衆議院

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第2号 平成17年10月26日(水曜日)

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平成十七年十月二十六日(水曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 筒井 信隆君

   理事 柴山 昌彦君 理事 菅  義偉君

   理事 鈴木 恒夫君 理事 吉川 貴盛君

   理事 吉田六左エ門君 理事 前田 雄吉君

   理事 松本  龍君 理事 佐藤 茂樹君

      赤池 誠章君    井上 喜一君

      浮島 敏男君    遠藤 武彦君

      大野 松茂君    後藤 茂之君

      斉藤斗志二君    杉村 太蔵君

      冨岡  勉君    中森ふくよ君

      中山 泰秀君    西本 勝子君

      広津 素子君    福井  照君

      藤井 勇治君    矢野 隆司君

      安井潤一郎君    山本  拓君

      若宮 健嗣君    岡田 克也君

      岡本 充功君    小宮山泰子君

      近藤 洋介君    田名部匡代君

      寺田  学君    福田 昭夫君

      松本 剛明君    横山 北斗君

      遠藤 乙彦君    古屋 範子君

      江藤  拓君    鈴木 宗男君

      古屋 圭司君    保坂  武君

    …………………………………

   参議院決算委員長     中島 眞人君

   参議院議員        荒井 正吾君

   参議院議員        直嶋 正行君

   参議院議員        山下 栄一君

   環境大臣         小池百合子君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     細田 博之君

   財務副大臣        田野瀬良太郎君

   文部科学大臣政務官    下村 博文君

   厚生労働大臣政務官    西川 京子君

   国土交通大臣政務官    中野 正志君

   会計検査院長       森下 伸昭君

   会計検査院事務総局次長  石野 秀世君

   会計検査院事務総局事務総長官房審議官       佐野  洋君

   会計検査院事務総局第二局長            増田 峯明君

   会計検査院事務総局第三局長            高山 丈二君

   会計検査院事務総局第四局長            千坂 正志君

   政府参考人

   (内閣府食品安全委員会事務局長)         齊藤  登君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    小林 武仁君

   政府参考人

   (財務省国際局長)    井戸 清人君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房文教施設企画部長)      大島  寛君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  松谷有希雄君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       松本 義幸君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局労災補償部長)       森山  寛君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           中川  坦君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           川本正一郎君

   政府参考人

   (国土交通省土地・水資源局水資源部長)      仁井 正夫君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 寺田 達志君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局環境保健部長)       滝澤秀次郎君

   政府参考人

   (国際協力銀行理事)   野崎  茂君

   参考人

   (食品安全委員会プリオン専門調査会座長)     吉川 泰弘君

   決算行政監視委員会専門員 藤野  進君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月二十六日

 辞任         補欠選任

  大野 松茂君     中森ふくよ君

  田名部匡代君     横山 北斗君

  松本 剛明君     近藤 洋介君

  渡部 恒三君     岡本 充功君

  東  順治君     遠藤 乙彦君

同日

 辞任         補欠選任

  中森ふくよ君     大野 松茂君

  岡本 充功君     渡部 恒三君

  近藤 洋介君     松本 剛明君

  横山 北斗君     田名部匡代君

  遠藤 乙彦君     東  順治君

    ―――――――――――――

十月二十日

 会計検査院法の一部を改正する法律案(決算委員長提出、参法第三号)(予)

同月二十一日

 会計検査院法の一部を改正する法律案(参議院提出、参法第三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 会計検査院法の一部を改正する法律案(参議院提出、参法第三号)

 歳入歳出の実況に関する件

 行政監視に関する件


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     ――――◇―――――

筒井委員長 これより会議を開きます。

 歳入歳出の実況に関する件及び行政監視に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、参考人として食品安全委員会プリオン専門調査会座長吉川泰弘君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

筒井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。

 引き続き、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、政府参考人として内閣府食品安全委員会事務局長齊藤登君、警察庁警備局長小林武仁君、財務省国際局長井戸清人君、文部科学省大臣官房文教施設企画部長大島寛君、厚生労働省医政局長松谷有希雄君、厚生労働省医薬食品局食品安全部長松本義幸君、厚生労働省労働基準局労災補償部長森山寛君、農林水産省消費・安全局長中川坦君、国土交通省大臣官房審議官川本正一郎君、国土交通省土地・水資源局水資源部長仁井正夫君、環境省大臣官房審議官寺田達志君、環境省総合環境政策局環境保健部長滝澤秀次郎君及び国際協力銀行理事野崎茂君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

筒井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。

    ―――――――――――――

筒井委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。赤池誠章君。

赤池委員 おはようございます。私は、自由民主党の赤池誠章です。本委員会で初めて質問をさせていただきます。

 私は、山梨県内におきまして、北朝鮮に拉致をされました日本人を救出する会、いわゆる救う会山梨の事務局長をしておりました。今回の選挙におきまして、経済制裁の断行そして北朝鮮の拉致問題解決、そのことを公約として訴えてまいりました。

 お手元の方に新聞資料を配付させていただいております。

 私の選挙区であります山梨一区、甲府市において、二十一年前に、山本美保さんが北朝鮮に拉致をされたのではないかという疑いの中で、失踪事件がございました。山本美保さんが拉致をされたというのは、蓮池御夫妻が拉致をされた新潟県の柏崎の海岸、六年後にそこでセカンドバッグが発見されたということでクローズアップをされたわけでございます。

 民間の組織であります特定失踪者問題調査会によりますと、四百五十名の中で非常に拉致濃厚であるというふうに認定をされ、地元甲府においても救出運動が大きく盛り上がったわけでございます。

 ところが昨年、平成十六年三月五日、山梨県警は、美保さんが失踪した十七日後、昭和五十九年六月二十一日に柏崎の海岸から二百キロメートル離れた山形県の海岸で発見された身元不明遺体とDNAの鑑定が一致したということで、自殺の可能性が高いということで発表いたしました。しかし、警察の発表した内容には疑問点があるということで御家族そして支援する方々は考えております。

 そして本年、平成十七年三月二十九日に、日本弁護士連合会が人権救済申し立て事件ということで、政府に要望書を提出しております。

 それによると、山形の御遺体は山本美保さんではないと。山本さんは北朝鮮当局によって拉致されたのではないかということが法律の専門家によって政府の方に要望書として出されております。

 具体的に言いますと、四点ございます。

 第一は、山形の御遺体は歯が十三本腐って抜け落ちている、十八本のうち十本に治療痕があるにもかかわらず、山本美保さんは歯がよく、そのような治療痕は御家族の記憶によるとないということです。

 第二は、山形の御遺体の着衣、下着などのサイズが山本美保さんより小さい、そして遺留品も家族には全く見覚えのないものであること。そして、座高などの高さ、長さが違っている。

 第三として、柏崎の海岸から二百キロメートル離れた山形での御遺体、損傷が非常に激しく、一部白骨化、屍蝋化しており、失踪した後十三日から十七日間の間では、そのような白骨化、屍蝋化は起こらないと専門家は考えております。

 そして第四として、平成十四年、北朝鮮の元工作員の証言によって、平成六年ごろ北朝鮮国内において山本美保さんとそっくりな女性を見たということがマスコミで報道をなされております。

 そこで質問ですが、失踪した山本美保さんはDNA鑑定から山形の御遺体であるというふうに警察の方では御判断なさっているということですが、以上指摘したいわゆるDNA鑑定以外の矛盾点、それをどのような形で御説明をなさるのか、警察庁の御見解をお伺いしたいと思います。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の方については、昭和五十九年六月四日に、山梨県甲府市の自宅から図書館に行くと言われましてバイクで外出され、四日後の六月八日に、新潟県柏崎市の海岸で同人のバッグ等が拾得されました。そのまま行方不明となったものであります。

 失踪から約十カ月後の昭和六十年四月十五日に山梨県甲府警察署に、また平成十四年十月二十一日同署に北朝鮮による拉致ではないかという、二回にわたる家出人の捜索願があったものであります。

 さらに、平成十六年一月二十九日には、山梨県警察に対して、同人を被害者とする国外移送目的略取誘拐罪、刑法第二百二十六条を内容とする告発状が提出されたものでありまして、現在も山梨県警察において捜査を進めております。

 御指摘の四点の件については後ほど申し上げたいと思いますが、DNA鑑定というものは、平成十四年十月二十一日に家出人捜索願を受けた後、山梨県警から関係県警察に照会いたしました。その際に、山形県警察におきまして、同人との関連性を排除できない身元不明死体の骨髄の一部が現存していたということが判明したわけであります。そこで、平成十五年四月に、同人の御家族及び関係者に対しDNA鑑定の必要性を説明したところ、これに同意する旨の意思表示がなされました。そこで同人の御親族から血液の提供を受けまして、警察庁科学警察研究所及び名古屋大学大学院の医学系研究科においてDNA鑑定をしたところ、その御遺体が山本美保さんであることが明らかになったものであります。

 委員御指摘の歯型の問題とか遺体の状態は、私どもが承知しているところは、その当時非常に状態が悪かったということでございまして、歯型の照会をするには至らなかった、また、遺体等に付着していた衣類等によってそれを照合することができなかった、こう承知しております。

赤池委員 横田めぐみさんの事案もそうですが、DNA鑑定は本人一致ということで、当然、それ以外の、遺体とかサイズとかが違うということは、やはり御家族の心情に立つと到底納得できないということで、その後も残念ながら山梨県警の方できちっとした説明がなされていないという、警察への不信にもつながっているということを、先日も私、直接御家族とお話をさせていただいて感じております。その辺の説明というのはきちっとなされたんでしょうか。

小林政府参考人 先ほど、委員の方から新聞の切り抜きが配られて、私もそれを拝見させていただきましたけれども、あの当時、山梨県警が、警備一課長ですか、捜査の経緯をしかるべく御家族の方に御説明申し上げて、だけれども、DNAの鑑定の中身について、やはり捜査上のことでございますので、必要最小限のお話をさせていただいたと私どもは承知しております。

 御遺族の御納得がいただけたかどうか、そこは若干問題がありますけれども、私どもは、山梨県警としては一応説明は尽くしたというふうに承知しております。

赤池委員 そのときは説明をしたというのは聞いているんですが、昨年十月にも拉致問題の捜査担当者会議が開かれて、全国の都道府県の警察に通達ということで、その辺の十分な心情を配慮した説明をしてほしいという通達も出ているわけなんですが、残念ながらその通達以降も山梨県警は御家族に対してお話をしていないということを御家族がおっしゃっておるわけです。その辺に関しては、警察庁としての通達と県警の対応がずれているというふうにも考えるんですが、いかがでしょうか。

小林政府参考人 若干の意思疎通のそごといいますか、あるように聞いております。

 御家族の御心情は察するところでありますけれども、県警とのパイプというものが、御家族の側の御判断もあり、それ以上の説明はなされていないと伺っております。

赤池委員 本当に双子のきょうだい、また御家族にとって非常に心痛が二十一年間続いているということもございますし、その辺では、やはりこういった問題は、本当に微妙な問題ですが、ぜひ誠意を持って引き続き説明をしていただきたいと思います。特に、御家族としては、サイズの違いというのがなぜなんだということをいまだに引きずっておりますので、その辺、ぜひ警察の方も誠意を尽くして、その矛盾に関して御家族に説明をしていただきたいというふうに思っております。

 そして、その事案のみならず、御案内のとおり、現在警察庁は十一件十六人の認定をしておりまして、それ以外にも拉致の可能性を否定できないということで、いわゆる特定失踪者という形で捜査をなされているというふうにも聞いております。民間の特定失踪者問題調査会によると、約四百五十名、実際にはその中でも三十四名が拉致濃厚であるということで、民間の調査機関ではそういうふうに言っているわけなんですが、警察庁として、個別案件は当然プライバシーがありますから表明できないにしても、民間の一つの調査機関でも四百五十ですから、四十七都道府県、本当にたくさんの相談、それから具体的な案件が挙がってきていると思います。個別のケースは結構なんですが、その辺の警察庁としての取り組みをお聞かせ願いたいというふうに思います。

 それからもう一点。調査会によると昭和二十三年から平成十五年まで、本当につい二年前まで特定失踪者のリストが公開されているわけです。ということは、現在、警察庁としては、北朝鮮の拉致事案というのが現在進行形で続いているというふうに可能性として考えていらっしゃるのか、それとも、それは日朝交渉の過程の中で、もうそういうことはない、過去完了形というふうにお考えになっているのか、あわせてお聞かせ願いたいと思います。

