各地の里地里山を含む国立公園におきましても、小中学生などの子供たちを対象に、自然環境の復元、維持活動等を行うことによりまして、自然との触れ合いを推進し、自然環境の大切さを学ぶ機会を提供する子どもパークレンジャー事業を文部科学省と連携して取り組ませていただいているところでございます。

 こうした取り組みを積極的に推進して、その成果を全国に発信することによりまして、この里地里山の保全を、さらには人間と自然が共生する社会を構築してまいりたい、そのように考えております。

村井分科員 それでは質問を終わらせていただきますが、最後に、今回、環境委員会で付託される容器包装リサイクル法をめぐっては、拡大生産者責任を主張する民主党と、そうでない環境省との間で、非常に激しいバトルが想定されるわけでございます。そこは我々も必死の思いで我が方の主張、そして地球環境を守るための主張を繰り返していくことを宣言するとともに、ただ、こういった里山の問題、そういった問題はやはり政党の違いで争う問題ではありません。小池大臣がますます活躍されること、そして江田さん、竹下さんの今後のますますの活躍も期待するとともに、もちろん我が郷土の誇りであります副大臣とも連携をしながら、しっかりと里地里山対策を進めていきたいと思います。今後ともよろしくお願いします。

 ありがとうございました。

山本(公)主査代理 これにて村井宗明君の質疑は終了いたしました。

 次に、松本大輔君。

松本(大)分科員 民主党の松本大輔です。

 本日は、私の地元で行われようとしております林道建設問題について、環境省、それから林野庁の見解をお伺いしたいと思います。

 お手元に資料一として配付させていただきました。ここに地図と写真をつけてございます。

 このようにブナの生い茂る美しい渓畔林のそばを林道が通る予定でございまして、この緑資源幹線林道大朝鹿野線戸河内―吉和区間、二軒小屋―吉和西工事区間、ちょっと長い名前なんですけれども、この計画の概要について、まずは林野庁の方からお伺いしたいと思います。これは事務方で結構でございますので、概要を教えてください。

島田政府参考人 二軒小屋―吉和西工事区間につきましては、中国山地南側の森林地域を東西に結ぶ大朝鹿野線の一部を構成している戸河内―吉和区間の一工事区間でございます。

 当該工事区間につきましては、現行の計画では延長十四・四キロメートルでございまして、ここの区間については、現在未着工でございます。

 緑資源機構におきましては、現在、林道事業実施計画の変更手続を進めております。この変更計画案におきましては、当該工事区間は延長十三・二キロメートルというような計画になっているところでございます。

 林道事業実施計画におきましては、区間ごとに事業費を定めておりまして、変更計画案における戸河内―吉和区間の事業費につきましては百六億円でございます。平成十六年度末現在の実績につきましては、その事業費については七十七億円、残事業二十九億円というような状況になっているところでございます。

松本(大)分科員 これはたしか、計画されたのは三十年以上前のお話だと思います。ここに総事業費百六億もかけて行う意味があるのか、このカビ臭い計画に果たしてそれだけの意味があるのかというお話は、二時間後に農水大臣とやりとりをさせていただく予定でございますので、その話はその場に譲りまして、この時間はもう一点の環境負荷の面に着目して質疑を進めていきたいと思います。

 この林道計画は、平成十二年の林野庁の事業再評価において、環境保全に十分配慮して工事を行うようにという注文がついております。そこで、緑資源機構、実施主体でございますが、ここが環境保全調査検討委員会というものを始めて、昨年の十一月に報告書が取りまとめられました。私も、全九回の委員会のうちの六回を傍聴させていただきました。

 結局、環境の専門家から成る五人の委員のうちのお二人から、ざっくり申し上げれば、反対と反対に近い立場からの意見書が、異例の意見書が提出をされて、事前の環境調査が不十分であるということ、それから、全員一致の結審ではないというような問題点が指摘をされたところでございます。

 お手元に、参考として、資料二でございますが、その報告書が公表されたときの新聞記事をおつけしております。

 もう一度部長にお伺いしたいんですが、この環境保全調査報告書と意見書の概要について、できるだけ簡潔にお答えをいただけませんでしょうか。

島田政府参考人 緑資源機構が設置いたしました環境保全調査検討委員会が取りまとめました環境保全調査報告書におきましては、環境保全に配慮した工種、工法の採用や、杉人工林の間伐による針広混交林への誘導などの環境保全措置を講ずることにより、事業による影響の回避、低減等が図られることが期待できるというようにしているところでございます。

 一方、同報告書では、一部の動植物の生息、生育の状況が十分に把握できなかった項目ですとか、両生類の移動路など保全措置の効果などに係る知見が必ずしも十分得られていない項目などが含まれているため、事業を実施する場合に当たっては、事業の実施が環境に及ぼす影響を十分に把握し、自然環境の保全のための措置の効果等を確認する環境保全フォローアップ調査を行うことにより、環境に及ぼす影響の一層の回避、低減を図っていく必要があると取りまとめているところでございます。

 また、この報告書とは別に、二人の委員の方から、野生生物に対するさらなる調査の必要性、林道整備後の適切な管理の必要性などを内容とする意見書が提出されております。報告書とあわせてこれらについては公開されていると承知をしているところでございます。

 緑資源機構におきましては、事業の実施に当たりまして、環境保全調査報告書を踏まえ、二人の委員の方の意見も参考にしつつ、必要な保全措置等を適切に講じていく考えであるというふうに聞いているところでございます。

松本(大)分科員 今部長からは、知見が必ずしも十分に得られていないというような、穏当な表現もあったんですが、意見書を見る限りは、全員一致での結審ではない、これは繰り返しになりますが、細見谷の自然を正しく評価できていない、かなり手厳しい表現が盛り込まれているというふうに私は理解をしております。

 きょうは環境保護の責任者である大臣にお越しをいただいておりますので、通告どおり、ぜひこの報告書と意見書についての大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

小池国務大臣 きょうお取り上げになっている点でございますが、その前に、アセス法、環境影響評価法は、平成十一年六月の施行でございますけれども、それ以前に着工されているものには遡及されないということについては御承知だと思います。と同時に、このアセスというのは、基本的に事業者が責任を持って行うということになっております。事業者が自主的に環境保全調査を行うということでございます。

 それから、先ほど御報告ありました意見書でございますけれども、この内容については今読ませていただいているわけですが、ただ、環境大臣として今ここで何が言えるかというと、やはりどうしても一般論になってしまうんですが、それを承知の上でお答えをさせていただこうと思います。

 やはり、地域地域にはそれぞれ特性がございますので、事業者が、貴重な動植物であるとか、生態系の保全をする、自然環境に対する適切な配慮が行われることが望ましい、これが一般論であり、また原則論であると考えております。

松本(大)分科員 一般論とお断りをいただいて御答弁いただいてありがとうございました。

 環境アセス法にのっとっていないということは百も承知の上なんですが、教科書どおり、ぴったりはまってくる、該当箇所があるものについては何も大臣の見解を求める必要はないわけで、官僚の方に処理をしていただければいいわけですけれども、このように、マニュアル等、前例がない、正解がないという分野だからこそ、こういう時間を利用して政治家としての見解をお伺いできることが非常に有意義であるというふうに私は思っております。

 地域の特性に応じて適切な取り組みを行ってほしいという一般論でお答えをいただいたんですが、きょうは宮腰農水副大臣にもお越しをいただいておりますので、ぜひ副大臣にもお伺いしたいんですが。

 子供たちに豊かな自然を残していくためにも、林道の建設工事に着手する前に、こういった意見書にも盛り込まれておりますとおり十分な環境調査、追加調査を実施すべきだというふうに私は考えますが、副大臣の御見解をお聞かせください。

宮腰副大臣 今ほど環境大臣の方からも話がありましたけれども、今行っております、緑資源機構が自主的に実施しております環境保全調査、あるいは環境保全のフォローアップ調査、この二つがあるわけでありますけれども、環境保全調査につきましては、工事に先立ち実施されるということでありまして、事業の実施が環境に及ぼす影響を予測評価し、自然環境保全のための措置を検討するために実施をしたものであります。

 それから、環境保全フォローアップ調査、これは、環境保全調査の結果を踏まえ、この調査報告書において予測された事項の検証を行うということとともに、自然環境のために講じた措置の効果等を確認する調査であります。これからこの環境保全フォローアップ調査について、既に報告書が出されております環境保全調査報告書に示されている調査案を勘案いたしまして、必要に応じて適切な措置を講じていくために行われることになるということであります。

 委員も環境保全調査のための委員会に数回にわたって御出席をされたというふうに伺っておりますけれども、私どもといたしましては、専門的かつ学術的な知見を有する第三者の委員によりましてさまざまな角度から検討された報告書、これについて、緑資源機構が今後の事業の実施に当たり、その報告書を踏まえて、必要な環境保全措置を講じつつ適切に事業が実施されるというふうに考えております。

松本(大)分科員 私は、このフォローアップ調査というのは、事後的な検証というふうに、何か一見聞こえのよさそうな、耳ざわりのよさそうな名前がついているんですが、その実は、環境アセスというか、本来事前に評価しなければいけないものを、実態上は先にまず工事をしちゃって、本来必要だった事前の調査を後に先送りしてしまうというものになってしまうのではないかなという懸念をぬぐい去れないわけなんですね。

 本来環境アセスは事前評価でないとだめだということは釈迦に説法だと思いますけれども、実際そういった懸念があるからこそ、お手元にお配りした資料四の意見書において、例えば、お一人目の波田教授のところでは、二枚目になりますが、三番、「モニタリングおよびフォローアップ調査」のところで、「現時点における調査資料ではモニタリングの開始時点のデータとしては不十分なものである。」というふうにおっしゃっておりますし、もう一方、鳥居先生、この方は、三つ目のパラグラフの真ん中の辺、ちょっと下線を引くのを忘れました。「工事の影響を鮮明にするためには、着工前にファウナとフローラは明らかにされる必要がある。」動物相と植物相は明らかにしていく必要があるんだというふうにおっしゃっているわけであります。

 これは、フォローアップ調査をすればいいということではなくて、あくまでも、着工前にモニタリングの基礎データが今不足しているんだから追加の事前調査をしっかりやってくださいねという意見書だというふうに私は理解をしておりまして、そういったことが行われなければ、安易に、拙速に工事に入ってしまえば、取り返しのつかないことになってしまうのではないか、かけがえのない自然が失われてしまう可能性が高いのではないかという点をぜひ副大臣にも御理解をいただきたいし、その点についてどのように思っていらっしゃるのかということをお伺いしようとしたわけでございます。

 ちょっと具体的に聞いてみたいと思うんです。これは森林部長で結構ですので。

 このフォローアップ調査と事前調査の間には明確な線引きがなければならないと思うんですね。モニタリングの出発点としてのデータが不足しているというふうに委員の先生方はおっしゃっているわけですから、これはフォローアップ調査に回せるけれども、これは事前に着工前に追加調査としてやらなければならない、その線引きが明確でなければならないと思うんですが、その基準について端的にお答えをいただけますでしょうか。

島田政府参考人 環境保全調査と環境保全フォローアップ調査につきましては、いずれのものも緑資源機構が自主的に実施する調査でございます。

 環境保全調査につきましては、工事に先立ちまして実施されたものでございまして、その実施が環境に及ぼす影響を予測、評価をする、そして自然環境保全のための措置を検討するというための調査でございます。

 そして、環境保全フォローアップ調査の部分につきましては、環境保全調査の結果を踏まえまして環境保全調査報告書において予測された事項がございますけれども、そういう事項がどういうふうにしてなってきているのかということの検証を行いますとともに、自然環境の保全のために講じましたいろいろな措置がどのような効果を持ったのかというようなことを確認する調査というようなことになっているところでございます。

 両調査の調査内容の仕分けにつきましては、環境保全調査検討委員会において、環境保全調査報告書を取りまとめる過程で整理をされたものだというふうにして聞いているところでございます。

松本(大)分科員 さらに具体的なケースで聞いてみたいと思うんです。

 例えば、何度も取り上げますけれども、この意見書において事前調査が不十分とされたツキノワグマ、先ほどの時間帯にも獣害、鳥害として取り上げられておりましたけれども、ツキノワグマやあるいは水生動物の生息状況調査、これらについてはフォローアップ調査に盛り込まれているんでしょうか、それとも事前に行われるんでしょうか。お答えください。

島田政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいまのツキノワグマなどの関係につきましては、事業の実施により影響を及ぼすおそれがあると予測された事項の検証として、環境保全フォローアップ調査におきまして対象とされている項目になっております。

松本(大)分科員 実はもう資料五として皆さんのお手元にもお配りをしてございますが、ツキノワグマやクマタカ、こういった動物あるいは水生動物、こういったものについてはフォローアップ調査に盛り込まれているということなんですけれども、本来こういった保護の要請の度合いの非常に高い希少動物については、まず現状の把握を行わなければ、果たして当該林道工事が悪影響を与えたのかどうか、事後的な検証、フォローアップ調査というのはできないはずなんですね。だからこそ、ここは本来事前に着工前に評価をしておかなければならない、その調査が不十分であるという指摘を何度も委員の先生方が行っていらっしゃったにもかかわらず、結局はこのフォローアップ調査というもので先送りをされているというのが私の実感であります。

 先ほど、クマの被害のことについて話がありましたけれども、要するに、クマの生息状況についてきちんと調べておかないで、ここに林道を通してしまって、人と接触する機会がふえてしまって、クマによる被害が惹起される可能性というのがあるわけですね。だからこそ、ここに本当に林道を通して車の交通量をふやすことがいいのかどうかをちゃんと事前に評価しておかなければいけないのに、それがこういうフォローアップ調査という、一見耳ざわりのいい名前で事実上先送りをされてしまっているというのは、これは環境アセスの、立法趣旨というか、法の精神を没却してしまうものではないかというふうに私は思いますし、これはゆゆしき問題だというふうに考えるんですが、環境大臣のこのことについての御見解をお願いしたいと思います。

小池国務大臣 先ほど来の質疑応答を拝聴させていただいているわけでございます。これも原則論、一般論ではございますけれども、環境影響評価法、アセス法に基づいての環境影響評価の場合でございますが、事業者がみずからの事業の実施に伴う環境への影響について、事前に調査、予測そして評価を行うわけであります。ただ、予測の不確実性が大きいという場合には、工事着手後に事後調査を実施すること、このこともあわせてお答えをしておきたいと思います。

松本(大)分科員 予測の不確実性が大きいというのは、十分に調べられた上のことであれば、まだどうかよくわからないなというのはわかるんですが、こうして五人の委員のうちのお二人が、そもそもデータが不足しているんだ、調査自体が不足しているんだとおっしゃっている段階では、そもそも調査の不確実性というものを論ずる以前の段階ではないかというふうに私は思います。

 不十分だと専門家御自身が指摘されている事前調査を先送りして林道工事に着手して、自然環境を破壊してしまう可能性を残すということは、私は非常に問題があると思うんですが、環境大臣は問題なしというふうに考えていらっしゃるという御答弁になったということでしょうか。

小池国務大臣 個々のことにつきましては、やはりみずからの調査を行った方々が一番お詳しいわけでございますけれども、事業の実施に際しては、やはり何といっても地域の特性が守られるのかということを、適切に調査を行って、そして環境配慮を行うということが望ましいというのは言うまでもないことだと思います。また、それに尽きるのではないかと思っております。

松本(大)分科員 農水副大臣にもあわせてお伺いしたいと思います。

 先ほどの時間の中でも、村井さんの質疑の中でも、ツキノワグマのお話、出ておりましたけれども、こういった十分な事前調査をしないことで、後々リスクを残してしまうというような形で林道建設に着手をすべきではない。逆に言えば、十分な追加事前調査を行わない限りは林道建設工事に着手すべきではない。それは、ツキノワグマが人に被害をもたらさないようにという観点からも、私はそのようにすべきだというふうに思うんですが、クマ被害について造詣の深い副大臣の御見解をお願いします。

宮腰副大臣 クマ被害については、先ほどの村井先生の方がよっぽど造詣が深いんだと思います。

 調査のことでありますけれども、先ほど、着工時期が、アセス、環境影響評価法の施行前に着工されていたということで、法的に申しますとアセスの対象とはなっていない事業であります。さらには、今事務方にも確認いたしましたけれども、事業規模の点においてもアセスの対象とならない事業であるというふうに聞いております。

 しかしながら、委員御指摘のように、ツキノワグマでありますとか、それからクマタカでありますとかニホンカワネズミ、ヒダサンショウウオ、ニホンヒキガエル等に影響を及ぼすおそれがあると予測されたというような環境保全報告書が提出をされておりますので、事業の実施に当たりましては、これらの指摘を踏まえまして、極力この影響を緩和していく、与えないようにしていくという前提でこの工事を進めさせていただきたいと思っておりますし、また、自主的な調査として、環境保全フォローアップ調査、これもしっかりとやってまいりたいというふうに考えております。

松本(大)分科員 どうしても、追加の事前調査を行うということをどなたからもおっしゃっていただけないのは非常に残念なんですけれども。

 本件についての問題というのは、まず、環境に十分配慮して工事をしなさいという期中評価が行われた結果、環境保全調査検討委員会というものが組織をされて、専門家が集まったのにもかかわらず、実は五人中二人が意見書を出された。全会一致ではないという形で議論が打ち切られてしまったということがまず第一点ですね。

 それから、第二点目としては、今申し上げたように、モニタリングを行う前段階のデータが余りにも不足しているじゃないかという指摘が、委員の少なくともお二人の先生からは行われていて、にもかかわらず、着工ありきの姿勢でどんどんこの林道工事が進められようとしている。本来事前に行われなければならない調査が、工事をまずやっちゃってから、工事やりながらでいいじゃないかという形で先送りをされてしまった。環境アセスの趣旨が、まあこれは環境アセス法にはのっとっていないわけですけれども、環境保護の要請が非常に高いというふうに期中評価で下された事業なわけですから、そこはやはりその精神を酌み取っていくべきではないかというふうに思います。

 三つ目の問題点についてお話を進めたいと思うんです。この林道事業については、環境に対する影響評価、この事前調査が不十分という問題もさることながら、もう一点。

 この報告書について、林道完成後、移管先となる自治体を果たして拘束し得るのかという点について、委員の先生方から何度も懸念の声が上がっておりました。九回にわたって、一年半にもわたって、これだけ一生懸命議論をしてきた、何とか環境への影響を緩和しようと一生懸命議論をしてきた、でも、一たんつくられてしまって移管をされた後は、果たして地元の自治体はその環境保全措置を遵守してくれるのかどうか、そこの担保が全くないじゃないか、こういうお話でございます。

 そこで、副大臣にお伺いをしたいんですが、地元移管後、環境の専門家の方々が承認をされたこの報告書にある環境保全措置というのは効力を持ち続けるんでしょうか。

    〔山本(公)主査代理退席、主査着席〕

宮腰副大臣 緑資源幹線林道、これは全般を通じまして、地元移管後も適切な管理が進められることが重要と考えております。

 本工事区間につきましては、まず、緑資源機構において、戸河内―吉和区間の管理者として予定されております廿日市市、安芸太田町など地元関係者に対しまして、環境保全調査検討委員会における検討経過及び同委員会において取りまとめられた環境保全調査報告書の内容について、十分説明に努めてきたこと、それから、戸河内―吉和区間の一部については、環境保全報告書を踏まえ、環境保全に関する必要な措置を講ずることとする旨を盛り込んだ林道事業実施計画の変更案について、地元自治体から特に意見はなかったこと、今後、緑資源機構において、林道管理者として予定されております地元自治体との連絡調整を図りつつ、環境保全フォローアップ調査を通じて、完成後の林道の適切な管理について、留意すべき事項などについて取りまとめていく予定と聞いていることなどから、農林水産省といたしましては、地元移管後も環境保全調査報告書を踏まえて適切な管理がなされることが十分期待できるものと考えております。

松本(大)分科員 期待できるということなんですけれども、この意見書を何度も引き合いに出して恐縮なんですが、委員の先生方が、例えば、資料四の二枚目「五、完成後の管理」のところ、下線引きました、「現時点における廿日市市の管理項目の受諾意思表明が必要である。」もうお一方の先生は、鳥居先生の方ですが、一番最後ですね、「管理移管される地方自治体に踏襲されるということが担保されていない。この担保を着工の条件とすべきと考える。」ということでありまして、期待できるということではなくて、むしろ確約をしてほしいというニュアンスで、意思表示をしてほしい、はっきりと向こうの意思表示を確認してほしいということをおっしゃっていらっしゃるわけですね。この点については、何か交渉等で確認はされているんでしょうか。

宮腰副大臣 この事業については、先ほど申し上げましたとおり、緑資源幹線林道全般を通じて、この地元移管後も適切な管理が進められることが重要と考えておりますけれども、移管するということは、これは事業着工の条件といいますか、ルールになっているわけでありまして、その移管の際に地元の自治体からいろいろな御意見、要望等も承っているわけでありますけれども、私どもといたしましては、この幹線林道の完成後も、環境保全調査報告書を踏まえまして適切な環境保全措置がとられるように、緑資源機構と地元自治体が十分連絡調整を図るよう要請していくという考えであります。

松本(大)分科員 しつこいようですが、もう一問聞かせてください。

 移管先である廿日市市という自治体ですけれども、この自治体がこの保全措置を遵守するんだということが担保されない限り、林野庁として、農水省として、緑資源機構の建設工事には着手させるべきではないというふうに考えますが、この点について、農水副大臣、環境大臣、お二方の御見解をいただきたいと思います。

宮腰副大臣 一昨年の十二月二十一日付で広島県の廿日市市長から、環境保全調査報告書素案に関する意見について、これはおととしの十二月の時点でありますけれども、この意見が緑資源機構あてに出されております。この中で「本市、吉和地域における、林業の振興また森林資源の有効活用を図るためには、本林道の整備は急務となっており一日も早い完成を望んでおります。」という前文の後で、「工種、工法の選定に当たっては、環境への負荷の軽減を図ることは重要でありますが、後年度に於いて維持管理経費負担を伴わない耐久性のある工法での整備を要望します。」というふうになっております。

 一方で環境保全の必要性、一方で維持管理経費が安くなるように耐久性のある工法でお願いしますといったような、二律背反的な、大変難しい要請が来ているわけであります。

 私どもとしては、やはり環境にしっかり配慮をした工法でもってやっていく、同時に、できる限り後年度負担が伴わないようにやっていく、それを何とか二つ満たしたような形で進めていくことが必要であるというふうに思っておりまして、その点、緑資源機構と地元自治体の間でしっかりと調整が進むように指導してまいりたいというふうに考えております。

玉沢主査 制限時間が来ましたが、大臣、答弁しますか。(小池国務大臣「はい」と呼ぶ)小池大臣。

小池国務大臣 ただいまの副大臣のお考えがベースになるものと考えます。

松本(大)分科員 終わります。

玉沢主査 これにて松本大輔君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして環境省所管についての質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

玉沢主査 農林水産省所管について、政府から説明を聴取いたします。中川農林水産大臣。

中川国務大臣 おはようございます。

 平成十八年度農林水産予算の概要を御説明申し上げます。

 初めに、予算の基礎となっている農林水産施策の基本方針について御説明申し上げます。

 農林水産業、農山漁村は、食料の安定供給を初め、国民の命や暮らしの基盤をなす重要な役割を担っています。このような農林水産業、農山漁村ですが、内外の諸情勢の変化の中で、大変な転換点を迎えております。

 こうした折、私は農林水産大臣に就任し、農林水産行政を進めていく際の取り組み姿勢と優先的に取り組むべき重要課題を「Do! our BEST」として取りまとめました。お客様に買ってもらえる、よいものをつくり、供給するという意識改革を進め、関係者とのチームワークを大切にしながら、施策全般にわたる改革を大胆に実行いたします。

 次に、十八年度農林水産予算について、その枠組みから御説明いたします。

 平成十八年度一般会計予算における農林水産予算の額は、関係府省計上分を含めて、二兆八千三百十億円となっております。その内訳は、公共事業費が一兆二千六百十七億円、非公共事業費が一兆五千六百九十二億円となっております。

 平成十八年度の農林水産予算は、担い手の育成、確保を初めとする農業構造改革の推進、食料の供給・消費システムの改革の推進、地域資源を生かした農村の活性化を図るとともに、京都議定書の目標達成に向けた森林吸収源対策の着実かつ総合的な推進や構造改革の推進を通じた我が国の水産業と漁村の再生を進める観点から、重点施策に思い切った予算配分を行うなど、新たな政策展開が図られるよう編成いたしました。

 以下、農林水産予算の重点事項につきましては、委員各位のお許しをいただきまして、御説明を省略させていただきたいと存じます。

 よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。

玉沢主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま中川農林水産大臣から申し出がありました農林水産省関係予算の重点事項の説明につきましては、これを省略して、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

玉沢主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

玉沢主査 以上をもちまして農林水産省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

玉沢主査 質疑に入るに先立ちまして、政府当局に申し上げます。

 質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小野次郎君。

小野(次)分科員 おはようございます。小野次郎でございます。まだ国会議員になりまして半年、こういう委員会で質問するのも二度目でございます。

 前回は、前の特別国会でございましたけれども、十月十九日に農水委員会で最初の質問をさせていただきました。そのときは前大臣だったわけでございますけれども、そのときも米国産輸入牛肉の話を質問させていただきました。今回こういう機会を得ましたので、きょうもまた米国産輸入牛肉の問題を質問させていただきます。

 と申しますのは、十月に質問申し上げたときには、年内にも輸入が再開されるだろうという見通しは一般的にも持っていましたし、私自身も当然視野に入れて質問させていただいたわけでございますが、その後、御存じのとおりの経過で、一たん再開された輸入がこういう経緯でまたとまってしまっている。そこまでは、はっきり言って、十月の質問の段階ではこういう事態の展開があるだろうとは想像できなかったわけでございますが、それだけに、私としては、再度の農水大臣に質問できる機会でございますので、改めて輸入牛肉の問題を質問させていただこうと思います。

 まず第一に、今般米国政府から提出されました米国産牛肉問題に関する報告書でございますが、大変分厚いものだというふうに聞いておりますけれども、その分析と公表というのは速やかになされるべきだというふうに思います。この作業の進捗状況と、時間的、時期的なめどにつきまして、お伺いしたいと思います。

中川政府参考人 報告書の公表に関してのお尋ねでございますが、現在、厚生労働省等関係省庁と連携をしながら、私ども鋭意その作業を進めているところでございます。専門的な内容が多いということのほかに、これはかなり膨大な附属資料がございまして、それとの照合などに時間を要しているところでございまして、もうしばらく時間が必要かというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、しっかりとした内容のものをできるだけ早く公表するように、私ども今努力をしているところでございます。

 この公表を待ちまして、米国への照会、協議など今後の対応につきましては、この報告書の中身をよく踏まえまして、そして検討していきたいというふうに思っております。

小野(次)分科員 作業がまだ公表できる段階まで達していないという御説明でございますけれども、既に報道あるいは現地サイドからもいろいろな情報が伝わっておりまして、それによれば、今回、脊柱つきの牛肉が我が国に輸入された原因の一つとして、米国農務省の検査官が、十分な研修を受けていなくて、日本向けの輸出条件そのものを熟知していなかったためじゃないかというふうに言われておりますが、そのような事実はもう既に耳に入っているのでございましょうか。その点を伺いたいと思います。

松本政府参考人 米国側の報告書の要旨におきまして、今回の事案の原因といたしまして、本件は輸出業者及び農務省検査官が日本へ輸出可能な特定の製品を熟知していなかったためであると判明したこと、問題の施設を担当した食品安全検査局の検査官が農業マーケティング局の輸出証明プログラムについて十分認識しておらず、日本向け輸出に不適格な製品の出荷を認可及び承認すべきでなかったということも明らかになったということ、一方で、輸出証明プログラムのもとで今回が最初で唯一の子牛肉の出荷であることから、不適格な出荷の経緯は例外的なケースであるという判断に確信を持っているということ等について、その報告書の要旨に記述があるということは承知しております。

 報告書の内容につきましては、現在、農林水産省と連携いたしまして、疑問点の整理を含めまして、精査しているところであります。御指摘の点も含めまして、今後、米国政府に内容について確認することとしたいと考えております。

小野(次)分科員 私は国会議員になる前、公務員生活を二十九年半続けてまいりました。特に、属していたところが警察というところでございまして、警察というところは人でできている役所でございます。多くの人に、ある考え方、ある基準というもので同じように事務を執行してもらう、これを徹底するというのは、極めて大切なんだけれども、最も難しい問題だという気がいたします。

 今の点についてでございますが、そういう熟知されていなかった可能性があるということが前提になれば、これからの再開に向けての米側とのさらなる詰め、協議が必要だと思いますけれども、その際には、机の上で、こういう仕組みで検査するんだということで、それなら合理的だなというような、机上のスキームの検討では足りないんだろうと思います。

 また、人が動かしていない施設みたいな、あるいは設備みたいなものを見て、これでこうやってこうやっていくんです、ああ、なるほどという施設や設備のチェックでも十分じゃないんだろうと思います。要は、もし、それに携わる現場関係者の教育、訓練、知識、そういうものが問題だとするならば、そういった現場関係者に対する周知や教育訓練が最大の問題になってくるんじゃないかと思います。

 それはまた、先ほど僕が申し上げたように、人間が十人いて、十人とも同じようにやってくれるかどうかというのは、極めてこれは大変なチェック、念には念を入れた検査というか検証をしないといけない問題だと思うんですが、そういう認識をお持ちかどうか、お伺いしたいと思います。

松本政府参考人 米国側の報告書の要旨におきましては、再発防止策として、対日輸出施設に常駐する検査責任者に対する研修の実施、また、対日輸出施設の最高経営責任者等と米国農務省との会合の開催、米国農務省食品安全検査局と農業販売促進局との連携強化等について記述があることは承知しております。

 これらにつきましては、既に実施されているとされている対策もございますが、今回の報告書で初めて盛り込まれたものもありまして、こうした再発防止策によりまして、輸出プログラムが適切に遵守されるか否かということにつきましては、報告書を十分に精査していく中で検討していきたいと考えておりますし、議員御指摘の、検証のあり方ということについても、精査の中で具体的にどのようにしていくかということについても検討してまいりたいと考えております。

小野(次)分科員 いずれにいたしましても、今回の件で、日本の消費者には米国の検査体制に対する不信感というものが広がっているように思います。

 輸入を今後いずれの日か再開する場合には、落ち込んでしまっている信頼の回復のために、ずっととは言いませんけれども、一定期間でも日本向け牛肉輸出施設に日本の検査官を常駐させて、脊柱等の特定危険部位の除去などが適切に実施されているか直接に検査する体制をとることも必要じゃないかと私は思うんですが、それについてのお考えを伺いたいと思います。

松本政府参考人 二国間の合意事項による輸出食品の衛生管理につきましては、輸出国政府が確保するということが国際的なルールとして一般的であると承知しております。米国産牛肉の安全確保につきましては、日米間で合意した対日輸出プログラムの遵守が必要であり、このプログラムは、輸出国であります米国政府の責任で遵守されるべきものであるというぐあいに考えております。

 今後の輸出プログラムの実効性を確保するための措置のあり方につきましては、消費者の信頼回復を図るということが一番大事でございますので、そのようなことができるよう、的確に対応してまいりたいと考えております。

 なお、議員御提案のありました輸出国に常駐する検査官を置くべきとの御提案でございますけれども、現行の輸入国と輸出国との責任分担という観点からは、慎重な検討が必要ではないかと考えております。

 厚生労働省といたしましては、基本的には、日米協議を踏まえた現地調査を機動的に行うというようなことで対応してまいりたいというぐあいに考えております。

小野(次)分科員 今のお答えは、常駐させることが難しい理由は、主としてアメリカ側との関係でということですか、それとも、日本政府の側として、例えば体制を組むだけの経費とか人的な余裕がないからという、どちらの方に重点があるのでしょうか。もう一度そこだけ明らかにしていただきたいと思います。

松本政府参考人 基本的には、こういう二国間の合意に基づく輸出国の衛生管理というのは、輸出国の政府が確保するということが国際的なルールでございますので、そういう観点から、まずは米国政府が責任を持っていただく、そういうことでございます。

小野(次)分科員 その点はちょっととりあえず承っておきますが、次に、米国産牛肉の月齢の確認というのは、言うまでもないですけれども、A40の格付による方法と生産記録による方法とがあるわけでございます。日本の消費者がこれを選択できるように、国内での小売段階に至るまで月齢の判定方法を表示させるということはできないのか、お伺いしたいと思います。

中川政府参考人 二十カ月齢以下という日米間で合意をしました条件をどう担保するかということは、今先生がおっしゃいましたように二つの方法がございますが、その中で、いわゆる成熟度、マチュリティーを用いる方法につきましては、いろいろ議論もございました。それで、日本の専門家の方々、六人によります月齢判別検討会などでの検討も踏まえて、このA40という方法も月齢確認をする上で十分信頼度の高いものである、そういう結論をいただいたわけでございます。

 したがいまして、生産記録にしろA40という成熟度を使うにしろ、そういう意味で二十カ月齢以下ということを判別するという意味におきましては、特別差がない、つまり安全性において差のない判別方法だということになっておりますので、これを、どちらかということを仕組みの上で表示を義務づけることは難しいというふうに思っております。

 ただ、民間ベースで、自分のところはアメリカの企業との間で、こういうふうな形でやってほしい、民間ベースの契約の中でそういう差別化を図ることは可能ではないかというふうに思っております。

小野(次)分科員 どういう場でだか忘れましたけれども、中川局長に同じ質問をして同じお答えをいただいた記憶があるのですけれども、しかし、消費者の側からすれば、それをAで選ぶかBで選ぶかも消費者の本来自由であるはずなんで、AであるかBであるかという、そのA40の格付による方法なのか、生産記録による方法なのか、それぐらいは消費者に、サービスというのじゃないんですけれども、知らせていただいて、そこで消費者が選べるようにするというのも合理的な仕組みじゃないかなと思うんですが、もう一度その点をお伺いしたいと思います。

中川政府参考人 おっしゃるように、消費者の方のニーズにこたえて、商売上、取引上、いろいろ民間ベースの創意工夫の中でそういうことに取り組まれるということは、大変評価すべき取り組みだというふうに思っておりますけれども、安全性において差がない事柄について、その区別を表示として義務づけるという点につきましては、やはり義務をつけるということは違反をした場合には一定のペナルティーを科すことにもなりますし、そこまでこの点について仕組みをつくるということはなかなか困難であるというふうに思っております。

小野(次)分科員 二月の八日に、これは委員としてというよりも、八三会という前回の総選挙で受かりました自民党の若手代議士の集まりがあるのですが、その企画で二月八日に同僚議員とともに東京都の芝浦と場を視察してまいりました。その際にも、目視の方法で枝肉の月齢をぴたりと言い当てることは難しいという現場の声を伺ってまいりました。

 A40の格付による方法で正確に、月齢二十カ月以下である、そういう牛肉を選定できるとする合理的な根拠というものをもう一度わかりやすく教えていただきたいと思います。

中川政府参考人 一昨年の十一月から昨年の二月にかけまして、先ほど申し上げました月齢判別検討会というところで、これはアメリカ側で試験をしました約三千三百余りのサンプルで、このA40とした場合の月例の判別がどうかということを議論をいただいたわけでございます。

 その際に、何カ月かということをぴたりと当てるということは確かに難しいといたしましても、二十一カ月齢以上の牛を効率的かつ正確に判別できるかどうかという点から見ますと、このA40という基準は有効に機能する。統計的には、九九%の信頼度で一・九二%以下の確度でそれは判別ができるという結論が得られたわけでございます。

 そういうことで、このA40という仕組みを、月齢判別、二十一カ月以上か二十カ月以下かということで判別をするという意味においては、効率的だというのが専門家の方々の御意見でございました。

 それから、なおつけ加えさせていただきますけれども、今度はそのA40を判別するアメリカの検査官の技量ということも問題になるわけでございますが、既に、昨年から、格付の監督官レベル二十八名に対しまして研修を実施した。今度は、この監督官が全米で格付員をそれぞれ試験いたしまして、信頼性を確認した上で対日輸出肉の格付を行う格付官としてきちっと認定をするということもしておりまして、最近まで百六十名余の人がそういう試験を受けて、適格だというふうなことを私ども情報として得ているところでございます。

小野(次)分科員 御説明を伺っていると一応理解はできるんですけれども、今、この問題の一番根本の部分というのは、落ち込んでしまった消費者の信頼が回復されなければ、政府間で何らかの、また、納得いく説明があったからといって始めようと思っても、買ってきてだれが口に入れるんだ、買って食べるのかという問題が解決されなければ、やはり基本的にはこの問題が着地点を見出すことは難しいんだろうと思います。

 そういった意味で、科学的、あるいは理屈の面でこれでいいはずだというのではなくて、やはりもう一度消費者の信頼が回復できるような、ある意味で、いい意味であっと驚くような、国内のBSEの問題が起きたときに、全頭検査という言葉を聞いたときに、当時は議員ではありませんでしたけれども、私たち一消費者としても、あそこまでやってくれるのかというので信頼が回復したというような記憶がございます。そういう手を打たないとなかなか難しいのかなと。

 一方で、恐らく米側の方は再開はいつだろうかということを聞いてくると思いますが、日本の消費者の信頼を回復するということが、そのハードルを乗り越えられなければその先なかなかこちら側は進めないというのが現実だろうと思いますので、その辺については、農水省、厚生労働省、いろいろな役所が関係するのかもしれませんが、一層御努力いただきたいと思うわけでございます。

 米国産牛肉輸入問題については、消費者がその意味で十分な情報提供を受けるということが必要だと思うし、何よりも、納得、安心して、消費者自身が米国産の牛肉を買おうと手を伸ばすようになることが目標なんだろうと思います。

