衆議院

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第9号 平成14年7月5日(金曜日)

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平成十四年七月五日(金曜日)
    午前九時三十分開議
 出席委員
   委員長 赤城 徳彦君
   理事 亀井 善之君 理事 細田 博之君
   理事 望月 義夫君 理事 茂木 敏充君
   理事 中山 義活君 理事 堀込 征雄君
   理事 井上 義久君 理事 東  祥三君
      逢沢 一郎君    岩倉 博文君
      金田 英行君    栗原 博久君
      坂井 隆憲君    高鳥  修君
      竹下  亘君    野中 広務君
      林  幹雄君    平井 卓也君
      松野 博一君    柳本 卓治君
      阿久津幸彦君    佐々木秀典君
      佐藤 観樹君    手塚 仁雄君
      松崎 公昭君    松沢 成文君
      山花 郁夫君    山元  勉君
      福島  豊君    山名 靖英君
      武山百合子君    中井  洽君
      大幡 基夫君    吉井 英勝君
      北川れん子君    保坂 展人君
      西川太一郎君
    …………………………………
   総務大臣         片山虎之助君
   総務副大臣        若松 謙維君
   政府参考人
   (総務省自治行政局選挙部
   長)           大竹 邦実君
   衆議院調査局第二特別調査
   室長           牧之内隆久君
    ―――――――――――――
委員の異動
七月五日
 辞任         補欠選任
  小西  理君     岩倉 博文君
  中井  洽君     武山百合子君
同日
 辞任         補欠選任
  岩倉 博文君     小西  理君
  武山百合子君     中井  洽君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 公職選挙法の一部を改正する法律案(内閣提出第一〇一号)


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     ――――◇―――――
赤城委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、公職選挙法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として総務省自治行政局選挙部長大竹邦実君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
赤城委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。
    ―――――――――――――
赤城委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。細田博之君。
細田委員 本日から、公職選挙法改正案について審議に入れるということで、大変有意義な審議ができることを願っております。
 昨年の十二月に、新しい国勢調査に基づきまして、次の衆議院選挙から新しい区割りを設定すべきであるということで、衆議院議員選挙区画定審議会設置法に基づいて審議会の勧告が行われ、その内容が出されたわけでございます。
 我が自由民主党といたしましては、他の政党のことはわかりませんが、非常にまじめに、一つ一つ分析をして、それが適当な中身であるかどうかということを検討いたしたわけでございます。審議会のおっしゃることだからすべて丸のみにすればいいというのは、ある意味では立法権の放棄でもございますし、審議会はまじめに、もちろん非常にいい勧告を出していただきましたが、なかなか地元の事情まで及ばない場合もある。
 例えば、徳島県の例などございまして、大変高い山がございまして、剣山という山があります。海抜千九百五十五メートル、これを越えるのはとても普通の交通では無理でございまして、山すそを回って徳島市を回らないと向こう側へ行けない、こっち側にも来られない。地勢的にも歴史的にも、交流がほとんどない。そういうところを、人口の数によって一つの選挙区にこのたびまとめてしまおうというようなことも行われております。
 また、東京都におきましては、昔から、武蔵野、三鷹、小金井といえば一つの地域でございます、菅直人幹事長ですか、地元でもありますけれども。普通、だれが考えても、武蔵野、三鷹、小金井というのは一つの単位で、府中、調布、狛江、稲城、ここは一つかなと。しかし、そっちの方が人口が多い。そこで、勧告案は、これはいろいろな前提を置いて、では、三鷹市をはがして、そして、他方から府中市をはがして交換すれば、ちょうど人口格差がよくなるからいいのではないか。二つだけ例を申しましたが、北海道とか、その他たくさんそういう例が見られることがわかっておるわけでございます。
 これは、きょうの金田議員を初め、同僚議員が関連の質問をいたすわけでございますが、我々は、やはり全国の情勢を一番知っているのが国会議員ということもございますので、真剣に、前向きに取り組むということで、検討いたしたわけでございます。
 そして、例えば一減と言われたところでも、私どもの島根県、竹下委員もそこにおられますけれども、三人区を二人区にすると言われれば、人口格差拡大、九十五選挙区になったことの原因が島根にあるということで、やむを得ない、これは受け入れようということを了承しておりますし、山形県においても、大分県においても、それは了承しておるわけでございます。
 しかしながら、北海道や静岡では新たに二倍を超える選挙区を、静岡で二つ、北海道で一つ、わざわざつくるような選挙区の変更を行うということで見直しが行われていることから、これもちょっとおかしいんじゃないかという議論が行われ、いわゆる二増三減案、そして格差をすべて二倍未満に抑えようということの案が党で了承される。これは、普通、与党というのはなかなか、国会議員の集団でなかなかないのでございますが、そこまで了承を得ました。
 これは党利党略じゃないか、あなた方の有利に直したんじゃないかというようなことが一部マスコミなどで出ましたが、つぶさに見ていただくと、そんなことはございません。民主党と自民党とどっちが有利かわからない実態のところも多いですし、やはり我々は、国会でございますから、立法府としては十分に検討しなければならないということ。
 それから、何よりも大事なことは何かといえば、これは総務大臣にこれからお伺いするわけですが、憲法十四条に基づく格差の問題であると考えるわけでございます。
 芦部東大教授、先般お亡くなりになりましたが、「憲法」岩波書店、百十七ページに書いてございますが、ごく簡単に言いますと、
 具体的には、一票の重みが議員一人当たりの人口の最高選挙区と最低選挙区とで、おおむね二対一以上に開くことは、投票価値の平等の要請に反すると解するのが妥当である。一票の重みが特別の合理的な根拠もなく選挙区間で二倍以上の較差をもつことは、平等選挙の本質を破壊することになるからである。この二対一の基準は、学説では広く支持されているが、最高裁の判例では明確な基準は示されていない。
云々と書いて、過去の判例などが出ておるわけでございます。
 私は、こういう憲法論が本問題の非常に大きな論点でございますので、九十五にもなってしまったわけでございますが、できれば今回においてもみんな二倍未満にすべきだという考えも持っておりますし、また、勧告の中にございますように、わざわざ二倍を超える選挙区を一部でつくることは望ましくないのではないか、そういうふうにも考えるわけでございます。
 過去、三倍未満ならまあまあだというような判例があったんですが、あの時代は、先生方百も御承知のように、どんどんどんどん人口移動が始まって、三・何倍になってしまった。そこで、最高裁も困りまして、三倍を超えるに至ったということは、やはりどう見ても憲法に違反すると思う、しかし、選挙を無効にするわけにもいかないという判例が出ておる。だから、三倍を超えれば違憲であって、三倍未満であれば合憲であるというはずはないんです。学説すべてにわたって出ておりますように、二倍だということを考えるべきであろうと思います。
 そこで、画定審議会設置法では、各県一配分規定があるということ、それで県ごと配分でございますから、五増五減で出されるということは、審議会の勧告としてはしようがないでしょうと、法律に書いてあるんですから。そこまでは結構です。
 しかし、その三条の第一項には、はっきりと二倍以上とならないことを基本とするということが具体的に書かれておって、芦部さんが本でも言っておりますように、いろいろな状況を考える、行政区画、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行って、格差が二倍以上にならないようにすることを基本とすると一項で書いてある。ただし、二項において、一割り振って県別の割り振りは決めましょうよと言っているんですが、やはり一項と二項では、一項の方が本来重いわけでございます。
 審議会としては、二項を守って、勧告は出す。しかし、国会は、やはり本来の憲法上の議論から、本来二倍未満とする努力をすべきでありますし、もう一つ申しますと、十年後の国勢調査を考えると、またこの規定が問題になって、小さな県の定数が三に維持された場合は、二倍を超える選挙区が二十ぐらいにふえることが考えられるんですが、私は、その場合は、我々の国会の良識としても、二倍未満にすることが一項によって基本なんですから、必ずそういうふうに修正すべきだと考えるし、それは十年後の話をするよりも、まず本年度、今において本来すべきことではないかということを考えるわけでございます。
 長々といろいろ申しましたけれども、総務大臣にぜひお伺いいたしたいわけでございますが、やはりこの憲法論というのは大事なわけでございますし、硬直的に、今の規定があればもうそれが金科玉条、これでよしとするというようなことではいけないので、政府としてもあるいは立法府としても前向きに、せっかくここまで来たのでございますから、九つまで来たのでございますから、できるだけゼロに近づけるとか、二倍以上の選挙区を新たにつくらないとかという努力は本来すべきことであると思いますが、いかがお考えか。その憲法論についてお願いします。
片山国務大臣 今、細田委員から憲法問題を含めて御所見の御開陳がございまして、大変私も感心して聞かせていただきました。
 私どもの方も、一票の格差の是正、平等選挙ということは大変重い命題であると認識いたしております。ただ、今回は、御承知のような今の仕組みでは、選挙区画定審議会にいろいろなことをお願いしようということでございまして、審議会の方ではやはり法律に基づいて一生懸命努力されて、現在の案を勧告されたわけでございます。
 なるほど二倍を超えているものが九つありますけれども、二・〇幾らというあれで、前よりは格差が減っておりますし、法律も基本としてと書いてありますから、少しも許さない、こういうことではございませんので、そういうことを含めて、法律の理念を踏まえて、投票価値をできるだけ平等にするということで最大限の努力をしたものだ、私はこういうふうに思っております。
 しかし、二倍を超えているものが九つあります。それは憲法上許容されるものとの見解を当審議会の中でも委員さん方が大分議論された、こういうふうに聞いておりますので、政府としては審議会の御勧告は尊重せざるを得ない立場でございますので、そういうことで今回の案をつくらせていただいたわけでございます。
 立法府の御判断あるいは御見解としては、大変今貴重な意見を聞かせていただきましたので、今後ともそれについてはしっかりと受けとめさせていただきたい、こういうふうに思っております。
細田委員 政府のお立場はよくわかりますし、何よりも国会で決めた法律に従って、審議会が割り振りをしたり検討したわけでございますからね。
 しかし、北海道選出の先生方もおられますけれども、与党野党を問わず、北部北海道が三分割されるなんていうことが本当にいいのだろうか。全国で一人当たりの人口が十三位である北海道が、一減によって二位になっていいのだろうか、これは金田先生がこれからされますけれども。
 私は、国会の責務である、これからも責務であるし、例えばいかなる形で今回法律が通るにせよ、これは今国会中に通さなきゃいけないと私は思います。このまま宙ぶらりんで次から次へやったってとんでもないことになって、選挙区の数で言うと、大きな選挙区の異動、選挙区でも四十四もあるんですね。細かく言えば六十八、中規模以上というと五十六、七ありまして、それだけあるものを、この通常国会が終わって秋の臨時国会でもやろうかというようなことが議論されるべきでないと。だから、決着をつけなきゃならない。
 そのときに、格差が多少残ったとしても、この残った格差を次のときに自動的に現行法に基づいてやるんだから、二倍以上がそのときに二十になろうが、三十になろうが知らないよという議論をするのは、まさに立法府の責任の放棄につながるので、私は、そういう意味で、逆に将来の議論を今に戻しているんですよ。
 我が与党自民党は、皆さん方は奇異に思われるかもしれないけれども、この際、二倍未満にすることができますよう、こうしましょうという案を党の選挙制度調査会で了承をして、関係党にも協議することはできるというようなところまで来たわけでございます。そして、多くの減少県、減員県などは了解しながら、もう一歩のところまで来たわけでございますから、私は、もっといろいろな建設的な議論が各層において行われて、立法府としての責任ある審議を進め、また今後の展望を開くべきであると。
 その中に、我が友党公明党さんを初め、あるいは少数政党の皆さんも、待てと。小選挙区比例代表並立制は大政党に有利で、最初は二大政党と言っておったけれども現実的ではないではないか、中選挙区がいいという面もあるので、これは第九次選挙制度審議会でやるべきだという議論もあります。これは政府において、第九次審において、いろいろまた基本的な議論もしていただくことにしながら、その中で格差の問題も考えていく、こういうことだと思います。
 大臣、その九次審等での、抜本的な考え方も、もう一度いろいろ検討していくということについてどうお考えになるか、ぜひ御答弁願います。
片山国務大臣 この前、与党で御相談いただいたようなお話も私は聞いておりますし、総理からも九次審のお話がございました。
 いずれにせよ、この法案が成立すれば、その次には九次審の構成を決めてスタートする、こういうことになろうと思いますし、基本的には、選挙制度は議会政治の根幹にかかわることでございますので、各党各会派の御意見をよく拝聴しながら、九次審のスタートについても準備を進めてまいりたい、こう思っております。
細田委員 ありがとうございました。
赤城委員長 次に、金田英行君。
金田(英)委員 五増五減が本日から議論をされるわけでございます。その前に大臣にいろいろ御質問したい向きがあるのでございますが、お手元に資料をお配りさせていただくことを御了解いただきたいというふうに思います。
 資料一から資料六までありますけれども、とにかく今の状況を見ておりますと、審議会の勧告、それはもう、そこのけそこのけ勧告が通る、この勧告を政治家がいじることはまかりならぬのだというような雰囲気が漂っていることは、まことに異常だというふうに思うのでございます。あくまでも公職選挙法の改正という法律改正手続は、この国権の最高機関である立法府の我々がその責任を果たさなければならないと思っているのでございます。
 そして、法律を変えるわけでありますが、法律を変えることを、特にいろいろな議論をしておりますと、それは法律を変えてから後議論してくださいと言って、審議会の皆さん方あるいは総務省の方は法律に隠れてしまう、まともな議論ができないという状況に今あるわけでございます。
 時間もありますので、具体的に勧告がなぜおかしいのか、本当におかしいと私は思っております。そして、こんなおかしいところは我が立法府として直すべき義務があるんだというふうに思っております。先生方の真摯な御議論を賜りたいと思います。
 資料に基づきまして、おかしい点について説明させていただきます。
 まず、資料の一でございます。
 全国の人口を三百で割りました。そして、平均で四十二万三千六十四という、これが一選挙区当たりの平均数値だということでございます。そして、審議会の検討の中では、これの最上限をその四分の三である五十六万四千人、これを最上限にしよう。そして、最低限はその三分の二である二十八万二千四十三人にしようという検討の基準をつくったのでございます。この間に入れば、最大、最小の間に入れば大体二分の一におさまるであろう、そのことは算数的にはすごく正しいのでございます。そういう検討もあろうかと思います。
