衆議院

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第3号 平成14年7月17日(水曜日)

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平成十四年七月十七日(水曜日)
    午後三時開議
 出席委員
  衆議院
   委員長 池田 行彦君
   理事 甘利  明君 理事 新藤 義孝君
   理事 中馬 弘毅君 理事 牧野 隆守君
   理事 池田 元久君 理事 石井  一君
   理事 北側 一雄君
      麻生 太郎君    大島 理森君
      中山 太郎君    橋本龍太郎君
      蓮実  進君    林  幹雄君
      堀内 光雄君    町村 信孝君
      宮下 創平君    小沢 鋭仁君
      佐藤 敬夫君    手塚 仁雄君
      羽田  孜君    鳩山由紀夫君
      肥田美代子君    冬柴 鐵三君
      東  祥三君    志位 和夫君
      土井たか子君    野田  毅君
  参議院
   委員長 広中和歌子君
   理事 河本 英典君 理事 矢野 哲朗君
   理事 今泉  昭君 理事 木庭健太郎君
      有村 治子君    加藤 紀文君
      小泉 顕雄君    舛添 要一君
      吉村剛太郎君    直嶋 正行君
      羽田雄一郎君    平田 健二君
      日笠 勝之君    富樫 練三君
      筆坂 秀世君    西岡 武夫君
      大渕 絹子君
    …………………………………
   内閣総理大臣       小泉純一郎君
   総務大臣         片山虎之助君
   法務大臣         森山 眞弓君
   外務大臣         川口 順子君
   財務大臣         塩川正十郎君
   文部科学大臣       遠山 敦子君
   厚生労働大臣       坂口  力君
   農林水産大臣       武部  勤君
   経済産業大臣       平沼 赳夫君
   国土交通大臣       扇  千景君
   環境大臣         大木  浩君
   国務大臣
   (内閣官房長官)
   (男女共同参画担当大臣) 福田 康夫君
   国務大臣
   (国家公安委員会委員長)
   (防災担当大臣)     村井  仁君
   国務大臣
   (防衛庁長官)      中谷  元君
   国務大臣
   (沖縄及び北方対策担当大
   臣)
   (科学技術政策担当大臣) 尾身 幸次君
   国務大臣
   (金融担当大臣)     柳澤 伯夫君
   国務大臣
   (経済財政政策担当大臣) 竹中 平蔵君
   国務大臣
   (規制改革担当大臣)   石原 伸晃君
   内閣官房副長官      安倍 晋三君
   政府特別補佐人
   (内閣法制局長官)    津野  修君
   衆議院国家基本政策委員会
   専門員          鳥越 善弘君
   参議院常任委員会専門員  宍戸  洋君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 国家の基本政策に関する件


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     ――――◇―――――
    〔池田行彦君会長席に着く〕
会長(池田行彦君) これより国家基本政策委員会合同審査会を開きます。
 本日は、私が会長を務めさせていただきます。
 国家の基本政策に関する件について調査を進めます。
 これより討議を行います。
 討議に当たりましては、申合せに従い、野党党首及び総理におかれましては、配分時間を厳守し、相互の発言時間を考慮しつつ、簡潔に発言を行っていただくようお願い申し上げます。
 発言の申し出がありますので、順次これを許します。鳩山由紀夫君。
鳩山由紀夫君 初めに、カナナスキス・サミット、総理も行かれました。行かれる前に野党の我々としてはいろいろな意見を聞いていただきたかった、そんな思いはあります。聞いていただければいろいろとアドバイスもできたものにな、そんな思いはあります。
 ただ、内容に関しては既にさまざま報道されていますから、ここでは一つだけ伺いたい。
 それは、実はジェニンの問題でありまして、パレスチナの町で虐殺があったと言われています。この問題に関して、例えばサミットで、あるいはブッシュ大統領に対して、どういう場でも結構でありますから、日本の立場を鮮明に主張されたということはありますか。
内閣総理大臣(小泉純一郎君) これは、ジェニンという特定の場所でなくて、イスラエル、パレスチナ、この中東の問題についていろいろ議論になりました。いわゆるテロも含めまして、アラファト・パレスチナの自治政府、どう改革していくか、そして、イスラエル側との話し合いをどう平和的に持っていくかという話の中でいろいろ取り上げられたわけであります。
