衆議院

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第2号 平成16年5月12日(水曜日)

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平成十六年五月十二日(水曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 増田 敏男君

   理事 岩崎 忠夫君 理事 江渡 聡徳君

   理事 中馬 弘毅君 理事 町村 信孝君

   理事 井上 和雄君 理事 辻   惠君

   理事 中井  洽君 理事 井上 義久君

      赤城 徳彦君    岩永 峯一君

      宇野  治君    奥野 信亮君

      木村  勉君    後藤田正純君

      下村 博文君    能勢 和子君

      早川 忠孝君    古川 禎久君

      三ッ矢憲生君    水野 賢一君

      森山  裕君    山口 泰明君

      山本 明彦君    宇佐美 登君

      小宮山泰子君    佐藤謙一郎君

      田島 一成君    津川 祥吾君

      中山 義活君    永田 寿康君

      平岡 秀夫君    堀込 征雄君

      松崎 哲久君    松野 信夫君

      村越 祐民君    長沢 広明君

      山名 靖英君    吉井 英勝君

      山本喜代宏君

    …………………………………

   総務大臣         麻生 太郎君

   総務副大臣        山口 俊一君

   法務副大臣        実川 幸夫君

   総務大臣政務官      小西  理君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    栗本 英雄君

   政府参考人

   (総務省自治行政局選挙部長)           高部 正男君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    樋渡 利秋君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房総括審議官)         玉井日出夫君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           金森 越哉君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局私学部長)         加茂川幸夫君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  辻  哲夫君

   衆議院調査局第二特別調査室長           大竹 邦実君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月四日

 辞任         補欠選任

  佐藤 観樹君     小宮山泰子君

同月十七日

 辞任         補欠選任

  小宮山泰子君     津川 祥吾君

四月九日

 辞任         補欠選任

  加藤 公一君     辻   惠君

五月六日

 辞任         補欠選任

  津島 恭一君     森山  裕君

同月十二日

 辞任         補欠選任

  櫻田 義孝君     山口 泰明君

  西野あきら君     能勢 和子君

  阿久津幸彦君     平岡 秀夫君

  岩國 哲人君     小宮山泰子君

同日

 辞任         補欠選任

  能勢 和子君     西野あきら君

  山口 泰明君     櫻田 義孝君

  小宮山泰子君     岩國 哲人君

  平岡 秀夫君     阿久津幸彦君

同日

 理事加藤公一君四月九日委員辞任につき、その補欠として辻惠君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

三月十六日

 十八歳選挙権の早期実現に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一〇六六号)

 同(石井郁子君紹介)(第一〇六七号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一〇六八号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一〇六九号)

 同(志位和夫君紹介)(第一〇七〇号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一〇七一号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一〇七二号)

 同(山口富男君紹介)(第一〇七三号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一〇七四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する件(第四十三回衆議院議員総選挙の結果等概要)


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     ――――◇―――――

増田委員長 これより会議を開きます。

 理事の補欠選任についてお諮りいたします。

 委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

増田委員長 御異議なしと認めます。

 それでは、理事に辻惠君を指名いたします。

     ――――◇―――――

増田委員長 この際、総務大臣、総務副大臣及び総務大臣政務官から、それぞれ発言を求められておりますので、順次これを許します。総務大臣麻生太郎君。

麻生国務大臣 当委員会の皆様方には、かねてより格別の御高配にあずかっていることに対しまして、心より厚く御礼を申し上げる次第です。

 選挙は民主政治の基盤をなすものでありますことを考えますとき、選挙制度や政治資金制度を所管する総務省の大臣といたしまして、その責任の重さを痛感いたしておるところです。

 私といたしましても、今後とも、副大臣及び大臣政務官とともに、公正かつ明るい選挙の実現に向けて最大限の努力を重ねていく所存であります。何とぞ、よろしく御指導のほどをお願い申し上げる次第です。(拍手)

増田委員長 次に、総務副大臣山口俊一君。

山口副大臣 おはようございます。

 去る、昨年の九月二十五日に総務副大臣を拝命いたしました山口俊一でございます。

 非力ではありますが、懸命に大臣を支えながら、補佐をしながら頑張ってまいりたいと思っております。どうか、増田委員長を初め、理事、委員各位の御指導、御鞭撻をよろしくお願い申し上げます。(拍手)

増田委員長 次に、総務大臣政務官小西理君。

小西大臣政務官 おはようございます。

 本年四月六日に総務大臣政務官を拝命いたしました小西理でございます。

 増田委員長を初め、理事、委員の皆様方の格段の御指導、御鞭撻を心からお願いを申し上げます。よろしくお願いいたします。(拍手)

     ――――◇―――――

増田委員長 政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として警察庁刑事局長栗本英雄君、総務省自治行政局選挙部長高部正男君、法務省刑事局長樋渡利秋君、文部科学省大臣官房総括審議官玉井日出夫君、文部科学省大臣官房審議官金森越哉君、文部科学省高等教育局私学部長加茂川幸夫君、厚生労働省保険局長辻哲夫君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

増田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

増田委員長 昨年十一月に行われました第四十三回衆議院議員総選挙及び第十九回最高裁判所裁判官国民審査の結果の概要について、政府から説明を求めます。麻生総務大臣。

麻生国務大臣 この機会に、第四十三回衆議院総選挙及び第十九回最高裁判所裁判官国民審査の結果の概要について御報告をさせていただきます。

 御承知のとおり、今回の選挙は、昨年十月十日に衆議院が解散されたことによる総選挙でありまして、平成六年に公職選挙法が改正され、衆議院選挙が従来の中選挙区制から小選挙区比例代表並立制に改めて後、三度目の選挙となります。

 選挙すべき議員の数は、小選挙区で三百人、比例代表で百八十人、合計四百八十人でありました。

 選挙当日の有権者は一億二百三十一万人で、前回の総選挙に比べ約百八十二万人増加をいたしております。

 次に、投票の状況について申し上げます。

 十一月九日の投票日は、全国的に曇りまたは小雨の天気でありました。

 投票率は、小選挙区選挙で五九・八六%、比例代表選挙で五九・八一%でありまして、これは、前回に比べそれぞれ二・六三ポイント及び二・六四ポイント低下し、これまでで二番目に低いものとなっております。

 次に、立候補の状況について申し上げさせていただきます。

 小選挙区選挙につきましては、候補者数は千二十六人で、競争率は三・四倍でありました。

 比例代表選挙につきましては、名簿を届け出た政党は五政党、十一選挙区で延べ五十五政党、その届け出名簿に登載された候補者数は七百四十五人で、競争率は四・一倍でありました。なお、このうち、小選挙区選挙に届け出がなされた重複立候補者は六百十二人であります。

 この結果、小選挙区選挙及び比例代表選挙の合計の候補者数は千百五十九人で、前回の千四百四人に比べ二百四十五人の減少となっております。

 次に、当選人の状況について申し上げます。

 党派別に申し上げますと、自由民主党は小選挙区で百六十八人、比例代表選挙で六十九人、合計二百三十七人、民主党は小選挙区で百五人、比例代表選挙で七十二人、合計百七十七人、公明党は小選挙区選挙で九人、比例代表選挙で二十五人、合計三十四人、日本共産党は比例代表選挙で九人、社会民主党は小選挙区選挙で一人、比例代表選挙で五人、合計六人、保守新党は小選挙区選挙で四人、無所属の会は小選挙区選挙で一人、自由連合は小選挙区選挙で一人、無所属は小選挙区選挙で十一人となっております。

 なお、女性の当選人は三十四人で、前回より一人下回っております。

 次に、党派別の得票率の状況について申し上げます。

 小選挙区選挙では、自由民主党四三・八%、民主党三六・七%、公明党一・五%、日本共産党八・一%、社会民主党二・九%、保守新党一・三%、無所属の会〇・八%、自由連合〇・二%、その他無所属を含めて四・七%でありました。

 また、比例代表選挙では、自由民主党三五・〇%、民主党三七・四%、公明党一四・八%、日本共産党七・八%、社会民主党五・一%となっております。

 最後に、最高裁判所裁判官の国民審査の状況について申し上げます。

 今回の国民審査は、前回の国民審査以降に任命されました九人の裁判官について行われたものであります。

 国民審査の結果は、いずれも罷免を可とする投票が罷免を可としない投票の数より少なく、したがって、審査に付された全裁判官が国民の信任を受けました。

 以上をもちまして、今回の衆議院議員総選挙及び最高裁判所裁判官国民審査の結果の御報告を終わらせていただきます。

増田委員長 次に、第四十三回衆議院議員総選挙違反検挙・警告状況について説明を求めます。警察庁栗本刑事局長。

栗本政府参考人 第四十三回衆議院議員総選挙におきます違反行為の取り締まり状況について御報告を申し上げます。

 選挙期日後九十日の平成十六年二月七日現在で集計をいたしました数字は、先生方のお手元に配付いたしております資料に示しているとおりでございます。

 具体的に申し上げますと、検挙状況につきましては、総数で五百六十二件、七百九十人となっておりまして、前回の総選挙におきます同時期の五百五十二件、千三百七十五人と比べますと、件数で十件増加いたしておりますが、人員では五百八十五人減少しているところでございます。

 詳しく罪種別に申し上げますと、買収が四百十四件、六百二十三人、自由妨害が五十一件、二十七人、戸別訪問が九件、二十人、文書違反が十三件、四十一人、投票干渉四十一件、二十四人、その他として三十四件、五十五人となっておるところでございます。今申し上げましたように、このうち、買収が検挙事件のうち、件数で七三・七%、人員で七八・九%を占め、最も多くなっているところでございます。

 次に、警告状況について申し上げます。

 総数で三千二百五十六件でございました。これは、前回の総選挙と比べまして、前回が四千七十六件でございましたので、八百二十件ほど減少しているところでございます。

 なお、この警告事案のほとんどは文書関係についてのものでありまして、その警告事案のうち、文書関係が総件数で九六・五%を占めているところでございます。

 以上、四十三回の衆議院議員総選挙におきます違反行為の取り締まり状況について御報告申し上げます。

    ―――――――――――――

増田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。早川忠孝君。

早川委員 自由民主党の早川忠孝でございます。

 衆議院総選挙後、最初の委員会でありますので、衆議院選挙の総括という意味を込めまして、衆議院総選挙において問題となったこと等について、基本的な件についてのお尋ねをいたします。

 ただいま、麻生大臣から、昨年十一月に実施されました衆議院総選挙について結果の御報告がございました。今回の衆議院総選挙は、小選挙区比例代表並立制による三度目の選挙である。選挙の管理、施行という観点からは、かなり安定的な選挙が行われたものと感じております。

 しかしながら、小選挙区比例代表制そのものについては、私個人として、見直すべき点が多々あるのではないかと考えております。私自身、小選挙区選挙で何度か敗れておりますけれども、選挙で当選できなかったとしても、国民の代表として国政の一翼を担うべき資質が私に当時なかったとは考えておりません。むしろ、全国を見渡しますと、衆議院議員としての十分素質を備えながらも、当選できなかった。小選挙区制のハードルが高いということで政治の世界への挑戦をできないという状態が続くことは、将来の日本を考えますと、十分なその方々を政治の世界にどんどん入っていただきたいという点からいうと問題があるのではないかと。そういう意味では、個人的には、将来、中選挙区制を採用する方がやはりいいのではないか、こういうふうに思っております。

 衆議院議員選挙制度の見直しの点について、大臣の御所見をお伺いいたします。

麻生国務大臣 これは、早川先生、長い間の議論がございまして、中選挙区の方がいいではないかということを主張しておりました、当時の、副幹事長をしておったんだと記憶しますが、しておりました私らといたしましては、いろいろお気持ちよくわかりますと申し上げたいところですが、これは御存じのように、自治省にもおられたんでしょうし、いろいろ選挙制度もお詳しいと思いますが、これは、世界じゅう、この制度が正しい選挙制度というのがないがゆえに、各国、実にばらばら、いろいろな選挙制度を採用しておられるんだと存じます。

 小選挙区のいいところもあれば、これは中選挙区のいいところもありますし、もちろん、反対に問題点もあるわけで、今あります小選挙区、中選挙区以外の選挙制度だって、当選者枠内連記制とか、当時いろいろ考えられた制度がありますので、私としては、これが悪いからというような話、これがいいから存続すべきと言う立場にありませんので、各党でこれは議論をよくしていただかないと、選挙制度は議会制民主主義の根本をなすところでもありますので、一大臣の所感やら何やらで決められるべき話でもありませんので、ぜひその点も考えていただいて、これは、選ばれた人にとっては選ばれた制度が一番いいということになりましょうけれども、いろいろな意味で広く国民の意見が反映される選挙制度というものが常に試行錯誤の中から考えられ、各党によって議論というものがなされるというのが正しい形なのかなと感じております。

早川委員 今、大臣から御所見をいただきました。私がかつて自治省におりまして、また選挙管理委員会の事務を指導したということもございます。

 そこで、今回の衆議院選挙においては、不在者投票の送致漏れや投票用紙の交付誤り等が生じたと聞いております。選挙時は、いろいろな事務が錯綜し、選挙管理委員会の職員や選挙事務に従事する職員の方々の心労も相当なものだと思います。しかし、選挙は民主主義の基礎であり、選挙事務についてミスが許容されてはならないと考えています。

 今回の総選挙で、選挙管理委員会で管理、執行上起こったミスについてどのように考えておられるのか、また、今後このようなミスが起こらないようにどのような対策をとられようとされているのか、お伺いいたします。

高部政府参考人 お答えを申し上げます。

 さきの衆議院議員総選挙におきましては、御指摘がございましたように、残念ながら、不在者投票の送致漏れや投票用紙の交付誤り等の管理、執行上のミスが発生いたしまして、特に、一部の団体におきましては指定投票区制度をとっているというようなこともございまして、不在者投票の送致漏れにより、大量の不在者投票が無効になったといったようなことがあったわけでございます。

 いずれの事例も、確認作業を怠るといったような単純ミスが重なって生じたものでございまして、多くの有権者の方々の貴重な投票を無効にするというこういう誤りはあってはならないことでありまして、まことに遺憾に思っているところでございます。

 総務省といたしましては、近く参議院選挙があるわけでございまして、それに向けまして、文書の通知類でございますとか各種会議の場におきまして、各選挙管理委員会に対しまして、一つ一つの作業を確実に実施することでございますとか、複数の者で確認作業を行うといったような、そもそもミスが極めて単純なミスでございますので、個別の作業を一つ一つ確実にやっていただくということが大事なわけでございまして、改めて管理、執行の基本に立ち返るということと、あわせまして、緊張感を持って職務に臨むように徹底を図って、選挙の管理、執行に遺漏のないように万全を期してまいりたい、かように考えているところでございます。

早川委員 今回の衆議院総選挙におきましては、いわゆるマニフェスト選挙というふうに言われました。そのための公職選挙法の改正が総選挙公示の直前であったということで、マニフェストの頒布ということについていろいろ混乱があったのではないかというふうに考えられます。

