衆議院

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第1号 平成25年6月21日(金曜日)

会議録本文へ
本分科会は平成二十五年六月十八日(火曜日)委員会において、設置することに決した。

六月二十日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      伊藤 忠彦君    勝沼 栄明君

      小林 茂樹君    河野 太郎君

      島田 佳和君    武井 俊輔君

      野田 佳彦君    河野 正美君

      石井 啓一君    吉川  元君

六月二十日

 河野太郎君が委員長の指名で、主査に選任された。

平成二十五年六月二十一日(金曜日)

    午前九時開議

 出席分科員

   主査 河野 太郎君

      伊藤 忠彦君    勝沼 栄明君

      小林 茂樹君    島田 佳和君

      武井 俊輔君    野田 佳彦君

      福田 昭夫君    河野 正美君

      石井 啓一君    吉川  元君

   兼務 秋本 真利君

    …………………………………

   厚生労働大臣       田村 憲久君

   農林水産大臣       林  芳正君

   経済産業大臣       茂木 敏充君

   厚生労働副大臣      桝屋 敬悟君

   農林水産副大臣      江藤  拓君

   経済産業副大臣      赤羽 一嘉君

   厚生労働大臣政務官  とかしきなおみ君

   会計検査院事務総局第二局長            藤崎 健一君

   会計検査院事務総局第四局長            田代 政司君

   会計検査院事務総局第五局長            太田 雅都君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 杵淵 智行君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           平山 佳伸君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           神田 裕二君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  原  徳壽君

   政府参考人

   (農林水産省食料産業局長)            針原 寿朗君

   政府参考人

   (林野庁次長)      篠田 幸昌君

   政府参考人

   (林野庁森林整備部長)  古久保英嗣君

   政府参考人

   (水産庁長官)      本川 一善君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           中西 宏典君

   厚生労働委員会専門員   中尾 淳子君

   農林水産委員会専門員   栗田 郁美君

   経済産業委員会専門員   乾  敏一君

   決算行政監視委員会専門員 平川 素行君

    ―――――――――――――

分科員の異動

六月二十一日

 辞任         補欠選任

  野田 佳彦君     渡辺  周君

  石井 啓一君     中野 洋昌君

同日

 辞任         補欠選任

  渡辺  周君     福田 昭夫君

  中野 洋昌君     石井 啓一君

同日

 辞任         補欠選任

  福田 昭夫君     野田 佳彦君

同日

 第一分科員秋本真利君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成二十一年度一般会計歳入歳出決算

 平成二十一年度特別会計歳入歳出決算

 平成二十一年度国税収納金整理資金受払計算書

 平成二十一年度政府関係機関決算書

 平成二十一年度国有財産増減及び現在額総計算書

 平成二十一年度国有財産無償貸付状況総計算書

 平成二十二年度一般会計歳入歳出決算

 平成二十二年度特別会計歳入歳出決算

 平成二十二年度国税収納金整理資金受払計算書

 平成二十二年度政府関係機関決算書

 平成二十二年度国有財産増減及び現在額総計算書

 平成二十二年度国有財産無償貸付状況総計算書

 平成二十三年度一般会計歳入歳出決算

 平成二十三年度特別会計歳入歳出決算

 平成二十三年度国税収納金整理資金受払計算書

 平成二十三年度政府関係機関決算書

 平成二十三年度国有財産増減及び現在額総計算書

 平成二十三年度国有財産無償貸付状況総計算書

 (厚生労働省、農林水産省及び経済産業省所管)


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     ――――◇―――――

河野主査 これより決算行政監視委員会第三分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることになりましたので、何とぞよろしくお願い申し上げます。

 本分科会は、厚生労働省所管、農林水産省所管及び経済産業省所管についての審査を行うことになっております。

 なお、各省庁の審査に当たっては、その冒頭に決算概要説明、会計検査院の検査概要説明及び会計検査院の指摘に基づき講じた措置についての説明を聴取することといたします。

 平成二十一年度決算外二件、平成二十二年度決算外二件及び平成二十三年度決算外二件中、厚生労働省所管、農林水産省所管及び経済産業省所管について審査を行います。

 これより厚生労働省所管について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。田村厚生労働大臣。

田村国務大臣 平成二十一年度、平成二十二年度及び平成二十三年度厚生労働省所管一般会計及び特別会計の決算の概要について御説明申し上げます。

 まず、平成二十一年度の決算について申し上げます。

 一般会計につきましては、歳出予算現額二十九兆四千二十六億円余に対して、支出済み歳出額二十九兆五百七十七億円余、翌年度繰越額一千三百三十九億円余、不用額二千百八億円余で決算をいたしました。

 次に、特別会計の決算につきまして申し上げます。

 第一に、国立高度専門医療センター特別会計につきましては、収納済み歳入額二千八十一億円余、支出済み歳出額一千六百七十二億円余であり、差し引き四百八億円余を国立高度専門医療研究センターに承継するなどとして、決算をいたしました。

 第二に、労働保険特別会計につきましては、収納済み歳入額七兆二千三百七十億円余、支出済み歳出額六兆八千六百八十五億円余、翌年度繰越額三十八億円余、未経過保険料相当額百五十八億円余、支払備金相当額一千八百五億円余であり、一般会計からの超過受入額を調整し、差し引き二百四十四億円余をこの会計の積立金として積み立てるなどとして、決算をいたしました。

 第三に、船員保険特別会計につきましては、収納済み歳入額五百五十四億円余、支出済み歳出額四百七十八億円余であり、差し引き七十六億円余を労働保険特別会計及び年金特別会計の翌年度の歳入に繰り入れて、決算をいたしました。

 最後に、年金特別会計につきましては、収納済み歳入額七十五兆六千四百八十八億円余、支出済み歳出額七十四兆六千百二十億円余、翌年度繰越額六千五百八十万円余であり、差し引き一兆三百六十七億円余を翌年度の歳入に繰り入れるなどとして、決算をいたしました。

 次に、平成二十二年度決算について申し上げます。

 まず、一般会計につきましては、歳出予算現額二十九兆三千八十一億円余に対して、支出済み歳出額二十八兆六千一億円余、翌年度繰越額三千九億円余、不用額四千七十一億円余で決算をいたしました。

 次に、特別会計の決算について申し上げます。

 第一に、労働保険特別会計につきましては、収納済み歳入額七兆一千百十九億円余、支出済み歳出額六兆七千三十四億円余、翌年度繰越額十五億円余、未経過保険料相当額百五十億円余、支払備金相当額千七百八十四億円余であり、一般会計からの超過受入額を調整し、差し引き一千七百三十億円余をこの会計の積立金として積み立てるなどとして、決算をいたしました。

 次に、年金特別会計につきましては、収納済み歳入額七十九兆一千八百四十二億円余、支出済み歳出額七十五兆九千三百五十九億円余、翌年度繰越額三億円余であり、差し引き三兆二千四百七十九億円余を翌年度の歳入に繰り入れるなどとして、決算をいたしました。

 最後に、平成二十三年度決算について申し上げます。

 まず、一般会計につきましては、歳出予算現額三十一兆九百九十八億円余に対して、支出済み歳出額三十兆六千四百五億円余、翌年度繰越額一千七百八十三億円余、不用額二千八百十億円余で決算をいたしました。

 次に、特別会計の決算につきまして申し上げます。

 第一に、労働保険特別会計につきましては、収納済み歳入額七兆二千五百六十五億円余、支出済み歳出額六兆七千七百八十一億円余、翌年度繰越額三十億円余、未経過保険料相当額百五十六億円余、支払備金相当額一千七百九十七億円余であり、一般会計からの超過受入額を調整し、差し引き二千六百四十二億円余をこの会計の積立金として積み立てるなどとして、決算をいたしました。

 次に、年金特別会計につきましては、収納済み歳入額八十兆五千二百七十一億円余、支出済み歳出額七十六兆四千百八十四億円余、翌年度繰越額五億円余であり、差し引き四兆一千八十一億円余を翌年度歳入に繰り入れるなどとして、決算をいたしました。

 以上をもちまして、厚生労働省所管に属する平成二十一年度、平成二十二年度及び平成二十三年度の決算の説明を終わります。

 何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。

河野主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院藤崎第二局長。

藤崎会計検査院当局者 それでは、最初に、平成二十一年度厚生労働省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 まず、不当事項でございますが、保険料の徴収が適正でなかったもの、会計経理が適正を欠いていたものなど計四百九十八件につきまして検査報告に掲記しております。

 次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項でございますが、概算払いにより交付した補助金等の国庫返納等に関するもの、年金記録相談等において判明した年金記録の基礎年金番号への統合の処理に関するものなど計十件につきまして検査報告に掲記しております。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項でございますが、予防接種の手数料に関するもの、宿日直手当または超過勤務手当に関するもの計二件につきまして検査報告に掲記しております。

 続いて、平成二十二年度厚生労働省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 まず、不当事項でございますが、保険料の徴収が適正でなかったもの、会計経理が適正を欠いていたもの及び仕様等が適切でなかったものなど計二百五十七件につきまして検査報告に掲記しております。

 次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項でございますが、国民健康保険組合における組合員の被保険者資格の確認に関するもの、緊急人材育成支援事業における訓練・生活支援給付及び訓練・生活支援資金融資の実施に関するものなど計十二件につきまして検査報告に掲記しております。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項でございますが、介護給付費負担金の算定に関するもの、失業等給付金の支給の適正化に関するもの計二件につきまして検査報告に掲記しております。

 続いて、平成二十三年度厚生労働省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 まず、不当事項でございますが、保険料の徴収が適正でなかったもの、仕様が適切でなかったものなど計百五十三件につきまして検査報告に掲記しております。

 次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項でございますが、生活保護における特別児童扶養手当等の収入認定に関するもの、医療保険における医療給付と介護保険における介護給付との給付調整に関するものなど計十件につきまして検査報告に掲記しております。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項でございますが、緊急雇用創出事業及びふるさと雇用再生特別基金事業による委託事業に関するもの、失業等給付金の支給に関するものなど計三件につきまして検査報告に掲記しております。

 以上、簡単でございますが説明を終わります。

河野主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。田村厚生労働大臣。

田村国務大臣 平成二十一年度、平成二十二年度及び平成二十三年度の決算検査報告において掲記されております事項につきましては、会計検査院の御指摘のとおりでありまして、まことに遺憾であります。

 指摘を受けました事項につきましては、直ちに是正措置を講じましたが、今後なお一層厳正な態度をもって事務の執行の適正を期する所存であります。

河野主査 この際、お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河野主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河野主査 以上をもちまして厚生労働省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

河野主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許しますが、本日の分科会は、時間を厳守していただくために、委員部から質問時間終了の通告があった後の質問については、主査は政府側の答弁を求めません。質問は質問時間内に行っていただきますようお願いいたします。

 勝沼栄明君。

勝沼分科員 おはようございます。自由民主党の勝沼栄明でございます。

 本日は、河野主査、伊藤副主査、各先生方の御配慮で、このように御質問の機会を与えていただき、まことにありがとうございます。また、田村厚労大臣、とかしき大臣政務官、政府参考人の方々におかれましても、会期末の非常に多忙な中にもかかわらずおつき合いいただき、ありがとうございます。早速質問に移らせていただきます。

 私は、この職業につかせていただく前は、形成外科の医師として北海道じゅうを転々としておりました。北海道の地域医療の現状を肌で感じてわかっている、そういった自負がございます。

 北海道の地域医療は今非常に深刻な状況であります。統計的には、医師数は対人口十万人当たり二百二十九人と大体全国平均と一緒なんですけれども、そのうち札幌、函館、旭川の三都市に八割近くの医師が集中している。大変地域偏在が見られます。また、医師数を面積で割った指数を、東京を一としましたら北海道は大体〇・一六でございます。また、高齢者率が三〇%を超える地域は百七十九市町村あるうちの百十一となっており、大変高齢化が進んだ地域でございます。

 医師の偏在が大変進んでおりますけれども、御存じのとおり、今僕が御説明したとおり、大変広域分散型であり、高齢者率が大変高く、さらに大変厳しい冬がございますので、患者さんの移動もままなりません。そして、医療難民がどんどんふえている状況がございます。道内各市町村の首長さんにお話を伺いましても、仕事の約三分の一が医師確保に費やされている、そうおっしゃいます。

 全国の自治体でも同様のことが起こっていると思いますが、政府そして厚生労働省、地域医療の現状がこれだけ逼迫している、こういった状況に対しての認識をお聞かせください。

とかしき大臣政務官 質問ありがとうございます。

 勝沼委員の御指摘のとおり、医師不足は厚労省としても大変深刻な問題である、このように受けとめさせていただいております。

 その要因といたしましては大きく四つ考えられまして、まずは、委員も御指摘がありましたけれども、絶対数の医師の不足ということでございます。世界の中の日本の医師の数なんですけれども、これをOECD加重平均で見ますと二・七人、日本の場合は二・二人ということになります。ドイツが三・七人、アメリカが二・四人でありますから、先進国の中でも日本は結構医師の数がやはり相対的に少ない、人口千人当たりの数でありますけれども少ないという、絶対数が不足をしております。

 そして、二つ目が医師の偏在。これも御指摘いただきましたけれども、人口十万人当たりの医師数というのを見ますと、京都府が二百八十六・二人、埼玉県が百四十二・六人ということで、約二倍程度の差が生じております。

 さらに三つ目の理由が、産婦人科、小児科、外科、救急といった特定の診療科における医師が不足をしているというところが挙げられます。

 そして四番目が、女性の医師の処遇が余りよろしくないということで、なかなか難しくて、出産とか育児とかを契機に離職なさってしまう方が非常に多いということで、そういったいろいろなことの複合的要因で医師不足という状況を生んでおります。

 この現状をしっかり認識しまして、厚生労働省といたしましても、医師の確保にしっかり取り組んでいき、引き続きいろいろ取り組みを考えていきたい、このように思っております。

勝沼分科員 ありがとうございます。

 私も同じような認識を持っておりました。やはり、現場で働いていても、なかなかそういった声が通じないですとか、医師の頑張りだけではなかなかこういったことを改善できない、そういった思いから、手段として政治の道を選んだということもございます。

 平成十六年開始の臨床研修医制度、それが引き金となり、医師不足、医師、科の偏在、そして地域医療の崩壊、こういったことが顕在化されたと私は認識しております。加えて、同時期に国立病院、国公立大学病院の独立行政法人化が行われ、さらに、北海道においては無給の大学院生が非常勤でありながらも地方病院で常勤扱いを受けていて保険の面倒を見てもらうとか、その病院が保険料の水増し請求をしていたという名義貸し問題が当時大々的に報道されたこともありまして、各大学病院医局が非常勤医師を地方病院から引き揚げたり、保険指定を取り消された地方病院が相次いだという事件がちょうど同時期に起こったということがありまして、より深刻化いたしました。当初、研修医が大学医局に入局しない制度開始時の二年間だけが問題とされていたものが、遷延化し、よりひどくなっております。

 そこで、お尋ねいたします。

 臨床研修医制度が現在の医師偏在や地域医療崩壊を招いた原因の一つであるとの御認識はございますでしょうか。

とかしき大臣政務官 これも勝沼委員おっしゃるとおり、やはり一つの引き金になったというふうに考えております。

 現在の医師臨床研修制度は、平成十六年に導入をされまして、努力義務から義務化されたものであります。これは、研修医の基本的な診察能力が向上したという効果が見られた一方で、いろいろ問題もありまして、研修医が減少しまして、医師派遣機能が低下してしまった、こういう問題を抱えてしまいまして、医師不足が加速する原因となりました。そしてもう一つは、募集定員が研修希望者の一・三倍を超える規模まで拡大したために、研修医が都市部に集中してしまった、こういった問題もございました。

 このために、平成二十一年から制度の改正を図りまして、これは大きく分けて、研修プログラムの弾力化によりまして必修科目の中に地域医療を入れさせていただいたり、それから、一定規模の病院には産科とか小児科とか比較的お医者さんの不足している研修プログラムを義務づけたり、こういったこともしております。あとは、研修を受けていただく指定病院の基準を強化したりとか、研修医の募集の定員の見直しとか、こういったいろいろなことを対応させていただきまして、少し制度を改善させていただいております。

 研修以外にもさまざまな要因が絡んで、先ほどおっしゃいましたように、いわゆる名義貸しの問題ですとか国公立の法人化の問題とか、こういった問題もありますので、制度を少しずつ改めつつ、いろいろな問題も改善していきたい、このように考えております。

 医療体制を少しでもよりよいものにしていきたい、このように厚労省も考えておりますし、先生も現場でいろいろ経験をなさったことをもとに御提案いただけたら今後もありがたいかな、このように思っております。よろしくお願いします。

勝沼分科員 ありがとうございます。

 とにかく、地方においては、この臨床研修医制度の導入は非常に評判が悪いです。地域医療崩壊の元凶のように語られています。私も実際にそう思っていました。

 というのも、私は平成十二年にちょうど医師免許を取得しまして、次の年から制度導入前の内科ローテーション研修が始まったり、そういったこともありましたので、最後のストレート入局の年となっています。医局制度の崩壊も目の当たりにしてきましたし、また、実際に制度導入当初の研修医の受け入れ、そして指導も行ってまいりました。

 受け入れる側の体制もまだまだ整っていない状況ということもありましたが、九時―五時勤務で、患者さんに責任も持たないで、二年の研修期間が終わってしまえば都会に戻っていく、そんな若い子たちばかり見ていると、やはりがっかりしますし、日本の医療は大丈夫かなと本気で心配しておりました。恐らく、そういった現場の声を受けて、先ほど先生もおっしゃいましたけれども、臨床研修医制度の改正が行われたと思います。

 二〇〇九年二月の臨床研修制度のあり方等に関する検討会のまとめに、大学病院において臨床研修を受ける医師が大幅に減少し、若手医師が実質的に不足したことにより、大学病院の医師派遣機能が低下し、地域における医師不足問題が顕在化、加速化したので、医師の地域偏在への対応、大学病院の医師派遣、養成機能の強化、さらに研修の質の一層の向上等の観点から、研修医の募集定員及び受け入れ病院のあり方を見直す、こう述べられておりますが、それを受けての同年四月よりの臨床研修医制度に関する省令の見直しだと思っております。

 では、二度になるんですけれども、省令見直しによる臨床研修医制度改正の内容を、より具体的にお教えください。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十一年の臨床研修制度の見直しの内容でございますが、先ほど政務官からお答えいたしましたけれども、十六年度以降、基本的な診療能力をしっかりとつけるという目的で始めた研修制度ですが、多々、いろいろと御指摘のような点があった。

 そのために二十一年に内容を見直しましたが、その具体的なものとしましては、一つ目には、まず、研修プログラムを弾力化する。従来は内科や外科を初め七科目を必修として残りは選択ができるようにしておりましたけれども、もう少し幅を持たせるということで、必修としては内科、救急、地域医療の三科目に決めました。ただ、それだけではなくして、残り二つの科目を必ず回ってくださいということで、選択必修科目という名目で二科目をつくっております。

 そういう意味では、弾力化をして、従来の形でやっているところもございますけれども、そういう弾力化のプログラムに合わせた研修病院もございました。

 それから、二点目の指導体制の問題がございます。臨床研修病院の指定基準について、指導医の廃止でありますとか、あるいは入院患者の規模、こういうものについての基準を強化いたしました。

 それから、偏在の問題も御指摘にございました。各病院の募集定員について、受け入れ実績や、あるいは、逆にその病院そのものが、ほかの、例えば僻地の診療所へ医師を派遣しているとか、そういうことを勘案して募集定員を決めていった。それから、都道府県格差もございましたので、このあたりは、人口や、もともとの大学側の医師の養成数でありますとか地理的条件などを勘案しまして、都道府県ごとの募集定員の上限を決めた。

