衆議院

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第1号 平成27年3月10日(火曜日)

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本分科会は平成二十七年三月五日(木曜日)委員会において、設置することに決した。

三月九日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      石原 宏高君    小倉 將信君

      小池百合子君    鈴木 俊一君

      階   猛君    重徳 和彦君

      中野 洋昌君

三月九日

 石原宏高君が委員長の指名で、主査に選任された。

平成二十七年三月十日(火曜日)

    午前八時開議

 出席分科員

   主査 石原 宏高君

      池田 道孝君    岩田 和親君

      小倉 將信君    加藤 寛治君

      小池百合子君    鈴木 俊一君

      藤井比早之君    前田 一男君

      牧島かれん君    渡辺 孝一君

      菊田真紀子君    階   猛君

      中根 康浩君    福田 昭夫君

      井出 庸生君    太田 和美君

      重徳 和彦君    鈴木 義弘君

      横山 博幸君    輿水 恵一君

      中野 洋昌君

   兼務 小山 展弘君 兼務 後藤 祐一君

   兼務 鷲尾英一郎君 兼務 濱村  進君

   兼務 田村 貴昭君 兼務 藤野 保史君

    …………………………………

   農林水産大臣       林  芳正君

   環境大臣         望月 義夫君

   農林水産副大臣      あべ 俊子君

   農林水産副大臣      小泉 昭男君

   環境副大臣        北村 茂男君

   環境副大臣        小里 泰弘君

   農林水産大臣政務官    佐藤 英道君

   農林水産大臣政務官    中川 郁子君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  澁谷 和久君

   政府参考人

   (内閣府地方創生推進室室長代理)         富屋誠一郎君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 島根  悟君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 上冨 敏伸君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 松村 武人君

   政府参考人

   (国税庁課税部長)    藤田 博一君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           大西 康之君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           中山 峰孝君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       三宅  智君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房長) 佐藤 一雄君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         今城 健晴君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房参事官)           金丸 康夫君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           小風  茂君

   政府参考人

   (農林水産省食料産業局長)            櫻庭 英悦君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  松島 浩道君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  奥原 正明君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            三浦  進君

   政府参考人

   (農林水産技術会議事務局長)           西郷 正道君

   政府参考人

   (林野庁長官)      今井  敏君

   政府参考人

   (水産庁長官)      本川 一善君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           田村  計君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 小川 晃範君

   政府参考人

   (環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長)   鎌形 浩史君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局環境保健部長)       北島 智子君

   政府参考人

   (環境省水・大気環境局長)            三好 信俊君

   政府参考人

   (環境省自然環境局長)  塚本 瑞天君

   農林水産委員会専門員   奥井 啓史君

   予算委員会専門員     石崎 貴俊君

    ―――――――――――――

分科員の異動

三月十日

 辞任         補欠選任

  小池百合子君     岩田 和親君

  鈴木 俊一君     渡辺 孝一君

  階   猛君     福田 昭夫君

  重徳 和彦君     丸山 穂高君

  中野 洋昌君     輿水 恵一君

同日

 辞任         補欠選任

  岩田 和親君     藤井比早之君

  渡辺 孝一君     前田 一男君

  福田 昭夫君     中根 康浩君

  丸山 穂高君     吉村 洋文君

  輿水 恵一君     大口 善徳君

同日

 辞任         補欠選任

  藤井比早之君     池田 道孝君

  前田 一男君     加藤 寛治君

  中根 康浩君     菊田真紀子君

  吉村 洋文君     井出 庸生君

  大口 善徳君     中野 洋昌君

同日

 辞任         補欠選任

  池田 道孝君     牧島かれん君

  加藤 寛治君     鈴木 俊一君

  菊田真紀子君     中根 康浩君

  井出 庸生君     太田 和美君

  中野 洋昌君     斉藤 鉄夫君

同日

 辞任         補欠選任

  牧島かれん君     小池百合子君

  中根 康浩君     階   猛君

  太田 和美君     鈴木 義弘君

  斉藤 鉄夫君     稲津  久君

同日

 辞任         補欠選任

  鈴木 義弘君     井出 庸生君

  稲津  久君     中野 洋昌君

同日

 辞任         補欠選任

  井出 庸生君     横山 博幸君

同日

 辞任         補欠選任

  横山 博幸君     重徳 和彦君

同日

 第一分科員小山展弘君、第三分科員濱村進君、第四分科員後藤祐一君、第七分科員鷲尾英一郎君、田村貴昭君及び藤野保史君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成二十七年度一般会計予算

 平成二十七年度特別会計予算

 平成二十七年度政府関係機関予算

 (農林水産省及び環境省所管)


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     ――――◇―――――

石原主査 これより予算委員会第六分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることになりました。よろしくお願い申し上げます。

 本分科会は、農林水産省及び環境省所管について審査を行うことになっております。

 なお、各省所管事項の説明は、各省審査の冒頭に聴取いたします。

 平成二十七年度一般会計予算、平成二十七年度特別会計予算及び平成二十七年度政府関係機関予算中農林水産省所管について、政府から説明を聴取いたします。林農林水産大臣。

林国務大臣 初めに、予算の基礎となっている農林水産施策の基本方針について御説明をいたします。

 私は、平成二十四年十二月の政権交代以降、農林水産大臣として、攻めの農林水産業の推進に向けた検討を進め、農林水産業・地域の活力創造プランを取りまとめるなど、農林水産業の成長産業化に向けた政策改革に取り組んでまいりました。また、昨年秋以降は、与党の立場から、先般の農協改革の法制度等の骨格の取りまとめを初め、攻めの農林水産業の実行に向けて取り組んでまいりました。

 このたび、再度、農林水産大臣の重責を担うこととなり、身の引き締まる思いであります。農政改革を切れ目なく、さらに前に進め、強い農林水産業と美しく活力ある農山漁村の実現に全力で取り組んでまいります。

 また、現在、食料・農業・農村基本法に基づく食料・農業・農村基本計画の見直し作業も進めております。農政の中長期的ビジョンとして、施策の方向性、食料自給率目標や食料自給力指標、農業構造の展望や具体的な経営発展の姿等についてお示ししてまいります。

 次に、平成二十七年度農林水産予算の概要を御説明申し上げます。

 平成二十七年度農林水産予算の総額は、関係府省計上分を含めて二兆三千九十億円、その内訳は、公共事業費が六千五百九十二億円、非公共事業費が一兆六千四百九十九億円となっております。

 農林水産予算の編成に当たっては、農林水産業・地域の活力創造プランに基づき、農政改革を着実に進め、強い農林水産業と美しく活力ある農山漁村を実現するための施策に予算を重点的に措置したところであります。

 以下、農林水産予算の重点事項につきましては、委員各位のお許しをいただきまして、御説明を省略させていただきたいと存じます。

 よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。

石原主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま林農林水産大臣から申し出がありました農林水産省関係予算の重点事項の説明につきましては、これを省略して、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石原主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

石原主査 以上をもちまして農林水産省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

石原主査 質疑に入るに先立ちまして、分科員各位に申し上げます。

 質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力をお願いいたします。

 また、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岩田和親君。

岩田分科員 おはようございます。自民党の岩田和親でございます。

 本日の予算委員会分科会、第六分科会の最初の質問者をさせていただきまして、大変光栄でございます。農林水産に関しまして、幾つかの観点から質問をしていきたいと思っております。

 言うまでもなく、農林水産の現場は、今、非常に厳しい、苦しい状況にあるわけでございまして、まさに未来への希望が欲しい、そういう状況だと思います。ぜひとも希望につながるような前向きな答弁を期待いたしまして、質問を進めてまいります。

 まず最初に、米政策につきまして質問をしてまいります。

 二十六年産の米は、近年にない価格下落によって非常に厳しい状況にあります。特に、私の地元の佐賀県におきましては、作況指数が九二と不作であった上に、価格下落が重なってしまい、極めて厳しい状況です。さらに二十七年産が悪い状況になれば、もう農業は続けられないのではないかという追い詰められたような御意見をしばしば伺っております。

 二十六年産の厳しい状況を踏まえて、二十七年産においてはより細やかに対応していただきたいと考えております。二十七年産の米についてどのように取り組む考えか、伺います。

松島政府参考人 お答え申し上げます。

 二十七年産の米の需給安定の取り組みということでございますけれども、まず、昨年の秋に二十七年産の生産数量目標を、米の需給、需要の見通しを踏まえまして設定させていただきました。

 その中で、やはり主食用米から需要のある飼料用米への転換ということが重要だということで、現在、水田活用の直接支払い金を活用しましたり、また、二十六年度補正予算、二十七年度当初予算におきまして、飼料用米の利用や保管に必要な機械などのリース導入の支援などを行うことによりまして、現場におきまして飼料用米の生産拡大に向けた取り組みを進めているところでございます。

 さらに、需要に応じた生産を進めるために、国といたしましても、きめ細やかな情報提供を進めていくという方針で考えているところでございます。

 また、二十七年度当初予算におきましては、産地であらかじめ生産者が積み立てを行っていただきまして、長期計画的な販売や輸出用などの他用途への販売を行う場合に支援する事業を措置しておりまして、需給の安定に向けました産地の自主的な取り組みを支援してまいりたいと考えているところでございます。

岩田分科員 今回のこの米の下落を受けまして、三十年産から予定されている米の生産調整の見直し、これに対しても不安の声が上がっているわけであります。国による需給調整がなくなればさらに価格が下がるのではないか、そのような不安の声があります。

 こういった意見を踏まえて、平成三十年産からの米の生産調整の見直しについてどのように取り組まれるのか、お伺いします。

松島政府参考人 米政策につきましては、これまでは行政が生産数量目標の配分を行ってきたところでございますけれども、平成二十五年十二月に農林水産業・地域の活力創造プランを決定いたしまして、委員御指摘のとおり、平成三十年産を目途に、行政による配分に頼らずとも、国が策定する需給見通しなどを踏まえつつ、生産者や集荷業者、団体が中心となって、円滑に需要に応じた生産が行われるよう各般の環境整備を進めるということとしているところでございます。

 三十年産に向けましては、先ほど御答弁を申し上げましたとおり、飼料用米など主食用米以外の作物への転換や国によるきめ細かな需給、価格情報などの提供の取り組みをさらに進めるということに加えまして、中食、外食ニーズに応じた生産と安定取引の推進、それから、二十八年産以降の生産数量目標の配分に当たっても、さらなる工夫を行うなどの環境整備を進めてまいりたいと考えているところでございます。

 いずれにしましても、主食用米の需要が減少する中で米の需給の安定を図るためには、主食用米から飼料用米などの主食用米以外への転換が重要でございまして、今後とも、三十年産に向けまして、現場の意見も聞きながら丁寧に環境整備の取り組みを進めてまいりたいと考えております。

岩田分科員 ただいまのこの生産調整の見直しの問題、もちろん私なりに重要性といいますか意義は理解をしているつもりではありますけれども、やはり十分に現場にまでその考え方なりが伝わっていないのではないか、そういうふうな思いがしております。また、さらに言いますと、昨年の価格下落は農政の大きな転換が原因ではないか、そういうふうな意見もあります。

 いわば、誤解とも言えるようなさまざまな意見というのが農業関係者の中に少なからずあるわけでございまして、国が水田農業をどのようにしていこうと考えているのか、その基本的な考え方をもっと理解してもらう必要があるのではないかと私は考えております。

 農業所得の向上のためにはさまざまな取り組みが必要でありますが、一番基礎となる水田において、毎年耕作が続けられて次の世代に農地を引き継いでいけることができる所得を確保することが不可欠であります。そのためには、米の需給が引き締まって価格が少しでも高くなること、さらには、水田をフル活用することが所得につながるような施策が重要であります。

 今後の米生産、さらには水田農業についてどのように取り組み、主要な農地である水田を守っていくのか、お伺いします。

あべ副大臣 委員にお答えいたします。

 我が国におきまして、食生活の変化などによりまして、一人当たりの主食用米の消費量が最大のときに比べて約半分となっているところでございます。主食用米の消費量の大幅な減少傾向が続いているところでございます。

 こういう状況の中におきまして、貴重な生産装置でございます水田のフル活用、さらには、主食用米の需給の安定を図る観点から、水田活用の直接支払い交付金などによりまして、まずは加工用米や飼料用米といった主食用米以外の米の生産振興を図るとともに、小麦、また大豆など、固定的な国産の需要がありながら、その多くを海外の輸入に依存している品目については作付を拡大していくなどを進めているところでございまして、今後とも、こうした政策手段を講ずることによりまして、我が国の水田をしっかり守っていく所存でございます。

岩田分科員 繰り返しになるわけでありますけれども、水田農業というのはやはり我が国の農業の一番基本でもありますし、ひいては、このことがまさに地域のさまざまな景観や環境、そしてまた地域の社会的な人のつながり、こういったものの基盤でもあるわけでございます。本当に、例えば輸出であったり園芸であったり六次化であったり、こういうふうな取り組みというのは、できる人たちが頑張って進めていくべきでありますけれども、やはりそのベースとなる部分をしっかり守っていくということ、これが不可欠であるということを繰り返し申し上げさせていただきます。

 ちょうどこの週末は自民党の党大会だったわけでありますけれども、その中での安倍首相の総裁としての挨拶、一番冒頭に、農業を守っていきたいという強い思いを発言されました。私は大変印象に残っております。ごつごつとした手で、農業を守り、農地を守り、地域を守ってこられた、その思いというものをしっかりとまた農業の皆様にもお伝えをいただきたいと重ねてお願いをさせていただきます。

 続きまして、強い農業づくり交付金について質問をしてまいります。

 農業の成長産業化をより強く推し進める意味で、強い農業づくり交付金のような施策が必要なわけですが、この交付金に対しての要望が多く、各地域に十分に行き渡っていないという声を聞いております。

 こういった交付金に対して、さらに予算確保をする、要件などを使いやすくすることによって、意欲ある生産者を支援し、成長産業化を推進すべきと考えておりますが、いかがお考えでしょうか。

佐藤大臣政務官 委員御指摘のように、強い農業づくり交付金におきましては、産地の競争力強化等を図るために、農業者団体による集出荷貯蔵施設等共同利用施設の整備を支援しているところであります。

 現場からは、確かに、引き続き根強い施設整備への要望が寄せられているわけでございますけれども、本交付金におきましては、平成二十七年度要求前倒しとして、平成二十六年度の補正予算において百七十六億円を措置させていただきました。また、二十七年度当初予算におきましては、対前年度予算額と同水準の二百三十一億円を確保させていただきました。

 これにより、厳しい財政状況の中ではありましたけれども、平成二十七年度当初と平成二十六年度補正を合計すると四百七億円となりまして、平成二十六年度当初予算額と平成二十五年度補正予算額を合計した額を上回る額を確保できたところでございます。

 今後とも、現場の事業要望を把握しつつ、産地の競争力強化等を高める観点から、所要の予算規模の確保に努めてまいりたいと考えております。

岩田分科員 予算確保に本当に御尽力いただいているということに改めて敬意をあらわしたいというふうに思いますが、申し上げましたように、聞いたところによりますと、要望の半分程度だとか、なかなか十分に採択がなされない、そういうふうな現状があるようでございます。

 もちろん、それぞれ一つ一つの案件に対しての可否というものはあるんだろうというふうには思いますけれども、成長産業にしていくということ、そしてまた、やはり意欲ある生産の方が手を挙げておられるということであると思いますので、ぜひ力強い後押しをお願いしたいというふうに思っております。

 特に、これからは、よく言われていますように、例えば、オランダを参考にしたような、園芸のさらなる先進的な取り組み、こういったものもこの中に入ってくるんだろうと思いますので、ぜひともよろしくお願いをしたいというふうに思います。

 それでは次に、農地中間管理機構について質問をしてまいります。

 この農地中間管理機構がスタートをしたところでありますが、各都道府県でも体制が整って、これから運用が本格化する状況である、そのように受けとめております。

 これまでなかなか成果が出なかった農地の集約化ですが、やはりそれにはさまざまな原因があっただろうというふうに思います。出し手と受け手、または地域のニーズなどを的確に把握をして、この制度のもとで確実に結果を出すことが期待をされております。

 そこで、農地中間管理機構の取り組みをいよいよ加速化していくために、どのようなことが課題だと考えているのか、そして、それらの課題を踏まえてどのように進めていかれるのか、お聞きします。

奥原政府参考人 農地中間管理機構の関係でございます。

 この農地中間管理機構は、担い手への農地の集積、集約化、それから耕作放棄地の発生防止、解消、こういった人と農地の問題を解決するための切り札として、平成二十五年に法律を作成していただきました。この法律は、昨年、二十六年の三月から施行されておりまして、実質的にはこの二十六年度が初年度ということになっております。

 既に全ての都道府県でこの機構が立ち上がっているわけでございますけれども、これまでの状況を見てみますと、熊本県のように知事が率先してリーダーシップを発揮してやっていただいている県がある一方で、なかなかそこまで体制が整っていないという都道府県もございまして、全ての都道府県が軌道に乗っているというところまではまだいっている状況ではございません。

 この背景といたしましては、やはり、各県の機構の役員体制、あるいは役職員の意識の問題、それから業務体制、こういったものが従来の農地保有合理化法人のときに比べて十分改革されていないですとか、あるいは、この機構が仕事をするときにベースになります各県、各地域におきます人・農地プラン、農家の方の話し合いですけれども、こういったものが十分進んでいない、こういったことがあるものというふうに思っております。

 今後、権利移動が進んでまいりまして、特に収穫時期、昨年の秋からことしの春にかけまして農地が動いていくことになりますが、この三月末までにどのくらい動いたかというデータを集計いたしまして、それをもとに、各県の機構の活動の検証、評価を抜本的に行いたいというふうに思っております。その結果を踏まえまして、この機構の事業を全ての県におきまして軌道に乗せるための具体的な対応策を検討したいというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、大切なことは、各県それから各県の機構が、農業を成長産業にしていくための最重要課題として、この問題に本気になって取り組んでいただくということであるというふうに考えております。

岩田分科員 ただいま御答弁もいただきましたように、やはり、今日までのなかなか農地の集約化が進まなかったことを考えてまいりますと、機構という形ができただけでは結果というものは伴わないだろう、今までの取り組みの焼き直しではない、新たなあり方というふうなものが求められているんだろうと思います。

 そこで、この機構のあるべき姿、ビジョンといったものをどのように考えているのか、お示しいただきたいと思います。

奥原政府参考人 この農地の中間管理機構、ここが成果を上げるためには、従来の農地関係の制度とはちょっと違いまして、従来の農地保有合理化法人ですと、農地を貸したい人、あるいは農地を借りたい人が、それぞれこの合理化法人のところに相談に来る、その相談を待って対応するというのが基本でございましたけれども、今回の農地中間管理機構は、不動産屋ではなくて、自分から積極的に動いていくディベロッパーのようなものになっていただくということを想定しております。ここが地域農業の将来をきちんと考えて、どういうふうにすればその地域の将来展望が得られるかということをきちんと考えて動いていただく、こういう発想でございます。

 特に、農村部におきまして、農家の高齢化が進展をしておりますが、その中で、各市町村それから各地域、人・農地プランといった話し合いをやっていただいておりますけれども、なかなかその地域の農業の将来展望が得られないというところが非常に多くなっております。高齢化が進んでおりますので、五年先、十年先には農業の担い手がだんだんなくなってしまう、そうすると、耕作放棄地がふえてしまうんじゃないかという心配のところが十分あるわけでございます。

 この点につきまして、この農地の中間管理機構が各市町村あるいは各地域と十分連携をとって、まとまった農地をこの中間管理機構に預けていただくように働きかけていく、これが非常に重要でございます。まさに、中間管理機構が地域を動き回るということをお願いしているところでございます。

 このほかにも、農地の借り手、受け手の方につきましては、公募をするというのが法制度に入っておりまして、実際に全ての県の機構でこの公募が行われております。この公募に応募していただいた受け手の方、担い手の方のニーズをきちんと踏まえて、その方に必要な農地をきちんと探して提供するといったことも必要です。

 それから、担い手の中には、相互に利用権を交換することによってまとまった面積を使えるようにするといったニーズの方もいらっしゃいます。こういった担い手のニーズにもきちんと対応していくということ。

 それから、土地改良事業、基盤整備事業をやるときが農地を動かす一つ大きなきっかけになりますので、こういった基盤整備事業との連携をきちんととる。

 こういったことを含めまして、農地の中間管理機構が積極的にその地域の状況を踏まえながら動いていただくということをお願いしているところでございます。

岩田分科員 私も地元でさまざまな農業にかかわる方々のお話を伺っておりましても、どうしても農地というものに対しての思い入れというものがある。これは当然のことでありますから、そこが集約化にとっては大きな課題であるということは、これからもやはり出てくるだろうというふうに思います。

 今御答弁をいただきましたように、そういったところをやはりこちらからさまざまな形で仕掛けていく。そこには、当然その機能というものも必要でしょうし、そしてまた、人の信頼を得る、そのための、かかわる方々の情熱、思いというものも必要だろうと思います。

 今の農業にかかわる方々の高齢化等々の状況を考えましても、まさに機能がしっかり結果を出さなければならない、そういう待ったなしの状況でありますので、ぜひとも頑張っていただきたいと思います。

 この機構に関してもう一点、農業委員会の改革との関連についてお尋ねをしたいと思います。

 先般、方向性が示されました農業委員会の改革においても、農地の集約化についての役割が位置づけられたと受けとめております。

 今回の農業委員会の改革と農地中間管理機構の推進や担い手への農地集約化がどのように関連をしていくのか、お示しいただきたいと思います。

奥原政府参考人 農業委員会でございますが、農業委員会は、農地に関します市町村の独立行政委員会でございます。

 具体的な任務といたしましては、担い手への農地利用の集積、集約化を進める、新規参入の促進をする、あるいは耕作放棄地の発生防止や解消を進めるといったことで、地域農業の発展を積極的に進めていくことが期待されているわけでございます。

 したがいまして、こういった農業委員会の目的は、先ほどの農地の中間管理機構、これの目的と共通の部分が非常に多いわけでございまして、この両者が連動することが望ましいというふうに考えております。

 一方で、農業委員会の活動状況を見てみますと、地域によってかなり差がございます。平成二十四年に農水省が実施をいたしましたアンケート調査の結果を見てみますと、農家の方から見て余り評価をされていないという側面もかなり見えております。

 例えば、農業委員会の農地の集積などの農家への働きかけが形式的であるですとか、遊休農地等の是正措置を十分講じないとか、それから、農業委員が名誉職になっているんじゃないか、こういった御指摘もいただいているところでございます。

 こういったことを踏まえまして、昨年六月の政府・与党の取りまとめ、それから、二月にまとめられました法制度の骨格におきましては、農業委員会の委員の選出方法につきまして、公選制から市町村議会の同意を要件とする市町村長の選任制に改める、その際、農業委員の過半は認定農業者にするということも決められております。それから、各地において農地利用の最適化を進めていく農地利用最適化推進委員、こういったものも新たに設けるということも決まっております。

 こういった改革によりまして、農業委員会が地域の農地利用の最適化をよりよく果たせるようになれば、この機構を通じた農地の集積、集約化にも貢献するというふうに考えているところでございます。

岩田分科員 本当に待ったなしの状況、農地の集約化をぜひ進めていただきたいというように申し上げまして、次の質問へ移ります。

 次に、有明海の再生について質問をしてまいります。

 今まさに有明海再生への道筋をつけてほしい、それが有明海にかかわる人々の切実な思いであります。引き続き、赤潮や貧酸素水塊が発生をしまして、海の環境は非常に悪化したままでございます。また、タイラギなどの二枚貝はほとんど漁獲ができないような状況がずっと続いております。そして、有明海の最も奥にある佐賀県西部の水域は、特に厳しい環境にあると言わざるを得ません。今漁期のノリも、色落ち等で大変苦戦をしております。

 そういった中、国においては、環境調査、魚介類の増養殖対策、漁場改善対策などに取り組んでいただいております。今日までの御努力に改めて敬意をあらわしますが、なかなか状況が好転しない中、二十七年度の予算案で、沿岸四県と協調をして、さらに踏み込んだ施策をなされると聞いております。

 今回の予算案において、沿岸四県や漁業者とどのような調整をなされたのか、お尋ねをいたします。

三浦政府参考人 お答えいたします。

 有明海につきましては、赤潮や貧酸素水塊の発生等によりまして漁業が大きな影響を受けて厳しい状況にあることを踏まえまして、有明海の再生に向けて、沿岸四県が協調して、海域環境の保全、改善や水産資源の回復等の取り組みの充実を図る必要があると考えております。

 このため、四県及び四県の漁連、漁協等とで構成する有明海漁場環境改善連絡協議会におきまして、四県及び四県の漁連、漁協等から寄せられた御要望も踏まえまして、今後の取り組みについて検討を行って、平成二十七年度予算案におきまして、有明海再生対策として、前年度予算額十四億六千万円を上回る十八億円を計上したところでございます。

 この予算の活用等によりまして、有明海沿岸四県が協調した取り組みを初めとして、有明海の再生に向けた取り組みを推進してまいりたいと考えております。

岩田分科員 有明海再生についてやはりここで触れなければならないのは、諫早湾の潮受け堤防の開門の問題が横たわっているということ、これは避けて通れないわけであります。

 有明海再生のためには開門調査が必要であるという私の立場をここで改めて申し上げておきますが、関係する訴訟の状況が複雑に絡み合っている現状も私は十分に承知をしております。

 そういう中、目の前の課題に具体的に取り組み、有明海の状況を一歩でも前に進めて結果を出していこうという国と関係各県の姿勢に大いに賛同するものであります。

 有明海とともに生きる住民は、将来が見通せない現状に追い詰められております。ぜひ、赤潮や低酸素水塊の発生メカニズム、二枚貝の激減の原因などを解明して、根本的な環境改善を図っていただきたいと切に望みます。

 待ったなしの厳しい状況にあります有明海、その再生に向けた国の決意をお聞きいたします。

あべ副大臣 委員御指摘のように、有明海に関しましては、赤潮、貧酸素水塊の発生などによりまして漁業が大きな影響を受け、厳しい状況にあることは十分に承知をしております。

 農林水産省といたしまして、有明海の再生は国としても重要な政策課題であるというふうに認識しておりまして、これまでも、増養殖技術の開発、赤潮、貧酸素水塊の発生機構の解明、覆砂、海底耕うんなどによる漁場の環境の改善に取り組んできたところでございます。

 有明海を再生し豊かな海を取り戻さなくてはならないという思いは一緒でございまして、今後とも、各県と連携をしながら、必要な取り組みを推進してまいります。

岩田分科員 思いは一緒であるということは私も十分に受けとめておりますけれども、繰り返しになりますが、有明海とともに生きる人々の切実な思い、本当に今は切迫した状況というのを改めて申し上げさせていただくわけでございます。

 本当に、これでこの海が死の海になってしまうのか、それともまた改めて宝の海になってしまうのか、現状を考えれば、ここは待ったなしでございます。

 今年度の予算でさらに一歩踏み込んでいただいたことに感謝を申し上げながらも、ぜひ、今日までのさまざまな調査や取り組みが次なる新しい一歩につながって、未来につながっていきますことを心から期待を申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

石原主査 これにて岩田和親君の質疑は終了いたしました。

 次に、渡辺孝一君。

渡辺(孝)分科員 おはようございます。北海道選出の渡辺孝一と申します。

 きょう、お聞きしますと、かなりの長丁場という話を聞いております。大臣以下三役の皆様、農水省の関係の皆さん、もちろん委員長、本当に御苦労さまでございます。

 短い時間ではございますけれども、私なりに、この二年三カ月間の経験の中で、農水に関しまして御質問をさせていただきたいというふうに思います。

 特に林大臣には、再登板ということで御苦労さまでございます。我が地元の方では政経セミナーにも御来道いただきまして、大臣からはしっかりとしたお言葉を聞かせていただき、大臣のファンもかなり多くいらっしゃいます。

 今、私が衆議院議員になってから、TPPに始まりまして、あるいは農政改革、日豪EPAの交渉、設立、さらには今回の米価下落等々、本当に、先輩議員から、一年、通年の年よりも君たちは二倍、三倍ぐらい大変忙しい農水委員会ではなかったのかなどということも言われましたけれども、なかなかその実感はなく、皆さんも大変お忙しかったのではないかというふうに思います。ぜひ、これからもしっかりと日本の農業を守るために御尽力を賜りたいと思います。

 さて、戦後七十年の歴史を迎えました我が日本も、その中の農政という点を捉えますと、ある意味、大きな転換期に来たのではないかというふうに思っております。

 釈迦に説法ではございますけれども、今、日本が置かれている人口減少や少子高齢化等々、これを踏まえますと、非常に地方のあり方というのが問われる時代になってくるのかと思います。

 特に、地方と申し上げますと、我が選挙区も同じでございまして、やはり一次産業を中心とした市町村が大変多く、その中で、特に農政の分野に関しましては、かなりの市町村の方々が汗を流して努力をしているという現状でもございます。

 総理が、この日本を再生しようということで、いわゆる地方創生の旗を上げましたけれども、このことに関しましても、非常に地方の人間は大いなる期待を抱いているところでもございます。

 しかしながら、この地方創生の中でも、最終的には中央と地方、いわゆる都市と田舎の共存共生というのがどういうふうに構築できるかという課題もありまして、まだまだ地方には努力をしなければいけない部分が多々あるのではないかというふうに思っております。

 今回は、お米に多少絞りまして御質問をしたいというふうに思っております。

 岩田議員とも若干重複するところもございますけれども、まず一点目は、昨年の二十六年度産米のいわゆる米価下落につきまして質問をさせていただきたいと思います。

 地元では、北海道は作況指数も第一次発表では一〇七などという数字が出て、通常であるならば大変喜ばしいことではあるんですが、今の農家の方々の率直な気持ちを申し上げますと、いわゆる豊作では非常に喜べない、あるいは作況指数が本当はもっと下がるのではないかと。いろいろと、実りの秋のいわゆる充実した形が、今はなかなか農家の方々が心底喜べないという状況になっていることをまず大臣にはおわかりいただきたいなというふうに思っております。

 そんな中、米価下落に関しましては、種々の原因があるのも踏まえております。当初の第一回目の概算金に関しましても、全国各地、系統の方々がかなり頑張っていただいたのではないかと思いますけれども、農家の方々の落胆は非常に大きかったような気がしております。

 そこで、米価下落の原因を農水省としてはどのように捉えているかということをまずお聞きしたいというふうに思います。

松島政府参考人 委員御指摘のとおり、二十六年産の米の相対取引価格につきましては、六十キログラム当たり大体一万二千円台ということで、二十五年産よりも二千円程度低い水準で推移しているという状況にございます。

 その原因でございますけれども、まず、二十五年産米の在庫が二百万トンを超える水準であったということと、それから、今委員からもお話がございましたように、八月までの間、大変好天候が続きまして、豊作予想がある中で、JAグループの方では概算金をかなり低い水準に設定したということが相場観を形成してしまったということで、出来秋の米の価格の水準がこれまでになく低い水準でスタートしたということでございます。

 それ以降、国といたしましては、さまざまな米価下落対策を実施しておりまして、例えば、ナラシ対策による収入減少に対する補填ということに加えまして、国の直接支払い交付金の早期支払いですとか、それからセーフティーネット資金の実質無利子化、そういったものも行ってきておりますけれども、それ以降、米の価格の水準はほぼ横ばいで推移しているという実態にあるということでございます。

渡辺(孝)分科員 御答弁ありがとうございます。

 今、米価下落の原因の中で在庫米の話が出たかと思います。六月の在庫米につきましては、毎年二百二、三十万トンあるわけでございますけれども、これも質問したいんですが、この六月時点での在庫米二百二、三十万トンというのが適正な量なのかどうかということをまずお聞きしたいんですが。

松島政府参考人 今委員から、二百二、三十万トンの在庫水準というお話がございました。

 農林水産省は、毎年、七月から翌年六月末を一年間といたしまして、その需給見通しを作成しまして、あわせて六月末の民間在庫量を公表しているところでございます。

 二百万トンという水準は過去五年から十年間の平均的な在庫水準でございまして、この背景といたしましては、六月末の民間在庫数量の中には、七月以降、その当年産の新米が出る九月、十月までの間に消費される分が含まれているということもございますし、また、米を安定的に供給するためには一定量の流通在庫が必要ということもございますので、その二百二十万トン、三十万トンという水準が全て過剰な在庫ということではないというふうに御理解いただければと思います。

渡辺(孝)分科員 決して在庫米が多いことを私はどうのこうの言っているわけではないんですが、いわゆる年間の消費量が八万トン、人口減少等々あるいは食の多様化等々でそういう変化が見られるという中で、五年から十年の平均でこの二百という数字が決定されるのであるなら、やはりこれは今後、需給調整等々にも大きな影響が出てき、さらにはこの在庫米の量についても若干の変化がしてくるのではないかと思いますけれども、局長のお考えを聞かせていただきたいと思います。

松島政府参考人 委員御指摘のとおり、主食用米の消費水準というのが、人口の減少、高齢化という中で、毎年八万トン程度減少している実態にあるわけでございます。

 そういった中で、国は、毎年の需要量を見通して、生産者に対しまして需要に応じた計画的な生産というものを行っていただきたいと考えておりまして、そのために需給見通しというものをこれまで発表してまいりました。

 その中で、先ほど申し上げました六月末時点の在庫数量というのは、七月以降生産されます新米の需給の状況を把握する大変重要な要素でございますので、今後とも、的確にその在庫量を把握して公表してまいりたいと考えているところでございます。

渡辺(孝)分科員 ぜひそのように努力をお願い申し上げたいと思います。

 さて、今局長からもお話しありましたように、将来の需給調整というのは、これは本当に米生産農家にとってみれば非常に大きな問題になってくるのかというふうに思います。そんな中、政府がいろいろと、飼料米、さらには海外に向けての輸出ということで、新たな分野というか、いわゆる成長分野にしっかりと矛先を向けていただいているのも、農家の方々は非常に安心する材料になっているのではないかというふうに私は思います。

 そこで、飼料米について少しお聞きしたいんですが、確かに、昨年が十八か十九万トン、今年度は六十万トンという数字を挙げて全農さんあたりも努力をしていただいているということでございますけれども、今、この飼料米の需要というものは、農水省としてはどのぐらいの量を総量として考えていらっしゃるか。

松島政府参考人 委員御指摘のとおり、平成二十六年産米の飼料用米の生産は十八万トンでございました。また、二十七年産米につきましては、全農が六十万トンの生産目標を掲げまして、現在、現場におきまして生産拡大に取り組んでいるという状況にございます。

 それでは、飼料用米の需要全体がどのくらいあるのかということでございますけれども、飼料用米は、基本的に、現在ほとんどが輸入されております飼料用トウモロコシとほぼ同じ栄養を持っておりまして、畜種によってどの程度代替できるかというのは差はございますけれども、基本的には、最大量としてはそういった輸入トウモロコシに代替するものがあるというふうに考えているところでございます。

 実際には、畜産農家でございますとか、それから飼料会社の団体などにお聞きしますと、足元の需要で大体年間百万トンぐらい、中長期的には二百万トン以上需要があるのではないかという話を伺っているところでございます。

渡辺(孝)分科員 仮に、これが本当に潜在需要として二百万トンあるとすれば、輸入に頼っている穀物飼料が大きく国内の市場で提供できるということになれば、これは決して米農家だけではなく、いわゆる畜産、酪農関係の方々にも朗報になってくるのではないかというふうに思いますので、ぜひしっかりと進めていただきたいと思います。

 次に、ちょっと輸出米のことについてお聞きしたいんですけれども、この輸出米、正直申し上げまして、地方の方に行きますと、なかなか輸出ということに、話が大き過ぎて農家の方々はぴんときていないようでございます。

 特に北海道の農家の方々は、当然、水田面積も広大な面積を有しているがゆえに、どうしても日ごろの農作業に追われてしまい、その輸出等々あるいは販路等々につきましての議論をするとしても、なかなか時間がないということで、正直言って、私一人が笛を吹いているような状況でもございます。

 もちろん、農商の連携の中では、商工会議所や商工会、さらにはその青年部等々にいろいろと投げかけてはいるんですけれども、なかなか輸出しようという雰囲気が、どうもまだまだ末端の農家の方々には御理解を得られていないような気がしてなりません。

 今、農水省の中で、この輸出につきまして、局長、何か御説明いただければと思います。

松島政府参考人 米に限らず、我が国農林水産物につきましては、諸外国で高い品質について評価がございまして、農水省といたしましても、農林水産物の輸出額一兆円を目標に、現在、省を挙げて取り組んでいるところでございます。

 平成二十六年の我が国の農林水産物、食品の輸出額を見ますと、六千百十七億円ということで、史上最高額となってございます。

 その中で、お米につきましても、例えば量で見ますと、平成二十五年が三千百トンであったものが二十六年には四千五百トン、額で見ましても、平成二十五年に十億円だったものが十四億円と、それぞれ四割ぐらい伸びているという状況にございます。その背景といたしまして、やはり日本食というものが海外におきまして相当な評価がある中で、日本のジャポニカ米というものの需要が着実に諸外国において伸びているという実態もあるのではないかと思ってございます。

 お米の輸出については、そういった粒の輸出だけではなくて、煎餅やあられ等の類いの米の菓子とか、それからあと日本酒、こういったものを全体として、今、例えば二十六年産米でいいますと百七十億円の実績がございますけれども、これを、六百億円を目指して現在輸出拡大に取り組んでいるということでございます。

 それから、なかなか個々の農家の方々だけでは輸出の取り組みというのが難しいのではないかという委員の御指摘がございましたけれども、これにつきましては、米だけではなくて、日本酒や米菓など米の加工品も含めた幅広い生産者、出荷業者、加工業者が参画する輸出団体というものを昨年の十一月に立ち上げまして、オール・ジャパンで輸出拡大に取り組む体制を整備しているということがございます。

 そういった中で、国といたしましても、二十六年度補正予算におきまして、この輸出団体が取り組む輸出拡大の取り組みについて支援を申し上げるということで、この三月にも日本産米や米加工品の統一ロゴマークを制定いたしまして、このマークを用いて、シンガポール、上海などの海外においてPRイベントを開催する場合の資金について支援申し上げるということで後押ししているところでございます。

渡辺(孝)分科員 重々理解しておりますし、まだまだ大変なことが多かろうというふうに思います。

 確かに、経産省や、特にその外郭団体のジェトロからもいろいろなお話を聞かせていただきますけれども、安倍総理のかけ声とともに輸出額がどんどんふえている。目標一兆円というのも私は逆に少ないんじゃないかというぐらいな思いもしておりますけれども、これに関しては、ぜひ成長産業にしていただくようにお願いを申し上げたいと思います。

 そこで、ちょっと局長にもう一点お聞きしたいんですが、我々国会議員というのはその地域地域で選挙区で戦っているわけでございますけれども、経産省やジェトロの方々からお聞きする限りは、確かに、頑張っている企業あるいは法人、さらには個人の方々、その成功例は多々聞かせていただき、それはそれで大変よろしいことだというふうに思っておりますが、私たちの立場としては、やはり地域の底上げというのをまず一番の目標に考えているところでもございます。

 そんな中で、我が地域はほとんどが農業が主体の市町村でありながら、なかなか自治体の方でも、この輸出に関しまして、手を挙げるあるいは声を上げるというのが少ない状況にありまして、このことは、私の立場から各自治体にも、市長、町長あたりにはハッパをかけるんですけれども、なかなか半歩あるいは一歩前に出るというところが踏み切れないでいるのではないかというふうに思います。

 ぜひ今後そちらの方にも目を移していただき、自治体等々が積極的に取り組めるような、いわゆる後押しというのを決めなければいけないのかなということがまず一点。

 そして、輸出の際のハードル、これをどのように解消していくかというのを、今後、国と地方でしっかり責任分担を明確にしなければいけないのではないかというふうに思いますけれども、局長、何か御意見がございましたら。

松島政府参考人 先ほど申し上げました米の輸出団体につきましては、これまで我が国の米の輸出につきましては、例えば北海道産米でありますとか東北の何々県産米といった、各地域ごとのお米を輸出していこうということで取り組んできたわけでございますけれども、諸外国におきましては各地域の米の特色や特徴といったものがなかなか把握されないという点もございまして、やはりジャパン・ブランドとして進めていこうという考え方で、お米に限らず、畜産物ですとかお茶ですとか果物ですとか、そういった各県横断的な組織をつくって取り組んでいるということでございます。

 ただ、他方で、委員からお話しございましたように、その地域の特色ある作物を優良性を生かして海外に発信していこうという取り組みというのはやはり尊重しなくちゃいけないと思っておりまして、例えば乳製品などでいいますと、十勝ブランドというのは中国でも相当な評価があるということでございます。

 お米に話は戻りますけれども、米の需給の安定を図る観点から、地域でそれぞれ生産者が積み立てをしていただいて、その積立金を活用して米の例えば輸出に向けた場合の経費を賄っていただく、その際に国が支援する仕組みというのを二十七年度予算で五十億円措置してございます。

 そういった資金なども活用していただきながら、ジャパン・ブランド全体としての輸出の促進とあわせまして、地域の特色ある農産物を生かした輸出の取り組みというのを並行して進めていくということが大事ではないかなというふうに考えているところでございます。

渡辺(孝)分科員 はい、わかりました。

 ジャパン・ブランド、確かに、海外に向けてはそれが正当なやり方だというふうに私は思っておりますけれども、地域の特徴を生かした地域ブランドというのも、やはり積極的に海外向けに戦略を組んでもよろしいのかなというふうに私は思っております。

 地域の努力も当然必要ではございますけれども、そういう地域に対しまして、今後、農水省の方からも光を当てていただきながら、ブロックブロックで特徴のある輸出ということもぜひアドバイス、御指導いただければなと思いますので、そういうときにはよろしくお願い申し上げたいと思います。

 次に、いわゆる生産調整、三十年度産米から、国は情報提供等々の協力は惜しまないけれども、政府から民間に委ねていくという方向性が打ち出されました。これに関しましては、やはり、系統のみならず、本当に一般の米生産者の方々もかなり不安に思っております。

 これに関しまして、今の段階でどのような話が行われ、将来民間に委ねるとしたら、それを今からどこというふうには決めていないとは思いますけれども、目ざとく民間に委ねるような話がどこまで進んでいるのかということを、お話しできる部分でよろしいですから、局長、ぜひお答えいただきたいなと思います。

松島政府参考人 委員御指摘のとおり、一昨年の十二月に米の政策見直しというのが決定されまして、三十年産を目標に、国による生産数量目標の配分に頼らない、生産者が自主的に需給を見通してみずからの経営判断で作付を決めていくということが決められたわけでございまして、現在、その条件整備、環境整備を行っているところでございます。

 その第一歩といたしまして、昨年の生産数量目標の配分に当たりましては、これまで生産数量目標というのは一つの水準を現場にお示ししておりましたけれども、今回は、自主的取り組み参考値という、もう一つ別な、機械的な、在庫水準を達成するために必要な生産数量というものを提示しまして、現場においてその幅の中でさまざまなことを御検討いただいて、自主的な取り組みを進めていこうというような工夫もさせていただいたところでございます。

 それ以外に、先ほど委員からもお話がございました国による需給情報、価格情報の提供の充実といったものもございますし、また、三十年産に向けまして具体的にどういう姿となるのかということにつきまして、政府部内におきましても明確な姿が現段階で意思統一されたわけではございませんけれども、こういった毎年毎年の取り組みを進める中で、現場での御意見などもよく伺いながら、三十年産に向けて円滑な新制度への移行が図られるよう十分努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

    〔主査退席、小倉主査代理着席〕

渡辺(孝)分科員 三十年度産米、まだまだ時間的な余裕があるのかどうか。私としては、かなり厳しいタイムスケジュールなのかなというふうに思っております。

 特に、一般の生産者の方々にこの生産調整の仕組み、ルール等を理解していただくにはかなり時間も必要なのかというふうに思っておりますので、できましたら早急に情報の提供を、生産調整の提供だけではなく、この生産調整をどのようにやっていくんだという情報提供も、早目に国から地方の方々にお願いをしたいなと。

 そして、地域の中でそれぞれが系統の方々や単協の方々と協力し合いながら、我が町、我が村はどうしようという、やはりそういう議論をしっかりとさせないと最終的にはこの生産調整も私は失敗に終わってしまうんじゃないかなという気がして、非常に危惧しているところでございますので、ぜひ早目早目に手を打つことをよろしくお願いしたいと思います。

 もう時間もありませんので最後になりますけれども、今私が、米を中心に生産調整、さらには飼料米、輸出米等々について限定した質問をさせていただきましたけれども、最後、大臣にお答えいただきたいと思うんです。

 やはり最終的には、日本の食料が、消費者、これが日本人の方であろうと外国人の方でも構いません、いわゆる消費者の方々に適正な価格で購入していただけるシステムをどうつくっていくかというのが大事かというふうに私は思っております。

 そんな中で、米に関しましては、全国ほとんどの都道府県がかかわるわけでもございますので、ぜひこの米政策をしっかりすることで、決して米農家の方々だけではなく、ほかの農政にもかなり大きな影響が出るのかなと。

 私の地元では、若い、いわゆる後継者と目される青年部の皆さんはこんなことを申しております。今まで戦後七十年の中で確かに米は守られてきた、そしてその中で、我々もそのぬるま湯の体質に甘えていたところもあったのではないか、今後は、飼料米、輸出米も含めてですけれども、我々みずからがこの米に対してしっかり考えていかなければいけないんだという、そんな決意をする農家の方々もいらっしゃいます。

 ぜひ大臣に、そういう彼らに一言応援のエールを送っていただければ大変ありがたいと思っておりますので、よろしくお願いします。

林国務大臣 今の青年部の方のお話を大変心強く聞かせていただいたわけでございます。

 先ほどお話があったように、マクロで需要が少しずつ減っていくということですが、八百万トンが約一%ずつということですから、まだまだかなりの需要が国内にもあるし、先ほど局長から答弁いたしましたように、輸出のマーケットも徐々にふえていっている。こういう状況でございますので、まさに今委員が引き合いに出していただきましたように、需要がどういうところにあるかということをしっかり捉えて、それにしっかりと合わせてやっていく、こういうことを我々もしっかりと応援していきたいと思っております。

 例えば、中食、外食の方にお聞きしても、同じ米でも、おにぎりは形が崩れにくいもの、おすしであればお酢が入りやすいもの、丼であれば粘りが少ないものと、いろいろなニーズがあるわけでございまして、そういうニーズに応えながら、生産調整に頼らずともやっていく仕組みというのを、三十年産まであと少し時間があるようですけれども、しっかりと一年ずつ着実に進めていくことによって、現場でいろいろな混乱や不安がないようにしっかりと取り組んでまいりたい、こういうふうに思っておるところでございます。

渡辺(孝)分科員 どうもありがとうございました。

小倉主査代理 これにて渡辺孝一君の質疑は終了いたしました。

 次に、藤井比早之君。

藤井分科員 おはようございます。

 昨年もこの分科会で質問させていただきまして、ことしも質問させていただきたいと思いますが、昨年質問させていただきました酒米、酒造好適米の生産数量目標、いわゆる減反の枠外での増反、増産を認めるという制度改正でございます。

 おかげさまで、私の選挙区の抱えるJA兵庫六甲、JA兵庫みらい、JAみのりの三JA管内においては十九万俵から二十四万四千俵まで増産をしていただきまして、農家さんのこの収入アップが十四億五千万円に上るというふうに、これはJA兵庫みらいの稲葉洋組合長が試算をされた額なんですけれども、これだけの手取りのアップが見られるということでございます。

 今回の制度改正、まさに生産者の方にとっては、価格を維持しながら増産ができる、酒造メーカーの方にとっては、必要な山田錦、酒米を入手できて、そして増産ができる、海外へも販売がふやせる、そして消費者の皆さんにとっては、海外の方も含めて、すばらしい、おいしい日本酒を楽しむことができるという、まさに三方よしの改正だと思いますけれども、この改正内容について改めて確認させていただきたいと思います。

あべ副大臣 酒造の好適米につきまして、これまで日本酒の需要量が減少してきたことなどから、平成二十五年産米までは、その生産量、需給調整の対象となる主食用米の生産数量の目標に含む運用を行ってきたところでございます。

 しかしながら、長期的に減少傾向にございました日本酒の出荷量、平成二十二年以降はほぼ横ばいに転じてまいりました。吟醸酒などにつきましての、今後、輸出を含めた需要拡大の取り組みも期待されているところでございます。

 さらには、平成二十六年産米より、日本酒メーカーなどにおける日本酒の生産増に対応した酒造の好適米の増産分につきまして、生産数量目標の枠外で増産できるように措置をしたところでございます。

 この結果、平成二十六年産の酒造好適米は、需要の増加に対応いたしまして、平成二十五年産の生産量七万六千トンから、平成二十六年産は一万二千トン増の八万八千トンとなったところでございます。

藤井分科員 先ほど制度改正について紹介いただきましたけれども、特に大切なのは、価格が下がらなかったということだと思います。どれだけ必要なのかというのを酒造メーカーさんに確認をしていただいて、その枠で認めていただいた。おかげさまで、価格が下がらずに増産ということで十四億五千万円のアップ。これは、約二三%も収入がアップしたという形になっていますので、すばらしい制度改正であったと思います。

 林農水大臣初め、農水省の方々に本当に心から感謝申し上げたいと思います。

 また、このような形で価格が維持できるというのは、やはり需要があるからということだと思います。特に、これから人口が減っていく中で、海外のマーケットも含めて需要増、その取り組みを進めていかなければならない。そのための輸出拡大に向けた取り組みについてお伺いさせていただきます。

櫻庭政府参考人 委員御指摘のとおり、酒米の生産者の所得向上のためには、日本酒の需要増、とりわけ海外での需要増と輸出拡大が重要であり、平成二十五年に策定しました国別・品目別輸出戦略におきましても、米、米加工品の一環として、日本酒を重点品目に位置づけているところでございます。

 また、昨年六月に発足しました輸出戦略実行委員会の議論を踏まえまして、日本酒を含めた米関連食品の輸出拡大を図る団体、全日本コメ・コメ関連食品輸出促進協議会を昨年十一月に設立いたしまして、オール・ジャパンで輸出拡大に取り組むこととしておるところでございます。

 昨年の日本酒の輸出は前年比九%増の百十五億円となりまして、年々増加しているところであります。今後は、この輸出団体が推進役となりまして、関係省庁及びジェトロと連携しまして、世界的に人気の高い和食、食文化等の普及とあわせ、海外見本市でのPR等各種プロモーションや商談会を実施し、日本酒の輸出拡大に取り組んでまいる所存でございます。

藤井分科員 ありがとうございます。

 聞いておりますと、ニューヨークやパリで本当に人気がある。まさに世界の無形文化遺産に和食はなりましたので、ぜひ日本酒の輸出拡大に取り組んでいただきたいと思います。

 そうした需要拡大とともに、今までなぜこれだけ評価があるのかといいますと、やはり、江戸時代からでございますけれども、本当に土づくりから一生懸命地元の方々がやってこられた。それですばらしい山田錦ができるということでございます。もういよいよ価格も一本五万円で買っていただけるようなそういう日本酒もできているところなんですけれども、需要増とあわせて、一本ごとに高価格で取引していただける、やはり、これがまさに収入アップへの近道だと思うんです。

 そのために、昨年質問させていただきましたけれども、そういう地域ブランド、まさに今まで一生懸命土づくりをやって、そして栽培しにくい山田錦を一生懸命栽培してきた。それを正当に高く評価して地理的表示保護制度を導入してはどうかと質問させていただいたんですけれども、その質問の後、地理的表示保護に係る法案を政府で作成していただいて、そして成立もいたしました。

 この特定農林水産物等の名称の保護に関する法律、いわゆる地理的表示法の制度趣旨と目的についてお伺いさせていただきます。

櫻庭政府参考人 我が国の農林水産物、食品は、品質の高さ、そういったことでの強みを有しております。特に、国内のそれぞれの地域には、長年培われた独特の生産方法や気候、風土、土壌などの生産地の特性により、高い品質と評価を獲得するに至りました地域ブランド産品が多く存在しているところでございます。

 地理的表示法は、このような伝統を有する地域ブランド産品の名称を地理的表示として国に登録し、公的に保護することでブランドの価値を守るための制度でございます。これにより生産者がより多くの利益を確保することを目指すものでございます。

 本年六月までに法が施行されることとなりますが、制度の着実な定着と活用を実現するため、これまで、生産者、関連業者、消費者を対象に説明会等を開催したところでございますけれども、引き続き、制度の趣旨及び内容の十分な周知を図ってまいる所存でございます。

藤井分科員 地域ブランド、本当に地域の皆さんの特色を生かした、そしてまた高く評価される、そのことが極めて大切だと思っております。

 そのような高評価という中で、せんだって、春節ということで海外から、特に中国の方々だと思うんですけれども、物すごく大勢来ておられて、東京で本当にびっくりしたんですけれども、この方々が本当に神戸ビーフが大好きで、私の選挙区、神戸ビーフや黒田庄和牛の産地ということになるんですけれども、驚くような価格でもどうにかして手に入れたいというような形で、本当に望まれておるというところなんです。

 まさに、日本酒と並んで日本の和牛、これは本当に輸出拡大に向けたチャンスを迎えているんじゃないかと思うんですけれども、アジア、アメリカ、さらにふやしていく、それとともに、EUやアラブ諸国へも販路を拡大していく、そういった視点が必要だと思うんですけれども、そのような中で、輸出するための食肉の処理施設を増加させるなど、やはり、輸出に向けたインフラ整備が必要なのではないかと思います。

 また、一方で、神戸ビーフについては、輸出拡大するにしても、海外シフトするための物がもう足りなくなってきているんじゃないかという声も聞くところでございまして、やはり、子牛の需給とかも含めた適切なバランスのとれた生産計画というものが必要になってくるんじゃないかなと思うんですけれども、こうした輸出拡大に向けたインフラの整備と、和牛、肉牛の、そもそも畜産振興そのものについてお伺いさせていただきたいと思います。

松島政府参考人 委員からお話がございました和牛でございますけれども、これにつきましては大変海外でも人気が高うございまして、輸出額も順調に伸びております。例えば二十六年の輸出実績を見ますと、八十二億円ということでございまして、前年が過去最高でございましたけれども、これが五十八億円でございますので、四割の増ということでございます。

 こうした中で、やはり輸出をさらに拡大していくためには、諸外国が求めます衛生条件というのを満たす必要があるということでございます。また、あと、今お話がございましたイスラム諸国につきましては、ハラール認証といったものを求められるということでございます。

 こういった輸出の求められる条件を満たすような食肉加工といったものを進めていくために、農林水産省では、強い農業づくり交付金ということで、施設整備の応援をしてございます。その中で、例えばハラール認証でございますとか、それから、諸外国が求める衛生条件を満たすような施設を整備する施設整備につきましては、特別輸出枠という枠を設けまして、重点的に予算を配分することによって応援しているということでございます。

 それから、神戸ビーフの関連で、なかなか輸出するための実際の牛が不足しているのではないか、そういった肉用牛の生産基盤の強化が大事ではないかというお話でございました。

 確かに、近年、やはり繁殖経営の農家の方が減ってきてございます。これは神戸に限らず全国的な傾向でございまして、これまで繁殖経営というのは小規模の農家が多く、高齢者も多かったものですから、その農家数の減少に伴いまして、肉用の専用種の子牛の生産量が減っているということがございます。

 これは、肉用牛の生産基盤の強化ということが、輸出もございますし、それから、国内で安定的に和牛を供給していくためにも不可欠でございますので、平成二十五年から繁殖雌牛の増頭対策というものを強化いたしまして、例えば、農協が繁殖雌牛の貸し付けを行う際の奨励金を交付するといった形で支援を充実してございます。

 それに加えまして、平成二十六年度補正予算や二十七年度予算におきましても、畜産クラスター事業という、地域ぐるみで中心的な畜産経営体を位置づけて、その方々に対して施設整備ですとか機械のリースといったものを重点的に推進していくという事業を発足させたわけでございますけれども、その中に当然繁殖経営の農家も対象となりますし、それに加えて、例えば、受精卵移植技術を利用して乳用の雌牛由来の和牛の子牛の生産を拡大していく、こういった取り組みも支援していくこととしてございます。

 こういったさまざまな肉用牛の生産基盤の強化という施策を通じまして、牛肉の輸出拡大、またそれを、国内における肉用牛の生産基盤の強化といったものに努めてまいりたいと考えているところでございます。

藤井分科員 ありがとうございます。

 神戸ビーフも九州まで持っていかんと輸出できへんとかそういう話も聞きますし、先ほど、子牛の安定供給といいますか、そういう話もありましたけれども、国内の安定供給というのも必要だと思いますので、ぜひよろしくお願い申し上げたいと思います。ありがとうございます。

 このような形で、日本の農業、まだまだこれから強くなれると感じるところでございますけれども、昨年も質問させていただきました、二十五年補正、二十六年予算に次世代施設園芸導入加速化支援事業というのを創設していただきました。

