衆議院

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第3号 平成22年3月1日(月曜日)

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平成二十二年三月一日(月曜日)

    午前九時三十分開議

 出席分科員

   主査 山口  壯君

      田中 康夫君    豊田潤多郎君

      森本 和義君    小里 泰弘君

      小野寺五典君    小池百合子君

      谷  公一君    笠井  亮君

   兼務 金田 勝年君 兼務 坂本 哲志君

   兼務 福井  照君

    …………………………………

   農林水産大臣       赤松 広隆君

   農林水産副大臣      山田 正彦君

   農林水産大臣政務官    佐々木隆博君

   政府参考人

   (林野庁長官)      島田 泰助君

   農林水産委員会専門員   板垣 芳男君

   予算委員会専門員     杉若 吉彦君

    ―――――――――――――

分科員の異動

三月一日

 辞任         補欠選任

  小里 泰弘君     小野寺五典君

  小池百合子君     谷  公一君

同日

 辞任         補欠選任

  小野寺五典君     小里 泰弘君

  谷  公一君     小池百合子君

同日

 第一分科員坂本哲志君、第四分科員福井照君及び第八分科員金田勝年君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成二十二年度一般会計予算

 平成二十二年度特別会計予算

 平成二十二年度政府関係機関予算

 (農林水産省所管)


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     ――――◇―――――

山口主査 これより予算委員会第六分科会を開会いたします。

 平成二十二年度一般会計予算、平成二十二年度特別会計予算及び平成二十二年度政府関係機関予算中農林水産省所管について、前回に引き続き質疑を行います。

 この際、分科員各位に申し上げます。

 質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力をお願いいたします。

 また、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。福井照君。

福井分科員 おはようございます。

 冒頭から恐縮ですが、おととい、鳩山総理が我が高知県に、土佐にお越しをいただきました。いろいろ視察をしていただいてお帰りいただいたんですけれども、たまたま、たまたまじゃないんでしょうけれども、参議院の民主党の候補者の、現職でいらっしゃるんですけれども、次回の選挙の事務所開きに参加されて、それで、事もあろうに、事務所開きだけじゃなくて近所の公園に行って応援演説をしたということで、御本人も人柄がいいものですから、こんなこと本当はしちゃいかぬのだけれどもなと言いながらやったということで、もうまさにこれは憲法違反なんですね。

 ですから、本当に最近起こっている事象は、余りにもあっけらかんとやられるものですから、知らなかったということもそうですし、しかし、今回を初め、このままあっけらかんとはしゃがれると本当に日本がひっくり返ってしまうと思います。おとといのことですから、きょう初めて、月曜日、国会ですので、この場でも抗議をさせていただきたいというふうに思います。

 質問第一問ですけれども、昨日、たまたま津波で態勢をしきました。我が高知県も、実はその対抗馬の自民党の参議院選挙に向けての事務所開きをする予定にしておりましたけれども、急遽中止をしました。こんなときに、津波が来るかもしれないという日にこんな一党一派のための選挙なんかやっている場合じゃないと。その後自民党の県連大会も予定されていたんですけれども、これも中止をしました。それで、各市町村そして県庁で態勢をとっていただいたということでございます。

 先ほど須崎市長に電話で聞いたんですけれども、たまたま岩手県と高知県だけが一メーター二十センチということで、もうひたひたと本当に水没する直前までの津波の水位、波高でしたので、不幸中の幸いだったということなんです。須崎市は五十年前に物すごい被害がありましたので、その記憶があって、避難勧告で終わっているんですけれども、市民の協力も得て、厳しい態勢をしいて、それで事なきを得たということなんです。

 昨日、官邸では態勢をしかれたということもテレビでは存じ上げておりますけれども、ぶら下がりだからしようがないと言われてしまえばそれまでですけれども、全国的に態勢をしいているときに、しかもプロ野球のオープン戦も中止、そしてすべてのイベントも中止という国民的な態勢のときに防災服じゃない総理大臣が記者会見をされたという、それはそれでまた抗議したいんですけれども、ここは分科会ですので、農水省としての昨日の対応、態勢のとり方、そして、もし被害が起きた場合、漁港とか漁船とかあるいは浮き魚礁とか、そういうときにもし被害が起きたら瞬時にどういう対応をとられたか。頭の準備体操もされていたと思いますので、そこからまず御紹介いただきたいと思います。

赤松国務大臣 昨日のあのチリ地震による津波、私どもも大変心配をいたしておりました。一九六〇年のあのチリ地震のときの大惨事、日本にも大きな被害を及ぼしたわけで、私も子供ながらにあの当時のことを覚えているものですから、大変心配をしておりました。

 今委員おっしゃったように、高知でも一・二メートル、岩手でも宮城でも一部そういうところがありましたけれども、少し堤防を越え、水没するかしないか、ぎりぎりのところで引いていってくれたものですから、不幸中の幸いというお言葉を使われましたけれども、その程度のことでおさまって本当によかったと思っております。

 私どもの対応でございますけれども、あらかじめ予測をされておりましたので、水産庁を中心として官邸にそういう対策室が設けられておりましたので、これはもう早い段階からそちらに人は出してやっておりました。

 閣僚については、私自身もずっときのう東京にいて、途中、埼玉の会議には一つ出ましたけれども、とにかく、すぐ官邸に駆けつけられる態勢ということでずっと宿舎に待機をしておりましたが、気象庁等のいろいろな状況報告も刻々と入ってきまして、予想をしていた、心配をしていたよりも、そのレベルまでは至らなかったということで、結局、私も待ってはいたんですけれども、招集はされずに、官房長官のところで当面の対応はしていた。

 万が一に、これは少しでも被害が出るあるいは緊急に対策本部を設けてというようなことであれば、すぐ戻れる態勢には私どもしておりましたが、結果的にはそういうことにならなかったということでございます。

福井分科員 事実経過はよくわかりましたけれども、できれば、やはり海岸は日本で三万三千キロはございまして、国土交通省の所管もありますし農水省の所管もございますので、全体で、官邸は全体なんですけれども、国土交通省もやはり農水省も、赤松大臣が呼びつけて五分以内に来いとか、寝ている局長を起こしてすぐ自転車でも出てこいという訓練をぜひしていただきたかったなというふうに思います。

 それで、ちょっとメモがあるかどうかわかりませんけれども、漁港整備事業でも、避難するためのちょっと高台、鉄でつくった構造もありますしコンクリートでつくった構造もありますけれども、そういうのもやっていただいておりますし、それから内閣府では、津波避難タワーといいまして、ちょうど和歌山県で最初につくったんですけれども、外階段で、実際上本当に一人でも二人でも救えるような、ふだんは公民館として使っても、津波で押し流される人にロープを投げてそれで助け出せるというような、そういうデザインされた津波避難タワーというのがあるんですね。今、日本で多分五カ所か六カ所ぐらい設計中と建築中があるんです。

 ですから、そういう公共事業が土地改良を含めて激減していますけれども、非公でつくってもいいんですけれども、農水省の公共事業として津波対策、海岸堤防もあるし漁港の整備もあるし、そういう避難のための施設もありますから、ぜひ大臣のリーダーシップで、今年度の予算の項目を変えるというのは困難かもしれません。しかし、次の経済対策の補正予算、そして再来年度、二十三年度の予算案からぜひ大幅アップ、この津波がたまたまひたひたの状態で終わったのを契機として、その態勢の訓練と頭の体操と、そして予算の拡大ということでぜひお願いをしたいと思います。

 では大臣、答弁をお願いします。

赤松国務大臣 今の、来年度以降これからに向けてということにつきましては、防災担当大臣を初め、関係する国交省そして私ども等々で一度相談をさせていただきたいというふうに思っております。

 それから、頭の体操というお話がございましたけれども、私どもも、農林水産省として万が一のときには緊急体制というのも今つくっておりまして、いつでもそれが直ちに対応できるというような方向でやっておりますし、昨日も、何時時点で〇・二、〇・三みたいなことを刻々各局長クラスにはみんな連絡をしながら、もし一定程度以上いったら直ちに本省へ来いというようなことを命ずるつもりでございましたけれども、そこまで至らなかったものですからあれですが、一応そういう体制は今ありますけれども、しかしそれで十分かどうか。委員の御指摘の点もございますので、省内でもしっかりと検討をさせていただきたいというふうに思います。

    〔主査退席、豊田主査代理着席〕

福井分科員 ありがとうございました。では、ぜひよろしくお願い申し上げたいと思います。

 それでは次の質問でございます。これは通告しております、一行ですけれども。

 今というか、この数十年間農水省がやってきたことは、沈み行く大きな船の船底の穴を、ぼっぽこあくものですから次々と埋めていく、それで何とか沈まないようにしてきたというのが、この戦後の農水省のやってきた行政のいわば例え話だと思います。

 お客様の目という目で、そのお客様はだれかというと、農地であり農業、農村、農民であったということなので、私も政務官をさせていただいたのでこれは実感なんですけれども、地域全体でどういう成長をしてもらおうと思っているのか。その地域は、愛知県という単位でもいいし、あるいは四国地方という単位でもいいんですけれども、それはやはり農水省としても、これは旧国土庁に任せるんじゃなくて、農水省として地域全体の成長戦略があって、そのツールとして農業の輸出があり、そして農地の土地利用の抜本的な改革がありというふうに、今までの政策がツールとしてあってというんだったらいいんですけれども、どうしてもそれが自己目的化してくるんですね。これはもう副大臣や政務官がずっと指摘してきたことなんですよ。

 ですから、せっかく政権がかわったわけです、そして新進気鋭の大臣になられたわけですから、そういう目で成長戦略の一環として、これは今菅大臣のところでお立ていただいていると思いますけれども、農業が成長戦略としてどのように貢献できるのか、あるいは、地域の成長戦略をどのように立てるということを農水省としてどのように指導するのか、ぜひきょう御答弁いただきたいなということでございます。

山田副大臣 本当に、これから農業が我が国の中でも重要な位置を果たしていくように私どももしっかり頑張りたいと思っておりますが、中でも、今回、いわゆるバイオマスエネルギー、新エネルギー利用とか地球温暖化対策、そういった意味でもこの農業分野の果たす役割というのは非常に大きい、いわゆるCO2二五%削減にしましても。そういう意味で、このバイオマスを利用した一つの要するに電力の創出とか、あるいはプラスチックとか、いろいろなものを新しく農業の成長産業として期待できるんじゃないかと。

 また一方、世界が食料危機に陥っていく中で、私どもとしては、いろいろなものを逆に一兆円輸出できるようなそういう産業としてひとつ立派にやっていけるんじゃないか。同時に、農業、山村の振興等々に役立つ、そういう成長戦略を新しい政権のもとしっかり頑張っていきたい、そう思っているところです。

福井分科員 ありがとうございました。いつもこうやって山田先生の人徳にごまかされてしまうんですけれども、ぜひ、エラボレートされた、本当に高級な成長戦略を早急に打ち立てていただきたいなというふうに思います。

 農水省でお世話になったときに一番感じたのは、もっと離れている役所ももちろん多いんですけれども、現場と省議とが、大臣を中心とする局長会議がありますね、その省議が余りにも現場と離れているので、これはちょっとびっくりしました。直轄事業をするとか農水省の直営でやるとか、あるいは、大蔵省だったら税務署がありますよね。だから、国民に直接接する機会と場所をいかにふやすかというのがこれからキーだと思いますよ。その情報で計画をコラボレートしないと何の意味もないわけですので、ぜひ早急に全局長を毎週地方に派遣して、それできちっと国民の声を聞いて、そして成長戦略というものをお願いしたいなというふうに思います。

 そういう意味で、農水省が抜けている点をちょっと御質問させていただきたいんですけれども、これも通告しております。

 キャリア教育といいまして、ちょうど初当選、二〇〇〇年のとき、文部省を呼んでキャリア教育をしたらどうかと言ったら、いや、それは労働省ですと言って、労働省を呼んだらそれは文部省ですという時代があったんですね。それはたった十年前です。小泉構造改革で、五年で五万人キャリアカウンセラー、キャリアカウンセラーというのは、生涯とか職業とかいう意味のキャリアですね、をカウンセリングする、五年で五万人つくるということで、今、ハローワークに五万人派遣することができるというところにやっと来たんです。

 だけれども、一方、アメリカはもう百万人いまして、すべての小中高校、そして公民館、それで二十四時間の電話対応ということで、若者が、一体僕は何になったらいいんだろう、何に適しているんだろうか、要するに、自分が自分を見詰めるしかないんですね。自分が自分で自分の職業を見つけ出していく、そういうキャリアカウンセラーという一つの分野がやっとこの十年で出てきた。

 一方、農業と介護は人手不足、一方、失業率は高い。何じゃこりゃということなんですね。

 ですから、キャリア教育という意味で御質問させていただきたいのは、農水省としてやらなければならないこと、もちろん、今の厚生労働省がやるべきことはたくさんありますが、農水省としてやらなければならないことは、これは、農家とか農業のイメージの大改革だと思うんです。失業率が高いのにどうして介護と農業が人手不足。これはやはりきついからですよね。介護も、言っては悪いですけれども、おしっこ、うんちのお世話をして一生終わるのかというふうに言われたら、なかなか介護で一生終わるというふうに踏み出せる人は少ないわけですよ。農業もそういうイメージがあるんですね。

 ですから、時に海外に行ってマーケティングを行い、時に海外に行って営業をして自分のつくった野菜と果物を売り、時に特許を申請し、時に自分でその種をつくりというホワイトカラーのイメージの農家、農業がありますよ、あるいはそっちの方がマジョリティーですよというふうになると刮目すると思うんです。日本の若者が、ではそれだったらちょっと農業でもやってみようかということで、まるで大企業に、トヨタに就職するように農業に就農するということがふえるんじゃないかと思うんです。

 これは単なるアイデアだから、御高説を賜りました、検討しますというそんな答弁もあり得るんですけれども、しかし、今そんな悠長な時代じゃないんですね。高校を卒業して職業がない人が統計だけでも一割、二割ですよ。実際、一生私はこの会社、この職業ということでスキルを持って今度三月末、四月から高卒の人が決めてかかる率というのは、多分ほとんどないと思います。とりあえず就職するというのが八割、就職できない人が二割という状況で農業がこんな担い手が不足しているという状況。それをことし解かなければ、農水省の意味がない、政権交代の意味がないとさえ私は思うんです。

 そういう意味で、キャリア教育という問題もあるし、そして日本人の若者が農業に対するイメージを変えるということもありますし、そして地域の農業自体が、そのきつい、汚いというイメージを払拭するという努力もあって、それがネットワーク化して進化するわけですね。次のステージに行く。

