衆議院

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第1号 平成15年2月27日(木曜日)

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本分科会は平成十五年二月二十五日(火曜日)委員会において、設置することに決した。
二月二十六日
 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。
      尾身 幸次君    奥野 誠亮君
      藤井 孝男君    宮本 一三君
      田中 慶秋君    中塚 一宏君
二月二十六日
 宮本一三君が委員長の指名で、主査に選任された。
平成十五年二月二十七日(木曜日)
    午前十時開議
 出席分科員
   主査 宮本 一三君
      尾身 幸次君    奥野 誠亮君
      藤井 孝男君    後藤  斎君
      田中 慶秋君    鉢呂 吉雄君
      牧野 聖修君    渡辺  周君
      東  祥三君    中塚 一宏君
      藤島 正之君
   兼務 赤羽 一嘉君 兼務 塩川 鉄也君
   兼務 吉井 英勝君 兼務 北川れん子君
    …………………………………
   経済産業大臣       平沼 赳夫君
   経済産業副大臣      高市 早苗君
   経済産業副大臣      西川太一郎君
   経済産業大臣政務官    桜田 義孝君
   経済産業大臣政務官    西川 公也君
   政府参考人
   (内閣府大臣官房審議官) 山口 勝己君
   政府参考人
   (金融庁総務企画局長)  藤原  隆君
   政府参考人
   (公正取引委員会事務総局
   経済取引局取引部長)   楢崎 憲安君
   政府参考人
   (文部科学省科学技術・学
   術政策局原子力安全監)  広瀬 研吉君
   政府参考人
   (厚生労働省医政局指導課
   長)           渡延  忠君
   政府参考人
   (経済産業省大臣官房商務
   流通審議官)       望月 晴文君
   政府参考人
   (資源エネルギー庁長官) 岡本  巖君
   政府参考人
   (資源エネルギー庁省エネ
   ルギー・新エネルギー部長
   )            伊藤 隆一君
   政府参考人
   (資源エネルギー庁電力・
   ガス事業部長)      迎  陽一君
   政府参考人
   (資源エネルギー庁原子力
   安全・保安院長)     佐々木宜彦君
   政府参考人
   (中小企業庁長官)    杉山 秀二君
   政府参考人
   (国土交通省自動車交通局
   長)           丸山  博君
   政府参考人
   (気象庁地震火山部長)  藤谷徳之助君
   政府参考人
   (環境省環境管理局長)  西尾 哲茂君
   予算委員会専門員     中谷 俊明君
    ―――――――――――――
分科員の異動
二月二十七日
 辞任         補欠選任
  田中 慶秋君     後藤  斎君
  中塚 一宏君     一川 保夫君
同日
 辞任         補欠選任
  後藤  斎君     渡辺  周君
  一川 保夫君     東  祥三君
同日
 辞任         補欠選任
  渡辺  周君     鉢呂 吉雄君
  東  祥三君     藤島 正之君
同日
 辞任         補欠選任
  鉢呂 吉雄君     牧野 聖修君
  藤島 正之君     中塚 一宏君
同日
 辞任         補欠選任
  牧野 聖修君     渡辺  周君
同日
 辞任         補欠選任
  渡辺  周君     田中 慶秋君
同日
 第一分科員赤羽一嘉君、第二分科員北川れん子君、第五分科員塩川鉄也君及び第六分科員吉井英勝君が本分科兼務となった。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 平成十五年度一般会計予算
 平成十五年度特別会計予算
 平成十五年度政府関係機関予算
 (経済産業省所管)


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     ――――◇―――――
宮本主査 これより予算委員会第七分科会を開会いたします。
 私が本分科会の主査を務めることになりました。よろしくお願い申し上げます。
 本分科会は、経済産業省所管について審査を行うことになっております。
 平成十五年度一般会計予算、平成十五年度特別会計予算及び平成十五年度政府関係機関予算中経済産業省所管について審査を進めます。
 政府から説明を聴取いたします。平沼経済産業大臣。
平沼国務大臣 おはようございます。
 平成十五年度の経済産業省関係予算案等について御説明申し上げます。
 我が国経済は、失業率が過去最高水準となり、消費者物価も三年連続下落し、継続的なデフレ状態にあるなど、大変厳しい状況にあります。また先行きについても、国内情勢に加え、米国経済の減速やイラクを初めとする国際情勢において高まっている不透明感が足元の経済を停滞させるおそれがあり、予断を許しません。このような状況に対処し、一日も早く民需主導の自律的な経済成長を実現するためには、昨年六月に決定された経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇二に沿った構造改革への取り組みをさらに強力に推進する必要があります。また、平成十四年度の補正予算の円滑な執行に努めるとともに、現在御審議いただいております平成十五年度予算案に盛り込まれた諸施策を積極的に推進してまいりたいと考えております。
 経済産業省といたしましては、平成十五年度において、以下の六つの重点施策を中心に、全力を挙げてその遂行に取り組む所存であります。なお、具体的な予算額につきましては、一部重複して計上している部分があることをあらかじめ申し添えます。
 平成十五年度の重点施策の第一の柱は、技術革新の促進による経済活性化であります。日本経済の発展のかぎを握る知の創造と活用を強力に推進するため、科学技術振興費予算として総額で千三百六億円を計上しております。
 特に、情報家電・ブロードバンド・IT分野、健康・バイオテクノロジー分野、環境・エネルギー分野、ナノテクノロジー・材料分野の重点四分野においては、実用化、市場化に直結する戦略技術の研究開発を産学官の連携により集中的に推進してまいります。
 また、大学などの知的資源を活用し、研究成果の事業化を促進する大学発ベンチャー一千社計画をさらに推し進めるとともに、地域経済の再生を図るため、産業クラスター計画として、地域経済を支え、世界に通用する新事業が次々と展開される産業集積の形成に取り組んでまいります。
 さらには、製造技術、加工組み立て技術の競争力強化、知的財産の適切な保護、活用の促進など、次世代産業競争力基盤の強化に向け、所要の予算を計上しております。
 第二の柱は、新たなビジネスフロンティアの開拓であります。
 挑戦者支援型の社会の実現に向けて、技術開発への支援、起業家人材の育成、人材と企業との的確な結びつけなど、起業、創業への取り組みを幅広く支援してまいります。
 また、東アジアにおける自由ビジネス圏の形成を推進するとともに、内外の人材、企業の機能を我が国に引きつけるため、対内直接投資促進など、貿易・投資の環境整備に所要の予算を計上しております。
 第三の柱は、活力ある中小企業の育成と地域の活性化であります。
 厳しい経済環境の中、中小企業の金融セーフティーネット対策や再生支援を推進するとともに、技術革新基盤の形成、人材の確保、販路開拓などにより、中小企業の新事業展開などを支援してまいります。また、中心市街地の活性化などを通じて、地域経済の活性化を引き続き促進いたします。中小企業対策予算としては、総額で一千二百九十五億円を計上しております。
 第四の柱は、ITを活用した経済社会の再生であります。
 ITの活用により経済社会の再生を図るため、電子政府・公的分野の情報化や企業の戦略的IT化を促進するとともに、情報セキュリティー、ルールなどの基盤整備、IT人材の育成、IT産業の競争力強化などに対して、総額で百十九億円を計上しております。
 第五の柱は、環境・リサイクル施策の推進であります。
 京都議定書の目標達成に向けて地球温暖化対策を推進するとともに、循環型経済社会の構築を目指して、リサイクル対策を推進してまいります。
 また、二〇〇五年に開催が予定されている愛・地球博の開催準備を着実に実施してまいります。総額で二百四十二億円を計上しております。
 第六の柱は、エネルギー対策の推進であります。
 京都議定書の締結などを踏まえ、エネルギー起源二酸化炭素排出抑制対策を環境省とも連携しつつ強力に推進するとともに、環境負荷の小さい天然ガスへの燃料転換支援など天然ガス利用の加速化を進め、さらに、新エネ・省エネ対策のさらなる充実を図ってまいります。
 また、石油・液化石油ガス国家備蓄の推進などに努めるとともに、アジア諸国と連携したエネルギー安定供給対策を進めるなど、安定供給対策を着実に実施してまいります。
 さらに、原子力等長期固定電源に係る歳出への重点化を図ってまいります。
 以上、御説明をいたしました政策を中心に平成十五年度の経済産業政策を実施していくため、一般会計で総額八千八百九十二億円を計上しております。また、特別会計につきましては、石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計に総額六千二百三十億円、電源開発促進対策特別会計に総額四千八百五十五億円、特許特別会計に千百五十六億円、貿易再保険特別会計に千四百七十二億円を計上しているところであります。
 さらに、財政投融資計画案につきましても、構造改革を断行するために、所要の措置を講じております。
 なお、経済産業省の平成十五年度の予算案及び財政投融資計画案の詳細につきましては、お手元に資料をお配りしてありますので、委員各位のお許しをいただき、説明を省略させていただきたいと存じます。
 何とぞよろしく御審議のほどをお願い申し上げます。
 以上でございます。
宮本主査 この際、お諮りいたします。
 ただいま平沼経済産業大臣から申し出がありました経済産業省関係予算案の重点事項の説明につきましては、これを省略して、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
宮本主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
宮本主査 以上をもちまして経済産業省所管についての説明は終わりました。
    ―――――――――――――
宮本主査 この際、質疑に入るに先立ちまして、分科員各位にお願いを申し上げます。
 質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。
 なお、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。
 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。赤羽一嘉君。
赤羽分科員 おはようございます。公明党の赤羽一嘉でございます。
 きょうは、今大臣が御発言されましたことに対しまして、何点かに絞りまして質問をさせていただきたいと思います。せっかく大臣が御出席いただいておりますので、分科会はもうちょっと細かいこともやりたいと思いますが、冒頭一つ、大きな産業政策についてのお考えを確認しておきたいと思います。
 一つは、今、中国を先頭に東アジア圏の成長というのは目覚ましいものがある。よく日本国内の産業、とりわけ製造業の空洞化ということを大変心配されている面もありまして、昨年はセーフガードの発動等々、こういったことも議論されたわけでございますが、私は、日本の産業の中でもとりわけ中小企業、製造業の支援というのは、今回大胆に措置をとられたそういう資金繰り面での部分、これだけではちょっと、先行き立ち行かなくなるんではないか。やはり商売、ネタ、商売ができてこそ、この両輪があってこそ前向きな発展というのはあるのではないか。
 私は、個人的には、中国とか東アジアとか、もうどんどん中小企業も出ていけるような形にしていかなければいけないんではないかというふうな思いがあるのですが、経済産業省の皆さんと話をしていると、その辺が定まっているのかどうか。国内の製造業がどんどん海外へ出ていくということは、中国が世界の工場化していってしまって、日本国内は実は大変な空洞化で、日本の製造業はなくなっていってしまうというような危惧から国内産業を保護しよう、そういった政策も出てくるんだと思いますが、その辺の方向を経済産業省としてどう考えられているのかというのをまず冒頭お聞かせいただきたいと思います。
平沼国務大臣 お答えさせていただきます。
 確かに、中国に対しては工場の移転率等も最近とみに高まってきておりまして、これが空洞化の非常に大きな原因になっていることは事実です。例えば一九九〇年には六・四%だったんですけれども、生産拠点が二〇〇〇年には一四%台になる、さらにそれがふえているような状況でございます。
 そういう中で、私どもとしては中国脅威論はとらないで、やはりお互いにこれだけ補完関係にある、そういう関係がもう構築されております。したがいまして、例えば日本の貿易で輸入ということを考えますと、今までは米国が一位でございましたけれども、ついに中国が一位の座を米国から奪った、こういうことも事実でございますし、また中国は世界の中でもGDPが六位になる、こういうようなことで、改革・開放以来非常に経済も好調になっています。
 私どもは、そういう意味では日本の産業競争力をつけて、そして中国の一歩、二歩先を行く体制をつくることがやはり空洞化を防ぐことだし、日本での雇用を確保することにつながっていく。こういうことで、一昨年の十一月に経済産業省の中に産業競争力戦略会議というのを立ち上げまして、約半年間いろいろ議論をさせていただきまして、そしてこれを取りまとめて、経済財政諮問会議の中でもこれを反映して、日本のいわゆる重点施策の中に入れさせていただきました。
 それは大体四つの分野に集約されて、その四つの分野をやれば、それがすべての産業に広がるというコンセプトでございます。ITが情報通信を含めて一つでございますし、それから、やはりこれからは環境・エネルギーというのも非常に大きな分野であるし、それからバイオテクノロジーというのもこれから日本はその本領を発揮する、そういう素地のあるところである。それからまたナノテクノロジー・材料。こういった四分野をひとつ伸ばしていこう、こういうことをさせていただく。
 また発想の転換として、中国というのは十三億人が住んでいる世界最大の人口の国ですから、ビジネスチャンスという形で中国をとらえて、そして中国もWTOに加盟をいたしましたから、そういう中で、お互い共通の土俵の中でしっかりと補完関係を築いて、そして中小企業も含めて日本もその中で大きな果実をとっていく、こういうことをやはりやっていくべきだ。これを経済産業省として基本的なコンセプトとして、これから一生懸命やらなければならない、このように思っているところでございます。
赤羽分科員 今の大臣の御答弁を聞いて少し安心をいたしました。
 といいますのは、私の地元で、弱電の下請というか、部品メーカーをしている結構元気な中小企業がありまして、中小企業といっても全世界で一万人ちょっとの従業員を抱えていて、実は日本人は五百人ぐらいなんですね。各地域の工場の経営陣みたいな形で張りついていて、その社長とこの前話したときにおもしろいことを言われたんですが、給料の比較をわかりやすくしてみようかと。
 うちの五百人の日本人というのは、実は年収七、八百万円なんだ、これは分単位にしますと六十六円なんだというんですよ。中国は幾らだと思う、中国も地域によって違うんだけれども、大体二円五十銭ぐらいなんだ。タイも、バンコクの周辺だとやはり二円ちょっとで、奥地に行くと一円八十銭ぐらいだ。今一番安いのはインドネシアで、一円五十銭ぐらいなんだというんですよ。
 六十六円と一円五十銭のこの人件費の差というのはどうしようもないんだよねと。よく空洞化とかなんとかと言っているけれども、自分たちが出なければ結局欧米のところが出てくる。要するに、デフレなんて言うけれども、彼らの立場から言うデフレなんというのはもう必然だ、現状安いものができているわけだから、そこで頑張って競争していくしかないんだ、それを何か日本でどうのこうのなんという発想をしている限り、非常に産業政策として厳しいものがある、世界じゅうで頑張っていかなければいけないんだというようなことであって、ああ、これがやはり現場の声に近いのかな、こう思いました。
 やはり経済というのはグローバルなものですから、国内保護をしなければいけない部分があるのは、それは地場産業をどう成長させていくかというのは、私の地域もケミカルシューズ等々の地場産業がありますのでよくわかっていますが、それは前向きな目標があっての国内保護であって、目標のない国内産業の保護というのは本当は経済のグローバル化に乗りおくれるということで、ぜひ、その知恵を出していただきたいということが一つであります。
 もう一つは、時間も限られていますので、今回も随分中小企業に向けての融資政策、去年も売り掛け債権の担保保証制度ですとか、いろいろ画期的に一生懸命、平沼大臣の指揮のもとでやっていただいているというのは大変感謝もしております。
 ただ、率直に申し上げて、僕らよく言われるんですが、国会でこういうものをつくりました、政府・与党でこういう制度ができました、こう言っても、いや、赤羽さん、もう全然現場がわかってないね、実際現場へ行ったら県の信用保証協会で全部はじかれているんだよ、セーフティーネット保証だ特別保証だ、いろいろ言うけれども、結局はうちはだめなんだよなというところが案外多いんですね。
 それで、そのギャップに、やはり国会議員というのは余りよくわかってないな、現場はそんな生っちょろいもんじゃないなんという声がすごくあって、実は、大臣も御存じだと思いますけれども、うちの公明党も「中小企業応援ブック」というわかりやすい本をつくらせていただいて、ほとんど中小企業の知恵をかりたんだと思うんですけれども、今、こういうものを持っていって説明をするんですね。そうすると、さすがに今回の、要するに資金繰り円滑化借りかえ保証制度とかセーフティーネットの保証、七号、八号の新設とかは物すごく感激していただいて、よし、やろう、こういうふうにして金融機関にやはり行くわけですね。
 そうすると、ちょっと一つの事例で申しわけないんですが、私がよく知っている、神戸でも一番しにせに近い、また、しにせといっても古いスタイルじゃなくて、一番元気のあるレストランを経営している会社がありまして、ここでちょっと資金繰りが大変になってきた。実は、ある銀行からの貸しはがしに遭って融資を申し入れた。四千五百万円ぐらいなんですけれども。彼らはまだ保証枠も残っているし、今まで返済が滞ったことは一回もないんですよ。今回、七号の申請に当たって、神戸市長に、金融機関の貸しはがし、貸し渋りによってこういった事態が起こっていると認定されるようにお願いいたしますと、この認定書もついているんです。
 神戸市長の認定書をもらった瞬間に、この当事者というのは、当然、これで受けられるな、七号の、市長の認定まで受けたんだからこれで大丈夫だ、自分たちはずっと円滑にやっているし、最近ちょっと売り上げが落ちているとはいえ、自分たちが、自分の会社が頑張らなければほかが受けられるような状況じゃないだろう、こういった思いで出したら、結局だめだと保証協会からバッテンが出てきているんです。バッテンが出てくるというか、きょう、ちょっと確認したら、そんな、まだ最終決断ついていないとはいうものの。
 これは、またかということで、どうなっているんだと。この制度にのっとったものじゃないか。おまけに、神戸市長の判こもついている、認定しますという認定書までついている。鳴り物入りの、七号保証、八号保証が新設されたと宣伝もしている。これでも受けられないと、またかということになるんですね。
 私、いろいろ思うんですけれども、一つは、だめだといったときの理由の説明が、多分余りよくないんじゃないかと思うんです。おたくはこうこうこうでこうだからだめだということが、余りやられていない。結局、門前払いをされているようなことがすごく大きいんじゃないかな。それがあるとなかなか、相当踏み込んだ画期的な制度も、やはり絵にかいたもちみたいになってしまうのは本当に残念なことなので、ぜひ保証協会の対応というのをもう少し丁寧にしていただきたい。
 本当、この一件一件のリスクというものを感じると、やはりこれはいつものことなんですが、なかなか貸し出しをしにくいというのはよくわかりますが、神戸市長が、貸しはがしに遭っているんだという認定を出させているという手続を踏んでおいて、これはまただめだというような話になりますと、私は、せっかくの制度が死んでしまうんじゃないかということを大変心配しております。
 画期的な、この二月十日から始まったということで、我々も大宣伝をしているんですけれども、この制度が生きていくような活用の方を、経産省のお考えを、副大臣ですか、お答えいただきたいと思います。
西川副大臣 私も、ただいまの、人ごとならず先生の御質問を拝聴させていただきまして、尾身先輩からもそうだという御発言がございまして、大方そういうことを御体験の国会議員の方々、多いのではないかと思っております。
 そこで、お答えなんでございますが、明日でございますが、全国信用保証協会代表者総会というのを当省で開催いたしまして、平沼大臣、御出席をいただきます。私ども両副大臣、両大臣政務官も陪席を許していただいておりますが、そういう席で、中小企業庁長官初め、幹部から、ただいまの御意向も加味しながら、制度の周知徹底を図る努力を重ねてまいりたいと思います。
 もちろん、この制度が発足する以前から、このことにつきましては十全の体制をとったつもりでございます。特に、百万部のリーフレットを用意いたしまして、既に二十万部を配布済みでございまして、努力をしております。
 そして、この制度が、ただいまも評価をしていただきましたように、初めの二月十日からの一週間、それはわずか実質四日間の営業日でございましたけれども、八百六十四件、百十九億円というスタートでございました。それが既に二週間で四千五百件、金額にして六百六十億円、こういう付保実績となっております。
 したがいまして、この制度を十分活用していただくために、私どもといたしましては、保証協会に対しまして、個々の中小企業の実情に即したきめ細かい審査を通じて総合的な判断を行うよう指導をしてきております。特に、年度末の金融繁忙期や、また暦年の年末の繁忙期にも、周知徹底を図るべく、文書による指導を行っておりますが、私ども、特に、先週末でございます、二十一日でございますが、保証協会に対しまして、保証手続の迅速化等適切な保証を行うよう文書で指示をいたしたところでございます。
 先生の御意向を受けて、しっかりと徹底してまいりたいというふうに思っております。
赤羽分科員 ぜひよろしくお願いいたします。
 何か、保証協会は、我々政治家がそういう事情を聞こうとかすると、非常に圧力をかけられたみたいな反応をして、我々ですら門前払いに遭うような状況なので、そんな気持ちは全くなくて、本当に、そういったことをぜひまず役所のサイドで御徹底のほどお願いしたいと思います。
 昨年も、売り掛け債権担保融資保証制度、これも相当新しいアイデアで、これはもう質問あれですけれども、これも相当鳴り物入りで、うちの党も期待して、信用保証も二兆円ぐらいかな、随分と画期的なあれだと。私も二回ぐらい、議事録持ってきていますけれども、このPR、周知徹底が大事だとかなんとかいって、スタートしたら、こっちは鳴かず飛ばずだったんですよね、最初。一年間にたしか三回ぐらい制度設計を変更しているんですね。
 私は、この教訓というのはすごく大事だと思うんですよ。やはり、役所としては使い勝手がいい、だあんと行けると思ったら、なかなか使い勝手が悪いという現場から声が出てきた、それをしっかり耳を傾けて制度を変更したということは非常にいい事例だと思いますので、ぜひ今回も、相当いい制度だというような自負もあるでしょうけれども、実際の現場の声をしっかり聴取していただきながら、活用していただけるようによろしくお願いを申し上げたいと思います。
 それで、もう時間が、最初の与党の質問で十時半までに終わるようにと言われておりますので、随分はしょりますけれども、実は、先日の予算委員会で、我が党の太田前国対委員長が質問に立ちまして、竹中大臣から、リレーションシップバンキングは、大手主要行の金融とは別の視点が要るということで、検討している、抜本的なあり方の見直しをしているところです、ぜひ地域の中小企業に対する金融のあり方が活性化するような方策を探していきたいという発言がありました。
 そのときに、太田さんも発言をしたと思うんですが、こういった役割は今こそ政府系の金融機関が果たすときなんではないか。まさに、小泉総理が言う、民でできるものは民に、これは非常に当たり前なんですが、民でできないことも民にさせている傾向があるんじゃないか。今こそ、リスクをとれない民間の金融機関の実態の中で、公的な、特に中小企業の団体は商工中金をぜひ存続してほしいという全国的な要請活動があったと思いますし、今まさに政府系の金融機関、商工中金なんかが、まさに、企業、企業の目ききをして、踏み込んだ融資というか、生きた資金繰りをしていけるようなことを督促していただきたい。
 政府系金融機関は民業圧迫だなんという批判も浴びましたけれども、今この状態は別に民業を全然圧迫していないわけでありまして、数年間という限られた期間かもしれませんが、踏み込んで、ぜひこの政府系金融機関の、今も活用されていると思いますが、なお一層の督促というか、激励をして、頑張っていただきたい。
 最後に御決意をいただいて。
平沼国務大臣 重要な御指摘だと思っております。
 実は、小泉内閣では、民ができることは民、こういう基本方針があります。経済財政諮問会議の場でも、一部の議員の中から、政府系金融機関の見直し、そういう意見が出たことも事実でございますけれども、私は、今の金融情勢、中小企業の資金繰り等を考えて、今こそ、政府系金融機関が必要なときはないんだ、だから、政府系金融機関の機能は今むしろ強化すべきだ、こういうような趣旨の主張をさせていただき、政府系金融機関が今一番大切だ、こういう中で、認識も一致したところでございます。
 ですから、赤羽先生おっしゃるように、これからも、今一番厳しいときですから、政府系金融機関がきめ細かく対応することが大切でございまして、先ほどの御質問で御指摘の、例えば信用保証協会の窓口が非常に冷たい、そういうようなことはあってはならないわけでありまして、あしたの会議がございますし、既に通達も出しておりますけれども、私どもとしては、しっかりと徹底して、しっかり遺漏なきを期すように努力をしてまいりたい、このように思っております。
赤羽分科員 どうもありがとうございました。
 以上で終わります。
宮本主査 これにて赤羽一嘉君の質疑は終了いたしました。
 次に、後藤斎君。
後藤(斎)分科員 民主党の後藤斎でございます。経済産業委員会の所管に入る前に、幾つか御質問申し上げたいと思います。
 今、イラク、北朝鮮も含めて、安全保障の問題が大変緊張を増しております。これにどうこたえるかというのは、これから各委員会の中でもまた私も含めて質問させていただきますが、国内においても、平時においては忘れがちな地震対策、そして防災対策、これも大きな国の責務がある安全保障の関連だというふうに認識しております。
 まず、災害対策委員会にも以前所属をしておりましたが、ことしはその場がないので、大変恐縮ですが、本日の委員会をおかりしまして御質問を幾つかさせていただきます。
 東海地震というのは、予知が可能だという地震の数少ないものであります。これはまさに、観測体制をどう強化して、仮に大地震があった場合でもその災害をどれだけ極小化するかということが必須だというふうに思っています。
 いろいろ国が地震予知に観測施設を整備したりもしているということは十二分に承知はしておりますが、最近、問題を指摘される中に、観測機器の老朽化というものが懸念をされている部分がございます。最新機器への更新というのはもちろん財政コストという点でコスト増になるわけですが、冒頭申し上げましたように、地震予知、さらには東海地震というのは大変大規模だという地震の一つでございます。現在、政府におかれて、地震予知の精度の向上という観点から、どんな形で機器の更新を含めた観測体制の強化をなさろうとしているのか、冒頭御質問申し上げたいと思います。
藤谷政府参考人 お答えいたします。
