衆議院

メインへスキップ



第6号 平成14年4月24日(水曜日)

会議録本文へ
平成十四年四月二十四日(水曜日)
    午前九時三十分開議
 出席委員
   委員長 渡海紀三朗君
   理事 岩屋  毅君 理事 桜田 義孝君
   理事 御法川英文君 理事 持永 和見君
   理事 木下  厚君 理事 松崎 公昭君
   理事 山名 靖英君 理事 塩田  晋君
      相沢 英之君    岩永 峯一君
      江藤 隆美君    小西  理君
      橘 康太郎君    谷  洋一君
      土屋 品子君    中川 秀直君
      中村正三郎君    額賀福志郎君
      武藤 嘉文君    村上誠一郎君
      森岡 正宏君    森田  一君
      井上 和雄君    金子善次郎君
      今野  東君    手塚 仁雄君
      楢崎 欣弥君    葉山  峻君
      平野 博文君    神崎 武法君
      大森  猛君    穀田 恵二君
      山口わか子君    中村喜四郎君
    …………………………………
   参考人
   (米国ジョージタウン大学
   政策大学院研究教授)   上山 信一君
   参考人
   (東京大学大学院法学政治
   学研究科教授)      田辺 国昭君
   参考人
   (東洋大学経済学部教授・
   都市デザインセンター長) 竹内佐和子君
   決算行政監視委員会専門員 川城 正彰君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 歳入歳出の実況に関する件及び行政監視に関する件(政策評価制度と行政監視の在り方)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――
渡海委員長 これより会議を開きます。
 歳入歳出の実況に関する件及び行政監視に関する件、特に、政策評価制度と行政監視の在り方について調査を進めます。
 本日は、参考人として、米国ジョージタウン大学政策大学院研究教授上山信一君、東京大学大学院法学政治学研究科教授田辺国昭君及び東洋大学経済学部教授・都市デザインセンター長竹内佐和子君に御出席をいただいております。
 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位には、政策評価制度と行政監視の在り方につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 まず、上山参考人、田辺参考人、竹内参考人の順序で、お一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。
 なお、念のため申し上げますが、御発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。
 それでは、まず上山参考人にお願いいたします。
上山参考人 おはようございます。
 私は、現在ワシントンDCに住んでおりますけれども、二カ月に一度日本に戻ってまいります。それで、特殊法人でありますとか自治体あるいは中央省庁のいろいろな改革プロジェクトの委員でありますとかアドバイザーをやっております。そういった経験をもとに、きょうはお話をさせていただきたいと思います。
 私は、もともとは経営コンサルタントでありまして、国家公務員を四、五年やりました後、マッキンゼー社という大企業の改革を主にやる企業でコンサルタントをやっておりました。十四年間に約二十社のリストラクチャリングであるとか構造改革というのをやってきております。その経験をもとに、政府あるいは自治体の改革はいかにあるべきかということをここ数年間ずっと考え、本を書いたり、いろいろなところでお手伝いをしておる、こういうものであります。
 きょうは、政策評価制度、これを中心に、これまでできてきたこと、それから、今後どうあるべきかということについて意見を述べさせていただきます。
 お手元に私のレジュメ、資料がございますが、それの三ページをお開きください。横長の図があります。これをまず御説明したいと思います。
 政策評価につきましては、先生方御存じのとおり、既にもう各省庁で実施されておりまして、ホームページでも一部その試行結果が公表されております。ですが、まだなかなか具体的にイメージがわくような形で成果が出されておりませんので、本来こういうものであるべきだということを海外の例から引いて簡単にちょっと御説明したいと思います。
 政策評価は、企業でいいますと業績評価そのものでありまして、ある組織、ここでは局というものを例にとっておりますが、例えば文部科学省の小学校の教育を担当している局、そこの仕事ぶりを評価する、それをどういう切り口で政策評価ではやるのかということを例で示しております。
 政策目標というものをまず掲げるわけですが、例えば学級崩壊対策であるとか学区の自由選択制とか、これは、議員の先生方あるいは行政マン、国民、いずれの観点から見ても大事だなと思うような課題の固まり、これに沿って実際に評価をしていく。目的をまずはっきりさせる必要がありまして、学級崩壊であれば、現在どれぐらいあるのかということをまず理解する。例えば、仮に一〇%だとします。そうすると、これは大変だということで、一年たったら三%以下にしたいな、これがアウトカム、成果の目標。それに対してどんな仕事を役所はすればよいのかということで、例えばボランティアの先生を投入しよう、これがアウトプットであります。当然それにはお金が必要になりまして、これがインプットということになります。
 従来の行政にもこのような作業は当然あったわけですけれども、体系的にされていなかった、あるいは情報公開されていなかった。あるいは、インプットとアウトプットというのは予算編成のプロセスで明快になります。幾らの予算を使ってこれだけの仕事をする、インプット、アウトプットははっきり出されていたわけですが、その結果、何をどこまで変えるのかというアウトカム、これに関しては今まで余り明快にされていなかった。それをはっきりしていこうではないかというのが、政策評価の一つの眼目であります。
 企業に例えますと、右端のインプットが投資であります。アウトプットが売り上げだ、アウトカムというのが利益に相当する、こういうふうに私は理解をしております。
 というのが、本来の政策評価制度の考え方です。もちろん、細かいことを言い出しますと、これだけではない、もっといろいろあるんだということですけれども、本質的には、目標を立てて、一定期間後、どれぐらいインプット、アウトプット、アウトカムがあったのかということを測定する、その上で次どうするかを考える、これがこの制度であります。
 次のページを見ていただきたいんですけれども、これがいわゆるガバナンスあるいは経営改革という観点からどういうふうに意味を持つのかということが実は大事であります。政策評価をやれば、あたかも急に行政効率がよくなるというような論調に時々接するんですが、政策評価は非常に有効な道具ではありますけれども、これだけをやれば何か大きく変わるというものではありません。大きく分けると四つ、四つのことを同時にやって初めて政策評価も機能するというふうに考えます。
 この図は、民間企業のコーポレートガバナンス、行政監視に相当するというふうに考えればいいと思いますが、それと照らし合わせて政策評価を位置づけ直したものであります。
 民間企業のよい経営というのはどのようにして行われるかといいますと、この図の左の方に「民間経営手法」と書いて組織の図がありますけれども、極めて当たり前ですけれども、現場で仕事をしている第一線の人たちが自分のやっていることを点検して次の課題を見つけてみずから改善する、こういう活動が当然一番重要なわけです。ただ、現場の人たちが頑張っても解決できない話がある。お金、予算が必要、あるいは制度を変えないとだめ、そういう場合には経営者が出てきて戦略目標を立てる、あるいはそこに投資というものが発生する。
 そこで、いわゆる戦略計画というものができてくるわけですけれども、企業のいわゆる年次報告書、アニュアルレポートに書いてあることは、この図でいいますと、下から二番目の「目標管理」というところであります。幾らのお金を使ってこんなことをやりましたというのを株主に対して報告する、これがアニュアルレポートであり、この図の下から二段目の分野であります。行政評価あるいは政策評価というのは、この下から二番目の部分になるわけです。
 そのようにしていろいろな情報が企業から外へ出てきますと、それに対して監査というものがかかる。これが下から三番目の「専門家による評価」。しかし、それでも完全に信用できないということになりますと、情報公開というものをかけなくてはいけない。いわゆるエンロンのスキャンダルなどはこの下から三番目のところで、企業と監査の間で癒着があった、こういうことになります。政策評価というのは、この下から二番目の部分でしかありませんで、実は、そのためには一番下の現場改善活動というのがまずないとちゃんとした評価ができないということであります。
 一般論はこの程度にしまして、現在の政策評価がどうなっているかということについて、簡単に触れさせていただきます。
 レジュメの一番最初のページに戻ってください。私、日本を離れておるということもありまして、東京に戻ったときに、いろいろな省庁の評価担当の方々あるいは幹部の方に少しインタビューをしてみました。そうしますと、押しなべて、この評価というものを理解するということに関してはかなり進んできた。予算の議論、政策の議論のときに、例えばアウトカムはあるのかといったような議論があちこちでされるようになって、意識という意味では大分変わってきた。それから、国民に対する説明という意味でもかなり意識されるようにはなった。
 しかしながら、むだな予算を削り、あるいは生産性を上げていくという意味では、まだとてもそういうところには行っていない。むしろ、書類を書いたり報告をしたり会議をしたり、こういう政策評価導入にまつわるいろいろな作業に追われていて、本来、そもそも何をやるべきだったのかというところまでは手が回らない、こういう状況であります。
 それから、そもそも評価をやってみてつくづく思うんだけれども、今の役所の仕組みがなかなか改革というものに向いていないな、これが実はいろいろな方々の意見であります。
 例えば、評価をしてこの事業は問題だということに気がついても、それでは実際に改善できるかといいますと、改善したところで特に褒められるわけでもない。あるいは、予算あるいは人事というものががちがちに固まっていて、その制約がある限りは、自分たちが自主的に目標を変えて次のステップに向かって進むということがなかなかできないんだ、こういうフラストレーションが現場の側にあります。つまり、評価されて問題が出る、そうすると自分たちは直したい、だけれども、今の制度の中ではそれが自分たちのイニシアチブでできない、こういうフラストレーションがあるわけです。
 制度自体に関してどうかということを、これは今度は私の視点で見ますと、まだまだ極めてプリミティブといいますか、制度をつくっただけという状態に近いと思います。
 まず、評価作業自体が自己目的化している。例えば予算編成であるとか現場のいろいろな政策立案活動、これに使われていない、つながっていない。気持ちの上ではつながり始めているけれども、実際の仕事には反映されていない。
 それからもう一つ、非常に大きな問題は、法制化のプロセスで、この評価というものは客観的かつ厳格な実施を行うんだということが明確に書かれたわけですね。評価をする以上、こうありたいというのが法制化のプロセスでの議論だったんだろうと思いますが、実は、業績評価というものは、第三者がある日突然来て、いい悪いということを決めつけるというものではないわけです。自分で目標を立てさせて、それができたかどうか自分で分析をさせて、それに対して君の見方は甘いんじゃないかというような対話を繰り返していく、これが非常に大事なわけです。
 ところが、現在の制度は、各省庁から出てきたものに対して事後に一方的に各省庁のチェックをするという意味で、総務省あるいは学識経験者の第三者委員会がチェックする、こういうことになっていて、実務家からすると大変怖い。最初に自分が何を約束したのかということと関係なく、一方的に後からチェックされる、こういうことになりますので、やはり高い目標を出すのは怖いし、自分の担当業務に関して素人であるような他省庁の公務員、あるいは外の民間の人たちにいきなり評価されるというのは嫌だ、こういう問題があるわけです。
 したがって、外から厳格に評価したいという意図はわかるわけですけれども、これはイソップ物語の「北風と太陽」という話を思い起こすべきだと思うわけです。北風をびゅうびゅう吹かせますと、必要な情報も何も出てこない。政策評価で立てる目標は低目にする、全部できています、こういう形で、書類づくりだけが進行するということになるリスクが極めて高いので、そういう意味で、後でまた質疑の中で提案しますけれども、現在の制度そのものの運用の仕方というものをもう少し各省庁の自主性にゆだねてみる、その上でまたチェックをかけていく、こういうことにする必要があるのではないかというふうに思います。
 以上です。(拍手)
渡海委員長 ありがとうございました。
 次に、田辺参考人にお願いいたします。
田辺参考人 おはようございます。
 二〇〇二年の四月から行政機関における政策評価に関する法律が動き出しております。この四月までに、この三年から五年の間にどういう形で評価を行うのかを定める基本計画、それから、毎年どのように行っていくのかを記した事業計画が各府省から出ているわけであります。また、次の六月には、昨年度行われた政策評価の結果が出そろうこととなっております。こういったまさに日本の評価制度が動き始めようとしている時期に発言の機会をいただいたことに感謝申し上げます。