小林政府参考人 警察は、北朝鮮による日本人拉致容疑事案の全容解明のため、必要な捜査を最大限の努力をもって進めてきております。

 拉致容疑事案は、御案内のように十一件十六名と現在まで判断しておるところであります。これらの事案以外にも、委員御指摘のように、北朝鮮による拉致の可能性を排除できない事案というものはあると見ておりまして、鋭意捜査、調査を行っているところであります。

 このほか、警察としては、今委員御指摘のように北朝鮮による拉致ではないかとする公訴、告発等を受けておりまして、これを受理して所要の捜査を推進しておるところであります。また、拉致の可能性が否定できないものとしてなされました多くの届け出や御相談がございますので、これに対しても、御家族や関係者の御心情に配意しつつ、所要の捜査、調査を行っているところであります。

 今、北朝鮮が拉致をやっているのが云々ということでございますけれども、これは、そういうものも含めて捜査をしておるということで御理解いただきたいと思います。

赤池委員 ということは、可能性は高いというふうに理解をしてよろしいんでしょうか。答えにくいですか。

小林政府参考人 具体的にどうかということについては、これは何とも言いようがないわけでありますが、いずれにせよ、こういうものについては重大な関心を持って引き続き警戒していく、こういうことでございます。

赤池委員 わかりました。

 それでは、今後の問題なんですが、いわゆる民間の調査機関に任せてでなくて、政府の責任を持ってきちっとやっていくということで、専従ポストを新設すべきだという意見が前からございます。その辺の、今後の警察庁としての拉致問題解決、いわゆる特定失踪者の捜査強化のための体制強化の方針についてお考えをお聞かせください。

小林政府参考人 これまで十一件十六名の北朝鮮による日本人の拉致容疑事案ということでありますが、これ以外の、拉致の可能性が否定できない、排除できない事案等の捜査等もございます。また、各都道府県警察に対して、やはり専従的に捜査指揮なり指導をせないかぬと思うんですね、そういった観点。それから、関係機関もより多くございまして、ないしは委員御指摘の民間団体との調整、こういうものをやはり専門的に行う組織をつくらないかぬじゃないかということを考えておりまして、平成十八年度の組織要求におきましては、拉致問題対策官、これは仮称でございますが、設置を要求していきたい、こう考えております。

赤池委員 拉致問題対策官を新設ということで組織要求しているということなんですが、具体的にその拉致問題対策官がどういう位置づけでどういう形で仕事していくのか。その具体的な方針というか中身まである程度お考えでしたら、お聞かせください。

小林政府参考人 先ほど申し上げました拉致問題対策官でございますけれども、一応府令職と称するクラスを要求してまいりたい。これについては直接各都道府県の本部長に対していろいろ指示をできる立場ではないかと思いますので、そういった要求をしてまいりたい、こう思います。

赤池委員 やはり四十七都道府県ということで、非常に大きい組織のところは十分な人員それから時間も割けるというふうに思うんですが、残念ながら、私の選挙区、山梨県というのは非常に規模も小さいということで、なかなかそういう面では拉致事案に関して十分な人材を割けない、そういった事情もあるというふうにも承知をしております。

 そういう面では、拉致問題対策官の新設とともに、都道府県、指導監督強化をしていただいて、さらに連絡、連携を密にして、こういった事案が、先ほど質問させていただきましたが、過去完了形ではない、やはり可能性としては現在進行形だということも聞かせていただきましたので、ぜひ、来年度拉致問題対策官を新設していただいて、都道府県警察一体となって事案の解決に向けて引き続き努力をしていただきたいと思いますし、私も一生懸命応援もさせていただきたいというふうに思っております。

 拉致問題は、御案内のとおり、国家国民にとって、国家の信頼感という面では非常に大事な問題だというふうに思っております。特に、直接対峙なさる警察と国民お一人お一人の信頼関係がなければ成り立たないというふうにも考えておりますので、ぜひそういった新設ポストの中で、本当に御家族の心情を十分配慮して、大変ですが、きめの細かい対応をお願いいたしまして、私の質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

筒井委員長 次に、佐藤茂樹君。

佐藤(茂)委員 公明党の佐藤茂樹でございます。

 きょうは、決算行政監視委員会でお時間をいただきまして、アスベスト問題とその対策につきまして御質問をさせていただきたいと思います。

 といいますのも、六月の末に、尼崎にありますクボタというメーカーの旧神崎工場でこれだけの方がアスベストで亡くなられたという発表が企業側からありまして、私も、その後を受けまして、七月の上旬に、党のアスベスト対策本部の一員として現地に赴きまして、担当者からさまざまに聞き取り調査を行ってきたわけでございます。

 クボタが被害者を出したという責任は非常に重いんですけれども、ただ、あの企業は、六月の二十八日でしたか、発表までに三カ月間しっかりとした社内調査をやった上で発表したわけですね。それを聞いた上でも、社内のことはしっかり調べておられるけれども、周辺のことについてはその当時でもなかなかつかんでおられなかった。

 ですから、今だんだん問題になってきております周辺住民の方であるとか労働者の御家族の方、そういう問題が後々またさらに大きな問題となりまして、また、クボタ以外のいろいろなアスベストを使っておられた企業の方々、業界の方々にまでいろいろ及んでいるということが今大変な社会問題になっておりまして、私は、こういう問題は、確かに厚生労働省や環境省が中心になってされているんですけれども、いろいろな省庁に関連していくテーマでもございますし、こういう問題をしっかり取り扱うのは、委員会でいえば予算委員会あるいはこの当委員会で行政の対応をしっかりとチェックをさせていただきたいな、そのように考えている次第でございます。

 そこで、まず厚生労働省にお聞きをしたいんですけれども、尾辻厚生労働大臣が先週の十八日の閣議後の会見で、中皮腫の労災認定について、アスベストとの因果関係について医学的裏づけは求めない方向で労災の認定基準を見直す方針を言われました。基準の緩和に向けた専門家による検討会を近く立ち上げられるというふうに言われました。

 これはどういうことかというと、現行の認定基準というのは三つの段階がございまして、一つは中皮腫と診断された人、二番目として、そのうち一年以上のアスベストの暴露歴がある、三番目として、今回問題になっておりますこのアスベスト暴露による中皮腫かどうかの医学的所見があること、そういう三つの条件がきちっと整った人が認定される。そういう基準が今あるわけですけれども、特に医学的所見については、肺の中に実際にアスベストの繊維が残っているのかどうかということをしっかりと調べないといけない。時には痛みを伴うそういう手術もした上で所見される、そういうこともありますので、いろいろ従来から患者から苦情が出ていた問題でございます。

 特に、尾辻大臣は、この十八日の二日前の十六日だったと思うんですけれども、大阪で中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会の関西支部の方々と面談された上でこういう会見をされて、私は非常に英断だと思うんですけれども、そこで、まず厚生労働省にお聞きしたいのは、ここで大臣が言われました中皮腫の労災認定基準の緩和に向けた専門家による検討会というのは、いつ立ち上げられて、そして、立ち上げられた後もそんなにゆっくりと議論していくような状況ではないと思うんですね。なるべく早く結論を出してあげる、これが何よりも患者のためになると思うんですけれども、いつごろ結論を出されるおつもりなのか、まずお伺いしておきたいと思います。

西川大臣政務官 佐藤先生、ありがとうございます。

 まさに、このアスベスト問題、本当に我が厚生労働省にとっても大変大きな課題でございまして、今環境大臣もお越しでいらっしゃいますけれども、環境省と本当に連携をとりながら、しっかりとした対応をしていきたいと思っております。

 尾辻大臣がそういうふうに大変前向きな発言をされたということは大変大きなことでございまして、なるべくこの労災認定基準の見直しについての、大体いつごろはっきりするんだというお話もごもっともでございます。本当に病状を考えますと、一刻でも早く、きちんと早急に対応しなければいけないということは私たちも認識しております。

 その中で、なるべく十一月の早い段階に委員会の着手に向けて動いていきたいと思っておりますが、その場合に、認定基準との整合性についてどうするかというのが大きな課題でございますので、大体今までのそれぞれの委員は、このアスベスト問題に関して立ち上げてきました中での専門の方々を中心に、大体六人程度の方々にお願いしようかと思っておりますが、十一月中にはきちんとした早期立ち上げをしていきたいと思っております。

佐藤(茂)委員 十一月中に立ち上げられるという今、西川政務官の御答弁でございました。

 ぜひ、遅くとも年内にでも結論を出すようにお願いをしたいなと、結論がいつ出るかというのは委員の皆さんのあれですからわからないと思うんですけれども、お願いをしたいなと思います。

 そこで、きょうはお忙しい中、環境大臣に来ていただいておりますので、お聞きをしたいのは、厚生労働大臣がああいう形で表明されたということは、やはり労災の認定というのは緩和されていく方向になるのであろうと私は思っております、具体的な詰めは専門家がさらにされると思うんですけれども。

 そのときに、中皮腫についての労災の認定基準が緩和されるのであれば、もう一つお聞きしたいのは、今政府また与党もいろいろ関係して検討しております新法ですね。新法の中で、これは労災の補償の対象とならない方、またその遺族の方々、こういう方々を何とか救済しようということでやっているんですけれども、この九月の二十九日の基本的枠組みが発表された段階では、その新法の中でこの認定基準については、アスベストを原因とする疾病であることを証明する医学的所見があること、そういうふうにされているんです。

 しかし、今この労災の認定基準というのが緩和される方向になるならば、やはりこの新法で、この段階で発表された基準というものも見直されて、中皮腫については認定基準の緩和を当然図っていくべきであると思いますけれども、小池環境大臣の所見を伺いたいと思います。

小池国務大臣 今御質問の中にもありましたように、新法、これにつきましてはできるだけスピーディーに、そして的確な中身にしてまいりたいと考えているところでございます。

 そして、今政務官の方からも御紹介ありましたけれども、中皮腫の認定基準について今後検討会を設置する、これは厚労省と環境省と合同でつくってまいります。そしてまた、中皮腫と石綿の関連ですね、これについてはいろいろな説がございます。遺伝子とかウイルスとかありますけれども、それこそ専門の皆様方に御検討いただいて、基本的には、しっかりとした、中皮腫の方々についてはすき間のない形での救済策をとっていくようにしてまいりたいと思います。

 検討会は、できるだけ早急に、来週早々にもメンバーも決めまして、動かしていきたいと思っております。病状について、先ほど政務官もおっしゃいましたように、大変深刻でございますし、そのあたりのことも十分念頭に入れて進めてまいりたいと考えております。

佐藤(茂)委員 今環境大臣おっしゃいましたように、やはり社会で不安に思っておられるのは、すき間のない救済策が本当にできてくるのかどうかというところですね。これはもう基本的枠組みの「目的」でも言われましたけれども、そこのところをやはりしっかりと国民の皆さんに安心していただけるような、そういう新法というものをしっかりとつくっていただいて、その中で認定基準も、やはりその被害者の皆さん、患者の皆さんに厳しくないような認定基準というものをしっかりと心がけていただきたいな、そういうふうに私は思います。

 では、小池環境大臣、お忙しいでしょうから結構でございます。

 それで、もう一つ厚生労働省の関係でお聞きをしたいんですけれども、その先週の十八日の尾辻大臣の会見でもう一つは、中皮腫にかかっておられて、具体的に労災認定を受けておられる患者の皆さんの通院の話を尾辻大臣は若干されました。それは、先ほども言いました、二日前のその患者の会の皆さんとの中で要望で出てきたことを受けて話をされたんですね。

 それは、現行では、患者が労災認定された場合、最寄りの病院への通院費は支給されるんですけれども、しかし通達で、自宅から四キロ以上の通院は支給の対象外、そういうふうにされている、そのことを患者の方から面談のときに言われて、四キロ以上離れた病院に通う場合も、最寄りの病院に限定されている交通費支給については遠くても納得できる病院に通えるようにしたい、そういうふうに厚生労働大臣は話をされたと報道されているんです。

 私もそのとおりだと思うんですね。中皮腫という病気は、専門医に見てもらう必要があるのに、近くの病院に専門医がまだまだそんなに多くおられない状況でございまして、安心して、本当に信頼に足る専門医に見てもらうためには、そういう距離規制というのをやはり取っ払うべきであると私は考えるんです。交通費支給について、中皮腫の患者の負担をなるべく早く軽くしていただくために、早急にスピード感のある対策を具体的に厚生労働省として、大臣もおっしゃっているわけですから、打つべきだと私は思うんですが、西川政務官、この件につきましても御答弁をお願いしたいと思います。