 国民の安全と安心の確保というのは、政府に第一義的な責任があるんだろうと思います。その意味では、市場で、競争の中でそういういい結果が生じるだろうとか、あるいは各個別企業の営業努力でそうやるのじゃないですかというような、そうとれるような御説明では済まないんじゃないかと私は思うわけでございます。

 体制、コスト、あるいは外交上の米側への配慮、いろいろな問題があるだろうと思いますが、そういった負担やコストの面を考慮してもなお、この食の安全に対する信頼の回復という問題は、官民でいえば、官が関与することにちゅうちょすべき問題ではない、そういう性格の問題だ、ちゅうちょすべきじゃない問題だというふうに私は思うわけでございますが、農水大臣に、この問題に対する全般的取り組み、今後の取り組みを含め、今私が申し上げた質問に対するお考えをお聞かせいただければ幸いでございます。

中川国務大臣 小野委員御指摘のとおりでございまして、約二年間かけまして、きちっとした手続、科学的なリスク評価、あるいはリスクコミュニケーションをいろいろな政府機関等がやってきて、その上で十二月十二日に輸入再開を決定したわけでございますけれども、今回、一月二十日にああいう事件が発生をいたしました。今、徹底的に、御指摘のように、文書によるやりとりだけではなくて、やるべきあらゆることをこれから日本側もやっていかなければなりませんし、当然、アメリカ側にも求めていかなければなりません。

 その上で、仮に、リスク管理の面から、再発防止あるいは原因究明について徹底的な一つの方向性が見えたとしても、御指摘のように、再開をしたとしても、消費者が買わないということであれば、要するに売れないということでございますから、アメリカ側にとっても決してこれは望むところではないというふうに私どもも思っております。

 小野委員は、まさにリスクという観点からのお仕事を長くやってこられた上での御質問でございますから、私としても大変重たいものを今感じているわけでございますけれども、再開をいたしました、リスク管理としてこれは大丈夫ですと言っても、そのリスク管理行政、これはアメリカだけではなくて、日本の場合、厚生労働省と私どもでありますけれども、リスク管理行政そのものに対する信頼がなければ、消費者の皆さんの本当の意味の消費の回復、あるいは食欲といいましょうか、買ってみよう、食べてみようという気にならないのではないかという危機感を私ども持っておりますので、そういう最終的な、単なるルールの問題、あるいは執行の問題だけではなくて、管理行政そのもの、管理機関そのものに対する信頼というものも極めて大事であるという意味で、今の御指摘に対しては、とりわけ小野委員の御経験を踏まえた上での御発言であるだけに、重たく受けとめさせていただき、そのようにできるだけやれるように最大限の努力をしたいと思います。

小野(次)分科員 前回は、質問を多くつくり過ぎまして、全部できなくて反省して、今回、ちょっと少な目にしましたら時間が余ってしまって、まだまだ未熟なものですから、同僚の杉田議員がもう座られたので、ちょっと時間が残りましたが、これで私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

玉沢主査 これにて小野次郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、杉田元司君。

杉田分科員 おはようございます。私は、自民党の愛知県十四区選出の杉田元司でございます。

 きょうは、地球温暖化に絡めまして、森林と林業の整備事業についてお伺いをさせていただきます。

 愛知県、皆様方はイメージをどうお持ちになられておられるのか、いろいろなイメージがあると思うんですが、実は、工業出荷額におきましては、もう既に三十年近く全国の都道府県の中でトップを走ってきました。これは、地元のトヨタ自動車を初めとする輸送関連、あるいは自動車関連が、長い間の支えによって今日までこの愛知県を形づくってまいりました。また一方で、農業という部門でも、全国の農業粗生産額、出荷額が大体五番目に位置している、そんな農業立県でもあります。

 自動車と農業、もう一つ、愛知県には、林業を支える山がございます。

 私は、実は、生まれ育ちましたのが、太平洋に面する、むしろ農業地帯で生まれ育ちました。愛知県の西が名古屋だとしますと、東の外れでありまして、静岡の県境に近い地域であります。

 この地域は、愛知県が農業全国五位と申し上げましたけれども、さらにこの三河という地域に限りますと、もう二十八年来、農業粗生産額が全国一位を誇ってまいりました。

 しかし、この地も、その前はいかがであったかと申しますと、貧農、大変貧しい農村地帯でありました。また、漁村も、これも収穫量の多いときもありますし、あるいは量が少ないときもあったりして、どちらかといえば貧しい漁村でありました。

 そんな中で、この三河の地域は、昭和四十三年に山から貴重な水をいただいた豊川用水が通水をいたしまして、それ以来、この地域の農業は、飛躍的な発展をするようになりました。米とかあるいは麦というものに頼らない、どちらかといえばハウスの栽培、野菜や果樹あるいは花卉といったものに特化した農業、日本一を二十八年ほど続けてまいった。

 私は、実はその農村地帯で生まれたわけでありますけれども、今回、衆議院に立候補させていただくときに、その地帯を離れまして、山の地域からこの選挙では立候補をさせていただくことになりました。

 当時、私どもは、一千万農家と言われる方々に囲まれて、非常に裕福な農業地帯。そんな中で、あるとき、山の、北設楽郡と申しますけれども、その一町長が私に申したことがあります。

 上流と下流で、君たちは下流域で大変豊かな農業にはぐくまれ、そして優雅な営み、そして豊かな生活を送っている。しかし、その陰で、我々の生活の実態を君は知っているか。私たちの地域は、あなたたちに水を供給するために山を切り開き、そしてダムをつくって、そして、何十年あるいは何百年とこの地域に住んできた村民が、あなたたちの水のために離村をし、あるいはふるさとを離れていかざるを得ない状況。そのことは、あなたが政治の中で仕事をしている限りは決して忘れてほしくない、そうした下流の協力をぜひ上流の私たちに与えてほしい。

 そんなことを言われたことが大変印象的でありましたし、まさか、よもや私がその山を背景にした地域で選挙に出させていただくとは思ってもおりませんでした。今、山々をこつこつと歩かせていただきながら、山村の、あるいは中山間地域の置かれている状況、このことを、あのときああ話してくれた、かつての町長の言葉が、今、忘れることができません。

 そして、この疲弊し切った山村を、何としてでももう一度、かつてのように人が交流をする山づくりというものを目指し、心がけていかなければいけない。そのことが政治家としての第一歩の心構えになってまいりました。

 折しも、昨年、たまたまでありますけれども、愛知県におきましては、愛・地球博、環境博覧会、万博が開催をされました。当時、経済産業大臣であられました中川現農水大臣も、所管大臣としてたびたび愛知にお越しをいただき、そのつぶさな状況を見ておられることと思います。

 小泉総理も、開会式あるいは閉幕式にもお越しをいただき、そのときの御発言が印象的でありました。環境と技術は両立できるものだ、このことを強く確信した、こんな発言をなされました。

 世界は今、地球の温暖化、あるいは山々の荒廃、そして、そうした自然を守り抜いていかなければならないという趨勢の中にあります。しかし、山の置かれた状況は、その趨勢とは裏腹に、大変苦しい状況に追い込まれております。

 かつて、山の産業といえば、建設業そして林業あるいは農業でありました。しかし、小泉構造改革の中で、公共事業等々の削減を含めて、今、山の建設業は大変疲れ切った状況の中にあります。そして、林業も、もう昭和の三十年の初めから大変疲れ切っておりましたけれども、それでも、林業の減った分の収益は、建設業でその間働かせていただいて、そして生計を立ててまいったのが今日までの山村の状況であったと思っております。

 そんな中で、これから質問に入らせていただくわけですが、万博の、先ほど環境と技術、このことは、象徴的なことがありました。

 一つは、愛知が自動車産業の県であると申し上げましたように、トヨタのロボット館、これは長蛇の列ができるほど毎日のにぎわいがありました。もう一点、その技術と全く対峙する環境、その部門で、地域材を使った、国産材を使った、ちょうど昭和三十年代の日本の一般的な木造家屋、これは平均的な木造家屋、トトロの家と申しまして、本当に手づくりの、いろりがあり、そしてまた丸テーブルが、円卓のテーブルがあり、そのトトロの家の木造住宅、そこもロボット館と同じように長蛇の列がなされました。昔を懐かしむ親たちと同時に、子供たちもそのトトロの家に行きたくて行きたくて、入場制限をかいくぐりたいぐらいに行きたくて、ということは、感じますところは、やはり、木のぬくもりや温かみや、そしてかつての日本の木造の住宅に対する、もう一度戻ってみたい、あるいはそこで生活をしてみたいという気持ちが、この万博の二つのケースの中で端的にあらわされてきたのではないかと思っております。

 そういう意味合いから、今、日本の置かれているこの木材、そして木材のこれからの考え方、そのことからまず御質問をさせていただきたいと思います。この万博を通じまして、木材の意義あるいはそのことの認識、そして、これからどうこのことを伝え、PRをしていかれるのか、まずはお伺いをさせていただきたいと思います。

川村政府参考人 お答えいたします。

 今お尋ねございました愛・地球博でございますが、随所に木材が使用されたということでございまして、例えて例示を申し上げますと、長久手会場のグローバル・ループで床材に板を使っておられましたし、また、長久手の日本館では、これは今、非常に出てきております間伐材、これをいかに活用するかということで、角材を束ねてやりました編成材、あるいは間伐材をそのまま束ねた束ね柱、こういう新しい使い方、こういうことも示された上で、展示がなされておりました。

 こういうふうに、木材というものが非常に使い道もあるし、いいものだということは、非常に展示効果としてあったと思っております。

 また、瀬戸会場に設置されましたものにつきましては、その一部を、木材部分は近隣の豊田市の新設小学校で再利用するというようなこともお聞きしております。

 そういったことは、愛・地球博のテーマでありました自然の叡智、また循環型社会の構築という意味で、木材の利用が非常に大きな意味を持つんだということを、国内だけでなくて全世界にPRできたものというふうに考えております。

 私どもも、木材利用の意義の普及ということについては、力を入れて普及してまいりたいと思っております。

中川国務大臣 今長官から答弁したとおりでございますけれども、今御指摘のように、私、担当として大変お世話になりました。一言だけ追加をさせていただきますが、あの会場をつくる前に行ったときには、豊かな自然の丘陵でございました。最小限の伐採をして施設をつくりましたけれども、終わった後はまた森に返す、この発想そのもの、これからその作業は進んでいくのでありましょうけれども、これがまさにこの地球博の一つの大きなテーマを実現している。終わった後もまた森を、自然を返す、森にするという計画だというふうに伺っておりまして、このことも私は大変大きな終わった後の一つの大事業であるというふうに評価をしております。

杉田分科員 大臣からも直接の御答弁をいただき、ありがとうございます。感激をいたしております。

 今、その後の利用、これも大事な役目で、愛知県としては力を込めて取り組んでいるさなかであります。

 地球環境にとって森林の果たす役割は大変大きなもの、このことはもうどなたも認識をされておられることと思います。そしてまた、日本の森林は、約四〇%が人工林であります。人工林というのは育てていかなければならない。それは、苗を植え、下草を刈って、間伐をして、そして木材として利用をしていく、一つの大きな循環サイクルだと思っております。木材というのはその出口かもしれませんが、そのもとは苗を植えることから、そうした一連の中で、これから木材利用についても大いに国民的な理解を賜っていかなければならないと考えております。

 そんな中で、京都議定書等におきましてもCO2の削減数値目標、いろいろなことを絡めまして、地域材の利用というのはこれから議定書の中におきましてもどのような位置づけになさっていかれるおつもりか、お伺いをさせていただきたいと思います。

川村政府参考人 京都議定書と木材なり森林の関係でございますが、吸収源として森林が位置づけられているのは御案内のとおりでございますし、また木材は住宅とか家具の形で炭素を長く貯蔵するという面がございますので、排出削減の方にも位置づけられております。温室効果ガスの排出削減対策ということでも、吸収源と並んで位置づけられているわけでございます。

 そして、委員の御質問の中にありましたとおり、木を使うこと、地域材を使うことで森林の整備が進む、まさに使ってこそ元気な森林ができるということでございますので、私どもも、地域材の利用、これは一番ポイントになるところだということで、国民運動としての広がりも含めて、地域材の利用を進めてまいりたいということで努力してまいりたいと思っております。

杉田分科員 具体的にはどのような取り組みを計画され、また取り組んでおられるのか、お示しをいただきたいと思います。

川村政府参考人 まず、木材の利用となりました場合には、住宅での利用というものがかなり量的にもはけるわけでございますので、地域材を活用して住宅づくり、特に気候風土にも合いますし、各自治体もかなりそういうことでの支援策をされております。私どもも、そういう各地の支援等を頭に、この普及の活動を推進するということを一つ大きく取り上げておりますし、また、そのためにも、素材として円滑に供給していくということも必要なわけでございます。そういう住宅メーカー等のニーズに応じた形で木材を供給していくということが必要でございますので、集成材でありますとか合板とか、そういった技術革新が進んでおりまして、間伐材等含めて国産材の利用が広がっております、そういうところにも力を入れていきたい。

 それからまた、できるだけ低コストでやるということで、ユーザーなり、家をつくられる方、あるいはそのような木製品をつくられる方、そういう方のあれになりますので、コスト削減のための流通体制、そういうものの改善、合理化、こういうものも進めようということでございます。

 特に、来年度予算では、川上と川下のミスマッチというものが非常にありますので、一定の品質、それから大ロットで安定的に供給するような新生産システムというもののモデル事業にも取り組もうとしているところでございます。

杉田分科員 ぜひ強力に、前向きに取り組んでいただきたいとお願いをさせていただきます。

 もう一点、私、最近考えることがあるんですけれども、実はこの半年間の中で、国会におきましては、食育に対するいろいろな議論、そしてまたその整備が進められています。これはもちろん、人間力という意味で我々にとって欠かすことのできないことでありますので、大いにこの食育教育というものは進めていかなければならないと思います。

 ただ、気になることを一度本で読んだことがあります。というのは、日本の市場の中にアメリカのファストフード会社、具体的に名前を挙げればマクドナルドだとかああしたところでありますけれども、その日本進出に当たっても、銀座が第一号店であったというように聞いておりますけれども、そのときに、何を進出し、これから営々とこのファストフードを広めていくか。それは、子供たちをターゲットにする戦略を打ち立てたそうであります。

 なぜか。子供のときにそうしたものを一度食すれば、大人になっても生涯食していく。皆さん方もそうでありますけれども、子供は、小さなころに一度も食べなくて、食べず嫌い、私たちの田舎では食わず嫌いと言いましたけれども、食わず嫌い、食べず嫌いが続きますと、大人になってもその食は敬遠をしてしまうという傾向がある。まさにこのファストフードは、子供の興味を引くようないろいろな催しをしながら、大人の手を引っ張って、そこでこの戦略を広めていった。大人になっても、四十年たっても五十年たってもその味は忘れられないという、一つの方法だったと思っています。

 私は、実は最近、この食育と対して、今の日本の子供たちは木に触れる機会というものがほとんどないのではないか、むしろ、食育というものがあるならば、木に触れる育、木育というものも同じように進めていくべきではないのかなと。そして、子供のころにマンションやアパートで木に触れない生活をしていれば、大人になっても、先ほどの例と同じように、木の住宅に住んでみよう、あるいは木に触れる生活をしてみよう、そうしたものが、生まれるどころか、一向にそういう芽生えがないのではないかな、そんな気がしてなりません。

 そういう意味では、木育という教育をこれから推し進めていっていただきたい、お願いでありますけれども、全国で、今そうした木と触れる事例というものはどのようなものがあるのでしょうか。そのあたりをお伺いさせていただきたいと思います。

川村政府参考人 森のありがたさ、ありがたみ、恵み、そしてまた木の文化、こういうものをちゃんと子供に理解をしてもらう、そして親しみを持ってもらうということは非常に重要だと我々も思っております。

 具体的な例では、まさに先生の御地元の愛知県でも取り組みがなされておりまして、NPOが行政とか木材団体と連携をしまして、小学校におきます総合学習の時間に講師を派遣しまして、木材のよさ、性質などをわかりやすく説明する、木材利用の意義を伝える授業を実施されておるという事例もございます。

 また、もう一つ例を申し上げますと、北海道でも木育推進プロジェクトというものを立ち上げて取り組んでおられまして、親子で大小さまざまな木のおもちゃに親しみながら木を体感する木の遊園地、それから木育についての講演会を組み合わせたイベント、それから教材の作成等をされているということを聞いておりますし、今後とも、こういった全国の事例の状況、そういうものを把握いたしまして、私どもとしても全国に発信をしてまいりたいというふうに思っております。

杉田分科員 今、愛知県と、いみじくも大臣御出身の北海道の例を引き合いに出していただきました。心強く思っております。

 実は、私の、冒頭申し上げました農村部の豊かさ、そしてまた、それを享受させていただいた、その感謝の気持ちが、森を守っていかなければならないという気持ちに転化をしてまいりました。地球における環境が言われる以前から、この恩恵に対する感謝の気持ちが、森へ入って木に触れて、下草を刈ったりあるいは間伐を手伝ったりして、何とかそのお礼をしていこう、これが実は、地元の、行政がなかなか立ち上がれなかったので、民間、言ってみれば青年会議所が主体になってその行動をしてまいりました。今、ようやく子供たちが、限りがありますけれども、山に入りながら、山のぬくもりを持ち帰って生活を日々送っていくことができるという状況が定着をしつつあります。

 なお一層、今、北海道、愛知の例を引き合いに出していただきましたけれども、林野庁としてこの取り組みをどう行っていかれるのか、改めてお伺いをいたします。

川村政府参考人 私どもも、児童の木育といいますか、森林なり木材の意義、そういったものの認識を深めていただくということで、交付金が実はあったわけでございますが、三位一体の関係で、来年度から税源移譲されるということがございますが、しかし、これは非常に重要な予算でございますので、私どもとしても、引き続き都道府県との会議を通じて働きかけをしていきたいと思っております。

 また、教育にもかかわる問題でございますので、文部科学省さんとも連携をいたしまして、学校教育関係者を対象とする会議等、これへ直接林野庁の職員が参りまして、この木育をぜひ実施してほしいということでお願いをしております。また、教材も作成をするといったようなことで努力をしておりますので、こういう努力を引き続き強力に進めてまいりたいと思っております。

杉田分科員 先ほどは食育基本法、お話をさせていただきました。さらには、近年、景観法が制定をされて、まちづくり、その美観、そうしたものに取り組まれる姿勢というものに私は大変共鳴を受けております。

 日本の町は、どうも町全体がばらばらで統一性がない。そして、建築資材につきましても、多様なものが余りにも使われ過ぎていて統一性がない。そういう意味からも、この景観法というのは、美しい日本、そしてまた古来からの日本の姿を一つの統一として求めていくには大変すばらしい法律であると思っております。

 そんな中で、建築基準法も見直しが図られて、今までは三階建てまでしか木造を許されなかったと思いますが、これからは四階以上につきましても木造でも許可を受けられるというような基準法の改正があったというように記憶をしております。

 学校ですら木造校舎が今もう消滅しつつあります。先ほど来から申し上げてまいりましたように、子供たちが木に触れることは、家を出て、そして学校に行き、学校の壁一つ、あるいは廊下を一つ歩くについても木と触れ合う生活、このことが子供のころから木に親しむ第一歩であろうと思っております。

 そういう意味で、少なくとも公共施設を初めとする、さらにもっと範囲を広めてもらえるならばなおのことでありますけれども、せめて、そうした施設に木造あるいは木質の建築物等々をこれからぜひ推し進めていっていただきたいと思いますけれども、そのあたりのお考えをお聞きしておきます。

川村政府参考人 最近、木造の公共施設もかなりふえております。それからまた、技術の進歩もございまして、かなり大きな構造の公共物も木材でつくられるようになってきています。例えばホールとか体育館、こういうものも木材を利用してつくられているものがございます。これは非常にシンボル的な意味合いもございますし、我々としてもそれは引き続き支援をしてまいりたいと思っておりますし、また、建築基準法等の問題も、そういう技術の進歩に合わせて、より木材の利用が可能となるように、引き続き努力をしてまいりたいと思っております。

杉田分科員 ありがとうございました。

 時間も迫ってまいりました。大臣にお伺いをさせていただきます。

 森林・林業基本法、これに基づきまして、林業基本計画が五年ごとに見直すことになっております。十八年秋を目途に、また新たなる森林資源の利用あるいは推進のために策定があるというように聞いておりますけれども、それらを踏まえまして、地域材利用、そして今まで申し上げてまいりましたことに関しまして、大臣の御所見をお伺いさせてください。

中川国務大臣 ずっと今杉田委員のお話を伺っておりまして、愛知県というところは、本当に、去年はもう十数回お邪魔をいたしましたけれども、すばらしい地域だなと。

 私は、原点はやはり水だろうというふうに考えております。冒頭お話がありましたように、愛知県が今日本一の農業地帯である。しかし、先人たちが水の確保に大変御苦労されたということも承知をしております。

 他方、山で降った水が森林に蓄えられたりして、ずっと流れてきて、農業に役立ち、さらには海の、漁業にも役立っているわけでありまして、山は海の恋人という言葉があります。つまり、山というのは、ある意味では我々の生活や、特に一次産業の原点である。山自身もそうでありますけれども、農にも林にも貢献をしているという先ほどの町長さんのお話は、全く私も同感でございます。

 そういう中で、山が本当に、一言で言えば大変苦しんでいる。また、山自体が苦しんでいますし、木材産業、林産業も苦しんでいる。しかし、山や木の重要性については、私はほとんどの国民が御理解をしていただいているのだろうと思いますけれども、経済的な理由、コスト的な理由であるとか、また先ほど長官がちょっと言っておりましたけれども、欲しい木が、欲しい材がなかなか手に入らないとか、そういったミスマッチの問題等があるわけであります。

 そういう中で、一つの大きな御提案としては、地域の木材を利用していくということが、ある意味ではこれからの非常に大きなポイントになっていくのだろう。地産地消という言葉が農業でもございますけれども、森林、木材においても、地産地消というものが、ある意味では林産業活性化の、したがって、山を活性化するための一つの大きな原動力になっていくのだろうと思います。

 木材の地産地消ということになりますと、林野庁、農林水産省がこうすべきであるなんということを言うことは僣越でございまして、まさに御地元の皆さんの知恵を我々が後押しをさせていただくということがまた重要になってくるのだろうと思います。

 いずれにいたしましても、基本計画の見直しの中で、木材、森林の全体像はもとよりでありますけれども、大きな柱として、地域のそれぞれの山、そしてまた木材、そしてまたその利用というものの推進を大きく進めていきたいと思いますし、計画ができましたならば、それに基づいて、ぜひオーダーメードのいろいろな施策や、また要望をお出しいただいて、我々としても、全力を挙げてその実現のためにお役に立たせていただくように努力をしていきたいというふうに考えております。

玉沢主査 これにて杉田元司君の質疑は終了いたしました。

 次に、大畠章宏君。

大畠分科員 民主党の大畠章宏でございます。

 今、杉田委員から、山の問題についてるる御質問がございましたが、山というのは大変大事でありまして、今いろいろ質疑応答がございましたが、ぜひ山の問題にこれからもしっかりと取り組んでいただきたいということを申し上げたいと思います。

 それで、きょうは中川大臣がおいででありますが、中川大臣は、かつて農水大臣をされ、そして経済産業大臣もされ、そしてまた農水大臣、日本の主流の、経済産業と農業、両方に強い政治家でございまして、その次はどういうポジションにつくのか大体想像もつきますが、大いに御奮闘いただきたいと思います。

 そこで、きょうは何点か御質問させていただきます。まず、今地域経済が非常に疲弊をしておりまして、なぜ地域経済が疲弊しているかというと、お金というものがどうも東京の方に、大都市部にどんどん集まる流れができておりまして、地域の方でなかなか流れないんですね。血液が流れなければ、末端は壊死してしまいましたから。そういう意味では、この血液の流れ、いわゆるお金の流れというのが地域でなかなか回らないという現象が強いんですね。ここのところがどうも、中川大臣はそうお考えじゃないかもしれないけれども、小泉総理は、どうもそっちの方は余り眼中になくて、改革改革と言っているんだけれども、改革を進めれば進めるほど、何か地域の血のめぐりが悪くなるような感じがするんです。

 それで、きょうは、中川大臣、温かい中川大臣にお伺いしたいんですが、地域の経済を循環させるためには、そこでとれたものをそこで消費する。魚なんかも一たん築地に持っていって、それからやろうとするから、港でとった魚が、その売り渡し価格の三倍とか五倍で地元のお店に、スーパーに並ぶという話になってしまうので、やはり、魚でも野菜でもそうだけれども、一生懸命生産した、言ってみれば物づくりですよね、物をつくった人のところにきちっと対価が渡るという仕組みをつくらなければ、地域経済は非常におかしくなってしまうんですね。

 私は、前から地元の方ともいろいろお話をしていますが、地産地消、地域でとれたものを地域で消費する、その流れがあれば地域だけで経済が回り始めるんです。そうすればやはり非常によくなるので、地域の方でも努力をされていますが、農水大臣として、地産地消というこの一つの経済ルールといいますか、この問題をどういうふうに受けとめておられて、どういうふうにこれから拡大しようとしているのか、まず、そのことについて御所見をお伺いしたいと思います。

中川国務大臣 大畠委員には、経済産業委員会でも大変お世話になりましたけれども、今回の農水の分科会におきましても、まず地産地消という観点からの御質問でございます。結論的に申しますと、大いにこれは大事であり、進めるべきだというふうに考えております。

 実は、地産地消のある意味では先輩格はヨーロッパでございまして、フランスとかイタリアで長く伝統的に、しかも文化も含めて、こういう大事な食というものを進めていこうという、スローフードの一環として、日本よりもちょっと前ぐらいからそういう運動があり、日本でもある意味では、日本型のものはもともとあったわけでありますけれども、それとの連係なんかもあるわけでございます。

 御指摘のように、北海道にもいろいろとありますけれども、とれたところでの価格と大消費地での末端価格では、本当にびっくりするぐらいに差がある。これは付加価値がついている部分もありますけれども、それ以外の部分もあるのではないかというふうに思います。

 消費者は、私は、地産地消を基本的に望んでいる、消費者サイドも。したがって、生産サイドも望み、消費者サイドも望むのであれば、じゃ、そこは何が問題なのかということを考えなければいけません。

 私は進めるという立場で、農林水産省も進めるという立場で、何がその一層の活性化、あるいは何が、どこかで問題があるとすれば、それを解決するためにどうしていったらいいのか。一つは情報だろうと思いますね。それから、一つは御地元の御努力といいましょうか、宣伝だとかいろいろなことも含めてやっていくということも、やはり主役は地元ですから、その地元のアイデアに対して、時にはアドバイスをし、そして何といっても支援をしていくということが大事だというふうに考えております。

 地産地消推進計画というものを全国都道府県で今大変進めておりますけれども、茨城の御地元にも大変すばらしい農林水産物があるわけでありますから、大いにそれを、茨城に行って食べたい、また、茨城の人がこっちに出てきて販売するものを直接買って、茨城の雰囲気あるいはまた香りをかぎながらおいしいものを食べたいということを、今は一、二の例を申し上げましたけれども、ほかにももっとあるかもしれません、大いにとにかく推進するために、私は、全力を挙げてこの問題を進めていきたいというふうに考えております。

大畠分科員 基本的な認識は大臣がおっしゃるとおりだと思うんです。私は、中川大臣に期待するところは、経済産業大臣をされて、そういう経済産業の流通面でも非常に精通されておりますから、私も地元でいろいろ相談を受けているんですが、結局流通なんですね。いわゆる巨大なスーパーマーケットあるいはコンビニ、そういうところになかなか乗らないんです、結局。いいものがあるんだけれども、そういう流通経路に乗らないと、例えば私は日立に住んでおりますが、日立でとれた魚もスーパーマーケットでなかなか買えないんです。

 だから、そういう流通経路を少し工夫していただいて、大臣の御経験なんかも踏まえて、ぜひ地元でとれたものが地元の商店街で売られるような、もちろんそれぞれの当事者が努力をしなければなりませんが、そこら辺もぜひ工夫していただきたいということであります。

 そこで、実は、日立で小泉光彦さんという、これは昔でいえば漁師の方ですね、漁業師と今はいいますが、この方が自分の体験記というのを書きました。魚をとるのがいかに大変かというのを書いたんですが、ちょっとこれは後で細かい話になりますから、担当者の人との論議になりますから、その間、大臣にこれを少し読んでおいてもらいたいんです。

 そこで、大臣にはその小泉さんの自伝的な本を読んでおいていただきたいんですが、このおじいさんが大正時代の生まれで、魚をとる三代目の漁師の方なんですね。かつては遠洋漁業まで夢をはせたんだけれども、二百海里問題で非常にまた狭まってしまって、今、苦難な道なんですが、一生懸命夢を持ってやっているというような中身なんです。

 そこで、最初に、この漁業問題についてお伺いしたいと思うんですね。

 漁業問題について、まず、小泉さんの指摘なんだけれども、魚がだんだんとれなくなったりなんかしていろいろあるんですが、昔は休漁期、休漁期間に、海底のごみといいますか、いろいろなものが陸から流れてきますから、それが海底にたまる、それを一生懸命掃除をするという作業をすることができた、しかし、今はそういう予算がなくなっちゃって、できなくなっちゃったと。しかし、海底の掃除をするということは、魚を育てるといいますか、非常に大切なんだというんですが、この海底の清掃作業なんかをできるような、お金だってそんなに高いお金じゃないんです、ですから、そこら辺の予算づけをしてほしいという話。

 それから、最近、原油高でもってオイルが、リッター三十円ぐらいが今リッター七十円ぐらいに上がっているんですね。ですから、一生懸命魚をとろうと思っても、朝四時に出ても、せいぜい四時間、八時ぐらいには上がってこなきゃならない、あるいは七時には上がってこなきゃならない。それ以上いると、魚をとる値段よりもオイルの値段が高くなっちゃいますから。一生懸命、本当は一日、夕方までやりたいんだけれどもできないという、現実の課題なんですね。

 それから、育てる漁業というので、一生懸命、この期間は休漁するかなと思っておるんですが、隣の県から来てとってしまう。そうしたら、休漁なんかしないで、こっちもとっちまえという話になっちゃうんですね。ここら辺、県をまたいだ、魚をとってもいいという許可という制度をもうちょっと考えないと、みんな水産の資源問題については余り関心なく、無秩序にとり始めているという、そういう混乱が起きているという話なんですね。

 それから、先ほど中川大臣からもお話がありましたが、魚をとった漁師が魚を売るときの売り渡し価格と小売価格との余りの差、言ってみますと、一生懸命魚をとっている人よりも流通段階での利益が上がっているんですね。これは物づくりの世界もそうなんです。家電なんというものもそうなんですが、こんな価格で売られているのかという話でね。物づくり、一生懸命魚をとる、一生懸命農業で食べ物をつくる、そういうつくっている人に対する社会的な評価といいますか、位置づけが非常に低くなっていると思うんですが、ここら辺、まず最初に、漁業問題について四点指摘をさせていただきましたが、この件についての回答をお願いしたいと思います。

小林政府参考人 四点御指摘いただきました。逐次お答え申し上げます。

 漁場の底の清掃といいますか、これは非常に漁場が汚れて、効用が低下してきたときに非常に効果のある対策でございます。そういう意味では、確かに昔からやっている対策でありまして、予算的にも、私ども公共予算がございますけれども、そちらの方でこういった堆積物の除去、あるいはその底の質の改善といいますか、こういうふうなものを重点的にやっております。

 ちなみに、私どもの公共予算、毎年全体としては縮減になっておりますけれども、これらの関係の予算につきましては、十八年度予算におきましても、対前年度五%増ということで、重点的に進めたいと思っています。

 もちろん、個々の状況によりまして、現場の皆さんの要望とかそういったこともいろいろ違うでしょうから、これはまた都道府県ともよく相談しながら積極的に進めていきたいと思っているところでございます。

 それから、二つ目が、燃油価格の高騰問題でございます。

 御指摘のように、水産業の場合には非常に燃油コストが高いのに加えまして、価格になかなか転嫁できない。先ほど流通問題もございました。そういった中で、昨年の影響が非常に大きかったものですから、いろいろ検討を進めてまいりまして、この問題は一種の構造問題といいますか、燃油の高騰の状況というのはこれからも変わらないであろう、そういった中で、それに対応できる経営をどうやってつくるかということが基本でございまして、これはまた地域ごと、漁業種類ごとでやはり状況が違うものですから、あるいは各県でこれからのビジョンをつくってもらおうと、これは省エネが中心になります。そのための取り組みを今やってもらっておりまして、それに対する支援をしようということで、補正予算で、クラゲ対策等を含めて、燃油対策等の五十億円の基金をつくっておりまして、これによりまして、これから、例えば漁協系統に燃油流通の効率化をどうやって進めてもらうかとか、それから漁業者の皆さん、それぞれ省エネ型漁業にどういうふうに転換してもらいますか、こういった緊急対策をやると同時に、来年度予算では技術開発等、こういった対策を総合的に進めていきたいと思っております。

 それから、三点目でございますが、漁業調整、資源管理という意味で、県をまたがる問題、常に調整の問題でございます。

 これも、従来から各地域にございます難しい問題でございますが、基本はやはり、その資源をどうやって大事にしながらお互いに調整をとっていくかということでございまして、各県ごとの漁業調整規則に基づく対応がございます。それが基本ですけれども、県間で調整が必要な場合には、広域的な漁業調整委員会でありますとか、場合によったら私どもの方でも指導、助言していくということで対応しております。

 特に、最近の進め方といたしましては、そういった漁業調整という観点のみならず、資源回復でございますね、こういった資源回復計画みたいなスキームを平成十四年から進めておりまして、もちろんこれは漁業種類とか地域によってそれが適用できるかどうかというのはまた個々に違いますけれども、いわゆる水産政策全体の方向としては、そういう資源の取り組みの中で、今出てまいりました漁場の回復とか、それから漁獲の制限、調整だとか、あるいはいろいろなそういったものを総合的に組み合わせてやっていくというような方向で進めていきたいと思っているところでございます。

 それから、最後に、流通関係でございまして、私どもの調査でも、水産物の産地価格と消費地価格、これは、調査によりましては二倍から五倍の差があることは事実でございまして、水産の場合には、これはなかなか難しい点は、例えば流通形態で、産地と消費地に市場があるとか、こういったものをどうやって効率化するかの問題がございますし、それから、とにかく魚が消費地に行くまでの間にさまざまなコストがかかります。そういったいわば宿命があるとはいたしましても、これもやはり相当考え方を変えなくちゃいけませんので、とりわけ国産水産物の場合には、その鮮度というのが、おっしゃるとおり一つの強みでございます。そういうものをどうやって訴えて、消費者によく理解してもらうかということでございまして、私どもの対策としましても、産地から消費地に向けた直接的な取引とか、あるいはそういったところに重点を置いた新商品の開発とか、さまざまな、これも地域に応じたやり方がございますので、そういうものに対する一種のモデル事業的な支援というようなことも進めておりまして、また、あわせまして、私ども水産基本計画の見直しの作業に入っておりますが、その中でも、この加工流通問題をどういうふうにとらまえるかということで、重点的な課題として取り組んでいきたいと思っているところでございます。

 以上でございます。

大畠分科員 四点まとめて御回答いただきましたが、要するに、五%ぐらい予算つけているんだと言うんだけれども、清掃作業に対する……(小林政府参考人「五%増。対前年五%増です」と呼ぶ)対前年度で五%増と言うのですが、末端まで下りていないみたいなんだね。だから、実際問題できていないと。過去に比べて五%増だったらもっとふえるんだけれども、どこかで消えちゃうんだよね。だから、例えば、上流から水を流しても下流のところにはちょろちょろも流れていないということですよ。

 だから、五%増といったって、実際に、では海底の作業やってくださいというときに、そこに予算が下りていなければ、海底作業はやっていないということ。そうすると、その予算は一体何に使われちゃったのかというんだよね。途中で、何か結局流通段階で消えちゃって、実際にそういう、今御答弁があったような形の予算に使われていないということですから、それはもうちょっと現場を見て、二〇三高地じゃあるまいし、進めと言ったって、実際問題、がたがたになっちゃったらだめですから、やはり今お話があったような形で、海底の掃除というのは資源を守るために大変重要だというのであれば、実際にそういう作業が行われているかどうか、今度私と一緒に行って見てきましょうよ。そうじゃないと、どんなにここで、委員会で五%増と言ったって、実際にそういうものをやっていなければ意味がありませんからね。どうですか、実際に、今度漁場というか、漁業組合にでも行って、一緒に見てきましょう、それ。

 それから、緊急支援措置をやると言っているんですが、これも力を入れてもらいたい。例えば、リッター当たり三十円が七十円になったら、これは倍ですから、これは大変な影響を受けています。ですから、この問題についてもさらにやってもらいたいと思うし。

 資源回復の問題からも何らかの手を入れると言うんですが、これは仕組みを変えなきゃだめですね。全国どこでも動ける船なんですよね。それが、中古船で買えば、その船にくっついていますから、その船を使って全国各地を動くという話になっちゃうんです。ここら辺、そういうルール自体をもう一度見直して、日本の魚の資源を守ろうという視点であれば、もうちょっと現場を見ていただいた方がいいと思うんですね。何か仕組みを変えないといけないと思うんです。

 それから、売り渡し価格の問題で、消費地ととったところとを直結したいというのは、これは流通問題なんですね。ですから、それぞれのところで工夫しろというのと同時に、何か流通にメスを入れることが必要じゃないかと思うんですね。大変な流通革命が起きていますから、その流れに乗らなければ。東京経由で日立のスーパーマーケットにおりてくるわけですよ。日立でとられた魚が、東京に行って、東京からまたスーパーに回ってくる。だから三倍か四倍になっちゃうんですね。だからここら辺も、ぜひ現場を見ていただきたいということを申し上げさせていただきたいと思うんです。

