衆議院

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第1号 平成15年2月12日(水曜日)

会議録本文へ
平成十五年二月十二日(水曜日)
   午後四時三十分開会
    ─────────────
 委員氏名
  衆議院
   委員長 瓦   力君
   理事 甘利  明君 理事 伊藤 公介君
   理事 津島 雄二君 理事 牧野 隆守君
   理事 海江田万里君 理事 手塚 仁雄君
   理事 北側 一雄君 理事 東  祥三君
      麻生 太郎君    亀井 静香君
      古賀  誠君    高村 正彦君
      中川 秀直君    中山 太郎君
      蓮実  進君    堀内 光雄君
      宮下 創平君    村井  仁君
      山崎  拓君    岡田 克也君
      菅  直人君    中野 寛成君
      野田 佳彦君    羽田  孜君
      冬柴 鐵三君    志位 和夫君
      土井たか子君    熊谷  弘君
  参議院
   委員長 江田 五月君
   理事 河本 英典君 理事 野間  赳君
   理事 北澤 俊美君 理事 木庭健太郎君
      有村 治子君    狩野  安君
      小泉 顕雄君    田村耕太郎君
      中島 眞人君    舛添 要一君
      松田 岩夫君    輿石  東君
      角田 義一君    直嶋 正行君
      日笠 勝之君    富樫 練三君
      筆坂 秀世君    西岡 武夫君
      又市 征治君
    ─────────────
 出席委員
  衆議院
   委員長 瓦   力君
   理事 甘利  明君 理事 伊藤 公介君
   理事 津島 雄二君 理事 海江田万里君
   理事 手塚 仁雄君 理事 北側 一雄君
   理事 東  祥三君
      麻生 太郎君    高村 正彦君
      中川 秀直君    中山 太郎君
      蓮実  進君    林 省之介君
      堀内 光雄君    宮下 創平君
      村井  仁君    山崎  拓君
      岡田 克也君    菅  直人君
      中野 寛成君    野田 佳彦君
      羽田  孜君    冬柴 鐵三君
      志位 和夫君    土井たか子君
      山谷えり子君
  参議院
   委員長 江田 五月君
   理事 河本 英典君 理事 野間  赳君
   理事 北澤 俊美君 理事 木庭健太郎君
      有村 治子君    狩野  安君
      小泉 顕雄君    田村耕太郎君
      中島 眞人君    舛添 要一君
      松田 岩夫君    輿石  東君
      角田 義一君    直嶋 正行君
      日笠 勝之君    富樫 練三君
      筆坂 秀世君    西岡 武夫君
      又市 征治君
 出席国務大臣
       内閣総理大臣   小泉純一郎君
       総務大臣     片山虎之助君
       法務大臣     森山 眞弓君
       外務大臣     川口 順子君
       財務大臣     塩川正十郎君
       文部科学大臣   遠山 敦子君
       厚生労働大臣   坂口  力君
       農林水産大臣   大島 理森君
       経済産業大臣   平沼 赳夫君
       国土交通大臣   扇  千景君
       環境大臣     鈴木 俊一君
       国務大臣
       (内閣官房長官)
       (男女共同参画
       担当大臣)    福田 康夫君
       国務大臣
       (国家公安委員
       会委員長)
       (産業再生機構
       (仮称)担当大
       臣)       谷垣 禎一君
       国務大臣
       (防衛庁長官)  石破  茂君
       国務大臣
       (沖縄及び北方
       対策担当大臣)
       (科学技術政策
       担当大臣)    細田 博之君
       国務大臣
       (金融担当大臣)
       (経済財政政策
       担当大臣)    竹中 平蔵君
       国務大臣
       (規制改革担当
       大臣)      石原 伸晃君
       国務大臣
       (防災担当大臣) 鴻池 祥肇君
 出席内閣官房副長官
       内閣官房副長官  安倍 晋三君
 出席政府特別補佐人
       内閣法制局長官  秋山  收君
 委員外の出席者
  衆議院事務局
       国家基本政策委
       員会専門員    大西  勉君
  参議院事務局
       常任委員会専門
