衆議院

メインへスキップ



第6号 平成19年6月20日(水曜日)

会議録本文へ
平成十九年六月二十日(水曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 仙谷 由人君

   理事 鴨下 一郎君 理事 北村 誠吾君

   理事 柴山 昌彦君 理事 渡海紀三朗君

   理事 平田 耕一君 理事 古川 元久君

   理事 松本 大輔君 理事 古屋 範子君

      赤池 誠章君    浮島 敏男君

      江藤  拓君    佐田玄一郎君

      坂井  学君    杉村 太蔵君

      鈴木 馨祐君    玉沢徳一郎君

      冨岡  勉君    西本 勝子君

      平口  洋君    広津 素子君

      福岡 資麿君    藤井 勇治君

      古屋 圭司君    保坂  武君

      茂木 敏充君    矢野 隆司君

      安井潤一郎君    岩國 哲人君

      枝野 幸男君    金田 誠一君

      玄葉光一郎君    小宮山泰子君

      武正 公一君    西村智奈美君

      漆原 良夫君    太田 昭宏君

      鈴木 宗男君

    …………………………………

   参考人

   (東洋大学教授)     松原  聡君

   参考人

   (社団法人日本民間放送連盟会長)         広瀬 道貞君

   参考人

   (桐蔭横浜大学法科大学院教授・コンプライアンス研究センター長)      郷原 信郎君

   決算行政監視委員会専門員 藤野  進君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月二十日

 辞任         補欠選任

  西本 勝子君     平口  洋君

  赤松 広隆君     西村智奈美君

  吉良 州司君     小宮山泰子君

  松本  龍君     枝野 幸男君

同日

 辞任         補欠選任

  平口  洋君     西本 勝子君

  枝野 幸男君     松本  龍君

  小宮山泰子君     吉良 州司君

  西村智奈美君     赤松 広隆君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 歳入歳出の実況に関する件及び行政監視に関する件(放送のあり方)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

仙谷委員長 これより会議を開きます。

 歳入歳出の実況に関する件及び行政監視に関する件、特に放送のあり方について調査を進めます。

 本日は、参考人として東洋大学教授松原聡君、社団法人日本民間放送連盟会長広瀬道貞君及び桐蔭横浜大学法科大学院教授・コンプライアンス研究センター長郷原信郎君に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位には、放送のあり方につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、松原参考人、広瀬参考人、郷原参考人の順序で、お一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えをいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。

 それでは、まず、松原参考人にお願いいたします。

松原参考人 おはようございます。東洋大学松原聡でございます。

 放送についてお話しするということでいろいろ考えてまいりまして、通信・放送融合時代の放送のあり方とか考えてまいりましたが、ここは、今議論されている放送法の改正についてお話しするのが適切であろう。それから、とりわけ、やはり話題になっております、「あるある」問題についての放送をめぐる考え方につきまして私の私見を述べさせていただくのが一番だろうと思いまして、その問題を中心にきょうはお話しさせていただきたいと思います。

 それで、ただ、私は、今までちょっと、こういう分野にかかわる公的な立場に立っておりまして、一つは、昨年の六月に報告書をまとめました、竹中前大臣のもとでの通信・放送懇談会の座長をしておりました。この問題に関しましては、実は、この懇談会では全く議論をしておりませんでした。そもそも、「あるある事典」の問題が起きていない時代でありましたので、全く議論しておりませんでした。その意味で、通信・放送懇談会の議論ときょうの議論とは直接のかかわりは全くございません。

 それからもう一点、現在、菅大臣のもとでの通信・放送に関するタスクフォースの委員をしております。実は、このタスクフォースの委員は国家公務員法適用でございまして、守秘義務がかかっておりまして、そこでの議論ときょうの議論がどうかかわるのかということで若干ちゅうちょいたしましたが、結論的に申し上げますと、タスクフォースではこの問題に関する議論は全くしておりません。議論していないということをしゃべるのが国家公務員の守秘義務としていいのかどうかと確認しましたら、議論をしなかったということを言うのは全く問題ないという確認を得てまいりまして、それで、きょうは、そのような公的な立場を離れて、私が経済学者あるいはこういう分野を勉強している者として、この問題をどう考えるかという視点でお話しさせていただきたいと思っております。

 まず、これは憲法にもかかわる非常に大事な問題でありまして、言論の自由あるいは報道の自由、こういう問題があります。その一方で、報道の側に虚偽があったりあるいは名誉毀損の問題があったりという事例も幾らでもあるわけでありまして、その意味で、今回、「あるある」等の問題の中で出てきた問題というのは、いわば報道の自由みたいなものとそれに対する制約をどうするのか、こういう非常に大きな問題でありまして、その意味では、放送の問題を超えた、いわば規制する側の国家権力とそれからマスメディア全般にかかわる問題だ、それは非常に難しい問題だという認識は当然持っております。

 しかし、一般論として、権力と報道の自由という問題よりは、放送にかかわる問題というものがもう少し違う側面を持っているのは、私は、放送というマスメディアと新聞、雑誌その他のマスメディアとの間では大変大きな性格の違いがある、このように考えております。

 というのは、放送というのは限られた資源である電波を使う、その電波を使うことについての許認可権というものを国が持っている、こういうことであります。したがって、放送事業者は、限られた資源である電波を国、もっと広く言えば国民の合意と言ってもいいと思いますけれども、そのもとで使わせていただいているような事業者なんだ、ここに新聞、雑誌との、他のメディアとの間の決定的な違いがある。

 極論すれば、放送が基本的にベースとしている電波は有限だ、その使用に対しては相当厳しいコントロールが必要だ、そういう媒体だ、こういうことであります。それに対して、あえて極端に物を言えば、新聞とか雑誌は、資源は無限であり、輪転機を回せば幾らでも発行もできるという意味で制約がない、このように考えているわけであります。

 その意味で、マスメディアに対して内容上の規制を持っているのは私は放送についてだけだと思っておりまして、放送法という規律の体系があるのに対して、新聞法あるいは雑誌法といったような規律の体系は全くないわけであります。

 さらに、放送法というものが、放送の内容等について、あるいはNHK等についての規定があるわけでありますけれども、実は放送法というのは電波法とセットになっているわけであります。要するに、私は、電波法がある、要するに電波の使用について法的な規制がある、規律体系があるから放送法があるんだ、このように考えているわけでありまして、全く抽象的な世界の中で、マスメディアに、放送だけに対して内容を含めた規制がかかっているということではない、電波法とのセットなんだ、こういう考えに立っているわけであります。

 その上で、放送の内容とそれに対する規制の問題についてのお話に入っていきたいと思うんですが、現在、放送法では第三条を中心にいたしまして、番組基準と申し上げましょうか、番組準則というものがございまして、公序良俗等々の具体的な規定がありまして、そのような番組の基準に基づいた放送をしなければいけない、こういうスキームになっているわけであります。

 問題は、その放送法三条に規定されているような番組基準、番組準則が破られたときにどのような対応がなされるか、こういうことであります。それで、現在の規律では、放送法の番組基準等を破った場合の行政処分のあり方としては、放送法ではなくて電波法での行政処分、こういう形になっているわけであります。電波法での行政処分ということになりますと、免許の停止あるいは免許を取り上げる、取り消し、こういう形での処分になる、こういうスキームでございます。

 その一方で、電波法による行政処分というのは大変厳しいものでありまして、いわば放送するなというぐらいの、事業免許取り消しぐらいの厳しい処分でありますから、しかし、そこに至る前に幾つかの段階が必要だろう、恐らくこういう判断だと思いますが、放送法の三条についての違反等が出てきたときに、今のスキームの中では、行政指導という形で、注意から警告までの何段階かの指導がある、こういうことでございます。

 したがいまして、今のスキームでいきますと、放送にかかわる番組基準が破られたときには、基本的には行政指導で行われている、ただ、その一番行き着く先には、規律上は電波法による免許の見直し、こういう形になっている、こういうことでございます。

 それで、問題はもう少し現実に進んでいかなければなりません。このような議論が抽象的に行われているのではなくて、冒頭に申し上げましたように、「あるある大事典2」ですか、に象徴されるような、放送法の第三条に抵触するような事例が現実に起きている、こういうことであります。そういう現実に対して今までどのように対処してきて、それで十分だったかということが今回の放送法改正の議論につながっている、私はこのように見ているわけであります。

 簡単に数字を御紹介させていただきますと、今の放送事業者に対する免許が更新されました平成十五年以降で見ますと、今申し上げた行政処分に対応する事例は二十三件ございます。警告が二、厳重注意が十六、注意が五、こういう形であります。さらに、年次別に見ていきますと、実は、平成十七年以降、非常に顕著にこの件数が増加しているわけであります。平成十七年は二件でございました。平成十八年が「あるある」の問題を含めて八件でございます。平成十九年、まだ年度の途中でございますけれども、既にもう六件発生している、こういう状態であります。

 それで、ここでこういう問題が議論の俎上に上ったというのは、まず、事実として放送法三条に抵触するような事例が起きている、かつそれが、残念ながらでありますけれども、増加傾向にある、こういう事実であります。

 それからもう一つは、三条に抵触するような事例が発生したときの対処の仕方でありまして、今までは、先ほどから申し上げておりますような行政指導、基本的にはランクが五つあるわけであります。口頭の注意から警告まで五つに分かれておりますが、そのランクの中で今までは指導が行われてきた、こういうことであります。

 それで、「あるある大事典2」のような問題がその行政指導の一から五までのランクの中におさまる事例なのかどうかということが改めて問題になったんだ、私はこのように考えております。

 「あるある大事典」につきましては、今の放送法改正のスキームが出る前でありますから、恐らく、行政、総務省の当局としては、行政指導の一から五のランクの中のいわば一番厳しい警告を行うが、その警告で十分なのか、国民がそれで納得するのかという問題意識が私はあったんだと思います。現実には、それ以上の形の処分等をしようとすると今度は電波法の放送免許についてどうこうという話になってしまって、日本のそのような規律、あるいは放送法三条に違反するような事例が出てきたときの対処の方法としては、間に実は非常に大きなすき間があったのは事実でございます。

 諸外国の事例を若干私調べてまいりましたが、やはり主要国すべて、放送に関しましては、虚偽の放送等に対する行政当局による対処がすべて規定されているわけであります。

 例えば、アメリカでありましたら課徴金の制度がある、それからイギリスでありましたら過料といったような制度がある、フランスにつきましても金銭的な罰則とか行政庁の見解の放送をしなければいけないという命令があるというような、諸外国押しなべてそのような違反事例に対する対処の方法、スキームというのが出ているわけです。

 その諸外国の事例と日本の状況を比べますと、日本の場合には、行政指導と、その次が、諸外国の過料とかそういうのがなくて、飛び越えて、諸外国の中でも一番厳しい処分であります免許の停止等々、取り消し、こういうところになってしまいまして、その意味では、日本の場合には、諸外国で出ているいわば中間的なといいましょうか、そこでの趣旨がなかった、こういう現状は、国際的な制度の比較をすると明確なわけであります。

 そこで、恐らく、今回の放送法改正で総務省が再発防止計画というのを出しましたのは、そのすき間を埋めるための一つのステップを置かなければいけないのではないか、このような問題意識に基づいていたのだと思います。

 その中身に関しましては、法案の提案理由説明にございますように、「虚偽の説明により事実でない事項を事実であると誤解させるような放送」であって、その次、「国民経済または国民生活に悪影響」、実際のですね、「悪影響を及ぼし、または及ぼすおそれがあるもの」についてはと、そのことをその再発防止計画の対象とした、こういうことだと思います。

 それで、このことの是非というものを私がここで判断するのはまだ差し控えさせていただきたいと思いますが、しかし、一つの事実として、今まで、行政指導と免許の停止、取り消し等の間に非常に大きな差があって、その間の事案についての対処のしようがなかったということは事実として申し上げていいのではないかと思っております。

 それから、もう一点といたしまして、諸外国の、主要国との制度の比較をいたしますと、今回の放送法改正案に盛られました再発防止計画は、諸外国に比べますと非常に緩い規定だと思います。