 ただいま御質問がございました東海地震に対する観測監視体制でございますけれども、気象庁では、東海地域とその周辺に地震計や地盤の伸び縮みをはかる地殻岩石ひずみ計等を設置しております。それとともに、国土地理院、防災科学技術研究所、産業技術総合研究所及び大学等関係機関の協力を得て、地震計のほか、GPS等の各種データを気象庁本庁に一元的に収集し、二十四時間体制で監視をしております。
 気象庁は、従前から最新の地震学の知見を取り入れまして、データ処理技術の高度化に努めるとともに、平成九年度以降、静岡県の協力も得ましてひずみ計を増強するなど、観測監視体制の強化を図ってきております。
 さらに、平成十五年度には、地震活動等総合監視システムを更新することにより、東海地震の直前予知に必要な前兆現象を的確に把握する能力の向上を図る計画でございます。
 これらの措置によりまして、直前予知に必要な前兆現象を的確にとらえられるものと考えております。
後藤(斎)分科員 東海地震に関連をしまして、直下型と言われております南関東地域の地震の切迫性というのが最近特に指摘をされております。
 この件につきましては、平成四年、ちょうど十年前になりますが、中央防災会議では、その地震対策にかかわる大綱というものをまとめて、必要な施策を講じるということにしておりますが、そこもまだ十二分にその施策が実施をされているような話がなかなか出てきておりません。この南関東地域の直下型地震に対する観測並びに今後の対応について御質問申し上げたいと思います。
藤谷政府参考人 お答えいたします。
 南関東地域の観測監視体制でございますけれども、気象庁は、南関東地域に地震計や地盤の伸び縮みをはかります地殻岩石ひずみ計等を整備しております。
 先生、今御指摘がございました中央防災会議で決定されました南関東地域直下の地震対策に関する大綱の趣旨に沿いまして、大学等関係機関と連携して、地震、地殻変動等のデータを気象庁本庁に一元的に収集して、二十四時間体制で監視を行っておるところでございます。
 さらに、平成十五年度には、気象庁本庁の地震活動等総合監視システムの更新を行いまして、より迅速かつ的確な地震情報の提供に努めてまいります。
 今後とも関係機関と密接な連携を図りながら、南関東地域の地震、地殻活動の観測監視体制の強化に努める所存でございます。
後藤(斎)分科員 もう一点、御質問申し上げたいと思います。富士山の防災対策についてです。
 富士山は、活火山であるということは、知られているようでなかなか知られていないという火山の一つでありますが、もちろん富士山は東京からも天気がいいときに見えるということで、仮に火山が噴火をすると、首都圏も含んだ人口密集地域に多大な影響を与えるということは言うまでもございません。
 最近、地方自治体も絡めて、国も、富士山に対する防災対策、検討をし、順次手続を進めているというお話を聞いておりますが、まだまだ地域間の連携も含めて十二分ではないという感じもしております。
 現在の富士山の火山観測の体制についてどのようになっているのか、そしてそれをどう強化していくのか。あわせて、各地方公共団体も含めて総合的に窓口を設けながら、政府全体として富士山の火山防災対策について検討していく必要があると思いますが、その点について、順次お答えをお願いしたいと思います。
藤谷政府参考人 お答えいたします。
 富士山の火山観測監視体制でございますけれども、富士山につきましては、気象庁は昭和六十二年から山頂に地震計を設置し、本庁において監視を行っております。
 平成十二年十月から十二月及び平成十三年四月から五月にかけまして、深部での低周波地震が多発いたしました。この活動を注意深く監視する必要があることから、観測体制の強化について大学等と協議を進め、気象庁として八合目に地震計を設置いたしました。また、大学等関係機関も観測体制の強化を進めているところでございますので、気象庁は、これら関係機関のデータの分岐を受け、さらなる監視体制の強化を図っているところでございます。
山口政府参考人 お答えをいたします。
 富士山におきましては、平成十二年及び翌年の十三年に低周波地震が多発をいたしました。これにつきましては直ちに噴火が懸念されるものではないと判断をされましたけれども、これを機に、改めて富士山が活火山であることを再認識させられたところでございます。
 富士山が仮に噴火をした場合には、首都圏を含む広域において甚大な被害が発生するおそれもあることから、的確な防災対策を確立することが必要となります。このため、山梨、静岡、神奈川、東京の各都県、地元市町村及び国の関係機関で富士山火山防災協議会を設立し、富士山防災対策の基本となります火山ハザードマップの作成や広域的な防災対策の検討を行うこととしたところでございます。
 現在、この協議会のもとに設置をされております、学識者等から構成される富士山ハザードマップ検討委員会におきまして、ハザードマップを作成するために必要な事項、例えば火山噴火によって火山灰や溶岩流などがどの範囲まで到達をするのかといった検討や必要な防災対策等について、ことしの春を目途に検討をしているところでございます。
 この検討委員会の報告を受けまして、来年度から、地元地方自治体等でハザードマップの作成、配布や防災計画の策定を行いますとともに、政府におきましても、富士山の火山防災対策に関する大綱のようなものを策定するなどして、必要な防災対策を推進してまいりたいと考えております。
 以上でございます。
後藤(斎)分科員 今のような形で、ぜひ精力的に進めていただきたいと思います。
 災害が起こったときに、どうしてもけがをなさったりということになります。その際に必要なことは、政府でも今かなり充実をしておりますが、災害時における救急医療の拠点、いわゆる基幹災害拠点病院の充実だというふうに思っています。もちろん国においても予算が充実するのはなかなか難しいということもわかっておりますが、各自治体においてもその部分で十二分に対応はできないかと思います。どちらがどうということでなく、必要なものはということで、ぜひ充実をしてほしいと思っております。
 現在、山梨県では、県立中央病院以下、八病院を地域災害拠点病院として指定をされ、施設の充実を図っているところでありますが、国はこのような災害拠点病院にどのような助成を行いながらその施設充実に対応していくのか、今後の考え方をお聞きしたいと思います。
渡延政府参考人 お答えいたします。
 ただいま委員から御指摘がありました災害医療の拠点となる災害拠点病院、山梨の場合でありますと、県に一カ所、基幹医療センターとしての山梨県立中央病院、そのほか、八つの二次医療圏ごとに地域災害医療センターが指定されておるところでございます。
 これらの病院等につきまして、例えば施設について、耐震補強あるいは医薬品の備蓄倉庫、自家発電装置といった完結的な医療を行うために必要な施設を整備する場合、また医療機器について必要な備品購入等を行い整備する場合、これらのものにつきまして、県から上がってきた計画を伺いまして、県、国それぞれ負担し合って国庫補助を行っておるところでございます。
後藤(斎)分科員 ぜひその充実を今後とも継続してお願いをしたいと思います。
 次に、本論に近いところに行きます。
 ことしに入って、いわゆるやみ金というものが違法貸し付け、取り立てをしているという相談が私のところにもありますし、新聞報道等でもたくさん出ております。もちろん取り締まり役は警察であるというのは承知をしておりますが、現在の貸金業法、貸金業規制法自体の登録のあり方も含めて、それを問題にされる方もございます。
 例えば、登録時に資産調査をやるとか、その後の業者の検査体制を強化するとか、いろいろな見直しが必要だという指摘を踏まえて、なかなか実態が、やみ金の部分がわからないというのも実情だと思っております。今、いわゆるやみ金融の現状、そして政府として今後どんな形で対応を、規制法の見直しをしていくのかどうかも含めてお答えをお願いいたします。
藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 貸金業の無登録営業、それから違法な高金利による貸し付け等を行っているいわゆるやみ金融と言われる問題については、金融庁といたしましても深刻な問題として受けとめております。
 これまでも、貸金業登録業者に対する監督強化に加えまして、政府広報等を通じた国民への周知、あるいは違法業者の摘発のための捜査当局との連携強化、こういうことに積極的に取り組んでまいったところでございます。
 金融庁といたしましては、こうした取り組みを今後一層強化するとともに、やみ金融問題に対応した規制の見直しにつきましても、本問題を取り巻く動向や議論等を踏まえまして、関係当局間の連携のもとに、幅広い観点から検討をしてまいりたいと存じております。
後藤(斎)分科員 今のお答えは、貸金業規制法の見直しをするという趣旨で理解をしておいてよろしいんでしょうか。
藤原政府参考人 現在、幅広い観点から、関係者がいろいろな角度から御検討いただいておりますので、今後、その動向を見ながら、私どもとしても検討をさせていただきたいと思っております。
後藤(斎)分科員 ぜひ、見直しというのは今この場で言うのは難しいかもしれませんが、少なくとも現状に沿った形、先ほども赤羽さんが大臣とお話をしたように、やはり見直すべきは見直す、柔軟な対応が必要な部分もあるということで、余り前例だけにとらわれた規制のあり方というのは今の時代には合わないということを御指摘して、次に移りたいと思っております。
 経済産業省。きのうも、大臣の所信に対する質問で、大臣からいろいろなお考えをお聞きしました。きょうは、委員会でなかなか質問しにくい点について御質問を申し上げたいと思っております。
 もちろん中小企業の問題が一〇〇%メーンではない委員会ということは十二分に了解しています。ただし、中小企業をこれからどんな形で活力ある形に持っていくかという中で、大臣はよく転廃業の比率の問題を指摘なさっています。
 ただ、私が一つ思うのは、転廃業比率で開業比率を高めるということだけを数字的に余り強調し過ぎると、いわゆる労働力人口的なものが、二〇〇六年から全体の人口も減っていくという日本の社会の構造をとらまえると、そこだけ強調し過ぎると、本来であればもうやめていく年齢の方の廃業というものももちろんありますから、余り正しいやり方ではないのかなという感じも個人的にはしております。
 さはさりながら、中小企業がどうやってこれから頑張っていけるかというのは、メーンはもちろん金融という、融資をどう受けて、直接金融になればまた別かもしれませんが、現在の間接金融に大きく依存をしているような状況では、その金融のあり方がこれからどう時代に合った変化をしていくかということに私はなっていくと思っています。
 まず、冒頭御質問を申し上げるのは、無担保無保証のいわゆる特別小口金融という部分であります。
 これについては、大変いい制度だということで、上限いっぱい、上限いっぱいというのは、逆に言えばもっと借りたいというふうな方も含まれていると思いますが、この辺の利用の現状と、どこまで目いっぱい借りているのか、その点について簡潔に冒頭お尋ねをしたいと思います。
杉山政府参考人 お答え申し上げます。
 御質問のございました特別小口保証制度でございますが、利用実績で申し上げますと、平成十三年度で、件数二万四千、額で八百億円、それから平成十四年度で申しますと、四月からことしの一月までの実績で、件数一万七千件、五百三十億円という状況になってございます。
 その張りつき状況でございますが、直近の実績で見てみますと、一千二百五十万円が限度額でございますが、一千万円から一千二百五十万円のところにどのくらいの割合があるかということで見てみますと、件数で約一・九%、金額で全体の二・九%というような状況になっているところでございます。
後藤(斎)分科員 何か、思ったよりも低い数字なので、ちょっと唖然としております。
 熱心にこれからもっと借りたいというところの方がいろいろな御相談に来るのかもしれませんが、仮に二%を切る数字で張りついているということであっても、限度額をもう少し上げてもらいたい。平成十三年度ですから、まだ一年ちょっと前に改正をして一千万から一千二百五十万に上げたということは承知をしておりますが、この一千二百五十万の限度額を上げれば、もっと使っていろいろな商売をしたいという方もいらっしゃるのも現状だと思いますが、この限度額を引き上げるということは今お考えになっていないんでしょうか。
杉山政府参考人 お答え申し上げます。
 特別小口保証制度の限度額、これは、具体的なニーズでありますとか利用状況というものを見て、限度額の引き上げというのも当然検討すべきことだと思っています。
 従来、累次にわたって引き上げを行っております。例えば、平成五年の限度額は五百万円でございましたが、十年ほどの間に三回の引き上げを行いまして、現在は、先生御指摘のとおり、千二百五十万円という状況になっております。したがいまして、私どもは、この制度がそういったニーズにどう適応するか、ニーズの動きはどうなっているか、実態はどうなっているかということをよく見きわめながら、必要な改正検討というのはやっていきたいと思っております。
 ただ、先ほど申しましたとおり、現在の張りつき状況から見ますと、今すぐにこの一千二百五十万円を引き上げなければいけないという状況ではないと思っております。ただ、こういった利用状況というものは不断にチェックをしていきたいと思っております。
後藤(斎)分科員 あわせて、創業者に対する保証、いわゆる創業関連保証、正式名は新事業関連保証制度というんだと思いますけれども、これは現在どんな利用状況になっているのか、答えの中で触れていただきたいのと、現在では、この創業資金の二分の一は自己資金ないし借入はできないよという仕組みになっておりますが、大臣が繰り返し御発言をなさっているように、創業家育成というものの中で、例えば二分の一、三分の一、四分の一、いろいろなメニューをしながら、この事業性であればという部分で資格要件を緩和するなり強化するなりし、要するに、要件というものを見直しをする、メニュー化をするということが私は必要ではないかなと。一律に二分の一以内みたいなことであれば、なかなかやりたくてもという方もいらっしゃると思いますが、その点についての現状と、今の資格要件の見直しについて、あわせてお答えを願います。
杉山政府参考人 お答え申し上げます。
 御質問のございました新事業創出関連保証制度でございますが、まず、実績で申し上げますと、これは平成十一年の二月から実施をいたしておりますが、ことしの一月末までで九千六百七十五件、金額で五百四十億円という実績でございます。
 今、自己資金要件について御言及がございました。現在の制度では、自己資金の範囲内ということで、半分までは自己資金でお願いをするということになっているわけでございます。これは、創業ということでございますので、そういった方に自己の責任を感じてもらう、あるいは個人の創業を着実に立ち上げるためには、まず融資規模は現実的な範囲でやっていただくといったことが大事ではないかということで、そういった範囲内にさせていただいているわけでございます。なお、この保証限度額は、平成十三年の臨時国会におきまして法律改正をしていただきまして、保証の限度額を一千万円から一千五百万円に引き上げたところでございます。
 今先生から具体的な御提案もございましたが、私ども、こういった新事業創出関連保証制度の利用実態、ニーズ、こういうものをよく踏まえながら、いろいろと研究はしてみたいと思っております。
後藤(斎)分科員 さらに質問を続けたいと思います。
 現在、信用保証制度の中で、いわゆる保証料の引き上げについて議論されております。早ければ来年度、今年の四月一日からということになっておりますが、確かに、現在の状況のような中で信用保証制度全体を維持していくために、ある程度の保証料の引き上げというのはある意味ではやむを得ないと思いますが、変な話、三月三十一日までと四月一日、一日で今の考えですと〇・三%上がるというふうなことは、何かちょっと解せませんし、何らかの激変緩和みたいなものが必要ではないかなという感じもします。
 あわせて、今、基本的には保証料を一律に取っているケースがほとんどですが、例えば今の一%を一・三にするにしても、例えば、優良か、やや優良か、ちょっとという三段階に分けて、一・三と一・〇と〇・八の選択制にする。余り複雑にすると大変事務量がふえて審査期間も長くなるということになるかもしれませんが、そういうふうな工夫を、先ほども小口保証の部分でも御指摘をさせていただいたように、いろいろ考えをして、柔軟にやはり対応できるような仕組みをとっていくべきじゃないかな。
 ある調査によりますと、金融機関の貸出金利、要するに、借りかえをするときに、金融機関から中小企業は大体四割弱が金利引き上げを要求され、二割の中小企業者が引き上げに応諾をしている。ただ、金利がこれから上がってくる。これは、保険料のものも含めて計算をするかどうかで若干差があるかもしれませんが、一%金利が上昇すると現在の売上高経常利益比率は〇・三%低下し、利益は一三%失われるというふうなことも指摘をされています。
 なぜ政府系金融機関がというのを、大臣も先ほどお答えをされていたように、要するに、貸し渋りや金利の引き上げが、通常の方ですと、いや、こんなにゼロ金利で、普通預金もほとんどつかないしと。ただ、借りる側からするとそうではない状況が、先ほどのやみ金融もそうでしょうし、今の銀行、要するに政府系金融機関以外の銀行もそうだという中で、もっとこの部分を借りやすいような形、それも企業の体力や将来性に沿った形で柔軟にやはり体制を整備することもぜひ考えていただきたいというふうに私は思っていますが、先ほどの激変緩和の部分も含めて、保証料の引き上げについてどのようにお考えになっているか、簡潔にお願い申し上げます。
西川副大臣 ただいまの後藤先生の御意見は、大変傾聴に値する御意見だというふうに、冒頭まず、真摯に承っておきたいというふうに思っております。
 その上で、先生も御事情をよく御存じだ、こういう前置きで御質問をしていただいたので簡潔にお答えをさせていただきたい、こう思うわけでございますが、いずれにいたしましても、この中小企業総合事業団の信用保険部門の収支というものをしっかりしておきませんと、いわゆる保証渋りというものにつながってはいけない、こういうことを私どもとしては心配いたしておりまして、昨年もことしも、昨年は実績、ことしは見込みでございますが、それぞれ六千億程度の赤字が発生したり、発生するだろう、こういうことでございまして、さらに、十五年度から十七年度にかけては九千億程度の大幅な保証の資金不足が見込まれる、こういう状況は非常に深刻でございます。
 そして、御案内のとおり、この不足額の大宗を国が負担をいたしているわけでございますが、補正予算でも二千億程度の財政措置を行ったわけでございますけれども、このままいきますと同じことになって大変厳しくなる。そういう中で、受益者負担という言葉が適当であるかどうかあれでございますが、御利用くださる方々に〇・三%程度御負担をふやしていただけないかと。
 これは、昨日も委員会で平沼大臣が具体的にお答えを申し上げたわけでございますけれども、御利用の平均が、三年間の融資期間で千四百万というのが大体平均なのでございますが、この方々を例にとってみますと、七万一千円、年に二万四千円、月に二千円程度の負担増になるということは事実でございます。
 そこで、私どもとしては、激変緩和ということになるのではないか、こう思っているのでございますけれども、一つは、セーフティーネット保証でございますとか小規模の零細企業の方々に向けての特別小口保証、こういうものにつきましては上げない、現行のままである一%を堅持する、さらに、過去の返済が順調であった、こういう中小企業者に対しては一定の割引率を導入する、それから、売掛金の担保の融資につきましては、二月十日からこの保証料率を〇・八五に逆に引き下げる、こういう措置をとっているわけでございます。
 私どもとしては、激変緩和策というのはこれをもって代替できるのではないか、こう考えておりまして、しかし、先ほど御提案のありました段階的な選択ということにつきましては検討させていただきたい、こう思っております。
後藤(斎)分科員 終わりますが、一点だけ。
 保証料の部分につきましては、確かに直接的な影響は今副大臣がお答えになったとおりかもしれません。ただ、先ほども御指摘をしたように、貸出金利を上げるという要請が四割近くあり、応じざるを得ないという企業が二割ある。私は、そこの貸出金利の上げをまた誘発するようなことは、ぜひ連動しないような形の、指導と言うと大変語弊がありますが、きちっとしたフォローはしていただきたいというふうに思って質問を……。(発言する者あり)
西川副大臣 はい、簡単に。
 大変重要な御指摘だと思います。これは、保証つき、しかも信用保証協会の保証つきのものというのはリスクが低いわけですよね、ほとんどリスクがないわけですから。それに便乗して上げるというのはおかしいと、きのう各党の先生方から厳しい御質問も出ました。真摯に受けとめて、金融庁にその旨強く申し入れたい、こう思っております。
後藤(斎)分科員 ありがとうございます。
宮本主査 これにて後藤斎君の質疑は終了いたしました。
 次に、塩川鉄也君。
塩川(鉄)分科員 日本共産党の塩川鉄也です。きょうは、ディーゼル車の排ガス規制の問題の事業者や自治体への影響ということでお聞きしたいと思っています。
 昨年十月からの改正NOx・PM法の施行及び東京都などの地方自治体独自の排ガス規制強化対策が進み、あわせて大気汚染の公害訴訟での判決も契機に、ディーゼル車の排ガス規制強化は社会的な要請となっております。
 公害被害者の方の訴えは大変切実であります。葛飾区の七十代のある女性の方のお話を紹介しますと、二十年近く前から肺気腫を患い、いつも酸素吸入器が欠かせない、発作が起きると胸が詰まったようになり、苦しくてとても立っていられない、一週間も点滴を打つこともある、どうして道路ばかりつくるのか、本当に空気をきれいにしてほしい、こういう声にこたえる取り組みというのが大変重要だと思います。
 これとあわせて、この排ガス規制対策を新車への買いかえだけで進めようとしてきた政府と自動車メーカーの対応によって、肝心の使用過程車対策がなおざりにされて、これが社会問題として広がっております。
 例えば、バス十二台を持つ貸し切りバス事業者の方の状況をお話ししますと、十年前の旧NOx法でNOx減少装置を一台百万円、十二台ですから合計千二百万円で据えつけをしました。今回さらにPMの減少装置、これは一台百二十五万円で三台分つけなくちゃいけないということで、三百七十五万円プラス消費税ということでつけなくちゃいけない。このPMの減少装置をつけたバスも、さらに二年後にはこれはもう使えなくなるわけですから、そういう点でもこの業者さんは切実な中で資金繰りに追われて、結局今もうサラ金にも手を出す、多重債務にも陥るような状況になっている、こういうことが今大きく広がるという問題があります。
 そこで国土交通省にお聞きしますが、この間、政府として、運輸事業において規制緩和策が行われてまいりました。この間の規制緩和策によって小規模事業者の新規参入が大変増加していると思うんですけれども、その現状について、簡単で結構ですけれども、お話しいただきたいと思います。
丸山政府参考人 貸し切りバス事業者、平成十二年と十四年の数字を比較して申し上げますと、平成十二年三月に二千三百三十六事業者が、平成十四年には三千二百八十一事業者にふえております。車両数で申し上げますと、平成十二年三月が三万七千六百六十一両、これが平成十四年には三万九千八百六両というふうになっております。
塩川(鉄)分科員 今、貸し切りバスの事業者で急増しているということでお話がありましたけれども、二〇〇〇年の二月から貸し切りバス事業は免許制から許可制になりました。そういう中で新規参入が相次いでいます。
 日本バス協会の調査でも、二〇〇〇年一月三十一日、つまり許可制になる直前の時点での事業者数が二千四百八十四、車両数が三万三千四百九十四台、つまり一事業者当たりの保有台数は十三・五台だったわけですね。それが、それ以降、規制緩和後の二年二カ月間で新たに許可を受けた事業者の状況を見ますと、新規参入で入ってこられた方というのが九百四十八あるんですけれども、従来の事業者の規模にすると約四割に相当するような新規参入者があったわけですが、保有する車両数というのは三千三百十九台ですから、つまり新規参入の方の一事業者当たりの保有車両台数というのは三・五台なんです。そういう点でも、小規模事業者が多数という現状があります。
 国土交通省の中部運輸局が昨年の六月に調査を行っておりまして、規制緩和後の貸し切りバス新規参入事業者の動向という調査では、比較的中小規模の参入が多いというふうに指摘をして、ここで大事なことは、こういった新規参入事業者の今後の経営見通しはどうかということなんですね。この調査は昨年の六月ですから、排ガス規制強化が周知徹底される前といいますか、実際事業者の方へなかなかそこまで知られていない段階で、その時点での将来の見通しはどうかということを中部運輸局が聞きましたら、従来の観光とか遊覧だけじゃなくて、自治体とかコミュニティーへの需要開拓に取り組んで、経営状況としては、アンケート調査実施前には、現在の経済状況から経営環境としては厳しく、事業経営的にも厳しいとの回答が多数を占めるものと考えていたが、予想に反して、需要動向は増加あるいは増加傾向との答えが多く、また今後の経営見通しも明るい、あるいは横ばい、こういう回答が過半数を占めていた。
 つまり、新規参入の小規模事業者の方が、新たな市場開拓もされる中で大変努力をされて、それなりの見通しを持って頑張っていらっしゃる状況というのがここでも浮き彫りになっています。
 こういった事業者はどういうふうに新規参入してくるか。大手のバス会社が車検切れの、大体十二年間使用して中古で出ます、この中古のバスを購入するわけです。そこから三年とか五年使用するという形で入ってこられているわけですね。そういった創意工夫を発揮して頑張ってこられた方が、ディーゼルの排ガス規制の強化で、使用過程車への後づけ装置がないなどきちんとした対策がとられていないために、今苦境に陥っている状況にある。
 そこで、重ねて国土交通省にお聞きしますが、こういった貸し切りバスですとかトラック事業者など、規制緩和による新規参入の小規模事業者に対する影響調査、排ガス規制強化がどういう影響をもたらすのか、こういう調査は行っているんでしょうか。
丸山政府参考人 新規の参入事業者に対します影響の調査については行っておりません。
塩川(鉄)分科員 ここを今影響が直撃しているわけですね。例えば、トラック事業者への影響ということで、政府としては調査をしていない。そのかわりに民間のシンクタンクなどでの調査を紹介しますと、昨年十月の三菱総合研究所のリポートでも、中小規模の事業者を中心にトラック事業者が、今後四年間に全体の七%の業者が廃業に陥るだろう、こういうことを報告しています。
 それから、貸し切りバス、観光バスの事業者の方のお話を聞きましたら、一つの例を紹介されていましたけれども、去年の十一月ぐらいに、週の初めに、ある大手の旅行会社の代理人から電話をもらって、週末、平日にバス一台、百万円出すから調達してくれと。貸し切りバス一台ですよ。普通、一台七万円ぐらいですよね。多少、週末ですとかピークの時期ですと二十万円ぐらいが相場ですから、それを百万円出すというのはどういうことかと。それは結局、沖縄から修学旅行の子供たちが羽田に着いたけれども、事情によって大手の旅行会社がバスを確保できなかった、穴があいてしまった。それを必死に探す際に、普通の七万では当然無理だ、二十万でも割に合わない、結局、百万という金額で何とか確保しなくちゃいけないという状況になっているというのが今の現状だというんです。
 これは、去年の秋に大手のバス会社が一定程度減車をしていますから、そういう影響のあらわれだと思うんですね。ことしの十月を過ぎると、今言った中小規模の貸し切りバス事業者がこれを機に引き揚げよう、廃業しようという話になると、この秋の観光シーズンに大きな影響が出る。修学旅行のバスが確保できないんじゃないかとか、今はやりの激安のツアー、こういうのも全部なくなるんじゃないかとか、貸し切りバス事業者だけじゃなくて観光業にも影響が出るんじゃないか、こういう懸念の声というのが生まれてきています。
 それから、ダンプの事業者の方への影響というのが大変深刻です。
 日本砕石新聞というのがありまして、ことしの一月十三日の記事で、骨材業界では運搬の大部分を一人一車が担っており、ディーゼル車排ガス規制対策費用は個人ドライバーにとって重い負担になる、規制導入によって半数近くの一人一車が廃業すると見られる、ダンプ不足から骨材の供給が一時的にストップする可能性もあると指摘をしています。