 日本としては、この中東の和平の問題についても大きな関心を抱いていると。インド、パキスタンもそうでありますけれども、アフガンにおきましても、一地域の不安定というのは単なる一地域の不安定にとどまらない。特に、中東のイスラエル、パレスチナの問題は、長年にわたってのお互いの不信感、憎悪がある中で、どうやってこの地域に平和をもたらすかという中で取り上げられたわけでありまして、私どもは、大変熱心に各国首脳の参加のもとにこの問題が取り上げられまして、引き続き中東和平に関しては、アメリカを中心として全世界が関心を持っていかなきゃならない、イスラエルにもパレスチナにも自制を促して、平和的な話し合いの道を広くあけて、この問題について国際的な関心を持って取り組もうということで共有の認識を持つことができたと思います。
鳩山由紀夫君 そういう一般論を聞いているんじゃありません。イスラエルがジェニンにおいて虐殺を行った、そう言われている。それで国連の調査団ができて、いざ派遣だということになってイスラエルが反対をして、結局まだ、これは緒方貞子さんが中におられるのに派遣ができていない。イスラエルに川口大臣も行かれた。でも、そこでも、私の知る限りにおいて、一切この問題について扱われていない。どういうことなんだ。
 私が申し上げたいことは、確かにそれは、イスラエル、パレスチナの和平の問題、大事です。私も行ってきたインド・カシミールの問題も大変に重要な問題です。一般論を申し上げているんじゃないんです。日本としてのはっきりとしたメッセージをどうしてしっかりとお出しにならないのかな。日本として、おっしゃることは、やることはやる。これは、例えばいろいろな国際会議、中東和平国際会議、ニューヨークで開かれるようですが、出させてくれ、出させてくれ、出させてくれ、そればかり言って、結局出してもらうことはできなかった。こんな話でしょう。
 私は何を申し上げたいか。せっかく、ちょうど四年前のきょう、国際的な刑事裁判所、この設立条約というものが立ち上がった、採択をされた日なんです。それがきょうなんです。例えばジェノサイド、虐殺、戦争犯罪、こういったものに対して、いいですか、ことしの七月一日から発効することになっていたんです。
 私は画期的なことだと思う。日本としても、当然これには早く署名し批准をしたいと思う。にもかかわらず、日本の態度、どうなんですか。早く署名、批准すべきだと思いますが、総理の御答弁、聞きたいんです。
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 今、この問題についても、日本としては国内法を整備しなきゃならない点がありますので、前向きに検討しております。
鳩山由紀夫君 その御答弁は、実は昨年の秋、私が代表質問のときに総理がお答えになったと同じですよ。もうあれから半年以上たっているんです。にもかかわらず、日本はまだ、国内法を整備する。うそでしょう。大して何もやっていないんでしょう。
 なぜ日本が署名も批准もしないのか、わけを言いましょう。アメリカでしょう。アメリカに対してこの問題も気兼ねしているんじゃありませんか。
 今、アメリカが世界の、ある意味で超一級の唯一の大国になった。軍事大国になって、世界じゅうでアメリカの兵隊さんがいろいろな活動をしている。彼らがさまざまな問題を起こして、戦争犯罪、それを国際的に裁かれたら嫌だということで、アメリカは拒否しているじゃありませんか。
 日本としては、今、署名もしない、批准もしないなんという話じゃなくて、真っ先にアメリカに対しても、間違っている問題は間違っている、はっきりと言う勇気を持って、この国際環境の中でせっかく、大国意識に対して、我々先進国も発展途上国も一体になって国際刑事裁判所、そういうものをつくり、戦争犯罪をきちっと裁こうじゃないか、そういう、せっかく七月一日に発効したというにもかかわらず、まだのろのろのろのろ、そんな状態じゃありませんか。アメリカに対して説得する自信、ありますか。
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 何でもアメリカを追及すればいいという態度は遺憾に思いますね。民主党、第一党、責任ある野党でしょう。
 アメリカと協力しながら国際社会と協力していこうという、言うべきことは言っております。アメリカの参加を各国も求めているんです。アメリカ抜きにしてどうやって国際平和、確立できるんですか、アフガンにとっても、インド、パキスタンにとっても、イスラエル、パレスチナにとっても。日本の新聞の報道では、ブッシュ大統領の演説がサミットなんかで非難を浴びたと言っている報道がありますが、そんなこと全然ありませんよ。むしろ、フランスも、サミット参加国もすべて、アメリカの関与がぜひとも必要だと言って主張しているんです。いかにアメリカを国際社会から孤立させないか。日本もそうなんです。アメリカに言うべきことは言っています。
