衆議院

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第17号 平成13年5月31日(木曜日)

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平成十三年五月三十一日(木曜日)

    午後二時二十三分開議

 出席委員

   委員長 御法川英文君

   理事 荒井 広幸君 理事 川崎 二郎君

   理事 渡海紀三朗君 理事 平林 鴻三君

   理事 荒井  聰君 理事 田並 胤明君

   理事 若松 謙維君 理事 黄川田 徹君

      赤城 徳彦君    浅野 勝人君

      岩崎 忠夫君    河野 太郎君

      左藤  章君    佐田玄一郎君

      坂井 隆憲君    新藤 義孝君

      鈴木 恒夫君    谷  洋一君

      野中 広務君    平井 卓也君

      宮路 和明君    山本 公一君

     吉田六左エ門君    伊藤 忠治君

      大出  彰君    大畠 章宏君

      奥田  建君    玄葉光一郎君

      鈴木 康友君    武正 公一君

      中村 哲治君    松崎 公昭君

      松原  仁君    山井 和則君

      山村  健君    高木 陽介君

      山名 靖英君    佐藤 公治君

      春名 直章君    矢島 恒夫君

      重野 安正君    横光 克彦君

      松浪健四郎君

    …………………………………

   総務大臣         片山虎之助君

   総務副大臣        小坂 憲次君

   総務大臣政務官      新藤 義孝君

   総務大臣政務官      山名 靖英君

   総務大臣政務官      景山俊太郎君

   政府参考人

   (総務省総合通信基盤局長

   )            金澤  薫君

   政府参考人

   (総務省政策統括官)   高原 耕三君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局

   経済取引局長)      鈴木 孝之君

   政府参考人

   (消防庁長官)      中川 浩明君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   藤井 秀人君

   政府参考人

   (財務省理財局次長)   牧野 治郎君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  伊藤 雅治君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局安

   全衛生部長)       坂本由紀子君

   政府参考人

   (経済産業省製造産業局次

   長)           小平 信因君

   総務委員会専門員     大久保 晄君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月三十一日

 辞任         補欠選任

  河野 太郎君     鈴木 恒夫君

  滝   実君     岩崎 忠夫君

  玄葉光一郎君     大畠 章宏君

  山井 和則君     鈴木 康友君

  野田  毅君     松浪健四郎君

同日

 辞任         補欠選任

  岩崎 忠夫君     滝   実君

  鈴木 恒夫君     河野 太郎君

  大畠 章宏君     奥田  建君

  鈴木 康友君     山井 和則君

  松浪健四郎君     野田  毅君

同日

 辞任         補欠選任

  奥田  建君     玄葉光一郎君

    ―――――――――――――

五月三十一日

 地方公共団体の特定の事務の郵政官署における取扱いに関する法律案(内閣提出第六五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 電気通信事業法等の一部を改正する法律案(内閣提出第九五号)

 消防法の一部を改正する法律案(内閣提出第六一号)

 行政機関が行う政策の評価に関する法律案(内閣提出第八七号)

 地方税法の一部を改正する法律案(内閣提出第九八号)


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     ――――◇―――――

御法川委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、電気通信事業法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として総務省総合通信基盤局長金澤薫君、総務省政策統括官高原耕三君、公正取引委員会事務総局経済取引局長鈴木孝之君、消防庁長官中川浩明君、財務省主計局次長藤井秀人君、財務省理財局次長牧野治郎君及び厚生労働省医政局長伊藤雅治君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

御法川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

御法川委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。赤城徳彦君。

赤城委員 時間が限られておりますので、早速質問に入りたいと思いますが、電気通信事業法の質問に入る前に、大臣に官民の役割についてお考えを伺いたいと思います。

 と申しますのは、実は私、国土交通委員会の理事もしておりまして、きのうまではいわゆるJR法の質疑をしていました。これはJRを完全民営化するという中身なんですが、その質疑の中で、質問する側も、答える扇大臣の方も一様に、かつての国鉄からJRに民営化して本当によかったよかった、こういう話をするのです。

 何がよかったかといって、まず、職員の態度が変わった。それまでは、親方日の丸でいつも威張っていたのが、JRになってからは、おはようございますとあいさつをしてくれる、朝行くと何度も何度も次から次へあいさつされて、もう何回もあいさつをしてもらったとか、そんな話がありました。それから、国鉄時代は非常に非効率で、赤字を出して、何年間かで七兆円国の税金を費やした。それがJRになったら逆に税金を払う側になって、三兆円税金を納めてくれている、めでたしめでたしというふうな話をされていました。

 こういう改革の議論をするときには、ユーザーとか国民の側から見て、どういう問題があって、それが民営化することによってよくなるのかどうなのか、そういうことを国民の視点で見るということが大事だと思います。

 そこで、小泉総理から大変大きな問題が提起されています郵政三事業について、果たして、利用者国民の目から見て、職員が威張っていて態度が悪いとか、経営が非効率で税金を費やしているとか、何かそういうふうな問題があって民営化せよ、そういう国民の声があるのかどうか。国民の視点から見た三事業の評価を大臣、どういうふうに受けとめておられるのか、まず伺います。

片山国務大臣 今、赤城委員から問題の御提起がございましたが、郵政三事業につきましては、大変有力な民営化推進論もありますし、今、赤城委員が言われましたように、大変うまくいっているではないか、頑張っているではないか、今のままでも十分ではないか、こういう意見がありますね。少なくとも、私どもが、例えば地元に帰って皆さんからいろいろな意見を聞きますけれども、よくやっているという意見が多いことも私は事実だと思います。

 ただしかし、マスコミ界や学者の皆さんだとか、確かに今のままの、特に郵貯、簡保の金融マーケットにおけるいろいろな影響力等を含めての議論もあることも事実で、そこで、我々としては、例の中央省庁再編の行革のときに与党として大議論して、最終的には国会の承認を受けて、二年後には国営公社に移行する、その際、残った郵便事業についても民間参入を検討する、こういう条文を入れましたね。ただ、その中に、民営化等の見直しはしないものとするという条文も入っていることは事実でございます。

 当面、我々は、二年後の国営公社を国民の期待するようないい公社にする、それから、民間参入を郵便についてどこまでどういうふうに考えるか、こういうことをしっかりと議論して、そういう法定化というのですか制度化をしたい、そして、その後に、これは与党三党の合意で、小泉内閣ができるときに決まったわけですから、国民的な議論の中で、その後のあり方については、仮に新しいあれが出るのなら方向づけをしていく、こういうことで我々としては対応したいというふうに思っておりますから、今、赤城委員が言われましたように、国民の声が非難ごうごうというふうには私も全く受け取ってはおりません。

赤城委員 この問題を議論し出すと切りがなくなりますので、この辺にしますけれども、いずれにしても、マスコミとか学者が決めるわけではなくて、やはり国民が何を望んでいるか、郵政三事業に対して大変な期待がある、そこから遊離してしまったり、それを踏みにじるようなことがあってはもはや改革ではないと思いますので、大臣もよろしくお願いをいたしたいと思います。

 それでは、電気通信事業法の改正でございますけれども、私は、特に卸電気通信役務制度を中心に伺いたいと思います。

 自治体や公益事業者等が有する光ファイバー網を活用する、これは大変有意義なことだと思いますが、まず、電気通信事業者以外が保有する光ファイバー網というのがどのぐらいあって、今回の制度によってそれがどのぐらい活用されると見ているのかを伺います。

小坂副大臣 御指摘のように、地方自治体や電力会社、鉄道事業者等が光ファイバーを保有しているわけでありまして、これがどのくらいあるのかということで、ただいま御指摘の電力会社、鉄道事業者、地方自治体が保有するものを本年の四月に調査を行ってみました。その結果、合計で約十三万キロメーター強を保有している、こういうふうになっております。

 また他方、電気通信事業者が敷設している光ファイバー網はどのくらいかあわせて申し上げておきますと、平成十一年度末において、中継系、加入者系合わせまして五十二万キロメーター、ケーブルの長さであります。NTTがこのうちの約半分、二十五万キロメーター、このような状態になっております。

赤城委員 この制度によってどのぐらい利用が見込まれるかということも伺ったんですが、ちょっとその点は結構でございます。

 今の電気通信事業者、現在保有しているのも相当な距離があります。中継系はほとんど整備されていますし、大都市部、都市部では相当ネットワークというのは整備されています。そうしますと、前に、NTTの方からだったと思いますが、聞いたんですけれども、もう基本的な部分は整備されていますから、JRとか電力会社とかが持っているものを余り使う意味がない、そういうふうな話も聞きました。

 そこで、今一番大事なのは、加入者系、特に各家庭までどういうふうに引くか、それから、地方でどういうふうに整備していくか、こういうことだと思うのですね。そういうことからしますと、今度の卸電気通信役務制度というのが、今ある電気通信事業者が持っているネットワークと重複してしまうのではないかというのが一点。それから、課題であります加入者系、地方、そういうところに余りプラスにならないのではないかなという点が一点であります。その点についてお伺いします。

小坂副大臣 今、答弁申し上げた中の、それでは電力会社、鉄道事業者等あるいは地方自治体が持っている光ファイバー、どの程度活用できるか。活用する方策でございますけれども、従来は、いわゆる心線貸し、あるいはIRUという略語で言われておりますが、廃棄し得ない利用権といいますか、長期安定的な使用権を設定する、こういった契約に基づきまして貸し出されておりました。

 今回それに加えまして、自治体あるいは公益事業者等がみずから第一種電気通信事業者になって卸電気通信役務制度を活用できる、こういうような選択肢が広がったわけでございまして、こういったものを利用しながら一体どのくらい貸し出されるか。先ほどの御質問にもあわせてお答えを申し上げますと、現時点では、自己利用のためにそもそも保有しているものでございますから、それをどの程度貸し出されるかというのはにわかには予想しがたいものでありますが、こういった選択肢がふえた結果、電気通信事業者へ貸し出されるものがふえるという傾向にありますし、またその方向で誘導していきたい、こう思っているわけでございます。

 しからば、それで幹線はいいけれども、加入者系が問題なんだろう、こういう御指摘でございまして、そのとおりで、加入者系が一番の問題でございます。

 NTTの事業者は、中継回線網、いわゆるバックボーン回線と呼ばれますが、これは光ファイバー化をほぼ完了しているわけでありまして、それではその先は、現在でどのくらいになっているかといいますと、東西NTTの光・IP通信網サービスというのがこの三月末にスタートをしたわけですが、スタートしてから三月末までで百六十契約という、ほとんど実数としてはまだ上がっていない。この後に、マンション等の集合住宅で、もう既にそこに一気に入るような場合には光を引いていこう、こういう動きも新聞等に報じられておりますので、急速にふえてくるとは思いますが、しかし、それもおっしゃるように都市部が中心でございます。

 そういう意味で、都市部においては、委員御指摘のとおり、大分重複するぐらいにたくさん出てきているだろう、こういう御指摘もありますが、一方、地方においてはまだまだそういう意味では格差がございます。

 したがって、この卸電気通信役務制度によりまして、特にアクセス網の光ファイバー化を促進するようにしてまいりたいと存じますが、しかし、地方の低需要の地域については、国、地方自治体の敷設する光ファイバー等を活用したサービス展開を積極的に検討していかなければならない、こう思っております。今後、地方自治体、公益事業者等の光ファイバーが相互に補完しながら、我が国の通信ネットワーク、光ファイバー網が一層進展していくように、加入者系の光化についても、施策を講ずる必要性等をつぶさに検証しながら見守ってまいりたい、このように考えております。

赤城委員 今、副大臣からも言われましたように、中継系のネットワークはもう既に光ファイバー化が済んでいます。大都市部、政令指定都市や県庁所在地級のエリアでは九三%整備されている。ところが、人口十万未満の地方都市では一四%しか整備されていない。地方で、特に各家庭までどうやって引いていくか、これは大変難しいと思います。

