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第1号 平成14年4月8日(月曜日)

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本分科会は平成十四年三月二十六日(火曜日)委員会において、設置することに決した。
四月五日
 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。
      岩屋  毅君    江藤 隆美君
      谷  洋一君    額賀福志郎君
      村上誠一郎君    楢崎 欣弥君
      葉山  峻君    松崎 公昭君
      神崎 武法君    春名 直章君
四月五日
 松崎公昭君が委員長の指名で、主査に選任された。
平成十四年四月八日(月曜日)
    午前九時開議
 出席分科員
   主査 松崎 公昭君
      岩屋  毅君    村上誠一郎君
      後藤  斎君    今田 保典君
      楢崎 欣弥君    葉山  峻君
      山内  功君    神崎 武法君
      春名 直章君    吉井 英勝君
   兼務 松島みどり君 兼務 大谷 信盛君
   兼務 金田 誠一君 兼務 永田 寿康君
   兼務 松原  仁君 兼務 黄川田 徹君
   兼務 佐藤 公治君 兼務 赤嶺 政賢君
   兼務 阿部 知子君 兼務 重野 安正君
    …………………………………
   農林水産大臣       武部  勤君
   経済産業大臣       平沼 赳夫君
   環境大臣         大木  浩君
   国務大臣
   (金融担当大臣)     柳澤 伯夫君
   国務大臣
   (経済財政政策担当大臣) 竹中 平蔵君
   内閣府副大臣       松下 忠洋君
   内閣府副大臣       村田 吉隆君
   経済産業副大臣      大島 慶久君
   環境副大臣        山下 栄一君
   環境大臣政務官      奥谷  通君
   会計検査院事務総局事務総
   長官房審議官       千坂 正志君
   会計検査院事務総局事務総
   長官房審議官       檜垣 敏夫君
   会計検査院事務総局第一局
   長            石野 秀世君
   会計検査院事務総局第二局
   長            増田 峯明君
   会計検査院事務総局第四局
   長            有川  博君
   会計検査院事務総局第五局
   長            円谷 智彦君
   政府参考人
   (内閣府沖縄振興局長)  武田 宗高君
   政府参考人
   (金融庁検査局長)    五味 廣文君
   政府参考人
   (金融庁監督局長)    高木 祥吉君
   政府参考人
   (総務省自治財政局長)  林  省吾君
   政府参考人
   (総務省自治税務局長)  瀧野 欣彌君
   政府参考人
   (財務省大臣官房審議官) 藤本  進君
   政府参考人
   (文部科学省大臣官房審議
   官)           清水  潔君
   政府参考人
   (文部科学省大臣官房審議
   官)           坂田 東一君
   政府参考人
   (厚生労働省医薬局食品保
   健部長)         尾嵜 新平君
   政府参考人
   (農林水産省大臣官房審議
   官)           山本 晶三君
   政府参考人
   (農林水産省総合食料局長
   )            西藤 久三君
   政府参考人
   (農林水産省生産局長)  須賀田菊仁君
   政府参考人
   (農林水産省経営局長)  川村秀三郎君
   政府参考人
   (農林水産技術会議事務局
   長)           岩元 睦夫君
   政府参考人
   (食糧庁長官)      石原  葵君
   政府参考人
   (林野庁長官)      加藤 鐵夫君
   政府参考人
   (水産庁次長)      川口 恭一君
   政府参考人
   (経済産業省大臣官房長) 林  良造君
   政府参考人
   (経済産業省大臣官房地域
   経済産業審議官)     今井 康夫君
   政府参考人
   (経済産業省大臣官房商務
   流通審議官)       古田  肇君
   政府参考人
   (経済産業省商務情報政策
   局長)          太田信一郎君
   政府参考人
   (経済産業省商務情報政策
   局消費経済部長)     青木 宏道君
   政府参考人
   (資源エネルギー庁電力・
   ガス事業部長)      迎  陽一君
   政府参考人
   (資源エネルギー庁原子力
   安全・保安院長)     佐々木宜彦君
   政府参考人
   (中小企業庁長官)    杉山 秀二君
   政府参考人
   (国土交通省鉄道局次長) 梅田 春実君
   政府参考人
   (環境省大臣官房廃棄物・
   リサイクル対策部長)   飯島  孝君
   政府参考人
   (環境省総合環境政策局長
   )            炭谷  茂君
   政府参考人
   (環境省地球環境局長)  岡澤 和好君
   政府参考人
   (環境省環境管理局長)  西尾 哲茂君
   政府参考人
   (環境省環境管理局水環境
   部長)          石原 一郎君
   政府参考人
   (環境省自然環境局長)  小林  光君
   政府参考人
   (農林漁業金融公庫総裁) 鶴岡 俊彦君
   政府参考人
   (中小企業金融公庫総裁) 堤  富男君
   政府参考人
   (国際協力銀行総裁)   篠沢 恭助君
   参考人
   (中小企業総合事業団理事
   長)           見学 信敬君
   決算行政監視委員会専門員 川城 正彰君
    ―――――――――――――
分科員の異動
四月八日
 辞任         補欠選任
  楢崎 欣弥君     今田 保典君
  葉山  峻君     後藤  斎君
  神崎 武法君     上田  勇君
  春名 直章君     小沢 和秋君
同日
 辞任         補欠選任
  後藤  斎君     山内  功君
  今田 保典君     楢崎 欣弥君
  上田  勇君     福島  豊君
  小沢 和秋君     吉井 英勝君
同日
 辞任         補欠選任
  山内  功君     葉山  峻君
  福島  豊君     神崎 武法君
  吉井 英勝君     瀬古由起子君
同日
 辞任         補欠選任
  瀬古由起子君     春名 直章君
同日
 第一分科員松島みどり君、金田誠一君、赤嶺政賢君、第二分科員大谷信盛君、松原仁君、黄川田徹君、佐藤公治君、第四分科員永田寿康君、阿部知子君及び重野安正君が本分科兼務となった。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 平成十年度一般会計歳入歳出決算
 平成十年度特別会計歳入歳出決算
 平成十年度国税収納金整理資金受払計算書
 平成十年度政府関係機関決算書
 平成十年度国有財産増減及び現在額総計算書
 平成十年度国有財産無償貸付状況総計算書
 平成十一年度一般会計歳入歳出決算
 平成十一年度特別会計歳入歳出決算
 平成十一年度国税収納金整理資金受払計算書
 平成十一年度政府関係機関決算書
 平成十一年度国有財産増減及び現在額総計算書
 平成十一年度国有財産無償貸付状況総計算書
 〔総理府(金融再生委員会、金融監督庁、経済企画庁)所管、国際協力銀行、総理府(環境庁)、農林水産省所管、農林漁業金融公庫、通商産業省所管、中小企業金融公庫、中小企業信用保険公庫、中小企業総合事業団〕


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     ――――◇―――――
松崎主査 これより決算行政監視委員会第三分科会を開会いたします。
 私、民主党の松崎でございます。本日の主査を務めることになりましたので、何とぞよろしくお願いいたします。
 本分科会は、総理府所管中警察庁、金融再生委員会、金融監督庁、経済企画庁、国際協力銀行、環境庁、農林水産省所管、農林漁業金融公庫、通商産業省所管、中小企業金融公庫、中小企業信用保険公庫及び中小企業総合事業団についての審査を行うことになっております。
 なお、各省庁の審査に当たっては、その冒頭に決算概要説明、会計検査院の検査概要説明及び会計検査院の指摘に基づき講じた措置についての説明を聴取することといたします。
 平成十年度決算外二件及び平成十一年度決算外二件中、本日は、総理府所管中環境庁、経済企画庁、国際協力銀行、金融再生委員会、金融監督庁、通商産業省所管、中小企業金融公庫、中小企業信用保険公庫、中小企業総合事業団、農林水産省所管及び農林漁業金融公庫について審査を行います。
 これより総理府所管中環境庁について審査を行います。
 まず、概要説明を聴取いたします。大木環境大臣。
大木国務大臣 環境庁の平成十年度及び平成十一年度歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 まず、平成十年度の当初予算額は七百九十八億三千五百二十二万円余でありましたが、これに予算補正追加額三百十五億五千九百三十六万円余、予算補正修正減少額十八億五千百八十三万円余、予算移しかえ増加額八億九千六百五十六万円余、予算移しかえ減少額二十六億八千九百四十八万円余、前年度からの繰越額四十六億三千六百八十六万円余を増減いたしますと、平成十年度歳出予算現額は一千百二十三億八千六百七十万円余となります。この予算現額に対し、支出済み歳出額八百八十七億七千五百三十四万円余、翌年度への繰越額二百二十六億八千四百二十五万円余、不用額九億二千七百九万円余となっております。
 次に、平成十一年度の当初予算額は八百六十億一千五百二十五万円余でありましたが、これに予算補正追加額百六億一千百三十二万円余、予算補正修正減少額二十一億三百四万円余、予算移しかえ増加額十五億一千四百五十二万円余、予算移しかえ減少額二十八億一千三百十一万円余、前年度からの繰越額二百二十六億八千四百二十五万円余、予備費使用額二十五億二百五十万円余を増減いたしますと、平成十一年度歳出予算現額は一千百八十四億一千百七十一万円余となります。この予算現額に対し、支出済み歳出額九百八十四億三千八百六十三万円余、翌年度への繰越額百八十九億八千七百四十八万円余、不用額九億八千五百五十九万円余となっております。
 以上、簡単ではありますが、平成十年度及び平成十一年度の決算の概要を御説明申し上げました。
 よろしく御審議のほどお願い申し上げます。
松崎主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院増田第二局長。
増田会計検査院当局者 平成十年度環境庁の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
 次に、平成十一年度環境庁の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。
 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項一件であります。
 これは、東京都におきまして、低公害車普及推進事業の実施に当たり、消費税の申告において補助金により賄われる課税仕入れに係る消費税額が控除されることになっているのに、その消費税相当額を補助対象経費に含めていたため、補助金が過大に交付されているものであります。
 以上、簡単でございますが、説明を終わります。
松崎主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。大木環境大臣。
大木国務大臣 平成十一年度の決算検査報告において掲記されております事項につきましては、会計検査院の御指摘のとおりでありまして、まことに遺憾に存じております。
 指摘を受けました事項につきましては、直ちに是正措置を講じましたが、今後なお一層厳正な態度をもって事務の執行の適正を期する所存であります。
 以上であります。
松崎主査 この際、お諮りいたします。
 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
松崎主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
松崎主査 以上をもちまして環境庁についての説明は終わりました。
    ―――――――――――――
松崎主査 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。今田保典君。
今田分科員 民主党の今田保典でございます。
 このほど、新しい地球温暖化対策推進大綱というものが決まったわけでありますが、新たな削減目標が設定されまして、ここに示された目標達成には大変な努力が必要であろう、こういうふうに思います。それぞれの立場で当然最善を尽くすということは考えられますが、そういった観点から、私は長年運輸関係の仕事をしてきた関係もありまして、運輸部門の関係、とりわけその中心となります自動車の環境対策問題についてこれから質問させていただきたい、こういうふうに思います。
 新しい大綱では、交通関係の対策として、物流の効率化、公共交通機関の利用促進、そして交通渋滞の緩和、クリーンエネルギー車あるいは低公害車の普及促進などが挙げられておりますけれども、これらに対する取り組みは進められておりますけれども、国土交通省など、関係省庁にまたがる取り組みというのはなかなか見えてきません。これらの省庁と現在どのように連携をして取り組んでいるのか、本当に大切な部分でございますので私は気にしておるわけですが、この点について御質問をさせていただきます。
大木国務大臣 今、今田議員から、御専門の立場からるると御質問があったわけでございまして、これから地球温暖化対策を進める上において交通部門が非常に重要な地位を占めているということは、御指摘のとおりでございます。
 ただこれは、民間の交通需要というのは、ほかっておきますとなかなか簡単に減らないというか、むしろそれは、ある意味におきましては、我々の経済活動、社会活動が自然にふえていくわけですから、それをよほど、温暖化対策という意味から措置を進めなきゃいかぬというわけであります。
 今もお話ございましたとおりに、環境省も、国土交通省とか経済産業省等と連携いたしまして、例えば昨年の七月に、低公害車開発普及アクションプランを策定いたしまして、例えば低公害車の車種としてはどういうものがあるんだ、それから登録台数というようなものをまず把握いたしまして、今後どういうふうに進めていくかというようなことも検討しておるところでございます。
 また、環境省が事務局を務めております道路交通環境対策関係省庁連絡会議というものを通じまして、これは個々の車の車種というか、そちらの方からのアプローチもありますが、もう一つは、全体としての交通流の円滑化、円滑化といいますか、合理化と言った方がいいかと思いますが、といった施策を関係省庁が連携して推進しておるところでございまして、要するに、交通部門におきましても、いろいろな対策を総合的に組み合わせて、目的を達成するようにということで努力をしてまいりたいと思っております。
 今の交通流の対策とか、あるいは物流のお話もございますけれども、モーダルシフト、物流の効率化、あるいは公共交通機関をどういうふうに利用するか、これはかなり、今各地方でも、地方の知事さんとか市長さんがいろいろと勉強しておられまして、対策をとられているところもありますので、そういった方々とも協力しながら、これからひとつ施策を進めてまいりたいというふうに思っております。
今田分科員 今ほどのあれなんですが、私、常日ごろ思っているのは、例えば、今非常に不況だということでなんでしょうけれども、駅前、あるいは東京都内でいえば赤坂周辺、あるいは六本木周辺、そういったところにタクシーがずらっと並んでいるわけですよ。冬は、寒いものですから、暖房をつけるためにエンジンをかける、それがアイドリングをしている、それから、夏は夏で、暑いものですから、冷房をかけるためにアイドリングをやる、こういうことでございます。
 タクシーは御案内のように今規制緩和をやっているものですから、車がどんどんふえているんですよね、タクシーの台数が。適正な車の数というものは私はあると思うんですよ。しかし、それは交通関係から言わせれば規制緩和なんだということで許される。しかし、環境面から見ればこういったものは大変な問題だ、私はこういうふうに言わざるを得ないわけですよね。
 そういった面から言わせていただきますと、各省庁間の連携というものを、もちろん警察庁もあるんでしょうけれども、そういったところの連携を十分に考慮した環境対策というのは私は必要ではないかということを申し上げたいわけであります。
 そこで、その現状を正しく把握するために地球観測体制の強化、こういうことに前の大綱でなっておったわけでありますが、現在の測定の基地、それから観測の体制はどうなっているのか、お聞きをしたい。
 それから、測定データ、公表されておりますけれども、これが非常に古いデータだということで苦情が来ておるというやに聞いておるわけでありますが、こういった環境にかかわるものについてはやはり最新の情報を国民に流すということが非常に大切ではないかというふうに思うわけでありまして、国が発表している最新の地球温暖化ガス排出量のデータは何年前のデータなのかということも含めてお聞きしたいと思います。
大木国務大臣 今お話ございましたように、これは前からある例の地球温暖化対策推進大綱、最近また手直しもいたしましたからあれではございますが、むしろ、計測データの収集というのは前からやっておるわけでございます。総務省、文部科学省、国土交通省、環境省、それぞれの立場からいろいろとデータは集めておるわけでございまして、温室効果ガスの濃度の動きだとか、結果としての海面の上昇など、常時監視体制は実施しておるわけでございます。
 それから、今年度から、総合科学技術会議の地球温暖化研究イニシアチブというものがありまして、これで観測体制を一層充実させたいということで、データをお互いに各省いろいろ持っていますから、データの相互比較利用、さらに、お互いにきちっとしようとか、あるいはデータを今度は利用して、お互いにそれをまた活用していくということで、そういったネットワークの確立などを図るように今努めておるところでございます。
 ただ、御指摘のとおりに、なかなかデータというのが、一番最新というのは、物によりますので、例えば温暖化ガスの中でもCO2は割に捕捉が簡単なんですけれども、ほかの、メタンガスとかいうようなことになりますと、その発生の状況もいろいろ違うものですから、これがぴしっと最新ということにまいらなくて、現在のところ、最新の温室効果ガス排出量のデータというのは、総体としては一九九九年のものが一番新しいというようなことになっていますが、それは私も言っているんですが、仮に正確なものは出ないにしても、大体の傾向ぐらいわからぬかというようなことで、そういうことも含めまして、できるだけ新しいものを集めて、また皆さん方の御検討に供するように努力をしてまいりたいと考えております。
今田分科員 やはり私は、データというものは、正確に国民に伝えるという観点からすれば時間がある程度かかるのかなという感じはしますけれども、しかし、世の中非常に変化が激しいわけですから、なるべく近いデータを国民に知らしめるということが必要ではないかということを申し上げたいと思います。
 そこで、環境対策を進めるに当たって、そのためには基礎的な研究あるいは技術開発が不可欠だと思うわけでございまして、政府の方針にも「地球温暖化現象の解明等に関する研究を推進する」というふうになっております。この研究はどこでどのように進めているのか。あるいは、自動車の燃費改善とか低公害車の開発については進んでいるようでありますけれども、地球温暖化現象そのものの研究についてはなかなか国民には見えていないというものがあるわけでありまして、これもまた大変な努力をしているんだろうと思いますので、やはりある程度国民に知らしめる必要があるのではないかという意味で、このことについてどのようになっているのか、お聞かせをいただきたい、こういうふうに思います。
大木国務大臣 地球温暖化問題あるいは環境問題全般に非常に大事だということで、政府の各省庁の中にも、予算をつくるときにはいつも皆さんそれぞれのお立場から予算請求もしておられますし、そういうことで、政府全体としては、いろいろな省庁で随分、大体いつもお話ししておりますのは、国土交通省とか経産省とか、そういったところが中心になりますけれども、今そういった調査研究になりますと、実は九府省にわたっております。内閣府のほかに、警察、総務省、文部科学省とか厚生労働省、農林省、経済産業省、国土交通省、そして環境省というようなことで、えらいたくさんだなという印象を受けられると思います。そういう九省庁が中心となって、我が国の気候変化予測、あるいは森林とか海洋、それから大気との間の二酸化炭素の循環の研究などということをしております。
 それと、実は政府のほかに、もちろんそれは自動車会社とか関連のいろいろな産業部門もそれぞれに研究はしておられますし、ある意味におきましては一番専門家がそういうところにそろっているわけですから、自動車会社の方もいろいろと勉強はしておられますけれども、やはり地球温暖化対策でどこまで進んでいるのかということをまず示さなきゃいかぬわけでありますから、これはやはり中央官庁では今の九省庁を中心にして勉強いたしておりますし、それからまた、時宜に応じてまた民間との情報交換なども進めておる。
 ただ、今の九省庁だけでもなかなか、情報交換というのは完全に行われているかというふうになると、改善を要する部分もあると思いますので、できるだけ、国としてきちっとした情報を持たないと、やはり適切な対策はとれないと思いますので、まず政府の中で、あるいはまた民間とも協力しながら、しっかりしたデータの収集に努力をしたいというふうに思っております。
今田分科員 それでは、私、先ほど言ったように運輸関係に長く携わってきたという立場から、ちょっと専門的なことでお伺いしたいんですが、自動車のNOx・PM法の関係でありますけれども、自動車のNOxあるいはPMの削減については理解はしておりますけれども、これまでの対策にある小型トラックをガソリン車に代替するという考え方はなかなか理解できないという人もおるわけであります。
 二酸化炭素の排出量も少なく、エネルギーの効率のよいディーゼルエンジンを、なぜ二酸化炭素排出量の多いガソリンエンジンに交換しなければならないのかというような声もあるわけであります。それから、NOx、PMの削減のみに着目した発想ではないのかという業者の方々の声もあるわけでありまして、こういった方針といいますか、こういったものをもう一回再考する必要があるんではないかというような声もあるわけでありまして、それぞれの業者から、そういった専門的な観点からいろいろなお話をお聞きしてこういった方針を出されたのか、この点についてお伺いをしたいと思います。
大木国務大臣 自動車の排出ガスで今、NOx、PMのお話がございましたけれども、実は、そのNOxなんというものは、CO2より前に、自動車の排気ガスとしては先輩でございまして、昔、公害で自動車公害というとすぐにNOxというような話があったわけでございますが、何といいましても、直接にNOx、PMの方は人の健康を害するということが非常にはっきりしておりますものですから、これはやはり、特に大都市などではどうしてもそれを規制しなきゃいかぬということが一つあると思います。
 片や、しかし、今の温暖化からいえばCO2の方の排出も抑えなきゃいかぬということで、二つ、ある意味におきましては相反する、二律背反の、まことに難しいわけでありまして、どうも、忠ならんと欲すれば孝ならず、孝ならんと欲すれば忠ならずというか、ちょっと昔的な表現を使いましたけれども、要するに、なかなかそこのところの調整が難しいわけですから、これはやはりバランスをどこかで見ながら、しかし、本当は両方ともきちっと抑えられるようなものが出てくれば一番いいわけですが、とりあえずは両方、大気汚染の原因物質の排出量の削減、それから燃費の向上という面ももちろんございますから、そういうこともある。
 そういうことで、総合的に自動車の性能も改善していただくということでありますし、先ほどから申し上げておりますけれども、いろいろな、物流とか交通量の対策とか、そういったものも全部見ながら、ひとつ総合的に対処してまいりたいと思っています。
 正直申し上げまして、非常にこの辺が難しいところでございますので、民間の業界からもいろいろと御要望はあります。ですから、そういう声には十分に耳を傾けながら、しかるべきバランスを見出しながら、全体としては、やはりそういった自動車からのいろいろな汚染物質の排出というのを抑えるようにということで努力を続けてまいりたいというふうに考えております。
今田分科員 確かに、環境面から見れば、いろいろなことのデータのもとでこういう方針を出された、こういうことでありますが、しかし、いわゆる物流関係に携わる方々から言わせれば、今、規制緩和で大変厳しい中でなかなか車を入れかえできないというような状況、それから、整備も含めて、しっかりした企業のいわゆる運行管理体制といいますか、車両を一たん買う、買うことによってこの車を、私の知る範囲内では十数年使っているんですよね、何回も何回も修理をしながら。そうしないとコスト的に合わない、こういうことでやっているわけですよ。
 したがって、普通の、一般の若い人の乗用車のいわゆる入れかえ時期と大変な違いがあるわけでありまして、こういった方針を出されたからすぐ対応できるというような話にはなかなかなっていないというふうな感じをいたすわけでございまして、そういったことも含めてぜひ答えをお願いしたい、こういうふうに思うわけでございます。
 そこで、そのNOx、PMの削減対策についてでありますが、エンジン自体の改善、それからPM除去装置の開発はされているのかどうか。これらの開発プログラムの実用化スケジュール、そして価格などの必要な情報が公開されていない状況であります。その点についてどのようになっているのか。また、エンジンについては、既に非常に厳しい欧州規制にも適合するエンジンが開発されているというふうに聞いておりますが、これはどのようになっているのか、お聞かせをいただきたいと思います。
西尾政府参考人 御説明いたします。
 自動車のNOx、PMの対策に対する排ガス規制は、専門家によりますメーカーヒアリングなどを行いながらその規制の方向を打ち出して、それにあわせて開発を進めていっていただくという方式でやっております。
 今一番新しいといいますか、これからやる排出ガス規制ということで検討いたしておりますのは、現在、中央環境審議会で検討いたしていただいておりまして、さきの三月六日に案を示しております。これは、平成十七年を目標にいたしましたディーゼル自動車の規制強化の案でございます。
 これにつきまして公開ということでございますが、この案につきまして、この四月四日までパブリックコメントをやるということで、一般にもその案をお示しして御意見も聞いているという作業をいたしておりまして、近く答申がなされると思っています。
 この答申がなされますと、この目標値はPMなどの大幅な規制強化を図りまして、これは欧州の基準もその時点で抜きます、世界最高水準のものになると思います。各自動車メーカーはこれに対して最大限の開発努力をする。それは、一方では、温暖化ガスに関係いたしますCO2対策に関係いたしますが、燃費も下げないで、しかしこの大気基準を満たそうという開発をしようということでございますので、主として、この燃料噴射機系の改良などのエンジンの改善、それから連続再生式のDPFということで、ディーゼル微粒子の除去装置といったようなものを中心にします開発に懸命に取り組んでいるということでございます。
 欧州におきましても、実は、同じ平成十七年、要するに二〇〇五年を目標といたしましたユーロ・フォーという規制強化が図られます。ある面では我が方と大体方向は同じでございますので、恐らく内外のメーカーがそういう欧州、日本の規制強化に向けまして協力、共同して開発するといったようなことで、開発競争といいますか、開発対応は進んでいくというふうに考えております。
今田分科員 エンジンの方はそのようなことでわかりました。
 ところが、PM除去装置、現在のトラックに使っておる方々のお話を聞きますと、非常に評判がよくありませんね、メーカーはそれぞれのあれですけれども。そんなことで、まだまだ十分な開発になっていないのかなというような感じをいたすわけでありまして、しかし、環境というものは待ってくれないわけでありますので、ぜひひとつ十分に対応していただきたい、このようにお願いをしたいと思います。
 それから、もう一つ改善要因として挙げられている燃料対策ですが、今、我が国で流通しているのは五〇〇ppm軽油とされている高硫黄軽油、専門語で言えばそういう言葉なんですが、この高硫黄軽油では、エンジンにしてもDPFにしても開発には限界がある。そこで、世界水準の五〇ppm低硫黄軽油の供給が絶対必要だと言われているわけでありまして、その五〇ppm低硫黄軽油の精製技術、設備の状況、予想される価格、そして供給される時期などについて、相当進んでいるやにも聞いておりますけれども、この状況についてお知らせをいただきたいというふうに思います。
西尾政府参考人 先生御指摘のように、この新しい新長期規制に対応するということになりますと、DPFなどの技術が必要でございまして、そのためには軽油中の硫黄分を下げるということがどうしても必要でございます。
 そういうことでございまして、既に平成十二年十一月の中央環境審議会答申におきましても、軽油中の硫黄分につきましては、現在の五〇〇ppm以下というのを五〇ppmに低下させなきゃいけない、それも、平成十七年から規制を行いますから、その前、平成十六年末までに低減しなきゃいけないということが指摘されております。
 この答申を受けまして、大気汚染防止法等に基づき必要な措置を講じまして、平成十六年末までには五〇ppm以下の低硫黄軽油の全国的な供給を確保していくということが必要でございます。
 これにつきましては、精製メーカー等におきましても所要の対応がなされておると思っておりますが、お尋ねの価格その他でございますが、これは、平成十二年の石油審議会答申におきまして、脱硫装置等の改善による設備投資額は二千億円というようなことが一つ仮定されるのではないか、これを仮定すると、一リットル当たり二円程度になるのではないか、これは社会全体ではある意味では受容可能なレベルのものではないかというようなことが石油審議会答申で指摘されております。
 以上でございます。
今田分科員 そこで、今ほどちょっとこのことに触れたようでありますが、二千億円もこの開発のために、まあ二千億円以上なんでしょうけれども、設備投資がかかる、こういうことになれば、燃料の価格に対してのかさ上げをする必要があるということは、当然そういう形になると思うんですよね。
 ただ、この燃料の価格の値上げとなりますと、大臣も御案内のように、今トラック業界、大変な厳しい規制緩和の中で荒波に今さらされておるわけであります。そういった業界の状況を考えると、果たして、私の感覚ですよ、私の感覚としては、リッター当たり五円前後も値上げをしなきゃならぬのかなという状況になるのではないかと思うんです。先ほど言ったように、業界の状況を考えた場合に、果たして、大変な業界に対してそれほど負担を強いられる状況ではないんじゃないかなというような感じをするわけでございます。
 当面、何年というのは私はなかなか言いにくいわけでありますが、そういう燃料が開発されて、それを使用してくださいよといった段階で、ある程度、数年間は、利用される業界に対して、税の軽減とか、あるいは今軽油の引取税というものを活用しておりますけれども、そういったものをさらに活用して業界に対しての負担というものを少なくしてやるというようなこともひとつ考えてみる必要があるのではないかというような感じをするわけです。
 どこかの議員さんと違って、私は別に口ききをしているわけではありませんし、業界から何をもらっているということもないわけでありますが、そういった業界の状況を見て心配して申し上げているので、誤解のないようにしていただきたいんですが、そういう意味で御質問をさせていただきます。
大木国務大臣 今本当に、業界、特にトラック業界が非常に一番もろにいろいろな影響を受けておられると思います。私も、やはり自分のところの選挙区やら、そういうお話を受けておりますので、これからどういうふうに実際に具体的にいつからどうするとか幾らにするとかというのは、ちょっと今そういう具体的な数字は申し上げられませんけれども、業界が非常にきつい状況にあるということは十分に頭に入れまして、これからもまたそういった燃料対策を勉強してまいりたい。
 もちろん、これは環境省だけでもなかなか決着つきませんので、関係省庁とも十分に協議をしながら、これからできるだけ理解を得られるような対策を実施してまいりたいと思っております。
今田分科員 税の軽減というものも含めて検討してみていただけたらどうかということを私、質問させていただいたわけですが。
 税務局の方来ていますか。なかなか悩ましいことでしょうけれども、御回答いただければ。
瀧野政府参考人 軽油引取税の件についてのお尋ねでございますので、お答え申し上げます。
 軽油引取税は、都道府県の道路財源として現在賦課されておるわけでございます。道路財源でございまして、地方の道路財源全体、国とは異なりまして、地方団体が負担する経費のうちで道路特定財源としてはまっておりますのは約三割ということで、国道と比較いたしまして地方道の整備状況は立ちおくれているという中で、なかなか全体としての軽油引取税の軽減というのは難しい状況にあるわけでございます。
 それと、軽油引取税は流通課税でございますので、個別のそういう品質に配慮いたしまして軽減いたしますと、非常に徴税手続が難しいことになってしまうというような状況もあるということがございます。
 ただ、環境問題で税制についても対応していくべきではないかという議論ももちろん議論としてあるわけでございまして、政府の税制調査会におきましても中期答申におきまして、「国・地方の環境施策全体の中での税制の具体的な位置付けを踏まえながら、国内外における議論の進展を注視しつつ」「引き続き幅広い観点から検討を行っていきたいと」考える、こういうふうにされておるところでございますので、私どもにおきましても、税制調査会等の場でいろいろ議論していきたいというふうに考えております。
今田分科員 質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
松崎主査 これにて今田保典君の質疑は終了いたしました。
 次に、赤嶺政賢君。
赤嶺分科員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。
 きょうは、沖縄県のジュゴンの問題について質問させていただきます。
 大木環境大臣は、昨年まで沖縄北方特別委員会の委員長として、ジュゴンが生息をしている辺野古の海岸を視察いたしました。私も御一緒いたしましたけれども、辺野古のリーフに白波が立っているその情景もごらんになられたと思います。まさにその場所で米軍基地が建設されようとして、ジュゴンの絶滅が非常に心配をされているその場所であるわけですが、向こうをごらんになって、今環境大臣になられて、どんな感想をお持ちなのか、まず御感想をお聞かせいただきたいと思います。
大木国務大臣 赤嶺議員には、沖特のときにも大変お世話になりまして、ありがとうございました。
 今お話しのとおりに、沖特の委員長をやっておりましたときも現場へ行かせていただきまして、もちろん、何といいましても沖縄という米軍の基地が非常に重くのしかかっている地域でいろいろなことをやっていく、その中で環境の保護ということもしていかなきゃいかぬ。
 ジュゴンの問題は、これは何回も私もお話を伺っておりますし、ですから、基地問題の処理は当然きちっとやっていかなきゃいかぬわけですが、その中におきまして、またジュゴンが一つ大きな課題ですけれども、ジュゴンの問題を含めまして、沖縄の環境の保全ということは、今後ともまた、環境省の責任ある一人として、これも十分に配慮していかなきゃいかぬというふうに改めてそういう感想を持っております。
 感想だけで恐縮ではございますが、とりあえずそういうふうにお答えさせていただきます。
赤嶺分科員 ジュゴンを守ることは環境省の大事な責任ある仕事だと。大臣も本当にその立場でぜひ頑張っていただきたいと思います。
 ところで、その米軍基地とのかかわりというのは非常に関係が深いわけですね。それで、参議院の環境委員会で、環境庁のジュゴン調査について、東海岸で生息していることがわかっているので、本年度は西海岸の調査をやるということになりまして、現在、ジュゴンが生息をしている東海岸地域は調査の対象から外れているわけですね。東海岸で防衛庁のやった調査というのは生息を確認しただけでありまして、その場所というのは、米軍基地がつくられることによってジュゴンが絶滅するかもしれないという不安がかなり高まっている地域ですから、生息が確認されたからそれでよしとするわけにはいかない。
 日本のジュゴンを守るためには、東海岸に生息しているジュゴンの保護について、環境省としてきちんと知見も得、そして保護の対策をとらなければいけないと思うわけです。ですから、最優先して東海岸の地域でのジュゴンの調査、そして保護、これらについて環境省がきちんとした対策をとるべきだと思います。いかがですか。
小林政府参考人 御説明申し上げます。
 環境省が今行っている調査につきましては、ジュゴンの分布調査とジュゴンのえさ場になる海草藻場の分布調査、こういうことを中心に調査を実施しようというものでございまして、単年度で終了するということではございません。数年かけて調査を実施するということでございます。
 今回、ジュゴンの分布調査に関しましては、既に防衛施設庁で調査した結果もありますので、東海岸ではなくて西海岸の方をことしはやるということでございます。ただ、もう東海岸の方はやらないということではございませんで、ことしはとにかく西海岸の方をやって、その次の年、東海岸の方もやるということで、先生御指摘のとおり、ジュゴンの保護のために具体的方策を立てるための調査ということで、全力を尽くしてまいりたいと存じます。
赤嶺分科員 私、非常に懸念をしていますのは、今の環境省の、ことしは分布と藻場の調査だ、それを数年かけてやります、こうなっているわけですね。現在分布が確認されているのは、東海岸地域です。そこには、今年度じゅうにも米軍基地の基本設計をつくって、そして事業に着工されようとしております。基地との関係で、生息しているジュゴンが守られるかどうか、このことが最大の問題になっているのです。
 もし環境省が、ジュゴンの保護が最大の責任であり任務だとすれば、東海岸でこそ保護の対策をきちんととるということが必要じゃないですか。広域的な分布と藻場の調査が必要であれば、それはおやりになれば結構です。石垣島、宮古島まで広げても、これはそのこと自身は意味のある調査だと思います。しかし、肝心のジュゴンが生息している地域でのジュゴン保護対策というのが全く欠落しているのじゃないか、それでいいのですかということを聞いているわけです。大臣、いかがでしょうか。
小林政府参考人 ジュゴンの調査は非常に時間がかかります。分布状況を調べるためにも非常に時間がかかります。そういうことで、数年かかるというふうに我々は思っております。
 それから、普天間基地の移転の予定地である辺野古に関しましては、ジュゴンの保護も含めまして、防衛施設庁の方で適切に環境の影響評価が行われる、事業者においてそういう配慮というか調査が行われると思っています。
 我々としても、西海岸だけではなくて東海岸の方もちゃんと調査をするつもりで、全力を尽くす予定でございます。
大木国務大臣 お地元の議員の立場からすれば、東の方もきちっとやってくれ、こういうことだと思いますけれども、これは、御存じのとおりに、いろいろな役所に分かれて調査しているものですから、何となく東の方について環境省が忘れているのじゃないかというような御心配もあると思いますが、東も西も、当然にこれはジュゴン全体としての環境問題でありますので、十分に関係各省とも連絡をとりながら、また状況を見守って、必要なことは、できることは進めてまいりたいと思っております。
赤嶺分科員 ジュゴンが、分布調査をやらなくても、藻場の調査をやらなくても、現に生息していることが東海岸の地元のNGOの方々の努力によって確認をされているのです。その確認をされたときにも、私は衆議院の沖北の委員会でも質問をいたしました。そのときに環境省は、実はジュゴンに対する知見を持ち合わせていませんということでありました。ジュゴンの専門家は日本に存在しませんということでありました。しかし、国際社会は、先進国でジュゴンの生存を確認している国はオーストラリアと日本しかない、先進国としての環境保護の姿勢を見せてほしい、こういう声が起こっております。
 今また、この東海岸地域で、生息が確認されている地域で、藻場の存在も確認されている地域で、来年環境省はやりますと言っている、防衛庁はそこを粛々と基地の建設は進めていきますと言っている。
 防衛庁がこの間やった調査というのは、実はジュゴンの保護には何の役にも立たない調査なんですね。全くジュゴンの生息なんかを無視しているわけですから、ある人によっては、リーフの上に基地をつくるから、リーフの中にある藻場は守られる、こう言っています。ところが、ジュゴンというのは、昼は深い深海にすみ、夜になるとリーフの中の切れている部分、ざん口と言います、沖縄の方言では「ざん」はジュゴンです、ざん口を通って、そして浅い海に来て海草を食べて帰る、こういう習性があるわけですね。
 ところが、このリーフの中は埋めないでリーフの上を埋めるのだからジュゴンは大丈夫だといったような議論もあるわけですよ。現に、防衛庁の調査報告書というのは、藻場は守られるかのような雰囲気の表現もあるわけですね。しかし、ジュゴンの生態を知っている人から見れば、こんなことはあり得ない、こんな知見でリーフの上に基地をつくるのか、本当にジュゴンを保護できるのか、こういうことを言っているわけですよ。
 防衛庁が調査をしていますしていますと言いますけれども、防衛庁も環境に配慮しますと言っていますけれども、そういうジュゴンの生態、そしてジュゴンの保護にとって何が必要か、こういうのは環境省こそ一番に考えるべきではありませんか。環境省が意見を持たないで、事業者である防衛庁は環境に対する影響はできるだけ少なくしますとしか言いませんよ。でも、本当にそれで、地球上に先進国ではオーストラリアと日本にしか、その日本でもその基地建設地域にしか生存していないと言われているジュゴンが保護できると考えておられるのですか。そのために環境省は何もしなくていい、こういうことを考えておられるのですか。
小林政府参考人 ジュゴンの保護のためにどういうことをすべきかということについて、特に沖縄の海域でのジュゴンの生態も行動もほとんど何もわかっておりません。ある一部のことは少しずつわかり始めましたけれども、そういうために環境省は調査をするということでございます。
赤嶺分科員 ですから、何もわかっていないことが問題なんですよ。ジュゴンについて何もわかっていないまま、ジュゴンがすんでいる地域に政府として米軍基地をつくらせようとしている。そのことについて、環境省は、時間がかかることだから待ってほしい待ってほしいとしか言わない。これでジュゴンが絶滅してしまったらだれが責任をとるのですか。環境省には落ち度がなかった、こういう話になるのですか。それはそうじゃないと思いますよ。
 そういうことについて環境省が知識がないのであれば、あの地域にはNGOの方々が長いことジュゴンの調査をしております。生態についてもよく経験上知っている中身があります。これらについて、現地のNGOとそして環境省が一緒になれば、ジュゴンの保護のために何が必要か、防衛庁は基地をつくるために何が必要か、こういう計画を持つはずです。
 環境省は、あそこのジュゴンを保護するために、ジュゴンの保護のために頑張ってきたNGOの方々と、何が必要かという議論を始め、そして保護のための方向性を打ち出していく、今のジュゴン調査にとどまらないようなそういう対策が、これは常識で考えても必要だと思いますけれども、大臣、いかがですか。
大木国務大臣 今事務方の方からも御説明申し上げましたけれども、現状がどうなっているかよくわからないということの中には、委員の方はもう絶滅の危機に、現実に東側でそういう状況が起こっているというお話ですが、そこのところは、ちょっと正直申し上げますが、私も素人ですから余り具体的にそれ以上申し上げられませんけれども、そこのところをも含めて、やはりある程度きちっと調査をしたいというのが、これは政府全体としての立場だと私はあえて申しますけれども。
 ということでありますから、もちろんゆっくりやっておったうちに絶滅してしまったというようなことであれば、これは当然環境省としても非常に困ることでありますから、そういう状況は避けたいと思いますけれども、今どういう状況にあるかということも含めて議論しておるところでございますので、地元のお気持ちはわかるわけでございますけれども、ある程度はその状況を把握して、その上でどういう対策をしようかということでありますし、もちろん、今の基地の移転の話もいろいろと、どういう時期になるかというようなことは私どもも十分見守りながら、見守りながらといいますか、よくそういうことも頭に入れながら、ひとつ今後も環境省としてできるだけのことはしてまいりたいと思っております。
赤嶺分科員 米軍基地の建設の基本計画は、早ければ二、三カ月以内に、遅くとも年内には決めるという方向が強くなってきているんです。しかし、環境省は、まだジュゴンについて生態を知らないから知らないからと言って、東海岸で生息しているジュゴンの保護について先送りをする、その前に広い海域でのジュゴンの調査が先だとおっしゃっている。しかし、日本のジュゴンについてこういうことを言い続けているのは、日本の環境省だけなんですよ。国際社会は、もう既に先のことを言っているんです。
 これは、二〇〇〇年の十月に、第二回世界自然保護会議で、ジュゴン保護に関して日米両政府に対する勧告決議が行われています。全会一致です。ところが、日米両政府だけはその採決に加わらなくて、退場、棄権しているんですね。世界でこの二カ国ですよ、アメリカと日本だけ。その決議について言われているのは、ジュゴンの生息域やその周辺における軍事施設の建設に関する自発的環境評価アセスメントを、可能な限り早急に完遂することと求めているわけです。
 今私が主張していることは、国際自然保護会議での全会一致の決議の主張と全く軌を一にしているわけです。国際社会も基地建設とのかかわりで、ジュゴンの保護に懸念を表明しています。ですから、環境省は、自発的な環境評価アセスメントが防衛施設庁の調査に当たると考えているんですか。
小林政府参考人 普天間の移転先の事業に関しましては、やはり環境アセスメントを実施するということで、防衛施設庁の方で調査を実施する。これはアセスメントの精神からいっても事業者がやるべきものというふうに思っておりますし、その中でジュゴンの保全についても十分検討されるものと理解してございます。
赤嶺分科員 事業者がやるアセスメントもあるでしょう。しかし、国際社会が求めている自発的な環境影響評価、先ほどアンマンで決議をされた環境影響評価というのは、事業者のやるアセスのことを言っているんですか。
小林政府参考人 そのように理解しております。
赤嶺分科員 全然違うんです。恐らく日本の環境省がそのように理解しているかもしれないということを国際社会は大変心配しまして、そして、国連の環境計画がことしの二月の二十三日に出されて、その中でも、日本のジュゴンの保護についてちゃんと言われているんです。沖縄海域のジュゴンを保護する措置がとられない限り、ジュゴンは日本海域で間もなく死滅するだろう、これが国際社会の認識なんです。ジュゴン保護の対策がとられない限り死滅するだろう。日本の環境省はまだその認識に至っていないということを大臣はおっしゃいました。
 そして、環境アセスについても、基地建設を含めていかなる大規模計画も、その承認の前に強制力を持った環境評価が実施されなければならない、このように言っているんです。そういう国連の環境計画について、今直ちに日本の環境省は受け入れるわけにはいかないということを参議院で答弁しておられるようなんですけれども、余りにもジュゴンの保護について認識が浅過ぎるんじゃないですか。これで先進国の環境省としてのプライドが出てくるんですか。
 日本の子供たちが、先進国ではオーストラリアと日本にしかいなかったジュゴンが死滅して、日本の小学生たちが、何でジュゴンが死滅したんだろう、国連や国際社会があんなに勧告していたのに何で基地をつくらせてしまったんだろう、そういう後悔が残るような経過を今環境省はたどっていることになりませんか。
 国際社会は絶滅を心配している。そして、環境アセスも自発的にやってほしい、強制的なものをやってほしい、このぐらい強い姿勢で日本に対して忠告を行っている。それでも今のジュゴンに対する保護の姿勢をさらに強化するということにはならないんでしょうか。大臣、いかがですか。
大木国務大臣 どうも同じような答弁を繰り返して恐縮なんですが、これは、事がやはりジュゴンの生息の現状について科学技術的にどういうふうに判断するかという判断の問題でございますので。これは、委員の気持ちというか、いろいろな国際機関が、あるいはNGO等がそういう意見あるいはそういった気持ちをいろいろな形であらわしているということは十分に承知しておりますけれども、先ほどから局長も答弁しておりますように、第一義的には地元でいろいろと御自分の問題として議論しておられるということでございますから、私どもとしては、十分にまた沖縄県当局とも話し合いをしながら、どういうことができるか、あるいはどういうことが必要かということを検討してまいりたいと思っています。
 沖縄の知事さん、随分しばしば来られますから、知事さんともお話ししながら、沖縄としてはどういうことだ、それから環境省としてはどういうことだということを、しっかりと意見もすり合わせながら、これからの方策を進めてまいりたいと思っております。
赤嶺分科員 東海岸に生息しているジュゴンの保護について、本当に、知事とお会いになったときでもよろしいですし、あらゆる機会をとらえて、環境大臣、本当に検討していただきたいと思います。
 日本は、アジアでも、ジュゴンが生息していると言われているフィリピンやマレーシアに比べても保護対策は見劣りがする、このように言われているんですよ。これで胸を張って、環境を守りますと日本の政府が国際社会に向かって言えるようなものではないと思います。本当に、ジュゴンが保護されるためにどのような保護対策をとるかどうかが、これによって試されているということを申し上げておきたいと思います。
 次に、泡瀬干潟の埋め立てについてちょっと取り上げたいんですが、泡瀬干潟の埋立事業は、環境に重大な影響を与えるということで、昨年の八月以来、工事が中断をしてまいりました。ところが、その後、内閣府のもとに環境監視・検討委員会が開かれて、二月の二十二日の環境監視・検討委員会の結論として、海草の生育状況はおおむね順調である、また機械化による海草の移植は可能である、ただ、今後ともモニタリングをしていくことによって移植技術が向上するものと判断できるという結論を出しております。尾身沖縄担当大臣は、環境問題はクリアできた、このように発言をしまして、中断していた干潟の埋立工事を再開いたしました。
 環境省に聞きますけれども、環境監視・検討委員会の報告によって、海草の移植実験が成功したと。本当に成功したとなれば、これは世界初の出来事で、環境の専門家の間では沸き立つような議論が起こって当然だと思いますが、移植実験が成功し、そして今後、環境監視・検討委員会の報告によってあの泡瀬干潟の環境は保全される、守られるという認識でしょうか。いかがですか。
炭谷政府参考人 ただいま先生が指摘されましたように、二月の二十二日の委員会におきまして、海草の機械化移植は可能と判断されたと伺っているわけでございます。一方、今後とも、モニタリングを行いまして、技術の向上が図られるべきだという意見も出たと承知しているわけでございます。
 環境省といたしましては、そのような判断された詳細な科学的な根拠については現在のところ承知しておりませんが、確実に移植が実現できるよう、徹底したモニタリングを実施し、また移植の技術の向上を図っていくということが必要で、慎重に対応することが重要というふうに考えておりまして、今後とも沖縄県の環境部局と連携を図りながら必要な助言を行ってまいりたいというふうに考えているわけでございます。
赤嶺分科員 科学的な根拠は、いま一つ環境省としては確信を持てないけれども、確実に移植が成功するよう、引き続きモニタリングを続けていきたい、こういうお話であるわけですね。