 世界の情勢を見ながら、アメリカといかに世界各国と協力して平和づくりに資するか、そうでありまして、アメリカが間違っている、追及すれば日本の自主性だ、そういう観点は私はとりません。
鳩山由紀夫君 総理はいつも、問題に答えられなくなると、怒られて、話題をすりかえるじゃありませんか。
 私は、アメリカに対して何でもかんでも反対しろと言っているんじゃ全然ないですよ。国際刑事裁判所という大変大事な国際的な機関ができた。日本だって、川口大臣、これを支持しているんでしょう、基本的には。アメリカは大反対をしている。PKOと何か取引みたいなことを行っているじゃありませんか。国際的に超大国のアメリカがひとりで何でもかんでも行ってしまうということに対する危機感から、国際刑事裁判所をつくろうではないかという発想になった。これは、私は大変貴重な画期的なことだと本当に思うのです。
 それだけに、日本は、アメリカは同盟国でしょう、まさに親友なんですから、言うべきことははっきり言うべきではないか。何でもかんでもアメリカに追随していればいいという話じゃない。こういうときには、むしろはっきりと日本の立場を説明して、早く目を覚ましなさいと。何で戦争犯罪者というものが公正に裁かれないのか。アメリカや参加していない人たちは除外されていいんだなんて発想では、これは国際的に通る話ではありません。
 その意味で、いいですか、小泉総理、私の申し上げたいことは、国際的な環境をしっかりつくることによって暴走を防ぐ。アメリカだけじゃないんです。ロシアも中国もまだ加盟していないんですから、こういった大国意識を持っている国々に対して、戦争を二度と日本はしないんでしょう、だから、日本は二度と戦争をしません、そういう国だというあかしで、一番先頭に立ってこういう問題、走り回るべきだと思いますが、改めて御答弁願いたい。
内閣総理大臣(小泉純一郎君) まずお断りしておきたいのは、アメリカと協力すると言うと追随と言う、これは言葉のすりかえですよ。アメリカに追随するばかりじゃない。日本はアメリカと協力するということは、これは日本の国益にかなっている場合が多い。必ずしもアメリカとすべて行動を一緒にしているわけではありません。京都議定書の問題しかり。
 しかしながら、こういう問題については、アメリカの参加を求める、アメリカの協力を求めるということは、アメリカ自身にとっても、世界にとっても必要なんです。不安定地域にとっても必要なんです。アメリカだけ非難していれば済む問題じゃないんです。ヨーロッパ、EUにおいても、アジアにおいても、中東においても、アメリカをいかに参加させるか、これにみんな意を砕いているんですよ。アメリカがやっていることを非難して済めば、こんな簡単なことはありません。そうじゃないんです。アメリカの、大変政治的にも、軍事的にも、経済的にも強力なあの国の、いかに世界の問題に関心を持ってもらって協力を取りつけるか、これが大事なんですよ。それを、協力を求めるということを追随していると言うのは、余りにも一方的な議論だと私は思うんです。
鳩山由紀夫君 アメリカに対して一緒にやろうという協力も求めていないように私は聞いています。
 ただ、この問題、こんなに怒る話じゃないですよ、本来。もっと冷静に判断をして、国際的にきちっと処理する問題でしょうと申し上げているんです。もう水かけ論ですからこれ以上申し上げません。
 私は、たとえアメリカでも、間違った行動をするときには厳しく言うべきだ、当然だと思います。それを言えないということが情けない、改めて申し上げておきます。(内閣総理大臣小泉純一郎君「言っている」と呼ぶ)言っておられないから申し上げているんです。
 話を変えます。
 情報化社会になりました。情報化社会。ちょっと話を聞いてください、済みません。情報化社会になると、あの例の防衛庁のリスト事件、こういう問題が起きる。国家の管理が相当厳しくなるような話が情報化時代になると起きてくる。だから、私は、個人情報というものはしっかりと保護されなきゃならないことは言うまでもありません、これはかつてもこの党首討論でも申し上げてきたとおりであります。
 ただ、残念ながら、個人情報保護法案、メディア規制法案になってしまった。主務大臣の権限が強過ぎて、報道機関、萎縮して……(発言する者あり)
会長(池田行彦君) 静粛に願います。
鳩山由紀夫君 取材がきちっとできない、こんなことを嘆いて、これは平成の大悪法だと、彼らがそう言っているじゃありませんか。だから、個人情報保護法案、本当にいいものをつくるべきです。メディア規制法案のような話じゃなくて、本当の意味で、情報化時代にふさわしい、個人データを保護する法案をつくるべきだ。
 まずはこの個人情報保護法案、今出しておられるのは廃案にしてください。
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 個人情報を保護するという趣旨においては大して意見は違いないと思います。今言ったメディア規制法案というのも、それは誤解です。メディアを規制する意図なんか全くありません。報道の自由と、そして個人の情報を保護する、これは必ず話し合っていけば両立できる問題です。こういう点については、私は話し合いの余地は十分とってあるんです。