 副大臣が答弁の中で言われた、自治体等と相まってということなんですが、それは、ちょっと確認したいんですが、こういうことなんでしょうか。今度の卸電気通信役務を地方自治体もやれると思いますけれども、例えば、各家庭まで下水道がありました、その管路を利用して光ファイバーを敷設して、地方自治体がその事業でやりますと、ネットワークをつくりました、これを第一種電気通信事業者に提供してやらせる、そういうふうな仕組みができるということなんでしょうか。

小坂副大臣 それは、御指摘のような、例えば下水道に光ファイバーを通すとかそういう形で、それが家庭まで延びるということを仮置きしますと、それをNTTの中継網と接続して使うとか、それをNTTが今度は借りてそれを実施するとかいうことが可能になってまいります。

 自治体自体が光ファイバーをケーブルテレビ等と同じように張りめぐらして電話サービスをやっている地域も、三重県等にはございますので、そういったものも合わせると、相互に補完し合って、自治体のを使う、あるいは自治体自身がNTT網と接続する、ほかの電気通信事業者網と接続する、いろいろなパターンが考えられて、いずれにしても、光ファイバーが少しでも多く家庭に加入者線として張りめぐらされるように、これから行われていくものを期待している、こういうことでございます。

赤城委員 光ファイバー網、特に各家庭までどういう整備主体がそれを整備するかという問題について、私は前々から持論だったんですけれども、民間がやるのか公がやるのかという、最初にその議論が起こったときに、民間では採算の合う都市部だけだ、それも重複してどんどん引かれてしまって余り効率的でない、一方、地方はおくれてしまう、それよりも、全国にまずネットワークを整備してしまって、光ファイバー、ブロードバンドであれば容量はたくさんとれますから、それを民間に開放して、だれでもそれを使えます、つまり、インフラ部分は公有あるいは共有で、その上は、ソフト部分は自由に参入して競争する、そんなふうにできないかな、こう思っておりました。

 今度の制度もそれに資するように、各自治体を活用しながら、民間とあわせてやれるのであれば、これはもう大々的にそういう形で、特に地方まで整備していく、このことが大事だと思います。

 そこで、大臣にお伺いしたいのですが、IT戦略会議の方も動き出しましたし、e―Japan計画、森内閣のときからの懸案でありました、五年以内に世界最高のネットワーク社会をつくります、これに向けて、今申し上げましたような、全国津々浦々までだれでもこのネットワークを利用できる、都会でも農村でも地方でも変わりはないんだ、こういう社会をつくる、大臣の御決意と、あわせて、ユニバーサルサービスという議論がありまして、加入電話と公衆電話と非常電話ですか、この三つだ、いや、これからはもうインターネット、こういうものはユニバーサルサービスだ、こういう決意のもとに今申し上げたようなIT社会をつくるということが大事だと思いますので、大臣のお考えをお伺いします。

片山国務大臣 御承知のように、e―Japan戦略では、五年以内に我が国を世界の最先端のIT国家にする、一千万世帯が常時超高速ネットワークにアクセス、三千万世帯が高速ネットワークにアクセス、こういうことでございまして、しかも、希望すれば、引き込み等をやればすべてに行き渡る、き線点というのですかね、そこまでの整備をやる、こういうことを決めておりますから、それに向かって大いに頑張ろうと思いますけれども、今は、そういうインフラは基本的には民間にやっていただく、それを融資や利子補給で応援する、こういうことでございますけれども、今、赤城委員が言われましたように、ぎりぎりのときに、残ったところをどうするかの議論があると思いますね。そういうときにパブリックセクターがどういう役割を果たすかは、私は大いにこれから検討する余地があるのではなかろうかと。デジタルデバイドの解消というのもe―Japan戦略の大きな目標でございますから、そこのところは今後の展開を見ながら検討していく余地があるのではなかろうかと思っております。

 それから、ユニバーサルサービスにインターネットがならないか、こういうことでございます。今、インターネットの普及はおくれていると言われておりますけれども、この一、二年、急速に伸びていまして、世帯では三四%の普及率ですよ。それから、人口の方はもう四〇%を超えていると思いますね。

 だから、そういう意味で、これがさらに爆発的に普及していったときにどういう位置づけをするか。今、ユニバーサルサービスは御承知のような三つのものに限定いたしておりますけれども、私は、さらにインターネットが普及していって、また国民の意識も、なるほど、そこまでは認めざるを得ないんではないかというように成熟してくれば、ユニバーサルサービスとしての扱いということがあり得ると思いますけれども、まだそうはいっても三四%ですから、今後の検討課題ではなかろうか。

 これはまたいろいろ御議論があると思いますけれども、ユニバーサルサービスの維持のためにはお金もかかりますし、そういうことを含めて私は今後の大きな検討課題の一つだろう、こういうふうに思っておりますので、よろしくお願いします。

赤城委員 民間が競争してできるところは民間でやるのが本当だと思いますが、民間ではできないこと、民間よりも官がやった方がうまくいくところ、こういうこともあろうかと思いますから、官民が適切に役割分担をして、新しい国家をつくる、こういう考え方でぜひお願いをいたしたいと思います。

 以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。

御法川委員長 次に、山井和則君。

山井委員 今回の電気通信事業法について質問をさせていただきます前段で、私のIT革命に関する関心事項についてちょっと述べさせていただきたいと思います。それは、特に情報バリアフリーということについてであります。

 実は、私はメールマガジンというのを発行しております。今、読者が千四百人ぐらいおられまして、国会での報告をしているわけなんですけれども、非常にこれでうれしいなと思いますのは、こういうメールマガジンを発行し出してから、聴覚障害の方、話せない方ですね、あるいは視覚障害の方も音声で聞かれたりして、そういう方々から国会についていろいろな質問や要望を受けることができました。

 そういう意味では、ある意味で、IT革命あるいはインターネットの時代というのは何か冷たいイメージがあるんですけれども、非常に弱い立場の方々に優しい、まさにIT革命の一つの意義がこういう福祉の向上や障害者の社会参加の促進ということでもあると思います。

 メールマガジンということを言いますと、一つ思い当たりますのが、小泉首相が今回メールマガジンを始められるということで、私もすばらしいことだと思うんですが、びっくりしましたのが、何とそのシステム構築費に一億円かかったということなんですね。私は、やはりインターネットやIT革命という趣旨から考えて、簡便に、安く、だれもが情報を提供できるということを示すのがIT革命の意義だと思うんですけれども、一億円もかかっているということに関して、非常に余りにも高過ぎるんじゃないかなというふうに思います。これは内閣府に言うことかと思いますが、どういうことでこのメールマガジンのために一億円かかったのかというようなことを、公表することもぜひともお願いしたいと思います。

 また、デジタルデバイドという言葉もありますが、IT革命において、一歩間違うと弱い立場の方々の情報が入手しにくいという部分がありますが、逆に、IT革命によってだれもが社会参加しやすくしていく必要があると思います。

 今、情報バリアフリー法案について、中村議員と私と議員立法を計画しているところなんですけれども、例えば、アメリカではリハビリテーション法五百八条で、政府が調達する情報機器は障害者対応の機器であることが六月から義務づけられることになっておりまして、日本の取り組みと大きく違うなというふうに思います。

 電気通信事業法の改正について質問する前段として、このような、すべての国民が恩恵を受けられるIT革命の意義ということと、先ほどお伺いしました一億円のメールマガジンということについて、片山大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

片山国務大臣 小泉総理のメールマガジン、これをやるということは、この前、閣議でも話が出まして、閣僚もみんな了承したわけでありますけれども、一億円という話は全く聞いておりませんね。(発言する者あり)今、後ろの方で新聞か何かにそういう報道があったということでございます。これは存じ上げませんから、ちょっとコメントのしようがありませんが、メールマガジンはそういうことで出していく、こういうことでございます。

 それから、今、IT革命の恩恵をすべての国民にと。全く我々も同じ考え方でございまして、特にデジタルデバイドというのがこれから大きな課題になってくる、この解消に全力を挙げようということで、当委員会でも何度もお答えさせていただきましたが、総務省の中にIT有識者会議をつくりまして、その中にはお年寄りの代表の方や障害者の代表の方にも入ってもらいまして、そこでいろいろなワーキンググループをつくりまして、障害者の皆さんのためのITをどういうふうに進めるか。きのう、実は代表の方に、その研究成果を私のところに持ってきていただいて、大変ありがとうございましたと私はお礼を申し上げまして、有識者会議にそれを生かして一つの結論を出したい、こういうふうに特に思っております。

 情報バリアフリー、特に障害者の方やお年寄りの方にはやはり機器の開発が要るでしょうね。あるいは料金のことも言っておられましたけれども、料金のことはなかなか直ちにということは私は難しいと思いますけれども、いろいろな総合的な、そういう意味での情報バリアフリー対策をこれから考えていきたいと思いますので、またひとつ御示唆、御指導いただければ大変ありがたいと思います。

山井委員 今、大臣からもお話がありましたように、決してIT社会において取り残される人があってはならないというふうに思います。同時に、IT革命の推進ということを考えますと、そのような障害がある云々という次元ではなくて、広く日本全国でユニバーサルサービスが受けられる、都市部だけではなくて、やはり地域の方でも受けられるというふうにしていかねばならないと思います。

 そこで、ちょっと根本的なことから改めてお伺いしたいんですが、今回、導入しようとしている非対称規制のことなんですけれども、このような規制により、国際的な規制の動向と調和した競争ルールを確立できると考えておられるのか、最初に、まずそのことをお伺いしたいと思います。

片山国務大臣 今度の電気通信事業法の改正の大きな目玉が非対称規制の導入、ドミナント規制というんだそうでございますけれども、結局、市場支配力のある事業者には一定のブレーキをかける、その支配力を乱用しないように防止する仕組みをつくる。それから、それ以外の事業者にはできるだけ規制緩和をしてもらう、これが大きな目玉でございます。

 また、それ以外に、既にお話があったかと思いますけれども、光ファイバー網や電柱や管路や、既存の、持っている皆さんに、それを一定のルールのもとに開放してもらうとか、あるいは、例の電気通信事業に係る紛争については、処理委員会をつくってそこで専門的に、柔軟に処理していただくとか、そういうことを目玉にいたしております。

 これは、国際的に言いますと、WTO基本電気通信合意、平成十年二月に発効したものでございますけれども、それに沿うものでございますし、それから、ドミナント規制というのは欧米諸国でも既に取り入れておりますから、そういう意味では国際的な動向に一致する改正ではないか、こういうふうに思っております。

山井委員 国際的な動向に一致するということですが、この非対称規制を導入する上で、競争の強化ということでいろいろなメリットがあるかと思うんです。

 改めてお伺いしますが、国民のメリットは何か。それとともに、やはりデメリットの部分もあるのではないかと思います。そのあたり、国民のメリット、デメリットということについてお伺いしたいと思います。

片山国務大臣 これによって、公正な競争ルールができて競争が促進される、これがいろいろな意味でマーケットに活力を生みますし、工夫が起こります。その結果、私は、ITの、例のe―Japan戦略が五年以内に世界最高水準のインターネット網で先進国化、こういうことでございますから、そういうもとで、より低廉で、より高速で、より多様な通信サービスが受けられるようになるのではなかろうか、これは競争政策促進のメリットではなかろうか。

 デメリットは何かというのは、これからやってみなければわかりませんけれども、例えば過当競争になるとかですね。あるいは、国際競争力に陰りが出て、そういう意味での別の何か問題が生ずるとかということが想定されないわけでもありませんけれども、私は、それらは克服できるのではなかろうか、こういうふうに思っております。