 まず、選挙運動用パンフレットについての頒布の制限で、党の政策を記載したパンフレットが、いわゆる制限された場所以外でも頒布されているという事例が現認されております。政党の政策を記載したパンフレットの頒布について公選法ではどのように規制しているのかについて、まず総務省にお伺いいたします。

高部政府参考人 選挙運動用のパンフレットでございますが、選挙運動期間に限りまして、候補者届け出政党、衆議院名簿届け出政党等、参議院名簿届け出政党等及び所属候補者の選挙事務所内、演説会の会場内及び街頭演説の場所において、二種類に限り頒布するというような仕組みになっているところでございます。

 一方で、御指摘ございましたけれども、政治活動用パンフレットにつきましては、公選法の百四十六条あるいは二百一条の十三といった規定がございますが、こういう規制に該当しない限り、その頒布に特段の制限はないという仕組みになっているわけでございます。

 したがいまして、選挙運動用パンフレットであれば頒布場所が限定されるということでございますけれども、政治活動用パンフレットということであれば、基本的に頒布場所に制限はないという形になっているわけでございます。

 それで、公職選挙法におきまして選挙運動とは、特定の候補者の選挙につき、特定の立候補者または立候補予定者に当選を得させるため投票を得もしくは得させる目的をもって、直接または間接に必要かつ有利な周旋、勧誘その他諸般の行為を行う、ちょっとわかりにくい定義でございますが、このように解されているところでございます。

 しかしながら、政党の活動につきましては、理論上は別といたしまして、実際の活動が選挙運動か政治活動かの認定というのは、なかなか境目が難しいようなことがございまして、現行の公職選挙法におきましても、そのことを前提に置きまして十四章の三という章がございまして、政党等について、選挙運動手段と類似する手段による政治活動を一般に禁止しているわけでございまして、ビラ等々について規制しているわけでございますが、パンフレットについては禁止されていない、こういうような仕組みでございます。

 そこで、このようなことから、今回の衆議院議員選挙につきましては、選挙運動用パンフレットと内容が類似するものの、選挙を特に特定しない形での政策のパンフレットが政治活動用パンフレットとして頒布された事実があったのではないか、かように考えているところでございます。

早川委員 先ほど、警察庁の方から、選挙違反の検挙、警告状況の御報告がありました。いわゆるマニフェストの頒布についての規制違反についてはどうなっているのか、その警告あるいは検挙の状況についてお伺いいたします。

栗本政府参考人 お尋ねの、公職選挙法百四十二条の二に規定されますいわゆるマニフェストに関しましては、今御説明ありました、公選法で定められている方法以外の方法で頒布したいわゆる頒布方法違反、これにつきましては、この選挙について一件を検挙し、合計三十三件の警告を実施しているところでございます。

早川委員 公職選挙法の改正は議員立法で行われたものでありますので、マニフェストと選挙運動との関係をどう整理するかについては、今後、各党においても十分話し合っていかなければならない大事な問題だと考えています。

 本委員会においてマニフェストを導入された公職選挙法改正のときに、「新法の施行状況を踏まえ、参議院における選挙制度上の違い等問題点を検討し、今回の改正の趣旨が更に進展するよう、見直しを含め必要な措置を講ずるものとする。」との決議が行われているというふうに承知しております。本来であれば、当委員会によって、政治活動との関係、頒布の方法や時期、参議院選挙とマニフェストの位置づけ等について議論をしていく必要があるのではないかと考えています。今後の委員会において議論していくことを要望して、次の質問に移ります。

 ことしは参議院の通常選挙の年であります。その選挙期日については未定ということですが、この七月または八月に実施されることは確実なわけでありますので、参議院通常選挙について御質問いたします。

 御案内のとおり、参議院比例代表選挙は、前回の参議院選挙から非拘束名簿式に改めました。非拘束名簿式は、候補者個人に投票することも、それから政党に投票することもできる制度であります。選挙人は候補者を選ぶことができるわけですから、拘束名簿式比例代表制と比べて、顔の見える選挙などと言われております。しかし、制度が複雑で、無効票がふえるのではないかとの意見もございます。今回の選挙は新制度後まだ二回目でありますし、参議院の場合は半数改選ということで、今回改選を迎える方々にとっては初めての制度ということになるわけであります。

 したがって、その制度の周知を十分に行っていただきたいと考えておりますけれども、どのように周知を行われていくおつもりであるか、総務省にお伺いいたします。

高部政府参考人 参議院比例代表選出議員選挙につきましては、御指摘ございましたように、前回から非拘束名簿式となりまして、参議院名簿登載者の氏名または参議院名簿届け出政党等の名称もしくは略称を記載して投票するといった仕組みになったところでございます。

 それで、今回の参議院議員通常選挙に向けましては、今回で二回目でございまして、より制度の周知徹底が図られますように、新聞広告、あるいはポスター、雑誌、広報紙、点字パンフレット、あるいはホームページと、いろいろな媒体を効果的に活用した啓発を行いたいと考えておりますし、また、各選挙管理委員に対しましても、投票の記載方法の混同等が生ずることのないように、選挙人への周知並びに投票所における説明、案内といったようなことにも配慮していただくように要請しているところでございます。

 いずれにいたしましても、選挙管理委員会や明るい選挙推進協会等の民間団体とも連携を密にいたしまして、できる限りの工夫を凝らして制度の周知徹底に努めてまいりたい、かように考えているところでございます。

早川委員 電子投票の国政選挙への導入についてお伺いいたします。

 地方公共団体が条例によりまして地方選挙に電子投票を導入することができるという、地方選挙電子投票法が施行されて二年が経過いたしました。この間、九団体において電子投票が実施されたと伺っております。電子投票制度は、時代の流れでありまして、今後拡大していくべきである、国政選挙へも導入すべきではないかと私は考えております。

 そこで、電子投票を国政選挙に導入することについて総務省としてどのようにお考えであるか、お伺いいたします。

高部政府参考人 電子投票についてでございますが、投票方法は選挙手続の中でも最も中核的なものだというふうに考えておりまして、その変更については、広く有権者の合意を得て進めていくべき事柄だというのが基本的な認識でございます。

 地方選挙につきましては、ただいま御指摘ございましたように、平成十三年に法律が制定されまして、特に地方公共団体につきましては、条例による記号式投票の制度が既にあったというようなこと、あるいは、意欲的な取り組みをしたい地方公共団体の取り組みを国の制度で制限することのないようにといったような理由から、地方公共団体が自主的な判断で導入することを認めて、これも御指摘ございましたように、九団体の実施事例があるといったところでございます。

 一方、国政選挙の投票方法でございますけれども、これも委員御案内かと思いますが、平成六年の衆議院選挙の制度改革の際に、一たん記号式投票を導入されたというような経緯もあるんですが、一度も実施されることもなく、平成七年に、議員立法によりまして自書式に戻されたといったような経緯があるわけでございます。

 こういう経緯もございますし、それから、電子投票につきまして、地方団体でやっている場合でも類似の課題はあるわけでございますが、技術的な課題といたしまして、特に、参議院の比例代表のように候補者数が非常に多い場合には、どういう表示方法にするのかといった技術的な課題もあるところでございます。

 いずれにいたしましても、国政選挙に電子投票を導入するという点につきましては、これは選挙手続の根幹にかかわる問題でもございますので、地方選挙の実績等を踏まえまして、各党各会派におかれましても十分御議論いただく必要があるものだ、かように考えているところでございます。

早川委員 次に、公職選挙法違反事件の捜査等について警察庁にお伺いいたします。

 先ほど、選挙違反検挙の状況について御報告がございました。新聞報道等を見ておりますと、今回の衆議院総選挙においては、電話による選挙運動に従事する者に報酬を支払った者について、買収罪として検挙された事例が多かったような気がいたします。

 過去の選挙における検挙状況及び裁判所の判断、今回の公職選挙法違反事件等について、その状況がいかがであるか、警察庁にお伺いいたします。

栗本政府参考人 御指摘のいわゆる電話作戦と申しますか、電話による投票依頼行為に報酬を支払う行為、これにつきましては、過去の裁判例でも、選挙運動に対する報酬であり、買収罪を構成するとされているところでございます。

 この関係での検挙状況につきまして、これは各県からの細かい報告がちょっとございませんけれども、事件という形で、何人かの被疑者がいて、それぞれが検挙件数になりますが、そういう形でとっておりませんので、具体的にあった事件という形では把握いたしております。

 それについて見ますと、平成に入って以降の国政選挙について見ますと、衆議院議員総選挙におきましては、第三十九回、これは平成二年の二月に施行されておりますが、これ以降五回の選挙におきまして、合計三十七事件のうち強制事件が三十二件でございますが、三十七事件の検挙がございます。

 また、参議院議員の通常選挙におきましては、平成元年七月に施行されました第十五回通常選挙以降五回の選挙におきまして、合計十六事件、うち、強制事件十二件の検挙を把握しております。

 ただ、昨年行われました四十三回の衆議院総選挙におきましては、九事件でございますが、そのうち、検挙件数が九十五件、人員では百三十二人ということで、昨年の総選挙のより詳しいデータがありましたので、あわせて御報告を申し上げたいと思います。

早川委員 電話による選挙運動を行う者に対する報酬の支払いが買収罪に当たるというのが、確立した先例だということがわかりました。

 これに対して、電話による選挙運動を行う者に対しての報酬の支払いを認めてはどうかという意見があるようであります。私も、個人的には、一定の限定をかけた上であれば議論の余地があるのではないかというふうに考えておりますけれども、現行法がそのように規定をしている以上は、選挙関係者においては法を遵守しての選挙運動を行わなければならない、これが重要であるということを指摘したいと思います。

 そこで、最後でありますけれども、昨年の衆議院議員選挙時の埼玉八区における現金買収事件について、少額の現金の受供与で逮捕された人もいるようであります。現在も公判が係属しておりますし、個別事件についての言及は差し控えたいと思いますけれども、公職選挙法違反事件というのは、善良な一般市民の方々をも巻き込むのであり、その取り締まりに当たっては、くれぐれも行き過ぎがあってはならない、また、あらかじめ特定の候補者を選定して、いわばねらい撃ちのような捜査方法をとってはならないというふうに考えております。警察当局において、各都道府県の警察本部が取り締まりの成果を競い合うような状況の中で、軽微な違反事件についての検挙等を行うことがないよう、十分警察庁において指導されることが必要であろうと私は考えております。

 そこで、選挙違反の取り締まりに関しての警察当局のお考え方をお伺いいたします。

栗本政府参考人 私どもの警察といたしましては、選挙違反取り締まりを通じて選挙の公正確保に寄与する、これが私どもの警察の責務と認識しておるところでございます。

 そのようなことを踏まえた上で、取り締まりに当たりましては、常に、不偏不党かつ公平な立場を堅持するということで各県を指導しているところでございまして、また、具体的取り締まりに際しましては、買収などの選挙の公正を直接に害する悪質な違反に指向してこれを検挙する、また、軽微な違反については、警告により違法状態の早期検挙と続発防止に努めるよう指導しているところでございます。

 また、このような具体的な違反取り締まりに当たりましては、申すまでもなく、正当な選挙運動及び政治活動の自由の確保に配意するとともに、人権の尊重に十分配意するように指導しているところでございます。

早川委員 時間でありますので、終わります。

 ありがとうございました。

増田委員長 次に、井上義久君。

井上(義)委員 公明党の井上義久でございます。

 大臣、所用もおありのようでございますから、初めに、永住外国人の地方参政権付与の問題についてお伺いしたいと思います。

 この国会でも、私ども公明党、永住外国人に対する地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権付与に関する法律案、これを提出しております。できるだけ速やかに、各会派の御協力を得て審議し、採決をしていただきたいとまずお願いする次第でございます。

 この件に関し、まず総務省に、この定住外国人に対する地方参政権付与につきまして、それぞれ都道府県、市町村で決議や、あるいは地方自治法に定める意見書を採択していると思いますけれども、総務省として受理した分、どのような状況になっているか、まず御報告をお願いしたいと思います。

高部政府参考人 本年五月七日現在におきまして、永住外国人に対する地方参政権付与を求める地方自治体の意見書等の決議で、総務省が受理いたしましたものの数は、都道府県分三十二件、指定都市分十二件、指定都市以外の市区町村分千百八十二件、総数で千二百二十六件となっておるところでございます。

井上(義)委員 全国でおよそ三千百の自治体が現在あるわけですけれども、定住外国人が不在な町村はそのうち六百ぐらいあるそうでございますから、総務省に届いている分だけでも過半を超える自治体が、既に、定住外国人に対する地方参政権付与について、付与すべきという意見書を採択しているわけでございます。

 これは、民団中央本部の調べでございますと、これについては決議等を含んでおりますから若干違いはあると思いますけれども、三十六都道府県、五百三十五市区、七百三十九町、二百九村、千五百十九の自治体で既にそういう決議等が行われているということでございまして、採択率も四六・〇%、それから、外国人不在の町村を入れますと優に半分を超えているわけです。

 また、その当該地域の人口を含めますと、日本国民の七六%ぐらいの人たちがこれに賛成をしているという状況があるわけでございまして、この定住外国人の参政権の付与ということにつきましては、さまざまな意見があることは私どもは承知はしておりますけれども、国際化の潮流、あるいは永住外国人参政権にかかわる諸外国の動向、あるいは一九九五年の最高裁判決、あるいは、今指摘をいたしました地方自治体議会での意見書の採択状況、それからさまざまな約束事もあるわけでございまして、そろそろ決断をすべきときが来ているのではないかというふうに思うわけでございます。

 この件について、私は、政府としてもぜひ積極的な推進をお願いしたいと思いますし、立法府としても一定の結論を出さなければいけない、こんなふうに思っているわけでございまして、総務大臣のこの問題に対する御認識、御見解をまずお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 この永住外国人の地方参政権の件につきましては、これはもう井上先生よく御存じのように、公明党以外からも、たしか共産党からも同じような内容というか、片一方は被選挙権まで入っておりますので、少し内容は細かに精査すれば違っておりますが、少なくとも二法案が今国会に提出をされておると承知いたしておりますが、井上先生、これはもう長い間の御議論があったところなので、その経緯、よく御存じのとおりだと思いますので、これは国の制度の根幹にかかわる最も大事なところだと思いますので、賛成論から反対論までこれは真剣に議論がこれまでずっとされてきたところでもありますので、それこそ各会派におきましてこれは議論を進めていただくということであって、これは、行政府の立場としてこっちとかあっちとか言えるような種類の話ではない。

 少なくとも、自分が選ばれる制度の根幹にかかわる話だと思いますので、先ほどのあの小選挙区、中選挙区のお話と同様、これは非常に根幹にかかわる話だと思いますので、一層の御議論を期待をいたしております。

井上(義)委員 これは、自公の間の政権合意の中にもこのことがうたわれておるわけでございますし、麻生総務大臣、総務大臣という立場でございますけれども、与党自民党の有力な議員の方でもございますので、ぜひイニシアチブを発揮していただいて、党内のコンセンサスをつくっていただきたいということを改めて要望をいたしまして、次の質問に移りたいと思います。