 ダンプの労働者の方がつくっている全日本建設交運一般労働組合全国ダンプ部会の調査でも、そこは極めて実態に近い一人一車の方の状況をとらえている調査だと思うんですが、平成五年以前の古い登録のダンプというのは全体の六割ですから、そういう点でも影響は直撃するんじゃないか、こういうことが危惧をされるわけです。そういう点で、特に新規参入者に当たる調査が行われていない。
 ちなみに、ダンプの事業者の影響調査というのは行っていますか。
丸山政府参考人 包括的な、全般的な調査を行っているかということについて言われますと、行っておりませんけれども、どのくらいの影響が出るかということについて調べましたところ、NOx・PM法の対策地域内で登録されております大型ダンプの台数が約六万台でございます。そのうち、普通の貨物自動車との代替比率が同じであるというふうに仮定いたしますと、今先生がおっしゃいましたように、七割が対策をしなければいけないということは把握しております。
塩川(鉄)分科員 ダンプというのはトラックという大きなくくりの中にあるものですから、ダンプだけの影響というのは見えてこないんですよ。実態として、そういう調査も行っていない。貸し切りバスや、あるいはトラック事業者やダンプの事業者に対する、この排ガス規制がどういう影響を与えるかということについて、政府としてきちんとした対応がとられていない。
 特に、この間の規制緩和で新規に参入した小規模事業者がもろに影響を受ける、こういう事態についてしっかりとらえる必要があると思うんですね。いわば、この間の政府の規制緩和策によって小規模事業者が増加をしてきたのに、他方で、政府の無策によってこの小規模事業者は廃業に追い込まれる。これほどおかしな話はない。このような現状を正確につかむためにも、きちんとした影響調査を行うべきだと思うんです。
 国土交通省として、ぜひ約束していただきたいんですが。
丸山政府参考人 規制緩和の実施によります影響につきましては、私どもも、例えば先ほど貸し切りバスの話がございましたけれども、規制緩和後、今二十六カ月たったわけでございますけれども、逐次、バスでございますとか、路線バスにつきましても観光バスにつきましても、どういう影響があって、それはどういう理由によって撤退したかということは把握しております。
塩川(鉄)分科員 新規参入者という点で調査を行われていないわけですから、そういうのもきちっとこの時点に立って行うべきだということを求めていきたいと思うんです。
 それからもう一つ、地方自治体の持っているディーゼル車両というのはたくさんあります。これは住民サービスを提供するものになっているんですが、このディーゼル車の排ガス規制強化を機に、全国で移動図書館車の廃止というのが相次いでいるんですね。一台一千五百万円ぐらいする、それなりにお金のかかる車両になります。
 例えば埼玉県の富士見市では、この十年使用してきた移動図書館車は、三千冊の図書を積んで学校や地域を回り、市民の皆さんに歓迎されています。担当者の方は、こういった排ガス規制の強化もあるということで、引き続き続けるために車両の買いかえを要求したら、逆に打ち切り、廃止ということを当局の方に言われてしまったということなんですね。埼玉県の草加市でも、やはり移動図書館車をことしの十月で廃止する。理由は、ディーゼル車の規制により移動図書館車が使えなくなるからだと。この草加市はどうするんだ、ワゴン車を購入して、箱に本を積んで回るんだというんですよ。ですから、それこそ一回一回おろして本を並べるなんということで代替するというんですから、とても今までのようなサービスはできない。愛知県の瀬戸市でも、同様に廃止の危機にある。こういう話というのは、あちこちで今生まれてきています。
 さらに、この愛知県では、県が所有をしている障害者の団体に貸し出しをしていた福祉バス、これを廃止するという話です。三十一人乗りのリフトつきのバス、車いすも乗れるような、そういったバスですけれども、ここ三年ほど利用状況は安定をしていた。そういったものを廃止するということに対して、障害者団体の方からは、バスを活用した研修旅行などは社会参加や交流の貴重な機会だったと悲鳴が上がっている。これは地元の愛知新聞などで紹介をされていました。重度の障害を持つ方が出かけるというのは、バリアフリーが進んだ今の世の中でもなかなか大変なことです。バスに乗り合わせて集団で仲間で出かけられる喜びというのは、かえることができない喜びだと思うわけですね。こういうものさえ奪うような状況になっている。
 そこで、環境省に伺いますが、こういった自治体保有のディーゼル車両についての排ガス規制強化についての影響の調査、これはきちんと行っているんでしょうか。
西尾政府参考人 今先生御指摘のように、幾つかの自治体で永年地域の方々に親しまれてきた移動図書館や福祉バスというものが廃止の方向になった、その理由の一つには車種規制が挙げられているというふうに報じられているということは承知していますが、自治体で車両を購入、保有するに当たりましては、それぞれの行政目的に照らしまして、さまざまな事情を勘案して自治体の判断で行っていると思っておりますので、そのことにつきまして特別の調査を行う、あるいは個別の事情をつまびらかにするということはいたしておりません。
 ただ、一般論として申し上げれば、自治体におきましては、これはやはり大気環境改善の見地から、車種規制に適合する自動車へ代替していただくことはもとよりでございますが、さらに低公害車の率先導入といったようなことによって、よりクリーンな自動車の使用をしていただきたいというふうに期待しているところでございます。
塩川(鉄)分科員 例えば、埼玉県富士見市では、こういったディーゼル車両を廃止して、一部はもうやめてしまう、残りについてはリースに切りかえるということでの対応を始めているそうなんですけれども、これは今、ことしの十月を機にリースの需要が増加をしているものですから、そもそも確保できないんじゃないですかというぼやきが市の担当者の方から上がるような状況に今なっているわけですね。
 そこで、続けて環境省にお聞きしたいんですが、今言ったような移動図書館車ですとかあるいは福祉バスだけじゃなくて、例えばレントゲン車、検診車、こういったのは中古のバスを改造していますから、全部今度ひっかかるわけですよね。こういった特殊仕様の車両の影響調査はどうなっているのか。あるいは、消防団の持っている古い消防車両ありますね、こういうのも当然ひっかかってくるわけです。このような影響調査というのも行っていないわけですね。その点だけ確認します。
西尾政府参考人 今御指摘の数字自体は把握しておりませんが、一部の特殊車両、極めて構造が特殊であるというようなものにつきましては、車種規制をかけていく規制の年限等において特別の配慮をしているところでございます。
塩川(鉄)分科員 レントゲン車とか検診車はやっていないということですね。そういうように、今多大な影響が出ているわけですから、これに対してきちっと影響調査を行うですとか実態を正確に把握することが、まず政府の施策の中で行われていることである以上責任があると思うんですが、大臣として、その点、ぜひお約束いただきたいと思うんですが、いかがでしょう。
平沼国務大臣 今、塩川先生からいろいろ具体的な例を示されて、お話を聞かせていただいて、大変これは大きな問題だなと率直に感じさせていただいています。
 今御指摘以外の車両でも、例えば都内にあります機動隊の膨大な車両もあります。そういったことの対策というものもやはり考えていかなければいけませんし、自動車メーカーとしては、私ども要請をして、NOxそしてPM法、これに対しては非常に厳しくなってくるので、これをどんどんクリアするような車種をつくれ、こういうことで要請をしているところでございまして、近々、自動車メーカーも、例えばNOxの排出量が八〇%軽減できるような、そういう車両が出るというふうに聞いています。
 問題は、やはり後づけの問題がございまして、これを総合的にやって、そしていろいろ悪い影響が出ないようにしていくためには、環境省のみならず我が省も国土交通省もやはり連携をとって、そして、この円滑な、そういう一つの実施というものを知恵を絞って考えていかなければいけないんじゃないか、そういうふうに思っています。
 そして、一方においては、やはり環境というのは大変大切な二十一世紀の課題でございますから、やはりこの法律も施行していかないと、将来に対して、人類にとっては大変大きな問題を惹起することになりますから、そういう過渡的な段階ではやはり政府としてもきめ細かい対応はしていかなければならないんではないか、こういうふうに今御質問を聞いて思わせていただきました。
塩川(鉄)分科員 この排ガス規制を口実にして福祉切り捨てですとか住民サービス後退というのはおかしな話で、本来、環境規制も福祉への配慮というのも両立させてしかるべきものだ。それが、現場では、きれいな空気を守るためには本は読むな、あるいは障害者は外に出るな、こういう状況になっているということを許してはならない。
 そういう点でも、この使用過程車対策にきちんと全力を挙げるということが大事で、大臣もおっしゃられたように、低公害車の普及の問題もそうですけれども、今の、現在使われている車両に対しての施策として、この後づけ装置の問題、開発、普及、本当に責任持ってやるということが必要なわけですね。そういう点で、なかなか難しいという話ばかり聞くものですから、そんなに日本というのは技術力がないような国なんでしょうか。
平沼国務大臣 八〇%削減できるというのは、私、NOxと言いましたけれども、これはPMの方で、ちょっとそれは訂正させていただきます。
 日本の場合に非常にそういう技術力というのはありますから、私は努力をすれば不可能ではないと思っておりますし、後づけ装置に関しても、今百種類ぐらいのものが出ている、こういう現状で、いろいろそういうものは出ていることは事実です。ただ、一つは大変コストがかかるとか、いろいろな問題がありまして、これは非常に大切な問題ですから、こういう技術的な潜在力のある日本としては不可能なことではないと思いますので、我々としてもここの面ではさらなる努力をしていかなければならない、こういうふうに思います。
塩川(鉄)分科員 不可能なことではないという御答弁をいただきましたので、ぜひそういうお立場で自動車メーカーに対しても督励もお願いしたいと思っています。
 同時に、技術開発というのは中小の技術開発のメーカーもたくさんあります。そういったところも視野に入れて、必ず後づけ装置をつくってもらうということで、ぜひとも督励していただきたいんですけれども、その点を改めてお約束いただきたいんですが。
平沼国務大臣 自動車メーカーに対しては、累次にわたって私どもは要請をしてきております。そういう形で自動車会社も一生懸命取り組んでいることも事実ですけれども、中小にもそういういろいろいい技術があるわけでありますから、そういったことも含めて、経済産業省としては問題意識を持って取り組んでいきたい、このように思います。
塩川(鉄)分科員 後づけ装置の開発と同時に、これを機に事業の展望もしっかり見据えて買いかえもしていきたい、そういう事業者の方もいらっしゃいます。そういった方の話を聞きますと、新規に参入した小規模事業者ですから、そんな資金的な余裕がないわけですね。いろいろ融資などの対応も考えなくちゃいけない。
 お聞きしましたら、例えば貸し切りバスですけれども、新車ですとこれは三千万円です。いろいろクーラーつけるですとかテレビやビデオですとかカラオケですとかつけると、三千五百万ぐらいすぐいってしまうんですよね。そういった新車に対して、こういった新規参入の事業者というのは中古で買っていますから、幾らかというと大体三百万ぐらいで十年とか十二年物が出るんだというんです。ですから、五台持って一千五百万ぐらいで参入しようといった事業者が新車を買うとなると一台三千万です。最低五台と言われると一億五千万円ですよ。とても用意できないと。では、いろいろ制度融資がないかということで聞いて、無担保無保証なんかでぜひといったら千二百五十万円ですから、バス一台も買えない、こういう話になってくるわけですね。
 ぜひとも、そういう点でも、もうことしの十月という大きな期限の区切りのある取り組みですから、ここを一つの節目に、事業者の方はその後どうしようか考えています。つまり、十月がクリアできたとしても、それはPM対応だけですから、さらに二年後の再来年にはNOxの規制がかかりますので、そのときにはもう車は使えないとなると、やめようかという話になってくるわけですから、先ほど言った後づけ装置と同時に、きちんとした融資などの助成策、特別な融資制度というのを環境省、国土交通省、経済産業省で一体でぜひ考えていただきたい。
 一部道路特定財源などを使って、PMの除去装置の助成策なんか国土交通省は始めていますから、道路特定財源ももっとこっちへ持ってきてこういうところで使ったっていいわけですから、そういう点でぜひ知恵を出していただきたいと思うんですけれども、その点、ぜひお約束いただきたいんですが。
平沼国務大臣 先ほどの御答弁の中でも、環境省を初めとして経済産業省、国土交通省、そういったところが連携をとって知恵を出していくべきだ、こういう御答弁を申し上げましたけれども、私どもはそういう姿勢でこれから検討させていただきたいと思います。
塩川(鉄)分科員 それから、国土交通省が来年度の予算で行っている補助策に排ガス除去装置の購入に対する補助があります。各自治体との協調補助という形でその対象地域を全国に広げたわけですね。
 この点で、一部の県の中では、東京に乗り入れる車について、規制もかかっていないうちで助成するというのは県民の理解が得られないんじゃないかなんということを言う県の担当者がいるという話なんかも耳にするものですから、そういうことでは困るわけで、各県はこの協調補助にきちんと取り組んでいるかどうか、その点をお聞きします。
丸山政府参考人 先生御指摘のように、今おっしゃった補助を円滑に実施するためには、協調補助を求めております地方公共団体の理解と、それから、その主体的な取り組みというのが非常に大事なことでございます。
 現在、私ども、既に各地方局を使いまして、補助制度の内容を自治体等にもよく説明をしてきておるところでございます。きょうも本省に各局の自動車部長を集めまして会議をやっておりますけれども、そこの中でも、この補助制度が円滑にいくように、さらに督励をしてまいりたいと思っています。
 それを含めまして、また各地方公共団体への働きかけを強めまして、本補助制度が円滑に実施されるよう努めてまいりたいと思います。
塩川(鉄)分科員 いろいろな助成策について国土交通省のホームページを見ますと、見つからないんですよ、助成策。国土交通省のホームページで支援制度を探しても、検索で出てこないんです。
 例えば、全日本トラック協会などを通じて行っている支援策は、全ト協のホームページできちんと出ていますから大変わかるんですが、自家用車の方などはそこに行く機会がないものですから、こういう点はぜひ改善をしていただきたい。より周知徹底を図るという点での取り組みをぜひお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
丸山政府参考人 先生御指摘のとおりでございまして、今までの装置、それから新車の買いかえにつきましては、事業者、いわゆる青ナンバーの車に対してだけ行われていたということでございまして、全ト協なりあるいはバス協会を通じて低公害車の購入などの補助が行われていて、割合把握しやすかったということでございます。
 ことしから、域外の白ナンバーも含めまして一般車全体について補助制度が拡充されます。そうしますと、業界団体を通じて実施なり周知徹底を図るということは非常に難しくなるわけでございまして、先ほど申し上げましたように、各局を使いまして、一般の事業者にわかるような説明会、あるいは自治体も巻き込んで周知徹底を図っていくということをやっております。
 それから、ホームページにつきましても、充実をするように今検討をいたしております。
塩川(鉄)分科員 終わります。ありがとうございました。
宮本主査 これにて塩川鉄也君の質疑は終了いたしました。
 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。
    午前十一時三十二分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時開議
宮本主査 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。東祥三君。
東(祥)分科員 自由党の東祥三でございます。
 私は、中小零細企業の経営上の問題について、本日、質問いたしたいと思います。
 経済産業大臣、副大臣、お見えでございますので、現実に今、日本の中小零細企業が置かれている状況、とりわけその経営者の方々が抱えている非常に厳しい状況について、率直にお考えをお聞かせいただきたい。それと同時に、これらの問題に対して一定の方向性が開示されることを祈って、本日、来させていただきました。
 私の選挙区は東京の江東区というところでございます。深川、亀戸といった歴史の古い下町、そしてまた木場、新木場といった木材の町、そして近年では豊洲、東雲といった新しい臨海部の町などがございます。
 長引く経済の低迷の中、私の江東区におきましても、中小零細企業の経営不振そして倒産が多発しておる状況でございます。経営者の悲鳴に近い相談がたくさん寄せられてきております。まさに、中小零細企業の皆さん方の阿鼻叫喚とも言えるような様相を呈しているわけであります。
 大臣はこれらの問題についてよく御承知だと思いますけれども、私ども自由党は、民間経済の分野についてはできるだけ民間に任せるべきだと考えております。規制や行政指導は極力なくして市場の原則にゆだねる環境の中でこそ、自立した活力と創造性に富んだ中小企業が生まれてくる、このように確信している次第であります。
 ところが、では、現実はどうなっているのか。戦後の経済復興期から高度経済成長期を経て、バブル期そしてその崩壊と長引く不況の中、一貫して規制と行政指導で縛られ続けて、結果として、自立しようとする芽は摘まれ、活力と創造性を発揮しようとする動きは規制されてきたと言わざるを得ない。
 そして今、町の中小企業はどうなっているのか。金融機関の当座の生き残りのための犠牲にされてしまって、また、大企業のリストラや経営合理化のしわ寄せを一身に浴びる格好になっているのではないか。
 私は、基本的には、今申し上げたとおり、民間経済は民間に任せ、各種の規制や旧来の業界保護を目的とする行政指導は断固撤廃すべきだと考えておりますけれども、その撤廃していく過程の中において、経済環境がいいときには顕在化せずに済んでいた旧来の商習慣の問題が、この長引く不況の中で、とりわけ中小零細企業の経営を圧迫する問題として顕在化してきてしまった、このように考えております。
 きょうは、そんな江東区の中小企業の皆さん方からの生の声をもとに、手形の問題、そしてまた個人保証の問題を取り上げて、これらの問題に対して一定の方向性が明確に示されればと思っているわけであります。
 まず、大企業が、下請の中小企業に対してその支払いを手形で行っている中で発生する極めて深刻な問題点についてお伺いしたいと思います。
 毎日その資金繰りに四苦八苦している中小企業がほとんどでありますけれども、その背景の一つに、この手形による支払いの問題があると言わざるを得ません。
 中小企業は、親企業からの支払いを百五十日、百八十日、ひどい場合は二百十日といった手形でもらっても、その期間を持ちこたえられなくなっているのが現状なのであります。これに対して下請中小企業から異議を訴えようものなら、注文を減らされて、仕事を回してもらえなくなる。大臣、これが現にちまたの至るところで起きているわけであります。まず目の前の資金繰りを何とかするために、中小企業の立場はますます弱いものとなっていくわけであります。
 そこで、平沼大臣の答弁をいただく前に、公正取引委員会にお伺いしたいと思います。
 製造業の下請取引においては、親事業者が百八十日といった長期手形や割り引き困難な手形を交付したりする事例が現実に見られる。加えて、下請業者は、そのような不利益行為について、親事業者からの報復を恐れる余り、公正取引委員会にも申告できない状況にあるわけでありますけれども、これに対して、いわゆる下請法、下請代金支払遅延等防止法をより厳正に運用すべきなのではないか、このように考えているんですが、いかがですか。
楢崎政府参考人 先生御承知のように、下請取引の性格上、不利益を押しつけられた下請事業者が私どもに情報提供、申告するというのはほとんど不可能な状況にあるというのは我々十分承知しているところでございます。
 そのために、受け身で情報が来るのを待つだけじゃなくて、私どもの方から下請法違反があるかどうかといったことで積極的に書面調査を出しているわけでございます。
 最近のデフレ状況等かんがみまして、定期調査の数をふやしたりしているわけでございますけれども、平成十三年度は親事業者一万八千社に書面調査を出して、さらに、下請事業者にその反面調査として九万五千社に対して書面を出して、こんな問題がありますかという回答をいただいて、それを見て、問題があるところについて調査をやっているわけでございますけれども、十三年度におきましては、千三百十四件、親事業者の会社数でございますけれども、是正措置を講じさせたということでございますけれども、前年度よりも一五%の違反件数が増加している状況でございます。
 また、御指摘の長期手形につきましては、昭和四十一年に公正取引委員会の方で通達を出しておりまして、一般業種につきましては手形サイトが百二十日、繊維業につきましては九十日を超えるものを割り引き困難なおそれのある手形だというふうに通達を出しておりまして、それに基づきまして、私どもとして、長期手形二百二十五件の警告を行いまして、改善措置を講じているところでございます。
東(祥)分科員 さらに徹底的にこの問題に対しての厳正な態度で接していただきたいというふうに申し上げておきたいと思います。
 手形でもらって、それを銀行で割り引いてもらえる中小企業は実はまだいい方なんであります。とりあえず、当面は何とか息をつないでいける。悲惨なのは、手形でもらっても割り引きすらできない中小企業であります。日々の運転資金が捻出できなくなって倒産に追い込まれてしまう。中小企業は、毎月の給料や家賃は当然でありますが手形では支払えないのであります。現金を用意しなければなりません。
 そこで、公正取引委員会に重ねてお聞きしたいのでありますが、最近の傾向としては、長期手形だと非難されないようにするため、手形の交付にかえてファクタリング方式なるものを用いる親事業者がふえていると聞いております。この方式は、手形ではなくて一応アスタリスクつきの現金であります。ただし、手形のサイトと同じ程度の日数が経過してから現金を振り込む方式であります。
 手形をやめて現金で支払いますといえば、表向き聞こえはいいわけでありますけれども、何のことはない、下請業者にしてみれば、現金化できるのは手形と同じ日数をやっとの思いでしのいだ後のことであります。なおかつ、割り引きたくても手形そのものではないわけであります。これは実質的には下請代金の支払い遅延であります。悪く勘ぐれば、親企業が手形に張る印紙税を節税していると言っても過言ではない。
 このようなファクタリング方式による実質的な支払いの遅延に対しても、下請法により厳正に対処すべきなのではないか、このように思うんですが、いかがですか。
楢崎政府参考人 最近、手形の発行とか受け取りに係る業務を節約するために、ファクタリング方式等の一括決済方式が用いられるようになっていることは確かにそのとおりでございます。
 公正取引委員会といたしましては、昭和六十年に、先生がおっしゃったように、こういったファクタリング方式によって実質的に支払い遅延が起こってはいかぬということで通達を出しております。
 まず、一括決済方式により下請代金を支払う場合、支払い期日、言葉をかえて言えば債権の譲渡が確定した日と言ってもいいんだろうと思いますけれども、それ以降、下請事業者が現金化できるようにしないといかぬというふうにしているところでございます。債権譲渡が確定した日から、そして親事業者が銀行に振り込む決済日までの間に下請事業者が対価を得る、現金化できるようにしないと支払い遅延だ、下請法に違反するという考え方を明記しているところでございます。
 それからまた、下請代金の支払い期日、債権譲渡が確定した日から決済をするまでの間、それは手形と同様に百二十日、繊維業であれば九十日以内とする、そういう考え方を徹底しているところでございまして、いやしくも先生がおっしゃったように、決済日以降にしか現金化できないということであれば下請法に違反するということでございますので、そういった事例があればきちんと対応していきたいと思っているところでございます。
 また、毎年実施しております下請事業者に対する定期調査の項目の中に、一括決済方式による下請代金の支払いに係る調査項目等を設けておりまして、公正取引委員会の方でチェックできるようなシステムを講じているところでございます。
東(祥)分科員 この点に対しても、楢崎部長、厳正に、さらに厳しく、下請業者、親企業の手荒い扱いを受けている、そういう人たちを守るという視点で徹底的に頑張っていただきたい、重ねて要請しておきたいというふうに思います。
 もう一点公正取引委員会に伺いますけれども、下請というのは何も製造や修理に限定されているわけではない。私の地元江東区内においても、清掃業やクリーニング業、また運送業や警備会社など多くのサービス業の中小企業は、大なり小なり、ほとんど大手の企業の系列下、下請関係にあるわけであります。
 現行の下請法の対象であります物品の製造や修理の下請取引だけではなくて、サービス分野についても下請取引の問題が非常に深刻だと考えざるを得ません。これについてどう対応されておられるのか、この点についても、ぜひ、取引部長お願いいたします。
楢崎政府参考人 サービス化が進んでまいりまして、サービスの委託取引に係る問題が大きくなってきたわけでございますけれども、公正取引委員会では、平成十年に役務取引のガイドラインというものをつくりまして、独占禁止法で、こういった事例があればきちんと対応しますという考え方を明確にしていたところでございますけれども、なかなかやはり、先ほど来御指摘のあるように、独禁法上の考え方を示してもなかなか情報が上がってこないということで、ガイドラインの実効性がなかなか上がらないという問題もあったわけでございます。
 それからまた、独禁法の優越的な乱用で個別に対応しようと思っても、やはり基本はきちんと取引条件を合意して書面化するといったことが非常に重要でございますので、独禁法に基づくガイドラインの対応よりも、下請法の対象に加えてきちんと積極的に情報収集して違反を見つける、あるいは書面化をして取引条件を合理化する、そういったことが必要だというふうに私どもも考えましたし、また、私どもの検討を依頼した企業取引研究会でも、下請法の対象をサービス取引まで拡大すべきじゃないかという御提言をいただいたわけでございます。
 そういった御提言を受けまして、私どもとして、下請法の対象にソフトウエアの開発とかテレビ番組の制作などの情報成果物の下請取引、それから運輸業とかビルメンテナンスとか、そういったサービス役務の提供の委託取引を下請法の対象に加えるという下請法の改正法案を今国会に提出する予定で今準備しているところでございますので、国会に提出されましたときには、どうぞよろしくお願いしたいというふうに思います。
東(祥)分科員 取引部長、問題意識は多分共有していると思いますので、その実効性を担保していく、そしてまた、限られた分野だけではなくて、サービス分野にも広げた形での法改正というのをできるだけ早く出していただきたいというふうに思う次第でございます。
 下請と親企業の問題は、製造業に限らず、今申し上げましたとおり、サービス業などさまざまな業界にまたがっているわけでありますけれども、一たび日本の大企業の経営が破綻した際に連鎖倒産が膨大な件数に上る要因もここにあると言えるのではないかというふうに思います。五カ月、六カ月先の手形をたくさん抱えている下請の中小企業はひとたまりもないわけであります。せめて一カ月分の売掛金の損失だけで済んでいれば助かる下請が、長期の手形を抱えていたために次々と連鎖倒産に追い込まれてしまう現状であります。
 そこで大臣、大臣もこれらの問題に対して大変精通されている、問題の所在を理解されている、そして何とかしなければならない、このように思われている大臣だといろいろなところから伝わってきているわけであります。まず、この下請企業に対する支払い問題、特に手形の欠点、そして親企業の優越的立場を使っての下請いじめ、結果として下請いじめとも言える支払いの遅延が中小企業をますます苦境に追い込んでいる実態について、中小企業政策を所管される大臣として、どのようにお考えで、そしてどうすべきなのかということについて、御発言お願いしたいと思います。