西川大臣政務官 本当にこの病気が最近急にクローズアップされてきたということ、もちろん前からあったわけですけれども、そういう状況の中で、なかなか地域にこの病気のことを専門的にわかる病院が少ないという現実はもうはっきりあるわけでございますね。そういう中で、四キロ以内のところだというのは、どう考えても患者さんの立場に立って考えていない考え方だと思います。

 そういう中で、やはり何とかして、少しでも設備の整った、きちんとした診療を受けていただく、そのために、今回、全国の労災病院が大体二十二カ所ほど、これが今、中皮腫の問題を専門的に扱うようになっておりまして、ただ、二十二カ所ということですので、かなりまだまだ足らない。あとは、がんセンターを中心に、その他大学病院があると思いますが、そういう中で、やはり最寄りの医師の紹介状があれば、もうその範囲は超えてどこにでも、どこにでもと言うと語弊がありますが、それはある程度常識的な範囲の中で通えるところにどうぞお越しいただいて、その場合にはきちんと対応しますということになると思いますので、よろしくお願いします。

佐藤(茂)委員 政務官、済みません。

 なると思いますというのは、まだ具体的にそれを、厚生労働省として通達か何かで打ち出されているとか、そういうことではないんですか。これから出そうとされているんですか。そのことをちょっと事実関係だけ、再度お願いします。

西川大臣政務官 今、検討段階ですが、速やかに通知する予定でございます。

佐藤(茂)委員 ぜひお願いをしたいと思います。

 細かいことですけれども、そういう意味でいうと、具体的に中皮腫になられている患者の皆さんにとっては非常に深刻な問題でもあるので、おくれのないようにお願いをしたいと思います。

 それでは、下村政務官に来ていただいていますので、続きまして文部科学省絡みでちょっとお尋ねをしたいんです。

 政府として、七月の末に、当面の対応として五本柱の対策を打たれました。その中の一つに、五番目だったと思うんですけれども、実態把握の強化ということで、これはもう各省がそれぞれの関係している施設、機関、そういうところに果たしてアスベストで被害を受けているような建物があるのかどうか、そういうものをしっかりと調べよう、そういうことで動かれておりました。特に文部科学省絡みでは、やはり子供がふだん通っておる学校というものがございます。ですから、子供の安全という観点からも、こういう実態をしっかり把握しておくことは非常に大事だと私は考えております。

 九月の二十九日に、学校施設などでのアスベスト使用実態調査の中間報告を文部科学省として発表されました。それで、その段階ではまだ進捗割合は三四・〇%だそうですので、十一月末までにぜひしっかりとした全調査をしていただきたいと思うんですが、その中でも、三四%の段階でも非常に際立った数字として出てきたのが、例えば、公立学校一万七千三十六校のうち八百七校でアスベストが使用されていた、その中で特に、その時点で百四十四校では飛散、暴露のおそれがあることが判明した、そういうふうに文部科学省が発表された。その各学校の中でも、さらに部屋を見ていくと、日常で利用している部屋が百九十九室、その他の部屋では百二室、そういうように公表されているわけですね。

 今回飛散のおそれが指摘されたこの百四十四校というのは、実は私もびっくりしたわけです。というのは、七月の中旬に文部科学省の皆さんといろいろやりとりしたときには、私どもは過去にも全国調査をしました、そういう話をお聞きしました。それはいつかというと、八七年に全国調査を文部科学省としてされたそうです。そのときには千三百三十七校出てきましたと。ですから、その千三百三十七校に対して、各自治体に撤去や封じ込めを行うなどのそういう措置をしっかりやりなさいという指導をいたしました、そういうふうに文部科学省は言われました。

 しかしながら、この結果として、約十八年たった今になっても百四十四校がそういう飛散であるとかまた暴露のおそれのある学校として出てきたということは、一つは、やはり文部科学省としては、自治体に任せたけれども、その千三百三十七校、実際にその後、ちゃんと言われたとおり措置がされたのかどうかという確認をされなかったことがここに結びついているのではないかな、そういう可能性は否定できないと私は思っておるわけでございます。

 それは、それで終わったらいいんですけれども、このアスベストというのは、そういう意味でいうと、その学校で飛散したり暴露する教室をそのままにしていると、それに通っていた子供に、わからないうちに、何年もかかって何らかの形で被害が出ている可能性も否定できない。

 そういうことから考えると、その八七年の反省に立った上で、早急にしっかりとした手を打ち、それが本当にきちっとした措置がとられているのかどうか、今度は確認する必要があるであろう、そういうふうに私は考えるわけでございます。

 それで、今回も文部科学省は、九月二十九日付の通知で、当面の対応について二点言われました。それは、まず該当する部屋等を使用禁止にするなどするということ、その上で、直ちにアスベスト等の除去を行うなど適切な措置を講じることと二つ言われているんです。この二つ、特に一つ目は、該当する部屋等の使用禁止の措置がすべて、とりなさいと言うだけじゃなくて、もう一カ月たっています、とられたのかどうかということを八七年の反省の上に立ってきちっと確認すべきである、私はそのように考えますけれども、文部科学省の見解を伺いたいということが一点。

 時間も迫ってきましたので、もう一点は、やはりアスベストの除去をしなさいと言うだけではなかなか進んでこなかった。私も七月の時点で聞いたときには、文部科学省は三分の一の補助をずっと出して措置してきましたと。千一校、その七月の時点では補助事業をされてきたということは聞いているんです。しかし、今わかっている範囲でも、それでもしてこなかったところは百四十四校あるわけですから、やはり何らかの追加支援策というものも、補助で行うのかも含めて、補助金の拡充で行うのかどうかも含めて、アスベストを除去するために図る必要があるんじゃないのか。その辺につきまして、文部科学省の見解をお伺いしておきたいと思います。

下村大臣政務官 先生御指摘のように、私も七月に学校現場を、アスベスト対策をしているところを見に行きまして、現場において徹底されていない部分がかなりあったということを感じております。

 これを受けまして、御指摘のように、九月の二十九日に、学校施設等における吹き付けアスベスト等使用実態調査の中間報告をしたわけでございます。このことによって、御指摘の百四十四校、暴露のおそれがある部屋等が使用されている。こういう学校について、文部科学省は、この九月二十九日の通知ですぐに、該当する部屋等を使用禁止にするなどした上で、直ちに石綿等の除去を行うなど法令に基づき適切な措置を講じるよう直接指導いたしました。

 既に、該当している学校等は使用中止もしておりますし、また、立ち入り制限などの措置が講じられております。また、対策工事についても既に実施済みかあるいは実施中ということで、各学校設置者が適切に、これについてはきちっと今対処しております。今後とも、暴露のおそれがあるものが確認された学校について、学校設置者において適切な対応がとれるように指導していきたいというふうに考えております。

 そして、そのために、御指摘のように現在、アスベスト除去等の対策工事に係る追加財政支援対策の検討を進めております。十一月末までに取りまとめる予定の調査結果を踏まえながら、アスベスト対策について確実に実施していきたいと考えておりますし、また、既に各自治体が十七年度予算で実施していることについては、補助採択の該当にはなりませんが、これは文部科学省として、今後、追加財政支援策の検討をしているところでございますので、その際、このアスベストの緊急性にかんがみて、弾力的な運用もあわせて行うことによって、確実な対策ができるようにしていきたいと考えております。

佐藤(茂)委員 ぜひ、抜かりのないような対策をお願いしたいと思います。

 時間の関係上、国土交通省等お呼びしていたのに質問できなかったことを謝りまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

筒井委員長 次に、福田昭夫君。

福田(昭)委員 民主党の福田昭夫でございます。

 私は、ダム事業を中心として、公共事業の見直しについて、さきに通告した項目をさらに絞って質問させていただきますので、政府関係者の明快な、簡潔な答弁をお願いいたします。

 まず、公共事業の見直しについてでありますけれども、御案内のとおり、一般公共事業費、国費ベースでは、ピーク時の既に約六割ということで、八兆円弱ということになっているようであります。そうした中で、国、地方合わせて一千兆円を超える借金を抱えている、また、人口減少の時代がやってくる、そんなことを考えると、私は公共事業のさらなる見直しが必要だと考えております。その見直しに当たりましては、公共事業の量の見直しから質の見直しへと転換を図るべきだと考えております。

 例えばでありますけれども、同じ国交省の中でも、今、地方の中心市街地は、シャッター通りと言われるように、大変疲弊をいたしております。そうした中心市街地へのお金をふやす。あるいは、所管は違いますけれども、文科省が所管をしております小中学校の施設などの耐震化、非常におくれております。そういったところに振り向ける。あるいは、ソフト事業も大変大事でございますので、教育とか福祉とか医療とか環境とか、そういった問題に振り向けるということが必要だと考えておりますし、実施に当たりましては、国がやるんではなくて、地方に権限や財源を移譲してやる、それが非常に大切だと考えております。

 中野政務官におかれましては、政治家としてどう考えるか、お答えをいただきたいと思います。

中野大臣政務官 御紹介いただきました、私は、大臣政務官の中野正志でございます。

 今委員からお話がありましたように、公共事業の役割は、社会資本の整備を通じて、国土の基盤を形成し、国民生活を豊かにするということにあることは当然であります。近年、御指摘をいただいたように、大変厳しい財政事情のもとで、歳出改革の一環として抑制されてまいりました。八兆円とありますけれども、ピーク時十四・九兆円、今七・五兆円ということになります。こうした中、本格的な人口減少社会の到来を控えて、限られた予算を最大限に活用し、真に必要な社会資本整備を着実に進めていくことが重要だ、これを基本に置いて私たちは事業を遂行いたしておるところであります。

 国土交通省としましては、従来、道路など九つの事業分野別に策定されていた社会資本整備に関する長期計画、これを一本化いたしまして、さらに、計画の内容を事業の量から達成される成果に転換した社会資本整備重点計画を平成十五年の十月に閣議決定して、現在はこれに基づいて、事業評価の厳格な実施、そしてコストの縮減、事業の迅速化を図るなど、重点的、効果的かつ効率的な事業の推進に努めているところであります。

 今後とも、この社会資本整備重点計画に基づいて、また御指摘をいただいたような災害に強い国土づくりや国際競争力の強化、そういったことにしっかり対応できる社会資本の整備を推進してまいりたいと考えているところであります。

福田(昭)委員 次に、ダムをめぐる環境の変化について質問をさせていただきます。

 ダムをめぐる環境は、大幅に今変化してきていると思っております。

 まず、利水面をとりますと、間もなく国勢調査の速報値も出るかと思っておりますが、日本が完全に、先ほども申し上げましたが、日本の人口のピークは去年かことしということが明確になり、人口減少の時代に突入する、したがって生活用水の需要は伸びない、むしろ減っていくという状況がはっきりしてくるかと思っております。

 また、治水面におきましても、ダムは万能ではないということが明確になっております。私の地元の那須、余笹におきまして、大変な大雨で災害がございました。あのときは、四千年に一度の確率の大雨でした。したがって、四千年に一度の確率に対応するダムなどどこにもつくることができません。これはもう逃げるほかありません。ですから、ダムが万能だということは全くない、そういう状況になっておりますので、治水面でも、ダムだけで対応できる話ではありません。

 さらに、環境面を考えますと、ダムをつくれば完全に川は死にます。生態系に与える影響は大変大きなものがございます。

 そして、さらに大事な点は財政面でございます。国家財政も大変でございますけれども、実質破綻先のような状況でございますが、地方財政も大変な状況でございます。とてもとても、ダムを初め大規模公共事業に負担するお金が全くない、それが地方自治体でございます。

 そんなことを考えますと、現在までにつくりました既存のダムをいかに有効に活用するか、これが私は大きな課題だと思っております。こうした変化を踏まえてさらなる抜本的な見直しが必要だ、このように考えておりますが、政務官の考え方をお聞きできればと思います。

中野大臣政務官 確かに、委員御指摘のように、人口の減少などを踏まえて、水需要の動向などの変化というのはこれからも大いにあり得ます。全国における水需要の動向を水道用水などの三つの用途別に概観しますと、次のようになっております。

 一つ目には、水道用水の使用水量は、人口増加と生活水準の向上とが相まって、最近三十五年間で約三倍に増加しておりますが、近年では、御指摘のように、ほぼ横ばいという傾向であります。