 単発、単発、こういうメニューもありますというのは、役所の答弁書で多分お手元にあると思うんですよ。もうそんなんじゃだめなんですよ。何とかモデル事業がありますよ、どっかの地域ではこれでうまくいっていますよ、そんなんじゃだめなんです。もっと日本全体が全員共通認識を持ってネットワーク化して、それで創発するんですね。次の発明が起きるというそこまで行かないとだめ。だけれども、それにはもっと時間がかかると言われてもだめ。ことしやらないとだめなんですよ。ことし、日本経済の一番の問題は雇用だからです。

 だから、人手不足の農業を担当している農水省、政治主導の政務三役、今どういうプランと戦略をお持ちか、ぜひこの場で御紹介いただきたい。

    〔豊田主査代理退席、主査着席〕

佐々木大臣政務官 福井委員の御指摘、大変重要な御指摘だというふうに私も認識をしてございます。

 例えばドイツなんかでは、もう小学生のあたりから労働教育、職業教育と日本では言うんですけれども、ドイツの場合なんか労働教育という言い方をして、働くこと自体をちゃんと教えていくというようなシステムができ上がっていますし、先ほど御指摘をいただいたアメリカなんかでも、ジョブカフェというようなシステムが既にでき上がっていたりして、キャリアカウンセリングといいますか、私自身としては、職業教育というよりは、もうちょっと根底にある、三つの義務の一つである労働教育みたいなものからしっかりやっていく必要があるのではないかなというふうに思ってございますが、そういった意味でも大変重要な御指摘をいただいたというふうに思ってございます。

 農業に関しても、既に議員御案内のとおりだと思いますが、全都道府県の段階で新規就農相談センターなども農業の分野に関しては設置をしてございまして、平成十三年から取り組んでいるわけでありますが、これらのセンターなんかをもっと活用して、就農相談、あるいは都会から、新卒の就農ばかりではなくて、途中で農業をやりたいというような人たちの窓口もやはり必要なのではないかというふうに思っておりますので、そういったこともしっかり充実をしていきたいというふうに思っておりますし、特に今は、農の雇用ということで、特に本年度、二十二年度でも二十一億円ほどの予算を措置をしたいというふうに考えているところであります。

 さらにまた技術面、資金面、そんなところからもしっかり支援の体制をとっていかなければならないというふうに考えているところでございます。

 以上です。

福井分科員 ありがとうございます。

 そして、道州制でもし道ができたら、経済ですよね。国は治安と安保と外交と、そして基礎自治体がやる。道はやはり経済をやるということだと思います。そういうレベルでやることを、やはり日本だけではもう立ち行きませんから、特にアジアですね、成長戦略のターゲットはアジア、農業の相手アジア、農産物の消費者であるアジアとどう向き合うかというのが各地方地方に与えられた課題なんですよ。これは高知県だけでも解けませんから、四国道か中四国道かというところで解いてもらうしかないんですね。

 これは新聞で読んだだけなんですけれども、ボルドーのブドウ園を、最近中国人がすごいワインを消費されますので、そういうのを見越したチャイナマネーが農園ごと買って、これから百年も二百年も中国人が飲むためのワインを直接そこで自分が生産するという投資行動が行われた。そこに日本も行かなければならないというところまでは行っていませんけれども、行っていいんじゃないかと思うんです。

 すべての地方でいろいろドメスティックな戦略がありますけれども、なかなかそれで解けないのが四国なんです。その中でも高知。ですから、チャイナマネーでもコリアンマネーでもいいんです。山を買っていただいて間伐していただいてもいいし、あるいは野菜畑、果物畑を丸ごと買っていただいて、それでずっと輸出をするということでもいいんですね。

 ですから、これは普通の経済のアナロジーでもいいんですけれども、やはり、日本に海外から直接マネーが来て投資してもらうということがこれから日本を成長させる大きな要因のうちの一つというときに、では、農業として一体何をやっているのかと。こんなもの、一つの農協でできませんから。まだ道はできていませんから。やはり、農水省が東京でいろいろな機関をつくる、あるいはいろいろな人を派遣する、あるいは、いろいろな人のアイデアを知事や首長さんに分け与えるという行動が要るんです。鎮座まします陸軍大部隊というんじゃなくて、そういう騎馬隊的な、本当に機動的に動くようなそういう部隊を大臣が指揮しなければならないというふうに思うんです。

 海外からのマネーの投資を誘発するためのこれからの努力についての決意をぜひ教えてください。

赤松国務大臣 先生の地元の高知県を初め、今、農業ばかりじゃなくて、地域そのものが大変御苦労されていると思います。

 そういう中で、一番最初の御質問にもつながると思いますけれども、地域を考えるときに、第一次産業をやはりしっかり支えていかなければそこには第二次も第三次もないところというのはいっぱいあるわけで、そういう意味でいえば、地域の未利用の、未活用のそういう資源というのもしっかり生かしていく。そのときには、場合によっては外国からの資本やそういうことだってあったっていいというふうにこれは思っております。

 しかし、まずは日本の力で、地域のやはり力でもって産業を興していく、そこに新しい雇用を生み出していく。

 今、私ども、法案も出させていただきますけれども、六次産業化というような形で、農業あるいは水産業、林業、そういうものを生かしながら、そこから新たな加工や流通や販売、そして、そこにまた新しい雇用をぜひ生み出していく、産業を生み出していく、そんな努力をしっかりとさせていただきたいと思いますし、委員御指摘のように、そう時間があるわけじゃありません。本当に今やらないと大変なことになってしまうというふうに思っておりますので、戸別所得補償制度を初め、あるいは六次産業化の方策を初め、こういうことについてできるだけ早くそれが地域でちゃんと実を結ぶように、頑張ってやらせていただきたいと思っております。

福井分科員 ありがとうございました。

 では、最後にいわば陳情ですけれども、高知県で今技術を開発している人がいまして、要するにオン・ザ・スポットで、生えているところでロボットでそのまま粉砕をしてチップにして、それでパイプで圧送すれば、今起こっていることは間伐の切りっぱなしですから、何百万立米も切りっぱなしにして置いているというだけなので、これはまことにもったいない。ですから、そうやってロボットが立ったまま上からずっと粉砕していくわけですね。というのを今技術会議の方へ提案させていただいているので、ぜひ採用していただきたい。

 そうすると、路網ももちろん要りますよね。だから路網ももちろん飛躍的にふやす。だけれども、圧送するパイプであればそのまま燃やすことができるわけです。日本だけですから、要するに木材は燃やしちゃいかぬという、なぜかそうなっちゃって、文明がサステーナブルになっているわけですけれども、しかし、もっと燃やしていいんですね。

 大臣御存じだと思いますが、今、オーストリアのギッシングという地域と市があって、それで、その首長さんがたまたまアメリカから教師をされて帰ってきて、それでこういうポリシーで地域を運営したんです。つまり、エネルギーは地産地消で行こうと。高知県もそうだし、いろいろな県もそうですけれども、原子力発電にしても何にしても、とにかく電力を輸入しているというのがいろいろな県の現状です。

 しかし一方、高知県だけでもざっと言って今は六十万ヘクタール山がありまして、六百万立米、毎年育つんです。これをA重油に換算したら百五十万キロリットルなんです。そんなに今は使っていませんから、ですから、毎年毎年太る量でその県全体のエネルギー量が賄えるんですよ、毎月はちょっと違いますけれども。しかし、地方だと、山が多いところは、その山の間伐材を燃やすだけでエネルギーが確保できるんです。

 もちろん、そのギッシングはそれだけじゃありません。山のバイオマス、木材バイオマスもそうだし、いろいろなバイオマスを使って、だけれども地産地消で、だからエネルギーが輸出できるようになるまで行ったということで、世界で一番貧しい地域が世界で一番豊かで有名な地域になったという、地域経営の今モデルになっているんです。

 ですから、世界で一番貧しいところというのが高知県に共通するので、ぜひこれでやらせていただきたいなというふうに思いますので、ぜひ御援助をお願いしたい。

 ちょっと時間がなくなりましたけれども、最後に質問が一つあって、どうしても農林水産物の輸出というので説かなければなりません。

 先ほどからいろいろ言っていただいて、貿易外収支のことも大事なんですけれども、貿易でもうけるということも必要なので、ちょうどこれは松岡大臣のときに始まったいろいろな努力があります。今は政権も交代しましたけれども、しかし、現政権、現大臣として、農林水産物の輸出について各地域をこういうふうに応援しているぞということで元気になるようなコメントを最後にお聞きして、質問を終わらせていただきたいと思います。

赤松国務大臣 現在たしか四千億ぐらいで、それを一兆円にしようというようなことでいろいろ努力をさせていただいています。

 特に中国、韓国、この間もジャスコの社長と会って話していましたら、中国の場合は、リンゴだとか桃は縁起がいいとかいうので大変高価な形で輸出ができている、あるいは向こうで買っていただいているというような話もいろいろございました。

 その意味で、ぜひこれからも、単に守る農業ではなくて、積極的に外へ打って出られるような農業、そんな形でまたしっかりと農水省としても応援をしていきたいと思っています。

 それから、前段でお話しのありました木材のロボットの使用については、それは高知県の話ですか。(福井分科員「そうです」と呼ぶ)そうですか。ちょっとほかの用事もありまして今度高知へ行きますので、そういう機会に私自身もぜひそれを見させていただいて、どういうまた応援ができるのか。あるいは、高知にとどまらず、いいものであれば、今、森林・林業再生プランというのも去年の年末につくってちょうど始動しかかったところですから、そういう中で、今、特に路網の整備とか、作業道がないために伐採してもそのまま森の中へ置きっ放しということですから、本当に、先ほど私が申し上げた未利用の資源というのはいっぱいまだまだ残っているわけで、そういうのを有効活用しながら、環境対策としても、あるいはエネルギー対策としてもしっかり有効に使っていくという立場で、私自身も現地へ一回行ってぜひ勉強もさせていただくつもりでございますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。

福井分科員 ありがとうございました。では終わります。

山口主査 これにて福井照君の質疑は終了いたしました。

 次に、小野寺五典君。

小野寺分科員 きょうは、質問の機会をありがとうございます。

 昨日、チリ地震による大きな津波が太平洋沿岸、特に三陸沿岸に大きな被害を及ぼしました。私も実は、終日この対策本部におりまして、津波が直接上がってくるところを現実に見ておりました。きょうの読売新聞の一面に大きな写真が出ております。このカラー写真は私の家のすぐそばの写真でありまして、本当に津波というのがいかに怖いかということを、子供のころから私どもは身にしみて伺っております。

 そういった中、ようやく皆さんのお力で一段落したこの津波の被害なんですが、これから実は、大きな被害の全容が明らかになってまいります。それは特に漁業に対しての被害であります。

 養殖いかだあるいは養殖施設、この被害というのが相当数ございます。きのうは津波被害で調査ができないんですが、けさになりまして、私どもの地元の漁師さんが朝早く現場に行きまして、自分たちのいかだを調べております。朝から何本も連絡が入っています。想像以上の大きな被害が起きている。特にカキいかだあるいはワカメの養殖施設、これはちょうど今が最盛期になります。漁師さんにとっては一年の収入の一番大切な、ピークを迎える時期にこのような被害がありました。

 ところが、この被害に対しての対策ということですが、例えば、養殖に対する共済にしても、収穫物の共済に一部入っている場合がございますが、このいかだ施設そのものの共済というのは大変共済金の比率も高いということで、なかなか入っている方が多くない。ということで、現実には多くの漁民の方々がこれから復興に向けての大変な被害があるということになっております。ぜひ、この問題に対しての大臣の認識と対応についてお伺いしたいと思っています。

赤松国務大臣 具体的には、もう既に私どもとしても、特に宮城、岩手、それから先ほどの四国の高知、こういうあたりの被害というのを大変心配いたしておりまして、政務官の方からお答えをさせますけれども、今、特に水産業等のところで被害も出ておるようでございますので、あわせて報告をさせていただきたいというふうに思っております。

佐々木大臣政務官 お答えいたします。

 実は、私の北海道も根室の方が同じように被害を受けてございまして、まだ詳細については、先ほど大臣からもお答えいたしましたが、関係者自体も避難中だったというようなこともあって、まだ被害の全容をつかんでいるところにはございませんけれども、早急に情報収集をさせていただきたいというふうに思ってございます。

 実は、私も、奥尻沖の津波の被害を見たことがございまして、第一波だけで終わらない。しかも日本海の場合なんかは、狭いものですから、行って戻ってくる方がまだ大きくなって戻ってくる。最高五メートルぐらいまでいったのではないかなどという被害も見せていただいてございまして、津波の恐ろしさというものは私も経験をしているところでございます。

 先ほど大臣からも申し上げましたように、水産庁の災害情報連絡会議というものを設置して今情報収集をさせていただいているところでございます。関係する都道府県と連携を図りながら、被害の把握、そしてその被害の調査が終わり次第、円滑な復旧に向けて万全の対策をとらせていただきたいというふうに考えているところでございます。

小野寺分科員 今回の被害というのはかなり広範囲に広がっております。当然、これだけ広範囲でありますと、激甚災害というような、私たちもそういう印象を持っております。ぜひ早急な調査をしていただきまして、そして、今政権に関しては戸別所得補償というお話をされております。こういうまじめに額に汗して一生懸命頑張っていらっしゃる方々が天災という形でこれだけの被害をこうむるということに関しては、ぜひ、これこそ戸別にしっかり所得を補償していただく、そのようなことだと思いますので、対策には万全をとっていただきたいと思っております。

赤松国務大臣 直ちに調査するよう指示をしたので、私も何らかのことが出てくるのかなと思ったのですが、残念ながら、けさの段階ではまだ、委員も先ほどおっしゃっておられたように、被害に直接遭った方たちが避難してみえたり、今やっている最中ということで、ちょっと具体的な結果が申し上げられなくて恐縮でございますけれども、早急に調査をいたしまして、その被害については、今御要請があったとおり、農水省としてもできる限りのことをきちっとやり切るということをお約束しておきたいというふうに思います。

小野寺分科員 この津波に関しては、実は、予報システムというのが文部科学省、国土交通省、他省庁によって今とられております。

 今回、予報システムというのが特に沿岸域でかなり有効に機能いたしました。ですから、私ども、今から二十分後にこれだけの波が来るぞというのを予測しながら住民の皆さんにその都度危険を訴えるということができましたので、ぜひ、こういう問題に対しては政府を挙げて対応、さらに予算をつけていただきたいと思っております。

