衆議院

メインへスキップ



第9号 平成25年4月18日(木曜日)

会議録本文へ
平成二十五年四月十八日(木曜日)

    午前九時三分開議

 出席委員

   委員長 保岡 興治君

   理事 石原 宏高君 理事 奥野 信亮君

   理事 原田 義昭君 理事 平沢 勝栄君

   理事 ふくだ峰之君 理事 佐藤 茂樹君

      安藤  裕君    井野 俊郎君

      石川 昭政君    大串 正樹君

      大塚  拓君    小松  裕君

      今野 智博君    白須賀貴樹君

      助田 重義君    田所 嘉徳君

      高橋ひなこ君    中村 裕之君

      長坂 康正君    鳩山 邦夫君

      宮内 秀樹君    宮川 典子君

      武藤 貴也君    務台 俊介君

      吉川  赳君    國重  徹君

      輿水 恵一君

    …………………………………

   総務大臣         新藤 義孝君

   政府参考人

   (総務省自治行政局選挙部長)           米田耕一郎君

   衆議院調査局第二特別調査室長           岩尾  隆君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十八日

 辞任         補欠選任

  藤井比早之君     武藤 貴也君

  務台 俊介君     小松  裕君

  井上 義久君     輿水 恵一君

同日

 辞任         補欠選任

  小松  裕君     務台 俊介君

  武藤 貴也君     藤井比早之君

  輿水 恵一君     井上 義久君

    ―――――――――――――

四月十六日

 衆議院小選挙区選出議員の選挙区間における人口較差を緊急に是正するための公職選挙法及び衆議院議員選挙区画定審議会設置法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第五一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 衆議院小選挙区選出議員の選挙区間における人口較差を緊急に是正するための公職選挙法及び衆議院議員選挙区画定審議会設置法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第五一号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

保岡委員長 これより会議を開きます。

 開会に先立ちまして、民主党・無所属クラブ、日本維新の会、みんなの党、日本共産党、生活の党所属委員に対して出席を要請いたしましたが、出席が得られません。

 さらに理事をして出席を要請させたいと思いますので、しばらくお待ちをお願い申し上げます。

 この際、暫時休憩いたします。

    午前九時四分休憩

     ――――◇―――――

    午前九時二十二分開議

保岡委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 理事をして再度出席を要請させましたが、民主党・無所属クラブ、日本維新の会、みんなの党、日本共産党、生活の党所属委員の出席が得られません。やむを得ず議事を進めます。

 内閣提出、衆議院小選挙区選出議員の選挙区間における人口較差を緊急に是正するための公職選挙法及び衆議院議員選挙区画定審議会設置法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。新藤総務大臣。

    ―――――――――――――

 衆議院小選挙区選出議員の選挙区間における人口較差を緊急に是正するための公職選挙法及び衆議院議員選挙区画定審議会設置法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

新藤国務大臣 衆議院小選挙区選出議員の選挙区間における人口較差を緊急に是正するための公職選挙法及び衆議院議員選挙区画定審議会設置法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 この法律案は、衆議院議員選挙区画定審議会が行った衆議院小選挙区選出議員の選挙区の改定案についての勧告を受けて、衆議院小選挙区選出議員の選挙区を改定する等の措置を講じようとするものであります。

 次に、法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、衆議院小選挙区選出議員の選挙区間における人口較差を緊急に是正するための公職選挙法及び衆議院議員選挙区画定審議会設置法の一部を改正する法律の規定により、衆議院議員選挙区画定審議会が行った衆議院小選挙区選出議員の選挙区の改定案についての勧告に基づき、当該勧告どおり十七都県において四十二選挙区の改定を行うことといたしております。

 なお、改正後の選挙区の区域は、平成二十五年三月二十八日、すなわち勧告が行われた日現在の行政区画その他の区域によるものとしております。

 第二に、改定後の衆議院小選挙区選出議員の選挙区を定める規定等の公職選挙法の改正規定については、この法律の公布の日から起算して一月を経過した日から施行し、施行日以後初めてその期日を公示される衆議院議員の総選挙から適用することとしております。

 以上が、この法律案の提案理由及び内容の概要であります。

 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。

保岡委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

保岡委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として総務省自治行政局選挙部長米田耕一郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

保岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

保岡委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大塚拓君。

大塚(拓)委員 おはようございます。自由民主党の大塚拓でございます。

 本日は、ごらんのように野党の出席が得られていないという状況での委員会となったこと、まことに残念に存じます。

 特に、このたび、これは、今御趣旨の説明でもあったように、国会として決めた法律をもとに政府が区割りを決めた。それに対して審議に応じないという姿勢、特に民主党の、一度は政権を担った政党として、このときに至って逃げ回るというこの姿勢は、まことに情けないと言わざるを得ません。これは決められない政治の姿そのものだというふうに申し上げたい。(発言する者あり)厳しく批判しろという声もございます。決められないというより、あえて決めない政治と言ってもいいのかもしれないと思っております。

 この三年三カ月の間、民主党政権のもとで政治が全くとまっていた。そのことが、この一事を見ても、民主党の責任というものがよくわかるということだろうというふうに思っております。

 ちなみに、けさの新聞の社説を少し御紹介したいと思いますが、読売新聞、「海江田氏は「定数削減が一番大きな約束だ」と主張したが、これは筋違いと言わざるを得ない。 民主党は昨年十一月に成立した〇増五減の選挙制度改革法に賛成した。それに従った区割り法案を差し置き、抜本改革を唱えても与野党が合意できる状況ではない。」「こうした態度は党利党略を優先し、一票の格差是正をなおざりにする姿を印象づけるだけだ。」このように書いております。

 あるいは日経新聞、「司法に違憲判決を突き付けられた「一票の格差」是正は待ったなしの課題だ。〇増五減を処理し、さらに定数削減に取り組む。順番は明らかだ。野党は時代遅れの審議拒否はやめてもらいたい。」

 朝日新聞も、「堂々巡りはうんざりだ」「不毛な争いと言うほかない。」とした上で、「民主党は昨秋、〇増五減の先行処理にいったんは同意している。このまま何もせず、違憲状態を放置するというのでは、あまりにも無責任だ。」

 そして毎日新聞、「民主は議論を避けるな」という見出しで、「海江田氏は定数削減との抱き合わせであることや、その後の各種高裁判決で事情は変わったと反論したが、受け身の対応は旗色の悪さを認めるようなものだ。」

 このように、各紙、民主党の姿勢、野党の姿勢、厳しい論調が目立つわけでございます。

 これについて、大臣から一言ございましたらお伺いしたいというふうに思います。

新藤国務大臣 今委員からも御指摘がありましたように、この法案は、最高裁の判決を受けて、その中で国会の各党各会派が御議論いただいて、そして主要会派による賛成により法律ができ上がり、その法律に基づいた区割りが勧告され、また、その勧告に基づいた法律を私どもでお出ししている、こういうことであります。

 これは、まさに憲法上の要請であり、立法府からの御要請でもあります。私どもとすれば、これが可及的速やかに成立をして、そして最高裁からの御要請に応える、その責任があるというふうに思っております。

 国会内の御議論については、ぜひ各党各会派で、それぞれの責務に基づいてしっかりとした御議論と、また、正常な国会運営がなされることを期待しております。

大塚(拓)委員 そうなんですね。これはまさに立法府の要請に基づいて、政府が速やかに区割りを決定したという事情でございます。

 ちなみに、その根拠となっている〇増五減の緊急是正法、昨年の国会で賛成した会派を申し上げておきますが、民主党、もちろん自民党、生活の党、公明党、みんなの党、維新、そして改革、太陽の党、太陽の党は維新に合流をしたと思いますけれども、これだけの党が賛成をし、政府に区割りを速やかに決定しろと要請をしながら、きょう出てこないという事態になっているわけでございます。

 本来、今回の法律について反対する要素があるとすれば、区割りの線引きがおかしいのではないか、そういう意見はあり得ると思いますけれども、それ以外の事情で反対する要素がない。反対する要素がないけれども反対したいから逃げ回っている、そうとしか言いようがないと私は思うわけでございます。

 ちなみに、この前提となっている緊急是正法でございますけれども、これは、最高裁の判決に基づいて、違憲状態であるというふうに認定をされた、それを受けて、立法府として案を取りまとめたということでございますけれども、お配りをしております資料をごらんいただきたいと思います。「衆議院選挙制度改革を巡る経緯」というふうになっております。

 最高裁が違憲状態を判示したのが平成二十三年の三月二十三日でございます。それに対して、二カ月たたない五月十三日に、自由民主党としては既に、〇増五減の法案を取りまとめております。その時点で速やかに立法府として対応すれば、直ちに違憲状態を解消できる環境が整っていたわけでございます。しかし、これに対して、民主党が対案ということで、五増九減、六増六減の両案、二案を提示したのが七月の二十八日、さらに二カ月以上が経過をしている。そして、当時与党民主党の樽床幹事長代行が座長となって、衆議院選挙制度に関する各党協議会、これを設置したのが十月十九日、もう大分時間がその時点でたっているわけでございます。

 しかし、この各党協議会ができて、十月二十一日に、民主党が五増九減と六増六減の両案、自民党が〇増五減案を各党協議会に提示し、そして、この二十三年十月二十一日の時点では既に、自民党、民主党ともに、格差是正を先行させる、そういう主張をこの各党協議会で述べていたわけでございます。その他の政党については定数削減等との一体協議というのを主張されていたわけですけれども、民主党について、格差是正を先行させると、もう既に二十三年十月に言っている。

 しかし、その上で、年が明けた平成二十四年の一月二十五日、第九回の各党協議会において、突如として、〇増五減に比例定数八十削減というものをくっつけて、一体処理ということを主張し始めたわけでございます。

 ここから迷走が始まりました。その後、計十六回、この各党協議会というのは開かれているわけでございますけれども、その間、まとまる見込みのない一体処理というものに民主党がこだわり続けたおかげで、大変時間が経過をしてしまった。そして、結局、十一月十六日、解散をするということになって、慌てて、自民党が提出していた〇増五減法案に各党も飛び乗るという形で成立を見たわけでございます。

 この間、民主党の無責任な姿勢によって、一年八カ月が浪費をされてしまいました。これはまさに、立法府が不作為を問われてもやむを得ない時間が経過していると、私の個人的な見解でございますけれども、思うわけでございます。

 そこで、その内容を少し明らかにしていきたいと思いますけれども、このもととなった、平成二十三年三月二十三日、最高裁の判決でございます。これについて、二十一年の総選挙が違憲状態だと判示した根拠は何か、これについて政府から御説明をいただきたいと思います。

米田政府参考人 お答えいたします。

 平成二十一年執行衆議院小選挙区選挙に係る一票の格差をめぐる選挙無効訴訟は、今お尋ねのとおり、平成二十三年の三月二十三日、最高裁大法廷で判決が行われたわけでありますが、この判決におきましては、まず、各都道府県の区域内の選挙区の数につき、各都道府県にあらかじめ一を配当する、いわゆる一人別枠方式に係る部分、それからこの基準に従って改定された選挙区割り、これが全体として憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたということ、それから、一人別枠方式を廃止し、区割り規定を改定するなど、この判決の要請にかなう立法的措置をそれが必要とされる是正のための合理的期間内にできるだけ速やかに講ずる必要があるということを判示したわけでございます。