 それで、ごみの清掃作業については冒頭に申し上げましたが、一緒に行って現地で聞いてきましょうよ。五%予算をふやしているんだけれども、何で下の方にはちょろちょろで、実際の作業には予算が出ないのか。どうですか、もう一度答弁ください。

小林政府参考人 先ほど申しましたように、国のレベルで予算を確保しているという話と、それが都道府県を通じて現場でどういうふうに活用されているか、これは確かに、おっしゃるとおり、さまざまに、差があると思います。

 私がお邪魔に行くかどうかは別といたしまして、茨城県でどういった形で取り組まれておって、例えば今の私どもの種々の予算がどういうふうに活用されているのかいないのか、これは私ども、よく調べてみて、また必要なことは先生にも御説明をしたいと思っております。

大畠分科員 ぜひ、やはり現場主義でいきましょう。どんなにいいものを国でやっても、現場が全く機能していないとすれば、一言で言えば、それは無駄な予算になっちゃいますよ。ですから、現場に有効な形の流れを、途中の仕組みも、県もどういうふうにやっているのか、それをぜひ調べていただきたいということを強く要望しておきます。

 次に、今度は農業問題について質問をさせていただきます。

 農業問題については、現地の方から次のような話が来ています。三つあるんですが、一つは、経営所得安定対策の中の品目横断的経営安定策についての指摘であります。

 経営規模の特例における物理的特例基準に関しての指摘でありますが、現在の基準は二十五ヘクタールという一つの全国平均値をベースに置いているんですが、これは小規模農家を救済するという意味でありましょうけれども、これだと中規模の農業地域というのが抜け落ちてしまうんですね。私の、日立、高萩、北茨城という地域でいえば、ここら辺でこの適用の二十五ヘクタールというふうにやると、ほとんど漏れちゃうんです、中間の地域が。したがって、この中間層に対する特例をやることが必要じゃないかと。私のところも非常に大きな農地ではないと思うんですが、どうも小さ過ぎるんじゃないかという指摘が一つ。

 二つ目には、現在の農業政策の中で、今度は二十ヘクタール以上という集落を対象とするというんですが、それで十九年産より適用されるということなんですが、急に政策を変更するんじゃなくて、十六年から十八年まで実施していた米政策、農業政策を五年程度継続できるような経過措置はとれないのかという意見が出ています。

 三点目には、十九年度から適用を予定している経営所得安定対策は、米の生産調整支援策の見直し、品目横断的経営安定対策、それから、農地・水・環境保全向上対策の三つがあるが、農地・水・環境保全対策については具体的な内容が提示されていない。これはいつぐらいに提示されるのか。

 三番目については、きょう、この委員会においでじゃないというので、一番、二番についてお答えをいただき、三番については後ほどまた文書で出していただければいいと思いますので、一番、二番についての現在の所見をお伺いしたいと思います。

井出政府参考人 委員からの最初のお尋ねにお答えいたします。品目横断的経営安定対策における物理的特例基準でございます。

 これは、農地面積の小さな地域というものが全国にもございますので、その全国の全集落の田畑の平均が二十五ヘクタールということでありますが、その二十五ヘクタールに満たない集落が多数存在するという地域もあるということから物理的特例として措置をしております。したがいまして、委員が申されましたように、この特例基準では当該市町村等の格差率と言っておりまして、その二十五ヘクタールとそれぞれの市町村の平均の耕地面積がどのくらい乖離しているかということによりまして、この計算式に当てはめて計算をしてもらうということになっております。

 そのときに、単位といたしましては、市町村等と書いてありますように、市町村単位であれ、あるいは旧市町村単位であれ、集落単位であれ、その地域の実情に合った形で県が地元の市町村等と相談をしていただいて、集落単位で決めるのか、旧市町村単位で決めるのか、市町村単位で決めるのかを選べるということになっております。選んでいただいた上で、私どもの方で、それ以外の、ルール以外のことを適用されていないでしょうねということだけを確認させていただくことになっておりまして、かなりきめ細かに農地面積が少ない地域というのに対応しようといたしております。

 したがいまして、全国平均の二十五ヘクタールを上回っている地域については、これはあくまで原則の二十ヘクタールというものを適用させていただく、こういうふうに考えております。

岡島政府参考人 二点目の点でございます。

 十六年度から十八年度まで実施している農業政策ということで、これは米政策を指していることかと考えます。御案内のとおり、現在の大きな政策の方向性につきましては、平成十一年に制定された食料・農業・農村基本法で示されたところであり、米政策につきましては、平成二十二年度の水田農業のあるべき姿の実現に向けて、平成十六年産から改革に取り組んでいるところでございます。

 今回の、担い手を対象とした品目横断的対策は、米政策と表裏一体のものでありますので、整合性を持って進めていくこととしておるところでございまして、具体的には、十九年産から、現在実施しております産地づくり対策でございますとか稲作所得基盤確保対策、担い手経営安定対策あるいは集荷円滑化対策について所要の見直しを行いながら、整合性を持って施策を推進してまいりたいというふうに考えているところでございます。

大畠分科員 それぞれ御答弁いただきましたが、基本的な考え方はわかりますが、先ほどの魚の問題と同じように、やはり現場を見てやらないと、どんなにこうだろうなという基準をつくっても、網の目が大きくて、みんなおっこっちゃって、ひっかかるものはなかったり、細かいと今度は目詰まりしちゃったり、難しい問題がありますから、少し現場をしっかりと把握しながら基準というのはやっていただきたい。特に最初の計算式の計算については、茨城の私の地域では四十五ヘクタールぐらいにしないと該当しない。私のところも、まさに海と山に囲まれて、小さなところがたくさんあるんですよ。しかしそれでも集落的には、四十五ヘクタールぐらいにしてもらわないとなかなか適用にならないというような声も来ておりますから、十分現地の声を聞きながら対処していただきたいと考えているところでございます。

 いずれにしても、大臣、今、少し魚の問題と農業問題について質疑をさせていただきましたが、日本として、あるいは政府としても、自給率の向上問題を取り上げたりしておりまして、一つの目標として、自給率たしか四五%だったかな、そういうものを目標にということで、日本の自給率を高めるというのは大変重要なことでありますし、また今、小泉さんの、いかに先代から苦労しながら魚とりを続けているかということについての伝記的な本を見ていただきましたけれども、これから農業あるいは魚、そういうものについて、大臣としてどういう考え方でこういう問題について取り組んでいかれようとしているのか。その本を読まれたり、今の質疑を聞いての御感想をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。

中川国務大臣 まず、この小泉さんの自伝の部分もさることながら、提言を興味深く読ませていただきました。問題点を単に政府や県や議員たちがしっかりやってもらいたいではなくて、例えば、地産地消を自分たちでやりましょうとか、御地元のタコですかアンコウを、コウフクダコですか、というふうに命名しているとか、いわゆるブランド化しようとか、みずからもそういう努力をしていって、消費者に買ってもらわなきゃだめだ、そのためには自分たちも努力しなきゃだめだ、無駄なものはできるだけそいでいこうという発想は、これはもう漁業だけではなくて農業においてもまさに非常に重要な、基本的な提言だと思います。

 つまり、いろいろなものもそうですけれども、顧客が買いたいものをどうやってつくる側が提供するか、しかも、それが食であり、その前提が自然であるわけでありますから、破壊したら二度と回復ができない、いわゆる持続可能なことが必要である。それから、農でも林でも水でも多面的な機能があるということでございます。

 そういう観点から、大変興味深く読ませていただきましたし、我々の政策もそういう視点から、今の新しい農業政策、あるいは林業、水産業の計画の見直しを含めてそういう観点からやっていきますし、WTO交渉もそういう観点から今一生懸命努力をしているところでございまして、貴重な文章を読ませていただき、ありがとうございました。

大畠分科員 時間が来ましたので、これは終わりますが、ぜひ大臣には現場主義ということで、物をつくっている立場といいますか、そういうものをぜひ掌握しながら、大臣のお仕事をしていただきたいと思います。よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

玉沢主査 これにて大畠章宏君の質疑は終了いたしました。

 次に、松本大輔君。

松本(大)分科員 民主党の松本大輔です。

 先ほどの時間に引き続きまして、地元で行われようとしております林道建設事業について取り上げたいと思います。

 まずは、実施主体となっております独立行政法人緑資源機構について、林野庁長官にお尋ねしたいと思います。

 緑資源機構における一般競争契約の件数、平成十六年度は何件でしょうか。

川村政府参考人 緑資源の平成十六年度の契約でございますけれども、指名競争入札または随意契約で行われておりまして、一般競争入札による契約は行われていないということでございます。

松本(大)分科員 一般競争契約がゼロということだったわけですが、次の質問は、通告では、内規に違反して指名競争入札云々と書いたんですが、こちらが期待している答えが出そうにないので、聞き方を変えます。

 林野庁長官にやはりお尋ねしたいんですが、予定価格が工事で五百万以上、物品で三百万円以上で、指名競争契約または随意契約としている契約件数は何件でしょうか。また、それらの契約価格の合計額は幾らでしょうか。

 指名競争入札については、平均落札率もあわせてお答えください。同様に十六年度で結構です。

川村政府参考人 今お尋ねの、予定価格が工事で五百万円以上、それから物品三百万円以上で指名競争入札または随意契約を行っている契約の件数でございますが、三百二十六件、契約金額の合計は約二百八十三億円でございます。

 それから、指名競争入札の平均落札率は九三・九%となっております。

松本(大)分科員 驚くべき答弁であると言わざるを得ません。

 まず最初の問いに対して、一般競争入札はゼロである。それから、次の問いでは、三百万以上の物品、五百万円以上の工事についての契約ではすべて随契か指名競争入札になっている、その数は三百二十六件で二百八十三億にも及んでいる。

 お手元にお配りしております資料二をごらんいただきたいのですが、ここに一覧があるとおりでございまして、これだけのおびただしい量の契約が、一件も一般競争入札はなくて、すべて指名競争入札または随契で行われている。その数は、先ほども御答弁いただいたとおり、実に三百二十六件で二百八十三億。三百二十六件もの契約がありながら、一般競争入札はたったの一つもない、こういうことでありました。

 落札率は平均九三・九%ということでありましたが、ちなみに、最近官製談合で話題となった防衛施設庁の平均落札率は九五・九%であります。二ポイントしか差がないということです。

 ちょっと順番が前後しますが、お手元の資料の一をちょっとごらんいただきたいと思います。

 規程上どうなっているのかというお話でございます。これによりますと、緑資源機構会計規程によれば、この「第三章 契約」、十九条のところですが、原則として一般競争契約なんだ、これは一項ですね。そして、二項でもって、ただし次の各号に該当する場合はとして、指名競争契約または随契によることができるケースを限定列挙している、こういうことでございます。

 長官に先ほどお答えいただきました、契約の合計が三百二十六件、合計およそ二百八十三億円という契約については、これはすべてこの十九条の二項のケースに該当しているという御認識でしょうか。

川村政府参考人 緑資源の会計事務は、緑資源機構の会計規程、今申されましたもの、それから契約事務細則というものがありますが、これに基づいてなされております。

松本(大)分科員 大臣がお戻りになられたので、ちょっと御見解をお伺いしたいと思うんですが、昨年度だけで三百二十六件の契約が行われている中で、一般競争入札はゼロであった。すべて随契かあるいは指名競争入札であって、その金額は累計で二百八十三億円。平均落札率は九三・九%。防衛施設庁の官製談合が平均落札率九五・九%ですから、それにほぼ近い数字となっているわけであります。

 しかも、これは規程がどうなっているかといえば、先ほども御紹介したとおり、資料一にあるとおり、十九条の一項で原則は一般競争契約になっている、ただし次の各号に該当する場合は例外的に指名競争契約または随意契約というふうに、内規がそう定められているんですね。

 三百二十六件すべてが一般競争入札ではないということであれば、大臣、原則と例外が逆転してしまっていて、この規程の十九条一項というのは事実上死文化していませんか。

中川国務大臣 まず、落札率が似ているからといって、官製談合と何かあたかも同じように言われるのは大変心外でございますが、いずれにいたしましても、結果的にこういうふうになっております。

 小泉内閣としても、できるだけオープンな形で、そしてまた文字どおりの競争というものを原点にしてやっていくということはこの法律に書いてあるとおりでありますけれども、小泉内閣としての、よりそういう観点でやっていこうという考え方でございます。

 ただし、結果的にこういうふうになっているんだということは事実でございます。

松本(大)分科員 オープンそれから競争を原点としてやっていくんだということでありまして、大臣御自身もおっしゃっているように、ただ、結果として、昨年度だけで三百二十六件に及ぶ契約のうち、十九条一項に定める原則であるはずの一般競争契約というのはゼロなんですよ。それでもって、二百八十三億もの契約が取り交わされてしまっているということであります。

 大臣、今、ちょうど確定申告の季節でございます。今月からは所得税の定率減税も半分に減らされております。ここまでの議論をごらんになられた納税者が、今のやりとりを聞いて、しようがないよねと納得されるとお思いですか、問題ないというふうにお思いですか。

中川国務大臣 それは、人によっていろいろ見方があるので、思わない人もいるでしょうし、こんなものかなと、実態を知って判断をする人もいらっしゃるかもしれませんし、思うか思わないかという主観を私が、主観に対して私の主観を言えというと、こういう大事な場でございますから、発言は慎重にしなければいけないというふうに思います。

松本(大)分科員 こんなものかなというふうに思われるということは、それはもう政治不信とか行政に対する不信感というものは、これはもうやむを得ないんだ、そんなものでしょうというふうに、非常に何か寂しい答弁であるなというふうに私には聞こえました。

 もし、これは本当に問題ないとおっしゃるのであれば、いっそのことこの十九条の規程を順序を入れかえて、独立行政法人緑資源機構の契約については、原則随意契約か指名競争契約でやります、一般競争契約でやるのはあくまで例外的なものなんだ、原則やらないんだというふうに変えられたらどうですか。もし規程を変えるつもりはないのであれば、運用面で実際に死文化させてしまっているということについては、私は極めてこそくなやり方だと思いますよ。

 これは、大臣、もし問題ないとおっしゃるのであれば、いっそのこと規程を変えられて、原則一般競争契約はやらないんですというふうに変えられたらどうですか。

中川国務大臣 松本委員がそういうふうに御判断されるのは松本委員の御判断でありますが、我々は、法律に基づいて、そしてまた小泉内閣の方針に基づいてやっているわけでございまして、問題があると思うか思わないかとか、一般の人がどう判断するかとか、あるいは、松本委員がおかしいと思われるということについて、我々はその考えそのものは否定はいたしませんけれども、結果的にこういうことになっていることに対して、何か法律的に、あるいはまた何かのルールに反しているということであれば、これは問題としてもちろん看過できませんけれども、こういうことになってしまったということに対して、法律の条文を変えるということについては、我々としては、はい、そうですというふうに、それだけではお答えすることは控えなければいけないというふうに考えております。

松本(大)分科員 法律を変える必要はないんだということであれば、法の立法の趣旨というか原点に立ち返って、このとおり運用されるように、これは運用面の是正を勧告されるべきだと思いますよ。三百二十六件もの契約が一件も一般競争契約で行われていないというのは、だれがどう考えたって、主観とおっしゃいましたけれども、通常、原則で定められていることが三百二十六件あって一件もないというのは、これは非常に奇異な感じを覚えるというふうに、ごく控え目に言って私は思います。

 時間もありますので、次の質問をしますけれども、また長官にちょっとお伺いしたいんですが、緑資源機構の役員八名のうち国家公務員出身者の数を教えてください。

川村政府参考人 お答えいたします。

 緑資源機構の役員、八名おりますが、国家公務員出身者、これは平成十七年四月一日現在で六名でございます。

松本(大)分科員 では、そうした公務員出身者の方がこの緑資源機構でどのくらいの給与を受け取っていらっしゃるのかというのが、我々野党としては気にかかるところではあるんですけれども、資料三をごらんいただきますと、めくっていただいて二枚目ですね。これは民主党の決算行政監視調査会の資料要求に対しての御回答でありますが、一番上、「1移行前の組織における最終一年間の指定職等の給与総額」、これはいわゆる役員の方の給与総額だと思うんですが、「(十四年度)」として「未公表のため記載せず」となっております。この理由は何でしょうか。

川村政府参考人 お答えいたします。

 緑資源機構への移行前の平成十四年度時点でございますが、役員の報酬等の公表方法などにつきましての統一された基準が存在しておりませんで、緑資源公団の指定職などの給与年額につきましては公表されていなかったということから、本表への記載は行わないこととしたところでございます。

松本(大)分科員 ですが、これは実は未公表じゃないんですよね。お手元の資料を一枚めくっていただくと、資料四というのがあるんですが、これは、昨年ですけれども、独立行政法人の組織等に関する予備的調査についての回答ですね。調査票ですが、これがそのときのコピーでございます。

 原本はこういう分厚いやつなので、予備的調査についての報告書の四百五ページをコピーしておつけしたものですが、これの左下、ちょっとマジックで黒く囲んでおりますが、「移行前の組織における最終一年間の指定職等の給与総額(十四年度)」としまして、一億三千四百九十五万三千円というふうに記載をされています。

 長官、先ほど未公表とおっしゃいましたが、これは昨年の予備的調査で回答されている、すなわち公表されておりますが、先ほどの未公表というお答えはうそですか。

川村政府参考人 十四年度の取り扱いは、先ほど申し上げたとおりの理由でございます。

 資料四の今御指摘のございましたところに確かに数字が書いてございますので、これは、ちょっとこの場で、なぜここにこういう記載があるのか、ちょっと理由なり背景あるいは経緯、これではわかりませんので、速やかに調べてみたいと思います。

松本(大)分科員 そんな悠長な話じゃないと思うんですね。一年前、この資料四の時点では、二〇〇五年八月時点では、予備的調査では回答したんだと。ところが、年が明けて二〇〇六年二月九日、民主党の決算行政監視調査会に対する資料要求に対しては、未公表のため記載せずとされたと。同じ質問に対して、一方ではお答えをなさり、一方では未公表のため記載せずとされた。しかも、未公表というのは事実と違っているわけですね。二〇〇五年八月時点で既に公表されているデータでございます。

 なぜこれは一度公表したものを未公表とうそを言われたのか。先ほど、これはうそなんですかと聞きましたら、調べてみたいということですが、私の質問に際しての文書での回答によっても、これは林野庁さんからいただいたものですが、同じように、答えとしては未公表のため記載せずとしたというふうに書いてあります。

 これは、では、だれが、一度公表したものなのに未公表のために記載せずと記載するように指示をしたんですか。

川村政府参考人 どういう経緯で、はたまたどういう指示によってこういう形になったのか、それは速やかに調べてみたいと思います。

松本(大)分科員 同じ議員からの資料要求に対して、一方ではお答えをする、しかしながら、時間がたって別の聞き方をすると、これは未公表だとうそをつく。一度、公表しているデータですよ。にもかかわらず、未公表のため記載せずと平気でうそを言われる。その場その場で対応を変えて、しかもうそをついて情報の開示や資料の提出を拒んでいらっしゃる。大臣、このような姿勢というのは、私はこれは断じて許されるべきものではないというふうに思うんですが、これはいかがですか。

中川国務大臣 まず、うそという言葉は、私はこの場では穏当ではないというふうに思います。ただし、事実関係については、今長官がお答えいたしましたように、きちっと調べて委員に御説明をさせていただきたいと思います。

松本(大)分科員 これは、委員に御説明というよりは、二〇〇六年二月九日時点で、民主党決算行政監視調査会に対する緑資源機構提出資料とありますので、これは既に私以外に資料要求をされた方々に対して、一度事実と異なった回答をされているということなんですね。これについては、いつまでに、どのような対応をされるおつもりですか。

川村政府参考人 調査の経過がわかり次第、資料をお配りした方々には再度説明をさせていただきたいと思います。

松本(大)分科員 補助金所管の官庁の農水省が、その補助金を申請してくる、この場合、つまり緑資源機構ですけれども、その組織に人も送り込んでいる、先ほどの出向者あるいは天下りということですが、それでずぶずぶの関係になっている。

 冒頭の質問にもあったとおり、緑資源機構自体は補助金をもらって事業をしているのに、一般競争契約を行って少しでも税金を節約するように規程上なっているにもかかわらず、一件もそんなことはしない。指名競争入札や随契ですべての契約を行っている。ひょっとしたら、談合という言葉は使うなというふうにおっしゃいましたけれども、実際上は、結果として、平均落札率が九三・九%にも達しているんだ、端的に言えば税金の無駄遣いをふやしているんだ、こういうことではないかというふうに思います。

 そして、その組織において、出向者の方々あるいは転籍された方々がもらっていらっしゃる給料についての情報を公開してくれと我々が請求しているのにもかかわらず、あるときは提出するし、あるときは未公表だから記載できないんだというふうにその場その場で対応を変えられる。うそという表現は穏当ではないとおっしゃいましたけれども、これは質問する議員の立場からすれば、うそをつかれたというふうにとるのが通常の人情ではないかと私は思います。

 こうした緑資源機構が行っている事業の一つが、ちょっと前置きが長くなりましたけれども、本日私が取り上げております地元の林道工事でございまして、これはけさほど、九時半からのこまでございましたけれども、現在の未着工区間、二軒小屋―吉和西工事区間についてこのほど工事計画の変更が行われておりまして、その概要については先ほど林野庁の方から既に御答弁をいただいております。十三・二キロで二十九億円の工事だということでございました。

 大臣、先ほども、御質問で、オープンでそれから競争というものを原則としていくんだというふうにおっしゃっておりましたが、私の地元で行われようとしている二十九億円の林道事業ですが、この二十九億円の工事、これは丸ごとの発注ではないにせよ、さすがにこれは、またもや指名競争入札や随契でやってしまうというようなことは、これだけ、三百二十六件も連続して行ってきて、よもやないと思うんですが、大臣の御見解をお聞かせください。

中川国務大臣 いただいた資料を引用させていただきますけれども、この十九条に沿ってやっていきたいと考えております。

松本(大)分科員 十九条の規程がなぜあるのか、その趣旨に立ち返って、ぜひ運用面、実態面でしかるべき対応がとられるように指導していただきたいなというふうに思います。

 本日は平成十八年度予算の予算委員会の分科会でありますので、では、この二軒小屋―吉和西工事区間、総額二十九億円のうちの幾らの予算が今回の十八年度予算案に盛り込まれているのか、教えてください。

川村政府参考人 公共事業と同様に、この事業費につきましては、予算成立後、農林水産大臣が路線ごとの支出負担行為実施計画を作成しまして、財務大臣の承認を得て決定されるという仕組みになっておりまして、現時点ではその額は決定を見ておりません。

松本(大)分科員 予算の適否を審議するのが予算委員会だというふうに、予算審議だというふうに私は理解をしておりまして、この分科会も平成十八年度予算についての分科会だというふうに理解をしておるんですが、この事業について十八年度に幾ら投下されているかもわからないと。資料要求したところ、十八年度には緑資源整備事業に必要な経費として二百七十二億七千九百万円。それから、幹線林道事業というのはそのまた一部だと思うんですが、これはちょっと探したんですが、なかったんですが、平成十七年度にさかのぼれば、ちょっと戻れば、幹線林道事業だけで百二十一億のお金が投下をされている、こういうことなんです。

 財政が厳しい折、一円たりとも冗費はないんだ、無駄遣いはしていないんだと胸張って言えるような予算なのかどうかを納税者、国民の皆さんにかわって審議するのが我々の使命でありますし、それが予算委員会の役割だというふうに私は思うんですが、十八年度に着工されるということが言われているこの事業について、では、十八年度分として一体全体幾らの予算が投下されるかすら数字が出てこないということであります。

 では、その緑資源機構さんへの十八年度分につけられる補助金の適正規模というのは一体全体どういうふうに判断をされているのか、私は、どうやっているのかなと、正直わかりません。では、非常にざっくりとしたどんぶり勘定でやられているのかなと。積み上げでないとすれば、予算が一つ一つの事業について明らかにできないんだとすれば、では、それはざっくりとしたどんぶり勘定で、鉛筆なめて予算つけていらっしゃるのかなというような感慨を持ってしまうわけでございます。

 ただ、時間もせっかくいただいておりますので、単年度の予算がないからこれで質問ができないということにしたくはないので、せめて、では、複数年度に及ぶプロジェクトだというふうに考えたとして、二十九億というこの本件事業について検証してみたいと思うんですが、昨年も同じような質問をさせていただきましたら、当時の長官の答弁は、緑資源機構が自主的に費用対効果の分析を行う、検証を行っていくことが重要、ただし、林道の規格がこれから変わり得るかもしれない、決まっていないので費用対効果の分析にはもう少し時間がかかるだろう、こういう趣旨の答弁を行っていらっしゃいました。

 ただ、事業費については今二十九億というふうに出たわけですから、当然、費用対効果の片側、効果の部分についても、補助金所管官庁として機構から当然その効果部分を聴取されているんではないかというふうに思います。費用対効果の分析についてちょっとお伺いしたいと思います。

宮腰副大臣 先生御指摘の戸河内―吉和区間につきましては、平成二年に工事を着手いたしまして、平成十二年に再評価を行いましたけれども、当時は事業実施に関し費用対効果などに基づく事業評価を行う仕組みになっていなかったというところであります。

 しかしながら、今後行う期中の評価に当たりましては、費用対効果分析を行うこととされておりまして、平成十八年度に予定されている期中の評価に当たっては、御指摘の戸河内―吉和区間の費用対効果分析を行いまして、八月末ごろの公表を予定いたしております。

 以上であります。

松本(大)分科員 済みません、ちょっと最後、よく聞きとれなかったんですが、八月末ごろの公表、費用対効果についてということですね。

 もし、期中評価に合わせて費用対効果の検証がされて、その公表は八月ごろにずれ込むんだとすれば、十八年度予算には、本件事業についての補助金はついているけれども、費用対効果の分析、その検証結果というのは予算の適否の判断材料とはなり得なくて、最短で十九年度予算にしか反映されないということになってしまうわけであります。

 納税者にかわって国会議員が税金の使い道をチェックするという大事な予算委員会には費用対効果が提示されないで、農水省さんが用意した学者の方々による期中評価に費用対効果が提出されるというのは、私は納税者を少しばかにされていらっしゃらないかなというふうに思います。つまりは、納税者の代表者が予算の適否について審議する場面では費用対効果の分析は出さないけれども、農水省さんが選んだ学者さんが審議をする場面では費用対効果を出しますというのでは、やはり納税者よりも農水省さんが選んだ組織内の評価の方が優先をされている、重く見られているという感じを受けてしまうということであります。

 費用対効果については、やはり予想、見込みの部分でも結構ですから出していただかないと、これはあくまで十八年度予算の審議をやっているわけでございますので、我々としては、では、一体全体何をもってその予算の適正な支出なのかどうかというのを判断すればいいのかということになってしまうわけであります。

 一部はもう既に出ているはずなんですね。例えば木材生産上の効果について言えば、昨年の質疑でも、主伐、それから更新というのは考えていない、間伐だけ三百二十四ヘクタールやるんだということですから、少なくとも、五年間に限れば、その間伐材がどのぐらいの金銭的な価値を持つのかということで木材生産上の効果は出るはずですし、あるいは、道路に転換交通量が発生するということでいえば、環境保全調査検討委員会においてそれが既に出されておりますから、実際に時間距離が十分、二十分長くなるということもわかっておりますので、では、そこの部分については余り効果がないなとか、こういった積み上げで効果というのははじき出せるはずなんですね。

 これは、費用対効果が出されるまでは、建設工事には少なくとも着手させるべきではないのではないか。補助金が盛り込まれていて、今回には間に合わないとおっしゃる。だから、補助金は出てしまうのかもしれないけれども、実際の着工に関しては、これは費用対効果を緑資源機構からきちんと聴取するまでは執行は認めない。百歩譲って補助金はつけるけれども、執行は認めないんだ、つまり建設工事に着手はさせないんだというようにすべきではないかと私は思いますが、最後に大臣の見解をお伺いしたいと思います。

玉沢主査 申し合わせの時間が過ぎてきておりますので、御協力をお願い申し上げます。

 川村林野庁長官。

川村政府参考人 先ほど副大臣の方から申し上げましたとおり、平成十八年度が期中評価の、再評価の時期に当たっておりまして、その中で費用対効果の分析も出てまいります。

 近々こういうことが行われるということでございますので、その結果を踏まえて判断してまいりたい、こういうふうに思っております。

松本(大)分科員 終わります。

玉沢主査 これにて松本大輔君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

玉沢主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。中川泰宏君。

中川(泰)分科員 それでは、私自身、農家をしておりましたので、十九年から入る経営安定対策事業を、新しい時代の農業が始まると。今まで個人の農家から、事業としてこれからは進んでいくわけであります。

 そうした中、行政改革の中の政策金融の改革が行われます。農林漁業金融公庫の分野について、農業、林業、水産業向けの超長期の低利融資機能は、資本市場が代替できない範囲に限って残すとなっておるところであります。しかし、私は、農業は同じ中小企業の法人とは少し違うということも含めて、法人になる中で、現状の実態を訴えて、その中でこの施策が必要であるということを申し上げたいと思います。

 まず、私は、京都の農家をリードする中央会というところの会長をしておりました。その中で、今、新しく法人ができ上がってまいりますと、例えば、十ヘクタールの米農家を新しくやろうと思うと、機械の購入等々で約五千万円ぐらいが最低必要であります。これを、小さな、今まである機械をいっぱい集めてきてというふうになりますと、これは事業としてはいけない、できないわけであります。

 また、京都が今日まで進めてまいりました京野菜、これも事業として大変有能な事業でありますが、これを新規でパイプハウスをつくってやろうと思うと、一ヘクタール当たり二千五百万円ほど建設費がかかるわけであります。しかし、このハウスは細い鉄のパイプ、ビニールでありますので、お金を借ろうとしても、担保価値の査定には入らないわけであります。

 そして、京野菜をつくる初めに、大体三年ぐらい土づくりをしなくてはなりませんから、事業としては三年ぐらいは所得がない。例えば京都府なら、新規で入った場合は、十五万とか二十万、若い子にお金を出してやって、そして三年間ほど面倒を見てやるという制度も入れておるところであります。

 さらには、機械は結構長もちしません。買いかえなくてはなりませんし、ビニールは三年に一遍、さらには中のネットは最低でも二年に一遍、交換をしてもらわなくてはならないわけであります。そうすると、運転資金も含めて、相当数のお金が要ることになります。

 また、我々農業というのは、努力、技術だけではできないところがあります。それは気候であります。周りの経済状況であります。

 例えば、京都の場合ですが、平成十六年の台風二十三号の被害を見ますと、私の地元、谷垣財務大臣の地元であります、一緒でありますが、そこでは大変厳しい災害を受けました。パイプハウスが、約二千棟のうち七百九十二棟がだめになったわけであります。また、京都の丹波の黒大豆、京のナシ、また京ミズナ、京カブラ、京の大根などの農産物だけでも三億円の被害を受けました。さらには、米倉庫がつかって、JAの施設も含めて、四千六百万円を上回る被害を受けたところであります。

 また、十七年度でありますが、我々農家にとりますと、重たい雨というのがあります。軽い雨と重たい雨。重たい雨が少し余分に降りますと、お米は倒伏して、倒れてしまいます。これは水分を含むわけであります。そうすると、丹後でコシヒカリが大量に倒伏をしてしまったわけであります。

 しかし、今、コンバインの機械が非常によくなっておりますので、稲刈りはやっていけます。ところが、倒れると、丹後は海の近くでありますので、砂が大量に農地に入ります。その砂も一緒にコンバインが引き上げていくわけであります。確かに、JAとか大きな施設は石抜き機というのを持っております。しかしながら、小さな施設は石抜き機を持っておりません。そうすると、結果として、出荷する段階になってから、お米が売れなくなったと。これだけでも、十七年度に五千万円の被害が出ておるところであります。

 さらには、ことしの冬でありました。大変大雪が降り、農家も必死の対策をいたしました。みずからがハウスのビニールを切って倒れないようにという努力をいたしましたが、結果として二百九十八棟がだめになったわけであります。このハウスを直すだけでも五千百万円というお金が必要でありました。ミズナなど京野菜が千八百万円も被害が出ておりまして、さらには、大根などは雪の下で凍ってしまって商品とならないということになりまして、七千八百万円の被害が出たところであります。

 しかし、農業というのは、先ほど少し申しましたが、自然環境だけでなく、例えば、京都でチューリップをつくっております。チューリップをつくっておるのに、ことしは灯油代が考えられないような値段でありました。その中で、出荷価格というのは一本二十円であります。灯油価格を入れますと、つくる原価が四十円もかかってしまうわけであります。しかしながら、二十円でも、ことし市場へ出荷をしておかぬと、来年買ってもらえないわけであります。損失があろうとも出荷はしなくてはなりません。中東がくしゃみをしますと、我々農家も風邪を引くというような今の時代であります。

 このように、農林業融資というのは、我々不安定な農家にとりますと、やはり政策金融は絶対必要でありますし、公的資金の担保がないと、なかなか事業として、法人として営んでいけないわけであります。

 そこで、農林水産省にお尋ねをいたします。

 農林漁業は自然に左右され、収益性が低いといった特性を有しております。公的資金などの政策的な配慮から融資は不可欠であります。今後、統合後の政策金融機関が特殊会社または独立法人に準じた法人になった場合、これまでどおり低利の資金の借り入れ等について支障がないのか、支障がないようにやっていただけるのか、お尋ねを申したいと思います。

井出政府参考人 委員お尋ねの点でございますが、御指摘のように、現在、農林水産省といたしましては、担い手に施策を集中して農政改革を行い、やる気と能力のある農家がより強い経営体になっていくことを後押しするということを進めております。農林公庫資金は、こういった担い手育成などの政策目的を達成するための重要なツールでございまして、今後ともこのような機能が十分発揮される必要があると考えております。

 農林公庫は、年末に閣議決定されました行政改革の重要方針によりまして、中小公庫、国民公庫等と統合されることになっておりますが、民間で対応できない農林漁業向けの融資については存続されることとなっております。

 今後の制度設計におきましては、この農政改革を推進する上で不可欠な農林公庫資金の機能が十分発揮される組織体制とするなど、農業向け融資に支障を来さないようにしていくことが重要であると考えており、努力をしてまいりたいと思っております。

中川(泰)分科員 ありがとうございます。

 今申し上げた実態のとおりに、農業とは、我々が普通の都会の人の感覚では考えられないような事態が起こりますので、今御答弁がありましたとおりに政策金融の中できちっと対処をしていただきますようお願いを申し上げる次第であります。

 そして、統合後の政策金融についてお尋ねをしたいと思います。

 閣議決定された行政改革の重要方針の中の「政策金融として残す機能を担う機関の組織形態、組織設計の方針等」を見ますと、中小零細、個人等の国内金融と国際金融はおのずと性格が違うことから、それぞれ政策金融として明確な旗印を立てるとともに、専門の窓口設置、人材育成など専門性の活用、強化に取り組むとするとされています。この表現どおり解釈いたしますと、農林漁業向けの融資の窓口は、中小零細、個人等に含まれてしまうのかな、そう解釈したらいいのでしょうか。

 そうだとすると、先ほど少し申し上げましたが、普通の中小企業と農業法人が同じことで扱われると、私は少し無理だと思います。例えば、中小企業なら決算書の三年分を出して融資を受けることができます。しかし、農業の場合は、現実とは違うわけであります。さらには、農業の場合は、まず技術であります。そして、どれだけいいものをつくるかということや、そうしたことが実績でありますし、本人がやる意欲があるかということが非常に大切であります。そういたしますと、先ほどにもありましたとおりに、十分人材育成された専門家がそこまで足を運んで見ていただきませんと不可能である、私は、これを同じ中小零細と個人の中に入れられますと、農業は無理だなと。

 特に今、世の中が人口減の時代に入り、土地が下がり始めております。恐らく十年後は、農地価格は今の十分の一以下に下がるのではないかなと予測いたします。そういたしますと、農林中金でも貸し付けを変えますと不良債権になってしまう、地元農協が融資をしてあげようと思っても、不良債権となってしまう。そのことを考えますと、農林漁業経営の不安定さ、特殊性を踏まえると、融資に当たっては、専門的な知識と金融のノウハウのもとに、独自の融資の相談窓口の設置が私は必要だと考えておりますが、どのようにお考えか、お教えいただきますようお願い申し上げます。

大藤政府参考人 お答えいたします。

 新政策金融機関の組織の具体的な設計につきましては、先生御指摘の行政改革の重要方針において示された考え方に沿って、今後、詳細な制度設計の中で検討していくこととされております。行政改革の重要方針におきましては、専門性の活用、強化のための仕組みについて検討を行うこととされておりまして、その際、専門の窓口設置など、専門性の活用、強化に取り組むとされているところでございます。

 今後、本日の先生の御指摘の点も踏まえつつ、窓口のあり方や職員配置のあり方を含め、具体的な組織設計において検討してまいりたいと考えております。

中川(泰)分科員 ありがとうございました。

 それでは、大変申しわけありませんが、きちっとした農林水産ができる窓口もつくっていただきますよう、御要望を申し上げておきます。

 次に、私は、京都で一番自信のあるのが京野菜であります。私自身、初めて農協長になったときに、地域を一軒一軒歩いて、農家の皆さん方に、京都府が、そしてJAが、市町村が一体となって進めております京都府の農林水産物ブランド確立推進協議会に基づき、京野菜をつくってえなと必死になって農家を歩きました。当時は、農家の皆さん方は、何ぼ組合長が言っても、農協と役場の言うたものでもうかったためしがない、せやから信じられぬという話でありましたが、だんだんと説得に応じていただきまして、当時は京都はタマネギをつくっておりましたが、お年寄りでもできる楽な京野菜をつくってくれと言いました結果、どんどんとふえ始めてまいりまして、中には、京野菜をつくって十年で一億円貯金を残すというような農家も生まれたところであります。

