衆議院

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第1号 平成20年2月27日(水曜日)

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本分科会は平成二十年二月二十五日(月曜日)委員会において、設置することに決した。

二月二十六日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      遠藤 利明君    大島 理森君

      杉浦 正健君    野田  毅君

二月二十六日

 遠藤利明君が委員長の指名で、主査に選任された。

平成二十年二月二十七日(水曜日)

    午前九時開議

 出席分科員

   主査 遠藤 利明君

      上野賢一郎君    杉浦 正健君

      杉田 元司君    西本 勝子君

      野田  毅君    平口  洋君

      盛山 正仁君

   兼務 赤松 正雄君 兼務 井上 義久君

   兼務 古屋 範子君

    …………………………………

   農林水産大臣       若林 正俊君

   環境大臣         鴨下 一郎君

   農林水産副大臣      今村 雅弘君

   環境副大臣        桜井 郁三君

   環境大臣政務官      並木 正芳君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 御園慎一郎君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           中尾 昭弘君

   政府参考人

   (農林水産省総合食料局長)            町田 勝弘君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  内藤 邦男君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            中條 康朗君

   政府参考人

   (林野庁長官)      井出 道雄君

   政府参考人

   (水産庁長官)      山田 修路君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 白石 順一君

   政府参考人

   (環境省地球環境局長)  南川 秀樹君

   政府参考人

   (環境省自然環境局長)  櫻井 康好君

   農林水産委員会専門員   渡辺 力夫君

   予算委員会専門員     井上 茂男君

    ―――――――――――――

分科員の異動

二月二十七日

 辞任         補欠選任

  大島 理森君     西本 勝子君

  野田  毅君     平口  洋君

同日

 辞任         補欠選任

  西本 勝子君     杉田 元司君

  平口  洋君     上野賢一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  上野賢一郎君     野田  毅君

  杉田 元司君     盛山 正仁君

同日

 辞任         補欠選任

  盛山 正仁君     大島 理森君

同日

 第二分科員赤松正雄君、古屋範子君及び第五分科員井上義久君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成二十年度一般会計予算

 平成二十年度特別会計予算

 平成二十年度政府関係機関予算

 (農林水産省及び環境省所管)


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     ――――◇―――――

遠藤主査 これより予算委員会第六分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることになりました。よろしくお願い申し上げます。

 本分科会は、農林水産省及び環境省所管について審査を行うことになっております。

 なお、各省所管事項の説明は、各省審査の冒頭に聴取いたします。

 平成二十年度一般会計予算、平成二十年度特別会計予算及び平成二十年度政府関係機関予算中農林水産省所管について、政府から説明を聴取いたします。若林農林水産大臣。

若林国務大臣 平成二十年度農林水産予算の概要を御説明申し上げます。

 初めに、予算の基礎となっている農林水産施策の基本方針について御説明いたします。

 農林水産業と農山漁村は、食料の安定供給はもとより、国土や自然環境の保全、良好な景観の形成、文化の伝承といった多面的機能の発揮を通じ、国民の暮らしにおいて重要な役割を担っています。農林水産業を持続的に発展させ、農山漁村の活性化を図ることは、地域を再生し、国民生活の安定向上を図る上で、不可欠であると考えております。

 農林水産行政をめぐっては、今年度から実施に移した農政改革の着実な推進、食品に対する消費者の信頼の確保、重要な局面を迎えているWTO交渉への的確な対応を初めとして、先送りのできない数多くの政策課題を抱えています。

 私は、昨年、農林水産大臣に就任して以来、生産現場や消費者の声を十分に踏まえるよう心がけながら、これらの課題に取り組んでまいりました。今後とも、常に国民の立場に立った農林水産行政を展開することによって、地方の主要な産業である農林水産業の活力を高め、生活者や消費者が主役となる社会の実現につながるよう、全力で諸施策の推進に取り組む所存です。

 次に、二十年度農林水産予算について、その枠組みから御説明いたします。

 平成二十年度一般会計予算における農林水産予算の額は、関係府省計上分を含めて二兆六千三百七十億円となっております。その内訳は、公共事業費が一兆一千七十四億円、非公共事業費が一兆五千二百九十六億円となっております。

 平成二十年度の農林水産予算は、強い農業づくりと農山漁村の活性化、食と農に関する戦略的な取り組み、資源、環境対策、美しい森林(もり)づくりや力強い水産業の確立などを進める観点から、既存の予算を見直した上で大胆に予算の重点化を行うなど、新たな政策展開が図られるよう編成いたしました。

 以下、農林水産予算の重点事項につきましては、委員各位のお許しをいただきまして、御説明を省略させていただきたいと存じます。

 よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。

遠藤主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま若林農林水産大臣から申し出がありました農林水産省関係予算の重点事項の説明につきましては、これを省略して、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

遠藤主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

遠藤主査 以上をもちまして農林水産省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

遠藤主査 質疑に入るに先立ちまして、分科員各位に申し上げます。

 質疑の持ち時間はこれを遵守され、議事進行に御協力をお願いいたします。

 また、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西本勝子君。

西本分科員 おはようございます。自由民主党の西本勝子でございます。

 時間をいただきましたので、今国会に提出されました森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法に関して質問させていただきます。

 私の地元に、カワウソのすむ町と市民憲章にうたっている須崎市という自治体があります。市内には、国の天然記念物カワウソが国内で最後に目撃された新荘川が流れていまして、昭和五十四年にNHKのテレビで、清流を泳ぎ、アユを食べる姿が放映され話題となりました。その後、姿が見えなくなったため、いろいろな目撃情報をもとに追跡調査をしたにもかかわらず、市民の願いで名づけたオッター君は確認できないまま三十年の歳月がたち、ニホンカワウソの金看板は色あせてしまったのでありますが、近年、この川で困ったことが起きています。

 それは、冬場にかけて数カ所に瀬切れが発生するようになったのであります。特に昨年は、春の田植え前に農業用水路ののみ口に水が乗らず、稲作農家の方々が大変苦労したということでした。

 また、この新荘川には豊富な伏流水があり、上水道や施設園芸の用水をポンプでくみ上げているのですが、上水道の水源地は河口から上流約一キロメートルほどの位置にあり、今後さらに川の水量が減ってきますと、伏流水の下流に向けての圧力が低下し、干満差の大きい大潮のときには水源地まで海水が迫ってくるのではないかと心配をし始めています。

 こういう事態を受けて、瀬切れの原因調査を四国自然史研究センターというところに依頼したところ、結果は、近年の降水量自体にはさほどの変化はないが、雨の降り方が極端になったのが要因ではないか、つまり、大雨の回数がふえ、このときに流域の保水力以上の水が一度に流れてしまっていると分析され、この対策としては、特効薬はないが、流域の保水力を高める森林整備などが指摘されました。

 こういうことがあって、先日、地元の首長さんや森林組合、林業従事者、山林所有者などが集まり、私と地元の先輩議員も参加して森林勉強会を開き、新荘川流域の植林の実態を現地調査し、流域の保水力を高めるため今後の間伐をどうするのかといった検討をしたところでした。

 現地調査では間伐の状況を視察したのですが、植林して一度も間伐をしていないところは、密植状態ですので太陽光は地面に届かず、下草もまばらで、地肌が見えてごろごろした感じに見えました。一方、一、二度間伐したところは、まばらではありますが、光が地面に届き、下草やごく低い木も育っています。

 私は、この状態で間伐は終わったと思っていたのですが、実はそうではないのです。四、五回の間伐を実施し、あとは収入間伐をするのみという山を視察したのですが、そこは一、二メートルから三メートルになる雑木が生い茂り、その中に三、四メートルの間隔でヒノキの大木がにょきにょきと立っておりました。この状態ですと、木の葉の緑の層が地面と空中の二層構造になっていて、これなら立体的に大量の光合成ができそうだと感じたのであります。

 そこで、まずお伺いします。

 京都議定書の目標達成におけるCO2削減において、我が国の森林吸収量は三・八%が上限として認められているのですが、この森林吸収源の対象として認められる森林とはどのような状態のものなのか。つまり、植林をした山の場合、どこまで間伐をしたときから森林吸収源として認められるのか。一定の基準のようなものがあればお伺いいたしたいと存じます。

井出政府参考人 お答えいたします。

 森林吸収源の対象につきましては、京都議定書によりまして、一九九〇年以降に新規植林、再植林をするか、森林経営が行われている森林であるとされておりますが、我が国の場合には、新規植林、再植林はほとんどございませんので、森林経営の中で一九九〇年以降に間伐などの森林施業が適切に行われている森林、これが森林吸収源の対象の大宗を占めるということで条約事務局に報告をいたしております。

 植林した山について具体的に申し上げますと、一九九〇年以降に少なくとも一回以上は間伐等の施業を実施しており、森林の健全な成長のために必要な林内の密度が保たれていることが必要であるとされております。すなわち、林の中に光が届く程度の森林の密度に保たれているということが必要でございます。

西本分科員 ありがとうございました。

 森林吸収源と認められるのは下刈りや間伐の作業を実施したものということでありますので、地元で先祖代々の山を守り続けている方たちにとっては、自分たちが間伐することで、国が約束した京都議定書の目標達成に役立っている、かけがえのない地球を守っているという誇りと達成感を持ちながら山仕事ができるわけでありまして、大きな励みになると思います。

 そこで、もとに戻って、新荘川流域の間伐状況ですが、森林組合の資料によりますと、流域の山林面積約九千ヘクタールのうち植林面積は六千二百三十ヘクタールですが、このうち間伐が必要な面積は四千三百六十ヘクタールもあり、約七割ということでした。

 なぜこれほど間伐が進んでいないのか。理由は幾つかあって、後で述べますが、総論としては、林業に夢が持てないとのことのようです。

 ところが、このたび、林家にとって希望の持てる制度設計ができたようですので、今国会に提案しています森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法案についてお伺いいたします。

 この法案は、京都議定書の第一約束期間における森林吸収目標を達成するため、毎年二十万ヘクタールの追加的な間伐等を行うための時限立法のようですが、地域によっては通常間伐が思いどおりに進んでいない状況がある中で、どういう課題にどのような力点を置いて対応していくのか、その概略をお伺いいたします。

井出政府参考人 間伐の推進につきましては、従来から、予算措置等によりまして、路網の整備でありますとか、施業の集約化によるコストの縮減でありますとか、間伐材の利用促進により森林所有者の自己負担を軽減するといった課題に取り組んできておりますが、さらに、年二十万ヘクタールの間伐を追加的に実施していくためには、目標に向けて、国、地方の連携によりまして間伐の実施を促進していくということが必要でありますし、そのためには、都道府県や市町村の財政負担の軽減ということが大きな課題になっておりまして、新法案ではこれらに力点を置いているところでございます。

 具体的には、都道府県の基本方針に基づきまして、市町村が間伐等の実施の促進に関する計画を策定した場合におきまして、この計画に基づく事業に対し国から市町村に交付金を直接交付する制度を創設するとともに、追加的な間伐等の実施に要する都道府県または市町村の負担部分について地方債の起債対象とする等の措置を講ずることを内容とするものでございます。

西本分科員 ありがとうございました。

 高知県では、樹齢の補助対象を拡大したことや、自治体の負担、個人の負担の軽減策、さらに森林を支える担い手づくりなど、一定の対策が盛り込まれているようで、林家にとっても朗報だと評価いたしますが、具体の問題について何点かお伺いいたしたいと存じます。

 地元で聞いてみますと、山林所有者個人で間伐をしているものや、数人の組で実施している形態など様々ですが、特措法案では、市町村が特定間伐等促進計画を策定することとなっています。この計画の中で、特定間伐を施行する実施主体はどのような者、団体を想定されているのか、お伺いいたします。

井出政府参考人 特定間伐を施行する実施主体といたしましては、従来から森林整備の担い手として事業を実施してきておられます市町村、あるいは森林組合等の林業事業体、あるいは森林所有者などを想定いたしております。

西本分科員 ありがとうございます。

 ちょっと質問が多いので先へ急ぎます。

 次に、市町村の負担の軽減策として、地方債の適用と償還金に対する交付税措置が盛り込まれているのですが、これは、地方にとっては、いわゆる善玉起債ということで有利なものであるわけですが、何分、地方の自治体は財政が逼迫しているところも多く、この特定間伐のように有利な事業でも、起債制限の限度があるためちゅうちょする自治体もあると思いますが、起債制限にかかる自治体に何か特別な措置があるのか、お尋ねいたします。

御園政府参考人 御指摘のように、地方債に関しましては、国債と同様に、公共施設の建設事業等の財源とする場合などの一定の場合にしか発行できないということにしておりまして、私有林の間伐等、今問題になっているような事業については地方債の対象とならないというのが従来の取り扱いでございました。

 しかしながら、今御指摘のような、京都議定書に基づく約束の履行に果たす森林の重要性というものにかんがみて、平成二十四年度までの間に間伐を促進していこうということで、今、林野庁長官からもお答えがありましたように、計画をつくって地方公共団体が追加的に間伐を実施する場合については、特に特例として地方債の発行対象とすることとしております。

 ただ、御指摘のように、地方債を発行すると地方公共団体の実質公債費率なんというのが上昇してまいりまして、一定以上になると、これは許可制度になるとか、そういう制限もかかりますので、そのようなこともかんがみて、御指摘のように、普通交付税の基準財政需要額に三〇%算入することによってその分は実質公債費率の計算から除外いたしますので、財政上の指数が悪化することを防ぐことができるというような措置も講ずることとしております。

 いずれにいたしましても、それぞれの地方公共団体、実質公債費率も含めて、財政の状況も十分に見きわめながら、今回の制度を活用して、みずからの地域の森林の間伐等を促進していっていただけるものというふうに願っているところでございます。

西本分科員 ありがとうございました。

 この事業は、国が約束した京都議定書の達成という目的でもありますので、地方の負担は限りなくゼロになってもよいのではないかと考えていますので、よろしくお願いいたします。

 次に、間伐の経費であります。

 通常の間伐においても、一団の面積を確保するため、森林組合などが不在地主の交渉に追われているのですが、特定間伐等促進計画の区域設定の中に不在地主がいる場合、この者への対応に係る人件費は間伐の経費として認めることとなるのかどうか、お伺いいたします。

井出政府参考人 今御指摘のように、間伐を促進するためには、不在村者に対しまして森林施業の働きかけを行いまして、施業地を集約化することが重要でございます。

 このため、従来から、森林組合が森林所有者に向けまして相談会や施業提案会を開催する経費でありますとか、不在村者にダイレクトメールで施業に向けた呼びかけを行う経費に対する支援をしますとか、森林組合が三大都市圏や都道府県庁所在地において不在村者に直接会って施業の働きかけを行うふるさと森林会議の開催経費に対する支援を行ってきているところでございます。

 さらに、この間伐等促進法案に基づきまして市町村に直接交付される交付金の中でも、事業費の一割の範囲内で地域提案によるソフト事業が可能となっておりまして、不在村者に対する間伐等実施のための合意形成を目的とした事業にも活用することが可能でございます。

西本分科員 ありがとうございました。

 次に、特定間伐の方法についてでありますが、植林をして最初の間伐は、発生材の利用価値も薄いことから、一部を作業道の土どめなどに使っているのですが、その他は切り捨て間伐となっているのが実態のようです。

 その後の間伐では、出しの条件や間伐材の価格によって山出しをするかどうか決めているようですが、特定間伐の場合、間伐材を山から出すことを条件としているのかどうか、お伺いいたします。

井出政府参考人 間伐を実施しました後の伐採された木材につきましては、利用されることが望ましいわけでありますけれども、森林の林齢や立地条件などによりましては、伐採された木材を林内に切り捨てする場合もございます。

 本法案では、間伐等の実施を促進するということが目的でございますので、こういったいわゆる切り捨て間伐と利用間伐の双方について、区別することなく対象といたしております。

西本分科員 ありがとうございました。

 前段一問目で申し述べた勉強会で、各方面の方々から間伐の進まない理由や問題点などを伺ったのですが、まず、多くの方から出たのは、基幹の林道整備ができていないため、広範囲の間伐ができないということでした。次に、森林従事者が育っていない、不在地主の交渉に時間がかかる、間伐材の価格が低いため採算が合わないといったことが問題となっているということでした。

 特に、林道の新設は、間伐の促進はもちろんのこと、山に人が入ってくれることで山を知り、山に興味を持ってくれることにつながるので、どうしても基幹林道新設の強い要望があったのですが、明年度から緑資源機構の業務が一部県に移管される法案が提出されているのですが、こうなった場合、従来からの山のみちづくり交付事業は県の裁量で整備できるのか、また、あわせて、この特措法でも林道整備ができるのか、お伺いいたします。

井出政府参考人 緑資源幹線林道事業につきましては、豊富な森林資源を有してはおりますが、地理的条件が極めて悪いといった地域におきまして、間伐等の森林整備や林業の振興、さらには地域振興を図るため、林内路網の骨格となる幹線林道を整備してきたところでございます。

 この緑資源幹線林道事業については、平成十九年度限りで独立行政法人が行う事業としては廃止いたしまして、今後は山のみち地域づくり交付金による補助事業とすることとしており、事業実施主体である地方公共団体が、その裁量で必要性を判断した上で実施することとなります。

 なお、この交付金の中で、地域の創意工夫を発揮した取り組みが可能となるように措置をさせていただいているところでございます。

 また、間伐促進のための特別措置法案におきまして、市町村を交付対象とする交付金を創設しておりますが、この交付金は、間伐等の促進やそのために必要な条件整備を進めるために、直接間伐を実施していただくことと、また、これにあわせまして、直接的に必要な林道、作業道等の路網整備についても補助対象とすることとしているところでございます。

西本分科員 ありがとうございます。

 次に、これも勉強会で問題の指摘にあったことですが、林業従事者の育成についてであります。

 森林組合では、緑の雇用事業で若者が入っていますが、まだ完全に技能の習得まで至っていないようです。そこで、即戦力として林業従事者を短期に養成する訓練事業を補助事業で実施できないか、お伺いいたします。現下の不況のあおりを受けて、建設業などに携わっていて退職や解雇を受けた方などの雇用にもつながると思うのですが、いかがでしょう。

井出政府参考人 御指摘のように、林業就業者の減少、高齢化が進んでおりますので、森林整備を着実に実施していくためにも、新規就業者の育成、確保を図っていくことが重要だと考えております。

 このため、平成十五年度から、新規就業者に対して研修を行う、いわゆる緑の雇用事業を行ってきているところでございますが、平成十八年度からは、初年度に植えつけ、下刈り、間伐等の基本的な技術を習得する研修に加えまして、二年目には、かかり木処理等の高度な技術に関する研修を行うことといたしまして、平成十五年度から十八年度まで四年間で約六千百人が研修を修了しております。

 さらに、平成二十年度の政府予算案におきましては、総合的な技能の習得のために、この緑の雇用をさらに一層拡充いたしまして、路網と高性能林業機械を組み合わせた低コスト作業システムの習得のための研修をいわゆる三年目研修として追加することといたしております。

 緑の雇用の研修につきましては、建設業を初め他産業からの転職者も対象といたしておりまして、雇用の確保にも大きな効果をもたらしていると考えております。

 この緑の雇用の円滑な実施を通じまして、林業の担い手の確保、育成にさらに努めてまいる考えでございます。

西本分科員 ありがとうございました。

 それでは、最後の質問とさせていただきます。

 この特措法は、目的が京都議定書の第一約束期間の目標達成ということから、五年間の時限立法なのですが、間伐自体は、CO2の削減だけに寄与しているのではなく、森林の持つ多面的機能を発揮させることにより、水源涵養や景観の保全、山地防災など、あらゆる国土の保全にかかわるものでありますので、今後もさらに重要になってくるものと理解をしています。

 そうであるならば、この特措法案の制度を通常間伐として五年後以降も長期に継続すべきと考えるのですが、大臣の御所見をお伺いいたします。

若林国務大臣 委員が今御指摘になられましたように、この法律案は、京都議定書の第一約束期間の終期である平成二十四年までの間に間伐等を実施する、これを促進するということを目的として設けようとしているものでございます。このために、まずはこの期間における森林整備に全力を挙げて取り組み、その目的を達成するようにしなければならない、そのことが重要だと考えているのでございます。

 その後の措置のあり方について御提案がございましたが、ポスト京都議定書、御承知のように、我が国は洞爺湖サミットで議長国になるわけでございますが、先般、美しい星50という提案を世界に向かって発しておりまして、この二十一世紀、どのような形で地球温暖化にストップをかけていくか、全世界の知恵と、そしてまた実行努力を促しているわけでございますが、そのようなポスト京都におきます地球温暖化対策というものがどのように展開されているか、また、委員がお話しのように、我が国の森林の整備がどのように行われていくのかといったような内外の諸情勢を見きわめながら検討していく必要がある、このように考えております。