 まず、期日前投票制度でございますけれども、昨年の十二月一日に施行されまして、この七月の参議院選挙が、制度導入後の最初の本格的な国政選挙になるわけでございます。

 それで、この期日前投票制度につきましては、投票者の利便ということをやはり積極的に図っていかなければいけないと。また、それが投票率のアップにもつながるわけでございます。

 これは不在者投票のときにもいろいろ指摘をされたわけでございますけれども、やはりこの期日前投票所の数の問題、お伺いしましたら、市町村で合計四千四百九十六カ所、これは前回の参議院選挙の不在者投票の記載場所ですけれども、一自治体当たり平均一・四カ所弱ということで、それぞれの自治体によって相当な温度差があると。東京二十三区を見ても、一カ所のところもあれば、支所ごとにやっているところもあるというような状況で、やはり、せっかくこの期日前投票制度を本格的に導入したわけでございますから、投票者の利便性を考えて、投票率のアップを期すために、期日前投票所の増設というものをやはり積極的に総務省としても推進すべきではないか、こんなふうに思っておりますけれども、当局の取り組みをお伺いしたいと思います。

高部政府参考人 御指摘ございましたように、不在者投票記載場所につきましても、できるだけ選挙人の利便に資するように増設をしてほしいといったような要請をしてまいったところでございますが、これも御指摘ございましたように、現実的には、人員の確保でございますとか場所等の確保といったようなことが課題になりまして、市区町村によって大分差があるといったのが実情でございます。

 期日前投票におきましては、選挙人の投票環境の向上という観点からもこの制度が整備されたということでございますので、このことによって不便になってはどうかというような御指摘もかねていただいているところでございますので、当面、今度、期日前投票になりますと確定投票ということになりますので、そういう意味では、物理的に隔離するとかといったような課題、あるいは投票立会人の常駐でございますとか、より厳格な二重投票の防止といったことでハードルが若干高くなる部分があるわけでございますが、私どもはこれまでも、当面、増設しているところについて、まずは数は減らすことのないようにといったようなこともお願いしておるところでございますし、今後とも、できるだけ増設に積極的に取り組むように市町村に対しましては要請してまいりたい、かように考えているところでございます。

井上(義)委員 もう少し具体的に、自治体に対して要請したのかどうか、これから要請するのか、そのことを含めて、それに対する自治体の対応はどうなのか、もうちょっと踏み込んだ答えをしてもらいたいと思います。

高部政府参考人 参議院選挙に向けまして、これからの取り組みにつきましては、近々、委員長、書記長会議等を催すことにしておりまして、順次いろいろな通知類を発することにしておりまして、その通知の中でも、この期日前投票所につきましてできるだけ積極的に取り組むようにといったようなことを要請してまいりたい、かように考えております。

井上(義)委員 これは明確にきちっと積極的に増設するように、これは相当自治体で差があって、隣の区とうちの区とはどうしてこんなに違うんだという指摘が我々にも結構あるわけでございますから、これはその気になればきちっとできるので、積極的な推進を図っていただきたいと改めて要望しておきます。

 それからその次に、昨年の国会で郵便投票の対象者の拡大と代理投票記載制度、これを導入して、この三月一日からこれが施行されたわけです。それで、この法改正で、郵便投票で新たに約十二万人、これは要介護五の在宅介護者が対象になるんですけれども、それから、代理記載制度では約十三万人の方々が新たに投票できるようになるわけでございまして、この制度をせっかくつくったわけでございますから、やはり活用されなければ意味がないわけでございます。

 ただ、この両制度とも、事前に郵便等投票証明書の交付申請、あるいは代理投票のための証明手続が必要になるということを考えますと、ことしの参議院選挙、もう既に投票日まで六十日ということでございますから、早期の準備対応というのがこれは必要だと思うんですね。

 この制度をどうやって普及するか、また知らしめていくかという、かなり対象者が限られておるわけですから、また、それも特定されるわけですから、やはりこの周知徹底ということを積極的にやらなければ、せっかくつくった制度の意味がない。

 これは、民主主義の基本にかかわる、投票権が拡大をするという非常に大事な制度の創設でございますので、その点についてお伺いしたいと思います。

高部政府参考人 郵便等投票でございますが、公選法の改正によりまして、対象者の拡大と代理記載制度が設けられたところでございまして、私ども、できるだけ施行を急ぐべきだということで、本年三月からこの制度の施行をすることといたしたところでございます。

 それで、これも御指摘ございましたように、この周知というのは大変大きな課題だというふうに考えておりまして、実はきょう持ってまいったんですが、このようなチラシを五十六万部つくらせていただきまして、こういうものを活用して啓発に努めるというようなことにも努めております。

 それからもう一つは、効果的に届くようにということで、国の方も、厚生労働省でございますが、地方公共団体におきましても、厚生部局との連携を十分図りながら改正内容を周知するようにということが大事だという考えのもとに、このような要請をしているところでございます。

 参議院選挙に向けましても、いろいろな媒体を活用いたしまして、効果的に活用していただくようにといったようなことで周知に努めたいと思っておりますし、それから、市区町村の選挙管理委員会に対しましても、厳正かつ的確な実施が図られるように周知に万全を期していくようにというふうに考えているところでございます。

 いずれにいたしましても、選挙管理委員会あるいは明るい選挙推進協会等とも連携をとりながら、工夫を凝らして対応してまいりたい、かように考えているところでございます。

井上(義)委員 それでは、最後の質問になりますけれども、いわゆる視聴覚障害者の方々が候補者の政見を知る機会を確保するということ、これは非常に大事な観点だと思います。

 これまでもこの委員会で取り上げられたことがございますけれども、例えば参議院の比例代表、これについては手話通訳が可能になっている、ところが、選挙区選挙はこれができないと。それから、衆議院の比例代表は、同じ局録方式なのにこれは手話通訳ができない。それから、小選挙区については、持ち込みがオーケーですから、手話通訳も字幕スーパーも可能である。

 こういう状況を考えますと、一番いいのは、持ち込みをオーケーにすれば、持ち込みにすれば、これは手話通訳も字幕スーパーも全部オーケーになる。

 少なくとも、例えば衆議院の比例で手話通訳ができるようにということとか、あるいは政見放送でも、確かに、字幕スーパーでだれが翻訳するのかという問題がありますけれども、例えば、いわゆる政見放送者が字幕スーパーだけ事前に持ち込むということでもこれは可能になるわけでございまして、私は、こういう聴覚障害者の方々の政見放送を知る機会という意味で、持ち込み方式、あるいは可能なところで手話通訳を可能にする、あるいは字幕スーパーを可能にするというようなことを積極的にこれは推進しなきゃいけないんじゃないか、このように思いますけれども、この点についてお伺いしたいと思います。

高部政府参考人 障害者の方々が選挙に参画しやすいようにその環境整備を進めることは、大変重要な課題だと認識しているところでございます。

 それで、もうこれも委員から御指摘ございましたように、手話通訳につきましては、参議院の比例の選挙、あるいは、持ち込みビデオで衆議院の小選挙区選挙が手話通訳を付することができることとなっているところでございますが、その他につきましては、政見放送の収録期間が極めて短い中で、手話通訳士の資格を持った方々が地域的に偏在し確保が難しいといったようなことなどから、制度化されていないというのがこれまでの経緯だろうと考えております。

 ただ、手話通訳士の数は年々増加しているというふうにも承知しておるところでございまして、その状況を踏まえつつ、放送事業者、関係団体と協議しながら、引き続き導入について検討していきたい、かように考えているところでございます。

 また、字幕スーパーにつきましても、同じようないろいろな技術的な課題があったところでございますが、この辺の技術進歩もあるところでございます。また、委員御指摘ございましたが、あらかじめ届け出が出たものをというあたりの議論もしたことはあるんですが、画面の動きと合わなくていいのかとかいったようなことも課題になるかなと当時議論した記憶がございますが、いずれにしても、今後の技術の進展等を踏まえまして、選挙の公正の確保に十分留意しながら、また、必要に応じて、有識者の意見も聞きながら幅広い観点から検討を進めてまいりたい、かように考えております。

井上(義)委員 技術的に十分可能である、これが共通の認識だと思いますので、ぜひ具体的な実現に向けて努力していただきたいことを要望いたしまして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

増田委員長 次に、井上和雄君。

井上(和)委員 民主党の井上和雄でございます。

 まず、警察庁の方に、公職選挙法違反の実態についてお伺いしたいと思います。

 先ほど警察庁から、前回の衆議院選挙における違反状況の御説明がありました。まあ、前々回に比べれば検挙人員が五百人近く減っているということでございます。当然ですね。選挙の実態の変化によって、取り締まり対象とか検挙される選挙違反の内容というのは変化しているんだなというような印象も受けました。

 私も、先日、警察庁の方からレクを受けましたら、今回でも、例えば投票干渉とか投票偽造というような、いわば御高齢者とか社会的な弱者の方を巻き込んだような選挙違反が摘発されているというお話を伺いました。本当にこういうことは、選挙の投票というのは本当に基本的な権利ですから、こういった基本的権利を侵害する、非常に、極めて悪質な犯罪じゃないかというふうに私は思っています。そしてまた、今回、郵便投票というのが実施されるということになりますと、こういった事例が非常にふえてくるんじゃないかというふうに危惧もいたします。

 そういった意味で、これまでなかったようなこういう投票干渉とか投票偽造というもの、まあ偽造というのはあったかもしれないけれども、しっかりと今後取り締まりしていただきたいというように思います。

 それで、選挙違反の中心というのは、これはもう当然、買収事件というものがあると思うんですね。例えば、買収事件のその内容もかなり変化していると思うんですけれども、警察庁に、平成元年以降、買収の件数というもの、平成二年、三十九回以降の総選挙における買収の件数と検挙人員ということに関してちょっとお伺いしたいと思います。簡潔にお答えいただければと思います。

栗本政府参考人 選挙違反におきます買収事件の検挙状況ということでお尋ねでございますので、若干数字を申し上げて恐縮でございますが、平成二年二月施行の三十九回以降、五回の若干の数字を御報告申し上げたいと思います。

 三十九回につきましては、買収罪の検挙件数が三千四百七十八件、検挙人員が六千九百四十人でございます。

 平成五年七月施行の第四十回につきましては、同じように、検挙件数で二千六百八十三件、人員で五千百三十三人です。

 平成八年十月施行の第四十一回につきましては、検挙件数で七百五十七件、検挙人員で千五百三十一人となっております。

 また、平成十二年六月施行の第四十二回につきましては、検挙件数で三百九十件、人員で千百三十三人。

 そして、昨年行われました第四十三回につきましては、検挙件数で四百十四件、検挙人員で六百二十三人ということで、この五回を見ましても、検挙人員につきましては、一貫してかなり大幅に減少しているという状況でございます。

井上(和)委員 私も、当委員会に初めて所属いたしまして、今回、特に買収の検挙件数が大幅に下がっているんだということを知りまして、非常にびっくりしました。特に平成二年は、今お話がありましたけれども、三千四百七十八件もあったんですね。そして今回が四百十四件。もう驚くほど件数が減少している。これはひとえに、当然、警察当局の御努力、そしてまた、政治家として我々もクリーンな選挙に取り組むということを真剣にやってきた、そしてまた、制度的にも連座制とか導入された、そういったさまざまな要因があったと思うんですね。

 ただ、結果として非常に件数が大幅に減っているということは、クリーンな選挙に向けては大きく前進しているというふうに評価できると思います。

 ところが、今までの買収事件というふうに思いますと、要するに票をお金で買う、こういうのが恐らく国民一般の認識だと思うんですね。つまり、お金を上げるからそれに投票してもらう。しかし、昨今、非常にわかりにくくて、例えば、一般的に考えて軽微なものと考えられるような買収事例が非常にふえていると。例えば、いわゆる選挙運動員が働いて、その労働対価に対する支払いに対して、これを買収だと。それは当然ですね。しかし、それに対して警察当局からの取り締まりが中心になっているというような感があります。

 それで、例えば電話かけ、電話の投票依頼に対して、労働対価に対してお金を払うということに関しての摘発が多くなっているという印象を受けます。

 そこで、先ほど自民党の早川先生も、例えば電話かけに対する対価というものを認めてもいいんじゃないかというお話もありました。実は、私たち民主党も、この電話かけに関しては、人数を制限して、限定要件をつけて認めてもいいんじゃないか、対価を払うことを認めてもいいんじゃないかという法案を議員立法にいたしまして国会に提出いたしました。ぜひ、当委員会においても、一刻も早くこの法案に関して御議論をいただきたいと思うんですが、委員長、いかがでしょうか。

増田委員長 後日、理事会に発言の趣旨はお伝えいたします。

井上(和)委員 どうもありがとうございます。

 そこで、今、総務大臣はちょっと参議院の方に行かれてしまったので、山口副大臣に、これはちょっと通告してなくて申しわけないんですけれども、この電話かけの対価を認めるということに関して御所見がございましたら、ちょっといただけますでしょうか。

山口副大臣 もう私がいろいろ申し上げるまでもなく、恐らく先生の方でいわゆる公職選挙法の趣旨ということはもう十分御承知と思いますが、今回、民主党さんの方からそういった御提案があるというふうなお話も聞いております。

 結局、選挙運動員への報酬の支給及びその対象者の拡大というのは、やはりその時代時代、状況に応じて議員提案で実はいろいろと拡大していったという経緯もございますので、どうか、各党各会派で、あるいは当委員会で十分御議論いただいたらというふうに思っております。

井上(和)委員 この電話かけの問題に関しては、後ほど、私の同僚議員がさらに詳細を御質問させていただきます。

 それでは、戸別訪問の禁止に関して簡単にお伺いしたいんですけれども、今現在では、公職選挙法によって戸別訪問は禁止されています。なぜ禁止されているかというと、恐らくは、戸別訪問というものが買収の温床になりやすいということが立法の趣旨であったというふうに私は思うんですね。

 ただいま警察庁からいただいた統計によっても、かなり買収事件というもの自体は大幅に減ってきているという中で、私は、やはり戸別訪問というのは、国民と一対一で政治家が議論するという大事な機会じゃないかと思うので、これをもう解禁してもいいんじゃないかというふうに思っておるんですね。警察庁の方に、私、今回の選挙で戸別訪問によって買収が発生したという事件があるかと聞いたら、ないという話でしたから、もうこれは戸別訪問を解禁してもいいんじゃないかと思うんですが、山口副大臣、御簡潔にちょっと、御意見があったら。

山口副大臣 副で申しわけありませんが、お答えさせていただきたいと思いますが、今、井上先生も御指摘いただきましたけれども、戸別訪問ということによって、やはりいろいろと、禁止行為が生じる可能性があるとか、選挙人あるいは候補者にとっても煩雑じゃないか等々の考え方の中で、実は大正十四年からこれは設けられておる規定なんです。