 諸外国の場合には、政府の見解をそのまま放送しなければいけない命令まである、それから罰則、過料を払わなければいけないという規定があるのに対して、日本の放送法に基づく違反に対する対処に関しましては、そのような過料等々あるいは政府の見解の放送を強制するようなものではない。それから、これは過去の行政指導と同様でありますけれども、放送事業者の側の合意の上と認めた上でということのスキームは今回の計画についても同様だ、こういうことでありますので、諸外国に比べますと非常に緩い規定にはなっている、これは事実として申し上げてよろしいかと思います。

 それから、もう一点といたしまして、やはり基本的には民間の側の自主規制が望ましい、こういう姿勢は私はあると思っておりまして、今回、BPOが組織を変えまして、このような虚偽の可能性がある放送に対して非常に強い権限で自主的に対処するスキームができ上がりました。今回のこの新しい政府の対処の方法につきましても、BPOのそのような対処がしっかりしているうちは発動しない、抜かずの宝刀でいいんだ、こういう仕組みがございます。

 そのようなことを勘案いたしますと、私は、国際的に見て、相対的に見て、比較的緩い形の結果になったな、こう見ております。

 最後に一点だけ申し上げたいのは……

仙谷委員長 参考人に申し上げます。お約束の時間が経過しておりますので、御協力ください。

松原参考人 はい。

 最後にもう一点申し上げたいことは、この問題が、実は通信・放送融合の中で、インターネットの中でも放送に類似するようなサービス、非常に強い影響力を持つサービスがどんどん出てきております。例えばGyaOなどは、一千万を大きく超える契約者を持っている。

 そうなりますと、今言ったような問題が、ただ単に電波を使うようなところだけではなくて、インターネットというところに対する問題にも広がっていかざるを得ないような面があると私は思っておりますので、それを最後に申し上げて、私のお話は終わりにさせていただきます。

 どうもありがとうございました。(拍手)

仙谷委員長 ありがとうございました。

 次に、広瀬参考人にお願いいたします。

広瀬参考人 「あるある大事典」を初め、放送番組、このところいろいろ問題を提起しまして、皆様にも大変御心配をかけております。一体、放送事業者に任せておいて、うまくこれらのものを自分の力で規制していけるんだろうかというような御心配をおかけしております。

 放送法の第三条は、番組編成の自由、表現の自由と言いかえてもいいと思いますが、を前提とした上で四つの規制を設けております。この四つの規制というのは、放送事業者だれもが大体常に頭に置いておかなければならないことですが、一つは、公安及び善良の風俗を害しないこと、公序良俗に反しないことということです。二番目は、政治的に公平でなければならないという点であります。三つ目が、報道は事実を曲げてはならない。四つ目が、意見が対立するテーマについては、できるだけ多くの意見を紹介しなさい、これは中立ということだろうと思います。この四つの規制です。

 いずれも、これらは至極もっともな話であって、だったらば、その一つ一つに罰則を設けたらどうかと思うぐらい、極めて常識的な規制だと思うんです。

 ところが、実際になりますと、一つ一つとってみますと大変難しいのは、政治的な公平というのは何をいうのか。仮に五つの政党がある場合に、それぞれの主張を同じ時間、同じ時間帯でやらなければならないのかどうかとか、報道は事実を曲げないという点、今回の「あるある」は、いわば生活情報番組ともいうべきもので、厳密な意味での報道ではありませんが、とはいえ、数字をわざと変えたり、学者の言う学説にわざとうその翻訳をして文字として流したりというような、そういうことは当然許されませんが、事実を曲げないというのが、ではどういう番組ならば許されるのか。バラエティーだとかドラマならば、これは当然そういう話も出てくるわけですけれども、その厳密な分け方となると必ずしも楽ではありません。

 意見が対立する場合、できるだけ多くを取り上げろという点についても、五つの政党だけでも相当時間をとるんだけれども、意見となりますと、そのほか、学者の意見、いろいろな方々の意見もあるわけで、これもそうそう簡単に是非が決められる話でもありません。

 したがいまして、この種の取り扱いはえらく慎重を期すわけで、私たちは、今回「あるある」事件が起きた後、世間の空気が一気に規制論に走ってまいりまして、一般的な規制がかけられることになりますとこれは大変深刻な問題だと思いまして、みずから規制していくにはどうすればいいかということを真剣に議論してまいりました。

 BPOは、全国の民間放送各局とNHKで構成しております。民放連は、会員二百社の中から理事会を構成し、また正副会長会議というのをつくっておりますが、これらの場で時間をかけて検討してまいりました。一方で、世間の規制論に助けられる形で、政府の中からも、放送法を改正して行政処分等ができるようにすべきだという議論が出て、総務省を中心に放送法改正の作業が進められてきました。

 こうした中で、私たちは、かつてなくこの問題を真剣に取り上げることになった。これまで、いろいろ番組問題が提起されながらも、みずから規制を強めていくというような行為まではなかなか至らなかったんですが、今回初めて、思い切った、考えられる一番過激な、みずから規制する、律する措置を決めた次第でございます。

 BPOの中に以前から、放送で権利を侵害される、放送被害とでもいいますか、そういう方々を救済するための委員会というのはありました。それからまた、青少年に有害な番組を流してはならないということで、青少年を主として対象として番組を検討する委員会もございました。

 しかしながら、一般的に番組問題を取り上げ、ふさわしくない番組に対してチェックをかけていくという一般的な組織はございませんでした。放送番組委員会というのはありましたけれども、これは、放送局の番組制作者たちも入った、いわば相互に研修し学んでいこうというような、そういう緩やかな組織だったため、これを今後活用するというわけにもいかないということで、三つ目の番組問題について、放送倫理検証委員会という委員会を立ち上げることにいたしました。

 どういうことをやるかといいますと、ふさわしくない番組があった場合、そして、それが雑誌や新聞に報じられ、あるいは関係者から訴えがあった場合には、その番組について、まず当該放送局に資料を提出させる、放送済みのテープを提出させる、それを見てこの問題は深刻だなと思ったらば、本格的な調査に乗り出す。特別調査チームをつくりまして、一体どういう経緯でこういう番組が出てきたか、チェック機能は社内で、局内できちっと機能したのかどうかというようなことを調べる。その上で、放送局に対して再発防止の計画を提出させる。計画が十分ならばいいんですが、そうでないと認めた場合にはもう一度出し直させる。それで、一件落着後、本当に再発防止計画が機能しているかどうか、二、三カ月置いて検証し、それもまた場合によっては公表させる、そういうシステムでございます。

 これが、例えば、総務省のもとでだとか政府の電波監理審議会のもとで、こうなりますと、やはり憲法で言う表現の自由に抵触するのは間違いないわけで、しかしながら、民放、NHKを含めた放送局が独自に立ち上げたそういうBPOがやる分については、いわば、これは自浄努力の一つということで十分に機能もし、しかも憲法の表現の自由に抵触することなくいけるんじゃないかと考えた次第でございます。

 時あたかも、政府の放送法改正作業と時期も一緒になりまして、その中に、総務省案では、総務大臣は、そうした問題のある番組が出た場合はその放送局に対して再発防止計画を提出させることができる、その計画について、電波監理審議会の議を経てということになっておりますが、総務大臣が計画に対する意見を付して、これは非常に不満であるとかいうようなことも入るんじゃないかと思いますが、意見を付して世間に公表することができる、こういう規定でございます。

 再発計画を提出させ、それをフォローしていくという点では、私たちの案でもあるいは役所の案でもこれが一番中核的な部分になるわけですが、そのため、何だ、民放連は政府の案をまねしただけかとも言われますけれども、私たちは、あえて政府の考え方もすべて網羅し、なおかつ、経緯を調べるとか、プラスアルファの部分をつけて、それを民放連の案としたわけでございます。

 さっき、松原先生から、諸外国の例も紹介されました。どこの国も表現の自由の中で放送被害を出さないようにするにはどうすればいいかというのは苦労するところでありまして、先ほど、アメリカとイギリスの例が紹介されましたけれども、政府そのものがやるんじゃなくて、アメリカの場合も英国の場合も、独立の機関を設けてそれがやるということで、政府と一歩間を置いたやり方になっております。

 早くから、日本でもそうしたものをつくればいいんじゃないかという意見がございました。現在もあるわけですが、アメリカや英国の実態を見ますと、放送事業者は、必ずしもこれがいい方法だとは感じていないようであります。アメリカのFCCの場合は、やはり電波の有効利用ということを真っ先に考える、決して番組本位の組織ではありませんで、往々にして、例えば、電波を入札制にして高いところに使わせたらどうかとか、そういう案も出てきております。

 それから、確かに罰金制度などがありますけれども、それは非常にわかりやすい部分、例えば、番組の中で女性が胸部を出す、そういう場面があったらば直ちに罰金だとか、非常に単純な点についてはその種のことを聞くんですけれども、最初に申しましたように、政治的公平の問題、それから公序良俗の問題もそうですけれども、非常に微妙な問題については、やはり、なかなか思い切った介入はできないし、していないようでございます。

 このBPOは、日本独特のやり方でございますけれども、成功するならば、恐らく、世界で最もすぐれた番組監視機関になるんじゃなかろうかというふうに考えております。

 機能を強化されたBPOはスタートしたばかりでございます。放送事業者としては、これが早く定着していくこと、そしてまた、国会を含めてそうですけれども、国民の信頼を得て、BPOが厳しいことを言ってくれるのでこれはもう安心して任せられるんだ、そういう形に早くなっていくことを期待しております。

 放送事業者は、いわば、BPOの判断というのは最高裁の判断みたいなもので、ここが判断を出したら、いろいろ言いたいことはあっても、すべて守っていく、忠実に守っていく、そういう約束の合意書にNHK及び民放各社がサインをしてBPOに提出しております。私たちは、皆さんとともに、BPOを立派な組織に育て、放送事業者の自浄機能を確実なものにしていきたいというふうに思っております。よろしく御理解いただきたいと思います。

 ありがとうございました。(拍手)

仙谷委員長 ありがとうございました。

 次に、郷原参考人にお願いいたします。

郷原参考人 桐蔭横浜大学の郷原です。

 私は、さまざまな分野の企業、官庁などのコンプライアンスの問題について研究、啓蒙活動などをしております。

 その一環として、不二家の信頼回復対策会議の議長を務めまして、信頼失墜の原因等についていろいろ調査を行いました。

 その中から、TBSの「朝ズバッ!」の虚偽、捏造疑惑の問題をこれに関連して取り上げまして、報告書で問題提起をいたしました。そして、先ほど広瀬会長もおっしゃっていたBPOの今回新しくつくられました検証委員会の方にこの「朝ズバッ!」の問題について審理を要請いたしましたところ、先ごろ審理入りという決定がなされたというふうに伝えられております。

 この「朝ズバッ!」の問題に関連して、この委員会で、五月の十日でしたか、放送のあり方という観点から質疑が行われたということで、この議事録を事前に送っていただいて読んでまいりました。枝野委員と田村副大臣との間で、非常に深い、真剣な議論が行われているということに私は大変感銘を受けました。本日は、そういう議論の延長上で意見を申し上げる機会を得ましたことを大変ありがたいと思っております。

 まず、放送事業者のコンプライアンスという観点から考えてみたいと思います。

 私は、かねてからコンプライアンスは法令遵守ではないということを申しております。遵守という言葉、これは、いいから守れ、つべこべ言わずに守れというような意味で受け取られ、それが、重要な問題について考えること、議論することを停止させてしまう副作用があるということをいつも申しております。

 こういう、法令遵守では適切ではない、うまくいかないということの程度というのは業種、業態によってさまざまです。中には自由競争と法令遵守の組み合わせで基本的にうまくいくという分野もあります。例えば、規格化された商品、製品を製造するというような事業です。そのつくる過程で社会や他人に迷惑をかけないように法を守り、そして、その製品が社会に迷惑をもたらさないように法を守り、その範囲内で安くていいものを提供していくということで基本的には事足ります。

 それに対して、公益性の強い事業に関しては、複数の抽象的な価値の同時極大化が求められる関係で、なかなか法令遵守という発想ではうまくいきません。電力会社、保険会社、鉄道会社などで、最近、法令遵守という観点だけではうまくいかないさまざまな不祥事が発生しているというのも、まさにそういったことが根本的な原因ではなかろうかと思います。