       員        宍戸  洋君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
国家の基本政策に関する件


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    ─────────────
   〔瓦力君会長席に着く〕
会長(瓦力君) これより国家基本政策委員会合同審査会を開きます。
 本日は、私が会長を務めさせていただきます。
 この際、御報告申し上げます。
 去る七日の両院合同幹事会において、今国会の合同審査会についてはお手元に配付いたしておりますとおり合意し、運営されることになりましたので、よろしくお願い申し上げます。
 国家の基本政策に関する件について調査を進めます。
 これより討議を行います。
 討議に当たりましては、申合せに従い、野党党首及び総理は、配分時間を厳守し、相互の発言時間を考慮しつつ、簡潔に発言を行うようお願い申し上げます。
 また、委員各位におかれましても、議事の妨げとなるような言動のないよう、御協力をお願いいたします。
 発言の申出がありますので、順次これを許します。菅直人君。(拍手)
菅直人君 今日は、私にとっては初めての党首討論であります。小沢自由党党首の持ち時間も譲っていただきまして、三十二分間、小沢党首の思いも込めて精一杯質問をさせていただきます。
 総理、最近の国会答弁を見ていると、何か棒読みばかり多くてちょっと元気がないように思いますが、今日はいかがですか。
内閣総理大臣(小泉純一郎君) できるだけ丁寧に、穏やかに、挑発に乗らないように、誠心誠意答弁すると元気がないと言われるんですよ。いろいろ言われますが、今日も真剣に、丁寧に答弁したいと思っております。
菅直人君 私も、イギリスのクエスチョンタイムを見ましたが、ずばっずばっと言い合うわけですから、どうか小泉総理も持ち味を生かして、私もずばっと質問しますから、ずばっと答えていただきたいと思います。
 まず、イラク情勢についてであります。
 今、フランスとドイツ、あるいはロシアも含めてイラクの大量破壊兵器の査察についてはもっとこれを継続すべきだ、もっと強化すべきだ、共同宣言が出されております。私は、日本国民も世界の多くの国民もそのことに賛同している、私もそのとおりであります。
 総理は、この三国、ドイツ、フランス、ロシアのこの共同宣言、更に査察を続けよう、それを強化しようという考え方に賛成ですか反対ですか、ずばっと答えてください。
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 物事、ずばっと答えることのできる質問と、イエス、ノーかと、どっちかと言うと、必ずしもイエス、ノーとは違った答弁もあると思います。
 私は、このイラクの問題につきましては、まずイラクが国連安保理の決議を誠実に履行すること、実行に移すことなんです。これについては国際社会も一致して求めている。しかも、長い間イラクがこれを実施していなかった、そこに問題があるわけでありまして、私は今後も、圧力を強めれば協力するということではよろしくない、もっと早く協力して、あるいは妨害をせずにこの決議を実行に移していれば、これほどまでに国際社会が緊張する必要はなかったんですから、その点を我々はもっと進めているべきではないか。
 なおかつ、これは去る、パウエル国務長官が安保理で報告した以来、疑惑が深まっていますから、それに対して今ブリックス査察団が訪問して協議して、十四日にはその報告の上また議論されます。そういう状況を見ながら、アメリカに対しては国際協調を構築するように引き続き努力すると。そして、国際間の、EUの中でもいろいろ意見が割れているようであります。
 そういう状況を見ながら、日本としては、できるだけこの問題が平和裏に解決するような外交努力を続けていく必要があるんではないかと思っております。
菅直人君 相変わらず結論が分からないですね。
 ドイツの総理も、シラク・フランス大統領も、プーチン・ロシア大統領も、はっきり自分の意見を言っています。今は一か月前、二か月前とは違います。ここまで来て、まだ、いや、イラクが十分に国連決議を尊重しない、履行しないからと。もちろんそのことを踏まえた上で、せんだってのブリクス氏などが言ったことを踏まえて、更に強力に査察をやりましょう、そう言ったんじゃないですか。
 それに対しても、いや、半年前の証文を出すような返事をしないでください、ちゃんと国民に分かるように、日本国政府は、小泉総理はこの問題についてどう考えているんだ、もっと査察を続けるべきなのか、アメリカが言っているように、もう査察はいい加減にして武力攻撃に移るべきなのか、どちらなんですか。
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 半年前じゃなくて、今時点で私はお答えしているんです。