西本分科員 ありがとうございました。

 大臣の前向きな御答弁、本当に期待しております。

 きょう紹介しました須崎市に再びカワウソのすめる環境を取り戻すためにも、森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法が成立できることを期待いたしまして、質問を終わります。どうもありがとうございました。

遠藤主査 これにて西本勝子君の質疑は終了いたしました。

 次に、平口洋君。

平口分科員 おはようございます。

 私は自由民主党の衆議院議員の平口洋でございます。

 選挙区は広島第二区でございまして、広島市を少し含むのですが、それから西の方に山口県境まで至る区域でございまして、結構広い区域が選挙区であります。都市部と農村部と両方ある地域でございまして、特に本州の奥の方とか、あるいは、私の出身地なんですが、江田島市あたりは農村が多いわけでございます。

 そういう中で、一つ大きな問題だろうと思います、私自身もそうなんですが、団塊の世代がそろそろ退職期を迎えてくる時期になるわけであります。少子高齢化社会が到来するというのは各分野でいろいろ議論されておりますので、改めてここで数字を用いて説明することもないと思いますけれども、ベビーブーム、昭和二十二年から三年、四年、そういったようなときは年間に二百万人ぐらいの赤ちゃんが生まれて、その人たちが育っていったわけですが、今は、子供さんが百万人ちょっと、当時の半分ぐらいしか生まれておられないんですね。そこが、いろいろといびつな構造にもなると言われているところなんですが。

 その団塊の世代の人たちが、今から、例えばサラリーマンの場合は定年を迎えてリタイアされるということになります。もちろん、その二百万人が、全員が全員働いておられたわけでもないでしょうし、またサラリーマンをされていたわけでもないんでしょうけれども、かなりの部分がサラリーマンをされていて退職を迎えるということは事実だろうと思います。

 そこで、こういう人たち、老後のことを考えていろいろなことを計画されるんでしょうけれども、多くの人たちは、一回農業というものを試みてみたい、そういう意欲を持っておられると思うんですね。もちろん、昔から生物が好きだったとか鉢植えの植物が好きだった、そういったようなこともあろうかと思いますけれども、いずれにしても、営農の意欲を持っているということだと思います。

 ただ一方で、いろいろな事情から農地を取得することができない、そしてまた、農業に関する知識、農薬とか農業機械とか、そういったようなことも余りないというふうなことだろうと思います。

 一方で、私の選挙区なんかもそうなんですけれども、農村地域が、やはり年々過疎化が進んでおりまして、場合によっては廃屋もあって、休耕田や、あるいは農業をやめた荒れた農地が残っていたりするんですね。

 そうすると、やはり、この団塊の世代の人たちの六十歳を過ぎてからの生き方として農業の分野にかなり入ってきていただくということが、これが一つは地域振興にもなるでしょうし、あるいは、場合によっては高齢者になられた御夫婦、もうだれかの手助けがないと農業がやっていけない、こういうふうな方々のお手伝いもできるんじゃないか、このように思うわけでございます。

 ちょっと前置きが長くなりましたのですが、こういったようなことを踏まえて、団塊の世代の退職期、退職後、その農業の分野への活用、こういったようなことについての考え方、私はそう思っておるんですけれども、それについての大臣のお考え、あるいは、今後そういうことについての何かの方針なり方策なりお持ちであれば、まず冒頭お伺いしたい、このように思います。

若林国務大臣 委員が御指摘になられましたように、団塊の世代が退職期を迎えております。この団塊の世代というのは、日本の高度成長過程で育ち、そして精いっぱい働いて定年を迎えるわけでございまして、ひたむきに仕事で生きてきた、こういう世代だと思います。こういう皆さん方が、定年を迎えまして、後期の人生というものをどう過ごすかということについていいますと、やはり、そういう農山漁村と共生・対流を深めて、自然と共生をしていくような生活体験をしたいという意欲が非常に強い世代だというふうに考えております。

 そういう世代が、比較的経済的にもゆとりのある人が多いということもありまして、こういう人たちの中には、二地域居住といいますか、今まで住んでいた都市部の生活基盤というのを持ちながらも、地方に行って地方での生活もする、そこで居住地を求めるというような意欲も非常にいろいろな調査によってあるわけですね。そういう意味では、農山漁村部においてそういう人たちを受け入れていく居住条件の整備というようなことも必要になってきていると思うのでございます。

 そこで、そういう人たちが新たに農業に参入をしたり農村地域に居住する、そのことは、地域社会、農業にとりましても、その活性化を図る上で大変重要なことだというふうに問題意識を共有しているつもりでございます。

 このために、農林水産省では、こういう団塊世代などの就農を積極的に支援をいたしております。

 具体的には、就農を勧めるという意味でいろいろなキャンペーンを張ったり、就農の支援策なども整えているところでございまして、今まで農業経験のない人たちも就農できますように、一つは、新規就農の相談センターというものを国自身、全国段階においても持っておりますと同時に、各都道府県も積極的に就農センターの相談活動をいたしているところでございます。もう一つは、その準備段階として、働いているときに、働きながら夜間や週末に農業の基礎を学べるというような就農準備校の研修というのも手がけております。

 また、就農の際の経営開始をするために資金が必要になりますが、その必要な資金については無利子貸し付けの制度を持っております。また、就農後の技術指導を受ける、これは非常に大事でありまして、農業というのは極めて技術が大事な分野でございまして、そういう意味では、技術指導を普及組織によって行っていくといったような、就農希望者の情報の収集でありますとか就業相談の段階から、実際に就農して定着するまでの各段階に応じた支援策を講じているところでございます。

 今後とも、これらの取り組みを通じて、議員が御指摘になりますように、団塊世代などが農業分野で活躍できる、また、農村地域に居住して地域の農業者と協力し合いながら地域活性化、地域づくりに参加して協力してもらえるといったような施策を充実してまいりたい、このように考えております。

平口分科員 ありがとうございました。

 大臣の大変丁寧な、また前向きのお答えに本当に感謝をいたします。

 おっしゃったように、自然と共生をして余生を送りたいという人は非常に多いわけですし、特に、ちょっと汗を流して、そして労働の喜びを知って、さらに自然の空気のいいところ、そこで、健康にもいいんじゃないかというふうに思っている人が大変多数いらっしゃるものですから、御指摘があったような相談体制というものを十分にこれは県も市町村も整えていただいて、一人の営農意思のある方がいらっしゃれば丁寧にその方々を導いていくといったような方向の政策をぜひとも、今もやっておられると思いますが、今後ともますます展開していっていただきたい、このように思います。

 そこで、団塊の世代の人たちの営農の問題だけじゃないんですけれども、地域社会では年をとった御夫婦で細々なりに農業を営んでいるという方々も多いわけであります。こういう方々が一番がっかりする、情けない思いをするというのは、私の地域では特にひどいのかもしれませんけれども、イノシシの被害なんですね。特に、イノシシが好きなものは、里芋だとかタケノコだとか、場合によっては水稲もやられるんですけれども、これが入ってくるともう一網打尽になりまして、せっかく営々と育ててきた作物が全部やられてしまうというふうなことでありまして、本当に深刻な事態になっているわけでございます。

 きょうは、特にイノシシ被害に対してどう対応していくかというふうなことについてお伺いしたいのでございます。

 まず最初に、イノシシの数はやはりふえているのかどうか。現在どのぐらいいて、それがやはり過去の趨勢ではふえつつあるのか。常識的には非常に多産系の動物だというふうに聞いておりまして、一年で三頭も四頭も子供をつくる能力があるというふうなことなので、そういったようなことからすると、場合によっては幾何級数的にふえていく側面もあるんじゃないか、このように思いますけれども、このあたりの実態把握を環境省の方から御説明願いたいと思います。

櫻井政府参考人 お答えいたします。

 野生鳥獣、イノシシも含めてですけれども、この正確な生息数につきましては、出産による増加や捕獲などによって大きく変化をいたします。あるいはまた、生息場所も森林などの見通しのきかない場所でありますから、その数というのはなかなか推定が困難なんですが、私どもで、イノシシの生息分布域の調査というものを自然環境保全基礎調査の一環として行っております。

 これによりますれば、一九九八年から二〇〇三年の五年間に、生息している区域というのは一・三倍に拡大をしているというふうに理解をしておるところでございます。

平口分科員 わかりました。いずれにしても、イノシシがふえているということは間違いのない事実のようでございます。

 次にお伺いしたいのは、これは一般論でございますけれども、一方で、野生動物というのはそれなりに保護する姿勢で取り組んでいかなくちゃいけない、このように思っているんですけれども、こういう害がもたらされる野生動物が増加することと、それともう一方で、野生動物そのものの保護をしていかなくちゃいけない。こういったようなことの整合性というんですか、物の考え方、このあたりについてお伺いしたいと思います。

櫻井政府参考人 野生生物の保護ということの重要性はもちろんでございますが、一方で、御指摘のような鳥獣被害、特に農業に与える鳥獣被害というのが深刻な事態にもなっているということは、私どもとしても十分承知をしておるところでございまして、そういった、農業の発展を図る上でも鳥獣被害の軽減というのが課題になっているだろうというふうに認識はしております。

 鳥獣保護行政の中では、こういう個体数、要するに数が著しく増加している鳥獣につきましては、人の側では、例えば防護さくの設置など鳥獣被害の防止を図るということもございますけれども、一方で、御指摘のように、捕獲を含めました個体数の管理ということも必要になる場合があろうかというふうに考えております。また、人と鳥獣のすみ分けをするためのバッファーゾーンをつくるなどの生息環境の整備ということも必要だろう。

 そういった鳥獣被害の防除、それから個体数の管理、さらに生息環境の整備というようなことを総合的に進めていくことが重要ではないかというふうに考えておるところでございます。

平口分科員 ありがとうございました。

 そこで、イノシシによる被害なんですけれども、全国的にどのような被害状況になっているのか。また、私の出身でございます広島県、あるいは江田島市といったようなものはどういう被害状況になっているのか。また、被害を受ける作目ですね、どういったようなものが、畑あるいは田んぼが被害を受けているのか。このあたりについて御説明いただきたいと思います。

内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど委員御指摘のように、野生鳥獣による農作物被害が深刻化しているわけでございまして、平成十八年度で被害金額は約二百億円となっております。このうち、イノシシによる被害は約五十五億円に上っております。

 このイノシシ被害を品目別に見ますと、全国では、水稲で約二十三億円、果樹で約十三億円、野菜で約九億円などの被害となっており、広島県では、約四億円の被害のうち、果樹が約一・六億円、水稲が約一・四億円、野菜が約一億円の被害を報告されております。江田島市につきましては、総額のみ報告を受けておりまして、約三千万円のイノシシ被害となっております。

 以上でございます。

平口分科員 ありがとうございました。

 今被害額については承ったんですけれども、この被害額がふえているかどうかという点についてお答えいただきたいと思います。

内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 全国でイノシシの被害額は、ここ五、六年を見ますと、五十五億円というような数字になっております。報告でございますので、あくまでも数字から見ますと、例えば平成十六年は五十五億円、平成十七年は四十九億円でございますが、十八年はまた五十五億円、こういう状況でございます。

平口分科員 わかりました。

 全国の数字は、多いけれども横ばい状況の感じであるというふうな御答弁だったと思うんですけれども、地域を限ってみると、やはりイノシシが最近非常にふえて困っているというところもあるわけでございますので、そういったような地域については、特によく目を凝らしていただいて、それなりの対策をしていただきたい、このように思います。

 次に、イノシシによる農産物被害の対策、これについて、今までの対策はどうなっていたのか、そしてまた、平成二十年度を含む今後の対策としてはどのような対策を講じていかれるおつもりなのか、お答えいただきたいと思います。

内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 農林水産省では、これまで、各種補助事業によりまして防護さくの設置等に対する支援を行ってきたところでございますが、今後は、新しく制定されました鳥獣被害防止特措法に基づきまして、市町村が被害防止計画の作成、それから被害防止対策を強力に推進できるよう、制度面、予算面で充実強化が図られております。

 まず、制度面では、都道府県にかわりまして、市町村みずから被害防止のための鳥獣の捕獲許可権限を行使できるようになりました。それから地方交付税の拡充、それと、鳥獣被害対策実施隊員は非常勤の地方公務員としまして、狩猟税の軽減などの措置が講じられることになっております。

 また、予算面では、私ども、これまで予算額、平成十九年度でいいますと一・九億円でございましたけれども、これを二十年度予算案では二十八億円に大幅に拡充する総合対策事業を措置しまして、侵入防止さくの整備、牛の放牧などによる緩衝帯の設置、犬を活用した追い払いなど、ソフト、ハード事業を一体的に取り組める内容にしまして、これによって鳥獣被害対策を総合的に支援していきたいと考えております。

 以上でございます。

平口分科員 ありがとうございました。

 国の方はそういうことだろうと思いますけれども、私が調べた広島県の数字ですと、必ずしもふえていない状況にあるんですね。特に、イノシシの捕獲の中心となる主体というのが、どちらかというと市町村、市の方に移行する方向にありまして、そういったようなこともあってからかもしれませんけれども、県予算がどちらかというと減っている。一方で、イノシシはふえる一方だということなんですけれども、こういったようなことについては、やはり国も県もそして市町村も総力を挙げて、だんごになって取り組んでいただきたいと思うものですから、この県予算については特にここでお答えをいただかなくて結構ですけれども、どうぞ力を込めて頑張って対応していただきたい、このように思います。

 そこで、このイノシシの具体的な捕獲方法なんですが、これについてはどのようなやり方をされているのか、お伺いしたいと思います。

内藤政府参考人 イノシシの捕獲方法としましては、箱わなによる捕獲、ワイヤーを使用するくくりわなによる捕獲、銃による捕獲などがあるわけでございます。

 農林水産省としましては、箱わなによる捕獲は、安全であること、それから、捕獲したイノシシの肉を有効利用しやすいことから、農業者にとって取り組みやすい方法と考えております。

平口分科員 いずれにしても、最終的には、農業者の方々に前向きにイノシシの捕獲をしていただかなくちゃいけない、その旗振り役は基礎自治体である市町村がやる、そのお手伝いをさらに県の方でやり、あるいは国の方でやるというふうな構造だろうと思います。ですから、最終的には、個々の農業者の方々が、十分な知識と十分な技術力を持ってイノシシの対策を実行に移さなきゃいけない、このようなことだと思います。

 しかしながら、地域の細々とやっている農業者の方々は、最初の質問でも申し上げましたように、場合によっては転職サラリーマンの方であるでしょうし、場合によっては大変御高齢のお年寄り夫婦であったりするんですね。そうすると、こういう方々がきちんとおりをつくってえさをつけてイノシシを捕獲する、こういったようなことはなかなかふなれなものですから、ここをどうするかということがやはり一番大きな問題になってくるんじゃないかというふうに思います。

 一方、国の方で、議員立法で先般、これは鳥獣被害防止特別措置法ですか、これが成立しまして、市町村が中心になって実効性のある活動をするようになっておりますけれども、国も計画を立てる、方針を立てる、県もそれに基づいて計画を立てる、こういうことになっておることは承知いたしておりますけれども、やはり実行面で、最終的に農家の方がきちんとしたイノシシ対策ができるように、これはやはり手とり足とりやってもらいたい、このように思うんですね。

 農業の分野では、農業の改良普及指導員ですか、そういったような資格を持った方々が個別指導に当たられているものですから、やはり、このイノシシの捕獲みたいなことについても、せっかく立派な法律ができて、予算も計上されているわけですから、こういったような方向できちっとやっていけるようにしていただきたいと思いますけれども、御所見を伺いたいと思います。

内藤政府参考人 委員御指摘のように、被害現場におきまして、効果的な捕獲技術あるいは防除技術を速やかに普及させることが重要だと考えております。

 このため、従来から農林水産省におきましては、被害現場において活用できるわかりやすい被害防止技術マニュアルをつくりまして、これを配付する、あるいは、市町村職員、農林漁業団体職員等を対象としまして、被害防止技術研修会を各地で開催する、あるいは、被害対策のアドバイザーとしまして専門家を登録しまして、被害現場に紹介するといった取り組みを進めてきているわけでございます。

 さらに、二十年度は、予算案の総合対策事業におきまして、現地における技術講習会の開催をより積極的に支援することとしております。

 今後とも、都道府県、市町村と一体となりまして、捕獲技術、被害防止技術の普及を図ってまいりたいと考えております。

平口分科員 ありがとうございます。

 御答弁のようなことで結構かと思いますけれども、ただ一方で、今はもう何でも市町村の方にゆだねて、いろいろなことが問題になるたびに、市町村でなきゃできない、市町村でなきゃわからないというふうなことが多いんです。

 例えば、これは県のつくった資料で、予算のところの説明で、まあ、確かに予算が減っているんですが、市町の体制も整ったとの判断から、平成十八年度からは市町の主体的な対応にゆだねているというふうな表現があるんです。市町にゆだねるのはいいんですけれども、市町ではとても手が届かないような分野が必ずあるわけですし、やはりそこは、県とか国がきちっと予算を計上して、それなりの対応策をやっていただきたいと思います。

 市町中心の行政というのが、我々は知らないよというふうなことにならないように、十分御留意をいただきたいと思いますし、農林水産省の方々も、できれば、こういうイノシシの被害の現場に立ち会ったり、あるいは、その対策をやっているところに出かけていって、とにかく現場はこれだけ苦しんでいるんだということを実感として受けとめていただいて、それに基づいた行政なり政策なりを展開していただきたい、このように思います。

 そこで、時間も余りないんですが、私の素人考えなんですけれども、イノシシを一頭駆除すると、ハンターの方々は、例えば私の出身の市では、五千円の報償金か何かをいただけるようになっているんですね。ただ、五千円の報償金というと、実際にイノシシを捕まえる労力に対してはそう大きい額ではありませんし、まあ、ないよりは大分いいんですけれども、そういう意味では、私は、イノシシのお肉がもっと流通するような、こういう政策を推進するべきではないか、このように思っております。

 私自身も何度かイノシシの肉やら、あるいは豚とかけ合わせたイノブタの肉、桜なべとかいいましたけれども、そういったようなものを食べた経験がある。結構おいしいんですね。割と歯ごたえがあって、非常にファンも多いはずなんです。ですから、もっと、ありていに言えば、コマーシャルベースに乗るようなことにしたらどうかというふうに思うんです。

 これは、厚生労働省の方の所管かと思います。食品衛生法上、このイノシシ肉の流通についてどのような問題があるのか御指摘をいただきたい、このように思います。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 イノシシを食肉として流通させようとする場合でございますが、食品衛生法に基づいて、まず、施設につきましては、都道府県知事等により、条例で定められた施設基準に適合する旨の食肉処理業の許可を受けること、また、食肉の処理に当たりましては、食肉の調理、保存基準のほか、条例で定められた管理運営基準に適合することが必要とされております。

平口分科員 ありがとうございました。

 そう難しい手続ではないわけでありますので、イノシシの肉が市場に出回ることも夢ではない、このように思います。

 特に、あれだけの、もうほとんど、私が四つんばいになって走っていったぐらいの体重とか大きさを持っていますから、お肉の量もすごくあるんじゃないかというふうに思います。これが商品価値を持つようになれば、それなりの産業としても成り立つだろうと思いますし、それなりの所得が個々の農家にもあるいはハンターにも行くようになるんじゃないかというふうに思います。これは、農林水産省と厚生労働省の両方の分野に差しかかると思いますけれども、ぜひとも努力をしていただきたいと思います。

 最後に、大臣にお伺いしたいんですが、イノシシの被害のみでなくて、私の地元では、シカなんかもふえて困っている地域があるわけです。こういう有害鳥獣、こういったようなものの対策について、基本的なお考えをお願いしたいと思います。

若林国務大臣 委員の広島県におきます被害の状況、実態をお伺いしながら、私は長野県で育って、長野県が地盤でございますけれども、御承知のように、山、山地の多い地域、土地柄でございます。

 長野県の鳥獣被害も深刻でございます。鳥獣は、今、イノシシと猿とシカですね。そういうのが年間でちょうど一億五千万ぐらいずつ、この三つで四億五千万ぐらいの被害が出ているということでありまして、特に山間地などは、丹精込めてつくった作物がこのようなイノシシなどの被害で荒らされますと、やる気を失っちゃうんですね。耕作放棄地が出る、耕作放棄地が出るとまたそこが巣のようなことになって、またそこで鳥獣被害が多発していくというような悪循環を起こしているというような状況をよく承知いたしております。

 そういう意味で、鳥獣被害防止特別措置法が議員立法で成立をいただいたということは大変有意義であるし、私どもも、せっかく成立しましたこの法律に基づきまして、鳥獣害の対策を重点的に措置したい、このように思っております。