 これも御存じかとは思いますが、実は平成五年に、例の政治改革、今の小選挙区比例代表並立制というのを導入するときの当時の細川総理と自民党総裁との合意事項というのがあったわけなんですが、実はこのときに、政府としては、戸別訪問というのは、候補者と有権者が直接話し合いをする機会でもあるし、いいんじゃないかということで実は自由化というふうなことを考えておったわけなんですが、そのときの合意事項で、やはりだめだというふうなことに相なった経緯が実はございます。

 そういった経緯もございますので、やはりこの件に関しましても、どうか各党各会派の方で御議論いただきたいと思っております。

井上(和)委員 ぜひ、前向きに当委員会でも議論していただきたいと思います。

 その次の問題に移りますが、今回の総選挙及び先日行われました衆議院の補欠選挙の状況を見まして、やはり投票率の低下というものはこれは甚だしいと。特に補欠選挙は、埼玉八区では三五%という低投票率ですよね。これではもう民主主義が本当に機能しなくなる、本当に危機的な状況にあると私は思います。

 そういった意味でも、当委員会では、この投票率に関して、どうやって改善していくかということを本当に真剣に議論しなきゃいけないというふうに思います。もちろん、我々政治家の努力も本当に必要ですけれども、特に若年層、例えば前回の衆議院選挙におきまして、二十歳から二十四歳の投票率というのはもう三割しかないんですね。十人に三人しか行っていない。これは本当にもう深刻に我々受けとめなきゃいけないと思うんです。

 そういった意味で、やはり若い人たちに投票に行ってもらう。私は、やはり学校教育の中で、小学校、中学校、高校、政治に参画する、選挙に投票に行くということをしっかり教えていかなきゃいけないと思うんですね。

 私、先日、文科省の方から指導要領とか教科書も見せていただきましたけれども、教科書を読んで、選挙制度の説明なんかもありますけれども、二十になったら投票に行きたいなというふうに思えるとはとても思えないし、私自身も、もう数十年前になりますけれども、学校で習って、ほとんど教科書の内容は余り変わっていないなという印象でしたけれども、もう少し教育の内容、方法等に関して相当工夫していかなきゃいけないというふうに思うんですけれども、このあたりについて私は文科省の責任というのは非常に重要だと思うんですよね。

 もちろん、指導要領がありますが、実験校とかそういうこともやっていらっしゃるようですけれども、具体的に少し考えてやっていただきたいと思うんですが、どうでしょう。

金森政府参考人 お答え申し上げます。

 児童生徒が、選挙制度を含め政治に関心を持ち、実感を持って理解したり進んで考えたりできるよう、学校におきましては、指導方法の工夫に取り組み、調査、見学や体験など、具体的な学習活動を取り入れることは極めて重要であると考えております。

 各学校の実際の取り組みといたしましては、例えば、多くの中学校では、生徒会の役員を選挙で選ぶといった活動を通じまして生徒が政治参加の基盤を培う体験を重ねておりますほか、学校によりましては、社会科における民主政治と政治参加の授業の一環として、生徒が個人で政策を立案いたしまして、クラスの中で同じような政策を立てた者でグループをつくり、立会演説会や政策討論会、投票といった活動を実際に行うことによって政治参加の意識を高めている事例もございます。

 また、実際の選挙における投票率などの資料を選挙管理委員から提供してもらい、生徒が、投票率が低かった理由を考えたり、改善の方策を話し合うといった事例も見られるところでございます。

 児童生徒が、政治に関心を持ち、実感を持って考えることができるよう、体験的な学習の充実を図ることは重要でございます。各学校の実践例も見られるところでございますので、私どもといたしましては、各学校段階ごと、各教科ごとに、各県の指導的立場にある教員などを集めた研究協議会などの機会を通じまして、すぐれた実践例の収集や普及に努力してまいりたいと考えております。

井上(和)委員 それでは、文科省にお願いなんだけれども、そういうことをやって、実際にそういう教育を受けた子供たちが、二十になって何人ぐらい投票に行くかというのをしっかり検証してもらいたいんだよね。そうしなければ、ただやりました、あとは、二十、成人になったら勝手に行ってくださいというんじゃなくて、では、こういう方法で工夫してやりました、例えば生徒会選挙でマニフェストを入れたらどうですか、そういうことをやって、二十になったら、そういったことをやった子供たちは七割、八割投票に行く、そういうことを検証してもらいたいんだよね。ぜひよろしくお願いします。

 では、時間ですので、質問をやめさせていただきます。

増田委員長 次に、平岡秀夫君。

平岡委員 民主党の平岡秀夫でございます。

 きょうは、少し選挙違反の問題について取り上げてみたいというふうに思います。

 私、あるときに、比較的親しい警察幹部の方といろいろお話をしておりまして、選挙違反というのは警察にとってどんな位置づけになるんでしょうかというようなことを聞いてみました。交通違反も似たようなところがあるのかもしれませんけれども、全国で一斉に選挙が行われるというような状況のときには、いろいろなところで選挙違反があるかもしれない。それを全部網の目を張って監視するということは、到底やはり警察の組織的な力といいますか、人員としてもできないというようなことで、選挙は公正に行われているらしいというような印象を有権者に持ってもらえる程度しか現実としてはできないんだ、こういうような話もちょっと聞いたところでございます。

 確かに、現実を考えてみたら、それがやむを得ないのかなというふうに思うんですけれども、そうであるとするならば、ひとつ注意しなければいけないことがあるんではないかというふうに思います。

 ひとつ注意しなければいけないことは、大きく分けて二つになるわけでありますけれども、特に、目立った、目に余るような活動があるような場合には、それに対して警察としてもきちんと対応していくということが必要ではないか。それからもう一つは、逆に、警察の方で、あるいは取り締まり当局の方で、非常に恣意的に、あるいは政治的にというんですかね、ねらい撃ち的なことをするというようなことになったのでは、本当にこれは、公正な選挙というものをやっていくときにかなり大きな問題が出てくるんじゃないか、こんなふうな気がいたしているところでございます。

 そういう点で、一つは目立った動きについての話、もう一つは恣意的になってはいないだろうかというような話、こういう点で質問してみたいというふうに思うわけであります。

 まず最初に、教育者と政治活動、選挙運動についての話でございますけれども、選挙が終わった後も、週刊誌報道とか、あるいは、その後ちょっと私が入手しました内部文書によれば、作新学院において、昨年の総選挙に際して、これから申し上げるような行為が行われているということが大体うかがい知れるわけでありますけれども、これは一般論としてでの話で結構でございますけれども、次に私が申し上げるような行為というのは、公職選挙法、あるいは教育基本法、特に第八条の第二項だろうと思いますけれども、あるいは義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する臨時措置法といったような諸法令に違反するのではないかというふうな気がするんですけれどもいかがでしょうかということで、三点ほど申し上げます。

 教員を含めて学校ぐるみで、理事長である候補者の後援会への入会勧誘活動を行ったこと、職員を含めて学校ぐるみで、告示後、理事長である候補者の後援会入会者に入会のお礼の電話をしたこと、教員を含めて学校ぐるみで、告示後、理事長である候補者に投票するよう同窓会員に勧誘したこと。したことと過去形で言ってしまいましたけれども、することというふうにちょっと読みかえていただいて、一般論としてお答えいただきたいというふうに思います。

 それぞれ、総務大臣、法務大臣、文部科学大臣ということでお願いいたしたいと思います。

高部政府参考人 お答えを申し上げます。

 御指摘ございました公職選挙法第百三十七条でございますが、「教育者は、学校の児童、生徒及び学生に対する教育上の地位を利用して選挙運動をすることができない。」と規定しているところでございます。

 同条は、教育者がその教育上の地位を利用して選挙運動することを禁止しているのでございまして、教育者が、その教育上の地位を利用しないで、一般人と同様な選挙運動をすることや政治活動を行うことを禁止しているものではございません。

 それで、個別具体の事案については、その具体の事実に即して判断すべきものだ、かように考えるところでございます。

樋渡政府参考人 お尋ねは、一定の事実を仮定して犯罪の成否を問われる趣旨と思われますが、犯罪の成否は個別の事案ごとに証拠に基づいて判断されるべき事柄でございまして、お答えいたしかねるところでございまして、一般論として申し上げますれば、これは、所管をしているところの省庁がお答えになっているところだろうというふうに思います。

加茂川政府参考人 教育基本法等についてのお尋ねでございます。

 まず、教育基本法第八条、その二項でございますが、学校教育が、その目的を達成するために、学校に一党一派に偏した政治教育を持ち込むことを禁止しておりまして、いわゆる政治的中立を保つために定められたものでございます。

 本条において禁止されておりますのは、学校が、その学校を教育活動の主体として、特定の政党を支持し、またはこれに反対するための政治教育、その他の政治活動を行うことでございます。

 具体的には、学校での例えば典型的な例が授業中でございますが、学校の教員が生徒に対していわゆる一党一派に偏した党派的な政治教育を行う場合であって、このような行為は本条で禁止されておるわけでございます。

 先生がおっしゃいました活動が具体にどういう程度であるのかつぶさに承知はしておりませんけれども、学校教育活動として行われていないと認められる場合には、今申し上げました学校教育に関する基本法八条第二項に違反するものではないと私どもは理解をしております。

 また、いわゆる義務教育の政治的中立確保法についてのお尋ねもございましたが、この法律は、学校の職員を主たる構成員とする団体の組織またはその活動を利用して、小中学校など義務教育諸学校に勤務する教育職員に対して、児童生徒に特定の政党等を支持しまたは反対させる教育を行うことを教唆、扇動することを禁止するものでございまして、本件について申しますれば、児童生徒に対する教育、これに関する教唆、扇動と言えない場合については、本法が禁止する行為には当たらないのではないかと考えておるものでございます。

平岡委員 今、教育基本法の第八条第二項に触れられましたけれども、この法律は、「法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。」こう書いてあるわけですね。

 この法文は、「その他政治的活動」というのは、特に政党の支持あるいは反対するということの限定が付されているわけじゃなくて、「その他政治的活動」というふうに一般的に書いてあるわけですよね。そういう状況の中で、これは明らかに教育基本法八条第二項の違反じゃないですか。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 先生、委員御指摘になりました教育基本法第八条は政治教育に関する規定でございまして、その一項に、「良識ある公民たるに必要な政治的教養は、教育上これを尊重しなければならない。」という規定をまず定めてございます。それを踏まえて、政治教育のありようについての第二項でございますので、教育のありようとしての政治的中立性を求めておると私どもは解釈をしておるわけでございます。規定の仕方もそうなっておると理解をいたしております。

平岡委員 今のは私納得できませんので、政府の統一見解を求めたいと思います。「その他政治的活動」というのは一体どこまでの範囲が含まれているのかということについて。よろしいでしょうか、委員長。

増田委員長 わかりました。理事会に御報告いたします。(発言する者あり)理事会に報告いたし、協議いたします。

平岡委員 同じく内部文書によれば、作新学院においては、昨年の総選挙に際して、PTAに対して、在校生の保護者に、理事長である候補者に投票するよう依頼したことがうかがい知れますけれども、これは、公職選挙法第百三十七条、先ほど言いました教育者の地位の利用に当たるのではないかというふうに考えますけれども、どうでしょうか。

 先ほど、ちょっとこれに関して教育者の話が出ましたけれども、選挙制度研究会、これはどういう研究会かというのは後で調べていただければと思いますけれども、そこにこう書いてあります。「直接児童生徒等を選挙運動に従事させる場合はもちろん、これらの者の父兄あるいはPTA等に働きかける場合も含む」と、こういうふうに書いてありますけれども、これは地位利用に当たるんじゃないですか。

高部政府参考人 お答えを申し上げます。

 先ほど申し上げましたように、公選法百三十七条が地位利用による選挙運動を禁止しているところでございます。

 結局のところ、その「地位を利用して」ということに該当するかというものについて、個別事案に即して、地位利用に当たるかどうかというのを判断せざるを得ないものと考えているところでございまして、この「地位を利用して」というのは、抽象的に言いますと、教育者たる地位に伴う影響力を利用してというようなことで考えられるわけでございまして、こういう考え方、こういうことで地位利用に当たるかどうかというのは個別具体に判断せざるを得ないものと考えておりまして、御指摘の具体の事例が当たるかどうかについては差し控えさせていただきたい、かように考えております。

平岡委員 それじゃ、私が選管とかに問い合わせるという形で質問してみたいと思います。

 私がある学校の校長先生に、おたくのPTAに、私に投票していただけるように学校の父兄の人たちにお願いをしてほしいということを私が校長先生に依頼をするということは、これはいいんですか。

高部政府参考人 具体の事例をお示しいただいた上で今の御質問をいただいているわけでございまして、そういうことでございますので、その個別具体の事案について私どもからどうこうということは差し控えさせていただきたいと思います。

 無論、私どもとして、事前にお話しいただければ、いろいろな過去の実例等も踏まえて、お答えできる範囲でお答えをさせていただくということにはなるものと思っております。

平岡委員 私は、だから私のケースとして今問い合わせているんですよ。ここで聞いているんですよ。私がある学校の校長先生に、私に投票していただけるようにおたくのPTAの方々に、そのPTAに属している父兄の方々にお願いするように働きかけてくださいということを頼んでもいいですかと聞いているんです。

 私がそういうことを聞いているのに対して、それはここじゃ答えられなくて、私がどこかの選挙管理委員会に行って聞けば答えてくれるということですか。どうですか。

高部政府参考人 先ほどお答えいたしましたのは、具体事例との関連でお話しになられましたので差し控えさせていただいたわけでございますが、純粋に一般論として申し上げまして、教育者の方々が選挙運動をするということについて御質問がございますれば、公選法に百三十七条という規定があって、地位を利用した選挙運動はできませんということをお答えすることになろうかと思っております。

平岡委員 全然私の質問に答えていただけていないというふうに思いますけれども、かなりやはり慎重に考えなければいけないことであるということはよくわかりました。

 そういう意味で、こういう問題についても、実は、取り締まり当局、かなりこれはいろいろと週刊誌でも書かれているような話でもありますし、こういう目立っているようなケースについては、やはりしっかりと、捜査をするかどうかは別としても、きちっとした監視をしていただきたいというふうに思うわけであります。

 それで、ちょっとまた視点を変えて聞いてみたいんですけれども、学校法人が、例えばその設立の寄附行為の中に、自分たちは政治活動を行いますよ、政治行為を行いますよ、あるいは選挙運動を行いますよというようなことが書いてあるような寄附行為であった場合には、その寄附行為というのは認可されるんでしょうか。

加茂川政府参考人 学校法人の寄附行為の認可についてのお尋ねでございます。

 学校法人を設立する場合には寄附行為の認可申請が行われるわけでございますが、その場合には、当該寄附行為の内容が法令に違反していないかどうか等を審査した上で、寄附行為の認可を決定しているところでございます。

 御存じのように、学校法人は私立学校の設置を目的として設立されておりまして、その管理運営を行っておりますので、通常、寄附行為には、その設置目的である学校教育を実施するという目的、あるいは設置する学校等について規定するのが通常でございまして、先生御指摘のように、学校法人の根本原則を定める寄附行為の中に、政治的行為、政治行為でありますとか選挙運動を行うことと規定する条文を設けることは、通常、想定をされておりません。

