衆議院

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第2号 平成14年11月21日(木曜日)

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平成十四年十一月二十一日(木曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 青山 二三君
   理事 馳   浩君 理事 林田  彪君
   理事 松宮  勲君 理事 森田 健作君
   理事 肥田美代子君 理事 山口  壯君
   理事 丸谷 佳織君 理事 達増 拓也君
      小野 晋也君    小渕 優子君
      太田 誠一君    岡下 信子君
      上川 陽子君    河野 太郎君
      阪上 善秀君    石毛えい子君
      武正 公一君    水島 広子君
      山谷えり子君    石井 郁子君
      原  陽子君
    …………………………………
   国務大臣
   (内閣官房長官)     福田 康夫君
   内閣府副大臣       米田 建三君
   文部科学大臣政務官    池坊 保子君
   政府参考人
   (内閣法制局第一部長)  宮崎 礼壹君
   政府参考人
   (内閣府大臣官房審議官) 石川  正君
   政府参考人
   (内閣府男女共同参画局長
   )            坂東眞理子君
   政府参考人
   (警察庁生活安全局長)  瀬川 勝久君
   政府参考人
   (総務省総合通信基盤局電
   気通信事業部長)     鈴木 康雄君
   政府参考人
   (外務省総合外交政策局国
   際社会協力部人権人道課長
   )            泉  裕泰君
   政府参考人
   (文部科学省生涯学習政策
   局長)          近藤 信司君
   政府参考人
   (文部科学省初等中等教育
   局長)          矢野 重典君
   政府参考人
   (文部科学省スポーツ・青
   少年局長)        遠藤純一郎君
   政府参考人
   (厚生労働省大臣官房審議
   官)           青木  豊君
   政府参考人
   (厚生労働省職業安定局次
   長)           三沢  孝君
   政府参考人
   (厚生労働省職業能力開発
   局長)          坂本由紀子君
   政府参考人
   (厚生労働省雇用均等・児
   童家庭局長)       岩田喜美枝君
   政府参考人
   (経済産業省大臣官房審議
   官)           松井 英生君
   衆議院調査局青少年問題に
   関する特別調査室長    石田 俊彦君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 青少年問題に関する件


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     ――――◇―――――
青山委員長 これより会議を開きます。
 青少年問題に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣法制局第一部長宮崎礼壹さん、内閣府大臣官房審議官石川正さん、内閣府男女共同参画局長坂東眞理子さん、警察庁生活安全局長瀬川勝久さん、総務省総合通信基盤局電気通信事業部長鈴木康雄さん、外務省総合外交政策局国際社会協力部人権人道課長泉裕泰さん、文部科学省生涯学習政策局長近藤信司さん、文部科学省初等中等教育局長矢野重典さん、文部科学省スポーツ・青少年局長遠藤純一郎さん、厚生労働省大臣官房審議官青木豊さん、厚生労働省職業安定局次長三沢孝さん、厚生労働省職業能力開発局長坂本由紀子さん、厚生労働省雇用均等・児童家庭局長岩田喜美枝さん及び経済産業省大臣官房審議官松井英生さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
青山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
青山委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。武正公一さん。
武正委員 民主党・無所属クラブ、武正公一でございます。
 皆さん、おはようございます。きょうは、大臣、副大臣、政務官にお見えいただきまして、順次、質疑をさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、文部政務官、週五日制が始まってもう半年を経過しておりますが、この半年間の評価をどのようにされているか、お伺いします。
池坊大臣政務官 申し上げるまでもなく、週五日制は、家庭、学校、地域社会との連携の中で、それぞれが持っております教育機能を発揮しながら、子供たちに、自然体験、社会体験を行いながら、知育だけでなく、それを応用する、生きる力をはぐくむものでございます。
 ことしの九月に、日本PTA全国協議会の調査、どう感じたかという保護者に対しての調査によりますと、正直言ってまだ戸惑っているところであるという意見もございますが、その一方では、子供との活動や親子の触れ合いなどがふえていいという意見もふえてきております。始まります前に教育現場で聞きました声は、すべて土曜日お休みというのは困るんだというブーイングが多かったことを考えますと、これは定着してきているというふうに思っております。
武正委員 理事会のお許しをいただいて、お手元に二つの調査の資料を配付させていただいております。
 一つは、平成十一年度と平成十四年度の週五日制に対する意識調査結果の比較、これは保護者に対するもので、埼玉県の教育局の指導部指導課がこの九月に取りまとめたものでございます。それからもう一つは、この夏、私の事務所で学生さんのインターンを五名受け入れまして、その学生さんが、文部科学省さん、ゆとり教育と言うけれども、本当に子供たちはゆとりを感じているんだろうかと、夏の暑い盛りに、子供、保護者にアンケートをとりました。それぞれ、お手元で御紹介をさせていただいております。
 まず、県の方の資料でございます。一枚あけていただきますと、概要が右側に出ておりますが、「平成十一年度と平成十四年度の比較」でございます。
 三年間でどう変わったか。右側の2を読みますと、「土曜日のお子様の様子を御覧になってどう思いますか」という質問に、「学力低下を心配している」が一〇ポイント、「有意義な過ごし方をしていない」が七ポイント、それぞれふえた。学力低下を心配、そして、有意義な過ごし方をしていないんじゃないか、これが三年前と比べてふえたというのがまず一点。逆に減ったのは何ですかというのがその後に書いてありまして、「家族のふれあいが深まっている」が一三ポイント、「社会性を育てる上で有効である」と「自主性を育てる上で有効である」がそれぞれ九ポイント減っているということでございます。
 このことのグラフは、それから二枚めくりますと、前から四ページ目に、「土曜日のお子様の様子を御覧になってどう思いますか」というグラフが出ております。
 これを見られて、政務官、先ほどは大変前向きな評価の数字というか結果を引用されましたが、この埼玉県という都道府県がやった調査、保護者に対するものではございますが、この三年間の変化を含んでどのようにお考えになりますか。
池坊大臣政務官 これはやはり、子供たちの生活態度が変化してきたことのあらわれではないかと思っております。ことしになってから土曜日お休みになりましたのでこのような現象の数字が出てきたというふうには考えておりません。
 私どもは、土曜日を有効に使ってほしいというふうに考えておりますので、ことし、新子どもプランというのを策定いたしました。週末において体験活動などを積極的にしてほしい、そのためにはボランティアに関係していらっしゃる方々のお力もおかりしながらボランティア活動などもしてほしいというふうに思っておりまして、全国的にはそういうような事例もたくさん出ております。
 また、今、学力低下ではないか、保護者はそれを一番心配しているのだというお話でございました。議員も御存じだと思いますけれども、きめ細やかな教育をしたいということで、教職員定数の改善などを行っております。
 土曜日を有効に使うような、やはり地域社会での連携が今出てきているのではないかというふうに思っております。
武正委員 学校教育現場では土曜日が休みになったことへの取り組みをというようなお話でございました。
 たしか東京都が、夏休みに教員が出てくるようにと、何か日報をつけなさいというような意見がありました。これは、若手経営者にちょっといろいろ話しましたら、夏休みに毎日出てきて日報をつけるよりも、逆に、毎週土曜日、交代で出るような形がとれるんじゃないかと。そんなこともありまして、この土曜、日曜の週五日制に伴った取り組みはまだまだ文科省としても工夫の余地あり、そんなことをあらわす率直なアンケートと私は考えております。
 青少年健全育成を各所管の省庁の総合調整というお立場で、官房長官、この埼玉県の結果、平成十一年度と十四年度の比較を見られて、どのようにお考えになるか。特に、家族の触れ合いが深まっていないとか、あるいは、文部政務官からも地域社会というお話が今ございましたが、これは文部行政を幅広く超えた取り組みが必要だということなんですが、いかがでしょうか。
福田国務大臣 青少年の教育問題等に大変熱心に取り組んでいらっしゃることは、よく事務所で調査などされてわかりました。
 今お示しいただきました土曜日の子供の状況、これを拝見しまして気がつきましたことは、三年間経過しまして、どうも何かマイナスのメリットというか、評価しない部分がふえているんじゃないか、そういう感じがしまして、これは私もちょっと意外に思ったんですけれども、もしこういうふうなことであるならば、これはちょっと考えなきゃいけないことがあるのかなと。教育、社会全体の問題として、また、家庭の問題としても大事だと思います。
 例えば、家族の触れ合いが、これが減っているんですね。深まっているんじゃなくて、深まっていないんですね。それから、スポーツ、文化に参加する時間が、これは若干ふえていますね。これはよろしいかと思いますが、社会性をはぐくむという面では有効でない。それから、自主性を育てるのにも適していない。部活動に参加する時間がふえた、これはプラスですね。それから、学力が低下するのが心配だとか、有意義な過ごし方をしていないようだとか、これがふえているとか、どうも余りいい評価はないですね。これは大変興味あるデータだと思っております。
武正委員 ありがとうございます。
 今度は、先ほどちょっと御紹介した「ゆとり教育アンケート」。今、学生さんが、与野党問わず、国会議員の事務所でインターンということで、ボランティアでさまざまな経験を積み、知識を得ようということで積極的に参加する、これは政治参加ということ、あるいは若者の政治意識の向上を図るということで非常にすばらしい取り組みだなと私は思っておりまして、この夏、五名の学生さんを受け入れて、アンケート、彼らの発案によってとった結果をお手元で御紹介しております。
 表紙から一枚めくっていただくと、どんな形でやりましたかというのがある。二枚目、アンケート結果の方をちょっとお開きいただけますでしょうか。
 まず一番目、「学校が週休二日制になったことをどう思いますか?」小学生、「うれしい」八四%。子供は休みがふえたことを素直に喜んでいるようであります。保護者、「賛成」四五%、「反対」四六%。やはり保護者とすれば、賛否両論相半ばという感じがございます。
 二番目、「休日となった土曜日に(お子様は)何をしていますか?」小学生、「運動」プラス「遊ぶ」で六八%。保護者、やはり「運動」プラス「遊ぶ」で六七%。「勉強」は、子供は一五%やっていると言っているんですが、親は三%しかない。ですから、やはり勉強の満足度では親子異なるのかなといったこともわかります。
 三番目、「学習指導要領の内容が三割削減されましたが、お子様の学力低下に対して不安はありますか?」「はい」六五%。これはよく言われるところでございます。
 四番目、「習い事や塾は増えましたか?」小学生、「以前と同じ」五九%。保護者、「以前と同じ」六六%。ですから、週五日制になっても習い事や塾はふえていないということがこのアンケートからおわかりいただけると思います。
 こういった結果が出ておるんですけれども、文部政務官、このアンケートを見られて、どのようにお考えになりますか。
池坊大臣政務官 子供たちにとっては、子供の大多数が、土曜日お休みがうれしいと答えております。ですから、やはりこれはいいことなんじゃないか。だけれども、それの使い方が問題なんだというふうに私は思っております。今度、新学習指導要領になってまいりました。その中で大切にしておりますことは、子供たちが基礎、基本の知識をしっかりと身につけながら、それを応用する力を持つようにということで、その応用を土曜日に使えたらというふうに思っております。
 半数の方が私立よりも公立に行かせたいと思っていらっしゃるということに対して、私はむしろ、ほっとする思いがいたします。よく現場で、私立にみんな行かせたがっているんだよ、だけれども、学費が高いから公立に行っているんだよ、やむないんだよというふうなお声があるんだというふうにおっしゃる方がございますけれども、決してそうではなくて、もちろんそういうことも入ってはいるでしょうけれども、公立のよさを認めている方もたくさんいらっしゃるということを、私はうれしいと思っております。
 学力の心配ということがございますけれども、新学習指導要領になる前の学力はどうかということを、ことしの一月に、小学校五年、六年、中学一、二、三年でテストをいたしました。それからまた、新学習指導要領でどうなったかという推移を見たいと思っておりますので、十六年の一月、二月でこういう調査をするつもりでございます。
 決して日本の学力も、OECDのPISAなどを御存じだと思いますけれども、劣っておりませんので、そのことは私どもも、選択学習の幅を拡大しながら、きちんとした指導をしていきたいと思っておりますけれども、健全な姿ではないかと思っております。
武正委員 ページをめくっていただきますと、四ページ目にQ5、Q6が出ております。こちらの方にもう政務官の御発言が入っていっていただいているので、これの方を御紹介しますが、ただ、その前に、OECDの調査を引用されて、学力低下していないよということを言われましたが、学力は低下しているという調査も歴然としてあるわけですね。
 ですから、文科省さんとして、いや、学力は低下していないというふうに言われるそのお気持ち、お立場はわかるんですが、本当に週五日制によっていかなる影響が出ているのか、先ほど官房長官からも意外なアンケート結果だということで、やはり週五日制、政府全体挙げて、ある面再検討、そして、どこに問題があるのか、問題があるとすれば、例えば文科省、もっともっとそれこそ力強くやっていただくように、政府としてのお取り組みも必要なのかな、そんなことを先ほどの官房長官とのやりとりでも感じたわけでございます。
 それで、今のQ5、「中学校は公立と私立のどちらに進学したい(させたい)ですか?」「公立」子供四六%、保護者五七%。これは決して学費が安いからではないですよというようなお話が先ほど政務官からありましたが、Q6の、「教育費に負担を感じますか?また、月々おいくらかかっていますか?」ということでございますが、やはり負担を感じるという人の方が一・五倍になっておりまして、その方々は三万円以上ということでございました。
 これは、小学生の保護者は、月間の支出が三十万だとすると大体三万円ぐらいというような、そんな統計も出ておるんですが、これが中学、高校、大学といくと、月々、モデルとして支出が三十万だとすると、大体五万円、五万円というような形で、教育費の負担が当然のように中高大と上がっていくに従って重くなるといった中で、小学生の保護者さんからもこういう御回答があります。
 これについては、文部政務官、どのようにお考えになりますか。
池坊大臣政務官 確かに、私立は学費がございますから、負担を感じる方もいらっしゃるのではないかというふうには思います。
 ただ、公立をよくするということは私たちに課せられた使命だというふうに私は思っておりますので、公立のことに関して言うならば、先ほど申し上げたように、今までは画一的な授業をしておりましたけれども、これからは一人一人の個性を伸ばして、七五三と言われるように小学校で三割わからない子供がいる、わからない人にもきめ細やかに、また、能力がある人はその能力を伸ばすような少人数学級とか、あるいはそのための教員も加配いたしております。それからまた、学力向上フロンティア事業というのを策定いたしまして、それぞれの拠点で個に応じた指導の充実を図り、それを全国に広げていきたいというようなこともいたしておりますので、これから、公立がいいなという芽が大きく広がっていくと思います。