 あそこの移植実験、おおむねうまくいったというその現場のモニタリングというのは三カ月ぐらいしか行われていないんですね。モニタリングというのは、普通、素人が考えて、春夏秋冬やるべきものですが、事業着工を急ぐ余り、そのモニタリングについてもずさんで、そして環境を守る役所の方で科学的な確信もないのに、開発庁は事業を再開しようとしている。
 泡瀬干潟について環境省はどのように認識し、そして泡瀬干潟の藻場やあるいは海の揺りかごと言われているあの干潟一帯をどのようにこれからやっていこうと考えているのか、その認識と保護についてお聞かせいただきたいと思います。
炭谷政府参考人 泡瀬干潟につきましては、海草やクビレミドロの生育するような非常に希少的な植生があるわけでございます。また、シギ、チドリ等の渡来地でございまして、ムナグロの越冬数は日本最大というふうに承知しているわけでございます。
 私ども環境省といたしましては、そのような自然環境の特性にかんがみまして、自然環境の保全というものについて今後とも慎重に見守っていきたい、対応してまいりたいというふうに考えているわけでございます。
赤嶺分科員 内閣府からもお見えでありますので伺いたいんですが、そもそも泡瀬干潟の埋め立てが始まった経緯というのは、一度バブルの時代に県から計画が出されましたけれども、国においては、やはり採算の見通しなしということで埋立事業は却下されているんですね。その後、特別な事情が起こりまして、その中城湾港新港地区に特別自由貿易地域をつくっていく、そこに企業がたくさん誘致されるので港湾を拡大しなければいけない、その港湾を拡大するのにしゅんせつ土砂が出る、そのしゅんせつ土砂等の捨て場として、事もあろうに泡瀬干潟が選ばれたという経過があるわけですね。
 その特別自由貿易地域は、企業の誘致目標は九十社です。その地域で民間が土地を購入したのは一社です。企業が余りにも来ないので、沖縄県の側が賃貸工場まで建ててあげてようやく五社入居した。ところが、港湾の拡張計画は、相変わらず九十社の企業がやってくるという計画のもとに予定どおり進めていく、そういうことですね。いかがですか。
武田政府参考人 今御質問の特別自由貿易地域でございますが、今御指摘のございましたように、現在六社、さらに二社が立地に向け調整中ということでございます。政府といたしましては、税制措置に加えまして、またレンタル工場の整備といったことで助成を行いまして、さらに、先般成立させていただきました新しい沖縄振興特別措置法におきましても、管理運営法人に対するサポートといったことも織り込んでおるところでございます。
 今後は、こういった施策を講じながらさらなる企業の誘致に努めまして、産業の振興であるとかあるいは雇用の創出、そういった面に努力をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
赤嶺分科員 最後ですが、大臣は、沖北委員長として沖縄の経済産業発展にも通じておられます。今の答弁にありましたように、企業誘致で悪戦苦闘している。悪戦苦闘していて、見通しもないのに港湾のしゅんせつだけは先にやっておこう。そのために、大事な、沖縄で一番大きな面積を持つ干潟をつぶして、シギ、チドリ、渡り鳥の飛来地としての干潟がなくなろうとしている。そういう問題について、環境大臣としてどのような感想をお持ちですか。
大木国務大臣 環境の保全、保護ということが重要だ、これはもちろん環境省の一番基本的な仕事でございますが、いろいろな施策を進めるためには、今もお話ございましたけれども、沖縄全体としての経済発展、振興というようなことも、またこれは沖縄県民の重要な関心事項だと思いますから、やはり現場で沖縄県のいろいろ環境部局もございますから、先ほどから申し上げておりますように、地元とも十分に連携をとりながら、ひとつその辺で、どういうプライオリティーがあるか、あるいはどういうバランスがあるかというようなことを考えながら適切な措置を進めてまいりたいと思っております。
松崎主査 時間ですから。
 これにて赤嶺政賢君の質疑は終了いたしました。
 次に、阿部知子君。
阿部分科員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。
 きょうは、私は、主にダイオキシン汚染問題について水産庁並びに環境省にお尋ねをしたいと思います。
 まず一点目ですが、今私どもの食卓をめぐる日々の情勢は、これ不安の連続。一つは、肉類に関しましては、いわゆる狂牛病、BSE問題、あるいは表示の偽りの問題で、消費者としては大変に不安な思いを持っている。そして一方、せんだって、私の関係する財務金融委員会で塩川財務大臣に、肉の問題がこれほど不安では消費者の心も落ち込むだろうと質問いたしましたら、肉がだめなら魚を食べればいいとおっしゃったのですが、果たしてこの魚とか魚介類の方も、やはりダイオキシン汚染ということで、目には見えない不安という形で、国民にはじわりじわりと不安感が広がっているように思います。
 そこで、きょう、水産庁にまず第一問目、伺いますが、水産庁は平成十一年度から十四年度まで、特に魚介類中のダイオキシン類の実態調査ということをお進めで、百一検体を目安に、魚類、貝類、甲殻類などを食卓に供せられたときに、どれくらいの量を果たして食べられるんだろうか、安心して食べられるんだろうかということを国民にメッセージするために、経年的に続けておられると思います。
 その中で、今年度というか昨年度の調査、今年度の調査報告が三月に行われて、その結果がほぼ前年度とおおむね同じレベルになったという御報告ですが、ここでいう前年度とは九九年、それから今回の発表が二〇〇〇年度ですが、実はこの発表の中から、アナゴとかスズキ、タチウオ、ボラなど、九九年度の検査で非常に汚染の濃度が高く出たものが除外というか、今回は測定の対象になっておりません。まずこの点について、担当の水産庁からお答えを伺いたいと思います。
川口政府参考人 御説明申し上げます。
 私ども、今委員御指摘のように、我が国の食料として動物性たんぱく源の約四割を占めております水産資源を安全かつ持続的に提供する、こういう観点から、平均的な食事におけます魚介類からのダイオキシン摂取量を把握するための魚介類中のダイオキシン濃度の実態調査を実施しております。
 ただいまお話がございましたように、水産物には、地域ですとかあるいは魚種、魚の種類、さらに言いますと、同一の魚の種類、例えばスズキという種類でも、ダイオキシン濃度にその個体によって大きなばらつきがございます。
 そういう意味で、特定の魚だけをいつもいつも食べるということもないわけでございまして、そういう意味で通常想定しがたいものというふうに考えておりまして、このダイオキシンの基準でもございますが、生涯にわたって摂取を続けた場合の一日当たりの耐容摂取量、TDIという表現をしておりますが、こういうものが設定されておる。そういう考え方に対応してサンプルを選んでやっておりまして、年間百余り、これを継続的に広くサーベイランスをかけていきたいというふうに考えているわけでございます。
阿部分科員 水産庁の現在行っておられる調査のあり方について、私は二点、疑問とまた改善点の提案がございます。
 平均的な食卓とおっしゃいましたが、人間、百人寄れば百個の顔があるように、嗜好、その人がおのおの何を好むか、そして食べ方の偏り。バランスよく、きょうは遠洋でとれたものを食べ、あしたは近海魚を食べなさいとかいう形で、バランスよく食べよというのも水産庁の御指導の一つなのかもしれませんが、例えば私なら、アナゴとかウナギが好きです。アナゴとかウナギは水の深い底質の方に生息する動物で、このアナゴやウナギのダイオキシン濃度が高いというデータが出ておるわけです。
 もし私が、アナゴやウナギというのはこんなに高いんだったら、平均値で食べるということはないわけだから、好きで食べた場合に非常に問題が生ずるのであれば気をつけようとか、そういう形にもなってまいりますので、私は、一点は、高く出た種類については毎年毎年やはり推移を見られるべきだと思います。
 それからもう一点は、高く出たということは何らかの汚染ということですから、その汚染が特定できるような、大体ダイオキシン類は、昔でいいますと農薬汚染が主でしたが、最近は焼却灰によるものが多くなってございまして、これはおのおの、同族体を分けてまいりますと、農薬由来と焼却灰由来ではパターンが違ってございます。このパターン分析をすべきでないかということと、経年的、経時的に行っていくべきではないかということが、私は、国民の安全性を守るという観点から水産庁としてぜひ御尽力いただきたい点です。
 あわせて、きょう、資料の四枚目の方に、実は私の後段の質問で、荏原の問題、藤沢の問題で質問いたしますときに、関連の流域のコイやフナが非常に高濃度に出たデータをお示ししてあります。次の質問に使おうと思いましたので、四ページ目ですが、ちょっと藤沢市というところを見ていただきますと、コイとフナというのが非常に高く出ております。この引地川という川ですが、ここではコイは食べてはいけないというくらいにしないと、摂取量が簡単に超えてしまうわけです。また、ここにもう一つ特徴がございまして、コプラナPCBの方が普通六、七割を占めておるのですが、ここの焼却灰パターンですと、コプラナPCB以外のダイオキシン類の方が高く出る。
 これは同族体を分析していけばまたさらに明らかになるのですが、こういう事態もありますので、ぜひこれからの水産庁の、特に摂取安全量をめぐる点に関しましては、高いものは持続的にはかる、そして高い原因に一歩でもアプローチできるような同族体分析を併用していかれる、あるいは、もうやっておられるかもしれませんが、もしアナゴ、ウナギ等についてデータがおありであれば教えていただきたいですが、いずれにしろ、この二点についてお考えを伺いたいと思います。
川口政府参考人 今委員御指摘のように、私どもは、魚介類からのダイオキシン類摂取の評価につきましては、特定の魚種だけを対象にしていくということではなくて、TDIと比較できる、国民の平均的な魚介類からの摂取実態を把握するということも重要だというふうに考えております。
 今、幾つかの魚種を挙げて御指摘ございましたけれども、そういう中で、いろいろな魚類の中で相対的に濃度が高いというアナゴですとかスズキですとかいう魚種が挙げられました。ウナギはそれほど高くないので、ウナギの名誉のために申し上げておきますが。
 そういうものにつきましては、これらが検出されたということで、この実態を十分踏まえまして、魚介類へのダイオキシンの蓄積というのはどういう格好で起こってくるのか。例えば、水中におりますから水から入るのかもしれません。えらから入るのかもしれません。あるいは泥から上がるものが入ってくるのかもしれませんし、えさを通じて入るということもあろうかと思いますが、そういった蓄積の過程がどういう機構で起こってくるのか、そういう調査も十四年度から実施するということにしておりまして、そういう中で、御指摘のありましたようなモニタリングですとか実態調査、こういうこともあわせてやっていきたいというふうに考えております。
 いずれにしましても、今後ともダイオキシン類の魚介類への蓄積の状況ということを把握するための調査を、関係府省とも連絡をしながら、引き続き実施してまいりたいというふうに考えております。
阿部分科員 では、重ねてのお願いですが、ウナギは大丈夫とおっしゃいましたが、アナゴはことしは抜けております。これも必ず、先ほど申しました、高いものは経年的に、それから同族体の分析を行っていただきたい。
 さらにもう一点つけ加えれば、いわゆるTDIは、諸外国における基準よりも我が国は高目の設定でございます。これが果たして大丈夫なものであるか否かは、ダイオキシンというのはやはり未知の化学物質で、蓄積性があり、まだまださまざまな、例えば発がん性とか精子が減るんじゃないかとか女性が妊娠しづらくなるんじゃないか等、今後わかってくる問題が多いので、現時点で、我が国が決めたTDIだから大丈夫というふうな視点に立つのではなく、より本当の真実が浮かび上がるような、先ほどおっしゃいました、貝類にどうやって蓄積されていくか、あるいは貝類に蓄積されたもののパターンからまた新たな知見が得られるのではないか、そういう点に関してぜひとも水産庁として御尽力をいただきたいと思います。
 では、引き続きまして、荏原ダイオキシン問題に移らせていただきます。
 私は、この決算委員会にもおられます葉山先生と一緒の藤沢から小選挙区は立っているのですが、ちょうど私の選挙の少し前でしたが、二年前の三月ごろ、荏原製作所という、環境に優しいエコ企業というタイトルを持った企業から、七・五年間にわたり約三グラム、水系にダイオキシンが出た。これは塩の三グラムとは違いまして、ダイオキシンは猛毒でございますから、七・五年で三グラムという値は、恐らく日本で判明した今までに前例のない非常に高濃度汚染なのだと思いますが、その問題に関して、私の地元の市民団体も非常に熱心に取り組み、また関連の荏原製作所、藤沢市、神奈川県もそれなりの取り組みをしておると思うのです。
 それらの諸団体からいろいろ話を伺いますと、やはり国の政策としてこういうことがあったらいいなという点を幾つか指摘を受けましたので、私は、きょうはその点についてお尋ねをいたします。
 先ほど申しましたように、総量にして三グラムですが、汚染発生当時、汚水が排水管に行くのではなく、雨水管、雨水を流す方に間違って入ったために、その近辺の引地川ではかったダイオキシン濃度が八千百ピコグラム。もうこれはある種天文学的な数字でして、一ピコとかいうところで現在せめぎ合いをしているところが、八千百ピコグラムだったということで、非常な高濃度だったのです。
 実は、その二カ月後に、当時は環境庁でございますが、環境庁と神奈川県、藤沢市がいわゆる安全宣言というのを出されました。私はさっき狂牛病問題を取り上げましたが、これと非常に似ておりまして、省庁としては、国民に安全を与えたいので早目に安全宣言なさるのかもしれませんが、二年たった後も、特に、ムラサキイガイといって、川は流れて海に行き、海の船底なんかにへばりついている貝、ムール貝ですね、この貝の中のダイオキシン濃度をはかってみて、なおかつ同族体分析をすると、焼却灰パターンが非常に強く出ておりました。
 結果的に見て、川が荏原製作所によって汚染され、川の底まで含めて海に流れ、海に流れたものがプランクトンを介したりして貝に行く。非常に貝が汚染された実態が、ただ数値だけじゃなくて、そのパターンからも読み取れるのです。
 まず第一点、当時の環境庁の安全宣言が適正であったかどうか。それから、今回、ムラサキイガイの測定値について、環境庁としてどのような御所見をお持ちかの二点について、一点目は、恐縮ですが、当時の大臣ではございませんが、新大臣にお願いいたします。あと二点目は、実務的なこともありますので、担当の方でお願いします。
大木国務大臣 何か今の安全宣言が早過ぎたというところが私に対する御質問だと思うんですけれども、人体に明らかに影響があるという状況であればこれは早々に安全宣言できないんですけれども、荏原製作所でもいろいろと今のダイオキシンの話が出てきまして、それの修正措置といいますか、現場のいろいろな、きちっと修理といいますか、されて、一応人体に対する影響というものが出ないと。
 それから、水が、ある意味では、水というのは、どこまでがきれいかということになればあれですけれども、人体との問題でいえば、そこの水をそのまま直接に水道で飲んでいるというようなことじゃございませんから、そういう意味では、人間に対する健康の危険ということからいえば、まあ、いつまでも危ない危ないと言っているのも、これはまたかえって誤解を与えますから、必要な時期におきまして安全宣言をしたということでございます。
 ただ、これから、食品といいますか、衛生の問題はまた別な話として、これは荏原の話がどうこうということではなくて、やはりどういうときにどういう危険があるかということは適切に御説明しなきゃいかぬ。ただ、やたらに何でも危険だ危険だと言うのは、そうするとかえって、何か危険危険と言っているけれども、それこそオオカミ少年じゃないんですが、危険危険と言って危険じゃないというようなことではいけないんで、やはり私は、危険なら危険の程度というようなものをきっちりと御説明して、これからまた国民にそういったPRをしていくのが必要じゃないか。環境大臣としてはそのように考えております。
石原(一)政府参考人 ムラサキイガイの件でございます。引地川の下流でのムラサキイガイのダイオキシンの濃度についてでございます。
 引地川の、藤沢のダイオキシンのこの問題が発生しまして以降、五月三十一日に、その当時の周辺環境調査、結果を含めての発表をさせていただいたところでございます。その後、フォローアップが必要ということで、藤沢市あるいは神奈川県において、フォローアップ調査を実施しております。
 その結果によりまして、ムラサキイガイにつきましては、十三年度調査したところでございます。神奈川県が調査していました結果では、四ポイント調査しておるんですが、特に引地川河口が他の地域に突出している、あるいは十年度に、当時は環境庁でございますが、環境庁の方でダイオキシン類の緊急全国一斉調査というのを実施しましたが、その中におきまして調査しましたムラサキイガイに含まれた濃度の範囲内でございまして、特に問題となるような状況にはないというふうに認識しております。
阿部分科員 私は、行政のあり方として、先ほどの大臣の御答弁、そして今の担当者の御答弁、そうしたことがやはり非常に、ある意味での安易な安全宣言になったり、省庁としての安全行政への失政につながっていくと思うので、あえて二点申させていただきます。
 きょう、お手元にお配りいたしました資料の一ページ目は、この間、平成十二年度にはかられました神奈川県下のさまざまな湾や川のダイオキシン濃度でございますが、上段は、富士見橋とか石川橋とか書いております引地川水系のダイオキシン濃度は、相変わらず神奈川の全県の平均に比べても高うございます。右横に神奈川県平均と全国平均、これは神奈川県の資料か環境省の資料か、ちょっと確認があれですが、いずれにしろ、数値はそう相違はございませんでしたが、依然として高うございます。
 もちろんこれは、現在も例えば川上の方に何か汚染源が荏原以外にもあればこのようなパターンは生じ得ることとも思いますが、あともう一つは、汚泥になってたまったものがやはり少しずつ影響することもあるかと思います。
 そして、下を見ていただきますと、今度は底質といって、川の底ですね。ここの中で調べてみますと、江ノ島と湾央というところがやはり非常に高く出ております。先ほど申しましたが、川は流れて海に行く。それで、海の底質が高くなってくる。
 何度も申しますが、これは、安全値というのが仮の値でございます。仮に安全値と定めたのであって、ダイオキシンというもののもたらす健康被害は、まだ実態がわかっておりません。例えばサリンですと、なめてすぐとか、そのときに出てすぐ猛毒として作用いたしますが、ダイオキシンは蓄積性で、生体に取り込まれて連鎖していった結果、最終的に人体に、例えば肝臓にたまる、そして腸と循環する、そういう形で長いスパンを持ったものでございます。
 そして、ここであえてお示ししたのは、二年たった今も同じようなパターンで、全国よりは現実に高いということと、二ページをおめくりいただきますと、これは当時のデータでございます。平成十二年度になりますでしょうか、二年前の六月と三月。これは、川の上流、荏原が関係しないところでは、左から数えて五番目のところ、これは農薬パターンが高く出ております。高名橋と申します。そして、下は引地川ですが、後段、右側の方が高く出ます。これが焼却灰パターンです。現在も、分析いたしますと、ほぼこのようなパターンで焼却関連が強く出ております。
 そして、例えば、恐縮ですが、今度は資料の四ページ目に戻っていただきまして、タチウオ、江の島の沖でとれるタチウオ、私も多くならない程度に供しておりますが、これも、基準値は一応満たしていても、ごらんいただきますように焼却灰パターンの方が非常に高く出ております。右半分の方が高く出ております。
 ということは、何度も申しますが、基準値というのはかりそめの設定である。それで、汚染のより踏み込んだパターンを見なくてはいけないという点で、私はあえて、一部の資料でしたが、これを出させていただいて、これからの環境行政それから水産庁のフォローアップもぜひとも、一歩でも物事の実態に近づくように組み立てていただきたい。
 そして、あわせて、恐縮ですが、新大臣の安全宣言をめぐることでは、実はその直後、この川の底をはかりましたところ、二百五十ピコグラム・パー・リッター。今、環境省の方で、底質、川の底とか海の底の新基準をつくる作業を繰り返してやっていただいておりますが、いろいろな、高いところから低いところまでの差は出ておりますが、その後、神奈川県下ではかりますと、大体十幾つ。この二百五十という値は、現在私どもの神奈川県下ではかった値では破格に高い。直後ですから土に入ってしまった。これを実は、安全宣言をなさる前に川底をさらっておいていただけば、川は海に汚泥を流すというところのワンブロックを防げたものと思います。
 当時、県の方からも底をさらってはどうかと、あるいはさらうことが拡散させるかもしれないといろいろな意見がございましたが、振り返って二年後の川のパターン、海のパターンを見ますと、焼却灰の影響が大きいということは、当時、やはりいろいろな手法をもってして安全に川底をさらえるようなことをあわせ行いながら安全宣言をした方が、少なくとも水系や水生生物、それから生態系に汚染が広がることがなかったのではないか。
 今後このような汚染がほかで発生しては困りますが、やはり一大教訓ですので、新大臣には、今後の安全宣言にあっては、ちょっとこの一点について御所見を伺いながら、また、行政上の長としての御覚悟をちょっとお伺いいたします。
大木国務大臣 どうも、こういういろいろな環境問題、私も大臣になってまだ二カ月ぐらいですけれども、いつも申し上げているのは、やはりいろいろな資料だとか現状の調査とかいいますと、環境省、しっかりその先頭になってやれというお話なんですが、実はこれは、私どもはそんな、ちょっと言いわけになりますけれども、現実にそういった現場へ行ってみずから調査をするという能力は非常に限られておる、人間もそんなにおりませんから。
 ですから、できるだけ私は、やはり都道府県だとか、あるいは場合によりましては市町村とか現場から、そういった資料はできるだけ私ども十分にいただきまして、また、それに対して必要になればいろいろと意見を申し上げて、やはり一緒になってやらないと、何かすべてのことを全部中央官庁でやれとおっしゃっても、かえってその結果混乱するだけでできない。
 ですから、気持ちの上では、できます、できますと言ってもあれでございますので、今言ったような資料をまたこれはきちっといただきまして、それからまた過去のことも、経験も十分に勉強して、やはり手おくれにならないように努力をしてまいりたいというふうに考えております。
阿部分科員 ぜひともそのようにお願いしたいと思います。
 そして、各自治体が望んでおりますことは、例えば、かりそめ、仮であっても基準をつくるとか、それから指針、例えば汚染地域は可及的速やかに除去するとか、生態系への広がりを防ぐとか、ある程度物事の考え方のガイドラインを環境庁にはぜひおつくりいただきたいと思っておられると思うのです。
 これからでき上がります底質の基準、当時もし底質基準があれば二百五十ピコグラムというのは早急に対応ができたもので、今ございます土と大気と水、この三つしかございませんでしたので、環境庁として、環境省になり御尽力中と思いますが、やはりこの点についてはリーダーシップをとっていただきたい。
 そして、その中で、私はあえて年平均ということをとらずに、例えば川は、大水の後流れて低くなって、その平均値は下がります。でも、川にあったものは消えてしまうわけではなくてどこかに行きますので、対処方法として、高い値が出たところは可及的速やかな対処ということを環境庁のいわゆるガイドラインとしてお考えいただきたい。
 時間の関係がございますので、この二点を申し述べまして、きょうの私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
松崎主査 これにて阿部知子君の質疑は終了いたしました。
 次に、佐藤公治君。
佐藤(公)分科員 自由党、佐藤公治でございます。
 大臣のいらっしゃる時間が十分ぐらいということでございます。これは安心していただければありがたく、ちゃんとその分で大臣の質問は終わらせていただくようにいたします。ただし、ちょっと順番をいろいろと変えさせていただいて、先に大臣に聞きたいこと、それを質問させていただきます。
 これは質問を事前通告しておりませんが、大臣のお考えで本当にお聞きしたい部分があります。
 大臣は二回目ということで、環境絡みに関しては非常によく御存じだと思いますけれども、環境庁から省に昇格した、昇格したという言い方がいいかどうかわかりませんが、一体全体何が変わったんだろうかなと、こんな思いが私も環境関係をさせていただく中、思う部分があります。
 人が言うには、それこそ厚生労働省の産業廃棄物関係が環境省に移っただけであって、中身はそんなに変わってないじゃないか、こんな意見も聞かれるわけでございますが、実際問題、大臣が二回目の大臣をされて、何が変わったのか、簡単簡潔に要点だけをお聞かせ願えればありがたい。
 またもう一つは、逆に何がまだ足りないのか、また、どう構築していくのか、そこら辺の大臣のお考えをお聞かせ願えればありがたいと思います。
大木国務大臣 今も御質問の中でもお話がありましたとおりに、実際の仕事では、前に比べて今度省としてやらなきゃならぬ仕事でふえておるのは、廃棄物の問題です。これは、今まではむしろ厚生省とかそういったところと一緒にといいますか、間接にいろいろと調査研究とかそういったようなことも多かったんですが、今度はみずから処理をする、そういうところが一番仕事の量としてはふえてきておると思います。
 ただ、私いつも申し上げるんですが、やはり現在の日本の政府の行政機構というのは非常に縦割りの弊害というのはたくさんありますけれども、今回はまた環境庁から省になりましたから、これはよその省との話し合いのときに、やはり一つの省としての意見をはっきりと申し上げる、そういう意味では、そういった同じ立場、省としての立場で話ができるということでは改善しつつあるかと思います。
 それから、私自分で勝手に縦割りと並べて横割りと言っているんですけれども、中央官庁と都道府県、それから市町村とか、あるいはいろいろなボランティアというのもありますけれども、そういった意味でのお互いの風通しというのは、これはまだ非常に十分でございません。
 それから、これもさっきも申し上げたんですけれども、現在の環境のリーダーシップをとれというお話がありますけれども、現実には地元の状況に応じた、例えばある程度実際にやっていただく仕事というのは都道府県でやっていただく、それを私どもとしては国全体の立場からいろいろとまた協議をし、あるいはその指導もする、そういうところでございますので、大変抽象的な言い方ですけれども、そういった縦横の関係をこれからさらにきちっと深めてまいりたい、そういう感じも持っております。ただ、大変残念なんですが、いつもいつもこういうようなところでPRしておるんですが、まだ人間が足りないものですから。
 実際には、環境省がみずからやるというとかえって仕事ができないこともありますから、これはやはり現場での仕事は都道府県がみずからやっていただくけれども、もちろんその全体の姿を見てまた必要な協議とかあるいはその指導とか、そういうことはさせていただきたいというふうに思っております。
佐藤(公)分科員 大臣はよくおわかりになっているんだと思います。
 私自身も思うことは、もう結論の方から先にお話しさせていただければ、縦割り行政の障害というか弊害というか、そういうものがある。ただ言えることは、おっしゃられるように、リーダーシップというか、やはり企画調整能力というものが余りにも力がなさ過ぎるがために、ほかの省庁との縦割りが生じているのが実情だと思います。環境関係にしてもいろいろな分野がありますけれども、まさにたらい回し状態というのが実情、そんな感じがいたします。
 そして、私が大臣のお話を今聞いても、都合が悪くなると現場主義、地方に任せる、こういうことですけれども、やはり国としての国家のあるべき姿の環境の分野としては、本当にその大きな方向性、やはりそういったものを明確に打ち出し、それに強力なリーダーシップでやっていく、その許容範囲の中では地元に任せる、これが正確な表現だと思います。
 では、その方向性がきちんと出ているのかといったら、まだまだでき切れていない。そして、その枠組みにみんなをはめていくこと自体、大変失礼ですけれども、力のなさで、枠組みにはめ切れていない、これが実情だと思います。
 そういうことを思いながら、ちょっと聞かせていただければありがたいと思いますけれども、私は、環境関係でもやはりCO2とかSPM、浮遊粒子状物質ということの問題点についてお聞きしたいと思います。
 旅客、貨物といった運輸部門のエネルギー消費は近年増加傾向にあり、これは自動車の保有台数の伸びに起因しており、CO2の排出量は年々増加の一途をたどっていると思います。
 運輸車両については、大半がディーゼル車であり、ガソリン車に比べNOxやSOx、SPMの排出量が非常に多く、特にSPMは一〇〇%ディーゼル車から排出されており、それがもとで起こる大気汚染は大都市を中心に依然として厳しい状況にあると思います。
 また、SPMは肺がんやぜんそく等人体に影響を及ぼす原因とも言われておりますが、このような状況から、SPM対策の一環として、いち早く東京都が環境条例に基づくディーゼル車の排ガス規制を平成十五年十月から開始することを決めました。この規則では、ディーゼル車から排出される微粒子状物質を減少させる装置、DPF、微粒子状物質減少装置の義務づけや、低公害車の導入促進を積極的に行うことになっています。
 しかしながら、昨年五月、環境省、経済産業省及び国土交通省が設けたディーゼル車対策技術評価検討会では、ディーゼル車に含まれるPMのDPF性能を評価した結果、現在におけるDPFには技術的な課題が多く、一律の義務づけは困難であるとの最終報告をまとめております。
 国と東京都の姿勢の違いでも明らかなように、ディーゼル車のPM対策としてDPFの取りつけが効果的とする考えとそうでないとする相違の意見がありますが、現状はどのようになっているのか。また、環境省として、今後PM対策をどのようにお考えなのか。大臣のお考えをお聞かせくださいませ。まず最初に大臣の方向性を。
    〔主査退席、岩屋主査代理着席〕
大木国務大臣 一般論を申し上げます。
 技術的にどういうふうにとか、数値とかなんとかは後からまた参考人からお話ししたいと思いますが、今の自動車を原因とする大気汚染というのは、先ほどのほかの議員のお話にもございましたように、一体何をまず抑えるんだということで、NOxなのかそれともCO2なのかというようないろいろなことがありまして、全体としてはなかなか難しい。
 それはしかし、全体として考えなきゃいかぬのですが、実は、この自動車を原因とする汚染状況というのは地域によって物すごく違うのですね。やはり東京の真ん中ともう少し人里離れたところでは全く違いますから、これは、例えば都道府県別でどうだといいましても、非常に反応が違うわけでございます。私は今愛知県が選挙区ですけれども、愛知県なんか、やはり東京、関東地区あるいは関西に続いて東海も大分汚染しておるから、いろいろと、そういう規制をきつくしろというようなことは言っているのですけれども、なかなか地元では反発も強いということでございます。
 東京都が一生懸命やっておられることは存じておりますし、石原さんからも私大分いつも言われて、東京都が一生懸命いいことを言っているのに、国の方でやらなきゃ自分の方でどんどんやるといったお話があるのですけれども、これはやはり、一般論として申しますと、ある程度その地域の状況も考えながらということが必要ではないかというふうに思っております。
 しかし、全体として、やはり自動車を原因とする、CO2だけとらえても非常に増加しておるわけでございますし、そのほかNOx、PMの方ももちろん国民の健康を守るということからいえばきちっとやらなきゃいけませんから、さっきから同じことを言っておるのですけれども、地域によって多少差があるということと、それから今何をまずプライオリティーをつけてやっていくかということ、その辺はやはり政策の問題として考えていかなきゃいけないというふうに感じております。
 あとは、ちょっと数字の方は……。
    〔岩屋主査代理退席、主査着席〕
佐藤(公)分科員 細かいことはまた後で、あれでしたらお話を聞かせていただきますけれども、私が言っていることは、今お話をさせていただきましたけれども、実際問題、DPFに関しての評価が違うということですね。違うというよりも、余り技術的にすぐれていない。
 こういうことで、これを推し進めるということを東京都が今しようとしているわけですけれども、このDPFの性能的なこと、こういうことも含めて、環境省としてそれをバックアップする。当然、技術が開発されていい方向にいけば、それはそれでいいことです。ただ、コスト問題はあります。ですが、実際問題、DPFに関しては、決してすべてが適用できない、しづらいという部分の評価が出ている、結果が出ているのに、それを推し進めようとする東京都、こういうことに対して、環境省または大臣としてどう思われますかということでございます。
大木国務大臣 一言で申しますと、いろいろな東京都の判断それから環境省の判断、違うところは、東京都は何といいましても国の中央でございますから、そこでどういうふうにするかということは国全体としての政策にも大きな影響がありますから、これは十分に意見を調整しながら進めてまいりたいと思っております。
 ただ、ちょっと私も、今の具体的な問題についてはまだ東京都とも話をしていないわけでございますので、これはひとつ現状は参考人の方から御説明したいと思っております。
佐藤(公)分科員 これに関しては、細かいことは後で時間があれば聞かせていただきますが、大臣、あともう三、四分ぐらいしかあけられないということでございますので。
 こういう中で、私が非常に技術的に注目しているのは、やはりバイオディーゼルということ、これに非常に関心を持っております。
 御存じだと思いますけれども、アメリカにおいてもかなり日本よりも進んだバイオディーゼルの位置づけ、今アメリカの方でも、実際問題タックスインセンティブというようなことで、税制とバイオディーゼル関係の燃料の関係、こういうのでかなり強力に推進する方向になっている。
 このバイオディーゼル関係のこと、確かに今エンジンの開発、まあDPFもございますけれども、いろいろなエンジンの開発が進んでいる中、途中経過として今あるディーゼル車を使っていけるようにするためには、やはり規定値にできるだけ限りなく近づける。そういう意味ではバイオディーゼル燃料というものが非常に有効、効果があると私は思います。
 こういうものに対して、大臣、私も見ている限り、非常に方向性がきちんとしないがままに何か時間だけが過ぎている、そんな気がいたしますが、このバイオディーゼル燃料に関して大臣の見解、御意見を聞きたいと思います。
大木国務大臣 私も、バイオディーゼルの話は、聞いたり、それから物の本で二、三読んだ記憶もございますから、これはひとつ勉強してまいりたいと思いますけれども、ただ、現実に、科学的にといいますか、あるいはコストの問題も含めてどこまで実用に広く供し得るかどうかということについては、ちょっと私もまだ結論、恐らく私は役所でもまだ結論は出しておらないと思いますけれども、一応の現状をどこまで勉強しておるかということにつきましては、参考人の方からひとつ御説明させたいと思います。
佐藤(公)分科員 言われていることはわかりますけれども、僕が言いたいことは、やはり大臣自身がそういったものに興味を持ち、関心を持ち、役所の方に指導していっていただかなければ、役所の方ではなかなか速度が遅い。
 まして、先ほどお話ししたように、縦割り行政の中で横との関係を持ったら、これは経済産業省だ、バイオだとこちらは農林水産省だ、こんなことでたらい回し状態になっている。まさに、本当に大臣もしくは副大臣、政務官のリーダーシップが問われていると私は思います。
 こういう意味で、過去、平成十年、十一年、そして大臣をずっとやられていたときの環境の関係の今の流れを見ていますと、まだまだ本当にスピードが遅い、また強制力もない。こういうことでは、あっという間にこのままでいったら三年、五年がたってしまう、そんな気がいたします。
 どうか、大臣、これに関しては本当に大臣みずからがやはり関心を持ち、そして役所に対しての指導を願えればありがたく、お願いを申し上げます。
 どうぞ、大臣、出てくださいませ。
 では、引き続きまして、先ほどの件でございますが、簡単に、資料、データ的なことがあったら御説明願いたいと思います。
西尾政府参考人 最初にお尋ねになりましたのは、DPFについての評価が違うではないか、こういうことだと思います。
 それで、DPFを装着していくことによりディーゼルの排ガス問題を解決していこうという方向性は、これは正しいんだと思っています。
 ただ、昨年五月の段階でのディーゼル車対策技術評価検討会の取りまとめ段階では、現在あるいはごく近い時点で使用できるディーゼル車というものにつきまして、これを一律に、全国的に装着をさせるというようなレベルで見て十分なものなのかというテストに対しまして、専門家の評価は、耐久性等の技術的な課題が残っているので一律の義務づけは困難である、しかしながら一方で、特定の車について特定のものを導入するとか、いろいろ工夫をすればできる分野があるので、そういう部分についての促進は適当だという判断を示されたと思っています。
 そういうことでございますので、そういうDPFの認定制度でありますとかそういう補助といったようなことも私どもでも行っておるわけでございますので、自治体が、一つの自治体でやることについてのいろいろな御議論はあるとは思いますが、自治体でも、そういう一部の部分につきましてその促進をするという取り組みをされるのは、それぞれ自治体の独自の取り組みということで、両方が相まって大気改善に寄与するものという整理をいたさせていただいている次第でございます。
佐藤(公)分科員 ではお聞きしますけれども、DPFに関しては、こういう評価検討会で出たものに対して、一律の義務づけは困難であるというふうにきちんと出ているのに、それは東京都がやることだからどうぞおやりください、ないよりあった方がいいのかなということなんでしょうか。
西尾政府参考人 全国一律の義務づけをしていくことについては困難であるものの、有効性が期待できるものについては促進が適当であるという、その両方をにらんだような形での専門委員会のまとめだったと思います。
 それから、全国への義務づけにつきましては、十七年の単体規制の導入に向けましては、やはりこれはDPFをビルトインしていくのが基本的な技術方向だろう。そういうことを踏まえて、もうすぐ十七年の規制につきましての答申がなされるという運びになろうと思っております。
佐藤(公)分科員 私は、DPFが悪いというわけじゃない、ただ、今現実的に、技術的に非常にまだまだ問題点があるということ、そういうことで進めること、そしてまた、DPFも必要ですけれども、先ほどお話ししたようにバイオディーゼル燃料、こういったものも同じように使っていく、そしてお互いが相効果を出していけば、より一層大気汚染、CO2問題、またはPM関係の問題も、少しずつでもよくなるんではないか、そういうことを思う部分があります。
 そして、そこの中でこのバイオディーゼル燃料ということに関して、国として今後どういう支援を考えているのか、また考えていないのか、その辺のあたりを副大臣もしくは政務官の方からお答え願えればありがたいと思いますが、いかがでしょうか。
 これは技術というよりも、やはり方向性というか支援をどう考えているのか、まずこれは、とても大事なことは、バイオディーゼル関係のことに関して、やはり国が、政治が、どういうとらえ方をして、どういう方向性を持っているのか、とても大事なことですから、できれば副大臣か政務官の方からお答え願いたいと思います。
山下副大臣 先ほど大臣からも答弁ございましたけれども、環境、特に大気汚染、人の健康被害にかかわることですので、技術的な検討というのは極めて大事だと思いますし、より先進的な取り組みがあるならば、それはできるだけ取り入れていくという方向が正しいだろう。
 ただ、それを環境省として取り組む場合は、全国の問題としてどうするかということがあるので、それはすぐに実行していくというようなことは無理かもわかりませんけれども、最新の技術を検討しながら、積極的に検討していくという姿勢が大事であろう、こういう考え方に立つべきだというふうに思います。
西尾政府参考人 先生御指摘のように、車体での技術を推進していくとともに、燃料ということに十分な目配りをしていく必要はあると思っております。我が国でも、例えば京都を中心にいたしまして、廃油、廃食用油、これを燃料にできないかといったような取り組みもされております。
 ただ、しかしながら、これらのものをきちんと導入します場合には、その排ガスの性状でございますとか、その他いろいろな技術的な点の点検が必要でございます。したがいまして、御指摘のようなバイオディーゼルといったような新しい燃料という問題が出てまいりますが、私ども、やはり専門家によりますその実態調査あるいはその排ガスの試験といったようなこともしながら、環境面の評価をきちんとした上で対応を考えていくというものだと思っておりますので、御指摘のバイオディーゼルにつきましても、これから十分関心を持ってデータ等を収集してまいりたいというふうに思っております。
佐藤(公)分科員 先ほどからのお話の中で、やはり技術ということが出てきていますけれども、僕は本当にこういった技術、これだけじゃございません、ほかの技術もございますが、この技術ということに関してやはりもっと積極的に環境省として取り組み、それにおける対応、政府における後押しというものが重要だと思います。
 先ほどからも技術ということが言われておりますけれども、では、一体全体環境関係の技術に関してどれぐらいの応援というか国としての支援体制をとっているのか。これはさっきもお話ししました縦割り行政の中で、いや、これは農林水産省だ、これは経済産業省だということでやることによって非常に効率が悪い。そしてお互いが遠慮し合うのか、お互いがとり合うのか、そういったことによって技術における日本のいいものがどんどんおくれているような気がする。
 そんな気がしますけれども、この技術に関して、環境省としてはどういう取り組みを考え、どれぐらいのことを考えて今までやってきていると思われますか。
西尾政府参考人 まず、コマーシャル的な自動車、車体などに盛り込む技術、これはやはり基本的に自動車メーカーで奮ってやっていただくべきだと思っています。それから、私の承知しておる限りは、燃料電池でありますとか、非常に大きな基礎的な新技術、これはやはり経済産業省等でおやりいただくというふうなことで今まで進んでおったのではないかと思っております。
 私ども環境省といたしましては、比較的前からあるいは十年ぐらい前から、例えば電気自動車でございますとか、あるいは低公害車のようなことをやります。あるいはDPFの可能性、要するにフィルターの可能性といったようなことにつきまして、比較的大きなメーカーでございますとか、あるいは他の省庁が取り組まない場面におきましては、そういうものを将来に役立てるべく、その後検討してまいったというようなことでございます。
佐藤(公)分科員 非常にはっきりしない部分があって、実際、では、その技術に関して、それは民間に任せてやるべきところはやっていく、これは結構ですけれども、やはり新たな技術に関しては、なかなか大手のようにいかない部分、中小零細が持っている技術というのが私は多いと思います。
 そういう部分に対しての支援策をきちんととっていく、やはりそういうところにも目を向けて将来の環境行政に関して考えていく、こういうものを考えていくべきだと思いますけれども、副大臣か政務官、いかがでしょうか。
山下副大臣 技術開発の予算の面については、私が感じていますことは、やはり経済産業省中心にやっているなということを感じるんですね。ただ、環境省が持っている研究所もそうたくさんございませんし、そういう意味では、予算面の支援の部分というのは、環境省的には非常に弱い部分があるというふうに思うのです。
 したがいまして、今お話ございましたように、経済産業省、国土交通省、また環境省それぞれ役割分担しながら、しかしどこかに任せるということではなくて、日本が大事にすべき部分が技術開発の部分だと思いますし、そういう面で先進国として国際貢献できる部分でもありますので、環境省として何ができるか、極めて強い体制にはないけれども、よく連携をとってやってまいりたいというように思っております。
佐藤(公)分科員 私は、本当にこの車のCO2、またはDPF、バイオディーゼルだけではなくて、PCB処理やなんかにしても、今脱塩素化学処理、超臨界、いろいろとありますけれども、プラズマ技術なんというのも非常にすぐれた技術に思えます。
 これはアメリカの方での技術ということになっておりますけれども、このプラズマは、電気プラズマ、ガスプラズマありますけれども、電気プラズマの方ですけれども、こういうプラズマやなんかの技術もいいんではないか、なぜ考えていかないのか、評価はどうかというように環境省の方に問い合わせましたら、これに関しては、非常にいい技術だということは環境省も認めている部分がある。ただし、やはりほかの国でやっているからというだけじゃなくて、日本の国で実績を積まないと、やはりはっきりしたことは言えない。
 これは、ある意味で安全な答えだと思います。非常に安全的な答え、常識的な答えですけれども、逆に、民間がなかなかやらない、やれない部分を、そういった技術をやはり政府が後押しをしながらでもやっていく、いい技術ならやはりしていくということが必要だと思います。
 そして、環境省の方のいろいろな方々のお話でいいますと、またほかの業界関係の話を聞きますと、やはり民間でやって成功して初めて政府としては後押しができるというような状態の話を聞きます。これって何か僕はおかしいと思います。それじゃもういつまでたったってできないようなことだってあり得る。こんな消極的な環境省じゃいけないと僕は思います。その分には予算が足りない部分もあったとしても、それはやはり多くとってでもそれを積極的に推し進める環境省の責任があると僕は思いますが、副大臣、いかがでしょうか。
山下副大臣 委員がおっしゃること、よくわかりますし、その方向でやはりやるべきだというふうに私も思います。予算の配分をどうするかということも、いいことについては、また、やるべきことについては思い切った配分の方針変換も必要だろうと思いますし、その辺は、委員の御意見は大事にしたいというふうに思います。
飯島政府参考人 今の委員の御指摘のPCB処理のためのプラズマ分解技術でございますが、昨年技術評価を終了いたしまして、ことしの三月に廃棄物処理法の技術基準を改正いたしました。したがって、今後、このプラズマ分解技術についても導入が図られるものというふうに考えております。
 また、中小のシーズの技術開発につきましても、これはわずかなお金ではございますが、廃棄物処理の研究費といたしまして、私ども、今年度予算、十億円の予算を持っておりまして、全体の技術開発費には到底及ばないんですが、シーズの開発といったものも支援できるようにしているところでございます。
佐藤(公)分科員 環境省としては予算的には割と多くとっているのかもしれませんが、私の感覚からいえば、私たちの未来に対して、将来に対して、子や孫のために、そんな金額では少ないと私は思います。もっとたくさん分捕って、やはりそれは環境省、どうか副大臣、政務官、財務省と協議して、予算をたくさんとって、今投資しなかったら手おくれになっちゃうことというのはたくさんあると思います。こうしている間にどんどん汚染されていく、そこの部分に関しては、これはもっともっと力を入れていかなきゃいけないと思いますので、それはもう副大臣、政務官、何とぞよろしくお願いいたします。
 それと、私も、産業廃棄物、ごみ処理というか、地域の一住民として、町の、または地方の自治体におきます説明会にも出ました。何カ所にも、一市民として、町民として出ましたが、やはり地方自治体が、ごみの分別または大気汚染、いろいろなことに関して説明すること、私が聞く限り、説明している本人もよくわかっていないのではないか、そして、聞いている方はもっとわかっていない。言われたからやっているというのが実情。そこには地方の行政における危機感が全くないのが、私が感じたことです。
 これに関しては、本当に徹底した啓蒙と教育をしていかなきゃいけない。こういう部分では、まだまだ足りない。住民の方々とお話をしても、なぜしなきゃいけないのかよくわからないんですよ。ただ言われたから、ルールになったから、そういう部分ではいけない。これは文部科学省の教育の問題とも絡み合うことかもしれませんけれども、やはりここら辺の徹底した教育、もしくは啓蒙、指導に当たらなきゃいけないと思いますが、副大臣、いかがでしょうか。
山下副大臣 廃棄物問題、私も非常に関心がございまして、ごみを減らすということが非常に大事な観点だと思うんですね。リサイクルの前にやはりリデュースということが大事だというふうに思います。
 ちょっと時間もございませんけれども、私この前、徳島県の上勝町に行きまして、ごみを三十五種類に分別しているわけですよね。山の中の町ですけれども、それが何でできるのかということを如実に体験してきたんですけれども、ここは、事情があって焼却炉を廃止せざるを得なくなった、焼くところがないということで、町長のリーダーシップもございましてそうなったわけですけれども、日本人というのはやる気になればできるなということを感じました。
 小学生でも中学生でもそれに協力して、そして、それも単に分けるだけではなくて、ちゃんと洗ってごみを出すということ、収集も税金でやらない、ごみ収集車は一台も走っておらない中で、町民がみずからボランティアで集めているというふうなこと、実際実現しておったわけでございまして、その結果、ごみは三分の一に減ったということです。
 何のために分けるのかということ、分ければ資源、捨てればごみという基本的な考え方をしっかりと体験的に学ぶことが極めて大事だな、何のために分けるのかとわからぬままに今まだ続いているようなことがまだまだあるのではないかという意味で、生きた環境教育には極めて重要であるということを認識しながら、今仕事をさせていただいている現状でございます。
佐藤(公)分科員 もう時間がございません。
 まさに聖域なき構造改革は聖域なき意識改革です。この意識改革をより推し進めていただかなきゃいけない。どうも今の環境省のやり方を見ている限りは全然足りない、そういうことを最後に申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
松崎主査 これにて佐藤公治君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして環境庁についての質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
松崎主査 これより総理府所管中経済企画庁及び国際協力銀行について審査を行います。
 まず、概要説明を聴取いたします。竹中経済財政政策担当大臣。
竹中国務大臣 平成十年度における経済企画庁の歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 まず、平成十年度の当初歳出予算額は百四十九億一千八百八十一万円余でありましたが、予算補正修正追加額九億六千五百四万円余、予算移しかえ減少額八億一千三百八十七万円余を増減いたしますと、平成十年度歳出予算現額は百五十億六千九百九十八万円余となります。
 これに対しまして、支出済み歳出額は百四十五億二百四十六万円余、翌年度繰越額八千四百六十二万円余であり、歳出予算現額との差額四億八千二百八十九万円余は不用となった額であります。
 次に、支出済み歳出額の主な内訳は、経済企画庁百十七億八千五百二十五万円余、海外経済協力基金交付金八億三千六百三十七万円余、国民生活安定対策等経済政策推進費八億六千三百十九万円余、経済研究所九億四千九百三十万円余等であります。
 また、不用額の主なものは、経済企画庁について、職員諸手当を要することが少なかったこと等によるものであります。
 次に、平成十一年度における経済企画庁の歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 まず、平成十一年度の当初歳出予算額は百五十億九千九百万円余でありましたが、予算補正修正減少額三億百六十一万円余、予算移しかえ減少額六億二千三百万円余、前年度繰越額八千四百六十二万円余を増減いたしますと、平成十一年度歳出予算現額は百四十二億五千九百一万円余となります。
 これに対しまして、支出済み歳出額は百三十一億四百四十七万円余であり、歳出予算現額との差額十一億五千四百五十四万円余は不用となった額であります。
 次に、支出済み歳出額の主な内訳は、経済企画庁百十四億六千百六十二万円余、国民生活安定対策等経済政策推進費四億八千三百四十万円余、経済研究所十億五千八百九十六万円余等であります。