山井委員 確かにメリットは、私も十分あると思います。しかし、やはり多少気になりますのが、まさに今、大臣がおっしゃってくださった過当競争ということと、それによって国際競争力が、もしかしたら鈍る点が一部あるんではないかということなんです。

 二十九日の片山総務大臣の答弁でも、日本のインターネット料金が下がってきたというふうな答弁もありましたが、確かに、料金が下がることというのは、もちろん、利用者にとってはいいことなわけです、短期的には。しかし、正直言いまして、私の知り合いでも情報通信産業に従事されている方が多いんですけれども、二十一世紀の基幹産業である情報通信産業、すばらしいお仕事をされていますねと言ったら、もう大変だと、競争がきつくて大変だということを聞いて、花形産業で基幹産業である一方、非常に御苦労をされているわけです。

 確かに、生き残っていく上では、どこでも楽な仕事は私はないと思います。しかし、まさに大臣がおっしゃったような過当なサービス競争によって体力が低下してしまって、逆に日本の国際競争力がトータルで低下してしまったり、あるいは、これからは多様なサービスをどう開発していくかというときに、料金を下げることばかりに競争する余り、多様なサービスをスピーディーに出していくことができなくなったら、トータルとして長期的に日本の国益にかなわないではないかと思います。その点について、いかがでしょうか。

小坂副大臣 委員御指摘のように、私どもも努力をしてまいりましたが、競争環境を整備するということで、その競争環境が十分に整備された結果として、今御指摘のように、競争で大変なんだという事業者の声が聞かれるほどになってきたかと思うわけでございます。

 昭和五十年以降、二十五年間にわたりまして三分間十円というのは続いてきたのですね。ようやく競争環境の中で三分間八円四十銭とか、もう八円台になって、八円台の前半といいますか、下の方に張りついてまいりました。そこまで料金も下がってまいりましたし、インターネットプロトコル、いわゆるIP技術を使った会社も出てまいりまして、三分どこへかけても二十円、こういったサービスも、市外電話サービスでも均一料金というようなものも出てきたわけでございます。このように、事業者間の競争のメリットは、低廉な料金で供給して利用者に還元するという意味で、このメリットは非常にあります。

 しかし、そのデメリット、御指摘になった部分を、それでは過当競争というのはどういう状況かというのを見ますと、事業者が疲弊してしまって結果として市場から去っていってしまう、残ったところが寡占化して、逆に今度は料金を上げてしまう、こんなことになれば、これはデメリット、こういうことになるわけでございます。

 そうならないように、今後は、電気通信市場における技術革新の進展や競争環境の変化に伴って生じている構造的変化に事業者みずからいろいろ対応していただいて、私どももそういった意味で環境を整備しながら、事業者が従来型の役務を合理化したり、より効率化を図って、また新たにインターネット関連のサービス等、新しい分野に進出をして、収入構造を変革させてこれに対応していく、これがポイントだと思うのですね。

 こうした経営努力を行うことによりまして、企業の体質が改善され、結果として国際競争力の面においても体質が強化されてくる。こういうことになるように、私どもも期待をし、事業者みずからも努力をしていただいているところでございまして、そういう方向になるようにこれからも努めてまいりたいと存じます。

山井委員 まさに過当な、過当競争というのはどこで過当というのかというのが確かに一番難しいところだと思うのですが、一つには、私は、情報通信産業における労働条件というのも非常に大事だと思います。ほかでもない二十一世紀の日本経済がどうなっていくか、日本が二十一世紀に国際競争力を持って、しっかりと、いい国として生き残っていけるかどうか、その非常に大きな部分をこの情報通信産業の未来が負っていると思います。

 そういうところでは、相反することかもしれませんが、競争に強く、同時にやはり働く方が安心して働けるということが大事だと思うのです。幾ら国際的には強くなってきた、勝負に勝ったといえども、これは競争社会の宿命かもしれませんが、競争に勝ったと喜んでいたら相手の会社はつぶれているとか、結局、次は我が身じゃないか、気がついたらみんな疲れ切って、外資が入ってきて、日本の情報通信産業は外国勢が主力になったということになったら、元も子もないのではないかと思います。

 話はちょっとずれるかもしれませんが、例えばプロレスとか、大切な試合の前には練習を少し緩めるそうなんですよね。直前までハードなトレーニングをやっていたら、肝心の本戦のときに負けてしまうから、やはり体力を使い過ぎないように、ちょっと体調を整えるということも大事だと思います。

 改めてになるのですが、小坂副大臣、その辺、過当競争にならないような、一歩間違うと、日本人というのは非常に競争が好きな国民でして、私も福祉を専門としていますが、行き過ぎた競争というのはある程度コントロールをしないと、結局は私は国民のためにならないと思うのですが、いかに過当競争を、もちろん、競争を大事にしながらもコントロールしていくか、この辺について御所見をお伺いしたいと思います。

小坂副大臣 委員の御指摘のとおりでありますが、各事業者がみずからの体質を常に見直していくということがまず第一だと思いますね。古い設備を適宜更新をしていく、その更新するコストをちゃんと見積もって、事業計画を立てていく、そういう中で、将来の伸びる分野となかなか伸びにくい分野というのがだんだん明確になってまいりますから、それを補完するような新しい事業の導入に力を尽くして設備投資をしていく。これは経営者としての責任だと思うわけでありますが、そういった努力によって、過当競争というものに陥らないようにやっていかなければいけない。したがって、過度の規制緩和というものは過当競争を招くということにもなりますので、規制の緩和に当たっては、市場環境も見ながら調整をしなければいけない。

 こういうことで、法律の改正に当たっては、パブリックコメントを求めたり、いろいろな形で広く知見を求めて対応してきているところでございまして、御指摘のような意味で、どこまでいったら過当競争になるか、この辺は常に注意深く私どもも見守ってまいりたいと思います。

山井委員 競争を促進して低廉で多様なサービスを国民が享受するということとともに、冒頭に申し上げましたように、いかにユニバーサルサービスというものを守っていくか、この公共性と競争強化、両方両立することがこれから必要だと思います。

 その点に関して、これからユニバーサルサービスを提供する事業者に課せられた役割と期待は非常に大きいと思います。具体的に言いますと、業務範囲の拡大によって、今まで以上にNTTの東西、NTT西日本、東日本が自由にIPサービスを提供できるというのは、国民にとっても大きなメリットがあるというふうに思います。

 そういう経営の自由度を増すための改正であるという趣旨にかんがみれば、総務大臣が要請されたNTTの自主的な実施計画の提出というのが、行き過ぎて、国民サービスの提供の阻害とならないようにする必要があると思いますが、いかがでしょうか。

片山国務大臣 今、山井委員の御指摘のように、東西NTTの役割というのは大変重要だと私も思います。ユニバーサルサービスの主要な担い手でございまして、今後も技術等の研究開発の中心になってもらうところが東西のNTTではなかろうか、こういうように思っておりまして、IT革命の恩恵をすべての国民が享受できるようにするためには、東西NTTにさらに十分その地位を認識していただいて頑張っていただきたい、こういうふうに思います。

 今般の法改正におきましても、NTTの経営自由度を向上させるために業務範囲の拡大を今おっしゃいましたが、それとともに外資規制も、資金やいろいろな問題もありますから、少しこれもNTTさんの意向も聞きながら緩和いたしました。今後とも、先ほども言いましたが、IT革命推進の中心になっていただきたい、こういうふうに思っている次第でございます。

山井委員 ユニバーサルサービスのことに関してなんですが、二十九日の中村哲治議員の質問の多少続きにもなるんですが、このユニバーサルファンドということに関して長期増分費用方式を用いたものとしての政府見解が示されております。このことにおいて、ユニバーサルサービスの提供というものが目的である以上、現実の事業者がサービス提供実現可能なコスト算定とすべきであると考えております。そういう意味では、実際のコストより、長期増分費用方式の策定モデルの作成において、安くなる部分と高くなる部分と両方取り込む必要があると思います。これを踏まえて、現実的なコストと余りにも大きく乖離しないようなコストに対する策定モデルを作成すべきだと思うんですが、いかがでしょうか。

小坂副大臣 ユニバーサルサービスのコストを算定するに当たりましては、今御指摘のありました長期増分費用という方式を用いるのがいいんではないか、こう思っているわけですが、それは、事業者が効率の悪い設備を保有して、非効率性に基づいた算定基準でコストを算定して、それを他の事業者が肩がわりしなきゃならないということになりますと、それは他の事業者も容認しがたいものになりますので、透明性を持って客観的評価をし得る計算方式というのが求められるわけであります。

 そういった点で、非効率性を排除することができるという長期増分費用方式という計算方式を用いることによって、客観的に見てもある程度御理解をいただける数字というものがここに提示をできるだろうということから、この長期増分費用方式という方式でコストの算定を行い、それをもとに、さらに、そこに実際にかかっているいろいろな状況等を勘案しながら、審議会等の意見を踏まえてコストの算定を行っていく、こういうことでございますので、今おっしゃったような部分も若干ここには含まれながら、基本的には長期増分費用方式によって算定されたものを基準に算定をする、こういうことを考えているところでございます。

山井委員 利用者、国民の立場に立って、ユニバーサルサービスというものが長期間安定して提供できるようなシステムに、ぜひともしていただきたいと思っております。

 以上のような御答弁を踏まえまして、根本的なことなんですが、意見提起をしたいと思います。

 今回の法改正の最大の目的は、情報通信政策の競争強化、競争促進である、その必要性は私も認めます。ただ、国内の競争も大事ですが、国際的な、IT時代というのは非常に急速な、ドッグイヤーと言われるような流れの中で、日本の情報通信産業というのは今後のグローバル化した国際競争にこのような形で対応できるとお考えでしょうか。

片山国務大臣 今、委員、箱庭的行政という御指摘もありましたが、私は、やはり国内的には競争促進はやむを得ないと思いますけれども、国際競争力をしっかり保持していくということや、通信主権という言葉がありますけれども、そういうものはやはり守っていかなければならないし、その中心にはいろいろな意見があってもやはりNTTさんに頑張ってもらわざるを得ない、こう考えておりまして、ただ、そこの調和をどうやるかですね。

 そこで、今般、自主的な競争促進の計画をつくっていただくことにいたしました、先ほどもお話がありましたが。恐らく、NTTでは十分な議論と検討の中でいい答えを出してくれると思っておりますので、今後とも、その答えの実行をしっかりと見守りながら、我々も今、委員が言われましたことについては対応してまいりたい、こういうふうに思っております。

山井委員 ありがとうございます。

 そのことについてもう一つ続けてお伺いしたいんですけれども、今の情報通信競争の現状は、イギリスのボーダフォンの動向にも見られるような、国境を越えた資金調達力が勝負を決する現状となっています。そう考えたときに、国内競争の活性化と海外進出というのが必ずしも一致しない部分というのがあるんではないでしょうか。

 そういう意味で、まさに今回の法改正でできるだけ許認可を減らして、届け出制に移行していくという方向性は正しいとは思うんですけれども、それでも規制、管理に重きを置いた事前規制型裁量行政というんですか、そういう色彩がまだまだ強いと思います。これで、非常にスピードを求められる国際競争の時代に生き残っていけるんでしょうか。そのことを改めてお伺いしたいと思います。

片山国務大臣 御指摘のように、我々はこの規制改革で十分だと考えておりません。

 そこで、規制改革三カ年計画やe―Japan戦略のアクションプランで、いろいろなことを今目標として掲げておりますが、特にこの関係は、今度はe―Japan二〇〇二プログラムというのを来年の年次目標としてつくろう、こう考えておりますから、そういう中でさらなる規制緩和と、しかし、一方では国際的な視野も十分持ちながら、こういうことの調整をしながら対応してまいりたいと考えております。