 そういうようなところが主な見直しの内容でございます。

勝沼分科員 ありがとうございます。

 では、その改正によってどういったことがどう変わったか、また具体的にお教えください。

原政府参考人 お答えいたします。

 具体的な何が変わったのか。

 まず、基本的な診療能力の向上、これは大目的ですので、これについてアンケートをとっております。

 研修修了者に対するアンケート調査においては、基本的な臨床知識、技術等について、自信を持ってできる、あるいはできると回答した研修医の割合は、全体的に年々上昇してきております。それから、研修修了者の臨床研修に対する満足度でございますが、これも五点満点で四・〇と高い満足度を示しております。

 また、患者へのアンケート調査におきましても、研修医に担当してもらってよかった、あるいはとてもよかったというような好印象のものが九三・五%と、相当程度の満足度が得られているというふうに考えております。

 そういう意味では、医師と患者との関係においては、一定の効果が上がっていると考えます。

 それから、地域偏在の点でございますけれども、大きな都道府県、東京、神奈川、愛知、京都、大阪、福岡、この六都府県を大都市圏と考えまして、この六都府県とそれ以外の都道府県での研修医の採用実績につきましては、制度導入前は研修医の五一%が六都府県でございましたけれども、平成二十一年度、二十四年度になるにつれまして、六都府県が四六%程度、その他のところが五四%弱というふうになっているところで、これも一定の効果が出てきたのではないかというふうに考えております。

勝沼分科員 ありがとうございます。

 診療能力向上ですとか患者さんの満足度が上昇したことは非常に歓迎すべきことだと思います。

 あと、若干、地域の臨床研修医の数がふえたように感じたんですけれども、幾ら地域とか大学病院に臨床研修医がふえても、研修が終わってその地域や大学に残ってそこの地域医療を担ってくれなければ意味はないですし、もし医師派遣機能強化目的で大学に臨床研修医を集めて医師不足や偏在を解消しようとしているのであれば、少し研修医に期待をかけ過ぎなようにも思います。

 また、臨床研修医制度を廃止して、医師派遣機能を強化した医局を復活させるというならともかく、それは今となっては非常にナンセンスな議論でありますので、臨床研修医制度の改正だけでは医師偏在、地域医療の崩壊の抜本的な解決策にはなりにくい気が個人的にはいたします。当然、卒業前教育や後期研修の充実もあわせて考えなければいけないと思いますし、また、総合診療科の拡充や地域住民の方のマインドの変化など、挙げたら切りがありませんが、総合的な対策が必要と思います。

 ところで、平成二十七年度からも制度改正があると聞いておりますが、今後の臨床研修医制度は、どういったコンセプトで、どう変えていく予定でしょうか。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 平成十六年度から始まりました研修医制度でございますけれども、五年後の二十一年に一度見直しました。

 今回も次の見直しのステップに入っておりまして、平成二十三年の七月から、医師臨床研修制度の評価に関するワーキンググループでもって、さまざまな角度から議論をしていただきました。その結果、本年の二月に論点整理を取りまとめていただいたところでございます。

 現在、この論点整理をもとに、医道審議会医師臨床研修部会において、臨床研修の質の一層の向上や地域医療の安定的確保の観点から、研修プログラムあるいは研修病院の指定基準、募集定員の設定など、制度全般についての議論を進めていただいているところでございます。

 今後の予定といたしましては、平成二十七年度開始の研修医から見直し後の制度を適用することを念頭に、本年じゅうにも見直しに関する一定の方向性を取りまとめていただこうと考えております。

勝沼分科員 ありがとうございます。

 やはり、臨床研修医制度は、あくまで省令の理念にありますように、医師が、医師としての人格を涵養し、将来専門とする分野にかかわらず、医学及び医療の果たすべき社会的役割を認識しつつ、一般的な診療において頻繁にかかわる負傷または疾病に適切に対応できるよう、プライマリーケアの基本的な診療能力を身につけておくことができるものでなければならない。これに沿って充実させていき、同時並行で諸問題を解決していかなければならないと考えます。

 では、医師不足、医師偏在、地域医療の崩壊に対してのその他の取り組みについてお教えください。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、一番初めに政務官の方からもいろいろな医師不足の原因をお答えさせていただきました。まず絶対数の不足ということがございます。これにつきましては、平成二十年度から医学部の入学定員を徐々に増員してきております。それまで十数年間ずっと変わらなかったわけでありますけれども、平成二十年度から徐々にふやしまして、平成二十五年度には、増加する前の平成十九年度に比べて千四百十六人をふやしまして、全体として九千四十一人の入学定員の枠になっております。

 また、平成二十二年度からは、この定員の枠を増加するときに、特定の地域あるいは診療科での勤務を条件とするいわゆる地域枠というものを設けておりまして、平成二十五年度の地域枠の入学定員は四百七十六人となっております。

 こういう意味では、その地域で働いていただける方々を育てている、それから全体的な数もふやしている、そういうような対策でございます。

 また、都道府県がその地域枠の設定をしているわけですけれども、そのためには、修学資金を貸与する、そういうようなことをいろいろやっております。そのための地域医療再生基金による支援なども厚労省から行っておりまして、この基金につきましては、平成二十四年度補正予算で全国の都道府県を対象に五百億円を積み増すこととしております。そのような資金的なサポートもしている。

 それから、あとは、育ってきた人たちをどのように県内の病院に配置するか、あるいは、医者ですので、研修が終わった後もそれぞれの専門領域におけるキャリアを形成してもらわないといけない。そのために地域医療支援センターというものを都道府県に設置していただいて、都道府県内における医師の診療科や地域の偏在を解消する、それから専門医の取得などキャリア形成の支援をしていただく、そういうようなことをやっているところでございます。

 これらの取り組みを通じまして、引き続き、医師確保や医師の地域偏在への取り組みを進めていきたいと考えております。

勝沼分科員 ありがとうございます。

 医学部入学定員の増加や地域枠の増加、そして地域再生基金等に関しましては、他の省庁や各自治体が絡むところでもございますので、また別の機会にお聞きいたします。

 ただ、入学定員増加に関して一つだけ言わせていただきたいんですが、北海道のある大学でも、地域からの推薦入試をふやしたりAO入試を導入したり、いろいろ試みたのですが、結果として留年者がふえてしまったということも聞いております。

 地域の入学者をふやそうとして大学の入学のハードルを下げた結果として授業についていけない学生がふえてしまう、そういうことなんですけれども、これでは本末転倒ですし、やはり質を下げずに量も確保していく。非常に難しい課題でありますけれども、医師というのは勉強はできて当たり前ですから、プラスアルファが一番大事ですので、そこをお忘れなきようお願いいたします。

 では、先ほどお話に出た地域医療支援センターについてお聞きいたします。

 地域医療支援センターの今後の展望、そして期待するところをお教えください。

原政府参考人 地域医療支援センターにつきましては、各都道府県が設置をするということにしております。

 地域医療支援センターには、事務職員でありますとか専任の医師を置くとか、そういう形で県の職員として採用した医師や自治医科大学の卒業生、こういう者たちを都道府県内のどの病院に配置するかというような配置をして、地域偏在の解消に努めていく、そういう役割。それから、先ほども申し上げましたけれども、専門医の取得のためには一定程度、田舎ではできませんので、都会の病院に来る必要もあります。そういうようなためのキャリア形成をどうしていくか、それもあわせて考えていただくということにしております。

 地域医療支援センターには平成二十三年度からその運営費に対する補助を開始しておりまして、平成二十三年度に十五道府県、平成二十四年度には二十道府県に補助対象を拡大してきております。平成二十五年度、今年度におきましては、昨年度から十カ所増加しまして、三十カ所の補助を予定しているところでございます。

 今後とも、地域医療支援センターは、やはり大学を卒業してから一定程度のベテランになるまでのキャリア形成に非常に重要な役割を果たしていただけると思っておりまして、厚生労働省としては、できれば全都道府県に設置をしていただけたらと考えております。

勝沼分科員 ありがとうございます。

 恐らく強制力を持たない医局のようなイメージだと思うのですが、まだ取り組みは始まったばかりですので、実際に派遣する医師も集まってこなければ何も始まりませんから、今後の展開を注意深く見守りたいと思います。

 何度も申しますけれども、医師不足、偏在そして地域医療の崩壊は、全国的に極めて深刻です。さまざまな要因が絡みつつも、地域の医師派遣機能を持っていた大学病院がその力を失ってしまったということが一番の要因であることに変わりはありません。地域の実情に応じて、自治体、大学病院、臨床研修病院、地域の医療機関が協力して対応して解決策を探って、しっかりとした制度をつくることは急務と思います。

 最後に、医療者の端くれとして一言言わせていただきますけれども、実はもっと前から、医師不足も医師偏在も地域医療の崩壊の兆候もありました。でもそれを、やはり現場の医師や看護師やコメディカルの限界を超えた頑張りが、何とか患者さんの力になりたいという使命感がそれを押しとどめてきました。医療行政はその使命感に少しあぐらをかいてきたと言っても過言ではないと思います。それが臨床研修医制度をきっかけとして限界に達し顕在化してしまった。それがこの問題の本質だと思っております。

 パンドラの箱をあけてしまった、そう言う方もいらっしゃいます。今後、医学部入学定員も一・四倍にふえて、単純計算で医学部十四校分の医学生がふえます。これからの日本の医療を担っていく彼らが、高い臨床能力を身につけ、そして医療の社会的側面をしっかり理解した医師となってもらえるよう、医学教育、臨床研修医制度、後期研修制度を充実させ、一人前になった暁には、日本全国で決して地域格差が出ることなく、持てる力を遺憾なく発揮できるように、我々も後押ししていかなければならないと思っております。

 そして、医療を受ける患者さんも提供する医療者側も御家族も皆が幸せになれる、そして超高齢化社会を物ともしない世界をリードする医療制度をつくり上げていくために、私も力を尽くしていく所存でございます。パンドラの箱から最後に出てきたのは希望であります。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

河野主査 これにて勝沼栄明君の質疑は終了いたしました。

 次に、小林茂樹君でありますが、質問時間の厳守をお願いします。

小林(茂)分科員 自由民主党の小林茂樹でございます。

 体の健康というテーマでお話をされた勝沼代議士に続いて、私は、幾分、体の健康もございますが、心の健康について質問をさせていただきたいと思います。貴重な機会をいただいたこと、まず感謝申し上げたいと存じます。

 いろいろな人同士が支え合って、また悩みを分かち合いながら生きていく現代の社会、大変悩み多き現代でございます。そんな中で、最終的にその解決方法をみずから見つけることができずにみずからの命を絶つという悲しい出来事。私たちの記憶にもありますように、十四年間連続でみずから命を絶つ自殺者が三万人を超えていた、そういう記憶がございます。

 昨年は、大台といいますか、三万人を切りまして、二万八千人弱という数字であったかと記憶をしておりますが、しかし、依然として三万人近くの方がみずから命を絶つというこの現状を、引き続き何とかしなきゃいけない、減少に向けて、官民いろいろな分野で取り組んでいかなければいけないと私は思います。

 よく、その自殺防止に取り組まれる団体の方の中で言われる言葉に、一人の自殺者の背後には、同様に深く悲しみ苦しむ人たちが五人いるということであります。そう考えると、この三万人を超えた十四年間、深く自分のことのように悲しむ人たちの累計は二百万人にも及ぶということでありまして、私たちも、もはや人ごとではない、誰しもが身近にそういう苦しみ、悲惨な結果になったということを体験しているわけでございます。

 かつて、交通事故死者が一万人の大台を超えて、交通戦争とも言われたわけでありますが、この自殺者が二万人を、それをも超えているという現状を何戦争と呼んでいいのか、そういうことを考えますと暗たんたる気持ちになるわけでございます。実際には自殺未遂に終わるということも考えますと、我々の周りには、現在も大変深刻な精神状態にある、数多くの悩みを持たれている方がおられるということになります。

 早速、質問に入らせていただきます。

 実情を正確に知ってこそ適切な自殺対策がつくれる、そういうふうに考えます。日本における自殺者は、十万人当たりの発生率で報告されるようでございますが、世界的に見ればどういう水準になるのか、世界的に見てやはり日本は高いのか、そういう調査があるかと思いますので、世界における日本の自殺の発生の現状、また近隣諸国と比較した調査がありましたら、あわせて教えていただきたいと思います。

杵淵政府参考人 お答えいたします。

 世界保健機関の資料によりますと、各国の調査時点が異なっておりますが、日本の自殺死亡率は、ロシア、日本、フランス、ドイツ、カナダ、米国、英国、イタリアの主要八カ国のうちでは、ロシアに次いで高い数値となっております。また、十五歳から三十四歳までの若い世代の死因の第一位が自殺となっておりますのは日本だけでございます。

 このようなことから見ますと、世界的に見ても日本の自殺は深刻な状況にあり、特に若い世代において顕著であると考えられるところでございます。

小林(茂)分科員 主要八カ国の中での調査ということでありますが、先進国の中での調査に限らず、世界的にどういう傾向にあるのかということも、引き続き、私自身も関心を持って調べていきたいと思いますので、また御協力よろしくお願いいたします。

 次の質問でございます。

 悩み相談や自殺防止に具体的に取り組んでいるいろいろな団体がございます。こういった各種団体の活動状況などを聞かせていただきたいと思います。

 悩みを持つ人、さらには、限界まで悩み尽くして、命を絶つまでのぎりぎりの精神状態にある、そういう人の声を真摯に受けとめる、電話を通じて悩みを受ける団体がございます。いのちの電話もその一つでございます。私の知るところでは、そのルーツはイギリスにございまして、日本にはルツ・ヘットカンプといった方が、女性でございますが、日本に紹介されたと聞いております。

 東京で始まったこの活動、一昨年四十年を迎えたわけでございますが、現在では五十一の電話相談センターがございます。四十年前、ようやくボランティアという言葉が広がり始めたころではないかと思うんですが、最近では、資金の問題、また電話相談に応じる相談員の募集に関してもいろいろな悩みがある。人員の不足、資金不足等々についての問題を抱えているようでございますが、悩みを持つ人の具体的な声を聞き、支えていきたい、世の中の役に立っていきたい、こういうような善意で団体が運営されてきたわけでございますけれども、この団体自体も一つの岐路、壁に立っているのかな、そのように思います。

 今の、ロシアに次いで二番目に高いということであれば、世界的にこの自殺に関しては深刻な状況にあるわけでございますが、悩みといいますか、問題を抱えた団体同士の連携という意味では、いのちの電話以外にも、悩みを聞く、自殺防止に取り組む団体が幾つかあるように聞いております。ぜひとも連携をして共通の課題に取り組んでいただきたいと期待をしております。

 質問です。

 これらの各種団体がどのような活動を行っているのか、教えていただきたいと思います。また、従来の電話回線における相談方法に加えて、インターネット上のメールを通じて相談を受け付け、そして回答していく、こういう手法も新たに始まったというふうに聞くんですが、その成果について御存じでしたら教えていただきたいと思います。

杵淵政府参考人 お答えいたします。

 自殺はさまざまな要因が複雑に関係しているため、さまざまな分野の人々や組織が密接に連携する必要があると考えております。そのようなことから、一般的な電話相談以外にも、例えば、専門的な相談を受けるものとして、多重債務問題などに関する相談を受ける団体、あるいは、相談を受けるということではなく、孤立防止などの訪問支援を行うといった団体、自殺多発地域においてパトロールや保護などを行うといった団体など、さまざまな民間団体が悩み相談や自殺予防のための活動を行っているものと承知しております。

 また、メール相談につきましてですが、メール相談は、二十四時間受け付けが可能であり、仕事をしている人でも相談できる、あるいは電話や対面が苦手な方でも相談できるという特性があると聞いております。また、若年層の相談がふえる点があると考えられるところでございます。

小林(茂)分科員 インターネットに関して今お聞きいたしましたけれども、文章化されて、相談者の悩みがある程度明確化されるということであったり、相談者への回答を落ちついて共有して答える余裕ができる、そういう効果もあるというふうに聞いておりまして、今のさらに効果、成果なども聞かせていただきながら、参考にさせていただきたいと思います。

 三点目でございますが、二点目の、似たような関連団体が連携していくということに少し近いわけでございますが、都道府県それぞれが原因について調査しているのであれば、都道府県それぞれに自殺の原因等についてはさまざま地域性があるならば、そういった情報を共有し合って自殺防止に役立てていく、そういうことができるのではないかなと思っております。

 私の地元であります奈良県では、奈良県が事務局になりまして、自殺対策の連絡協議会といったものが設立をされております。自殺防止を願っていく団体の連絡調整の場所となっておりますが、参加者は、臨床心理士、医師、弁護士、ボランティア、報道機関、さまざまでございます。こういったところが参加をして、共通の課題が話し合われております。

 奈良県の自殺発生率といいますのは、全国的には低い水準でございまして、平成二十一年から三年続けてワーストワンといいますかベストワンといいますか、最も少ない数字であります。十万人当たりの発生が二百四十人から二百七十人ぐらいで大体推移をしておりますが、ある意味では自殺対策が成果をおさめていると言えなくもないんですが、引き続き、県としても低い原因を調べて、そして、今後の防止策づくりに役立てようとしております。

 昨年、まだ奈良県が調査を始めた途中経過でございますけれども、奈良県はアルコール摂取の低い県である、そういうところでありまして、それらが原因になっているのかもしれない、そのようなこともあるのかもしれないなと思いますが、悩みがあるので飲酒をするというふうに考えたら、必ずしもアルコール自体に原因があるとは言えないんですが、鶏と卵のことでありますけれども、仮説を立てていく、そして調べていくということは大事でありまして、いつまでたっても原因がわからないということではなくて、アルコールも一つの原因、そういう行動を起こしていく引き金にはなり得るということであるかと思います。

 政府が発表された自殺総合対策大綱、これを見ますと、自殺の主たる原因は、健康、家庭、経済、こういったことが大部分を占める状況でございます。

 ただ、男性の場合に限りますと、原因不明というものも三〇%ある。男性の場合は三〇%原因がわからない。この自殺という案件の性質上、調査の限界もあります。ひとり暮らしの場合はその原因を聞く相手もいないというわけでありますから、調査の限界もあるわけですが、限られたデータをもとにして自殺防止に役立てていくということは有意義である、そう思います。

 他府県、四十七都道府県それぞれにこういう調査事例があるのかどうか、ちょっと私はわかりませんが、この自殺要因が地域によってさまざまである、こういうふうに思います。調査の成果を活用していくという方法もあると思うんですが、都道府県の成果について調査があれば、教えていただきたいと思います。

杵淵政府参考人 自殺対策を進めるに当たりましては、地域における自殺の実態、地域の実情に応じた取り組みを進めることが重要であります。

 自殺総合対策大綱におきましても、必要な情報の提供やその活用の支援、先進的な取り組みの全国への普及などが必要であるとされているところでございます。

 内閣府といたしましては、地域の要望に応じまして、そうした実態の調査等に資するための詳細な地域別の自殺統計の提供をしておりますとともに、都道府県主管課室長会議や取り組み事例集という形で、各都道府県における先進的な事例を紹介しているところでございます。

 都道府県における自殺調査を特定した形では承知はしておりませんけれども、御指摘のような事例も含めまして、引き続き各都道府県に対して有用な情報を提供してまいりたいと考えております。

小林(茂)分科員 今の奈良県のことを事例に、話題にしているわけでございますが、随分古くから、奈良県の統計をさかのぼりますと、既に昭和五十年のころから比較的低位でございまして、昭和五十年は三十七位、五十五年で三十位、昭和六十年で三十八。このころは三十位台であるわけですが、昭和六十一年ごろから、四十四位、四十三位というふうにずっと推移していまして、飛躍的にといいますか、自殺が上がった平成十年、前年、平成九年が自殺者数二百十二人であったのが、やはり翌年平成十年、奈良県は三百三十一人、一気に百二十人上がったということで、全国的な趨勢と傾向をともにしているということがここからうかがい知れるわけであります。しかし、依然として、四十一位、四十七位、三十八位と、ずっと低い水準であるんです。

 先ほど、アルコール摂取量と比例しているのではないか、そういう仮説を奈良県では一旦立てたかのように聞いているんですが、私の奈良県が低い仮説というのは、奈良県はベッドタウンでございまして、昼間人口が非常に低くなる、三〇%が他府県に働きに出る、こういう地域特性がございます。すなわち、サラリーマンの方が多い。大企業、中堅企業、中小企業の経営者が少ないということも言えるわけです。

