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第3号 平成14年7月22日(月曜日)

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(注:この議事情報は、「決算行政監視委員会第三分科会議録第1号」のデータです。)
本分科会は平成十四年七月十日(水曜日)委員会において、設置することに決した。
七月十九日
 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。
      江藤 隆美君    桜田 義孝君
      中川 秀直君    村上誠一郎君
      森田  一君    手塚 仁雄君
      楢崎 欣弥君    葉山  峻君
      山名 靖英君    穀田 恵二君
七月十九日
 山名靖英君が委員長の指名で、主査に選任された。
平成十四年七月二十二日(月曜日)
    午前十時開議
 出席分科員
   主査 山名 靖英君
      江藤 隆美君    桜田 義孝君
      村上誠一郎君    森田  一君
      後藤  斎君    長妻  昭君
      楢崎 欣弥君    葉山  峻君
      山内  功君    児玉 健次君
      穀田 恵二君
   兼務 井上 和雄君 兼務 山田 敏雅君
   兼務 上田  勇君 兼務 金子 哲夫君
    …………………………………
   厚生労働大臣       坂口  力君
   厚生労働副大臣      狩野  安君
   会計検査院事務総局第二局
   長            増田 峯明君
   政府参考人
   (文部科学省大臣官房審議
   官)           清水  潔君
   政府参考人
   (文部科学省高等教育局私
   学部長)         石川  明君
   政府参考人
   (厚生労働省大臣官房総括
   審議官)         木村 政之君
   政府参考人
   (厚生労働省医政局長)  篠崎 英夫君
   政府参考人
   (厚生労働省健康局長)  下田 智久君
   政府参考人
   (厚生労働省医薬局長)  宮島  彰君
   政府参考人
   (厚生労働省職業能力開発
   局長)          酒井 英幸君
   政府参考人
   (厚生労働省雇用均等・児
   童家庭局長)       岩田喜美枝君
   政府参考人
   (厚生労働省保険局長)  大塚 義治君
   政府参考人
   (厚生労働省年金局長)  辻  哲夫君
   政府参考人
   (社会保険庁運営部長)  冨岡  悟君
   政府参考人
   (農林水産省大臣官房審議
   官)           坂野 雅敏君
   政府参考人
   (経済産業省大臣官房審議
   官)           大井  篤君
   政府参考人
   (経済産業省商務情報政策
   局消費経済部長)     青木 宏道君
   政府参考人
   (資源エネルギー庁電力・
   ガス事業部長)      迎  陽一君
   政府参考人
   (中小企業庁次長)    小脇 一朗君
   厚生労働委員会専門員   宮武 太郎君
   決算行政監視委員会専門員 川城 正彰君
    ―――――――――――――
分科員の異動
七月二十二日
 辞任         補欠選任
  手塚 仁雄君     長妻  昭君
  楢崎 欣弥君     山内  功君
  葉山  峻君     後藤  斎君
  穀田 恵二君     児玉 健次君
同日
 辞任         補欠選任
  後藤  斎君     葉山  峻君
  長妻  昭君     手塚 仁雄君
  山内  功君     楢崎 欣弥君
  児玉 健次君     穀田 恵二君
同日
 第一分科員井上和雄君、第二分科員上田勇君、第四分科員山田敏雅君及び金子哲夫君が本分科兼務となった。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 平成十二年度一般会計歳入歳出決算
 平成十二年度特別会計歳入歳出決算
 平成十二年度国税収納金整理資金受払計算書
 平成十二年度政府関係機関決算書
 平成十二年度国有財産増減及び現在額総計算書
 平成十二年度国有財産無償貸付状況総計算書
 (厚生労働省所管)


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     ――――◇―――――
山名主査 これより決算行政監視委員会第三分科会を開会いたします。
 私が本分科会の主査を務めることになりましたので、何とぞよろしくお願いいたします。
 本分科会は、厚生労働省所管、農林水産省所管、農林漁業金融公庫、経済産業省所管、中小企業金融公庫及び中小企業総合事業団についての審査を行うことになっております。
 なお、各省庁の審査に当たっては、その冒頭に決算概要説明、会計検査院の検査概要説明及び会計検査院の指摘に基づき講じた措置についての説明を聴取することといたします。
 平成十二年度決算外二件中、本日は、厚生労働省所管について審査を行います。
 これより厚生労働省所管について審査を行います。
 まず、概要説明を聴取いたします。坂口厚生労働大臣。
坂口国務大臣 おはようございます。
 平成十二年度厚生労働省所管一般会計及び特別会計の決算の概要につきまして御説明申し上げます。
 まず、一般会計につきましては、歳出予算現額十八兆七千九百五十九億円余に対して、支出済み歳出額十八兆一千九百九億円余、翌年度繰越額三千三百三十三億円余、不用額二千七百十七億円余で決算をいたしました。
 次に、特別会計の決算について申し上げます。
 第一に、厚生保険特別会計につきましては、収納済み歳入額四十兆千九百七十七億円余、支出済み歳出額三十八兆二千四百十三億円余、翌年度繰越額一億円余であり、差し引き一兆九千五百六十三億円余をこの会計の積立金として積み立てるなどとして、決算をいたしました。
 第二に、船員保険特別会計につきましては、収納済み歳入額八百四十三億円余、支出済み歳出額八百七十二億円余であり、一般会計からの超過受入額を調整し、差し引き三十一億円余をこの会計の積立金から補足することとして、決算をいたしました。
 第三に、国立病院特別会計につきましては、収納済み歳入額一兆一千四百八十四億円余、支出済み歳出額一兆八百七十四億円余、翌年度繰越額四百四十六億円余であり、差し引き百六十三億円余をこの会計の積立金として積み立てることとして、決算をいたしました。
 第四に、国民年金特別会計につきましては、収納済み歳入額二十三兆九百二十九億円余、支出済み歳出額二十一兆七千八十七億円余、翌年度繰越額百五十二億円であり、差し引き一兆三千六百九十億円余を翌年度の歳入へ繰り入れるなどとして、決算をいたしました。
 第五に、労働保険特別会計につきましては、収納済み歳入額八兆三千百八十七億円余、支出済み歳出額七兆六千六百二十一億円余、翌年度繰越額二百億円余、未経過保険料相当額三百十三億円余、支払備金相当額千九百五十九億円余であり、一般会計からの超過受入額を調整し、差し引き三千八百二十六億円余をこの会計の積立金として積み立てるなどとして、決算をいたしました。
 最後に、石炭並びに石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計の石炭勘定のうち、厚生労働省所管分の歳出決算につきましては、歳出予算現額百四十三億円余、支出済み歳出額が百三十四億円余、不用額八億円余で決算をいたしました。
 以上をもちまして、厚生労働省所管に属する平成十二年度の決算の説明を終わります。
 何とぞよろしく御審議のほどお願いを申し上げます。
山名主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院増田第二局長。
増田会計検査院当局者 それでは、平成十二年度厚生労働省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。
 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項百八件、意見を表示しまたは処置を要求した事項二件、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項三件及び意見を表示しまたは処置を要求した事項に対する処置状況一件であります。
 まず、不当事項について御説明いたします。
 検査報告番号七二号は、健康保険及び厚生年金保険の保険料の徴収に当たり、徴収額が不足していたものであります。
 同七三号は、労働保険の保険料の徴収に当たり、徴収額に過不足があったものであります。
 同七四号は、厚生年金保険の老齢厚生年金及び国民年金の老齢基礎年金の支給が適正でなかったものであります。
 同七五号は、雇用保険の失業等給付金の支給が適正でなかったものであります。
 同七六号は、雇用保険の特定求職者雇用開発助成金の支給が適正でなかったものであります。
 同七七号は、医療費に係る国の負担が不当と認められるものであります。
 同七八号は、労働者災害補償保険の療養の給付に要する診療費の支払いが適正でなかったものであります。
 同七九号は、保健衛生施設等設備整備費補助金の経理において、補助対象事業費の精算が過大となっているものであります。
 同八〇号は、精神保健対策費補助金の経理において、補助対象事業費の精算が過大となっているものであります。
 同八一号は、高齢者介護体制整備支援事業費等補助金の経理において、補助対象事業費の精算が過大となっているものであります。
 同八二号から八四号までの三件は、社会福祉施設等施設整備費補助金が過大に交付されているものであります。
 同八五号は、生活保護費補助金の経理において、補助対象事業費の精算が過大となっているものであります。
 同八六号から九六号までの十一件は、生活保護費負担金の経理が不当と認められるものであります。
 同九七号から一一七号までの二十一件は、児童保護費等負担金の経理が不当と認められるものであります。
 同一一八号は、少子化対策臨時特例交付金の対象としていた保育所設備整備事業を実施していないものであります。
 同一一九号は、国民健康保険の療養給付費補助金が過大に交付されているものであります。
 同一二〇号から一三一号までの十二件は、国民健康保険の療養給付費負担金の交付が不当と認められるものであります。
 同一三二号から一七三号までの四十二件は、国民健康保険の財政調整交付金の交付が不当と認められるものであります。
 同一七四号から一七九号までの六件は、水道施設整備費補助金の経理において、仕入れ税額控除した消費税額に係る補助金を返還していないものであります。
 次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について御説明いたします。
 その一は、休業補償給付等の受給者に係る求職者給付等の支給に関するものであります。
 療養のため労働者災害補償保険の休業補償給付等を受給していて就労できる状態にない者に対して、雇用保険の求職者給付等を支給するなどしている事態が見受けられましたので、厚生労働省に対して是正改善の処置を要求したものであります。
 その二は、政府管掌健康保険及び厚生年金保険の適用事業所の全喪処理に関するものであります。
 適用事業所が解散したり休業したりするなどして、その従業員全員が使用されなくなった場合には、全喪処理を行うことにより、その事業所を適用事業所から除外し、健康保険及び厚生年金保険の適用を受けないこととすることとなっておりますが、休業を理由として全喪処理された強制適用事業所が全喪処理後も事業を実施している不適切な事態が多数見受けられましたので、社会保険庁に対して、改善の処置を要求したものであります。
 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。
 その一は、ケアハウスの施設整備事業の実施に関するもので、施設の整備計画の策定時に施設の建設地についての検討が十分でなかったこと、入居者のニーズの把握が十分でなかったことなどにより入居率が低いままとなっていて、事業が効果的に実施されていないと認められました。これについて指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。
 その二は、国民健康保険料収納率低下給付金の交付に関するもので、交付金交付対象年度の収納率については年度途中である十二月末の収納率を適用することとしていましたが、その収納率は年度全体の収納の実態を反映したものとはなっておらず、交付額が決算時の収納率に基づいて計算した額よりも過大となっておりました。これについて指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。
 その三は、国立病院等における医師会費の国費負担に関するもので、国立病院等を代表する者のほかに、副院長や診療科医長等について医師会費を国費で支払ったり、医師個人の医療行為を保険の対象として医師会が取り扱っている医師賠償責任保険の保険料や医師会以外の団体の会費を国費で支払っている事態が多数見受けられました。これについて指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。
 以上をもって概要の説明を終わります。
山名主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。坂口厚生労働大臣。
坂口国務大臣 平成十二年度の決算検査報告において掲記されております事項につきましては、会計検査院の御指摘のとおりでありまして、まことに遺憾であります。
 指摘を受けました事項につきましては、直ちに是正措置を講じましたが、今後なお一層厳正な態度をもって事務の執行の適正を期する所存でございます。
山名主査 この際、お諮りいたします。
 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山名主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
山名主査 以上をもちまして厚生労働省所管についての説明は終わりました。
    ―――――――――――――
山名主査 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上和雄君。
井上(和)分科員 おはようございます。民主党の井上和雄でございます。
 委員の皆さんも、本日は月曜日の早朝から本当に御苦労さまでございます。きょうは、分科会ということなので、リラックスした雰囲気の中で、ぜひ大臣にも本音ベースで議論をさせていただきたいと思います。
 きょうは、先週宮路副大臣が辞任されましたけれども、そういった問題に関連して、私立の医学部に関する裏口入学の問題等について大臣にお伺いしたいと思います。
 宮路副大臣、帝京大学医学部の入試に関して口ききをしたということで辞任されました。私もテレビでの宮路副大臣の委員会での答弁を拝見いたしまして、その隣に大臣がお座りになっていまして、宮路さんはにこやかなお顔で答弁されていたんですが、大臣がもう非常に渋い顔をして座られていたのを、対照的でございましたので非常に印象に残っております。
 帝京大学に関しては、もうさまざまな、いろいろなうわさがこれまでもずっとあったわけです。宮路副大臣が口ききをしたということが即裏口入学があったということには話はつながらないと思うんですけれども、これまでの特に私立の医学部の高額な寄附金の問題とか裏口入学にいろいろなことが言われておりました。こういうことを考えると、どうも裏口入学があったとしても無理はないんじゃないかなと恐らく多くの国民の人もそう思っているんじゃないかなというふうに思っているんですね。
 医師という公的な使命を担う者が十分な素質を持っていないということがあっては、これは大変大きな問題だと思います。よく、裏口入学はやぶ医者への第一歩だなんというふうに言っている人もいるんですけれども、入学自体が金で動いている、金によって決まっている状況というのは、社会的な公正という観点から非常に問題があると思うんです。
 大臣御自身は、お医者さんでいらっしゃいますし、また、日本の医療をとにかくよくしようというふうに思われている厚生労働大臣でいらっしゃいますから、これまでの日本の私立医科大学の裏口入学の実態というものをどの程度御存じなんでしょうか。ぜひ忌憚のない御意見をお伺いしたいと思います。
坂口国務大臣 医師を養成いたします大学におきましては、将来の優秀な、そして国民のためになる医師を養成するわけでありますから、勉学はもちろんのこと、人間的にもすぐれた人をそこで養成していかなければならないというふうに思います。
 いわゆる私立大学等の裏口入学、いわゆる裏口入学と言われますような事態が現実問題として本当にどの程度存在するのかしないのかといったことを定かに私も存じません。いわゆるうわさとして、そういうことがささやかれているわけでございますが、現実問題としてそれが存在しているのかどうかというようなことにつきましては、正規の確たる事例もないわけでございまして、私も存じ上げないわけでございますが、しかし先ほど委員が御指摘いただきましたとおり、これからの医療を考えましたときにも、すぐれた能力だけではなくて、人間性にも豊かな、やはり温かい医療をつくり上げていきますためには、それにふさわしい人材がそこから選ばれなければならないことはもちろんでございます。
 仮にも、そうしたことがあってはならないというふうに思っておりますし、そうしたことがないように、やはり、これは医師の養成を担当いたしております厚生労働省はもちろんでございますけれども、いわゆる文部科学省の方とも綿密な連携をとりまして、そうしたことのないように努めていきたいと考えております。
井上(和)分科員 大臣は開業医をされていたわけじゃないですし、どちらかというと学究的な分野にいらっしゃったんだと思うんですね。そういう意味で、よく御存じじゃないという御答弁、まあそうかなとも思うんですけれども、実は私もいろいろな、周りを見ていまして、そういう裏口入学のケースを実際に知っているんですね。だから、大臣が本当に知らないとおっしゃるのは、立場上そう言わざるを得ないということだと思うんですけれども、しかし、これは医学界で常識ですよね。どうでしょう、大臣。
坂口国務大臣 受験をいたしますときに、いわゆる特別寄附金とか、そうしたことが必要だというようなうわさは、これはもうありがちなことでございまして、あるわけでございますが、そのことがいわゆる入学のための点数を左右するものというふうに軽々に考えることは私はできないというふうに思います。
 そうしたことが私立大学の中で本当に行われているのかどうかということは、これは外からは全くわからない話でございまして、しかしそういう憶測があるということにつきましては私も存じ上げているわけでございますが、しかし、ならば本当にそういうことが行われているのかどうかということについてのデータというものを私は持ち合わせておりません。
井上(和)分科員 大臣は、医科大学の担当じゃない、所管ではないんで、私は本当にお気の毒だと思うんですよ。要するに、文部科学省が担当して医科大学を所管しているわけだけれども、そこの監督がしっかりしていないで、相当ひどい学生が入っているというのはもう周知の事実です。私もいろいろ今回調べましたけれども、かなり古い話なんですが、例えばこれはもう三十年ぐらい前の話ですが、私立医科大学というのはたくさん、設立された後にもう山ほどあるんですね、そういう資料が。
 実際に、これは「北里大学医学部不正入試の実態」なんて、これは雑誌の記事なんですが、現実にもう成績が改ざんされているというようなことも出ていまして、私も、こういうことは往々にしてあるということを聞いていますので、事実だと思うんですね。
 そういった中で、本当にそういうことが行われているかどうかというのは、きちっと文部科学省は調べなきゃいけないと思うんですね。それをまた、裏づけるだけのデータというのはありますね。
 例えば、これは第九十四回医師国家試験の学校別合格状況、九十四回というのは平成十二年です。ちょっと古くなりますが。帝京大学の場合は、受験者が百三十六人いて六十六人しか合格していないんですね。四八・五%しか合格していないんです。私大平均の場合でも七三・八%ですね、合格率が。帝京大学の場合は、百三十六人受けて六十六人しか受かっていない、四八・五%。
 いろいろ言われているほかの私立大学、川崎医科大学というのがあるんですが、百十七人受けて六十七人しか受かっていない、五七・三%。さすがに合格率五〇%以下というのは帝京大学だけですね。あと、金沢医科大学というのが百三十七人受けて七十七人しか受かっていない、五六・二%ですね。半分ちょっとしか受かっていないわけですよ。当然、医師国家試験を受けるまでにいろいろな絞り込みをやっているわけですよね。それでも半分ぐらいしか受からないと。
 同じ私立大学でも、恐らくは、きちっと教育をしているところはあるんでしょう、入試なんかもきちっとやっているところ。昭和大学医学部というのは、百十六人受けて百三人が通っていますね、八八・八%ですね。
 同じ私大の医学部でもすごい差があるわけですね。こういう差はどこから出るんでしょうか。きょうは文部省の清水審議官もいらっしゃっていますが、どう思いますか、どういうことでしょうか。
清水政府参考人 お答え申し上げます。
 医科大学等のいわゆる医師国家試験の合格率ですが、例えば十四年度のデータで申し上げますと、国公私全体で九〇・四%、国立が九二・一%に対し、私立が八七・四%というふうな平均的な状況になっております。
 御指摘の帝京大学でございますが、先生御指摘のように、変動がございます。例えば平成十年度でございますと、帝京大学の合格率は八一・七%、平成十一年だと七三・〇%、平成十二年度は御指摘のように四八・五%、平成十三年が八〇・四%、平成十四年が七六・三%というふうに、全般として、その時々の状況と申しますか、ある意味で医師国家試験は、大学側にとっては六年間の教育の成果でもございましょうし、学生にとっては六年間の学習の成果という側面もございます。
 正直に申し上げて、医師国家試験の合格率についてこのことをもって、さまざまな複雑な要因が絡んでいるであろうというふうに思っておるところでございます。
 ただいまお尋ねがありましたように、昭和四十年代から五十年代にかけて、不正入試あるいは寄附金の別途経理等の問題に対して、そういう問題が生じてまいりました。昭和五十六年には、先生御指摘のように、比較的伝統のある私立大学においても、入学者選抜と寄附金の収受との間に密接な関係を疑わせるような、そういう事態が生じたわけでございまして、私ども、これに対しまして、抜本的、総合的な対策、改善策を講じなければならないというふうなことで、さまざまな寄附金の収受、あるいは入学者判定の方法、基準等について、いわば全大学に対する総合的な調査を行ったというふうなことでございます。
井上(和)分科員 大臣、今帝京大学の話が出ましたけれども、例えば私が申し上げた例で、平成十二年、百三十六人受けて六十六人しか合格していない。
 例えば、ちょっと私が調べましたら、聖マリアンナ医科大学というのが新設されたわけですね。新設されて、一九七七年に初めて卒業生を出したときに、大分古い話になりますけれども、六十六人受験して二十一人しか合格していないそうですね。これは史上最低の医師国家試験の合格率だということです。ところが、実際に入学したのは百二十四人。つまり、百二十四人入学して、六十六人しか国家試験を受験することができなかった。つまり、成績がまあまあだったということですね。そしてまた、そのうち受かったのが二十一人、三分の一だ。全体の合格率というのは一六・九%だということですね。
 大臣、医師国家試験というのはそんなに昔から難しいんでしょうか。御自身も御受験されたことだから、よくおわかりになっていると思いますけれども。
坂口国務大臣 まじめに勉強しておりましたら、それほど難しいということではないんだろうというふうに、率直にそう思います。
 その年々によりまして、非常に難しいことも事実、こんなことを聞かれてわかるかなというような問題が出るようなときもございましたりしまして、年によって非常に難しいとき、あるいはそうではない年というようなことはございますけれども、しかし、六年間まじめに勉強を重ねていれば、やはり合格はそんなに難しいということではないというふうに私は思っております。平均的に申しまして、そういうことではないかと思います。