 さて、次にマグロの問題に移りたいと思っています。

 今回、大西洋のクロマグロの資源管理の問題で、大きな問題に直面していることがございます。大臣御存じのとおり、マグロ類は五つの地域マグロ資源管理機関とその合同の会議ということで管理しておりまして、今までは資源管理で、この地域管理機関がそれぞれ厳しい措置をとってきております。

 大西洋のクロマグロにつきましては、昨年のICCATの年次会合において、漁獲枠の大幅削減それから附帯事項を採択して、しっかり対応したい、そのような対応をとっておりましたが、なかなかその効果が出ないということで、今回、ワシントン条約の規制にするというような動きが今できております。

 まず、不思議に思うのは、二つの国際機関、このICCATというのとワシントン条約と両方あるんですが、今回、もしモナコ案が採択された場合、この二つの漁業機関が相矛盾する結果を出すことになりかねない。これはやはり、日本としては、このような本来漁業者が管理している自主規制を重く見て、逆に言えば、ワシントン条約のような、資源保護ということでアフリカゾウとかそういう希少動物と同じ扱いにするというのはとてもおかしいな、私もそう思っております。

 ところが、当初、このモナコ案というのは、ワシントン条約でクロマグロがかかるなんて、そんなことあるわけないよねということで、多分、後ろに座っている水産庁の官僚の皆さんも、それから現政府もたかをくくっていたんではないかと思っています。ところが、ふたをあけてみると、これは赤松大臣の発言、二月五日の記者会見ということですが、非常に微妙な差になる、本当に五票ぐらいの差で多分決まるんじゃないかと、五票以内のねというお話だと思います。

 大臣にお伺いしたいのは、この五票以内で決まるというのは、クロマグロはこのワシントン条約の附属書1に載らないのか、載るのか、どちらの見通しでこの五票というお話をされたか、お伺いしたいと思います。

赤松国務大臣 結果が出ればわかることですが、明確なそれがあって五票と言ったわけではありません。要は、五票というのは、場合によってはモナコ提案が可決されてしまう。三分の二というあれがあったものですから、当初は私自身も、正直言ってそう心配はしておりませんでした。というのは、私どもは、むしろ積極的に、現在割り当てられている量を減らそうじゃないか、もうそれでも資源が枯渇をしているということであれば、一年休漁したっていいじゃないかという提案をしながら、前に出て、何とか全面的な商取引の禁止ということにならないようにという布石を打ってきました。

 その時点では、フランス等、私どもに同調してくれていたんですが、そこからちょっと雰囲気が変わってまいりまして、ヨーロッパの主要国が何カ月前とは違って一気にモナコ提案に賛成するような、いろいろな条件つきとはいえ、提案そのものには賛成のような流れになってきた。

 そういうふうになってきますと、フランス、イギリス、スペインなんというところは、かつての植民地であった国との友好な関係もありますので、そういう影響をまた受けるんじゃないかということで、場合によっては三分の二以上をとる可能性が出てきた。

 例えばスペインなんかも、もちろん日本にマグロを輸出しているところだからと思っていたら、むしろスペインなんかもモナコ提案に賛成というような流れで、EU全体ががちっと固まってしまうとこれはかなりの力になるという意味で、私どもとしては、水産庁の顧問、OBの皆さんを顧問に決めまして、今、全世界に六人それぞれ行ってもらっています。

 先日、佐々木政務官にはヨーロッパに行ってもらって、各国にいろいろな要請をする、日本の主張を理解してもらうということでやりました。舟山政務官にも、私が許可が出なくて行けなかったものですから、OECDの農業大臣会合を通じて各国に働きかけをして、今何とか三分の二を超えないように、五十票以上を我が方がきちっと固められるようにやっている。しかし、情勢は決してそんなに甘くないというのが私の認識でございます。

小野寺分科員 私どもも外交の経験がございます。委員長も大変御経験があると思うんですが、現実、こういう問題が起きたときには、まず一番初めに私どもが攻略、攻勢するのは、例えば事務局なんです。

 今回、なぜEUがここまでまとまって一つの方向を向き始めているかというと、CITESの事務局が事務局の勧告案ということで、このクロマグロを附属書1に入れるべきだ、そういうことを実際に書いてしまいました。ということは、ここで大体、相撲でいえば、ほぼ徳俵まで追い詰められたということに実際はなってしまいます。なぜ、ここまでなる前の段階で外交的な努力をされなかったのか。この問題はもう秋に顕在化していました。

 私は、外務委員会、委員会は違いますが、さんざんこの問題を水産庁含めて、長官にもお話をいたしました。なぜここまで追い詰められてしまったのか。これは、大変恐縮ですが、やはり政権がかわり、それぞれいろいろな引き継ぎの中で、こういう微妙な問題に対して、なかなか役所側が大臣等にしっかりとレクチャーしなかったのか、伝えなかったのか、そういう中でちょうど起きてしまったことなのかなと私は思っております。決してこの問題が、例えば与野党の政争の問題になるということはないと思います。オール・ジャパン、きょういらっしゃる政務三役は、皆さん水産に大変理解の深い方ですので、このマグロ問題がどこまで大きな影響を持つかということをよく御存じだと思います。

 特に、決して、これはワシントン条約で二国間の取引というだけでの問題ではなくて、公海上でとれたマグロを実は輸入することもできない。となりますと、日本は今、世界の漁場、日本が開拓した大西洋の公海上でのマグロ漁業、これもクロマグロの漁業ができなくなってしまう。ですから、決して地中海とか、相手国から入らないだけじゃないんです。

 公海上で漁業ができなくなってしまう、こういう大きな問題をはらんでいるんですが、このことについて、ぜひ大臣の御感想を聞きたいと思います。

赤松国務大臣 確かに御指摘のとおりでございます。

 ただ、前大臣は石破さんですが、前政権から引き継ぎがなかったとか、それで何かうまくいかなかったんだろうということの認識は私は持っていません。

 一応、七月にモナコからそういう提案があると。ただ、さっきお話がありましたように、一時は、モナコ提案に対して、フランスを初めヨーロッパの中の国々も日本と同じ立場で、とりあえず、まず四〇%削減しようじゃないか、一回資源管理の状況を見てみようということで流れたものですから、まあ、これでいけるのかなと。その辺、甘かったと言われればそうかもしれませんけれども、しかし、それが一気に、今度は環境派の人たちの巻き返しもいろいろございまして、フランス自身が、あるいはスペイン自身が、イギリス自身がどんどん変わっていくというのが本当に一つの大きな流れで動き出したものですから、非常に今心配をしています。

 もう一つは、量としては、実は大西洋のクロマグロ、クロマグロそのものは、御存じのとおり、日本人が七〇%、八〇%食べていますけれども、量的にはそう大したことはありません。

 しかし、問題は、先ほど委員が御指摘あったように、大西洋ばかりじゃなくて、インド洋とか太平洋とか、いろいろなそれぞれの資源管理をしているほかのところにまで波及をするんではないか、あるいは、クロマグロに限らず、メバチだ何だ、ミナミマグロだ、いろいろなところに、ほかの魚種にも広がっていくんじゃないか、そういうことを考えると、まさにアリの一穴で、ここが突破されてしまうと一気にいろいろなところに広がっていくということになりかねません。

 あわせて、今回のワシントン条約では、附属書2の方に、高知なんかが産地ですか、サンゴだとか、あるいはフカひれに使うサメだとか、そういうものも今度2に掲載ということもあわせて出ていますので、しっかりと、三月の中旬に行われるワシントン条約のCITESの会議に向けて、最後までできる限りのことをきちっとやり切って、何とか三分の二以上いかないように、最後まであきらめずに努力していきたいと思っています。

小野寺分科員 認識はしっかりしていらっしゃると思いますが、ただ、今のお話の中で、確かに量は少ないということがあります。ただ、ここを主な漁場としている漁業者の方がいらっしゃって、その方々は、ここがもしできなくなると、自然、この大西洋の遠洋マグロ漁業、マグロ漁業全体が自分のところでは経営できなくなるという経営体の方もいらっしゃいますので、そこはしっかりフォローする必要があると思っております。

 さて、その中で、これは仮の話になりますが、もし附属書1に採択をされることになった場合、これは大臣の発言にもございますが、政府の留保という考え方があります。

 新聞報道ですが、この留保の場合、日本漁船のこの大西洋公海での操業、それは、条約上は留保したということになった後に、では、留保したんだから、この大西洋で日本の漁船を操業させてクロマグロをとってもいいというふうに大臣はお考えなんでしょうか。

赤松国務大臣 私の認識では、それはできるというふうに思っております。

 ただ、僕もちょっとその記者会見で言い過ぎちゃったと後で反省しているんですが、留保が先にあるんじゃなくて、そうならないように、まずはモナコ提案をきちっと否決をする、それに最大限今は努力する、力を注ぐという段階でありまして、その先のことまでちょっと言ってしまって、しまったな、申しわけありませんと言わざるを得ませんが、どちらにしても、もし最悪のそういう結果が出た場合には、いろいろな選択肢があると思いますけれども、留保ということも選択肢の一つであるということもまた事実だと思っております。

 あと、その場合にはどうかということであれでしたが、これはもう留保したわけでありますから、私どもとしては、そのまま附属書2の扱いと同じということになりますので、いわゆる商業取引はできないけれども、とることそのものは禁止されたわけではないという認識で、そのまま操業できると思っております。

小野寺分科員 確認いたしますが、もし仮にモナコ提案が採択されてしまった場合、最善の努力をしても仕方ない場合に、留保ということを使い、鯨類と同じような形で日本はクロマグロのことを考える。そしてその際には、大西洋の公海上でのクロマグロの漁業というのを認めると考えてよろしいんでしょうか。

赤松国務大臣 そうならないことを願いますけれども、最悪の場合はそうならざるを得ないというふうに思います。

小野寺分科員 その際、一つ心配があります。

 実は、大西洋の公海上のクロマグロだけではなくて、地中海の中の、沿岸十二海里から間の真ん中のところ、ここも一応公海上の扱いになっています。ですから、留保という条約上でいえば、地中海の中の操業もできるということになります。同じくここの漁業というのもできると考えてよろしいんでしょうか。

赤松国務大臣 そうなると思います。しかも地中海の場合はいわゆる蓄養が多いものですから、今、日本に一番多くクロマグロを送ってきているのはたしかマルタだと思いましたけれども、マルタは明確に日本と同じスタンスでございますので、そういう意味でいえば、輸出証明もきちっととれる。だから、当然そこからも入ってきますし、日本の操業もできるという認識でおります。

小野寺分科員 そこで、こういうことがその後起きつつあるなということを共通認識するべきだと思うんですが、実は、シーシェパードという団体が、鯨で大変日本は攻撃をされております。次に標的にしようとしているのは、もしワシントン条約の会議でこのマグロの問題が、例えば日本が留保ということになり、地中海なりあるいは公海上で操業を始めた場合、これは同じくそちらの方向に向く可能性があるのではないかと考えているんですが、これはちょっと、そういう指摘があるということで御感想を伺いたいと思います。

赤松国務大臣 シーシェパードについては、南太平洋における妨害活動を、自分のところの船が壊れちゃったとかいう理由もあって、今期は一応これで終わるということを発表したというふうに聞いております。

 あわせて、船を修理した後なんでしょうけれども、今度は地中海へ向かうぞというふうなことも言っているやに仄聞をしておりますので、その点については心配しておりますけれども、しかし、これは捕鯨と同じことでございまして、私どもとしては、正しい権利を主張しながら、考え方についてはいろいろあってもいいと思いますが、そのことと妨害行動、こうした破壊活動とは全く別だということで、毅然とした態度で臨んでいきたいというふうに思っております。

小野寺分科員 同じくサメの問題もございます。サンゴの問題もございます。

 例えばサメというのは、ひれだけではなくて、身ははんぺんに使うこともありますし、あるいは背骨を含めた骨格部分というのは、コンドロイチン酸という、これはがんに大変有効だということで、今世界じゅうで注目をされております。スクワレンという深海ザメに特有な栄養素もございます。こういうすべてを実は日本人は活用して今までサメとの共生の文化をとっておりました。

 今回、サメという資源の枯渇、これは日本の責任ということではなくて、むしろ世界じゅう、このひれをねらってきている、そういう漁業国が多いです。御存じのとおり、ひれだけとって、生きたサメを海に帰す、そのサメというのは、当然ひれを切られて泳いでいるわけですからそのうち死んでしまう、そういう状況が映像で流れるたびに、このサメの問題というのも、世界じゅうの皆さんが、やはりこれは規制すべきだ、そういう印象も持ちます。

 ぜひこういうことも持たれないように、私ども資源管理はしっかりすべきだと思うんですが、サメというのは、それだけ実は私ども地域にとってマグロと同様に重要な漁業になっています。附属書2ということですが、この先やはり1に上がるということも十分可能性があります。私どもは、どうもこのワシントン条約という、どちらかというと資源保護の視点で考える皆さんとはなかなか相入れない。やはり日本人は魚食文化の国ですから、長い間、魚、海からの生産物というのは、私ども人類がそれを利用させていただいて共存していくということを学んでまいりました。そういうことで、ぜひここはしっかり支援していただきたいと思います。

 そして、もし大西洋のクロマグロ、これがワシントン条約の問題で来た場合に、今大臣は、留保されるということ、そして、ここで漁業ができるようにしっかりこれからも許可を与えていくというお話をされました。それで一安心しましたが、これからこれがほかの水域に広がって、世界じゅうの公海上でマグロがとれなくなる、こういうことだって、今後さまざまな要因で圧力があると思います。また、サメの問題にしても、サンゴの問題にしても、同じくさまざまな要因が来て、なかなか操業がしにくくなるということはあると思います。

 私は、こういう国際的な規制の強まり、そして、そこで影響を受ける漁業者こそ、逆に言えば戸別所得補償、本来で言えば所得の補償をしっかりすべき対象業種だと思いますが、いかがお考えでしょうか。

赤松国務大臣 私ども民主党のマニフェストの中でもその点は触れておりまして、二十三年の本格実施に向けて、もし体制ができれば、この戸別所得補償制度の仕組みの中で、遠洋は除くかもしれませんけれども、沿岸に限ってということになるかもしれませんが、ぜひこれは入れていきたい。

 ことしの予算の中でも、たしか二億円、水産に関して所得補償制度ができるかどうか、そのための調査費ということで計上していたと思いますので、今、それぞれ漁業者の皆さん方も大変厳しい状況で経営をされておりますので、ぜひそれは産業としてしっかり支えていけるような仕組みをつくれるよう考えていきたいと思っております。