 また、不用額の主なものは、経済企画庁について、退職手当を要することが少なかったこと等によるものであります。
 以上、平成十年度及び平成十一年度経済企画庁の歳出決算の概要を御説明いたしました。
 何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。
松崎主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院石野第一局長。
石野会計検査院当局者 平成十年度経済企画庁の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
 平成十一年度経済企画庁の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
 平成十一年度国際協力銀行の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
松崎主査 この際、お諮りいたします。
 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
松崎主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
松崎主査 以上をもちまして経済企画庁及び国際協力銀行についての説明は終わりました。
 これより質疑に入るのでありますが、その申し出がありませんので、経済企画庁及び国際協力銀行については終了いたしました。
 午後零時三十分から本分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午前十一時十一分休憩
     ――――◇―――――
    午後零時三十分開議
松崎主査 休憩前に引き続き会議を開きます。
 これより総理府所管中金融再生委員会及び金融監督庁について審査を行います。
 まず、概要説明を聴取いたします。柳澤金融担当大臣。
柳澤国務大臣 平成十年度における金融再生委員会及び金融監督庁歳出決算の概要を御説明申し上げます。
 まず、金融再生委員会歳出決算の概要を御説明申し上げます。
 平成十年度の歳出予算現額は、金融再生委員会設置法が平成十年十二月十五日に施行されたことに伴い必要となる同委員会の運営等経費を支出するための予備費使用額六億二千九百五十九万円余となっております。これを支出済み歳出額五億七千四百九万円余に比較いたしますと、五千五百四十九万円余の差額を生じます。この差額は、人件費を要することが少なかったこと等のため、不用となったものであります。
 続きまして、金融監督庁歳出決算の概要を御説明申し上げます。
 平成十年度の当初予算額は五十五億一千八百六十万円余でありましたが、これに予算補正追加額一億七千八百十五万円余、予算補正修正減少額一億六千百九十二万円余、予算移しかえ増加額十億六千七百十六万円余を増減いたしますと、平成十年度歳出予算現額は六十六億二百万円余でありまして、これを支出済み歳出額五十九億五百八十一万円余に比較いたしますと、六億九千六百十八万円余の差額を生じます。この差額は、人件費を要することが少なかったこと等のため、不用となったものであります。
 以上をもちまして平成十年度金融再生委員会及び金融監督庁歳出決算の概要説明を終わります。
 よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。
 引き続いて、平成十一年度における金融再生委員会及び金融監督庁歳出決算の概要を御説明申し上げます。
 まず、金融再生委員会歳出決算の概要を御説明申し上げます。
 平成十一年度の当初予算額は十二億四千六百五十六万円余でありましたが、これに予算補正修正減少額二千三十四万円余を差し引きますと、平成十一年度歳出予算現額は十二億二千六百二十一万円余でありまして、これを支出済み歳出額九億七千三百三十九万円余に比較いたしますと、二億五千二百八十二万円余の差額を生じます。この差額は、人件費を要することが少なかったこと等のため、不用となったものであります。
 続きまして、金融監督庁歳出決算の概要を御説明申し上げます。
 平成十一年度の当初予算額は六十八億四千七百六万円余でありましたが、これに予算補正追加額一億七千百九十万円余、予算補正修正減少額三千四百六十六万円余を増減いたしますと、平成十一年度歳出予算現額は六十九億八千四百三十万円余でありまして、これを支出済み歳出額六十八億三千五百八十四万円余に比較いたしますと、一億四千八百四十五万円余の差額を生じます。この差額は、金融機関等検査旅費を要することが少なかったこと等のため、不用となったものであります。
 以上をもちまして平成十一年度金融再生委員会及び金融監督庁歳出決算の概要説明を終わります。
 よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。
松崎主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院千坂審議官。
千坂会計検査院当局者 平成十年度金融再生委員会及び金融監督庁の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
 引き続きまして、平成十一年度金融再生委員会及び金融監督庁の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
 以上でございます。
松崎主査 以上をもちまして金融再生委員会及び金融監督庁についての説明は終わりました。
    ―――――――――――――
松崎主査 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。松原仁君。
松原分科員 民主党の松原仁であります。金融の現状を問うところから始めてまいりたいと思います。
 今、不良債権処理の問題というのは、最近の日本の政治の一番中心の課題であったわけでありますが、この不良債権の額というのが随分いろいろと変化をしているわけであります。
 今、まずお伺いしたいのは、中小企業の不良債権というのはどれぐらいあるか、これをお伺いいたしたいと思います。
高木政府参考人 お答え申し上げます。
 ちょっと先生の御質問とずれると思いますけれども、十三年三月期におきます全国銀行の不良債権額は三十三・六兆円ございます。そのうち中小企業向けが幾らかということでございますが、実は、これは特別に調査しないと把握できないものですから、主要行についてだけ調査した数字を持っておりますので、それでお答えさせていただきたいと思います。
 主要行につきましては、不良債権額が十八兆円、そのうち中小企業向けのものが金額ベースで約十兆円、先数ベースで約三万件という状況になっております。
松原分科員 中小企業、主要銀行では十兆円、こういうふうな話であります。約三十四兆円の不良債権があって、いろいろな議論があるんですが、私が関係者と話したところでは、恐らく大企業、大企業というのは中小企業以上ですね、十兆円ぐらいではないかという話があります、十兆から十一兆円ぐらいではないかと。そうしますと、中小企業に対しての不良債権というのは二十兆円ぐらいあるだろう、こういうふうに言われているわけであります。
 中小企業が一社どれぐらいの負債を持っているかというのは、これは千差万別で、最近は大変厳しい経済状況ですから、負債が三千万、四千万でも倒産するケースもあるでしょうし、いろいろなケースがあると思うんですが、並べると、これもある金融機関の方に話を聞いたら、松原さん、大体それは一億円ぐらいではないかというふうな話でありました。
 そういたしますと、二十兆円で大体一億円ということは、何社ぐらいがいわゆる不良債権を持っている中小企業の数になるかということでありまして、今の話は、三万件というのは、大手銀行が貸している中小企業の数ですね。そういうふうな話でありますが、いわゆる信金、信組までいきますと、恐らく、二十兆を一億円で割りますと、二十万社ぐらいが不良債権処理の対象になるのではないかというふうに言われているわけであります。
 今、これはちょっとお答えがいただけるかどうかわかりませんが、こういった不良債権処理でどれぐらいの失業者が生まれると巷間言われているか、お答えをいただきたいと思います。
高木政府参考人 大変恐縮でございますが、我々、今把握しておりません。
松原分科員 通告していなかったので恐縮でありますが、大手の企業が不良債権処理で六十万人ぐらいという議論も一面あるわけであります。
 私が今申し上げたいのは、二十万社が、そういった意味では、不良債権処理に伴って処理されてしまう可能性があるということになりますと、中小企業というのは製造業で三十人、それからサービス業では五人以下、大体こういうふうな仕分けになっているというふうに理解をいたしております。大体この仕分けはこれでよろしいですよね。
 そういたしますと、二十万社で、一社で大体五人から六人が失業するとすると、これだけで百万人の失業者が発生する。所管ではないというふうにおっしゃるかもしれませんが、社会的現象としては、大体百万人近い失業者が不良債権処理に伴って生まれる可能性が大きいというふうに思うわけであります。大企業と別でありますが、百万人が失業する可能性があるということに関して、大臣、どんなふうにお考えか、お伺いいたします。
柳澤国務大臣 松原委員のお話、非常に概数で御議論を展開されたわけですけれども、不良債権というものがすべて破綻に行き着いてしまうということでは必ずしもないわけでございます。
 今、監督局長が言ったのは、多分、私どもがアメリカのSECと同じ基準でリスク管理債権として開示もさせていただいておる数字で議論をさせていただいたか、こう思うわけです。その中はどういう中身であるかというと、いわゆる要管理債権といって、金融機関にとって既に元利、特に利息の面で予定どおりの収益になっていないもの、そういうもの以下の債権ということであるわけでございます。
 今現実に、大手あるいは地域金融機関、あるいは共同組織形態の、今先生お触れになったような信金とか信組というものがどういうことをやっているかと申しますと、私ども、破綻懸念先以下の債権についてはオフバランス化をしなさい、こういうことを大手に対して申したわけでございます。
 それを受けてどういうことをやっているかというと、これは破綻懸念先以下になったら大変だ、そこで、要管理ぐらいのものになって、不良債権の仲間へ入ったものは、できるだけ早目に再生を図って上の方に持っていく、要注意とか正常化の先に持っていこうというようなことで、いろいろの相談の窓口等をつくりまして、そして、指導と言ってはおこがましいかもしれませんけれども、中小の融資先というのはなかなか、自分で再建計画をつくる、あるいは十分説得力のあるものについてはつくるのが難しいというので、じゃ、それを一緒につくってもっといい債権にしていきましょうというようなことをしているということもございます。
 それから、もちろん、破綻懸念先になっちゃったものについても、これは大手、中小、あるいは共同組織を通じて言えることなんですけれども、できる限り企業の再生を図るというような形でやっていきましょうということであって、全部破綻、あるいは特に清算をしてしまおうというようなことというのはできるだけその一部になるようにということでやっているわけでございます。
 したがって、二十万件あるいは二十万先を前提にして、すべてそこを破綻してしまう、あるいは清算してしまうというような前提で御議論をされると、ちょっと見積もりを誤ってしまうんじゃないか、このように私の感想を申し上げさせていただきます。
松原分科員 今、大臣そうおっしゃいますが、いわゆる不良債権、その周辺において必ずしも、それは助かるんだ、ホスピスじゃないよ、こういう話だと思うんですが、実際、例えばRCCに行った場合、五年間で再建計画、いわゆる借金をなくす計画をつくれみたいな、そういうふうな具体的な話になってくる。そうすると、ただでさえそういうのはできないから行っているわけであって、実際は、これは週刊朝日か何かに載った話で、この不景気の世の中で云々、こうありますが、実際RCCに送られて、とりあえず従来の返済を百万円きちっとしていても、これはだめだというふうな話が来たりしているのは事実でありますから、そういった意味では、今の話で不良債権が全部破綻するわけではないという議論は、それは全然違うだろう。
 現実には、それは五年間、返済元利。利息だけだったら別ですよ。元利返済を五年でやれとか、長くても十年でみたいな議論になったら、それができる企業というのはほとんどあり得ないというふうに思っているので、私は、そこの認識は違うんじゃないかと思うわけであります。
 それはまた後でお伺いするとして、もう一つお伺いしたいんですが、平成十三年、五十を超える信金、信組が破綻をしたわけであります。どれぐらいの信金、信組が最終的に残るのかという話であります。
 アメリカのダボス会議のときに、フレッド・バーグステンさんという人が、日本は約半分の金融機関を閉鎖し、残った銀行に公的資金を注入すべきだ、こういうふうな話をしておりますが、こういう御発言に対してはどういうふうな御所見をお持ちか、お伺いいたします。
柳澤国務大臣 ダボス会議におけるバーグステンさんの発言、私も新聞報道で知ったわけでございますけれども、その後、バーグステンさんてどんな人というようなことでほかの専門家の方にも聞いたら、あの方は、もともと経済が御専門ではなくて国際政治が御専門の方なんだけれども、最近は国際政治よりも経済に関心を寄せていらっしゃる方ですよというようなことでございました。それだけに、私も、少しバーグステンさんの御見解というのは粗っぽい御議論だなというようにお聞きいたしております。つまり、バンクホリデーが必要だとかというようなことでございますが。
 他方、例えばニューヨーク連銀のマクドナー総裁がつい最近も現地の講演か何かでおっしゃられていますけれども、金融の話というのは、そういうマクロ的な大ざっぱな話ではなくて、やはり一社、一社の話、一機関、一機関の話だという前提でお話しになられたようですが、一つ一つ、日本の金融機関あるいは金融システムというのは改善の道を歩んでいるようだ、こういうお話もいただいておりますので、だからといって、鬼の首をとったように申し上げるつもりは毛頭なくて、これからも厳しい努力が必要だと思いますけれども、バーグステンさんの話だけが御意見ではない、あるいは我々の金融システムへの監察の結果ではない、我々はそのように受けとめているわけであります。
松原分科員 この記事だと、そんな空気は小泉首相も感じていたというんですが、今、柳澤大臣が、バーグステンさんのこの議論は極めて粗っぽいということで、私は、それは批判をしているというふうに受けとめさせていただきたいと思うんですが、そういう認識は、総理大臣も同じ認識だというふうに思ってよろしいんですか。それは全く別だ、それは私の認識だ、こういうことでしょうか。
柳澤国務大臣 私は総理と、バーグステンさんのコメントについて話し合った事実はございませんので、これは、私が今お尋ねを受けて、私が新聞報道に接してどう考えたか、感じたかをお話し申し上げたということでございます。
松原分科員 結局、そういうふうに実際に五十の信金、信組が破綻をする中で今一番何が問題かというと、ある金融機関が、例えば私の地元は品川、大田ですが、大田区のある金融機関が破綻した。受け皿があるんですよ。受け皿が、言ってみれば、かなり冷ややかな受け方しかしない。具体的にどことかは言いませんが、大変技術力のある、大田区のオンリーワン企業と言われるような技術力のあるところが、たまたまつき合っていた金融機関、それはわかりますよ、大田区だから。それが破綻したときに、新しい受け皿が手形を割り引いてくれなかった。それで結果的に倒産してしまったという話があったり。
 これはもう私と非常に親しい企業なんですが、そこは非常に優良なんですよ。きちっとやってきて、うちは破綻した金融機関ではトップA、本人の表現だとAクラスの、融資先としては頑張ってきたところだと。しかし、新しい金融機関が受け皿になったら話が全然進まない。それで、どういうことかとちょっと聞いたら、またその金融機関も急に態度が変わったりして、こんなものでいいのかということですが、私がそういうふうに聞かなければそれは変わらなかったかもしれない。
 そういうふうなことを考えると、私は、そういう問題はたくさんあると思うんですよ。つまり、受け皿金融機関に来たときに非常に対応が悪くなったり、手形を割らなかったり、それまでの融資計画、一番いい融資先だったのでよくやってきたのが急に変わったり、話をすればそうかといってもとへ戻ったり、こういう状況があるというのは極めて問題だというふうに私は思っているんです。
 私が聞いたのは、ある金融機関です。金融機関の人間にどうなんだと聞いたら、いや、松原さん、それは、我々は前に先行する金融機関の、例えば、いわゆる優良の三〇%の融資先は引き継ぎたいと思う、下の一〇%はRCCか何かでしょう、残りの六〇パーは、これは我々はもう関知しないと。本音の話は恐らく大臣には届いていないと思うんですよ、怒られるから。ただ、本音の話は、オフレコではそういう話が来ているわけですよ。
 ですから、金融機関が破綻して次のところに移るときに、正常という表現を使うべきかどうかあれですが、取引先は大変に苦慮している。こういう状況に対して、いわゆる努力しますとか何とかしますとかいうんじゃなくて、何か具体的な方針というものをお考えか、お伺いいたします。
柳澤国務大臣 破綻金融機関から債務者と申しますか貸出先を引き受けていただくということは、私ども、一般論として強くそれをお願いしている立場でございます。
 具体的にどういうことかというと、破綻をした金融機関について、金融整理管財人が資産の査定をします。それについては、預金保険機構の指名した外部の監査人がこれを監査します。それで、この債務者区分は、今までの破綻先がやっていたものと全く分離独立した形で、金融整理管財人のもとで外部監査法人の監査を受けた上で、きちっと債務者区分が決まるわけでございます。
 そういう中で、正常先についてはすべてこれを引き取ってもらいたい。それから、要注意先についてはできる限り引き取ってもらいたい。破綻懸念先、破綻先については、そちらの方に関連の融資をしておったというようなときには、いや、それは自分たちも引き取りたいといって、これは救済金融機関の側が自主的に引き取られる例がある。大体こういう区分でございます。
 そこで、今、松原委員の言ったようなことを仮にやった場合、どういうことになるかといいますと、救済金融機関は大損をします。大損するんです。というのは、引き継いだ金額はちゃんと引き継がれているわけですから、ここに、これを破綻させてしまったら損が立つんです。損が立ちます。そういうことを、損が立っても我々はやっていくんだというように考えるということについて、我々は、損得勘定でいっても少し今の話は不思議だなというふうに思う、こういうことです。
松原分科員 議論として、しかし現実にこういうふうなものがあるということは、これは理論的に恐らく――では、受け皿になった金融機関がありますよね。それが受け入れたときに、その中に、それはその受け皿金融機関のマンパワーもありますよ、全部それをフォローするだけの人がいるのかという問題もあるでしょうし。
 それから、そこが貸したときに、やはり、今はもう金融機関もすべて、検査官に対して非常におそれをなしているわけですよ。何でこんなところに貸したんだというふうに言われることが一番怖いわけですから、とにかく、損する得する以前に、怒られないようにしたいと。金融庁の人が来て、何でこうなんだと言われたときに答えられないというのが一番困るというふうな認識で、恐らく、現実に多くのところを実際は受けられないよという話がオフレコの中であるということは、それは認識をしておかないと現実を見誤るだろうと私は思っているんです。
 それで、日本の場合、中小企業の風土というのはいろいろとあります。例えば、日本は長い間、法人税というのは世界で最高水準にあった。また、いわゆる累進性が高い所得税というのがあって、企業がやはり、西欧というか、例えばヨーロッパやアメリカの企業のように、内部に利益をなかなか留保できない税体系にあったのではないか。
 だから、議論するとおもしろい議論があるんですよ。日本のある程度健全な企業も、どこかに投下資本しようとする場合、社長の一存で決まらない。西欧の方の会社は一存で決まるというんですよ。それは、会社がそれぞれ自分の中にそれだけの利益というか金を持っているわけですね。それが、今言ったように、法人税とかもしくは所得税とか、そういう問題でなかなか内部にお金が留保できなかったということだろうと私は思っているんですよ。
 そういう中で、同時に日本の場合は、昔から手形という慣習がある、だから手形かというふうな気もするけれども、手形という慣習がある。そうすると、日本の場合の金融機関というのは、西洋の中小企業に対する、そういう金融機関が向こうでもあるでしょう、それとは本質的に若干趣が違うんじゃないか。
 つまり、財務部門の一部が外にあって金融をやっている。だから、そういう中でそれぞれの銀行は自己資本比率が低くなってしまった、オーバーワークしたみたいな部分で。それでどんどんお金が流れていった。こういう風土があるということを考えたときに、現実に、大臣どうおっしゃろうと、貸し渋り、貸しはがしというのは非常に横行している。また、金融機関が移ったときに、現実にお金を貸さないというふうなところもたくさんあるわけですよ、それなりにしっかりしたところに対しても。理論上おかしいといったって現実にあるわけですよ。
 そういうふうなことを考えたときに、私たち民主党で出している地域金融円滑化法というのがあるんですが、こういったものをやはりつくって、実際に金というのは経済の血液ですから。ですから、バブルの不良債権退治をするということは、これは一つの大事な目標ですよ。しかし、例えて言えば、頭痛がしているから頭痛薬を飲んだ、副作用で胃が痛くなっちゃった、こっちの方が重病だ、頭痛よりもっとひどい病気を引き起こしたと同じような状況にこのままいくとなってしまう。
 だから、私は、こういった地域の金融、やはり銀行は社会の公器としてお金を、日銀から金が行っているわけですから、金を地域に循環するのは銀行の大きな責任だと思うんですよ。自分の方はリスクテークできないということで、そういうのを流さないでいるというのは、これは社会的な大問題だと私は思うので、そういった意味では、現実がそうなんだから、それに対しては地域金融円滑化法みたいなものをつくるべきだと思うんですが、ちょっと御所見をお伺いします。
柳澤国務大臣 金融機関が、銀行法の一条で、公益性を持っている。公益性というのは、中身はどうなんだということの中に、やはり金融仲介機能というものをしっかり果たして、経済に対して血液ともいうべき資金を疎通させていくということである、これはもう通説の説くところでありまして、だれも異存がないところでございます。
 そういう中で、ではどういうふうにそれを確保していくかということについては、私どもは、今、まず第一に、それは市場原理、つまり、利益を上げるという動機に基づく市場原理でやるのが基本的にいいんじゃないかという、そういう原則を踏まえつつも、しかし、なかなかそうばかりもいかぬぞというようなことで、政府系金融機関というものがそこに働く余地がある。この二本立てでやっていこうよというのが現在の体制だということでございます。
 私ども、民間金融を監督している立場から申しても、今我々はもう何回も何回もこの点は申し上げておりまして、金融に対して、特に地場の中小企業金融に対して、できるだけもっと積極的にやるようにということは機会あるごとに申し上げていることでございます。
 現実にどうかというと、確かに今、松原先生が御指摘になるような、リスクに対して慎重な態度をとっているという面がありますけれども、同時に、そのリスクに見合う分は金利としていただいて、もっと中小企業に対していわば資金を供給することによって銀行の側も利益を上げる、こういうことで大いにやっていこうというような姿勢もそこここで現実見られているところでございまして、いや、そうじゃないんだ、金利は安くしておれに金を貸してもらいたいんだということについては、やはり当面は政府関係金融機関というようなところで対処していただくというような、デマーケーションというか、そういうようなことで今は日本の経済は運営していかざるを得ない状況にあるんではないか、このように考えております。
松原分科員 金利はある程度高くても貸すというのが私は現実的だろうと。そういうものすらまだまだマイノリティーであって、公的な金融機関というのは、やはりリスクヘッジをするために、現実は保証協会だって何だって物すごく今貸さないですよ。その現実を知った上での議論でないと私は成り立たないと思うのです。
 さっき、不良債権になっても、どうだろう、大丈夫だというふうな話もあったんですが、大丈夫じゃないので、大体RCCに行けば、当然これは手形割引はしてくれない、それからあと当座貸し越しもしない、当然のように盆暮れ支援はしないわけであります。それでもって五年間以内に健全になれと。なれるはずがないのでありまして、これはもう実際死刑執行所に入るような話になってくる。
 私は、それはもう何と言おうとそういう状況なんだという認識のもとにやらなかったら、先ほど言った百万人の失業者なんというのも、全然絵にかいたもちじゃなくて、現実にもっと大きなものになってしまうのではないかというふうに思うんですね。やはり手形割引、当座貸し越し、こういったものをきっちりやってもらう。受け皿も、それをやらないで受け皿といったって、さっき言った、オンリーワン企業がだめになってしまった。技術がもったいないですね。そういうふうに私は思うわけであります。
 金融マニュアルによると、一期目赤字、二期目が赤字だと自動的に破綻懸念先になるという明文化されたものはないにしても、現実はそうなっているという指摘があるわけなんですね。
 私はここで申し上げたいのは、一つは、検査官の裁量と数値化されるものというのはどうなのかということなんです。
 考え方として、例えば、一期目赤字、二期目赤字で自動的に破綻先で、じゃ引当金積み増ししましょうという議論をすると貸さなくなるわけですから、私は、これは非常に難しいんですが、さっき日本の経営的風土と言ったんですが、多くの中小企業の人に私がヒアリングすると、みんなそうしてくれと言うのは何かというと、少なくとも利息をきっちり払っている、銀行とのあれで、利息を払うのをちょっとあれしてくれとかそれは別にして、払っているところは、これはもういわゆる要注意先とか懸念先とかにしないでくれと。そういったところは、それは個人のオーナーの資産があるところも含めて、そういうところはやっているわけですよ。
 だから、大分時間がなくなってきて早口で恐縮なんだけれども、そういった利息を払っているところに関しては、一期目、二期目赤字でも、それはもう従来どおりという判断、それをやはり明文化しないといけないと僕は思うんですよ。
 どういうことかというと、結局、そういうものを明文化しないと、検査官が今度自分の過失になるわけですよ。おまえ、検査に行ったけれども、あんなもの許されるはずないだろう、そういうものをたくさん抱えている金融機関はだめだろうというふうに言われたとき、検査官は、彼は彼でリスクテークをしたくない、こういうふうに思うと思うんですよね。
 私があと申し上げたいのは、例えば、マニュアルの中にもいろいろとあります。ここに、中小零細企業については、当該企業の財務状況のみならず、当該企業の技術力、販売力、成長性、代表者等の役員に対する報酬の支払い状況、代表者等の収入状況や資産内容、保証状況と保証能力等を総合的に勘案しとか、それから、金融機関が行っている対応を、これは規模や特性に応じ十分なものとして云々かんぬんとか、意見を交換するとかある。
 この総合的に勘案するというときに、裁量を持って検査官は勘案するけれども、今言ったように、検査官は厳しくやっておかないと、この間も経済産業省の参考人招致である金融機関の方が言っていましたよ。彼らは厳しくチェックしないと、後から来た人間から、おまえ、こんなの不良債権だろう、この金融機関はこれだけ不良債権があるじゃないかと言われると彼はメンツがなくなるから、徹底的に厳しくやると。数値化されないものを総合的に勘案して、それをプラスの要素に入れるなんということは、現実あり得ないんですよ、これはあり得ない。私は、そういった意味において、この検査官というのはどうなんだろうと思うんですよね。検査官の資質の問題です。
 私は大臣に申し上げたいのは、検査官が実際に実務をやったことがあるのか。ないというデータをいただいていますから。実務をやったことがあるのか。例えて言うなら、泳ぎを知らない人間が水泳を人に教えられるのかというのと同じ議論なんですが、この検査官の資質についてどういうふうにこれから改善をしていくつもりなのか。例えば企業の実務をやっている税理士さんとかそういった人が入るなり、そういったことも含め、ちょっとお伺いしたいと思います。
柳澤国務大臣 まだ私たちも、新しい金融庁になって、関係機関の御理解をいただきながら、検査をより綿密に、また適正に行わなきゃいけないということで、定員増を図っているわけでございます。
 そういう中で、検査の質というものをどうやって確保していくか、これは先生御指摘のとおり大変重要な問題だというふうに考えておりまして、その中には、途中採用者、金融をやった者、あるいは会計をやった者というような者も適宜に取得すると同時に、何といっても若い人たちについては、これはもう研修をきちっとやるということを主にいたしております。
 同時に、仕事の実施においては、そういう不適切な裁量を振るうということを避けるために、私ども、事前の研修、それから、実際に検査をやっているときに、幹部が出かけていって、その検査を支店長さんとちょうちょうはっしやっているときに、その経営陣とひそかに会って、今うちの検査官が入っていますけれども、どんな状況だというふうに御報告を受けていただいていますかというようなモニタリングをいたしております。
 そして、最後には、どうしても意見が折り合わないものについては、別に上級というわけではないんですが、本庁あてに意見の申し出をいただいて、こういう意見の相違があって我々はこれは納得できないという申し出も受け付けいたす、こういうようなことで、裁量が不当な方向に発揮されないように、そういうようなことをやっております。
 同時に、もう一言言いますと、裁量を防ぐ、あるいはもっと本当に勘案すべきことを勘案するということを確保するために、今度事例集というのを出します。それを出しますと、もうこれはパブリックコメントに出しまして最終的な決定事項というふうにいたしますので、そういうことで、マニュアルに書いてあるようなことを本当に実施するように、確保するようにということをこれからやっていこうと考えております。
松原分科員 私は、金融機関が貸し出す、貸し付けている金が不良債権か否かを抽出して検査官がチェックする、そのときに、事例集はもちろん結構で大至急やらなきゃいけないけれども、それは経済産業省なんかと相談して、商工会議所なんかと相談してやってほしいんですが、やはり金融機関が貸し出すときの基準として、今まで数値化されないのれんとか技術力とか地域への貢献とか特許とか、数値化できるようにきっちりやらなければ、検査官もリスクヘッジをするわけだから、リスクテークしないんだから、おれの裁量でこれは認めたということをしないんだから、これをきっちりやらなかったらだめだと思うんですよ。実際、今まで意見申し出は百七十六件で、僕は少な過ぎると思っているんですよね、百七十六件という数も。そういったことは、まず第一点、ぜひお願いしたい。
 二つ目は、これはまた話が変わるかもしれませんが、金融庁は銀行に対して、これは多くの企業が私に言ってきているのは、担保を五億円なら五億円で設定していますよね、土地担保。実際には二億五千万しか残っていない。二億五千万返済したという場合に、それは担保をどんどんとスライドして減らしていく、こういう努力を、そういうシステムをしていないとやはりよくないというのもあるので、早口で言っているのでどこまでわかっているのかわかりませんが、これは検討してほしい。ぜひやってほしい。
 そして、最後にペイオフについてなんですが、情報公開なきペイオフというのは極めて非常識で、金融恐慌を引き起こす可能性がある。今、決算書だけではなくて科目の内訳までわかるような情報公開というのはまだやっていないんですよ、現実には。
 それで、今とりあえず当座あれしましたが、普通預金まで含めてのペイオフが行われたら大変な混乱になる。実際、中小金融機関というのは、これはやはり公的資金の注入も大手よりもはるかに少ない可能性がある。
松崎主査 時間が過ぎています。
松原分科員 そういったことも含めて、このペイオフの扱い、少なくとも情報公開をきちっとやるようなペイオフをしなければいけないということを申し上げて、もう時間が来てしまったので、本当はもっとゆっくりと議論したかったのですが、以上で終わります。
柳澤国務大臣 ペイオフとこの情報開示の問題は非常に重要だと我々も考えております。
 ただ、私が言っていることは、金融機関と預金者との関係というのは、もうかなり力関係が逆転しているということであろうと思います。したがって、預金者の方々もどんどん情報公開を要求されるということが大事だろうと思います。一方的に金融機関にこれやれ、あれやれとやられますと、コストばかり高くなって、せっかくの利益をどんどん、そんな読まぬような資料をたくさんつくってこれをむしばんでしまうということは私は避けるべきだ、本当に必要だと思う人はどんどん要求されたらいい、このように考えています。
松原分科員 終わりですけれども、それは預金者が金融機関にそれを言えないような強弱の関係があるということも認識をしないといかぬと思います。
松崎主査 これにて松原仁君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして金融再生委員会及び金融監督庁についての質疑は終了いたしました。
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松崎主査 これより通商産業省所管、中小企業金融公庫、中小企業信用保険公庫及び中小企業総合事業団について審査を行います。
 まず、概要説明を聴取いたします。平沼経済産業大臣。
平沼国務大臣 平成十年度及び平成十一年度通商産業省所管の決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 初めに、平成十年度の決算の概要でありますが、まず、一般会計歳入歳出決算につきまして御説明いたします。
 通商産業省主管の歳入でありますが、歳入予算額二百三十七億円余に対し、収納済み歳入額は二百二十五億円余であり、差し引き十二億円余の減少となっております。
 次に、通商産業省所管の歳出でありますが、歳出予算現額一兆七千六百十九億円余に対し、支出済み歳出額は一兆六千四百五十七億円余でありまして、その差額一千百六十二億円余のうち、翌年度へ繰り越しました額は八百二十六億円余であり、不用となりました額は三百三十六億円余であります。
 次に、特別会計について申し上げます。
 第一に、電源開発促進対策特別会計でありますが、収納済み歳入額は五千八百四十億円余であり、支出済み歳出額は三千五百二十三億円余でありまして、その差額二千三百十七億円余のうち、翌年度へ繰り越しました額は四百億円余であり、剰余金は一千九百十七億円余であります。
 第二に、石炭並びに石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計でありますが、収納済み歳入額は一兆四百三十四億円余であり、支出済み歳出額は五千七百六十五億円余でありまして、その差額四千六百六十八億円余のうち、翌年度へ繰り越しました額は一千八百六十五億円余であり、剰余金は二千八百三億円余であります。
 第三に、アルコール専売事業特別会計でありますが、収納済み歳入額は五百二十億円余であり、支出済み歳出額は三百二十九億円余であります。
 第四に、貿易保険特別会計でありますが、収納済み歳入額は二千八百三十二億円余であり、支出済み歳出額は二千七百七十七億円余であります。
 第五に、特許特別会計でありますが、収納済み歳入額は一千六百八十三億円余であり、支出済み歳出額は八百七十一億円余でありまして、その差額八百十一億円余は全額剰余金であります。
 次に、平成十一年度の決算の概要でありますが、まず、一般会計歳入歳出決算につきまして御説明いたします。
 通商産業省主管の歳入でありますが、歳入予算額二百五十九億円余に対し、収納済み歳入額は三百七億円余であり、差し引き四十八億円余の増加となっております。
 次に、通商産業省所管の歳出でありますが、歳出予算現額一兆四千三百四十二億円余に対し、支出済み歳出額は一兆二千八百十八億円余でありまして、その差額一千五百二十三億円余のうち、翌年度へ繰り越しました額は一千二百三十二億円余であり、不用となりました額は二百九十一億円余であります。
 次に、特別会計について申し上げます。
 第一に、電源開発促進対策特別会計でありますが、収納済み歳入額は五千九百八十二億円余であり、支出済み歳出額は三千四百七十四億円余でありまして、その差額二千五百七億円余のうち、翌年度へ繰り越しました額は四百七十四億円余であり、剰余金は二千三十三億円余であります。
 第二に、石炭並びに石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計でありますが、収納済み歳入額は一兆百三億円余であり、支出済み歳出額は五千二百八十億円余でありまして、その差額四千八百二十三億円余のうち、翌年度へ繰り越しました額は一千七百八十一億円余であり、剰余金は三千四十二億円余であります。
 第三に、アルコール専売事業特別会計でありますが、収納済み歳入額は五百五十七億円余であり、支出済み歳出額は三百六億円余であります。
 第四に、貿易保険特別会計でありますが、収納済み歳入額は一千六百七十二億円余であり、支出済み歳出額は一千五百七十四億円余であります。
 第五に、特許特別会計でありますが、収納済み歳入額は一千七百五十五億円余であり、支出済み歳出額は九百三億円余でありまして、その差額八百五十二億円余は全額剰余金であります。
 以上をもちまして、平成十年度及び平成十一年度における通商産業省所管の一般会計及び特別会計の決算の概要に関する御説明を終わります。
 何とぞよろしく御審議のほどお願いをいたします。
松崎主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院円谷第五局長。
円谷会計検査院当局者 平成十年度通商産業省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。
 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項九件であります。
 検査報告番号一六六号から一六八号までの三件は、地域産業創造技術研究開発費補助金の経理が不当と認められるものであります。
 この補助金は、中小企業者が行う新製品、新技術等に関する研究開発事業で、新規性を有するものとして都道府県知事の認定を受けた研究開発等事業計画に基づくものに対し、都道府県が補助する場合、その事業に要する費用の一部を国が補助するものであります。
 本院がその経理の適否について検査いたしましたところ、一、補助の対象となった機械装置等を購入していなかったものが二件、二、補助の対象となった機械装置等を購入していなかったり、補助の対象とならないものを事業費に含めていたりしていたものが一件ありました。
 これらは、いずれも本補助金の経理として適切を欠いており、ひいては補助の目的に沿わない結果になっていると認められたものであります。
 また、検査報告番号一六九号から一七四号までの六件は、中小企業設備近代化資金の貸し付けが不当と認められるものであります。
 この資金の貸付事業は、都道府県が、国の補助金と自己資金等によって資金を造成し、設備の近代化に必要な資金の調達が困難な中小企業者に対して、設備の設置に必要な資金の額の二分の一以内の額を、原則として五年の償還期間で、無利子で貸し付けるものであります。
 本院がその貸し付けの適否について検査いたしましたところ、一、中小企業者が貸し付けの対象となった事業費より低額で設備を設置しているのに、貸付対象事業費どおりの価格で設置したとして貸し付けていたものなどが四件、二、設備そのものを設置していないものに貸し付けていたものが一件、三、中小企業者が貸し付けの対象となる事業費を過大に計上しているのに、これを貸付対象事業費として貸し付けていたものが一件ありました。
 これらは、いずれも本資金の貸し付けとして適切を欠いており、ひいては補助の目的に沿わない結果になっていると認められたものであります。
 引き続き、平成十一年度通商産業省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。
 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項七件であります。
 検査報告番号一七三号から一七五号までの三件は、地域産業集積中小企業等活性化補助金及び創造技術研究開発費補助金の経理が不当と認められるものであります。
 地域産業集積中小企業等活性化補助金は、地域産業集積の活性化等に寄与することを目的とし、中小企業者が行う新商品・新技術開発事業、販路開拓事業等に要する経費の一部を国が都道府県を通じて補助するものであります。また、創造技術研究開発費補助金は、中小企業製品の高付加価値化等に資することを目的とし、中小企業者が行う新製品、新技術等に関する研究開発事業に要する経費の一部を国が直接または都道府県を通じて補助するものであります。
 本院がその経理の適否について検査いたしましたところ、一、補助の対象とならない補助事業終了後の経費などを補助対象事業に含めていたものが一件、二、補助の対象となった機械装置等を購入していなかったものが一件、三、補助の対象とならないものを事業費に含めていたり、補助の対象となった機械装置等を購入していなかったりしていたものが一件ありました。
 これらは、いずれも本補助金の経理として適切を欠いており、ひいては補助の目的に沿わない結果になっていると認められたものであります。
 また、検査報告番号一七六号から一七九号までの四件は、中小企業設備近代化資金の貸し付けが不当と認められるものであります。
 この資金の貸付事業は、都道府県が、国の補助金と自己資金等によって資金を造成し、設備の近代化に必要な資金の調達が困難な中小企業者に対して、設備の設置に必要な資金の額の二分の一以内の額を、原則として五年の償還期間で、無利子で貸し付けるものであります。
 本院がその貸し付けの適否について検査いたしましたところ、一、借り主が、設備の設置に必要な長期資金を金融機関から借り入れた後に重複して貸し付けを受けたものが二件、二、中小企業者が貸し付けの対象となった事業費より低額で設備を設置しているのに、貸付対象事業費どおりの価格で設置したとして貸し付けていたものなどが一件、三、中小企業者が貸し付けの対象となる事業費を過大に計上しているのに、これを貸付対象事業費として貸し付けていたものが一件ありました。
 これらはいずれも本資金の貸し付けとして適切を欠いており、ひいては補助の目的に沿わない結果になっていると認められたものであります。
 次に、平成十年度中小企業金融公庫の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
 引き続き、平成十一年度中小企業金融公庫の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
 次に、平成十年度中小企業信用保険公庫の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
 引き続き、平成十一年度中小企業信用保険公庫の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
 次に、平成十一年度中小企業総合事業団信用保険部門の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
 以上をもって概要の説明を終わります。
松崎主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。平沼経済産業大臣。
平沼国務大臣 平成十年度及び平成十一年度の決算検査報告において掲記されております事項につきましては、会計検査院の御指摘のとおりでございまして、まことに遺憾に存じております。
 これらの指摘事項につきましては、直ちにその是正の措置を講じたところであり、今後このような御指摘を受けることのないよう一層努力をしてまいりたいと思います。
松崎主査 この際、お諮りいたします。
 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
松崎主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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松崎主査 以上をもちまして通商産業省所管、中小企業金融公庫、中小企業信用保険公庫及び中小企業総合事業団についての説明は終わりました。
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松崎主査 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。永田寿康君。
永田分科員 大臣、お疲れさまでございます。円谷局長もお疲れさまでございます。
 民主党の永田寿康でございます。本日は、まず、通告にはないんですが、冒頭、一つ重大な、政府の決算に関する姿勢で重大な問題が明らかになりましたので御指摘をしたいと思います。
 明日、私は、旧郵政省に関する決算について質疑を分科会ですることになっておりますが、ここで渡切費に関するお話をお伺いしようと思っておりました。先日、実はこの渡切費につきましては、平成十二年分と十三年の上半期分につきまして郵政事業庁の監察局が検査をいたしまして、不正な使用が何点か認められたということで、特定郵便局長のうち数名が、十六名ですか、処分され、そして、三千数百万円の不法な支出があったということが明らかになっております。
 なぜこれをもう少し前にさかのぼらないのかということを問いましたところ、文書の保存期間が一年間であるために書類がない、こういうお話でありました。ちょっと待ってくださいと。平成十年と十一年の決算はこれから国会で審議をされるはずではなかったですかと。そこで渡切費に関する書類が保存期間が一年であるということを理由にして処分されるようでは、これは決算の審議のしようがないわけですね。このようなことは、やはりまず書類を廃棄したその当の本人たちの、責任者の問題もさることながら、書類の保存期間を一年と定めた責任者もまた重大な責任を負っているわけでございます。
 どういう人がこの保存期間の決定についてかかわっていたかということを問いましたら、実は、当初、この渡切費に関する文書の保存期間は三年で制度がスタートしましたが、平成十二年に一年に改めました。これは省庁再編に伴うものでございます。一年に改め、そして、会計検査院からこれでは過去に遡及することができないという指摘を受けて、また平成十四年の二月に三年に戻す、こういうことになっております。
 この二回にわたる文書の保存期間の変更は、決裁が、最高責任者が部長です。要するに、役人がやっているんですね。もちろん、文書の保存期間というのは、これは内規、単なる政府の内部の内規でありますから、国会の決算審議に迷惑をかけるようなことがあっては絶対ならないと私は思っているんですね。
 これは非常に重大な問題ですから、あした、局長、申しわけないんですが、これは郵政の担当のところでやらせていただきたいと思います。
 大臣に、ぜひこのことに関する感想を一言お願いしたいのと、もう一つは、ゆめゆめ今回の通商産業省関係の平成十年、十一年の決算に関する書類が、保存期間の短さによってなくなってしまう、廃棄されてしまうというようなことがないと私は思いますけれども、ぜひそこを調べていただきたい。そして、調べた上で、不適切な文書の保存期間があるならば、できるだけそれを延ばしていただく。慣例からいけば、大体二年に一回、二年分の決算を審議するというのは、これは国会の慣例でありますから、その慣例に従って、決算が終わるまでは絶対に文書を捨てない、このようなことをお約束いただきたいんですが、まず大臣、いかがでしょうか。
平沼国務大臣 それは大変重大な御指摘だと思っています。その経緯に関して、三年であったのを一年にする。さらにまた一年から三年に戻す。これはやはりどう考えてもおかしいことだと思います。ですから、決算を厳密にやるということでは、やはりそのことはきちっとしていかなきゃいかぬと思います。
 当省関係におきましては、私どもは、ゆめそういうことはないと思っておりますけれども、よく調査をいたしたい、こういうふうに思っております。
永田分科員 では、ぜひ内部の調査もしていただいて、そして保存期間がいたずらに短くならないように注意をしていただくとともに、できれば、この保存文書の期間を定めるときに大臣決裁にしていただきたい、このように思う次第であります。
 また、局長にも一つお願いをしたいのですが、会計検査をする上で保存期間が短過ぎて証拠書類がないというようなことがあれば、これは会計検査院の使命を全うすることができないわけですから、ぜひ各省庁に呼びかけをして、会計検査の機能に支障のないように文書の保存期間を定めるということをぜひお声かけをしていただいて、どのような措置がとられたかの報告も受けるように、このようにお願いしたいのですが、局長、一言お願いできますでしょうか。
円谷会計検査院当局者 通常、会計検査院では証拠書類を五年間保存しておりまして、毎年検査院に送っていただいて検査をしている。
 渡切費につきましては、渡切費を支給した段階で支出が終わっているということで、従来は手元保管ということをお願いしておった。我々も三年間保管してあれば検査には支障がないだろうということでおったわけですけれども、昨年いろいろな問題が出てまいりまして検査をいたしましたところ、一年に変更されていたということで、これは遡及して検査するには非常に支障がある、検査院は通常はその年度の決算検査をするわけですけれども、問題があればさかのぼるということにしておりますので、それができないというのは非常に問題であるということで、昨年、検査報告にその旨を掲記いたしまして、郵政事業庁の方ではそれを改善する、改善というかもとに戻すということで今年度検査を、昨年度の検査をしておりますが、一昨年の検査にも支障ないように、証拠書類は二年間でありますけれども、とりあえずは保管して検査をしておる。
 ほかのものにつきましては、通常の原則の五年間を守っていただいていると思いますので、検査に支障はないと思っておりますが、今回のことについては、先生御指摘のような点があったということは事実であります。
永田分科員 改めて会計検査院には、各省庁にお声かけをして、こういう文書の保存期間にかかわらず、国会での決算審議が終わる前に書類をゆめゆめ破棄することのないようにというふうにお声かけをしていただきたいと思います。
 さて、本題に入りますが、実は私、昨年の分科会でNHK関係の予算を審議して以来、NHKについてずっと詳しく調べておったんですが、その中で、地上波デジタル放送の話が出てきました。私、これはインターネットがここまで急速に普及しておる中で、地上波デジタル放送というのは、果たして費用対効果が国民の側から見ていいのか悪いのかということに大きな疑義を持ちまして、ぜひもう少し、ブロードバンドを普及させることによって、国民負担が少ない形で放送通信文化を国民に楽しんでいただく、このような形に持っていきたいなというふうな姿勢でお話をしたいと思います。
 どういう観点かということをちょっとお話ししますけれども、結局、地上波デジタルというのは、放送塔の設備の変更に二千数百億円かかるというようなことが去年の十二月ぐらいに出てきまして、そのコストが余りに過大ではないかということで、二〇〇三年から電波を出し始めるということが、これがだんだん怪しくなってきたということなんですが、一方で、電波を出す側の工事は二千数百億円で済むかもしれませんけれども、テレビの受信をする側は、そのデジタル放送の受信をするための変換装置を各テレビにつけなければならない。
 今の計画だと、二〇一一年には今のアナログ波の電波はとまってしまって、今使われているテレビは一切映らなくなってしまうわけですから、国民が放送文化を十分に楽しもうと思えば変換装置をつけなきゃいけない、こういうことになるわけですね。その値段が一台当たりおよそ三万円程度だろうと言われています。世の中にテレビはおよそ二億台あると言われていますから、六兆円の国民負担が発生するわけですね。