 しかし、気象などに左右される野菜の生産は、価格の低迷で経営が危機にさらされることが多く、価格安定対策が求められております。京都府では、規模の小さい産地においては、安定生産が困難であるため、価格変動が大きいのが現状であります。現在、国の施策として、指定野菜価格安定対策や特定野菜等供給産地育成価格差補給事業がありますが、京野菜は指定されておりません。しかし、地域の特産として、京野菜は我々の経営の中心、柱となってまいりました。

 そこで、京都府では、独自の経営安定対策で支えております。この対策に国の支援をお願い申し上げたい。三位一体改革により、国庫補助金の交付金化により、地域の裁量権を大幅に認める方針もあり、大産地、大規模農家といった画一的な基準ではなく、京都の近郊にある小さな農家も農業をやっていくという後継者づくりのためにも、そうした施策をお願いしたいと考えます。

 特に、中川農林大臣は、私自身も北海道に講演を頼まれてJAの時代に何度か行きましたが、北海道の人たちは、一番農業の実態をわかっていただけるのが中川大臣だと、それぞれ農家の皆さん方からお聞きしたところであります。京野菜など地域特産野菜の振興策について、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

中川国務大臣 中川委員は、長年、農業あるいはまた農業者の組織のトップとして大変御活躍されております。また、先ほどは、京都のあるいは農業のいろいろな大変な部分、二次産業、三次産業とは違う部分があるという御指摘を改めて拝聴した次第でございます。

 言うまでもなく、自然相手、生き物相手のお仕事でございますから、その条件によって、できるもの、とれるものが違ってくるということでございます。北海道のように大規模に基幹的な農作物をつくる地域もあれば、京都のように、まず長い歴史、文化、伝統があって、そして、京都ならではの自然条件、京都のおいしい水も含めまして、そういうところで長い間培われてきた京都ならではの農作物、とりわけ京都でいえば京野菜等々ございますけれども、そういったような農業形態、農産物もあるわけであります。

 要は、地域によって、その地域の農業をどうやって発展をさせていくかということでございますが、最近は、特に、つくっただけではなくて、つくったものを顧客に喜んで買ってもらえるという共生の関係が、ある意味では強い農業、あるいは我々が目指したい施策の一つでございます。

 そういう観点から、いわゆる地域特産的な農作物、いろいろございます。代表的な例でいいますと、秋田の比内鶏でありますとか、あるいは京野菜がたくさんございます。賀茂ナスであるとかミズナであるとか万願寺トウガラシであるとか、いろいろございますけれども、特に都市のお客さんは、京野菜、食べたい、あこがれている。先日は、ある大きな日本食文化の大会がございまして、そこでも京野菜コーナーというのがあって、大変な人気でございました。私、出席いたしましたけれども。

 そういうものをつくっていく、そして、それを期待している消費者が日本じゅうにいっぱいいるわけでありますから、ぜひ、京都ならではの強みを生かしていただきたい。つまり、北海道と京都、あるいは東京近郊や沖縄、それぞれ農業形態が違いますから、オーダーメードで、さっき中川委員おっしゃったように、組合長みずからが一軒一軒回って、こういう農作物をつくろうよと。そういうオーダーメードの農業政策あるいは農作物生産をまずやっていただく、それの後押しを我々としてはさせていただきたいというふうに考えているわけであります。

 京都におきましては、行政と農業関係者が一体となって、伝統野菜のブランド認証をやっているというふうにも伺っておりまして、そういう意味で、そういうオーダーメードの施策を我々としては応援をさせていただく。制度としては、強い農業づくり交付金なんという制度もございます。これは皆さん方がある程度自由にやっていただくことに対しての交付金制度でございますけれども、こういったようなものを、強い農作物をつくる、売れる農作物をつくる、ブランド力のあるものをつくるということに対して、応援をさせていただく。

 もちろん、先ほどのように、自然災害であるとか価格暴落であるとか、そういうことに対してのセーフティーネットというものは国の農政としてもしっかりやっていくわけでありますけれども、京野菜なんというのは、ある意味では攻めの部分の代表例ではないかと私自身も思っておりますし、大いに伸ばしていただけるものだというふうに思っておりますので、攻めの部分についても、我々としては大いに後押しをさせていただき、お客さんが好まれるものをもっともっとつくっていただけるようなそういう農政というものを今後ますます進めていきたいし、その代表例、トップランナーが私は京野菜ではないかというふうに思っております。

中川(泰)分科員 大臣、ありがとうございました。

 我々地方の農家にとると、やはりそれぞれ地方に合った農業施策を、農業をということでありますし、品目横断の関係においても、そうした地方がやっていけるような体制づくりに、一番農業のことを知ってもらっております中川大臣でありますので、よろしくお願いを申し上げます。

 また、もう一点でありますが、今回、商標法が改正されまして、今年四月一日から地域団体の商標制度が導入されるわけであります。我々京都では今、京野菜については、このブランド化をするためには、例えばネットの分厚さまで決めて、それは、万が一農薬をやった場合、遮光度がありますから、光が入ってくるあれで農薬の分解速度が違うんです。だから、ビニールまで一定にして、さらには、一番最初の、虫が入らないようにするため〇・八ミリのネットをかけて、これも何年かに一遍買いかえて、それから、一年かかって、野菜をつくらずに土と草引きばかりをして、この京ブランドという名前をとってきたわけであります。そして、日本一の野菜になって、日本一の価格にもなりました。

 また、大臣が言っていただきましたが、壬生菜、賀茂ナス、九条ネギ、万願寺トウガラシ等、地域の名前を出した野菜が全国的に売れ、今は和食だけではなく洋食にも多く使われるようになったところであります。

 しかしながら、これが売れ始めると、似たような商品が出てまいります。ヴィトンやシャネルがにせのブランドができるように、京野菜も、京都でつくらなくても京野菜という名前で現実に売られております。恐らくミズナなんかは、京都で生産するもっと多くのミズナが日本国じゅうに京ミズナとして売りに出ております。

 京都府でも、この京野菜をブランド化するために単費で三十二億円も投資をしてもらっておるわけであります。ところが、このことを考えますと、私は、何にもしない県が名前だけ使うて商いをする、我々の苦労のあれを得るということがいいのかなという心配をしております。

 今回のそうした新しい商標登録やそういうことがきちっとできる法改正もあるわけでありますが、もともと使うておった名前は使えないとかいうこともあるわけであります。そういたしますと、私は、他県において京都府に係る地域ブランドを使用することについて、法規制をちゃんとしなかったら、例えば、北海道は北海道、秋田は秋田の比内鶏とか、順番にその名前を認めていなかったら、農家がこれから法人化して苦労していくのに、できるのかという心配があります。

 特許庁の考えを聞かせていただきたいと思います。

脇本政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、本年四月から新たに導入される地域団体商標制度におきましては、地名と商品名のみから成る商標でありましても、農業協同組合等が使用した結果、隣接する都道府県にまたがって広く知られている等の要件を満たしている場合には、地域団体商標として登録を認め、第三者の使用を排除することができます。

 しかしながら、第三者との権利調整の観点から、地域団体商標の出願前から不正競争の目的なく同一の商標を使用している者には先使用権を認め、引き続き使用することを可能としております。ただし、商標権者と先使用者が同一の商標を使用しております場合には、消費者にとりまして出所の混同を生ずる可能性がありますことから、商標権者から先使用者に対しまして商品に産地を表示するよう求めるなど、混同を防ぐのに適当な表示を付すよう請求することが商標法第三十二条の二に基づきできることとしております。

 以上でございます。

中川(泰)分科員 ありがとうございました。

 終了でありますが、まず申し上げておきますけれども、何ぼ、ちっちゃな里の産地を表示いうても、表は京野菜であります、裏に、眼鏡をかけて見なくてはいけないぐらいな字で、茨城産であります。それが本当に食の安心、安全につながるのかな。やはり私は、農家とか地方の皆さん方の苦労をきちっと認めてもらえるような体制を、特に中川大臣にお願いをしておきます。よろしくお願いいたします。

玉沢主査 これにて中川泰宏君の質疑は終了いたしました。

 次に、近藤洋介君。

近藤(洋)分科員 民主党の近藤洋介でございます。本日は、予算の分科会で質問の機会をいただきましたことに心から感謝を申し上げます。

 私、ふだんは経済産業委員会におりますが、中川大臣には半年ぶりぐらいに質問をさせていただきたいと思います。農業政策は、私も議席を預かって以来、委員会は農林委員会には所属しておりませんが、私個人的には、農業政策は私にとっての一つのライフワーク、政治家としてのライフワークだと思って、今後も引き続きしっかりと見ていきたい、そして提言をしていきたいと思っている大事な分野でございます。そんな思い入れも込めまして、きょうは質問に立たせていただきたいと思います。

 まず最初に、農政改革、本委員会でもたびたび質問されているかもしれませんが、農政改革についてお伺いしていきたいと思います。

 このたび、経営所得安定化対策大綱、昨年の十月に省議決定されたことを受け、関連法案が今国会に提案されると伺っておりますが、この経営所得安定対策等大綱、いわゆる農政改革でありますけれども、考えてみますと、平成十一年の七月に施行されました食料・農業・農村基本法、戦後の大きな農政転換のこの基本法改正の流れの中の一つの形なのかなと受けとめているわけでございます。

 考えてみますと、この当時、平成十年、十一年は、中川大臣が農林水産大臣としてこの基本法の策定に深くかかわられて、リーダーシップを発揮されたと私も記憶をしております。その中で、この基本法を、さまざま条文を見ますと、例えば、第二十一条では「望ましい農業構造の確立」ということで、農政の構造改革のことをうたっておりますし、さらには、三十条では「農産物の価格の形成と経営の安定」というところで、農産物の価格が需給状況及び品質評価を適切に反映するように、需給状況を反映するようにというところに、これまでの価格支持から大きく農政を変えようという思い。さらには、価格が変動する部分について、この二項では、緩和をするために適切な施策を講ずるものとする。これは、その後の新たな米政策等々で着実に実行されてきたと受けとめております。その意味では、今回の品目横断の施策というのは、この基本法にのっとった話だと思います。

 ただ、一方で、あれからもう七年、八年であります。農業というのは、多くが年に一回しかできませんから、工業製品と違いますから、そう簡単に大きくかじをぐっと切ることができないのは、私も重々承知しておりますが、感想を申し上げれば、随分時間がたったなと。その中で、中川大臣が再登板されて、これの一つの総仕上げをされるのかなと受けとめております。その意味では、我が党の考え方は、民主党の議員の考え方は、さまざまあるでしょうけれども、私は、個人的にはこの考え方、賛成でございます。

 ただ、一方で、大臣、私も地元が山形県で、農業県でありますが、さまざまな生産者の方に伺いますと、ぶっちゃけて言えば、今回の農業政策の大綱というのは、要するに四町歩持たないと切り捨てられるんでないか、四町歩持たない農家はもうだめなのかということだとか、二十町歩の集落営農というけれども、そう簡単じゃないよ、どうするんだという声が、正直言って、大変聞こえてくる。小さい農家、おれたち五反とか一町歩の農家はもうだめなんじゃないか、切り捨てられるんじゃないかという声も、地元を歩くと率直に聞くわけでございます。そういう意味では、規模要件のみがPRされておるなという気がするわけです。そして一方で、小規模農家は切り捨てられるんじゃないかという不安感が現場にまだあるのも事実だろうと思っております。

 今回の新たな経営安定化対策を導入した政策的な意義、意図を改めて大臣にお伺いしたいと思います。

中川国務大臣 近藤委員御指摘のように、現在の食料・農業・農村基本法は、私が農水大臣のときに御審議をいただき、スタートをしたわけでありますけれども、そのときに近藤委員は農政担当の敏腕記者から政治の世界への志を決められたという時期でもございました。はっきり覚えております。

 それまでの農業基本法は、あくまでも生産サイドを中心とした法律でございましたけれども、今、二十一条、特に三十条の御指摘がございましたが、品質とか価格変動、これはある意味ではやむを得ないものである。消費者と生産者との関係においては、これはもう当然、価格変動もあるし、消費者は品質のいいものを買いたいしということになる。しかし、それは生産者と消費者との間の対立関係であってはならない、また、断絶関係にあってもならない。消費者の方はいいものを欲しいし、また安全、安心なものが欲しいし、先ほどの御指摘のように、顔の見える、山形のだれだれさんちのサクランボ、山形のどこどこ地方の和牛、そういう時代になってきているわけでありますから、それにこたえれば、よりよいものが高く売れる、そういう農政に転換をしていくことが、生産サイドあるいは生産地域、そしてまた都市に住む消費者の皆さんにとっても、両方にとってもハッピーであるというのが、この法律の私なりの理解でございます。

 そういう流れの中で、基本計画をつくり、五年に一度見直しをしますということになって、五年たったので基本計画の見直し作業をしていき、その結果、現時点においては、その具体例の一つとして、品目横断の云々という政策を中心としてやってきているわけでございまして、結果的には、十九年度からを予定しておりますけれども、そういう幾つかの柱になりつつあるわけでございます。

 その中で、大規模でなければならないというのはあくまでも一つの要件であって、根本は、やる気と能力のある農家がもうかるようにしようではないかということでありますから、もちろん四ヘクタール、あるいは北海道は十でありますし、また、二十という要件もありますけれども、小規模であっても、いろいろな工夫をして、そしてまたいいものを、つまり結果的に高収益のものを上げるような農家、よく熊本の例を私は出すんですけれども、熊本の農家は非常に規模が小さい、しかし、米、麦、そしてまた裏作でもって高収益のものをつくる。労働時間も相当、年間かけてやっている。こういう農家、これはもうさっき言った趣旨に当然合致するわけでありますから、規模だけではない、根本は、やる気と能力のある農業者が、さらにいいものを消費者、国民に対して供給できるようにしていくことによって、日本全体、消費者と生産者との間の共生によって、さらに食に対するレベルアップができるようにしたいというのが、今回の改革の趣旨でございます。

近藤(洋)分科員 大臣、今までの農業政策というのは、基本法制定前の農業政策というのは、それぞれ諸先輩方の議員の先生方がさまざまな苦労の中でつくられてきたことは評価しますが、ただ、一方で、すべてを救おうとして、結局すべてがだめになってしまった、結果として。すべてを救おうとして、結果として全体が地盤沈下してしまったという評価を受けても仕方がない部分もあるのかなという気がしているわけでございます。

 その意味では、今回の所得安定化対策は、とにかくやる気のある農家を支えていくんだ、規模のみでないんだという、その精神をしっかり持っていただきながら、これは要望でございますが、農業生産者の方は当然消費者の方との対話が重要である、全くそのとおりだと思います。同時に、政策を遂行するためには、やはり、その政策を受ける方々、これはもう消費者であり生産者であり、こういう方々との対話、とりわけ生産者の方々との対話というのは必要でありましょうし、法案審議で国会の場でも議論したわけでございますが、現場の農林水産省におかれましても、生産現場といいますか、生産者の方については、やはりまだまだ不安視、混乱されている方も多いやに聞いておりますので、ぜひ対話の方をしっかりやっていただきたいと思うわけでございます。

 このいわゆる新たな農業政策についてもう一点お伺いしたいんですが、今回の農政改革では、農地、水、環境保全の向上という、これまでになかった対策の導入も計画されています。これは、ある意味では、政策効果とすれば、集落をしっかり守るといいますか、水を管理するという観点からこういった観点を入れていらっしゃるとは思うんですけれども、これは一つ間違えますと、間違えますとというか観点を変えますと、いわゆる農林水産関係の公共事業をふやすのかともとられるわけでございます。

 私は、公共事業がすべて悪いと言うつもりはないんですが、ただ、農政改革、基本法のころの議論に立ち返りますと、あのときは明らかに農林水産省予算の中で公共予算の比率が五割を超えてしまって、ちょっと多くなり過ぎていやしないか、農林水産省全体の中での公共予算の占める割合が余りに多くなり過ぎたのではないかという議論がたしかあのときあったように記憶しております。実際、委員長のお許しを得て配付させていただいた資料の三、農林水産省総予算に占める公共事業費、平成十一年度はその比率が五一・六%ございました。当時、ウルグアイ・ラウンド対策という予算も組まれていましたから、さまざまな要因があったかとは思いますが、しかし五割を超えて、平成十二年も五割を超えて、ずっと五割、五割、五割を超えていたわけですね。新たな政策とともに、公共事業の削減論ということもあったんでしょうけれども、最近は五割を下げる形になってきました。平成十八年度においては四四・六%でございます。

 ただ、やはり大臣、ここは農業予算の構造改革も今回の品目横断の中で一つ観点に置いて考える、踏み出すべきじゃないか。当初七年前、思い切って農林水産省予算の構造を変えていこうという趣旨があったんですが、まだ実体的にはそれほど大きく農林水産省予算の構造が変化されたとは、残念ながら思えません。公共事業費はいわゆる政府全体の方針の中で減ってきたものだと思っていますので、農林水産省の構造改革が進んだとはなかなか表面的には思えないんですが、今後の農林水産の予算の構造について、どのように改革をしていくお考えなのか、お伺いしたいと思います。

中川国務大臣 農政、先ほど申し上げたように、大事な使命を今負っているわけでございますが、その手法の最大の一つが予算であるわけでございますが、その予算につきまして、今近藤委員からいただいた資料でいうと、五一・六から四四・六に公共事業費が減っていったという御指摘、また、私の方からは、六千億円、十一年度から十八年度までの間に減少しておりますが、公共事業予算はその中で五千億円を占めているという、またそれと同じようなデータもございます。

 公共事業も、必要なものは、厳しい財源の中ではありますけれども、まだまだやっていかなければいけないものもあるわけでございます。しかし、全体として、農地、水、環境とかあるいは災害対策とか、そういった面からの公共事業予算もありますし、また、国際競争力強化でありますとか、そういったものもありますので、限られた予算の中で、できるだけの知恵を絞って、最適にやっていくのは何か、緊急的に何か、中長期的に何かということを考えた上でやっていきたいということでございまして、一概に公共事業予算をどんどんどんどんゼロに向かってやっていくということは、これはまた私はそういう考えは持ちませんし、また、単にシェアでもって固定的にやるということも、私はそういうふうにも考えておりません。

 現在やるべき最大課題、といっても、冒頭おっしゃいましたように、農業というのはことしだけの問題じゃなくて、土にしても、あるいはまた生き物にしても、何年も何年も何十年もというタームで考えていかなければいけない。また、食料政策からいっても農村政策からいってもそういうタームの政策でございますから、そういう観点から、限られた中ではございますけれども、最大限の、ベストミックスといいましょうか、適正配分の予算をつくり、そしてそれをきちっと執行していきたいというふうに考えております。

近藤(洋)分科員 次の話題にいきたいと思います。果樹の枝折れ対策についてお伺いしたいと思うんです。

 ことしは大変な豪雪でございまして、私の地元の自宅の前は、今週の日曜日もまだ一メートル雪が積もっております。さすがに道路には雪はありませんけれども、まだ一メートルと。米沢市というところですが、ピークのときは二メーター五十ぐらい、もう家がほとんど雪室というか、かまくらの中に住んでいるような状況で、大変な豪雪でございました。

 雪の量は随分、一般市民としてはもう少なくなってきたんですけれども、心配なのは果樹の枝折れでございます。水を含んだ雪で、果樹農家の方々は今回の豪雪で、畑での雪の除雪作業で随分苦労されておりますが、いよいよ雪が重くなりまして、枝折れ被害がこれからどんどん出てくるのかなと懸念をしているわけでございます。

 そこで、ぜひ農水省の、これは事務方で結構でございますがお伺いしたいんですが、農林水産省として、こういった果樹の枝折れ被害が予測されますが、どのような支援を行う考えがあるのか、ぜひお伺いしたい。

西川政府参考人 今回の大雪で被災された方々に対しては、心からお見舞いを申し上げたいと思います。

 私ども、この災害に対しましては、融資であるとか共済金の早期支払いであるとか、あるいは技術指導とかいったことで、いろんな対策をもう既に行っております。

 今委員御指摘のとおり、まだ現場には多くの雪が残っておりまして、被害の全容というのは雪解け時期に判明するということだろうと思っておりますが、当面は、私どもとしては、できるだけ早く被害状況を把握しようということで、山形にも担当官を派遣したりしておりますけれども、いずれにしても、被害の早期把握に努めるということをしてまいります。また、被害を受けられた農家の方々が一刻も早く経営再建できるよう、金融措置等も含めまして、共済措置も含めまして、対応していきたいということでございます。

 また、この雪が解けた後にならないとなかなか被害の実態はわからないわけでございますけれども、今回のそういう被害を大幅に受けたところにつきましては、災害を契機として、優良品種への改植など、力強い産地の構築に向けた構造改革もするような産地づくりというものにつきましては、強い農業づくり交付金という私どもの予算がございます、こういうものを活用していただければそういう復旧もできるということでございますので、こういうものを通じまして積極的に支援していきたいというふうに考えております。

近藤(洋)分科員 今御答弁ございましたように、品種転換ですか、を図ろう、要するに、例えば仮に木がその畑で全部だめになってしまった、その場合は、新しい品種に転換しようという場合は支援する、こういう制度があるということでございますね。

 農業は米から畜産からさまざまあるわけですけれども、私の地元だけじゃないと思うんですが、果樹農家というのは比較的元気がいいんですよ。例えば、私の地元でいえば、サクランボがあり、ラフランスがあり、リンゴはちょっと今、価格が下がって、何とかリンゴ農家頑張ってもらいたいなと思っているんですが、いずれにしろ果樹農家というのは、総じて見れば、若い担い手がいらっしゃる分野でございますよね。やる気のある農家もいらっしゃいます。ですから、そのやる気をそがないように、そういう前向きのことがあるんだよということを積極的に通知して、自治体とも連携して、こういった強い品種転換なり、前向きなものに、災い転じて福となすんだというところに対しては、積極的に対応をお願いしたい、改めて強調したいと思います。

 あわせてもう一点、この関連で。

 農業共済に入っていれば、被害は、ある程度共済金がおりるわけでございますけれども、農水省の方に伺ったら、果樹共済は大体二割から三割の加入率だ、こういう話でございました。米は強制加入ですからいいわけですが、果樹の場合は二割から三割。

 これはそもそも考えてきますと、農業共済制度というもの、農家の方々に話を聞きますと、共済は余り入りたくないなという方が正直なところ多いんですね。米も、強制加入だけれども、正直言って余り入りたくないなと。その心は、二つあります。掛け捨てだから、被害に遭わなきゃ取られるだけだから、まあちょっとなというのが一つ。二つ目は、どうも、共済制度、共済の仕組みそのものに対してちょっと不信感が一部あります。何となく、地域の顔役に言えば少し共済金が多くもらえるんじゃないかとか、そうじゃないのもあるんじゃないかとか。どうも、共済金の支払いがそういうことで変化するんじゃないかなんて思っている方も随分、これは誤解だと思うんですけれども、相当な誤解だと思うんですが、おるようでございます。

 いずれにせよ、果樹共済が二割から三割というのは、僕は共済制度そのものは大事な制度だと思うんですけれども、米と比べて、強制加入の米は一〇〇%、片っ方は二割、三割と。信頼を得るような制度にすることも含めて、この農業共済、果樹共済のあり方を考え直す必要もあると思いますし、加入促進策が必要だと思うんですが、農林水産省はどう考えているでしょうか。

井出政府参考人 委員お尋ねの果樹共済についてでございますが、これまでも加入促進を図るために、農家のニーズをいろいろお聞きして、また、農家によっての不公平感があるというようなこともございましたので、例えば暴風雨等の特定の災害だけを対象にすることによって共済掛金を安くするような共済方式ですとか、農家が防風ネットなどの防災施設を用いた場合には掛金を割引する制度を導入するとか、あるいは、過去の被害の発生状況によりまして地域や農家をグループ分けしまして、掛金に差をつけるとか、制度改善にはいろいろ努めてきたところでございますが、御指摘のように、なかなか加入率が上がってこないわけでございまして、それにはやはり制度のPRという面でまだ足りないところがあるのかとも思っております。

 また、損害評価につきまして、もちろん適正な手順に基づいて実施はしておるわけでございますが、その結果につきまして、やはり、農家の方々に十分な説明をする、なぜこういう査定になったのかということをやはりはっきりと御説明するということが大事じゃないかと私どもも思っておりまして、その趣旨に即して農業共済団体をさらに指導いたしまして、加入促進に努めていきたいと思っております。

近藤(洋)分科員 ぜひ農業共済、農家の方々に、しゃれではありませんが、ノーと言われないように、透明な、しっかりした制度にしてもらいたいと思うわけであります。

 最後の論点で、牛肉の話をお伺いしたいと思います。

 大臣は、今国会で、牛肉問題でなかなか御苦労をされました。いずれにしろ、今回の米国産輸入牛肉、輸入停止措置をされているわけであります。アメリカの政府もさまざまなレポートを出しているようですが、時間をかけてといいますか、しっかりとした対応を双方でとっていただきたい、日米両国でしっかりとっていただきたいと思うわけであります。

 この牛肉輸入停止の期間、私は、国内の畜産農家の方々にとってみますと、輸入がないというのは、それだけ消費が、マーケットが減りますから、長期的には生産者の方にとってもプラスじゃないと思っているんです。ただ、今の畜産業、肉牛の話を考えますと、この輸入停止期間を一つの機に、これは国産牛肉の振興といいますか、活性化を図る大きなチャンスと言うと、大臣のお立場からはチャンスとは言いにくいんでしょうけれども、ある意味では一つの大きな転機になるのかなと、それなりの期間が予想されますので。この間に国産牛肉の振興を図る大きなチャンスの機会だと、私はそう思うわけですが、その支援策等、お考え方をお伺いしたいと思うんですが。

中川国務大臣 日本の牛肉、とりわけ米沢牛とか山形牛を含めたいわゆる銘柄牛、ブランド牛というのは、日本だけではなくてもう世界的に人気があるわけですね。先日も、報道によりますと、米国産の牛肉を日本がストップしたにもかかわらず、アメリカ大統領は神戸ビーフを食べているというようなニュースまで報道されておりました。

 世界じゅう行っても、昔は、日本の牛肉は、はしで切れるぐらいにやわらかいから、これは肉ではないというようなことを、つい十年か二十年前には言われていたんですけれども、日本のビーフ、神戸ビーフ、米沢ビーフといって、世界じゅうの人たちが今日本の牛肉を期待しているわけでございます。もちろん、国内においても、適正な価格でおいしいものを食べたいという人がいるわけであります。

 それから、農業政策面からいいましても、自給率の観点からも、あるいはまた安定供給の面からも、消費者ニーズにこたえる面からも、やはり、国産牛の振興というものは、今までもやってきておりますし、今後もやり続けていきたいというふうに考えております。この状況を利用してという考えは私はございません。今までも努力してまいりましたし、今後も、山形であろうと、また私の地元北海道であろうと、それぞれ産地間競争をしながら、世界のトップ水準の肉、主査の岩手県の前沢牛であるとか、いろいろな牛肉が競争し合いながら、全体として、日本のお客さん、世界じゅうのお客さんに、いい肉が、国産の肉が供給できるように今後とも努力していきたいというふうに考えております。

近藤(洋)分科員 最後に、関連して、その肉なんですけれども。

 日本の畜産、特に肉牛、米沢牛とか山形牛の生産者の方、特に流通の方々が心配しているんですけれども、だんだん将来的に生産者がいなくなるんじゃないかという心配も感じている、特に若い流通関係の経営者の方が多いですね。大規模化に随分なっているんですけれども、賄えるんだろうか、このブランドを維持できるんだろうかというふうに心配している方がいます。この期間が一つの、ある意味で猶予期間をもらったというぐらいの気持ちで、やはり振興を図らなきゃいかぬと私は思うわけであります。

 最後に、一点。資料を配付させていただいておりますが、肉牛の、いわゆる子牛と肥育というのは、御存じのとおり違うわけでございます。上の方は子牛の生産、鹿児島が一位で、二位が宮崎、三位が大臣御地元の北海道、こういうことであります。

 二番目の表は、いわゆる肉専用の肥育牛の飼育頭数で、一位鹿児島、二位宮崎、こういう順番なんですが、ちなみに、私の地元の山形県は、正直言って、子牛はほとんど九州や各地からいただいて、そして二十カ月以上育てて、米沢牛、山形牛として売っているわけです。これはもちろん、一番長く育てるところの牛ですから、これは全然問題ないわけであります。私自身も、実は、生まれ落ちたのはアメリカ合衆国でありましたけれども、育ったのは山形県ですから山形産だと、こう言っているわけですから、全然問題ない。

 問題ないんですが、ただ、ブランド力というか、そういうことをしっかり考えると、いわゆる繁殖と肥育の一貫生産ということもやはり一つ大事なのかなという気がするわけでして、この辺の一貫体制というのも、一つの、ブランドづくりとして、これから大事な時期になると思うんですが、そのための農林水産省としての考え方、支援策があれば、ぜひ最後にお伺いして、終わりたいと思います。

西川政府参考人 お答えします。

 銘柄牛などの地域ブランドの確立を図っていくということは、地域内で子牛を生産して、肥育まで、一貫した取り組み、これが大変重要なのではないかというふうに考えております。

 このため、私どもといたしましては、優良な繁殖雌牛の導入による能力が高い子牛の生産、地域内での育成肥育の奨励など、地域内一貫生産のための取り組みに係るいろいろな活動に対して支援をしているというところでございまして、これからもこれについて支援をしていきたいというふうに考えております。

近藤(洋)分科員 私も旗を振っていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 終わります。

玉沢主査 これにて近藤洋介君の質疑は終了いたしました。

 次に、糸川正晃君。

糸川分科員 国民新党の糸川正晃でございます。

 一般質疑では大臣に何回か質問させていただきましたが、本日は農水省所管の分科会ということでございますので、私の今の地元が福井ということもありますので、そういうことも絡めながら質問をさせていただきたいと思います。

 早速でございますが、現在、佳境を迎えておりますWTOの農業交渉というものは今後の農政を左右する重要な交渉であるというふうに考えております。この交渉の結果次第では、我が国の農業に多大な影響を及ぼすというふうに思います。また、国内におきましては、農業従事者の減少、これは高齢化によるものでもございますが、農政は今大転換期を迎えているのかなというふうに思っています。このため、食料の安定供給など、農業の果たす役割を考えたとき、政府としては農政改革を積極的に進めるべきだ、これに基づく各般の施策を展開する必要があるのではないかなというふうに思います。

 今後、どのような農政改革を行っていくのか、まず農水大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

中川国務大臣 まず、先ほどもちょっとお話が出ましたが、自給率が日本の場合にはカロリーベースで四〇%ということは、先進国の中で余りにも低過ぎる。せめて、少しずつ少しずつでもいいから、何もアメリカやフランスやイギリス並みとは言わないまでも、少しでも上げていくことが文字どおり国民の生命、健康の維持のために大事である。そのためには、日本の中でしっかりとした農家、つまり農業生産者がいなければならない。

 しかし、今、糸川委員も御指摘になりましたように、国際競争力もあります、消費者の嗜好もありますといういろいろな条件の中で、自給率という観点からも、また消費者のニーズにこたえるという観点からも、農業サイドもそういうものに打ちかったり、そういうものにこたえていきながら頑張ってもらわなければいけないということが前提だというふうに思っております。

 そういう観点から、今回、やる気と能力のある農家にさらに頑張ってもらって、もうかってもらって、そしてまた消費者もいいものを安心して食べられるような体制をつくっていく。もちろん、輸入の部分についても安全、安心というものが大前提でございますけれども、より力強い日本の食料政策、農業政策、そして、そのためには、農業者あるいはまた農業に従事するいろいろな関係者の皆さんが、そういう目標が実現できるようにするために施策を遂行していきたいというふうに考えております。

糸川分科員 今大臣がおっしゃられている内容に付随すると思うんですが、去る二月二十四日、十九年産から新たに導入する品目横断的経営安定対策に関する三つの法案が閣議決定されたというふうに思います。これは国会に提出されたところでありますが、本対策は、これまでのようなすべての農業者を対象とする施策を見直し、担い手に対象を限定した対策として導入されるわけでございます。

 これは、なぜ本対策は担い手に限定した対策なのか。すべての農業者を対象とするべきではないのかなというふうに思うんですが、そこの御見解をお聞かせいただけますでしょうか。

    〔主査退席、山本(公)主査代理着席〕

中川国務大臣 日本の農業者のカウントの仕方はいっぱいあると思うんですね。農地を持っていれば農業者、あるいはまた販売していれば農業者、あるいはまた一定の規模以上とか、あるいはまた認定農家とかいろいろなカウントの仕方がありますけれども、一番広い概念でやっていくとするならば、冒頭申し上げたような目標を達成するためには、どうしてもプロとしての意識と技術と能力によって、結果として国民、顧客に対して買ってもらえるようなものを、適正な価格で買えるようなものを供給する必要があるわけです。そのためにはコスト削減も必要でしょう。また、よりいいものをつくることも必要でしょう。また、量を確保することも必要でしょう。いわゆる一番広い概念でやっていくということになると、結局は、その人たちに基準を合わせるとすると、冒頭申し上げた目標を実現することは極めて難しい。むしろ、逆方向に行くのではないかという危惧を私は恐れております。

 そういう意味で、ほかのところで十分収入のあるような方々もいらっしゃる。しかし、片方では、もう農業しかやっていけない、おれたちはプロとして頑張るんだといって一生懸命頑張っている皆さんもいらっしゃる。そういう意味で、私は先ほど第一問で、御質問に対して答えるための担い手、担い手というか農業者として、いわゆる担い手という方を前提としてこの施策を進めなければいけないというふうに考えております。

糸川分科員 ぜひその担い手という部分で、どの人が本当にプロなのか、この人はプロと言えるのかどうかというところを審査するわけだと思いますので、しっかりとそれは見きわめていただいて、本当は私もプロだったのにという人があぶれないようにしっかりと見ていただければなというふうに思います。

 今回の対策では、個別経営のほかに集落営農というのも対象というふうにされていると思います。小規模農家等についても集落営農の組織化によって対策の対象となるわけでございますが、ただ、集落営農として対象となる場合には一定の条件を満たす必要があって、現場から、特に経理の一元化ですとか法人化の達成が難しいのではないかという声があります。

 このような中で、新たな経営安定対策への制度移行というのをどのように円滑に図っていくのか、お答えいただけますでしょうか。

井出政府参考人 集落営農をこの制度に乗せていくための要件の一つといたしまして、経理の一元化とか一定期間内、五年間ですが、法人化を目指してほしいというようなことを申し上げておりますが、この点について、これが難しいんだという声があることは承知いたしております。

 ただ、いわゆる個人、法人と伍して担い手として位置づけられるためには、こういった集落営農がやはり持続的かつ安定的に存在していくということがやはり最低限必要ではないかと考えております。そのためには、やはりその集落営農組織名義で口座を開設し、農業収入をその口座に入れて管理をする、そこから真の意味での集落営農組織というのが始まると考えております。

 このため、私どもとしては、農業関係団体と連携をとりまして、組織づくりの指導ですとか先駆事例の情報提供などで現場への働きかけを今既に行っておりますけれども、十八年度予算では、特に集落営農組織をつくっていくためにはリーダーというものが非常に大事でございますので、そのリーダーの活動を育成する、あるいはそういった経理一元化のための会計処理に対する研修等を支援するということにいたしております。

 こういった支援策を講じつつ、組織化、法人化を進めていきたい、こういうふうに考えております。

糸川分科員 品目横断的経営安定対策の導入によって、今のような助成の対象が担い手に絞られたという話が先ほどもあったわけです。対象とならない農業者というのは、これは生産が継続できなくなってしまうとか、それから国内での農業の生産の減少につながっていくのではないかなというふうにも考えるわけでございます。

 この対策の導入によって食料自給率の向上が図れるのかどうか、お答えいただけますでしょうか。

井出政府参考人 先ほど大臣からお答えいたしましたとおり、今度の対策の対象者につきましては、我が国農業の構造改革を加速化するという観点から、やる気と能力のある担い手を対象とすることにいたしているわけでございますが、こういったやる気と能力のある、生産性の高い担い手が生産の相当部分を占めるような強靱な農業構造の実現を図りまして、そういったことを通じまして、農産物の生産コストが引き下げられたり品質の向上が図られる、こういうふうに考えております。また、消費者や食品産業のサイドから見ましても、その需要に的確に対応した農産物を安定的に供給できる体制が確立されるのではないか。こういった両面から、国内農産物の生産拡大と食料自給率の向上に資するというふうに考えているところでございます。

 もちろん、食料自給率につきましては、国内生産だけではなくて国民の消費のあり方によっても左右されるものでございますので、今回の新しい基本計画では、食生活の見直しに向けた取り組みの強化ということもあわせて講ずることによりまして、自給率の向上を図るというふうに考えておるところでございます。

糸川分科員 この今回の対策の成否というものは、この対策の導入までにどれだけの、今おっしゃられたやる気と能力を持った担い手という人たちを育てるか、育成するかということにかかっているのかなというふうにも思いますが、農水省は担い手育成には今までも取り組んでいらっしゃったのではないかなというふうに思います。

 その対策の導入まで、もうほとんど時間がございません。その中でその取り組みを加速しなきゃいけない。今おっしゃられたやる気と能力を持った担い手の育成や確保という点で、どのように取り組まれているのか、お答えいただけますでしょうか。

井出政府参考人 担い手の育成、確保でございますが、現在、私ども行政と農業団体とが連携協力をいたしまして、個別の農家、法人につきましては、市町村が認定する認定農業者へある程度の規模あるいは能力のある方々を誘導する、つまり、認定農業者になっていただくということを今一生懸命やっているところでございます。