小野寺分科員 沿岸はもとよりなんですが、きょうここでお話ししているのは遠洋漁業のマグロ漁業の問題、そして、国際規制で、規制強化で一番影響を受けるのはこういう遠洋漁業、近海漁業ということですので、ぜひ、戸別所得補償を沿岸のことだけに限らず、その検討、研究というのは遠洋漁業まで広げていただくことをもう一度お伺いしたいと思います。

赤松国務大臣 経営の形態や雇用の形が、沿岸の場合と遠洋漁業で、企業という形でやっていらっしゃるところもあるものですから、少しそういう違いはあると思います。

 しかし、そのことも含めて、まだ別にすべて確定して決めてやっているわけじゃありませんので、ただ、トータルとして、水産業はなかなか今いろいろな条件のもとで成り立ちにくい状況にある。販売価格と生産費が常に逆転をしているような構造的な仕組みになっているということであれば、その辺のところは少し、詳細なところは今後の検討ということで、小野寺委員の御意見は御意見としてしっかり承っておきたいというふうに思っております。

小野寺分科員 沿岸でも、沖合でも、近海でも、養殖でも、すべて漁業者は漁業者ですので、そこに差をつけるということは、むしろ漁業者の皆さんに不公平感をもたらしてしまいます。制度設計をしっかりしていただきたい、そのように思っています。

 さて、もう一つ、実は、カツオの資源の問題なんです。

 昨年の漁期に、日本近海に来遊しますカツオ資源、これがかなり激減をいたしました。北海道から三陸沿岸、そして四国まで、カツオ産業、特に、日本人が大好きなうまみという感覚、このうまみの成分というのは、イノシン酸というかつおぶしからできる成分です。ですから、日本人のおいしさ、うまみの基本が実はこのかつおぶし。そのカツオの資源が今大変厳しくなっているというのが現地の話です。私も地元、気仙沼の魚市場を回って見ていまして、資源が減っているのもそのとおりなんですが、実は、魚体が小型化をしています。中には、小さくなって卵を持つ、そういう魚も見えてきています。

 通常、こういう状況を見ると、これはかなり乱獲の状況なのかなと。ところが、私ども沿岸で主にとっているのは、一本釣りでとっているのが多いんです。一番今この資源の問題で急に資源を多くとり始めたのは、外国船によるまき網。公海上でのまき網。そして、今、水産庁の研究者にいろいろお話を伺っていますが、一部は太平洋のカツオとは相入れない別な資源の系統かもしれないけれども、例えばフィリピン沖とか、幾つか今盛んに外国船によってまき網が行われている漁業海域では、もしかしたらこれが太平洋に上がってくるカツオかもしれない、そういうさまざまな不安が起きています。

 ことしの漁期を間もなく迎えますが、その漁期に向けて、もしまた資源的な問題があった場合には、国際的な、特に外国のまき網漁業、小さいサイズでせっかくのカツオをごそっと根こそぎとってしまう。漁業でいえば、私ども釣りの漁業というのは、どちらかといえば、そろそろ成人になっておいしいなというのを選択的にとれるんですが、まき網漁業になりますと、家族でいえば、お父さんからお母さんから子供から小さい乳飲み子まで一網打尽にとってしまう、そういう漁業になってしまいます。

 資源管理の面で、この公海上での特に外国船のまき網というのが大変これからも問題になると思うんですが、この問題について、ぜひ日本が、資源管理の意味でも、規制強化を含めた検討のための国際機関で訴えるなり、逆に日本がイニシアチブをとっていくなり、そのようなお考えがあるかどうか、伺いたいと思っております。

佐々木大臣政務官 お答えさせていただきます。

 今、小野寺委員御指摘のように、カツオの水揚げは本当に激減をしてございまして、平成十七年との比較でも、特に近海物については半減をしておりますし、遠洋物でも相当減少しているというような事実があるということは、我々も認識をしているところでございます。

 このカツオ等についても、中西部太平洋まぐろ類委員会、WCPFCというところで今資源管理をしているわけでありますが、そこの科学委員会の資源評価というものでも、実は我々の認識と多少違うんですけれども、カツオの資源は高位というふうに位置づけられているわけであります。

 これらのデータ等をまずしっかり収集をして、そして、漁業者やあるいは農林水産省、そして研究センター、これらの関係者で意見交換をして、どのような対応ができるのかということについて、今月の四日にこれらの協議機関を設置しようということで今進めてございますので、これらの中でしっかり意見を聞いて、どういう対応ができるか、事務方にも指示をしているところです。

小野寺分科員 これはかなり、今後大きな、大変な問題になります。

 日本は資源の問題、資源管理の問題で、ぜひこの外国船のまき網規制、公海上から北上してきて三陸沿岸の漁場につながる可能性が高いわけですから、その先で全部とられてしまったのでは、日本近海に来るカツオがいなくなってしまう。このカツオ関連の業者は大変多いということをぜひ認識していただきたいと思います。

 最後に、一点だけ指摘させていただきます。

 私、このマグロの問題を見て大変心配なのは、予想だにしない結果でこのような状況に陥ってしまったと思います。今後、WTOの農業交渉がございます。私どもが知らないうちに、水面下で、どこかで事務局はまた別の案があり、そして、私ども日本政府が国内の問題でずっと内向きの目で見ている中で、気がついてみたら外堀をすべて埋められてしまい、ことしの農業交渉で厳しい局面に追い込まれかねない、そういうことにつながらないように、私ども、ぜひ三役の皆さんにしっかり海外に行っていただいて、むしろこれから来る、マグロもありますが、農産物交渉、これにしっかり対応していただきたい、そうお願いいたしまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

山口主査 これにて小野寺五典君の質疑は終了いたしました。

 次に、谷公一君。

谷分科員 谷公一でございます。

 きょうは、三十分の時間を与えられました。森林・林業について、昨年の十二月に政府が出されました森林・林業再生プランを中心に、大臣以下、お尋ねをしたいと思います。

 鳩山内閣の大きな理念に、コンクリートから人へという理念がございます。大臣、森林・林業施策はコンクリートですか。

赤松国務大臣 これは象徴的な言葉でございまして、一般的に言う建物あるいは道路、そうしたものをすべて否定しているわけではありませんけれども、そういうことが中心だったやり方から、むしろ直接人へ、担い手へ、農業者本人に、あるいはもっと身近なところへという意味でのコンクリートから人へという意味でございまして、林業については、特に今まで路網の整備だとか作業道だとか、なかなか、間伐してもそれを切り出す道さえないというようなことでしたので、スーパー林道のようなものはつくらないかもしれませんけれども、反対に、路網整備やこうした切り出しのための作業道についてはしっかりと、ドイツ並みに少しでも近づくように努力をしていきたいという言葉が、象徴的な形で誤解を生んだかもしれませんけれども、コンクリートから人へということだと御理解をしていただければありがたいと思います。

谷分科員 誤解を生んだかもしれないと言われますが、森林・林業再生プランのサブタイトルで、「コンクリート社会から木の社会へ」という言葉があります。では、そういう予算になっているのだろうかと見てみますと、全く配慮されていないというのが実情ではないかと思います。

 公共事業費は国全体として一八・三%の減、また、そのことについて、鳩山総理は施政方針演説で、来年度予算を命を守る予算に転換した、公共事業費を一八・三%削減したということを誇らしげに言われている。では、森林・林業の基幹である森林整備のお金はどうなっているのかと見てみますと、一千六百十七億がふえているのかというと、全然そんなことはない。トータル一八・三%以上の二六・九%、三割近く減っている。治山事業に至っては、九百九十二億から六百八十八億と三割を超えた減少だ。

 コンクリート社会から木の社会へという森林・林業再生プランは、平成二十二年度予算に生かされていますか、大臣。お尋ねしたいと思います。簡潔にお願いします。

山田副大臣 先般、二十一年度の補正予算の審議の際に、千二百三十八億、いわゆる二十一年度の森林・林業再生予算をそのまま残しておりまして、それが各地方の基金にそのまま残っておりますし、まだ使われていない森林再生の予算がかなりありましたものですから、それを合わせますと、今年度、コンクリートから木へ、そして、木の特に切り捨て間伐はやめて、これから先、木で公共建物をつくるような法案も準備しておりますし、いわゆる木材需要のこれからの創出も含めて、今年度の予算においても十分な対応を、昨年度の残された補正予算も含めて今考えている、そう思っているところです。

谷分科員 山田副大臣の答弁がございましたけれども、全く事実にも反していると思いますよ。一次補正が執行停止をしたんですよ、ようやくきょう。そのうち、森林整備とか花粉の少ない森林づくり対策事業、緑の雇用担い手対策事業、それぞれ理由があるでしょう。あるでしょうけれども、四百億執行停止したというのは事実です。大臣は、それらもあるから二十一年度に比べて大丈夫だと言うのは、これは詭弁に近い答弁だと私は思います。

 この点をいろいろ言い張っていても、限られた時間でございますので、視点を変えます。

 二月二十四日、朝日新聞朝刊に次のような記事が出ていました。これは、森林・林業再生プランにかかわる記事です。「昨年十一月、林野技官のトップ、島田林野庁長官が再生プランの対案を手に菅氏の事務所を訪れた。国家戦略室が作った素案は木材自給率向上の数値目標を盛り込んでいたが、島田氏は「木材の需要がありません」と難色を示した。だが、菅氏は「需要の問題じゃない。木が太っても運び出せないことが問題だ」と反論した。」

 林野庁長官、これは事実ですか。

島田政府参考人 ただいまの記事の部分につきましては、私が直接朝日新聞の取材を受けてお答えしたものではございません。一部、最後の方のコメントの部分については私もそのお話をさせていただきましたが、途中の部分については私は存じ上げないところでございます。

谷分科員 私が長官に聞いているのは、事実かどうかということだけです。菅氏の事務所を訪ねて、素案が木材自給率向上の数値目標を盛り込んでいた、島田長官は木材の需要がありませんと難色を示した、こう記事に出ている、そのことは事実ですかと。それだけです、お尋ねしているのは。もう一度、簡潔にお願いします。

島田政府参考人 事務所をお訪ねしたこと自体については事実でございます。そのときのやりとりの詳細についてはちょっと記憶のないところもございますけれども、今後の木材需要等をきちっと確保していくということが日本の森林・林業を再生していくためには非常に重要な課題であるということを申し上げたことは記憶しております。

谷分科員 まじめな長官でございますので、目標を掲げて、そのときに需要面から見て本当にできるかどうかという疑問を言われた、あるいは懸念を言われたということは、今の答弁から見る限り、事実であろうと思います。それは当然だと思います、実態を見れば今自給率二四%ぐらいですから。

 では、この森林・林業再生プランの、目指すべき姿、十年後の木材自給率五〇%以上、これは供給面からはじいた数字ですか、それとも需要面をしっかり見定めた数字ですか、目標ですか。大臣、お尋ねしたいと思います。

赤松国務大臣 これにつきましては、御存じのとおり、戦後、人工林の植林をしてちょうど五十年、六十年たってきた、今が一番育ち盛りというか、木材利用としては最適のとき、これからまた十年、二十年たってもCO2の吸収能力はどんどんと落ちるだけということですから、今それを切って、そして新しい木を植林していく、このパターンが一番いいわけです。

 ただ、一番問題点は、切り出しても、それがきちっと使われなければ意味がないということでございまして、そういう意味で、いわゆる川下の整備もきちっとしていかないと、川上だけを一生懸命やっても、その受け皿となるものがなければ、これは何ともならないわけです。

 そういう意味で、今回の通常国会でも、まず隗より始めよじゃありませんけれども、民間住宅にもしっかり使ってもらうようにお願いをしておりますが、今のこういう景気状況ですから、では、まず公共建築物から始めてみようじゃないか。これは自分たちがやる気になればできることなので、地域の低層の三階までの役所の建物だとか、あるいはそういう役所の施設だとか事務所、そしてまた文部科学省にもこれをお願いして、小中学校の校舎等にも、子供たちに木のぬくもり、温かさ、そういうことを体験してもらうというのもやはり教育的な意味も非常にございますので、こうした教育施設。あるいは厚労省にお願いをして、今度は厚労省が関係するいろいろな社会福祉施設というものについても、公共的な建築物については国産材の木材利用をぜひお願いするというような法律も今回出させていただく予定でございます。

 その意味で、もちろん、川上部分におきましても、そうしたフォレスターというような制度をつくって、しっかりと木を守りあるいは成長させていっていただく、そういう指導的な役割を果たしていただく方の養成もいたしますし、また、現にある人材も有効に活用していこうということも考えながら、いわゆる川下、川上両方の施策を進めないと、とても自給率五〇%なんということはなし遂げることができない、このように思っておるところでございます。

谷分科員 需給面から十分踏まえた五〇%かどうかということは、今のお答えではよくわかりませんでしたけれども、しかし、大臣が言われるように、川上、川下合わせた対策で、今までのやり方をはるかに超えるようなダイナミックな転換がなければこれは難しいと思います、大変だと思います。そういう意味で、しっかり取り組んでいただきたいし、木材、林業を元気にする、そして山村地域を何とか活性化、再生しようというのは、私自身も山村で生まれ育った者として、そして今住んでいる者として、その思いは同じでございます。

 同じなんですけれども、大臣、もう一度先ほどの話に戻るんですけれども、では、そういうプランに基づいて、プランには、まだこれは骨子ですから、これから森林・林業再生プラン推進本部なり、そのもとでの検討会で進めていくかと思うんですけれども、その目指す姿と現実の二十二年度の予算が余りにも乖離しているから大変危惧するんです。これはいわば、大臣に悪いんですけれども、民主党のマニフェストと一緒じゃないか。言うだけ言うて、実際にその現実になれば、いやいや、またお金の制約があるとか、頑張ったけれども諸情勢が変化したということになりはしないかということを懸念しているんです。

 もう少し具体的に聞きます。

 このプランで、十年でドイツ並みの路網密度を達成というふうに言っています。では、路網の予算はどうなっていますか。路網予算がどのぐらいなんですか、今年度、二十二年度。

赤松国務大臣 行政というのは継続ですから、昨年末の第二次補正の中で例の五千億円、地域活性化・きめ細かな臨時交付金ということで五千億円用意をし、これは四つの主なメニューを入れました。そのうちの一つに、路網の整備ということできちっと位置づけております。

 それからもう一つは、今年度予算の中で、例の公共事業にということで、農水にかかわる、これは林業、水産業も含めてですが、一千五百億円。林道整備のための路網の整備等にもぜひこの資金を活用いただきたいということで、これは、地域がぜひここをやりたいというのをどんどん挙げてきてくださいということで、今地方からも挙げていただいておりますので、それを採択して直ちにこれにも取り組めるように、有効なお金として、地域が使いやすい、使い勝手のいい資金としていくということで予定をさせていただいております。