 おりませんけれども、寄附行為には必要的記載事項のほかに任意的記載事項もあるわけでございまして、先生御指摘のようなことが万々一あり得たとしまして、その場合には、本来目的である私立学校の設置という規定についての全体的なその整合性が保たれているかとか、本来業務がちゃんと全うできるような規定になっているかということを、総合的に判断することになるんだろうと思っております。

平岡委員 かなり慎重な言い回しをされましたけれども、多分、認められないということを言っておられたんだろうと思います。こんなことを書いた学校法人の設立の認可なんかされてしまうというのは、私も常識的には考えられないというふうに思いますので、そこはそういう理解でいいんだろうというふうに思います。

 それでは、逆に今度は、書いていないかもしれないけれども、私立学校が政治活動や選挙運動のためにいろいろな経費を使う、学校の施設を使う、あるいは、電話を使うとか車を使うとかいうふうな形で施設を使ったり設備を使ったり、あるいは経費を使ったりということは許されるんでしょうか。

 この点については、まず、総務省の方から公職選挙法上の問題点、それから文部科学省の方からは、学校を管理する立場から御返答いただきたいというふうに思います。

高部政府参考人 今御指摘いただいた、団体の政治活動あるいは選挙活動に関しての支出という観点から今私が想定されます公選法の規定といたしましては、まず、選挙運動に関して言いますと、公選法の規定でいいますと、選挙運動の費用というものがございますので、選挙運動の費用について出納責任者と意思を通じたものは、それは選挙運動費用になっていくという格好になってきます。(平岡委員「候補者も、候補者または出納責任者」と呼ぶ)はい。

 それと、もう一つ該当規定として考え得るのは、御指摘いただいた事例が極めて幅広いことでございますので、網羅的にお答えをしかねる部分がありますが、政治資金規正法の規制といたしまして、企業、団体の関係の政治活動に関する寄附、あるいは、これは選挙を含めてですが、これについての規制がございますので、そういう条項が関連条項として考えられると考えております。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 私立学校が、政治活動でありますとか選挙運動といいますか、これにどうかかわっていけるのかということについてはいろいろ御議論があろうかとは思いますけれども、寄附行為上の規定にかかわらず、学校法人としても、目的の遂行の必要な範囲内であれば、政治的な活動を行うこと、それに伴って必要な経費を支弁することも法令上禁止されているものではないと私どもは理解をしておるところでございます。

平岡委員 選挙期間中の選挙運動についてはどうですか。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 今、一般論で申し上げましたけれども、選挙期間中、その期間外を問わず、学校法人の行い得る行為として、本来の目的遂行に反しない限り、目的の範囲内の行為と考えられれば、必要な経費も支弁できると考えております。

 ただ、付言させていただきますと、本来、学校法人は、学校を設置し、これを管理運営することが最大の目的でございますので、この本来の目的に支障があるような形での経費の支弁でございますとか、幾ら関連する行為であっても、おのずと限界があるものと、ふさわしくない行為または望ましくない範囲というのはあるものだと思っておる次第でございます。

平岡委員 今の答弁がいいのか悪いのかというのは、かなり慎重に言っておられるから、認められるケースもあるかもしれないという程度の話で言っておられるんだろうと思います。だけれども、通常は、一般的には、多分認められないケースの方が圧倒的だろうと思うんですね。

 それから、いろいろなケースの場合、特に理事長が候補者であるというようなケースのときに、その学校が一生懸命理事長のために政治的活動をしているというようなこと、あるいは選挙運動をしているというようなことであれば、選挙運動費用そのものも、候補者と意思を通じて金を出しているということ、当然それは選挙費用の総枠制限の中に入ってくるような話ですよね。そういうのはやはりちゃんと監視していかなきゃいけないですよ。

 そこで、ちょっと時間がないので話が移りますけれども、実はこの件で、昨年の九月二十一日付の新聞に、「作新学院創立百十八年記念特集 学校法人船田教育会理事長・船田元氏に聞く」として、当時ある党の衆議院議員公認候補予定者であった理事長との対談の広告記事を掲載しているということですけれども、これは、例えば公職選挙法の百五十二条、有料のあいさつ広告の禁止、これに当たるんじゃないですか。どうでしょう。

高部政府参考人 御指摘ございました公選法の百五十二条でございますが、公職の候補者や後援団体が、当該選挙区内にある者に対する主として年賀、寒中見舞い、暑中見舞い、慶弔、激励、感謝等のためにするあいさつを目的とする広告を有料で新聞等に掲載することを禁止しているというふうに考えているところでございます。あくまでも、あいさつ目的、候補者や、あるいは後援団体のあいさつ目的の広告の有料での掲載の禁止ということでございます。

 それで、個別具体の事案がこれにストレートに当たるかどうかというのは、これは、お答えは差し控えさせていただきたいと考えております。

平岡委員 個別事案の当てはめの問題をここでやるつもりもないんですけれども、これを見ますと、「作新学院創立百十八年記念特集」、百十八年というのがどういう意味があるのかようわかりませんけれども、わざわざそういう特集を組んで、創立百十八年を迎えます、こういうようなことで、最後に、ここで聞き役に回っている人が「作新学院の一層の発展をお祈りいたします」というふうな形で、それは、おめでとうございますとか、いろいろお世話になりましたとか書いていませんけれども、明らかに、百十八周年を迎えて、これはあいさつですよ、客観的に見て。

 こういうようなことをやはり野放しにしておいちゃいけない。すぐにこれを逮捕して取り締まれるかというのは別として、こういうものについてはしっかりと警告を発するなり何かするなり、やはり、選挙の公正さというものを担保できるように取り締まり当局としてもしっかりとやってもらわなきゃいけないというふうに思うんです。

 次に、先ほど私が冒頭申し上げました、逆に捜査当局が、恣意的にあるいはねらい撃ち的に何か特定の事案についてだけ捜査に入っていくとかというようなことがあるというのも、逆にちょっといろいろ問題があるというふうに私は思うんです。あるところでは、やはりここはあるだろうと思ってずっと張り込んで、ずっとそこだけやっていると。ほかのところでいろいろ起こっていても、そっちはもう全然手が回らない、ここだけやっているというような形というのは、何かちょっと不自然な感じがするというふうな意味で、利害誘導罪の問題についてちょっと取り上げてみたいというふうに思います。

 利害誘導罪については、これ、本当に最初、何のことか私も全然わからなかった。法文を見るとこういうふうに書いてあります。これはポイントのところだけ読みますと、次に掲げる行為をした者は、「三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。」当選を得る目的を持って「選挙人又は選挙運動者に対しその者又はその者と関係のある社寺、学校、会社、組合、市町村等に対する用水、小作、債権、寄附その他特殊の直接利害関係を利用して誘導をしたとき。」これを読んで、どういうケースがこれに当たるのかというふうにぱっと思いつけるような人というのは余りいないんだろうというふうに思うんです。

 そこで私は、こういうケースは当たるのかなというふうにちょっと考えてみて、これが当たるのか当たらないのかということを、法務省そして総務省に聞いてみたいと思います。

 一つ、車上運動員や手話通訳者の確保、派遣を人材派遣会社に報酬を支払うことを約束して当該人材派遣会社の社員に依頼すること。どうでしょう。

高部政府参考人 委員がこの条文を読まれましたので、この規定でございますけれども、この規定ぶりを見ますと、まず、一定の目的を持って誘導行為がなされること、それから、誘導行為が選挙人または選挙運動者になされること、それから、誘導行為が、選挙人または選挙運動者自身の特殊の直接の利害関係を利用して、あるいは選挙人または選挙運動者と関係ある団体の特殊の直接の利害関係を利用してなされるもの、この三つの部分にある程度要件的には分けられると思います。

 具体の事例の御指摘がございましたけれども、個別の事案に即して、これらの要件でございます、「当選を得若しくは得しめ又は得しめない目的」を有しているか、あるいは「運動者」に該当するのかどうか、あるいは「特殊の直接利害関係を利用して誘導した」のかといったような観点で、具体の事案に即して判断されるべきものと考えます。

樋渡政府参考人 犯罪の成否は、個別の事案ごとに証拠に基づいて判断されるべき事柄でございまして、法務当局としてはお答えいたしかねるところでございます。

平岡委員 捜査当局にとってみれば、確かに、個別の事案に即してでないと判断できないと言われるのかもしれませんけれども、取り締まられる側は、これが違反になるのか違反にならないか、これは天と地の差があるんですよね。だから、そういう意味で、総務省におかれてもしっかりとこれはやはり答弁してもらわなきゃいけない。その可能性があるなら可能性があるというふうにちゃんとやはり答弁してもらわないと、本当に有権者の人たち困りますよ。あるいは、選挙運動をする人たち困りますよ。

 私、今から七件ほど、これは時間がないのでだあっと読み上げます。これは世の中でよくある事例なんです。だから、これについて、利害誘導罪、あるいは別の、公職選挙法違反でもいいんですけれども、そういう犯罪の構成要件に該当するのか、これについて答弁してもらいたいと思いますので、よく聞いて、事前に通告してありますから聞かなくてもわかっているかもしれませんけれども、読み上げます。

 まず第一点、ある会社が工事の受注や契約の成立を受けられるように尽力することを約束して、これは候補者とかが約束して、その会社の社長に選挙運動または投票を依頼すること。

 ある学校の役員がその学校の教員に対し、選挙運動をしなければリストラするとか、選挙運動をしなければボーナスを出さないとか言って選挙運動を強制すること。

 第三点、ある宗教団体に対して寄附、お布施を出すことを約束して、その宗教団体の幹部に選挙運動または投票を依頼すること。

 第四点、ある宗教団体に関係の深い新聞社の新聞を大量に購入することを約束して、その宗教団体の幹部に選挙運動または投票を依頼すること。

 第五点、ある商店主に、その商店が販売している商品を、定価、一般の人の小売価格と同額で買うことを約束して、その商店主に選挙運動または投票を依頼すること。

 第六点、ある団体の支持政党に比例区で投票するよう有権者に働きかけることを約束して、その団体の幹部に選挙運動または投票を依頼すること。

 第七点、別の選挙区にある候補者に自分の支持者が投票するよう働きかけることをその候補者に約束して、その候補者に、自分の選挙区にいるその候補者の支持者に自分に投票するよう働きかけることを依頼すること。

 以上七点ですけれども、この点についてはどうでしょう。構成要件に該当するんでしょうか、どうでしょうか。

高部政府参考人 いずれも構成要件該当性についてお答えせよということでございますが、構成要件該当性ということになりますと、なかなか私ども、個別具体の判断ということになりましてお答えしにくいかと思いますが、御指摘いただいた事例につきましては、委員がこの条文を読まれて、なおかつ、法制局におられた法律の専門家の先生が読まれたことでございます。

 私ども、当然のことながら、この種の問題については事前に御相談いただくことがあるわけでございますが、そういう場合について想定いたしまして、あくまでも一般論として考えてみますと、今御指摘いただいた事例については、利害誘導罪の関係が問題になる可能性がある事例について御指摘いただいたというふうに考えられますので、利害誘導罪についての規定を引用するか、ないしは二百二十一条全体にするか、その辺の関係がありますというようなことは御注意喚起を申し上げる事例ではないかと、かように考えます。

平岡委員 今私が読み上げたようなものは、私が少し整理してやってみたんですけれども、では、一般の有権者の方々とか選挙運動をしている人たちが、今私が読み上げたようなことが本当に公職選挙法違反で、あるいは利害誘導罪で逮捕されるかもしらぬ、場合によっては懲役刑になるかもしらぬというようなことであるということを知っているという認識を持っておられますか。あるいは、どういうふうな一般有権者の方々は認識を持っているかということについては御存じですか。

高部政府参考人 一般の方々についてこの規定を知っているかどうかといったような統計データをとったことはございませんので、そのこと自身については私ども何ともお答えしようがないところでございますが、この利害誘導罪の規定について振り返ってみますと、我が国の選挙法は、明治二十二年だったと思いますが、衆議院選挙法ができたわけでございますが、そのしばらく後の改正でこの利害誘導罪が入っておりますので、大体百年の歴史を有しているものと考えておりまして、そういう積み重ねの中で来ているということが一つあろうかと思います。

 それからもう一つは、選挙運動全般についていいますと、選挙運動の全体の公選法の体系というのは、基本的に、ボランティアといいますか、無償で自発的に行うという形になっておりますので、お金の絡む、あるいは利害誘導になりますと、直接的な、財産的な関係からストレートではない部分はありますけれども、そういうものについて、私ども、きれいな選挙の推進というような形での周知には努めているといったところでございます。

平岡委員 私が読み上げたケースは、必ずしもお金が絡んでいるわけじゃないんですよね。選挙運動しなければリストラするというようなことが、給料をもらえなくなるからお金が絡んでいるといえばそうかもしれませんけれども、リストラされると首を切られるかもしらぬ、必ずしも損得関係だけ、お金勘定だけじゃない、そんな問題も入っているわけですよね。

 だから、そういう意味で言うたら構成要件が非常にあいまいなんです。関係のある者の範囲というのは一体どれだけの範囲を言うのか、隣に住んでいるおじさんは関係のある者なのか、その二軒隣に住んでいる人は関係のある者なのかどうか、こういうこともわからないし、「特殊の直接利害関係」というのは一体何なんですか。「特殊の直接利害関係」、もう本当に、何でもこれは「特殊の直接利害関係」と言いくるめようと思えば言いくるめられるような、そんな状態になっているというふうに思うんです。

 そして、私が思うのは、こういうようなことで仮に意図的な捜査とかが行われて、無知の有権者の方々が何か事件に巻き込まれるようなことが起こったら、もう選挙運動なんて怖くて怖くて、もうとにかく関係したくない、もう私は全然選挙には関与したくない、こういうことになってしまったら、本当にこの民主主義の根本が揺らいでしまう。やはり、選挙には積極的にみんなが関心を持って、そして本当に、いい人と思うんなら選挙運動をどんどんしてやる。そういうときに、何がやっちゃいけなくて何をやっていいのかというところについてはっきりとわからない、非常にあいまいな形のものがあるというのは、私は問題だろうと思うんですよね。

 それで、一つは、まずは選挙管理当局及び選挙取り締まり当局については、この利害誘導罪について国民一般に周知するための広報活動をちゃんとすべきじゃないですか。どうでしょう。

高部政府参考人 先ほど申し上げましたように、きれいな選挙の推進という観点からの啓発には努めているところでございます。

 私ども、工夫をしながら、今御指摘の点の啓発といいますか普及についてもいろいろ工夫はしてまいりたいと思いますが、一方で、委員も御案内のとおり、利害誘導罪の個別にどういう該当かということになりますと、極めて専門技術的な部分もございます。そういうことも考え合わせますと、一方では、私どもも、特に選挙される候補者の方々等にも注意喚起をしながら、選挙の基本がボランティアとなっている、お金に、あるいは利害が絡むようなものについては、疑問があるときは選管当局にお尋ねいただくというようなことでいろいろ工夫していきたい、かように考えるところでございます。