 これにつきましては、私の地元の加西市鶉野に四ヘクタールのトマトハウス団地を整備するということで、起工式には皆川事務次官にもお越しいただいたんです。まさにこの次世代施設園芸、林大臣の肝いりの事業と理解しておりますけれども、ぜひ、この制度の創設趣旨と目的、現在の状況について林大臣にお伺いさせていただきたいと思います。

林国務大臣 これは、私が大臣に就任してすぐのころから、いろいろな方からぜひ一度オランダを視察に行ってはいかがというお話を聞きまして、たしかOECDか何かの会議でパリに行きましたので、それで一足延ばして行ってまいりました。

 向こうではガラスでございますが、高さ八メートル、広さが四ヘクタールぐらいある大きなハウスの中で全部パプリカをつくっておられて、全自動でございました。それをこん包、出荷まで、たしか、家族経営で三、四人でおやりになっている。そういうのを目の当たりにしまして、なるほど、こういうことをやってオランダが、農産物の輸出のたしか世界二位か三位だったと思いますが、こういうことに結びついているんだなと。

 しかし、いろいろな使っておるものを見ますと、日本でもやればできるような機械、技術等でございますので、これはぜひ何かできないだろうかということで、この次世代施設園芸の導入加速化支援事業ということに至ったわけでございます。

 日本の場合は、ガラスというわけにいきませんで、やはりハウスは、台風が来るということもあるので、日本のビニールハウス的なものにするですとか、それから、向こうはたしかロッテルダムかどこかからパイプでCO2を買っておりましたけれども、せっかく日本の場合は森林が豊富にございますので、木質バイオや、そういう再生可能エネルギー等脱化石エネルギーを活用してCO2を光合成に使ってもらう、こういうこともやっていこうということ、そして、我が国のお家芸であるICTを活用した高度な制御を行っていこう、こういうことで始めたわけでございます。

 藤井先生のお地元の兵庫も含めて全国九カ所で今拠点整備をしておりまして、まさに兵庫県では、四ヘクタールのハウスで木質チップを活用いただいてトマトを栽培する計画になっておるというふうに聞いております。

 二十六年度補正と二十七年度の当初で合わせて六十億円を計上いたしまして、二十七年度までには八カ所の拠点整備が完了して生産が開始される、こういうふうに聞いております。

 これはここにとどまることなく、モデル事業ということでございますから、大規模なところでやっていくというこの次世代施設園芸を、この拠点をもとにして全国的に横展開をしていくということで構造改革を進めて攻めの農業を実現していきたい、こういうふうに考えておるところでございます。

藤井分科員 ありがとうございます。

 本当に、この事業によりまして地元の、特に雇用の創出や生産者の皆さんの所得の向上に役立っていただければと思っておりますので、地元の皆さんとともに何とか成功できるよう頑張ってまいりたいと思っております。

 この加西市鶉野の、これはトマトハウス団地ということで生食用のトマトということになるんですけれども、トマトとか果物、特に生食用はこれから輸出拡大が可能なんじゃないか。また春節の中国の方々の話になるんですけれども、驚くような高い値段でイチゴとかを買っていかれるんですよ。

 私の選挙区もイチジクやイチゴの産地という形になるんですけれども、まさに、生食用のイチジクやイチゴは輸出したらすばらしいんじゃないかなとは思いながら、これは、すぐに悪くなるので輸出するにはなかなかハードルが高いと思うんですけれども、これに対する対応をお伺いさせていただきたいと思います。

松島政府参考人 委員からイチゴやイチジクの輸出についてお話がございました。

 まず実績を御説明申し上げますと、イチゴにつきましては、平成二十五年が二百五トンの輸出実績がございまして、対前年と比べまして一六二%と大幅な伸びを示してございます。

 それから、イチジクにつきましても、近年は輸出実績がございませんでしたが、平成二十六年は八トンの実績がございました。

 イチゴなどの青果物の輸出につきましては、二十五年の八月に農林水産省におきまして、農林水産物・食品の国別・品目別の輸出戦略というものを策定いたしましたが、その中で、成長の著しい東南アジアなどに着目した市場開拓、それから、日本産青果物が海外店舗に周年供給できる体制を確立するというふうに記されているところでございます。

 一方、委員からお話がございましたイチゴなどの軟弱果実の輸出につきましては、輸出商社からお伺いしますと、なかなか鮮度保持が難しいとか、それから、輸送中の衝撃で傷みやすいという問題点があるというふうに伺っております。

 こういったものに対応するために、イチゴの個別包装容器を開発いたしましたり、輸出産地における予冷施設を整備するといった支援を行っているところでございます。

 今後とも、そういった鮮度保持、それから、衝撃に弱いといったものにどう対応するかという技術開発を含めまして、関係者が一体となりまして、ジャパン・ブランドとしてのイチゴなどの軟弱果実の輸出拡大に努めてまいりたいと考えているところでございます。

藤井分科員 ありがとうございます。技術開発も進めていただければ、すばらしい市場開拓、開けていくのではないかと思っておりますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 話がかわりまして、昨年もお伺いさせていただいた鳥獣被害対策についてお伺いさせていただきたいと思うんです。

 食肉として何とか加工をして、それでジビエとして活用できないか。その際には、血抜きとか内臓の関係を現場で何とかできないか。これは、昨年は要望ということで質問ではないんですけれども、させていただいたところなんです。

 昨年の質問以降、御検討いただいて、こちらについてのいわば方針等を諮られたというふうに聞いておりますけれども、それについて具体的にお伺いさせていただければと思います。

三宅政府参考人 野生鳥獣肉の衛生管理に関しましては、専門家等による検討結果を踏まえまして、昨年の十一月ですが、野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針を策定し、都道府県等自治体にお示しをいたしました。

 屋外で放血する場合、いわゆる血抜きでございますけれども、E型肝炎等のリスクがあるため、具体的には、その同指針におきまして、放血に使用するナイフ等は使用する直前に火炎やアルコール等により消毒すること、放血を行う際は、軍手等繊維製ではなく、ゴム、ビニール等合成樹脂の手袋を使用し、複数個体を処理する場合には一頭ごとに交換すること、放血後、血液の性状を観察するとともに、足のつけ根等に触れることにより速やかに体温を調べ、異常を認めた個体は食用に供さないことなどを示しました。

 また、屋外で内臓摘出をすることも考慮しました衛生管理としまして、屋外における内臓摘出は、食肉処理施設への運搬に長時間を要し、腸管内微生物の著しい増殖が懸念される場合等、迅速適正な衛生管理の観点からやむを得ない場合に限ること、内臓摘出は、個体をつり下げる、またはシートの上で実施するとともに、内臓摘出後に腹をひも等で縛ることにより、体腔内等が土壌等に接触することのないように行うこと、摘出した内臓について、適正な衛生管理の知識等を有する狩猟者が異常の有無を確認し記録すること、個体全体に影響する異常が確認されたものについては食用に供さないことなどを示しました。

 厚生労働省としましては、引き続き、各都道府県等を通じて本指針の普及に努めるとともに、本指針のさらなる充実を図るなど、野生鳥獣肉の安全性確保に資する取り組みを進めてまいる所存でございます。

藤井分科員 ありがとうございます。

 ボタン鍋ということで、昔から地元ではイノシシは食用に供されていたんですけれども、鹿はまだまだこれから。昨年、そういうような形でガイドラインをつくっていただいてありがたいんですけれども、これはまだまだ知られていないんじゃないかなと思いますので、ぜひその周知、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 鳥獣被害と並びまして、昨年ちょっと質問をさせていただきました農業農村整備でございます。

 地元には、東播用水、そして東条川用水、これからの事業をちょっと控えておりまして、また、ため池の防災、減災が極めて大事だと思うんですけれども、こちらについてことしもお伺いさせていただきたいと思います。

三浦政府参考人 お答えいたします。

 農業農村整備は、農業の競争力強化や国土の強靱化を図るために重要でございまして、平成二十七年度予算案におきましては、まず、農業農村整備事業について対前年度比一〇二・四%の二千七百五十三億円を計上いたしましたほか、農山漁村地域整備交付金の農業農村整備分でございますけれども、今回は七百三十五億円、それから、簡易な基盤整備を行うための、新規の非公共事業でございます農地耕作条件改善事業百億円、これらを合わせて三千五百八十八億円、対前年度比で一〇四・八%を計上したところでございます。

 あわせまして、事業制度面で、平成二十七年度から、水利施設整備に係る事業におきまして、農地集積率に応じて促進費を交付することといたしましたほか、ため池整備に係る事業におきまして、地域の防災上ため池を廃止することが妥当な場合の定額助成を行うこととするなど、農家負担の軽減を図ることとしているところでございます。

 こうした中、兵庫県におきましては、国営かんがい排水事業東播用水二期地区を実施中でございまして、また、東条川二期地区についても、実施に向けた地区調査に係る経費を平成二十七年度予算案に計上しているところでございます。

 また、ため池の防災、減災対策につきましても引き続き支援をしていく考えでございます。

 今後とも、必要な予算の確保に努めまして、農業農村整備を推進してまいりたいと考えております。

藤井分科員 ありがとうございます。

 農家負担の軽減というのも御答弁いただきまして本当にありがとうございます、これも切実な問題でございますので。また、東播用水は新規着工を本当にありがとうございます。また、二十七年度予算には東条川二期も入れていただいているということで、この場をかりまして本当に感謝申し上げたいと思います。

 最後に大臣にお伺いしたいと思います。

 農協改革でございますけれども、このたび、何となく、マスコミ報道では官邸、政府対農協みたいな構図で誤った報道がされているんじゃないかと危惧をしておるところでございます。

 先ほどのあの山田錦もそうですし、イチジクやイチゴもそうですし、神戸ビーフや黒田庄和牛もそうです。地元の農協さんは、農家の手取りをアップするためにこういった改革、実に汗を流していただいておるというところでございますけれども、まさに農家の皆さんの手取りアップに汗を流していただいている農協さん、これを決してたたく改革ではありませんよね。このことを、そうではないというのを断言していただきたいと思います。

林国務大臣 断言したいと思います。

 安倍内閣におきましては、成長産業にするために、また、地方創生の核とするために、農林水産業・地域の活力創造プランというものをつくりまして、先ほどから御議論いただいているような六次産業化による高付加価値化とか輸出とか、また、担い手農業者への農地集積を図る、こういう農政改革をやってきたわけでございまして、そういうことをやっていく中で、それに携わっていただく主体も、この政策を活用して自由にやっていただくための環境というものをさらにつくっていこうということでございます。

 したがって、地域農協というのは、やはり農業者、現場の皆さんにとっては最も近い経営主体でもあるわけでございますので、そういう地域農協の皆さんが今まで以上に伸び伸びといろいろなことができるようにしていこう、また、理事の構成や経営の目的などをきちきちっと規定することによって責任ある経営体制をさらに確立していこうという、いわば自己改革の枠組みを明確にする。

 それから、中央会については、この地域農協の自己改革、いろいろな取り組みを適切にサポートできるような組織体制に移行する、こういうことをやっていこうということでございまして、まさに地域農協が強く大きくなってもらいたい、こういうことが我々の考えであるということで申し上げておきたいと思います。

藤井分科員 ありがとうございます。

 地方創生にはやはり農林水産業の振興が欠かせないと思います。中でも、生産者、農業者の方の所得を上げる、手取りを上げる、このことが何としても必要だと思いますので、ぜひ、農協の皆さんとともに、また地元の皆さんとともに、どうかよろしくお願い申し上げたいと思います。

 本当にありがとうございました。

小倉主査代理 これにて藤井比早之君の質疑は終了いたしました。

 次に、前田一男君。

前田分科員 おはようございます。北海道八区の前田一男でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 今回は、我が国を取り巻く水産業の現状と、また、これからのあるべき方向性、そういったことについて議論をさせていただきたいと考えております。

 今、地域の漁船漁業は衰退の一途をたどっております。これは、自然的要因としましては、資源量それ自体が減少しているというふうなこと、また、海水温が上がってきて、魚の回遊の状況が変わってしまっているということもあるかもしれません。また、いそ焼けも顕著でありますし、近年は海獣の被害なども出てきております。

 こういった自然環境がなかなか好転していかない場合には、国で行う制度面、また、補助事業などで強い後押しをしていくべきなのでありましょうけれども、そういったことも十分なされているのかどうか、甚だ疑問であります。

 今、地域では、地方創生、この言葉に最後の希望を託しているというふうに、地域を回って感じています。地域の疲弊、それを国が、国をもう一度、地域をもう一度立ち上げるためにさまざまな取り組みをしてくれるかもしれない、本当に国が地域に光を当ててくれるかもしれない、そのような最後の望みをかけている、そのようなことを地域を回る中で感じているところであります。

 以下、具体的な観点について質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まず初めに、北海道沿岸の資源の状況、また、生産の状況であります。

 押しなべて見てみますと、養殖漁業、これが早い時期から計画的に行われてきているところは割と生産量も上がっているというふうに感じているわけでありますが、オホーツク、そして太平洋、日本海と考えますと、日本海はどうしても海況が荒い状況でありまして、なかなか養殖が定着しないというふうな状況にあります。

 現在のこれら三海域の大きく見たときの生産量、また、私の選挙区でもある日本海沿岸、恐らくここの水揚げは小さくなっているというふうに思うんですが、ここに対する養殖また蓄養、こういったことに対しての国としてのこれからのてこ入れ、支援についての考え方、そういったことについてまずお聞かせください。

本川政府参考人 御指摘のとおり、北海道における沿岸漁業の平成二十四年の生産量でございますけれども、全体で九十三万トンございまして、その内訳は、太平洋が四十四万トン、オホーツク海が三十五万トン、これに対しまして日本海では十四万トンということで、全体の一五%になっております。

 また、沿海地区の漁協の正組合員の一人当たりの生産額につきましても、日本海では八百四十万でございまして、オホーツクがやはり非常に多うございまして、三千五百二十万ということであります。相当大きな開きがございますし、全道平均でも千四百七十万でございますので、その六割ぐらいといったような状況でございます。

 御指摘のとおり、資源的には、日本海側における主要な魚種、ホッケやスケトウダラは非常に厳しい状況にございます。

 こういう状況を踏まえまして、やはり、日本海側の漁業の振興を図ることは非常に重要であると私も考えてございまして、現地を見させていただいたり北海道庁とも意見交換をして、その振興策について話し合っているところでございます。

 特にスケトウダラにつきましては、資源的な管理に取り組むといったようなこと、これに伴いまして、いろいろな魚種、養殖業の新たな取り組みへの転換、こういったことも進めていかなければならないというふうに考えております。

 北海道が一定の方向をまとめつつあるといったような状況でございますので、私どもとしても、それを支援してまいりたいと考えております。

前田分科員 海獣の被害も、近年、漁師を悩ませている大きな問題になっています。特に今、トドやオットセイ、こういった海獣被害は漁師の方々が頭を抱えるようなことになっております。政府としましても、強化網の対策事業などもしておりますけれども、なかなか、効果は残念ながら限定的であるというふうに私は思います。

 また、水産の多面的機能発揮対策としての監視活動、こうしたこともいろいろ知恵を使ってやっていただいているところでありますけれども、小さく経営をしている方々にとってはこれも十分な、一種補償的な役割を果たしているとも言えましょうけれども、しかし、大きく漁業を経営し、そして人も何人も雇っているような人であれば、こういったことだと十分な手当てにはなっていないというふうなことが言えます。

 私は、やはりこれは大々的に駆除をしていかなければいけないというふうに思います。そうしていかなければ漁師さん方が生活が成り立たないところまで来ているのではないかというふうに感じています。残念ながら、今認めている採捕数が余りにも少な過ぎるというふうに思うのであります。

 そこで、現状、トドやオットセイの被害額はどのくらいなのか。恐らく、今これから言っていただく被害額というものも、実態と比べればもっともっと小さなものにおさまってしまっているのではないかというふうに思うのでありますけれども、その具体の被害額としてはどのくらいのものが今数値として挙げられているのか、また、今申し上げました駆除の強化、これについての現在のお考え、そういったことをお聞かせください。

本川政府参考人 トドとオットセイの被害額でございますけれども、平成二十五年度、トドで約二十億円、それから、オットセイで約三億円の被害が報告をされております。

 トドにつきましては、これまでいろいろな実態把握でありますとか駆除活動、それから、今御指摘の強化刺し網、こういったものをお配りして実証していただく、そのようなことをやってきております。

 そういう中で、まさに御指摘のように、駆除数についてもう少し飛躍的に伸ばせないかといったような強い御指摘を受けまして、昨年八月に、トドの採捕数の上限を、約二百頭から倍以上の約五百頭に増頭するといったようなことをさせていただいております。

 それから、これに伴いまして、平成二十六年度の補正予算では一億円を計上して、頭数見直しに伴う駆除活動を含む有害生物対策を強化している、そんな状況でございます。

前田分科員 地域にいるラッコとかトドとかオットセイ、数百頭という規模ではなくて、もう何万頭、何十万頭といますので、もっともっと抜本的な対策というものを講じていただきたいというふうに思うのであります。

 地方創生の名のもとに、地域が今最後の希望をかけているということを先ほど申し上げました。例えば、私が町長時代からずっと声を上げ、そして実現してこなかったものの中に、いそ焼け対策、イカゴロの海中投与というものがあります。

 環境省の方では、これについては、一定の制約をかけながら、海を汚さないような工夫をしながら行うということについては是としているというわけでありますけれども、しかし、運用面ではなかなかそうもなっていないというふうに考えています。

 これについては、さまざまな問題もありましょうけれども、地域の方々が、海を守るために最後の希望をつなげていきたい、そのように考えておりますので、こういったイカゴロの投与についても、さらなる新しい取り組み、また、考え方というものをもう一歩前に打ち出していただければ幸いであります。

 次に、国の制度の運用、また、補助金などの内容についてちょっと議論をしていきたいというふうに思います。

 まずは漁船保険であります。

 これらも、以前は付保対象となっていたものが、その範囲が狭まってきてしまっているということを、浜を回っているとよく聞くのであります。

 一つ例を挙げますと、船のプロペラに漁網などが絡まってしまって、プロペラが動かなくなってしまう状況、てん絡という言葉を使うそうでありますが、その状況を放置してしまいますと、大きな事故につながってしまう危険性があります。そのため、ダイバーの方に潜ってもらってそれを取ってもらったり、また、船を上げたりしてその絡まった網を取るというふうなことをしなければいけないのであります。

 以前は、そのような状況になれば、それにかかる経費は漁船保険で出していたというふうなことでありますけれども、しかし、ある時期からは、実際に船またプロペラに損傷が生じなければ、そういったダイバー費用も船を上げたり下げたりする費用も、それは対象にしないというふうなことになってしまいまして、漁業者の方の不安、負担はすごく大きくなってしまっているのであります。

 こういった付保の範囲が狭まってしまったことの経緯とか、また、これからもそうしていくのか、何らかの見直しの考え方があるのか、そういったことについて、この漁船保険については御答弁いただきたいと思います。

 また、もう一つ、労災保険もちょっとお話し申し上げたいのであります。

 地域の本当に小さく漁業を経営している方、三十トン未満の船で沿岸漁業をされていて、そして、船頭さんと、あと、使っている若い人が一人か二人、そういった状況ですと、労災保険は入らないで、ノリコーなどという任意保険、こういったことに入って、事故があったときの付保というものをしている。それでこれまでずっとやってこられたのでありますけれども、最近、複数の浜の漁師さんから、そういったことはできなくなっちゃって、今は労災保険に必ず入らなきゃいけないというふうに言われているんだけれども、どうなんだろうかというふうなことを言われているんです。

 そんなことはないというふうに思うんですが、その点、確認させていただきたいと思います。

本川政府参考人 まず、一点目の漁船保険についてお答えをさせていただきます。

 洋上で漁網とかロープが絡んで船が動かなくなる、そういう事態が生じた場合に、これを放置しておりますと次の事故にまたつながってしまうということで、その船を曳航して港まで連れて戻る、あるいは洋上でダイバーが潜って船を動けるようにする、これについては漁船保険の対象になっております。

 ただ、引いてきて港に到着をした状況で、仮にエンジンなどに損傷がなければ、それについては保険の対象にしておらない、漁網を取ったりする経費についてはですね。

 これはなぜかと申しますと、平成十五年、十六年にかけて全国の調査をしましたところ、ほとんどの組合では、損傷のない場合のダイバー費用であるとか、そういう除去する経費については保険の対象にしておらなかったといったような実態がございましたので、その時点の公平性の確保の観点から、一部保険の対象を狭めさせていただいたといったような経緯でございます。

 ただ、いろいろ考えてみますると、全ての場合について保険の対象にしないといったようなことは果たして適切かどうか、やはり重要な、事故の防止につながるようなケースもあるのではないかということで、漁船保険団体の方で、この点については支払い対象とすることについて検討を行っているといったような状況でございます。

 その検討を受けて、我々としても必要な対応をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。

    〔小倉主査代理退席、主査着席〕

大西政府参考人 失礼いたします。

 三十トン未満の漁船の場合について労災保険の対象となるということの御質問でございますが、三十トン未満の沿岸漁業を営む事業主が労働者を一人ないし二人雇用し事業を行っている場合、労災保険法上は、強制適用ではなく、暫定任意適用事業に当たるものとされておるところでございます。

前田分科員 漁船保険の適切なる運用をぜひよろしくお願いしたいというふうに思います。

 次は、水産庁で行っている省エネ機器等の導入推進事業について伺いたいと思います。これについては長官とは何度も議論させていただいているのでありますけれども、ぜひ大臣にもお耳をかしていただきたいと思います。

 例えば船外機についてでありますけれども、これは、要件として五%の燃油使用量の削減率、これが確保されることが要件となっているわけでありますが、しかし、実際にこの五%の削減をしようと思えば、これはエンジンの馬力を、また、出力を五%小さくするということになってしまうわけでありまして、そうしますと、エンジンに逆に負荷がかかってしまって燃油の使用量が余計ふえてしまうとか、船の大きさは同じなのでありますから、小さなエンジンでそれを動かすと船の安定性が確保されなくなってしまう危険性があるとか、そういったことがあります。

 つまり、車の省エネとこの船外機の省エネというのは違う。これは水産庁の方々はよく理解しているんだというふうに思いますけれども、その向こう側にいる財務省との折衝の問題なのかどうかわかりませんけれども、ぜひ、省エネということを大前提に掲げているがゆえにそこが重要な点になってしまうのかもしれませんけれども、漁業者の実態に合わせて、本当にかゆいところに手が届くような、そういうふうな要件というものにつくりかえていただきたいというふうに考えています。

 また、今、この補助要件の中には五人以上のグループ形成ということも言われています。これも、現場ではほかの組合との話し合いとかそういったことも出てまいりますので、漁組の組合員の数も小さくなっていく中で結構な負担になっているという現状があります。

 また、この事業は漁師の方からは希望が大変多いのでありますけれども、予算が限定的であり、二分の一以内の補助ということが言われているのでありますけれども、いつも、二分の一、四〇%ぐらいになっているように私は感じています。ほかの省庁の予算の状況もいろいろ見るのでありますが、私は、水産庁の事業の予算の額、ほかの省庁に比べても極めて少なくなっちゃっているんじゃないかというふうに思うんですね。

 これは水産庁の折衝が十分でないということではないというふうに思うのでありますけれども、今、地域の漁村は本当に疲弊していますので、ここへの手当てを今しなければ、本当に、漁船漁業で成り立っている町や村はなくなってしまうというふうに思うんです。

 ぜひ、こういった状況を踏まえながらの、今私が申し上げたことについての考え方、また、今後に向けた意欲、そういったことについてお聞かせいただきたいと思います。

本川政府参考人 省燃油の機器の導入事業でございますけれども、漁業の場合にはコストに占める燃油費の割合が非常に大きゅうございますので、やはり燃油価格の動向がこれを左右するといったようなことでございまして、漁業者グループが行う省エネ活動への支援とともに、こういう省エネ効果の高い機器の導入を支援して燃油使用量の削減を図っていくということを目的としたものでございます。

 原則として、やはり燃油使用量を削減するということが目標の事業でございますので、一般的には、全般的には一〇%の削減をしてくださいということを機器の導入についてはお願いをしております。ただ、御指摘のように、エンジンの場合にはトルクの問題とかそういうことがございますので、一〇%一律にお求めするのも非常に難しいということで、何とかこれを五%に軽減をするといったような措置を講じさせていただいて取り組んでいるところでございます。

 何度も御相談させていただいておりますけれども、この五%については、緩和することはなかなか難しい問題であるというふうに考えておりますが、ただ、いずれにしても、いろいろなメーカーがいろいろな馬力のものを出してございますので、そういうものも丁寧に現場に御説明しながら、何とか御理解を得ていきたいというふうに思っております。

 それから、五人以上のグループでの活動を必要要件としているということでございますが、これについても、広さをどこまでとるか、同じ市町村でとるのか、もう少し広範囲にとるのか、漁協の単位でとるのか、そういったようないろいろな工夫をしますれば五人のグループを組むということは可能ではないかと私ども考えておりまして、これについても、具体的に漁業者の御相談にあずかりながら取り組んでいきたいというふうに考えております。

 それから、予算額でございますけれども、平成二十五年度の補正予算では二十八億円の予算を計上いたしました。これについて三十三億円の申請がありまして、御指摘のとおり、補助率全体が四二%程度にせざるを得なかったといったような状況であります。こういう状況を踏まえて、二十六年度の補正予算では、平成二十五年度を上回る、四割以上増額となる四十億円を計上させていただきました。

 これについては、燃油価格が相当大きく下がっているという中で、必要性についていろいろ議論はあったわけでございますけれども、こういう下がっているときこそ、将来に備えてこういう省エネの活動を進めていくことが必要であるということを、正直申し上げて、財政当局にもきちんと説明をさせていただきながら、何とか増額をし確保させていただいたといったような状況でございます。

前田分科員 船外機のメーカーには、同じ能力を持ちながら五%の省エネができる、そのような機器の開発、そういったことを働きかけていただきたいなというふうに思います。

 また、漁業を取り巻く環境が厳しさを増している中で、水産加工業、ここにも大きなしわ寄せが及んでいるということが言えるというふうに思います。

 まず、水産加工における外国人技能実習制度の見直しについて伺いたいと思います。

 本制度では、実習期間の延長への要望が強くございまして、これについては、先般、制度見直しの方向性が認められました。これは大変喜ばしいことだというふうに思っているのでありますけれども、見直しが行われたが、しかし、さまざまな要件をはめることによって結局それが実効性のないものになってしまうということも少なからずあるわけでありますけれども、今回の要件の設定においては、現場の実態を踏まえたものとなっておりますね。その件についてお聞かせいただきたいと思います。

中山政府参考人 先生御指摘のとおり、現在、技能実習制度の見直しについて検討しております。

 優良な受け入れ機関において、これは監理団体と実習実施者でございますが、一定の技能を身につけた実習生については、現行の三年から最大五年間に実習期間を延長することを考えております。その際、問題となるのは、先生のおっしゃるとおり、実習生の負担でございます。この実習生の負担に関しましては、技能検定三級相当の実技のみの合格を要件とする方向で検討しているところでございます。

 いずれにいたしましても、現場の実態を踏まえまして、適切な要件を法務省ともども検討してまいりたいと考えております。

前田分科員 この試験には学科試験と実技試験とがあるんだと思いますけれども、これらについてはどのようにお考えでしょうか。

中山政府参考人 先ほど申しましたとおり、実習生につきましては、技能検定三級相当の実技の試験のみの合格を要件とするという方向で検討しているところでございます。

前田分科員 ありがとうございました。

 最後になりますが、IQについて質問をしたいというふうに思います。

 近年、国内のイカの水揚げ高の減少が大変著しい状況にあります。二十六年は過去二十年間で最低の十四万トン程度というふうにも聞いております。

 国内産がこれだけ減ってしまいますと、加工業者の方々はイカの手当てに大変な苦労をされているわけでありまして、こういった場合には、機動的に、そして速やかにIQの追加枠を広げる措置を講じて、そして、業界に安心感を与えていくべきだというふうに思うのであります。

 聞きますと、二十七年の資源調査、この数値が極めてよいのでしばらく様子を見るということを聞いております。こうなってしまいますと、加工業者の方々のこれからの経営の戦略のあり方、また、イカの不足による価格の高騰、そういったことも心配されるわけであります。既に現場では生産調整も行われているような状況とも聞いております。

 私は、IQについては、資源調査によるこれからの将来見込みを判断の材料とするのではなくて、例えば過去三年のトレンド、そこから算出してみる、そのような、もっと弾力的、機動的な対応、考え方というものがあってしかるべきだというふうに思うのでありますが、この点の考え方はどうでしょうか。

本川政府参考人 輸入割り当てにつきましては、年度当初に、その翌年というか、翌年度の生産見通しでありますとか需要見通し、そういったものを経済産業省と協議いたしまして、最終的には、経済産業省が年間の輸入割り当て枠を設定して公表しているといったようなことでございます。年間一回だけの割り当てということでございますので、翌年をどう見越すかによってその輸入量が左右されるといったような状況でございます。

 ただし一方で、漁業者の側に立ちますれば、輸入量を多く設定し過ぎてしまいますと、全体的な価額の下落、そういったものにつながりかねないといったような状況がございまして、やはり翌年の生産量をどのように見るかということが非常に大きな議論、ポイントになるわけでございます。

 先ほど御指摘のように、資源上の問題もございますけれども、一方で、その年々のやはり漁海況、豊漁であるか不漁であるかといったようなことも影響してまいりますので、その点については一定のかたい生産の見通しを持ちながら、枠を設定して公表させていただく、その上で、もし漁が余りよくないといったようなことでありますと、年度途中でこれを弾力的に追加していく、そのような運用を行ってきているところでございます。

 いずれにしましても、加工業者の方々のお気持ち、需要というものは十分念頭に置きながら、我々として弾力的な対応を行ってまいりたいと考えております。

前田分科員 今さまざま議論させていただきました。また、私も意見を申し上げましたが、我が国の漁業者支援のあり方、これは、今きちんとした手当てをしなければ、本当に漁村が衰退してしまって、また、船が沖に出ているというふうな状況は、沿岸の監視という意味でも大変重要な役割を果たしているんだというふうに思います。

 今こそこの地方創生、新しい発想に立って、IQで外から入ってくるものを縛って、そして国内の漁業者を守るということも一つの方法ではありますけれども、もうちょっと直接的な支援、例えば燃油の減免が今も一部行われておりますけれども、この燃油の減免をさらに進めて漁に出やすいような状況をつくってあげるとか、また、今、世代交代が進んでおりますけれども、なかなか、新造船、小さな船でも今はソナーとかいろいろな機器が入っていますから、七千万とか一億とかしてくるような高額であります。これについては融資制度しかまだありませんけれども、これについてももっと思い切った補助事業、そういったこともやっていただけないかなというふうに思うところであります。

 また、漁船漁業が厳しくなっていく中で、海況の厳しい例えば日本海沿岸においても、何らかの漁種とか方法を考えて、養殖の施設づくり、そういったことにももう一歩進んだ取り組みをしていただきたいとも思いますし、また、船が減って今漁港がたくさん、まあ空とは言いませんけれども、割とゆとりのある漁港がふえてきておりますので、そういったことを蓄養・養殖施設に変えられるような、これは許可を変えていくことによってできましょうから、そういったことも地域でいろいろと考えておられますから、ぜひそういった地方創生の地域の発想、知恵、そしてそれに対して責任を持っていくというふうなことを政府としても後押ししていく、そのような形をとっていただきたいと思います。

 ぜひ、漁業者の方々にとって水産庁という役所が、私たちの、自分たちの側についてくれている、そういうふうな省庁だ、そう思ってもらえるような省庁になっていただきたいと思いますし、また私も、そのような方向に進んでいくように政治の立場から支援してまいりたいというふうに思います。

 本日はどうもありがとうございました。

石原主査 これにて前田一男君の質疑は終了いたしました。

 次に、池田道孝君。

池田(道)分科員 自由民主党の池田道孝でございます。

 林大臣におかれましては、再度の登板、御苦労さまでございます。引き続き農林水産委員会に所属しておりますので、今後ともよろしくお願いを申し上げます。

 今国会での安倍内閣総理大臣の施政方針演説におきましても、その内容は、冒頭に農業問題について触れられておられます。農家の視点に立った農業改革ということで、「戦後一千六百万人を超えていた農業人口は、現在二百万人。この七十年で八分の一まで減り、平均年齢は六十六歳を超えました。もはや、農政の大改革は待ったなしであります。」こういうことで、我が国の農業を取り巻く環境、そしてまた、国民の食料の生産、美しい国土、日本の国土を守る、そうした観点から、農業問題について大変な、冒頭からのお話、施政方針演説でございました。

 御承知のように、我が国の農業というものは、猫の目農政と言われてまいりました。そのたびそのたびに、国としては時代に合った農業政策を推進してこられたわけでございますけれども、それが翌年には、あるいは二年、三年たったら変わる、そうした状況の中で農家の方々は、非常に不安を持った、そしてまた一方では、怒りに満ちた、そうした中で農業を営んでまいりました。

 それはいろいろな要因があろうかと思いますけれども、一つには、やはり、農家の方々に対するそうした農政のPRあるいは説明不足が大きな要因ではなかったかなというふうに思われます。

 この一年間、ずっとマスコミをにぎわしておりますTPPの問題、これにつきましては、交渉ルールにもありますので、我々にも中身ははっきりわからない。そして、農家の方々には、地域の方に聞かれたら、いやいや、重要五品目は必ず守りますよ、そして、交渉が行き詰まって決裂、そうしたときには、五品目が守れない場合には交渉から脱退しますよ、そうした説明で今まで農家の方々も納得してきておられます。

 そして、後半半年間、常に農協改革につきましてマスコミをにぎわしてまいりました。林大臣におかれましては、ちょうど大臣を離れられて党務に専念されて、その農協改革の方向性を決められた、そして、それについてJA、全中の方々もある程度の御理解をいただいたというふうにお聞きをいたしておりますけれども、まだ決まったわけではございませんが、そうした中身につきましても、農家の方々はほとんどそれが内容がわからない。

 そして、これから後でまた御質問させていただきますが、二十七年度から始まりました大きな改革であります農地中間管理機構、この点についてもそうでございますけれども、ずっと今までが、農家の方々の不安をあおる、言葉は悪いですけれども、そうした農政でございました。

 いろいろな施策をこれから講じてまいりますけれども、第一の、農家の方々に対する不安を払拭する上でも、そうした説明あるいは十分なPR、政府、地方自治体、そして農協が一丸となってやって初めて政策が実行できると思いますけれども、今までのそうした農家の方々に対する政府の取り組み、そして、今後の施策を実現していく上での、農家の方々に対する不安を払拭するためのPR、説明、そうしたことについてのお考えをお尋ねいたします。

あべ副大臣 池田委員におかれましては、特に農業のことの熟知をされ、また、経験もおありで、地域の声も聞かれている中、御指摘のとおり、農政改革の実行に当たって、その目指す方向性、考え方につきまして、現場の関係者にしっかりと周知し、一体となって取り組むことが重要でございます。

 そのため、これまでも、平成二十五年十二月の農林水産業・地域の活力創造プラン決定以降、プランに基づく農政改革の内容につきまして、都道府県や市町村とともに連携をして、現場説明会を実施するなど、丁寧な説明に努めてきたところでございます。また、説明のわかりやすさ、これも重要だと思っております。

 また、現場とこの農政を結ぶ機能を強化するため、農林水産省の組織も見直すこととしているところでございます。

 具体的には、農政全般につきまして、現場に伝える、現場から酌み上げる、機能を強化するためのポストとして、地方農政局などに地方参事官を新設いたしまして、各県庁所在地へ配置することにしておりまして、農林水産省設置法の一部を改正する法律案を今国会に提出させていただいたところでございます。

 農林水産省といたしましては、こうした組織も活用しながら、政策についての情報を現場に的確に伝え、また、現場の考えを受け取るなど、現場とのキャッチボールを不断に行いまして、現場への施策の周知徹底にしっかりと取り組んでまいります。

池田(道)分科員 ありがとうございました。

 もう細かいことは申し上げませんけれども、そうした大きな改革だけでなしに、例えば昨年の米価下落による対応等につきましても、危機感がないというような状況がよく見受けられます。今後とも、そうしたことにつきましては十分な説明をお願い申し上げます。

 それに関連してということではございませんが、ちょうど昨年の今ごろに県の方に説明をされました、二十七年度から始まっております農地中間管理機構でございますが、実際には、市町村の方への説明というのは田植えが始まったころだったろうと思います。

 そうした状況の中で、貸し手、出し手、借り手のマッチングがなかなかできていないというのが現実でございます。ただし、昨年の米価下落を見ますと、特に、兼業農家の方々がこれからそうした農地をお貸しするということになるのではなかろうかなというふうにも思っておりますけれども、そうした状況の中で、私の地元岡山県で申し上げますと、直近の数字で、二月までの数字でも、マッチングができているのは四十八・九ヘクタールしかございません。

 先ほど申し上げましたような米価あるいはWCS、飼料用米等の条件のもとで、そうした農家の方々もふえてくるのではなかろうかなというふうに思いますけれども、これも、第一に、農家の方々へ制度が十分浸透していないということで、岡山県では、水田所有者の方々全戸へのチラシの配布、あるいは個別の説明による制度の周知をされておりますけれども、そうした対応につきましてのお考えをお尋ねいたします。

奥原政府参考人 農地の中間管理機構の問題でございます。

 これは、二十五年に法律をつくっていただきましたけれども、我が国の農業を成長産業にしていくためには、担い手のところに農地の集積、それから集約化、これをさらに加速化していくことが必要でございます。このために、今後十年間で担い手の農地利用の割合を、現状五割でございますが、これを八割まで拡大するということを目的といたしましてこの中間管理機構の法律をつくっていただいたところでございます。

 既に全ての都道府県におきましてこの機構が立ち上がっておりますけれども、この機構のスキームは、機構自身が農地の所有者から農地を借りまして、担い手の方にできるだけまとまった形で転貸をする、そういうスキームでございます。

 したがいまして、受け手となる担い手につきましては機構が公募するという形にしておりますけれども、一方の出し手の方につきましては、まとまった面積を出していただくことが必要でございますので、公募するという仕組みではございませんで、機構あるいは地方公共団体が、人・農地プラン等の話し合いの中で、まとまった面積を出すようにしていただくということをベースにしております。

 これまで、初年度の取り組みの中で、各県の機構の方から、なかなか農地の出し手が出てこないという話も伺っておりますけれども、これにつきましては、それぞれの地域におきます人・農地プラン、地域の話し合いが必ずしも十分進んでいない、要するに、出し手の掘り起こしの活動が十分進んでいない、こういったことが一つございます。

 それから、もう一つは、この機構の問題につきまして農業者への周知が必ずしも徹底されていない、こういったことがあるというふうに考えております。

 都道府県ごとに機構ができておりますので、県によっていろいろでございますけれども、例えば熊本県のようなところは、知事が前面に立ってPR活動を行っていただいておりまして、こういうところでは、農地の出し手の方も順次出てきているということもございます。

 それから、機構が、市町村ですとか農協を含めまして地域の関係機関と連携していただいて、地域の話し合い活動を推進していただく、こういったことが機構を軌道に乗せていく上では非常に重要なことでございますので、今後ともこういった方向で指導していきたいというふうに考えております。

池田(道)分科員 中間管理機構の設置、そして耕作放棄地をなくすという観点からも、あるいは大規模農家を育てるという意味からも、非常に大切な、そして重要な事業だろうと思いますし、私どもも大賛成でございます。

 そうした中で、この利用設定期間が原則十年でございます。今までの一時利用権設定でございますと三年あるいは六年という期間があるわけでございますが、そうしたこと、あるいは、一時利用権設定の場合には近所の方々とかが借り手になるわけでございますが、中間管理機構を介した場合に、長期である、そして誰に貸すかわからない、あるいは、これは利用権設定でも一緒ですが、一度貸すと戻ってこない、そうした不安が高齢者の方々には多いというようなことで、出し手も少ない。

 あるいは、逆に、実際の窓口になっております市町村、新しい事業が入りますと職員がどうしても不足するというような中で、市町村の対応に取り組みの濃淡がある、そういう現実もございます。

 そうした点につきましてのお考えをお尋ねいたします。

奥原政府参考人 農地の流動化を進めるためには、出し手の方に安心して農地を出していただくということが非常に重要でございます。

 そのために、今回、農地の中間管理機構を整備しておりますが、この中間管理機構は、出し手の方から機構自身がまず農地を借りまして、これを担い手の方に転貸をするという仕組みでございます。したがいまして、出し手の方から見れば、貸す相手はあくまで農地の中間管理機構、公的な組織でございます。したがいまして、機構に貸した場合には、地代の支払いは確実に行われます。それから、その間、耕作放棄地になることもございません。

 そういった意味で、出し手にとっては安心して貸すことができる、そういう仕組みになっておりますので、農地の中間管理機構自体が農地の出し手に対するインセンティブになっているというふうに考えております。

 その上で、先ほどの熊本県等におきましては、知事が率先をして、知事を信頼して農地を預けていただきたい、こういったPRもやっておられますので、こういったことを通じまして、出し手の抵抗感それから不安感、こういったものの払拭につながるような取り組みをさらに進めていきたいというふうに考えているところでございます。

 それから、機構の地域での職員体制の話も今御指摘がございました。

 機構につきましては、客が来るのを待っている不動産屋ではなくて、地域農業の将来をデザインしてみずから実行していく、ディベロッパーとしての自覚を持って、自分自身で積極的に動き回っていただくということをお願いしております。

 その際、特に大事なことは、現場におきまして農業者の間のところを動き回ってコーディネートする、そういった職員の方の体制、質と量でございます。

 これも熊本県について言いますと、現場でコーディネートに当たる職員の方を四十名、これは機構自身だけではございませんで、市町村の職員の方、それから農協の職員の方も含めておりますが、現場で動ける方を四十人程度整備をしていただいて、各地域で動いていただいております。

 こういった事例を各地に紹介をすることで、各県とも、この機構の本体、それから県庁組織、あるいは委託先の市町村ですとか農協ですとか、こういったところの職員体制をきちんと整えて現場できちんと動けるようにしていただきたいということで、さらに指導を強めていきたいというふうに思っております。

池田(道)分科員 ありがとうございました。

 今、局長が言われましたように、例えば熊本県の、知事が筆頭にという例が全国に広がればいいんですけれども、今言われたように、中間管理機構が責任を持ってと言いながらも、先ほど申し上げましたような、どうしても貸す方々は、出し手の方々というのは、町内の方でしたらいいですけれども、遠方のどこの担い手の方かわからないというのが地方の実情でございますし、例えは違いますが、空き家対策でも、空き家がいっぱいあっても、どなたが入ってこられるか、素性がわからない人にはというその懸念がどうしても払拭できませんので、そうした中で、いろいろな形でPRをしながら進めていただきたいと思います。

 それから、先ほどの猫の目行政じゃございませんが、この制度につきましても、非常にいい制度でございますので、事業そのものを長期間そしてまた安定的に実施をしていただきたい。そしてまた、それに必要な十分な予算を確保していただきたいという現場の声でございます。

 このことにつきまして、またお考えをお聞かせ願います。

奥原政府参考人 農地の中間管理機構は、今後十年間で担い手の農地の利用面積を、現状五割から八割まで拡大するということを達成するための手段として整備をした制度でございます。

 したがいまして、一年、二年でやめてしまう話では全くございませんので、この事業を全ての都道府県におきましてきちんと軌道に乗せた上で、十年計画でもってきちんと実行していくということでございます。したがって、長期にわたって安定的に実施をしていきたいというふうに考えているところでございます。

 それから、この事業が成果を上げるためには、当然、予算面の措置も重要でございます。この予算につきましても、これまで当初予算、補正予算を含めて相当な金額を手当てしておりますけれども、今後とも、この事業が円滑に進むように、予算面でも十分な手当てを考えていきたいというふうに考えております。

池田(道)分科員 続きまして、日本型直接支払い制度についてお尋ねをいたします。

 この制度ができた当時、当初は名称が違いましたけれども、非常にいい制度だなと。私は、農家の方々、非農家の方々を含めて地域の方々を、運命共同体という言葉を使っているんですが、運命共同体の中で、地域の農道あるいは水路、特にこれから五月の連休、田植え前には全国あちこちでやられると思いますけれども、そうした作業に対して国から補助が出る、そうしたすばらしい制度ができましたよということで、できた当時、県会議員でございましたけれども、地域の方々にお願いをして、私の地域はすぐつくっていただきました。しかし、それからなかなか広がらないというのも事実でございました。

 そのときに、非常に難しい提出書類がありましたけれども、これは前々回にもお話をさせていただいたかどうか、通常考えられないような農水省の態度で、すぐ書類の変更を、簡略にしていただきました。非常にありがたかったんですけれども、なおかつ、根拠書類等の保存すべき書類等の整理に手間がかかる。あるいは、その書類作成における事務処理ができない。特に、資源向上支払いの必須項目であります農村環境保全活動の実施が困難。このことにつきましてなかなか地域で広がらない。

 皆さん方が、隣の自治会等でやっておられるのでうちもやろうという会合を持たれても、制度そのものには関心を持たれてオーケーが出るんですけれども、実際にやる段になりますと、その事務処理等ができにくいので、どうしても二の足を踏むということが多々ございます。

 そうした制度につきましてのお考えをお尋ねいたします。

三浦政府参考人 お答えいたします。

 今年度創設いたしました多面的機能支払い、日本型直接支払いの一環でございますけれども、多面的機能支払いにつきましては、従来の農地・水保全管理支払いと比較いたしまして、約一・三倍、四十九万ヘクタール増の百九十六万ヘクタールまで取り組みが拡大してきております。

 取り組みの普及推進に当たりましては、作成書類のひな形を示しますとともに、できるだけ、該当項目をチェックすればいいというような様式を導入いたしましたり、実施状況の確認に必要な活動組織からの提出書類を簡素化するといった、事務手続の簡素化を図っているところでございます。

 また、先生からお話がございました農村環境保全活動の実施、これを要件としておりましたけれども、これを要件としない農地維持支払いを創設いたしまして、農業者の方々にとって取り組みやすい制度としたところでございます。

 平成二十七年度から、本制度は、農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律という法律に基づいて実施されることとなっておりますけれども、その際にも、既に多面的機能支払いに取り組んでいる地区の活動計画書を法律に基づく事業計画書として活用できるようにするですとか、これまで交付金の交付や申請事務を担ってきていただきました地域協議会を、活動組織や地方公共団体の事務を支援する組織として位置づけるといった事務手続の簡素化に係る検討を進めまして、本制度ができるだけ多くの地域で取り組まれるように、引き続き普及推進を図ってまいりたいと考えております。

池田(道)分科員 ありがとうございました。

 どちらにいたしましても、少子高齢化等で若い農業後継者が少ないということで、こうした取り組みの中で地域を守っていくということが大切でございます。

 そうした中で、地元からの、取り組まない理由についてということで、岡山県ですが、組織をまとめるリーダーがいない、高齢化が進み、活動への参加者が少ない、活動期間として規定される五年間を継続して取り組む自信がない、そしてまた、同様の活動を支援する市町村独自の制度が既に存在する市町村では事務処理が煩雑になるため遠慮がち、中山間地域等直接支払い制度との重複実施を制限している市町村がある、そして、水路や農道等の整備工事は基本的に行政が行うことから、資源向上支払いを実施しない市町村がある、こうした、いわゆる県が市町村の意向も聞いての意見でございます。

 そうした個々の問題全てを解消しながらということにはなかなかならないだろうと思いますけれども、そうしたことについてのお考えをお尋ねいたします。

三浦政府参考人 お答えいたします。

 この多面的機能支払いの普及推進に当たりまして、先生のお話にございましたような課題がさまざまあることは承知しております。

 これらの課題につきまして、例えば、今お話がございました、リーダーがいない、あるいは高齢化が進んで参加者が少ないとか、五年間を継続して取り組む自信がない、そういったことにつきましては、集落間が連携をしてリーダー等の人材確保を広域的に行っていただく、あるいは、広域的な取り組みによって効率的な事務体制をつくっていただくといったこと、あるいは土地改良区、民間団体等に事務委託をすることによって活動の負担軽減を図るといった工夫などができると考えております。

 また、市町村独自の取り組み、制度が既に存在するといったことでなかなかこの制度に入ることを敬遠しがちであるとか、もう一つお話がございました、行政が基本的に担うような部分について、施設の長寿命化といった資源向上支払いというのがございますけれども、こういった取り組みにちゅうちょするというようなことがあるというお話がございました。

 これらにつきましては、国庫補助事業でございますので、この制度を活用していただくことが市町村にとってもメリットがあるといったことを御説明するなど、そういった地域の抱える課題に応じまして、具体的かつきめ細やかに普及推進を図ってまいりたいと考えております。

池田(道)分科員 どちらにいたしましても、先ほどの農地中間管理機構、あるいは多面的機能支払いにつきましては、これからの我が国の農地を守っていく非常に重要な、そしてまた農家の方々にとりましては非常に便利な、そして有効な補助制度でございますので、しっかり普及ができるようにお願いをいたします。

 ただ、これから先のことですけれども、懸念されるのは、農地を中間管理機構を介して担い手、法人の方々に貸し出しをいたしますと、農家の方、農業従事者というのが減ってまいります。そうすると、今まで非農家あるいは兼業農家の方々で貸している方々が、そうした農道の整備にはもう遠慮するという声がぽろぽろ出てきておりますが、それは別といたしまして、そのときはまたそうした形での対策を十分とっていただきたい。

 そして、多面的機能支払いの件でございますが、いい制度で、事務処理が非常に難しいという中で、一方では、岡山県の場合には、ほとんどのところが事務処理を土改連の方へ事務委託をしております。事務委託をして、その報告をしているわけでございますが、その委託料が大体補助金の一割、三百万ですと三十万ぐらいの委託料を土改連の方に支払いをしているというのが事実でございます。

 補助制度でございますから、そうした作業をしなければならないというのはわかるのでございますが、一方では、せっかく補助をいただいて農道、水路をきれいにして、その中から委託して一割分をまた委託料として支払えというのは、補助制度そのものはいいんですけれども、その中で一割分もそちらに取られるというのは、これは感情的な問題かどうかわかりませんが、どうも納得しがたいというのが、実際にやっておられる団体の方々の御意見でございます。

 そうしたことについてどういうふうにお考えになっておられるか、お尋ねをいたします。

三浦政府参考人 お答えいたします。

 多面的機能支払いの事務の手続につきましては、農業者の方々の事務手続の負担に配慮して、土地改良区等の機関に事務処理を委託するということが可能であるという形にしております。

 その際の事務委託料につきましては、委託する事務の内容ですとか期間等によりまして異なりますので、基本的に、活動組織と受託者との間で協議によって決定されていくというものであろうと考えております。

 いずれにいたしましても、この制度を安定的に実施していくためには、必要な書類の作成というのは、これはどうしても必要だと考えておりますけれども、できるだけ事務負担を軽減するというところが重要であろうと考えておりますので、今後とも、農業者の方々の御意見を伺いながら、事務手続の簡素化を進めますとともに、事務委託等によりまして効率的な活動実施ができるといった事例を提示するなど、一層の事務の負担軽減に努めてまいりたいと考えております。

池田(道)分科員 ありがとうございました。

 時間が参りましたのでこれで終了いたしますけれども、非常に農業問題は過渡期でございます。所得倍増がすぐにはできるとは思いませんけれども、これからの農業政策におきまして、私どもも頑張りますけれども、農水省を含め、農林水産大臣含めまして、農家の方々にこれからの明るい農業展望が開けるよう、よろしくお願いをいたします。

 ありがとうございました。

石原主査 これにて池田道孝君の質疑は終了いたしました。

 次に、加藤寛治君。

加藤(寛)分科員 おはようございます。

 本日は、林大臣を初め、大変御苦労さまでございます。自民党の加藤寛治でございます。

 今回の質問をする機会を得ましたことに感謝をしながら、質問をいたしたいと思います。

 地方創生における農業政策の取り組み方針について、三点についてお伺いをしたいと思います。

 順序が逆になるかもしれませんけれども、まず、独立法人農研機構カンキツ研究口之津拠点の今後の取り扱いについてお伺いをしたいと思います。

 御案内のように、地方創生が急務の中で、国の機関の地方移転の一環として、従来ある国の機関を有効に活用すべきではないかと考えております。

 私の地元の農研機構カンキツ口之津拠点は、業務効率のため、その研究機能を他拠点に集約すると聞いておるわけでございますが、地方に国の機関があることによって地域が活性することを考えた場合に、九州ならではの研究を行うために口之津拠点を有効活用すべきだ、このように私は考えておるわけでございますが、その点についていかがされるのか、お考えをまずお伺いしたいと思います。

西郷政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構果樹研究所のカンキツ研究口之津拠点につきましては、業務効率化の観点から、同機構として、研究設備がそろった静岡県の興津拠点に集約化しつつ、地元ニーズに応じたかんきつの品種育成の普及促進等の事業を継続する計画であると承知しているところでございます。

 一方で、かんきつの栽培あるいは病害虫防除に関する技術の研究など、九州地域の自然環境下でなければ達成できないという研究もあると考えられることから、御指摘の趣旨も踏まえまして、関係機関とも調整の上、このような現場ニーズに合った研究の実施を検討するよう同機構を指導してまいりたいと存じております。

加藤(寛)分科員 先ほど御答弁いただきましたように、やはり、地方に国の機関を移転するという地方創生の大きな眼目の一つでもあるわけでございますから、現存する国の機関を有効に活用されることが私は地方創生の実現に向けて大きな原動力となるものと思いますので、ぜひとも前向きに検討をしていただきますようにお願いを申し上げておきたいと思います。

 次に、農協改革についてお伺いをしておきたいと思います。

 農協改革につきましては、御案内のように、大変な議論の中で、基本的な大枠については方針が決定をしたようであります。

 全中については一般社団法人化の方向で、会計業務監査について外部に監査法人を設立することによりまして、単協といたしましては、従来からの公認会計監査法人かいずれかを選択することになったわけでございますけれども、要は、単協として監査費用がこれまでより負担が増にならないかどうかということが、単協並びに組合員の肝心かなめなところでございますので、その辺のところを一点お伺いをしておきたいと思います。

 次に、准組合員の利用制限については、五年間の、地方それぞれの地域の調査を精査して方針の決定をしてまいりたいという方針のようでございますけれども、私なりに、単協の組合長として経験をしたことを踏まえて考えますときに、単協自体は、営農販売、信用、共済事業を大きな三本柱として運営することによって成り立っておるわけでございますので、准組合員の利用規制というのはすべきではないという思いでおります。

 また、准組合員の皆さん方も、地方の過疎地であればあるほど、買い物とかガソリンスタンド、そしてまた金融等におきまして非常に助かるという感謝の気持ちもよく耳にすることでもございますし、地域づくりの構成員の一人として、地方の創生、地域の振興のためには大きな原動力の一役を担っておるわけでございますから、そういう観点からお考えをお伺いしておきたいと思います。

奥原政府参考人 農協改革の関係でございます。

 まず、会計監査の関係でございますけれども、二月に取りまとめられました農協改革の法制度の骨格、これにおきましては、会計監査につきましては、農協の信用事業を、イコールフッティングでないといった外からの批判を受けることなく安定して継続できるようにするという観点で、信用金庫あるいは信用組合等と同様に、公認会計士による会計監査を義務づけるということにされております。

 これは、全中の中に現在は全国監査機構というところがございますが、これを外に出して、公認会計士法に基づく監査法人を一つつくっていただく、それと、従来からあります普通の監査法人、そこを選択して使っていただく、こういう仕組みでございます。

 その際、先ほど先生から御指摘ございましたように、公認会計士の監査になったときに監査のコストがふえてしまうのではないか、そういう御指摘もいただきましたので、法制度の骨格の中では、政府は、農協が負担をふやさないで確実に会計監査を受けられるように配慮するということも法律の中で規定をするという趣旨が骨格の中に盛り込まれているところでございます。

 現在、今度の国会にこの法律を出すべく、条文の詰めの作業をやっておりますので、配慮の具体的な中身まで決まっているわけではございませんが、これに即しまして検討していきたいというふうに考えているところでございます。

 それからもう一点は、准組合員の関係でございます。

 農協は、あくまでも農業者の協同組織でございますので、正組合員であります農業者のメリットを拡大する、これが最優先でございます。したがいまして、准組合員へのサービスに主眼を置いて、正組合員であります農業者へのサービスがおろそかになるようなことはあってはいけないというふうに考えております。

 ですが、一方で、農村地域もいろいろでございますので、特に、過疎化ですとか高齢化が進行している農村社会におきましては、農協が実際上その地域のインフラとしての側面を持っているのも事実でございます。

 こういった状況を背景といたしまして准組合員の利用規制について議論がされてきたわけでございますけれども、これまでは准組合員についての規制を特にやっておりませんので、正組合員と准組合員の利用の実態が必ずしも十分把握できておりません。