 これは、ブリクス委員長が国連で十四日に報告する予定になっています。そういう状況を見て、NATOの問題も、各国で意見の違いもあるようであります。そして、なされた後、十四日にどのような議論がなされるのか。
 日本としてははっきりしているんです。
 まず、たとえ仮に国際社会、国連安保理が、武力行使の決議がなされても、日本は武力行使はいたしません、戦闘行為には参加しません。そして、これからの対応については、各国、支持あるいはアメリカの武力攻撃に対して支持しない、いろいろ声明出しておられます。意見も言っておられます。そういう中にあって、我々としては、先ほど言ったように、まずイラクが誠実に履行すること、アメリカも国際協調体制構築できるように引き続き努力すること、そして、あと日本がどう対応するかというのは、十四日の査察の報告と議論の状況を見て日本としてはどういう態度を取るかはっきりいたしましょうと。極めてはっきりしているんです。
菅直人君 いや、極めて今の答弁を聞いているとはっきりしていますよ、確かに。つまりは、アメリカが言うのを待ってアメリカに付いていくと、はっきり言えばいいじゃないですか。
 少なくとも、NATO諸国はそれぞれの意見を自分で言っています。総理は、NATO諸国の中で意見の割れがあるそうですがと。我が国だって、アメリカとの間で日米安保条約を結んでいる同盟国ですよ。ドイツだって、NATOに入っているアメリカの同盟国ですよ。はっきり物を言っている。賛成か反対かは構いません。自分の意見を言わないというのは、結局、結論が、アメリカが出したときにそれに付いていく、川口さんはほぼはっきり言っていますけれども。総理も、それなら、それしかありませんと国民の前で言えばいいじゃないですか。
 何一つ言わないというのは、事実上、意見がない。総理に意見がない国というのは、日本はどうなるんですか、一体。
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 今、はっきり意見を言っているんですよ。もう十四日の報告を待って、国際社会の議論を待って、日本としてははっきり態度を表明する。今の時点で菅さんの質問について、右か左か、イエスかノーと言うだけの答弁ではないでしょう。
菅直人君 国民の皆さんが聞いたら、いかに総理が逃げているかということがよく分かるでしょう。
 そこで、少し話を進めますが、総理はスコット・リッターさんという名前を最近お聞きになっていませんか、イラクのことで。
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 何かテストを受けているようなものでね。菅さんの方が知識の豊富で、いかにも総理は知らないだろうと。リッターさん、名前は聞いております。
菅直人君 ここに彼のインタビューの「イラク戦争」というものがあり、また日本でも講演をされたようであります。
 彼は、UNSCOMというんですか、国連大量破壊兵器廃棄特別委員会で、九一年から九八年まで、イラクでこの査察に当たっていた当事者、アメリカ人です。
 彼の言い方は、いろいろありますが、決定的な形で化学兵器や生物兵器が必ずあるというふうには言えない、あるいは化学兵器において五年程度で効力を失うものもあるから、五年間きちっとした査察して新しい生産をやめさせれば無効になるものも多いんだと。そういう話を聞くと、やっぱり徹底して査察をやるべきだと、こう思うのが自然じゃないですか。
 総理は、もうこれ以上同じことを聞いても駄目かもしれませんが、少し話を進めますと、そうするとブッシュ政権というのは一体何を求めているのか、大量破壊兵器の廃棄あるいは開発の阻止を求めているのか、それともフセイン政権打倒を求めているのか、どちらだと思います。
内閣総理大臣(小泉純一郎君) ブッシュ政権のみならず、国際社会はイラクの武装解除を求めているんです。しかも、武装、大量破壊兵器、化学兵器あるいは生物兵器等、イラクが持っているということを認めているからこそ武装解除しなさいということを国連で決議しているわけでしょう。これを説明するのはイラクなんですよ。捜査、査察というのは捜査じゃないんですよ。なくなったことをイラクが説明、責任を示しなさいということを求めているんだけれども、この何年間、イラクは妨害したり協力しなかった。そこに問題があるんです。
菅直人君 よく分からないですね。査察が捜査でない、査察は査察ですよ。怪しいところに行って調べるのはかなり捜査に似ていますよね。それは川口さんみたいに、初めから有罪だからおまえ証拠を出せというのもやり方かもしれないけれども、普通、査察というのは怪しいところを調べてその証拠を見付け出すのが査察ですよね。だから、査察は捜査に似ていると思いますよ。
 そこで、証拠がはっきりしないまま、武力行使を容認する国連決議の新たな決議もなく、アメリカが先制攻撃をイラクに加えるとしたら、これは国連憲章に反すると思いますが、総理はどうお考えですか。