平沼国務大臣 お答えさせていただきます。
 御指摘のように、親企業とそして下請企業との取引においては長期手形の交付等不公正な取引方法と見受けられるケースがたくさんある、このように私どもはよく承知をいたしております。
 経済産業省といたしましては、このような不公正な取引については、先ほど来お話がございましたけれども、下請代金支払遅延等防止法に基づきまして、書面の調査でございますとか立入検査等によって事態の把握にこれまでも努めてきたところでございます。
 公正取引委員会も、その取り組みについて答弁がございましたけれども、具体的には、私ども、平成十四年度上期においては約三万六千の書面調査を実施いたしました。そして、違反の疑いのあった親事業者に対しては、八百件を上回る実際に立入検査、これを実施いたしまして、支払い遅延、これは八十一件、それから下請代金の減額、これが七十七件、それから長期手形交付、これが五十一件等の違反行為に対して所要の改善指導というものを徹底して行ったところでございます。
 また、昨今の、御指摘の厳しい金融情勢でございますとか、あるいはデフレ経済の進展の中で、下請取引の適正化対策に最大限の努力を傾注していかなければならない、こういう認識を持っておりまして、昨年十一月から、さらに特別立入検査の実施、それから親事業者に対する下請代金支払遅延等防止法の周知の徹底を図ってきまして、緊急下請取引適正化対策、こういう名のもとに強力に私どもは指導を実施してまいりました。
 その一環として、御指摘のような長期手形の交付等の違反行為が生じることのないように、私どもは昨年末、経済産業大臣と公正取引委員会委員長連名の通達も出させていただいて、さらなる徹底を図っているところでございます。
 それからまた、先ほど公正取引委員会からも、サービス分野というものが非常に大きな分野になってきた、こういったところにやはりまだ網がしっかりかかっていない、こういうことでございますので、役務の委託に係る下請取引を規制対象に追加する、こういうことを柱とした下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法律案、これを今国会に提出する予定になっておりますので、私どもも全面協力をしてこの早期実現に力を発揮していきたい、こういうふうに思っております。
 そういう厳しい状況の中で、中小企業の皆様方が大変努力をされています。ですから、そういったことに私どもはきめ細かく対応するために、例えば、大きな倒産の中で連鎖に巻き込まれた、そういう中小企業者に対しては、やはり特別のセーフティーネットを張るなどこれまでも累次の対策を講じてまいりましたけれども、さらにそういったものを徹底していかなければならないと思っておりますし、また、一生懸命資金の、いわゆる債務の支払いを努力されている方々の負担が少しでも軽くなりますように、この二月十日から借りかえ制度というのも実施をさせていただいて、今まで一年で返さなければいけないのを五年でいいです、そういう形で私どもは一生懸命支援をしていこう、このように思っているところでございます。
東(祥)分科員 大臣、この支払い手形の問題というのは、ある意味で日本の商習慣といいますか、長い歴史を持っている。世界で、僕の知る限り、例えば百五十日間あるいはまた百八十日間、こんな手形を出す、そういう形での経済取引が行われているというのは聞いたことがないわけであります。
 問題は、多分この支払い手形をどうするのかということなんだろうと思います。国際競争が激しくなる、そういう状況の中で、本来こういう商習慣、クローズドの社会で日本の経済がどんどん発展していく、そういう状況の中では埋もれていた問題であります。しかし、それが一たび悪くなってきたときに、この商習慣、よき習慣だったのかわかりません、日本的角度から見るならば。しかし、それが機能しなくなってきてしまって、企業の存在それ自体も窮地に追い込まれてしまう、こういう問題なんだろうと思うんですね。
 そこで、一つ、アイデアでございます。
 ことしから、日本全国一斉に毎年、毎年ですよ、十日間ずつ手形のサイトを短縮するというのはいかがでしょうか。仮に、百五十日の手形だと、段階的に一年に十日間短縮していけば十五年にはゼロ日になるわけであります。いわゆる手形の撤廃という視点であります。この一点だけでも、中小企業にどのくらいの希望を与えることになるか。それほど現場は深刻なんだと御認識していただきたいというふうに思うわけであります。
 本来ならば、がばっと、本当に政府がやる気があるならば一朝一夕にできるんだろうと思いますけれども、長い間の商習慣であります。大企業も含めた上で、ある意味で自転車操業になってしまっている日本の経済、これを抜本的に変えていくためには、このような商習慣そのものも、これもある程度ソフトランディング、ある程度ですね、させていかなくちゃいけない。そういう視点から一つの提案をさせていただきたいと思いますが、大臣、この点についていかがお考えですか。
平沼国務大臣 私も十一年間企業で営業をやっておりました。先ほどの日本独特の商習慣、こういうお話がございましたけれども、当時、やはり非常に厳しい状況にありまして、お産手形というようなものも出回っていたことも記憶しておりまして、結局これは十月十日、そういう長期の手形もあったことを記憶しています。したがいまして、今の御提案の、一年ずつ短縮をしていく、こういうのは一つの御提案だと受けとめております。
 しかし、一方において、自由主義経済体制の中で、そういう一つの契約というものを規制するということもやはりよく検討していかなければならない私は案件だと思っておりますので、これは御提案として受けとめさせていただいて、しっかりと検討させていただきます。
 しかし、本当に企業経営上困るようなそういう長期の手形に関しては、下請代金の支払い遅延防止法、こういったものを改正する、その中でやはりしっかり担保していく、こういうことが私は必要なことではないか。御提案は御提案として、しっかりと受けとめさせていただきたい、このように思っております。
東(祥)分科員 まだまだやはり日本というのはお上の発想ですからね。水戸黄門のテレビ番組はまだ視聴率が高いんですよ。我々は、やはり日本の社会を変えていく、自立した、そしてまた主体的な民間経済を創造していく、これは個々人の自発的な意思に基づかなくちゃいけないわけでありますが、やはり習い性となってきている。
 そういう状況の中で、それをある意味で促進していく。起こっている問題に対してそれをどういうふうに防ぐか、それはそのとおりなんです。それと同時にそれを、ある意味で側面的に支援していって、そして最終的な形での、いわゆる商取引でありますから、そこに政府が介入していかなくても済むような形へ、こういうものをやはりもう一方において考えておかなくちゃいけないんじゃないか、そういう視点で提案させていただいておりますので、ぜひ考えていただきたい。
 時間がなくなってまいりましたけれども、どうしても取り上げなくてはならない問題が、もう一つの個人保証の問題であります。
 この問題に対しては、大臣、副大臣、御説明するまでもありませんけれども、この個人保証の過酷さが日本の中小企業の経営者からある意味で再挑戦のチャンス、これを奪ってしまっているというふうに思うわけであります。日本の中小企業に敗者復活戦は残されなくなってしまっているわけであります。
 金融機関が、不良債権の処理や自己資本比率の強化をにしきの御旗にして当事者責任を先送りしている、回避している一方で、末端の中小零細企業の経営者に対しては、その融資に当たり経営者本人が個人保証を求められ、身ぐるみはがされてしまう、事業の失敗の場合、そういう状況になってしまっている。経営者個人が保証債務の履行を余儀なくされて、最終的には個人の破産にまで追い込まれてしまう現状にあるわけであります。
 この点に関しては大臣、副大臣の方が私よりも詳しいかもしれませんけれども、平沼大臣、経済産業大臣としてこの問題をどう認識されて、どう取り組まれようとしているのか、この点についてもぜひお聞きしておきたいというふうに思います。
高市副大臣 中小企業の場合は、どうしても企業の資産とあと個人の資産が混然としている場合も多うございますし、それからまた、担保に資する十分な資産を企業として持っていないというようなケースもありますので、どうしても、お金を借りるときに経営者の個人保証が求められるということはある程度避けがたい状況になっております。そしてまた、これはアメリカなどにおいても一般的なんですけれども。
 しかしながら、私自身も政治家として非常に多く個人保証による悲惨な事例を聞いております。企業が倒産したことによって個人保証していた経営者が身ぐるみはがされて、まさに二十一万円という自由財産の範囲、もう生存にもかかわるような状況に追い込まれて、再挑戦のチャンス、失敗から学んで再挑戦するチャンスすら奪われるというのは重大な問題だと思っております。
 経済産業省といたしましては、とにかくまずこの個人保証徴求を必要としない資金調達手段、これを何とか拡充しようということで、一つは、直接金融の拡充ということで、中小企業総合事業団によりますベンチャーファンドへの出資事業、これを行っております。
 それから、国民生活金融公庫、これは創業者に対する無担保無保証の新創業融資制度の創設ということで、これもできるだけ無担保無保証でという制度の拡充でございます。
 それから、信用リスクを金利でカバーする民間金融慣行というのを普及していきたいと思っておりまして、この環境整備のために、中小企業信用リスク情報データベース、いわゆるCRDと言われておりますが、これを整備拡充しているところでございます。
 それと、前の臨時国会で、ベンチャーファンドによる資金供給を拡充するために、中小企業等投資事業有限責任組合法、これを改正していただきまして、これで出資対象に有限会社や企業組合も追加したし、株式投資以外の投資手法というものを認めることで、できるだけ多く新事業に挑戦する人たちの資金調達、これを支援できるように措置したところでございます。
 個人保証の問題ですけれども、さっきの、申し上げました破産法における自由財産の範囲、これを見直すことは絶対に必要だと思っております。これは、現在、法制審議会の倒産法部会において破産法の見直しということで検討されておりますけれども、経済産業省といたしましても、とにかくこの自由財産の拡充ということを強く申し入れ、また協力していきたいと思っております。
東(祥)分科員 時間が参りましたので、最後に大臣。
 新しい時代、新しい経済のルール、そういうものを模索していく場合、もちろん今までやってきたことの延長線上で起こっている問題に対してどのように対処したらいいかということと、今申し上げている個人保証の問題というのは、中小零細企業の経営者にある意味で復活のチャンスを与えていくという視点なんだろうと思うんですね。
 今、副大臣からお話があったことというのは、ある意味で、資金調達をどうしていったらいいのか、これまた別の大きな日本の経済の構造上の問題が存在しているわけでありますが、そもそも、自立して、また創造的な形でもって進んでいける。なぜ、日本の場合とアメリカの場合、あるいはまた欧米の場合と、そういう起業家精神というものを持った人たちが少ないのか、現実に行動していく人がいないのか。いたとしても、しょっぱなに出ばなをくじかれてしまう、それで終わり。そこに僕は本質的なメスを入れていかなくちゃいけないんだろうというふうに思うんですね。
 大臣、副大臣、もちろん官僚の皆さん方の頭は使わなくちゃいけないわけでありますが、やはり政治家なんですから、現実に新しい時代を創造していける、その発想を出せるのは、やはり国民の皆さん方に接触している政治家しかできないんだろうというふうに思うんですね。延長線上の問題は問題として、これからそういう問題に対して真正面からぶつかっていくにはどうしたらいいのか、それをみんな期待しているんです。
 最後に、二十秒でいいですから、平沼大臣、一言、中小企業経営者、中小企業の経営者になろうとする人々に、ぜひ大臣としての覚悟の言葉といいますか、それをお聞かせいただいて、質問を終わりたいというふうに思います。
平沼国務大臣 お答えをさせていただきます。
 非常に大事な視点でお話をいただいたと思っています。ちょっとお触れになりましたけれども、日本は何も新しく業を起こす意欲を持っている人が少ない国じゃございませんで、年間百二十万人ぐらいの意欲を持った人がおります。それが、結果的には十八万社しか誕生していないというのは、そこに制度、いろいろなものの欠陥があると思っています。それを取り払って、新規に業が起こるということは、雇用の解決にもなりますし、この国の経済を活性化することでございます。
 そういう中で、いろいろやっておりますけれども、事業計画に着目をして、本人保証も土地担保も何も要らないという制度もつくらせていただきました。それから、今まで株式会社は最低資本金一千万円、有限会社は三百万でしたけれども、これも取っ払って、一円からでも企業を起こせるということにしました。
 それから、間接投資が非常に比重の多い世界だったんですが、直接投資ができて、いわゆるエンゼル税制も整備をして、そして、アメリカがかつて三つ子の赤字の七〇年代を乗り越えてプロパテントによって非常に伸びてきた、そういった事例も学んで、私どもは、やはり業をする人が意欲を持つ、そういったことを積極的に構築していかなければならない、このように思っております。
東(祥)分科員 どうもありがとうございました。時間をオーバーして申しわけありません。
宮本主査 これにて東祥三君の質疑は終了いたしました。
 次に、渡辺周君。
渡辺(周)分科員 民主党の渡辺でございます。
 それでは、持ち時間の範囲内で何点か質問をさせていただきたいと思いますし、また、もし時間が余りましたら、通告にはございませんけれども、いろいろと昨今の我が国を取り巻く環境についても、大臣あるいは副大臣の御所見を伺いたいとも思います。
 まず、私は安全保障委員会におりまして、実は午前中も安全保障委員会が開かれておりました。その中で、今、目下の北朝鮮それからイラクという点が、我が国を取り巻く安全保障上の大変大きな課題であります。
 そこで、ぜひお尋ねしたいのは、今、もちろん国連でイラクの最終報告を待つ段階であります。今の現状では、推測の話とはいいながらも、恐らくアメリカはイラクに対して軍事行動を起こすであろう、非常にその蓋然性は高いというふうに考えているわけですが、この点について、もしアメリカがイラクに対して軍事行動を起こした場合、イラク攻撃を行った場合に、我が国の経済に与える影響というのは大臣はどのように見通していらっしゃいますか。もしあれでしたら、大臣と副大臣とでどうぞ。
平沼国務大臣 アメリカは、湾岸地域、イラク周辺に既に二十万を超える兵力を展開しておりまして、大変な危機的な状況になりつつあると思っています。
 そういう中で、もし攻撃があった場合には日本経済には少なからぬ影響がある、これは短期的、中期的、長期的、こういうことで考えなければならないと私は思っております。
 私は、エネルギーを所管する担当大臣として、原油の価格とその確保、こういうことをやはりプライオリティーナンバーワンに考えているところでございますけれども、例えば、これは委員もよく御承知のとおり、まだサウジアラビアには日量で九十八万バレルの供給余力がありますし、それからOPEC全体でも二百三十万バレル近い余力があります。それから、IEAも全部合わせると百十五日分くらいの石油の備蓄があり、我が国も百七十一日分あるわけであります。
 したがって、その影響は非常に大きいものはあると思いますが、私どもとしては、やはりその影響をできるだけエネルギーの面から少なくするためのきめ細かな手を打っていかなければいけない。そういう意味では、これが中期化し、長期化した場合には大変大きな影響がある。そのために、我々としては、なるべく起こらない、こういうことを望んでいるわけでございますけれども、もし起こった場合には、私どもとしては一番ダメージが少ないような、そういうことで万全を期していかなければいけない、こんなふうに思っております。
高市副大臣 今、大臣から石油については話がありました。
 経済については、戦争がどのように展開していくかによってあらゆるパターンが考えられると思います。
 例えば、湾岸戦争のときですと、原油価格が高騰しました。戦争開始後急落いたしましたけれども、イラクがクウェートに侵攻してから、その後開戦までの間、どんどん原油価格が上がってしまった。それによって物価が上昇いたしまして、物価が上昇したことによって消費が減退しまして、企業の方もマインドが悪くなってきますから投資が減っていくというようなことで、非常に状況が悪くなった上に、ドル安で円高、こういったこともございました。
 今回の場合も、戦争が中長期化するといった展開になりますとこういった影響というのは否めないと思いますが、ただ、石油製品というものが消費者物価に占める割合は三%ほどでございますので、今回、原油についても十分な備蓄もありますし、また、増産体制も、イラク、ベネズエラを除く国だけでも相当な増産体制というものが期待できますので、急激な物価上昇を短期的に心配しているということではございませんが、あらゆる事態が起こりかねない。
 それから、すごく長期化しちゃった場合には、アメリカの軍事支出が増大する、それによって財政状況が悪化する、長期金利が上昇する、それによって非常に悪くなってきて日本からの輸出が減るというような点についても十分留意し、あらゆる状態を想定してシミュレーションし、また対応を考えて準備しているところでございます。
渡辺(周)分科員 実は、イラクに対してアメリカが軍事行動をとった場合どうなるかということを、別の委員会で言ってなんですが、外務大臣に申し上げると、仮定の話には答えられない。その議論を実は予算委員会やあるいは安全保障委員会でもずっとやってきたわけです。ですけれども、こんなものは、起こることを、やはり最善の結果を望みながらも最悪の事態を想定していなければいけないわけであります。
 ですから、今、いろいろな事態を想定してシミュレーションしている、当然国家としてやるべきことでございます。幾つかの想定パターンがございまして、短期であった場合、中期であった場合、長期にわたった場合、その場合には例えば原油価格はどうなるのであるか。備蓄はどれぐらい、今、民と官を合わせて百七十、ですから半年というふうに考えるわけであります。
 ですけれども、当然のことながら、こういう最悪のシナリオを想定しているということは国家として必要なことなんでございまして、今そういうお答えをいただきましたから少しは安心をしたわけでありますけれども、実際そうなった場合には、国として、例えば何らかのデータはもう用意されているんでしょうか。例えば石油業界などですと、原油価格がどうなりそうだということはある程度もうシナリオを書いているんですけれども、国として、経済産業省としては。もちろん、お答えできる範囲で結構ですから。
平沼国務大臣 イラク周辺の情勢が厳しくなってきました昨年の秋以降、私ども省内で、実は、今高市副大臣がシミュレーションという言葉を使われましたけれども、短期、中期、長期、そういったときのエネルギーの需給バランス、それから価格の問題、それが経済に与える影響等、これは省内で我々随分議論をして、そういうシミュレーションをやっているところでございます。
渡辺(周)分科員 そんな中で、お尋ねをしたいんですけれども、ここへ来て、東京電力のいわゆるデータの改ざん等を含めて、これからも含めまして、今休止状態にある、先般も供給者側からデータをいただきまして、今どれぐらいの発電量かということも教えていただきました。
 そんな中で実は、時あたかも、中東に依存している我が国の原油が、備蓄があるとはいえ今後どのような展開になるかわからない。また、ここは、恐らく今回イラクとアメリカが事を構えて、何らかの形で収束をしても、中東という非常に政治的にあるいは民族的に不安定なところに我が国は依存をしている、もうここで何度も議論もされていると思いますけれども。そうしますと、この政治的、軍事的に不安定なところに依存が高いという中で我が国のエネルギー安全保障ということを考えたときに、やはり原子力発電の問題は避けて通れないわけです。
 この原子力発電といわゆる自由化の問題、きょうはその後にこの話を質問するつもりでおりますけれども、この間も電気事業法の改正、そして先般の電気事業分科会報告を見まして、平成十七年もしくは十九年に我が国は高圧需要者への部分自由化を進めて、最終的には完全自由化を検討しようというときに、やはりここで欠落しているのは我が国が原子力政策をどうするかということでございます。あたかも、この報告書ができたとき、中東依存の我が国の非常に脆弱なエネルギー安全保障政策の中で、原子力をいかに考えるかということをこれから我々は本当に議論をしていかなければいけないと思うんです。その自由化の議論の前に、原子力政策について大臣はどうお考えか。
 そして、これは私も実はいろいろな委員会で、決算行政監視委員会でフランスの会計検査院などにも行きました、あるいはエネルギー政策をつかさどっている方々にも会いました。あのフランスですら、非常に原発に対する国民の不安は、アンケートをとると、世論調査をすればどんどん高まっている。そして、ヨーロッパのある国ではもう脱原子力だという国もあるわけであります。しかし、我が国の場合は残念ながらそれができないわけでございます。そうすると、我々は原子力ということをどうとらえるかということに関しては、大臣、改めてどうお考えなのか、ぜひお尋ねしたいと思います。
平沼国務大臣 渡辺先生から大変重要な御指摘をいただいたと思っています。
 我が国のエネルギー状況というのは、これは御承知のように、天然のエネルギー資源というのはほぼ皆無に近い状況なわけであります。そういう中で、御指摘のように、一次エネルギーの五二%を占めている石油もその八八%が中東に依存している、こういう状況です。そして、さらに今後のエネルギー需要を考えたときに、ある面では二十一世紀というのは、環境をいかに人類が克服するか、こういう大きな課題もあります。
 そういう中で、私どもは総合的に考えて、原子力発電というのはやはりどうしても必要なエネルギー源だ、このように位置づけております。そして今、フランスの例もお引きになられましたけれども、非常に厳しい状況ですけれども、しかし、原子力発電というのは、安全性を担保すれば、その発電過程において二酸化炭素の排出はゼロでございまして、安全性さえぴちっと担保できれば、これだけ環境、自然に優しい、そういうエネルギーはないわけでございます。
 そういう意味からも、私どもは今後、原子力も主要な日本のエネルギー源の一つとして位置づけて私どもは努力をしていかなければいけない。しかし同時に、新エネルギー、そういったことも我々としては並行的に努力をしていくことも必要ですし、さらにはまた一極集中を分散する意味でも、例えば石油から天然ガスへの転化、こういう形で国のそういうエネルギー政策も転換をしていく必要がある。
 いずれにしても、エネルギーの中で原子力は主要な柱の一つとして総合的に展開をしていかなければならない、このように思っています。
渡辺(周)分科員 まさにそうなんです。
 それで、八八%、オイルショックのときを上回る極めて高い水準で、我が国は中東に今依存をしているわけであります。
 もう一つ当時と違いますのは、脅威として、これから中国という大国が、年七%という成長率、すさまじい成長で急速な工業化、近代化、都市化が進んでいるわけでありまして、今自転車に乗っている方々がオートバイに乗るようになり、オートバイに乗っている方々が四輪車に、自動車に乗るようになる。そして急速に工業化が進んだ場合には、これは恐らく、中国の石油の消費量は日本を抜くであろうというふうに言われているわけであります。
 そうしますと、世界的なエネルギー需給の中で中国が大変な消費国になった場合に、我が国としていかにしてエネルギーを確保するかということは大変大きな問題でありまして、ですから原子力に依存しなければならないわけであります。今回の電気事業分科会の報告書では、この問題については先送りされているわけでありますが、私も、かつて党でエネルギーの調査会を主宰しておりましたときにいろいろ繰り返し言われたことは、二〇一〇年までにあと十基から十三基ほどの原子力発電が必要なんだと。しかし、とても現実問題として、これはそういう状況にはないわけであります。ですから、ここで決意を伺いたいのは、今後の原子力政策をどうするかということが一点。
 それから、自由化の議論の中で、原子力とこれは非常に両立しないのではないか。私も、昨年の十二月にテキサス州やネバダ州に行ってまいりました。それで、こういう話をしたときに、原子力発電という大変コストの高いものはやはり国が責任を持ってやらないといけない、とにかく資金リスクの大きい原子力発電というものは、これは安全保障的な面からいっても、国としてどう関与するかということが大事だと言われてきたわけですけれども、その点について今後どういう姿勢で対応するか、それではもう一回お尋ねをして、次の質問に移ります。
高市副大臣 確かに、中国の今後の石油需要ということを考えますと、日本のエネルギーセキュリティー、このためには原子力発電の重要性というのは否めません。先生おっしゃったとおり、もしも原子力発電の設置が推進されましたら、一つは環境対策上も非常にいいわけでございますが、残念ながら、大変信頼を損ねる問題も起こり、厳しい状況にあるのが現状でございます。
 その小売自由化のことなんですけれども、これが進展してまいりますと、原子力発電所の場合、特に初期投資が非常に大きくて、その回収期間も長うございますので、事業者が投資に慎重になるということ、これは懸念いたしております。
 その中でも推進が図られますようにということで、原子力等の大規模発電事業と送電事業の一体的な実施を確保するために、発送電一貫体制、これを維持してまいります。
 それから、全国的な電力流通の円滑化、卸電力取引市場の整備、これも進めまして、原子力発電による発電電力量の吸収余地、これを拡大する。
 それから、特に原子力発電等に固有の対策といたしまして、長期安定運転確保のための環境整備ということで考えておりますことがあります。具体的には、その環境整備のために、需要が落ち込んでいるときに優先的に原子力発電からの給電を認める優先給電指令制度、このルールの整備、それから電源立地対策の重点化を行うつもりでございます。
 具体的には、今まで電源立地対策としていろいろ地元支援を行っておりましたけれども、ここから沖縄等一部の地域以外の火力を抜きまして、特に原発、それから地熱、水力といったものに重点化していくことで支援を進めてまいりたいと思っております。
渡辺(周)分科員 この段階的自由化という議論はもちろん承知の上で、私どもも、かつての商工委員会に籍を置いておりましたときに、ちょうど電気事業法の改正を担当しておりました。
 その後、例えば、大停電がありましたニュージーランドのオークランドにちょうどそのころ行きまして、そしてまた、昨年はネバダ州やテキサス州に行ってきたわけでありますけれども、この自由化、私、一つ印象に残ったことは、実は、昨年アメリカへ行きましたときに、供給者側の方々とも会いました、そして公益事業委員会なる方々ともお会いしました。
 一つ、非常に聞かれて答えられなかったことは、実はそこの消費者団体に行ったんですね。それは、小売自由化の中でいろいろなトラブルが、例えばクレームが二五〇%ふえた、いわゆるスイッチングをするに当たって随分と詐欺的な、要は契約の取りかえなんかが起きたわけですね。これは先の話かもしれませんけれども、そのときに、そういう幾つかの事例を聞きながら、電力自由化というのはそもそも日本は何のためにやるんですかと聞かれたんです。
 それは、例えば投資家をふやすためですか、あるいはイノベーション、技術革新のためなんですか、あるいは電力コストを下げるためですかといろいろ言われましたけれども、実は、規制緩和あるいは自由化という言葉自体が、これはある意味では選択肢がふえるのはいいことだ、しかし、一つ間違えると、消費者を守るためのルールをも奪い取ってしまうのではないかというような、つまり消費者の利益に大きな意味ではつながらない場合もあるというふうに言われました。
 例えば、そこで話を聞いたのは、実は、自由化になったら六%電気代が小口の方々で安くなりますよというふうに言われていました、ところがそれは、六%下げるということをあらかじめ約束をして、しかも、もともと前年が電気代が高過ぎた、ですから、その分翌年には下げることができるという上で、何か一年やってみたら実は六%電力料が下がったから自由化は成功したなんというふうに思われたら、それはだまされていることだから、もともと高かったものが安くなっただけのことであって、ですから、これは自由化によって安くなったのではない、そこのところをよく知っていてくださいというふうに言われたわけなんです。