 この判決に基づいて、今御紹介ございましたとおり、各党各会派による議論を経て、一人別枠方式の廃止とともに、選挙区間の人口格差を二倍未満とするために、〇増五減による緊急是正法が立法府において制定されたものというふうに承知しております。

大塚(拓)委員 一人別枠方式というものを根拠にしている区割りが違憲状態だということであったというふうに思います。

 それに基づいて〇増五減の緊急是正法ということになったわけでございますけれども、一部野党で、現在この区割り法案で示されている区割りも一人別枠から離れていない、一人別枠方式に基づくというような主張をされる向きもあるようですけれども、それでは、今回の区割りについて、これは一人別枠方式が維持されていると言えるようなものなのかどうか、この点について政府の見解をお伺いしたいと思います。

新藤国務大臣 これは、一人別枠方式を定めた画定審設置法三条二項、この規定が最高裁大法廷判決において、違憲状態だ、このように判示されたわけであります。そうした違憲状態を解消するために、各党各会派の御議論を経て、立法府において制定されたのがこの緊急是正法であります。

 この緊急是正法は、まず、一人別枠方式の規定を廃止し、それにかえて〇増五減による新たな配分方式を定めているということでありますし、この画定審議会設置法の一部改正におきましても、第三条第二項を削るということで、これを明記したということであります。

 そして、現実の問題として、現行の都道府県別の選挙区数は、平成十二年の国勢調査人口、これに基づいて一人別枠方式で配分されたものであります。ですから、平成二十二年の国勢調査人口に基づいて、仮に一人別枠方式で配分したとすると、定数が三百の場合は四増四減、それから定数が二百九十五の場合は一増六減となるわけでありまして、〇増五減とは異なるわけであります。

 今回の区割りの改定案はそうした緊急是正法にのっとったものということでありまして、これを成立させることによって、この最高裁大法廷判決が求めた違憲状態の解消はされる、このように我々は考えているわけであります。

大塚(拓)委員 一人別枠方式は廃止をされている、そして、廃止をされた結果の区割りだということだと思います。今御指摘のように、一人別枠が維持されていれば区割りが全く違う結果になっているということから見ても、これは明らかでございます。

 さらに言えば、これは緊急是正法の趣旨説明、我が党の細田議員の説明でございますけれども、この中でも、「第三に、」という理由の中で「一人別枠方式を廃止することといたしております。」というふうに明確に述べた上で審議をされ、そして賛成をしたという各党においては、これは一人別枠方式が廃止されているということを認識した上で賛成をしているわけでございますから、今さら違うことを言い出すことは全く筋が通らない。

 そして、三月六日から各高裁においても格差訴訟について判決が出ておりますけれども、この中でも、今回の緊急是正法については一人別枠方式が廃止されているものだという認識を含む判例が多いというふうに思います。

 こうした状況から見ても、今、この期に至って、少なくとも賛成した党が一人別枠方式は現在生きているなどと言うことは、全く事実をねじ曲げるものであって、何らかの政治的な意図があるというふうにしか思えないということは指摘をさせていただきたいというふうに思います。

 そこで、今も御答弁の中でありましたけれども、平成二十二年の国勢調査人口に基づいて区割りがされたということでございます。

 この人口なんですけれども、区割りというのは人口に基づいて配分されるということになるわけですけれども、どの人口のデータを使うかということについて、これも一部野党の方が予算委員会などで質問されている中で、この国勢調査人口ではないデータをいろいろ例示しながら議論をされている方がいるように思います。

 そこで、まず確認をしたいのは、この人口というところについて、なぜ国勢調査人口によることとしているのか、この点について確認をさせていただきたいと思います。

米田政府参考人 お答えいたします。

 まず、今次の改定案につきましては、いわゆる〇増五減による緊急是正法が根拠規定となっておりますけれども、その作成の基準といたしましては、平成二十二年国勢調査人口を用いるというふうに明文でしております。

 また、これまでの区割りにつきましては、衆議院議員選挙区画定審議会設置法に基づき行われたものでございますけれども、この法律におきましては、審議会は、原則として、十年ごとの全数調査による大規模国勢調査の結果による人口を用いて区割りの改定案を作成することとされているところであります。

 従来から衆議院小選挙区の改定につきまして国勢調査を用いている理由でありますけれども、一つは、国勢調査人口は人口の把握そのものを目的として統計法に基づき全国一斉に行われる実地調査による人口であり、確度が高いということ、それから二点目といたしまして、衆議院議員の定数配分につきましては、大正十四年の衆議院議員選挙法以来一貫して国勢調査人口を基準として行われてきたものであること、さらに三点目といたしまして、議員の定数配分はある程度の安定性を要することなどの理由が挙げられてきたところでございます。

大塚(拓)委員 そういうことなんですね。恐らく、この大規模国勢調査に匹敵するだけの全国一律の調査というものはほかにないという事情もあろうかと思います。それから、選挙区がころころ変わるというのは有権者にとっても大変不利益になるわけでございますから、恐らく、私は、ここは憲法の認める立法府の裁量権という範囲に含まれるところなのかなと。毎年毎年人口が仮に異動していたとしても、十年に一度の国勢調査によるところとするところに私は合理性があるというふうに思うわけでございます。

 一方で、予算委員会において、これは民主党の後藤祐一議員だったと思いますけれども、総務省推計とされるデータを提示し、これに基づいて、二倍を既に超えているではないか、こういう指摘があったわけでございます。ここで利用された、その予算委員会で使用された総務省推計という人口データは何だったんでしょうか。これをお伺いしたいと思います。

米田政府参考人 事実関係についてお答え申し上げます。

 今御質問の点につきましては、各都道府県が独自に行っている推計人口であるものと考えられますけれども、これは、四月九日の衆議院の予算委員会での質疑に当たりまして、質問者から御依頼がございまして、新聞報道に掲載されていた選挙区について、関係の都県がホームページに公表している市区町村ごとの推計人口の数値を単純に足し合わせて私どもが提出したものであります。

 そうした推計人口と言われるものは、今回の区割りの改定とはもちろん直接の関係がございません。その調査、推計方法の詳細についても総務省としては承知していないところでございまして、その意味では総務省が試算したものとは言えないというふうに考えております。

大塚(拓)委員 そういうことなんですね。結局、国勢調査に基づくというのは、これは法律に基づいて総務省がしっかりと対応できる根拠があるわけですけれども、その予算委員会で出された数字、これは要するに、議員が新聞で見て、どうなんだと総務省に問い合わせ、総務省は、これは各都道府県がおのおのの方法でやっている調査ですよと言うところを、いや、まとめろと無理にまとめさせた数字だ、こういうことなんだろうと思います。

 結局、こうしたデータに基づいて選挙区割りの議論を進めることそのものが、非常に法の趣旨に反すると言わざるを得ないというふうに私は思うんですね。全く各都道府県の推計の方法もわかっていないという状況でございます。これは、しっかり法に基づいた全国一律の国勢調査によるという姿勢が私は正しいと確信をいたしているところでございます。

 次に、判決についてもう一つお伺いをしたいわけでございますけれども、平成二十四年の総選挙に関して、今、一票の格差訴訟というのが各地で行われて、高裁で判決が出たわけでございます。これは、三十二選挙区にかかわる三十四件の訴訟、一部の選挙区については複数の訴訟が起こされているという事情があるので件数がこういうことになっておりますけれども、十七件、高裁判決が出ております。

 これについては、三月六日の東京高裁判決を皮切りに、四月十一日まで、判決も幾つかの訴訟がまとめて出ているものもありますので、これでたしか全てだと思いますけれども、この十七件の判決、選挙は無効だとするものが二件、違憲ではあるけれども事情を勘案して無効とはしない事情判決、これが十三件、違憲状態である、このように認定をするもの、これは二十三年の最高裁判決と同じ路線だと思いますけれども、これが二件、こういう状況になっております。

 要するに、事情判決というのが今大勢になっているわけでございます。十七分の十三が事情判決、違憲と認定しながら無効としないということになっている。

 これをもとに、今度は最高裁がこれについて審査を進めるという番になっているわけでございます。これはおおむね百日以内に最高裁の判決が恐らく下るのかな、こういうふうに思いますけれども、ここで、最高裁がこうした事情というものを審査するときに、今回、この〇増五減に基づく区割り法を我々は一刻も早く通さなければいけないということでやっているわけでございます。しかし、野党のこの姿勢を見ると、通らないというケースもあるかもしれない。

 ここで、〇増五減に基づく区割り法が通らなかった場合、最高裁の判決で、この事情判決の事情という部分に関して判断に影響が出るのかどうか、ここについて政府の見解をお伺いしたいというふうに思います。

米田政府参考人 お答えを申し上げます。

 最高裁におきましては、これまで二回事情判決というのが出ております。これは中選挙区制の時代でございますが、昭和五十一年の四月十四日、それから昭和六十年の七月十七日の二回であります。

 この判決におきましては、定数訴訟の性格を勘案いたしまして、一つは、選挙権の制約など当該選挙の効力を否定しないことによる弊害がどの程度か、一方で、当該選挙を無効とすることによりまして、当該選挙区の議員が存在しない状態で議員定数配分規定の改正を行わざるを得ないなど、憲法の想定しない事態が現出することによってもたらされる不都合ということをどの程度と見るのか、その他諸般の事情を総合考察し、格差は違憲であるものの選挙は無効としない、いわゆる事情判決を出したところでございます。

 それで、最高裁判所がどのような御判断をされるか、区割り規定が憲法に違反するかどうか、さらに、憲法に違反するといった場合に、その総選挙の効力について無効とされるのか、あるいは今申し上げました事情判決により無効とされないのかということにつきましては、これは最高裁判所において判断されるものでございますので、私どもとして何とも申し上げようがないところでございます。

 参考までに、昨年の衆議院総選挙に係る格差訴訟について、ことしの三月六日の東京高裁で下されました判決、これはいわゆる事情判決としたものでありますけれども、これを御紹介いたします。

 国会において本件区割り規定の是正が早急に行われないままに本件選挙が施行されるに至った経過は看過することができない、しかし、国会においては、緊急是正法を制定するなど、平成二十三年大法廷判決の判示に従って選挙区割りを是正する対応を示しており、今後、選挙区割り規定を投票価値の平等にかなったものに是正していくことが期待できること、その他、緊急是正法のもとで選挙区間における議員一人当たり人口の格差が二倍未満に是正されることが予定されていることなど本件にあらわれた諸般の事情をあわせ考察すると、本件選挙を無効とせず、本件選挙の違法を宣言するにとどめるのが相当であるというふうに判示されたところでございます。

 これは御参考まででございます。

大塚(拓)委員 そうなんですね。今御紹介がありましたように、東京高裁の判決の中では、事情として例示していく中で、現在国会でこうした審議が進んでいる、今後解消されることが期待されるということが事情としてはっきり判示されているわけでございます。