栗本政府参考人 私ども、選挙違反の取り締まりを通じて選挙の公正に寄与する、これが警察の責務でございます。

 そういう意味におきまして、個別の具体的な事件の検挙を通じて、これを広報するなどいたしまして社会や国民に対して注意喚起を図り、同種犯罪の防止に努めていきたいと考えております。

平岡委員 こういう問題が起こったらちゃんと取り締まりをしてちゃんとやりますというんじゃなくて、やはり、警察というところは犯罪が発生するのを防止するのも一つの役割でしょう。ですよね、今うなずいておられますけれども。となると、さっき言ったように、本当に選挙については、非常に公職選挙法は難しくて、一体何ができて何ができないのかがわからない人がたくさんいるんですよ。世の中のみんながいろいろやっているからこれは当然許されるのかなと思ってやってみたら、いや、それはもう選挙違反ですよというふうにして強権的な捜査が入る。これじゃ本当に、みんな怖くて選挙運動なんかできない。選挙のお手伝いができない。

 そういう意味で、警察ですら、やはり私は、ちゃんと、こういうものは犯罪になりますよ、注意してくださいということを一般的に広報する必要があるし、もし行われているというおそれがあるのなら、それは違反になりますからやめてくださいよという警告とか発するというそういう役割をちゃんと果たさなきゃいけないと思うんですけれども、どうでしょう、もう一度その点についてお答えいただきたいと思います。

栗本政府参考人 警察の選挙違反に当たりましての基本的な考え方、これは、私ども、あくまでも不偏不党、厳正公平に立場を堅持して取り締まりに当たると。また、個別の事案につきましては、先ほど申し上げましたように、悪質等選挙の公正を害するような犯罪に重点を指向して検挙を行っていく、または軽微な犯罪については、警告などを行って違反の摘発、防止に努める、そういう基本的な立場、方針に即してやっておりますので、そういう立場を踏まえて、警察としての立場において寄与していきたいと考えております。

平岡委員 本当に、無知な有権者、無知なと言うと失礼ですけれども、本当によくわからない、法律についても詳しくは知らないというそういう有権者の方々が本当に選挙から離れていくというようなことのないように、警察の方でも、しっかりとその点、周知、広報というのを努めていただきたいというふうに思います。

 最後に一点、こういうあいまいな構成要件の利害誘導罪、これは、一刻も早くもっと明確な構成要件のものにしていくということが必要であるというふうに思っていますけれども、この点については、総務副大臣、御答弁願います。

山口副大臣 お答えをさせていただきます。

 先ほど来、一般論として平岡先生がおっしゃっておった、これはどこまでが選挙運動でどこまでが違反なのかよくわからぬみたいなこと、私もよく実感として思っておりますけれども、ただ、この利害誘導罪にしましても、実は私も、こうした職につく前は、何と、利害誘導罪というのを十分承知をしておらなかったみたいなこともございました。そこら辺、しっかり周知徹底をしていきたいと思いますが、ただ、この件に関しましては、先ほど選挙部長の方からも御答弁いたしましたけれども、これは、我が国選挙法制定当初から実は採用されてきたものでありまして、同時に、判例等におきましても構成要件があいまいであるというふうな指摘は実はなされておりませんので、我が方としては、当面の間、早急な見直しということは考えておりません。

平岡委員 ぜひ見直しを、早急なことは考えていないというんじゃなくて、どういうふうに世の中にこれが影響を与えているかということを踏まえて早急に検討していただきたいということをお願い申し上げたいと思います。

 以上で終わります。

増田委員長 次に、辻惠君。

辻委員 民主党・無所属クラブの辻惠でございます。

 民主党は、先般、公職選挙法の改正ということで、電話かけの要員について、一定の範囲でこれは費用の提供を認めるべきであるという法案を提出しております。本日は、まず最初に、これに関連して、立法事実、立法目的に関連する基礎事実についてお伺いをさせていただきたい、このように思います。

 まず、同僚委員から、この五回の国政選挙の検挙件数、買収の件数についてはお伺いしたと思いますが、そのうち、いわゆる電話かけに関する事例、買収事案のうち何件ぐらいあるのか、お答えいただきたいと思います。

栗本政府参考人 お答えをいたします。

 いわゆる電話作戦に関する買収罪及び利害誘導罪等の買収事件の検挙状況についてのお尋ねというように理解をさせていただいた上で答弁を申し上げたいと思いますが、これについては、ほかの検挙件数、検挙人員という形では統計をとっておりませんので、そのような事件という形で御報告を申し上げたいと思います。

 まず、衆議院議員の総選挙におきましては、平成二年二月施行の第三十九回の総選挙以降、五回の選挙が昨年までありますが、この五回で合計三十七事件の検挙がございます。それから、参議院議員通常選挙におきましては、平成元年七月施行の第十五回通常選挙以降、五回の選挙を通じまして合計十六事件の検挙を把握しております。

 ただ、昨年行われました四十三回の衆議院選挙のみ、その事件の中で検挙件数という形でとっておりますので、それについてのみ御報告申し上げます。

 四十三回につきましては、今の事件、これは九事件ございますが、九事件のうち、検挙件数で見ますと九十五件、検挙人員で見ますと百三十二人となっているところでございます。

辻委員 今の点、五回の推移でわかる範囲で結構ですから、数字を挙げてください。

栗本政府参考人 まず総選挙につきましては、第三十九回が十二事件、これも事件で御了解いただきたいと思います。十二事件でございます。第四十回十三事件、第四十一回一事件、第四十二回二事件、昨年の四十三回が九事件でございます。

 それから、参議院の通常選挙、これは、平成元年の十五回が六事件、第十六回五事件、第十七回三事件、第十八回ゼロ件、零でございます。それから、平成十三年の第十九回が二事件となっておりまして、若干、減少しているとか、傾向的にちょっと申し上げにくい数字になっているかと思います。

辻委員 わからないということかもしれませんけれども、電話かけの態様に変化とか特徴の変化とか、そういうことはあるんでしょうか、この五回において。

栗本政府参考人 お尋ねは、どのような者がどのような場所でやっているかということだろうと思いますが、そのような形での把握はいたしておりませんので、大変申しわけありませんが、お答えいたしかねるところでございます。

辻委員 別の角度から、今後、その点についてはまた伺いたいと思います。

 公職選挙法二百二十一条に関連して、投票買収の場合と選挙運動者買収の場合があると思いますが、通常、電話かけで買収ということになると、電話をかけてくれということを依頼するわけだから選挙運動者買収が基本になると思いますが、そういう理解でよろしいんですか。

栗本政府参考人 基本的には委員御指摘のとおりだと思いますが、中には、電話運動に従事する者が、選挙人という立場もあるかと思いますので、その趣旨が、選挙人とそれから選挙運動者と兼ねたような場合もあろうかと思います。

 しかし、基本的には、選挙運動者に対する買収ということが多いかと思っております。

辻委員 数字を調べてくれと言っただけですから、きょうはお答えいただけないのかもしれないけれども、それぞれの案件についての捜査の端緒というのは、具体的にはどういうことなんでしょう。概要で、わかる範囲でお答えいただければと思いますが。

栗本政府参考人 捜査の方の具体的な端緒のお尋ねでございました。

 これは、一般的に、選挙違反取り締まりはもちろんそうでございますが、私ども警察の行っている捜査の端緒等については、今後のいろいろな捜査上の支障がございますので、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。

辻委員 事前からいろいろ警察で情報収集される、あと、外部から寄せられるものもあるということが一般には想定されます。

 次に、公職選挙法の二百二十一条で、基本的にはこれに該当するということで、選挙運動の電話かけの依頼というのは、対価が払われた場合にはこの二百二十一条の買収罪に当たるということだと思いますが、選挙運動者に対する対価の支払いということについて、これが部分的に解除されている条項として公職選挙法百九十七条の二があると思います。

 この百九十七条の二の立法趣旨はどういうものなんでしょうか。

高部政府参考人 この規定、百九十七条の二の規定は昭和二十七年の改正で入ったものでございますけれども、今手元にある資料でその理由を見ますと、選挙運動に従事する者に対する交通費、宿泊費、弁当料等の実費弁償及び選挙運動のために使用する労務者に対する報酬の支給に関する法的根拠を示し、いわゆる運動買収との限界を明らかにするものだというようなことが書かれているところでございます。

辻委員 いや、私が尋ねているのは、二百二十一条では、運動員買収ということで原則禁止になっているわけですよ。それが、昭和二十七年で部分的に解除されているということでこの百九十七条の二というのが新たにつけ加わっているわけですから、それは、このつけ加わった具体的な理由、立法事実、立法目的があったと思うんです。それについて伺っているんです。それについてお答えください。

高部政府参考人 百九十七条の二の二項で、ただいまの規定が昭和二十七年に入ったものでございますが、この規定は、先ほど言いましたように、報酬の支給に関する法的根拠を示す、限界を明らかにしたものだ、かように考えているところでございます。

辻委員 いや、質問に対する答えになっていません。

 要するに、選挙運動を行っていく上に当たって、本来は全部ボランティアがやるべきだという趣旨で二百二十一条が規定されたのだというふうに思われますけれども、それが、具体的に選挙運動がやはり円滑に、そして有効に、そしてきちっと行われていくためには、一部部分的にその二百二十一条を解除して、対価を支払うことの合理性を認めなければいけない、そういう趣旨があるからこの百九十七条の二が新たに規定されたんだと思うんですよ。だから、その点についてどうお考えなのか、お答えください。

高部政府参考人 失礼いたしました。

 百九十七条の二の規定が二十七年に入りまして、三十七年の改正でこの二項が入りまして、選挙運動に従事する者のうち、選挙運動のために使用する事務員に対しては実費弁償のほか報酬を支給できると、ただいまおっしゃられましたように、二百二十一条で原則できないものについてできるということで、当時の理由を見ますと、その事務が機械的事務である場合に限られることになりますが、機械的な事務を少しでも越えた場合に、これに報酬が支払われたからといって直ちに買収であるとすることには、社会常識から行き過ぎであると考えられますし、また、選挙の実際といたしましても、同一人の一連の行為としてなされることが通常であります、このような面から、選挙運動のために使用される事務員についての規定を明確にするとともに、一定範囲内で報酬をできることといたしましたというようなことになっております。

辻委員 いや、だから、選挙運動を実効性を持ってやっていくために必要不可欠な部分については、やはり対価を払っても要員として認める必要が現実にあるということで、百九十七条の二の二項以下でどんどんつけ加わってきているわけでしょう。だから、その点についてそれはそういう理解で間違いないと思うんですが、いかがですか。

高部政府参考人 ただいまお答えしましたように、当時の議論をいたしますと、選挙運動の実際にかんがみてということでありますので、その辺の実態の判断の中で入れられたものだとは考えております。

 ただ、具体の議論をする中では、選挙運動がボランティアだということを基本にしながら、その中で、どういうものが実態の中で払ってもいいものかというような御議論がなされているものだというふうに考えているところでございます。

辻委員 もちろんボランティアを原則としながら、実際にかんがみて部分的に解除がつけ加わってきているという経過があると思うんですが、どのようにつけ加わってきているのか、その経過について概要を御説明いただけますか。

高部政府参考人 選挙運動に従事する者に対する報酬支給の規定でございますが、先ほど言いました昭和三十七年の改正において、初めて事務員を対象に創設されました。昭和五十三年の改正で、車上運動員、いわゆるウグイス嬢についての改正が加わりました。それから、近いところでは、平成十二年の改正におきましていわゆる手話通訳士が加えられた。

 それで、これらの者に対して報酬を支給することができるようにされたというような経過でございます。

辻委員 やはり、歴史的な経過、そしてその時々の必要性にかんがみて、実情に応じて部分的に買収罪が解除されてきている。選挙運動を実効性あらしめるために、必要な要員については徐々に百九十七条の二でつけ加わってきている、部分的に解除されてきているという大きな流れは確認できると思うんですね。

 そういう流れを確認した場合に、電話かけの要員について一定の範囲で部分的な解除をするということについて、これは時代のニーズに必ずしも背反しない、むしろ合致するのではないかと思いますが、いかがですか。

山口副大臣 先ほど来、選挙部長がお答えをいたしましたように、結局、無報酬であるという原則論に対して、選挙の実情との調和をどうやって図っていくかというふうな問題であろうかと思います。ですから、選挙人の自由というふうな大前提がこれはあるわけなんですけれども、しかし同時に、社会情勢とか選挙の実態から見た場合に、やはり一定の範囲内において報酬を認めるべきであろうというふうな考え方もありまして、先ほどお答えしたような経緯があったわけでございます。

 いずれにしても、ただ、そうした立法措置というのは議員立法でなされておりますので、ここら辺も、先ほど来と同じ答弁になってしまうんですけれども、各党各会派の方で十分御議論をいただいたらというふうに思っております。

辻委員 選挙の実態を議員立法として率直に論議をし合って、その中で、やはり実態において、ある範囲においては必要不可欠だということの意見も当然合理性が一定あると思うんですね。その点についてやはり検討課題としてお考えいただきたいと思いますが、いかがですか。

山口副大臣 やはり実態にかんがみてということで、当然検討課題であろうと思っております。

辻委員 それで、電話かけが買収罪に当たるのかどうなのかということについて、その該当性の有無ということについては、やはり非常にいろいろなケースによって、現実に選挙運動を行う立場においてなかなか判断が困難な事案というのは多々あると思うんですね。

 そこで、そういう意味におきまして、もちろん、それが本当に刑事犯罪に該当するかどうかというのは、やはり個々の構成要件該当性だけじゃなくて、違法・有責性、トータルなケース・バイ・ケースの判断だと思いますが、ある類型的な問題としてこの電話かけが買収罪との関係でどのような問題が生ずるのかという点について、以下、五つの例について申し上げますので、御回答いただきたいというふうに思います。

 まず第一は、会社の社長が、自社が応援する候補者のために自社の従業員に勤務時間中に電話をかけさせ、通常どおり給料を支払うこと。

 第二に、会社の社長が、その社員に勤務時間外に電話かけをさせること。これは、勤務時間外手当を払うか払わないかは、いずれかの場合ということで結構であります。

 三番目、政党が、自党の候補者のために自党の職員に勤務時間中に電話かけをさせ、通常どおりの給料を支払うこと。

 四番目、ある衆議院議員が、みずからの秘書に自分の衆議院選挙のために勤務時間内に電話をかけさせ、通常どおりの給料を支払うこと。

 五番目、ある衆議院議員が、みずからの秘書に自己の応援する市長選候補者のために勤務時間内に電話かけをさせ、通常どおりの給料を支払うこと。

 以上ですが、いかがでしょうか。総務省ですか。

高部政府参考人 委員も御指摘いただきましたように、個別具体の話はなかなか申し上げにくい部分があるわけでございますが、あくまでもごく一般論ということで申し上げますと、今、五点について御指摘をいただきましたけれども、通常どおりの給料が支払われるというようなことでありますれば、給与が支払われていたといたしましても、会社等の内部の問題だというふうに考えられますので、直ちに、選挙運動の報酬として財産上の利益供与等がなされたり、あるいは、特定の選挙運動員にとって特別な直接利害関係があることを利用して誘導が行われたというような認定は、なかなか難しいのではないかというふうに考えられるところでございます。