 ですので、ここでちょっと哲学的なことを、そもそも自由化の先に行き着くものが一体何のためかという哲学を、大臣、ぜひ聞かせていただきたいわけです。これは、投資家をふやすことなのか、あるいはイノベーションにつながるのか、それとも消費者のコストダウンにつながるのか。何のためにやるのか。これは、各地へ行くと、決して値段が安くなるわけではありませんで、逆に言うと、莫大なコストをかけて投資をした分が回収できずにつぶれていく企業も出てくるであろう。今回の自由化のスタイルは我が国独自の固有のシステムであるということは理解をしておりますけれども、我が国として進めるそもそもの考え方、哲学というのは何だということをぜひ聞かせていただきたいわけです。
平沼国務大臣 電力の制度改革は、電気という国民生活、経済活動に必要不可欠な財の特徴を十分に踏まえまして、まず安定供給の確保と、そして環境への適合を図ること、これが必要だと思っています。
 その上で、いわゆる自由化、これは市場環境の整備等を通じまして需要家の選択肢を広げ、そして競争を通じたより効率的な電力供給の実現を図っていくこと、こういうふうに私ども考えておりまして、昨年成立をさせていただきましたエネルギー基本法の理念もこうした考えの上に立ってのことでございます。
 そういった形で、今具体的な事例で、必ずしもそうではないし、自由化をやった国々の中ではいろいろな問題点が指摘される、そういう御指摘は、私、しっかりと拝聴させていただきました。そして、カリフォルニアの電力クライシス、これを考えると、やはり日本も他山の石としてこの教訓はしっかりと踏まえた上で、今申し上げたような基本理念、これでその目指すところをしっかりと担保してやっていかなければならないんじゃないかな、このように思っております。
渡辺(周)分科員 幾つかの例を見て、例えば、ニュージーランドのオークランドで大停電があったときに、向こうの電力会社の方々ともお会いしました。
 やはり、自由化、当時は規制緩和、ディレギュレーション、それから競争原理の導入というものが何よりも今求められているんだという方々が一生懸命その方向にリードした。それに反対して、公益事業というのは実は市場の原理になじまないんだということを言った方々は、そんな古代の化石みたいなことを言っているのかといって、いわゆるアカデミーの世界でも、学者の世界でも、何か後送りされてしまって、いわばスポイルされてしまったわけです。
 ところが、今になってみると、つまり、競争原理が余りにも導入されると、例えば最低限の研修であるとか、あるいは現場を知ること、あるいは基礎教育も含めて、そちらがおざなりになって、どちらかというと営業優先あるいは値引き優先になって、市場拡大の方に走ったばかりに、結果的に事故率が高くなった。つまり、送電部門を担当している方が感電して亡くなったりとか、そういう形で、結果として、安くなったかもしれないけれども、企業はもうかったかもしれないけれども、実はそこにいる方々の質は悪くなってきたという、やはり光と影の、影の部分があるわけであります。
 アメリカにおいてやはり言われたのが、日本の場合は、例えば年間の停電時間が九分、わずか九分だ、それを、例えば世界的に比べて電力コストは日本は高いというけれども、果たしてそうだろうか、一年間のうちに九分しか停電しない国というのはそれなりのコストを払って当たり前じゃないか、それをなぜあえてあなた方は自由化に走るんですかということを聞かれまして、実は私たちも答えようがない部分がございました。
 ですから、これはニュージーランドもしくはアメリカの例、幸いにしてアメリカの場合は、幸いにしてと言ったら言葉は語弊がありますけれども、カリフォルニアで失敗をして、例えば部分自由化に踏み切ろうとした州では、幾つかの州ではこれは見直しをしようということになったわけであります。
 ですから、これは我が国としての自由化のあり方ということを考える上では、まだ時間がありますから、ぜひとも徹底して世界のさまざまな例を、まさにエネルギー庁の方々、経済産業省の方々に、とにかく何年にもわたってそこに行っていただいて、まさにいろいろな変化、変遷を学んできていただきたいなというふうに思うわけです。
 そして、我が国として、今現在、平成十七年には高圧需要者への自由化、そして十九年四月から完全自由化、小口への参入も含めて検討を始めるということですが、その点について、今がその段階でしょうけれども、果たしてそれで本当にいいのだろうかということは、ぜひ世界の事例を見ながら、ある意味では自由化論議にひとつ決着をつける役割を日本が担うこともひょっとしたらあるのではないかということを私は申し上げたいと思います。
 何か御意見がございましたら、いただいて。
岡本政府参考人 私ども、電力のここでの一連の制度改革を考えるに当たりまして、まさに、先ほど来先生御指摘のように、それから大臣が先ほどお答え申し上げましたように、安定供給ということ、それから、効率化ももちろん目指すわけですけれども、安定供給という過程を含めて、それを損なうようなことがあってはいけないというところは肝に銘じているところでございます。
 発送電一貫の今の事業体制というのを維持するとか、あるいはカリフォルニアとかかなりの外国で強制的な電力プール、卸取引市場というのをつくるということをしましたが、私ども、強制的なプールというのはつくらない。日本ではやはり長期の相対取引というものが基本で、それを補完するものとして、任意の民間主導による卸電力取引所というのはつくっていきますけれども、それはあくまでも補完だというふうに位置づけております。
 それから、先々の自由化ということにつきましても、段階的に自由化範囲を拡大していくということで、そのステップ、ステップごとに検証をしながら、それから家庭を含めた先々の自由化ということにつきましても、ユニバーサルサービスというのをどうやって確保していくのか、あるいは最後の最終供給責任というのをどういう形でだれに担っていただくのか、そういう議論を尽くした上で、十九年ごろからそういった議論を始めるということで、アプリオリに全面自由化というものを決めてかかるということなしに、まさに、先ほど来先生御指摘のように、日本のすぐれたモデルをつくっていくという考え方のもとに、ステップ・バイ・ステップで検証を重ねながら進めてまいりたいと考えておるところでございます。
渡辺(周)分科員 それでは、時間が来たので終わりますけれども、この問題につきましては、委員会等で、差しかえてでもまた質疑をさせていただきたいと思います。ありがとうございます。
宮本主査 これにて渡辺周君の質疑は終了いたしました。
 次に、北川れん子君。
北川分科員 社民党・市民連合の北川れん子といいます。
 きょうは、高速増殖炉原型炉「もんじゅ」にかかわる原子炉設置許可処分の、無効であるという確認が名古屋高等裁判所で一月二十七日に出たということを受けて、質問させていただきたいと思います。
 まず最初に、今、期限の三月二十八日に向けて担当チームが組まれたということなんですけれども、上告理由を、どのような省のどのような部署で、何人ぐらいでまとめていらっしゃるのか、教えていただけますでしょうか。
佐々木政府参考人 現在、私ども作業中でございますけれども、法務省ともよく御相談をさせていただいておりますが、私どもの原子力安全・保安院内では、訟務室というところがございますが、六名で構成されております。また、「もんじゅ」の安全審査に携わる課として、新型炉規制課というところがありますが、十一名で構成されておりますけれども、そのうち審査に携わる者は五名でございます。これらの職員が今、全力を挙げて理由書の検討をしておるところでございます。
北川分科員 今、十五、六名の皆さんで鋭意上告をまとめていらっしゃるということなんですが、といたしますと、これには原子力安全委員会は入っていないということでありまして、直接の責任者というのはどなたになるのでしょうか。
佐々木政府参考人 今回のいわゆる設置許可の処分者としての経済産業大臣が責任者になるわけでございます。
北川分科員 今、直接の責任者は、被告でいらっしゃる経済産業大臣にあるし、この上告のまとめの責任も経済産業大臣におありになるということなんですが、そのことを受けて、大臣としては、二十七日から一カ月ほどがたったんですけれども、どのような認識をお持ちになっていらっしゃるのか、お伺いしたいと思います。
平沼国務大臣 御指摘のように、名古屋高等裁判所金沢支部から、一月二十七日に出された、高速増殖炉原型炉「もんじゅ」の設置許可処分無効確認等控訴事件判決におきましては、法務省などと私どもが内容を精査した結果、御承知のように、国としてこれを受け入れることはできないとして、一月三十一日に最高裁判所に上訴したところでございます。
 したがいまして、私どもとしては、この上訴、こういう形の基本的な方針というのは変わっておりません。
北川分科員 今現在、何件の裁判を経済産業省はお抱えになっているのかもあわせてお伺いしたいと思うんですけれども。
佐々木政府参考人 現在、「もんじゅ」以外で経済産業省が係争中の原子力関係訴訟は六件でございます。内訳といたしましては、地方裁判所で審理中のものが三件、高等裁判所で審理中のものが二件、最高裁判所で審理中のものが一件となっているところでございます。
北川分科員 お伺いしておりましたら、廃棄物の埋設訴訟、廃棄物の管理訴訟、再処理訴訟が今言われた地方裁判所で、柏崎刈羽の一号炉、ウラン濃縮訴訟が高等裁判所で、そして東海の第二訴訟が最高裁、上告審において審理中ということで、かなりそれぞれ、分野的にも、また核の廃棄物の問題まで問われた裁判をお抱えということなんです。
 では、この「もんじゅ」と合わせて七件ということで、ただいまの大臣のお言葉は上告をしたことが妥当であったという意味においての御返答だったと思うんですが、七件抱えていらっしゃる中で、「もんじゅ」裁判というのは最高裁において住民原告の完全勝訴という面を見せておりますが、その認識において、今まで抱えていらっしゃった六件とこの「もんじゅ」でいかがでいらっしゃるかということをお伺いしたいと思います。
平沼国務大臣 今、北川先生、最高裁とおっしゃいましたけれども、高等裁判所だったと思います。
 私どもとしては、上訴いたしましたその理由として、今回の判決では、例えば、配管の破損によりナトリウムが水と接触した場合でも、炉心崩壊事故を防止できる対策が幾重にも講じられているにもかかわらず、これらの対策がすべて機能しなかった場合、それを想定する等、仮定に仮定を重ねる立論をして、そして安全審査に看過しがたい過誤、欠落がある、こういうことを指摘するなど、私どもとしては非常に問題がある、このように認識しております。
 国としては、安全審査を慎重かつ適切に行っておりまして、こうした判決を受け入れることはできないと考えておりまして、そしてまた、過去の最高裁判例との関係も含めて最高裁における判断を待つこととしたものでございまして、こうした基本的な考えのもとに今私どもとしては上告をする、こういうことに相なっております。
北川分科員 今の御答弁をお伺いしておりますと、他の裁判等々と同じといいますか、「もんじゅ」裁判が別に新たな示唆を経済産業省もしくは保安院等々に与えてくれたというものではないというふうに聞こえたわけですけれども、これは、十七年間の長い過程において闘われてきた、先ほど私、ごめんなさい、高等裁判所で判決が出て、上告されたんですよね。なので、その安全度に対する要求の度合いですが、昨今はやはり違ってきているのではないか。
 殊に、これは八五年だったものですから、その次の年がチェルノブイリの事故がありました。そして九五年に、審査前の検査中に「もんじゅ」が事故、十二月八日、ナトリウム火災を起こすということがあり、九九年はジェー・シー・オーの臨界事故というふうにつながる中の過程のこの十年というのは、提訴をした八五年とは随分違ってきていると思うんですね。
 それで、先ほどおっしゃった多重防護をしているからという点さえも、裁判所は単一故障が仮定されているとは認めがたいというふうに言われていて、そこら辺のいわば思想性といいますか、哲学的な面においての安全度というものの要求の違いというふうにも、私は骨子だけしか読んでいないんですが、とれたんですが、その点においては、平沼大臣も最近経済産業大臣におなりになったという点で、今の時点、今の時代性においての状況の中から見て、もう少し突っ込んだ御見解がおありなのか、もしくは、裁判の上告といった一枚の壁ができてしまったところでは何も言うことができないというお立場なのか。さらにちょっとお伺いをしてみたいと思うんです。
佐々木政府参考人 今先生御指摘の「もんじゅ」の安全性についてでございますが、裁判としての法の解釈の問題、あるいは最高裁における過去の判例事例等に対して、私どもは今いろいろ上告の理由を整理しているところでございます。
 今先生が御指摘のいろいろなこの長い流れの中で、一方でいろいろなことが、技術の知見も蓄積をされてきているとか、「もんじゅ」の安全性についても同様に、その時点時点での最善の安全の確保を図るというのが当然のことでございますけれども、このことと、設置許可そのものの無効を争っている今の我々の立場は違うものでございまして、今回の判決におけます安全審査とは何か、基本設計とは何か、こうしたところにおいて、原子炉等規制法の法令の解釈において相当今回の判決には国の見解と違うということがあることは事実でございまして、この点で最高裁で審判をきちんと仰ぐということで、我々は今準備をしているところでございます。
北川分科員 経済性を見詰めていらっしゃった院長のお言葉としてはそうだと思うんですが、この裁判はやはり安全審査の質の高さといったものに重点を置いて、それに伊方裁判の最高裁判決というのがもう出ているので、あれ以外の判例違反というのは認められないというふうにも聞いております。
 この骨子の中にも、本件安全審査において、遷移過程の事象推移などが評価された形跡は一切認められないというふうに書いていらっしゃって、そのことは、とりもなおさず、裏返すと、原子力安全委員会はこの点を評価しなかったと認めるほかない。そして、それをもう少し裏返すと、経済産業省は、申請者、当時は旧動燃というふうになると思うんですが、動燃が出したデータの分析、解析や、そのことの持つ意味の質の評価というものがなかったのではないかというふうにも読み取れる判決文を書かれているんですが、その点は、フレッシュ大臣、平沼大臣の今の御見解をやはりお伺いしたいと思います。
 なおさら、院長の継続性の中でのお言葉は重々わかりますし、安全審査が問題であったというふうには言っていないわけなので、その点をお伺いしたいと思います。
平沼国務大臣 当省といたしましては、この「もんじゅ」の安全審査というのは適正に行われて、十分に安全性が確認されたものでありまして、その判決というのは、安全審査の考え方や内容を十分に判断せず誤った判断をしている、こういうことから、当省として改めて安全審査を行う必要はない、こういう基本的な考え方に立っております。
 「もんじゅ」の安全性については、これまでも国民に対して機会あるごとに説明をしてまいりましたけれども、今後においても国民の理解を得るべく私は説明をしていかなければならないと思っております。
 それから、時系列的なことをおっしゃいました。私は、前の経済産業大臣に就任しましてから二年七カ月に相なるわけであります、フレッシュと言っていただいて大変恐縮をしておりますけれども。しかし、日本の場合には、いわゆる裁判の中で一審があり、二審があり、そして三審制、こういう形であります。そして、この裁判の過程におきましても、第一審ではいわゆる今の高等裁判所の判断とは違う判断が出て、今度はそれが逆転した。
 ですから、私どもとしては、今るる申し上げましたけれども、そういう基本的な考え方に立っておりますので、やはりこれは最高裁の判断を仰ぐ、このことが国として必要なことだ、こういう考え方に立っているということを御理解いただきたい、このように思っております。
北川分科員 裁判というのは、勝ったとしても負けたとしても、すべてが勝ちすべてが負けるということはなくて、そこから何を酌み取るのかというのがとても大事だと思うんですね。そういう点においては、島根三号と泊三号が今安全審査を受けている。
 そして、もう一つ大きな違いというのは、軽水炉と高速増殖炉の経験と知見の違いですよね。軽水炉は長年、三十年にわたるいろいろな実績と経験を積んでこられた。けれども、高速増殖炉は、せんだっても、昨日も議論になっておりましたけれども、新しい技術段階に踏み込んだ炉であるといった意味においても、ここは明白性を問うべきではない、明白性よりも、起こった後の事故に対しての事象に重きを置いた方がいいというのが判決であったと思うんです。
 そういたしますと、現在も続けて、日々、安全審査というものの考え方がいろいろ編み出されてくるわけですが、「もんじゅ」高裁判決での教訓といったものは、経済産業省の中でこの一カ月間何も議論はされなかったのでしょうか。
佐々木政府参考人 お話をちょっと分けて申し上げた方がよろしいかと思いますけれども、まず、この「もんじゅ」の判決に対して、高等裁判所におけるいろいろな進行協議等における我々の努力なり、あるいは「もんじゅ」に対しての安全性の問題についての国民の皆様方への説明とか、こうした意味からいえば、今回のこの判決ということをやはり重く受けとめざるを得ないという意味では、我々も今いろいろ議論をしているところでございます。
 一方、いわゆる軽水炉につきましての安全審査につきましては、従前の科学的な実績をベースにして、なおかつ新しい科学的な知見も十分考慮しまして、安全の審査には従前より万全を期しておりますけれども、引き続きそうした姿勢で臨んでいきたいと考えております。
北川分科員 今言われた言葉は、審査のありようというものをここから教訓としては学び取らないんだというふうにしか聞こえなくて、今まさにおっしゃるように自分たちの正当性を司法判断にゆだねていらっしゃるわけですから、国民や市民への説明といったものは、この高裁判決から自分たちは何を学んで、教訓としてより一層原子力政策に反映させるかという説明がない限りは、原告、地域住民の皆さんともども、やはり深い納得といいましょうか、それはないと思うんです。自分たちの正当性だけをPR、説明していくという態度はもう改めなければいけない時期に来たのではないかと思いますが、大臣はいかがでしょうか。
平沼国務大臣 今保安院長からもお話をさせていただきましたけれども、地域の皆様方に対する説明責任、そういったことはやはりしっかりとしていかなければならないと思っております。
 しかし、今回の判決は、私、先ほど繰り返し申し上げさせていただきましたように、いわゆる判決の中での考え方が我々の考え方と非常に違う、そういったところがございます。ですから、そういったところはやはり上訴をさせていただいて、その中で、法治国家でございますから、最高裁の中の判断にゆだねていきたい、こういうふうに思っております。
 私どもは、今回の高裁の判決というのは判決としてしっかりと受けとめて、そして地域住民の皆様方にも説明すべき説明責任というのはしっかりと果たしていかなければならない、このように思っております。
北川分科員 上告のチームも組まれていますし、十分な時間と環境を整えていらっしゃるということを先ほどお伺いしましたので、そうではない、あとのメンバーの皆様は、高裁が示した判決、川崎裁判長が出した判決というものから何を自分たちは酌み取ればいいのか、そういう議論も両輪立てでぜひやっていただきたいということを申し上げておきたいと思います。
 では次に、脱原発というのは経済的にも合理性があるということで、昨今は、やはり経済の面から見ても優位に立ってきているという点を指摘されている方も多くなってきました。
 その中で、次は脱プルトニウムといった面から、新いばらきという茨城地域でまかれている新聞、ことしの一月二十九日なんですが、そこに「東海再処理施設のプルトニウム 受払間差異改善へ」という見出しで、普通これを読めば何を意味しているかというのがよくわからないんですけれども、要するに、受け払い間の差異が二百六キロ、何しろ行方不明になったプルトニウムがこの二十五年で二百六キロ出ましたよということなんです。
 このプルトニウムといったものは液体で保管をされているということなんですけれども、プルトニウムの管理について教えていただきたいと思います。
広瀬政府参考人 プルトニウムでございますが、平成十三年末の現在で、「常陽」に千三百八十三キログラム、「もんじゅ」に千八百三十九キログラム、東海再処理施設に千四百八十四キログラム、実用発電炉では全体で八万四千百十八キログラムございます。
 これらのプルトニウムは、原子炉においては、炉心や使用済み燃料プール等における燃料集合体中の燃料の中に含まれております。再処理施設におきましては、使用済み燃料プールのほか、溶液、粉末等の状態で再処理施設の中の各工程の中に存在をしております。
 プルトニウムの管理でございますが、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律に基づきまして、原子力事業者は、核物質の在庫、移動等の計量管理報告を国に提出することになってございます。
 また、国及び国際原子力機関、IAEAといっておりますが、実際に施設に立ち入りまして、記録の確認や核物質の測定、分析等を行うことによりまして報告内容に矛盾がないことを確認しております。さらに、封印や監視カメラを適用することによりまして、核物質の不正な移動等がないことを確認して、厳格な管理を行うようにいたしております。
北川分科員 「もんじゅ」、「常陽」、再処理、それから照射された炉にある燃料、これは軽水炉ごとで分けて管理をしていて、IAEAの査察の対象になり、適切な日時、経過のもとでの報告をしている、組成別に管理をしているということなんですが、このプルトニウムの経済的価値といったものはどういうふうに見ていらっしゃるんでしょうか。経済的価値というものがプルトニウムはあるんでしょうか。
広瀬政府参考人 原子炉施設の中でウランを燃焼してプルトニウムが出てまいります。再処理施設で使用済み燃料の中からプルトニウムを取り出すわけでございますが、それは、このプルトニウム、さらに核分裂の機能を持っているということでございまして、これを高速増殖炉や軽水炉に用いるということで、十分価値のあるものだという認識を基本的に持ってございます。
北川分科員 十分な価値を経済であらわすと、では、一兆とか二兆とか、そういう価値という意味であるのでしょうか。抽象的に十分な価値という意味なのでしょうか。数字転換ができるものとして見ていらっしゃるんでしょうか。
広瀬政府参考人 一概にプルトニウムの価値を金額で申し上げることはなかなかできないかと思うわけでございます。ウランを燃やすことによって新たな核燃料物質ができるというところに本質的なプルトニウムの価値があるかというふうに認識をいたしております。
北川分科員 では、なぜIAEAの査察とかという形の国際機関でやってもらわなければいけないかというと、八キロあれば原子力爆弾がつくれるという。二百六キロ割る八がどれぐらいになるかというのも、皆さんはわかられるかもわかりませんけれども。この行方不明になった量というのを朝情報でいただいて、二回間違えていましたということで、数値は、二百六は合うんですが、再処理施設計量値というのが違っていました、先ほどのとは違うといった点、そしてまた、年度の書き方で前後が違っていた。それで、これは八四年が抜けているんですね。
 そういう点から見ると、この二百六に、逆に言えば、数字合わせとして見てもいいのかなというぐらいこの二百六というのが二十五年でということなんですが、八キロ以上になっている年が結構あります。こういう意味では、二十五年間たまったから今調査をしているのか、十二、三年は一年ごとに、一キロとかマイナス一とか三とかだったのが、急遽八五、六年ぐらいからずんと上がっていきまして、年間で通しても、一年間ベースで見ても八キロを超えるときもあるんですが、IAEAからの勧告というのはもっと早い段階で出ていたのではないでしょうか。どうして、昨今、かなりの量で差異が認められてきていたのか。
 まして、これは、濃縮したものの、結局は抽出をして分析をして想定するということですので、それが本当に正しいかどうかということも含めてなんですが、資料を間違えていたと言って改めて持ってこられた数字を見ても、二百六だけは合うんだけれども、計量値が違っていたという点等々、やはり不信感を抱かざるを得ないようなデータのありようなんですが、もっと早い時期からIAEAは勧告をしていたのではないでしょうか。そして、調査をされるということなんですが、どういう調査をされるのか、あわせてお伺いをしたいと思います。
広瀬政府参考人 資料につきましては、訂正をさせていただきまして、大変申しわけございませんでした。
 東海再処理施設でございますが、先ほど申し上げましたように、国際原子力機関、IAEA、それから私ども日本国政府、これは我が省でございますけれども、検認とか封じ込め、監視等の保障措置を厳格に行っておりまして、保障措置の本来の目的でありますプルトニウムの転用がないということは確認がされておるわけでございます。この点については、IAEAも、再処理施設におきましてプルトニウムの転用がないという結論には確信を持っているという証明をしてございます。
 この保障措置の一つの手段の中に計量管理というものがあるわけでございますが、これは、使用済み燃料の中に含まれます発電所側で推計されましたプルトニウム量、これは計算値でございます。ウランからプルトニウムができますので、計算値になってございます。それと、再処理施設側で溶解後に計量を行ったプルトニウム量、それを受け取り量と言っておりますが、この間に差がある。実際の再処理施設側の計量値の方が少ないという、今先生御指摘の受け払い間差異が発生をしております。昭和五十二年の東海再処理の操業開始から平成十四年の九月までの累積で二百六キログラムに達しておるものでございます。
 この問題につきましては、先生御指摘のように、従来からIAEAそれから国等は問題認識を持っておりまして、IAEA、国、核燃料サイクルとの間でその解明に取り組んできております。具体的には、平成七年から三者によるワーキンググループを設置して、この原因究明、対策等の調査に取り組んできているところでございます。
 最近になりまして、分析技術が改善をしてまいりまして、この二百六キログラムの受け払い間差異に関しましてかなりのことがわかってまいりました。
 その一つは、計量槽の前に行く、前の工程でございますが、高レベル放射性廃液の貯槽の中に九十四キログラムのプルトニウムが行っておりまして、それは計量槽の方に流入していないということがわかってまいりました。
 また、発電所側の払い出しから再処理施設で受け入れまして入量計量槽で計量を行うまでかなりの時間がたつわけでございますが、プルトニウムは放射性崩壊でそれ自身がなくなっていきますので、その減少分を正確にカウントするということで、これが二十九キログラムということでわかってまいりました。
 このようなことで、二百六キログラムの要因がかなり解明をしてきておるところでございますが、国、IAEAは、さらにこの内容を解明していきたいということで、現在作業に取り組んでおるところでございます。三月をめどにこの作業にめどをつけたいというふうに考えてございます。
北川分科員 もう時間が参りました。本当にありがとうございました。
 しかしながら、この件に関しては、情報もなかなか少なく、幾ら情報を公開してほしいと言っても教えていただけない面もあります。長年やってこられたことへのなれというか緊張感のなさというのが、こんなになってきても余りびっくりしないというところにきているのかなという気もいたしました。
 先ほど、半減期の問題はどうなんだというお声もありましたけれども、やはりその点を初心に返ってもう一度見詰め直していただきたいということを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
宮本主査 これにて北川れん子君の質疑は終了いたしました。
 次に、吉井英勝君。
吉井分科員 日本共産党の吉井英勝です。
 きょうは、昨年来大臣とも経済産業委員会で質疑をやりましたが、東電等不正事件にかかわって、検査の問題などに触れて質問したいと思います。
 この東電不正事件が明らかになって以来、昨年の十一月の六日の内閣委員会と十一月二十七日の経済産業委員会で、私は、検査結果のデータ改ざんとか隠ぺいをした不正事件とあわせて、炉心シュラウドの傷などの発見自体が非常に難しいという問題、それから、検査機器の開発や検査の手法の開発が今必要な段階だという問題を指摘しました。