 以下では、四つの点についてお話し申し上げたいと思います。
 まず第一番目は、この日本の政策評価制度というものは諸外国の制度と比べてどういう特徴があるのかという点であります。それから二番目に、この評価制度のもとで具体的にどういう評価を行っているのかということであります。それから三番目に、この評価制度を回していく際に必要な役割、その分担というものについて議論していきたいと思います。それから、最後に四番目といたしまして、この日本の政策評価制度の抱える幾つかの問題点、課題ということについてお話し申し上げたいと思います。
 まず第一番目に、日本の政策評価制度の特徴について、簡単に御説明申し上げたいと思います。
 まず第一番目の特徴としては、これが包括的な制度であるということであります。例えばアメリカの場合ですと、公共事業の評価であるとか規制のインパクト分析、さらには会計検査院によるプログラム評価、それからGPRAというさまざまな制度が乱立しております。これは根拠も主体もばらばらであります。しかしながら、日本の場合には、一つの法律の中にこれらの諸制度を含む形で位置づけているという点であります。
 それから二番目に、日本の政策評価制度は法律によって義務づけているということであります。アメリカのGPRAを除きますと、法律によって評価というものを義務づけている例は少ないということであります。例えばアメリカの規制インパクトという評価制度をとりますと、大統領令で行われております。つまり、行政の中だけであります。それから、イギリスのPSAと言われる評価制度は、内閣の方針として行われているということであります。つまり、日本の場合には、評価制度の位置づけが法律で義務づけられているという点でその位置づけが高いということであります。
 それから、三番目の特徴といたしまして、既存の評価方式の組み合わせによって日本の政策評価制度は構築されているということであります。つまり、評価のやり方として新しくつくり出したというものはない、つまり、世界のどこかで既に存在しており、動いているというものから成り立っているということであります。
 それから、四番目の特徴としては、これがかなり柔軟性を持っているということであります。つまり、各府省が具体的にどういう評価を行うのかというその構築はゆだねられているということであります。つまり、画一的にどのような政策、どのような行政においても同じ方式で行えということではなくて、政策に適用的に自分の制度を組み立てていくということが可能になっているということであります。
 それから、五番目の特徴といたしましては、予算とのリンクが比較的弱い制度であるということであります。アメリカですとOMBが中心になって行っておりますし、それからイギリスの場合ですと日本の財務省、トレジャリーが中心になって行っております。つまり、財政と評価というのが一つの省庁の中で完結しているわけであります。その点、日本の場合には、財務省と総務省がこの役割を分担しておりますので、予算という資源配分の流れと評価の流れが切れるという可能性は指摘できるわけであります。
 それから、第二の論点に移っていきたいと思います。具体的に、どういう評価を日本の制度では試みているのかということであります。
 日本の評価の方式というのは、単一の方式ではなくて、三つの方式を組み合わせるという形で動いております。なぜか。つまり、評価に求められる要請にこたえるためには、一つでは不十分であり、三つ必要だからというのが恐らくはその理由になろうかと思われます。
 その三つの方式というのは、事業評価という方式、実績評価という方式、それから総合評価という方式であります。
 まず第一番目に、表一をごらんいただきたいと思いますけれども、実績評価がねらいますのは、省庁の側、政府の側の説明責任を確保する、さらには、仕事をできるだけ効率的に行うような誘因づけを与えるということであります。基本的な手法といたしましては、各省がどういう仕事をしているのか、それを体系化し、その実績を測定するような指標をつけるということであります。そこで出てくる情報というのは、結局、どの程度うまく行ったのかという成績を点検するような情報であります。
 それから、第二番目の事業評価というのは、当時問題になっておりました公共事業等にかかわるような評価方式であります。つまり、これが目的といたしますのは、特定の事業を行うべきなのか否かということを判断する、その判断に必要な情報をつくり上げるということであります。そうなりますと、時期としては、事業を行う前に行うということであります。基本的な手法といたしましては、費用便益分析というものが用いられているということであります。
 それから、三番目の総合評価というものは、これはある意味ではレポート方式であります。つまり、非常に大きな制度改正を必要とする、そのときに過去を振り返ってどうだったのだということを見てみるということであります。つまり、その目的は、次の政策改善、制度改善に向けた情報を提供するということであります。
 ただ、このやり方はかなりコストがかかりますので、限定的、重点的に行わざるを得ないということです。手法といたしましても、かなり複数のいろいろな手法を組み合わせて、かつ、定量的なもののみならず、インタビュー等を重ねて定性的なものも用いるということであります。つまり、ここの総合評価で出てくる評価の情報というものは、問題を解決するために資する情報をつくり上げるということであります。
 こういう三つの方式をうまく組み合わせてもらうことによりまして、日本の評価制度というのは成り立っているということであります。
 次に、三番目の論点に移っていきたいと思います。これは、評価制度を動かしていく際に必要となる役割ということであります。
 政策評価の制度をきちっと動かしていくためには、恐らくは以下の四つの制度、四つの役割というものが必要になってくるような気がいたします。
 第一番目の役割というのは、評価のプロセスを管理するという役割であります。各省庁におきましては、例えば官房の政策評価室というようなところが担当しております。それから、政府全体では、総務省の行政評価局がこれを担当しているわけであります。つまり、評価を計画的に行い、その出た結果というものを計画的に公表していくために、その流れを管理するという役割であります。
 それから、二番目の役割というのは、政策評価の情報をつくり上げていくということであります。例えば事業評価でありますと、費用と便益に関する情報というのをつくり上げる、それから実績評価でありますと、目標値はどういうものになっているのか、実際に行った結果どういうものになったのか、この情報をつくり上げていくという役割であります。これは各省の原課局が実際上は担っていると考えられます。
 それから、三番目の役割というのは、評価情報をチェックするということであります。つまり、つくり上げられた情報というのがきちっとしたデータに基づいているのか、その妥当性をチェックする、それで評価の信頼性というものを確保するという役割であります。
 それから、四番目の役割というのは、評価を通じて出てきました情報を、次の決定であるとか行動につなげ、利用していくという役割であります。政府であるとか国会であるとか、さまざまな団体が恐らくこの役割を担っていくだろうと思われます。
 大切なのは、この四つの役割のどれが欠けましても政策評価制度というものはうまく回らない、逆にどれかが欠けますと、この制度が形骸化する危険があるということであります。現状におきましては、管理の部分、それから生産の部分に関しましては、とりあえず計画をつくるということで律しているわけであります。しかしながら、三番目のチェックであるとか、それから利用という側面に関しましては、いろいろな主体が入り込みますので、この部分は若干弱いというのが恐らく現状かなと思われます。
 それから二番目に、このループというのを、この四つの役割というのは、各省庁の中で完結するようなものではないということであります。
 次の表の二をごらんいただきたいわけですけれども、内部評価で行っている各府省の自己評価という一つの流れがございます。他方、この流れだけではなくて、例えば総務省と各省の対抗関係を利用した形で評価を行うという、もう少し大きな流れがございます。他方で、総務省の方でもまだ足りないとしたときには、会計検査という形で返ってきますし、それから国会の調査という形で評価が行われるという、非常に幾つかの大きさを異にするループが存在しているということであります。このループが多元的に組み合わされているというのが、この評価制度、特に各府省の内部評価、自己評価というものを律し、緊張感を与えるために必要になっているということであります。
 以上が、三番目の役割にかかわる部分です。
 最後に四番目といたしまして、今の日本の政策評価制度が抱える課題について簡単に指摘しておきたいと思います。
 まず、総論といたしまして、第一番目に挙げられますのは、ちょっと変な言葉ですけれども、「政府の不在」と書いております。どういうことかといいますと、日本の政策評価制度におきましては、分担管理原則に従いまして、政府の大きな方針というのが、各府省の施策に分解された後で初めて政策評価の対象になるということであります。
 例えば、政府の方針ということで、各省を通じて雇用創出を重視しましょうということがうたわれたといたしますと、それが各省の施策に落ちてきたときに初めて、どう行うのか、どう評価するのかということが議論されがちであります。しかしながら、政府全体としての共通の方向性というものが、各省におろしてきたときに組み入れられているという保証は必ずしもないわけであります。また、複数の省庁が絡む共管事務に関しましては、ここの評価の領域が空白になりがちであるという問題点であります。
 それから二番目は、「執政の不在」という、これまた若干レトリックを使っておりますけれども、この執政というのは、各省の大臣、副大臣、政務官という省の中の政治家によって担われている部分であります。これらの政治家の方々が、評価の目標の設定にどのくらいコミットしているのか、さらには、評価の結果が出てきたときに、どの程度その結果に対して責任を負うのかということが必ずしも明らかではないというのが二番目の問題点であります。
 それから、三番目の問題点として挙げられますのは、コスト情報とのリンクが弱いということであります。特に、実績評価では目標値という形で出てきますけれども、それを達成するために幾ら予算がかかったのかということは明示されていないということが多いわけであります。つまり、どれだけの負担でどこまで行ったのかということが、なかなか今の段階では見づらいということであります。恐らくは、公会計制度、それから予算費目等多くを交えて検討する必要があるということです。
 それから、四番目の問題というのは、レビューもしくはチェックの機能が弱いということであります。先ほど上山さんの方からも議論がございましたけれども、各省が行った後で、それがどの程度正しいものなのかということを再検討する、その部分というのが弱い、十分な支援が割かれていないということであります。
 それから、五番目の問題といたしまして、今とかかわることでありますけれども、評価の技能の蓄積が不十分であるということであります。技能が十分でないところで評価を行おうとするわけですので、一般的には、現状の評価のやり方をそのまま肯定しがちになってしまうということであります。つまり、よりよい方向を目指して質の向上を目指すというインセンティブが余り埋め込まれていない可能性があるということであります。
 それから、六番目の問題点としては、利用者の意見をフィードバックができていないということであります。これは、制度が動き出してからまだ時間がたっていないということもありますけれども、どういう形で利用したいのかということをインプットいたしませんと、どういう情報を生み出していくのかということがわからないということであります。
 以上申し上げましたような幾つかの問題点を日本の政策評価制度は抱えているような気がいたします。恐らくは、今は動き出した段階であります。これをよりよく動く方向に持っていくために、もう一段階の努力が必要な気がしております。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
渡海委員長 ありがとうございました。
 次に、竹内参考人にお願いいたします。
竹内参考人 竹内でございます。
 政策評価について幾つか述べさせていただきたいと思います。
 日本の現在行っております政策評価につきましては、今後、極めて大きなレベルアップが必要だというふうに考えております。そもそも政策評価の目標は何だったのかということでございますけれども、やはり三つの観点が重要なのではないかと思います。
 それは、まず一つは、市場の評価というものを政策とどういうふうに結びつけていくかということ。それから、市民の目線で、今の政策に対してどのような不満があり、どのような期待があるのかということをなるべく時間のロスなく反映させていく必要があるということ。それによって政策に対する潜在的ニーズというものをくみ上げていくという目標があると思います。それから、三番目の大きな目標としては、現在の政策にかわる新しい政策の方向というものを政策評価を通じてどのように提示していくかという大きい目標があるというふうに考えております。
 そういう観点からいきますと、現在の政策評価というのは極めて努力目標のような形にとどまっておりまして、非常に客観的なツールを欠いているというふうに見ております。それでは、何かもっと政策評価が、現在の努力目標から、どうしても政策決定にとって必要なものであるということを組み込むにはどうしたらいいかということが次の問題点になってくるわけでございます。