 また、集落営農につきましては、当然小規模な農家の皆さん方でもこの集落営農に参画することによって担い手の一員となり得るわけでありますので、これも、集落営農、各地で一生懸命取り組まれた先駆的な事例が数多くございますので、そういったものを紹介するなり、いろいろ研修会等もやりまして、推進をいたしております。

 具体的には、今農業関係団体は、全国、都道府県、地域の各段階に、担い手育成のための支援協議会を設置いたしまして、それぞれの段階でこの担い手の育成の目標数を定めまして、その普及推進、あるいは担い手の育成、経営改善への支援を行っていただいております。

 また、私どもも各県担当というものを決めまして、現地に足を運んで直接お話をさせていただく、そういう機会をたくさん持つことによりまして、今この制度の円滑な導入に向けて真摯に取り組んでいるところでございます。

糸川分科員 今、若い人でもこれから農業に取り組みたいと思っている人もたくさんいらっしゃると思いますので、新しいそういう担い手をぜひ多く育てていただければなというふうに思います。

 先ほどの委員も大雪のことについて質問されていたと思うんですけれども、私も今、福井なものですから、果樹やビニールハウスなどに今回の大雪で被害が出ているという状況でございます。

 これは、北陸地域、信越地域では特に被害が大きくて、今後、これから雪解けですとかそういったことによってさらに被害が広がってしまうのかなというところで、ことしの営農に関しまして影響が出るのじゃないかという心配をされているわけでございますが、この大雪に対する農水省の対応状況というのをお聞かせいただけますでしょうか。

井出政府参考人 委員御指摘のとおり、昨年十二月上旬以降、記録的な大雪によりまして、農林水産業関係でも、先ほどもお話がございましたけれども、果樹の枝折れですとかビニールハウスの倒壊等の被害がかなり出ておりまして、二月二十四日現在で被害額八十八億円と言われております。

 農林水産省におきましては、これまで、被害防止のための技術対策の徹底でありますとか、関係金融機関に対して資金の円滑な融通等を要請するとともに、共済の世界でも、迅速な損害評価によりまして共済金の早期支払い等を行ってきておるところでございまして、福井県では既に園芸施設共済については支払いが始まったと聞いております。

 しかしながら、大雪の通例でございまして、雪解け時期になりませんと被害の全容が判明してまいりませんので、可能な限り早期に被害状況を把握いたしまして、被害を受けました農林漁業者の方々が一刻も早く経営再建ができますように、その支援に万全を尽くしてまいりたいと考えております。

糸川分科員 これは、これからもまだ大雪というのが、今後もいつか起きるかもわかりませんので、しっかりとその対策をしていただければなと思います。

 もう一つ大きな問題として、今、エチゼンクラゲと言われるような大型クラゲというんでしょうか、このクラゲの問題というのが平成十七年にも未曾有の規模で出現したわけでございます。これは全国各地で広がっておりまして、多くの底びき網漁業ですとか定置網漁業というのが操業停止に追い込まれているという現状がございます。

 これは本年以降も大量に出現が予測されているわけでございますので、今どのような対策を講じていくつもりなのか、お聞かせいただけますでしょうか。

小林政府参考人 大型クラゲでございますが、昨年の七月初旬、長崎県の対馬南部の海域で発生いたしまして、北海道道東太平洋岸の一部を除きましてほぼ全国的に出現いたしました。今御指摘ございましたように、これに伴います漁業被害でありますけれども、底びき網漁業とか定置網漁業、こういったところの作業量、作業時間の増大あるいは漁獲量の減少といった大きな被害が出ております。

 それで、昨年の夏以降のクラゲにつきまして、ことしになりまして、二月に入りまして一応収束に向かってはいるんですが、ただ、これは近年の状況を見ていますと、ことしを含めてまた出現する可能性は多分にあるわけでございまして、そういった意味で、対策を機動的にやっていこうということで補正予算で基金の造成をさせていただいております。

 大型クラゲ被害防止対策といたしまして、一つ、出現状況をきちんと把握して、これを漁業者初め関係の皆さんに的確に情報提供する。それから、大型クラゲを除去するための改良漁具、こういったものの導入促進を図る。さらには、漁協などが洋上で組織的、効率的に駆除をしてもらう。それからさらに、陸揚げした大型クラゲの処理も大変でございまして、そういったものの処理のための経費等、こういった助成が一つでございます。

 さらに、やはりこの発生原因を究明しまして、それで抜本的な対策を講じなくちゃいけませんので、これは十八年度の予算案の方でございますけれども、関係国の中国、韓国と連携しながら東シナ海などでの共同調査を進めていく、こういった予算も計上しているところでございます。

糸川分科員 これは本当に毎年毎年出てくるのではないかなという問題でございますので、今後も継続してしっかりと対策をしていただければなと思います。

 次の話ですが、北陸地方というのは日本有数の米どころでございます。私の福井県では農業産出額の七割を米が占めておるわけでございます。当然、十九年産からの米の生産調整の仕組みですとか支援策がどのようになるのかということが、非常に関心の高いところでございます。

 そこで、平成十九年産からの生産調整というものは、国が配分を行わないということでございますので、国は生産調整に対してどういう役割を果たされるのか、お聞かせいただけますでしょうか。

岡島政府参考人 十九年産からの移行を目指しております新たな需給調整システムでは、農業者、農業者団体が地域の販売戦略に基づいて、主体的に需要に応じた生産に取り組むことにより、米づくりの本来あるべき姿の実現を図るものでございます。

 その際、新たな需給調整システムにおきましては、行政による生産目標数量の配分は行わないものの、国、都道府県、市町村のそれぞれが需要量に関する情報の提供を行うこと、行政から提供された需要量に関する情報に基づき、JAなどの生産調整方針作成者が傘下の農業者へ生産目標数量の配分を行うこととなります。

 また、国は、JAなどが作成する生産調整方針を認定するとともに、市町村、JAなどを構成員とする地域協議会が生産調整方針作成者の間の調整などの機能を十分発揮するよう適切に指導助言を行うこととしております。

 このように、農業者団体の主体的な取り組みに対しまして、国を初めとする行政が各段階で支援を行うこととしており、今後とも農業者団体と行政がしっかりと連携をとって需給調整に取り組んでまいりたいと考えております。

糸川分科員 今の配分についての農業者団体と行政が連携をして取り組んでいくということはよくわかりました。ただ、生産現場では、品目横断的経営安定対策というのが導入された場合、産地づくり対策というのがなくなってしまうのではないかなというような不安があります。平成十九年度からの米の需給調整に対する支援策というのはどのようになっているのか、お答えいただけますでしょうか。

岡島政府参考人 米につきましては、平成二十二年度における米づくりの本来あるべき姿の実現を目指して、需要に即応した米づくりの推進を図るために、需給調整対策でございますとか、流通制度の改革など各般の施策に取り組んでいるところでございます。

 十九年度からの米の需給調整に対する支援策につきましては、水田において米も含めた品目横断的経営安定対策が導入されることなどを踏まえまして、産地づくり対策につきましては、現行対策の実施状況などを踏まえた見直しを行うこととしております。また、稲作所得基盤確保対策、担い手経営安定対策に関しましては、担い手を対象にする部分につきましては、品目横断的経営安定対策へ移行しますし、担い手以外の方の部分につきましては、米の需要に応じた生産を誘導するため、当面の措置といたしまして、産地づくり対策のメニューの一つとして米価下落の影響を緩和するための対策を行えるよう措置することといたしております。さらに、集荷円滑化対策につきましては、その実効性を確保し実施する。こういった内容で見直しを行うこととしておるところでございます。

 なお、予算規模などのこれらの対策の詳細につきましては、十九年度予算の概算要求の決定時までに決定することといたしております。

糸川分科員 わかりました。ありがとうございます。

 私の福井というのは、実はコシヒカリを生んだ県でございまして、今、福井県の農業試験場で開発された水稲の新品種、イクヒカリ、こういうものも導入を推進するとか、こういうことにしっかりと取り組んでおるわけでございます。近年、どんどん米の消費量が減っていく中で一生懸命攻めの農政を展開しようとしているわけでございます。ただ、新品種の知的財産の保護ですとか活用というものを積極的に、かつ戦略的にしていくべきだというふうに思いますが、御見解をお聞かせいただけますでしょうか。

西川政府参考人 我が国の農林水産物は、高品質、高付加価値、安全、安心といった農林水産業関係者の努力や技術、我が国の伝統や文化、消費者の信頼に支えられた他国に類を見ない特質、強さを有しておりまして、これは我が国にとっての貴重な知的財産というふうに考えております。

 近年、知的財産権の取得、保護のための法制度の整備でありますとか、DNA品種識別技術の開発といったことが進みまして、我が国農林水産物の特質、強さを知的財産権として権利化して、守りと攻めの両面で積極的に活用できる環境が急速に整ってきているというふうに考えております。

 新品種等の知的財産の積極的、戦略的な活用というのは、国際競争力の強化、収益性の向上など、攻めの農林水産業の展開に向けた重要な政策課題だというふうに考えておりますことから、省内に三浦副大臣を本部長として農林水産省知的財産戦略本部を去る二月二十三日に設置したところでございまして、今後、知的財産に係る施策を強力に推進してまいりたいと考えております。

糸川分科員 一生懸命新しい新品種をつくろうとしている人がいるわけですから、そういう人たちの権利を何とか守ってあげるということも必要になってくると思いますので、よろしくお願いします。

 また福井の話になってしまうんですけれども、福井県の小浜市というところで食のまちづくり条例というのを制定しておりまして、地元の野菜を学校の給食なんかに使うということを推進しているわけでございます。地産地消と言うんですけれども、こういう取り組みを全国的に展開していった方がいいのではないかなというふうに考えますが、御見解をお聞かせいただけますでしょうか。

西川政府参考人 地産地消の御質問であると考えますけれども、この取り組みは、生産と消費のかかわり、伝統的な食文化等への認識を深めるとともに、食育の推進などの観点からも大変重要であるというふうに考えておりまして、全国的展開を図る必要があるというふうに考えております。

 このため、十七年度は全国市町村の約三割に当たります六百地域を目標に地産地消推進計画の策定を進めておりまして、年度末までにはほぼ達成する見込みとなっております。

 さらに、十八年度におきましては、地産地消の核となります直売施設等の環境整備や、地域のリーダーやコーディネーターの育成、あるいはITを利用した生産者と消費者のマッチング、関係者の情報交換の場づくりといったことを総合的に推進いたしまして、今委員御指摘ございました学校給食等も含めまして、地産地消の一層の全国展開を図っていきたいというふうに考えているところでございます。

糸川分科員 それは全国的にしっかりと取り組んでいただければと思います。

 先般、疏水百選というのがありまして、福井県では足羽川と九頭竜川の下流が選定されたわけでございます。この二つの疏水の重要性が全国的にも評価いただけたんだというふうに誇りに思っておるんですけれども、この疏水百選というのはどういう趣旨、目的があって選定されたのか、また選ばれたところの今後のPRというのをどのように考えていらっしゃるのか、簡潔にお答えいただけますでしょうか。

山田政府参考人 お答え申し上げます。

 疏水は我が国の米づくりの歴史とともに先人の努力によって形成されたものでございます。現在、その延長は約四十万キロメートル、地球十周分にも達しておりまして、まさに農業や地域の振興、自然、景観、文化など国土環境保全の基盤でございます。また、国民共有の資産でもございます。

 こうした疏水の役割や重要性を十分に国民に知っていただき、国民全体で保全活動に取り組み、次の世代に継承していく必要があるということで、今回、疏水百選を選定したわけでございます。このねらいは、地域の貴重な資源を再発見し、農業を中心にその多様な役割を評価し、国民的な運動としてその保全を進めていくということでございます。

 次に、PRでございます。これにつきましては、先生の地元の二つの地区も含めて、選ばれました百十地区、いずれも非常にすぐれた地区でございます。この百十地区が今後中心的な役割を担って全国的な運動を展開していく必要があると考えております。

 このため、パンフレットの配布あるいはシンポジウムの開催などさまざまな広報活動を展開いたしまして、PRに努めるよう指導するなど努力してまいりたいと考えております。

糸川分科員 それはしっかりとPRもしていただきたいと思います。

 先ほどいい水というところで、本来はもう一問質問しようと思ったんですが、実は、私は森林のことを非常に大事に思っていまして、森林が水を育てるのかなと。雨水がろ過されて川に流れて、それが回り回っていい米ができたりとか、農産物に回ってくるんだと思っています。

 そこで、今ではなかなか間伐が進んでいないというところも一つの問題となっていますので、こういう問題にもしっかりと取り組んでいただければなということを最後一言添えまして、終わらせていただきます。ありがとうございました。

山本(公)主査代理 これにて糸川正晃君の質疑は終了いたしました。

 次に、高橋千鶴子君。

高橋分科員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 今、WTO交渉が四月までのモダリティーの確立に向け、山場を迎えていると思います。私も、我が党の紙智子参議院議員とともに、WTOに関する議員会議・香港会合のオブザーバーとしてではありますが、昨年十二月の香港行動に参加をさせていただきました。

 私たちが参加をした会議では、各国の国会議員が本当に熱心な討論をし、そして、その採択宣言の中に、農業は単に経済の一分野ではなく、数億人の人々の生存そのものの基盤でもある、このように明記をされました。私は、この視点が今交渉の場においても本当に大事ではないかと考えております。

 大臣は、これまで交渉に当たって、守るところは守り、譲るところは譲ると繰り返し述べておられます。私は、その真意が私たちと同じ気持ちと受けとめていいのかどうか、このことを伺いたいと思うんです。農業交渉における大臣のスタンスについて、まずは伺っておきたいと思います。

中川国務大臣 日本は、世界と貿易をしたり投資をしたり、人の交流をしたりしながら発展をしてきたわけでありますし、これからもそうであろうと確信をしております。

 したがいまして、工業分野のみならず農業におきましても、自給率四〇%という議論が先ほど出ましたけれども、逆に言うと、少なくとも現時点では六〇%分は輸入に頼っているということでございます。したがって、貿易の基本ルールでありますWTOにおけるルールを今度次に向かってどういうふうに改定をしていくかということが今行われているわけであります。

 御承知のように、農業だけではなくて、非農産品あるいはサービス、ルール、開発、あるいはまた、その他いろいろな分野について今交渉をやっているわけでありますが、共通のルールのもとで、貿易等を通じて、それぞれの国、とりわけ今回の場合には発展途上国が発展できるようにしようというのが今の交渉の基本的な共通認識でございます。

 したがって、これは全体として、貿易等の壁を下げようというのが、これはどの分野でもそうであります、農業においてもそうであります。ただし、下げることによって、日本なら日本の根本的な国益が失われる、あるいは守るべきところが守れなくなってしまう、これは日本としては絶対に阻止をしなければなりません。交渉ですから、譲るところは譲っていきます。また攻めるところは攻めていきます。そして、守らなければいけないところは守っていきます。これが、日本のといいましょうか私の基本スタンスであり、農林水産大臣になる前の経済産業大臣のときから、そして農林水産大臣としても、こういうスタンスで交渉に臨んでいきたいというふうに考えております。

高橋分科員 そこで、守るべきところの話を少し具体的に伺っていきたいと思うんですが、多くの生産者が関心を持っているのは、関税の削減率あるいは重要品目がどうなるのかということかと思います。

 上限関税については、日本も当然受け入れられないと述べてきたところであります。ところが、米国が提案しているこの重要品目の一%の問題ですね。これが、言ってみれば、計算すると十三品目くらいにしかならないのではないか。そうすると、米だけでも十七品目もう既にあるわけですから、一体、そこだけになっちゃうのかという大変な不安がございます。

 重要品目の設定をどこに持っていくのか、この点でのお考えを伺いたいと思います。

中川国務大臣 重要品目というのは、もう既に、WTOの現時点でも既に共通の項目として了解されているわけであります。ただし、御指摘のように、それをどのぐらいにするかということについては、各国あるいは各グループの間で大きな差がございます。

 御指摘のように、アメリカは一%、タリフライン、関税分類上の一%というふうに言っておりますし、EUはおおむね八%という言い方をしておりますし、また、日本を含めたグループ、いわゆるG10というグループは一〇%から一五%というふうに言っております。ちなみに、タリフラインという分母の数字そのものが各国によって違いますけれども、日本は一五%を目指して今交渉に臨んでいるわけでございます。

高橋分科員 では、一五%を目指してということで決意を伺ったと思います。

 そこで次に、二月二十五日の日本農業新聞では、アメリカの提案が具体的に示されたとして、重要品目の関税引き下げ率を一般品目の六割とする一方、低関税輸入枠を国内消費量に基づき大幅に拡大するという内容でありました。この試算を見ますと、現行七十六万七千トンのミニマムアクセス、年間消費量は一千万トン弱でしょうか、総輸入量が六百万トンにもなると試算がありました。これではだれが見ても、国内市場を大きく圧迫するものであります。しかも、この十一年間で六百八十七万トンでしょうか、ミニマムアクセスの量、それに一年で届くような大変な量、到底受け入れられないと思います。

 いずれにしても、ミニマムアクセスの拡大を避けられないと思っているのか、その見通しと、こうした拡大を迫るアメリカの提案などに対しての考えを伺いたいと思います。

中川国務大臣 まず、交渉ですから、先ほどから伺っておりますと、アメリカの提案を前提にして、日本はどう対応するんだというような御質問が多いように理解いたしますけれども、日本は提案をしております。

 日本提案をどうやって実現させるかということに私は今全力を挙げているわけでございまして、今お話がありましたように、確かに消費量ベースにしてTRQを拡大するという議論もありますけれども、日本は、あくまでも現行の関割枠をベースにして、それから、いわゆるスライディングスケールと呼んでおりますけれども、関税の削減との組み合わせによって柔軟に対応しようというのが日本の提案でございまして、それをどうやって実現をしていくかということが日本の国益としての交渉に臨む立場であって、アメリカが提案したことに対して日本はどうするんだというのは、私はそういう交渉はとりたくないというふうに理解しております。

高橋分科員 よろしいと思うんです。もちろん交渉事ですので、具体的なことは言えないと当然おっしゃるだろうと思っておりました。

 それから、日本がG10グループと関係を密にして、共同提案を出して頑張っているということも十分承知をしております。その上で、あえて、なぜアメリカの話をというのは、アメリカの話が極端だからということと、大臣が平成十年、十一年、新食料・農業・農村基本法を制定されたときに大臣を務めておられまして、その議論の過程の中でも、アメリカを初めとした輸出大国の声がやはり大きくWTOに影響している、そういう認識を述べておられたから、やはり私はこういう点でも、きっぱりとした態度を、国民は注目しているわけですから、あえて述べていただきたい、そういう思いで伺わせていただきました。

 ついでに言いますと、そのときの九八年、平成十年の十二月の農林水産委員会で、米の関税化に移行する議論がされたときに、大臣はミニマムアクセスのことでこのようなことを発言されております。「九五年からスタートをして一年たち二年たちしていくうちに、ミニマムアクセスの存在というものが、国内生産に影響を与えないという政府決定をきちっとやってはおりますけれども、一方では、消費者の需要のほとんどないミニマムアクセス米がどんどんたまっていく、量がふえていく、こういう状況になってまいりました。」大変率直な答弁だったのかなと思うんです。

 やはり、最初はこんなにもミニマムアクセスがふえるとは思わなかった、しかし実際はどうなのかということで、率直な弁を述べられたのかなと思われるんですけれども、ここの政府決定、国内生産に影響を与えない、これはもちろん生きているわけですよね。このスタンスは当然守っていく、この確認をさせていただけますか。

中川国務大臣 たしか九三年の年末にウルグアイ・ラウンドが合意したときに、日本が決して望んだわけではありませんけれども、ミニマムアクセス、つまり義務的輸入量というものを、四%から六年かけて八%にするということになったわけでございます。これは、義務的ですから、とにかく入れなければならない。ただし、政府といたしましては、それが国内生産に影響を与えないようにいたしますということも約束をしたわけでございます。

 しかし、毎年少しずつふえていって、六年後には四%が八%輸入しなければならなくなる。しかし、今御指摘のように、売れない。売れればいいんですけれども売れない。在庫になっていく。しかも義務的に入れなければいけないということで、私のときに、このままでは大きな問題になるので、これはもう関税化をしようということで、九八年のたしか年末だったと思いますけれども、そういう決定をしたわけでございます。

 ミニマムアクセスを今の交渉においてももちろん制度として守っていく、そしてまた、それが国内生産に対して影響を与えないようにするという基本的な考え方は、少なくとも現時点においては変わっておりません。

高橋分科員 ありがとうございます。

 大臣が今、義務という言葉を何度もお使いになられましたので、きょうは私これ以上はこの問題を言うつもりはなかったんですけれども、その後の農林水産委員会の議論の中で、私の先輩である中林よし子議員やまた私自身も委員会で取り上げたことがございます。日本はミニマムアクセスは義務だと言ってきたけれども、必ずしもそうではない、そして、義務だとは言われていないし、また、諸外国の約束の達成状況を見ても、一〇〇%達成しているのは日本だけではないかということも指摘をしてきたつもりであります。

 ですから、そういう立場に立って、これは私、要望にとどめますので、国内の生産に影響は与えないという政府決定は生きているということでありましたので、その点でやはり今後も見きわめていく必要はあるだろうということを要望しておきたいと思います。

 それからもう一つ、WTOの関係で、いわゆる黄色の政策と言われている国内助成の基準を日本は七五%と提案をしていますけれども、その理由を伺いたいと思います。

中川国務大臣 国内支持の削減のうち、いわゆる黄色の政策の七五%削減の根拠、これは、WTOにおいて約束された約束量、削減約束というものがあるわけでありますけれども、それに対して、日本は既に八二%削減をしております。ほかの国、アメリカ、EU等々は日本よりもはるかに低いわけでありますので、日本としては、攻めるべきところと冒頭申し上げたうちの一つとして、日本は思い切り下げますよ、ただし、現実には約束水準をもう達成していますよという観点を総合的に勘案して、七五という数字を申し上げているわけであります。

高橋分科員 攻めるところの一つだというお話でありましたけれども、私も現地で約束水準の問題を切り札だというふうな説明を受けました。なるほどと思ったわけです。

 ウルグアイ・ラウンドの約束水準、大幅に上回って日本は削減をしてまいりました。四兆円の水準なのに対して七千三百億円だ。一八%しか達成をしてこなかったわけです。

 しかし私は、確かにそれが切り札となり、攻めの交渉の一つのカードになるかもしれない、でもそのことによって国内の生産者はどうなんだろうかと考えたときに、少なくとも八二%を削減してきたということは、局長でもよろしいです、逆に言うと、WTOの範囲内でも国内助成はまだ、例えば倍加もできる、これは理論的には成り立ちますね。

中川国務大臣 先ほどの御質問が、私が間違っているのは御質問の趣旨がよくわからないということで、黄色が七五なのか全体の削減が七五なのか、たしか黄色とおっしゃったんですけれども、黄色だと七〇%削減が日本の提案でございます。

 それから、今回は国内支持全体を削減しようという新しい交渉が入っておりまして、それについては七五%削減しようということでございますから、いずれにしても訂正をさせていただきます。

 今御指摘のように、日本は総合AMSの約束水準の八二%まで既に実績を下げておりますので、七〇%でも七五%でもいいんですけれども、もう既にやっておりますから、そういう意味で、さらなる実害はないという理解で、攻めの部分であるというふうに申し上げたわけであります。

高橋分科員 ですから、さっき局長に伺ったんですけれども、理論上は、枠内でも国内助成は、倍加でも、一定の伸ばす余地はある、いいですね。

佐藤政府参考人 お尋ねの件でございますけれども、先ほど大臣の方から御説明ありましたように、一定の、相当幅の削減を既にしておりますので、そこに交渉の余裕といいますか、EUあるいは米国に比べて余裕があるということでございます。

 委員からの御質問で、ふやせるのかということでございますけれども、基本的には、国際交渉の中で、それぞれの助成を見直していく、あるいは引き下げていくというような交渉になっておりますので、基本的にはそういう形の中での各国の対応になろうかというふうに存じております。

中川国務大臣 アメリカ、EUとだけ交渉をやっているわけじゃないんですね。百五十カ国の加盟国のうちの百二十カ国ぐらいが途上国、それから、アフリカ等五十数カ国のLDCがあります。この国は、農業振興のために国内支持を出そうと思っても出せないんです。

 ですから、先進国同士のけんかなんというのは、多くの貧しい国々から見ると、金持ち同士のけんかである、国内支持を出す同士のけんかであるということも、この交渉上、先ほど冒頭申し上げたように、開発ラウンドである以上は、農業助成のためにお金を出したくても出せないという国がいっぱいあるんだということも、ぜひラウンドの交渉として御認識をいただければありがたいと思います。

高橋分科員 それは当然でございます。国内助成を出せない途上国がいっぱいいる、そこをもっと発展させるためのラウンドである、それはもう十分承知をしております。

 しかし、だからといって約束水準を、だれにも言われていないのにWTOの合意である水準を大幅に削減してまでやってくる必要があったのかということが言われていると思うんです。

 確かに、日本は、指標上では大変豊かな国であります。日本の農業者の皆さん、今回、百人を超える自主的な団体の皆さん、私と一緒に香港に参りました。なぜ豊かな日本がこの場にいるんだというふうなことを、いろいろな方から取材を受けたそうです。

 本当に日本の農家の実態がどうなのかということ、それは途上国と比べれば違うとおっしゃるかもしれないけれども、では日本の農業がどうなってもいいのかということではないわけですから、そういう立場に立って、日本の生産者の立場に立って判断をする必要があるのではないか。これはもう次に進みますので答弁は必要ありませんけれども、大臣は、先ほどの国会のときに、次の交渉に臨むに当たってはやはり国民的なコンセンサスが絶対に必要だという認識をお示しになりました。私は、こういう点で本当に、では日本の農家の声は聞こえているんだろうかということを指摘して、そういう立場に立ってお話を進めていきたいなと思うんです。

 国内対策の話でありますけれども、経営所得安定対策等大綱が昨年の十月に発表されまして、関係法案が今国会に提出をされております。早いところでは、秋まき麦の播種までに加入を決めなければと、急ピッチで担い手の特定や集落ごとの話し合いが取り組まれていると思います。

 家族農業経営と法人経営、集落営農経営を合わせて四十万の担い手に集約するというのが政府の今の目標であるかと思いますけれども、まず、現状はどうでしょうか。担い手要件をクリアできる認定農業者あるいは集落営農が今どのくらいあるのか、伺いたいと思います。

井出政府参考人 今回の品目横断的経営安定対策の対象者の要件といたしましては、認定農業者か、一定の要件を満たす集落営農組織であって経営規模等の要件を満たすものというのが原則でございますが、そのほか、生産調整組織や複合経営等についても特例基準を設けております。

 したがいまして、現時点で、この認定農業者あるいは集落営農組織でございますけれども、数としましては、認定農業者は昨年の十二月末現在で約十九万五千人、あるいは十九万五千経営体と言うべきかもしれませんが、あると言われておりますが、このうち、例えば四ヘクタールを満たしているかどうかということになりますと、そのデータは残念ながらございません。

 また、集落営農につきましても、昨年の五月現在で約一万、全国に存在すると言われておりますが、こちらの方も、今回要件にしております経理の一元化、あるいは法人となる計画を持っているかといったような要件を満たしているかどうかにつきましては、これは個々の組織の意向を確認する必要がございますので、現時点ではこれを示すことは困難でございます。

高橋分科員 データがないというお話でしたけれども、例えば、私の地元の青森県では、現在四ヘクタール以上の面積を持つ農業者が一割程度だろう。集落営農が現在百十二ございますが、いまだ対象要件を満たしている集落営農は一つもありません。集落営農では先進的な取り組みをしている岩手でも、現在は六だと聞いております。また、麦や大豆の交付金を直接受け取っている農業者、これは青森の話ですが、千百八十三経営体ございますが、ほとんどが非認定農業者だ、九百九だということです。

 ですから、こういう大変な状態から出発をして、何とか担い手にするように、引き上げるようにと今非常に頑張っているわけなんですね。ただ、やはり期限を焦ると非常に無理が生じるのではないかと思うんですけれども、この担い手の特定、集落営農の対象条件をクリアする上でハードルとなっているのは何か、農水省の認識を伺いたいと思います。

井出政府参考人 個別経営につきましては、認定農業者であって四ヘクタール以上というのが原則であるということになっております。ただ、現時点で四ヘクタール以上の経営規模をお持ちでも、認定農業者になっておられない方もかなりございますので、現在、そういう方を認定農業者に誘導するということをやっております。

 また、集落営農組織につきましても、経理の一元化なり五年以内の法人化をしていただきたいということを要件といたしております。経理の一元化と申しましても、私どもがお願いをいたしておりますのは、集落営農組織名義で口座を設けて、その口座に農産物の販売収入を入金していただく、そういうことを申し上げているわけでございまして、入り口としてはそんなに高いハードルを課しているわけではございません。

 現在、地域地域で説明会等を開催する中で、そういった経理の一元化なり法人化というのがかなり高いハードルなのではないかという誤解を解くべく、さまざまに努力をいたしているところでございます。

高橋分科員 今、誤解と言い切りましたけれども、各地のいろいろな様子を聞きますと、説明を聞けば聞くほどわからなくなるだとか、説明を聞いているうちに生産者が席を立ってしまっただとか、そういう問題がいろいろあると思うんですね。ですから、高過ぎはないとおっしゃいましたけれども、やはりそこに非常に困難なものがある、では、それは何なのかということをもう少し見ていく必要があるのではないかと思うんです。

 例えば、主たる経営者を決めるとされていますけれども、平成十二年の農水省の調査でも、認定農業者のいる割合はまだ四割でありますから、そういう中で、集落営農で、主たる人を決めて、所得の目標を決めていく、そのこと自体が大変であるという声がまず一つあると思うんですね。逆に言うと、私自身が花巻に行ったときに聞いたんですが、認定農業者の方が、それだったら、別に自分がその集落営農の中心にならなくても、自分が一人でやった方がいいと言っていた。そうなったら、では、だれがその集落営農のリーダーになっていくんだろうか。そのリーダーがいなければ、やはりこれは成り立たないわけですよね。

 そういうところをどうするかといったときに、一人でやるよりも集落営農でやる方がメリットがあるというのがやはり必要なわけですよね。でも、ではどうするのかといったときに、やはり米の値段がどんどん下がっているじゃないか。かつて、五百三十万、他産業並みと言われた時代がありましたけれども、時代といったってついこの間ですが、一万六千四百円を基準にしていたと思います。それが一遍に、もうどんどん下がってきている、歯どめがありません。

 そういう中で本当にメリットを生み出すことができるのか、この点についてどのようにお考えになっているでしょうか。

井出政府参考人 委員お尋ねの件は、集落営農に対して五つの要件をお願いしているわけですが、その集落営農の中のコアになる人、その人を決めてくださいと言っておりますけれども、それは候補者であっても構わないというふうに言っているわけでございます。

 それから、東北地方特有の問題でありますが、西日本と違いまして、認定農業者の方はまだかなりおられます。西日本の場合には、もうほとんどいないというのが実情でございます。ですから、私どもは、東北で集落営農組織として立ち上がっている例を見ますと、その集落内の認定農業者、少なくとも三、四人の方が、その集落営農組織のリーダーとなって、中核となって集落営農を起こしているという例が圧倒的に多いわけでございまして、いわば東北方式かなと思っておりますが、そういった先進的な事例も見まして、そういう取り組みをぜひお願いしたいということで、そういう例を御紹介し、また、そういう地域でリーダーとして活躍されている方に、方々に出向いていただいて、お話もしていただくというようなことをいたしておるわけでございます。

 集落営農組織で、完全に経理が一元化されたり、あるいは機械や施設、肥料、農薬等も共同で買ったりすれば、これは個人でやっている場合よりもかなりコストが削減されるというのは、集落営農組織をつくられた先駆事例で明らかになっておりますので、そういったことも、数字も添えて私たちも説明をしているということでございます。

高橋分科員 きょうの日本農業新聞に大特集があって、集落営農の方が個別の経営よりもコストが非常に安くついて収益が上がっているという、わかりやすい図式ですとかがありましたので、多分そのことをおっしゃっているのだと思うんです。

 東北方式というお話もありました。例えば、秋田で農水省がモデルとするような集落営農を直接指導した方にもお話を聞いたことがあります。何度も何度も地域に足を向けて話し合いをして、そして本当に苦労をしてつくってきた。ただ、自分がやってきたことは国のやっていることとイコールと思われては困る、地域から自発的に育ってきた集落営農なんだというお話をされてきたことと、一律にそれが集落営農でなければならない、要件を満たさなければならないとなると、さっき言った米の値段が下がってくるというのでは、やはり簡単ではないのだと。

 ですから、そこを、ハードルを越えて集落営農として要件を満たすところもあれば、そうじゃないところもあるんだ、そうじゃないところも含めなければ、やはり日本の全体の農業としてはもっていかないんじゃないのかというのが私の言いたかったことなんですね。質問したかったんですが、時間が来ましたので、このことをぜひ含んでいただいて、進めていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

山本(公)主査代理 これにて高橋千鶴子君の質疑は終了いたしました。

 次に、重野安正君。

重野分科員 それでは質問させていただきますが、主に林野庁の質問になろうかと思います。大臣、出席しておりますけれども、何だか失礼だなという感じもいたしますけれども、お許しをいただきたいと思います。

 まず、林政改革大綱及びこのプログラムについて質問をいたします。

 この大綱及びプログラムに基づきまして森林・林業基本法が制定されました。これら大綱並びに法案の基本が、森林の持つ多面的機能に着目をして、持続的に発展させること、そのために市町村やあるいは消費者にも理解を求めていこう、そういうことになっております。

 このプログラムは二〇〇一年度から二〇〇五年度まで五年間を対象としておりまして、今年度末が施策の展開期限となっているわけであります。年度末を目前にしまして、このプログラムの、どれほど実現できたのか、実行できたのか、達成度というんでしょうか、そういう総括あるいは評価というものがなされているのか、いないのか。まず、その点から聞いていきたいと思います。

川村政府参考人 お答えいたします。

 ただいま御質問にありましたとおり、森林・林業政策の改革につきましては、平成十二年に林政改革大綱、それから林政改革プログラムができておりまして、それを受けて基本法、そしてその法律に基づきまして森林・林業基本計画ができておりまして、これに基づいて総合的な施策の展開を図ってきたところでございます。

 この五年近くを見ますと、計画的な間伐の実施、あるいは低下していた国産材の供給量、こういったところに増加の兆しが見られます。それは一定の成果と言えると思います。ただ、材価の低迷、それから経営コストの増加によります林業採算性の大幅な低下、これが林業生産活動の停滞を招いておりまして、森林の多面的機能の発揮に支障を生じ得る懸念が危惧されるわけでございます。そういう意味では、依然として厳しい状況だと思っております。

 それぞれの政策につきましては、八分野にわたりまして政策評価というものを、第三者を交えての委員会をつくりまして審査をしていただいておりまして、それをフィードバックしつつ、施策の遂行を図っているというところでございます。

重野分科員 現状認識としては、今長官の答弁、私も共有できるわけであります。

 後段の評価の問題ですが、これは今やられていると思うんですが、具体的にそれを内外に公表する、その量的なものも含めて、どういうところが反省すべきところであるというふうなことが具体的に明らかにされるのでしょうか。あるいは、する考えがあるかどうか。

川村政府参考人 ただいま政策評価につきましては八分野で実施しているということだけ申し上げましたが、より具体的に申し上げますと、例えば木材利用の推進と木材産業の健全な発展、あるいは森林の整備などの政策分野、こういうことでございまして、平成十六年度、八分野でございまして、あらかじめ目標を設定し、毎年目標に対する実績について評価を実施しております。

 そして、この評価の実施に当たりましては、中立性、公正性及び透明性を確保するという観点から、学識経験者から構成をされます農林水産省政策評価会、それから林野庁の専門部会において意見をお聞きするとともに、パブリックコメント等を通じまして広く意見募集を行うということで、厳正な評価を行っていくという努力をしているところでございます。

 この評価の結果につきましては、農林水産省のホームページへの掲載、それからまた、マスコミへの発表等によりまして、国民の皆様に対しても幅広く公表しているというのが現状でございます。

重野分科員 次に、私は今国会冒頭の代表質問の中でも林業に触れさせていただきましたけれども、この十年間になくなった集落、五千の集落が消えたかもしくは縮小、そういう数字がございます。ほとんど山に囲まれた、そういう地域なんですね。このことを見ても、地域の林業の持つ多面的機能の持続的発展というか、持続的に維持できるというか、そういう可能性というものは非常に低下している、こういうふうに見なければなりません。私は、そういう認識を共有できるかどうか、そこから林業の具体的な施策展開、そういう状況に対応した施策の展開、こういうことが求められると思うんですが、そういう点の長官の認識をお聞かせいただけますか。

川村政府参考人 ただいま委員より集落の減少という観点からの御指摘がございました。確かに、山村部におきまして集落の戸数が減り、そして集落が消えてしまうということもある、そういう現実があることは承知しております。

 山村地域におきましては、林業、これがやはり基盤となる産業でございます。もちろん農業もございますが、そのためにはやはり人材の確保というものが必要だというふうには考えるわけでございますが、これは農業と同様でございますけれども、やはり高齢化も進んでおりますし、減少も進んでいるということでございます。