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 前提、これは前提がこうなればということでありますが、これは今後国連で、安保理で協議されることであります。戦争が認められているのは自衛権行使と国連の決議が必要であります。しかし、今後どういう状況になるか今の時点でまだ分からない。アメリカも今の時点で武力行使をするとは言っていない。平和的解決を望んでいると言っている。そういう点を考えて、状況を見ながら日本は判断したいということであります。
菅直人君 これを国民が聞いて、総理は一体何を考えているんだろうかと。何一言言わないじゃないですか。私は、仮定といっても、前提といっても、あり得る前提をはっきり言いました。あり得る前提をはっきり言いました。
 つまり、新たな武力行使容認決議がなく、つまりは一四四一のままで、そして証拠も、この間のパウエルさんの証拠は必ずしも十分じゃない。ですから、もっと決定的な証拠もないまま、だから査察を継続しろというのが私の意見ですが、総理は査察を継続しろとも言わない、十四日まで待ってます、待ってます。そういう場合に、もしアメリカが一四四一以外の決議がなくて一方的に先制攻撃やった場合は国連憲章に違反するんじゃないですかというのに、いや、自衛権が何とかでと、自衛権のことがちゃんと国連憲章に書いてあるわけですから、その前提の下でそういう認識をお持ちかどうか、改めてもう一度だけお聞きします。
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 一四四一は、これはイラクに更に重大な違反があった場合には国際社会として一致して対応しなきゃいかぬと。最後の機会を与えると言っているんですよ。イラクがこのような疑惑がないということを証拠示さなきゃいけないんですよ。そして、フランスもドイツも含めて、違反行為をしているということで一四四一決議なされたんでしょう。それに対してイラクがこたえてないから、いまだに査察官が、査察団が行っている。その協議をして更に十四日、どういう報告がなされるのか、そこなんですよ。
菅直人君 余りこういう言葉は使いたくないですけれども、ちょっとお粗末じゃないですか。
 つまりは、各国の首脳はここまで来てきちんと……(発言する者あり)
会長(瓦力君) 静粛に願います。
菅直人君 自分の言葉で語っているのに、十四日まで待つ、八日まで待つ、何とかまで待つ。少なくともドイツやフランスや、あるいはロシアや中国もきちんと自分の意見を言っていますよ。ですから、アメリカに後を付いていくと言うんなら、その意見をきちんと国民に伝えればいいんですよ。それも言わないで、いや、付いていくかどうかも分かりません、アメリカも武力行使はするかどうか分かりません。今、何ですか、イラクに重大に違反があった場合、重大な違反があるという前提でやっているんじゃないんですか。訳の分からないことを余り言わないでください。
 まあ、これだけで終わっても問題ですから、これと同じように、これ以上に重大でもある問題、北朝鮮の問題に話を持っていきます。
 総理は、(発言する者あり)安倍晋三さん、何かあったらちゃんと言ってきてください。
 総理は、さきの予算委員会で、金大中大統領や盧武鉉次期大統領の太陽政策を支持すると言われました。どういう具体的な行動を、支持するということは何らかの行動をともに取るということにもなるわけですが、どういう具体的な行動を想定して支持すると言われたんですか。
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 金大中大統領は、俗に言う太陽政策といいますか包容政策といいますか、話合い路線を取っております。私は、今それを太陽政策と言うことにしましょう、支持すると言っております。そして、次期大統領であります盧武鉉氏もこの太陽政策を支持していくということであります。
 どういうことかといいますと、これは話合い路線なんです。ブッシュ大統領が、イラク、北朝鮮、悪の枢軸という発言をされましたけれども、武力によってこの北朝鮮の核疑惑の問題、拉致の問題等を解決するのではなく、政治的、平和的解決でやっていこうということが金大中大統領の考え方であり、私もその線に沿って今まで金大中大統領とも話し合ってまいりました。
 また、いずれ近いうちに盧武鉉次期大統領とお会いして会談する予定ですが、今後とも、北朝鮮に対しましては、話合い、政治的解決を目指して、韓国とアメリカの密接な連携はもちろん、周辺国ともよく協議をしていこうということであります。
菅直人君 総理は、あるときには、たしかこれはプリマコフさんのとき、プリコフスキー氏との会談では、まず北朝鮮がNPT脱退決定を撤回するなど対応すべきだ、瀬戸際政策を続ける限り対話は難しいという考えを強調したと。そんな古い話じゃないんですよ。こういうふうにもあります。