井上(和)分科員 そうしますと、現在の場合は非常に素質の、レベルの低い人が入って、とにかく進学、うまく進級していって、今大臣がおっしゃったように、そんなに難しくないような医師国家試験を通ってしまえば、これは何回か受けていても、医師免許を取得するということになるわけですね。大臣は、どう思いますか。医師国家試験を通れば大丈夫だというふうに思われますか。
 例えば、今非常に医療事故なんかがふえている。私は、どうしてこんなに医療事故がふえているかといえば、やはり医師の養成に問題があると。その本当の、根本的な問題というのは、いわゆる昭和四十六年以降につくられた新設の医科大学、聖マリアンナ医科大学、私はさっき名前も出しましたけれども、あとは埼玉医科大学とか金沢医科大学とか今回の帝京大学、そういう大学が十三大学新設されましたよね。そういった大学がかなり不適性な医師をつくり出していたんじゃないか、そういうことがあるんじゃないかというふうに思うんですが、いかがでしょう。大臣、どういうふうに思われていますか。
坂口国務大臣 優秀な人材でありましても、大学に入りましてからいろいろのことをやりましたり、いろいろのことをやりましたりというのは、いわゆる大学の勉強以外のことに熱中するのもいたりいたしまして、私の同級生などで、本当に優秀な男でありましたけれども国家試験に合格しなかった運の悪いのも中にはおりましたから、一概にはそれは私は言えないと思います。そして、そういう人も踏ん張って、今度、その次に受かりましてから優秀な人材に、そしてその後は大学の教授にまでなりまして、すばらしい研究をしたのもおりますから、一概に、落ちたからどうだということは私は言えないというふうに思います。
 しかし、試験でございますから、そのときの運の悪さ、よさというものもございます。筆記試験だけではなくて、以前には口頭試問みたいなものもございまして、そのときに出されます問題等によりまして、それによって、でき、ふできというようなこともあったというふうに思います。
 ですから、一概には私は言えないというふうに思いますが、しかし、恒常的にいつも余り成績が学校として芳しくないというのは、やはり学校自体も考えていただかなければならないのではないかというふうに思います。平均いたしまして、その平均値で見た場合に、常にその平均値を行かない、かなり下回っているというようなところにつきましては、それは選抜方法から含めまして、やはりお考えをいただく必要があるのではないかという気がいたします。
井上(和)分科員 先ほども申し上げましたように、大臣が直接その後、医学教育を所管していないということ自体も一つちょっと腑に落ちない点も私、あるんですよね。やはり、医師を養成するまでは文部科学省の担当で、出てきた医師が問題を起こしたらそれは厚生労働省の責任ということになってくるわけですからね。
 だから、本当に私は、大臣、お気の毒だなと思うんですけれども、ちょっと文部科学省に、大臣、何かおっしゃりたいことがありますか。今、ちょうど文部科学省の担当者が来ていますけれども、もう少ししっかり裏口をなくせとか、もう少しちゃんとやれという御希望がございましたら、ぜひおっしゃっていただきたいと思います。
坂口国務大臣 現在、いわゆる研修医制度と申しまして、卒業しました後のいわゆる研修医の問題をやっておりまして、そして、あと二年ぐらいいたしますとその制度が始まるわけでございます。今までは、我々のときはインターン制度というのがございましたが、それがなくなりまして久しいわけでございますが、もう一度、やはりすべての科目に通じる医師というものをつくり上げていかなければいけないというので、研修医制度が復活をするわけでございます。それも、一年ではなくて二年やるということでございます。
 そうしたことがございますので、現在、文部科学省とさまざまな問題でお話し合いをいたしております。厚生省寄りのことで御理解をいただかなければならないこともございますし、そして、文部省の中におきますことにつきましても、私たちとして意見を申し上げるべきこともございまして、そうした会合の中で文部科学大臣にも率直な御意見を申し上げているところでございますので、これからも、新しい医師養成をしていくのにはどういうことが必要なのか、そしてまた、出てからではなくて、入学をいたしますときにどういうことが大事なのかといったことにつきましても、よく意見を申し上げていきたいと思っております。
井上(和)分科員 それでは、文部科学省にお伺いしますが、現在、裏口入学の実態というのをどの程度つかんでいますか。
清水政府参考人 裏口入学についてのお尋ねでございますけれども、入学者選抜というものは公正に行われなければならないというのは、一つの大きな原則でございます。
 恐らく、さまざまな形で、裏口入学と言われますのは、入学者選抜のその判定に当たって、いわゆる例えば寄附金、あるいは寄附金の有無、あるいはその収受等あるいは額等によって、いわばそういう意味で合否が左右されるなど、その判定が公正を欠くというふうなものであるというふうに考えておりますが、その実態については把握しておりません。
井上(和)分科員 今回、帝京大学に立入調査をするということですけれども、入試の原簿なんかをちゃんと押さえて調査するつもりはあるんですか。
清水政府参考人 帝京大学におきましては、現在、大学から、事情の聴取を重ねると同時に報告書を提出していただいたところでございます。
 大学側の報告書によりますと、選抜の実施については入試委員会規定等に基づききちんと行われた、あるいは合否の判定は、当日中に、筆記試験、面接の評価に基づいて点数の高い者から順に合格しており、また、そのような形で適正に行っていたというふうな報告があったわけでございます。しかしながら、帝京大学においては、一方、合否発表前の寄附金の受け入れがあったということでございまして、私どもは、これは極めて遺憾であるというふうに考えております。
 このことに関しまして、例えば、この寄附金の受け入れにより合否が左右されるなど、いわゆる不正入試が行われたかどうかについては確認はできておりませんが、御指摘のような点も含めながら、今後、帝京大学に対する調査の報告を求める、さらに資料の提出を求めると同時に、現地で調査も行いたいというふうに考えております。
井上(和)分科員 これは審議官、入試の原簿を見ないとわからないですよ。見せてもらわないと、要するに、ただ大学側の報告だけ聞いているのでは、本当にわからないですね。ぜひ入試の原簿を見せてもらって、それはもう今回だけじゃなくて、ずっと今までのを見せてもらった方がいいですよ。何か、ほかの大学ではもう焼いて捨てちゃっているところもあるというらしいのですけれども、見せられないから。しかし、それは、なかったら、やはり今後は入試の原簿をちゃんととっておけということをしっかりと通達すると。
 これはさっき大臣がおっしゃっていましたけれども、合格率が低いというのはやはり問題がある可能性が多いわけですから、やはりそういうほかの大学でも立入調査をしたりする必要があると思いますが、どうでしょうか。
清水政府参考人 帝京大学につきましては、基本的に、例えば合格者あるいはその成績表等についての原本については、事情聴取あるいは報告書の提出の際に見せてもらってはおります。ただ、現実の問題として、私どもには資料として提出はいただいていない、このような状況になっております。
 いずれにいたしましても、先ほど御答弁申し上げましたように、今後、帝京大学におけるさらなる資料の提出、あるいは現地の調査を通じまして、御指摘の点も含め、調査をきちんと行っていきたい、このように考えております。
井上(和)分科員 それでは話題を変えまして、今度、医療費の不正請求の問題に関して、大臣にお伺いしたいのです。
 これ、金曜日に報道されていたのですけれども、新潟県内の医療法人が、仕入れた薬の一部を医薬品ブローカーに売りさばいて、また治療に使ったように見せかけて、代金など所得約二億五千万円を隠していたということで新潟地検に刑事告発されていたということなんですね。この記事にも、事実上、医療機関によるレセプトの水増しはノーチェックだと、また、厚生労働省の説明が載っていますが、診療の金額や総量をチェックすることが基金、つまり診療報酬支払基金の目的じゃない、また、医師の良心を信じる、つまりレセプトを細かくチェックすることなくて、医師の良心を信じるというコメントが出ているんですね。
 この問題、直接、大臣、申しわけないのですけれども、質問取りの際申し上げていないのですけれども、医療費の不正請求なんですけれども、年間約五十億円ぐらいが摘発されているということなんですけれども、私は、これは氷山の一角じゃないかと思うんですね。今のこの新聞の記事にもありましたけれども、非常にノーチェックでやっているんじゃないかというふうに思うんですが、大臣はどういうふうに思われていますか。恐らく、これはちゃんとやったら、年間一兆円ぐらい医療費が節約できるんじゃないですか。
坂口国務大臣 そんなにたくさんあるかどうかは別にいたしまして、現在、いわゆる審査支払い機関というのがありまして、そこで一次検査をそれぞれやっているわけです。
 しかし、ここは、どちらかといえば、医学的にそのやり方が間違っていないかどうかといったことがやはり中心になる。審査するのは専門医が中心にしてやるものですから、この診断名に対しましてこの治療法は一体いかがか、あるいはまた、この段階でこれほど多くの検査をすることはいかがなものかといったような、医療面を中心にしまして見ていると私は思うんですね。もちろん保険請求上のルールというのがありますから、保険請求上のルールに違反していないかどうかということも当然のことながら見ておりますが。
 だから、そういうチェックを中心にしまして、国保の場合にはいわゆる国保連合会、それから健保の場合には支払い基金といったところが中心になりましてこれはやっているわけでございます。そういう面ではかなりチェックをしているというふうには私は思いますが、しかし出てまいりますものを全部チェックしておるわけじゃないわけですね。いわゆるその中でいつも問題のありますところだとか、あるいはアトランダムに抜き取りをして見ているということでありますから、全体を見ているわけではない。だから、全体が大丈夫か、その中には悪いものは一つもないかという御指摘でございますと、それは、そこまではできていないというのが実情でございます。
 そういう意味では、ある種の、これは診療機関、医療機関、それから医師の個人のモラルその他にもよるというふうに思いますが、これからいよいよこういう審査もIT化が進んでまいりますから、いろいろの条件を入れておきまして、そしてつぶさに、いわゆる平均値から非常に離れているようなところをチェックするということは可能になってまいります。ですから、今までよりも今後はより強烈に、より明確にそれらをチェックできるようになるというふうに思います。
 現在、かなりIT化が進行中でございます。近いうちにそれができるようになるというふうに思っておりますが、それまでの間は、そう全部が全部できるわけじゃございませんので、そこは、一方においては信頼をしながら、一方におきましてはこういう事例がある、そういう警告を発しながらやっていく以外にないというふうに思っています。
井上(和)分科員 大臣、今健康保険料の値上げに関して審議されているわけですけれども、恐らく国民の多くは、とにかくこういった医療費の不正請求などをまずなくしてくれ、節約してくれ、それでどうしてもだめならこれは上げてもしようがない、しかしどうもやるべきことをやっていないんじゃないかということを多くの方が思っているんですね。そういった意味で、ぜひ、性善説も大事かもしれないんですけれども、やはりきちっとチェックをして少しでも医療費を減らすということをやっていかないと、今後の健康保険制度に対する国民の信頼が薄れていくというふうに私は心配しますので、ぜひよろしくお願いいたします。
 では、時間なのでこれで終わりにします。どうもありがとうございました。
山名主査 これにて井上和雄君の質疑は終了いたしました。
 次に、児玉健次君。
児玉分科員 日本共産党の児玉健次です。
 二〇〇〇年度の決算については真剣に検討したい、こう思います。
 昨年の予算委員会の分科会のときにリンパ浮腫の問題を大臣に御質問して、一年と少々が経過しました。乳がん、子宮がんの術後のリンパ浮腫の発症率、術式の改善で幾らか低下しているようですが、それでも毎年一万人から一万五千人のリンパ浮腫患者が生まれる、このように専門家は推定しています。
 去年、私は、大臣にリンパ浮腫の患者の方の写真や、そして弾性スリーブ、ストッキングを直接手にとっていただいた。リンパ浮腫患者の皆さんの苦痛と日常生活への影響、このことについて坂口大臣はどのように認識なさっているか、まずそれを伺いたいと思います。
坂口国務大臣 昨年の分科会におきまして、児玉委員から詳しくリンパ浮腫につきましてのお話を伺いまして、写真も見せていただきましたり、医療機器も見せていただきましたりしたわけでございまして、私もそれ以後、関心を持って、その種の病気に対してどういうふうになっているのかということを見ているわけでございます。
 そうこういたしておりますうちに、私の周辺にも一、二、やはりリンパ浮腫の人がおりまして、その方々の話もずっと聞いているわけでございますが、日常生活においてやはり非常に苦労が伴うと申しますか、肉体的なことの苦痛も伴うということを聞いているわけでございます。
 何かいい方法がないんだろうか、手術の仕方等によって回避はできないのであろうか、かなり専門の先生方の御意見も伺っているところでございますが、リンパというそういう問題の、いわゆるひとつの血管の中を流れるという形のものでないだけに、やはりその点が手術等におきましても大変難しいというお話を伺って、それに対する治療方法等につきましても、やはり関係の先生方にできる限り、その皆さん方に苦痛を取り除くような方法があれば、ひとつ研究をしていただきたいということのお願いを実はしているところでございます。
 引き続きまして、その皆さん方の御苦痛が少しでも和らぎますように、あるいはまたそうした患者さんが少しでも少なくなりますようにやはり努力をしなければならないと考えている次第でございます。
児玉分科員 昨年、今のお話にあった、術前に、リンパ浮腫が起きる可能性についてのインフォームド・コンセントといいますか、そしてどんな注意が必要か、これを十分に日本の医療機関がやる必要があるということについて強調しましたら、当時の健康局長が、術前指導の実情を把握いたしまして、必要な対策を考えてみたいと思っております、こうお答えになった。今術前の説明、指導はどこまで進んでいるでしょうか。下田参考人からお答えいただきたいと思います。
下田政府参考人 平成十三年度に実施をいたしましたがん克服新十カ年戦略、その中におきまして、がん患者のQOLに関する研究班というものがございますけれども、その中で、乳がん術後のリンパ浮腫に関する調査というものを行っておりまして、がん治療後の四肢のリンパ浮腫の実態調査ということを行っております。
 調査を依頼しましたのは全国七十五施設の医療機関でございましたけれども、そのうち六十施設から回答がございまして、リンパ浮腫に関する術前の説明、こういったものを聞いておりますけれども、その回答といたしまして、必ず説明をしているというのが三十九施設、全回答施設数の六五%に該当いたします。時にしているというのが十八施設となっておりまして、これは三〇%に当たっております。全然していないという施設が三施設でございまして、五%という状況でございました。
児玉分科員 去年の質問の後、こういう調査をしていただいた、そのことを私は大切なことだった、そう思っております。
 そこで、私、今の術前の指導につきまして、日本で大変苦労なさっているこの分野の専門のお医者さんに伺ったんですが、もし術前の指導をすることなしにリンパ浮腫が発症するとすれば、アメリカで医事裁判が起きた場合に、間違いなく医療機関の側が敗訴になる、それがもう常識だというんですね。ここのところを私はさらに進めていただきたいと思います。
 そこで、先ほど大臣のお話にあった、この後、なるべくリンパ浮腫が生まれないような術式の研究、残念ながら現に大変な苦労をなさっている方々に対する適切な治療、どうやって支えるか、この問題です。これは、もちろん日本だけの問題じゃなくて、国際的な問題です。
 何回かそのことについて議論をして、以前私が指摘をしました一九九五年の国際リンパ学会執行委員会が採択した統一見解、これですね、それを厚生省としてもこういう概要を、日本語に訳していただいて、それも拝見をしました。
 その中で、リンパ浮腫患者に対して国際リンパ学会が現在の段階で最善と判断する医学的アプローチを示すものがこの文書だ、そう言っています。そして、この文書について批判的な検討が進めばいいし、そして引き続き改訂、リバイスされていくことを求める、こういうふうにこのリンパ学会の統一見解の中では言っています。
 そして、その治療の冒頭のところに何が来ているかというと、複合的理学療法、ちょっと訳がどうなのかなと思うので、コンビネーション・オブ・フィジカル・セラピーズ、そういうふうになっていて、バンドによる圧迫療法、弾性ストッキング、弾性スリーブ等が列挙されていて、「医師が責任をもつことが望ましい。」はっきりそのように述べた上で、結論のところはこうなっています。「リンパ浮腫という疾患は無視してはならない疾患である。 現在リンパ浮腫に対しては、正確な診断と効果的な治療法があり、リンパ学は、医師に対し専門的教育がなされている専門分野として認識されている。」こう言っていますね。
 厚生労働省は、この国際リンパ学会の統一見解を国際的な知見として真剣に受けとめるべきだと考えますが、下田参考人のお考えを聞きたいと思います。
下田政府参考人 ただいま委員御紹介の一九九五年に発表されました「リンフォロジー」に掲載をされました国際リンパ学会の統一見解、これは、現段階におきます最先端の知見あるいは考え方を示したものと考えております。
 その後も新たな知見が加わればこれはどんどん修正されるべきということまで加えておられるわけでありまして、厚生労働省としましては、このことを広く周知徹底を図るという観点で、あらゆる機会を通じまして、こういうものにつきましての御紹介をさせていただいておるところでございます。
児玉分科員 国際的にはそうですが、やはり多くの患者の皆さん方が粘り強く世論にも訴えていく、そして医師、医療関係者の献身的な努力も続けられる。
 私は、ことし、うれしく思うのは、去年と違って、日本国内の医学界でもこのことについて重要な前進的変化が生まれている。リンパ浮腫治療研究会が設立されて、昨年六月、浜松市で開かれた第二十五回日本リンパ学会総会、その場所で、リンパ浮腫治療の現況をテーマにした公開サテライトシンポジウムが開催されました。そして、その研究会が、昨年十一月、大阪で関西地区講演会を開催された。
 厚生労働省はこのような国内の医学界の動きを承知なさっていると思いますけれども、これらのシンポジウムや講演会でどんなテーマの発表がどんな医療機関の方からなされたか、ほんの一端でいいですから、テーマとその医療機関、氏名だけ御紹介いただきたい。下田さん、お願いします。
下田政府参考人 昨年六月、浜松にて開催をされました第一回リンパ浮腫治療研究会公開サテライトシンポジウムにおきましては、非常に多くの演題が出されまして、大変御熱心な議論がなされたというふうに伺っております。
 その中で、代表的なものといたしましては、「リンパ浮腫に対する合併圧迫療法 十年の経験」という演題で、国立金沢病院名誉院長の上山先生ほかが、また「リンパ浮腫治療 世界の現況」という演題で、東京大学の宮田先生ほかが御講演されておられます。
 また、同年十一月に開催をされましたリンパ浮腫治療研究会関西地区講演会というのがございましたが、その中では、例えば「上肢リンパ浮腫治療と管理」という演題で、リムズ徳島クリニック院長の小川先生ほかが御講演されておられます。
児玉分科員 私は大臣と違って医学は全く素人ですが、そういったときに、御報告になったレポートを取り寄せまして、拝見して、先ほどの国際リンパ学会における最新の知見が日本で確実に広がってきているということを確認できたように感じるんです。
 そこで、先ほど厚生省が紹介してくださった二〇〇一年度厚生科学研究事業の一環として行われた乳がん術後のリンパ浮腫に関する調査、ここでは、術前指導がどうだったか、どのくらい行われているかというだけでなくて、高度リンパ浮腫の年間症例数が一例から五例に及ぶ施設、六〇施設中五十一施設、八五%がそれだけのリンパ浮腫の患者一ないし五例を扱った、こういうふうにお答えになっているわけですが、そこで実施されている治療について拝見した。そうしたら、生活指導、五十施設、八三%。理学療法、さっきの複合的な療法ですね、五十五施設ですから、九二%の医療施設でそれが実施されている。その理学療法の内容について、これも複式回答が可ですが、リンパマッサージ、そして器械マッサージ、弾性包帯、これらが現に行われているようですね。
 そのことを見ていけば、複合的な保存療法というか理学療法、これが、現在外科的な、そして薬を使っての医療、いろいろありますが、全体を通じて最もベーシックな役割を果たしているのではないか、こう私は思うんですが、この点、厚生労働省、いかがでしょうか。引き続き、参考人、お願いします。
下田政府参考人 ただいまお尋ねの治療の件でございますけれども、先ほどの国際リンパ学会等々の御意見も、従来からやっております生活指導、理学療法というのが現段階では主であろうというふうに言われております。
 そういった観点から、今御指摘のマッサージあるいは弾性包帯、スリーブ等々を用いました理学療法を効果的に行うことが現段階では一番有効ではないか、このように考えておるところでございます。
児玉分科員 まさしく、今おっしゃったことが国際的には日本より先行して医学的な知見になってきていたけれども、日本でもそのようになりつつある。
 そういう中で、ヨーロッパ各国においては、この理学療法、保存療法と言ったりもしますが、そういったものが各国の健康保険でどのように扱われているか、そこがやはり今、日本にとっても重要な問題だと思います。
 大臣はよくご存じのように、アメリカには日本のような公的保険制度がありませんから、アメリカと比較することは余り私は好まないけれども、しかし、アメリカでは、すべての州にリンフェデマセラピー、これが存在していて、そしてそこで、先ほどから議論している弾性ストッキング、弾性スリーブ、リンパマッサージ、これらが適切に実施されているんですね。
 公的保険が日本と同じように行われているヨーロッパではどうだろうか。これは患者さんのお集まりであるリンパの会の会員の方の中で、ドイツまで行ってしばらく入院して治療なさった方がいらっしゃるわけですが、その方が現地で調べていただいたものがあります。
 その一部を紹介したいんですが、大臣、オランダではどうかというと、医師が処方したリンパドレナージ、バンデージ、そしてポンプによる圧迫療法は、健康保険が適用されています。それから、フランス、スイスでは、リンパ浮腫のすべての治療に対して健康保険が適用されている。イギリスではどうだろうか。イギリスでは、弾性スリーブ、弾性ストッキングによるバンデージ、圧迫靴下、大体これは四カ月ぐらいしかもたないとよく言われるんですが、六カ月で二組、健康保険によって患者さんに供給されているんですね。
 こういった進んだ国々における現在の状況を厚生労働省はどのようにつかんでいらっしゃるのか、ひとつ教えていただきたいと思います。
大塚政府参考人 諸外国におけるリンパ浮腫に対する処置の状況でございますが、私どもも少し調べをしてみましたけれども、現時点におきまして、必ずしも正確な状況をつかむ段階には至っておりません。今後機会をとらまえまして、もう少し調査をしてみたいと考えております。
児玉分科員 大臣、ぜひその面の努力を、今大塚局長のお話のように進めていただきたいんですが、ヨーロッパではもう健康保険が大体適用されている、この状況について、大臣としてはどんな感想をお持ちでしょうか。
坂口国務大臣 諸外国と比較をいたしましたときに、諸外国では適用されているものが日本では適用されなかったり、あるいはまた逆のものがあったり、必ずしも、諸外国、ヨーロッパ先進国と日本との間で一致いたしておりません。それはそれなりに、それぞれの地域によって差もあるんだろうというふうに思いますが、しかし、必要なものはやはり必要としていかなければならないわけであります。
 私も、このリンパ浮腫の場合にも、それに必要な器材というものが、これは日本の中でも、いわゆる保険適用のための治療方法としてそうした器材が申請をされているのかどうかということもあると思います。それで、それがされれば、それは外国の例なども、最近は日本で全部治験をやらなくても、検査をやらなくても、諸外国のそういう例があればそれらも十分に参考にさせていただくようにいたしておりますし、プラスして日本でやらなければならないものがあればやるといったようなことで、薬にいたしましても医療機器にいたしましても、それらを認めていく方向に最近変更いたしておりますから、そんなに時間かからずに可能になるのではないかというふうに私は思っております。