 放送事業というのも、公共の電波を利用して社会に重大な影響を及ぼす事業です。まさに公益的事業の典型と言えるのではないかと思います。

 放送事業に対しては、二つの重要な社会的要請があります。一つは、放送の内容に関する要請です。真実性、客観性、公平性、そして公安、善良の風俗などの内容面できちんとした要請を満たさないといけない。それと同時に、放送の自由を確保しないといけない。放送に対して国家の介入は極力排除しなければいけないということです。

 放送法は、この二つの要請を両立するための枠組みを規定しています。基本的には、自主的な番組基準を作成することと番組審議機関によって放送内容をチェックすること、この二つによって、先ほど申した二つの価値の同時極大化を図っているわけです。

 真実性という面に関しては、放送法第四条で、真実でない事項の放送によって権利侵害を受けた者からの請求があったときには、遅滞なく調査を行って、真実ではないことが判明した場合には、取り消し、訂正の放送をしないといけないという規定があります。

 この具体的な規定に違反しなければいいという発想を仮にとったとすると、指摘があったらまず調査を行う、しかし、結局、真実かどうかはわからなかったというようなことで済ませてしまえばいいわけです。そして、その真実が不明であることの理由として使えるのが取材源の秘匿という理由です。このようにしておけば、具体的な法規の違反にはなりません。

 そして、その一方で、自由競争という面から考えてみますと、放送事業者の収益は視聴率が広告料収入に反映されます。結局、コストをある程度かけないと真実性というのは追求できないわけですが、それは、ある意味では、放送事業者にとっては負担になります。

 一方で、視聴率を向上させようと思うと、わかりやすさ、おもしろさが求められる、それ自体が真実性を害する危険性をもともとはらんでいます。そして一方で、番組を制作するコストを低減していこうと思えば、取材コストを節約することになり、真実性を害する危険があります。

 このように考えますと、自由競争をとことん突き詰めていくと、真実性を害する危険があちこちに出てくるというのが放送事業です。結局、先ほどの四条のような緩い規定ということを前提にして自由競争をそのまま推し進めていくと真実性が軽視されるというのは、ある意味では当然の結果と言うべきかもしれません。

 放送事業者は、法令遵守という考え方から脱却して、社会的要請に適応する、放送事業者に求められる二つの価値を同時極大化するという観点から、コンプライアンスを実施していくべきだと思います。

 一方、マスメディアという観点から考えますと、これもコンプライアンスが非常に重要な分野ではないかと思います。

 報道については、積極的な姿勢が絶対に必要だと思います。真実性が一〇〇%明らかではなくても、思い切って権力に立ち向かう報道をしなくちゃいけない場合もあります。事実は伝えないといけない。伝える姿勢が必要です。しかし、それに関してもし虚偽の疑いがあるという指摘を受けたときには、本当に自分たちの取材、報道に問題がなかったかということを検証する謙虚な態度が必要ではないかと思います。

 そういう検証をするというコンプライアンスの姿勢が十分でないと、これは社会の方から、放送事業者はけしからぬ、何とかしろというような声が持ち上がってきて、まさに今の放送法改正の動きというのはそういう観点からの公的介入の強化の動きにほかならないのではないかと思います。

 私が日ごろからかかわっております企業不祥事という観点から考えてみますと、ありのままに企業不祥事の実情を放送として伝えてもらうというのは非常に期待しがたい状況にあります。企業というのは、たくさんの従業員が働き、株主もいるという、生きた、生身の存在です。こういった企業の中で行われることというのは、決して単純なことではありません。複雑で、非常に微妙なものです。こういったことを単純化し、おもしろおかしく報道しようとすると、必ず事実がねじ曲がります。まさに企業不祥事報道というのは、放送事業者としてのコンプライアンスが最も求められる分野ではないかと思います。

 そういった観点から、最近、企業不祥事に関して起きていることを見ますと、私は、子供のいじめとほとんど変わらないような構図が見えるのではないかと思います。確かに、わかりやすく極端化した事実を伝えれば、読者、視聴者の興味を引くことはできます。しかし、果たしてそれがどんな影響を及ぼしているかということです。

 一たびバッシングが始まると、専門家も識者も官庁も、すべて同一の方向でバッシングを行うということがしばしば起きています。いじめられる側の企業には逃げ場がありません。子供の世界でのいじめの先導者の心理、ある番組でそういった立場の子供が言っていたのを聞いたことがありますけれども、なぜいじめるのか、おもしろいからということだそうです。このいじめの娯楽化と企業不祥事バッシングの構造と、非常に共通したものがあるんじゃないかと思います。

 こういったことを前提にして、不二家問題についてちょっとお話をしてみたいと思います。

 不二家をめぐる一連の問題、世の中でどのように受け取られたかというと、この資料にも書いています二点に象徴されます。消費期限切れの牛乳を原料として使用した、不衛生なものを原料として使用した、そういう食品メーカーとしてけしからぬことをやった不二家が、それが明らかになってばれたら大変だといって隠ぺいした、このような事実として不二家問題は報道されたわけです。

 しかし、実態は大きく異なります。不二家が原料として使った牛乳は、確かに形式的には一日消費期限切れでした。しかし、客観的には、食品衛生上も品質保持上もほとんど問題はありません。そして、隠ぺいという点についても、雪印の二の舞といって隠ぺいしたということが言われていますが、この言葉は、不二家の社内で書かれた、つくられた文言ではありません。不二家が委託した外部のコンサルタント会社がこのような文言の報告書を経営幹部が集まる場にぶつけて、殊さらにセンセーショナルにこの問題を取り上げようとした、その文書が事もあろうに外部に流出したという問題です。

 このような問題であるにもかかわらず、不二家は大きな誤解を受け、そして激しいマスコミのバッシングにさらされました。その過程では、不二家側の対応の問題もいろいろありました。それによってマスコミの側が誤解をしたということもいろいろありました。しかし、そういった一般的な誤解や無理解の問題を超えて、非常に意図的に不二家の名誉、信用を毀損したんじゃないかと思えた番組がTBS「朝ズバッ!」でした。

 この「朝ズバッ!」がどのように不二家問題を報道してきたか、五ページの上のスライドに書いております。一月中だけで合計三時間四十分、一日平均十五分にわたって連日連日不二家をたたく報道をしてきました。その中では、何の根拠があるのかわかりませんが、粉飾決算をしているとか株価が暴落しているというふうなことをみのもんた氏が公言したり、そして問題になった一月二十二日のチョコレートの再利用疑惑報道、そして一月三十一日には、もうこれは異物というより汚物だねというような、食品メーカーに対して絶対に言ってはならない言葉まで言っています。

 こういった一連の不二家報道の中で起きたのが、一月二十二日から二十三日にかけてのチョコレート再利用疑惑です。詳細はここに書いております。そして、資料として、信頼回復対策会議の報告書の別紙としてつけたペーパーを用意しておりますので、こちらの方をごらんください。

 要するに、この中で我々が一番注目したのは、不二家に対してTBS側が事実確認してきた内容がこの六ページの上のスライドに1、2ということで書いています。返品されてきたチョコレートを再び溶かして使用していたんじゃないか、平塚工場の従業員が証言しているぞ、もう一つは、カントリーマアムについて、消費期限が切れていたので捨てようとしていたら上司に怒られ、それを再度新しいパッケージに入れて製品としていたというような証言をしているんだけれども、どうかということをTBS側が不二家に確認してきました。それに対して、そういった事実はない、そしてカントリーマアムは平塚工場では製造していないというふうに答えたわけです。

 そうしたら、実際の放送で、2の事実確認の文言とほとんど同じ内容の、チョコレートに関する証言が放映されたわけです。これを我々は、この類似性から考えて、カントリーマアムという平塚工場でつくってもいないクッキーに関する証言、いわば無価値な証言です、それをチョコレートに関する証言として再利用して流用した疑いがあるということを指摘し、先ほどのBPOの検証委員会の審理入りの決定に至ったわけです。

 ここで我々が問題にしたいのは、事の真偽ですね。放送した内容が正しかったのか、間違っていたのかという点ももちろん重大ですけれども、それ以上に重大だと思っておりますのは、この不二家問題に関するTBS側のコンプライアンスの問題です。

 不二家は大変なバッシングを受けて、本当にほとんど反論すらできない状態にあったんですが、この一月二十二日の放送だけは許せなかったということで、その日のうちに直ちに電話でTBS側に抗議をしております。そして、翌日には書面で調査と訂正を申し入れています。それに対するTBS側の対応を六ページの下の方に書いておりますが、まともに取り合っていない。逆に、いろいろ言ってくる。恫喝的なことを言って、それならこういうことに答えてみろというようなことを言っていたのが実情です。

 そして、三月に至って、信頼回復対策会議の議長として私が、TBSのコンプライアンス室長の方に、チョコレート再利用疑惑が事実無根だ、コンプライアンス室として調査をしていただきたいということを要請して、それ以降、ここに書いたような経過のやりとりがありました。

 その中で注目していただきたいのは、資料として添付しております電話メモです。これを見ていただければわかります。ほとんど、コンプライアンス室長の対応というのは、番組内容がうそでないということを取り繕うために、その場その場の弁解を繰り返しているというに等しいものです。

 そういった経過を経て、我々は、これはもう事実無根の報道だというふうにほぼ確信して、三月三十日には信頼回復対策会議の報告書の中でこの問題を取り上げたわけです。そして、その前後でのTBS側の対応、これは七ページの下の方に書いております。前に言っていることを平気でひっくり返すということを続けています。

 そして、報告書公表の際の記者会見で私が、余りにそれまでの経過が不誠実で、まさにうそばかり言っているということを、これは公益上重大な問題だと判断してTBS側と不二家との間の会議のテープを公表したのに対して、それが道義、モラルにもとるというような批判をしてまいりました。それに対して私は、全く道義、モラルに反しないということの理由を詳細に述べて、TBSの井上社長あてに公開質問状をぶつけましたが、現在に至るまで何の回答もありません。

 そして、四月十八日には謝罪放送らしきことがこの「朝ズバッ!」の放送の中で行われました。三点について、誤解を招きかねない表現があったというふうに言っております。八ページの上の方です。しかし、この中で、みの氏がミルキーをほおばったり、たくさん不二家のお菓子を並べて思い切り不二家の宣伝をして、その一方で、誤解を招きかねないというふうな話が出ているんですが、一体何をどう誤解したのか、さっぱりわかりません。事実について何も明らかにしないまま、単に不二家の無償広告をしたというのがこの日の放送ではなかったかと思います。

 このようなTBS側の対応のために、不二家は大変な営業上の損害をこうむったことは間違いないと思います。しかし、八ページの下の方に書いておりますが、その後も、謝罪らしき放送をした、一応それを不二家側が受け入れた格好になったにもかかわらず、TBSの社長は、賞味期限切れのチョコレートを再利用したとの証言者の根幹部分については信用性が高いと考えているというような発言までしているわけです。これが現在までの経過です。

 結局のところ、この問題についてのTBSのコンプライアンスが全く機能していない、これは極めて憂慮すべき事態ではないかと思います。こういった現状のもとで、これから放送事業者の自浄能力をどのようにして高めていくのかということが当面の重要な問題ではないかと思います。放送法の改正というのは、放送に対する公的介入として私は決して許されるべきものではないと確信しております。そうであるがゆえに、こういった問題について放送事業者の自浄能力の発揮が強く求められているのではないかと思います。

 以上です。(拍手)

仙谷委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

仙谷委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。福岡資麿君。

福岡委員 自由民主党の福岡資麿と申します。

 本日は、質問の機会を与えていただきましたことをまず感謝申し上げます。そして、三人の参考人の方々には、大変貴重な御意見をそれぞれに賜りまして、ありがとうございました。

 先ほど来、各参考人がおっしゃっていますけれども、放送法の改正というのが今俎上に上っている中で、その前に、この決算行政監視委員会でそもそも放送のあり方ということについてそれぞれの参考人に聞く機会を設けられたということは、大変意義の大きいことだというふうに思っております。

 そもそもこの放送のあり方について大きな社会的問題になったのは、話も出ていましたように、「あるある大事典2」というのが大きな社会現象となったということに端を発していました。

 私も直接このときの納豆の番組を見たわけではないんですけれども、友人から、そのときの報道をもとに納豆が非常にいいらしいというメールをもらって、スーパーに駆けつけたところ、一つもスーパーには納豆が置いていないというような現状がありまして、報道が持つ社会的影響の大きさというのを改めてかいま見たような感じがしたわけでございます。