山井委員 ありがとうございます。

 最後になりますが、二十一世紀基幹産業の一つがこの情報通信産業であると思います。その意味では、魅力ある産業、やはり競争力があると同時に、多くの人たちが情報通信産業で働きたいと思えるような魅力ある産業にすることが競争力の強化と同時に必要だと思います。そしてまた、そのことを通じて日本という国が、最初に申し上げましたように、体の不自由な方あるいは地域に住んでいる方々、あまねく日本国民がIT革命の享受を受けられるようにしていきたいと思います。

 以上、ありがとうございました。

御法川委員長 次に、武正公一君。

武正委員 まずは、片山大臣、そして小坂副大臣におかれましては、小泉内閣におきましてまた大臣、副大臣に再任されたということで、心からお祝いを申し上げる次第です。

 小泉首相の改革断行内閣にあって、余人をもってかえがたしということでの再任と考える次第でございますが、この二月二十七日に私も、同僚の民主党の委員ともども、片山大臣には、二兎論、一兎論ということを聞かせていただきました。すなわち、景気回復か財政再建かということでございまして、その折、私の質問に対して片山大臣は、「御承知のように二兎論と一兎論というのがございまして、今はやはり景気回復に軸足を置くべきだけれども、財政構造改革についてもそろそろ準備に入るべきではないかと私個人は考えております。 今、経済財政諮問会議というのがありまして、私もそのメンバーでございます」云々ということで御答弁がありました。

 今回、小泉内閣において総務大臣ということで、かなり小泉首相が財政再建の発言をされておりますが、このときの発言と今の財政再建への考え方、あるいはこれからの取り組み方、御所見をお伺いしたいと思います。

片山国務大臣 先ほどお話がありましたが、私はかねがね、景気回復最優先、もうこの一兎だけでいいという議論のときからずっと見ていまして、三年やってきましたから、国、地方の財政出動で、特に地方の財政は我々の方が責任を持たなきゃいかぬ立場ですから、国、地方の財政出動でこれだけ需要追加、拡大をやってきて、私は効果はなかったと言いません、あったと思います。あったと思いますが、なかなか本格的な景気回復にはならない以上、やはり構造改革的な要素がどうしてもあるので、この部分を忘れては難しいのではなかろうかという発想で、経済財政諮問会議でも、常に、景気回復最優先だ、最優先はこれはもうないがしろにできないけれども、しかしもう一方では、構造改革という視野を入れて路線をしくなり準備をするなり、そういう二兎を追う構えでなければいかないのではないかということを私は言ってきたのですね。

 今度の小泉新総理は、むしろ、これは二兎ではないのだ、二匹のウサギでなくて、よく考えてみたら一匹なのだ、景気回復と構造改革というのは一体なのだ、コインの裏と表なのだ、こういう考えに近いと思うのですね。だから、構造改革なければ景気回復なし、こういうことなのです。

 私もかねがね、景気回復をやるのだけれども、そのやり方で構造改革に資するやり方もある、あるいは、物によっては構造改革を先行した方が景気回復にプラスのこともあると。小泉総理ほど徹底しておりませんけれども、私は割に二兎を追う構えということは、ある意味、近かったと思いますが、今回はそういうことで、小泉新内閣ができて、構造改革と景気回復を一匹のウサギとして追っかけていこう、こういうことでございますから、我々もその方針のもとに、所管行政については考えていく、こういうことでございます。

武正委員 二匹と思っていた森内閣が、今度は小泉内閣になったらウサギは一匹になってしまったということでございまして、最初から一匹だったのかどうかということがこれから問われるわけでありますが、民主党は、もう既に、前から財政再建すべし、構造改革すべし、そして、二匹のウサギはどちらも追えるのだということを訴えてきたわけでございます。

 そこで、火曜日にも大臣の方で電波の入札、オークション制について御発言がございました。私は、財政再建の観点から、国民にいたずらに痛みを求めない、国民一人一人に痛みを求めない、すなわち、国民に負担を求めないというような観点から、政府の収入を上げる仕組みというものを真剣に考える必要があるのではないかなというふうに考えております。

 そういった中で、電波のオークション制、火曜日も二〇〇五年の答申というか結論を得たいという御答弁でございましたが、二匹のウサギが一匹だった、しかも、景気回復と財政再建はどちらもできるのだという小泉内閣にあって、片山大臣、電波のオークション制についての御所見をお伺いしたいと思います。

片山国務大臣 今のe―Japan戦略では、もう委員御承知のように、二〇〇五年までに結論を出す。一つの考えではあるけれども、よその国の例を見ると、弊害もかなり出ている。それから我が国の国情に合うか合わないか。

 だから、オークションでも、純粋のオークションではなくて、いろいろな変形のオークションというのはあると思いますね。例えば、無制限ではなくて、ある程度合理的な範囲の上限を設定して、それについてオークションをして、何社かそれに該当したら、その中でいろいろな審査を加えて物を決めるとか、いろいろなやり方があると私は思います。

 ただ、今、e―Japan戦略で二〇〇五年まで、こう言っておりますから、前倒しという委員のお気持ちもわからないではございませんので、いずれにせよ二〇〇二のプログラムをつくりますから、委員の御指摘を踏まえて検討させていただきますけれども、少し時間をかけて検討した方がいいのかなと私個人は思っております。二〇〇五年でなければいかぬとも思いませんけれども、それでは軽々にすぐ、何年前倒しできるのかなという感じを持っておりますので、この辺はなお検討させていただきたいと思います。

武正委員 間もなく小泉内閣の骨太な経済構造改革の発表が六月にあるということでございますし、大臣も経済財政諮問会議のメンバーとして積極的な御発言をされておると思いますので、私はぜひ財政再建の観点からも、電波のオークション制について、結構弊害面を大臣はよく口にされますが、ある記事によりますと、それによって個人個人の利用者の方の、携帯等いろいろな利用料が上がったということはないという指摘もあるのですね。ですから、まだまだいろいろなプラス面、マイナス面、あろうかと思いますので、これは至急に御検討いただければなというふうに思っております。

 さて、今回の電気通信事業法の改正案に対する審査でございますが、紛争処理委員会につきまして、二、三、お伺いをさせていただきたいと思います。

 お手元の方に、委員長のお許しをいただき、電監審の委員さんのこれまでのリストを配らせていただきました。電波監理審議会も同じく五名ということで、これまでこういった方々が委員になっておられます。

 電監審と今回の紛争処理委員会をちょっと比較をしてみました。委員の適性というようなところがどういうふうに書かれているかということでございますが、電監審の方では、「委員は、公共の福祉に関し公正な判断をすることができ、広い経験と知識を有する者のうちから、両議院の同意を得て、」郵政大臣、これはちょっと古いですね、大臣が任命するということでございます。

 一方、紛争処理委員会の方でございますが、こちらの方が、同じような形で書かれてはいるのですけれども、不適格要件というものが書かれていないということでございます。電監審の方は不適格要件ということで、放送事業者、電気通信事業法等々、電気通信事業者とか製造事業者あるいはその団体はだめですよというふうに書いてあるのですが、この紛争処理委員会、こちらの方は特段の不適格要件がないといったことでございます。電監審も不服申し立てとか、その処理とかをやるわけなのですね、それぞれ八条委員会ということでございますが。委員の任命について、委員はこうあるべしというものが、片や非常に広い形で電監審の方はまず決めて、ただ、放送事業者、電気通信関係はだめですよ、片や今回の紛争処理委員会は、これはまず第一項では、すぐれた識見を有し、ということなのですが、その前に、「電気通信事業に関して」というただし書きがある。一方、同じく紛争処理委員会は、先ほどのような、関係者はだめですよという不適格要件はない。この違いがどうして出てきたのかを小坂副大臣、御答弁をお願いいたします。

小坂副大臣 武正委員御指摘のとおり、そのように記述されているわけですね。

 それで、電波法は、そもそも昭和二十五年にできた法律でございまして、また同様に不適格要件を定めております法律としては、航空事故調査委員会設置法等はこのように書かれておりまして、そこには、「次の各号のいずれかに該当する者は、委員長又は委員となることができない。」と書いてあって、不適格要件を定めております。

 今回の法律に不適格要件を規定しなかったのは、電気通信事業紛争処理委員会を構成する五名の委員の適格性につきましては、総務大臣が委員を任命する際に適格者であることを十分考慮して選任をする、そしてなおかつ、委員は両院の同意を得て任命することとされているわけでございまして、委員の適格性は十分担保される、こう考えているわけです。

 このような書きぶりといいますか、法律の規定の仕方は、最近の法律では、例えば情報公開審査会の法律のように、「委員は、優れた識見を有する者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。」とか、運輸審議会あるいは地方財政審議会等も同じような規定ぶりになっております。そのような意味で、従来の規定の仕方と変わった表現になっておりますが、同じように委員の適格性は十分担保される、このように思っておるところでございます。

武正委員 今、御説明がありましたが、国会の同意人事といっても、例えば先ほどの航空事故調は、過去、二十七名の委員が任命されておりますが、そのうち十五名がいわゆる運輸省関係のOBというようなこともありまして、我が民主党では、各種審議会あるいは独立行政委員会の委員の人選について非常に問題があるというふうなことで、国会の同意についての基準まで設けているところでございます。

 その中で、電監審と紛争処理委員会の書きぶりが違っているということでございますが、この紛争処理委員会の独立性を保つためにも私は八条ではなくて三条にすべきではないかなというふうに思うんですけれども、これについてはいかがでしょうか。

小坂副大臣 まさに委員がおっしゃいましたように、国会の同意人事のあり方も、近年、議院運営委員会等で精査をされまして、その基準も与野党の話し合いの中で決めていただきまして、より一層そういった適格性の審査が担保されるようになってきたと思うところでございまして、そういう意味も含めまして、今回の法律の書きぶりとなっているわけでございます。

 また、三条委員会にするか八条委員会にするかということにつきましては、米国のFCCのように独立性をより強めた方がいいという御指摘もあるんですが、多くの方々がFCCを引用されるときに、これは政策立案と紛争処理、規制の分野は分けているというふうに認識をされておられますが、実際にはFCCはその組織の中に両方の機能を有しているわけでございまして、その点でそもそもの誤解といいますか、情報が十分に伝わっていないような気がいたします。

 そういった意味では、私ども、今回の八条委員会といたしましても、組織的には政策立案部門と完全に独立した形で事務局等を設置いたしておりますし、組織的にも、同じ大臣のもとではありますけれども、より機動性に富んだ合議制ではない機関として、ドッグイヤーと言われるような変化の激しいこの分野の規制のあり方、そして紛争処理のあり方というものに的確に対応できる組織として、八条委員会の形式をとっているわけでございます。

 言ってみれば、三条委員会のような独立性を持ちつつも政策へフィードバックすることができるような、紛争の状況が政策の部門に反映が可能なような、そういった意味合いも加味した組織として今回、提案をさせていただいているところでございまして、この八条委員会における処理において、独立性は十分に担保し得るものと考えているところでございます。

武正委員 通信と放送の融合ということも踏まえて、私は、三条委員会にすべきであるし、また、電気通信の紛争処理のみならず、先ほど例を挙げました電監審、これも一緒に統合して日本版FCCというような機能を持たせてはどうか、そういった意味では、情報通信審議会の中の機能もあわせていくべきではないかなというふうに考えております。

 そこで、きょうは厚生労働省の方、消防庁の方にもお見えをいただいておりますので、ドクターヘリ事業と消防無線の関係ということで少しお聞かせをいただきたいなというふうに思っております。

 これは、こんな報道がありまして、救命に一刻を争う事故などの際に、医師を乗せ現場に駆けつけるドクターヘリの本格導入を目指す厚生労働省の計画が、緊急連絡用の消防無線活用に総務省消防庁の待ったがかかり、暗礁に乗り上げていることがわかった、消防庁が通常業務に支障がでる可能性を主張し、両省庁は対立したまま、モデル事業などでドクターヘリを導入している現場からは、消防無線なしではメリットが生かせない、時間のロスが大きく、患者の命が奪われる可能性もあると、批判の声が出ている、消防庁側が、通常の消防、救急業務での交信と混じって支障が出るおそれがあると難色を示したということでございます。