 そうしたこともやはり必要ではないかという気がいたします。そうした暁においてどうするかということの判断だというふうに思います。
児玉分科員 そうした暁を早くさせたいんですね。
 リンパ浮腫の患者さんたちの筆舌に尽くしがたい苦痛、苦痛だけではありませんね、会の皆さんたちが会員の方々のアンケートをとっていらっしゃるんだけれども、弾性ストッキング、スリーブ、マッサージ等でどのくらいの経済的負担が今余儀なくされているか。
 代表的な例を言いますと、五十三歳、子宮がん手術、浮腫発生して四年、年四万円の購入費が今かかっている。六十五歳の方、乳がん手術、術後十年、腕、年六万円、こう書いていらっしゃる、その方は。「スリーブを着けているとあついけれど、手が適当にしめつけられ気持よく、軽く感じる。」と。そして、この状況が少なくとも悪くはならないし、改善されていく、しかし、年六万円の負担がある。四十三歳、卵巣がん手術の方、術後一年発生、両足に着用しているために、年十万円を必要としていると。
 そこで、私は、今大臣がおっしゃったことなんですが、確かに、一つの乗り越えるべき重要な関門というのは、この弾性スリーブや弾性ストッキングが日本の薬事法の適用対象になる必要があるだろうし、もっと端的に言えば、特定医療材料として認められることが非常に急がれるんじゃないか、こう考えるんですね。
 弾性ストッキング、スリーブが薬事法の指定を受けるための手順はどんなものか、医薬局長、端的にちょっと示していただきたい。
宮島政府参考人 御指摘の弾性ストッキング及び弾性スリーブが、リンパ浮腫の治療に用いることを目的とする器具器械であるとしますと、当然、薬事法上の医療用具に該当し、製造または輸入販売を行う場合には厚生労働省の承認を取得する必要があるということでございます。
 承認を取得するためには、製造または輸入販売業者が、厚生労働省に当該製品の性能や規格等に関する資料を添付して申請するという必要があります。
 この申請資料につきましては、先ほど大臣からも御答弁申し上げましたが、海外で実施されたデータであっても使用することができます。ただ、その際、そのデータの信頼性を確保するため、適正に運営管理された試験施設で実施されたものであることなどが我が国の基準に合致するということが求められるということになっております。
児玉分科員 そうすると、先ほどの大臣の御答弁ともあわせて考えて、日本で全くゼロから出発しなくていいわけですね。ヨーロッパで既に実際に医学上の有効性が証明されているわけですから、そのデータを活用することができる。そして、この保存療法、理学療法が日本人に対して有効であるという追加的な何かが、データがあればいい、こういうふうに理解していいですか、どうですか。
宮島政府参考人 基本的には、海外で実施されたデータであっても使用することは可能であります。ただ、個々の製品について具体的に申請がありまして、その製品について詳細に審査を行うわけでありますけれども、その際に、具体的な、どういうデータが求められるかということを精査していきますので、海外で使用されるデータに加えて、日本で付加的にデータを求めるということもございますけれども、基本的には、海外で使用されるデータであっても、信頼性のあるものは使用することができるということであります。
児玉分科員 その点は理解できました。
 そうなってくると、この弾性スリーブやストッキングが薬事法の対象になっていく、そして特定保険材料として指定をされる、そこに向けて道が開けていく。そうなると、これはやはり厚生労働省の御判断だ。そこに向けて国内の医学界がどんな努力をさらに広げていくか。患者の皆さんたちの粘り強い御苦労とあわせて道が開けてくるように考えるんです。
 そこで、最後に、私は大塚局長にもお聞きをしておきたいんですが、先ほどの国際リンパ学会の統一見解の中で、はっきりこう書いています。診断困難な症例に対して、専門医、専門医療機関を紹介することが考慮されるべきである、一つそのように言って、その上で、理学療法がよい結果を得るために、医師が責任を持つことが望ましい、こういうふうに提起をしています。
 この問題をちょうど二年前、二〇〇〇年の三月十四日の厚生委員会で議論をしたときに、当時丹羽大臣でした、いろいろやりとりの後、最後に丹羽さんがおっしゃったのは、委員から御指摘のあった保存療法につきまして、普及性、有効性、効率性であるとか、こういった観点から内部で十分に検討させていただきたい、こう言われました。
 二年経過した。ぜひこの面での前進的な検討を求めたいんですが、大塚参考人、いかがでしょうか。
大塚政府参考人 ただいま御紹介のありました当時の丹羽厚生大臣の御答弁、医療保険における適用の基本原則をそのまま的確にあらわしていると思います。それから、先ほど来お話のございました、臨床の現場あるいは学会でさまざまな取り組みが行われていることも承知をいたしております。
 医療保険でございますので、医学的なバックグラウンドに立って、それの適用の場合には、今もお話がございました普及性でありますとか、有効性はもちろんでございますけれども、他の代替性でございますか、これは効率性という表現で御指摘がございましたが、こういった面から検討をすることになります。
 私どもといたしましては、医療の現場でどのような位置づけがされ、どのような方向、価値を認められているか、ここにやはり基本的には、最終的には戻っていくんだろうと思いますので、医療の現場における普及の状況、あるいは今後さらなる医学面からの検討を注視いたしたいと考えております。
児玉分科員 その点ですが、私、ずばり言いたいんです。
 厚生労働省御自身の御努力でなさったがん克服新十カ年戦略事業、先ほど御紹介にあった乳がんに関する部分もそうですが、主任研究者が海老原国立がんセンターの東病院長さん、この方が、今大塚保険局長のお話にあった普及性そして有効性、安全性、効率性、何か五つぐらいあるけれども、その中のどれもかなり重なり合ったカテゴリーだと思うんですが、回答のあった施設の中で、理学療法をしている施設は九二%になっていますよ。こういうのを普及性の要素を満たしていると見ることが可能じゃないだろうか。そして、理学療法の内容について言っても、リンパマッサージ、器械マッサージ、弾性包帯、弾性スリーブ装着、これらについても現に回答のあった医療施設ではその多くが使っているということも、厚生労働省御自身の調査によって今明らかになりつつある。
 私は、大臣に強くお願いをしたいんですが、リンパ浮腫に関して一生懸命に治療なさっている医師や医療機関、そして症状に対して患者の指導管理等をなさっている医師、医療機関、こういうところに対して診療報酬における適切な評価が検討されてしかるべきじゃないか、この点をお伺いして終わりたいと思います。
坂口国務大臣 診療報酬のあり方につきましては、この抜本的な方針をこれから年度末にかけましてまとめたいというふうに思っておりますが、その中で、医師が時間をかけて患者さんに説明をする、やはりそのことに対する評価というのは私は必要だと思っております。
 現在の診療報酬体系の中で何を基準にしてこの診療報酬を決めていくか、それには幾つかの基準というものが要るんだろうというふうに思っております。その基準は、一つはコスト、一つは重症度、そしてもう一つは時間的な尺度、これはやはり大事だろう。ですから、医師と患者の間の信頼を高めますためにも、よく状況について説明をする。医師が説明をするというのはそれだけの時間を一人にかけることであり、そうすると一日に診る患者さんの数は制限されるということになってくるわけでありますから、そのことに対する私は評価というのは当然すべきだというふうに思っています。
 したがいまして、リンパ浮腫という特別な、これに対して特別につけるということではなくて、そうした全般的な大きな流れの中で考えていくということが私は大事ではないか。したがって、その中に当然のことながらリンパ浮腫の問題も入ってくるというふうに私は思っている次第でございます。
児玉分科員 時間が参りましたから、全国の本当に苦労なさっている患者の皆さんの強い願望に早くこたえていただきたいということを強く求めて、質問を終わります。
山名主査 これにて児玉健次君の質疑は終了いたしました。
 次に、金子哲夫君。
金子(哲)分科員 社会民主党・市民連合の金子でございます。きょうは、パート労働者の問題について幾つかお尋ねをしたいと思います。
 その前に、質問事項を出しておりませんけれども、また五十七回目の八月六日を迎えます。大臣にはまた広島、長崎に出席、記念式典に出席をしていただくということ、また、小泉総理も昨年に引き続いて御出席というふうに報道ではお聞きをしております。また一方で、非常に残念なことですけれども、従来、総理また厚生労働大臣、厚生大臣が広島、長崎にお見えになった際に、被爆者の代表から聞く会ということで開催をしていただいて、直接被爆者の代表から御意見を伺うという場があったわけですけれども、ことしは小泉総理が、広島、長崎、御出席の予定になっておりますが、この聞く会に出席はできない、しないというようなことがマスコミ報道されております。
 直接総理にお伺いをしなければなりませんけれども、所管の厚生労働省ということもありまして、大変な日程の中で広島、長崎を続けてお訪ねをいただく、記念式典に出席をしていただくということについては高く敬意を表したいと思いますけれども、しかし、これまで続いてきたこうした被爆者代表から聞く会に総理が出席されないということ、いささか広島の地元の被爆者の皆さんからもなぜという疑問の声が出ておりまして、ぜひその点改めて、もう少し時間がございますので、厚生労働大臣の方からも小泉総理に、被爆者代表の意見を聞く会に出席をぜひしていただきたいというようなことを御要望いただきたいというふうに思うんですけれども、その点、まず最初にちょっとお伺いしたいと思います。
坂口国務大臣 私も、小泉総理から直接そういうお話を聞いたわけではございません。何か新聞等の中でそういうニュースが流れているものですから、私もそれを拝見しているだけでございまして、直接聞いたわけではございません。
 そういうお申し出のありますことも、そういうお話がありますときにはお伝えをしたいというふうに思っております。
金子(哲)分科員 ぜひともよろしくお願いをしたいと思います。
 それでは、早速本題に入りたいと思いますけれども、今厚生労働省の中でも、パートタイム労働者の問題について研究会も持たれて、そして最終報告も出たというふうに伺っております。全般的にパートの労働者がふえ、この問題が重要な検討課題になっているということは、私もそういうこと、国会の中にも議員懇談会ができまして、私もそのメンバーの一人になっておりますけれども、きょうは、そのパート労働者の中でも、大学の非常勤講師の問題について、特に絞りましてお伺いをさせていただきたいと思います。
 ちょっと大学の非常勤講師の実態について少し最初にお話をさせていただきたいと思いますけれども、非常勤講師というのは大体一年の契約ということになっているということを聞いておりますし、授業のみを何こまか担当するパートの大学の教員というふうに考えていいというふうに言われておりますが、今何こまという話をしましたけれども、一こまは、週一回行われる授業で大体九十分間の担当をするということになっているようであります。
 大学非常勤講師といってもさまざまな形態がありまして、第一には、大学の専任教員が自分の大学以外で非常勤講師をするような場合、それから弁護士さんとか公認会計士、医者、マスコミの関係者などが非常勤講師をする場合、それから専任の教員であった人が退職後にかつての本務校で非常勤講師をする場合、そしてもう一つ、きょうこれからお話をしたいのは、実際には本務校というかきちっとした学校を持たずに、主として生活の糧を非常勤講師としての収入から得ているような場合。つまり、この四番、今最後に言いました、本務校はなくて主として講師のみで生活の糧としていらっしゃる方、こういう人たちを専業非常勤講師、こういうことで呼んでいるというふうに言われております。
 実情はどうかといいますと、きょうは文部科学省の方もお見えになっておりますけれども、九八年の調査によりますと、大学の非常勤講師の総数は十三万三千八百六十九人、全教員に対して四七・八%という比率になる。そのうち、私が今言いました大学の専業非常勤講師の総数は四万五千六十七人、これは文部科学省の調査によっての数字と聞いておりますけれども、こういうことになっております。
 ただ、非常勤講師といいましても、先ほど言いましたように、一つの学校に特定をして勤めているということでありませんから、複数の大学をかけ持ちしているということが言われますから、これは実数を、もし把握されていればまた後ほどお教えいただきたいと思いますが、実際には把握できていなくて、ほぼ予想的に言えば、そういう非常勤講師をやられている人たちの中で言われているのは、実数二万人前後の人が専業非常勤講師として働いていらっしゃるのではないかというふうに言われております。
 しかも、規模の大きい私立大学では、授業の二四%ないし三四%が非常勤講師によって担当されていると。ある首都圏の私立大学では、非常勤講師の数が専任教員の数を大きく上回って、授業の五〇%以上をこのような非常勤講師が担当している大学も最近は珍しくなくなっているという状況にあるというふうに言われております。
 ところが、こういう大学教育の中で、非常勤講師と今申し上げましたように、非常に重要な役割を果たしておりますけれども、そのいわば労働条件といいますか、そのようなものはどうかというと、非常に劣悪な待遇の中で働かされているという状況があると思います。
 一こま当たり、先ほど言いました、週一回やりまして、月に大体四週とすれば、四回出まして月額で大体どれぐらいかというと二万五千円、まあ九十分ということを考えれば高いか安いか、いろいろあると思いますけれども、年額にして三十万円前後だと。ですから、専任教師は週に五こまぐらいやられているようですから、それだけもし働いたとしても年に百五十万円前後という条件になっているということです。大体、専任教員の年収は八百万から一千三百万円ということですから、非常勤講師の待遇は専任教員の七分の一の待遇の実態にあるということでありますし、それから、重要なことは、雇用保険等にかかわる問題について、この非常勤講師というのは全く今その待遇が行われていないということであります。
 もちろん、大学の講師の場合には、ほとんどの場合、専任教師用の研究費、図書費、出張費等々もありますけれども、非常勤講師の場合には、その専任教員の大体十分の一ぐらいという、極めて差別的な待遇で働いているということであります。
 特に、先ほど申し上げましたように、大学の専業非常勤の講師が、本来はパート労働者でも保障されている共済組合とかそれから社会保険への加入がほとんど認められていないというか、実態上、そういう実態になっていないということになっております。
 ですから、そういうこと、場合によれば、これは大学ではありませんが、中学校、高校の非常勤講師の場合はもっとたくさんのこま数を持って担当をしているというようなこともありますし、そういうことの状況の中で、先ほど言いましたように、パートの労働者の問題として今研究会も行われておりますが、これからこの専業の非常勤講師の、特に年金問題などについて具体的に少しお伺いをしたいというふうに思います。
 まず、わかればお教えをいただきたいと思いますけれども、専業の非常勤講師が、これは私学共済は厚生労働省の直接の担当ではなくて文部科学省の担当ということになりますけれども、それからまたは、例えば厚生年金などの社会保険、こういったものに加入を認めている大学、つまりは、事業主が負担をしなきゃいけないという問題もありますから、そういった講師の数とかをどれぐらいというふうに、調査とかそういうことがもしおわかりであれば、厚生労働省でも結構ですし文部科学省でも結構ですけれども、お答えをいただければと思います。
石川政府参考人 ただいま専業非常勤講師等の私学共済への加入のお尋ねがございました。
 私学共済への非常勤講師の加入につきましては、労働日数でありますとか労働時間が常勤教職員のおおむね四分の三以上というような要件がございまして、ただ、これを加入させるに当たりましては、各大学から申告といいますか申請に応じて報告をとっておるものでございまして、その内容について、非常勤であるか常勤であるかというようなことを区別しないで該当する者の報告を受けておるというようなことでございまして、ちょっと数字についてはその両者を区別するというふうなことはできておらないところでございます。
金子(哲)分科員 厚生労働省の方で、例えば厚生年金などの関係で、こういうことについてもしおわかりでしょうか。わからなければ結構ですけれども。
冨岡政府参考人 社会保険の適用状況について御説明申し上げますと、平成十三年十月一日現在で、全体では適用事業所数が全国で約百六十七万事業所、被保険者数が約三千二百三十万人おりますが、このうち教育に関しましては、教育全体で適用事業所数が約一万事業所、被保険者数が約二十三万人となっておりますが、先生御指摘に係ります大学の専業非常勤講師に特定した社会保険の適用状況につきましては把握しておりません。
金子(哲)分科員 先ほど文部科学省からも話がありましたが、ほとんど入っていないという状況だろうと思います。
 今お話がありましたように、四分の三というお話がありましたけれども、もう御承知のとおり、今、最初私が申し上げましたとおり、学校、特に大学の場合、拘束される時間というのは、まあこれは大学の先生の労働時間というのは一体どういうふうに計算されるのかよくわかりませんけれども、いずれにしても、自分の待機時間も含めまして、研究時間も含めまして労働時間になる。ところが、今お話ししましたように、非常勤講師の場合にはその授業の担当する時間だけが契約時間ということになりますと、もう到底、これは四分の三というようなことには該当しないのは明らかなわけですね。
 そうしますと、今文部科学省さんおっしゃいましたように、四分の三というものでやっておりますということになると、実態上はほとんどやっていない。ただ、ある程度良心的な学校、私どもが把握しているところでありますと、例えば大阪電気通信大学などでは、週四こま以上担当している人たちに対しては私学共済に入れるように、そういうことをやっている大学もあるように聞いておりますからすべての大学がそうだということは申し上げませんけれども、ほとんどの大学がそうだということになると思います。
 そうしますと、その上に、実態上は、先ほど言いましたように、非常に低い額で働いていらっしゃるということもあって、いわば複数の学校に非常勤講師として働いていらっしゃるという実態が、先ほど言いましたように、四万数千人の非常勤講師で実数は二万人だということは、複数にダブっていろいろな学校にいらっしゃるから、そういう実態になるわけですよね。
 厚生労働省にちょっとお伺いしたいんですけれども、例えばパートの労働者の場合に、複数の雇用主の場合でも、この社会保険適用のことが、一応は法律上は適用が可能ということになっておりますけれども、こういう場合には、今申し上げましたように、大学の専業非常勤講師のような場合には、複数の雇用主のもとで働いている細切れパートの場合、社会保険には加入は可能なんでしょうか。
辻政府参考人 お尋ねの厚生年金の適用でございますが、厚生年金は、いわば被用者、勤め人という形で制度が動いているわけですが、その場合に、お勤めの事業所、これは適用事業所と私ども呼んでおりますけれども、適用事業所に使用される方について適用するということでございまして、あくまでもその適用事業所とのいわば雇用関係が、再三出てまいりましたように、同種の業務に従事する通常の就労者の所定労働時間あるいは所定労働日数の四分の三以上をおおむね占めなくてはいけないということでございますので、それぞれの適用事業所で四分の三をクリアしなければ、四分の三クリアしていない方が二つを足して四分の三であるとしても、二つの適用事業所で四分の三を超えているとしても、これは適用されません。
 その考え方でございますけれども、細分化してまいりますと、最後は、一人の方がいろいろなところで働いて、そこで賃金をもらえる、俗っぽく一人親方というような言葉がございますけれども、こういう場合は今国民年金が適用されていますことで、個人がいろいろなところで賃金をもらえる、国民年金を適用されている状況と、それから、事業主に対してどのように雇用されているかという雇用の関係を今四分の三ということで見ているわけですけれども、これとの考え方の違いでございまして、私どもは、その四分の三ということで現在適用しておりますので、御指摘のような場合には残念ながら適用されないわけでございます。
金子(哲)分科員 今のお話で非常に矛盾があると思うんですよね。
 複数の事業所に働ける。四分の三だ。四分の三以上なければだめだ。複数で四分の三以上働くということになると、一以上の仕事をしなきゃその人は適用されなくなる。一人の通常の人が働く時間よりも大幅に長く複数で働かなければ実際上できなくなるという、ちょっと矛盾があるわけですよね。
 しかも、今、複数の事業所に働いていても、適用される人がいるわけでしょう。どういう人が適用されているんですか。
辻政府参考人 その場合は、あくまでもそれぞれの適用事業所で四分の三以上クリアされる方でございますから、したがって、非常に多くの時間を就労に当たられて、それぞれの事業所で四分の三をそれぞれクリアしている方だけが複数で適用されております。
金子(哲)分科員 その合算規定の適用者の中に、例えば企業の役員などが入っていませんか。
    〔主査退席、桜田主査代理着席〕
冨岡政府参考人 補足してお答えいたします。
 会社の役員といった方につきましては、そういった経営に判断されるという立場なものですから、時間的な要件というものはございません。
 そういうことで、会社の役員といった方で二以上の事業所で適用されるといったケースもございます。
金子(哲)分科員 ちょっとよくわからないんですけれども、つまり、二以上の事業所で働いていても、役員だったら経営の側にいるからということで厚生年金適用できる。ところが、一生懸命働いている、相手側の事情で、特殊な職場なんですよね、例えば今私がお話ししたように、大学の非常勤講師という特殊な職場である場合、そういうふうなことだけで画一的に適用してまいりますと、これはいつまでたっても適用できないんじゃないか、もう今の社会保険行政の中では救済をされていかないんではないか。
 ですから、私は今これで、今までがどうだということではないんですけれども、そこらが、複数の事業所に働いている人たちに対して、一方で法律上はいろいろなことが想定されたにしても、救済するということを決めていながら、実際、実態上はほとんどそれが、そういう働いている人たちが、しかも雇用関係はしっかりと持っている、いわば雇用者、いわば非常勤講師としての働きをしている人たちに対して、実際には、複数の事業主に雇用されていながら、これが適用されないような矛盾点はないでしょうかということをちょっとお伺いしたいんです。
辻政府参考人 ただいまの役員の場合は、役員の勤務形態そのものがそもそも、一時間、一時間といったような労働で企業に貢献するのではなくて、その執行責任者としての貢献の仕方によって企業との雇用関係が認められ、したがって、そのような形でいわば雇用関係を認めるためには、二つ以上重複する場合がある。
 逆に、時間に対して、あるいは日に対して労働をし、賃金をもらうという関係の場合は、その二事業所でそれぞれ四分の三以上、それぞれの事業所における通常の勤務者の四分の三以上勤めるというのは大変なハードワークをされていると思いますが、その方はそのような形で雇用関係を持ちますので、四分の三以上を満たす、こういった考え方で、今複数の適用事業所で適用される場合があるわけでございますが、これをどの程度、事業所との関係ではなくて、複数の事業所に割ったものを足していくかということは、これは、逆に言えば、一人の方がいろいろなところから賃金をもらえる。
 これは今の形では、何度も説明して恐縮ですけれども、一人親方というようなことをよく言われますけれども、いろいろな現場へ行って、それぞれの現場で賃金をもらって、日々あちこちから賃金をもらえる方というのは、収入を得られる方というのは、国民年金に適用されておられるわけでございまして、そこのところの、どうしてもその考え方の違いというものは出てくるということで、ここのところは、一つの制度のいわば形から割り切りをせざるを得ないというのが現状でございます。
金子(哲)分科員 厚生年金法の第二十四条の二項にも、複数事業所に勤務する者の月額報酬の給与の合算により算出することが規定をされておりますし、それから、同施行令の第四条の場合にも、そういう場合における各事業主の保険料負担の案分による算出方法も規定をされておりますし、さらに、健康保険法の第三条九項にも同様の規定があるわけですね。