 東京高裁と同じ考え方を最高裁がとるとするならば、ここの部分、国会には今後期待できない、こういうふうにみなされれば、事情が変わったということで無効、こういうふうになる。東京高裁と同じ考え方をとるならば、そうなっても理論的に自然だというふうに私は思うわけでございます。

 そうしたことを考えても、この緊急の格差是正に基づく区割り、一刻も早く、私が最高裁の判事だったら、少なくともこれすらできなかったら、これは無効と言わなければ国民の権利が侵害されるというふうに思っても仕方がない、こういうふうに思うわけでございます。

 そこで、仮に無効になったら、仮にという話でございますけれども、例えば東京一区などを見ると、比例復活の議員もいるところでございます。万が一にも無効判決ということになった場合、小選挙区の議員あるいは比例復活の議員、この身分はどうなるのか。そして、最高裁が無効ということになれば、三十二の選挙区、今回訴訟が提起されている三十二全てが無効、再選挙ということになるわけですけれども、この中には、福井三区のように、〇増五減法案で消滅をすることが予定されている、そういう選挙区もあるわけでございます。

 無効となったらどうなるんでしょうか。お聞かせください。

米田政府参考人 一票の格差の訴訟におきまして、最高裁でこれまで無効判決が出されたことはございません。今後どのような判決がなされるか、最高裁が御判断されることであろうということがございますので、私どもから仮定のお話はちょっとコメントできませんが、一般論として、公選法等について申し上げますと、公選法二百四条による選挙の効力に関する訴訟で今回争われているわけでございますけれども、この訴訟では、訴訟が提起された選挙区について選挙が無効とされた場合には、当該選挙区から選出された議員は、将来に向かって身分を失うということにされております。

 また、衆議院の比例代表選挙におきましては、小選挙区選挙との間で重複立候補が認められているわけでありますけれども、一方の選挙に関する争訟事由は他方の選挙結果には影響を及ぼさないという公選法の二百八条第一項ただし書きがございます。

 この規定によりまして、小選挙区における選挙無効訴訟により選挙が無効とされましても、比例代表選挙の当選人とされた者には影響を及ぼさないというのが現行の公選法の規定でございます。

大塚(拓)委員 そういうことなんですよ。公選法の二百八条で、小選挙区が無効になっても、比例の選挙の結果には影響しないんです。ということは、東京一区が仮に無効になった場合、比例復活されている海江田代表の身分には何の影響もない。海江田さんは痛くもかゆくもないんですね。だからやっているかとは言いませんけれども、こういうおかしな状況になるわけでございます。

 ちなみに、再選挙というのは四十日以内にやらなければいけないわけですけれども、四十日以内に同じ状況で選挙をやってもまた無効になるだけなんですけれども、その間に、福井三区、消滅する選挙区についてどうするか、こうしたことが調整できるとも思えない。要するに、国政が大混乱する。そんなことを承知で野党は反対をしようというのか、そこを厳しく問いたいと思っております。

 時間が参っております。とにかく、この一票の格差問題というのは最高裁が違憲、違憲状態であるというふうに指摘をしている問題であって、定数削減、これも公党間の合意で重いことは重いわけですけれども、レベルが全く違う。まずこの状況を一刻も早く解消、しかもできる状況であるわけですから、この法案を一刻も早く通し、そして次の課題に移ることが立法府に課された責務であるということを申し上げ、そして、野党の皆様には一刻も早く審議に復帰されることを要望しつつ、質問を終えたいと思います。

 ありがとうございました。

保岡委員長 次に、宮川典子君。

宮川委員 おはようございます。自由民主党の宮川典子と申します。

 きょうは、質問の機会をいただきまして、ありがとうございました。

 きょうは主に〇増五減法案についての質問をさせていただきたいと思いますが、その質問の前に、二つ、きょうの私の気持ちというか、前提としてお話をしなければいけないことがあると思います。

 まず、私は、実は山梨一区の選出でありまして、〇増五減の対象県になっております山梨県の出身であります。きょう、質問の中に例として山梨県の例を挙げますけれども、これは決して山梨だけ減員をしないでくださいというお願いではなく、あくまでも一つの例としてお受け取りいただければと思います。

 そしてもう一つは、山梨県の一員として、ずっとこの〇増五減の問題を有権者とともに闘って、また憂えて、不安に思ってきた一人であります。選挙前の一候補者としても、そして一有権者としても、山梨県の方たちが、こうして〇増五減がある、減員を受け入れなきゃいけないということに対してどれだけの不安を持っていたのか、また、それに対してどんな考えを持ってやっていたのかというのは、地元の感覚でなければわからないと思います。

 それを踏まえた上で、我々立法府は、今回の問題に関して、違憲であるとか選挙無効であるという判決が出ている状態で、この〇増五減問題に関して真摯に向き合うことがなければ、私は国会議員の資格がないと思っております。ですから、あちらの野党席にいない国会議員の方たちには猛省を促したいというふうに思っております。

 今回、この〇増五減というのは、我々国会議員の問題ではなくて、選挙権というのを行使する、投票して自分の民意を届けようとする有権者のためのものであるということを我々は忘れてはいけないというふうに思いますし、前回の十二月十六日の選挙が違憲状態が出たままで行われたことに対して、やはり立法府として私は反省をしなければいけない、そういう思いを持って今回は質問をさせていただきたいと思います。

 それでは、〇増五減法案に至る経緯についてお伺いをしたいと思います。

 これまで、さまざまな選挙制度がとられてきまして、その中で、一票の格差問題というのは、もう既に、戦後も、昭和三十年代からさまざまな議論を生み出してきたところであります。一〇〇%完璧な選挙制度がないと言われるゆえんというのは、こういうところにもあるのではないかと思います。

 中選挙区時代、一九九〇年の選挙に対して一九九三年に最高裁の大法廷で違憲判決が出てからというもの、大きな選挙制度改革をして、小選挙区比例代表並立制というものが導入されました。その中で、一人別枠方式も導入した上で一票の格差の是正をしていこうというのも、また、一人でも多くの民意をしっかり政治側で受けとめるためにも、その制度が運用されてきたわけですが、このたび、違憲判決、選挙無効判決という大変厳しい司法の判断が下ったところであります。

 それが二〇一一年と私は記憶しておりますけれども、それから明確にこの一票の格差の是正に向けて政治側、国会側でも議論が尽くされてきたと思いますが、今回、区割り審が出したのは〇増五減ということで、五県が対象県となって減員されるということが決定をいたしました。

 しかしながら、先ほど大塚委員の質問、また資料の中にもありましたとおり、〇増五減だけではなく、例えば四増四減であるとか、いろいろな議論が尽くされてきたというふうに思います。また、それ以外の試案を出された与野党の選挙制度のチームもあったかというふうに記憶をしておりますが、この〇増五減が採用されて今回の勧告に至った経緯をぜひ政府側から御説明いただきたいと思います。

米田政府参考人 今御質問のとおり、今回の区割りは〇増五減法、緊急是正法に基づくものでございますので、まず、この緊急是正法がどのようにして出てきたかということを、私どもの認識を申し上げます。

 緊急是正法は、平成二十三年三月の最高裁の大法廷判決、いわゆる違憲状態で合理的な期間が未経過である、こういう判決に応えるものとして、各選挙区間における人口格差を緊急に是正し、違憲状態を早期に解消するために、各都道府県内の選挙区数を〇増五減により定めた上で、今次の選挙区の改定案の作成に当たっての基準の特例等を定めております。平成二十二年国勢調査人口に基づき、選挙区間の人口格差を人口最小県である鳥取県の人口最小選挙区の二倍未満とするというものであります。各党各会派の議論を経まして、立法府が昨年の十一月に制定されたものでございます。

 この緊急是正法案の審議の際、提案者であられます自民党の細田議員が趣旨説明をなさいましたけれども、この趣旨説明におきましては、附則別表で定める数として、議員一人当たり人口の少ない、言いかえれば、一票の価値の高い、高知、徳島、福井、佐賀、山梨の上位五県について、それぞれ一減していると説明をされております。

 すなわち、選挙区間の格差を二倍未満におさめるため、議員一人当たりの人口が、人口最小県である鳥取県の議員一人当たり人口、これは計算をいたしますと二十九万四千三百三十四人になりますけれども、これを下回る今申し上げました五県につきまして定数を一減させることとしたものと承知しております。

宮川委員 ありがとうございます。

 それで、この〇増五減が導入されたわけでして、先日の三月二十八日に勧告が行われたわけですけれども、きょう委員のお手元に配付してあります緊急是正法によって今回の区画が行われました。それは、十七都県、四十二選挙区に及びます。

 私たちの山梨県も、今、皆さんの区割り法案資料というふうに書いてある二十九ページに、山梨県の地図と、また勧告前のそれぞれの選挙区の人口数、そしてその後の数が出ておりますので、ぜひ御注目いただきたいなというふうに思いますが、この緊急是正法に向けて、とにかく一刻も早く違憲状態、無効状態を脱しなければいけないということで今回の勧告があったというふうに存じております。

 ただし、私が一つだけ気になるのは、私が配付しました手元の資料、資料一、二、三をごらんいただきたいと思いますが、小選挙区比例代表並立制の中で、区割り変更が行われたことが今まで何度かあります。その中で、その区割りに向けてかけた時間、また回数、会議の数というのを比較してみますと、資料一にあるように、平成六年の小選挙区画定審議会の開催状況というのは、平成六年四月の十一日から同年の八月十一日まで、二十二回にわたって具体的な区割り、またヒアリングを受けてこの区画が決まっております。

 そしてまた、平成十二年の資料二でございますが、平成十二年の国調に基づく区割りのスケジュールというのがありますけれども、これは一年間の時間をかけて、三十回も審議をして区割りを決めております。

 では、今回の緊急是正法に基づく〇増五減の法案というのはどうかというふうに見ますと、もちろん、それまでは与野党ともにそれぞれの党内での議論もさまざまあり、また前政権下での議論もあったというふうには思いますが、ここで平成二十四年の十一月十六日にこの緊急是正法が成立をいたしまして、二十六日に公布、施行されたわけでありますが、結局、この後に衆議院の総選挙がありましたので、これが実際動いていたというふうにはなかなか考えにくいところもあります。この一回目、二回目以降とずっと矢印がありまして、勧告をするというのが、その期限が五月の二十六日とされておりました。

 しかし、選挙が終わって十二月の二十六日に安倍第二次内閣が発足をされた以降、これがしっかり審議をされていたかということを考えると、時間としては正味三カ月ぐらいしか費やされていないのではないかなというふうに私は思いますし、恐らくこれまでの平成六年、平成十二年の区画、区割りの再調査のスケジューリングとは、かなりその会議の回数も少ないのではないかというふうに思っております。

 今回は、〇増五減という減員も含めた上でのかなり慎重な議論を必要とするものであったのにもかかわらず、回数が少ない。そしてまた、勧告期限の五月二十六日までに二カ月余りをまだ残した状態で、ここで緊急に出さなければいけなかった理由が何かなければ、これは示しがつかないのではないかなというふうに私自身は思っております。