 それぞれ、厚生労働省さんと消防庁さん、お見えですので、御所見をお伺いしたいと思います。

伊藤政府参考人 お答えいたします。

 ドクターヘリを運航する上で、救急患者情報の伝達でございますとか着陸場所の確認のためには現場の救急隊と直接交信する必要があることから、ドクターヘリにおきまして消防無線の使用が可能となるよう、厚生労働省といたしましては、総務省消防庁との間で調整を行ってきたところでございます。

 ドクターヘリによる消防無線の使用に当たりましては、全国各地の消防本部等における消防活動に支障を来さないよう留意する必要がございまして、現在、専門的、技術的観点から消防庁と調整を進めているところでございます。

 私どもといたしましては、早期に消防無線の使用が可能となるよう、密接な連携を図ってまいりたいと考えております。

中川政府参考人 ドクターヘリの運用におきまして、救急隊との連携を図るため消防無線の利用を計画いたしておりますが、ドクターヘリにおきます消防無線の利用に当たりましては、上空からの通信であるため電波範囲が広く、一定のルールのもとで運用されないと、通信対象ではない周辺の消防本部なども含めまして、混信、ふくそうを生ずるおそれがあるわけでございます。

 消防庁といたしましては、厚生労働省からドクターヘリにおきます消防無線の運用計画を具体的に確認の上、混信、ふくそうによる消防、救急活動の支障が生じることのないよう、調整を行っているところでございます。

 ドクターヘリの運用が予定されております地元の消防機関の意見も十分踏まえまして、消防無線の運用に関しまして調整を図っていきたいと考えております。

武正委員 今の両省庁にまたがって、電波の利用ということで、それぞれ交渉しているんだけれども、なかなかまだ結論を得ていないということでございます。これも、やはり電監審を三条機関にして、あるいは内閣府に置くというようなことで省庁間の調整機能も果たせるんではないかなというようなことを考えますし、それのつながりで、先ほど言いました紛争処理委員会も同じように、各省庁にまたがったり、それこそ電気通信事業者あるいはそれぞれのいろいろな関係団体の調整ということでございますので、私は、やはりこれは三条委員会にすべきであるし、日本版FCCが必要ではないかなと思うんですが、小坂副大臣、いかがでしょうか。

小坂副大臣 武正委員御指摘のドクターヘリの通信の問題につきましては、私も同感でございます。やはり緊急でございますので、迅速な連携をとる必要がある。私は、常に災害においては国の機関は相互に連携を保つために共通の周波数で連絡を取り合うべきだ、こう思っております。例えば海上保安庁が海上にあって船等が間にあるのであれば、地上のパトカーあるいは救急車と海上の海上保安庁が常にダイレクトに連絡を取り合わなければいけない、こう思っております。

 このドクターヘリの問題については、まだ消防無線がアナログであるということも起因していると思いますので、早期にデジタル化を図る、こういうこともあわせて、御指摘のような趣旨が早期に具体化できるように、これは督励をしてまいりたい、こう思っております。

 また、御指摘の電気通信事業紛争処理委員会を電波監理審議会あるいは情報通信審議会と統合して三条機関として日本版FCCにしろ、こういうお話でございます。これは民主党の皆様の中にはいろいろな御意見があるようでございまして、むしろ情報通信審議会というのは、情報通信政策のあり方という意味で、政策審議のほかに電気通信事業法に基づく省令や許認可の諮問に対する答申を行っているわけでして、政策部門と紛争処理機関を切り離すべきだという御指摘をいただいている部分もありまして、これを一緒にしろという委員の御意見は、ある意味ではその御趣旨と相反するものですから、どのように解していいかと思いますが、私どもは、この紛争処理委員会を、むしろ、政策部門と同じ大臣のもとにありながらも切り離していって、独立性をより強めた形で置いた方がいい、こう思って、八条委員会ではありますが、そういった意味合いを強めた機関として設置することを提案させていただいているところでございます。

武正委員 情報通信審議会には、電気通信にかかわる法執行機能も含んでいるわけでございまして、諮問と実際の執行ということでございますので、この執行部門を、電監審なり紛争処理委員会という形で統合することも一つではないかなというふうに考えるわけであります。

 もう時間も限られておりますが、電監審ですが、これは先ほど委員のリストをお配りいたしました。これは審理官を五名置けることになっているのですが、平成元年から一名しかいないんですね。電監審の方は、みんな総務省、郵政省の役人の方がやっておられる。審議会の委員は広く学識を持っておられる方々ということで、かなり審理官の方のウエートが高いと思うのですが、一名でいいのかどうか。五名置けるのに一名になってしまっているというのが一点。

 それから、電監審についても、八条委員会でございますが、八条審議会でございますが、昭和二十七年から平成十二年までで、異議申し立ての件数はわずか二十五件ということでございます。総務大臣あるいは郵政大臣のもとに置かれた八条機関である電監審、ここにはなかなかやはり物が言いにくい。監督官庁、監督大臣である郵政大臣、総務大臣のもとに置かれたところには言いにくいといったところを聞いているわけですね。

 今回の紛争処理委員会も、同じように総務大臣のもとで八条委員会ということでありますので、本当に、紛争処理について、事業関係者が監督官庁、監督大臣のもとに置かれたこの紛争処理委員会に申し立てがどんどんとできるのかどうか、こういった点も実効性が非常に危惧されるわけでございます。

 こういったところを踏まえて、日本版FCCが必要であるというふうに考えるわけですが、最後はひとつ大臣の方から、御答弁をよろしくお願いいたします。

片山国務大臣 FCCとの比較での御議論はいろいろいただいておりますけれども、それは、私も申し上げているのですが、実は、FCCは行政委員会なんですね。アメリカは大統領制なものですから行政委員会を多用しておりまして、戦後、日本にもたくさん持ち込まれて、日本も少し迷惑しているようなところがあるのですけれども、今はもう大分直りましたけれども。

 ただ、FCCの中身を見ますと、行政委員会ですけれども、やっていることは総務省の関係のところと同じなんですね。企画立案をやり、規制監督をやり、紛争処理までやっているんですよ。ただ、日本の場合には、行政委員会でなくて独任制というのか、閣僚の一人として、閣僚にその責任を持たせている。その方が、日本の議院内閣制からいうと責任の所在がはっきりしますし、それから、機動性という意味では、行政委員会は合議制ですから、これはいろいろそこで直ちにということになかなかならない。そういうことを考えて、今の制度に、中央省庁再編の中でそういう結論になったんだろう、私はこう思っております。

 そこで、規制や監督をするところが紛争処理をやるからなかなか言いにくいんだ、こういうあれですけれども、それは恐らく戦前の日本人の考えじゃないでしょうか。今は、そういう方が言いやすい、そういうこともやっているところに注文を出して、早く対応させよう、こういうことで、むしろ私はそれが一体の方が、紛争処理ですから、裁判じゃありませんから、司法じゃありませんから、その方が実態に即してスムーズにいくんじゃないかと考えておりますが、いずれにせよ、しかし、委員御提言のことについては、引き続いて検討させていただきたいと思います。

武正委員 時間も参りましたので、あとのユニバーサルサービスについては、今回は取り上げられませんでしたが、今の大臣の御答弁は断じて納得できない、また見解を異にすると言わざるを得ないところでございます。

 というのは、昭和二十六年に行政委員会を簡素化したところの委員会報告を読みますと、「アメリカにおけると異なり、わが国の社会経済の実際が必ずしもこれを要求するものでなく、組織としては、徒らに厖大化し、能動的に」責任の明確性を欠き、これを廃止するんだということで、電監審も当時委員会だったのですね、三条委員会。これを、昭和二十六年……

御法川委員長 武正君、時間が来ましたので。

武正委員 ということでございますので、私は、またこれは次の機会に譲りますし、いろいろな機会でやはり三条委員会、日本版FCCが必要であるということを、準立法、準司法が必要であるということを言って、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

御法川委員長 次に、伊藤忠治君。

伊藤(忠)委員 民主党の伊藤忠治でございます。

 まず初めに、片山大臣、それから小坂副大臣、おめでとうございました。

 時間が幾らいただいてもございませんで、本来なら二時間ぐらいいただきたかったのですが、委員会が大きくなりまして、民主党のレギュラーのメンバーもふえたものですから、こんな格好になりました。

 それで、私は、全体的に、昨日の議論をお聞きいたしていて、これは押さえなきゃいかぬなということを含めて重点的に申し上げますが、その前にちょっと私の感想をお聞きください。決して答えは要りません。

 森内閣でITが始まりまして、通信の市場は宝の山だ、これは産業の発展の牽引車になる市場だというので、ベンチャー育成をやらなきゃいかぬ、市場開放もやらなきゃいかぬ、そういうのを総じて変えることが改革だ、こういう雰囲気だと思うのですね。

 改革というのはまさに仕組みを変えることだろうと思いますし、それは時間がかかっちゃいけませんから、もうスピーディーにやらなきゃいかぬ、これも改革の大きな要素である。聖域はないというのが得意の小泉発言でございまして、小泉さんの人気は、御承知のとおり、あっと言わせるようなところなんでございます。

 改革を論じる場合に、私たちもそれは賛成でありますが、問題なのは、だれのために改革をやるのか、ここが一番ポイントだと思うのですね。だれのために改革をやるのか、改革の結果をだれが享受するのかということが一番大切なのであって、改革の波に乗っていいとこ取りで大もうけをするということがあっては、私は、これはやはりコントロールが要ると思います。そういうのをコントロールするのが行政の役目だし、政治の役目だろうと思っているのです。

 一番今、世界的に一つのモデルとして出ていますのが市場の活性化万能主義、市場万能だということで、アメリカは経済の謳歌、景気の謳歌を誇ってきたのですが、万能主義を突き詰めていったら、カリフォルニア州の電力の危機がまいりました。私は、あれは一つのいい例だと思いますよ。どんどん市場競争だ、自由化だとみんなやった。ところが、最後にインフラそのものがおかしくなりまして、電力がとまった、電力が供給できなくなった。回り回って、結局、これは住民が負担しなきゃいかぬ、不便を住民がかこつということになったわけで、そこまでいくというのは、行政の責任でもあるし、挙げて政治の責任ではないか、私自身、これは他山の石にしなきゃいかぬな、このように思っているわけです。ですから、市場万能主義でやっていきますと、結局、角を矯めて牛を殺すというようなことになるのではないか、カリフォルニアの例はまさしくそうだと思うのです。

 そこで、やはり市場活性化を図らなきゃいかぬけれども、公正競争が必要である、公正競争をどのように担保するのかということで、非常に総務省としてもいろいろな角度から検討いただいて、今回の法案もまさしくそれが中心に据わっている改正案なんですが、NCCもNTTもともに栄えるということだろうと私は思っているわけです。そのためには、過去の経過もございます、現実も見なきゃいけません、その中でルール化を図ろうとすると、当然そこでトラブルが発生をいたします。そのトラブルをどのように止揚していくのか、解決をしていくのかということで、行政のサイドの課題が次から次へと出てくるのではないかと私は思っているわけです。例えば、NTTサイドの問題に絞って申し上げますが、八五年の民営化からずっと私、一貫してかかわってまいりました、再編成のときも私、やらせていただきましたが、そういう歴史の流れと課題をしょって今日に至っているわけでございます。