 そういうことから、総合的な鳥獣害対策を進めるという視点で、予算面におきましても、十九年度の予算は約二億円弱でございましたが、これを今年度から二十八億円に、それこそ大幅に拡充をすることといたしておりまして、環境省初め関係省庁と十分連絡をとりながら、この充実に努めてまいりたい、このように考えております。

平口分科員 御丁寧な答弁、ありがとうございました。

 以上で私の質問を終わります。

遠藤主査 これにて平口洋君の質疑は終了いたしました。

 次に、赤松正雄君。

赤松(正)分科員 おはようございます。公明党の赤松正雄でございます。

 若林大臣、環境大臣から農水大臣へと、日本のこれからにとって極めて重要な大臣ポストを続けてなさっていることに大変期待をいたしております。

 きょうは、今イノシシのお話がありましたけれども、私も、よりバックグラウンドとしての森、森林、先ほど大臣も、シカ、イノシシ、猿、この三つの被害が大変なんだという話をされました。クマを挙げられなくてよかったな、こう思いましたけれども。私は、後半お話を申し上げますが、やはり、何ゆえにこういう動物が里に出てくるのかという、そのバックグラウンドのところをしっかりと考えてやっていかないと、それこそ百年先、あるいは百年前、二百年前、そしてこれからということを考えたときに、大変なことになるのではないかという感じがいたします。

 大臣が講演をされた、京都で行われた議事録をインターネットで取り出しまして、読みました。なかなかすばらしい読み物になっていて、これは多くの人が読まれたらいいんじゃないかというふうに強く感じました。もっとも、全部は読んでいなくて、前半の部分、真ん中ぐらいまでしかまだ現状では読んでいませんが、なかなかいい中身だったと思っております。

 講演の中で、大臣が最初に、京都に行かれたからなんでしょうけれども、江戸時代に描かれた京都近郊の絵図を示されて、森は豊かだったと紹介されて、大正から昭和初期の山の写真と比較をされて、山というのは、明治、大正、昭和、日本では昭和初期まで大変に荒れ続けてきたんだという指摘をされた。そして、今でははげ山などほとんど見られない、そんな緑豊かな森に変わってきた、我々の先輩の努力によりまして、大変山の状況は前進して改善されてきている、こう述べられておるわけでございます。

 森、山にどういうイメージを抱くのかというのは人によって若干違うかと思うんですが、まず、大臣は、美しい森林というものをイメージしたときにどういうものを連想されるのか、簡単にお願いいたします。

    〔主査退席、杉浦主査代理着席〕

若林国務大臣 わざわざインターネットをごらんいただいて、ありがとうございました。

 ただ、私のあの講演、特に、お話ありました、これは京都で行ったこともありまして、京都周辺の山を例にとってお話をしたわけですけれども、むしろ江戸時代は荒れていたという意味で、荒れた様子をあの中で説明いたしております。江戸時代から昭和にかけまして非常に荒れたものを修復してきているんだと。

 大文字山周辺につきましては、森林はまばらにしか描かれていません、その奥の比叡山については、ほとんど樹木が描かれておりません、そのために、絵なんですけれども、それを見ますと、小さな谷までもよく見えるというほど森林というものが非常に少ない状態でありましたということをお話ししまして、現在の写真と比べまして、非常に緑が豊かになってきましたということをお話しして、そして、他の地域についても、ほとんど荒れている百年前の写真と現在とを比較しながら、明治以降、非常に努力によりましてここまで森林の整備が進んできたということをお話しいたしました。

 そういう意味では、明治、大正、昭和、日本では昭和初期までは大変荒れておりました。いろいろな事情がありましたが、それがこのような豊かになってきたんだということを私はお話ししたつもりでおります。

 そして、美しい森林というものをどういうふうにイメージするかということでありますけれども、もう委員も御承知のように、森というのは、ただ単に樹木を木材として利用するとか、あるいは燃料として利用するとか、そういうことだけじゃなくて、多面的な役割を果たしているわけですね。そのためには、広葉樹林とか、あるいは針葉樹林と広葉樹林の混交をした形の多様な健全な姿というものが美しい森林の形でありまして、秋には紅葉、そして春には新緑の美しさといったようなことも大事になってきます。

 針葉樹だけですと、そういう紅葉とかあるいは春の美しさといったようなものも十分発揮できないということでありますから、こういう植林を進める場合にも、人工林と天然林を大事にしながら、それを複合した形で多面的な機能が発揮できるような森づくりが大事だ、そして、その場合には、光が土地まで及ぶように手入れをしていくということが美しい森林の基本だ、こんなふうに考えております。

赤松(正)分科員 大臣の今のお話を聞いていて、全体に俯瞰してみた場合、確かに今のようなお話なんだろうなという感じがいたしますが、私の森に対するイメージというのは、実は私は、後で申し上げます日本熊森協会という団体の顧問をしているんですけれども、一緒に森を見に行く機会があるんですが、私のイメージは、いわゆる光がさんさんと差し込む、広葉樹林、ブナやナラが生えていて、ちょっとした広場がある森、こういうイメージが美しい森林のイメージでございます。

 もちろんいろいろな側面がありますので、私が言っていることだけではなくて、つまり、例えば、遠くから見て緑の木がいっぱい生えている、そういう森もいいなという考え方もあるんでしょうけれども、私の持っているイメージは、言ってみれば、森の林の中に空間がある、動物が遊ぶような空間がある、眠れる森の美女でしたか、そういう、昔、子供のときに見た絵本の中に出てくるような、ああいうのが美しい森林だなという感じがするわけですね。

 森論議をしていてもあれなんですが、大臣のおっしゃったこと、全体としてはそうなのかもしれませんが、ぜひこれは頭にとめておいていただきたいんですが、こういう考え方を言う人がいて、私は一つ共鳴したんです。

 つまり、昔の政治家は偉かった、今の政治家はだめだと言う人がいまして、何でかというと、昔の政治家、お殿様ですね、江戸時代期、江戸は荒れていたとおっしゃいましたが、森というのは、山というのは神聖なものだ、アンタッチャブルで、山の頂上というのは人間が手をつけちゃいけない、そういう考え方。長野県出身の環境大臣、農水大臣経験の若林先生にそんなことを言ったらあれでしょうけれども、そういう、山の上には手をつけないというのがあって、やはりお殿様、政治家は偉かった。戦後のことを言っているんでしょうけれども、今の政治家はどんどん木を切ってきたという歴史がある、そこはやはり今の政治家はしっかり考えてほしい、こういう注文をつけられまして、それも一つの見方だなと実は思ったことがあります。

 どんどん時間がたっていきますので先に進みます。

 一昨年ごろ、クマが異常に山をおりてきて大騒ぎになりましたね。原因は何だということで、いろいろそれぞれ関係者の間で議論になりましたけれども、台風でドングリが落ちたからだとか、あるいは里山を放置したからだとか、クマが人間の作物に味をしめたとか、個体数が増加したとか、いろいろ言われておりましたけれども、突き詰めて言えば、山にえさがなくなって山から下へおりてきた。

 先ほどのイノシシ、シカ、猿、こういったものとは別に、私はクマに大変注目をしたいんですけれども、クマが里に出てきた、これは、杉やヒノキの拡大造林の結果ではないのか、こういう指摘に私は非常に共鳴をしているんですが、林野庁長官の御答弁をいただきたいと思います。

井出政府参考人 委員から、一昨年ごろにクマが異常に山をおりてきたというお話がございました。

 このことにつきましては、環境省の調査報告書が出ておりまして、平成十八年のツキノワグマの大量出没地域におきましては、両年とも、ブナとかミズナラといったクマのえさになるドングリ類が、五、六年に一度のサイクルで豊凶が来るそうでございますが、凶作であった。一方、ふもとの耕作放棄地にキイチゴ等の実をつける植物が繁茂し、よいえさ場となるなど、中山間地域の環境変化といったものが要因として挙げられていると聞いております。

 クマにつきましては、林野庁としましても、クマのえさになるドングリ類の広域的な結実予測の調査を、平成十八年度から、クマ被害の未然防止を図る観点から実施をしてきております。

 また、クマを含め野生動物の生育場所の変化につきましては、間伐の手おくれによる下層植生のなくなった森林が増加しているからだとか、一方では、暖冬によって野生動物の死亡率が低下しているのではないか、あるいは狩猟者の減少等によりまして捕獲数が低下し生息数が増加してきているのではないかといった、その原因につきましてはさまざまな指摘がなされております。

 林野庁といたしましても、今後とも、環境省等の関係省と連携を図りながら、特定鳥獣保護管理計画に基づきまして適正な生息数の維持を図りますとともに、野生鳥獣の生育環境となります、今大臣からお話がありました針広混交林化、広葉樹林の整備を推進するなどいたしまして、その地域の実態に応じた野生動植物の生息、生育環境にも配慮した多様で健全な森林整備を推進してまいりたいと考えております。

赤松(正)分科員 最終的にバランスのとれた御答弁をしていただきましたけれども、いろいろな見方があるという話を前半にされて、後半、広葉樹林のことにも触れられました。

 私たちは、先ほど来同僚委員がおっしゃったような、鳥獣の被害を受ける皆さんの大変な御苦労、私も、人間とクマとどっちが大事なんだとよく仲間から言われるんですが、やはりここは、大きい、広い気持ちで、もちろん人間の生活が脅かされるのは大変ですけれども、同時に、先ほど冒頭で述べましたように、より広範囲な角度から、より根源的な原因を探って、的確なる対応をしていくということも、現象面として出てきた動物をいかにして殺すかということに取り組むというのは私は余り望ましいことではない、こんなふうに思っているんですね。

 そこで、より具体的には、平成二十年度予算で、例えば花粉対策として、首都圏や京阪神などに飛んでくる発生源を重点区域に指定をして、十年間でおおむね五割減少させるとする花粉発生源対策プロジェクトをつくって、二十五億円の計上がされています。その中で、花粉の少ない杉を、当初、平成二十八年度は百万本としていたのを、平成二十九年度に一千万本に増大するとしている。これは拡大造林の二の舞にならないのかという懸念があるわけですね。

 先ほど言いましたような、一つは、広葉樹林、ブナやミズナラの生い茂った森の中でクマが生息する、食べ物としてのドングリなんかもある。それとは逆のイメージで、杉がいっぱいあるというのは、今申し上げた、普通の生活をしている、都会で生活をしている人たち、都会だけじゃなくて、日本じゅうで今起きている花粉の対策にもなる。つまり、広葉樹林を植えるということが、クマとかそういう動物の対策にもなるし、同時に花粉対策にもなる。

 こういう考え方から、広葉樹林というものをしっかり植えていくべきだという観点で、先ほど言ったような拡大造林の二の舞になるのではないかというこの観点に関しまして、林野庁長官の御見解を伺いたいと思います。

井出政府参考人 お答えいたします。

 最近の杉の造林面積は、年間五千ヘクタール程度でございます。これは、十年前は一万ヘクタールを超えておりましたのでかなり減ってきておりますが、この五千ヘクタールの植林をしますには、苗木が一千五百万本程度必要でございます。このうち、現在、花粉の少ない少花粉の杉苗木の供給量が十万本ということで非常に少ないわけでございまして、今後この花粉発生源対策を進める上では、これまでの杉苗木にかわります少花粉杉苗木の供給量を大幅にふやすことが喫緊の課題となっております。

 このため、二十年度予算案につきましては、少花粉杉等の苗木供給量を大幅に増大する。今委員から御指摘がありましたように、十年後にはおおむね一千万本にするということで、少花粉杉品種等のミニチュア菜種園の整備等を行おうとしております。一方では、首都圏等への杉花粉の飛散に強く影響を与えると推定される杉林を対象といたしまして、森林所有者の意向を踏まえながら、少花粉杉林だけでなく、広葉樹林等への転換を行うための取り組みも進めることといたしております。

 したがいまして、今回の対策は、既存の杉人工林を花粉の少ない森林へ転換しようというものでございまして、新たに人工林をふやすものではございません。また、転換奨励に当たりましては、地域の実情、森林所有者の意向に応じまして、広葉樹への転換も予定しているところでございます。

赤松(正)分科員 ぜひとも広葉樹林の重要性というものをしっかり認識していただいた上で、しっかりとした対応をしていただきたいと思います。

 先ほども話題になっておりましたけれども、鳥獣被害の防止特措法について、私どもは、先ほども申し上げましたけれども、捕殺、有害をもたらす動物を殺すということに重点的に、もうほとんどすべてそれに使われるのではないかという懸念を抱いております。先月滋賀県で開かれました獣害対策サミット、近畿農政局、北陸農政局などが共催したものですけれども、そういったところに参加した人の話を聞きますと、非常にそういう側面が強いのじゃないかという印象を受けたというわけですね。

 今申し上げた鳥獣被害防止特措法に基づく関連予算が、野生鳥獣の捕殺、殺すこと優先ではなくて、先ほど来申し上げておりますような、鳥獣、鳥やけものが帰れる広葉樹林の、そういった自然の森の復元、そういうところにもしっかり目配りをしてほしい。もちろん当面の被害防除にも取り組むのは当然でありますけれども、より広範囲な、バックグラウンドとしての広葉樹林の自然の森の復元というものにしっかり留意してほしい。

 こういう要望に対しまして、今度は生産局長の御答弁をいただきたいと思います。

内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 野生鳥獣による農作物被害を防止するという観点からは、委員御指摘のように、捕獲のみでなく、被害防除あるいは鳥獣の生息環境管理といったことを総合的に実施することが重要と考えております。

 このため、二十年度予算案におきましては、被害防止計画を作成した市町村等が実施します捕獲のための安全で効果的な箱わなの導入、あるいは被害防除のための防護さくを設置する、こういったことを総合的に支援する鳥獣害対策予算のほか、人と鳥獣の共存に配慮しまして、鳥獣の良好な生息環境の整備、保全に資するための、里山等での広葉樹の植栽、造成整備の予算を計上しているところでございます。

赤松(正)分科員 局長、そのことに加えて、法では被害防止計画は市町村が定めることができるとされているわけですが、計画作成に際しては、行政や被害農家に加えて専門家や自然保護団体を入れて作成すること、そして、鳥獣捕獲の要請があったときは情報及び対応を公開すること、こういう要望があるわけですけれども、現場の自治体任せではなくて、今申し上げたような、そういう専門家や自然保護団体、こういったところの意向をしっかり加えるようにという行政指導というものをしっかりしていただきたいと思うんですが、生産局長、お考え方を聞かせていただきたいと思います。

内藤政府参考人 市町村が被害防止計画を作成するに当たりましては、被害防止対策協議会等の関係者からの意見聴取、それから、必要に応じまして都道府県あるいは専門家からの情報の提供や技術的な助言を受けるよう、先ほど策定しました基本指針において明記しているところでございます。

 また、鳥獣の捕獲計画を含む被害防止計画につきましては、法律上、作成後速やかに公表するということになっておりますし、毎年度、当該被害防止計画に基づく鳥獣の捕獲数等につきまして、都道府県知事に報告することとされております。

赤松(正)分科員 されておりますのですが、それが実際に法としてしっかり発動するように、いろいろな角度で、議員立法でできたのだから関係ないというのではなくて、しっかりと目を光らせて、プッシュをしていただきたいと思いますね。

 例えば、数日前に兵庫県で、クマの捕獲数という格好で地元紙に大変具体的な数字がばっと出てきて、クマがいかにたくさん里に出てきて、そして殺されたかという記事が出ていたんです。それが、日本熊森協会としては、そんな事実はないということで、問い合わせたりなんかをいろいろしたようですけれども、何かその背後には、どうもはっきりしない、ちょっとここでは言うのをはばかられるようなこともあったりするようなんですね。

 やはりここは、クマの生息数というものをしっかり調べる、そういうことも取り組まないといけないんじゃないのかなという感じがいたします。十把一からげ、動物全部一緒で、繰り返しになりますが、人間に被害を与えるがゆえにそれを捕獲するという発想ではなくて、より根源の、森を豊かなものにする、そして動物がそこで生息ができる、そういう感じでいっていただきたい。若林大臣が冒頭でおっしゃられたような森のイメージというものに、ぜひともそういったものを強くつけ加えていただきたい、そんなふうに思う次第でございます。

 最後に、総合食料局長にお話をお伺いしたいと思いますけれども、なかなか今、巨大スーパーの出現で、出現というか、日本社会におけるさまざまな形の定着によって、中小の小さいスーパーあるいはまた小売店等は苦戦をしている。そういう中で、共同商品の仕入れ機構、オール小売市場連合会というのですが、この活動がいろいろな角度で今、まだまだですけれども、結構注目を浴びてきております。

 食料の安定供給を目指した自治体が戦前に各地で設置した公設市場は、九〇年代に大半が民営化しましたけれども、私の住んでいる姫路なんかでも、ほとんどそれはもう今やつぶれてしまいました。

 一方で、そういう状況の中で、大阪を中心に、先ほど申し上げましたオール小売市場連合会の動きが起こり出しまして、この十年間、地道に活動を展開して、今や首都圏から九州に広がりつつあります。つまり、共同で商品を仕入れして、そして独自の債務保証制度を活用しながら、そういう小さなスーパーを束ねることによって、大手のスーパーしか相手をしなかった卸業者がそういう小さいところにも取引に応じるようになった。

 そういうことで、農家の人の商品を都市部に出すようになったとか、結構今非常に厳しい話が多い中小スーパーの事業展開の中で、このAKRの動きというのは、経営基盤強化の方向に非常に示唆に富んだ試みだと思うんですけれども、農水省総合食料局長の認識、とらえ方、こういった動きを政策的にさらに拡大して取り入れるお考えはないかどうか、聞かせていただきたいと思います。

町田政府参考人 ただいまお話をいただきましたオール小売市場連合会、また全日食チェーンといったボランタリーチェーンによりまして、中小の食品小売業者が共同仕入れなどに取り組むことは、経営の効率化、また品ぞろえの強化につながることでございます。大変意義のあるものと私ども認識しているところでございます。

 このため、農林水産省といたしましては、共同化に必要な冷蔵庫や配送車両などの設備導入の促進を図りますため、中小食品小売業者に対しまして、国民生活金融公庫、中小企業金融公庫によります低利融資、また、財団法人食品流通構造改善促進機構によりますリース料の一部助成、こういった施策を講じているところでございます。

 今後とも、これらの施策を通じまして、中小食品小売業者の共同仕入れなど、販売業務の共同化、また経営基盤の強化、こういったことを推進してまいりたいと考えているところでございます。

赤松(正)分科員 ぜひとも、今の時代状況の中にあって大事な試みだと思いますので、農水省の促進、よろしくお願い申し上げます。

 では、最後に大臣、先ほどの、森、クマの件、それから今の件等につきまして、大臣の所感を若干聞かせていただきたいと思います。

若林国務大臣 やはり、人と自然とが共生していく社会というのを我々はみんな望んでいると思うんです。共生していく自然の中に占める森の役割、大変大きな役割を果たしておりまして、委員が先ほど来御指摘があり、御意見をいただいております森には、大変な動植物、特に豊かな動物がそこに長くすんできている、そのことがやはり、お話ございましたようないろいろな物語にもあります、子供の夢も描いております、そういう意味で、森の持つ豊かな資源としての価値というものを大事にしながら、人と自然とが共生していく、人と森にすむ動物との間で調和のとれた環境が生まれてくるということが大事だなというふうに思います。

 私、長野県でも、実はクマの被害、人身被害の全国で一番多いところでございます。そういう地域の人たちとも話をしているんですけれども、やはり個体管理というものをもう少し科学的にきちっとした上で、それに沿った個体数の管理も前提にしながらやっていかなきゃいけない。

 そこで、新しくできましたこの法律は、基本方針を定めることになっております。基本方針に従って市町村が計画を立てるわけですが、委員がおっしゃられたような、自然の識見を有する人たちの意見もよく聞いて、それは基本方針の中で明らかにしていく必要があるな、こういう感じ、印象を持ちました。

 委員の御趣旨に沿って、しっかりとした、自然と人間との共生のあり方というようなものを大事にしていきたいと思っております。

赤松(正)分科員 大臣、今個体管理というお言葉を使われました。そういう発想があるのはわかりますけれども、クマの場合、これは絶滅品種ではないのか。要するに、日本からクマがいなくなってしまう。イギリスなんかは非常に森林がもうなくなってしまって、それは産業革命のころにさかのぼるわけですけれども、森林の増殖に失敗をしているということが指摘されていますけれども、そういう世界との比較で見ると、日本は非常に豊かな森林を持っている、先進国の中でも非常に飛び抜けてすばらしいそういう財産を持っているところなんですね。