 それから、これは当然のことながら、森林整備事業として一千百八十二億円、前年度比七三・一%で確かに減額はされておりますけれども、しかし、一千億円を超える大きな予算もまた計上しておるところでございます。

谷分科員 具体的な数字はお聞きできませんでした。

 ただ、今、大臣の答弁で指摘をさせていただきたいのは、五千億の話をよくされるでしょう。これはだめですよ。例示として路網を挙げたというのはわかります。その努力は、いろいろ私も聞いていますけれども、買います。地方公共団体も自主的に考えて、お金は国が五千億用意するから、その中で路網をやってください、そういう意欲はわかります。意欲はわかりますけれども、現実は全然違いますよ。

 内閣府が今まとめていますけれども、恐らく、期待していたものは出てこないと思います。だって、今まで地方団体は、景気対策ということで前年は一兆円ですよ。その前は六千億。それらのさまざまな事業をやっているのを突然路網と言われて、特に市町村は、私の聞いている限り、積極的に取り組もうなんという市町村はありません。それから都道府県も、一部にはあるかもわかりませんが、額は知れています。

 五千億は、額全体なんです。ですから、その話を余りされても説得力はありませんし、すぐにこれは結果が出ることですから、余りされない方がいいと思います。意欲は買いますけれども。

 それで、では、路網が具体的にどれぐらいかということはお話がありませんでしたが、私の知る限り、森林整備の大体三割程度だというふうに聞いています、林道とか路網整備合わせて。そうすると、二十一年度予算でいうと五百億程度、二十二年度が、一千百八十億に減っていますから三百億強になる。

 では、ドイツ並みの路網整備を十年後に目指すならば、どれぐらいのお金が必要ですか。どれぐらいお金がかかるんですか。佐々木政務官、おわかりですか。数字を言うてください、どれぐらいの金がかかるのか。プランに書いてありますよ。お答え願います。わからないなら、わからないで結構です。

赤松国務大臣 直ちに今、例えば何千億かかるのか、あるいは兆の金がかかるのか、多分かなりの金額になろうかと思いますけれども、ちょっとそのところは計算をしたものがまだ私の手元にありませんので、また追って谷委員の方に御報告申し上げたいと思います。

谷分科員 これは大きな問題ですよ。常識的に、数千億なんてオーダーではないのと違いますか。場合によっては四兆、五兆もかかるという話もあるやに聞いています。四兆、五兆といったら大変な金額ですよ。まあ、子ども手当は毎年五兆三千億、防衛費は五兆もいかない、十年間にしても、それだけの金額をするということは、本気でこれをやるということであれば、相当これは予算の組み替えも考えていかなきゃならない。しかし、そういう決意があるのかどうか、もうひとつよくわかりません。

 冒頭の話に戻ります。

 公共事業が大きく下げられて、一八・三%、国全体で減った。うち森林整備は二七%近く、治山に至っては三割も減った。そうしたら、これは公共事業というくくりではなくて、森林整備はコンクリートでも何でもないんだ、これはそういうくくりではなくて、別のくくりで予算を仕分けすべきだという議論も当然あっていいと思うんです。性格上、違いますもの。そういうおつもりがあるのかないのかということをお尋ねしたいと思います。これほど予算の組み替え、組み替えと言っていて、どうしてこの点について議論をしないんですか。

赤松国務大臣 これは、鳩山内閣の中で、例の、二〇年に二五%、九〇年比でCO2を削減する、こうしたCO2の吸収源というのは基本的には森林しかないわけですから、そういう意味で、この鳩山内閣にとっても、森林・林業の再生というのはまさに中心の課題ということだと私は思っております。もちろん雇用の問題等もございますけれども、むしろ、環境対策、地域活性化という意味で非常に大きな意味を持っているというふうに思っております。

 ですから、先ほども申し上げましたように、かつていろいろ御批判のあったこうした林業予算を使って、もう高速道路並みのスーパー林道というようなところはつくらないかもしれませんけれども、むしろ、こうした作業のために必要な作業道だとかあるいは路網の整備だとか、今、ヘクタール当たり日本が十七メートル、ドイツが百十八メートルですか、約十倍ぐらいその整備率が違うわけですから、そういう意味で、直ちにドイツ並みというふうにはいかないまでも、ぜひ、それにできるだけ早く追いつくように、しっかりとそうしたことを予算ということも含めて取り組んでいきたいと思っております。

谷分科員 ややすれ違いの議論のように思います。思いは同じかもわかりません。ただ、それが二十二年度予算に何ら姿が見えていないんじゃないですか。姿が見えていないどころか、ほかの公共事業よりも削減率がこれほどひどいとはどういうことですか。その姿勢を私は問うているんです。

 これは、うがって見れば、農家戸別所得補償のお金を出すために農林水産省全体で財源を捻出した、そして、そのしわ寄せも当然林野庁にも来たということではないかと思いますけれども、それならば、こんな大きなプランを言うべきじゃないですよ。このプランを言って内閣として取り組むということであれば、予算でそういう姿を見せないと、これはだれも信用しないですよ。

 現に、全国の森林関係者あるいは私の地元でも、もうえらいこっちゃ、こんなことで新政権はどうして山を再生していくのか、言葉では大事にすると菅副総理などはしばしばテレビで言っていますけれども、それは言葉だけのものではないか、現実の施策はそうなっていないのではないかという声が大変強いということを指摘させていただきたいと思います。

 その関係で、この森林・林業再生プランの中に、補助金、予算の見直しとあります。この見直しというのは、ほかのところは、何か言葉が大変私はひっかかるんですけれども、このプランの中で、活用とか拡大とか、拡大化、高度化とか、非常に前向きなことを言っているんですけれども、この見直しだけ、いかにも無駄があるかのような、縮減するかのような表現に思えます。補助金を、あるいは補助金を一括交付金にするかもわかりませんが、拡充しようという意思はあるんですか。どうですか、これは。

山田副大臣 森林予算が減っているじゃないか、減っているじゃないかというお話ですが、しかし、考えていただきたいと思うんです。

 今まで、各都道府県と国と合わせて二兆円近いお金が森林・林業に使われておったわけです。ところが、何に使われておって、どうなってきたかという今の結果を見ていただきたいんです。いわゆるスーパー林道、一メートル五十七万円もかかる。そして、普通、町村がつくっている林道は一メートル十七万円もかかる。しかし、実際の路網というのは一メートル二千円でできるんです。一メートル二千円。そうすると、少ない予算でかなりの路網ができる。しかも、都道府県が負担している部分を入れれば、八百万ヘクタールの人工林において、それなりの路網を整備していくことに、今委員が言っているようなそんな莫大なお金がかかるわけはなくて、お金の金額じゃなく、使い方が問題なんです。

 そういう意味で、我々は、その予算の補助金をもう少し、本当に意味のあるそういう予算にこれから活用していこう。いわゆる今までみたいに切り捨て間伐にお金を出すようなことをやめて、いわゆる路網を整備する前に、まず土地の、山林の境界線の確定とか、そういうところに金をかけながら、単なる森林組合に二〇%手数料を補助金を渡すとかそういったことをやめて、もっと有効に活用していこうというのが我々のこの予算なわけです。しっかりそこはわかっていただきたいと思っています。

谷分科員 全然わかりません。今の副大臣の答弁では、もっと具体的に、例えば路網はどれぐらいかかるか、それで、莫大な金はかからないとはおっしゃいますけれども、どれぐらいの金額ということさえ答弁されていないじゃないですか。

 具体的な数字も言わずに、あるいはやり方をどう変えるか、すぐスーパー林道とかその話にされますけれども、大部分はそういう経費じゃないですよ、今までの林業予算は。間伐とか、それは路網も相当やっていますよ。ただ、一部にいろいろ批判されたような予算があるということは私も認めますよ。ただ、そのことをもって、いかにも今までの施策があるいは事業費が無駄であるかのような発言というのは、私はとても承服できないと思います。

 それから、森林組合の話をされました。森林組合については、今度、森林・林業再生プランにのっとって、どういう方向でしようかということに資するということかと思うんですけれども、全国の森林組合にアンケートを出されていますね、二月の初旬に。三月末が締め切りのようでありますけれども、大変細かい、員外利用の状況とかそういうのを、都道府県を通じて全国の森林組合にアンケートをされていると聞いています。

 ただ、こういう補助金を出しているようなところがこんなアンケートを出して、項目を数えたら五十を超えていました。圧力じゃないですか、こんなの。アンケートをすること自身が悪いとは私は言いませんよ。悪いとは言いませんけれども、林野行政の元締めから、いつまでに、担当者の名前を明記してアンケートをとるということ自身、大変政府からの圧力で、言いたいことも言えないようなことではないかと思いますが、どうですか、こういうやり方について。

佐々木大臣政務官 お答えさせていただきます。

 森林組合に対してアンケートを実施したということは、確かにそのとおりでございます。特に委員が御指摘されているのは、員外利用の制限のところなのかなというふうに思っています。

 ただ、我々は、先ほど来御答弁申し上げておりますように、今、森林・林業の再生プランというものを作成するに当たって、先ほどの予算の段階もそうでありますが、大臣から答弁申し上げたように、川上、川中、川下、それぞれの地域のところでどういう改革が必要なのか、どういうプランが必要なのかということについて、今論議をさせていただいています。

 事実関係をある程度やはりしっかり把握しなければ、プランをつくっていくことはできませんので、そういった意味でアンケートを今実施させていただいたということでございまして、例えば、森林整備の取り組み状況ですとか、国や都道府県等からの事業の委託状況ですとか、あるいは員外利用の状況などというものをしっかりと把握した上で、森林・林業再生プランの中に生かしていきたいという趣旨でアンケートをさせていただいたものでございます。

谷分科員 時間も大分なくなりました。

 大臣、私が繰り返しお話しさせていただいているのは、森林・林業を再生しよう、それは我々も同じ思いなんです。そしたら、そういう思いを裏づけるような予算なりそういうものをぜひ進めてほしいということなんです。合ってないんじゃないかと。ひどいですよ、こんなのは。一般の、国土交通の公共事業の削減に比べて、何で林野の削減率がこんなに大きいんですか。これは普通の国民から見ればおかしいですよ、この感覚は。あるいは、地域の方の安全、安心に本当にかかわる治山なんかは三割を超えているじゃないですか、削減。

 昨年の集中豪雨、私の選挙区でも、あるいは同じ兵庫県の佐用町でも大変な被害がありました。県議会の方は、もっと治山事業を拡充して力を入れてほしい、そういう意見書も出しました。では、そういう声が今回の予算に反映されているか。反映されていないから、私は繰り返しこのことを言っているわけなんです。

 今までの、公共事業一本でくくって予算を組み立てるやり方では、限界があるように思います。そこは、大臣、しっかりと主張していただいて、場合によっては組み替え、予算というのは時の内閣がそれぞれの内閣の考え方でもって組み替えは可能なんですから、何も法律的な縛りがないわけですから、ぜひ強いリーダーシップをお願いしまして、何か御答弁があればお願いしまして、終えたいと思います。

赤松国務大臣 谷委員の御意見を踏まえまして、これからも、森林・林業の発展のために、先生のまたお力もいただきながら、しっかりと取り組んでいくことをお誓い申し上げたいというふうに思います。

谷分科員 ありがとうございました。

山口主査 これにて谷公一君の質疑は終了いたしました。

 次に、金田勝年君。

金田分科員 予算委員会の分科会ということで時間をいただきました。きょうは限られた時間ですので、足りない部分は農林水産委員会の方で、しっかりまた足らざるところを質問させていただきたいな、こういうふうに思っております。

 まず、我が国、農業は国の大もとだということを、国会議員たるもの全員がしっかりとわきまえなければいけない。都会の国会議員であろうが、地方選出の国会議員であろうが、いずれも同じであります。我が国は、古来、瑞穂の国と言われるように、農業そして農村が国の大もとだということをぜひとも認識しなきゃいけない。そして、産業として成り立つ農業という一面と、心のふるさととしての農業、この二つの重要なポイントをやはり我が国の指導者たる者は全員が理解していなければいけない、こういうふうに私は思うわけであります。もちろん、情熱を持って取り組んでいただきたい、こういうふうに思っております。そういう中で幾つか質問させていただきたい。

 まず、赤松大臣にお聞きしたいわけです。きょうは赤松大臣にすべてお聞きしますので、よろしくお願いいたします。

 我が国は、昭和四十六年に米の生産調整が開始されて以降、一貫して、需給ギャップを解消して価格の安定を図るために生産調整を行ってきたわけですけれども、赤松大臣はこれまでの生産調整政策についてはどのように総括をされているのか、お聞きしたいと思います。

赤松国務大臣 減反に限らず、農政全体でお答えをした方がいいと思うんですけれども、前政権、自民党中心の政権の中で、私は決して無為無策に来たというふうには思っていません。当時の政府あるいは与党の皆さん方も、よかれと思い、トータルでは何兆円というお金を農業の振興のために、あるいは農業の再生のためにということで、いろいろな施策、制度もつくりながらやってこられたと思います。

 しかし、現実の問題として、もう委員自身がおわかりのように、高齢化が進み、後継者はいない、耕作放棄地は三十九万ヘクタールに及び、農業者は十五年前と比べて収入は半分になっちゃった、もう農業だけでやっていくことさえ難しい。しかも、担い手、農業に従事する人たちの、これは地域によって多少違いますけれども、所によっては六〇%、六五%以上が兼業農家だったり高齢農家だったり、年金やあるいは出稼ぎのお金でもって農業所得と合わせて何とかやっているというところが現実問題として非常に多いということでございます。

 その意味で、減反政策についても、生産数量目標ということで私どもは今言っていますけれども、もちろん、そういう一つの国が定める方向なりは必要だけれども、しかしそれは、強制をして無理やりに全員参加でということはもう、やはりそういう時代ではないのではないか。

 ですから、今回の戸別所得補償制度についても、あくまでもこれは強制ではありません。入りたい人は自主的に進んで入ってください。ぜひ多くの皆さんに入っていただきたいと思います。しかし、もうおれは自由気ままにやるんだという人は、残念ですけれども、それも強制ではありませんから仕方ありませんねというのが、今回の私どもの農業政策の大転換をしようということに対する基本的な姿勢でございます。

金田分科員 そういう大臣に、昨年の十一月の二十六日から先般の一月に至る経緯について、私は確認をしたいな、こういうふうに思っております。

 要は、赤松大臣、昨年十一月の二十六日、大潟村でのごあいさつで、四十年間の政策転換の中で皆様に御迷惑をおかけした、大潟村の入村者も減反政策に従った者、意に反して別の道に進んだ者もいるだろうが、政権交代し時代が変わったとの発言を行っておられます。