 それだけやはり、特に報道の中でもテレビというのは影響力が大きい媒体ですし、また、そもそも報道というのは権力を監視するという意味合いを持つ以上、みずからがみずからを律するという姿勢が非常に大切であるということは言うまでもないことだというふうに思っています。

 そういった観点から、各参考人の方々にそれぞれ御意見をお伺いしていきたいと思います。

 まず、松原参考人にお伺いをさせていただきます。

 先ほど御自身でもおっしゃいましたが、昨年、通信・放送の在り方に関する懇談会ということで答申をまとめていただきました。これについては、今回の放送法の改正にかかわるところとは具体的にはそれほどリンクしていないというふうに思いますが、今回の件に絡むこととしては、答申の中身を見ていますと、ソフトパワー強化への貢献ということで、情報発信の担い手として存分に各放送局が活躍できるような体制をつくっていくべきだというようなことがこの答申の中にもまとめられているわけです。

 しかしながら、今回の「あるある大事典」というのは、そういったソフトパワー強化どころか、そういったソフトのあり方そもそもに疑問を呈するような事態だったわけでございまして、まず総論として、今回の答申にまとめていただいているように、各事業者が情報発信の担い手としてソフトパワーを強化していくためには具体的にどういったことが必要だとお考えなのかについて、御意見をお聞かせください。

松原参考人 私どもが去年の六月にまとめた報告の中で、大きな柱がソフトパワーの強化でありました。これは、一国の競争力、国際競争力等々を考えていったときに、ソフト、広い意味でのソフトが持つ力というのが非常に大きいんだ、こういう認識に基づいております。

 そのときに、日本のソフトの提供側の非常に大きなところがテレビ局であるわけでありますが、そこがもう少し広範なソフトの提供ができるような形にしないと、一国のソフトパワーが十全に発揮することはできないのではないか、こういう問題意識でありました。

 具体的には、例えば今のテレビ局の番組調達のあり方が劣悪だと言われる、子会社的なところに大半が依拠している。しかし、もっと自由に、番組をつくる側とそれを実際放送する側の組み合わせがあっていいだろう。そういう一種のソフトの需要と供給みたいなところをもっと自由化するとか、そんなようなことを私どもは考えておりました。

 以上です。

福岡委員 確かに、今おっしゃったみたいに、その答申の中におきまして、そういった放送者とそれをつくる制作者側のあり方ということにつきまして踏み込んだ御提言があったものというふうに考えています。

 「あるある」問題の中でその問題についてちょっとお聞きしたいんですけれども、まず、今回の答申の中にも、コンテンツの外部調達ということをもっと推進していくことが必要ではないかというふうに言われております。今回の「あるある」の問題も、そもそも、報道をするテレビ局と制作を委託する制作会社、そこからまたさらに委託する孫会社、そういった関係というのが指摘をされていたわけで、例えば「あるある」の問題についても、当初の報道によると、あたかも関西テレビ側は、あくまでも自分たちはつくっていなくて、制作者側がつくってきたんだというような言い逃れをして、その後の報道によって、やはりそれは報道者側の責任として責任を認めるというようなことがあったわけです。

 どんどん外部委託を進めていくということは、また何か不祥事が起こったときに、それぞれの子会社、孫会社がつくったんだという、責任逃れを一部ではできかねない温床になってしまうんじゃないかというような考え方もあると思うんですが、そのあたりについてはどのようにお考えですか。

松原参考人 私どもの提言の発想がどこにあったかといいますと、今御指摘のように、放送局の中で下請、孫請があるというのは全くそのとおりであります。そのことが責任体制をちょっと不明確にしたりとか、あるいは労働条件のことを含めていろいろな問題を巻き起こしているのは全くそのとおりでありまして、私どもが考えたのは、あるテレビ局とその下にある一種の親会社、子会社、孫請的な関係を変えろと。

 要するに、制作会社はいろいろな放送局に番組を提供できる、放送局の方も、自分の系列の子会社、孫会社ではなくて、いろいろなところからとるようになる。極端な話、NHKの制作子会社から民放が番組を買ってもいい、NHKがその逆をやってもいい、そういう競争関係を入れることが結果的に番組の質を上げるだろう、こういう認識でありました。

 逆に、今のような固定化した関係での外部化、外部化、下請、孫請ということは、おっしゃるような問題を引き起こす温床だと思っておりまして、私たちの発想は、そうではなくて、それを自由にすることで結果的に番組提供の質が上がる、こういう考えに立っておりました。

福岡委員 松原参考人にもう一点、補足で確認したいと思います。

 そういった観点からすると、今後も固定した下請先ということじゃなくて多様化が必要だということでございますけれども、あくまでも番組制作については局側、すなわちプロデューサーなりが今後もコミットしていかなければいけないという姿勢については、それはそのようにお考えだということでよろしいんでしょうか。

松原参考人 番組の編成権は、これは局にあるわけです。それから、放送法三条に規定されたことを遵守する責務も放送事業者に直接あるわけでありますから、自由な、多様なところから番組を調達するということは、従来以上に、そのようなところについてのチェック、自己規制というものが求められるのは当然だと思っております。

福岡委員 ありがとうございました。

 続きまして、広瀬参考人の方にお伺いをさせていただきたいと思います。

 御承知のとおり、放送法の三条の四に、番組審議機関をそれぞれの放送局は設けるというようなことがありますけれども、そもそも、今回BPOというお話がありますが、その前に、各番組、各放送会社の中にそういった自浄作用が果たして機能していたのかというような問題がきっと出てくると思います。

 やはり、一般の方々の感覚からすると、問題が発覚するたびにまた新たな機関をつくって、今までこの機関が機能していなかったからまた新たな機関をつくりましたということで、同じような機関を屋上屋を重ねるようにつくっていくことで責任逃れをしてしまうんじゃないかというような不安があることも確かでございます。

 そもそも、放送法上でいえば、局内の番組審議機関がしっかりと機能すべきというのが一番望ましい姿でありますけれども、今回の「あるある」についても、そして今回のTBSの問題についても、詳しくはわかりませんが、果たして十分に機能していたかというと、疑問に思わざるを得ない部分が多々あるというふうに感じています。

 そういった部分で、今後、BPOというのを新たにつくりますということをおっしゃいましたけれども、それが本当に果たして機能するのかどうか、そのあたりについて参考人としての御意見をお聞かせいただきたいと思います。

広瀬参考人 おっしゃるとおり、番組審議会がこれまで十二分に機能してきたかといいますと、残念ながら、大変疑問が大きいと思います。

 各局で番組審議会というのをどういうふうに位置づけているかというのが基本的な問題でありまして、ある局は、ただただその局でつくった番組の応援団体じゃないんだ、それが世間にどういう影響を与え、あるいは、被害を生むおそれがあるなら、それもきちっと指摘するのが番組審議会だという位置づけをしているところもありますけれども、多くのところはやはり、月に一回、決められた番組審議会の意見を聞く会を催し、そこでお茶を濁してきたというところが多いんじゃないかという気がいたします。

 今回、民放連では、一体、各局の番組審議会はちゃんと活動しているのか、特に、関西テレビの場合、番組審議会の活動はどうだったのかという点についても大変関心も持ち、議論もしました。

 関西テレビの問題が出た後、外部調査委員会ができまして、大変詳しい調査報告を出しておりますけれども、残念ながら、あの中にも番組審議会という言葉はほとんど出てきていなかったんじゃないかと思います。

 今回、BPOの再発足に当たりましては、やはり番審の位置づけというのをかなり重視しておりまして、各放送局に勧告を出したり、再発防止計画を求めたりするときには、社長さんだけじゃなくて、番審あてにもきちっとその種のものを出していく、そういう規定も入っております。

 放送法による規定で、番組についての二本柱といえば、一つは放送番組基準をきちっとつくるということ、これは各局でつくっております、それと番組審議会という、この二本が柱になっているわけで、番審が機能しないとなりますと、法制そのものが揺らぐことになりますし、私たちは、今後、番審の強化ということを常に訴えていきたいと思います。

福岡委員 今回の「あるある大事典」に関しては、最終的には行った方のモラルの欠如ということでしょうけれども、そこの根底には、多分、構造的な問題があるというふうに思うんです。

 この例えはいいかどうかわかりませんが、この事件を聞いたとき、私は姉歯の耐震偽装事件を思い出しまして、そういった無言の圧力というか不正を行わざるを得ないような局側からの重いプレッシャーというのが、制作現場の方には何らかの形で働いていたんじゃないかというようなことを個人的な感想として思ったわけでございます。

 今回、ATP、全日本テレビ番組製作社連盟の方で今回の温床についてアンケート調査等をされていまして、いろいろな原因として、例えば予算不足、特に最近、デジタル化が進む中で、局側も、設備投資が大事だということで、コストを、下請に出すとき切り詰めを図っていらっしゃるというような話であったり、視聴率競争の弊害であったり、また、先ほど言った孫請にどんどん出していくという構造であったり、優越的地位を濫用しているんじゃないかというような話というのがあるわけです。

 この中で、まず、視聴率競争の弊害というところについてお伺いをしたいと思います。

 私は、いい番組をつくったかどうかという一つの指標というのは、多くの方々に見ていただけるに足るものかどうかということで、視聴率が高い、低いというのを一つの指標にすることは間違ったことではないというふうに思っています。しかしながら、それがややもすると商業至上主義に乗ってしまう。

 私の聞くところによると、番組は、番組そのものを買うタイムというやり方と、枠で買っていくスポットという広告の買い方というのがあるというふうに承っておりますけれども、例えばスポット広告なんかは、視聴率掛ける単価ということで広告会社が買っていく。要は、仮に単価が十万円だとしたら、一〇%の視聴率の場合は、十万円掛ける一〇%で百万円の収益なんですけれども、仮に視聴率が二〇%になると、二〇%掛ける十万円で二百万円と、局側の収入が倍になるというようなことが言われていまして、そういった中で、局側も、視聴率をなるべく高くとって自分たちの売れる枠を広げよう、そういった商業的な要因で視聴率競争に走っているのではないかという指摘もあるわけなんですけれども、その点につきまして広瀬参考人の御意見をお伺いしたいと思います。

広瀬参考人 おっしゃるとおり、ややもすれば放送局の経営姿勢が視聴率に引っ張られるということはあるだろうと思います。

 しかしながら、地上波のテレビは基幹的なメディアである、放送であるというふうに位置づけられ、大変有利な地位を与えられております。その中で求められるのは経営者のいわば志みたいなものでありまして、いかに視聴率が高かろうと放送すべきでないものはしてはいけない、そこのところは非常にはっきりしているものだと私は思います。

 今後、視聴率という何人が見たかという数字だけでなくて、喜ばれたものなのか、むしろ軽蔑されたものなのか、そうした質も勘案すべきであるということで、例えばテレビ朝日ではそうした質の調査も、インターネットを通じてでありますけれども調べておりますし、結構、スポンサーもそういう面を重視するところが出てきております。

 放送事業者のそうした自覚とスポンサー企業のそうした志とが一致すれば、だんだん改善も期待できるんじゃないかというふうに考えます。

福岡委員 今、キーワードとして自覚と志というようなことをおっしゃいましたけれども、例えばそれが制作会社それから孫請に出されるうちに、本来のそういった自覚というのが薄れるのではないかというような指摘もあるわけなんです。

 先ほど、冒頭の御陳述の中で三条についてもお話しいただきましたけれども、この放送法の三条を見てみましても、報道は真実を曲げないですること、報道については真実を曲げてはいけないという書き方なんですね。

 今回の「あるある」問題について言えば、放送法上はこれは教養番組として届けていらっしゃる。要は、報道番組ではないという逃げもできるわけなんです。そして、教養番組として届け出ていらっしゃいますけれども、実際に報道等を見ると、プロデューサーは教養番組としても認識していなかった、生活情報バラエティーというジャンルで認識をしていたと。あるいは、単純なバラエティーだというふうにつくり手側は認識していたんだと。

 今、そういったジャンルの垣根というのがどんどん薄れてきている中で、果たして、この放送法という中の縛りだけでいうと、報道でなければ多少歪曲してもいいのかとか、誇張した表現をしてもいいのかというふうな部分のモラルの問題が出てくるというふうに思いますが、その点についての広瀬参考人の御見解をお聞きしたいと思います。