 そういう意味で、まず一つは、人材の確保ということがやはり森林整備の適切な実施、ひいては森林の多面的機能の発揮ということで必要であろうと思っておりますし、そういう観点で、人材の確保、例えば緑の雇用といったようなことでの新規林業就業者の確保、育成といったようなこともやっておりますし、また、今はもう採算がとれないというような実態でございますが、経済ベースで林業活動が続けられるような方向での改善がなされないとなかなか長続きしないということがございますので、林業事業体への施業、経営の集約化でありますとか、コスト低減という意味での作業道の整備、高性能林業機械の導入、こういったことを柱に今後努力をしてまいりたい。また、国内資源が、これからは戦後造林したものが本格利用できるような状況になりますので、資源的には非常にこの条件は出てきている。また、価格的にも、もうそれこそ間伐材等につきましては外材よりも安いという状況もございますので、いかに効率的にやって下流のニーズにつなげていくか、こういうことも必要だろうというふうに思っております。

重野分科員 森林に国民が何を期待しているかというデータをちょっと調べてみたんですが、昭和五十五年から平成十五年というスパンでとっていったグラフがありました。

 木材生産、もちろん木材を販売して収入を得るわけですね、森林にそういうことを期待している、それが昭和五十五年では二番目に高かった。それが、平成十五年になりますと、何を山に期待するかというと、一番に災害防止。これはもうずっとランク一位ですね。次に温暖化防止、それから水源涵養、大気の浄化、騒音緩和、保健休養、こういうふうに序列があるわけです。

 だから、そういう、国民の山に対する見方というものにマッチしたものに施策を、よりきめ細かな、具体的な提案をしていかなければならないんじゃないか。そうしないと、国土の保全機能という面から見ても、ある統計を見ましたら、もう五年後には国土の保全という観点から見て不良とランクされる山林が五〇%になる、こうなっているんですね。

 また、山がある地域に在村して山を持っている方の率というのが、昭和五十五年から平成十七年にかけますとぐっと下がってくるんですね。不在村の山林地主というのが、昭和五十五年は一八・八%、これが平成十七年に二四・四%と、不在村の山持ちがふえてくる。県外におって山を持っている人が、七・三から九・八。つまり、山を持っている人と山との距離がどんどん遠くなっていっている、そういう状況ですよ。

 やはりそういう状況にマッチした対策というのを講じていかないとミスマッチを起こす。その点は長官、どのように考えておられますか。

川村政府参考人 お答えいたします。

 今委員に御指摘いただきましたように、森林に国民が期待される機能というのは、年によって違いますし、最近は、先ほど申されましたように、地球温暖化の防止でありますとかあるいは保健休養、こういうものがかなり高くなっております。そういう国民のニーズに応じた対応策ということが当然必要でございますので、そういうものへの対応をしなくちゃいけないと思っております。

 それから、災害防止につきましても、近年は特に山地災害、これが多くなっておりまして、時間雨量五十ミリを超すような雨量が過去に比べますとかなり頻発をしております。そういった集中豪雨、集中型の降雨、そういうものに対応するような治山といいますか、防災をしていかなくちゃいけない、こういうこともあろうかと思います。また、非常に国民の関心も高まっておりますので、先ほど国民参加型の森林づくり、まさに森林の機能でありますとか恵みでありますとか、そういうものをよく国民に理解していただく。そうしないと我々の林野施策もまた御理解いただけないということでございますので、そういう努力もあわせて非常に大事になってきている、こういうふうに思います。

重野分科員 非常に重要なファクターですので、そこら辺はしっかり具体的に施策を展開してほしい、強く要望しておきたいと思います。

 それから、山に関する農水省の二〇〇四年度の意向調査というのがありました。保有山林面積三から三十ヘクタールと幅があるんですが、そういうレベルの林家において、木材の生産ということを一番大事に考えているものが六九%あります。その中でまた、間伐をやらなきゃならぬ、そういう考えを持っている方が七四%あります。そういう状況がある反面、労働力が得られない、あるいは実施しても採算がとれないじゃないか、こういう考えを持っておられる方もいるわけです。結果として二六%の方が、もう間伐しませんとはっきり断言しております。これは非常に見逃せない数字だと思います。

 いずれにいたしましても、木材価格の低迷、あるいは自給率の低下、こういうふうなものが根っこにあるわけですけれども、私はやはり、そういうふうな状況にあるということをどう受けとめて、そういうマンパワーに対応した施策というのを考えていかなければならないということはもう常々考えておりますが、長官、そこら辺についてどういうふうに考えておられるか。

川村政府参考人 また、御指摘をいただきました、小規模経営の林家におきまして林業生産の意識が低くなっている、これもアンケートで実態を把握しております。そしてまた、不在村の山主が非常に多くなっておりまして、こちらもまさに森林とその所有者の方との距離が遠くなっている、こういう実態がございます。

 そして、何といいましても、やはり山を元気にしていくためには、間伐等、山の手入れが必要なわけでございます。そうなりますと、現に今間伐等の施業をしておりますのは、各地に森林組合等を初めといたしまして林業事業体というものがございます。これをいかに効率的にやっていくか。それから、そういう小規模の林家との関係の受託をいかに拡大していくか。そのためにはいろいろなデータベース化も必要だと思いますし、また、木を切っても山持ちに全く、何らの収入もないということではインセンティブが働きませんので、やはりそこのところの収益性を上げていく。それは例えば、林道路網を整備して、例えばヘクタール当たり百とか二百とか入れたり、高性能機械を入れますと、コストが五割下がったとか三割下がったという事例もあるわけでございまして、そういうことごとも組み合わせて、やはり経済的なインセンティブも与えていく必要があるだろうというふうに思っております。

重野分科員 こういう数字をあえて申し上げたいのでありますが、林業就業者、これが、昭和五十年、二十二万人、平成十一年、七万人、激減しているんですね。それから、その年齢を見ると、六十五歳以上が、昭和五十年、九%でありましたけれども、平成十一年、二九%。二九%は六十五歳以上、そういう中身なんですね。だから、そういう現実に照らして手を打っていかなきゃならぬということを私はあえて付言しておきたいと思うんです。

 同時に、単に林家の問題だけではなしに、木材、木製品産業についている、そういう仕事に就業している人の数も調べてみたんですが、昭和五十年四十七万人おった。これが、平成十年には十八万人。これでは、国土の八割を占める山ですよ、林業の衰退は即国土の崩壊に直結する、私は常々そういうふうな主張をしているんですが、そういう点から見ても、これは深刻な事態だ。これはやはり林野庁を震源地として政府を挙げてこの問題に直視をして取り組まなきゃならぬ、こういうふうに私は常々思っておりますが、どうですか。

川村政府参考人 林業力の減少それからまた木材産業におきます労働力、そういうものの減少はもう委員御指摘のとおりでございます。

 私どもも、人が中心になって活性化しなくちゃいけないということでございますけれども、やはり、そのためには経済ベースで成り立つ部分がないことには長続きしないし、力強くならないということで、そして、特に森林の場合は木を使ってこそ山が元気になるということです。

 最近の技術の進歩等によりまして、従来は日本の針葉樹は合板に使えなかったんですけれども、間伐材でも合板に使える、そういうことで、ここ五年でシェアが五倍に増加しております。それから、集成材でも非常に絶対量の増加がふえているということで、かつては使えなかったような小径木も、小さく切ってそれを張り合わせることによって大きな構造材にもできるという時代になっておりまして、現に、合板メーカーでありますとかそういう集成材メーカーが新規に投資をする、こういう状況が各地で見られるようになっております。そういうことを受けますと、いかにそういう方々に、外材と比較して、国産材を使っていただくか、そういう努力をすることによってまさに経済的なベースで回っていく基礎ができると思います。

 来年度やります新生産システムも、そういう兆しを受けまして、いかに国産材とユーザーとのミスマッチをなくしていくかということをまず大きな経済的なインセンティブとして努力する必要があるだろう、こういうふうに思っております。

重野分科員 そこで、もう少し内容について聞きたいんですが、木材利用の推進をどうふやしていくかという視点に立って、住宅の地域材利用の推進という一つのテーマ、あるいは木質資源の多角的利用の推進、こういう柱が立てられております。そういう目標を立てておられますけれども、それがどれほど思っている方向に進んでおるのか、進捗しておるのかということをひとつ確認したいということ。

 それから、ちょっと話は違いますけれども、いろいろな税制上の優遇措置が、国税、県税含めて、各層で講じられております。そこ辺がどういうふうな効果を上げているか、それをどういうふうに評価しているか。税制上のそういう措置が効果を上げているかどうか、それをどういうふうに見ているか、それについてひとつ聞かせてください。

川村政府参考人 木材の利用拡大ということにつきましては、委員御指摘のとおり、建物、こういうものでの利用がやはり量的には一番使用量が多いものですから、住宅利用ということで、まさに地域材を利用した住宅ということでの各自治体でいろいろな努力といいますか支援策を講じておられます。

 それに対しましては、例えば低利の融資でありますとか、あるいは現物の地域材をそのまま、例えば柱を百本贈呈しますとかがありますし、そういうことに対しましては地財措置も講じられております。こういう措置が講じられて、まさに地域がそれぞれの特色を生かした住宅づくりということをされるということは、非常に重要なことだと考えておりますので、これを我々としてもぜひ支援してまいりたい、こういうふうに思っております。

 また、新たに、バイオマス資源としての利用ということで、木くずだきのボイラーでありますとかペレット化とか、いろいろあるわけでございますが、これにつきましても、まだまだ絶対量は少ないわけですけれども、確実に伸びているということがあります。そういうことで、我々も、これを今後とも増加するような方向で指導あるいは支援をしてまいりたいと思っております。

重野分科員 私がそこを強調するのは、今でこそ外国から木材がどんどん入ってきている、しかし、これとて無限ではないと思うんですね。

 ちなみに、世界の森林面積の変化、ちょっと古いのでありますが、二〇〇〇年までの十年間にどのくらい減ったかという統計があるんですが、世界で九千四百万ヘクタールの森林が減ったというんですね。アジアで四百万ヘクタール、アフリカで五千三百万ヘクタール、北中米で六百万、南米で三千七百万、オセアニアで四百万、これだけの広大な森林がこの地球上から姿を消しておるんですね。こういう流れはとまっておりませんからね。いかにこの国が外に求めても、もうそれぞれの国が、出さない、こういうときが必ず来る、そのときに日本の林業が健全で国民の期待にこたえるような力を持っておかなきゃならぬ、こういう長期戦略の上に立って見ても今大事なときなんだ、私はそれを強調したい。その点についてひとつ御理解をいただきたい。

 もう時間もありませんので、次に。

 一九九三年度からは森林・山村対策、一九九八年度からは国土保全対策などを通じて、地方交付税などによる地方財政措置を講じてきております。これを含めて、国及び地方のそれぞれの負担額、どれくらいそのためにお金を投入したのか、あるいは、そのためにどれほどのお金を負担したのか、そこ辺についての数字を示していただきたい。

川村政府参考人 森林・山村に係ります地方財政措置でございます。平成五年度に森林・山村対策という柱が創設をされまして、かつ、また平成十年度には、新たに、農山漁村地域が国土保全上多面的な機能を果たしているということで、国土保全対策という柱が立っております。そして、平成十七年度で申し上げますと、森林・山村対策で千七百億円程度、それから国土保全対策には千三百億円程度の措置がされているということでございます。

 そして、これはもう御案内のとおり、地方財政措置の交付税でございますので、一定の活動をするということが前提になっておりまして、それが具体的にどう使われたかということは、総務省さんにも確認をしましたが、そういう統計はないということでございます。

 ただ、これは地財措置の趣旨をしっかり各自治体が理解していただいて十分に活用していただくということが非常に大事であろうと思っておりますので、今後とも総務省と連携をしながら、しっかりこの財政措置の充実と積極的な活用ということで我々としても努力をしてまいりたいというふうに思っております。

重野分科員 そこに最終的には尽きるわけで、いろいろ言っても、要はその目的を達するための裏づけがないと物事が前に進まぬわけです。そういう意味では、林野庁もひとつしっかり頑張って、そこ辺の財源確保のために努力していただきたい。

 最後に、ちょっと話は違いますが、いわゆる森林公社の問題です。

 私も県議時代、県の監査委員等々で県の森林公社の監査等々に行った経験を持っていますが、本当に厳しい内容にあります。今大きな転換点に来ておるわけでありますが、森林整備をするための債務が物すごく膨らんで、事業継続が困難、公社も衣がえをして、解散をして、その債務は県の予算の中で消化していこうというふうな苦労をしているのが地方の実態であります。私は、これについて幅広い対策を講じていかないと、せっかく植えた山が荒れ果ててしまう、そういうことになりかねない。

 そこで、そういう公社造林がこの国全体で一体どれほどなされたのか、そして、その結果として既往の債務が今いかほどあるのか、将来に向けてこれをどうするのか、この三つの点についてお聞きをして、私の質問を終わりたいと思います。よろしくお願いします。

山本(公)主査代理 川村長官。

 なお、申し合わせの時間が過ぎておりますので、簡単明瞭に答弁を願います。

川村政府参考人 まず、面積でございますが、公社造林は四十二万ヘクタールでございます。債務の残高はこの十七年三月末で一兆円余でございます。

 そして、この対策でございますが、これまでも林野庁、各種施策で助成をしてきております。そして地財措置も講じられております。そして、特に十八年度におきまして、さらに公共での助成、また拡充、それから金融措置の充実、また地財措置も、総務省と大分協議をいたしまして、かなりの思い切った地財措置が講じられるということで、五十年ぐらいのタームで見た場合にはかなり解決の方向に行くのではないかということで、各県においても、そういう評価をしていただいているところが次第に出てきているところでございます。

重野分科員 終わります。

山本(公)主査代理 これにて重野安正君の質疑は終了いたしました。

 次に、広津素子君。

広津分科員 ありがとうございます。

 佐賀三区から昨年の九月に初当選しました自由民主党の広津素子です。きょうは、日本海の玄界灘に面した地元の重要な産業である水産業の振興のために御質問させていただきますので、よろしくお願いいたします。

 まず、今世紀に地球人口が百億人になると言われていますが、そのときには、土地の狭い我が国では、魚や貝を初めとする水産物は、食料自給率の確保と食料安全保障の観点から、たんぱく質その他の栄養素の源として重要であると考えられます。また、魚介類を初めとする海産物は、食品としても生活習慣病の予防や脳の発育などに効果があるすぐれたものです。

 お手元の図をごらんください。

 このような中、平成十六年の我が国の国内漁業生産量は平成六年から一貫して減少しており、平成十六年では、前年と比較しても、遠洋漁業で一一%、沖合漁業で五%、沿岸漁業で四%減少し、海面養殖業で三%、内水面漁業・養殖業で四%とあらゆるジャンルで減少しております。また、平成十七年に資源評価が行われた魚種のうちの半数以上で、資源水準が低位となっているとのことです。

 そのため、玄界灘に面した私の地元である漁業の町、唐津の玄海漁連や藻場をつくっている建設業の皆さんの話から、地元の海の回復対策について、農林水産省及び環境省に御質問いたします。

 まず、近海の魚が減ったことに関する最近の農林水産省の取り組みについてお伺いします。

 最近、沖合や沿岸の魚が減っていますが、それはなぜでしょうか。また、このことに関して何らかの対応をしていらっしゃれば、それを教えていただければ幸いです。

小林政府参考人 今先生から御指摘がございました水産をめぐります資源状況は、厳しい状況になっております。

 私ども水産資源の評価というのをやっておりまして、その研究動向を見てみますと、評価対象の魚種、系群と言っていますが、これは大体日本近海で九十三種を見ているわけでありますが、そのうち、半分以上の五十種がいわゆる低位、非常に資源状況がよくない、そういう水準にございます。

 こういった状況を踏まえまして、まず、こういったことになった要因といいますか原因のようなものでございます。これはさまざまな説が考えられるわけですけれども、一つは長期的な要因で、資源の周期的な変動、これは天然資源でありますので、そういった影響があるのじゃないかとか、それから、やはり生活排水などの流入、あるいは埋め立てとかそれから海の砂利の採取、こういったことに伴う水域環境の変化、こういったことも考えられるわけであります。さらには、過剰な漁獲ということが資源に与える影響もあるわけでございまして、これは海域とか魚種によって影響は違うと思いますけれども、そういったことが原因ではないかというふうに言われておるわけでございます。

 こういった状況の中で、私どもいわゆる資源の確保、これが政策上重要な柱でございまして、昔から水産行政では、漁業調整でありますとか、それから国連海洋法を批准した後はTAC制度、こういったものを進めてきておりますけれども、特に平成十四年、これは今の新しい基本計画ができた以降でございますけれども、そこでは資源回復計画というようなことも進めておるわけでございます。これは、今言いました漁場環境の改善でありますとか休漁措置とか、そういうのをさまざま組み合わせまして資源の増大を図ろうというものでございまして、藻場、干潟の造成なんかもポイントでございます。

 ちなみに、例えばトラフグのような、緊急に資源回復が必要というふうに位置づけられたわけでございますけれども、こういったものにつきましては国が資源回復計画を定めまして、それを受けて各県、各団体で取り組みをやってもらう、こういったような措置も導入しまして資源の回復対策を進めているところでございます。

広津分科員 ありがとうございます。

 次に、魚の放流事業についてお伺いします。

 県や市町村でも魚の放流を行っておりますが、なかなか成果が上がりにくいようです。それは、放流した稚魚が生存率が低いということもあるでしょうが、タイやヒラメやトラフグなどは遠距離を泳ぐ魚であるため、佐賀県唐津市で放流しても、採取されるのは長崎県平戸、福岡県姫島だったりすることがあるようです。そのため、県よりも広域な地域の枠組みで放流事業を行うことが必要だと思われますが、現在はどのような取り組みがなされているのでしょうか、教えていただければ幸いです。

小林政府参考人 先ほど申し上げました資源回復対策の一つの柱が種苗放流でございます。

 今全国各地で資源の積極的な増大策という位置づけでいろいろな重要魚種の種苗放流を進めておりますが、例えば、今もお話にございましたように、マダイとかヒラメ、これは県の範囲といいますか、海域を非常に広く動きますので、こういった魚種の場合には、県だけではなくて、県レベルを超えた広域的な取り組みというものが重要でございまして、栽培漁業の推進上も一つの課題でございます。

 それで、各県で種苗生産して放流するわけでありますが、それを個々の県だけでやるのじゃなくて、例えて言いますれば、全体の海域の中で最も適した場所、そこで集中して放流する、これは一種の広域的な適地放流のようなことをいたしますと効果も相当上がるだろうということで、十八年度予算案に新しい事業で栽培漁業資源回復等対策事業、こういったものを設けまして、新たにこういったような取り組みを通じた効果的な資源造成を図っていこうというふうに考えておるところでございます。

広津分科員 ぜひよろしくお願いいたします。

 次に、日本国内が協力するだけでなく、日本海の沿岸国、つまり韓国や中国も相談して協力し、資源管理や放流などを行っていく必要があると思いますが、いかがでしょうか。日本だけで放流していても、韓国や中国の方でとるばかりということではなかなか資源も回復しませんので、そのようなことをお伺いいたします。

小林政府参考人 これはもう御指摘のとおりでございまして、我が国の周辺海域、とりわけ日本海中心に、日中韓三国がいわば共通の資源を利用し合っているわけでございます。今後、こういった国々と協力しながら資源管理をきちんとやっていくということが当然重要でございます。

 これまでの経緯を申しますと、我が国は中国、韓国との間でそれぞれ漁業協定を締結いたしました。この協定は、一つはそれぞれの国の科学者レベルでいろいろな協議をしまして、関係する魚種についての資源評価、情報交換、こういうことをまず行っております。その上で、それぞれの国に対しまして、それぞれの排他的経済水域、いわゆる二百海里の中での漁獲割り当てを実施いたします。最近は、資源状況の悪化ということもございますので、それぞれ総漁獲割り当て量、あるいは操業隻数を削減してきているという状況でございまして、こういった形でのいわば資源管理措置が講じられているということであります。

 もう一つは、二国間で共同管理することとなっている、いわゆる暫定水域等でございます。こちらにつきましては、資源管理、それぞれの国との政府間協議の場を通じまして、これからどうやっていけばいいのか、より積極的、効果的な取り組みができるように議論を進めているという状況でございます。

 それで、一方で種苗放流、こういった取り組みは、また非常に効果のある措置ではございますけれども、今申し上げましたような、まず漁業協定をつくって、それぞれの間の操業状況、操業条件、こういうものを決めるという形の資源管理措置を進めているところでございまして、まずはこういった資源管理の枠組みをつくるというところから着手しているといった状況でございます。

広津分科員 よろしくお願いいたします。

 次に、磯焼けについてお伺いします。

 故郷の海では、前に海草が生えていた場所に海草がなくなり、砂漠のような海底になったり、藻場をつくっても思うように藻が育たなかったりすることについて、漁業関係者は、農業用の排水が除草剤を含んでいることや生活排水が川から海に流れていることなど、生態系に関する問題点を挙げています。そのような廃水処理に関しまして、現在どのような対策が行われているのでしょうか。教えていただければ幸いです。

    〔山本(公)主査代理退席、主査着席〕

小林政府参考人 いわゆる磯焼けの問題でございます。

 磯焼けは藻場、これが長期的に消滅していく現象ということでございまして、当然水産資源に大きな影響があるわけでございます。こういった磯焼けが発生する原因につきましても、これはいろいろな説がありますが、例えて言いますれば、水温や栄養素、こういったものの海況の変化、あるいは魚介類による食害、例えばウニの食害といったようなものがございます。それから、透明度が減少するということによる影響等、いろいろ説がございますけれども、海域によって状況が異なりますので、原因はなかなか一概に特定できない状況でございます。

 そういった意味で、また各海域の方では、藻場の回復を図りたいという形で、さまざまな研究をして、その成果によっていろいろな効果を見ていきたいということが重要でございます。それで、私ども、人為的に制御可能な要因を究明したいという目的で、平成十六年度からですけれども、全国の十七都道府県におきまして現場の実験を進めております。それは、例えば、そういう成果としまして、今申し上げました魚介類による食害、ウニなんか典型でございますけれども、こういったものがわかってきておりますので、ではそのウニをいつどういうふうに駆除すればいいのかとか、そういったものをどういった体制でやるのか、それらのことが確認され、またそういった対策の方も浮かび上がってきているということでございます。

 今後、こういったいろいろな蓄積を積み重ねまして、その成果をガイドラインとして取りまとめた上で、磯焼け対策に活用していくということが重要だと考えておりまして、また、水産基盤整備事業といったような公共事業などを活用しながら、全体としての藻場の保全、創造に努めていきたいというふうに考えておるところでございます。

坪香政府参考人 お答えさせていただきます。

 除草剤を含みます農薬でございますけれども、農薬取締法に基づきまして、登録が必要ということになってございます。

 環境省は、人畜あるいは水産動植物への被害の防止の観点から、登録の可否に関します基準を定めているということでございます。このうち、水産動植物への被害防止に係る基準につきましては、平成十七年四月から、従来の魚類だけではなくて、甲殻類あるいは藻類に対する毒性も勘案いたしまして設定することとしてございます。これによりまして、生態系への影響の未然防止の強化に努めているところでございます。

 もう一つ、家庭から排水される生活排水についてでございますが、汚濁原因の大きな割合を占めている海域もございまして、その対策の推進が極めて重要というふうに思っております。このため、各地方自治体におきまして、水質汚濁防止法に基づきまして、生活排水対策の推進が特に必要な地域、そういう地域につきまして、生活排水対策重点地域として指定しております。その地域におきましては、生活排水処理施設の整備並びに啓発活動等の生活排水対策を図ってきているところでございます。

 さらに、先生御地元でございます唐津湾のような閉鎖性が非常に高い海域につきましては、水質汚濁防止法に基づきまして、事業場に対する窒素、燐の排水規制が実施されているところでございます。

 これらの取り組みによりまして、唐津湾のような閉鎖性海域を初めとするそういうところでは、水質改善を今後とも着実に推進してまいりたいというふうに思っております。

広津分科員 よろしくお願いいたします。

 あと、藻場というのは、ウニを駆除されたら困るというか、ウニはむしろバリューの高い生産物でございますので、ウニがどんどん繁殖できるように、藻場の方をどんどん繁茂させていただきたいなというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。

 あと、今までもぎりぎりの財政運営をしてきた地方の漁業中心の小さな町で、緊急に下水道や浄水設備をつくることは困難です。特に佐賀県というのは、下水道の整備の割合が日本でも一番低い地域なんですけれども、これは漁業その他にとって明らかに経済効果のある公共事業ですので、交付税もしくは補助金を使っても、緊急に下水等の必要な整備をしていただき、昔のきれいな海や川に戻したいのですが、いかがでしょうか。

小林政府参考人 漁村地域におきます汚水処理施設の整備、これは今御指摘ございました、資源等に関係するという意味での非常に大事な点でございますし、また漁村の環境、あるいは暮らしということを考えても、これは重点的に整備を進めなくてはいけないということで、私どもの水産基盤整備の長期計画の方でも重点課題になっているところでございます。

 それで、進捗状況は、まだ全国に比べれば高うございません。そういった意味で、これから整備計画の見直しも進められますけれども、こういった中で、汚水処理施設の整備もまた引き続き重点事項として進めていかなければならないというふうに考えているところでございます。

 そういった中で、こちらの施設につきましては、さまざまな政策目的なり、その対象地域に応じた事業がございまして、これは水産庁だけでなくて、他省のものを含めまして、私どもの集落排水施設、それからあとは下水道、さらには合併処理浄化槽など、それぞれ特徴がございますので、それをうまく活用してもらっているということでございます。特に、最近はやはり地域に応じた効果的な運用ということが求められておりまして、私ども農林水産省に加えまして、国土交通省、環境省などと適切な役割分担と連携をして、効率的な整備を推進しているという状況でございます。

 そういう中で、特に平成十七年度から、内閣府の方で、地方の裁量を拡大した汚水処理施設整備交付金を創設したということでございまして、これは今申し上げましたそれぞれの事業を統合いたしまして、執行段階とかいろいろな事業費の配分等で効率化するというものでございますが、こういったものを活用いたしまして、今後ともきれいな海や川を取り戻すため、連携して汚水処理施設整備の推進を図っていきたいと考えております。

 もちろん、この事業推進上は、国の補助金、地元地方公共団体の補助金、それから地元の負担金等々、これを有効に活用して組み合わせていく必要があるわけでございまして、なかなか地方財政厳しい折ということがございますので、まず冒頭申しました、この事業の漁業あるいは漁村集落においての重要性ということもよく訴えながら、地方におきましても漁村における汚水処理施設の重要性というのをよく理解していただいて、この事業が進捗されるように引き続き私どもも頑張っていきたいと思っているところでございます。

広津分科員 よろしくお願いいたします。

 最後に、水産業では、今後生産高を上げていくために、つくり育てる漁業の推進や資源管理が重要であると考えますが、水産基本計画の見直しにつきまして、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

中川国務大臣 広津委員の先ほどからのお話を伺っておりまして、日本というのは今まで世界一の漁獲量を上げていた国家でありましたけれども、このいただいたデータを見ても、ピークに比べて漁獲量がもう半分になってしまっている。そしてまた、世界じゅうに行ってとる時代から、日本の近いところでの漁業中心になってきているわけでございます。

 日本の排他的水域というのは、世界の中でも六番目ぐらいの極めて大きな水産の地域を持っているわけであります。しかし、何といっても、御地元の佐賀のような、地先といいましょうか沿岸といいましょうか、こういうところの海をいかに豊かに、きれいに管理していくかということが、冒頭の御意見にありましたように、五十年足らずのうちに人口が百億人になってしまうというときに、日本がまさに再生可能な、貴重な資源としての漁業、魚、そしてそれをはぐくむ海をどうやって維持していくかということでございます。国際的な環境も大変厳しいわけでありますし、とりわけ昨年はクラゲの問題とかあるいは原油高の問題で、漁業関係の皆さん方は、佐賀県でも大変苦しい一年だったと思います。

 しかし、水産あるいは漁業というのは、今後とも日本にとって極めて大事な産業であり、資源であり、また空間であるわけでございますから、そういう観点から、一月の二十五日に水産基本法に基づきます基本計画の新たな策定をお願いしたところでございます。

 そういう問題点をどうやって克服していくか、今も長官とのいろいろなやりとりがございましたけれども、そういうような観点を含めながら、また、とったものを、おいしい佐賀県でとれた魚を日本じゅうの消費者が喜んで食べていただけるような、流通とか保管とかいった技術も含めて、日本は栽培技術、あるいはまたそういった海をきれいにする技術は世界に誇る技術を持っているわけでございますから、こういう有効な技術を積極的に生かして、そしてまた消費者の皆さんにも、おいしい佐賀県沖の魚を初め、地先でとれる、地産地消という話がさっきあったんですけれども、海においても地産地消というものを推し進めていきたいというふうに考えております。

 そういう観点で基本計画を策定すべく、きょういただきました広津委員のいろいろな貴重な御意見もしっかりと踏まえまして、基本計画の策定に向けて審議会で御議論いただくべく、私からもまた、いろいろと御意見をいただきながら、大臣としての仕事を進めさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

広津分科員 どうもありがとうございます。よろしくお願いいたします。

 今までもさまざまな対策がなされてきたことがわかりました。どうもありがとうございました。

 今後さらに頑張っていただきまして、地方の重要な産業であり、また、日本の人口を支えるとともに食料の安全保障にも資する水産業の振興を、農林水産省、環境省、国土交通省など省庁の枠を超えてやっていただけるとありがたいと存じます。

 以上です。

玉沢主査 これにて広津素子君の質疑は終了いたしました。

 次に、福岡資麿君。

福岡分科員 自由民主党の福岡資麿と申します。

 私は先ほどの広津先生と同じで佐賀県の出身でございまして、御承知のとおり、佐賀県は農林水産業がまさに基幹産業の一つでございます。そういった観点におきまして、本日この質問の機会を与えていただきましたことをまず心から御礼を申し上げたいというふうに思います。

 御承知のとおり、佐賀県は、地理的に言いまして、北を玄界灘、そして南の方を有明海と、二つの全く性質の違った海に取り囲まれた大変特徴的な県であるということが言えると思います。そういった中で、ことしの十月、全国豊かな海づくり大会というものが佐賀県で行われることが既に決定しているわけでございます。

 そこで、農林水産大臣にお伺いしたいんですけれども、この豊かな海づくり大会というのは、水産資源であったり、自然環境の保護、こういったことが主要なテーマとして行われているというふうに承っておりまして、我が佐賀県におきましても、先ほど来御指摘ありますように、漁獲量の減であったり、また有明海の問題であったり、いろいろな問題がある中で、この豊かな海づくり大会を契機にして、やはり皆さん方のそういった海に対する意識を高揚させて、次に向けた新たなステップにしようという機運が高まってきておるわけでございます。そういった観点におきまして、ぜひ農水大臣のこの大会に向けての意気込みというところをお聞かせいただければというふうに思います。

中川国務大臣 全国豊かな海づくり大会、私も農林水産大臣として過去二回、天皇、皇后両陛下の御臨席をいただきまして、参加をさせていただきました。

 昨年は神奈川県でございまして、最後に神奈川県から佐賀県へバトンタッチという大変すばらしいセレモニーもあったところでございます。十月ですか、佐賀県におきまして全国豊かな海づくり第二十六回大会が行われるということは、大変私にとりましても楽しみな、すばらしいことだろうと思います。

 何といいましても、豊かな海があって、もちろん魚も、あるいはまた生態系も、そして我々人間も、日本人も生かされているんだということを改めて思い、そしてまた、海を大切にし、その海からとれる貴重な海産物には本当に感謝をしながら大切に扱っていかなければならないという気持ちになります。天皇、皇后両陛下が御放流をされる瞬間というのは、私はいつも大変な感動を覚えるわけでありまして、特に農林水産大臣という立場でお供をさせていただくということは、私に与えられている水産あるいは海づくりに対する責務の大きさというものを感じておりますので、どうか佐賀大会におきましても大成功になることを、関係者の皆さんは今懸命に御努力をされて御準備をされていると思いますので、御成功を心から御祈念させていただきたいと思います。

福岡分科員 ありがたいお言葉をいただきまして、ありがとうございました。

 今御指摘のとおり、地元挙げましてこの大会の成功に向けまして今一致団結取り組んでおるところでございますので、今後とも、引き続き農水省の方としても変わらぬバックアップをしていただきますことを心からお願いをさせていただきたいというふうに思います。

 二点目でございますが、次に、諫早湾干拓の問題について一点質問をさせていただきたいというふうに思います。

 諫早湾干拓の水門を閉め切って以降、ノリもしくは貝類も含めまして漁獲高が大きく減少傾向にあるということについては御承知のとおりであるというふうに思います。この点につきましては、地元の漁民の方々を通じまして、有明海を何とか再生させたいという非常に強い思いがあることもこれまた事実でございます。

 そういった中で、やはり漁業者の方々については、今あくまでも開門調査ということを求められておるわけでございますが、それに対して、農水省さんとしては、二次的被害等も考えられるというような御見解を今示されているというふうに承知をいたしております。

 そういった中で、そうはいっても、有明海で生計を立てていらっしゃる漁民の方々、本当に必死にもがいていらっしゃるわけですので、もし諫早湾干拓事業の中長期開門調査を行わないということでされるのであれば、有明海の再生に向けて、今後、抜本的な対策として、本格的調査も含めてどのような対策をとられるおつもりなのかということについて御質問をさせていただきたいと思います。

山田政府参考人 お答えいたします。

 ただいま先生のお話にありましたとおり、中長期の開門調査につきましては、農林水産省といたしましては、平成十六年五月に、この中長期の開門調査にかえて、有明海の環境変化の要因を解明するための調査、また環境改善のための技術開発を目的とした現地実証などを実施することとしたところでございます。

 現在、この方針に基づきまして、有明海沿岸の各県及び漁連等が参加した協議会がございますが、この協議会において話し合いを行いながら、漁業者の方々と協力して調査や現地実証を実施しているところでありまして、今後とも、漁業者の御意見をよくお聞きしながら実施をしていきたいと考えております。

 また、先生お話がありました有明海の再生に向けてということですが、先生御案内のとおり、現在、有明海・八代海特別措置法がございまして、この法律に基づいて各種の事業が実施されております。今後、さらに漁業者等の意見をよくお聞きし、必要な措置を同法に基づく事業に反映させるなど、漁業者の支援に努めてまいりたいと考えております。

福岡分科員 今お話にもありましたように、引き続き地元の方とのしっかりとした対話ということを重視していただきながら今後の施策等について進めていただきたいということを、この場をおかりしましてお願いをさせていただきたいというふうに思います。

 次に、同じくノリに絡んでなんですけれども、御承知のとおり、今、ノリのIQ枠拡大ということが問題になっておりまして、今国内においては、国内の需要と国内の供給というのが大体年間約百億枚というところで均衡がとれているというふうに言われておるわけでございます。

 そういった中で、先日ですか、ニュースとして、韓国とのIQ枠を十年後に十二億枚まで拡大するというようなことがニュースとして入ってまいりまして、それに対しまして、やはり地元の漁業関係者の方々は大きな不安をお持ちでいらっしゃるわけです。韓国に対して十二億枚ということは、ほかは中国等も含めましてさらにIQ枠が広がるのではないか。その中で、今国内の需給バランスが非常にとれている中で外国産の非常に安いノリが大量に入ってきた場合に、まさにノリで生計を立てている方々の生活が脅かされてしまうのではないかというような御不安の声というのが多数寄せられているわけでございます。

 そんな中で、国内生産者への影響緩和策としてどのようなことを考えられているのかということについて御質問をさせていただきたいと思います。

小林政府参考人 今お話ございましたように、IQ制度のもとでありますけれども、韓国との間での将来の輸入枠が徐々に拡大していくこと、それから、中国ともまたそういった点の協議を引き続き進めておりますし、それから、二月末には今年度の枠の拡大について公表したところでございます。

 今、我が国の農林水産業においては非常に厳しい状況でございますけれども、こういったグローバル化といいますか国際化の進む中で、やはり、国内生産の競争力を高めながらそういった流れにこれから対応していくということは必要でございまして、そういう意味では、これから私ども、さまざまな生産、流通、消費にわたる対策ということは必要だと考えておりますが、十八年度の予算におきましても、ノリ産業の構造改革という切り口での予算を盛り込んでおるところでございます。

 一つは、まず生産コストの削減でございまして、共同利用する大型ノリ自動乾燥機、こういうものの導入とか、生産性の低い従来の機械はそういうものにかえていくといったような対策がございますし、それから、優良品種の育成あるいは高品質なノリ生産技術の導入といった、いわば付加価値を高めるという対策もございます。それから、さらには消費面では、海外への輸出促進を含めまして、国内を含めた消費者へのPRによる需要拡大、こういったようなことを総合的に進めていくことにしておりまして、今後、各地域での生産者の皆さんの取り組み、それからいろいろな今後の具体的な方向をよく見ながら、こういった対策が効果を上げるように取り進めていきたいというふうに考えているところでございます。

福岡分科員 今、対策についてお示しをいただきました。

 佐賀におきましても、御指摘いただきました協業化等を積極的に推進することで一生懸命取り組んでおりますが、やはり、一生懸命合理化に努めたところで、中国産、韓国産に比べてノリの単価はどうしても高くなってしまうというのが現状のようでございます。そういった観点から、今後も現場をしっかりと見ていただきながら、きめ細やかな対応ということをぜひともお願いをさせていただきたいというふうに思っております。

 次でございますが、またノリにも関連することなんですが、食品表示に関することについて質問をさせていただきたいと思います。

 例えばノリについても、十八年の十月からJAS法において原料原産地表示がなされるというふうに聞いておりますけれども、おにぎりに巻くノリなど、そういったノリを使った加工食品についても原産地等がある程度きちんとわかった方が消費者としては明確に選択できる一つの材料になるのではないかというような声もあるわけでございます。

 ですから、そういった点も含めて、特に加工食品の原料原産地表示等につきまして、自主的な表示も含めてさらに推進をしていくことが必要ではないかというふうに私自身思っておるわけでございますが、その点につきましての御見解をお聞かせいただきたいと思います。