 市場の活性化はどうかといえば、一連の改革の中で、今日の市場で、一種、二種の業者を含めまして、業者全体の数、新規参入がうんとふえまして、業者全体の数では何と八千八百九十三社。これが、今総務省がいいですよと事業認可を与えている、届け出制でやれるところもありますが、その数なんですね。これは、総務省のデータで私は言っているのです。せんだって下さいと言ったらくれましたので、そのデータでは、何と八千八百九十三社あるわけです。恐らく二種が多いと思うのですが、それから一種の業者が三百四十二社ですよ。

 これがお互いに市場競争をやって、料金は安く売らないとユーザーもふえないというので、サバイバルなんですね。当然つぶれるところが出てくるじゃないですか、皆さん、そう思いませんか。ベンチャー育成は結構ですが、入ったはいいけれどもつぶれてくる。つぶれてきたら、それは経営者の責任なんですよ。商売は厳しいですからね。これは官僚ではありませんから、やはり経営者が責任をとるということなので、つぶれたり起きたりということが、これからどんどん起こってくると私は思っているのです。

 言うならば、市場の変化と競争の激化がどんどん進んでいくということの結果、我が国の今の料金の現状はどうかといえば、大体欧米と比肩するところまで来ています。日本だけが高いのじゃありません。いまだに日本の料金は高い高いと言う人がいるのですが、勉強が足らぬですね。料金は大体欧米の水準まで来ているのです。欧米よりも安いところまであるのです。統計できちっと出ています。こういう現状の認識をきちっとしておかないと、ただ一面だけとらえて、何だ進んでいないだとか日本の料金は高いだとか、外資系は口をそろえて皆言います、日本の料金は高い。実態を知っているのですか。事実はそういうことなので、科学的な分析の上に正しい認識で、これからの方策というのをお互いに考えてやっていかなきゃいかぬのではないか、こう思っているわけです。

 そこで、IT革命の戦略が出まして、五年後には一千万、三千万のブロードバンドを引かなきゃいかぬ。これはもう全体の責任なんです。民間主導ですから、NTTやNCCの主要な会社は、一生懸命それを達成していかなきゃいかぬという歴史的な使命をしょっておりますね。ところが、大変厳しい。これがどうも思うようにいきづらいという、言うならばコントロール規制のようなものが障害になるという部分が出てきているわけで、そういうものをクリアできる方法というのはなかなかない。

 私は、こんなことを言いますと、非常に与える影響が大きくて、どうしようかなと思ったのですが、こういう考え方もございます。つまり、一番いいのは、今も赤城先生がおっしゃったように、自治体が加入線まで光ファイバー網を張るというような部分がふえてきます、これから。CATVの現状は、皆さん御承知のとおり、日本国全体で人口のカバー率が二〇%。我が三重県は非常に進んでいる県でございまして、人口比四四%もCATVを引いているのですね。これは、光で引いていません。今は同軸ケーブルだと思うのです。これは光に張りかえなきゃいけませんが、基礎のネットワークはできているわけですから、今後の課題でやっていけば、簡単にとは言いませんが、資本力があればやれるわけですよ。そういうような状況なんです。

 自治体が直接経営で百十、三セクの経営が二百三十九、民間の経営が三百三十七です。こういうように今CATVがどんどん広がっているのです。これは必ず、通信と放送の融合が絡みまして、これからネットワークとしてブロードバンドに発展をしていくと私は認識するのです。そうなりますと、NTTもNCCも、そういう広がりの中で、だんだん自分たちの仕事が厳しくなるというのか、IT革命の目標からいったら、皮肉を言いますが、楽になるというのか、そういう状況だと思うのです。

 そうしたら、私は、これから日本の国として一日も早くブロードバンドを形成するためには、こういう方法はいかがなのかなと。東西が、西の方は一千億の赤字を抱えて、もうあす倒れるかなという状態です。東の方はどうにかもうかって、数百億の程度でよろよろしていますね。そういう苦労はもうせぬでよろしいと。つまり、ユニバーサルサービスと回線貸し業と固定電話の多少の基本的なサービスだけに限定して、これを輪切りにしまして、言うならば国営の回線貸し業会社をつくったらどうやと。そうしたら、ほかの分野ではその回線会社にぶら下がりまして、安い接続料金を払いまして、自由に商売ができるじゃないか。それならこれは非常に楽だ、NCCも文句は言われぬだろうというふうな気持ちが私はするのです。

 それなら、そんな回線会社、国でつくるのはいいけれども、収支が合わぬじゃないか。合わぬに決まっていますよね。接続料金はどんどん下げなきゃいけません、料金全体を下げるというのですから。下げたら赤になります。倒れるわけにいきませんから、公費を投入したらよろしい、銀行みたいに。公費を投入したらよろしい。私はこのように割り切るのです。

 そういう感想を冒頭にきょうは述べさせていただきます。お答えは要りません。何をはね上がったことを言うているなということになったらいけませんので、私はそこにとどめておきますが、どう考えても、これはなかなか定規で引いたようにはいきませんので、そういう方法もあるのかなという思いをまず冒頭に述べさせていただきます。

 そこで、質問に入りますが、一つ一つ具体的に申し上げますので、お互いに演説はやめまして、イエスかノーかでやりたいと思います。

 まず、移動体のドミナント規制なんですが、昨日の議論でもございましたけれども、二五%を基準に検討するということをお答えになっております。このことを確認させていただきます。PHSは除外するのですねということを確認させていただきたい。

 その中で、条文の中にございますが、特に二五%に絡みまして、これは大臣の方でまた別途判断いただくわけですが、「当該割合の推移その他の事情を勘案して」、こういう文章が法案の中に入っています。これはどういう意味なんでしょうかということを、これだけお聞きしたいですから、それに限定してお答えをいただきたい。つまり、客観性を担保するためには、基準を明らかにするということですから、この表現はちょっとわかりにくいので、お願いを申し上げたいということでございます。

 それで、省令をつくられるということですが、これは大体いつごろまでに省令をつくられて運用されるのかということでございます。省令ができました段階で、これは国会で、実は法令審議だけが立法権の範囲ではございませんので、政省令の部分についても審議の対象になりますので、そのことは、別に省の方にどうのこうのじゃなくて、これは議会の内部の話でございますから、ぜひとも御法川委員長、そういう立場で、議会制度協議会で議論しまして、そういう結論になっておりますので、御本人も一番詳しい方でございますから、とにかく政省令を含めましたでき上がった段階で我々が要求をすれば、それは審議にかけていただきたい。

 以上のことをまず御質問させていただきます。お答えをどうぞ。

小坂副大臣 伊藤委員のお考え、つぶさに聞かせていただきました。いずれも、いろいろなアイデアを御提示いただきましたが、基本的には利用者の利便という視点に立っていろいろ考えてみたという御提案をいただきました。

 答弁は要らないということですから、私どもの考えは述べませんが、今御質問いただきました、第二種指定電気通信設備の指定における具体的な特定移動端末設備数のシェアについて、この部分で二五%という答弁をしておったけれども、それでいいのだな、こういうことでございますので、二五%を考えていると端的にお答えを申し上げ、またPHSは含まれないのか、こういう御質問でございますので、これも、特定移動端末設備としては、携帯電話を省令で規定する予定でありまして、PHSにつきましては、そのネットワークの大部分を地域固定網に依存する形態であること、また加入者総数も携帯電話加入者総数の一割にも満たない、こういった理由から、対象とは想定いたしておりません。

 それ以降の質問につきましては、担当の方から説明をさせていただきます。

金澤政府参考人 「当該割合の推移その他の事情を勘案して」、この文言の意味合いでございますけれども、これは、単に一時的な市場シェアの高さのみならず、一定期間における市場シェアの変化や当該企業の規模、技術力、ブランド力、他事業者からのクレームの有無等その他の事項を総合的に勘案して指定するというものでございます。

 それから、省令をいつごろつくるのかというお話がございましたけれども、この法律は六カ月程度かけて施行してまいる予定でございまして、その間に省令の大枠を固めてまいりたいというふうに思っておりますので、六カ月ぐらいかかるというふうに考えております。

伊藤(忠)委員 次に伺います。

 接続約款規制に絡む移動体の話です。届け出制になったのですが、届け出をするときに、料金算定根拠、これはその都度求められまして云々ということになりますと、事実上、認可と同じようになるのではないのか、私はそういうふうに思うのです。

 だから、これは出すだけ出してくれという意味なのか。それをしっかり吟味して、言うならば、事前にチェックをするという意味なのか。その辺が一つ。必要ないのではないかと私が主張しましても、いや、それは何としても出してくれと。出したとしましょうか。それを公開するということになったら、料金算定根拠というのは、それぞれどの企業が出すにしても、企業秘密みたいなものですから、事前でぱっと広がったら大変なことになります。この二点について、どなたでしょうか、どうぞひとつよろしくお願いします。

小坂副大臣 事業者の接続約款届け出の際に、接続料の算定根拠の資料を添付する必要があるかどうか、こういうことでございますが、今回、今御指摘のありましたような接続約款を提出する際に、接続料の算定根拠等の資料を全部整備しろと言いますと、これは大変な業務量になってまいります。そういった意味で、事業者の負担を必要最小限にする観点から、接続約款の届け出に際しましては、算定根拠に関する資料の提出を義務づけることは考えておりません。

 ただし事後的に、第二種指定電気通信設備に係る接続約款の接続料が、能率的な経営のもとにおける適切な原価に適切な利潤を加えたものを超えているのではないか、こういったような疑義がある場合には、当該接続約款の内容が不適切というふうに判断されますので、総務大臣は、当該接続約款の変更を命ずることができるというふうにしておりますので、このようなことで公平性を担保していきたい、このように考えております。

伊藤(忠)委員 次に移ります。

 ファイアウオールについて確認をさせていただきますが、これは再編時の議論を私も覚えていまして、それに基づいて東西NTTが報告しておる内容がございますよね。これは決められているのです。それで報告をしているわけで、その経過からするならば、これはNTTコミュニケーションズに限定をする、こういう考え方なのでしょうね。そうでないと、これをどんどん広げていくということになったら話がまた逆戻りしますので、原点に立ち返ってまた議論ということになりますから、経過を踏まえますと結果はそういうことかな、こう私は思うのですが、その点について御答弁をお願いいたします。

小坂副大臣 いろいろとたくさん説明するようには言われておるのですが、委員、十分に御存じだと思いますので端的に答えます。現時点では、NTTコミュニケーションズ以外には考えておりません。

伊藤(忠)委員 次に、業務範囲の拡大と、自主的実施計画の話を少しさせていただきますが、この中に、自主的に実施計画はつくるのだけれども、この実施計画を期待するというので出ていますよね。金澤局長名で通達になるのでしょうね。これが出されております。それは、御承知のとおり、IT戦略本部からと、規制改革推進三カ年計画の閣議決定というので出ているのですね。

 それで、IT戦略本部は、ずっと読みますが、もう最後だけしか読みませんが、ずっと書いてありまして、「一定の競争促進措置を実施することを期待する。」となっていますね。閣議決定の三カ年計画の方は、「当該実施計画の実施状況を注視する。」と書いてあるのです。これは大分違いますよね。注視するというのはにらんでいるということですよね。おれがにらんでいるから、何か意に沿わないことをやったらチェックするぞということを言っているに等しいわけで、こういう文書が出まして、それを総務省は局長名で当該企業に通達を出しているわけです。

 だから、自主的な実施計画であるにもかかわらず、実質的には、この政省令、規則でぴしっと縛るような中身に事実上はなっていると思うのですが、まさか総務省はそんな考え方でこれを扱われないと思います。だから、リンクはさせないと言われるのですが、裏でこういうものでがんと縛られたら、やはり権力を感じますから、業者というのはびりびりと震えてしまいますよね。