 本当に、一人で背負えないぐらいの大きな負債を抱えて行き詰まる、経済的な悩みを抱えて、どうしようもない段階まで追い詰められる、こういった人の数が結果として少ないというのが、奈良県が少ない理由じゃないかなと私も日ごろ考えているところなんですが、男性の場合、経済状態を苦にしてという状況、自殺率が高いというところもありますので、これにどう対策を講じていくかということも、目に見える形で減少させる一つの方法じゃないかなと思うわけであります。

 質問の四点目でございますが、東日本大震災被災地、主として東北地方でございますが、東日本大震災の被災者の心のケアが急務でございます。特に、児童、高齢者を初めとした社会的弱者というんですか、こういった方々に対しては、特に手厚いケアが必要でございます。

 先ほど紹介をいたしましたいのちの電話は、仙台にもセンターがございます。仙台にあります電話相談センターの事例でございますが、二年前、二〇一一年三月十一日発災。この日以降も、恐らく一時的には被害の状況にあり、回線もストップしたかと思うんですが、復旧をいたしまして、その建物に電話相談員が通勤をすることが可能になってきた。また、電話回線も復旧をして、その地域の、悩みを抱えるいろいろな方々が相談しに来られた。恐らく、日ごろからの相談、心の相談以外の相談も相当殺到しただろうと予想するわけですが、そのような状況にあっても、仙台の相談員の方々は休まずに出勤をされていたわけですね。

 実際に、相談を受ける方々も被災をしていたかと思います。住居を失ったり、また、知人、友人を失われたというケースもあったかと思うんですが、そういう大変な状況にもかかわらず、仙台の方々は献身的にそのセンターに来られて、不眠不休。このいのちの電話相談センターというところは二十四時間三百六十五日休まない電話相談でございますので、休まれずに仙台の方々は出勤をされていた。それ以上出勤をされると、もう本当に危険な状態になるんじゃないか、そう思って、どうかお休みくださいということで、それ以上無理をされるといけないということで、ようやく休止をされた。

 こういう話で、私も驚いているわけでございますけれども、その後、一旦休止をされて、休止をしている期間は、全国にあるその他の四十幾つかのセンターがかわりに被災地の相談を受けた、そして適切な対応をしていた、そういう状況であるということでございます。もはや民間のボランティアだけでは限界を超えていたという状況であったわけですが、それでも働かれた。敬意を表したいと思うわけであります。

 現在も、東日本大震災の後に被災地にお住まいになっている人たちは、心の悩み、健康の悩み、経済的な悩み、さまざまな悩みを抱えることになっておられるわけですが、その中でも、特に社会的弱者である児童、また高齢者の心のケアに対してどのように取り組まれているのか、お尋ねしたいと思います。先日の新聞報道でも、特に女性の悩みを専門的に聞いたりしている、そういう取り組みがあるというふうにも聞いていたんですが、具体的にお答えがあれば教えていただきたいと思います。

田村国務大臣 あの東日本大震災は本当に未曽有の災害でございましたから、本当に被災者の方々は大変な悩みを抱えられながら今なお暮らしていただいておられるわけであります。そのような意味からいたしますと、心的外傷後ストレス障害、PTSDでありますとか、うつ病、さらには、不安障害でありますとか、時間がたつにつれ、アルコール問題なども広がってきておるわけでありまして、それをいかに専門的な医療につなげていく体制をつくるかということが大変重要であろうというふうに思います。

 我が省の補助事業でありますけれども、心のケアセンター、こういうものをおつくりいただきまして、専門職の方々にいろいろな相談に乗っていただきながら、必要に応じて専門的な医療というものにつなげていく。こういう体制をそれぞれ、岩手、宮城、福島県等々でとっていただいておりまして、このようなセンターを複数おつくりいただいております。

 一方で、子供の話も出たわけでありますけれども、子供に関しましては、安心こども基金という基金がございまして、ここから、例えば児童精神科医の先生方、こういう方々に相談に乗っていただく、また、訪問等々をしていただきながら巡回相談みたいな形、こういう形もとっていただきながら対応いただく。一方で、子育て関係の職種の方々、例えば保育士の方々でありますとか、そういう方々には、研修を受けていただきながら、そのような問題に対して対応できる能力をおつけいただくというようなこともしていただいておるわけであります。

 高齢者に関して申し上げますと、だんだん長引いて、それぞれ仮設住宅等々でいろいろな悩みも複雑化してきておるわけでありますけれども、やはり、地域支え合い体制づくり事業という中において、サポートセンター、これはもう被災後直ちに立ち上げてきておるわけでありますが、そういうようなサポート拠点をつくっていただく中において、例えば、生活支援サービス、それから地域の交流等々、こういうような事業もやっていただいて、コミュニケーションをとっていただく。相談事業等とあわせて、そういうような形で高齢者の方々に対しても対応いただく。

 女性の方々は、女性の方々特有の悩みがありますから、こういうものに配慮しながら、これは高齢者のみならず、そういう方たちに対してもしっかりと対応いただくというようなことでございます。

 いずれにいたしましても、やはり、心のケアという部分で、時間の経過とともにいろいろな症状が出てこられます。早く治療といいますかケアをしていかないと、これが重症化していくわけでございまして、しっかりとアクセスできるような体制、アウトリーチも含めてでありますけれども、そういう体制づくりをこれからもしっかり進めてまいりたい、このように思っております。

小林(茂)分科員 ありがとうございます。

 昨年一年間は、私自身も、それまで自分が身を置いていた地方議会、県議会という立場から、国政を目指して、国の政治に自分自身がかかわっていきたい、そういったことで活動してきたわけですが、当時のテーマ、経済を回復させよう、外交を安定させよう、それらに続いて、東日本大震災からの復興復旧、こういったこともテーマで、遠く奈良県からそういうエールを送りたいという気持ちで、何度か地域に足を運びながらも、しかし具体的には支援の方法もない、そういう無力さというものを痛感したわけです。

 今紹介したように、仙台におけるこの電話相談のセンターは本当に献身的にやっておられますし、一時的に受け切れなかった電話相談の回線を、全国、北海道あるいは九州、沖縄、こういったセンターが一時的に受けて、遠くから支えていた。こういったことを聞くにつれて、遠く離れていてもできる支援というものがあるんだろうなと思います。

 また、現地においては、今、大臣お答えのように、きめの細かい、女性に対する支援、児童、高齢者に対する支援というものが着実に進められているということでございますので、引き続き推進いただけたら、そういうふうに思っております。

 いのちの電話のこと、あるいは同様の活動をしている各種団体のことを話題にさせていただきましたが、具体的な相談の内容、電話でのやりとり等々、記録を、プライバシーの保護もありますのでその範囲内のことでありますが、それらを見ますと、本当に悲惨な、出口のない案件というものも多々ございます。しかし、どんな悲惨な状況にあっても、みずから命を絶つ、そして新たに五人の悩み苦しむ人たちを生んでしまうという状況は避けねばならないと思っているわけでございますが、誰が支えていくのか。家族、夫婦、知人、友人、こういった自分以外の誰かの人が支え手である必要があるなと思っております。

 自殺総合対策大綱なども読ませていただいておりますが、やはり家族といったものが、家族が支え合っていくということが必要であるな。少子高齢化対策といったものも、厚生労働省を中心に解決していくべき大きな課題の一つでございますけれども、いかに苦しみ、悩みを持とうとも、夫婦、家族の支えで何とか乗り越えていくんだ、そういう思いがあれば、やはり家族を持っていく、パートナーを見つけていくということを奨励していく世の中にしていかなければな。そうあれば、どんなに苦しい、この東日本大震災のような状況であっても乗り越えていけるなと、こういう質問をいたしながら感じているところでございます。ありがとうございます。

 四点目の質問は以上でございます。

 最後に、五点目でございますが、今の東日本大震災の話題から、少し関連をいたしまして、若干、農林、経産の分野に及ぶかとは思うんですが、東日本大震災の被災地にお住まいになっている方々、まずは、体の健康を取り戻す、と同時に、心の健康も取り戻す、こういった課題がございますが、その被災地に暮らしている人たちが本当に安心して暮らすためにどんなことが必要なのか。少し飛躍をしているかもしれませんが、安心して暮らせる住まいづくり、そして、若い人たちも、この東日本の被災地にやってきて、なりわいを行う、仕事をしていく、生活をしていく、そういう意味での、仕事場づくり、産業振興といったものも必要であると思います。

 住宅整備そして産業振興、こういった側面から考えたときに、地元の農林水産業の振興というものも私は一つの課題であると思うんです。中でも、私は奈良県出身でございまして、奈良県の貴重な資源であります山林、森林、これを産業振興という面に、経済になかなか生かせずに、お金にかえられない、こういう課題を持っているわけでありますが、東北地方も、そのような意味においては、かつては森林立県であったわけであります。再び林業振興のためにどのような方法があるのか、現状認識をしておきたいなと思うわけでございます。

 そのためにも、冒頭に、心の悩み、日本ではどんな水準なのか、世界先進八カ国の中での二番目である、そういう数字を聞かせていただいたんですが、正確に現状認識をするために、木材の現在の自給率を正確に教えていただきたいと思います。

 よく言われる食料自給率四〇%。しかし、これはカロリーベースであって、実際に、別の指標からすると四〇%よりもう少し上がっていく、こういう数字のトリック的なものもあると聞いておりまして、食の場合は四〇%、これが共通理解でございますけれども、別の角度からいうと、もう少し上がっていくということでございます。

 木材に関して、この自給率はどのようになっているのか、教えていただきたいと思います。

篠田政府参考人 お答えを申し上げます。

 木材自給率の推移でございます。ややさかのぼって、振り返ってみるわけでございますけれども、昭和三十九年に貿易自由化というのが始まりましたし、それ以降、昭和六十年代だったと思いますけれども、為替で円高が進んだとか、木材価格それ自体が低下したということで、林業経営の方は非常に厳しい環境にあったというのが一面でございます。

 それで、国産材の需要も一方でまた徐々に低下をいたしまして、最近で申しますと、平成十四年が底でございました。平成十四年に木材自給率が一八%。その後、やや持ち直しまして、平成二十三年には二六・六%という数字を現在把握してございます。製材用材に限りますと、もうちょっと、やや高うございまして、同じく、平成十四年が三二%だったのが、最近、二十三年は四三・一%という数字が現在出ておるところでございます。

小林(茂)分科員 木材利用促進の具体的な方法がさらにあれば、そのこともあわせてお聞きしたいと思います。

篠田政府参考人 お答えを申し上げます。

 木材需要を拡大していくというのは、これは非常に重要な取り組みかというふうに思うわけでございます。

 私どもの方では、木材自給率が五〇%という目標を掲げておりますけれども、国産材の利用を推進していくということで、幾つか施策を講じております。

 一つには、公共建築物の木造化でございますとか、あるいは木材加工施設の整備につきまして御支援を申し上げるというのがございます。それから、これは最近始めたわけでございますけれども、木造の住宅をおつくりになる、その建築をされるときにポイントを付与する木材利用ポイントということでございますけれども、こういった取り組みも始めているところ。それから、耐火性、耐震性というのも非常に大事でございますので、そういったものを備えた製品を開発して普及する。それから、最近これもまたいろいろ進行しておりますけれども、木質バイオマスを使いました発電施設等々を整備している。こういったことを講じているところでございます。

 引き続き、需要拡大につきましては、私どもも熱心に取り組ませていただきたいというふうに考えているところでございます。

小林(茂)分科員 ありがとうございました。

河野主査 これにて小林茂樹君の質疑は終了しました。

 次に、吉川元君でございますが、質疑時間を厳守していただきたいと思います。質疑終了の通告後の質問については、政府側の答弁を求めません。よろしくお願いします。

 吉川元君。

吉川(元)分科員 社民党の吉川元です。

 本日は、雇用行政を中心に、時間が許せば生活保護制度についてもお尋ねしたいと思います。

 最初に、雇用保険制度についてです。

 図らずも職を失ってしまった方に対する失業給付は、働く人にとっての最初のセーフティーネットです。その意味で、第一のセーフティーネットである雇用保険制度を充実させることは大変重要なわけです。

 しかし、完全失業者数に占める雇用保険の受給者の割合は、総務省の労働力調査とそれから独立行政法人労働政策研究・研修機構の雇用保険業務統計から推測をいたしますと、日本の場合、この雇用保険受給率が大変低くなっております。

 当初、七〇年代のころには八〇%、九〇%という時代もありました。だんだんとこれが低下をしてまいりまして、二〇〇〇年代初頭には二〇%台に低下をしている。ことしに入ってからは、これは月ごとにも統計が出ますけれども、一月が二〇・五%、二月が一九・二%、そして三月が一八・六%と、ついには一〇%台に突入してしまいました。

 欧米諸国では、失業者の雇用保険受給率が七割から八割というふうな話も聞いたことがございます。なぜ日本ではこのような事態になっているのか、その要因について厚労省としてどうお考えなのか、尋ねます。

桝屋副大臣 お尋ねがございました点でございますが、今委員もお話しされました、完全失業者数に占める雇用保険受給者の実人員の割合でございますが、現在二割程度だろうと思っております。お話がございました総務省の労働力調査における完全失業者、これが二十四年度でありますが二百八十五万、その中に占める雇用保険受給者の実態でございます。

 ただ、この二百八十五万の中には、失業期間が一年以上の長期失業者が百七万、そのほか、主婦などの働いていなかった者が新たに仕事を探し始めた場合、これも入っているわけであります、これが三十五万人、それから学卒未就職の場合、これも大きな問題でありますが、十五万人、あるいは自営業者が廃業した場合などその他の場合、これが二十五万人ぐらい含まれているわけであります。こういう実態があるということでございます。

 なお、平成二十二年の雇用保険法改正によりまして、三十一日以上の雇用見込みがあります労働者への雇用保険の適用拡大を図っておりまして、非正規雇用労働者に対するセーフティーネット機能の強化を図っているところでございます。また、雇用保険を受給できない方に対しては、平成二十三年に求職者支援制度を創設いたしまして、支援を行っているところでございます。

吉川(元)分科員 今ほど、窓口を広げたというお話であります。それに関連して、一点お聞きしたいことがございます。

 いわゆるリーマン・ショックの後の派遣切りに対応して、今お話のあった非正規労働者の雇用保険の加入要件は三十一日以上の雇用見込みへと緩和をされました。これ自体は大変評価をするものです。

 ただ、どうしても指摘をさせていただかなければいけないのは、その際に、受給要件を満たす被保険者期間、これもあわせて変えられている。それまでは離職一年前六カ月だったものが、離職二年前十二カ月というふうになっております。あるいは所定給付日数を短縮するといったようなことも行われており、結果的に言うと、受給要件は厳しくなっているというふうにも認識できるわけです。

 とりわけ自己都合退職、これは、今のいろいろな雇用の厳しい中にあって、本来は自己都合ではないけれども、自己都合にさせられるようなケースも散見されます。そういう自己都合退職で保険加入期間が十年に満たないと、九十日間の給付にとどまるわけです。深刻なデフレの不況下で、求職期間が長引いている現実とミスマッチを起こしているのではないかとも思います。

 また、基本手当日額も、月額に換算いたしますと最高で二十二万円程度だと思いますけれども、これですと、東京二十三区で四人家族の世帯でいいますと、生活保護費を下回るような額にしかならないということでございます。

 政府は、生活保護費を削減するということに向かっているわけですけれども、この第一のセーフティーネットを充実させない限り、最後のセーフティーネットである生活保護がふえていくというのは、これは当たり前の話ではないかとも考えます。

 受給資格要件あるいは基本手当日額、所定給付日数について、失業者の実態に沿って充実させる方向で見直すべきだと思いますけれども、大臣のお考えはいかがでしょうか。

田村国務大臣 今委員おっしゃられましたとおり、雇用保険の受給資格要件について、平成十九年の雇用保険法改正によりまして、離職前二年において十二カ月の被保険者期間があること、こういう要件としたわけでありまして、このときに、同改正の中において、ただし、解雇、倒産に関しましては、離職前一年間の間で六カ月以上ということであったわけであります。

 リーマン・ショックの話が出ました。その後、二十一年の改正におきまして、雇いどめ等々、これに関しましても、一年で六カ月というような、そういう要件でもいいというふうにしたわけでございます。ここは、リーマン・ショックも受けまして要件緩和をさせていただいたわけでありますが、なかなかいろいろな御意見があるわけでありまして、給付に関しましてはもっと手厚くすればいいじゃないかというふうに委員はおっしゃられますが、一方で、財政等々を考えたりでありますとか失業率、こういうものを勘案しますと、まだまだそのような状況でないと言われる方々もおられるわけでございまして、なかなかこれは、引き続き議論をしておる最中だということでございます。

 なお、一番の特効薬は、しっかりと再就職をいただくということでございまして、こういうための支援で、やはりハローワーク等としっかりとした体制を組んで、それから、これは、言うなれば、福祉とそれからハローワークというような形での連携というものも各地域で始まってきておるわけでございまして、そういうような形で、アクセスしやすいような形の中で就労につなげていくということが大事であろうということでございまして、これからもそういうような形の体制づくりをしっかりと進めてまいりたいというふうに思っております。

吉川(元)分科員 今、今後も検討していくということでございますけれども、先ほども少しお話をしましたが、自己都合という名で、実は、本当のところは自己都合ではないけれども自己都合と書かされる、そういうケースも、これはどのぐらい実態としてあるのかというのはありますけれども、報道もされておりますので、実態に即した形で、とにかく最初のセーフティーネットをしっかりと張って、そこから、大臣も今おっしゃられたとおり、もう一回就労していくということが社会にとっても本人にとっても一番ベストなことですので、そうした観点から、しっかりと今後も検討をいただければというふうに思います。

 次に、雇用対策について少しお尋ねをします。

 リーマン・ショックを経て、雇用対策が次々と打ち出されてまいりました。しかし、現実を見ますと、残念ながら、正規雇用はふえず、相変わらず非正規雇用がふえ続けております。

 今回、二〇〇九年度分からの決算の審議ということですけれども、二〇〇九年の一月―三月期の平均で、正社員が三千四百万、非正規が一千七百四万人おられました。直近の統計、二〇一三年の一月から三月でいいますと、正規の社員が三千二百八十一万人、それから非正規の方が一千八百七十万人。ということは、この四年間の間に、正社員が百十九万人減り、非正規は逆に百六十六万人ふえております。

 まず、お伺いしたいのは、非正規がなぜこのような形でふえてきているのか、その要因についてどう考えておられるのか、厚生労働省のお考えを尋ねます。

桝屋副大臣 ただいま委員の方から厳しい数字をお示しいただいたわけであります。

 これまでも、お話がございましたリーマン・ショック、あの東日本大震災あるいは急激な円高といった厳しい経済状況に置かれている中で、累次の雇用対策を打ってきたわけでありますが、この雇用対策としては、いわゆる雇調金、雇用調整助成金の要件緩和などを実施いたしまして、雇用の下支えを中心に行ってきた、こういう流れがあろうかと思います。

 一方、企業におきましては、厳しい経済情勢あるいは国際競争の中で、こうした対策を活用して雇用の維持に取り組んでいただいた、こういうことでございますが、先行きが見通せない中で、正規雇用を増加させるまでにはなかなか現状至らなかった、こういうことだろうと思っております。

 政府としては、日本再興戦略などによりまして経済成長を実現していく中で、正規雇用を増加させるとともに、非正規雇用の若者の学び直しの支援など、非正規雇用労働者の雇用の安定あるいは処遇の改善に向けた総合的な取り組みを強力に進めていきたいと考えてございます。

吉川(元)分科員 さまざまな経済環境の変化等々の中でこういう事態は起こっているということは、これは理解できる部分もございます。ただ、この間行われてきた雇用対策にも実は問題があるのではないかということを指摘せざるを得ません。