 これはもちろん政府から予算をつけるわけではありませんが、国民の側からしてみれば、莫大な負担なわけです。果たして六兆数千億円で何ができるかと言われれば、例えばハイビジョン並みの画質が提供できるという話ですね。しかし、インターネットで、今ブロードバンドで、ハイビジョン並みの映像で二時間の映像を受信すれば、わずか八秒で済んでしまうわけですよ。しかも、これは放送時間と余り関係ないわけですね。そういうことを考えると、ハイビジョン並みの映像を受けるというのであれば、これはブロードバンドで十分じゃないかという話があります。
 双方向だという話があるわけですね、地上波デジタルは双方向でできると。ちょっと待ってください。この間辻元清美さんがおやめになったときの夕方のニュースは、視聴者からのメールをテロップでばんばん流したんですよ。こういうのは双方向と言わないんですか。今双方向でやろうと思ったら、視聴者がインターネットにつなげばそれで実現できるわけですよ。双方向、もう別にブロードバンド時代には一々テレビでやる必要はないでしょう。
 いや、チャンネルがふえるんですよという話がありました。ちょっと待ってください。百二十チャンネルふえるというけれども、六兆円の国民負担で百二十チャンネルふやすといえば、一チャンネル当たり五百億円でしょう。インターネットというのは、ホームページの数だけチャンネルがあるのに等しいんですよ。何十億ページもあるんです。一チャンネルふやすのに、サーバー一個専用のものを持ったって、せいぜい百万円でしょう。チャンネルをふやすといったって、いかにも効率が悪くありはしませんかと。
 そうすると、今度は一斉同時放送ですというわけですよ。一斉に数十万人、数百万人の人に同じ情報を届けるのはインターネットでは無理だろう、こういう話がありますね。では、一斉に数十万、数百万人の人に同じ情報を届ける必要性があるようなコンテンツは何かといったら、ニュースや災害時の安否確認情報だというわけですね。ちょっと待ってくださいよと。鈴木宗男さんの涙をハイビジョンで見たい人はいますか。そんなものはアナログ波でもできるわけですよ。
 だから、要は、ニュースや安否情報はアナログ波で今までどおりやっていただいて、あとは娯楽として楽しむようなもの、ハイビジョン映像がぜひ必要なものは、映画とかドラマとかあるいは美術館の探索とか、「生きもの地球紀行」みたいな番組は、ぜひこれはもうブロードバンドでやるべきだ、私はこういうふうに思っているわけですが、このようなコンテンツ別のすみ分け論というものについて、経済産業省の担当者である平沼大臣はどのようにお考えでしょうか。
平沼国務大臣 この問題について大変よく調べられている、そういう感想は持っています。また、私は自由民主党に所属しておりますけれども、自民党に所属している議員の方が雑誌に問題点を書かれたのも読ませていただきました。
 ITは、インターネットという新たなインフラの上で、これはもう釈迦に説法で恐縮ですけれども、音声や映像を含めた多様なコンテンツが提供されるところに意義がある、こういうふうに私は理解しております。今後、ブロードバンド化が進展してまいりますと、これまでの放送ネットワーク上で提供されてきたようなサービスと同等のサービスがブロードバンドの上でも徐々に提供をされるようになる、こう思っています。
 ここはいろいろ御意見があるところだと思いますけれども、国民の前により多くの選択肢が提供されるということにつながるわけでございまして、より多くの映像サービスが放送ネットワークやブロードバンドを通じて提供される中で、国民が主体的な選択によりまして、おのおののコンテンツにふさわしい伝送路が選択されて、その結果としてコンテンツのすみ分けが確立されていくんじゃないか、そういうことはある意味では重要じゃないかと思っています。
 三月八日に産業構造審議会、これはよく御承知だと思いますが、情報経済分科会では、こういう観点に立ちまして、既存の放送事業者の公益的価値を認めつつ、ブロードバンドの発展のためには、ブロードバンドには既存の規制というものを適用しないで自由な競争を確保する仕組みが重要である、こういう提言がなされたところであります。したがって、非常に大きな問題点でありますから、私どもとしては、慎重にそういったことを考えてこれから取り組んでいかなきゃいけない、そういう認識を持っています。
永田分科員 それで、要するに国民の側から見てコストパフォーマンスのよい政策をぜひ実施していただきたいという気持ちで、六兆数千億もかけて地上波デジタルをやるよりは、やはりブロードバンドを利用して高画質の映像を、あるいはコンテンツをお届けする方がコスト的に有利なのではないか、こういう視点でお話をしておるわけでございます。
 そこで、国民の負担感というものもひとつ議論をしてみたいと思います。
 というのは、このままいくと二〇一一年にアナログ波の電波はとまってしまいます。そこで、放送文化を享受しようと思えば、いや応なく国民は一台三万円からの変換装置を買わなきゃいけないわけですよ。一方で、今ブロードバンドを事実上受信しておるコンピューターというのは、十五万円、二十万円する代物ではありますけれども、みんな何の強制もなく、自発的に買っているわけです。それは、金額としては三万円と二十万円かもしれません。しかし、国民の負担感という目から見れば、これは明らかに、国民は喜んでコンピューターを買って、インターネット文化を楽しんでいるわけですね。
 そういう意味でいえば、やはり負担感というものも考えて、経済産業省の大臣ではおられますけれども、一国務大臣として、ぜひ、地上波デジタルはコストパフォーマンスが悪いからもう一回見直してくれないか、その分はおれたちが頑張るからというふうにおっしゃっていただきたいんですけれども、いかがでしょうか。
平沼国務大臣 いろいろな問題点が御指摘のようにあるということは、私ども認識しています。そういう中で、国民の選択肢が広がり、国民のニーズがどうか、そういうことを私どもはしっかりと見きわめて、これから総合的に取り組んでいかなきゃいけない、そういう認識を持っています。
永田分科員 なぜこのような旧郵政省、今は総務省ですが、地上波デジタルについてこのような国民不在の議論、国民不在の政策が行われようとしているかといいますと、結局、地上波デジタルを推進するための協議会というのがあります。総務省とNHKと民放の代表から成るものです。冗談じゃありません。受信者の利益を代弁する人はそこにはいないんです。僕はそこは指摘したいんです、そこで業者行政に陥っていると。そういうことは指摘しなければならないんですが、実は、このお寒い状況はIT戦略会議も同じです。いわばインターネット文化のユーザーの声を代弁する人は、メンバーには入っていないわけです。学者であるとか、あるいはメーカーの人であるとか政治家であるとか、こういう人が入っているわけです。
 ぜひ同じテーブルに受信者の利益を代弁する人も入れていただきたいんですが、お考えはいかがでしょうか。
平沼国務大臣 私もメンバーでございまして、担当副本部長をIT戦略本部でしております。これは御承知のように、IT基本法に基づきまして、すべての国務大臣とIT関係の有識者から構成されています。具体的には、ITメーカーや通信会社の経営者だけでなくて、地方自治体、県知事さんが入っておりますし、それから大学教授、そしてユーザーとして、これは一分野ですけれども銀行の経営者、そういった幅広い分野から、IT社会の形成に関してある意味では造詣の深い方々が参画をされています。
 確かに、議員御指摘のとおり、議題の内容に応じて、やはりそれに直接かかわるそういった有識者、あるいは経験を持った人たち、そういった人たちから御意見を伺うことは私は必要だと思っています。たまたま先般、通信・放送のまさに融合をめぐっての戦略本部の議論の場には、放送関係者にも入っていただき、今言ったような方々と議論があった。ですから、御指摘のとおり、そういった使う側の方たちの意見もしっかりくみ上げるような、そういう形にすることは望ましいことだと私は思っています。
永田分科員 ただ、ぜひもう一歩踏み込んでいただきたいんです。つまり、政策の意思決定をする上でユーザーの意見を聴取する、これを参考にするというのではなくて、政策を決定する場で積極的に発言力を持ってそこにいられるような形で参加をさせていただきたいんです。ぜひそのことを前向きに検討していただきたいと思います。これは国策を形成する上で非常に重要なことです、この人事は。ですから、ぜひ副本部長であられる大臣には、旗振り役となって、民間人というかユーザー、本当に普通のユーザーで構いませんから、ちゃんと発言力を持つ形で、決定権の一部を担うような形でまぜていただきたいなというふうに思います。
 一方で、ブロードバンドも、これから普及させていく上で、国からの財政的な支援というのは大変大事なものになろうかと思います。私が気にしておりますのは、地上波デジタル放送は、今度実現するのに電波利用料というのを使うわけです。これは携帯電話、皆さんお持ちだと思いますが、一台当たり五百四十円、一年間に払っているわけです。NHKは、電波を使う上で二億円、国庫に納めているわけですね。この電波利用料というものは、税金ではありません。あくまで、電波を使用する者に対して課金をするということですね。
 その趣旨は何かというと、電波の使い方に競争原理を導入しようということです。つまり、よりたくさんお金を払ってくれる人はより高度に電波を利用し、要するに、電波の利用に関して高度な知識を持ち、高度な利用をすることによって社会に貢献しているだろう、こういうような観点から、よりたくさんのお金を払える人に、より優先的に電波を割り当てるという観点からプライシングがされている、価格がつけられるというものであります。
 こういう観点から価格をつけられた電波は、確かに、使えば課金はされて国庫に対してお金が入ってくるかもしれませんけれども、入ってきたものは、別に、政策の本来の目的とは全く違う、意味がない話なんです。つまり、副産物なんですよ。そのプライシングをするということ自体が政策の目的なのであって、そこで入ってきたお金というのは、別に、どこに使おうが勝手というお金なわけですね。
 その証拠に、このお金は一般会計に入っています。現在は、旧郵政省、今は総務省ですが、ここが電波関係の政策を推進する上でさまざまなお金に使っている、そういう話でありますが、これには政策的に言えば根拠がありません。もう一般会計に入ったものですから、電波関係のものに使う必要は全くなくて、広く国民全体の利益になるように使われるべき筋のお金であります。決して少額のお金ではありません。
 ぜひ、経済産業大臣におかれましては、総務大臣とお話し合いをして、放送と通信というのは今後一体のものであるし、また、iモードの利用者も電波利用料を払っているわけですが、これは、現在は総務省関係の、郵政省関係の予算に使われているわけですよ。総務省が独占しているわけですね。このような電波利用料の使い方は甚だ不適切で、国民の資源配分という観点から見ても最適とはとても言えない状況にあるので、ぜひ、せめて、放送と通信と両方合わせた政策に使っていこう、ブロードバンドの普及にも使っていこう、このような発言をしていただきたいと思いますが、お考えはいかがでしょうか。
平沼国務大臣 御指摘のように、電波利用料というのは一般会計に繰り入れられています。しかも、電波法で、その使途は、不法電波の監視業務や電波利用の効率化など、こういう形で定められているところであります。また、昨年の電波法の改正におきまして、電波の有効利用に資するとの観点から、地上波放送のデジタル化のためのアナログ周波数変更対策という使途が加えられたと私は認識しております。
 また、携帯電話など、無線によるインターネット利用が今後ともますます発展していくものと期待されておりまして、限られた資源とも言える電波を効率的に利用していくことというのは、非常に私は重要なことだと思っています。また、地上波放送のデジタル化が図られれば、電波利用の効率化につながって、また、IT社会の発展にも私は資するものだと思っております。
 そういうことで、今、総務省と私どもにそういう御指摘がありました。そういう形で、これから総務省と連携をとりながら、どういう効率的な使い方があるか、そういうことは検討していかなければいけないと思います。
永田分科員 事ほど明らかになったように、お金の面でも、総務省と経済産業省はすみ分けをしている。そして、例えば電波は向こうが所管している、通信ケーブルはこっちが所管しているみたいな、いわゆる縦割りが非常に目立つんですね。これが政策決定の方向をゆがめているのみならず、やはり税金その他、電波利用料もそうですけれども、資源配分を大きくゆがめているのは明らかであって、ぜひ、その縦割りの弊害を打破するという意味でも、経済産業大臣には一汗かいていただきたいなというふうに思います。
 一方で、この縦割りの弊害だと思われる事件が一つ起こりました。この間の総務委員会で、NHKの予算を審議している最中に私が出したお話でございますが、「地上波デジタルの断末魔」のお話をしたいと思います。
 経済産業省所管の経済産業研究所というところがあります。ここにおります技術系の職員池田信夫氏が、自分のメーリングリストに個人的な立場で、「地上波デジタルの断末魔」というメッセージを出しました。そこで、要するに、二〇〇三年から電波を出すことは恐らく難しいだろうというようなことをNHKの理事会が決定したということを外から聞いて、漏らしちゃったんですね。どうやらそれは本当らしいんですよ。
 一月の理事会で、NHKの海老沢会長が、二〇〇三年から電波を出すのは難しかろうというような発言をして、ほかの理事がそれに同意したというようなことはどうやら本当らしいのですが、それが外に漏れるのを恐れて、その後に、この議事はなかったことにしようということで隠滅工作がはかられた形跡があります。
 問題は、この池田信夫氏なる個人がメーリングリストで書いたところ、それをNHKの職員が見つけまして、結局何が起こったかといったら、NHKの山田理事からこの池田信夫氏に対して、根拠のないことを言うなということで訂正と謝罪を求める内容証明郵便が送られてきています。しかも、その末尾には、満足いく回答が得られない場合には法的措置も検討しますということが書き添えられています。これは、弁護人の名前も入っている正式の文書でございます。内容証明郵便になっています。
 同時に、経済産業省の官房長に対して、このようなものを、私どもNHKの山田理事は、私たちはこの池田信夫氏に送ったのでよく気をつけるように、このような指摘が官房長に対しても通知がなされておりますが、官房長、事実関係はいかがでしょうか。
林(良)政府参考人 ただいま御指摘ございましたように、NHKの局長の方がおいでになりまして、事実と違うことを言われたのでこのような謝罪を求める内容証明つきの郵便を出したので、念のためにお知らせしておきますというお話でもって来られました。
永田分科員 池田信夫氏の発言は、経済産業省からの指示でやったんでしょうか。
林(良)政府参考人 もちろんそんなことはございませんで、経済産業研究所というのは、御承知のように、独立行政法人として独立した存在でございますし、特に研究関係でございますので、非常に自主的な活動を許容されておるものでございます。
 さらに、本件につきましては、経済産業研究所の組織としての見解でもございませんで、むしろ、個人の見解として発せられたものというふうに聞いております。
 したがいまして、いずれにしても、経済産業省なり経済産業研究所という組織との関係ではなくて、池田研究員とそれからNHKの方との関係だと承知しております。
永田分科員 なぜこれは指示があったかどうかをお聞きしたかというと、要するに、NHKがここまでの過剰反応をしたということは、恐らく、池田信夫氏がかつてNHKの技術者であったということも関係があろうかと思いますが、しかし、どうやら図星に当たったから痛かったんじゃないのかなというような気がするわけですよ。
 正直言って、官房長にこのようなお話をするというのはとんちんかんな話で、僕は、何か町金の取り立てみたいな感じがするんですよ。要するに、お金を返さないと職場に押しかけていって上司の前で騒ぐぞ、そんな印象を受けるわけです。関係ないですからね。ですから、そういう指示がなかったということは、ましてや、報道と言論の自由を体現するべきNHKが言論封鎖のようなことをするわけですから、これはよほど図星に当たって痛かったんじゃないのかなという推測を立てるわけです。
 一方で、しかし、逆読みすると、これはある種、NHKの側としてなぜこのような過剰反応をしたのかというのは、もう一つは、常日ごろから、やはりブロードバンド勢力と地上波デジタル勢力の代理戦争のようなことがあっちこっちで行われておるわけですよ。これは国民にとっては大変不幸なことでありまして、もっと仲よくして、コンテンツ、中身によって、こっちはブロードバンド、こっちは放送、アナログでやるんだ、そういうような話をしていただいて、国民負担が最小限の中で最大の効果を得るような政策のミックスというものをぜひ考えていただきたいのです。
 二〇一一年まで間がありません。デジタル放送が始まると、本当に二〇一一年には我々は、先ほど、放送通信文化の選択肢をより広げるというようなお話を大臣はなさいましたけれども、二〇一一年にアナログ放送の電波がとまってしまったら、我々は放送文化を一部失う、選択肢がなくなってしまうというような人も出てくるわけですよ。これは大変恐ろしい事態なので、ぜひそのようなことにならないように、放送と通信の一体化した行政、これを考えていただきたいと思うのですが、大臣、それについての御決意はいかがでしょうか。前向きにお願いします。
平沼国務大臣 今、この経済産業研究所のことに関して、私はちょっと驚きながら聞かせていただきました。私どもとしては、やはり独立行政法人で、その中の人の問題意識を持って個人の意見として言われたことであるから、そういう干渉というのはいかがなものかなと私は率直に思っています。
 それから、これから、そういった地上波デジタルを含めてのこれからの放送行政、それから放送政策、そういったもののあり方については、各般の意見をよく聞きながら、どれが最適か、そういうことにやはり力点を置きながら議論をしていくことは、御指摘のとおり非常に必要なことだ、このように私は思っています。
永田分科員 各般の意見を聞きながらというお話がありましたので、最後に、これからの政策決定のあり方について一言指摘をして、終わりにしたいと思います。
 つまり、自民党の中でも法案の事前審査制をやめるというお話がございます。内閣に一元化して、政策決定システムをつくっていくべきだ、このような話があります。各般の意見を聞くのは大変結構なんですが、ぜひ議論は国会の中でやっていただきたいんですよ。事前審査、特に自民党を初めとする与党の部会の中での審査というのは、これが非常に充実をしておるから、だから委員会では質問を与党は短くてもいいんだというお話がありますが、部会の中で行われている議論をぜひ国会でやっていただきたいんですね。
 それはなぜかというと、国民から見えないわけですよ、議事録もない、非公開の場でやるわけですから。よって、国民は政治を物すごく遠いものと感じてしまったわけですね。これは議会制民主主義の崩壊というべきであって、国会の空洞化の大きな原因はそこにあるわけですよ。ですから、ぜひ、各般の意見を聞く場合には、まずもって国会議員の意見をきちっと聞いていただきたい。
 大臣も出られたと思いますが、よくタウンミーティングをやっています。冗談じゃありません。国民の意見はまずもって国会議員が代弁しているのであって、まずは国会議員の声に真摯に耳を傾けていただきたい。ですから、私たちが委員会の開催をお願いしたり本会議の開催をお願いしたら、ぜひ、嫌がらずに開いて、ちゃんとお話を聞いていただきたい。一般質疑も時間をたっぷりとっていただきたい。もちろん、その後で、まだ足りないところがあるかもしれないからといってパブリックコメントを求めるのは大いに結構ですが、国会議員との議論というものをもう少し誠実にやっていただかないと議会制民主主義も三権分立も成り立ちませんから、ぜひそこは誠実に今後は対応していただきたいと思います。
 御指摘をいたしまして、終わりたいと思います。ありがとうございました。
松崎主査 これにて永田寿康君の質疑は終了いたしました。
 次に、金田誠一君。
金田(誠)分科員 大臣、御苦労さまでございます。民主党の金田誠一でございます。
 きょうは、フランチャイズシステム、とりわけコンビニエンスストアの問題点について質問をいたしたいと思います。
 まず、フランチャイズにおけるコンビニの問題、どのように認識しておられるかということについてお尋ねをしたいと思うわけでございます。
 ここにブックレットがございます。「コンビニフランチャイズはどこへ行く 「地獄の商法」? 適正化への法規制が必要だ」というブックレットでございますが、それぞれ大学の先生方の書かれたしっかりした内容だと思っております。こういう薄いものですから、時間がございましたら、ぱらぱらとでもごらんになっていただければありがたいなと思うわけでございますけれども。
 このブックレットの冒頭に、一九九七年から九八年にかけて経済関係誌のタイトル、これが紹介されております。このタイトルだけでももう内容は推測できるわけでございますけれども、例えば、「年中無休で働けど……コンビニ残酷物語」これは週刊朝日。「コンビニ契約の地獄」財界展望。「フランチャイズの地獄」週刊ダイヤモンド。「FCはトラブルビジネスだ」週刊東洋経済。「カスミ集団訴訟が示すコンビニフランチャイズの奴隷の契約」これはエコノミスト。こういう状態でございます。
 経産省、中小企業庁でも、この報道を知らないわけはないと思うわけでございますが、この実態は今もって全く変わっておらないというところが問題だと思うわけでございます。
 それでは、フランチャイズシステムの代表格であって、一見華やかに見えるこのコンビニエンスストアが、なぜ地獄の商法、奴隷の契約などと呼ばれるのか。それがきょうのお聞きをしたい趣旨でございます。
 私は、二年ほど前からこの問題に取り組んでおりまして、公取あるいは中小企業庁の皆様とも何度となく協議を重ね、多数のコンビニ店のオーナーさん方から実態をつぶさに聞いてまいりました。コンビニフランチャイズの問題点、おおむね知ることができたと自分なりに思っているところでございます。
 そうした立場から申し上げれば、まず第一は、コンビニ店は夫婦二人で二十四時間働いて、それでも食うや食わずの生活、たまるのは借金ばかり。やめたくても、高額な違約金を請求されるのでやめることもできない。まさに加盟店にとっては地獄、奴隷でございます。
 一方、フランチャイズの本部の側でございますが、出店に当たっての費用はほとんどが加盟店の負担。その店舗が赤字であろうがなかろうが、ロイヤルティー収入は確実に確保される。閉店するときには高額な違約金を請求できる。これは本部にとってまさにモラルハザードのシステムでございます。こうした中で、オーナーの自殺、夜逃げ、一家離散、これが相次ぎ、問題は経済問題を通り越してもはや社会問題、こういう状況だと思います。
 本来、フランチャイズシステムとは、本部も加盟店もそれぞれが独立した事業者として、加盟店の繁栄があって本部が繁栄する、本部の繁栄のもとで加盟店も繁栄するという共存共栄の関係でなければならないわけでございます。
 今日、地獄の商法、奴隷の契約と言われる実態を解決するためには、共存共栄を実現するための新しいルールづくり、フランチャイズ新法の制定が求められている、こう思います。残念ながら、現在、中小企業庁が進めている法定開示文書の改正、あるいは公取が進めているガイドラインの改定、いずれもこの実態を解決するものでは全くございません。
 私は、今日のコンビニフランチャイズ問題を以上のように認識しているところでございますが、経済産業省はどのように認識しておられるか、まず第一点目、伺いたいと思います。
平沼国務大臣 私もそのブックレットは後で読ませていただきたい、こういうふうに思います。
 フランチャイズシステムというのは、加盟者にとっては、チェーン本部からすぐれた商品や経営ノウハウ、その提供を受けて、商標だとか商号の使用が可能となるなど、個人経営では得られないさまざまな情報やシステム、ノウハウ等を享受できる、こういう面が側面としてあります。また本部の方にとっては、加盟店の資金負担による出店時の投資コストの削減、これは今御指摘がございました。それから、急速な多店舗展開が可能となる等、そういうふうなメリットは本部の方にあるわけであります。
 本来でありますと、このフランチャイズシステムというのは、加盟者と本部が、おっしゃったように共存共栄、こういうことになる、そのメリットがあるわけであります。ですから、本来なら、その長所が生かされて、産業の発展や雇用の創出につながって、そして共存共栄で行くのが望ましいと私は思います。
 しかしながら、御指摘のとおり、加盟店と本部との間で、もう全部それは金田委員もよく御承知だと思うんですけれども、さまざまなトラブルが生じて、それが社会問題化していることも事実だと私は思っています。このトラブルの多くというのは、フランチャイズ契約の内容が複雑多岐にわたっておりまして、契約に至る過程で聞かされた話と契約後の実態が異なる、こういうことから発生しているものが非常に多い、このように承知しております。
 例えば具体例としては、本部に支払うべきロイヤルティーとしての、こう思っていたんだけれども予想外のものがそこにつけ加わっていた、例えば経営指導等の内容の相違だとか、近隣に競合店が出現したことによる売り上げの低下、そういうことが予想外にいろいろ起こってきた。
 そういうことで、経済産業省といたしましては、フランチャイズ契約の締結に当たって、加盟希望者が適切な情報を得た上で、契約内容を十分に理解して契約できる状況を確保できる、このことが必要であるという認識のもとに、中小小売商業振興法に基づいて、事前開示というものを義務づけているところであります。こういったことによって、本部と加盟店のトラブルが回避され、相互信頼が醸成されて、フランチャイズシステムが本来持っている長所が生かされる、こういうことが私どもは望ましいと思っておりまして、今後もこういう方向で私どもは指導を徹底していきたいと思っておりますし、私どもはまた、いろいろな御意見をよく承りながら対策を講じていかなければいけない、このように思っております。
金田(誠)分科員 確かに、大臣、前段お答えいただきましたような利点、メリットというものは、フランチャイズシステムの中には十分あるわけでございます。それが生かされるという形が望ましいと思うわけでございますが、今は、その利点以上にマイナス面が前面に出てきている。そこが問題で、それを取り除くためにどうすればいいかということで質問をさせていただきたい、こう思うわけでございます。
 大臣の方からは、内容を十分理解して契約をする、そのための事前の開示が必要であるということで今御答弁あったわけでございますけれども、そのことももちろん重要な要素の一つでありますけれども、それだけでは極めて不十分である。既に、中小小売商業振興法、小振法でしょうか、これによる事前開示の規定はあるわけでございますけれども、ほとんど役に立っておらない。今回改正をしたとしても、ほとんど今までと変わらないだろうということが一つでございます。
 それと、既に契約をされている方には効力は全くと言っていいほど及ばない。したがって、事前開示はもちろん必要ですけれども、契約の内容に立ち入って、ここまではやってもいい、これはやってはならない、こういう内容のルールをつくることが必要だ、こういう観点で以下質問をさせていただきたい、こう思っているところでございます。
 そこで、具体的な各論に入りますけれども、まず一つは、コンビニフランチャイズの実態を知ることが必要だと思うわけでございます。そこで、地獄の商法、奴隷の契約と言われている実態について、中小企業庁などとしても調査をしてその問題点を解明すべきだと思うわけでございます。
 その調査の内容は、最低でも、契約過程における不当な勧誘、これがどういうことで行われているのか、あるいは不公正な契約の内容、とりわけ、夫婦二人で二十四時間三百六十五日働いても残るのは借金ばかり、こういう実態。それはなぜ起こるのか、そのよって来る原因とそれを可能にしているからくりがさまざまな中身に含まれていると私は思うんですが、それを解明するような調査が必要だと思うわけでございます。
 さらに、やめる場合は不当に高額の違約金を取られるため、やめるにやめられないという実態。これが一体どうなっているのか。こういう点を明らかにする調査をぜひやっていただきたいと思うわけでございますが、いかがでしょう。
杉山政府参考人 私ども中小企業庁といたしまして、中小小売商業振興法に基づきますフランチャイズ契約に関します、特に事前開示義務の履行につきまして、十二年度、十三年度、コンビニを中心といたしましたフランチャイズの加盟店に対しまして実態調査を行っております。
 こうした調査の中で、問題を了知したという場合には、従来にも関係のチェーン本部からいろいろ事情を聞きまして、改善についての行政指導をしたこともございます。
 今、先生から、その調査の内容を拡充すべきだというお話がございました。私ども、十四年度につきましても、引き続き、コンビニを中心としたフランチャイズに関する調査を実施する予定にしております。その際に、契約に先立って開示項目が十分開示、説明をされたのかどうか、あるいは、契約の過程においてどういった勧誘が行われたのかどうか、あるいは、事前説明の中で解約違約金について説明が十分に行われたのかどうか、こういったことについても調査をいたしたいと思っています。また、加盟店が、フランチャイズ契約につきましてどう考えているのか、どういう点に不満点があるのか、そういう点につきましても、実態把握をこの調査の中でやっていきたいと思っております。
 こういった調査も通じまして、また、関係部局あるいは公正取引委員会とも連携をとりながら、チェーン本部や加盟店の実態把握に努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。
金田(誠)分科員 調査されているということでございますが、中身をまだ拝見いたしてございません。ぜひその調査実態なども開示いただければありがたいなと思うわけでございますし、問題は、調査をしました、しかし問題ありませんというんじゃ意味がないわけでございまして、もう既に何百人となく自殺をされているということまでコンビニ協議会の方では出しているわけでございますけれども、なぜそういう実態になっているのか、本当の実態はどうなんだということを調査していただきたいということを重ねて申し上げておきたいと思うわけでございます。
 そこで、中小小売商業振興法、私は、これに問題があるといいますか、これではもう対応し切れない、こう思うわけでございまして、この小振法の問題点について、以下、順次質問をさせていただきたいと思います。
 小振法の目的規定を読みますと、「中小小売商業の振興を図り、もつて国民経済の健全な発展に寄与する」となっているわけでございますが、少なくともコンビニフランチャイズについては、その目的が全く達成されていないどころか、逆効果になっていると思います。というのも、フランチャイズ運営の適正化については、第十一条による書面の交付と説明、第十二条による勧告と公表の規定のみであり、本部と加盟店の共存共栄のルールをつくるという規定は全くないわけでございます。ここに問題があると私は思っておりますが、この点、いかがでしょうか。
杉山政府参考人 先ほど大臣から御答弁がありましたように、フランチャイズ契約というのは契約の中身が大変複雑多岐でございまして、先生御指摘のありましたようなさまざまな契約の情報につきまして、トラブルを防止するためには、まず加盟希望者が十分にその中身を理解した上で加盟するかどうかの判断をするということが大事だと考えております。
 そういった観点から、中小小売商業振興法におきまして、フランチャイズ契約の締結に当たりまして、加盟希望者が適切な情報を得た上で中身を十分に理解して本部と契約をするということを確保するために、いろいろと書面交付義務あるいは説明義務というものを課しているところでございますが、最近さまざまなトラブルが増加をいたしております。こういった意味で、私ども、今回この法律の事前開示項目を大幅にふやしたつもりでございます。
 具体的に申し上げれば……(金田(誠)分科員「いや、いいです」と呼ぶ)はい。そういった拡充をした中身というものを的確に開示をしてもらいまして、その中身を十分踏まえた上で加盟希望者の方々が判断をされる、そういうことをフォローしていきたいというふうに考えております。
金田(誠)分科員 それでは効果が上がらないということを申し上げたいと思います。ぜひひとつ、そこから踏み越えるという検討をしていただきたいと思います。
 以下、具体的にどういうルールをつくればいいかという観点から質問をしたいと思います。
 コンビニフランチャイズを地獄の商法、奴隷の契約と言われている状況から脱却させるためには、新しいルールづくり、フランチャイズ新法、これが必要だというふうに思います。
 まず、契約時に提示される予想売り上げまたは予想収益、これについて正確な情報を提示するということはもちろんでございますが、それとともに、結果として実態と大きくかけ離れた額であった場合のリスクは本部側も負担をするというルールが必要ではないか。結果的に間違っていたんだというだけでは済まない、いろいろなことが起こるんだだけでは済まない。出した情報については、もちろんオーナー、加盟店は負担せざるを得ないわけでございますけれども、本部側も全く負担なしということはおかしいだろう。それぞれがリスクをとるというルールなんかは必要じゃないでしょうか。
古田政府参考人 御答弁申し上げます。
 御指摘のありましたように、予想売り上げの額と実際の額が乖離するということは起こり得るわけでございますが、これらについては、店舗の立地でありますとかあるいは経済、景気動向でありますとか、そういったさまざまな外部環境の変化によっても生ずるわけでございまして、この乖離をもって直ちに法的ルールの問題ということにはなるものではないんではないかというふうに考えておるわけでございます。
 しかしながら、本部が提示した予想額の算定根拠が合理性を欠くものであったり、また、実際には達成しようのない額、あるいは達成困難である額を予想値として示すことなどによって、実際のフランチャイズシステムの内容よりも著しく優良または有利であると誤認させ、競争者の顧客を自己と取引するように不当に誘引するというような場合におきましては、独占禁止法の欺瞞的顧客誘引に該当するというふうに考えられるわけでございまして、このような場合には、独占禁止法に基づきまして必要な是正措置を命ずるということになるのではないかと思っております。
金田(誠)分科員 その独禁法が全く機能しておらない。仕組みとしてこれは無理なんでしょうか。公取のガイドラインができて十九年です。一件も発動された経過が、記録がないという状態で、問題ばかりがどんどん進化しているという状況でございます。したがって、既存の独禁法でできるなんということは幻想だ。実態がそうなわけですから、ぜひそういう認識をしていただきたいと思うわけでございます。
 そこで、次の質問に入ります。
 契約書、附属文書の開示についてということでございます。確かに、事前開示書面はいただきました、各チェーンでやっている分を。しかし、それでは不十分でございます。このコンビニフランチャイズが地獄の商法、奴隷の契約と呼ばれるのは、不公正な契約のからくりが一般に開示されてこなかったことが大きな原因になっているわけでございます。諸外国では、このフランチャイズを登録制にする、登録して何人でもこれを開示できるというシステムまでできているわけでございますから、この際、契約書、附属文書の開示制度をつくる、あの項目だけを開示すればいいというのではなくて、契約書と附属文書を全面開示する、こういう仕組みがどうしても必要だと思いますし、あわせて、主たるフランチャイズ本部の契約書、これをぜひ資料として御提出いただけないか。いかがでしょうか。
古田政府参考人 御答弁申し上げます。
 まず、情報開示の一環としての契約書、附属文書の開示でございますが、中小小売商業振興法におきまして、契約に際しての重要事項、基本事項について、加盟希望者に対して事前の情報開示を義務づけている、これは御案内のとおりでございます。
 また、当省といたしまして、それに加えて、平成十二年の五月から、加盟希望者にチェーン本部の情報を提供するためのチェーン本部に関するデータベースというものを策定いたしまして、インターネット上で一般に広く公開しているところでございます。その掲載項目には、加盟に際し必要とする金銭、加盟者が本部に定期的に支払う金銭等、契約に関する基本的な情報が開示されているところでございます。さらに、今般の中小小売商業振興法の情報開示項目の追加を踏まえて、このデータベースの改定を検討しているところでございます。
 一方、御指摘のフランチャイズ契約書自体につきましては、ノウハウ等の本部の経営上の秘密が含まれる場合もございまして、これを保護するために第三者への開示を禁止する条項を契約に規定することがあるというふうに承知いたしておりまして、一般論として申し上げれば、こういったことをフランチャイズ契約に盛り込むことについて、あらかじめ一律に法的ルールとして禁止すべきものではないというふうに考えております。
 なお、私ども経済産業省といたしまして、フランチャイズ本部に対して任意の契約書の提出を求めたことはございますが、一定の調査目的に沿ってお願いしたものでございまして、それ以外の目的には使わないということになっておりまして、本部の同意を得られない限りは提出することは困難であることを申し添えさせていただきます。
金田(誠)分科員 これは、社会問題化しているコンビニフランチャイズの問題の国政調査という観点から私は必要だと思っているわけでございまして、委員長、ぜひ、機会がございましたら、理事会でコンビニ契約の契約書の提出ということをお諮りいただきたいとお願いを申し上げたいと思います。
 実は、私は、ある筋から主だったチェーンの契約書を入手いたしました。拝見をしますと、ノウハウなんというものはありません。しかし、読んでみると、これはひどいや、これはとても人に見せられないなと思う内容は随所にございます。だから開示できないわけでございます。したがって、それが開示されない限りはこの問題は解決しないということを申し上げているわけでございまして、一歩踏み込まなきゃ問題は解決しません。問題がないという認識ならそれでいいんですよ。大変な問題でしょう。だから申し上げているわけで、引き続いて、大臣、検討をお願いしたいというふうに思います。
 次に、ロイヤルティーについてお尋ねをいたします。
 廃棄ロスや棚卸しロスにロイヤルティーがかけられている、このような不当な契約は無効にするというようなルールが最低必要ではないかと思うわけでございます。いかがでしょう。それとあわせて、ロイヤルティーでもう一つ。二つまとめて聞かせていただきます。
 現在は、加盟店が赤字でも本部はロイヤルティーを満額取れる仕組みになっております。幾ら加盟店が赤字でどんどんそれが積み重なって累積していても、本部に入るロイヤルティーは満額入る。これが、本部のモラルハザードを招き、共存共栄の理念からほど遠い状態をつくっていると思います。赤字のリスクは本部もそれなりに分担してとるような、こういうルールが最低必要ではないか。ロイヤルティーについて二件、ひとつお答えいただきたいと思います。
古田政府参考人 お答え申し上げます。
 御指摘のロイヤルティーにつきましては、御案内のように、チェーン本部が加盟店に自己の商標やサービスマーク等を使用させる対価として、加盟店から例えば粗利や売上高の一定割合という形で受領するものでございます。また、その額につきましては、フランチャイズ契約に規定されておりますが、これはチェーン本部ごとに異なることが通例であるわけでございます。
 そういったロイヤルティーの中身については、かなりの部分が当事者間で協議されるべき問題だというふうに考えておりますが、まず最初に、ロスの点の御指摘がございました。
 このロスの問題をだれがどう負担するかということについても、私どもとしては、一義的な事前法的ルールには必ずしもなじまないのではないかというふうに考えております。実際、コンビニエンスストアのロイヤルティーの算定の基礎となる売り上げ総利益には、いわゆる廃棄ロス原価が含まれることが多いことは承知いたしておりますが、加盟者の募集において、本部が加盟希望者に対しまして、このような売り上げ総利益の定義について十分な開示を行わない場合、あるいは実際と異なる説明をすることによって著しく優良、有利であると誤認させて不当に誘引する場合には、独禁法上の問題になってくるのではないかというふうに考えるわけでございます。
 それから、赤字のリスクの御指摘もございました。
 このロイヤルティーの額の決め方が、即チェーン本部ごとにいろいろあるわけでございますが、共存共栄の観点から、加盟店の経営安定のために加盟店の粗利益が一定額に達しない場合には、本部がロイヤルティーの減免を行うなどの最低保証制度を実施している場合も一定程度あると承知いたしております。
 いずれにしましても、フランチャイズシステムは、本部と加盟店の相互依存関係の上に初めて成り立つ仕組みでございまして、ロイヤルティーの算定につきまして、加盟希望者が十分に理解した上で加盟するかどうかの判断を行うことができるようにすることが必要でございまして、これについて、中小小売商業振興法に基づく書面交付義務と説明義務を課しているところであるわけでございます。
金田(誠)分科員 脱サラなどをしてコンビニをやる、その際、いろいろ説明されても、聞いているときはわかったつもりでも、実際やってみてこんなつもりではなかった、それが今圧倒的な多数になっているわけですよ。したがって、事前開示だけでは不十分だからこういう問題が起こっている。したがって、ルールが必要だ。諸外国でもルールをつくっているところが多いんじゃないですか。圧倒的な力の格差があるわけで、問題があっても対等に交渉して解決できるなんという状態では全くない。だから、奴隷の契約、地獄の商法と言われているわけです。そこをぜひ認識して物事を考えていただきたい。
 あと幾つか聞こうと思っていたんですが、時間がなくなりましたので、最後の項目。フランチャイズを中途解約する場合というのが、項目が行っていたと思います。これだけちょっと聞かせてください。
 実際に本部がこうむる損害をはるかに上回る違約金を徴収されるため、やめたくてもやめられない。やっていれば赤字はどんどんかさむ。しかし、やめるときには何千万。これもまた、やめられない。進むこともできない、退くこともできないという契約になっているわけです。まさに奴隷の契約でございます。
 そこで、裁判などでは、違約金は実際の損害額を上限として判決が出る場合が最近は結構あるわけでございます。それも、ルールとして、法外な違約金なんというのは最初から決めるのはだめだ、実際本部が損害をこうむったらそれはやむを得ないかもしれませんが、上限はそこまでだ、その損害額を立証する責任を本部側に負わせる、こういうルールなどをつくらないとどうしようもないんじゃないですか。これはいかがでしょう。
古田政府参考人 事前ルールの問題として中途解約の御指摘がございましたが、この点につきましては、まず、加盟の段階で中途解約の条件が不明確である場合に、加盟希望者の適正な判断が妨げられるだけではなくて、加盟後においても、加盟者はどの程度違約金を負担すれば中途解約できるのか不明であるために、解約が事実上困難となる場合があることは事実でございます。
 こういった点につきましては、本部のやり方が優越的地位の乱用ということで、独禁法上の問題に該当する場合がございますし、その判断の際、違約金の多寡といったようなものも勘案の要素となるというふうに承知しておりまして、今般、公正取引委員会の方で、ガイドラインの改正原案においてその点を明確化するという方向を出していただいておるわけでございまして、私どもとしては、その方向を見守りたいということでございます。
金田(誠)分科員 公取が違約金の上限を決めるということはありません。今、そういう話はないと思います。
 そこで、この小振法の事前開示文書、これだけでは全く不十分。公取も十九年前からガイドラインをつくっておるのだけれども、一向に役に立たない。こういう状態の中では、フランチャイズ新法、もうこれしかない。諸外国はほとんどあるわけですから、私は、これをつくるしかこの問題を解決する道はないと思います。
 最後に、大臣に改めて御所見を伺いたいと思います。
平沼国務大臣 大変大きな問題について、金田委員はあらゆる角度から検討されて、社会問題化している問題点を非常に鋭く御指摘をいただきました。
 大変厳しい状況になっているということは私どももよく把握しておりますけれども、今、中小企業庁長官や商務流通審議官からいろいろ対策ということも述べさせていただきました。そういった形で、私どもとしては、総合規制改革会議の答申を受けまして、中小小売商業振興法に基づく事前開示項目の充実強化を行ったところでもありますし、また、公正取引委員会におかれましても、これはもっと十分やらなきゃいけませんけれども、独占禁止法ガイドラインの改定を検討されている、こういうことでございまして、非常に今お困りの方々がたくさんいらっしゃるわけでございますから、さらに我々としては徹底して、そういう社会問題がこれ以上ふえないような形で、現行法の厳正な運用によって的確に対応していく、こういうことで、きょうは非常に有意義な御意見を伺いましたので、それも十分参考にさせていただきたいと思っております。
金田(誠)分科員 新法について踏み込んでいただけなかったのは残念でございますけれども、ぜひ検討していただきたいと重ねてお願いを申し上げまして、また機会がありましたら質問させていただきたいと思います。
 終わります。
松崎主査 なお、先ほどの資料請求の件につきましては、取り扱いを理事会で協議をいたしたいと存じますので、御了承願います。
 これにて金田誠一君の質疑は終了いたしました。
 次に、後藤斎君。
後藤(斎)分科員 きょうは、先ほど予算委員会で、加藤紘一議員が辞職をするということで、大臣も気が動転なさっているかもしれませんが、ちょっと前に戻って、幾つか御確認をしながら御議論をしたいと思います。
 冒頭は、昨年の十一月二十一日、経済産業委員会の中で売掛金担保融資保証制度、この審議を通じて、その後制度が正式にスタートして、はや四カ月ほどになります。先般の本会議で、大臣から、実際どのくらいの保証が対応されているのかということで、聞き間違いでなければ二億円くらいだというお話だったと思います。
 当初、二兆円の保証規模をつくったときにも、平成十三年度の補正で、五十九億の予算で支えていく。その際にもかなり御議論をし、もっと使いやすい、それも保証協会や金融機関が本当にスタートをしていくのだという意思が出るには、もっときちっとした予算的手当ても含めて対応すべきではないか。なぜなれば、不動産担保、預貯金担保から売掛金債権ということで、新しい分野での中小企業の下支えをする制度だったわけです。
 大臣、今、現状、この制度が、四カ月たった中でまだ二億円ということでは、〇・〇〇一%くらいだと思いますが、どのように評価して、本当にこの法制度を根づかせるものにしていく御意思があるのかどうか、冒頭、お尋ねしたいと思います。
    〔主査退席、岩屋主査代理着席〕
平沼国務大臣 売り掛け債権担保融資保証制度というのは、御指摘のとおり、昨年の秋の臨時国会で法改正を受けて、法律公布からわずか十日後の十二月十七日から運用を開始しました。
 そして、最新の実績を申し上げますと、四月五日までの累計で、申込件数というのは三百五十五件で、そして保証承諾件数が二百十一件になりました。融資金額は五十一億、こういうことになっておりまして、当初、なかなか伸びなかったのですけれども、ようやく拡大しつつあるな、こういう実感でございます。
 これはもう委員よく御承知のように、この制度というのは、中小企業向けの融資の担保として、不動産ではなくて売り掛け債権を利用するという点では、ある意味では画期的なものだ、こういうふうに思っております。また、中小企業にとっても金融機関にとっても、これは全く新しい制度でございます。したがいまして、これは言いわけになるかもしれませんけれども、実務面で習熟して、そして制度が定着するまである程度時間を要する。制度創設後直ちに実績が大きく伸びる、これはなかなか難しい面があったと思っています。
 そこで、せっかく両院の御賛同をいただいて確立した制度でございますので、本制度を幅広く普及させていくための課題として、一つは、当たり前のことですけれども、本制度の存在を関係者に十分周知徹底をすること。それから、債権を譲渡したり担保として差し入れることに対して企業が持つ抵抗感をなくしていくこと。一つは、だんだんそれは払拭されつつありますけれども、あそこは売り掛け債権まで担保に入れたのかというような、そんな風評。そうじゃないんだ、それは法律に基づいたものである、こういうことを、やはり抵抗感をなくすという形で、こちらも努力をしなきゃいかぬ、こう思っています。
 それから、これは後藤委員もよく御承知のように、譲渡禁止特約というのがございまして、国や地方公共団体や大企業が、従来から、売り掛け債権が変なところに行ってしまったら困るという形で、譲渡禁止特約というのをつけているのですけれども、これを今、経済産業省を初め関係の機関から率先して、そういうことをどんどん解除していって使い勝手のいいようにしてほしい、こういうことで努力をしております。
 御指摘のとおり、この四カ月経過して、なかなか利用が進んでないわけでございますけれども、しかし、前回申し上げたところから比べれば大分ふえてきたことも事実でございまして、さらに私どもは、信用保証協会ですとか民間金融機関等に対する情報提供はどんどんしておりますし、また、テレビでも実は広告をさせていただきました。また新聞等による広報、そしてまた全国に二百万枚のチラシをつくりまして、そういう周知徹底を図っておりますので、私どもは、だんだんに皆様方に御理解をいただいて浸透してくるのじゃないか、こういうふうに思っておりまして、御指摘の点をよく踏まえてさらに努力をさせていただきたい、このように思っています。
後藤(斎)分科員 大臣が今話をされたような中でその普及をしていくには、どうしても私は今、今年度中、いろいろな意味で見直しも行われるかもしれませんが、政府系金融機関が民間の金融機関よりももっと積極的に新しい制度を根づかせ、そして普及をする役割を担わなければいけないのではないかなというふうに思っています。
 先ほど大臣がおっしゃられた、三百五十五件の申請、そして採択というかオーケーになったのが二百十一件、このうち政府系金融機関が対応というか担当したのは何割くらいあるのでしょうか。
杉山政府参考人 売り掛け債権の担保融資保証制度につきまして、政府系金融機関であります商工中金が積極的に呼び水として役割を果たしておりまして、その過半、百十七件程度をこの商工中金が担当しているということでございます。
後藤(斎)分科員 ぜひ、大臣が御答弁いただいたように、積極的なPR、そして風評被害というか、風評でないような形のものを積極的に政府としても対応なさるように要望しておきたいと思います。
 次に移りたいと思います。
 きょうは、短時間にたくさん聞くので申しわけございませんが、今、税の抜本改革が経済財政諮問会議、政府税調を含めて各般の機関で進んでおります。とりあえず二カ月後の六月を目途に、今後の税制の基本的な方向について位置づけを、構成を決めていくということであります。
 今よく言われるように、産業が空洞化をしている。そして、なかなか中小企業も総じて元気が出ない。先ほどの売り掛け債権が進展しないのも、もしかしたら金融機関の問題だけじゃなく、中小企業の方にも、インセンティブが設備投資等々でなかなか働かない、そんな問題もあると思います。
 一方で、国内の経済再生、活性化にこれから必要だと思うのは、国内企業のみならず海外の企業進出をどう促していくかということも、私は活力を生み出していく大きな役割ではないかなと。そのとき、海外企業が国内に入ってくる際に、インフラの問題、そして税のコストの問題、これらを様々にほかの日本以外の国とも比較検討し、対外直接投資を進めてくるかどうかということを決定するというふうに考えております。
 ただ、日本は先進国の中で対内直接投資が二十四位ということで大変低くなっております。そしてアメリカは、日本の三十倍に、対内直接投資が、外国企業が入ってくるということであります。そしてフランスでは、昨年、海外企業を積極的に誘致するために、対仏投資庁なるものをスタートさせたということであります。
 法人税の問題も、シンガポールがいろいろな国から企業が進出される、法人税の低さだというふうにも言われています。これは税のみならず、税を含めた問題をどう日本経済再生に生かしていくのか、そしてその中で、雇用創出や地域経済の活性化をどう位置づけるのか、そんな展望が私は必要ではないかなと。特に、中小企業でいえば、創業促進のための税をどう考えていくのか、そして事業継承をするときの税をどう考えておるのか。
 それらもろもろ含めて、大臣、直接の所管ではありませんが、経済産業全体を担当なさる大臣として、経済の活性化に向けた税制のあり方はどのようにお考えになっているのか、御所見をお伺いしたいと思います。