 そこで、私が導入したいポイントというのは、財政システムとの関連をきちっと政策評価とくっつけて行うということでございます。現在、日本の歳入欠陥あるいは歳入不足というものが一種の政策評価と結びついて、いわゆる政策に対する効率の悪さというものと結びついて出てきている、歳入欠陥が生じているということを考えますと、歳入欠陥がなぜ生じているのかということと政策評価を結びつけて考えていく必要があるというふうに思います。
 それから二番目に、日本の政策評価において著しく欠けていると思われますのは技術的な観点でございまして、エンジニアリングというもの、今日のさまざまな技術革新というものの成果を、政策決定の場で十分に使うことができないというような問題点があると思います。このような技術的な評価が欠けているということでございます。
 それから、三番目に重要な評価としては組織の改編度。つまり、新しい人材を投入したり民間の資本を活用したりということで考えていきますと、人材あるいは資本の活用の仕方、あるいはそれに関連いたします法的な、司法的なフレームワークというものを変えていかなければならないわけですけれども、こういった人材と物と金、この三つのものを行政の中で活用する、そういう法的なフレームワークあるいは組織の改編というようなポイントが、現在の政策評価の中では十分に生かされていないというふうに考えております。
 このような新しい政策評価を導入していくということになっていきますと、これからの行政改革ないしは政策評価のあり方というのは、もっと一段と変わったものにならざるを得ないのではないかというふうに考えております。
 この問題点というのは、既に行政改革の段階で指摘されているポイントでございまして、そこにも書いてありますように、行政改革のポイントというのは官と民の分担体制をしっかりするということでございますが、ただ官と民との関係を整理するということではなくて、本来の目標というのは行政サービスの質を高度化させていくこと、サービスの質を上げるということが目的でございまして、それをいかに安いコストでやっていくかということで考えますと、計画的な側面と事業サービスというものを分離して、その上で官と民が分担を決めていく。この問題をきちっと整理しなければならないわけですが、現在の政策評価にはそのポイントが十分に反映されていないと考えております。
 それから二番目に、行政改革にとって、あるいはこれからの政策評価にとって重要なのは、中央と地方の関係あるいは財源分担の比率というものをどのように柔軟に見直していくかというポイントが重要であるというふうに思われます。
 現在、地方分権の中では、国の関与をいかに排除していくかという観点から検討が行われております。しかしながら、補助金制度あるいは分担比率というものが固定的であるために、どうしても柔軟な、経営的な判断ができないという問題がございます。ここにもう少し焦点を当てた分析が必要かというふうに思われます。
 それから、次に重要なことは、行政改革の最大の課題は、縦割り行政の排除あるいは省庁間の連係プレーというものをどのように柔軟に行っていくかというポイントだと思います。
 しかしながら、現在使われております省庁間組織というものが十分に活用されていない、形だけつくっているというようなことでございまして、それが現在の税制改革あるいは都市再生といった問題に対処するときに、どうしても縦割り行政というものが壁になってきているということでございます。ここの効率性をどのように担保していくかということが重要かと思います。
 予算制度との問題あるいは決算の問題、会計制度の問題、これも非常に大きく響いておりまして、どうしても財政の削減というものが事業ごとに行われるのではなくて、予算ごとに一律の削減という目標にまだとどまっているために、現場の実際のお金の使われ方からのフィードバックが十分生かされていないというような問題がございます。
 大きく言いまして、現在の行政評価ないしは政策評価というものは非常に大幅な構造改革を必要としている、政策評価そのものに大胆な構造評価、構造改革をしませんと、市民が望んでいるよりよい政策というものが実現できないというふうに考えております。そのように考えてみますと、さらに新しい仕組みというものを政策評価の中に取り入れていく必要があるのではないかというふうに思われます。
 まず最初に気になっております問題というのは、二ページ目に移りますが、では、政策評価の中でどのくらい客観的な評価をすることができるのかということになります。
 その場合に、どのように評価するかというのは、人々の、行政に携わっておられる方のモラルであるとか経営的な感覚であるとか、そういう抽象的なレベルではなくて、実際のコストの精緻な分析、エンジニアリングの技術を活用いたしまして、老朽化の度合い、メンテナンスコスト、あるいは建物をつくった後にコストが地域でどのように発生しているかというようなことを精緻に分析すれば、努力目標ではなくて具体的にもっといい経営の仕方というものが出てくるわけで、そういう意味では、効率性、収益性の視点から評価方法をもっと精緻化すべきであるというふうに考えております。そして、法律的なフレームプラス、より技術者を活用して、現場が、何が、どのような問題が起こっているかというようなこともよりきちっと分析をしていくべきだと思います。
 それから、大きい問題が、日本の政策にとっての最大の欠陥は、資金調達能力がないということでございます。つまり、税収がどんどん減っている、しかし政策は行われている、この間のギャップをどのように埋めていくかというのが政策評価のポイントになるというふうに思われます。
 なぜ歳入欠陥が生じてしまうかといいますと、政策を支える制度として税制ないし財政というものが非常に大きな欠陥を抱えた制度になっているということでございます。新しい技術的ニーズ、市民のニーズに対応できるような税制、財政になっていないということが大きなポイントでございます。
 そして、最近の新しい福祉社会に向かってどのような福祉サービスが必要なのか、あるいは、最近大きいテーマは環境に対する対応ということでございます。環境問題に対して、ごみというような問題、上下水道の不備の問題、こういった問題に対しまして、果たして現在の税制で十分に対応できるのかといいますと、全く対応できていないわけでございます。
 この分野におきましては、私は、税制プラス汚染者負担であるとか、受益者負担であるとか、利用者負担であるとか、そういったサービスとの対応関係を明確にした、いわゆる新しいサービスコストというものを導入することによって、税制で賄えない財源というものを現場で回収していく、現場で徴収していくというような仕組みを導入いたしまして、税制とそういった新しい料金体系というものをセットにすることによって、日本の財政政策というものをより高度なものに変えていけるのではないか。
 増税議論だけをやりますと、どうしてもそこで既に話が終わってしまいまして、より高度なサービスを求めている市民のニーズにこたえられない。つまり、制度もサステーナブルでないどころか、市民のサービスに対する期待にもこたえられないという二つの面で問題があるということになりますと、税制と、それプラス上乗せのサービスに対応した料金体制というような問題、これをセットにした新しい政策体系というものをつくっていくことが必要だというふうに思われます。
 このような新しい問題を考えていきますと、現在の政策評価局ないしは評価機関のあり方というところで大きな限界があるというふうに考えているわけでございます。
 現在、財政諮問会議あるいは地方分権改革推進会議、さまざまなところで一部政策評価というものを代替しているというか、いろいろな形で動かしているわけでございます。つまり、何か新しい政策はないかというような意味で政策評価を行っているわけでございます。
 これらの成果をうまく政策評価に生かしていくために、私が提案申し上げたいのは、政策評価をやっているさまざまな組織の間をコーディネートする政策評価官というような非常にモバイルな人材を活用することによって、省庁間の連絡体制をスムーズにし、情報の内容を、情報が漏れがないような形に持っていってはどうかということを提案申し上げたいと思います。
 そして、今行われております司法改革ないしは公正取引委員会の問題、これが非常に大きいわけでございまして、日本の競争政策というものは、現在の地方自治体で起こっておりますようなさまざまな公共事業の不正の問題に十分対応していないわけでございまして、その点から申し上げますと、政策評価官の創設、そして、現在ございます行政管理、行政監察局、そして司法制度、この三者体制で新しい市民のニーズの吸い上げという機能を拡大していくことが必要だというふうに考えております。
 そして、二番目に重要なことは、現在政府が行おうとしている構造改革ないしは政治との関連をいかにスムーズに政策評価の中でも反映していくか。つまり、現在の政策評価というのは待ちの状態になっておりまして、政治家が何か言わない限り何もしないというような体制になっているわけでございますが、既に特殊法人改革、財政構造、財投改革などが提案されておりまして、この政策をいかにサポートし前に進めるかというような積極的な意味での政策評価の活用というものが求められているというふうに思います。
 それから、三番目に政策評価で重要なことは、日本の経済成長というものが非常に低迷を続けているわけでございますが、最大の問題は、経済活動をより活性化し、新しい産業を起こしていくということが非常に重要なことでございまして、ただ政府を小さくするというだけの問題ではございませんで、新規の産業にかえていくというような視点が必要であるというふうに思われます。
 その意味で、政策評価とこれからの経済の持続性というものから考えますと、民間の活動にかえていきながら新しい産業にかえられるような政府の活動はどんなものかという切り取り方についての議論を活性化させていくという目標があるのではないかと思います。
 以上で、今後の政策評価について必要となるようなポイントを申し上げました。以上でございます。(拍手)
渡海委員長 ありがとうございました。
 以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
渡海委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。持永和見君。
持永委員 参考人の三先生方、大変お忙しい中をおいでいただきまして、また、行政評価という、我が国では平成十三年から初めて具体的な導入をしようということで始まった新しい評価制度でありますけれども、これについてそれぞれのお立場から大変貴重な御意見をいただきましたこと、まず厚く御礼を申し上げたいと思います。
 それでは、大変時間も限られておりますが、二、三御質問をさせていただきたいと思います。
 まず、上山参考人にお聞きいたします。
 上山参考人は大変外国の評価制度についてお詳しいということをお聞きいたしておりますけれども、日本の新しく取り入れられた行政評価制度は、一つは、各省庁と総務省と二重の行政部内での評価制度になっておりますね。各省庁がまず自己評価をやって、それを総務省が総合的な形で評価をするというような形になっておりますけれども、諸外国のそれぞれ、さっき先生のお話では、法律で縛られたところは少ないんだというお話でございましたが、諸外国の制度、果たしてこういう二重的な形が評価のチェック機能として意義があるのかどうか。あるいは、そのほかに、自己評価を各省庁がやって、改めて調整官庁みたいなものが評価をやっている国が多いのか。あるいは、自己評価は自己評価として、その調整というか、その上の段階の評価制度というのは、そういった官庁ではなくてほかのところがやっているのか。
 その辺、具体的に何か御示唆いただくものがありましたらお伺いをいたしたいと思います。
渡海委員長 委員長の許可を求めていただきたいと思いますので、冒頭申し上げましたが、よろしくお願いします。
 上山参考人。
上山参考人 まず、海外の制度ですけれども、二重のチェック、要するに、各省庁がみずからやって、さらにほかの機関がチェックするのかということに関しては、どこでもおおむねそのような仕組みになっています。ただ、我が国の特徴は総務省がチェックをするということになっていますが、例えばアメリカであれば予算局、イギリスも同じく大蔵省、つまり、予算編成部局が実質、制度的には必ずしも明快じゃないんですけれども、事実上、予算の権限を持っているところがチェックをかけていく、こういうことであります。
 総務省がチェックをするということに関しては、私はかなり限界があると思います。その問題がまず一つあります。ただ、今まで制度をつくるということにおいては、やはり総務省の職員の中にそういうノウハウを持った方が多いので、つくる段階ではよかったが、運用のところまで総務省が引き続き関与するかどうか、これは私は疑問です。
 ただ、各省庁に単に任せますと、当然お手盛り評価になってしまうという問題があります。それに対する解決策が二つあります。
 一つは、やはり各省庁の大臣、先ほど田辺先生が執政という言葉を使われましたけれども、大臣、副大臣、政務官ですね。こういった方々がむしろ経営者として、局長以下がやっている自己評価に対して挑戦していく。これがまず一番大事なことで、私は、これがまず今根本的に欠落しているというふうに思います。
 それからもう一つは、やはり内閣、もっと言いますと総理ですけれども、総理が大臣をチェックする。これを制度的にどうやるかといいますと、やはり内閣府のところに今の行政評価局の持っている機能あるいは人材を移して、一段高いところから全体を見ていくというふうにするべきで、今の総務省の位置づけは各省庁と全く対等でありますから、企業でいえば総務部あるいは総務課がほかの事業部がやっていることをチェックする、もともと限界がある構造だと思います。
持永委員 ありがとうございました。
 それでは次に、田辺参考人にお伺いをさせていただきます。