 先ほど比較をいたしました二〇〇九年一月から三月期と二〇一三年一月から三月期では、雇用全体はふえております。ただ、要するに、仕事がありますけれども、非正規ばかりがふえて正社員が減っているという形になっております。これは、つまり正社員の代替として、賃金や社会保険料負担が安くて済む非正規が雇用されているということではないかというふうにも推測できるわけです。

 問題にしたいのは、そういうときに政府が打ち出していく雇用対策、これが正社員の増加に寄与してきたのかという点でございます。

 例えば、これは現在行われていることでございますけれども、若者チャレンジ奨励金というのがございます。内容は、三十五歳未満の非正規雇用に社内訓練を実施すれば、その企業に一人一月十五万円、二年間支給される。上限は年間で六十人月ということでございますから、単純に計算いたしますと一千八百万円が企業に入るわけです。さらに、二年後に正社員にすれば、一年後に一人当たり五十万円、二年後にはさらに五十万円が企業側に支給をされる。企業にとっては、これはかなり高額な援助になってきます。

 こういうチラシ等がございますけれども、これを見ますと、新規の非正規雇用の若者を雇うだけではなくて、既に有期雇用として契約をしている社員でも構わない、オーケーだということになっております。この制度によって正規社員がふえればもちろんよいことだというふうに思いますけれども、変な使われ方をしますと、二年間、国の援助を受けて非正規を雇用できる、そういうことになりかねません。

 同じように、トライアル雇用奨励金あるいは実習型雇用助成金も、常用雇用ではなく、あくまで有期雇用として採用することが条件になっています。正社員化そのものを目的とした均衡待遇・正社員化推進奨励金であっても、有期雇用を正社員化する場合に助成金が支給をされます。

 もともと、正規であれ非正規であれ、会社にとっては仕事があって労働者が必要だから雇用するわけであって、非正規で採用するなら助成金や奨励金を出しますよ、そういう政策が打たれますと、本来、正規で雇おうと思っていても、とりあえず正規ではなく有期で雇おう、非正規で雇った方が国からの支援があるんだ、そういう誤ったシグナルといいますか、そういうものにつながりかねないという危惧を持ちます。また、これはあってはならないことですけれども、さまざまな不正が発生する危惧も持たざるを得ません。

 先ほどの若者チャレンジ奨励金でいえば、二年後に正規雇用しなくても、奨励金を返還する必要はないというふうにもなっております。このスキームで果たして正社員が確実にふえるのか、これはちょっと私も疑問を持たざるを得ません。

 多くの求職者がいても、中小企業、零細企業では募集をかけても人を確保することが困難だというようなことも聞き及んでおります。であれば、中小企業であっても非正規ではなくダイレクトに正社員を雇おう、そういう企業にしっかりと応援をしていく、賃金の上乗せができるような、そういう雇用対策にした方が、正規をふやしていく、安定した雇用をふやしていくということでは実効性は高いのではないかというふうにも考えます。

 これまでの雇用対策のあり方をしっかりと総括し、見直すべきだと思いますが、いかがでしょうか。

田村国務大臣 日本の国は非正規の割合が大変ふえてきておりまして、これはバブル崩壊後、やはり日本の国の製造業を中心に国際競争力もだんだん失われていく、円高の加速ということもいっときございました、そういう中においてなかなか、国内において、製造業だけじゃないんですけれども、持続的に職場というものをつくっていけるということ、それから、閑繁等々、いいときと悪いときがありますから、そういうものに対応ができるかできないかという中において、正規よりも非正規の方がそういうものに対応しやすいというような経済状況であった。

 国内のサービス産業等々を中心にやはり長引くデフレでございまして、そういうものに対応していく中において、正規雇用よりも非正規の方が使い勝手がよかったというような不幸な状況があったわけでありますが、一方で、製造業を中心に、非正規というものが、失業率増加、これは欧米を見ておりますとかなり失業率が高い中でも、日本は比較的、高いといっても一定程度でおさまっておったというのは、一定のバッファー役を果たしたんだというふうに思います。

 ただ、処遇という意味では、本来、非正規というものは、雇用期間というリスクを企業はヘッジしておるわけでありまして、労働市場からいえば、本来はそちらの方が高くなきゃいけない、そういう話になるんですが、悲しいかな、そういう状況になっていないということでございまして、少なくとも同一価値労働同一賃金というものを我々も目指していかなきゃならぬなという思いの中で、これから非正規の処遇改善をやっていかなきゃならぬというふうに思っております。

 ただ、一方で、そうはいっても、やはり正規にかわっていただかなきゃならぬという我々の思いもあるわけでございます。今言われましたこの若者チャレンジ奨励金というものは、今委員そのようなおっしゃられ方をしましたけれども、本来は正規になっていただくための、そういう事業でございまして、二年の間、これは上限は二年ということでございますけれども、座学を学びながら、また一方でオン・ザ・ジョブ・トレーニングをやっていただきながら、その間、月々十五万円出る、それで就職が定着すれば、さらに五十万円ですか、これが出るということでございます。

 決して企業に、非正規の方が使い勝手がよく、これを利用してもらうというものではございませんでして、しっかりと正規に向かって、ぜひともそれぞれの企業でお学びをいただきながらマッチングをいただく。それぞれのニーズといいますか、それぞれ、要するに労働者側と企業側がうまくマッチングできるというような仕組みの中で実は提案をさせていただいて、予算計上して進めておる事業でございますので、そうならないようにしっかりと対応をしてまいらなきゃならぬと思っておりますので、そこはチェックをしてまいりたいというふうに思っております。

吉川(元)分科員 今、大臣の御答弁がありました。その意図は決してだめだということではないんですけれども、ただ、このスキームがかえって、正規を雇うよりは、例えば、中小企業で正規を雇おうと思った、そうしたらこのチャレンジ奨励金がある、二年間非正規で雇えれば月十五万円もらえる、だとすれば、普通の企業経営者とすれば、二年後に正社員にするというふうに考えていたとしても、最初の二年間、では有期でいいじゃないか、その方がお金が入ってくるんだからという、そういう逆の形になってしまわないのか、それを非常に私は危惧をしております。そういうことがないように、しっかりと見ていただければというふうに思います。

 次に、ハローワーク及び労働基準監督の業務について尋ねます。

 ハローワークの業務に従事する職員の中には臨時、非常勤などの非正規が非常に多いというふうに聞いておりますけれども、どの程度の比率になっているのかお聞かせください。

桝屋副大臣 ハローワーク業務の職員の構成のお尋ねでありますが、ハローワーク業務に携わっております職員につきましては、平成二十五年度でありますけれども、約二万九千人おりまして、そのうち非常勤職員は約六割でございます。

吉川(元)分科員 ちょっと驚くほど高い比率であります。

 非正規の方がだめだと言うつもりは全くございませんが、現在の就職難の折に、窓口でしっかりと求職者のニーズに応えていく、そのための知識や経験、それから、やはり何より本人の心構えといいますか、自分も安定して働きながらきちんと対応していくんだという環境をつくっていく、あるいは責任を負える体制をつくっていくべきだというふうに考えております。

 日本の場合、正規の職員一人当たりが担当する失業者の数は二百八十人を超えると聞いております。一方、他の先進国でいいますと、イギリスは二十三人、ドイツは三十七人、フランスは四十六人。これだけのギャップがあるわけです。

 先ほどもずっと言われておりました、きちんと職を見つけていただく、就労していただく、そのための大きな役割を果たすのがハローワークでございます。そういう点からいうと、やはりきちんとした対応ができるような体制をつくっていかなければいけないというふうにも思います。

 あわせて、労働基準監督官の数についても少しお話を聞きたいというふうに思います。

 年々、個別の労働紛争の制度の利用者が増加をしております。そういうところから見ますと、職場の労働条件の監視というのは大変重要な役割、労働基準監督官の役割というのは重要だというふうに考えております。

 これは麻生財務大臣がよく言われるわけですけれども、経営者の矜持、家族的な経営といいますか、働いている人たちをまず第一に考える、そういう日本的な経営といいますか、そうした経営者がいればいいのかもわかりませんが、残念ながら、今、ネット上では、ブラック企業だとか、そういう驚くべき企業の実態ということも報告をされています。

 そういう中で、監督官はしっかりやっていかなければいけないというふうに考えますけれども、日本の場合は、この労働基準監督官が物すごく不足をしているということになります。一人当たりで千、二千、ある報道では三千を超える事業所を担当している。これは、年間一千八百時間の労働時間で一時間に一つの事業所を回っても、事実上不可能ですけれども、千八百です。これを考えますと、圧倒的に監督官が不足をしているのではないか。

 これは、もちろん働く人の労働条件のことも関係をしますけれども、昨年、関越自動車道で高速ツアーバスが事故を起こしました。その原因はさまざまありますけれども、その一つの要因として、やはり労働条件が大きな影響を与えているということも指摘をされております。ただ単なる労働条件ということだけではなく、利用者あるいは国民の安全にもかかわるような、そういう事態も発生をしているわけです。

 そこで、大臣に、労働基準監督官の数について、現状どのような認識をお持ちで、また、今後どのように対応していこうとお考えなのか、お聞かせください。

田村国務大臣 労働基準監督官でありますけれども、委員おっしゃられますとおり、日本は決して多くないわけでございまして、ILO事務局が作成した資料において、先進工業市場経済国では労働基準監督官一人当たり最大労働者数一万人というふうに目安をつけておるわけでありますけれども、我が国は一万六千四百人ということでございますから、そういう意味では、やはり、比較的といいますか、比較して少ない。ILOが言っている状況よりもさらに多くの人数を一人で見ているという状況であります。

 やはり、過重労働等々をどう防止していくか、それから労働安全衛生というものをしっかりと見ていくという意味からすれば、この労働基準監督官の役割というのは大変大きいわけでございますが、一方で、行革、総定員数という中においてなかなか人数をふやせないというような、そういう悩みを抱えておるのも事実でございます。

 いかに効率的にこれをしっかりとチェックできるような体制をつくるかということで、例えば、全国企業ならば、本社企業等々をしっかりとチェックする中において全国にその目を光らせていくでありますとか、いろいろな情報をメールでしっかりととっておいて、あらかじめ目安をつけながら効率的に指導していくでありますとか、いろいろな効率的な方法を考えておるわけでございまして、とにかく、少ない人数ではございますけれども、憂いのないようにしっかりと体制を整えて頑張ってまいりたいというふうに思っております。

吉川(元)分科員 とにかく、行革の観点はいろいろありますけれども、これは財政も含めてそうですが、働く人々が安心して働ける、その環境をしっかりつくっていくということが、結果的に言えば税収を確保していくことにもつながりますし、景気回復にもつながっていく、そういう認識のもとでしっかりと体制を整えていただければというふうに思います。

 次に、公務員の関係についてお伺いします。

 先ほど、ハローワークの現場で、臨時、非常勤など非正規雇用が多いのではないかというふうに質問させていただきました。これは、国家公務員あるいは地方公務員の職場でも同様の事態になっております。

 細かい点について触れようとは思いませんけれども、国家公務員の職場では、臨時、非常勤など期間業務職員は、原則、公募による一年更新の雇用で大変不安定な身分、そのもとで正職員の方と同じような仕事をされているということもお伺いをしております。

 これらの方々の賃金、労働条件などの処遇の改善に取り組んでいただきたいというふうに考えておりますが、あわせて、改正労働契約法によって、民間の労働者の場合は有期雇用から無期雇用への転換の道が開かれまして、これは一歩大きな前進だというふうに考えております。ただ、公務員の場合はここから落ちております。適用除外ということになっております。

 隗より始めよという言葉がございますけれども、これはもちろん、所管は違うというふうにお答えになられるかもわかりませんが、労働行政全般をつかさどる厚生労働省の長である大臣が、率先して政府に働きかけをしていく、公務員の有期雇用労働者を無期雇用に転換する道を検討することがあってもいいのではないかというふうにも思いますが、いかがでしょうか。

田村国務大臣 公務員は、御承知のとおり、任用でございますから、労働契約は当てはまらないわけでございます。そういう状況でございますから、所掌外でございますので、改めてコメントは差し控えますが、労働契約法等々の趣旨でありますとか、また内容、それから状況、こういうものに関しては、丁寧に、どういう状況かということは、所管される省の方にはお伝えはさせていただきたいというふうに思います。

吉川(元)分科員 それでは、まだ時間がもう少し残っておりますので、今度は、生活保護の関係について少しお話を聞きたいというふうに思います。

 厚労省は、この五月の十六日、社会・援護局長名で、自治体等々に、「就労可能な被保護者の就労・自立支援の基本方針について」という文書を発出されております。読ませていただきました。生活保護を受けられている方々の就労を支援していくこと自体は大変歓迎すべきことですし、異論はございません。ただ、この文書を読みますと、ちょっと気になる点が何点かございます。

 まず、原則六カ月を活動期間として集中的な就労支援を行うとしていますけれども、支援を行うのは保護の実施機関ですから、具体的にはケースワーカーの方々だと思います。ただ、これは現状でも人手不足、これはもう、先ほどから何度かハローワークとか監督官のお話をしましたが、ケースワーカーも人手不足です。その中で、新たなきめ細かな就労支援を可能とする体制になっているのか。そうでなければ、この発出された文書等々は、単に絵に描いた餅に終わってしまうのではないかと危惧しますが、この点についてはいかがでしょうか。

桝屋副大臣 生活保護制度、今、具体的な資料の中身までお話をいただきました。

 お話しのとおり、稼働年齢層の受給者が大変ふえておりますので、働く能力のある方については早期脱却をしていただこうということで、今委員がお話しになりましたように、原則六カ月以内に就労、就職できることを目的に、集中的な就労支援を行おう。こういう集中的な就労支援によりまして、自立促進の効果が期待される一方で、委員おっしゃるように、ケースワーカーの負担というのは、これはもう大変なものだろうと私たちも思っております。

 これまでも、最近の福祉事務所のありようとして、就労支援ということを具体的に事業として取り組んできておりますから、私は相当の実施体制はあると思っておりますが、委員おっしゃるように、体制の整備ということは極めて大事だと思っております。

 地方自治体全体の職員数が今減少しておりますから、余計これは大変でありまして、そんな中で、平成二十一年度以降、毎年度、地方交付税算定上の人数をふやしておりまして、特に二十五年度におきましては、都道府県で三人、市町村で二人という、これまで以上の増員を図ってきたところでございます。

 さらに、さっき申し上げました、今回の生活保護法改正案におきましては、これまで予算事業として行ってきた就労支援員、この事業でございますが、これを生活保護法に被保護者就労支援事業という形で明確に位置づけまして、財政的にも支援をしていきたいというふうに考えているところでございます。

吉川(元)分科員 もうそろそろ時間が来ますので、最後に一点お伺いいたします。

 今回の文書を読みますと、やはりどうしても保護費を削ろうというのが先に立っているのではないかというふうな気がしてなりません。

 といいますのも、例えば、直ちに保護脱却が可能となる場合の就労は困難と見られる場合でも、パートタイムだとか、短時間、低額でもいいからとにかく就労させろだとか、あるいは、保護を停止して就労を促すだとか、そういう文言が散見されております。

 この点については、機械的に行うということではなくて、生活保護、この制度そのものの考え方に基づいて、機械的な保護の停止や廃止は避けるべきですし、保護者の立場に立った支援をしていくべきだと思いますけれども、最後に大臣、お答えください。

田村国務大臣 これは、働け働けと無理やり働かせているわけではありませんでして、やはり本人の意思をちゃんと確認した上で、そういう仕事でもいいですかということは、原則あるわけであります。

 それで、ではなぜ働くように促すかという話になりますと、やはり、生活保護に入って、就労せずに時間がたてばたつほどなかなか保護から脱却できなくなるというのは、委員も御承知のとおり、意欲も含めてだんだん落ちていくわけでございまして、たとえ短時間、一週間のうち数日でも、また、一日のうち短時間でも、まず生活のリズムをつくっていただく。それによって就労意欲を持っていただいて、自立に対する思いというものを強く持っていただくということが大切であるわけでございます。

 そのような意味からの今回の一つの措置でございますので、その点は御理解をいただきますように、よろしくお願いいたしたいと思います。

吉川(元)分科員 以上で質問を終わります。

河野主査 これにて吉川元君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして厚生労働省所管についての質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

河野主査 これより農林水産省所管について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。林農林水産大臣。

林国務大臣 平成二十一年度、平成二十二年度及び平成二十三年度における農林水産省の決算の概要を御説明申し上げます。

 最初に、平成二十一年度の一般会計について申し上げます。

 まず、一般会計の歳入につきましては、歳入予算額は四千八百十七億八千五百五十七万円余に対しまして、収納済み歳入額は四千九百八十七億三千三百二十万円余であり、差し引きいたしますと、百六十九億四千七百六十三万円余の増加となっております。

 次に、一般会計の歳出につきましては、歳出予算現額は三兆五千七百六十六億九千二百四十七万円余に対しまして、支出済み歳出額は三兆三百二十四億五千七百十一万円余、翌年度繰越額は三千九百六十三億九千七百六十五万円余、不用額は千四百七十八億三千七百六十九万円余となっております。

 次に、特別会計の決算について御説明申し上げます。

 食料安定供給特別会計等の五会計を合わせて申し上げますと、収納済み歳入額は三兆百三十三億九千八百五十二万円余、支出済み歳出額は二兆七千九百七十五億八千百八十五万円余でありまして、歳入歳出差し引き二千百五十八億千六百六十七万円余のうち、農業共済再保険特別会計等の三会計の翌年度に支払いが予定されている額二百九十五億八千七百九万円余を控除した結果、千八百六十二億二千九百五十七万円余の剰余を生じました。この剰余金は、翌年度の歳入及び一般会計に繰り入れることといたしました。

 以上をもちまして、平成二十一年度における農林水産省の決算の概要に関する説明を終わります。

 引き続きまして、平成二十二年度における農林水産省の決算の概要を御説明申し上げます。

 最初に、一般会計について申し上げます。

 まず、一般会計の歳入につきましては、歳入予算額は七千五百九十二億二千六百三十四万円余に対しまして、収納済み歳入額は八千四百七十一億八千四百五十万円余であり、差し引きいたしますと、八百七十九億五千八百十五万円余の増加となっております。

 次に、一般会計の歳出につきましては、歳出予算現額は三兆千億五千八十万円余に対しまして、支出済み歳出額は二兆六千百四十一億二千七百三十万円余、翌年度繰越額は三千四十三億四百四十八万円余、不用額は千八百十六億千九百二万円余となっております。

 次に、特別会計の決算について御説明申し上げます。

 食料安定供給特別会計等の五会計を合わせて申し上げますと、収納済み歳入額は二兆六千五百四十七億八千二百七十四万円余、支出済み歳出額は二兆四千三百三十九億千百七十九万円余でありまして、歳入歳出差し引き二千二百八億七千九十四万円余のうち、農業共済再保険特別会計等の三会計の翌年度に支払いが予定されている額九百二億四千六百六十二万円余を控除した結果、千三百六億二千四百三十一万円余の剰余を生じました。この剰余金は、翌年度の歳入及び一般会計に繰り入れることといたしました。

 以上をもちまして、平成二十二年度における農林水産省の決算の概要に関する説明を終わります。

 引き続きまして、平成二十三年度における農林水産省の決算の概要を御説明申し上げます。

 最初に、一般会計について申し上げます。

 まず、一般会計の歳入につきましては、歳入予算額は四千三百八十四億八千八百七十七万円余に対しまして、収納済み歳入額は四千三百四十九億千百八十万円余であり、差し引きいたしますと、三十五億七千六百九十六万円余の減少となっております。

 次に、一般会計の歳出につきましては、歳出予算現額は四兆五千三百二十億七百万円余に対しまして、支出済み歳出額は三兆六百五十六億九千四百六十三万円余、翌年度繰越額は一兆千二百十六億二千二百六十一万円余、不用額は三千四百四十六億八千九百七十五万円余となっております。