平沼国務大臣 我が国の税制というのは、委員御承知のとおり、これまで公平、そして中立、簡素、この理念のもとに構築をされてきたところであります。他方、税制のあり方というのは、企業や個人の意欲や活動に大きな影響を与えるものでございまして、小泉総理の施政方針演説の中にも、経済再生の確固たる基盤を築くかぎである、こういうふうに施政方針演説の中で述べられております。
 今、経済活性化に向けた税制のあり方については、御指摘のように、私もそのメンバーであります経済財政諮問会議等において、六月に一つのまとめを出す、こういうことで議論しているところであります。経済産業省といたしましても、やはり企業の活力を引き出しまして経済活性化を促進するとともに、今おっしゃった国際水準、そういったものを踏まえて、魅力ある事業環境というものを構築して競争力を強化する、そういう認識のもとに、実は、経済活性化のための企業関係税制に関する研究会を設置して、今検討を進めているところでございます。
 そういう中で、御指摘がございました、例えば地方税を含めた法人所得課税負担の見直しでありますとか、また、これからインセンティブを与えて競争力をつけるという面では、研究開発を促進する税制でありますとか、また、今投資のことをおっしゃいましたけれども、投資を促進するための税制、それから、これから事業再編というものがありますから、その事業再編の関連税制、それから、これはこれからも力を入れていかなきゃいけないと思いますけれども、日本の場合には、やはり新規企業が起こるというのがアメリカなんかに比べると非常に数が少ない。今、年間十八万社ぐらいであります。したがって、創業を支援する税制というのも幅広く検討していかなきゃいけない。
 その他、経済活性化をするためには住宅関連もございますし、また今おっしゃいました事業承継あるいは相続あるいは贈与、こういったことも総合的に私どもはやって、その企業のいわゆる経済の活性化につなげていくべきだと思っています。
 それからもう一つ、海外の投資というものは二十四番目だ、こういう御指摘がありました。それは日本にとって大変大きな問題であります。そういう中で、やはり高コスト構造をいかに是正するかというものももう一面非常に大切なことであると同時に、税制のことも御指摘のように非常に重要であります。また、さらにそれに拍車をかける意味では、これからいろいろな面で議論をしていかなきゃいけませんけれども、特区というような、そういう誘い水的な考え方もある意味では積極的に取り入れていかなきゃいけないんじゃないか。
 そういうことで、税制に関しては今総合的に一生懸命に検討を進めているところでございます。
後藤(斎)分科員 もう一点、その税の関係で。
 これは内閣全体というか、経済産業省と総務省の方で、地方自治の観点、そして産業育成の観点、これで拮抗する外形標準課税についてお尋ねをいたします。
 経済産業省、大臣の答弁、若干違っているかもしれませんが、従来であれば、新規創業に外形標準課税を一律導入すれば、創業支援に逆行する、課税強化になる、活力をそぐ、雇用創出にも逆行する。幾つかのマイナスの論点の中で、経済産業省というか産業界では、外形標準課税の導入には反対の立場をとっています。
 一方で総務省では、この一連、昨年からの流れの中で、資本割という新たな併用案をまとめられ、税の中立性ないし小規模法人への特例、ベンチャー企業への配慮、経過措置の導入等々で、足して二で割ったわけではありませんが、かなり導入のしやすいような環境も一方でつくっているような感じもいたします。
 ただ、平成十四年度中に法改正を外形標準課税にはしてという、もう具体的な期日まである程度決め、そして一億円以上の法人については来年の四月以降の開始、資本金一億円以下の中小法人は二年おくれの平成十七年四月一日から順次開始という予定で総務省の方は検討なさっております。
 これは、一義的には地方税という中での対応かもしれませんが、産業界の御意見をいろいろな形でまとめ、それを支援していく経済産業大臣として、外形標準課税の導入についてはどのような今御見解をお持ちでしょうか、お答えを願います。
平沼国務大臣 賃金等を課税標準とします外形標準課税というのは、担税力のない法人に対して新たな税負担を強いることになります。今こういう厳しい状況の中で、雇用や投資活動に私どもは悪影響を及ぼす等の問題があると思っています。したがいまして、これは慎重に検討しなければいけない、こういうふうに思っています。
 また、税制のあり方を検討するに際しては、常に何が国際標準なのかということを私どもは念頭に置く必要があるのではないかと思っています。
 この外形標準課税の論議に当たりましては、一つは、近年、主要国におきましては、賃金を課税標準とする外形標準課税は廃止されているという事実があります。また現在、欧米だとかそれからアジア諸国では、税制上の優遇措置の実施を含めて、内外企業の誘致合戦というのが非常に繰り広げられているところであります。
 そういったことを考えますと、やはり私どもはより慎重に外形標準というのは考えていくべきだ、このようなスタンスでもあります。
後藤(斎)分科員 大臣、そうお話をされましたが、先ほども冒頭お話しした一連の中で、昨年の六月の閣議決定、骨太の方針の中でも、景気の状況を見ながら導入を図るということになっています。政府税調では、昨年十二月、早期の導入ということを答申しております。そして、ことしの一月の中期展望の閣議決定では、平成十五年度税制改正を目途にその導入を図ると。条件が確かに景気の状況、各方面の意見を聞きながら検討を進めるということはありますが、十五年度中ということが明記をされております。
 そのような中でも今お話しになられたようなスタンスを、経済産業大臣としては、この閣議の中、そしてこれからの税の取りまとめの中で御主張なさっていくということで理解してよろしいでしょうか。
平沼国務大臣 私も経済財政諮問会議のメンバーでございます。これから諮問会議の中でも税制を論議する、既に始まっておりますけれども、そういう中で、私どもは、やはり今言ったそういう点に力点を置いて主張すべきことは主張していきたい、こういうふうに思っております。
後藤(斎)分科員 次に移りたいと思います。
 よく言われる、先ほども同僚議員から議論があったと思いますが、金融監督庁の検査のあり方であります。
 いろいろな意味で、金融監督庁の調査、十把一からげにしてあるところがありまして、それぞれの金融機関の目的、設立の経緯、何を、どういう業種を主体に運営しているのかという点をやはりきちっと勘案しながら対応すべきであるというふうに私たちは考えております。
 一番現場に近いと言われている信用組合は、組合員のまず相互扶助という理念で設立をされております。そして、目的は、中小企業金融の円滑化と地域経済の健全な発展ということであります。さはさりながら、画一的、機械的に金融庁の金融マニュアルが適用されるのであれば、なかなか実際の運営ができにくくなり、そして、結局は中小企業にお金をなかなか信用組合は貸していけないということに、今現実はつながっているのではないかなと思います。
 確かに、金融検査マニュアルの中では、中小零細企業等の今後の成長率、販売力、技術力も含めた非財務面も総合的に勘案して判断していくんだということもございますが、それがやはりマニュアルということで、きちっとどのような基準でという具体的なものがないために、その検査官の、恣意ではないでしょうけれども、個人の判断にゆだねられる部分もあるやにお聞きをしております。
 その意味で、中小企業庁として、さらに金融庁に、きちっとスタンダードを明確にしながら、そして、その検査マニュアルの施行というか履行というか実施については、中小企業というものに配慮をした対応にきちっとすべきだということを、今後も要請ないし明確化を求めていくべきであると思いますが、御見解をお伺いしたいと思います。
杉山政府参考人 ただいま先生御指摘ございましたように、例えば信用組合というのは、組合員でございます地域の中小企業等へ資金を供給するという大きなねらいを持った存在でございまして、その信用組合などが健全に業務を行うというのは、円滑な中小企業金融の確保という観点から大変重要なことであると考えております。
 現行の検査マニュアル、先生御指摘ありましたように、中小零細企業向けの貸出債権の査定に当たって中小企業の特性を配慮するという旨の配慮事項が盛り込まれておりますけれども、例えば、私ども、いろいろ地域の金融状況などを伺ってまいりますと、金融検査マニュアルにおける中小企業の特性への配慮というのが必ずしも検査の末端まで浸透していないとか、あるいは中小企業金融の実態に合っていないというような声が随分ございました。私ども、こういった声を金融庁の方にも連絡をいたしました。
 今般の緊急に取り組むべきデフレ対応策の中で、金融庁におきまして、中小零細企業の債務者区分の判断につきまして、マニュアルの具体的な運用例というものを作成し、公表するということに相なっております。この具体的な運用例の作成、公表につきましては、昨年来、私ども、機会あるごとに金融庁に対して要請してきたものでございます。
 現在、この作成を金融庁は進めているというふうに承っておりますが、内容が明らかになり次第、私どもといたしましても、中小企業への資金供給の円滑化の観点から、必要に応じて意見はきちっと申し上げていきたいというふうに考えているところでございまして、こういう点も含めまして、よく金融庁とは十分な連絡調整を図って、中小企業への円滑な資金供給の確保というものに努めていきたいと考えております。
後藤(斎)分科員 ぜひ大臣、その点も、ペイオフ解禁は四月一日からでなく、本格的な解禁というのは、私は、普通預金も含まれる来年の四月一日だと思っています。
 これからますます金融機関は、それに歯どめがかかるのではなく、もっと加速度的に貸しはがし、貸し渋りというものが起こっていくようなことに今の状況だとなりかねないというふうに私は思っていますので、先ほど中小企業庁長官が話をされたそのマニュアルの明確化、ぜひ早期にオープンにしていただいてということを、また金融庁、金融大臣にもお伝え願えるように心からお願い申し上げます。
 関連しまして、先ほどもお話しした政府系中小企業の三金融機関のこれからのあり方が、今年中に、議論を今進められていると思いますが、位置づけも含めてこの問題、大臣の見通し、現状の評価、これから合併をするのか、それとも民営化になるのか、さまざまな御意見があると思いますが、その点、政府系金融機関についてはどのような御見解をお持ちなのか、簡潔にお願いいたします。
平沼国務大臣 我が国の中小企業というのは、大企業に比して間接金融への依存度が高いのですけれども、民間金融機関だけでは、中小企業が本当に必要とする資金ニーズにタイムリーに対応できない。これは、昨今の貸し渋り、貸しはがし、そういった形で、政府系中小企業金融機関は、民間金融機関を補完するため、ある意味では非常に大きな役割を担っておると思っています。
 特に、昨年来、中小企業をめぐる金融経済情勢というのは極めて厳しいわけでありまして、御承知のように大型倒産でございますとか信金、信組の破綻、こういったものがありまして、ともすると、やる気と潜在力のある中小企業までが非常に厳しい連鎖の中に巻き込まれて破綻に追い込まれるような事態、こういうことが起こりかねない。だから、これを回避するためには、今やっている政府系中小企業金融機関のセーフティーネット機能というのは、今一番私は重要だと思っています。
 したがって、私どもは、いろいろな対策をしておりますけれども、昨年十二月に閣議決定された特殊法人等整理合理化計画におきまして、政策金融機関については、一つは民業補完、政策コストの最小化、それから機関、事務の統合合理化、この原則のもとに抜本的な検討を行った上で、公的金融の対象分野、規模、組織の見直しを行うこととする、こういうふうになっております。
 これを受けまして、経済財政諮問会議で検討が開始されているところでございますけれども、今申し上げたように、今非常に厳しいですから、私どもは、政府系の中小企業金融機関の民間金融機関を補完するその政策的な役割というのは今非常に重要ですから、それを踏まえながら、私は、議論の中で、どういうあり方がいいか、これで取り組んでいきたい、こう思っております。
後藤(斎)分科員 次に移ります。
 時間もないんですが、「目的」、「その地区内における商工業の総合的な改善発達を図り、兼ねて社会一般の福祉の増進に資することを目的とする。」「その地区内における商工業の総合的な改善発達を図り、あわせて社会一般の福祉の増進に資することを目的とする。」ほとんど同じ目的の法律が、商工会議所法と商工会法にございます。あわせて、事業の内容も、ITセミナー、インターネット活用創業セミナー。
 これは何を言いたいかというと、私は、本当に制度が末端まで生きるのであれば、中小企業中央会、そして商工会議所、商工会に、合わせて一千数百億の、国、都道府県、地方自治体含めた助成金が使われております。先ほど、売掛金債権を支える予算はわずか五十九億であります。私は、この部分をもっと、合併ないし統合ないし人的、資金的な融通をもっとうまくすることによって、冒頭お話をした新しい制度が支えられるんじゃないかなということを強く思っております。
 もちろん、すぐにできるものではありませんが、私は、似たような事業、ほとんど似ている目的の法律にのっとった組織、そういうものはむしろ、政府系金融機関については大臣がおっしゃられたように必要性は僕もあるとは思います。ただ、それも、本当に今それが活用されているかどうかという視点で考えていかなければいけないと僕は思っています。
 大臣、大変恐縮なんですが、ワークシェアリングについても、三月二十九日に厚生労働大臣、連合、そして経済界を含めてまとまってはいますが、私は、経済構造の活性化という視点、マクロ的な視点というのがやや抜け落ちているのかなという気持ちもございます。それも含めて、大臣、簡潔で結構ですから、先ほどの中小企業の団体、補助金等の問題、そしてワークシェアリングについて、端的にお答えをいただけますでしょうか。
平沼国務大臣 御指摘の点は、それぞれの団体というのが、それぞれの受け持つ地域だとかそういう形で今まで機能してきたと思っています。ですから、それはそれなりに私は意味があると思いますけれども、要は、御指摘のように、中小企業庁が中心となって、やはり中小企業のためにそういった団体が効率的に機能するように私どもは努力をしていかなきゃいけない、その件はそう思っています。
 ワークシェアリングというのは、現下の厳しい雇用情勢に対応する緊急対応型のワークシェアリングと多様就業型ワークシェアリング、これに区別をして、そして、私どもとしてはむしろ今後は、少子高齢化だとか多様化した社会のために多様就業型ワークシェアリング、ここに重点を置いてやっていくことが望ましい、私はこのように思っております。
後藤(斎)分科員 時間が来ましたので以上で終わりますが、ぜひ、お願いをしました件もよろしく今後もお願いを申し上げます。
 ありがとうございます。
岩屋主査代理 これにて後藤斎君の質疑は終了いたしました。
 次に、松崎公昭君。
松崎分科員 長時間にわたってありがとうございます。ちょっと攻守ところを変えまして、民主党の松崎でございます。
 中小企業の現状を踏まえた、そこの問題に絞って質問をさせていただきます。
 私も実は、本当に零細企業の経営者をもう三十年以上やって、現実的に貸し渋りでありますとか厳しい現状の中にいる一人でありまして、きょうは、余り党の立場とかそういったことよりも、経営者の一人としての立場を中心にしながらお聞きするようになるかもしれませんので、よろしくお願いしたいと思います。
 今さら申し上げるまでもなく、日本のこの経済社会を支えてきたのはまさに中小企業であった。雇用の七二%ですから、大変な率であるということ。私、見ていまして、自分もやっていながら、先ほど大臣もお話しになった、廃業が年に二十八万、そして創業が十八万であると。どうも九五年ぐらいから、立ち上がってくる企業が減っている。
 これはさまざまな状況がありますから、一概に政府の政策が云々ということは言えませんけれども、どうも最近の流れとして、グローバルスタンダードの中で特に金融関係を、アメリカの方から強く日本の再生ということを言われ、そしてそのひずみが、もう既にたくさん言われているように、中小企業の貸し出し問題なんかに相当集約されている。しかし一般的には、弱い者は、退場すべき者は退場していいんだということが、政府の経済の中心的な政策にも、あるいは世の学者たちも、どうもそういう傾向が多いんですね。ですから、そこからいきますと、私は、もっと日本の経済構造、今まで発展してきたさまざまな角度から中小企業を見ていった場合に、そういう視点で、切り捨てといいましょうか、政策的にも非常に冷たいといいましょうか、そういう形でいいんだろうか、そういうふうに思っております。
 ですから、全企業の九九・七だからという、数字であえて言うことはありませんけれども、これはヨーロッパでもそうですね、やはり中小企業を非常に大事にしている。OECDでも、三十カ国で統計しますと日本だけが減っているんだそうであります。ですから、そういう現状で、政府なり皆さんの方が本当に中小企業に対してどんなとらえ方を、歴史上のことや、日本の経済システムの流れを見ても、どういうふうに位置づけているのかということを、まず大臣に本音を聞かせていただきたいと思います。
平沼国務大臣 私どものところに、毎日のように諸外国から大臣クラスの方々がお見えになります。その方々が異口同音におっしゃるのは、それぞれ、自分の国で中小企業を育成したい、日本はまさに中小企業のすそ野が広い国で、それが日本の経済の源泉になっている。ですから、それのための人材を派遣してほしい、ノウハウを教えてほしい、こういうことで非常に皆さん方が来られます。
 そういうことは、とりもなおさず日本の評価というのが、まさに中小企業が経済大国の日本の中枢を担って、活力の源泉だ、日本の強みはそこにある、こういうふうに諸外国からも見られていると思って、私は、そういう外人から言われていることで、今さらながら、やはり中小企業というのは経済立国の日本にとってまさに屋台骨を背負ってくれる大切なものなんだと。したがって、ここはやはり、やる気と潜在力のある中小企業に対しては、この厳しい経済情勢の中でしっかりとした手当てをしていかなければならない。
 それからもう一つ、中小企業で一生懸命やっておられる中でも、どうしてもだめになってしまったというようなところがあります。そういったところに対しては、今の日本の、退場がしにくい状況になっているんですね、個人保証がもう無制限にある。ですから、そういったところもやはり考えながら、やる気とそして潜在力のある中小企業を発展させていくということ。
 もう一つは、開業率と廃業率のことをおっしゃいましたけれども、確かに今お挙げになった数字のとおりです。アメリカは経済規模が日本の倍と言っておりますけれども、八十八万社が年間誕生していますから、日本は今の十八万社を倍増するような、やはりそういう力強い経済政策をしなきゃいけない、そう思っておりまして、まさに中小企業は非常に日本の源泉である、ここはしっかりと私どもとしては伸ばしていかなきゃいけない、そういう基本認識を持っております。
松崎分科員 大臣のそういう姿勢は確かに正しいんですが、どうも今の流れを見ておりますと、特に金融面で、私はアメリカンスタンダードを非常に疑問視をしている人間なんですけれども、いわゆる日本の体質とか、今までの、いい悪いは別として、農村共同体みたいな、そういう形ですそ野を、中小企業が中心になりながら、共同体的な形で来たわけなんですね。
 ですから、よく日本はある意味では社会主義的だと言われておりますけれども、そういう底辺を、共同体でやってきたところが今、アメリカンスタンダードといいましょうか、特に金融面を世界の標準にしなきゃならないということで、今までの、一番ひずみのあった護送船団的な、政官業のひずみの部分を直さなきゃならぬということで、そこに集中し過ぎたことによって、どっと行ったことによって、そのしわ寄せがまさに中小企業に貸し渋りとか来ている。
 もちろん、信金、信組の問題も、同じような見方をすれば、アメリカンスタイルで来た日本の改革というものが、どうもひずみが、金融関係を中心にしながらそこへ行って、その結果、中小企業の方にもろに来ているというふうに私は思っております。これは政党の中でもいろいろあると思います。自民党さんも、民主党の中にも、そうじゃないと言うのと、私と同じような考えと、それぞれ分かれておりますから、一概に言えないわけでございますけれども。
 しかし、やはり私は、ここでもう少し、今、日本を支えてきた中小企業をきちんとやっていただきたい。特に、今ちょっと問題にしようとしていたのは安定化特別保証制度、この評価というのはなかなか難しいんでありますけれども、ただ救ってくれじゃなくて本当に生き残って、しかも新しい創業をしようじゃないか、そういう中小企業もたくさんあるわけでありますから、そういう場合にこの中小企業の安定化特別保証制度、もう終わりましたけれども、この総括というのはなかなか大事でございます。こういうものも見方によれば確かに甘やかしだと見るかもしれません、確かにいろいろ問題があった借り手もありましたから。しかし、私は、これはそれなりの効果があったな、今言った日本の中小企業の活力を支えてきた役割からいったらこの制度は非常によかったと思いますけれども、どうでしょうか、総括は。
平沼国務大臣 この特別保証制度というのは、もう松崎議員御指摘のとおり、平成十年に未曾有のいわゆる金融システムの不安が起こりまして、それにつれまして大変な貸し渋り、貸しはがしが起こりました。それに対応するために、もう民間の金融機関は全く対応しなかったわけですから、そういう意味で異例、特例の措置として、御承知のように、最初は二年間、そして保証は二十兆、こういうことでやらせていただきましたけれども、二年を経過する直前に、これはさらにもう一年延長して十兆上乗せをしよう、こういう形で昨年の三月三十一日までやらせていただきました。
 私は、総括いたしますと、これは非常に、やってよかったと思っています。それは、一部分はいろいろなことがありましたけれども、結果的には、全国に五百万になんなんとする中小企業者の三分の一強の百七十二万社がこの保証制度を利用してくれた。そして、十兆上乗せしてよかったなと思うのは、保証した額も、三十兆を設定しましたけれども二十九兆、保証させていただきました。
 そういう形で、私は、このことによりまして中小企業の倒産の急増を緊急避難的に回避するということに非常に効果があったと思っています。一概にどういうというような具体的な数字というのはなかなか出しにくいわけですけれども、私は、平成十年、十一年を合計して、会社では一万社、そして負債総額で二兆円ぐらいの倒産が回避されて、それによって十万人の雇用が維持された、こういうふうに見ております。
 一方では、本制度のために一兆四千五百億円の財政手当を必要としたところでありまして、それなりの政策コストが出たと思っていますけれども、この制度の総括をしますとやはりそれに見合う、それ以上の効果があった、私はこのように思っています。
松崎分科員 私も、効果はあったと思うのであります。この制度が導入された背景というのは、また山一やら拓銀の、確かに特に金融関係を中心とした大変な銀行不安があって、BIS基準の導入等で大変な貸し渋りが始まるということもあったと思います。それから、橋本政権の後の大変な経済の収縮もあったと思うのですね。
 ただ、これはよく自民党さんでも一時復活という話があったそうでありますけれども、それは今立ち消えた。私は、今と、この制度が入った平成十年から平成十三年三月までの、去年の三月ですか、これと比べましても、いわゆる経済状態、企業の状況は決してそれよりもよくなっているとは思えない。むしろ、いろいろなデータを見ましても、これからもっと厳しい。特に一月、二月は、これは全体の倒産でありますけれども、史上最高の倒産数と負債額。これは一月も二月もですね。いろいろな状況を見ますと、経済短観を見てもそうだし、これからの設備投資の状況ですか、それから銀行の貸し出し状況なんかも、これはこの間NHKでやっておりました。この四年間、大企業には八兆円のプラスがあったけれども、中小に対しては五十六兆円のマイナスだ。これは今の状況でいきますと、もっとふえるのかなと。
 ですから、そういう倒産件数だけじゃなくて、さまざまな指標、あるいは景況感もそうですね、それから金融事情を見ていますと、私は、この導入時と同じか、あるいはもっと悪いと。私自身経営していまして、それは業種によりますから一概に言えません、でも、この三、四年前よりも本当に悪くなっています。ですから、経営者は、これは中小企業の皆さんそうでしょうけれども、自分の給料なんか取れずに、何とか従業員を継続しなきゃいかぬ。もうリストラもぎりぎりだというのが現状なんですね。
 ですから、これはちょっと気をつけなければいけないのは、いわゆる弱者保護反対という、先ほどから言った金融の流れ、グローバルスタンダードの流れからいって、退場すべきものというところに入るか入らないかという問題はありますけれども、私は、中小企業の日本の経済の構成上からいったら、そういうジャンルで分けちゃいけないような気がするのです。ですから、厳しいので、これはやはりもう一回復活すべきではないかなという考えを持っているのですけれども、いかがでしょうか。
平沼国務大臣 今、松崎議員が、具体的に失業の非常に厳しい状況でありますとか、企業のいろいろな今の問題点、倒産件数、そういったことをおっしゃられました。
 確かに、今非常に状況が厳しくなってきています。昨年の三月三十一日で特別保証制度を打ち切りました。しかし、御指摘のように、さらに景気が非常に厳しい状況になってきたわけでありまして、その中で、一つはやはりセーフティーネットをしっかりとさらに構築しなきゃいかぬということで、第一次補正予算の中で一千四百億を計上して、特に中小企業に対するセーフティーネット保証・貸付を充実させていただきました。先ほど来の御議論にあるとおり、まだまだ浸透していなくて、これからどんどん努力しなきゃいけませんけれども、もう一段、中小企業に対しての、資金に対してやはり我々としてはできる限りのことをさせていただこうということで、昨年の秋の臨時国会で、売り掛け債権に着目をした新たな保証制度をつくらせていただきました。これはまだとっかかりでもありましたし、実績が徐々に上がってきております。
 ですから、こういったことも我々としてはやらせていただいているところでありまして、そういう形で私どもは今厳しい認識のもとででき得る限りのことをしていかなきゃいけない、こういうふうに思っています。
松崎分科員 お言葉でありますけれども、セーフティーネットの保証等が一つの目玉かもしれませんけれども、これも確かに一定の数字はいっておりますね。一年間で一万三千二百四十五件ですか、二千三百十億。ただ、これも今までのいろいろな政策を集めたということもありますし、あるいは狂牛病でありますとか、焼き肉屋さんとか緊急のあれで二号を適用するとか言っていますけれども、例えば五号を見ましても、不況業種対策といいましても、これは百九十二、今指定している。しかし、意外とこれも利用は少ないですね、千三百十六件。十三年で四千九百八十七。全国で、一業種ごとにやりますと二十六件ぐらいなんですね。
 ちょっと我々の仲間に聞いてみますと、ほとんど知らないのですね。中小零細の人たちは毎日が大変ですから。政府としてはやっていますよということはわかりますけれども、これは本当に血の通ったやり方じゃないのじゃないか。先ほどの御質問にもありました売り掛け債権担保、これもまた同じような、試みはいいけれども、ほとんど実行に移ってないという。
 ですから、そこをやはり私は、特別保証制度というのは意外とかなり知られておりました。中はかなり問題も含まれておりましたけれども、この辺はもう少し審査とか、審査が楽だから変えたのですけれども、もうちょっとそこを工夫しながら、やはりこの制度は、一般の保証制度ももちろん額を上げたりして頑張っていらっしゃいますけれども、これは非常に使い勝手のいいものでありましたから、まずこの状況では、厳しい状況では使い勝手がいいことが一番大事だ。ですから、これはぜひもう一度考え直していただきたい、そんなふうに思います。
 先ほど、日本と欧米、アメリカ等の比較で、創業が少ない、創業しにくい状況だということがございました。ここで、例えば日本とアメリカを比べて、どうしてこんなに、ファンドが少ないのか何か、あるいは日本の国民の直接投資ということ、あるいは株もそうですけれども、投資が少ないですよね。そういう国民性もあるのかもしれませんけれども、何とかしてこの創業をバックアップする制度というか、あるいは国民的な雰囲気をつくるにはどうしたらいいのでしょうか。
平沼国務大臣 先ほど、松崎議員からも数字が出まして、日本の創業というのが十八万しかない、アメリカは、日本の経済規模の倍ですけれども、八十八万社が誕生している、こういうことであります。
 ただ、少し分析してみますと、日本でも創業、起業意欲を持っている人がかなりいまして、年間百二十万人を超えるような人が何らかの形でベンチャーを起こしたい、新規事業をやりたい、こういう意欲を持っている、そして開業のところまで準備を進めていく人が約半分ぐらいあるわけですけれども、そこのところでみんな断念していってしまって、結果的には十八万社しかない。それは、やはりいろいろなことで、日本の場合にそういう創業がしにくい体制になっているんじゃないか。
 一つは、これはもうよく御承知で、あえて申し上げますと、国民生活金融公庫の中に新規開業に対する一つの貸付制度がありました。しかし、これは新規に開業しようとする人たちに向かって、その業で六年実績がなかったら貸さないよという形で、最初からハードルを高くしているわけです。
 そこで、昨年の秋に、これは両院で御賛同いただきまして成立をいたしまして、むしろそういう本人の保証だとか、あるいは第三者の保証、担保、そういうものなしに、事業計画に着目をして、とにかく新規企業を立ち上げるようにしようじゃないか、そういう制度を始めまして、これは相当今実績が上がりつつあります。そういうことをやはり一つはやっていくということは、やりたい人は百二十万人いるんですから、私は、五年間で今の十八万社を四十万社ぐらいにする、必ずできるんじゃないかと、アメリカの半分ぐらい。
 それからもう一つは、やはりアメリカの場合には、個人が新規の産業に投資しやすい税法上だとかそういう形のシステムができている。ですから、そういうことも投資を促進するような、そういった税制もやはりあわせて考えていく。そしてまた、そういう新規に立ち上げる企業に対しての税制上の優遇、そういったことも一体化をしていけば、意欲を持っている人たちはたくさんいるわけですから、そういう意味では倍増することも私は決して夢ではない、そういう形で今積極的に取り組んでいるところでございます。
松崎分科員 新聞報道でも、大臣が諮問会議にエンゼル税制の控除を申し出るというお話も書かれておりました。その辺で、やはり国民の意識も変えていく。先ほどの売り掛け債権担保もそうですけれども、そういう国民の意識を変えていくというところは、日本国民のいいところは残しながら変えていくということは一番大事だろうと思っておりますので、そこはひとつ期待をするところであります。
 ただ、先ほどもちょっと出ましたけれども、前の松原さんもそういうお話をしていましたけれども、日本の場合、アメリカもそうですけれども、個人保証というのが非常に強いですよね。
 デフォルト時の日米比較を見ても、日本は一カ月ぐらいしか生き残れない。ところが、アメリカの場合は一年ぐらい、ある意味では生き残れる。これは当然これから法的なところをいじることによって変わるかもしれませんけれども、やはりこの辺も変えることによって、創業しやすい、アメリカのように、一度つぶした人の方が次に立ち上がると非常に信用がある。日本は逆ですからね、もう夜逃げしたり、死んじゃったりということになっておりますので。
 だから、逆にこの辺の意識転換もするにはやはり制度も必要だろうと思いますので、この辺もしっかりと個人保証の問題、今まで日本は非常にそれで当たり前、あるいは担保主義が強過ぎたこともありまして、周りまでみんな、親戚縁者まで非常に迷惑がかかる。こういう時代になりますとますます保証人になる人がいなくなっちゃう。ですから、やる気があってもできない。その辺で、個人保証の問題はテーマとして取り上げていただけますでしょうか。
平沼国務大臣 日本の場合には個人保証というものが大変厳しくできておりまして、中小企業で個人で保証していると、破綻をした場合に仏壇と二十万円しか残らない、こういうことがよく言われています。したがって、本当に身ぐるみはがれてしまうような状況です。
 今御指摘のように、アメリカなんかはそういう経験を積んだ人の方がノウハウを持っているんだから、再チャレンジの場合、そういう評価があるわけですね。ですから、やはり私どもはそういう新しい観点からの考え方をこれから入れていかなきゃいけない。
 その一弾として、繰り返しになりますけれども、個人保証に関しては、新規創業の中で、個人保証も第三者保証もなしに、いわゆる事業計画に着目をしてやるという制度をつくらせていただきまして、ことし初めから実施しているんですけれども、四月四日現在でこういった形で二百九十四件で九億三千五百万円の融資実績ができております。
 ですから、そういったことは非常に私はこれから必要だと思いますし、また、創業、ベンチャー企業への投資促進のために、中小企業総合事業団による投資事業組合への出資の制度がありまして、こういったものでやはり実績をつけていく。そして、事業破綻の際に、個人保証した創業者への責任の追及というのが、今言ったように仏壇と二十万円、再起の可能性を奪うようなことになっておりますので、今法務省においてそういった破産、倒産法制の検討が新たに進められているところでございます。
 私といたしましても、今申し上げたような観点を十分に踏まえまして、破産時における自由財産の範囲のあり方についてやはりしっかりと検討しなきゃいけない、こういう意識でこれからも行動しなきゃいかぬ、こういうふうに思っています。
松崎分科員 私は、去年の暮れに銀行の支店長に、売り掛け債権担保融資保証制度、先ほど後藤委員もやっておりましたけれども、たしか十二月の十七日から始まったので、無理だと思いましたけれども、一応聞いてみたのですね。全然知らないよと。これは十七日に始まったものですから、時間的には難しいのでしょうけれども、せっかくいいものをつくろうとしてもこれは年末には間に合わないし、また、これが結構使い勝手も悪そうですね。
 これは、先ほども大臣お話しになっていました譲渡禁止の問題やら、それから先ほどの答弁で、商工中金の方が多い、半分ぐらいだと。民間は、銀行によってもまた相当、こういうものに対して乗りやすいところと全然乗らないところ、中小企業の貸し出しが多いところと大企業中心との違いかもしれませんけれども。
 せっかくいいものをつくって、担保主義から変わっていく。いいんですけれども、これでは残念ながら使い勝手が悪過ぎる。幾ら宣伝しても、やはりまず担当者、経営者もそうですけれども、銀行、この辺の意識改革をもっと徹底的にやらないと、いいものをつくっても、結局、これはいわゆるブッシュ対策の応急のデフレ対策じゃないかなという陰口がたたかれてしまいますので、この辺の工夫というものはいかがなものでしょうか。
平沼国務大臣 十二月十七日にスタートをいたしまして、当初はなかなか、PRも不足でございましたし、また、一つは風評みたいなのがございまして、あそこは売り掛け債権まで担保に出したのかというような、そういうシュリンクする面もありましたが、しかし、これは昨年の秋の臨時国会で正式に法律で決められたことです。ですから、やはり周知徹底をすることが必要だということで、私どもは、全国に九カ所ある経済産業局、それからもちろん政府系中小企業金融機関、さらには全国の商工会議所、それから商工会連合会、こういったところを動員して、そして金融機関を含めてこれは今周知徹底をしています。
 それから、今、いわゆる大企業ですとかいわゆる官公庁が、これの譲渡を、解約禁止条項、こういうのがありまして、これが一つの足かせになっていましたから、これももう隗より始めよで、まず中小企業庁からそれを外す、こういう形で動き出しました。そして、その他の中央官庁ですとか地方公共団体にもそういう形でお願いしているし、大企業にもお願いしています。それから、さらにテレビでも広告をするようになりましたし、全国紙を使ってやっておりますし、さらにはチラシも二百万枚つくって今一生懸命PRをしておりまして、ようやく利用件数も先ほど申し上げたようにふえてまいりました。さらにこれは努力をしなければいかぬ、こういうふうに思っています。
松崎分科員 時間もなくなりました。
 特別保証制度、今の現況は、かつての二年半の導入したときと同じかそれ以上にこれからなりますよ。ですから、日本の経済大国を本当に支えてきた中小企業、まさに今瀕死の重傷であります。今どこでも叫んでいます。ですから、こういう制度ももう一度考え直していただきたいということを私は再度御要望申し上げまして、終わりにさせていただきます。
 ありがとうございました。
岩屋主査代理 これにて松崎公昭君の質疑は終了いたしました。
 次に、吉井英勝君。
吉井分科員 日本共産党の吉井英勝でございます。
 きょう、私は、浜岡原発事故や原発の老朽化と地震問題を中心に質問したいと思いますが、最初に政府参考人の皆さんに幾つか伺ってから、大臣にも質問するようにしたいと思います。
 九五年に阪神大震災がありましたけれども、あのときの神戸六甲台の、非常にかたい岩盤である、ここでの地震動の記録というのは、最も大きな地震動に耐えられるとしてきた浜岡原発の三、四、五号機の応答スペクトルを超えているものがあったということは、これは原子力施設耐震検討会の報告書でも述べられていたと思うんですが、まずこのことを最初に確認しておきたいと思います。
佐々木政府参考人 今お話しの兵庫県南部地震を踏まえた原子力施設の耐震安全性につきましては、平成七年九月の原子力安全委員会の報告書が出ております。応答スペクトルにつきまして、今御指摘の、確かに神戸大学の記録が浜岡の応答スペクトルを長周期側で一部上回っております。
 ただ、これについては……
吉井分科員 最初に応答スペクトルを超えたという事実を確認しておかないと。あと、おっしゃりたいんでしょうが。
 それで、原発の応答スペクトルなどについては、もともといろいろな計算式を用いるわけですね。その中の例えば大崎の式、有名な式ですが、皆さんよくお使いになるものですが、これは、大崎元東大教授が、設計用基準地震動は実際の建造物を壊した大地震の記録をもとにつくったものではないと、つくった御本人が言っておられます。これはあくまでもコンピューターを使って、それで計算機の上で人為的に決められたという、限界を持っているんだということを指摘しておられます。ですから、その限界のあるものでさえ超えてしまったというこの事実を重く見ておく必要があると思うんです。
 昨年の十一月でしたが、内閣府の方で、東海地震による震度分布等の見直し検討結果というのが出されております。もちろんよく御存じのことだと思いますが。この中でも、南海、東南海、東海と、ずっとここに大きな地震がこれまであったわけですが、マグニチュード七・九だとか八・四とか、八・四、七・九、八・〇とか、ずっと歴史的にものすごく巨大地震がこの地域であったんです。東海地震の場合は、空白域が百四十七年に及ぶ、非常にエネルギーがたまっているということは専門家の見ているところなんですね。しかも、浜岡原発というのはその震源域の真上にあるわけですね。これは昨年十一月の内閣府の文書でも「東海地震 東南海地震(一九四四)で歪みが解放されず、安政東海地震から約百五十年間大地震が発生していないため、相当な歪みが蓄積されていることから、いつ大地震が発生してもおかしくない」と言われているところなんです。ここは、阪神大震災、七・二よりもさらに、これまでの記録からいいますと、マグニチュード八とかそれ以上も考えられる非常に大きな、巨大地震が懸念されるところなんですね。
 そうすると、この巨大地震は、浜岡原発三、四、五号機の応答スペクトルですね、阪神大震災でも超えているわけですから、もちろん非常に限界のある計算式でやっても超えているわけなんですが、当然のことながら、巨大地震については大きく超える、七・二よりもはるかに大きいものになれば。やはりそのことを考えた対策というものを真剣に今考えなきゃいけないと思うんですが、この点は、考えるという立場ですね。
佐々木政府参考人 先生、一つだけ指摘させていただきたいんですけれども、この神戸の方の地震計に基づきます今回の応答スペクトルの比較は単純にはできないと我々は思っております。
 それは、地震計の設置場所直下に埋め戻し土あるいは表層土、あるいはその下に四十メートル程度の風化された花崗岩が分布しておりますことから、地盤の増幅などの影響が考えられるというのが原子力安全委員会に提出しました当方の見解でもございまして、基本的に安全上の問題、従来の評価についての妥当性は損なわれるものではないという、一応結論をいただいております。
 ただ、浜岡の原子炉の設置に当たりましては、当然、大規模な想定東海大地震であるとか、あるいは安政東海地震といったような規模のマグニチュードの地震を想定して設計いたしておるところでございます。
吉井分科員 いろいろ言いわけしてもだめなんですよ。もともと砂地地盤だったら二倍から三倍、地震動は大きく振れるということをずっと言ってこられて、岩盤の上、岩盤の上ということを言ってきて、これは神戸大学のデータなんですから、今度出てくると、また言いわけをする。
 ここから大臣、よくお考えいただきたいんですが、大事なことは、防災というものは言いわけから始まるんじゃなくて、実際に、過去の歴史地震ですね、巨大地震に備えたその対策のところから出発をしていかなければいけない、ここが一番大事な点だと思うんです。ですから、私はこの点で大臣に、この巨大地震、特にあらゆる分野で今東海地方における震災を考えているときですから、原発防災ということを考えたときに、これはあらゆる角度から、この機会にやはり根本的な検討というものを加える必要があるだろうと思いますので、この検討についての決意だけ一言伺って、さらに問題を深めていきたいと思います。
平沼国務大臣 私どもといたしましては、この浜岡原子力発電所の耐震安全性については、今御指摘の東海地震、あるいはそれを上回る地震にも十分耐え得る設計である、こういうことで当省としては確認をしているところでございます。
吉井分科員 阪神の七・二でも、それで設計しておったのを上回っているわけですから、マグニチュード八になったら全然それはもう成り立たない議論になるので、私は、事務方がいろいろ大臣のところへ持っていっている答弁書は多分そう書いてあるんでしょうが、これは政治がやはり責任持って、国民の安全を守るという角度から根本的な検討を深めるということだけ考えてもらわぬといかぬと思うんです。
 次に、原発の老朽化に対する取り組みの問題です。
 私は、八八年に玄海原発、九一年には関電美浜二号機など、その後もずっと原発事故調査に行っておりますが、やはり老朽化した原発の安全対策の強化ということを求めてきました。
 原発の「高経年化に関する基本的な考え方」というのは九六年四月報告、電気事業者の評価と具体的取り組みは九九年二月報告とか、いろいろ指摘されております。
 その中で、例えば制御棒案内管について、仮に脆化していたとしても、欠陥が存在しなければ脆性破壊しないとしてきたわけですが、今回浜岡原発の事故では、まさにそこにこの欠陥、問題があったわけですね、発生したわけです。「欠陥に地震荷重が作用しても問題になるものではないと評価する。」としてきたわけですが、今回欠陥が存在して、脆性破壊と結びついた。逆に、脆性破壊と結びつくような欠陥があるときには、地震荷重が加われば、阪神大震災級の原発では、さらに大きな問題というものをきちんと検討した、考えた対策が必要になってきますので、こういう可能性というものを考えた取り組みが必要だということを私は思うんですが、その可能性に備えた対策の点だけ、その必要性だけ伺っておきたい。
佐々木政府参考人 その点については先生の御指摘のとおりでございまして、私どもも、高経年変化といったことを念頭に置きまして、原子炉の安全性につきまして、三十年運転経過したものを目途にしまして、十年の保全計画の中で、地震動と合体して内部荷重との組み合わせによります評価も行っているところでございます。
吉井分科員 問題は、老朽化と地震の重なった条件のもとでの、実際に起震台に載せての実験とかをやったことはほとんどないわけです。ですから、そのことはさらに後で触れていきたいと思いますが、その前に浜岡原発事故について、二つの事故がありました。
 昨年十一月七日のECCS関連配管の破断事故について、現時点での報告も読んだわけですが、配管破断の原因は水素爆発というふうにしていますね。同様の事故が昨年十二月十四日にドイツでも、やはり沸騰水型原発の配管内部における水素爆発事故が発生いたしました。これはあらかじめ先ほどもう原発の名前も挙げて申し上げておきましたが、この水素爆発が起こる条件、水素ガスの生成のメカニズムとか、一定空間に滞留する条件、爆発に至るガス濃度の条件とか、あるいは着火源がどういうものになるのかとか、何がこの引き金になるのかということ、それについて現時点でわかっていることがあれば伺っておきたいと思います。
佐々木政府参考人 現在まさに調査中でございますが、もうかなり大詰めに来てございます。
 今の御指摘の配管の破断におきますいわば着火の条件、それから蒸気の流動、あるいは温度の変化等、あわせましていろいろな試験をやってまいりました。今その結果を取りまとめまして、おおよそこういう現象ではないかというところの大詰めの評価を行っているところでございます。
吉井分科員 ドイツの方と見解は大体同じような方向に向かっているんですか。
佐々木政府参考人 ドイツの情報も私ども入手いたしておりますけれども、ドイツの方の破断の箇所は、先生御案内のとおりに、原子炉圧力容器の頂部スプレーの配管でございます。ドイツの安全規制当局とも私ども今非常に密にいろいろ連絡をとり合っておりますけれども、この原因が今のところ、まだ事業者の見解ということで規制当局の正式見解ではございませんけれども、主蒸気隔離弁に間接的につながっているドレーンラインから流入した高温の水蒸気が要因となって水素が爆発したのではないかというような見解がございますけれども、まだ規制当局からの正式な原因究明についてはこれからというふうにも聞いております。
 なお、我が国にも同じように炉心の頂部スプレー配管が設置されておりますけれども、構造が違っておりまして、主蒸気からのドレーンラインというものはないということで、現段階で判断する限りにおきまして、我が国では同じような場所での同じような事象ということは考えられないと思っております。
吉井分科員 私も場所が違う話を皆わかった上で聞いているんですが、ただ、なぜ水素爆発に至ったのかというそのメカニズム、原因、そこでわかっていることがあったら伺っておきたいんですが、まだ解明されていないと。
 いずれにしても、長時間運転、老朽化に伴って、今までに解明されていない、あるいは今まで起こらなかった問題が次々起こってきているというのがこの間の原発の事故等であります。
 日本原子力発電の熱交換器部分の一次冷却水漏れ事故が発生したことであるとか、あるいは東京電力の福島第一原発六号機では、一昨年でしたか、震度六に耐えられる、この設計でいったのが震度四で蒸気を逃がす配管が破断してしまったんですね。それから、二号機でも小口径配管の破断というのがこのときにありました。
 ですから、応力腐食割れなどさまざまな条件をどのように設定して、老朽化した原発であれば機器類はこういう状況になっているだろうということを設定しての、老朽化原発を想定した装置を起震台の装置の上に載せて実際の耐震試験を行っていくこととか、それをやらないと、新しいものでパーツパーツに分けて起震台に載せてやって一応のデータをとったものがあるにしても、それは老朽化した原発の場合には必ずしも当てはまらないわけで、そういう実験というものが今求められていると思うんですが、これをどのように進めていかれるか、伺っておきたいと思います。
佐々木政府参考人 今後の高経年変化への対応の、材料の問題、応力腐食割れの問題、あるいは照射脆性の問題、いろいろ我々も、基本的にこうした問題に対応していかなきゃいかぬと思っております。
 そしてまた、初期欠陥がどういうふうに発展していくかということも十分にこれは対応していかなければいけないと思っております。
 当面、私ども、耐震設計との考えで最も早く急いでやらなければいけないなと思っておりますのは、それぞれの重要機器のいわば最終体力をきちんとここで確認をしておく、これらのデータをきちんと集めて分析できる体制にしておくということが非常に大事だと思っております。これに今早急に取り組んでいるところでございます。
吉井分科員 最も重要な部分もそうなんですが、しかし、重要と思っていなかったところから次々と事故が起こって、しかもそれが大規模事故に発展する可能性をそれぞれに秘めているものがありますから、この対策というものは本当に速く進めていかないと、老朽化と大規模地震という問題には対応できないということを申し上げておきたいと思います。
 次に、IAEAと日本政府のプラント状態の定義が違うという問題がありますが、これはちょっと見づらいでしょうけれども、こっちがIAEA、こっちが日本政府の見解です。
 これは、要するに過酷事故を法的に安全規制の対象に入れるという立場、ここまでIAEAは入れる。日本政府はここまで、ここは民間事業者がみずからやりなさいというのがシビアアクシデント、過酷事故のところでありますが、この区分けの仕方というのはIAEAと日本政府の考え方では違いがありますから、まずこの点だけ最初に確認しておきます。
佐々木政府参考人 確かに、厳密に申しますと、設計基準事象を超えるシビアアクシデントというものをどこから線引きするかということで、IAEAと日本との考え方を線図に引きますと、そういう違いが若干出てまいります。おっしゃるとおりでございます。
 しかしながら、基本的に我々が今シビアアクシデントということで考えておりますのは、設計基準事象を大幅に上回って炉心の燃料の問題を取り上げているといった意味では、趣旨としては、我々は、同じことをやっているというふうに考えております。
吉井分科員 ですから、大臣、法的規制が、シビアアクシデントについては日本ではIAEA基準になっていないんです。
 しかも、このIAEAの基準を考える上でも、日本が非常に大事なのは、地震国だという問題ですね。特に浜岡もそうなんですが、老朽化と、そして大規模地震の震源域の上にある原発を抱えている、そのときに過酷事故が起こった場合にはどうするかということをきちんと考えた、そういう法的基準、規制というものを考えていかないと、これは現実にはうまくない。これはよく確率論的安全評価を皆さんの方は、これで電力会社はやっているから、実際にそれをやってみたら大丈夫だということなんですが、これは工学的に見ても統計的に見ても裏づけのないものですから、やはり現実に発生している事故から出発して災害対策というものはきちんと考えていく、安全に備えた規制というものもその立場から臨んでいく必要があるということを申し上げて、次に、発電コストの問題を伺っておきたいと思うんです。
 発電原価の算出というのは、資本費と燃料費と運転維持費の合計を発電電力量で割り算しているというのがこれまでのやり方ですが、本当は、再処理費、開発費、解体処分費、地元対策費などのすべてを、部分的に入っているものもないことはありませんが、すべてをコストに入れないとおかしいわけですね。
 実際、商業用原発の廃炉措置にかかる費用の試算というのが、皆さんの方からもいただいておりますが、商業用原発全部合わせると、数字でいえば二兆五千二百四十八億円になりますね。ところが、実際には、超ウラン元素を中心とする高レベル放射性廃棄物の処理工場とその解体処理も含めて約四兆円かかる。再処理工場の建設費二兆一千九百三十四億円を含めて、その解体処理などのコストが約十兆円かかる。
 電気事業連合会はそれらの数字を挙げて約三十兆円を試算しておりますが、少なくとも私が二月に説明いただいたときには、資本費は減価償却費と固定資産税と廃炉費用等として一キロワット当たり二円三十銭、燃料費は核燃料サイクルコストを含むとしていたわけですが、六ケ所再処理工場とその解体費用、ここから出てくる高レベル放射性廃棄物の処理費など合わせると、とても一円七十銭じゃ済まないわけですね。地元対策の電源三法交付金その他はコスト外になっているわけですが、これもおかしいわけで、実際に原発の発電コストは幾らになるのか、これを次に伺っておきたいと思うんです。
迎政府参考人 原子力発電のコストにつきましては、平成十一年に総合エネルギー調査会原子力部会におきまして、一キロワット当たり五・九円というふうな試算をいたしたところでございます。これにつきましては、いろいろ、ほとんどの再処理のコスト、そういったものも含めたわけでございますけれども、基本的には他の、電力、火力等との比較をするという目的のもとに試算を行ったものでございまして、これはおおむね、細かい入り繰りはあると思いますけれども、他の電源との比較において遜色がないというふうな確認結果を出したところでございます。
吉井分科員 今おっしゃった報告書を全部読んだ上で聞いていますから、どういう試算の根拠かわかった上の話なんです。