 二つ目には、工業用水の淡水補給水量は、経済活動が拡大する一方で、逆にまた回収率も向上いたしておりまして、近年では、ほぼ横ばいもしくは微減という状況になっております。

 三つ目でありますけれども、農業用水、この使用水量は、水田面積の減少による減少要因がある一方で、用排水の分離による水の反復利用率の低下などによる増加要因もあり、これもまた、ほぼ横ばい傾向を示しております。

 他方、近年、少雨の年と多雨の年との年降水量の差が大きくなるなどの気象条件の中長期的な動向などによって、水資源開発施設が本来の機能を発揮できないことが多くなってきているなど、安定的な供給の確保が課題になっています。

 このような動向を踏まえて、引き続き、水の使用動向や、あるいは供給実力などを的確に把握することが重要であると考えております。

福田(昭)委員 おっしゃるとおり、農業用水は、田んぼが四割も減反いたしておりますから、伸びるはずもありません。また、工業用水も、回収水の利用が定着をいたしております。また、工場の海外移転なども盛んでありますので、工業用水も伸びるはずがないわけであります。

 さて次に、全国に計画されているダム事業の数と総事業費及び執行済み額について、国、水資源機構、都道府県の設置者別にお伺いをしたいと思います。簡単に、数字だけで結構です。

仁井政府参考人 失礼いたします。

 昨日お伺いしたときに、ちょっと私ども誤解がございまして、フルプラン、見直しした三計画に位置づけられた事業の事業費、執行済み額というふうにお伺いしてしまったところがございます。その点に限って御説明申し上げます。

 これまで、吉野、木曽、筑後川のフルプラン、改定してございます。ここに計上された事業、九事業でございます。総事業費は一兆四千二百億余、十六年度末までの執行済み額九千七百五十億余、事業費ベースでの進捗率七〇%となっております。

福田(昭)委員 ありがとうございました。

 ちょっと連絡が行き届かなくて数が出ませんでしたけれども、これは後日、資料としてお願いをしたいと思います。今のお話をさせていただきますと、この三水系についてはかなりの見直しが進められているのかなという感じはいたしております。

 次に、六つのフルプランの現状と見直しについてでございますが、今お話がありましたように、三つの水系については既に見直しが済んで、あと四つの水系で三つの計画の見直しがこれから進められるということでございます。そうした中で、特に利根川・荒川フルプランの見直し状況と、執行済み額はわかるでしょうけれども、もし総事業費の見込みなどが出ておりましたらお答えをいただきたいと思いますし、さらには、利根川・荒川水系の既得水利権の現状と利用状況についてお答えをいただければと思います。

仁井政府参考人 利根荒フルプランについてのお尋ねでございます。

 利根荒フルプラン、現時点では目標年度も徒過しておりますし、なるべく早期に見直しを完了したいということでございまして、現在、関係都県に対して将来の水需給の見通しを調査依頼するなど、見直し作業を進めているところでございます。

 利根荒にかかわる関係自治体の数も多い、そういった中で、それぞれの都県としても意思決定に時間を要するといった要素もございまして、いわば表の世界でなかなか進んでいるということを申し上げることができないところでございますが、今後、関係者との調整を精力的に行い、なるべく早く見直す方針でございます。

 なお、フルプランにおきましては、フルプランそのもので事業費を計上するとかそういう性質のものではございませんので、事業費についての情報を私ども持ち合わせておりません、御容赦ください。今動いている事業についての事業進捗状況については、後日報告させていただきたいと思います。

福田(昭)委員 なかなか本当のことをしゃべってくれないようでございますが、それでは、先ほど申し上げましたが、利根川・荒川水系の既得水利権の現状と利用状況についてはちょっとお答えがなかったので、これはぜひお答えをいただければというふうに思います。

仁井政府参考人 失礼いたしました。失念いたしました。

 現行の利根荒フルプランに基づいて開発された水利権の設定状況、それから使用状況についてのお尋ねでございます。

 開発により設定された水利権量の合計量でございます。水道用水について毎秒四十二立方メートル、工業用水につきまして毎秒十九立方メートル、農業用水につきましては、農業用水は期別に与えられるものもございますが、ピーク時の量でございますが、毎秒約五十九立方メートルという状況になっております。

 一方、これにつきましての使用実績、ニューエストのもの、平成十四年度でございますが、水道用水毎秒約三十八立方メートル、工業用水毎秒約十五立方メートル、農業用水毎秒約二十五立方メートルとなっております。

 なお、若干注釈させていただきたく思います。農業用水につきまして、水利権水量と平成十四年度の使用実績、かなりの乖離がございますが、これは、一部の土地改良事業で末端の用水路整備が未整備であり、その時点ではまだ需要が顕在化していないという要素、それから、農業用水の水利権水量、これは渇水年を対象にして、渇水のときでも需要が賄えるようにということで付与されるものでございます。

 一方、毎年毎年の水運用というのは、降雨の状況によりまして、いわば有効雨量としてカウントできる部分を差し引いた、足らず前の部分を河川から取水するという運用をしております。平成十四年度は、計画年に比べまして四割ほど多雨年だ、年間ベースで見ても雨が多かったということもございまして、その時点においての河川への依存度が若干減ったという要素だというふうに思っております。

福田(昭)委員 それでは、非常に水も余っているような状況がよくわかるわけでありますが、そうした中で、既得水利権を調整する権限なんですけれども、今これを国が持っているわけでございます。しかし、今回の近畿地方の淀川水系の見直しに当たりましては、こういうすばらしいことが書いてあるんですね。

 これは、ことしの八月二十二日の日経新聞でありますが、ここに、国土交通省が水の転用を容認した、こう書いてあるんですね。「利水事業からの撤退を後押ししている背景がもう一つある。国交省が余った水の転用を容認し始め、自治体の水不足への不安が解消したからだ。」こう書いてあるんですね。最後の方では、「国交省の清治技監は「自治体の間で合意があれば国はストップできない」と柔軟に対応する考えを示している。」こうあるんですけれども、これは本当かどうか、確認をさせていただきます。

仁井政府参考人 既存水利の用途間の転用の問題でございます。

 用途間の転用、需要として乏しくなったものについて新たな需要に対して転用する、これは既存水利の合理的な利用ということで、私どもとしても大いに進めたいというふうに考えております。

 ただ、これは、それぞれの既得水利を持っていらっしゃる方、それから新たに水利を獲得しようとする方、双方の合意によって成立するものでございます。合理的な形でその合意が成立すれば、これは私、直接河川の水利行政担当はしておりませんけれども、従来の河川行政の中でも、それを阻むとかそういった運用はないはずというふうに承知しております。

 私どものフルプランの中でも、水の転用を進めるなど合理的な水使用を進めるということは閣議決定された本文中にも明記しているところでございます。

福田(昭)委員 国土交通省としては、百八十度というか方針を転換したということで、私は大変すばらしいことだと思います。

 そういうことになれば、ぜひともその権限をさらに、例えばですが、水道用水などを調整する権限、これを都道府県知事にしっかり与えていただきますと、例えば工業用水がちょっと余っている、これを都市用水、生活用水に切りかえる。そしてその水を県内くまなくある程度供給できるような体制をつくる。そういったことができれば、これ以上ダムはつくらなくても、まず都市用水、生活用水、工業用水については十分間に合うんではないかというふうに私は考えます。

 したがって、ぜひともそういった意味では、これから利根川・荒川フルプランを初め、あと三地域のフルプランの見直しがあるわけでございますが、これをしっかりやれば相当のダムの抜本的な見直しができる、私はそう思いまして、そういった意味では、多分地方自治体ももろ手を挙げて賛成するんじゃないかと思っています。

 関東地方の知事たちもやめたがっている人は多分たくさんいるはずです。しかし、今までの国土交通省の姿勢では、手を挙げると怖いということで挙げない知事さんが何人かいるんじゃないか、もしかすると全員かもしれません。ぜひとも、その辺、この考え方をしっかり都道府県知事に伝えて、しっかりとした見直しができるようにしてほしいなと思いますが、いかがですか。

中野大臣政務官 貴重なお話もいただきましたけれども、フルプランの見直しには、水資源開発促進法の規定に基づいて関係者に協議し、関係の都道府県知事の意見と学識経験者等で構成される国土審議会の意見を聞き、その後閣議決定を経て国土交通大臣が決定するということになっております。

 基本的には、例えば御指摘ありました利根川・荒川フルプランにつきましては、国土審議会水資源開発分科会のもとに設置されております部会におきまして、現行計画の全部変更に向けた調査審議を行っているというところであります。また、フルプランの見直しに当たっては、国土審議会の調査審議における資料や議事の公表もしっかり行っております。なおかつ、地元の住民の方々の代表としての関係都道府県知事の意見をしっかりお伺いするなど、開かれた対応を行ってきております。

 手を挙げたから国土交通省がどうの、そういうことはございませんで、私どもは、いつでもオープンに、またお互いに相協議しながら対応を進めてまいるという基本姿勢は変わりありませんので、そこは御理解をいただきたいと思います。

福田(昭)委員 国の姿勢が大変明確に変わってきたということで、これはしっかりと地方も対応する必要があるというふうに思っております。

 次に、河川整備基本方針を策定する上において最も重要な基本高水流量の見直しについてでありますが、現在使用されている流量が、どうも三十年から四十年前に策定されたものであるというような話を伺っております。その後、データもたくさん蓄積されているということでございますので、この際、しっかりと計算し直してより科学的な数値にすべきだと思いますが、いかがでしょうか。お答えをいただきます。

仁井政府参考人 御説明申し上げます。

 まことに申しわけないんですが、ちょっと昨日、私ども取材したところで意を尽くしていないところがございました。高水の話についてお話があるといったところもお伺いしていなかったように思っておりまして、そちらの関係の部署が出てきておりません。申しわけございません。

 今のお話につきましては、担当部局にしかと伝えていきたいと思っております。

福田(昭)委員 それでは、基本高水についての基本的な考え方は出なかったようでありますが、後日またお伺いをするといたしまして、次に、見直しに当たっての方法論的なことで少し御質問をさせていただきます。

 見直しに当たりましては、まず前提として、全くゼロベースで見直すというのが一つだと思いますし、それから二つ目として、やはり住民の意見をしっかりと聞くということが大切だと思っています。

 このことについては既に平成十二年の三党合意でしっかりと、住民のコンセンサスを重視する、そういう考え方も示されているようでございますので、そういった意味で、淀川水系では流域の委員会ができました。しかし、ほかのところはどうも余りできていないようでございますので、ぜひ、これから見直しをするところにおいては、しっかりと住民代表を入れた、しかも公募委員なども含めた流域の検討委員会がしっかりとできて、見直しができるようにしてほしいと思っています。

 それから、決定するシステムを、閣議決定ではなくて国会で議決をして決定する、国会承認、そのような仕組みに変えるべきではないか。これは、先ほど話が出ました社会資本整備重点計画そのものも含めて、すべてしっかりと国会で審議をして承認する。そういう仕組みをつくらないと、いつまでたってもこうしたお金のむだ遣いにつながるようなことが起きてきてしまうんじゃないかということで、社会経済情勢の変化に対応してしっかりとした計画を立てて進めていくということを考えますと、すべてこうした基本計画は国会の承認が必要だ、そういうシステムに変えていくべきだと私は思います。

 この三点について、一つ目はゼロベースで、二つ目は住民の意見を反映させる、そして三点目は国会承認、こういう三点について中野政務官のお考えをお伺いいたします。

中野大臣政務官 フルプランの見直しに当たっての基本的な考え方から申し上げさせていただきますけれども、平成十二年の審議会の報告を受けて、一つ目には経済社会状況の変化を踏まえたしっかりした水需要予測、それから二つ目には水利用の安定性の確保、それから三つ目には既存施設の有効活用、これらを新しい計画の基本的な視点として作業を進めておるところであります。

 具体的に申しますと、一つ目には、水需要予測につきましては、近年の人口あるいは産業の動向や水利用の状況などを踏まえてより適切な水需要を行いまして、二つ目には、水利用の安定性の確保、これにつきましては、近年の少雨化傾向により渇水が頻発していることを踏まえて、新規需要に対する供給量の確保だけではなく、水需給全体を見据えた安定的な水の利用を可能とするように、そして三つ目の既存施設の有効活用につきましては、用途間の転用などを進めることにより既存施設の有効活用を図りつつフルプランの見直し作業を全体的に鋭意進めている、こういうことで御理解をいただきたいと思います。