 そういったことで、勧告の中で、現在の秋田二区というのは二十七万九千七百七十六であるから最小限の二十八万より二千二百人ほど少ない、ですから、これは直さなければならないということで、何と秋田市の隣にあります男鹿市、南秋田郡の五城目町だとか飯田川町だとか、二千二百の減少を防ぐために十万三千人の人間を異動させたのでございます。こういった勧告内容になっているわけであります。
 そのことによって、現在の秋田一区、これは秋田市を中心とするところでございますが、それが三十八万になり、そして、秋田二区はこの十万人の異動があって三十三万人になった、こういう勧告でございます。
 しかし、勧告の内容を見てみますと、高知一区が最小の選挙区であります。二十七万、これが最小であります。そして、最大は五十五万八千、これが最大であります。この間に現在の秋田一区も秋田二区も入っているのでございます。なぜこのようなことをしなければならないのか。
 生活圏を破壊して、これらの町は秋田市の隣町であります。嫁さんの新しい嫁入り道具を買うのでも、みんな秋田市に行くのであります。ところが、この町は、能代に行く、あるいは大館に行くということになると、六十キロも離れるところに行くわけであります。最大の選挙区、最大の兵庫六区と最小の高知一区の間にちゃんとおさまっている現状の秋田一区、秋田二区を何で動かすのかということ、本当にまじめに不思議な感じがするわけであります。
 あくまでも選挙区をいじるということであるならば、現状三百ある選挙区を尊重する形、一票の格差をなるべく同じにしようという必要最小限度の努力、そういったもので事足りるはずであります。まさに候補者と選挙民との関係というのは、本当に密接な関係にあるわけです。おらたちの代表は国会に行っておる、そして、国会でどんな行動をしているのか、そういったこと。ですから、選挙区をいじるということは、そこに後援会もあります、そういったようなことを不必要にいじることだけは絶対避けなければならない、私はそう考えるものでございます。
 時間がありませんので、先を急ぎます。
 三百の選挙区を割りました。そのときにどうやって割るかというと、法律に従って、まず、資料二の表の中で、一均等配分、後ろから三列目でございますが、四十七を割り振りました。そして、残りの選挙区は二百五十三であります。この二百五十三の選挙区を人口比例で割ります。人口比例で割り戻しますと、一番上の福岡県というのは九・九九八二という数字が出てくるわけであります。各県にそれぞれの数値があるわけでありますが、これの整数部分を全部とりまして、二百二十八の選挙区をこれらの都道府県に割り振ったのであります。そして、残りの二十五の選挙区は、小数点以下の多い順番で上から二十五番目をとって、三百の選挙区を各都道府県に割り振ったという作業をやっているのでございます。
 しかし、この表を見ていただくとわかるんですが、一番最後の選挙区をとったのは、三百番目の選挙区は大阪府であります。そして、残念ながら三百一番目の選挙区になったのは島根県であります。何とここの差は、例えば、大阪府では、もし一万七千九百二十五人が減っていたんであれば、島根県と逆転するのであります。また、島根県は、一万五千七百九十三人ふえていたとしたら、これは三百番目ということで、選挙区の数が一つふえるのであります。何とこの一万数千の人口が十年間でふえたか、ふえないかということによって、選挙区が一つふえたり減ったりするという結果になっている、そういったことでございます。
 これは何を説明しているかと……(発言する者あり)いや、数字がそうなんです。だから、何もこれが悪いと言っているんじゃなくて、そのような一万人の人口異動で、平均四十二万なければならない選挙区がふえたり減ったりするという実情になっているんだということでございます。
 それで、資料三をちょっとのぞいていただきたいのであります。基礎定数の配分によってどんな結果があらわれているかということを資料三で示させていただいております。
 民主党さんは、基礎定数の配分をやめるべきだという法案を出されたことがありました。何で五増五減に賛成なのか、その点がわからないです。五増五減というのは、基礎定数の配分をやった結果が五増五減なんですから、何でそんな論理矛盾的なことを言うのかわからないんですが、まず、資料三を見ていただきます。
 単純人口比例配分とした場合の数と、基礎定数を配分した場合の数とを比較してみました。そして、単純人口比例配分によるよりも、基礎定数を配分したことによって、損していると言うと語弊がありますが、与えられる選挙区が少なくなったところは、東京がマイナス三であります。神奈川県がマイナス二であります。福岡県がマイナス一であります。こういった形になっているわけです。
 そして、単純人口比例配分したときよりも、基礎定数を配分したことによって増となった都道府県がございます。青森県から始まって沖縄県まで、それぞれの県が一ずつ増加しているのでございます。
 そこでこの問題を見るときに、あれ、おかしなことがあるなと。北海道がマイナス、減となる都道府県になっているのでございます。なぜ基礎定数一配分したかと申しますと、下の方に二行で書いてありますが、過疎地域に配慮をしなければならない、そして、選挙区を考える場合に、何といっても、人口だけということではおかしいんじゃないのか、面積も計算、配慮しなきゃならないんじゃないのかと。地政学上の問題もあるでしょう、いろいろな地域のものがあるから、基礎定数を配分することにしましょうということで、細川政権のときに基礎定数一配分を法律で定めたのでございます。
 しかし、ここに減となる県をざっと見てみますと、東京、神奈川、愛知、大阪、埼玉、千葉、静岡、兵庫、福岡、これらはまさに大都市圏であります。しかし、不思議に過疎県であります北海道がこの中に入っているのでございます。単純人口比例した十三、それよりも北海道は減らされているのでございます。過疎地域への配慮、こういったことを考えるならば、基礎定数一配分したという立法趣旨を考えるならば、この北海道というのは極めて不当な扱いであります。
 国勢調査の結果、一平方キロの人口密度をごらんください。東京は一平方キロに五千五百十六人も住んでいます。しかし、北海道は七十二・五人しか住んでいないのであります。過疎地域に配慮するというのであれば、これは最小限、過疎県である北海道は、基礎数の配分がそれを上回る数が割り当てられてしかるべきなのであります。
 ですから、一律基礎数を配分したからといって、法律でそう書いているからといって、算術的に単純にこういった答申、勧告をするということは、その立法精神からして間違った結果になっているんだというふうに私は思うところでございます。我々は、立法府の責任として、その趣旨を考えるならば、こういったよりよい勧告に何とか直すべき義務があるんだというふうに考えるところでございます。
 それと、資料四でございます。
 我々は、議員一人当たりの人口はなるべく同じでありたいというふうに思っているのでございます。東京は千二百万人で二十五の選挙区が与えられておりまして、議員一人当たり人口は、何と四十八万二千人でございます。そして、この一人当たり人口が多い県は、上から十の都道府県を調べてみましたら、この資料四のとおりであります。これらはすべて大都市圏であります。
 しかし、何と過疎県である北海道が四十七万三千五百七十九ということで、北海道は議員一人当たりの人口が二番目に多い、一票の価値がそれだけ希薄に評価されてしまったという結果を招いていた勧告でございます。これは何といっても勧告を許すわけにいかないというふうに、単純に我々は追及します、質問をします。そうしますと、法律でそう書いてあるからといって、法律の陰に隠れてしまうのでございます。議論になりません。ここは立法府、我々の責任で、そして良識で直さなければならない、そういったことだろうというふうに考えるのでございます。
 そして、資料五を見ていただきます。
 これは、全国で一番最小の県であります高知一区、高知一区の二倍を超える選挙区はここに示したとおり九つあるわけであります。九つある中で、何と今回の勧告でさらに二倍を超える選挙区を三つも多くつくり上げているということがあります。静岡五区、静岡六区、北海道六区がそうであります。
 ですから、相当無理な、二倍を超える、まさに二倍を超える選挙区はつくらないようにしようという配慮について、事ほどさように、五増五減を実施するということ、機械的に実施するということのために、相当論理的に合わない、そういったものをつくってしまったという勧告内容になっているわけです。この点についても、我々立法府は正さなければならないというふうに思うのでございます。
 また、資料六には、このような勧告を受けて我々の地元では大変な騒ぎになっているわけであります。何でおれたちに相談なく、あっちの選挙区にくっつけ、こっちの選挙区にくっつけ、そう言われなきゃならないんだ、我々の生活圏はどうなるんだ、文化圏……(発言する者あり)いや、そういった形になっているんです。例えば資料一のそれでもそうです。そういった形になって、この選挙区割りについては反対であるということで、各市町村議会で反対決議が行われているのでございます。それがまだまだどんどん出てくるのでありますが、やはり我々は、有権者である国民の皆さん方のそういった悩みや苦痛をしっかりと受けとめながら、この法改正に当たらなければならないというふうに考えるところでございます。
 確かに、五増五減、法律でそう書いてある。だから、おまえら黙れ、そこのけそこのけ勧告が通るということでは、国会の代表としての我々の良識が問われるんだ。やはり、おかしいところはおかしい。
 それから、もう時間がないんだ、今国会は今月中で終わるんだからもう時間がないんだ、ですから、五増五減のまま通してくれというふうな声もあります。しかし、それは今の法律案で、この秋田県のところはおかしいからこれは削ろう、北海道のこれはおかしいからここは削ろうという作業で十分で、何の作業に時間がかかるということはありません。
 事ほどさように、五増五減というのは、たった一万人の増減で割り振りされているというような事実があったのは先ほど御説明したとおりでございます。資料二を見ていただきますと、三百一番目が島根県であります。三百二番目の県が静岡県、山形県、大分県。まさに減にすべき県というのは三百一番目から三百四番目、ここにずっと次点で並んでいるのでございます。一万人ぐらいの増減。
 やはり、我々は安定した選挙区選挙というものをつくらなければなりません。やはりそこで選挙民が、我々の選んだ代議士はどんな活動をしているんだといって、突然ある日別の選挙区に組み入れられてしまって、別の先生を担がなきゃならなくなる。それは、ある程度一票の格差を均等にするためにとか、そういった必要最小限なきゃならないのはわかりますけれども、そのようなことは、この程度の一万人の増減、十年間で一万人の県の人口が増減することは多々あることであります。
 ですから、我々は今そういったことを直す。私は、本当に真剣になって国会の先生方の皆さんに、おかしいものはおかしいんです、そういったことを直すべきだ。ただ単に、これは勧告だから、学者先生が書いたものだから、つくったものだからこれを正すのは国会として不遜だ、国会議員がいじるのはおかしい、そういった世の批判を浴びるだろうと。批判を浴びることを恐れて、私はマスコミの皆さん方にもお会いしてよく言うんです、悪いものは悪い。必ずしも勧告は金科玉条ではないんだよ、間違ったことは間違ったとして直す責任が我々にはあるんだということを強く訴えたいと思うのであります。
 時間がないからもうこれで我慢せいとか、おまえは泣け、本当にそういった党利党略や個利個略で我々、申しているのではございません。やはりおかしいものはおかしいということで、直さなければならないというふうに思っておるのでございます。
 特に、この資料一でごらんになるとおり、この男鹿市や南秋田郡、いわゆる五城目町、飯田川町、これらが、学校も秋田高校に行くんです、能代高校に行くんではありません。天王町だとかこういったものは秋田市から車でもう十分か十五分ぐらいの距離なんであります。そういった生活圏を壊してまで、こんな勧告はどうしても国民の皆さん方が納得しないし、選挙……(発言する者あり)
 それから、今回の国勢調査の結果、六十八もの選挙区の変動を勧告されております。果たして、二三%、約四分の一にもわたる選挙区をいじる必要があったんだろうか。確かに二倍の格差は、二・〇何倍にすることはできました。とにかく、おもしろおかしくいじられている部分については……(発言する者あり)
 三分の二の基準というのはどこで決まっているのかということであります。それは作業上の便利のために仮定で置いた三分の二基準であり、三分の四基準なわけですから、現実に高知一区が最低の選挙区ですから、これよりも多いのに何でこんな区割りの変更をのまなければならないのか。
 やはりおかしいのでございまして、ここの辺について、片山大臣、私は質問に来たのでございます。ただ一人でしゃべるんじゃなくて、私は聞いていただきたかったんであります。友党の公明党の皆さん方にも聞いていただきたかったし、保守党の皆さん方にも聞いていただきたい。そして民主党も、ただおっかない、これにさわるとけがをする、やけどをするということじゃなくて、おかしいものはおかしい、正そう。時間もまだ十分あるんです。ここはその部分をへずれば一部修正になるのでございます。
 片山大臣、私るる申し上げさせていただきました。ここは立法府であります。法律の陰に隠れて逃げまくるということは許されない場であります。片山大臣の感想なり御意見を賜りたいと思います。
片山国務大臣 今、金田委員のいろいろ資料を入れての御説明を聞かせていただきました。
 政府の立場は、法律に逃げるわけじゃありませんが、やはり審議会をつくって、勧告をお願いして、それをいただいたわけでございますので、これは尊重せざるを得ない立場であるということはぜひお考えいただきたいと思いますし、審議会は、お互いに議論して今回の方針をつくりまして、その方針に基づく基準をつくって、それを当てはめてやったんですね。そういう意味では、やや画一的でしゃくし定規的じゃないかという批判は、私はあるいはあると思います。しかし、そうでもやらなければ、なかなかきっちり整理ができない、説明ができないというところはあったと思います。
 それによって、いささかどうかなというような例が、私は全くないわけではないと思います。思いますけれども、勧告をいただいた以上、政府としては尊重して、そのまま法案として今回出させていただいたわけでございまして、そこのけそこのけ勧告が通るということでは必ずしもないと私は思いますけれども、今の仕組みは、国会で議論して、法律にして、今の法律をつくったわけでございますので、そこのところはぜひ御理解を賜りたいと思います。
 法案が国会に出ましたら、国権の最高機関である国会でしっかりと御判断いただいて、決めていただく、こういうことでございますので、そこは、出す政府と請け負った国会との機能分担の議論で当然あると思いますので、十分な御議論を賜ることを私からもお願いいたしたい、こう思います。
金田(英)委員 おかしいところはおかしいのであります。だれが見ても、この資料三で見ていただいても、東京、神奈川、愛知、大阪、北海道、埼玉、千葉、静岡、兵庫、福岡、大都市圏であります。まさにこういった県の中に、一番の過疎県である北海道が、人口比例配分よりも少ない数が割り当てられているということは……(発言する者あり)
 私は、細川政権のときにこの法律の審議に参画させていただきました。おかしい。北海道は、明治時代、三県に分かれていた時代があるんだ、だから、三県分の基礎定数を配分すべきであるという主張をさせていただきました。しかし、当時の政権与党であります細川内閣は、野党の自民党の言うことを聞いて法案を直しても間に合わないからこれでいくんだというような形で、必ずしも十分な論議が尽くされていたわけではないわけです。基準を当てはめた結果、法律の立法の趣旨に合わないという結果が生じた場合は、それを直すことはやぶさかでないはずであります。我々立法府の良識であります。
 私は、個利個略で話しているのではございません。党利党略で話しているのでもございません。たまたま私の北海道七区という選挙区は、三等分されて隣近所それぞれに組み込まれてしまいまして、私の選挙区はなくなるということになっているわけです、なくなる。