 先ほどのお話で、日本で導入された政策評価、これまで実施された過程の中でいろいろな役割についてお話がありまして、政策評価過程の管理だとか生産とかチェックとか利用とかそういう問題で、特に評価の情報利用というのが非常に弱いんだというお話がございましたが、こういった役割、機能を高めるためには、それぞれの分野で具体的に、例えばこういうことがあるんだよ、ある国ではこういうこともやっているし、こういうことがあるんだよというような例がもしおありになりましたら、参考までにお聞かせいただきたいし、また、特にどういう面が弱いんだということが御示唆いただければありがたいなと思います。よろしくお願いします。
田辺参考人 先ほど、利用の側面が弱いということを申し上げました。これは二つの側面がございます。
 一つは、各府省の中でどう利用するかという問題であります。つまり、評価の結果が出た後、それをどういう形で、次の施策であるとか次の予算であるとか次の制度改正、もしくは管理の仕方を訂正するという方向に回していくことができるか否かという問題だろうと思われます。
 一般的には、制度を担当している部局は官房にありますので、官房を中心とした動かし方になろうかとは思うんですけれども、それが時々そのループが長過ぎてどこかでとまってしまう。つまり、情報は出すし、こういう結果になったけれども、それを次にどうするんだというところに関しては、制度のマネジメントというところでとまってしまう可能性が大きいということであります。
 それから二点目は、もう少し広い形で、各府省の中だけではなくて、政府全体として、もしくは政府とそれから国民との間でどう回していくのかという問題が一点です。
 ここは幾つかございますけれども、一つは、アメリカ等と比べますと、行政評価局が行っている評価に関するフィードバックというのは比較的強いような気がしております。つまり、アメリカの方がむしろ言いっ放し。特にGAOの評価に関しましては、国会議員の、国会の方にフィードバックするわけですけれども、そこで一回断ち切れますとなかなか続いていかない。これに対して、行政評価局の場合ですと、各省にどういう形で直してくれというある種の勧告をいたしますので、その短いフィードバックに関しては非常に大きいということであります。
 それから三番目に、国会でこういった情報をどう生かすのか、そこをどういう形で使っていくのかということは、まさにここの知恵の出しようだと考えております。
持永委員 ありがとうございました。
 それでは次に、竹内参考人にお伺いさせていただきますが、先ほどもお話がございましたように、行政評価というのは、それぞれの行政が適正に正しく効率的に、しかも透明性によって行われたかどうかという面と、もう一つ大事なことは、国民の税金で行政を行うわけですから、税金が本当にむだなく効率的に使われているか、こういうことであろうと思うんですね。
 そういう面での行政の評価ということになりますと、やはり財政との関連というのがこの評価制度の中に生かされて、それが直ちに次の翌年度の予算とかそういうことにはね返ってこないと、行政評価だけひとり歩きしても、これは本当の意味で実効性のある行政評価にはならないのではないかと思います。そういう点で、今はただ総務省を中心に行政評価をやる、各省庁は自己評価をやる、これはこれで一つのメリットもあろうと思いますけれども、やはり基本的には財政とのつながりというのが大事なことだなと私は思っております。
 そういう点について、予算システム、財政システムとこの行政評価システムとを結びつけるにはどういうようなコーディネートをしたらいいのか。もし御意見がおありになったら、お聞かせをいただきたいと思います。
竹内参考人 いい質問をいただきましてありがとうございます。
 まず、政府の活動の中で、財政的な面でどのような効率化が図れるかという御質問だと思います。
 それで、まず一番大きい内容は、政府の中でも非常に行政手法といいますか、行政的に決めていかなきゃいけない、国会ですとかさまざまな制度を運営していくという側面と、実際に窓口で市民のためにサービスを行っていく人たちの仕事に、大きく言うと二つに分かれるというふうに思います。
 それで、もちろん行政事務的な仕事を効率化するための方法と、それから、実際に事業をやっている場合にどういうふうな利用効率が図れるかということは、こここそまさに第三者による効率化のチェックというのがしやすい分野でございます。
 できればということですけれども、すぐにできないとしても、今自治体で行われておりますようなさまざまな福祉サービス、環境サービスといった部門につきましては、私は、むしろ一括の民間委託を行います。民間が実際に運営してみる。それで何%コストを削減できるのか。一〇%コストを削減できたら、例えば、その一%はそのコストを削減した民間の方の努力に対する報奨金というような形で利益をくっつけるというようなやり方をいたしますと、パブリックなことをやりながら、いや、実は民間がやるとこれだけコストを削減できます。しかし、公共がやっておりますと、コストを削減しても、現実に予算制度が変わりませんと、前年度並みということで、その一〇%のコスト削減分が表面化されないわけでございます。
 その意味では、官と民がサービス契約みたいなものを結びまして、民がやった場合に、もちろん全部民間人がやることは難しいんですけれども、まずフレームワークを民間の事業体に直しまして、そこで浮いたコストを官と民でどのように分けるかというようなやり方、リスクシェアリングといいますけれども、そのような形によって、本来きちっと使われなければならない税金ないしは公的な収入というものを効率的に使う方法が出てくると思います。すぐに導入は難しいんですが、このような方法が考えられると思います。
持永委員 大変ありがとうございました。
 今後とも、国会としても、私どもとしても、この行政評価制度がさらによくなるようにいろいろ議論を積み重ねていきたいと思いますから、どうか先生方も、ひとつよろしく今後とも御指導をいただきたいと思います。
 以上をもちまして質問を終わります。ありがとうございました。
渡海委員長 次に、山名靖英君。
山名委員 公明党の山名靖英でございます。
 本日は、三人の先生方、本当にお忙しい中、ありがとうございます。
 先ほど来より、三人の先生方から、現状の政策評価につきましてるるお話をいただきました。印象として持ちましたことは、まだ制度としてスタートしたばかりでありまして、十分その機能も成果も果たされていないことはもう当然でありますけれども、かつ、この制度の持つ難しさといいますか、あるいは問題点等、まだまだたくさん抱えているなということを現実の問題として自覚をした次第でございます。
    〔委員長退席、岩屋委員長代理着席〕
 私ども、この制度をつくる際には、本当にいろいろな角度から、皆さんからのいろいろな御意見を聞きながらこの法律をつくったわけでありますが、何よりも、従来我が国になかった政策の決定過程の透明性、あるいは費用対効果等の効率性、そして何よりも、国民に対する情報公開といいますか、ガラス張りの政治、こういったものを目指してこの制度の確立をしたわけであります。
 これからの我が国にとって、この制度は今後とも極めて重要なテーマでもありますし、そういった意味でもよりバージョンアップをしていかなきゃいけない、そのために制度そのものは三年に一度見直していこう、こういうふうにうたっているわけでありまして、今後とも先生方の御意見をしっかりと拝聴しながら、より一層高度な制度の確立を目指して私どもも努力をしていきたいと決意をしている次第でございます。
 そこで、きょうはたくさんの問題点を御指摘いただいたので、その一つ一つの分析といいますか、方向性といいますか、そういったものについてお伺いをしたいんですが、時間の関係もございますので、若干の点だけお伺いをして終わりたいと思っております。
 一つには、今回のこの評価制度の運営におきまして、いわゆる政策評価・独立行政法人評価委員会、こういうものを設置しております。各府省の政策評価、それから総務省における二次的な評価、そして加えてこの政策評価・独立行政法人評価委員会、こういうものをつくりまして、かなり精緻な評価をねらったわけでございます。
 ところが、この第三者委員会ともいうべき委員会の役割といいますか、機能といいますか、これが果たしてどこまで機能できるのか。そのアウトカム、成果というものが具体的に提示され、国民の前に公表されて初めて、国民としても、なるほど、自分たちの税金が的確に、いい事業に、そして見事な成果を上げて使われた、こういう国民的な評価にもつながるわけでありまして、そういう意味では、この評価制度が、先ほど上山先生もおっしゃいましたけれども、単なるお手盛り的な評価にならないように、そういった意味での第三者機関たる政策評価・独立行政法人評価委員会に対する評価、これについてまずお伺いを、上山先生と、それから若干竹内先生にもお願いしたいと思います。
上山参考人 独立行政法人政策評価の第三者委員会ですけれども、今のところ、まだあの委員会自体が機能しているとかしていないとかいう評価は早過ぎるというふうに思います。各府省が十分なデータを出してきて、それに基づいて機能するものでありまして、今の段階ではなかなか断定的なことは言えないと思います。
 しかしながら、このまま、例えばあと一年、二年経過して機能するだろうかといいますと、私は極めて疑問があります。
 まず、各府省にまたがるようなこと、例えば政府全体でやっておりますODAの評価、このようなことを総務省が評価する場合、この評価結果に対してのチェックというようなことは、恐らくあの委員会でそれなりにできるんじゃないかと思います。
 しかしながら、各府省の実際に直接の業務にかかわる事業評価であるとか実績評価、こういったものをあの第三者委員会が評価できるかというと、私は、幾ら優秀な人材を集めたところで、ほぼ不可能に近いというふうに思います。ましてや、独立行政法人の評価結果をあそこで評価するというのは極めて難しい。これはどういうことかといいますと、政府全体は極めて大きな会社でありますから、そこの各事業部の中の細かいことについて一々二次チェックをかけるような、そのような第三者の集まりというものがもともと想定不可能だというふうに思います。
 私の提案は、むしろ各府省に経営評価委員会といったようなものを置くべきである。大臣、副大臣、政務官、それから全局長が出て、局長が評価されるというような委員会を置いて、企業でいえば役員会ですけれども、そこに第三者が参加して、お手盛り的な議論にならないようにチェックをする、各府省レベルで政治家がチェックする、あるいは第三者がチェックする、こういったことを考えた方がむしろ現実的であるというふうに考えます。
 以上です。
竹内参考人 現在の政策評価・独立行政法人評価委員会の位置づけでございますが、現在、毎月一回、会合を開いておりまして、それぞれの委員が非常に短く意見を述べるというようなスタイルになっております。実際の事務局は、行政管理局だったか監察局だったか、その省庁の中の事務局が実際の作業を行っておりまして、こちらは従来、行政監察という形で、現行の行政制度ないしは法律のもとで実際に行政制度が法律にのっとって行われているかどうかという、比較的、個別的チェックに適した事務局体制だったというふうに考えております。
 そういたしますと、これから目標としております政策評価をより社会的にも、国民の目から見てもわかりやすくという機能からいきまして、現在の評価委員会の形では不十分であるというふうに私は考えております。
 まず第一の問題は、スピードが欠けているということでございます。
 最近の公共事業の問題、あるいは高速道路の料金の問題ですとか、それからBSE、狂牛病の問題で、食糧庁を廃止して民間の方による新しい規格制度、こういうふうなものは、本来ならば政策評価の中でももっと議論されるべきだったというふうに考えているわけでございますが、これがやはり出てこない、アイデアも出てこないというようなことから考えますと、もちろん垂直的に各省庁ごとに検討するということも大切だと思いますけれども、よりスピーディーに新しいアイデアを提案していくような場所にまずしていくということ、それが一つ。
 それから、行政評価委員会としての独自のスタッフあるいは活動体制というものがありませんと、いわゆる国際的な意味での第三者性というものが担保されないというふうに考えておりまして、時間はかかると思うんですが、そういった体制がまず必要であり、また、内閣府との連係プレーによって、よりゼネラルな観点、つまり統一的な観点といいますか、総合的な観点ともかみ合わせながら、スピーディーに動かしていく必要があろうかと思います。
山名委員 ありがとうございました。
 始まったばかりで、十分な情報のない中でこの独立行政評価委員会の評価をお聞きした無理もあるわけでございますが、いずれにしましても、この制度がスタートして、それなりに職員の間には緊張感がありますし、刺激がありますし、それぞれの府省につきましても、そういった、今までにない、かなりのインセンティブが働いていることは事実でありますし、基本的にはこれは歩きながら、走りながらしっかりとその改善策を講じていくという方向がいいのではないかと私も思っております。
 そこで、この政策評価につきまして、ただ、与えられたマニュアルというか、柔軟性はそれぞれ当然担保しなきゃいけないわけでしょうけれども、評価をすればそれで終わり、それで結果的にオーライだということであってはなりませんし、何のための評価だったのか、それが、先ほどもお話がありましたけれども、具体的に次への施策、政策、そして予算、こういったものに着実に反映されていかなければ、この評価制度の意味は全くないわけでございます。