 一昨日、私は、盧武鉉次期大統領、金大中大統領と会談をいたしました。その中でかなりはっきりしました。盧武鉉次期大統領の考え方は、今、核疑惑の問題がある。これに対して、先ほど総理がプリコフスキー氏に言ったように、まず北が核カードを捨てるべきだ、そうでなければ話合いには応じられない、こういう姿勢をアメリカが取るとすれば、北朝鮮はそれに応じないかもしれない。妥協するかもしれませんが、応じないかもしれない。応じないときにはどうなるか。論理的に言えば、国連決議を得てアメリカが北を攻撃することになる。そうすると、北はまず間違いなく韓国を攻撃するであろうと、これは盧武鉉さんたちの見方です。
 そのことは何としても避けたい。何としても避けたいから、ここは何とかアメリカに、ある意味ではそういう前提なしできちんと話合いに乗ってもらいたい。わざわざ鄭大哲さんも同席をされましたが、特使で送ってアメリカを説得する。自らの言葉でブッシュ氏に、ブッシュ大統領に会って私は説得したいと盧武鉉さんは言っておられました。総理もそれと同じ行動を取るという意味で支持をされるんですか。
 私は、後ほど自分の考え方を申し上げますが、基本的にはこの盧武鉉さんの考え方に賛成です。総理も太陽政策に賛成というのは、一緒になって、まず前提条件なしででもアメリカが北との話合いに乗るべきだと総理としてもブッシュ大統領に要請するということですか。
内閣総理大臣(小泉純一郎君) これは、菅さんも盧武鉉次期大統領と会談されたようでありますが、私も先日、盧武鉉大統領、次期大統領の特使とお会いしました。その際に、三つの条件を挙げておられましたね。まず、韓国は北の核を容認しない、二つ目には、この北との問題について政治的、平和的解決を望む、三つ目が日本とアメリカ、韓国としては緊密に連携を取っていく。私も同感だとお話ししました。
 今後、この問題につきましてはアメリカはかなりきついことを言っておりますが、脅しによる交渉には応じないけれども、常に話合いのドアは開けてあるということは言っております。
 そして、日本としては、韓国が北朝鮮にとっては一番近い国でありますけれども、日本も正に隣国であります。アメリカに対しても、韓国、日本の話というものを十分聞くべきだし、今後の対応についても両国と密接に連携すべきだということは、昨年、メキシコでのAPECの会合の際には、ブッシュ大統領、金大中大統領、私の三者会談でも一致しております。そういう中で韓国で政権交代があった。
 私は、この路線は今後とも続けていくべきだと思っております。
菅直人君 相変わらず抽象的で何も答えていませんね。私は具体的なことを言ったんですよ、具体的なことを。
 今、北朝鮮ははっきりと脅しているんですよ。はっきりと我が国やアメリカを脅しているんですよ。脅しているときに、じゃ、脅している限りは交渉に応じない、話合いに応じないのか。それとも、脅しているかもしれないけれども、それでも話合いが必要だということでアメリカに話合いに応じるようにと説得するのか。盧武鉉さんはその説得にブッシュ大統領に会いに行ってもいいと、こう言っていました。(発言する者あり)安倍晋三さん、そこでやじを飛ばすのはやめた方がいいですよ。言いたかったら委員会に出てください。
 そこで、私のこの問題に対する若干の考え方を申し上げますから、皆さんにもよく聞いていただきたい。
 実は、韓国の核開発に関する脅威というか、その意識は私はちょっとびっくりしました。意外なほど脅威を強くは感じていません。つまり、北の核開発は南をねらったものじゃない。アメリカあるいは日本だと。ミサイルの中距離、長距離もそうです。ですから、逆に言えば、韓国にとっては北から、何らかの形でアメリカの攻撃を受けたときに南に対する攻撃があること、そのことが最大に避けなければいけない戦略目標です。
 アメリカにとっては何か。アメリカは北の核開発そのものももちろん反対ですが、それを容認したら日本も核開発をする。まあ、元気のいい人が後ろの方にいますからね。そういうことになってくるんではないか。そのことを恐れているんです。
 そして、日本は二つの問題があります。つまりは、日本は核開発に対する、この日本にとっての安全保障の最大の脅威をどう取り除くか、拉致事件に対して根本的な解決をどうやって北朝鮮にのませるかというこの三つがあります。それぞれ若干重視する点が、ニュアンスが若干微妙に違っているんです。
 ですから、私は、この日本とアメリカと韓国が若干その違うニュアンスを一本にきちっとまとめたらどうか。まず北朝鮮に対しては、第一に核兵器開発は永久に放棄する、第二に改革・開放政策を進めていく、第三に拉致事件に対してはその解決のために最大限の努力をする。これに対して、いいですか、これに対して、それをするならば、アメリカは軍事力によって今の政権打倒はやらないことを約束する、日本は日朝の間での国交回復をし、その上で経済的な援助を行うことを約束する、韓国は今の南北の経済交流などを更に拡大して交流を深めていく。つまり、このワンパッケージの三つの考え方、三国の考え方を提示する。(発言する者あり)今、やじで、金正日体制を守るのかという変なやじが飛びました。守ろうとしているんじゃないんです。守ろうとしているんではなくて、金正日体制が暴発をしたときの、そのことをいかに防ぎながら次の事態に動かしていくか。