広瀬参考人 放送法三条の二の、報道は事実を曲げないというところについての報道の解釈ですけれども、これはだんだん広がってきておりまして、情報に関する限りひん曲げるようなことは絶対許されない、狭い意味での報道だけじゃなくて、情報バラエティー系でいうならば、そういう情報部分についてはひん曲げてはならない、そういう解釈ではほぼ一致していると思います。恐らく総務省もそうだし、放送事業者もその辺は自覚していると思いますし、関西テレビの場合も、あれは報道でないからいいんだという言い方はなかったと思います。

 ただ、おっしゃるとおり、昔は、純粋なるバラエティーと報道あるいは情報番組というのは截然と分かれておりましたけれども、やはり、情報を扱うバラエティーという変な分野が大きくなってきて、その辺が大変あいまいになっているのは事実であります。しかし、あくまでも、情報に関する限り改ざんだとか捏造というのは許されないだろうと思います。

福岡委員 もう一点、広瀬参考人にお聞かせいただきたいんですが、契約の問題というのもあると思うんです。

 制作会社に出す、それから孫請に出すという中で、これは日本放送協会さん等が、ヒアリングした結果によると、今、放送事業者からそういった制作会社に委託するに当たって契約書を結んでいるのが約七五%、その後、孫請にまたさらにそこから出すに当たっては、またそれよりも低い確率でしか契約が結ばれていないと。従来からテレビ局というのはなかなか口約束の部分が多くて、大分改善されてきたという経緯は承知していますけれども、しっかりとそういった契約を結んで、こういう業務について委託するという結びができていないというところが今回のこういった問題の温床になっているという指摘もあるんですが、どのようにお考えですか。

広瀬参考人 関西テレビの事件が起きた直後に、あそこの場合にはプロダクションからちゃんとでき上がったものをもらって放送したということで、そのでき上がったものに対する点検がおろそかになったという言い方がしきりにされました。それで、今後はそこを強化していくということも約束されておりますが、しかし、考えてみますと、丸々完成品を持ってきてくれという発注の仕方そのものに問題があるわけで、その後の議論の中で、放送局が高みにあって、製品の制作を発注し、でき上がったものを高みから点検するという、そんなものじゃないでしょう。番組というのは、仮に外部に発注する場合であっても、放送局とその外部のプロダクションが一緒になってつくるべきもので、制作現場に放送局がノータッチだというのは、これは無責任もいいところだ、そういう風潮に変わってきております。それが私は正解だと思います。

 今回のBPO、放送倫理検証委員会と各局の合意書の中には、契約の中には、そうした制作会社に発注する場合、この制作会社もまた放送局と同等の責任がある、一緒に責任を持つんだよということがはっきり記されております。それが当然だろうというふうに考えております。

福岡委員 次に、郷原参考人の方にお伺いをさせていただきたいと思います。

 先ほど来ございましたが、この不二家問題につきましては、信頼回復対策会議の議長を務められたということで、いろいろな交渉をされてきたということでございます。

 今回、いろいろ報道等を見ていますと、TBSも謝罪はしていますけれども、一部認定といいますか、今回の一番肝心なところというのは、チョコレートを回収して再利用したかどうかというところだと思うんですけれども、それについて不二家側は、成型不良品についてはそうしたけれども、外に一回商品として出たものについてはそういうことはしていないと。ただ、今回のTBSの謝罪の部分でも、そこの部分は非常にあいまいなままの形として残っているわけでして、やはり消費者として知りたいところの一番重要な部分が玉虫色になっているということは言えるんだろうというふうに思います。

 そういった中で、今回、BPOとかがつくられるというふうに言っていますけれども、本来やはり、局側が全部認定せずに何とか玉虫色で逃げ切ろうとするようなときに、どうやってその実態を解明していくのか、果たしてこのBPOでいいのかということも含めて、参考人のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

郷原参考人 少なくとも今回の問題については、検証する作業は決して難しくないと思うんですね。我々が指摘している問題は、カントリーマアムについての証言ビデオがあるのかないのか、もしあったとして、では、それとは別に、全く同じ文言のチョコレートに関する証言があるのかないのか、それだけ確かめれば済むわけです。ですから、今の検証委員会の本来の委員による調査だけで、その点についての結論は十分に出る問題だと思います。

 それが、すべての案件について同じような方法が、同じように簡単に結論が出るかといえばそうじゃないと思いますけれども、今回についてはそう思います。

福岡委員 今回、BPOの機能を強化させて対応するということでございますけれども、やはり、一般の消費者からすると、BPOということの存在自体を知らないというのが率直なところでございます。

 これも報道等によるところですので、事実を確認したわけではないんですが、今までいろいろな、「あるある」で証言した方の中にも、明らかに自分の名誉を毀損するものじゃなかったから事を荒立てて訴えなかったけれども、何か編集に意図的なものを感じたとか、明らかに事実とちょっと違うようなことを報道されたんだけれども、自分の名誉を著しく傷つけるものではなかったから黙っていたというようなことが報道の中にもあるわけなんですね。

 やはり、何か間違いが起こったときに、それは著しく名誉を毀損された場合にはBPOに訴え出るということはあると思うんですけれども、本来、消費者の方とかが、まず何か当事者として疑問に思ったら、つくったテレビ局なり、そこに、ちょっとおかしいんじゃないですかと電話するのが普通だと思うんですね。そこで、電話を受けた方が、今回のプロデューサーみたいに不遜な態度をとられる。そこからまた局内の番組の審議委員会にでも行けばいいんですけれども、そこの担当の現場の中で、その場だけ、済みませんでしたと言って終わらせてしまうというようなことがあるというふうに承っていて、そういう中で、やはり局の自浄作用というのが一義的にはすごく大事だというふうに思うんですけれども、そういった観点から、郷原参考人のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

郷原参考人 全くおっしゃるとおりだと思います。

 自分がつくった番組に関して問題があったということをきちんと認める姿勢をとってくれれば問題ないわけですけれども、恐らく、今の制度のもとではそれがなかなか簡単には認められない。認めるとそれによる不利益が非常に大きいので、何とか自分の裁量の範囲内でごまかしてしまうというような行為につながるんじゃないかと思うんですね。

 大きな流れでいいますと、今回のTBSの「朝ズバッ!」の問題も、最後は、当事者の頭をなでて御機嫌をとっておけばぐずぐず言わないだろうと。今までは、そういう形で直接の利害関係人との間でおさめてしまえば済んだということだったと思うんですね。しかし、実は公益に非常にかかわる問題であるだけに、それだけで済ませたのでは非常に問題だ、もっともっときちんと事実が何だったかということを明らかにしないといけない問題がたくさんあると思うんですけれども、残念ながらそれが期待できない状況にあるんじゃないかと思います。

福岡委員 大変貴重な御意見、ありがとうございました。まだまだ聞きたいことがありますが、時間が参りましたので、これで質疑を終了させていただきます。

 ありがとうございました。

仙谷委員長 次に、古屋範子君。

古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 本日は、参考人の皆様におかれましては、御多用のところ国会においでいただきまして、貴重な御意見をお述べいただきましたことを大変感謝申し上げる次第でございます。放送のあり方につきまして、幾つか御見解をお伺いできればというふうに考えております。

 放送は、国民が生活をしていく上で必要不可欠な情報を初めといたしまして、さまざまな情報を迅速かつ効率的に提供するという非常に重要な機能を担っているわけでございます。中でも地上放送は、恐らくテレビを見ない方はほとんどいないのではないかというくらい、基幹放送として、国民に最も身近なメディアであり、その重要な役割を担ってこられたことと思います。

 昨今、二〇一一年、地上テレビジョン放送の完全デジタル化、あるいはブロードバンドの進展などに伴う通信・放送の融合、この連携が進展をしておりまして、技術的には、高質な映像、音声、また双方向サービスなど、こうした新たなサービスの提供が可能となっております。

 このデジタル化につきまして、さまざまな課題も多くあるというふうには考えておりますが、私も最近ワンセグをやっと買いまして、携帯でテレビを見るということは少ないわけでありますが、緊急のとき、移動している、そのようなときに、緊急の情報が欲しい、今各局どのような取材をしているかというようなときに非常に役立つわけでございます。こうした通信と放送の融合が進んできているということでございます。

 松原参考人は、ずっと通信・放送の在り方に関する懇談会の座長として、私もそのときは総務大臣政務官としてそこには陪席をさせていただいておりましたけれども、このような環境の中での通信また放送のあり方について、昨年の六月、提言をまとめられたことでございます。

 そこで、まず初めに、広瀬参考人、松原参考人、お二人に順次お伺いいたします。

 このデジタル化、また通信と放送の融合、連携の進展など、放送を取り巻く環境が変化をする中で、放送の公共的役割、また放送事業者の社会的な責任につきましてどのようにお考えか。さまざまな通信がございましても、メディアがあっても、やはりこの放送、非常に重要な役割を担っていると考えますが、この点につきまして、広瀬参考人、また松原参考人にお伺いをいたしたいと思います。

広瀬参考人 地上波テレビは、地上波の放送は、政府からも基幹的な放送だというふうに位置づけられておりまして、いろいろ有利な地位を約束されております。

 我々が、ではその役割として何を考えているかということになりますと、まず第一に、公共的な、公益的な情報をしっかり放送していくという番組上の役割でございます。多くのキー局は、朝、昼、夕方、夜と四つの報道番組をつくっておりまして、恐らく、一日二十二時間ぐらいの放送時間中、九時間強がそうした報道系の番組になっております。

 二番目が、電波をいかに広く届けるかということでありまして、昨年、四十七都道府県すべてでデジタル放送が始まりましたけれども、まだまだ中継局が足りなくて、ことしも、来年も、大体百二十七局で五百億円ないし六百億円かけて中継局の拡張をしております。

 やはり、いかにいい中身であっても、基幹放送という以上はすべての方に見てもらわなければ意味がないわけで、これは放送事業者が自分たちの負担でもって徹底的に波を普及していく、そういう決意はしております。

 三番目は、特に緊急時にきちっと放送していくということでありまして、自然の災害の場合には大体電気も切れるようなことが一緒に起こりがちでありますけれども、各放送局とも、一瞬たりとも放送を中断できないということで、大変大きな充電池を抱え、なおかつ自家発電に移り、放送に万全を期すという格好をつくっております。

 番組面での公共性の確保、普及面での公共性の確保、そして緊急時に即時対応できるようにする、この三つが一番公共的な役割かなと考えております。

松原参考人 技術的ないろいろな放送・通信にかかわる変化等の中で放送事業者がどのような責務を担うべきかという御趣旨の御質問だと思います。

 私は、まず、技術的な変化というものがどこに出てきたかというのは、アナログからデジタルに変わっていったわけでありますけれども、伝送路がやはり多様化した、ここは技術的に大変大きなポイントだと思っています。

 従来は、テレビ放送は電波で送るしかなかったわけで、それも、とりわけ地上波の電波で送るしかなかった。そこは込みだったわけです。ですから、先ほど来申し上げてきた、放送法と電波法がセットなんだ、国民に有限な電波を割り当てられているんだということは、まさに伝送路が電波だった、こういうことであります。

 しかし、技術の変化、ブロードバンドの普及等によって、テレビのような映像を送るのが、電波だけではなくて、ブロードバンドを介して、あるいはCATVの回線を介して送れるようになった。このことは、私は大変大きな変化だと思っておりまして、要するに、電波によって受けていた放送上の制約、事業者の数、キー局が限られるとかいうところが大分乗り越えられるような形になったのではないか。

 それから、既にBSとかCSを通して、実は放送事業者、放送局の数は物すごくふえているわけであります。そのときに、今の規律でいきますと、すべての放送局に基本的には一律に規制がかかっている。公平でなければならない、偏ってはいけない、すべてにかかっている。しかし、ここまで伝送路も多様化して、放送も多様化していくと、そのような規制をすべて一律にかける必要があるのかどうかという点は、私は、検討する必要がある、こう思っているわけであります。

 きょうの議論の中でも、基幹放送という言葉が出てまいりました。要するに、幾つかのキー局が放送して、それを数千万が一斉に見る、こういう基幹放送の部分に対する公共性のあり方と、それ以外の放送局に対する公共性のあり方というのは、グレードが違ってしかるべきであって、今は差がないわけですから、それはもっと差をつけていいのではないか。