 そういう状況の中で、やはりクマというものは非常に森林との関係が深いものを持っている動物であるということから、ぜひともクマを絶滅させてはいけない、そういう強い自然保護団体があるということも意識に置いていただいて、ぜひともしっかりとした対応をしていただきたいと思います。

 ありがとうございました。終わります。

杉浦主査代理 これにて赤松正雄君の質疑は終了いたしました。

 次に、井上義久君。

井上(義)分科員 公明党の井上義久でございます。

 きょうは、農山漁村の活性化につきまして、まずお伺いしたいというふうに思います。

 農山漁村は、食料の生産の場のみならず、自然環境の保全、良好な景観の形成、あるいは文化の継承など、重要な役割を果たしているわけです。しかし、過疎化や高齢化の進展等によりまして、これらの機能が失われつつある地域が大変増加している。政府としても、昨年十一月に地方再生戦略を取りまとめて、本格的な対策に乗り出しました。農水省においても、農山漁村活性化のための戦略を取りまとめられたところでございます。

 実は、公明党でも地域活性化推進本部を立ち上げまして、私が本部長に就任をいたしまして、昨年後半から全国各地、精力的に地域を回らせていただきました。実態調査等も行ったわけでございます。

 特に、我が党は、地方議員の皆さんと連携をして、いわゆる限界集落、私どもは限界集落という言い方自体が、住んでいる人にとってはいかがなものかなということで、過疎集落、こう言っているわけでございますけれども、実際に過疎集落に私も行きまして、地域の皆さんから直接お話を聞き、また過疎集落を抱える自治体の行政の担当者からもさまざま意見を聞きまして、先般、政府に対して十一項目の具体的な提言を行ったわけでございます。

 私は、いろいろ地域を回らせていただいて、またそういう過疎集落に行きまして、いわゆる過疎集落問題というのは、日本が人口減少社会に入って、やはり避けて通れない問題だな、国土の保全とか、あるいは伝統文化の継承とか、やはり国のあり方、国土形成というものをどう国が考えるのか、これはそういう基本的な問題だな、やはり政府が挙げてこの問題に対してきちっとした方向性を出して、対策をしっかりやるべきだなということを痛感してまいりました。

 ただ単に一つの過疎集落がなくなるか存続するかという問題だけじゃなくて、国全体の国土形成のあり方につながる極めて重要な問題であるという認識をしたわけでございまして、そういう観点で、そういう人たちのアンケート調査をとりましても、農林水産業の衰退というのが実は過疎集落の、もちろん高齢化とか後継者がいないというのは裏腹の関係なんですけれども、やはり一番は農林水産業の衰退ということを挙げていらっしゃるわけでございまして、そういう意味で、私は、この過疎集落問題というのは、実は農林水産業の問題でもあるというふうに認識しているわけでございまして、こういう農山漁村の現状について、大臣がどのような認識をお持ちになっているのか。

 また、先ほど言いましたように、農林水産業というのが、実は過疎集落の問題と裏腹の関係で、私は、ある意味で、農林水産省、農林水産大臣がこの問題に関してやはり政府のリーダーシップをとるべきである、このように思っておるわけでございますが、まず大臣の認識をお伺いしたいというふうに思います。

若林国務大臣 今、委員からお話ございました。委員が本部長になりまして、公明党におきまして、地域活性化の推進本部、その中の重要な課題として、過疎集落の実態調査を行っていただきました。これは二〇〇七年の十一月、十二月に集中的に大規模な調査をしていただいたわけでありまして、これは公明党のホームページで、私、読ませていただいております。現状が浮き彫りに出るようなすばらしい調査でございました。

 そういう調査から浮き彫りにされてきました過疎集落の対策、これは委員がお話しになりましたように、日本の国家として、この長い歴史の中で、国民が全体、今日の繁栄を迎えることの原点的なところにかかわる問題、重要な問題だと認識いたしております。人口の減少、高齢化というものが、特に過疎地域に集中的にあらわれているわけでありますから、この地域における主要な生産活動というのは農林水産業というものが担っているわけでございまして、こういう住民の生活というものに非常に深いかかわり合いがございます。

 今さら申し上げるまでもなく、これらの集落というのは、国土の保全とか水源の涵養とかのほかに、やはり伝統文化というものを伝承してきているわけであります。精神面における支えにもなっている地域でございますので、こういう機能を果たしている過疎地域、山村地域といったようなものの活性化を図るということは、農林水産省が取り組むべき重要な課題であるというふうに認識をいたしております。

 このため、省内では、今村副大臣を本部長といたしまして、昨年、農山漁村活性化推進本部というものを設置いたしまして、過疎集落対策を含めた農山漁村活性化の問題に取り組んでまいったわけでありまして、今後とも、関係省庁と深く連携をとりながら、過疎法があります、山村振興法がございます、そういうような諸法制も十分活用しながら過疎地域対策に取り組んでいく所存でございます。

井上(義)分科員 私は、先ほども少し触れましたけれども、ある意味で、こういう集落というのは日本人としてのアイデンティティーの重要な一部を担っているというふうに思っているわけでございまして、そういう観点からいいますと、やはり少子高齢化という流れの中で、農山漁村の将来ビジョンというものをどのように描くのか、どのような基本理念、基本構想のもとに活性化、再生を図るのかという基本的な考え方をまず確立することが非常に重要であるというふうに思いますし、また、厳しい財政状況の中で、いかに継続的に財源を確保していくのか。単なる効率化というだけではこの問題は解決できないわけで、そういう意味で、この問題に取り組むそういう基本的な考え方を確立した上で、具体的な施策というものをしっかり展開していかなければいけないのではないかというふうに思います。

 大臣から、今基本的な考え方をお伺いいたしましたので、では具体的に、例えばこういうことを今重点的に取り組んで、この集落の機能維持、実は、そういう地域で必死になって、何とかここを支えようと頑張っている皆さんがたくさんいるわけで、そういう人たちを今支えないと、本当にこれは大変な事態になってしまうなということで、来年度予算も含めて、具体的な施策についてお伺いしておきたいというふうに思います。

今村副大臣 まず、御党の過疎集落対策についての御努力、そしてまた貴重な御提言につきまして、本当に心から敬意を表する次第でございます。

 私たちの省といたしましても、昨年の秋から、この取り組みは本当に喫緊の課題であるということでやってまいりました。

 まず、いろいろな人の意見を聞こうということで、一般からの御意見等を聞きまして、これは約五百件ほどいただいております。そしてまた、関係団体からもいろいろな話を聞きました。そして、省の幹部みずから現地視察に行こうということで、全国で二十一カ所ほどいろいろなお話を聞きに回ったわけでございます。私も参りましたが、つくづく感じましたのは、本当に高齢者の方が頑張っておられるな、だからこそ、今のうちに、とにかくこれは早く何とか対策をやらなきゃいけないということをつくづく感じたわけでございます。

 こういったことを経まして、昨年の十一月に、省といたしまして、農山漁村活性化のための戦略ということをつくり、そしてそれを政府全体の地方再生戦略というものに反映させていったところでございます。

 大きな柱としては三本あるのかなということでございまして、一つには、何といっても集落の維持、再生をしなきゃいけない。もう一つは、そのためには、そこで飯が食えるというようなことにもしなきゃいけないわけですから、地域経済の活性化ということをどう図るか。そして三番目に、そういったことを進めていく上で、どうやってそれを引っ張っていく人あるいは支える人の人材を育成していくか、この三本柱になるのではないかというふうに思っております。

 特に、中核をなします地域経済の活性化ということでございますが、私は、ある意味では、非常にマイナスと思われる条件も見方によってはプラスになる、本当は宝物が埋まっているんじゃないかという気もいたしております。例えば、やはり山地であれば昼夜の温度差が非常に大きい、そうしたことでありますと、逆に野菜等は大変おいしいものができるわけでございます。

 そういったものをもっともっと、山ならではの価値を見出して、そしてそれにさらに付加価値をつける、そしてまたそれを工業、商業とも連携してしっかりと売り出していく、そういった仕組みをつくっていくことが必要ではないか。先ほどの有害鳥獣の話も出ておりましたけれども、やはりある意味では、イノシシにしてもシカにしても、見方を変えれば貴重なたんぱく源ということも考えられるわけでございます。そういったことでやっていきたい。

 そのためには、やはりどういうインフラ整備等々を含めて必要なのかという中で、従来やっておりました中山間地の直接支払い、あるいは農地、水、環境保全対策、あるいは、一番大事でありますが、交通、通信手段の整備、これは御党の調査の中でも一番最大のものに挙げておられたと思いますが、そういったことを通して地域活性化のためにどういうことが必要であるか、そういったこととよくマッチングをするような対策をとっていきたいというふうに思っております。

 最後でございますが、何といっても、これを引っ張っていく人材、ぜひこれをしっかりと育成して、また応援隊もこれから結成してやっていくという仕組みをしっかりと考えて、また予算等の措置も講じていきたいというふうに思っております。

 以上です。

井上(義)分科員 今回、農水省、経産省の両省で、中小企業者と農林漁業者との連携による事業活動の促進に関する法律案、それから企業立地促進法改正案、この二本を国会に提出して、いわゆる農商工連携による地域産業活性化を図るという政策が打ち出されているわけでございまして、私は非常に高く評価しています。これをどう成功させていくのかということが、非常に農山村の活性化にとっては重要なポイントであるというふうに思います。

 法律の審議はこれからでございますけれども、これの具体的な推進ということについて、農水省としての取り組みをお伺いしておきたいと思います。

若林国務大臣 地域経済の活性化を図っていくという視点に立って見ましても、その地域経済の中で重要な役割を果たしております農林水産業、それと、地域におきますつながりを今までも持っておりました商業とか工業とか、そういった産業との間の連携をしっかりとさせた上で、地域が自立的、持続的な成長が実現できるような条件整備をしていくということが非常に大事だ、こういうふうに思います。

 今委員が御指摘になりました農商工連携促進法案なり企業立地促進法の改正法案の二法案を国会に提出したところでありますが、今までややもすると、農山漁村地域から人を引っ張り出してきて、工業の労働力、商業の労働力として使うという意味で、そういう意味での工業立地というようなことに軸足が非常に強かったように思うんですけれども、やはり商業なり工業なりが持ってきているいろいろな先端的な技術だとかノウハウだとか、とりわけ販売力だとか、そういったようなことが地域の農林水産業を発展させるという意味で、その産物をどう活用していくかということでありまして、今までも農林水産業の立場からいえば、一次産業ではなくて一・五次産業を目指すんだというようなことを言って努力をしてきましたが、それらはやはり商工業との連携の中で、さらに昨今は観光業なんかとも結びつけまして、幅広く地域の産業としてこれを活性化させていかなければならないというふうに思うのです。

 いろいろな例がございます。時間の関係がございますから申し上げませんけれども、一つ二つ申し上げると、北海道の江別市では、江別小麦めんとして年間三百万食を、地域のハルユタカという小麦を利用した高品質なめん類をつくって売り出しているとか、あるいはまた福岡におきましては、減農薬栽培の農産物を活用したジャムだとか、そういう自然食のレストランの新メニュー、こんなようなことを加えまして、年間二十万人の観光客を誘致してきているとか、いろいろな各地で新しい芽生えが出ておりますが、それは大いに進めていきたいと思っております。

井上(義)分科員 それからもう一点、来年度予算でも、農山漁村の活性化対策ということで一千九百億円近い予算を計上しているわけですけれども、特に都市と農山漁村の交流とか、有効と思われる施策がかなり盛り込まれていると思うんですけれども、これが星だというものがあればお伺いしたいと思います。

中條政府参考人 平成二十年度予算におきます農山漁村活性化対策の具体的な取り組みについての御質問でございます。

 私ども農林水産省としましては、農山漁村の活性化は重要な課題というふうに認識しておりまして、今ほど大臣それから副大臣の方から基本的な施策と方向につきまして御紹介がございましたけれども、その基本的方針に沿いまして、まずは人材への直接支援、さらには農山漁村集落の再生、三番目には地域経済の活性化、この三本を柱とします対策に取り組むこととしております。

 具体的に平成二十年度予算としまして順次申し上げますと、まずは、人材への直接支援につきましては、地域固有の農林水産物、伝統文化など、いわゆる地域力を発掘し得る人材の育成を支援することとしております。また、農山漁村集落の再生につきましては、農地、水、環境保全向上対策、中山間地域等直接支払い制度によります支援、小規模、高齢化集落の水路、農道等の保全管理活動に対します支援を行うこととしております。さらには、地域経済の活性化につきましては、今ほど大臣の方からお話がございました農商工連携の展開とともに、全国の小学生が農山漁村で一週間程度の宿泊体験を行います子ども農山漁村交流プロジェクトを初めとします都市と農山漁村の交流など、幅広く推進することとしております。

 今後、こういった施策を関係各省ともしっかり連携しながら着実に取り組んでまいりたい、このように考えております。

井上(義)分科員 農村振興局の役割は非常にかつてないほど大きい、このように思っていますので、しっかり頑張っていただきたいというふうに思います。

 それでは、原油高騰対策について少しお伺いしたいと思います。

 まずは、水産業ですけれども、漁業で使用されるA重油、平成十六年三月が四万二千五百円、これに対して、昨年末、平成十九年十二月で八万五千八百円、これはキロリットル当たりですけれども、約二倍にはね上がっているわけです。油代というのは漁労支出の大体一九%を占めている、こういうふうに言われておりまして、ところが一方で、漁獲物というのは競りで売買されるということでなかなか価格転嫁が難しいということで、大変深刻な事態になっております。

 それで、平成十七年度の補正で私どもも取り組みまして、政府・与党で漁業経営安定特別対策基金、これを設立いたしまして対策を講じてきました。十九年度補正でもこれを積み上げる、それから二十年度予算でもさらに燃油高騰対策を講じてきているわけでございますけれども、これらの対策について、その具体的な効果といいますか、それをどのように農水省は認識されているか、お伺いしたいと思います。

山田政府参考人 燃油高騰対策の御質問でございます。

 ただいま委員からお話がありましたように、十七年度補正におきまして、燃油高騰対策として基金を設置して対応してきたところでございます。

 具体的には、燃油タンクの統廃合によりまして燃油の流通の効率化を進めるという内容のほかに、漁業活動の燃油の消費を抑制するための対策として、沿岸漁業では省エネ型機器の導入を支援する、また沖合遠洋漁業におきましては、共同で漁場探査や漁獲物運搬を行うことによりまして操業の効率化を推進してきたということでございます。

 それから、このほかに、十八年度から省エネ技術の開発普及というのもあわせて実施をしておりまして、例えば、発光ダイオードの集魚灯をサンマ棒受け網漁業に導入するというような研究なり実際の普及の活動というようなことに取り組んでいるわけでございます。

 十七年度の補正などによりまして実施をしました燃油タンクの統合につきましては、四十四の地域で取り組まれておりまして、地域によっては、流通のコストが最大で一〇%程度削減されるというような効果も生んでおります。

 もう一つ、申しました省エネ型機器の導入につきましては、十六道県、百二十三のグループで実施され、省エネ型の船外機が二千三百台ほど導入される、あるいは今後導入される見込みになっておりますし、共同漁場探査あるいは共同の運搬の取り組みについては十九のグループで実施されているということで、こういった取り組みでも、例えば省エネ船外機の導入によりまして、最大で二〇%程度の燃油消費の削減がなされるというような効果を上げているところでございます。

    〔杉浦主査代理退席、主査着席〕

井上(義)分科員 今お話があったように、やはり省エネ型漁業への早急な転換が不可欠。原油価格の推移を見ますと、燃油の価格を下げることはなかなか難しいということになりますと、これはもう省エネ型漁業への転換を図るということが最重要課題だというふうに思います。

 漁業者の皆さんからいろいろ聞きますと、そういう意味でいろいろ施策はやってきているんですけれども、省エネ操業あるいは省エネ機器導入に対するもう一段大型の支援策というものが要望されているわけでございまして、十九年度の補正あるいは二十年度予算で、具体的に漁業者の皆さんの要望にこたえるようなもう一段の省エネ対策といいますか、その辺について、農水省の認識をお伺いしたいと思います。

山田政府参考人 委員からただいまお話がありましたように、省エネ型漁業への転換は極めて重要でございます。

 それで、十九年度補正予算におきまして百二億円の基金の設置がなされたわけでございますが、十七年度補正で実施しました対策に加えまして新たな対策を講じているところでございます。

 一つは、地域やグループで一斉に、例えばイカ釣りなどで集魚灯の光の強さを落としていくということによって省エネ型操業へ転換する、こういった新たな取り組みの推進、また、輪番制で休漁していくというような格好でコストの削減を図っていくというような対策をとっているところにつきましては、藻場、干潟を整備するといった活動に対する支援という形で、そういった新しい操業体制の構築を支援していくというようなことで省エネ型漁業への転換を進めていきたいというふうに考えております。

 また、先ほども言いましたけれども、省エネ型の技術導入を進めるということで、発光ダイオード集魚灯をさらにほかの漁業種類にも適用できないか、あるいはもっと効率よく魚を集める方法がないかというようなこと、あるいは抵抗の少ない船の形に変えていくというようなことで、その技術開発、普及を進めております。

 こういったことを、全体としては強い水産業づくり交付金という事業がありますので、そういった一般の事業で受けて、省エネ型の操業がさらに進むように推進していきたいというふうに考えております。

井上(義)分科員 先般、岩手県の大船渡市に行ってまいりまして、カキが中心ですけれども、養殖の業者の皆さんと懇談をしたんですね。そのときに出た話なんですけれども、今、いわゆる環境対策もあって、船外機を使っているわけですよ。これはガソリンなんですね。今、道路特定財源が議論をされていますけれども、要するに、このガソリンにも道路特定財源、暫定税率がかかっているわけで、それについて、重油の場合は還元しているわけですけれども、還元すべきではないかと。

 これはもっともな話で、では、どういうふうに捕捉するのか、いろいろ課題はあると思うんですけれども、やはり、そういう皆さんが十分納得できるだけの、例えば道路特定財源の一部を使ってしっかりした漁業者対策をやるとか、何らかのことが必要だというふうに思うんですけれども、これについてお伺いします。

山田政府参考人 ただいまお話がありました、船外機用に使われるガソリンについての税金でございます。

 これは、委員からお話がありましたように、漁船のエンジン用のA重油については免税等の措置がありますけれども、漁業者が船外機等で使用するガソリンについては、実際には自動車などに使用するものと区別がつかないという課税技術上の問題もあって、減免措置はとられていないところでございます。

 ただ、農林漁業用のガソリンに対する揮発油税につきましては、直接漁業者に還元するということではなくて、漁港関連道の整備などということで、その財源相当額を予算措置として農林漁業用の揮発油税の財源身がわり措置の予算が講じられているところでございますので、それなりに漁業者なり漁村への還元はなされているところでございます。

 なお、省エネの推進は、それにしても依然として重要でございますので、船外機への転換、あるいは乾燥機の導入等の省エネの機器の導入をさらに推進するということはあわせてやっていきたいというふうに思っております。

井上(義)分科員 還元されていると言うんですけれども、これは、ガソリンそれから軽油もそうなんだと思うんですけれども、では、漁業者の皆さんが大体どのぐらい使っていて、それに見合うような道路特定財源はどのぐらいで、どのぐらい還元しているのか、それをちょっと答えてくれますか。

山田政府参考人 申しわけありませんが、今揮発油税でどのぐらい入っているかというのはちょっと手元に資料がございませんけれども、農林漁業用揮発油税の財源身がわり漁港関連道事業というのがございますが、これは、平成二十年度につきましては六億円程度の予算が計上されております。

井上(義)分科員 これは道路だけですか。後でちょっと言ってもらいたいんですけれども。

 要するに、実際に大体どのぐらいの量が使われていて、ほぼどのぐらいの税収があるのか、正確にはつかめないと思いますけれども、大体漁業者の数とか、大体一日どのぐらい使うとか、そういうことは当然推計できるわけですから。

 それから、ガソリンもそうだし、それから軽油税、これは地方税になっていますけれども、それについてもどうなのか、この辺のことについてちょっとお伺いします。

山田政府参考人 ただいま手元にある資料でございますけれども、年間のガソリンの使用量、これは漁業用ということであろうかと思いますが、これは約八万キロリットルございます。それで、ここから推定をする課税額としては、私どもの計算では四十四億円ということでございますので、おっしゃるように、すべてが予算に反映されているわけではありませんけれども、必要なものということで計上して、予算措置がなされているというふうに考えております。