 なお、東日本大震災復旧・復興関係経費につきましては、歳出予算現額は一兆五千二百十七億九千六百五十八万円、支出済み歳出額は六千五十六億千七百一万円余、翌年度繰越額は七千七百七十億六千三百三十三万円余、不用額は千三百九十一億千六百二十二万円余となっております。

 次に、特別会計の決算について御説明申し上げます。

 食料安定供給特別会計等の五会計を合わせて申し上げますと、収納済み歳入額は二兆七千四百二十五億七百七十九万円余、支出済み歳出額は二兆四千三百五十億三千三十八万円余でありまして、歳入歳出差し引き三千七十四億七千七百四十万円余のうち、農業共済再保険特別会計等の三会計の翌年度に支払いが予定されている額六百九十二億千四百五十二万円余を控除した結果、二千三百八十二億六千二百八十七万円余の剰余を生じました。この剰余金は、翌年度の歳入及び一般会計に繰り入れることといたしました。

 以上をもちまして、平成二十三年度における農林水産省の決算の概要に関する説明を終わります。

 よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。

河野主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院田代第四局長。

田代会計検査院当局者 最初に、平成二十一年度農林水産省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 まず、不当事項でございますが、会計経理が適正を欠いていたもの、補助事業の実施及び経理が不当なものなど計七十九件につきまして検査報告に掲記しております。

 次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項でございますが、非常勤職員が委託事業に従事する場合における委託費の支払いに関するもの、官用車に係る車検等請負契約の契約方式に関するものなど計九件につきまして検査報告に掲記しております。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項でございますが、行政情報システムの保守員の業務に係る予定価格の積算に関するもの、従事者が出向者、管理職等である場合の人件費の算定に関するもの計二件につきまして検査報告に掲記しております。

 続きまして、平成二十二年度農林水産省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 まず、不当事項でございますが、貸付料等の徴収が適切でなかったもの、委託費の支払いが過大となっていたもの並びに補助事業の実施及び経理が不当なものなど計四十件につきまして検査報告に掲記しております。

 次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項でございますが、耕作放棄地等に係る贈与税及び相続税の納税猶予制度の適用に関するもの、国営東郷土地改良事業及び国営ふらの土地改良事業の実施に関するものなど計七件につきまして検査報告に掲記しております。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項でございますが、管理体制整備型の国営造成施設管理体制整備促進事業に関するもの、総合評価落札方式による一般競争入札の実施に関するものなど計三件につきまして検査報告に掲記しております。

 続きまして、平成二十三年度農林水産省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 まず、不当事項でございますが、委託費の支払いが過大となっていたもの並びに補助事業の実施及び経理が不当なもの、保険の給付が適正でなかったものなど計四十三件につきまして検査報告に掲記しております。

 次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項でございますが、家畜導入事業に係る基金の国庫補助金相当額の返納に関するもの、国有林野事業特別会計における債権管理に関するものなど計九件につきまして検査報告に掲記しております。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項でございますが、国営造成施設管理体制整備促進事業に関するもの、都道府県が事業主体となって実施する更新整備を伴う土地改良事業に関するものなど計六件につきまして検査報告に掲記しております。

 以上、簡単でございますが説明を終わります。

河野主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。林農林水産大臣。

林国務大臣 会計検査院から御報告のありました平成二十一年度、平成二十二年度及び平成二十三年度決算検査報告に対しまして、農林水産省が講じた措置を御説明申し上げます。

 予算の執行に当たりましては、常に効率的かつ厳正な処理に努力してまいりましたが、不当事項等として指摘を受けるような事態が生じましたことは、まことに遺憾であります。

 御指摘を受けた事項につきましては、不当事項について、指摘に基づき直ちに是正や改善措置、補助金の返還、手直し工事を実施するとともに、それ以外の処置要求事項等についても、指摘に基づき是正や再発防止のための改善措置を講じているところです。

 今後、このような事例の発生を未然に防止するため、指導監督の強化を図り、事業等の厳正かつ効率的な実施に万全を期すとともに、予算の適切な執行をより一層徹底してまいる所存であります。

河野主査 この際、お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河野主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河野主査 以上をもちまして農林水産省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

河野主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許しますが、時間を厳守するために、委員部より質問時間終了の通告があった後の質問については政府側の答弁を求めません。時間を厳守していただきますようお願い申し上げます。

 福田昭夫君。

福田(昭)分科員 民主党の福田でございます。

 本日は、株式会社エコシティ宇都宮の国庫補助金返還問題について質問をさせていただきます。この質問は、五月二十二日の農水委員会、六月六日の総務委員会に続いて三回目の質問であります。

 この案件は、最初に指摘をしたように、「ホットな情報!ジェイシーネット」にあるような、補助金ブローカーによる国庫補助事業を使った詐欺事件の様相を呈してまいりました。農水省は誠実にお答えください。

 まず、一つ目と二つ目、一緒にお伺いをいたします。

 宇都宮市が株式会社エコシティ宇都宮を指名した選定手続について、先日のお答えでは、宇都宮市の補助金等交付規則及び宇都宮市のバイオマス利活用補助金交付要綱に基づいて指名をしたということでありますけれども、どのような規定に基づいて、何社から指名をしたのか、さらに、二つ目、株式会社エコシティ宇都宮の社員数は何人だったのか、それをぜひお答えいただきたいと思います。

針原政府参考人 お答えいたします。

 まず、宇都宮市の補助対象者の選定手続でございます。

 宇都宮市に問い合わせたところ、まず、宇都宮市バイオマス利活用補助金交付要綱第四条におきまして、「補助金の交付を受けることができる者は、市内に住所を有する民間事業者で、市税を滞納していない者とする。」とあります。また、同要綱七条におきまして、「補助金の交付を受けようとする者は、補助金交付申請書に次に掲げる書類を添えて、」これは事業計画書等でございますが、「市長が別に定める期日までに市長に提出しなければならない。」と規定されております。

 他方で、宇都宮市補助金等交付規則第三条におきましては、補助金等の交付を受けようとする者は、補助金等交付申請書を市長が別に定める期日までに市長に提出しなければならない。また、同規則第四条におきまして、市長は、申請があったときは、法令、予算等に照らしてその内容を審査し、必要に応じて行う現地調査等により、補助金等を交付すべきと認められるときは、補助金等の交付を決定するものとすると規定されております。

 当該決定は、この条項に沿って行われております。

 宇都宮市からは、要綱、規則に基づき、エコシティ宇都宮一社のみからの申請があり、市が審査を行った上で市の事業実施計画を作成し、栃木県に申請したとの回答がございました。

 また、エコシティ宇都宮の社員数でございますが、この社員数は従業員のことかと存じますけれども、従業員数につきましては、平成十七年十月五日付の事業者から宇都宮市宛ての補助金交付申請書によると七名でございました。県宛てあるいは国宛ての申請書にはその七名のことは記載されておりませんが、市宛ての申請書には七名となっておりました。

福田(昭)分科員 今回の選定に当たりましては、私が知事に公開質問状を出しました。その答えはこう書いてあります。「当該補助事業は、業者選定を行う公募事業ではなく、一般的な補助事業であるため、実施要綱等の規定に基づいて事業主体が市、県を経由して国に申請を行うものであり、最終的にはその内容を国が審査した上で交付の決定がなされたものであります。」あたかも国に責任があるように答えてありますよ、基本的に。

 ですから、あくまでも、最初から一社が実は指名をされたということでありまして、お手元に資料を差し上げてありますが、この株式会社エコシティの役員を見てみますと、唐木正信代表取締役会長、あるいは渡辺勇雄中村土建社長、それから晋豊建設の社長阿久津英一とか、みんなこれは当時の富一宇都宮市長の後援会だったり応援団なんですよね。ですから、最初からここに申請をさせるということで実は決まっていたんじゃないでしょうか。

 そして、社員数でありますが、今、書類には七人という話もありましたけれども、地元で聴取をしたところ、作業員が三人、事務員が一人だった、そういう話もあります。いずれにしても、大変少ない人数でこれだけの大事業をやろうとしていたということが実ははっきりわかってまいります。

 次に、三つ目でありますが、三つ目は、この株式会社エコシティ宇都宮の改修工事のうち解体工事の費用について、約四億円のうち、解体工事は幾らかける予定だったんですか。

針原政府参考人 エコシティ宇都宮は、設備のふぐあいにより操業が停止したため、平成二十一年九月に改修工事に着手いたしました。同年十二月に旧設備の撤去工事が終了した段階で休止しております。

 改修工事の事業費は、今御指摘のとおり、計画ベースで約四億円でございました。今回、改めて栃木県及び宇都宮市に確認いたしましたが、この中で実際に設備撤去に幾らかかったかということについては、計画上込み込みになっていたということもあるんでしょうけれども、把握していないという回答でございました。

 以上でございます。

福田(昭)分科員 どうもおかしいですよね。先日のお答えですと、改修工事は約四億円というお答えでありましたが、そのうち、撤去工事だけで、解体工事だけで終わっちゃったわけですよね。その工事を把握しないで、どうやって本当にもう一回しっかり事業ができるように指導したんでしょうか。大変疑問であります。

 次に、四つ目でありますが、四つ目は、株式会社エコシティ宇都宮が銀行から受けた融資の時期と使途についてお伺いしたいと思います。

 このエコシティ宇都宮は、施設整備時の補助残融資額、二つの銀行から五億円の融資を受けております。また、平成十九年の二月には、今度は運転資金を、三つの銀行から三億二千万の融資を受けているんですね。特に、この三億二千万の融資を受けた運転資金はどのように使われたんでしょうか。お答えをいただきたいと思います。

針原政府参考人 平成二十三年五月十三日に栃木県知事から関東農政局長宛てに出された財産処分の承認申請書によりますと、エコシティ宇都宮の金融機関からの借入額につきましては、八億二千万でございました。

 金融機関別の内訳は、栃木銀行が四億二百万円、栃木信用金庫が……(福田(昭)分科員「内訳はいいですよ。どう使われたか」と呼ぶ)はい。わかりました。

 融資の時期、使途でございますが、施設整備時の設備資金と操業開始後の運転資金に対し融資が行われたと承知しております。具体的な期日、使途につきましては、これも栃木県及び宇都宮市に問い合わせておりますが、民間同士の取引のため、県、市とも承知していないということでございました。

福田(昭)分科員 これもおかしな話ですが、次、五つ目ですけれども、株式会社エコシティ宇都宮が施工業者から受け取った賠償金と額について、何度も質問しておりますが、最初、五月二十二日の農水委員会では、栃木県との話し合いの中で、その賠償額の概算については、私どもも聞き取っておりますが、しかし、民民の取引なのでお答えできないというのが五月二十二日でありました。

 しかし、六月六日の総務委員会では、これが後退をして、今回、改めてその使い道について県及び市に確認いたしましたが、県、市とも事業者が受け取った賠償金の金額や使途は承知していないという回答でしたと。

 回答が、それこそ変わってしまいました。これは、なぜ答えを変えたのか。都合が悪くなったので変えたんじゃないですか。いかがですか。

針原政府参考人 今御指摘のとおり、私の説明、農水委員会と総務委員会での説明のしぶりは御指摘のとおりでございます。

 事実経過を申し上げますと、エコシティ宇都宮が施工業者から受け取った賠償金の金額につきましては、平成二十二年一月の関東農政局と栃木県との打ち合わせの中で、県より概算として聞き取ったものはあります。その旨、五月二十二日の農林水産委員会ではお答えいたしました。

 他方で、その額は、概算、推測が入っていたということで、額は承知しておられますかということを改めて確認しましたところ、これはあくまでも当時の県担当者の推測によるもので、実際の金額はわからないという回答が、その後確認したらございました。その旨、六月六日の衆議院総務委員会で回答しているわけでございます。

 いずれにしても、前回も御説明しましたとおり、民間同士の取引の問題でございますので、私からこの場でその金額を申し上げる立場にないことを御理解いただきたいと思います。

福田(昭)分科員 都合が悪くなって答えられなくなったんだと思いますが、前にも、また資料もそちらに提供してありますが、宇都宮市長が栃木県知事に対して、平成二十三年の五月十三日、財産処分承認申請書を出しております。その書類の中にはっきりと書かれているんですね。

 「エコシティ宇都宮は、機械・施設の不具合は設計・施工上の瑕疵であるとし、施工業者の富士重工業と宇都宮市の三者で改修に向けた協議を実施。富士重工業は施設の不具合を認め、エコシティ宇都宮へ損失補填及び改修費用、賠償金を支払った上で、エコシティ宇都宮への一切の関わりを断ち、改修工事は韓国プラントメーカーが実施することで合意した。」こうはっきり書いてあるんですね。

 ですから、受け取ったのは賠償金だけじゃないんですよ。損失補填金、改修費用約四億円、さらには賠償金、これを受け取っているんですよ。

 ですから、これを宇都宮市や県が把握していないとなったら、これは大問題ですよ。だって、農水省の指導に基づいて、県や宇都宮市は、このエコシティ宇都宮がちゃんと生ごみ処理できるように指導してきたんでしょう。違うんですか。指導してきたんですよね。それなのに、このお金がわからなかったら、どうやって改修工事をやらせて、本当に、生ごみ処理ができるように、対応できないじゃないですか。どうなんですか。

針原政府参考人 御指摘のとおり、ある程度の概算は、話し合いの中では聞き取っております。それは、正確な額を問い合わせたところ、あくまでも県担当者の推測によるもので、実際の金額はわからないという回答でございました。

 この旨、改めて富士重工にも確認いたしました、私どもで。富士重工サイドからは、顧客との個別の取引にかかわる話のためお答えできないという回答でございました。

福田(昭)分科員 わかりました。答えられないんでしょうね。答えたらおかしなことになるから。

 次に、それでは六番目の質問ですが、一つは、宇都宮市が、株式会社エコシティ宇都宮に対する方針を変更したんですね。

 当初、宇都宮市は、平成二十一年十二月、日本政策金融公庫が競売を申し立てた後、平成二十二年一月に補助金の決定を取り消して、同年二月から、補助金二億六千万の返還請求を含めて請求をして、督促を含めると六回も、エコシティ宇都宮に、補助金二億六千万を返せ、こう請求しているんですね。それなのに、突然、今度は財産処分申請に宇都宮市は方針を変更したんですね。

 この方針を変更したのはなぜですか。

針原政府参考人 事実経過を申し上げますと、宇都宮市は、市の補助金等交付規則に基づきまして、平成二十二年一月二十九日付で交付決定の取り消しを通知し、同年二月三日付で補助金返還通知を発出しております。これは、今御指摘のとおり、平成二十二年一月に、宇都宮市が事業者の登記簿を確認したところ、宇都宮地裁が担保不動産の競売開始を決定し、差し押さえられていることが判明したことを受けたものであると市から私どもは報告を受けております。

 他方で、同じ時期に、宇都宮市、栃木県は、改修工事の休止後も事業継続の可能性を追求している、そういう段階でございました。したがいまして、その間も事業者等との調整が続いていたということでございます。

 ただ、その調整の結果、最終的には、関係者間の話し合いにより、事業継続は困難と判断されて、その時点で、結果として、財産処分による事業中止の手続を進めることになったと承知しております。

福田(昭)分科員 非常に苦しい言いわけだと思います。

 次に、それでは、実は宇都宮市は、今、本当に、補助金の返還を、督促も含めて六回請求をしていたわけでありますから、そして、日本政策金融公庫が差し押さえの申し出をしているわけでありますから、そして、その後、ちゃんと現地調査をしているんですよね、エコシティ宇都宮、宇都宮市は。その時点で、しっかり実はこの賠償金など多額なお金を差し押さえるべきだったんですよ。そうすれば、補助金を無駄にしたり、あるいは融資をしたお金が黒焦げになっちゃったり、あるいは損失補填金や改修費用や多額の賠償金、これを合わせると何億になるかわかりませんが、こうした現金を差し押さえておけば、国にもちゃんと、国庫補助金二億六千万、返せたんですよ。そう思いませんか。

針原政府参考人 まず、事実関係を申し上げますと、宇都宮市は、エコシティ宇都宮に対しまして、平成二十二年二月に、宇都宮市補助金等交付規則に基づきまして補助金の返還請求を行い、再三にわたり、補助金返還に係る督促状を発出しております。計五回というふうに私ども承知しておりますが、ただ、裁判所による債権回収手続は行っておりません。

 このことにつきまして、改めて県、市に問い合わせております。栃木県は、承知していないという回答でございました。宇都宮市は、係争中であるので答えられないという回答でございました。

 それをどう思うかという点につきましては、これも、係争中の問題につきまして、国として何か評価的なものは言うことはできないということを御承知ください。

福田(昭)分科員 では、七つ目に入りますが、県及び宇都宮市の融資銀行への対応です。

 これは、これだけの多額の損失補填金、改修費用、賠償金を株式会社エコシティが受け取っていることを、宇都宮市や栃木県はこの融資をした銀行に連絡していない、通報していないんですよ。そのことを私は日本政策金融公庫へ行って確認してきました。知っていましたかと言ったら、知りませんでしたとびっくりしていました。

 こういう不誠実な対応をどう思いますか。

針原政府参考人 本件についての評価は、なかなか、係争中の案件でもございますのでコメントすることは大変難しいわけでございますが、あくまでも補助金一般論として申し上げますと、補助事業により整備された施設にふぐあいが生じて改修等により当事者間で事業継続に向けた話し合いが行われている、そういうようなときに、行政がその情報をほかの機関に漏らしたり話したりするということは、普通は考えられないわけでございます。

 本件につきましての評価につきましては、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。

福田(昭)分科員 それはおかしいじゃないですか。もう政策金融公庫が差し押さえを申し立てているんですよ。そうしたら、もう裁判所がいつ決断するかだけの話でしょう。そうなったならば、金融機関にも通報するのが、やはりそれが誠実な対応じゃないですか、行政機関として。おかしいですよ。

 次に、八つ目でありますが、それでは、農水省が一生懸命指導していました、財産処分申請を出すに当たっては、株式会社エコシティ宇都宮がやはり自己破産をしてもらわなくちゃ困る、だからぜひ自己破産の手続をするように、こう指導してまいりましたが、その自己破産の手続はちゃんとできていますか。

針原政府参考人 エコシティ宇都宮は、平成二十三年九月の担保不動産の競売による落札後、弁護士に相談しながら自己破産手続を進めることを検討したということが私どもの資料でも残っております。

 ただ、最終的には、破産申し立ては行われておらず、破産手続は開始されておりません。

福田(昭)分科員 これもおかしいじゃないですか。宇都宮市や栃木県は、しっかり株式会社エコシティ宇都宮に破産手続させなければ財産処分申請ができないんじゃないですか。どうなんですか。

針原政府参考人 そのときの対応の評価でございます。

 これにつきましても、今まさに係争中の問題でございますので、その評価的なものは、私の方からは差し控えさせていただきたいと思います。

福田(昭)分科員 なぜ自己破産手続をとらないんですか。それをやったら持っている財産が全部わかっちゃうからやらないんじゃないですか。違うんですか。これだけ富士重工から多額のお金を分捕っておいて、それがはっきりわかっちゃうから、それでしないんじゃないですか。どうですか。

針原政府参考人 今の御質問に対するお答えも、係争中の案件の当事者の対応の評価に係ることでございますので、答弁は差し控えさせていただきたいと思います。

福田(昭)分科員 それでは、九つ目の質問です。

 まさに、今回の国庫補助金の返還、栃木県知事による国庫補助金立てかえ払いだというので、国に返還をいたしました、そして、それをめぐって、栃木県知事が、宇都宮の市長、宇都宮市が返せということで裁判に訴えております。まさに、私は、栃木県知事と宇都宮市長の責任は物すごく重大だと思っております。

 先ほどから指摘をしてまいりましたが、宇都宮市長は、先ほど申し上げたように、株式会社エコシティ宇都宮と富士重工業と三者で会談をして、損失補填金、改修費用、賠償金が出ていることを知っているはずであります。また、栃木県知事も、平成二十三年五月十三日付の宇都宮市長からの財産処分承認申請書で、賠償金が出ていることを知っているはずであります。