 私は、これが今までの農政に対する大臣の言葉であったとするならば、政策というのは国民の信頼が何よりも大切なんですし、そしてこれから国の政策を転換してやっていくにしても、これまでの政策に従ってきた農業者がないがしろにされるような、そういうことが感じられるような大臣の発言であったとするならば、これから政府が行う施策に対しても信頼性を損なうことになってしまう。これは非常に重要なことだというふうに思うんですね。

 生産現場の農業者から見ますと、国の政策に従えば正直者はばかを見るんじゃないかとか、あるいは国の政策と反対のことを行った方が得なんじゃないかとか、そういう意見も、大臣のこの発言以来ずっと秋田では満ち満ちているのであります。

 そういう状況に対して、これからの農政を考えて、過去のことについて仮に御意見を言うのであれば、やはり広く一般農家あるいは減反に協力してきたすべての農家に対して温かくなされるべきではなかったのか、こういうふうに思いますが、その点、大臣のお考えを聞きたい。

赤松国務大臣 私が申し上げましたのは、そのときには、現地へ行って私自身の目で大潟村の実態を見てみたい、それは何も減反政策に反対してきた涌井さんたちのグループばかりじゃなくて、村長さんともお会いしましたし、その後、知事さんとも農林部長さんともお会いしましたし、また、前政権の減反政策に忠実に従ってこられたそういう農業者の方たちともお会いをしました。

 ただ、たまたまその涌井グループの人たちと一緒だったときに私が申し上げたのは、かつて日本の食糧難の中で、米の増産だと、国策として大潟村を、八郎潟を埋め立てて、そこでもって米の生産をやろうじゃないかといって全国から人を集めて、財産もみんな売り払ってそこに来た。ところが、そこで営農を始めたら、一年か二年で、いや、もう米は余っているから減反だ、もうつくるなと。しかし、もう財産まで売り払ってきて、そこへ来て、今さら、最初はつくれ、今度はもうつくるな、そんなことに従えるかと。

 これはどっちがいいという話ではなくて、そういう中で、残念なことに四十年間も、裁判闘争までして、しかも逮捕までされ、そしてまた、こんな小さな大潟村の中でほぼ真っ二つですから、隣同士仲よくしていた村民たちが反目し合って四十年間来たということは、いわゆる猫の目農政とは言いませんけれども、国の政策がその都度変わることによって、むしろこの大潟村の皆さん方は減反賛成派も反対派もそれに翻弄されてきたという意味で、これはもう前政権のことだから我々関係ないよなんという言い方は私はしません。それはもう、今の農政の責任者として、今まで農政の方針が変わることによって大変御迷惑をかけてきたということをおわびしたわけでございます。

 一方、記者会見で、例えば今まで減反政策に従って、米しかつくっちゃだめだといってそれに忠実に従ってやってきた人たちは、反対に米がどんどんどんどん勝手につくられちゃうものですから、米価だけががんと下がる、収入は一気に下がってしまう、そういう中でも文句を言わずに、腹には一物あったかもしれませんが、しかし少なくとも表向きでは文句も言わずずっとやってきた人たちには大変御迷惑もかけたということで、そういう方たちに対する感謝の気持ちも、これは繰り返し言っていますけれども、一月十九日の閣議後の記者会見でも、これはテレビ等にも出ましたので御理解をいただいたと思いますけれども、そういう方たちにもこれは感謝を申し上げているということでございまして、別に片方だけにどうこうといったことではありません。ぜひ御理解をいただきたいと思います。

金田分科員 そういうことで、おわびの言葉を述べたというふうにおっしゃるわけであります。

 やはり、今の農業の現状は厳しい、そういう中で農家の苦労は多いわけですし、農家の人たちは懸命に働いて、そして制度に乗っていこうという大変な努力をしているわけです。ですから、その農家の皆さん全員に温かいねぎらいの言葉、慈しみの言葉、誠意を持ってそのようにおっしゃっていただく、そのことをもう一度確認申し上げたいと思います。

赤松国務大臣 私どものそういう思い、願い、そしてまた、具体的な今度の農政の大転換ということで、経緯はいろいろきょうまであったと思いますけれども、結果的には、知事さん等のお骨折りもあり、あるいは率直にそれぞれの意見をぶつけ合うことによって、結果論としては両者が納得できる、わかった、この線でいこう、これからはみんな仲よく村が一つになってやっていこうというような結果になったのは大変うれしいことだと思っております。

 この秋田県における、特に大潟村における解決が、全国注目の地域だったものですから、その後の福島、東北地域あるいは関東地域、いろいろな地域に今大変いい影響、結果を与えておりまして、秋田と同じようにしっかりとこの制度を納得の上で理解をし、そして参加をしようというような動きが今全国的にも大変強まっているということは、改めてまた秋田県の皆さん方の、妥結に向けて一つになって頑張ろうという方向で決めていただいたことに感謝を申し上げたいというふうに思っております。

金田分科員 わかりやすく、はっきりそういうふうに……。

 大臣の言葉は、非常に厳しい、そして県民の心を逆なでする、そういう言葉が非常に多かったと思います。質問はいたしませんが、時間の関係で私の方から申し上げると、十二月八日のときに、もしペナルティーなるものを是正しないのであればもう戸別所得補償の政策は秋田県には提供しない、これは県民としては、皆、本当に農家を不安に陥れる、そういうおどしに聞こえたわけであります。

 同時に、それを受けて、私どもは調査団も派遣したり、あるいは大臣に見てもらいたくて公開質問状もお出ししたりしましたが、それを見ていないという返事を期限後にもらってみんながっくりきたり。とはいいながら、また一方で、県議会で超党派で、大臣の発言に対しまして決議がされておるわけですね。やはり、当時の状況というのは非常に大きな大きな、農家の皆さんや県民の皆さんに対して、大臣が本当に私たちの農業の現状をわかっていないのではないか、そういう不安を非常に駆り立てて与えた。

 これに対して、副大臣もいらっしゃいますのであれですが、当時、大臣のかわりにおっしゃった発言が、軽い気持ちで話したんだと思うというふうにおっしゃっておられます。同時に、民主党の国会議員さんが秋田の場合六人おりますが、その六人の方々がみんな、農林大臣には慎重に発言してもらいたいと記者会見しているのであります。そして、その決議案は、超党派で、この発言撤回を議会で決議されている。

 こういうことはどういうことかというと、やはり、米の配分の格差解消に対して国の対応が、言うことを聞かないんだったら所得補償の金は出さないぞ、さあどうする、そういうふうにトップダウンで秋田県に対して、県民に対して迫ったというふうに受けとめられているんですね。

 これは大変なことなんですよ。今の政権は地域主権とおっしゃるんだけれども、地域主権なんてどこ吹く風だ、冗談じゃないよ、今まさに中央集権の力を見せつけるんじゃないのかというふうに県民だれしもが思って本当に憤りを感じていた現状というのを、余り大臣に報告された方もいらっしゃらないだろうと思うので、私からきっちりこれは申し上げておかないと。国の大もとである農業を愛する農林大臣である者には、本当に、農家の人たちに対する温かいねぎらいの言葉、慈しみの言葉、誠意を持ってそういう言葉をかけていただける大臣であってほしい、心からそれを求めますので、反省を求めたいと思います。

 以上です。

 いいですか、次に行ってよろしいですか。何か御意見があれば。

赤松国務大臣 金田先生は宿舎も一緒で、私の人柄をよく御存じだと思いますが、私は、そういう中央集権的な、強権的な、おどし的な、そういうことを申し上げるようなタイプの男ではございません。むしろ、優し過ぎるんじゃないかといって怒られるぐらいで。

 私が申し上げたのは、ただ、御理解をいただきたい、この制度は今までと違って強制ではないんですよ、ぜひ全員の方に入っていただきたいけれども、しかしこれは強制じゃないので、どうしてもおれはこんな制度は嫌だ、従えないんだという方は入っていただかなくたって結構なんですよ、でも入った方がメリットはあるんじゃないですかねということは申し上げてまいりました。

 それからもう一つは、ぜひ、これを機に、四十年間、これは秋田だけではなくて全国そうですけれども、一方でまじめに生産数量を守っていらっしゃる方がいるにもかかわらず、勝手放題にやってきた。しかし、勝手放題、つくり放題やってきた人たちは、実は一番迷惑がかかっているのが生産数量を守ってきた人たち。減反に従ってきた人ほど、米価が下がれば大きな影響を受けて、一番迷惑をこうむっているわけですね。

 ですから、そういう勝手放題につくらせない。そのためには、そういう人たちも中に入ってもらわないと、引き込まないと制度が成功しないわけですから、そのためにペナルティーは科さない。ペナルティーは科さない、過去は問わないというのを大原則にしてやってきたものですから、最初からペナルティーはあるよ、おれの県だけはペナルティーかけてやるんだということを大臣として認めるわけにはいかないということで申し上げてきたということでございます。

 私の言の足らざる点があればおわびをしますけれども、趣旨はそういうことで、最終的にはすべての農家の皆さん方が御理解をいただいて、大潟村の場合にも九十数%の参加率で、過去四十年間農政に反対をし続けてきた人たちも、今度は積極的、前向きにこの制度に参加をしていただけるということで、わずか、あんなちっちゃな大潟村の造反組がいなくなっただけで、二十万俵お米が締まるんですね、少なくなる。需給が締まるんです。

 そういう結果が出ているということで、これは無理やりやったわけじゃなくて、最後はみんなが率直に意見を出し合って、今まで減反に賛成してきた人も反対してきた人も納得の上で数字を決めて、この数字でお互いにやっていこうということになったということ、このことだけはぜひ御理解をいただきたいというふうに思っております。

金田分科員 大臣が反省をされておられるということですので、この点については、やはり、例えば県に対して国からの方針というのが示されていない段階で、米政策推進協議会というところで粛々と進めている作業も一転してもとへ戻し、そして大臣の、言ってみれば、県民だれしもおどしとしか受けとめなかったんですが、そういう発言でひっくり返されたという認識がある。

 これに対しては、非常に言葉が足らなかった、あるいは今いろいろな形での反省の弁はありましたけれども、そういうことをこれからは絶対にしてほしくない、そういうことをまず申し上げて、時間の関係で進めたいと思います。

 生産現場では需給調整は緩むというふうに見ているんですね。ところが、総理も大臣も需給は締まるというふうに言っているんですけれども、私は、これに対しては非常に、不安な農家が今多い現状につきましては、やはり出口対策というものをしっかりしてもらわなければいけない。

 同時に、定額部分が支払われることによって、相対取引で安く買いたたかれる可能性があったり、あるいは、集荷円滑化対策を実施しないとしているわけですけれども、では過剰米対策についてはどうするんだとか、あるいは二兆五千億を割り込んだ農業予算。

 私は、戸別所得補償というのは別枠でやるべきだったと思うんですよ。何で別枠でできなかったんだと。それを農業予算の中に入れて、二兆五千億割り込んで、二兆四千五百億になって、そして三十四年ぶりに農業予算が少なくなった。これで立派な予算だろうと言われても、とんでもないなというふうにみんな思っていますよ。

 だから、そういう思いを持ったときに、やはり二兆五千億割り込んで、それでその中に戸別所得補償対策の予算が入っているんだとなった場合に、これは将来的に予算がどうなるかわからない状況の中で、やはり参加者がふえてくれば個々の配分量は減ってくるし、非常にこれから先に対する不安というのが出てくると思います。

 そういうところをしっかりと、農林水産委員会で議論していきますけれども、皆様の方で、農林省の方で、そして大臣の方で検討して説明していただかないと、いやいや、この制度が入れば締まるんだ、締まるんだと言われて、はあ、そうですねというふうな現状には今はないということだけは皆さんにお話をしなきゃいけないと思いますが、どうですか。

赤松国務大臣 去年までの例で申し上げると、確かに米はだぶついているわけですから、三十万トンから五十万トンだぶついている。そうすると、だぶついているんですから、買いたたかれて値段が安くなって売らざるを得ないということもあるんですけれども、今度の場合は、先ほど大潟村の例で申し上げましたけれども、もともと一〇〇%つくっていた人たちが、今度はほぼ半分ぐらいに生産を落としてしまうわけです。

 それからもう一つは、今まで造反組の分を上乗せして余分につくっていた人たちも若干下がりますので、そういう意味でいうと、両方ともが下がるということで、さっきも申し上げましたが、大潟村だけで俵数にして二十万俵ですから、一万二千トンぐらいだと思いますが、それぐらいがあんな小さなところでさえ減っていく。これは全国的にそういう状況が起こってきますから、少なくとも、今、毎年毎年三十万トンだ、五十万トンだと余ってきたお米というのは、もうそんなだぶつかなくなります。

 ですから、それは、仲買業者は買いたたきに来るかもしれませんけれども、わざわざ高く売れるものを安く売るなんということはあり得ないことですし、また、今度の制度については、定額部分、変動部分、ダブルで農業所得を補償しているわけですから、そういう意味でいえば、たたき売りみたいなことにはならないというふうに思っております。

 それから、予算のことですが、確かに、御指摘のとおり、前年度比でいうと、農水予算は九五・八%に減りました。しかし、非公共については、戸別所得補償制度が大きな割合を占めるんですけれども、一一四・七%ということで、昭和六十年度以来最高の額になったといって、私どものこうした政策的な訴えがきちっとお認めをいただいたというふうに思っております。

金田分科員 過剰米対策をしっかりやる、出口対策をしっかりやるということを、早く安心の材料としてきっちり詰めてもらわなきゃいけない。まあ、農林水産委員会でやります。

 ただ、今の予算について言いますと、ふえているものだけ取り上げて、非公共の一般が一四%ふえているからといったって、農林予算全体が三十四年前の水準。そして、その水準が公共事業の削減によって行われた。

 しかし、その公共事業とは何であるか。農、林、水が、去年は一兆あったのが、ことしは五千億でしかない。交付金用に一千五百億用意したものを入れれば六千五百億ですけれども、特に、その中で農も林も今大事なんです。

 農でいえば、土地改良はかなめです。この土地改良予算をコンクリートから人への考え方で処理してもらっては困るんです。なぜか。コンクリートじゃないんです。土地改良予算がコンクリートだという人は、農業をわかっていない人だというふうに思っております。

 土なんです。土も人も大切なんです。だから、土である農業の構造政策をきちっとやっていかなきゃいけない。その部分を、言葉一つで、民主党の皆さんが、コンクリートに入れましたよなんていったら、これは農業のことを本当に理解していないということにつながりますので、これは絶対に補正予算を組むことになると私は思うんですね。補正予算を組むことになることが今わかっているんだったら、予算を修正しなきゃだめなんですよ。当初予算を修正しなきゃいけない。