 それから、住民参加あるいは国会の議決という問題でありますけれども、フルプランの策定に当たっては、水資源開発促進法の規定に基づいて、関係省に協議をし、関係都道府県知事の意見と学識経験者等で構成される国土審議会の意見を聞き、先ほど申し上げましたように、閣議決定を経て国土交通大臣が決定することになっている。

 国民の代表である国会においてこのように御議論いただくこともむしろ極めて重要であると認識しておりますけれども、フルプランは、行政として実施する施策を取りまとめる行政計画であり、最終的には内閣が国会に対して責任を負いつつ策定することが議院内閣制のもとでは適切であると考えております。

 住民の皆さんの御意見につきましても、前段で申し上げましたように、身近な存在である都道府県知事のもとで、しっかり住民の皆様の御意見また御参加をいただきながら、県として、あるいは都道府県としての考え方を取りまとめいただき、私どもと協議をして、最終的に決定をされることがいいと私たちは考えておるところであります。

福田(昭)委員 いろいろな決め方があるわけですが、市町村では基本構想を定めるときには議会の議決を経て定めるということになる、都道府県は知事が定めるということになる、国会はそのように内閣が定めるということでありますが、私は、市町村と同じような仕組みにしていくべきだと思います。そうでなければ、それこそいつになっても政治主導の行政ができないんじゃないでしょうか。そのような疑問がございます。少なくとも国会承認等するぐらいにしないと、政治家主導の行政ができないんじゃないでしょうか、そう思っております。

 そこで、時間も来たようでございますので、最後にちょっと要望させていただきますけれども、公共事業の見直しはダム事業だけではないと思っています。その他たくさんのものがあると思っていますが、そうした中で、私は、小泉内閣の構造改革の総仕上げはやはり増税をするための環境づくりじゃないか、そう考えております。

 しかしながら、これから、特別会計はもちろんですけれども、一般会計でもまだまだむだがたくさんございますので、ぜひとも、歳出の削減、民間経済の活性化による増収、そういったことを基本として、財政の健全化を図るようなしっかりとした予算編成ができるように要望して、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

筒井委員長 次に、岡本充功君。

岡本(充)委員 民主党の岡本でございます。

 きょうは、私は、BSEの問題だけではなくて、環境省にも来ていただいておりまして、アスベスト対策についても時間の許す範囲でお聞かせをいただきたいというふうに思っております。

 また、きょうは、食品安全委員会のプリオン専門調査会座長であります吉川先生にもお越しをいただきました。本当にお忙しい中、御無理を申し上げましたけれども、きょうはよろしくお願いいたします。

 まず最初に、今、食品安全委員会でのカナダ産牛肉とアメリカ産牛肉の評価の前に、民主党としてもアスベスト対策の新法をまとめたところでありますけれども、政府におけるアスベスト対策。新しい法律を制定することを含めて現在鋭意協議中だと聞いておりますけれども、この概念。アスベストによる健康被害を受けた皆様方にすき間なく金銭的補償をしていくという考え方だと聞いておりますけれども、悪性中皮腫におけるアスベストの因果関係というのは医学的にもかなりの部分が相関があるということがわかってきておりますが、事肺がんに関していいますと、この評価は大変に難しいところがあります。

 すき間なく多くの被害者の皆様方に金銭的補償をするとなると、どうしても、適用とならない人、補償の対象とならない人にも補償がおりるような大き目の制度設計をしなければならないというふうに私は考えるんですけれども、特に政府として、すき間なく補償が行き渡るような方策、どういったことをお考えなのか。これから検討をするということではなく、今想定をしている範囲内で結構ですから、お答えをいただきたいと思います。

滝澤政府参考人 特に肺がんについて判断が難しいのではないかというお尋ねがございました。

 政府全体の方針といたしましては、九月の二十九日に関係閣僚会合において基本的枠組みがまとめられております。その中で、対象疾患について、石綿を原因とする疾患であることを証明する医学的所見があることという表現が明記されております。

 御指摘の肺がんについては、石綿以外にもさまざまな原因が考えられておりますので、石綿に起因するものであることを示す医学的な所見という部分について、明確に専門家の検討をしていただき、設定していきたい。

 それで、今後、検討会を設置して、具体的な検討に早急に着手するというちょうどタイミングになっております。

岡本(充)委員 いや、検討するではなくて、私はきのうもちょっとお話をさせていただいたんですけれども、石綿が原因だと特定をするためには、例えば病理学的な所見が必要だと。では、肺の組織を見て石綿がある可能性、病理学的な組織が残っていたとしても、そのスライドガラスの中に石綿があるかないかなんというのは、もしかしたら確率として非常に低いかもしれないわけですね。スライドガラスの中に、切片の中にたまたまあればいいですよ。そうじゃない場合には原因とならないのか。

 逆に言えば、確かにほかの要因があるでしょう。例えば喫煙もありましょうし、ほかの要因があるのはわかっていますけれども、では、喫煙でなった人まで拾っていいのかという議論もあるでしょう。

 しかし、すき間なく埋めるというのであれば、大き目の網を用意して、フォールスポジティブ、フォールスネガティブという科学的な言葉もありますけれども、はっきり言うと、今回は、適用じゃないかもしれないけれども、その人にもお金がおりてしまうというか、おりるような大き目の枠を設定する意向なのか、その方針だけでも示さなければ検討会で多分話ができないと思うんですよ。

 そういう意味で、政府としては、大きい網を用意して、今回は、適用にならない人も場合によってはお金がおりてしまうかもしれないけれども、それでも、そのリスクを冒してでも大きい網を用意するんだという意味合いでその検討をしてもらうのかということです。

滝澤政府参考人 若干繰り返しになりますが、石綿を原因とする疾患であることを証明する医学的所見、これは、ポジティブな所見を今の医学レベルにおいてどのような基準を並べるか、選定するかということでございまして、今委員のおっしゃるような言い方でのお答えという意味で申し上げますと、ポジティブに石綿起因であるということが証明されることが今回の救済の対象になるのではないかというふうに私は考えております。

岡本(充)委員 だとすると、政府が今回の枠組みである程度合意しているすき間なくという概念からいうと、私も、石綿でないことが証明されない限り、肺がんでお金を出せと言っているわけではないんです。ただ、石綿が原因である、石綿に起因するということを証明することは極めて難しいんじゃないかという懸念を持っていまして、とすると、過去にさかのぼって、亡くなられた方で、肺がんの患者さんの中で石綿に起因すると明らかに言えるような人というのはかなり少なくなる。それでは、すき間なくというその言葉に合致しないんじゃないんですかというふうに聞いているんです。

滝澤政府参考人 中皮腫と肺がんを並べて少し簡潔に申し上げますが、中皮腫という病気は、九割方アスベスト由来であろうということが医学的にも知見の積み重ねで言われております。逆に、中皮腫を診断する際にそれではどうするのかということは、なかなか、パソロジカルに病理組織を見なければというような、かなり本人に負担をかける話もございます。

 これは厚生労働大臣も先日答弁されておりましたが、そういうことで、中皮腫については、中皮腫という診断があれば、それは救済の対象にしようという基本が今考えられております。

 一方、肺がんは、年間五万人以上の発生がございますけれども、さまざまな要因で肺がんが発生すると言われていまして、私ども、繰り返しになって恐縮ですが、今のところの基本的な考え方としては、石綿に起因する肺がんである。例えばエックス線所見で、プラークでありますとか石綿小体でありますとか、専門家にそこを詰めていただくわけですが、そういうことを条件にして、認定基準にして、それに当てはまるかどうかというものをやはり吟味して、それで救済の対象にする、そういうイメージを今のところ持っています。

岡本(充)委員 BSEの話もしなきゃいけないので余り長くは言えないんですが、今お話にありましたけれども、中皮腫は確かに私もそうだと。

 ただ、私も、肺がんの人をみんな救えと言っているわけじゃないんです。みんな対象にしろと言っているわけじゃない。ただ、今のお話ですと、かなり数が、証明するのは難しい。

 本当に石綿に起因するかもしれない人をすき間なく埋めようと思うのであれば、医学的所見のみを求めるのであれば、労災の適用基準がいいかどうかは別です、これは労災ではないわけですけれども。例えば、石綿に暴露したのが何年、こういう基準が一つあったりする。医学的所見以外のものでそれを補完していくことで、クリティカルな証明が医学的にできなくても、ある程度補完するようなものを設けていかないといけないのではないか、こういう趣旨を含めての質問なんですね。

滝澤政府参考人 もちろん、個々人の暴露歴といいますか、職歴とかあるいはヒストリー全体ですけれども、そういうものを参考にするというのは当然のことだと思います。

 先ほど申し上げたプラークとか小体の話は、先生御承知だと思いますけれども、暴露歴とかなり相関するのではないか。それを、その度合いでもって認定基準にするかどうか、あるいは基準にするにしてもどういう定量的な基準にするか、こんな議論を今後お願いしていくわけでして、ヒストリーと、それから客観的な医学的な所見と、当然総合的に判断して対象を決めていく、こういうイメージでございます。

岡本(充)委員 では、この問題は、また機会を見つけて御質問させていただきたいと思います。

 さて、食品安全委員会のプリオン専門調査会の吉川座長にお越しをいただいておりますので、早速御質問させていただきたいと思います。

 今回、食品安全委員会に諮問されております、米国産もしくはカナダ産牛肉と日本産牛肉の同等性という言葉があります。同等性というのはどういうことだと吉川座長はお考えになられているのか、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。

吉川参考人 お答えします。

 諮問の最初のときから、今回の報告書、たたき台を見られたと思いますけれども、今までのとかなり違って、「経緯」と「諮問の趣旨」という、そこから書き始めてありますけれども、同等性というものを最終的にどう考えるかというところは、委員会でもこれまでも何回か議論しましたし、前回のときにも管理側に、諮問の趣旨としての同等性というのはどういうことなのだということを改めて問い直したわけです。

 私自身としては、米国及びカナダ産の牛肉あるいは内臓と、現在日本で流通している全年齢の牛肉及び内臓のリスクが、それぞれの要因について分析をして比較したときに、どのぐらいのリスクがあって、それぞれどういう違いがあるのかないのかということを回答するということで、分析というのはそういうことですから、科学的に分析した結果として、両群の間にその差が非常に少ないというのが結論であれば、評価の結果はそれでいいというふうに思っております。

岡本(充)委員 ちょっと大分先走ってお答えをいただいたんですけれども、同等性という言葉について、確かにこの前も少し議論になっていました。私も、プリオン専門調査会、月曜日午後、傍聴させていただいたんです。

 では、日本とアメリカもしくはカナダ、これからちょっとアメリカ及びカナダをアメリカと言わせていただくかもしれませんけれども、例えば日本とアメリカのリスクを評価する上で、同等なのか。同等だと言えるのは、非常に小さければ同等だと言えるのか、それとも非常に小さいは差があるのか。定性的に評価をすることを基本とすると審議するに当たっての基本方針に書いてありますけれども、定性的に言えば、非常に小さいという言葉は同等なのか、それとも同等ではないのか。これは、科学的に言えば差があるということを言いたいんだというふうに私は思うんですけれども、参考人はどのようにお考えでしょうか。手短にお願いします。

吉川参考人 数学理論で同等、そういう科学性で言うならば、同等というのはAイコールBということですから、それ以外のものはすべて同等でないという答えになります。

 要求されたのは、それぞれの条件について評価した結果として、そのリスクというものの大きさがどうなるのかというふうに私は最初から考えておりました。それで、両方を比較したときに、その差は非常に少ないというのが分析結果であって、それを行政的に国際防疫上同等と考えるか、あるいはそれを、そういうふうな了解のもとで行政対応をとるかとらないかは、これは管理側が判断するべきことであって、分析対象としては、科学的に差があるかないか、その差は大きいか小さいか、どのレベルに入るものかということを分析するようにというふうに諮問されたと私自身は考えています。

 ただ、これは委員会ですから、委員全体のコンセンサスをとるという格好で詰めていきたいというふうに考えております。

岡本(充)委員 まさにその科学的な見地を求められているわけですから、同等かどうかという諮問の仕方がいいか悪いかは食品安全委員会で判断する内容ではありませんし、今言われたように、科学的に考えればAイコールBがまさに同等であるわけで、そこに少しでも差があれば、当然のこととして同等ではない。