辻委員 電話かけというのは、要するに選挙運動にとって不可欠であります。したがって、いろいろなケースがあると思うんですが、冒頭で伺ったところ、検挙事案は、衆議院選挙においては、この五回について十二件、十三件、一件、二件、九件だというふうになっている。ある意味では氷山の一角なわけですよね。

 だから、氷山の一角を一罰百戒的に取り上げることが、果たして全体の公平性、妥当性に照らしていかがなものなのかということが言えると思うわけでありますが、捜査の端緒として電話かけの問題について寄せられているのは、この検挙された件数は、その中の何%ぐらいが検挙されているんですか、これは。

栗本政府参考人 今御指摘の、情報が寄せられた中で具体的に事件、検挙になったのはどのくらいの比率かというようなお尋ねかと思いますが、もちろん、そういう観点から私ども把握いたしておりませんので、答弁いたしかねるということで御理解賜りたいと思います。

辻委員 つまり、ある意味で氷山の一角であるというそういう実態としての理解ということについてはいかがですか。お認めになりますか。

栗本政府参考人 警察といたしましては、先ほど申し上げました基本的な立場に立ちまして、個別事案につきましては、法と証拠に基づいて、犯罪になる行為あるいは刑罰法令に触れる行為があれば厳正に対処しているところでございまして、そのような立場で、すべて、私どもが認知した限りにおいて適切な対応をしておるというふうに判断しております。

辻委員 型どおりの公式発言ですから、私の質問に対する具体的な回答としては全くなっていないというふうに思います。

 要するに、非常に、ある意味では氷山の一角であるという実態が現にある。したがって、その中で一定の案件だけを取り上げて検挙している、そういう可能性だって十分あるわけであります。そうだとすると、それは、警察なり検察なりの権限が本当に適正に行使されるのかどうなのか、本当に権力の行使が客観性が担保されているのかどうなのか、こういう疑いが生じてくるわけであります。そのような懸念を払拭させる、そういうことがやはり立法事実として必要性があるんだろう。その点をきょうのこの場で指摘しておきたい。

 このことについては、今後、後日また論議をさせていただきたい、このように思います。

 次に、前回、法務委員会で、三月三十一日でありますが、組織的選挙運動管理者という概念について伺いました。組織的選挙運動管理者に当たるということで連座制の適用がなされた案件が、四十一回、四十二回、四十三回の衆議院選挙、そして、直近の参議院選挙を合わせて二十件あるということで、その中で、組織的選挙運動管理者が有罪になって連座制の適用になった案件が八件あるということで、その点を質問させていただきました。

 前回、そのうちで、法務省が掌握されている、把握されている案件は三件であった。それで、公職選挙法二百五十一条の三には、組織的選挙運動管理者としては、当該選挙運動の計画の立案もしくは調整に当たる者、私はこれを第一類型というふうに一応規定いたしますが、そして次に、当該選挙運動に従事する者の指揮もしくは監督を行う者、これを第二類型、そしてその管理を行う者、第三類型ということで質問いたしました。

 前回、お答えいただいた三件については、これは第一類型と第二類型に当たるものであって、基本的には第三類型に当たるというふうには明言はされていないというようなお答えをいただきましたが、ほかの残りの五件についてきょうは伺いたいと思いますが、その五件のうち二件については、訴えが取り下げられているということで判決に至っていない。

 私の調べたところでは、東京高裁、平成九年九月二十四日判決、東京高裁、平成九年七月十七日判決、福岡高裁、平成九年八月七日判決でありますが、これらの事実については、法務省、承知されていますか。そして、この連座制適用例の組織的選挙運動管理者というのは、私が指摘した第一類型、第二類型、第三類型のどれに該当するという判断になっておりますか。

 この点、お答えください。

樋渡政府参考人 今、委員の御指摘になった判決例の順に申し上げます。

 東京高裁、平成九年九月二十四日判決では、違反者が、当該選挙においてほか一名とともに選挙対策組織の実質上の最高責任者として選挙運動の計画の立案、調整を行い、選挙運動に従事する者の指揮監督を行ってきたと認定されておりまして、これはすなわち、委員の御指摘する一と二に該当するということであります。

 次は、東京高裁、平成九年七月十七日判決の事案では、検察官において、違反者三名について、一名は候補者の選挙対策本部を実質上統括していた事務局長、一名は候補者のA郡及びB市の選挙対策本部等を実質上統括していた者、一名は候補者のC町の選挙対策本部等を実質上統括していた事務局長で、いずれも選挙運動の計画の立案、調整、選挙運動者に対する指揮監督を行ったことから、組織的選挙運動管理者等に該当すると主張し、訴訟では事実関係は争われておらず、これもすなわち、委員の御指摘する一と二ということでございます。

 最後に、福岡高裁、平成九年八月七日判決では、違反者四名が話し合いに基づいて後援会事務所を設置し、役員会や世話人会等の会合を企画、立案し、候補者の選挙カーによる遊説の際の日程を調整するなどした上、この会合等を通じて選挙運動者を集め、これらの者に、協力者カードの作成、選挙カーによる遊説の際の同乗や伴走車の提供などの選挙運動をさせ、他方で、人を雇って選挙人に電話をかけるなどの選挙運動をし、選挙運動を企画、立案、調整し、選挙運動者を指揮していたと認定されておりまして、これは、委員の御指摘する、やはり一かつ二ということでございます。

辻委員 ですから、最近の国政選挙、連座制の適用になって、組織的選挙運動管理者が有罪であるということで適用になった八ケースのうち判決に至った六ケースは、すべて第一類型ないし、かつ第二類型の事案であって、第三類型のものは見当たらないということなわけであります。

 それで、この二百五十一条の三の組織的選挙運動管理者に関しては、これは、国会の質疑で、当時、保岡興治さんや山崎拓さんなんかがいろいろな論議をされていて、これはまだ熟さないから、今後、運用の中でいろいろ修正していかなきゃいけない課題だということが議論されております。まさに、非常に第三類型があいまいなまま残されている点は、法文の規定のあり方としても問題ではないかということを指摘しておきたいと思います。

 そこで、四十三回の衆議院選挙において、新聞報道では次のような事実が報道をされております。

 一つは、宮崎二区から立候補して当選された江藤拓さんの運動員で元町議の方が、公職選挙法違反に問われて、懲役一年六月、執行猶予五年の判決を受け、確定した。また、衆議院の東京十六区で立候補した島村宜伸さんの関係の選挙事務所の職員が、やはり買収罪で逮捕されて、これは、一月の二十七日付でやはり懲役一年六月、執行猶予三年の有罪判決が確定した。そしてこれは、その後三十日を経過しております。ですから、連座制の適用の申請を東京高検はやっていないという事案であります。

 この二つの例について認識されているかどうか、そして、それが連座制の適用の申請になっていないという事実について認識されているかどうか、いかがですか。

樋渡政府参考人 委員御指摘の二つの事件がありましたことは事実でございまして、その関係の、議員を被告とする連座訴訟は提起されていないということも承知しております。

辻委員 だから、この場合の選挙運動者は、組織的選挙運動者であるが組織的選挙運動管理者ではないということだから連座制の適用が申請されていない、高検はこのように判断したというふうに理解されますが、それでいいんですか。

樋渡政府参考人 組織的選挙運動管理者等にかかわる連座要件に限らず、検察官から連座訴訟を提起する類型につきましては、違反者を買収罪等により禁錮以上の刑に処する旨の判決が確定した後、管轄の高等検察庁において、公選法所定の連座制の要件に該当する事実関係があるかどうかを検討し、連座訴訟を提起するか否かを判断していると承知しておりまして、これも検察活動にかかわる具体的な内容でございますが、お尋ねの事案につきましては、関係証拠に照らして、そのような事実関係を認めるに至らなかったため、連座訴訟が提起されなかったものというふうに承知をいたします。

辻委員 連座制の適用を高検が申請する事案は、その選挙運動者が逮捕されて起訴された段階で百日裁判の請求をしているんですよ。それで、この百日裁判の請求は、基本的に、裁判所に担当の地方検察庁からこれを百日裁判にしてくれという請求を出すわけなんですね。

 そうすると、今おっしゃったのは、選挙運動管理者の有罪が確定した後、高検が判断する、それはそれだとは思います。しかし、それ以前に、選挙運動者が逮捕されたときに、これは組織的選挙運動管理者に当たるかどうかの判断を先行的に地検段階でやっている、このように理解されますが、その点は間違いありませんか。

樋渡政府参考人 要するに、判決が確定してから、高検においてその内容を吟味してその結果を出すものであることは前から言っているとおりで、先生の御理解のとおりでございます。また、そういうような疑いのあるといいますか、そういうようなことになるような事件について百日裁判の請求をするということも事実でございます。

 したがいまして、そういうような関係、いろいろなことを検察庁の方で判断しながらやっていることだろうというふうに思います。

辻委員 時間がちょっと迫ってきていますので端的でいいんですが、結局そうすると、百日裁判の請求を地検の段階で判断して、請求するかどうかする。そして、組織的選挙運動管理者が有罪になった後、確定した後、これは連座制の適用を申請するかどうか、訴訟を起こすかどうかは高検が判断する。地検と高検との間でこれの判断が食い違う可能性としては論理的にはあり得るんですか。

樋渡政府参考人 論理的には当然あることでございます。

辻委員 そうすると、地検の判断と高検の判断が食い違うことが論理的にはあり得るということは、地検と高検でそれぞれ裁量権があって、どこかで基準が決まっていて、確定的に、一律に高検も地検もそれに従うということじゃなくて、地検と高検でそれぞれ裁量権がある、だからこそ食い違いが生ずる可能性があるということでしょう。

 そうすると、地検及び高検での裁量権の基準というのは、何を基準として、どう判断しているんですか。この点はいかがですか。

樋渡政府参考人 高検に裁量権があるんではありませんでして、事実認定をされたその事案に基づいて、それに連座訴訟を提起すべき事案であれば提起することは義務でございますので、したがいまして、裁判所の判断が地検の判断とは違うという場合だってもちろんあり得るでありましょうから、そういうようなことを高検の段階でさらに検討するということは、当然のことだというふうに思っております。

辻委員 要件があればそれに従ってやることは義務なんだ、だから裁量権がないというふうにおっしゃっているけれども、要件があるかどうかの判断を高検なり地検がそれぞれ独自にやるわけですよ。これは、通常は、裁量権があって判断しているんだということが、これが常識的な考え方ですよ。その点は、言葉で義務なんだということを幾ら言ったって、現実には、やはり判断基準が明らかになっていない状況の中で高検、地検がそれぞれ判断をしているわけだから、それについての妥当かどうかというのは、これはきちっと検証されなきゃいけないというふうに思います。この点を指摘しておきたい。

 最後に一点だけですが、これは、四月二十一日の法務委員会で、安倍晋三自民党幹事長の選挙違反はがきの点について私は質問しました。そしてこれは、本年三月四日に文部科学省から京都大学の方に調査が依頼をされて、五日に調査会を京都大学が設置して、そして調査会が三回審議を行った。そして、中西輝政教授と安倍代議士の秘書から事情聴取をした。

 これについて、人事院規則一四―七第五項一号、第六項八号は公務員の政治活動を禁止している。明らかにこれはこれに該当する。しかし、京都大学は、中西教授はこれを知らなかったから、何の措置も講じなかったと言っている。

 そうすると、この人事院規則というのは、故意の場合にしか意味をなさないということなんですか。知らないと言えば、何もこの人事院規則の規定に抵触することはないんだ、おとがめなしだ、こういうことでいいんでしょうか。文部科学省はこれについてどういう見解を持っているんですか。お答えください。

玉井政府参考人 お答えを申し上げます。

 先ほど、本件につきまして委員の方からも事実関係の御指摘があったところでございますが、要は、京都大学が、調査結果によりますと、中西教授本人は、自身の職、氏名がはがきに掲載されていることを承知していなかった、そういうことから国家公務員法上の政治的行為には該当しないということで、京都大学では特段の措置を講じなかった、こういうふうに私どもは承知をしておりますし、我が省としての本件につきましては、京都大学の判断による適切な対処がなされたものというふうに認識をしているわけでございます。

辻委員 申しわけない、最後に一点だけ。

 要するにそれは、本人が意図して犯した場合のみ人事院規則は適用になるのであって、何らかの事情で本人がそれを意図していなかったということであれば、これはおとがめなしだ、こういう判断を文部科学省は持っている、こういうことでいいんですか。

玉井政府参考人 お答え申し上げます。

 京都大学の調査によりますと、関係者の事情聴取も行った結果でございますけれども、御本人、中西教授御自身が知らなかったということでございますから、それについて故意でもなければ過失でもないという判断を京都大学としてはしているわけでございます。

 すなわち、京都大学におきましては、御本人が、事実として議員の秘書の方からの要請があったわけでございますが、電話でなされまして、その電話には中西教授の夫人が応対したけれども、そのことは教授本人には伝えられていなかった、それから、議員秘書から中西教授本人に再度の確認がなされていなかった、こういうことから、中西教授は承知していなかった、したがって、特段の措置を講ずる必要はないという判断をしたわけでございます。

辻委員 質問は終わりますが、私の質問に答えていない。故意か過失か、故意に限るのかというふうに言ったところ、いや、過失でもないというふうに言っておられるわけですね。だけれども、これは、故意でなければ明らかに過失の事例なんですよ。過失の事例がこれに当たらないということをおっしゃっているということは極めて問題であります。

 この点については再度継続して問題にしていきたいということを最後に申し上げて、質問を終わります。

 以上です。

増田委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 さきの総選挙時に、買収は四百十四件、検挙者六百二十三人と報告がありましたが、私は、このうち、さいたま地裁で判決が下された、新井正則前衆議院議員の公選法違反事件について伺いたいと思いますが、この事件というのは、起訴状などによりますと、新井被告は、二〇〇三年十月十七日ごろ、自身が支部長を務めた自民党八区支部の政党助成金一千万円のうち五百万円を、選対本部長だった元所沢市議の砂川被告に買収資金として渡し、そのうち二百九十万円が、戸別訪問、駅頭でのビラ配りなどの選挙運動への協力者への報酬として、地区長ら十八人、所沢市議九人の合計二十七人に渡った買収違反ということでありました。それで、この事件は、選挙買収の原資に、国民の税金、政党助成金が使われていたということが浮き彫りになった事件です。

 そこで、この全容を解明する必要があると思うんですが、この買収事件の原資となった政党助成金一千万円、これは自民党本部から自民党八区支部に振り込まれ、使途状況の報告が自民党本部と埼玉県選挙管理委員会になされ、自民党本部から総務大臣に報告されるという形になりますが、ですから、これは総務大臣に報告の行っているというものなんですから、どういう報告になっているかを、大臣はまだ来てはらへんから、山口副大臣に伺っておきたいと思います。