 こういう三十数%に、三分の一にした査定を何というか御存じでしょう。必要でないんですか。新規着工できませんよ。合意を取りつけて、そして物すごく苦労した上でこの土地改良の事業というのは始まる。一人一人の合意を取りつける、そして、いつになったらこの水田が使える、農業に資する、そういうことを考えたときに、それをもう本当に切ってしまえ、三分の二は要らないよ、もうとんでもない話で、こういうのを真空切りというんですよ。予算査定の言葉で真空切りというんです。昔、真空切りというのを知っているでしょう。この真空切りをするような予算編成というのは絶対だめです。

 やはり積み上げて、どうしてもこれが必要だ、地域経済に効果があるんだとなったときはどの程度に落とすことができるか、そういう議論を私はやったと思いません。必ず補正予算に至ると思いますが、補正予算は今の段階で言うわけにいかないという答弁になるでしょうけれども、もし補正予算を組むようなことになったら当初予算を今のうちに変えろ、これは私の意見です。どうですか。

赤松国務大臣 現在のところ、全くそのようなことは考えておりません。

金田分科員 現在のところというのがくせ者なんです。だから、初めから補正で手当てしなければいけないような予算を組むのを真空切りというんです。こういう予算で農林予算が四・二%減る。そして、その中には非公共がふえたというけれども、その非公共は戸別所得補償でふえたんでしょう。だから、そういう意味で今回のこの農林予算というのは私は形が非常に悪い。

 今私が申し上げたいことは、要するに、林業予算もそうです。林業は、路網の整備とか作業道の整備をして間伐を促進する。昔は間伐を五齢級、六齢級あたりでやっていた。今は九齢級でやっているんです。九齢級でも間伐ですよ。だから、どれだけ今大変な事務量があるかということにつながるんです。そういうときに、路網の整備に充てる予算も減っている。公共事業予算は減っているんですよ。こういう状況で、例えば国産材を将来成長戦略で五〇%に持っていくなんてちゃんちゃらおかしい。

 そういうことを考えて、時間の関係で農林水産委員会に譲るしかないなと思いますが、私は、要するに、予算や税をしっかりと根拠のある形でやはり積み上げて、そしてつくっていただきたい。例えば、メッセージ的に、あるいは政治利用や選挙利用の形で予算をいろいろな形で左右したりしないでほしい。この思いが強いものですから、この続きは農林水産委員会でやらせていただきたいと思います。

 ところで、大臣もそう考えていると思いますから最後に質問しますが、食と農というのは国の財産であって、心であって、哲学であって、国の大もとなんだということを国民全体のコンセンサスとしてつくり上げる仕事、これが農林大臣のお仕事だ、私はこういうふうに思っています。

 政治家である以上、それはだれしもがわかっていなきゃいけないことでありまして、先ほど言いました、産業として成り立つ農業、心のふるさととしての農業、だからその思いが必ずすべての農家に伝わるような農政をしていただきたい、本当にそうお願いをする次第であります。もしそれが国のコンセンサスにならない場合は、国民全体のコンセンサスにならない場合は、国は滅びると思います。

 ですから、そこを、どんなに都会派の人が言おうが、どんなに政治的に予算をつくろうとしたり税をつくろうとしたりする人が言おうが、この農業、農村を守るという決意を、農林省の職員はもちろんですが、そのリーダーたる大臣はしっかりと持っていただきたい、そして誠意を持って農家の人たちを慈しんでいただきたい、こう思います。

 一言答えを聞いて、私は終わります。

赤松国務大臣 委員御指摘のように、私自身も、農林水産大臣としての誇りを持って、ぜひ農と地域の再生のために全力を挙げて頑張らせていただきたいと思います。また、委員各位の御指導をよろしくお願いして、決意にかえます。

金田分科員 ありがとうございました。

山口主査 これにて金田勝年君の質疑は終了いたしました。

 次に、坂本哲志君。

坂本分科員 自由民主党の坂本哲志でございます。

 私は、これまで自民党の農業通の方と選挙をやってまいりました。無所属でやってまいりました。ですから、自民党農政に対して私なりのマニフェストというのをつくってまいりました。前回の昨年の選挙のときも、党のマニフェストとは別に、私なりの農業のマニフェストをつくったつもりであります。

 その中には、ヨーロッパ型の所得補償、こういった問題を私自身も入れておりました。それは、米に、あるいは酪農に、こういったものについては所得補償がある程度できるだろうというようなことで、やはり、価格支持制度も含めて、新たな農業の、農政の展開をしていかなければならない時期に来ているというふうに私は思います。

 しかし、民主党さんの、あるいは現政権の戸別所得補償制度が出てまいりまして、私が考えているものと、あるいはこれから日本がやらなければならない農政の姿とやはり違うな、これは大変なことを招くかもしれないなということを最近特に思います。

 ですから、きょうはまず初めに、今、畜産関連の価格及び関連対策や、また、現政権になりましてからの米の所得補償制度、それぞれにいろいろな論議があるところでありますけれども、少し基本的な立場から、もっと大きな意味から日本の農政のあり方をどうすればいいかということを考え、そして、大臣にそのお考えをお伺いいたしたいと思います。

 御存じのように、南北に長い国です。一作のところもあれば二毛作のところもあります。九州、北海道、あるいは沖縄、それぞれに違います。水田があり畑作があります。水田にも、湿田があり、そしてまた乾田があります。中山間地ももちろんあります。畑作におきましても、施設園芸があり、そして露地物があります。私のところの畑作は、熊本の阿蘇から吹く風が強いものですから、どうしても施設園芸ができません。地面に潜りますゴボウ、大根、カンショ、こういったものが中心であります。そのためのブランド化というのをやっております。

 それと同時にまた、酪農あるいは畜産、こういった非常に多様な農業をいかにこの狭い日本の中で展開していくのかというのが一番大切なことだと思いますけれども、今はどうしても数字の論議になってしまって、将来の日本の農業のあり方、農政の姿、これが見えません。

 と同時に、農業だけではなくて、日本の場合には、農業と同時に農村集落というのがあります。農業の姿の形でまたその集落の形が変わってくる、そして生活スタイルも変わってくる。それが国づくりに大きな影響を及ぼしていくということがあります。

 そういったことをもろもろ考えると、農業、農政は本当に哲学的で、奥行きの深いものである。ただ単に数字だけでお互いちょうちょうはっしの論戦をすべきものでもないというふうに私自身は思いますけれども、大臣が考えていらっしゃる日本のあるべき農政の姿、それぞれの分野で、あるいはそれぞれの作物で、あるいはそれぞれの地域でどういうような農政というものを目指して、そして今ここからスタートされようとしているのか、そのことをまずお伺いいたしたいと思います。

赤松国務大臣 例えば自給率一つとりましても、私どもがちょうど高校生ぐらいのころですか、昭和四十年には食料自給率は七三%でした。それが今はもう四一%ということになっており、御存じのとおり、OECDの中でも最下位のグループに入っているということで、これから世界の状況を見ても、人口がふえる、世界の食料需給がますます逼迫をしてくる。少なくとも、我が国の国民の安心のためにも半分ぐらいの食料自給率、五〇―六〇%ぐらいはこれは何としても確保していかなければいけないということでございます。

 その意味で、今、地域で産業と一般的に呼べるものは、もう本当に農業しかないんですね。第一次産業の中で、本当にそういう中核でしっかりと産業として成り立っていかせられるような農業に仕上げていきたい。平均年齢六十五歳、後継者がいない、所得は十五年前の半分、それではもう農業が成り立つわけがありませんから、その意味で、しっかりとまじめに意欲を持ってやれば農業で食っていけるというふうな仕組みをつくっていくことが私どもの今の責任だと思っております。

 また一方、食の安全の問題、それからまた環境の問題、地域の水、緑、環境を守っていくためにも、やはり農業、林業をしっかりと支えていかないといけないというふうに今思っておりまして、都市の人たちにとっても消費者にとっても、農業問題というのは国民全体の問題という意味で極めて重要な課題だというふうに思っております。

坂本分科員 今、自給率の問題と、そして産業として成り立つということを言われました。

 自給率だけにとらわれても、これは非常に考え違いをするおそれがあります。七三%、以前はやはりそうだったでしょう。米とそれから唐芋と、あるいは大根と漬物とというようなことであれば、当然自給率は上がっていきます。昭和三十年代、この前も言いましたけれども、農業基本法ができて、農業の所得が上がるためには、酪農や畜産、選択的拡大の分野だということで振興してまいりました。そのことは、自給率とはまた別に、自給率を低める結果にも一方ではなりました。配合飼料の輸入、こういったものを含めて、結果として自給率を高める方向には行かなかった。

 だから、どういう自給率が一番適正なのかということは、これからもっと考えていかなければいけない問題だと思います。

 それから、産業として成り立つ、農業として飯を食っていけるというようなことを言われました。しかし、今の政権が出された米の戸別所得補償を見る限り、産業としてやっていける、あるいは所得を安定して確保できる、そういう方向にあるとは思えません。

 私は、農業で大切なことは、一つは、地域の特性をしっかりとやはり把握して、その地域に合った農業をすること、そして二つ目は、後継者を育成確保すること、そして三つ目に、そのために安定的な経営対策、所得を得ることができるということであると思います。今は、その経営所得、所得だけに目を奪われて、地域の特性あるいは後継者、こういった問題に目が向いていないというふうに思っております。

 一番の課題は、今の農政を展開していった場合に果たして後継者が育つかどうか、米の戸別所得補償にしても。後継者の定義あるいは後継者像の範囲、これをどういうふうにこれからとらえていかれるおつもりですか。お伺いいたしたいと思います。

赤松国務大臣 私どもは、日本の地域そして農業を支えているのは、小規模であれ、条件の悪い中山間地と言われるようなところも含めて、そういう人たちも含めて日本の農業を支えていただいていると思っております。

 一方、集落営農といいますか、あるいは農業法人、そういうところが積極的に、今度の制度でも全国統一でもって画一的な基準をつくって、そして、頑張れば頑張るほど利益が上がっていく。土地を集約し、協業化し、あるいは機械化を進めていけば、コストの削減になって、それが自分の収入増につながっていく。意欲のある担い手たちが頑張れば頑張るほど収入がどんどんとふえていくという仕組みと同時並行でやはりやっていかないと、これはうまくいかないだろうと。

 それで、さっき後継者という話もありましたが、安定的農業で収入が得られる、ちゃんと暮らしていける、結婚もして子供も養うことができる、そういう条件がなければ自分の子供や孫に後を継げなんということを言えるわけがないわけで、その意味で私どもは、ちゃんとまじめに一生懸命に頑張れば農業で食っていけるという所得制度をやはりつくっていかないと、これは幾ら若い人に来い、来いと言ったって、なかなか農業には、あるいは農村には来てくれないということだと思っております。

 それから、一つは、リタイアした人たちが今農業を盛んにやってもらっています。これも大変いいことだと思います。しかし、そういう人では本当の意味での農業の担い手にならないんです。やはり、若い人たちが本当に農業法人その他に入ってちゃんと技術を学ぶ。農業というのはそんな甘いものじゃないんです。もっとしっかりした知識なり技術なりを習得した上で、そして、今度はみずから営農者として独立をしていくという形が一番理想的な形だし、これからもやはり日本の農業が、あるいは農家が進むべき道ではないかというふうに思っております。

坂本分科員 ちょっと漠然的でよくわからないんです。

 二〇〇五年の食料・農業・農村基本計画の中では、担い手の絞り込みと、そして支援の集中化というのが出ました。今の政策を見る限り、どういう像を、どういう担い手を考えていらっしゃるのか、絞り込むお考えがあるのかどうか、これをお聞かせいただきたいと思います。具体的に、こういうことでということでお聞かせいただきたいと思います。

山田副大臣 確かに、これまでの自民党政権下においては、担い手対策、担い手対策、そしていわゆる大規模化、そういう専業農家の育成、そういったものを盛んにやってきましたが、結果としてすべて不成功に終わった、うまくいかなかったと私は思っております。

 それで、どうしてうまくいかなかったのか。やはり、先ほど赤松大臣が答弁したように、本当の担い手は農業所得で食べていける、そういう政策、いわゆる戸別所得補償制度をとらなかったということにまず最大の理由があると思っております。

 私どもは今回、今、集中と絞り込みというお話がありましたが、その対象を絞り込みすることはいたしません。意欲のある農家であればだれでも、若い人でも定年退職者でも、すべての農業に参加し得る人に対してそれなりの所得補償をし、それなりの担い手としてこれから農業をやっていただこう、そう思っているところなんです。

 殊に、最近私が現場を回ってみまして気づいたことが一つあります。それは、今までおやじの代は、幾ら忙しくても、二十四時間というわけじゃありませんが、朝早くから夜遅くまで働いても、それはそれでよかった。しかし、我々若い農業後継者にとっては、週に二日でも三日でもいい、完全な休みが欲しい。いわゆるヘルパー制度、そういったものにこそきちんとした手当て、いわゆる助成制度。そういったヘルパーになろうとする人も若い人で、農業を学んでいく。そういう人たちもまたみずから農業に携わっていく。雇用も生まれてくる。そういう形で、若い担い手の人たちにとっては、週に一日、月に四日ぐらい完全な休みがとれるような、そういう農業形態を我々が制度上つくり上げていくことも一つの担い手対策じゃないか。

 我々は、合理化、大企業化、そして専業農家絞り込み、そうじゃなくて、本当に幅広くいろいろな形で、農業の担い手、若手、そういったものの育成に取り組んでいきたい、そう考えております。

坂本分科員 幅広くということで本当に担い手ができるのかな。そして、足腰の強い農業とこれは鳩山総理も言われておりましたけれども、果たしてそれで足腰の強い農業ができるのかなというふうに私自身は思います。

 実は自民党、選ばれたというのか、専業農家そして担い手を中心にするというようなことで方針としては決めていたんです。しかし、一昨年の参議院選挙で、弱小農家を救えという民主党のマニフェスト、これに一敗地にまみれて、そして結局先祖返りしてしまったんですね。せっかく食料・農業・農村基本法ができて、そして日本のこれからの農業を、担い手を中心にしてそれをさまざまな方々がサポートして、食料政策として、産業政策として、地域政策としてやっていくというちょうど踏み出したばかりのときにその選挙があって、そのことによってまたもとに戻ってしまった。これは、自民党にとっても日本の農政にとっても私は大変なマイナスだと思うのです。