 それから、学力は確実に低下しているという先ほどのお話でございますが、そういうデータはございませんし、どういうふうになっているかは、これから、きっちりした調査をもとにして、また私たちがやるべきことがあったらやっていきたいと思います。一部の風潮で学力が低下していると言われておりますのは、何のどこをもってして低下しているのかというのが私はちょっと疑問に思っております。
武正委員 既にこの二年半、国会のいろいろな審議を通じて、学力低下を示す調査というものはさまざまな委員会で出されておりますので。その論議はまた別な機会にさせていただきたいと思います。
 さて、私は、こういった結果を見て、週五日になって塾や習い事をふやせない、その理由として教育費が高いということがあるのではないかなというふうに思うんです。これは、政務官からは既にいろいろお話しいただいておりますので、内閣府の方からお答えをいただきたいんですが、お金がかからないでやれる、そんなことがもっと土曜、日曜にあれば子供たちが有意義に過ごせる、先ほどのようなアンケートの結果が出ないで済むんじゃないかと思うんですが、文部科学省さんからはそういったお答えがありますけれども、これについてはどのようにお考えになりますか。土日について、お金をかけないで有意義に過ごせるような受け皿ということでございます。
福田国務大臣 土日の過ごし方ということになりますけれども、土曜日も日曜日もないと思うんですよ。土曜日だから特別にということではないと思いますが。
 青少年がその過ごし方として自発的に何か自分でするということがあれば、それはそれでよろしいかと思うけれども、しかし、それでなくて、社会的な活動に参加する機会を与えるということもやはり社会としての役割ではなかろうか、こういうふうに思います。ですから、そういうような社会活動を通した経験が人格形成に非常に役に立つということであれば、政府としても積極的にそういう方向を応援していかなければいけない、こう思っております。
 内閣府といたしましても、青少年行政の基本方針などを定めました青少年育成推進要綱におきまして、「当面特に取り組む課題」の一つに「青少年の社会参加活動等多様な活動の促進」を挙げておりまして、関係各省間の連携を図りながら、ボランティア活動それから職業体験等の促進を図ってまいろう、このように考えているところでございます。
武正委員 そうしましたら、それぞれアンケートを使った質問から、今度は、男女共同参画、また男女別学、共学といった問題に移らせていただきます。
 今般、中教審から、教育基本法の改正ということで中間報告が行われております。その中で、これまでありました男女共学の条文にかわり、男女共同参画社会の実現や男女平等の促進に寄与するという観点からといった形での中間報告が出ておりますが、まず文部政務官、この男女共学が削除されて男女共同参画という形になってまいりました中間報告は、どのような観点から行われておりますか。
池坊大臣政務官 教育基本法の見直しの中間報告が、この間、中央教育審議会で行われました。そして、その中にあっては、現行法の第五条の男女共学というのはもう広くその趣旨が浸透しているのではないか、だけれども、その一方では、社会において男女共同参画がまだ十分に行われていないところもある、そういう観点を踏まえまして、これから、教育や学習やあらゆる場において男女共同参画社会の実現や男女平等の促進に寄与するという新しい視点がやはり必要なのではないだろうか、だから、教育の基本理念としてその趣旨を規定することが適当という皆様方の御意見がございました。
 これからも、半月の間に五カ所、公聴会をいたしますので、いろいろな意見が伺えると思いますが、このようなことを入れましたのはそういう経過でございます。
武正委員 官房長官、この点、いかにお考えになりますか、男女共同参画という形になりました点。
福田国務大臣 今、大筋は、文部科学政務官の答弁のとおりでございます。政務官のおっしゃられた、この中間報告にあります教育の基本理念、これが規定されているわけでございますけれども、現在の審議会で、中教審の開催などを通じてさらに議論を深めていく、こういうふうにしておるところでございまして、男女共同参画社会の実現を推進する立場から大変意義のある、そういう提言だと考えております。
武正委員 ちょっと時間の関係もありますので、本来であれば、男女別学をどうお考えになりますかと女子高校出身の政務官にお尋ねしたかったんですが、それはまた時間の関係で飛ばしまして、次に移らせていただきます。
 私の埼玉県では、男女共同参画の苦情処理委員会が県知事の方に勧告を行いました。
  高校生活の三年間を一方の性に限ることは、人格形成からも、また男女共同参画社会づくりの視点からも問題である。
  高校生という多感な時期に、異性と真剣に向き合い共に協力し合って問題を解決していく体 験こそ重要である。
  公立の高校として、男女の性差にとらわれることなく個人の能力・個性を発揮していくため、男女別学校の共学化を早期に実現する必要がある。
こういった勧告が出たわけでございます。
 先ほど、公立学校もこれから多様なメニューというか、個性化あるいは選択肢ということを文部科学政務官からもお話がありましたが、私は、いろいろな学校があってもいい、公立も私立も、別学も共学も、そしてまたいわゆる専門学校、専修学校、いろいろあっていいというふうに思うんですが、この勧告について、男女共同参画担当としてどのようにお考えになりますか。
福田国務大臣 県立高校における男女の共学ということにつきまして、これはやはり地域事情というのはあると思うんです。ですから、その地域の実情に応じて、設置者であります県が県の判断として考えていけばいいのではないかな、こういうふうに思っております。
 私どもの群馬県のことにつきまして申し上げれば、なぜそういうふうに申し上げたかというと、群馬県は別学が多いんですよ。男子校、女子校、この比率が非常に高い。ということは、逆に言えば共学率が低いんです。私も御質問がありまして見てみましたら、全国平均が九六・四%、群馬県、私の出身の群馬県は六六%というんですよ。非常に低い。これも我が県の実情に応じてというように言えないことはないんだけれども、しかし、この数字を見まして、群馬県は随分おくれているな、こういう感じがいたしております。ここのところは、本委員会の小渕委員と力を合わせて、我が県の男女共学という観点からの共学推進を図りたい、こういうふうに思っております。
武正委員 私は、群馬さんは群馬さんのお考えでやっていただいていいんじゃないかなというふうに思いまして、今、官房長官が言われた、おくれているということがどうかなというふうに思うんですね。(福田国務大臣「低いんです」と呼ぶ)低いということで今御答弁があって、おくれているということは御訂正をいただいたというふうに理解いたします。別学も共学も、それぞれあっていいというふうに思うわけでございます。
 この基本法では、第九条で「地方公共団体の責務」、第二十条で「地方公共団体及び民間の団体に対する支援」がありますが、要は、地方公共団体に関する質問が県から国にあったとき、国に直接、地方公共団体のことがあったとき、あるいは国に関することが県にあったとき、どのような連携ができるとお考えになりますか。お答えいただけますか、国と地方の連携について。
坂東政府参考人 男女共同参画に関する苦情につきましては、先月、十月に男女共同参画会議の方で苦情処理等に関する意見を述べたところでございますが、その際にも、できるだけ間口の広い、苦情を受け付けるところがあって、それが国あるいは関係機関と十分連携を進めていく体制をつくることが必要だというふうに言われておりますので、ぜひ今後ともそうした連携を緊密に図っていくようにしたいと思っております。
武正委員 男女共同参画社会基本法に「苦情の処理等」があるんですけれども、男女共同参画会議令第一条二項に、「専門委員は、当該専門の事項に関し学識経験を有する者のうちから、内閣総理大臣が任命する。」とありますが、苦情処理・監視専門調査会の専門委員の「当該専門の事項に関し学識経験を有する者」というのはどういう意味になりますか。
坂東政府参考人 お答えいたします。
 特に監視につきましては、それぞれの年度ごとに監視をするテーマを決定していただいて、その分野について監視をしております。すべての基本計画全体を監視するというのではなくて、重点的に監視する分野を決めますので、例えば十四年度ですと、国際関係、地球社会の平和、開発への貢献ということで国際法あるいは国際協力、開発の分野の専門の方に加わっていただく、あるいは統計情報のことをするので統計の専門家の方に専門委員になっていただくというふうに、その年度ごとの専門分野に応じて委員の方に新たに加わっていただくという形で対応しております。
武正委員 ということは、男女共同参画問題に詳しいということじゃなくて、それぞれの専門性といったことだと思います。
 もう時間もそろそろ終わりになりますが、官房長官、ぜひ最後にもう一回。
 先ほどの、群馬県は低いといったことについて、それはそれで低いということなんですけれども、男女別学、男女共学、それぞれやはりよさがある。ですから、それは、文部科学大臣の方にお尋ねしたときは、設置者の意向といったことを尊重すると。男女別学、共学、それぞれ歴史があるじゃないか、伝統があるじゃないか、それぞれのよさがあるよといったこともお認めをいただいているんですが、埼玉県でも、二十一万余の署名をもって知事の方に、男女別学校、これはやはり選択肢として残してほしい、そんなことも多くの別学校のOG、OB、そして生徒も言っているんですけれども、こういった別学校もあっていいんじゃないかといったことについてはどのようにお考えなのか、それをお尋ねして、終わらせていただきます。
福田国務大臣 先ほども答弁申し上げたとおりでございまして、県の実情に応じて、県民の意向に従ってやればいい、その声をその県でよく吸い上げて間違いないように対応してほしいと思っております。
武正委員 以上で終わります。ありがとうございました。
青山委員長 次に、山谷えり子さん。
山谷委員 民主党の山谷えり子でございます。
 今、武正議員も、男女共同参画社会とはというやりとりがございましたけれども、男女共同参画社会というのは、性別にかかわりなく、個性や能力を十分に発揮できる社会をつくることであり、職場での差別の是正とか、生活慣習面での抑圧的な部分というのは見直していきたいというふうに思っております。
 しかしながら、保育や教育の場で、行き過ぎも現在あるように感じております。男性と女性の区別をなくす、違いを排除していくという画一的、機械的な場面が見られる。今の高校の男女共学問題もそうかもしれません。
 私も、公立、私立、それから男女共学校、女子校、それぞれで育ちまして、それぞれのよさというものを身をもって体験しております。アメリカなどでも女子大のよさというのが今急速に見直されておりますし、今、国立の女子大も男女共学化というような検討もされているようでございますけれども、ぜひともこれは、歴史や伝統、文化、それぞれの多様性という視点で考えていくことがこれから大事なのではないかというふうに思います。
 さて、この委員会で、四月十一日、「未来を育てる基本のき」というような小冊子の中では、押しつけるような子育てをしていませんか、女の子だったらおひな様、男の子だったらこいのぼりなどというようなこと、これについての感想を福田官房長官に求めましたところ、「例示を見ましたら、正直言って、私も余りこれに賛成しません。」というふうにお答えになられました。
 この冊子の中に、「子育てはジェンダー・フリーで」と書かれております。「ジェンダー・フリーに育ってほしいものです。」と書かれております。
 ここで、「ふりーせる保育」という記述がございます。フリーダム、リリーフ、セルフコンフィデンス、もうわけのわからない単語を並べて「ふりーせる保育」ということを言っておりまして、子供の人権、ジェンダーフリーの視点をベースにした保育プログラムで、松戸市で今三カ所で実践中ということで、私もちょっと保護者に取材をさせていただきました。
 そうしましたら、「ふりーせる保育」をする、急に説明会があるというふうに言われた。保護者が、欠席の保護者のためにビデオを撮っていいですかと言ったら、肖像権の侵害になるからやめてくれと保育所側から言われた。そこで、行きましたところ、いきなり、松戸市男女共同参画プランの資料を配布されて、かなり厚いものですが、児童の権利の尊重、男女共同参画社会づくり、性の差別意識、ジェンダーフリーの説明があった。保護者は、ぽかんとしてしまった。一体何の説明だろうとぽかんとしてしまった。
 実際、始まった保育が、食事やおやつの時間も自由ということで、遊びに夢中の子は食べ忘れてしまう。それから、言葉遣いとかしつけが悪くなっていく。担任制も廃止されたので、子供と先生の関係が薄まっていく。お別れ会に何か発表させましょうよと親が言ったらば、それは子供の意思を尊重しなければいけないから、子供が決めることだ、幼児でも判断基準があるというふうに言われて寂しい気持ちになった。
 それから、お母さんたちが、運動会で「慎吾ママのおはロック」のCDをかけて一緒にダンスをしたいと言ったらば、お母さんが朝御飯をつくるというフレーズがジェンダーフリーに反するからだめだと言われて、歌詞をなくしてカラオケだけでやった。
 それから、「桃太郎」の本を読もうとしたら、おじいさんがしば刈りに、おばあさんが川に洗濯に、これがジェンダーフリーにかかわるからだめだというふうに言われたということでございます。
 実際、公民館では、「桃太郎」というのは暴力的で、とにかくジェンダーバイアスを押しつけるお話だから、「桃子の鬼退治」なんというふうに変えたりして読もうなんという運動がありまして、来年の高校の教科書では、「ある生徒は、このようなジェンダーにとらわれない幼児に育ってほしいと、だれもが知っている「桃太郎」のお話を「ももからうまれたももこちゃん」と改題してジェンダーフリーな絵本を創り、保育所の子どもたちに読んでもらった」。これはもう検定で合格しております、来年の春から使われる高校の教科書でございます。
 このようないろいろな動きがあるわけでございますね。これは、この「ふりーせる保育」だけではなくて、このような伝統行事を否定したり、このような絵本を書きかえたりという動きは、全国に保育の場で広がっております。とにかく保育所職員に研修、保護者には情報提供という形で、何か言おうものなら、それは間違っているというようなことで否定されてしまうというような苦情が今上がってきております。
 十一月十五日、衆議院の内閣委員会で、米田副大臣は、男女共同参画社会について、画一的、機械的に男女の違いを認めないというものではない、今、混乱がある、政府の立場をはっきりさせるために、十一月十二日の参議院の内閣委員会での福田大臣と米田副大臣の発言議事録、質疑応答を刷り物にして、全国の都道府県に配布いたしますというふうなお話でございました。
 内閣府に問い合わせたところ、配布してどうするんですかと言ったら、男女共同参画課に配布して、問い合わせがあったら答えるというようなお答えでございました。
 私は、今、保育現場、教育現場のこのような現状を見るにつけ、それだけでは不十分だというふうに思っております。一体、現場がどうなっているのか、調査していただきたいですし、それから、保育、教育等の現場までこのやりとりが伝わるような、さらに進んだ方策をぜひとも考えていただきたいというふうに思います。
 十一月十二日の参議院の内閣委員会で、内閣府の坂東眞理子男女共同参画局長は、ジェンダーイクオリティーとかジェンダーフェアネスという言葉はあるけれども、ジェンダーフリーという言葉はないではないかという質問に対して、そのとおりだ、ジェンダーフリーという用語はアメリカでもない、北京宣言でも国連婦人の地位委員会でもない、日本の男女共同参画社会基本法でも計画でも使用していない、画一的に男性と女性の違いを一切排除しようという人がいるが、そのような意味での社会づくりを目指してはいないというふうにお答えになりました。
 これは青少年健全育成の団体のグッズなんですけれども、これにも、ジェンダーフリーな社会を目指して、図書館でジェンダーフリーの絵本が待っているよ、こう書かれているんですね。相当なものなんでございます。官房長官、どういたしましょう。御所見をお伺いしたいと思います。
福田国務大臣 今、お話を聞いていて、正直言って、よくわからないことが多かったです。どうも私の現実感覚からは遠く離れたところのお話が大分多くございます。
 そういうことでありますが、まあ、余り行き過ぎちゃいかぬということは率直に思いますね。ほどほどにしてほしいという感じがいたします。
山谷委員 米田副大臣、いかがでございますか。
米田副大臣 十二日の参議院の内閣委員会の質疑応答を都道府県に配布するというお答えを申し上げたわけでありますが、今伺いまして、都道府県の担当課にとどめ置いて問い合わせがあったら答える、それでは消極的ではないかというお尋ねでありました。
 私もそれでは消極的だと思いますので、担当者に、もうちょっと迅速に政府の基本的な立場は伝えるべく手段を講ずるように、この後、指示するつもりでおります。
 また、御指摘のさまざまな現象、今、官房長官も、びっくりしているというふうにおっしゃいましたが、私もやはり、伺って、大変ゆゆしき事態だと思います。