 つまりは、それはあるということは、例えば、私はあえて企業の役員のお話をしましたけれども、そのほかの対象である、例えば特殊技能を持っている人もそういうことに入りますということを、社会保険庁のパンフレットの中には合算規定対象者として書いているわけですね。
 ですから、私は、そういうことに対して、もともと法律の中に、複数の事業所に働いている人を対象として考えていた考え方があった、しかし、五十五年に出された厚生省の通知、内簡というようなものの中に、いや、実際は運用はこうなんだというような規定をして、それで実際上狭められている、複数事業所で働いている人たちの適用範囲が。
 今回のようなケースの場合は、私はこれからの検討をぜひ、後でお尋ねしたいと思いますけれども、もともと精神としては、そういう複数の事業所に働いていても、そういう人たちに対しても、できるだけそういう社会保険的なものを適用していくようなシステムをつくろうということで出発したと思うんですよ。だから、今言われるように、いや、あの人だけ特殊ということではなくて、ただそれは厚生労働省の中で、内部にあってそういうことを内簡のようなもので、自分たちで、こことここが適用だと。
 大体、企業の役員より、一生懸命働いている人たちがこういう社会保険の適用を受けずに、役員で高額の報酬を受けている人がこういうことで優遇されているようなシステム自身が私は問題があるというふうに実は思うのですね。
 ですから、働く人たちの将来の不安とか、今、国民皆年金の時代と言われている中にあって、そういうことで救済されない人たちに対して、やはり救済していく。特殊な事情で、一つの大学だけではどうしてもそれだけで生活が得られないために、複数に働かざるを得ない人たち、そういう現に職場があるということですから、精神としては、複数の事業所に働いていても救済できるものは救済していくという精神じゃないんですか。その点、もう一度お伺いしたいと思います。
辻政府参考人 少しかたくなな答弁になって恐縮でございますが、その合算の規定はあくまでも、適用事業所において雇用関係が認められるという場合に、しかしながら複数の事業所で適用される場合もある、その場合に合算するというふうに位置づけられるものでございまして、しかも、役員の場合は、言いましたような時間当たりの勤務あるいは日当たりの勤務といったような考え方ではないものでございますので、極めて例外的でございまして、役員を除きましては、やはり適用事業所で雇用関係がある、すなわち、四分の三以上ということを満たさなければ、それぞれで必ず満たさなければ、合算規定は動きません。したがって、合算規定はそのような前提のものでございます。
 したがって、ばらばらの適用事業所のものを足して、そして雇用関係を、複数で見れば雇用関係があるといいましょうか、その複数というのは、逆に言えば、それが多ければ、自営業といいましょうか、自分がいろいろなところへ行って収入を得るという形にもなるわけでございますので、そこの点の区分というものが今このようになっているということを御説明した次第でございます。
    〔桜田主査代理退席、主査着席〕
金子(哲)分科員 私は、今、大学の非常勤講師という極めて限定された職業についてお話をしているわけで、そのときに一般の自営業者とかそういうことを引き合いに出すことはないじゃないですか。現に、大学の非常勤講師という特殊な職場形態があることを最初に御説明をして、そのことについてどうかという話をしているわけで、その中で検討できないかということを申し上げているわけです。
 次に申し上げたいと思いますけれども、先ほども言いましたように、パートの労働に関して、パートの年金などについて制度改正を行うべきだということで検討がされている。先ほども言いましたように、研究会の最終報告も出されて、例えばその中では、正規職員のやはり四分の三というのはおかしい、二分の一ぐらいでどうだろうか、年収が六十五万円以上だったらどうだろうか、そういうようなことが検討されているわけでしょう、現実的には。
 そうしますと、しかし、私はそういう方向にできるだけ下げていくということで検討してもらいたいと思うのですけれども、それであっても大学の非常勤講師というのは救済をされないわけですか。
 先ほども言いましたように、大学の教員に対して二分の一も労働するということは一体どうかということになると、大学の先生というのは、先ほども言いましたように、研究時間も含めて八時間というふうに考えられているのかよくわかりませんけれども、少なくともそのうちの週何時間しか実際に授業を行わない。そして、非常勤講師の場合は、実際にその一こま授業を行ったときだけが契約の労働時間ということになりますと、大臣、二分の一でもなかなか厳しいと思うのですよ、大学の先生と比べて二分の一以上働いていなきゃできないということになりますと。
 しかも、年収の六十五万、例えば今出ておりますような六十五万ということになりますと、大体週二こま担当している非常勤講師が年収六十五万以上クリアしようと思えば、月額二万七千百円ということに計算上はなるわけですね。今二万五千円というお話をしましたけれども、そうしますと、これもクリアできない。ということになりますと、今検討されている問題でも非常に難しい問題が出てくる。
 ですから、私は、ある意味では、やはり、先ほど言いましたように、二万人ものいわばそういう非常勤講師で今現在働いていらっしゃる人たちがいらっしゃる。しかも、これまた毎年更新ですね、これは非常勤講師ですから。毎年更新で、不安定な状況で働いていらっしゃる。そういう人たちの将来、しかも、講師をずっと長く続けていらっしゃる。現実的に大学を見てみますと、一人の人が何年もやっていらっしゃるケースというのは随分あるわけですね。
 そうしてみますと、そういう人たちに対して、今までどおり、例えば厚生年金についても、実際には働いて大学に対して寄与しているにもかかわらず、こういう厚生年金事業主負担分が受けられないために厚生年金に加入できないというようなシステムがこのまま続いていいのか。
 パートの今度の見直しをされるときに、こういうことも救済すること、特殊な労働職場ということでの救済というものはぜひ検討としてやっていただきたいということを私は強く要望したいと思いますけれども、その点について大臣のぜひお考えをお伺いしたいと思います。
坂口国務大臣 先ほどからずっと委員の御指摘になりますお話を聞いておりまして、確かに、私たちが知っております人の中にも、三カ所も四カ所も大学を持ち回りと申しますか、講義をなすっている方があることは事実でございます。
 私も、先ほどから聞いておりまして、どこかの大学に一つどこか落ちつく場所があって、それで、それはそれとしながら、よそへもひとつ講義に行きますよという場合はいいわけですね。
 だけれども、どこか一つ落ちつく場所がない。それで、平等にあちらこちらに回っておみえになる。それは、御本人がそういう形態を好んでおみえになる場合も中にはあるのかもしれないけれども、やはり受け入れ側の大学の方で、そうした場合に受け入れるということを決めてくれれば、それはそれでいいわけです。
 だから、その雇用関係をどういうふうにお話し合いをなさるかということになってくる。それがそうでありませんと、先ほど局長が答弁しましたように、大工さんと同じにして申しわけないですけれども、一人親方のような形で、どこへでもお仕事に行かれるという形態になってしまうということになります。
 四分の三がいいかどうか。それは二分の一ぐらいだったら、それでいいのかどうか。しかし、それでもなおかつ、そういう形態というのは確かに残ることは残るわけですね。それは、個人が契約をされるときの大学とその先生との間の契約のあり方の問題なのか、それとも、そうではなくて、あちらこちらへ行かれる場合に、それは同じように四つなら四つの大学、同じような時間数ずつしか行っておみえにならないということのために起こってくることなのか。そこは、僕も頭の整理がなかなかできにくいのですが、大学の先生では、週一時間ぐらいしか教えてみえない先生もたくさんありますね、正直言って。
 私の知っている先生でも、週一時間教えたらいいんだという人はあるわけですよ。それで、その間どうしているのですかと言ったら、いや、行っても行かなくてもいい。行っても行かなくてもいいと言ったらしかられますけれども、図書館へ行って勉強するなり、研究を、いや、それは自宅研究でもいいんだ、こう言っておみえになる。
 そんないい商売もあるのかなと僕は思うことがございますけれども、その賃金の高い低いは別にして、それはその大学とその先生との契約の問題になってくるんじゃないか。
 どこか一つ、おしりをおろすといいますか、どこかを中心にしてほかへも行く、そのどこかを中心にしたいと思うところの大学との契約の話になってくるのかな。それで高い賃金、低い賃金は、それはあると思いますよ。あるけれども、しかし、それはそれでそのお話し合いをいただくことがまずは大事になってくるのではないかなという気持ちで聞かせていただいた。
 その四分の三がいいか、二分の一にするかという、これは我々も検討したいというふうに思いますけれども、それだけでは解決のできない問題だということもよくわかります。
 だけれども、私も割り切れないのは、同じように四カ所なり五カ所なりの大学を、同じように毎週一時間ずつ回っておみえになるという場合には、どこの大学が中心かということが御本人もわからないし、周辺もわからないしということになってしまう。ですから、そこは御本人が、どこと中心にして契約をして、そこへ腰を落ちつけられるかという話になってくるのではないかという気がしますけれども、どうでしょうかね。
 私も余り十分に認識をせずにお話しして、申しわけありません。よく検討いたしますけれども。
山名主査 金子哲夫君。時間ですので簡潔に。
金子(哲)分科員 時間が参りましたので終わりますけれども、先ほど、今大臣も非常に難しい問題だとおっしゃいましたように、文部科学省の中にも、おっしゃいましたように、大学はこれからさらに、大学の経営の問題もあって、私は、こういう非常勤講師制度というものが進んでいくんではないか、大学の中で占めていく割合も大きくなるんではないかというふうに思います。
 そうしてみますと、やはりそこに働いていらっしゃる方の問題について、今までどおりでいいというわけにはいかなくなるんではないかというふうに思いますので、これは厚生労働省の問題でもありますし、また文部科学省の問題でもありますので、今検討されているさまざまな課題の中の重要な、特殊なケースとして、ぜひ今後の検討課題の中でこういう問題が救済をされていくようにお願いして、時間になりましたので、ちょっと時間オーバーしましたけれども、質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。
山名主査 これにて金子哲夫君の質疑は終了いたしました。
 次に、長妻昭君。
長妻分科員 民主党の長妻昭でございます。
 時間もありませんので、ぜひ手短に御答弁いただきたいと思います。
 まず、今回の一連の中国のダイエット食品によって、多くの方が健康被害に遭われて、お亡くなりになった方もおられるということで、心よりお見舞いを申し上げたいと思います。
 これに関連してでございますけれども、この御芝堂減肥コウ嚢、セン之素コウ嚢、この二品に関連してお亡くなりになった方が三名おられるということが厚生労働省の発表でございました。特に、平成十二年、おととしには、埼玉県で二十九歳の女性がお亡くなりになった、昨年の十一月には京都市で三十代の女性が劇症肝炎でお亡くなりになったということでありますけれども、これは私、一つ検証したいのは、このお亡くなりになった時点で本当に把握をしていれば、こういう商品に絡んでお亡くなりになったんだという商品名がその当時広く世間に知られていれば防げたんではないのかなということが、一つ大きな疑問として残るわけでございます。
 その意味では、昨年あるいはおととしのこの死亡事例というのはどこまで、保健所含めて、把握されておられたのかをお教え願います。
宮島政府参考人 御指摘の埼玉県と京都市の事例でございますけれども、まず、埼玉県の事例につきましては、中国製未承認医薬品、セン之素コウ嚢によるものと考えられる健康被害事例につきまして、埼玉県が十七日に発表しております。それから、京都市につきましては、これは別の健康食品によるものと考えられますけれども、やはり十九日に発表しております。いずれも、現段階におきましては製品と肝障害との因果関係はまだ判明しておりませんけれども、一応、被害症例があったということであります。
 本件につきましては、厚生労働省が十二日に報道発表いたしましたけれども、その発表の後、恐らくこの発表を見られた主治医あるいは遺族の方から、いわゆる中国の健康食品を服用していた経過があるということを踏まえまして都道府県に報告されたものというふうに聞いておりまして、各自治体においては、そういった主治医なり遺族からの報告を受けまして、それぞれ翌日に、今申しましたように、埼玉県、京都市におきまして、この事例についての発表を行ったというふうに聞いております。
長妻分科員 ちょっと的外れの御答弁はやめていただきたいと思うんですが、七月十七日、七月十九日というのは今月の話ですか、今お話しいただいているのは。私、そういう趣旨で質問していないのは重々おわかりだと思うのでございますけれども、おととしと昨年にお亡くなりになった、その直後にその情報がどこまで上がっていたんですかということをお聞きしているんです。
宮島政府参考人 今申し上げましたように、この二件につきましては、その主治医及び遺族におきまして、十二日の報道発表をしたのを見まして、いわゆる関係の方が中国の健康食品を服用した経過があるということで、そこで初めて保健所の方に報告されて、それを受けて保健所が発表した、こういう経過というふうに承知しております。
長妻分科員 今、それを受けて初めてということをおっしゃられましたけれども、ということは、おととしと昨年のこの事例というのは一切保健所も全く把握をしていなかったという御答弁だというふうに理解をいたしますが、それで本当に間違いございませんですか。
宮島政府参考人 保健所からは、健康食品等について苦情なり相談等があった場合は、それを県を通じて国の方へ報告するという形になっておりますけれども、その事例の、過去の事例を見ました中に、この二件は含まれておらなかったということでございます。
長妻分科員 今お話しになった、保健所から厚生労働省に情報が上がる仕掛けになっているというお話がありましたけれども、そこが機能していないんではないかということを私は危惧しているわけであります。
 特に、厚生労働省の中にある新開発食品保健対策室というのがございますけれども、ここが昭和六十三年に通達を各保健所に、都道府県に出しております。健康食品で被害があった場合はここに教えてくださいねという通達が出ているわけでございますけれども、対策室長にお話を聞くと、ここ三年間ではゼロ件だった、一件も上がってこない、こういうお話がありました。
 ところが、今回いろいろこういう事件があったことをきっかけにその報告を調べてみると、実は百六十一件が、過去三年間報告はあったんだけれども、省の中あるいは各自治体レベルで、その百六十一件の紙が、苦情相談受付票というのがとまっていた、そして新開発食品保健対策室は全然知らなかったことが判明をしたというのも室長さんが言われている話でございます。これは大変な話だ。今局長は、それがないから保健所にはないんですと非常に楽観的なお話をされていますけれども、それが機能していない、この百六十一件がどこかにとまっていたということでございます。
 この百六十一件の中にひょっとするとこの事例が、あるいは死亡事例じゃなくても健康被害の事例があるかもしれませんけれども、この百六十一件、プライバシーもありましょうが、名前は要りませんけれども、ほかの情報をぜひ出していただきたいと思うのですが、いかがですか。
木村政府参考人 ただいま先生から御指摘のございましたように、健康食品の苦情相談等につきましては、健康障害が発生するおそれがある場合には毎年度末にまとめて厚生労働省の新開発食品保健対策室まで提出するよう、昭和六十三年、都道府県等に通知をいたしております。
 それに対しまして、実はこの七月十二日に、改めて都道府県等に対しまして苦情相談受け付け状況について確認しましたところ、都道府県等から百六十一件の報告が提出されたところでございます。これまでに報告がなされていなかったことにつきましては、まことに遺憾でございまして、これは同室から定期的な確認を行っていなかったということも一因だろうと思っております。
 いずれにしましても、今後はこうした報告が適切になされるよう、厚生労働省としましても……(長妻分科員「公表するんですか」と呼ぶ)はい。その件につきましては、今どのような内容が百六十一件あるのか、それをちょっと改めて精査をいたして、調査をいたしてみたいと思います。(長妻分科員「公表していただきたいと思います。御検討を」と呼ぶ)はい。よく検討させていただきたいと思います。
長妻分科員 これは坂口大臣、今お話を聞いていただいたと思うんですけれども、普通の医薬品、普通のものに比べて、やはりこれは個人輸入ということで自己責任の比率は高いとは思いますが、ただ、情報がきちんと上がっていれば、従来のシステムの中でもひょっとしたらこれは危険情報を発する、私も民主党を通じて危険情報公表法という議員立法を国会に提出をいたしておりますけれども、そういうことの検証が必要だと思うんです。
 いずれにしても、百六十一件がとまっていたということで、三年間報告がゼロで、官僚の方に聞くと、いや、不思議に思っていたんです、こういうのんきなお話を私にいただいている。不思議に思ったら三年間ずっとほっておかないで何らかのアクションをとるべきだと思うんですが。
 大臣、ぜひこれは、幹部の方に厳重注意じゃなくて、ある程度きちんとした処分を、これはもう絶対こういうことが起こっちゃいけない、人の命にかかわるんだということで、そういう処分の御検討もぜひいただきたいと思うんですが、いかがでございますか。
坂口国務大臣 いずれにいたしましても、地域からそうした意見が吸い上げられないということが一番問題でありまして、いかにそういう通達を出してあったといたしましても、それが機能しなかったら何にもならないわけであります。御指摘のように、三年間も一件も来なければ、一体どうなっているのというふうに誘い水をやはりしなきゃいけないと思うんですね。そこは私も怠慢のそしりは免れないというふうに思います。しかし、いただいたものをこちらとしては集計をしてということでございますから、罰則までやるかどうかは少し別だというふうには思いますけれども。
 しかし、いずれにいたしましても、そういうふうに決めております以上、それが機能している、していないということは、こちらから見ておりましてもある程度わかるわけでございますから、ないからといって、多分全部何もなかったんだろうというのではいけないと思うんですね。そこは、こういう時代でございますから、謙虚に反省すべきところは反省をいたしまして、そういうことのないようにしたいと思います。
長妻分科員 ぜひ宮島局長、木村総括審議官に、この百六十一件の内容を開示する、万が一そこにこういう健康食品の問題があっても、言葉は悪いですけれども、隠さずに全部公表していただきたいというのを、先ほど御検討いただくということでありますので、強くお願いいたします。
 次に、残留農薬の問題でございますけれども、これは冷凍ホウレンソウ、加工食品でございますが、そこからクロルピリホスという残留農薬が、基準値以上のものが見つかったということで問題になりました。
 一つ調べてみますと、食品衛生法の十六条では、食品を輸入するとき輸入の届け出書を出しなさいと。政令の規則の十五条には、食品等輸入届出書という書類が、食品を日本に輸入するときにはそういう届け出書が必要になるということでございます。この届け出書にはその当該食品の食品添加物の名前等は記載義務があるんでございますが、これはちょっと私も驚いたんですけれども、残留農薬といいますか、使った農薬に関する記載義務がありませんで、食品等輸入届出書にはそれを書かないでいいということになっておりまして、現実的にもそういうものは書いていないということでございます。
 ということはどういうことかというと、この主権国家である日本に入ってくる食品等で、一体どういう農薬が入ってきているのかさっぱりわからない、書類面でも何にもわからない、全然わからない、こういう体制が続いているんでございます。
 これは大臣にぜひ、政令を変えるのは閣議決定でできると思いますので、この食品等輸入届出書には農薬を記載義務として食品添加物と同様に入れていただく、これはぜひ必要だと思うんですが、いかがでございますか。
坂口国務大臣 御質問をいただく項目にその今御指摘いただきました項目が入っておりまして、私もそのときにも、どうしたらいいのかな、こう考えていたわけでございますが、一つの農場からそこの農作物を全部集めてそして日本に入る場合でございますと、一種類の農薬ということ、それが二種類か三種類かわかりません、同じ農薬で入ってくるということになるでしょうから、そこは把握されやすいわけでございますが、幾つも幾つもの農業をやっている方々から少しずつの野菜をたくさん集めて日本に入れるといったような場合には、それぞれの農業をやっている皆さん方のところで使っておりますものが違ってくるというようなこともあるわけでございます。
 そうしたときに、日本に輸入をする代理店と申しますか業者が、一々それをチェックして、ここのものはこれを使っている、ここを使っているという、その中のどれが当てはまるかわからないけれども、輸入するものについては大体五種類なら五種類、六種類なら六種類の農薬が使われているというようなことが総論的に把握が一体できるものなのかどうか。その辺も少し検討しなければいけないと思うんですね。
 いずれにいたしましても、こちらの方ですべての農薬について検討するといいましても、これもなかなかできない話でございますから、何か四十数種類はやっているようでございますが、それでもそれ以外の農薬もたくさんあるわけでございますので、この辺のところの、農薬のあり方につきまして、ひとつ十分に検討させていただきたいと思います。
長妻分科員 今大臣からもお話がありましたけれども、結局、生鮮野菜等、今回の冷凍ホウレンソウの加工食品も含むんでしょうけれども、四十数種類の農薬、これはモニタリング調査でそれをやっている。逆に言えば、その四十数種類はわかるかもしれないけれども、あとは何も、どういう農薬が日本に入ってきているのか書類上もさっぱりわからないということは、私はこれは主権国家としては問題であるというふうに考えております。
 ビジネスでこれは輸入をするわけですので、私も関係者に聞いてみますと、極端に言えば、電話を十本ぐらいいろいろなところにかければある程度わかるんだ、次回からはそうしてくれと言えば、農薬の名前ぐらいは幾ら何でもわかるんだよと。どれだけ残留しているとか、そういうのはわからないものの、農薬の名前ぐらいは、電話を何本か、輸入される方が調査すればできるわけでございますので、ぜひ、食品等輸入届出書に使った農薬をすべて記載するということ、この部分に関して前向きに御検討いただきたいと思うんですが、その部分だけの、御検討をいただくということをぜひお話しいただきたいと思います。大臣から。
坂口国務大臣 先ほども申しましたとおり、いろいろなところから集めてくるという場合に、それが、一つの農薬というわけにはいかないと思いますから、さまざまな混合体ということもあり得るわけでございますので、そこをどういうふうにするかというようなこともございますから、そうしたことも含めて、今後、どのようにしたら国民の皆さん方の不安をなくしていくことができるかということを、総合的にひとつ検討したいと思います。
長妻分科員 次に、これに関連してでございますけれども、離乳食というのがございまして、これに今回問題となっております冷凍ホウレンソウが使われているんではないか、こういう話が出ているわけでございます。
 ある意味では、赤ちゃんですから体重が当然小さいわけで、通常の基準よりも、ここにクロルピリホスが入っていれば影響が出やすいわけでございますが、離乳食に使われている実態というのはどの程度把握されておられますか。
木村政府参考人 ただいまの離乳食に使われておりますクロルピリホスにつきましては、どの程度含まれておるのか、その実態は定かでございません。
 いずれにいたしましても、当該ホウレンソウを摂取された方の追跡調査、先生からちょっとお伺いをいたしておりますけれども、そのことにつきましては、消費者の方が高濃度のものをとられたかどうか特定することは非常に困難でございますので、詳細な調査は難しいと考えておりますけれども、中国産の冷凍ホウレンソウを日常的に摂取された方々につきまして、健康被害があったかどうか、意見をお寄せいただく等の可能な対応は検討してまいりたいと考えております。