 かたくなに、今の政府の法案がすべてだ、完全だとは言っておりません。もし修正すべき点があれば修正しようということを言っているわけですから、対案を出していただければ私どもは真剣に検討して、できれば、お互い協力してこの法案を扱うようにできればいいなと思っております。
鳩山由紀夫君 私どもは、対案を出せと言えば、あすにでも、いつでも出せます。もう持っています。ただし、個人情報保護法案が……(発言する者あり)いいですか、聞いてください、メディア法案として余りにも誤解されている中で、それに同類項だと思われるような、この国会の、通常国会の中で、騒々しい中で議論するのはやめたい……(発言する者あり)
会長(池田行彦君) 静粛に願います。
鳩山由紀夫君 そんな思いで、だから廃案にしてくれ、そう申し上げているんです。
 その個人情報保護法案と極めてかかわりのあるものが、御承知のとおり住民基本台帳ネットワーク、これがいよいよ八月の五日から稼働すると聞きます。
 これは、おわかりのとおり、小渕総理もみずから、個人情報保護法案なくして住民基本台帳ネットワーク、これを稼働させてはならない、総理のときに小渕さんがそう話をされた。自民党の中でも、伺いますところによれば、二十二人の方が、これは今は無理だ、延期すべきだというふうに主張されております。
 小泉総理の同朋であられると思いますが、中田横浜市長も意見書を出されたんでしょう、延期すべきだと。大変危険な内容をはらんでいるんです。ぜひ、中田市長もそれなら小泉総理にとっては抵抗勢力とおっしゃるんですか。
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 急に中田横浜市長の話が出ましたけれども、別に私は、抵抗勢力とか協力勢力とはとっておりません。いい友人だし、改革意欲に富んだ、意欲に富んだ、見識のある人だと思っています。だからこそ、横浜市長に当選されたんでしょう。
 この個人情報保護の問題につきましても、今住基法ネット、この法案、円滑に実施するために必要だということで今国会に提出しているんですから。それを議論している、この騒々しい通常国会の中でと言いますけれども、騒々しいのはこの議場、たまに討論のあるときだけであって、ふだんは静かですよ。どうやっていい法案を考える、十分時間があります。勉強する時間も、研究する時間も、話し合いする時間もあります。審議していただければ、もういつでも応じますし、いい案があれば、いつでもそれを検討するにやぶさかではございません。
鳩山由紀夫君 ここに、六月十一日に行われました電子政府評価・助言会議、この議事概要があるんです。内閣府の地下講堂で行われております。ここで、いわゆる住基ネットの問題に関して議論されているんです。セキュリティーの問題です。
 このセキュリティーに関して、経産省、経済産業省のお役人さんが、依然として人材不足である、三千三百ある地方自治体に対し人材を確保することは大変であると。それに対して委員が、三千三百ある地方自治体に広げていくのは無理な状況であるという議論がなされて、情報セキュリティ対策推進室の人まで、すぐにうまい方法が見つかるわけではない、だから、まあ最低限の核だけつくっておけばいいと。
 こんな発想で八月五日を迎えるんですか。住基ネットに対しては、自治体のほとんどが、これではできない。中田市長だけでありません。もし親友ならば、中田市長の声もよく聞かれた方がいいです。内容を聞かれて、住基ネット、これは自民党の中にも延期すべきだという大きな声がある中、我々は、まず一たん凍結をすべきだと。少なくとも個人情報保護法案が正しいものとして成立をするまでは延期すべきだ、凍結をすべきだ、そういう法案を提出しています。総理も賛成してください。
内閣総理大臣(小泉純一郎君) これは八月五日に実施を予定しているわけです。各自治体も今、準備を進めているんです。そのために、政府としては、その実施の円滑化のためにはいろいろ配慮したい。確かに、不備な点、心配する向きもあるでしょう。そういう点もよく聞きながら、このシステムがうまく機能するように政府としては協力するというのが私は筋だと思っております。
鳩山由紀夫君 非常にセキュリティーに対して認識が甘いんです。
 この中にも、まだいろいろありますよ。自治体の職員は本当に悩んでいるんだ、日夜大変な悩みの中だと。しかも、これは、国民の皆さんに、御存じないといけませんから多少説明いたしますが、それぞれの三千三百ある市町村が、それぞれの皆さん方のお一人お一人のさまざまなデータを全国三千三百のネットでつなげるという話です。となると、いいですか、一つでも、セキュリティーというのは、一つでもそこに穴があけばそこからすべてのデータが入手できてしまうという大変なもろさがあるんですよ、総理。これは、今勉強中だからなんという話じゃなくて、万全を期さなきゃいけない。この委員の中でも、こういったシステムを統合させるというと、みずほ銀行と同じ問題が出てくるのではないかというふうに……(発言する者あり)いや、私が言っているんじゃないですよ、この概要の中で指摘をされている。