 これに対して、松浦原子力安全委員長は、あの装置は非常に検査がしにくい構造になっています、「今後ますますその技術開発を進めて、より詳細にきちんと実態を把握できるようにしないといけないと思いますので、安全委員会としても開発を期待するところ」ですというのが答弁でした。
 また、SCC、これは応力腐食割れですが、これに関する検査技術の開発については、炉心シュラウドの応力腐食割れに関する検査技術の開発については、「今後相当に力を入れていくべきだ」という答弁でもありました。
 ですから、今本当に検査機器をきちんと開発して、それでかなりの水準に達しないことには、そもそも問題の出発点であるデータそのものがちゃんとしたものがとれないわけですから、その後保安院としてどのように取り組んでこられたのか、これは先に政府参考人に伺っておきたいと思います。
    〔主査退席、尾身主査代理着席〕
佐々木政府参考人 ただいま先生御指摘のように、そもそも安全の確保上の検査、そのまた精度というものが極めて基本である、私は同じ認識を持っております。
 今回、法改正も行われまして、維持基準の導入といった前提も、すべてこれは検査自身がきちんとした精度を持っていることというのが前提になるもの、こういうふうに理解もいたしております。
 今先生がおっしゃいましたいわゆる超音波探傷の技術につきまして、既存のいろいろな手法で一定のばらつきはあるものの精度が十分に担保されているものと、場合によっては、亀裂の進展が様相が少し異なるために端部のエコーがとらえにくいといったような現実があることも、我々は今までの知見で学んできたところでございます。
 そうしたことから、この検査の精度と同時に、いろいろなひび、欠陥等が生じた原因究明そのものともあわせて、各種のいろいろなデータをもう少し集めた上できちんとこの問題は議論をしたいと考えておりますが、現在、東京電力のシュラウド及び再循環系配管の傷等につきまして、これの健全性をどう評価するかといったことにつきましては、専門家あるいは非専門家から成る健全性評価委員会を私ども設置をいたしまして、いろいろ技術的な観点から検討しているところでございます。
 まず、シュラウドにつきましては、フェーズドアレーという超音波の探傷の装置を使って今までやってまいりました。これについては、十分に今の把握度というものは、検査上の精度というのは一定の担保がなされているものというふうに我々も評価をいたしております。
 一方で、今議論を進めておりますのは、再循環系の配管316L材、しかも、溶接部の近傍といったところでの検査の精度については、もう少しデータを集めて議論をする必要があるというふうに考えております。
吉井分科員 女川一号だったと思うんですが、超音波で実際に調べてみたら二ミリだった。だけれども、もっと厳密に調べたら、傷の深さが十二ミリだった。これはもう全然、そもそもこの検査機器が、単なる両端から軸方向にやればどうとかこうとかいうだけの話じゃなくて、それは大体、配管の構造とかさまざまな問題ありますから、そう単純じゃないんですね。
 今、コアシュラウドのことをおっしゃったんですが、これもかなり、厳密にいけるというような話じゃないんですね。コアシュラウドについては、浜岡原発の四号機、これは一昨年見つからなかったものが、昨年急に六十七カ所見つかったんですね。そんなばかなことはないわけですよ。これはもともと、あなたが大丈夫とおっしゃった機器自体が十分調べ抜くことができない。それはもちろん、水中から全部出してしまって、出して、それで測定するならばもう少し精度を高くできるんでしょうけれども、今日の定期検査のときには水中でそのままというのが多いものですから、そう簡単じゃない。
 ですから、いろいろ検討しているとか議論しているとか評価のお話があったんですが、端的に私が伺っておりますのは、松浦原子力安全委員長の答弁というのは、検査機器の開発、検査技術の開発や手法、それをやはりきちんとやらなければいけないということを認めておられるんです。その原子力安全委員長の指摘に基づいてどのように取り組んでこられたのか、この一点だけもう一遍きちんとお答えください。
    〔尾身主査代理退席、主査着席〕
佐々木政府参考人 私ども保安院といたしましても、検査技術、検査機器の開発を含めてでございますけれども、この向上が極めて重要である、同時にまた、この検査の機器を扱う検査員の資質といったことも極めて重要である、こういう認識を持っております。
 私どもは今までも、こうした実機ベースでいろいろ、傷が入っているものについていわば確証試験として、発電技検という協会がございますけれども、こうしたところで実際ベースとの比較といったようなことも過去やってまいりました。ただ、主として304材ということでございました。引き続き私ども、今後こうした検査の精度を確証していくといったことはやっていきたいと思いますし、また検査の機器の開発等の今後の重要性についても認識しているところでございますので、政策面での検討といったことも考えてまいりたいと思っております。
吉井分科員 例えば再循環系配管については、東京電力福島第一原発の四号機で、公称肉厚は設計時に、大体市販されている材料を使いますから、四十ミリの公称肉厚。これは計算式入れての必要肉厚が、皆さんの方も一致する数字ですが、二八・一二ミリ。ところが、実際には傷の深さが十二ミリに達していたのがあるんですね。だけれども、この十二ミリというのは、今おっしゃったUTには誤差がありますから、もう少し少なかったかもしれないが、もう少し多かったかもしれない。いずれにしても、この測定値でいきますと、これは公称肉厚からこの測定値を引きますと二十八ミリ、つまり基準肉厚と同じなんですね。だから、誤差によっては基準肉厚を切ってしまっている、こういう問題が既にあったわけなんです。
 それから、こういう問題もありました。それは制御棒駆動水圧系配管の問題なんですが、これは福島第一原発三号機で、私自身が現場へ入って見たものですが、基準肉厚を割り込んだ傷が生じて、肉厚、ここの場合は薄いんですが、三ミリなければいけないのが一・九ミリしか残っていない。もう完全に基準肉厚を切ってしまっているんですね。それを問題にしたんですが、調査に入ったときは、全体の制御棒駆動水圧系配管のうちの六〇%にそういう傷が見つかっていたんです。ところが、改めて東電の方で調査したら、何と八六%も傷が新たに見つかった。中には、基準肉厚を切るぐらいの生易しいものじゃなくて、貫通してしまっていたのが七本あった。ですから、これは単なる検査する人の技能の向上、当然なんですが、それだけじゃないんですね。
 私、東電も浜岡も技術系の幹部の方とお話ししますと、コアシュラウドの傷を見つけるのは極めて難しい、熟練を要するということを言っているんですよ。熟練者でないと見つからないということでは、そもそも原発の安全を考える上で本当に安心していられない状態、これが現在の状況なんです。
 ただ問題は、その検査機器の開発、検査技術の開発を本当にやり抜かなければいけないということとあわせまして、やはり構造上の問題を持っているのがあるんですね。制御棒駆動水圧系配管というのは何しろバンドル状に、束状に炉心を貫通してくる分がありますから、それはもう、真ん中の方の配管の傷を見つけるなんというようなことは、そもそも手を入れること自体がいかないわけですからね、人間の骨がぐにゃぐにゃにならないように。それを円周状に調べるというのは極めて難しいんです。しかも腐食対策で被覆しているものですから、この被覆をはがしてやらなければいけない。
 つまり機器だけで解決しない、検査しやすいものへの構造上の改善ということを考えなければいけないものもかなりあると思うんですね。何しろ、原発というのは機器の数も多いし、調べなければいけないところの総延長は気が遠くなるほど長いわけですから。ですから、その構造上の問題などについてはどういう検討をしておられるか、これも伺っておきたいと思うんです。
佐々木政府参考人 先生御指摘のように、非常に材料の使われ方、環境、それから加工等、そうした面で新しい知見というものが出てきていることは一方で事実でございますけれども、超音波探傷という技術で、既にいろいろ確立した技術というものもあるわけです。これらについて、今までの実績の中で十分一定の成果を上げているものもあるわけで、超音波探傷一般そのものが非常に問題だという御指摘は当たらないと私は考えております。
 ただ、これから考えなければいけないと思いますのは、特に新しい素材等を使う場合とか、あるいは溶接の金属部でありますとか、いろいろな知見をベースにしたときに検査の最善の方法の組み合わせであるとか、あるいは検査機器をさらに開発しなければいけないとか、特に原子力発電所の場合には、被曝といった問題と検査という問題は非常に密接でございますので、そうした意味からも、自動化をより進めるような方向も必要でございます。
 過去には、PWRの蒸気発生器の細管の検査、渦流探傷等については相当の自動化が進んでまいりました。そういう意味で、御指摘のように、私どもも今後の検査のあり方の中でも、いろいろ今議論を進めておりますけれども、御指摘されている面についての対応というのは今後も必要だという認識は持っております。
吉井分科員 超音波探傷による検査がだめと言っているんじゃないですよ、それだけで簡単にいかないという話をしているんです。それは構造が、あなたのおっしゃったのは大体、直管であれば、ストレートなパイプであれば両端から軸方向にかけてという手法もあり得るわけなんです。しかし、エルボーを含めた曲がったところでの、そこでの溶接近傍のところを見るとか、そう簡単にいかないわけなんです。
 では、その構造上、どういうふうにそれを検査可能にしていくかとか、検査機器や検査手法の面からのアプローチもあれば、構造上常にメンテナンスを考えた、検査できるものへということを考えたものにしていくということもやらないと、これは簡単にいく話じゃないんです。
 あわせて、しかし同時に、浜岡原発などのように、実際には、地震の震源域の真上に立地する原発、しかもここが老朽化しているという場合には、これはこの構造をいじくること自体が非常にもう困難になってきているという原発もあるわけです。
 そこで、この問題の締めくくりのところで大臣に伺っておきたいんですが、検査機器の開発とか手法やら構造上の配慮とか、いろいろなことを当然検査ということにかかわってやらなきゃいけないんです。そうでないと、原発の安全性の大前提になるデータがまともにとれないんですから、現に正確にとれなかったという問題があるわけですから。しかし同時に、それをやったとしても、あるいはやろうとしても、地震の震源域の真上で、そしてもう老朽化しているものについては、やはり浜岡のようなもの、廃炉というものを実際問題として考えていくということをやらないと、これは検査という世界だけでは解決しないものがある、今そういう状況になっていると思いますが、この浜岡などについての廃炉を含めた根本的な検討というものについて、大臣のお考えを伺っておきたいと思います。
平沼国務大臣 東海大地震というようなことが想定され、浜岡原発、それが御指摘のような地理関係にある。ただ、浜岡原発の耐震設計というものは、想定され得るマグニチュードを想定しておりますし、限界の地震というところまで想定をして基本設計がなされている、こういうふうに私は承知をしております。
 したがって、私どもとしては、想定外の地震が来てもその安全性は担保できる、このように私も承知をしているところでございますけれども、今御指摘の今後の検査体制、こういったものに関しては、機器の開発でございますとか、あるいは技術者の習熟の度合いを高めるとか、あるいはまた検査方法を新たにいろいろ検討して、そして検査をより精密、緻密にしていく、こういう努力は私はしていかなければならないと思っております。
 したがって、非常に年数がたった原子炉に関しましても、今の一つの判断では、限界的な耐用年数が来ている、私どもはそういうふうには思っておりません。しかし、原子力発電というのは安全性が第一でございますから、この安全性をいかに担保しながら、国民の皆様方の理解をいただく、このことは必要なことですから、このことに最大限心を砕いてやっていかなければならない、このように思っております。
吉井分科員 浜岡の例、さっき出しましたけれども、要するに、一年前に検査したら何もなかった、一年後に調べてみたら六十七も傷が見つかった、そういう状態で、老朽化しているものであって、しかもこれは制御棒駆動水圧系配管のように、構造上、それはもう今までとは違う発想でやらないと検査そのものがなかなか大変、そういうものになっているものについては、これは一例は浜岡ですが、その他の老朽化している原発についてもこれはやはり廃炉ということを真剣に考えていかないと、そもそもことし調べたデータが正確でない上に、それをもとにして来年まで大丈夫という推測というのは全くできないという状態なんですから、これは大臣の方で、きょう直ちに今ここでと言ったってあなたもなかなか大変でしょうが、しっかりよく検討をしてもらいたいと思います。
 なお、地震の話については、事務方の方がもう少し大臣に正確に説明しなきゃいけないと思うんです。これは、あそこの地盤からして、相良層というのは非常にもろい、壊れやすいところで、ですから液状化しやすいところ。砂地盤の上であれば震動が二倍、三倍になりますからという説明をずっとやってきたんですが、それで計算しても阪神大震災級で浜岡の原発は問題ありというのが既に出ておりますから、それは、かつて阪神大震災の後、私は議論したことがありますので、ここではそれは繰り返しませんが、事務方の方からもう少しきちんとした説明を大臣に、何か地震でも大丈夫というふうな、そういう印象を持たれちゃいけませんから、これはきちっとやっておいてもらわないかぬと思います。
 次に、関西電力が御坊市の沖合を埋め立てて使用済み核燃料の中間貯蔵施設を建設しようと計画していることについてまず伺っておきたいと思います。
高市副大臣 二月二十一日の新聞報道でそのような報道があったようでございますけれども、昨日、関西電力の社長の記者会見でもこれを否定しておりますし、経済産業省といたしましても、御坊市で関西電力によります使用済み核燃料中間貯蔵施設の立地計画が具体的にあるとは伺っておりません、承知いたしておりません。
吉井分科員 電事連の会長としての記者会見も含めて見ましても、つくらないということは言っていないんです。今計画を持っていないという趣旨の発言はあるんですが、つくらないとは言っていないですね。地元からの声があればつくるというお話もありますし、ですから、この話が消えたわけじゃないんです。
 あわせて、私はこれは政府参考人の方に伺っておきますが、関西電力の原子炉から取り出した使用済み核燃料を要するに持っていこうというのが中間貯蔵なんですが、その関西電力の使用済み核燃料の放射線量、全体でどれぐらいなのか、及び主な核種ごとにどれぐらいなのかということを伺っておきたいと思います。
迎政府参考人 お答え申し上げます。
 関西電力の使用済み燃料の貯蔵量は、三つの発電所で二千トンございます。それで、核種別の内訳では、ウラン235が一%、ウラン238が九三%、それから非核分裂性のものを含めましてプルトニウムが一%、それから核分裂生成物等が五%でございます。
 それから、全体の放射能量につきましては、これは燃料の燃焼度等によっていろいろ異なりますので、直ちに推計することは困難でございまして、現在、こういった数字は所持しておりません。
吉井分科員 私、これは資源エネルギー庁の場合はきちんとつかんでおいてもらう必要があると思うんですよ。
 かつて、さっきもどなたかの議論でありましたが、プルトニウムの移動、これはきっちりしないと国際的に問題になりますから、プルトニウム量が使用済み核燃料の中にどれぐらいあるものかということなどについてずっと追ってもらうこととあわせまして、それが放出した場合のという議論をやったこともありますが、実際には、値としては大体出ているわけなんです。そういうことがちゃんとしなかったら、例えば東海村のジェー・シー・オーの事故のときのように、出てきた放射線量は幾らだったというのを緊急に、ある程度誤差を含めたのは当然にしても、大体試算してこれぐらいの放射線量が出てくるからこう対応するということが出てこないわけです。ですから、そういう点ではやはりきちんとしなきゃいかぬと思います。
 九九年の五月七日の科学技術委員会で原子炉規制法改正案を審議したときに、資源エネルギー庁の長官は、使用済み核燃料の全量再処理方針は不変だという立場を強調していました。だぶついている使用済み核燃料の調整のための中間貯蔵施設というふうに答弁をしていたわけですが、この立場は今も一緒ですか。
迎政府参考人 使用済み核燃料の中間貯蔵というのは、使用済み燃料が再処理をするという前提のもとに、再処理されるまでの間の時間的な調整を行うことを可能にするものでありまして、核燃サイクル全体の運営に柔軟性を付与する手段として重要なものであるというふうに考えております。
 それで、原子力委員会の長期計画におきましても、民間事業者が二〇一〇年までに操業をいたすべく準備を進めているところのものであり、今後も、安全の確保を大前提に、中間貯蔵の事業が着実に実施されることを期待するというふうに記載しておるところでございます。
吉井分科員 要するに、全量再処理という方針なんですよ。全量再処理するからそれまでだぶついているものを中間貯蔵しようという発想なんですが、この中間貯蔵をするに際して、個々の燃料体を何年間貯蔵するかということを申請書に記載するという予定はございません、概念的には数十年のオーダー、これは進捗調整、高速炉の開発、民間再処理工場の事業計画、こうしたものの進捗状況に依存して、結果として貯蔵期間が決まるというのが当時のエネ庁長官の答弁です。
 つまり、中間貯蔵には期間を明らかにしないというのは、これは今もその立場ですか。その点、一言だけ聞いておきます。
迎政府参考人 中間貯蔵について、どれぐらい貯蔵をするかというふうなものを私どもの方で決めているというふうなことはございません。これを設置する事業者が決めるというふうな性格のものだというふうに考えております。
吉井分科員 そうじゃなくて、事業者も決められないんですよね。つまり、進捗に合わせてということですから、貯蔵期間を事業者の方も届け出段階では明らかにしないんです。
 そうなると、今、再処理工場もとまり、高速増殖炉がうまくいかない、「もんじゅ」はもううまく進まない。だから、このプルトニウムを中心とした核燃料サイクルは破綻しているんですよ。使用済み燃料をそのまま、だぶついてきたのを中間貯蔵施設でやったとしても、これは再処理工場を仮に無理やりえいやっとやったとしても、今度はプルトニウムがだぶつくんですね。それを使うめどはつかないんです。日本だけはあくまでも「もんじゅ」をやって高速炉でということを言ったところで、世界的にはもう全然趨勢が違うわけですね。
 そうすると、つまり、再処理をする、この全量再処理という展望がない中では、もともと出発点の全量再処理ということを原則とした中間貯蔵そのものが今崩れてきている。このことを大臣としてやはり率直に考えていただく必要があると思うんですが、この点、大臣、どうですか。
平沼国務大臣 今、いろいろな状況の中で、局面的には一部厳しい面が御指摘のとおりあるかもしれません。しかし、国の基本的な政策として、核燃料サイクルというものをしっかりと確立して、この国のエネルギーの安定供給、そのことを図っていくということは、やはり国のエネルギー政策の基本でございます。
 したがって、今なかなか厳しい条件にあるということは私も承知をしておりますけれども、国民の皆様方の理解をいただきながら、そして問題点を一つ一つ克服しながら、やはり、核燃料サイクルを含めて私どもは国のエネルギー政策というものはしっかりとやっていかなければならない、このように思っております。
吉井分科員 将来、再処理工場へ行くめどが立たないままに、つまり破綻してきているわけですから、この中間貯蔵施設というのを進めていきますと、これは実質的には中間じゃなくて、使用済み核燃料の、高レベル放射性物質の最終処分地ということになってくるんですよ。永久貯蔵といいますか、最終処分地ということになってしまいます。そういうことを強行していいのか。
 今は原発サイト内のプールでやっているんですよ。しかし、新たなところへ持ち出してしまって、そこを永久処分地とする、そういうことがいいのかということが今問われているときでありますから、私は改めて最後に、大臣、原発サイト内で貯蔵しなさい、満杯になったら運転停止だ、関西電力には、矛盾を深めて永久貯蔵となるような中間貯蔵施設は計画そのものを持たないように指導するべきだと思うんです。最後にそのことだけ一言聞いて、終わりたいと思います。
平沼国務大臣 すべて破綻して、すべてができないという前提にお立ちになっておられるお話だと思っております。確かにいろいろ障害はありますけれども、我々としては、国の基幹的なそういうエネルギー政策を進めていくために、やはりいろいろな障害を一つ一つ克服し、そしてやっていくことが必要だと思っておりまして、中間貯蔵施設が永久の施設になる、このようには考えておりません。
吉井分科員 時間が参りましたので、終わります。
 破綻したことはおやめになるように。
宮本主査 これにて吉井英勝君の質疑は終了いたしました。
 次に、藤島正之君。
藤島分科員 自由党の藤島正之でございます。
 なるべく大臣、副大臣にお答えをいただきたいと思っております。
 私は新潟県の柏崎市の出身でありまして、御承知の柏崎原発、今もう半分以上とまっちゃっているわけですけれども、この原発の問題についてきょうはお尋ねしたいと思いますが、まず、去年の夏からの原発のトラブルの経緯、どんなふうにとらえて評価といいますか判断しておりますか。これは、保安院じゃなくて政府側の方にお願いしたいんですが。
西川大臣政務官 原子力発電所における事業者の自主点検などに関する一連の不正問題でありますけれども、当省としましても調査をいたしました。法令に定める技術の基準に適合していなかった可能性があるもの、国への報告を求めていたにもかかわらず適正な報告を行っていなかった、こういうものが明らかになりました。このため、これらにつきまして公表を行うとともに、事業者に対しまして昨年の十月、厳重注意を行いました。さらに、国の定期検査の一部である格納容器漏えい検査において不正が行われたことが明らかになりました。当該原子炉につきましては、法令に基づき一年間の運転停止処分を行った、こういうことでございます。
 これらの背景としまして、事業者において限られた者が独善的な判断を行う、こういうことが恐らく常習化しておったんだろう、こう考えております。経営トップあるいは他部門からの監査、チェックが十分に行われていなかった、安全確保の品質保証活動の重要性についての認識が浸透していなかった、こういうことが挙げられるかと思います。一方、国におきましても、自主点検について規制上の位置づけが当時ありませんでした。運転開始後にひび割れなどが見つかった場合の健全性評価手法が不明確、罰則による抑止力が不十分などの問題があった、こう受けとめております。
 こうした問題の再発を防ぐために、昨年、大変お世話になり、臨時国会において法律改正を行うことができました。当省としましては、再発防止策を確実に実施しよう、信頼回復に努めていこう、こういうことで現在努力をさせていただいております。また、現在停止中の原子炉についても健全性の評価を進めているところでございます。
 以上です。
藤島分科員 総括としては今お話のあったようなことだろうと思うんですけれども、私は、ほかの何物にも増して、この原発問題というのは、安全性に対する信頼、これがすべてだと思うんですね。先ほども大臣、そのことをちょっと触れられていたんですけれども、もう一度その点を確認したいと思うんですよ。
 ほかのいろいろな事業、経済活動の中であります。ところが、この原発問題に関しては、ともかく安全性、これがすべてだと思うんですね。それは世界共通のことだと思うんですが、その点についてもう一度、大臣の方から確認したいと思います。
平沼国務大臣 まさにそのとおりでございまして、二十一世紀は地球の環境をいかに守るか、そういう人類にとって大変大きな課題があります。したがって、原子力というのは、その発電過程において二酸化炭素を一切出さないというような有用性があります。しかし、それにも増して、何にも増して、いかに御指摘のように安全を担保すること、このことをやはり最優先しなければならない、それが原子力発電だと思っております。
藤島分科員 この安全ということに対する認識に若干それぞれの部門で甘さがあった、こう思うわけですけれども、この点について少し具体的にお尋ねをしておきたいと思います。
 まず、一部の報道ですけれども、二年ぐらい前に国の方からちょっと問題があるんじゃないかというような指摘をしたということが報道されているわけですが、この点についてどういうふうに認識をして、どういうふうに注意をしたのか。その後、注意をしただけで会社側の回答を黙って待っていたというようなことも報道されているわけですけれども、その辺の事実関係と、今その点について経済産業省として反省することがあればお答えいただきたいと思います。
佐々木政府参考人 実は、平成十二年の七月に最初の申告を受けましてから昨年八月に公表されるまで二年もの期間を要したことにつきまして、大臣直属の委員会を設けて、その調査過程について評価が行われたところでございます。
 この評価によりまして、当初申告処理に当たった資源エネルギー庁及び平成十三年の一月以降これを引き継ぎました私ども原子力安全・保安院が、申告の内容が事実だとしても、安全上の問題はなく、法令違反の可能性も低いと判断した、調査への取り組みがその結果不十分となり、早い段階での法律に基づく処理が行われなかったということで厳しい御指摘を受けておりますが、この報告では、原子力安全行政に対する信頼の確保が必要であるとの認識が原子力安全・保安院には不十分であったため、対応に迅速さを欠き、公表がおくれたという厳しい指摘を受けているところでございます。
 この報告を受けまして、当省の関係者に対して処分が行われましたが、昨年十月には、外部有識者から成る申告調査委員会の監督のもとで申告情報の処理を行う体制を整えたところでございます。私ども、現在、この委員会の指導助言を受けつつ、法律に基づく報告徴収や立入検査を機動的に行うなどによりまして、こうした申告案件の的確な処理に努めているところでございます。
藤島分科員 大変反省して、新しくいろいろ考えておられるようですが、そこはしっかりやっていただきたい、こう思います。
 もう少し、中身ですけれども、トラブル隠しの問題ですね。実際にそれがすぐ危険性に直結しているとは私も全然思っていないんですけれども、トラブル隠しをしていたということに対する信頼性の問題なんですね。
 これは、私は平山知事にも何回もお会いしてその辺も話を聞きましたし、西川柏崎市長も親しい仲間なものですから何回もいろいろ話を聞くんですが、ともかく、会社側に対する信頼が、もともと原発反対者のグループは余り信頼がないので反対は反対でいいんですけれども、信頼していた人ほど今回の事件は、てっぺんから下に落ちる、どうしていいかわからない、もう何を言っていいかわからない、そんな感じを非常に強く受けたわけでありますけれども、そのトラブル隠しについて、政府側としては本当に個人的なものと考えているのか。最近では、どうも組織的と考える方が素直なような感じがするんですけれども、そこはどういうふうに考えておりますか。保安院でいいです。
佐々木政府参考人 一連の不正に関する問題につきまして私ども調査を行いました。この問題の背景として、事業者には、法令遵守の重要性あるいは業務実施に当たっての公正さ、説明責任の重要性についての認識不足などの問題があったと考えております。そして、原子力部門の他部門からの監督の不行き届きがあった、あるいは現場限りでの判断が慣習化していた、そして事業者の社内体制や安全確保活動に関する品質保証体制上の問題があったものと考えております。
 この結果、私ども、昨年の十月、東京電力に対しまして、組織風土の改革と真の安全文化の醸成を図ることを強く求める、こういうことを内容といたしまして厳重注意を行ったところでございます。また、東京電力に対して、保安検査あるいは定期検査の実施に際して、保安規定の遵守状況や設備の健全性などの結果を見るだけでなくて、実はこうした結果を出すプロセスである社内における検討あるいは意思決定状況などの品質保証活動についても確認することとしたものでございます。
 私どもといたしましては、こうした検査などを通じまして東京電力の社内体制が改善され、保安活動の適切な実施により再発防止が確実に行われることをさらに確認してまいりたいと考えております。
藤島分科員 やはり会社の組織の方を少し改革していかないといけないんじゃないかなという感じが実はしておるわけですね。