高部政府参考人 ただいまの点につきましては、報告をいただいて、今、形式審査中という段階でございますので、確定したものがございませんので、お答えを控えさせていただきたいと存じます。

吉井委員 いずれにしても、審査確定となれば、これは直ちに明らかにしないと、国民の税金が選挙買収に使われておったと、とんでもないことがまかり通っているわけですから、これは全面的に明らかにされたいと思います。

 それで、冒頭陳述を読んでおりますと、新井被告は、「平成十五年十月九日、自由民主党本部から支部政党交付金一千万円を振込入金されるとともに、十七日ごろ、砂川に対し、「選挙資金です。地区の方へ配ってください。」と申し向け、一千万円から取り分けた五百万円を手交した。」と。投票翌日から警察の捜査が開始されることを知り、自民党所沢支部の帳簿を改ざんさせた、また、活動費であると弁解するため、領収証数枚をパソコンで作成させた事実等が示されております。

 これはどうもよう聞く話やなと思ったら、この間も内閣委員会で随分やりましたが、北海道警の裏金づくりのときの帳簿改ざんなどと同じなんですね。(発言する者あり)今言うてはるとおりやけれども……(発言する者あり)いやいや、しかし、警察も変わらぬぐらいのことを一緒にやっておるわけです。支部政党交付金一千万円、公認料千五百万円、二千五百万円の話が出てくるんですが、いずれもこれ、政党助成金が原資です。

 そこで、政党助成金の運用については、第四条第一項で、「条件を付し、又はその使途について制限してはならない。」としておりますが、一方、第二項がありますね。政党助成金が国民から徴収された税金その他の貴重な財源で賄われているものであることから、「国民の信頼にもとることのないように、政党交付金を」「使用しなければならない。」と規定されております。

 そこで、これは山口副大臣に伺っておきますが、この新井前議員の買収行為というのは、「国民の信頼にもとること」ではないんですか。

山口副大臣 お話しのとおり、極めて遺憾な事例でありまして、まさに国民の皆さん方の不信をあおるといいますか、本来、政党助成金をつくるときに我々いろいろ議論をしたわけなんですが、その趣旨からしても大変問題があるというふうに理解をいたしております。

吉井委員 さいたま地裁で、先日六日の日に新井前議員の論告求刑公判が行われました。その論告でも、「買収資金は政党交付金で、国民の政治不信を増大させた。犯行で主導的役割を担った責任は重大」としています。

 それでは、政党助成金の使途の適否について。これは、第十八条の、支部が政党本部と都道府県選挙管理委員会に報告する使途等報告書では、「選挙関係費」という項目があります。「選挙に関して支出される経費で、例えば、公認推薦料、陣中見舞その他選挙に関して行われる政治活動に要する経費」の額を計上できることになっています。しかし、新井被告らは、政党助成金等で使った買収費をこの活動費に偽装、改ざんしようとしたわけなんですよ。

 それで、この政党助成法の立場に立っても、私たちは、この法律は憲法違反ですから廃止すべきものと考えておりますが、この助成法の立場に立っても、買収行為に使うことは許されないことだと言わなきゃならぬと思うんですが、これは、山口さん、どうですか。

山口副大臣 これはもう、本来、買収行為というのは、政党交付金を使う以前の問題として公選法上あってはならない話でありますけれども、同時に、先ほども申し上げましたけれども、この助成法のさまざまな議論の中で、やはり、国民の皆さん方から応分の御負担をいただいて、しっかりした政治をやろうというふうなことが実はあったわけでございまして、そうしたことから考えますと、著しく最初の思いとは相反したようなことが起こったなというふうな思いでございます。

吉井委員 よく、民主主義のコストだ何だという議論を当時言っている人がおりましたが、これは選挙買収のコストに使われていたと。

 そこで、政党助成金は、これは政府参考人に伺っておきますが、国会議員一人当たり、年間にすると毎年四千五百万円になる。これは、議員割りとか得票割りのややこしい話はあるけれども、結果として議員という形で反映しておりますから、これを確認しておきたいと思います。

高部政府参考人 いろんな計算の仕方があろうかと思いますが、人に割り振られる額について所属議員数で割り算した数字を今持っておりますが、これによりますと、二千三百九十七万円というような格好になろうかと思いますが。

吉井委員 それはあなた、票割り分を全然数に入れてないからで、票によって議員が生まれてくるわけですから、ですから、日本共産党はこれを受け取っていませんから、それを差っ引きますと、大体七百人の国会議員で三百十七億円を割れば簡単に出てくる話で、四千五百万円、一人一人が毎年国会議員の歳費とは別に受け取っているという形になるわけです。

 それで、新井議員以外にも買収、供応で選挙違反を受けている議員がおりますが、この政党助成金で、買収、供応であっても、会議費として処理することもできるわけです。国の会計検査が入るわけではありません。北海道警の捜査報償費の場合は、まだ会計検査院の検査が入っておりますが。ですから、こういう点では、これらの事件に国民の税金が使われていなかったのか。ほかの議員の買収事件ですね、その使途と報告書を精査、解明し、国民の前に、政党助成金の使途の詳細、やはり買収に使われているかどうか、徹底的に情報を公開をするべきものだというふうに思います。さっき、精査してという話がありましたが、これはまずきちんと報告をされるのかどうかということを伺っておきたい。

 そしてもう一点は、今回の新井前議員の事件というのは、要するに、政党助成金制度の弊害というものを改めて浮き彫りにしました。そもそも政党助成金制度は、憲法の定める思想、信条の自由に違反するのであります。こうした政党助成金を原資にした買収事件を再び起こさないためにも、この年間三百十七億、国会議員、毎年一人当たり四千五百万円に及ぶ、こういう国民の税金の政党の山分けという問題を生み出している政党助成金制度は廃止するべきであるというこの意見も申しておきまして、さっき言った公開ですね、きちんと報告、公開する、この点だけ、これは山口副大臣に伺って、もう時間が来たというのが来ましたから、あなたの方にそれだけ。

高部政府参考人 収支報告につきましては、私ども形式審査をさせていただいて、これが終了いたしますれば、公表あるいは閲覧に供するということになろうかと思っております。

 それから、政党助成金についてのお話がございましたけれども、政党助成制度は、政治改革について議論を積み重ねた結果成立を見た政党助成法に基づいて、いわば民主主義のコストともいうべき政党の政治活動の経費を国民全体で負担していただくものでありまして、民主主義の発展に重要な意義を持つ制度であると考えております。

 いずれにしても、御指摘の点は、各党各会派において御議論いただくべき問題だと考えておるところでございます。

吉井委員 時間が参りました。終わります。

増田委員長 次に、山本喜代宏君。

山本(喜)委員 社民党・市民連合の山本でございます。

 私は、日本歯科医師連盟にかかわる贈収賄事件について質問いたします。

 この事件については既に七人が起訴をされました。その中には元社会保険庁長官も含まれています。そして、厚労省まで家宅捜索を受けるという事態になったわけでございます。診療報酬をめぐる中医協の審議がゆがめられて、国民の医療費がわいろで左右されてきた、こういう経過が今司直の手によって明らかにされようとしています。国の医療、福祉施策に対する国民の信頼が大きく失われたというのが今回の事件であります。

 社民党は、金権腐敗政治を一掃するために、企業・団体献金の禁止に取り組んできましたが、政官業の癒着は一向に後を絶ちません。政治に対する国民の信頼を回復するために、事実解明はもとより、再発防止に向けた国会としての真剣な取り組みが必要ではないかというふうに考えるわけでございます。

 そこで、最初に、日歯、日本歯科医師会会長の臼田被告、中医協の元委員下村被告の診療報酬をめぐる贈収賄事件での逮捕、起訴、この起訴事実についてお伺いしたいと思います。

樋渡政府参考人 東京地方検察庁におきましては、五月四日、下村健及び臼田貞夫らを贈収賄罪により東京地方裁判所に公判請求したものと承知しております。

 それで、被告人下村にかかわる公訴事実の要旨は、被告人下村は、中央社会保険医療協議会委員であったが、同協議会等でかかりつけ歯科医初診料の算定要件緩和に賛成してほしい等の趣旨で供与されるものであることを知りながら、平成十三年六月上旬ごろ、臼田らから現金二百万円及び酒食等の供与を受けて、自己の職務に関しわいろを収受したというものであり、被告人臼田にかかわる公訴事実の要旨は、被告人下村らに対してかかるわいろを供与したなどというものであると承知しております。

山本(喜)委員 中医協の審議がこのような贈収賄でゆがめられていたという事実、年間三十一兆円に上る国民の医療費に関して極めて不明瞭に決められていたというこのことについて、政府の見解をお願いします。

辻政府参考人 中医協に係りますこのたびの贈収賄事件は、厚生労働省にとりまして極めて遺憾であり、重く受けとめなければならないと考えております。

 現在、私どもといたしましては、厚生労働大臣の指示により、捜査の状況を見守りながら、事件の構造の解明を急いでいるところでございますが、その際、今回の事案が個人的な問題であったのか、中医協の組織のあり方そのものに問題があったのかを明らかにする必要があると考えておりまして、仮に中医協にそういう制度疲労的なものを起こしているとすれば、どう改革をしていくかということを真剣に議論しなければならないと考えております。

山本(喜)委員 その改革を真剣に考えるということでございますが、この診療報酬を決める過程、これ、どういうふうに透明性を図っていくのかということが一番重要ではないかと思いますが、これについて具体的な検討はなされているのかどうか、お伺いします。

辻政府参考人 現在、事件の構造の解明を急ぐ必要がございますが、既に、この件に関連いたしまして、各方面より中医協のあり方についてさまざまな議論が行われ始めております。

 中医協の審議は既に公開で行われておりますけれども、先日の衆議院厚生労働委員会においても、厚生労働大臣から、さらに、例えば公益委員の数が適切か等の委員構成、複雑な診療報酬体系をわかりやすくすること、あるいは診療報酬改定の事後評価とその公表など、今後、検討する上での着眼点が明らかにされております。

 いずれにいたしましても、今回の事案を契機として、関係者の御意見も伺いながら、診療報酬の決定過程の透明性を図るとの御指摘の点も含めて、中医協の運営のあり方に検討を進めてまいりたいと考えており、事件の構造解明を行いつつ、速やかに検討を深めてまいりたいと考えております。

山本(喜)委員 今回の事件では、日歯連が中医協委員にわいろを贈っていただけでなくて、国会議員に対して献金攻勢をかけていたというふうにマスコミでは報道されているわけでございます。自民党の少子高齢社会歯科診療報酬等に関する小委員会でありますとか、古賀誠議員が主宰する勉強会の参加者に対する献金ということについても報道されています。

 そこで、自民党のその小委員会並びに古賀議員が呼びかけていた歯科診療に関する勉強会、これに対する厚労省の理解というのはどうであったのか。それから、この会議に厚労省関係者がかなり参加しているわけですが、これはどういう経過で参加しておったのか。お伺いします。

辻政府参考人 まず、自民党の少子高齢社会歯科診療報酬等に関する小委員会あるいは古賀議員が出席された勉強会、こういったものにつきまして当時の担当者に聞き取りを行いまして、もとよりその存在が確認されておると同時に、これらの会議に参加したことがあるのか等について御報告を申し上げます。

 当時の担当者から聞き取ったところによりますと、御指摘の会合のうち、少子高齢社会歯科診療報酬等に関する小委員会については、平成十二年の一月二十七日、これはたしか立ち上がりのときだと思います。そして十二年の十月十九日、十三年の十一月二十日、十三年の十二月十一日、十四年の一月二十九日の五回開催されたことが確認されております。それで、小委員会からの要請によりまして、当時の保険局、医政局の歯科関係の関係担当官が出席しております。

 また、古賀議員との意見交換会、勉強会につきましては、当時の保険局の担当者に確認したところ、平成十三年暮れごろ、当時の佐藤政務官から、歯科保険医療担当者と話をしたいとの要請があったため、当時の保険局及び医政局の歯科関係の担当官が出席しております。

 なお、この会議の内容は歯科に関するフリートーキングのみであり、個別具体的な要請を受けた記憶はないとのことでございます。

山本(喜)委員 ほかの委員会だと五分前に紙が来るんですけれども、今、三分と来たので。

 この日歯連から自民党の小委員会あるいは古賀議員の勉強会の参加者の献金についてお伺いしますが、二〇〇〇年から二〇〇二年にかけて、自民党の政治資金管理団体、国民政治協会、並びに、古賀誠衆議院議員が代表を務める古賀誠筑後誠山会、自民党福岡県第七選挙区支部、それから、木村義雄衆議院議員が代表を務める国際政経研究会、自由民主党香川県第二選挙区支部に対する政治献金について、その政治献金の内容についてお伺いします。

高部政府参考人 日本歯科医師連盟からの収入につきまして、国民政治協会、古賀誠筑後誠山会、自由民主党福岡県第七選挙区支部、国際政経研究会及び自由民主党香川県第二選挙区支部の平成十二年から平成十四年までの収支報告書の記載について確認いたしましたところ、次のとおりでございました。

 まずは、自由民主党の政治資金団体である国民政治協会におきましては、平成十二年、五億九千三百万円、平成十三年、四億五千万円、平成十四年、四億六千三百万円との記載があるところでございます。

 古賀誠議員が代表を務める古賀誠筑後誠山会においては、記載がないところでございます。同じく、自由民主党福岡県第七選挙区支部におきましては、平成十二年、五百万円、平成十三年、六百万円、平成十四年、百万円との記載があるところでございます。

 木村義雄議員が代表を務める国際政経研究会におきましては、平成十二年、一千万円、平成十三年、八百万円との記載があるところでございます。また、平成十二年、百万円、平成十四年、百万円との、政治資金パーティーの対価にかかわる収入の記載があるところでございます。同じく、自由民主党香川県第二選挙区支部におきましては、記載がないところでございます。

 以上でございます。

山本(喜)委員 時間になりましたけれども、この多額の献金というのがこの贈収賄事件にも関連してきているというふうに推測されるわけでございます。したがいまして、この企業・団体献金の禁止ということを、これは政治資金規正法の附則十条にもあるわけでございますから、この点について、政治献金、企業・団体献金の禁止ということについて早急にやっていくべきだというふうに考えますが、政府の見解を最後にお伺いして、質問を終わります。

麻生国務大臣 時間が超過をしているようなので手短にお答えさせていただきますが、最初の方につきましては、平成十二年の一月、もう既に政治家個人に対しましては企業、団体からの寄附はできないことになっておる、もう既になっておるというところだと思っております。

 いずれにいたしましても、政治資金のあり方につきましては、これは民主主義のコストをどのように払っていただくかということになろうと思いますので、この点につきましては、国民にどのような形で負担をしていただくのかという観点から幅広い御議論をいただかねばならぬところだと思っております。

増田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十四分散会


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