中川政府参考人 表示のお尋ねでございますけれども、表示は消費者の方々が商品選択をする際のよりどころになるものでございまして、食品に対します消費者の方々の安心あるいは信頼を確保する観点から、品質に関します情報を的確に提供していくということは大変大事なことだというふうに思っております。

 食品の原産地表示でございますけれども、JAS法によりまして、平成十二年の七月から、生鮮食品はもうすべて原産地の表示というのは義務づけをされております。加工食品につきましては、平成十三年に、梅干しですとかあるいはラッキョウから始まりまして逐次対象品目を拡大してまいりましたが、こういった個別の対応ではなくて、平成十六年の九月に、どこでとれた原料を使っているかということが最終の製品に大きな影響を与えるものとしまして、生鮮に近い、加工度の低い二十品目群を対象といたしまして原料原産地表示のいわば義務化をしたわけでございます。これは、今先生も御指摘ありましたように、ことしの十月からこれの義務化を行いたいというふうに思っております。

 こういった食品の表示制度につきましては、厚生労働省と共同で食品表示に関します共同会議というものを設けておりまして、ここで消費者の方々のいろいろな御意見も踏まえながら、さらに表示についての充実を図ってまいりたいというふうに思っております。

 それから、あと、製造業者の方々の自主的な取り組みでございますが、いわゆる義務化ではなくても、できる業者の方が自主的にいろいろな取り組みをされるというのは大変大事なことだと思っております。こういった自主的な取り組みの推進も含めまして、食品表示の普及あるいは啓発というものに努力をしていきたいというように思います。

福岡分科員 まさに今、食の安心、安全というようなことが問われている中で、やはり、消費者にとりまして明確な選択ができるような形というのをなるべく推進していっていただくようにお願いをさせていただきたいと思います。

 次に、大臣にお聞きをしたいんですが、今まで水産で来ましたが、佐賀は農業についても大変盛んなところでございまして、非常に、攻めの農業といいますか、例えばイチゴであったりアスパラガスであったり、特徴的な農産物をたくさん産出している県でございます。

 そういった中で、今後の農業のあり方として、攻めの農業というのもひとつ考えていかなきゃいけない。その中の一つとして、やはり輸出も含めた部分で積極的に取り組んでいかなければいけないのではないかというような方針が示されていると思いますが、今後、農産物輸出振興にかける大臣の意気込み、今後の取り組みについての姿勢ということについて、ぜひお聞かせをいただければと思います。

中川国務大臣 福岡委員おっしゃるとおりでございまして、佐賀県でも、非常に品質のいい農産物をつくって、日本じゅうの消費者の皆さんに買っていただく。そして、それが日本じゅうだけではなくて、世界じゅうの日本のおいしいものを食べたいという人たちに売っていこうじゃないかということを、今、小泉内閣、去年をベースにして五年間で倍にしようという計画を立てております。

 過去におきましても、明治の初めから、お茶だとか生糸だとか、あるいは魚の缶詰だとかありましたけれども、去年は、おかげさまで、一昨年に比べて一二%ふえたわけでございますけれども、もともとの世界じゅうに対して供給をしておりますホタテガイとか海産物とかいったものに加えまして、日本型食生活が非常に健康にいい、ヘルシーだということで、おすしのネタみたいなものもございますし、それから、緑茶みたいなものとか日本の和菓子とかいったものが大変伸びているわけでございます。

 ただ、これは、いいものをつくったんだから、東南アジア、中国、アメリカの人が黙って買ってくれるというものじゃございませんから、やはり現地に出向いて、展示会をやったり試食会をやったり、また、日本に来て日本食のすばらしさを知っている人に、ある意味では宣伝をしてもらうということで、触れ合う機会、知る機会がなければ、これはいいものであっても売れないわけでありますから、そういう意味で、農林水産省におきましても、現地の大使館、ジェトロ、あるいはJICA等々の出先と協力をいたしまして、また、農業団体自身も現地に出向いていって積極的にPRをすることによって、こういう成果が、第一年目において三千三百億を超える成績になっているわけであります。

 今、アスパラとか、そういうイチゴとか、いいものがあるんだということでございます。私の地元も、アスパラあります。大いに、佐賀県と北海道と、アスパラも競争して、そしてまた、競争によっていいものができるわけですから、日本じゅうだけじゃなくて、東南アジアや中国や台湾といった日本食をよく知っている人たちに、佐賀のアスパラと北海道のアスパラと、どっちがおいしいんだと言って、中国と競争できるぐらいにお互いに頑張っていこうじゃありませんか。

 そういう意味で、佐賀県においても、我々の攻める農業、輸出農業というものに、大いにまた福岡議員にも貢献をしていただきたいとお願いいたします。

福岡分科員 大臣の決意をお聞きしまして、大変心強く思いました。

 佐賀県におきましても、日本全国に発信していくのはもちろんのことでございますが、世界に向けて地元の特徴ある農産物を発信していこうということで取り組んでおるところでございます。

 その中で、一点、検疫についてお伺いをしたいんですけれども、例えば、今、佐賀のイチゴとかを中国に積極的に輸出を図っていこうというようなことで取り組みをしているところでございますが、対中国については、今、リンゴとかナシとかについてはもう検疫体制が整っているということでございますけれども、イチゴ等についてはまだ検疫の体制が整っていないということで、香港とかには出ていますけれども、中国本土とかにはまだ輸出ができていない状況だというふうに承っておるわけでございます。

 そういった中で、地元の方からも、積極的に世界に発信をしていく上で、相手国の検疫体制というのをきちんと取り組んでいただいて、早目に受け入れていただくようなことというのもぜひとも推進していただかないと、向こうが受け入れてくれなければ出すものも出せないというような話もあるわけでございます。

 ですから、そういった点で、ぜひ、今後、中国との農産物輸出に係る植物検疫上の協議がなるべく進むように強く働きかけていくべきではないかというふうに思っておりますが、その点に関します御見解をお聞かせいただければと思います。

中川政府参考人 中国におきまして、これまで輸入実績がない品目の輸入を認めるに先立ちまして、検疫当局によりますリスク分析が行われることになっております。

 これまで我が国としましては、中国向けに輸出希望のあります、先ほど先生がおっしゃいましたイチゴを初めとしまして十品目の果実類あるいは野菜、それと米につきまして、平成十六年以降、中国の検疫当局に対しましてリスク分析に必要な資料を提出いたしまして、解禁要請を行ってきているところでございます。イチゴにつきましては、十六年の十月に既に資料も提供いたしまして、輸入解禁要請を行ってきております。

 現在、中国の方で、検疫当局におきますリスク分析の作業を実施中というふうに理解をしておりますけれども、我が国といたしまして、できるだけ早くこういった必要な分析措置が終了し、我が国の要請をしております品目について解禁が実現するように、引き続き中国側に強く要請をしていきたいというふうに思います。

福岡分科員 ぜひとも積極的な取り組みについてお願いをさせていただきたいと思います。

 次に、品目横断的経営安定対策に関する周知というところについて御質問をさせていただきたいというふうに思いますが、昨年来からこのような品目横断的安定対策のポイント、いわゆる雪だるまと言われるようなパンフレットをつくられて、新しい経営のあり方についてきめ細やかに各地において説明会等も行われながら周知徹底を図られているということについては十分評価できるのではないかなというふうに思っております。

 しかしながら、例えば私の地元におきまして、その一部について非常に今誤解を生じて、間違ったような話が流布をしているような部分もございます。この雪だるまパンフレットでいいますと、ちょうどこの二十六ページのところのナラシ対策の部分でございますけれども、この説明のところで、この米印のところに、細かくよく読めば書いてあるのですが、実際農業をされている方々にしてみれば、ナラシの部分で九割の、ある程度所得を補償していただけるという部分について、その部分が、例えば、災害等による収量減の部分のそういったところまでナラシの中で面倒見てもらえるんじゃないかと。

 いわゆる、本当は、農災等に入っていなければ九割の補償がされないにもかかわらず、そういったところが非常に誤解をされていて、このパンフレットを見るだけにおいては、もう今までのように、特に大豆等において、農災等に加入していなくても九割の補償がされるのではないかというようなことが地元の中で出回っておったりする部分もあって、そういった中で、地元の方も必死に事実の説明をして回っているということでございますけれども、このパンフレットの表示等も含めて、もう少し、誤解を生じさせないように、しっかり親切に御説明をして回るべきではないかというような要望も上がってきております。

 その点につきまして、今後の取り組みについてぜひお聞かせをいただければと思います。

井出政府参考人 委員御指摘の点でございますけれども、品目横断的経営安定対策につきましては、昨年の十月に決定をいたしました経営所得安定対策等大綱でも明らかにしておりますけれども、今お話がございましたように、ナラシ対策の補てんをする際には農業災害補償制度による補償との重複を排除するということにいたしております。

 具体的には、災害による減収に対しましては、農業災害補償制度の加入、未加入を問わず、農業災害補償制度による補てんがあったものとみなして、ナラシ対策の補てん金から共済金相当額を控除する方向で検討いたしております。したがいまして、両制度に加入して初めて対象となる担い手の経営安定が図られるものでございまして、農業災害補償制度を積極的に活用することが重要であると考えております。農業災害補償制度の担当部局等にも、大豆等の共済加入を推進するチャンスでもあるのだということも私からも申しております。

 いずれにいたしましても、そのパンフレットも含めまして、この品目横断的経営安定対策の内容について、今後とも農業者に対しましても十分に説明をしていくわけでありますが、御指摘の点も含め、しっかりとした説明をしていくよう心がけたいと思っております。

福岡分科員 ありがとうございます。

 特に、やはり地元を回らせていただいている中で、一番農業者の方から御質問いただくのは、この品目横断的経営安定対策、今までと経営のあり方が大きく変わるわけですから、そういった中で、やはりいろいろな戸惑い、不安の声というのがたくさんあるわけでございます。

 しっかりといろいろ御説明をされるように、資料等を配布されているということは十分承知をしておりますけれども、そうはいっても、すべての方がわかっていただけるようにしっかりとフォローアップしていくということが何よりも大切ではないかというふうに思っておりますので、今後とも引き続き、きめ細やかな御配慮をしていただきますことを心からお願いをさせていただきたいというふうに思います。

 最後になりますが、米の需給調整について御質問をさせていただきたいと思います。

 品目横断的経営安定対策の導入にあわせまして、平成十九年産から、新たな需給調整システムというのが導入をされることになっております。それに伴いまして、今後は地域協議会が主体となって生産調整等を行っていくというようなことになっていくわけでございますけれども、これはすべてというわけではございませんが、地元の中でもほんの一部の市町村の中に、そういった新たな地域協議会ということに移行する中で、市町村はなるべくコミットしないようにしよう、なるべく距離を置こうとするような動きが中には見られるところもあるというふうに承っておるわけでございます。

 そういった中で、出されているこのパンフレットの中にも、やはり将来にわたって都道府県、市町村が取り組むべき地域農政の重要課題だということも承っておるわけですから、そういった観点におきまして、行政側もしっかりと生産調整に今後とも関与していくという意味におきまして、農水省さんの方から、各地域に対するしっかりとした浸透であったり徹底というものが必要ではないかというふうに思っておりますが、その点に関しましての御見解をお聞かせいただきたいと思います。

岡島政府参考人 お答え申し上げます。

 米の生産調整に関しましての行政側への関与のお尋ねでございます。

 御案内のとおり、十九年産からの移行を目指す新たな需給調整システムにおきましては、農業者、農業者団体が地域の販売戦略に基づいて主体的に需要に応じた生産に取り組むことによって、米づくりの本来あるべき姿の実現を図るものであります。

 そうした中で、これまで、行政による生産目標数量の配分ということを行っていたわけでございますけれども、新たな需給調整システムにおきましては、国、都道府県、市町村のそれぞれが需要量に関する情報の提供を行う、行政から提供された需要量に関する情報に基づきまして、JAなどの生産調整方針作成者が傘下の農業者へ生産目標数量の配分を行うことというふうになります。

 その際に、今委員御指摘のとおり、地域協議会でございますけれども、構成員としては市町村、JA等が構成員となっているわけでございますけれども、その地域協議会が生産調整方針作成者の間の調整の機能を十分発揮することが重要であります。このため、現場に最も近い行政機関として、地域水田農業の振興に携わる市町村が地域協議会への参画などを通じて需要に応じた産地の育成などに積極的に関与するよう、指導を行っているところでございます。

 今後とも、農業者団体の主体的な取り組みに対しまして、市町村を初めとする行政が各段階で支援を行い、生産調整の実効性を確保してまいりたいと考えております。

福岡分科員 ありがとうございました。

 佐賀県は、御承知のとおり、一次産業に従事されている方の比率が非常に多うございますので、そういった部分におきまして、そういった方々が混乱を来すということは地域そのものが大きな不安に巻き込まれるというようなことにもなりますので、ぜひとも今後ともしっかりとした対応をしていただきますことを心からお願いをさせていただきまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

玉沢主査 これにて福岡資麿君の質疑は終了いたしました。

 次に、松本洋平君。

松本(洋)分科員 自由民主党の松本洋平でございます。

 本日は、分科会におきまして質問をさせていただく機会をちょうだいしまして、ありがとうございます。

 今、私の前に、同僚で同期でもございます広津議員、そして福岡議員からお話がございました。佐賀県でも大変だなというような感を強く持ったわけでございます。

 実は、私の地元は東京十九区になるんですけれども、こちらでも、いろいろ大変な問題を抱えているわけでございます。その中の一つ、都市農業につきまして、本日はぜひ御質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。

 私の地元東京十九区というのは、西東京市、小平市、国分寺市、国立市の四市で構成をされております。東は練馬区境、西は立川市境ということでございまして、多摩地区にある、どちらかというと都心に近いところから中盤あたりにかけての、東西に長い選挙区になっているわけでございます。

 都心から来た方が私の地元に来て大体、異口同音に言うことがございまして、それは一体何なのかといいますと、いや、本当にこの町というのは緑が多くて、すてきなところですねというようなお話をされるわけでございます。いわば、住宅地と緑が共生する、そうしたモデル地域というような位置づけであると言っても過言ではないんじゃないかと思います。最近、住宅販売等のパンフレットを見ておりますと、緑が近いとか、水のそばとか、そういうまくら言葉がつくようなケースが非常に多いわけでございまして、住環境の整備という観点からいっても、緑の果たす役割というのは非常に大きなものがあるというふうに私自身感じているところでございます。

 そして、私たちの町におきましてそうした緑を支えている大きなものが、やはり都市農業というものが果たす役割は非常に大きくなっているわけでございます。私も地元を回っておりまして、地元の農業関係者、特に若い農業の担い手の方々とひざを突き合わせていろいろとお話をさせていただく機会があるわけでございまして、そうした経験を通しまして、きょうは御質問をさせていただきたいと思います。

 そこで、まず最初になんですけれども、この都市農業につきましての国の位置づけについて、ぜひその御見解を農林水産省、そして国土交通省から教えていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いをいたします。

中川国務大臣 まず、松本委員は、いわゆる都市出身の議員でありますけれども、農業について大変熱心であるということは、私自身、もう何回もお話をさせていただいて、本当に心から敬意を表したいと思います。

 農業といえば都市に対しての農村というイメージがありますが、データを見ても、都市的農業の位置づけというのは極めて大きいものがあります。農業粗生産額でも約三割を占めているわけでございまして、しかも、きょうは一日、地産地消という言葉が何回も出てきておりますけれども、まさに、東京でできたものを東京の人が食べれば、文字どおり大都会における地産地消という意味で、これまた大変に意味のあることであります。

 それからまた、今、緑とか水とかオープンスペースというようなお話がございましたけれども、特に都市に住む皆様方にとっては災害というものが非常に大きな課題だろうと思いますけれども、万が一のときのオープンスペースの役割というものも極めて大きいわけでもございます。農家と契約して、万が一のときの避難場所に利用するような契約も随分とふえているやにも聞いております。

 それから、最近は食育という言葉が盛んでございますけれども、もう少し前でいうと、自然を体験するとか本物を見るとか、ああいった、特に子供たちの情操過程における大事な要素が文字どおり身近に豊富にあるという観点からも、非常に有利といいましょうか、いい条件が備わっているわけであります。

 以上、申し上げただけでも、都市農業の果たす多面的な役割というものがあるわけでございます。そういう意味で、私どもも、都市あるいはその周辺の農業というものについても、今後とも大いに施策を進めていきたいと思っております。

 つまり、私の地元の北海道のような地域の農政、東京のような農政、あるいは、福岡委員のところの佐賀県のような農政、それぞれが違うわけですから、一律に同じ農政であってはもうだめなのでありまして、オーダーメードの農政をやっていくことが重要だということでありまして、それぞれの地域の発展に農業が果たす、また、発展によって、またその地域の農業が発展をしていくという、文字どおり共生の関係の中で、農林水産省としても、都市圏の農業の推進に向けて、これからも松本さんにいろいろ教えていただきながらやらせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

高梨政府参考人 都市農地につきましての国土交通省の考え方につきましてお尋ねがございました。

 安全で安心して暮らせる、そして、美しく潤いのある生活環境の実現を図る上で、都市におきます緑とオープンスペースの重要性はますます高まっております。都市農地は、住民の生活に四季折々の季節感や潤いを与えるとともに、都市の貴重な緑地的な空間、また防災的空間といたしまして、また、農業体験やレクリエーションの場としても大変重要な役割を果たしております。都市における良好な生活環境の確保の面から大きな役割を果たしているというふうに認識しているところでございます。

 このような観点から、国土交通省といたしましては、市街化区域内の保全すべき農地につきまして、地方公共団体による生産緑地制度の積極的な活用につきまして助言をしているほか、都市住民が家族とともに土と触れ合い、農業体験をレクリエーションとして行う場であります市民農園の整備につきましても、都市公園事業による支援に努めているところでございます。

松本(洋)分科員 ありがとうございます。

 今、大臣がおっしゃったオーダーメードの農政というのは、まさに私、そのとおりだと思っておりまして、極めて重要な考え方だというふうに、私自身も同じ思いを持たせていただいたところでございます。

 また、先ほど大臣、また国土交通省の方からもお話がございましたとおり、都市部におきまして、やはり身近な農地を残してほしいという住民のニーズは日に日に高まっていると私は感じております。繰り返しになってしまう部分もありますが、例えば昨今問題になっておりますヒートアイランド現象ですとか、緑と調和した住環境の整備、災害時の緊急避難場所としての役割、また、子供たちへの食育の観点、地域住民の交流、こうした観点から、本当に都市農政というのはますます重要になっているわけであります。

 ちょっと余談になりますけれども、先日、地元を歩いておりましたら、幼稚園の生徒が農家の方々のお宅に行きまして、ニンジン等をとって、それを実際に子供たちがみずから調理をして、カレーをつくるというようなことをやっておったわけでございますけれども、まさに今、子供たちというのは、どうやって野菜ができるのかということも知らない子供もだんだんふえてきているように感じるわけでございます。そうした現場体験というのも本当に重要だなということを感じた次第でございます。

 そうした中におきまして、これは二〇〇二年のデータになりますけれども、都市的地域農業の全国におきましての割合です、農地面積は二三%、農業産出額が二九%であるわけでございます。品目を見てみますと、特に野菜に関しては三八%、果実が三四%、花卉が三九%、こうした形になっているわけでございます。つまり、住民に心の潤いといいますか、そういうものを与えるだけではなくて、やはり日本全体の農業生産という観点からも都市農政は非常に大きな役割を実は果たしているということが、私はこのデータから読み取れると思っているわけでございます。

 しかしながら、そうした中におきまして、現在、私の地元もそうですけれども、都市農業というのは大変な危機に瀕しているわけでございます。町の貴重な緑である都市農業が衰退をいたしまして、急速な勢いで、町から農地、そして緑が減少を進めているわけでございます。

 都市農業、特に東京の農家一戸当たりの耕地面積は六十アール弱ということでございまして、北海道を除く全国平均が一・二六ヘクタールですから、その半分もないわけでございます。また、生産緑地法の影響などもありまして、耕地面積は、一九九〇年の一万一千五百ヘクタールから、二〇〇四年には八千三百九十ヘクタール、二七%減少しているわけでございまして、農家戸数に至りましては、二万六百七十九戸から一万四千九十戸と三二%の減少をしているわけでございます。

 この現状と、これから取り組もうとしている都市農業のあり方との差につきまして、農水省としてどのような施策で今取り組まれようとしているのかをぜひ教えていただきたいと思います。

山田政府参考人 先生お尋ねの、都市農業についての施策でございます。

 今、先生からお話ありましたとおり、都市農業、非常に重要であるというふうに考えております。また、先ほどお話がありましたように、都市住民のニーズというのも非常に高いということで、これにこたえていく必要があると考えております。

 農林水産省といたしましては、市街化区域内の農地においても、例えば普及事業ですとか防災の関係、あるいは病害虫防除など、営農継続に必要な施策を実施しておりますし、また、特に、生産緑地を中心にしまして、元気な地域づくり交付金というのがございますが、こういった交付金の制度によりまして、簡易な基盤整備等への支援あるいは都市住民との触れ合いの場の提供のための市民農園や交流施設の整備への支援などを講じております。

 また、施設整備あるいは簡易な基盤整備を実施する場合に、農業近代化資金ですとか農林漁業金融公庫資金の活用もできるようにしているところでございます。

松本(洋)分科員 ありがとうございます。

 さまざまな施策を実施していただいているということでございます。

 ちょっと一歩踏み込みまして、これは通告はしていないんですけれども、今後、都市農業推進のために、これ以上何かやるとかいう予定がありましたら、ぜひ教えていただきたいと思っておるんですが、今何かお考えのことというのはありますでしょうか。

山田政府参考人 今後の対策ということでございますが、実は、農林水産省といたしましては、昨年十月に組織の見直しをいたしまして、都市農業を担当する室、都市農業・地域交流室と申しますが、これを設置いたしました。本格的に都市農業の検討を進めていこうということでございまして、この担当室を中心にして、今後の施策をまた検討していきたいというような状況でございます。

松本(洋)分科員 今後とも、さらなる都市農業振興のための施策というものをぜひ、この場をおかりして強くお願いをいたしたいというふうに思っております。

 現在、都市農業を続けていくに当たりまして大きなよりどころとなっているのは、やはり納税猶予制度というものであると私は思っているわけでございます。そのような中、この納税猶予制度というのは、実は都市部と農村といいますか、では制度上若干違いがあるわけでございます。

 何かと申しますと、納税猶予税額の免除要件に関しまして、通常は、二十年以上特例農地等で農業を続けた場合には免除をされるということであるわけですが、都市営農農地につきましては、二十年営農による相続税免除という特例が、これは二〇〇四年ですか、廃止をされて、終生営農ということになっているわけでございます。なぜこのように違いがあるのかをぜひ教えていただきたいと思います。よろしくお願いします。

加藤政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、この納税猶予制度につきましてぜひ御理解をいただきたいのは、この制度は、相続税という税制、これはあらゆる資産を総合して金銭価値に換算して課税するわけでございますが、農地につきましては、いわゆる農業の特殊性、また、農地の所有と経営の一体を旨とするという基本的な考え方を尊重いたしまして、納税猶予制度という他の財産とは一線を画した特別の制度を行っておるわけでございます。

 そういう前提の中で、実は平成四年から、都市部における農地について制度改正がございまして、これは兼ねてからいろいろ御指摘がありまして、本来の農業の継続のために必要な制度として純化していくべきである、したがいまして、その段階で、生産緑地としてきちっと農業を営農していただくという方以外は、都市部の市街化区域は、基本的には普通の土地と同じようにしたわけでございます。

 その際、二十年の営農の免除要件については、これは別に都市部とそれ以外と関係なく、兼ねてから、当時、問題点が指摘されていました。つまり、制度の趣旨は、営農しているからこそ相続税が免除されるわけであって、二十年続けて、二十年後やめてしまったら免除になるというのはどうも制度の趣旨と合わない。私ども、この制度ができた当時のいろいろな議論は、結局、二十年というのは、当時としては、もう古い時代でございますから、永久にやるということとニアリー・イコールである、かつ、当時の継続管理の事務的な問題等もございましたのでそういう結論を出したわけですが、その後、非常に平均寿命等も延びるとか、いろいろな事情の変化がございます。

 したがいまして、このときに都市部の農地についての納税猶予制度の大きな改革があって、基本的には廃止をする。ただ、生産緑地に限って継続するというときに、その継続の要件というものをやはりこの際適正化する。たまたまそのときに改正の対象が都市部の農地ということで、あわせてこの問題をその段階で措置させていただいた。こういう経緯でございます。

松本(洋)分科員 ありがとうございます。

 この問題、大変微妙な問題といいますか、難しい問題をはらんでいるというのは私も重々承知をしているところでございます。

 ちなみに、これはことしだと思うんですけれども、ちょっと地元でアンケートをとっておりまして、農業に実際に従事されている方からとったアンケートの中に、実は今後十年ぐらいの農業の見通しということでアンケートがとられております。もちろん都市農業に従事している方ばかりですけれども、その中で、約三〇%ぐらいの人が相続税などの税負担のために現状維持は困難であるというような実は回答をしていたりもするわけでございまして、もちろん微妙かつ難しい問題であることは重々承知しながらも、ぜひ何らかのお力添え、御検討というものをよろしくお願いいたしたいというふうに思っております。

 あともう一つ、納税猶予につきまして質問をさせていただきたいと思います。

 地元でこんな声がございました。例えば、親が病気なんかで耕作ができなくなって、そういう場合に一時的に他人に請負耕作をしてもらった農地についても、子供が相続した際に納税猶予制度の対象になるというような制度であるというふうに認識をしております。しかし、実態として、地元の方々の声を聞きますと、例えば相続をする子供がまだ就業する年齢に達していないというときに、もし自分自身に万が一のことがあった場合に、これをどうするのか心配で、やはりなかなかこの納税猶予というものを活用することができないというような話もあるわけでございます。

 ですので、こうした場合に、親の農地を相続する子供がまだ就業年齢に達しないなど、そういう一定の条件の中におきましてでも、相続人みずから耕作できないような正当な事由があれば、一時的なつなぎとして他人に請負耕作をしてもらう場合、その場合に納税猶予の適用を受けることができるような、そうした制度というものは考えられないのか、ぜひ教えていただきたいと思います。

加藤政府参考人 今御指摘の点につきまして、私ども、この納税猶予制度の趣旨にかんがみ、やはりできるだけ営農が円滑に継続していく、継続していく限りにおいてはやはりきちっとこの制度の趣旨が達成できるということは非常に大切なことだと思っております。御指摘のように、営農の意思があるのにたまたま病気になられた方については、一定の事情のもとに、一時的な他人による耕作を認めるという措置はしております。

 それから、先生御指摘のお子様がまだ若干小さいという場合も、今、現実の取り扱いといたしまして、成年になるまでは、生計を一にする御親族の方、同居の親族の方がかわって成年になるまで農業を一時的に行うということについては、現実問題としてやむを得ないであろうということで認めております。

 それ以外、この問題について、まさに先生御指摘のように、非常に制度の趣旨等、それから現実の他の財産との公平の問題とかいろいろありますので、ある程度きちっとした線引きが必要だということで、引き続きこの適正な制度の運用ということを前提にいろいろ議論はさせていただきたいと思っております。

松本(洋)分科員 ありがとうございます。

 とはいえ、やはり核家族化が進んできたりしている中におきまして、こうした問題は今考えるということが極めて重要なことだと思っております。いろいろと難しい問題をはらんでいるのはわかりながらも、やはり、かといって都市から、私たちの町から農地というものがなくなってしまうということは何としてでも防いでいかなければならないというふうに考えておりますので、いろいろとお知恵をおかりしながら、一生懸命ぜひ頑張らせていただきたいと思いますし、御協力をよろしくお願いいたしたいと思います。

 次に、今、都市農業に従事する者にとりまして、先ほどの納税猶予と並んで大きなよりどころとなっているのは、やはり生産緑地制度になっているわけでございます。しかし、先ほど申し上げましたように、都市部におきましては農地がだんだん減少してきている、また分散をしているという中におきまして、現在の生産緑地制度というのは次第にハードルが高くなってきているんじゃないかというふうに私自身考えているところでございます。

 確かに、地方の方々からすると猫の額のような農地なのかもしれません。しかしながら、この生産緑地制度を活用した人は、三十年間、もう何としてでも農業を続けるという強い決意のもとに、実印をつきまして、そして今、一生懸命頑張って働かれているわけでございます。

 そうした強い思いを持っている都市農家の皆さんからすると、少しでも生産緑地制度、特に五百平方メートルという指定要件の緩和措置というものを実現してもらいたい。そして、農地を残していき、農業を続けていきたいというふうに考えているわけでございますけれども、その点につきましてのお考えというものをぜひ教えていただきたいと思います。よろしくお願いします。

高梨政府参考人 お答え申し上げます。

 生産緑地地区の指定面積要件についてでございますけれども、これは平成三年の生産緑地法の改正によりまして、従来一ヘクタールであった生産緑地地区の面積要件につきまして、農地等の持つ緑地機能をできる限り評価して、五百平米以上という小規模なものまで大幅に引き下げたところでございます。

 御質問の面積要件の見直しについてでございますが、都市環境としての機能を発揮し得る規模の農地の確保が必要であること、それに加えまして、継続的な営農条件の整備や農地としての永続性の確保、農地所有者と周辺の宅地所有者との税負担の公平性などの観点から、関係省庁含め、慎重な検討が必要と考えているところでございます。

松本(洋)分科員 慎重な審議といいますか検討が必要ということではございますけれども、今、都市と農業とのかかわり合いの中で、多くの方がやはり町の緑をぜひ残してほしいという思いは、恐らくそんなに差はないんじゃないかというふうに私自身は考えているところでございまして、もちろん諸問題あるのはわかりますけれども、そうした観点からも、ぜひ前向きな御検討というものをよろしくお願い申し上げます。

 といった観点で、そろそろ時間も近づいているわけでございますけれども、我が国の農業政策を考えたときに、都市農業の振興というものは、住環境もそうですし、食料自給率を上げていこうというようなことも農林水産省さん今一生懸命取り組まれている中におきまして、農業政策の中でも都市農業の振興というのは非常に重要であるというふうに私は思っております。もちろん、地方における農業は我が国の農業政策の根幹でございます。その振興は、我が国の農業、文化そして食料自給率を守っていくために極めて重要であるわけでございますが、先ほど申し上げましたとおり、都市農業が果たす役割というのも極めて重要なわけでございますので、ぜひとも政府といたしまして、一層の都市農業への理解そしてお力添えというものをお願いしたいというふうに思っております。

 そのためにやはり何よりも必要なのは、都市農業の現場に従事をしている方々、そして実際の農地の現場というものを、政府の方々にもより一層自分の足で見ていただいて、自分の目で見ていただいて、そして肌で感じていただくということが、私は極めて重要なことではないかというふうに考えているわけでございます。

 そうした観点から、各省の担当セクションと現場である関係都道府県、市町村、関係諸団体との協調体制につきまして、ぜひとも農林水産省の御意見というものをお聞かせいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

山田政府参考人 ただいまお尋ねがございました、現場との協調とか、あるいは現場の意見を聴取しろというお話でございます。

 先ほどちょっとお話をしましたが、昨年十月に、都市農業を担当する室を農林水産省に設けたところでございます。その室では、今先生お話がありましたような、地方自治体ですとか農業団体等との意見交換あるいは現地調査を実施してきております。

 具体的に言いますと、昨年十月に室ができまして以降六回にわたりまして、都府県あるいは農業会議関係者との現地調査あるいは意見交換、農家の方の意見を聞くとかいうこともいたしましたし、それから本年一月には、三大都市圏の十一の都府県の都市農業担当者との間で連絡調整会議というのを持っております。

 こういう形で、これまでも関係の団体あるいは現場の農業者の方々の意見をお聞きする、あるいは調整するということでやってきておりますが、今後とも、地方公共団体等との協調、あるいは現場の実情をよく踏まえながら、都市農業の振興に取り組んでいきたいと考えております。

松本(洋)分科員 ありがとうございます。ぜひ一層、現場の声というものを大事にしていただきまして、都市農業の振興のためにより有効な手段そして手だてというものを打っていただきたいと思います。

 もう時間でございますけれども、まさに今、地元におきまして都市農業に従事している方々は、歯を食いしばりながら一生懸命この農地を守ろうと頑張っているわけでございます。そして、もうここ五年、十年が、都市農業を守るためには勝負になるそうした年であるというふうに思っているわけでございまして、ぜひとも格段のお力添えをお願い申し上げ、そして私も、都市農業そして日本全体の農業に関しまして一生懸命勉強しながら取り組んでまいりたいと思っております。どうぞよろしくお願いします。

 きょうはありがとうございました。

玉沢主査 これにて松本洋平君の質疑は終了いたしました。

 次に、鈴木克昌君。

鈴木(克)分科員 民主党の鈴木克昌でございます。

 きょうは、林業、そして農業、そしてまた上下流の交流というような視点で少し御議論をさせていただきたい、また御要望をお願い申し上げたい、このように思っております。

 まず、林業についてお伺いをしてまいりたいというふうに思うんですが、森林の持つ公益的な機能は、これは言うまでもありません。水源涵養から始まって森林浴、そしてまた、最近あれかもしれませんけれども、燃料の問題や、ある意味では酸素の光合成の問題や、森や林の持つ機能というのはまさに我々人間にとって最も必要なものだ、このように思っています。

 しかし、そのような森林、特に林業に携わる方々が今大変な状況にある。本当に御苦労をされておるということでございます。これは、ある意味では、安価な外材と申しますか、こういったものが大量に入ってくる。そしてまた、国産材としてその価格が低迷をするというような状況。それに伴ってどういうことになっていくかというと、結果的に、森林が荒れていってしまう。そうすると、冒頭申し上げたような機能が低下をしていく、こういうことでございます。

 こういった問題を解消することは我々にとって本当に大きな問題だというふうに思っておりますが、一方で、現場に入りますと、林業従事者といいますか、こういう方々も非常に高齢化をしておるし、足らないというような状況もあります。そして、環境や緑を守る、そういう意味での事業の転換をしていく必要もあるのではないかな、このように思っておるわけであります。

 そこで、林業を守り、そして森林を守っていくために、実際にどういうふうにしていけばいいのかということになるわけでありますが、私は、公共の建物に、ある一定のいわゆる国産材使用の義務づけをやるとか、それから国産材の利用推進のさらなる政策を打っていくべきだ、このように思っておるわけであります。

 十八年度の農林水産予算の概要を拝見いたしましても、「多様で健全な森林の整備・保全の推進」を重点的に実施というふうに述べられておるわけであります。その中で、強い林業・木材産業づくり交付金というふうにあるわけでありますが、私の選挙区でも、御案内のように、地域木材を使って、いわゆる統廃合になっていく小中学校の建築計画が実はあるわけでございます。

 そこで、林業とか、そういった今のような公共の建物についての木材使用という面で何点かお伺いをしたいんですが、まず大臣にぜひお伺いをしたいのは、いわゆる林業で生計が立てられないこの実態、私の選挙区へ入りましても、かつては林業に携わり、そしてある意味では安定的な生活をされておった方が、高齢化もありまして、本当に林業ではもう全然食べていけない、こういうような状況で、結果的には山からおりなきゃならないというような状況でございます。そこで、ぜひひとつ、この際大臣から、林業で生計を立てていく、そういうことについての抜本的なといいますか、そういうことについての大臣の御所見をまず冒頭お伺いしたいというふうに思います。

中川国務大臣 鈴木委員は大変林業についての問題に御熱心だということはよく存じ上げております。

 率直に申し上げて、林業で生計を立てていくための抜本的な方策は何かという御質問に対しては、一応想定問答はあるんですけれども、どうもこれを読んでも私自身も抜本的な対策と言えるかどうか自信がないので、率直に言って今大変悩んでいるところでございます。

 つまり、林業でございますから、経済的な意味で、それでもって生計を立てていくということは、林業、木を売ったりまた木を加工したりして経済行為として成り立って、それでもって生計を立てていくということになりますと、売り手側の人がいるとすると買い手側の人がいて初めてビジネスが成り立って、それによって利益が上がって、それでもって暮らしていくということになりますと、もちろんそういう方も一部いらっしゃるとは思いますけれども、多分鈴木委員も私も、問題意識としては、そうじゃない人がいっぱいいるからどうしようかということになるんだろうと思います。

 では、そうじゃない人に対してはどうしたらいいのかということでございますが、一つは、不在村地主の方が今だんだんふえてきておりまして、四分の一近くになっております。この方たちは、多分生計ができない、もしくは林業でもって生計しなくても別のところで住んで暮らしていける人たちだろうというふうに思います。

 では、それ以外の人たちで、暮らしていく人たちはどうしたらいいのか。よく先輩のお話を聞きますと、昔は裏山の木を二、三本売れば一年間暮らしていけたのが、今はもう暮らしていくどころか、それはもう税金のことを考えたら云々なんという話をよく聞くことがございます。

 そういう意味で、もちろん国産材を利用して住宅その他いろいろなものに、愛知県のいい木材であるとか、あるいはまた各地のいい木材を使って地産地消、あるいはまた日本じゅうで、それでもっていい値段で売れて、いい製品ができるということによって結果的に暮らしていけるように、ぜひ木の国日本としては将来のことも考えてやっていきたいというふうに思っております。

 木づかい運動とか緑の雇用とか、いっぱいありますけれども、率直に申し上げて、抜本的に生業を立てていけるための方策は何かと言われると、私自身、非常に今これだと自信を持って申し上げられることがないので、今基本計画の見直しも含めまして、鈴木委員や、また国会、あるいはまた審議会、その他国民的ないろいろな御意見を聞きながら、まさにきちっとお答えができるように私自身もこれから勉強していくしかないというのが、大変申しわけございません、答えになっておりませんけれども、今の御質問に対してのお答えができるように、ぜひそうしたいという熱意を持って懸命に今後努力をさせていただきたいというふうに思います。