 そこで、この端緒となったのが内部告発なんですけれども、それが出たころ、東京電力の広報部が、告発には当てにならないものも多いので、二〇〇〇年十二月に指摘を受けた時点では危機感を持っていなかった、こういうふうに言っているんですけれども、告発というのは本当に当てにならないのかどうか。
 告発というのは見てみればある程度わかるはずで、よく、組織ですから、大臣もあれですけれども、人事なんかでは物すごい告発があるんですよ、本当にひどい告発もありますけれども。やはり、そうでないまじめなもので、読んでみれば、全くこれは本当に事実担当しているとか専門家でないとわからないような告発、こういうのは大体正しい告発が多いと私は思っているわけなんです。
 そういう観点から、まあ告発奨励とは私は言いませんけれども、組織というのはそんなものであっちゃいけないんですけれども、やはり告発は、今回の件では恐らく現場の判断だけで却下して取り上げなかったということだったようなんですけれども、これはもっと上の方が判断すべきで、そうすればもっと早くオープンにして、私が言うのは、信頼性の問題として、要するに隠していく体質みたいなのが明らかになったからいけないんで、これが本当に皆さん、地元の人も、すぐ危険だなんてだれも思っていないんですよ。だから、その体質をきちっとしないといかぬ。その意味で、内部告発を現場でなくてもうちょっと上のレベルが判断する、そういった件も指導すべきである、私はこう考えておるんですが、副大臣、どうですか。
高市副大臣 おっしゃいましたとおり、今回の問題は、やはり組織的な企業風土の問題点に気がつかせていただきました。
 その中で、このような社員の方からの内部の告発というものが大きな問題の発見の端緒になるということも事実でございますので、昨年十月に、外部の有識者から成る申告調査委員会、この監督のもとで申告情報の処理を行うという体制を整えさせていただきましたし、この委員会の指導や助言を受けながら、法律に基づく報告徴収、それから立入検査を進めているところでございます。確かに重要な御指摘でございます。
藤島分科員 本来、監督ですから、法律に基づく違反があったところで明らかにチェックをするというのがきちっとした体制なんですけれども、私は、やはりその前の段階、これはその意味で、シュラウドのひび割れ、それはそもそも直ちに法令違反になるような、そういう問題ではない部分があるわけですね。だから、そこら辺もレベルが低いうちにきちっと把握して、現場がオープンにするかしないかの判断じゃなくて、もっとハイレベルがオープンにするかしないかの判断、要は信頼性の問題なものですから、私はそういう意味で、先ほどから申し上げたような内部体制、それをきちっとして、隠すという体制はぜひ改める、それが必要である、こういうふうに思っております。
 それと、起こった後の広報というか、地元住民というか社会一般、国民に対して知らせる方法なんですけれども、実は私は地元なものですから、柏崎市の各責任者のところを回っていたんですよ。そうすると、二人組でどうも私の後ろを同じように回っているんですけれども、それは全戸じゃないんですよ。いわゆる地区長さんというのがありまして、柏崎ですと四百戸ぐらいが地区長さんになっているんですね。全部で三万数百戸なんですけれども、そのうち四百戸ぐらいがそうなっている。そこをずっと回っていたんですが、いつも後ろを同じように二人がついてくるんです。それで、何だと聞いたら、東京電力だと言うんです。それですぐぴんときたんですよ。恐らくこの説明だろうと思ったんです。
 そのときに言ったんですよ。こんな大事な事故が起こったのに地区長さんだけに、四百人ですから、説明していたらだめだ、ともかく全戸に早く説明して回りなさいと言ったけれども、いやとかなんとか言っていたんですよね。その後二カ月ぐらいして、結局、急に全戸に説明して回ったんですね。
 ですから、その地区長さんという責任者だけ納得しても、こういう問題は本当に全戸が関心を持っているわけですから、全員に対する素早い体制が必要だと思うんですね。つくるときは大変なものですから、一戸一戸、それこそ何回も何回も訪問してやるんですが、こういうときにそういう遅いということが致命的になる。どんどん疑心暗鬼で増幅されていって、そこに後から説明に来ても、聞く方は全然違う受けとめ方になっちゃう、こう思っているんですけれども、その点はどういうふうにお考えになりますか。
高市副大臣 柏崎市、先生のふるさとということで、物すごくやはり現場に密着した、いい御指摘をいただいたと思います。
 こういったことというのは、今回の事件でも二年もろくに説明もせずに放置したということで、問題が起きてすぐにやはり対応することは大事ですし、戸別訪問ということになりますとどうしても何日も何日もかかってしまう、その場合に、まず地区長さんを優先的に回るというのは大事かもしれませんけれども、印刷物でありますとか、それから合同の説明会を地区ごとに開かせていただくとか、いろいろな方法でやはり全員に情報を共有していただけるように努めるのは大変大切だと思います。いい御指摘をいただいたと思います。
藤島分科員 本気でやる気になりますと、東電ぐらいの会社になりますと、関連会社とかみんな動員して、研修というか、この段階ではこういう説明でいいんだよという資料をつくってやりますと、二、三日でできちゃうんですよ、三万戸といいましても。何千人が動員できるんですよ。現にそういうやり方をやるんです。
 ですから、本当にそういうふうな気持ちがあれば、地区長さんをやってすぐ皆さんにというその順番はいいんですけれども、余りにも間があき過ぎちゃって、なかなかこれは難しい問題でもあるんですよ。余り中途半端なままで説明するとかえって心配が増幅される。ある程度はっきりした段階じゃないと説明できない。かえっていかぬ場合もありますので、そこは十分考えてやらにゃいかぬですけれども、今回に関して言うと大変遅過ぎた、よく反省してやってもらう必要があるんだろう、こういうふうに思うわけであります。
 それから、チェックの問題ですけれども、国と地方自治体が今ダブルチェックみたいなことになっているわけですね。国は、保安院がチェックしている。その一方で、現場では県、市町村がチェックしている。これは私はおかしいと思うんですよ。こういうものは本来国が全責任を負わにゃいかぬ。これは、せんだって平山知事とお会いしたときも、平山さんがそう言っているんです。こんなもの、地方の責任に持ってこられても全然困る、何といったって、本来国が責任を持ってやってもらわにゃいかぬと。
 というのは、チェックは非常に専門的な知識が必要なんですよ、そんな、単にちょちょっと見た目でわかる、わからぬの問題でもないわけでありますので。国がすべて責任を持ってもらわにゃいかぬ、こういうふうに考えるわけですけれども、これは、大臣、どういうふうにお考えになりますか。
平沼国務大臣 一義的には先生がおっしゃるとおりだと思っています。ただ、原子力発電の場合には、その安全性の担保という形で、立地の皆様方が大変心配をされております。そういう意味では、立地地域の皆様方を完全に疎外した形でということは、これは納得は得られないことだと思っています。
 しかし、一義的には、やはり国が責任を持ってその安全体制を確立し、そのことが、地域の方々に信頼できるようなそういう体制を一日も早く構築することが必要だ、このように思います。
藤島分科員 それで、国のチェック体制の問題なんですけれども、保安院がやるわけですけれども、やはりその中で気になるのが天下りの問題なんですね。
 ほかの役所の件でもそうなんですけれども、端的に言えば、大蔵省と銀行行政の問題、金融行政の問題で、結局は、検査が甘いということから金融庁をつくって分離したわけですね。というのは、かつては大蔵省から地方銀行とか、普通の銀行でもほとんど幹部は必ず各社にOBが行っておった。それじゃ検査がやはりきちっといかないわけですね。それで、今回、財務省をつくったときに非常に議論になって、結局、金融庁は別にして、監査、監督をきちっとやろうと。人事の異動もある程度切ったわけですね。余り下の方であれば異動しても構わないけれども、トップはもう行ったら行きっきりというような金融庁と財務省との関係をつくるとか、もちろん、金融庁の方から検査対象になる金融機関には絶対天下りは行かないということをやっているわけですけれども。
 私は、この信頼性を回復するには、やはりそこもきちっとした方が国民の理解が得られるんじゃないか、こう思うんですが、念のため、実際、各電力会社にOBが現在経済産業省からどれぐらい行っているのかどうか。
平沼国務大臣 お答えさせていただきます。
 当方で把握をしております限り、当省の退職者で、現在原子力発電所を保有している電力会社十社に勤務している者の合計は十名おります。いずれも、現役時代及び退職後に蓄積をした知識、経験等の発揮が社業の発展において有用であるとの判断から、各社の求めに応じてそれぞれ活動する場が与えられたと承知しております。
 御指摘の点、確かに重要な点でございます。ただ、安全規制については、これは先生御承知のとおり、法令ですとか基準に従いまして、科学的、合理的な判断に基づいて厳正中立に実施をしているところでございまして、当省退職者の有無によって判断に差異が生じる余地がいささかもあってはならないと思っておりまして、御指摘の点は私ども重く受けとめさせていただいて、そしてそういうことが絶対に起きないように努力をしてまいりたいと思っております。
藤島分科員 今、大臣がそういうふうに言っていただければ、それ以上余り言う気はないんです。それは確かに、会社側も役人の経験、知識を活用したいということがあるわけで、これを全部否定するのはこれまたおかしいわけでありますけれども、私は、少なくとも民間会社に行った方は、普通の経済産業行政は構わないんですけれども、こういう全く信頼性にかかわる検査を担当している、それとの関連性のある部門に行かせない、ほかの分野で活躍願うという注意も必要だろうと思うので、その辺も考えてやっていただきたい、こう思います。
 それから、保安院の独立性の問題ですけれども、これはお聞きするだけにしておきますけれども、今、経済産業省の中にあるわけですね。エネルギー庁と一緒になってあるわけですけれども、これを、本来であれば内閣とか、人事院とか会計検査院といったようなものと同じように、まさに先ほどから私が申し上げているような安全性に対する検査の中立性、信頼性という観点からそういった機関に移す、これも一つの信頼性を非常に高める方法だろう、こう思いますけれども、これは大臣の御所見、副大臣ですか。
高市副大臣 先ほど財務省と金融庁の例を先生引かれましたけれども、当時、私は一政治家として、財政の裏づけのない金融政策なんというのはいかぬのじゃないかと言って、実は私は分離に反対していたんです。そういったこともございました。
 今回、特に原子力政策につきまして、安全性、国民の安全という非常に重大な問題を含んでおりますので、立地はするけれども安全は知らないというような形での分離になってはかえって無責任なことになると考えております。ですから、私は、現在エネルギー政策に責任を負う経済産業大臣のもとで一次的な規制を実施する、そしてまた一方で、客観的、中立的な立場から原子力安全委員会が再度安全性を確認するというダブルチェック体制、非常にこれはいいものだと考えております。
藤島分科員 確かに振興する方とチェックが全く発想が違っていちゃいけないとは思うんですけれども、ほかの行政と違いまして、最初に私が申し上げたように、まさに原子力行政というのは信頼性そのものなんですよね。金融行政とかなんかとまたちょっと違っていると私は思うんですよ。
 ですから、地元住民がなかなか納得しないというところはあるわけでありまして、それはまさに国のやり方に対する信頼性が今なくなってきているからなんですね。まさにそこなんですよ。よくそこは、金融行政とまた違った意味がある、安全性に対する。本当に、地元から見れば、国を信頼したいと思って信頼してきた、その指導のもとにある会社を信頼してきた。先ほど申し上げたように、反対する人じゃなくて、応援する人ほど信頼してきた。そういう人が全部裏切られた気持ちになっているわけですね。そこをよく考えていただきたい、こういうことなんですね。
 それで、私は、今東京が停電するとかしないとか、こういう話まで行っているので、それは日本の経済にとって一大事なんですね。もし東京で停電なんかあれば、世界の中の日本が、世界の中の東京がまた地盤沈下しますよ、間違いなく。そんな東京に大事ないろいろなセンターを置いていいのかという話にもなります。今、そうでなくても日本の経済がこんな状況のときに、絶対あってはならない。
 そのためにはやはり、細かいことは言いませんけれども、要するに柏崎の原発を早く再開しないといかぬわけですね。これはぜひやってもらわないと、私は大局的に見て、本当に、停電があるなんてとんでもない話なんですよ。それは柏崎の人も心配していますよ。今、柏崎の人も、東京は停電するけれどもうちは東北電力だから停電しないなんて、そんなこと思っている人はいないんですよ、実は。東京でそんなになれば柏崎もそんな状況になる、これはえらいことだとみんな思っているんです。
 したがって、これは本当に国の責任で再開に向けて誠意を尽くして地元の皆さんを納得させる、これは本当に夏場の需要期までにぜひ誠意を尽くしてやっていただきたい、こう思います。最後の質問ですが、御意見を伺って終わります。
平沼国務大臣 今、御承知のように、東京電力は十七基の原子力発電所がございますが、十三基がとまっております。そして、これから三月、四月にかけて、場合によっては全基停止、こういう非常に厳しい状況に相なっております。
 今の段階では、他電力会社からの融通でございますとか、休止中の火力発電所を立ち上げて何とかぎりぎり回る、そういう見通しでございますが、御指摘の夏場になりましてピーク時を迎えますと、六千四百万キロワットぐらいの総量が必要です。
 ですから、そういう意味でも、御指摘がございましたように、地域の皆様方の納得を得られるようにしっかりと私どもは体制を整えて、そして一日も早く立ち上がるように最大限努力をしていきたい、このように思っております。
藤島分科員 終わります。
宮本主査 これにて藤島正之君の質疑は終了いたしました。
 次に、鉢呂吉雄君。
鉢呂分科員 民主党の鉢呂吉雄でございます。
 大臣におかれましては、朝からの連続の質疑時間で大変お疲れだと思いますけれども、あと二人で終わりますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。
 きょうは、私は、サマータイム制ということで、若干、普及啓蒙といいますか、日本ではまだなかなかそのことについて関心が低いのでありまして、きょうはそういう意味で大臣にも少し知っていただきたい。知っているかもわかりませんけれども、そういう観点で大臣の御所見をお伺いいたしたいと思いますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。
 アメリカでは、デーライト・セービング・タイムというようなことで、日照時間を有効に使おう、直訳すればそういう意味合いになるんだそうですけれども、サマータイムが、高緯度、赤道直下は日照時間、夜と昼がほとんど年間通じて同じだということでその必要性がないんだそうですけれども、世界で七十カ国が何らかの形で、オーストラリアなんかは地域によってサマータイムを導入するということで、大変広く普及されております。OECDに加盟しておる二十九カ国で実施をしていないのは日本と台湾と韓国ぐらいで、私は一昨年中国にも行きましたけれども、中国も同一時間帯のようでありましたけれども、そういうことで、世界では大変広く普及しておるということでございます。
 若干質問形式をとらなければ、時間がすぐ来ますので、まず最初に、内閣府で世論調査をこの関係で毎年のようにやっておるんですけれども、国民の理解はどの程度、賛成、反対、その世論調査の結果についてお知らせをいただければと思います。
伊藤政府参考人 サマータイム制度の導入に関しましては、内閣府の世論調査がこれまで六回実施されてきております。
 その中で、サマータイム制度についての賛否の割合についてでございますが、平成二年の調査では、賛成、これは賛成という人と、どちらかというと賛成という人、両方合わせてでございますが、三五・二%でございまして、反対、これも反対と、どちらかというと反対という人が三〇・五%であったわけでございますが、国民の理解を推進してきた中で、徐々にではございますが賛成がふえてまいりまして、平成十年の調査では、賛成が五三・九%、反対が二五・三%ということで、調査としては初めて、賛成が半数を超えることになりました。
 しかしながら、一番最新時点、これは平成十三年の調査でございますが、その調査によれば、賛成が五〇・九%、反対が二八・八%ということで、賛成が三%ほど減り反対が三%ほどふえるということで、最新時点では若干後退してしまっているという状況でございます。
 また、財団法人であります社会経済生産性本部が行っております生活構造改革フォーラムというところが、ちょうど一年ほど前に国会の先生方を対象にアンケートをさせていただいておりまして、これは回収率が二七%程度と必ずしも高くはないんですけれども、賛成していただいている方が六六・五%、反対の方が二八%ということになってございます。
鉢呂分科員 大臣、お話あったとおり、サマータイム制を知っているというふうな方は八割を超えていまして、国民の皆さんは頭では、ということは、諸外国にもよく行かれるような時代になりましたから、ある程度サマータイム制があるということは知っているし、また私は驚くのは、五四%、直近の調査では五一%ぐらい、過半の方は賛成だというふうに言っていらっしゃいます。国会議員はそれ以上に、六六%の方が入れてもいいというような、これは調査資料が二百名ですから、七百二十五名いる国会議員のうち、大体、アンケートを出す人は賛成の人が出すというようなことが多いですから、その趣旨を体した、関心のある国会議員が出したと思いますけれども、ある程度世論は、サマータイムについても知っているし、賛成というような感じもあるようでございます。これは、内閣府がきちっとした調査をしていますから客観的だと思っています。
 大臣は御案内かどうかわかりませんけれども、昭和二十三年、私の生まれた年に、戦後間もなくこれを導入して、四年、五年しか続かなかったということで、議員立法で導入して、最後は吉田内閣のときにこれを廃止法案でやめた。どちらかというと労働過重になったんだと。余りいい思い出が、その当時の年代の人に聞きますと、むしろ働かされたというようなことが多いようです。
 ただ最近、いろいろな人の話を聞きますと、今高市副大臣はかわりましたけれども、やはりアメリカで生活をされた、幼少のころを過ごしたというような方のいろいろな言葉があるんです。アメリカのカリフォルニアで、一時間余計に遊ぶことができて大変有意義だったと。あるいは、イギリスで育ったけれども、サマータイムにはよい思い出しかない、悪い思い出は一つもないということです。
 春から秋にかけて、季節の変わり目ということで、そういう意味では人間がリフレッシュしながら春を迎えていくという形で、土曜日から日曜日にかけて一時間とか二時間調整するんですけれども、若干寝過ごしても日曜日ですから大した問題はないというようなことで、始まりはそういうことで始まっていくんです。私どもも海外に行くことがあるんですけれども、夕方が非常に長くて、大変明るい中でいろいろな行動をとれるということで、私は大変、その必要性があるのではないかなというふうに思っています。
 いろいろなところでこの導入の意義等についてもお話をしていまして、やはり一番大きいのは太陽の恵み、これは自然の恵みを、人類も生物、自然の一人ですから、この太陽の恩恵を十分受けるというのが自然でないかというようなこと、あるいはまた、ここの経産省の所管ですけれども、資源の節約、省エネというような観点があろうと思っております。
 どのぐらい省エネになるのか、いろいろなデータがあるかもわかりませんけれども、若干、その辺のわかる資料がありましたら御答弁をいただきたいと思います。
平沼国務大臣 鉢呂先生にお答えさせていただきます。
 私、昭和十四年生まれでございますので、サマータイムのことを鮮明に覚えております。私の祖母などは、英語になじみがなかったので、サマータイムが始まるのでこれはちゃんと覚えなければいかぬといって、サンマとタイと言って覚えていたことは私覚えているんですけれども、私も、なぜ途中でやめたのかなという、子供心にそんな気がしておりました。
 言うまでもなく、サマータイム制度というのは、日の出の時刻が早まる時期に太陽光を有効活用できる時間をふやしていく制度でございまして、明るい夕方の時間を長くすることによって、御指摘のように省エネ、それから地球温暖化の防止、さらにはライフスタイルの変革等の効果が期待されるわけであります。
 その省エネ効果で、数字では一体どのぐらいの数字が出ているかということですけれども、一つの試算では、原油換算で五十万キロリットルの効果がある、こういうふうに言われております。これは、省エネルギー対策の目標の約一%に相当するわけであります。
 また、地球温暖化防止効果については、相当ばらつきがありますけれども、約二十五万から百二十三万トンCO2、二酸化炭素排出削減効果があると試算されておりますので、大変そういう意味ではデータ的にも、これから省エネ、そして地球環境に優しい、そういうことを考えたときには、制度としては非常に効果がある制度だと思っております。
 また、余暇活動の増大も見込まれるために、そういう意味では、いわゆる新産業だとか需要の創出にも結ぶ。この生産誘発総額として、これも地球環境と夏時間を考える国民会議が出しているデータでは約九千九百億円、一兆円の効果がある。これは日本のGDPの、二〇〇一年度を五百二兆円とすると〇・二%ぐらいの効果がある、こういうことでございます。
 またそのほか、夕方の明るい時間が増加するということで、当然のことながら、子供が屋外で遊ぶ時間や機会が増加したり、高齢者が地域社会で貢献できる、また、そういったために、逆に犯罪ですとか交通事故の減少も指摘されているところでございます。
 一応そういう経済効果がある、このように見られているところでございます。
鉢呂分科員 今の大臣の言われたとおりで、私も同じ資料を見させていただいています。
 特に今の省エネ効果は、照明需要の節約になるということと、家庭用、業務用の冷房需要というのが、やはり朝早くから活動するということで、気温が低いことでそれだけ節約になるというようなことです。データに、先ほどの五十万キロリットルの原油換算の節約というのは、日本の全世帯の一カ月の照明の節約になる、あるいは島根県や福井県の全世帯の一年分の、照明だけですけれども、節約になるというデータもあります。
 大臣が言われました、地球温暖化の関係でCO2の、これは幅がありますけれども、二十五万から百二十三万トンのCO2を削減できる。大臣も御案内のとおり、国では去年の三月十九日に地球温暖化対策推進大綱、いわゆる京都COP3に基づくCO2の削減に関する閣議決定をしておりまして、この中にも、国の施策として国民的議論を展開し、合意形成を図ってサマータイム制を導入する、こういうふうになっているわけです。私は、もう少しく、これは経済産業大臣の所管でないかもわかりませんけれども、平沼大臣に期待するのは、そういう面のリーダー役を果たしていただきたい。
 今、何かとすると不況、不況ということで、これだけの自然界の恵みをきちんと時間によって調整すれば、かなりの経済効果がある。経済効果ばかりでは先ほど言ったような労働過重にもつながりますから、今大臣が言われたようにライフスタイルの変化というようなものに、先ほど私が言ったように、夜まだ四、五時間明るさがありますから、平日でもゴルフをやって、また子供とキャッチボールもすることができる。
 今の時代ですから、二十三年当時は労働時間がそのことによって、年間二千二百時間の労働時間が百時間以上どんどんふえていくということで、今の日本もサービス残業があるから、日が明るかったら仕事が終わらないということにもなりかねないかもわかりませんけれども、ここはやはりライフスタイルを変えていくんだという視点でやれるのではないかなというふうに私は思っております。
 また逆に、やはりサマータイムを導入することによるマイナス面もあるわけでありまして、若干マイナス面、三つぐらいあると私は思います。一つはやはりコストがかかるという問題と、私が一つ言いました労働過重の問題と、生体、人間の体のリズムが狂うのではないかというようなことについて、特にコストの問題について、先ほどプラスの面の一兆円の効果はあるという話がありましたけれども、どういうコストといいますか、ソフト、ハードのいろいろな問題点があるんだろうと思っていますけれども、何か資源エネルギー庁でありましたら、お願いいたしたいと思います。
伊藤政府参考人 サマータイムの導入に関して出るコストでございますが、地球環境と夏時間を考える国民会議というところで平成十一年に報告が出ておりまして、ハードウエア、これは例えば交通の信号機でございますとか、深夜電力と普通の時間の電力を分ける電力のメーターでございますとか、そういった設備を直さなきゃいけないということで、ハードウエアの改修費用として恐らく六百億円程度お金がかかるのではないかという点。それから、日常的に使われておりますパソコン等の中に時計も入ってございまして、そういうソフトウエアの改修費で四百億円程度。合わせて一千億程度のコストが政府及び民間においてかかるのではないかという報告が出ております。
鉢呂分科員 費用はかかりますけれども、先ほど言いましたように、一兆円ぐらいの効果も出てくるということで、一度ソフトウエアとかそういうものをきちっと整備すれば、今の時代ですから、電磁時計とかいろいろありますから、瞬時に直すこともできるわけで、私は、コスト論で片づけることは今はできないだろう。
 また、先ほど言った生体リズムの関係は、やはり、私どもも違う国に行きますと、時差ぼけとかいろいろあります。医学的に調査をすれば、一時間程度のことで人間の健康は、虚弱な方がそれによってリズムが狂って病気になってしまうというようなことは通常言われるんですけれども、しかし、それはなかなか医学的な解明はそういうことにはなっておらない。むしろ、サマータイムによって活発になるとか、プラスの面の方が多いのではないか、こういうふうに言われておるわけであります。
 しかし、導入に当たっては、やはり国民の正しい理解がなければなかなか進まないと思います。そういう面で、昔は、二十三年は、議員立法で、上から政府が無理やりやったというような感じが大変国民の中に意識が強くて、それが失敗に終わった原因だというふうに言われておりまして、必ずしも官がこういうものを引っ張っていくという形ではないでしょうけれども、やはり、広報とか普及するための国民の理解を得るということは非常に必要だと思います。
 そういう留意点を十分徹底する中で、私は、導入の方向というものを政府としても十分検討する価値があるのではないかというふうに思っておりまして、後で大臣の決意を聞かせていただきます。
 時間がなくなりますので、そこで、実際に、構造改革特区で、札幌商工会議所、日本の最北端であります北海道の札幌の商工会議所が、第二次提案の中でこのサマータイム制を提案しておるわけでございます。これは、Jリーグのコンサドーレ、北海道のチームの副社長といいますか、石水さんという商工会議所の幹部、皆さんがオーストラリアに行って、サッカーの試合に行ったんだそうですけれども、先ほど言ったように、地域的に非常に上手に使っている。オーストラリアには赤道直下から高緯度のところもありますから、このサマータイムを導入しておる。非常に太陽を有効に使っている。
 大臣も御案内かと思いますけれども、札幌と福岡ですから、大臣の岡山よりちょっと南ですけれども、この二地区の日の出と日の入りのデータを見ますと、七月一日、一番長いと思われるところで、北海道の札幌は三時五十八分にはもう日の出であります。そして、福岡は五時十一分です。ここで一時間十三分の差が出るんです。まあ、日の出がそうですから、その前から明るいですから、この差は非常に大きい。日が入るのは、札幌が十九時十八分、七時十八分です。福岡が十九時三十三分。ここで十五分しか違わないんです。やはり、北国は、夏は非常に日が長くて、冬は非常に短くなるんですね。
 やはり夏を、太陽を有効に人々が使うということは非常に大事なんですね。七時ごろまで皆さん寝ておるんですけれども、カーテンの暗いところで、三時五十八分に日は出ているのに、もう二時間以上も暗やみにいる。私は農家出身ですから、北海道の農家の人は朝三時過ぎには起きて働くんですけれども、それは朝は有効に働けますね。
 ですから、こういうふうに時間が非常にとれるんですから、今回、札幌会議所の提案は二時間ですね。一時間じゃなくて、二時間早めてほしい。二時間早めることによって、長期化する景気低迷を、北海道をアピールして、経済の活性化にもつなげたいということが趣旨なんですけれども、四月の第一日曜日から九月の最終日曜日まで六カ月間という意欲的な取り組みであります。