 しかし、その後の新たな発展、展開がありますね。せんだっても、電事連の方から約三十兆円と。三十兆という数字だけじゃなくて、実際にはもっと細かく、私今ちょっと触れましたように、これまでの廃炉費用と考えていたもの以上の問題とか、再処理のコストとか、それらが今、次々と新しく示されてきているわけですから、それらを入れた一番新しいところで実際の原発コストは幾らになるのかということを伺っているんです。まだわからないならわからないで、後ほどきちんと試算してお答えいただくということで結構ですが、どうですか。
迎政府参考人 御指摘の、原発の後処理費三十兆円というふうな新聞記事、私どもも拝見をいたしました。これにつきましては、バックエンドの費用を含めた原子力にかかわる費用というのは電気事業の経営上重要課題ということで、電気事業者においても当然いろいろな試算をされているというふうに私ども承知をしております。常にこういったいろいろな試算をしておられるものと思いますが、その一部が報道されたのではないかというふうに思っております。
 ただ、私どもといたしましては、十一年に出しましたものから非常に大幅な見直しが必要であるというふうな理解はしておらないということであります。
吉井分科員 大幅な見直しが必要と言っておられるんですから、本当に見直しをやって、実際の原発コストは幾らになっているのか。よく、過去に出された数字、かなり甘い数字で、原発は安い、安いという議論がずっと出てきたわけですよ。これは先に走り過ぎてしまって、しかし、よく見てみれば、例えばことしの原子力関係予算の四千八百九十四億円だって、これは国がやっているからということでコストに入らないわけですが、これは本来、原発をやっていこうと思ったら、民間事業者が全部やるとなれば民間事業者のコスト負担になるわけですね。かなり国民が負担している分が皆あるわけなんですが、それらを実際の原発コストに算入したらどうなるのか。やはり、そこはきちんと、あるいは電源三法交付金の問題とか、きちんと入れたコストというものを出さないと、再生可能エネルギーなど、他の発電コストとの比較というのは簡単にいきませんから。まず見直しのお話ですが、速やかに計算をやって、出していただきたいというふうに思います。
 それから、この機会に、電気事業連合会から政府へ原発に関する支援要請が出されているということですが、電力事業者内部の協議とエネ庁との話し合いについて今報告できることがあったらしていただきたいんですが、時間がかかるようであれば、後ほどお答えいただくということで結構です。
迎政府参考人 先ほども申し上げましたように、原子力発電のいろいろな、フロントエンド、バックエンド含めたコストについては、電気事業者の方で、電気事業の問題として、重要な経営問題として、いろいろな試算等あるいは検討等行われている、これは常にそういうことだと思いますけれども、私どもが何らかの支援要請を受けた、そういうふうなことはございません。
吉井分科員 次に、ベルギーの原発からの撤退が決定されたわけですが、政策転換の理由は何かということと、これはMOX燃料工場もベルギーで閉鎖するわけですね。それから、イギリスのBNFLの検査データに問題があったということで、イギリスとのMOXの契約も今見直しということになってきている。せんだって関西電力は、フランスのコモックス社製のMOX燃料の申請取りやめをやってきたわけです。
 そうすると、これは、プルサーマル計画を進めてこようとされたんですが、かなり全体が変わってこようかと思うんです。まず、ベルギーの政策転換の理由と、そして、日本のそれと関係したプルサーマル計画の変化等について、簡潔で結構ですから、伺っておきます。
迎政府参考人 ベルギーの政策の転換につきましては、本年の三月に、現在運転中の原子力発電所の使用期限を四十年として、段階的に原子力発電所を閉鎖していくというふうな法案を閣議において決定したというふうに聞いております。
 これにつきましては、一九九九年に樹立された連立政権の中で、エコロ党といいますが、環境政党が参加した際に、原子力発電所閉鎖というふうな連立政権協定を締結したことが背景にあるというふうに聞いております。
 ただ、この法案には、電力の安定供給が危機に瀕するおそれがある場合、原子力発電所の廃止条項については、この条項にかかわらず必要な措置をとることができるというふうな規定が盛り込まれておりまして、法案自体の中でも、現時点で必要な代替エネルギーの確保の明確な具体策が示されてはおらない。あるいは、ベルギーは今後、京都議定書の履行のために七・五%のCO2の抑制もやっていかなければならない。こういう中で、そもそもこの法案がどういうふうな形で審議、制定されるのか、あるいは、実際、先ほど申し上げましたような例外条項を含めてどんなふうになっていくのか、これは今後とも私どもとして注視していこうというふうに思っております。
 また、ベルギーはフランス、オランダ等と電力の輸出入等のある国でございまして、我が国との関係で申しますれば、各国固有のエネルギー事情あるいは環境問題への対応の観点から、同じところ、違うところあるわけでございまして、こうした点を十分認識しながら、私どもは考えていきたい、こういうふうに考えておるところであります。
吉井分科員 大陸間で電力の出入があることは私も知った上で話をしております。しかし、全体として、その大陸で今原発からの撤退という方向に向かっていることも事実であって、そして、ではそれをどう補うか、本当にびっくりするようなスピードで再生可能エネルギーの建設、促進、普及というものに取り組んでいるというこの事実にまず目を向けなきゃいけないと思うんです。
 実際に、ベルギーがMOX燃料工場を閉鎖へ、イギリス、フランスから日本の契約している電力会社が撤退したりとかなってきますと、日本自身のプルサーマル計画自体が実は簡単には進まないというところへ来ている。やはり矛盾に直面しているということをきちんと見ておく必要があると思うんです。
 そこで、最後に大臣に伺っておきますが、やはり原発のこれだけの老朽化という問題とそれから東海大地震という問題、きょう一つこれを私は取り上げました。それから、発電原価が、これまで言われてきたのと、実際はいろいろなものを入れていったら随分上がってくるという現実の問題が今出てきているわけですね。そして、プルトニウム循環方式の行き詰まりというものが今国際的に問題になってきて、ヨーロッパははっきり撤退という方向です。
 ですから、やはり日本は、日本だけがプルトニウム循環方式にいつまでもしがみついているというやり方じゃなくて、プルトニウムというのは特に危険なものなんですから、日本の原発政策全体の見直し、少なくともプルトニウムの循環方式については、これはこの方向を進めることについては根本的な見直しに進んでいくとか、やはりエネルギー政策の中でそこだけは、原発推進の立場でおられても、プルトニウム政策についてはきちんと見直しをやるということをこの機会に考えるということが大臣としてもお考えになってしかるべきじゃないかと思いますが、最後にこの点を伺っておきたいと思うんです。
平沼国務大臣 我が国はいわゆるエネルギー資源というものが非常に乏しい国でありまして、そういう意味では、二十一世紀を展望しても、やはり発電過程においてはCO2の排出量が全くないという原子力発電というのは、主要なエネルギーとして確保していかなければならないと思っています。もちろん、原子力行政、政策を進めるに当たっては、先ほど来御議論がありました、安全性をいかに担保するか、このことが一番、第一義的に重要だと思っています。
 そういう意味でも、やはり、天然資源、エネルギー資源の乏しい資源小国の日本としては、プルサーマル計画も安全性を担保しつつ着実に実行していかなきゃいけない、私はこのように担当大臣として思っております。
    〔岩屋主査代理退席、主査着席〕
吉井分科員 時間が参りましたので、終わります。
松崎主査 これにて吉井英勝君の質疑は終了いたしました。
 次に、山内功君。
山内(功)分科員 民主党の山内功でございます。本日は、商品先物取引のことについてお伺いをしたいと思います。
 農協や銀行の役職員、先週は郵便局長、自治体の収入役、金銭感覚に一般の方よりもたけていると思われる方が公金を着服して逮捕されて、そのお金は先物市場に流れていったという事件が頻発をしております。預貯金金利もほとんどゼロ金利ですので、そこにまた投機的な心をくすぐる、業者がねらいをつけるということもあるんだろうと思っています。
 国民生活センターあるいは農林水産省、経済産業省、消費生活センターなどに寄せられた苦情相談などの件数を、平成十年から平成十三年まで教えていただきたいと思います。
青木政府参考人 ただいま、商品先物取引に関しますいわゆる苦情相談件数の直近年の推移について御質問がございましたが、まず初めに、地方局を含みます経済産業省に寄せられましたものは、平成十年度が二百二十二件、十一年度が二百九十三件、十二年度が三百一件、十三年度は本年二月末まででございますが、三百五十二件でございます。
 また、国民生活センター、あるいは各地にございます消費生活センター、これらに寄せられました苦情件数でございますが、平成十年度が二千九百三十三件、十一年度が三千四百二十九件、十二年度が三千八百五十件、十三年度は昨年の十二月まででございますけれども、三千七百二十九件と承知をいたしてございます。
 最後に、日本商品先物取引協会でございますけれども、この団体は、御案内のとおり、商品取引所法に基づき平成十一年四月に発足した自主規制団体でございます。したがいまして、十一年度以降の数字を申し上げますが、十一年度が五百三件、十二年度が三百七十一件、十三年度が四百二十六件でございます。
山内(功)分科員 そうしますと、平成十年の改正で委託者保護をうたった規定が設けられたのにもかかわらず、わずか一年後の平成十一年度から、相談件数の総合計は四千件を超える苦情相談が寄せられているということになるわけです。平成十年の法改正の委託者保護がほとんど機能していないのではないですか。
青木政府参考人 私どもといたしましては、自主規制団体によります自主規制並びに法令の厳正な運用をいたしておるところでございますが、一つの理由といたしまして、この苦情件数の増大の要因分析でございますけれども、なかなか定量的に分析するのは難しゅうございますが、例えば全商品取引所、これは全国に七カ所ございますけれども、ここにおきます取引の出来高が、平成十年が七千二百四十万枚、これが平成十三年に至りますと一億二千百万枚、近年の新たな商品上場によりまして、かなり取引が活発化をいたしてございます。こうした取引の活発化に伴いますトラブルの増加ということも、この苦情件数増大の一つの背景にあろうかと存じます。
山内(功)分科員 平成十三年に営業許可の更新について申請のあった商品取引会社、八十五社、すべてに許可を与えたのですか。
青木政府参考人 お答え申し上げます。
 数字は、私ども、申請は七十八社ございました。これについて許可を与えたものでございます。
山内(功)分科員 二〇〇五年に委託手数料の完全自由化を迎えるわけですが、商品版ビッグバン、そういう時代にふさわしい業者をふるいにかける絶好の機会だったんじゃないのでしょうか。
青木政府参考人 商品取引所法におきますいわゆる許可の要件でございますけれども、大きく分けまして財務面と業務面がございます。財務面におきましては、商品取引員のいわゆる純資産額が必要額を上回っていること、あるいは受託業務の収支見込みが良好である、さらに、業務面におきましては、当該商品取引員が受託業務を遂行するに必要な知識、経験等を要すること等々の要件がございます。
 私ども、昨年の許可の更新に当たりまして、商品取引所法にのっとり、これらの要件について厳密な審査を行い、その基準に適合していたわけですから、許可の更新を行ったものでございます。
 また、その過程におきましては、制度の共管官庁でございます農林水産省とも連携をいたしまして、必要な立入検査を実施する等、財務面のチェックをいたしましたという状況です。
山内(功)分科員 私は、四年から六年へと許可期間が延長されて初めての更新手続であったわけですから、それだけ業者に自由に営業できるようになったということも考えれば、二〇〇五年を迎えさせるためにも、監督姿勢は厳しくあってしかるべきだと考えております。
 それでは、今、経済産業省は、許可更新は単独で、つまり、農水省と連携もしないで許可の更新をしたと聞いていいのでしょうか。
青木政府参考人 商品取引におきましては、工業製品関係の商品あるいは農林水産系の商品、これをともに扱っている業者もおりますので、当然のことながら、許可の更新に当たっての方針の作成ですとかあるいは立入検査ですとか、こういうことにつきましては、密接な連携のもとに行ったところでございます。
山内(功)分科員 平成十年の法改正で適合性原則を盛り込んだ趣旨は何でしょうか。
平沼国務大臣 お答えさせていただきます。
 商品の先物市場が、商品の価格変動に関するリスクヘッジ及び公正な価格形成という機能を適切に果たしていくためには、ヘッジニーズを有する産業ユーザーのみならず、商品先物市場における取引の厚みを確保するため、さまざまな投資家の市場への参加が重要であると思っています。
 その際、商品先物取引というのは、比較的少額の資金で多額の取引ができる反面、御承知のようにリスクが大きく、仕組みが複雑であることから、一般投資家が安心して取引を行うことができますように、商品取引員の勧誘を適正化するなど、一般投資家の保護を徹底することが非常に重要であります。
 このような観点から、商品取引員は、顧客の商品先物取引に関する知識、経験、財産の状況を適切に把握をしまして、取引に伴うリスクを負担することができる顧客に対して勧誘を行うべきであるとの観点から、おっしゃるように、平成十年の商品取引所法改正におきまして、商品取引員の勧誘の基本原則でございます適合性原則を設けたところでございます。
山内(功)分科員 だとしたら、エグチフューチャーズという会社に初めて適合性原則を適用したのが平成十四年二月までなのですが、平成十年から十四年までの間に、適合性原則を考えてほしいというような、いわば被害者のような方からの訴えも一切なく、全く善良な会社しかなかったと言えるのですか。
青木政府参考人 苦情の中には、いわゆる勧誘につきまして、不適正さについて苦情相談をしてこられる一般投資家もございます。
山内(功)分科員 しかし、いろいろ判断して、初適用が四年先までになったということなんでしょうが、一定の数値基準がないから、その適用についてちゅうちょがあると思うので、判断が難しいなら、その判断について類型化をしていくというような作業はされないのですか。
青木政府参考人 この適合性原則に違反する勧誘であるかどうかにつきましては、これは法令上の要件でございます、顧客の商品先物取引に係る知識、経験、財産、こうした状況に加え、現実の取引の状況も踏まえ、やはり個別具体的に判断をしていくことが必要でございます。
 したがいまして、こうした一律の具体的な基準の設定は、やはりなかなか困難でございます。また、場合によっては、一律な基準を設定することが、かえって適合性原則の趣旨に反するいわゆる脱法的な行為、こうしたものも助長するケースも考えられようかと思います。
 一方、先生御指摘のように、適合性原則違反に対する迅速な対応を図るということは、私どもといたしましても非常に重要であるというふうに考えておりまして、その観点から、本年一月から、商品取引員がいわゆる委託者から受けた苦情等につきまして、これを私どもに報告するに当たり、いわゆる苦情申し出者の適合性原則に係る事項の内容、つまり、経験ですとか知識ですとか財産ですとか、こうしたものの詳細な報告をすべての商品取引員に対して提出を求めることとした次第でございます。
山内(功)分科員 アルツハイマーの人や老人性痴呆の方に商品取引をやらせているのではないかという訴えもあるのですが、このエグチフューチャーズ、あるいはそれ以外の取引員の適合性違反のことについて、主務省に言ってきた方とかはおられないのですか。
山本政府参考人 ただいま御指摘のございましたエグチフューチャーズの関係で御説明を申し上げたいと思います。
 エグチフューチャーズにつきましては、農林水産省、昨年、立入検査をいたしまして、その結果、ただいま経済産業省から御説明ございましたような意味での、商品取引所法上のいろいろな問題点がいわば判明いたしましたので、いわゆる適合性の原則に反するものといたしまして、ことしの二月に、委託者保護措置の強化等を内容とする改善命令を課したところでございまして、このような委託者保護の観点から、委員ただいま御指摘のございますようないろいろな新しい商品取引所法に基づく委託者保護の考え方につきまして、さらに今後努力してまいりたいと考えております。
山内(功)分科員 私は、アルツハイマーの人に商品取引をやらせているのではないかと聞いたのですけれども。
 商品取引員あるいはその団体で、例えば、こういう人からは大金の委託を受けないようにしようというガイドラインをつくっていると思うのですけれども、どういう条文になっているのですか。
青木政府参考人 今、各社のものを持っておりませんけれども、実は、各社とも、受託業務管理規則というものを定めることとなっております。
 それに当たりまして、先ほど来申し上げております日本商品先物取引協会、自主規制団体でございますが、ここがいわゆる日商協のガイドラインをつくっておりまして、例えば適格性の審査、これは、例えば未成年者あるいは成年被後見人等明らかに不適当と思う者、こういう者を例示して、勧誘あるいは受託を行わない、こうした旨を各社の管理規則で定めること、あるいは、未経験者の取引に係る管理措置といたしまして、当然まだ知識が乏しいわけでございますので、例えば、その審査結果によりまして当初の受託取引数量を制限する、例えば三月なり半年を習熟期間として、契約時に設定した範囲内の中で取引を行うといったような幾つかの項目についてのガイドラインがございます。
山内(功)分科員 例えば、もっと細かく、これから述べるような基準を設定することについて、一つ一つコメントいただけますか。
 例えば、七十五歳以上の高齢者に対しては勧誘を禁止する。恩給や年金で生活をしている人からは委託を受けない。母子家庭、専業主婦からの受託行為も禁ずる。以上述べたようなことについて、例えば省ではどんな見解を持っておられるんでしょうか。
青木政府参考人 例えば高齢者でございますけれども、確かにどこかで線を引くというのも一つの考え方でございますが、しかしながら、現実に、高齢者であっても十分な余裕資金を持ち、あるいは先物取引について十分理解と判断能力があるという上で取引を希望する場合、これが一律に適合性原則に反するというのはなかなか言いがたいのではないかというふうに考えてございます。
山内(功)分科員 個別に、もう少し個別に聞いたつもりなんですけれどもね。
青木政府参考人 恩給等々でございますけれども、先ほどの適格性につきまして、例えば一定の所得を有しない年金生活者等について勧誘、受託を定めないということも一つの考え方でございますけれども、他方、そうした方が蓄積した財産をかなり持っているという場合に、そうした方にまで禁止をするというのもなかなか難しいところがあるのではないかというふうに考えてございます。
 いずれにいたしましても、なかなか、この類型化あるいは具体的な基準というのは非常に難しい問題であろうかと思いますけれども、他方で、先ほど来申し上げていますように、私どもといたしましては、この一月から、各商品取引員が苦情を報告するときの適合性原則についての詳細な報告を求めるという体制を整備したところでございます。
 今後、そうした個々の案件の処理、あるいは日商協の個々の案件の処理の個別具体例の積み重ねを通じまして、先ほど申し上げました日商協のガイドライン、こうしたもののより具体化に反映をさせていきたい、こういうふうに考えてございます。
山内(功)分科員 よく自己玉についても裁判所などでも争いになっているようですが、自己玉についてはどういう危険性があり、省としては今後どういうふうに指導をしていこうと考えておられますか。
青木政府参考人 自己玉といいますのは、先生御案内のとおり、商品取引員が自己の計算のために、自己のために行う取引でございまして、当然に商品先物市場の厚みを増す上では非常に重要な取引でございます。ただ他方で、委託者との取引におきまして、場合によっては利益相反に陥る可能性もあるということでございます。
 したがいまして、私どもとしては、そうしたものの情報開示を適切に行うことによりまして、市場の透明性あるいは公正の担保というものを図っていく必要があるというふうに考えてございます。
山内(功)分科員 そのために今とっている方法は何ですか。
青木政府参考人 自己玉の数量、それから委託者の数量、委託者によります委託玉の数量につきまして、それぞれ各商品取引所におきまして商品ごとに開示をさせているところでございます。
山内(功)分科員 もっと進んで、顧客に対して、自己玉、向かい玉としてこういう玉があるということを個別に通知することまでは考えませんか。
青木政府参考人 その自己玉の機能でございますが、これは例えば当業者の場合ですと、自己のヘッジ目的といったいろいろな機能がございまして、そうしたものを通知するというのは必ずしも適当ではないと思っております。
 ただ、先ほど申し上げましたように、この自己玉とそれから委託玉、このそれぞれの正確な数値について、各商品取引所で、最近はオンラインでだれもが見られるように、そうした措置を今後とも講ずることによって適切な情報開示の確保に努めてまいりたいと思います。
山内(功)分科員 例えば、被害申告の多い取引員、あるいは日商協のあっせん、調停などに多く係る業者、あるいは裁判所で損害賠償の責任を追及された業者、そういう業者について業者名を公表することは考えませんか。
青木政府参考人 いわゆる苦情相談といいますと、言った言わないということで、なかなか原因が特定できないわけでございます。したがいまして、そうしたものをただ苦情があったからといって一律に公表することは、私ども考えてございません。
 ただ、経済産業省といたしましては、例えば行政処分を行ったときには、これは法律には書いてございませんが、私どもとしては積極的に公表するという方針をとってございます。
山内(功)分科員 日本商品先物取引協会あるいは補償基金協会の関係について少し聞きます。
 日商協の会長、酒巻会長が、東京の三つの弁護士会が先物取引被害一一〇番と題して被害相談を予定しているとの報道に、その実施は業界のイメージを非常に低下させるので業界は抗議すべきだと発言をしているのですが、そんな発言自体を知っていますか。
青木政府参考人 承知をいたしてございません。
山内(功)分科員 日商協の年間予算は幾らぐらいで、それはどういうところから賄われているのですか。
青木政府参考人 日本商品先物取引協会の年間の予算でございますが、恐らく収入の方でお答えした方が先生の問題意識に的確だろうと思いますけれども、平成十三年度、まだ決算が終わっておりませんが、予算額の段階で、十一億二千八百万円でございます。
 収入の主な項目別の内訳でございますけれども、約七五%の八億四千八百万、これが会費収入でございます。それから四千二百七十万、これが受講・受験手数料、あるいは、外務員の登録という事務を行っておりますが、七千四百十五万、その他雑収入でございます。
山内(功)分科員 五名の役員のうち、通産省からは大臣官房付の方が副会長に就任している。それから、農水省からも大臣官房付の方で、どちらも局次長クラスでしょうか、一名就任している。これは間違いないですか。
青木政府参考人 局次長とおっしゃいますと、どういう方でございますでしょうか。
 前段の部分は間違いございません。役員のうち一名、経済産業省のOB、もう一名が農林水産省のOBが就職をしているというのは承知をしております。
山内(功)分科員 受託債務補償基金協会にも、四名の役員のうち、東北通商産業局長が一名、農水省からは近畿農政局長を退職した方が一名、役員に就任しておるのは間違いないですか。
青木政府参考人 そのとおりでございます。
山内(功)分科員 債務補償基金協会からの、出金というんですか、基金を使ったというのは、平成四年以降、今日までも利用実績はないでしょう。
青木政府参考人 ございません。
山内(功)分科員 天下りを減らすとか、役員の数自体を減らす、職員の数を減らすということについては考えていないのですか。
青木政府参考人 この債務補償基金と申しますのは、委託者債権の保全をする重要な機関でございまして、現在もなお弁済財源の増額に努めているところでございます。そうした観点から、商品取引所法に基づく指定を受けた団体でございまして、特に役員の合理化といったようなことは現時点では考えてございません。
山内(功)分科員 商品取引所の理事長も、全員が経済産業省のOBではないのですか。
青木政府参考人 経済産業省が関係しております商品取引所、全国で七カ所のうち三カ所ございます。東京と大阪、この二つは経済産業省専管でございまして、ここの取引所にはそれぞれ、経済産業省のOBの方が就職をされてございます。
 なお、名古屋につきましては農林水産省との共管でございますが、ここには、経済産業省のOBは理事長として就職をいたしてございません。
山内(功)分科員 農水省のことについてまで聞く時間がなくなりましたけれども、取引所の理事長から承認を受けているということは、余り大きな後ろ盾にはならないと私は思います。理事会を強化するためだったら、例えば外部から過半数を占めるぐらいの理事を選任するぐらいのことをした方が、透明性は一層高まると思っています。
 最後に、市場の信頼性を高めるために、審議会や専門家からどのような指摘を受け、それにどう対応しようとしているのか、論点ごとに指摘をして、それについての対応策を述べてください。
青木政府参考人 最近の審議会の議論は、昨年、十三年の六月に、産業構造審議会の中に設けております商品取引所分科会においてなされてございます。農林水産省と共同でこの分科会の運営に当たったところでございますが、昨年の六月末にいわゆる報告書をいただいたところでございます。
 一つの内容が、いわゆる商品取引所におけます契約の履行に関するリスクの管理ということでございます。
 これの背景といたしましては、数年前に、実はパラジウムの先物市場におきましていろいろ混乱が生じたというようなこと、さらには、昨年、原油の試験上場の申請があった、こういう観点から、契約履行についてさらにリスク管理を強化するようにという御指摘をいただいております。これにつきましては、逐次、東京工業品取引所を中心に実施をしているところでございます。
 それからもう一点といたしまして、勧誘、受託をめぐるトラブルの対応につきましても、昨年の六月、あわせてこの分科会から報告をいただいております。
 例えば、本年一月から、商品取引に、苦情を経済産業省に報告するときには、適合性原則に関係いたします項目についても詳細な報告を求めるといったようなことにつきまして、この報告書をもとに、逐次、自主規制措置等を強化しているところでございます。
山内(功)分科員 委託者が刑事処分を受けたり、あるいは自殺に追い込まれたりする事例がたくさんございますので、これからも、委託者の資産から見て取引が不相応な場合など、各主務省ともに積極的な関与をしていただきたいということをお願いいたしまして、質問を終わります。
 ありがとうございました。
松崎主査 これにて山内功君の質疑は終了いたしました。
 次に、松島みどり君。
松島分科員 自由民主党の松島みどりでございます。
 最初に、大卒の就職の問題について、就職協定その他のことで御質問したいと思っています。
 いわゆる企業側と大学側の就職協定というのは、九七年に廃止をされました。企業の倫理憲章で、内定を出すのは十月一日以降にしなさいということだけが決まっているわけなんですけれども、しかし、今現実に、実際どういうことかといいますと、大学生、大学四年になったばかりの今の時期、四月、この時期に、大企業の内々定が大体出始めている、大体が出そろうというのが現状でございます。内定というのは十月一日以降なんですけれども、今、内々定が出ている。三年生の終わりぐらい、三年生の年末ぐらいから始まって、年が明けて、三年生の二月、三月、そしてこの四、五月がピークである。
 これがまた、二年間しかない修士課程、理工系の場合は修士へ行かないと就職できないということが多いんですけれども、その場合は、修士課程二年間しかないのに、一年生の後半がもう就職で忙しくなる。短大生でも、一年生の一月ぐらいからこういう状況になっちゃう。
 そうしますと、学業に差しさわりがあるということが一つ。そしてまた、昨今の情勢でいいますと、就職内々定をもらって喜んでいたら一年後にその会社があるかどうかわからないという事態が頻繁に出てまいります。その会社があったとしても、例えばことしの三月に大学を卒業して四月に入社のシーズンを迎えた人たち、この人たちの場合は、一年前はいわゆるIT景気、よかったので、たくさん採用する予定であって、それからIT不況になり、九月のテロ、そしてまた狂牛病ということで、いろいろな業種が採用をまた縮小しちゃった。
 そうしますと、一年前に決まったことが当てにならない。さっき申しましたように、勉強に差し支えるということと同時に、就職の内々定の取り消しだとかが起こってくる。学生についての大変なこと。そしてまた、学生がいいかげんになっちゃって、早く決まったら喜んでもう勉強しなくなっちゃって、せっかく内定したけれども、あるいは、内々定を四年生の初めにとって喜んでいたら、三年生から四年になるときの成績が悪くて進級もできなかったり、いろいろなことが相互にあるようでございます。
 これに関して、経済産業省、企業を見ている立場、そして学生を見ている立場で、どのようにそれぞれお考えになって、さらには、場合によったら、余りこういうことを縛るのはどうかという面もありますけれども、ある程度の基準としての就職協定なり何とか、そういう基準というものの復活というものもまた考えなきゃいけないか、どういうふうにお考えになるか、それぞれお伺いしたいと思っています。
清水政府参考人 お答え申し上げます。
 文部科学省でございますが、学生の就職活動が年々、早期化、長期化している、あるいは、そういう中で、先生御指摘のとおり、一定期間授業に出席できないであるとか、卒業研究指導が十分できないという意味で大学教育に影響が生じている状況というのは、私どもも憂慮しているところでございます。
 新規学卒者の就職・採用活動については、御指摘のように、平成九年度、就職協定にかわるものとして、大学側が申し合わせを、企業側が倫理憲章を、それぞれ定め尊重するという方式になり、それらの中で、就職・採用活動の早期化への慎重な対応、自粛をそれぞれ申し合わせているというふうな状況になっております。私どもとしては、こういう関係者間の合意というものを尊重しながら、就職・採用活動が良識ある形で行われることが重要だというふうに考えております。
 そういう意味で、大学に対しては申し合わせの周知を図る、そして、企業、経済団体等に関しては、ちょうど二月から三月にかけてでございますが、私どもの文部科学大臣の方からも、採用活動に当たって学事日程の尊重と早期の採用活動の自粛について要請を行ってきているところでございます。
 私どもとしては、大学と企業が連携して秩序ある形で就職・採用活動が行われるということが、学生の卒業時の質的な付加価値を高め、学生はもとより企業にとっても望ましいという認識に立って引き続き努力していきたい、このように考えております。
平沼国務大臣 確かに松島先生御指摘のようなそういう傾向があって、大事な、例えば四年制の大学のときは、最後の一年間を非常に無為に過ごす、これは大きく見れば社会的に大きな損失につながる、そういうふうに思っております。
 したがいまして、私どもといたしましても、文部科学省と連携をとりながら、また、私どもが所管をしております経済界の方にもよく働きかけて、そういうむだの起こらないように私どもはやっていかなければいかぬし、また、これからいろいろ御質問が出ると思いますけれども、そういう期間の中においても、これから目的を持って自分が働こうとする、そういった企業との連携を深めながら、一歩先に意欲ある活動をするということも私は可能だと思っております。
 いずれにいたしましても、ここは非常に御指摘の点がありますので、私どもとしても問題意識を持ってやっていかなければいけない、このように思っております。
松島分科員 今ちょうど大臣がおっしゃっていただきました、先んじて企業のことを知るという話。今、大学生の間で、というか企業の方も結構はやっていることの中に、インターンシップ、職業観の養成のためには非常に役立つわけですけれども、このあり方によっては、一般的にいろいろな業種はどういうところかという勉強をする場であるだけじゃなくて、それが行き過ぎちゃって、まあ行き過ぎかどうかわからないんですけれども、例えば人事部が窓口か何かになっていたら、早い目に俗な言葉で言うとつばをつけるというか、はっきり言いまして、いい学生というのはどんな業界にとってもいい学生なんですよね。それはそれでいいかとは思うんですけれども、早い目に学生をウの目タカの目で企業の方が、今本当に企業は生き残りをかけている、バブル期と違って一人採ることについて、どんな人間を採れるかというのが非常にナーバスになっているときに、インターンシップで来た子の中からどの子がいいかと、企業もそういう目で見る。そしてまた学生も、いい子ぶるというか、そればかり意識したインターンシップになる、そういうおそれがないか。
 実を申しますと、私もこの質問をするに当たって、東京と関西の有力私大、四大学の就職課長さん、部長さんにいろいろお話を聞いたら、そういう危惧が出ていた。
 と同時に、これは、企業の方の団体、そして学校の方の、大学の方の横のつながりなんですけれども、現実には、この採用に当たっても企業同士はライバルであり、大学同士ももちろんライバルで、今、いい企業にちゃんとはめ込まないと、入学の応募者の数まで影響してくる、そういう状況でございますから、例えば、これをチェックするならば、第三者機関なり、別の立場で見る立場の人が、余り役所が監視するというのはいかがなものかとは思う一方で、必要になってくるんじゃないかなという気がしておりますが、そのインターンシップの問題と、あと、いかがでしょうか。
大島副大臣 私の方から、今のインターンシップに対して経済産業省として。
 恐らく先生は、これは見直しをするべきじゃないかという御趣旨でお尋ねだと思いますけれども、まず最初に申し上げたいことは、あくまでもこの制度というのは、学生の実務経験を積むことにより生きた知識を学ばせようという教育の一環であるということを強調させていただきたいと思います。そして、インターンシップと称して、就職だとかあるいは採用活動が行われることがないように実施されるべきだということは、先生のお考えと我々同感でございます。政府におきましては、平成九年に、当時の文部省と労働省、そして通商産業省の三省が合意をいたしまして、連携を図りつつ、インターンシップ事業を支援しているところでございます。
 こういう認識のもとで、我が省といたしましてはインターンシップ事業の推進に努めておりますが、インターンシップ受け入れ企業数及び参加学生数とも年々実績を伸ばしている、こういうインターンシップが大学及び産業界に年を追うごとに浸透して、参加学生及び産業界からも非常に高い評価を得ている、こういったことも事実であろうという認識をいたしているところでございます。
 一方、最近では、企業が自発的に学生に就業体験を行わせる動きも広がっております。いずれにいたしましても、学生が学業を通じて得るべき最低限の必要な知識や経験は大学自身が良識に基づいて適正に判断して、学生を送り出すことが最も重要であるというふうに考えております。
 我が省といたしましては、今後も、将来の産業界を担う有望な人材を育成するという目的がございますので、文部科学省、厚生労働省とも連携を図りながら、インターンシップの推進に努めてまいりたいというふうに考えております。
松島分科員 どうもありがとうございました。
 私も、二十数年前、まだ男女雇用機会均等法もないころでございまして、一浪下宿の女子は二百社回りと言われて、物すごく動き回った。そして、それがまたいろいろな業界を知る勉強のもとになったな、かえって就職の楽だった男子学生が名前で企業を選んだのに比べれば非常に勉強になったな、そういうことを思い出しながら質問をさせていただきました。どうもありがとうございます。
 あと、次は全く経済産業省マターなんですけれども、産業活力再生特別措置法、いわゆる産業再生法でございます。
 これは平成十一年から適用が始まって、来年三月に、つまり、今年度の終わりに一応期限が切れると思います。この先、この法律をどうするかという考え方をそろそろ始めるべき時期じゃないかと思っておりまして、質問をさせていただきます。
 この課題というのが選択と集中という非常に格好いい言葉でできてきまして、一覧表、これが適用されたのが今までのところ百三十四件、経済産業省の案件がそのうち八十四件を占めておりますけれども、これを見ておりますと、確かに随分強いところも入っている。トヨタとか松下とか、そういうところも入っている。登録免許税の軽減なんかがありますから、日本の企業の足腰を強くするという意味では非常にいい法律ではあるとは思います。
 しかし、そこでちょっと疑問がございまして、認定要件として、事業再構築とそれから新事業開拓と、これを両方満たさなければいけないということになっています。
 これは、もちろんある会社におけるスクラップ・アンド・ビルド、選択と集中、まさにそうだと思うのですけれども、ある特定の会社について見ると、幾つかの業界について見ると、新しい製品をどうこうしろと言われても、新しい分野に出ていけと言われても、そうそうない。今やっている部門について効率よく、つまり、古い設備を廃棄して新しい設備を導入する、それにはお金がかかる、いろいろな投資が必要だ、そういう形の既存の品目の中での選択と集中というか、スクラップ・アンド・ビルドみたいなことしかやりようのない会社というのも、やはりそれなりにあると思うのですよね。それについて、やはりこの辺も対象とすべきじゃないかということを一つ思っております。
 それと、もう一つ、認定基準の中で、ROE、自己資本当期純利益というのが二ポイントアップしなきゃいけないということになっているのですけれども、これは、赤字が黒字に転換するようなとき、マイナス三%だったのがプラス一%になったら、プラスのあとが一%だけなので、この要件にはまらないのですね。二ポイントというのは、マイナスがプラスになっても、とにかくポイント数で二ポイントアップすればいいと思うのですけれども。
 このあたりの考え方。だめな会社にも目を向けていただく。だめな会社がだめななりに頑張ろうと、ちょっと言い方は悪いかもしれませんけれども、やろうとしているのに対する対応としてもこれを使っていけないかと思っておりますが、いかがでしょうか。
大島副大臣 産業再生法は、今先生がいろいろとお話をいただきましたけれども、平成十一年に制定されました法律でございまして、この法律に基づき、百三十四件の事業再構築計画を認定してまいりました。税制あるいは法制面での支援措置を講じてまいりましたけれども、先生が今おっしゃいましたように、本年度末までの時限立法として措置をされているところでございます。
 このために、ことしの一月から、産業再生法の拡充と延長の方向については、産業構造審議会の新成長政策部会というものが置いてございますけれども、そちらの方で議論を開始させていただいたところでございまして、近年の国内需要の停滞や、あるいはアジア経済の成長に伴う国際競争の激化の中で、我が国産業の高付加価値化、そして、国際競争力の強化を図るということが急務だということが認識をされているところでございます。
 このため、強みのある技術や産業をより強くして、また、内需の低迷が見込まれている産業や国際競争力のために巨額の設備投資が必要とされる産業におきましては、効率的な生産体制を整備するために集約化や退出を促すなど、さらなる事業の再構築あるいは産業再編のための環境整備などが基本的な視点となるというふうに考えているところでございまして、今後、産業界の実態に即したニーズを十分に把握しながら法改正に向けた検討を進めてまいりたい、現時点ではそういうお答えをさせていただきたいと思います。
松島分科員 そこで、これからいろいろ進めていかれるところだと思いますので、要望させていただきますと、今まさに御説明の中にありましたように、強い部分を持っている会社のその強い部分をより伸ばす、それも確かに大事なことなんですけれども、例えば、倒産法制ではないけれども、すれすれのところの、倒産法制を使っちゃうと、裁判所にそういう形で駆け込みますと、例えば流通業の場合には現金取引しかできなくなる、つまり、仕入れができなくなって途端につぶれちゃう。この産業再生法の場合ですと、いろいろな形で救われるという。その弱いぎりぎりの会社を救う形のためにも、余り強いところを伸ばすという、強い会社はほっといても強いです、頑張っていきます。
 そうじゃないところにも何とか手を差し伸べられるように、例えば、さっきも認定基準のうちROEの話をしましたけれども、それ以外にも、例えば債権放棄が含まれる場合に、キャッシュフローベースで十年以内に有利子負債を返せるようにとか、結構きついハードルがございます。そのきつい中で頑張っている、平成十一年よりも今の方が経営環境非常に悪うございますので、そういう会社でも使える制度にしていっていただきたいなと要望させていただきます。
 あと、これから先はぜひ大臣に答えていただきたいなと、日本の政府のというか経済産業省の姿勢ということで質問をさせていただきたいと思います。
 大体全部私の考えとか論調は一緒なんですけれども、項目を申しますと、タオルのセーフガードの発動の問題。それから、これは直接は、アンチダンピングの話ですから財務省であるかもしれませんけれども、ポリエステル短繊維の布団などの詰め綿の問題。そして、それに絡んでまいります、こっちはやられている方のアメリカの鉄鋼だとか、そういうことを加えて、あと対中、中国向けの円借款、さらに人民元の為替のレートの問題。そういったことで、対外的なことでお伺いしたいと思っています。
 タオルのセーフガード、これについては先週末に調査期限を延長するということを経済産業省としてお決めになりまして、打ち切るよりはまあ延ばした方がそれはいいといえばいいんですけれども、これはやはり先延ばし先延ばしという感じを受けざるを得ない。というのは、私だけではなくて、やはり当該産業の方々から見てもそうじゃないかという思いがしております。
 去年の四月に政府調査を開始しまして、去年の十月十五日に調査の延長を決めて、そして今度また延長を決めたわけでございます。つい最近ですと、その伸び率は減ってきたり、あるいは伸びないでマイナスになったりしているけれども、やはり高い伸びのときもあるわけですよね。
 この繊維産業の問題というのは、ただ繊維産業だけでなしに、日本のいろいろな産業の、繊維というのはフロントランナーといいますか、最初にぶち当たってくる部門で、これが日本の産業をどのように守っていくかの試金石だと私は思っております。
 その中で、やはり闘う姿勢を見せていただきたい。繊維の協定で繊維のセーフガードが無理だったら、今度中国はWTOに入りました。WTOの中では、対中繊維セーフガードというのは非常に割と発動しやすいように、言葉で言っても、現在の繊維協定では、シリアスダメージ、深刻な打撃がないといけませんけれども、今度のWTOの対中繊維セーフガードでは、私、ちょっと発音よくないんですけれども、マーケットディスラプション、市場攪乱というのでやることができる。こういうことを活用して、とにかくやるんだという前提で、いい材料を全部、それに適合した材料を全部集めて闘うということを一刻も早くやっていただきたいと思うんですけれども、いかがでございましょう。
平沼国務大臣 中国の繊維のセーフガードというのは、今度WTOに中国が加盟するに当たって、アメリカとそういう一つの協定ができ、それが全部に敷衍する、こういう形の協定でございます。
 確かに、今回のタオルの問題も、今御指摘になられましたけれども、やはりセーフガードというのはWTO上で認められたルールでございます。したがって、これは、自国のそういう産業に壊滅的な打撃を与える、そういうおそれがあるというふうなときには、これは何も日本の、横車を押すということじゃなくて、あくまでも利益の、日本のルールの中で措置をする、こういうことでございますから、私どもも、例えばタオルのセーフガードに関しても、非常に慎重な数量の調査をいたしまして六カ月間延長しましたけれども、何もこれで何もしないということじゃございませんので、もし、今落ちついているけれどもそれが急増するというようなことになれば、これはやはりセーフガードを発動する。これをちゃんと担保していることでありまして、そういうルールで認められたことで要件をしっかりと満たすようなことがあれば、それは当然やる、こういう基本姿勢は私どもは失わないでちゃんと持っていきたいと思っています。
 一方、やはり我が国というのはある意味では自由主義貿易の恩恵を一番受けている国であることも間違いない。そういう中で、中国との関係というものは、いろいろあるわけですけれども、補完関係にある。そういう中で、ちょうど武部農水大臣がお見えになっておりますけれども、野菜三品目に関しては、私どもはそういう形で、壊滅的な打撃を与えるという形でそういうこともやりました。
 しかし、両国の関係を維持していくためには、やはり話し合いのベースも同時に必要じゃないか、こういう一つの観点もありますから、私どもは、やはりやるべきときはちゃんとやるし、しかし、相対的に見てどっちがいいかという判断も同時にすることは、ある意味では政策上必要なことだ。そういうことで、今果敢に、そういう条件が整ったらやるべきだ、こういうことですから、それは我々は留保し、担保し、私どもはそういう一つの基本姿勢でやっていきたい、こう思っています。
松島分科員 繊維に関して申しますと、かつてワイシャツの生地に使うポプリン・ブロードの輸入に対しても、中国に向けてその業界が九五年二月に繊維セーフガードの発動要請を行った。しかし、このときも旧通産省は、調査開始して、いや、静まったからやめて、また再度やって、延ばし延ばしして、これじゃやはり、この業界は日本政府というのは一体なんだろうという気がすると思うんです。
 今ちょうど農林水産業のことをおっしゃいましたから申し上げさせていただきますと、確かに農林三品、暫定発動されて、その後、去年の十二月に本格発動を見送りました。見送りましたが、私は覚えておりますが、十二月、塩川財務大臣と武部農林水産大臣の間の復活折衝において、この見返りに五十億円ぽんとお金が、予算がついたんですよ。繊維製造業にこんなことありましたか、何十年の間。
 私は、これまで日本の輸出の面で支えてきた繊維に対しても、もうちょっと何とかしていただきたい、そういう気持ちでいっぱいでございます。製造業、中小企業の方々が、何で農業ばかり優遇されるのかと、どういう思いで暮らしているのかということを申し上げさせていただきたいと思っております。
 つまり、私が申し上げました、こっちにとって都合のいいところの材料をとってほしいといいますのは、今でも過去にさかのぼってとれるわけです。アメリカがいい例じゃありませんか。アメリカは鉄鋼で、日本を含む全世界に対して、じゃなくて自分たちが協定を結んでいるNAFTAは除いて、鉄鋼のセーフガードを発動いたしました。
 日本の場合は、アメリカ向けの鉄鋼の輸出二百二十万トンのうち、百四十万トンが該当しております。この中身というのが、輸入救済措置として三〇%とか一五%の税をプラスオンするというわけです。日本からアメリカに対して輸出しているもので多いものは大体一%とか〇・何%とかいう関税ですから、これはもうすごい上乗せになるわけですね。これは果たして最近ふえているかというと、全然ふえていない。アメリカの場合は、九五年から九八年にかけては随分ふえたけれども、その後は、落ちついたり、減ったりしているんですよ。それでも闘おうとしている。ちょっとえげつないですけれども、やろうとして、我が国も闘う姿勢だけは持っていただきたいと思っております。
 あと、これはアンチダンピングですから、財務省になるかと思います。
 布団なんかについての詰め綿用のポリエステル短繊維、これについては、化繊協会所属の帝人、東レ、クラレ、東洋紡、そしてユニチカファイバーの五社が、不当廉売だといって韓国と台湾に対して、これは九七年度から九九年度、この三年間についてこの二国からの輸入がほぼ倍増しました。同時に、輸入はふえるし、値下がりもして、日本は大変な状況を受けた。これについてが今度の四月二十二日に期限が来る、そのアンチダンピングをどういうふうに見るかという。そもそもふえたのも、中国が輸入管理をしたり、あるいは、欧米、インド、メキシコ、トルコなどが反ダンピング措置をとって、日本だけゆるゆるだったからどんどん入ってきたわけです。
 これについての対応、四月二十二日期限切れですが、もうほっておかないでほしい。経済産業省と同じように、またしばらく調査するからなんていういいかげんな答えを出さないでいただきたいと思っております。今まで日本がアンチダンピングの課税をしたのは二件だけです。九五年のパキスタン綿糸の二件だけ。一方、やられている方は、アンチダンピングの課税を受けた方は、一九九五年から二〇〇一年までの間に世界じゅうで九百九十一件のうち、日本は五十六件で三番目です。日本ばかりやられているんじゃないか、言いたいことを言わないでやられっ放しじゃないか、そういう気持ちを持っておりまして、御答弁お願いします。
藤本政府参考人 お答え申し上げます。
 大韓民国、それから台湾産のポリエステル繊維の問題でございます。
 これは、昨年二月二十八日に、先生御指摘のように、国内生産者からダンピング関税の申請がなされまして、昨年四月二十三日より……(松島分科員「経緯は知っているからいいです」と呼ぶ)
 本件につきましては、現在ではまだ決定には至っておりませんけれども、WTOダンピング防止協定等に定められました国際ルール及び関税定率法等の国内法令に基づきまして、公平かつ厳正に調査をさらに進めて、結論を出すところでございます。
松島分科員 ぜひ公平、公正にやっていただきまして、これはダンピングじゃないということでしたら、では日本のこの合繊五社はうそを言っていたということになるんだけれども、どちらが正しいのかきちっと本当に、日本の製造業のための判断をしていただきたいと思っております。
 最後に一つだけ、経済産業大臣に対しまして、これは私、朝、塩川大臣にも質問させていただいたんですけれども、人民元の為替レートなんですが、これはもう随分、資本取引が自由化されていないために、本当ならば元が強くなって競争力が低下すべきところが、全然なされていない。これは日本の産業界にとっても、中国からの製品の流入というのは大変な状況でございます。
 これについて、やはり産業を見ている経済産業大臣のお立場としても、世界と一緒に、塩川大臣はもう文句を言い始めるということを言われていたんですけれども、ぜひ平沼大臣としても同じ歩調をとって、中国に対し適正な、管理体制をやめて資本取引の自由化によるモデレートな相場になるようにという要求をしていただきたいと思っておりますが、いかがでございましょうか。
平沼国務大臣 特に経済界から、今の中国の元に対してのいろいろ御要望、そういうことは私どももよく承知をいたしております。
 今回、中国はWTOに加盟した、自由貿易体制の中で同じ土俵に上がったわけですから、私は、そういう中で、今の世界の経済の状況、それから各国のそういういろいろな立場、主張、そういう中でおのずと元というのは決まっていくと思いますけれども、私も塩川大臣と同じように、やはり実勢に合った形で落ちついていくのが望ましい、こう思っております。
松島分科員 ぜひよろしくお願いします。
松崎主査 これにて松島みどり君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして通商産業省所管、中小企業金融公庫、中小企業信用保険公庫及び中小企業総合事業団についての質疑は終了いたしました。
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松崎主査 これより農林水産省所管及び農林漁業金融公庫について審査を行います。
 まず、概要説明を聴取いたします。武部農林水産大臣。
武部国務大臣 平成十年度及び十一年度における農林水産省の決算の概要を御説明申し上げます。
 最初に、十年度の一般会計について申し上げます。
 まず、一般会計の歳入につきましては、歳入予算額五千百二十億三千二百十三万円余に対しまして、収納済み歳入額は四千七百十億五千八百二十八万円余であり、差し引きいたしますと四百九億七千三百八十四万円余の減少となっております。
 次に、一般会計の歳出につきましては、歳出予算現額四兆七千百八十四億八百二十七万円余に対しまして、支出済み歳出額は四兆三百三十二億六千四十四万円余であり、この差額六千八百五十一億四千七百八十三万円余につきましては、六千五百八十億四千七百二十二万円余が翌年度へ繰り越した額であり、二百七十一億六十一万円余が不用となった額であります。