 今回、ここの資料の中には一回、二回以降というふうにしか書いておりませんが、これまでの会議が何度行われたのか、そして、勧告期限まで二カ月余りを残して三月の二十八日にこれを勧告しなければならなかった背景、経緯等がありましたら御説明を願いたいと思います。

米田政府参考人 今回の区割りは緊急是正法に基づくものでございます。この緊急是正法では、先ほども申し上げましたが、平成二十三年三月の最高裁判決に応えるものとして、次のことを定めております。各選挙区間の格差を緊急に是正するため、施行から六カ月以内においてできるだけ速やかに勧告を行うというふうにされております。

 区割り審議会におきましては、この緊急是正法を踏まえまして、昨年の十一月二十六日、これは区割り法が施行された日でございますけれども、この日に審議を再開いたしまして、第二回が、選挙中でありますが十二月十日、それ以降、精力的に改定案の作成作業を行っていただきまして、十五回、約四カ月の審議を重ねて、この三月二十八日に内閣総理大臣に勧告を行ったところであります。

 この審議会の審議におきましては、今回、緊急是正法で定められた手順、それから基準にのっとって行ったわけであります。

 まず、基準となります鳥取県の審議を他の都道府県よりも先行して行うことといたしまして、区割り基準素案を審議、作成し、区割り基準素案と鳥取県の具体的な区割りについて鳥取県知事へ意見照会を行いました。その後、鳥取県知事からの回答を受けまして、鳥取県の区割りの審議、改定原案の作成を行いました。

 次の段階といたしまして、鳥取県の人口最小の選挙区が決まりましたので、改定対象選挙区の範囲が決まってまいりましたので、この確認を行い、改定対象選挙区を有する鳥取県以外の十六の関係都県について審議に入ることとしたわけであります。

 審議は、まず、関係都県知事へ区割り基準素案と具体的な区割りについて意見照会をし、回答を受けました。同時に、関係都県の改定対象選挙区の地勢、交通等のレビュー等を並行的に行い、この二月二十六日に、緊急是正法に基づく区割りの改定案の作成方針、いわゆる区割り基準を取りまとめ、公表をしたところであります。

 その後、その次の段階といたしまして、この区割り基準に基づいて、具体的な区割りの改定作業に入ったところであります。

 具体的な区割りの改定案の審議に際しましては、緊急是正法では、格差二倍未満の人口基準に適合しない選挙区の改定は、選挙区の異動は必要最小限とするというふうにされております。地勢、交通等の自然的社会的条件を考慮して、どの区域を改定すべきか、さらに、市区の分割を行う場合に、地元の意見をしんしゃくいたしまして、どの区域で分割をすべきかといった点について議論がなされ、区割り基準に基づいて慎重に審議が行われました。

 このような結果、公職選挙法の制定以来初めて、格差是正としては今回初めてでございますけれども、国勢調査人口での人口格差が二倍以上の選挙区は解消されたということになっております。

 審議会におきまして、違憲状態の解消のために、緊急是正法が求める早期の区割り案の勧告、それと、具体のこの区割り案の作成という極めて重要な任務との間で大変な御苦労をいただいた結果であるというふうに考えております。

宮川委員 ありがとうございます。

 十五回の審議がなされたということで、この〇増五減に関して、しっかりこれから国会でも、また当委員会でも審議をしていかなければいけないと思います。

 この〇増五減の対象県とされているところが、山梨県、徳島県、福井、佐賀、高知、この五県でありますけれども、実際、三月二十八日に区割りが出まして、その新一区、新二区がどういうふうに区割りが出るのか、その地域性と人口差というものが出ました。

 私が今調べた限り、皆様、資料五をごらんいただければと思いますが、〇増五減対象県の区割り後の人口格差、新一区と新二区の人口格差がそこにありますが、高知が約二万、佐賀県が約三万、徳島が十二万、福井が十三万、そして私の地元であります山梨県は二十万の人口格差が出ております。

 先日の区割り審の会長の参考人質疑の際にも、委員長からの質疑の中に、どうして二十万もの人口格差が出たのかという御質問がありましたけれども、この山梨一区、二区を例にとってみましても、現在、区割りが終わった後の山梨新一区というのは、一票の格差が一・八二八倍でございます。そして、新二区が一・一三七倍ということになります。

 今、違憲状態、また無効判決が出ているところの一票の格差を見ますと、一・八倍以下でも違憲状態が出ているということであります。この現実に鑑みると、是正をしたはずなのに人口格差が出て、そしてそれが違憲状態にひっかかるような、もしかしたらそういう可能性もあるような一票の格差になってしまっている。

 一・八倍も格差の倍率が出てしまっているというこの現実について、また、同区域内で二十万も人口差が選挙区に出てきてしまっているということについて、政府の御見解を求めたいと思います。

米田政府参考人 まず最初に、今回、一票の格差における裁判でございますけれども、いずれの裁判におきましても、この区割りについては、別表に書かれてあるわけでございますが、これは全国一つで一体不可分のものという捉え方をされております。したがいまして、争われました選挙区の格差というんでしょうか、それにはかかわりなく、全体として一票の格差がある場合にはそれは違憲状態という判決をしておりますので、ちょっとこれは申し上げておきたいと思います。

 そこで、お尋ねの選挙区数が一減となる五県についての区割りでございますが、いずれもこの県につきましては定数が三から二となるわけであります。したがいまして、県の区域を二分する必要がございます。審議会におきましては、人口最小の選挙区を手がかりとして、行政区画、地勢、交通その他の自然的社会的条件を総合的に考慮して、合理的に選挙区の改定案の作成作業を行ったというふうに承知しておるわけでございます。

 お尋ねの点でございますが、まず、緊急是正法では、人口の均衡を基準として求めているのは、全国の格差二倍未満の基準となる鳥取県のみであります。定数減となる五県の選挙区の改定においては、この人口均衡という点は明確に求めているものではありません。

 それから第二点目に、仮に人口の均衡を図ることといたしましても、この場合、地域的なつながりが希薄である地域が同一の選挙区となるおそれがあるということ。

 さらに三点目といたしまして、この改定案におきましても、ほかの都道府県と比較して結果的にそれほどの人口不均衡ではない。例えば、具体的に言いますと、改定後の県内の選挙区間格差、これを大きい順に少し申し上げますと、山梨県が一・六〇七倍、これは全国で第十位になっております。福井県、一・三九八倍で全国第二十六位、こういうふうになっているということを理由として挙げていると承知しているわけでございます。

 以上です。

宮川委員 ありがとうございます。

 今の御答弁にもあったんですが、今私たちは、小選挙区比例代表制というものを、人口割りで選挙区の区画を決めているはずなんです。しかしながら、今回の緊急是正法の中では、人口の均衡を図ることは必ずしも求められていないというふうに、今の御答弁からも、また法律案、資料の中にありますけれども、資料六の法律案を見ると、そのようにとることができます。

 だとするならば、人口に基づいてずっと区画を決めてきた小選挙区の区画であったにもかかわらず、今回の緊急是正法はそれが特には求められない、人口の均衡は求められないというふうに読めてしまうというのがなぜなのかなというのが、私の一番大きな疑問であります。

 確かに、地元の人たち、有権者の気持ちを考えれば、減員という、もしかしたら自分たちの声がこれから届きにくくなるかもしれない、一人衆議院議員が減ることで自分たちの要望が国に届きづらくなるのかもしれないという思いを、恐らくこの対象県、五県の方は一様に持っていらっしゃると思います。また、そこにかかわる、逆に政治側として仕事をする人たちも、単純計算をして一・五倍の仕事がどこまでできるのか、有権者のためにどんな仕事ができるのか、精度の低い仕事をしてはいけないということの危機感も持っていると思います。

 その中で、減員という、有権者にとってはある意味不利益に感じてしまうことまでも今回は受け入れて、しっかりこの〇増五減に一有権者としても立ち向かおうというふうにしているにもかかわらず、例えばこの二十万の差、十万の差というのが後々に、もしかしたら新たな違憲判決、無効判決を呼び込むことにならないであろうかという不安を持つのは当然のことだというふうに思います。

 山梨県を例にとれば、山梨新一区は非常に人口のふえ続けているところです。新二区はどんどん人口が減り続けているところであります。その中にある私の地元の山梨市というところは、この五年間で数千人も人口が減っているところであります。そうなると、これは一回選挙をしたら、もうそのときの人口格差で大きな差が、もしかしたら二倍になってしまうこともあるんじゃないか。そして、そうするとまた何度も何度も、選挙制度の改革をせずとも、区割りを見直さなければいけないという不安に有権者は悩まされることもあるのではないかなというふうに思います。

 法のもとの平等というのは、一人一人の権利が同じである、その重みを一緒にしなければいけないということでやっておきながら、今回の緊急是正法の中には、人口の格差というものの均衡を図る必要はないというふうに書いてありますけれども、どうして人口格差を必ずしも優先しなくてもいいという法律になったのか。また、現実にできてしまう格差に対して大変厳しい思いを持っている有権者もいるということで、改めて、この緊急是正法というのが人口の均衡を求めなかった理由について、ぜひ御答弁を願いたいと思います。

米田政府参考人 緊急是正法は、冒頭にも御質問がありましたとおり、これは緊急に違憲状態を脱するために作成された法律ということで、とにかく、できるだけ異動が少ない形で行うというようなことがまずあったものというふうに私ども推察しております。そういうことで、人口の均衡という点を求めるのは基準となる鳥取県のみというふうに限定をされたのではないかというふうに推測はしております。

 ただし、これは、基準に明記されていないからといって、人口の均衡を全く考慮しないというわけではないというふうに思われます。地勢、交通その他の自然的社会的条件を総合的に考慮するという中で、人口の均衡を図ることがこれらの考慮要素との比較考量をしたときに合理的であると認められる場合には、人口の均衡を図るということも当然に考えられるところでございまして、明記していなかったから全く無視をしていいということでもないというふうに私どもは解釈しております。

宮川委員 ありがとうございます。

 全く無視するというものではないという中で二十万の差があるということに関しては、やはりまだ少し疑問を持たざるを得ないかなというふうに思います。

 確かに、行政区画を割らない、地勢をしっかり考慮する、また交通事情を見るということでありますけれども、それと同時に、やはりこれから五十三万、三十三万の人口格差がある中で、例えば、新二区で当選した人より新一区で落選した人の方が得票数がとれるという可能性も出てくるわけです。これが有権者にとって大きな疑問になるということは、容易に想定できることだというふうに思います。

 ですので、行政区画を割らない、またその他の事情を考慮された御苦労はわかりつつも、またそういう選挙の後に有権者に対して大きな疑問を投げかけることになり得るということもぜひ御了承いただきたいというふうに思います。

 あと残り時間も五分少々となりましたので、抜本的な選挙制度改革について、最後に御質問をしたいと思います。

 小選挙区比例代表並立制が導入されまして二十年近くがたとうとしております。今、この違憲また無効の判決が出たりして、そのメリット、デメリットというのが明らかになってきたというふうに思いますが、この二十年運用した中で、小選挙区比例代表並立制のメリット、デメリットをどのように政府として捉えているのか、御答弁をお願いします。