 例えば、先ほど言ったサッカーの関係なんかも、夜、戸外で、十分明るいうちでやれるとか、北海道は夏が観光シーズンなんですけれども、観光客の移動も大変スムーズにいくとか、先ほど言ったように、五時に仕事が終わっても、日没まで五時間ぐらい明るさをとれるということで、大変有効に使えるのではないか。あるいは、札幌証券取引所が、二時間早まることによって、日本の中の株の取引のキャスチングボートをむしろ担えるのではないかというような、さまざまな利点があるということなわけであります。
 しかし、若干、今お聞きしている中では、この特区の中では担当省庁がまだ、サマータイム制についてどこで検討するかさえ決まっておらない。すべてにかかわりますから、経産省で言うこと自体は、何か省エネばかり、あるいは何か働くためのというような感じ、経済行為というふうに見られますけれども、そこで思い悩んで、平沼大臣にこのリーダーシップをとってほしいなと思って、ここを御指名させていただいたんです。
 例えば法令も、明治二十八年に、勅令しかないんですね。法律はないんです。明石の標準時間を日本の単一の標準時間にするというだけの根拠しか、明治二十八年の標準時に関する勅令第百六十七号という時間規定に関する特例があるだけで、当時、昭和二十三年のときは、さっき言った議員立法でそういうものをつくって、廃止法案という形であります。
 北海道だけでやる場合は、北海道条例だけでできるのかどうか。私はできると思いますけれども、そういう観点を含めて、大臣のお考えをお聞かせ願えればというふうに思います。
平沼国務大臣 今、特区というのは、第二次募集が終了いたしまして、たしか四百六十一件、地方自治体、企業を含めて、それぞれ工夫を凝らしたものが集まっているわけであります。これをまとめておられるのが鴻池担当大臣でございます。
 私は、先ほどいろいろ申し上げましたように、やはり経済産業省を所管する大臣の立場として、サマータイムというのは、日本の経済にとっても、またライフスタイルのいろいろな多様化、こういった面でも非常に意味があることだ、こういうふうに思っておりまして、私もやはり、お話を伺って、こういったものを推進していくべきだ、こういうふうに思っております。
 今、鉢呂先生のお話のとおり、まだ担当がどこかということが決まっておりません。そういう中で、いずれ鴻池担当大臣ともよく話をさせていただいて、私も一生懸命取り組んでいきたい、こういうふうに思います。
鉢呂分科員 あと三分でございますので、中小企業の信用保証の問題について、これは二、三年前といいますか、政府は相当の大きな予算をもって、私は非常に成功したんだろうと。ちょっとこの実績を聞かせてもらいながら、再度この信用保証措置をやる決意があるかどうか、この二つに分けて、事務段階からはその実績、そして決意については大臣から。
 若干言いますと、今中小企業庁ではさまざまな、中小企業金融公庫、国民金融公庫等の政府系の金融機関の、貸しはがし、貸し渋りの資金の新たな商品を出しております。非常に結構なことなんですけれども、なかなか、商工会議所どまりというふうな感じで、中小企業の皆さん、知らない人が多いんですね。これは民間の金融機関との接触はあるんですけれども、なかなか商工会議所とかそういうところには行かない。ですから、やはり民間の金融機関と接した信用保証措置というのはあれだけ伸びたんですね。伸びたというか、皆さん利用したんですね。
 ですから、公庫の資金ももちろん大事です。これとあわせて、やはりもう一回信用保証措置の復活が必要ではないか。私ども野党も、このものを大きな重点にして、今回組み替え予算も実は出しておるんですけれども、この点についてお願いをいたしたいと思います。
杉山政府参考人 ただいま先生から、いわゆる特別保証制度の実績についての御質問がございました。
 この制度は、平成十年当時、大変未曾有の金融システム不安の中で、民間の金融機関が一斉に中小企業に対して貸し出しを減少させるといった状況に対応いたしまして、当初、二十兆円の保証枠を設けまして、いわば臨時異例の措置として平成十年十月から実施をした保証制度でございます。平成十一年の十一月にさらに制度取り扱いを一年間延長いたしまして、トータルで三十兆円の保証規模を用意し、一兆四千五百億円の財政措置でこの制度を運行したわけでございます。
 この制度は十三年の三月に終了いたしておりますが、この間、百七十二万件、二十八兆九千億円という保証実績を記録しているところでございます。
平沼国務大臣 特別保証制度に関しましては、今中小企業庁長官から申し上げたように、大変幅広く、中小企業者の三分の一強の方が利用していただいて、これによって雇用の確保と倒産の未然防止、これができたと思っています。これは二年で始めまして、そして必要性があって一年延長しまして、十兆円上乗せをいたしました。異例、特例の措置として三年やらせていただきました。
 そこで、これをもう一回というお話でございますけれども、私どもといたしましては、これはある意味では異例、特例の措置だったという形で、その後やはり、いわゆるセーフティーネット保証、貸し付けを拡充すること、そしてまた補正予算、上げていただきましたけれども、これによりまして、やはり中小企業が今、金融機関のいわゆる不良債権処理が加速化されるに伴って非常に厳しい状況でございますから、とりあえず十兆円の枠を確保させていただきました。
 それからさらに、これはもう鉢呂先生よく御承知だと思いますが、特別保証自体、その保証を受けた方々は返済を一生懸命頑張っていただいています。しかし、今非常に厳しい状況ですから、借りかえ制度というのをつくりまして、あと一年で返さなければいかぬ、そういった方々には五年間、時間的に延ばすというような措置もやらせていただきまして、私どもとしては、今きめ細かくこのセーフティーネット保証、貸し付け、さらには借りかえ制度、こういったことを充実させていただいております。
 こういう事態ですから、また小泉総理も、柔軟かつ大胆に対応する、こういうことも言っておりますので、今後の状況を見ながら、私どもは中小企業対策に遺漏なきように万全を期していかなければならない、このように思っております。
鉢呂分科員 時間が過ぎましたので終わりますけれども、私どものところにも中小企業者からぜひということで、そのセーフティーネット資金ですか、これについてお話をすれば、ほとんどがそれは公庫さんで対応していただいたり、しかし、我々のところへ来ない人はやはり知らないというのが現実のようでして、やはり一工夫要るのかなと。
 その信用保証の問題は有効でありますから、ぜひさらに、まだ当初予算が成立しない段階で言うのはおかしいんですけれども、もう一段、二段の補正予算も私は必要かなと。その中では、やはりこのことの必要性は、やはり貸し渋り、貸しはがしは依然として非常に強いものがありますので、中小企業庁としての、また大臣としての対応を、対策を考えていただきたい、このことを申し上げまして、時間が超過したことをおわび申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。
宮本主査 これにて鉢呂吉雄君の質疑は終了いたしました。
 次に、牧野聖修君。
牧野(聖)分科員 民主党の牧野聖修です。
 平沼経済産業大臣に質問をいたします。大型店問題と信用保証制度の二点について質問をします。
 大型店問題は、少し後ろ向きの、過去になりつつある問題かなという感じもしないわけではありませんが、過般、ダイエーの経営破綻というものが明らかになったという時点で、一つの時代の区切りとして大臣に質問をさせていただきたい、こういうことで機会をいただいた次第であります。
 大臣、私、八百屋なんです。おやじの代から二代続けて八百屋なんです。静岡の駅南地域というところで間口三間、奥行き五間の小さな八百屋をやっております。本当は八百屋はやりたくなかったんですけれども、卒業のときにおやじが寝込んだものですから、急遽帰って八百屋をやることになりました。市場へ行ったり店番をしたり配達をしたりして、それこそ一生懸命努力したと思っております。
 ちょうど昭和五十二年ころですか、その私どもの生活しております静岡市にイトーヨーカドーが三万五千平米で出店をするという話が出てまいりまして、静岡に松坂屋と西武デパートがありますが、二つ合わせたより大きいということでびっくりしました。そして、一年間の売り上げ実績を三万五千平米で計算すると静岡では何店舗ぐらいになるかという話をみんなでしましたら、どうも三千店舗ぐらいは要らなくなってしまうんじゃないかということになりまして、これは大変だと。
 そういうことで、当時、商工会議所の方にみんなで何とか助けてもらいたいという陳情に行きましたら、それは国策で、国の方が主導してやっていることだから、我々ではどうすることもできない、こういうふうに言われました。それで、私は当時、八百屋とか魚屋をみんな集めて市役所の方に行きましたら、市議会の皆さんも気持ちはわかってくれて、一緒に運動に加わってもらって、静岡市議会としてはイトーヨーカドーの出店を反対しようという決議まで当時してくれたんです。
 ところが、それを持って県の方へ行きましたら、県の方は全く無力でありまして、通産省に行ってくれ、こういうことでした。それで、当時私は通産省に何回か来ました。そうしたら、通産省の当時の担当の皆さんが私に言うには、自由主義経済体制の中で、それはどんなに努力しても、それはだめですよ、皆さんはイトーヨーカドーに負けないような仕事をしたらいいじゃないか、そういう暴論を結構言われて、愕然とした思いがありました。
 そのときに、これは消費者の喜ぶことで、ひいては物価が安くなる、便利になる、地域が活性化する、そして文化も向上する、こういうことにつながっていくことですので、ぜひ受け入れてほしいというふうな話でございました。
 後に知ったことでありますが、流通近代化政策というものが当時ありまして、通産省がそれを主導していて、小売商のこの層は暗黒大陸で非常に古い体制になっているので、これを淘汰して、余った余剰労働力は新しい産業の方に振りかえていく、そのためには大型店を全国に適正規模に配置していくことが国家にとっていいだろう、そういう考え方があったということを伺いまして、国の考え方としてはそうかなというふうに思いましたが、そのときの大型店の雄はダイエーだったですね。そのダイエーが、あのときから二十数年たちまして経営破綻をしたということになりまして、時代の大きな移り変わりを私は実感しているわけです。
 大臣に伺いたいのは、流通近代化政策といいますか、大型店政策は成功したのか失敗したのか、その点をどういうふうに考えておられるのか、お答えをいただきたいと思います。
平沼国務大臣 お父上から家業を引き継がれて、そして地域にあって一生懸命頑張られた、そして大型店の出店に際しても一大運動を起こされて、そして当時の通産省に来られていろいろな体験をされたということ、私、大変興味深く聞かせていただきました。一つの大きな時代の要請の中で、大店法を含め、国としてはそういう自由主義経済体制のもとでの一つの施策が私はあったと思っております。
 そういう中で、この大型店というものが失敗をしたか成功をしたか、こういうことですけれども、それは、一概に私は結論づけることはまだできないと思っています。確かに、ダイエーのようにあるいはマイカルのように、そういう形で経営破綻したところも出ております。しかし、一方においては、それ以外のところでは利益が上がっているところもありますし、それなりに地域社会に貢献をし、発展を遂げているところがあるわけでございまして、本当に、そういう意味では、私は今一概に結論をどっちかと言うことはできない、このように思っております。
牧野(聖)分科員 平沼大臣は次の国家の指導者をうわさされている方で、今の答弁を聞いて、正直な方だなと素直に思いました。そういう大臣でありますので、私も、揚げ足をとったりそういったことをしないで素直に質問をさせていただきたい、こういうふうに思います。
 私は、失敗していると思うんです。物価は安くなりましたか。大型店が出店してシェアを、売り場面積を拡大することによって物価は下がりましたか。あのとき何にも下がらなかったんですよ。ずっと上がってきたんですよ。物価が下がってきたのはデフレ状況に入ってからですね。一九九七年ごろから下がってきているんですよ。大型店が出たことによって物価は下がっていない。
 では、便利になったか。ワンストップショッピングで便利になる、こういうふうに通産省は言いましたよ。実際には、たまに買い物に行くために、みんなたくさん買って、余って腐らせているというのが現実ですね、今。しかも交通渋滞で大変な思いをしている。運転のできない人、体の弱い人は郊外店まで行けないんですよ、今。近所に商店街があっていろいろなお店があれば、あっ、なかったと言って夕げのひとときに飛んでいって買い物ができたのが、今できないんですよ。地域に残っているのは交通渋滞とごみだけということで、僕は便利になったと思いません。目先は変わった、確かに、新しく変わったけれども、本当に便利になったかというと、便利になっていないんですよ。
 それから、地域が活性化して文化が向上すると言いましたけれども、どこを調べてみても、その店は、繁盛している店はいいけれども、周りは衰退の一途をたどっていますね。どこも活性化しているようなところはありませんよ。それは、大型店が出たことによってその周りへ一緒に出て、若干そのおこぼれを得てよくなっているのもあります。これはコバンザメ商法といいまして、実際にそれによって地域が活性化して文化が向上しているなんという例はどこにもありません。
 だから、私は失敗していると思います。大臣どうですか、そのこと。
平沼国務大臣 私は文化が向上したということは申し上げていなかったつもりでございます。
 私も選挙区は岡山でございまして、そして、江戸時代から続いている表町商店街、これはやはり文化の伝承の場だと私は思っておりますけれども、この表町商店街がやはり一部シャッター通りになっておりまして、大変寂しい状況になってきています。
 ですから、そういった面を考えますと、そういういわゆる影の部分もあったと思っておりますし、私は、そういう意味で、この大型店というものが本当に成功したか失敗したかということを今の段階ではまだ判断はできませんけれども、しかし、影の部分も非常に大きくあるというのは御指摘のとおりだ、私はこういうふうに思っております。
牧野(聖)分科員 私が大臣に真剣に受けとめていただきたいことは、当時、ダイエー、イトーヨーカドー、ジャスコ、西友、ニチイ、こういう大型店が地方に進出することによって淘汰されていった商店は何店舗ぐらいあったかというと、おおむね百万ですよ。中には首をつって自殺をした商店主がいましたね。行方不明になって家族離散しているのがいる。それは悲惨ですよ。大変な状況でしたね。そのことをぜひ忘れないで受けとめていただきたい、こういうふうに思うんですね。
 それで、あのときは、世界の趨勢がそういう状況にあるので日本もそれに右倣えしていくんだというふうに通産省は私どもに言いましたよ。それで、私はあっちこっちの事例をずっと調べていたんですけれども、そんなことはない。
 フランスにはロワイエ法という法律があって、地域の商店街とか地場産業を一生懸命守っていますね。ベルギーにも同じような法律がある。建前は自由でオープンですけれども、実際にはちゃんと地域とかそういうものを守るそういう努力をしている。それからドイツにおいては、これまたオープンですよ。でも、実際出店するということになると、都市計画とか郊外への規制で出られないようになっているね、実質には。
 日本だけですよ、こんなにどんどん出られている。外国の、それはもうカルフールやウォルマートやトイザラスもどんどん入ってくる。
 アメリカにしても、環境法とか建築基準なんかのいろいろな規制の中でなかなか出られないようにしていますね。イギリスなんかの地方は、実際には、オープンなんですけれども都市計画の規制によって出られないようにした。小規模の地域にはもう全く出る可能性がないような規制をして、その地域、商店街とかコミュニティーとかそれに基づく文化を守っている。
 日本だけですね。九〇年代から方針転換したけれども、経済的規制じゃなくて社会的規制、それによって調整をしようと言いながらこんなに野放しにしたのは日本だけですよ。
 私はそう思いますけれども、大臣はどうですか。
平沼国務大臣 諸外国の例を引かれて御意見を承りました。
 確かに、先ほどは地元の表町の話もさせていただきました。私も出張なんかをしてヨーロッパ各都市に行きますと、古いそういういわゆる何百年保たれている商店街というのが残っている、こういうことも目にしております。しかし、一面、パリの中にもそういういわゆる大型店のようなものもできているのも目にしています。
 日本の場合は、そういう意味では、こういう中心市街地、これが寂れているということは、現実の問題として国としても問題意識を持って、そして中心市街地を活性化する、こういう事業をやり出したわけでありまして、そういう観点からいいますと、やはりこういう文化、伝統のある、そういういわゆる地域の商店街というものに対して、ある意味では諸外国に比べては配慮が足らなかった、そういうことは指摘ができるのではないかな、そういうふうには思います。
牧野(聖)分科員 私、この問題は自分の心の中に秘めて次の時代へそのまま突き進んでいこうと思っていたんですが、ダイエーの経営破綻ということがありましたので、しかも、平沼大臣だということもありまして、この機会をみずから求めて質問をさせていただくことになったんですが、本当に心に響くような答弁をいただいて本当にうれしく思っております。
 それで、さらにこの上申し上げるのは失礼なのかもしれませんが、私がお願いしたいことは、当時、私は、全国百四十地域の大型店と紛争している皆さんを、連帯して小売連絡協という組織をつくって、三十六万の商店をまとめて大型店問題に対抗してきましたね。そのときに、一番大型店の中で行儀の悪かったのはダイエーなんですよ。札束で地域をたたいて歩いて出店したね。そういう意味では、人道にももとる。二兆円も近い負債を抱えるなら私だってあれだけのことはできますよ。私だって経団連の副会長にはなれるよ、それだけ放漫経営をやれば。
 だから、私が大臣に言いたいのは、当時自由主義経済の名のもとに、自由競争の名のもとに小さな店はみんな殺されていったんです。同じ理屈でダイエーの問題に対処してもらいたい。今全国の小売商はみんなそう思っています。当時、倒産して夜逃げをしたり何かした人たちは、今の日本のダイエーに対するやり方はおかしいと思っている。現在商売している人たちの九〇%は、あすもわからない状態ですよ。その中で、何でダイエーだけ助けるんだ、その金があるならおれたちを助けてくれというのは当たり前じゃないですか。大臣、どうですか、そのことについては。
平沼国務大臣 経営不振のダイエーのような流通業が経営再建を進めるかあるいは事業を中止するか、これは当該企業と金融機関等の関係者との間で私は自主的に判断をすべき問題だ、基本的にはそういうふうに考えています。
 また、経営再建を進める場合におきまして、例えば債権放棄を含む私的整理を進めるかあるいは民事再生法や会社更生法にのっとって法的手続を進めるかについても、当事者間で判断して選択すべきである、こういうふうに考えております。
 実際のところ、債権放棄、これは、例としてはもう言うまでもありませんが西武ですとか岩田屋さん、会社更生法ではマイカル、そして長崎屋さん、それから民事再生法、これはそごうでございますけれども、その後自己破産等々さまざまなケースがあるわけです。
 そうした中で、ダイエーにつきましては、選択と集中による構造改革を進めまして、主力銀行が債権放棄等により支援するという自主的な取り組みを行っている、私どもはこのように考えております。
 産業再生法の認定については、ダイエーの申請に基づいて、産業再生法の趣旨に照らして審査をしまして、その定める要件に合致すると認められたことから認定したものでございまして、法にのっとって減税措置等の支援が行われた、このように思っております。
 また、政策投資銀行、ここも支援をいたしましたけれども、この政策投資銀行による企業再建ファンドに対する出資については、政策投資銀行が主力銀行の申し入れを受けて、ダイエーの経営再建計画を審査した上で決定をしたものでございまして、私どもとしては、ダイエーのみを特別扱いにしたものではない、このように認識しております。
 私は、先生がいろいろな運動を通じて、そしてまた本当に、三十六万店の小売業の皆さん方の中心になってそういう方々の痛み、苦しみというものを身をもって味わわれた体験の中から今おっしゃったお言葉だ、こういうふうに重く受けとめております。
 私どもとしては、やはり政府として一つの企業というものを恣意的に、政府の意思によって生かす、殺す、そういうことは私どもはすべきではない、今申し上げたような一つの判断の中で行っていくべきだ、このように思っているところでございます。
牧野(聖)分科員 大臣の言葉を信じたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 ただ、ダイエーの経営破たんに伴って、新聞とか雑誌の中で、経済産業省の幹部から、過剰債務企業再建の先行モデルにダイエーのケースをしたいというふうな発言があった記憶があるんですよ。これは言語道断ですね。言語道断です。
 私が言いたいのは、当時ダイエーに出店によって殺されてしまった小売商業、それに関係する皆さんは、政府がダイエーを守るということになれば、今まではダイエーに殺されたと思っていましたけれども、そのダイエーを政府が守ることになれば、時はめぐって政府に殺されたということになるんですよ。これは絶対阻止しなくちゃいけませんね。それだったら、政治に対する信頼はもうなくなりますよ。現実に、小売商業者の大半がそう思っている。ぜひそのことを忘れないで今後に処していただきたい、そういうふうに思います。
 それから次に進みますが、大臣はあちらこちらで商店街のいろいろな重要性については非常に前向きな発言をされておりますので、その点につきましては心から期待したいと思っております。
 私は、宮城沖地震のとき、それから兵庫の淡路大震災のとき、あのときも現場へ駆けつけていろいろな復旧作業を見ましたけれども、大型店は地域の復旧作業の中では無力でしたね。そのときいち早く立ち上がったのは地元の商店街ですよ。その地元の商店街が立ち上がることによって初めて地域に活力が出てきたというのは、これは事実ですね。大臣もそのことはきっと御承知だと思います。ですから商店街のことについて意を強くされておられるのではないかなと思いますが。
 地域の商店街は、どんなことがあっても地域から逃げ出すことはできないですね。そこで生活してなりわいをやっている。だから、何かあればもうけとかそういうのは捨てて地域のために立ち上がる、これが商店街ですね。ですから、きざな言い方をしますと、災害時のときには既存の商店街、そういう集積は、ガスや水道や通信網、このライフラインに匹敵するだけの重要な役割を果たす。それから、地域のコミュニティー、地域文化の担い手ということがあるわけですね。ですから、その点のことをぜひ御留意されまして商店街の振興に当たっていただきたい、こういうふうに思います。
 この点について、大臣のお気持ちをお聞かせください。
平沼国務大臣 私は、牧野先生おっしゃるとおりだと思っております。
 あの阪神・淡路大震災のときも、私も、いわゆるずっと続いている商店街がまず立ち上がって、そしてそこから結束が固まったということはよく承知しております。そして、商店街というのは、おっしゃるようにそこにずっと皆様方は離れずにおられる方々でありますから、そういう意味では、文化に根差したお祭りでありますとか地域の催しというのは、まさに商店街の皆様方が中心となってそれを伝承し、そしてそれをまた後世に伝えていく、こういう役割を担っておられまして、そういう意味では、おっしゃるとおり、コミュニティーのまさに文化の一番の原動力になっていただいていると思っています。
 ですから、そういう意味で、この日本にとっても、地域の商店街というのをしっかりと守っていくということが日本のたがを緩めないことにつながる、こういうふうに思っておりまして、私どもも今、中心市街地活性化、そういった事業をいろいろ展開させていただいておりますけれども、そういったこともこれからさらに力強く展開をしなければならないと思っておりますし、また、商店街の皆様方は中小零細企業の方々がほとんどでいらっしゃいますから、そういう意味では、中小企業に対するセーフティーネットでありますとかいろいろな支援策、こういった応援策も幅広く政策として講じていかなければならない。このことを旨として中小企業対策もしっかりやらせていただきたい、このように思っております。
牧野(聖)分科員 かつては国策によって殺されたという経緯が小売商人にはあります。今度はそういうことのないように、国策によってこの厳しい不況の中で立ち上がることができるように、手厚い行政を実行してくださいますように心からお願い申し上げまして、次の質問に入ります。
 信用保証協会のことについて質問させていただこうと思いましたが、時間もなくなり、先ほど我が党の鉢呂議員からもお話があり、質問させていただきましたので、もう私はくどくどと言うことは差し控えたいと思います。
 いろいろ調べてみましたら、国の方は結構一生懸命やってきたなという実感ですね、このことについては。よくやってきたなという感じがします。この信用保証制度というものを使ってきたからこそ中小企業者や零細企業あるいは小売商店も生き残ることができてきた、こういうふうに思っております。
 ただ、最近、どうも財政が破綻しそうだ、その問題がずっと出ておりまして、もし仮に破綻すると、それはもう全国の中小企業は全部お手上げですね。大臣もう何回も何回もこのことについては御答弁されていると思いますが、お気持ちをお聞かせください。
西川副大臣 先ほど来から、中小・小規模企業、商店を思う牧野先生の熱いお気持ちが伝わる御質疑、感銘を受けながら拝聴しておりました。
 そこで、今御心配の中小企業の総合事業団の信用保険部門の収支の悪化につきまして簡単に申し上げますと、大変厳しい経済の不況が長引いているということで、代位弁済がふえておりまして、急速に今悪化をいたしておりまして、平成十四年度、そしてさらにさかのぼって十三年度は、それぞれ六千億円程度の赤字を計上もしくは赤字の計上見込み、こういうことになっております。そして、平成十五年から十七年にかけての三年間の見通しは、約九千億円不足をするであろう、こういうところがございます。
 現下の厳しい経済情勢のもと、信用補完制度というのは中小企業の資金調達を支援するセーフティーネットとして極めて重要でございます。したがいまして、大臣もたびたび御答弁をなさっておりますように、私どもとしては、この制度をしっかり堅持していくということをやっていきたい。
 もう時間もあれでございますが、もう一つだけどうしても申し上げたいことは、こういう不足の大宗につきましては、保険準備基金というものがございまして、これが枯渇した場合の投入を想定して中小企業事業団に積み立ててございます融資基金、これは七千五百億円ほどございますけれども、これを取り崩して、そして、まことにこういう中恐縮でございますが、受益者の方にも御負担をいただきまして、〇・三%程度の最低限の保証料率の値上げで一割を補っていただきたい、経験則で、およそ不足分の一割がそれで補えるものでございますから。
 しかし、いろいろな特例も設けながら、軟着陸ができるようにしていきたい、こんなふうに思っております。
牧野(聖)分科員 時間が参りましたのでこれで質問を終了したいと思いますが、いずれにいたしましても、中小企業者、零細小売店は信用保証制度がないとやっていけないという現実があります。その救済のためには税金の投入というものが避けられないのではないかと私は思いますが、増税はできないし、簡単に手数料のアップもできない、ましてや国債も簡単にこれ以上増発はできない、こういう状況でございますので、大変厳しい大変な状況だとは思いますが、ぜひ閣内において各省庁と連携をとりまして、中小企業者のためにこの信用保証制度を堅持して、よりよい形になるように御配慮をしていただくことを心からお願いしまして、質問を終わります。
 ありがとうございました。
宮本主査 これにて牧野聖修君の質疑は終了いたしました。
 次回は、明二十八日金曜日午前九時より開会し、引き続き経済産業省所管について審査することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時三十五分散会


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