 それから、もう一点は、先ほどもちょっと触れましたけれども、伝送路が多様化することによって、放送と同じようなことを、電波を使わないで、要するに、電波法の許可を得ずに、ということは、自動的に、放送法の規律も受けずに放送と同じようなサービスをすることが現実に可能になってきて、その事業者が大変強い力を持ってきているわけです。そうすると、そのような放送法、電波法の規制に全くよらない事業者のいわゆる放送類似サービスと、放送の中で実は余りマイナーな人しか見ていない放送との間で、もしかしたら規制で逆転現象が起きちゃっているのかもしれない。そのあたりのところを含めて、私は、今の放送に対する規律の全般的な見直しが必要だ、こう思っております。

古屋(範)委員 ただいまのお答えの中で、広瀬参考人からは、事業者の側からも、デジタル化に向けて、その中身においても、また、そのインフラ整備においても、御努力を今続けられているところであるというようなお話であったかと思います。

 また、松原参考人は御専門家としての立場から、伝送路が多様化をしてきた、ブロードバンド、CATV、そういった中で将来に向けまして非常にさまざまな可能性があるだろう、しかしながら、それに対する制度設計というものも時代に適応したものでなければならないんだろう、そこは今後検討の余地があるというようなお答えであったかと思います。

 放送、特に地上テレビジョン放送は社会的影響力が強いメディアでございます。逆に言えば、その果たすべき役割というものは非常に大きいというふうに考えます。

 しかしながら、昨今、先ほどからも話題になっております、放送番組に関しましていろいろな問題が起こっております。総務省による行政指導が行われたもの、最近五年間で二十三件に及ぶと伺っております。このような状況に対応いたしまして、BPOの機能強化等の対応が図られたということでございます。そのことに関しましては評価をしたいというふうに考えております。しかし、問題が引き続いて起こっていく中で、必ずしも迅速な対応ではなかったとの批判も出ているところでございます。

 また、放送番組では、虚偽報道以外にも、政治的公平の観点、また、暴力、わいせつなど、公安及び善良な風俗を害さないという観点からの問題もございますが、今回設立をされました委員会の審議対象とはなっておりません。

 そもそも、放送番組に関する問題は今に始まったものではないというふうに承知をしております。十年前にもこのような、似たようなことがございました。さまざまな議論を経まして、BRCが平成九年にできまして、業界による取り組みが行われてきたというふうに認識をいたしております。その中で、取り組みが行われているにもかかわらず、こうした問題が引き続いて起こっているということは否定できない事実であると思います。

 そこで、三人の参考人にお伺いいたします。松原参考人、広瀬参考人、郷原参考人にお伺いいたします。

 今回のBPOの機能強化による取り組みにつきまして、これが十分なものと御認識になっているでしょうか。例えば、今回設立をされました放送倫理検証委員会の、虚偽報道だけでなく、政治的公平性あるいは善良な風俗にかかわる問題など幅広い問題を対象とすることや、国民の信頼を得るためにBPOに法的根拠を持たせることなどについてどのようにお考えか、三人の参考人にお伺いいたします。

松原参考人 私は、今回の、BPOが虚偽報道に対するチェック機能を大幅に強化したということは、スキームとして評価しております。このことによってしっかりと自己規制することで、総務省からの、放送法改正が通るか通らないかわかりませんけれども、強制的な行政処分のようなものが出されないにこしたことはない。これが十分に機能することを私は期待しております。

 それから、その強化された委員会が扱う範囲でありますけれども、私は、放送法三条全般にかかわるようなところを対象にすべきだ、こう思っております。その意味で、恐らく御意見は一緒かもしれません。

 それから、もう一点、そこに法律的な意味合いを持たせるかどうかということでありますけれども、私は、総務省の権限と業界の自主的なところというのは分けるべきであって、今の自主的な組織でよろしいのではないか、こう思っております。

 問題は、ここで、いろいろな組織について、裁判なんかもそうですけれども、BPOの今の決定について、今後出す決定について、だれがどういう形で最終的に納得するのかという、もう一段上の検証というんでしょうか、上級審という言い方は私はおかしいと思いますけれども、何らかの不服審査とかそういうシステムがもしその中に入れば、よりこれは国民の納得が得られて、総務省の言う伝家の宝刀を抜かないで済むための防波堤になる。

 結論から申し上げますと、私は、BPOの今回の制度改正については評価している、こういうことでございます。

広瀬参考人 BPOが今後うまく機能していくかどうか、最近みたいに放送番組問題が噴出するようなことがうまくなくなるかどうかというのは、私たちも、なくなることを期待するというだけであって、必ずしもそうなるかどうかわかりませんが、BPOがかつてなく大きな力を持って、かつてなく広く活動できるようにしたというのは、本当に我々の思い切った姿勢を示すものだと思います。

 これまでと違う第一の点は、だれでも、つまり、権利を侵害された人だとかそういうことに関係なく、だれでもそこに、この問題はどうだといって訴えることができる。政治的公平の問題は、これまでやや実際の議論は敬遠されがちだったのですけれども、この問題も堂々と議論の対象にしていったらいいと思います。

 私が一番大きく期待しているのは、さっきも申しましたけれども、公序良俗に反しないだとか、政治的公平、事実を曲げないとか、それぞれ、規定そのものは当たり前なんだけれども、その解釈が非常に難しいということを申し上げました。BPOで議論を積み重ね、ケースをたくさん扱う中で、次第に、政治的公平というのはこういうことだよ、事実を曲げないというのはこういうことだよという、その基準がだんだん浮かび上がってくるのじゃないかというふうに思います。それを期待します。

 それから、それに公的な権威を与えるべきじゃないかという点でございますけれども、BPOは民放とNHKがお金を出し合って運営していて、やや放送局寄りじゃないかと見られるところはそういうところからだと思うんですけれども、しかしながら、これが公的なものになり、政府の予算が入るとかなんとかなりますと、人選にまで政府はどうせ物を言うでしょうし、私たちも、全面的にここにお願いするという気はなくなるだろうと思うんですね。

 したがいまして、やはり、今の放送局が中心になって、自分たちの自浄機能を強化するためのものだという位置づけが当面一番いいのじゃなかろうかというふうに考えております。

郷原参考人 少なくとも、私たちが審理の要請をいたしましたTBSの「朝ズバッ!」問題については、先般、BPOの検証委員会で審理を行うということが決定されたということですし、そういう面では、この検証委員会の機能というのは十分期待できるとは思っています。

 ただ、若干懸念するのは、五月の中旬に新たな検証委員会の枠組みが公表され、直接被害を受けた人じゃない人からもいろいろな情報あるいは要請を受け付けるということが公表されてもう一カ月余りになるんですけれども、結局、具体的な動きとしては、この「朝ズバッ!」の問題だけです。果たして、これだけの数の放送が行われていて、その中ではいろいろな問題が起きていると思うんですけれども、それが十分カバーできているのだろうかということです。

 それに関しまして、実際のこの「朝ズバッ!」の問題に関して我々がちょっと体験したことなんですけれども、審理を要請する際に、記者会見を開きましたが、その前日に、予告するという意味で、BPOの検証委員会に、こういう書類を持っていくからということを事務局の調査役の方に知らせておいたのですが、まことに迷惑そうでして、そういうような位置づけの組織ではないのだ、一般人から請求を受けて審理をするようなところではなくて、自主的にやるところだから、そういうものを別に持ってきてもらわなくてもいいというような雰囲気だったのですね。書面にも、我々が申し立てという言葉を使っていたのが大層お気に召さなかったようで、それについても後からいろいろ文句を言ってこられた。こういうような態度をとられると、一般の人はそういう情報提供をもうしたがらないのじゃないか。

 後から調べましたら、その調査役の方というのは、つい最近までTBSのアナウンサーと解説委員をやられていた方らしいのですが、やはり、そういうような事務局の組織にもやや問題があるのではないかという感じがいたします。

古屋(範)委員 私自身も、やはり、表現の自由、これが大前提、基本であり、その上に立って、こうした自主規制、BPOのような機能がさらに強化をされていく、ここが基本であろうというふうに考えております。これからさらにこの機能を発揮していくことを心から期待したいところでございます。

 次に、全く違った観点でございますが、私も一視聴者でございまして、国民の視点からということで、リテラシーと字幕放送についてお伺いをしてまいりたいと思います。

 以前から言われていることでございますが、先ほど民放連の会長もお触れになりました、青少年にとって有害な番組はここでは適さないというような御発言がございましたけれども、青少年、子供にとって放送の持つ影響力は非常に強いわけでございますけれども、果たして今のテレビ番組がどうなのか、子供に見せたくない番組もあるという指摘も一方でございます。

 私も子育てをしてきまして、子供にどの番組を見せてよいのか、あるいはどのくらいの時間見せてよいのか、悩みながら来たところではございますが、放送局におきましても、さまざまな取り組みは行っていらしていると思います。

 しかし、例えば民放連におかれましては、青少年に配慮する時間帯を十七時から二十一時と定めていらっしゃいます。今の青少年の生活時間帯を考えますと、適切な時間設定と言えるのかどうか、夜が非常に遅くなっているというような傾向もございますでしょうし。また、民放連におかれましては、二十一時以降、放送事業者が児童、青少年への配慮が必要と判断した放送番組については、冒頭でその旨を表示するということを定められていると聞いております。その運用の実績はどうなっているものかというふうに考えます。

 非常に影響力を持つ放送、子供に見せたくない番組が提供されるというのは、やはり親としては非常に望ましくないと考えるところでございます。放送事業者におかれましては、次世代を担う青少年の健全な育成に資する、質の高い番組の提供に邁進されていくべきというふうに考えます。

 また、情報の受け手側でのさまざまな番組を読み解ける力、リテラシーの向上というものも重要であるというふうに考えております。放送事業者にあっても、その社会的責任を自覚し、視聴者のリテラシー向上のための取り組みにも、受け手側の向上にも取り組みをすべきではないかというふうに考えております。

 そこで、広瀬参考人にお伺いをいたします。

 リテラシーの向上、また青少年の健全な育成に資する番組提供に向けた現在の民放連各事業者の取り組みはどのようになさっているのか、この点についてお伺いをいたします。

広瀬参考人 民放連の中には幾つかの委員会がございます。その中の放送基準審議会という極めて重要な会がありまして、そこが青少年の問題、リテラシーの問題、そしてまた放送番組基準の問題を担当しております。

 青少年につきましては、私たちも、将来の社会を担う方々で、その健全な育成というのは大きな関心事でありまして、この放送基準審議会では、例えば全国PTA協議会といいましたか、ここと定期的に会合を持ち、そこでの意見を聞いて、新しい試みをいろいろやっております。

 例えば、青少年に悪い影響を与えそうな番組ワースト幾つというようなものがありますけれども、そういうものをPTAが出してきておりまして、こういうのは何とかならないのかという申し入れを受けたことがあります。それに対しまして民放連は、悪い番組はわかりました、しかし、では青少年の健全な育成にとっていい番組はどうなんですか、そういうのも皆さん方で調査してくれると私たちは非常にやりやすくなりますよというようなことで、最近はそれも資料として出していただくようになりました。

 例えば、困った問題は、「クレヨンしんちゃん」というアニメが、悪い方の三番目ぐらいに出てくる、同時に、今度はいい方の、ベストテンのうちで五番目とか七番目に出てきたり、一体これはいいのか悪いのかみたいな話にもなりますけれども、しかし、そうした活発な意見の交流が大変私たちには役に立っていると思います。

 また、一般家庭でのテレビ、メディアリテラシーの高度化というのは、やはりこれも大きな課題でありまして、最近は各放送局がその種の講座を設けたり見学会を催したりということで、地道ではありますけれども、努力は続けております。

古屋(範)委員 民放連におかれましても御努力を続けられているということでございます。

 ここに、御存じかもしれません、NHK放送文化研究所で行いました子どもに良い放送プロジェクトの中間報告がございます。これは、平成十三年から、子供によい番組につきまして、その種類、内容、映像、音声の使い方ですとか、また視聴時間、子供への見せ方、親のかかわり方など、詳しく調査をしたものでございまして、十八年四月にその中間報告が取りまとめられております。