 金大中大統領が二つの例を私との話で挙げられました。二つの例、一つはですね、聞いてください。レーガン大統領がかつてソ連を悪の帝国と呼んだ。しかし、ニクソン、失礼、アメリカとソ連はその後いろいろな形で、今、ソ連が崩壊したこの歴史を我々は知っています。中国も、かつては今の北朝鮮にある意味では似たような体質はあったけれども、ニクソンがそれを訪問して変わる一つのきっかけになった。ですから、今の政権を倒すことそれ自体が目的なのか、これはフセイン政権もそうですよ。それとも、それは軍事的に、私はあの北朝鮮の国民が変えるのはどうぞ御自由ですと、もちろん。軍事的にそのことを打倒する、フセイン政権を打倒するといったような形で取るんではなくて、そういう考え方をパッケージにして提示をしたらどうかと。この提案に対して盧武鉉さんは基本的に賛成だと言われました。
 総理は、何か私の提案に対して御意見があれば聞きたいし、もし総理にそれに替わる対案があるならきちんとお答えください。
内閣総理大臣(小泉純一郎君) この北朝鮮との問題は、菅さん言われましたように、拉致の問題、核兵器の問題、ミサイルの問題も含めまして、そういう問題を解決して日朝国交正常化しようというのが前提なんです。その際に、日本としては、今政権交代とか金正日体制の政権交代という話が出ていましたけれども、北朝鮮が国際協定並びに国際法を遵守して、この核の疑念、これを払拭することによって孤立しないで国際社会の責任ある一員になるのが一番利益になるんだということを私は何回も金正日総書記にも、九月十七日、話したときに言ったんです。
 そして、ブッシュ大統領についても、この問題については、日本、韓国の意見をよく聞くと言っているんです。そして、我々としては、今確かに北朝鮮は正にきついといいますか、核の脅しといいますか、挑発的なことを言っています。日本としては、そういう状況を見ながら、今までの方針のとおりに粘り強く、日本、韓国、アメリカのみならず、各国にも働き掛けてもらうと。北朝鮮は孤立してはいかぬと。そして、平和的、政治的解決を国際社会が望んでいるんだから、その方向に一歩でも踏み出せということをあらゆる機会を通じていろんな人に働き掛けているわけですから、私は、この路線をもって今後韓国の次期大統領にも会いますし、ブッシュ大統領にいたしましても、北の問題については日本の意見、韓国の意見、よく聞いて対応したいということをはっきり言っているんですから、私は、こういう面において、この本質的に平和的、政治的解決を望もうという菅代表の意見にそんな違いはないと思うのであります。
菅直人君 とにかく意見を聞く意見を聞く、自分の意見は何も持っていないというのが今の結論です。
 そこで、少し別な話をします。
   〔資料配付〕
菅直人君 お手元に先日の予算委員会でパネルにしたこの表をお渡ししましたが、あのときに総理は二〇一〇年初頭にプライマリーバランスを黒字にするというその目標は変えられないで発言をされました。しかし、塩川財務大臣も竹中経済担当大臣も、税収の見通しが大幅に狂った、デフレ克服が明らかに遅れている、総理自身も改革の成果が上がるのはまだ時間が掛かると。
 つまりは、当初であれば今年度、平成十五年度の予算のときには、その赤字幅は金額で十八兆の予定だった、去年の見通しでは。しかし、現実には二十六兆九千億、約九兆円も赤字幅が増えている。それなのに、最後の到達は大丈夫です、二〇一〇年です。つまり、山に登ると言って、十年掛かって山に登る。一年目、二年目は下がっていながら山へ登っていく。大丈夫です、最後は、急ぐからと。だれが急ぐことを信用するでしょうか。
 まして、今年の、平成十五年度の予算に対して、既に与党では補正予算の話もちらほら出ています。一般的に補正予算を組めば、少なくとも、いい悪いはともかく、この赤字幅が広がることは間違いありません。総理は、このプライマリーバランスを……
会長(瓦力君) 菅直人君、時間が来ておりますので簡潔にお願いします。
菅直人君 はい、分かりました。
 公約を守れるのかどうか、また後になって大したことがないと言われないようにしっかり答えてください。
内閣総理大臣(小泉純一郎君) これは、二〇一〇年代、この目標に掲げて努力しようということであります。楽な目標ではありません。楽ではありませんけれども、歳出改革に努めて努力していこうと、そのために一つの目標を掲げているわけであります。
菅直人君 最後まで何一つ答えられなかったのは残念だということを指摘して、質問を終わります。
会長(瓦力君) これにて菅君の発言は終了いたしました。(拍手)
 次に、志位和夫君。(拍手)
志位和夫君 私は、医療費の自己負担増の問題について質問します。
 政府がこの四月から強行しようとしている健保本人自己負担の三割への引上げに対して、今日、日本医師会、日本歯科医師会、薬剤師会、看護協会などがそろって負担増凍結の全国一斉行動を行うなど、国民の怒りはずっと広がってきております。野党四党は、本日、国会に負担増凍結の共同の提案を提出いたしました。