 そこで、この行政評価法は、それぞれ関係する府省の大臣に総務大臣から評価結果を勧告したり、あるいは府省に対して政策の反映状況についての報告を求めたり、特に必要ならば内閣総理大臣に対して意見を進言したり、こういったことも一方で言っておりますが、政策評価の結果を確実に政策とか予算に反映するためには、より一層具体的な何かというものを明確にしておかないと、ただ一過性の、ひとりよがりの評価で終わってしまう。それでは、それぞれの評価機関そのものもそういうことで終わってしまいそうな懸念を私は持つわけなんですけれども、これにつきましては、上山先生と田辺先生、簡単で結構ですので、何か方法がありましたらお教えいただきたいと思います。
    〔岩屋委員長代理退席、委員長着席〕
上山参考人 制度ができて運用に入って、まさに先生がおっしゃるとおり、極めて具体的なレベルで、今後どうするかというのをつくり込んでいく必要があると思います。
 先ほど、田辺先生のレジュメで、三種類の評価方式があるという御説明がありましたけれども、私は、横断的なプログラム評価、それからあと、公共事業の個別事業のチェックの事業評価、こういったものについては今の仕組みでもある程度回るだろうとは思います。もちろん、第三者評価委員会の機能の限界などは先ほど申し上げたとおりですけれども。
 問題は実績評価でありまして、各省庁が一体何をやっているのか、これを国民と議会のもとに示すのが実績評価なんですが、今のところ、評価項目自体がせいぜい三十とか四十、一つの府省がやっていることを三十個ぐらいのチェックポイントで見ていくということ自体に私は極めて無理があると思います。
 きょう、私が絵入りのレジュメで一番最初に御紹介した小学校の教育の例ですけれども、これぐらいの密度で、各局について局の主要な施策、恐らく多くて二十、少なければ十個ぐらいだと思いますけれども、その単位で、局レベルで目標を立てさせて、大臣と相談をして目標を世間に公表し、一年たったら、先ほどの各府省の経営評価会で議論をし、それから国会に報告する。こういう、局長の責任を問う、それで大臣と局長が約束をする、さらに大臣が総理に対して報告をする。総理対大臣、それから大臣対局長、こういうところの契約関係を極めて明快にしていかないと、事務局任せの評価資料づくりというのを今のまま続けていっても実効性はないというふうに考えます。
田辺参考人 恐らく三点あると思います。
 一つは、評価というのは情報の提供であり、最終的な決定ではないという側面であります。そうなりますと、省内で回せる部分に関しては省内でマネジメントし、持っていくということが可能でありますけれども、それに加えてやはりそれ以外の、政治家のリーダーシップ等、この情報を生かすということが必要になってくるだろうということであります。
 それから二点目は、三つの評価方式があるということを申し上げましたけれども、事業評価それから総合評価、特に事業評価の公共事業等のチェック等に関してはだんだん精度が上がってきたような気がいたします。恐らく、このフレームというのをほかの領域に、例えば規制などがその一つの典型でありますし、それから租税特別措置なども考えられますけれども、そちらの方向に持っていくということが、精度を上げ、かつ決定に結びつくという方向をたどるのではないかということであります。
 それから三番目には、やはり幾らかかっているのかというコスト情報がないと、例えば民間はどうやっている、それに対して国の方はどうやっているという比較ができませんので、コストの方のフレームをつくり上げて、それと同時に、評価をより有効に生かせるような体制をつくるということだろうと思います。
 以上です。
山名委員 時間が参りましたので終わらせていただきますが、今後、やはり職員一人一人の意識の改革といいますか、行動様式等がしっかりと変わって、この評価制度そのものが真に国民に対する、より高度なサービスをより一層安く、こういう成果へと結びつかなければいけないわけであります。
 一方、評価そのものが大変硬直化して、がちがちになっていけば、これはまた職員そのものが意識的に萎縮して、閉じこもって、先ほどもお話がありましたけれども、余りにも新しい発想に立てない、こういった事態を私は心配するわけであります。
 そういう点で、制度はできたけれども、職員がそれをがっちり受けとめて、いわば魂を入れた制度にするためのこれからのいろいろな課題もテーマもあろうかと思います。きょうは時間がございませんので、また次の機会にでも、その辺の工夫についてまたお伺いしたいと思います。
 今後とも一層御協力をいただきまして、我が国の政治の、また行政の発展のために御尽力をいただきますことを心からお願い申し上げまして、終わらせていただきます。ありがとうございました。
渡海委員長 次に、松崎公昭君。
松崎委員 民主党の松崎でございます。
 きょうは三人の先生、ありがとうございました。
 私は、今いろいろ先生方のお話をお聞きしたり、質疑を聞きながら、やはり日本の官僚制度、時には社会主義的な体制のように見えるくらいの強力な官僚体制というものが今までの日本の現状を招いているという前提で、その中にこの政策評価、行政評価というものをおくればせながら導入し始めたという点では評価をしておるわけでありますけれども、さてそれが、今までのお話の中で、まだ定着はもちろんしていない、始まったばかりであります。そこで、一番大事な根本的な問題をやはり我々は今問題にしなければいけないのじゃないかな、そんなふうに思っております。実際にことしから動いてきているわけでありますから、枝葉のさまざまな問題はこれからの議論であろう。
 まず、上山先生に聞きたいのは、先ほどのお話の中で、職員、公務員の意識は進んで、理解は大分進んできたんだ、しかし、なかなか実態の、生産性向上とかそういうものにはつながってないんだ、そういうことでありました。
 実際に、日本の今までの長い官僚体制の中で培ってきたお役人さんの意識をまさに変えていくには、周りの状況を変えなければだめだというお話かもしれませんけれども、どの辺からインセンティブを与えたら本当の評価をみずからできるように、先ほどの幾つかのお答えの中にも出ていたようには思いますけれども、もう一度その辺の、インセンティブを与えるにはどうしたらいいのかという根本的なところをお話しいただきたいと思います。
上山参考人 まさに、非常に根本的な問題でありまして、最も重要なテーマだと思います。
 恐らく話は二段階でありまして、キャッチフレーズとしてはみんな理解をした、だけれども、目の前の業務に埋もれてしまって生かせない、これをどうするか。まず日常化するという問題が一個あると思います。もう一つは、本質的に変えていくという上で、何かもっと仕掛けが要るのじゃないかということだと思います。
 まず、日常的にこの評価を根づかせていくという意味でいいますと、私は、自分自身が昔、公務員をやっていたという経験にも照らして言いますと、やはり予算と人事ですね。予算と人事に何らかの形で影響を与えているというのが間接的であっても説明がつけば、皆さん熱心に使うだろう。
 ただ、問題になりますのは、一つは、やはり今のところ、余りにもがちがちの管理システムになっている。例えば予算の流用であるとか、あるいは節約して頑張って残した予算を、次の年は全額減らされる。三重県庁などでは、節約して頑張った部は、半分は自分たちの研究開発に使ってよい、半分は召し上げる、こういうような弾力的な運用をしていますので、私は、予算制度、もっと言いますと予決令を抜本的に根底から変えないと評価制度は機能しない。
 それから人に関しても、やはり総務庁、旧行政管理局ですね、行政管理局のチェックが非常に厳しくて、人っ子一人異動させられないといいますか、極めてかたい管理体制になっていて、せっかく現場の、課とか係のレベルでいいことを思いついても、なかなか人員配置が機動的にできない。こういったところにやはりある種の規制緩和を、役所の中の規制緩和をやらないと、局長さんが頑張る、あるいは大臣がトップダウンで言ってみんなでついていく、これがなかなか起きないというふうに思います。
 それから、根本的な方の問題に関しては、私は実は、制度をつくったり勉強したりというよりも、むしろ運動論だと思います。企業でいいますと、例えば、お客様に親切運動とか、トータル・クオリティー・マネジメントとか、現場改善活動とか、非常に泥臭い活動を企業はやります。霞が関ではこういうものをばかにする雰囲気があるんですけれども、やはり体を動かさないとわからないことというのはいっぱいありまして、自治体などでは、まさに体を動かしていく中から実際に市民のニーズを感じる。あるいは、恥ずかしいけれども改善案をお互い出し合ってやってみたら、とてもさわやかな気分になる。若干心理学的な話になりますけれども、おかしいと思っていることを口に出す、しかも、実際おかしいんだったらやり直してみようぜ、こういうことを実際にやるような運動論をつくる必要がある。
 クリントン政権のアメリカの九三年以降の動きを見ますと、GPRA法などを入れると同時に、まさにナショナル・パフォーマンス・レビューという、TQC運動ですね、これを日本の企業に学んだというふうに彼らは公言しているわけですけれども、日本に学んで、明るく楽しく現場改善をやっている。私は、こういったところを同時にやらないと、いろいろな制度を上からかぶせるだけだと、やはり書類づくりだけに追われてしまう、ますます萎縮する、こういう発想の大転換が必要じゃないかと思います。
松崎委員 おっしゃるとおりだと思うんですけれども、ではそこで、特に今の、先生の御本なんかにもよく地方の問題とアメリカの例が多いんですけれども、これは主に地方を中心に、ある意味ではやりやすい、柔軟性があるのかもしれません。ところが、日本の場合は、特に中央官僚がまさにがちがち、そこにこの制度を入れた。今おっしゃったとおり、がちがちであったり、いろいろ、予算の制度も。
 これをどこからやるかというと、まさにトップダウンといいましょうか、各地方自治体の場合も首長が率先して動かしていくということでありますので、これは最終的に政治の判断で、トップの判断でということになるのか。しかし、それではすべてそこに行ってしまいますので、もう少し公務員の皆さん自身の意識転換というものを、トップだけの指導じゃなくて仕組みとして何か入れる方法は、今の制度と比べて、もう少し何か仕組みの中に入れられないんでしょうか。
上山参考人 結論から言うと恐らく二つでありまして、一つはトップダウンで、ちょっと柔軟にこの予算は使え、財務省にはおれが説明するからというような、大臣、政務官、副大臣、こういうような役割がまずは期待される。
 もう一つは、やはり情報公開だと思うんですね。徹底的な情報公開をやる。先ほど私、例の小学校のケースを出しましたけれども、あれは局レベルの、局長の仕事の情報公開だと思うんですが、それよりさらにブレークダウンして、課長レベルの情報公開。実際、そんなものをインターネットで一般国民が一々読むとは思いません。だけれども、場合によっては見られてしまう、あるいは議員の先生方が見ている、こういう緊張感が仕事のやり方を大きく変えていくということで、私は、かなり目の細かい情報公開とこの政策評価制度を連携させていくことが大事で、したがって、非常に細かい評価の書式であるとか、どのレベルのことを評価するのか、こういったところまで議会が率先して関与していかないと、事務的なことは任せるよというふうにしていると、やはりなかなか浸透していかないと思います。
松崎委員 かなり国会の責任もあるということを逆説的にいただきまして、我々もしっかりしなきゃいかぬと思います。
 それから、先ほどの先生のお話の、各省庁に経営評価会、ただ、局長というのが政治任用じゃないわけでございまして、欧米でしたらこの辺はかなり政治任用かもしれませんので、思い切ったことができる。そういう意味で、この辺も政治が変えていかなければならないことなのかなと思います。
 それからもう一つ、先生の先ほどのお話の中でちょっと気になったのは、当面各省庁に運用をゆだねないとまずいのではないかと。というのは、私は、この評価はやはり第三者、これはいわゆる常識論でありますけれども、自分で自分の評価をするというのはどうも納得がいかないんです。先ほど、当面自分で分析が必要なんだ、そして、今のところは運用は各省にゆだねた方が段階的にはいいんじゃないか、そういうお話がありましたけれども、その辺はちょっと私は気になって、第三者機関に評価そのものはゆだねるべきであろうという原則論でいきますと、ちょっとそこが矛盾を感じたんですが、いかがでしょうか。
上山参考人 私も、常に第三者機関のチェックを入れるという体制は必要だと思います。ただ、第三者がどこで介入するかということと、第三者がどうやって力を発揮できるかという問題があると思うんですね。
 総務省という、各省庁から見ると全く同格の役所の第三者委員会というのは、各省庁からしますと全然怖くない。まず、その権威といいますか、おられる先生方は個々人はすばらしいわけですが、委員会として力を持っていない、こういう構造的な問題があります。
 力を本当に持つには、私は、非常に現実的な話として、各省庁の大臣が任命する第三者、これが本当に完全に第三者になり切るかという問題はありますけれども、官僚グループからすると、大臣というのはやはり多くの場合怖い存在であって、その大臣が自分の援軍として第三者を任命してくる。もちろん、大臣と第三者の意見が対立することがあってもいいと思うんですけれども、要は、総務省が第三者を任命してこの人がチェックするよと言っても、各省庁は納得しないわけですね。
 したがって、やはり各省庁に一たんやらせて、大臣の言うことならば聞くという状態で運用してみた方がいい、現実的ではないかと。そこからふぐあいが必ず出てくると思うんですね。やはり大臣と第三者と役人の間で、ある種癒着が起きちゃう。そうしたときに、本来の第三者委員会というものが、恐らく総務省ではなくて私は内閣だと思いますけれども、内閣が総理の力を、総理直属の第三者委員会が大臣に対して文句をつけていく、こういうのが本来の姿だと思います。
 まだこれは、段階的な学習のプロセスであって、一足飛びにはいかないと思います。