 それが正しいのであれば、それが論理的に正しいのであれば、私は甘んじて国会の結論を受けとめさせていただこうと思っております。しかし、やはり何ぼ言っても議論をしてもらえない、法律の陰に隠れて、こんな矛盾がある状態を放置して、おれたちはこれでやるんだ、そういった態度では、立法機関である国会の良識が泣いてしまうと思います。
 私どもも、もうこれで決まったんだからということであれば、野党のいろいろな意見もお聞きしながら、法案を修正したり、あるいは附帯決議をつくったり、いろいろな、おかしい、理屈の合うもの、やはりおまえの言うことは筋が正しいんだということであれば、それを何らかの形でこの審議の中に反映させなければならない、それがこの立法府の義務だと私は思っている次第であります。
 私の選挙区はなくなります。勧告どおりやれば、なくなります。それでも構いません。国会の皆さん方がそれでいいんだというのであれば、私はもうこれ以上言わないつもりでおりますが、確かに私は抵抗勢力のようにこの問題を語るときに言われがちであります。しかし、私は抵抗勢力ではございません。小泉総理をしっかりと支えながら日本の二十一世紀をつくっていくべき、そういう立場にあるという自分の信念は曲がらないのでございます。何にも抵抗しているのではありません。おかしいものをおかしいと言っているだけであります。
 どうか、法律でそう書いてあるからといって、小学生や中学生がやるような算数の結論のようなことを金科玉条にして、そして、これは正しいんだ、そういった一方的な議論しかできないような日本の国会であってはならないというふうに金田英行は思うのでございます。
 民主党さんだって、基礎定数はおかしいという持論をお持ちのはずでございます。基礎定数を配分しないで人口だけでいけば、こういった増の県だとか減の県というのはなくなって、人口がうまくいく、そういう考え方もあるでしょう。私は、やはり人口だけではないんだと思っておりますから、基礎定数の配分の哲学というのはやはり尊重した、尊重したとしても、この結果はおかしいというふうに主張させていただいているのであります。
 民主党さんの論理に従うならば、五増五減に賛成するのはおかしいのであります。五増五減というのは、基礎定数一を配分した、そういった結果の勧告であります。ですから、やはり民主党さんの議論も矛盾しているのであります。
 確かに、小選挙区比例代表並立制についての議論というのはあります。私も中選挙区の方がいいんじゃないのかなというふうにも考えておるものでございますが、やはりここはこの小選挙区比例代表並立制でいくというのであれば、今回の勧告が持つ間違い、矛盾というのをしっかりと我々は議論していかなければならないというふうに考えるところであります。
 大臣、大体、五増五減というのは昨年の十二月十九日に勧告されました。そして、今はもう七月であります。その七月にわたっても、二増三減だとか三増三減だとかという議論がどうしても消えてこないというのは、一体何だとお考えでございますか。それでもし、個利個略で主張し、あるいは党利党略で主張しているのであれば、いやしくも国会議員たるもの、そのようなことはこの選挙制度に関してはすべきでないという良識は持ち合わせているのに、個利個略で主張しているからでないのであります。
 やはり、審議会なり総務省の職員はおかしいじゃないの、あんたの言っていることはおかしいよと、こういう方程式でこうやっているんだから納得してくれという説明があれば、我々国会議員は納得するのであります。しかし、それがいまだかつて、今に至ってもまだ納得させられていない。そういったことについて、大臣はどういうふうに考えているのか。
 やはり、個利個略の意見であれば静まります。党利党略の意見であれば、我々国会議員、静めます。しかし、いまだかつて、いまだに三増三減、二増三減という案がほうふつとして出てきて消えないというこの実態、これについて、勧告の内容ができが悪いからであります。そのことについて大臣の所見を伺います。
片山国務大臣 もう釈迦に説法ですが、選挙制度は百点のものはないんですね。その時点の、特に国会の合意でいろいろ決めてきた、こういう経緯がございまして、そういう意味では、今回の勧告も私は百点だとは思っておりません。大変な努力をされたことには審議会の委員の皆様に感謝いたしますけれども、百点ではない。
 そこで、例えば二倍を超えているのがあるじゃないか、九つも。あるいは今、金田委員御指摘の、生活圏を切っているじゃないか、そういういろいろな御意見の上で、それを補正する意味で、二増三減だとか三増三減だとか、そういう御検討がなされているんだと私は考えております。百点じゃありません。
 しかし、審議会としては最善のものをつくる努力をしてきた、ここは政府としてはそれを尊重せざるを得ない、こういうことでございますので、先ほども言いましたが、国権の最高機関であります国会において、各党各会派で十分な御議論を賜りたい、こういうふうに思っている次第でございます。
金田(英)委員 個利個略でないのであります。私の地元事情をお話しさせていただきたいと思います。
 留萌支庁、宗谷支庁、上川支庁の旭川を除いたもの、これが北海道七区という選挙区であります。この地域は、明治以来一体の生活圏として、いろいろな会合でも道北圏として、北海道総合開発計画の中でも道北圏というエリアとして開発計画がつくられ、そして関係市町村が連携をとってきた、そういった地域であります。その地域を三分割して隣近所につけられますと、まさに生活圏そのものが壊れ、文化圏が壊れるのであります。
 歴史的にずっと営々としてきた……(発言する者あり)明治維新もそうです。一体の……(発言する者あり)変なことを言うから、忘れちゃうじゃないですか。そういったことでありまして、生活圏が壊れてしまう、こういったこと。
 また、つくった選挙区が、勧告された選挙区が、北海道新十二区と申しますのは、知床の果てからずっとオホーツク沿岸を通って稚内まで来て、そして利尻、礼文島を含む、何とその距離六百キロという大選挙区でございます。六百キロといいますと、東京から新幹線で新神戸まで届くという、膨大な選挙区をつくり上げて勧告したのでございます。
 生活圏を壊し、そしてまた、地域の一体感がないところに組み込まれるわけです。宗谷管内、稚内市の皆さん方は、全然関係のない、今まで交流のなかった網走の人方と、あるいは紋別の人方と交流しなければならないということになるのでございます。まさに、そういった地元の事情というのを全く無視した勧告内容になっているのであります。
 また、留萌支庁管内は空知支庁管内にくっつけるという勧告でもあります。これについても、生活圏、今まで一緒だった歴史的な事情からいっても全然違う生活圏に組み込まれる。文化圏、生活圏を壊してまで、ちゃんと三十三万という人口を抱える、そういった選挙区でもございます。
 そういったことで、この北海道のマイナス一というのは、どうしてもその立法趣旨からしてもおかしいのであります。間違っているのであります。私は、この勧告が、はっきりとここは立法趣旨に沿わない勧告であるということで、はねつけなければならないと思っております。
 皆さんの、先生方の真剣な御議論、学者先生がつくったものだから、もう我々は議論できないんだということではないはずであります。どうか、私はマスコミの皆さん方にもしっかりと、勧告をいじったら批判するぞということがあるかもしれません。しかし、それは、やはり間違いは正すという我々の立法府としての機能を全うしたことになるのであって、必ずしも勧告、審議会が絶対的に正しいんだということでは私どもはないわけであります。
 具体的にこういった一、二の例を引きながら議論をさせていただきましたので、どうか先生方のこれからの御議論の中で、修正には時間がかかりません。今ある法律のその部分をただ削るだけであります。何も時間がかかる、間違ったところ、間違いを正すのにはばかることなかれでございます。そういったことでございますので、何としても、もしそれで五増五減でいいというのであれば、どうぞ私の体の上を乗り越えていってください。私は必死になって、地域の皆さん方を守るためであります。地域の選挙民の皆さん方が各議会でこうやって、この五増五減には反対だというふうに決議させていただいているのでございます。どうか、そういった国民の声をしっかりと踏まえた中で、正当な法律改正になるべきことを良識ある先生方にお訴えしながら、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
赤城委員長 次に、佐藤観樹君。
佐藤(観)委員 民主党の佐藤観樹でございます。
 五増五減案が出ておりますけれども、それを決めました小選挙区画定審議会、この法案の提案理由を申し上げ、かつ成立をさせたのは私が自治大臣を仰せつかったときでございます。そして、具体的にこの答申を出したのは野中広務自治大臣でございます。そういう意味、立場から、私は、責任を感じつつ、かつ内心じくじたるものを持って質問をいたします。
 今回の改定は、皆さん御承知のように、最大の人口格差が前回が二・五七三倍から二・〇六四ということで縮小したこと、それから、二倍以上を超える選挙区が九十五小選挙区から九に減ったこと、そのことにつきましては評価をし、今、金田委員からもいろいろと御質問がございましたが、ああいう要素を大変苦しい中を選択してやっていただいた審議会の委員の方々には心からその御苦労に敬意を表します。
 ただ、私が内心じくじたると申しましたのは、結果が、残念ながら二倍以上を超える選挙区が九つまだ残っておることであります。
 そのことに触れる前に、今のお二人の前の質問を聞いておりますと、何か、今度の五増五減を初めて答申を出したような感じで言っておりますけれども、これは、区画定審議会法及びあらかじめ公にしております作成方針というのが、具体的に出る前に審議会から出ているわけですね。その了解のもとに、この前の案も、野中大臣時代の案も出、現在の五増五減もできているわけでありまして、今回の場合には意図的に何か新しい作業をしてやっているわけじゃない、こういう経過ですよね。大竹さんでもいいし、大臣。
大竹政府参考人 今回、区割り審議会が、具体の区割りの作成に当たりましては、ただいまお話がございましたように、あらかじめ区割りの作成方針を定めまして、その中で具体的な基準を設け、それによって作業が進められたところでございます。
佐藤(観)委員 したがって、国会でこの法律が通り、そして、国会の人事案件として審議会の委員が決まり、それに任せることをお互い当時いた国会議員は全部了承の上にこの五増五減案ができて、御苦労を重ねて作業をしていただいた。それが五増五減であります。
 確かに、細かくいろいろ、その議員の立場に立ってみると、いろいろ言いたいことは私とてあります。正直言って私とてありますが、片山大臣が言われますように、百点満点ではないが、いろいろある要素の中で、その重要度を考えて、この五増五減案が答申をされた、大臣に答申をされ、そのまま国会の方に提出をされた、こういう経過でございます。
 私が内心じくじたると申しましたのは、この法案を出した当時は、皆さん、思い出していただきたいのでありますが、中選挙区制であります。中選挙区制の委員の方々が選出された議会に、この法案は当時提案されたわけであります。したがいまして、その前に中選挙区制で何度も何度も定数是正ということをやり、そのときは、一票の平等の格差是正ということと同時に、片方では、過密過疎を配慮する、そういう国会の決議もございまして、その延長線上として、残念ながら、残念ながらと言っちゃいけないな、自分で提案理由を、残念ながらと言ってはいけませんが、内心じくじたる思いというのは、この区画定審議会法の第三条の一項に、二倍以内を基礎とするということが書いてあります。基礎ということが書いてございます。この字を入れざるを得なかったこと。
 それから、その第二項にございますように、四十七都道府県全部一名ずつ配ろうと。それは、中選挙区制で出られた方々から見て、自分の県の選挙区が大幅にその際減ってしまうということはやはり国民的な合意を得にくい。当時は政治改革政府と言われるぐらい、細川内閣は政治改革が第一の目標でございましたから、したがいまして、国会の了承を得るためには、そういう政治状況をバックにして、各県一名を配るということをやってきたわけでございまして、内心じくじたる思いというのはそういう意味でございます。
 しかし、私は、それから六年たって、国勢調査からいえば、この前の選挙から六年たって、考えてみますに、かねてから申しておりましたように、二倍を超える、これはいわば一人の意見はお二人に相当するということなんですよね。たまたま私と同期の高鳥先生がいらっしゃるし、今一つ席があいていますが、その隣に野中先生がいらっしゃいますが、その有権者の方々は私の選挙区の有権者の方々よりほぼ二倍の権限を持っているということが、この格差二という意味なんですよね。
 したがいまして、これは民主主義の原点から、先ほど細田先生も言われましたように、憲法の問題の以前の問題、日本の国会の民主主義というのはそのぐらいの程度なのかねという民主主義の土台がまさにはかられていることである。
 それから、まさに半分しかいわば発言権がないということは人権問題である、国民の人権、そして民主主義の基本であるところの人権問題である、したがって、これは限りなく一に近づけるべきであるというふうに私は考えておるわけでございます。当時の状況と現在とでは政治状況が変わってきたわけでありますから、この区画定審議会法も、各県に配るのをやめ、それから、ほぼ二倍を基礎とするという基礎ではなくて、二倍以内にするというふうに本来すべきこと、これが我々に課せられた、後世にまた残すべき責任ではないか、私はこう思っておりますけれども、大臣、いかがでございますか。
片山国務大臣 現在の選挙区画定審議会法は、まさに佐藤委員が自治大臣のときにできた。あの中に、今言われましたように、基本としてとありますですね。それと、各都道府県一つずつの定数を配分する、こういうのが決まったわけでありまして、私は、当時の状況で、大変な議論をされてああいうことになった、こういうふうに思っております。
 そこで、あれからもう何年もたったではないか、どう考えるかと。これは、やはり両論成り立ちますね。私はやはりそう思います。
 全部が一になるということは理想です。しかし、いろいろな状況から、選挙区を決めて定数を配分していく上で、完全に一になってしまうということはかなり至難のわざでございまして、佐藤委員が言われるできるだけ一を目指すというのは正しいと思いますけれども、そこに行くまでにはまだまだもう少しいろいろなことがあるのではなかろうか、こういう気がいたしますし、各都道府県均等に一の定数を配分するというのは、今の都道府県制度が、それぞれ、東京都のような人口の多いところも鳥取県のような人口の少ないところも同じような都道府県としての地位を与えておりますから、それを尊重するのは一つの考え方でございます。
 人口の多寡にかかわらず、都道府県を一つの単位と見て発言権を与えていく、これも私は一つの考え方だろう、こう思っておりまして、この辺はどうか国会で十分な御議論を賜れば幸いだ、こう考えております。
佐藤(観)委員 確かに、この区画定審議会というのは、内閣府の下にありまして、実務的には総務大臣の責任になっておりますが、本来、これは我々国会議員に課せられた最大の責任でございまして、国会を構成するのは国会議員でございますから、あるべき民主主義の姿、権利というものが十分保障される制度にすべき、これは我々の責任だと思っております。
 確かに、もう一つ私が言い落としておりますのは、その三条の二項で言いますように、完全に一に近づけるためには、非常に厳しいけれども、現実に、今度の中には、例えば江戸川区は事務所単位ということで選挙区割りをやっていますよね。それから、練馬区の場合には出張所単位で選挙区の線引きをやっているし、大田区の場合には特別出張所というそれごとにやっているわけですよね。一般市の場合にも、松戸市は支所というところで、支所単位に選挙区の区割りをやっているわけであります。
 そういうことからいいますと、私は、できないことではない。あるいは、どこでも大抵合併してやってきたわけですから、日本の今の三千三百二十幾つの地方自治体というのはやってきたわけでありますから、そういう歴史的な経緯なり、まさにいろいろなことを考慮していけば、それはできないことではないということも私はつけ加えておきます。
 それで、先ほど金田委員からも御指摘がありましたように、皆さんのお手元に各県別の今度の改正の問題、現在の問題、それから三百で割った場合、つまり、各県一名ずつ割り振らないで、小選挙区の数でございます三百で割った場合の数字が書いてあります。バッテンをつけましたのは、別に悪いことをしたからバッテンをしたんじゃなくて、ここは本来減らなくてもいいじゃないか、ここはふやさなくてもいいじゃないか、そういう意味で、バッテンがついているのでございます。