新藤国務大臣 まず、制度からいうと、この衆議院の選挙制度は、民意を集約する小選挙区制度、それから民意を反映する比例代表、これを並立する、こういう制度にしたわけです。

 当時の議論からいうと、従来の中選挙区制が、同一政党の候補者が複数出られる、そういう制度になっていたわけでありまして、その選挙が、政策の争いに加えて個人間のサービス合戦につながりやすいとか、そういうようないろいろな指摘がありました。そして、政治改革をやらなければいけない、こういう議論が繰り広げられたわけでありまして、政策本位、政党本位の選挙制度を導入しようということから始まったものだ、こういう位置づけであります。

 私は、ちょうどこの小選挙区制度が始まったときの一番最初の選挙に参加をさせていただいて、国会に来た人間であります。ですから、その前のときに、本当に議員がまさに政治生命をかけたいろいろな議論の末に国会の中で定められた制度であります。

 メリット、デメリットそれぞれあると思いますが、政権選択について国民の意思が明確に示される、こういう意味において、これはメリットがあるのではないかと思いますし、また、確かに政権交代が起きたわけですから、中選挙区の間のずっと固定化された政治が動いたという意味においては、これはメリットがあったのではないか、このように思います。

 一方で、動きが激しい、それから、四九対五一が、選挙が終わるとゼロ対一〇〇になるわけですから、少数の意見が反映されにくい、こういうデメリットというのはあるのではないか、このように思います。

 それから、比例代表につきましても、これは多様な民意を選挙に反映できる、こういう利点、それから、少数勢力であっても議席を確保し得る。

 ですから、今、並立制においては、小選挙区で三位、四位になった方でも議席を得られている、二位の方が得られずに、こういうようなことがありますが、これは別々の制度なので、実際にあるわけですね。こういった特性がありますが、それは小党分立にもつながる、こういうようなこともあるのではないか。

 さまざま、いずれにしても、全ての制度にはメリットもあればデメリットもある、こういうことだと思います。

宮川委員 ありがとうございます。

 まさにおっしゃるとおり、どの選挙制度をとってもメリット、デメリットというのがあると思いますが、だからこそ、どれだけ民意をこれから政治の側に取り込んでいくのかという選挙制度改革に向けて、常に議論というのが必要だというふうに私自身は思っております。

 今、議員定数の削減というようなものが大きく取り沙汰されておりますけれども、これはあくまでも、選挙制度がしっかりと、これからどういう選挙制度をとるのかということが決まらなければ進まない議論だというふうに私自身は思っております。

 本当に今の状況の、現在の人口比率で選挙区を決めていいのか、また、都市と地域間の格差をどうやって是正していくのか、また、一人一人の民意というのをどう取り込むのが一番最適な方法であるのかということを、常に国会の場で、また政治の場で、それぞれの党が議論すべきだというふうに思っております。

 民主主義の根幹である選挙制度改革に向けて、大臣の、最後、短くて結構ですので、今後どのように取り組まれる御決意があるのか、それをお伺いして、質問の最後としたいと思います。

新藤国務大臣 選挙制度は民主主義の根幹です。我が国の国家運営の根幹をなすものであります。ですからそれは、国民の代表である国会議員が、そしてまた各政党がしっかりとした御議論をいただく、これが重要であります。

 私は今、行政の方におります。したがって、立法府の御議論を踏まえて示された方針また法律、そういったものには適切に、しかも可及的速やかに対応したい。そして、よりよい選挙制度を、不断の努力を行っていくことは、私も国会議員の一人として、それは責任ではないか、このように考えています。

宮川委員 ありがとうございました。

 以上で質問を終わります。

保岡委員長 次に、田所嘉徳君。

田所委員 自由民主党の田所嘉徳でございます。よろしくお願いをいたします。

 今国会は、大変大きな改革がなされる国会だなというふうに思っております。この倫選特におきましても、過日、ネット選挙を可能とする審議も行われました。これも、たしか前回の参院選でありましたでしょうか、そのころも、もう解禁前夜であるというようなことも言われたときもありましたが、なかなかできなかった。これが前進もしたわけでありますし、さらには、マイナンバー制度につきましても進んでいるわけでございます。

 そして、最高裁の違憲判断を受けての定数の格差の是正ということでございますが、これも大きな課題でありました。しっかりと進めていかなくちゃならない。まして、議員がみずから律していかなければならない事柄である。そういう中にあって、やはり十分な審議というものが必要であります。

 そういう中にあって、委員長から催告まで受けても野党が出てこないということは、まことに理解不能でございまして、まことに残念でありますけれども、やはりしっかりと議論をしていかなくてはならないというふうに思っているわけであります。

 まず、先ほど質問にございました、総務省が試算をしてみますともう既に格差が二倍を超えている、だから是正にならないんだというような報道がされておりましたけれども、それが、そんなことはやっていないと。大変安心をしたわけでございます。

 私は、これを見た人は、あたかも無駄な是正策を強引に進めようとしているというふうな印象を受けたと思うんですね。それはおかしいということですし、そんなことはなかったということですから、こんな報道に対する考えをまず大臣にも示していただきながら、最初に確認したいのは、本法案によりまして区割りの見直しを行う、そして、平成二十二年の国勢調査による選挙区割りの最大格差が一・九九八倍となるわけでございます。これで二倍未満となって、政府は、これによって、最高裁で判断された考慮すべき要件を加味して違憲状態が解消されるというふうに確信をしているのか、その点についてお聞きをしたいと思います。

新藤国務大臣 まず、報道につきましては、私どもの方からもこれは違うということで申し入れをしておりますし、先ほども答弁がありましたが、我々の試算ではないということであります。議員の要請に基づいてそのような取りまとめをいたしましたが、私どもの試算ではないということでございます。

 それから、今回の法律は、まさにこの最高裁の判決に基づいて、違憲状態を解消するために各党各会派において国会で御議論をいただいた、その法律に沿って進められてきたものでありまして、これによって、私どもは、最高裁の大法廷判決が言うところの違憲状態からは脱することができる、このように考えております。

 これは憲法上の要請だ、このように考えておりますし、また、国会の御議論を経て決められたものであります。立法府からの要請でもある。こういうことを受けとめて、可及的速やかにこの法律が成立することを望んでいるということでございます。

田所委員 私は、その立法府からの要請というのを大変強く受けとめていきたいというふうに思っております。

 そういうことで、これまでの流れというものをちょっとなぞってみたいと思うんです。

 最高裁の判断が示された後に、立法的措置を協議するために設置された衆議院選挙制度に関する各党協議が行われてきたわけであります。こういう中では、各党から、一票の格差是正に限らないで、衆議院の定数削減であるとか選挙制度の抜本改革、いろいろな主張がされてまいりました。そして、長い期間をかけてきたわけですけれども、それぞれ方向性が違う、合意形成に至らなかったわけでございます。

 そういう経緯がある中で、私は、選挙制度というものは、その性質上、言いますといろいろ要素がありますので長くなりますが、各党の十分な理解のもとに実現すべきものであるというふうに思いますし、そのためには、どうしてもある程度の期間をかけた議論というものが必要になるというふうに考えております。

 しかし、今すべきことは、最高裁での違憲判決から二年以上を経て、まずはすぐに実現できるような格差の是正を行って、一刻も早く違憲状態を解消することであるというふうに思います。

 選挙制度の各党による協議がそういった難航してきた状況の中で、今何をする、そういうことについて、政府の考えをまずお聞きしたいと思います。

新藤国務大臣 私どもとすれば、これを丁寧に御説明していくしかないと思うのであります。

 何よりも、この緊急是正法は、平成二十三年三月の最高裁大法廷判決に応えるものとして、そして、国会における各党各会派のさまざまな議論を経た上で、〇増五減、さらには、国勢調査人口に基づいて、選挙区間の人口格差を人口最小県である鳥取県の人口最小選挙区の二倍未満とするもの、こういったものを踏まえての立法府が制定した法律であります。これに基づいて区割り審ができ、そして区割り審の作業が開始されて、また、勧告がなされました。この勧告に沿った形で、私どもがこの法律の改正を出させていただいているわけであります。

 何度も申しますが、これは憲法上の要請でございます。そして、国会の責任において出された法律、国会の、立法府の御要請に基づいて、我々行政府が応えて法律を出させていただいているわけでありまして、これを可及的速やかに成立させること、これが私たちの責務だ、このように考えております。

田所委員 この緊急是正法でありますけれども、そもそも、我が党の細田博之議員が発案されたもので、小選挙区の区割りに関する部分については民主党も同じような内容であったわけであります。それを与野党が賛成して成立した、先ほど詳細な内容も述べられましたけれども。

 しかし、本改正案では格差是正たり得ないということで、突然、民主党は変節をしているわけでございます。その理由として、緊急是正法の採決の際には賛成した細野幹事長は、札幌高裁、福岡高裁、広島高裁岡山支部の、緊急是正法は一人別枠方式を違憲とした平成二十三年最高裁大法廷判決の趣旨とは質的に異なる、十分なものとは言えないことは明らか、格差是正の措置とは到底言いがたいと言ったことを取り上げて、これをよりどころとして変えてきているわけでありますけれども、私は非常に不合理であるというふうに思います。

 これは、この判断というものにつきましても、ここで取り上げる、この審議の中で取り上げるとすれば、若干他事考慮となるのではないか、そういう面で問題もあるんではないかと思いますけれども、大臣にその点についてお聞きしたいと思います。

米田政府参考人 先ほどから何度もございますとおり、緊急是正法そのものが最高裁の大法廷の判決に応えるものとして、立法府において制定を、昨年の十一月にされたものでございます。そういう意味で、昨年の十一月の時点におきまして、平成二十三年の大法廷の判決で、その時点の区割りが違憲であるというようなことも言われていたことを踏まえて制定されたものというふうに私どもは理解しているところでございます。

 政府といたしましては、この緊急是正法の規定によりまして審議会の方から内閣総理大臣に行われました勧告に基づき、速やかに区割り改定法案を作成いたしまして、国会に提出したところでございます。

 本法案は、緊急是正法と一体であり、その成立は憲法上の要請であるとも考えております。そういう意味で、今回の、できるだけ早く勧告をし、できるだけ早く提出をしたというような形での対応をしたものだというふうに私どもは考えております。

田所委員 今の答弁、ちょっと私の聞いた、高裁の中でそう言われたこととの応答での質問とはちょっと違うんじゃないかなというふうに思うんですが。

 いずれにしても、私は、この裁判所の判断も読んでみました。そういう中で、その反対の論拠として挙げておりますが、その前段には、「できるだけ速やかに」と一番最初に書いてあるんですね。そういうところは読み飛ばしてしまう、自分で都合のいいところだけを使えばいいというような、裁判の判断というものをそういうふうに利用しているところがあります。

 そこで聞くわけでありますけれども、この裁判所の判断というのはどういうものなんだということでございます。処分権主義、あるいは訴訟物の特定という中で、おのずから応答すべきことは限られてくるわけでありますけれども、都合のいいところだけつまむ、それで話を行う、あるいは主張していく。そしてある面、時には完璧なものとして金科玉条のごとく、枝葉末節に至って物を応えなければならない。