 それほど市町村にとっても大変大きな問題でありますだけに、やはりこの問題、総理、これは余り勉強されないで、いい、いいなんという話じゃなくて、真剣に一人一人の悩みを聞かれて、延期すべきときは、また凍結すべきときは凍結すると、総理としての判断をお出しになるべきだ。
内閣総理大臣(小泉純一郎君) これは、住民の利便に資するために、そして同時に、個人情報にも十分配慮しながらこのシステムを実施していこうということであります。確かに、人間がやることですから、一〇〇%間違いないということは言えないと思います。しかし、万が一、不便あるいは支障を来すような場合には、それがないようにできるだけの措置を政府としても講じたい。
 既に準備を進めているわけですし、私は、この問題については、いかに円滑に実施していくか、細心の注意を払いながら、八月五日実施に向けて準備を進めていきたいと思っております。
鳩山由紀夫君 総理はそういうふうにおっしゃるんでしょうけれども、準備が進んでいないから、その焦りの声が、この電子政府、一番詳しいはずの方々のセキュリティーの議論の中で出てきているということ、これだけは、私どもが言っている話じゃありませんからね、専門家の会合でそういう話があるということは、総理の頭の中にしっかりと入れていただかなきゃならない。そのことを改めて申し上げておきます。
 さてそこで、総理、いよいよあと十分足らずになりました。私が申し上げたいのは、総理の、小泉改革の最も大きな過ちは、優先順位、政策の優先順位を完全に間違えられたということです。
 ある学者が言っていました。重い心臓病を患っている日本の経済、そこに、顔のおできを手術するような話で心臓病が治るわけないじゃないか、そのおできの手術すらうまくできていない場合に、一体これでこの国はどうなるんだと。大変に、本当に怒りを込めてそういう比喩で話をされていました。
 これは病気の話ですからこれだけにしておきますが、私が申し上げたいことは、こういう、総理が優先順位を間違えておられる間に、どんどん経済が悪くなってきている。就業者、百三十二万人減ったでしょう。企業倒産、一日六十件ですよ。自分たちの経営がうまくいかなくて、経営不振で自殺をされる人が一日三十人ですよ。きょうも株価は下がっていましたが、株価はまたバブル後最安値を更新しようという勢いでしょう。サラリーマンの給料もずっと四年間減り続けて、結局五年間で四万三千円、平均で給料が下がったというじゃありませんか。これが小泉総理一年数カ月の結論ですよ。
 だから、失業がふえた、失業がふえたから大変だからといって、雇用保険料を今度はまた上げようというんでしょう。雇用保険料を上げる、一千五百億上げるということを、それをやれば、また経営者とサラリーマンにむちを打つ話じゃありませんか。その結果として失業がまたふえるという話がある。
 私どもはもう既に提案しています、雇用保険料を、負担を上げるのではなくて、その分は公共事業、あの田中康夫前知事が、公共事業を見直すべきだ、脱ダム宣言をなさっている。その脱ダム宣言と同じように、公共事業をもっと大胆に減らせば、このぐらいのお金は簡単に浮くんです。そういうやり方で雇用の問題というものに対して片をつけていかないと、雇用保険を負担を上げればさらに失業がふえるなどというそんな政策、小泉総理、こういう政策をやるべきだと本当にお考えですか。
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 最初に引用された学者、どなたかわかりませんけれども、お医者さんに例えましたけれども、その学者は名医とは言えないですね。
 雇用対策が大事だということで、昨年九月十一日テロが発生した後の臨時国会におきましても、テロ対策法案とともに、雇用対策五千五百億円の第一次補正予算を組みました。
 そして、当時から言われていました。九月から、去年を思い起こしてください、学者だか何だかわかりませんけれども、小泉内閣はだめだ、だめだ、改革は失敗した、失敗した。十月危機が起こる、年末危機が起こる。起こらないと、正月危機が起こる。二月、三月、行き詰まって小泉内閣が投げ出すだろう、政権投げ出すだろうと。四月、金融危機が起こる。起こらないと、六月、また危機が起こる。今何月なんですか。不安ばかりあおり立てて、失業率は五%から二けたへいく、そう言っていたんだ。
 厳しい状況はわかっています。しかしながら、既に五月、景気底入れという宣言を出すことができました。しかも、十四年度予算におきましても、予算の重点配分、公共事業においても削減をいたしました。そして、構造改革、いろいろ、政府にできるもの、民間にできるもの、民間にできるものは民間に任せていこうという大方針のもとに、今、着々と構造改革が進んでおります。