 なお、その詳細及びこれらの施策の内容は、お手元の「平成十年度農林水産省所管(一般会計及び特別会計)決算に関する概要説明」に掲載いたしましたとおりであります。
 次に、特別会計について申し上げます。
 まず、食糧管理特別会計につきましては、国内米管理勘定等の七勘定を合わせて申し上げますと、収納済み歳入額は四兆二千百七十三億一千三百十三万円余、支出済み歳出額は四兆二千百七億七千四百五十八万円余であり、差し引き六十五億三千八百五十五万円余の剰余を生じました。この剰余金は、法律の定めるところに従い、翌年度の歳入に繰り入れることといたしました。
 このほか、農業共済再保険特別会計、森林保険特別会計、漁船再保険及漁業共済保険特別会計、農業経営基盤強化措置特別会計、国有林野事業特別会計及び国営土地改良事業特別会計がございますが、これら特別会計の概要につきましても、お手元の資料に掲載いたしましたとおりであります。
 以上をもちまして、平成十年度における農林水産省の決算の概要に関する御説明を終わります。
 引き続きまして、平成十一年度における農林水産省の決算の概要を御説明申し上げます。
 最初に、一般会計について申し上げます。
 まず、一般会計の歳入につきましては、歳入予算額四千六百九十二億九千二百四十八万円余に対しまして、収納済み歳入額は四千五百一億五千三十九万円余であり、差し引きいたしますと百九十一億四千二百九万円余の減少となっております。
 次に、一般会計の歳出につきましては、歳出予算現額四兆六千十七億九千九十八万円余に対しまして、支出済み歳出額は三兆九千四百四十一億四百四十八万円余であり、この差額六千五百七十六億八千六百五十万円余につきましては、六千二百六億七千八百二十三万円余が翌年度へ繰り越した額であり、三百七十億八百二十六万円余が不用となった額であります。
 なお、その詳細及びこれらの施策の内容は、お手元の「平成十一年度農林水産省所管(一般会計及び特別会計)決算に関する概要説明」に掲載いたしましたとおりであります。
 次に、特別会計について申し上げます。
 まず、食糧管理特別会計につきましては、国内米管理勘定等の七勘定を合わせて申し上げますと、収納済み歳入額は四兆二千三十八億七千八百五十四万円余、支出済み歳出額は四兆一千九百五十五億七千一万円余であり、差し引き八十三億八百五十三万円余の剰余を生じました。この剰余金は、法律の定めるところに従い、翌年度の歳入に繰り入れることといたしました。
 このほか、農業共済再保険特別会計、森林保険特別会計、漁船再保険及漁業共済保険特別会計、農業経営基盤強化措置特別会計、国有林野事業特別会計及び国営土地改良事業特別会計がございますが、これら特別会計の概要につきましても、お手元の資料に掲載いたしましたとおりであります。
 以上をもちまして、平成十年度及び十一年度における農林水産省の決算の概要に関する御説明を終わります。
 よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。
松崎主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院有川第四局長。
有川会計検査院当局者 平成十年度農林水産省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。
 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項二十六件、意見を表示しまたは処置を要求した事項二件及び本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項四件であります。
 まず、不当事項について御説明いたします。
 検査報告番号一四〇号は、道路建設工事の施行において、設計が適切でなかったため、横断暗渠管の所要の安全度が確保されていない状態になっているものであります。
 検査報告番号一四一号は、中国青年農業指導者育成事業において、支出した事実がない額を事業費に含めていたため、国庫補助対象事業費の精算が過大となっているものであります。
 検査報告番号一四二号は、卸売市場流通高度化事業において、還付された消費税相当額の取り扱いが適切でなかったため、国庫補助対象事業費の精算が過大となっているものであります。
 検査報告番号一四三号は、復旧治山事業において、アンカー工費等の積算を誤ったため、工事費が割高となっているものであります。
 検査報告番号一四四号は、農業用施設災害復旧事業において、ため池の堤体復旧工の設計が適切でなかったため、工事の目的を達していないものであります。
 検査報告番号一四五号、一五三号及び一五四号の三件は、自動制御製茶機械を設置する事業において、既存の製茶機械の売却額を控除していなかったため、国庫補助対象事業費の精算が過大となっているものであります。
 検査報告番号一四六号から一四八号までの三件は、精米施設または水稲育苗施設を設置する事業において、補助対象外の経費を含めていたため国庫補助金の交付が過大になっていたり、補助事業で設置した施設の用途を廃止したりしているものであります。
 検査報告番号一四九号は、水環境整備事業において、設計が適切でなかったため、水路等の所要の安全度が確保されていない状態になっているものであります。
 検査報告番号一五〇号は、広域基幹林道開設事業において、ヒューム管の施工が著しく粗雑となっていたため、工事の目的を達していないものであります。
 検査報告番号一五一号は、農林漁業用揮発油税財源身替農道整備事業において、設計が適切でなかったため、橋梁張り出し床版の所要の安全度が確保されていない状態になっているものであります。
 検査報告番号一五二号は、農林漁業用揮発油税財源身替農道整備事業において、施工が設計と著しく相違していたため、ボックスカルバート等の所要の安全度が確保されていない状態になっているものであります。
 検査報告番号一五五号から一五八号までの四件は、林業改善資金の貸し付けにおいて、借り受け者が、貸付決定前に既に納入させていた機械を対象として貸し付けを受けていたりなどしていたものであります。
 検査報告番号一五九号から一六五号までの七件は、農業改良資金の貸し付けにおいて、借り受け者が、機械等を貸付対象事業費より低額で購入したりなどしていたものであります。
 次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について御説明いたします。
 その一は、農業経営改善促進資金の貸し付け及び全国低利預託基金の活用に関するものであります。
 農業経営改善促進資金の貸し付けが極めて低調で、国からの多額の出資によって造成された全国低利預託基金の大部分が活用されていない事態が見受けられましたので、農林水産省に対して、農業経営改善促進資金の金利、貸し付け方式等について、金融情勢等の変化並びに認定農業者及び融資機関双方のニーズに対応したものとなるよう改善の意見を表示いたしたものであります。
 その二は、並型魚礁設置事業における事業計画の策定及び魚礁の管理・活用に関するものであります。
 魚礁設置後の漁獲量が減少しているにもかかわらず、その原因を十分調査、検討することなく事業を繰り返し実施しているなど事業計画の策定及び魚礁の管理・活用が適切を欠いており、事業効果が十分発現していない事態が認められましたので、水産庁に対して、事業計画策定の際に用いる増加見込み量の把握方法を定めるなどするよう改善の処置を要求いたしたものであります。
 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。
 その一は、農業構造改善事業における農業協同組合連合会の手数料の算定に関するもので、手数料率等が農業協同組合連合会の業務の実態に適合したものとなっていない事態が見受けられました。これについて指摘したところ改善の処置がとられたものであります。
 その二は、糖業振興臨時助成金の交付に関するもので、助成金の額を事業者の見込みの欠損額に基づいて算定しておりましたが、実際の損益額との間に乖離が生じていたため、助成金が過大に交付されておりました。これについて指摘したところ改善の処置がとられたものであります。
 その三は、林道開設工事等の機械土工の積算に関するもので、地山を掘削した後のルーズな状態となった軟岩は押し土・積み込み作業が効率的になるのに、大きな塊が相当残る岩塊・玉石や破砕岩の場合の作業効率を適用していたため積算額が過大となっておりました。これについて指摘したところ改善の処置がとられたものであります。
 その四は、漁港整備事業における土運船による運搬費の積算に関するもので、しゅんせつ工の実態に見合っていない過大な規格の土運船が選定されていたため、積算額が過大となっておりました。これについて指摘したところ改善の処置がとられたものであります。
 引き続き、平成十一年度農林水産省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。
 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項十四件、意見を表示しまたは処置を要求した事項一件及び本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項五件であります。
 まず、不当事項について御説明いたします。
 検査報告番号一五九号は、農業集落排水事業において、設計が適切でなかったため、汚水処理水槽等の所要の安全度が確保されていない状態になっているものであります。
 検査報告番号一六〇号は、漁港修築事業において、ケーソン製作費の積算を誤ったため、工事費が割高となっているものであります。
 検査報告番号一六一号は、農業経営育成対策事業において、高率な最低制限価格を設定したため、割高な契約を締結することになっているものであります。
 検査報告番号一六二号及び一六六号の二件は、経営基盤強化林業構造改善事業等において、仕入れ税額控除した消費税額に係る補助金を返還していなかったものであります。
 検査報告番号一六三号は、農業集落排水事業において、汚水処理施設管理棟の施工が設計と著しく相違していたため、工事の目的を達していないものであります。
 検査報告番号一六四号は、農林漁業用揮発油税財源身替農道整備事業において、残土処理工費の積算を誤ったため、工事費が割高となっているものであります。
 検査報告番号一六五号は、農林業地域改善対策事業において、舗装工の施行が著しく粗雑となっていたため、工事の目的を達していないものであります。
 検査報告番号一六七号は、経営基盤確立農業構造改善事業において、農用地の整地工費の積算を誤ったため、工事費が割高となっているものであります。
 検査報告番号一六八号から一七二号までの五件は、農業改良資金の貸し付けにおいて、借り受け者が、貸し付けの対象とならない事業について貸し付けを受けたりなどしていたものであります。
 次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について御説明いたします。
 これは、水田麦・大豆等の生産振興を図るための技術対策の実施に関するものであります。
 水田麦・大豆生産振興緊急対策技術・営農実証事業におきまして、実証する技術の判定方法が明確でないなどのため事業が効果的に実施されていなかったり、作業記録がないなどのため事業の実施状況を十分確認できなかったりしている事態などが見受けられましたので、農林水産省に対して、事業効果の発現及び確保が図られるよう改善の処置を要求いたしたものであります。
 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。
 その一は、地域農業経営確立総合対策における事業効果の発現に関するもので、ソフト事業としての推進事業とハード事業としての支援事業が有機的に連携して実施されておらず、事業の効果が発現していない事態が見受けられました。これについて指摘したところ改善の処置がとられたものであります。
 その二は、指定野菜価格安定対策事業の運営に関するもので、事業の対象となる野菜指定産地が、指定野菜の作付面積、指定消費地への出荷割合等の産地要件を満たしていないのに適切な処置がとられていないなどの事態が見受けられました。これについて指摘したところ改善の処置がとられたものであります。
 その三は、農業集落排水事業における汚水処理区の設定に関するもので、経済性の観点から見て、隣接した汚水処理区を接続することなどにより事業費の低減が見込まれる事態が見受けられました。これについて指摘したところ改善の処置がとられたものであります。
 その四は、造林補助事業における間伐の標準単価の設定に関するもので、標準単価で想定している作業内容と、実際に行われている作業内容とが適合していないと認められる事態が見受けられました。これについて指摘したところ改善の処置がとられたものであります。
 その五は、国有林野の素材生産事業等における輸送費の積算に関するもので、素材の輸送で使用する車両の標準車種及び素材の積載量が、各森林管理局等の要領で区々となっていたため、積算額が過大となっておりました。これについて指摘したところ改善の処置がとられたものであります。
 以上が、農林水産省決算についての検査結果の概要であります。
 次に、平成十年度農林漁業金融公庫の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
 引き続き、平成十一年度農林漁業金融公庫の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
 以上です。
松崎主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。武部農林水産大臣。
武部国務大臣 会計検査院から御報告のありました平成十年度決算検査報告に対しまして、農林水産省が講じた措置を御説明申し上げます。
 予算の執行に当たりましては、常に効率的かつ厳正な処理に努力してまいりましたが、一部の事業について、御指摘を受けるような事態が生じましたことは、まことに遺憾であります。
 不当事項として指摘を受けたものにつきましては、既に補助金等の返還または手直し工事を施工させる措置を講じたところであります。
 農業経営改善促進資金の利用を促進し、全国低利預託基金の有効活用を図るよう改善の意見を表示されましたものにつきましては、貸し付け方式等について認定農業者及び融資機関のニーズ等に対応したものとなるよう制度の改善を図ったところであります。
 また、並型魚礁設置事業における事業計画の策定及び魚礁の管理・活用を適切に行い事業効果の発現が図られるよう改善の処置を要求されましたものにつきましては、都道府県に対し事業実施後の施設の管理・利用が適切に行われるよう指導を強化するとともに、事業計画の策定方法及び事業実施後の指導方法の確立に努めるなど、事業の効果の発現が図られるよう所要の措置を講じたところであります。
 引き続きまして、平成十一年度決算検査報告に対しまして、農林水産省が講じた措置を御説明申し上げます。
 不当事項として指摘を受けたものにつきましては、既に補助金等の返還または手直し工事を施工させるなどの措置を講じたところであります。
 水田麦・大豆等の生産振興を図るための技術対策を適切に実施して事業効果の発現及び確保が図られるよう改善の処置を要求されましたものにつきましては、水田農業経営確立対策実施要領の改正を行うとともに指導通知の発出を行い、都道府県及び市町村に対する的確な指導に努めたところであります。
 以上、会計検査院の御指摘に対しまして、農林水産省が講じた措置の説明を終わらせていただきますが、今後、このような事例の発生を未然に防止するため、指導監督の強化を図り、より一層予算の適切な執行に努めてまいる所存であります。
松崎主査 この際、お諮りいたします。
 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
松崎主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
松崎主査 以上をもちまして農林水産省所管及び農林漁業金融公庫についての説明は終わりました。
    ―――――――――――――
松崎主査 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大谷信盛君。
大谷分科員 民主党の大谷信盛でございます。
 大阪選出でございますので、ざっくばらんに大臣また局長と御議論をさせていただけたらというふうに思います。
 きょういただいた時間の中で詰めさせていただきたい課題は、いわゆるこの国の食料流通の中で、自給力を高めていこうとかいろいろな考え方が根底にあるというふうには思うんですが、まず中央卸売市場、ここに第六次、第七次の卸売市場整備基本方針というものがございますが、食料流通とともに、市場の今後のあり方というものについて、ぜひとも考えをまず最初にお聞かせいただきたいというふうに思います。
武部国務大臣 卸売市場につきましては、産地の大型化、量販店の進出、市場外流通の増大、市場関係事業者の経営悪化等、卸売市場をめぐる状況が変化する中で、生鮮食料品等を重視する我が国の食文化、生活文化を支える基幹的流通機構として大きな役割を果たしていると存じます。
 このため、第七次卸売市場整備基本方針等に基づきまして、情報化の進展、食品の安全性に対する関心の増大等に対応した中核的な卸売市場の再整備、市場関係事業者の経営体質の強化、公正かつ効率的な市場取引の確保等に努めるとともに、卸売市場の競争力の強化を図るため、現在開催中の卸売市場競争力強化総合検討委員会における議論も踏まえつつ、今後とも、卸売市場が生鮮食料品等の基幹的な流通機構として、国民に安全で安心な食料を円滑に供給していくことができるようにさらなる努力をしてまいりたい、かように存じます。
大谷分科員 今の中で一番響いたのは、今後もこの国の食品流通の基幹的な機構として位置づけて役割を果たしていただくということですが、六次、七次、その前からずっと始まっているわけですけれども、いろいろな意味で変化が見られる。
 私なんかがこの六次、七次を見ていて思うのは、六次の方は、本来、市場というものは、競りを中心にして大正十ウン年から始まってきた七十年の歴史のあるものだというふうに思う。そこにこれからは相対が、今大臣がおっしゃられたような生産地の大型化、また消費地に向かっての量販店の拡大によって、大型の店舗が大量に安定した供給を求めるというような形の中、いわゆる相対取引がふえてきた。それをもうこれからは現状追認という形で、本来の公開取引である競りというものよりか相対取引というものを中心にしてやっていくんだというふうに私には読み取れる。
 そしてもう一つは、この七次の中で出てきているんですが、卸さんそれから仲卸さんという業種のいわゆる縮小をこれからは余儀なくされるな。また反対に、縮小していかなければ、今言ったような生産地の大型化、また量販店への対応というものができないのではないかというふうに思われているような節があると思うんですが、この大きな特徴というもの、流れの中での変化というものがどんなふうに来ているのかということを少し御説明いただけたらというふうに思います。
西藤政府参考人 卸売市場をめぐる状況につきまして、大臣からも最近の状況の変化の御説明がありましたが、多少数字を含めて、最近の状況について私どもの状況認識を御説明申し上げたいと思います。
 生鮮食料品、青果物、野菜、果物及び水産物、食肉、花等が中央卸売市場を経由して生産から消費に行くという形になっております。この間、この十年間の状況を見ておりますと、一つは、卸売市場を経由するものの割合、生鮮食料品が生産から消費まで結びつくに当たりまして市場を経由する割合が、青果物で見まして八〇%台から七〇%台にこの十年間でほぼ一〇ポイント低下をいたしております。これがまさに、大臣の御説明の中でも市場外流通の増大と、いろいろな形での流通形態が出てきている。
 もちろん、その背景の一つとして、例えば野菜の自給率でございますが、この間、数字が若干あれかもしれませんが、十年前ほぼ九〇%の国内での供給が行われておりましたが、この十年間で、生鮮野菜に対してもその二割が海外から入ってくるということで、一〇ポイント程度国内での供給が低下するという状況がございます。
 そういういわば物理的なといいますか物量的な状況の変化とあわせて、近年の経済状況を反映いたしまして、卸売市場の取扱高を見てみますと、ほぼこの十年間で二割、青果物であれ水産物であれ取扱高が減少する。たしか、中央卸売市場の青果、水産等合わせた取扱高が五兆四千億ぐらいでなかったかと思いますが、これは十年前に比べますと約二割低下している、そういう状況の変化がございます。
 もちろん、先ほどもありましたように、産地サイドでは、産地の大型化、農協の合併が進む、そういうのにも対応して生産地の大型化が進んでいる。さらに消費サイドでいえば、販売サイドと申しましょうか、そういう点で申しますと、先生からも御指摘がありましたように、量販店でのウエートがどんどん高まっている。かつては、生鮮食料品の消費者との一番の接点は、専門小売店と言われる青果の小売屋さんあるいはお魚屋さんというのが中心だったわけですけれども、近年、いわゆる専門小売店の割合というのは一割台に落ちてきている。それをカバーするといいますか、それは、裏返して言えば量販店の取扱高がふえてきているということ。
 あるいは、同じ生鮮食料品の消費でも、家庭内消費と外部化と申しますか、家庭内で野菜を買ってきて調理して食するということから、同じ家庭内で消費するにしても、既に調理済みの食品を量販店等で買ってきて食するという食の外部化、それは、流通から見れば直接家庭が最終末端であることは変わらないんですけれども、直接の購入者というのは、家庭から、我々は中食と呼んでおりますけれども、そういう企業に変化する。
 こういう大きな生産から消費をめぐる状況の変化の中で、大臣が先ほど申されましたように、やはり生鮮食料品流通の基幹的な役割を担っていくためには、こういう状況変化に応じた対応を積極的に進めていくということが求められているというのが基本的な私どもの認識でございます。
大谷分科員 現状に合わせて、国民の食の安全、安定供給ということを考えたら、市場も改まっていかなければいけないんだ、その改まっていく形を示唆したものがこの六次、七次であるんだということだというふうに理解をそれはそれで私はいたします。
 しかしながら、何個かの不安がございます。例えば、何個か順を追っていきたいんですが、競りが今、漠とした数字でいいますと、多分、全国の市場の三割あるかないかで、七割が相対ではないかなというふうに思います。いつからこんなに本来の公開取引である競りの方が少なくなって、個人取引である相対の方がふえてしまったのかというふうに思うのですが。
 この変化に対して、公正な価格をつけるというのがいわゆる市場の何よりも大きな流通の経路の中で持たされている責任であり役割だというふうに私は思うのですが、そのことが阻害されていくのではないかという懸念を持つのです。そこの部分はどのように御説明をなさるのでしょうか。
西藤政府参考人 市場における売買方法についての御質問でございます。
 市場における売買方法につきましては、市場ごと、品目ごとの実情を踏まえまして、市場利用者の、先ほど来申しました多様なニーズに対応し、かつ機動的に対応し得るようにということで、平成十一年の卸売市場法改正によりまして、まさにその市場ごとに開設者が、卸売業者、仲卸業者、生産者、場合によっては消費者、実需者も含みますが、構成される市場取引委員会の意見を聞いて業務規程で定めるという状況にいたしました。
 私ども、先生御指摘のとおり、競りあるいは相対、その中間、両方やるという形態が当然あり得るわけですが、いずれの場合も公正かつ効率的でなければならないというふうに思っております。そういう公正、公開、効率的な売買取引を確保するという観点で、当然のことながら、相対取引であっても、取引数量、価格等の公表を義務づけることによって、公開性といいますか透明性といいますか、そういうことを確保しているというふうに思っております。
 相対取引の量かつ取引形態の状況は先生も御指摘があったところであるのですけれども、全国に卸売市場が配置されておりますが、それぞれの市場の歴史的な経緯、歴史的な経緯と申しますと、仲卸業者の数がどうだ、あるいは市場に実際競りに参加する売買参加者の数がどうだ、そういうような状況を含めた歴史的な経緯によって、例えば青果で見ますと、現在競りの割合が全国平均でたしか四割程度じゃないかと思います。現状でも非常に高い市場と、さらにそれを下回っている市場と、地域の状況によって区々の状況がございますが、私ども、公正かつ効率的ということをあわせ、かつ、いろいろな疑念にこたえていくためにも非常に透明性が確保されるべきであろうということを考えておりまして、十一年の改正においても、そういう透明性確保ということとあわせて、市場ごとに実態に即して選択していただく、選択肢を一つとして決めつけているわけではなくて、市場の関係者の協議によって決定していただくというふうに取り扱っているところでございます。
大谷分科員 相対取引で一番公平性を保っていこうと思うならば情報公開ということになると思うのですけれども、商いが生ずる前にどれぐらいの量がどんな品質で入ってくるか、また反対に、商売、商いが成立した後にどれぐらいのものがどれぐらいの値段で、どの効率で売られたかとかという、商いの成立、事前事後の情報というものが必要だというふうに思うし、また、それの努力を義務づけてまいりますということが七次の方針の中にも出ているのですけれども、法律的にこれからどれぐらいそれを義務づけていくのか。今、慣習、歴史がその市場市場ごとにあるというふうにおっしゃいましたが、どんな努力を国としてはしていくのだろうかということを少しお定めいただけたらというふうに思います。
西藤政府参考人 市場ごとに、当日の総量としての入荷量と、今先生御指摘のような取引結果、量的なもの、価格についても、私、それぞれの市場ごとについて現在手元にきっちり持っておりませんけれども、市場ごとに公表するということで、透明性を十一年改正で確保しながら取引方法の選択をしていただいているという状況がございます。
 若干敷衍させていただきますと、先生おっしゃるとおり、非常に競り取引自体は公開性が高くて、分荷等の、荷を分けていくのに能率的だという面もございます。かつ、個性のある物品については、競りでなければなかなか公正な評価を得ることができないという状況がございますが、一方、相対取引は、近年、小売の形態も量販店の割合が非常に大きくなってきているという実情を申し上げましたが、ほぼ同品質のものを大量に取引するという観点では非常に迅速に相対取引の場合は行える、それと、取引の安定性の要求に対して対応できるというそれぞれのメリットがございます。そういう状況の中で、先ほど申しましたように、公正、効率、公開、外に示していくということをあわせて措置することによってこの措置は担保されると私ども思っております。
 また、競りという観点で申しますと、近年、事例はまだ一つしかございませんけれども、中央卸売市場で見られる事例で固有名詞を挙げますと、例えば秋田市の中央卸売市場では、地場野菜の流通の円滑化を図るという観点で、通常、競りは早朝行われますが、その日朝、午前中に収穫したものを再度午後に競りをかけて、その日のうちに市内の消費者の手に届くようにする、そのために午後わざわざ競りの機会を設けるというふうな、それぞれの市場がそれぞれ実情に応じた工夫をしながら対応してきているという状況にあるかと思っております。
大谷分科員 いろいろな形で、これはきょう始まりにしたいのですけれども、情報公開等々含めて、工夫を含めて、相対取引の中で公正性が担保できるようにしていく連携をお互いさせていただきたいというふうに思います。
 時間がないので、先へちょっと進めさせていただきます。
 あと、この新しい基本方針の中で、卸だとか仲卸さんとかというのがどんな役割を担っていくのだろうか。僕自身の個人的な考えでは、もしかしたら卸さんというのは一市場に単数でいいのかな、その方が公平性を保てるのかなというような少し考えを持つのですが、きょうは時間がありませんので、仲卸の方について、今後の役割について少しお話をさせていただきたいというふうに思うのです。
 まず、大型店が大きな大きなお客様になっていく、これはバーゲニングパワーでいうと明らかに買い手市場ですね。要するに、スーパーはたくさん買うからまけろというような話になりますし、また反対に、仲卸さんは、自分のところが少々痛い目してでも売らないとよその仲卸さんに行かれてしまうという、仲卸同士の競争原理がある。向こうの場合にはそれが、小売の中ではありますが、仕入れの中では発生しておりません。
 そうなってくると、立場が弱くなってくる。一週間前に、相対であれ競りであれ、こんなもので、この生鮮品をこれぐらいの量を一週間後に欲しいんだ、できるかというふうに言われる。そうしたら、できると言わざるを得ない。しかしながら、農産物、水産物は天候によって左右されるものでございますから、実は百の値段で百個のものを約束したものの、当日の、納入日の競りでは、これが百の値段どころか百三十の値段になってしまった、損をしてでも売らなければいけないというようなことが発生してきている。これはある意味、公正な取引をする場の中においては、少しおかしなことが起こってきているのかなと。もちろん、商売でございますからリスクというものはだれにでもあって当たり前だというふうに思いますが、最近このようなケースがふえてきているのではないのかなというふうに私は思うのです。この七次の中で、そんな市場にとって市場ルールを破っているような取引が行われているならば、これは是正しなければいけないし、何らかの形での考えがあるのかということを、ぜひお考えをお聞かせいただきたいと思います。
西藤政府参考人 第七次の整備基本方針におきましても、卸売業者、仲卸業者の競争力の強化という観点で方向性を出しているつもりでございます。
 先生も仲卸業者を中心に御質疑ということでございますので、仲卸業者の状況について申し上げますと、現在、全国中央卸売市場で約六千弱の経営体の数になっております。減少傾向で推移してきておりますが、一社当たりの取扱高も、もちろん先ほど来申しておりますような近年における経済動向、競争条件の激化等々が影響していると思いますけれども、経営的にも、平均的に見ても仲卸業者は営業利益をなかなか計上できない。もちろん、非常に優秀な経営体も非常にあるわけですけれども、そういう状況がございます。
 そういう点で、仲卸業者の機能として、まさに卸売業者と販売業者を結ぶ重要な値つけ機能なり分化機能なりを果たしているわけでございます。販売の状況が変化する中で、例えば先ほど専門小売店の減少傾向が大きいと申しましたけれども、しかし、数としては依然として専門小売店の方が多いわけでございます。そういう専門小売店の方に品ぞろえを的確にし、提供していく機能というのは非常に重要ですが、これはやはり一定の大きさがなければ、なかなかそういう機能を代替して担っていくという状況はできないんじゃないか。
 それと、いわば競争力という観点で、量販店と仲卸業者の間に適正な競争関係があるのかという、せんじ詰めればそういう御質問じゃないかというふうに思います。
 そこのところは非常に、ある面では取引は透明な形で行われるわけですけれども、一方で、仮に量販店の優越的な地位があって、いろいろな支配があるという状況であれば、まさに競争条件にかかわる状況でございまして、私ども、過去二度にわたって関係者からも実態調査をしながら、その状況を公正取引委員会の方にも御報告し、御検討をお願いしているという状況でございます。
大谷分科員 ぜひその状況、また、過去二回のうちの最後の一回がいつだったのかわかりませんけれども、今も例えば私手元に持っている、平成八年に全国青果卸売組合連合会関西地区協議会が関西地区十一の市場の中で実態調査をされたものを見ますと、量販店の言いなりで、仲卸業者はサービス過剰であるから始まって、○○○○企業が一番悪いとかというようなものも出てまいりまして、かなりゆがめられているようなところがあるのかなというふうに、このアンケートだけを見ると思います。ぜひともそこのところはもう一度改めていただきたい。
 なぜかというと、大手の何々スーパーさんが最近倒産をされました。その前も、何々々々さんという大型郊外店をたくさん出されているスーパーが倒産をなされました。民事再生法で今頑張っておられます。税金も注入をするというような議論がされております。これは要するに、量販店がどんと買うからそれに合わせて市場も変わっていくんだといいますけれども、状況がここ一、二年で大きく変わってきた。この十三年の三月につくったときに比べて、一年で、ドッグイヤーですから昔の一年とは僕は全然状況は変わってきていると思うんですよ。
 確かに小売店、専門店が少なくなってきているのは事実です。しかしながら、その専門店の客が逃げているかというと、ある専門店にはどんどんお客さんがついていっているわけなんですよ。それは何かというと、多品種、我々国民の消費の文化というものも多岐にわたるものになってきました。したがって、売るものも多岐にしていかなければいけない。スーパーというものは、どちらかというと一定のものをどばっと買って安く売るというものでした。余りそこは多品種、国民の複雑な食文化の需要にこたえるものにはなっていなかったのかなというふうに思います。その点、やはりすき間で、専門店というものはすごい強いわけですよ。改めてその専門店がこれから小売の中で認められていく、発達していくとするならば、その小売店がしっかりとお客様の求めるものを仲卸さんから買えるような、そんな状況をつくっておかなければいけないんじゃないのか。
 七次のこれを見ると、もう小さな中小の仲卸業者さんはいいんだ、ある一定のものを共同でどこかのITの技術なんかを駆使してばっとまとめて、まとめて買ってもらったらいいじゃないかみたいなふうに聞こえるんですが、そうですと、我々の国民の食文化の多種にわたるニーズにこたえられないんじゃないか。中小の仲卸業者さんの育成とは言いませんが、それなりの位置づけというか役割というものも踏まえた上で、次につくる八次の基本方針というものを僕はつくらなければいけないんだというふうに思っておるんですが、その辺についてはいかがお考えでしょうか。
西藤政府参考人 専門小売店の状況で、先ほど来、近年減少傾向という状況で申し上げました。一方で、そういう状況の中で、さらに若干申し上げますと、かつて専門小売店は、個別に市場まで仕入れに行き、仕入れから販売までいわば自己完結的にそれぞれおやりになっていた。それは、市場まで出かけていって、仲卸業者の方から実際に自分で目で見て品物を仕入れて、それを自分で加工し、店頭で販売する、これが典型的な形だったかと思うんですけれども、物流技術あるいは情報技術進歩の中で、例えば仕入れの状況に対しても仲卸業者の方にゆだねるという状況、いろいろ出てきています。そういう中で、先生御指摘のように、専門小売店、あるいは中小でも専門ないろいろなところに特徴を持っておられる仲卸業者の方というのは、それぞれのニーズの変化に応じて、消費者の状況にどれだけ的確に対応するかによって今後の態様が決まっていくんだろうと思っています。
 ただ、その場合にあっても、例えば専門小売店にあっても、私冒頭申し上げましたように、自己完結的にすべて自賄いでやっていけるような専門小売店の数というのはかなり限られていくんではないか、労力的にもそれは限られていくという状況にあります。そういういわば専門小売店の共同化、あるいは仲卸業者の方が共同でいろいろな、自分のお得意様に対する物流を共同でやるというような取り組みを支援することを通じて、特徴のある、すべての方が、すべてというわけにはいかないと思いますが、消費者ニーズに対応し、あるいは実需者のニーズに対応して特徴ある行動をとれる方がそれぞれ元気にやっていけるような枠組み、支援は我々も考えていきたいというふうに思っております。
大谷分科員 ぜひそのポイントについて、釈迦に説法ではございましたけれども、お気づきであるならば、実態調査も踏まえてもっともっとニーズにこたえられるような市場、特に仲卸さんの役割というものが伸びるような形で御指導をしていただけたらというふうに思いますし、そのことに関してはぜひとも連携をさせていただきたいというふうに思っています。
 僕が思っているのは、これから生産地また消費地の方の変化とともに、卸、仲卸の垣根がなくなっちゃうんじゃないのか。例えば仲卸さんも、おっしゃったように加工をもっともっと手がけるようになっていって、大型の仲卸さんがこれから誕生してくるのか。それはそれで確かに、安く一定の食料を効率よく公正な価格で消費者に流通するということでいえばあるんでしょう。しかしながら、それだけじゃないんだ、その反面、しっかりと今言ったようなニーズにこたえられるような中小の特徴ある仲卸さんも、中小の特徴ある専門店の方と結びついて商売ができる、流通ができる位置づけというものをぜひとも考えていただきたい。決して中央卸売市場というものが量販店の集配センターになっちゃいけないんですよということがこの三十分間で一番言いたかったことですし、一番お聞きしたかったことは、そんなことは思っていない、しっかりと中小の仲卸さんの役割というものも踏まえた上に日本の市場というものをつくっていくんだということを確認させていただけたというふうに思います。
 最後に、提案でございます。実態調査はぜひともやっていただきたいんですが、何か二回の調査、これはお願いでございますが、またどんな段階でどんな内容でやられたかというのを教えていただきたいのと、もう一つは、多分築地を中心とする関東方面というところでの実態調査の方が層が厚く、私は大阪選出でございますが、大阪の方という地域性のことで考えると、どちらかというと抜けているようなときがあるのかなと、今見ていないので言えませんけれども思っておりまして、ぜひとも押しなべて、地域地域違うと思いますので、実態調査をしていただきたい。
 また、反対に、市場の関係者、従事者の方ともひざ詰めでお話をしていただきたいというふうに思うんです。局長がもしくは課長、課長補佐が市場に来られましたら、それは都道府県のお役所の方は下にも置かぬような対応になられるというふうに思います。この前お聞きさせていただきましたら、二時から市場は始まっておるのでございますが、二時に実態調査に足を運ばれるということはなかなか大変かと思いますが、そこのところをやるぐらいでの出たデータ、いわゆるファーストハンドファクトみたいなものを持っていただいて、その上で八次というものをぜひつくっていただきたいという要望をし、ともに頑張ることをお誓いし、これにて質問を終わりたいというふうに思います。
 ありがとうございました。
松崎主査 これにて大谷信盛君の質疑は終了いたしました。
 次に、黄川田徹君。
黄川田分科員 自由党の黄川田徹であります。
 農水省所管を中心に、通告に従い順次質問いたしますので、よろしくお願いいたします。
 まず、BSE対策に関連してお尋ねいたしたいと思います。
 去る四月二日、BSE問題に関する調査検討委員会は最終報告をまとめまして、そしてBSEの発生を防げなかったことを農水省の重大な失政と厳しく批判しております。
 武部農相は、九〇年、九六年の失態については直接の責任はないにしても、風評被害を恐れてか、EUの評価を最終段階で無視したことなどの責任は免れないと思っております。また、感染牛が発見された後の対応のまずさから消費者の不信を招き、平成十三年度そして十四年度で約四千億円にも及ぶと想定されます多額の財政支出を招いた、余儀なくされた、この責任は重いわけであります。
 実は、私は、きのう、おとといと地元に帰りまして、国政座談会を開きました。畜産農家は、廃用牛の流通対策を国の責任で実現するよう本当に強く求めております。特に、農水大臣の問責決議案は参議院で否決されましたけれども、民意の無視あるいは政局の優先という声が大きいわけでありますので、まずもって農水大臣はこれにどう答えられるでしょうか。お願いいたします。
武部国務大臣 委員から御指摘のございましたように、私は、BSEの発生時、どうしてBSEの侵入を防げなかったのかというふうに痛切に感じました。これは行政上に構造的な問題があるのではないか、過去のことについても客観的な検証をする必要がある、また本件については科学的な知見に基づく検討も必要だということで、私は、まず第一に、人の生命や健康に影響を与えない体制を早くつくるということで、厚生労働大臣にも強く要請しまして、全頭検査体制というものに全力を尽くした所存でございます。そして、今申し上げましたような客観的な検証、科学的な知見に基づく検討が必要だということで、この調査検討委員会の設置に執念を持って取り組んだ所存でございます。
 半年余り過ぎたわけでございますが、私は、ゼロリスクというのは今日においてなかなか難しいとは思いますけれども、しかし、このリスクに対してどう立ち向かっていくかということについて危機意識をしっかり持っていれば、さまざまな情報をいただいているわけです、この情報に対して、しっかりしたリスク分析によるリスク評価、リスク管理、そしてリスクコミュニケーションというものを組み合わせておけば、厚生労働省や都道府県とのきちっとした危機対応マニュアルというものを構築できていたのではないか、このように深い反省に立たされているわけでございます。
 今、私の責任について言及がございましたが、EUのステータス評価の問題については、これが中断されたからといってBSEの侵入を防ぐことができなかったわけでありますけれども、しかし、そういった情報についてきちっと公開し、関係省との危機対応マニュアルさえできていれば、あのような初期段階における混乱はなかったのではないか、私はこう思っております。
 申し上げておきますけれども、私は、EUのステータス評価を断ることについて最後に了とした責任者は私でありますが、そのときには、五月にOIEの総会でOIEの新たなる基準を採択した、EUもその基準に準拠したものをすぐつくるらしい、現に七月にはEUの新しいOIEの基準に準拠した評価基準がなされているわけでございまして、そのことについては、いずれにいたしましても、もろもろを含めて大きな責任を感じているわけでございまして、国民の皆さん方の間に相当大きな批判があることも承知いたしております。
 しかし、私も四カ月余りこの問題と真剣に取り組んでまいりました。さような意味では、私自身、相当学習させられた、学習している、このように思ってもおりますし、既に調査検討委員会の論議は、あれは委員御案内のとおり公開ですから、我々も今後何をどのように取り組むべきかということについては、既に農林水産省においても取り組みをしているわけでございます。今週中には食と農の再生プランというものは発表できると思います。また、先般、関係閣僚会議が設置されまして、食の安全の問題に関する法整備また行政組織のシステムづくりについて総理からも指示をいただき、こういった取り組みをしているわけでございます。
 今私がなすべき責任というのは、一連の経緯を真摯に受けとめつつ、しっかりした対応に全力を尽くす、そして、国民の信頼、評価というものはそう簡単なものじゃないと思いますが、それに向けて政治生命をかけた取り組みをしっかりやっていくというふうに決意を新たにしている次第でございまして、御理解を賜ればありがたいと思います。
黄川田分科員 座談会を通じまして、国民の目線では、まだまだ大臣は免責されていないということをここでは指摘しておきたいと思います。
 それから、通告項目が多いわけでございますので、簡潔明瞭な御答弁をよろしくお願いいたしたいと思います。
 そしてまた、なぜ、どのようにしてこのBSEが我が国で発生したか、そして感染源、感染経路の解明が何よりも重要だと思っておるわけでありますけれども、この報告書においても触れられておりません。そこで、感染経路の解明は本当に難しい問題でありますけれども、現在どのように進んでおるのでしょうか。
 そしてまた、農水省は、原因究明のために生産局のスタッフが鋭意解明中といいますか、そういうふうに聞いておりますけれども、内部作業では限界もあるのではないかと思っております。そこで、専門家の第三者による原因究明委員会を設けて解明作業を急ぐべきではないでしょうか。そして、その検討経過を逐次情報公開すること、これが大事だと思っております。消費者の不安心理が和らげられ、消費回復に寄与するのではないかと思いますので、この点について見解をお願いいたしたいと思います。
須賀田政府参考人 昨年の十一月三十日に引き続きまして、去る三月十五日に、第二次の感染経路の究明に関する中間報告を取りまとめ、公表をさせていただいたところでございます。
 この中で、やはりまだ、配合飼料工場のうち四工場におきまして肉骨粉の混入の可能性が否定できないということが判明し、また、一九九八年の六月以前に輸入されましたイタリア産の肉骨粉は加熱処理条件が不十分である可能性が高いということが判明をいたしました。また、これまで感染牛は三例出ているわけでございますけれども、三例に共通して給与された代用乳に、BSEの発生国でございますオランダ産の動物性油脂が含まれていたということが判明したわけでございます。
 今後の調査といたしまして、まずそのイタリア産の肉骨粉の問題、先般、現地に再度専門家を派遣いたしまして、先ほど申し上げました加熱処理条件、三気圧に満たない条件で加熱が行われたのではないかということ、そして、一九九八年六月以前に使用していた機械が肉骨粉に蒸気が触れないような構造であることが判明したことから、どのような処理をもって湿熱処理としたのか、これは加熱処理要件に入っておりましたので、どのような処理をもって湿熱処理としたのか等について再度調査をしております。また、オランダ産の動物性油脂、この油脂は原料が牛の脂身等であったことが書類で確認できるかどうか、それから骨等の副産物を原料とする油脂が混入した可能性がないことを確認できるかどうかについて、オランダ政府を通じて製造会社に照会をしているところでございます。
 そのほか、PCR等の検査によって哺乳動物のたんぱく質が検出されました魚粉工場、七工場ございますけれども、一応、肉骨粉は入ってなかったという結果にはなっておりますけれども、仕入れた食品残渣の確認というのを再度行っているところでございまして、感染経路の究明に全力を挙げて取り組んでいきたいというふうに考えているところでございます。
武部国務大臣 第三者による原因究明委員会を設置してはどうかという御提案でございますが、今局長がるる説明いたしましたが、いずれにいたしましても、この原因の究明あるいは感染経路の究明というものは極めて重要でありまして、農林水産省内では、要員もふやしまして強化いたしております。
 しかし、私は、調査検討委員会でも御指摘いただいておりますけれども、この問題はやはり専門的、科学的に究明していくということが大事だ、このように思います。
 さまざまなデータについては当然農林水産省が調査に当たることは言うまでもないことでございますが、原因究明につきましては、関係法令に基づく立入調査等を通じて農林水産省が全力を挙げて取り組むことに加えて、委員御指摘のとおり、専門家の意見の行政への反映、あるいは消費者に対する積極的な情報の提供といったようなことが今後不可欠だ、最も大事なことだ、私はこのように考えておりまして、今後とも、BSEに関する技術検討会というものがございますが、専門家等の第三者の御助言を活用するということについて真剣に考えてみる必要がある、このように考えております。
 同時に、情報の公開につきましても、この調査の公開につきましても努めていく必要があるのではないか。やはりリスク分析に基づくリスク評価、リスク管理、リスクコミュニケーションというような組み合わせというのは非常に大事でありまして、その一環として、前向きに委員の御提言を踏まえて検討してまいりたい、このように考える次第でございます。
黄川田分科員 それでは次に、大家畜経営維持資金について伺います。
 昨年度分の借りかえが可能な新しい融資制度が今年度から発足すると耳にしております。貸し付け条件等、どのような内容か。特に、BSEの影響がまだ続いている現状を踏まえまして、無担保無保証人の条件を維持しつつ、貸付期限を五年程度に延長が必要と考えておりますけれども、農水省の見解はいかがでしょうか。
    〔主査退席、岩屋主査代理着席〕
須賀田政府参考人 先生おっしゃるように、BSEの発生によりまして畜産経営に深刻な影響が出ているということで、十四年度におきまして、昨年措置をいたしましたいわゆるBSEつなぎ資金につきまして、償還期限については、肉用牛等の肥育期間を考慮いたしまして倍の二年以内というふうにし、また貸付限度額も、例えば肥育牛だと一頭当たり十五万として、十万の一・五倍というふうにしたわけでございます。さらに、無担保無保証人での機関保証が可能なようにしたということで、新しい運転資金も創設をいたしました。これは、昨年創設したものの借りかえもできますし、新たに経営資金を借りるということもできるわけでございます。
 あわせまして、BSEマル緊事業は継続ということを決めましたし、従来四半期ごとに支払っておりました子牛の生産者補給金、あるいは通常マル緊、それから生産拡大奨励金、これも毎月払うようにいたしましたので、あわせまして農家の経営安定対策の充実を図ったところでございます。
黄川田分科員 当初、これについては地方公共団体あるいは農協等が運転資金に心を配りまして、政府の政策を補完するようなそういう対策を講じているというのが見受けられました。本当にこれは国の責任で万全の対策をとるのが筋でありますので、よろしくお願いいたしたいと思っております。
 それでは、次に肉骨粉の焼却について伺います。
 環境省は、全国九カ所を対象に、今肉骨粉を含む死亡牛等の焼却施設の整備への助成を考えているようであります。しかしながら、焼却すべき焼却物が県境を越えて広域流通することや、あるいは設置場所、運営主体等の問題もありまして、都道府県の調整にゆだねたままでは実現が難しいんではないかと私は思っております。
 そこで、今回のBSEに感染された肉骨粉の侵入を防げなかったことは、明らかにこれは国の責任でありますので、この際、国が主体性を持った広域的な焼却施設を整備し、事態の根本的解決を図るべきではないかと思います。これについての見解を求めておきたいと思います。
 それから、加えて、このような広域的な国営焼却施設の整備には数年かかると思われます。そこで、この間の暫定的な処理を加速させるために、セメント業界等関連する民間企業の総力を挙げた、地域に密着した協力など、弾力的な対応が必要と考えますけれども、あわせてその見解をお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
須賀田政府参考人 肉骨粉の処理でございます。
 現在、一日約九百トン生産量がございまして、一般廃棄の焼却施設と、それから先生言われたセメント工場の協力を得まして、現時点で焼却量が一日七百十三トンというふうになっておりまして、梅雨入り前には一日の焼却量と生産量が均衡するようにしたいということで懸命に取り組んでいるところでございます。
 特に、セメント工場につきましては、社団法人のセメント協会に協力を要請いたしまして、全三十六セメント工場ございますけれども、三十三工場が環境大臣への申請を行いまして、特例措置についてそのうち二十一工場が認定をいただいているという状況でございます。
 セメント工場での本格的焼却が始まりますれば、一日の生産量を上回る千百トンの焼却が可能になるわけでございまして、一日も早く関係者の協力を得て進めていきたいというふうに考えているところでございます。
 廃棄物行政全般を所管いたします環境省あるいは都道府県との連携というものに努めながら、一般焼却施設の確保あるいはセメント工場の本格焼却の促進というものに努めていきたいというふうに考えておるところでございます。
黄川田分科員 私の地元でも、セメント会社の協力をいただきまして、その処理について動き出しております。しかしながら、政府においても、この肉骨粉等の処理、抜本的な対策といいますか、さらに前進するような具体的な対応をよろしくお願いいたしたいと思います。
 それでは、農水省にはお引き取りいただきまして、次に、地域課題でありますけれども、並行在来線対策についてお尋ねいたしたいと思います。
 一昨年の十一月、私は運輸委員会で、二度にわたりまして並行在来線の民営化にかかわる基本的課題を幾つかお聞きいたしました。また、東北新幹線の盛岡―八戸間の開業は本年の十二月を予定しております。
 そこで、最初に並行在来線の経営分離問題について、東北新幹線以外で、北陸新幹線の長野―直江津等の三区間、あるいはまた九州新幹線の八代―川内間の検討状況はどのように展開しておるのでしょうか。国土交通省にお伺いいたします。
梅田政府参考人 並行在来線に係る検討状況につきましてお尋ねがございました。
 九州新幹線の鹿児島ルートにつきましては、並行在来線でございます鹿児島線八代―川内間につきまして、本年の二月二十五日に、鹿児島県と熊本県との間で第三セクターの設立につきまして基本的な合意ができたところでございます。現在のところ、両県が中心になりまして、ことしの秋に設立予定の第三セクターの具体的な内容につきまして検討を行い、関係者と鋭意詰めておられると聞いております。