 例えば、この分野でいうと、私もさんざん、ウエスタンブロットをこれまで実験室でやってきました。同じところにバンドが、近いからこれは同等、同じものですよねと言って先生のところに持っていったら、先生は、これは違う、高さが、バンドのレベルが違うじゃないかと。もしくは量でも、この光り方とこの光り方が同等ですよねと言っても、それはきちっと定量的に評価をして、本当に同等かということを私たちの科学の分野では求められると思うんですよね。

 科学的な見地を求められている食品安全委員会のプリオン専門調査会であるからこそ、私は、同等であるかと聞かれれば、これは最終的に突き詰めれば同等ではない、科学的にはそうだ、あとはリスク管理官庁の方でこの答申をどう使われるかはどうぞ御自由ですが、AイコールBでないことは事実だというふうにはお答えする、そういう御意向はないんでしょうか。簡潔に。

吉川参考人 どういうレベルで、どういう形で結論を返すかというのは、まだ最終的な段階に至っていませんので、それぞれの委員の意見を聞きたいと思いますけれども、私個人の考えとしては、科学的なAイコールB、今言われたような意味で同等性を問われたというふうには余り考えておりません。

 それは、もともとすべての条件がわかって、すべてが同じであればそういうことになりますけれども、御存じのように、日本もアメリカもカナダも、出てきた背景も違えば、とってきた規制も違いますし、まして今度のは前提条件まで含めての評価ですから、科学的にはどのレベルのリスクに互いが入るのかということを返せば、それで私は個人的にはいいと思っていますけれども、委員の中にはいろいろな意見があると思うので、その点についても議論していきたいというふうに考えております。

岡本(充)委員 それで座長代理は前回コメントを出されたわけですね、同等かどうかは不明であるというのが科学的な、適切な表現じゃないかと。

 要するに、私も、二国間の制度もしくはリスクが全くイコールになることは、それは同じ国じゃないんですからあり得ないのはわかっています。ただ、差があるかないかと言われれば差はあるわけで、それで、同等かどうかは、同等ではない。イコール、もちろん輸入再開がいい、だめという判断はどうぞリスク管理官庁の方でやってくださいというのであれば、それはわかりますけれども、そこに差があるというのであれば、答申は、非常に差が小さかろうが差があるという結論であるというふうに認識をしたいと私は思うんです。

 それについて、座長は、それで問題がない、そのとおりだというふうにお考えか。もう本当に時間がないので、端的に、短くお願いします。

吉川参考人 最も大事なことは、小さい差があるかないかということではなくて、それによってどれだけの大きなリスクが入るのか入らないかということを分析することだと思ってこれまで分析をしてまいりました。

岡本(充)委員 大きなリスクが入ってくるのかどうか。では、ちょっと個別の話をしていきたいと思います。

 私は幾つかお伺いしたいものがあるんですが、このたたき台、いろいろ拝見していくと、例えば日米のサーベイランスなんかの比較もしています。それから、摘発率を比較したりしています。例えば、こういう数字の出し方も、確かにラフにしか出せない。統計学的に、同じような土台で評価できないと思うんですね。

 片や全数調査をし、片や恣意的かどうかわからないけれども抜き取り調査の中で、対等に比較はできないけれども、それを使って頭数の推計を行う、その上で、これを結論について評価をするための一つの材料としていくというのは無理があるのじゃないかというふうに私は思うんですけれども、それについてはどのようにお考えでしょうか。

吉川参考人 アメリカの汚染に関して、分析としては両側からやる格好になっております。

 一つの方は、侵入リスクという格好で、当時の英国からどのくらいの生体牛を入れたか、肉骨粉を買ったか、あるいは動物性油脂を入れたかというリスクファクターをどのくらい持ち込んだか、それに対してどのくらいの規制で低減効果あるいは回避効果があったのかといったような上流からの分析と、それと同時に、下流というか、実際のサーベイランスデータの方から持ち上げていったものと、それが大きくずれた場合には、これは本気で考え直さなければいけない。

 実際に上流から戻ってきたものと実際に調べたものから上がっていったもの、それを日米、カナダというもので比較して、そこに書いてあるように、日本とカナダは恐らく同程度の汚染状況になっているだろう、アメリカの場合は日本より高いかもしれないけれども、飼育規模という大きさから考えれば、百万頭当たりでいえば、カナダが同等、アメリカはひょっとしたら日本よりも少ないかもしれないというのが分析の結果です。

岡本(充)委員 先生、その上流、下流という話は、先生のお考えの中で、今回この比較をする中で使われた考え方ですけれども、実際のところ、正直言って、抜き取り検査なんですから、それを単純に掛け算をして、リスクはこのくらいだ、何頭だということは意味をなさないんじゃないかというふうに思うんです。科学的に考えて、抜き取り調査で。

 しかも、無作為抽出なら別ですよ、無作為抽出ならまだしも、恣意的に抜き取りをしているのが明らかな中で、向こうは、怪しげな牛を抜き取ったんだ、こう言うし、どういう牛を抜き取ったか、その基準がはっきりしない中での抜き取り調査で全数を推計するのは科学的にはナンセンスなんじゃないかと思うんですけれども、それはどうなんでしょう。

吉川参考人 科学的正確性という点でいえば、全部を調べるのが最もベストですけれども、サーベイランスというものの考え方の中は、BSEに限らず、限られた数で全体を把握するのにどういう手段が一番賢明かというときには、最もリスクの高いグループを最初に調べるというのは疫学調査ではやることであって、サーベイランスということに限れば、ヨーロッパもスイスもみんなそういう方法を用い、そこから全体を推計するということは特に変わった方法ではありません。

 日本が行っているのは、むしろスクリーニングとして、食肉検査という考えで全頭検査を行ってきたわけであって、そこには母集団の汚染を調べるということとは別途に、食品の安全性という格好で全頭の検査をしてきたわけであって、それはサーベイランスにも使えるということはそのとおりだと思います。

岡本(充)委員 先ほどもお話をしたとおり、最初の検査としてはそれでもいいかもしれない、ハイリスク群だけを見るというのは。ただ、全数を推計するに当たっては、本来は無作為抽出で検討をしなければ、例えば、ある疾患がどのくらい、疫学的に調査をするのにもですよ。最終的には、マスとして見るときには無作為抽出が必要になってくるのは当然じゃないのかというふうに思うんですが、いかがですか。本当に時間が短いので、短時間で。

吉川参考人 ネガティブな部分も含めて、無作為抽出の方がより精度が高いことは事実だと思います。

 ただ、既にヨーロッパのアクティブサーベイランスも二〇〇一年から始まって、そこには膨大なデータが出ていて、ハイリスク牛と健康牛でのBSEの陽性の比率とか、そういうものはすべて、範囲は何千万頭というオーダーで得られているものですから、それほど推計に大きなずれがあるとは私自身は考えておりません。

岡本(充)委員 今おっしゃっていただいた、無作為抽出の方が科学的にはより精度が高いということは、私もそのとおりだと思います。その点については、ぜひ吉川座長も一度御検討いただきたいと思います。

 さて続いて、幾つか聞いていきたいんですけれども時間の関係で、結論の部分についてもちょっとお話を伺いたいと思います。今、非常に小さいという話をした、それはそうとして。

 私は、前回の議論を聞いていたら、ほとんどとは言いませんけれども、二時から始まって三時半過ぎまでは厚労省、農水省等からの資料の説明だった。そこからだっと話が始まって、そして結論部分に入ったのはもう五時を回っていたころで、そして、五時を過ぎてから、結論部分について、それで結論に附帯する意見のところを先生は読まれて、ほとんど議論もないままに終了しましたと私は認識している。

 次で結論を決めるにはまだ早過ぎるんじゃないか。結論についての討議をする前に、ざっとこの文章を読んで終わってしまった。しかも、最後の方は五時を過ぎたから複数委員が立ち上がられて帰られた、このような状況であったと私は認識しているんです。次ではまだ結論の取りまとめは無理ではないかというふうに考えるんですが、座長はどうお考えでしょう。

吉川参考人 次回で早過ぎるかどうかは審議をしてみないとわからないと思いますけれども、たたき台そのものに関しては、既に十一日の時点で各委員に配り、各委員からも意見を聞き、また、その間、委員会は開きませんでしたけれども検討を重ねてきたので、そういう意味では、時間配分として前回非常に不十分であったことは私もそのとおりだと思いますし、欠席された委員もいますので、次回、前回中心的に審議できなかった「結論のために」及び「結論」と附帯項目について審議をした上でコンセンサスを得ないとというふうに考えております。

岡本(充)委員 さて、その結論ですけれども、結論は大変短くなっていて、その後に附帯意見というような形で載せるのか、その形態はこれからなんでしょうけれども、ほかの意見があるのも事実です。いろいろな意見で採決するわけにはいきませんから、これを結論として両論併記する、こういったことは可能なはずなんですが、これについては、はっきり言ったらこれだけ意見が違っているんですね。非常に小さいと言う人から、同等かどうか不明であると言う人もいれば、まだ評価が足りない部分があると言っている人もいる。

 いろいろな意見が出る中で、結論としてたった一つだけを載せるということについては、この前伺っていて私はちょっと違和感があったんですけれども、両論併記をされるお考えはないんでしょうか。

吉川参考人 これは専門調査会ですから、座長が権限を持っているわけではないので、討議の結果、両論併記あるいは時期尚早その他あれば、そういうまとめ方が賢明であるということになれば、そういうことはあり得るというふうに考えております。

岡本(充)委員 ということは、そういう異論が出れば、次で結論をまとめることはしない、コンセンサスが得られるまで時間をかける、こういうふうに座長としてお答えいただけるわけでしょうか。

吉川参考人 全く対立して平行路線であればそういうことを考えるし、付記でいいということであればそういう格好になるだろうと思いますし、そこは、あの委員会はいつも公開で審議の結論をまとめていくというスタイルをとっているので、今の時点では、どういう最終版になるか私自身もわかりません。なるべく委員のコンセンサスがとれるような方向で審議を重ねていきたいと思っております。

岡本(充)委員 時間がなくて、いろいろな省庁の人に来ていただいたのに、大変申しわけないんですけれども、質問が十分できなさそうであります。それをまずおわびをしておいた上で、最後に吉川座長に、大変僣越ではありますけれども、ちょっと懸念を申し上げさせていただいて。

 きょうの新聞にも出ておりました。多くの国民の皆さんはまだ疑っています、アメリカ産牛肉について。そして、リスクの評価についても、管理官庁が管理をした上でなければと言いますけれども、管理をする管理の内容、仕方、プログラム、アメリカから来たと言っているデータ、きょう聞こうかと思ったけれども時間がなかった。それは、すべて、例えば、EVプログラムだとかこういうプログラムをつくるんだ、これからやるんだ、それはやらなきゃわからない。例えば、飼料規制だって今回出てきた。肉骨粉をどういうふうに規制していくかというその方針は、十月の上旬に出したんだという話は出ていた。だけれども、それがどうなっていくかまだわからない。それを見守っていく、もしくはそれの行く末を見きわめないと、評価が最終的にできないんじゃないかというふうに私は個人的に思っているんですね。

 別に、アメリカ産牛肉の輸入を再開するなと言っているわけじゃない。私は、安全でおいしいアメリカ産牛肉をみんなと一緒に食べたい。だから、アメリカにもある程度の、もちろんそれは管理官庁がすることだけれども、要求をしていくことは、僕は決して理不尽なことではないと思っているんです。

 そういう中で、科学的に本当に、食品安全委員会が国民の皆さん方に安心して食べてくださいと胸を張って言えるのかどうかということについては、私は、管理措置も含めて十分討議をしていって何らおかしいものではないと思うんです、措置の手段ですね。

 そういうことをぜひお考えいただいて、最終的にそれはだれの責任か、何かもし問題があったときにだれの責任か、あやふやになることのないように、私は、リスクの評価でぜひ勇み足を踏むことのないように、慎重な上にも慎重御審議いただきたいということを最後にお願い申し上げまして、本当にきょう済みません、皆さん、お越しいただきましたけれども質問できませんでした。また機会を設けてやらせていただきます。局長、どうも済みません、皆さん、どうもありがとうございました。