 北海道の場合には、確かに、金田委員が言われましたように、本来、三百で割れば、今度の法案のように、五増五減案のように十二にしなくて、十三であります。
 それから、埼玉県の場合にも、今度は十四が十五とふえておりますが、本当の、三百で割れば、これは十六でございます。
 それから、千葉県の場合には、今度の案では十三ということになっておりますが、千葉県は十四でございます。
 東京は、今回は一応触れていませんけれども、三百で割れば、二十五ではなくて二十八でございます。
 神奈川は、十九が二十、これは間違えたかな、ちょっと待って、神奈川は二十ですね。十八が二十であります。失礼いたしました。
 静岡県の場合にも、後からまた質問があると思いますが、八が九であり、それから滋賀県の場合には、今度は四、一ふえることになっていますけれども、三百の場合には三でございます。
 それから、最後の沖縄県は、今度は三が四になることになっておりますが、ここは三になるのであります。
 金田委員の言われた矛盾というのは、何で北海道が減らされるのか。それは、三百から四十七引いた、つまり、第三条の二項を使って、三百から四十七引いた二百五十三で割るから、数字のちょっとした差で議席が減るのであります。冒頭私が申しましたように、そういう政治状況だったものですから、各県一名配分をいたしましたけれども、しかし、本来は、これは三百小選挙区に割るべきであるというふうに私たちは考えます。
 総務大臣に答えを求めるのは何かと思いますけれども、いかがでございますか。
片山国務大臣 先ほども少し申し上げましたが、四十七を引かずに三百で単純に人口スライド、これは前からそういう議論があったわけでございまして、それはそれで私は一つの立派な考え方だと思います。
 また、その四十七分けるというふうにしたのは、先ほども言いましたが、我が国の今の統治構造といいますか、ちょっと大げさでございますが、今は都道府県単位ですべてのものが、行政が動いている、そういう仕組みになっておりますので、大きかろうが小さかろうが、北海道にも東京都にも鳥取県にも同じ発言権をまず確保して、その上で人口だ、こういう考え方もあろうと思います。
 アメリカは、上院は州の大小にかかわりなく全部二ですよね、ハワイもカリフォルニアもニューヨークも。ところが、下院の方は人口スライドでございまして、そういうことで、私は、折衷した案を今の定数配分でおとりになったのではなかろうかと考えております。
佐藤(観)委員 大臣もいみじくも言われましたけれども、各県平等。交付税なんか、その他いろいろ違いますけれども、基本的発言権としては平等になっているわけですね。
 それで、今度のというか、これは先ほど言いましたように、当時、野中自治大臣のときの作成方針と変わりないのでありますが、まず、平均値の四十二万三千六十四の三分の二と三分の四で幅をつくった。その次に一番大事なのは県ですよね。県にまずどれだけの議席を配分するかというのがその次に一番大事な作成方針でありまして、このことも私は当然だと思うんです。
 そういう面からいいますと、逆転県になるような、数が減ったり、あるいはふやさなくてもいいのにふえているというところが出てくる、そのもとの原因は、この三条の第二項のことがあるからでございまして、私は、その意味で、県の減らさなくてもいいところが減ったり、あるいはふやさなくてもいいところがふえたりするもとというのは、四十七を各県全部一つずつ配っているから、みんなの納得が得られない。我が党が法案をそのために出しているということであります。それぐらい県というのは、そういう意味で非常に重要であるということであります。
 次に、前の金田委員からもお話がございましたが、いわゆる三増三減案でございます。先ほどちょっと私、触れましたけれども、これは何か意図的に審議会がつくったのではないんですよね。国会が審議会法を、衆参両院を通って、審議会の委員を国会で決め、そしてその審議会の委員、国勢調査がございましたから、審議会が自動的に審議を始めて、それが一年以内に国会に、昨年の十二月十九日に答申を出してきたということでございます。
 それから、作成方針についても、ここはこうします、こっちの選挙区は、こっちの県はこういうふうにしますなどということではなくて、全国一律に設けられる作成基準というものをあらかじめ公にして出したものなのであります。したがいまして、これはもうくどくど言うまでもありませんけれども、この案を尊重しないということは天につばすることでございまして、すべてこれは国会が決めて、細部については審議会に任せたということなのでありまして、これは尊重義務が我々国会議員にはあるのであります。
 そういうことからいいますと、立法府でつくった審議会が出してくる案について、立法府の中でそれを認めないということは、法治国家からいって、私たちは認めるべきことではないというふうに思います。これも総務大臣に聞くのもいかがかと思いますが、一応御意見をお伺いいたします。
片山国務大臣 この審議会の性格あるいは勧告に至るまでの手続等は佐藤委員の言われたとおりでございまして、仕組みやこういう結果については、立法府で決めたといったら決めた、私もそう思います。そういう意味では、これは政府としては尊重するのが当然でございますし、立法府でもそういうことを念頭に置いていただく必要があるんではなかろうか、こういうふうに思っております。
佐藤(観)委員 それと、今、片山大臣も市町村合併について、市町村合併特例法を設け、あれは片山さんの時代だったかその前の大臣の時代だったか、いずれにしろ、前の大臣のときでしたか、十七年の三月までに各議会で合併を承認したものについては特例が設けられている。したがって、平成十七年の三月になりましたときには、三千三百余ございます市町村は、今いろいろと協議になっているのは三分の二、約二千が協議の対象、協議を始めているということのようでありますが、それが全部完成するかどうか、かなり時間が迫ってきておりますから、その結論はわかりませんが、いずれにしろ、新しい形の地方自治体が、最終的に幾つになるかわかりませんが、平成十七年三月にはできるわけであります。
 そして、次の国勢調査、これは簡易調査と言っておりますが、十七年の十月に行われるわけですね。これは簡易調査であります。区画定審議会法の第四条の二項には、「前項の規定にかかわらず、審議会は、各選挙区の人口の著しい不均衡その他特別の事情があると認めるときは、第二条の規定による勧告を行うことができる。」ということになっておりまして、必ずしも十年に一遍ではなくて、この第四条の第二項は、市町村合併なり、あるいは何か特別なその他の事情があったときには勧告をすることができる、それは自主的に区画定審議会が勧告することができるというふうに理解をしておるわけでございます。
 恐らく、片山総務大臣がハッパをかければ次の市町村合併というのはかなり進むであろうということを考えますと、平成十七年の十月にいわば公表されるわけであります。それからまた作業を始めるということでございますので、やはり大きく変わる状況ではないかというふうに考え、それまで片山総務大臣がいらっしゃるかどうかは別にいたしましても、これはいわば自主的に画定審議会が動き出すことでありますから、総務大臣にお伺いするのもいかがかと思いますけれども、国会議員の一人として、責任ある立場にある総務大臣としては、私はこの平成十七年の簡易調査をもってしても不均衡の是正はすべきであるというふうに考えておりますが、いかがでございますか。
片山国務大臣 今、佐藤委員が言われましたように、市町村合併が全国的な大きな流れになっておりまして、今、市町村が三千二百十八あるんです。それを千ぐらいを目指して、こういうことでやっておりまして、約七割の市町村が協議会や研究会をつくって合併の検討に入っていただいておりまして、私は、かなり今の状況からいうと進むのではなかろうか、こういうふうに思っております。
 そうしますと、平成十七年三月で特例法が切れますから、その時点で一応市町村の再編成ができる。そうなりますと、行政区画がかなり変わってくるのではなかろうか。人口がそれによってどう異動があるか定かではありませんけれども、今、委員が言われましたように、四条二項の状況の変化でということには該当する可能性がかなりある。そういう場合に、審議会が自主的な判断でいろいろ御検討して勧告する、こういうことも私は十分あり得るな、こういうふうに思っておりますが、いずれにせよ、審議会の御判断でございます。
佐藤(観)委員 この区画定審議会法が成立をいたしました平成六年の十一月二日、このときに、衆議院の政治改革特別委員会では附帯決議を付しているのであります。
 衆議院議員の小選挙区の区割りを定めることにより、ここに政治改革関連法は施行の段階を迎えることになるが、政治改革は、ここにとどまることなく、引き続き推進する必要がある。小選挙区の区割り及びその他の事項について、それぞれ次のとおり所要の措置を講ずるものとするということで、一項目めは、小選挙区間の人口の格差について、衆議院議員選挙区画定審議会設置法において、二倍以上とならないようにすることを基本とするとされているので、今後審議会が改定案の勧告を行うに当たって、小選挙区間の人口の格差ができる限り二倍未満になるように努めるものとすること。また、各選挙区の人口の著しい不均衡その他特別の事情が生じたときは、審議会は、十年ごとに行われる国勢調査の結果を待つこともなく、五年目に行われる国勢調査(簡易調査)の結果により、小選挙区の改定の勧告を行うものとするという附帯決議までつけてあるわけであります。
 そのことも踏まえ、かつ本委員会におきます三月二十六日の内田参考人の御意見でも、これは参考人の御意見でございますけれども、答弁の中で、同法、つまり区画定審議会法の「第四条第二項の規定によりまして、十年後の国勢調査を待たずに見直しが行われることも考えられるのでございます。」ということを当委員会でも言われておるわけでございます。
 いずれにいたしましても、私は、先ほども申しましたように、我々の一票の格差是正ということは、背後におのおの有権者を持っておりまして、有権者の権利をお互い全国民一緒にしていくか、その政策の中で全国的な均衡ある発展をどうするかとか、あるいは過疎過密をどうするかとか、そういった問題は別の次元の政策として考えるべきことであって、あくまで選挙法といたしましては、一票の格差をできる限り一に近づけていくということが必要であるというふうに思っておるわけでございます。
 最後になりましたが、先ほど一言言い落としました。自民党さんの、五増五減のお話につきまして、金田委員からかなり詳しく御質問がございました。これによりまして、静岡なりあるいは北海道なりの減るべきところを減らさない、それから、ふやすべきと答申になっております沖縄と滋賀についてふやさないということを、案といたしましても、二倍以上を超えるところが七が九になるだけなんですね、自民党さんの……(発言する者あり)失礼しました、九が七になるだけでありまして、これが二倍以下に全部がなるということではないわけでございます。世間では、何か自民党さんの三増三減をやりますと、二倍以下に全部がなるように受け取っている向きがございますけれども、それは事実とは違いますので、そのことをつけ加えさせていただきまして、私の質問を終わります。
赤城委員長 次に、山名靖英君。
山名委員 公明党の山名靖英でございます。質問をさせていただきたいと思います。
 選挙制度というのは、まさに政治に対する国民の信頼をかち得る上での基盤ともいうべき制度でありまして、一方で、議会制民主主義を維持、また発展させる重要な役割を持っている、このことは周知のとおりでございます。とともに、この選挙制度は、我々議員にとっても一方での生き残りをかけたものであることは、当然、認識されるところであります。しかし、最も大事なことは、国民の信頼をかち得る基盤ともなるべき制度が、国民にとってわかりやすく透明性があり、また合理的である、そして公正、公平、中立でなきゃならない、これが最も大事な視点でなければならないと思います。
 そういう観点から、今改正案について若干の質問をさせていただきたいと思います。当然、現行制度の持つ問題点といいますか、これがさきの国勢調査によって人口変化による是正を余儀なくされたというところからの勧告案が出されたわけであります。一つ確認をしておきたいと思いますが、当然この小選挙区比例代表並立制という制度が導入された際に、一方でその問題点も与野党から指摘をされたところでありました。
 そこで、いま一度ここで、現行制度の持つ問題点、矛盾点、これをどう認識され、そして、今回の改正案がその問題点についてどのような是正策をとろうとしたのか、この辺の認識について、まず大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
片山国務大臣 現在の我が国の制度は小選挙区比例代表並立制でございまして、小選挙区制と比例代表制を接合しておる、こういう制度だと認識いたしております。
 小選挙区制につきましては、よく言われますように、二大政党制を志向する、政権の選択が明確な形で示される、したがって、政権の交代の可能性も強い、こういうことが言われる反面、少数意見が選挙に反映されにくい、あるいは候補者選択の幅が狭い等の問題点が指摘されております。
 また、比例代表制につきましては、鏡のように民意を反映するけれども、乱立する、各党、少数勢力も議席を得て乱立する、小党分立になって政権が不安定になる、こういうことが一般論として言われているわけでありまして、両方の短所を補おうということが現在の並立制だ、こういうふうに考えておりますが、世界にも余り例のない制度でございまして、長所だけがうまくジョイントされればよろしゅうございますけれども、逆の場合には、これはこれで問題になる。
 こういうことでございまして、そういう中で、ぜひ今の平等選挙、投票価値の平等ということを念頭に補正を行うということが、今の選挙区画定審議会ですか、それの定数の見直しだとか、選挙審議会自体がやるわけじゃございませんけれども、仕組みはもう法律で決まっております。それに基づく選挙区定数の配分や選挙区割り等を審議している、こういう仕組みだ、こういうふうに思っておりまして、いろいろな考え方はありますけれども、いずれにせよ、私は何度も言いますが、議会制度の根幹にかかわるわけでありますから、選挙制度については、基本的には各党各会派で十分な御審議、御検討を賜る、それで適正な結論を得ていただくことが正しいのではなかろうかと思っております。
山名委員 そういういわば理念、法体系のもとに今回の改正がなされたわけであります。しかし、先ほどからも出ていますように、決して当初の目標といいますか、理念に基づいた改正について、どうかなと首をかしげたくなるような内容であることもまた事実であります。
 先ほどから出ていますように、いわゆる五増五減案、これは、二倍の格差是正を目指してはおりますものの、決して格差是正には至っていない。もう数値的なことは差しおきますが、基本的に二・〇六四倍、こういうことで、まだ二倍を上回っているというのが実情でございます。
 画定審議会設置法の中には、一票の格差は二倍未満を基本とするということ、それから、これに行政区画や地勢や交通、こういった事情を総合的に考慮して合理的に行う、こういう規定があるわけでありまして、当然今回の改正もこういった二つの基準をもとにして検討されたというふうに認識をされておりますけれども、結果的に、そこで言うような二倍以上の選挙区が解消されなかったという事実は残っているわけであります。
 しかし、一票の格差是正のための努力という面では評価できるのではないか。現行制度の中では九十五選挙区あった一票の格差二倍の問題が、今回は九選挙区に激減した、改善をされたということについては、パーフェクトではないけれども、一定の評価は下せるんじゃないかと私は思っております。
 そもそも、この一票の格差の問題を本当に解消しようと思ったら、まさに大幅な区割りをやらなければできないわけでありまして、これは、ある面での混乱といいますか、こういうことにもつながるし、制度そのものの安定性という問題からも大きな問題が残ると思っております。ただ、我々の責務としては、どこまでも、法のもとの平等、いわゆる一票の不平等を解消する立法府としての努力はこれからも続けていかなければならない、このことは当然であろうかと思います。
 この一票の格差の問題は先ほども論議されましたように、今の制度で、今の内容でやる以上は、もうどこまでもついて回るんじゃないか。論議がありましたように、まず都道府県に一ずつ配分をしていくというこの配分方法、いわゆる完全な比例配分になっていないわけでありますから、こういうところからの原因というものがあると思っております。そういう意味でも、それを三百選挙区に完全比例配分しようと思えば、これはもうまさに区割りを今以上に大幅に根本的にやり直す、これ以外にないわけでありまして、一層複雑な区割りを余儀なくされるというデメリットもあることも、我々は認識をしなければならないと思っております。