 今まで、不安をよくあおり立てる、だめだ、だめだと言いながら、我々は、これから多少の低成長は我慢して、将来の持続可能な経済成長に向けての構造改革が必要だということでやっているんですから、私は、この方針に間違いないと思いまして、これからこの改革路線を堅持して、来るべき大変革の時代に対応できるようなしっかりした日本経済の基盤をつくりたい、それが小泉内閣の使命でありまして、余り、だめだ、だめだ、不安をあおり立てて、ろくなことないです。
 日本というのは、過去、石油危機も円高の危機も乗り越えてきたんです。自信過剰もいけないけれども、自信喪失もいけない。しっかりとした展望を持って、今、小泉内閣は改革を進めているんですから、この路線を曲げることなく、しっかりと今後も進めていきたいと思います。
鳩山由紀夫君 健康保険法改正案を一つとってみても、総理が今お話しされたように、改革だ改革だ、三方一両損だ。しかし、これが構造改革なんだと言いながら、抜本改革をまた先送りしたんじゃありませんか。それで二割から三割、サラリーマンの負担をそれだけ上げたじゃありませんか。何でそんなのが構造改革なんですか。ふざけたこと言っちゃいかぬ。
 この小泉改革を、通常国会、総括して申し上げれば、結局は、小泉さん、あなたは、自民党をつぶすなどと言いながら、改革をやる、やると派手なパフォーマンスをしながら、結局、自民党の枠の中だけの総理だったんじゃありませんか。だから、何もできなかったんだ。何かできているといろいろと自慢げですけれども、結果が全然示していません。
会長(池田行彦君) 鳩山君、お約束の時間でございます。
鳩山由紀夫君 例の鈴木宗男議員の問題にしても、まさに利権構造そのもの、帝京大学の宮路さんの問題も、まさに口きき、自民党の政治の悪さが前面に出ているこの国会だったじゃありませんか。
 この通常国会を通じて明らかにわかったことは、自民党のこの利権政治、もう終えんさせなきゃならないという国民の大きな声があるということだ。ぜひそのことは、小泉総理、改革だ改革だ、上辺だけのことをお話しされないで、自民党をつぶすというぐらいの気迫を完全に失ってしまった小泉さんには、まるで何も私は魅力を感じない。私どもに魅力を感じさせるような本来小泉さんにならなければ、どうだったんだ、この一年二カ月が何だったかと、もっと深刻に考えていただきたい。
会長(池田行彦君) 鳩山君、時間を過ぎました。発言はやめてください。
鳩山由紀夫君 私は、二十一世紀にふさわしいこの国のあり方、まさにそれは自民党政治そのものを、あなたが乗っかっている自民党政治そのものを壊さなければならないということを改めて宣言をして、そのために、野党の皆さん、特に民主党が軸になって新しい時代をつくり上げていく、その決意を改めて申し上げて、私の討論といたします。
会長(池田行彦君) これにて鳩山君の発言は終了いたしました。
 次に、志位和夫君。
志位和夫君 私は、社会保障の負担増の問題について伺います。
 このパネルを見てほしいんですが、来年度は社会保障の史上最悪の負担増の年になる危険があります。
 まず、医療保険ですが、今参議院で大問題になっている法案が通りますと、健保本人三割負担への引き上げ、高齢者一割負担の徹底、そして保険料の値上げで、一兆五千百億円の負担増。介護保険は、来年は三年に一度の保険料の見直しの年でありまして、日本医師会の調査によりますと、平均一割のアップだという。そうしますと、二千百億円の負担増です。それから、年金の保険ですが、財政制度審議会の報告を見ますと、物価スライドの凍結の解除、これを打ち出されておりますが、これをやられますと、物価の下落に従ってカットされることになる。九千二百億円です。それから、雇用保険。厚生労働省の方針、伝えられるところでは、料率を一・二%から一・四、一・六に段階的に上げる。これをやられますと六千億円。合計三兆二千四百億円ですよ。政府の公式の方針です、これは。私、これは非常に重大な、史上最悪の負担増になろうとしていると思います。
 本来、社会保障というのは、国民が苦しい生活をやっているときに生活の支えになるのが社会保障です。ぎりぎりの苦しい生活をやっているときに、逆に社会保障が国民の暮らしに襲いかかるような事態をつくっていいのか、これが問われていると思います。
 私、総理に認識を伺いたいのは、そういうことが強行されたら日本の経済にどういう影響を及ぼすかということについての認識です。先ほど、景気の底打ちということも、底入れということをおっしゃいましたけれども、そういうことを実感されている国民の方、ほとんどいらっしゃらないと思う。実際、倒産、リストラで所得はどんどん落ち込む、消費は落ち込みっ放しです。そういう事態のところに三兆二千四百億円もの、社会保障だけでですよ、負担増がかぶったら、一体経済にどういう影響を及ぼすか。私は、大変深刻な打撃をこうむることは間違いないと思いますが、経済に対する影響という点での総理の端的な認識を伺いたいと思います。
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 社会保障は、国民のいわゆる安全、安心確保という観点から極めて大事な問題であり、経済の面からも十分配慮しなきゃいけないと思います。経済政策と切り離して考えることはできないと思います。経済政策のみならず、政治の安定ということを考えても極めて重要な課題だと思っております。