 だから私は、最高裁判所の要請に基づいてという言葉は余り好きではありませんし、適当ではないんじゃないかなというふうに思っております。国会からの要請というのは、当然で、いいことでありますけれども。

 いずれにしても、そういう中で、この最高裁の判断ということにつきましても、これまでも蛇足判決なんというのもありました。聞いていないことに答えて大きな影響を与えているものもあります。「司法のしゃべりすぎ」なんという本を書いている元判事もおります。

 私は、そういう中で、三権分立における司法判断の受けとめ方、これには、立法政策に対してはおのずから一定の制約がある、一定ののりがあるというふうに考えているわけですけれども、その点についてお聞きをしたいというふうに思います。

新藤国務大臣 今の前の質問の件でありますが、高裁においていろいろな判決が出ているわけであります。そういった判決文の一部を取り上げて主張されている方がいらっしゃるかもしれません。でも、高裁判決は一部を取り上げているわけではありませんし、さまざまな、東京高裁の判決などもございます。ですから、それらも含めて、今後これは最高裁によってまた判断がなされるものではないか、このようなふうに捉えているということであります。

 今の御質問であります三権分立の原則において、これは、私どもは行政府におります。ですから、今、委員がいろいろなお考えを述べることは、これは政治の御意見として、これはおっしゃっていただいていい、このように思いますが、私どもは、これは、行政機関たる総務省が司法機関の裁判所の判断について、我々はそれをコメントする立場にない、こういうことでございます。

田所委員 一点、そうでしょうかという点を述べたいと思うんです。

 法案を提出されますよね。それは、何に応答して、どういう契機に基づいて進めるのか、それはどこがしっかりと捉えることが間違いじゃないのかということは、私は、それは行政府でも理解しておかなければ、法案提出にはやはり欠けるところにもなってしまうんじゃないかというふうに思うんです。

 そこで、かかる昨年の総選挙の裁判、この判断が、三月六日以降、十七の高裁及びその支部で出されているわけであります。その中でも、広島高裁と広島高裁岡山支部の判断は、選挙無効の判決ということでございます。これまでの判断とどのような点で違っているのか、何で無効なのか、それを皆さんはどう捉えているのか、その点をお聞きしたいと思います。

米田政府参考人 ことしの三月二十五日の広島高裁の判決、それから二十六日の広島高裁岡山支部の判決では、選挙無効という判決が出たわけでございますが、そこでは、当該選挙は、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態で施行されたものであるということ、それから、選挙権の制約など当該選挙の効力を否定しないことによる弊害と、選挙を無効とすることによる不都合、その他の諸般の事情を総合勘案しても、いわゆる事情判決をするのが相当ではないと判断いたしまして、無効と判示されたものと承知をしております。

 なお、この無効判決の効力でございますけれども、広島高裁の判決では、選挙を無効といたしますけれども、その効果は、一定期間の経過後、平成二十五年十一月二十六日の経過後に初めて発生するというふうに判示をしております。

 一方で、岡山支部の判決では、この無効判決確定により、当該特定の選挙が直ちに将来に向かって失効するものと判示をしているところであります。

田所委員 答えていただきましたが、私は、この選挙無効は重大な判断でありますけれども、この中には、早くせよ、早くしなかったということが言われているんじゃないかと思うんですね。

 やはり、そういう面から、これまでの経緯の中を見ても、例えば民主党は連用制の導入、まずそれを唱えておりましたが、今はどうかわかりません。そういう中で、現在は並立制のまま八十削減ということを言っておりますし、維新の会は三割の定数の削減を主張しております。一方で、国民の声をしっかりと反映させるためには、定数削減は行うべきではないという政党もあるわけであります。

 各政党の方向性はばらばら、非常に多様な意見が出ているわけでありまして、これをすぐに合意させるということはなかなか難しいというふうに思っております。やはり、そのことを持ち出してくるということは遅延の原因にもなりますし、今言ったように、早急に応えるということに相反するものであるというふうに思っております。

 そういう中で、合理的な範囲で法改正を行う、私は、今回の法案の非常に大きな意味があると思いますけれども、これまでの経緯、その内容を踏まえて、どのように考えるか、その点についてお答えをいただきたいと思います。

新藤国務大臣 これまでの経緯があって、この法案が出されたわけであります。そして、その法案は、各主要政党の賛成によって成立をした。まさにそこにあらわれているわけであります。

 過去の協議におきましても、民主党、自民党、当時の与党であった民主党も、格差是正を先行させて、定数削減や抜本改革は引き続き協議すべきと主張した、こういった経緯もございました。そして、いろいろな案が出されましたが、結局、〇増五減で、今の、まずはこの是正を行おう、こういうことになったわけであります。

 そこから先は、ここまで定めた上で、しかも、これをできるだけ速やかにという意味においては、先ほど、区割り審がどうして少し早かったのかと。それは、まさに努力をされた結果だ。区割り審の作業は、非常に大変な作業を、しかも日程を切り詰めてやっていただいた、こういうことも私は漏れ聞いております。

 ですから、その意味で、早くにこういった状態を解消しなくてはいけない、こういう立法府からの御要請に基づいて、我々も、これを速やかに法案を提出して成立をお願いしている、こういうことでございます。

田所委員 さきの予算委員会の質疑の中で、この区割り法案に反対している野党が、衆参ダブル選挙を実現可能とするために早期の成立を目指しているんじゃないかというようなことを発言しております。

 これにつきまして、私は、一刻も早くやらなくちゃならない問題に衆参ダブル選挙なんというとっぴなことを持ち出す、これはまさに区割り法案の成立を棚上げするような、そういうためにする議論であるというふうに思うんですけれども、そうじゃないですか。どうですか、大臣、そういう意図もあるんでしょうか。ちょっとお答えいただきたいと思います。

新藤国務大臣 これは、まさに衆議院の解散権は総理大臣の専権事項でありまして、個別のことに関して私がコメントすることではないわけであります。

 そして、予算委員会の中で、制度上、この是正法が成立するとダブル選挙は可能なのかと。これは手続上のことを問われて、仮定ですからお答えをいたしません、このように申し上げたわけでありますが、その後、再三にわたった御質問がございました。ですから、仮定としての手続においては、これは可能なこともございます、こういうお話をいたしました。そうしたところ、ああ、やはりできるんだ、狙っているのか、とんでもない、こういうお話になりましたので、私としては、それは違うと。そういうふうに私の答弁を引用することはやめていただきたいということで、それは申し上げ、また、質問者の方もそこは了解をいただいているというところでございます。

 そういった今回の、司法において憲法の違憲状態だと言われたものを是正することとそのほかの政局的なことは全く関連がない。これは、立法府の御要請に基づいた、行政上としてやらなければいけないことだ、このように考えております。

田所委員 今の、大臣、どうなんでしょうかというのは、ためにする議論ではないでしょうかというところですからね。解散するんでしょうかという話じゃありませんから。答えとしてはばっちり合っていましたので、それで理解をいたしました。

 つきましては、総務省が主導しまして、平成の大合併というものも行われたわけでございます。平成十一年、約三千二百あったものが、平成二十五年には千七百ということになって、市町村の枠組みが大きく変わりました。しかし、今日に至るまで、小選挙区の区割りは改定されていない。私の茨城でも、五つの市で複数の小選挙区に分割されている、そういう状況であります。

 この改定前にこういった市町村は全国で幾つあるのか、そして、今回の区割り改定でその分割が解消される市町村数が幾つあるのか、これをお聞きしたいと思います。

米田政府参考人 平成二十五年三月二十八日、これは勧告日でありますけれども、この勧告日現在で、市町村合併によってその区域が分割されている状況にある市区町村の総数は九十七であります。このうち、今回の区割り改定で分割が解消されることとなる市区町村の数は十二でございます。

田所委員 今お聞きしたことの答えは、それでわかりました。

 それは市町村の数でありますけれども、関係する選挙区の数というものは幾つになるんだろうか、このことについてもう一度答えてもらいたいと思います。

米田政府参考人 これも勧告日現在でございますが、複数の小選挙区に分割されている状況にある市区町村が関係する、属している選挙区の総数は、小選挙区全三百の選挙区中、百二十五ございます。

田所委員 ちょっと聞き方を省略したので、幾つになるのかと聞いたんだけれども、それでも多分百十ぐらいあるんでしょうね。いずれにしても、そのくらい、今度の改定が行われても、選挙区が分断された市町村を含んでいるところが百十七ぐらいあるということでございます。

 区割りの改定は、人口の均衡を考慮するだけじゃなくて、行政区画、地勢、交通や選挙区の実態なども勘案して行うということでございます。ですから、この法案で十七都県四十二選挙区、これだけでも大変な作業だったということでございます。まして、民主党の主張するような全国の選挙区を全て見直すということになれば、私は、それだけでも膨大な作業になって、とてもすぐに実現できるようなものではないというふうに思うんです。

 このことからも、一刻も早く違憲状態を解消しなければならないという前提がある中では、まず本法案を成立させるべきである、こういった方向性が導かれるわけでありますけれども、この大変な作業、それらについて、今どれだけ何ができるのか、総務大臣の見解をお聞きしたいと思います。

新藤国務大臣 今やるべきは法案の審議、そして国会の正常な状態における審議というものが望まれると思います。

 私どもは、立法府の要請に基づいて法案をお出しさせていただきました。そして、その法案は、最高裁からのこういった御指摘も踏まえた上でのものとして、立法府が枠組みをつくっていただいたわけであります。ですから、これを我々はとにかくきちっと審議した上で可及的速やかに成立させていただいて、そして選挙区の体制を整えなければいけない、こういうことだと思います。

 残念ながら、今このような、きょうは委員長の御差配によりましてこのような審議をしていただいているわけでありまして、私は、まずは、とにかくこの法案の成立に向けて我々の役目を果たしてまいりたい、このように考えております。

田所委員 そんな膨大な、全国の選挙区全て是正するというようなことを抵抗の種にするんじゃなくて、やはり今でも厳しいこのことをしっかりと進めるということが重要だろうというふうに思っています。

 今の法案によって、是正すべき選挙区が特定をされた。そういう中で、該当する選挙区、これは大変私は大きないろいろな問題も抱えているというふうに思います。小選挙区制ですから、同じ選挙区で同じ政党の候補が重複すれば、それは誰を代表にするのか、それもいろいろ大変でしょう、悩ましい問題であります。たかだか五人減という向きもあるかもしれませんけれども、これまで長年育ててきた議員、あるいは頼りにしてきた議員がいなくなってしまう当該選挙区の有権者の不利益というものも、私は考慮しなくてはならないんだろう、その面も忘れてはならないというふうに思っております。

 その点、長きにわたって民主制を実現した今の当該選挙区の歴史というものを考えれば、議員を削減するということを伴うわけでありますから、大変重いものだというふうに思っておりますけれども、その認識を重く持って、これはそういうものを伴うんだと覚悟を持ってこの法案を出されているのか、その点について大臣の認識をお聞きしたいと思います。