 私も、この調査、かねてから注目をしている調査研究でございますが、ゼロ歳、一歳、二歳に関しましても、専念して見ている、ながら視聴、部屋についているだけ、この三つを合わせますと、ゼロ歳でテレビの接触時間一日三時間十三分、一歳ですと三時間二十三分、また二歳が二時間四十四分。実際に専念して見ているというわけではないんですが、テレビとの接触時間が非常に多いというのが現実でございます。

 それから、ふだんよく接触しているテレビ番組、これはやはり幼児番組が一番多いわけで、ゼロ歳が約七割、一歳、二歳は九割以上、そして二番目がアニメ、漫画ということでございまして、ここの部分、非常に難しい課題があろうかと、先ほどおっしゃいましたように線引きというのが非常に難しいということでございます。

 この中でも、やはり親と会話をしながらテレビというものに接していくということが言葉の発達にも非常によいというような調査結果が出ておりまして、発信をする側だけでなく、受け取る側のリテラシーの向上が今後大きな課題かというふうに思っております。

 あと一問、申しわけございません、広瀬参考人に。

 今、字幕放送が非常に重要さを増してきているというふうに思っております。平成十七年度、NHKでは九八・二%であるのに対しまして、民放キー局五社平均で六五・九%というふうに伺っております。この字幕放送の強化など、デジタル時代における取り組みにつきましてどのように進めていかれるか、お伺いいたします。

広瀬参考人 例えば、ドラマなどは比較的字幕放送がしやすい分野でありまして、そうしたものは既に一〇〇%字幕放送できるようになっております。一方、一番難しいのはやはり生の番組で、特に討論だとか次々変わるニュースだとか、その辺の字幕放送が一番難しい。

 NHKが、全国に先駆けてといいますか、放送局の中ではトップを走っております。しかし、民放もかなり強い要請を受けておりまして、今後十年に完全字幕化ということで、年度計画を立てて、それを役所にも提出し、徐々にといいますか、かなり力を入れて字幕を広げております。今後もその方向で進んでいきたいと思います。

古屋(範)委員 参考人の皆様、貴重な御意見をありがとうございました。

 以上で質問を終わりにいたします。

仙谷委員長 次に、枝野幸男君。

枝野委員 民主党の枝野でございます。

 参考人の皆さんには、お忙しいところをありがとうございます。

 まず、郷原参考人にお尋ねをいたします。

 不二家・「朝ズバッ!」報道の件で、企業は複雑でいろいろな人たちで構成されているということで、不二家の経営者の立場からの声というのは大体聞こえてきておりますが、従業員、あるいは、この不二家の場合はフランチャイズシステムですから、フランチャイズの皆さん、こういった関係者の皆さんがこの「朝ズバッ!」報道についてどういう受けとめをされているのか、御存じの範囲で教えてください。

郷原参考人 先ほど申しましたように、この件だけは不二家の側も許せないということで直ちに反応したということからいたしましても、いかに、不二家の従業員そしてFC店の関係者などにとっても、こういうありもしない話で廃業しろとまで言われたことが大きな衝撃だったかということがわかると思います。

 私が聞いている範囲でも、FC店の関係の方、もういきなりのことで、この先どうなるかということが不安で眠れない状態だったところに、五時ぐらいまで起きていたら、あの「朝ズバッ!」の放送を見て大変な衝撃を受けて寝込んでしまった人がいるというふうにも聞いていますし、従業員などがどういう思いをしていたかということは、今回の問題がマスコミにまた取り上げられる過程で、例えば週刊文春がこの問題を取り上げましたが、この取材に平塚工場の従業員の人たちが物すごい協力をしたということからしても、非常に許せないという思いを持っていることはもうはっきりわかるんじゃないかと思います。

 以上です。

枝野委員 もう一つ、この「朝ズバッ!」という番組のあり方、編成のあり方等についての御見解をお聞かせください。

郷原参考人 この「朝ズバッ!」という番組は、非常に特徴的なのは、みのもんた氏という司会者が言いたい放題なことを言う。これは視聴者の声を代弁しているような構成ではあるんですね。何か非常に素人的な観点から物を言っているようではあるんですけれども、そこに専門家として弁護士とかいろいろな評論家とか、あるいは政治家が出てきたり解説員が出てきたりする。そういう人たちが同意してうなずいたりすることで、何か社会全体で是認されたような、みの氏の発言がそういうふうに受け取られるというところに特徴があるんじゃないかと思います。やはり、そういう番組の編成自体に根本的な問題がありはしないか。

 先ほど、従業員の側の反応、不二家の社員の側の反応ということからしますと、実は、みのもんた氏以上にあの人が許せないという声を私は聞いたことがあるんですけれども、弁護士です。弁護士のバッジをつけて、あそこで全く間違ったことを、食品衛生法に違反しているかしていないかとかいうことに関して間違ったことをたくさん発言している。それがいかに自分たちにとって大きな不利益になるかということを述べている人もいました。

 そういう意味でも、番組の編成というのは、非常に気をつけないと、全体として誤ったことが権威づけられて大きな影響をもたらすということになりかねないんじゃないかと思います。

枝野委員 郷原参考人はBPOの検証委員会に審理を要請して、先日、審理が決定されたということでございますが、今回、一方では放送法の改正という議論が出てきております。不当な、不適切な放送と闘っている見地からは、この放送法の改正についての郷原参考人の御見解をお聞かせください。

郷原参考人 私は、放送内容に対する国家の介入は極力すべきではないと考えております。放送法もそういう考え方、思想のもとに組み立てられていると思っておりますし、それを維持すべきだと思います。

 一方で、今回のような虚偽、捏造の疑いに対してきちんと適切に対応していかなくちゃいけないことは確かですが、例えば、「朝ズバッ!」の問題でBPOの検証委員会の結論が十分なものじゃないというふうなことが仮にあったとしても、だからといって、放送法を改正して、放送内容に対する国家の介入をすべきだというふうには私は決して思いません。問題のレベルが全く違うと思います。「あるある」だとか「朝ズバッ!」だとかというような、そういう一番組のレベルで考えるべきことではないと思います。

 この放送内容に対する国家の介入の問題は、民主主義ないし社会の根幹にかかわる問題で、別途慎重に考えるべき問題だと思います。だからこそ、それとは別の枠組みで、こういう、例えば今回の不二家のような、企業に対して、従業員に対しても非常に大きな影響を与えるような虚偽、捏造の問題に対して、もっと別の枠組みできちんと正すことを考えていくべきだと思っております。

枝野委員 それでは、このBPOでの検証なんですが、これは広瀬参考人にお尋ねした方がいいのか郷原参考人にお尋ねした方がいいのか。

 ここで調査をしていただかなきゃならないのは、要するに、カントリーマアムの証言を流用した的な捏造があったかどうかという側面と、それから、捏造があった場合に、先ほど来お話のある、司会者やそこに出ている弁護士がこれは著しく不当ではないかというような発言をしている、この両面があると思うんですけれども、これは、このBPOの検証委員会で、両面について、少なくとも前者が肯定されたときに、その場合にはそういった部分まで検証がされるんだという理解、あるいは、申し立てた側としてはそういう理解をしているということでよろしいんでしょうか。両方にお尋ねしたいと思います。

広瀬参考人 TBSの問題の場合、再出発いたしましたBPOが取り扱うんだということを決定いたしました。それで、どういう調査をし、どういう勧告を出すのか全くわかりませんけれども、私たちは、BPOがその種の作業を始めたら、結論が出るまでこれはもう一切放送事業者からは意見を出すまい、つまり、BPOがTBS問題で調査を重ね、その結果出したものを全面的に支持していこう、そういう姿勢でございます。

 したがいまして、検証委員会の作業の状況その他、一切私たちは取材もしておりません。

郷原参考人 BPOの検証委員会は、単に捏造があったか、虚偽の放送があったかということだけ、その点についての事実認定を行うだけの機関だとは思いません。ですから、当然、その根本にある番組の編成方針のあり方、番組自体の取材とか報道のあり方一般の問題も審議してしかるべきだと思います。

 それに加えて、先ほど申しましたように、この問題に対して事後的にコンプライアンスがきちんと機能していたのかどうか、事後的な検証がちゃんと行われていたのかどうか、そこを十分に審理していただいて、そこに不十分な点があれば、その点についての是正を求めるという措置をとっていただきたいと思っております。

枝野委員 広瀬参考人のお答えは、個別案件についてどういう調査が具体的に進んでいるかということについてはそういうお答えだと思いますが、今、郷原参考人からお話があったようなことが、つまり、そういうことについてBPOの任務の中に入っているのか、それは、BPOを事実上つくっていらっしゃる民放連の立場としてはお答えいただけると思いますし、当然入っていると認識をしているんですけれども、よろしいですか。

広瀬参考人 その種の方々も委員に入っております。

枝野委員 それで、このBPOによる検証委員会が機能するかどうかというのは、ここが、今回の場合であれば、TBSに対してどういう調査権限を持っているのかということにかかるんだというふうに思います。

 私は、これはリスクはありますけれども、この場でも、私が公表されている事実から知る限りでは、偽造である疑いが濃厚であるというふうに受けとめられていますが、物証はTBSが持っています。先ほど郷原参考人がおっしゃられたとおり、取材テープそのものに当たればこれは事実関係がはっきりするわけですし、あるいは、そこで証言をしていると称される元従業員からヒアリングをすれば事実関係ははっきりするわけでございます。ただ、外部からそれを郷原参考人などが求めても、不二家側から求めても、取材源の秘密だとか何だかんだ言ってそれに応じなかった。

 BPOという検証機関ですから、当然のことながらBPOは、そういった証拠提供、あるいは参考人を出してこい、ヒアリングさせろということをTBSに求めるんでしょうし、TBSは応じる責任、義務がある。結論については民放各社とも全部従いますという覚書を書いているとおっしゃいましたが、そういう調査の要請については従うんだ、こういう仕組みになっているという理解でよろしいでしょうか。

広瀬参考人 仕組みについてはそういう理解で結構でございます。

枝野委員 松原参考人にお尋ねをしたいんですが、松原参考人は、今回提起をされている放送法の改正については、先ほどのお話は、どちらかといえば肯定的な御見解というふうに承りました。

 ただ、提起されている政府の放送法の改正の方向ですと、今回も一番大事な、事実関係がどうなのか、偽造、捏造があったのか、今回のこの「朝ズバッ!」問題でも、要するに、捏造なんかしていないしていないとTBS側はずっと言い続けていて、そこが食い違っているわけですね。

 それで、提起されようとしている放送法の改正でも、結局はいろいろな権限をつけているけれども、逆にそこは報道の自由に対する配慮だと思いますが、合意の上と。つまり、テレビ局側が、放送局側がとことんしらを切り続ければ、どこか別にたまたま証拠が挙がらない限りは指導を受けない。正直に、内部で調査をして、事実関係はこうでしたと言ったところが処分をされる。

 私は、今回の「あるある」と不二家・「朝ズバッ!」の関係も実は似たような関係があるんじゃないかと。「あるある」の方は外堀が埋められていましたから、やむなくというところもあったかもしれないけれども、「あるある」の方は、関テレ自体がみずから調査をして、こういうことでしたということをみずから認めました。これに対してTBSの方は、少なくとも現時点まで、みずからちゃんとした調査をしたとは思えない状況で、だから今回の指導も緩かった。ここの部分のところをあいまいにして、なおかつ権限を与えるということは、非常に総務省の裁量の余地が広い、僕は、ある意味では最悪の介入の仕方であると。

 明確な基準とルールが決まっていて、ここを超えたときは指導がありますとかなんとかということであるならば、まだ一定の検討のしようがあるかもしれないけれども、まさに裁量で、本人が認めたら指導ができる、処分ができる、本人がとことんしらを切ったら逃げられる、こういう仕組みは最悪だと思いませんか。

松原参考人 まず、放送法改正についての私のスタンスを申し上げますと、きょうの議論でも出てまいりましたし、世の中の議論でもこういうことがあると思うのは、国家権力が放送業界に対して出ていくことはよくない。今回、プラスで条項が加わるわけですから、よくない。こういう発想が強いと思うんですね。

 だけれども、その前に、まず現在の放送法というものが、法律にはよらない行政指導を事実上している。呼ばれたら、各放送事業者の責任者が総務省に行って謝っている、警告を受けている、こういう状態があります。それから、最終的な処分としては、放送免許を取り消すという処分も総務省の権限の中にあるわけです、電波法の中で。