井上(義)分科員 大臣、要するに、四十億円、今四十四億円ぐらいという話がありましたけれども、六億円しか還元されていない。しかも、漁港に通じるような道路の一部みたいな話で、漁業者から見ると、自分たちが払っている税金がきちっとやはり自分たちの、そのために使われているわけですから、そこはきちっと還元してくださいねということで、これは農水省だけで決着がつかないと思いますけれども、少なくともそういう問題意識をしっかり持って、これについては少なくとも四十億円ぐらいの明確な予算が組めるような対象にしなきゃいけないと思うんですけれども、大臣、どうですか。

若林国務大臣 委員の御指摘がありました。委員の御意見も踏まえて、全体、今のガソリン税、ガソリンに係る課税のあり方の中で、そのことを我々としても念頭に置きながら検討してまいりたいと思います。

井上(義)分科員 しっかりやってください。我々も推進しますので、よろしくお願いします。

 以上で終わります。

遠藤主査 これにて井上義久君の質疑は終了いたしました。

 次に、杉田元司君。

杉田分科員 自由民主党の杉田元司です。

 三点につきましてお伺いをさせていただきたいと思います。

 私は、愛知県の出身でございます。ただ、愛知県と申しますと、法人二税の税収を初めとして、大変豊かな県というイメージが持たれがちでございますが、実は、愛知県には大きく分けて、昔から、名古屋、そして尾張、さらには三河という、地域の独自の文化がはぐくまれてまいりました。

 そんな中で、私は、三河、わけてもさらに奥深い奥三河という、これは岐阜県と長野県と静岡県、それぞれの県境が、最も行政的にもサービスを受けづらい地域、まして中山間地を初めとする森林・林業等々は生活の大きな支え、そしてそれに基づいて生活が営まれてきた地域でございます。

 そんな地域であるがゆえに、きょうは三点、申し上げました、鳥獣被害対策、そして新しく今国会に上程されております間伐促進法案、さらには限界集落について、それぞれお伺いをさせていただきたいと思っております。

 ちなみに、愛知県の県民の平均所得は約三百五十万円であります。ただ、最もよい、これは名古屋港に隣接した、合併をしないという村が一村ございますが、飛島村という村であります。独自財源が大変豊かなために、名古屋市を初めとする近隣と合併を拒みながら、独自の運営をされておられる。その所得はたしか八百九十六万円という、大変高い所得の水準であります。

 私の地域は、愛知県六十一市町村、かつては八十八市町村ございましたが、合併に伴い、今六十一市町村になりました。その中で、日本一内陸でミニ村と言われた富山村、これは人口二百を切っておる村でありますが、隣の村と日本一ミニ合併を行いました。その村を初めとする私の選挙区には数々の疲弊した町村がございますが、その町村民所得は、東栄町というところが百九十六万円、設楽町が二百十五万円、豊根村が二百十六万円というように、先ほど申し上げた飛島村は、この町村に比べますと約四・四倍の所得の格差が生じております。

 また、ちなみに、隣接する隣の町は豊田市でありますから、これはもう御案内のように、自動車を初めとする関連事業が大変好調を来しておりまして、この町のすべてが自動車にかかわった産業でなりわいを興しているという豊田市、そのすぐ隣が私どもの地域であります。

 これは、道路さえつながることができれば、そこへ就労の機会も、あるいは、道路さえできれば、この村々にもそれにふさわしいような事業展開ができるような企業も招き入れることができるのでありますが、いかんせん、なかなか愛知は、申し上げましたように、名古屋、豊田、尾張といった地域は非常に日の当たる部分、そして私どもの地域は陰りの部分でありまして、その格差につきまして、この三点からの御質問をさせていただきたいと思います。

 まず、鳥獣被害対策でありますけれども、昨年の臨時国会で対策措置法が成立いたしました。この財政上の措置をどのように講じていただくのかということが質問の趣旨でありますけれども、鳥獣被害対策は、長年、そこに住みついた方々が細々と中山間地の農業を営んでまいりましたけれども、イノシシやシカ、猿等の出没によって、あす収穫をしようとする農作物が一夜のうちにして皆、根こそぎ食いつぶされてしまう、年老いた老夫婦は、もうあしたから農業を営む気力さえ失い、被害届も出さなかった現状の中で、ようやくこうした対策法が成立をいたしました。

 そのことにつきまして、財政上の措置をどのように講じていっていただけるのか、まずお伺いをさせていただきたいと思います。

内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、鳥獣被害防止特措法第八条におきましては、市町村が行う被害防止計画に基づく被害防止施策が円滑に実施されるよう、必要な財政上の措置を講ずることとされております。

 これを受けまして、まず、市町村が負担します鳥獣害対策に係る特別交付税措置でございますが、これは、従来から対象となっている防護さくに加えまして、対象となっていない処分経費も含めた上で、特別交付税による交付率を〇・五から〇・八に拡充することになると聞いております。

 また、農林水産省におきましては、補助事業による支援措置といたしまして、二十年度予算案におきまして、被害防止計画を作成した市町村が実施します安全で効果的な箱わなの導入、防護さくの設置、牛の放牧等による緩衝帯の整備などの取り組みを総合的に支援します鳥獣害対策予算を大幅に拡充しまして計上しておりまして、今後とも、関係省庁と連携をして、鳥獣害対策を着実に実施してまいりたいと考えております。

杉田分科員 ありがとうございました。適切な対策、そしてまた財政上の措置を、先ほども御説明ありましたような防護さくや緩衝帯を含めて、お願いを申し上げたいと思っております。

 続きまして、今国会に上程をされております間伐促進法についての質問をさせていただきたいと思います。

 この中では法定交付金ということが新たに盛り込まれておりますけれども、その法定交付金の趣旨につきましての御説明を伺わせていただきたいと思います。

井出政府参考人 ことしから京都議定書の第一約束期間が始まりまして、平成二十四年度までに三百三十万ヘクタールの間伐を実施するということが必要になっております。この第一約束期間におきます間伐等の実施を強力に促進するためには、地域の森林の実情に通じた市町村の自主性、裁量性を生かした森林整備が必要でございます。

 この法案におきましては、こういった観点から、従来の都道府県を通じた補助事業に加えまして、市町村に直接交付する新たな交付金を創設することといたしております。

 具体的には、地域の実情に応じた間伐実施の条件整備等を図るために、市町村自身や林業事業体等による作業路網の整備でありますとか、所有者による施業が困難な森林等におきます市町村による施業等に対して助成をいたしますとともに、この事業費の一割の範囲内で、不在村者に対する間伐等実施のための合意形成を目的とした事業といった、地域の提案によりますソフト事業も実施可能とするなど、従来と比べて柔軟な仕組みを導入することとしております。

 これらによりまして、地域の自主的な取り組みを支援していくつもりでございます。

杉田分科員 今の御説明の中で、不在地主の項がありましたけれども、なかなか地元では、不在地主の方が大変ふえておりまして、大変大きな問題化しつつございます。まして、木材等の価格低迷の中で、地主自体の山への関心も薄らいできている、だから余計に山自体が放置をされていくという悪循環の中に入り込んでいるような気がしてなりません。

 しかし、実際に、今のような交付金の制度の中で、申し上げましたような地方の自治体の財政力、あるいは不在地主を含めた民間の方々も財政的に厳しい、そしてまた、それに見合うような供給体制がしっかりととれていけない、需要もそうでありますけれども、需給バランスがとれていけない、そんな現実の中で、こうした間伐を実施するに当たりまして、個人負担あるいは地方行政に対する支援というものを行っていただけるのか、御説明をお願いいたします。

井出政府参考人 委員御指摘のように、間伐を推進していくためには、地方自治体や森林所有者の負担軽減を図るという観点が非常に重要でございます。このため、間伐等促進法案におきましても、追加的な間伐等に要する地方負担につきましては、その軽減を図るため、新たに地方債の対象とするとともに、償還時にその一部を普通交付税として措置することによりまして地方負担の軽減を図ることとしているところでございます。

 また、個人負担につきましては、従来から、こういった間伐施業の集約化、低コスト化を図るということで、間伐の採算性を高めまして、実質的に森林所有者の自己負担の軽減を図るといった事業を展開しておりますが、平成二十年度におきましては、新たに定額助成方式のモデル事業を導入するとか、あるいは、民間事業体が、森林整備の意欲を最大限活用いたしまして、事後精算方式で間伐をやっていただきまして、結果的に損失が生じた場合には損失の一部を補てんするといった対策も導入することといたしております。

 こういった取り組みを通じまして、間伐におきます地方自治体あるいは森林所有者の負担軽減に今後とも努めてまいる考えでございます。

杉田分科員 地方債の起債、そしてまた普通交付税で充当していくと御説明でありましたけれども、普通交付税の充当率といいますか、そのあたりはいかようになっておられますか。

井出政府参考人 まず、地方債の対象には、地方公共団体負担分の全額が対象になりまして、そのうち三〇%が地方交付税として償還時に措置されるということでございます。

杉田分科員 そうしますと、この三〇%、さらには今後として、交付税充当がそれでも財政的に厳しいというような地方自治体というのはいかようにでも存在し得ると思うんですが、将来見通しとして、この三〇%という数値が上がっていく可能性というもの、それもまた含めたお考えというものはおありになるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

井出政府参考人 従来、間伐等の森林造成につきましては、個人の資産がそのことによって増加するということもありまして、地方債の対象とはできないという扱いをされておりました。

 このたび、総務省ともお話をいたしまして、こういった間伐推進が、地球温暖化対策とか京都議定書の実現とか、そういった国家目的に合致しているものであるということで、今般ようやく地方債対象あるいは交付税の措置対象に認められたわけでございますので、まずはこの制度を生かしてまいりまして、京都議定書のお約束期間終了後、次の段階等において、そのときの状況を踏まえて、また総務省等とも御相談をさせていただきたいと思っております。

杉田分科員 ぜひ、京都議定書の約束期間、二十四年までの間に、さらなる世界への公約を果たすためにも、国としての努力をお願い、期待をさせていただき、次の質問に移らせていただきたいと思います。

 これらのことを踏まえて、森林吸収目標の達成は可能であるのか、あるいは吸収源対策を林業振興にどのようにつなげていくのか、農林水産大臣の御所感をお伺いいたします。

若林国務大臣 委員も御承知のとおり、京都議定書、いよいよ実行初年度に入ってきたわけでございますが、この京都議定書の中で我が国が世界に約束をしたCO2の削減はマイナス六%でございますけれども、そのうちの三・八%を森林が吸収をして削減するということで、最大の削減量になっているわけでございます。

 この六%の削減というのは大変厳しい状況にありまして、むしろ、今までの努力の結果でありましても逆に六%超ふえているというような現状の中でこの六%を達成しなきゃいけません。世界に対する約束でありますから、これをしっかり約束を守る、守れる、そういうことをメッセージとして出さなければ、この夏の洞爺湖サミットで日本が議長国をするわけでありますから、とても指導性を発揮することができない。その意味では、三・八%を森林吸収源で達成するということは至上命令でありまして、何が何でもこれを達成しなければならない、こういう決意でございます。

 そこで、京都議定書の森林吸収目標は千三百万炭素トンということに計算されるわけでありますが、平成十九年度から二十四年度までの六年間で、毎年二十万ヘクタールを今までとプラスして追加的な森林整備というものが必要になってくるわけでございます。

 そのために、平成二十年度に向けては、十九年度の補正予算と二十年度の予算案を合わせまして二十万ヘクタールを超える追加的な森林整備に必要な予算を計上いたしておりますが、この追加的な間伐等に必要な地方公共団体の負担を、今長官が御説明いたしましたように、地方債の対象に新たに加えるなどを内容とした新たな法律案を今国会に提出させていただいているわけでございます。

 これらの取り組みを通じて、森林吸収目標というものを達成するために全力を挙げて取り組むわけでございますが、そのためには整備された森林というものを確保していかなきゃいけないという意味で、間伐等を進めていく。

 間伐を進めるということは、かねてより日本の森林整備のおくれの一番大きな課題でありましたから、こういう京都議定書の目標を達成するための森林整備を促進するという課題は、まさに日本の林業政策、森林政策の中心的課題でもあるわけでございまして、その意味で、森林施業の集約化でありますとか路網の整備でありますとか、そういう林業生産のコスト低減というものにこれを通じて積極的に取り組んで、国産材の安定供給を図ってまいるようにしていきたい、そういう形で林業政策と積極的に結びつきを図っていく必要があると考えております。

杉田分科員 大臣の御決意を拝聴させていただきました。

 ぜひ、この京都議定書、世界に対する公約と、そしてまた洞爺湖サミットを踏まえた、我が国の林業政策はかなりおくれている部分があると思っておりますので、振興につながるような大臣のお力添えを賜りたいと思います。

 続きまして、限界集落についてお伺いをさせていただきます。

 私も、せんだって地元に戻りました。実は、愛知県でありながら、道路の関係で岐阜県を通らないと、愛知県、私の選挙区に入ってくることができない、そういう地域がございます。まさにこれこそ限界集落の最たるものだと思っておるんですが、十八世帯がそこに住んでおられます。一番若い方が六十八歳とお聞きしましたので、二十数名の集落の方々、若い方が六十八歳でありますから、平均的にはかなり高齢化をしている集落であります。

 現職の衆議院議員がその集落に入ってきたのは、私のことでありますけれども、五十三年ぶりだと。五十三年間ここにはだれも来なかったんですかとお聞きしましたら、五十三年間、だれも私たちの集落に入ってこなかったと。恐るべき、政治や行政と疎遠に、限界というよりは、むしろもう消滅集落に近いという感じを抱いて戻ってまいりました。

 私を案内してくださった方が、この方たちとお話をして何か気づかれたことがありますか、こう尋ねられたので、私は、いや、それは何ですかと逆に伺い直してみますと、ほとんどの方々の目を見ましたか、こう言われました。会場を出てからふと気がついたんですが、ほとんどの方々の目が死んでいるでしょう、そこに気づいてくださいよと。確かに、私がお話を申し上げておっても、聞いておってくださるのか、あるいは希望を持たれているのか、それすらも感じ取れないような、まさにそこに私は大変な憤りを感じ、五十三年ぶりに伺ったその地域から戻ってまいりました。

 また、ある集落は、長い間の伝統、七百年以上続く私どもの花祭りという祭りを、今も営々と続けていきたいんですが、子供がそこにはいない。受け継いでくれる方がそこに存在しない。十八年ぶりに、実はこの間子供さんが生まれた。十八年ぶりでありますから、ぜひこの子に花祭りを伝承してもらいたいということで、大人たちが必死になって教えながら、この集落の消滅を防いでいこう、こんな気持ちを聞かせていただきました。

 限界集落は、まさに消滅を目前にし、夢や希望を持つことすらできなく、そこでひっそりと暮らしている方々、このまま政治や私どもがそこにしっかりと目と耳を傾けなければ、いずれ消滅集落になってしまうという危険性、可能性が大であります。

 しかし、それをほかっておくわけにはまいりません。私どもは、先ほどの国土という面からも、あるいは、私たちに貴重な水という問題を含めても、環境という問題を含めても、そこで生活をし、山林や、そして水を守ってくださる方々を、その集落を守り続けていかなければいけないと思っております。私たちは何もできないけれども、見守ってほしいという声がその集落の方々からはいつも届いてまいります。

 そこで、限界集落については御認識をお伺いしたいと思うのですが、これは総務省さんや国土交通省さんやあるいは農林水産省さん、いろいろなかかわりを持たれておると思いますけれども、今のこの集落の問題解決に向かって、農林水産省としてはどのようなお考えの中で事を起こしていかれるおつもりか、お話を伺いたいと思います。

中條政府参考人 委員のただいまの御質問でございますけれども、限界集落の現在持っております現状と、それに対する対策ということでよろしゅうございますでしょうか。

 お答えいたします。

 お答えします前に、限界集落という言葉でございますけれども、委員御案内のとおり、これはある有識者が用いられた定義でございまして、六十五歳以上の高齢者が集落の人口の半数を超えて、冠婚葬祭を初め田役、道役などの社会的共同生活維持が困難な状態に置かれている集落というふうに私ども聞いておりますが、一般的に申し上げまして、農山漁村、とりわけ中山間地域におきましては、都市と比較しまして人口の減少、高齢化が著しく、農業等の地域産業の低迷、高齢者を初めとします住民の生活への影響などが大きな問題となっている農村集落があると承知をしております。

 また、農村集落は、食料の安定供給の機能、それから国土、自然環境の保全といった多面的機能を持っておりますけれども、一部の集落では、人口減少に伴いまして、共同活動、相互扶助などの集落機能が脆弱化しておりまして、こうした重要な機能も失われつつあるものとも認識をしております。

 そこで、こういった集落に対してどのような対策をとろうとしているのかということでございますけれども、農林水産省としましては、これまで、中山間地域等の条件不利地域に対します農業生産条件の不利を補正する支援、農地、水、環境を保全する地域共同活動への支援、それから、中山間地域総合整備事業等によります生産基盤及び生活環境の整備、それから、複数集落がそれぞれの持っております機能を補完し合うことを通じまして集落機能の再編を図ることをモデル的に支援することなどの施策を通じまして、農林業の持続的な発展と農山村の振興を図ってきたところでございます。

 これらの施策を実行いたしまして、それぞれの成果等を踏まえまして、これに加え、特に平成二十年度予算におきましては、中山間地域等直接支払い制度に取り組んでおられます集落等が、集落間連携によりまして、小規模で高齢化の進む集落に出向きまして、水路、農道等の保全管理活動を行う取り組みを支援する事業に係る予算を計上したところでもございます。

 今後、私どもだけではできませんので、委員の御指摘のとおり、関係府省ともよく連携いたしまして、農山村の活性化に向けまして引き続き努力をする所存でございます。

杉田分科員 私どもの愛知県も、実は、私が冒頭申し上げました東三河中山間地域対策というものに本格的に身を投じるようになりました。

 と申しますのも、かつて、数年前の愛知万博、そして中部国際空港の開港といった、まさに、気圧配置じゃありませんけれども、西高、西が高く、東、我々の地域が西高の反対の東低、東が低い地域、これはぜひ是正、改正を進めていかなきゃならないということで、愛知県といたしましても、今まで、例えば過疎ですと総務省、あるいは治山治水ならば国土交通省というように、それぞれ県の中にもセクションが分かれていました、それを、愛知県の中に農山村振興推進室、そして、出先事務所を、東三河事務所から農山村振興事務所というように、すべてをまとめた事務所を今年度から開設することになりました。

 あわせて、来年度からは、おそがけでありますけれども、環境森林税を、五年の時効でありますけれども、二十五億の五年、百二十五億を、山村のために六割を追加的な税としてこの地域の発展のために給付していこう、そして四割は、都市に対しても、都市緑地にもそうした環境税を投じていこう、そして、都会も山村部も合意の上でこうした循環型社会をつくり出していこう、そういうような制度に進むことになりました。

 ぜひ、国といたしましても、農林水産省そして総務省、国土交通省と、こうした限界集落という一つの視点で行政が一体になってこの地域の支援に乗り出していただきたいことを最後にお願い申し上げさせていただき、質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

遠藤主査 これにて杉田元司君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時三十一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

遠藤主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。古屋範子君。

古屋(範)分科員 公明党の古屋範子でございます。

 昨年の十二月、鳥獣被害防止特措法が成立をいたしまして、先週、二月二十一日に施行となりました。そこで、本日は、鳥獣被害防止への取り組みにつきまして若林大臣にお伺いしてまいりますので、よろしくお願い申し上げます。

 イノシシ、シカ、またカラスや猿など、こうした野生生物による被害は全国的に深刻なものとなっております。また、農山漁村地域における一部の鳥獣による人身への被害も広がっているのが現状でございます。農水省の調査によりますと、平成十八年度の農作物に対する被害、その被害面積が十・六万ヘクタール、被害総額約百九十六億円となっておりまして、近年、被害総額は横ばい傾向で推移しております。被害額は自己申告が中心となっておりますので、あきらめて申告しないという方々も多いのではないかと思います。この被害額は、やはり氷山の一角ではないかという気がいたしております。

 特に、農産物に対する被害は、農業に携わる方々の農業を続けようとする意欲を、精魂込めてつくりました農作物、本当に、こうした鳥獣被害に遭ってしまうということは、そうした意欲をそぐものとも思われます。それが、ひいては耕作放棄など、さらなる鳥獣被害を招く悪循環を生じさせるなど、被害額として表にあらわれない、数字以上の影響を地域に及ぼしていると考えられます。

 そこで、初めにお伺いいたしますが、このような野生鳥獣によります農作物被害の現状についての御感想、そして被害が拡大をしている要因、これは大臣、どのようにお考えになりますでしょうか。

若林国務大臣 委員が御指摘のように、有害鳥獣による農作物に対する被害というものは、中山間地域を中心に近年、拡大をし、深刻化しておりまして、被害額は委員が今お話しのとおりおおむね二百億円程度で推移しているところでございます。このような被害は、数字にあらわれた被害以外に、委員がお話しのように収穫時に被害を受けることにより生産意欲に大変ダメージを与えるというようなことがございます。