 だから、そんなことにはまさかならないでしょうと。これはまさしく私は行政裁量だと思うのですよ。そこまで行きますと、法律で決めていないそのすき間をぎゅっと言わせるのは裁量行政、こういうわけですが、これはおかしいのではないか。もしそれをやられるのだったら、法律で明文化しなければいけないし、すべてが明文化できませんから、それは政省令を出したときに、そこで議会がチェックをさせていただきますよということになるわけですが、この点に限定して、どうですか。お答えください。

小坂副大臣 今回の改正法案における東西NTTの業務範囲の拡大は、地域電気通信業務の円滑な遂行及び電気通信事業の公正な競争の確保に支障を及ぼすことのない限り認可する、こういう姿勢であります。また、業務範囲の拡大によって競争環境がどのように変化するかというのは、私どもは常に見守っていかなければならないと思うわけでございます。

 同時に、自主的な計画を提出していただくことについては、今、委員御指摘のとおり、IT戦略本部、規制改革推進三カ年計画等において、その方針が提示されておりますので、あくまでもNTTの自主的な経営判断を尊重して、市場における競争の促進に資する計画を御自身で作成をいただいて、提出していただくことを期待していますという政府の立場をお伝えする、そういった意味合いの通達でしかないわけでございます。

 これは、いずれもリンクするものではございませんで、議員御指摘のとおり、法的に直接関連づけられるものではありません。そして、市場の競争環境というのは、私どもは、今申し上げたようないろいろな環境の変化というもの、わけてもどのような環境にあるか常に見ていなければいけないという立場でございますので、そういった立場から注視をしている。

 その中でも、自主的な計画を提出いただいたら、それがどういうふうに遂行されるのかなということをやはり見させていただいている、こういうことで注視という言葉が使われている、このように思うわけであります。

伊藤(忠)委員 これは所管庁の片山大臣が通達を出されて言われればいいことで、閣議決定が横から来まして、それで局長名で通達を出すというのは、どうも私はチャンネルがおかしいと思うのです。出たことを今さら言いませんけれども、これは正直言っておかしいと思います。だから、片山大臣が所管なんですから、それで、こういうことで期待をするよと言って出されるのだったらわかりますけれども、そんな、規制緩和とIT戦略会議が言ってきたことを局長名で通達を出すというのはどういうことですか。

片山国務大臣 この関係は、今、小坂副大臣からお答えしましたが、実は、私の名前で、これは通達というより要請ですね、自主的な競争促進の計画をつくってほしい、こういうことの要請でございますので、私の名前か局長の名前かと検討いたしましたけれども、今まで局長の名前で出したことが多いということでもございますので、それでは、向こうには、NTTさんの方には、よく伝えて、私の名前で出したらどうか、こういうことでございますので、それはあくまでも、裁量行為だというお話がありましたが、自主的なNTTさんの計画にしてもらう。

 ただ、これはもう長い経緯と電通審の第一次答申や、IT戦略本部での議論もありますから、要請ではございますけれども、できるだけ我々のこの要請に沿っていただきたい、こういうことでございまして、それが期待するとか注視するという言葉になっているのですよ。

 したがって、法律上は何のあれも書いておりませんが、もし計画を出していただいた後、その計画の中身や実行についていろいろ問題が出てきたら、そのときはこっちも対応させていただきますよということを、えんきょくにこの法律の附則で書かせていただいている、こういうことは御理解いただきたいと思いますが、実態は、我々とNTTさんと十分なコミュニケーションの上で事を進めてまいりたいと思っております。

伊藤(忠)委員 次に移ります。

 ユニバーサル関連でLRIC方式をちょっと質問いたしますが、まず、このLRIC方式の見直しの問題なんですね。これはこれまでの議論で触れられておりませんので、私はお尋ねいたします。

 LRICの法律改正の際に、附帯決議を議会は採択いたしております。これは皆さんも記憶に新しいところでありまして、こういうことになっています。

 「長期増分費用方式の導入に際しては、ユニバーサル・サービスの確保及び東・西NTTの経営・利用者料金に悪影響を及ぼすことがないことに留意し、効率的な投下コストの適正な回収が図られるよう、モデルの選択、適用、実施を慎重に行うこと。」これが一番目。二番目は、「長期増分費用方式は、諸外国においても一部において導入されているに過ぎない方式であり、この規制方式自体の有効性については、今後十分な検証を行い、必要な見直しを行うこと。」こうなっているわけです。

 だから、この附帯決議からしまして、依然としてアメリカは市内の一部しかこの方式はとっていないのです。日米交渉で、アメリカのUSTRが一生懸命にがんがん言ってきますよね。言っている本人の国がやっていないのですよ。だから、私に言わせれば、何を言うか、やってから言ってこい、お互い対等の立場で交渉をやろうじゃないかというふうに日本の政府は言わなきゃいかぬわけです。ところが、アメリカさんの前へ行くと、言いたいことの十分の一もよう言わぬと、結局、やられて帰ってきておるわけです。その結果生まれたのがこのLRIC方式なんです。

 ヨーロッパの皆さんは、先進国ではそれなりにやっているところが多いのです。私はそういうふうに聞いています。ヨーロッパに言われたら、対等にやったらいいと思うのです。アメリカに言われたら、手前のところがやっていないのに、何で日本にそんなことを言ってくるんだということで、言うならば対等以上の交渉の立場に立ってしかるべきじゃないでしょうか。

 私は、当時盛んにそのことを申し上げた。ところが、結果的には屈服したのですよ。それで二二・五%値下げをしまして、値下げするということは、日本の通信事業体すべてに影響を与えるわけです。当時は固定電話ですが、メタル回線全部そうなんですよ。大変なことなんです。だから、下げなければいかぬという努力はみんなやっているわけですよ。ところが、アメリカに言われて何で日本が屈服しなきゃいかぬのかというところに、日米交渉で大変問題を感じます。

 そういうことを指摘したにもかかわらず、問題は、森総理にかわりまして、森総理が、言うならばその後、名刺外交で訪米されまして、言わなくていいことを自分から言ったものだから、一たん棚上げになっていたものがまた生き返ってきまして、沖縄サミットの直前に決着したのですよ。これは、私は外務省にも抗議しました。何で外務省は腑抜けなんだということを私は言ったのです。きょうも外務省に来てもらおうと思ったのですが、これは後日に譲ります。

 日米交渉、まだ残り分があるのですよ、向こうはがんがん押してきますよ。ところが、交渉に立っているのはUSTRであって、言うならFCC絡みじゃないでしょう。その人を出してこいということを総務省も言ったわけですよ。そうしたら、彼らの言ったのはこういうことですね。いや、FCCの代表が出るかどうかを検討しましょう、たしかそういうことだと思うのです。検討しましょうといって帰っていったのにすぎぬわけですよ。そんな交渉がありますかということを私は問題点としてきちっと追及したいと思っています、主張したいと思っているのです。

 そこで、LRIC方式の見直しは、附帯決議にありましたとおり、今後、時代も変化します。しかし、実際に適正な利潤が確保できてこそのLRICなんでございまして、接続料金でございまして、利潤も出なかった接続料金を赤字覚悟でやったらつぶれてしまうわけです。この点について、まず一点、どのようなスタンスで見直していくのかということを明らかにしていただきたいと思っております。

 二点目は、基金の設置に絡んで申し上げますが、つまり、裁量行政でこれからやられていくわけですよね。これは、大臣がその辺はやられていくわけです。しかし、もう時間がありませんからそれ以上申し上げませんが、省令が作成された段階で私たちは委員会で審議をさせていただきますから、できた段階で大臣、ひとつよろしく対処いただきたい。この二点についてお尋ねをいたします。

金澤政府参考人 まず、一点目の見直しの件でございますけれども、これにつきましては、長期増分費用モデル研究会というものを開催いたしまして、現在、見直しを進めております。

 具体的には、技術革新を反映した新技術の導入、それから設備単価等の更新といった、より効率的な技術設備のモデルへの採用、それから電線類地中化の状況や加入者線の配線形態等、東西NTTの現実の実態に即したより現実的なモデルへの改修ということを考えております。それから、耐用年数についてもより実態に即した見直しというものをやっているところでございます。

 それからもう一点、報酬率についてお尋ねがございました。報酬率につきましては、費用の算定に当たっては当然盛り込んでおります。今後もこのような考え方で対処する考えでございます。

 基金の設立に当たっての省令の問題でございますけれども、政省令というのは当然、行政府が制定するということとなっておりますが、国会で御質問があれば、その内容については誠実にお答えしてまいりたいというふうに私どもは考えております。

 それから、今回の法案に関連する政省令の制定に際しましては、当然、情報通信審議会へ諮問いたしますし、それから、パブリックコメントの実施等により、関係各方面の意見を十分賜りながら、公正、透明な手続で実施してまいりたいというふうに考えております。

伊藤(忠)委員 そんなのはわかっていますよ。それは私も聞きましたからわかっています。だから、省令が作成された段階でこれは委員会で審議の対象にさせていただきますよと、もし御答弁が必要だったらお答えくださいということを言っておるわけですよ。

片山国務大臣 今、局長が言いましたように、立法、行政、司法は三権分立でございまして、政令、省令は実は行政府の権限にはなっておりますけれども、我々と当総務委員会との大変親密な関係からいいまして、省令について御議論いただくのは一向に構わないと私は思いますので、どういうコミュニケーションの方法があるか、少し考えさせていただきます。

伊藤(忠)委員 次に移ります。

 これは非常に重要なことなんですが、ユーザー約款ですね。これは現在、東西のメタルはかかっていますよね、認可。認可制というのはそれなりにお考えになってそうなっているわけですが、三十一条の四、これを迅速に処理してくれぬかということなんです。でないと、サービスはお互いにイコールフッティングでやっていかなければいかぬ、大きいところだというので規制を受けているわけですから、その辺は一言答弁いただければ次に移れると思いますので、どうぞ。

小坂副大臣 法案では、サービス約款、契約約款について、東西NTTのみを認可として他の事業者を届け出としているわけですが、迅速な処理ということで、基本的には一カ月ないしは二カ月以内に処理をするというのを目安にして迅速な処理を心がけてまいります。

 また、なぜ約款を認可にしなければならないのかといいますと、基盤的なインフラと言われるような設備を供給している事業者が、このサービスを契約した相手は、利用者、一般国民でございますので、それが変更されることは利用者にとって大きな障害となる可能性があるわけですので、これはやはり事前に障害の有無をチェックしておく必要があるということで、事後的な変更では間に合わないという観点から、このサービス契約約款について認可が必要、このようにしているところでございます。

伊藤(忠)委員 そのことを言っているんじゃありません。早くやってねと言っているわけです。いいですな、早くやってくれと言っているわけです。

小坂副大臣 一、二カ月というめどを持って、できる限り早くやるようにしてまいりたいと思います。

伊藤(忠)委員 次に行きます。

 ちょっとその前にお聞きしますが、赤城先生が触れられました自治体のネットの話です。これは指定電気通信設備になっているわけですか。自治体がネットを引きますよね。いろいろケースがあると思うのですが、ちょっと聞かせてください。

金澤政府参考人 なっておりません。なっていないということであります。

伊藤(忠)委員 今、東西メタルが指定電気通信設備なんですね。それだけですね。これは難しいというか、ちょっと押さえておかないと議論がかみ合わないというか、僕、間違うといけませんので聞いていますが、どうですか。東西メタルだけが指定電気通信設備ですか。

金澤政府参考人 指定電気通信設備という概念で今お尋ねがあったというふうに確認いたしますが、指定電気通信設備というのは、現在、NTT東西の設備でございまして、それはメタリック設備プラス光ファイバー設備ということでございます。(伊藤(忠)委員「光ファイバーも入っているわけですね」と呼ぶ)はい。