 それから、今回の農協の改革によりまして農業者の所得向上に向けた成果がどの程度出るか、このことを見きわめる必要がございます。

 そういったこともございまして、この法制度の骨格の中では、五年間この実態につきまして調査を行った上でこの取り扱いについては決定をするということに整理をされているところでございます。

加藤(寛)分科員 次に、農地の基盤、圃場整備についてお伺いをしたいと思います。

 林大臣はよく、農政は政府と現場のキャッチボールであるという話をされております。全く私も同感であり、私は、それは農政に対する名言であろうと大変評価をいたしておるところでございます。

 地方創生は日本の創生である、これに失敗をすれば国が危ないということを、総理、担当大臣、それぞれの数多くの皆さんが話をされておりますように、私は、この地方創生というのはこれから大変重要な政策だろう、このように考えております。

 しかしながら、これまで、国は過密対策に力、政策を傾注し過ぎて、過疎対策、地方をおろそかにしてきたような感が拭えないという思いをたびたび申し上げておるところでございます。その結果が東京一極集中をもたらしたものと思いますし、そこで、政府もようやく東京一極集中を是正して、地方のにぎわい、活性化、活力がなければ日本の国の繁栄はないとの思いで本腰を上げて取り組みを始めたことについては、私も非常に評価をしながら、期待をいたしております。

 また、過疎対策は、過密対策に比べて、予算、費用というのは、極めて少ない費用で実現をするものと私は考えております。ところが、よく費用対効果云々ということを言われる識者がおられるわけですけれども、そのことに余りにこだわった結果が今日の地方の衰退を招いたのではないか、私はこのように考えておるところでございます。

 そこで、地方の産業の振興、発展というのは、第一次産業、農林水産業であります。その中で、農業については、農地中間管理機構制度を各都道府県に設置して、農地の集約、集積を図り、機械化によって効率的な農業経営、農業所得増に資するよう、取り組みが始まったところでございます。そこで、規模拡大のための機械化、農地集積、集約するには、まず農地の圃場整備を進めてそれを完成することが先決であり、必要不可欠であろう、私はこのように考えておるところでございます。

 ところが、平成二十一年九月から二十四年十二月までの民主党政権の時代に農地基盤整備事業が六十数%削減されて、農業の基本である優良農地の整備、確保が大幅におくれました。このことは、国民に安定的な食料の供給をするという国家の使命というのがないがしろにされたという思いで、私は憤りも感じたような次第でございました。

 その後、平成二十四年の十二月に自公政権に復帰の後に、平成二十一年当時と同額ではないにしても、徐々に従前の予算に増額をされて、圃場整備事業というのが進行するものと期待をいたしておったわけでございますが、平成二十六年度の補正予算が、平成二十四年、二十五年の補正予算と比較をして圃場整備事業費が激減をした結果、地元の希望、意欲に応じられないような状況が、今現状としてあらわれております。

 このような状態がもし続けば、担い手の意欲をそぐことになりかねないわけでありますし、そうした状況の中では、担い手を数多く育成しようということはなかなか困難で、実現ができないということに私はなりかねないという思いでおります。ということは、ひいては、地方創生が実現できないような状況に陥るのではないかという思いがいたしております。

 また、新しい担い手を数多く育成しようということでございますけれども、もちろんそれも大変重要なことであろうという思いでおります。しかしながら、新しい担い手も大事でありますけれども、現在の担い手が営々として営農を継続して、そして後継者が育成できるということが一番最も大事なことであろう、私はこのように考えております。

 やはり、新規就農、新しく担い手となった人よりも、親の背中を見ながら、親が取り組んでおる農業を見ながら、よし、農業の後継者となろうという後継者、担い手の方が就業の確率というのは、非常に定着率が高いわけであります。

 そこで、政府は、十年後に、全農地四百五十万ヘクタールの八〇%、三百六十万ヘクタールを担い手に耕作を託したい、その計画であるようです。現在の五〇%から八〇%に推し進めるということでありますが、農業人口は、現在の約百八十万余から十年後は半減をして九十万に減少するという予測、推測がなされております。単純に計算しましても、一人当たり四ヘクタールであるわけですから、機械化を図らなければ、到底耕作できる面積ではありません。

 未整備の農地で無理に機械化をすると事故につながって、今現在でも毎年三百五十人から四百人の死亡事故が発生をいたしております。そういう状況の中で、現在の整備されておる農地は二百十万ヘクタールだと統計上伺っております。

 三百六十万ヘクタール必要である中で二百十万ヘクタールしかないということは、未整備の百五十万ヘクタールを早急に整備を図らなければならないという思いでありますが、今後十年間の中で、圃場整備についてどのような計画、方法で進められようとしておられるのか、林大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

林国務大臣 農地中間管理機構によりまして担い手への農地集積を進めていくためにも、農地の大区画化や汎用化等基盤整備を推進するということは、今、加藤委員もおっしゃっていただきましたけれども、大変重要だというふうに考えておるところでございます。

 何よりもやはり、地域のニーズ、このキャッチボールと申し上げておりますが、これを踏まえて、農地中間管理機構とも連携しながら、圃場整備等の基盤整備を計画的に推進していくことが大事でございますので、必要な予算確保に努めまして、担い手への農地集積、今お触れいただきましたように、今後十年間で五割から八割へとこれを促進してまいりたい、こういうふうに思っておるところでございます。

 この予算でございますが、農業農村整備に関する予算については、補正予算も活用しながら、やはり当初予算を確保していく、これが大変に重要だと考えておるところでございます。

 平成二十七年度予算案におきましては、いわゆるNN、農業農村整備事業について、対前年度比一〇二・四%の二千七百五十三億円を計上いたしましたほか、農山漁村地域整備交付金、農業農村整備分は七百三十五億円でございますが、それから、簡易な基盤整備を行うための新規の非公共の事業、農地耕作条件改善事業百億円、これを合わせまして三千五百八十八億円、対前年度比では一〇四・八%でございますが、これを計上したところでございまして、こういう予算を活用しながらしっかりと圃場整備を行ってまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。

加藤(寛)分科員 当初予算では前年度比一〇二%か四%ということで、増額はされておるということは御答弁でお伺いをしたとおりでございます。

 しかしながら、先ほど申し上げましたように、二十六年度の補正予算が二十四年、五年と比べて極端に減少をしたということで、我が長崎県におきましても、前年同様の予定で計画ができるものということから、意欲を持った地域の圃場整備に向けて計画をしておるわけでございますけれども、現状の中では六割程度しかその予定、意欲に対してお応えをすることができないということを聞いております。

 当初予算というのは、先ほど答弁の方でお伺いしましたように、そういう状況でございますけれども、ぜひ、二十七年度の補正予算の中でも積極的な圃場整備事業についての予算を確保していただいて、地域の意欲、担い手の皆さんがこれから農業に積極的に取り組んでいこうというその意欲をそぐことがないように、ぜひともお願いを申し上げたいと思います。

 一次産業等の、非常に三K事業と言われる。私は、三Kよりも四Kではないかという思いがいたしております。危険、きつい、汚いが三K。もう一つの四Kは、収入が少ない金欠ということで、農業、一次産業というのはそうしたことも言えるのではないかという思いで日ごろ取り組んでおるような状況でございます。

 私が三十数年前に県会議員に送っていただいたときに農家の皆さんから相談を受けたことのまず第一点が、自分の息子に嫁の来手がないんですよ、加藤さん、これをぜひ解決してくれんですかというような相談をたびたび受けました。

 そこで、私がその農業者に申し上げたことは、圃場整備をやって機械化を図れば、若奥さんは、食事の準備をして、三時休み、十時休みの準備をすれば、農作業には携わらぬでもできるようになるんですよ、そうすれば息子の嫁さんは幾らでも来手はありますよというような話をして、圃場整備の必要性を、三十年来、そう言ってまいりました。

 当初はなかなか理解されなかったわけでありますが、十年後、会うたびにそういう話をしておりましたら、取り組みが始まりました。今、現状でも始まっております。

 そうした中で現状を、現代を考えてみましたときに、農協の組合長当時に、やはり、出荷反省会というのが、出荷が終わってから反省会を農家の皆さん方とともにやるわけですけれども、そのときに集まってこられる皆さん、もう若い人ばかり、それに奥さんもともどもに出席をして、非常に若い農業後継者が育ってまいりました。やはり圃場整備の必要性というのをそのとき私は感じて、今現在では、自分の子供に嫁さんの来手はないんですよという相談を受けたことはありません。

 また、その出荷反省会には、関西、関東、中国地方からの市場の皆さんも見えるわけですけれども、この地域ぐらい若い世代の後継者が育っておるところは、全国回ってみてもありません。ぜひとも今の状態を保っていただいて、日本の農業のために農業の一翼を担ってもらいたいというようなことをたびたび聞いてまいりました。

 そういうことで、やはり圃場整備というのはぜひともやらなければ規模拡大はできないし、そしてまた、圃場整備の未整備の中での機械化を図れば、農業機械の事故で死亡される方が年に三百五十人から四百人、現実に発生をしておるわけでございますから、そうしたこと等も総合的に踏まえて、ぜひとも二十七年度の補正予算について、意欲のある農業者が意欲を持って取り組むことができるように、ぜひ大臣に御尽力を賜りますようにお願いを申し上げて、以上で質問を終わります。

 ありがとうございました。

石原主査 これにて加藤寛治君の質疑は終了いたしました。

 次に、濱村進君。

濱村分科員 公明党の濱村進でございます。

 本日は、木材産業、林業ですね、あるいは漁業について御質問をさせていただきたいというふうに思います。よろしくお願いいたします。

 まず、平成二十六年度の補正予算におきまして、五百四十六億円かけて森林整備加速化あるいは林業再生対策を行われるというふうになっているわけでございます。これは、新たな経済対策として行われるわけでございますので、地方創生にも非常に役立つという趣旨で予算づけをされているというふうに理解をしているわけでございますけれども、そもそも森林整備について目的は、人工林が今本格的な利用期を迎えているというそういう背景があるかというふうに思うわけでございます。豊富な森林資源を活用して林業を成長産業化するということが大変重要な課題になっているということであろうかというふうに思う次第でございます。

 私の地元、兵庫県でございますが、兵庫県におきましても、平成二十四年の数字でいいますと、土地面積の六七%が森林でございます。そのうち、六三%が民有林で、四%国有林がございます。改訂された日本再興戦略におきましても、林業を成長産業化するということで明記されておるわけでございますが、兵庫県の中においても四二%を占める人工林をしっかりと活用していかなければいけないという状況に入っているというわけでございます。

 国内には、兵庫県を初めとしてさまざまな森林資源があるというにもかかわらず、これは平成二十五年の数字でございますけれども、木材自給率については二八・六%と、二十四年から比較すれば〇・七%上昇しているというわけでございますが、ほかは外材、輸入製品であるということであります。

 平成十四年に一八・二%と底をついて以降、徐々に上がってきたという状況はあるにはあるんですけれども、そうはいっても、まだまだ上がり切っていない。あるいは、それでも日本の森、十年以上手が入っていないという状況があるのではないかというふうに思うわけでございまして、放置されている。放置されてしまうとこれは経済的損失につながるわけでございますので、しっかりと手を入れて経済的価値をふやしていかなければいけない、こういう状況にあるというふうに思うわけでございます。

 今まさに手を入れなければいけない時期に来ていると思うわけでございますが、なかなか自給率も上がらないこの現状について、どういう課題があるというふうにお考えでございましょうか。

林国務大臣 今委員から御指摘がありましたように、戦後営々と植林をして造成をしてきました人工林、これがまさに本格的な利用期、伐期を迎えておるということは委員御指摘のとおりであります。

 せっかく森林資源が豊富になっておるわけでございますので、木づかい運動というのをやっておりますが、木を使う、森を守るので切っちゃいけないということではなくて、切って使ってまた新しく植えていくということが、森林を本当の意味で守ることにつながる、こういう運動もしながら、林業をそのためにも成長産業化していく、これが非常に大事なことだと考えておるところでございます。

 このため、農林水産業・地域の活力創造プラン等を踏まえまして、CLTなどの新たな製品、これを普及しようとやっておりまして、直交集成板ということで、構造材にも木を用いていこうという新たな取り組みでございます。

 また、そういうものを活用して公共建築物にも木を使ってもらおうということ、そしてまたさらに、木質バイオマスの利用促進によります新たな木材需要をつくっていこう、こういうことでございます。

 また、供給の方も、こういう需要者ニーズに応じた国産材を安定的に供給できる体制、こういうものを構築していこう、こういうことを図ろうということでございます。

 また、手を入れるという今御指摘がございましたが、間伐等をやりまして、森林の整備保全、これを通じて、森林が果たしております多面的機能の維持向上にも役立てていこう、こういう施策を総合的に、積極的に推進をしておるところでございます。

 先ほど、委員からも自給率に触れていただきましたが、平成二十五年は二九%ということで、ボトムの平成十四年一八%と比べて一〇ポイント向上してきたわけでございます。また、林業従事者に占める三十五歳未満のいわゆる若い方の割合が、これも平成二年が六%でございましたが、近年は二割程度まで増加をしてきている。

 こういう明るい数字、兆しも見え始めてきておるところでございますので、今後とも、先ほど申し上げたような施策を総合的に推進していくことによりまして、林業を成長産業化するということに積極的に取り組んでまいりたいと思っております。

濱村分科員 大臣、大変ありがとうございます。非常にさまざまな観点でお答えをいただきました。

 まず、木づかい運動、木を使っていくということで言われておりました。また、CLTについても、公共建築物を初めとしてどんどん普及させていきたいと。CLTは本当に、国交省の建築基準などともしっかりとすり合わせをしながら進めていかなければならない点であるというふうに認識しております。あるいは木質バイオマスについても、後ほど触れさせていただきますけれども、こうした需要をしっかりと喚起していく、需要拡大をしていくということが非常に大事な点である。そして、もう一方で供給体制の整備も非常に重要であるということをおっしゃっておられました。

 そういう二つの大事なポイントを踏まえながらしっかりとやっていくということが大事であるということだと認識をいたしました。

 一方で、林業に従事されている方々にお話を伺うと、輸入材、輸入製品について、安い輸入製品が入ってきてなかなか勝てないというようなことをおっしゃる方々がよくおられます。実は私、そこは本当なのかなというところも思っておりまして、例えばヨーロッパのオーストリアという国は、アルプス山脈でございますので、非常に急な山地である、その中で森林所有者も非常に規模が小さいというような状況もありまして、林業における背景については日本と余り大差はないという状況であるというふうに言われております。

 さらにつけ加えますと、コストの面でいうと、オーストリアの方は非常にコストは高くついているんじゃないかというふうに思うわけです。実は、時間当たり四千円、一日当たり三万円ぐらいかかる。これは日本の倍以上と言われるような水準でありますので非常に高いなと思うわけでございますが、そのオーストリアの製品が、実は、鉄道でハンブルク経由で、船を経由してさらに日本まで輸送されているという状況があるというわけでございます。

 ですので、日本の自給率が上がらない理由、必ずしも安い外材に負けているということではなくて、やはり、需要と供給のバランス、これについてもう一度見直しをしていかなければいけない、こういうタイミングに入っているのではないかというふうに思うわけでございます。

 話を少し深めさせていただきますと、私の地元であります兵庫県の中の宍粟市というところがございます。ここには協同組合で兵庫木材センターというところがございまして、これは非常に特徴的なところなんですが、二十三社が参加しておりまして、大手ハウスメーカーや地元の工務店に製材を供給している。品質、価格、供給力で外材に対抗できるようにということで、皆さんすごい努力をされているわけでございます。

 これはどういう方々が参画されているかというと、森林組合、そして、素材生産、製材、合板製造業、集成材の製造業、建材卸売業、あと、工務店が参画されているわけでございます。

 非常に多種多様な木材産業にかかわる方々を巻き込んで、みんなで地元の製材をしっかり競争力を高めていこうということで御努力されているというわけでございますが、こうした取り組みについて政府はどのように御支援なされるのか、お聞かせください。

今井政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生から御指摘のありましたとおり、利用期を迎えております国産材の利用を実際に拡大していくためには、量ですとか価格、あるいは品質、そういった面で実需者のニーズに対応して、国産材あるいは国産材の製品を安定的に供給していく体制を整えるということが非常に重要だと思っております。

 そういう点におきまして、委員から御指摘のありました宍粟市の兵庫木材センターの取り組みといいますのは、実需者からのニーズに応じまして、森林組合、素材生産業者、あるいは製材・合板業者、さらには工務店など、川上から川下の事業者が連携することによりまして、原木から製材に至る供給を一貫して行う、そういう取り組みだと承知しておりまして、全国のモデルになり得るものというふうに考えております。

 農林水産省といたしまして、これまで、国産材の安定供給の構築に向けまして、全国八カ所に設置しました協議会におきまして、国産材の需給情報の収集、共有を進めるような取り組み、あるいは、必要となります木材の加工流通施設の整備等への支援などを行ってきたところでございますけれども、平成二十六年度の補正予算、そして二十七年度の当初予算におきましては、これらの取り組みに加えまして、工務店と林業、木材産業の関係者が連携して地域材を利用する取り組み、こういったものを支援するものも考えているところでございます。

 こうした取り組みを通じまして、川上から川下の事業者の連携による国産材の安定供給体制の構築をさらに積極的に進めていきたいと考えております。

濱村分科員 今、全国のモデルになり得るものということで大変評価をいただいて、地元としても大変うれしいなというふうに思うわけでございますけれども、本当にこの木材センターの特徴としては、通常、こういった地域材を利用促進していくという取り組みは森林組合が中心になることが多かったりもするんですけれども、どちらかというとこの木材センターは、製材屋さんがかなりリーダーシップをとって二十三社を取りまとめてしっかりと推し進められたということで、非常におもしろいケースだなというふうにも思うわけでございますけれども、一方で、全てが全て順調であるというわけではありませんでして、当然、なかなかうまくいかない部分もあるということをおっしゃっておられます。木材センターの方からお話を伺うと、なかなか路網の整備が進まないというようなことをおっしゃっておられました。

 路網の整備、非常にこれまで政府も取り組んでこられたわけであります。今後もさらなる支援が必要というふうに考えているわけでございますけれども、どのような検討をなされておられるのか、お答えください。

今井政府参考人 お答え申し上げます。

 国内の森林資源は確実に成熟化してきているわけですけれども、この国産材の円滑な利用を図っていくためには、林道等の路網を整備しまして、低コストで効率的な作業システムとしていく必要があります。

 このため、農林水産省といたしましては、これまでも、公共事業であります森林整備事業、そして、非公共事業であります森林整備加速化・林業再生対策を活用いたしまして、現地の実情に応じて林道あるいは森林作業道等の整備を推進してきているところでございまして、平成二十六年度補正予算及び二十七年度当初予算案においても必要額を計上しているところでございます。

 またさらに、この路網の整備ですとか施業の集約化を進める上で、森林の境界が不明確でなかなかそういった作業が進まないというようなことも聞きますので、森林整備の推進とあわせまして、関係省庁、自治体とも連携しまして、森林整備地域活動支援交付金などによる境界の確認ですとか森林情報の収集の活動に対する支援ですとか、あるいは、都道府県の林務部局と地籍部局双方の情報共有などを通じまして、森林の境界の明確化活動、地籍調査との連携、そんなようなものもあわせて行いまして、事業の推進に努めているところでございます。

濱村分科員 路網の整備というのは大変重要で、実は整備自体も技術が必要だ。甘い路網をつくってしまうともろく崩れてしまうので、かえって山を傷つけるということもありますので、ぜひ、間伐以外の面における技術の承継についてもさまざま支援をお願い申し上げたいなというふうにも思う次第でございます。

 そしてまた、先ほど林大臣も少し触れられておられましたけれども、林業への従事者については、平成二年は六%、それが今二割にふえている、三十五歳未満の従事者の方ですね、これがふえているというふうにおっしゃっておられました。これは、世代交代なども考えたときに非常にいい傾向であるともいうふうに思うわけでございますが、先ほど申し上げたとおり、技術承継も非常に重要なことでございます。

 一方で、木材産業自体を衰退産業と考えている方々もおられるという状況は一方でございます。しかしながら、これは大いなる誤解でございますので、むしろ成長産業でありますし、林業が持続的な発展市場であるという認識をぜひ一般的に広めていきたいというふうに思うわけでございます。

 ですけれども、こうした誤解が生まれる背景について少し考察をしてみたいというふうに思うわけでございますが、本来は、山の持ち主さんあるいは事業者を取りまとめて木材産業を育成していかなければいけない。しかしながら、先ほど来出ております、路網の整備が進まない、あるいは先ほど長官も答えていただいたとおりでございますけれども、境界線の形態が不明瞭である、境界線が確定できないんですよというようなこと、あるいは、地主が不在で調整が進まずに集約ができないというような状況もございます。

 私も木材センターの方から聞いたら、路網の整備をしたいんだけれども、何でうちの山が路網にならなきゃいけないんだ、木を得られるはずのところが削られてしまうじゃないかというようなことで、なかなか調整が進まないというようなこともおっしゃっておられました。

 こうした背景はありつつも、森林組合の皆さんが、そこに対して自前で生産していくリスクがなかなかとれない。こういう調整事が大変だからということでリスクがとれない。そうなりますと、組合の本来の役割とは違って、補助金の申請手続であったりとか生産の外注、こういった組織体になってしまいがちだというような御指摘もございます。

 こうした状況を脱していきながら、しっかりと予見性を高めていくことが非常に重要であるというふうに思うわけでございまして、リスクも分散して、役割分担を明確にしながら利益を配分していく、こうした長期森林管理契約というような取り組みを行っていらっしゃる地域も既にございます。

 こういう取り組みを踏まえながら、木材産業の成長産業化に向けては、ビジネスモデルの再定義であったり再構築を行う必要があるというふうに考えるわけでございますけれども、農水省の御見解をお伺いしたいと思います。

佐藤大臣政務官 貴重な御考察、ありがとうございます。

 確かに委員御指摘のとおり、我が国におきましては小規模零細な森林所有者が多いことから、こうした所有者の森林を面的にまとめ、植栽、保育、伐採、搬出等の施業を集約化し、木材を安定的、効率的に供給できる体制を構築することは重要であると考えております。

 このため農林水産省としては、森林組合や地元の自治体と連携をいたしまして、森林組合等が森林の保育や間伐、路網整備等を面的にまとめる森林経営計画の策定の支援、さらには、その際、森林所有者の所在が不明であったり森林の境界が確定していないなどの課題に対応して、所有者の所在や境界を明確化する取り組みへの支援等を推進しているところでございます。

 今後とも、これらの施策により、森林施業の集約化を推進するとともに、国産材の安定的、効率的な供給体制を構築し、森林、林業の活性化と国産材の利用促進を図ってまいりたいと考えております。

濱村分科員 ありがとうございます。ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 もう一つ、兵庫木材センターのすばらしい点について、またかと思われるかもしれませんけれども、少しアピールをしたいと思うんですが、無駄なものがないということなんですね。

 どういうことかというと、樹皮あるいは木くずについて燃料にしている。木くずだきボイラーを導入して、樹皮、木くずを燃料に活用して廃棄物をゼロにしているということで、化石燃料を使用しないということでも非常にすぐれているというふうに思うわけでございます。

 あるいは、欠点材については、フィンガージョイント加工などを行って接合して製品化しているということでありますが、こうしたなかなか製材にならないようなもの、なりにくいようなものについても活用していくということは非常に重要であるというふうに思うわけでございますけれども、小径材も含めてどのように活用するべきであるとお考えか、お伺いしたいと思います。

あべ副大臣 林業の成長産業化を実現していくため、製材か、合板か、燃料用などの多様な木材需要を創出するとともに、これらの用途別に、需要者のニーズに応じ、国産材を安定供給する体制を構築することが重要であると考えております。

 御紹介のありました兵庫木材センター、森林組合や素材生産業者のほか、製材業者、また合板業者、集成材の業者など多様な需要者で構成されておりまして、まさに地域の木材を無駄なく活用できる体制となっておりまして、そういう点におきまして、全国的に見ても先進的な取り組みを実践しているものと評価をしているところでございます。

 農林水産省といたしましても、CLTなどの新たな製品の普及、公共建築物の木造化、木質バイオマスエネルギー利用の促進など、新たな木材需要の創出に取り組むとともに、また、国産材の安定供給体制の構築を推進しているところでございます。その際、拡大する需要と国産材との供給が的確にマッチングするよう心がけているところでもございます。

 今後とも、需要と供給のマッチングを初め、地域の木材が無駄なく有効に活用される取り組みを通じまして林業の成長産業化を実現してまいりたいと思います。

濱村分科員 ありがとうございます。

 今、木質バイオマスについても触れていただきました。これは本当は質問で聞こうかとも思っておりましたが、ちょっと時間の都合、割愛して私から触れさせていただくだけにとどめますけれども、実は、兵庫県の朝来市におきまして、二〇一六年九月からは木質バイオマス発電が稼働される見込みでございます。これは、兵庫県の森林組合連合会と県、あるいは朝来市、兵庫みどり公社と、関西電力さんの子会社である関電エネルギーソリューションの五者の連携によって、官民共同で行われる発電でございます。

 こうした、官民連携してしっかりと発電するというのは初めての取り組みでありますので、農水省の皆様からも、ぜひ、こうした取り組み、全国に普及、展開をしていただきたいというふうに思う次第でございます。

 次に、漁業についてお伺いをしたいというふうに思います。

 また地元の話で恐縮でございますが、イカナゴについてお伺いします。

 イカナゴについては、新子という稚魚がありまして、この稚魚については二月末に漁が解禁されたという状況です。しかしながら、ことしは過去最悪の不漁であるというふうに言われておりまして、本来であれば、この季節になってくると、各家庭で新子を買ってきて砂糖としょうゆで甘辛く炊いて、各家庭からにおいが醸し出されるという状況になってきて、地元では風物詩みたいなものになっているわけでございますが、なかなか今はこの新子が不漁にある。

 その原因分析、実は県の水産技術センターによりますと、大きく三つあるんじゃないかと言われています。一つには、瀬戸内海の水質改善が進んで海中の栄養分が減り、餌のプランクトンが減った。二つ目に、瀬戸内海の年平均水温がこの三十年間で約一度上昇した。それで、冷たい水を好むイカナゴがすみにくくなった。三つ目に、産卵などに必要な砂地の海底が減ったというようなことが挙げられるというふうに、これは県の水産技術センターが言っているというふうに言われるところでございます。

 この水質改善あるいは海底の管理については、水産庁からもさまざま取り組みを行っていただいておると承知しておるわけでございますが、この現状をどのように評価しておられるのか、お伺いできますでしょうか。

本川政府参考人 イカナゴにつきましては、御指摘の瀬戸内海のほか、宗谷海峡、それから仙台湾、伊勢湾、三河湾などに分布をしておりまして、このうち、私ども水産庁では、宗谷海峡の系群と伊勢湾・三河湾の系群について評価をしております。宗谷海峡については低位、減少傾向、それから、伊勢湾・三河湾の水準については少し増してございまして、中位、横ばい傾向といったような状況でございます。

 瀬戸内海につきましては、大阪府と兵庫県、香川県が資源動向を調査しておりますが、漁獲量は年変動が大きい、ことしは非常に少ないというふうにまさに伺っておりますが、全体的には減少傾向にあるというふうに伺っております。

 大阪府の研究者の見立てでは、夏の時期の海水温の上昇などが親魚の生き残りなどに悪影響を及ぼしているといったような指摘がなされておりまして、今、先生、水温が少し上がっているのではないか、まさにそのようなところが少し指摘をされているところでございます。

 なお、伊勢湾、三河湾では、漁業者が自分たちで毎年二十億尾以上の親魚をとり残して翌年の漁獲に備えるといった先進的な資源管理もなされておりますので、そういう瀬戸内海全体における環境の改善、そういった点についても少し模索をできるように取り組んでまいりたいと考えております。

濱村分科員 今、伊勢湾、三河湾の話がございましたが、資源管理をしっかりとやっていかなければいけない、これは瀬戸内海も一緒だと思いますので、ぜひ、あべ副大臣も岡山でいらっしゃいますので、瀬戸内海という意味では非常に大事なわけでございますけれども、瀬戸内海については、本当に水質がきれいになり過ぎたというところがございまして、富栄養化、つまり、栄養がたくさんあるような海にまた戻していかなければいけないというようなことが盛んに言われております。

 先日、二月二十七日にも、瀬戸内海環境保全基本計画が変更されて閣議決定がなされたというふうに承知しておりますけれども、瀬戸内法について改正の議論をずっとずっとしてまいりました。

 この点について農水省としてはどのように捉えておられるのか、お伺いできますでしょうか。

あべ副大臣 これまで農林水産省といたしまして、瀬戸内海の水産業の振興のため、サワラなどの放流、藻場の造成、また、保護育成礁の設置、二枚貝を食害するナルトビエイの駆除などの各施策を実施してきたところでございます。

 こうした中におきまして、瀬戸内海を生物多様性、また生産性が確保されている豊かな海としていくために、末松参議院議員外三名の国会議員の方々が昨年六月に瀬戸内海環境保全特別措置法の改正案を参議院に提出されたものの、残念ながら、審議未了により廃案になったことは承知しているところでございます。

 本法案につきましては、今国会でも再提出の動きがあると承知をしておりまして、農林水産省といたしましても、瀬戸内海の水産業を再生していくために重要な取り組みであると認識しているところでございます。

 今後、法律が改正された際には、必要な施策を推進してまいりたいと思っております。

濱村分科員 再提出の動きがある、我々公明党も、末松先生と一緒に取り組みながら、瀬戸内海を豊かな海にしていくというところに全力を尽くしてまいりたいということをお誓い申し上げて、質問を終わらせていただきます。

 大変にありがとうございました。

石原主査 これにて濱村進君の質疑は終了いたしました。

 次に、輿水恵一君。

輿水分科員 公明党の輿水恵一でございます。

 本日は、貴重なお時間をいただき、質問の機会を与えていただきまして、心より感謝を申し上げます。

 私からは、農薬のお話を伺いたいと思っております。

 実は昨年、緑豊かな大地と多くの生命を支えるミツバチを描き、人の暮らしのあり方を考えるというテーマでつくられた「みつばちの大地」というドキュメンタリー映画を鑑賞させていただきました。

 その映画の中で気がついたこと、発見したことは、私たちの毎日の食卓を彩る果物や野菜などの食物の三分の一はミツバチによって授粉されていること、また、近年そのミツバチが大量に死んだり失踪したりする現象が世界じゅうで起きていること、このようなことを知りました。

 映画で、アメリカのアーモンド畑でミツバチが働いて、そしてミツバチが授粉することによって大量のアーモンドができるという、そうやってミツバチが一生懸命働いている姿、改めてミツバチに感謝だなというそんな映画だったんですけれども、一方、ある国では、そのミツバチがいなくなってしまって、そして実をならすためにはやはり何とかしなきゃいけないということで、手で、こうやって木に登って、人海戦術で授粉作業をしているなんという、そんなところもありました。

 それくらい、我々もふだん気がつかなかったんですけれども、ミツバチの私たちの生活に対しての大きな仕事ぶりというのに改めて感動したわけでございます。

 そして、こんなミツバチでございますが、EUにおきましては、ミツバチの大量死、こういったものに敏感に反応しまして、その被害の拡大を防止するために、確かに原因究明も大事ですけれども、その因果関係が十分に証明されていない中でも、予防原則に基づいて、ミツバチ大量死の原因と疑われるネオニコチノイド系の農薬の販売や使用を禁止するなどの対応を迅速にとられている、こんなことも伺っております。

 農薬というのは、品質のよい農作物を安定的に国民に供給するために、確かに一方では大変に必要なものであり大切なものであると思いますが、また一方で、農薬は野外で使用される場合が多い、そういった中で、使用する際には、先ほどのミツバチなどの有用生物やその他の周辺環境に悪影響を及ぼさないよう、十分配慮していくことが必要であると考えます。

 そういった中で、まず一点目の質問をさせていただきますが、農水省におきまして、海外でのミツバチの大量死等への取り組みについてどのような認識を持たれているのか、また、日本における被害状況とその対策についてお聞かせ願えますでしょうか。

小風政府参考人 お答えいたします。

 EUでの状況についての御質問がまずございました。

 欧米では、女王蜂あるいは幼虫だけを残して働き蜂がいなくなる、いわゆる蜂群崩壊症候群、こういうものが報告されております。

 EUにおいては、ミツバチへの被害が生じる可能性があることから、平成二十五年の十二月より、登録されている五つの種類のうち三種類のネオニコチノイド系農薬について、ミツバチの好む作物、菜種でありますとかトウモロコシ、こういうものや、穀物への使用を一部制限しております。それからまた、一般家庭での使用を禁止して、農家などによる使用のみ認める、こういう措置をとっているということを承知しております。

 我が国では、欧米で報告されておりますような蜂群崩壊症候群は今までのところ報告されておりません。しかしながら、農薬の使用に伴いまして発生した疑いのあるミツバチの被害報告、こういうものが報告されておりますので、ミツバチ被害の全国的な発生状況をより正確に把握して、事故の発生要因を踏まえた被害防止対策の検討に資するため、平成二十五年度から平成二十七年度まで三年の間ですけれども、農薬によるミツバチの被害事例の調査を実施しております。

 その被害状況の報告でございますけれども、取りまとめまして、ミツバチの被害は水稲の開花期に多く、水稲のカメムシの防除に使用した殺虫剤を直接浴びたことが原因の可能性があるということと、それから、農家と養蜂家の情報共有が不十分であったり、被害を回復するための措置がとられていない、こういうことが明らかになっておりました。

 これを踏まえまして、当面の対策でございますけれども、ミツバチが殺虫剤を浴びないように、農家と養蜂家が都道府県、関係団体等を経由して情報を共有すること、あるいは、周辺を水田に囲まれた場所にはできるだけ巣箱の設置を避ける、こういうことを指導しておるところでございます。

輿水分科員 ありがとうございます。

 私も地域の養蜂業を営む方からお話を聞いて、ちょうどネオニコチノイド系の農薬が使われ出している時期と、蜂が、そこは大量死というわけではないんですけれども、蜂の繁殖力が落ちてきたとか、また、蜂がふえないというか、そういった現象も起きている。そして、確かに、水田の近くで養蜂業を営まれていた方なんですけれども、ちょっと山林の方に移ることによってまたそういった状況がなくなってきているという結果が出ているわけで、やはり農水省の調査のとおり、何らかの、先ほどのカメムシ対策に使われているネオニコチノイド系の殺虫剤、それが影響をしているのかなと。そういったことは確かに言えるものだと思います。

 それで、二十五年から二十七年の三年間調査をするというふうに今伺ったんですけれども、あと今年度、二十七年度の調査が残っているということで。ミツバチとともにいろいろな生物にも影響している。よく聞いたことがあるかと思いますけれども、赤トンボがいなくなったとか、田んぼでカエルが鳴かなくなったとか、また、虫の声が聞こえなくなったとか、そういった、いろいろな自然環境に影響を与えている可能性もあるということも踏まえて、最後のいよいよ三年目のこの二十七年度なんですけれども、このネオニコチノイド系農薬のミツバチへの影響について、調査の今までの状況を踏まえてどのような取り組みがなされるのか、再度お聞かせ願えますでしょうか。

小風政府参考人 お答えいたします。

 今までの調査ですけれども、委員御指摘のとおり、報告六十九件、死亡の事例がございました。このうち二〇%で農薬の使用者の方から養蜂家への情報提供が必ずしも行われていないとか、あるいは、農薬の使用者側が情報提供したという事例でございましたけれども、一方の、三〇%の養蜂家の方が必ずしも情報提供は受けていないということが、二十五年の調査で判明しております。これに対しましては、現場で情報共有を、お互い、防除する農家の立場と養蜂家がしっかりと情報共有をしてくれということを指導しております。

 それからまた二十六年の調査、これはまた三月まで調査しておりますけれども、その状況を取りまとめて、例えば、死んだミツバチの死体を集めてそれをまた分析するということ、必ずしも前回までは調査の試料が集まりませんでしたので、それをまた分析するということも考えております。その結果を取りまとめまして今後の対策を検討していきたいというふうに考えております。

輿水分科員 どうもありがとうございます。

 本当に大変な作業で、細かい作業かと思いますけれども、こういったところを丁寧にぜひ進めていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

 この農薬、確かに農作物を病気、害虫、雑草などから守る目的で使用されるものですけれども、その使用が人や環境に悪影響を及ぼす可能性というのもないわけではない。特に、ネオニコチノイド系の農薬というのは、動物の神経伝達系に強く作用する、そういった物質であると伺っております。ここで、農作物等に残留した農薬の人体への影響を心配している方々も少なくありません。

 厚生労働省では、食品中に残留する農薬などが人の健康に害を及ぼすことのないよう、全ての農薬、飼料添加物、動物用医薬品等について残留基準を設定していると伺っております。

 そこで、この農作物の残留農薬の基準についてどのように定められているのか、また、市場におけるチェック体制はどのようになっているのか、お聞かせ願えますでしょうか。

三宅政府参考人 ネオニコチノイド系農薬を含めまして食品中の農薬の残留基準につきましては、食品安全委員会が科学的根拠に基づき定めた一日摂取許容量、アクセプタブル・デーリー・インテーク、ADIというふうに略称されておりますが、これに照らしまして、子供や妊婦を含めまして、国民の健康に影響が出ないよう適切に定めているところでございます。

 また、実際に国内で流通する食品がこの残留基準値を下回っているかを監視するため、都道府県等において計画的に残留農薬の検査を実施しており、違反事例が確認されたときには、都道府県等は事業者に対して対象となる食品の回収等の措置を指示することとしております。

 また、厚生労働省では、流通する食品につきまして、平均的な食事を摂取した場合の農薬の摂取量を、マーケットバスケット調査という方法を用いまして調査しております。この調査結果によると、国民のネオニコチノイド系農薬の摂取量は、一日摂取許容量、ADIを大幅に下回っていることが確認されております。

 さらに、都道府県等の自治体の食品衛生担当部局において、農林水産担当部局と生産段階に係る食品安全規制も含めた違反情報を相互に提供するなど緊密に連携して、必要な監視指導を行うよう、国が定める食品衛生に関する監視指導の実施に関する指針において示しているところでございます。

 引き続き、関係省庁等と連携しつつ、科学的知見に基づく残留基準値の設定や残留農薬検査等の適切な実施により、食の安全確保に取り組んでまいる所存でございます。

輿水分科員 ありがとうございます。

 そういった非常に厳しい基準のもとで管理基準を設定され、そして市場でも調査をされているということで、適切に行っていただきたい、このように思います。

 この厚生省での取り組みとあわせまして、農林水産省におきましても、今の食品安全委員会、また厚生労働省、環境省と協力などして、農薬を使用する農業者の健康への影響や、あるいは水質や水生生物などへの影響、さらに周辺の農作物やミツバチなどの有用生物への影響、あるいは、先ほどの、農薬が残留した農作物を食べた人間の健康への影響などを的確に判断して適切に対応していく、農薬の使い方とか、そういったものを含めて対応していくことが重要かなというふうに考えます。

 そこで、ネオニコチノイド系農薬の質問の最後に林農水大臣にお伺いしますが、人も、先ほどの、私たちの生活を支えてくださっているミツバチも、安全な農薬の使用に対する取り組みについて、大臣のお考え、また、決意も含めてお聞かせ願えますでしょうか。

林国務大臣 ネオニコチノイド系の農薬については、前回大臣のときも御質問が幾つかあったところでございまして、そういう国会での審議も一つのきっかけになりまして、二十五年度から三年間の調査をしてみる。それから、何よりも大事なことは、ミツバチを飼っていらっしゃる方と農薬を使っていらっしゃる方が相互にきちっと情報を共有ができるということも大変大事であろうということで、種々の取り組みをやってまいったことでございます。

 そういうことにあわせて、最終的な国民の食の安全を確保するということ等々は国の重要な責務の一つでございますので、今厚労省からも答弁がありましたように、やはり科学的な見地からしっかりと対応することが必要である、こういうふうに考えております。

 したがって、このミツバチの被害についても、二十七年度までの調査結果などを踏まえて、農薬による被害を防止するための取り組みというものをしっかりと進めていくということが重要であると認識しております。

 また、一般論として申し上げますと、農薬のラベルに表示をされました使用方法、また使用上の注意事項、こういうものを守って使用するということを基本にいたしまして、都道府県の協力のもとで、農家等に対する農薬の適切な使用の指導、これをさらに徹底してまいりたい、こういうふうに思っております。

輿水分科員 ありがとうございます。

 本当に丁寧な調査、また、農薬の適切な使用について徹底をしていただき、また、先ほどありましたように、調査を待つ以前に、まず、農薬を使っている農業者の方と養蜂家の方がしっかりとした連携をとりながら、そういった事故がないような取り組みも積極的に進めていただければと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。

 それでは、次の質問に移らせていただきたいと思います。

 化学物質過敏症、そういったことなんですけれども、この化学物質過敏症というのは、人体の薬物や化学物質に対する摂取許容量を一定以上超えると引き起こされるというふうにされております。そして、一度発症すると、極めて微量の化学物質に過敏に反応し、多岐にわたる症状を示す疾患であるとされております。

 化学物質過敏症の症状もさまざまで、結膜炎や鼻炎、あるいは皮膚炎、気管支炎、動悸、不整脈、下痢、便秘、不眠、不安、頭痛、発熱、疲労感、場合によっては、いろいろな出血も伴うような重篤な状態も発症すると伺っております。

 ここで、化学物質過敏症の発症原因としては、新築建物等の建材や塗料、接着剤から放散されるホルムアルデヒドや、あるいは揮発性有機化合物による室内空気汚染によるものが全体の六〇%程度と言われております。いわゆるシックビル症候群とかシックハウス症候群というのもこの部類に入るものだと思います。そして、次に多い原因として、先ほどの農薬や殺虫剤、さらに有機溶剤と続くとされております。

 この化学物質過敏症について、成人を対象に行ったある調査によりますと、もう既に全国で約七十万人と推計されている。しかし一方で、診療できる医師が少なく、その症状から更年期障害や精神疾患など別の疾患として診断されたり、原因不明として放置されているケースも多いと伺っております。

 そこでまず、いわゆる化学物質過敏症についての現状の認識について、当局のお考え、認識をお聞かせ願えますでしょうか。

北島政府参考人 お答え申し上げます。

 環境省では、ごく微量の化学物質によってさまざまな体の不調を訴える、いわゆる化学物質過敏症とされる方々がおられることは承知しております。

 化学物質過敏症につきましては、その病態及び発症メカニズムについて、議員御指摘のとおり、未解明な部分が多く、医学的に確立された定義や診断基準が存在しないため、現段階では、確立された疾病、病気としての概念になっていないと認識しております。

輿水分科員 確かに、本当にどういうところからどのように発症してというその因果関係がなかなか明確にならない、そして、症状がいろいろな形で出てくるということで、非常に難しいものだと思います。

 しかし、先日、実は、化学物質過敏症の方に私も直接お会いしてお話を伺いました。その方は、新築の建物に六回引っ越しをされて、突然、せきがとまらない、息が苦しくなる、そういった状態になってしまいました。そして今では、印刷したばかりの印刷物を読むと、もう呼吸が苦しくなる。あるいは、我々普通の人間が部屋に入ってしまうともうその部屋でせきがとまらなくなるということで、おうちに伺ったときに、玄関の外でお話をさせていただく、そんな状況でございました。また、新車の車に乗れない。窓をあけた状態で、二、三年たった車でないと、車の中でせきがとまらないという、本当にそういうことがあるんだな、現場に起こっているんだな、そういったことを感じました。なぜ呼んでいただいたかといいますと、周辺のお宅が知らないでたまたまペンキの塗りかえをしてしまって、大変な状況になってしまったということです。

 現実として化学物質過敏症というものが存在するのは間違いない。しかし、どういう因果関係でそれが出ているかとか、あと、その基準もなかなか出せないのはよくわかるんですけれども、やはり実際に起きている。そしてそれが、長年化学物質を摂取することによって、個人差はあるものの、ある一定の基準値を超えることによって発症する、全国にも何十万人の方がいるとされている状況の中で、できれば、その発症を防止するような、室内環境を管理できるような取り組み、あるいは、発症している皆さんが少しでも安心して暮らせるような、そういった化学物質過敏症の方への刺激の少ない環境を整備するような取り組みとか、そういったものもあってもいいのかな、そういう感じを持った次第でございます。

 そこで、いわゆる化学物質過敏症、それをどのような形で発症を防いでいくのか、あるいは、発症された方が少しでも安心して暮らせるような社会をつくるためにどのような取り組みをなされているのかについて、お聞かせ願えますでしょうか。

北島政府参考人 お答え申し上げます。

 環境省では、現在、環境中微量化学物質による健康影響評価事業といたしまして、化学物質過敏症患者の臨床データ等を用いて、環境中化学物質の暴露評価等を行いまして、化学物質過敏症の病態や発症メカニズムを解明するための知見の集積を行っております。平成二十七年度につきましても、予算案に該当する予算を計上させていただいているところです。

 今後とも、化学物質過敏症に関する知見の収集に努めてまいります。

輿水分科員 ありがとうございます。

 非常に難しい、そういった課題かとは思いますけれども、現実に苦しんでいる方がいらっしゃる。そういった方に光を当てていただき、化学物質過敏症の発症を予防するための環境基準や、そういった皆様が安心して暮らせる社会の環境整備にぜひ御尽力をいただければと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 それでは、最後の質問なんですけれども、原木キノコの栽培支援についてお尋ねをしたいと思います。

 さきの原発事故の影響で、東日本の里山等が放射性物質に汚染をされてしまう、そういった中で、露地栽培も含め、原木キノコの栽培農家の皆さん、大変大きな打撃を受けているわけでございます。せっかく軌道に乗って、原木キノコというのは結構肉厚で大きくて、そして人気が出てリピーターもふえてきた、そんな状況の中での今回のそういった状況。

 この原木キノコの栽培において、今までは自分の里山で原木キノコを栽培するためのほだ木の調達ができた。それがもう調達ができない状況、そういったものも出ている。

 また、原木キノコを育てても、風評被害等もあって、昔のようにはなかなか売れ行きも厳しい、そういった課題も現場の皆さんは抱えていると伺っております。

 こういった中で、やはり里山を維持管理していくということも一つの大事なこと、また、日本の大事な原木キノコ、シイタケを含めた原木キノコの栽培のそういった業者をしっかりと守っていく、このことも農水省として非常に大事な取り組みであると思いますが、この原木キノコの栽培の支援についてのお考え、取り組みについてお聞かせ願えますでしょうか。

あべ副大臣 委員がおっしゃるように、福島原子力発電所の事故による放射性物質の影響によりまして原木キノコ生産用の原木が汚染され、東北の被災県を中心に原木不足が生じているところでございます。

 このため、農林水産省といたしましては、平成二十四年度以降、当初予算及び補正予算を活用して、キノコ生産者の原木の需要量を把握し、また、森林所有者などへの働きかけも含めて原木の供給可能量の掘り起こしを行い、また、原木の需要と供給のマッチング、さらには被災者などのキノコ原木の購入支援、また、原木の洗浄機械、簡易ハウスなどの施設整備の支援などの取り組みを実施しているところでございます。

 これらの取り組みの結果、平成二十五年以降、総量としては需給状況は改善しているところでございますが、樹種別に見ますと、主に東日本で使われておりますコナラにつきましては、いまだに供給可能量が供給希望量を下回っている状況でございます。

 このため、今後とも、都道府県、関係団体と連携をしながら、コナラを中心とした供給可能量の掘り起こしとマッチングを一層推進いたしまして、原木キノコ生産者の方々の必要となる原木が供給されるよう努力をしてまいります。

輿水分科員 どうもありがとうございました。

 まだまだこれからが勝負かなというふうに思いますので、今後も引き続き、原木キノコの栽培業者の皆様への光も当てていただきながら、安心してまたこの事業が継続できるように、よろしくお願いを申し上げます。

 以上で質問を終わらせていただきます。大変にありがとうございました。

石原主査 これにて輿水恵一君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

石原主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。福田昭夫君。

福田(昭)分科員 民主党の福田昭夫でございます。

 宇都宮市が導入したバイオマスの環づくり交付金事業をめぐりましては、民事と刑事の二つの事件があります。たまたま、私が平成二十五年に最初に衆議院の農水委員会で質問したときには林農水大臣でありましたが、大臣には聞いていただくだけで質問はいたしませんでしたけれども、きょうも事務方からしっかりお聞きしたいと思いますので、ぜひ、政府関係者におかれましては、簡潔明瞭にお答えいただきたいと思います。

 まず、一般論として確認すべきことについてお伺いをいたします。

 一つ目は、虚偽の税務申告の取り扱いについてであります。

 例えばですけれども、ある法人企業が、三億円所得があったのに、決算書には五千万しか計上せず確定申告をいたしました。そうした事実が判明した際、税務署はどのような対応をされるのか、お伺いをしたいと思います。

藤田政府参考人 お答えいたします。

 一般論として申し上げますけれども、国税当局におきましては、納税者の適正公平な課税を実現するという観点から、法定調書のほか、税務職員が独自に課税上有効な各種資料情報の収集に努めております。

 これらの資料情報と提出された申告書とを分析いたしまして、必要があると認められる場合には、税務調査を行うなどして適正公平な課税の実現に努めているところでございます。

福田(昭)分科員 それでは、適正な税務申告に努めているということですが、そうしたことを、税務署に情報が入った場合に、しっかりそれらを調査して、修正申告をさせるとか、あるいは、悪質な場合には脱税として告発されるとか、そのような対応はされておりますか。

藤田政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申しましたように、必要があると認められる場合には、税務調査を行うなどして適正公平な課税の実現に努めるところでございますけれども、これも一般論でございますけれども、その中で、脱税事件として検察官に告発し、刑事訴追を求めることを前提とした査察調査でございますけれども、その査察調査につきましては、脱税犯の法律上の構成要件に該当する事実があるかどうか、それを立証し得る見通しがあるかどうか、悪質であるかどうかなどを十分検討した上でその要否を判断することといたしております。

 いずれにしても、国税当局としては、個々の事実関係に基づきまして、法令等に照らして適正に取り扱うことといたしております。

福田(昭)分科員 それでは、所得が例えば三億円とはっきりしております、しかし、その所得を五千万しか計上していない決算書をつくり、それで確定申告をしている、それだけでは税務調査に入りませんか。

藤田政府参考人 お答えいたします。

 恐縮でございますが、一般論としてしか申し上げられないんですけれども、先ほど申しましたように、納税者から確定申告書が出ている、それと、各種いろいろな情報、国税当局に寄せられました情報ですとか、あるいは国税職員が集めた情報、それぞれをいろいろ分析した上で、必要があれば調査をいたしますし、その上で適正公平な課税の実現に努めるということでございます。

福田(昭)分科員 これ以上やっても無駄なようでありますが、明らかに所得を過少に申告しているということがはっきりしているわけでありますが、それに対してどうも税務署が調査をした様子が全くないということを指摘しておきたいと思います。私どもがきちっと税務署にはそのことを報告した、それにもかかわらず、どうも調査をした形跡がありません。

 それから、二つ目でありますが、二つ目は輸入納税申告の手続についてでありますが、輸入申告書には数種類の添付書類が必要となっているわけでありますが、そのうち、仕入れ書、インボイスには、品物の品名、数量、価格などが記載をされることになっております。それらを見て、これがおかしいというようなことに気づくことはあるんですか。いかがですか。

松村政府参考人 お答えいたします。

 これも一般論でございますけれども、輸入納税申告の手続は、輸入しようとする貨物の品名、数量、価格などを記載した輸入申告書を税関に提出することによって行われております。そして、輸入申告を受けた税関は、必要があるときは、申告の内容を確認するために、今先生がおっしゃられましたような、インボイスあるいは運賃明細書などの必要な書類を提出させることができるということとなっております。そして、輸入申告を受けた税関は、提出された書類の内容を確認しつつ、申告の内容が正しいかどうかを審査しているところでございます。

福田(昭)分科員 それでは、この輸入申告書、インボイス等については、保存年限は何年保存しているんですか。

松村政府参考人 お答えいたします。

 税関に提出された輸入申告書及びその他の書類の保存期間は、申告があった日の属する年の翌年から七年間でございます。(福田(昭)分科員「翌年からですね」と呼ぶ)はい。

福田(昭)分科員 そうすると、これは、今回の事件については、警察あるいは検察庁がこれを税関で確認すれば、輸入したものが本当にそれだけの価値のあるものかどうかというのが実ははっきりしちゃうんですね。しかし、これをどうも警察も検察も確認をした様子がありません。これを確認すれば、私どもが疑念があることについて実は晴れちゃうんですよね。ですから、これは、疑われている人のためにも、しっかり税関でこの輸入申告書を確認する必要がある、そう考えております。

 なぜかと申し上げますと、届いた品物を確認した人たちが、とても億円もするような品物ではない、こういうふうな証言が数人いるんです。ですから、これを確認すればしっかりこの事件の解決が実は図られる、そのように考えているわけでありますが、捜査当局がどうも調査をした形跡がないということを申し上げておきたいと思います。

 次に、エコシティ宇都宮の役員に対する業務上横領、会社法違反、特別背任罪の被疑事件についてであります。

 一つ目は、私の秘書が告発に至った経緯についてであります。

 参考資料をごらんください。まず、株式会社エコシティ宇都宮のこれまでの経過について、ざっと申し上げたいと思います。

 これは、宇都宮市の生ごみから堆肥をつくる事業に取り組んだ会社であります。平成十六年の三月に初めて宇都宮市に計画書を提出いたしました。平成十七年の六月に事業実施計画書を提出して、国の決定を受けて平成十八年の八月に操業を開始したものであります。しかし、機械は半年で動かなくなって、銀行から競売を申し立てられ、実質二年二カ月で破綻状態にある会社でございます。

 その会社が、平成二十年の三月には、臨時取締役会にて、その会社の専務と監査役を解任してしまいました。なぜかというと、この専務は、これからエコシティ宇都宮が機械を改修するに当たって、地元の施工業者から韓国のブーフン社というエレベーター設計会社の機械に取りかえるということに反対をしていた専務を解任してしまったわけであります。

 そして、その四月には、施工業者からエコシティ宇都宮に、改修するための費用として約三億二千万が二回に分けて支払われました。しかし、これは全て、県も宇都宮市もこの業者も、またエコシティも、全部秘密にしておりました、今まで。そして、五月から八月において、ブーフン社と、さらにブーフン社の本部長と称する個人に、我々の調査では約一億三千万と伺っておりますが、どうも最近の話ではそれよりも多いと伺っておりますが、韓国へ送金されました。

 そして、八月には、エコシティ宇都宮の第七期、平成十九年七月一日から平成二十年六月三十日の確定申告書、決算に、施工業者からの入金が三億二千万入っているわけでありますが、四千七百万余りしか計上されておりません。約二億七千万を申告から除外をいたしました。法人税法違反の疑いがありますが、これは、残念ながら平成二十五年の八月に時効を迎えております。

 そしてさらに、この二十年の十一月にエコシティ社は株主総会を開きましたけれども、この株主総会においては、まさに虚偽の決算書を提出して、総会を無理やり乗り切りました。施工業者からの補償金については事実を隠蔽いたしております。これは株主からの資料ではっきりしております。

 それから、平成二十一年四月には、国庫補助事業上の財産処分申請、民間の施工業者からいただいた補償金三億二千万を元手に、この施設全体を改修するということで、最初の国庫補助事業の財産処分申請をいたしました。国はこれを認めました。農水省は認めました。

 そして、九月には改修工事に着工し、十二月には解体工事が終了しました。しかし、新しい設備の設置工事は休止をいたしました。なぜなら、日本政策金融公庫から宇都宮地方裁判所へ、これはだめだということで競売が申し立てられたからであります。

 次のページでありますが、平成二十二年一月には、これを知った宇都宮市は、宇都宮市の補助金等交付規則に基づいて補助金の交付決定を取り消し、二月には、全額、宇都宮市へ返せという返還請求をいたしました。

 宇都宮市はその後も督促を五回もしておりまして、本来なら宇都宮市は、この間、エコシティ宇都宮が持っている、韓国から買ったと称される機械、あるいは現金を差し押さえるべきでありましたが、しかし、宇都宮市はこの間に差し押さえをいたしませんでした。ただ請求書を送っただけで、形を繕っただけが宇都宮市の対応でありました。

 そして、平成二十三年に入りまして、いよいよ競売開始が決定をされ、五月の十二日には、エコシティ宇都宮が宇都宮市へ第二回目の財産処分申請書を提出し、県がそれを受け、農水省に財産処分申請書を提出しています。

 この二回目の財産処分はまさに目的外使用、一回目は施設改修目的での財産処分です。二回目は、もう人手に渡っちゃうということで、目的外使用での財産処分申請書を提出いたしました。しかし、どうも、この間に韓国のメーカーから購入したという機械は、実はどこにもありません。不明であります。いまだに行方不明であります。