 そういうような被害が拡大してきた原因としては、幾つか考えられますが、一つは、近年、雪が少なくなってきているというような傾向がありまして、鳥獣の生息適地が拡大しているということが指摘されております。また、農山漁村の過疎化、高齢化の進行によりまして、耕作放棄地が増加してきているといったような要因が複合的に関係しているというふうに考えられるわけであります。

 また、この耕作放棄地の発生について言いますと、悪循環を起こしまして、先ほどの中山間地における営農意欲の減少というようなことから、耕作意欲が衰えて、耕作を放棄する、放棄したところがこういう鳥獣の巣になっていくというようなことで、そこからまた鳥獣被害が拡大してくるといったような悪循環が見られるところでございます。

 このために、この被害防止対策の実施に当たっては、こういう鳥獣による被害の状況、鳥獣の生息状況等の的確な把握や被害の原因分析を行って、取り組むべき課題を明らかにしなければいけないと思っております。

 そこで、この法律に基づきまして、鳥獣による農林水産業に係る被害の防止のための施策を実施するため、基本的な指針というものを農林省の告示で定めたところでございますが、その告示の中では、被害防止対策の実施についての基本的な事項という中に被害原因の究明という事項を入れておりまして、被害防止対策の実施に当たっては、鳥獣による農林水産業に係る被害の原因を分析して、取り組むための課題を明らかにすることが重要だと。このためには、国、都道府県は、鳥獣の生息状況や生息環境に関する調査、あるいはまた鳥獣による農林水産業等に係る被害に関する調査の結果を踏まえながら、被害の原因を究明するための取り組みを推進しなきゃいけないということを定め、告示したところでございます。

古屋(範)分科員 ありがとうございました。

 そうした雪が少なくなるというような環境的な要因、そして過疎化、こうした人的な要因、こういうものが相まってこうした鳥獣被害が拡大していくという大臣のお話でございました。それに対しまして、本法案に基づき、基本的事項の中で被害防止の原因究明をしっかりなされていくという御決意を今お伺いできたかというふうに思っております。

 次に、アライグマ被害についてお伺いをしてまいります。

 昨年、本分科会におきましても、私、このアライグマ被害について、当時環境大臣でいらっしゃいました若林大臣に同じテーマで質問させていただきました。野生化したアライグマは今、爆発的な勢いで全国に拡大をしております。

 もとはといえば、鎌倉には富裕層が多く、そこでアライグマを飼っていて、大きくなりますと力も強く非常にどうもうであることから、そこから放してしまってふえていったのではないかということも言われているわけなんですが、このアライグマを捕獲したことがある都道府県は、平成五年には東京、北海道、愛知など五都道府県にとどまっておりましたけれども、十年後、平成十五年には四十一都道府県に広がっている。その後もふえ続けておりまして、現在は全都道府県で確認をされております。

 一見しますと、非常にかわいく、アニメの主人公にもなったくらいなんですが、実際には非常に大きな被害をもたらしているということでございます。私の地元神奈川県におきましても、平成十二年には二百十七頭だった捕獲数が、年々ふえ続けまして、十八年には一千五百十八頭に、そして、県内でも集中している横須賀・三浦地区では、十八年度に千三十一頭を捕獲しております。

 さらに、アライグマによる全国的な農業被害の状況を見ますと、平成十八年度にも拡大し、十六都道府県で約一億六千四百万円に上っているということが農水省の調査で明らかとなっております。

 関東で最も被害が深刻なのは、やはり神奈川県でございます。県では、関東で一番早い一昨年、十八年三月に、神奈川県アライグマ防除実施計画を策定いたしました。現在県内に約四千頭いると推測されているアライグマを十年間で完全駆除する計画を立てております。神奈川県の被害総額は千六十一万円。また、被害の申告があったのは、三浦市で八百二十万円、横須賀市で百三十万円を中心といたしまして、横浜、鎌倉、平塚、小田原、愛川、二宮、葉山の九市町村に上っております。

 アライグマの体内には、人や家畜に深刻な感染症を起こす病原体は見つかっておりません。しかし、木登りや民家に侵入するなど行動範囲が広く、病原体の運び役になって新しい感染症を引き起こす可能性があることが専門家から指摘をされております。アライグマの完全駆除は待ったなしでございます。

 これまで、各自治体でもアライグマ被害防止、駆除対策に取り組んでいるものと思いますけれども、全国的な被害の拡大の原因、さらに、アライグマの生息域拡大の原因についてお答えいただきたいと思います。

内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のように、十八年度にはアライグマによる農産物被害は全国で約一億六千万円、これは、平成十四年度と比較しまして約二倍というふうに拡大しております。

 このようにアライグマの被害が広がっているのは、私ども、ペットとして輸入、飼育されていたものが逃亡して野生化し、高い繁殖能力と日本の生育環境に合っていたということがあって、生育域が拡大したためと考えております。

古屋(範)分科員 そうしたペットを飼う、動物愛護の精神とも密接にかかわりがあって、一度飼ったならば最後まで飼い続けなければいけない、こうした飼い主のモラルにかかっているということでございます。それが皮肉にも日本の環境に非常に適していたということでここまで広がったものと思います。

 そこで、生息域の拡大が懸念をされていまして、広域に分布して被害を及ぼすアライグマなど、環境省は平成十七年度より外来生物の防除事業を実施されています。私は、この外来生物の防除に対する補助金や交付金等の財政支援をすべきと昨年の分科会で主張したところでございますが、そのときは、国として、都道府県、市町村が行うこの外来生物の駆除に対しては、補助金、交付金等の財政措置はないという冷たいお答えでございました。

 昨年の臨時国会におきまして、農作物被害の防止に必要な財政支援が国から地方に実施される、鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律、鳥獣被害防止特措法が成立いたしまして、野生鳥獣による農作物への被害防止策が財政支援も伴って実施されることとなったわけでございます。公明党も、農山漁村の暮らしを守るとともに、人間と動物が共生できる自然環境を整備する観点から、特措法の制定に積極的に取り組んでまいりましたので、超党派で特措法が提案され成立したということは大いに評価をしたいと考えております。

 また、被害対策に対して従来なかった法律ができまして、大幅に予算が拡充されることとなり、これまで農作物被害に苦しんでいた農家の方々からも、被害防止に厳しい財政状況の中、対応してきた県、市町村の関係の方々からも、ようやくという思いで喜びの声もいただいているところでございます。

 そこで、この法律の特徴と、この特措法で何ができるのか、また鳥獣被害防止への効果についてどのようにお考えか、この点についてお伺いいたします。

内藤政府参考人 議員立法で成立させていただきました鳥獣被害防止特措法は、特徴といたしましては、農林水産業の被害対策の中心となる市町村が主体的に対策に取り組めるように仕組んであるということでございます。

 まず、農林水産大臣が策定いたします被害防止対策の基本指針に即して市町村が被害防止計画を作成する。そして、この被害防止計画を作成した市町村に対しまして、国等が財政上の措置等各種の支援措置を講ずるという内容になっているわけでございます。

 この財政上の措置を申し上げますと、まず、市町村が被害防止計画に基づいて施策を実施する際に必要な経費についての特別交付税措置が拡充されまして、五割から八割にかさ上げになるということ、それから補助事業による支援措置、私どもの予算措置を大幅に拡充いたしまして、これに充てるということにしてございます。

古屋(範)分科員 国の基本指針に基づきまして市町村が被害防止計画を立て、それに対して特別交付税、これも五割から八割にかさ上げということで、市町村にとりましては大変ありがたいというふうに考えられるところでございます。市町村にとっても財政的に負担にもなっておりましたし、また業者の確保なども非常に苦労をしているようでございます。

 この鳥獣被害防止特措法は、農業などの被害防止を目的にいたしました法律でございます。農水省は、鳥獣対策室を設置予定、また鳥獣被害対策の予算案も前年度の十五倍、二十八億円を計上されるなど、鳥獣被害対策が大きく前進することが期待をされているところでございます。

 私の住んでおります横須賀市、また隣の三浦市など、さきにも申しましたけれども、このアライグマによる農作物被害が非常に大きいわけでございまして、平成十八年度、十六都道府県で約一億六千四百万円に上っているということもあり、この特措法が有効に活用されるよう積極的な取り組みをお願いしたいと考えております。

 そこで、効率的な対策を進めるために、市町村間の連携による広域的な取り組みが必要でございます。当然、こうしたアライグマも、市町村の境を越えて行き来をしているわけでございます。また、この市町村間の取り組みに温度差があれば、結局はそちらに逃げてしまうという、アライグマを野外から排除できた市町村とできない市町村が生じますと、再び繁殖が繰り返されるということにもなりかねません。やはり、一網打尽に駆除をしていくということが大事なんだろうと思います。

 そこで、今回の特措法では、被害防止計画を定めた市町村に対して被害防止施策を推進するための必要な措置が講じられることとなっております。先ほども触れられておりますけれども、さらにその具体的な措置等々、御説明いただければと思います。

内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど特別交付税のかさ上げのお話をしましたけれども、予算といたしましては、農林水産省におきまして、委員御指摘のように、予算額を二十八億円に大幅に拡充しまして、そして被害防止計画に基づき市町村が対策を講ずる場合、具体的には、アライグマ等野生鳥獣を捕獲するための箱わなの導入、あるいは防護さくの設置、それから市町村職員等が狩猟免許講習会へ参加する、こういった取り組みをするわけでございますが、こういった取り組みに対しまして総合的に支援することとしております。

 今後とも、関係省庁とも連携しつつ、対策の着実な実施に努めてまいりたいと考えております。

 それからあと、地方公共団体相互の広域的な連携が重要ではないかという御指摘がございましたが、大臣からも冒頭御説明しましたように、私どもがこのたびつくりました基本的な指針の中で、地方公共団体の広域的な連携が重要であるということで、各地方公共団体が相互に連携協力して被害防止対策を実施するようにということを明記してございます。

 以上でございます。

古屋(範)分科員 この総額二十八億の予算、ぜひ有効に活用していただきたいというふうに思います。また、先ほど申しましたように、広域連携というのが非常に大事だと思っておりますので、ぜひその辺も音頭取りをしていただいて、推進をよろしくお願いしたいというふうに考えております。

 さらに、先ほどの御答弁とも少し重なりますけれども、市においてはこうした駆除を積極的にやればやるほど負担がふえてしまうという悩みがございます。実際、市町村の財政を圧迫しているのが現状でございます。それに対する手厚い財政支援というのが求められているわけであります。

 今回の特措法第八条には、財政上の措置といたしまして、「国及び都道府県は、市町村が行う被害防止計画に基づく被害防止施策が円滑に実施されるよう、地方交付税制度の拡充その他の必要な財政上の措置を講ずるものとする。」とございます。市町村にとっては、実際に、具体的にどのような計画をつくれば財政支援がなされるのか、そこが非常に重要なポイントになってくると思います。

 そこで、市町村が作成する被害防止計画のイメージ、また作成上の留意点、また地方交付税制度の拡充がなされる対象や交付率など具体的な内容、そしてその他の必要な財政上の措置とはどのようなものか、以上の観点に関して御説明をいただければと思います。

内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 市町村が作成いたします被害防止計画の内容としましては、野生鳥獣を捕獲するための箱わなの導入、あるいは防護さくの設置、それから市町村職員等が捕獲技術あるいはそういったその後処理するための技術あるいは狩猟免許を取得するための講習会への参加、こういったハード、ソフト両面あるわけでございます。そういった取り組みを総合的に講ずるという内容で計画を作成していただきます。

 それから、特別交付税の拡充内容として私ども聞いておりますのが、従来から交付税の対象となっておりました防護さくの設置費、あるいはわな等の購入費、鳥獣買い上げ費等に加えまして、処分経費ですとか鳥獣被害対策実施隊の経費等も新たに対象に含めまして、これらに係る特別交付税の措置を〇・八に拡充するという旨を聞いております。

 以上でございます。

    〔主査退席、杉浦主査代理着席〕

古屋(範)分科員 先ほどの箱わなとか防護さくに加えまして、処分経費なども含められるということですので、大体、地方自治体は、アライグマを確保しますおりを貸与、貸し出しまして、そこに捕まったアライグマを業者がとりにいくというような、こうした駆除方法を使っていると思いますので、その点につきましても、ぜひとも財政支援をよろしくお願いいたしたいと思います。

 アライグマだけではないんです。三浦半島地域にはタイワンリスもたくさんおりまして、その捕獲するおりは多少アライグマよりは小さいんですが、タイワンリスの方もかなり多数生息しておりまして、私のうちもかんきつ類などを植えておりまして、売っているわけではないんですが、もう既にナツミカンなども全部タイワンリスに食べられておりまして、こうした意味では、非常に市民生活にも影響を及ぼしているというところでございます。

 こうした財政支援、市町村においては大いに期待をしているわけでございます。

 次に、平成十八年度に環境省が改正をいたしました鳥獣保護法、この狩猟制度の見直しによる農林水産業への被害防止と、また鳥獣の保護策を見直し、有害鳥獣の捕獲などが円滑に行われるようになったということでございます。そして、翌年四月には第十次鳥獣保護事業計画が、五年ごとに策定をされまして、これらの中で、有害鳥獣の捕獲についての計画が示されております。

 そこで、今回の特措法とこの鳥獣保護法また鳥獣保護事業計画などとの関係、整合性について御説明をいただければと思います。

    〔杉浦主査代理退席、主査着席〕

内藤政府参考人 御答弁申し上げます。

 ちょっと法律にかかわりまして多少長くなりますが、御容赦願いたいと思います。

 まず、御案内のとおり、鳥獣被害防止特措法におきましては、第三条で、基本指針は、鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律に規定します基本指針と整合性のとれたものでなければならない旨規定されておりまして、農林水産大臣は、基本指針を定め、または変更しようとするときは、あらかじめ、環境大臣と協議するものとするということとされております。

 この規定に基づきまして、今回、農林水産省におきまして、被害防止施策の基本指針を策定するに当たりまして、事前に環境省と協議を行いました。したがいまして、環境省との協議によりまして、鳥獣保護の基本指針と整合性がとれた内容になっております。

 続きまして、市町村が作成する被害防止計画でございますが、これは第四条によりまして、鳥獣保護事業計画と整合性のとれたものでなければならない。手続といたしましては、あらかじめ、被害防止計画を定めようとする場合、都道府県知事に協議をしなければならないということになっております。

 この鳥獣保護事業計画と特定鳥獣保護管理計画との整合性につきまして、基本的な指針でも明記してございます。両計画の整合性が保たれるよう、当該市町村が存する都道府県における鳥獣の生息状況や、都道府県が実施する鳥獣の保護管理対策の実施状況について、十分留意するものとする、こういう形で私ども明記してございまして、こういう留意事項を十分踏まえて市町村は被害防止計画を作成し、その上で、この案につきまして都道府県知事と協議を行うということになりますので、被害防止施策と鳥獣保護施策の整合性は十分担保されるものと考えております。

 以上でございます。

古屋(範)分科員 こうした野生鳥獣による作物の被害が増大をしている。その中で、このたび被害防止対策として特措法が成立をして施行されたことは、大変重要なことであると思います。

 冒頭大臣もお述べになりましたけれども、やはり地球温暖化という環境の変化、あるいはペットの輸入にいたしましても、どちらにしても、やはり原因をつくっているのは人間の側にあると言えなくはないと思います。アライグマのような特定外来生物については、徹底して侵入の防止を図り、また根絶を目指すべきであると思いますけれども、一方では、数が減少してしまっている動物などの特性を考慮して、駆除一辺倒ではなく、被害状況とその原因、動物の生息状況に関する調査研究の促進、また専門的な知識や経験を持った人材の育成など、さまざまな施策が重要であると考えます。

 特措法の成立で、被害の現場に最も近く、対策を苦慮している市町村が迅速に取り組めるようになったわけでございますが、こうした防止策の拡充とあわせまして大事なことは、森林伐採や開発などで生息場所を追われている野生動物とまた人間のこのバランスのとれた共生関係を構築すること、これが根本的な問題であろうかと思います。

 最後になりますけれども、若林大臣に、農山漁村の暮らしを守るとともに、こうした人間と動物が共生をしていける自然環境の整備への御決意をお伺いしたいと思います。

若林国務大臣 今、森林整備は地球温暖化対策の中の重要な施策として位置づけられておりますので、農林水産省といたしましては、間伐の促進によりまして、京都議定書で定められております六%マイナスのうち三・八%を担っております、これが着実に実施されるように、間伐を進め、森林整備を促進するということでございますが、この場合に、御指摘がありましたような野生鳥獣との共存の場を提供していくという意味で、森林が持っております多面的機能が十分発揮できるようにしなければならない、このように考えておりまして、間伐を進める場合にありましても、広葉樹林化などによって多様で健全な森づくりを進めるということを目標にしているところでございます。

 なお、森林・林業の基本計画というものを閣議決定して決めておりますが、その中で、森林の有する多面的機能の発揮に関する施策といたしまして、広葉樹林化とか長伐期化による多様な森林への誘導という項目を設けまして、それらの森林の持っている機能の中で、そういう野生鳥獣と人間社会とが共存していけるような意味で、実のなる樹木などを常に意識しながら、これを植栽していく、これを保護していくというようなことも入れるようにしております。

 なお、その同じ森林・林業基本計画の中に、国土の保全などを推進するという役割について述べておりますが、その中で、野生鳥獣の生息動向に応じた効果的な森林被害対策を推進するという項目を設けまして、野生鳥獣の生息環境となる広葉樹林や、針葉樹と広葉樹の混交林などを造成しまして、野生鳥獣との共存にも配慮して対策を適切に推進するということを計画では明らかにしているところでございます。

古屋(範)分科員 そうした有効な林業施策をぜひ推進されることを望みまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

遠藤主査 これにて古屋範子君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

遠藤主査 環境省所管について、政府から説明を聴取いたします。鴨下環境大臣。

鴨下国務大臣 平成二十年度環境省所管一般会計予算及び特別会計予算について、その概要を御説明申し上げます。

 まず、予算の基礎となっております環境政策の基本的な考え方について御説明申し上げます。

 地球環境は、二十世紀型の大量生産、大量消費、大量廃棄型のシステムにより、危機的な状況にあります。環境への負荷の増大は、世界的な水不足や食料危機等の深刻化にもつながるため、人間の安全保障とも密接に関連するものです。

 中でも最大の課題である地球温暖化問題に関しては、昨年末に、すべての主要排出国が参加して二〇一三年以降の枠組みについて交渉する道筋を定めたバリ・アクションプランが合意されました。今後、我々は二酸化炭素排出制約の中で暮らしつつ、発展していく道筋を新たに選び取る必要があります。バリ・アクションプランはまさにこの人類史を画する動きであると考えております。

 この中で、我が国は、クールアース推進構想に基づき、地球全体の排出量の早期のピークアウトと二〇五〇年までの半減を目指し、北海道洞爺湖サミットの議長国として世界の議論をリードしていく必要があります。

 我が国にはすぐれた環境・エネルギー技術や豊富な人材、深刻な公害克服の経験と知恵があります。これらを生かした環境対策を経済成長や地域活性化の原動力とすることにより、二十一世紀型の持続可能な社会の日本モデルを創造します。そして、北海道洞爺湖サミットやG8環境大臣会合を初めとするさまざまな機会を通じて世界に発信することにより、環境立国日本として国際的なリーダーシップを発揮します。

 本年が京都議定書第一約束期間の最初の年であることを十分に踏まえ、京都議定書の六%削減目標を確実に達成するために全力を尽くします。京都議定書目標の達成に関しては、今後策定される新しい京都議定書目標達成計画に基づき、オフィスや店舗、家庭を初めとするあらゆる分野で対策を加速します。

 生物多様性の保全及び持続可能な利用に関しては、第三次生物多様性国家戦略に基づく取り組みを国民各界各層の参加を得ながら進めます。例えば、さまざまな主体が地域で展開する生物多様性保全活動への支援などを行います。また、鳥獣の保護管理について広域的管理や担い手の育成などの取り組みを強化します。

 スリーRを通じた循環型社会の構築に向けては、現在、策定を進めている新循環型社会形成推進基本計画のもと、適正処理の推進と不法投棄の防止を大前提に、廃棄物系バイオマスの利活用や地元での処理が困難で高度なリサイクル技術を必要とする場合の広域処理などを推進します。国際的にもスリーRイニシアチブのさらなる展開に取り組みます。

 アジア各国においては、環境問題の解決が経済発展のかぎであるという認識が拡大してきており、環境保全と経済発展を統合し、持続可能な社会を実現しようという機運が高まっています。