松崎委員 ありがとうございました。
 最後に竹内参考人にお聞きしたいと思っておりますが、先ほどのお話、大変幅広く奥深い、つまり、今のこの政策評価という問題を一つのキーにして社会構造、行政システム全体を改革していかないと、せっかくのこの政策評価も生きないのではないかなというふうに私は受けとめさせていただきました。特に、この課題の問題等はさまざまな問題を、今日本の政治が、政府も含めた政治が抱えている問題をそれぞれの視点から解決しながら社会の構造を変えていく、政治の構造を変えていく、その中にどう政策評価が生かされていくのかなと。
 そこで、先ほどのお話の中で、今の政策評価、行政評価にも大胆な構造改革が必要なんだというお話がございました。その辺の深い全体的なお話の中から政策評価を取り上げたときに、今、先生のお考えになっている全体を変えていくという中での政策評価のあり方というもの、多分、今のままではいかぬ、だから大改造をしなきゃだめだというお考えだと思いますけれども、ちょっとその辺のお考えを披瀝していただきたい。
竹内参考人 まず、三つぐらいの点でいろいろな構造改革ができると思います。
 まず一つは、第三者性という側面ですけれども、民間でも官でもない、しかし、官のことをチェックできるような独立のステータスを持った新しい機関なり人材を活用するという方法が一つあります。
 それからもう一つ、非常に欠けているというふうに思われますのは、例えば公共事業のコスト積算などを考えますと、これは非常に技術的な問題なんですね。一つの事業でも大体五百から六百の費用項目があり、非常に細かく費用項目が分かれております。こういうものが技術の進歩とともにどのくらい安くできるかということは、政治家の先生方にお願いするのは難しいというふうになりますと、やはりもっと専門的、高度な問題なんですね。ここが抜けていますと議論だけで終わっちゃうということで考えますと、技術的な担保というものも必要だと思います。
 それから三番目に、市民側からの要求あるいは不満みたいなものが今抜けているわけでございまして、これはやはり官僚の不得意な分野だと思うんですね。法律的なことはちゃんとできるけれども、新しい潜在的なニーズをキャッチできないという意味でいきますと、ここはどういうふうにやっていくかということになるわけですけれども、ここは何かモニターみたいなものとかそういう形、つまり、第三者性という意味でいくと、有識者とか学者とか出てくるんですけれども、学者だけでもだめ。やはり学者と技術的な問題とそれから新しい市民の潜在的ニーズ、この三つを兼ね備えたような形、具体的な形はまだできていませんけれども、そのようなポイントが重要かと思います。
松崎委員 時間です。ありがとうございました。
渡海委員長 次に、塩田晋君。
塩田委員 三人の参考人の方々には大変貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。
 私は、二問ほどお願いしたいと思います。各参考人にお伺いしたいと思います。
 まず、我が国のいわゆる官僚制度、これは明治の初年以来、確立されて百数十年に至ったわけでございますが、その官僚制度というものがそれなりの役割を果たしてきたということは肯定するわけでございますが、やはりその中に、国益あるいは国家国民のためということで、公のための行政を実施する、そして、待遇も余りよくない中でこれを努めてきた。しかも、天皇の股肱の臣としてやってきた。あるいはまた、大臣という名称も残っておりますように、そういった形で官僚制度というものが確立をし、それなりの実績を果たしてきたということは否定できないところだと思うのでございます。
 また、終戦のときのあの大混乱の中でも、いわゆる官僚あるいは吏等がかなり大きな役割を果たして、その混乱を支えたということもあるわけでございますし、その後、戦後もう既に五十数年経ておるわけでございますけれども、その中でいろいろな形の弊害が出てきたというわけでございます。
 今回、昨年、行政政策評価制度が法定化されまして確立し、また、二重、三重のチェック機能でもってこれが行われようとしておるわけでございまして、これは非常に画期的なことであるし、評価できることであると思います。
 私自身の経験からいいましても、わずかな経験でございますが、戦前から戦後にかけて、また最近に至るまで、役人というもの、官僚というものは、大過なく過ごす、国家国民のためを一生懸命思いながら大過なく過ごすということが信条といいますか、官僚の道を歩む一番の、まあ、やり方としては上手な生き方だ、余りやり過ぎて出るくいは打たれるとか、あるいは、やり過ぎて失敗をした場合に大変な損害をこうむるといったようなところから、大過なくというのが一つのモットーのようになっていたと思うんです。
 そして、行政評価という面では、行政そのものは質的なものが相当強くありますので、なかなか難しい。そうすると、結局、行政を担当する役人の評価というのは、予算をどれぐらいたくさんとってくるか、あるいはまたどれぐらいの人員を確保するか、部下をたくさん持つか、また組織をどれだけ拡大するかということがメリットでありまして、あの人はやり手だというのは、予算の獲得、人員、組織、これを拡大する方がよしとされる、こういう評価であったと思うのです。
 これが今回の民主主義の戦後の政治の中で、現在評価制度というものが客観的、科学的に行われ、また先生も言われましたように、民間企業の経営の知恵を持ってきてこれを見直す、また、民間的経営に近づけていくという努力ですね、これは非常にいい方向の行政改革であるし、また、官僚制度の抜本的な、いわゆる公務員としての役割を果たす大きなきっかけになるものと私は思うわけでございます。
 そこで、古今東西、同じ問題があると思うんですが、政策とか行政というものは、量と質、これでもってよしあしを評価する。先ほど上山先生も言われましたが、改善をするという役人はメリットがない、インセンティブがない、結局やらない、保身のためにはそれがいいというようなことになってしまうというお話もございましたが、行政なり政策の評価につきまして、世界的にどういう議論がなされているか。質の面と量の面、いわゆる定性的なものと定量的な分析、これは非常に難しい問題だと思うのです。
 単に民間の会社が利益を求めて、利益がたくさん出ればその会社は発展するし、またそれに貢献した人が評価されるということですけれども、行政なり政策の場合は必ずしもそうはいかない面があると思うのです。この点はいろいろ世界的にも議論されていると思うんですが、三人の先生方に、行政、政策の定量的、定性的な問題についての議論はどのようにされているかについて、お聞かせいただきたいと思います。
上山参考人 非常に本質的な問題提起をいただいたと思います。
 まず、民間的な経営手法がどこまで使えるかということについて言いますと、かなり使える分野もあるし、相当応用問題で難しい分野もある。あるいは、そもそも余り使えない分野もある。これはやはり場合分けして考える必要があると思います。
 海外の生活の知恵、海外はまさに大きな流れとしては、特に八〇年代、イギリスでいえばサッチャー改革、あるいはアメリカでいえばレーガン改革、日本でも中曽根元総理の国鉄改革などはそれの典型だったと思うんですけれども、そういった流れ自体は今後も変わることはない。ただ、限界があちこちで見えて、そこからまた学習が進んでいる。
 私は、日本の状況を見たときに、三つほど大きな宿題があると思うんですね。
 一つは、やはり政策と執行というものをどこまで分け切れるかという問題だと思います。イギリスなどはそこを非常にきっちり分ける形で、執行部門に関してはかなり民間的なチェックを入れていく、政策部分に関してはむしろ政治のコントロールを強めていく、こういう方向で処理をしてきたわけですが、日本ではその議論がかけ声だけで終わっていて、なかなか執行部分を割り切ってチェックするというところまでいかない。
 先ほど私が提案しました局長クラスのところのチェックをかけていこうというのは、これはまさに執行というふうに割り切って、情報公開をどんどんやってチェックをかけていこうよ、こういう話であります。
 それから二つ目の問題は、国民が政府に何を期待しているかということ自体が実は非常にあいまいである。社会問題全部の解決を政府に期待するようなところが日本の国民の特徴としてあって、政府の方もそれに対してこたえる、強い使命感といえば聞こえはいいですけれども、実際はできないことまでできるというふうに過剰な期待を抱かせているものですから、評価結果が下がっちゃう。こういう悪循環が二番目の問題としてあるので、政府に何でもかんでも要望しないというか、政府はできないことがあるんだというのをはっきりさせる必要がある。
 三つ目は、やはり、しつこいですが、情報公開が全然足りない。何をやっているのか基本的に皆さんは知らないわけですから、国民の皆さんはよくわからない。ですから、先ほどアニュアルレポートというようなことを言いましたけれども、いわゆる白書でもだめで、普通の人が見て、何とか局って一体何をやっているのというのがわかるようなキャンペーン、啓蒙、教育、これをもうある意味ではゼロからやり直していかないと、民主主義そのものが機能しない。天皇の官吏という意識で皆さん仕事をしてしまうし、それから国民の方も過剰な期待をしてしまうということだと思います。
田辺参考人 量と質の問題について、私の意見を述べさせていただきたいと思います。
 一つは、今おっしゃいましたように、予算、人員、それから組織、この面におきましてそれが拡大するという傾向は、ここ数年もしくは十数年ないだろうということであります。
 そうなりますと、それをとってくる、拡大するということのインセンティブはもはやなくなってくる。そのかわりに、与えられた資源でもってどういう形で有効に使っていくのか、その知恵を出したものがある意味では評価されるというようなメカニズムに移りつつあるだろう。行政評価法というのは、そういった経営というか、評価の資源をどれだけ有効に使ったのかという方向への転換の一つの出発点であると考えております。
 それから二番目は、他方で、しかしながら、官僚制の中ではマネジメントだけではないわけでありまして、どういう形でより高度なアドバイスを政治家の側、大臣の側、政府の側に提供するのかということが必要になってきます。この面におきましても政策評価法というのは役に立つだろうと考えております。
 つまり、制度をスピーディーに、かつダイナミックに変えていかなければいけない。その際に、客観的な情報に基づいて次に何をするのか、過去の失敗に基づいて次は何をしてはいけないのかということを考えていかなければいけない。そのフレームをつくる、フィードバックの回路をつくるという点で、この政策評価法というものは生きてくる可能性があるだろうと考えております。
 それから三番目に、今のことと一つ関係はございますけれども、だんだんと官僚制が学ぶ組織から学ばない組織に変わってきたような気がするわけであります。つまり、過去の失敗はわからない、同じ失敗は繰り返してしまう。
 これに対して、組織でもって学習する、つまり個人の中で経験を蓄積するわけですけれども、それを単に個人のものじゃなくて組織のものとして変えていく、政府のものとして変えていく、さらには国のものとして変えていく、そういう装置としてこの政策評価というものが一つあり得るだろうということであります。つまり、どういう形で行い、どこが悪かったのかということを明らかにする。それは個人だけではなくて、組織全体としてその記憶というものを蓄積していくという役割があるのだろうと考えております。
 こういう学ばない組織から学習していく組織への転換という点でも、この政策評価の制度というのは意味があるような気がいたします。
 量と質、特にこういう改革期ですと、一〇〇%変われ、変革せよということを求められるわけであります。ただ、しかしながら、一〇〇%変わらないと動かない制度というのは、導入した途端、全く動かないわけであります。逆に、一〇〇%変わらないような制度を導入しても意味がない。恐らくはその中間地点で、できるだけよく、プラスアルファをねらっていくというものがこの政策評価制度の意味なのかもしれないと考えております。
竹内参考人 議員がおっしゃられたように、人事と金というものが現行制度の中で動いている以上、政策評価というものを入れていくということは非常に難しい状況だろうと思います。
 そこで、やはりこの人事の問題と予算というか、この硬直性をどのように改革したらいいかということでいろいろ考えますと、一つの提案があるんじゃないか。つまり、今公務員が、国家公務員、地方公務員、その中に新しい人材を、若干民間登用という形で少しはめ込むというような形ですが、第三の官僚制度をつくってはどうなのか。つまり、国家公務員でもない、地方公務員でもない、第三者性を担保した新しい官僚制度というものをむしろつくる。
 つまり、公務員、地方公務員の制度改革をやっておりますけれども、この議論を延々と待っていても政策評価の新しいポイントにならないわけでございまして、新しい官僚制度、新官僚というようなものを導入いたしまして、現行制度の中で新しいそういう人材の登用、あるいは流動化というものを一つとらえてみたらいいのではないかと思います。
 それから二番目に、政策自体が老朽化している場合がございます。現在の税制の中に残っております配偶者控除でありますとか租税特別法であるとか、こういうものが一たんつくりますと延々と残ってしまう。時代は変わっている。
 こういうふうな政策が古くなった場合にどのようにやっていくかというのは、現行の各省の評価に一応はゆだねられているんですが、どうもそこまではやっていないわけでございまして、やはり、今各省にいろいろな審議会制度がございますが、これをもう少しレベルアップして、政策がもう古いというものをもっとピックアップしていくというようなことが必要だと思います。