 そして、二十四年二月には、県による国への納付約一億九千六百万、そして、宇都宮市は県に対して、二月二十三日、納付できない旨を伝えました。三月、市は県から国に返還したエコシティ宇都宮の国庫補助金約一億九千万の返還を求められてはおりますが、市議会定例会において、エコシティ宇都宮を提訴しないという答弁をいたしました。

 これも、宇都宮市の対応としてはおかしな話であります。宇都宮市も、エコシティ宇都宮が三億二千万の補償金をもらったことはちゃんと承知をしております。承知をしておりながら提訴をしないという、とんでもないことを判断いたしております。

 そして、七月十三日には、今度は県が宇都宮に対して、補助金の返還を求めて宇都宮地裁に提訴をいたしました。不思議なことに、その七月三十一日は、韓国のブーフン社が廃業をいたしております。

 そしてさらに、三枚目でありますが、平成二十五年、私が大変疑問を感じて、衆議院の農林水産委員会あるいは総務委員会、決算行政監視委員会において、三回、真相究明のために質問をいたしました。

 そのときに非常に疑問に感じましたのは、農水省の答えが、最初は、この施工業者からいただいた三億二千万の補償金については受け取っているというふうに聞いていると言っておったわけでありますが、三回目になりましたら、改めて県と宇都宮市に確認したらば、そんなものは知らない、こういうふうな答えに変わってきました。

 これは何かあるぞということで、おかしいと思っておりましたが、そうした中で、平成二十五年の七月には、元エコシティ宇都宮の役員、解雇された役員から内部告発があり、DVDに約二時間収録をいたしました。そして、その際、その役員から私の秘書に対して、ぜひかわってエコシティ宇都宮の役員を告発してほしい、そういう要請をいただきました。

 それからさらに、知事に対する公開質問状や宇都宮市長に対する公開質問状などをする中で、また、さまざまな周辺の調査をしていろいろなことがわかってきました。

 そして、去年、平成二十六年の七月十五日、栃木県警察本部が、私の秘書が出した告発状、エコシティ宇都宮の会長と社長二人を業務上横領と会社法違反の疑いで告発いたしましたが、正式に受理をし、昨年の十二月十七日まで捜査をし、十七日に宇都宮地方検察庁に書類送検いたしました。同日、県と宇都宮市との補助金返還裁判が第一審で結審をいたしました。

 そして、二十七年、ことしに入りまして、エコシティ宇都宮は、自己破産手続をするようにと農水省から指導を受けていたわけでありますが、いまだに自己破産の手続をしておりません。

 そうした中で、三月四日、県と宇都宮市との補助金返還裁判に判決がおりまして、県が敗訴いたしました。そして、三月五日、その翌日には、宇都宮地方検察庁が不起訴の処分通知書を秘書に送付いたしました。翌六日にはその理由書を送付してきましたが、内容は嫌疑不十分ということでありまして、とても理解する内容ではありません。そして、きのう、三月九日、秘書が宇都宮検察審査会に不服申し立て書を提出したところでございます。

 以上が経緯でございますけれども、そんなことから、二つ目の不起訴処分及びその理由について、ぜひ検察の方からお話をいただきたいと思います。

 なぜなら、我々は、秘書と私は警察に対して、時効がことしの四月に迫っているので、ぜひ半年前には結論を出してくれるようにということで依頼をしておりましたが、残念ながら、半年前を過ぎまして、しかも、民事事件の判決が出るのを待っているかのようにまさに処分の連絡を受けたわけでございまして、しかも、処分の内容は嫌疑不十分ということでありますので、甚だ非常に不満足なものだということでございますが、こうしたことに対して法務省として何かお話しいただけることがありましたら、お願いしたいと思います。

上冨政府参考人 御指摘の事件につきましては、検察当局が平成二十七年三月五日、嫌疑不十分により不起訴処分としたものと承知しております。

 なお、それ以上の詳細につきましては、個別事件における捜査の具体的内容や検察官による証拠の評価にかかわる問題でございますので、お答えは差し控えさせていただきます。

福田(昭)分科員 そういう答えしか返ってこないとは思っておりましたけれども、いずれにしても、今後、検察審査会でどのようになるのか、推移を見ていきたいと思っております。

 秘書が宇都宮検察審査会に不服を申し立てる理由についてであります。大きく言うと四点ございます。

 一つは、平成二十年五月から八月中に韓国のブーフン社と本部長に機械代金を送金したことについてであります。一般の商取引として、代金を送金するのに、その会社と本部長に二カ所に分けて送金するということはまずあり得ないということが一つであります。

 それから、平成二十年八月、確定申告した決算書には、まさに修理代としていただいた三億二千万のうち約二億七千万を除外いたしております。この裏金で、一旦裏金にしてしまったお金で支払うということが大体あるんだろうかということが二つ目の疑問であります。

 それから三点目は、裏金で支払った輸入品は、多くの証言から約三千万ぐらいだと聞いているわけでありますが、それが一体どこにあるのか。実際にそれまで本当に捜査当局は確認しているのかどうかというのが三つ目の疑問であります。

 それから四つ目。先ほど財務省から回答がありましたけれども、税関には輸入申告書が七年保存されているわけでありますから、これを確認すれば、代金を送っただけの、本当にそれだけの価値のある、検察当局は韓国へ送ったお金、送金が幾らだか把握しているんです。ですから、それだけの代金のものなのかどうかというのは、これを確認すればすぐわかるわけであります。

 しかし、それもどうも確認したような様子がないということでありますので、こうしたものをやはり確認するということが実は疑念を晴らすことにつながるというふうに考えておりまして、法務当局はまさに法と正義を実現する役所でありますので、ぜひこれは、宇都宮地方検察庁を指導して、真相を明らかにしてほしいと思います。

 それでは次に、三番目、栃木県知事と宇都宮市長の補助金返還請求についてであります。

 これにつきましては、三月四日に判決がありましたが、今までの話を伺っていると、予想に反して、県が敗訴をいたしました。

 これは、今後の間接補助事業のあり方や、法律と条例、規則の効力の違いなどを再確認して、手続などをやはり修正すべきだと思いますが、今回の判決をどう思うか、お答えいただきたいと思います。

櫻庭政府参考人 お答えいたします。

 栃木県による宇都宮市に対する補助金返還請求訴訟につきましては、平成二十四年七月以降、十五回に及ぶ口頭弁論を経て、去る三月四日に宇都宮地裁の判決が言い渡されたものと承知しております。

 議員の御指摘の点でございますけれども、本訴訟の争点の一つであると承知しておりますし、現在、栃木県が判決内容を精査しているところでもあり、また、控訴期日が三月十八日とされていることから、現時点において、栃木県補助金等交付規則に対する裁判所の判断についてのコメントは差し控えさせていただきたいと思います。

福田(昭)分科員 現時点では無理だと思いますが、それでは、争点となった一つ、栃木県補助金等交付規則第二十四条は県規則に言う間接補助事業者等に適用または類推適用されるかについて、裁判所は適用されないと判断をいたしました。

 それから、争点の二であります財産処分承認に際して、宇都宮市が栃木県に対して県補助金を返還することが付款とされていたか、または合意されていたかについても、付款とされていなかった、また、合意はされていなかったと裁判所は判断をいたしております。

 次に、括弧三の、判決内容と栃木県のとるべき対応についてであります。

 三月十八日までに判断するんでしょうけれども、県補助金相当額の納付を条件とする付款または合意があったと認めることはできないから、宇都宮市はこれらを根拠に、県補助金相当額及びこれに対する返還期限後の遅延損害金を返還する義務は負わないとする判断が出たわけであります。

 今まで私が農水省あるいは財務省に確認してきたところ、誰が返還する責任があるのかという私の問いに対して、農水省も財務省も、目的外使用で財産処分申請を受けたときに、補助金相当額の返還を義務づける付款がついているから、国に対しては県、県に対しては市、市に対してはエコシティに責任があると答えていたと思いますけれども、今度の判決は全く逆の結果となりました。

 農水省としてもやはり何らかの反論が必要だと思いますが、いかがですか。

櫻庭政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げましたとおり、栃木県において判決内容を精査中ということでございますので、これ以上のコメントは差し控えさせていただきたいと思います。

福田(昭)分科員 この問題は大変大きな問題を抱えていると思います。

 先ほども申し上げましたが、裁判所の判断は、補助金等交付規則はあくまでも県内部の規則であって、それが外の人たちに実は適用されるものではないという判断を示しました。さらに、法二十二条の処分についても、それと全く同じように規則を考えるわけにはいかない、こういう判断も下しております。

 したがって、そうなると、例えばですけれども、補助金等交付規則、これをやはり法的効果のある条例として制定しないと、もしかすると、今後、間接補助事業をやったときにこういうことが何度でも起きるというふうにも考えられますが、いかがですか。

櫻庭政府参考人 お答え申し上げます。

 一般論としてでございますけれども、確定判決が出た暁には、その内容を精査して、しかるべき対処をしたいと思います。

福田(昭)分科員 本当に私も、今回の判決を聞いて、判決文を読んで、青天のへきれきみたいな、そういう感じがいたしましたが、そういう意味では、行政を担当する者として、やはり、条例と規則の違い、規程の違いというものをしっかり認識して取り組まないと、今回のような事件が何度となく起きてしまうということも考えられますので、これは早急に見直す必要があるんじゃないかなというふうに思っております。

 そろそろ時間もなくなってきましたので終わりにしたいと思いますが、しかし、今後、栃木県のとるべき対応策はどのようなことが考えられるのかということであります。

 十八日までに控訴をするのかしないのか、これから判断をするんだと思いますけれども、しかし、これだけの判決内容を見たら、控訴しても勝ち目がないんじゃないかな、そのように実は私は判断をいたしておりますが、これから県がどういう対応をするのか、もしこの判決を受け入れるということになったら、栃木県政を揺るがすような大問題に発展すると私は考えておりまして、そういった意味では、栃木県の対応を注視していきたいと考えております。

 そして、終わりに、この二つの事件の底流に流れている案件について申し上げておきたいと思います。

 この二つの事件については、実は民事事件も刑事事件も、施設を改修するために施工業者からいただいた約三億二千万の使途、使い道について、やはり事実が明らかにされていない。これが一番大きな問題だと思っております。これを明らかにすることによってしか、宇都宮市民、栃木県民が納得できる解決方法はないのではないかと思っております。

 そこで、改めて法務省にお願いをしておきたいと思いますが、ぜひ、宇都宮地方検察庁を指導して、宇都宮税関に保存されている輸入申告書を一日も早く確認して、その疑念を晴らすべきだと思います。そうすることによってこの問題の解決が図られるものと考えておりますので、きょうは法務省から上冨大臣官房審議官に来ていただきましたけれども、ぜひそういう御判断をいただくようお願いして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

石原主査 これにて福田昭夫君の質疑は終了いたしました。

 次に、小山展弘君。

小山分科員 小山展弘でございます。

 それでは、早速質問させていただきたいと思います。

 まず、総理は施政方針演説で次のように述べました。「戦後一千六百万人を超えていた農業人口は、現在二百万人。この七十年で八分の一まで減り、平均年齢は六十六歳を超えました。」と述べ、その後で、「もはや農政の大改革は待ったなしであります。」というふうに述べております。私は、ここのところには論理の飛躍があるように思います。

 その後に農協改革の話になっていくんですけれども、これではまるで、農業人口の減少が起き、農業従事者の高齢化が起きたことは全て悪い現象であり、また、それらは農協の今までの体制が悪かったかのような印象も与えるのではないか、まあ、とり方もあるかと思いますが、そういうものではないかと思っております。

 農業人口が減ったということは、これは、戦後直後と比べて、トラクターとかコンバインあるいは田植え機を初めとするような農業の機械化、農業労働時間の大幅な短縮があり、これらの機械化の進展によって専業農家だった農家が農作業の手間が大幅に省かれ、兼業農家となり、また、余剰人口が都市部に流れ、高度成長期の工業発展の労働力となったという側面もあろうかと思います。

 また、ロボット化ということできょうも農林水産委員会で大臣からもお話がございましたが、ロボット化が進めば、さらにその分、人が要らなくなるということにもなろうかと思います。

 また、大規模化によって農家数が減ったということも考えられると思いますが、必ずしも、戦後直後一千六百万人だった農業従事者が減少したこと自体が、農業の発展、農業にとってこれは阻害要因だったということではないのではないか。もちろん、マイナスとして懸念すべき事項として捉える側面もないわけではないんですが、全てがそうではない。

 また、農業従事者の高齢化についても、製造業や他のサービス産業とは違って、高齢者でも生産活動ができるということが農業の特徴である。退職してから新規就農することも可能だし、生涯現役で農業に従事することも可能であり、高齢化というのはこのことも示しているのではないか。高齢者で農業従事者が多い地域は介護の比率が少なく、長野県のように、長寿健康県である場合もあります。

 高齢化ということについても、高齢の農業従事者の方々の人口の山がそのままなくなってしまう、担い手がいなくなってしまうということは、これは大変懸念しなければいけないですけれども、高齢者が農業を担っているということが全てこれは悪い要因であるということは、これは言い過ぎではないかというふうに私は考えておりますが、これらの農業人口の減少、高齢化についての大臣の認識をお伺いしたいと思います。

あべ副大臣 委員にお答えいたします。

 今おっしゃったように、確かに、農業従事者が高齢化することで農業ができなくなるというふうに私どもは思っておりませんが、持続可能な力強い農業を実現していくために、新規就農を促進していく、この世代間バランスがとれていくということが一番重要だと思っておりまして、これに関して、農業構造をバランスがとれるようにしていくということが重要だと思っています。

 しかしながら、基幹的に農業に従事する方は、六十五歳以上は約六割でございまして、五十歳未満は約一割ということでございますので、我が国の農業、農村、こういう農業構造の問題を初めとして、耕作放棄地の増大、農業所得の減少などの課題が山積しておりまして、農業の活性化は待ったなしだと思っております。

 そのため、我が国の農業、農村の潜在力を最大限に引き出して強い農林水産業と美しく活力ある農山漁村を実現させるために、農林水産業・地域の活力創造プランに基づいて農業改革を実行するとしたものでございまして、具体的には、日本の農林水産物、食品の強みを生かした輸出促進による需要のフロンティアの拡大、六次産業化によるバリューチェーンの構築、多様な担い手の育成確保、また、農地中間管理機構の本格稼働による生産現場の強化、日本型直接支払いの着実な実施による多面的機能の発揮に取り組んでいるところでございまして、これらを着実に進めることによって我が国農業、農村の活性化を実現いたしまして、農業を若者にとって魅力のある産業に成長させていきたいと思っているところでございます。

小山分科員 次に、日本農業の将来像、ビジョンについて、安倍政権あるいは林農林水産大臣はどのような構想を描いているのか。

 ビジョンというと抽象的ですけれども、特に、その中でもどういう主体が今後の農業の担い手となるのか。今、年齢的なところではお話がございましたが、大規模農家、あるいは企業、株式会社の参入をどんどん認めていくというようなこともありますが、どういった担い手を主に考えているのか。

 TPP交渉も進展する中、経営安定対策法によっても大規模化を推進というような方針になっておろうかと思いますけれども、これまでの村落、集落、家族農業にかえようとしていらっしゃるのか、あるいは、多様な担い手による農業ということを想定していらっしゃるのか、御答弁いただければと思います。

林国務大臣 我が国の農業を安定的に発展させて国民に対する食料の安定供給の確保、これをするために、基本法第二十一条がございますが、ここに、効率的かつ安定的な農業経営が生産の相当部分を担う農業構造を構築すること、こういうふうに書いてございまして、これをまずは申し上げなければならないと思います。

 そのため、効率的かつ安定的な農業経営になっている経営体に、それを目指している経営体も加えまして、あわせて担い手として考えていこうということでございます。

 具体的に少し申し上げますと、効率的かつ安定的な農業経営を目指して経営の改善に取り組む認定農業者ばかりでなくて、将来、認定農業者となると見込まれる認定新規就農者、それから、将来、法人化して認定農業者となることも見込まれる集落営農、これも担い手として位置づけて、これらの経営体に経営所得安定対策や融資、税制等の政策を集中して実施をしていきたいと考えております。

 一方、今委員がちょっとお触れになりましたけれども、地域には担い手以外の小規模零細な農家もいらっしゃるわけでございます。これらの方々については、それぞれの御意向に応じて農業生産を継続していただいて、例えば地域の直売所などにおいて販売をしていただくという方法もございますし、そうでない場合は、中間管理機構等を活用していただいて担い手へ農地を貸し出していただくとか、それから、日本型直接支払い制度におきましては、多面的機能の維持、発揮のための地域活動、草の下刈りですとか水路の泥上げ、こういった地域活動に参加していただく、こういうことも想定をされておるわけでございまして、地域全体の農業、農村の発展にこういう形で貢献していただきたい、こういうふうに考えております。

小山分科員 多様な担い手ということを想定されているということだと思います。

 これから企業の参入とか大規模農業法人といったようなものがふえていきますと、最後に大臣がお話しになっておられた水路の管理とか、こういったものも、今は特に、貨幣を媒介として何か仕事でやっているというよりも、ボランティアというか、地域で維持をしているというそういった側面が強いかと思いますけれども、こういった部分も業としてやるのかというようなこともこれから出てくるのかなということも少し思いました。

 今お触れいただいた経営所得安定制度について、これは、民主党政権のときの戸別所得補償制度を包含しつつ、本年の四月一日から法改正を適用するということでございますけれども、民主党政権の際の農業者戸別所得補償制度と比較して、制度の対象を認定農業者、集落営農、認定新規就農者に限定するという方針ですけれども、このような方針にされた、制度の対象者を以前と比べて絞ったこの根拠というか理由というか、それを御答弁いただきたいと思います。

あべ副大臣 経営所得安定対策につきまして、一昨年、二十五年末に農政改革の一環として見直しが行われたところでございます。昨年の通常国会で担い手経営安定法の改正が行われて、これに基づいて、二十七年産から新たな対象者要件により実施することになっているところでございます。

 具体的には、委員がおっしゃるように、全ての販売農家を一律に対象とするということではございません。効率的かつ安定的な農業経営を目指して経営改善を図ろうとする認定農業者、さらには、将来的に効率的かつ安定的な農業経営を目指す認定新規就農者、将来的に法人化して認定農業者になることも見込まれる集落営農といった、意欲と能力のある担い手を対象とすることとしているところでございます。

 また、従来の面積規模要件に関しましては、小規模であっても、収益性の高い作物との複合経営、また、六次産業化により所得を上げていこうという農業者もいることから、担い手であれば規模要件は課さないということにいたしました。

 このような担い手に対し、諸外国との生産条件の格差から生ずる不利もございまして、生産コスト割れとなっている麦、大豆の畑作物に関しまして、このコスト差を補正する交付金、私どもはゲタ対策と言っておりますが、さらには、米、畑作の収入変動に対するセーフティーネット対策といたしまして、農業者の拠出を前提に、収入減少の一定額を補填する交付金、ナラシ対策でございますが、措置することとしておりまして、こうした枠組み、昨年の担い手経営安定対策の改正で決まっていることでもございまして、改正法に基づいた対策への加入が円滑に行われるよう、現場での説明会の開催、また、農業者へのチラシの直接配付によって、対象者要件の変更について周知の徹底を図っているところでございます。

小山分科員 これまで予算措置で実施されてきた制度についても、今後行われなくなるというようなことも中にはあろうかと思います。

 北海道のように、かなり認定農家さんが多い、かなり規模も大規模化が進んでいるところではそれほど大きな影響は出ないかと思いますけれども、やはり地域、地方によっては、あるいは中山間地域などでやっている地方にとっては、かなり今回のことが打撃になる地区も出てくるのではないかということも懸念をいたしております。

 そういった中で、ぜひ円滑になっていくように、そして食料生産量が落ちていかないように、また今後も政府の対応をお願いしていきたいと思います。

 次に、農協法のことについて伺っていきたいと思います。

 現在も政府部内で法案の条文が作成中とのことでございますが、今、法案の骨格ということで出てきておりますけれども、中央会を農協法に位置づけず、一般社団法人にするということ、農協に対する全中監査の義務づけを廃止するという制度変更を行うとのことですが、これは他の委員からも予算委員会等で質問もあったかと思いますが、こういった全中の組織を制度改変するということが農家の所得向上にどのように結びつくのか、このことについて改めて、今回大臣も林大臣にかわられたものですから、大臣の認識をお伺いしたいと思います。

林国務大臣 今回の農協改革でございますが、地域農協が自立をして自由に経済活動を行って、農産物の有利販売など農業者の所得向上、これは、所得でございますので、有利販売とそれから資材の有利購入、これによって所得の向上にしていくというのが農協の原点であろう、こういうふうに思っておりますので、この原点に全力投球できるようにするということを中心に据えて農協システム全体の見直しを行おうということにいたしたところでございます。

 中央会については、そういった観点で、地域農協のこういう自由な経済活動を促して適切にサポートしていただくという観点で種々の見直しを行いました。

 行政代行的に指導を行う特別認可法人が、自律的な組織、例えば連合会であるとか一般社団法人に変更をしていただくことによりまして、全中監査の義務づけも廃止ということでございます。当然、会計監査自体は信用事業を行っておりますと必要でございますので、これは、外出しした全国監査機構、外に出るものか公認会計士監査、どちらかを選択するという意味での義務づけの廃止ということでございますが、それから、業務監査は選択制にする、こういうことでございます。

 それからもう一つは、地域農協の役員、これが、従来以上に経営者としての責任を自覚して、農業者のメリットを大きくするように創意工夫して取り組んでいただく、こういうことを期待して今回の改革を行おうというものであります。

小山分科員 同じような質問になりますけれども、安倍総理も施政方針演説の中で、これからは地域農協の皆さんが主役、農家の所得の向上と、もう一つ、地域農協を、今大臣のお話にもございましたが、自由な経営をしていくというようなことでお話しになっておりますけれども、例えば、中央会を農協法に位置づけず、全国監査機構の監査義務づけ、全中監査の義務づけを廃止するということが、先ほどは農家の所得向上にどのように結びつくかということで質問しましたが、農協の収益の向上、販売高の増加、似たような質問になるかと思いますが、これにどのように結びつくというふうにお考えでしょうか。

林国務大臣 まさに農家の所得を向上させるという意味で、地域農協が自立して自由に経済活動を行う、こういうことになっていくようにしようということでございますので、同時に、農協自体のいろいろな経済活動が活発になることによって地域農協の収益も上がってくるということでございまして、今までも、収益を上げてはいけないというようなある意味誤解があって、これは、後で分配をするという前提であれば収益を上げてもいいわけでございます。

 とんとんにならなきゃいけないという誤解がないようにするという意味での改革もしていこうということでございますが、地域農協が農業者の所得向上のためにいろいろなことをやることによって、結果として地域農協もそういうことになっていく、しかし、あくまで農業者の所得向上がまず第一義である、こういうふうに考えておるところでございます。

小山分科員 多分、政府の考え方では、全中の監査、あるいは、農協が利益を上げてはいけない、収支とんとんでなければいけないんだという今までの制約が農協の経営の自由というものを制限していて、その結果、販売高が増加にならなかった。端的に言えば、全中の指導ないし監査というものが地域農協の自由な経済活動を制約してきた、だから、これを外せば、農協の経営の自由度が確保され、販売高が伸び、そして、結果としてそれが農家の方の所得向上に結びつくということかと思います。

 では、今まで、全中による指導とか監査といったもので単位農協の経営の自由を制約した事実、単位農協の販売先を強制的、統制的権限によって指示した事実があればお示しをいただきたいと思います。

林国務大臣 これは基本的には、中央会制度、発足時は一万を超えていたものが七百に減少して、一県一JAが増加している。それから、JAバンク法に基づいて、これはお詳しいと思いますが、信用事業については農林中央金庫に指導権限が与えられている。こういうことになって、制度発足時と変わってきたということからこの自立的な新たな制度に移行する、こういうことにしたわけでございます。

 今お尋ねの、経営の自由を制約した事実がどの程度あるのか、これは統計的にこれぐらいだと言うことはなかなか難しいわけでございますし、農協側の主観的な受けとめということもあると思いますが、例えば、一月二十九日付の日本農業新聞の、これは組合長に対するアンケートでございますが、十農協ぐらいが、中央会制度がJAの自由な経営を阻害していると思う、こういう回答があったということでございます。また、意見の紹介ということで、「中央会の指導は各農協の特異性を生かさず、画一した面もある。」こういう組合長の意見も、その紙面でアンケートを紹介をされているところでございます。

 それから、昨年の九月二十五日でございますが、同紙の読者モニターの調査でございますけれども、二六%の方が、中央会があることにより、あなたの地域のJAが独自の工夫をして農業を振興することが難しくなっていると思うと回答をしておられます。ちなみに、思わないという方も四〇%おられますのでそれも付言しておきますが。

 したがって、どれぐらい制約されているかというのを数字で定量的にお示しするというのは難しいと思いますが、いろいろなヒアリングをいたしますとこういう声もあったということも事実であろうか、こういうふうに思いますので、しっかりと今のシステムを新しいシステムにすることによりまして、もし制約があったとすれば、さらに自由な活動を地域農協にしていただくように、このシステム改革を進めていきたいと考えておるところでございます。

小山分科員 確かに、いろいろなどんな組織でもこれは批判もあろうかと思いますし、また、組織の中での摩擦というものはあろうかと思います。

 しかし、まさに今お話しいただいたとおりで、組合長アンケートでも十JAのみ、たしかこの一月二十九日のアンケートでは、九割以上の組合長が特にそれは感じていないという回答をしていようかと思いますし、また、読者モニターでも、今まさに大臣がおっしゃったとおり、四割の方がそうではないということもお話しになっております。

 また、大臣まさにおっしゃったとおり、主観的なものもありまして、何か数字で示すというよりも、具体的な事実、ここで販売の指導をして、そのことで強制的に別のところに売り先が変わったとか、あるいは、この作物を売れとか購買でこれを買えとか、どちらかというと全中というよりも、全農の販売事業を展開する中での摩擦の方が経営の自由あるいは販売についての摩擦といったところでは問題なのかなと。

 私が伺った限りでは、恐縮ですが、全中が農協の経営の自由を制約した事実というところでは、やはりそういう事実ということには認定できないものではないかなと。

 このことは私は大変重要だと思っておりまして、全中が農協の経営の自由を制約しているという事実がないということであれば、全中の指導権限を廃止したり監査機構の監査を廃止したとしても、直ちにそのことによって農協の経営の自由度が増して農協の販売高がふえるということにつながらないということになりますので、現行の体制のままでも十分農協の経営の自由度が変わらないということになるわけですから、私は、このことは非常に重要なことではないかな、立法事実があるかどうかということにかかわるのではないかと思っております。

 また、今、全中の現状制度についての認識ですけれども、一万ものJAが七百に数が減って、また、これまで大きな破綻事例も、過去にはありましたけれども、現状は減ってきたということで大臣からもお話しありました。だからもう中央会は今までのような形では要らないということの趣旨であろうか、農水省の考えもそうであろうかと思っておりますが、むしろ、今、数も減ってきて、そして指導体制がしっかりしているからこそ現状のままでいいのではないか。業務監査という監査も行い、また、会計監査についても特段の大きな破綻事例とか赤字、固定化債権の見過ごしといったようなこともなかったということも、逆に裏を返せば言えるんではないか。農水省自身が今の体制がいいということをお認めになっているような話でもないかなというふうにも私は受けとるわけであります。

 全中が一般社団法人になることで、制度上、JA、特に経営不振JAに対する指導が難しくなってくると思います。全国監査機構が一般の監査法人となることでJAバンクに対する監査情報の提供が不可能となるほか、現状の賦課金方式による監査というものも困難になって相対になりますから、これは、コストの面でも会計監査だけでも二倍にふえるのではないかという見込みを出しているところもありますし、また、業務監査をさらにこれに希望をするということになれば、さらにJAの負担するコストははね上がるという可能性があろうかと思います。

 今後、有利販売、特に買い取り販売を積極的に推進するという方針とのことですけれども、買い取り販売は、価格変動リスクとか、非常にリスクが大きい。森林組合が赤字を出したり財務が悪化したというのは、大体この買い取り販売をやって失敗しているんです、価格が変動したりということが大きいんですけれども。今の農協は、受託販売でやっているから非常にこういった経済事業に関する失敗というのが少ないということが言えようかと思っているんですけれども、さまざまなリスクというものも今後考えられます。

 これまでは、こういったリスクに対して全中の強制的な監査、指導によって単協外部からもチェックがなされ、歯どめがかかっておりましたけれども、今後、そういったリスク管理といったものはどこが担うことになるのか、認識をお尋ねしたいと思います。

林国務大臣 先ほどちょっと申し上げましたように、この信用事業については農林中金に指導権限が与えられておるということで、今回の改革によりまして、一般の信用組合、信用金庫と同様な第三者性が確立された公認会計士、または、新しく中央監査機構が外出しになりますので、これも公認会計士法に基づいた外部監査ということで、より外部性の高まった、公認会計士法による監査法人への監査ということがございますので、そういう意味ではそういうガバナンスというのはきちっと保たれるもの、こういうふうに考えておるところでございます。

 まさに今委員がおっしゃっていただいたように、委託販売ということは、ある意味ではリスクはとらない、要するに、販売努力をしなくて売れた分だけ手数料をもらう、こういうモデルでありますので、やはり、きちっと買い取って、自分でリスクをとって農家のために販売するということがなかなか行われていなかったのではないか、一方でこういう指摘があるわけでございます。まさに委員がおっしゃっていただいたように、買い取りになれば、在庫を持つ、リスクをしょうということですから、それなりにきちっとしたガバナンスもなければならない。

 しかし、一般の商取引では、ほとんどのケースで、こういう買い取りをやってリスクをやることによって手数料もかっちり取っていく、こういう販売方式をやっているということでありますから、どちらが必ず一〇〇%正しいということではございませんが、そういうことをいろいろと試していくことによって、結果として、農家のための有利販売というのをきちっとやっていくということとそれから財務の健全性というのをどうやって両立させていくのか、これが大変大事なことでありまして、そのために、地域の農協がきちっとしたガバナンスの中で自由な経営をしっかりやっていっていただこう、こういうことを目指していくための改革だというふうに考えておるところでございます。

小山分科員 大きな方向性についての認識というところでは大臣と共有するところもあるんですけれども、まさにこの買い取り販売はリスクが大きい、だけれども、それもやっていくということは私も大事なことだと思っております。

 それだからこそ、今後、この農協の財務の安定性、経営の安定性というものが、より確保が大事になってくる。であるからこそ、業務監査、そして今までの会計監査でも特段の大きな問題があったということではないわけですし、それは平成二十年の農水省の規制改革会議に対する答申でもそういうことが出ておりますので、逆に、今度、業務監査や全中の経営改善指導がなくなるということが、少なくとも、経営の安定性を確保していくことについては今までよりもプラスになることではないのではないかということを少し懸念をしているところであります。

 それに関連しまして、再編強化法に基づく、今は大臣からも、信用事業のところで農林中央金庫による指導ということでございましたが、もちろん農中もこの指導を行っておりますけれども、信用事業を中心に、経営不振JAに対して経営改善指導を行っているというものです。これまでは、全中の指導とともに、まさに車の両輪としてJAの経営破綻防止に努めてまいったと認識をいたしております。

 今後、この片方の全中の経営指導が、強制的なという意味におきましてはなくなって、農林中金が単独でこの経営不振JAに対しては、出てきた場合には行わざるを得ないということになっていくかと思いますけれども、この農林中金が単独で行うことになるということについて、農林中央金庫はそのことを承知し、かつ、それを行える体制を整えているのでしょうか。

佐藤大臣政務官 多くの農業協同組合は、信用事業、経済事業を含めた総合事業を営んでおります。組合の自己資本率が経済事業の結果として低下することもあると認識はしております。その場合、JAバンク基本方針に照らして、農林中金が農協に対して経営改善を指導することになると思います。

 したがって、経済事業についても、自己資本比率に影響するような重大なものについては、農林中金が指導する仕組みになっていると認識しております。

小山分科員 仕組みの御説明というようなことでありましたが、農林中金も職員の数も限られておりますし、もともと銀行ですので、その中で、農協法に位置づけられた指導業務を中心に行う全中と同様の指導はするというのは、相当職員にも負荷がかかりますし、金融機関としての仕組みを整えてきている、あるいはそういう事業体制でやっているわけですから、かなりここは無理がかかるのかなということも想像しております。

 まさに大臣が先ほどお話しにもなりましたが、リスクをとっていくということであります。ほかの企業も同じように買い取り販売をやっていく、またはリスクをとって事業を行っているわけですけれども、ここが協同組合と株式会社の違うところではないかと。

 株式会社は、余りこういうホリエモン的な考え方は私も好きじゃないですけれども、最終的にはこれは投資ですね、株式投資、会社は株主のためのものだ。そう言いたくないところはありますけれども。

 だけれども、協同組合の場合には、これはあくまでも協同組合という経営体が継続することが前提であって、利用の継続、維持ということがやはり使命ではないか。会社のように、株主が最終的に投資の失敗だったということではないと思うんですね。

 そのことからしますと、協同組合が何か経済事業、特にこの買い取り販売等販売事業を積極的に展開する中で、リスクをしょってこれが失敗をしてしまったというようなことは、起こり得るかもしれないですけれども、早期に是正をして、そして経営を健全たらしめていくことが本来の協同組合にとっての使命ではないか。

 それを考えますと、株式会社のように、潰れてしまってもいい、極論をすればそういうことではなくて、最終的にはやはり継続をさせていくということを前提にして協同組合に対する指導というものを考えれば、私は、全中の指導を今の農協法にしっかりと位置づけて経営改善指導をしていくという方が、より経営の健全性に対しては貢献度が高いのではないかなと今は認識をしているところであります。

 ある意味、全中の業務の中では、この業務監査、そして経営改善指導というのは、いい事業、いい業務の部類に入るだろうと私は認識をいたしておりますので、ぜひここのところは、もうかなりのところまで法案等も進んでいるかとは思いますけれども、今後条文調整などもあるものですから、いま一度ぜひこういったことも考慮に入れていただいて、最後の作業をお願いしたいと思います。

石原主査 時間が経過しております。

小山分科員 済みません。

 以上で質問を終わります。

石原主査 これにて小山展弘君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

石原主査 環境省所管について、政府から説明を聴取いたします。望月環境大臣。

望月国務大臣 それでは、平成二十七年度環境省所管一般会計予算及び特別会計予算について、その概要を御説明申し上げます。

 まず、予算の基礎となっている環境政策の基本的な考え方について御説明します。

 東日本大震災の発生から、この三月で四年がたとうとしております。除染については、着実に進捗しており、今後とも適切に行ってまいります。除染と復興を進めるために必要不可欠な中間貯蔵施設の整備や、廃棄物の処理については、政府全体で全力を尽くします。また、原発事故による放射線に係る住民の健康管理についても、適切に対応してまいります。さらに、三陸復興国立公園やみちのく潮風トレイルを活用したグリーン復興を進めます。

 二〇二〇年以降の気候変動対策に関する新たな枠組みを構築するため、本年末のCOP21に向けて、全ての国が参加する公平かつ実効的な国際枠組みとなるよう積極的に貢献するとともに、我が国の温室効果ガスの新しい削減目標と具体的な行動計画をできるだけ早期に策定します。低炭素エネルギー社会の構築に向けては、徹底した省エネルギーと再生可能エネルギーの最大限の導入や水素の本格的な活用、先導的な技術を活用した削減対策や環境金融の促進などを図ります。また、すぐれた低炭素技術の普及を通じて世界全体の排出削減に貢献するとともに、気候変動の影響に適切に対処してまいります。

 循環型社会を実現するための取り組みとしては、災害時における円滑、迅速な廃棄物処理体制の確保、廃棄物処理施設の更新、産業廃棄物処理業の一層の高度化や、PCB廃棄物の確実かつ適正な処理などを進めます。

 人と自然が共生する社会の実現に向けては、鹿やイノシシなどの野生鳥獣による被害対策の強化、絶滅危惧種の保全や外来生物の防除などに取り組みます。

 また、国民の健康と良好な環境の確保のため、PM二・五による大気汚染への対策、水銀に関する水俣条約への対応などを進めます。

 さらに、二〇二〇年のオリンピック・パラリンピック東京大会に向け、環境に優しい五輪と環境都市東京の実現を目指した取り組みを進めます。

 原子力規制委員会については、原子力規制の継続的改善及び放射線モニタリング体制の充実強化を図るとともに、原子力規制人材育成の強化などに取り組みます。

 これらの施策を実行するため、平成二十七年度環境省所管一般会計予算及び特別会計予算については、一般会計予算では総額二千九百六十二億二千七百万円を計上しております。

 次に、特別会計予算につきましては、エネルギー対策特別会計に総額一千五百九十一億八百万円、東日本大震災復興特別会計に、復興庁所管予算として総額六千六百七十一億五千三百万円を計上しております。

 なお、委員のお手元に配付されております環境省所管一般会計予算及び特別会計予算の主要施策については、お許しを得て説明を省略させていただきます。

 よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。

石原主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま望月環境大臣から申し出がありました環境省関係予算の主要施策の説明につきましては、これを省略して、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石原主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

石原主査 以上をもちまして環境省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

石原主査 質疑に入るに先立ちまして、政府当局に申し上げます。

 質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中野洋昌君。

中野分科員 公明党の中野洋昌でございます。本日はどうかよろしくお願いいたします。

 時間も限られておりますので、早速質疑に入ります。

 まず、動物愛護について伺わせていただきたいと思います。

 この動物愛護、犬、猫の殺処分数というのは、ここ十年間で大分大きく減ってまいりました。平成十五年で数字を見ますと、犬に関して言えば十七万頭、猫に関して言えば約二十七万頭という数字でございました。これは、十年たちまして平成二十五年、犬は三万頭、猫は十万頭。返還あるいは譲渡の率も、平成十五年で見ますと六・三%でしたけれども、平成二十五年では二七・五%。大分上がってまいりました。

 しかし、これはまだまだ殺処分数が諸外国から見れば多いということも事実でございまして、そうした意味で、昨年、環境省で、人と動物が幸せに暮らす社会の実現プロジェクトというものを始められました。殺処分のゼロを目指すんだ、こういう大きな目標を掲げられた。これは、私は率直に大変高く評価をしております。

 ぜひこの取り組みを進めていただきたいと思いますけれども、今後、環境省として、こうしたプロジェクトを受けて、犬、猫の殺処分ゼロ、かなり大きな目標でございますけれども、具体的にどのように取り組みを進めていかれるのか、ぜひお伺いをしたいと思います。

望月国務大臣 今先生がおっしゃった、平成二十五年で犬が三万頭程度というようなことで、これが多いか少ないかということでございますが、昭和四十八年に動物愛護法、私、ちょっと調べてみたんですけれども、昭和四十九年から統計をとっているんですけれども、そのときに犬が約百万頭殺処分されていた。そんな数字を見て私も驚愕をしたわけでありますけれども、それでも現在、そこまで来たのかなと。

 しかしながら、今先生がおっしゃったように、環境省は昨年六月に、人と動物が幸せに暮らす社会の実現プロジェクトのアクションプランを発表いたしました。その中で、殺処分をできる限り減らし、最終的にはゼロにする、これを目指すことをプロジェクトの目的として明確に位置づけたわけであります。

 この目的を達成するために、アクションプランでは、飼い主、ボランティア団体、事業者等、関係する団体に求められる取り組みを示しております。飼い主でいえば安易な購入の防止とか、そういったことをやはりさまざまそれぞれにいろいろなものを位置づけまして、各主体の取り組みを強化させ、それからまた連携させるために、環境省としては、モデル事業の実施、それから普及啓発の強化等の取り組みを行っていくこととしております。

 引き続き、自治体と協力してアクションプランを推進し、犬、猫の殺処分の削減、まさにゼロに向かって進めていきたい、このように思っております。

中野分科員 ありがとうございます。

 大臣の、ゼロに向かって進めていきたいと大変力強い御答弁をいただきまして、しっかり来年度以降も、ぜひ力をいよいよ入れていっていただきたいと思うんです。

 先ほどの御答弁の中にも御紹介がありましたモデル事業を進めていくという件は、私も伺っております。今年度ももう既にモデル事業をやられているというお話も伺いました。

 中身を見ますと、七つモデルがございまして、マイクロチップを活用したものを中心に、さまざまモデル事業ということでやられておりますけれども、来年度以降、このモデル事業をもっともっと広くやっていただきたい。

 特に今年度はマイクロチップ関連のものも多かったわけでございますから、それ以外にも、地域猫やあるいはシェルターや、本当にさまざまな、各それぞれの地元で、動物愛護団体の皆様を初め、協力していろいろな事業をやっておられますので、さらに幅広く取り組みを支援していくべきというふうに考えますけれども、御答弁を求めます。

塚本政府参考人 お答え申し上げます。

 飼い主、ボランティア団体、事業者など関係する各主体の取り組みを推進するため、環境省では、関係自治体と連携してモデル事業を実施することとしています。その成果は全国へ展開してまいりたいと存じます。

 先生御指摘のとおり、今年度は七カ所の自治体で、マイクロチップを用いた所有明示の推進などを中心としたモデル事業を展開したところでございます。

 来年度につきましては、より幅広い課題を対象として、実施自治体数もふやしてモデル事業を実際に実施していく予定でございます。

中野分科員 ありがとうございます。

 モデル事業、二十七年度はしっかり予算もとれたということでございます。予算額につきましては、またしっかり私も応援をしていきたいと思いますので、来年度、そして再来年度と、いよいよもっと大きな予算もしっかりと要求もしていただきまして、この取り組みをぜひ前に進めていっていただきたいと御要望させていただきます。

 続きまして、これも動物愛護の関連なんですけれども、アニマルポリスというものについてお伺いをさせていただきたいというふうに思います。

 これは承知の方もいらっしゃると思うんですけれども、例えばイギリスであるとかあるいはアメリカであるとか、諸外国ではこういうアニマルポリスと言われるような方々がいらっしゃって、これはどういう方々かというと、実態は国や州によってさまざまなんですけれども、例えば動物愛護団体の方々、こういう方がそういう権限を持って、動物虐待をしているような事案があったら、それについて、実際にどうなのか、このペットは本当にここの飼い主に任せて大丈夫なのか、そういうことも含めて、通報などを受けて対応する、こういう方々がいらっしゃいます。

 これは、もちろん民間でやっている場合もありますし、もちろん公的な部分で、保健所であるとか警察であるとか、実態はさまざまであるとは思うんですけれども、いろいろな関係者の方が密接に連携をしてこの取り組みを進めている、こういうことを伺っております。

 やはり日本も、動物虐待、たまにニュースで、先日も野鳥に矢が刺さっていてとか、いろいろなニュースになる場合がございますけれども、それに限らずいろいろな動物虐待のような事案があるわけでございまして、こうした動物虐待事案に対応する相談窓口をつくろうということで、実は、私の地元の兵庫県では、アニマルポリス・ホットラインということで、警察の方が、こういう虐待があったらぜひここに相談をしてきてください、そういう窓口を日本で初めて設置させていただいた、こんなこともございます。

 こうしたいわゆるアニマルポリスと言われる取り組みは、日本でもいろいろな機関が連携をしてもっともっと進めていくべきである、このように私は考えますけれども、まず、環境省としてはこれについてどうお考えか、御答弁をいただきたいと思います。

塚本政府参考人 お答え申し上げます。

 愛護動物の虐待や遺棄の防止のための取り組みとして、環境省は、普及啓発活動を行うとともに、虐待や遺棄についての事例集をつくっております。それを自治体の業務の参考として情報提供しております。

 それから、個々の動物の虐待などの問題の対応につきましては、これまでも自治体の動物愛護担当部局と警察が連携して対処されているというふうに承知しております。

 環境省といたしましても、自治体と警察などの関係者が連携協力して対処することが重要と考えておりまして、自治体に対して、警察などとの連携の重要性について文書で通知を出しているところでございます。

中野分科員 ありがとうございます。

 今回、きょうは警察の担当者の方にも来ていただいておりますので、警察サイドとしては、アニマルポリスのこういった取り組みについて進めていくべきではないか、今、環境省からも自治体と警察と連携してというお話もございましたので、どのようにお考えかをぜひ御答弁いただきたいというふうに思います。

島根政府参考人 お答えいたします。

 警察では、動物虐待事案に対しまして、関係する行政機関とも連携協力し、適切に対処しているところであります。

 御指摘のとおり、兵庫県警察では、平成二十六年一月から、動物虐待事案等専用相談電話、アニマルポリス・ホットラインを開設して積極的な相談を促している、このように承知をいたしております。

 各都道府県警察におきましては、住民から寄せられますさまざまな相談に対し的確に対応できるよう各種相談体制を整備しているところでありますが、こうした動物虐待に関する専用電話を設置するかどうかにつきましては、相談の状況でありますとか体制等を勘案いたしまして、各都道府県警察において適切に判断すべきものと考えております。

 いずれにいたしましても、警察庁といたしましては、相談を初めとして、動物虐待事案への対応がより適切に行われますよう、担当者に対する教育訓練を充実していくほか、事案の内容に応じまして速やかな事件化を図るなど、さまざまに指導してまいりたい、このように考えております。

中野分科員 ありがとうございます。

 これは都道府県と都道府県の警察の取り組みでございますので、確かに、地元によって対応の仕方という意味では少し濃淡があるというふうには思います。ぜひ警察庁としても、しっかりと連携をしていく、こういう取り組みについてはどんどん前に推し進めていただきたい、このようにお願いを申し上げる次第でございますので、どうかよろしくお願いいたします。

 少し話はかわりまして、世界自然遺産の関係で質問をさせていただきます。

 これは何かと申しますと、私の地元は兵庫県の尼崎市というところでございまして、私の地元で世界自然遺産登録の動きがあるわけではないんですけれども、尼崎市というところは、阪神工業地帯の中心地でございましたので、奄美大島を初め、奄美群島の出身の方というのが実は大変に多い、こういう地域でございまして、よく、地元の郷土会、郷友会、こうしたものが尼崎を中心に開かれていて、大変にふるさとを大事にされる、そしてふるさとへの交流も大事にされる、こういう地域でございます。

 昨年は、奄美群島が日本の本土に復帰して、奄美群島というのはもともと米軍の占領下にあった地域でございまして、復帰が少しおくれたこともございましたので、本土復帰六十周年ということで、奄美の中でも非常に、奄美の振興に向けてさらに力を入れていこう、こういう動きもございましたし、奄美振興開発特別措置法、通称奄振法と呼ばれますけれども、これも改正をいたしまして、非常に自由度の高い奄美振興開発の交付金、こういう制度もつくりまして、地元の創意工夫を生かして奄美を振興していく、こういう取り組みが去年は大変に大きく進んだところでございまして、例えば何をしたかというと、航空運賃を引き下げて交流人口をふやしていく、こういう取り組みもやっていたところでございます。

 そして、奄美群島をこれからどうやって振興開発していくか。もちろん、箱物のようなハードという世界もあるんですけれども、なかなかそれでは開発が今後勢いがついて進んでいかないということで、やはり、観光であるとかITであるとか、そういった柱を何本か立ててやっていこう、こういうことでございました。その中で、観光、交流人口をふやしていくというのは、大変に大きなこれからの課題ということになっております。

 その中で、今、琉球・奄美、ここを世界自然遺産に登録しよう、こういう動きがまさに進んでいるところでございます。世界自然遺産に登録をされますと、ここに向けて観光客の方が非常にふえる、こういうこともございまして、これから地元では、世界自然遺産登録を次の目標にしてしっかりやっていこう、こういうお話でございます。

 琉球・奄美の世界自然遺産登録、非常に地元も熱い期待をして、またしっかりやっていこう、こういうことでございますので、環境省としてどのようにこれを推し進めていかれるかというのをぜひお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。

北村副大臣 先生御指摘のとおりでありまして、環境省では、奄美・琉球の世界自然遺産登録を目指した取り組みを今進めている中でありまして、科学的に奄美大島、徳之島、沖縄島北部、西表島の四地域を候補地として選定し、取り組みを進めているところでございます。

 具体的には、世界自然遺産の登録に必要な、まず、国が責任を持って管理することのできる国立公園等の保護地域の指定あるいは拡張、さらには、アマミノクロウサギなどの希少種の保護増殖、マングース等の外来種対策などを積極的に今推進させていただいているところであります。

 いずれの取り組みも、関係自治体や地元住民等多くの方々の理解と協力を得ながら、着実に前進をいたしております。

 環境省としては、引き続き、早期の世界自然遺産登録を目指して、丁寧に、着実に取り組みを進めてまいりたいと考えているところでございます。

中野分科員 ありがとうございます。

 環境省の役割は非常に大事でございますので、ぜひ進めていっていただければと思います。

 また、大臣、副大臣も、もし機会がございましたら、奄美群島は大変美しい自然でございますので、ぜひ来ていただければと思います。よろしくお願いいたします。

 もう一つ、地元の関係で、先ほど奄美群島の話をいたしましたけれども、いろいろな離島出身者の方が、実は私の地元尼崎というのは大変多いところでございます。奄美群島だけではございませんでして、例えば、鹿児島県に甑島諸島というところがございます。薩摩川内市でありますけれども、実はこちらの出身の方も大変に多い、そんな地域でございます。

 私、甑島も行ってまいりましたけれども、大変自然が豊かなところでございます。例えば、その地質が特に希少だということでありまして、鹿島断崖といった、日本の地質百選に選出をされているような、大変自然が豊かである、こういうことでございますので、現在、この甑島を国定公園に指定していこうということで手続が進められている、このように承知をしております。

 この甑島も、現在、非常に過疎が進んでいる地域でもございまして、これからの島の産業を支えていく、漁業など一次産業ももちろんあるんですけれども、やはり観光というのは非常に大事だろう、こういうことで言われております。

 こうした豊かな自然環境というのは、やはりいい観光資源になっていくんじゃないか、私はこのように思います。諸外国でも、こうした国立公園みたいなところを観光の目玉にして、ここに非常に多くの観光客の方がいらっしゃる、そういう取り組みをしているところがあるというふうに思いますし、これから、特に二〇二〇年オリンピック・パラリンピックに向けて、外国人観光客誘致というのもどんどん進めていくわけでございます。

 国立公園あるいは国定公園、こうした自然を観光資源として、もちろん国内のお客様もそうでございますけれども、外客誘致、こういうこともしっかり国として進めていくべきである、このように考えますけれども、いかがでございますか。御答弁を求めたいと思います。

    〔主査退席、小倉主査代理着席〕

塚本政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘の国定公園そして国立公園は、我が国を代表するすぐれた自然の風景地でございまして、重要な観光資源だというふうに認識しております。

 御指摘のとおり、国立公園などの自然観光資源を生かした外客誘致というものも非常に重要な課題だというふうに考えております。

 国立公園への外国人観光客をふやすために、環境省では、国立公園のすばらしさを実感できる多言語でのウエブサイトの構築など、そして、海外向けの情報発信をそれを通じて行っております。また、標識ですとか情報提供施設の多言語化や、トイレの洋式化などの国際化対応を推進しております。

 環境省といたしましては、こうした取り組みを通じまして、国立公園、国定公園を活用した観光立国推進に努めてまいりたいと存じます。

中野分科員 ありがとうございます。

 非常に大事な取り組みであるというふうに私は思います。

 国立公園、国定公園というと、自然を保護するという観点はもちろん大事でございますけれども、この日本の豊かな自然をやはり多くの方に、自然を守りながらこれを知っていただく、また親しんでいただく、こういう、地域にとって非常に大事な資源であるというふうに私は思いますので、しっかり力を入れていっていただきたいというふうに思います。

 ちょっと時間も少なくなってまいりましたけれども、最後に農協改革について伺いたいというふうに思います。

 安倍政権におきまして、農協改革に限らず、農業全体を、やはり大きな成長戦略の一つである、このように考えておりまして、いろいろな取り組みがなされてきたというふうに承知をしております。そうして、今回大きな議論となっております、農協をどのように改革していくのか、これもその一つである、このように承知をしております。

 しかし、現在、地元の地域の農協の皆様といろいろな意見交換もさせていただきますけれども、私は、必ずしも今回の農協改革、その意図するところがまだしっかりと伝わっていないんじゃないかな、こういう率直な感想を持つわけでございます。

 よくお伺いをするのは、今回の改革というのは、JA全中の組織、中央会の組織や業務をどうするか、こういう話がかなり多いわけでございまして、これをすると、では、果たして地元の現場の農協で、あるいは農家の皆様のところで何がどう劇的に変わっていくのか、こういうことを考えたときにちょっとそれがまだよくわからないね、こういうお声が実は多いわけでございます。これは余り現場に関係ないんじゃないか、こういう率直な御意見もいただいたこともございます。

 私は、安倍政権がやっている農政改革全体の大きな流れでいろいろな取り組みがある中で、その中のまた一つとして今回農協改革という大きなものがある、このように考えておるんですけれども、全体の農政の改革、そして今回の農協改革というのは一体その中でどういう位置づけなのか、こういうところをぜひわかりやすく御説明いただければというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。

金丸政府参考人 お答えいたします。

 安倍内閣におきましては、農業を成長産業とし、地方創生の核としていくため、農林水産業・地域の活力創造プランに基づきまして、六次産業化による高付加価値化、海外マーケットも視野に入れた需要の開拓、農地集積バンクによる担い手農業者への農地集積などを柱といたします農政改革を進めてきたところでございます。

 こうした農政改革が成果を上げるためには、政策面の見直しとあわせて、農業者を初めとする経済主体が、政策も活用しながら自由に経営を展開できる環境を整えていくということが必要不可欠でございます。

 地域農協は、農業者が自主的に設立しました協同組合でございまして、農業者にとって最も身近な経済主体でございます。ここが、地域の農業者と力を合わせまして、農産物の有利販売等に創意工夫を生かして積極的に取り組みますと、農業を成長産業にしていく可能性は十分あると考えております。

 このため、今回の改革は、地方分権の発想に立ち、地域農協が、それぞれ地域の特性を生かして創意工夫しながら自由に経済活動を行い、農産物の有利販売など、農業者の所得向上に全力投球できるようにすること、それから、連合会や中央会は地域農協の自由な経済活動を適切にサポートしていくこと、これを基本的な考え方としております。

 こうした農協改革と政策の見直しとが連動することによりまして、農業の成長産業化の道筋がつくものと考えております。

中野分科員 ありがとうございます。

 もう一問あったんですけれども、ちょっと時間も迫ってまいりましたので、これで終わらせていただきます。

 やはり、農協改革は非常に大事だと私は思います。その上で、やはり、現場の農協の皆さんあるいは農家の皆さん、こうした皆さんにその意図をしっかりと伝えていく、こういう形で改革をしていくということをしっかり伝えていかないといけないと思いますし、また、これから法案を作成して議論するという流れになってまいりますので、またそのときに、いろいろな現場の御意見、さまざまあるというふうに思いますけれども、しっかりと問題意識をお伝えさせていただきたいな、このように考えておりますので、どうかよろしくお願いをいたします。

 以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。

小倉主査代理 これにて中野洋昌君の質疑は終了いたしました。

 次に、太田和美君。

太田(和)分科員 維新の党の太田和美でございます。

 本日は、福島県の原発事故によって生じた千葉県内における指定廃棄物の処分についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 早速でありますが、質問に入らせていただきたいと思います。

 千葉県でも、焼却灰など約三千六百トンが県内七市に保管されているわけでありますが、今月末までに最終処分場をつくるという国の方針のもとで、我孫子市と印西市の市境であります手賀沼の終末処理場で一時保管をしていました指定廃棄物をもとの市町村に戻すというおかしなことをやっております。このような最悪な経過をたどってしまった国としての責任をどうお考えなのでしょうか。

小里副大臣 この処理施設の建設がおくれていることによりまして地域の皆様に大変御心配をおかけしているところでございまして、大変申しわけなく思っているところでございます。

 若干質問の通告と違う御質問でございますが、その原因についてお尋ねであろうと思います。

 平成二十六年四月十七日に、第四回の市町村長会議におきまして選定手法を確定いたしました。これに従って選定作業を鋭意行っているところでございます。

 ただ、千葉県におきましては、国有地とか県有地だけじゃなくて、広く県内全域の民有地も選定の対象としているところでございまして、そういった中で、土地の数も多いことから作業がおくれているということを説明申し上げざるを得ない状況でございます。

 大変御心配をおかけしておりますことを重ねておわびをしながら、しっかりと今後の作業を急いでまいりたいと存じます。

太田(和)分科員 一度、手賀沼の終末処分場の県の施設に保管した廃棄物を戻すのは、国の負担でやっているということでございます。松戸、柏、我孫子市への返却でどのぐらいの追加的な負担が生じているのか、お答えを願いたいと思います。最終処分場ができていれば必要のない費用であり、政策のおくれによって国民負担がふえていると言えます。国はどのように責任をとるおつもりなのでしょうか。

鎌形政府参考人 御指摘の指定廃棄物、手賀沼の終末処理場に運び込んだ分でございますけれども、松戸市、柏市、流山市に戻すという作業を現在行っておりまして、松戸市、流山市につきましては戻すことが完了しましたが、柏市も今、搬出中ということでございます。