 同時に、大事なことは、社会保障におきましても、国民がいかに負担していこうかということであります。財政面も、経済面も、そして具体的には、今言った医療にしても年金にしても介護にしても考えていかなきゃならない。そういう中で、私どもとしては今の財政状況をどう思うか。これから高齢化の時代、少子化の時代、今の制度で果たして社会保障はこのままもつのかどうか、保険制度にしてもこのままやっていけるのかどうか、そういうことを総合的に考えなきゃならない問題であります。
 しかも、今、財政にしても極めて深刻な状況でございます。(発言する者あり)そういうことから考えて、今質問に私は十分答えているつもりなんですが、社会保障と経済とどういう関係があるかという質問です、そういう点について、経済政策と社会保障政策を切り離すことはできないと言っているんです。
 私は、それじゃ給付ばかり先にやりますなんて、財政はどうするんですかという観点がなかったら社会保障政策は維持できないんです。保険料ばかり、下げなさい、下げなさいと言ったら、後それを、税金はどの程度持つのかという問題も出てきます。これは経済と密接に関係があるんです。財政政策と密接に関係があるんです。だから、社会保障制度というのは、経済の面も両面に考えなきゃならないということを申し上げているのであります。
志位和夫君 私は、三兆二千四百億円の負担増がかぶせられたら、経済にどういう影響があるかを聞いたんです。それについて何にもお答えにならないじゃないですか。
 私は、今財政が大変だというふうにおっしゃいましたけれども、長野のあの、ダムの中止のために頑張っているその知事をみんなで引きおろすような、そういうむだ遣いをどんどん進めたのはあなた方じゃないですか。私は、そういう税金の使い道ということを含めて、この問題を真剣に検討すべきだ。
 私、総理の答弁を聞いておりまして、今の負担増の深刻さについての認識、全くないなと思いました。
 九七年の橋本内閣、あなたが厚生大臣だったときの、消費税の増税などの九兆円の負担増、あれが景気を非常に大不況に突き落としたというのは、国民の皆さんみんな経験済みのことです。ところが、あのときは、政府の統計でも、国民の全体の所得は景気の回復の中で伸びていたんですよ。毎年、大体五兆円伸びていた。五兆円伸びている上り坂のときでも、九兆円の負担増ですから、差し引き四兆円の所得が減ってああいう事態になった。
 ところが、総理、今は所得が減っているんですよ。景気の悪化で、大体、政府の統計でも毎年二兆円、所得の減少がある。所得が減っているところに三兆円の負担増の追い打ちかけたら、合計五兆円の所得を奪うことになるでしょう。これが経済にどういう影響を及ぼすか。経済が悪くなったら、税も入ってこなくなる。保険料だって入ってこなくなる。現に、二〇〇一年度の税収は政府の見通しより三兆円少ないじゃないですか。健保保険だって、これは一千億円減ることになるんですよ。
 結局、総理のやり方を進んだら、またここに三兆円の負担増をかけたら、ますます景気が悪くなる。税も入ってこなくなる、保険も入ってこなくなる、そしてまた負担増だということになったら、悪循環になるじゃありませんか。ですから、私、ここはその全体を見て、この負担増政策について真剣に見直すべきだ、中止すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
会長(池田行彦君) 内閣総理大臣、志位君の持ち時間は終わっておりますので、簡潔に御答弁願います。
内閣総理大臣(小泉純一郎君) この提示した、先ほど挙げた中では政府の試算とは違う点があります。細かいことは言いません。
 しかしながら、それでは、これは税負担でやれといったらどうやって財源を調達するんですか。共産党の言っていることを見れば、これをやらないで税金、公費を投入するというわけでしょう。これは財政状況をどう考えるのか。どこで増税するんですか。そういうことを言わないで、継ぎはぎをとらえて、ここは負担が多い、負担が多いと。
 医療保険とか社会保障だけじゃありません、経済というのは総合的に考えなければだめです。
会長(池田行彦君) これにて志位君の発言は終了いたしました。志位君、持ち時間は終了しております。
志位和夫君 先ほど言ったように、税金の使い方を変えなさいということを私たちは言っている。そういうことを求めて、負担増の中止を重ねて私は要求して、終わりにいたします。
会長(池田行彦君) これにて志位君の発言は終了いたしました。
 次に、土井たか子君。
土井たか子君 小泉総理、間もなく八月の六日の広島、八月の九日の長崎、原爆投下の日がやってまいりますが、犠牲となられたおびただしい方々の魂の前に気持ちを新たにして平和と非核を誓うことは、ますます大事なことだと思います。被爆国日本にとって、非核三原則、これは揺るがすことのできない国是でございますけれども、小泉総理、まず非核三原則を遵守するということに対しての御認識、御決意のほどを承ります。