 それから第三番目の、質の高度化という点につきましては、私も、今いろいろ出ておりますが、官僚制度を残した形の準民営化という形。つまり、いきなり首であるとか公務員の人員を削減するということではなくて、組織そのものを準民営化するというような形。しかし、制度の中は、公共サービスをやるという意味では、計画部門を従来の官僚の中に残しながら事業部門というものを準民営化していくというような、いわゆる一時的な出向という格好になろうかと思うんですけれども、そのような形で、ステータスを変えませんと、今おっしゃったように、公務員のままで、すぐ民間的なサービスをどうぞと言われてもすぐに変わらないわけでございまして、まず入れ物を変える形を使いながら徐々に民営化していくというような方法があるのではないかと思います。
塩田委員 貴重な御示唆をたくさんいただきまして、ありがとうございました。
 今の行政、政策の量と質の問題は、端的に言いますと、これは行政じゃないですが、裁判の面で、大岡越前守が非常に名裁判をやられた。これは質が非常にいい、どんどんたまっている案件を解決して判決を下していく、スピードで量を上げていくという、この両面があるわけですね。だから、質的な評価というのは、価値観の問題等、非常に難しい問題をはらんでいると思います。そこで、これはこれからなお検討すべき問題だと思っております。
渡海委員長 時間がかなり経過しておりますので、御協力をお願いいたします。
塩田委員 時間がありませんので、この辺で終わります。ありがとうございました。
渡海委員長 次に、大森猛君。
大森委員 日本共産党の大森猛でございます。
 きょうは、大変明快かつ聡明なる御意見をいただき、本当に私も勉強させていただいております。私がお尋ねしようとした点は既にあらかたお示しをいただきましたので、視点を変えまして、若干、まず各参考人に共通してお聞きをしたいわけなんです。
 政策、これの集大成が政治と考えていいかどうかわかりませんが、政治は当然国民のものであります。最終的にはやはり政策というのは国民が評価をするんだという点で、その国民の代表者で構成される国会、これがどういう役割を果たすべきなのか、その位置づけやら、そして率直に現状に対する各参考人の評価とか、きょうは決算委員会で各委員もいますけれども、ちゅうちょなく、そういう点、皆さんの御意見をお聞かせいただけたらと思います。
上山参考人 大変難しい御質問をいただいてちょっと当惑しておりますが、私は、国会自体の機能というよりは、国会議員というステータスでいろいろ仕事をされるという議員さん、それからあと各党、国会で議席を占めておられる各党の機能、こういう二つにむしろ着目すると、相当改善点があるんじゃないかというふうに思うんですね。
 党に関して言えば、これは与党野党を問わず、やはり、英国でいいますとマニフェスト、要するに、党としては今後こういう政策をやりたいんだというパッケージを選挙の前にちゃんと国民に示す。その際には、役人、行政マンをかなり大量に動員して、一緒に議論をしてつくっていいわけですね。だけれども、政権をとった後は行政マンと議員は直接接触してはいけない。こういうようなある種仕切りといいますか、これが英国などの場合はしっかりできていて、私は、党自体が政策をつくっていくという基本的な能力、体制、これをやはりまず強化していただく必要がある。
 それから、個々の先生方に関して言えば、私は、特定の分野で専門家になって、むしろ委員会で、個々の文教委員会とかいろいろありますが、そこで政策通になっていただき、そこで各省庁の局長クラスと、先ほど来申し上げている政策評価のデータを使って個別具体的な議論をする。こういう各論に、ちょっと英語になっちゃいますけれども、ダウンサイジングするといいますか、非常に大きな大企業に国会自体がなっていて、それをむしろ事業部別に権限移譲して、委員会で相当いろいろなことがどんどんできるという体制に変えていく必要があるんじゃないかと思います。
田辺参考人 三点ほど申し上げたいと思います。
 まず、政策評価の中から考えていきますと、評価というのはあくまでも情報の提供であります。それをどう生かし、どう決定するのかというのは、やはり国権の最高機関であるところの国会のあり方に決定的に依存するということであります。
 まず第一は、いろいろな国会の見方はあると思いますけれども、研究者としていろいろ議事録等を拝見いたしますと、そこでの審議のクオリティーは決して低いものではない。対話もしくは反論という形で言葉を交わしながら、よいポイント、それから悪いポイントを出していく。その審議の場としての国会の役割というのは、これは日本の国会の中におきましても高く評価してよいのではないかと思われます。
 それから二番目は、やはりここは最終的な決定の場であります。だから、多数決でもって正当化するという側面はある。その重い役割を皆様方がやはりちゃんと担っているんだろうということであります。
 それから三番目の問題は、ここの役割であります。つまり、国会の側が政府を監視する、何をやっているんだというその緊張感をつくり出すというところの問題が一点です。
 ただ、これは若干の問題があるような気がしております。と申しますのも、国会と政府の関係を考えるときに、一般的にはアメリカ型の発想でもって、つまり、大統領も選ばれて、議員の方も選ばれて、権力が完璧に分離しているところの議論でしばしば日本の国会は批判されるわけですけれども、実際はそうなっていない、議院内閣制ですから。国会と政府の関係というのは、ある意味では、野党と与党の関係になってこざるを得ないということであります。
 その緊張感の中で行いつつ、国会の集団としての監視、政府をいかに監視していくのかというのをどういうふうに埋め込むのかというのは、まだ完璧に解決したわけではありませんけれども、こういった一連の政策評価制度を使うことによって、より効率的なもの、効果的なものにしていくことができるのではないかと考えております。
竹内参考人 大変難しい課題だと思っております。
 つまり、国会の評価あるいは国会のアウトプットをどのようにカウントするかということになるわけでございますが、端的に言えば、日本の信用力というものを担保しているわけでございまして、将来にわたって日本という国がどのように生きていくのかということをどのような形で世界に対して示していくかということからいえば、やはり日本の国会の評価はそれほど高くないというふうになってしまうのではないかと思います。
 やはり、どうしても国内的な利益あるいは地域の利益というものをバックにして国会議員が活動なさっているということ、それと、世界が評価したいのは政策のパッケージというところを評価したいわけでございまして、必ずしも地元で有力であるということが国際社会において日本の信用力をバックアップするとは限らないわけでございまして、ここに大変な努力が必要だろうというふうに思います。
 その意味では、国会がだめだという議論ではないんですが、どうしても世の中に出てくる国会の議論の中身は余り高くはないというふうに思っておりまして、もう少し高度な議論をやっていると想像いたしますので、その部分はもう少し、専門家をもっと活用していただくとかそういう形、それから、国際的な日本の政策の信用力というものをもう少し担保できるような国会の議論というふうな形に変えていっていただければありがたいと思います。
大森委員 率直な御意見もありましたけれども、私も、国会の役割として、立法あるいは政策の立案だけではなくて、監視、さらには政策評価においてもやはり機能を発揮しなくちゃいけないという面で、さまざまな改善が当然必要になると思います。
 いよいよ四月一日から政策評価法がスタートして、各先生の問題点の指摘、あるいは解決の方向なども示されました。
 その中で、特に上山参考人にお伺いしたいんですが、評価作業が自己目的化する、あるいは形骸化、あるいは現状追認装置になる危険性もあるという点で、その解決の方法も、徹底したそういう面での情報公開とか、幾つかの方向の指摘もありました。
 具体的に、こういう政策評価で、こういう懸念されるようなことを克服して活用されている地方自治体があれば、内外問わず、一つでも御紹介をいただけたらと思います。
上山参考人 自治体に関しては、国内でもそうですし、海外でも幾つか成功例があります。特に海外の方が、九〇年代、あるいは場合によっては八〇年代からいろいろやってきておりますので成功例が多いわけですけれども、例えばカリフォルニア州のサニーベル市であるとかノースカロライナのシャルロット市であるとか、あるいはイギリスの自治体でもかなり成功例があります。
 共通するのは、やはり組織体としての行政部局、二百人の職員がいて、百億円の予算を使ってという組織体ですけれども、そこが、そもそも一体何人人がいて、幾らお金を使っているのかということを網羅的にオーディットしていく。この網羅性というのが私はかぎだと思うのです。
 それからもう一つは、やはりコストの計算というものをきっちりとやっていく。図書館で本を一冊貸し出すのに実は二千円かかっていますというような試算が、やればできるわけですね。職員の人件費とか建物とか土地代とか、全部割り振っていけばできる。そうすると、二千円という金額は税金に照らしてどうなのかということを市民のレベルで議論できるわけです。
 こういった網羅性というのは私は非常に大事だと思うんですが、残念ながら、日本の政策評価は、行政活動評価法ではなくて、政策といういわば商品の評価でしかない。
 その中でも、実績評価という評価方式については、ある種網羅性をカバーするような前提になっていますが、各省庁が自分の代表的な政策を自分で恣意的に選んで、我が省は例えばこの十個ですというような形で出してきますから、残りに抜け落ちた部分というのは一切評価の網がかからないわけですね。公共事業などは、事業評価という枠組みがありますから、かなり網羅的にチェックできるわけですけれども、そもそも、あれだけの人がいて、あれだけのお金を使って、何やっているのかという直接的な質問に対しては答えられない仕組みになっている。
 ですから、ホームページに出されている実績評価の項目を全部積み上げても、予算で見ても人で見ても、全体の二割とか三割とかですね。まだ私は作業していませんけれども、今度そういうことをやってみようかと思っています。
大森委員 次に、各参考人の方にお聞きをしたいんですが、この法律の国会での審議の際にも、あるいはきょうの御意見の中にも、先行的に事業評価制度を導入した三重県あるいは北海道などの事例もいろいろ出されました。私どもの関係するそれぞれの地方議員団に伺いますと、ややもすれば、福祉あるいは中小企業の分野が削られ、一方で、談合とかあるいは大型の公共事業の見直しとか、あるいは三重県では同和行政等の改善については余りというかほとんど役に立っていないというようなことも伺っております。
 きょうも、企業の経営との比較の中でいろいろ御意見もありましたけれども、それぞれ一言ずつお聞きをしたいんですが、企業経営と例えば自治体の経営と、基本的に共通する点と、それから、本質的にこの点は異なるという点、それぞれお感じの点があったら一言ずつお答えいただければと思います。
上山参考人 共通する点は、生産性を追求しなければいけないということです。これは学術研究であっても文化活動であっても、やはりやっていること自体の価値を幾らという形では言えないと思います。だけれども、生産性というものはやはり要求されるわけで、その点においては企業と全く変わらない。
 ですが、何のためにやるのかという目的意識においては、やはり企業とは全然違う部分がかなりあるし、むしろ違うからこそ行政が存在する意味があるわけで、そういう意味では、マーケット、市場経済でできない部分に関して政府がまさにやっているんだ、そこのところの原点を確認した上でそもそも政策の判断をしていく。
 生産性の部分と政策そのものの価値の議論を混同してはいけないと思います。
田辺参考人 自治体におきまして民間企業と共通している点というのは、サービスの提供を行うという点であります。
 それから、違う点は、自治体の側、地方公共団体におきましても、やはり最後は権力であるということ、その権力が公共性によって支えられていなければいけないということ、この点が圧倒的に民間企業とは違うと思っております。
竹内参考人 共通する点は、民間でも行政でも官僚化するという問題、つまり、巨大組織になればなるほど官僚化する、変えることが難しくなるということでございまして、特に給料の面で、先ほど行政官僚は安いお金で働いているというお話がございましたが、必ずしもそうではないと思います。非常に高い給料になっていると思います。その分の働きをしていないという方がかなりいらっしゃるというふうに思います。
 二番目の、違う点は、破産があるかないかということでございまして、民間企業は商品が売れなくなれば破産がある、しかし、行政制度は破産がない。しかし、これほど政府に対する不信感が高まっているということは、政府も必ずしも正しいことをやっているとは限らないということはみんなわかっているわけです。しかし、破産がない。この間を埋めていくのが政策評価ではないかと思います。
大森委員 もう時間がなくなりましたので、最後に一言ずつお聞きしたいんですが、形骸化等を防ぐために情報公開ということを上山参考人はおっしゃったわけですが、加えて、私は、それと両輪の関係で、住民参加、これがどうしても必要じゃないかと思います。
 この点、政策評価を進めていく上での住民参加について一言ずつお答えをいただければと思うのですが、よろしくお願いします。
渡海委員長 それぞれ簡潔にお願いします。
上山参考人 住民がどこで参加するかということですが、私は、一番手っ取り早いのは、評価結果が出た段階でパブリックコメントというのをきっちりかけていく、今のところ、政策をつくる段階で素案に対してパブリックコメントをかけるということになっていますが、評価結果を国民に見せてきっちり意見を聞く、そういうプロセスを何らかの形で導入してはどうかと思います。