 差別をなくすことは人類の共通の、また恒久的な課題でありますが、おのずからある区別というものもまたあるわけでありまして、画一的また機械的に男女の違いを否定するものではないということは政府の基本的な考え方であります。
 お話を伺っておりまして、ロシア革命直後のボルシェビキ政権におけるソビエト社会の混乱、あるいはポル・ポト支配下のカンボジアのさまざまな社会的混乱、あるいは中国の文化大革命下における混乱、それらを想起いたしました。
 よほど注意してきちんと施策を進めないと誤った方向にいく危険性がございますので、政府としては、これからも、この間の参議院の内閣委員会におきまして官房長官そして私が答弁を申し上げた基本姿勢にのっとって施策を推進してまいりたいというふうに思います。
山谷委員 ぜひともよろしくお願いしたいと思います。
 続きまして、出会い系サイトについて質問させていただきます。
 今、年少者の被害急増が深刻でございます。本年上半期で昨年同期の二・六倍、被害者の四八%は女子高校生、二五%が女子中学生という状況です。昨年検挙された児童買春事件で、出会い系サイトに関するものは前年比九・四倍。
 こうした出会い系サイト被害実態を踏まえまして、福田大臣の御所見、対策等をお伺いしたいと思います。
福田国務大臣 この出会い系サイトというのは、最近、青少年が大変利用している、そういう話を聞いておりまして、その結果、児童買春の被害を受ける事例が急増している、こういうことでございます。そして、その被害者の大半が女子中高生であるということで、大変憂慮しておるところでございます。これは早急に対応を考えなければいけないと思います。
 本年十月の青少年育成推進会議において、「「出会い系サイト」に係る児童買春等の被害から年少者を守るために当面講ずべき措置」を申し合わせいたしております。今後とも、この申し合わせの趣旨を踏まえ、関係各省の緊密な連携のもとに積極的な広報啓発活動を行ってまいります。また、法規制についても検討してまいりたい、このように考えております。
山谷委員 法規制についてなんですけれども、これは大人側の問題と利用する児童側の問題といろいろあると思うんですけれども、大人側、この書き込みをする人間が問題なわけで、売春防止法には勧誘・誘引規制がございますが、児童買春防止法にはございません。このような予備行為について対策をかけるというようなことが考えられるのか。
 そして、もう一点、児童の利用の防止策として、成人向けサイトに入り込めないような対策について、また、規制をかけることができるのか、そのような形での規制を考えていらっしゃるのか、もっとさらに違うものを考えていらっしゃるのか、お答えいただきたいと思います。
瀬川政府参考人 出会い系サイトについて、少年の被害が大変深刻化しているという実態がございます。それから、出会い系サイト対策につきましては、昨年の風営適正化法改正のときに、附帯決議もいただいております。
 今、警察庁といたしましては、有識者の方々による研究会を設置しておりますし、また、プロバイダーやサイト運営者といったインターネット関係業者の方々にも参加いただいたシンポジウムを開催するなどしておりまして、幅広い意見を皆さんからお聞きして検討しているところでございます。関係省庁とも連携して今後進めてまいりたいと考えておりますが、今御指摘がありましたような点につきましても、十分検討の課題とさせていただきたいと思っております。
山谷委員 公序良俗違反、違法と決めなければプロバイダーも削除できないわけでございますから、ぜひここは踏み込んで法規制を考えていただきたいというふうに思います。
 また、今、サイトが三千五百ぐらいあって、閉鎖するにしても、削除がどう行われているかにしても、なかなか警察だけのサイバーパトロールじゃチェックできない。やはり民間のボランティアパトローラーの育成なども必要ではないかというふうに思いますが、その辺はいかがでございましょうか。
瀬川政府参考人 警察庁では、平成十三年から、文部科学省、民間有識者、それからインターネット業界の関係者といった方々と一緒に、インターネット上の少年に有害なコンテンツの実態、それからその対策ということにつきまして、調査研究を行っております。その中におきましても、いわゆる民間の方によりますホットライン活動というものの有効性が指摘されているところでございます。
 警察としても、サイバーパトロール等、鋭意進めているところでございますけれども、出会い系サイトの実態をよく把握し、必要な措置を講じていくためには、警察のみの力では十分ではないというのは御指摘のとおりだろうと思います。この研究会の研究の結果、あるいは外国の事例もいろいろございますので、こういったものも参考にいたしまして、関係の方々と協力をし、このいわゆる民間のホットライン活動の育成と効果的な連携方法ということにつきまして、さらに検討を進めてまいりたいと考えております。
山谷委員 ぜひともプロフェッショナルな形でのパトローラーの育成を考えていただきたいというふうに思います。
 青少年育成推進会議の申し合わせを受けて、先週、プロバイダー、事業者等に適切な措置を要請なさったということでございますけれども、こちらの方も、ただ要請するだけではなくて、今後、自主規制の状況などを定期的にチェックして、話し合いの場所を持っていただきたいというふうに思っております。
 それから、今、高校生の八一・五%が携帯を持っております。検挙事件のうち、出会い系サイトへの接続者が九八%であった。となれば、インターネット接続のできる移動電気通信事業者に対してフィルタリングサービスを実施するような自主的な取り組みを要請すべきではないかというふうに考えておりますけれども、その辺はいかがでございましょうか。
鈴木政府参考人 お答え申し上げます。
 ただいま御指摘ございましたように、インターネットあるいは携帯電話の普及に伴いまして、携帯電話からインターネットへのアクセスが容易になりまして、インターネット上のいわゆる出会い系サイトが青少年の健全な成長に有害な影響を及ぼしているということは重々承知いたしております。
 先ほども御質問ございました中にありましたように、官房長官からお答え申し上げた推進会議の要請を受けまして、私どもも関連事業者に要請をいたしまして、モデル契約約款その他の再度点検をお願いしているところでございます。
 また、今お話のございました、携帯電話事業者がフィルタリングサービスを提供するようなものにつきまして、技術的には、コンテンツの中に特定の単語だとか表現があった場合に自動的に判別する、そういったものが含まれるようなコンテンツへのアクセスを遮断するということが考えられますが、しかしながら、携帯端末におきましては、現在のところ、この種のソフトウエアが実現していないということと、もう一つ、出会い系サイトと申してもいろいろございまして、何を青少年にとって有害な出会い系サイトと判断するかといった観点の問題もございます。
 先ほど警察庁の方からも御答弁ございましたように、関係事業者も協力して必要な研究会に入っておりますので、そこでまた検討させていただきたいと思っております。
山谷委員 携帯端末でのコントロールではなくて、ネットワーク網の方でコントロールというのは可能だと思います。確かに、おっしゃったような問題点がございまして、一〇〇%捕捉するということは難しいというふうに思いますけれども、かなりの部分が捕捉できるというような技術は既に持っているというふうに考えておりますが、その辺はいかがでございましょうか。
鈴木政府参考人 ただいま御指摘のございましたように、携帯電話ではない、いわゆるパソコンを通じてのインターネットへのアクセスにつきましては、既にそうした技術ができておりますし、そのようなサービスもネットワーク側で提供いたしております。
 しかしながら、携帯電話につきましては、端末の方で一定の操作をしなければいけないところもございまして、残念ながら、そのようなことはまだできておりません。今後、携帯電話事業者と、どういったことをすれば効果的な対策が打てるのか、相談してまいりたいと思っております。
山谷委員 これは決意さえあれば相当できるというふうに思いますので、ぜひ御決意くださいまして進めていただきたいと思います。取扱説明書に書き込むとか、その程度のことでは全く効果がないというふうに思っておりますので、子供たちを守っていただきたいと思います。
 サイトの書き込みで、このところずっと見ておりますが、十五歳、十六歳、十七歳、もうずらりと並んでいる。おさわりまで、五万円で、夜八時まで、ゴムつき四万円、高校生としたい人、もうめちゃくちゃでございます。このような状況を保護者は恐らく知らないんだろうというふうに思いますね。その被害実態をまず教えなきゃいけない。保護者に教えなきゃいけない。お父さんたちに教えなきゃいけない。先生たちに教えなきゃいけない。本当に、殺害される、金品を奪われる。海外では、女性や子供を装って登録して、数人で待ち伏せて暴行する。幼児性愛者が子供のふりをして、チャットしておびき出す事件も続発しております。
 今、女子高校生の二割は出会い系サイトの利用者、そのうち四割以上が相手と会っている。約二十万人弱。男女中高校生を合わせると、約三十四万人の子供たちが実際に異性と会っております。お金をもらうためには嫌らしいことをしないといけないと思っている子がなぜ多いのか。小学校六年です。二万円でと書いたメッセージで十二歳の子供に三万円を渡して児童買春処罰法違反に問われた男性がいましたけれども、加害者に腹が立ちますし、被害者に心が痛みます。
 今、売春など性を売り物にしていいと答える高校生が四人に一人。ピルを勧めてフリーセックスをあおるような「ラブ&ボディBOOK」というのが中学生全員、百三十万人に配られようとしました。私は回収を求めまして、そのような措置が進みつつあるように認識しておりますが、高校の先生用の指導資料には、愛がなければ性交してはいけないという考えを押しつけてはいけないという文があります。これは、フリーセックスの勧めなんですね。愛がなくてもいいということを言っているんです。先生の書いた実践報告書には、中学、高校生のころは性交の回数は多い、その場合は、ピル、確実な避妊方法で快楽の性が追求できることを気づかせる。中学生に何でこんなことを気づかせる必要があるんでございましょうか。
 旧総務庁の統計なんですが、電話するのは本人の自由あるいは構わないと答えた子が八割、いけないとしたのは二割。見知らぬ男性とデートしてプレゼントをもらう、いわゆる援助交際のようなことをいいか悪いかというふうな調査では、高校生の女子、テレクラの電話経験がない子で、本人の自由と言った子が七二%、テレクラの電話経験がある子では、構わないと言う子が八五%という非常な状態なんですね。
 愛や節制ある生き方、それから、自分の体というのは自分を超えた本当に豊かなものであるという普遍的な価値観を学校では全く教わっておりません。性的自己決定権という権利を自己決定能力が十分でない子に適用している。今、短期に同時に複数のパートナーとセックスするライフスタイルが定着化して、早期化しております。乱交文化が始まっております。これは小さな問題ではなくて、国家安全保障の問題だというふうに私は認識しております。トラウマに一生苦しむ子たちもいます。
 欧米では、年齢や人格形成に配慮した節制と責任、魂の問題を考えた性教育に転換しておりますけれども、日本は全く逆の愚かな方向に性教育がいっているというふうに私は認識しております。
 今、日本では、エイズ感染者の四割近くが十代、二十代です。アメリカでは、三人に一人の成人がインターネットで性的な内容を持つものにアクセスしていて、そうした方々はパートナーの数が多くなる、HIVを含む性感染症がふえるというような研究が進んでおります。日本でも、エイズ、性感染症治療費がこのままいくと老人医療費を抜くのは何年先か。私は、公衆衛生学の博士にちょっと聞きましたけれども、驚くほどの近さでございます。医療経済学、臨床的リスク分析データなどを出して新しい公衆衛生システム構築も必要となる事態となっています。そのようなことも視野に入れて、ぜひ法規制も考えていただきたいというふうに思います。
 学校によっては非常に温度差がある。警察が説明に行こうとすると、いやいや、うちはというようなことがございますので、このような現状認識。
 それから、学校でのフィルタリングソフト設定率はまだ八〇%弱でございます。地方交付税措置でインターネット関連として渡しているにもかかわらず、一〇〇%になっていいはずなのに、学校でさえまだ八〇%のフィルタリング設定率ということでございます。家庭におけるフィルタリングシステムの普及促進に努めるために、販売業者あるいはパソコン業界に、いろいろな設定の義務づけ、説明などの要請もしていいというふうに考えております。
 時間でございますので、福田官房長官、今いろいろ私が申しましたことに対して、改めての御所見、それから、規制の方向性をお教えいただきたいと思います。
福田国務大臣 いろいろおっしゃいましたけれども、一つは、今の社会風潮についてどう考えるべきかということだと思います。これは時間がかかりますから、一つだけ感想を申し上げます。
 先ほどのサイトの問題ですが、これは私は具体的にどういうことなのかよくわからないんだけれども、私の感じで申し上げれば、この問題が起こるのは携帯電話があるからだということなんでしょうかね。そうしますと、若い、小学校、中学校の学生が携帯電話を持つ必要があるのかどうかということがありますね。緊急時に必要だ、こういうふうなことなのかもしれぬけれども、緊急時に全員が、例えば地震が起こって電話したら、電話局はパンクしちゃいますね。通信できませんよ。かえって緊急な通話ができないというような、さっきちょっと国家安全保障上の問題があると言ったけれども、別の意味で言ったんだろうと思いますけれども、そういう問題もあるわけですね。
 ですから、本当に必要なのかどうかということを社会で考えてみる必要があるんじゃないでしょうか。また、簡単に持たせるような家庭のあり方、このことももう一度考え直してみる必要があるんではなかろうか。そういうことからこの問題がかなり解消されるのであれば、それはそれで一回、重要な問題として取り上げるべきではなかろうか、こんなふうにも思っております。
山谷委員 米田副大臣はいかがでございますか。
米田副大臣 御指摘の冊子については、既に回収されました。
 また、法規制の検討を去る十月二十一日に、内閣府事務次官を中心とする青少年育成推進会議というものがございますが、十月二十一日に開かれた会議におきまして、「法規制の検討を行い、早急に結論を得る。」この旨の申し合わせを行ったところでございます。
山谷委員 私は、パソコン業界とか携帯電話会社とのやりとりが、総務省、経済産業省、非常に手ぬるい、腰が引けていると思います。それはいろいろ業界のことを考えてのことだというふうに思いますけれども、ぜひとも、現状認識をしていただきまして、各家庭におけるフィルタリングシステムの普及促進などはやっていただきたい。それから、学校でのフィルタリングソフト設定率もきちんと上げていく。これは、それぞれ責任者の方、どのようなお立場で今進めていらっしゃるか、お聞きしたいと思います。
矢野政府参考人 学校におきましては、子供たちが有害情報を含むホームページを閲覧できないように、学校単位あるいはネットワーク全体でフィルタリングソフトなどを用いてアクセス制御を行うなど、さまざまな工夫がなされているところでございまして、このようなフィルタリングソフトが導入されている公立学校は、御指摘ございましたけれども、平成十四年三月現在、全体の八割を超えている状況で、導入が進んでいるというふうに認識いたしているところでございます。
 我が省といたしましては、フィルタリングソフトの活用を含めまして、有害情報への対応方法あるいは指導方法につきまして解説いたしました教員用のガイドブックを作成いたしまして、各学校に配布して、学校におけるフィルタリングソフトの活用を推進しているところでございます。
 今後とも、学校や教育センター等におけるフィルタリングソフトの活用を推進いたしますとともに、子供たちの情報活用能力の育成に努めてまいりたい、かように考えているところでございます。
山谷委員 例えば「おもちゃ」なんて打つと、アダルトグッズのところにすっと行っちゃうわけですね。しかも、いろいろなアダルトグッズがだあっと並んでいるその後に、このカテゴリーを友達に教えよう、携帯でこのカテゴリーを見ようみたいな、そういうことも書いてあるわけで、そういう生の実態をぜひ先生たち、それから保護者に教えていただきたいというふうに思います。
 それから、経済産業省の方はいかがでございましょうか。
松井政府参考人 お答えいたします。
 経済産業省におきましては、平成八年度から、所管の財団法人などに委託いたしまして、フィルタリングソフトの開発及び無料配布を実施しております。また、これに加えまして、プロバイダーが守るべき倫理要領、有害コンテンツ対策に関する広報パンフレットの作成、配布、ウエブサイトなどでの公開など、さまざまな形で広報活動を展開してきております。
 今後とも、パソコン購入時に小売店にフィルタリングソフトを紹介していただくよう広報することを含めまして、幅広く広報活動を展開すべく努力してまいります。