 我が国は、アジアの一員として公害経験や環境・エネルギー技術を活用し、水環境保全や廃棄物処理などの分野での協力を進めます。さらに、黄砂や光化学スモッグなどのアジア地域に共通する問題に率先して取り組むことにより、環境汚染の少ないクリーン・アジアを目指します。

 また、環境への取り組みが経済や地域社会の活性化にもつながるような、環境、経済、社会の側面が統合的に向上する社会を実現するための基盤づくりの取り組みを進めるほか、安全、安心の確保と快適な生活環境の保全、公害健康被害対策等のための施策を講じます。

 平成二十年度環境省所管一般会計予算及び特別会計予算につきましては、以上のような基本的な考え方に立って取りまとめております。

 まず、一般会計予算では、総額二千百九十七億四千百万円を計上しております。

 次に、特別会計予算につきましては、エネルギー対策特別会計に一般会計から三百六十億円の繰り入れを行い、総額として四百二億二千六百万円を計上しております。

 なお、委員各位のお手元に資料が配付されておりますが、環境省所管一般会計予算及び特別会計予算の主要施策につきましては、お許しを得て説明を省略させていただきたいと存じます。

 よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。

遠藤主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま鴨下環境大臣から申し出がありました環境省関係予算の重点事項の説明につきましては、これを省略して、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

遠藤主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

遠藤主査 以上をもちまして環境省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

遠藤主査 質疑に入るに先立ちまして、政府当局に申し上げます。

 質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上野賢一郎君。

上野分科員 自由民主党の上野賢一郎でございます。

 きょうは、環境省所管に関しましてトップバッターで質問をさせていただく機会をお与えいただきまして、ありがとうございます。大臣も、お忙しいところをありがとうございます。

 私は滋賀一区の選出でございます。滋賀一区は、大津市とそして高島市、この二市から選挙区は構成をされているわけでございますが、このうち高島市につきましては、人口が五万四千人余り、琵琶湖の西側に位置をして、古くから里山、奥山、あるいは琵琶湖とのかかわりの中、自然とのかかわり中で人々が生活をしてまいりました。現在、滋賀県内でも最も人と自然が共生をした町、そのように私は考えております。

 この地域でございますが、継体天皇あるいは中江藤樹の生誕地としても知られておりまして、ことしはちょうど中江藤樹先生生誕四百年ということで、その記念のいろいろな行事も予定されているわけであります。最近では、この豊かな自然環境を生かして、観光にも特に力を入れているところであります。

 現在、この静かな町で、地域住民の間で大きな不安が広がっております。動物の多頭飼育、その問題が、地域社会の中で深刻な摩擦、あつれき、こうしたものを生じさせているところであります。

 昨年の秋に、ある団体が高島市に施設を設置いたしまして、犬の搬入を開始いたしました。詳細はわかりませんが、現在までに百頭近くの犬が搬入されていると言われております。これに対しまして地域住民の皆さんが大変な不安を感じられておりまして、周辺の自然環境、あるいは生活の環境、人体への影響、そうしたものに対する懸念を表明されまして、この施設に対して激しい反対運動が生じているという状況でございます。反対をする期成同盟についても地域住民の皆さんが結成をされたという話もございます。

 高島市では、市長さんもこれに対して市長声明という形で意見を表明されておられますが、対応する法律がない、そうした現状に頭を悩ませているということが実態のようでございます。

 こうした静かな町に今大きな混乱が生じていることを踏まえまして、きょうは質問を進めさせていただきたいと思います。

 動物に対する愛護精神の高揚ということが言われております。人と動物が共生をしていくこと、動物愛護を進めていくことは、もちろん、これからの私たちにとってとても大切なことであります。ただ、一方で、そうしたことも地域住民の御理解あるいは協力がなければうまくいかないでしょうし、地域の環境がしっかりと守られているということを担保し、それをみんなが納得していただかなければ、そうしたことは大前提だろうと思っております。

 このような観点から、本日は、犬の多頭飼育の現状と課題につきまして、主として法制的な観点からの質問をさせていただきたいと思います。

 まず最初にお伺いをいたします。この高島市の問題を初め、犬などの多数飼育、多頭飼育をすることによって地域住民との間でトラブルが発生をしている、そういった例が見られると思いますが、環境省として、全国のこのような状況についてどの程度把握をされているのか、そしてどういった方法で把握をされているのか、それにつきましてお答えをお願いしたいと思います。

櫻井政府参考人 お尋ねの多頭飼育の状況についてでございますが、この動物愛護関係の行政は地方自治体の自治事務ということになっておるということもありまして、私ども環境省が全国すべての事例を網羅的に把握しているものではございません。

 しかしながら、ペットショップやブリーダーが倒産したとかそういった場合に飼養を放棄する、あるいは、一般の飼育者の方が多頭飼育といいますか多数の犬や猫を飼育するというようなことによりまして、周辺の生活環境が損なわれるのではないかという事態が発生した事例があるということは承知をしております。

 例えば、近いところでは、昨年の十月に徳島市でそういった事案がございましたし、同じように、平成十八年の十二月に佐賀県あるいは大阪府、あるいは十八年の九月に広島市で、そういった多頭飼育にかかわる、地域で問題になった事例があるということは承知しているところでございます。

 なお、こうした多頭飼育者に対しましては、先ほど申しましたように、地方自治体の自治事務ということから、各自治体で、飼養の頭数あるいは飼育者の対処能力等を勘案して適切な指導などを行っているものと認識しているところでございます。

上野分科員 今、網羅的には把握をしていないというお話でございました。全国津々浦々のことに関しまして、必ずしもすべての事例を把握する必要はないとは思いますけれども、今お話がありましたように、地域の中でいろいろなトラブルが発生をしている、そういった事例については、むしろ前広に詳細を把握されるべきではないかと思います。自治事務ではありますけれども、そもそもの法律、これは動物愛護法等の法律を所管されているわけでございまして、こうした法律に関して密接に関係をする事項でございますので、そうしたことについて十分に御留意をお願いしたいと思います。

 そこで、今申し上げました動物愛護法等々の法律の中でお伺いをしたいと思います。

 犬の多頭飼育を行う場合について、現在の法体系においてはどういった規制がとられているのか、その概要につきまして御説明をお願いいたします。

櫻井政府参考人 現在の動物愛護法に基づきますそういった多頭飼育によります周辺への影響、そういった場合にどういう法的な措置がなされているかということでございますけれども、多数の動物の飼育によりまして周辺の生活環境が損なわれているような事態が生じている場合に、都道府県知事が適正に対応できるようにするために、動物愛護管理法第二十五条におきまして、そういった事態を生じさせている者に対しまして、期限を定めて、その事態を除去するために必要な措置をとるように勧告することができる旨が規定をされておるところでございます。

 さらに、この勧告に従わなかった場合には、同様の措置を命令することができる、そして、この命令に違反した場合の罰則というものも動物愛護法には規定をされているところでございます。なお、これらの勧告、命令を出すに当たりましては、都道府県は関係市町村の協力を求めることができるということになっておるところでございます。

 なお、その勧告、命令の対象となる状況というのは、具体的には、省令で定めておるわけでございますが、幾つかの条件といいますか、こういった場合に勧告、命令が出し得るということで、まず第一に、動物の鳴き声その他の音、あるいは飼料の残渣または動物のふん尿等により発生する臭気、動物の毛または羽毛の飛散、ネズミ、ハエ、蚊、ノミ等の発生、こういったことによりまして日常生活に著しい支障を及ぼしている場合でありまして、複数の周辺住民からの都道府県知事等に対する苦情の申し出がなされているような場合に、勧告、命令が対象になるというように考えております。

上野分科員 その二十五条が発動された例はありますか。

櫻井政府参考人 二十五条に基づく勧告例はまだございません。

上野分科員 二十五条は今御説明をお伺いいたしました。あくまで、事後的に何らかの影響が生じた場合に都道府県知事が勧告、命令できる、そういう仕組みです。ということで、今のところその適用例もないわけですし、あくまで事後的なものだということに、私は若干の問題があるのではないかというふうに思います。これにつきましては後ほどまたお話をしたいと思います。

 では一方、現在、動物愛護法におきます動物取扱業者についての規制、これについてはどのような形になっているでしょうか。

櫻井政府参考人 動物取扱業者についてのそういった周辺環境との関係という観点で申しますれば、動物取扱業者はペットを譲渡するわけですが、新たな飼い主に健全な動物を提供する義務がその動物取扱業者にはございます。そういうことから、不適切な取り扱いがあるような場合には、動物取扱業者に対して、知事が立入調査とか施設の検査を行うことができることになっております。

上野分科員 今御説明をいただいたとおりでございますが、現在の動物愛護法によりますと、法律の第十条等によりまして、動物取扱業者、これは動物の販売、保管を業として行う者でございますが、動物の適正な取り扱いを確保するための基準を満たした上で、都道府県知事の登録を受けなければいけないということになっております。

 この登録を受けた動物取扱業者には、例えば、動物取扱責任者の選任、あるいは都道府県知事等が行う研修会への受講なども義務づけられておりますし、この都道府県知事等は、施設や動物の取り扱いについて問題があると認められる場合には、改善するように勧告や命令を行うことができます。必要がある場合には立入検査をすることもできる。こうしたことで、悪質な業者については、登録を拒否したり、登録の取り消しや業務の停止命令を受けることがあるということが法律の上で制定をされているわけであります。

 今お話がございましたように、健全な動物の取り扱い、特に譲渡等を前提にして健全な動物を取り扱おうということを目的としているように思われますが、そうしますと、例えば、多頭飼育を行いながら、これを業として行うのではなくて、無償で譲渡する、そうしたことを目的とする場合にも、これは取扱業者と形態としてはほとんど変わりがないにもかかわらず、その場合には一切の規制対象から外れてしまうというような問題点があろうかと思います。これは法律の公平性の観点からもいささか問題ではないかと思いますが、この点についてはいかがでしょうか。

櫻井政府参考人 御指摘の、有償で譲渡をする場合に、これは当然販売に当たるということになりますが、これは個々の事案の内容をよくつまびらかに調べないといけないかとは思います。譲渡といいながら、その対価を、例えば最低限の登録の費用だとかいうことで受け取っている、それが対価に当たるかどうかとか、いろいろなケースがあろうかと思います。

 したがいまして、つまり、法律上の用語で言いますれば、販売に当たる者は取扱業でございます、販売しない者は取扱業ではないという割り切りですが、実態に応じて、それが販売に当たるかどうかという判断のところは、個々の事案については判断が必要な部分になってこようかと思っております。

上野分科員 譲渡の実態がどうのこうのという話ではなくて、業者については、譲渡することを前提にしていろいろな法律の規制がかけられているわけでございますが、営利性がないというふうな場合には、同じような施設を設置していても、同じような飼育の形態があったとしても、一切の法律の規制がかからないというようなところに問題があるのではないかということを指摘させていただきたいと思います。

 こうした状況を踏まえて、各地域の都道府県で、みずからのイニシアチブで条例化をやろうという動きが進んでいます。

 例えば、既に山梨県では、多頭飼育する場合には届け出制を導入しておりまして、都道府県知事からアドバイスができるというような内容の条例を制定しております。

 それから、佐賀県では条例強化の動きがあると聞いています。昨年の年末に、佐賀県で佐賀県動物愛護管理推進計画というものが、これは案ですが、作成をされました。その中で、このように記述されています。「動物愛護管理法では、動物取扱業者へ立入検査の権限はありますが、営業者ではない動物の飼養者に対する立入検査の権限がないため、多頭飼養者等による飼養動物の鳴き声や悪臭による周辺住民への迷惑問題が発生しても十分な監視指導ができない状況にあります。」「営業者ではない動物の飼養者に対する立入検査の権限を条例に規定し、監視・指導の強化を行い多頭飼養者等による周辺住民への迷惑問題の解決に努めます。」そのようなことがこの計画の案の中では書かれているわけであります。

 営業者ではない動物の多頭飼育者について、先ほども申しましたが、これまで十分な措置がとられてこなかったと思います。私は、ここに法律の抜け穴のようなものがあるのではないかというふうな感想を持ちますが、これまでこうした対応がとられなかったのはなぜでしょうか。施設や動物の取り扱い方法についての規制、あるいは行政の立ち入り権限を認める、そうしたことをこれから検討すべきではないかと思われますが、いかがでしょうか。

櫻井政府参考人 多頭飼育という実態は、多頭飼育をしている場合、単に犬や猫が好きでたくさん飼っているという方の場合は譲渡をしない場合もあります。そういった場合は、その人が衛生的に飼っているかどうか。これは、では、一頭飼っているときに衛生的で、十頭だったら問題になるかとかいう議論もございます。

 それから、もちろん、それを譲渡している、それは、先ほど申しました販売に当たるかどうかという判断がまた必要になってくるかと思いますが、仮に販売に当たらないとしたときに、どういった措置をとるべきか、必要だろうかということだろうと思います。

 ただ、私ども、先ほど申しましたように、周辺の環境に悪い影響を与えるという意味では、現在の動物愛護法において法的な規定がございます。そういったことから、必ずしもそういう立ち入りをした上でないと判断ができないということではなくて、生活環境が損なわれているということが判断できれば、行政指導あるいは勧告、命令に至るまでの措置がとり得るのではないかというふうに考えておるところでございます。

上野分科員 おっしゃるとおり、事後的な措置としては現在の法律でも一定の対応はできるというわけでございますが、それでは不十分ではないかということで、例えばこの佐賀県の条例のようなものが設置されているのではないでしょうか。それについてはどのように評価をされていらっしゃいますか。

櫻井政府参考人 そういった調査、立ち入りを認めるような条例を制定する動きがあるということは私ども承知をしておりますが、これは、周辺の生活環境との関連でいえば、その判断をするに当たっての、いわば周辺から調査をする、あるいは中に立ち入って調査をするという、その調査の精度をより高めるためのものというふうに理解ができるものではないかというふうに思っております。それがあれば、勧告、命令に当たって、より適切な判断はできるかもしれませんけれども、現在の制度の前提としております周辺環境の判断ということから、勧告、命令に至るということは可能であろうというふうに考えております。

上野分科員 各県の条例の動きについては一定程度評価できるというふうに理解してよろしいでしょうか。

櫻井政府参考人 各自治体におかれて、動物愛護法の運用にも資する、また、各自治体において視野に入れておられるのは、この二十五条の勧告のためだけではないと思いますが、二十五条の運用との関連でそういった動きがあるということは評価をしたいと思っております。

上野分科員 畜産業では、多数の牛や豚等について飼育する場合に、いろいろな環境上の法律の規制がございます。例えば、家畜排せつ物法によって、一定頭数以上の牛や馬等について飼育する場合の規制がかかっております。排せつ物についての規制です。あるいは、環境省所管の水質汚濁防止法におきましても、汚水の排出に関しまして、畜産業の一定規模以上の施設については、特定施設として位置づけられて、環境法令の規制の適用があります。

 畜産業については、当然ながら、昔から、多数を飼育する、そうしたことを前提に業が成り立っておりますので、こうした環境法令についての整備が先行して進められているものと理解できると思います。

 しかしながら、犬あるいは猫に関しましては、本来は、これまで個人が所有をして、個人の家でそれを飼うということが前提となっておりましたので、こうした排せつ物に対する規制あるいは汚水の処理、そうした周辺の生活環境との調和を図るべき法規制が今までなかったということが言えると思います。

 しかしながら、今し方の佐賀県の例もそうでございますし、あるいは、私が冒頭申しました高島市の例でもそうですが、犬や猫等につきまして多数を飼育するというような事例が全国的にもふえてまいりますと、それと環境との調和というものをどういうふうに考えていくのかということも、これからの政策課題として挙げられるのではないかというふうに思います。

 そこで、ぜひお願いをしたいのは、まず、最初に申し上げましたが、地域の実態についての把握、これは、自然環境局さんの体制、少人数でなかなか大変な部分もあろうかと思いますが、それぞれの地域で今どういった問題が地域住民との間で、あるいは地域の環境との調和という観点からどういった問題が生じているのかについて、ぜひ詳細な調査を環境省のイニシアチブでやっていただきたいと思いますが、これについてはいかがでしょうか。

櫻井政府参考人 冒頭お答えしましたように、すべて今までを把握しているわけではございませんが、今後、地域で問題になっている事案については、努めて把握するようにしたいと思います。

上野分科員 それはぜひ、市町村やあるいは地域住民の声としても把握していただけるものと考えてよろしいでしょうか。

櫻井政府参考人 地域の声として上がってくることが当然届くわけでございまして、そういった観点で進めてまいりたいと思います。

上野分科員 届くのではなくて、みずから率先して調査をしていただけるものと理解をさせていただきたいと思います。

 その上で、先ほど申し上げましたさまざまな環境法令あるいは動物愛護法での規制、こうしたものについても、多頭飼育の実態というものをよく調査をしていただいた上で、あるいは、それぞれの先行している各県での条例についてもよく調査をしていただいた上で、その規制の方法についても検討すべきではないかと思いますが、これについてはいかがでしょうか。

櫻井政府参考人 先ほど申しましたように、従来から、そういう多頭飼育による問題が事例として私どものところには届いておりますけれども、基本的には、指導監督の権限を有します都道府県が、必要に応じまして関係の市町村、動物愛護団体、あるいは獣医師会と連携をしながら、地域の環境問題として適切に対応していただいているものと認識をしております。

 しかしながら、本日いろいろ御指摘されましたとおり、近年、こういった大規模な多頭飼育問題が発生しているということも確かでございます。これら多頭飼育の問題の状況、先ほど御指摘がありましたように、その実態把握に努めますとともに、その対応につきましては、都道府県から聞き取り調査を行うなどによりまして、今後、適切な対応のあり方について検討してまいりたいというふうに思っております。

上野分科員 ありがとうございます。

 今、いろいろな御説明の中で、いろいろな問題点も出てきているということで、その実態把握に努めていただいた上で、どのような措置がとれるのか、対応ができるのか、検討していただけるものと思いますので、ぜひ前広に議論を深めていただきたいと思います。

 動物の多頭飼育の問題につきましては以上でございます。ぜひ今後とも検討を深めていただきたいと思います。

 最後に一つだけ、琵琶湖の水質の問題でございます。

 現在、環境省の方でさまざまな調査を進めていただいていると思いますが、この琵琶湖の水質の問題について、現在、環境省ではどのように評価をして、そして、今どのような調査研究を進めていらっしゃるのか、最後、それについてお伺いをしたいと思います。

白石政府参考人 お尋ねの、琵琶湖の水質、水環境の保全でございます。

 御案内のように、平成十七年度に湖沼法が改正されまして、それに基づく第五次の計画が策定されるということで、順次取り組みは行われているわけでございますけれども、CODなどの水質がほぼ横ばいであるという課題があるということが、私ども及び滋賀県の方の共通の認識でございます。

 したがいまして、今年度、十九年度から、湖沼の水質汚濁メカニズム全体のさらなる総合的な調査というものを開始しております。残念ながら、まだ今年度の調査結果がまとまっている段階ではありませんけれども、難分解性有機物による影響がどれぐらいであるか、植物プランクトンによる内部生産、増殖等々がどのように影響しているのか、あるいは地下水がどのように影響しているのか等々の調査を何年かかけてやろうというふうなことで現在実施中でございます。これは、来年度の予算の中にも必要な経費を計上しておりまして、引き続き、全体的な汚濁のメカニズムを解明することによって、さらなる効果的な水質浄化、水環境の保全に向けた対策に資するための調査をやってまいりたいと思いますので、どうぞよろしく御指導ください。

上野分科員 ありがとうございます。

 今年度から始まっておりまして、できましたら中間的な評価についてもお伺いをしたいとは思っておったんですが、なかなかそういう状況でもないようでございますので、引き続き、鋭意調査研究を進めていただいて、汚濁メカニズムについて解明をしていただくというようなことにぜひ御尽力をお願いしたいと思います。

 それでは、時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

遠藤主査 これにて上野賢一郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、盛山正仁君。

盛山分科員 ありがとうございます。自由民主党の盛山正仁です。

 きょうは、気候変動、地球温暖化についてお尋ねをしたいと思っております。

 気候変動は、その時間的な、空間的なスケール、また影響の大きさという観点から、二十一世紀の我々人類が直面する最大の課題の一つであるなというふうに思っているわけでございます。

 もう大臣御案内のとおり、一九九二年に気候変動枠組み条約が締結され、そして、その具体的な目標、手段につきましては、一九九七年に日本の京都で京都議定書が合意されました。そして、ことし一月から、その京都議定書の第一約束期間が始まったところでございます。我が国を含む先進各国は温室効果ガス削減の義務づけを負うということで、二〇一二年までの第一約束期間の間に、例えば我が国は、一九九〇年に比べまして温室効果ガスを六%削減するという義務を負っているわけでございます。