新藤国務大臣 これは、議員の選挙というのは基本であります。その選挙制度によって、みずからの運命といいますか、みずからの立ち居振る舞いが変わってくるという意味において、極めて重い問題だというふうに思っております。委員が先ほどからいろいろと言っていただいていること、これは非常に御意見として傾聴に値することだというふうに思います。

 しかし、であるからこそ、こういった民主主義の根幹にかかわる選挙制度やまた区割り、こういうものに関しては、国民の代表たる国会議員が議論を行って、その中で方針を定めていく、それを受けて行政がそれを法案として最終的に執行する、こういう流れをつくってきているというふうに心がけております。

 選挙区の画定によっていろいろな影響が出ること、これは極めて重い問題だと思いますが、我々とすれば、そういったものも踏まえて、立法府からの御要請をいただいてそれを法案として成立させ、またそれを適切に執行していく、こういうことに尽きる、このように考えます。

田所委員 市町村合併によって、同じ行政区でも選挙区が違うという状況、これはやはり異常だと思うんですね。これは必ず解消しなければならない、そういう課題だろう、このことに私は異論はないんだろうと思います。

 今般の選挙区割り法案によって、まずは違憲状態を解消するとしても、やはりそれで終わりではない。そういう中で、この後には、当然、市町村合併を反映した区割りの見直しというものを私は進めていかなくちゃならないというふうに思っています。

 広域合併を進めて、総務省は効率的な行政を実現しようというようなことでやってきたわけでありまして、やはりそういう点を考慮すべきだろうというふうに思っておりますけれども、その点をお聞きしたいと思います。

新藤国務大臣 これは、法律においても、できるだけ市町村の区割りは分割しないとか、そういった方針は出ているわけであります。

 しかし、いずれにしても、総合的な検討によってこのような案になっているわけでありまして、ここはまさに、立法府、各党各会派でよく御議論をいただかなければならないことだ、このように考えております。

田所委員 それでは、やはり迅速に格差是正を進めなければならないということで、さらには、別の議論として、それは定数削減やあるいは選挙制度改革があるかもしれませんけれども、今のこの問題をしっかりと処理していかなくちゃならないということ、このことをしっかりと皆さんにお願いを申し上げまして、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

保岡委員長 次に、佐藤茂樹君。

佐藤(茂)委員 公明党の佐藤茂樹でございます。きょうの審議の最後のバッターとして質問をさせていただきます。

 きょうは、この区割り改定法案につきまして、新藤総務大臣初め総務省の皆さんと何点か議論をさせていただきたいと思うわけでございます。

 一つは、今回のこの区割り改定法案が出てくる背景について、どのように認識されているかということをお尋ねしたいと思うんですね。

 それは、昨年の衆議院小選挙区の一票の格差をめぐる訴訟で、相次ぐ高裁判決では、全ての訴訟で違憲もしくは違憲状態、そういうふうに判断されまして、戦後初の選挙無効判決まで下されました。司法がこういう厳しい判決を繰り返していることについては、立法府の一員として、我々も厳粛に受けとめなければいけない、そのように思います。

 ですから、違憲状態の解消というのは、与野党を超えた、国会としての一日も早い責務である、そのように私は考えているんです。この一票の格差の是正は、もはや待ったなしである、そういう状態に来ているのではないかと思うんですが、一票の格差をめぐる相次ぐ高裁判決の状況及び総務大臣のこの判決結果に対する御認識について、まず冒頭、お尋ねをしたいと思います。

新藤国務大臣 まさに、まことに厳しい判決がなされている、これは厳しい状況だということは私も認識をしております。

 そして、昨年の十二月の衆議院総選挙に係る一票の格差訴訟、選挙無効判決が二件、事情判決が十三件、合憲ではあるが違憲状態、合理的期間未経過、これが二件だということでありまして、これは極めて厳しい。これを真摯に受けとめなければいけないと私も承知をしております。

 そして、この一連の高裁の格差訴訟につきましては、最終的には最高裁判所においての判断がなされると思いますから、その推移というものは注視をしていくということであります。

 また、政府といたしましては、二十三年の最高裁の判決において違憲状態とされた選挙区間の格差の早期是正、これをまずやらなければいけないということにおいて、何度も御答弁申し上げておりますが、区割り審が活動して、そして今、区割りの勧告が出て、そして、それに基づいた我々の法案が出ました。その大もとにあるのは各党間の御議論であります。

 そういった憲法上の要請、そして立法府からの要請、こういったものを踏まえて、私どもとすれば、まさに可及的速やかに、我々も作業を急いで国会に提出をさせていただいたところでありまして、この委員会においてこのように御審議いただいていることはまことにありがたいことだ、このように思います。私どもとしては、この早期の成立、そしてまたそれを執行する、この責任がある、このように考えております。

佐藤(茂)委員 今総務大臣から御答弁いただきましたように、平成二十三年の三月に最高裁の判決が出ているわけですね。しかし、そのときの政権与党であった民主党が、これはマスコミも指摘しておりますように、解散・総選挙というものを恐れて、一年八カ月間にわたって格差是正について放置してきたことは大変罪が重い、そのように私は考えているわけであります。

 最終的に、解散直前になりまして、党首討論も経て、今回、このもとになりますいわゆる〇増五減の緊急是正法というのが、今大臣からありましたように、当時の政権与党民主党はもちろんですが、我々公明党、自民党、さらにはほかの会派も賛成して成立をしたわけでございます。

 そこで、改めて確認をしておきたいんですが、昨年十一月に成立したいわゆる〇増五減の緊急是正法と今回出されてきました区割り改定法案の関係について、これは政府としてどのように認識されているのか、御答弁をいただきたいと思います。

新藤国務大臣 この緊急是正法は、平成二十三年三月の最高裁大法廷判決に応えるものとして、各党各会派の御議論を経て、立法府において制定された議員立法であります。そして、その緊急是正法によって、画定審の勧告に基づいて法案化したのが今回の区割り改正法案でございます。

 そして、この緊急是正法のみでは一票の格差は是正されないわけでありまして、今回の区割り改定法が成立して初めて一票の格差是正が完結する。そういう意味におきまして、委員が御指摘のとおり、この緊急是正法とこの区割り改定法案、これは一体のものと私も考えております。

佐藤(茂)委員 今御答弁いただきましたように、私も、今回の区割り改定法案というのは、昨年十一月の〇増五減の緊急是正法に基づく衆議院小選挙区の区割りを改定するものであって、まさに緊急是正法とは一体のものである、そう見るべきだと思います。これは我々政治家が言っているだけではなくて、マスコミ各紙の論調も、後で時間があれば紹介しますけれども、一致した見方なんですね。

 〇増五減の緊急是正法というのは、先ほども少し述べましたが、当時政権与党であった民主党を初め、我々、自民党、公明党のみならず、日本維新の会あるいはみんなの党などの各会派が賛成して成立をしたものでございます。民主党を初めとした各党が今になってこの区割り改定法案に反対姿勢を示されているというのは、どう考えても私は理解できません。わずか四カ月余りでの方針転換は御都合主義にもほどがあると私は考えております。

 これは私が言っているだけではありません。例えば、的を得たマスコミの論調の一つだけを紹介いたしますと、三月二十九日の読売新聞の四面では次のように述べられております。「「〇増五減」という全く同じ中身の政治課題に、四か月前は賛成、今度は反対――という態度の政党を、有権者はどう受け止めたらよいのだろう。今言っていることも、四か月先には簡単に反古にするかもしれない。そんな政党の言うことは、誰も信じなくなる。」まさに私は、的を得たそういう論ではないかというように思うわけでございます。

 ですから、〇増五減の緊急是正法と一体であって、その改正法に基づく今回の区割り改定法案を成立させてこそ、緊急是正法の本旨をかなえ、司法の指摘に応えるもの、そのように私は考えるんですが、総務大臣の御見解を伺いたいと思います。

新藤国務大臣 御指摘のとおりでございます。

 今回の区割り改定法案、これは法の形式といたしましては緊急是正法を前提としております。それは緊急是正法の一部改正法案という形にもなっているわけでありまして、この議員立法と今回の私たち政府が提出したものの関連性がここでもおわかりいただけるのではないか、このように思います。

 そして、これは立法府の責任において、このような御議論をいただき、そして法案ができました。それに基づいて我々はお出しをしているわけでありまして、これは何としても、今、裁判所からの厳しい判決も相次いでおります、そういったことも踏まえて、まず国会がその厳しさを認識していただいた上でのこういった法案の進め方になっていると思いますし、我々は、可及的速やかにこれに対処しなければならない、こういう思いで今まで対応してきたつもりであります。

 ぜひともこの早期成立をお願いしたい、このように考えております。

佐藤(茂)委員 そこで、改めて今の政府の考え方をお聞きしたいと思うんですが、〇増五減の緊急是正法に昨年十一月に賛成された政党の幹部から、今になってこのような発言をされている方がいらっしゃいます。〇増五減では違憲状態の解消には不十分だ、そういう発言をたびたび重ねておられるわけでございますが、そして、その上に立って、大幅な定数削減を含む抜本改革を主張されているわけですね。

 総務大臣は、今回この法案を出されてきた責任者として、〇増五減では違憲状態の解消には不十分だ、こういう主張をされているその考えにどのような御認識を持っておられるか、御答弁をいただきたいと思います。

新藤国務大臣 これは少しお時間を頂戴しなきゃならないと思うんです。

 まず、一人別枠方式、これについての御議論があります。

 一人別枠方式を定めた画定審議会の設置法の第三条第二項と現在の区割り規定、これは平成二十三年三月の最高裁大法廷判決において違憲状態と判示されているわけであります。そして、この違憲状態を解消するために、各党会派による御議論を経て立法府において制定されたのが緊急是正法、議員立法です。

 そして、緊急是正法は、まず一人別枠方式の規定を廃止して、そしてそれにかわる〇増五減による新たな配分方法を定めているわけであります。

 現行の都道府県別の選挙区数は、平成十二年の国勢調査人口に基づいて一人別枠方式で配分されております。今度は、それを平成二十二年の国調人口に基づいて、仮に一人別枠方式で配分したとするならば、それは、定数が三百の場合には四増四減にならなければなりません。定数二百九十五でも一増六減。これは〇増五減とは違うものになるわけであります。

 そしてまた、緊急是正法は、今回の区割りの改定について、直近の平成二十二年の国勢調査人口によること、そして選挙区間の人口の最大格差は二倍未満とすること、これを定めているわけです。

 そして、平成二十三年三月の最高裁大法廷判決は、そのような緊急是正法とほぼ同様の内容を定めている画定審設置法第三条一項について、投票価値の平等に配慮した合理的な基準であると判示しているのでございます。

 したがって、例えば、改定案の作成に用いた国勢調査人口以外のそのほかの、またその後の推計人口などが二倍を若干上回ることになっていても、それは憲法上の問題になるということにはならないと私は考えているわけであります。