山谷委員 十月二十一日、青少年育成推進会議申し合わせで、さまざまな出会い系サイトの被害から子供たちを守る申し合わせ、関係省庁の連携などが書かれておりますので、ぜひこれを実行していただいて、適当な時期にまたフォローアップして公表していく、そして、さらに新しい対策を考えていくというような形で子供をお守りいただきたいと思います。
 ありがとうございました。
青山委員長 次に、達増拓也さん。
達増委員 私も、子供の危機、青少年の危機について質問したいと思います。
 日本が今、経済、外交、さまざまな危機に直面しているわけでありますけれども、そういったさまざまな危機の中に子供の危機、青少年の危機というものがあると思います。
 青少年というのは、伝統的には、家庭でありますとか学校でありますとか地域あるいは職域といった世界の中で、外の世界から一定程度隔てられて守られてきたんだと思いますが、交通、通信を初めとするテクノロジーの発達、特にコミュニケーション技術の発達などによりまして、外部の世界が大々的に、家庭、学校、地域、職域といったところに浸透するようになってきた。その結果、家庭、学校、地域、職域というまとまりが伝統的な力を失って弱くなっていく。その一方で、外部の有害なものが、家庭、学校、地域、職域といったところに侵入するようになってきている。そこに、今までになかったような新しい危機というものが青少年、子供にとって生じてきていて、ここに、政府として子供を守る、青少年を守るという施策が求められている理由があるんだと思います。
 具体的に、まず薬物、特に覚せい剤の問題について伺います。
 まさにこれは交通、通信の発達、言いかえると、国際化でありますとか情報化でありますとか、町の中で、あるいはインターネット経由で、そして最近では、学校の中でまで覚せい剤などの薬物を容易に入手できるようになってしまっている。その結果、青少年の覚せい剤を中心とする薬物乱用ということがどんどん数がふえている、また、深刻化しているわけでありますけれども、この点について、政府としての対応を伺いたいと思います。
米田副大臣 先生御指摘のような社会構造の変化というものが、このような事案の発生する一つの大きな要因としてあるんだろうというふうに思います。御指摘のとおり、青少年の覚せい剤事案による検挙者の数は高水準で推移しておるというふうに政府は認識をしております。
 内閣総理大臣を本部長とした薬物乱用対策推進本部におきまして、関係行政機関相互の連携のもとに、総合的そしてまた積極的な施策を推進しているところでございます。同本部におきましては、薬物乱用防止五カ年戦略を策定しておるわけでありますが、その中の重要な大きな柱が青少年対策でございます。
 学校等における指導、すなわち、OBを含む警察官の方や麻薬取締官のOBの方々等の専門家に学校へ出向いていただいて教室を開き、中高生への啓発活動を行う、あるいは街頭補導体制の強化、再乱用の防止対策の充実強化、そして、相談体制の整備、広報啓発活動の推進などに努めているところでございます。
達増委員 町で容易に覚せい剤等を入手できるということについては、最近、警察がおとり捜査で取り締まりを強化するということ、これは基本的にいいことだと思います。やはり徹底的に取り締まっていかなければなりませんし、また、学校へのサポートについても、もともと学校にはそういう薬物対策のノウハウなどないわけでありますから、サポートが必要だと思います。そして、啓蒙活動についても、「ダメ。ゼッタイ。」という有名なスローガンがありますけれども、これをまた徹底してやっていくことが必要だと思います。
 次に、児童虐待について伺います。
 これも悲惨な事件が後を絶たないわけでありまして、大きく報道されるものですから、世の中全体の不安感、閉塞感を助長するようなことにもなっていて、国民的な関心も非常に高いところだと思います。これもやはり、家庭や地域といった伝統的なところの力が低下していく中で、さまざまなストレスですとか、そういったものによって、あるいは、きちんとした価値観を身につける機会を得られなかった親がそういう犯罪に走ってしまうということが起きていると思うんです。
 これについてもやはり国としての対策が必要で、その法律も整備が進んでいるところではありますけれども、現状、政府の対応を伺いたいと思います。
岩田政府参考人 全国の都道府県と政令指定都市に児童相談所という行政機関がございます。ここが扱っております児童虐待の相談件数を見ますと、十年前には年間で千件程度でございましたが、児童虐待防止法の効果もあったかというふうに思いますけれども、近年、それが急増しておりまして、平成十三年度では二万三千件という大変大きな数字になっておりまして、子供が健全に育つというような観点から見ますと、大変深刻で憂慮すべき事態にあるというふうに思っております。
 この児童虐待の問題への対応についてですが、大事なことが二つあると思います。
 一つは、発生の予防から、そして、いかに早期に発見するか、そして、必要な場合には、親から子供を引き離して保護をし、心身ともに傷ついた子供のケアをし、親に対してもカウンセリングをして矯正していくという、一連の施策が総合的に実施されるということが重要だというふうに思います。
 二つ目には、児童相談所が中核になってやっておりますけれども、児童福祉の機関だけでは対応できませんで、地域の保健医療あるいは学校、幼稚園、保育所といったようなところ、それから、もとより警察の御協力がなければなりません。こういった関係行政機関や施設の連携の強化というのも大変重要ではないかというふうに思っております。
 具体的に、今年度、力を入れておりますことを幾つか御紹介したいと思いますが、まず、児童相談所についての体制強化がございます。児童福祉司の増員や研修の充実、また、保護者にカウンセリングをするための精神科医の活用などもできるようにいたしております。
 また、児童相談所に併設されております一時保護所がありますが、一時保護所に、傷ついた子供にマンツーマンで対応できるように、児童指導員と言っておりますけれども、児童指導員の配置などもやっているところでございます。
 そして、親から離して保護をする場合には児童養護施設などで引き受けることが多いわけですが、この児童養護施設において、被虐待児に対応できるような職員の配置も心がけております。
 また、これからのことで、制度は発足したばかりなんですが、虐待児の問題についての専門的な経験のある方がおられます。例えば、児童相談所でそういったお仕事をしたことのあるOBの方などですが、その方の自宅に引き取っていただいて、専門里親という名前で呼んでおりますけれども、里親という仕組みの中で子供たちをケアして自立するお手伝いをするといったようなこともやっております。
 また、関係機関とのネットワークでございますが、中央レベル、都道府県レベル、そして市町村レベルでも、今、整備を進めているところでございます。
 以上、申し上げましたように、地方自治体との関係、また関係省庁との連携、それらを図りながら、児童虐待防止対策はさらに充実する必要があると思っております。
達増委員 子供が健やかに育っていくということは、家庭にとってはもとより、地域社会にとっても、そして、国全体にとっても大きな力であり、また、大きな希望になりますので、そこは関係各部局の総力を結集して取り組んでいただきたいと思います。
 次に、学校内での犯罪について伺います。
 これは、非常に悲惨な殺人事件が発生しまして国民の関心が高まったわけでありますけれども、そういった衝撃的な事件以外にも非常に数が多い。平成十三年の場合、不法侵入が千七百七十一件、そして、学校の中での犯罪の件数は全部で四万一千六百六件にも上っている。
 そもそも学校の役割として、そういう犯罪から子供を守るというのは想定されていなかったところだと思うんですけれども、学校中心に学校以外のさまざまなところも協力して子供を守っていかなければならないと思うんですが、この点、政府の取り組みはいかがでしょうか。
池坊大臣政務官 今、議員の御指摘のように、学校内の犯罪は近年ふえております。これは五年前と比べて四三・八%の増加だというふうに言われておりますし、昨年は池田小学校という大変痛ましい、悲しい事故がございました。私もすぐに現場に駆けつけましたけれども、まずは、学校は安心して学べる場にしなくてはいけないと思いますので、保護者、学校、地域の連携のもとに安全管理体制の強化が求められると思っております。
 私どもは、池田小学校の事件を重く受けとめまして、本年度から、子ども安心プロジェクトというものに取り組んでおります。これは、ソフト、ハード両面におきまして、学校安全及び心のケアというのを総合的に充実しようというものでございます。
 例えば、ハード面の安全対策については、学校施設の安全管理に関する調査研究を行っておりまして、死角のない校舎配置、防犯監視システムや通報システムの導入、あるいは、学校や地域の実情に応じて施設面で防犯対策を計画いたしますときの具体的な留意すべき点などをまとめました報告書を十一月十九日に作成いたしました。今後、これを全国の教育委員会、学校に送付して、安全な学校づくりに役立てたいと考えております。
 また、ソフトの面については、学校において不審者が侵入いたしましたときの事態に具体的にどういうふうに対応していったらいいか、その参考となりますように、不審者の侵入などの緊急時の子供の避難誘導の方法、負傷者が出た場合の応急手当ての方法、それから警察等の関係機関との連携など、日ごろからの危機管理体制というのが大切だと思っておりますので、学校への不審者侵入時の危機管理マニュアルというのを作成しているところでございます。年内には公表して、これも学校や教育委員会に配布したいと考えております。
 それからまた、ソフト面ですけれども、学校の安全管理に関する取り組み事例集の作成だとか、あるいはまた、事件や事故の後に子供はやはり心にたくさん傷を負いますので、PTSDなどへの対応にどうしたらいいかというような手引を保護者、教員向けに作成しております。
 今後とも、私たち文部科学省の一番のなすべきことは、やはり安心して学べる場をつくっていくことだと思っておりますので、それに向けて尽力してまいりたいと思っております。
達増委員 社会全体に、学校というものを尊敬して尊重していくような、そういう意識がみなぎっていれば余り心配しなくてもいいんでしょうが、実際、そうではないところが問題ですので、必要な対応をきちんととっていただきたいと思います。
 次に、情報化、IT化に絡んでインターネットが家庭や学校にもどんどん普及しているわけでありますけれども、そのこと自体は大変結構なことなんですが、青少年にとって不適切な情報あるいは有害な情報、アダルトサイトなどですね、そういうものが家庭や学校の中にも入り込んできている。そういうホームページ上の不適切あるいは有害な情報に青少年が害されないための政府としての対応について伺いたいと思います。
米田副大臣 お答えいたします。
 インターネット等の急速な普及、情報化社会の進展等を背景にいたしまして、性描写や暴力・残虐表現を含む情報等が青少年の人格形成に大変な悪影響を及ぼしている、また、性的な逸脱行為や残虐な行為を容認する風潮を助長しているのではないかという懸念が高まっております。社会において十分な配慮がなされることが必要であるというのが政府の基本的な認識であります。
 そこで、昨年十月十九日に青少年育成推進会議が開催されましたが、その際に、青少年を取り巻く環境の整備に関する指針について申し合わせを行いました。この申し合わせに基づきまして、関係省庁の緊密な連携のもとに、国民の意識啓発等の各種施策を強力に推進するとともに、地方公共団体や関係業界団体等の協力も求めているところであります。
 ちなみに、地方公共団体につきましては、四十六都道府県等で定められております青少年の保護育成に関する条例によりまして、青少年に有害なものとして知事等が指定した図書等を青少年が観覧することや、それらを青少年へ販売、貸し出し、頒布すること等を禁止しております。
 また、各都道府県警察は、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律及び四十六都道府県等において定められております青少年の保護育成に関する条例に基づきまして法令違反の取り締まりを行うとともに、少年を取り巻く社会環境を浄化する必要のある二百九十七地区を少年を守る環境浄化重点地区に指定して、地域住民やボランティアと連携した各種環境浄化活動を推進しております。
 こういった現状を踏まえまして、さらに推進会議といたしましては、有害図書等の指定を受けていない作品につきましても、住民からの意見を受け付けて積極的に指定の参考にしていくこと、また、販売店、レンタル店等における配慮、あるいは各種条例、法令等の積極的な適用により取り締まりを引き続き徹底すること、あるいは、住民の皆さん等による各種環境浄化運動の一層の推進等の要請を地方公共団体にするというふうなことも申し合わせをしたところであります。
 また、放送あるいはインターネット、ゲーム機ソフト、ビデオソフトにかかわる業界につきましても、それぞれの適切な配慮をお願いする、こういったことも申し合わせをしております。
達増委員 インターネットという新しいテクノロジー、メディアに対応した新しい工夫が必要なんだと思います。
 関連で、出会い系サイトの問題については先ほど同僚委員からも質問がありましたので省きますけれども、あれもやはり、未成年の利用で児童買春、売春などが発生したら有料サイトを開いていた業者も処罰される、未成年じゃないことを確認するための努力をきちんとしたとかが証明できない限りは罰するといったような、そういう厳しい取り締まりが必要になってくるんだと思います。
 それでは、時間でありますので、最後に、福田官房長官に伺います。
 こういった子供、青少年をめぐる新しい危機に対して、まさに総合的な対応を政府として求められていると思うんですが、この点、いかがでしょう。
福田国務大臣 今、青少年をめぐる問題というのは非常にいろいろな問題がございます。特に危機的な問題といえば、薬物乱用とか児童虐待とか、また、今御指摘もありましたような学校における犯罪行為、こういうようなことでございまして、こういう状況に対して政府としてどう取り組むか、こういうことがあろうかと思います。
 これは政府全体で取り組むべき課題だというように考えておりまして、当然、緊急対応しなければいけないと思いますが、中長期的な観点から取り組むべき問題もあるわけでございまして、そういう意味において、中長期的な骨太のビジョンを示す青少年プランともいうべきものを来年度のできる限り早い段階において策定したい、このように考えております。そのようなプランに基づいて政府の諸施策を強力に推進してまいる、このような考え方をしておるところでございます。
達増委員 終わります。
青山委員長 次に、石井郁子さん。
石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。
 日本の青少年にはさまざまな問題がございますけれども、私は、自立して生きていく、人間としてのこの基本のところで困難にぶつかっていると思っています。
 今、若年層の未就労、不安定雇用が社会問題となっています。これはやはり政治の責任であり、政治の喫緊の課題として取り組むべきだというふうに思いますが、まず、この点で大臣の御認識を伺いたいと思います。
福田国務大臣 青少年がその適性と能力に応じた職業選択を行い、そして、充実した職業生活を営んで有為な職業人、社会人として成長すること、これは我が国の将来にとりまして極めて重要なことであるという認識を持っております。
 国の青少年行政の基本方針等を盛り込みました青少年育成推進要綱におきましても、重点推進事項の一つとして「職域における青少年育成施策の充実」ということを取り上げておりまして、関係省庁の連携のもと、青少年の職場、職業への適応の推進等に取り組んでいるところでございます。
石井(郁)委員 少し具体的に伺っていきたいと思うのでございます。
 「平成十五年三月高校・中学新卒者の求人・求職状況」が九月五日に発表されました。これによりますと、今年度の求人数は十一万五千人で、前年同期に比べて二四%減少でございます。求人倍率は全国平均で〇・五倍。昨年もひどかったわけですが、今年はもっと深刻になっているということですね。九月末現在で、就職を希望する高校新卒者の内定が三分の一だという状況でございます。私は、これでは、未来ある高校生、若者が自分の人生にも日本の社会にも本当に希望が持てないという状況だと思うんです。
 そこで、高校の新卒者の就職状況というのは毎年こういう形で問題になるわけですが、政府としてどう取り組まれるおつもりか、伺いたいと思います。
矢野政府参考人 私の方から、文部科学省の立場として対応策について御説明申し上げたいと思います。
 御指摘のように、来年三月高等学校卒業予定者の雇用環境をめぐる状況は大変厳しい状況にございまして、昨年以上にも増して厳しい状況にあるわけでございます。このような厳しい状況にかんがみまして、去る十一月十九日、文部科学大臣、厚生労働大臣、それに主要経済団体の代表による懇談会を開催いたしまして、新卒者の採用枠の拡大を特にお願い申し上げたところでございます。