 したがって、栃木県知事は、宇都宮市長を訴えるんじゃなくて、やはり宇都宮市長と二人で、後援会の人や恩人がつくっている会社でありますけれども、株式会社エコシティ宇都宮を二人で提訴して彼らが持っている多額の現金を差し押さえるべきだったんじゃないですか。どうですか。

針原政府参考人 債権に係る保全のやり方につきましての評価に係る御質問でございます。

 まさに係争中の案件でございますので、これについてもお答えできないことを御理解いただきたいと思います。

福田(昭)分科員 これは重大な事件なんですよ、もしかすると。だって、国もだまされたんですからね。いいですか。だまされたのは、宇都宮市、栃木県、国、全部だまされているということですよ、基本的に。そのことに対して国が怒らなくちゃおかしいじゃないですか。国は二億六千万のうち一億九千六百万返してもらったからそれでいいという話じゃないでしょう、これは。

 私の見方が当たっているとすれば、栃木県知事はこのことを隠すために宇都宮市長を訴えた。局長も答えないでしょう。裁判中ですから答えられませんと。

 ですから、栃木県の福田富一知事は、このだまされた実態を隠すために宇都宮市長を訴えた。宇都宮市長と栃木県知事がよく話し合って、裁判所で、農水省が言っているように、宇都宮市が返すべきだという判決が出れば、やむを得ない、裁判所の判断が出たんだということで宇都宮市がお金を返す、こういうことで一件落着、こうしたいと思って訴えたんじゃないですか。でも、それはおかしいですよ、明らかに。

 株式会社エコシティ宇都宮は、明らかに計画倒産、稼働して半年で動かなくなっちゃった。しかも、株式会社エコシティ宇都宮がつくった堆肥を売ろうとしていた会社、売買契約書を取り交わしていますこの会社が本当に存在していたかどうかということも疑問になってきている。そういうことになると、最初から、この補助事業を通して国庫補助金二億六千万をかすめ取ろう、さらには、多分、融資のお金もどう使ったかわかりません。そして、富士重工から多額の損失補填金、改修費用、賠償金も受け取って、実は、その主役はどこかへいなくなっちゃった。

 ですから、これは、国もだまされた、市もだまされた、県もだまされた、日本じゅう、おれおれ詐欺から、本当に詐欺事件がたくさん発生しています。悲しいことです。

 今回は、国庫補助事業を通した詐欺事件かもしれない。このことをしっかり究明しなかったら、こういうことをまたやられますよ。これはよっぽどこの業界に詳しい人でしょうね。

 最初の質問のときにも申し上げましたけれども、「ホットな情報!ジェイシーネット」、これにはそういうことが書いてあるんですね。

 これは、農水省が把握しているかしていないかわからないのでお聞きしませんけれども、私の方から一方的に申し上げておきますが、こうしたことは、実は九州農政局でもあった。「福岡市の食品残渣リサイクル施設がある。」「メインの機械は、特許侵害や稼働もしていないにもかかわらず、国から補助金が支払われ、その後、農政局がそうした事実を知ったにも関わらず返還請求もしないデタラメぶりを九州農政局が発揮している。こうした事件を事なかれ主義で隠蔽したがる役所である。」こう書いてあります。

 こんなことを国が言われちゃだめですよ。だから、今回のこの事件、しっかり農水省としても明らかにして、単なる、国庫補助事業が失敗した、そういう問題ではないということをしっかり認識して厳正に対処すべきだと思いますが、いかがですか。

針原政府参考人 補助事業の適正な執行は、当然のことながら、私ども、幾重にも留意していく必要があるかと存じます。

 今御指摘のあった九州の施設でございますが、九州農政局管内に、バイオマス関係事業で補助金を交付して、現在稼働中でないものは一つもございません。

 それで、過去のネットを調べました。一時期、そういううわさが出ていたことがございます。名前は申しませんが、九州の北部の施設でございます。その後、関係者間の話し合いを行い、しっかりと、原料であるごみを搬入することにより、現在は稼働しております。

 事実関係のみを御説明させていただきました。

福田(昭)分科員 では、九州の方はぬれぎぬだというんですね、ちゃんと動いているということですね。

 しかし、栃木県の場合は全然動いていない、他人に渡っちゃった。そのことは本当に、この事業者にどうもだまされた可能性が高い。しかし、そのことを隠蔽するために知事が市長を訴えている。だって、農水省の指導はこういう話でしょう、国庫補助金は、まず農水省には県が返すべき、県には市が返すべき、市には株式会社エコシティ宇都宮が返すべき、これが農水省の考えでしょう。そうしたら、宇都宮市長だって自然に返すべきですよね。それを返さない。

 それは、宇都宮市長は、もしかすると、株式会社エコシティ宇都宮はお金を持っているということを知っているから返さないのかもしれない。そもそも、補助金の決定を取り消して全額返せと言っていた宇都宮市長が突然財産処分申請に切りかえたというのもおかしいですよね。どういう力が加わったのかわかりませんけれども、これもおかしな話であります。しっかり、お金を持っていることを知っているわけだから、二億六千万、全額返してもらうべきでした。

 農水省の指導が間違ったのかどうか、農水省が財産処分申請をしろと言ったからそういうふうにしたのかどうかわかりませんけれども、これは非常に疑問がたくさんある問題であります。今後、私もさらにしっかり調べて、場合によってはやはり警察の手をかりないとだめなのかな、こう思っております。

 以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。

河野主査 これにて福田昭夫君の質疑は終了いたしますが、ただいま答弁を差し控えた案件につきましては、決算行政監視委員会の理事会にて取り扱いを諮りたいと思います。

 次に、河野正美君の質疑になりますが、時間厳守のために、質疑終了の通告後の質問については政府側の答弁を求めません。時間を厳守してください。

 それでは、河野正美君。

河野(正)分科員 日本維新の会の河野正美でございます。

 本日、大きく分けまして三点の質問をさせていただきたいと思います。

 まず一点目に、私の地元でもあります福岡県で現在大変大きな問題となっております松くい虫の被害についてお尋ねいたします。

 我が国は海に囲まれた国でございますので、皆さん、海岸線に沿って美しい松林、防砂林の景色というのを容易に思い浮かべることができるのかなと思います。海からの風や潮を防ぎ、津波や高波を食いとめる、飛んでくる砂から海沿いに住む方々の暮らしを守るなど、大きな役目をしておるわけです。そしてまた、我が国には古来より白砂青松という言葉もあり、極めて貴重な自然財産だと思っております。

 海岸の乾いて養分の少ない土壌でも成長が可能で大きく育ち、森林になり、さきに述べたように極めて重要な意味を持つ松が今大変に危ない状況にあるということで、極めて憂慮するべき事態であろうと思います。

 松くい虫の被害がどのように起こるのか、簡単にメカニズムをお教えいただけますでしょうか。

江藤副大臣 これは先生もよく御存じだと思いますけれども、子供のころ、よくみんな遊んだと思いますけれども、マダラカミキリが飛んできまして、この中に入っております線虫が松の木の中に入りまして、松を枯らしてしまうというメカニズムになっております。

河野(正)分科員 ありがとうございます。

 今、国の被害状況が、福岡県も含めまして、福岡県に限らずですけれども、全国的にどれぐらいあるのか。また、林野庁の方では白砂青松百選なるものを選定されているということでございますけれども、この選定された地域も含めて、どういった被害状況か、お教えいただけますでしょうか。

古久保政府参考人 お答えいたします。

 全国におきます松くい虫被害は、近年、ピーク時、昭和五十四年度でございますが、当時の四分の一程度の水準で横ばいで推移しておりまして、平成二十三年度の被害量は約六十五万立方メートルでございます。

 このうち、福岡県の平成二十三年度の松くい虫被害量は、全国の被害量の二・四%程度、一万六千立方メートルでございますが、近年、海岸林の松林を中心に被害が拡大していると承知してございます。

 また、白砂青松百選でございますけれども、福岡県におきましては、日本の白砂青松百選として、三里松原、さつき松原、海の中道、生の松原、幣の松原の五つが指定されておりまして、これは県内におきましても代表的な松原でございます。

 福岡県全体における松くい虫の被害量は、先ほど申し上げたとおりで近年増加傾向でございますけれども、これら五つの松林においても、同様に増加傾向にあるものと承知しております。

河野(正)分科員 ありがとうございました。

 防除対策につきましてお尋ねいたします。

 実際、どのように松くい虫を防除されているのか、状況をお教えいただきたいと思います。

江藤副大臣 これは、平成十八年、三位一体改革のときに、かなりの部分が地方に移管されたという事情がありますので、国と県とで共同で防除体制をしかなきゃならないということであります。

 国の十分の十の定額のものもあるし、二分の一、三分の一の補助事業もありますけれども、基本的には薬剤空中散布をやります。しかし、これは周辺へのドリフトがあったりして若干問題があるかと。それから、直接散布をするやり方。薬剤を樹木に注入するやり方。それから、予防的な措置として特別伐倒駆除、もう切ってしまう。切ってそのまま置いておきますと切ったものの中に線虫は残りますので焼却するのが一番いいんですが、環境に余りよくないということもありますので、これに微生物を入れて線虫を殺すような対策を今とっております。

河野(正)分科員 十分な財源を確保されているのかどうか。十分の十の事業もあるということでございますので、また、ここは決算委員会の場でございますから、過去に十分確保されていたと御認識されているか、御見解をお尋ねしたいと思います。

江藤副大臣 今までの減少傾向を見れば、私の宮崎もかなりやられたことがあるんですよ。私のところもフェニックスのゴルフ場までやられてしまいまして、かなり深刻な事態があったんですけれども、現状としては大分減ってきておりますので、不十分であるとは考えておりません。ただ、自民党政権下のことですから余り言いたくはないんですけれども、三位一体改革の時代、平成十八年以前に比べると、若干予算規模的には少なくなっている。しかし、今後必要となれば、これは十分、林野庁として予算措置も含めて対応していきたい、そう考えております。

河野(正)分科員 ところで、先ほどから出ておりますけれども、ヘリコプター散布というのが極めて有効な手段であるというふうにも言われております。これにつきまして、人体への影響というのが心配されるところでございます。五年ほど前には、福岡県に限らず、小中学生、高校生などの児童や生徒が突然、目のかゆみや充血などの眼症状、目の症状を訴えたという報道もあっているようでございます。

 こういった空中散布に対する対策、対応等は十分されていますでしょうか。

    〔主査退席、伊藤(忠)主査代理着席〕

古久保政府参考人 お答えいたします。

 予防措置のうち、薬剤の空中散布と申しますのは、効率的な防除を行う観点から、広範囲を対象に有効な手段でございます。

 ただ、委員御指摘のように、健康被害への懸念というものがあるわけでございますので、そもそも空中散布の量全体は以前に比べて相当減っておりますけれども、これを行います場合には、地元との合意がなされている場所において実施するものであり、さらに住居から二百メートル離れるとか、いろいろな基準を遵守した上で、事前に付近の住民の方々に周知をし、また、人の動きが少ない早朝に散布する、こういった配慮を行いながらやっているところでございます。

河野(正)分科員 もう一つの方法といたしまして、樹幹注入という方法があると聞いております。素人感覚でありますと、空中散布といういささか荒っぽい手法に比べると安全でよい方法なのかなと思いますが、この樹幹注入というのはどういった場所を対象にしているのか、加えてメリット、デメリットについてもお教えいただけたらと思います。

    〔伊藤(忠)主査代理退席、主査着席〕

古久保政府参考人 お答えいたします。

 樹幹注入も予防措置の一つでございまして、あらかじめ、守るべき一本一本の松の樹幹、幹に薬剤を注入しておく。そのことによって、材線虫が侵入いたしましても木の中では増殖しがたい、こういうことでございますが、これは一本一本の処理でございまして大変コストがかかるということで、薬剤散布が難しい住居周辺ですとか、特に貴重な単木、大木の象徴的な松を守るですとか、そういったときに、コストはかかりますけれども選択することになっております。

 また、これは余り続けますと、木に小さな穴をあけますので木自体が弱るというようなこともあって、なかなか、どこでも、またずっと続けられるというわけでもございませんので、そういったことも判断しながら選択しているわけでございます。

河野(正)分科員 ありがとうございました。

 それから、抵抗性の松があるというふうに聞いております。これについて、どのようなものか、またどれくらいの効果が期待できるものなのか、そういったものを教えていただきたいと思います。

古久保政府参考人 お答えいたします。

 農林水産省は、昭和三十年代後半から広がり始めた松枯れ被害に対応するために、昭和五十三年度から、松枯れの激害地の中での生存木から種子や穂木を採取いたしまして、これに対して線虫を接種して、抵抗性が強いと認められたものを抵抗性の品種として供給をしているところでございます。

 これまでにアカマツ二百十七品種、クロマツ百二十八品種のマツノザイセンチュウ抵抗性品種が開発されて、海岸林の造成などに用いられているところでございます。

 この抵抗性松の効果でございますけれども、抵抗性の判断といいますのは、もともと材線虫が自生いたします北米において、これと生態系の中で共存できる松、また造林を行っても被害なく成林できる松、これと同程度以上の抵抗性を持っているものということでやっておりますので、全く枯れないわけではないのでございますけれども、松林の維持には十分な抵抗性を持ったものということで選択しているところでございます。さらに抵抗性のより強いものを開発すべく努力しているところでございます。

河野(正)分科員 ありがとうございました。

 抵抗性の松につきましては、今後一層の開発強化をお願いしたいと思います。

 ところで、一口に松林と申しましても、国有林と民有林というふうに区別されると思いますけれども、民有林への対応というのはいかがでしょうか。

古久保政府参考人 民有林における松くい虫被害対策につきましては、先ほど副大臣が御説明いたしましたように、三位一体改革の結果、被害の先端地の拡大防止、それから環境に配慮した防除手法の導入、推進、こういったことに限って助成をさせていただいております。

 また、その際に、国が支援する松くい虫被害対策の対象というのは、都道府県知事が定めます保全すべき松林と、それからその周辺で一体として防除を行うべき補助林、こういったものを対象として助成をさせていただいているところでございます。

河野(正)分科員 また、これはある意味、商業施設になるので難しいのかなと思いますが、先ほど副大臣の御答弁にもありましたように、ゴルフ場の松林で、コース設定を変えなければならないほど被害を受けた場所もあるというふうに伺っております。今の御答弁にもありましたように、そういった拡散防止という観点から見るとゴルフ場への補助とかも考えなきゃいけないのかなと思いますが、この辺はいかがなんでしょうか。

古久保政府参考人 先ほども申し上げましたように、国が支援する被害対策につきましては、都道府県知事が定める保全すべき松林と周辺松林ということでございまして、ゴルフ場などの松林におきましても、これに該当する場合には助成をさせていただく。また、これ以外の土地の場合は、それぞれの管理者等とよく連携を保ちながら、全体の防除が上がるように連携をしてまいりたい、このように思っております。

河野(正)分科員 ありがとうございます。

 ゴルフ場は非常にその辺は難しい問題かなと思いますが、地域に蔓延させないという意味では何らかの対策も必要なのかなというふうに感じておりました。

 次に、先ほどから出ております、松くい虫被害木の中にいるカミキリムシの幼虫等を駆除するという観点で、薫蒸処理や破砕処理、焼却処理等々が大切だということでございます。また、マツノマダラカミキリが羽化する春までが勝負ということで、ボランティアの方にお願いしたり、体験型の学習活動という一環で中学生に松林の清掃や間伐などをお願いする、あるいは植樹を行ってもらうという例もあるようですけれども、こういったものに対する支援とか、そういう実績がございましたらお教えいただきたいと思います。

古久保政府参考人 防除を徹底いたしますためには、ボランティアの皆さんなどの御協力も大変有効なわけでございまして、とりわけ、漏れがなく被害木を見つけて、これから虫が出たり繁殖したりしないように丁寧に処理をすることが重要でございます。

 このために、地域のボランティア活動が行う松葉かきですとか枯れ枝拾い、こういったさまざまな活動に対しては、国としても森林・山村多面的機能発揮対策交付金といったものを設けまして支援対象としております。

 また、国土緑化推進機構が実施主体となっております緑の募金事業におきましても、こうした活動に対し支援が行われている状況にございます。

 また、福岡県におきましては、県独自の財源でございます森林環境税によりまして、松林の整備、保全活動を含むボランティア活動に対する支援、こういったものが行われております。

 また、森林管理署におきましては、要請がございますれば、これに応えて、ボランティア活動、さまざまな活動、松林の保護もございます、こういったものに対して技術的な指導助言を行っているところでございます。

河野(正)分科員 新聞記事をいろいろ見ておりましたところ、福岡県におきましては糸島市でスマートフォンを用いて行政と住民がタッグを組んでやっていこうという記事が載っておりました。

 住民ボランティアでつくった約十名のパトロール隊が、枯れた松を発見した場合に、あらかじめダウンロードしておいた専用アプリを用いて写真を撮る。そうすると、全地球測位システム、いわゆるGPSですけれども、それで測定された位置情報や日時が、市と連携をしている九州大学のサーバーに自動で送信される。これを地図上にプロットしていきまして、そういったことでパトロール隊と糸島市が情報を共有していくということで、ことし三月に運用を開始して、記事が出たのが今月、六月四日ですけれども、それまでに約三十本の枯れ松を伐採したということでございます。

 これについて、何か国として情報を把握されているか、あるいはこういった試みを補助していく気持ちがおありになるか、また全国展開などについてもお聞かせいただけたらと思います。

古久保政府参考人 お答えいたします。

 松くい虫被害は、先ほども申し上げましたように被害木を漏れなく発見してこれを徹底的に処理するということが重要でございまして、これまでもさまざまな技術開発、これは大学等の研究機関からの提案も含めまして、GPSの活用その他さまざまな技術によって、これまでも有効なものについてはどんどん導入をしていくということで取り組んでまいりましたし、これからもそのようにしてまいりたいと思います。

 また、これがボランティア活動その他の方々によって進められる場合には、これに対してもしっかり支援をしてまいりたいというふうに考えてございます。

河野(正)分科員 やはり、先祖から受け継いだ美しい白砂青松を次世代につないでいく、こういったことが我々の未来に対する責任だと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 次に、二点目に移ります。

 燃油高騰による漁業危機の問題についてお尋ねしたいと思います。

 私の地元であります福岡県粕屋、宗像という地域におきましては、海にも面しておりまして、大変に新鮮でおいしい水産物を享受できる地域でもあります。ところが、昨今燃料費が高騰する、一方で水産物の価格は基本的には市場の競りや入札で決まるわけですから、燃油等のコスト上昇分を十分に魚価に反映できないと言われております。

 先般、五月二十五日土曜日に、福岡県では一斉休漁という活動が行われました。六千隻以上が休漁し、漁業経営危機突破漁民大会というのが開催され、私も出席させていただきました。狭い会場内に四百人以上が集まったということで大変な熱気でございました。当日は秋田県におきましても同様な行動が行われて、こちらも千八百隻休漁されたということを聞いております。

 水産資源の減少、魚価低迷、そして燃油等経費の増大。漁に出たら赤字になってしまうという声をたくさん聞きました。どういう天気が大漁になりやすいのか、私は詳しくはございませんが、当日の福岡は非常に晴天でございまして、こんな日に漁に出ずに室内にこもっているのは非常に非生産的といいますか、国家にとっても損失だなと思った次第であります。

 当日に行われました決議文の中には、政権交代後に推進された景気浮揚政策による円安の進行で燃油価格が急激に上昇し、出漁断念のみならず廃業に追い込まれる経営体が出現しているとあります。景気浮揚策で廃業してしまうというのは、極めておかしな事態になってしまっていると思います。

 私は医療が専門分野なんですけれども、社会保障制度のために消費税を上げるということでありながら、医療における控除対象外消費税、いわゆる損税の問題というのも議論が進んでおりませんし、医療を守るはずの消費増税で医療崩壊になってしまうという懸念もございます。

 こういった問題で、今回、景気浮揚ということですけれども、非常によかれと思った政策で実は大変なことになってしまうということが多々あるのかなと思って、懸念を抱いております。