 平成二十六年度に予定額として合計で約四億円の負担を見込んでいるというところでございます。こうした運搬に係る費用、あるいはそれぞれの市に戻した後の一時的な保管に要するこの費用につきましては、いずれにしても国において負担した後、放射性物質汚染対処特別措置法に基づきまして、東京電力に求償するということとしてございます。

太田(和)分科員 ありがとうございます。

 最終処分場の設置期限についてお尋ねをさせていただきたいと思います。

 二十四年三月に環境省が出しました指定廃棄物の今後の処理の方針において、二十六年末をめどとして最終処分場の確保を目指すとございました。その後、二十五年、自民党政権になって出された指針では時間軸の記述がなくなっております。昨年三月の予算委員会で井上副大臣は、デッドラインは設けていないという答弁をしておりましたけれども、これは明らかに後退をしているのではないでしょうか。

 本当に最終処分場をつくる気があるのでしょうか。なぜ方針転換をしたのですか。最終処分場をつくると言うのならば、いつごろまでに候補地を決めて、そしていつまでに候補地においてボーリングや地盤、そして地質、地下水などの詳細な調査を行って、最終的な候補地をいつ提示できるのか、そして、いつまでに建設を始めて終了するのか。これは具体的な全体のタイムスケジュールを示すべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

小里副大臣 委員が御指摘のとおりに、平成二十四年三月の環境省が定めた処理方針におきまして、そのような目標が定めてあるところでございます。

 ただ、その後、さまざま反省にも立ちながら、平成二十五年二月に選定プロセスを大幅に見直しをいたしました。例えば、候補地選定に当たりましては、関係自治体の意向や状況をしっかり勘案したり、また、詳細調査を実施した上で確定するといったようなことを、丁寧に手順を踏む内容を定めているところでございます。

 こういった手順を進める中で、地域ごとにも事情が大きく違ってまいります。したがって、現時点におきまして期限等をあらかじめ定めるということは大変困難であると考えているところでございます。

 このため、今後のスケジュールにつきましては、一概にいつまでにとお示しできるものではございません。また、平成二十四年三月の環境省で定めた目標も引き継いでいるということではございません、その間には政権の交代もあったわけでございますが。

 いずれにせよ、各県における処理施設の早期設置に向けまして、引き続き努力してまいりたいと存じております。

太田(和)分科員 ということは、前政権の方針としての期限を撤回するということであろうかと思います。今までの、前政権の、二十六年度末をめどとして最終処分場を確保するといったそれを前提として、地元では、一四年度末までに一時保管を終了するとした手賀沼終末処分場の県の約束がございました。このことについては、国としてどのようにお考えでしょうか。これも国の責任において、もし方針が変わったとしたのであれば、その撤回をお願いするべきだったのではないかというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

小里副大臣 前政権の方針を転換するというような意図的な思いで申し上げているわけではございませんけれども、さまざま反省はあったと思います。割と国の方から一方的にお示しをして、調査もなく候補地を選定したといったような経緯もあったように私は認識をしているところでございます。

 そういったさまざま考慮すべきところを考慮して、丁寧に作業を進めていく新たな選定手法というものを各地域の実態に応じて定めたものでありますから、また、この種の作業というものは極めてデリケートなものでございまして、考慮すべきさまざまの要素がございます。慎重に、かつ急いでいかなければならないものと心得ております。

 どうか御理解をいただければと思います。

太田(和)分科員 大変困難な作業であろうかとは思います。しかし、事故から四年がたっても全くめどがついていないという現状であろうかと思います。

 また、千葉県の場合は、選定方法が昨年の四月に決まったということでございますが、宮城や栃木と比べて、現地調査の対象となる候補地もまだまだ挙がっていない状況でございます。なぜそんなに手間取っているのかというふうに、やはり地元の皆さんも大変不安に思う気持ちもあろうかと思います。

 そこで、お尋ねしたいのが、現時点でどこまで絞り込めているのかということをお聞きさせていただきたいと思います。

鎌形政府参考人 千葉県におきましては、市町村長会議で確定いたしました選定手法におきまして、国有地のみならず、県内全域の民有地も選定対象に含めているところでございます。このように、対象となる土地の数が非常に多くなります。そういう意味で、詳細調査を行う候補地の選定に時間を要しているというところでございます。

 現在の作業でございますけれども、確定した選定手法に従いまして、例えば、地すべり危険箇所や自然公園区域などに加えまして、千葉県独自の要件でございますが、県の最終処分場指導要綱を考慮した除外項目、例えば、建物から五十メートル以内のエリアといったものも除く、そういった作業をして、その上で、処理施設に必要な面積、これは約一・五ヘクタールと想定してございますが、そういった面積が確保できる土地について、地形とかあるいは傾斜の確認を行うといった丁寧な作業を行っているところでございます。

 現時点でどこまで絞り込めたかということについてお答えする段階にはないところでございますが、選定作業に時間を要し、大変御心配をおかけしてございます。できるだけ早く詳細調査を行う候補地の公表ができるよう、作業を鋭意進めてまいりたいと考えてございます。

太田(和)分科員 ただいま御答弁の中でもございましたように、絞り込みがおくれているのは、やはり他県にない選定のルールをやっているからではないかというふうに思います。

 まず、宮城、茨城、栃木、千葉、群馬の指定廃棄物を抱えている五県のうち、なぜ千葉だけが民有地を含めるということになったのでしょうか。

 千葉県の場合は、房総地区に国有地が多くあって、廃棄物保管が多い東葛地区には少ないので、候補地の対象として民有地も加えたというふうにお聞きをいたしました。東葛地区にあえて最終処分場を恣意的に持っていくために、千葉だけ民有地を含めるというような独自のルールをつくったのではないかというふうに私は考えてしまいました。

 というのも、今、民有地を含めて約五千カ所近くに上ってしまっているというようなうわさもお聞きしております。五千カ所の中から、こんな膨大な中から選定をするというのは、もちろん、難航してしまって時間がかかっているわけであります。

 このような中で、繰り返しになりますけれども、なぜ千葉だけが民有地を含めて選定することになったのかということをお答え願いたいと思います。

鎌形政府参考人 御承知のとおり、詳細調査の候補地の選定に当たりましては、市町村長会議、知事さんと各首長さん全てにお集まりいただく会議において議論を積み重ねてきてございます。千葉県の場合には、四回、その市町村長会議を開催いたしました。

 その過程で、私どもとしては、国有地を基本に御意見を伺う、こういうような姿勢で臨んだわけでございますけれども、国有地のほかに、県有地、あるいはその他の土地も含めて幅広く対象として考えてほしいという御意見が多々ございました。

 そういうところで議論を重ねた結果、民有地も含めて選定の作業をするという手法が確定したところでございます。

太田(和)分科員 なぜ千葉県だけが民有地を含めて選定をしていくのかということが、少し、ちょっとわからないところでありましたけれども。

 また、候補地の選定のルールとなる選考基準を見ると、まず適性評価方式で、一つ、生活空間との距離が五百メートルを超えているか、二、水源までの距離、三、自然度、そして四、指定廃棄物を保管しているかどうかで絞り込んで、さらに、この四つの項目ごとに五段階の評価基準を定めて項目ごとの評価点をつけて、総和したポイントの数の高い候補地から選定されるというふうにこのルールはなっております。

 既に候補地案が示された宮城では、今お話しした四番目の指定廃棄物の保管状況は、評価基準の項目すら入っておりません。

 また、栃木では廃棄物の保有量はポイントが〇・五から二・五となっておりまして、一千トン以上あってもポイントが二・五しかつかないんです。

 しかし、千葉では、一から五の五段階で、千トン以上は五ポイントつくことになってしまいます。千葉では、栃木と比べてポイントが二倍になっているんですね、この保有量に関してです。

 指定廃棄物が千トン以上あるのは、千葉県では柏市しかございません。ポイントが高くなるようなルールがつくられているような気がします。どうしてこんな仕組みになってしまっているのでしょうか。保管量の扱いがほかの県と違っている。しかも、先ほども話したように、千葉県の場合、候補に民有地を入れれば、この東葛地区に行くことが決まってしまうような気がいたします。

 既に放射性物質によって被害を受けている地域にさらに負担を強いることになるのではないかというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

鎌形政府参考人 選定の仕方、手法の確定の仕方でございますけれども、繰り返しになりますが、各県それぞれ市町村長会議を重ねて議論をした上で決めてきているということでございます。

 指定廃棄物の保管状況の重みづけについての御質問でございますが、御指摘のとおり、宮城県では重みづけはゼロ、栃木県ではほかの項目に比べて二分の一、千葉県ではほかの項目と同等の扱いということで、それぞれ独自のルールがあるということでございます。

 これも、それぞれ議論の中で、例えば、指定廃棄物の保管状況を重く見るべきだという御意見、あるいは見るべきでないという御意見、さまざまございました。そういう中で、千葉県におきましては、両様意見がございました中で、ほかと重みづけを一ということとしてございます。

 それで、御指摘ございますけれども、この手法を選定するに当たりましては、どこが選ばれるかという予断を持って選定手法を決めてきているということではないことを申し添えておきたいと思います。

太田(和)分科員 まず、そもそもなんですけれども、適性評価が、候補地から住民が居住しているその住居までの距離が五百メートルを超えれば丸としていることが私はおかしいというふうに思います。五百メートルというと、目と鼻の先です。五キロメートルの間違いじゃないかというふうに私は思ったぐらいです。

 最終処分場の必要な土地の面積は、小学校の敷地の一個分ぐらいの大きさがあるというふうにお聞きいたしました。約一・五ヘクタールくらいですね。こんな大きな最終処分場を建設するのに、生活空間との距離がたった四キロで適性評価の最大の五ポイントもついてしまうということに私はすごく疑問を持っています。車で五、六分の距離だというふうに思います。もっと住居のある集落から候補地の距離を離して検討するべきではないかというふうに思います。

 処分場の構造も、コンクリート壁を二重にして遮蔽するというふうにありますが、コンクリートだって時間がたてばひび割れてしまうのではないかとか、万が一有害物質が流出してしまうのではないかとか、放射性セシウムは水に溶けやすいので、それが地下水に影響が出てしまうのではないか、このようなやはり住民の皆さんの不安というのは非常に高くなってくるというふうに思います。

 ですから、住宅からうんと離れたところに建設をお願いしたいというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

鎌形政府参考人 計画しております処分場につきましては、御質問の中にも御指摘ございましたとおり、二重のコンクリートで覆って、あと、埋め立てた後につきましても、土壌で覆土するとか、あるいはベントナイトという、放射性物質を通しにくい泥で覆うとかいうことで、外への放射線の放出というものを抑えるという思想でやってございます。

 そういう意味で、安全には安全を期すということでやってございますけれども、住民の方々の安心を高めるという観点から、住居などからの距離に応じて点数づけをするというような手法をとっているというところでございます。

 そういう意味で、住居から離れれば離れるほど、適性という意味では高くなる、つまり、選ばれやすくなる、こういう仕組み。逆に言うと、住居に近ければ近いほど選びにくくなる。そういうことを、安心の確保のためにルールとして設けている。

 こういったことを、有識者の意見も聞きながら、そして各市町村長会議でも議論を重ねながら決めてきたというところでございます。

太田(和)分科員 いずれにいたしましても、このような選定の仕方は柏の住民の皆さんの理解が得られないのではないかというふうに思います。

 国の原発の政策の失態によって放射性廃棄物が出たわけであって、柏や東葛地域の方々が出したわけではありません。原発事故の責任は、この地域の人たちにあるわけではないんですね。すなわち、指定廃棄物を保管していない地区に最終処分場を設置するべきではないという意見があったりとか、また、保管量の多い地域内で処理を前提にして検討するべきであるとか、また、保管量の最も多い地域に高いポイントをつけるべきだとか、こういう意見は私は妥当ではないというふうに思います。

 ホットスポットと言われた柏地域の人たちは、原発事故後、大きな不安と負担を強いられてまいりました。むしろ、保管量の多い地域ほどポイントを低くしてほしいというふうに言いたいぐらいです。

 福島から送ってもらった電力の恩恵を受けていたのは千葉県の皆さん全体なんですね。最終処分場を県外に持っていけというような先祖返りをした議論を私はするつもりはありません。この負の施設となるものを、千葉県の中で公平に痛みを分かち合った中で候補地を決めてもらいたいというふうに思います。今のままでは手続の公平さに疑問を非常に抱きます。

 もう一度選定方法を検討し直していただきたいことを強く要望させていただきたいと思います。

 続いての質問に移らせていただきたいと思います。処分の方法についてお尋ねをいたします。

 茨城県では、民主党政権時には一回候補地が示されましたけれども、地元の反発があり、仕切り直しとなっています。現在、選定のルールの策定も終わっておりませんけれども、候補地選定の手法を決める段階の県内の各自治体へのアンケートでは、最終処分場方式ではなく、分散方式を望む声が多かったため、今は分散方式が検討されているというふうにお聞きをいたしました。

 茨城県の指定廃棄物の保管量は千葉県と同程度の三千トンレベルでありますけれども、千葉では分散保管の検討はなされたのか、また、千葉県でできない理由は何か、その根本的に異なる点は何なのか、お答えをお願いしたいと思います。

小里副大臣 千葉県におきましては、市町村長会議の議論を経まして、一カ所での集約処理に向けました選定手法を確定したところでありまして、まず、その議論の経緯が異なっております。

 また、柏市の市長さんが先般もお見えになりまして御要望をいただいたところでありますが、県内、多くの指定廃棄物を抱えている柏市、松戸市、流山市からは、一日も早い集約処理の施設建設に向けまして、切実な要望をいただいているところでございます。

 さらに、これらの市におきましては、先ほど御指摘をいただきましたように、一時保管をめぐりまして、手賀沼の方に今仮置きをしているところでございますが、これをまたもとに戻すという再搬入の作業に入っております。もし一時保管という話が出てまいりますと、この再搬入の作業、手続にも混乱を来すおそれがあるところでございます。

 加えて申し上げますと、千葉県内の指定廃棄物と茨城県の指定廃棄物とは、その濃度が違うんですね。例えば、何年かたっていきますと減衰をしていきますけれども、十五年後を見た場合、茨城県の方は、ほとんど八千ベクレル・パー・キログラム以上のものがなくなっていくと予想されますが、千葉県は、これが十五年後であっても一千三百トンが残ると見込まれているところでございます。

 このように状況が大きく違ってまいります。議論の経緯、保管状況、将来への見通し等を踏まえた対応が必要であるかと思うところでございます。

太田(和)分科員 茨城県の市町村会議では、環境省から出された資料がございまして、指定廃棄物となる放射性濃度が八千ベクレル以上の廃棄物が、現在、千葉県と同じぐらいの三千五百トンありますけれども、事件発生後の四年後、つまり二〇一五年には二分の一、八年後の二〇一九年には十分の一、そして、十五年後にはわずか〇・六トンとなるという推計がされておりました。

 そうした数字をもとに、茨城では、一カ所の最終処分場より、分散保管し、放射性濃度が八千ベクレル以下に減衰してから既存の処分場で処理すべきという意見が強くなったというふうに思われます。

 千葉県の場合、放射能濃度の減衰はどう推計されているのか。千葉県は、仮に一トン未満になるのは何年後になるのか、教えていただきたいというふうに思います。

 なぜ千葉県には資料を出してくれないのか。今、副大臣の方からもお話がありましたように、十五年後には八千ベクレル以上が一千三百トン残るというふうにお話がありましたけれども、なぜ千葉県ではそうした資料をしっかり提出していただけないのかなというふうに思います。

 ぜひ、茨城県でもこういうような具体的な資料が、詳細が出ておりますので、ぜひ千葉県でも出していただきたいというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

小里副大臣 私の認識しておりますところでは、まず、先ほどの御指摘のとおり、茨城県、〇・六トンに減衰する、その時期は十三年後であると認識をしておりますが、十五年後はさらに少なくなっていくと思います。

 ただ、千葉県においては、そういった詳しい予想、見込みというものはとっていないように認識をしております。その点でも、ちょっと状況が違うなと思うところでございます。

    〔小倉主査代理退席、主査着席〕

太田(和)分科員 まず、やはり濃度が違うというのであれば、本当は、そこに含まれる放射性物質が、何が入っているのかとか、そういったものもしっかりお示しするべきだというふうに私は思います。最終処分場をつくるというような方針のもとで、いつまで減衰するのかわからない中で、そしてその中にどんな放射性物質が含まれているものが搬入されてくるのかもわからない。

 例えば、茨城県でも統計が出せたように、セシウム137であれば半減期が約三十年だとか、ストロンチウム90だと半減期二十九年、セシウム134だと二年とか、いろいろ統計が出せるはずなんですね。

 なぜ千葉県は出さないのか。茨城県と違って、濃度が違います、茨城県はほかに比べて濃度が低いんです、そんなことを言っていても、そんな話だけ聞いていれば、千葉県の人たちはもっと不安になっていってしまうというふうに思います。

 ぜひとも、これから最終処分場を建設するに当たって、そこに含まれる放射性物質が何なのか、そしてまた、それがどのぐらいのスピードで減衰していくのかというような、茨城県と同じようなデータをしっかりと出していただきたいということを、強くお願いさせていただきたいと思います。

 時間もなくなってしまいましたので、これで質問を終わりにさせていただきたいというふうに思いますけれども、最後に、このような最終処分場の問題も解決できていないのに、原発の再稼働とかいうようなお話が今もう、現在出てきております。副大臣には、ぜひとも政府の一員としてその辺のところをしっかりと考えていただきたいということを最後に申し上げまして、質問を終わりにさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

石原主査 これにて太田和美君の質疑は終了いたしました。

 次に、牧島かれん君。

牧島分科員 自民党衆議院議員の牧島かれんです。

 本日は、望月大臣そして北村副大臣にも御質問させていただく機会を与えていただき、本当にありがとうございます。

 今、日本では多くの家庭でペットを飼っております。そのペットでありますワンちゃん、猫ちゃんは自分たちの家族の一員であると思っていらっしゃる方も多くなっているのではないでしょうか。

 その中で、今いろいろな調査を政府の方でもしていただいておりますが、実際にどれぐらいの家庭で犬、猫が飼われているかというと、三四・四%という数字が出てきております。大体三軒のうちの一軒に犬または猫がいるということになります。飼われているペットの中でやはり一番多いのは犬で、五八・六%、猫が約三〇%、そして魚類が二〇%で、最近では、男性が魚を飼う率が上がってきているというような世論調査結果も出てきています。

 昨年、私の地元小田原で動物フェスティバル神奈川二〇一四、西湘地区でということで行われました。これは、行政と、それから公益社団法人神奈川県獣医師会、公益財団法人神奈川県動物愛護協会、小田原獣医師会の主催で行われたものです。講演会のほか、盲導犬や聴導犬のデモンストレーション、さらには愛犬のしつけ教室、そして、長寿動物の表彰式というものが行われました。

 この開催日は大変な大雨だったんですけれども、飼い主の皆さんは、自分たちが大切に育てている犬、猫が御長寿であることが表彰されるというので、もう必ず参加しなければという熱気がそこにはあふれておりまして、飼い主の方が喜んでいらっしゃる姿というのがとても印象的でありました。

 今、犬も猫も長生きする時代になってきております。調査結果の中で専門家の方の分析、犬の平均寿命十二歳と言う方がいらっしゃいます。十二年前に比べて三歳延びています。猫に関しては、平均十歳、これも十二年前よりも五歳延びていると言われています。また、別の研究で、一般社団法人ペットフード協会は、犬の平均寿命は十四・二歳、猫は十五歳とも言われています。

 昔に比べて犬も猫も長生きするようになったということは、飼い主の方も、自分の飼っている動物と過ごす時間が長くなって喜びもありますが、同時に、動物の最期までみとっていかなければならないという、私たちの新たな課題がここに見えてきているように思います。

 飼い主が動物の長寿とともに最後まで一緒に暮らしていくんだという考えについて、大臣の方からお考えをお聞かせいただきたいと思います。

望月国務大臣 先生の御指摘、大変大切なことだと思っております。

 そもそも、昭和四十八年に動物愛護法がまずできましたけれども、動物の所有者は、動物の愛護及び管理に関する責任を十分に自覚して、適正に飼養することが必要であるということがまず第一に書かれております。

 それから何回か法改正されたわけでございますが、平成二十四年度の動物愛護管理法の改正によりまして、終生飼養、要するに長生きを動物も、人もそうですけれども、そういう時代になってまいりまして、すなわち、動物がその命を終えるまでしっかり飼育をするということが飼い主の基本的な責任である、これを今回明確にされたわけでございます。これは、私たち人と同じように全ての動物には命があることに鑑み、基本的な飼い主の守るべき責務として明確にしたものでございます。

 環境省としても、今先生の御指摘のように、これは大変大事なことであるということ、重要であるということを認識しております。

 それから、環境省におきましては、終生飼養等飼い主責任について、ホームページやパンフレット、多分先生も見ていただいておると思いますけれども、さまざまな方法を通して一般の国民の皆さんに、三軒に一軒は、犬、猫、あるいは何かしら命を預かっているということでございますので、そういったことに関して、よりその大切さというものを、パンフレット等を活用して広く普及活動をしてきたところでありますけれども、引き続きやはり、大切でございますので、自治体と連携して飼い主責任の徹底に努めてまいりたい、このように思います。

牧島分科員 大臣、ありがとうございます。

 命を預かっているというお言葉、本当に重たいと思います。ペットを飼うことにするときに、やはりお子さんの情操教育のためにと考えられる親御さんも多いですから、そういう観点も必要だと思います。

 また、動物の介護ということも昨今では話題になっておりますし、それも覚悟した上で最後まで動物と一緒に過ごす、その動物が長生きする分、自分はそのとき何歳になっているだろうかということもイメージしながら、飼い主さんはその動物とのつき合いを始めていかなければならないということだと思います。

 この観点に立っても、やはり、動物を虐待するとか遺棄するとかというのは本当にもってのほかなのでありますが、飼い主の皆さんに守っていただきたい七カ条、今大臣がおっしゃったとおりに、環境省さんが出されているところには、むやみに繁殖させてはならないということも書かれています。一頭一頭大切に、愛情を込めて適正に飼育をするという観点でいえば、不妊とか去勢の手術もしていかなければならないのではないかというふうに考えますが、一方でどれぐらい不妊去勢手術が進んでいるかということをちょっと調べてみました。

 調査によりますと、犬を飼っている中で、去勢手術をしていないという方は六〇%を超えています。猫に関しても、手術をしていないというのが二二%になっています。自然のままがいいと思うからとおっしゃる飼い主さんや、また、猫の場合は一八・五%の割合で、手術費用が高いからという回答が出てきています。動物との一対一のつき合い方、また、愛情の注ぎ方の上ではむやみに繁殖してはならない、そのためには不妊去勢手術もしなければならない、だけれども、費用が高いからできないという飼い主さんの声もある。

 では、助成金というのはどれぐらい進んでいるかというと、神奈川県の例をとってみても、犬、猫ともに不妊も去勢の手術も助成金を出しているという市は三つしかありません。秦野市と横須賀市と相模原市しかありません。なかなか市における助成金の制度も進んでいないようです。

 この点、環境省としてのお考えをお聞かせください。

北村副大臣 お答えをいたします。

 動物の飼い主が動物がみだりに繁殖をして適正に飼養することが困難にならないよう不妊、去勢の措置などをすることは、飼い主責任としてとても重要であるというふうに考えております。

 環境省においては、不妊去勢手術に係る助成金の制度は、制度としてはありませんが、不妊、去勢の必要性に関するパンフレット等の自治体への配付等により、普及啓発を進めてきたところでございます。

 また、自治体が引き取った犬、猫等の収容や譲渡のため、不妊や去勢などを行う手術室等を備えた施設を整備する場合も、補助金等を出して支援をしているところでございます。

 環境省としては、こうした取り組みを通じて、引き続き自治体を支援していきたいというふうに考えているところでございます。

牧島分科員 ありがとうございます。施設整備も進めていただいておりますし、各自治体においての判断もありますが、環境省さんにはさらなるバックアップを進めていただきたいと思います。

 今お話しありましたとおり、法律によって、愛護動物をみだりに殺したり、または傷つけたりした者には二年以下の懲役または二百万円以下の罰金、動物を遺棄した者には百万円以下の罰金というものが課せられています。

 こうした厳しい罰則があるという一方で、実は、全国では殺処分がまだゼロになっていません。数は少なくなっているものの、平成二十五年、十二万八千頭が、犬、猫、大変残念なことに、殺処分によって命を失われてしまっています。まだまだやらなければならないことがあるというふうに考えております。

 環境省による人と動物が幸せに暮らす社会の実現プロジェクトで示されたとおり、無責任な飼い主による飼育放棄、迷子の犬、猫、所有者がいない犬、猫など、自治体の動物愛護センターや保健所に引き取られる犬や猫の数は年間二十一万頭、そのうち、残念ながら八割が殺処分というのが現実です。

 殺処分ゼロに向けて、各自治体やまたモデル事業も出てきています。神奈川県では殺処分ゼロを達成いたしました。これは喜ばしいことと多くの方に御評価いただき、環境省のホームページなどでも御紹介いただいております。

 しかし、この殺処分ゼロの背景には、本当に多くのボランティアの方たちの涙ぐましい御努力があって実現しているのも事実です。センターに犬、猫の引き取りの連絡がある、そうすると、ボランティアの方がそこに行って、そして犬、猫をそこから救出して、預かりボランティアとしてみずからが餌を上げ、場合によってはおむつをしてあげて、里親さんを探してマッチングをしてということをしていただいて殺処分ゼロを実現しています。

 このセンターにいる例えば犬の場合であったら、高齢であるとか病気を持っている、さらには、凶暴性などによって大変里親を見つけるのが難しいと思われる犬の場合でも、ボランティアさんが引き取ってくださっています。

 こうしたボランティアの方たちの活動について、環境省としてはどのように評価をしていただいているでしょうか。

北村副大臣 殺処分数を減らしていくことは極めて重要であり、大切なことだと考えております。自治体で引き取った犬、猫について、飼い主への返還あるいは新たな飼い主への譲渡を進めていくことが大変大事だと考えております。

 返還や譲渡を進めるためには、ボランティア団体の皆様には、動物愛護センター等における譲渡活動について日ごろからさまざまな御協力をいただいているところでありまして、心より感謝を申し上げているところでございます。

 環境省では、譲渡を円滑に進めるための自治体職員向け講習会の開催や、自治体が整備する動物収容譲渡施設の整備、改修に対する補助等を行っているところでありまして、自治体とボランティア団体等の連携により、さらに譲渡が進むよう支援をしていく考えでございます。

牧島分科員 自治体とボランティアの方たちの共同作業の部分も大事だと思いますので、ぜひ、引き続きお進めいただきたいと思います。

 殺処分ゼロに向けて、法律によって、犬、猫の生後五十六日以内の販売の禁止や販売時の現物の確認、さらには対面販売の義務化というものが決められました。

 同時に、さらに、所有者を明確にすることというのもこの法律の精神の中に入っています。これは、飼い主さんが責任を持って最後までその犬、猫、自分自身とのつながりを、誰が所有者であるかがほかの人にもわかるようにする、または、センターに保護されたときに所有者さんに戻すことができるという意味でも大事ですし、どこからその犬、猫がやってきたのかということがわかるためにも大事なことだと思います。ただ、こちらもまだ十分に進んでいるとは言えません。

 この所有者の明示は、その所有者さんの、飼い主さんの名前とか住所などを記録していただく方法で、首輪や名札や、さらにはマイクロチップなどが考えられています。しかし、全ての犬に対して、どのように明示していますか、明示していませんかという質問をしたところ、明示していないといった方がまだ六四%います。猫に関しては八〇%が明示していないという現実です。

 明示の方法も示されています。首輪だったら、明示している人たちは、七割の人はその方法を使っていますし、さらには、名札が三割、マイクロチップも一割と方法も明確になっている。精神もその法律の中に書かれている。だけれども、まだ所有者明示が進んでいない。理由として、明示する必要がないと考えている所有者さん、飼い主さんがいること、また、面倒だからとか動物が嫌がるから、かわいそうだからという回答もありました。

 そこで、動物適正飼養推進・基盤強化事業の中でマイクロチップという手法が義務化できるかどうかというのをもう少し踏み込んで調査をしていただきたいと思っておりますが、いかがでしょうか。

小川政府参考人 マイクロチップに関する御質問でございます。

 平成二十四年に改正されました動物愛護管理法の附則の第十四条第一項でございますけれども、ここにおきまして、販売の用に供せられる犬、猫等にマイクロチップを装着することを義務づけることに向けて必要な施策を講ずるものとされております。

 また、同条の第二項では、この講じた施策の結果やマイクロチップの装着率の状況等を勘案し、施行後五年を目途として、装着を義務づけることに向けて検討を加え、その結果に基づき、必要な措置を講ずることとされております。

 このため、環境省におきましては、現在、マイクロチップの装着を呼びかける普及啓発を行うとともに、マイクロチップを読み取るマイクロチップリーダーの配備状況に関する調査などを行っております。このようなことで、現在、義務づけを検討するために必要な施策を進めているところでございます。

牧島分科員 ありがとうございます。

 チラシも拝見いたしました。もっと多くの飼い主さんや、また、獣医師の先生方など御関係者の方にも御協力をいただく必要があるかと思いますし、ポスターの掲示なども、飼い主さんがよく見られる場所に示していただくことが普及につながるのではないかと思います。

 また、マイクロチップのリーダーのことも、今御指摘をいただきましたとおり、しっかりと読み取ってそれぞれの飼い主さんのところに戻ることができるような犬、猫のマイクロチップシステム、さらに強化をしていくことが望ましいのではないかと考えております。

 この改正動物愛護法でペットのインターネット販売が禁止され、また、処分のための自治体への持ち込みも規制されました。

 法律が施行されて一年間、何が起きたかというと、複数の県で多数の子犬が死骸の状況で発見されたという大変痛ましい事件が起きました。残念なことに、これは、悪徳ブリーダーと考えられる人たちによる動物の遺棄、放置と思われます。これは何としても食いとめていかなければならない。

 この背景には、パピーミルと呼ばれる子犬工場、ここでは犬が機械的に交配、繁殖させられています。劣悪な環境、また、決してきれいとは言えないような状況の中で犬がただただ数をふやさせられているという現実があるという指摘が出てきています。こういうことをしていると、動物たちは精神もむしばまれてしまうし、また、遺伝性の疾患の要因にもなります。これを何としてとめていくのか。

 海外の事例、イギリスでは、雌の出産回数に制限が設けられています。六回を超えて出産させてはならない。また、雌犬は一歳に達するまでは繁殖させてはいけない。また、一回出産したら一年あけてからじゃないと次の出産はさせてはならないというふうに、ちゃんと明確にルールが決められています。

 さらに、アメリカでも、バージニア州では、商業ブリーダーが所有できる犬の頭数は五十頭までというふうに制限がかけられていて、十八カ月以上八歳以下の雌犬だけが繁殖するということになっています。

 こうした諸外国の事例を考えたときに、日本はどのような取り組みをすべきだと現状お考えでしょうか。

小川政府参考人 繁殖業における繁殖制限に関する措置でございますけれども、動物愛護管理法に基づく告示におきまして、みだりに繁殖させることにより母体に過度な負担がかかることを避けるため、その業者の持ちます飼養施設の構造や規模、また職員数を踏まえて、繁殖回数を適切なものとして、そのため、必要に応じて繁殖を制限するための措置を講ずる、こういうふうに示されているところでございます。

 この繁殖制限の問題につきましては、平成二十三年に報告書をまとめました動物愛護管理のあり方検討小委員会がございますけれども、この中で、外国の規制を参考にして、繁殖回数や繁殖間隔について規制を導入すべきとの意見がございましたけれども、一方では、品種の違い等によって適切な繁殖の時期や頻度が異なるために、一律の規制というものは困難であるという意見も示されております。

 そこで、環境省といたしましては、引き続き、この検討会等の御意見も踏まえまして、繁殖制限のあり方というものについて検討してまいりたいというふうに考えております。

牧島分科員 確かに、一律は難しいという御答弁ではありましたが、概念ではなくて、より具体的に制限が設けられるということが私は大事だと思っておりますので、引き続き、専門家の方々の御意見も踏まえて御検討を進めていただきたいと思います。

 もちろん、優良なブリーダーの方たちもいらっしゃいます。しかし、本当に悪質で悪徳なブリーダーが存在しているのではないかという御指摘があるのもまた事実でありまして、そうしたところに対しては、勧告とか命令、罰金、罰則、さらには営業停止といったようなところまで踏み込まなければならないこともあると思います。

 こうしたプロセス、年間どれぐらい出ているのでしょうか。立入検査の効果というもののあり方について御意見をぜひお聞かせいただきたいと思います。

小川政府参考人 動物愛護管理法におきましては、ペットショップや繁殖業等の第一種動物取扱業者につきまして、基準を遵守していない業者に対しましては、都道府県知事等が期限を定めて改善すべきということを勧告することができるという定めになっております。この勧告件数につきましては、平成二十五年度では全国で三十八件でございます。

 それから、勧告を受けた者がその勧告に従わない場合には、都道府県知事等は、勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができるという規定がございます。これに従いまして平成二十五年度で命令を行った件数は二件でございます。

 さらに、動物取扱業者がこの命令に違反したときなどにつきましては、都道府県知事等が登録を取り消したり、または業務の停止を命ずることができるとされております。この取り消しや業務停止命令につきましては、二十五年度においては該当するものがございませんでした。

 一方、立入検査でございますけれども、平成二十五年度に都道府県等が動物愛護管理法に基づいて立入検査を行ったという施設数でございますが、これが一万五千七百九十九件ございます。このうち、さらに指導を行ったという施設数が三千五百八十五件でございます。

 都道府県等におきましては、まず立入検査を行って、立入検査において問題を発見した場合には、次に指導を行う、それで指導に応じない場合には、法に基づく改善に係る勧告や命令を行うという順番での対応をしているところでございます。

 したがって、前段の立入検査と指導ということによりまして業者の改善にかなりの効果を上げているというふうに考えております。

牧島分科員 私たちの願いとしては、もちろん、悪徳のブリーダーであったり改善しなければならない環境が改善されることでありますので、そのプロセスの中でまず立入検査をして、指導しなければならないものが指導されて、それによってしっかりと状況がよくなっていっているということを期待しています。

 ただ、そうなっていないのであれば、現状、勧告の数、全国で三十八件というのは、聞いたところでは随分少ないかな、一般的に皆さんが心配されている実情と数字がちょっとマッチングしていないかなという印象を持たれる方もいらっしゃると思うので、そういうことがないように、本当に状況が悪ければ最終的には取り消し、営業停止なんだということをやはり業者の方も意識をして、しっかりとした運営を、業をなしていただくように御指導いただきたいと思います。

 ドイツに住んでいる日本人の友人が犬を飼うことにしたときの話であります。

 ドイツは、御承知のとおり、ティアハイムという保護施設から犬を、その飼い主さんとの相性も考えながら、何度も通って選ばれて、その御家庭にやってくるというプロセスになっています。

 飼い主になるときには飼養環境などの審査があります。この日本人の友人もドイツに住んでいますので、家の中もチェックされたと言っていました。そこで、割といいと思われていた餌を選んでいたんですが、指導に来られた方が、もっとオーガニックな餌にしなければなりませんというふうにアドバイスをされたと言っています。さらに、お散歩に関しても、一日二回、一時間ずつお散歩をしていたんですけれども、そうではなくて、十五分ずつ五回、お散歩をするようにというような指導が入ったと言うんです。

 これは、二〇〇一年にドイツでつくられました、動物保護、犬に関する命令、犬命令とかと呼ばれる法律に基づいてのアドバイスだと考えられます。

 ここでは、屋外での十分な運動、飼育者との十分な接触というものが犬にとっては大事なんですということがこの法律の中にしっかり書かれている。しかも、屋外飼育の場合は、雨風をしのげる小屋と、小屋の外に、日陰になる、断熱された寝床を用意しなければなりません。また、屋内飼育の場合は、自然採光と新鮮な空気を確保してくださいということが書いてあります。

 犬命令はさらに、商業的に繁殖する者は、犬十頭とその子犬につき管理者一名をちゃんと配置する、おり飼育の場合は、おりの各辺の長さは体高の二倍以上として二メーターを下回らない、おりの最小面積は、体高五十センチメートル未満で六平方メートル、五十から六十五センチメートルの場合は八平方メートル、六十五センチ以上であれば十平方メートルと、しっかりと数値で決まっています。

 ブリーダー一名当たり一体何頭を飼育することができるかという飼育頭数の制限、または、おりで飼育する場合はこれだけの面積やこれだけの広さはちゃんと確保されなければならない、ちっちゃいおりにぎゅうぎゅうに犬を押し込めてしまうようなことがあってはならない、または、一人のブリーダーが何十頭もの犬や猫を見ているというような状況はだめなんだというような数値目標を入れるということは、日本ではどのように考えられているのでしょうか。

小川政府参考人 動物の繁殖業の飼養施設についての御質問でございますけれども、数値としての基準は定められておりませんけれども、動物愛護管理法に基づく告示におきまして、個々の動物が自然な姿勢で立ち上がるとか横たわる等の日常的な動作を容易に行うための十分な広さ及び空間を有するものといった基準が定められておるところでございます。

 この飼養頭数ですとか、あるいは飼養環境の問題につきましては、先ほども申し上げました動物愛護管理のあり方検討小委員会の中で、科学的根拠に基づく数値基準など、現状よりも細かい規制について、専門的な知識を持つ有識者による議論をすべきという意見が示されておるところでございます。

 このため環境省におきましては、動物の繁殖規制に関します海外の制度の調査や日本の繁殖業の実態調査を行っているところでございます。

 小委員会での御指摘等も踏まえまして、この調査結果を用いて、適正な飼養環境の基準について、数値化ということの必要性も含めまして検討してまいりたいというふうに考えております。

牧島分科員 ありがとうございます。

 数値化についても検討ということで御答弁いただいたのは、本当に前向きな、一歩進んだお話になったかと思います。細かい基準、これから示されることを御期待申し上げたいと思います。

 いろいろな事例を御紹介させていただきながら議論をさせていただきましたが、現在、日本では毎日二千六百頭の犬、猫が販売されています。そのうち三百三十頭が殺処分でこの世から去ってしまっているというこのアンバランス、やはりどこかで調整をしていかなければならないと思っています。

 動物たちには、私たちの生活の中でもたらしてくれるいろいろな癒やしがあります。さらにこれが、アニマルセラピー、セラピードッグというような言葉にもつながっています。

 高齢者の方とか障害を持っている方、または病気の方などに寄り添うことができるセラピードッグたちの活躍も期待されているところです。病気の方、またはリウマチの方、ちょっと曲がってしまっているところをぺろぺろと犬がなめてくれたり、また、つえをついている方でも車椅子の方でもセラピードッグは、寄り添いながら、その歩みのスピードとともに一緒に歩いてくれるということもしてくれます。

 このセラピードッグたちの中には、実は、東日本大震災で飼い主とはぐれてしまったいわゆる被災犬がボランティアの方たちによって救出されて、セラピードッグとして訓練を受けて、そしてまた東北に行って、被災をされている方たちとともに時間を過ごすという役割を担うようになった犬もいました。

 犬、猫、動物たちがそれぞれの個性を生かした社会であってほしいと願っています。殺処分ゼロの先に、また、私たちが犬、猫、動物と人間がともに共生する社会を目指してさらなる議論を具体的に進めていきたいという願いを込めて質問をさせていただきました。

 以上で終わります。ありがとうございました。

石原主査 これにて牧島かれん君の質疑は終了いたしました。

 次に、菊田真紀子君。

菊田分科員 民主党の菊田真紀子でございます。

 きょうは、大臣、副大臣、朝から大変御苦労さまでございます。

 きょうは、被災地における除染について質問させていただきたいと存じます。

 もちろん、この除染作業というのは本当に大変な作業でございまして、現場の作業員はもちろんでありますけれども、環境省、そしてまた市町村、自治体挙げてのお取り組みということで、本当に敬意を申し上げたいというふうに思います。

 私は新潟県でありますけれども、被災地から新潟県内に避難をされている方々、そして、本年四月以降も新潟県内に住むとおっしゃっている方々が約三千人おられます。まだ帰還のめどもなかなか立たないという現状でありますし、そしてまた精神的な苦痛なども抱えながら、ふるさとのことを大変心配いたしているところでございます。

 それでは、早速ですが、質問に入らせていただきます。

 昨年の五月、放射性物質汚染対処特措法、この違反の容疑で最初の逮捕者が出ました。国が直轄して除染をする福島県田村市で、除去した土壌を別の民家の敷地内に埋設したというものでありますが、この事案について環境省の見解をお伺いいたします。

三好政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘の田村市の除染に係る事件でございますけれども、昨年の五月に環境省の不適正除染一一〇番に通報がございました事案でございまして、福島県警が捜査を進めまして事実を特定したということで、ことしの二月に逮捕に至ったというふうに認識をいたしております。

 環境省では、事実を確認後、昨年の五月二十六日付でこの事案の概要と対応状況を公表いたしました。先生、先ほど国の直轄というふうにおっしゃられましたけれども、この事案につきましては、田村市の、市町村除染の事案でございます。田村市を初めといたします各市町村に、除去土壌の適切な管理等の徹底を文書で要請したところでございます。

 特措法違反ということで逮捕がありましたのは初めてでございまして、大変残念な事態であるというふうに考えております。関係機関とも連携いたしまして、再発の防止と法令の遵守の徹底に努めていきたいというふうに考えているところでございます。

菊田分科員 除染については、これまでもこの国会において問題点がさまざま指摘をされてまいりました。

 田村市は市町村が除染をする汚染重点調査地域ということでありますけれども、予算は国が十分の十措置をいたしているわけでございます。逮捕者が出たということは、大変深刻であるというふうに私は受けとめております。

 先月も、南相馬市の小高地区で、国の直轄除染で出た廃棄物が現場に不法投棄された可能性が高いと、環境省福島環境再生事務所が発表しました。特措法違反の疑いがあるとの報道がありますが、事実関係についてお聞かせください。

三好政府参考人 お答え申し上げます。

 先月の二十五日に、南相馬市で除染工事を行っている元請業者から、除染作業員から除染作業で発生した可燃物を土のう袋に入れないまま穴を掘って埋めたという報告を受けたと情報が入ったところでございます。

 情報に基づきまして福島の環境再生事務所の方で掘り起こして確認をいたしましたところ、倒木やツタ、枝等が埋設されていることが確認されたところでございます。

 これらの全量、あるいは埋設されたものがどういうものであるのか、あるいはその経緯につきましては引き続き確認が必要であるというふうに考えているところでございますけれども、環境省といたしましては、直ちに受注者に対しまして、関係業者からの聞き取りによる原因究明、施工状況の再確認、それらを踏まえた再発防止に関する対応を指示したところでございます。

 また、昨日九日から警察の方で現場の検証が始まったというふうに承知をいたしているところでございます。

菊田分科員 昨日から現場の検証が始まったということでありますので、これは、全容がわかり次第、国会でもしっかりと説明責任を果たしていただきたいというふうに思います。

 事は、人命そして安全にかかわることであります。除染に対する住民の不信感が増幅されるようなことがあってはならないというふうに考えますが、違法行為は、不適正除染に関する通報件数の推移を見ますと、全体的には確かに減ってきております。減ってきているから改善されているということなのでそれでよいという認識なのか、それとも、これは絶対にあってはならない、根絶せねばならないという認識なのか、これは、せっかくの機会でありますので、大臣にお答えいただければというふうに思います。

望月国務大臣 除染作業につきましては、今御指摘がございましたように、一部、不適正な事業が実施された事案があった、不正にですね、このことについては、まことに遺憾だと思っております。

 そういったことを考えると、これは、もちろんこういったものを減らしていくというのは当たり前のことであって、根絶をしなくてはいけない、そういうつもりで我々もさまざま指導あるいはまた除染適正化プログラムを作成して、そういった取り組みをしております。

 少なくなればいいということではなくて、最終的にはもちろんそういったことがあってはいけない、こういうつもりで取り組んでいきたい、このように思います。

菊田分科員 大臣、ありがとうございました。

 不適正除染に関する通報件数の推移を見ますと、直轄事業ということに関する通報は確かに減ってきておりますけれども、非直轄事業については相変わらず通報が続いている、こういう現状でありますので、しっかりと環境省としてもチェックをしていただきたい、監視をしていただきたいというふうに思っております。

 昨年の田村市の案件でありますが、作業員本人から不適正除染一一〇番に情報が寄せられたと先ほど御説明がございました。今回の南相馬市の事案でも、現場の作業員みずからが元請に申告をしたというふうに聞いておりますが、これはなぜだと思いますか。

三好政府参考人 お答え申し上げます。

 田村市の事案につきましては、先生御指摘のとおり、通報者みずからがかかわった不適正除染の実態を申告するために、先ほど申し上げました不適正除染一一〇番に通報されたものでございます。

 なぜということにつきまして、明確なお答えはなかなかしにくいところでございますけれども、さまざまな労働条件の不服の御相談という過程の一環の中で、みずからの作業の内容につきましても通報いただいたものというふうに考えているところでございます。

 なお、南相馬市の案件につきましても、御指摘のとおり、当事者である本人が通報を行ってきたものでございますけれども、これは、元請の事業者に対して、相談という形で連絡があったということでございます。

 先ほど申し上げましたとおり、現在、警察の方の調べも進んでおりますけれども、理由も含めて事実を確認中であるというのが現在のところでございます。

菊田分科員 私は、現場の作業員にすれば、自分たちに責任が押しつけられるのではないか、上の会社あるいは上の人間は責任をとらないで逃げてしまうのではないか、そういう不信感があって、みずから告発するというのは大変なことだと思いますけれども、あえて告発しているのではないかというふうに推測をいたしております。

 それから、これは本当に巨額の国民の税金を使った事業です。こういう国税を使った事業なのに不正が行われる、ゼネコンだけが潤っているのではないかというような義憤も背景にはあるのではないかなと思いますが、さまざま分析をしていく必要があるだろうというふうに思います。

 大臣、副大臣、政務官は、この南相馬市の事案についてはいつお知りになったでしょうか。

望月国務大臣 ただいま御指摘のございました、南相馬市小高地区の除染現場近くで木の枝などが埋められていた件でございますけれども、これは、除染工事の受注者から環境省に情報が入った二月二十五日の日に、私を初めとする政務三役は報告を受けております。

 その報告を受けまして、事実関係をしっかり把握するように事務方に指示をさせていただきました。

菊田分科員 ありがとうございました。副大臣も多分一緒ですよね。(北村副大臣「はい」と呼ぶ)

 これは、二十五日に、もう夜ですね、既にNHKで報道されました。翌日二十六日には新聞等々で報道をされています。

 そこでお伺いしますけれども、福島環境再生事務所はいつ把握をされたでしょうか。

三好政府参考人 お答え申し上げます。

 福島環境再生事務所には、同日の十二時三十分にまず支所の方に報告がございまして、本所には十三時五分に連絡があったということでございます。

 それから、そもそも通告者の方が先ほど申し上げました元請の事業者に訪問されて連絡されたのは、同日の午前中というふうに承知をいたしております。

菊田分科員 ありがとうございました。

 抜き打ち的検査というのは実施されていたんでしょうか。

三好政府参考人 先生御指摘の抜き打ち的検査といいますのは、除染適正化プログラムにおいて位置づけられているものでございます。これにつきましては、高圧洗浄等の外形的に工程管理ができない部分につきまして、除染が適切に実施されているかどうかということを抜き打ち的に検査をするために行っているものでございます。

 南相馬市の事業につきましても、この抜き打ち検査を行っている場所はございます。

 先生の御指摘が、不法に埋設された場所について抜き打ち検査を行っているかどうかということでございますと、先ほど申し上げましたとおり、これは外形的に工程が管理できない部分についてのものでございますので、いわゆる我々の整理で抜き打ち的検査ということは実施はしておりませんけれども、監督職員等による巡視でございますとか完了検査等は行っているところでございます。

菊田分科員 私は、抜き打ち的検査をもう少し丁寧に広範に行っていく必要があるのではないか、今後の課題としてぜひ御検討いただきたいというふうに思います。

 私、こういう現場の作業を担った方々にお話を聞いたことがございますけれども、一部で、抜き打ち的検査といっても、朝礼をまず朝やる、作業員が集められた中で、きょうは検査があるので、しっかりヘルメットをかぶったり、しっかり安全確認をやってくださいということが朝礼で事前に周知されるというようなお話を聞いております。そうすると、実際には抜き打ち検査になっていないんですね。

 こういうことも含めて、本当に緊張感のある作業がしっかりと行われる必要があるというふうに思いますので、まず、この抜き打ち的検査、私が聞いてきたような話を聞いていませんか。事実関係はどうですか。

三好政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども、そのような形で抜き打ち的検査が行われているという実態は承知をいたしておりません。先生御指摘でございますので、しっかりと確認をしたいというふうに思っております。

菊田分科員 ぜひよろしくお願いします。

 除染適正化推進委員会は、直近ではいつ会議が開かれたんでしょうか。

三好政府参考人 除染適正化推進委員会につきましては、これまで三回開催をいたしておりまして、直近の第三回は平成二十五年十一月十八日でございます。

 これは、それまでに、除染適正化に関する取り組み、先ほど申し上げました適正化プログラムをつくりまして、それへの対応状況等も御報告をさせていただいたということでございまして、第三回の会議では、不適正な事例が横行している状況とは考えられないが、一部であっても指摘については信頼を損なうことを踏まえ、通報にあらわれないことをもってよしとするのではなく、教育、手順の徹底や地元とのコミュニケーション等幅広い取り組みを継続していくことが必要等の御指摘をいただいたところでございます。

 そういう御指摘も踏まえまして、三カ月に一度、不適正除染一一〇番を初めとする不適正除染に関する通報の概要と対応につきましては、情報を公開するということで取り組みを進めてきているところでございます。

菊田分科員 まさしく今おっしゃったとおりなんですね。通報にあらわれないことをもってよしとするのではなくて、これは、継続的にしっかりと適正に行われているかどうかということを確認していく必要があるわけでありますが、この会議はどういうときに開かれるんですか。

 昨年五月にその逮捕案件がありました。そして、ことし二月にも、まだ全容はわかりませんけれども、そういう疑いが表に出てきているということでありますので、私は直近で開かれる必要があるというふうに考えますが、いかがでしょうか。

三好政府参考人 この委員会自身は、ある程度一定の仕組みを確認いただきまして、あとは機動的に開催するということで申し合わせをいただいているところでございます。

 先生御指摘のとおり、今回、直轄除染におきましても不適正な除染があったわけでございますので、その全容を解明した上で、また新たな対応等を検討していく必要もございますし、その過程で、必要に応じてこの検討委員会も開催をさせていただく必要があるのではないかというふうに考えているところでございます。

菊田分科員 ぜひよろしくお願いします。

 南相馬市の事案に関しまして、元請のJVに幾らで発注されたんでしょうか。そしてもう一つ、この企業体の中には、過去に問題が指摘され、環境省から改善指示が出されるなど行政処分を受けた企業はありますか。

三好政府参考人 この事業の元請の共同事業体には、三百二十四億八千六百四十万円で発注をしているところでございます。

 現在までのところ、同企業体において、過去に行政処分を行ったという事実はございません。

菊田分科員 なぜ不適正な除染というのがなくならないのかということを改めて考えるわけでありますけれども、昨年の田村市での事案、先月の南相馬市での事案、いずれも現場作業員が情報を提供したわけですけれども、もし現場の作業員が情報を提供しなかったら、不法投棄といいますか不適正な除染というのはもしかしたら現在も明るみに出なかったかもしれません。

 表に出てくる不適正除染、不法投棄、違法行為というのはごくわずかで、実態はもっと深刻なのではないか、氷山の一角なのではないかという問題意識を私は持っておりますけれども、この点について見解をお聞かせください。

望月国務大臣 この除染作業、これはまさに福島の復興には大変大切なものでございまして、一部不適正に事業が実施された事案があったことについては、まことにこれは遺憾に感じております。こういうことがあってはいけないということでございます。

 政府といたしましては、一昨年一月の不適正事案の報道を受けて、先ほどからお話しございましたように、除染適正化プログラムを策定、同プログラムに基づくさまざまな取り組みを進めてまいりました。

 この内容を若干ですがお話しさせていただきますと、元請業者に再発防止を徹底的にさせるということ、あるいは監督体制を強化させるということ、あるいはまた、先ほどからの不適正除染一一〇番の新設、こういうものが前にはなかったものですから、こういうものによって細かいものがわかってきたということでございまして、そういったものをしっかりとどんな小さなことでも受け付けてやっていく、それからまた、通報から現地調査、対応策までの一元管理、どこかで消えてしまうだとか弱い者が上に声を出したらというようなことのないように、一元化でしっかりとこれを調査していく等でございます。

 その結果、当初の調査では数件の不適正事案が認められましたが、このプログラムの策定以後は、現在調査中の南相馬の事案を除き、田村市の事案の一件のみと承知をしております。

 先ほどから申し上げましたように、これはゼロにならなければ、あるいはまた氷山の一角ではないかというようなことであっては決していけないと思いますので、これをよりしっかりと、先ほど先生がおっしゃったように、緊張感を持ってやるようにということでございますので、現場にしっかりと我々も指示をしていきたい、このように思います。

 引き続き、不適正除染の根絶、これなくしては福島の皆さんとの信頼関係は成立しませんので、こういった形の中でしっかりと進めていきたい、このように思います。

菊田分科員 大臣から、根絶を目指すんだという力強い御答弁をいただきました。大変ありがとうございます。ぜひよろしくお願いいたします。

 私、今回いろいろ調べてみて、構造的な問題というか、ちょっといろいろ気づくことがあったんですけれども、元請から現場に至るまで数次にわたる多重請負構造になっています。それから、上司の指示に従っただけなのに、何か問題があると現場の作業員が責任をとらされるというようなお話も伺っております。

 現場の作業を担う人手が不足をしていて、県外からの出稼ぎ作業員が多い。表向きは一次下請や二次下請会社の従業員という形で作業しているケースも見られる。それから、作業員は除染作業の知見や経験がない人も少なくない。ましてや、何をやったら違法なのか、何をやったらだめなのか、特措法についても理解をしていない。さらに、短期間の雇用のために十分な意思疎通が図られていない。安全管理が行き届いていない。こういう問題点が見えてまいりました。

 こういった構造的な問題点を解決しないと、なかなかこういうことが根絶されないんじゃないかというふうにも思っております。

 これまで除染に執行された国の予算は幾らあったのか、お聞かせをいただきたいと思います。

三好政府参考人 お答え申し上げます。

 放射性物質汚染対処特措法に基づいて実施する除染に関する経費といたしまして、環境省でこれまで計上してまいりました予算の総額は一兆四千八十一億円でございます。

菊田分科員 一兆四千億円を超える大変巨額な国家予算であります。国民の皆さんの税金でもあります。先ほども申し上げましたように、こういう巨額の税金を使った事業なのに不適正なことが行われないように、しっかりと監視をしていただきたいというふうに思います。

 きょうは厚生労働省にも来ていただいておりますけれども、福島県労働局が三月五日に発表した除染事業者に対する監督指導結果に関しまして、平成二十六年七月から十二月までの間で労働基準関係法令の違反があった事業者は五百八十八事業者、違反率は七〇・一%と、相変わらず高どまりをしております。労働条件の明示がしっかりとなされていないとか、それから定期賃金の支払いに問題があるとか、割り増し賃金の支払いに問題があるとか、さまざま労働関係の違反等々が報告をされているわけであります。また、安全衛生関係違反も依然として横行している、こういうふうに発表されております。とりわけ市町村発注の事業の違反率が非常に高いということが懸念をされます。

 なぜこんなにトラブルが多いんでしょうか。これは、過去もずっと調べてみますと、平成二十五年の一月から六月まで、上半期で違反率が六八%、平成二十五年の下半期、違反率は六七・六%、そして平成二十六年上半期は五九・四%、今回が七〇%を超えるということで、非常にトラブルが多い。一向に改善されない。このことについて、まず厚労省に答弁を求めた上で、環境省としての見解も求めたいと思います。

大西政府参考人 委員御指摘の福島労働局が監督指導した結果でございますが、平成二十六年の七月から十二月までの間に、除染事業者に対して、八百三十九事業所、監督いたしました。労働基準関係法令違反につきましては、委員御指摘のとおり、五百八十八事業所、違反率は七〇・一%でございました。

 私どもといたしましては、除染業務に従事する労働者の労働条件や安全衛生の確保を図るため、除染電離則を初め、労働基準関係法令違反が疑われる除染事業者に対して重点的な監督指導を実施していることもございましてこういった違反率が高くなっているのではないかということもございますが、除染等作業に従事する労働者の安全と健康、あるいは法定労働条件の確保につきましては、大変重要な課題というぐあいに認識しておるところでございます。