 我が省といたしましても、こうした状況を打開すべく、求人開拓あるいは生徒に対する就職指導に専念いたします高等学校就職支援教員、ジョブ・サポート・ティーチャーと呼んでおりますけれども、こうした教員の配置でございますとか、産業界等の外部人材を活用いたしますキャリア・アドバイザーの配置、さらには、生徒に望ましい職業観、勤労観を身につけさせるためのインターンシップの推進などを進めているわけでございます。
 そういう意味で、今後とも引き続き、高校生の就職内定状況の把握に努めながら各学校における就職指導の充実を図りますとともに、厚生労働省とも連携いたしまして、就職支援の充実に努めてまいりたい、かように考えているところでございます。
石井(郁)委員 超氷河期という言葉がございましたけれども、さらに冷え込んでしまっている高校生の就職戦線ということでございますので、私は、本当に今、真剣な取り組みが求められているというふうに考えています。
 さらに具体なんですけれども、高校生の就職決定実態調査を日本高等学校教職員組合とか私立学校教職員組合連合とかがまとめておられますが、それを見ますと、就職が厳しい上に、やっと内定したと喜んでいますとその内定が取り消される、特に女子の雇用が厳しいという例が各県から挙げられているんですね。内定後の研修が終わってから内定取り消しを言われるケース、内定後に賃金一〇%ダウンの労働条件変更を言われる、こういうことが起こるんですよ。これは、今、雇用が少ない、やっと内定が決まったという喜びを吹き飛ばすということもありますし、高校生を一層傷つけるということで、法律にも触れることでありますから、私はきちんとした指導が要るというふうに思いますが、その辺、いかがですか。
三沢政府参考人 お答え申し上げます。
 新規学卒者に対しまして、事業主の一方的な都合により採用内定を取り消すということは、その対象となりました学生の方々にはかり知れない打撃と失望を与える、その後の人生に深刻な影響を及ぼす重大な問題だと我々は認識しております。
 このため、新規学卒者を採用しようとする事業主が考慮すべき事項を定めた、新規学卒者の採用に関する指針というふうなものを定めておりますけれども、その中で、採用内定の取り消しの防止についても規定しております。これに基づきまして、私ども、ハローワークなどにおいて、広く、事業主に対する採用内定取り消し防止の啓発、指導を行っているということでございます。
石井(郁)委員 新規学卒者の問題を若干取り上げましたけれども、今、もう一つは、卒業後の未就職者の問題、卒業の時点で就職が決まらない方の問題がやはり深刻だというふうに思います。
 学校基本調査でも、卒業後の進路で、進学、就職というふうに大体分けますが、その他という分類になってございますね。その他という分類は、今、一〇%にも上っています。そうしますと、公私立を含めて今百三十万人の卒業者と考えますと、約十三万人だ。この方々は一体どうされているのか。以前ですと、大体、予備校に通っていたとかいう話があるんですけれども、今は、もう予備校にも行かない、行かなくても済んでいるという状況もあるということを聞いているんですけれども、多くが未就労あるいはフリーターというところになっていると思うんですね。それで、社会保障からは疎外される、労働基準法無視の本当に劣悪な労働条件、低賃金というところがこの若い若年層でどうもまかり通っているということが言われているわけであります。
 まず、政府として、こういう実態というのは把握されているのかどうか、あるいは調査されるおつもりがあるのかどうかということをお聞きしたいと思います。
三沢政府参考人 お答え申し上げます。
 学卒の未就職者の状況と申しますか、高校卒業後の状況でございますけれども、私どもが把握しておりますのは、学校卒業後、未就職になった方々の状況でございまして、先ほど来お話ございましたように、本年三月の就職内定率が八九・七%ということでございます。
 その後、未就職のまま卒業せざるを得なかった、こういう状況にある場合でございますけれども、私どもとしては、学校と連携いたしまして、未就職卒業者のハローワークへの登録の推進ということを始めております。これをもとに個別の支援方針というものを作成し、それに基づいて、職業講習の実施とかトライアル雇用、こういうものを行っております。これによりまして、卒業後三カ月間に三万八千七百十人の方がこれに登録いたしまして、うち一万三百人の方が就職したということでございます。
石井(郁)委員 私はやはり、きちんとした実態把握というのが必要だというふうに思うんですね。それはぜひ、今後、強く求めていきたいというふうに思います。
 今お話に出ましたトライアル雇用制度というのが導入されておりますので、ちょっとそのことで伺いたいと思います。
 先月の新聞報道を見たところ、「トライアル雇用制度の利用が予定の二割強にとどまっている。」というのがございました。「試用期間中、企業側には一人当たり月額五万円が支給される。厚労省は「補助金目当てに利用する企業が出ると、制度の趣旨に反するから」と、制度のスタート時に「積極的な周知は必要なし」との通達を全国の労働局に出している」ということが報じられているのです。これが本当なのかどうかということや、都内の企業の担当者によると、雑誌を見て制度を知ってハローワークに問い合わせたけれども、向こうの担当者さえも知らなかったという事実があるわけです。
 だから、政府は、せっかくこういう制度がありますよと言っているけれども、これだったら使われていないじゃないかという問題で、私は、これも一つの雇用促進の問題として周知徹底を図るべきだ、利用率はせっかく予算もつけているんでしょうから高めるべきだというふうに思いますが、いかがですか。
三沢政府参考人 お答え申し上げます。
 先般、一部の新聞に、先生御指摘のような記事が掲載されました。その中で、お話しの、「積極的な周知は必要なし」というふうな記事もあったわけでございますけれども、私どもが全国に通達しておる内容には、そのような内容は盛り込まれておりません。
 ただ、いずれにしましても、事業主の方が本制度を知らないというふうなことはあってはならないことでございますので、私どもとしては、従来から、リーフレットの作成、配布等に努めておったところでございますけれども、この新聞報道を踏まえまして、本事業の適切な活用、積極的な周知について、改めて通達を出して労働局に指示したところでございます。したがって、今後とも本事業の効果的な運営が図られるように努めていきたい、こう思っている次第でございます。
石井(郁)委員 同様の問題は文科省にも申し上げたいと思います。
 学校関係者がこういう制度について知らされていないということも聞いておりますし、これは高校生にきちんと知らせておくという点では学校の教員の重要な内容になるというふうに思いますので、厚労省と連携して、この若年雇用対策、こういう形でいろいろあるというようなことについて、もっと周知徹底を図ってほしいというのが一点。これをどうされるか。
 と同時に、先ほどお話にありましたジョブ・サポート・ティーチャーというんですか、就職支援教員を百人、昨年度配置されたということですが、これも、何か、二月に決まって、実際、現場では活用し切れないという状況だったようでございます。
 一つは、そういう点で本当に活用されるようにすることと、この百人ではとにかく少ない、来年度どうされるおつもりか。私はもっとふやしていかなければいけないというふうに思いますが、そういう計画がおありかどうか、伺います。
矢野政府参考人 御指摘のジョブ・サポート・ティーチャーでございますが、これは、高校生の就職支援の充実を図る、そういう観点から、各都道府県の研究指定校に対しまして教職員定数を加配することによりまして学校の取り組みを支援するものでございまして、進路指導主事あるいは担任教員等と連携しながら、就職を希望する生徒に対する就職相談を行ったり、企業求人の開拓に当たることを主な任務といたしているところでございます。
 そこで、平成十四年度、今年度でございますが、今年度におきましては、各都道府県の希望に基づきまして、全国三十三の道府県に計八十一名を配置したところでございます。配置された教員は、配置校のみならず、近隣の高等学校もあわせて担当しておりまして、そういう形で、可能な限り各学校のニーズにこたえてきているところでございます。
 来年度のお話もございましたが、この増員につきましては、これは各都道府県の意向等も踏まえながら私どもといたしましては対応してまいりたい、かように考えているところでございます。
 なお、トライアル雇用についての関係者への周知でございますが、これは厚生労働省とも連携しながら、必要な周知に努めてまいりたいと思っております。
石井(郁)委員 今の御答弁ですけれども、都道府県の御要望を聞いてという問題ではなくて、私は、政府として、本当に今の高校生の就職問題にきちんと取り組む施策が要るということを申し上げているわけでありまして、そんな姿勢では、本当に消極的だ、冷たいと言わなければなりません。抜本的に今求められている。少なくとも、このサポート・ティーチャーをふやしてください。これは強く要望しておきたいと思います。
 そこで、私は、政府として、若年雇用対策という問題で、非常に予算も少ないし、また、施策としても不十分だと言わざるを得ないわけですね。
 若干、この点で、特にヨーロッパ諸国を見てみますと、九〇年代、共通して、この若年雇用対策というか政策がいろいろとありましたね。そういう中で、きちんと予算もつけて行っているということがあるわけですよ。
 私はちょっと調べて驚いたんですけれども、OECDがエンプロイメントアウトルックというのを発表しておりまして、それを見ますと、各国のGDP比での若年雇用対策費がどうなっているかというのが出ているんですね。ちょっと申し上げますと、二〇〇一年、フランスが〇・四%、ドイツが〇・〇九%、イギリスが〇・一五%ですが、日本のところは「――――」となっているんですよ。そして、下の注を見ますと、とにかく数字が出てこない、それは〇・〇〇五%だ、そこに満たないというわけで数字が上がってこないというんですね。
 こういう状態というのは、政府としては、これでいいとお考えなのかどうか。まず、こういう数字というのはどう御認識されているのか、伺いたいと思います。
三沢政府参考人 お答え申し上げます。
 御指摘のOECDの調査でございますけれども、これは、OECD加盟各国が若年者雇用対策の範囲を任意に定めて報告しているものであります。そういうことに加えまして、各国のGDPの額あるいは若年者失業率、それから若年者の採用とか雇用慣行、こういうものもかなり異なっている、そういう状況でのものでございますので、このGDP比を用いて若年者雇用対策の予算額を一概に比較することはなかなか難しいものじゃないか、こう認識しておるところでございます。
石井(郁)委員 そんな答弁しかされないのかなと思うとがっかりですけれども。だって、これは国際的に報告書が出ているわけでしょう。見ますと、一九九七年から九八年、九九年、二〇〇〇年、二〇〇一年とずっと出ているんですよ。他の国はみんな、GDP比、少しずつ伸びているわけですよ。例えばフランスで言うと、一九九七年〇・二六%が二〇〇〇年には〇・四二%ですから。日本は「――――」なんですよ。数字が上がってこない。
 これは、世界じゅうでこんな状態にしておくんですか。それじゃ、何でこうなんだということを言わなきゃいけないし、これはもっときちんとした御説明をいただきたいと思いますけれども、もう時間がありませんので、とにかく、若年雇用対策の予算は少ない、施策も不十分だということがここにあらわれているじゃないですか。だから、私は、やはり抜本的にふやす必要があるということを強く申し上げたいと思います。
 その例としてもう一つ申し上げたいのは、学卒未就職者に対する対策としては、公共職業訓練というのは大変意味を持っていると伺っています。この公共職業訓練の充実、拡充ということを本当にお考えにならないのかどうかという問題です。
 これは、学卒者の方が、まだ今のところ三カ月とか六カ月ですけれども、そこに行って、それでさらに次の就職につなげていくということでございますが、これは一体どうなっているのか。これは本当に拡充すると。今、人数を聞きましたら、全国で何か三千六百人ぐらいだというじゃないですか、この三カ月、六カ月の訓練を受ける若者というのは。だから、もっと抜本的にこの辺もふやすべきだというふうに思いますが、いかがですか。
坂本政府参考人 学卒未就職者等に対する公共職業訓練につきましては、ハローワークや雇用・能力開発機構の都道府県センターにおいて十分な職業訓練を実施した上で、個々人の訓練ニーズを勘案して、民間教育訓練機関や事業主への委託訓練を実施しているところであります。
 若年者が安定した就職につくためには能力開発の推進が重要であると考えております。このため、学卒早期離職者等に対しまして、グループカウンセリング等を通じて訓練受講の動機づけや意欲喚起等を行うとともに、職業能力開発大学校等におきまして企業実習を含む職業訓練を実施するなど、今後とも、若年者に対する職業訓練に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
石井(郁)委員 時間が参りました。私は、雇用の問題というのは基本的に雇用を創出するという根本問題がございますけれども、若年層の未就労ということは本当に社会問題だ、政治の問題だというふうに思いますので、公的支援システムを今後はきちんと考えなければいけないということを強く申し上げまして、終わります。
 ありがとうございました。
青山委員長 次に、馳浩さん。
馳委員 自由民主党の馳浩です。
 官房長官、どうぞお帰りいただきたいと思います。お疲れさまです。
 まず、「ラブ&ボディBOOK」の回収の指導問題について質問をいたします。
 未成年者の人工妊娠中絶の実施率は、未成年者女子人口一千人当たり、一九八〇年が四・七%、二〇〇一年が一三・〇%、二十一年間で約二・八倍になっております。性行為の経験も、東京都の調査では、高三で男子は四割、女子は五割近くが経験済みであります。このような状況下に出されたのが、厚生労働省所管の財団法人が出版した「思春期のためのラブ&ボディBOOK」なる小冊子です。
 国会内で論争が起きております。民主党の山谷えり子先生は、絶版と回収を厚生労働省に求めています。同じ民主党の参議院の小宮山洋子先生は、朝日新聞の紙上で、絶版の見直しとこのような小冊子の普及を訴えておられます。自民党では、亀井郁夫参議院議員が回収を訴えています。十一月一日の衆議院文部科学委員会で、遠山大臣は、「問題のある資料は直ちに回収してもらいたい」と答弁しておられます。
 そこで、厚生労働省にお伺いします。
 この「思春期のためのラブ&ボディBOOK」は問題のある資料と考えていないのか否か、また、財団に対して全部回収の行政指導をするつもりはあるのかないのか、お聞きしたいと思います。
岩田政府参考人 「ラブ&ボディBOOK」は、今、委員がおっしゃいましたように、十代の子供たちの人工妊娠中絶の増加あるいは性感染症の増加、そういった現状を踏まえまして、思春期の性や健康を考えるハンドブックを自治体その他が作成する際の参考になるような内容を示そうということで、旧厚生省の中に女性健康手帳検討委員会というものができまして、そこから報告書が出ております。この報告書を参考といたしまして、財団法人母子衛生研究会が、国からの助成を受けるということではなくて、独自の事業として、この研究会報告を参考にし、また、改めて専門家の意見も聞いて作成したのがこの「ラブ&ボディBOOK」であるというふうに聞いております。
 本冊子につきましては、国会その他でさまざまな議論を呼んでおりますが、例えば、ピルについての副作用が記述されていないというようなこともございました。財団の方では、追加修正資料を作成して配布いたしております。
 この冊子につきましては、私も何度も読み直してみたんですけれども、性については大変興味本位の情報が世の中にあふれておりますが、そういった中で子供たちに何を知らせるか、そういう観点で読んでみたんですけれども、個々の内容については科学的な知見に基づいて書かれておりまして、不適切であるというふうには考えられないと思います。
 ただ、この冊子の配布、利用については、成長期の子供たち、個人差もあるでしょうし、年齢が違えばまた大きな理解度の違い、経験度の違いもあるでしょうから、そういうようなことも配慮しながら使っていくことが重要ではないかというふうに考えております。
馳委員 では、私が問題点を指摘したいと思います。
 私、今、手元に持っておりますが、開きますと、すぐ、「男の子へ」「女の子へ」というところがあって、まずこれはおかしいなと思ったのが、「「男らしさ」にこだわらず、自分らしく生きていこう」「ひかえめで自己主張しないほうが「女らしい」なんていわれるけれど、」。