長妻分科員 意見をお寄せいただく等のということで、非常に受け身的なお話がありましたけれども、私はいつも疑問に思うのは、この前の法律違反の添加物のときでも、ローダミンBというアメリカで発がん物質と認定されているものの健康被害調査をされているんですかと聞くと、厚生労働省さんは、いや、そういうのはしていませんと。今回の話も、余り意識してされていない、全くされていないのだと思いますけれども、問題が起こったらそれを対症療法的にやるというのも当然重要ですけれども、健康被害が一番重要でありまして、どの程度これはあったのかというのを調査していただきたい。
 もう一つ言うと、ファミリーレストランで出されているホウレンソウのソテーからもエンドリンという物質が発見をされている。このエンドリンという物質は、発がん物質で、日本では一切残留農薬で残っちゃいけないということで禁止をされているものでありますので、こういう双方について、やはり健康被害の追跡調査。今、多分ホームページか何かで、被害がありますかというので出して、どなたか来る人を待っているというようなニュアンスに聞こえたんでございますけれども、積極的にその追跡調査なりをして、どの程度、ベビーフード、離乳食に使われているか、さらにエンドリンの被害がどの程度あるのか、あるいはどの程度の摂取量が最大あったのか、これに関しては調査は積極的にしていただきたいと思うんです。
 ぜひ大臣、その御意見、御決意を、ちょっと非常に感度が、消費者の食の安全への、健康被害への感度が鈍いという感じがしますので、大臣からぜひ健康被害追跡調査の御決意をお示し願いたいと思います。
坂口国務大臣 私も、もう子供が大きくなってしまってから余り離乳食にかかわっておりませんので、最近のことはよくわかりませんが、離乳食の中に、例えばホウレンソウだとかなんだというようなものを入れた、あるいは、それをすぐもとへ戻すことのできるような離乳食があるということであれば、すぐその離乳食を調べればわかることでございますから、これは検査できると思います。
 ただ、それぞれの御家庭で離乳食にホウレンソウ等をお使いになって、それが日本の国内のものなのか、あるいは海外から来たものかよくわからないけれども、とにかくそれを子供に食べさせていたというような場合には、これはなかなか難しいというふうに思いますけれども、いわゆる離乳食としてそういうホウレンソウを使ったものがある、そういうものが存在するのであれば、それはでき得ることでございますから、やらすようにしたいと思います。
長妻分科員 もう一点は、テーマは変わりますけれども、レセプトの問題でございます。このレセプトの不当、不正な支払いの問題というのが、ずっと国民の皆さんの側からも疑念がなかなか消えない問題でございます。
 この問題で、国保、社保合わせて、大体、一年間に過剰と判断されて減額されたレセプト。これはもう定義がはっきりしているんですが、過剰と判断されて減額されたレセプトというのは年間幾らぐらいの金額になるのか、お示しを願いたいと思います。
大塚政府参考人 十二年度の数字で申し上げざるを得ないわけでございますが、さまざまな段階がございますけれども、第一段階、原審査と俗に私ども呼んでおりますが、原審査の査定、それから再審査での査定、こういうことになるわけでございます。
 実は、この内訳の仕方がそれぞれ社保と違いますので、これは推計値、ちょっとラフな数字になって恐縮でございますが、社会保険の関係、つまり支払基金における査定額は、資格誤りなどを除きまして、平成十二年度で約五百億円でございますから、その規模その他を考えますと、国保も入れますと、多少ラフな数字で恐縮でございますが、八百億から九百億。こういった数字が、いわゆる審査における査定額、こう言っていいのではないかと考えております。
長妻分科員 これは、疑いというのではなくて、現実問題、これだけの金額が減額をされた、八百から九百億円というお話がございました。
 それで、私も疑問に思って調べてみたんですが、では、その治療を受けられた実際の患者さんは、窓口で自己負担分もお金を払っている。そうすると、それが払い過ぎということで八百から九百億削減されているということは、その窓口でお金を支払った自己負担分のお金もやはりちょっと返ってきてほしいわけでございまして、これは、今厚生労働省さんの指導としては、自己負担分で換算して一万円以上の減額があったものは被保険者にお知らせが行く、通知をしなさい、こういう指導をされているみたいでございます。
 ただ、本当に普通の感覚でいえば、千円だってそれは大切なお金でございますから、一万円以上ではなくて全額、金額の枠をはめずに、そういう減額があった場合はその被保険者に通知をして、そしてその被保険者がお医者さんからお金を返してもらう、こういう措置が必要ではないかと思います。
 例えば、八百から九百億減額があったということは、これは保険の二割負担とか三割負担とかざっくり計算をいたしますと、例えば二割でも二百億円弱ぐらいは自己負担で取り過ぎたといいますか、そういう部分があるわけでございますので、それはやはり自己負担で払った方にお返しするというのが筋だと思うんですが、この一万円という枠を取っ払って、全部の方に御通知をするという措置をぜひとっていただきたいと思うんですが、大臣、いかがでございますか。
坂口国務大臣 同趣旨の御質問が厚生労働委員会でも再三出ておりまして、一番の大事な問題は、取り過ぎだとかそういうことをなくすることが一番大事でございますけれども、不幸にしてそういうことが起こりました場合に、それをチェックして、そしてその修正をしてもらう。修正しましたときに、国民の皆さん方にも御負担をいただいているわけでございますから、そのことは医療機関にも通知をするといったようなことが大事になってくるというふうに思います。
 ただ、私も、先日その御質問がありましたときにもいろいろ省内でも議論をしたんですが、そのときに、個人と医療機関との一つの契約ということもないですけれども、そのときの診療でお払いをいただいたということで、すべてそれをもとへ戻すということになるのかどうかということには、法的にはいろいろ何か難しい点もあるようでございます。
 しかし、常識的に考えれば、それはお返しを申し上げるのが私も筋だというふうに思っております。ですから、一万円というのが妥当な線なのか、千円というのが妥当な線なのか、その辺は、どこかで線は引かなきゃならないというふうには思いますけれども、しかし一万円というのはこのごろかなりな額でございますから、もう少しやはりその点は考えてもいいのではないかというふうに思っております。
長妻分科員 ぜひ前向きに御検討いただきたいと思います。
 最後の質問でございます。
 先ほどの残留農薬に絡んで、日本では、農薬の基準値というのが、二百三十とかそのぐらいの種類の農薬の基準値が決定しているというふうに聞いておりますけれども、先ほども話が出ましたが、モニタリング調査は、例えば野菜とか果実などでは、ホウレンソウの冷凍も含めて、大体四十以上ぐらいのモニタリング調査をしているということで、ある意味では、せっかく基準をつくったにもかかわらず、それ以外の、野菜でいいますと百八十ぐらいはせっかく基準があるのにモニタリング調査の対象に入っていない、こういうことがあります。
 いろいろな手間とかもあると思うんですが、例えば、五十だけにこだわらずに、それぞれ、今回は五十でもほかの種類を入れて五十にしてみるとか、そういうふうに非常にフレキシブルな形での工夫が必要だと思うんでございますが、大臣、あるいはどなたか、御検討を。
木村政府参考人 ただいまお話にございましたように、現在、二百二十九農薬の食品への残留基準が定められておりまして、そのうち、現時点では四十三種類の農薬につきまして検査を行っているところでございます。
 この理由といたしましては、検疫所における輸入時の残留農薬検査は、その効率的な実施を図るために一度に多種類の農薬を分析する方法を採用しておりまして、輸入されてくる農産物に広く使用される可能性のある過去の検出結果等を踏まえまして、その数を特定いたしているところでございます。
 今後とも、輸入食品の安全性確保のために、生産地における病害虫の発生の状況とか農薬散布等の生産実態に関する情報の収集に努めまして、これらの情報をもとにいたしまして、より一層効果的なモニタリング検査に努めてまいりたいと考えております。
長妻分科員 先ほどのレセプトの話で、若干戻りますけれども、保険者から被保険者に通知をするということはかなりのところでやられているようでありますけれども、その通知を見ますと、御家族全部の方の合計金額が出ていたり、あるいは自己負担額が日付ごとに時系列的に並んでいなくて受けた方がなかなか検証しにくいとか、そういうことがございます。
 ぜひ、自己負担額も例えばきっちり横欄に時系列的に書いて、それでその自己負担がちょっと違っている場合は、取り締まりGメンのフリーダイヤルの電話番号か何かもそこの下に記載をして、すぐ対処できるような、そういう通知の工夫をしていただきたいというのも一つ今大きな声として私も聞いておりますので、最後、その点だけ御答弁いただいて、質問を終了します。
山名主査 時間ですので、簡略にお願いします。
大塚政府参考人 患者と保険者の間でどのような情報提供をするか、さまざまな方法がございます。例えばレセプト自体の開示の要求。
 ただいま御指摘がございました医療費通知、これはもちろん一つには保険者の大変大きな事務ということもございますし、本来、被保険者にも、自分がかかった医療費を、不正とかということだけではございませんで、保険者も保険を運営する一人として参加していただくという趣旨でございますので、それを唯一、いわば不正チェックのシステムの材料にするという位置づけは私どもとしては考えておりません。しかし、いろいろな御指摘がございますから、さまざまな角度から検討してまいりたいと思っております。
長妻分科員 どうもありがとうございました。
山名主査 これにて長妻昭君の質疑は終了いたしました。
 午後五時三十分から本分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時二十四分休憩
     ――――◇―――――
    午後五時三十分開議
山名主査 休憩前に引き続き会議を開きます。
 厚生労働省所管について質疑を続行いたします。後藤斎君。
後藤(斎)分科員 大臣、大変御苦労さまでございます。厚生労働省の案件に入る前に、経済産業省に何点か確認をしたいと思います。
 まず一点目でございます。
 昨年の十二月、中小企業信用保険法が改正をされました。その中で、鳴り物入りで、売り掛け債権担保融資制度が創設されました。三月に確認した際にも、まだ実績が、融資ベースで五十億程度だというお話でございました。地元の経営者の方とお話ししていると、まだまだ制度の趣旨ないしその実績が十二分に浸透していないという感じを、私自身は持っております。
 現時点までの実績と、まだまだという点でいえば、中小企業庁、これからもっと普及をさせるためにいろいろな対策を講じなければならないと考えておりますが、その点はいかがでしょうか。
小脇政府参考人 お答えを申し上げます。
 不動産担保に依存しない民間金融の拡大に向けた呼び水として、今先生御指摘のとおり、昨年末に、私ども、売り掛け債権担保融資保証制度を創設いたしまして、実施をしてきているところでございます。
 当初は、先生今御指摘のとおり、金融機関あるいは中小企業の方々にとってふなれな制度であったということもございまして、制度の浸透に時間が必要であったわけでございますけれども、最近、実績は増加をしている、こんなような状況にございます。具体的には、三月末まで二百一件の実績が、七月十九日、直近時点でございますけれども、千三百七十四件と増加をしてきておりまして、融資実行額も七百二十一億円に達しているところでございます。
 私ども中小企業庁といたしましては、この制度が我が国の中小企業金融に定着するように、いろいろ全力で取り組んでいるわけでございます。
 具体的には、まず第一は、積極的に普及啓発活動に取り組むということでございます。各信用保証協会あるいは金融機関はもとより、テレビあるいは新聞等々メディアを活用いたしました広報、あるいは、私ども、リーフレットを二百万枚作成しまして配布をする、あるいは全国各地で説明会を開催する等々の努力をしてきたところでございます。そして、現在では、本制度をわかりやすく解説した利用マニュアル、これを百万部印刷して配布をしているところでございます。
 さらに、制度的ネックとしてございました債権譲渡禁止特約、国あるいは地方公共団体あるいは大企業向けの売り掛け債権には債権譲渡禁止特約がついておりましたけれども、その解除を働きかけまして、五月末には、すべての中央官庁におきまして、物品役務に関します特約の解除を実施したところでございます。
 さらに、第三番目といたしましては、制度の手続簡素化に取り組みました。中小企業あるいは金融機関のニーズを踏まえまして、継続取引要件の緩和あるいは債権報告書の徴求簡素化といった手続の簡素化、改善を、四月から実行に移しているところでございます。
 私どもとしましては、引き続き、こうした制度の普及、浸透のための努力を重ね、最近の増加基調を今後とも維持促進したい、このように考えております。
後藤(斎)分科員 二兆円というのが、まず第一段階目では目標の融資額でございます。それに向けて、さらに柔軟な制度、そして普及について、中小企業庁でもぜひお骨折りをいただきたいと思います。
 二番目でございます。
 今、外形標準課税ということで、総務省が昨年からいろいろなニュートラルな案もつくったということでありますが、それを踏まえて、政府税調そして六月の閣議決定におきましても、できるだけ早期に外形標準課税を導入するということになっております。ただ、まだ、中小企業の団体の方を含めて、経営者の方からは、実質的に増税になる外形標準課税は導入をさらに見送ってくれというふうな趣旨の要望もございます。この点につきまして、経済産業省としてはどのようにお考えでしょうか。
小脇政府参考人 お答えを申し上げます。
 今先生御指摘の六月の閣議決定では、外形標準課税に関しましては「改革と展望」に示した考え方に沿って検討する、こういうふうに明記をされておりまして、その「改革と展望」、具体的には本年一月二十五日の閣議決定でございますけれども、そこにございますとおり、今後、各方面の意見を聞きながら検討を深めてまいりたい、このように基本的に私ども考えております。
 その際、外形標準課税の導入によりまして、法人所得にかかわります実効税率が表面的に下がるかどうかということではなくて、法人の税負担全体が実質的に増加するかどうか、あるいは雇用や競争力に与える影響等々、経済や企業活動の実態を十分に考慮する必要がある、このように考えております。
 とりわけ、中小企業に関しましては、目下大変厳しい経営状況にございます中小企業の担税力の問題、あるいは特に賃金を課税標準とした場合に、労働集約的である中小企業の経営や地域の経済に与える影響等々、こうした点を十分考慮していく必要がある、このように私ども考えているところでございます。
後藤(斎)分科員 総務省、自治体からは、できるだけ早期に外形標準課税の導入ということも、要望が一方でございます。先送りをただ、せずに、税体系全体の見直しも今行われていますので、早期に全体の合意形成をとられるように強く要望したいと思います。
 次に移りたいと思います。
 今、大変きょうも暑い、三十五度を超す地域もあったようですけれども、電力の自由化の問題がそろそろ今年度中にということで、秋からは本格的に議論がこれからされるのではないかなと思いますが、今、総合資源エネルギー調査会において、閣議決定も踏まえましていろいろな議論をされていると思います。ただ、一方で、昨年のカリフォルニアの問題、そしてエンロンと、かなり強引に自由化を進めるべきだというふうな方と、やはり電気というのは個人の家庭的に見ればそんなに大きな負担でもない、むしろ安定供給を求める、いろいろな声がございます。
 現在のエネルギー調査会並びに資源エネルギー庁として、どんな形で御議論を進めているのか、お聞きをしたいと思います。
迎政府参考人 お答え申し上げます。
 昨年の十一月から、我が国の電気事業制度のあり方につきまして、総合資源エネルギー調査会電気事業分科会の場で議論を行っておるところでございます。ここでは、我が国の経済活動及び国民生活の基盤となる電気の安定供給を効率的に達成し得る公正かつ実効性ある制度の構築に向けて、今後の制度はいかにあるべきかということで、幅広く議論をいただいておるところでございます。
 分科会の審議の状況でございますけれども、これまでに十回御議論をいただいておりまして、現行制度の評価及び海外事例の検証、それから我が国の需給構造の変化等について御審議をいただきまして、こういった結果を踏まえて、本年の四月に具体的な論点の整理を行いました。現在、これに基づきまして、需要家の選択肢の拡大ですとかあるいは広域的な電力流通のあり方等、具体的な制度にかかわる論点について御議論をいただいておるところでございます。今後とも、電気事業分科会において、予断を持つことなく御審議をいただいていくこととしております。
 ただいま先生から御指摘ございましたように、先ほど御紹介いたしました諮問の趣旨でも、安定供給を効率的に達成ということで、いずれもないがしろにしてはいけない点であるというふうに考えておりますので、こういったことを予断を持つことなく御審議をいただきまして、その結果を踏まえて、適切な制度設計に取り組んでいきたい、こういうふうに考えておるところでございます。
後藤(斎)分科員 ありがとうございます。
 質問通告していなくて大変恐縮なんですが、今回の議論は、さきに成立をしましたエネルギー基本法とは、どんな、制度の中で議論をされていくんでしょうか。
迎政府参考人 電力の需要、供給を考える場合に、電力というのがその瞬時瞬時きちっと停電することなく安定的に供給をされなければいけない、あるいは発電においても、エネルギーのセキュリティーというふうな問題というのも非常に重要であるわけです。
 それから、エネルギー基本法でもうたわれておりますように、現在、発電という事業については、いろいろ大量に化石燃料の燃焼等を行うというふうなことから、地球環境等の問題というのも重要な問題であると思っております。それから、ユニバーサルサービスというふうなことも、電気事業というものにおいては大変重要になるわけです。
 こうしたエネルギー基本法で、重要性というので御指摘のあった点については、分科会の議論においても、こうしたものの重要性あるいは配慮の必要性についてはいろいろ御議論いただいておりますので、こうしたエネルギー基本法に示された視点をも踏まえ、御議論をいただいているというふうに考えておるところでございます。
後藤(斎)分科員 いろいろな法律の体系が電気事業についてはございますが、各般のそれぞれの目的を、すべてとは言いませんが、できるだけ中長期的な視点も含めて御議論いただけるように、ぜひお願い申し上げます。
 次に、大店立地法についてお尋ねをしたいと思います。
 ことしの三月二十九日、規制改革推進三カ年計画ということで、閣議決定を改定版でされております。その中の「流通関係」でも、「新規参入の促進」ということで流通分野の重点項目の第一番目に掲げられておりまして、その中には、「参入要件の緩和により新規参入を促進するなど、事業者活動に対し過度の制限を課す規制を見直し、消費者の選択肢を一層拡大する」というふうな決定がなされております。
 大店法、大規模小売立地法の八条を見ますと、その九に、いろいろな意見がなくても県が意見書を出した場合、通知から二カ月を経過した後でなければ新設ないし変更を行ってはならないという規定がございます。大規模小売立地法は施行されて二年ほど経過をしますが、かなりの件数が新しい法体系の中で届け出をされております。
 ただ、この八条の規定、例えば、意見がない場合だとすぐ営業ができて、意見がある場合だと二カ月間営業が実質できないという点があって、自治体や国のお立場から見れば、そうでいいんだ、単に手続だからしようがないだろうという話もありますが、一方で民間事業者から見れば、この二カ月間、営業機会というものがないわけですから、お金というか、収入が入ってこないというふうな営業損失が実際出てくる。
 なぜこういうふうな規定になっているのか。そして、私は、閣議決定をされた三カ年計画の趣旨にも反するような形になっているんではないかなというふうな感じを持ってなりませんが、この点について経済産業省、どのようにお考えでしょうか。
青木政府参考人 お答え申し上げます。
 大店立地法におきましては、いわゆる出店者が都道府県の意見を踏まえ、自主的対応策を示すための届け出を行ってから二カ月の間は都道府県が勧告をできることとされております。先生御指摘のとおり、この期間が終了するまでの間は、出店者は営業開始を控える必要があるとされてございます。
 このように、法律が期間制限として二月の定めを置きましたのは、都道府県側として、出店者から自主的対応策が出された場合には改めてこれを公告縦覧に付すとともに、これがいわゆる大店立地法の法目的でございます周辺の生活環境の保持の観点から、十分に適切になされているかという点について検討する必要があるわけでございます。
 ただ、一方、委員御指摘のとおり、営業制限を必要最小限度の範囲に抑えるべきとの観点もございまして、こうしたもろもろの観点を踏まえまして、比較考量によってこの期間が定められたものというふうに理解をしてございます。
後藤(斎)分科員 仮に、この意見書に従わなかった場合は、どのような罰則が適用されるんでしょうか。
青木政府参考人 これは法律の第十八条によりまして、この規定に違反した場合には五十万円以下の罰金に処せられることとなります。
後藤(斎)分科員 それは、国庫納付になるのでしょうか、自治体の収入になるのでしょうか。
青木政府参考人 国の収入になると理解しております。
後藤(斎)分科員 今お答えを冒頭にいただいたように、これからの運用、また、ややもすれば事業者の方は十二分に把握をされていない中でという場合もあると思います。自治体の関係の職員の方も、その点、事前というと何か最近非常に悪い言葉かもしれませんが、相談にきちっと対応しながらやるように、ぜひ経済産業省としても御指導賜るようにお願いを申し上げます。
 次に移りたいと思います。
 最近、エコタウン事業ということが全国各地で対応されております。もちろん、ゼロエミッションということで、環境産業という視点も含めて、これから大変必要な事業だと思っています。
 ただ、現実は、なかなか地域住民の方、片仮名、英語を使っても、やはり産業廃棄物みたいな視点で導入が進んでいない地域もあるというふうに認識しております。経済産業省として、これからどんな形でエコタウン事業を進められていくのか。その点について、課題も幾つもあると思うんですが、含めてお答えを願いたいと思います。
大井政府参考人 お答えいたします。
 経済産業省におきましては、平成九年にエコタウン事業というものを創設いたしまして、先ほど御指摘のありましたように、ごみゼロ型の町づくり、それから、新しい産業としての環境産業の育成、こういったことを目的としているわけでございます。これまでに、十六地域、二十七の先導的なリサイクル施設というものを、このエコタウンによりまして整備を図ってきたところでございます。
 御指摘のとおり、地元におきまして、私どもといたしましても、合意の形成というのが大変重要であるというふうに考えておりまして、そもそもこのエコタウンプランというのは地方自治体が作成することになっております。その作成過程におきまして、地元住民であるとか、あるいは事業者であるとか、いろいろな方々と十分お話し合いをして、その地域としてぜひこういった事業を進めていきたい、こういうようなものについて助成をするという仕組みになっているわけでございます。
 私どもといたしましても、こういう熱心な地方自治体に対しまして、補助等を通じて支援を申し上げ、ごみゼロ型社会の構築というものに積極的に貢献していきたいというふうに考えているところでございます。
後藤(斎)分科員 経済産業省の政府参考人の方、結構ですので。
 厚生労働省の方に入らせていただきます。
 今、歯科医療ということが、医療分野の中にもちろん入っておりますが、正直言って、医科に比べて軽視されているという傾向も否定できないと思います。
 そんな中で、歯というのは、私も入れ歯はありませんが、虫歯がいっぱいありますけれども、やはり歯が痛いときとか体が全体よくないなというふうなことで、六〇年代から初診料が、特に医科と歯科で格差が拡大をしております。もちろん最近是正の動きもございますが、私は、これから歯科重視の医療体制、要するに、よくそしゃくをできれば健康というか、すぐもちろん健康にはなれませんが、健康づくりには役立つ、いろいろな視点がございます。