 ですから、そもそも国家権力と放送の関係を問題にするのであれば、今の放送法自体についてどうなんだ、それがおかしいんじゃないか、呼びつけられて謝りに行くこと自体がおかしいということから議論をするならいいんですけれども、それはいいと。それから、最終的にいざとなったら免許の停止から取り消しまであり得るんだ、それも規律としてはいいんだと。その間をつなぐところにプラスアルファの項目が入ったことをもってして、さあ国家権力の介入だという議論は私はおかしいと思っておりまして、その点について私はニュートラルで、ともかく、そういう枠組み自体をどう議論するかというのはこれからの課題だし、少なくとも、今出てきた改正案については、極端なところが二つあって、その間を埋めるものが必要なのではないかという問題の立て方については合理性がある、こう私は判断しています。

 その上で枝野さんの質問にお答えすると、ここが、今の国家権力と放送との間のぎりぎりのところのやりとりの中で、今まではやはり行政指導しかなかった、その行政指導のやり方も、事実関係を総務省の側が精査して、それで呼びつけてやるというのではなくて、いわば事業者の側が、言葉は悪いんですが、自白するような、自分で認めたものに関してやる、こういうスキームでありました。

 そこのところを、今回、新たに訂正計画等のスキームを出すときにそのことは変えなかったわけですね。要するに、総務省の側に調査権限を与え、それから、事業者の側が納得しないときに、そこで強制的に出すようなスキームにしなかった、こういうことだと思うんですね。そのことを枝野さんの解釈からすると、非常にあいまいだ、裁量権をふやす、こういうことになると思いますが、その一方で、今までそういう中で行政指導もやってきて、そこの範囲では放送事業者も納得なさっていたんじゃないかと思うんですね。

 その意味で、無理やり放送事業者に納得させて、さあ処分する、そういう意味での裁量権は、私は、その法律の条文とか説明を聞く限り、そこはないんじゃないかと。むしろ逆に、強い権限を与えて、否定しているのに証拠を突きつけて、さあ処分だという方が私はむしろ国家権力の過度な介入になるんじゃないかという判断をしています。

枝野委員 私も、そもそも行政指導が行われていること自体がおかしいんじゃないかと。そもそも、一般論として、この放送に限らず、行政指導という仕組みがおかしいという論に立っていますので。ですから、現状がおかしいという前提です。

 その上で郷原参考人に、今の松原参考人の御意見についての御感想も含めて、郷原参考人は、国家権力による介入は避けるべきだと。では、今回のTBSのような対応に対してどういうことをしていけばいいのか、しなければならないのか、その点について御意見をいただきたいと思います。

郷原参考人 私、コンプライアンスの問題に関して、二つ重要な言葉があるというふうにいつも申し上げています。センシティビティーとコラボレーションです。

 センシティビティーというのは、社会の要請に対して鋭敏であること。そういう意味では、放送がどんな社会的な要請にこたえるべきかということを関係者がもっと深く考えるということが必要だと思いますし、もう一つのコラボレーションの要素として、放送事業に関係を持っている人たちが、もっと番組の内容、編集方針、そして虚偽、捏造の有無について関心を持って積極的にかかわっていくことが必要なのではないかと思います。やはり、国家の介入を行うべき場面ではないということであるだけに、余計にそういうふうな面でのコラボレーションが必要だと思います。

 具体的には、例えば、インターネットの掲示板、ブログなどでも今回の問題について非常に議論が盛り上がっています。私も初めてこういったブログなどを詳しく見たんですけれども、新聞、テレビなどの論調よりもはるかに深い議論が行われているように思います。

 そういったことを通じての、もっと広範囲なネットワークでこういったものを論じていくこと、そして、番組のスポンサーの方も、スポンサーが番組内容に介入することは、これはマイナス面もありますけれども、少なくとも、今回の問題のような、コンプライアンスが全然機能していないとか、虚偽、捏造疑惑について放送事業者としてきちんと義務を果たしていないとか、それから、番組の編集方針自体に問題があるとかいうような問題に関しては、スポンサーがもっと関心を持って企業社会全体の利益としてこの問題にかかわっていく必要があると思いますし、株主もそうだと思います。放送事業者の株主も、放送事業者としてのコンプライアンスのあり方についてもっと積極的に意見を言っていくべきだと思います。

 TBSの大株主である楽天が、放送事業者であるTBSのコンプライアンスのあり方について株主提案をしているということが報じられていましたが、私は、そういう面では、この楽天の動きというのは注目すべきではないかと思います。

 先ほどの松原参考人の見解に対する意見、一つだけつけ加えさせていただきますと、今回の放送法改正は、一応、総務大臣の話では、認めた場合にしか発動しないというふうに言われています。しかし、調査権限を与えているんですね。書類を提出させることができるとかというふうな権限を与えています。そうすると、処分に至る前の段階でこれを出せ、あれを出せというふうにいろいろ言っていけば、事実上、かなりの介入を招くおそれもあると思います。

 ですから、いずれにしても私は、放送法の改正による公的介入の強化には決して賛成できないと考えております。

枝野委員 ちょっと大事なこの件、「朝ズバッ!」問題がいい方向で解決するかどうか、大変重要なことなので、広瀬参考人さん、もう一回だけ確認させてください。

 BPOが必要と認めて、いや、合理的に考えて認めざるを得ないと思うんですが、取材テープを出せ、あるいは証言したと称するこの人間に会わせろといった場合には、TBSは取材源の秘密だとかそういうことは言わない、言わせない、こういう仕組みでBPOの検証委員会をつくったんだ、そういう理解でいいですね。ここは大事なところなので、もう一回だけお願いします。

広瀬参考人 BPO、わけても放送倫理検証委員会の活動について大変思い切った権限を与えまして、それでいいんだなということで合意書に各局サインしております。

 それで、放送倫理検証委員会は十分なる調査権限を持つと認めてくださって結構でございます。

枝野委員 その上で、これは何せ事実関係を自己準備されていないかもしれませんが、先ほどの郷原参考人のお話の中で、BPOの受け付けをする事務局の体制が、これは何なんですか、各構成テレビ局からの出向者なんですか、それともOBなんですかというような方が事務局を担っている。一人や二人いてもいいかもしれませんけれども、大宗を占めているということでは、このBPO検証委員会に対する外部からの公正らしさが疑われることになると思うんですね。

 このあたりの構成については、広瀬参考人はどういうふうに考えておられますか。

広瀬参考人 BPOの事務局に放送局経験者がいらっしゃることは事実でございますが、今、BPOの事務局が一番真剣に考えておりますことは、政府の介入を招かなくて済むようなそういう自浄機能を放送事業者が発揮できるかどうか、それはBPOの活動に一にかかっているんだというその自覚は大変強いものであると感じております。

枝野委員 広瀬参考人の主観的な思いとしてそういう思いがおありだろうということは私も受けとめたいというふうには思いますし、放送事業に携わっていらっしゃる方の多くの皆さんがそういう認識を持っていらっしゃるんじゃないかというふうに期待をしたいというふうに思いますが、例えば、今回のこのTBSの「朝ズバッ!」問題をめぐるTBSの対応の経緯などを見てきても、とても、気をつけないと権力の介入を招くことになりかねないぞ、ここはちゃんとみずから律しなきゃなということがベースに存在をしてきているとは到底残念ながら受けとめられませんし、それから、そもそも、主観的にどう考えていらっしゃるかということ以上に大事なことは、外部から信頼される。外部から信頼されるためには、外部から信頼できる人間だと客観的に見られる人、体制をつくることが重要であるということになるわけですよね。本人が幾ら悔い改めまして、私はもう悪いことしませんとどんなに言っていたって、犯罪を何度も犯している人を裁判官にしたらだれも信用しませんよね。

 ですから、やはり客観的に事務局にしても、BPOの検証委員会の委員の人選のことについては、これは介入になりますから言いませんが、いかにテレビ局から中立的な方々が周りを占めていて、自主的な機関だけれども、外部的に公正、第三者的にチェックしているんだというふうに国民に受けとめてもらわなければ意味がないわけです。

 そういう観点からすると、委員の人選のことまでは言いませんが、事務局などについては相当な御配慮が要るのではないでしょうか。どうですか。

広瀬参考人 従来、BPOがやや放送局寄りともとれるような対応を、そういうことが絶対なかったかといいますと、残念ながら、そういうふうに解釈されてもしようがないことがあったと思います。

 しかしながら、新しいBPOは、放送事業者の立場で物を見ていたのではこれは全然意味がないんだ、むしろ放送事業者につら過ぎるぐらい当たっていくのが、今後放送事業者の自浄機能を確保する唯一の道だ、そういうことであるわけで、今回のTBSが対象になった第一発の事項も、BPOの関係の委員の方々は、むしろ、その辺の自分たちの新しい役割を十分自覚した上での作業をやってくれるものだというふうに思っております。

 BPOは、月に一回、自分たちがどういう案件を審査し調査し、どういう勧告を出したか、出さなかったかという報告書を出しております。その報告書に対してより多くの方々が意見をBPOに寄せる、これは甘いじゃないかとか、これは厳し過ぎるぞというような意見を寄せてもらうのが、BPOのこの先の長い活動に対して一番役に立つことだと思います。

 したがいまして、今の段階、つまり始まったばかりで、ある事件を調査し始めたそのときにああこうというのは、やはり慎んでいた方が、少なくとも私の立場としては慎むべきだというふうに感じております。

枝野委員 前回、この決算行政監視委員会でこの「朝ズバッ!」問題を取り上げまして、私は自分の想像以上の反応にびっくりいたしました。メールがたくさん来たりとか、ネット上でいろいろなところで褒められました。主観的には、キヤノンの偽装請負を追及したときの方が褒められてしかるべきかなと個人的には思ったんですが、あれも相当ネット上では褒めていただきましたが、それ以上です。相当、テレビ報道、例えば今回の「朝ズバッ!」報道について潜在的に国民の皆さんから強い不信がある。こんなに強い不信があるんだということを私自身もびっくりするほどでございました。

 その認識がないと、私も公権力が放送内容に介入するということは避けるべきだというその強い立場でありますが、世の中が、本来それを支えるべき国民の皆さんが、むしろもっと規制をしろという方向になりかねない相当危ういところにいる、こういう御理解をいただきたいというふうに思っていますし、その上で、最初の、このBPOが頼りになるのかどうかということは相当注目をされているというのは、これは広瀬参考人の立場に申し上げる話ではありませんけれども、ということだというふうに思っておりまして、これの検証結果については国会としても注目をして見守りたいというふうに思っていますし、その結果いかんによっては、委員長、またこの委員会に今度はBPOの責任者の方等に来ていただくということも含めて考えなければいけないんじゃないかというふうに思っておりますので、記録にとどめておいていただければというふうに思います。

 参考人の皆さんには、本当にお忙しいところをありがとうございました。

 最後に一点だけ、委員長にお願いを申し上げます。

 決算行政監視委員会で決算の総理出席による締めくくり質疑がいつ行われるか、いつ行われるか、むしろ、この放送に関する審議より先に行われるんじゃないかというふうに聞いておりましたが、どうも行われていない。決算を早くきちっと整理をしていくということは、骨太方針も出たようですけれども、来年度以降の予算編成にとって大前提条件ですから、一刻も早く総理出席の締めくくり質疑を入れていただかないといけないんじゃないかというふうに思いますので、委員長の善処をお願い申し上げます。

仙谷委員長 きょうは参考人から貴重な御意見を伺う機会でございますので、その進行については、できるだけこういう場で申し上げるのは控えたいとも思いますけれども、ただ、両筆頭の大変な御尽力にもかかわらず、五月二十五日に理事会で決定しております締めくくり総括質疑が、総理出席のもとに行うべしという決算行政委員会の決定が実行されていないというか、履行されていないことについては私も非常に遺憾に存じております。

 そういうことで、今国会中に必ず締めくくり総括質疑が行われるように、そして、決算についてのこの衆議院の議決が行われるように、より御尽力をいただければというふうに考えております。よろしくお願い申し上げます。

枝野委員 では、時間ですので終わります。

 お三人の参考人の方、本当に参考になりました。ありがとうございました。

仙谷委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の皆様には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時五十六分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.