鈴木(克)分科員 大臣、本当に率直に御答弁をいただいたと思うんですが、木の国日本、そして林業に携わる方々が安定して、将来、要するに夢を持って生計が立てられるような、そういう時代が早く来る。そういう時代をつくっていくためにぜひ大臣も、今力強い御発言をいただいたわけでありますが、私どもも一生懸命考えさせていただきますので、ともども一つ本当にお願い申し上げたい、重ねてお願いを申し上げます。

 さて、それでは具体的なところを二、三お伺いしたいんですが、そういう世の中をつくっていくために、まず地域材を学校建築だとか公共の建物に使うということを今よりもさらに強力に制度化するとか義務づけるとかというようなことができないものだろうかな、私はこのように思っておるわけでありますが、この辺について現況をどんなふうにお考えになっておるのか、御答弁をいただけたらと思います。

川村政府参考人 地域材の利用拡大ということでは、私どもも非常に重要なことだと思っておりますので、各省とも連携をいたしまして、木材の活用といいますか利用拡大ということに努めております。

 例えて言いますと、文部科学省との間では、学校に併設して整備をされます複合的な公共施設の木造化、またエコスクールということで推進をされておりますけれども、その施設整備の一環に内装の木質化への支援を行っておりましたり、あるいは厚労省とも連携をしまして、保育園が保有いたします屋外の遊具の木製化への支援等、地域材の利用推進を図っているというのが現状でございます。

鈴木(克)分科員 冒頭、質問でも申し上げましたように、こういうものを強力に義務づけるというのか、私はそれぐらいのことをしていかないとなかなか地域材が使われていくということにならないんじゃないかなというふうに思います。

 今、他省との連携もとりながらということでいろいろと御検討いただいておるようでありますが、しっかりとその辺をやっていただきたい、このことをお願い申し上げたいと思います。

 それから、それに関連しまして、私も田舎というか小さな町の市長をしていたんですが、自治体が地域材を使うというような計画をつくったときに、国として何か支援、そういうものがあれば各自治体も非常に使いやすいし、地元にあるわけですから、そういう意味で、自治体が地域材を使うというような計画を立てたときに何か国から支援をするというようなお考えというか、現況はどんな状況になっておって、また今後どんなふうにお考えなのか、お聞かせをいただきたいと思います。

川村政府参考人 木材の利用の促進につきましては、もちろん国による取り組みも必要でございますけれども、地域の実情に即しまして各自治体が創意工夫をされまして、こういう利用拡大の取り組みをされるというのは非常に重要なことであるし、意義のあることだと思っております。そして、実際、各自治体、例えばそういう地域材を活用して住宅をつくられる場合に、低利の融資をされるとか、利子補給をされるとか、あるいは補助金を出されるとか、あるいは地域材を直接贈呈されるとか、そういった取り組みが県レベルでも、市町村レベルでもされております。

 私どもも、公共施設の整備などにつきましては、強い林業・木材産業づくり交付金の中で地域材を利用した整備というものへの助成もしているわけでございますが、そういうものとタイアップをして強力に進めていきたいと思っております。

 今後とも、都道府県との連携また情報交換、そういうものをしっかりやってまいりたい、こういうふうに思っております。

鈴木(克)分科員 これは御答弁は要りませんけれども、実は私も森林の持つ保水力について少し調べてきたんですが、雨が降った地表への水のしみ込みの状況というのを見て、なるほど、こういうふうなのかなと思って、本当に今さらながら森林の持つすごい力を思わされたんです。

 広葉樹林のところへ雨が降ったときに、一時間当たり二百七十二ミリ保水をするんですね。それから、針葉樹林のところは二百四十六ミリ、一時間当たり保水をする。伐採地の跡は百六十ミリ。草地、草のところだと百九十一ミリ。山崩れの跡地というと九十九ミリ。ちなみに、歩道は十一ミリ。これだけ森林の持つ保水力のすごさというのは本当にあるわけですね。いや、これは御答弁要りませんから、私が調べてきたので。今さらながら、本当に森林の持つすごさというのを我々は感じなきゃならない。繰り返しになりますが、その森林が荒れてしまえば、結局、この保水力もなくなってしまうということであります。

 土砂の量もちょっと調べてきたら、一年間で流れ出る量が、荒廃地で三百七トン、これは一定の広さのところですけれども、耕地が十五トン、森林が二トンということで、いかに森林が土砂をせきとめておるか、流出を防いでおるかということであります。

 ということで、これを先に申し上げて御質問に入らなきゃいかぬかったかもしれませんけれども、いずれにしても、くどくなりますが、そういう森林の機能に我々は感謝をしながら、そして十分生かしていく。それが、林業の皆さんが生活ができるということを、そしてまたそのできた木が有効に人類のために活躍、活用されるような制度、そういうものを考えていかなくてはいけないのではないかな。

 そういう目線からいくと、冒頭、大臣は、本当に前向きといいますか、今一生懸命考えていくというお話がありましたけれども、ぜひひとつ皆さん方におかれましても、長官におかれましても、そういう目線でもう一度日本の林業政策というものをお考えいただきたい。これはいっときの、我々の時代だけのことではなくて、後世につながるもの、大きく言えば地球環境につながっていくものだ、こういうとらえ方は十分御理解をいただいておると思いますが、重ねてお願いをして、次の質問に入らせていただきます。

 次は、これもまたちょっと、私の選挙区は田舎なものですから、田舎の悩みを大臣初め皆さんに聞いていただきたいんですが、鳥獣害なんですね。

 私も地元へ戻りますと、あるとき、こういうことを聞かされたことがあったんです。お年寄りが二人みえまして、鈴木さんと言うから、何ですかと言ったら、最近の鳥獣、特に猿だとか、あれは人間のしゃべる言葉がわかるのかねと言うわけですよね。何でですかと言ったら、かなり実ってきて、あすあたり取り入れをしようかと言うと、ごっそりやられちゃうと言うんですよ。本当にもう泣くにも泣けないということで、おじいさんとおばあさんがしゃべっておるのを聞いておるんじゃないかというような話があるわけです。

 いずれにしましても、都市へ人口が移動をしていく、中山間地で、いわゆる農業の担い手不足、そして農業従事者が高齢化していく。しかし、そんな中でも、みんな一生懸命で、何とか里山を守っていこうという方もたくさんみえるわけですね。そこにあらわれるのがいわゆる鳥獣害なんですね。

 これは、よく言われるのは猿とかイノシシとかシカとかいうことなんですが、最近は、例えばアライグマだとかマングースだとかハクビシンだとか、こういうようないわゆる外来種が農作物を荒らしていくということでございます。これは自然環境、もちろん、植林をした木の芽を食べられれば、これはもう何ともなりませんし、そういうような自然環境もさることながら、人間に与える社会的、経済的な問題というのも非常に多いわけであります。

 そこで、この鳥獣害をどういうふうにしていけばいいかということでいろいろと調べてきたんですが、鳥獣害に対しての予防策ということで、野生の動物にえさを与えないでください、人家、農地でえさになるものを置かないでください、食べられるような状態にしないでください、野生動物の生息地にえさとなるものを残さないでください、農産物を食べているのを見過ごさないように、すぐ追っ払ってください、こういうようなことが書いてあるんですね。だけれども、これは理屈の上ではそうかもしれませんけれども、現実には、こんなことをやっておったら、それこそ生活できないわけですよね。

 したがって、この鳥獣害に対してどういう形で、政府も手だてというか対策はいろいろとお考えになっておるやに思いますけれども、まず、全国の被害というのはどんなものなのか、そして、私どもは愛知県でありますので、恐縮ですが、愛知県の被害総額の状況をどのように把握されておるのかということをまずお伺いしたいというふうに思います。ちょっと私も調べてまいったんですが、何か、十一年から十四年ですか、平成八年から十四年の間で、これは年間二百億くらいではなかったですかな。何にしても、それぐらいの被害だというようなことも聞いておるんです。

 いずれにしても、昨今、全国的にどんな状況になっておるのか、そしてまた、愛知県はどうなのか、御答弁いただきたいと思います。

西川政府参考人 鳥獣による被害でございますけれども、平成十六年度の野生鳥獣による農作物の被害状況につきましては、全国の被害面積としては約十四万ヘクタール、被害金額にいたしますと約二百六億円というふうに承知をしております。また、林業被害につきましては、全国の被害面積は約七千四百ヘクタール。

 このうち、愛知県におきます農作物の被害状況につきましては、面積で約四千ヘクタール、被害金額は約六億円となっております。同様に、林業被害面積、県からの報告では約十四ヘクタールというふうに聞いているところでございます。

鈴木(克)分科員 とりわけ、今申し上げたように、中山間地で一生懸命農業を守っておられるのはほとんど高齢者なんですよね。高齢者にとってみると、本当に丹精込めてつくってきて、いよいよ取り入れをしようかなと思ったら、結局ごっそりととられてしまうということで、これは恐らく金額以上に精神的ダメージというのは非常に大きなものがあると私は思うんですね。

 そこで、関連してというか、さらにお伺いするんですが、今まで農水省はどのような鳥獣被害の対策をやってみえたのか、そして、今後どのように取り組んでいこうと思われておるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

    〔主査退席、山本(公)主査代理着席〕

西川政府参考人 農林水産省におきましては、野生鳥獣による農作物などの被害を防止するという観点から、これまで、被害防止のための技術開発を行う、あと、強い農業づくり交付金などの各種補助金によりまして、各地域で取り組む、侵入防止さくの設置、イノシシなどがこれに当たると思いますが、そういう防止さくの設置、追い払い等自衛体制の整備や必要な知識の普及啓発などに対しまして、支援を行ってきております。

 また、各地域における取り組みを円滑に進める観点から、現場の技術指導者が活用できますよう、全国的に被害が大きいイノシシ、シカ、猿の生態の特性と被害対策をまとめたマニュアルを近々まとめて、作成、配布をするというふうにしております。

 これらに加えまして、十八年度からは、新たに、環境省との連携のもと、県域をまたがる広域地域を拠点地域として設定いたしまして、地域参加型の鳥獣害情報マップの作成と、これを活用した総合的防除技術体系の確立を推進する対策というものを実施することとしているところでございます。

 今後とも、関係省庁との連携を一層密にいたしまして、農作物等の被害防止対策を推進してまいりたいと考えているところでございます。

鈴木(克)分科員 ちなみに、私はある県の鳥獣被害防止対策というのを持ってきたんですが、より効果を上げるには、来にくい環境をつくりましょう、野生鳥獣の特性を知りましょう、対策を根気よく続けましょう、こういうことですよね。これは、猿やシカやイノシシが聞いてくれればいいんですけれども、本当にそういう話じゃないんですよね。

 だから、環境省にお伺いをしますが、イノシシ、シカ、猿の捕獲数はどんなふうになっておるのか、ちょっとお聞かせをいただきたいと思います。

南川政府参考人 捕獲数でございますが、全国で、平成五年と平成十五年を比較して申し上げます。

 まずイノシシでございますが、平成五年が七万九千頭でございました。十年たちまして二十一万頭捕獲しております。シカでございますが、六万三千頭であったものを、平成十五年では十六万頭捕獲をしております。それから猿でございますが、平成五年が五千頭、これが平成十五年には約一万一千頭となっております。

鈴木(克)分科員 いずれにしても、鳥獣の被害対策として、捕獲をするとかいろいろとあるわけですけれども、本当に効果がある鳥獣の管理というか、やはりすみ分けが私は必要だと思うんですよね。その辺について何かお考えがあったら聞かせていただきたいと思います。

南川政府参考人 制度的に申しますと、現在、著しく数がふえた鳥獣につきましては、各県で特定計画をつくってもらいまして管理をするということになっております。

 中身としましては、具体的に捕獲数を決める、また二つ目には、例えば奥山に広葉樹をつくるなどの生息地の環境管理をする、それから被害防除対策を行うといったことでございます。

 ただ、これだけでは不十分な点もございます。やはり、特に現在被害が出ておりますシカ、それからイノシシを考えますと、わなをより効率的に使ってとるということが特に必要だと思います。そういう意味で、私ども、できますれば今国会に、そういうわな免許の、狩猟資格の取りやすさなどを内容とした法改正を出したい、そして御審議をいただきたいというふうに考えているところでございます。

    〔山本(公)主査代理退席、主査着席〕

鈴木(克)分科員 いよいよ時間も迫ってまいりましたが、最後の質問をさせていただきたいと思います。

 水源を守り、水源地を守り、山間部の皆さんの生活を守っていくには、やはり上流と下流の交流というものが私は必要だというふうに思っています。

 私の地元、蒲郡なんですが、山間部の皆さんと直接契約を結びまして、給食に使うお米を一万二千キロ買い入れるというようなことをやっています。それから、私は市長のときに、ある村の分収育林として共管システムというのをやってきました。

 そこでお伺いをするんですが、上下流の交流を含めて、どのような取り組みをなさっておるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

川村政府参考人 水源涵養機能というものは非常に重要でございまして、このためには、治山事業でありますとか間伐等の森林整備、いろいろやっておりますが、今申されました上下流の連携によります森林整備、これは国民的な盛り上がりをつくる上でも非常に重要であると思っております。

 その一つのやり方としまして、森林法を平成三年に改正いたしまして、森林整備協定というものを位置づけております。上下流の住民が協力をされまして、記念植樹とか造林とかされまして交流を図るということで、森林の重要性、こういったものの理解を促進するということ、また、実際的にも造林をしていくというようなことになっておりまして、平成十七年十一月現在で、全国で四十一の全国森林整備協定が結ばれております。

 委員が市長をされておりました蒲郡市と愛知県の設楽町も「かがやきの森」森林整備協定を締結されたということは私どもも承知しておりますが、ぜひ今後ともよろしくお願いしたいと思います。

鈴木(克)分科員 時間が参りました。

 いずれにいたしましても、日本の林業、そして木の国日本を守っていく、そしてまた里山を守っておる高齢者、そういった方々が本当に安心して生活できるような、そういうための施策をひとつ大臣初め皆さん方にはお願いを申し上げて、私の質問を終わります。ありがとうございました。

玉沢主査 これにて鈴木克昌君の質疑は終了いたしました。

 次に、田名部匡代君。

田名部分科員 民主党、田名部匡代でございます。

 中川大臣、長時間お疲れさまでございました。私もだんだんおなかのすいてくる時間となりましたし、大臣も早くのどを潤したい時間になってきたかと思いますが、あと三十分おつき合いを願いたいと思いますので、どうぞよろしくお願いをいたします。

 さて、早速でありますけれども、もう御承知のとおり、近年、大型クラゲの発生によりまして漁業者が大変な被害を受けているところでございます。私は青森県の出身でございますが、私の地元でも大変な被害をこうむっている漁業者の方々が嘆いているというのが現状でございます。

 大臣も、所信表明の中でこの問題について、喫緊の課題だということで御発言をいただいております。早急な対策が求められているところでありますが、まず、このクラゲがなぜこんなに大量に発生しているのか、根本的な原因を解明することも急がれるわけですが、現段階で発生原因というものがどのぐらい解明されているのか、担当の方にお答え願いたいと思います。

小林政府参考人 最近の大型クラゲの大量発生、この原因でございますが、なかなかまだきちんと解明されていない状況でございます。

 専門家の皆さんの意見としまして、一つは中国大陸沿岸部の富栄養化ではないか、あるいは地球温暖化による水温の上昇ではないかとか、さらに、水産資源の乱獲によりまして、大型クラゲ、これはプランクトンを食べるんですけれども、それと競合する魚介類が減少した、いろいろな説がございます。ただ、クラゲの発生場所だとか、それから生活史、まだまだ不明な点が多うございまして、その具体的な原因として特定されるには至っておりません。

 こういうこともございまして、来年度予算におきまして、中国、韓国と連携した形で、大型クラゲの初期発生の海域とされております東シナ海等におきます共同調査などを実施いたしまして、この大型クラゲの発生原因の解明を図ることとしているところでございます。

田名部分科員 その原因を突きとめるというのはなかなか時間のかかることなのかもしれません。

 今御説明にありましたとおり、クラゲの被害というのは日本、中国、韓国でも出ているわけでありまして、本年度からこの三カ国におきまして共同調査を行うということであります。これはどういった形で行われるのか、また、日本、中国、韓国の沿岸すべてにおいて調査をされるのか、また、その調査報告というのは一体いつごろ上がってくるのかということをお答えいただけますでしょうか。

小林政府参考人 大型クラゲに関します日中韓の共同調査でございますが、まずその準備といたしまして、昨年の十二月でございますが、中国の上海で、大型クラゲに関する国際ワークショップ、これは日中韓が参加しておりますけれども、そこで専門家の皆さんが集まった第二回目の会合がございました。第一回目はおととしの二月だったと思いますけれども、その二回目の会合におきまして、日本側からこの調査に向けまして提案を行っています。

 一つは、東シナ海あるいはその隣接水域におけますクラゲの分布とか生態についての共同調査、それから二点目が、各国の沿岸域におけます出現状況のモニタリング、それから三点目としまして、その調査データを相互交換して、また国際ワークショップの開催なんかでそういうものを活用していく、こんな提案を行ったところでございます。

 これに対しまして、このワークショップでの韓国あるいは中国から参加されている皆さんは、共同調査の実施について基本的に賛同する、こういった意向が示されたところでございまして、これを受けまして、この十八年度の対応につきまして現在準備を進めております。

 韓国あるいは中国の関係機関との間で、具体的な共同調査計画の立案に向けての協議ということでございますが、内容はまさにこれからでございますけれども、遅くとも本年の四月中には計画が取りまとめられて、大型クラゲの発生、これは夏でございますが、その先立つことしの五月ぐらいには、東シナ海等での共同調査に着手できるかと考えております。

 もちろん、この調査、結果が出たりいろいろな成果ができますれば、それを早急にまた取りまとめて世の中に報告していきたいと思っているところでございます。

田名部分科員 先ほど御説明の中にありましたように、このクラゲの大量発生の原因というものが、温暖化の説、また、一部新聞報道では、工業排水などによる人的汚染の可能性もあるのではないかといった説もあるわけであります。

 そんな中において、この調査の方法が、例えば、各国それぞれが自分たちの国を調査するという形なのか、それとも、三カ国が一体となって、他国の状況も事前に把握できるというか、原因を一緒に追求していけるような形なのかというのは大変重要だと思うんですけれども、そういったことというのはもうお決まりになっているんでしょうか。

小林政府参考人 まさにそういったところを今いろいろ相談しているところでございまして、まだ具体的な方向は決まっておりませんが、例えて言いますれば、例えば、同じ船で同じ海域に行って、その三国の皆さんが集まってということもあるでしょうし、それぞれの国においての調査機関あるいは調査船がやった上でそれをまた突き合わせるという形もあるでしょうし、いろいろな形があると思いますけれども、それはまた、まさにこれから研究者の皆さんを中心に具体的な計画をつくっている、そういった状況でございます。

田名部分科員 まだ具体的な中身が決まっておられないということですので、被害に遭われた皆さんとしては、正確な情報、その原因というものを一刻も早く知りたいと思っていらっしゃると思います。

 また、調査結果が出たときに、その責任がどこにあるのか、原因いかんによっては、それが人的な工業排水による汚染だったとした場合とか、それぞれの国で責任をとらなければいけない状況になり得る可能性もあると思うんですが、そういった場合、駆除をするのは、三カ国で一緒になってその責任を負うのか、それともそういった原因がある国が独自で駆除をするのか、そういったどういう対応をするのかということはまだ決まっておられないと思いますが、これは先に決めておくことが必要だと思うんですけれども、どうお考えでしょうか。

小林政府参考人 何といいますか自然界、環境変化に伴うさまざまな影響が出てきている中で、まず科学的に調査をする。それで、原因とか要因がわかってきますれば、それに対してどう対策するか。その対策の中で、何らかの形で因果関係が出てきたときに、それをだれが負担するのか。そういったものは当然一つの物事の流れとしてあるわけでございますが、これはとりわけ海の中の非常に様子のわからない段階なものですから、まず客観的に、科学的な調査をきちんとやる、これがまず第一だと思っております。

田名部分科員 ありがとうございました。

 これまでの間にどれほどの被害があるかというのは、もう皆さんの方で十分に把握していると思います。

 大変な大きな被害を受けております中、本日も私は地元の水産関係の方とお話をさせていただきました。本当に困っていらっしゃいました。話をした中で幾つか要望がありましたので、済みません、通告しておりませんけれども、簡単な御要望、また御質問ですので、よろしくお願いしたいと思います。

 まず、水産総合研究センターでさまざまな研究調査が行われている、そのように伺っておりますが、被害を最小限に食いとめるためにも、こういった研究調査というのは大いに役立つものだ、そのように思っております。

 そのセンターの取りまとめた情報というのが必ずしも地方の漁業者に伝わっていないのではないかということが考えられるわけですが、現段階で、センターの持っている情報というのは、どういった形でそれぞれの地域に通知をされているのか、通告をされているのかということを教えていただけますか。

小林政府参考人 一つの事例として申し上げますと、昨年、センターの方の一つの取り組みとして、例の洋上駆除、要するに、船で、実際の大型クラゲ、これを駆除するために調査船を使って、その対策を講じました。その結果、それはそれで一つの効果があるというような事例が出てきますと、それは我々行政の方も含めて一つのマニュアルにして、それで例えば、こういった漁具についてはこういう効果がありますよ、それから、こういう改良ができますよというものをまとめまして、去年の七月ごろに一冊出しまして、また改訂版も出していまして、これはもちろん我が独立行政法人のセンターだけじゃなくて、各都道府県の研究所の皆さんも非常に努力されています。そういうものを集大成してマニュアル化して、それを現場までお示しして活用してもらう、そういったようなことをやっております。

 また、あわせて、センターの方ではセンターの方でさまざまな研究開発をやっておりますので、そういうものの成果等は、常々プレスリリース等、あるいは恐らく自分のいろいろなメールとか、そういうようなところを活用して発信しているというふうに聞いております。

田名部分科員 だんだん水産関係の皆さんも後継者がいなくて高齢化をしてきているわけで、インターネット等に載せていただいてもなかなか見られないというのが実態だと思います。

 それで、当事者のお話を伺う限りでは、例えば、漁協を使って各船に乗っている方々の家庭に届くようにするとか、近隣のそういったところにとりに行けば情報が得られるようにするとか、そういったより細かい情報提供をしてほしいんだということをおっしゃっていましたけれども、そういったことはできないでしょうか。

小林政府参考人 今まさに御指摘の点、非常に大事だと思います。

 私ども、今のクラゲ対策とかそれから燃油対策、ああいった形で予算化もしまして、それをどうやって現場でうまく活用してもらうかという段階になっておりますので、私どももできるだけわかりやすいものをつくって、都道府県等あるいは漁業団体を通じてお示しすると同時に、漁業団体の方でも説明会を開いたり、それから、わかりやすいパンフレット、マニュアル等をつくっておりますので、そういうものを現場でもうまく活用してもらうということだと思いますし、常々、そういった取り組み、それから普及啓発、宣伝とうまくいきますように、私どもよく心がけていきたいと思っております。

田名部分科員 これまでも独立行政法人でいろいろなパンフレットが出されておりまして、その中には、余りにもカラーで無駄なんじゃないか、無駄にお金がかかっているんじゃないかというような御指摘も今までありましたけれども、ぜひ、必要な情報でありますので、無駄にお金をかけるのではなくて、どういった施策が施せるのかとか、例えば大量発生している場所がどこなのか、そういった情報を随時発信できるような体制を整えていただきたいな、そのように思います。

 それと、現在、各自治体によって支援措置というものがばらばらにあるというふうに聞いておりますけれども、それは事実でしょうか。被害に遭われている漁業者に対しての支援というものを自治体独自で行っているところもあるんでしょうか。

小林政府参考人 私は具体的に承知はしておりませんが、一般的に、いろいろ私どもも支援策をやっている中であり得ますのは、例えて言いますれば、融資なんかをするときに国の利子補給がございますけれども、そういったところに各都道府県がさらに都道府県の判断で上乗せ補給するとか、そういったさまざまな形態がありますので、今回のクラゲ対策という中で具体的に出てくるのかどうかというのはちょっと私は承知しておりませんけれども、我々からしましても、国の支援策にあわせまして、各都道府県等がまた御自身の判断で、それにさらに充実をさせるということは、これは結構なことだと思っています。

田名部分科員 私も全国各自治体を調べたわけではないですが、先ほど申し上げましたように、各自治体によって、例えば青森県でも、県でのそういった救済措置を申請することによって支援をしてくれるとか、それは小さな町でもまた負担をしてくれるとか、また組合も一緒になって支援をしているというようなところがあるわけですが、それが各自治体によって格差があるというか、つまり、財政的に苦しいところはなかなか漁業者に対して支援ができないというのが実情だと思うんですけれども、全国で被害に遭われている漁業者の皆様に一元的に支援ができるように、国と自治体と市町村と一緒になって支援策というものは打ち出せないでしょうか。

小林政府参考人 いろいろな施策が効果を持つためには、やはり現場現場の状況に合った形で、国からいろいろな施策の出るものが現場の状況と合った形で進められていくということが必要だと思っていまして、特に農林水産行政の場合にはそういった点が多いわけでございます。

 一方で、今、地方分権、三位一体改革という流れがございます。要するに、国が国の立場だけで県、市町村にこうすべし、ああすべしということはありませんので、やはり、国、県、市町村が、それぞれの立場で、お互いの施策を、先ほど申しました、効果あらしめるためにどういうふうにやるかということをよくお互い認識し合いながら、そういう中で進めていくものであろうと思っています。そういう意味では、私どもが政策をつくり施策を打ち出していくときに、その趣旨なり、そういったことをよく説明し、また現場の都道府県の水産部あるいは漁協の皆さんがよく受けとめて、それをまたそれぞれの分野の中で各地方団体に訴えていく、そういったことを連携させてやっていくということかと思っております。

 何か一律に国の方から、こういった形で枠を決めてということではなくなってきておりますので、今申しましたような方向で進めていくことが適当かと思っております。

田名部分科員 確かに、三位一体の改革ということで地方分権が進められて、地方は財政的にもいろいろな痛みを押しつけられているんだ、私はそのように思っています。いい政策を掲げて、それを打ち出して、さあやりましょうと言ってはみるものの、それが結局は、いずれというか、時間がたてば自治体に、お金も自分たちでやりなさい、その掲げた政策も続けてくださいというのが今の地方分権の実態だ、私はそのように思っているんです。

 地方分権だといいながら、結局、財源がないわけですよね、自治体は、地方は。ですから、地方分権だからそれぞれの各県で自分たちに見合った施策、支援をしてくれというのであれば、そこに対する予算を国の方でしっかりと確保をしていただきたい。そして、必要な支援を必要なときに、それは全国一律的ではなくても結構だと思うんです、それぞれの地域に見合った支援策をぜひ政府の方で打ち出して、そういった予算を確保すること、支援をしていくことをやっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

小林政府参考人 繰り返しになりますけれども、地域地域で農林水産施策の方向なり具体的な施策がちゃんと受けとめられて、効果を持って進められていく、これは当然私どもが期待することであります。そういったことに役立つように、例えば、水産政策でいきますと、ことしは基本計画の見直しを始めます。そういった基本計画の見直しの論点だとか経緯だとか、そういうものをよく世の中にわかっていただく、これが先行きの政策展開に当たってのプラスになるでしょうし、そういった努力とか方向づけというのは大事だと思っています。

 ただ、一方で、予算ということになりますと、これは今、国も地方もすべて厳しい中で、どうやってそれをうまく有効に使っていくかというだけでございまして、そうしますと、結局、恐らく各レベルレベルで優先順位というものの中で判断していくことになると思いますので、そういう優先順位として水産のこの政策は大事なんだということを、やはり国は国、県は県、市町村は市町村で、どうやってそこの皆さんに理解してもらえるか、それをどうやって我々が訴えていくかというのが大事だと思いますので、そういう意味での努力はしていきたいというふうに考えております。

田名部分科員 漁業者の皆様からは、網に入ったクラゲの買い取りとか、陸上、洋上の処理への支援、そういった支援もぜひ行ってほしいというような要望が届いておりましたので、そのことをお伝えだけしたいと思います。

 漁業を取り巻く環境というのは、私が申し上げるまでもなく、大変厳しさを増しております。水産資源が減少する、また魚価の低迷、そして輸入水産物の増加、先ほど申し上げた後継者不足、こういった数々の諸問題を抱えているわけであります。ですから、ぜひ、クラゲ問題はもちろんでありますけれども、水産政策に対してより一層力を入れていただいて、海に囲まれたこの日本の貴重な資源を守っていただきたいと思いますが、一言、大臣から御決意のほどをお聞かせ願えますでしょうか。

中川国務大臣 今、田名部委員が直前に御指摘になったように、水産をめぐる情勢というのは大変厳しいわけでございます。とりわけ昨年は、原油価格の高騰でありますとか、あるいは先ほどからの大型クラゲ、直径一メートル、重さ百五十キロものものがわっと押し寄せてきて、青森県、そして津軽海峡からまた太平洋の方へ抜けていくという、本当に御丁寧に日本じゅうをじゅうりんしていったわけでございます。しかも、原因は、冒頭長官が申し上げたように、学者の説によると特定の地域の特定の自然現象あるいはまた人的結果によって生じているということであれば、環境意識を持ってもらわなければいけない、海の大切さを思ってもらわなければいけない。そういう教育から、外国に対してきちっと説明をしないと、発生したけれども自分たちのところから外へ行っちゃうから関係ないんだというようなことを万が一言うとすれば、これはとんでもないことであって、私は、この問題は、共同して原因究明をする、対応をするということは、発生地域が特定され原因が特定されたならば、日本であれば日本の責任は大きいですし、日本以外の国であればその国の責任は極めて大きいというふうに私は思っております。

 そういう中で、しかし、日本の漁業、また日本国民の日本の漁業に対する期待は依然として大きいわけでありますから、おいしい、安全な、日本の漁業者がとったお魚を安心して日本の人たちが食べられるようにするための環境整備、緊急のものまた中長期的なものも含めまして、我々としては、これを推し進めていくことは極めて大事なことでございますので、いろいろな諸問題を一つ一つ解決し、また基本計画の見直しを含めて、中長期的にも対応していくべく一層努力をしていきたいというふうに思っております。

田名部分科員 ありがとうございました。大臣の心のこもった思いをお聞かせいただきまして安心をいたしました。

 続きまして、リンゴの問題に移らせていただきます。もう時間が余りなくなってまいりましたけれども、火傷病の件でございますが、もう委員会でも何度か御質問があったと思います。

 昨年、WTOの検疫措置の緩和が決着をしたことに対して、本当に多くのリンゴ農家の皆様がいまだに不安を感じておられます。私は、国民の命と財産を守るというのは政治の基本だと思っています。しかしながら、今の政治を見たときに、BSEの問題でもそうでありました。どういった事情が優先したのかわかりませんけれども、必ずしも安全だと確認をされていない、逆に言えば危険である、その可能性が残っているものが輸入を再開してしまう。私は、先ほど申し上げた政治の基本、国民の命と財産を本気で守っていくんだ、そういった姿勢が足りないのではないか、極めて無責任である、そのように思っております。この火傷病に関しては既に決定してしまったことでありますので、現段階で我が国のとるべき対策というのは最善の方法で病気が侵入しないようにすることだ、そのように思っております。

 そこでまず、輸入されるリンゴの成熟度。これは、病気がついているかついていないかは、まあ、日本とアメリカの言い分は違うわけでありますが、そのリンゴの成熟度にも関係しているというふうに言われております。この成熟度を判定する場合、どういった基準をもって、どのような検疫体制で行っているのか。また、おわかりになれば、入ってくるリンゴに対してどのぐらいの割合で検査を行っているのかということを教えてください。

中川政府参考人 WTOのパネルにおきまして、そこの専門家の意見によりますと、成熟をした病徴のない、つまり病気にかかった形跡のない、そういったリンゴの果実というのは火傷病菌に感染していない、そういう専門家の知見をもとにしてパネルの判断が下されたわけでございます。

 そこで、成熟しているかどうかということをきちっと確認をすることが防疫対応上大変大事になるわけでありますが、まずは、アメリカから日本に輸出をされます際に、日本の植物防疫官の立ち会いのもとで、アメリカの検査官が、こういったヨード・でん粉反応を用いましてリンゴの果実が成熟しているかどうかということを試験することになっております。

 抽出率は五%ということになっておりますが、具体的には、その五%の中にしおれたものが目視であれば、それをきちっと切断をして、そして沃素液の中につける。

 そうしますと、でん粉だけであれば、つまり成熟していなければ青紫色の色が出てまいりますから、そういったものが発見された場合は、そのロットを対象といたしまして、これがどこの樹園地から生産されたものかということが確認をできます。そういたしますと、その樹園地の中の一定のまとまりのあるところ、栽培ブロックと呼んでおりますが、そこのリンゴは全部日本に対しては輸出ができないということになるわけでございます。こういった形で、まずはアメリカから輸出をされます際に、火傷病菌を持っているようなものは全部排除をするというチェックをいたします。

 それから、今度は、日本に入ります水際におきましても、これまた全体のロット、これは量がどれぐらいかということによって抽出率は変わってまいりますけれども、非常に小さい場合には二割ぐらいのものを対象として、今度は日本の植物検疫官がそういうものがないかどうかということをきちっと検査するということでございまして、万が一にも日本の国内にそういった火傷病菌がついたようなリンゴが来ないようにということで、万全の対応をとっているところでございます。

田名部分科員 ぜひこれからも、その検査体制というのはより強化していけるように力を尽くしていただきたいとお願いを申し上げたい、そのように思います。

 ただ、万が一ということがあってはいけないわけですが、万が一その病気が侵入した場合、政府としては全責任をとるというような御発言が以前あったと思います。農家にとっては、病気になった場合は生活が成り立たない、つまり生きるか死ぬかぐらいの大きな問題だ、そのように思うんですけれども、どういった責任のとり方をされるのか、また、その生活というか所得の支援をするというところまで考えていらっしゃるのか、お聞かせください。

中川政府参考人 先ほど申し上げました水際措置のほかにも、ふだんから植物防疫所の職員等が、万一にもそういったものが、木にそういう病徴があらわれるかどうかということは定点観測的に十分注意をして監視をしたいというふうに思っておりますが、万一そういった火傷病菌が日本で発見された、そういった病気にかかった木が見つかったということになりますと、植物防疫法の中に緊急防除という制度がございます。これは、見つかったその木、あるいはその周辺の木のものを伐採して焼却をするということになるわけでございます。

 そういった樹園地のリンゴならリンゴの木の価格、それから、一たん伐採をしますと、新たに植えかえてそれが成熟するまで一定の期間というものが、そこからは収入が得られません。そういった木の経済的な価値、あるいはさらに成園になるまでの間の収入といったものを勘案いたしまして、そういった費用につきましては国の方で全額負担をして、防除の徹底を図っていきたいというふうに思っております。

田名部分科員 火傷病の話とはちょっとそれるんですけれども、リンゴの果汁の輸入の問題で、リンゴの果汁には原産地表示の義務づけがないというふうに把握をしておりますが、正しいでしょうか。

中川政府参考人 加工食品についてのルールというのはいろいろございますけれども、端的に今申し上げますと、リンゴ果汁につきましては、その原料でありますリンゴがどこか、原料原産地の表示は、現在、義務づけになってございません。

田名部分科員 日本にはかなりの量のリンゴ果汁が輸入をされていると思いますけれども、もう時間がないので申し上げますが、食の安全という観点から申し上げれば、やはりこういったことに対しても原産地表示の義務づけというものが必要なのではないか。

 それは、リンゴの果汁に限らず、あらゆる加工食品、そういったものに対しても、また外食産業に対しても、そういった原産地表示とかを義務づける必要があるんだ、そのように思います。それは、消費者が自分たちで安全なものを選んで買うことができる、そういったことでもありますし、また、広い意味で申し上げますと、国内の農家を守るということにつながっていくんだ、私はそのように思います。

 もう時間になりました。最後に、大臣、こういった食の安全という意味において、原産地表示の義務づけをもうちょっと広げて、幅広く表示をしていくということに大臣はどのようなお考えをお持ちでしょうか。

中川国務大臣 原産地も含めまして、その食品のいろいろな情報を消費者が知りたいということは、いろいろな意味で私は当然のことだろうと思います。安全、安心もあるでしょう。あるいはまた、例えば国内的に言うと、青森のリンゴジュースだったら飲みたい、だから青森と書いてくれよとか、そういう、いいもののという意味で情報が知りたいとか、いろいろな意味で食品に対して国民は情報が知りたいんだろうと思います。

 外国から入ってくるリンゴジュースについては、今局長からも答弁がありましたが、JAS法上の義務づけということになりますと、加工度の問題であるとか、実際それは技術的にできるのかどうかとか、あるいはWTO上、TBTという輸出の非関税障壁の問題とか、いろいろあるわけでございまして、現実的にはこれはしていない、そしてまた、やろうとしても義務づけるということは難しいということであります。

 ただ、一般論としては、私は、表示できるものは基本的に表示をしていくということについて決して後ろ向きではないということだけは私の考えを申し述べさせていただきたいというふうに思います。

田名部分科員 もう時間になりましたので、終わらせていただきます。

 大臣とのやりとりをもっと楽しみたかったわけでありますが、私もまた次回、こういった機会がありましたら、もっともっと勉強して頑張りたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 どうもありがとうございました。

玉沢主査 これにて田名部匡代君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして農林水産省所管についての質疑は終了いたしました。

 これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつ申し上げます。

 分科員各位の御協力によりまして、本分科会の議事を滞りなく終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午後五時五十八分散会


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