 私どもの民主党としても、医科、歯科の診療報酬について格差を是正する、十年間で段階的に格差是正をしていこうという政策決定もしております。四五%くらい今格差が、初診料でございますけれども、なぜこんなに格差が開いてしまったのか、その理由と、厚生労働省としてこれからどんな形でその格差是正をしていくのか、お答えを願いたいと思います。
大塚政府参考人 ただいまお示しございましたように、かつては、かつてと申しますのは昭和五十九年のころまででございますが、医科と歯科の初再診料が同じ額であった時代がございました。その後累次の改定を重ねまして今日の点数になっているわけでございますが、これは医科と歯科のある意味ではそれぞれの特殊性によるものでございまして、具体的に申し上げますと、医科診療報酬におきましては、累次の改定の際の御議論といたしまして、基本的な診療行為を評価するという観点から、初再診料にある意味での重点を置いた引き上げが行われてきたわけでございますし、他方、歯科診療の特殊性という観点からいたしますと、初再診料もさることながら、歯科固有の技術を評価するという点に力点を置かれまして、具体的には中医協で御議論をいただいて、それぞれ累次の改定の際に決定をしてきて今日の姿になっているというわけでございます。
 これも御案内と存じますけれども、前回の改定、平成十二年四月の診療改定におきましては、歯科の初診につきまして、いわゆるかかりつけ歯科医初診料というものを導入いたしまして、この初診料は二百七十点でございますが、医科の初診料と同点数のものを導入したわけでございます。
 全体といたしまして診療報酬の個別の点数をどう評価するかといいますのは、全体の中でどれを重点にするかという御議論がどうしてもその前提としてございまして、今後また改定という機会も、もちろん原則的には二年に一回あるわけでございますが、そうした段階でそれぞれ、中央社会保険医療協議会などの御議論を踏まえまして対応してまいりたいと考えております。
 なお、全般的なことを申し上げれば、歯科の重要性というのは申し上げるまでもございませんで、私どもも、歯科診療の重要性にかんがみまして適切な評価を進めてきておるというふうに考えております。
後藤(斎)分科員 ぜひ我が党の政策も、こんな形で冊子になっておりますので、こういう改革案もごらんになっていただいて、一緒にやはり与野党できるところは私はしていくべきだと思っておりますので、その点を要望したいと思います。
 次に、医療費の適正化という観点から、薬価の問題について御質問をしたいと思います。
 全体の健康保険法の審議の中で、全体の医療の問題はかなりの議論を大臣されてきたと思いますが、このまま進んでいけば、二〇二五年には国民所得の現在七%から一二%に国民医療費がなってしまう。経済成長率というのはこれから、私は後でまた述べますが、そんなにGDPがふえるということは私は難しいというふうに思っています。
 一方で、薬価の問題につきましては、大体三十兆あるうちの二〇%を切るくらいの数字でかなり薬価差益の問題はクリアになっていくという部分もあると思います。
 ただ一方で、これも先ほど御質問した規制改革推進三カ年計画の中で、過剰な投薬や検査について見直しをしていくというふうな整理もされております。あわせて先発品と後発品の算定価格、これももちろん開発のインセンティブというものが新しい薬についてプラスに働くような算定方法はもちろんでございますけれども、普通に考えれば、先発品ばかり使わずに、同じ効能であれば後発品の部分を使いながら全体の薬価部分を抑えていくというのは当然であります。
 三年前の中央社会保険医療協議会の中の基本方針でも、薬価差益を解消するために云々ということが方針として決まっております。その中でも後発品の薬をできるだけ使うようにというふうには書いてありませんが、それも含めて検討するというふうな指摘があります。
 私は、後発品の使用促進という観点を進めていけば、医療費全体の適正化ということにもつながるという視点で、厚生労働省はどんな形でお考えになっているのか、お答えをお願いします。
坂口国務大臣 後でまた事務局の方からお答えをすると思いますが、御指摘のように、やはり後発品をどれだけ使うかということによって、これは医療費に非常に大きな影響を与えることは必至でございます。中身をよく見ますと、大学病院でありますとか国公立といったところが特に使っていないわけでありまして、その他社会保険庁の病院等も余り使っていないといったようなことで、足元が使っていないということがあるものでございますから、国公立に対しましても、ぜひこの後発品と言われております薬剤をもっと使ってほしいということを今積極的に進めているところでございます。
 名前が後発品といいますと何となくおくれておるような感じを与えまして、同じ薬効であるにもかかわりませず後発品と言うのは少し悪いのかなと私も思っているわけでございますが、もう少し公のところが率先してやはり使ってくれるようにしていきたいというふうに思っておる次第でございます。
大塚政府参考人 現状につきまして若干の補足をさせていただきますと、ただいま大臣から申し上げましたとおり、後発品の使用促進というのは極めて重要なこれからの課題だろうと考えております。
 具体的に、例えばやはり品質の信頼性ということが大事でございますので、私どもの言葉で日本版オレンジブックというような言葉を使っておりますが、品質の再評価をしてこれを公表するというような作業を進めると同時に、今年度の、平成十四年度の診療報酬改定におきまして、後発品を含む処方を行った場合に、処方せん料を相対的に高く評価する、あるいは薬局において後発品の調剤を行った場合にも、あるいは品質、価格に関する情報提供を行った場合にも評価をする、こういった改定を行いまして、積極的な使用促進策に取り組んでいるところでございます。
後藤(斎)分科員 最後に大臣、今高齢化、少子化ということが議論をされております。私は、今のままの少子化対策、高齢化対策を続けていけば、厚生労働省もせんだって一年前倒しで、人口減少の時代が来るというふうな推計を出されております。一億二千七百万人の現在の人口が、このままの出生率でいけば、五十年で一億を切り、百年後には六千万人台になってしまう、人口が半減するという時代であります。
 私は、先ほど経済産業省にもいろいろな話を聞きましたが、すべてが、ほとんど今の、現在の人口を前提とした経済活動だというふうに私は認識しています。
 例えば、少子化の対策でいろいろ厚生労働省はやられておりますが、今百十万人くらいの出生率であります。ほとんどの義務的な部分は、特に教育費は国庫負担になっておりますけれども、一方で、もっとやはり教育に、衣服費に、食費にかかるということで、例えばスウェーデンの云々という話もございますが、私は、例えば、一人当たり年間百万出します、そうすると、例えば二百万人に戻すのに何年かかるかというのは具体的にはわかりませんが、少なくとも二兆円程度の社会的給付を振り向けるみたいな抜本的な対策が必要だと思います。
 今、社会保障給付ということで七十五兆円程度が使われておりますが、そのうち高齢者給付が五十兆でございます。もちろん、少子化対策と高齢化対策のバランスをとらなきゃならないのは当然でありますが、このまま人口が減少するという国は、私は国として成立をしない。もちろん、大きく価値観を変えれば別かもしれませんが。私は、ぜひ抜本的な対策を講じていただくという意味で、大臣の御所見を、人口減というものを前提にしながら御答弁をお願いしたいと思います。
坂口国務大臣 御指摘いただきますように、だんだんと少子化が進んでまいりまして、一番最近の数字でも一・三三でございまして、東京都は一・〇、しかも東京都の中でも目黒とか渋谷というふうなところは〇・七まで下がってまいりました。非常に下がってまいりまして、私も、このままでいきますと日本民族は滅亡するのではないかというふうな危惧さえ持つわけでございます。
 そうした中で、今御指摘いただきましたように、社会保障給付費の七十五兆の中で、高齢者向きには五十兆円、そして少子化対策としましては二・五兆円の、わずか三%でございますので、これは少しバランスを欠いているのではないかという気もいたします。
 ただ、少子化は高齢化の問題と違いまして、お金を使えばもとに戻ってくるというわけにもいかない。心の中の問題がありますだけに、何をまず優先的に手がけて、どういうことを組み合わせていったらいいかということを真剣に考えなければいけないというので、今、少子化対策の委員会等もつくりまして内部のまとめに入っているところでございますが、皆さんの御意見も十分に尊重させていただきながら、誤りなきを期したいと思っているところでございます。
後藤(斎)分科員 ぜひその線で、抜本的な視点も含めて検討をお願いしたいと思います。
 以上で終わります。ありがとうございます。
山名主査 これにて後藤斎君の質疑は終了いたしました。
 次に、上田勇君。
上田(勇)分科員 まず最初に、中国製ダイエット食品の摂取によりまして、死者、重症者を含む多数の犠牲者が発生している問題についてお伺いしたいというふうに思います。
 これまでの二商品に加えまして、新たに六つの商品によって健康被害が出ているということが公表されたところでございます。これらには、報道によりますと、甲状腺ホルモンや食欲抑制剤など、医薬品にしか使用が認められていない物質が検出されているということでありますが、これまでの報告等を見る限りにおきまして、果たしてこれらの物質が今回の肝機能障害などの直接の原因なのかどうか、それが必ずしも明確ではないような気がするんですが、その原因の解明についてはどうなっているんでしょうか。
宮島政府参考人 御指摘の、中国から個人輸入等されましたいわゆるダイエット用健康食品を服用した後、重篤な肝機能障害を含む健康被害が多数発生しております。
 厚生労働省としましては、実際に服用していた製品を入手いたしまして、分析を行ったところでありますが、これまでのところ、調査により、肝障害の原因物質はまだ判明しておらないところであります。
 ただ、本日新たに、十二日に発表した未承認医薬品二製品及び本日公表いたしました一製品、この三製品に共通しまして、医薬品成分であるフェンフルラミンから合成したと考えられるNニトロソフェンフルラミンという新しい合成の物質が高い濃度で検出されたということが判明いたしまして、先ほど公表したところでございます。
 ただ、この物質も、肝障害とは直接関係があるかどうかということにつきましては今後さらに究明の研究をやっていかなければなりませんけれども、いずれにしましても、原因物質の早急な解明のために努めてまいりたいというふうに思っております。
上田(勇)分科員 この問題について、もう発病された、発症された方々への対応、これにしっかりと取り組んでいただく必要があるわけでありますけれども、やはりこれから新たな被害が拡大しないように、ここにも万全を期して取り組んでいただきたいというふうに思います。
 今の御説明で、原因が、まだ完全に因果関係が解明されていないというようなことでありますので、まずはそれに全力を挙げていただく必要があるというふうに思いますし、また、そのほか、被害が明らかになった場合には、その実態や危険性の広報にももっと力を入れていただきたいというふうに思いますし、必ずしも今薬事法の違反が明らかでない場合であっても、そういった健康被害のリスクが高いといった場合には商品名を公表するとか、またその類似商品についても必要な情報を提供するとか、消費者が健康リスクを十分に、また適切に把握できるような情報を提供することが重要なんではないかというふうに思います。
 そういう意味で、今後、新たな被害を拡大しないという意味では厚生労働省としてどのような対策をお考えになっているのか、お伺いいたします。
宮島政府参考人 これまでの調査により、肝障害の原因物質はいまだ明らかではありませんけれども、御指摘のように、健康被害の拡大を防止するというために、十二日に二製品の名前を公表し、本日、さらに一製品の名前を公表したところであります。それから、県からの報告を受けまして、六製品の名前も公表して、国民に注意を呼びかけたところでございます。
 引き続き、中国産ダイエット用健康食品等の摂取による新たな被害の発生を防止するために、こういったリスクのある製品についての名称を公表するということに加えまして、いわゆる発生元であります中国当局に対しまして、必要な情報を提供し、適切な対応措置を要請するということもあわせてやっております。
 さらに、当然、未承認医薬品ですとこれは薬事法違反でございますので、そういうものについての製造あるいは販売行為がありますと、これは薬事法に基づく取り締まりを徹底してやりたいというふうに思っております。
 それから、輸入食品につきましては、やはり水際でそれを食いとめるということも重要でありますので、輸入食品の審査体制の強化、効率化というものも並行してやっていくという形で、こういったものを駆使して、総合的な対策の実施により、最善を尽くしてまいりたいというふうに思っております。
上田(勇)分科員 今回問題となっておりますダイエット食品、そのほかにも海外から実に多種多様ないわゆる健康食品が輸入されて、流通しているというふうに思います。
 利用者はどのようにその安全が確認できるのか。これだけいろいろなものが出回っていると、非常に不安に思っているんじゃないかというふうに思うわけであります。商品の種類も多いし、流通の形態もさまざまなので、なかなかその実態を把握していくというのは非常に困難な面があるというのはよくわかりますけれども、非常に一般の方々、消費者の方々の中に広がっている不安に対して、厚生労働省として、これだけいろいろな種類のものがある中でどういうような対策が考えられるのか、御見解を伺いたいというふうに思います。
狩野副大臣 上田委員御指摘のように、今、中国産ダイエット用健康食品等の問題につきましては、個人輸入などによって入手し、そして服用後に肝障害を含む健康被害が発生していることが全国的に報告されておりますけれども、厚生労働省といたしましては、これまでの調査により、肝障害の原因物質は明らかになっていないものの、健康被害の拡大を防止するため、十二日にこれらの製品名を公表し、国民に注意を呼びかけたところであります。
 また、引き続き中国産ダイエット用健康食品等の摂取による新たな被害の発生を防止するために、中国当局との間で情報交換等を急いでやりたいと思っております。そしてまた、未承認医薬品等の取り締まりの徹底、そして、被害情報の迅速、的確な収集そして公表、輸入食品の審査体制の強化、効率化、原因物質の解明のための研究等、総合的な対策の実施に最善を尽くしてまいりたいと思っております。
    〔主査退席、桜田主査代理着席〕
上田(勇)分科員 ぜひ万全を期していただきたいんですが、とかく漢方とかというと何か安全なような気が、錯覚に陥りがちでありますし、また、食品ということになると、それほど劇薬とかが入ってないんだろうというような安心感もあるんじゃないかというふうに思います。
 そういう意味で、薬品ということであれば、それなりにとる方の、摂取する方の消費者も非常に気をつけて行うんですが、やはり健康食品という名になると、多少のものをとったとしてもそれほど大きな被害が出ないんだろう、まして漢方だということであれば安全なんじゃないかというような気持ちになりますので、ぜひこの点、本当にしっかりとした対策を立てていただくのが一つ。それと、やはりそういったリスクが非常にあるんだということも広報していただく、こうしたことにもぜひ取り組んでいただきたいというふうに思いますので、よろしくお願いをいたします。
 それで、次に、今度は教育訓練給付制度について何点かお伺いをしたいというふうに思います。
 教育訓練給付制度については、これまでさまざまな分野にわたります、実に二万件以上の講座が指定され、非常に多くの方々に利用されているというふうに承知をいたしております。その中には、本当に新しい仕事につくために極めて効果の高いものもたくさんあるんですけれども、確かに、今いろいろな批判が出ているように、その一部の中には、英会話教室のように、どちらかというと教養を高めるという意味での意味合いはあるけれども、では、新しい仕事につく、新しい職業につくという意味での効果がどうなのかという、疑わしいものも含まれているんじゃないかというふうに思います。
 そういう意味で、厚生労働省としてもこの見直しなどを今行っているのではないかというふうに思うんですが、そこで、厚生労働省としての、これまでの教育訓練給付金制度の効果についてはどのように評価をされているのか。また同時に、雇用保険財政の今逼迫もあるので、その見直しを進めているわけでありますけれども、現在大幅な見直しが行われているというふうに聞いておりますが、どのような考え方、どういうような基準を持ってその見直しを行っているのか、お答えをいただければというふうに思います。
酒井政府参考人 ただいま先生が御指摘のように、この給付は、御本人の使い方によって大いに生み出される効果が違うものと実は思っております。
 私どもといたしましては、自発的に能力開発をしていくというような時代にも、企業の能力開発に加えて、そういうような形になってきておりますので、それを支援するといったこともねらってこの制度をやっておるわけでございますけれども、実際の効果、一番重点になりますのは、資格を取ってそれを生かした、あるいは資格でなくても、それを取って職務上生かした、こういうことで、これは本来、できれば何件資格を取ったかということを私ども申し上げればいいところなんでございますが、今後、その効果については、データをとるなり、あるいは講座を開講しているところにそういうデータをとらせるなりということをしていきたいとは思っておりますが、いろいろこれまで見たところ、一定の効果は上げてきた。
 ただ、先生おっしゃるように、英語でもレベルの低いものが入っておりましたということがございました。ですから、昨年見直しを行いましたし、ことしもそれを取り組むようにいたしております。
 また、今御指摘のように、なかなか雇用保険全体として厳しい状況でございますので、どんなふうに給付を重点化するかといったことについて、今、審議会の部会で議論をしております。そういうものを踏まえながら、できるだけ役に立つように講座の指定も重点化するといったようなことで取り組みたいというのが基本的スタンスでございます。
上田(勇)分科員 次に、教育訓練給付金について、教育訓練給付金の支給対象となるための指定基準が定められているんですが、それについてお伺いをいたしますけれども、この指定基準の中には、「教育訓練が、次のいずれにも該当するものであること。」というようなことで、(1)から(8)まで八項目が書かれております。内容や期間、それから実績、費用など八項目について書かれているんですが、これらの基準、ある見方をすると、どうも画一的で外形だけを見ているような嫌いもあるのではないかという気がいたします。
 むしろそれぞれの講座が、どれだけ新しい仕事につく、それとも、また同じ職場の中でもそのキャリアアップに役立つのか、そういったことに基づく判断がもっとあってしかるべきなのではないのかなというような気がするわけであります。
 例えば期間について言いますと、ここに書かれているのは、これは通学制のものについて言えば、一カ月以上一年以内であり、かつ、受講時間が五十時間以上というふうに規定されております。これは一つの何かの決め事という意味では、何かで決めなきゃいけないというのはよくわかるんですが、一定の役立つ職業能力を身につけるために、日数とか時間数、これが分野によってやはり相当異なるんじゃないのかなという気がいたします。
 例えば、自動車免許の大型、大型特殊あるいは二種免許などは、これは私は、新しい職業につくためにそういうような免許を、資格を取得するというのは非常に役立つものではないかというふうには思いますけれども、残念ながらなかなか、その受講時間がいずれも五十時間に満たないということで、この支給対象にならないというのが現実にございます。
 そういう意味で、これまでいろいろな経緯があってこの指定基準が定められているということはよくわかっておりますが、この指定基準、どのような考えで定められているのか。また、さきの例でも述べたんですが、その講座が、新しい仕事につく、新しい職場につくという意味でどれだけ有効なのかというような視点を重視して、もう一度やはり弾力的に見直す必要があるのではないかというふうに思いますけれども、それについてのお考えを伺いたいというふうに思います。
酒井政府参考人 先生今おっしゃいました五十時間の問題、あるいは二種免許の問題、今挙げられたわけでございますが、基本的に、先生最初におっしゃいました、趣味的なあるいは教養的なものは対象にしないで、十分な職業上の効果があるものということで、当初から運用の際には、講座の指定に当たってそのようなことに努めてきたつもりなんでございますけれども、確かに、中にいろいろなものがまじっておったということがございます。
 それから、五十時間の問題は、これはこの制度の前段にございました中高年者に対する奨励金制度、そこで五十時間という形で運用してきて一応の成果が上がっておったということで、それをひとつ参考にさせてもらった、中高年齢者等受講奨励金制度というものがございました。そういうものをある程度念頭に置いておったということでございます。
 では二種免許はどうなんだ、二種免許は、大変に恐らく対象の方が広がるものだと思います。先生がおっしゃるように、職業に役に立たない、そういうつもりはないのでございますが、財源の限りの中でどういうものを選ばせていただくかということの中で、私ども、関係審議会にも御報告しながらやってきておるわけでございますけれども、今後ともその指定については中身を見てやっていきたいということ。
 それから、先生おっしゃった、効果はどうなんだということにつきましては、例えば、資格については、その指定した講座がどれだけの合格率だったかということをこれから出してもらうことにして、そういうものの中でやはり合格率が低いというようなものは外れていただくというようなこと、それから、そういうことをあわせて、その受講希望者に情報開示をしていくといったようなことに取り組みたいというふうに思っておるところでございます。
上田(勇)分科員 この教育訓練給付制度、その本当にまさに、先ほど御答弁にもあったんですけれども、使いようによっては、新しい雇用を生み出す、あるいはその新しい職業につくという意味で非常に効果があるものでありますし、また、引き続き、やはり経済の構造改革が進んでいく中で、どうしても雇用のシフトが行われなければならない、その中で、これは、私は、今の雇用情勢の中での緊急的な措置というよりも、ある程度の期間続けていかなければいけない、そういうような政策なんではないかというふうに思いますので、また、ぜひいろいろな観点から制度を総合的に検討していただければというふうにお願い申し上げる次第でございます。
 それで、次に、またちょっといろいろなところに話が行って恐縮なんですけれども、実は、三月の予算委員会のやはりこの厚生労働省関係の分科会で臨床検査技師制度について質問をいたしました折に、局長の方から、「検討課題の一つとして検討させていただきたいと思っております。」というような御答弁をいただいたわけでありますけれども、今、その後、どういうような検討状況なのか、経過をお伺いさせていただければというふうに思います。
篠崎政府参考人 確かに、本年三月四日の予算委員会におきまして、先生の方から、臨床検査技師と衛生検査技師を統合して、検体検査についても業務独占とすべきではないかという御質問がございまして、私の方から、検討課題の一つとして検討させていただきたいと申し上げたところであります。
 これまで部内で検討を進めてきておりますけれども、その中で、問題点として大きく二つあるわけでございます。その一つは、臨床検査技師と衛生検査技師との統合につきましては、現在、現に衛生検査技師という名称を用いて業務を行っている方々に生じる不利益、そういうものに配慮する必要があるのではないか、どういうふうに配慮したらいいかというようなことが一つございます。それからもう一つは、検体検査を業務独占とすることにつきましては、他の医療関係職種の業務独占とは異なりまして、患者の生命あるいは身体に直接危険を及ぼすような業務ではない、そういうことから、国民の職業選択の自由を制限して業務独占とする、そういう必要性は乏しいのではないか、そういうような考えもあるわけでございまして、以上申し上げましたような問題点がございます。
 私ども、部内だけの議論では十分とはいかないと考えておりまして、今後は、有識者あるいは関係団体、関係者の意見を十分に伺う必要があると考えておりますので、そのための検討会を立ち上げていきたいというふうに考えております。