 他方、この気候変動枠組み条約以外の場でも、例えばG8、サミットの流れでいきますと、二〇〇五年の七月に、イギリスのグレンイーグルズ・サミットで先進、途上国主要二十カ国によるG20の会議が設けられて、サミットの流れに沿って、主要先進国を中心として議論が進められております。また、アメリカが主導する形で、ことし一月にもハワイで主要国による会議が開催されておりますように、いろいろな場で、いろいろなところで、地球温暖化について議論が進められているところでございます。

 それで、ことしは日本がG8の議長国となりまして、七夕の七月七日から北海道洞爺湖でサミットが開催されるわけでございますが、その主要な議題は、地球温暖化を中心とする環境問題となっております。そして、その首脳会合の前の五月の二十四日から二十六日にかけましては、私の選挙区でもございますが、神戸でG8環境大臣会合が開催される、そういうタイミングになっております。

 こういう状況を踏まえてということかと思いますが、昨年六月、ハイリゲンダム・サミットで当時の安倍総理大臣がクールアース50を提唱されました。そして、ことし一月には、ダボス会議で福田総理がクールアースの推進構想について発言されたところであり、各国の支持を得ているところでございます。この一年間で日本政府の地球温暖化に対する取り組みは急激に積極的なものになってきたのではないのかな、そんなふうに感じているところでございます。

 昨年十二月、インドネシア・バリで、COP13ということで、第一約束期間以降の具体的な枠組みについて、二〇〇九年末までに、つまり来年末までに合意するというバリ・ロードマップという行程表が定められたところでございます。今年末のポーランドでのCOP14、あるいは来年、デンマークでのCOP15に向けて残された時間はもう限られてきているのではないのかな、そんなふうに思うわけでございます。

 そこでまず、鴨下環境大臣に、日本として、この夏のサミットに向けて、気候変動問題に関して世界をどのようにリードして取り組んでいかれるのか、具体的な今後の道筋についてお伺いしたいと思います。

鴨下国務大臣 いろいろと先生から御指摘をいただきました。まさに先生、専門家でもいらしたわけでありますから、そういう意味では、私たちと問題を共有していただいていることに大変感謝を申し上げます。

 また、加えまして、時系列的に整理をいただきましたわけですけれども、私も、昨年のバリでのCOP13のときに、京都議定書の十周年というようなことで、バースデーをNPO、NGOの皆さんが大変祝ってくださいました。その裏には、日本はしっかりと取り組んでもらいたい、あるいはリーダーシップをとってくれ、こういうようなことのメッセージが込められているんだろうというふうに受けとめたわけでありますけれども、今回、いよいよ七月七日にG8のサミットが行われるわけで、その半年間、もう既に半年を切っておりますが、この間にいかに日本がリーダーシップをとり、そしてまた、みずからの足元の環境対策、特に、京都議定書からの約束期間が始まったわけでありますから、その中でマイナス六%を実現するためにどういった手をどういうふうに打っていくか、こういうようなことが問われているわけであります。

 今御指摘いただきましたように、この一月に、福田総理がダボスでクールアース推進構想を発表されました。この構想におきましては、主要排出国がすべて参加する仕組みづくりや公平な目標設定に取り組む中で、我が国として、主要排出国とともに、今後の温室効果ガスの排出削減について国別総量目標を掲げて取り組む、こういうようなことを表明したわけでありまして、先生がおっしゃるように、ダボスでもあの福田総理の発言は大変歓迎されたというふうに、私も現場におりましたけれども、そういうふうな印象を受けました。

 また、加えまして、これはバリで大変議論になりました。例えば、先進国、それから新興工業国、特に中国、インドを含めた新興工業国、加えて、G77と言われる発展途上国、こういうようなところの利害が鋭く対立しまして、すべての国が入るいわば新しいAWGをつくる、こういうようなことについても大変難産をしたわけであります。

 そういう中で、私も感じましたが、日本を初めG8国は、ある意味で、適用の部分あるいは技術の部分、こういうようなところでこれからできるだけ途上国支援をしていくべきだ、こういうようなことを感じて帰ってきたわけであります。

 福田総理のクールアース推進構想の中でも、世界全体で二〇二〇年までに三〇%のエネルギー効率の改善、加えて、百億ドル規模の新たな資金メカニズムの構築、それから、これは我が国全体の話ですが、革新的技術の開発と低炭素社会への転換、こういうようなことを提案したわけであります。特に私は、百億ドル規模の資金メカニズムというのが、途上国が非常に期待もしておりますし、加えて、それをG8の中で今度は横に広げて、先進国全体が途上国支援を積極的に行う、これが多分、これからCOP15に向けて、コペンハーゲンに向けての出口でもめないといいますか、求心力を保っていく極めて重要なことなんだろうというふうに思っています。

 ですから、日本は、この七月七日までの間におっしゃるように幾つかの重要な会議がございます。特に三月の、グレンイーグルズ・ダイアログに基づく最終的な取りまとめ、多分そのときにブレア前イギリス首相もおいでになるようでありますけれども、そこで取りまとめたものを今度は、ちょうど先生の御地元であります神戸で五月に行われますG8の環境大臣会合にしっかりとした形でインプットして、それを最終的に七月七日のG8洞爺湖サミットに向けてしっかりとそれをインプットしていく、こういうような形になるんだろうと思います。

 ですから、いずれにしましても、まず安倍前総理がおっしゃったクールアース50、そしてさらに、それを受けて福田総理がダボスで発言なさったクールアース推進構想、こういうようなことを基軸に、しっかりと環境省としても私としても取り組んでまいりたい、こういうふうに考えております。

盛山分科員 大臣、大変よくわかる御丁寧な答弁で、まことにありがとうございました。

 途上国に対する取り組みというのが、これからの人口増加あるいは経済発展に伴う途上国からの温室効果ガスの排出ということを考えますと、もうなくてはならない、一番大事なところだろうと思います。

 途上国自身は、ほとんどの国が今の京都議定書の枠に入っているわけでございますが、そこでちょっとお尋ねをしたいのは、現在、京都議定書の枠に入っておらない一番大事な国、アメリカのことでございます。

 アメリカの今後の協力というんですか、気候変動枠組み条約の国連のその枠の中に入ってくる、ここが一番大事なもう一つの点であろうかと思うわけなんでございますけれども、アメリカの動向が最近ぐっと昨年来変わってきたように私には感じられてなりません。

 民主党のオバマ、クリントン候補はもちろんのことでございますが、仮に共和党政権が続くにしても、現在のマケイン候補も、これまでのブッシュ政権の方針を転換するということをはっきり言い出しております。そしてまた、議会の方でも、リーバーマン・マケイン法案というような動きが出てきております。各州の動きを見ましても、東部十三州だけではなくて、カリフォルニアを初めとする西部、あるいは中部の州の動きもどんどん積極的なものになってきていると思います。

 この最近のアメリカの動向をどのように評価し、そしてそれが我が国あるいは世界全体にどのような影響を及ぼすと見ておられるのか、南川地球環境局長にお尋ねしたいと思います。

南川政府参考人 御指摘のとおり、アメリカのブッシュ政権でございますが、少しずつではございますけれども、その姿勢を変えているところでございます。

 昨年九月から、気候変動に関する主要経済国会合というものを開いております。これにつきましても、全く独自にやるということではなくて、国連のプロセスに協力するということをベースに作業を進めるということでございます。

 また、御指摘のとおり、連邦議会は大きく動いております。キャップ・アンド・トレードの排出量取引を主たる内容とします温暖化対策の法案が多く提出されております。御指摘のように、既に一つの法案につきましては委員会を通っておりますし、それにもクリントン、オバマの両候補は賛意を示しております。また、マケイン候補は、本人自身がキャップ・アンド・トレードの法案を提出されておるということでございまして、早い時期にアメリカ自身がこの問題に積極的に取り組むだろうというふうに考えております。

 また、州の方も、例えば先月行われましたEUとアメリカの各州、あるいはオーストラリア、カナダの州とのキャップ・アンド・トレードについての連絡会議には、そこに二十三の州が議論に参加しておるということもございます。

 こうした世界の大きな動きがある中で、昨年のバリの会議におきましても、米国を含めた主要排出国が参加する、実効性のある枠組み構築に向けた議論がそこで開かれるという合意が形成されていったと考えているところでございます。

 私ども、ことしの神戸の会議あるいは洞爺湖の会議におきましても、このアメリカ等の動向をしっかり踏まえまして、気候変動について議論を進めたいと考えているところでございます。

盛山分科員 局長、ありがとうございました。

 局長の方から今、キャップ・アンド・トレード、排出量の取引についてお話が出ましたので、今度はそのあたりについて大臣にお尋ねをしたいと思います。

 現在の我が国の構造から見ますと、温室効果ガスの排出については、全体の約六割を産業部門、エネルギー転換部門が出してきている、こういうことかと思います。産業部門、エネルギー部門、それなりに頑張ってきてくれているのも事実でございますが、経団連を中心として、自主行動計画ということで原単位の目標をそれぞれの業種によって定めまして、その自主的な、自発的な取り組みをしているというところであろうかと思います。それはそれでもちろん評価できるわけではございますけれども、義務づけがなされているものではないということ、それから、経団連その他、そういう枠組みに参加をしようという企業はよろしいわけでございますけれども、そういうところに入っていない企業、フリーライダーというんですか、こういうような問題もあろうかと思います。

 他方、やっと最近になりまして、排出権の取引、こういったことが積極的に議論されるようになってきたように感じられてなりません。自民党内の会議でも、これまで排出量の取引につきましては全く否定的でありました。ところが、政府の方も、総理のところを中心にしまして、地球温暖化問題に関する懇談会、この設置を発表されたところでもございます。また、経済産業省においても、局長の諮問機関としての地球温暖化対応のための経済的手法研究会も発足するということになったばかりでございます。また、経団連の会長も、これまでの方針を大きく転換されるような、大きく踏み込んだ発言になってきている、そんなふうに感じております。

 これまで、とにかく排出量の取引あるいは環境税ということになると、もう全く議論が進まなかった。その状態からやっと冷静に、何がよくて何が悪い、何が問題であって、どうすればそれをクリアできるのか、そういう冷静な、前向きな、建設的な議論ができるような環境に少しずつ変わり出してきているのかなというふうに思うわけでございますけれども、その現在の状態につきまして、日本政府がこれからの排出量取引についてどういうふうにしていくのかを含めまして、大臣のお考えを伺いたいと思います。

鴨下国務大臣 今、先生が全体的な流れについて整理をしていただきました。私も同感であります。

 それで、先ほどのお話のように、総理がダボスで国別総量目標の話をお話しになった。こういうようなことで、ある意味で、自主行動計画によってセクター別のアプローチは今までもあったわけですけれども、加えて、ある種キャップについての議論ができるようになった、こういうようなことなんだろうというふうに思っております。

 加えまして、これから日本は、足元で第一約束期間をしっかりと守らなければいけませんし、その後のポスト京都のフレームワークの中で、安倍前総理が、世界で五〇%の温室効果ガス削減、こういうようなことを二〇五〇年までにやるんだ、こういう話でありますから、これは、単純に自主行動計画だけで本当に達成できるのかどうかということについては、いろいろと議論があるところであります。

 ですから、例えばカーボンに価格をつける、こういうようなことの規制的な手法、あるいは経済的な手法、こういうものを組み合わせてより積極的な削減をしていく、こういうような努力が、産業界、あるいは環境省も含めてですけれども、議論をされるべきだというふうに思っています。

 その中で、非常に有効な手段の一つとして、もう既にEUではそれぞれ実行されているわけでありますけれども、いわゆるキャップ・アンド・トレード、こういうようなことを、私は日本型であってしかるべきだというふうには思っておりますけれども、そういう議論が今まさに起こり始めたというようなことについては、大変歓迎すべきことですし、環境省としては、従前から自主参加型の排出量取引の知見を蓄積してきたわけですけれども、加えて、これからさらにそれを加速していくように私としても努力をしてまいりたい、こういうふうに思います。

盛山分科員 大臣、ありがとうございました。積極的にこれからも取り組んでいただきたいと思うわけでございます。

 この排出量取引につきましては、従来から産業界を中心に、日本だけがこういうことをするというのは、国際競争力を阻害して、例えば、日本に工場を置くのではなくて途上国に持っていったらいいじゃないかといったような形で、日本産業の空洞化が起こるといったような批判がこれまで高かったかと思います。また、炭素リーケージについてもそういうような問題があるんじゃないかというふうに指摘もされているところでございます。

 南川局長の方からお答えをいただきたいわけですけれども、こういう産業界からの指摘に対してどのように対応していかれるのか伺いたいと思います。

南川政府参考人 御指摘のとおり、炭素リーケージということで私ども指摘を受けております一つに、要は、日本がより厳しい規制を行えば、規制のない、緩い国に移る。そうすると、逆に今度は、より緩い規制に合わせて排出をするので、本来日本で増設等をするよりも、地球規模で見ればたくさんCO2が出てしまう、そういう御指摘がございます。これにつきましては、やはり制度設計が大事だと考えております。

 こういった競争力の問題、あるいは炭素リーケージの問題は、既に実施されていますヨーロッパでも大変議論がなされております。そのためにヨーロッパは、最初にグランドファザリングと申しまして実績に応じて枠を振り当てるということでやっておりましたけれども、これでは、まじめにやってきた人がより厳しい、サボってきた人が少しやればいいということで、不平等だ、余りきかないということがございました。

 そういったことから、ベンチマークということで、徐々にやり方が変わってまいりまして、一定の高いレベルの目標を設定して、それに達している企業はさほど努力をしなくてもいい、より低いレベルの対策しかしていないところはたくさんの努力を求められる、それができない場合には買ってくるといったことでございます。

 また、将来的には、近い将来の課題として、例えば、国外に逃げる可能性がなく価格転嫁のしやすい電気についてはオークションを行う、そして排出権を買ってもらう、そもそも枠を買ってもらう。そして、競争にさらされる産業についてはベンチマーク方式を使うといった提案もなされておりまして、さまざまな工夫を凝らしておるところでございます。

 それから、アメリカの法案につきましても、法案の中では、主要な貿易相手国が米国と同等の対策を行っていない場合については、その国からの輸入者に対して排出枠の提出を求める、すなわちその分の金を払わせるという対抗措置なども入っております。

 そういったことで、制度設計の中で十分この問題を検討していく必要がありますし、それによって工夫していきたいと考えているところでございます。

盛山分科員 局長、ありがとうございました。

 大変わかりやすい御答弁ではありますけれども、けちをつけるわけではないんですが、今おっしゃったことを具体的に、環境省だけではなく、経産省を含めた政府内で合意を設けていく、あるいは、特に産業界、正直、例えば大口の鉄鋼業界あるいは電力業界、こういったところとの話し合いがこれまでもうまく進んでこなかったのではないかと思うんですね。今おっしゃったような炭素リーケージの問題も含めて、排出量取引制度を導入していくためには、広く各界の合意を得ていく必要があるのではないかと思います。

 大変困難な道筋ではないかと思うわけでございますけれども、大臣に、どのようにして具体的に合意を取りつけていかれるのか、お尋ねしたいと思います。

鴨下国務大臣 もう既に先生もお話しになっていますように、環境省では従前から、ある意味で制度設計等の知見について自主参加型の中で蓄積してまいりましたけれども、加えまして、経済産業省も勉強を始める、こういうようなことを、報道だけですけれども、私も聞いております。加えて、例えば東証の中にも勉強会が始まる、こういうようなこともあるようでありまして、各層各分野でそれぞれこの排出量取引について制度設計の、単純に言えば細かいディテールまで含めた勉強をしていただいて、最終的にはそれを政府全体で取りまとめていって実現をしていく方向を模索する、こういうようなことなんだろうというふうに思っておりまして、多分、先生がお考えになっている方向で相当スピードアップしてこれから進んでいくんだろうというふうに思っております。

 そういう中で、これは単純に国内の問題だけじゃございません。EUとの制度上の問題、あるいは今度は、アメリカの中でのリーバーマン・ウォーナー法をも含めたさまざまな、特に州政府で積極的なところもございますから、そういうところとのある種の互換性、こういうようなことも踏まえて、国内外の全体の知見をうまく集積して最終的に政府で統一できるように、環境省としてもしっかりとその連携方を努力してまいりたいというふうに考えます。

盛山分科員 ありがとうございました。ぜひ積極的に取り組んでいただきたいと思います。

 国内もそうでございますし、国際的な交渉でもそうだろうと思いますが、まずやはり作文をするところ、そこが一番大事だと思うんです。たたき台を出して、これでどうだ、嫌なところ、けちをつけるところがあったらつけてみてくれ、それでどんどん直してやっていこうじゃないかというそのリーダーシップが大事だと思います。大臣の今の御発言、本当に力強く思いました。ぜひよろしくお願いします。

 それでは、予算委員会でもございますので、予算についてちょっとお尋ねをしたいと思います。

 ことし一月から第一約束期間が始まっているわけでございますが、今、中央環境審議会で、二月八日に京都議定書目標達成計画の評価・見直しに関する最終報告を取りまとめて、三月末に向けて京都議定書目標達成計画の改定が行われるというふうに伺っております。

 この計画を具体的に実施していくというのはなかなか困難だと思うんですけれども、政府として十分な予算の確保はできているのかどうかというところを、南川局長からお答えいただきたいと思います。

南川政府参考人 政府におきましては、京都議定書目達関係予算ということで、何とか六%削減を達成したいということから、例えば、直接にこの六%削減にききます関係だけで五千百九十四億円の予算を計上しているところでございます。前年に比べまして二%の増でございます。

 まず、環境省におきましては、業務・家庭部門の対策の強化をしっかり行います。また、京メカ、京都メカニズムの活用も行います。そういったことで、前年度に比べて二割以上の増でございます三百七十二億円を計上しておりますし、あるいは、経産省、農水省を含めましてさまざまな予算を、多くの場合、増ということで計上いただいているところでございます。

 何とかこうした予算をお認めいただきまして、私ども、目達計画の達成に努力したいと考えております。

盛山分科員 ありがとうございます。

 ぜひ目達計画達成のために頑張っていただきたいんですが、心配性なのかもしれません、老婆心なのかもしれませんが、本当に今の予算でちゃんとその目標達成ができるのかなと、余計なことかもしれませんが、つい心配をしてしまうわけでございます。

 例えばシンク、森林吸収源にしましても、補正予算がなかったら、当初予算では、今のシーリングのもとでなかなかしんどいんじゃないかなというふうに農水省の予算を見ても思いますし、今、局長が御答弁のCDMの話にしましても、一応一・六%ということで目いっぱい日本がそれを購入するという場合に、今の特会の予算で本当に大丈夫かなといったようなところ、これから目標その他が具体的になるに従って、それを本当にいかに実効性のあるものにしていくかということについて、今のシーリングの枠内での環境対策の予算で十分にできるかどうか、つい心配をするわけでございます。

 例えば、毎年恒例でございますが、夏の骨太の方針のところで、環境対策に関するシーリングの見直しその他を今後やっていってもらう必要があるんじゃないのかなと思うわけでございますが、最後に、目標達成に向けての大臣の御見解を伺いたいと思います。

鴨下国務大臣 大変ありがたいお言葉をいただきまして、ありがとうございます。

 我々も、この新たな目達計画、三月に閣議決定する予定でございますが、そういう中で詳細に、本当に削減が可能なのかどうか、こういうようなことについては、科学的な知見、裏づけ、こういうようなことも踏まえつつしっかりと取り組んでまいりたい、こういうふうに思っております。

 ただ、おっしゃるように、政府を挙げてこれから京都議定書の第一約束期間の間にマイナス六%を実現する、加えて、現在は基準年から六・四%ふえているわけでありますから、森林のシンク、あとは京メカ、こういうようなものも含めての話の中には、ある種かなりの予算を必要とするわけでありまして、環境省のみならず、関係省庁とも連携をしながら、政府を挙げて、この京都議定書の目標達成のために全力を挙げてまいりたいというふうに思います。

 加えて、これからはある意味で経済と環境が車の両輪になって、世界で日本があるべきリーダーシップを発揮する、こういうようなことで、洞爺湖サミットは一つの節目だというふうに思いますので、その時期と軌を一にして、来年の概算等の話もございますので、積極的に環境に貢献するために予算はどうあるべきか、こういうようなことでしっかりと取り組んでまいります。

盛山分科員 大臣の力強い御発言に本当に感激しております。ぜひ積極的に、力強く取り組んでいただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

遠藤主査 これにて盛山正仁君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明二十八日木曜日午前九時より開会し、引き続き農林水産省及び環境省所管について審査を行うこととし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時三十四分散会


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