 そこで、今回残念ながら九選挙区で二倍を超えるところを残してしまった、その辺の原因、理由についてどのようにお考えなのか、お聞かせいただきたいと思います。
若松副大臣 委員の御質問に対するお答えでございますが、先ほどから議論になっておりますいわゆる審議会におきまして、今回の区割りの見直しを行うに際して、「区割りの改定案の作成方針」、これは何度も出てきたお話でございまして、これに基づいて取りまとめた結果が今回の内容でございます。そして、その結果として九選挙区について格差二倍以上になった、このように承知しております。
 そこで、この審議会では、これらの格差二倍以上となった選挙区について、三つの観点から、それ以上の見直しは必要はない、そのように判断したと理解しております。
 まず一点目は、市区につきましては、基礎的自治体であることからできるだけ分割を避けるべきであること、二点目としましては、仮に分割するとしても、これらの選挙区についてのみ異なる新たな基準を設けることは適当ではなく、かつ困難であると考えられる、三点目が、市区の分割を避けようとすればするほど、近接する多数の選挙区を含めた大幅な見直しが必要となる、こういった観点からその見直しを行わなかった、このように承知しております。
 なお、平成八年及び十二年の総選挙に関します最高裁判決に照らしましても、憲法上許容されるものという見解が審議会委員から示されているところを付記させていただきます。
山名委員 今御答弁がありましたけれども、極力市区の分割を行わない、こういう原則があるわけであります。ところが、実際、今改正案の中ではその市区の分割については、二十都道府県に及び、六十八選挙区において改定されるということになっておりまして、分割市区が十六あるわけであります。これだけ多くの選挙区での異動というのは選挙制度そのものの安定性に欠けるのではないか、こういう思いがあります。
 加えて、先ほども議論がありましたが、一方で市町村合併が大変なスピードで、平成十七年三月の特例法切れをにらんで今進められております。七割近い全国の市町村が何らかの形で市町村合併の協議を進めようとしておりますが、こういう状況の中での今回の選挙区の見直しというのは、こういう地方分権時代、市町村合併という構想を一方で阻害している要因になりはしないかというおそれを私は持っているわけであります。
 例えばさいたま市、ここでは、さきに合併をしたわけでありますが、今回の改正案では、そのさいたま市は、埼玉一区、五区、十五区と三つにずたずたにされるわけであります。せっかく合併して、市民が結束をして新しい町づくりをという中で三区に分断されてしまう、こういう事態も一方であるわけでありまして、その辺のいわゆる分割市区をめぐる問題点、これをどのように御認識されているのか。市町村合併への阻害要因とならないのか、その辺についての御所見をお伺いしたいと思います。
若松副大臣 山名委員より二点の御質問かと思いますが、まず一点目の、今回の六十八の選挙区の異動についてでございますが、審議会におきましては、何といっても投票価値の平等という要請をいかに実現するかということとあわせて、選挙区の安定性を考慮しつつ最大限の努力を行うことによって最大格差を縮小し、格差二倍以上の選挙区の数を縮減する等、審議会設置法で規定されている作成の基準に従って、最善と考えられる改定案を取りまとめられた、そのように承知しております。具体的にはそのためにおおむね一道県あたり三つから四つの選挙区について改定されておりまして、このような改定はかなり努力をされた適当なものであると理解しております。
 また、市区の分割は原則として行わないということでありまして、一定以上の人口を有する市区や飛び地を解消する場合に、一定の要件に該当する場合に限って例外的に分割する、そのように承知しておりまして、投票価値の平等という要請との調和を図りつつ選挙区の安定性を考慮した内容になっているもの、このように理解しております。
 それと、市町村合併との関係でございますが、ちょうど私の選挙区が上尾市を含んでおりまして、隣がさいたま市で今、委員の御指摘のところでございます。そして、市町村合併の推進に伴いまして、この審議会におきましても知事意見の聴取を行って、さまざまな地域の実情等の把握に努めてきたわけでありますが、当然、今回の区割り画定に際しては市町村合併の動向も十分考慮されたものと承知しております。しかしながら、格差縮減のため、やむを得ず郡を分割したところもありまして、結果として、必ずしも地元における合併論議に合わなかった、そういったところが幾つか生じたのも事実でございます。これは何度も申し上げておりますように、投票価値の平等の要請を達成するため、同審議会においてやむを得ない判断であると理解しております。
 いずれにしても、今回の法案は、政府として審議会の勧告を尊重し、そのまま法案化したものでございまして、何とぞ御賛同の方をよろしくお願いしたいと思います。
山名委員 そもそも論としまして、先ほども言いましたが、この制度が導入された当初のねらいというのはいろいろありました。中選挙区から小選挙区比例代表並立制になったわけでありますが、金のかからない選挙をやろう、二大政党制の実現、あるいは政権交代を可能にする、それから政策本位の選挙にする、いろいろなねらいを持ってこの制度が導入されたわけであります。
 しかしながら、現実的には、金をめぐるそういうものは依然として存在しておりますし、それから政策本位の選挙というところも至りませんし、まして二大政党制、こういうねらいどころか、むしろ多党化してきている。したがって、こういった制度導入の際のこの制度における期待、これが完全に近いまで崩れてきているわけであります。
 多党化した中での小選挙区制というのは、当然これは議席に反映しない死票を生むことは必至でありまして、この制度のもとで過去二回総選挙をやっておりますが、やはり五〇%近い死票を生んでいるわけです。ある面で五〇%を超えている。この過去二回の現制度のもとにおける選挙結果というのは、一票の格差問題のみならず、選挙制度そのものの存在というものを問い直し、抜本的な改正の必要性を露呈しているのではないか、私はこういう認識を持っているわけであります。
 先ほどからも種々論議がありまして、五増五減、三増三減、二増三減、あるいは完全比例配分、いろいろな論議をこの制度のもとでやるわけですけれども、これはもう、まさにびほう策であって、根本的な議会制民主主義を担保する国民の政治、選挙に対する信頼性をかち得るだけのそういった改革ではないと。これはいつまでも際限なくこんな論議を続けるわけでありまして、今回に限って言うならば、格差是正、こういう課題に一歩前進したことは評価をいたしますけれども、この制度の持つ根本的な欠陥というものを解決するに至っていない、このことを私は強く主張したいと思います。
 私たち公明党も、かつてからこの現行制度の持つ問題点を指摘いたしまして、やはり基本的には定数三を原則とした百五十選挙区、イコール四百五十、これによって定数削減とともに、死票をなくする意味からも一票の平等性を担保できる制度として、そういった中選挙区制を提案いたしているわけであります。
 この現行制度を導入した際、一斉にマスコミ等の世論調査等が出ましたが、国民の皆さんの思いは、こんな制度はだめだ、やはり次の選挙は中選挙区制の方がいい、こういった世論調査、六〇%以上の声がそういう形で出ておりますし、マスコミも一斉に現行制度に対する批判をしたわけであります。たしか、自民党の中にも、あるいは社民党の中にも次は中選挙区制度、こういう声もあったわけであります。
 ともかく、この制度の持つ欠陥をなくし、先ほど申しましたように、広く国民の皆さんが公正公平に議会制民主主義を担保できる制度にするためにも、私は、第九次選挙制度審議会を早期に設置して、抜本的な選挙制度改革に我々立法府としても全力を挙げるべきだ、こういうふうに思っておりますが、最後にその辺の問題に対する御所見を大臣にお聞きして、終わりたいと思います。
片山国務大臣 何度も同じことを申し上げますが、選挙制度に完全なものはございませんので、常に、あるべき制度ということで見直すべき点があれば見直していく、こういうことが必要ではなかろうかと思います。
 先ほども御答弁しましたように、与党三党の話し合い、合意に基づいて、総理から五月の中旬に、第九次選挙制度審議会の設置の検討をしてほしい、こういうお話がございましたので、この法案が成立すれば第九次審議会のスタートに向けての準備に入ります、こういうことを申し上げたわけでございまして、現在もそういうつもりでいろいろ検討いたしておる段階でございます。
山名委員 以上で終わります。ありがとうございました。
赤城委員長 次に、武山百合子君。
武山委員 自由党の武山百合子でございます。
 きょう、私が質問することになりました経緯もちょこっとお話ししたいと思います。
 私は、埼玉県の小選挙区十三区、春日部、岩槻、蓮田、久喜という、人口約五十五万の大きな選挙区でございますが、その中の約八万という岩槻市が、実は、政令指定都市のさいたま市の方に今回の区画の方でくっつくということで、岩槻市という町は、江戸城を築きました太田道灌の居を構えたところで、明治の時代に上野から東北本線が出発しまして、岩槻を通って東北の方に行くというときに、時の豪農が、汽車が走ったらカヤぶき屋根の屋根が燃えるということで、反対に遭って、それで東北本線は岩槻を通らないで結局、大宮の方を通って、埼玉県の県庁所在地、浦和ですけれども、新幹線がとまらない浦和、そういう埼玉県でございますけれども、私の地元のことはまた後で詳しくお聞きする前に、早速、大枠のところで、まず、衆議院議員の定数の削減ということでお聞きしたいと思います。
 まず、地方議会においても定数削減が進みつつあり、民間企業においてもリストラなどが行われている現状を考えますと、国会もみずから国会議員の定数を削減することが必要であると思います。私たち自由党は、衆議院の定数を将来的に四百にすることを主張しておりますけれども、今後の望ましい国会議員の定数のあり方について、大臣から御見解をお聞きしたいと思います。望ましい国会議員のあり方という視点でお願いいたします。
片山国務大臣 今、委員からお話がございましたが、なるほど、国家公務員、地方公務員は定数削減を計画的にやっております。特に国家公務員の場合には十年間で二五%削減しよう。独立行政法人の移行の分も含めますから二五%でございますけれども、かなりな削減をやる。地方公務員は同じでございますし、特に地方議員の場合には、市町村会議員さんの定数削減がかなり進んでいますね。都道府県も進んでおりますが、市町村ほどではございません。民間も経営合理化でリストラをおやりになっている。
 こういう中で国会もどうか、こういうことでございますが、御承知のように、平成十二年に衆議院の方で比例の定数を二十人削減、それから、参議院の方で比例と都道府県選挙区合わせて十人の削減、こうやってまいったわけでございます。
 この定数問題というのは各国でもばらばらですね。大きな国でもそう多くない定数のところがあるし、小さな国でもかなりいる、こういうことでございまして、国民がどういうふうなことで納得されるかということも一つあると思いますけれども、四百人がいいか何百人がいいか、今ここで数字的に私が申し上げるような立場にもないし、特にそういう意味での意見もございませんけれども、全般の状況、国民の意向等を背景に、やはりこの国会の中で各党において十分な御議論を賜ることが必要ではないか、こういうふうに思っております。
武山委員 大臣の見解は議論を賜るということで、国のあり方として、国会議員の定数のあり方については議論にまつ、そういうお考えでございますね。ぜひ総務大臣として国の国会議員がこういう方向でいったらいいということをお示しできればと思ってお聞きしましたけれども、それは残念でございます。
 次に移りますけれども、自由党が与党であったとき、平成十一年ですね、十月四日に自民党と公明党との間で交わされた三党連立政権合意書というものがまずあります。
 衆議院議員の定数については五十名の削減、うち二十名については次期総選挙において比例代表選出議員を削減するという内容で、次期臨時国会冒頭において処理する。二つ目は、今、大臣からもお話がありましたように、三十名の削減ということで、これは小選挙区定数などを中心に行う、それで、平成十二年の国勢調査の結果により所定の法改正を行うということになっていたわけですね。
 このことをまず明確に覚えておるかどうか、お聞きしたいと思います。
片山国務大臣 これは各党間の話し合いでございまして、政府としてそれについて関与したとか覚えておくとかということではないので、そのことについての御答弁は、私の立場では差し控えさせていただきたいと思います。
武山委員 政府の一員であると同時に、自民党の党員でもある。やはり、自分の意見も、なおかつ総務大臣としてでも意見が述べられる委員会であってほしいと思います。非常に残念です。
 まず、このうち、二十名の比例代表定数の削減は実行されましたけれども、三十名の小選挙区を中心とした削減に関しては、もはや議論すらされていないというのが現状だと思います。
 国会議員の定数削減問題について具体的な議論がなされていないという現状を、自民党の代表としてどう思われるか、それはぜひ率直なお答えを聞きたいと思います。
片山国務大臣 私は、自民党の議員ではございますけれども、自民党の代表ではございませんので、自民党の意見を言う立場にはございません。それは御理解賜りたいと思います。
 何度も言いますけれども、議員の定数をどうするかというのは、やはり代議制、代表制民主主義の本当に根幹だと思いますね。そういうことについては、政党政治でございますので、それぞれの各政党、各会派内において十分な御検討と御議論を賜る必要があるのではなかろうか。行政府の方がこうだどうだという問題よりも、まず国会、立法府の中での御議論が先行すべきではないか、こういうふうに私は考えております。
武山委員 総務大臣であると同時に自民党の国会議員であり、政権与党を形づくっているわけですから、国民はあなたを結局代表として選んでいるわけですから、国会議員の代表として率直な意見が述べられないというのは非常に残念です。
 それでは、個人的な見解を述べていただきたいと思います。
片山国務大臣 今、総務省というのは地方自治も所管しておりますし、地方にできることはできるだけ地方にということは総理も言っておられるし、地方分権を推進する、地方をもっと強くしていく、こういうことはこの国の将来のためには必要だ、私はこう思っております。
 市町村でできることは市町村でやってもらうと。どうしてもできないことは都道府県がやる。都道府県や市町村でできないことだけ国がやる。国をもっと身軽にする必要がある。本来の、外交だとか防衛だとか経済政策だとかいろいろな、そういうことにもっと国の仕事を限定すべきではなかろうか、こういうふうに思っておりますから、そういうことになれば、今の衆議院、参議院のあり方、定数ということも当然検討の対象にすべきではなかろうか、こう思っております。
武山委員 どんなに個人的な見解を聞いても、やはり議論が、議論がというふうに逃げの一手でございます。
 それでは、自由党は、衆議院定数削減法案、つまり、衆議院選挙区の定数を当面十五削減するという内容の法案を平成十三年六月二十八日に提出いたしました。
 与党などの反対により、提出から一年余り過ぎた現在においても継続審議扱いのまま審議すらされていないのが現状なわけですけれども、この問題に対して、早急に審議入りして国民的な議論を行うべきだと考えますけれども、大臣はどうお考えいただいておりますでしょうか。
片山国務大臣 自由党から平成十三年六月に出た法案が継続審査になっていることは承知いたしておりますが、この法案の扱いは国会の中で、関係のところで決めていただく、こういうことではないかと考えております。御理解を賜りたいと思います。
武山委員 国会の中は、委員会では、やはり法案が出てきたものは積極的に真っ正面からぶつかって議論すべきだということを一言つけ添えさせていただきます。