筒井委員長 次に、近藤洋介君。

近藤(洋)委員 民主党の近藤洋介でございます。本日は、決算行政監視委員会での質問の機会をいただき、ありがとうございます、感謝をいたします。

 一昨日でありますか、新聞報道によりますと、自由民主党の財政研究会ですか、消費税率の引き上げの方向性を明確にした報告書を発表されました。また、政府税調では、定率減税の廃止ということも明確に出されておるやに聞いております。総選挙のマニフェストでは何も触れずに、選挙が終わった直後にこうした考え方が続々と出てくる、非常に奇異な感じがするわけでありますが、世間ではこうした行為を後出しじゃんけん、こう言うわけであります。

 有権者に対して果たして誠実な行為だったのかなというふうに疑問に思うわけでございますが、私も、税制の改革が必要だと思う、認識を持つ一人でありますけれども、増税を語る前に、やはり歳出の洗い直しといいますか徹底的なチェック、これは当然必要なわけであります。我が党、民主党の前原代表も、行革なくして増税はないということを主張しておりますが、私も改めてこの点を強調していきたいと思うわけであります。

 当委員会の委員、新しい構成になったようでございます。私はきょうは差しかえで入れさせていただいておりますが、新しい議員の中には、議員の歳費でいろいろなものを買いたいとか、いろいろなところに食事に行きたいとか、おっしゃる方もいるやにマスコミで聞いておりますけれども、国会議員の職務というのは、お金を使うのではなくて、お金の使い方をチェックすることでありますし、私も真剣に質問をしたいと思いますので、御答弁者の方も、真摯かつ簡潔な御答弁をお願いしたいと冒頭思うわけでございます。

 私が取り上げていきたいのは主に財投の使い方ということなんですが、この中で一つのプロジェクトをめぐる融資について今委員会で取り上げていきたいと思うわけであります。

 日中間の国境の東シナ海のガス田、石油田、油田の開発をめぐる融資の案件ですが、お手元に、委員長のお許しを得て、東シナ海ガス田、油田の概念図を配付させていただいているかと思います。この資料を見ながら質問をさせていただきたいと思うわけであります。

 この東シナ海のガス田につきましては、日中間で、春暁そして天外天、それぞれの中間線にまたがる油田開発が現在中国政府において行われている。これに対して日本政府は、中間線をまたいだ油田であるから、これは我が国の権益であるということで主張し、日中間で政府間の交渉が行われているわけでございます。

 そのいわゆる春暁、天外天のガス田、この地図にもございますが、そこから七十キロメートル離れたところに中国名で平湖というガス田がございます。このガス田と上海を結ぶ、約三百七十キロメートル程度でしょうか、パイプライン計画がかねてからあり、旧日本輸出入銀行、現在の国際協力銀行が、東シナ海の平湖と上海を結ぶガス、石油パイプラインのプロジェクトに対して、一九九六年の八月に融資を行っています。アジア開発銀行と協調融資。

 日本の旧輸銀、現在の国際協力銀行の融資額は一億二千万ドル、日本円にして約百三十億円融資を実行しておりますが、この融資、中身は、返済期限が二〇一二年まで、そして金利はLIBORプラス〇・二五の変動金利と聞いております。当時としては大変好条件の金利で融資をされているわけでありますが、この一九九六年というのは中国が核実験を行った年でもあります。そういう意味では、日中間もそれなりに微妙な時期であったかと記憶しておりますが、日本から二百海里の域内でもある、さらには、中間線の、中国側とはいえ、いわゆる係争海域といいますか、非常に微妙な地域であるこの海域のパイプライン計画に、なぜ日本輸出入銀行がこの時期に、しかもこの地域に融資を実行したのか。理由を簡潔に御説明いただきたいと思います。政府参考人、本日は輸銀の野崎理事に来ていただいておりますが、輸銀の方からお話を聞きたいと思います。

野崎政府参考人 お答え申し上げます。

 中国が九五年に核実験を実施いたしましたため、同年八月以降、我が国政府は、無償資金協力のうち、緊急人道的性格の援助及び草の根無償協力を除くすべての援助を凍結いたしましたが、本件の融資承諾時点でございます九六年八月におきまして、有償資金協力、その他の経済協力については、特段の措置は実施されていなかったものと承知いたしております。

 かかる前提のもと、本件融資につきましては、財務省と一般的な協議も踏まえまして、九六年八月に調印したものでございます。

近藤(洋)委員 そういった中止の対象にないから融資を実行したということですが、輸銀の御説明は理解いたしますが、しかし、冒頭申し上げたとおり、係争水域にあえてこのパイプラインの融資計画を実行したということについて、先ほど理事は、財務省と適宜の協議を行ったということです。

 では、ここで財務省にお伺いしたいんですが、この時点で、例えば関係各省、外務省であるとか資源エネルギー庁であるとかといったところと協議をした上でこの融資を実行したんでしょうか。

井戸政府参考人 本件融資の決定に当たりましては、当時、旧日本輸出入銀行は、旧大蔵省に対しまして一般的な協議を行いましたが、他の省庁とは調整をしていなかったものと承知いたしております。

 なお、現在は、旧日本輸出入銀行の業務を引き継いだ国際協力銀行のアンタイドローンにつきまして、基本的にすべて外務省、経産省を含む関係省庁と密接に連絡調整を行っているところでございます。

近藤(洋)委員 議論しなかったというんですが、これは問題だと思うんですね。こういう係争水域と表現していいかどうかわかりませんが、微妙な地域に対して、では財務省は、もう一度確認しますが、こういった日中間の資源関係について知見を示した上で判断をしたのか、財務省にはそういう権限はありませんけれども。そういう判断をしたのかどうか。ないしは、では旧輸銀はそのとき、エネルギー庁なり外務省と別個に議論をされた上で財務省に持っていったんですか。それぞれ簡単にお答えください、事実関係だけ。

井戸政府参考人 当時、案件の協議につきましては、日本輸出入銀行が判断をいたしまして、必要があればケース・バイ・ケースで判断を行っていたものと承知しておりますが、当時、この案件につきましては、そうした協議は行われなかったというふうに承知いたしております。

野崎政府参考人 本件につきましては、当時の関係省庁に対しまして御相談申し上げてはおりません。

 ただ、ただいま井戸局長が御答弁申し上げましたように、国際協力銀行となりましてからは……(近藤(洋)委員「今のことを聞いているんじゃない、そのときのことだけでいいです、結構です」と呼ぶ)はい。

近藤(洋)委員 要するに、議論していないということですね。

 現在、この平湖のガス油田と、日本名では樫と書いていますが、天外天のこの油田は、パイプラインが既に結ばれているんですね。これは確認いたしましたが、結ばれています。さらに、この日本名白樺、中国名春暁と天外天も結ばれようとしていると聞いております。中国政府は、十月にもこの春暁と天外天の油田の開発の生産を開始するということを表明しておりますし、ガス田が、ガスの後は石油も出るわけでありますから、この石油が、すなわち平湖を通じて上海に送られることになるわけであります。

 このプロジェクトは、そもそも係争水域のプロジェクトでありますけれども、問題となっている中間線のところにある油田の資源がまさにストローのように吸い取られて、もう年内には場合によっては中国に運ばれる可能性が出てきているわけであります。事の本質は、中国側から見れば、日本の輸銀が、政府系金融機関がこのパイプラインに融資のお墨つきを与えている。日本政府は、片やこの油田開発をやめてくれと言っているけれども、片っ方でお金を出しているわけですよ、その資源を運ぶパイプラインに。日本の政府はあべこべじゃないかと中国政府から見られても仕方がないわけであります。

 この融資は結果として大変問題であったと指摘したいと思いますし、当初そのことを想定していなかったとしても、想定していなかったというならば、では想定しただけの手続を踏んでいたのかといえば、関係各省と協議していないとおっしゃっている。財務省は、先ほどの答弁からわかるとおり、資源開発の観点からこの案件を判断していませんね。政府はそういう判断をしなかったということだと思うんです。

 改めてその点を確認したいんですけれども、この融資に関する最高責任者はだれですか。財務省でよろしいんでしょうか、財務大臣でよろしいんでしょうか。

井戸政府参考人 旧日本輸出入銀行の個別融資の可否につきましては、旧日本輸出入銀行法に反しない限りにおきましては、日本輸出入銀行みずからの金融判断に基づいて行われていたというふうに承知いたしております。

近藤(洋)委員 ということは、輸銀の当時の総裁、保田総裁ですね、当時は。保田総裁がこの問題の最高責任者であるということなわけですか。政府は一切関係ないということでよろしいんですか。ちょっと財務副大臣、せっかくいらっしゃっています、そういうことでよろしいんですか。政府はこの件については最終責任を負わないということでよろしいんでしょうか。

田野瀬副大臣 先ほど井戸局長がお答えしたとおりでございまして、旧日本輸出入銀行法において、日本輸出入銀行総裁は日本輸出入銀行を代表し、その業務を総理するということになっておりまして、そういう判断をされたと承知しております。

近藤(洋)委員 副大臣、これは国益を大変損ねているんですね、結果として。これが輸銀の責任ですよと切り捨てるのは、僕は、ある意味で政府の怠慢ではないかと思うんです。指摘しておきたいと思うんですね。

 ちょっと改めて、では、会計検査院に来ていただいていますから簡潔にお願いしたいんです。この融資というのは、私は、結果として二点において問題があると思うんです。

 一点は、まずは、対外的に我が国は二百海里を排他的経済水域としておりますね。これは日本の立場。その中間線を越える部分、仮に中国側だとしても、我が国の公的な立場は二百海里が排他的経済水域であります。それを越えるところに対して、しかも係争水域に対して融資を行った、政保を行ったというのは、私は、これは財務省にそういった権限はないと思うんです。こういう意思判断をするのは、そもそも政府全体で意思決定をしなければいけない。この意思決定の問題が一点。

 二点目。この融資は、結果として本来の目的と違う形で行われている。プールをつくろうとして、結局そこが生けすになってしまったようなものですよ。プールをつくる予算で融資をしたけれども、それが結局、池、釣り堀になってしまった、違う目的で今使われようとしているんです。違う目的でも使われようとしている。春暁の中間線にある油田の石油を上海に持っていこうとしている、違う目的で使われている。しかも、結果としてこの融資は我が国の国益を損ねようとしているという点において、この二点において問題があると思うんですが、会計検査院は、この融資を検査されましたか。したかしないか。

 さらには、この本来の目的と違った融資は現時点において問題ではないかということを、会計検査院の院長、簡潔にお答えください。

森下会計検査院長 お答え申し上げます。

 平成八年に本件融資が実行されておりますけれども、いささか古いものになりまして、当時、検査をしたかどうかのはっきりしたものはございませんが、その後、最近時点では検査を行ったということはありません。検査をしておりません。

 それで、本件融資について、今のような問題提起をいただいたわけでございます。私どもといたしましては、本件融資が適切なものであったかどうかという判断をいたします際には、当時の融資の時点において、例えば契約約款の内容がどうであったのか、それから、融資判断が適切に行われたかどうかをやはり関係者から聞き出しまして、そして判断をしなければいけないというふうに思っております。それから、現在のパイプラインの使われ方につきましても、関係機関から情報の提供を受けて、そういったものを総合的に判断して検討していきたいというふうに思います。

近藤(洋)委員 院長、要するに、本来の目的と違った形で使われた場合、その融資はやはり適正ではないという判断でよろしいわけでしょうか。本来の目的と違った目的でそのものが使われた場合、今回のケースもそうですが、プールをつくろうとして生けすに使われてしまった、そういう場合は、この融資は適正ではないと会計検査院としても認めてよろしいと思うんですが、いかがでしょうか。この点だけ、確認です。

森下会計検査院長 現状としては、目的に反しているということは、事実として認定した場合に、それが融資の段階での責任であるのか、結果としての問題であるのか、これはやはり十分検討した上で判断していくということになろうかと思います。

近藤(洋)委員 政治は結果責任でありますから。この融資、そのときの意思決定において、財務省だけが判断をして決断をしてしまった。しかも責任は、先ほどの御答弁では、財務省が判断したにもかかわらず責任は輸銀である、こういうことであります。押しつけのような印象を得るわけですが、そういう意思決定をした融資、これが違う目的に使われ国益を損ねている。中国政府からは足元を見られているわけであります。

 今まさにこの油田開発、日本にとって極めて重要な資源です。資源のない我が国にとって、どれぐらいの規模があるかわかりませんが、イギリスにおける北海油田ぐらいになるかもしれません、大変貴重な我が国にとっての資源であるわけですから。その交渉に、中国側に対して非常に一つの理屈を与えてしまっている。