 これは、私、一応、国語の教員をしておりましたので、その経験から言うと、そう言いながらも、男らしさとか女らしいということを限定的にかえって記述しているということになるんですよ。恐らく言いたいことは、私が配慮を持って言いたいことは何なのかというふうに考えれば、個人としての生き方を、考え方を大事にしていきましょうねということを言いたいんだろうなとは思いますが、この記述によると、この「ラブ&ボディBOOK」を書いた人自身が男らしさ、女らしいということを決めつけている、偏見に満ちた記述であると私は指摘せざるを得ないのがまず第一点。これを書いた人は文章能力に非常に劣っていると私は指摘せざるを得ないというのがまず一点目。
 二点目。同性愛について書いてあるところがあったんですね。同性愛について、「もし、君が同性愛だと感じるのなら、自分の正直な気持ちにしたがって生きていっていいと思う。」。
 これも私が配慮をして読んであげるならば、この世の中には同性愛ということについての配慮も必要だし、本人のそういう素直な心情といったものも大事にしなければいけないんだろうなというふうに読めるかもしれませんが、同性愛というのは、分類をしていけば、性的嗜好という考え方もあれば、性同一性障害という、最近では精神医学界においてもきちんと検討の上確立した一つの、性同一性障害という患者さんも認定されているという問題もありまして、一概に同性愛についてこういう書きぶりをして済ませておくというのは適当ではありません。
 さらに、山谷先生の指摘を受けてピルの副作用の問題についても書かれてありますが、例えば、ピルというのは何物かというふうに考えれば、女性ホルモンを人工的に作用させる薬であることはおわかりですね。これに関しては、既に一九六〇年代に、アメリカの一地域でありますけれども、ジエチルスチルベストロールという化学物質が流産防止薬として使われて、それを使ったお母さんから産まれた子供に非常に高い確率で子宮内膜症の症状があらわれて、いわゆる環境ホルモン、内分泌攪乱化学物質としての作用も巷間広く言われている問題であります。
 事ほどさように、先ほど局長は科学的知見に基づいた記述もあると言われましたが、そういう科学的知見に基づいた記述という観点からも非常に抜かりの多い、不備の多い、正確ではない、もっと充実して広い知見を網羅した資料ならいざ知らず、非常に稚拙な冊子であるというふうに私はまず指摘したいと思います。
 さらに重大な指摘をしたいのがこの点であります。一番の問題点は、未成年者に、性と生殖に関する事項、これをリプロダクションと言うのですが、このリプロダクションについての自己決定権を何の制約もなく認めている点であります。
 この「ラブ&ボディBOOK」にはこう書いてあります。「自分で考える、自分で決める やっぱりそれが大事だね」と書き、さらに、「これを決めるのはすべて「自分」」とした上で、これに当たる対象事項をこう列挙しています。「だれを好きになるか」「交際するかしないか」「結婚するかしないか」「子供をつくるかつくらないか」「避妊するとしたらどんな方法でするか」「産むか産まないか」「いつ産むか」「どんな方法で産むか」を書いて、だんだんエスカレートしております。そして、その理論的根拠として、一九九四年、カイロ会議で広く主張されたリプロダクティブライツを持ってきております。
 問題点、その一。このリプロダクティブライツなる権利は、自己決定権たる自由権的性質や、リプロダクティブヘルスなる良好な健康状態を享受する権利たる社会権的性質もあり、また、何よりもその権利内容が明確なものではありません。そのような権利概念を、「合言葉はリ・プ・ロ」と書いて、さまざまな事柄を自己決定できるほど能力が発達していない未成年者に、成年者の権利としても定かでないものを前提に推進する配慮のなさ、早計さを指摘したいと思います。
 問題点、その二。憲法上も、未成年者の自己決定権自体、どの範囲で認められ、どのような制約を成年者と異なって受けるのか、議論が始まったばかりで、定説を見ない論争状況下にある点を無視しております。少なくとも、後親思想やパターナリズムからの広い国家的制約、保護主義、これを未成年者の人権は受ける点や、特に親や社会の介入が認められてしかるべき性と生殖に関する事項を、これを強調できていない点は甚だ問題であると断言できます。
 厚生労働省はこの財団による一部自主回収しかなされていないこの小冊子の全部回収の行政指導をすべきであると強く主張したいと思いますが、どうしますか、厚生労働省。
岩田政府参考人 今、委員の方から、この冊子の中の具体的な事項について、いかに不正確であるか、いかに稚拙であるかといったような点につきまして多々御指摘がございましたけれども、それに具体的に私の考えを述べるという時間もございませんが、やはりお答えしないといけないというふうに思いましたのは、今言われましたリプロダクティブヘルス・ライツの考えとこの「ラブ&ボディBOOK」との関係かというふうに思いますので、その点についてお答えさせていただきたいと思います。
 リプロダクティブヘルス・ライツというのは、片仮名の言葉で、子供たちに理解させるというのもなかなか難しい概念かもしれませんが、性と生殖に関する健康・権利というふうに訳されることが多いと思います。これは、子供を産む、産まない、産むとすればいつ産むか、何人産むかといったようなことを中心に、カップルあるいは男女それぞれの個人が自己決定をする自由と権利を持っているといった、このような考え方を中心とした概念であるというふうに思われます。
 今、委員が言われましたように、平成六年の国際人口開発会議において提唱されましたけれども、その後のさまざまな国際会議で、この概念については何度も確認されまして、その重要性は国際的には認識されているというふうに理解いたしております。
 また、我が国におきましても、政府が作成いたしました男女共同参画二〇〇〇年プラン、そして、その後、男女共同参画基本計画というのを策定いたしておりますけれども、その中においてもこの考え方が取り入れられまして、関係省庁はそれに基づいて具体的な施策を展開しているということでございます。
 御指摘の「ラブ&ボディBOOK」におけるリプロダクティブヘルス・ライツは、確かに国際文書をそのまま引用しているという感じもありますので、思春期の子供たちにどのくらい理解できるかなということもあるかもしれませんが、これは、旧厚生省が設置しました女性健康手帳検討委員会、先ほど申し上げましたけれども、その報告書の中で、リプロダクティブヘルス・ライツについても盛り込むことが望ましいというふうにされておりましたので、それを受けて財団法人母子衛生研究会の方で、さらに、別途、専門家にお集まりいただいた研究会を設けて、こういうものを作成されたというふうに聞いております。
 確かに、リプロダクティブヘルス・ライツの概念を思春期の子供たちにどういうふうに理解させるかというのは難しいというふうに申し上げましたけれども、ここでこのブック、冊子が最も言いたいというふうに私が理解できるのは、国際文書の引用をしたくだりの右側に、図入りで、「性については「NO!」を言える力が大事!」ということを強調している。ですから、自分の体や心に大変大きな影響があることですから、セックスをするとかしないとか、避妊をするとかしないとか、そういうことについてはノーと言える力が大事なんだということを強調している点については、適切ではないかというふうに思うわけでございます。
 また、この本の回収問題でございますが、そもそもこの本は、財団の方から一方的に送りつけたということではございませんで、まず、自治体の保健所や教育委員会の方にこの見本を送った上で、希望するかどうかということを注文をとったそうでございます。そして、希望のあったところにだけ配布したというふうに聞いております。
 また、国会等も含めていろいろな議論が起きましたので、その後、財団の方からは、また再度、既に配布した配布先に対しまして、使用する見込みがない場合は財団で引き取りますよというような連絡も差し上げているというふうに聞いております。
 したがいまして、回収自体については、厚生労働省の方から財団に対して、それにつけ加えて具体的な指示をするというのは適当ではないというふうに思うわけでございますが、先ほどの答弁でも申し上げさせていただきましたけれども、本当に発達の途上にある十代の子供たちでございますので、その発達の段階に応じて、あるいは、この本だけをいきなり使うということではないことが必要な子供もいるというふうに思いますので、どういうふうに使うか、どういうふうに指導するかということについては、現場で教育的な配慮を十分していただきながら使っていただくことが望ましいというふうに考えております。
馳委員 先ほど私が申し述べましたように、あいまいな権利概念であるリプロダクティブヘルス・ライツ、こういったことの記述を学術的に紹介するというところまでは、私もおおらかな気持ちで容認できるかなと思うのですが、局長、お名前は何とおっしゃいましたか、岩田局長、ぜひ役所の皆さん方が配慮して気をつけなければいけないのは、この小冊子を通してどのようにこういう知識が子供たちに伝わっていくかという点の配慮がなさ過ぎるのではないですかということです。
 もし私が皆さん方のリーダーであるならば、こんなものを配る前にやることが一つありますよ。何か。すぐわかりますよ。いいですか。これを配る前にやることをするならば、この小冊子を使って子供たちに指導してくださる先生方に十分な研修をし、このリプロダクティブヘルス・ライツといった権利概念についての理解を深め、そして、未成年者、青少年の性意識に対して、性行動に対して十分な配慮をしながら指導に当たってもらうという大前提が、厚生労働省も文部科学省も、あるいは総務省と言った方がいいのかな、所管となる内閣府の方にと言った方がいいのかな、いずれにおいても欠けていて、予算がつけばこういう小冊子を、そして、いや、求められたから配ったんですというこの姿勢は、私はこういう姿勢は容認できない。
 だから、私は、先ほど申し上げましたように、内容的にも不正確で、非常に不誠実である、稚拙な内容のこういったものは、これは厚生労働省の所管である財団がお配りとおっしゃるけれども、厚生労働省としても、深い反省とともに、回収してつくり直すなり、そして、これを使って指導していただく先生方へ文部科学省を通じてしっかりとした性教育の指導についての研修をしていただいて、そして、実態に合わせてこういったものを十分お使いいただく、こういう総合的な施策をぜひしていかなければいけないと思います。
 こういった配慮が欠けている。つまり、学術的ではなくて、教育的な配慮に欠けているのではないですか、厚生労働省の皆さん、これが私の主張であります。もう一度、御答弁をお願いいたします。
岩田政府参考人 性教育については、文部科学省の方では、従来から、関係教職員に対する研修などをおやりになっていると思いますけれども、先生の御発言もございましたので、教員に対する研修、そして親に対する研修、そういうものも含めて、どういう形で思春期の子供たちに自分たちの性と体の問題をしっかり考えさせて正確に理解させるかということについては、総合的に取り組んでまいりたいというふうに思います。
馳委員 改めて問いますが、この「ラブ&ボディBOOK」の絶版と全部回収について、私は、非常に問題の多いブックでありますので、絶版と回収を強く求めるものでありますが、もう一度、御答弁をお願いいたします。
岩田政府参考人 絶版、回収は財団法人の方で判断されることではないかというふうに思いますが、私の方で聞いておりますことは、この事業は財団の方で予定していた事業としては終わっておりまして、さらに増刷するというような事業計画はないというふうに聞いております。回収につきましては、先ほど申し上げましたように、財団として必要な手続はとったということのようでございますので、これ以上のことをするということは聞いておりません。
馳委員 甚だ物足りないというか、非常に厚生労働省らしい答弁ではないかなと私は思うんですよ。
 岩田局長、この冊子がつくられた、最初、山谷さんが御指摘なさって、すぐ、この一ページ、ピルの副作用について書かれた。国会議員に言われたらすぐ対応するというような対応の仕方はまさしくいわゆるHIV訴訟のときのような対応にもあらわれていますけれども、もうちょっと全体的な、行政としての責任を持った対応が私は望まれる。財団の判断でありますから、もうこの事業が終わっておりますからお役御免で関係ありませんという姿勢というのが私はよくないんじゃないかなと思いますが、再度、岩田局長に答弁を求めます。
岩田政府参考人 新しいお答えが何もできずに恐縮でございますけれども、先ほども申し上げましたとおり、厚生労働省としましては、「ラブ&ボディBOOK」の内容の評価、扱うときの教育的な配慮の必要性等を申し上げましたので、その上で、今の時点で特段のことを講ずる必要はないというふうに思っております。
馳委員 こだわるようでありますけれども、非常に稚拙な内容であるということは断言しておきます。先ほどの、男らしさ、女らしさというふうな最初の一ページ目の記述からして、私は、男女共同参画社会を内閣が一体となって進めているこの時期にこういう記述をいきなり書いてしまうところの安易さというか、記述者の文章能力のなさといったものは、非常に配慮に欠けている、改めてこういうことを指摘しながら、済みませんが、次の問題に移らせていただきます。もう時間がなくなってまいりましたが。
 青少年の奉仕活動、体験活動について、もう時間がないので一つだけ質問させていただきます。
 本年七月二十九日に出された中教審の答申について質問をします。この答申は、青少年の奉仕活動、体験活動に関する答申でありますが、この点については、一昨年の十二月に出された教育改革国民会議の報告でも提言がなされていたところで、これを受けて、国会も、学校教育法、社会教育法の速やかな改正を行ったところであります。であるならば、今回の中教審の答申は一体どこに答申を出す意義があったのか、この答申の概要も踏まえてお答えをいただきたいと思います。
近藤政府参考人 お答えいたします。
 青少年の奉仕活動、体験活動の充実につきましては、今、委員から御指摘がございましたように、教育改革国民会議の報告でもあるわけでございますし、生涯学習審議会の平成十一年の答申でも提言をされてきたわけでございます。
 今、文部科学省におきましては、教育改革の大きな柱の一つとして、豊かな心の育成、こういうことを掲げておるわけでございまして、昨年六月の通常国会で学校教育法、社会教育法の改正を行ったわけでございますけれども、今申し上げましたような提言を受けまして、社会奉仕活動でありますとか自然体験活動、そういった体験活動の一層の促進を図りたい、こういうことでございます。
 なお、中央教育審議会におきましては、そういった体験活動を推進するために、それでは具体的にどういった方策を講じたらいいのか、こういうことで御審議をいただきまして、その結果を答申に取りまとめていただいた。
 特に強調いたしたいところは、この答申におきましては、奉仕活動を、個人が経験や能力を生かし、個人が支え合う、新たな公共をつくり出すことに寄与する活動としてできる限り幅広くとらえる、あるいは、日常的にこういった活動を行うことによりまして個人が社会に参画し相互に支え合うような、そういった社会づくりを目指していきたい、そういう観点に立ちまして、小中高等学校段階の青少年あるいは高校を卒業して社会人になった人たち、そういった人たちが奉仕活動なり体験活動にもっともっと参画していただく、あるいはそういったものを社会全体で推進していく、そういった仕組みの整備でありますとか社会的な機運の醸成について具体的な方策を提言していただいている。それを受けまして、現在、文部科学省でもいろいろな施策を推進している、こういう状況でございます。
馳委員 近藤局長、実はこれは非常にすばらしい答申であったと思うんです。この具体的な推進策をさらに推進していく原動力となるのが、来年予想されております教育基本法の改正の内容であります。今、局長が御答弁になった中にもありましたが、新たな公共という概念、理念、こういったものを国民全体に推し進めていくという観点において、この具体的な推進策、これを来年度予算でも事業化してバックアップしていかれようとしているのが文部科学省の姿勢であります。
 我々も強く支持するとともに、来年の教育基本法の改正の議論を大いに盛り上げて、ぜひ、一体となって、奉仕活動、体験活動、ボランティア活動が国民運動に発展していきますことを願いながら、残余の質問はまた次の機会にさせていただきます。ありがとうございました。
青山委員長 次に、丸谷佳織さん。
丸谷委員 公明党の丸谷佳織でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 本日、青少年に関する問題としまして挙げさせていただきたいテーマは、児童の性的搾取に関する問題でございます。
 この委員会におきましても、本年の九月に、委員会視察としまして、石川県、富山県の青少年健全育成の状況を視察してきましたけれども、その中で、各県警察本部から青少年への取り組みに対しまして非常に要望が多かった案件に、出会い系サイトを何とかしていただきたい、国が強いリーダーシップをとって対処していただきたいという言葉もございました。この点を踏まえまして、出会い系サイトの問題、また、児童の性的搾取の問題について質問させていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 つい先日も、ニュースを見て愕然としたことがあります。というのは、十九歳の女子大生が携帯電話の出会い系サイトを利用して十三歳の中学校二年生の少女に売春のあっせんをしていたというニュースに愕然といたしました。また、その前には、女子高生が女子中学生を児童ポルノのモデルとして勧誘していて逮捕されたという記事が載っておりました。