 それでは、選挙区画の改定についてですけれども、個別の方で、埼玉県では、先ほどお話しいたしましたように、ちょうど副大臣が埼玉でございますので、地元の事情はよくおわかりかと思います。十三区から一区に移行という岩槻市、約人口八万人近くですね、その市が、さいたま市という政令指定都市にもうすぐなるわけですけれども、そこに全部、市全体が移行という案がこのたび出ております。この岩槻市では、実は、地下鉄七号線が浦和まで参りました。そして、これから岩槻に回って北の方の蓮田というふうに行く方向にお話は進んでおりまして、それと同時に、十三区の中で、いわゆる行政区が、春日部、蓮田というところで合併の問題も実は進んでおります。その合併推進が平成十七年ということで話が進んでおるわけですけれども、そうしますと、今度は選挙区と行政区というものが離れるわけですね。この点について、離れるのは困るという意見も大変あるわけです。
 それで、選挙区と違う、この点について、まず大臣からこの見解についてお答えいただきたいと思います。
若松副大臣 実は、武山先生が長年住まれたアメリカの国会議員会議がちょうど五月にございまして、その方はオハイオ選出の方でしたが、やはりこの区割り画定で、それによりまして新しい選挙区が七割になったと。やはりどこの国も、一票の格差というものを間断なく見直しているところは常にある問題だな、そういうふうに認識したわけであります。
 いずれにしても、市町村合併というのはその都度その都度地域の実情に応じて出てくるものでありまして、かつ、何度も申し上げておりますように、やはり一票の重みというもののバランス、これは常に両方をとらえての区割り画定をしなければいけないというふうに認識しております。
武山委員 そうしますと、合併自体は行政区で進んでいるわけですね。ところが、選挙区の区画の議論というのは、もちろん一票の格差ということが根底ですけれども、そうしますと、選挙区と行政区とは、結局合併問題も絡めますと、違ってきて当然だということに受け取ってよろしいんでしょうか。
若松副大臣 これも、区割り画定の際に審議会のいわゆる一つのルールがございまして、なるべく市町村を割るという形は避けよう、こういう原則があるわけでありますが、どうしてもその地域のやむを得ない事情、そういう場合もある、やむを得ない、そういったところも認識した上で、一票の格差というものをしっかりと平等化しよう、こういった議論でありますので、場合によっては、市が、市町村なりが分割しての選挙区もやむを得ない、そのような認識をしているところでございます。
武山委員 これは地元の市長さんの意見だったんですけれども、ただ単に格差二倍を基準にした区割り改正ではないか、ただ単に格差二倍を基準にしただけじゃないか、それぞれの市町村の事情をきちんと考慮しているのかどうかと。
 では、考慮しているのか、格差二倍を基準にして区割りしたのか、具体的な例を挙げていただきたいということなんですね。
若松副大臣 今、具体的な例ということでありますが、例えばさいたま市、その例でよろしいでしょうか。(武山委員「はい」と呼ぶ)
 私も同じさいたま市の隣に住む一候補者といたしまして、さいたま市が今回三つに分かれたというのは大変びっくりしております。特に、民主党さん、まずそこで三人の議員さんの頭も浮かびました、日ごろ同じ会合でお会いしている大変親しい関係でもありますし。
 埼玉県につきまして今回定数が一増になったということで、先ほどの審議会で、まず、人口最大選挙区である一区、いわゆるさいたま市が中心になるわけでありますが、ここを手がかりに見直しをしていこうということで、さらに五区、旧大宮を中心とするところでありますが、ここもさいたま市の一部をその区域としていることから、あわせて見直しを行うこととされたと承知しております。
 その際、二点ございまして、まず一点目は、一区、浦和を中心とするところでありますが、その隣接する四区、これは戸田とかがあるわけでありますが、そこにつきましては、荒川を挟んでおりまして、かつ、一つの選挙区になっている。この旧四区は、そういう意味では地理的な分割という面もありまして、以前から非常に批判が少なくないという選挙区でもありました。さらに十三区、これは武山先生のお生まれになったところの隣の選挙区でございまして、そこが人口五十五万人台と先ほど申し上げた大変大きな人口を有しておりまして、これらの一区、四区、五区、そして十三区、この四選挙区の見直しを対象にして、これを五選挙区にした、このように理解をしております。
 そして、見直しに当たっては、当然、地域の実情もできるだけ配慮されるべきものであると認識しているわけではありますが、結果として、必ずしも合併論議や地元の実情にそぐわないところが幾つか生じたところは大変残念でありますが、認識しているところであります。
 いずれにしても、審議会におきましては、投票価値の平等の要請を達成する、こういったことから考えますと、やむを得ない判断をなされたのかな、そのように理解しております。
武山委員 そうしますと、さいたま市では行政区と選挙区が一致しないと予想される地域はまず三地区で、有権者三千人出てくるわけですね。このため、さいたま市議会選挙、埼玉県議会選挙、それから衆議院選挙の選挙区がそれぞれ異なってしまうのではないかということが出てくるわけですね。これでも仕方がないというお考えでしょうか。どうぞ、これは大臣に聞きたいと思います。
 市会議員の選挙、県会議員の選挙、国政選挙、衆議院の選挙区がそれぞれ異なってしまうということが出てくるのではないかという意見があるわけですね。すなわち、三つの選挙区がそれぞればらばらになるということに対しての大臣の見解を聞きたいと思います。
若松副大臣 まず私が、さいたま市ということでかなり地元に近いところの事情でありますので、答弁させていただいて、大臣から答弁をさせていただきます。
 今おっしゃった、まさに、さいたま市の場合のいわゆる市議会選挙、そして県議会選挙、さらに国政選挙、いろいろと今、区割り画定のために大変当事者、いわゆる候補者は苦労されていると理解しております。そして、特にさいたま市につきまして、現在、今、委員が指摘したようなずれもございます。そのために、では今回この法案の修正を行うべきではないか、実はそういう議論もあります。
 それにつきましては二点問題点がございまして、まず一点は、さいたま市の政令指定都市への移行を前提としても、現時点におきましては、その行政区の区域は条例が実は必要でありますが、その条例が未制定でございます。そういうことから、画定した区域として法的に担保するものがない、これが一つ目の問題でございます。
 二つ目は、技術的な問題でございますが、現行の公職選挙法の別表というものがございまして、そこで区域の表示方法の単位として、いわゆる町、字としているわけでありますが、さいたま市におきます行政区の予定区域をあらわすためには、さらにその下位の地番等の表示を使わざるを得ないということで、地番には、土地の分筆等に伴いまして、枝番、飛び地が生じているおそれもあるほか、地番の付されていない部分もありまして、同市の行政区の区域を示す条例化の作業に先立ってその区域の範囲を責任を持って画定することは困難である。このようなことから、現在、法案の修正というのはなかなか難しいという理解をしております。
 しかし、これも知事またはさいたま市の市長からも要請がございますが、いわゆる行政区の区域が確定した後、しかるべき時期に法改正をすることは当然検討されるべきことであると理解しておりまして、そういった要請があれば、またこちらとしても検討してまいりたいと考えております。
片山国務大臣 今、若松副大臣が言ったとおりでございまして、来年の四月から政令指定市になるんです。そうすると、行政区を決めてもらうんです。この行政区が単位になりますから、それが確定しましたら、今の選挙区の不一致の問題等についても、知事やさいたま市長さんから十分意見を聞いて、何らかの調整をできる範囲でやりたい、こういうふうに思っております。
武山委員 それぞれ細かい部分ではたくさん問題点があるわけですけれども、市町村において合併の推進も片や出ていて、合併後に選挙区が変わるということも当然出てくる可能性がある。そういうことになりますと、市民の声は、それはおかしいんじゃないかということも実際に事実でありますので、これは非常にきちっと議論を煮詰めていかなければいけないんじゃないかと思います。
 半年ほど前に与党三党の衆議院選挙制度改革協議会が、衆議院選挙区画定審議会が衆議院選挙区の画定作業中にもかかわらず、大都市部における中選挙区の復活を容認することで合意したことを発表しましたけれども、これが余りにも党利党略過ぎる内容であったため、自由党や世論の強い反発を受けて撤回されたこと。また、それにもかかわらず、衆議院選挙区画定審議会が提出した衆議院選挙区の勧告案が発表された後、自民党が懲りもせずに定数二増三減試案を作成したことなども、法律で定められた衆議院選挙区画定審議会を無視してきた経緯を考慮しますと、今回の五増五減法案はまだ公平であると考えられます。
 しかし、本来ならば早急に衆議院の定数を削減して、その後、国勢調査結果をもとに衆議院選挙区画定審議会で新たな選挙区を画定すべきであるということを申し上げまして、私の質問を終わります。
赤城委員長 次に、大幡基夫君。
大幡委員 日本共産党の大幡基夫です。
 さて、小選挙区制を導入した際に、我が党は、この制度が民意を公正に反映するという、いわば選挙制度の根本基準に反するとして断固反対をしました。このときにこの制度を強行した皆さんは、政権交代、あるいは金がかからない選挙制度、同時に一票の格差の是正もその理由の一つに挙げていました。政治と金の問題でも小選挙区制の破綻は既に明瞭ですが、一票の格差の是正でも小選挙区制の破綻を明瞭にしたのが今回の区割り変更案であるというふうに私は思います。
 まず片山大臣にお聞きしたいんですが、今回、区割りの審議会は格差二倍以上にならないという基本方針を明確にしましたが、この一票の価値の平等というのは憲法の国民主権にかかわるいわば大原則だ、したがって、二倍以上の格差の是正というのは不可欠の命題であった、こういうふうに認識しているんですが、いかがでしょうか。
片山国務大臣 先ほども答弁いたしましたが、一票の格差の是正は大変重要な問題だと認識いたしております。今回の区割りにつきましては、設置法にありますように、選挙区間の人口格差が二倍以上にならないようにすることを基本としながら、行政区画、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行おう、こういうことで最大限の努力をされたわけでございますけれども、結果としては二倍を超える選挙区が九つ残った、こういうことでございます。
 我々としては、今言いましたような二倍以上にならないことを基本にしながらも、総合的な事情を勘案して最大限の努力をされた結果だ、こういうふうに思っておりまして、その点は、審議会の皆さんにそこまでやっていただいたことには十分な感謝をいたしておりますとともに、憲法上それは許容できる範囲ではなかろうかと考えておる次第であります。
大幡委員 二倍以上の格差の是正というのは、私は不可欠の命題だというふうに思うんです。
 一九九六年の総選挙をめぐって訴訟がなされましたが、九九年十一月に最高裁が判決を出しました。この判決に当たって、十四人の裁判官のうち三分の一以上の五人の裁判官がいわば違憲だというふうに判断をしたことが大きな注目を集めました。
 その判決文に反対意見が書かれていますが、こう言っています。代議制民主主義制度をとる我が国の憲法のもとでは、国会議員を選出するに当たっての国民の権利の内容、選挙人の投票の価値が平等であることは、憲法自体に由来している、国政参加の手段としての代議員選出の権利もまた、平等であるべきで、これは選挙制度の仕組みを決定する上で考慮すべき最も重要で基本的な基準だ。つまり、一票の価値の平等は選挙制度の仕組みにおいて最も重要な、基本的な基準だというふうに述べています。
 大臣、この意見について言えばもっともなことだという認識は当然持っておられると思うんですが、いかがでしょうか。
片山国務大臣 先ほども言いましたが、最大限の努力をされた結果で、二倍を超えている現状が今回の勧告によって大幅に是正されるわけでありまして、二・〇幾らという数字でもございまして、そういう意味では、私は憲法上も許容されると。
 言われることはよくわかりますよ。二倍以上にしないということが基本だということは法律にも書いておりますし、一票の価値の平等については、これは最も重要で基本的な事項である、そういう認識を持っております。
大幡委員 続いてこの意見は、この最も重要な基準に立って、議員一人当たりの人口格差が二倍を超えるときは、投票価値の平等は侵害された、つまり、実質的に一人一票の原則を破って、一人が二票、あるいはそれ以上の投票権を行使するのと同じことになる。
 この指摘についても、そういう考え方ももっともだという認識は当然お持ちだと思うんですが、どうでしょうか。
片山国務大臣 それは当然でございます。二倍ということはそういうことでございます。
大幡委員 つまり、一人が二票以上の投票権を行使するというのは、いわば憲法の要請である投票の価値の平等を侵害する、したがって、憲法違反だというのがこの五人の裁判官の意見で、最高裁の三分の一を超える五人の裁判官がそういう主張をしたということで、これは非常に重たいというふうに思うんです。
 区割り審議会が二倍以上にならないという基本方針を明確にしたのは、格差二倍以上は違憲だという認識が広範に存在している、こういうことを踏まえてのことだというふうに思うんですが、当然、こういう点も確認していいでしょうか。
片山国務大臣 審議会の先生方が、委員の皆さんが努力されたのはまさにその点だった、こういうふうに私も思っております。
大幡委員 したがって、この格差二倍以上の是正がどうなるかというのが今回の区割り変更の一つの動機で、実際やられたことは、二十都道府県、六十八もの選挙区をいじるという大規模なものでした。これだけ大規模な変更をしながら、格差二倍以上の選挙区が九つも残された。つまり、選挙制度の仕組みの最も重要な、基本的な基準が実現できなかった。このことが大問題で、結局、小選挙区のもとでは投票の価値の平等、格差二倍以上の是正はできない、このことを浮き彫りにしたのが今回の法案だというふうに私は思います。
 このことを少し具体的に聞きますが、小選挙区制度のもとで二倍以上の格差の是正を追求するとどうなるのか、この弊害が各地で深刻にあらわれている。例えば、今回の区割り案で市区分割が十六市区に及び、神奈川県の相模原市が新たに分割になりました。原則行わないというふうに決めていた市区の分割が事実上広がっているんです。つまり、二倍以上の格差の是正と、市区の分割は原則行わないという基本方針がぶつかって、結局、市区の分割は行わないという方針が崩れている。
 山形県の場合は、選挙区が一減されるに伴って新区割りで大きな波紋を呼んでいるそうです。山形県の東根市議会というところが全会一致で区割りの見直しを求める意見書を採択しているんですが、こう書いているんです。この選挙区は、「地理、歴史、気候、文化とも異にしており、人的な交流も乏しく、候補者の顔が見えない有権者の単なる数字合わせで決定したもの」。つまり、単なる数字合わせという形でもって、全会一致で意見書を採択しています。
 大臣に、こういう批判についてどのように受けとめておられるか、お聞きしたいと思います。
大竹政府参考人 山形県の選挙区割りに関しての御質問でございますけれども、山形県は、御案内のとおり定数が一減するわけでございまして、審議会におきましては、現在、山形県内の四つある選挙区の中で人口最小選挙区の三区を手がかりに区割りの見直しを検討されてございます。その結果、三区の地域特性を考慮いたしまして、この三区をおおむね旧郡単位で三つの選挙区に分割するということになったわけでございます。その結果、県全域を対象に三選挙区を設けるとなったわけでございます。
 画定審議会の審議に際しまして、各都道府県からいろいろと御意見を伺っております。この中で、平成十三年の十月に山形県の知事さんから、県内の具体の区割りを行うに際しての御意見が出されておるわけでございますけれども、この山形県知事さんの御意見は結果的に審議会の勧告の案と全く同様でございまして、そういった意味におきましては、東根の市議会はそれなりの御意見があろうかと思いますけれども、勧告が地域の実情に反するというものではないんではなかろうかというふうに私どもは理解してございます。
大幡委員 私、単なる数字合わせという批判に対してどう考えるかという質問をしたんですが、単なる数字合わせというのは、山形だけではないんですね。これは高知新聞です。高知の区割りについて「身勝手な数合わせ 区割り変更に戸惑い、憤り」ということで、高知の新聞も、今回、高知の区割りについて身勝手な数合わせだということを地元紙が一面、一面というか大見出しで報道するという事態が生まれています。
 高知市の区割りがなぜこうなったのかということについても説明してもらえませんでしょうか。