上田(勇)分科員 私も、その後、関係団体であるとか、そのほか医療関係者の方々からもいろいろな御見解も伺ってまいりまして、今局長の方から御説明のあった点についても、それはさまざまな意見があるというのはよく承知しているところでございます。それで、やはり今お話があったように、業務独占とはいっても非常に幅広いいろいろな検査があって、それを全部規制するということになると非常に現実の運営に支障が来しかねないというような御意見もありました。
 そういったことも踏まえて、しかし、いわゆる臨床検査技師あるいは衛生検査技師が行っているさまざまな検査というのは、医療関係者、医師が行う重要な診断のその基礎の材料となるいろいろなデータを提供するものでありますので、その中の特に重要な一定の部分については有資格者でなければ検査ができないというような形にしないと、それはやはり国民の生命や健康を守るという意味から、そういったことも必要なんではないかというふうに思いますし、また、そういった点などを引き続き御検討いただきたいということ。
 また、この臨床検査技師、衛生検査技師に関する法律、これは当初議員立法で提案されているといったことも、そういうような経緯も踏まえまして、また、私どもも党内で、また与党の中でもこういったことをいろいろと話し合いをさせていただいているところでございますので、これは今後、また厚生労働省の方ともいろいろと御相談させていただきながら我々としても取り組んでいきたいというふうに考えているところでございます。
 それで、またちょっと、最後、違う話になるんですが、今度は放課後児童クラブのことについてちょっとお伺いしたいというふうに思います。
 これは、放課後児童クラブ、少子化対策の中で、小泉内閣でも非常に積極的に推進してきている施策の一つでありますが、こうした放課後の子供さんたち、仕事をされているお母さんたちが安心して仕事につける、続けられるという意味で非常に重要な制度であるんですが、私の地元の横浜市などでは、もちろんこの放課後児童クラブ、学童保育というような、通称言われておりますが、こういった事業も行っておりますし、同時に、今度はその年齢ももっと幅広く、小学生全部を対象にして、今小学校に比較的余裕教室もありますので、そういったところを使いながら、横浜市では、はまっ子ふれあいスクールというふうな呼び方をしておりますけれども、そういった事業も行っております。
 これはいずれも目的は多分同じことを目的としているんだというふうに思うんですが、現在の制度の中では、これは厚生労働省からいただいた資料にもあるんですが、その指定基準があります。放課後児童健全育成事業においては幾つかの指定基準があるんですが、それになかなか合致しないということから、厚生労働省の補助の対象には、助成の対象にはならないというのが、このはまっ子ふれあいスクール、そういう状況にあります。
 これは目的も一つにしていることでありますので、私としては、ぜひこれは、それを融合するというか、統合することによってもっとそれぞれの事業の効果が上がってくるんではないかというふうに思うんですが、こういうような今行われている、多分これは横浜市だけじゃなくていろいろな自治体においてもこういう全児童を対象とするような事業というのが行われているというふうに聞いておりますけれども、そういう意味で、これをもっと融合する、統合するというような方向で考えていくべきではないのかなというふうに思っているんですが、その辺についての御見解を伺いたいというふうに思います。
岩田政府参考人 まず、全児童対策の方ですが、これは自治体が独自で行っております事業で、小学校において放課後にすべての児童を対象として取り組みが行われております。異年齢児が一緒に遊ぶといったような経験の場にもなりますので、大変有意義な取り組みであるというふうに考えております。
 一方、放課後児童クラブの方ですけれども、これは保護者が例えば共働きなどで昼間家庭にいないという、そういう児童に対しまして、遊びや生活の場を提供するという事業でございまして、児童福祉法に基づいて放課後児童健全育成事業として実施されているのは御案内のとおりかというふうに思っております。
 この二つの事業を統合してあわせて実施している場合についての考え方でございますけれども、一定の要件を満たす場合、この放課後健全育成事業としては、生活の場の提供ということが要るわけですから、例えば専用の部屋があるとか、それから、親がいない留守家庭のお子さんを預かっているわけですから、児童の所在が確認できるような体制ができているなど、一定の要件を満たしているところについては、放課後児童クラブに該当する部分については国庫の補助対象としていっているところでございます。
 また、横浜市ともよくお話をしたいというふうに思っておりますが、厚生労働省といたしましては、そういった地方自治体の多様な取り組みを支援していく方向で考えてみたいというふうに思っております。
    〔桜田主査代理退席、主査着席〕
上田(勇)分科員 ありがとうございます。
 これは、やはり目的は同じ方向で考えている事業でありますし、できればいろいろな形での、お互いに協力をし合って、お互いの効果を高めるというようなことがいいのではないかというふうに思います。
 もちろん、放課後健全育成事業の場合には、もっと明確な目的があって、それを満たすために幾つかの要件が必要だというのは理解するところでありますけれども、これは自治体側の、自治体の方の努力というのも必要なんだろうというふうに思いますが、ぜひ、そういう意味で、今度、利用する保護者の立場に立ってみると、これは本当に、ここに行くとこの制度、ここに行くとこの制度というのではなかなかわかりにくい面もあるので、これは、国とそれから自治体、いろいろと協議をしていただいて、今後、一番いい方向を見出していただければというふうに思いますので、その点も御検討よろしくお願いを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
山名主査 これにて上田勇君の質疑は終了いたしました。
 次に、山田敏雅君。
山田(敏)分科員 民主党の山田敏雅でございます。
 本日は、医薬品の副作用の被害者の救済についてお伺いいたします。
 その前にちょっと、若干、一つ質問させていただきたいんですが、私は、経済産業委員会で、新しい産業の創造ということで、バイオインダストリー、特に遺伝子工学とか細胞工学、そういうものを日本の将来の大きな産業にするべきだという議論を一生懸命やっているんですけれども、先日、アメリカのボストンに行ってまいりました。そこで、私は実は二十年前に留学しておったんですけれども、そのころの町と今のボストンの町は本当にさま変わりしまして、昔の港町で倉庫が全部空っぽだった場所が、今ニューヨークの摩天楼のような高層ビルになっております。これは、上から下まで全部バイオインダストリー、特に遺伝子工学を使った、大きな世界的な企業が全部集約して、それがアメリカの大きな力になっているわけです。
 そこで、我が国の状況はどうかということで、先日、ティッシュセンターというところに行ってまいりました。これは、経済産業省が全く新しい形の研究体制をつくるということで、細胞に関する研究、遺伝子工学も含めて、これの新しい研究所ができました。三十億円ぐらいの設備なんですけれども、そこに行って、研究者の方と意見を交換してまいりました。
 そこで大変重要な問題が提起されましたので、大臣、ちょっと本来の議題の前に一言聞いていただきたいんですが、そこにお医者さんがいらっしゃいます。もちろん、最先端の技術を研究していらっしゃるんですが、肝心なところに来ると、動物実験が必要になります。我が国の、その研究所に行きまして、動物実験の場所を見せてくださいと言いましたら、ありません、実は動物実験はできないんですと。新しくできて、日本じゅうから研究者が集まってきて、これからやろうというときに、その施設はありませんと。どうしたんですか。動物愛護団体のすごい反対があります、申し入れ書もありますと。
 世界じゅうで動物愛護団体はだんだん過激化がされて、イギリスなんかでは非常にテロ的なこともやる人もいる。我が国においても、大阪大学の医学部で、動物実験の場所に不法に侵入をして、かぎを破って中に入って写真を撮ったとかこういうことがあって、せっかく最先端の技術をやろうと思うと、これは動物実験が難しいんです。ほとんどできない。これじゃ日本の、確かに動物がかわいそうだというのはあるんですが、多くの人の命を救おうと思ってやっていらっしゃる研究が全く進まなくなってしまう、こういうことなんです。
 ちょっと質問書を出させていただきましたけれども、大臣、ひとつ、これは経済産業省だけの問題でやっても全然前に進まない。ぜひ厚生労働省、これは大臣の方でしっかりしたことを考えていただきたいんですが、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 それは、御指摘のとおりだというふうに思います。
 日本もバイオ、これからおくれた分を取り返さなければならないわけでありますし、ある意味では日本が今後最も大きく進むことのできる分野でもあるというふうに思います。
 もちろん、そういうバイオの面を進めていこうと思いますと、中にはやはり動物実験の必要なこともございますし、そこを抜きにして、やはり薬にいたしましても新しいバイオ製品にいたしましてもできない分野があるわけでございます。したがいまして、動物愛護ということには最も気を使っていかなければなりませんし、それは大事なことではございますけれども、やはり人間の生命にかかわります分野をさらに進めていきますためにはどうしてもそこは乗り越えなければならない点でございますので、私たちも経済産業省とよく連携をさせていただきまして、そして前に進むように努力をしたいと思います。
山田(敏)分科員 御答弁ありがとうございました。現場の研究者の方も強くそのことを申されておりましたので、きょう、この場でお伝えいたしました。
 さて、きょうの、副作用の被害者の方の救済についてでございます。
 大臣、今、日本の薬、医薬品の副作用というのは、過去十年間どういうふうに、すごくふえたのか、現状維持なのか。あるいは、本当に副作用の方の、被害者の状況が正確に認識を、現状認識が正確にできているのかどうか、こういうことをまずお伺いしたいんですが、副作用の被害者というのはふえているんでしょうか、減っているんでしょうか、現状維持なんでしょうか。
山名主査 宮島医薬局長でいいですか。どなたにお聞きしますか。
山田(敏)分科員 一応大臣にお聞きします、最初に。大体の認識で結構です。
坂口国務大臣 やはりふえているんですね。
 それで、これはとりわけ、企業からの報告があります分と、それから医療機関から報告があります分と、両方あるわけでございますが、特に企業からの報告分がふえておりまして、例えば平成十三年でございますと、二万二千四百五十一件あるわけでございます。これは、平成元年は二千三百五十七件だったわけでございますから、約十倍になってきている。それから、医療機関からのものにつきましては、平成十三年で四千九十四件。これは、平成九年から全医療機関に、何かあれば報告をしてもらうようにということにしましたから、その分でふえたということもございますけれども、こちらの方もふえてきているということでございます。
山田(敏)分科員 今御答弁ありましたように十倍とか、ここ十年で見ても五倍、医薬品の副作用がありますという報告が非常にふえております。
 しかし、問題は、この副作用の報告なんですけれども、医薬メーカーは、これは報告をしなければならないということが薬事法の第七十七条の四の二に書いてあります。しかし、その後の言葉が書いていないんですね。報告しなかったときに罰則がないんです。これは、報告してもしなくてもいいよ、しなければならない、だけれども、しなかったら罰則はありませんよ、こういうことですね。今、メーカーからの報告を二万二千件、一年間に受けていますと。これが実態です。
 もう一つの方の、お医者さんと薬剤師の方に、副作用があったら報告してください、これは平成九年に新たに通達を出されまして、今までは一部の、あったら適当にやってくださいということだったんですけれども、平成九年から全部のところにやってくださいということで、報告を受けました。その結果、平成の初めごろには千件ぐらいだったのが、約五千件の副作用の報告があるようになったわけですね。ところが、この報告も、協力していただけますかと。副作用があっても、報告しなかったら、罰則規定がないんですね。
 ですから、今おっしゃった、過去平成元年からの間で十倍ぐらい副作用がふえました、報告がふえましたというのですらも、本当の現状をあらわしているということにはならない。特に、医薬品の副作用は非常に問題になってきたわけですから、この点をもう少し厳しくやらなきゃいけないんじゃないかと思うんですが、いかがお考えでしょうか。
坂口国務大臣 現在、衆議院の方で御審議いただいています薬事法の改正がございます。これは参議院先議でございまして、参議院の方で先にお願いをしてまいりまして、現在、衆議院の厚生労働委員会で審議をしていただいているわけでございます。
 ここでは、企業として医薬品等の使用により保健衛生上の危害の発生等を知った場合には必要な安全対策措置を講じることを義務づけるとともに、企業がその規定に違反した場合には厚生労働大臣は業の許可の取り消し等の措置を行うことができる、そういうふうに少し厳しくしました。また、医療機関からの副作用等の報告についても義務化をするということに今度させていただきました。罰則というところまで至っておりませんが、かなり厳しくいたしました。
 それから、国民の皆さん方からの副作用についての相談も、これも大事でございますので、平成六年七月からでございますが、医薬品機構の中に消費者くすり相談室というのをつくりまして、そして、そこにいろいろな情報を入れていただくということもいたしております。現在、年間約八千件ぐらいの御相談と申しますか、いろいろの情報がございます。
 こうしたことをいたしておりまして、できる限り前進をさせたいというふうに思っております。
山田(敏)分科員 このままぜひしっかり成立させていただきたいと思います。
 さて、今お話のありました医薬品機構、これは医薬品副作用被害救済機構として発足した機構ですが、果たして医薬品の副作用の被害を受けた方をちゃんと救済できているのかどうか、こういうことがもう長年にわたって議論されております。
 今申し上げました、二万七千六百件の副作用の報告があります。過去十年間で五倍にふえたわけですが、それに対して、副作用の被害の救済、これは、この報告書ございますけれども、一年間に二百二十九件、これは医療費の救済ですね。その件数は、予算が二千百万円ですから、大体一月にならすと一人一月一万円、しかもそれは二年間で終わりです、こういうことですね。医療手当については一年間に三百五件、これも大体一人一月一万円。これは、何か非常に大きな、副作用の被害者がふえたということにしては、非常にお粗末な、救済が余り行われていないような状況です。
 トータルの額も、ここ数年、全部で九億円なんですが、それも五倍とか十倍になった形跡はございませんで、大体四割とか五割ふえているんですけれども、この実態はどういう理由でこういうふうになっているんだとお考えになりますか。これは、担当局長、お答えいただけますか。
宮島政府参考人 医薬品副作用の健康被害の救済につきましては、機構法に基づきまして給付対象者が定められているわけでありますけれども、一応、いわゆる民事責任を問わずに、いわゆる製薬企業の拠出金による共同事業という形でやっておりますために、その給付の対象は、一定程度以上の重篤な状態の方が対象になっているということで、具体的には、いわゆる入院相当以上の被害があった場合という形になっています。したがいまして、結果的に、軽度の被害の方は対象になっておらないという状況が一つございます。
 先ほど大臣の方からお答えがございました副作用の報告件数につきましては、昨今、そういう副作用情報につきましては、軽度のも含めまして、そういう情報があり次第速やかに報告するようにということを徹底してまいりましたので、したがいまして、メーカーなり医療機関においては、軽いものも含めまして、そういう報告をするという傾向が最近強まってきたために非常に件数が伸びておりますけれども、救済対象の方は、そういう意味では、一定程度以上の重篤なものに救済対象が限られているということで、そういう差が出ているのではないかというふうに思っております。
山田(敏)分科員 これは、給付金を申請する救済給付のシステムに問題があるのではないかという指摘がよくされております。今申し上げましたように、二万七千件の報告がある、これは一部だと思うんですけれども、全部入れると数万件の副作用の報告があって、一年間に二百人の方しか、しかも、それは一人一万円しか保護されていない、救済されていない。
 この救済の給付のシステムがこういうふうになっているんですね。お医者さんの診断書が必要です、それから投薬証明書が必要です、こういうふうになっているんですね。
 これは医師法という法律で、医師法第十九条、診断書を出してくださいと言われたときには、正当な事由がなくてはこれは拒んではならない、こう書いてあります。これもここで終わりなんですね。拒んだ場合にどういう罰則があるのか、これは書いていないんですよ。拒んでも別に何も罰則がない。さらに、投薬証明には、この法律上の中に言葉が出てきませんから、当然何の定めもない。したがって、この給付金を受けようと思った人は、お医者さん、投薬証明書を出してください、いや私はお断りします、何らかの理由で出せませんと言われたら、そのまま泣き寝入りになります。
 今、大臣、御存じだと思うんですが、この副作用の問題で大きな問題が起こっております。具体的に、一九九二年の三月に、四十二歳の男性の方が腫瘍の手術を受けた、このときに抗生物質コスモシンを受けて失明をされました。これは、いろいろな薬の副作用が重なって、いろいろな、出るんですが、これは原因がはっきりしません。救済基金にもちろん給付を請求しましたが、これは医師の製剤の投与が不適切だったという理由で支給を拒否されました。
 そうすると、この方は、失明されたわけですから、大変な被害を受けられました。残る手段は、この医師を相手に訴訟を起こすしかないんですね。これは、当然、医師の側は予想をされていますよね。私は副作用で失明しましたと来られた方が、投薬証明書を書いてくださいと。裁判をやるとそれによって自分が訴訟を受けて重大な責任を問われる、これをわかっていて投薬証明書を書くお医者さんはなかなかいない、こういう現状があります。これが一つの大きな原因です。
 もう一つは、これは患者さんの立場に立つと、お医者さんの言うとおりやって、そして自分は副作用を受けたわけですね。これは過失がないわけですね。ですから、副作用の救済をやる制度は無過失でないといけないのに、今言いましたように、これは審査しますと。これは、副作用は、この薬品でどういう原因でどういう投薬がちゃんと行われたかどうか、これを審査して出しますと。患者さんの視点から見ると、そんなことは関係ないわけですね、自分が受けたわけですから。
 この救済をするという精神、できたときの法律に、定めにあったと思うのですけれども、それが実行されていない。こういうふうに思うのですが、大臣、いかがお考えでしょうか。
坂口国務大臣 今御指摘をいただきました中には、幾つも難しい点も含まれているというふうに思います。
 一つは、薬剤によります副作用の場合には、医薬品の有効性と副作用と両方あるわけでありますから、先ほどの例のように、医薬品を適正に使用したかどうか。適正な量であれば何も起こらなかったものが、大変、例えば、あってはならないことですけれども、使用量を一けた間違えて十倍出したとかいうようなことでもしも起こりましたときには、いわゆる薬によりますところの副作用というのとは少し違うと思うのですね、これは。そういうことが一つあり得る。決められた適正量を投与して起こる薬の副作用ではなくて、薬の量を間違ったがゆえに起こるものというのは、それは薬が持っておりますことによる副作用といいますよりも、量を間違った医療行為の中での問題点というふうに、そこは少し切り離して考えざるを得ないんだろうというふうに思います。
 そうしたことはございますので、なかなかここは一概に言えないわけでございますが、先ほど、例えば、こういう薬を飲んでなったというようなことがありまして医療機関に行きましたときに、医療機関は、そういうことじゃなく、例えば、五年ないし十年、五年以上、七年とか十年前に出した薬であって、そのカルテがないとかなんとかというようなことだって私はあり得るんだろうというふうに思います。
 それではもうそれでだめかということになるわけですが、そのときには、こういう薬を服用して、そしてこういう状態になりましたという、医薬品の現物といいますか、その時期この薬を使って私はなりましたというものを一つ添付してもらう、それから、患者さんが御自身で記憶しておみえになる範囲内において、こういう期間私はこの薬を、例えば朝晩何錠ずつ飲んでおりましたとか、そういういわゆる服用状況をメモにしていただいたものを請求者に出していただくといったようなことができれば、それに代替をするといったことも認めておりますので、必ずしも、何が何でもなければならないということではなくて、そういう道もつくっておりますので、そうしたことも御参考にしていただければというふうに思います。
山田(敏)分科員 今大臣おっしゃったのは、これは患者さんの立場に立てば、量が多かろうが少なかろうが、副作用を受けたことは受けたんですね。この救済の制度は医薬品メーカーがお金を出して拠出金でつくった制度だから、薬によらないものはおれたちは関係ない、量をやったのはこれは医療行為の問題だから、こういうふうに今おっしゃったんですね。今最後におっしゃったのは、そうであってもこの制度は救えるということなんですか。そういうことをおっしゃったんですか。
坂口国務大臣 医療機関の方がやはり出してくれないといったときには、それにかえるべきものとしてそれはそういう方法があるということを申し上げたわけです。
 前半の話は、これは薬の副作用というものと、量を間違えたかどうかわかりませんけれども、量を間違えてなったというのとは若干違う。量を間違えてなった場合には、これはそれこそ訴訟の問題だというふうに申し上げているわけでございます。
山田(敏)分科員 これは、薬というのは必ずお医者さんないしは薬剤師の方が処方するわけですから、医療行為と薬というのは切っても切り離すことはできないわけですよ。この場合は、切って切り離してあるんですね。ですから、患者さんの立場に立つとすると、何を幾らいただいたか自分にはわからないわけですね。ですから、まず医療行為が何かあった場合もこれは救うべき制度であるべき、患者さんの立場に立ってやった副作用の救済制度だったはずなんですよ。これは行われていないんです、今おっしゃったように。現実には行われていない。
 今後、今、先ほどおっしゃったように法改正を検討していらっしゃるということであれば、この議論は、大臣、これから入れるべきだとお考えになりますでしょうか。
坂口国務大臣 今のお話は、薬による副作用云々をさらにもう少し超えて、医療全体としての行為が患者さんにどういう影響を与えたかという問題になるだろうというふうに思います。したがいまして、薬だけの範囲ではなくて、治療によって何らかの副作用を受けたときにどうするかという議論は私はあるというふうに思います。そのときにどうするかといったことは、これはやはり検討をしなければならない問題ではあるというふうには思います。
山田(敏)分科員 ぜひ検討していただきたい。御答弁いただきまして、ありがとうございます。
 最後に、これは今非常に限定して、年間に九億円しか使っていないんですね。ところが、この医薬品機構は、どんどんどんどんいろいろな業務が追加されまして、研究調査機構、融資だとか出資をするとか研究開発に助成をするとか、あるいは医薬品の治験の調査をどんどんやるとか、非常に大きなものになりました。
 ここに決算報告書がございまして、これを私、全部数字を足し算してみました。一般管理費、すなわち人件費と家賃ですね。これで年間に二十三億三千万円、全部で、一般管理費だけですね。これは融資とかそんなののけてですね。その中の人件費を、役職員の人件費ですね、役員と職員の人件費、これが十五億円です、年間。では、だれが何人どういうふうに働いているのかということで、調べていただきました。この医薬品機構の職員定員数は百五十一人なんです。そのうちに厚生労働省の出向者が百二十四名。ほとんど全員が厚生労働省から出向して、この一般管理費、人件費を使って大きな事業をやっていらっしゃるわけですね。そうすると、本来の機構の目的であった副作用が起きた方の、患者を救済するお金にはたったの九億円しか入っていない、しかし、一般管理費には、今言いましたように、そういう事業をどんどん続けて、大きなオフィスを借りて、ツーフロアでやっていらっしゃるそうですけれども、二十三億円。