 本当に、児童の性的搾取の問題においては、児童が被害者になっているという現実からまた一歩悪化して、十八歳未満、児童が児童を性的に搾取しているという非常に嘆かわしい状況になってきております。
 日本におきましては、児童ポルノ発信国といいますか、輸出国としまして、国連の機関からも名指しをされておりました。また、いわゆる日本のマスコミにおきましては、援助交際という名で少女売春がいわゆる歪曲化されていった。こういった現実を踏まえまして、一九九九年には法的な手続としまして児童ポルノ・買春防止法が制定されているわけですけれども、この法律が制定されて、買春、児童ポルノを防ぐというその目的が達成されつつある状況なのかどうか、現状というのを把握していかなければいけないと思いますが、児童ポルノ・買春防止法が制定されて以来、成果を上げているのかどうか、その検挙数から警察庁にお伺いします。
瀬川政府参考人 児童買春・児童ポルノ法は平成十一年の十一月に施行されております。
 その後の状況でございますが、まず、児童買春事件について見てみますと、検挙件数、人員とも、年々増加しております。平成十四年上半期では、検挙状況を見ますと、児童買春事件は八百五十件、五百五十六人ということでございまして、昨年同期に比べまして、百九十六件、三〇%の増、百六十二人、四一・一%の増となっております。
 それから、児童ポルノの事件でございますが、これは、施行以来、実は減少しておりまして、ことしの上半期では、児童ポルノ事件は八十一件、五十七人ということでございまして、昨年の上半期とほぼ同様の数字となっております。
 それから、御指摘の中に、日本が児童ポルノ発信国であるということでいろいろ世界的な指摘を受けているという点がございましたので、一点、その点も答えさせていただきます。
 イギリスにありますインターネット・ウオッチ・ファンデーション、ここの調査によりますと、児童買春・児童ポルノ禁止法施行前の平成九年には、インターネット上の日本発の児童ポルノはアメリカに次いで二三%という数字だったということでありますが、平成十三年のここの調査によりますと〇・三%ということで、極めて大きく減少しているという状況にございます。
丸谷委員 ありがとうございます。
 今の検挙数また最近の状況をお伺いしていますと、児童ポルノに関しては、児童ポルノ・買春防止法が非常に成果を上げてきているようです。しかし、一方、児童買春の方は昨年に比べて三割強ふえているということからしますと、この児童買春の問題に関してはもっと一層お取り組みを強化していかなければいけないということが言えると思います。
 その特徴なんですけれども、児童買春増加の特徴で何か挙げられる点はございますでしょうか。
瀬川政府参考人 児童買春事件の特徴でございますけれども、何といいましても、出会い系サイトに関連する事件が非常に多いということでございます。
 平成十四年の上半期に検挙した児童買春事件は八百五十件、検挙人員五百五十六人ということでございますが、このうち、出会い系サイト利用に係る事件として警察庁に報告があったものは四百件、四七%、検挙人員で見ますと二百四十九人、四五%ということでございます。これは、昨年の同期に比べますと、二百六十七件、二〇〇%の増、検挙人員は百七十六人、二四一・一%の増という際立った数字となっております。
丸谷委員 今御説明いただきましたが、出会い系サイトから児童買春の方に走っていくという特徴が多いということであります。
 なぜか。その背景なんですけれども、例えば、以前はテレフォンクラブというのが児童買春の非常に大きな温床になっておりましたけれども、このテレフォンクラブにつきましては、平成十三年に風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を改正したということもあり、減少しつつあります。それに加えて、テレフォンクラブというのは料金がかかる。しかし、一方、出会い系サイトの三分の一は無料で、子供でも使えるんですという子供の声があることから見ても、出会い系サイトの利用しやすさというのが、出会い系サイトを通じて児童買春に結びついている背景にある理由だと思います。
 また、政府で調査したところによりますと、出会い系サイト利用による児童買春被害者の声の中に、出会い系サイトの掲示板を見る限りでは何の後ろめたさもなしにみんなが売春をしている様子だったので、私も意識が薄れて売春をしてしまったですとか、あるいは、街角で男性に直接、援助してくださいと声をかけることなどは絶対にできませんが、このシステムがあったからこそ売春の客を誘うことができましたという子供たちの声が出ております。
 また、先日、ニュース報道の特集番組を見ていましたら、最近、出会い系サイトを利用して、青少年みずからが、昔でいうところの美人局といいますか、男女ペアになりまして、女子学生に成人男性を誘わせる、そこにやってきた男性に対しまして、その未成年の男子が、自分の彼女に一体何をするのか、何事かということでお金をゆする、その場にやってきました成人男性は、とてもじゃないけれども、これは公に自分では言うことができない、恥ずかしいからこういった行為を告訴することができないといった、言葉は悪いですけれども、青少年による美人局犯罪グループというものも実際には存在しているんだというニュース報道の特集がありました。
 青少年みずからが、安い出会い系サイトを使って被害者にもなり、同時に加害者になっているようなこの状況を踏まえまして、確固たる国家観を持ち、二十一世紀の日本はこうあるべきだという強い意志を持っていらっしゃる一政治家の内閣副大臣としまして、この出会い系サイトの問題にどのように取り組んでいっていただけるのか、御決意のほどをお伺いします。
米田副大臣 出会い系サイトの存在を契機に、青少年が犯罪の被害者であるだけでなく加害者にもなりつつあるという、極めてゆゆしき事態だというふうに思っております。
 そういう問題と同時に、私は、今の現状を見るに、国民精神が、特に次代を担う青少年の精神が腐敗していく、モラルが急激に低下していく、この事態を放置すれば我が日本国の滅亡は間違いない、まさに教育も含めた、教育といえば御当人たちだけではなく実は親の教育も必要かもしれませんが、その教育も含めた、国の総力を挙げての対応が今必要であるというふうに考えております。
 十月二十一日に開催されました青少年育成推進会議で種々の申し合わせが行われましたけれども、年少者またその保護者、あるいはまさに児童買春の加害者となる可能性のある一般の大人に向けての広報啓発活動の推進、そしてまた、インターネットや携帯電話に関係する事業者に対する種々の協力要請、また、従来展開してまいりました取り締まりの一層の強化、そして、先ほど来の御議論の中にもございましたが、法規制の検討、「「出会い系サイト」に係る児童買春につながる行為等に対する法規制の検討を行い、早急に結論を得る。」こういう申し合わせが行われているところであります。
 全く御指摘のとおりでございまして、政府としては全力を挙げて対応せねばなるまい、こんなふうに思っております。
丸谷委員 ありがとうございます。
 内閣府大臣官房政府広報室から出しています「児童の性的搾取に関する世論調査」を拝見いたしました。この中で、出会い系サイトに関連する犯罪から十八歳未満の者を守る役割の大きい者はだれですかという世論調査の中で、国民が多く答えていますのは、四九・六%の人が「出会い系サイトを実際に運営している者(サイト管理者)」を挙げました。以下、「出会い系サイトを利用する大人」が三九・二%、「出会い系サイトをインターネット上で見られるように仲立ちをする者(プロバイダー:インターネット接続業者)」が三三・四%という数になっております。
 しかし、一方において、出会い系サイトに関連する犯罪から十八歳未満の者を守るために必要な手段は何ですかという問いに対しましては、「利用者のモラルの向上」を挙げた人が五〇%、次いで、「発信者・サイト設置者に対する法的規制」を挙げた者の割合が四八・四%と、非常に近い割合なんですけれども。
 今、副大臣がおっしゃっていただいたように、法規制というのはやはり進めていただきたいものの、実際には、ある程度、一定時間というのはどうしても各省庁のすり合わせの中でかかってくると思います。しかし、一方で、利用者のモラル向上というもの、あるいは家庭、親、子供に対する出会い系サイトの落とし穴というか、こういった事例があって、こういった危険性があるんだよという広報啓蒙活動というのは、これはすぐにでもできることだと思いますので、内閣府としましては、この広報啓蒙活動にすぐ取り組んでいただき、法整備の方を、またこれはしっかりと充実した法律になるように、整合性をとるような努力をしていただきたいというお願いをしておきたいと思います。
 さて、警察庁にお伺いします。
 実際に今、警察庁にはサイバーパトロール活動をしていただいておりますが、これはパソコンのみが対象となっているんでしょうか、それとも携帯電話のサイトも対象になっているのかどうか、この点をお伺いします。
瀬川政府参考人 警察におけるサイバーパトロールでございますが、主に都道府県警察のハイテク犯罪担当部門においてサイバーパトロールを行っております。そのほか、民間の方あるいはボランティアの方にモニターをお願いして行っておりますが、現状ではインターネットに対するパトロールでございまして、携帯電話に関するサイバーパトロールは、現在、研究中でございます。
丸谷委員 携帯電話の利用率が非常に高いという点、また、携帯電話からのアクセスしかできない出会い系サイトを利用して犯罪に結びついているケースが多いという点から、携帯電話のサイトにおけるチェックというのは急いでいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それと同時に、先ほどの質問の中に、公共施設等、特に学校におけるパソコン端末においてポルノサイトなどの閲覧チェックができるような対策は、文科省の方から、八〇%においてフィルタリングが実施されているという答えがございましたけれども、そのほか、不特定多数が利用可能な端末の利用状況の把握というものも、これは省庁を超えて取り組んでいただかなければいけない課題だと思っております。
 こういったことを強化しろ、しろと言うのは非常に簡単なんですけれども、実際にサイバーパトロールをする側にとっては、人員も少なければ、予算もそれはかかってくるんだと思います。そこの点を抜きに強化しろと言ってもこれは無責任な話でございますので、現在、このサイバーパトロールの状況が、専門的にやっていらっしゃるのか、あるいはどういう状況で行われているのか、あるいは人員の確保、予算にどのように反映していこうと思っているのか、この点についてお伺いします。
瀬川政府参考人 お答えいたします。
 サイバーパトロールのやり方といいますか、実施状況でございますが、一つは、先ほどちょっと触れましたが、都道府県警察にそれぞれハイテク犯罪担当部門というのを設置してございまして、そこでやっております。それから、民間団体でございますとかボランティアの方に委嘱いたしまして、あるいは、警察部内でいろいろインターネット等をやっている者がおりますので、そういった者に自分の仕事外のものとして委嘱してやっていただいているということでございます。
 予算面につきましては、補助金等で予算措置、そのモニターの委嘱費あるいは研修費等の措置を講じているところでありますが、今後、ますます充実していきたいと思っております。
 それからもう一つは、インターネット上の児童ポルノの取り締まりのために、十四年度予算で児童ポルノ画像自動検索システムというものをお認めいただきまして、私ども、略称でシーパス、チャイルド・ポルノグラフィー・オートマチック・サーチング・システムというふうに言っておりますが、これが六月から試験運用をし、そして、九月から本格運用をしてきているところでございます。
 これは、インターネット上における有害な児童ポルノ画像を自動的に検索してきて、それで過去に摘発したのと同一の画像を発見して、これを検挙する。結局、インターネット上の画像というのは、一件、事件を検挙しても画像そのものは残るということで、そういったものを排除するための仕組みを始めております。既に検挙事例等も出ておりますし、それから、外国発の児童ポルノを発見して、日本は今まで外国の方から日本発のポルノが多いという指摘も受けていたんですが、最近は、このシステムの活用によりまして、外国へ、むしろ外国発の児童ポルノがあるという件について、既に十件ほど通報もしているところでございます。
丸谷委員 取り組みを強化するという意味で、先ほどの文科省もそうなんですけれども、八〇%まで達成しているというところをぜひ一〇〇%達成するという目的において、人員また予算も含めて強化していかなければいけないと思います。
 今、警察庁の取り組みを御紹介していただきましたけれども、携帯電話を通じた出会い系サイトでの児童買春という問題に関しては、日本が先進国というか、悪い意味での先進国なんですけれども、昨年十二月に、横浜で、児童の性的搾取に反対する世界会議というものがございまして、その中でも、NGO団体から、児童買春に関するワークショップがあったんですが、その中で、日本の携帯電話が非常に発達しているという点と、iモードを含めてそういったサイト面の多彩なコンテンツが掲載できるという点から、この児童買春に関しては、日本の取り組みが全世界に対する一つのスタンダードというか目安になるということがありますので、日本の警察はこの問題に対して非常に早い時期から取り組んでいるというお褒めの言葉もNGOからいただいておりますけれども、もっともっと世界のスタンダードをつくるんだという思いで取り組みを強化していただきたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。
 今も触れました性的搾取に反対する世界会議の中で出てきた案件としまして、現在我が国で批准をしています児童の権利条約に付随します選択議定書、これは、本年五月のニューヨークで行われました子ども特総の中で、選択議定書に関しましては署名までしましたが、まだ批准をしていないというのが我が国の状況です。
 以前から、私、議員としまして、選択議定書に関して早く批准をできるように国内法の整備を急ぐべきだという主張を繰り返してきましたが、現在、この国内法整備の議論はどのようになっているのか、この点について外務省にお伺いします。
泉政府参考人 お答えいたします。
 児童の売買、児童買春並びに児童ポルノに関する児童の権利に関する条約の選択議定書につきましては、今お話ありましたとおり、本年五月の国連子ども特別総会の際に署名を行いました。
 現在、本件選択議定書の締結に向けて、同議定書の国内担保のための具体的な措置などについて関係省庁と検討作業を進めているところでございまして、現段階では、例えば性的な搾取、営利目的の臓器の引き渡し、または強制労働を目的とした児童の取引についての国外犯を含めた犯罪化の義務の履行のために国内法令の整備が必要であると考えて、今、協議中でございます。
丸谷委員 我が国が急ぐべき国内法の整備としまして、三点、挙げていただきました。臓器の売買と強制労働、そして性的搾取という観点なんですけれども、これを我が国の国内法の整備において現実的に、また、余り時間をかけずに取り組む方法として、一つには、児童ポルノ・買春防止法の改正という考え方があります。また、もう一方では、現在あります児童福祉法の改正という点がございます。
 児童ポルノ・買春防止法の改正になりますと、この臓器売買と強制労働という目的がもともと入っていないものですから、これを新たにつけ加えるという作業になります。
 しかし、児童福祉法の改正という観点からしますと、第三十四条の第七号と第九号の改正、例えば第七号におきましては、「他人に児童を引き渡す行為」、いわゆるこれはトラフィッキング、密輸する側なんですけれども、この側の、国内犯のみならず国外犯にも法を拡大改正するという点が指摘できますし、第九号におきましては、「児童が四親等内の」というこの「四親等内」を削除すれば目的にかなう国内法の整備ができるのではないかと私は思いますが、厚生労働省の見解をお伺いします。
岩田政府参考人 御指摘の児童の権利条約選択議定書の批准に向けて、今、関係省庁で勉強しているというふうに聞いておりますけれども、今、委員が御指摘になりましたような児童福祉法の改正のやり方、これも国内法整備の一つの方法として考えられるということはあるというふうに思います。
 しかしながら、条約の選択議定書が要求しております児童の売買の犯罪化については、国外犯も含めるということになっておりますので、日本人が海外に行って海外の子供たちを売買するといったケースにも対応するということになります。