 ですから、今からでも遅くないから、自民党の中で、やはり担い手をもう一回絞り込みましょう、そして、すべてに所得補償することが担い手をつくり上げること、足腰の強い農業をつくり上げることにはならないんだ、やはり、使命感を持って、誇りを持って選ばれた農家が、みずからの集落のために、あるいは地域のために、あるいは食料政策を考えながらやる、これが本来の担い手であるので、そういうところをやはりもっと党としても強調しましょうというふうに言っているわけですけれども、これは現政権にも私はそういうことをぜひお願いしたいと思いますけれども、いかがですか。

 それからもう一つ、時間の問題もありますので。担い手の一つに、今、大臣だったですか、法人ということを言われました。これは企業法人のことを言われているんでしょうか。それとも、企業的な農業法人のことを言われているんでしょうか。それとも、家族農家が自分たちの組織を法人化する、そういった法人のことを言われているんでしょうか。漠然と農業を支える法人化といっても非常に考え方で違いがありますので、ここはひとつはっきりさせてお答えいただきたいと思います。

赤松国務大臣 農業法人のことは私が申し上げたので、私から答えた方がいいと思いますので申し上げますが、今、各企業が企業として農業法人をつくり、積極的にそこに参加をしてやっておられる例もございます。そこにはタイムレコーダーも入れ、いわゆる工場労働者と同じような形での運営を、イオンを初め、あるいは一部建設ゼネコンあたりがやりかけている例もございます。

 ただ、そればかりではなくて、今委員が御指摘のように、それぞれの小さな農家が一つの法人をつくって土地を集積し、そしてまた協業化し、機械化もその方がやりやすいという意味で新たな法人を設立してという場合もありますし、もしそういう方向であれば、それはそれでしっかりと私どもも応援をしていきたいし、いろいろな形態を認めていくということになると思います。

佐々木大臣政務官 坂本委員の御指摘の担い手でありますが、基本的には、今、食料・農業・農村政策審議会の基本計画の企画部会でも御論議を実はいただいてございます。

 実は、この担い手というのは、定義があるようでなかった。今もないですけれども、かつてもなかったと思うんですね。担い手って一体だれを指して言っているのかというのは、割とはっきりしていなかった概念だと思うんです。例えば、では認定農業者が担い手なのかというと、そこに限定されているわけでもなく、いろいろな事業名で担い手という言葉がたくさん使われているけれども、その対象者は必ずしも同じではなかったというふうに思っています。

 もう一つ、選択と集中で担い手に政策的に絞り込むといった場合に、それは集落の関係も私は重要に考えていかなきゃいけないと思うんですよ。絞り込むということは、その集落の人口は、農村人口が減っていくということを裏返しすればそういうことにもなっていく。そこのところをやはりしっかり考えていかなきゃいけないと思うんですね。

 先ほど大臣からも答弁させていただきましたが、今度の戸別所得補償というのは、やる気のある人たちのところに緩やかな構造政策としての集中をしていくシステムでありますから、それは自然減の分は仕方がないんですけれども、無理に担い手にここに集中をしていくというやり方が本当に正しいのかどうかというのは、我々もしっかり論議をしていかなきゃいけないと思っていますが、今度の基本計画の中では、その辺にもしっかりと書き込みたいというふうに思っております。今、論議をさせていただいている最中です。

坂本分科員 もう少しこの論議を続けさせていただきますけれども、戸別所得補償制度で徐々に、自動的にといいますか、それぞれやる気のある農家が生まれてくるであろう。それはそれで結構なんですけれども、一番最初に言いましたように、日本農業のあるべき姿があって、そして、やはり政策は誘導すべき政策でなければならないというふうに思うんです。百八十万農家にすべて戸別に所得補償をして、そして、そこから本当に担い手と言われる人たちが出てくるのかどうか、本当に米需給が引き締まるのかどうか、そういったことが全く政策誘導として見えてきません。

 ですから私は、担い手という概念、今政務官も言われましたけれども、もう少しはっきりとらえていかなければいけないと思います。

 一つは、やはり家族経営、これを、認定農家でもいいですよ、家族経営として家族が法人化してもいい、家族経営としてしっかりやっていらっしゃる方はいらっしゃいます。米でも二十町歩、三十町歩つくる。あるいは花卉でも、あるいは米、麦でも、いろいろなものをつくってやっている方がいらっしゃる。

 そしてもう一つは、やはり集落営農。集落営農も、ただ単に集落営農ということではなくて、きちんと法人化した集落営農、これが大切だと思います。

 そして、この二つと、大臣が言われた企業が農業に参入する法人経営、これは分けて考えなければいけないと私は思います。これを一緒にしてしまうと、集落の機能なり、あるいは、農村の持っているさまざまなこれまでの風土、歴史、文化も含めて大変な混乱に陥る可能性があります。ここはやはり慎重にやっていくべきであろうと思っております。

 私のところでも、九州の大きな電力会社が阿蘇の方の農業に参入しようということで、自分たちはもうけなくてもいいんだ、農業に使う資材とかあるいは電力とか、そういうので少しもうけが出ればいいんだ、農業そのものは地域の農協と、JAと一緒になってやっていくんだというようなことで、エコ室というものも設けられていろいろなことを今挑戦されようとしておられますけれども、そういう農業への参入というのはまた別枠で私は考えていかなければいけないと思うんです。

 その中で、今言いました家族経営そして集落営農、これをやはり重視するべきだと思います。

 その中で集落営農というのは、私のところは平坦地の、そして米作地帯でありますので、米、麦、そして大豆が中心であります。小学校単位で七つか八つ集落がありますけれども、その中で二つの集落が株式会社として集落営農を組織しております。四十町歩つくっております。そして、構成人員が四十人です。昨年、六千八百万円の粗収入を上げました。歳出は六千二百万円ほどでありましたので、都合六百万円ぐらいの黒字ということです。五百万円を積み立てました。そして、歳出の六千二百万円のうちの三千万円は人件費であります。これは、地域の方々が出た作業代、オペレーター、こういったものでありますので、事実上の地域の方々の収入になり、そして品代も入ってくる。

 やはり、こういう組織化された集落の中で、一生懸命なリーダーがいて、法人化して、そして一元管理化された集落営農というのが本当に私はこれから大切だと思いますけれども、それを指導していこうというところがないんです。行政は非常に弱い。市町村の行政、農政担当というのは非常に弱い。かといって、JAに、農協にそれができるかというと、そうでもない。

 私は、この集落営農についてもっと力を入れて、その集落営農を大規模に、三つ、四つ、五つ、六つの集落が一緒になって集落営農を組織するようなそういう体制に持っていかなければいけないというふうに思いますけれども、それに対しての御答弁をお願いいたしたいと思います。

山田副大臣 坂本委員がおっしゃっているその集落営農については、集落によっては、先ほども坂本委員が申されましたように、収入も上げている。そして、その集落そのものが生産法人となってその集落の維持にきちんと果たしている役割というのを幾つも私どもも見てまいりましたし、集落営農についてはそれなりに評価させていただいておりますし、これから先も集落営農をしっかり頑張っていただきたいと思っております。

 ところで、考えてみますと、先ほど家族による農業とおっしゃっていましたが、家族による農業形態というのも非常に大切でありますが、実際には、兼業農家、いわゆるお母ちゃんがスーパーのレジに働きに行っているとか、あるいはお父ちゃんがタクシーの運転手をしながら、それで先祖からの田畑を耕してきた。いわゆる今の日本の農業の実態を担っているのは、自給率を維持しているのは、むしろ兼業農家なんです。その兼業農家が日本の農業を支えているのに、いわゆる四町歩、四ヘクタール以上じゃないと、あるいは認定農家じゃないとというような制限をつけていくことはおかしいんじゃないのか。

 やはりその兼業農家の中からでも、今回、所得補償は、面積当たり、十アール当たり一万五千円という形で出ますから、余計面積を耕した方がそれだけ利益になるわけです。そうなって、余計収量があればそれだけ利益になるわけです。そうなれば、そこに、これから農業をやっていって、専業として本当にやっていけるような形も生まれてくるんじゃないか。

 また一方、もう一つの法人の方ですが、今、私の田舎で、ドールというアメリカの会社が農業生産法人をつくってアスパラの栽培をやっております。それはそれで二十人ぐらいの人が今働いておりますが、やはり田舎にとって雇用の確保には、若い人たちが高校を卒業してそこで今農業で頑張っている。そういう、企業が生産法人をつくりながらやっていくということもそれなりに意味があるんじゃないか。

 私どもは、そういう意味で本当に、農業を、大きくは、先ほど大臣が言ったような産業として育成していくという意味では、今坂本委員が考えていることとそう変わらないと思っております。

坂本分科員 兼業の位置づけというのはやはり重要で大切だろうと思います。これを私たちはないがしろにしろと言っているわけではありません。今私たちが考えている所得補償制度というのは、担い手を中心に、専業を中心に、そして兼業については、多面的機能という観点から、どれだけ多面的機能に寄与しているかというようなことで所得補償を考えたらどうかというようなことでアプローチを試みているところであります。

 兼業農家、本当に支えているのはそうでありますけれども、先ほど、大潟村あたりは生産調整で引き締まるかもしれない。しかし、これまで生産調整に参加していた小規模の二十アール、三十アール農家が、では、ほとんど自分でつくりますよということになった場合には、こういう方々が自由につくることで米余りが出てくるということは十分私は考えられると思います、兼業農家は非常に多いわけですので。

 ですからここは、兼業農家の位置づけはやはり慎重にしっかりとしていかなければいけないと思いますし、今、山田副大臣が言われました企業の参入について、雇用の場として地域としては非常に喜ばしいところもありますけれども、やはり長い目で見た場合に、農村集落や農村のあり方がどうかということを考えたときには、そのお互いのコンセンサスというのを十分にとった上でやらないと、アメリカの企業が五島あるいは対馬へ入ってきて、そして、一時的にはいいけれども最終的にはということをやはり私は心配しますので、これはぜひ慎重にやっていただきたいと思っております。

 最後に、畜産、酪農価格関連対策についてお伺いいたします。

 本当に大臣、副大臣、お疲れさまでございました。今回の価格改定、酪農を除いては、私個人としてはよかったな、まあまあだなというふうに思っております。特に赤牛に対しては御配慮をいただきまして、繁殖経営の新事業発動基準、三十五万円を確保していただきました。しかし、それに比べると黒の三十八万というのは、まあこれは財源的な問題もあるでしょうけれども、やはり、コストとして四十万というのが出ているわけですので、四十万の発動基準をすべきではなかったかなというふうに思います。それは一点、お考えを聞かせていただきたいと思います。

 それと、今回、私たちの赤牛の生産農家としてはよかったんですけれども、ただ、これをずっと続けていけば、将来的に非常にいびつな形になりはしないかなという心配があります。

 といいますのは、コストと、それから、全国平均の四分の三を子牛の場合には価格補償するわけでありますので、四十万、五十万で売れる農家というのは、非常にほかが安い方がいいんですね。全国平均が安い方がいいわけです。ですから、非常にブランド化した、特定した一部の優良農家と、一般の農家、そしてその農家はやはり買いたたかれていく、そういうふうに思うんですよ。ですから、ますます一部の一ブランド化の畜産農家と多くの畜産農家の格差が開いてきやしないか。

 それと、市場におきましても、対馬の市場あたりは非常に小さい市場であります。赤牛を熊本から買いに行きます。二業者か三業者しかありません。これがもし談合でもされれば子牛の価格というのは低値どまりするわけでして、非常にやはりそこはいろいろな形態、いろいろなものが突発的に出てくるだろうと思いますので、そこはこの一年十分見きわめながら、どういう傾向にこの畜産市場が動くのか、あるいは畜産農家が全体的に向上することになるのかどうか、推移を見守っていただきたいと思いますが、将来のことあるいは今回のことについての御答弁を一言、山田副大臣の方からお願いします。

山田副大臣 赤牛についての対策は喜んでいただいてよかったと思っていますが、確かに対馬でも赤牛をやっていて、熊本の坂本さんのところの地域が買いに行って肥育しているわけですが、確かにわずかな量しか生産できていませんし、小さな農家で大変だということはよくわかっております。

 でも、そうしながらも、今回、本当に肉用子牛については三十八万、黒牛について価格設定いたしましたが、これは、三段階で今までやってきましたが、実際に全国平均で払われている金額は三十六万そこそこでした。という意味で、三十八万にしたということは二万円アップで、これまでは、悪いと言ったらおかしいんですが、質のよくない牛をつくればその分だけ価格が補てんされて、余りいい牛をつくらない農家の方が恵まれておって、いい牛をつくった農家はなかなかその所得が補てんされなかったということがあるんですが、今回は、例えば差額の二万円については、四十万の牛でも二万円もらえるというふうに、いわば子牛の生産農家にとって、いい牛をつくればつくるほど励みになるという制度にもなったんじゃないか、そう考えておりまして、ぜひ今回、そういう方向でいい子牛をさらに余計努力してつくってもらえるような、そういう形にやっていければと思っております。

 酪農については評価いただけなかったようですが、酪農そのものは、今、酪農についての所得補償をということもありますけれども、生乳について、今現在は生産費よりも販売価格が下回っている、生産費の方が上に行っているという状況ではないんじゃなかろうか、そう考えておりまして、むしろ加工原料乳について、チーズ、これについては前年よりも思い切って予算を確保させていただいておりまして、ことし、酪農家全体の手取り額は去年を下回ることはない、そう私は確信いたしているところでして、畜産等についても、来年度所得補償の本格実施の際にもう一度、政務三役、赤松大臣のもと我々検討させていただきたい、そう考えておるところです。

坂本分科員 最後に、二つだけ私の心配な点を御報告して、終わりたいと思います。

 一つは変動部分で、これは米も畜産も一緒です。要するに、コスト補償部分でだんだんこれから安く買いたたかれたりすれば、開いてまいります。この財源が将来的にどうなるのかな、今の制度が持続できるのかなというような気がいたします。それが一つ。

 もう一つは、今言いました一部のブランド米とか一部のブランド牛とかこういったものだけが上に出てきて、多くの農家、多くの米作農家あるいは畜産農家、こういったところが非常に厳しくなりはしないか、格差がこれまで以上に一部と多くの農家との差になってきやしないかという心配がありますので、ここはしっかりと政府の方では見ていただきたいと思います。

 終わります。

山口主査 これにて坂本哲志君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして農林水産省所管についての質疑は終了いたしました。

 これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。

 分科員各位の御協力によりまして、本分科会の議事を滞りなく終了することができましたことに厚く御礼を申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午後零時九分散会


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