 私たちがこの負担増に反対する最大の理由は、医療費の自己負担増が必要な受診を抑制し、治療を中断させ、結局国民の健康悪化を引き起こす、ここにあります。九七年に健保本人の自己負担が一割から二割に引き上げられた際に、これは厚生省の患者調査ですが、一二%、三十五万人の患者が受診をやめています。これが三割負担になったらどうなるか。一層深刻になる。国民皆保険とは言えなくなる。これは許せないというのが国民の声であります。
 この国民の声に対して、総理が繰り返し答弁でおっしゃっているのは、国保は既に三割負担だということであります。国保が三割なら健保も三割にして何が悪いと繰り返しておられます。しかし、私、その発言聞くたびに、総理は国保の三割自己負担について何の問題もないかのように言うけれども、これはどんなに重いものか、どんな実態なのかを御存じなのかというふうに思います。
 私、今日、これは政府の統計から作成したグラフですが、これは、赤い棒は百人当たりの高額療養費の件数です。(図表掲示)政管健保本人は年間百人当たり三・二件です。それに対して市町村国保、高齢者と退職者を除く一般分で十七・七件です。高額療養件数が国保が五・六倍になる。高額療養費というのは、皆さん御存じのように、自己負担を超えた場合に、上限超えた場合に全額保険から給付される、こういう仕組みでありますけれども、要するに病気が重症化したケースです。重症率が五・六倍です。高齢者、退職者除いています。
 これは、私は、結局、二割負担の健保に比べて三割負担の国保、これが五・六倍になるというのは、結局、いろいろな要因あるかもしれないけれども、三割負担というのは重い、このためお医者さんに掛かれないで結局重症化するということを示しているんじゃないでしょうか。
 総理、どうでしょうか。どういう認識をお持ちでしょうか。
内閣総理大臣(小泉純一郎君) これは、二割から三割負担になって、それは若干負担が重くなるからお医者さんには少し行くのを控えようかなという方もあるかもしれません。しかし、やはりどうしても体が悪いと、お医者さんに診てもらおうというんだったらば、それは三割の負担というのはやむを得ないかなということで、必要な医療というものは私はおろそかにされるとは思っていません。特に、上限がありますから。
 これ、三割負担といっても、何回も言っていますように、百万円掛かった場合には三十万じゃありませんから。上限は、今までだったら六万三千六百円でしたか、今度は七万二千円ぐらいになりましたけれども。幾ら、百万、二百万掛かっても、その上限がありますから。これは必要な医療は診ていただく。
 そして、何回も行っても、それは料金が低ければ低いということはいい面もありますが、同時に、この保険、皆保険制度をどうやっていくかと。病気にならないで保険料を負担している方、これからますます高齢者が増えていきますから、当然病気になる方も増えてまいります。そういう際に、どの程度の保険料、病気にならない人が負担していただけるのか。また、税金にしても、もう七兆円程度毎年税額投入していますから、このいわゆる患者負担というものを抑えていくと、またこの保険制度そのものの持続可能性に問題点が起こってくる。
 そういう点を総合的に考えて、私は、これからも患者さん自身がどの程度負担するのか……
会長(瓦力君) 総理、手短にお願いします。
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 保険料をどの程度負担するのか、税金どの程度負担するのかということを、やはり一部だけじゃなくて総合的に考えていただきたいと。今回、三割負担といっても、乳幼児に対しては今度は二割負担ということになるんですから、その点もやっぱり考えていただきたいと思います。
志位和夫君 私は、三割負担が結局重症化の一つの要因になっているんじゃないかということを聞いたわけなんですが、それについては何のお答えもない。
 必要な医療は確保されているというふうにおっしゃいますが、中小企業の皆さんで作っている全商連の調査を見ますと、業者の婦人の方は、病気の自覚症状がありながら、八・三%の方がお医者さんに行けないという統計もあります。それから、初診から亡くなるまで、四人に一人は一か月以内という、すなわち、我慢に我慢を重ねてお医者さんに行ったときは手後れで、亡くなるというケースがたくさん、これ統計として表れていますよ。
 私、持続可能性ということを総理はおっしゃったんで、もう一度これを見てください。結局、一人当たりの医療費、これは青い棒です、政管健保の場合は年間十四・二万円、国保の場合は十八・九万円です。結局、一・三倍になるんです、一人当たりの医療費が。結局、病気が重症化すると、結局医療費も引き上がってしまって、制度自体が持続不可能になるんですよ。これをやはり本当に改革しようと思ったら、今の税金の使い方変える必要があるというのは予算委員会でも申しました。