佐藤(茂)委員 今、御丁寧に御説明いただきました。

 今回は、やはり政党としての責任が問われるんだろう、この議論というのは。ですから、いろいろな司法の判決のある部分をかじって、不十分だとか、そういう御意見はいろいろあろうかと思いますけれども、しかし、やはり昨年の十一月にあの緊急是正法を賛成した、それからそれに基づいて、そのルールに基づいて出されてきた区割り改定法案というのは一体のものであって、まずはこれを先行処理した上で、その上でそれぞれ主張されている抜本改革の議論は大いにやればいいんじゃないか、私はそういう考え方に基づいて先ほどから質問をさせていただいているところでございます。

 これは、立法府にいる我々だけではなくて、世論調査の結果も顕著に出てきているわけでございます。

 最近のNHKの世論調査によりますと、衆議院選挙の一票の格差をめぐり、政府・与党が、小選挙区の〇増五減の法律に基づいて区割りを見直し、一票の格差をぎりぎり二倍未満に抑える法案を選挙制度の見直しより先に成立させるとしている方針について、賛成が三二%、反対が一七%と明確に出ております。

 また、四月十六日付の読売新聞の直近の調査では、これは四月十二から十四日に調査されたそうなんですが、〇増五減を実現する区割り法案について、今国会で成立させるべきだとの回答が六五%に上りました。そうは思わないの一七%を大きく上回った、そういう報道でございます。

 ですから、一票の格差を早急に是正すべきというのが今の多くの国民の声である。言いかえれば、国民の声は一票の格差是正を進めよ、そういうことだと私は認識しておりますけれども、総務大臣の所見を伺いたいと思います。

新藤国務大臣 そうした報道があることは私も承知をしております。また、国民の間においてこのような御理解があるということだ、このように思っております。

 そして、何度も申しますが、これまでの立法府の中でのそういった御議論を経て、そして国民の代表が決めた、このことに沿って、我々はそれを行政府として執行していくということであります。いろいろな国民の声も踏まえながら、これはとにかく、今回きちんと成立をさせなければいけない、このように思っておりまして、それをお願いさせていただいているところでございます。

佐藤(茂)委員 そこで、今まで主要なことをもうお聞きしたので、あと、そのほかに細かいことをお聞きしたいと思うんですが、万が一、国会等でこれらの審議が滞って、〇増五減の緊急是正法に基づくこの区割り改定法案が成立しない場合、これはどのような事態が想定されると考えておられるのか、総務省の見解を伺っておきたいと思います。

米田政府参考人 今回のこの区割り改定法案が成立しない場合でありますけれども、もう既に平成二十三年三月の最高裁大法廷判決で違憲状態と判示をされ、かつ昨年の衆議院総選挙に係る格差訴訟の一連の高裁判決で違憲もしくは違憲状態という厳しい判決が相次ぐ中で、格差是正の立法措置が全く行われないまま現行の区割り規定が残置するということになるものというふうに思われます。

 今後、最高裁判決が予定されている状況下で、格差是正が行われないままこの最高裁判決を迎える事態ということも懸念されるところだと思います。

佐藤(茂)委員 ですから、これは秋かあるいは年末に最高裁判決があるというように言われているんですけれども、このまま放置しておくと、今選挙部長がおっしゃったように、司法から厳しい指弾を下されるというか、そういう可能性がやはりあるわけでございまして、我々は、そういう意味からも、もう待ったなしで、こういう一票の格差を是正する今回の法案については、立法府として真摯に取り組んでいかなければいけない、そのように考えております。

 もう一つは、先ほど総務大臣も言われておりましたけれども、今回のこの区割り改定法案では、選挙区間の最大人口格差は二・五二四倍から一・九九八倍に縮小して、この選挙制度、並立制を導入して以来、初めて格差が二倍を超えるそういう選挙区がなくなるという、画期的な区割り改定法案だと私は思いますが、しかし、一部の報道によれば、一票の格差が既に実態として二倍を超える選挙区がある、そういう報道もなされているわけでございます。それは、国勢調査の推計とかあるいは住民基本台帳に基づく人口ではもう違うんだ、そういうことを言われる論があるわけです。

 そこで伺いたいのは、この小選挙区の区割りを、十年ごとに行われる国勢調査の結果による人口を基本とされる根拠、さらに、直近の住民基本台帳による人口で一票の格差を判断されない理由、ここについて政府の見解をお伺いしておきたいと思います。

    〔委員長退席、平沢委員長代理着席〕

米田政府参考人 今回の区割りにつきましては、〇増五減による緊急是正法が根拠になっておりますが、これでは平成二十二年の国勢調査人口を用いることというふうにしております。

 さらに、これまでの改定におきましては、衆議院議員選挙区画定審議会設置法の三条、それから四条におきまして、審議会は、原則として、十年ごとの全数調査に基づく大規模国勢調査の結果による人口を用いて区割りの改定案を作成することとされているところであります。

 このように、従来から衆議院小選挙区の改定について国勢調査の人口を用いている理由でありますけれども、一つは、国勢調査人口というのが、国勢調査という、人口の把握そのものを目的とした、法令に基づき全国一斉に行われる実地調査による人口であるということで、確度が非常に高いということ。それから二点目といたしまして、衆議院議員の定数配分については、大正十四年の衆議院議員選挙法以来一貫して国勢調査人口を基準として行われてきたということ。それから三つ目といたしまして、議員の定数配分というのはある程度の安定性を要するということ。この三点等の理由によるものというふうに言われてきております。

 なお、御指摘の住民基本台帳の人口でございますけれども、これは、住民基本台帳法の規定に基づきまして、市町村に住所を有する者として、住民からの届け出に基づき住民基本台帳に記録されているものの数を、各都道府県及び市町村の御協力を得て、総務省において取りまとめたものであります。これは、人口の把握そのものを目的としたものではありませんで、その対象者も国勢調査の人口とは相違があるところでございます。

    〔平沢委員長代理退席、委員長着席〕

佐藤(茂)委員 よくわかりました。ですから、人口の把握そのものを目的とした、非常に確度の高い国勢調査を基準にして扱われている、そういうことを明快に答弁いただきました。

 それで、今回のこの区割り改定法案の周知の仕方についてお聞きをしておきたいと思うんですけれども、今回は、先ほどから自民党の委員の皆さんも質問されておりましたが、今回の〇増五減の緊急是正法によって定数一減となる福井県、山梨県、徳島県、高知県、佐賀県の五県はもちろんなんですけれども、今回の改定案では、選挙区が変更されるのが、何と十七都県四十二選挙区に広がるわけですね。私は、これは意外に多くの都県と選挙区に影響が及び、変更が余儀なくされるなというのが率直な感想でございます。

 ですから、今回、附則第一条で施行期日が改正されまして、公布の日から起算して一月を経過した日となっておりますけれども、この一カ月の周知期間で十分なのかどうか。また、関係する自治体、地域、そして何よりも有権者への選挙区変更の周知をどのように行っていかれるのか。政府の見解を伺っておきたいと思います。

米田政府参考人 申し上げるまでもなく、選挙制度は、議会政治の根幹、民主主義の基盤をなすものでございます。今回の区割りの改定につきましては、有権者、選挙管理委員会、政党等に十分御理解いただくことが非常に重要だというふうに認識しております。

 御指摘の、いわゆる周知期間でございますけれども、今回の区割り改定法につきましては、法の施行までの周知期間は一カ月、すなわち公布の日から起算をして一月を経過した日から施行することとしておりますけれども、これは平成六年の衆議院小選挙区比例代表並立制導入時、一回目の区割りができたこの法律、さらに平成十四年の区割りの改定法におきましても、それぞれ、この周知期間、一月を経過した日から施行するというふうにしていたこと。また、今回の改定では、本年一月二十一日の区割り審議会で、改定対象選挙区の範囲が既に公表をされております。三月二十八日の審議会の勧告後も、既にこの区割りの関係で各種の報道がなされていることなどを考慮いたしますと、一カ月が妥当なものと考えたところでございます。

 もちろん、総務省といたしましては、この法案成立後には、区割り改定の内容を十分有権者に理解していただけるような周知啓発を的確に行ってまいりたいと考えております。

 特に、今回区割りが変更となります選挙区の有権者等に対しましては、わかりやすく行うことが重要だと考えておりまして、例えば区割り地図などを使いまして、変更後の区割りが視覚的、直観的に把握できるような広報を展開するというようなことを考えております。そういう意味でも、関係都県、それから特に関係市区町村の選挙管理委員会に積極的な広報を要請していきたいというふうに考えております。

 なお、この夏、参議院通常選挙が行われることになっておりますけれども、こちらの方も、今回の参議院の選挙区選挙からいわゆる四増四減による定数是正がございますので、この是正と混同されないように配意をしたいというふうに考えております。

 以上です。

佐藤(茂)委員 そこで、最後になりますけれども、先ほど申し上げました各紙の社説の論調ですね、これが今、区割り改定法案について、三月の区割り審の勧告が出た以降、大体、一般紙というのは一つのテーマについてスタンスがそろうということはほとんどないんですけれども、基本的にそろった部分があるんです。そこをあえて紹介させていただきます。

 例えば、四月三日の朝日新聞の社説は、「なすべきことは明らかだ。」「まずは、これにもとづく公職選挙法改正案を、今国会で成立させることである。 自民、公明両党が、その先行処理を求めているのは当然だ。」「まずは〇増五減で格差を二倍以内に収める。これは国会として最低限の責任だ。」こう言われています。

 読売新聞は、三月三十日の社説で、「与野党は「違憲」を重く受け止めねばならない。」「区割り法案を先行処理すべきだ。」こういうふうに言っております。

 毎日新聞は、三月二十九日の社説で、「違憲判決を突きつけられた立法府の最低限の責務として、まずこの改定案を今国会で即座に成立させるべきである。」

 次に、産経新聞、三月二十九日の主張で、「自らの怠慢に警告を突き付けられてきた与野党には、この新区割りの公職選挙法改正案を最優先で成立させる責務がある。」

 日経、四月四日の社説、「喫緊の課題は全国の高裁から違憲判決を突き付けられた一票の格差の是正である。」「半歩でも前進した方がよい。先行処理は当然である。」

 こういう、もう五大紙がこぞって区割り改定法案については先行処理すべきだ、そういうふうに言っているわけでございます。

 ですから、法案の早期成立というのは、立法府の最低限の責務でございます。立法府が司法から突きつけられた課題に即答しなければ、政治は信頼を取り戻せなくなってしまいます。だからこそ、定数削減を含む選挙制度の抜本改革とは切り離して、まずは〇増五減の区割り改定法案を最優先で成立させるべきだ、そのように考えますけれども、総務大臣の今法案成立に向けた決意を最後にお伺いしたいと思います。

新藤国務大臣 今、佐藤委員が完全な形で世論を御紹介いただきました。そしてまた、議論も整理していただいたと思います。そういった国民の声、また、それが報道であらわれている、こういうことを御紹介いただいたわけであります。

 我々とすれば、これは、まず、憲法上の要請がある、そして立法府からの御要請に基づいた法律によりこれを準備してきて、今回お出ししている。行政府としては、これをとにかく適切に、可及的速やかに対処しなくてはならない、そういう責任を持って臨んでおるわけでありまして、まず、この御審議をしっかりしていただいて、そして成立をさせていただきたい、このことを強くお願いをしたいと思います。

佐藤(茂)委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

保岡委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時二十四分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.