 児童福祉法は、そもそもこれは戦後できた法律でございますが、国内の児童の健全育成を目的とした法律でございますので、児童福祉法の現在の目的に照らしますと、国外の犯罪の処罰も念頭に置いた改正が適当かどうかということについては、やはり慎重に検討すべきではないかというふうに思っております。今後とも勉強会を通じて検討してまいりたいというふうには思っておりますけれども、すぐに今の児童福祉法の目的になじむということにはいかないのではないかというふうに考えております。
丸谷委員 検討を要するのは理解できます。
 例えば、今、児童福祉法の目的という御答弁がございました。非常に純粋な質問なんですけれども、児童福祉法の目的、この「児童」というのは、日本国内にいる児童という観念でしかないんでしょうか。この点についてお伺いします。
岩田政府参考人 条文をお読みいただきますと、「日本人の」とか「国内の」というふうに規定はしておりませんけれども、制定された経緯、そして、この目的に沿って具体的な対策が児童福祉法の中に規定されておりますが、その体系を見ますと、この法律は日本の子供を対象とした法律でございます。
丸谷委員 その規定はないもののという御答弁でございました。児童福祉法の目的、この「児童」は、日本にいる、国内の日本人の児童だけを保護するという目的なのか、あるいは、これほどグローバル化が進んだ世界の中で、児童という保護対象を解釈の中でどこまで広げていくかという、ちょっと観念論的な議論もここは必要になってくるのかなと。今後検討する中で、そういった議論もぜひ加えていただきたいと思います。
 というのは、この児童福祉法が国内犯のみということでいってしまうと、先ほどお話がありました、日本人の大人が国外に出て、そして、その国外の子供たちを売買する、臓器売買をする、これに関しては適用できないということですから、それじゃ、そこで売買された、臓器売買をされた子供たちの権利というのはだれが守っていかなきゃいけないのか。売買する人を禁止するためには、この児童福祉法の、国内法という観念を拡大させて、国外犯までやるべきだ。また、これはテクニカルな問題で、国外犯まで適用拡大改正することというのは可能なのか不可能なのか、この一点を法制局にお伺いします。
宮崎政府参考人 お尋ねの点につきましては、いずれにしても、立法を要する、立法をしての話でございますので、たとえ、現在、児童福祉法の中で「児童」というのが日本国民たる児童に限ると書いてありましても、そこのところは、形式的に言えば改正を行えばできるということでございまして、法律上、いずれにしても立法しての話でございますから、できないことはないといいますか、要は、必要とされております法改正の内容の全体像が、幅なり深みを含めまして、どういうものが一番適切なのかということが確定いたしませんと、どれが適切であるかということがなかなか言えない。適切なのがどれかという問題でございまして、法律上、児童福祉法の改正ではできないということはないと存じます。
丸谷委員 ありがとうございました。
 これから検討されていく中で、どの改正がどの部分において必要なのかを慎重かつ緊急に議論していただきまして、重ねて主張しますけれども、この児童の権利条約の選択議定書の批准に向けて政府一体となって取り組んでいただきたい。今、法制局の御答弁の中に、できないことはないという御答弁がございましたので、このできないことはないということを議員からのエールにかえさせていただきまして、質問を終わりたいと思います。
 どうもありがとうございました。
青山委員長 次に、原陽子さん。
原委員 社会民主党の原陽子です。よろしくお願いします。
 私も子供たちを取り巻く問題というものはさまざまあると思いますが、今回は、児童虐待に集中して御質問させていただきたいと思います。
 児童虐待防止法が施行されてから現場が非常に逼迫しているという、現場の厳しい状況というものが指摘されております。いろいろプライバシーにかかわる情報なので詳しくは聞いていないのですが、三点、ここでケースを紹介させていただきたいんです。
 一点目は、児童相談所がかかわりながら虐待死させてしまった場合、さまざまなマスコミとかからの攻撃で家から出られなくなってしまったような引きこもりのケース。
 あと、担当する親が必要以上に担当者をつけ回して、おどしといいましょうか、暴力とか脅迫を振るわせて、その担当する児童相談所にかかわっている職員の方が恐怖感を覚えたりとか。これは件数でも出ておりますが、平成十三年には、半年間で、こうした暴力及び脅迫の件数が百三十六件にも上っている。こうした恐怖感から先ほどの引きこもりになってしまったようなケース。
 三番目のケースでは、本当に自殺されてしまった職員の方もいらっしゃる。虐待の通告の件数がふえて過労状態になった相談員の方が自殺してしまったケースや、そうした自殺をなさってしまった職員の上司の方もまた、その自殺というものを非常に重く受けとめて精神的ダメージを受けている。
 こうした現場の厳しい状態というものを、私はぜひ皆さんにも知っていただきたいと思っております。
 こうした実態を知っていますかと、まずは担当である厚生労働省に事前のレクのときに聞きましたら、こうした厳しい実態というものの把握を完全になさっていないという答弁を厚生労働省の方からいただきました。
 そこで、まず冒頭、福田官房長官に、こうした現場の厳しさの実態というものを厚生労働省に早急に調査させるべきだと思うのですが、その点のお考えをお伺いしたいと思います。
福田国務大臣 今、委員が御指摘になった実態把握につきましては、これは児童相談所が窓口になっています。児童相談所というのは、職員が地方公務員なんですね。ですから、まずは地方自治体がどういうように対応していくべきか、こういうような観点から検討したいと考えております。
 いずれにしても、児童虐待がふえている、これはもう親の問題であり、社会の問題であると考えておりますので、国としても無関心ではおりません。
原委員 もちろん、その一番身近にある地方自治体が中心となって調べていくことも必要だと思いますが、私は、国として、厚生労働省として旗を上げて、中には自殺されてしまったという本当に痛ましいケースもあるわけですから、そこのところの実態把握というものを早急に行うように、ぜひ内閣としても指導していっていただきたいと思います。
 次に、厚生労働省にお聞きをしたいのです。
 先ほどの委員の方の御質問の中にも、児童虐待に関して相談員や親や子へのカウンセリングというものを行っているという御答弁があったと思うのですが、私がここで集中してお聞きしたいのは、こうした児童相談所に働いていらっしゃる相談員の方のカウンセリングや支援体制の実態がどうなっているのかということをお聞きしたいのです。
岩田政府参考人 先ほど官房長官もお答えになられましたけれども、基本的には、児童相談所は都道府県の職員ですから、職員の精神面も含めた健康管理ということでは、自治体の方でしっかりやっていただくことであるというふうに思います。
 今、国として地方自治体に助言しておりますのは、児童虐待は、まず件数が非常に急増しているという量の問題があります。そしてもう一つは、問題が大変深刻で、その問題を解決しなければいけないというふうに思ったその職員が非常に心理的に負担を負う、そういう仕事の質の問題もございます。
 そこで、私どもとしてできることは、一つには、職員の数をふやしていただくようにということで、児童福祉司は地方交付税で措置されておりますので、総務省の方にお願いいたしまして、近年は毎年増員をしていただいているということがございます。
 それからもう一つは、仕事の仕方だと思うんですね。一つのケースを一人の児童福祉司が抱え込んでしまうということになりますと、精神的なストレスというのは大変なものがあるというふうに思いますので、必ず複数で対応するように、そして、一人でケースを処理するのではなくて組織として取り組むようにということが仕事のやり方としては大事ではないかというふうに思いますので、それらのことは、職員向けの「子ども虐待対応の手引き」という冊子をつくって職員にお渡ししておりますけれども、そういう中でも助言をしております。
原委員 先ほど、職員の数の増員を求めていくというお話だったんですが、ここに、児童福祉法二十八条事件に関するグラフがあります。ちょっと済みません、皆さんのお手元にはないんですが。この児童福祉法二十八条というのは、子供を保護者から分離して保護する必要があるにもかかわらず保護者の同意が得られない場合は、児童相談所は、家庭裁判所に申し立て、施設入所に対する承認を得て入所を進めるという、親から分離するという非常に難しいケースなんですが、このケースが、平成十年が六十五件だったのが平成十三年には百六十九件と、この四年間で二・六倍に件数がふえております。
 一方、これも事前にいただいた資料の中にあったんですが、児童福祉司の数、同じ期間で見てみますと、平成十年から十三年度で見ますと、児童福祉司の数は一・二倍にしかふえていないんですね。
 こうした相談件数や難しい件数は二・六倍にもふえているのに児童福祉司の数は一・二倍にしかふえていないという実態が、先ほどの、職員の引きこもりとか自殺とか、精神的にも非常に負担がかかる職場になってしまっている要因の一つになるのではないかと思います。本当にこのような実態が続いていくと、子供が救われる前に相談員の方、職員の方が倒れてしまうという実態を引き起こしてしまうと思うんです。
 ここで厚生労働省にお聞きしたいんですが、平成十四年度の児童相談所関連の予算と、今、平成十五年度のために概算要求を行っていると思うのですが、その要求額が幾らだったか、御説明いただきたいと思います。
岩田政府参考人 まず、児童相談所の人件費、運営費でございますが、これらは地方交付税で措置されております。児童相談所が取り扱います児童虐待対策の充実を図るために、国の予算として、平成十四年度では、従来の対策に追加いたしまして、児童相談所に併設されております一時保護所というのがありますけれども、そこの体制を充実するという予算、そして、今、児童相談所の増員も総務省にお願いしているというお話をいたしましたけれども、それだけでは十分でないというふうに思いますので、例えば、児童相談所のOBの方にもう一度活躍していただこうということで、OBの方を活用した、児童虐待対応協力員と呼んでおりますが、そういう方を採用していただく経費を手当ていたしましたり、また、保護者のカウンセリングというのが大変難しいけれども重要な課題なんですが、保護者へのカウンセリングをするために、その地域の精神科医の協力を得られるようにするための費用ですとか、児童福祉司の人材養成、研修のための費用ですとか、そういったような経費として、十四年度予算では約十五億一千万円を計上いたしております。
 十五年度の概算要求は、従来の対策に比べまして、児童相談所の相談件数が非常にふえているということもありますので、それをITを使って処理しよう、相談の記録をIT化し、そして、児童相談員がリスクを判断しないといけないときに、これまでの経験を蓄積して、ITの力もかりてそういう判断の補助をするような、そういうソフトも開発したいというふうに思っておりますが、要は、児童虐待対応業務の中にITを入れるということでございますが、そういった経費も新たに計上しております。
 概算要求額は、全体で約十六億五千万円でございます。
原委員 今、概算要求の額を聞いたんですが、相談件数の伸び率と比べますと、予算も十五億から十六億とそんなに伸びていない。私は、こうした相談件数がふえるのと同じ比率で予算や相談所、相談員の数はふえていくべきだと思うのですが、その点、再度、厚生労働省の岩田局長にお伺いしたいと思います。
岩田政府参考人 委員がおっしゃいますように、今、児童相談所の職員は大変な思いをして御苦労なさっておられるというふうに思います。体制の整備は大変重要な課題でございまして、特に、先ほど委員が言われました児童福祉法第二十八条の手続、これは家庭裁判所に、親が同意しない場合であってもその承認を得て児童養護施設などに子供を入れる、措置するための手続で、大変手間のかかる大変な仕事だというふうにもお伺いいたしております。こういうことで、まずは、児童福祉司の数をふやすということが大変重要ではないかというふうに考えているところでございます。
 平成十一年までは、地方交付税上標準的な自治体では、積算の基礎で児童福祉司が十六人でございました。その後、毎年、一人あるいは二人増員をお願いしまして、平成十四年度では、二十一人まで来ております。十六人体制であったのが二十一人体制まで来たということでございます。
 これを踏まえて各自治体で実際に児童福祉司の任用をしていただくわけですが、実際の数でいきますと、平成十一年では千二百三十人であった児童福祉司が平成十四年では千六百二十七人ということで、ふえております。こういう形で、児童福祉司の増員というのが体制強化の重要な柱であるというふうに思います。
 あわせて、児童福祉司お一人お一人の専門性をさらに高めるということも児童相談所のパワーアップになりますので、その専門的な研修についても、全国の児童相談所の福祉司を中心として、児童虐待にかかわる専門的な職員の研修施設も今年度からオープンしておりまして、研修の充実も図ってまいりたいというふうに思っております。
 また、児童相談所の数も、長らく横ばいでございましたけれども、自治体の御判断で、実情に応じてふやしておられるところも出てきておりまして、平成十四年度では、前年度から比べますと五カ所ふえまして、百八十カ所ということでございます。
 まだまだ問題の大きさから比べると体制は十分ではないというふうに思いますので、引き続き努力をしたいと思います。
原委員 やはり職員の方の数をふやすということは最大の課題になってくると思います。
 増員に関しては総務省の方にお願いをなさっているということなのですが、ぜひ官房長官、内閣、政府のこうした児童虐待に取り組む姿勢として、総務省の方に、こうした児童相談員の数をふやすように指示をするなり、厚生労働省が要求している予算がちゃんとそのままつけられるように、どうせなら本当に必要なところにはちゃんとしっかりとたくさん予算がつくように、例えば財務省に指導するとか、そうした姿勢をぜひ示していただきたいと思うのですが、官房長官のお考えをお伺いさせていただきたいと思います。
福田国務大臣 担当省庁の意見を聞きながら研究させていただきます。
原委員 ぜひよろしくお願いしたいと思います。本当に痛ましいケースというか、児童虐待というのは本当に悲しいケースだと思いますので、こうしたものがなくなっていくように、政府としても取り組みをお願いしたいと思います。
 最後にもう一点、先ほどの児童福祉法二十八条の件とかかわってくるんですが、この児童虐待に関する審議が何回かやられてきている中で、今までの審議の議事録を見ていくと、今一番問題点として挙げられているのが、家庭裁判所による分離決定によって、親との対応など、児童相談所の負担を少なくしていくことが必要だということを数多くの方々が言われていたように思います。
 こうした児童相談所の働き方、そして、児童相談所に働く職員の方々の負担を軽減するためにも、家庭裁判所の関与というものをいよいよ本格的に、真剣に検討していくべきときにあると私は思うのですが、そこの御見解をお伺いしたいと思います。
石川政府参考人 委員の御質問いただきました関係につきましては、内閣府の所掌じゃございませんものですからちょっと御答弁できませんけれども、関係省庁の方に、今御指摘の点について検討するようにお話をさせていただきたいと思います。
 以上でございます。
原委員 同じ質問を岩田局長にお伺いしてよろしいですか。この裁判所がかかわってくるというところに関してのお考えを。
岩田政府参考人 児童虐待防止法が成立になりまして、たしか三年後に法制の見直しをするということも法律でうたわれていたかというふうに思いますので、それまでに、大事なことは、第一線で実際にかかわっている人たちの御意見を聞くということ、そしてまた、この問題についての専門家がたくさんおいでになりますので、そういう方たちの御意見も聞いて、新たな制度の拡充というのはどういうものが必要かということを考えていきたいというふうに思います。
 厚生労働省としましては、社会保障審議会というのがございまして、その中に児童部会というのがあるんですが、この児童部会で、これからの児童の福祉のあり方を検討していただいているわけですが、児童虐待の問題は喫緊の課題でございますので、児童虐待の問題を集中的に検討する作業チームを近々立ち上げることにいたしております。そこでの御意見なども承りながら、方針を決めていきたいと思います。
原委員 ありがとうございます。
 第一線の意見を聞くということは私も非常に大切だと思いますので、ぜひ、現場で働く方々の実態をしっかりと把握して、必要ならば見直しを前倒ししていただくぐらいの姿勢を持って、私たちも頑張りますが、政府としてもこの問題に積極的に取り組んでいっていただきたいということを要望させていただいて、質問を終わります。
 ありがとうございました。
青山委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時六分散会


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