田辺参考人 二点ございます。
 一つは、評価自体の中に住民満足度の調査という形で声が反映されるという点。それから二点目には、各省庁の中に窓口をつくって電話番号とインターネットのアドレスを書いていますので、そこを通じて意見がフィードバックされるということだと思います。
竹内参考人 市民参加の問題は、より技術的に言えば、各端末を非常に身近なところに置いて、リアルに政策がイエスかノーかというような投票制度みたいなものをやっていったらどうでしょうか。
大森委員 どうもありがとうございました。
渡海委員長 次に、山口わか子君。
山口(わ)委員 社会民主党の山口わか子でございます。
 三人の参考人の先生には、長時間にわたって、もうおなかがすくころですけれども、いろいろ御示唆をいただいて、ありがとうございます。
 私の方は、最後ですし、もう三人の先生方から十分お話を伺っていますので、再確認という意味で質問をさせていただきたいと思います。
 まず、この政策評価について、なぜ政策評価が必要なのかというところがなかなか見えにくいという問題が実はあります。私も自治体に働いていたんですけれども、政策を実施する場合に、一体今のこの政策が本当に住民に反映されているんだろうか、あるいはサービスになっているんだろうかということは常に日常的にチェックしていかない限り、いい仕事はできないわけですね。特に自治体なんというところは直通ですから、住民に直接接していますから、常にそういうチェックをしながら、例えば予算の面でも政策の面でも、日常的な活動の中でそういうチェック、評価がそれぞれ行われて、そして翌年度の政策に反映していくということが私は一番理想的な姿だというふうに思っているんです。
 ただ、そのための教育が十分に行われていない、それぞれの職員の教育が行われていないという部分では、やはりそこを大事にしていかなければいけないんじゃないかというふうに思うんですね。
 もう一つは、政策評価制度を実施した場合に、政策評価だけがひとり歩きをしてしまって、その評価に対する実務時間といいますか、時間のウエートが大きくなってしまうことによって、むしろほかの重要な仕事がおろそかになってしまうんじゃないかという部分が一つは考えられると思いますし、もう一つは、評価自体がひとり歩きすることによって、政策そのものはちっとも変わっていかない。例えば前例踏襲主義ですとか横並び主義。よくあるんですね、隣の町もそうだから変わらないとか、こういう反省はあるけれども、やはりうちだけ変えるわけにはいかないとかというふうになってきて、なかなか評価自体が政策に反映されていかないという部分があるわけで、私は、この政策評価というものを本当に、なぜなのかというところがちょっとわかりにくいというふうに実は思っているんです。
 もう一つの点は、政策目標の置き方によって変わってくるという問題が多分あると思うんですね。例えば医療制度なんかを取り上げた場合に、医療費の削減だけを目標として評価をしているのか、あるいは国民の目線に立って、いつでもどこでもだれでも医療が受けられるようにするための制度として評価をするのかというふうに、非常に評価の視点によって、政策目標の設定によって分かれてしまうというふうに思うんですが、この点について上山先生にお伺いしたいと思います。
上山参考人 今おっしゃった問題意識は、まさに、恐らく公務員として実際経験されていた実体験から出てくる、非常に深い洞察に基づく御質問だと思います。
 政策評価がなぜわざわざ必要なのかということに関しては、私は、やはり官僚制というものが機能しにくくなった、それから議会にも限界がある、だから何らかの科学的な仕組みを入れる必要がある、その根本は、やっている内容をだれにでもわかる共通な形で全部オープンに出してしまえ、こういうことだと思うんですね。
 今までは、特に自治体などでは、関係者の利害をかなり公務員がいろいろなところを走り回って調整して、議会の根回しもやって、それで大体いろいろなことが利害調整ができた。こういう時代なんですけれども、今は、やはり関係者の数が物すごく多いし、サイレントマジョリティーもすごく多い、皆さん忙しい、行政の中身も極めて複雑になっている。こういう時代ですから、役人の調整力というものがもう実態をマネージできるようなものじゃなくなってきている。ですから、役所はもう責任をとれないよと。逆に言うと、むしろ開き直るべきであるというふうに私は思うんですね。
 となると、議会もやはりもっと積極的な政策形成に参加しなくてはいけないし、住民の方も、ちょっと待ってよ、それはおかしいというのを、早目に情報を入手して問題提起していく必要がある。ですから、議会で議論する、役所は執行するだけという、建前はそうなっていたわけですが、実態は、かなり役所が全部やっていた、議会も結構任せていた。その状況から、むしろ役人を解放すると言うと変な言い方ですけれども、解放する一つの重要なツールがまさにこの政策評価である。
 そのことを考えますと、作業をしたり調査をしたりというのはかなり大変ですし、お金もかかります。ですけれども、調整不能に陥るよりは、役人としても楽だし、全体としての生産性も上がるし、議会の審議の質も上がるし、情報公開も進む。トータルで見れば決して高いものではないし、米国などでは、事業額の一%ぐらいを何らかの監視、チェックにかけるというような慣行が自治体にはあります。やはりそれぐらいのお金はかけてやった方が、トータルでは安いのじゃないかと私は思います。
 そういう意味で、目標設定した上で評価をするわけですけれども、実は、最初の目標を出す段階から情報公開する必要がある。今の政策評価は、役所が仕事をし終わった後、急に何か出してきて、先生、これでどうですかといって第三者が評価するわけですが、それは全然おかしな話で、自分はこれをしたいということを大臣と相談して、その経過も全部オープンに出して、それから、実際やったらこうでしたという議論にしていく、プロセス全体もガラス張りにしていく、そういうことがたまたま評価という若干権威主義的な日本語で表現されているというふうに思います。
山口(わ)委員 ありがとうございました。
 政策評価を行う場合に、田辺先生にお伺いしたいと思うのですが、単年度で評価をした場合には、今の政策でいいだろうということが起こったとしますね。でも、数年たってみたら非常に重大な欠陥が出てきた、失政があったという場合に、ことしは特にそういうことが多かったのですけれども、こういう場合に、それぞれの評価の設定の仕方によっては、評価の出し方とか評価の結果によって非常に問題が起こる場合があると思うのです。そういった場合に、結構年数がかかっている問題もありますよね。例えばBSEの問題にしましても、ハンセン病の問題などにしましても、かなり長い経過の中で、重大な欠陥が評価として出てくるというような場合もあるわけです。
 そういった場合に、評価の視点、とらえ方というのはどうとらえていくのか、あるいはどの時点で問題意識として提言をしていくのかというようなところが、非常に難しい問題がたくさんあると思うのですが、その辺についてお答えいただきたいと思います。
田辺参考人 レジュメの方で、三つの方式というものを挙げました。
 このうち、実績評価に関しましては、三年から五年の中期計画で、最終的には五年後ぐらいに、うまくできたかどうかというのをチェックするという形になっています。ただ、単年度に毎年毎年見ていくという仕掛けですので、それに関しましては、今山口さんがおっしゃられたような問いに対しては答えられていないということであります。
 他方で、総合評価というのは事後的な評価であります。つまり、かなり問題が潜在化し、いつか出てきた、そのときに、なぜこの問題はうまくいかなかったのか、それを集中的に、かつ、その失敗を学ぶために資源を投入して答えていくというやり方だと思います。
 その点では、総合評価というのは、かなり長期的な問題に対して答えるためのシステムである。これに対して、実績評価というのは、毎年毎年、日常がうまく動いているのか否かということをチェックするための仕掛けになっているということだろうと思います。
山口(わ)委員 ありがとうございました。
 竹内先生にお願いしたいのですが、例えば、政策決定が実際に行われて、そしていろいろな事業が進むわけですけれども、国の政策というのは、国だけが政策を行っているわけじゃなくて、その政策が地方に反映され、住民に反映されていくと思うんですね。
 ところが、非常に画一的な政策であるために、それぞれの地方自治体にはいろいろな条件の違いがあると思うのですが、この辺が実は地方自治体の悩みでして、例えば、一つの例を挙げますと、土地改良事業、圃場整備事業をやろうと思っても、地方自治体によっては、山間地もあれば平たん地もあれば、もう全然補助金に乗れないような仕事もあるわけなんですが、そういう裁量というのは、実際に評価をしてもなかなか反映されにくい。
 ですから、国の政策が地方に反映されていかない限り、評価というのは非常に難しいと思うんですね。自分たちが幾ら努力しても、そういう弊害があって、つまり、評価が政策に反映していかないという問題が非常に最近はふえているのですが、こういった場合に、地方自治体と国との関係で、評価をどう見るかということが非常にこれから大事になってくると思うのですが、その辺について御意見をお聞かせいただきたいと思います。
竹内参考人 端的に申しまして、今の地方自治体の方がずっとずっと中央集権的である場合がありまして、今まで学んできたものが中央政府の制度だったものですから、中央政府の方が逆に新しい方に走っていって、地方政府が古い中央集権の考え方を持っていて、なかなか変えられないというのが現実だろうと思います。
 そこを、今おっしゃるように、地域のニーズあるいは地理的条件の違いですとかコストの違いというものを反映した、新しいスペックで事業ができるようにするために、なかなか地方自治体にお願いしてもできないということでいけば、一つの提案としては、先ほど言いましたような、地方公務員でもない、国家公務員でもない、第三者がそういうものを評価できるようにする。それから、今の公正取引委員会みたいな形で、いろいろな、独占的な事業が行われているとか、使われないものがたくさんあるというむだが起こった場合に、地方レベルでも判定できるような組織を地方につくっていくという形が必要でございます。
 現実には、一律の制度がずっとずっと残っているわけでございますので、それをまさにおっしゃるように変えていくような、制度的なフレームワークみたいなものが必要になってくると思います。
山口(わ)委員 今の問題で、上山先生にお伺いしたいのですが、今竹内先生のおっしゃったこともそのとおりなんですけれども、今はむしろ、地方自治体の方が変革を求めているという、変わってきた部分もあるんですね。さっき土地改良事業でちょっと申し上げましたけれども、逆に補助金制度では使いにくい、ですから国の制度は要りませんよ、私たちは独自で、こういう制度じゃない、違う方法でやりますよというような。
 つまり、地方自治体から見た政策の評価といいますか、こういうものはどう反映されていけば一番スムーズにいくか。実際に政策をどこで行うかというのは、やはり国民に一番近いところで行われるわけですが、そこに政策自身が反映されていかない。そのために、では、国へどう持ち上げるか。今はどっちかというとトップダウンになっていますが、そうでなくて、やはり地域から政策を変えていくような、そういう評価あるいは提言というのはどういうふうにしたらいいと思いますか。
上山参考人 最終的には非常に難しい、道のりの遠い話だとは思うのですが、三つほどあるのです。
 一つは、米国では行政評価法の運用をするときに、各地域支分局それから各州の政府から、やはり政策に関してのヒアリングをやっています。ですから、それぞれの地域で、この政策がどういう効果を発揮しているのかということをちゃんと聞いて、それも一つの重要な材料として見ていく。今のところ、我が国はそれを想定していない、この問題がありますね。一緒に仕事をしているパートナーだというふうに自治体を位置づけていない。言われたことだけあの人たちはやる組織だということになっている。この問題がある。
 もう一つは、やはり自主財源を各自治体が持たない限り、なかなか政策に関して文句をつけていくという心理にならないという問題があります。ただ、例えば静岡県の掛川市などは、新幹線の駅が欲しい、補助金がもらえなかった、そうしたら市民で、各家庭十万円ずつ出して、募金してつくろうといって実際つくってしまったわけですね。ですから、私は、何らかの形で補助金依存ではないような政策を出していけば、それが新しい国の制度になっていくという流れはできつつあると思います。
 それからもう一つは、各自治体がやっているいろいろなことを、よその自治体がまねていく。武蔵野市のムーバスというのはそうですけれども、民間でできないようなミニバスを、お年寄り中心にコミュニティーで走らせていく。こういうことを国とけんかしてやり始めると、よその自治体が、半ば応援する気持ちでどんどんやり始めるわけですね。そうすると、国側といいますか、縦割り省庁の権益と対立するようなものでも、事実上、首長が住民の支持のもとにやってしまう。事実上、特別法みたいな形で黙認されていく。こういうような風穴のあけ方はあると思いますが、一番大事なのは、やはり財源の地方への移管だと思います。
山口(わ)委員 どうもありがとうございました。これで終わらせていただきます。
渡海委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼申し上げます。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午前十一時五十分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.