 この問題について、私は、国保と健保の格差を問題にするんだったら、国保に合わせて健保を引き上げるということじゃなくて、国保の三割負担を下げるべきだと。これは元々、八四年の国保、健保をですね……
会長(瓦力君) 志位君、時間が迫っておりますので簡潔に願います。
志位和夫君 自己負担導入したときに政府が公約したことですから、やはりこれは逆の方向に向かっている。中止を求めたいと思います。
 質問を終わります。
会長(瓦力君) これにて志位君の発言は終了いたしました。(拍手)
 次に、土井たか子君。(拍手)
土井たか子君 私は、社会民主党の団として韓国を訪ねまして、十日の日に金大中大統領、そして更には盧武鉉次期大統領と会談をいたしました。その節、ただいまの北朝鮮の核問題、そして今日ここでも問題になっておりますイラクに対してのアメリカの武力攻撃という問題に対して話題に当然いたしましたけれども、お二方からは戦争を回避するということのための大変強い意思をひしひしと感じ取る話でございました。
 まず、この北朝鮮の核開発の問題に対しては、先ほど総理がおっしゃったんですが、これ韓国の方が核開発は容認できない、容認しないと。そして、この解決のためには平和裏に解決されるということでなければならないと。三つ目には、日本、アメリカ、そして韓国がお互い連携してこの問題に当たると。これ、韓国側の意見なんですね。韓国側が出された三原則と申し上げていいでしょう。
 私は全面的にこれ同感です。賛成ですが、しかし日本が一体どういうふうなこれに対しての対応ということを基本方針として持ちながら臨んでいくかということが一向にはっきりしないんです。
 韓国政府は、北朝鮮に対して、経済的にまず支える、安全を保障するということで北朝鮮の譲歩を引き出そうということに必死な外交努力を続けておりますし、ロシアあるいは中国も同様な努力を今行っているわけですね。
 しかし、我が国政府は、北朝鮮問題の平和的な解決を唱えておりながら、あの平壌宣言以降、どのような外交努力を払っておられるかというのがどうも分からぬというのが外から聞こえてくる声なんです。
 金大中大統領との話の中でも、国交正常化交渉がクアラルンプール以来、十月の末だったわけですが、行われなくなっているということは非常に残念だ、国交正常化交渉と同時にこの拉致問題や核問題に対して交渉していくということが並行して行われるということであっていいのではないかと。日本のことに対してとやかく言う話ではないがという前置きで、そういう御発言もございました。
 我が国の議論は、どうも最近は、金正日体制そのものについてこれはもう問題だという不信の傾向が非常に強うございまして、この問題について何とかならない限りは話にならないというふうな風潮というのが目立ち過ぎるぐらい出てきているというふうに思うんです。
 盧武鉉次期大統領の話の中では、相手に対して気に入らないからと言って話をやめてしまったら外交交渉成り立たないと。外交交渉というのは、やっぱり対話をしっかり続けていくということであって、そしてそれがやっぱり外交にとっては難しい問題を解決していくことのための大事な秘訣であると。したがって、相手に対して、気に入らなければ気に入らないほど、やっぱり外交交渉をしっかりやる必要があるということでありました。
 日本の、アメリカ政権に対しても、対決姿勢ということが今あらわにこの問題に対してはあるわけですから、ひとつこの問題に対しての対決路線の変更を迫るべきだと思うんですね。そうして、やはり今後どのようなメニューをもってこの問題に臨んでいかれるか、外交方針というのがどうもはっきりしませんよ。
会長(瓦力君) 土井君、時間が参っておりますので、簡潔に願います。
土井たか子君 総理、このことについてお答え願いたいと思います。
内閣総理大臣(小泉純一郎君) もう日本の北に対する姿勢は、去年の九月十七日、日朝平壌宣言を発してから一貫しております。拉致の問題、安全保障の問題、過去の問題、現在の問題、将来の問題、総合的、包括的に解決しながら北との正常化交渉に臨む。正常化、持っていきたい。その手段として韓国ともアメリカとも緊密な連携を取っていく。さらに、ロシアや中国、周辺国、関係国とも協力していく。
 これはもう一貫して変わっておりません。その点をよく御理解いただきたいと思います。
会長(瓦力君) 時間が過ぎておりますので、これにて土井たか子君の発言を終了いたします。
   〔土井たか子君「一貫している、一貫しているとずっとおっしゃいますけれども、具体的に外交方針というようなことを……」と述ぶ〕
会長(瓦力君) これにて土井君の発言は終了いたしました。
   〔土井たか子君「それが見えない。このことを申し上げて、終わります」と述ぶ〕
会長(瓦力君) 以上をもちまして、本日の合同審査会は終了いたしました。
 次回は、衆議院、参議院、それぞれの公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後五時十七分散会


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