 福島労働局におきましては、引き続き、除染事業者に対する監督指導を行い、こういった除染電離則に基づく適正な線量管理など、労働基準関係法令の遵守を徹底してまいりたいと考えております。

 また、法令を十分御存じでないという場合もあろうかと存じますので、法令の周知を徹底するため、環境省や各市町村等の発注機関に対して要請を行ってまいりたいというぐあいに考えております。

三好政府参考人 お答え申し上げます。

 違反率ということにつきましては今厚生労働省の方からお答えしたとおりでございますけれども、この趣旨は、先ほども御答弁ございましたが、除染事業者の是正を図ることを目的として、通報等で問題があると疑われている事業者を中心に実施されているというふうに承知をいたしております。事業者全体でこのような割合で違反が行われているという性格の数字ではないというふうには考えているところでございますけれども、他方で、高どまりしているということも事実でございます。

 除染に関して突出した事情があるかどうかにつきましてさまざま検討してまいりました。厚生労働省さんの方からもいろいろデータも頂戴をいたしております。なかなか、全国の全業種における違反率も六八%ということでございまして、一概に比べることはできないのでございますけれども、いずれにいたしましても、労働基準関係法令の遵守を徹底するということが必要でございます。

 私ども、事業に従事していただく方への周知徹底ということを励行いたしまして、厚生労働省とも連携をいたしまして、指導を強化してまいりたいというふうに考えております。

菊田分科員 ありがとうございました。

 先ほど私が指摘させていただいたような構造的な問題がこれは絶対背景にあるということだと思いますので、しっかり対応していただきたいと思います。

 もう時間がないので、最後、新潟の水俣病問題についてであります。

 新潟水俣病が公式確認されてから、ことしは五十年の節目の年であります。被害者を救済し、被害者への差別や偏見をなくし、このような悲惨な公害を二度と繰り返してはならないということでありますが、環境省として、この解決に向けて全力を挙げていただきたいと思いますが、この節目を迎えた本年における取り組み、見解をお伺いいたします。

北村副大臣 議員御指摘のとおりでありまして、新潟水俣病が昭和四十年に公式確認されて以来、本年で五十年という節目を迎えます。五十年を経てなお公健法の認定申請をされる方や訴訟を提起する方がおられるという点については、しっかりと受けとめていく必要があるというふうに考えております。

 環境省としては、公健法の適切な運用を積み重ねていくことが重要であると認識をしておりまして、今後も関係県市と二人三脚で水俣病対策に取り組んでまいりたいと考えております。あわせて、水俣病問題を解決し、地域の人々が安心して暮らせる社会を実現するための取り組みを進めてまいりたいと考えております。

菊田分科員 時間が参りましたのでもうやめますけれども、新潟の泉田県知事からは、抜本的な救済制度の見直しが必要なんだということを昨年も要望を出させていただいておりますが、なかなか環境省は抜本的な制度見直しは難しいという御回答で、非常に残念でありますけれども、ぜひこの節目の年に、全ての被害者を救済するための前向きな御検討をいただきたいと思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

石原主査 これにて菊田真紀子君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして環境省所管についての質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

石原主査 次に、農林水産省所管について、引き続き質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。後藤祐一君。

後藤(祐)分科員 民主党の後藤祐一でございます。

 きょうは、中川政務官、御体調が必ずしもすぐれない中、御出席賜りまして、ありがとうございます。

 先週、予算委員会で残念ながら出席いただけなかったので、少し確認をさせていただきたいと思います。

 西川大臣が辞任した二月二十三日、配付している資料によりますと、中川政務官は十七時ごろ退庁しておられますが、十八時四十分に新しい林大臣の認証式が行われております。

 この認証式が行われていたとき、中川政務官は何をされておられたんでしょうか。釈明文書等によりますと、酒席、酒の席の後であったとはいえ、私の軽率な行動により云々というコメントを出しておられますけれども、この十八時四十分の認証式のころ、お酒を飲まれていたんでしょうか。

中川大臣政務官 二月二十三日の私の夕方以降の行動について御説明をさせていただきます。

 二月二十三日は、十七時ごろ退庁いたしました。議員会館の事務所に在室をいたしておりました。十七時四十分ごろ、秘書官から、西川大臣が辞任をされ、登庁の必要があるかもしれないので都内で待機するよう連絡を受けました。その後、十八時十分ごろ、二十三日には初顔合わせは行われず、二十四日に改めて時間をとって初顔合わせを行うとの連絡を受けました。

 私といたしましては、登庁し、林新大臣にお会いをしたいとの思いはございましたが、当日、新大臣の就任記者会見などの日程もあることを踏まえまして、事務方からの連絡どおり、登庁しないことにいたしました。

 その後、十八時三十分ごろから二十一時ごろまで、都内で支援者の方々との会合に出席をいたしました。

 さらに、その後、門議員とお会いをし、会食をいたしました。その際、会食の後であったとはいえ、私の軽率な行動により、門議員の奥様や御家族、支援者の皆様方、日ごろお世話になっている皆様、全ての関係者の皆様方に大変御不快な思いをさせてしまったこと、まことに申しわけなく思います。

後藤(祐)分科員 御質問にできればお答えいただきたいんですが、十八時半から二十一時ごろ、支援者との会合に御出席というお話がございましたが、お酒を飲まれていたんでしょうか。

中川大臣政務官 都内の会合でございますけれども、都内の会合は食事をする場所でありまして、お酒も出ておりました。

 私と一緒に会食をしたことのある方は御存じだと思うんですが、私、非常にお酒が弱いので、たくさん飲んだつもりもないですけれども、お酒を飲んでいたということは事実でございます。

後藤(祐)分科員 ちょっと最後のところが聞こえなかったので、もう一度お願いできますか。

中川大臣政務官 お酒は飲んでおりました。ただし、お酒は大変弱いので、そんなにたくさん飲んだわけではありませんけれども、お酒を飲んでおりました。

後藤(祐)分科員 十八時四十分から認証式が行われたわけでございますが、この日は、西川大臣が急遽おやめになられて、宮内庁方面にも大変御苦労いただいて、かなり無理をしていただいて認証式を急遽開いていただいたはずでございますが、先ほど、できれば林大臣に、登庁してお会いしたいという思いがあったというお言葉がありましたけれども、この時間に、認証式が行われていた時間にお酒を飲まれていたというのは、ちょっとお言葉ではございますが、不謹慎だとは思わなかったんでしょうか。

中川大臣政務官 絶えず事務方と連絡がとれるように注意をしていた、その中で、何十年ものつき合いの皆様方でありましたので、お酒は飲んだわけでありますけれども、事務方と連絡をとりつつ、また、連絡がとれる体制になっていたことから、危機管理上、問題がなかったというふうに思いました。

後藤(祐)分科員 今、後ろからメモが入って読んだのかもしれませんが、危機管理ですとか連絡がとれる体制ということをお伺いしているわけではなくて、認証式が開かれるときにお酒を飲まれていたということは、ちょっとお言葉ではございますけれども、不謹慎ではないんでしょうかという御本人のお気持ちを伺ったわけでございます。御答弁お願いします。

中川大臣政務官 今、後藤議員から御指摘をいただきまして、本当にそのとおりだな、このように存じます。

 公人としての心得というのは、後藤議員のように、そこまで気を配るべきであったと。

 今後、後藤議員のせっかくの御忠告、アドバイスでございますから、そこをしっかりと肝に銘じまして、公人として、国民の皆様方に誤解がされないように、誤解を受けることのないように精進してまいりたいというふうに存じます。

後藤(祐)分科員 それでは、ちょっと別のことを伺いたいと思いますが、一部報道によりますと、門議員は政務官室に頻繁に訪問されておられたという報道がございます。

 これについては、配付資料の中で、農林水産省側から、三枚目ですね、門議員の来訪については、この一、二、三、四、つまり、九月十七日に食堂で政務官室スタッフ二名同席で昼食をとったというのが一つ。昨年の十月一日に中川政務官就任祝いの会の前後に複数の議員とともに来室されたというのが二つ目。三つ目が、昨年十月十七日に職員食堂で地元の農家夫妻と昼食をとった際に同席、これは大臣政務官室には立ち寄らず。四つ目として、そのほか、秘書官の記憶では、門議員が地元の方を同伴して来室したケースが一、二件とありますが、このほかに、門議員と中川政務官、お二人だけの状況で政務官でお会いしたことはありませんか。

石原主査 後藤委員、それは、場所はどこだというふうに……(後藤(祐)分科員「政務官室」と呼ぶ)

 中川政務官。

中川大臣政務官 門議員とは同一の政策集団に属しておりまして、二期生と活動をともにいたしております。そういう意味で、ほかのメンバーも私の政務官室においでをいただくということがよくあります。そのときには、それぞれの御地元の支援者、また御地元の皆さんを伴っておいでをいただくわけでありまして、門議員も同様でございます。

 参考の資料は、政務官室のメンバーと、それから門事務所が作成をしていただいたものでありますけれども、私も、門議員が数回、私の事務所においでをいただいたというふうに記憶をいたしております。

 政務官室は、常時、政務官室スタッフ三人が、私が在室しているときにおきましては、その三人の政務官室スタッフが在室をするということになっておりますので、二人きりという状況は全く考えられませんし、どなたがおいでになっても、二人きりでお会いをするというようなことはありません。

後藤(祐)分科員 中川政務官が、先週予算委員会に来ていただけなかったわけでございますけれども、今は体調がすぐれないということでございますが、中川政務官の担務というのは一体何なんでしょうか。つまり、農水省の中でどういったお仕事を担当されておられるんでしょうか。

中川大臣政務官 一言で言えば、大臣をお支えするのが私の使命だというふうに思っております。

後藤(祐)分科員 特定の、農水省の中の政策の分野ですとか、あるいは、特定の分野がないということであれば、例えば衆議院の先生方に対して、法案ですとか予算ですとか、そういったものを御納得いただけるように御説明して回るですとか、何らか、そういうお仕事があると思うんですけれども、政務に関することというのが本来の仕事だと思うんですけれども、大臣をお支えするのはもちろんなのでございますが、具体的にどういった仕事をされておられるんでしょうか。

石原主査 後藤委員、もしあれだったら、農水省から説明させましょうか。

後藤(祐)分科員 これは、その中の担当ですから、実際に御本人が何をされているかということなので、政務官にお願いします。

中川大臣政務官 基本的に、農林水産委員会、その他委員会に出席をさせていただいて、答弁をさせていただく、これが一つ、私の仕事であるというふうに思います。

 例えば、昨年でありますと、衆議院は私が担当させていただき、佐藤政務官が参議院を担当しておられました。そして、もちろん全国からさまざまな御要請がありますので、政務官室でお受けをする、これもまた私の仕事であるというふうに思っています。そのほか、要請がありましたら、全国の農林水産業の現場に出向かせていただいて、視察をさせていただいて、現場の声を聞く、これも私の仕事であるというふうに思います。

 そのほかに、農林水産省におきましては、さまざまな表彰状の伝達というものもございますので、それらの表彰式に出席をさせていただき、祝辞を述べさせていただき、表彰状あるいは感謝状をお渡しするということもございます。

 そのほかに、省内での会議も頻繁にございますので、省内での会議に出席をさせていただく、あるいは省内での会議が緊急の場合もありますので、そのような会議に出席をさせていただく、そのようなことが私の仕事であるというふうに考えておりまして、また、農林水産委員会の理事懇に出席をさせていただくのも政務官の仕事でありますし、また、私は、自由民主党の農林部会に出席をさせていただいて、政府側としての説明をさせていただくということもございます。

 そのほかに、必要とありましたらその仕事をさせていただいておりますけれども、これらが私の仕事であるというふうに思っております。

後藤(祐)分科員 中川政務官は、北海道の十勝地方の大変大規模の農業、酪農等が盛んな地域の御選出でございますけれども、二〇一二年十二月の衆議院選挙に際し、TPP交渉参加に賛成されましたか、反対されましたか。これは、農協ですとか、あるいは各新聞ですとか、アンケート調査があったと思いますが、いかがですか。

中川大臣政務官 二〇一二年の衆議院総選挙についてお尋ねだというふうに思っています。関税撤廃を原則とするものであるという、関税撤廃が原則であるということであれば反対であるというふうに申し上げさせていただいたというふうに思います。

 TPP交渉におきましては、衆参両院の農林水産委員会の決議において、重要五品目などの確保を最優先し、それが確保できないと判断した場合は、脱退も辞さないものとするとされています。TPP交渉に当たっては、この決議が守られたと評価をいただけるよう、政府一体となって取り組んでいるところであり、農政を預かる者として、国益を守り抜くよう、引き続き全力を尽くしていく考えでございます。

後藤(祐)分科員 二〇一二年十二月の段階では、まだ五品目の農水委員会の決議はないんですね。途中で差し入れた方は、ちょっと違うものを差し入れたんじゃないかなと思いますけれども。

 少なくとも、毎日新聞等のアンケート調査には反対という意思を表明されておられますが、二〇一三年の三月の六日に、電子版の十勝毎日新聞記事によると、条件闘争を模索する動きには反対すると述べておられます。

 また、二〇一四年九月に農水政務官に就任したときに、十勝毎日新聞から抱負を聞かれまして、西川大臣も国会決議の重みを話していて、しっかり守ることに変わりはない、守るべきものは重要五項目、雑豆、林業の合板なども含めてしっかり守る、もしはない、国益を守れないときは撤退を辞さない、これがぶれることはないと政務官になられた後に述べられています。

 また、二〇一四年十一月二十六日に、同じく電子版の十勝毎日新聞によれば、国会決議を守れたと皆さんに思ってもらえる内容でなければ交渉から脱退してもらうと語っておられますが、以上は事実でしょうか。そして、今でも、農水委員会の決議が守れないといったときにはTPP交渉から脱退するというお考えは変わらないということでよろしいでしょうか。中川政務官。

中川大臣政務官 今、早口でお話をされたので、参考資料などを提出していただければ、一つ一つチェックをさせていただいて、答えさせていただきたいというふうに思います。(後藤(祐)分科員「最後の部分だけでいいです」と呼ぶ)

石原主査 後藤委員、もう一度、短目に質問し直していただけますか、長かったので。

後藤(祐)分科員 では、最後の部分だけでいいです。農水委員会の決議を守れないときはTPP交渉から脱退する、この点についてはぶれがないということでよろしいでしょうか。

中川大臣政務官 決議のとおりだというふうに思います。

石原主査 中川政務官、もう一度、大きな声で言っていただけますか。

中川大臣政務官 そのとおりだというふうに思っています。(後藤(祐)分科員「そのとおりだと思います」と呼ぶ)そのとおりです。

後藤(祐)分科員 林大臣、同じ御見解でしょうか。

林国務大臣 今、政務官から答弁がありましたように、決議においては、重要五品目などの確保を最優先し、それが確保できないと判断した場合は脱退も辞さないものとする、こういうふうに決議がされております。これは委員も御承知のとおりであります。

 したがって、このTPP交渉に当たっては、この決議が守られたと評価をいただけるように、政府一体となって取り組んでいきたい、こういうふうに思っております。

後藤(祐)分科員 脱退も辞さないという部分は大臣として述べていただけないんでしょうか。だとすると、政務官と大臣で答弁が違いますが、大臣は、脱退も辞さないとはっきり言っていただけないでしょうか。

林国務大臣 先ほども政務官から、この決議については脱退も辞さないものとするとされている、こういう答弁だというふうに理解をしております。私としては、この決議が守られたと評価をいただけるように、政府一体として、この交渉を初め、取り組んでいかなければならないと思っております。

後藤(祐)分科員 では、政務官に聞きますが、先ほど政務官は、決議が守れないときはTPP交渉から脱退する、そのとおりでございますと答弁しました。(中川大臣政務官「済みません」と呼ぶ)いや、まだ求めていません。質問の途中です。

 大臣は違うことを述べておられます。大臣も、農水委員会の決議が守れないときはTPP交渉から脱退すると、これは、脱退するということが決議に書いてあるから云々ではなく、農水委員会の決議を守れないときはTPP交渉から脱退する、そのとおりですと政務官が言ったことと全く同じ見解だということでよろしいですか。

林国務大臣 大臣が脱退するという概念そのものがなかなかわかりにくいのではないかと思っております。交渉は政府全体としてやっておりますので、決議はそういうふうに書いてある、我々は決議が守られたと評価をいただけるように交渉するということでございます。この決議が確保できないと判断した場合は脱退も辞さないものとするというところまでが決議でございますので、この決議が具体的にどういう場合が確保されているかいないかというのは、それをお決めになった農林水産委員会の皆様の解釈に最終的には委ねられている、これも今まで答弁してきたとおりでございます。

後藤(祐)分科員 大臣の言っていることは、私はよくわかった上で聞いているんです。

 中川政務官は、やはり北海道の酪農の盛んな地域の代表であって、もう少し思いが強いというふうに私は受けとめました。

 政府統一見解を出していただくようお願いしたいと思います。お約束いただけますか、大臣。

林国務大臣 改めて統一して見解をお示ししたいと思います。

後藤(祐)分科員 それでは、残りの時間、農協改革法案について聞きたいと思いますが、農協法第八条、「営利の禁止」では、「組合員及び会員のために最大の奉仕をすることを目的とし、」とありますが、さきの二月十三日の農林水産業・地域の活力創造本部決定の法制度等の骨格によりますと、「農業所得の増大その他の農業者の利益の増進を図らなければならない」という規定その他が加えられるという方向だと伺っておりますが、この「農業所得の増大その他の農業者の利益の増進」という言葉が、これはマストという形で入ってしまいますと、追加されてしまいますと、准組合員、私も准組合員なのでございますけれども、残念ながら農地は持っておりません、農業をしておりません。私のような准組合員のために最大の奉仕をすることというのは、現行法では農協法の八条で読めますが、この法制度等の骨格のとおり改正された場合は読めなくなってしまう、そのようなおそれもあるんですが、これは読めなくなってしまうんでしょうか。もし読めなくなってしまうおそれがあるんだとすれば、これはしっかり読めるように法案をつくっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか、大臣。

林国務大臣 まずは、後藤委員におかれましては、その趣旨を御理解いただいて准組合員になっていただいているということで、大変すばらしいことだというふうに思っております。

 二月に農協改革の法制度等の骨格を取りまとめたわけでございますが、今御指摘のありました八条につきましては、「組合は、その行う事業によってその組合員及び会員のために最大の奉仕をすることを目的とし、農業所得の増大その他の農業者の利益の増進を図らなければならない」「「農協は、その目的を達成するため、的確な事業活動により利益を上げ、その利益を事業の成長発展を図るための投資や組合員への利用高配当に充てる」旨に改正する。」とされたところでございます。

 これは、農協が積極的な経済活動を行って利益を上げ、組合員に還元するなどといった、いわば農協の組合活動の本来の役割を明確化しよう、こういう意味でございますので、ここで言う組合員には正組合員だけではなく准組合員も含まれているもの、こういうふうに考えております。

後藤(祐)分科員 安心しました。大変重要な答弁だと思います。

 二つ目、この活力創造本部決定の別紙において、「准組合員の利用量規制のあり方については、直ちには決めず、五年間正組合員及び准組合員の利用実態並びに農協改革の実行状況の調査を行い、慎重に決定する。」とされています。

 五年間は前倒ししないということを約束していただけますでしょうか。また、この調査に当たっては、どのような目的、視点でいかなる調査を行うんでしょうか。その際に、本部決定において、「単位農協が実際上地域のインフラとしての側面を持っており、組合員でない地域住民に対してもサービスを提供していく必要が生じている」と記述されていることをきちんと踏まえた調査をされることを約束していただけませんでしょうか。大臣、お願いします。

林国務大臣 農協は、先ほど申し上げましたように、農業者の協同組織でございます。したがって、この農業者のメリットを拡大することが最優先であることは言うまでもないわけでございますので、准組合員のサービスへ主眼を置き過ぎて、正組合員である農業者へのサービスがおろそかになるということがあってはならないと考えております。

 一方、今委員が御指摘いただいたように、過疎化、高齢化等が進行する農村社会におきましては、農協が実際上地域のインフラとしての側面を持っている、これも事実であろうか、こういうふうに思っております。

 こういう状況を背景として准組合員の利用規制について議論がされてきたわけでございますが、これまで実は規制がなかったということもあって、正組合員と准組合員の利用実態が把握できていないこと、今回の農協改革によって農業者の所得向上に向けた成果がどの程度出るか見きわめる必要があることから、五年間の調査を行った上で決定する、こういうふうに決めさせていただきました。

 したがって、結論を出すのは五年間の調査を行った後ということになります。前倒しということは考えておらないということであります。

 また、調査方法については今後検討していくことになりますが、事業ごとに正組合員と准組合員の利用量がどれくらいであるか、当該事業についてほかにサービスを提供するところがどの程度あるか、こういったことも調査対象になる、こういうふうに考えておりますし、議論をする場合には、先ほど申し上げました、実際上、地域のインフラとなってきているということも踏まえてしっかりと議論していきたいと思っております。

後藤(祐)分科員 もう一つ、「理事の過半数を原則として認定農業者や農産物販売・経営のプロとすることを求める規定を置く。」とされておりますけれども、この「原則として」という部分は、私の住んでいる神奈川県みたいなところですと、こういったプロというのは大変少ないところでございまして、認定農業者や農産物販売、経営のプロが少ない地域においては……

石原主査 後藤君、申し上げます。

 申し合わせの時間が経過しておりますので、まとめてください。

後藤(祐)分科員 このプロで過半数にならない場合も含まれるというふうに理解してよろしいでしょうか。

林国務大臣 時間の関係で簡潔に御答弁させていただきますが、理事の過半数は原則として認定農業者や農産物販売、経営のプロとすることとされておりますので、今御指摘のあったように、地域によっては認定農業者の数が少ないなどの事情がある、こういうことで原則としてというのを入れておりますので、そういうことをしっかりと踏まえて、法制度の骨格を踏まえて、法案を作成してまいりたいと思っております。

後藤(祐)分科員 ありがとうございました。

石原主査 これにて後藤祐一君の質疑は終了いたしました。

 次に、鷲尾英一郎君。

鷲尾分科員 民主党の鷲尾でございます。

 久しぶりに林大臣に質問する機会をいただいて、ちょっと部屋へ入ってきたときはびっくりしましたけれども、しっかり質問させていただきたいなというふうに思っております。

 まず一つ目は、この一月九日に発表されました補正予算の内容につきまして質問させていただきたいと思います。

 特に選挙のときに、やはり稲作農家さんが大変な所得の減でお悩みになっている。これは、御当地新潟ではもちろんのこと、全国各地で見られたものである。そこを農水省も重く見て、一月九日の補正予算の決定には、稲作農家を対象者として、米価下落対策の稲作体質強化緊急事業というのが補正予算として組まれたわけであります。総額二百億円。

 ところが、これが申し込みの期限が第一次で一月三十日まで。急ぎ説明等をやったようでありますけれども、市町村までおりてくるのに、やはり実態としてはそこから二週間余りかかっているのではないのかな。そうしますと、あと二、三日というところで農家さんは説明を受けて、結局一月三十日に申し込めるかというと、やはり申し込めない。こういう状況だったと認識をしております。

 しかも、これはそれこそA、B、Cの類型があって、A類型は、十五種類の中の二種類以上のもの、例えばプール育苗とか温湯種子消毒とか疎植栽培とか、こういったものに取り組めば、体質強化に基づくので幾ばくか下落対策としてお金が入りますよ、そういう制度のたてつけでありますけれども、これが、ふだんやっていることであればよかったんですけれども、新たに取り組まなきゃいけないという基準が厳し過ぎて、結局は、一次募集でもその二百億という予算を余らせているはずです。二次でも余らせている。三次募集までやるという話になっています。

 緊急対策と言いながら、こういう二百億ものお金を、しかも、かなり皆さん厳しい状況なのに、期待をさせておいて、結局はなかなか申請できない。これはかけ声倒れにしかなっていないと思っておりまして、その申請の状況を聞かせていただけますか。

林国務大臣 稲作農業の体質強化緊急対策事業でございますが、二十六年産の米価下落に鑑みまして、稲作農業の担い手が二十七年産に向けて意欲を持って米の生産に取り組めますように、取り組みやすいメニューを提示して、生産コスト低減を図ろうとする農業者を広く対象として支援を行おうということで決めたところでございます。

 今御指摘があったように、補正予算という制約もあったんだと思いますが、閣議決定されてから周知を行いましたけれども、周知期間が短かったことなどから、例えば、新しい機械を導入しなくても補助対象になるんですが、新しい機械を入れなきゃだめなんでしょう、こういう声、私も実は、大臣になる前に地元で集会を開きますとそういうことを言われたわけでございます。

 それから、二十六年産と比べてコストが低減したか書類で確認する、こういうことも必要ないわけでございますが、うちはその書類がないからな、こういう声が結構あったものですから、やはり事業内容が正確に伝わっていないなということを私も感じたわけでございまして、この二月末までに行った追加募集でも申請額が予算額に達していないわけでございます。

 これはまだ現在集計中でございますので、まだ確たる数字はございません、一月末が六十二億だったということは御案内のとおりでありますが。

 したがって、確たる数字はございませんが、まだ枠がかなりございますので、年度内の執行がぎりぎり可能である三月十九日まで期限をもう一度延ばしまして、最終募集ということで今行っているわけでございます。

 先ほどのような誤解がないように、事業の趣旨、それから要件等の正確な情報を伝えられるように、より丁寧な説明に努めまして、より多くの方がこのコスト低減に取り組んでいただけるようにやっていきたいと思っております。

鷲尾分科員 大臣も御地元でお聞きになったということで、私の地元に限った話じゃないと思っていますけれども、私が一番よく聞くのは、要件が厳しいということです。新たな取り組みをしなきゃいけないというのがやはり厳しい。ここなんですよ。

 私は、補正予算が通る前、案の段階で、どういうものですかと本省に問い合わせたときに、比較的柔軟な対応という印象を、私は直接担当者から話を聞いて、ああそれだったらいいねという印象を受けたんですよ。ところが、なぜか二週間余り、現場に到達したときにはこれが物すごいしゃくし定規だったわけですよ。それで、説明を聞きに行った皆さんはもうやる気を失っちゃうわけですよ。新聞で大々的に米価下落対策だ、こういうのを銘打って、それでいざ説明に来たら、全然要件が厳しいじゃないか。ここが私は問題だと思うんですね。

 コストが結果的にどうこうとか、あるいは機械の購入がなくてどうこうというよりは、そもそも、取り組まなきゃいけない活動というか、取り組まなきゃいけない作業について余りにも新たに取り組まなきゃいけないハードルが高過ぎるということが問題なんですよ。

 そういう声は入ってきていないんですか。そこに対しての手当てというのは私はもっと必要だと思うんですけれども、いかがですか。

林国務大臣 これは、先ほど申し上げましたように、体質を強化するということでやろうということですので、全く何もしない人がただ価格の補填ということでやるということにはならないわけでございます。したがって、それはそういうふうにやっていただくというメニューをしっかりと用意をして、先ほど委員もおっしゃっていただいたように、このAのカテゴリーは十五ほどメニューがあるわけでございます。

 例えば、生産コスト低減が可能な本メニューにかかわる新たな取り組みをやりますと言ってもらえばいいわけでありまして、やったからこうなりました、ふえましたというのまで要求していないわけですけれども、どうも私も地元の集会で、そのときは大臣でございませんでしたけれども、党の調査会長として何か御意見ありますかと言ったときに、何か物すごくしゃくし定規に聞いておられる。聞いておられるということは、誰かがそういうふうに説明しているわけですね。

 そこが、我々がここで議論してつくったときよりもかなり限定的に何か文章を解釈して説明が行われている部分もちょっとあるのかもしれないなという印象をそのとき持ったのは事実でございますので、先ほど申し上げた丁寧に説明するということは、その辺も含めて取り組んでいただければいいんですという趣旨をさらに伝わるようにもう一度徹底していきたい、そういう意味で申し上げたところでございます。

鷲尾分科員 大臣、私、今回の予算の二百億の使い方、農水省として、政府としてもったいないなと。農家の皆さんのハートをがっちりつかむ方法はあったと思うんですよ。非常に簡単な方法があったと思います、この二百億があれば。それは、米の直払いに二百億を加算することですよ。ことしの概算要求だって約八百億しか出していないわけですから、それにこの二百億が加わったらどうなりますか。これは、来年度、皆さんやはりもっとやる気を出しますよ。米の直払いの金額がちょっと上がるのか、七千五百円じゃなくてちょっと上がるんだなと。そうなったらこれは、皆さん少し笑顔になられているけれども、私はそういうお金の使い方をしたら物すごいハートをがっちりつかんだと思いますよ。

 これは、実は私も地元で、二百億使うんだったらそういう使い方がいいじゃないかという話をしたら、もう皆さん拍手ですよ。もったいないですよ。せっかく予算を二百億円も使って現場の皆さんのやる気を失わせているようじゃだめですよ。

 そういう観点でぜひ大臣、予算、見直すとまでは言えないけれども、そういう観点で編成していただきたいですよ。きょうは農水省の幹部さんもそこにおられるから、ぜひそういう観点で見直していただきたいなと思っているところでございます。これは、我々は野党で予算編成権はないからコメントするにとどめておきたいと思いますが。

 一つ、いい話ですけれども、続いての質問です。

 多面的機能支払い、これは、平成二十六年度の新規については、それこそ、政府が農業、農村全体で今後十年間で所得を倍増させるという目標の中で、多面的機能支払いで農村の機能あるいは集落全体で所得を上げていく中での一つの大きなツールだということであります。

 我々は対案を出しますよ。去年も出したけれども、ことしも出します。出しますけれども、多面的機能支払いの中で、農地維持支払いとか、あるいは資源向上支払い、平成二十六年は大分これもかけ声倒れで、地元の農家さんが頑張っていろいろ事業をやろうやろうとしたときに、国が予算をつけようつけようとしても、市や県が結局予算が足りなくて、それだけのお金は出せないんですよと言ってカットカット、これが実のところだと思うんですよ。しかし、二十七年度は各地区で、今は県も予算の審議中ですけれども、少し違った様相を呈していると思うんです。

 そこら辺の現場の声というのをどう受けとめているか、お聞きしたいと思います。

三浦政府参考人 お答えいたします。

 多面的機能支払いは平成二十六年度からスタートしたものでございますけれども、二十六年度の実施状況を見ますと、従来の農地・水保全管理支払いの約一・三倍ぐらいまで取り組みが拡大しておりまして、新潟県においても大変熱心に取り組んでいただいていると承知しております。

 この制度、集落などの活動組織に対して支払われるものでございますけれども、共同活動に参加した農家に日当として支払いが行われることなどを通じまして、農家の実質的な手取りの向上にもつながるというものでございます。

 また、地域における共同活動が適切に継続されることによりまして、担い手が規模拡大を進めやすくなるとともに、小規模な農業者の方あるいは高齢者の方を含む地域の方々が共同して六次産業化等に取り組む環境が整うということにつながりまして、当該地域における所得の増加にも貢献し得るというものであると考えております。

 お話にありましたように二十七年度でございますけれども、これは、新しい、農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律に基づいて実施していくということになります。これを契機として活動に取り組みたいという地域も相当数あると承知しております。

 本制度が活用されますように、一層の普及推進に努めてまいりたいと考えているところでございます。

鷲尾分科員 せっかくだから、それこそうちの地元でもそうなんですけれども、これについては、二十七年度の事業については、県の担当者も含めて、予算を含めてかなり充足できるんじゃないかという見通しを立てているところでもありますので、そういう取り組みについては、いい取り組みはいい取り組みでぜひ頑張っていただきたいなということをコメントさせていただきたいなと思います。

 ただ、先ほど局長も答弁されていましたけれども、あくまで実質的な所得でありますので、本当は、経営体それから農家も、一戸一戸当たり農家の皆さんが直接支払いを受ける、所得になる、そういう制度の方が、今の農業の実態を考えれば、今後の農家の皆さんのやる気によりつながるだろうと考えております。その点は我々の法律の方がすぐれているのかなという確信をいたします。かなじゃないですね、すぐれていると確信をいたしていますけれども、いい取り組みはいい取り組みで、ぜひまた、やる気を持って続けていっていただきたいなと思っているところでございます。

 続いての質問でございますけれども、今政府の方でも、この四月から、建設の現場で、外国人技能実習制度の特例という形で、一度外国人技能実習を受けた方で自分の出身地に戻った方が、もう一度来ていいよ、二年あるいは三年来ていいよ、あるいは、今いる人は三年間認められているわけですけれども、今いる人がさらにもう一年続けていることができるよと。東京オリンピック・パラリンピックに合わせて建設需要が旺盛で、かつ、日本国内で人材不足であるがゆえの特例措置が設けられることになっております。今年度から準備をされていて、来年度から本格始動ということでありますけれども、そういう制度が一つ。

 それからもう一つは、外国人技能実習制度の拡充が今は議論されているところでありまして、この中に介護という業種も加わるという見通しになっております。日本語検定三級あるいは四級であれば、日本に来て介護の職場で働いてもいいよ、こういう外国人の活用につきましての議論がかなりかまびすしいわけであります。

 これは、この場でちょっと話が横道にそれてしまいますけれども、介護については、私もいろいろ関係者にヒアリングしましたら、現地ではそこまでのニーズというのはどうやらないというか、というのは、日本では高齢化が進んでいます、お隣の中国でも結構進んでいますけれども、ほかの東南アジアの国とか、そんなに高齢化が進んでいないものですから、技術移転とか国際貢献と言ってみても、日本でそれを学んで、帰ってきて果たして職になるのというのもやはりあるわけで、そういう意味からいって、今の制度、これは本当は法務委員会で議論しなきゃいけないんですけれども、かなり日本側のニーズに引きつけて、そこに国際貢献、技術移転という大義名分をつけて制度を運用しようとしているんじゃないかというふうに思っております。

 実は、ここからが本題です、それと同様の問題が農業の現場で起こってやしませんかという話なんですよ。

 例えば、前も一度委員会で私お話ししたことがあったかもしれませんけれども、農業の現場では人手不足、青年就農給付金だ何だとやっていますけれども、この米価の下落の状況で、どんなにやる気を持った若い人でも、よほど経営をうまくやらない限りは、二、三年やっても苦しくなってやめてしまうというのが現状じゃないですか。

 そういう現状も恐らく把握されていると思うんですけれども、そこで、それこそ農業法人の経営者の方で私も何人かヒアリングしましたけれども、外国人がいなかったら経営できない、こういう声もあります。

 農業の現場で外国人の今の就労の状況がどうなっているのか、あるいは、その雇っている方のニーズも含めてどんな見解をお持ちなのか、お聞かせいただきたいと思います。

林国務大臣 まず、外国人技能実習制度そのものは、やはり今委員がおっしゃっていただいたように、我が国で開発された技能、技術等の開発途上地域等への移転をすることによって国際協力を推進する、こういう目的ですから、国内の労働力不足を補うための制度ではないわけでございます。

 したがって、例えば日本再興戦略、昨年六月に決定されておりますけれども、「中長期的な外国人材の受入れの在り方については、移民政策と誤解されないように配慮し、かつ国民的なコンセンサスを形成しつつ、総合的な検討を進めていく。」ということで、農林水産省としても政府全体の検討に適切に対応していかなければいけないと思っておりますが、本チャンと言うと言葉があれですけれども、そちらの話とこの話はやはり性質上分けておかないと議論が混同するだろうな、こういうふうに思っております。

 例えば農業の現場では、二種類の人材不足、マネジメントをする、経営をやっていく人という人材と、それからまさに今御指摘のあったように、作業してもらう方、両方不足しているという声を聞くわけでございますが、その規制緩和の要望としては、この技能実習期間を五年間に延長するような要望も出ているところでございまして、ニーズはあるということだと思いますけれども、一方で、国の内外の人権団体等から、人権擁護の観点でのいろいろな問題も指摘をされているというところもあるわけでございます。

 したがって、そういうことを踏まえて、先ほど申し上げた原則にのっとって、今度の改正は、これは法務大臣の方ですから法務委員会で詳しくやっていただければと思いますけれども、私的懇談会で基本的方向を整理して今回の法律案の提出に至った、こういうことでございますので、その方向で我々も対応してまいりたいと思っております。

鷲尾分科員 農業の現場での状況というのはどう把握されているかということをお聞きをしたいと思います。

林国務大臣 先ほどちょっと申し上げましたように、現場からは規制緩和の要望が出ているということでございます。

 私も法人協会の皆さんや私の地元の方と話していても、法人協会とかは、割と大きく経営していらっしゃる方は、一種類目の人材、マネジメントをしていく、いろいろな企画をして販売なんかもやっていくような人材にも触れられますが、それほど大きな規模でない方の場合は、もう一つの方の働き手というものがやはりどうしても足りないねという声は聞くところでございまして、そういった意味で、先ほど申し上げました中長期的な外国人材の受け入れのあり方とあわせて、しっかりとこれでできることと、それから、これは先ほど申し上げた目的があるわけでございますので、これではなかなかすっとはまらないところは別途また検討していく必要があると考えております。

鷲尾分科員 あと、実際、現場で人数という形で外国人の方がどれぐらい入ってきておられるのかというところまで把握されているのかなと思ったんですけれども。

 では簡単に。

あべ副大臣 外国人技能実習生の人数を農林水産省は把握はしておりまして、農業分野の技能実習生は、平成二十五年度で、一年目が一万二百七人、二年目が七千二百五十二人、三年目が六千百四十一人の計二万三千六百人でございます。

鷲尾分科員 二万人を超えていますね。やはりすごいですね。

 その後、これは制度全体の設計の問題でもありますが、その二万人の方がお帰りになった後に出身国でどういう貢献をされているかというところも含めて、制度の趣旨を貫徹するのであれば本当はそこまで見なきゃいけないよねという問題提起だけしておきたいと思います。

 時間が少なくなってきましたので続いての質問でございますけれども、ネオニコチノイド系農薬、去年も質問しましたけれども。

 たしか大臣が、養蜂協会も含めて、都道府県だけじゃない、都道府県だけの被害状況というのは全く片手落ちだ、もっと徹底的に調べてくれと申し上げて、業界団体とも連携をしますという答弁をいただいておりますけれども、その集計結果というか、その状況についてお聞かせいただきたいと思います。

小風政府参考人 お答えいたします。

 ミツバチの被害状況の事例調査、平成二十五年度で報告のあった事例を取りまとめいたしました。

 その結果ですけれども、ミツバチの被害は水稲の開花期に多く、水稲のカメムシの防除に使用した殺虫剤を直接浴びたことが原因の可能性があるということが一つわかりました。

 それからもう一つ、委員お話しございましたけれども、農家と養蜂家との情報共有が不十分であったり、また、被害を回復するための対策がとられていないということが明らかになりました。

 具体的に六十九件のミツバチの被害が把握されましたけれども、そのうち約二割で、農薬の使用者側から養蜂家への情報提供が行われていない、あるいは、農薬の使用者側が情報提供したと回答した事例におきましても、三割ぐらいの養蜂家が情報提供を受けていないということが明らかになりました。

 このことを踏まえまして、当面の対策としては、ミツバチが殺虫剤を浴びないように、農家と養蜂家が県、関係団体などを経由して情報を共有すること、それから、周辺を水田に囲まれた場所ではできるだけ巣箱の設置を避ける、こういった施策を講じることを昨年の六月に指導しております。

 引き続き、平成二十六年、これもまだ調査を行っております、この状況を取りまとめまして今後の対策を検討していきたいというふうに考えております。

鷲尾分科員 たしか去年、新しく対象を広げてくれたわけですよね。だから、ことしのその結果というのはいつ出るかちょっとまた聞きたいですけれども、いつ出るのか。

 そうしたら、要するに、対象が広がった上で、今はもう進捗状況で何か新しい情報とかは入ってきているんでしょうか。去年と比べてそういう協会から入ってくるデータというのは多くて、やはりちょっと違った情報も入ってきていますとか、そういう進捗状況もちょっと教えていただけませんか。

小風政府参考人 お答えいたします。

 平成二十六年度の調査につきましては、三月末まで行っております。したがいまして、できるだけ早く取りまとめまして公表をしていきたいというふうに考えております。

 また、先ほどちょっとお話ししましたけれども、平成二十五年度の調査におきまして、養蜂家の団体の方も通じ、また県の方も両方通じるということで、調査を強化いたしました。

 その結果、先ほどのように、農家のサイドから情報提供したのも伝わっていない、あるいは逆に、養蜂家サイドにしたのが伝わっていない、こういうことがわかってきております。

鷲尾分科員 わかりました。

 それで、ネオニコチノイド系農薬の使用対象、使用範囲、これが広がったと認識をしておりますけれども、どう広がったのか、どういう根拠でそれを認めたのか、お聞かせください。

小風政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の件ですけれども、ネオニコチノイド系の農薬であるクロチアニジン、これにつきまして、ホウレンソウあるいはカブにつきまして、アブラムシの防除のために適用範囲の申請がございました。今、食品安全委員会における評価を経て、残留基準値の設定に向けて、厚生労働省による審議が行われているということでございます。

 今後、厚生労働省において、薬事・食品衛生審議会、この答申を受けまして残留基準値が設定されれば、農林水産省としまして、農薬取締法に基づいて、使用方法そして使用注意の事項を定めて登録を行うということになると思います。

 なお、ニコチノイド系の農薬につきましては、我が国で稲あるいは果樹、野菜、こういうものに被害を及ぼしているカメムシあるいはアブラムシ、こういう防除に重要な農薬である、それからもう一つ、これらの害虫の防除が行われる他の系統の農薬に比べて人や水生生物に対する毒性が弱い、こういうこともありまして、現時点では、ミツバチの被害がなるべく生じないように使用していくということが適当と考えております。

鷲尾分科員 先般の委員会でも私も話しましたが、EUの方では、予防原則にのっとって、ある使い方につきましては科学的な評価なしに禁止をしているというそういう規制のあり方もありますので、何が起こるかわかりませんから、ぜひ現実を注目していただいて、早目に対処することをこれからも望んでいきたいというふうに思います。

 最後の質問でありますけれども、圃場整備事業、これは自民党政権になって随分と潤沢な予算があるというところの中で、新潟平野は、新潟は大臣もお越しになったことはございますよね、ゼロメートル地帯が大半で、平地なものですから、そこにポンプを置いて、だから、水がたまってしまうとポンプで海まで流さなきゃいけない。これで農水省にも随分頑張っていただいているわけですけれども、ポンプで揚げるといういわゆる排水事業をさんざんやったというところがあって、一方で圃場整備というのが実はおくれているんです。日本一の米どころなのに圃場整備がおくれている。

 その米どころの一つである私の地元の燕市でもおくれているわけですよ。それこそ、その燕市でまだおくれている地域があるので、そこを今度バイパスが通る、通らないという話もありまして、ぜひ、地元から要望があったときにはしっかりと農水省も取り組んでいただきたいなということをお願いをしたいと思うんですが、一言見解をいただいて質問を終わりたいと思います。

佐藤大臣政務官 委員御指摘の新潟県が事業主体となって計画を進めている燕市の県営圃場整備地区におきまして、地区内を国道百十六号線の吉田バイパスが横断する計画となっており、現在、国土交通省と県において、路線計画などに関する協議が行われている状況と承知をしております。

 また、圃場整備事業の実施に当たっては、国が補助した残りの事業費を県、市町村、農業者が負担することとなることから、当該バイパスに関する協議の方向を踏まえ、地元の合意形成が十分に図られる必要があると考えております。

 新潟県からは、今後、当該バイパスに関する協議の進捗に合わせ、地元調整を進めていくと聞いておりまして、農林水産省としても、その状況を注視しつつ、県からの相談に応じるなどの対応をぜひ検討してまいりたいと考えております。

鷲尾分科員 引き続きよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

石原主査 これにて鷲尾英一郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)分科員 九カ月ぶりの農林水産にかかわる質問に立つことができまして、ありがたく思っております。

 前ぶれは、大臣も去年から見ますと少しやつれたのかなというふうに思うんですけれども、ダイエットしているわけじゃないですよね。お疲れさまですが、もう少しおつき合いいただければと思います。

 二月十二日の本会議において、総理の施政方針演説で、減反の廃止に向けた歩みをさらに進め、需要ある作物を振興しというような言葉を述べられているんですね。仮に需要があったとしても、ちょっと言葉遣いが御理解いただけなかったかなと思うんですけれども、国産のものと外国産のものと、本当は国産のものが買いたいんだけれども、やはり、プライス、コスト的に消費者の方が合わなくて、また、食品の加工をする方からすると、国産の方がいいんだろうけれどもなかなかコストが合わなくて買えないといった場合に、この総理が述べられたことを受けて、農林水産大臣としてどう考えていくのか、まず初めにお尋ねしたいと思います。

林国務大臣 総理が施政方針演説で、減反の廃止に向けた歩みをさらに進め、需要ある作物を振興し、こういうふうにおっしゃっていただいております。

 まさに今回の米政策の見直しにおきましては、平成三十年産を目途に、行政による米の生産数量目標の配分に頼らずに、農業者がマーケットを見ながらみずからの経営判断、これによりまして需要に応じた生産ができる環境整備を進める、こういうことにしておるわけでございます。

 国も何もしないわけではなくて、全国ベースまた各県それぞれの需給見通し、それから価格情報、販売状況、在庫情報、こういうものを提供する、こういうことでございます。

 やはり、個々の農業者、地域におかれて、適地適作という言葉がございますけれども、地域のそれぞれの事情に応じて、主食用米、それから主食用米以外の餌米ですとか麦、大豆等について、どれをどれぐらい生産するかをそれぞれ主体的に判断していただくということで、強い農業を実現していくということが重要だというふうに考えております。

 このため、国としては、地域みずから支援する作物、取り組み、単価、こういうものが決められる産地交付金というものを措置しまして、農業者や地域が主体的に判断をしていただいて、そしていろいろなことに取り組んでいただく、こういうものを支援しているところでございます。

鈴木(義)分科員 経営体がマーケットを見て判断するというところが一番難しいところだと思うんです。

 豊作貧乏という言葉があるように、昨年はどちらかというと東日本の方は豊作だった、お米に関して言えば。西日本の方は、凶作とまでいかなくても、作況指数でいけば一〇〇を下回っていた地域も散見されるというような状況なんです。それを受けてことしの作付をどうするかというのは、早いところでは苗代をもうつくったり、苗床をやったり、種まきをしちゃって、四月に入ったら田植えを始めようというところもあります。

 私の地元でも、一番早いところは、八月のお盆が明けたらすぐに稲刈りをするところがあります。なぜそんな早く収穫するんですかと農家の方にお尋ねしたら、八月に売る新米と九月に売る新米と値段が全然違うんだそうです。だから、何でかんで八月につくりたいというのが、その農家の方のおっしゃることなんですね。

 私、過去の農林水産委員会でも何度もお尋ねしていると思うんですけれども、個々の農家の方が、マーケットを見ながら、需要と供給のバランスと価格を見て御自分の判断でと言っても、なかなかそこのところが、できていれば、今ごろ農水省に補助金をくれとか、何をしてくれと言わなくて農業振興はできているんだと思うんですよ。

 でも、隣の人がやっていることが、自分だけが異質なものをやったときに、やはり横並びの感覚というのは農家の方はお持ちですから、そこのところを独自の判断でやってくれと言っても、これは感情論というんですか、慣習というのかな、そこのところはやはりなかなか変えられないんだと思うんです。

 だから、ある地域では、特定の作物に対しては国が後押しをしますよ、それ以外のことを自分でやる分については自己責任でやってほしいよ、そういったところをきちっとしていった方が、競合して価格競争にならないだろうという考え方です。

 その考え方に基づいて、二十六年十二月の貿易統計というんですか、速報値を見ますと、一位、二位、三位の国が羅列してありますので、大体、上位の国・地域というのが、香港とか台湾、アメリカ、中国、シンガポール。ほかの国もたくさんありますけれども、日本がどこの国に何を一番力強く売り込んでいきたいのかというのを、もうそろそろきちっと示した方がいいんじゃないかと思うんです。

 それで、平成二十六年の二月二十五日、ちょうど一年ぐらい前に、農産物・食品輸出の物流に係る課題と現状の補足というペーパーが去年出されているんです。

 これを見ていくと、港湾はどこの国に輸出しているか、あとは空港はどこの国に行っているのかというのが、大体シミュレーションできているわけです。それで、この中でも、オール・ジャパンでそれをサポートしていくんだというような考え方を持ってこの指針を出されているんですけれども、結局、どこの国に何を売っていくのかというのは、もし、ここでうたわれていることがあらかじめわかっているんだったら、もっと産地の近くで集積をして、海から持っていくのか、飛行機で持っていくのかというのを、きちっと国が方向を示してしまった方がいいんじゃないかと思うんです。

 すみ分けをしていくということです。緩やかなすみ分けをしていく。そうしないと、どこでも好きな作物を作付して、おらが地域もこれは輸出したいんだとか言っても、では、コストを誰が負担するんだ、またそこに補助金をつけるという話になると、これはなかなか、後段でまたお尋ねしますけれども、そこにどうしてもマージンが転嫁されてしまって、国際競争力になっていくのかという問題につながっていくんじゃないかと思うんです。

 まず、海外に出していくときの戦略があれば手短にお答えいただければと思います。

あべ副大臣 議員にお答えいたします。

 我が国の農林水産物、食品の輸出拡大に関しまして、平成二十五年、委員も御指摘のとおり、国別・品目別の輸出戦略を策定し、昨年六月に輸出戦略の司令塔として輸出戦略実行委員会を設置いたしまして、官民一体となって取り組んでいるところでございます。

 これらの取り組みにおきまして、例えば、香港には水産物、米、米加工品、青果物、牛肉、米国に対しては水産物、米、米加工品、茶などのように、重点品目と重点国を明確にした上で、重点品目について品目毎の輸出団体を設立、育成して、輸出を促進しているところでございます。

 さまざまな取り組みの結果、昨年の輸出額は六千百十七億円と史上最高額になりましたが、今後ともこの需要のフロンティアを拡大いたしまして、一兆円目標を大きく超えていくために、各産地が協力してオール・ジャパンで取り組んでいけるよう、生産者、関係事業者の活動を、また、関係府省やジェトロが強力にバックアップしていく考えでございます。

鈴木(義)分科員 ありがとうございます。

 今御説明いただきましたように、例えば香港、ここにもう日本の米が行っているんですけれども、富裕層が食べる量というのは決まっちゃっているわけです。そこにまた、産地を変えて違うお米をブランドとして売り込んだとしても、今五、六万円で売れているものが、こっちもいいんです、あっちもいいんですと言えば値崩れを起こすだけ。では、そこの次のミドルの人たちにターゲットをやろうとすれば、もっと価格を抑えなくちゃいけない。そこの国によって買ってくれるものというのがもう満杯になっちゃっている部分もあるわけです。

 だから、今御答弁いただいたような、さらっとお答えいただくんだと思うんですけれども、飽和状態のところに一生懸命輸出してやろうとしても、もう日本のものがある程度行っちゃっているところは、それを後追いしていったとしても、価格で崩れているだけで、一番利があるのは相手の国の消費者ということになってしまうわけです。ですから、戦略を練るといったときに、今まで二十五年から二十六年にかけてやってきましたということだけでは、やはりまだまだ不十分だと思うんです。

 そこで、次にお聞きしたいのが、イスラム圏に輸出をするために、ハラール制度に対する対応の進捗状況。

 どうしても、中東も含めて東南アジアから中央アジア、イスラム圏が多いわけですけれども、豚肉を使ったような調理器具、包丁もお皿も流し場も含めて、そういったものが豚肉を使っているというだけでもうこのハラール制度には乗らないんだそうです。

 だから、今、再度お尋ねしたんですけれども、持っていく先の、宗教観のある国の方々に買ってもらうといったときに、戦略というふうに考えたとき、相手の国と欲する物もそうなんですけれども、加工の仕方だとか、やはりもう少し踏み込んだ形で戦略を練っていかなければならないと思うんですけれども、今の国内におけるハラール制度に対する進捗状況をお聞かせいただければと思います。

櫻庭政府参考人 お答え申し上げます。

 イスラム圏への食品輸出につきましては、成長する世界の食需要を取り込むという戦略の一環で取り組んでおります。先ほど副大臣からございましたけれども、輸出戦略実行委員会においてハラールに関する部会を、二十六年、昨年六月に設けまして、イスラム圏のハラールに係る制度等の調査、それから、ジェトロにおいてハラールに関する専門家によるセミナーを開催するなど、ハラール食品輸出に向けた情報を収集し、わかりやすく輸出事業者等に提供しているところでございます。

 また、ハラール認証を取得しようとする事業者への支援として、食肉処理施設の整備費用や認証取得費用への支援を行っているところでございます。

 イスラム圏と言われる国々への輸出につきましては、例えば、マレーシアにつきましては六十八億円、輸出額で十三位でございます。アラブ首長国へは五十九億円となっておりますけれども、現時点では必ずしも輸出額は多くないものの、昨年の輸出の伸びは、マレーシアが一〇%、アラブ首長国連邦が四五%増と大きく伸びているところでございます。

 イスラム圏への輸出に当たりましては、ただいま申し上げたように、情報提供や支援策を引き続き講じるとともに、昨年は日本への観光客が非常に多く、ふえてきております。例えばマレーシアは、四一%増の二十五万人でございます。そういった中で、インバウンド対策、すなわち、訪日するムスリムへのハラール食の提供等も積極的に行うことによりまして、十六億人と言われるイスラムの人口に対して高品質な日本産の食品の輸出拡大を図ってまいる所存でございます。

鈴木(義)分科員 そうしますと、では、今、イスラム教の商圏のところに日本が出している、進捗状況でどのぐらい、五十社ぐらいあるんだとか、その辺はどうなんですか。

 今実際に、いろいろ協議会みたいなものをつくって、補助金もつけたりなんなりしているんですよという御答弁はいただいたんですけれども、具体的に、今国内でそれに対応するような企業さんなり事業所があるのかないのか、それだけで。

櫻庭政府参考人 具体的な数字は持っておりませんけれども、日本で、マレーシアでいけばJAKIM、インドネシア、シンガポール、それからアラブ首長国連邦、それぞれの認証機関が違っておりますので、そこら辺のデータを調べて、また後日お伝えしたいと思います。

鈴木(義)分科員 次に移らせていただきたいと思います。

 先ほど御答弁の中に、平成二十六年度、農産物の輸出額が六千百億ぐらい、それに対して輸入が六兆三千二百億を超える、今の日本国内に入ってくる農林水産物がそのぐらいあるんだと。輸入が三%ぐらいの伸びになっていて、確かに、農林水産省挙げて、政府一丸となって輸出に対応していこうということで取り組んでおられると思うんですけれども。

 それでは、これも過去にお尋ねしたことがあるんですけれども、輸入農産物を国内で加工して海外に輸出しているわけですね、それが六千百億ぐらいあるわけです。たしか、そういう御説明があったと思うんです。では、その中でどのぐらいが国内の農産物を使っているのかというお尋ねなんです。

櫻庭政府参考人 輸入された農産物のうち、何%が国内で加工され海外に輸出されているかにつきましては、統計数値が存在しないため把握しておりませんけれども、産業連関表という統計表がございまして、これで我が国の製造業の加工原料の調達割合、これを試算しますと、食品製造業が加工原材料を調達している国産の農水産物の割合が七三%、輸入品は二七%となっておりまして、我が国の食品製造業の原料の多くは国産となっているというぐあいが判明しておるところでございます。

鈴木(義)分科員 やはり農業も、生のものをそのまま青果物を海外に出すよりは、付加価値を上げて、マージンを国内で取って外に出していく方がいいと思います。

 今、政府参考人の方から御答弁いただいたんですけれども、農林水産省としてもう少しきちっとした統計をとる中で、やはり外に出していくといったときに、最終的に、農林水産省は加工会社を応援するんじゃなくて、一次産業の農林水産業に従事している人を応援するのが筋なんだと思うんです。今の御答弁の中で、国産品を七三%使っているわけですから、それをどんどん上げていくことが最終的に私は農林水産省の役目だと思っています。

 そこが、今、円安に少し振れていますから、海外から入ってくるものが割高になるから国産を使おうという考え方なのか、これがまたいつの時代か円高になったときに、海外から入ってくる原材料の方が安いということになれば国内産を使う人も減っていくだろうというのは推測できるわけですけれども、そこのところの見通しというんですか、今後ふやしていこうというふうに何か数値目標があれば教えてもらえればなと思うんです。

櫻庭政府参考人 やはり、日本の人口が減少する中で、生でそのまま食べるというより、胃袋がだんだん小さくなってきておりますので、どうしても加工需要というのは今後高まってくるかと思います。

 したがいまして、輸出あるいは加工に見合った生産体制をつくっていく、そして、加工需要に対する生産物をつくることによって農業経営を安定していく、このことが重要だと思っておりますので、そのとおり進めたいと思っております。