 さらには、開発された資源がそのままどんどん、このパイプラインはもう既に完成していますからね。平湖から上海まで、そして平湖から天外天のパイプラインは完成しているわけですから、いつでももう輸送できる状況になっているわけであります。

 ぜひここで確認したいんですが、今現在日中間で交渉をしております。交渉していることは、これはぜひ共同開発を進めてもらいたい、日本の国益に沿う形でのまさに共同の海にしてもらいたいと思うわけでありますけれども、この交渉は、残念ながら、小泉総理大臣の靖国神社参拝で、十月に行われるべき交渉が延期されています。これも総理の政治責任は大きいと思うわけでありますが、現在ストップしております。その間も開発は進んでいるんです。日本側は何も手出しできません。

 こういう状況で中国側が生産を開始した場合に、この融資、まだ返済期間が残っておりますし、まだ残金は残っているわけですから、即座に契約問題ありということで中国政府に返済を求めるべきだと思うんですが、いかがでしょうか。財務省、いかがでしょうか。

田野瀬副大臣 春暁―平湖間の原油パイプライン敷設問題、これは今先生おっしゃられましたように、日中両国政府による一連の東シナ海等に関する日中協議の内容に関連する問題でございます。

 現在、政府レベルの協議が、先ほど先生がおっしゃられましたように靖国神社問題等々ございますけれども、我々は、協議が続行しておる、こういうふうに判断しておりまして、政府内関係者と緊密な連絡をとりながら、この協議の進捗状況をこれからもしっかりと注視していかなきゃならない、こんなふうに考えておる次第でございます。

近藤(洋)委員 注視ということでございますが、私は理屈をしっかり申し上げているんです。契約と違うものを行った場合は契約違反だということで、しかるべきそれなりの対応をとるのが筋ではないかということを申し上げておるんです。

 では副大臣、こういうことが行われてしまったこと自体は、やはり財務省として問題であったという認識はございますか。結果としてこういう融資が行われてしまったということは遺憾であるという御認識はありますか。それとも、全く問題はないとお思いですか。どちらでしょうか。

田野瀬副大臣 まさに現在日中間で話し合われておる最中でございまして、仮定の論理にはちょっと現在答えにくいという状況にございます。とにかく、同協議の進捗状況をしっかりと注視しながら判断していかなきゃならない、こんなふうに考えております。

近藤(洋)委員 いや、私は非常に問題だと思いますね。こういうことが行われて、やはり政府は毅然としっかりした対応をとるべきだと思うんですね。

 官房長官、お忙しいところをいらしていただきまして、ありがとうございます。

 官房長官に、せっかくのお時間ですからお伺いしたいんですが、議論を途中から聞いていただいたかもしれませんが、今、政府系金融機関の統廃合の議論が政府内でも進んでいると聞いております。今回の旧輸銀の融資について、これは代表例として取り上げたんですけれども、旧輸銀、今は国際協力銀行になっておりますが、これは、融資の案件というのを調べるというのは、適正かどうかというのは大変難しいんですよ。

 これは指摘だけにしておきますが、旧輸銀は一つ一つの案件について情報公開もしっかりしていませんね。金利なり返済期限なり、融資の内容について、ODAについては相当細かくディスクロージャーというか公開していますが、いわゆるアンタイドローンについてはちゃんと公開しておりません。理由はいろいろある、相手の国との関係等々とおっしゃって、それは理由は事前に聞きましたけれども、そもそも公開しておりません。

 一つ一つの融資案件を会計検査院に調べろと言っても、これは難しいんですよ。なぜならば、借りている方も調べなければいけないから。そこには会計検査院の力は及ばないんですね。輸銀そのものは、融資対象としてラインシートというか貸出表を調べることはできるけれども、その先を調べることができないから、会計検査院でもなかなかチェックすることは難しいんです、難しいと思います。

 こういう状況で、チェックをすることが難しい、一つ一つの融資案件を適正かどうかというのをチェックすることが難しい状況で、いたずらに政府系機関をホチキスのようにとめて統合しても、私は、問題ある融資がかえってどんどんごまかされてしまうんではないかという危惧を覚えるんです。

 まずやるべきことは、例えば、国際協力銀行であれば、ODAの旧海外経済協力基金の部分はこれは残すにしても、輸銀の国際融資業務というのは、私は正直言ってほとんど民間で代替できると思っています。そういう業務をきっちり仕分けして、スリム化して政府系金融機関の統廃合という議論を進めないと、おかしな融資が温存される結果になるのではないか。徹底的な内容の洗い出しがまずは必要であって、形だけ整えても何の意味もないと思うのですが、官房長官の御見解をお伺いしたいと思います。

細田国務大臣 平成十三年当時、百六十三ありました特殊法人を、今、百三十六は廃止、民営化、独立行政法人化その他の整理をやりまして、二十七残っているわけですが、日銀、赤十字、NHK、預金保険機構等を除きますと、残る二十二のうち、関西空港あるいはNTT、JR等を除きますと、今、百六十三のうち十四法人残っておって、それが、公営競技関係五法人と、総合研究開発機構と政策金融八機関になっておるわけです。

 したがって、それらが本当に必要なものであるかどうか、戦後の役割を終えたものかどうか、あるいは中小企業金融機関がこのように数が多くていいのか、あるいは中小企業のためには必要なのかという議論を、もう最後に残った特殊法人でございますので、これらを今十分に検討しておるところでございます。

 二つの見方はあって、およそ、もうそんなものは要らないんじゃないかという議論もあるでしょう。民間銀行に任せればいいし、中小企業金融機関なんか要らないじゃないかというような指摘をする人もあるかもしれません。あるいは、輸銀と基金が合併した国際協力銀行にしても、あるいは開銀、北東公庫が合併した政策投資銀行にしても、役割を終えたと言う人もあります。沖縄金融公庫はどうか、公営金融公庫はどうかというさまざまな、それぞれの性格がございますので、十分精査して、ただ、小泉内閣としては、ここまで来たものの中で、政策金融機関残っておりますので、本当に国民が必要とする機関かどうかを吟味して、あるべき姿にしようと。

 民営化するものもあるでしょうし、合併するものもあるし、何らかの形で役割を終えるものもあるかと思いますが、これはこれからの精査でございまして、近藤議員がおっしゃる視点も大変大切な視点だと思っております。

近藤(洋)委員 時間が残り少ないので最後の話題にかえたいと思うんですが、政府系金融機関の問題はこれからもっとしっかり私どもは議論していきたいと思うわけでありますが、いずれにしろ、会計検査院の役割は大変大きい、これは間違いないところだと思っています。会計検査院法の改正についてもこれから採決があるというふうに聞いておるわけですが、非常に大事な役割を果たされるわけですが、昨日の衆院本会議で会計検査院の検査官、認証人事がございました。私ども民主党は反対でございました。

 なぜなら、理由を申し上げれば、財務省の方が、伏屋さん、個人的には立派な方だと想像します。想像しますが、しかし会計検査院の歴史の中で、現在の検査院、院長さんが今度定年を迎えられる、御引退をされると、その後任ということでございますが、会計検査院のプロパーの方がいなくなる。いなくなるのは四十六年ぶりだそうであります。

 院長、お伺いしたいんですけれども、何でプロパーの方がいなかったんですか。院長は事務総長もやられた方ですから、会計検査院というのはそんなに人材が払底しているんですか、僕は異常事態だと思うんですよ。何でこういう異常な事態になったのか、そんなに人材が払底しているのかどうか、院長、ぜひお答えいただきたい。会計検査院出身者の中で。

森下会計検査院長 お答えいたします。

 会計検査院の検査官の人事につきましては、国会の同意を経て内閣が任命されるということになっております。私どもとして特に見解を申し上げる立場にはないわけでございますが、私どもに人材が払底しているとか、そういった特段の事情があるわけではございません。

近藤(洋)委員 官房長官、この任命権者という、内閣が提出したわけですから。なぜ財務省の方を使われるのか。要するに、自分がつくった、後輩たちがつくった予算を査定するのが会計検査院ですから、これは、出身母体のところをきっちり検査できるのかというのはそもそも疑問なんですね。しかも、もう一方は総務省の方である。三分の二の方が霞が関出身者である。霞が関をチェックする会計検査院に霞が関出身者の方を使うというのはどう見ても理解できないのですが、官房長官の御見解をお伺いしたい。

細田国務大臣 会計検査院の検査官は非常に重要なポストでございます。かつ、予算の仕組みあるいは目的、実際の運用等について非常に明るい方にお願いしなければなりませんし、かつ、この会計検査という使命に忠実に、厳しい検査をやっていただかなきゃいけません。そのような方として、今は内閣官房副長官補をしておられます伏屋和彦君は、人格、識見も、経験も立派な方である、今の院長に劣らず、ともにすぐれた方であるということで任命することにしたわけでございます。

 ちなみに、財務省にいたら検査院検査官としていい仕事ができないんじゃないかということは必ずしも言えないわけでございまして、要は、きちっと会計検査の目的に即して、非常に目配りも届き、かつ正しく検査という、もちろん多数の人間を監督しながらやるわけですから、方針などにおいて間違いが起きないようにしっかりと監督できるかどうかという観点から選任を、任命をお願いしたところでございます。

近藤(洋)委員 李下に冠を正さずという言葉があるわけであります。やはり私は、財務省の方は使うべきではない、幾ら優秀だとしても。あえて言えば、小泉内閣になってやはり財務省は力をつけてきたなと思いますね。公正取引委員会の委員長の竹島さんも旧大蔵省、そして会計検査院の院長も大蔵省が握る。これで日銀総裁をとったら三冠王だ。大蔵省だけの、大蔵省支配が着々と進んで、そして大蔵省悲願の増税路線に突き進むというわけであります。こういうことを言われても仕方がないですね、税金の使い方をチェックするのに大蔵省の方を使われるということでありますから。

 やはりこういった問題、会計検査院の天下り問題もきょう指摘をしようと思いましたが、李下に冠を正さずということもございますし、私は、日本にはもっと人材がたくさんいると思います。そういった方を活用すべきであって、第一、こういった輸銀の問題の融資も見抜けなかったじゃないですか、会計検査院は。こういう問題も見抜けなかった。会計検査院はもっともっと強くしなければいけません。その意味でも、霞が関の人を使う必要は全くないということを最後に申し上げて、質問を終えたいと思います。

 ありがとうございました。

     ――――◇―――――

筒井委員長 次に、参議院提出、会計検査院法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。参議院決算委員長中島眞人君。

    ―――――――――――――

 会計検査院法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

中島(眞)参議院議員 ただいま議題となりました会計検査院法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の趣旨及び主な内容を御説明申し上げます。

 近年、国会における決算審査につきましては、決算の国会への早期提出、審査内容の充実、政府に対する多岐にわたる措置の要求、さらには国会法第百五条に基づく会計検査院への検査要請の実施など、その充実を図ってきております。

 こうした中、会計検査院の行う会計検査につきましても、国等の締結する契約の多様化を踏まえた検査対象の拡大、会計検査の円滑な実施の担保、さらに、会計検査院による国会等への報告時期の弾力化などが求められております。

 本法律案は、このような状況にかんがみ、会計検査の機能の強化及び活用を図り、もって国会における決算審査の充実に資するため、所要の改正を行うものであります。

 次に、本法律案の主な内容について御説明申し上げます。

 第一に、会計検査院は、国の工事以外の役務の請負または事務もしくは業務の受託のその契約に関する会計について、新たに検査をすることができるものとし、また、国が資本金の二分の一以上を出資している法人についても、工事その他の役務の請負もしくは事務もしくは業務の受託または物品の納入のその契約に関する会計についても検査をすることができるものとしております。

 第二に、会計検査院による実地の検査を受けるもの及び会計検査院から、帳簿、書類その他の資料もしくは報告の提出の求めを受け、または質問されもしくは出頭の求めを受けたものは、これに応じなければならないものとしております。

 第三に、会計検査院は、会計検査院法第三十四条または第三十六条の規定により意見を表示しまたは処置を要求した事項その他特に必要と認める事項については、随時、国会及び内閣に報告することができるものとしております。

 以上が、この法律案の提案の趣旨及び主な内容であります。

 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。

筒井委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

筒井委員長 本案につきましては、質疑、討論ともに申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 参議院提出、会計検査院法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

筒井委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決定いたしました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

筒井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

筒井委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時五十一分散会


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