大竹政府参考人 今回の審議会の区割りの見直しに当たりまして、大きな目標は人口格差をできるだけ縮減するということでございました。審議会でいろいろと御議論があったわけでございますけれども、その中で、高知県は現在、議員一人当たり人口が最小の県でございまして、高知県の選挙区がどのようになるかによりまして、全国的に格差が大きく広がってくる状況になるわけでございます。そういうこともございまして、全国レベルから比較いたしましてできるだけ格差を縮小するという観点から、高知県につきましては、できるだけきれいに三分割して三選挙区の人口がバランスをとれるようにしたいということで作業が行われたところでございます。
 したがいまして、確かに結果的に高知県の三選挙区がほぼバランスをとれたわけでございまして、そういった意味では、今お話がございましたような数字合わせという御批判はあるかもしれませんけれども、一方で、やはり審議会といたしましては、どうしても全国的な格差の縮小という観点から、このような作業はやむを得なかったものと考えております。
大幡委員 こういうのは高知だけではないんですね。高知の隣の徳島の県議会が、これも自民党から共産党に至るまで全会一致で反対の意見書を採択しています。徳島県も、いわば五増五減、議席の増減には関係ないところです。こういうところの県議会が全会一致で反対の意見書を採択している。徳島の県議会がなぜ意見書を採択したのか、その理由について説明していただきたい。
大竹政府参考人 徳島県におきましては、議員一人当たり人口は二十七万四千人でございまして、高知県は上回りますものの、やはり全国の議員一人当たり人口の三分の二を下回っておる県でございまして、非常に議員一人当たり人口が少ない県でございます。
 今回、区割りの見直しに当たりまして、特に三区が見直しの対象となったわけでございますけれども、三区は人口が二十五万人余りでございまして、もし徳島県についてこの三区を手直ししない場合におきましては、全国最小選挙区となる可能性があるわけでございます。そういった観点から、徳島県につきましても、やはり高知県と同じようにできるだけ各選挙区の人口を均等にするようにという形での区割りの見直しが行われたわけでございます。
 そういった中で、改定案におきましては、具体的に、二区の美馬郡という郡がございますけれども、これを吉野川の南北で分割いたしまして、南側の区域を三区とあわせるというふうな手法がとられたわけでございます。
 徳島県議会におきましては、現在の区割りが二回の総選挙を経まして県民の間に定着しているということ、それからまた美馬郡が分割されること等々につきまして、現行の選挙区の区割りを変えないでほしいということから、意見書が採択されたものと考えております。
大幡委員 つまり、今回、人口最小の島根の議席を減らした、そうすると、高知が最小になった、最小のところの比率が小さいと格差がふえるから高知を二十七万人というふうに何とかしたい。高知の次が徳島なんですよ。したがって、徳島の最小選挙区の基準も何とか人口を上げなきゃあかん。要するに、そのままにすれば二倍以上の選挙区が十以上になる、これを何とか減らすために高知や徳島、つまり、無理やりくっつけて数合わせをしたという事態で、それに対して非常に大きな批判が起こっているわけですよ。
 これは画定審議会の問題ではないんです。やはり小選挙区制度というものをつくって、そういうもとで定数是正という問題を議論してくれ、いわばここに大きな問題があるというふうに思うんですが、こういう混乱が広範に起こっているということに対して、総務大臣、いかがお考えでしょうか。
片山国務大臣 区割りをやる、線を引くということについて、内在するいろいろな問題点があることは事実です。だから、そういう中で、法律の理念を生かすために最大の努力をしていただいた結果だ、そういうふうに私は考えております。
大幡委員 つまり、一票の格差を二倍以下にするということで、生活圏や交通圏、歴史的な経過を無視した区割り変更というのが、小選挙区制度というもとで起こっている事態なんだ、当然こういう認識はお持ちでしょうか。
片山国務大臣 選挙区という線を引いて区域を決めるということに伴うやはりいろいろな問題点があることは事実ですけれども、しかし、総合的な事情を考えなきゃいかぬと思いますよ、ここでは二倍以上にはできるだけしないと。九つは二倍以上になりましたけれども、しかし極めて、二倍をちょっと超えただけですよね。そういう努力をされたので、それゆえをもって制度全体がおかしいとか、否定されるべきだということには、直ちにつながらないんではないかと私は考えております。
大幡委員 徳島県議会の意見書にこういう項があるんです。「今回の見直しにおいて、地勢、交通、地域間のつながり等を無視し、一票の格差是正に重きをおくだけでは、各選挙区における有権者の連帯感を益々阻害し、ひいては政治不信にもつながることが懸念される。」つまり、この表現は、一票の格差の是正と小選挙区制度というのが相入れないということの間接的な表現だというふうに私は読み取りました。そういう意見書に自民党から共産党までの各党が賛成をしている。
 私、ここには、小選挙区制という制度のもとで、一票の格差の是正というのがいわば正常な形では不可能であるということが浮き彫りになった、そして、この徳島だとか高知だけじゃなくて、今回六十八もの選挙区の区割りがいらわれていますが、こういう選挙区でも多かれ少なかれ同じような問題が起こっているという認識を持つ必要があると思います。
 つまり、小選挙区制というのは、文字どおり少数の意見を切り捨てる、第一党が得票以上の議席の拡大をする、民意を疎外するという点においてとんでもない制度だというふうに私は思うのです。また、政治と金の問題でも全く害悪しかなかったということも明らかになったわけです。この一票の格差の是正という問題でも、この制度の持つ弊害が浮き彫りになったというふうに思います。
 私も、最後に、この小選挙区制を廃止する、このことの必要性というのがもはや明白だということを指摘して、質問を終わります。
赤城委員長 次に、保坂展人君。
保坂委員 社会民主党の保坂展人です。
 まず一点だけ、今回の制度変更に絡んで、これは非常に目立つ例ということで自民党の方からも挙げられましたけれども、東京十八区と二十二区の府中市と三鷹市を入れかえる、こういう変更があったわけで、これは、私、ちょうど隣の選挙区でございますから、なかなか大変な変更だなと。この区割り審ではどんな議論があったんでしょうか。かいつまんでお願いをします。
大竹政府参考人 東京都につきましては、定数の増減がない中で、区割り基準の上限人口、これは五十六万四千という形でございますけれども、これを超える選挙区である二十二区、人口が五十七万六千あるわけでございますけれども、この二十二区の縮減を行わなければならないということが一つの課題としてあったわけでございます。
 審議会におきましては、この二十二区の見直しに当たりましては、市区の分割の可否も含めまして相当な議論がなされてございます。例えば、仮に市区を分割しました場合におきましては、例えば調布市と府中市、これは二十二区の市でございますけれども、ほぼ同程度の規模である市でございます。このどちらを分割するのかという問題、それからまた、分割する場合に市のどの部分を分割していくのかということの議論があるわけでございます。
 それからまた、市の分割を避けようといたしますと、周辺の数選挙区を対象に幾つかの市区を異動さすことによりまして、大幅な変動の中でこの二十二区の人口を縮減することも可能でございますし、さらにはまた、隣接してございます十九区、これがさらに大きな選挙区でございますことから、これも含めて大幅に多摩地区の区割りの見直しも検討されたところでございます。
 結論といたしましては、定数増減のない中で、影響する選挙区間を小幅に抑えるのが適当であること、その場合におきまして基礎的である市はできるだけ分割を避けるべきであること、それから、もし仮に分割するといたしますと、これらの選挙区についてのみ他の選挙区と異なる市区の分割基準を設けることとなるわけでございまして、これは適当ではないということから、最終的に、二十二区の府中市を十八区に編入し、十八区の三鷹市を二十二区に編入する改定案となったものと承知しております。
保坂委員 実は、私は、東京六区、世田谷区のちょうど三分の二、区議会議員選挙あるいは都議会議員選挙よりも行動範囲が狭いという選挙区で、先ほど金田議員が六百キロの選挙区を紹介されましたけれども、しかし、それでも人口においては、一票の格差ではベストスリーに位置をしているというところでございます。
 私は、ここでもう細かいことについて議論するのをやめて、もう一度振り返ってみたいんですね。特に、片山総務大臣そして若松副大臣と議論させていただきたいんです。
 つまり、九〇年代初めの、特に九三年の宮澤内閣の不信任案成立、そして、その前後のいわゆる政治改革をめぐる大きな政変も含めたいわば暑い季節があった、こう言われるわけですね。しかし、暑い季節を指して、あれは熱病だったと言う人まで今出てきております。もともとこれは、政治と金の問題あるいは政治腐敗を根絶するという国民の大きな声に後押しされる形で、いわば政治改革とはイコール小選挙区を基本とする制度変更である、中選挙区そのものが腐敗の温床なんだという議論で流れていったということは御承知のとおりです。
 その中で、小選挙区を基本にすれば、政治にお金がかからなくなる、例えば問題がある汚職議員などとされた人は次の選挙で通らなくなる、あるいは政策本位の論争が行われて国会が活発になる、さらに二大政党制になって政権交代が容易に起こり得るなどと言われました。
 現状はどうかというと、余り多くを語ることがないぐらいに、政治と金の問題は今国会でもまだまだ根深い問題として大変な政治不信を呼んでいますし、また、いわゆる汚職議員と言われた方でも小選挙区の場合は再選率が高い、これは以前から言われていたことですし、もちろん落ちる方もいますけれども、再選されてくる方も出てくる。また、政策本位の国会というふうに本当になっているかというと、国会の議事録を十年前と比べてみると半分以下じゃないでしょうかね、審議の時間も非常に短くなっている、なかなか皆さん忙しくなっているということもあると思います。
 そういうことを考えてみると、今、自民党の委員の皆さんから、個々具体的な、ここがおかしいという話が出ましたけれども、では、これについて、もっと根本的にまず選挙制度そのものの議論をすべき時期が来ているのかなという気が私はしております。
 そこで、総務大臣及び副大臣に伺いたいんですが、昨年九月、与党の選挙制度改革協議会で、いわゆる中選挙区制の一部復活の合意というものが行われ、そして翌十月にはその案が示されましたね、二人ないし三人の選挙区が一部できるという案だったと思います。しかし、また、これは余りにもトータルな哲学に欠けるということで強い批判が巻き起こって、どうもこの議論は棚上げとなり現在に至っているように見えますが、どういう経過があったんでしょうか。それぞれ、御存じの範囲でお答え願いたいと存じます。
片山国務大臣 これは政府というより与党間の話でございまして、報道では知りましたけれども、我々が関与しているとかなんとかという問題ではございませんので、それについての経緯その他をお答えする立場にないということを御理解賜りたいと思います。
若松副大臣 基本的に大臣と同じことなんですが、特に、この選挙制度の見直しというのは、第一回目の、前々回ですか、平成八年のときの衆議院総選挙、あのとき、選挙が終わった後は、世論は現小選挙区制度に対する反対が大変強かった。今、どちらかというとその議論が飛んじゃって、党利党略での改正議論が行われているというマスコミの論調であります。私も小選挙区でここ二回ほど戦わせていただきまして、地元のいろいろな有権者は、小選挙区というのは非常に人間関係がこじれる、そういった批判があるということは認識しておりまして、それでかつ、いわゆる政治改革の観点から、お金がかからないと言いながら現実にはかかっている、そういったことも考えてやはり見直しは必要ではないか。そういうのが、いわゆる自公保政権での一つの見直し議論をしていこうというような合意に今至っている、そのように理解しております。
保坂委員 実は、今回の五増五減案に、私ども社民党は党内で議論をして、これは賛成をしようという方向でございます。
 ただ、少なくとも無条件に賛成をするというわけではなくて、現在、現行法とこの制度がある以上は、この審議会の答申というものを尊重せざるを得ないだろうという立場であります。
 しかしながら、先ほど来の議論、この委員会冒頭から聞いておりますと、金田議員が何度も、今いらっしゃらないですかね、法律の裏に隠れて、法律の裏に隠れてということをおっしゃっていましたけれども、御発言がどの辺のところに真意があるか、ちょっと私、わからないんですが、法律というのは、土台であり、基盤であると思うんですね。もし裏に隠れるとするならば、脱法的な行為であるとか違法行為を指して裏に隠れてする行為であって、法律の裏に隠れる、その隠れる場所というのはないんじゃないかというふうに思うんです。
 あえて言うならば、法律がおかしいということを言うのであれば、その法律の土台になっている制度までいかないと、つまり、制度があって、その制度を根拠づける法律ができて、諸々の審議会があるわけですから、そこまで議論がいかないと、それは非常に表面的なびほう策になってしまうだろう。
 では、そういう議論をこれからしていける、あるいはすべきときであると私は思っていますけれども、社民党党内でも必ずしも意見集約はしておりません。例えば、中選挙区連記制という意見もあれば、あるいは小選挙区の並立制ではなくて併用制という当初提案された案がいいのではないか、またほかの意見もございます。
 しかし、こういった問題、片山総務大臣に伺いたいのですが、各党各会派、与野党のそれぞれの党利党略や立場を超えて、国民有権者の立場で選挙制度の設計というのは行われるべきだと思うのですね。したがって、そこはしっかりした話し合い、協議と信頼関係と合意、そして、永田町の都合だけでひた走るというのではなくて、国民世論にもしっかり配慮しながら、オープンな議論を進めていくべきだと思うんです。
 残念ながら、この委員会で、直近のところで言えば二回、定数削減をめぐって、総選挙の前に相当与野党の激突がございました。意見が闘わされて、削減ということではなかったですね。そして、近いところでは去年の、おととしでしょうか、参議院選挙の非拘束名簿方式の導入、これは全く新しい制度で、実際にやってみると、七万枚のポスターをどうやって全国に張るのということで立ち往生する経験をそれぞれの方が、大組織は違いますけれども、私なんかは大変やはり、時間をかけずにつくった制度はいろいろ至らぬところがあるなということを痛感しながらの選挙制度だったわけです。
 やはり強行突破の、そこのけそこのけ強行突破、これは、こういう議論を落ちついてこれからしていく意味で、言ってみれば、悪い前例になってしまっているんじゃないかというふうに思うんですね。その点、いかがでしょうか。
片山国務大臣 選挙制度というのは、議会制民主主義の基礎でございまして、大変重要なものだと考えております。
 しかし、これはやはり政党政治でございますので、各党各会派で十分な御議論をいただくということも私は必要だし、それから中立的な、例えば選挙制度審議会のような有識者を含むところでいろいろな制度についての御検討を賜るということも必要で、最終的には、国会でお決めいただく。そこで、国会の決め方の議論にちょっと触れられましたが、これは国会運営の議論でございまして、やはり国会の中で、どういう運営が適切かということの御検討を十分賜るべき問題だ、こういうふうに思っております。
保坂委員 議事録を探してきたら、ちょうど、これは九四年の、片山大臣が、ある時期、短い時期でしたけれども、自民党が野党に下ったときに、政治改革に関する参議院の特別委員会で、冒頭、力説されているんですね。政治改革、なかんずく選挙制度改革は民主主義の土俵づくりだ、これについては、与野党ということじゃなくて、十分関係者が論議を尽くし、合意形成をすることが私は筋だ、数で押し切る、一方的にどうにかするということじゃ私は困る、こう言って、時の細川総理大臣、そして佐藤大臣も答弁されているんですね。
 この政党助成というのは大変問題がある。いろいろ問題提起されていて、五年後の見直しじゃだめじゃないか、五年後の見直しなんというようなことを言っていては国民の信頼は戻らないと言って、野党のときにはちょうちょうはっしやられておられたわけですね。それから五年以上今たっているんです。
 ここで片山現大臣が指摘されていることも、例えば、政治と金のところで、金がかかる部分、何だ、やはり広報ですよね。私どももそうです。ビラにしてお渡ししたり、国会では何をやっているかという、そういう広報活動というのが公営じゃない。テレビや選挙の公報というのは選挙のときだけで、国会議員が日々何をやっているのかということについては何にも手段がない、そういうことについても言われていますよ。