 北陸新幹線の並行在来線でございます長野―富山間及び石動―金沢間につきましては、平成十二年十二月の政府・与党申し合わせにおける北陸新幹線長野―富山間の完成目標が、おおむね十二年強後となっております。したがいまして、第三セクターの設立等につきましては、具体的な動きにはまだなっておりませんが、現在のところ、関係の県で検討が進んでいるというふうに聞いておるところでございます。
黄川田分科員 それで、東北新幹線の岩手県側の並行在来線でありますけれども、これはいわて銀河鉄道株式会社ということでありまして、関係者の協力、支援のもと、去る三月十五日ですか、第一種鉄道事業者として国土交通省に許可申請を提出したということであります。そしてまた、この経営がうまくいくように一応のスキームは構築されましたけれども、なお厳しい状況で経営していかなきゃならないと思っております。
 そこで、今後、このスキームが確実に実行されるよう適切に対処すべきであると思いますけれども、まず国土交通省の見解をお願いいたします。
 あわせて、並行在来線に限らず、地方の公共輸送を担う第三セクターあるいはまた中小民鉄は厳しい経営環境にあります。台風、洪水等の大規模災害が発生した場合においては、その復旧対応が困難な状況になることが危惧されるところであります。ついては、現在の国の鉄道災害復旧事業費補助の拡充を図り、第三セクターの負担軽減を強く望むものでありますけれども、これについても国土交通省の見解を求めておきたいと思います。
梅田政府参考人 東北新幹線の盛岡―八戸間の並行在来線分離に当たりましては、先生御指摘のとおり、貨物鉄道の線路使用料に係る調整金制度というのが創設されております。
 御承知のとおり、この並行在来線の経営分離に当たりましては、貨物列車の走行比率が相当程度高まるものと想定されております。したがいまして、この貨物列車の線路使用料につきまして、平成十二年十二月の整備新幹線に関する政府・与党申し合わせにおきまして、線路使用実態に応じた適切な線路使用料を確保することとし、これに伴ってJR貨物がこうむる損失については新幹線貸付料収入の一部を活用して調整するということに決まっております。具体的には、JR東日本が日本鉄道建設公団に新幹線の施設貸付料を支払います。これを活用いたしまして、並行在来線の線路使用料に係るJR貨物の負担がふえないよう、本申し合わせに従いまして措置することといたします。これによりまして、第三セクター会社は、JR貨物から貨物列車の線路使用実態を反映した合理的な線路使用料を収受することが可能となるわけでございます。
 国土交通省といたしましては、今後、この第三セクターに対する線路使用条件の認可、あるいは鉄建公団に対する予算の認可等の措置を通じまして、このような調整措置の実施を担保する予定でございます。本調整措置につきましては、盛岡―八戸間だけでなく、今後、同じような実態にございます区間についても適用できるよう、一般的な制度として確立することとしておりまして、所要の手続を整備するなど、準備に適切に対処してまいる所存でございます。
 加えまして、今先生から御質問がございました、第三セクター鉄道等におきまして大規模災害が発生した場合の復旧が困難とならないよう、もう少し事業者の負担の軽減を図るべきではないかというお尋ねでございますが、平成三年に鉄軌道整備法の一部を改正いたしまして、それまでの補助率の拡大を、これは国分でございますが、二〇%から二五%といたしますとともに、関係地方公共団体も同額の補助を行うこととして、こういう問題についての支援の強化を図ってまいりました。現在のところ、本制度におきまして、平成三年度以降、十五社に対しまして二百億円強の支援を行ってきております。
 今後も、第三セクター鉄道が自力で復旧できないような災害に見舞われた場合におきましては、こうした制度を活用すると同時に、個々の災害の実情に即しまして適切な支援を行ってまいりたいと考えておるところでございます。
黄川田分科員 開業までに詰める課題も少なくありません。そしてまた、経営基盤の脆弱な第三セクターでありますので、特段の配慮をよろしくお願いいたします。
 残り時間、あと五分でありますので、まとめて二つお伺いいたしたいと思います。
 まず、産業の空洞化と地域経済についてお尋ねいたしたいと思います。
 私の地元では、過去に誘致した企業の二十四社が、海外に生産拠点を移すため、平成十三年度に県内から撤退いたしました。しかしながら、地元に密着し頑張っている企業も多いわけであります。その特徴は、業界でトップレベルの技術に立脚した製品を持っていること、例えば、独自性にすぐれた特殊金型製造などの素材開発型や、IT技術を駆使した加工技術型等が健闘しております。しかしながら、中国との差も徐々に詰められておりまして、新製品開発や製品改良に躍起になっておるところであります。
 そこで、経済産業省は、産業クラスター計画や中小企業技術革新制度など積極的な支援策を講じておりますけれども、地元で汗をかいて苦労している経営者からは、自分たちの世界とはギャップが大きい、申請等の手続に手間がかかり、かつ、参加すると開発のスピードが遅くなるなど不満の声も少なくありません。これらの実態を踏まえまして、経済産業省及び地方経済産業局にもう一歩踏み込んだ、地域に密着した政策展開を求めるわけでありますけれども、経済産業省の見解はいかがでしょうか。
 そしてまた、もう一問、一つ飛ばしまして、時間がありませんので、最後の質問であります。
 尾身大臣らが参加のもと、産学官連携サミットが、東北地区はことしの一月、仙台で開催されました。その場でも要望されたことと重複いたしますけれども、産学官を推進すべく、ここで二点お伺いをしたいと思います。
 まず第一は、地元市町村は、研究開発促進のため、市町村の施設を無償貸与することによりまして大学のサテライトを設置してほしいとの要望が強いわけであります。しかしながら、地方財政再建促進特別措置法による自治体の国への寄附行為の禁止事項によりまして、これまでは実現が図られていなかったわけであります。そして、きのうの日経新聞に、政府の知的財産戦略会議は、国立大学と地方公共団体の連携強化に向け、地財措置法の見直しを検討すべきじゃないのかというふうに載っておりましたので、この点について、工夫の余地はあるのかないのか、総務省にお伺いいたします。
 第二は、アメリカでは当たり前のことなのでありますけれども、大学内でベンチャー企業を育成するために、文部科学省は、三国立大学に、平成十三年度の補正予算でインキュベート施設を整備する予定と耳にしておりますが、私の住む岩手県など地方の国立大学にも早急に設置していただきたいと思うわけでありますけれども、この点について、文部科学省からお伺いいたします。
 まとめてよろしくお願いいたします。
岩屋主査代理 では、それぞれ簡潔に御答弁をいただきたいと思います。
今井政府参考人 お答え申し上げます。
 地域経済は大変厳しい状況になっております。先生御指摘の、地域の特性を生かした技術開発によって新しい事業を創出することが非常に大事でございます。その意味で、産業クラスター計画、SBIR等を総合的に推進しているところでございます。
 御指摘のございました、スピードが遅くなってしまうということでございますが、技術開発、さまざまな制度がございまして、例えば、研究期間が三年間の産学官で一緒にやるような研究開発、それから、一年間でやる補助金等々ございますので、この組み合わせをうまく考えていただければと思います。それは、地域の経済産業局がよく御相談に応ずるようにいたすつもりでございます。
 また、申請書が非常に厄介だということがございます。
 これはよく聞かれるところでございますが、先月行いました十三年度の補正予算でも、技術開発の予算に対して七倍の申請が来ておりまして、七倍の申請を非常に厳正に審査をするということになりますと、ある程度内容をきちっと書いていただく必要がございます。
 そういうことで、局の方で、書き方の御指導でございますとか、記載項目を減らすとか、記入例をお示しするとか、可能な限り御負担がないようにいたしたいと思っておりますし、一方で、こういう技術開発の応募をするということは地域の技術を発掘することになりますので、先生の御指摘も踏まえて、私どもとしては、御負担にならないような努力をしてまいりたいというふうに思います。
    〔岩屋主査代理退席、主査着席〕
林(省)政府参考人 御指摘いただきましたように、地方公共団体から国立大学を含めました国への寄附金等の支出につきましては、現在、法令の規定によりまして原則禁止とされているわけでありますが、これは、自発的寄附の名目に隠れた国から地方公共団体への負担の転嫁を防止することによりまして国と地方の財政秩序を維持しよう、こういう趣旨で設けられているものでございますので、この点については御理解をいただきたいと思います。
 したがいまして、市町村の施設を国立大学に無償で貸与するということは、現在の法令の規定のもとではできないわけでありますが、ただ、適正な対価のもとに利用していただくということはもとより可能でございますし、地方公共団体と国立大学の間で共同研究であるとかあるいは委託研究等を行うことも十分可能でございますので、これらの方法を活用して、地方公共団体と国立大学の連携を推進していただければと考えている次第でございます。
坂田政府参考人 先生が御指摘なさいましたとおり、地域の大学を中心に、地域の科学技術の振興を図りまして、あるいは産学官連携を推進して、地域におきまして例えばベンチャー企業等を創出する、これは非常に大事な課題であるというぐあいに私ども認識をしております。
 そういった観点から、先ほど先生御指摘ございましたとおり、平成十三年度の第一次補正予算、それから第二次補正予算を使いまして、いわゆるインキュベーション施設、これは、国立大学の研究成果でございますとか人的な資源を活用して、この施設を通じまして地域において新しい企業の創出を図る、そのためのものでございますが、これは全国十三の国立大学で整備をするということにしてございます。先生御指摘ございました三つの大学といいますのは、これは第一次補正予算でございまして、第二次がございましたので、私ども、追加で十の大学を整備するということにした次第でございます。
 実は、この十三の大学の中には岩手大学は今のところ入ってはございませんけれども、当然のこととしまして地方の国立大学が含まれております。したがって、今後、新しいこういうインキュベーション施設を整備していくという場合には、各大学からの要求でございますとか、あるいはその大学が行っております産学官の連携の実態、状況、あるいはまた地域のバランス、こういったことをよく考えまして前向きに検討してまいりたいと思っております。
黄川田分科員 地方に住んでおると、日本の製造業はどうなってしまうのかという本当に厳しい気持ちでおります。
 いずれ地方が元気になるように、各省庁連携しまして特段の取り組みを要望いたしまして、終わります。ありがとうございました。
松崎主査 これにて黄川田徹君の質疑は終了いたしました。
 次に、楢崎欣弥君。
楢崎分科員 民主党の楢崎です。
 きょうは、決算委員会分科会に所を変えての質問です。お互いに、所変われど相手変わらずという感じがいたします。
 それにしましても、私もこの半年間、大臣に対しましてその責任の所在を明確にするようにということを訴えてまいりました。率直に言って、しぶといと言われますか、改革に対する熱意が強いと言われますか、もうここまで来ますと、いろいろな思いを通り越して私自身複雑な感情を持っておるところです。
 先週、小泉総理の異常ともいうべき擁護論のもとに、参議院における問責が否決されました。ただ、これを国民が納得したわけではない、そのような自覚をしっかり持っていただきたいと思います。
 問責が否決されたことによる現在の大臣の心境というものをお聞かせいただきたいと思います。
武部国務大臣 先週、私への問責決議案が否決されたわけでございますが、楢崎先生御指摘のとおり、国民の皆様方がこれで私に対して一つの結論をつけたというふうには認識いたしておりません。
 楢崎先生には、農林水産委員会におきましても厳しい御叱正、御指導をいただきました。また、時には貴重な御意見も賜りまして、私ども、そうした御意見に敬意を表して、先生方の御意見も体して、このBSE問題への真剣な取り組みを続けてきた所存でございます。
 一連の経緯につきましては真摯に受けとめつつ、謙虚な気持ちで職責を全うしてまいりたい、ただいまそのような認識を新たにしているわけでございます。とりわけ、生産現場の皆様、消費者の皆様方の声をしっかり受けとめて、国民の皆様に安心していただけるような取り組みを政治生命かけて進めてまいりたい、そういう決意でございます。
 とりわけ消費者保護第一、生産者サイドから消費者サイドに軸足を大きく移すということが、結果的には生産者のためにもなる。生産者と消費者の間の顔の見える関係を構築すべく、食と農の再生プランというものに取り組んでいるわけでございまして、これも今週中には発表できるか、かように考えているわけでございます。
 そうしたことにみずから先頭に立って諸般の対策をしっかり講じて、そしてこの問題解決を図っていくことが、やがて国民の皆様方にも理解され、評価をいただけるもの、かように考えている次第でございまして、私は、今はむしろもっと大きな重い十字架を背負って進まなければならないという思いでございまして、さらなる御鞭撻と御指導をお願い申し上げたいと存じます。
楢崎分科員 その決意はよしとしたいと思います。
 きょうはBSEに関して質問をいたしますが、その前に一点お伺いします。
 プロ野球が始まりまして、私の地元では福岡ダイエーが早くも絶好調でして、市民も沸き返っておるところですけれども、その福岡ダイエーのホームグラウンド福岡ドームに地方競馬場外馬券売り場を設置するということで、今大きな問題になっています。
 これは、佐賀県、熊本県の荒尾市そして岩手県の競馬組合が共同で計画しているもので、農水省も昨年十二月、承認をされました。
 この福岡ドーム近辺というのは、養護学校を初め十五の小中高校がありまして、それに大きな病院もあるわけです。ですから、もともとこの計画が表に出てきた段階で、地域住民それからPTAの関係者は教育環境が悪くなるということで反対の意思を表明されていたんですけれども、農水省の承認決定以降、反対運動が激しくなりまして、とうとう今月の二日には福岡市長が設置反対を表明いたしました。
 このことについて、同日付で武部大臣の方に福岡市長の方から報告と再検討の要請がされていると思いますけれども、先週の六日にも、雨の中でしたけれども、住民の反対デモがありまして、近々この方々は大臣のところに陳情に伺われるそうです。実はきょうも、福岡市の助役が佐賀県競馬組合の管理者であります佐賀県の副知事を訪ねまして、計画の再検討を求めているところです。
 そこで、この福岡の状況を計画者であるこの三組合が理解していただけるような環境が生まれたら、農水省も承認撤回の再検討はしていただけますか。
須賀田政府参考人 経緯から申し上げますと、先生の言われた岩手県、佐賀県それから荒尾のそれぞれの競馬組合三組合が、所定の規定に基づきまして場外馬券売り場の設置承認の申請を上げてきたということでございます。それにはちゃんと周辺自治会長の同意書が添付をされておりました。そういうことで、私ども、昨年の十二月六日に承認をしたということでございます。
 そして、現在、まさに先生言われましたように、福岡市長の方から計画の再検討ということで、これは各競馬組合と株式会社福岡ドームに対して要請をされているということでございます。
 現時点では、今後の具体的対応というのは、まさにこの福岡市長の意向を受けて主催者がどういうふうに判断をするかという、主催者の意向にゆだねられているという状況でございます。仮定の話をいろいろ先行さすのもどうかと思いますけれども、もしもあきらめるというようなことになりますれば、恐らく取り下げの申請が主催者の方から上がってくるのではないかというふうに考えております。
楢崎分科員 そのときは趣旨に添った決定をしていただきたいと思います。
 きょうは、ちょっと視点を変えまして、羊のBSEと言われているスクレーピーについて伺います。
 私が昨年の十月十七日に質問したときに、そのときの発生頭数は五十八頭でした。この数字は変わりませんか。
須賀田政府参考人 昨年十月段階で、全国の発生頭数を三十一戸、五十八頭というふうにしておりました。その後、北海道から平成六年の一つの発生農場における発生頭数が二頭ではなくて三頭であるという報告がございまして、私ども十一月に訂正して発表させていただいておりまして、結局三十一戸、五十九頭というのが正確な数値でございます。
楢崎分科員 ということは、十月十七日以降は新たな発生はないということですか。
須賀田政府参考人 昨年十月十六日の茨城県の一戸、一頭が、現段階におきます最終発生頭数でございます。
楢崎分科員 感染源解明の究明はしてありますか。
須賀田政府参考人 このスクレーピーでございますが、昭和五十九年にカナダから輸入した綿羊の子孫というもので初めて確認をされました。
 その後の発生例につきましては、追跡調査によりまして、大宗が、初発生といいますか、初発の農場から導入された綿羊やその同居綿羊など、初発の農場と何らかの関係がある綿羊で発生していることから、初発農場と因果関係があるというふうに考えております。
 ただ、一部の感染綿羊につきまして、過去の追跡調査情報の収集に限界がございまして、初発の農場との因果関係の有無を明らかにするに至っていないというのが状況でございます。
楢崎分科員 ちょっと確認しますけれども、では、スクレーピーにかかった羊は、すべて国内で誕生したものじゃないわけですね、輸入したものから来たのですか。
須賀田政府参考人 カナダから輸入したものの子孫でございますが、これまで発生した五十九頭のうち、五十八頭はそういうふうに国内で生まれたものでございます。残りの一頭は、昭和五十六年にニュージーランドから輸入された綿羊が昭和六十年に本病に罹患したということが確認されたものでございます。
楢崎分科員 では、その感染源についての究明は、カナダには問い合わせられたのですか。
須賀田政府参考人 カナダから導入をした綿羊の子孫に発生をしておりますので、現在その罹患した羊の調査をしておるところでございます。
 また、ニュージーランドから輸入された綿羊というふうに先ほど申し上げました。ニュージーランド産の綿羊が輸入時に既に感染していたのか、あるいは輸入後に何らかの形で感染したのかは確認はされていないわけでございますけれども、ニュージーランドは国際的にもこの羊のスクレーピーの清浄国というふうにみなされておりますことから、恐らく綿羊が輸入時に感染していたというリスクは少ないのではないかというふうに思っております。
楢崎分科員 私がスクレーピーにこだわるのは、これから言いますけれども、決して甘く見てはいけない、そういう状況もあるわけですね。
 それで、厚労省は、羊についても危険部位の除去、焼却の方針を固めたとありましたけれども、既にそれは実施されてあるのですか。あわせて、実施していたら、それは法的な裏づけがあるものなのか、単なる行政指導なのか、通達なのか。
尾嵜政府参考人 綿羊とヤギの特定危険部位の取り扱いにつきましては、三月の二十二日に牛海綿状脳症に関する研究班会議を開催いたしまして、そこで専門家の方々に御議論をいただきました。
 その御議論を踏まえまして、四月一日から、屠畜解体時に、一つは、生後十二カ月以上の綿羊及び山羊の頭蓋、これは舌と頬肉を除く頭蓋、それから脊髄及び胎盤、それと月齢にかかわりませずすべての綿羊及び山羊の扁桃、脾臓及び附属するリンパ節を含む小大腸を除去し、それを焼却するというふうに、都道府県を通じまして屠畜場の設置者、管理者、従事者等に指導をしているところでございまして、法的な義務化ではなしに、現在は四月一日から指導ということで実施しておるという状況でございます。
楢崎分科員 帯広畜産大学のある研究者ですが、国内のスクレーピーにBSEを引き起こすタイプが含まれる可能性は否定できない、その病原体が人に感染しないという保証もないという警鐘が鳴らされているのです。ですから、決してスクレーピーを甘く見られないようにお願いしたいわけですけれども、早急にそういう除去等については法的に制度化すべきだと思いますけれども、もう一度お答えいただけませんか。
尾嵜政府参考人 この措置につきましては、先ほど御説明いたしましたように四月一日から指導ベースでやっておりますが、今後スクレーピーについては、今先生から御指摘ございましたように、羊のスクレーピーで、いわゆる羊がBSEに感染しているのが隠されているのではないか、そういうケースがあるのではないかというふうな御指摘なり議論というのはヨーロッパでもございますが、今のところそういった科学的な確認というものはされていないというのは先生も御承知のとおりでございます。
 そういったことで、私ども、専門家の意見も聞きながら、また四月一日からの各自治体におきます実施状況も見ながら、法的な措置についても検討していきたいという考えを持っておるところでございます。
楢崎分科員 わかりました。
 そこで、食肉以外は通常はどう処理されていたのですか。レンダリングに回されていたのでしょうか。ということは、肉骨粉にされていたということでしょうか。
尾嵜政府参考人 私ども、今回の行政指導の通知を出す前でございますが、一月に、各都道府県におきます屠畜場におきます綿羊及びヤギの特定危険部位の取り扱い状況を調べた調査がございます。
 その結果を申し上げますと、全部で八十九施設ございますが、四十施設がそういったものも含めて焼却をしておる、こういったケースが一番多い回答でございました。それと、二十二施設が化製場の方に送っておるというふうな回答でございました。
 そういったことでございまして、一般的には、焼却なりあるいは化製場に行っているというのが大多数であろうというふうに考えておるところでございます。
楢崎分科員 では、その五十九頭のスクレーピーはどのような方法で判明したわけですか。
須賀田政府参考人 五十九頭、確認されたスクレーピーは、家畜保健衛生所で病性鑑定が行われた後、その死体は焼却されたという状況でございます。
楢崎分科員 動衛研の方で、羊のスクレーピー向けに正確で感度の高い診断方法の開発を進めている。これは年末の十二月三十日に報道をされていたのですが、このめどはつきましたか。
岩元政府参考人 お答えをいたします。
 農林水産省では、動物衛生研究所を中心にいたしまして、先ほどお話がありました、スクレーピーが発生をした直後、昭和六十三年に直ちに羊スクレーピーを対象とした研究を行っております。
 その中で、羊スクレーピーの高精度検出法の開発ということに取り組んできたわけでございます。その結果、プリオンたんぱく質の検出に有効な特異的な抗体をつくった、それからその抗体をもとに、異常プリオンたんぱく質の高感度検出法、いわゆる抗原抗体反応を利用したイムノPCRという方法でございますが、これを開発いたしまして、一九九九年に、平成十一年でございますけれども、特許を申請してございます。こういった技術をもとに、羊の扁桃の組織をわずかとることによって、その検査方法によって検査が可能になっております。
 結論から申しますと、羊スクレーピーに関しましては、生きた羊で、いわゆる生前診断法というのが確立をしているということでございます。
楢崎分科員 昨年の十月十七日に私が質問したときに、小林前生産局長が、BSEとスクレーピーはプリオンのタイプが違うから異なる疾病であるというふうに判断されていると因果関係を否定されていたんですが、この考えは今も変わりませんか。
須賀田政府参考人 スクレーピーとBSEは、いずれも異常なプリオンを原因とする、一方が綿羊の、一方が牛の病気でございますし、発病までには数年を要するものでございます。症状としては、両方とも、運動失調でございますとか頭部の震え、起立不能などの神経症状を示しますけれども、スクレープという言葉がございますように、スクレーピーの方ではかゆがる行為が見られまして、そのために被毛の脱落が見られるわけでございます。
 BSEを起こすプリオンは、今まで分離されたスクレーピーのプリオンのタイプのいずれとも異なっておりまして、現時点では、OIEのサポーティングドキュメントでも、二つの疾病は異なるものであるというふうに判断をしているところでございます。
楢崎分科員 大臣、一九八六年にイギリスで初めて確認されたBSE、これはスクレーピーにかかった羊の肉骨粉をえさとして与えたというのが定説になっているんですけれども、ところが、最近の実験では、感染牛の脳を食べさせると羊もBSEにかかってしまったんですね。ですから、EUでは、BSEに感染した羊がいるのではないか、つまり従来のスクレーピーと混同されているおそれがあるという指摘がされ始めているんですけれども、このことについて、政府はどのような見解をお持ちでしょうか。
武部国務大臣 政府の見解ということではなくて、私が感ずるところを率直に申し上げますと、やはり、起こり得ないと思うことが起こり得る、そういう大前提を私ども行政に携わる者は念頭に置かなきゃいけないんじゃないか、このように思います。
 調査検討委員会の委員長代理であります山内先生も、イギリスでなぜ発生したかということについて羊のスクレーピーの話もされているところでございまして、そういう意味でも、今後、リスク分析に基づく、しかも、これは専門家とか科学者とか、そういった方々によるしっかりした調査ということが必要なんじゃないか、このように思っておりまして、私は、OIEの評価というものを否定するものではありませんけれども、しかし、やはり今後、食の安全、安心というようなことについての取り組みについては専門家によるしっかりした調査ということをもっと重厚にやっていく必要がある。そういう過程で、私は、この問題についてもいま一度、念には念を入れた分析が必要じゃないかという認識でございます。
楢崎分科員 私も、BSEとスクレーピー、この因果関係というのは明確に否定できるような状況ではない、そのように思います。
 次に、トレーサビリティー制度、いわゆる耳標制度についてお伺いしますけれども、たび重なる偽装表示以降、消費者の商品を見る目がまた一段と厳しくなってきたわけです。だから、この制度自体は評価されると思います。また、徹底されなければいけないと思います。
 そこで、これは順調に作業は進んでいますか。あわせて、この今やられている作業というのは法的に義務づけられているものかどうか、お答えください。
須賀田政府参考人 現在四百五十万頭の牛に耳標の装着作業をしているところでございます。当初は三月いっぱいまでにというもくろみでやっておりました。若干作業におくれがございまして、これが全国でデータベース化されるにはちょっと五月の末までかかるのではないかというふうに思っております。
 そして、耳標は屠畜場まででございます。今後は屠畜場から小売の段階までトレースする仕組みが必要になってきて、大事なことは、消費者が逆に追跡ができるような仕組みを構築するということでございますので、私ども、大臣の強い指示もございまして、法制化に向けて、今後検討を至急していくということで、実証事業あるいは技術経験のある方を集めた技術検討、こういうものに努めているところでございます。
楢崎分科員 重要な制度ですから、ぜひ法的な義務づけが必要だと私は思います。
 そこで、この耳標の取りつけは各都道府県がやっているんですね。データの管理は中央がやるんですか。どういうことになっているんでしょうか。
須賀田政府参考人 まず耳標の取りつけでございます。初めてのことでございますので、家畜保健衛生所、市町村、農協等がチームを組みまして、耳標装着チームという編成をして装着作業を行っているところでございます。
 そして、ここで管理をされます牛の個体情報のデータといいますのは、私の方の家畜改良センターというところで全国データベース化をしているところでございます。
楢崎分科員 そのデータですけれども、例えば、生年月日それから生産地名とかが入るんでしょうけれども、ほかにはどのようなデータをとられますか、お答えください。
須賀田政府参考人 それぞれの個体識別番号ごとに、ただいま言われました生年月日、性別、品種、所在地の情報、これは出生以降の移動の履歴でございます。それから死亡年月日、それから母牛の個体識別番号等の基礎情報を入力、蓄積するということとしているところでございます。
楢崎分科員 充実したデータであれば、防疫体制の確立とか優秀な家畜の改良にもつながっていくと思うわけです。
 それで、先ほど局長言われましたように、やはり農場から食卓までのトレーサビリティーが確立されないと制度そのものの意味もないと思うのですね。結局、切り分けられた部分肉の段階では牛の素性を示すものがなくなるわけですね。雪印事件は、まさにそのすきをついた犯罪だったと思うのです。
 ですから、これは今後やはり牛だけではなくて、豚とかヤギとか羊ですね、そういう家畜対象を広げていくべきだと思うのですけれども、大臣、そういう考えはありませんか。
武部国務大臣 豚、羊等については、その生涯を通じて出生地から移動しないことが多いと聞いております。このため、まずは牛を対象とした個体識別システムの構築に取り組んでいるところでございますが、他の家畜につきましても、順次今後の検討課題としたいと思いますし、委員御指摘のとおり、野菜でありますとか茶飲料、食品加工、こういったものも含めまして、十四年度で実証試験を少し精力的にやりたい、こう思っておりまして、私の考えは、先ほど局長が答弁しましたように、法的規制ということを視野に入れて、十五年度導入目標で、今、事務当局に指示をしているという次第でございます。
楢崎分科員 BSE発生という、その反省の上に立ってできた制度ですから、その反省が生かされる、実効ある制度であることを希望して、終わります。
松崎主査 これにて楢崎欣弥君の質疑は終了いたしました。
 次に、重野安正君。
重野分科員 何点か質問をいたします。社会民主党の重野安正です。
 まず、質問の第一は、四月二日付の新聞に、食糧庁廃止という大きな見出しが躍っていました。その次の三日の日にも同様の記事が出ていたわけであります。その内容は、農水省の外局である食糧庁を廃止して、新たに内閣府のもとに食品安全を担当する行政組織を創設する方向で検討している、こういう内容であり、BSE問題で農水省の生産者重視の行政が批判されたが、新組織には厚生労働省の機能や職員も加え、消費者重視の姿勢に抜本的に転換するとのことである、こういうふうに報道されているわけです。
 まず、この報道の中身は、事実そういうことを今農水省は検討しているのかという点の確認をしたいと思うんです。
武部国務大臣 農林水産省として、これまでに報道のような検討を行っていたわけではございません。
 他方、この食品安全を担当する行政組織の問題につきましては、BSE問題に関する調査検討委員会の報告書の中で、リスク評価機能を中心とし、独立性、一貫性を持った、各省との調整機能を有する新たな食品安全行政機関を設置するとの提言がなされております。
 これを受けまして、食品の安全性の確保に必要な新たな行政組織のあり方について具体案を作成すべく、四月五日に食品安全行政に関する関係閣僚会議が設置されたということは、委員も御承知のことと存じます。
重野分科員 今、大臣の答弁は、新聞報道をそのまま一〇〇%受け取ることは、これはやはりちょっと問題だというふうに私は受けとめました。
 そこで、この二日間にわたり報道された内容というのは、非常に事細かに具体的に書かれているんですね。だから、今大臣そのように答弁しましたけれども、そういう方向について内部的に議論がされているのではないか、こういうふうに疑うわけですね。そこら辺について、もう一度ひとつ具体的に聞かせてください。
武部国務大臣 農林水産省としては、全く今日まで報道にあるようなことは検討しておらないのでございます。
 ただ、与党でも食品の安全問題に関するプロジェクトもございますし、あるいはまた、この調査検討委員会におきましても食品安全問題にかかわる行政組織のあり方ということについて検討され、提言もいただいているわけでございまして、農林水産省としては今まではこういったことについての検討はしておりませんけれども、今後、政府部内におきまして、関係閣僚会議も設置されたわけでございますので、当然、いろいろなことを視野に入れて議論がされるのではないか。私は、そのことはそういうふうに思います。
重野分科員 確かに、今この国の食料事情は、かつて、大戦の後の飢餓状態というふうな、そういう状況にはありません。表面的には、飽食の時代と言われるような状況にあることは否定できません。しかし、食料問題を根本的に掘り下げていったときに、この国の食料のよって立つ基盤というのは甚だ寂しい状況に流れているという点を見落としてはならぬと私は思うんですね。
 もう我々は、穀物自給率はどうだとか、外国からのいろいろなものが店に行くと並んでいますね。どこどこ産と皆書いていますからね、フィリピン産のものがあれば、台湾産がある。そういうふうな状況がどんどん深化していく、進行しているという中で、この新聞報道の言わんとする部分というのは、非常に危うい。そこは、いま一度しっかり足元を見据えて、BSEに象徴されるように、消費者の立場というのを重視することは当然でありますけれども、同時に、危ういこの国の食料の自給を支えている部分というものを重視していくということは、絶対に忘れてはならぬ問題だと思うんですね。
 だから、とかく穀物に関して言えば、生産者に対する配慮、あるいは状況が非常に厳しくなっていくということは間違いない事実ですね。そこのところをどうすくい上げていくのかという点についての、大臣の根本的な思いというものを開陳していただきたいと思うんです。どうぞ。
武部国務大臣 私は、日本の食料の自給率の現状を思うときに、将来的に地球上の人口の推移ということなども考え、毎年五百万ヘクタールも砂漠化しているという実態、とにかく食料の自給率というのは、OECD加盟国で二十八番目でありますし、世界百七十八カ国・地域の百二十八番目ぐらいだと思います。こんなことで、国の食料の安定供給という大きな課題にこたえ得る、そういう責めを果たしているとは思えませんね。したがいまして、やはり食料の自給率というものを上げていかなきゃなりません。
 しかし、そのためには、消費者が求めているニーズは何なのか、生産者と消費者というものが顔の見える関係をしっかり構築して、生産者にとっても消費者はパートナーだということを認めた上で、一種の車の両輪といいますか、相互に手を携えて、今後の農政というものをしっかり考えていかなきゃいけない。特に、消費者が求めているものは安全、安心な食料の確保ということだろう、こう思うわけでございます。
 そういう意味で、農林水産省は今まで生産者サイドに軸足を置いていたということは否めない。やはり本来的な自給率の向上や、生産者が成り立っていくということのためには、軸足を消費者サイドに大きく移して、そして消費者保護第一という考え方に立ってこそ初めて生産者が成り立っていくわけであるし、自給率も向上していく、こういうことであります。
 私は、消費者重視へ転換するということは、決して生産者を軽視するということではありませんで、消費者をパートナーとみなして、そのニーズや意見、要望を真摯に受けとめて農政に反映していくということが、結果的に生産者の利益にもなり、農業の今後の発展につながっていくものだ、そういう基本的な考えで取り組んでいこうとしているわけでございます。
重野分科員 九五年に食管法が廃止をされました。食管法の廃止、即食料行政の縮小ということにはならない、ここのところをしっかり押さえてほしいと私は思うんですね。やはり国民に安全な食料、食品を提供するという国の大きな役割、任務がある。だから、そういう意味では、食料全般に目配りのきいた行政というものを展開していく上での戦力というものをどう考えるか、そういう部分も前向きに前進するというその中で考えてほしい、私はこのように思います。
 とかく、食管法の廃止、即その部分から国は撤退をする、こういうような短絡的なものではないだろう、そこのところをしっかり押さえていただきたいと思うんですが、大臣のお考えをお聞かせください。
石原(葵)政府参考人 ただいま委員からお話あったとおりでございます。そのときの米をめぐる情勢の変化に対応いたしまして、従来の食管制度から食糧法という制度に変えたわけでございますけれども、ただいま委員からお話ございましたように、今日でも生産調整の推進とか米の備蓄制度の運営、米麦の国家貿易の運営、計画流通制度の運営、それから米の表示の適正化、あるいは米の消費の拡大、こういう業務が必要だと思っております。
 こういうものを適切に実施する必要があると我々考えているところでございまして、引き続きそういうものに対しまして、食糧事務所を含む食糧庁全体を挙げて、こういう業務に取り組んでいきたいと考えているところでございます。
重野分科員 そこで、米に関連をしまして、従来食糧事務所が米の検査をしておりました。それが今、経過措置と申しますか、五年間かけて最終的には農協が、あるいは民間の検査が可能になる。
 私の周辺では、今農協が米の検査をやっているわけでありますが、どうも生産者から見た場合、かつての食糧事務所の米の検査に対する信頼と、そしてこういう仕組みが変わっていく移行期にあるとはいえ、農家の方々の米の検査に対する信頼というのが、いまいち皆さん不安を持っておられる。実際に請け負っておる農協の側から見ても、相当に荷が重いようですね。つまり、さじかげんというか、検査によって等級が決まるわけですから、そうなると、やはり農協というのは一つの経営体ですから、経営体の方が検査をするんですから、これは農家の側から当たる風当たりというのは非常に強いですよ。これはそういう現場の実態というものをよく調べてほしいと思うんですね。
 問題は、五年間かけてそういう形に移行していくんだが、それに定着するという確信を持っているのかどうなのか、この点をお聞かせください。
石原(葵)政府参考人 農産物検査でございますけれども、ただいま委員の方からお話ございましたように、平成十三年度から五年間かけまして民営化に移行するということにしているところでございます。これを着実に実施するという観点から、各県ごとに移行のプログラムを策定いたしまして、それに沿って推進しているところでございます。
 十三年度で登録検査機関として予定しておりましたJAのうち一千機関、そのうち約三百が既に登録されておりまして、この三百の登録機関が国内産米の約一〇%について検査を実施しているという状況でございます。この一〇%でございますけれども、大体当初予定したよりもちょっとおくれているかなという状況でございます。
 我々、これを円滑にしたいということで、ただいま委員の方からお話がありましたような問題は生じようかと思いますが、そういうことのないように、食糧事務所の検査官が可能な限り検査を行っている場所で直接農協の検査をする人を指導したり、あるいはそれ以前にも、民間農産物検査員育成研修、こういうことも実施しているところでございます。
 こういうようないろいろな対応をすることによりまして検査精度の向上を図ることによりまして、農産物検査の民営化が円滑にいくよう努めていく考えでございますので、御理解いただきたいと思います。
重野分科員 今大臣もBSE問題で大変御苦労なさっておる。農水省といえばBSE、こういうふうな感じですね。だけれども、私が強調したいのは、それも大事です。しかし、食料という問題、やはり食料でかちっとこの国は自立できているという、その根本的な問題というのは、私は決して粗末にしてはならぬし、重視をしていかなきゃいかぬ、こういうふうに思いますし、そういう点をしっかり踏まえて、この国の食料行政を進めていただきたい。
 そこで、ちょっと話を変えまして、BSEに関連をしまして、畜産農家はやはり深刻ですよ。本当に言葉では言いあらわせないほどに、僕は事態は深刻と思います。それこそ本当に一生懸命国の指導に基づいて、畜産経営は大型化している。私も百姓の子供ですが、昔は黒牛を二頭か三頭飼って、毎朝草を山に切りに行って、そしてそれを食わせて、レンゲを刈って食わせて、こういう程度の畜産だったんですが、今は違いますものね、全然。畜産専業です。もう何百頭という牛を飼って、搾乳をするとか、規模が違う。そういう畜産農家、それだけに至るまでに、大変な投資もしている。ところが、このBSEに関連をして、もう立ち往生ですよ、今。それで、ある意味では牛を動かしたくても、なかなか動かせない。動かせないということは、金にならない。牛はそれでもえさは食うわけですね。そういう意味では、今畜産農家、特に酪農の方というのは、本当に経営が崩壊するというぎりぎりの状況に来ていると思うんですね。
 同時に、今度米づくりは米づくりで、いわゆる自由化をしました。そして、米はもう相対取引で価格が決まるわけですね。そういう中で、本当にこれまた米の一戸の作付面積は大きくなりましたよ。もう一人で十町歩なんてたくさんあるのですから。それだけに、その米がどう動くかによって、その人はもう本当に命をとられるような状況が起こってくるわけですね。そういう意味では、この自由化のあらしの中で、立ち往生しているというさまがあちこちあるのですね。したがって、それを見ている跡取りは、もう腰を引くんですよね。やろうと思っていたけれども、やはり考えたらもう無理はせぬ方がよかろうと、今度は跡取りができない。悪循環に立ち至っているんですね。そういう状況にどう適切、迅速に対応していくか。農水省も、今までも大事だったけれども、今まで以上に私は非常に重大な岐路にあると思うんですね。
 そういう状況に対して、大臣、今、BSEの問題もあったし、そういう農家の方々をどう鼓舞して、頑張ろうというメッセージを発信できるんですか。そこら辺がはっきりしなきゃ、やはり農村の方は厳しいと僕は思いますよ。どうぞ。
川村政府参考人 我が国の農業の持続的な発展のためには、まさにおっしゃるとおり、それを担う人材の確保が極めて重要でございます。
 その農業後継者をいかに確保していくかということでございますが、今申されましたような現下のいろいろな課題に対応しまして、農業を魅力あるものにするという各般の農業振興施策も必要でございます。それはもとよりでございますが、特に農業後継者の確保のための直接的な施策といたしまして、新規学卒者の方もいらっしゃいますし、Uターンの方もいらっしゃいます。そういう農家子弟のいろいろな態様に合わせまして、またニーズに合わせまして、きめ細かな対策を講じていくということでございます。
 就農の基本はやはり技術でございますので、農業大学校でありますとか、先進農家におきます農業技術等の研修をいたしますとともに、経営を開始しますときには親から経営を独立するとか、新たな作物をつくっていく、そういうチャレンジをされますので、そういうものを支援していく。また、普及組織、関係機関がございますので、そういうものを総動員いたしましてそれをバックアップしていくということも必要だと思いますし、また、若い農家は相互の連携ということも必要でございますので、農業青年クラブの活動とか、青年の意見交換会とか、そういうものを通じまして幅広く対応していきたいということで、まさにここは力を入れていかなくちゃいけないと思っているところでございます。
重野分科員 とにかく、指導する側、その指導を受ける農民の側、それぞれが本当にやるぞという、奮い立つような、そういう施策そのものを今絶対やってほしい、このことを要望しておきたいと思います。
 次に、林業について二、三聞きたいと思うんです。
 国有林野事業についても、大変厳しい状況にあります。ちなみに、平成十一年度決算では、林産物収入が約三十九億円、予算に対して減額、こういうことになっているようであります。
 外材がどんどん入ってくるという状態の中で、価格において外国産の木材と競争はできないのですよね。これはもうわかり切った話なんですね。だから、この国の林業をどう維持発展させていくかということは、そのことを前提にして、極端な言い方かもしれませんが、価格競争でコストを下げて安い材木をつくれなんか言ったって、それは言葉では言えるけれども、この国の地形とこの国の条件の中で、ああいう外材と価格の面において競争することというのは、接近することはあっても肩を並べるあるいはそれを追い抜くということは、私は、言うことは言えても、現実はできないと思うんですね。
 その中でもなお、林家が林業に精を出すためにどうするかということを考えなきゃいかぬのですが、そういう問題について、大臣、この国の林業をどうするという根本的な理念というのを聞かせていただきたいと思うんです。どうぞ。
加藤政府参考人 今、先生が言われましたように、林業を取り巻く情勢は大変厳しいわけでございまして、そういう点で一方では森林の機能というものをきちっと果たしていかなければいけない。森林の機能に対します国民の要請は非常に幅広くなっておりますし、高まってきているというふうに我々認識をしているところでございまして、そういう点でいきますと、森林の多面的機能をどういうふうに持続的に発揮させるのかということも考えながら、あわせて、やはり林業の振興ということも図っていかなければいけないのではないかというふうに思っているところでございます。
 それから、今、外材との関係の議論があったところでございますけれども、実は、今変わってきておりますのは、例えば杉の未乾燥材と外材を比較いたしますと、杉の未乾燥材の方が値段が安いという状況になってきておりまして、今までは、実は外材の方が安くて、国産材の方が高いからなかなか売れないのだという議論をしてくるわけでございますけれども、状況はそういうふうに変わってきている。
 それがなぜ変わってきたかといいますと、やはり木材の需要構造が変わってきている。住宅の建て方も変わってきておりますし、今は乾燥がきちっとされて、それが大壁工法なりなんなりに対応できる。さらには、工期も非常に短い時間の間に建てるというようなことになってきているわけでございまして、そういったものが求められてきているわけでございます。そういったものにどう対応していくのかということをやはり木材としては考えていかなければいけないというふうに思っておるわけでございます。
 そういう点で、林業のあり方、それから木材産業のあり方を含めまして、やはり何といいましても構造改革をしていくということが重要ではないかというふうに考えているところでございます。
重野分科員 それと、日本の商社あたりが外国に行って、外国の木材を乱伐しているという話がごくごく当たり前のように語られている。確かに、その安い木材を国民に供給するという、それなりに一つの役割があるんでしょうけれども、しかし、裏返し、その木材を産出しておる国に対して、ある意味では犯罪的なことをやはりこの国がやっておるということを、僕はもっと国民共通の認識として定着させていかなきゃいかぬ。そういうことはやはり問題だという誘導役を林野庁はやっていかなきゃいかぬ。その点が一つですね。
 それともう一つは、百五十一通常国会において、森林・林業基本法が成立をしました。昨年の十月には森林・林業基本計画が作成されたところであります。しかも、気候変動枠組み条約第七回締約国会議、いわゆるCOP7において、我が国の森林の吸収源は三・九%、こういうものも国際的に約束をしたという状況があります。したがって、地球温暖化対策をより推進していくという大きな任務を背負うておるわけですが、同時に、この国の七割強を占めている山を豊かな山にしていかなきゃならぬ。
 かつて、雨が降ると、山に行くとミミズがたくさんいましたよ。僕ら大分の方言でアケンコと言うんですけれども、赤い蟹が山の林道をざわざわと歩き回るほど豊かだった。今はもういない。雨が降っても何にもいない。だから、そういうふうな国土の七割を占める山がやせ細って衰えているという状況は決してよくない。そういう視点というものをやはりもっと僕は強調して取り組むべきじゃないかと思うんですが、そういう私の視点に対して、長官、どういうふうに考えますか。
加藤政府参考人 先ほど申し上げましたように、林業の状況が非常に厳しいということで、なかなか手入れが一〇〇%十分にいっているのかということになりますと、それがなかなか難しいという状況になってきているというのが今率直な状況でございます。
 そういう点では、例えば間伐がされていない、間伐がされていないゆえに下草が十分生えていない、そういうところでは、下の土壌の虫もなかなか十分に育っていないというようなことではないかというふうに思うところでございまして、そういう点で、森林整備をきちっとやっていくということが必要であろうというふうに思うところでございます。
 間伐の問題につきましては、昨年から緊急五カ年対策というようなことを打ち出しまして、間伐を実施していただくというようなことでお願いをしているところでございまして、今回の基本法の見直しに当たりましても、先ほど申し上げましたように、森林の多面的機能の持続的な発揮を図りたいということで、森林整備をやっていきたいというふうなことを打ち出したわけでございまして、そういった方向を踏まえながら、森林整備の適切な推進ということを図っていきたいというふうに思っているところでございます。
重野分科員 農水省の予算で、民有林、国有林含めて、山にいかほど金を持っていっているか、ここにやはり根本的なものがある。やはり国土の七割を占める山に持っていく金額にしては少な過ぎる、これは。もう本当に、こういうことじゃ山を守れぬと僕は思うんですね。その点をあえて強調しておきたいと私は思うんです。
 最後に、私も九州は大分県ですが、うちの集落、もう戸数二十九戸。山の中、周囲は全部山。それで今、昔と違った光景は、田んぼ、畑、もう電さくで全部囲んでいるんですよ。ところが、その電さくもこのごろ引き払ったというんですね。電さくの電流をもっと上げなきゃ、もうきかなくなった。そうすると危ないんですよ。もしそれに当たった場合に、触れた場合に、それはもうぴりぴりどころじゃない。それがやはり田舎の現状なんですね。とにかく、イノシシ、シカ、猿。もう猿がどんどん出てくるんですから、民家の屋根に。ということは、どういうことかといったら、山に食い物がないんです、けものたちの。
 戦後ひたすら、植樹祭には必ず天皇陛下あるいは皇太子様がおいでになりますね。やはり植樹祭というのは重要な行事なんですね。それはそれでいいんです。しかし、結果として、もう杉、ヒノキ一辺倒のいわゆる育林をやってきた。だから、結局けものたちの食い物が結果としてなくなっている。山にミミズとかそういうサワガニとか、そんなのがいなくなった。イノシシや猿やシカたちの食い物を我々は奪ってしまったんだ。だから、やはり山に彼らの食い物をまたもとへ戻してやらなきゃいかぬ。そうなってくると、やはりそういう実をつける木を植えるとか、時間はかかるけれども、そのことが目的だというぐらいに力を入れてやらないと動物との共生ができませんよ。これはやはり人間の犯罪ですね。
 その点は、ひとつぜひ具体的に施策を展開してほしいと思うんですが、どういうふうにお考えでしょうか、大臣。
武部国務大臣 先ほど来先生のお話を伺いまして、先生は九州、私は北海道のオホーツクの地で育ちました。自然の恵みに感謝する気持ち、自然の脅威を恐れる謙虚な気持ちというのを、自然の中で育ったがゆえに身についてきたということは非常に幸せなことだ、こう思います。
 先ほど御指摘ありましたように、海外における違法伐採の問題を初め、有限天然資源でありますこういった木材の持続的利用ということについても、我が国はもっともっと声を大にしていかなくちゃいけない、このように思っております。農業や森林の有する多面的機能ということに対しまして、WTOを通じて、国際社会においてもしっかりその必要性というものを認めると同時に、国内にありましても、これはやはり国民的な合意ということが非常に大事であります。
 そういう意味で、新たなる森林・林業基本法というものは、そういう理念に裏づけられておりますし、いわばCO2の吸収源の問題にいたしましても、今のままでは三・九%にいかないわけでありますので、人為性の確保ということも含めまして、また複層林のお話もございました、やはり生物多様性の問題等々、ごく最近教えられること、たくさんあると思うんです。
 そんな中で、私は、国民の間にも、都市住民の間にも、ライフスタイルの変化というものを求めているんじゃないかと思うんですね。都市住民にも、皆さん方にも、おいしい水、きれいな空気、美しい自然というものを求めている空気が非常に強いですし、そういう意味で、私は都市と農山漁村の共生、対流ということも、農林水産省の一つの大きな柱として訴えているわけでございます。
 今具体的にというお話がございましたが、私自身がしっかりリーダーシップを発揮して、林野庁長官がしっかり思う存分の政策を展開できるように、政治主導で、そういった背景をしっかり支えていくということが必要だということを、先生のお話を伺いまして痛切に感じた次第でございますので、今後ともそういう決意で努力したい、かように存じます。どうぞよろしく御鞭撻、御指導をお願いします。
重野分科員 では、終わります。ありがとうございました。
松崎主査 これにて重野安正君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして農林水産省所管及び農林漁業金融公庫についての質疑は終了いたしました。
 次回は、明九日午前九時三十分から本分科会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後七時十五分散会


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