鈴木(義)分科員 例えば輸出をするためだけの農作物であれば、逆に、日本国内で流通するよりも少しグレードを落とすというのも考えていいんじゃないかと思うんです。コストの面だけを考えるんだったら、グレードをわざと落としてしまって安くつくってしまう、そのかわり、国内では回さないようなもの。だから結局、国内で消費をしていくものと海外で買ってもらうものとをすみ分けしていってしまうというような考え方、それでなおかつ日本で加工したものを外に出していくというふうにやった方が、もっともっとプライスで何とか競争ができるんじゃないかと思うんです。

 今までは、いいもの、いいもの、いいものと、いいものをつくればほかの外国の人たちも、日本はいいものだから安心して食べられるということでどんどん買ってくれたんですけれども、でも、ヨーロッパだって景気がいいのはアメリカぐらいで、あと、中国も経済的には伸びがちょっと鈍化してきたんじゃないかというマスコミの報道を見る限りは、ヨーロッパでもデフレに対応するような施策がとられるわけです。

 では、ヨーロッパを中心に、日本のいろいろなものを出しましょうと言っても、どんどん国内の価格が下がれば輸出する価格も下がっていくわけですから、そこのところはやはりよく見て、そういった対応ができるような農林水産、水産というとちょっとまた違うんでしょうけれども、農業でいえばそういう考え方に基づいて取り組むというのもありなのかなと思うんですけれども、その辺はいかがでしょうか。

櫻庭政府参考人 委員の御指摘の部分もあるかと思いますけれども、実際の農産物の収穫状況を見ますと、やはり、同じ圃場で、非常にグレードの高いものと中級品、あるいは市場に回らないはねものといいますか、規格外のものも出てきます。したがいまして、工業製品とはちょっと違いまして、同じ均一のものがコンスタントに生産できるわけでもございませんので、トータルとして集荷されたもののグレードの高いもの、輸出向きなもの、そして加工需要のものと分けて、それで日本の加工技術に基づきましてそれらを輸出していく、そういった仕組みの方が現実的なのかなというぐあいに考えております。

鈴木(義)分科員 ありがとうございます。

 これも過去に質問したときに事例で使わせてもらったんですけれども、これはイチゴの流通の構造調査の件なんですけれども、ジェトロの二〇一三年三月のときに、生産者が一〇〇とすると輸出商社のマージンが八〇%、輸入商社が一九八%、外国側から先の小売までの話だと思うんです。

 同じく、これは二月十二日の甘利大臣の演説の中で、日本経済再生本部で、「アベノミクス成長戦略の実行・実現について」と題して、岩盤規制の改革を初めとして、成長戦略に掲げられた各施策を速やかに具体化し、実行、実現する方針を取りまとめたんだと。

 それで、二十七年度に岩盤規制改革を、今、一つの例示ですよ、結局、百円でつくっている国内のイチゴを海外に出すときに八十円のコストがかかってしまう。そうすると、農協改革も含めて、改革をすることによって、この八十円の取り分を、少しでも農家側に行くのか、それとも、農家側に行くマージンはそのままにしておいたとしても、八十円を七十円、六十円、五十円に下げられるのかということだと思うんです。だから、今回の二十七年度に取り込まれるのかどうか、そこのところをお答えいただきたいと思うんです。

佐藤大臣政務官 マージンについての、委員の御指摘のとおりであると思います。

 特に、農協は農業者が自主的に設立する協同組織でありまして、農業者が農協を利用することでメリットを受けるために設立されたものであります。

 現在、食料は過剰基調にあり、川下の消費者、実需者のニーズに対応しなければ有利な販売はできない状況にあります。したがって、農協や全農が中間流通を排除して消費者、実需者への販売を進めることが農業者にとっても消費者にとってもプラスになるものと考えております。

 特に、全農が経済界と連携して、こうした流通マージンの引き下げに取り組むことが必要であり、これによって農協や農業者が大きなメリットを受けることになるものと考えております。

鈴木(義)分科員 何か、農協さんが変わればこのマージンは自分たちで考えてくださいよという話になっちゃっているんですけれども、でも、今マスコミで騒がれている農協改革というのは、なぜやるのかといったら、私は、簡単な言い方をすれば、この中間マージンをどうやって下げられるかというところなんだと思うんです。

 先ほどからお尋ねしている、国内の消費が、需要が落ちていくのは、誰が見たって人口が減少するのはわかっているわけです。生産量が一定だったら余ります、それは外に出しましょうと。でも、価格の競争力にどうしてもさらされるので、では、どうやって国内のマージンを低く下げるかというところに改革があるんじゃないかと思うんです。

 それは農協さんが考えることですよと言ってしまったら、では農協改革とは何なんですかという話になっちゃうと思うんですけれども、もう一度御答弁いただきたいと思います。

林国務大臣 今、佐藤政務官から御答弁いただきましたように、農協の改革というのは、これだけで何かマージンを下げて、売る人も買う人も同じものをつくって同じものを売っているけれども、ただ中間マージンが下がることによって所得をふやしていこう、こういうシンプルな話ではなくて、やはり先ほど委員がおっしゃったように、マーケットが多様化して、また、人口が減っていく中で、国内外にどうやって、付加価値をつけて、ニッチなマーケットも探していきながら、より高い値段でたくさん売るかということをまず考えて、その需要フロンティアを開発する中から生産者の取り分をいかにふやしていくか、こういうことを考えようということでございます。

 そのためにいろいろな施策を、一昨年の十二月から需要サイド、供給サイドあわせてやってきたところでございまして、そのような全体の動きに合わせて農協も、地域農協、全農それぞれ対応して、そういうことを変わったから自分たちもやるというよりは、自分たちが先んじてどんどんそういうことを開拓していく。こういうことも含めてやっていただくことによって、よってもって農業者の所得をふやしていこう、こういうことでありますので、単純に、中抜きをしてマージンが減ったので生産者の取り分がふえた、これも改革の中の一つであろうかと思いますが、それにとどまらないことをこの改革を契機にやってもらいたい、こういうふうに思っているところでございます。

鈴木(義)分科員 では、もう一点お尋ねします。

 先ほどの方も質問されていた、二十六年度の補正予算で稲作農業の体質強化緊急対策事業、これは資料をいただいたんですけれども、こういう、ホームページからダウンロードしたんだと思うんです、農家の皆様へという、これをずっと読んでいくんですけれども、この申請に当たって、データの提出や資料提出の必要なしという説明をされているんです。二%コストを下げる計画を出してくれと言っているのに、簡単なペーパーに少し書き込んでもらって申請すれば、一ヘクタール、一町歩ですね、二万円を超える、三万円ですか、それをお金をあげますよというふうにおっしゃっているんです。

 御丁寧に、農林水産省のところからQアンドAの、「すでにメニューに書いてある取組を行っている場合は、その取組を助成対象の取組とできないのか。」というと、「本事業では、既に取組を実施している農業者であっても、その取組についてさらにコストを下げるための工夫をしていただければ、既に行っている取組も支援の対象とすることとしている。」ということで、「なお、二%以上のコスト削減を示すデータの提出や二十六年産の生産に係る資料を提出する必要はありません。」

 これはまさしくばらまきじゃないかと思うんですけれども、どうでしょうか。

松島政府参考人 今委員から御質問がございましたのは、二十六年度の補正予算で計上いたしました稲作農業の体質強化緊急対策事業というものでございますけれども、この事業は、米価変動にも対応できるよう稲作農業の体質強化を図るために、生産コスト低減に向けた取り組みを行う農業者を支援する事業でございます。

 その事業の仕組みでございますけれども、まず、農林水産省があらかじめ、支援の対象となる農業機械の共同利用ですとか、それから直播栽培、それから肥料、農薬代といった資材費の削減などの生産コストの低減が見込める取り組みメニューをお示ししまして、農業者がそれぞれの二十七年産の営農計画の作成に当たりまして、みずからどの取り組みを実施するかということをお約束いただいて、そのことに対して交付金を交付するという仕組みにしてございます。

 したがいまして、農業者がメニューに掲げました取り組みを確実に実施していただくということが担保できれば、生産コストが低減されまして稲作農業の体質強化につながるというふうに考えてございます。

 ただ、先ほど委員から、コスト低減の効果を証明する資料は求めないのかというお話がございましたけれども、先ほど申し上げたような仕組みになってございますので、その取り組みが行われたことを確認させていただくということは我々は確実に実施していきたいと考えてございます。そこが担保できればコスト低減の効果が上がるというふうに考えているところでございます。

 また、委員から、農水省の方でホームページにアップしておりますQアンドAについて言及がございまして、これまで取り組んでいた取り組みについては対象とならないのかという質問に対して、そういったものも対象になるというような御質問がございましたけれども、これは、これまでと同じことをしていただくということだけでは我々としてはコスト低減がさらに進むというふうには考えてございませんで、これまで、例えば堆肥の投入によって何らかのコスト低減に取り組んでいただいたとしましても、二十七年産の作付に当たりましては土壌診断をしていただくとか、何か新しい取り組みをすることによってさらなるコスト低減をしていただくということを前提に支援をさせていただいているということでございます。

石原主査 鈴木君、予定の時間が参りましたので、簡単にまとめてください。

鈴木(義)分科員 今、大変詳細な答弁をいただいたんですけれども、このいただいている予算の概要説明の中で、きちっと二十六年度補正予算で二百億計上されて、全体のパッケージでなっているわけです。

 それで、去年の秋に私は地元を回ったとき、一町歩、二町歩やっているお米農家さんは、いや、うちは関係ない、自分のところの自家消費と親戚に、また、もう売る先が決まっちゃっていると。でも、実際苦しいのは、十町歩とか二十町歩ぐらいの中規模でやっているところが、今の価格、一俵当たり八千円ではもう商売にならないんだという話なんです。

 でも、そういう区分けは全然ない。二ヘクタールで切って、一ヘクタール未満と一ヘクタール以上と、そのあとは二万円のプラスアルファでやっていますから……

石原主査 時間が経過しておりますので、まとめてください。

鈴木(義)分科員 そこのところは、最後は大臣でも政務三役どなたでも結構ですから。やはりこれはちょっとおかしいと思うんですよ。本当の体質強化にならない。だって、データをきちっと出してと求めないのになぜお金を出すのか。最後に御答弁いただきたいと思います。

石原主査 林大臣、簡潔によろしくお願いします。

林国務大臣 簡潔に。

 今局長から答弁いたしましたように、取り組んでいただく取り組み自体はしっかり確認をさせていただくということで、効果が上がるように努力をしてまいりたいと思っております。

鈴木(義)分科員 ありがとうございました。

石原主査 これにて鈴木義弘君の質疑は終了いたしました。

 次に、井出庸生君。

井出分科員 維新の党、信州長野の井出庸生です。きょうはよろしくお願いをいたします。

 きょう、ちょうど農林水産委員会の方でも大臣の所信がありまして、私もお話を伺わせていただきました。大臣、副大臣、そして政務官の御挨拶を伺いましたが、メンバーで結束してやっていくということなので多くは申しませんが、責任を持って取り組んでいっていただきたいと思います。

 きょうは、まず農地の集積の関係で伺いたいのですが、政府・自民党の方で、今、農業改革の案をまとめていらっしゃる。

 報道を聞いておりますと、農協改革の部分ですか、全中という組織のあり方、そのあたりがかなり注目をされておりますが、私は、その中に含まれております農業委員会の改革、農地の集積の方が一つ問題としては大きいのではないかなと思っております。

 この農業改革というものは、岩盤規制を突破するとか、そういうことも大事なんですけれども、何よりもまず、頑張っている農家のための改革であってほしい。攻めの農業という言葉がよく出てまいりますが、今頑張っている農業の人たちにとってメリットのあるものでなければならないと思っております。

 その中で、農地の集積について、これは昨年の九月十日の日本経済新聞にも記事になっているんですが、耕作放棄地の固定資産税の課税を強化して、耕作放棄地をそのまま所有しているよりも貸し出したり手放した方が税制上のメリットがある、そういうことを検討するという記事がありました。

 私も、根本的に、そうした農地を持っている所有者に働きかけが行くような、所有者自身がよく考えて、耕作放棄地を持ち続けることがどうかということを考えるような、そういう制度をまずつくっていくべきだと思っておりまして、この日経の記事というものは非常に注目しておったんですが、こうした耕作放棄地の課税強化の取り組みというものについて、大臣にその必要性を伺いたいと思います。

    〔主査退席、小倉主査代理着席〕

林国務大臣 農地の集積のためには耕作放棄地対策というのは大変重要であって、平成二十五年に農地中間管理機構関連法案とあわせて農地法を改正いたしまして、まず、この中間管理機構を活用しようということを明記させていただいたところでございます。

 農業委員会が耕作放棄地を持っている方に対して利用意向調査を行って、所有者が意向表明どおり、すなわち何かやりますということを意向表明どおりに実行しない場合は、最終的に、都道府県知事の裁定によりまして、中間管理機構が当該農地を利用する権利を取得できる、こういうものをまず入れておるところでございます。

 また、今委員がおっしゃっていただいたように、税制も大変重要な手法であるということで、平成二十七年度の税制改正に際して農水省として要望をさせていただいたのが今の記事だと思いますが、農地中間管理機構に貸し付けた農地については、まず固定資産税を非課税とする、これは軽減するわけですね。一方で、有効活用されていない遊休農地については課税を強化するという、ふやす方と減る方とセットでの措置というのを要望したのでございますが、最終的に調整がつきませんでした。

 私が農林水産大臣をやめた後、実は自民党に戻りまして税制調査会というところにおりましたので、受け手でもあったわけでございますが、当時の議論を少し思い出してみますと、固定資産税というのは、土地の値段が一つ決まりますと、それについて違う取り扱いをするというのはなかなか原則として難しい、不公平になってしまうわけでございますので。その土地の値段にかかわらず、今耕作放棄地になっているか否かとかで区別をするというのがなかなか難しい、これが税の当局側の主張でございました。

 そういう主張があったものですから最終的に調整がつきませんで、税制大綱、与党で書かせていただいたものには、最終的には、農地保有に係る課税の強化、軽減等の方策について総合的に検討するということで、引き続きこれは検討していこうということになったわけでございます。

 農地中間管理機構の初年度の実績の検討、分析、これを今からやっていきますが、さらに平成二十八年度税制改正の中で検討してまいりたいと思っております。

    〔小倉主査代理退席、主査着席〕

井出分科員 税の観点から耕作放棄地か否かというところで区別するのは難しいという話で、引き続き検討されるということなので、私はこの税制の面からも検討を続けてほしいと思いますし、税制が難しいのであれば、それにかわる何かペナルティーや優遇制度でも結構なんですけれども、農地を所有している御本人が、やはり自発的に、耕作放棄地というものをちょっとどうにかした方がいいのではないか、そういうことを制度的に考えていくということは、私はぜひこれは農地集積の一つのメーン、目玉に据えていただきたいと思いますが、もう一度お願いいたします。

林国務大臣 何らかのインセンティブ、ディスインセンティブを組み合わせて、持っている人みずからが出していただくようにするということは、委員がおっしゃるように大変に大事だというふうに思っております。

 既に、この農地中間管理機構関連では、出していただいた方に対する集積協力金、こういうものも用意をして予算も計上させていただいているところでございますので、こういうものとあわせて、今、初年度でどういう実績になっているか、先ほど申し上げましたように、よく分析して、さらに何ができるか、しっかりと検討していきたいと思っております。

井出分科員 農地中間管理機構の話が出まして、そのことについても伺いたいのですが、農地中間管理機構に思ったように土地がまだ集まってきていない。たしか、これはことしの二月一日の読売新聞の記事に、読売新聞の調査で、農地貸し、目標の一割にとどまっている、そういう記事が出ておって、実態は苦労をしているのではないかなと思います。

 地元で農家の方に聞いておりますと、中間管理機構という存在が、まだなじみが薄いというか、遠いと。実際、農地中間管理機構は、業務を市町村に全て委託するような仕組みもとっておるのではないかと思うんですが、そうすると、市町村に委託することなども見ると、農地中間管理機構が本当に実態を果たしているのかなと、そういうところを疑問に思っておるんですが、目標に思ったように到達していない理由なども含めて、ちょっと現状を御説明いただきたいと思います。

奥原政府参考人 農地中間管理機構の関係でございます。

 この農地の中間管理機構につきましては、担い手への農地の集積、集約化、それから耕作放棄地の発生防止、解消、こういった、人と農地の問題を解決するための切り札としまして、平成二十五年に法律をつくっていただいたところでございます。法律は昨年の三月から施行されておりまして、実質上、この二十六年度が初年度の運用をしている、こういうことになっております。

 現時点では、東京都を含めまして全ての都道府県でこの機構が立ち上がっておりますけれども、県ごとに見てみますと、やはり県ごとにかなり仕事のやり方について濃淡があるところでございます。ある県では、県知事が本当にリーダーシップを発揮していただきまして、テレビでもラジオでもいろいろなところに出ていただいて、知事を信頼して農地を貸してくださいということを言われて、かなり軌道に乗りつつあるところもございますが、一方で、従来やっておりました農地保有合理化法人、このときと余り意識改革が進んでいない、そういう県も散見をされるところでございます。

 こういったことの背景となっておりますのは、一つは、やはり各県の機構の役員の体制ですとか役職員の意識の問題、それから業務体制の問題、こういったことが従来と比べて変わっていないという問題。それともう一つは、この中間管理機構がきちんと動くためには、それぞれの市町村、それから市町村の中の地域におきまして、農家の方がきちんと話し合っていただいて農地を流動化させていく、人・農地プランと言っておりますが、これの取り組みが必ずしも十分進んでいない、こういったことがあるというふうに考えております。

 ですが、現在、担い手が農地の五割を利用しておられますけれども、十年間でこれを八割のところまで持っていく。このための手法として農地の中間管理機構を導入しておりますので、ここにつきましては、できるだけ早くこの機構を各県とも軌道に乗せて、本格的に仕事ができるようにしていきたいというふうに思っております。

 この三月末で初年度の実績が県ごとに大体まとまりますので、このことをきちんと評価いたしまして、分析もした上で、二年度に向けてどういう形で軌道に乗せていくか、そこを具体的にさらに詰めていきたいというふうに考えております。

井出分科員 今、初年度の実績を見てこれから考えていきたいというお話がありました。

 私も各都道府県の中間管理機構のホームページなんかも一部見せていただいたんですが、先ほど、役員の体制というお話がありまして、例えば、北海道から東日本の各都道府県の中間管理機構を見ますと、実に半分以上の管理機構のトップが県の農政部長だったり、県の農政のトップだった方が中間管理機構のトップになっている。それで、先ほど私が申し上げた、実際業務は市町村に委託をする仕組みになっている。

 そうすると、現場で農業に取り組んでいる方は、実際何か新しいことが起こっているのか。特に、土地を借りたがっている農家というものは、そこに土地が集まってこないことには動き出せないわけですし、そこへの期待が若干低いのかなとも思います。また、もっと言えば、使っていない農地を所有している所有者からすれば、現に農業をやっていないわけですから、農家以上に関心が持てないような状況になっているのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

奥原政府参考人 まず、農地中間管理機構の役員の体制でございますが、今、先生からも御指摘ございましたように、各県の農地中間管理機構の役員は、全体でいいますと大体五百五十人ぐらいおられますけれども、その中で、トップの方を県庁のOBの方ですとか、現役の部長が兼ねておられる方もありますけれども、県との関係がかなり強い人事になっているのは事実だというふうに思っております。

 農地中間管理機構の法律の中では、役員の過半は経営について実践的な能力を持つ方にするということも入っておりまして、できるだけ、民間でいろいろな経営をされている、経営ノウハウを持った方に入っていただくということも法律の中では要請をしているわけでございます。

 実際には、五百五十人おられる役員の中で、企業での役員経験があるような方ですとか、あるいは農業で法人経営をやっていらっしゃるようなところの役員の方とか、まだこういう方が大体一割ぐらい入っているという状況でございまして、役員として民間の方が入っていただいても、必ずしもそのノウハウが十分に活用されていない、そういう状況も見られるところでございます。

 今度の農地中間管理機構は、借りたい人、それから貸したい人が来るのを待っているという組織ではなくて、ディベロッパーと同じように地域をいろいろ動き回っていただいて、農家の話し合いをコーディネートしながら、まとまった農地を中間管理機構が借りて担い手の方に転貸をしていく、こういうスキームでございますので、もっと民間の方々のノウハウを活用するような、そういう組織になっていただく必要があるというふうに考えております。

 一年目の評価をする中で、そういった役員体制の問題についてもいろいろ点検をした上で、二年目の具体的な対策を考えていきたいというふうに思っております。

井出分科員 中間管理機構というものは、土地を持っている方と借りたい人との中間的な受け皿だと思うんですが、私は今農業を頑張っている農家の方の話を聞けば、いろいろな地主さんから土地を借りている、毎年毎年、その地主さんとのおつき合いがシーズンが終わったらある、少しでももっと効率的に自分の仕事ができるように土地を探していると。それが、今現状で少しでも何とかよくやっていこうとしている農家さんの実態です。

 そのときに、最初に申し上げました耕作放棄地を持っている所有者側の税制なり、そういう制度改正をして、制度改正をすることによって、農業を頑張っている人の借りたいというニーズと、こっちの制度さえ動かせば、あとはそこを自然に任せた方が、間に受け皿をつくるより、先ほど局長がおっしゃられた流動性というものがよっぽど出てくるんじゃないかな、そういうことを考えてきょうこの質問をさせていただこうと思っているんですが、いかがでしょうか。

奥原政府参考人 実は、平成二十四年度から、市町村段階の人・農地プランというものを始めました。これは、農地を流動化させるために、その地域の農家の方々、これは所有者の方と担い手の方々、両方を含めてですけれども、話し合っていただいて、高齢な方から今後の担い手の方のところに農地の利用権を移していくという話し合いをしていただいて、プランをつくるという話を進めてまいりました。

 これを進めながら農家の方々の意見交換もいろいろやってまいりましたけれども、固有名詞のついた方、要するに、AさんからBさんに農地を貸すという話は、これはなかなか実際には難しいところがございます。

 例えば、AさんがBさんに貸すという場合に、Bの方が担い手であるということはわかっていても、人間関係もあって、なかなかAからBには直接は貸せないというような話も中にはあります。それから、個々の相対でやっておりますと、やはり、まとまった農地の面積になかなかならない。規模が拡大するにしても、分散した圃場の数がふえていくだけで、受ける方からすると、まとまった農地を効率的に使うということができない。

 そういった御指摘もいろいろいただきまして、であれば、人・農地プランで話し合うだけではなかなか理想的な姿にならないということで出てきたのが、この農地の中間管理機構でございます。

 この中間管理機構が所有者の方から一旦農地を借りて、これを担い手の方に、できるだけまとまって使いやすい形にして転貸していく。間に中間管理機構が入ることによって、集積、特に集約化の効果をできるだけ上げていこうという発想で、この中間管理機構を整備したわけでございます。

 御指摘のように、出し手のところのインセンティブをどのようにつけていくかは重要な問題でございまして、既に出し手に対する協力金という補助金はついておりますが、税制とかそういったものを含めまして、さらに出し手の方が出しやすい、受け手の方が中間管理機構を通してまとまった面積が借りやすい、そういう状況になるようにいろいろな工夫をしてまいりたいと考えております。

井出分科員 農家の方からすれば、おっしゃったように、できるだけ効率的にまとまった土地を借りたい、もっと言えば、それを長期的に借りられるものなら借りたいと。途中で急に返してくれと言われて、そこが自分の畑のど真ん中だったりしたら、それは大変なことなので、そういった農家のニーズにこれまで農業委員会が余り機能してこなかったから、まず農業委員会の改革の議論が出てきたのだと思いますし、これからは中間管理機構が農地集積と貸し出しの一番のメーンの役を担っていくと思うんですけれども、果たして、農業委員会のように、本当の農家のニーズといいますか、そういうものにきちっと応えられるのか。

 多くの農業委員会が、しっかりやっていただいているところもあると思いますので、一部だとは思いますが、やはり農家のニーズに応えない、事なかれ主義で、外からの企業の進出に対するものをしっかりストップをかけていくとか、そういったところには役割を果たしてきたのかもしれませんが、中間管理機構がそういう事なかれ主義の団体になってしまって、一方で、今回、中間管理機構の方に貸し出すことのメリットはかなりいろいろ出されていると思うんですけれども、そこに土地が行くような、事なかれ主義のところに土地が集まるようでは、農家の方にとっては余りそれはいいことではないと思うんです。

 そういうことのないように現場との密着をしっかりやっていただきたいと思うんですけれども、県に組織を一つつくって市町村に業務を移管する。市町村に業務を移管して、現場の農家さんから見たら、何が変わっているのかわからないというような声が上がっている。先ほどディベロッパーのようにというお話がありましたけれども、この中間管理機構をこれから柱に据えていくのであれば、そこのところは本当に真剣にやっていただかなければ大変なことになってしまうと思うんですが、いかがでしょうか。

奥原政府参考人 そこはもう先生御指摘のとおりだと思います。

 農地中間管理機構は、いろいろな業務をいろいろなところに委託ができるようになっておりまして、市町村に委託をしてもいいわけですし、あるいは農協でも民間の機関でも委託をすることができるようになっておりますが、これは丸投げをするということを求めているわけではございませんので、あくまで農地中間管理機構が中心となって、委託をしたところをうまくコーディネートして県内全体での農地の流動化の成果を上げていくというのが目的でございます。

 それから、先生から今御指摘ございましたけれども、農業委員会でございますが、これも農地中間管理機構と密接な関係がございます。

 農業委員会は、農地に関する市町村の独立行政委員会でございます。仕事としては、担い手への農地利用の集積、集約化、それから新規参入の促進、あるいは耕作放棄地の発生防止、解消といったことを目的としておりますので、農地の中間管理機構と目的の点で共通する部分が非常に多いわけでございます。農業委員会と農地中間管理機構がうまく連動すれば、農地の流動化の成果をさらに上げていくことができるわけでございます。

 一方で、現在の農業委員会の活動状況、これは地域によってかなり実は違っておりまして、農林省の方が平成二十四年に行いましたアンケート調査によりますと、農家の方から見て農業委員会の活動を評価している方が大体三割ぐらいしかいないというのが現状でございます。地域によって相当違いますけれども、農地の集積などの農家への働きかけが形式的であるとか、遊休農地等の是正措置をきちんと講じてくれないとか、農業委員が名誉職となっているとか、こういった御指摘をかなりいただいているところでございます。

 こういったことを背景といたしまして、今回、農業委員会についても改革をするということになっておりまして、二月に取りまとめました法制度の骨格の中では、農業委員の選出方法につきまして、公選制から市町村長の選任制に改める、このときに、農業委員の過半は認定農業者の方にするというルールも入れていこうという話になっております。

 それから、農業委員とは別に、それぞれの地域で、農地利用の最適化、担い手への集積ですとか耕作放棄地の発生防止をきちんと点検して担っていく農地利用最適化推進委員、こういったものを新たにつくっていこうという話も制度の骨格の中に入っておりますので、こういった農業委員会の改革が進んでいけば、農地中間管理機構との連動がさらに強まりまして、農地流動化の効果はさらに上がるものというふうに思っております。

井出分科員 私の地元でも昔あった話で、新規就農したい方が農業委員会の人のところを回って、農地を使いたい、農地を貸してほしいということを言ったら、実績をつくってから来い、いや、実績をつくるために農地が必要なんだ、そういう話が私のところにあるんです。

 ただ、おっしゃっているように、農業委員会の方が、私の地元では、この土地はどなたのもので今どういう状態になっているとか、そういうパトロール的な部分は非常によくやっていただいているという声もありますので、農業委員会の改革と、あと、今おっしゃいました中間管理機構との連動の部分が、まだちょっと私自身いろいろ勉強している中で見えていないところがありますので、今後議論をさせていただきたいと思います。

 あともう一点、農協改革の関係できょう一点だけ伺いたいことがありまして、農協改革の方は全中についてのいろいろな改革の話が出ておって、共通の認識としては、地域の農協が個性を生かして、自主性を持って頑張っていかなければいけないというところだと思うんです。

 そのときに、私がずっと思っていたのは、どうして地元の農家が地元の農協にしか入れないのかと。隣の農協が頑張っている、例えば、隣の農協を利用した方が資材が安いとか、そうしたときに、正規の組合員として隣に入れる。今、准組合員なら入れるということはあるようですけれども、それですと、准組合員をいたずらにふやすようなことにもなります。

 原因は農協の定款にあると聞いているんですが、農協が定款を変えるんじゃなくて、農家の方がやはり自由に選択をすることができるようにならないと、それぞれの農協が切磋琢磨して頑張るという状態をつくれないかなと思っておりまして、そこのところはぜひ農家の側が農協を選べるようにする。そこを、今、実態はそうなっていないので、実態の面でもそうなるような議論が必要だと思っているんですが、その点について見解をいただきたいと思います。

奥原政府参考人 農協だけではございませんが、協同組合につきましては地区という概念がございます。この地区の中で、農協であれば農業者の方がこの農協のメンバーになって農協を利用する、こういうことで地域の概念がございます。ですから、一つの地域に複数の農協ができていれば、これは、農家の方がどちらの農協を利用するかということは選択できるようになるわけでございます。

 かつては、一つの地域に複数の農協をつくるということが基本的に法制上認められておりませんでしたが、実は平成十三年に、一つの地域に複数の農協をつくるということを認める法改正がなされました。ただ、そのときは、県庁が、県知事が認可をするときに県の中央会の意見を聞かなければいけないという規定が入っておりました。ですが、この規定につきましても、平成二十五年に、義務づけ、枠づけの見直しに係る一括法の法律改正がございまして、このときに中央会の協議条項も落としております。

 したがいまして、今は、申請があれば、一つの地域に複数の農協をつくることはできる、そういう状況になっております。

 ただ、法制的にはそうなっておりますが、実際に一つの地域に複数の農協がどんどんできてくるかというと、実際にはそういう状況ではございません。どんどん手が挙がったり、地域を広げようという話が出ているわけではございませんので。

 実際に、農協は、活動するときに、ほかの農協ばかりではなくて一般の民間の機関ともいろいろな形で競争しております。だから、そのことをきちんと自覚をしていただいて、自分たちの農産物の販売ですとか資材の購入についての競争力を高めるような工夫をもっとしていただく必要があるというのが、今回の農協改革の一つの考え方でございます。

井出分科員 大臣にも伺いたいんですが、今お話があったことは私も以前にも聞いておるんですが、実態として、地元の農家さんがその地元にある農協に入らざるを得ない。

 私は、本来であれば、農家の側が農協なり自分の仕事をする先を選べるようにする方が農協にとってもそれはいいことだと思っているんですが、実態は、地域に一つ農協があって、農協に入るのは、地区でお住まいのとか、地区で十アール以上とか、その地区に住んでいるということが実際言われていて、これは言葉がいいのかどうかわかりませんが、もう選択肢が一つしかない。それが逆に、農業の、そういうこれから目指していく農協の活性化を阻害してきた大きな要因だと私は思っているんですけれども、大臣の見解をいただきたいと思います。

林国務大臣 私は、先生がおっしゃるように、基本的に、農家が農協を選ぶ、地域農協が中央組織を選ぶということがやはりより進んでいくように今回の農協改革も進めていかなきゃいけないと思っております。

 一方で、農協に入る必要というのは、実は農業の場合はないわけでございまして、農家が自主的に共同購入をしたり共同販売をしたりするために自主的につくる組織でございますので、そもそも農業をやるための必須の条件ではない。

 農協を経由している農産物も、日本全国で平均をとりますと、たしか五割は切っておりますので、実際に五〇%を超える農産物が農協は通っていない、こういうこともございますので、そういうこともあわせて、全体として農業がよくなっていくために農協がいかにあるべきかということをしっかりと踏まえて農協改革を進めていきたいと思っております。

石原主査 井出君、申し合わせの時間が来ておりますので、まとめてください。

井出分科員 はい。

 今、必須ではないというお話があって、実態、少しずつ農協に入らないことについてはそういうふうになってきているのかなと思いますが、かといって、その取り残されている農協が停滞しているわけにもいきませんので、そこのところをまたこれから議論させていただきたいと思います。

 きょうは、ありがとうございました。

石原主査 これにて井出庸生君の質疑は終了いたしました。

 次に、田村貴昭君。

田村(貴)分科員 日本共産党の田村貴昭です。

 国営諫早湾干拓事業における開門問題とその解決について質問をいたします。

 政府は、確定した開門義務を履行して有明海漁業の深刻な被害を解決する責任を負っているにもかかわらず、開門もその対策工事もやろうとせず、深刻化する漁業被害を放置し続けています。

 開門問題をめぐっては、開門を求める漁業者側が開門をしない場合の制裁金を、営農者側は開門した場合の制裁金の支払いを福岡高裁に申し立て、両者ともに認められました。これは去年の話です。ところが、農水省はこの二つの高裁決定に抗告をしました。

 しかし、最高裁判所第二小法廷は、一月二十二日、国の二つの抗告を棄却しました。つまり、堤防を開門してもしなくても国が制裁金を支払うことが確定したわけであります。

 この国が支払い続けている制裁金は何日現在で幾らに達しているか、お知らせください。

三浦政府参考人 お答えいたします。

 国がこれまで支払っております間接強制金につきましては、本日までの間に、昨年六月十二日から本年二月二十八日までの分、二百六十二日分といたしまして、総額で一億一千七百九十万円を支払い済みでございます。

田村(貴)分科員 その一億一千万に至る制裁金という原資は何ですか、そして、その制裁金の費目は農林水産省予算のどこから支出されているか、教えてください。

三浦政府参考人 まず、支払いの科目につきましては、農林水産本省共通費の一つでございます、目で申しますと、賠償償還及払戻金という目に該当する予算から支出をしております。

 この原資は税金であると承知しております。

田村(貴)分科員 林大臣にお伺いをいたします。

 前任の西川大臣は、この最高裁の決定を受けて、一月二十三日、次のコメントを出しました。

 国は、開門してもしなくても間接強制金を支払う義務を負っている状況に変わりはなく、引き続き、非常に厳しい立場に置かれているものと認識しています。

 このため、本件をめぐる一連の訴訟において、速やかに最高裁判所の統一的な判断を得る必要があると考えています。引き続き関連訴訟に適切に対応するとともに、問題の解決に向け、関係者間の接点を探る努力を続けてまいります。

林大臣も同じ認識でしょうか。

林国務大臣 今委員御指摘のように、本年一月の二十二日でございますが、最高裁判所は、開門に係る間接強制と開門禁止に係る間接強制のいずれについても、国の抗告を棄却する旨の決定をいたしました。

 このことを受けまして西川前大臣が、今御指摘があったように、開門してもしなくても間接強制金を支払う義務を負って厳しい立場に置かれており、速やかに最高裁の統一的な判断を得る必要があるとの趣旨のコメントを発出したところでございます。

 私としても、基本的には、このコメントの考え方を大きく変更する必要はないと考えております。

田村(貴)分科員 それではお尋ねしますけれども、最高裁判所の統一的な判断を得る必要がありますの統一的な判断とはどういうことを指すんでしょうか。

佐藤大臣政務官 本件をめぐっては、現在、開門の当否そのものを争う開門請求訴訟と開門差しとめ訴訟、また、平成二十二年十二月に国に開門を命じた福岡高等裁確定判決の執行力の排除を求める請求異議訴訟といった、実体的な義務について争う訴訟が係属しております。これらについて最高裁としての判断を得ていく必要があると考えております。

田村(貴)分科員 開門と開門反対、百八十度違う主張のどこに統一的な判断を求めていこうというのでしょうか。

佐藤大臣政務官 国は、開門義務と開門禁止義務の相反する二つの義務を負い、いずれか一方の立場に立てない状況にあります。

 国としては、このような状況が解消されるような裁判所の判断を求める必要があると考えております。

田村(貴)分科員 一つは確定判決ですよ。統一の判断というのは、漁民の側も営農者の側も納得し得る、そういう提案を指しているんですか。

佐藤大臣政務官 いずれか一方の側の主張に立って考えているものではございません。

田村(貴)分科員 「統一的な判断を得る必要がある」、得る必要があるというのは、最高裁判所に対して政府が、農林水産省が注文をつけているという理解でいいんですか。

佐藤大臣政務官 国は、開門義務と開門禁止義務の相反する二つの義務を負い、いずれか一方の立場に立てない状況にあり、このような状況を解消していくため、最高裁による統一的な判断が必要であると考えております。

 このため、国の立場や考え方が裁判所に認められるよう、引き続き、必要な主張を申し述べるなど、関連訴訟に適切に対応してまいります。

田村(貴)分科員 その国の立場、国の主張というのは、開門とそして開門反対の中でどういう立場のどういう主張なんですか。この際、はっきり答えてください。

佐藤大臣政務官 繰り返しの答弁になりますけれども、いずれか一方の側の主張に立って考えているものではございません。

田村(貴)分科員 全然わかりませんね。

 では、いつまでこの裁判をやるんですか。半年で一億円、一年間で二億円。これは何年もかかりますよ、残る裁判を最高裁までやっていったら。それを支払い続けるんですか。この裁判をいつまでやろうとしているんですか。どなたか答弁してください。

三浦政府参考人 恐縮でございますが、裁判の帰趨に関して予断を持ったお答えをすることは差し控えさせていただきたいと存じます。

田村(貴)分科員 林大臣も基本的に踏襲としてきたその西川大臣のコメントなんですけれども、「速やかに最高裁判所の統一的な判断を得る必要がある」、速やかにと言っているんですよ。速やかにというのは、いつ終わるかわからない裁判のことを指すんですかね、農林省の側に立ってみたら。これは解決しませんよ。どうするんですか。一体、国としてどうするのか、どうしたいのか、責任ある姿勢が全く見えてきません。

 国営事業として巨大な国費を投入して干拓事業を行って、堤防を締め切って、それがもとで有明海に異変を来して、そして深刻な漁業被害が長年にわたって続いている。漁業者にとっては死活問題が長年にわたって続いているのを、これからまだ繰り返そう、続けていこうということなんでしょうか。

 最近の漁場それから漁民の状況についてちょっと述べたいと思います。

 例えば、名産のタイラギ漁であります。佐賀大浦、福岡柳川、大牟田など、三年連続の休漁であります。十月十五日から二十九日に調査した五十五地点で成貝が確認されたのは湾奥中央部の一地点だけ、百平方メートル当たり三個体で、漁ができる基準となる百個体以上にはほど遠い状況だったということです。

 佐賀の有明海漁協の漁民の声があります。これまでの不漁は、タイラギの稚貝は発生するが、夏には死ぬのが問題であった。しかし、今期は稚貝すらいない。そのほかの魚も、種類、収穫量ともに減って、お金になるものがとれないから、油代にもならず、漁に出られない。ことしに入ってから、一カ月のうちに二、三日しか漁に出ていない。事実上の失業状態。こんな声が上がっていますよ。

 アサリ養殖の状況についてはどうですか。

 佐賀県有明水産振興センターが昨年四月から五月に実施した調査では、稚貝の数が前年から比べて七分の一、激減しています。

 長崎のアサリ養殖、こんな話を伺いましたよ。環境の悪化で稚貝が育たないから、中国産の大きなアサリを輸入してきて、その大きなアサリをまいて、それをとっている。これは品質表示に問題があるから、有明海でとったとしても、中国産と表示して販売しなければならない。こんな矛盾を来していますよ。

 そして、名産のノリはどうでしょうか。

 林大臣、ここにノリを持ってきました。佐賀県の太良町大浦でとれた秋芽の一番ノリです。ごらんいただけますように、色落ちしています。確認できましたか。おすし屋さんで食べるノリというのは、ぴかぴか光って、黒々として本当においしいんですけれども、これは明らかに色が落ちています。売り物になりません。香りがしないんですよ。ノリの風味がない。いその香りがしない。このノリは一枚四円二十銭、六等級であります。

 佐賀県の西部は、この十年ほど毎年赤潮続きで、そして、ことしはその中でも最も最悪な状況ということであります。秋芽が色落ちし悪かった上に、赤潮のために冷凍ノリを張るのも延期せざるを得ず、特に太良町では、三週間も延期した結果、色落ちするとわかっていても、網を張らなければ共済のお金もおりないので仕方なく網を張ったけれども、結局一回しかとることができなかったということであります。

 赤腐れ、それから芽流れ、熊本でも長崎でも福岡でも、地域によっては同様の状況が報告されています。

 貝が立たない、ノリが色落ちする、そして魚がとれない、漁に出られない、油代も賄えない、こんな状況の漁民の声を、切なる思いをどのように農林水産省として受けとめておられますか。大臣、どうですか。

あべ副大臣 有明海につきましては、赤潮、貧酸素水塊の発生などによって漁業が本当に大きな影響を受けており、タイラギに関しましては、佐賀、福岡両県でタイラギ潜水器の漁業が平成二十四年から三年連続休漁であること、もう委員がおっしゃったように、アサリに関しましても、平成二十四年の漁獲量千五百五十六トンで、ピークであった昭和五十八年九万九百十九トンの約二%であること、また、委員が御持参くださいましたノリ、毎年色落ちが発生していることなど厳しい状況であること、私ども十分に認識をしているところでございます。

 農林水産省といたしましても、有明海の再生、国としても重要な政策課題であることを認識しておりまして、これまでも、増養殖技術の開発、赤潮、貧酸素水塊の発生機構の解明、また、覆砂、海底耕うん等による漁場の環境の改善などに取り組んできたところでございます。

 今後とも、関係県と連携しながら、必要な取り組みを推進してまいります。

田村(貴)分科員 今、副大臣、御説明ありました。いろいろやってきた、海底耕うん、覆砂その他、それを私は全て否定するものではございません。だけれども、やっても根本的な解決につながっていない。長く長く、どの漁業をとっても深刻なやはり影響が出ていることに変わりはないんですよ。

 これを打開するためには、福岡高裁の確定判決も述べているように、やはり一回開門したらどうなのかということですよ。開門しないとわからないじゃないですか。開門して環境がよくなるのか、それとも変わらないのか、あけてみないとわからないじゃないですか。

 福岡高裁の確定判決に従う、国はそう言い続けてきました。その確定判決では、漁業被害と、そして干拓事業との関係においてはこう述べています。諫早湾では、潮受け堤防の閉め切りによって生物の生息環境に影響を及ぼす貧酸素水塊の発生が促進されている可能性が高い。赤潮の発生が促進されている可能性もあり、諫早湾やその周辺では魚類資源減少に関与する要因が複数生じた可能性が高いとして、堤防閉め切りと漁業被害との因果関係を肯定するのが相当だ。この確定判決に従うべきではありませんか。

 林大臣は、去年、まさにこの分科会で我が党の赤嶺政賢衆議院議員の質問に対して、因果関係の問題とか、それから共済金があるとか、いろいろ御答弁されたことは伺っています。しかし、今、副大臣もおっしゃったような対策ではもう解決できないといったところは明らかであります。

 今後どうしていくんですか。ノリがとれるように、貝が立つために、魚がとれるように、どうするんですか。しかとお答えいただきたいと思います。

林国務大臣 前回もここで赤嶺先生にはそういうお答えをしたと記憶をしておりますが、その後、裁判がいろいろ積み重なっております。国が負った義務は、開門義務と同時に開門禁止義務、相反する二つの義務を負っておるわけでございますので、法的にはどちらが優先するか明らかではなく、裁判所の判断を経なければいずれか一方の立場に立つことができない状況にあるということで、先ほどの西川前大臣のコメントということになろうか、こういうふうに思っております。

田村(貴)分科員 大臣、二つの異なる決定だとか、それから義務の衝突だとか言われているんですけれども、開門差しとめ仮処分の決定はこういうことなんですよ。被害防止のための対策工事をせずに開門するということを禁じたんですよ。換言すれば、被害が出ないように開門すればよいということではないですか。そのために農林水産省も、開門による被害が出ないように、農業用水を確保するために今努力をしてきたんじゃないんですか。何でこの工事をしないんですか。

林国務大臣 この対策工事の実施のためには、河川法に基づきまして地元地方自治体との協議、それから、工事に必要な民有地の使用についての地権者の了解等が不可欠になってまいりますが、地元関係者、地方自治体、これが開門に強硬に反対をしておりまして、協力を得られていない状況が続いているわけでございます。

 また、地元関係者の一部は、開門差しとめ訴訟において国と係争中でございますので、開門しない前提でなければ話し合いには応じない、こういう姿勢を崩していないわけでございます。

 こういう状況を踏まえまして、開門差しとめ訴訟などにおいて国の主張を申し述べるとともに、粘り強く関係者間の接点を探る努力を続けていく必要があると考えておるところでございます。

田村(貴)分科員 それでは解決しませんよ。やはり、反対している側の人たちを確定判決に従って説得するのが農水省の仕事というものじゃないんですか。

 統一的な判断を最高裁に求める以外にすべがないとおっしゃいますけれども、その当の最高裁は何と述べていますか。この間の間接強制の決定の理由の中でこういうくだりがあります。

 当事者が異なり、別個に審理された裁判の判断が分かれることは制度上あり得るとし、法的要件は満たされているとの理由であります。開門の是非については審理する立場にない、この間接強制の判断で審理する立場にない、開門、開門しないか。民事訴訟上、対立する二つの主張は認めることはあり得る。

 だから、これ以上農水省が統一的な判断を求めたところで、それを望むことはもはやできないのではありませんか、最高裁がこう言っているんですから。いかがですか。

佐藤大臣政務官 本年一月二十二日の決定におきまして、最高裁が御指摘のような内容について言及したことについては承知をしております。

 一方、この最高裁決定後におきましても、国は依然として相反する二つの義務を負い、いずれか一方の立場に立てない状況にございます。

 このような状況を解消していくため、速やかな最高裁による統一的な判断を求める必要があると考えているものでございます。

田村(貴)分科員 同じことを何度も繰り返すんですけれども、間接強制が福岡高裁で決定されたときに、佐賀新聞が一橋大学大学院の山本和彦教授の次のコメントを報じました。

  順当な判断だ。長崎県側の協力は必要なく、国の意思だけで開門できると、はっきりした判断を下している。国は開門してもしなくても制裁金を支払う立場に置かれている。国の財政からみたら大した額ではないが、理由もなく税金から支払う事態は避けるべきだ。当事者間の話し合いで解決できれば別だが、開門義務が確定している以上、国が営農者側の仮処分決定の取り消しを求めるしか選択肢はなくなっているように思える。

民事訴訟法の専門家もこう指摘しているではありませんか。

 そして、何度も言いますけれども、農林水産省が期待を寄せる最高裁判所、この間の決定の最後にこう結んでいます。

  なお、本件各排水門の開放に関し、本件確定判決と別件仮処分決定とによって抗告人が実質的に相反する実体的な義務を負い、それぞれの義務について強制執行の申立てがされるという事態は民事訴訟の構造等から制度上あり得るとしても、そのような事態を解消し、全体的に紛争を解決するための十分な努力が期待されるところである。

抗告人というのは国のことですよね。紛争解決の十分な努力が期待されているというのは国のことを指していると思いますけれども、それで間違いないですね。どうですか。

三浦政府参考人 先生の引用されたくだりにつきましては、こうなっております。

 本件各排水門の開放に関し、本件確定判決と別件仮処分決定とによって抗告人が実質的に相反する実体的な義務を負い、それぞれの義務について強制執行の申立てがされるという事態は民事訴訟の構造等から制度上あり得るとしても、そのような事態を解消し、全体的に紛争を解決するための十分な努力が期待されるところである。

となっておりまして、最高裁判所がこれで具体的に名宛て人として誰に対し言っているのかというのは、国も当然入ってくるとは思いますけれども、「全体的に紛争を解決するための十分な努力が期待される」というところでどこまで指しているかというのは、必ずしも決定文から一義的に明確ではないのではないかと受けとめております。

田村(貴)分科員 それはないでしょう。この文脈からいって、誰に、全体的に紛争を解決するための十分な努力が期待されているところであるか。これは国しかないですよ。決定文を読んだみんなが言っていますよ、ジャーナリストも専門家も報道も。農水省がそういう立場ではだめですよ。無責任もいいところです。

 林大臣、最高裁もサジェスチョンを示しています、打開の方向を示しています。最高裁に一方的な統一的な判断を求めているけれども、国の十分な努力によって期待されることを最高裁判所は投げかけているんです。努力を怠ってはいけません。この決定理由を読み返してみて、やはり、私は国の努力が一番必要だというふうに感じました。

 こう指摘されても、その一つの責任者である国は何もしないんですか。何も動かないんですか。この決定を受けて何かしたんですか。何かしたら答えてください。どう受けとめたのですか。

林国務大臣 何もしない、何もしないで待っているという意味ではなくて、引き続き、先ほど申し上げましたように、これまでもやってまいりましたけれども、この問題の解決に向けて今後も関係者間の接点を探る努力、これは続けていくということは当然の前提でございますが、先ほど来いろいろなやり取りをさせていただいておりますように、我々としては相反する義務を負っている状況というのは変わっていない、こういうことでありますし、地元との関係も、先ほど私が答弁したとおりでございます。

 したがって、今委員がお引きになったところ、解釈は今局長から答弁があったとおりでございますが、全体的に紛争を解決するための十分な努力が期待されるということは承知をしておりますので、引き続き、問題の解決に向けて我々ができること、すなわち関係者間の接点を探る努力、これはしっかりと続けてまいりたいと思っております。

田村(貴)分科員 大臣、もう一つ。

 日本経済新聞の一月二十八日付の社説であります。「政権として諫早湾の解決を」、これが見出しであります。「もともと国に責任があるのに、相変わらずよそ事であるかのような農水省の姿勢には違和感をぬぐえない。司法判断が示されるたびに関係者が一喜一憂する姿はむなしい。もつれた糸を解きほぐすには法廷外で関係者が一堂に会して話し合うしかないのではないか。」「もはや農水省任せではなく、安倍政権として解決に乗り出すべき時ではないか。」

 私もそう思いますし、国民もそういう解決方法を望んでいると思います。大臣、開門を前提にしない会合を幾らやってもだめなんですよ。開門による農業被害を防止する立場での実質的な協議に直ちに入ることを求めたいと思います。

 もう一点。せっかくつくった干拓営農地です。農業を定着させる、そして、豊穣の海と言われる有明海をもとに戻して豊かな漁場をよみがえらせる。農林水産省がとるべき立場というのは農漁共存ではないですか。今は干拓地において営農はできます。しかし、漁業はもう先が見えない状況になっています。農漁共存の立場をとるのが農水省ではありませんか。

 確認します。誰か答えてください。

三浦政府参考人 農林水産省は、農林水産業の振興を図ることを重要な責務としております。どの地域におきましても、農業の振興を図り、また、漁業の振興を図るということを進めていくことは私どもの責務でございます。

 ただ、本諫早湾干拓事業に関することにつきましては、ただいま先生の御質問にるる答えてまいりましたような状況を踏まえて、どういったことが適切かということを考えていかなければならないという状況にございます。

 裁判に関しましては、お答え申してまいりましたように、二つの相反する義務がある中でいずれか一方の立場に立つことができないという状況にあるということ、それから、それを踏まえて今最高裁の統一的な判断を求める必要があるというふうに考えているということ、こういったことを申し上げてまいりました。

 そういった訴訟に適切に対応しつつ、関係者間の問題として、関係者間の接点を探っていくという努力もあわせて行っていくということを基本に進めてまいります。

 その中で、先ほど副大臣から御答弁申し上げました漁業の振興を図ること、それから、当然、干拓地における農業の振興を図っていくことということも重要な課題として捉えてまいりたいと考えております。

石原主査 田村君、申し合わせの時間なので、まとめてください。

田村(貴)分科員 はい、わかりました。

 最高裁からも国の努力を求められ、各界各方面からも政治の責任で解決すべきとの指摘がなされているにもかかわらず、相も変わらず、主体性のない無責任な姿勢をとり続けていることが明らかになりました。多くの国民はそうした国の対応を決して許さないと私は思います。

 豊穣の海をよみがえらせるために、潮受け堤防を開門すること、そのために農業用水や防災など開門に伴う被害が生じないよう万全な対策を施すこと、そして、農漁共存の地域再生へ国がイニシアチブをとって責任を果たすこと、そのことを強く求めて、きょうの質問を終わります。

石原主査 これにて田村貴昭君の質疑は終了いたしました。

 次に、中根康浩君。

中根(康)分科員 民主党の中根康浩でございます。

 お時間をいただきまして、林大臣初め農水省の皆様方に御質問を申し上げたいと思います。

 きょうは、私は、地元活動の中でお寄せいただいた、ある意味、地元の生の声をそのまま大臣にお伝え申し上げ、いろいろとお答えをいただきたいというふうに思っております。こういう素朴な質問をすることができる分科会という機会は、ある意味大変貴重な機会であるというふうに思っておりますので、ぜひ有意義な時間とさせていただきたいと思います。何とぞよろしくお願いいたします。

 先日、地元の鮮魚の市場に、これは週に一回ずつぐらい訪れているんですけれども、そのときにそこの会員の方々からお寄せいただいたお声でございます。

 私の地元は愛知県の岡崎市でございますが、この岡崎市に愛知県公認の魚卸売市場があるわけでありますが、この市場の建屋内は、厳密に言えば会員以外は入場することができない。だから、中根さん、あなたも本当は厳密に言うとここに入ってこれないんですよということを言われましたが、議員として現場の視察だというようなことであるならば、それはお互いに理解し合える、そういうようなものなんだよということを教えていただいたわけでございます。

 したがって、会員以外は入場できない、あるいは、一般のお客様がそこを訪れても、当然、入場もできないわけですので、買い物をすることもできない、これが決まりだと。

 ただ、市場としては、会員が減少する、魚の消費が低迷をしたり、あるいは大手のスーパーさんが、愛知県の場合でいえば名古屋の大きな市場から、あるいは港から直接買い付けをして、なかなか岡崎の、地元の市場を御活用いただけないというような状況にもなってきたということで、市場の活気が失われつつあるということで、いずれこの市場がやっていけなくなってしまうのではないか。

 市場が成り立っていかなくなると、結局その迷惑をこうむるといいますか、困るのは地元の市民の皆様であったり、あるいは、大きな買い付けの力のない、地元の古くからあるお魚屋さんであったりということで、さらに魚屋さんが地域からなくなってしまうということにもなるわけで、市場というものはやはりこれからも守っていかなきゃいけない。守っていく、あるいはにぎわいを取り戻すためにどうしたらいいかというようなことで、大変皆さん頭を抱えているというか悩ませて、あるいはアイデアを探しているということでございます。

 そういった中で、一般の人たちが入場して、あるいは市場に対して親近感を持ってもらって気軽にお越しをいただいて、時には買い物も、今の規則ではできないけれども、買い物ができるように、こういうふうになると、多くの方々が市場というものを再認識していただくと市場の再活性化につながるのではないか、こういう極めて素朴な御意見を受けとめさせていただいたわけでございます。

 私は、ここにどういう難しい規制や規則があるかはよく存じておりませんでしたので、そうですよねと。市民がこういう市場に来て、新鮮な魚を見て直接買い物ができるということは、これは特に悪いことはないというか、いいことばかりじゃないかというような思いもいたしました。

 そういう素朴な御意見や疑問をぜひきょうはお聞き届けいただきたいというふうに思っておるわけでございます。

 こういう公設の、公設といいますか、この市場の場合でいうと愛知県公認の市場ということでございますが、規則では一般の方々は入場できない、買い物できない。ここを何とか、それができないという理由になっている規制を緩和して、そういう買い物や入場ができるようにならないか、あるいは、場合によっては、市場には定休日というようなものがあるわけでありますので、その定休日を活用して、例えばその場所でフリーマーケットみたいなものとか、あるいは軽トラ市のようなものとか、そういったようなものに活用することができないか、こういうアイデアをいろいろと模索して、市場の維持存続というものに努力をしておられる、こういう現場の声であるわけであります。

 そういった御要望にお応えできるような規制の緩和というものができないものか、まずはお尋ねをいたします。

櫻庭政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、地方卸売市場は、地域における生鮮食料品の流通の拠点として重要な存在であると位置づけている、認識しているところでございます。

 今御指摘にありました、一般市民への市場開放の取り組みとしては、各地で一般市民が参加する市場祭り、そういったものが実施されているというぐあいに承知しております。

 常時開放は、これはやはり、競りとか、いろいろな集荷、分荷のことがありまして難しいのでございますけれども、市場祭りとか、そういったものの開放につきましては、各地方卸売市場の裁量によって実施が可能でございます。

 したがいまして、このような市民との交流活動を推進することは、卸売市場への理解の醸成と市場の活性化の観点から重要であるというぐあいに考えておりますので、市場内でよく御検討していただければと思います。

中根(康)分科員 やはりそういう話は、やりとりはあるみたいで、愛知県公認の卸売市場ということですので、何か、愛知県の方に相談をしたら、確かに、定休日にはイベントのような一過性的なものには活用してもいいけれども、定休日ごとに、毎週のようにそこを使って軽トラ市のようなものを行うということは、目的外使用とか何かというようなことになって、それは認められないということです。

 ただ、市場の運営側からすると、一過性のイベントでは採算に寄与しないということで、ある意味、定期的に、定休日ごとに何か利活用したい、こういうような思いも持っておられるということでございますけれども、これは各市場の裁量でいろいろ活用できるということであるわけで、今そういう御答弁であったわけでありますけれども、愛知県公認というような位置づけの場合には、愛知県の裁量でそれが可能だというようなことで理解してよろしいですか。