 まず、話を戻しまして軽油引取税の免税措置についてお尋ねいたします。

 現状は時限的措置だと思いますけれども、今後も行っていく考えがあるのか、お聞かせいただきたいと思いますし、また、円安により高騰する燃油に対して何らかの対策があるか、燃料費補助制度についてもお聞かせいただきたいと思います。

本川政府参考人 まず、軽油引取税の関係でございますけれども、これについては、御指摘のように時限で特別措置を延長してまいっております。前回、二十三年の二十四年度税制改正要望のときに、これを恒久化するという要望を出させていただきまして、そのときには二十四、二十五、二十六年度までの三年間の延長ということで決着をいたしました。

 ただ、そのときの税制改正大綱におきまして、適用期限延長後の取り扱いについては、東日本大震災からの復興状況、措置廃止による国民生活への影響や、国、地方を通じた財政事情等も勘案し、引き続き検討というふうにされておりまして、水産庁といたしましては、水産業への影響を踏まえ、今後しっかり検討してまいりたいと考えております。

 それから、燃油高騰対策でございますが、これにつきましては、前回、平成二十年度に値上がりをしたときの経験も踏まえまして、価格が高騰したときに国と漁業者が積み立てを行って補填を行うというセーフティーネット事業が施行されておりまして、これにつきまして、今回、一定の見直しを行っておるところでございます。

 このような形で、燃油高騰に対する漁業経営の安定に寄与してまいりたいと考えているところでございます。

河野(正)分科員 イカ釣り漁船の方などは、こうこうと電気をつけてイカをおびき寄せるということで、この集魚灯にも燃料が物すごくかかるということでございます。LEDにかえることによって七割の削減になるということも言われておりますが、これに対する補助の現状、それと、最近車の方ではエコカーなどということをいいますけれども、船のエンジンについても省燃費タイプにしなければいけないのではないかということで、補助金による誘導とか、そういったことについてお考えをお聞かせください。

本川政府参考人 御指摘のように、LEDに切りかえることによりまして相当の省エネが期待されます。それから、エンジンにつきましても、今おっしゃったような省エネ型のエンジンに切りかえていくということは非常に有効な手段だと考えております。

 このため、今回、今申し上げたセーフティーネット対策の拡充にあわせまして、新たに、強い水産業づくり交付金というものを活用いたしまして、共同でLED集魚灯を導入される、そういったような取り組みに対して二分の一の補助を行う。それから、省エネ型のエンジンにつきましても二分の一の補助を行う。このようなことを決定させていただいて、七月から施行していくということにいたしておるところでございます。

河野(正)分科員 次に、難しい問題かとは思いますけれども、直接価格補填などの考え方はいかがでしょうか。

林国務大臣 先ほど長官からも今やっていることの説明をさせていただきましたが、漁業経営セーフティーネット構築事業を平成二十二年度からやっております。異常高騰も踏まえまして、六月五日に漁業用燃油緊急特別対策というものを決定いたしました。

 そのときも議論になったんですが、この仕組みにずっと入ってきていただいている方が積み立てをされておられます。したがって、直接に全額補助というようなことになりますと、今まで入ってこられた方との公平性のような問題も出てくるということから、今回、いろいろな御議論を与党にもいただいた上で、今までやっている補填基準を超えた分について上昇分の二分の一を負担するという現行制度に加えて、さらに、この特別対策の補填ラインを超えた場合には上昇分の四分の三を国が補填しようというようなことを柱として対策をさせていただいたということでございます。

 この特別対策の周知を今開始いたしまして、七月からしっかりと実行に移してまいりたいと思っておるところでございます。

河野(正)分科員 水産業を守るという意味で、我が国の貴重な資源でもありますから、そういった意味でしっかりやっていただきたいと思います。

 昨年十月一日の朝日新聞によりますと、「燃油高騰 漁師支援の補助金 漁協が天引き 三億円届かず 検査院調べ」ということが報道されているんですけれども、この実態について、担当省庁としてどういうふうに把握されているのか。あるいは、予算要望の段階で事務経費が含められなかったというようなことで、現場では事務経費は補助の対象ではないと指導されていたということですが、指導についてどうされていたのか、お聞かせください。

本川政府参考人 御指摘の事業は、前回の燃油高騰の前後に実施をしておりました、平成十九年度から二十二年度までに行われました省エネ推進協業体活動支援事業及び資源回復・漁場生産力強化事業という事業でございます。交代で休漁をして、休漁をしているときに海岸とか藻場、干潟の清掃を行う、このような事業でございます。

 これにつきましては、今御指摘ありましたように、漁協などの事務費を予算計上しておらなかったということでございまして、業者の方々が実際に計画を出したり取り組まれたかどうか、活動の成果を確認したり、こういったことに想定以上に事務費が必要になったということで、業者の方々からの了解をいただいて、漁協が事務費を徴収させていただいた。これが、やはり本来なら業者に交付されるものが行っていなかったということで、検査院の方からも御指摘をいただいたところでございます。

 この事業につきましては、御指摘を踏まえまして、国に返還するということではなくて、本来の受益者である業者の方にお戻しをするということで、二十二年度に御指摘いただいた分については既に戻しておりますし、二十三年度に御指摘いただいた分についても既に相当部分を業者の方に戻しておる、そのような状況でございます。

 こういった反省を踏まえまして、例えばことしから始まっております多面的機能の事業などにおきましては、きちんとそういう事務費を計上して、このようなことが生じないように予算措置をさせていただいておるということでございます。

河野(正)分科員 時間厳守で、残り五分ということですので、次の話題に移らせていただきます。

 最後に、ふえ続ける社会保障費ということで、何とか医療費の伸びを抑えなければならないということで、ここ数年、ジェネリック医薬品、いわゆる後発品をもっと積極的に使用しましょうということが言われております。

 欧米諸国では、特許が切れると先発のブランド品が一気になくなってしまい、後発品に転換されていくというようなことも聞いておりますけれども、我が国の現状を、処方率などでどれぐらい投与されているのか、お聞かせいただきたいと思います。

神田政府参考人 後発医薬品の処方率についてでございますけれども、処方箋については一般的に複数の薬剤が処方されるということですとか、あるいは全てが先発品、後発品というふうに限りませんので、処方率そのものは把握できておりません。

 しかし、薬価調査におきまして把握をいたしておりまして、二十三年九月時点で申しますと、全医療用医薬品に占める後発医薬品の割合は二二・八%というふうになっております。

河野(正)分科員 私が、もう二十年前になりますけれども、大学病院に勤務していた際に、私は精神科の医者なんですけれども、大学病院は総合病院ですから、いろいろな方が副作用と思われる身体症状で、単科の精神科病院から大学に送られてこられます。そのときにいろいろ見ていましたところ、レトロスペクティブに検証していくと、当時まだゾロ品と言われていたんですが、後発医薬品を使っている方が非常に多かったような感覚がありまして、それ以来、非常にジェネリック医薬品の品質についてはやはり厳しくしなければいけないのではないかなと思っております。

 そういった意味で、これを先発品と比べてどのように比較されているのか。生物学的同等性試験などが行われていると思いますけれども、果たして同じものと言っていいのかどうかについて、見解をいただきたいと思います。

平山政府参考人 お答えします。

 ジェネリック医薬品は、先発品とその有効成分、分量などが同じ医薬品でありまして、先発品とジェネリック医薬品をそれぞれ人に投与して、時間の経過とともに有効成分が血液中にどの程度含まれるかなどの比較をしたデータから、これらの有効性及び安全性が同等であると判断し、承認しているところでございます。

 データの比較につきましては、あらかじめガイドラインにより科学的に同等と判断できる試験条件やデータの幅を示しまして、適正に実施しているところでございます。

 引き続き、ジェネリック医薬品については、薬事法に基づき、厳正な承認審査を行ってまいりたいと考えております。

河野(正)分科員 後発品を使用したことによって重篤な副作用が出たというような副作用報告というのがあるかどうか、お聞きしたいと思います。

平山政府参考人 お答えします。

 ジェネリック医薬品は、先発医薬品と有効性及び安全性が同等であると判断し、承認しております。医薬品の副作用につきましては、先発医薬品と同様に、ジェネリック医薬品についても、薬事法に基づき、製造販売者に対し必要な報告を行うことが義務づけられておりまして、副作用報告の集積状況を踏まえて、必要な安全対策を実施しているところでございます。

 これまでの副作用報告の状況からは、特定のジェネリック医薬品について、その先発医薬品よりも副作用の発現が多いという事例はないものと承知しているところでございます。

 引き続き、副作用情報の収集に努め、医薬品の安全対策を進めてまいりたいと考えております。

河野(正)分科員 もうほとんど時間がありませんので最後にしますけれども、後発品の使用が伸びないのは、余り先発品と価格差がないからではないかなという意見があると思います。これにつきましての御見解と、また、安定供給を危惧される方もいらっしゃるんですが、このあたりの指導をどうされているのか、その点をお聞かせください。

神田政府参考人 後発医薬品の価格についてでございますけれども、後発医薬品の価格が高過ぎるという御指摘がございます。

 初めて後発医薬品が販売されるときには、平成六年には先発品の九割の額、平成八年から先発品の八割の額、平成十六年からは先発品の七割の額で薬価収載することとしているところでございます。薬価収載後の後発医薬品の価格の見直しにつきましては、先発医薬品と同様に、市場実勢価格に基づいて改定しているところでございます。

 後発医薬品の価格につきましては、次期薬価制度改革における検討課題というふうにされておりますので、中央社会保険医療協議会において引き続き検討していくこととしております。

 それから、安定供給についてでございますけれども、後発医薬品のメーカーに対しまして、正当な理由がある場合を除いて、少なくとも五年間は継続して製造販売し、保険医療機関等からの注文に迅速に対応できるよう、常に必要な在庫を確保するように指導しているところでございます。

 本年四月に策定いたしました後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップにおきましては、天災等、後発医薬品メーカーに責任のない場合を除きまして、既収載品目の安定供給に支障が生じた事例があった場合等には原因究明、改善方策、再発防止等を確認し、改善が図られない場合は新規の薬価収載希望書を受け付けないなどの必要な対応を行うこととしているところでございます。

 今後とも、こうした取り組みを通じまして、後発医薬品の安定供給に努めてまいりたいというふうに考えております。

河野主査 これにて河野正美君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして農林水産省所管についての質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

河野主査 これより経済産業省所管について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。茂木経済産業大臣。

茂木国務大臣 平成二十一年度、平成二十二年度及び平成二十三年度における経済産業省の決算の概要を御説明申し上げます。

 最初に、平成二十一年度について御説明いたします。

 一般会計の歳入につきましては、歳入予算額七百七十八億円余に対し、収納済み歳入額は七百三十億円余であり、差し引き四十八億円余の減少となっております。

 歳出につきましては、歳出予算現額二兆八千七百二十五億円余に対し、支出済み歳出額は二兆六千百四十億円余であり、その差額二千五百八十四億円余のうち、翌年度への繰越額は二千三百二十三億円余、不用額は二百六十億円余となっております。

 次に、エネルギー対策特別会計につきましては、収納済み歳入額は二兆六千五百三億円余、支出済み歳出額は二兆三千六百十四億円余であり、その差額二千八百八十九億円余のうち、翌年度への繰越額は七百四十六億円余、周辺地域整備資金に組み入れた額は三十五億円余、二十二年度予算に歳入計上した剰余金は九百三十六億円余、これらを除いた純剰余金は千百七十一億円余であります。

 このほか、貿易再保険特別会計及び特許特別会計がございますが、これら特別会計の決算の概要につきましては、お手元の資料に掲載したとおりであります。

 続きまして、平成二十二年度につきまして御説明いたします。

 一般会計の歳入につきまして、歳入予算額九百六億円余に対し、収納済み歳入額は八百五十一億円余であり、差し引き五十四億円余の減少となっております。

 歳出につきましては、歳出予算現額一兆六千七百六十二億円余に対し、支出済み歳出額は一兆五千五百七十二億円余であり、その差額一千百九十億円余のうち、翌年度への繰越額は八百三十四億円余、不用額は三百五十五億円余となっております。

 次に、エネルギー対策特別会計につきましては、収納済み歳入額は二兆五千八十九億円余、支出済み歳出額は二兆二千三百八十二億円余であり、その差額二千七百七億円余のうち、翌年度への繰越額は五百六十億円余、二十三年度予算に歳入計上した剰余金は千百七十一億円余、これらを除いた純剰余金は九百七十四億円余であります。

 このほか、貿易再保険特別会計及び特許特別会計がございますが、これら特別会計の決算の概要につきましては、お手元の資料に掲載したとおりであります。

 最後に、平成二十三年度につきまして御説明いたします。

 一般会計の歳入につきまして、歳入予算額二百七十九億円余に対し、収納済み歳入額は三百四十四億円余であり、差し引き六十五億円余の増加となっております。

 歳出につきましては、歳出予算現額三兆二千九百八十一億円余に対し、支出済み歳出額は二兆九千八百三十九億円余であり、その差額三千百四十二億円余のうち、翌年度への繰越額は二千七百十三億円余、不用額は四百二十九億円余となっております。

 次に、エネルギー対策特別会計につきましては、収納済み歳入額は三兆二千八百七十一億円余、支出済み歳出額は二兆九千二百七十八億円余であり、その差額三千五百九十三億円余のうち、翌年度への繰越額は六百四十九億円余、二十四年度予算に歳入計上した剰余金は千百三億円余、これらを除いた純剰余金は千八百四十億円余であります。

 このほか、貿易再保険特別会計及び特許特別会計がございますが、これら特別会計の決算の概要につきましては、お手元の資料に掲載したとおりであります。

 以上をもちまして、平成二十一年度、平成二十二年度及び平成二十三年度における経済産業省の決算の概要に関する説明を終わります。

 よろしく御審議のほどお願い申し上げます。

河野主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院太田第五局長。

太田会計検査院当局者 平成二十一年度経済産業省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 まず、不当事項でございますが、委託費等の支払いが過大となっていたもの、補助事業の実施及び経理が不当なもの計十九件につきまして検査報告に掲記しております。

 次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項でございますが、国際博覧会事業の実施及び経理に関するもの、中小企業者に適用される租税特別措置に関するものなど計八件につきまして検査報告に掲記しております。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項でございますが、財団法人交流協会の給与税金引当金に関するもの、石油貯蔵施設立地対策等交付金の制度に関するもの計二件につきまして検査報告に掲記しております。

 次に、平成二十二年度経済産業省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 まず、不当事項でございますが、委託費等の支払いが過大となっていたもの、補助事業の実施及び経理が不当なもの計十二件につきまして検査報告に掲記しております。

 次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項でございますが、中小企業再生支援協議会事業の謝金に係る消費税の取り扱いに関するもの、特許料等の納付に関するものなど計三件につきまして検査報告に掲記しております。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項でございますが、多数の郵便物の郵送を伴う環境対応車普及促進事業等の実施に関するものにつきまして検査報告に掲記しております。

 次に、平成二十三年度経済産業省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 まず、不当事項でございますが、契約の目的の達成が困難となっているもの、補助事業の実施及び経理が不当なもの計十四件につきまして検査報告に掲記しております。

 次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項でございますが、ものづくり中小企業製品開発等支援事業の補助事業完了後の実施状況に関するもの、株式会社日本政策金融公庫による省エネルギーの促進に係る貸し付けに関するもの計二件につきまして検査報告に掲記しております。

 以上、簡単でございますが説明を終わります。

河野主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。茂木経済産業大臣。

茂木国務大臣 平成二十一年度、平成二十二年度及び平成二十三年度の決算検査報告において掲記されております事項につきましては、会計検査院の御指摘のとおりでありまして、まことに遺憾です。

 不当事項につきましては、直ちにその是正の措置を講じたところであり、また、意見を表示されまたは処置を要求された事項につきましては、所要の措置を講じてまいる所存です。

 今後このような御指摘を受けることのないよう厳に対処してまいります。

河野主査 この際、お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河野主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河野主査 以上をもちまして経済産業省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

河野主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、これを許しますが、時間を厳守するために、質問時間終了の通告後の質問については政府側の答弁を求めません。時間を厳守してください。

 秋本真利君。

秋本分科員 自由民主党の秋本真利でございます。

 きょう、この質問の場に立つまでが大変でございました。この場に立つ機会を与えてくれました先輩には感謝をしたいというふうに思います。それを述べて、質問に入りたいというふうに思います。

 決算の本会の方でも、茂木経産大臣の方に核燃料サイクルを中心に前回質問をさせていただきました。その続きから質問をさせていただきたいというふうに思います。

 前回、大臣に対して、燃料サイクルについてどのような所見をお持ちかという私の質問に対しまして、大臣からは、燃料サイクルは、プルサーマルを進めることでウラン資源を節約することができる、高レベル放射性廃棄物についても、直接処分する場合と比べて、体積を減容できる、また、放射線の有害度も低減できるという観点から、このサイクルをしっかりと進めていきたいと考えておりますという答弁を頂戴しました。

 しかし、私は、大臣に申し上げたいのは、この答弁はゼロ回答のような答弁でございますけれども、私からの指摘のみならず、日本学術会議からも政府に対して提言がなされているはずでございます。核燃料サイクルはどん詰まりな部分があるから、その手前でとめてしばらく様子を見ろというような提言でございます。そして、総量規制もして、しっかりと燃料サイクルをコントロールするべきだという提言であります。そして、結びの文章には、原子力政策の方針を決めた後に高レベル放射性廃棄物の問題を考えるのではなくて、高レベル放射性廃棄物の問題を先に考えて原子力政策を立案しろというふうに書かれているところでございます。

 そして、〇五年の原子力政策大綱でも、政府が使用済み燃料の直接処分の技術に関する調査研究を適宜進めることが期待されるというふうにうたわれております。

 私は、核燃料サイクル、前回も申し上げましたが、原発の稼働の是非とは関係なしに、この後ろの部分というのは議論をしなければならないものですから、この後ろの部分についてはしっかりと結論を出すというのが我々の責任だというふうに思っております。

 そうした中で、私は、実は大臣にお話ししたいのは、茂木経産大臣が大臣に就任したときに、非常に喜ばしいことだなというふうに思いました。それは、経産大臣を私は政治家としても尊敬申し上げている政治家の一人でございますけれども、それは、大臣が侍であって、決断ができる男だというふうに思っているからであります。

 そして、これは私の耳に入っているうわさが本当かどうかわかりませんけれども、茂木経産大臣は、大臣としてというよりも一人の政治家として、この燃料サイクルに多少なりとも疑念を抱かれているのではないかということも耳にしたことがございます。

 そういった意味から、茂木経産大臣であれば、決断をして、この燃料サイクルからしっかり撤退をして、出口のある政策方向に転換できるのではないかというふうに私は個人的に期待していたものですから、前回の大臣の答弁を聞いて少し肩を落としたところでございます。

 改めて、茂木経産大臣のこのサイクルに対する見解をお伺いしたいと思いますので、よろしくお願いします。

    〔主査退席、伊藤(忠)主査代理着席〕

茂木国務大臣 御指摘していただきました日本学術会議における提言、これは、核燃料サイクル全体というよりも、主に最終処分のあり方を中心にした提言である、このように承知をいたしております。

 それから、私の考え方につきまして、疑念を持っているとかいうお話でありましたが、もしこういう場でお話をされるのだったら、具体的にどなたがどういう形でという形で引用していただくなり、具体的な根拠を示していただく方がよろしいのではないかな、こんなふうに私は思います。

 その上で、核燃料サイクルについては、先日も申し上げましたが、例えばプルサーマルを進めることでウラン資源を約一割から二割節約することができるとともに、高レベル放射性廃棄物についても、直接処分する場合に比べ体積を約四分の一に減らすことができ、放射能の有害度が天然ウラン並みになるまでの期間についても、直接処分する場合に比べて十分の一にすることができるわけであります。

 こうしたことに鑑み、我が国としては、経済性だけではなく、ウラン資源の有効利用や高レベル放射性廃棄物の体積、有害度の低減などの観点から、総合的に勘案し、使用済み燃料を再処理し、回収したプルトニウム、ウラン等を有効利用する核燃料サイクルの確立を国の基本方針としております。