 このあたりの、野党だったときの所信というのを今思い返してみて、いかがでしょうか。
片山国務大臣 野党のときは少し与党とは違うところがありますから、それは強調して言ったところもあると思いますけれども、基本的には、私は、あのときに質問した、詳細は覚えておりませんけれども、質問したことは、私の考えを申し上げたわけでありまして、基本的な考え方は変わっておりません。
保坂委員 ということは、もちろん、国会の運営ですから、今後、大事な制度変更、選挙制度をめぐる問題は、与党が数が多いからといって、異論があるのに、時によっては押し切る、こういうことは、政治家片山大臣としては、心情としてはこれはいかぬ、こういう認識でございますか。
片山国務大臣 基本的には、話し合いで、しっかり審議をして、審議が尽くせば採決で決める、こういうことでございまして、審議を尽くさずに数で決める、押し切る、こういうことは適当でないと思っております。
保坂委員 その審議を尽くす過程が問題なんですね。
 若松副大臣の方にも同じ質問をしたいと思うんですけれども、今、自民党の各委員から、それぞれの個々の、確かに六百キロといったら大変ですわね、そしていろいろな矛盾点が出てきた。やはり、法律の裏に隠れるなんという言葉が出てくるということは、その法律そのものはどうかなという話になり、その法律そのものの土台はどうかなということに根本はなっていくかなというふうに思うんです。
 その際に、やはり選挙制度の重大な変更とか、あるいは定数もそうですよ、それから、この前の参議院の非拘束なども含めて、これは国民が初めて体験する制度だったわけですから、与野党しっかり、きちっと意を尽くして話し合って、そして信頼をお互い持ってやっていくべきものと思うんですね。そのあたり、見解はいかがでしょうか。
若松副大臣 ちょっと記憶が間違っていればお許しいただきたいんですが、平成六年ごろでしょうか、ちょうど、いわゆる現在の小選挙区比例並立制ですね、この合意に、たしか細川総理と、あと河野総裁ですかの大変歴史的な署名がありました。いわゆる議論に議論を尽くして、大変な大もめの中で、最終的にそういう形の合意を得て、今回の現在の選挙制度に至っている。
 今までの議論を否定するのではなくて、選挙制度はどうあるべきかという、やはり日本の民主主義の成熟に今までの議論というのは必ずや貢献していると私は理解しております。その議論は今後も続けなければいけない。そういう意味で、先ほど大臣が申し上げましたように、やはりしっかり議論は議論としてした上で、かつ、大勢の意見を聞いた上で、そしていずれは、結論を出さなければいけない、そのような段取りをしっかりとらなければいけないと理解しております。
保坂委員 今回の選挙制度の五増五減ですね、そこで、法にのっとって、審議会が大変汗をかいていただいて出された答申、しかし、大臣がおっしゃるように、答申自体に百点のものはない。一部、ある地域を見れば、これは一体どういうことだということが起きているのも事実なんですね。
 そういうことを、それではどうやって変えていけるんだろうか。審議会の土台そのものについて、例えば小選挙区並立制という現在の選挙制度、大変死に票が多いという発言も公明党さんからあったと思いますね。そういう今回の制度そのものが、もう議論されていい時期に私は来ているんだと思います。
 その議論をやや妨げているのは、この直近の二回、定数削減と非拘束名簿導入のときの経過ですね。これはなかなか大きな傷を残している。したがって、相当の努力をお互いしないと、なかなか議論を率直、虚心坦懐なところで始めることが難しい。しかし、やはりそれは努力をしていきたいということを私の方は考えていますということを、私の発言の最後としまして、質疑を終わります。
赤城委員長 次に、西川太一郎君。
西川(太)委員 私は、保守党の立場から、基本的な問題についてお尋ねをさせていただきたいと思います。
 私どもは、特定の結論を持って質問をいたすわけではありません。まだ小さな党でございますし、私ども、今回の問題で直接影響をこうむるという立場の者も率直な話、いないという実情にかんがみて、だからこそと言うとちょっときざになりますけれども、国民がどういう仕組みがいいのか、そういうことを虚心坦懐に、原点に戻ってお尋ねをしていきたい、こんなふうに思っております。
 したがいまして、五増五減案がいいという結論から質問をするのではなくて、私どもは、この審議を通じて、どうすれば国民の気持ちが反映できる選挙制度になるのか、それに近づけるのか、こういうことも議論をしていきたい、こんなふうに思っております。
 私も、与党のプロジェクトチームの一員としてこの問題について議論を重ねてきた経緯の中で、直接間接、承知をしている部分もありますが、改めて公式の場で政府にお尋ねをしたい、こう思います。
 まず最初のお尋ねは、いわゆる投票価値の平等ということについてお尋ねをさせていただきたいと思います。このことは大変重要でございます。
 衆議院議員選挙区画定審議会が昨年末に行った勧告によりますと、選挙区の間の最大格差は二倍を超えて二・〇六四倍、こういうふうになっているわけであります。審議会の勧告ではこのように最大格差が二倍を超えているのでありますけれども、この点について、まず御見解を伺いたいと思います。
片山国務大臣 昨年十二月に選挙区画定審議会から内閣に出されました勧告する案が、現在二・五七三倍の最大格差を二・〇六四倍まで縮小する、格差二倍以上の選挙区の数も九十五から九までに縮減する、こういうものでございまして、審議会の委員の皆様が大変な努力をされて、こういう勧告案をまとめていただいたのではなかろうかと。投票価値の平等という観点からいいますと、やはり、二倍以上を超えるものが九つ残った、こういうことはこれでやはり御議論があると思いますけれども、トータルとしては、私は最大限の努力をされたものだと。
 したがいまして、この勧告は政府としては尊重すべきものだ、こういうふうに考えております。
西川(太)委員 選挙区間の格差を二倍以内に抑えるためには、現行の各都道府県への基礎配分、一人、そして残余を人口比例で配分するという定数配分の方式がおかしいという指摘も識者の間から出ております。各都道府県に一人の基礎配分を行って、残余を人口比例で配分するという現行の方式を見直せという意見については、どんな御意見でございましょうか。
片山国務大臣 これは、恐らく、制度導入の際に大変な御検討、御議論の上で出された方針だ、こう承っておりますが、それでは、この時日がかなり経過した現時点でこれをもう一遍見直す場合にどうか、こういうことでございますが、私は、先ほども答弁させていただきましたように、国土の均衡ある発展だとか、都道府県が行政の単位である以上、そこにまず一つの議席という形での発言権を認めるべきだとかという理屈も十分成り立つと思いますし、また同時に、全く人口にスライドすべきだ、人口に案分しなければおかしい、こういう議論も成り立つと思いますから、これは国会において各党各会派で十分御議論賜りたい。
 政府としては、どちらがいいという方針を特に持ち合わせるわけじゃありませんで、現行決められた各都道府県の配分一、これを尊重するという立場でございます。
西川(太)委員 次に、市区の分割については、これを極力避けるべきだという意見があります。別の言い方をすれば、もっと柔軟に分割をやれ、こういうことであります。
 これは実務的なことですから選挙部長に伺いますが、今回の勧告の改定案においては、十六の市区を分割しているわけでありますけれども、これはどういう基準によるものであるか、伺いたい。
大竹政府参考人 区割り審議会におきましては、区割りの見直しを行うに当たりまして、まず、「区割りの改定案の作成方針」を取りまとめ、これに定める区割り基準に沿って具体的な区割りの検討が行われたものでございますけれども、この区割り基準の中で、市区の分割の基準が定められております。
 具体的には、市区は基礎的自治体であることから市区の区域は分割しないことを原則としておりますけれども、一つといたしましては、市区の人口が全国の議員一人当たり人口の三分の四を超える場合、それから、市区の人口が当該都道府県の議員一人当たり人口の三分の四を超える場合、それから、一定の場合を除き、当該都道府県の人口最大の市の区域をもって単独の選挙区としたときに全国の議員一人当たり人口の三分の二を下回る選挙区が生じる場合、さらに、選挙区が飛び地となることを避けるために必要となる場合、この場合に限定いたしまして市区の区域は分割するものとされてございます。
 現在は、現行選挙区におきましては、市区の区域が分割されているものは十七あるわけでございますけれども、この区割り審の改定案によりますと、そのうち新潟市及び大分市の分割が解消されまして、新たに相模原市が分割の対象となったことから、十六の市区の分割が改定案の内容となっている状況でございます。
西川(太)委員 選挙区画をどのようにいじるかというのは、確かに、格差の是正という一つの大原則があっていろいろと作業をするわけであります。しかし、システムが優先をして実態が伴わないというか実態が忘れ去られる、こういう事態は果たして本当に人間のためにある制度、制度のために人間がある、この議論は、私はこの場合にも当てはまって大変重要だと思うんです。
 この案が最初に示されたときに、個人的にも友人である東京のある代議士が、自分の、長く努力をし、愛情を注ぎ、また支援をいただいた地域が全く別の選挙区になってしまう、または、今まである選挙区であったものがごそっと抜けてよその選挙区にかわる、こういうようなことがシステム的に行われる、それで、数字の上では整合性がとれる。しかし、それで本当にいいんだろうか。選挙というのは、民意を代表する代表者が国権の最高機関または地方議会にそれぞれ代表して出てくる。それは、選挙のときだけに候補者を選べばいいというのが一つの理屈かもしれないけれども、実態としては、お世話をさせていただいたりまたは陳情を受けたり、御意見を承ったり、日ごろのいろいろな血の通った努力の結果、選挙というものが実施されるというふうに、人間のためにはそれがいいんだと私は信じているわけであります。
 今回の選挙区の安定性といいますか、そういう観点から見ると、できるだけ有権者の異動は少ない方がいいんじゃないかと私は思うのでありますけれども、そのためには市町村の区域を割るということも一つの知恵じゃないか、こう思うんですが、今回、審議会ではなぜこの手法をとらなかったのか、大竹さんに伺いたいと思います。
大竹政府参考人 審議会におきましては、市区の分割につきましては、先ほど申し上げました基準を設けて、一定の場合には分割する、これに該当しない場合には分割しないという原則を設けて区割りの作業を行われたところでございます。
 今回の区割りの見直しに当たりまして、見直し対象選挙区をどうするかということで、市区の分割をどう考えるかについても審議会で議論されてございます。先ほど申し上げました市区の分割基準に該当します場合には、それを適用した市区の分割等も含めて柔軟に対応できるわけでございますけれども、先ほど申し上げました市区の分割基準に該当しない場合について、この見直し対象選挙区にのみ適用できる新たな基準を設けるのかどうか、こういった議論がなされたわけでございます。
 市区につきましては、基礎的自治体であることからできるだけ分割を避けたいということ、それから、仮に分割するといたしました場合に、これらの選挙区についてのみ他の選挙区と異なる市区の分割基準を設けることは、やはりこれは適当でないということ、こういったことの判断に立ちまして、市区の分割については原則の基準どおり行われまして、柔軟な市区の分割の適用は行われないとされたものと承知しております。
西川(太)委員 これについてはまだ意見がありますが、きょうはそのことについて触れずにおきたいと思います。
 最後に、市町村合併が進んでまいりますと、それに適合した区割りの見直しを求める意見が出る一方で、ただいま申しました選挙区の安定性という観点から、小選挙区を動かさないでほしい、こういう意見も出てくるだろうと思われるわけでありますが、合併によって市町村の境界が変更されたようなときには小選挙区は変更されるのか、自動的に変更しないとすれば、いつ見直しの機会があるかというのは大変重要な問題だと思うのでありますが、これについての御見解を賜りたいと思います。
大竹政府参考人 公職選挙法の第十三条第三項の規定がございまして、衆議院小選挙区の行政区画等に変更があっても、選挙区はなお従前の例によると定めているわけでございまして、選挙区の境界にまたがりまして市町村合併があった場合におきましても、選挙区の区域は従前どおりとされ、変更はないものでございます。したがいまして、それらの選挙区については、次回の区割りの見直しが行われる際に、行政区画等の事情を総合的に考慮した区割りの改定案が作成されるものと考えられるところでございます。
 審議会設置法におきましては、区割りの見直しは十年ごとの国勢調査により行うことを原則としておるわけでございますけれども、各選挙区の人口の著しい不均衡その他特別の事情があるときは、この十年ごとの国勢調査を待たずに見直しを行うこともできるとされているわけでございます。市町村合併の進展等により、全国の極めて多くの都道府県におきまして選挙区の区域が人口規模、行政区画等の点で実情にそぐわないというような状況になった際には、十年後の国勢調査を待たずに見直しが行われることも考えられるところでございます。
 いずれにいたしましても、この判断はそのときの審議会で行われるものでございます。
西川(太)委員 最後にお尋ねしたいのは、戸別訪問について伺いたいと思うんです。
 私は昭和四十八年から選挙に出ておりまして、都会議員の選挙を五回、国会議員の選挙を三回やっておりますけれども、いつも取り締まり当局の主観によって選挙違反になったりならなかったりするんですよね。
 例えば、選挙事務所の開設だって、はがきの選挙という字が大きいからといって注意されたり、そんなばかなことはないと私、思うんですけれども、などなど、選挙法の中にはもう随分古い哲学というか考え方でやっている、その典型的な例が戸別訪問の禁止だと思うんです。
 私の目の前にいらっしゃる佐藤観樹先生が自治大臣のときにこのことをお尋ねして、山花先生と佐藤先生から前向きの御答弁をいただいてその日のNHKのニュースに取り上げられたぐらいなんですね。ところが、その後、それが全然ぽしゃってしまってだめになってしまった。あんな失礼な法律はないと思うんですよ。行って、金を渡すだろう、受け取るだろう。こんな、候補者と有権者を頭から疑ってかかるような、そういうようなことは私はおかしい、こう思っております。
 まあ、しかし、このことについてはいろいろな経緯があります。したがいまして、そのほかのことについても、これから、私としては、この法律が通った後の九次審でそういうことがきちっとできるように答申をいただくように諮問したらいいな、こう思っております。(発言する者あり)ちょっと、何か誤解があるようですけれども、私、佐藤大臣がちょんにしたと言っていないんですよ。そのときにいい答弁をいただいているということを個人的に言っただけであります。
 最後、もう時間でありますから、簡単に御答弁をいただいて終わりたいと思います。
若松副大臣 戸別訪問の禁止でございますが、これは今、買収の温床等もありまして、候補者、選挙人ともにそういったことは避けようということで、大正十四年のいわゆる普通選挙の際に設けられたものでございます。
 御指摘のとおり、戸別訪問の解禁につきましては、平成五年に政府が提案しました政治改革関連法案におきまして夜間を除き自由化するということとされていたものでありますが、当時の国会における議論の過程の中で、従来どおり禁止することとされたところでございます。
 イギリスなんかを見ますと、イギリスはもう戸別訪問は当たり前ということで、確かに表現の自由とかそういった機会を今の公職選挙法はかなり縛っていると私個人としては思っておりますが、いずれにしても、この戸別訪問の解禁につきましては、今までの議論の経緯も踏まえまして、選挙運動のあり方という、いわゆる選挙の土俵づくりの問題という大変重要な事項でもありますので、まずは各党各派で十分御議論いただきたい項目であると理解しております。
西川(太)委員 終わります。
赤城委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時二十九分散会


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