櫻庭政府参考人 愛知県の公設の、これは民設でございますけれども、地方卸売市場になっております。県とよく相談していただければと思いますけれども、実際問題、開催頻度としては、毎週土曜日とか、あるいは第二、最終土曜日という形で開いている地方卸売市場の例もございますので、そこら辺は、あと問題は地域の皆さんとの合意形成が一番重要だと思っておりますので、個別具体的にあれば、事例とかをいろいろ御紹介しながら、我々も御支援してまいりたいと思っております。

中根(康)分科員 ぜひ、また個別に御相談する機会があれば、よろしくお願いを申し上げます。

 それで、今のは市場のいわゆる建屋の中、場内の話でありますけれども、その周辺、建屋の外に場外の市場というものがあって、そこには何軒かの食堂があって、その食堂は大変人気があって、朝早くから行列ができるような好評ぶりであるわけであります。

 したがって、この市場が稼いでいくためには場外をうまく活用していくということも大切なことだという御認識もあるようでございますが、ただ、今のところ、その二、三軒の食堂と若干の何か売店のようなものとか、あとは駐車場が大部分でということであるわけでありますけれども、場合によっては土地を買収して周りに市場を拡大していきたい、面積を拡大していきたいという場合には、何かそういった土地の取得に対する支援策というようなものは考えられないか、お答えいただければと思います。

櫻庭政府参考人 お答え申し上げます。

 土地の買収とかそういうものにはスキームは持っておりませんけれども、場外に食堂を整備する、そういった施設に対しては低利融資などの優遇措置がございますので、御活用いただければと思います。

中根(康)分科員 地元で聞いた声の二つ目でございます。

 これは、実は昨年のこの分科会でも取り上げさせていただいたEMについての質問であるわけであります。

 昨年のこの分科会で御答弁いただいたのは、佐藤生産局長さん。議事録を改めて読ませていただくと、該当部分は、「現場段階で、市町村あるいは農業者の方で、地域の土壌あるいは気象条件等を踏まえまして、地域段階でのEMの効果の有無の検証に取り組みたいといったような御要望がありましたならば、有機農業関係の予算の中でこうした実証についての御支援をすることは可能というふうに相なっている」、こういう御答弁をいただいたということでございます。

 まずは、この佐藤生産局長さんからの御答弁は実証についての御答弁をいただいたわけでありますが、その後ちょうど一年たったわけでありますが、平成二十六年度において、この実証ということについて実績があればお示しをいただきたいということでございます。

松島政府参考人 委員御指摘のとおり、EMの効果を検証するために現地で実証圃を設置するといったものにつきましては、有機農業関係の予算で支援することができるわけでございますけれども、二十六年度には地元からそういった要望がなかったというふうに承知しているところでございます。

中根(康)分科員 実証の御要望はなかったということでございます。

 もう一つ、今度は、これは研究という方面において雨宮技術会議事務局長さんから御答弁をいただいたものがあります。「研究機関からEMの効果に関する有用な研究計画がある場合には、提案公募型の研究資金でも応募が可能であるということでございます。」こういう御答弁があったわけでありますけれども、この研究資金というものについて応募があったかどうか、実績をお示しいただければと思います。

西郷政府参考人 委員お話しのありましたとおりに、一般的に、地域性、特異性の高い技術といったものにつきましては、まずは地域の試験場、大学等からの提案を受けて、外部専門家等の提案内容の審査を経た上で対応の適否を判断するという研究資金の制度がございます。

 ただ、この件につきましては、調べましたところ、二十六年度についての応募はなかったというふうに存じております。

中根(康)分科員 これは後でまた若干御紹介いたしますけれども、EMに対する取り組みは、全国各地でさまざま、有機農業あるいは環境浄化に対して展開をされているわけでありますが、今お示しをいただいたように、実証も、あるいは研究資金の活用も、いずれもなかったということについては、これだけEMが全国でいろいろ取り組まれている中で、なぜそういった研究資金やあるいは実証というものが活用されなかったとお思いになられますでしょうか。

佐藤大臣政務官 EMにつきましては、これまでのところ、水質の改善に対する効果は科学的に明らかになっていないということでありますけれども、EMを構成する微生物の種類が多種多様であり、その機能を正確に把握することが困難である上、EMが使用される環境も、地域や場所の違いによりさまざまであることに起因するものと考えております。

 一般的に、このような地域性、特異性の高い技術に関する研究につきましては、まずは地域の試験場、大学などからの提案を受け、外部専門家等による提案内容の審査を経た上で対応の適否を判断するという研究資金制度で対応しているところであり、今後とも、この枠組みにより対応してまいりたいと考えております。

中根(康)分科員 きょうは、EMに取り組んでおられる地元の方々から、いろいろと事例があるということで冊子を預かってまいりました。

 本当に、結構たくさんの好事例が掲載されているんですけれども、例えば愛知県の武豊町では、武豊堀川とアサリ池にEM活性液、EMだんごを定期的に投入した。その結果、アユの生息が確認できた、蛍が見られるようになったというような成果があらわれている。あるいは、小学校の五年生がEMを使って環境の勉強をした。自分たちでつくったEM発酵液でプールがきれいになる様子を観察したり、EMだんごをつくってアサリ池に投入した。

 また、わかりやすいのでいえば、愛知県の安城市、EM放流事業によって、アユが遡上し、水鳥が群れる環境が回復した。水質の指標のCODが改善して、魚が湖面を跳びはね、水鳥が集う油ケ淵へ再生された。さらなる浄化を目指して、市民によるボランティア活動が取り組まれている。生活排水と農業用水で水質が悪化していたのが、EMの浄化活動を行うことによって大幅に水質が改善した。これは、安城市の三河安城ロータリークラブの皆様方の活動であるわけであります。

 また、その隣の西尾市においては、西尾東ライオンズクラブの方々が、二の沢川あるいは北浜川というようなところにEMだんごを投入して、水質浄化が確認をされた。こういうような事例もあるわけであります。

 さらに言えば、大都会名古屋においても、堀川に毎週EM活性液を投入している、このことによって川の水の悪臭が減少したという効果があらわれたということでございます。

 もう一つだけ言えば、豊田は、五年間、EMの環境浄化活動を行って、川に蛍が舞って、ここもやはりアユが遡上する。水質改善も目覚ましいものがあった。生物化学的酸素要求量、BOD、あるいは大腸菌群数、こういう科学的な数字、客観的な数字を示すものにおいても確かな水質の改善が見られたということでございますし、また、川がきれいになっただけではなくて、農業の活性化にもつながり、田や畑の生物や川の生物もふえ、懐かしい里山の原風景が復活するというようなところにまでつながっていくことが期待される。こういった取り組みの事例が幾つかあるわけであります。

 こういった例はまさに枚挙にいとまがないぐらい全国各地で行われているわけでありますが、こういったロータリークラブあるいはライオンズクラブのような団体とか、また、小学校の子供たちの取り組み、こういうものはなかなか農水省からは余り認められないものということになってしまうのか。裏づけのない取り組みということになってしまうということなんでしょうか。

 子供たちの、あるいは、善意の団体の皆様方のお取り組みというものに対する農水省の評価というものはどういうものであるか、お示しいただければありがたいと思います。

佐藤大臣政務官 本当にさまざまな事例を御紹介いただきました。

 残念ながらEMの効果は今のところ科学的に明らかになっておりませんけれども、これは、その機能の把握が困難である上、使用される環境も多種多様であることが原因かなとも思われております。

 今後とも、提案公募型の研究資金への応募があれば、ぜひ対応を検討してまいりたいと思います。

中根(康)分科員 提案公募に対して応募があればぜひというような話もあったんですが、ある意味、そういう待ちの姿勢ではなくて、これだけ全国で多くの方々が取り組んでおられる、これに対してぜひ正面から向き合っていただいて、農水省としてもある意味主体的に、EMというものがどういうものであるか、本当に有効なものなのか、そうではないのかという客観的な検証を行う時期に来ているのではないかというふうに思いますので、ぜひお願いを申し上げたいと思います。

 これが有効なものということであるならば、例えば、私、何年か前に京都の貴船というところに行ったら、これは川床料理を楽しませていただいたんですが、豊かなきれいな環境がどういうふうにつくられているかということの一つに、やはりこの貴船地区でも、EMを川に投入して、それで環境浄化に寄与している、要するに、全国有数の観光地でもそういう取り組みが行われているということでございまして、こういうEMというものの有効性をある意味正当に評価して、EM農法のブランド化だとか、あるいはEM作物を活用しての六次産業化の推進であるとか、あるいはEM菌を使って浄化槽や水処理装置の開発であるとか、EMを使ってのさまざまな取り組み、また、子供たちに向けての環境教育の推進というようなことも考えられるのではないかというふうに思います。

 ぜひ、農水省あるいは環境省におかれましても、このEMというものについて何か偏見のようなものがあるとするならば、そういったものは払拭して、正面から向き合うような姿勢に変わってもらいたいというふうに思うところでございます。

 もう一つ、これもまた私の地元の愛知県西尾市というところのことでございますけれども、西尾市は抹茶の産地であって、経産省からも地域ブランドということで認定をされているわけであります。

 今や日本食ブームということもあって、和食には当然お茶が合うわけだし、健康にもいいということだし、あるいは、自分自身もペットボトルで毎日のようにお茶を飲んでいるということでありますけれども、ただ、実は日本の緑茶の国内消費は低迷しているというような事実もあるようでございます。

 低迷しているということであるならば、それを何とか盛り返していかなくてはいけない。盛り返すためには、クールジャパンということも含めて、海外の市場に新たな販路、活路を見出していくということが必要になってくるわけでありますけれども、この場合、例えば、輸出相手国の残留農薬基準が輸出拡大の阻害要因にもなっているということもあるように、なかなか難しいこともあるようでございますが、我が国のお茶の輸出戦略というものはどのようになっているか、お示しをいただければありがたいと思います。

松島政府参考人 我が国のお茶の輸出につきましては、海外における日本食ブームなどもございまして極めて順調に推移してございまして、五年前と比較しまして、輸出額は二倍に増加するという実態がございます。また、FAOの予測によりますと、さらに今後十年間で世界の貿易量が一・八倍になるということで、大変有望な市場だというふうに考えているところでございます。

 そのために、農林水産省におきましては、平成二十五年八月に輸出戦略というものを設定いたしまして、平成三十二年に茶の輸出額百五十億円というものを目標に、さまざまな支援措置を講じているところでございます。

 その中で、今委員からお話がございました残留農薬基準につきましても、そういった基準を設定していない国に対しまして、設定していただくように申請するためのデータの収集に対する支援ですとか、それから、例えば輸出拡大に向けて、減農薬栽培の技術を導入するための支援でございますとか、それから、外国の方はお茶の青臭い香りが苦手だということで、そういったものを抑制するための加工技術の導入とか、さまざまな支援措置を講ずることによって、その目標達成に向けて努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

中根(康)分科員 これは農水省さんからいただいた資料でございますけれども、輸出相手国としてはアメリカが圧倒的に多い、ヨーロッパ、EU方面は結構苦戦しているということでございますが、ある意味、強みを生かしていくということであれば、これからもアメリカをターゲットに輸出拡大を図っていくということもありますし、あるいは、まだ未開拓の市場だから伸びしろがあるということでいえば、EUを狙っていくという手もあるかもしれない。

 実際、輸出先としてはどのあたりをこれから主要なターゲットに考えていったらいいか。いかがでしょうか。

松島政府参考人 委員御指摘のとおり、現在、我が国の輸出の四五%程度がアメリカ向けでございまして、やはり、アメリカといった大きな市場も非常に大事でございますけれども、例えばEUですとか、それからまた、特に、お茶を飲む習慣がございます東南アジア、中国茶という非常に強敵なライバルがございますが、こういったところに対しまして、日本のお茶の品質の高さを売り物にして売り込んでまいりたいという企画を考えているところでございます。

中根(康)分科員 改めて確認したいと思いますけれども、要するに、競合相手が多いのがお茶であるわけでもありますが、日本のお茶の強み、セールストークはどういうものであるか、何を強みとして輸出を図っていくか、あるいは、どのあたりを伸ばしていけばさらに輸出が拡大していくかということはいかがでしょうか。

林国務大臣 我が国のお茶は、千年以上前に伝来をしておりますので、いわゆる茶道ということで非常に普及をしておりまして、甘いお茶菓子と抹茶の組み合わせということがもう日本の伝統文化として定着をしております。その後、庶民の一般的な飲み物として和食文化の重要な要素の一つになっておりますので、やはり、海外における日本食ブームとあわせて海外展開をしていくということが大変大事であろうというふうに思っております。

 また、我々、国内におりますと、いろいろお地元別に有名なところがあって、一々言いませんけれども、外に出ていく場合は、やはりオール・ジャパン体制で、日本のお茶ということでまずジャパン・ブランドとして出していく必要があると思っておりまして、輸出促進全国協議会の中に、茶の品目別の輸出団体として、日本茶輸出促進協議会というものも昨年の十二月にスタートしたところでございます。

 また、この五月からミラノの国際博覧会が始まりますので、日本茶を海外へPRするために、日本茶を提供するイベントを専門家の方に行っていただいて行う予定になっておりますので、やはり、単なるお茶を飲むというだけでなくて、文化そのもの、日本食そのものと一緒になって売っていくという魅力発信を進めながら、輸出の増進に努めていきたいと思っております。

    〔主査退席、小倉主査代理着席〕

中根(康)分科員 大臣から大変有意義な御答弁をいただいたわけでありまして、文化や歴史や、あるいはそういったものが相まって、ストーリーを持って輸出をしていくということが大変有益なことだと思います。

 特に、私の地元の西尾というところのお抹茶というのは、六次産業化の大変いいお手本になるようなもので、お抹茶の粉を使って、抹茶風味のいろいろな関連の商品がお菓子を含めてあるわけでありまして、お茶だけではなく、その関連商品も含めて、お茶の輸出拡大あるいは国内消費の拡大というものを推し進めていくということについて、ぜひこれからも農水省として力を込めて取り組んでいただきますようによろしくお願い申し上げ、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

    〔小倉主査代理退席、主査着席〕

石原主査 これにて中根康浩君の質疑は終了いたしました。

 次に、横山博幸君。

横山分科員 維新の党の横山博幸でございます。

 長時間にわたる御審議、まことに御苦労さまでございます。所管事項について数点質問させていただきますので、明確な御答弁をお願い申し上げます。

 それでは、早速質問に入らせていただきます。

 初めに、近年、市街化区域の宅地化の進行などにより農地専用面積が減少していると実感しておりますが、過去に全国につくられた農業用ダムは、初期目的の農業用水供給の目的に沿って十分に活用されているのか、活用状況をまずお聞かせいただきたいと思います。

 また、十分に活用されていない農業用ダムにつきましては、農業用水から上水道などに転用し、ダムの有効活用を図るべきだと考えますが、見解をお聞かせ願います。

三浦政府参考人 お答えいたします。

 農林水産省が所管する百九十カ所のダムの利用状況につきまして、平成二十一年十二月に点検を行っております。その結果、これらダムの平均の使用率は八五%でございました。このうち、使用率が七〇%に満たないダムが三十カ所ございました。

 これらの使用率の低いダムにつきましては、圃場までの水路整備等の促進によりますかんがい用水利用の拡大ですとか、隣接する地区への農業用水の供給や畜産用水等としての活用によりまして農業上の利用を推進するほか、上水道等の他用途への転用などに取り組むということを行ってきております。その結果といたしまして、主としてかんがい用水利用の拡大によるものでございますが、現在では十カ所のダムで七〇%以上の使用率に改善が図られたところでございます。

 今後とも、地域の実情に応じまして、農業用水としての活用を図りますとともに、他用途への転用を進めるなど柔軟な対応に努めまして、水資源の有効活用を図ってまいりたいと考えております。

横山分科員 大変ありがとうございます。ぜひ有効に活用していただきたいというふうに思っております。

 次に、このところの国内の経済情勢を鑑み、農林水産物の輸出促進が必要な状況であると考えますが、中国を初めとした東アジアへのかんきつ類の輸出については、いまだに解禁に至っていないと認識をしております。

 そこで、農産物の輸出規制の改善に向けた働きかけを強化すべきであり、また、水産物に目を向ければ、日本から韓国に輸出される養殖マダイの活魚は、韓国での検疫に五日から一週間を要することにより商品価値が低下し、活魚輸出の障害となっております。

 そこで、韓国における養殖マダイなどの活魚検疫の迅速化のため、生産者、生産県も含めて関係者協議の後、韓国との協議を積極的に進めるべきではないかと考えますが、見解をお聞かせ願いたいと思います。

小風政府参考人 お答えいたします。

 まず、かんきつ類輸出の関係でございますけれども、かんきつ類につきましては、既に韓国、台湾、カナダ、EUなど、多くの国への輸出が可能となっております。

 かんきつ類を含む農産物の輸出検疫の協議につきましては、国別あるいは品目別の輸出戦略の司令塔となる輸出戦略実行委員会の方針を踏まえまして、戦略的に取り組んでおるところでございます。

 なお、農産物の輸出促進に当たりましては、植物検疫のほかにも、放射性の物質あるいは残留農薬基準など食品安全に係る基準、要件への対応ということも、あわせて進めていくことが不可欠でございます。

 このため、国別・品目別輸出戦略の司令塔であります輸出戦略実行委員会において整理された輸出促進に係るさまざまな輸出環境課題を踏まえまして、戦略的に輸出促進に向けて対応してまいりたいと考えております。

 それから、養殖マダイの韓国への輸出についてお尋ねがございました。

 これにつきまして、御指摘のマダイの検疫とは、国際的にリスクの高い疾病とされておりますウイルス性の出血性敗血症、いわゆるVHSの韓国における検査というものと承知しております。動物の疾病に関する国際機関でありますOIEの方では、本疾病の診断方法として、臨床観察、PCRの検査、そしてウイルス分離、こういうものを規定しております。検疫の期間は十四日から二十日間としております。

 韓国の政府では、そのVHSの検疫の期間を、日本と同様に十五日以内と規則で定めておりますが、実態上は、議員御指摘のとおり、五日から七日間を要していると聞いております。

 本件につきましては、韓国の検疫期間は、我が国と比べましても短くなっておりますので、さらなる短縮を求めることは難しいかなというふうに考えております。

 なお、日本から輸出される養殖マダイの商品価値の低下を防ぐため、どのような措置が考えられるかということにつきましては、県と連携しながら検討してまいりたいというふうに考えております。

横山分科員 農産物を含めて水産物も非常に海外で需要度は高いと思いますので、ぜひ具体的に進めていただきたいというふうに思います。

 それでは次に、昨年、キウイフルーツの全国一の生産地、私の地元でありますけれども、愛媛県内においてかいよう病Psa3型の発生が国内で初めて確認されましたが、愛媛県と国の迅速な対応により、被害を最小限に食いとめました。

 被害農家は現状で大変厳しい経営環境に置かれておりますが、その後の被害状況と、被害防止のための研究はどのように進められているのか、また、被害農家に対する支援の状況並びに今後の再栽培への対策はどのようになっているのか、あわせてお聞かせ願いたいと思います。

小風政府参考人 お答えいたします。

 キウイフルーツのかいよう病の件でございます。

 昨年五月以降、愛媛県など七県で、国内で初めてのキウイフルーツのかいよう病の一系統でありますPsa3系統の発生を受けまして、七月十八日に当面の対応を取りまとめて、都道府県に対して通知を出しております。

 本通知に基づきまして、各都道府県では、消費・安全対策交付金などを活用いたしまして、昨年秋、それからことしの春の全国調査などにより、早期の発見、そして発生部位の除去などによる早期防除に努めております。また、感染のおそれがある植物の移動の自粛ということに努めております。

 昨年秋の全国調査では新たな発生は確認されておりませんでしたけれども、本年一月下旬には神奈川県の発生などを受けまして、二月十日に調査などの徹底を改めて都道府県に通知しております。

 引き続き、本年春の全国調査などの徹底によりまして、本病の早期発見、早期防除に努めてまいりたいと考えております。

 また、被害を受けた農家に対しましては、平成二十七年度の果実等生産出荷安定対策事業によりまして、感染した樹体の除去、キウイフルーツや別の果樹への改植への支援といたしまして十アール当たり十六万円、その後の未収期間の必要な費用に対する支援といたしまして十アール当たり二十万円を助成することとしております。

西郷政府参考人 キウイフルーツかいよう病の発生に対応する研究についてお問い合わせがございました。

 キウイフルーツかいよう病に対しましては、年度初期の主要産県での発生を受けまして、緊急に対応する必要がある研究課題について、平成二十六年六月から実施しております。

 その中で、早期発見のための部位、時期ごとの病徴の解明、土壌中の病原菌の消長の解明、効果の高い防除技術の開発等の成果を得てきたところでございます。

 この得られた早期診断技術や防除技術につきましては、生産者向けのパンフレットを作成いたしまして、広く周知していくこととしております。

横山分科員 大変積極的な対応をしていただいて、私の方としてもよく理解できましたが、キウイフルーツは収穫までに約三年かかると言われておりますので、非常に長期間、被害農家が対応に苦しむことになりますので、今後ともいろいろな支援をよろしくお願いしたいと思います。

 それでは次に、植物工場の件についてお伺いしたいと思います。

 植物工場は、施設内の温度、光、炭酸ガス、養液などの環境条件を自動制御装置で最適な状態に保ち、植物の栽培から出荷調整まで計画的に一貫して行う次世代型の植物生産システムであり、東北大震災被災地においても積極的に建築が進んでおりますが、一方で、全国の大学の研究機関において、海外からの研修生やパート労働者による技術の流出も懸念しております。

 そこで、これまで国費をもとに研究された知的財産の流出を防ぐため、さらに研究機関において管理を強化すべきだと私は考えますが、見解をお聞かせいただきたいと思います。

西郷政府参考人 農林水産省の研究予算によって大学や企業等の研究機関が得た知的財産につきましては、技術移転を進めるとともに、研究活動を活性化するため、日本版バイ・ドール制度を適用いたしまして、委託先の研究機関に帰属をさせているところでございます。

 この場合、このような知的財産は公的な研究の成果であるということから、農林水産省では、大学等の委託先に対しまして、委託契約において秘密の保持に関する義務を課すなど、知的財産が不用意に海外等に流出することがないよう適切な管理を指導しているところでございます。

 なお、万一、第三者に秘密を漏えいしたという者が出た場合は、委託先が漏えい者に対して損害賠償請求等の所要の対抗措置をとることができると考えているところでございます。

横山分科員 これは、将来のことを考えますと、知的財産の流出というのは、生産者と将来大きな競争を生むことにもなりかねません。ですから、このことについて徹底して研究機関に対して指導いただきたいというふうに思います。

 それでは次に、林地の不動産の買収の件についてお聞きしたいと思います。

 最近、外国人による日本国内の林地を初めとした不動産の買収がふえていると聞き、不安を抱いております。特に森林は、水源や治山機能などを有する国土の源であり、国民生活にとって欠かせない資源でもあります。

 そこで、外国人による森林地購入の制限について法整備を進めたとは聞いておりますが、現行の法整備で外国人による買収に歯どめはかけられるのか、実態を含めて、対応をお聞かせ願いたいと思います。

今井政府参考人 お答えをします。

 外国資本によります森林買収の状況についてでございますが、平成二十二年以降、毎年、都道府県を通じて林野庁の方で調査を行っておりまして、平成十八年から二十五年までの八年間の森林取得などの事例は、全国累計で七十九件、九百八十ヘクタールとなっております。

 これまで、森林法におきましては、森林の適切な管理、保全を図るため、林地開発許可制度等の規制措置を講じてきたところですけれども、平成二十三年の森林法の改正によりまして、新たに森林所有者となった方については、市町村長への事後の届け出の規定、そして、他の行政機関等が有する森林所有者情報の利用に関する規定、こうした規定が新たに措置されまして、森林所有者の異動を的確に把握することが可能となるなど、森林を適切に管理、保全するための制度が強化されたところでございます。

 今後とも、こうした制度の活用によりまして、外国資本による森林買収の動向を的確に把握してまいりたいと考えております。

横山分科員 ありがとうございます。

 中国の資産家は、特に日本の資産を購入したいという意欲が高まっております。これは、先ほども申し上げましたけれども、将来、日本にとっての危機になり得るかもしれません。ですから、十分にチェックを願いたいというふうに思います。

 それでは次に、同じく森林の関係でございますけれども、森林には大気中の温室効果ガスを減らす効果があり、環境上においても重要だと認識しております。

 そこで、森林育成の重要性に鑑み、その機能の効果を高めるため、計画的な主伐、植林が必要になりますし、下刈りや獣害対策なども重要であります。こうした事業のため、森林所有者負担の軽減対策として、造林事業の国庫補助率を引き上げる検討や、これまで補正予算で組まれていた森林整備加速化・林業再生基金事業を本予算でさらに充実することはできないか。森林整備のための施策も含めて、あわせて見解をお聞かせ願いたいと思います。

今井政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のありました間伐ですとか主伐後の再造林、あるいは鳥獣被害防止対策等に対しましては、農林水産省として、森林整備事業によりまして、国と都道府県を合わせて約七割の補助を措置しているところでございます。

 これに加えまして、計画的かつ効率的に森林整備を進めるため、森林経営計画の作成に向けた合意形成活動等への支援や、低コストな森林整備を進めるため、主伐と再造林の一体化技術の実証ですとか、あるいはコンテナ苗の増産のための施設整備等への支援、こうしたことにも取り組んでいるところでございます。

 今後とも、関係予算をしっかり確保いたしまして、関係自治体等と連携しながら、適切、適正な森林整備に努めてまいりたいと考えております。

横山分科員 大変ありがとうございます。

 七〇%という高い補助率ということで、森林を管理される方にとっても非常に頼もしい限りでございますけれども、農業と一緒で、後継者不足ということも非常に重要になってきております。集約化であるとか、そういったことで後継者育成のための支援もぜひお願いしたいと思います。

 それでは次に、水産業の関係についてお伺いいたします。

 水産業に必要な冷凍倉庫は、固定費の多くを電気代に費やし、経営を圧迫している状況にあると考えられます。

 そこで、海岸近くの冷凍倉庫の立地を生かし、屋根を利用した太陽光発電、あるいは潮流発電や、沿岸部の風力を生かした風力発電などで電力供給を行える状況にありますが、国は、この分野に技術支援や財政支援を行い、経営改善に意欲のある漁業協同組合や水産業者を支援するべきだと私は考えておりますが、具体的な支援策についてお聞かせいただきたいと思います。

本川政府参考人 御指摘のとおり、冷凍倉庫あるいは冷蔵倉庫のエネルギーコストの低減のために再生可能エネルギーを活用するということは、極めて重要なことだと思っております。

 このため、水産庁としまして、昨年三月に漁港のエコ化方針というのを定めまして、漁港とそこに立地するいろいろな施設について、再生可能エネルギーの利活用の方法などについてガイドラインを定めております。導入する手順であるとか、あるいは利活用の方法であるとか、さらには導入することに伴うリスク、こういったものもガイドラインで定めまして、技術的な支援、助言を行えるような体制を整えているところでございます。

 それから、物理的な支援でございますけれども、水産業の共同利用施設に電力を供給するという観点から、再生可能エネルギーの発電施設について、強い水産業づくり交付金で支援を申し上げる。ただし、固定価格買い取り制度との重複がございますので、売電をしないということを条件としてそういう補助金の対象にする、このようなことも支援として可能になっておるところでございます。

 今後とも、御指摘のような観点を踏まえて、そういう積極的な対応をする事業者の対応を促してまいりたいというふうに考えております。

横山分科員 大変ありがとうございます。

 今、一つだけ質問させていただきますけれども、答弁の中にあったリスクについて具体的にお聞かせいただきたいと思います。

本川政府参考人 やはり、多大な投資をするものでございますので、安定的に確保できるのかどうか、そういったことも含めて、投資に見合うような効果が上がるかどうかといったようなことについて十分に検討いただいた上で導入を判断していただくことが必要だろうと考えております。

横山分科員 大変ありがとうございます。

 続きまして、バイオマスの関係についてお伺いしたいと思います。

 木質バイオマスは熱としても電気としても利用でき、特に熱は、地域で供給、利用する典型的な地産地消型エネルギー利用であることから、林業再生や地域経済活性化、雇用の確保への貢献度が高いと考えられます。しかしながら、このところ、原材料の木材チップの不足や価格の不安定化が経営を圧迫すると予測されております。

 こうした現状の中、木質バイオマスをさらに推進するために、小型ボイラーや林地残材利用の研究開発支援や固定価格買い取り制度のさらなる優遇措置を図るべきではないかと考えますが、具体的な対応についてお聞かせいただきたいと思います。

今井政府参考人 お答えいたします。

 戦後造成しました人工林が本格的な利用期を迎えている中で、木質バイオマスのエネルギー利用といいますのは、国産材の大きな需要先となるだけでなく、地域の活性化ですとか、あるいは雇用の創出ですとか、そういう面で地方創生にも大きく貢献する分野であるというふうに考えております。

 こうした観点から、農林水産省といたしましては、木質バイオマスの関連施設の整備への支援、あるいは、未利用間伐材等の安定的、効率的な収集に必要な路網の整備ですとか森林施業の集約化に対する支援、さらには、より燃焼効率のよいボイラーの技術開発への支援、そういったことにも取り組んでいるところでございます。

 また、先月、再生可能エネルギー電気の調達価格に関連いたしまして、調達価格等算定委員会におきまして、未利用間伐材等を利用した木質バイオマス発電につきまして、二千キロワット未満の小規模な発電区分を設けることで合意されたというふうに承知しておりまして、こうした動きも注視しながら、今後とも未利用間伐材等の木質バイオマスのエネルギー利用の推進に努めてまいりたいと考えております。

横山分科員 大変ありがとうございます。

 答弁内容は理解できましたけれども、バイオマスの発電所、かなり全国で数多くできておると思いますけれども、この原材料の木材チップ関係について、国内の木材で十分調達できるような状況でございましょうか。

今井政府参考人 お答えいたします。

 未利用間伐材を二万トン以上利用して発電をしている施設が、現在、七カ所稼働しております。そこにおきましては、地域の森林組合と発電事業者の間で原料用のチップの供給の取り決め等を行ってやっておりますので、そこについては特段問題が生じておりませんけれども、中には外国のヤシガラを使って発電するというような人もおりまして、その辺は、各地域におきまして、原料供給者と発電事業者の間で混乱が起きないように、林野庁としても注視をしていきたいと考えております。

横山分科員 ありがとうございます。

 もう一点だけ。バイオマスで使うチップの材料と同時に、国内の主要工業であります製紙会社、こことの材料のとり合いというのはどのように考えておられますか。

今井政府参考人 お答えいたします。

 固定価格買い取り制度が発足するに当たりまして、製紙業界の方から、これまで製紙用に回っていたチップがバイオマス発電用の方に流れるのではないかというような不安の声も聞かれましたので、そこは、そういった影響が出ないように、極力、需給の関係を林野庁としても注視していくというようなことにしたところでございまして、現在も、そのように発電事業者と原料供給者側の協定がうまくいっているかどうかチェックもしているところでございまして、今後とも、さらに一層そういったチェックを強めていきたいと考えております。

横山分科員 大変ありがとうございました。

 それでは最後の質問になります。空港の関係でございますけれども、空港の出入国の際には、税関、出入国管理、検疫の必須手続がありますが、対応機関の職員数不足のため、現状では審査に長時間を要している状況であると思います。

 そこで、出入国に係る手続が円滑に行われますよう、植物や動物の検疫に対応する検疫所の職員数をふやすなど、検疫体制の充実強化を図るべきではないかと考えますが、見解をお聞かせ願います。

小風政府参考人 お答えいたします。

 観光立国推進による外国人観光客の増加に伴いまして、海外からの家畜の伝染性の疾病あるいは植物の病害虫の侵入リスクが高まると考えております。これらに対応するための輸入検疫体制の整備が必要と考えております。

 また、輸出促進を図っていくためには、輸出が可能な国あるいは品目を拡大するために、検疫協議を進めるとともに、輸出拡大を円滑に対応するための輸出検疫の体制の整備が必要と考えております。

 このため、平成二十七年度におきましても、輸出入の検査担当官の増員などの検疫体制の強化をお願いしているところでございます。

 今後とも、農畜産物の輸出拡大それから観光立国の実現に向けて、輸出入の検疫体制の強化を図りまして、円滑な動植物検疫の手続の実施に努めてまいりたいというふうに考えております。

横山分科員 大変ありがとうございます。

 一点だけ質問させていただきますけれども、現状での不足人数と増員の計画人数、これだけお聞かせ願いたいと思います。

小風政府参考人 平成二十七年度の家畜の防疫官でございますけれども、平成二十六年度三百九十四名おりましたのが、三百九十九名へ増員、実質五名増というふうに、今、二十七年度についてはお願いしております。

 また、植物防疫官につきましては、二十六年度八百八十九名を二十七年度は八百九十名へ増と、実質一名増ということをお願いしています。

 定員増につきましては、なかなか厳しい状況にございますけれども、いろいろ調整とお願いをしているという現状でございます。

横山分科員 予想以上に少ない人数のお答えだと思いますけれども、どんどん積極的に人数をふやしていって、外国人がどんどん来てスムーズに出入国できるように、ぜひお願いしたいと思います。

 何点か質問させていただきましたけれども、御丁重にお答えいただきまして大変ありがとうございました。以上で私の質問を終わります。

 大変ありがとうございました。

石原主査 これにて横山博幸君の質疑は終了いたしました。

 次に、藤野保史君。

藤野分科員 日本共産党の藤野保史です。

 大臣、大変お疲れのことと思いますが、私が最後ですので、よろしくお願いいたします。

 私、北陸信越ブロックの選出でして、新潟を初めとして米どころがたくさんございます。そして、どの県でも農業、農家が地域の経済と社会と文化を支えている、こういう地域でございます。その農業が、今、安倍政権のもとで大きな曲がり角に立たされているというふうに思います。

 きょうは、この問題を幾つかの角度からお伺いしたいと思っております。

 まず確認なんですが、国連は昨年を国際家族農業年というふうに指定をいたしました。これは、世界どこでも農業が家族経営によって支えられているからだというふうに思います。全農家に占める家族経営の割合は、フランスで七割、アメリカで八割、ドイツ、イギリスでも九割、そして、日本でも九割というふうになっております。

 そこで、農水省にお伺いします。

 国連は、この国際家族農業年に先立って二〇一一年十二月に決議を上げていると思うんですが、どういう内容で、日本政府はどのような態度でしょうか。内容をこちらで言いましょうか。

 では、中身的には、二〇一一年十二月に決議が行われていまして、前文がありまして、そこには国際家族農業年を設定した背景として、第五パラグラフにおいて、家族農家や小規模農家が食料安全保障の達成を目的とした持続可能な食料生産の基本であるというふうに認定といいますか、確認をしております。

 小規模農家や家族農家が持続可能な食料生産の基本である、この点についての日本政府の態度についてお答えください。

今城政府参考人 国際家族農業年についてのお尋ねでございます。

 委員おっしゃるとおりでございます。総会決議、二〇一一年におきまして、「農家と小自作農は食料安全保障を達成することを目的とする持続可能な食料生産にとって重要な基礎であることを確認し、」という文言がございます。

 まさに、私ども、そういうことも踏まえまして、昨年の国際農業年ということに関しまして、二十一世紀の家族農業に関する会合ですとか、そういうものに積極的に参画してきたということであり、また、食料安全保障と貧困の撲滅に大きな役割を果たすということを広く世界に周知させることや、各国のそれぞれの取り組みを奨励するということで制定された家族農業年と認識しておりまして、まさにそのとおりだというふうに考えております。

藤野分科員 日本政府もこの国連決議を支持していると。つまり、家族農業や小規模農家が持続可能な食料生産の基本であるということだと思います。

 こうした、家族農家を初めとする農家を応援する政治が求められていると思います。私も先日お話を伺ったある農家の方は、せめて二、三年後の見通しが持てるような交付金、こういったものも考えてほしい、こういう要望をいただきました。

 しかし、実際には、まさにその交付金につきましては、直接支払い交付金はなくしていくという方向でありますし、全体としては、小規模農家、家族農家というものがどんどん追い込まれているというふうに認識しております。

 先日、富山県の農家の方からお話を伺ったんですけれども、富山は農業生産の九割以上がお米でして、まさに米が大変重要な作物であり、昨秋の米価の大暴落というのは本当に打撃になっております。ある農家の方で、二十町歩つくっていらっしゃる方なんですが、この方にお話を聞きましたら、五百万円の損失だと。もう殺されるようなものだという言葉も使っていらっしゃいました。もう完全放棄するしかないとまで、本当に切実な訴えを寄せていただきました。

 大臣にお聞きしたいんですけれども、こうした交付金の半減あるいは米価の暴落というものを受けまして、農家の所得というのは軒並み減っていると思うんです。そのもとで安倍政権は農業所得を倍増するということを方針に掲げていらっしゃいますけれども、一体どうやって所得を倍増していくというお考えなんでしょうか。

林国務大臣 今委員がおっしゃっていただきましたように、米価は昨年非常に大きな動きを見せたわけでございますが、今、二、三年先というお言葉がありましたけれども、もう少し、五年、十年たっても持続可能な農業の姿というものを何とか描いていかなければならない。

 逆に言うと、そういう姿を描きませんと、今から若い人が入ってきてやっていこうということになかなかならない、こういうことも一方であるわけでございまして、そういう意味で米の政策の見直しということをやらせていただいたわけでございますが、まさに誰が米を消費していただくか、買っていただくか、このことも同時に考えていきませんと、五年、十年、持続可能なことになっていかないだろうということで一連の改革をやってきたところでございます。

 したがって、一昨年になりますが、二十五年十二月に農林水産業・地域の活力創造プランを取りまとめて、ここに、今お話しのあった、農業、農村全体の所得を今後十年間で倍増させることを目指す、こう書いてきたわけでございます。

 やはりこれは、需要の拡大、これは国内外でございますが、輸出の促進や、それから、国内の例えば介護食品向けといったような需要を質、量ともに拡大をしていくということ、また、農地集積を農地中間管理機構等を活用して加速化することによって生産コストの縮減をするということで所得を増大させる。

 また、農業の直接の所得の増大に加えて、加工、直売の取り組みの推進、農家民宿、こういったところで都市と農山漁村の交流の促進、こういうことをやることによって、いわゆる六次産業化と言われておりますが、こういう六次産業化等の推進を通じて農村地域の関連所得の増大、これを図っていこう、こういうことでございます。

 また、現在は食料・農業・農村基本計画の見直し作業を行っておりまして、いろいろな地域別また品目別の具体的なモデルもつくりながら、施策の具体的な方向性というものを示してまいりたいと思っておるところでございます。

藤野分科員 今、大臣からさまざまな方策が示されまして、中で、農地の集積ということもお話がありました。きょうも多くの議員からこの農地集積につきましてはお話があったと思うんですけれども、私もやはりこの問題は非常に重要だというふうに思っております。

 これも富山でお聞きした話ですけれども、現地では今でも集約化の圧力というのはすごいんだというお話を聞いてまいりました。こうおっしゃっているんですね。小さい田んぼじゃだめだ、個人個人じゃだめだ、もっとでかくやれ、こういう指導が物すごく入るというお話でした。物すごく指導が入る、こういう表現なんですね。県だったり土地改良区だったり、主体はさまざまでしょうけれども、末端はそういうことになっている。しかし、背景にあるのは安倍政権の農業政策だというふうにもおっしゃっていたのも共通しております。

 そこで農水省にお聞きしたいんですが、農地の集約、いろいろな質問がありまして、いろいろな方策があるということなんですが、私がお聞きしたのは、そのうちの一つとして、てことして中心経営体に農地を集積していく、いわゆる促進事業制度というのが昨年から始まっていると。

 これはどういう制度であるかというのを簡潔に教えていただければと思います。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 先生のお話にございましたのは、農業競争力強化基盤整備事業における農業経営高度化促進事業についてでございます。これは、農地の大区画化ですとか排水対策等の農地整備事業とあわせまして、中心経営体への農用地の集積、集約化に向けた支援を行うものでございます。

 主な支援内容といたしましては、農地整備事業の実施地区におきまして、事業完了後の中心経営体への農地の集積率に応じまして、事業費の最大一二・五%までの促進費を交付するものでございます。この促進費は、農地整備事業の実施に係る農家負担に使用すること等が可能でございまして、これによって、実質的に農家負担なしで事業を実施することも可能となっているという制度でございます。

 本事業を活用いたしまして、農地中間管理機構とも連携をいたしまして、担い手への農地集積、集約化を推進してまいりたいと考えております。

藤野分科員 ありがとうございます。

 要するにこの制度は、農地を集約すれば農家の実質負担がゼロで工事ができるということであります。破格の制度だというふうに思うわけです。ただでできるんだからこの際集約化しろというふうに地元では受け取られている。そのための予算が、昨年は三百二十四億円、ことしは三百四十一億円と非常に大きな予算を使って、国がまさに農地の集約を強力に進めている、ただでできるんだから、こういう話であります。

 しかし、これが、冒頭、国際家族農業年でも言いました持続可能な農業につながるのかということが問題だと思うんです。むしろ矛盾を生んでいるじゃないのかと。

 といいますのは、農家の方はこうおっしゃっていました。農地集約したら、農地が大規模化したら、当然機械も大規模化する。機械を大規模化したら、動かせる人も限られる。人数的には少ない人数で済むようになってしまう。集約されて土地がなくなった、働くこともなくなった高齢の方やそういう専門性のない方は、排水の、用水路の掃除などの仕事があるじゃないかという話もあるそうですが、しかもこれには交付金も出るんだけれども、金をもらってもやりがいはないんだ、こういうお話でした。今まで、物をつくることに喜びを持って農業をやってきたのに、排水の掃除だけやれと言われても、二年か三年はやるかもしれないけれども、みんな離れていきますよ、こういう声でした。持続的な農業にならなくなってしまう。

 別の方は、自分の田んぼというのが大規模化したら、図面上はここですよと言われたらそうかもしれない。けれども、見たら全然わからない。全部ならされちゃう。こうなると田んぼに愛着がなくなってしまう。こういう訴えをいただきました。自分の田んぼがそこにあるからこそ、盆暮れには行くし、村の行事、お宮さんとか、そういうお祭りとかそうしたものにも参加する。しかし、そういうものも行かなくなってしまうだろう。こうおっしゃっていました。まさに農村の崩壊になってしまう。

 先ほど若い方のお話もいただきましたけれども、今、富山では若い人が農業に希望を持てなくなりつつあるというお話も伺いました。認定農家になった方が早死にする例も生まれてきている。若い方に、おまえ頑張り過ぎるなよ、無理するなよとベテランが言いますと、大丈夫です、こう言って続けられるそうなんですね。しかし、そういう方から先に体を壊してしまう。本当に、逆に矛盾を生んでいるんじゃないかというふうに思うんです。

 若い方を初めとして、見通しや夢、やりがい、生きがい、農業にそれを感じられなくなってしまう。誰に聞いてもやる気がうせてしまうという声に、私は本当に衝撃を受けました。やりがいが感じられない、やる気がうせる、田んぼに愛着がなくなる、これは決して個別の例ではありません。

 大臣にお聞きしたいんですが、集約化を進めていく、ただだからやってみよう、その一方で小規模農家に対する支援というのがない、このバランスを欠いたやり方というのが、多くの農家のやりがいを失うという結果につながっているんじゃないんでしょうか。結果としてつながっているんじゃないか。

 この点についての大臣の率直な御認識をお聞かせください。

林国務大臣 いろいろな方にお話を聞きますと、それぞれ地域によっても、また、その置かれたお立場によってもそれぞれの御意見があるところでございますので、なかなか一概にこうだというのが言いにくいところが農業の難しいところだとは思っておりますけれども、今委員がおっしゃっていただいた中で、例えば、大規模化すると機械も大規模化しなきゃいけないというふうにおっしゃっていただきましたが、それはどのぐらいの大規模化ということにもよるのかなと。

 私が聞いておりますのは、一台で大体十から十五ヘクタールぐらいまではやれる。それに比べまして、北海道を除く都府県の平均面積は二・三でございますので、やはりそこの二・三から十、十五に集約していくということになれば、一台の機械のままで、余り過労死のようなことにならずに、効率的にやって生産費が下げられる。それを、例えば十五が五十、六十となっていきますと、今委員がおっしゃっていただいたようなこともあるいはあるのかな、こういうふうに思って聞かせていただいておりました。

 この間、仙台に参りましたときに、実は自分のところは五十ぐらいやっていらっしゃるという農家の方がいらっしゃって、家族で、研修員の方も数名いらっしゃいましたけれども、機械は一台でやっておられる。私ちょっと不思議に思って、一台でどうやってやるんですかとお聞きしたら、時期を少しずつずらして、三日、四日ずつずらしていくと、田植えもずれるし収穫もずれるし、一台でやれるんです、こういうお答えでございまして、なるほどな、こういうふうに思ったところでございます。

 したがって、先ほど家族農業年のお話がありましたけれども、まさに家族農業経営の中で規模を集積していくということも当然あり得るわけでございますし、規模を集積するといっても、一ヘクタールに満たないものが一、二、三と上がっていくのも集積であるし、それが十、十五というところになるところも集積であるし、それがさらに大きくなっていく、いろいろな規模の集積というのがありますので、そのフェーズ、フェーズに応じた、また、ケースに応じたしっかりとしたサポートというのが必要になってくるのではないか、そういうふうに考えております。

藤野分科員 私も、富山、あるいはほかのところも調べましたが、確かに富山は平均は二・三なんです。ただ、この十年ほどで見ますと、一番ふえているのは三十ヘクタール以上のそういう農業法人でありますし、二番目にふえているのが二十から三十、そういう大規模なところであります。ですから、まだ小規模農家がありますので、割ってみると二・三ですけれども、最近、やはりそういう意味での集約化が非常に加速しているというのが実態であります。そこで機械も大規模化せざるを得ないというのが各地で生まれているというふうに思います。

 そして、もう一つ私が衝撃を受けましたのが、別の農家の方がおっしゃっていたんですけれども、こうおっしゃっておりました。今の政策は企業参入まで見越したものだということを感じている。要は、特区にしやすくするということだ。俺らにしたら、その地ならしだ。こうおっしゃったわけなんです。これは私もはっきり言って胸を射抜かれる思いでしたけれども、地ならしという言葉をこれほどある意味せつない思いで聞いたことはなかったわけですが、一方で、先ほど大臣がおっしゃったように、家族経営をやりながら大規模化していく、あるいは、家族経営を応援しながら、そこをしっかり支えながら大規模化のニーズにも政治が応えていくということであれば、こうした声は出てこないと思うんです。

 なぜこういう声が出てくるかといえば、実際には需給調整にも手をつけない、米価暴落が大変な状況だ、その上に交付金もいずれなくなっていく、小規模ではやれない、家族では見通しが持てない、やる気が失われる。これが一方であるもとで、ただで大規模化してやる、ただで集約化しろ、こういうやり方で、じゃあといって取りまとめてやっている方なんです。やっている方から、これは何のためなんだ、結局企業参入の地ならしじゃないか、こういう声が出ているというのは、私は本当に深刻な事態だと思いますし、そう思うのも当然じゃないかと思うんです。

 やはり、今は農政が余りに小規模農家や家族農家に冷たい、一方で集約化、ですからそういう声が生まれるんじゃないんでしょうか。

 大臣、この点についてどう思われますか。

林国務大臣 まず、七千五百円とか一万五千円の交付金でございますが、これは民主党時代に始まったものでございまして、規模の要件がございませんので、規模がいかに小さかろうと大きかろうと、なくなるものはなくなります。したがって、先ほど来の御質問を聞いておりますと、むしろ中規模の方の方が経営に対する影響は大きいんだという御指摘もあったところでございます。

 一方で、今どのぐらいの程度の集積かということもございますけれども、規模を集積していくことによって単位当たりの生産コストが下がっていくということでございますので、農家の所得がふえていくということをやはり目指していくべきであろうというのが我々の考え方であります。

 そこで、地ならしという言葉がありましたが、農地を所有できる法人である農業生産法人、これの要件につきましては、昨年六月に政府・与党の取りまとめをいたしまして、今月、法制度の骨格を決めさせていただきましたが、この法人が六次産業化等を図って経営を発展させようとする場合の障害を取り除く、こういう観点で、役員の農作業従事要件とか構成員要件の見直しをしたところでございますので、何か、企業が入ってくるための準備をしているということではないということは申し上げておきたいと思います。

藤野分科員 一方で、農地集約という、ある意味文字どおりの地ならしというものが進んでいるということと、同時に、今安倍政権が進めている国家戦略特区についてもお聞きをしたいと思うんです。

 先ほど、企業参入の地ならしということとあわせて、要は特区の地ならしをしているんだということも声として御紹介しましたけれども、この特区、実は、私の地元であります北陸信越ブロックの新潟市が農業特区として選定をされております。兵庫県の養父市と並びまして、新潟が平地の特区、養父が中山間地の特区ということなんです。

 簡潔に内閣府にお答えいただきたいんですが、この新潟と養父それぞれ、農業生産法人として今参入しているのはどのような企業でしょうか。

富屋政府参考人 お答え申し上げます。

 国家戦略特区についてのお尋ねでございますが、農業関係の特例を盛り込んだ国家戦略特別区域計画につきましては、まず、養父市は平成二十六年の九月九日と平成二十七年の一月二十七日に、また、新潟市は平成二十六年の十二月十九日に内閣総理大臣の計画の認定を受けたところでございます。

 このうち、お尋ねの農業生産法人に係る農地法等の特例に関しましては、新潟市では、株式会社ローソン、株式会社新潟麦酒の二社が認定された区域計画に位置づけられております。また、養父市では、有限会社新鮮組、株式会社近畿クボタ、吉井建設有限会社、オリックス株式会社及びやぶパートナーズ株式会社、ヤンマーアグリイノベーション株式会社、株式会社姫路生花卸売市場、株式会社マイハニーの八社が認定された区域計画に位置づけられているところでございます。

藤野分科員 要するに、ほとんどが株式会社。養父の場合、八のうち二だけが有限会社で、あとは全部株式会社、新潟もローソンと新潟麦酒という株式会社ということで、当初の狙いどおり、株式会社が参入をしているわけです。

 私たちも、安倍総理はよく民間企業の創意工夫ということを強調されるわけですけれども、それ自身を否定しているわけではありませんが、ただ、どんなに創意工夫にあふれた企業でも体力が続かなくなるということがあるわけで、要は、そうなったときに踏ん張れるのかということが問題だと思います。

 実際、これまでも、日本各地で参入した株式会社が撤退するという例が生まれております。有名な話ですけれども、電子機器のオムロンや、あるいはワタミ、あるいはユニクロ、こうした名立たる企業が農業に参入して、一年半とか三年とか非常に短い期間で撤退しているということが実際起きているわけです。ですから、持続可能な農業といった場合に、担い手たり得るのかという点でやはり非常に問題だというふうに私は思います。

 そして、この新潟の特区は決して全面参入ではありませんで、まさにまだアリの一穴といいますか、非常に限られた参入になっております。

 例えば、先ほどお話しありました農業生産法人の要件、いろいろな要件がありますけれども、今回は役員要件の緩和ということで、いろいろな役員さんの中で一人だけ農業従事者がいればいいということの緩和なんですけれども、もともと新潟市などが規制緩和要望として当初挙げていたのは、いわゆる出資要件そのものを変えてくれということで、こちらの方が本丸というふうに本人たちもたびたび言っております。

 そういう点では、まさに、小さく産んで大きく育てるというのがこの特区の特徴なわけで、地元に受け入れやすいものからやって、後はどんどん広げていこうというのを北陸、信越でやろうとしているということで、絶対に許せないなというふうに思ってはおります。

 ただ、この特区というのはまだ具体化がこれからということで、質問に当たってレクをしたんですけれども、中身もまだこれからということですので、きょうは、私からは、プロセスについてちょっと大臣の認識をお聞きしたいというふうに思うんです。

 といいますのも、この特区を進めるためにいろいろな会議、国でも地方でもつくられているわけですけれども、農家が入っていない、生産者が入っていない。あるいは、先ほど大臣もおっしゃった消費者も入っておりません。いわゆる特区を進めたいという大臣の方や、あるいは手を挙げた首長の方や、新潟でいえば新潟経済同友会代表幹事、こういう方がごく少ないメンバーとして会議に入っていらっしゃる。国会の方でもそうですけれども。

 要は、農業改革を進めるのであれば、その農業の当事者、その声を聞くべきじゃないのかということなんです。

 大臣にお聞きしたいんですけれども、この特区で行われようとしていることは、いずれも農業の未来を左右する大問題だと思います。それなのに当事者が入っていない。大臣自身も国の会議には入っていない、入れてもらっていない。このことを、農業に責任を負う大臣としてどのように考えていらっしゃるんでしょうか。

林国務大臣 これは前も聞かれたことが実はございますが、自民党の中からも。

 国家戦略特別区域会議というのがございまして、ここには、必要に応じて、関係行政機関の長や、区域計画等に関し密接な関係を有する者を加えることができると書いてございます。

 また、総理の下に国家戦略特別区域諮問会議ということで、ここに、総理、官房長官、担当大臣、また、指定する国務大臣ということで、関係大臣も必要に応じ参加をして同意をする、こういう仕組みになっておりますので、そういう形でしっかりと、この私も農林水産業を所管する大臣として、農林水産業の健全なる発展と両立するように見てまいりたいと思っておるところでございます。

藤野分科員 私もその質疑を拝読したんですけれども、大臣は、閣議決定で自分がしっかり物を申すんだということと、あわせて、今おっしゃられた、いろいろな会議に臨時議員として参加されるということもおっしゃっていらっしゃいました。率直に言って、本当にそれで大丈夫なのかなというふうに私は思ったので御質問しているんです。

 といいますのも、閣議決定の場というのは、もうそこまで行ったら本当にもう大変なことで、そこに行く前にいろいろやることがあるんじゃないのか。あるいは臨時議員としての参加も、今いみじくもおっしゃいましたけれども、議長である総理が必要があると認めたときに初めて参加が認められるという限定つきであります。大臣がみずから会議に乗り込んで発言されるということがあればあれだと思うんですけれども、呼ばれたときだけ行くということでは、実際的には何の担保にもならないのではないでしょうか。

 一方では、大臣が先ほどおっしゃったように、現場でどんどん話が進んでいるわけです。新潟では昨年、もう二回、おっしゃられた区域会議が行われております。これには、いわゆる国家戦略特区諮問委員の有識者である八田達夫さんだとかコマツの坂根さんだとか、そういうまさに推進の方ばかりが現地に行ってどんどん議論されている。中身は本当に追加の規制緩和の話ばかりなんです。

 そういう点では、本当にこれでは農家の声が反映しない。中央でも反映しないし地方でも反映しないというふうになります。

 この新潟市が特区に選定された昨年三月二十八日に市長が記者会見されたんですが、これには、先ほど触れましたけれども、新潟経済同友会の筆頭代表幹事の池田弘さんが同席をされております。農業特区に関する記者会見なのに、農家の代表はいなくて、地元同友会の代表幹事が共同出席される。しかも、その代表幹事はこうおっしゃったんですね。プレーヤーは誰かとなると、経済人なのです。これからやるのは経済人だ。できるだけやりやすい枠組みを市とともに進めていくと豪語されました。

 本当にそういう意味では、国レベルでは辛うじて大臣がおっしゃったような関与ができるかもしれません。しかし、現場ではまさに経済人がプレーヤーだ。名実ともにそうなっている。これで本当に持続可能な農業ができるのか。私は絶対できないというふうに思います。

 そういう点では、本当にこの問題、改めて大臣にもお聞きしたいんですが、この問題というのは、まさに農家の立場に立った政策というのが今ほど求められるときはないというふうに思うんです。

 先日、私、三月に長野県のあるJAの代表理事組合長にお会いをしてじっくりお話をお聞きしたんですけれども、その組合長はこうおっしゃっていました。農業は、岩盤の上に土壌があって初めて成り立つんだ、岩盤のないところに農業は成り立たないんだ……

石原主査 藤野君、申し合わせの時間が既に来ておりますので、まとめていただけますか。

藤野分科員 はい、もう終わります。

 冒頭申し上げましたけれども、二〇一四年は国際家族農業年です。そして、ことし二〇一五年は国連の国際土壌年に指定をされております。岩盤があって、土壌があって初めて農業は成り立つ。そういう意味では、岩盤規制を掘り崩すという見当違いの政策を転換して、今頑張っている家族農業や小規模農業を応援する政治への転換を強く求めて、質問を終わります。

石原主査 これにて藤野保史君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして農林水産省所管についての質疑は終了いたしました。

 これにて本分科会の審査は全て終了いたしました。

 この際、一言御挨拶申し上げます。

 分科員各位の御協力によりまして、本分科会の議事を滞りなく終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午後八時七分散会


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