 そのほかに、今の出資金を、全部で四百二十億円の出資をやって、そのうち国のお金は二百四十億円出資をしてやっていらっしゃる。その出資先を見てみましたら、いろいろな会社をつくって出資しているんですが、その九社の中のほとんど全部、大手薬品メーカーの出資した会社に国が二百四十億円出資したんです。
 どうも、国民、患者の立場から立ってみると、ちょっとおかしいんじゃないかなというふうに思うんですが、大臣、いかがお考えですか。
坂口国務大臣 この医薬品機構には、大きく分けまして三つの部門がございます。一つは救済給付部門、一つは研究開発振興部門、そしてもう一つは調査等部門と、三部門つくってやっているわけでございますが、今後は、これは独立法人になる予定でございます。
 それで、この中で、今までの救済の給付部門、この救済給付部門は、独立して別途の会計、別枠の会計でここだけはやらせてもらっている。ほかのところは、国からの入りましたもの等につきましては、そのお金で研究費等に使っているということでございます。
 その中の割り振りについてはいろいろ先生も御意見あるだろうというふうに思うんですが、問題は、副作用として認めるべき人を認めずにおいて、ここの分野が少ないというんだったら、これは私も問題だというふうに思います。きちっとやっているというふうに言っておりますから、私はそう信じておりますけれども、万が一そういうことならば、ここには問題点が存在するというふうに思います。
 それからもう一つの点は、今お話ございましたように、厚生省から出向している人が多いじゃないかということ。確かに、これは見ますと厚生省から出向しておる者が非常に多い。独立行政法人に今度なりますので、そうなりますと、これからそんなわけにはまいりません。したがいまして、それを機会に、今後、本当に必要な人間をここに入れていくというふうにここは変えていかないといけないというふうに思っております。
山田(敏)分科員 大臣、今、副作用の被害者の方、救済がきちっと行われていると聞いているとか思っているとおっしゃったんですけれども、実際、年間に九億円しか払われていない。しかも、何でこんな少ないのかというと適用が非常に狭いものですね。副作用が一番大きいのは、抗がん剤とか血液製剤とか、あとは免疫抑制剤ですね。この百十一の薬品については、この救済から全部除外します、副作用があってもこれは関係ない、こういうふうになっているんですね。
 だから、もう残った医薬品で副作用があったというふうに言っていかなきゃいけないんですけれども、これは適用が余りにも、副作用があっても、もう基本的には救済したくないんだというのを宣言してからやっているようなもので、だから年間にたったの九億円しか、本当に被害に遭っていらっしゃるという方、今言いましたように、一人一月一万円、もう入院しなきゃいけない、非常に被害の重度の方がこれはやっておるわけですね。
 ですから、ちょっとこの際、大臣、きょう認識を新たにされて、百十一の品目をもうちょっと、本当にそんなたくさんの、これは、免疫抑制剤、抗がん剤、血液製剤、一番副作用のある、これは全部除外しているわけですから、これはちょっと適用がきつ過ぎる。それから、今言いましたように、今の申請のぐあいをもうちょっとよくする。それから、量を間違ったからもうあんたらだめと、ちょっと百のところを百二十だからあなたはもうだめです、こういうふうにされていると、もうどんどんちっちゃくなって一年に九億円になりますので、その辺を大臣、最後に御答弁をお願いして終わりたいと思います。
山名主査 坂口大臣。時間ですので簡略にお願いします。
坂口国務大臣 百のところを百二十とか百三十、そのぐらいな程度のことで起こったというのであれば、それは副作用として認めるべきだというふうに思いますが、これがけた違いな値を出すことによって起こったということになれば、それは医薬品の副作用と少し趣を異にしますので、それは別途その問題は考えなければならない問題であるということを先ほどから申し上げているわけでございます。
 抗がん剤等の問題につきましては、これは残念ながら、副作用があることを承知の上でお使いをいただかなければならないという状況にあるわけでございますので、そこは御理解をいただいて皆さんにもお使いをいただきたいという側面がございます。
 したがいまして、副作用がないという、ほとんどの人にはないというふうに言いながら、しかし起こる人があるというのとは少し趣の異なるものですから、そこも区分をして考えております。しかし、今御指摘のように、本当に提供しなきゃならない人がそこから漏れているということになりましたらそれは大変なことでございますから、そこはよく見直していきたいというふうに思っております。
山田(敏)分科員 終わります。どうもありがとうございました。
山名主査 これにて山田敏雅君の質疑は終了いたしました。
 次に、山内功君。
山内(功)分科員 民主党の山内功でございます。
 人には生きる権利があります。私は、そのためには安全なものを人は食べる権利がある、国はそれを保障する責務があると思いますが、まず大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
坂口国務大臣 食といいますのは人間の生命に直結するものでございまして、食生活が健康を左右することは、もう私が今さら申し上げるまでもないところでございますので、そういう面からいたしますと、この食にかかわりますものというのは安全であることが第一であります。したがいまして、そのことにはどれほど注意をしても注意をし過ぎるということはないんだろうというふうに思っております。
山内(功)分科員 今、ホウレンソウ、セロリあるいは枝豆とかいう中国からの輸入野菜について農薬の問題が指摘をされておりますが、まず、ざっとした輸入量の推移とか、現在の量とか、農水省の方にお願いしたいと思います。
坂野政府参考人 御説明いたします。
 中国からのホウレンソウの輸入は、そのほとんどが冷凍された形で輸入されております。平成十三年には五万七千トン、対前年と比べますと一三%ふえております。本年一月から五月までの輸入数量を見ますと一万七千六百トンということで、対前年の同期に比べますと一一%減っております。
 それから二つ目に、セロリでございますけれども、セロリの輸入は平成十二年から始まりまして、平成十三年には二百三十六トンとなっております。本年の一月から五月までの輸入量は三百十八トンということで、対前年の同期に比べますとほぼ倍になっております。
 三つ目の枝豆でございます。枝豆はそのほとんどがやはり冷凍された形で輸入されておりまして、平成十三年には四万五千トン、対前年と比べますと一三%ふえております。本年一月から五月の輸入数量は一万八千五百トンということで、対前年の同期に比べますと二〇%増加しております。
 以上でございます。
山内(功)分科員 中国からの輸入野菜の残留農薬問題、この問題は一体何が原因で今日のような事態を招いているのか、お聞きしたいと思います。
木村政府参考人 最近、中国産の冷凍ホウレンソウにつきまして多数の残留農薬基準違反が認められているところでありますが、その原因といたしましては、中国産野菜類の輸入量が増加する中で、一つには、生鮮野菜のみならず、加工原料として下ゆで、冷凍されたものなど、その形態が多様化しているにもかかわらず、我が国においてモニタリング検査が行われていなかったこと、それから二つ目には、中国国内において農薬による中毒事例が報道されるなど、残留農薬に対する規制が十分でないこと、そんなところが考えられるのではないかと考えております。
山内(功)分科員 中国側の対応として、今日のような事態を引き起こした、いわば日本から見ての問題点の指摘という点では、どういうことが指摘できますか。
木村政府参考人 冷凍ホウレンソウにつきまして、三月二十日まで我が国の検疫所におきまして輸入時検査を行っていなかったために、残留農薬の管理が十分でない生鮮ホウレンソウが冷凍ホウレンソウに加工されたのではないかというような御指摘もありますが、中国側からの情報が不足しているために、確たることはわからないという状況でございます。
 今後、中国政府との協議や生産地の事情を調査する中で、中国における冷凍ホウレンソウの残留農薬の管理状況、それから違反が多発する原因について情報収集してまいりたいと考えております。
山内(功)分科員 中国の農家の人も、自分の家で食べる分については大量の農薬を使った野菜はつくらないと思うんですよ。つまり、日本に輸出をする野菜についてこれだけたくさんの農薬を使っていたということは、中国自体に、日本に安全なものを輸出するという意識が欠如しているんじゃないですか。
木村政府参考人 繰り返しになりますが、その辺の、中国におきます残留農薬の管理状況、違反が多発する原因につきまして、そういうことも十分考えられるわけでございますが、さらに情報収集をしてまいりたいと思います。
山内(功)分科員 冷凍ホウレンソウなど、少し手を加えれば三月二十日までは一切検査をしなかったという理由はなぜですか。
木村政府参考人 当省におきまして、下ゆでされた冷凍ホウレンソウの残留農薬につきまして、従来、残留農薬基準値が設定されておりました生鮮野菜の検査を優先いたしていたために、ゆでたものの方の冷凍ホウレンソウにつきましては検査を実施していなかったものでございます。
 三月二十日より、当時残留農薬検査が実施可能な十八品目の下ゆでされた冷凍野菜に対しましてモニタリング検査を開始いたしましたが、それまでは生鮮野菜の方を優先していたために、冷凍まで手が回らなかったという実情でございました。
山内(功)分科員 それはおかしな話で、三月二十日以降は検査をするようになった、しかも検査の検体の量も順次ふやしている。つまり、今できるんだから、三月二十日以前にはできなかったという論法は通用しないと思うんですが、どうですか。
木村政府参考人 御指摘の点につきまして、今になって思えば危機意識が足りなかったということになるかと思います。
 三月二十日の前の時点で、民間の検査機関におきまして残留農薬の基準違反値が発見されたというようなこともありまして、その時点から鋭意検査をするようになった次第でございまして、繰り返しになりますが、今になって思えば、多少取り組みが甘かったという面はあるのかと思います。
山内(功)分科員 つまり日本の政府、特に厚生労働省に、今みずから告白されたように、自分たちも危機意識が欠けていたというのを中国に見透かされていたから今回のような事態になったんじゃないんですか。なぜ生鮮物については検出されないのか、ちょっと教えてください。
木村政府参考人 一月からこれまでの時点におきまして、生鮮物については違反野菜は発見されておりません。その点は多分、十分な注意が払われていたからと想像されるわけでございます。
山内(功)分科員 しかし、生鮮として入ってきたものでも、残留農薬が袋ごとにばらつきがあることも考えられたんじゃないですか。つまり、生鮮物で出ないというのが少し理解できないんですけれども。
 それでは、なぜ冷凍物では二百倍も二百五十倍も基準値を超えるようなのが多く出るのですか。
木村政府参考人 繰り返しになりますけれども、三月二十日までの我が国の検疫所におきます輸入時検査におきまして、生鮮ホウレンソウのみ検査を行っていたという事情からしまして、残留農薬の管理が十分でない生鮮ホウレンソウが冷凍ホウレンソウに加工されたのではないかという指摘もございますので、この辺のことも含めまして、中国におきます残留農薬の管理状況とか、違反が多発する原因について情報収集をしてまいりたいと考えております。
山内(功)分科員 輸入商社に対してペーパーを出すなどして指導をされているようですけれども、小さな輸入業者ほど、中国のブローカーの言いなりになって商社が買うというケースがあると思うんです。このような場合に、ブローカーの末端まで、衛生に気をつけるようにとか、農薬を使い過ぎないようにというような指導が徹底して行われないのではないかと思うのですが、そのあたりの懸念はどうでしょうか。
木村政府参考人 輸入食品の残留農薬対策につきましては、輸出国での生産段階における農薬の使用管理や残留農薬の検査が重要でありますことから、従来より、輸入食品関係団体等を通じまして、輸入者に対してその衛生管理の徹底について指導を行ってきたところであります。
 しかしながら、最近の違反の状況を見ます限り、結果的には輸入者による残留農薬のチェックが十分なされていなかったと推測されます。その原因の一つとして、不特定多数の農家から集められたホウレンソウをブローカーを通じて輸入するような場合には農薬の適正な使用管理が徹底されないという問題がありまして、輸入者に対する指導のみでは安全性の確保について限界があると考えております。
 今後、輸入者に対しまして農薬の適正使用の徹底を引き続き指導するとともに、中国政府を通じまして、中国の農家やブローカーへも指導が行き渡るように努めてまいりたいと思います。
山内(功)分科員 輸入業者の責任ということで論じるとすれば、ブローカーを通じて買ったので残留農薬の問題については見過ごしていたというような弁解も商社はすると思うんです。だから、商社が直接に契約農家、栽培農家として農地を管理して栽培させる、直接に生産させる、そういう輸入業者以外には、例えば今問題となっているようなホウレンソウとか枝豆とかを日本に輸入しないというような指導はできないのですか。
木村政府参考人 先ほど申し上げましたように、輸入業者、商社でありますが、輸入業者に対しまして、従来より輸入食品関係団体等を通じまして、輸入者に対してその衛生管理の徹底について指導を行ってきたところでありまして、特に冷凍ホウレンソウにつきましては、本年六月六日には、検疫所で検査を行っていない冷凍ホウレンソウについては、流通、販売前に自主検査を実施し、残留基準値を超えることがあった場合には速やかに結果を報告し、廃棄等の処分を行うよう輸入者を指導する。それから二つ目には、七月十日に、関係団体に対しまして、冷凍ホウレンソウの輸入自粛の要請を行ったところでありまして、今後とも個々の輸入者に対する自主管理の徹底を指導いたしまして、輸入食品の安全確保に努めてまいりたいと考えております。
山内(功)分科員 私は、輸入業者について直接的な自主管理を徹底させるんだったら、商社が契約をしているという具体的なことを省の方に聞いたんですけれども。商社の方に検査データを出させることについて、またその指導のペーパーが出されているようなんですけれども、商社の自主検査の達成率、あるいは現在までのところどの程度基準値オーバーが出ているのか、商社の自主検査の完了の時期はいつか、そもそも商社に自主検査の能力や技術はあるのか、そういうようなあたりをお聞きしたいと思います。
坂口国務大臣 詳しいことはまた官僚の方から答弁をさせますが、先生先ほどから御指摘のように、捕らえてみれば我が子なりという言葉がございますけれども、やはり日本の商社がもう少ししっかりしてもらわないといけない。
 さらに言えば、先ほど先生御指摘になりましたように、厚生労働省の検査体制の弱さをつかれたと言っても言い過ぎではないというふうに思いますが、全体を検査しているわけではない。生鮮野菜につきましては検査をしてきたわけでございますが、全部にしてこられなかったといったことも私は確かにあったと思う。
 こうなりました以上、こういうことが続きます以上、それではまた厚生労働省が手薄にしておりますところがねらい撃ちをされるというようなことになってもいけないわけでありまして、現在はホウレンソウでございますけれども、それがほかのどういう野菜にまた及ぶかもしれない。
 といったようなことでございますので、ここはひとつ、今度法案を出していただきましたが、検査をして、そしてあるパーセント以上農薬が含まれる、あるいは添加物が含まれるといったものにつきましては、それはもうその国からの輸入をしばらく中止をさせていただくとか、それからその前に、やはり物を輸入するわけでございますから、全部が全部、国が検査できれば一番いいわけでございますけれども、そういう体制にないことは御承知のとおりでございます。今のままでいいとは考えておりませんので、もう少し充実をさせなければいけないというふうに思っておりますが、現在の体制をたとえ倍にしたとしましても、全体を見ることは不可能でございます。
 したがいまして、日本の中で生産をする人は、こういったものを使って生産をしましたということを明確にしていただく。外国のものを輸入していただく方につきましては、こういう内容でございますということをやはり最初に検査をしてもらう。そして、その内容をつけたものを提出してもらうということがやはりなければ、私は安全というものは保てないというふうに思っております。
 しかし、野菜でございますから、いろいろのところから集めて、そしてこの日本に運ばれるということになりますと、一つのまとまった、こういう農薬でつくったものでございますということも言えない場合も中にはあるだろう、それはそれで対応の仕方があるというふうに思っておりまして、そうした方向を全体として考えながら、今後、食生活に対応していかざるを得ないというふうに思っております。
 先ほど御質問いただきましたことにつきましては、局の方から答弁させます。
木村政府参考人 一点目の商社の検査能力でございますが、これは、指定検査機関を使いまして検査をいたすような指導をいたしております。
 それから、今やっております輸入業者の自主検査につきまして、検査の結果、異常値を示す、そういうものもあるようでございますが、その比率につきましては、ちょっと承知を、今時点、その数値を持ち合わせておりません。
山内(功)分科員 今、大臣の方から、法律を改正して厳しく徹底したいというお話も伺ったんですが、例えばどのくらい違反件数が出たら輸入禁止にするのかというような、「相当数」の基準を、ざっぱにでも教えていただければお願いします。
木村政府参考人 ただいまの先生の御質問、多分、先日厚生労働委員会で議員立法が可決されましたが、その法律の中の輸入禁止規定におきます基準の話だと思いますが、今回予定されております禁止措置につきましては、特定の国、地域で製造された特定の食品等につきまして一律に輸入等を禁止するものでありますので、公正の観点から、発動の基準は可能な限り明確にすることが求められていると考えております。
 禁止するかどうかに際しましては、個々の事例に即して幾つか要件がございますが、その中に違反率というものも一つ特定をしてございます。この違反率というものがどのくらいかというお尋ねと思いますが、検査をいたしました食品等のうち、おおむね五%以上が違反となった場合を想定いたしているところでございます。
山内(功)分科員 輸入禁止措置をとる際には立入検査なども当然されると思うんですけれども、中国に何回となく、残留農薬の検査は徹底してしてくださいということを言っておられるそうですが、中国側の担当者は、検査はしているけれどもデータはないと皆さんに返事をされるそうですが、これは本当なんですか。
木村政府参考人 先日、農林水産省の担当官、それから厚生労働省の担当官が中国現地を訪問いたしまして、関係部局と協議をしたということがございましたが、その調査に行きました担当官が帰ってまいりまして報告を受けた限りにおきまして、確かにそのような報告を聞いております。
山内(功)分科員 そうすると、実際に外国ですから立入検査権なども十分にない。そして中国から、データはとっていません、あるいはデータを出すことはできませんということを言われると、実際どこまで検査しているのかということも心配になるわけです。この輸入禁止措置というのが本当にできるのかどうかということを、私としては懸念しているんです。
 昨年一年間、ネギとかシイタケとかイグサとか、セーフガードの問題が主に農林水産委員会を舞台に、私も随分議論をさせていただきました。そこで、経済産業省とかあるいは外務省、そういった役所から、いろいろな摩擦を生じさせるとか、あるいは消費者の傾向は安いものに魅力があるとか、あるいは工業製品について対抗措置をとられるというようなことから、随分、農林水産省に対しては大変な圧力がかかったという現場も見させていただいていたものですから、中国に対してしっかりと物が言っていけるのか、あるいは本当に禁止措置までとれるのかということについて、大臣の決意をお聞きしたいと思うんです。
坂口国務大臣 これは、最終的にはそうしますということを、まず申し上げなければいけないというふうに思います。
 現在、尾嵜部長が中国に行っておりまして、そうした、こういう処置をとります、こういう法律をつくりますということを向こうに伝えているところでございますが、ただしかし、輸入を禁止しますと言うだけではいけない。こういう状況が起こらないように、どうしていったらいいかということの話し合いもしなければいけないというふうに思います。
 したがいまして、そこは日中両国間でのいわゆる技術協議と申しますか、野菜をつくりますときにどういうふうに農薬は制限をしなければならないものだとか、使ってはならないものだとかというようなことにつきまして協議をし、現実に、現場におきますさまざまな技術指導等もするといったようなことを乗り越えていかなければいけないんだろうと思いますが、それでもなおかつ多くのそうしたものが入ってくるということであるならば、最後の決断をしなければならないというふうに思っております。
山内(功)分科員 ほかの省からいろいろあろうかとも思いますけれども、実際、健康被害、人の生きる権利に直接かかわる問題だと思いますので、しっかりとした対応をお願いしたいと思います。
 残留農薬基準が、農薬と言われている種類の中で一部しか設定されていないという事実がございます。日本で農薬と言われている薬の登録数、その中で、基準が作成されている農薬は何種類、差し引きした数字はなぜ作成していないのか、そのあたりを伺いたいと思います。
木村政府参考人 国際的に使用が認められております農薬数は七百種類くらいございますが、我が国におきまして残留農薬基準が設定されておりますのは、二百二十九種類でございます。
 それで、毎年毎年、残留農薬基準の策定につきまして二十から三十の数の基準を設定いたしておりますけれども、それだけの数しか設定ができない。その理由といたしましては、いろいろな手順、手続がございまして、薬事・食品衛生審議会におきまして、毒性データを慎重に評価していただいて許容一日摂取量を設定するとか、それから、並行して、各農薬ごとの試験分析法の開発検討及び検証を行う必要があるとかいうことで、かなりの時間がかかりますので、毎年二十から三十の基準設定しかできなかったという経緯がございます。
 今後、今使われております農薬のことを考えますと、あと二百くらいは基準を設定していかなければなりませんが、今のペースでいきますと、なかなかこれを達成することは容易ではございません。
 それと関連しまして、先日、与党の、食の安全確保に関する提言等におきまして、基準未設定の農薬等についての残留を原則禁止する、いわゆるポジティブリスト制の導入を図るべきだという御指摘もいただいております。このポジティブリスト制を導入するにつきましては、やはりある程度の数の、二百程度がこれから必要だと申し上げましたけれども、その程度の数の農薬の残留基準を設定する必要がございます。今のようなやり方ではなかなかこれが設定できませんので、その設定の仕方も含めまして、これから、基準値の設定の方法、それからポジティブリスト制の導入等につきまして、検討を進めてまいりたいと考えております。
山内(功)分科員 ありがとうございました。
 ダイエット食品の問題もございます。個人輸入のあり方も、これから検討していかなければならないでしょう。香港やシンガポールでは昨年から健康被害があったというような情報も、伝わってきております。法律的には、不作為による違法行為と国が問われかねない事態も、健康食品の問題では出てきていると私は思っています。
 厚生省の皆さんは、日本人の命を預かっている役所であるということを深く自覚して、こういう健康被害に国民が陥らないように、しっかりとした行政を行っていただくことを期待申し上げまして、終わりにしたいと思います。ありがとうございました。
山名主査 これにて山内功君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして厚生労働省所管についての質疑は終了いたしました。
 次回は、明二十三日午前九時三十分から本分科会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後七時三十七分散会


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