 なお、今週決定された自民党の参議院選挙公約においても、核燃料サイクル、放射性廃棄物最終処分については、次世代への責任を果たすべく、減容化、有害期間の短縮等の研究を加速とされていると承知をいたしております。

 一方で、最終処分場につきましては、処分制度を創設して以降十年を経た現在でも、処分地選定調査に着手できていない状況でありまして、これを次世代に先送りしてはいけない、どうにかしなければいけない、こういった強い思いも持っているところであります。

 これまで立地選定が進んでいない背景には、一つは、安全性ばかり強調し、国民の不安に真摯に向かってこなかったこと、そして、二つ目には、応募プロセスが、地元の発意が前提のため、地元が負う説明責任、負担が重いことなどの問題があったと考えております。

 このような反省に立ちまして、地層処分の安全性について審議を尽くすことや、多様なステークホルダーが参画する合意形成の手続を行うべきとの日本学術会議における提言等を踏まえつつ、この五月から、総合資源エネルギー調査会のもとで、最終処分の取り組みの見直しに向けた検討を開始したところであります。

 具体的な見直しの方向性としては、例えば、現時点で最も有望とされている地層処分技術の信頼性について改めて評価を行っていくとともに、最良の処分方法を常に選択できるように、可逆性、回収可能性を担保した形で取り組みを進める。

 つまり、一旦処分をしたにしても、途中で、場合によって、新しい技術であったりとか新しいものが出てきたら取り出す、そういうことも可能にするような、そういった可逆性、回収可能性を担保した形で取り組みを進めることがまずは必要ではないかなと考えております。

 その上で、この問題の解決に向けて、国がより前面に立って取り組むべく、国民理解の醸成や地元負担の軽減に資する取り組み、制度等について、必要な見直しを行ってまいりたいと考えております。

 また、使用済み燃料の直接処分につきましては、まずは、我が国において技術的に実現可能であるかどうか確認を行う必要があるとの認識のもと、将来的な政策の柔軟性を確保する観点から、今年度より、直接処分を可能とするための研究開発に着手する予算を計上しております。経済産業省と文部科学省が連携して実施をしておりまして、平成二十五年度予算において、それぞれ三億円を計上しております。

 いずれにせよ、核燃料サイクル政策については、ウラン資源の有効利用や高レベル放射性廃棄物の減容化、有害度の低減に資することから、これまでの経緯等も十分に考慮しつつ、関係自治体や国際社会の理解を得つつ、御指摘の放射性廃棄物の最終処分などの課題の解決を目指して、継続して取り組んでまいります。

    〔伊藤(忠)主査代理退席、主査着席〕

秋本分科員 相変わらず残念な答弁だなというふうに思いました。

 しかし、それでも、研究に対する予算もつけた、そして、提言についても、今大臣がお読みになっていた答弁、日本学術会議の提案そのものの部分、中身、中心的な部分でございましたので、ぜひ、可逆性ということもおっしゃっていましたけれども、そういったところになるまでに、しっかりその手前でとめなければ、このサイクルを無理に、進まない中で推し進めるとどういう問題があるのかということをこの後質問しますけれども、先が詰まって出口が見えないわけですから、その手前でしっかりととまって、先が見えた時点で前に進む、そういう指揮官の勇気ある決断というものも必要だというふうに思いますので、改めて、私は、その決断をしていただきたく強く要望したいというふうに思います。

 そして、〇五年の大綱からやっと八年たって、予算も、三億円程度ですけれどもついたようでございますので、しっかりとこの研究を進めていただいて、結論を出していただきたいというふうに思います。

 そして、六ケ所村のプールについて質問いたします。ここから先は、サイクルがやはりどん詰まりじゃないかという話をさせていただきたいというふうに思います。

 使用済みプール、各サイトから、プールがもういっぱいだから六ケ所村のプールに運ぶぞということで、三千トンのプール、容量があるところに約二千九百数十トン、九九%近く燃料が搬入されているわけでございますけれども、この二千九百数十トンの、もう既にプールに入っている燃料について、資料を請求して、どこの電力会社から何トン入っているのかという資料を経産省の方から頂戴をしまして、私の手元にございます。

 それで、各電力会社からそれぞれ搬入がなされており、そして、原燃に再処理費用の事業費としてお支払いされている金額がございます。それが約二千七百億円ということでございますけれども、これは調べてみると、運び込まれてそこに貯蔵されている燃料の量と、再処理事業として払われている金額に相関関係が見られません。

 例えば、二〇〇五年度、六ケ所に運び込まれている燃料の量が千七百二十九トン、これに対して支払われているのは五百三十億円。次の年は、二千二百六十九トンに対して二千七百四十六億円です。二〇一一年度を見てみると、三千三百四十四トンに対して二千七百四十一億円ということですね。つまり、約千トンぐらいふえても、支払われている金額は逆に五億円減っているということで、もう二千七百億円で固定のように支払われております。

 これは、基本料金のような、従量制ではなくて定量制のような感じがするんですけれども、この料金については、運び込まれている、そこに入っている燃料と支払われている料金が、どうして相関関係がないんでしょうか。説明していただきたいと思います。

中西政府参考人 お答え申し上げます。

 再処理の料金につきましては、設備関連の費用が大半を占めます本事業の特質というものを反映いたしまして、基本料金と従量料金という二つの料金制から成ってございます。

 再処理費用の大宗というのは、やはり、再処理量の多寡に依存しない設備関連の費用が固定費でかなり占められているということでございますので、どうしても基本料金の方の割合が多くなっているというふうに考えてございます。

秋本分科員 ユーザーから、総括原価方式で電気料金に付加をして、この再処理の費用を徴収というか、電気料金で頂戴しているものというふうに思います。そして、それを電力会社がプールをしています。それとは別に電力会社が原燃に料金としてお支払いをしている。

 この金額が大体一致するんだろうというふうに思いますけれども、今積み立てている金額が約二・五兆円ぐらいあるというふうに思います。そして、原燃にお支払いしているこの約二千七百億円を積み立てていくと、再処理がスタートしなくても基本料金だぞというようなお話でしたので、ずっと積み重なるわけですけれども、これは、最初にお約束した、四十年間かけて積み上げているという金額の中から取り崩してお支払いしているということでよろしいでしょうか。

中西政府参考人 基本的には御指摘のとおりでございます。

秋本分科員 今再処理工場が動いていないにもかかわらず定額料金で支払っているということは、では、支払っているものは、その四十年間で積み立てた中から払うんだよというような今の答弁でしたので、そうするとタイムラグが生じていますよね。再処理工場は動いていないにもかかわらず基本料金を払っているということですから。

 そうすると、逆に、お支払いをスタートしたときから四十年たった後にも、仮に再処理工場が動いていたとしたら、その時点では基本料金は発生しない、つまりこれは原燃の経営努力だということでよろしいんでしょうか。

中西政府参考人 基本的に、積み立てのための前提といたしましては四十年間というふうなことを考えているところでございます。

秋本分科員 そうすると、今の答弁だと、これは、積み立てているものの中から払っているんだから、再処理工場が動いていないからといって基本料金を払っていてもどこにも転嫁されないよということですから、電気料金の値上げの際に、もしこの辺が加味されたものが出てきたときは一言申し上げるという気持ちが経産省としてはあるということでよろしいですね。確認しておきたいと思います。

中西政府参考人 今の御指摘のとおりの御理解で結構でございます。

秋本分科員 それでは、仮にですけれども、この六ケ所村のプールに入っている燃料を、例えば東電と原電の分だけは抜いてこれをむつに搬出するということをした場合、これはいろいろな観点があると思います。経済的な観点だけではなくて、湿式は危ないんじゃないかという議論もあるわけです。

 では、少なくともその中で、プールが満杯で一〇〇%近い容量を占めてしまっている中で、少しでも抜いて、乾式に移して、むつに移そうじゃないかと。むつだって、東電と原電で何千億円ものお金をかけてつくったわけでございます。これを抜いてむつに持っていく。そうすると、基本料金がそこで東電と原電の分は発生しない。そうすれば、原燃は、動いてからその後で、東電と原電の分についてはタイムラグなくして後ろでも料金徴収ができるということですから、これは原燃にとってもメリットがあるし、東電と原電に関しては、基本料金をその時点では支払わなくていいわけですから、みずからで建てたむつに貯蔵すれば基本料金はかからないわけですから、こういった政策的な決断もあると思いますけれども、これについてはどういうふうな所見をお持ちですか。

中西政府参考人 現在の状況につきましては、いろいろ地元の皆様方との関係もありましてこのような状況になってございます。今のような仮定のお話につきましては、我々の方としては、具体的な対応につきましては現在のところは検討する状況にはございません。

秋本分科員 今やってきましたけれども、貯蔵量と支払い額については、基本料金だから相関関係はないんだという話ですけれども、各電力会社から出てきている貯蔵量と支払い額をトン当たりで割り返すと五倍ぐらいの差もあるわけです。

 この辺はちょっと見ていてよくわからない料金設定でございますので、結論としては、後ろには先延ばしさせない、原燃の経営努力だということの答弁がありましたので、電気料金の値上げの際や何かはしっかりと目を光らせて。その辺は、逆に言うと、それでは経営が成り立たないかもしれないわけですから、原子力政策は、この時点でもサイクルをしっかりと考え直さないと。動かなければ動かないほど、もう既に何年も動いていないわけですから、ここで何兆円もの誤差が生じてしまっているわけですから、これだって、後ろで再稼働して延ばしたときに担保できるんだろうかというのが大いなる疑問だと思います。

 それと、全国のサイトから六ケ所村に、もちろん使用済み核燃料を輸送しているわけでございます。この輸送に関して少し調べてみたんですけれども、原燃輸送という株式会社がこの輸送を担っております。

 それで、この原燃輸送の資料をいろいろと調べてみたんですけれども、もちろん、もう数年前からプールはいっぱいです。ですから、私の手元にありますけれども、ここ数年のこの原燃輸送の使用済み核燃料の輸送量は、ほぼゼロに近い形になっております。ですから、そこで輸送費というのは発生しないんだろうというふうに私は思っていましたけれども、いやいや、調べてみて、一一年度だけでも四十三億円もの輸送費が発生しています。

 この輸送費についてお伺いをしたいんですが、この輸送費は定量制ですか、それとも従量制ですか。

中西政府参考人 お答え申し上げます。

 原燃輸送が行います使用済み燃料の輸送につきましては、先ほど御指摘の金額は、輸送されたトンウランベースの数字になっております。

秋本分科員 それでは、これはそういうトン当たりだということであれば、これをそのときの年度で割り返せば、一トン当たり五千万円かかっている計算になります。

 この五千万円を、六ケ所に運び込まれると予定されている三万二千トンに掛けると幾らになりますか。政府のバックエンドコスト推計というものに、ここに書いてある使用済み核燃料輸送は九千二百億円です。三万二千トンに五千万円掛けても、九千二百億円より全然多いですよ。これは数字が倍になります。

 そうすると、このバックエンドの推計コストは間違っているんじゃないですか。トン当たりで割り返すとそうなりますけれども、本当にトン当たりなのか、定量制じゃないのかどうか、もう一度確認をしたいと思います。

中西政府参考人 先ほど私が申し上げました原燃輸送のコストにつきましては、輸送量一トン当たり単価が幾らというふうな形での輸送費になっているということでは必ずしもございません。

秋本分科員 ちょっと答弁に誠意がないというふうに思います。先ほど、一個前の答弁では、トン当たり幾らだというふうにはっきりと申したじゃないですか。それはおかしいですよ。

中西政府参考人 済みません。

 先ほどの答弁をもう少し正確に申し上げますと、これらの輸送の対価といたしましては、電気会社から受領しておりますけれども、船舶等の設備関連の費用がやはり大半を占めるということもありまして、料金の主要部分を占める基本料金と輸送量に応じた従量の、一応、詳細には二部料金というふうな位置づけになってございます。

 済みません、私の説明がちょっと不十分でございました。

秋本分科員 そうすると、これも先ほどの六ケ所のプールの問題と同じで、定量制なんですよ。つまり、運ぼうが運ぶまいが、一定程度の料金がそこでずっと継続的に発生してしまっています。核燃料サイクルを続けると言っている以上、仮にこれが三十年動かなくても、この料金はずっと支払い続けるということじゃないですか。

 それに、海を使って輸送しているということであれば、海上保安庁を含め、あるいは警察を含め、それに対する警備体制の費用というものもかかっているんだろうというふうに思いますが、それは多分公費ですから、ここには乗ってきていないんだというふうに思います。ですから、こういった面も少しもう一度精査をしていただかなければならない部分だというふうに思います。

 この会社は、日本全国の電力会社が株式の七〇%を保有していますので、言うなれば子会社のようなものですよ。この子会社みたいなところに、電力会社が、それこそ数十億円、数百億円というお金を支払い続けているわけです。これは、我々から取っている電気料金で支払われているんだろうというふうに思います。そこに、総括原価方式で、もしかしたらこの料金が乗っているかもしれない。

 このことについてはどうですか。それは確認をしていますか。

中西政府参考人 今の御指摘につきましては、乗っているというのが現状でございます。

秋本分科員 そうすると、これは総括原価方式で計上されて、定量料金でずっと支払い続けるということは、核燃料サイクルに見切りをつけなければ、我々が払っている電気料金からずっと永遠に徴収され続けるということじゃないですか。

 使用済み核燃料をほぼ運んでいない会社に、総括原価方式で、電気料金にこの定額料金の部分を上乗せして、我々の電気料金から搾取しているというのはおかしいのではないかというふうに私は思います。

 総括原価方式は、これのみならず、このバックエンドに対してもかなりのブラックボックスの部分がございますので、これについてはしっかりと、私自身も目を光らせて精査しなければならないし、経産省としても、あらゆる面で計算し直して、そして精査して、そして電気料金の値上げ等の申請のときには、改めてそこで経産省としても厳しい態度で臨むというような姿勢が必要なんだろうというふうに思います。回らないサイクルを続けようとすればするほど、こういった部分にもしわ寄せがあるわけでございます。私は、こういった点からも、核燃料サイクルというのは見直さなければならないというふうに思っております。

 そして、先に進みますけれども、使用済み核燃料のみならず、政府のバックエンドコスト推計ということで、きょう資料を配付したと思いますが、十八・八兆円というふうになっております。

 お伺いしたいのは、この中に第一再処理工場は四十年間の稼働ですということになっていますから、八十年間の推計の中で、残りの四十年間の経費は一体どこに乗っかっているのかということが一つ。それから、回収ウランと劣化ウラン、それから使用済みMOX燃料の再処理費用等は一体どこに計上されているんでしょうか。この十八・八兆円という数字の中に入っているのかどうか、お伺いしたいというふうに思います。

 それで、キロワット当たりで割り返したら同じ金額だというような答弁は聞きたくありません。八十年間の推計で、金額として十八・八兆円より膨らむのかどうかということを聞いていますので、その点について答弁をいただきたいというふうに思います。

茂木国務大臣 核燃料サイクルに係ります総事業費は、平成十六年度の総合資源エネルギー調査会の試算では、お出しいただいたように、日本原燃六ケ所再処理工場において、四十年間の操業で三・二万トンの使用済み燃料を再処理する計画のもとで、再処理施設の建設、操業、MOX燃料の加工、施設の廃止措置、放射性廃棄物の管理、処分等に要する費用を合わせると、御指摘のように、総額約十八・八兆円と見積もられております。

 御指摘の第二処理工場、そして使用済みMOX燃料処理工場、回収ウラン、劣化ウラン再利用などの費用については、当該核燃料サイクルのコストになっていくものと認識しておりますが、そのための施設の整備は、例えば、第二処理工場は六ケ所処理工場の操業終了までに建設するなど、将来に発生するものであり、具体的な計画、仕様が固まっているわけではありません。今後、計画が具体化した時点で、当然、核燃料サイクルのコストとして費用を見積もり、示していくものと考えております。

 なお、平成二十三年十二月の、これは前政権でありますが、エネルギー・環境会議で示された各電源の発電コストの試算において、核燃料サイクルが同様の設備、プロセスで繰り返し実施される前提、つまり、第二処理工場等についても六ケ所再処理工場と同じ費用になると仮定して試算した場合では、この場合の核燃料サイクルコストが約一・四円・パー・キロワットアワー、これを含めた原子力発電コストは八・九円・パー・キロワットアワー以上とされております。

 御指摘の第二再処理工場、使用済みMOX燃料処理工場、回収ウラン、劣化ウラン再利用などの費用については、例えば、第二処理工場は六ケ所処理工場に続くものであり、費用発生時期が異なることから、現行の試算、約一・四円・パー・キロワットに単純に上乗せされるものではない。つまり、新しく次に出てくるこの施設の値段が幾らになるかによって、一・四円より上になることもあれば、下になることもあるということであります。

秋本分科員 お尋ねしていないことまで丁寧に答えていただきまして、ありがとうございます。

 それで、先に進みますけれども、プルサーマル計画で再処理をして出てきたプルトニウムについては燃やしますよという計画に今なっているというふうに思います。「もんじゅ」のことも言いたいですけれども、「もんじゅ」は前回質問しましたので、「もんじゅ」はここでは触れません。そして、プルサーマルで燃やすということで、百歩譲ってそっちに行ったとします。

 プルサーマルの炉で燃やすんだというふうに言っていますけれども、今、日本で稼働しているプルサーマルの炉を回したときに、フィッサイル、ファータイルのどっちの単位でもいいです。両方足したものでもいいです。フィッサイルでも、ファータイルと足したものでもいいですから、今、日本のプルサーマルの炉で、出てきたものを燃やしたとして、燃やせるプルトニウムの量は何トンですか。

中西政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、年間大体四トン強の核分裂性のプルトニウムを分離するということになりますけれども、これに対しまして、大体四トン弱分のプルトニウム利用に相当します約九基分の軽水炉におけるプルサーマル利用というようなことで、これは既に地元の事前了解も得ているプラントでございます。そんなふうに我々としては認識をしてございます。

秋本分科員 今お話しになったのはフィッサイルだと思うんですけれども、その中に大間の分というのは入っていますか。入っていたんだとしたら、大間の分を抜いたとしたら一体何トンなのかお答え願いたいというふうに思います。

中西政府参考人 今申し上げました九基の中には、大間も入ってございます。そのうちの大体一・一トンが大間が使うというふうに前提を置いているものでございます。

秋本分科員 そうすると、大間を入れたとしても、再処理工場から出てきているプルトニウムすら燃やし切らないわけですよ。さらに、大間も稼働させなければもう全然、年間一トン以上のプルトニウムがずっとたまり続けるということになります。そして、日本では、今現在ももう既に処理して所有しているプルトニウムがございます。そういった意味では、プルサーマルのこの計画では燃やし切らないわけです。では、プルサーマルの炉をふやせるのかといえば、私はこれは大変難しい問題だろうというふうに思っております。

 出てくるプルトニウムは燃やせない、燃やし切らない、そして高レベル放射性廃棄物の処分地については候補地すら見つからないというところで、もうこの時点でも詰まっているわけであります。そして、その先まで行ったとしても「もんじゅ」は動いていないということで、どこで輪を切ってもこの核燃料サイクルは破綻していると私は思っています。

 ですから、原発の再稼働云々にかかわらず、稼働したとしても出てきたものは直接処分という方法もあるわけですから、ここは勇気を持ってサイクルについては撤退をするんだという判断をするべきだろうというふうに思いますけれども、ここまで質問した上で、最後に大臣に、それでもどうなのかということについて見解を求めて、終わりたいというふうに思います。

茂木国務大臣 先ほど御答弁を申し上げたとおりであります。

河野主査 これにて秋本真利君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして経済産業省所管についての質疑は終了いたしました。

 これにて本分科会の審査は全て終了いたしました。

 分科員各位の格段の御協力を賜りまして、議事を無事終了することができました。ありがとうございます。

 これにて散会いたします。

    午後零時二十八分散会


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