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 何回も申し上げていますように、非核三原則、堅持してまいります。
土井たか子君 それなら、私に提案がございます。この際、非核三原則を法制化することに踏み切ろうじゃないですか。
 核戦争を防止する、非核地帯を広げていく、日本から世界に明快なメッセージを送るという、この法制化に向けて努力しようというのが、非核三原則を遵守するときっぱり言われる中身に対してはやはり示していく、これは態度として問いただされると思いますよ。いかがでございますか。
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 日本は戦争放棄、そして武力の行使あるいは武力に、威嚇によって国際紛争を解決しない、これはいろいろな場所で国際社会にも表明してございます。そして、非核三原則におきましても、政府の大方針として事あるたびに言っているわけであります。私は、世界各国におきましても、その日本の方針については十分理解していただいていると思っております。
土井たか子君 ならば、ためらわずに法制化できるじゃないですか。法制化に対して努力をするというお考えを、ひとつ総理の口からはっきりおっしゃっていただきたい。いかがですか。
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 私は、もうこれは既定の事実で、新たに法制化したから強化されるということでなくて、はっきりと、日本は非核三原則、平和国家として十分国際社会で認知されると思っております。
土井たか子君 何かためらわれる理由があるんですか。法制化というのは、これは唐突なことを言っているわけじゃない。国会決議は五回あるんですよ。そして、非核三原則は国是であるということを正式にはっきり決めているんです。
 国是とは、もう御承知だと思いますけれども、国を挙げて是と認めたもの、国家としての方針、国家行動の基本準則、国家理性。このように広辞林には書いてあります、広辞苑にもございます。
 この中身を法制化することに対して、何かこだわりがおありになるんですか、何か思惑がおありになるんですか。これ、法制化したっていいじゃないですか。また、すべきですよ。どうお思いになりますか。
内閣総理大臣(小泉純一郎君) これは国会でも決議されておりますし、する必要がないし、しなくてもわかってもらえると。あえてする必要はないと思えば、別にする必要もない。国会決議は私は重いと思いますよ、国会決議。それで私は十分ではないかと思っております。
土井たか子君 国会決議を重いとおっしゃるなら、それをさらに法制化するということが考えられてもいいじゃありませんか。なぜ、いいことは念には念を入れという話がある。こういう問題に対しては、日本は非核三原則の国であるということを国際的にもはっきりさせていくということは大事です。
 みずからもってこのことに対して明確にしないと、小泉総理はそうここではお答えになっても、小泉内閣の中では、どうも疑いを持たれるような発言というのが出ているじゃないですか。これは、法制化に向けて努力されるということは大事な問題。何でためらわれるのか、その理由をお示しくださいよ。
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 私はためらってなんかないですよ。そんな疑いを持っている人はだれもいない。屋上屋というか、もう疑念がないんだから。そう不安をかき立てる必要ないです。非核三原則、これは国民がみんな同意しているんだから、当然のことですから、あえて当然のことを一々法制化する必要ないじゃないですか。
会長(池田行彦君) 時間は終わっておりますので、簡単にお願いします、土井君。
土井たか子君 この御認識を聞いて、私はここに非核基本法案の要綱を持ってまいりました、基本法の。ひとつ、これはお目通しをいただきます。
 そうして、これから、この中身については、超党派でやはり議員が取り組むべき問題だと私は思いますが、政府とされても、これに対して、国是ですから、言われ続けてきた国是ですから、ひとつ間違いなくこれの実現を期して努力するということでなければならないと思いますよ、総理。
 きょうの御答弁は、総理としたら、おっしゃることとなさることが違う、そういうことにもなりかねない、これはひとつはっきりしていただきます。
会長(池田行彦君) 土井君、持ち時間は終了しておりますので。
土井たか子君 終わります。
会長(池田行彦君) これにて土井君の発言は終了いたしました。
 以上をもちまして、本日の合同審査会は終了いたしました。
 次回は、衆議院、参議院、それぞれの公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後三時四十六分散会


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