 それで、先ほどお尋ねがございました地方自治体の設備、これは指定電気通信設備ではございません。

伊藤(忠)委員 メタルの話をするんじゃなくて、光ファイバーのこれからの話を私はしたいのです。

 そうすると、光ファイバーは、メタルと同じように、NTT東西だけが指定電気通信設備なんです。ほかのところはその規制がかかっていないんです。そこで競争して、一千万、三千万のブロードバンドを、網形成を建設せいというわけですよ。ここに私は大きな矛盾がある、こう考えるわけです。

 指定電気通信設備というものがかかるものですから、いうならば、ユーザー料金、料金約款も、当然これは規制をされてくる。つまり、一律に料金はやりなさいということになるように理解するのですが、その辺はそうじゃないんですか。都会は都会、地方は地方というふうに、それぞれの市場の状況を考えていいんですか。

金澤政府参考人 今のお尋ねは、指定電気通信設備を用いて提供する役務料金、接続料金ではなくて役務料金というふうに理解しておりますが、それはプライスキャップ制でございまして、上限が決まっておりますけれども、その上限の枠組みの中であれば自由に設定できるということでございます。

伊藤(忠)委員 それは東京を初め、都会では希望者、ユーザーが多いですから、そしてまた事業者も多いですから、それぞれ競争が激しい。すると、料金を下げて売ろうとする。質が一緒で料金が低ければユーザーはふえる、これが市場競争なんです。それをやっていく。だから、これはいいと思うのです。下げていけばいい。下げることは問題にしないわけです。

 ところが、山奥の谷底へ行っても、需要があれば引かなければいかぬということになるわけです。これは今後のユニバーサルサービスにも係るのですが、それは横に置くとしまして、そういう需要があれば、これはだれが引くかといったら、民間が引きに行くわけがありませんよね。NCCが引きに行くわけがありません、引いたら損しますから。つまり、幹線中継系から引かぬことには、加入線引きませんからね。そうすると、CATVかNTTが飛んでいってやるということになるんですよ。

 そうしたら、一加入当たり料金というのは、どうしたって、設備投資の関係を考えれば、料金が少しは高くなければ赤が出るじゃないですか。赤が出るからもう引きに行くのは嫌だといって拒否したら、ユニバーサルサービスに光は入っていないから、それはしようがないということになるのですか。その辺はどうですか。

金澤政府参考人 光ファイバーの接続料の話と今の話は関係してくると思いますけれども、光ファイバー構築がさまざまな競争環境の中で進んでいきますと、競争事業者が、低コスト分野である都市部を中心に非常に安い接続料を設定いたしまして、接続料にかかわる料金競争が生じてくるというふうな場合がございます。このような場合には、競争中立性の観点から、NTT東日本、西日本に地域別のコストを反映した接続料の設定を認める考え方にも、私どもとして一定の合理性があるというふうに考えております。

 この問題は、現在、接続ルールの見直しを検討している審議会でも答申草案を公表し意見招請を行っておりますが、そこでは、光ファイバー設備の提供は昨年末に始まったばかりであること、それから、地域別料金をNTT東日本、西日本は一時要望していたのですけれども、地域別料金は将来の課題だというふうに東西NTT自身が考えている。それから、電話、いわゆるあまねく電話の均一料金への影響、これに対する影響について深く検討する必要があるということから、当事者も含めて、私どもは当面は、現在の均一の考え方を維持することが適当というふうに考えておりますけれども、今後、光ファイバー設備の競争が進展してくれば、地域別料金の設定も検討課題になるというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、今後、光ファイバー設備をめぐる競争の進展状況を注視しながら、この問題の取り扱いを検討していきたいというふうに思っております。

伊藤(忠)委員 時間がありませんから先に進みますが、そのような矛盾が出てまいりますので、ぜひとも検討してください。

 これは、光は引いていかなければいかぬわけです。それで、非常にうれしいことにというのですか、やはり日本の光インフラ、光網は、今の体制でいけば、それはADSLもあります、そういうのはありますけれども、これは暫定的な話なので、結局、ブロードバンドを引いていくということが二十一世紀の一番、大道でございますから、努力すればやっていけるんです。本当に日本はぴかぴかの、そういう最高速のブロードバンドのネットワークができるものですから、ほかの国は心配しているわけですよ。だから、何のかんの言うて、まあちょっと日本をこうやろうかということに、どうしてもなるわけです。アメリカなんか、うまくいきませんよ、あれは。ヨーロッパだって、がたがたになるかわかりません。我が日本は、そういう点では、今の体制をもっとうまくやっていけば、僕は達成ができると思っています。

 ADSLを随分と、新規参入、皆さんは、韓国と比較して日本はおくれているおくれていると言うけれども、あれは、今の勢いでいったら、三百万ぐらいあっという間にいくのじゃないですか。でも、DSLだけで満足できるわけじゃないので、そういうことを考えますと、今のようなことを先取りするような格好で、局長さん、きちっとやはり検討していただいて、当該のところも、NCCさんを含めて、その辺はきちっとやはり意見を酌み取っていただかないと、これは後手に回ったら結局おかしなことになりますから、どうぞひとつよろしくお願いいたします。

 時間の関係で先へ急ぎますが、次は、NTT株の売却収入がどうなっているかとなりますと、これまでは、本当にこれは情報通信のために使われずに、何か公共事業の方に使われていって、国債整理基金は、バブルで収入がよかったものですから、大蔵省がそちらへ使った。これは焦げついて、公共事業、まともに進んでいるところはどこもありませんよね。これが朝日新聞の記事で二回にわたってばあんと暴露されて、これでびっくりこいて、通産と総務省が共管になっている基盤整備ですね、技術センター、あれのスキームを変えまして今回やっているわけですが、これでも二千七百億ぐらい、配当益がいっているんじゃないですか。売却益が大体五千億を超えていますよね。それがこれに一銭も使われていないんですよ。これはいかがなものか、私はこのように思います。

 そういう売却益や配当益を情報通信の基盤構築に使えば、どれだけ生きた金になるのか、このように痛切に私は思います。そういう意味では情けないですよね。そういうお金こそ、そこへ使えばいいのに、全く違うところへ使って、むだ遣いしているわけですよ。これははっきり言って、むだ遣いなんです。だから、それはやめていただきたい、こう思います。

 したがって、これは大臣にぜひとも要請したいんですが、大臣は経済財政諮問会議のメンバーでございますので、まさしくそこで大臣にどんと言ってもらって、きちっと整理をしていただきたい、このことについて答弁をいただきたいと思います。

片山国務大臣 保有義務のある株式の、これを緩和して売却した場合にどうそれを扱うかについては、御承知のように結論は出ておりませんよね、決めていないということですよね。それ以外のものについては国債整理基金の今、特別会計に入っている、こういうことでございます。

 実はけさもIT新戦略本部がありまして、そこでいろいろな議論の中で、私はインフラ整備について、公共事業そのものの概念を変えて、ITや何かをその主力にすべきだということをIT戦略本部で言ったばかりでありまして、せんだっての経済財政諮問会議でも、社会資本のあり方、公共事業のあり方のときに、何回か前ですけれども、それも強く主張いたしました。ただ、それは私はNTT株の売却収入とは言いませんが、公共事業そのものにしろ、こういうことを言っておりますので、また、今、委員から言われたような強い要請もあちこちから聞きますから、それについては経済財政諮問会議その他で主張してまいります。

伊藤(忠)委員 もう一点、時間の範囲内で、大臣にひとつ頑張っていただきたいと思う点がございまして、それは連結納税制度の導入の件ですが、これは、組織再編するときに戦後、独禁法に初めて風穴をあけまして、先鞭を切って持ち株制度を導入したわけですよね。それから、やはり分社化だとか統合だとかいろいろなものにこれは使われてきて、経済界では評価をされているわけです。問題なのは、連結納税制度はアメリカなんかでは導入されておるんですが、日本の場合にはそこまでいっておりません。したがって、二〇〇二年にはこれを実現しようということになっているように聞いておりますので、どうぞひとつ実現できるように、これも大臣に大いに頑張っていただきたい。答弁をお願いします。

片山国務大臣 私は、実は自民党の中の税調の、自分で幹部と言うのはおかしいんですが、いろいろなあれでずっとやってまいりましたので、連結納税の強い要請があることは存じ上げております。これは、税制改正大綱では二〇〇二年度の導入を目指す、こういうことでございますけれども、一つのネックは、いろいろなやり方で問題があるのと、委員御承知のように、国税も地方税もまともにやると、税収は落ちるんですよ。その辺をどう考えるかということがありますので、要請はしっかり受けとめて対応してまいります。

伊藤(忠)委員 終わります。ありがとうございました。

御法川委員長 次に、若松謙維君。

若松委員 公明党の若松謙維です。

 まず、整理して、小坂副大臣、十分後に帰ってきていただければ結構ですから、どうぞ遠慮なく行ってください。大臣には最初五分だけ質問させていただいて、あとはどうぞ行ってください。

 大臣に、これは質問通告していませんけれども、経済財政諮問会議等で、もしくは小泉総理とお話しする際に、通信と放送の融合、こういった議論は実際出てきますか、どうでしょうか。

片山国務大臣 きょう、小泉内閣になりまして初めての、今言いましたIT新戦略本部がありまして、その際に、委員の方から今の通信と放送の融合の話が出ましたが、私は九時四十五分に参議院の総務委員会があったものですから出ましたので、総理の発言はそれについてはなかったようですね。私がおるまでは総理の発言はありません。

若松委員 わかりました。

 これは質問通告しておりますが、電気通信審議会答申によりますと、一連の競争政策が導入されて二年を経過してもなお十分な競争の進展が見られない場合には、NTTグループの経営形態について、完全資本分離を含め、現在の持ち株会社形態の抜本的な見直しが必要である、こう言われているわけですが、今回の改正案につきましては、NTTの経営形態のあり方の見直しについては直接言及しておりません。

 そこで、電気通信制度のあり方について、結果的に、期限を定めないで、包括的、抽象的な見直し規定を置くにとどめている。やはり後退という言い方をせざるを得ないと思うんですけれども、なぜこのような規定に至ったのか、御答弁をお願いします。

片山国務大臣 なるほど、電気通信審議会の第一次答申には二年という期間をつけていましたですね。それで、これを附則か何かで書いたらどうかという意見もありまして、これは与党の中でのいろいろな議論もありました。そこで、私は、審議会は権威ある審議会で一つの意見だけれども、これをどう扱うかは、二年後という期間じゃなくて、私はそこは速やかにということで、そういうふうに直したらどうかと。それは、二年より前倒しもあるし、事情があれば二年より後ろにいくこともある、そういうことで法律を書くべきだ、こういうことにいたしたわけですね。それで例のe―Japan戦略にも規制改革三カ年計画にも、「速やかに」ということで抜本的見直しを書かせていただいたわけであります、そっちの方は。

 ただ、法律にする上で立法技術の議論もありますし、いろいろな意見がありまして、包括的なことを書いています、包括的に。しかし、あの中の精神は、NTTさんに自主的なインセンティブ型の競争促進政策を自分で決めていただいて、実行していただいて、それで効果が上がらないようなことならば経営形態を含めて抜本的に見直すということが、あの附則の抽象的な表現の中にはあるわけでありまして、それは関係の方には御了解いただいております。

若松委員 あと結構ですから、どうぞ、大丈夫です。

 それでは、今度は局長と公正取引委員会にお聞きしたいんですけれども、いわゆる我が国の電気通信分野以外の分野におきまして、非対称規制、この非対称規制という言葉がなかなかわかりにくいんですけれども、私はハンディ、いわゆるゴルフでいうハンディキャップ、ハンディを与える、そういうふうに理解しているんですけれども、電気通信分野以外の分野で非対称規制が行われている例があるかどうか。

 また、この電気通信分野の非対称規制について、もし外国の例でありましたら御紹介いただきたいと思います。

金澤政府参考人 我が国の電気通信分野以外の分野において非対称規制があるかというお尋ねでございますが、例えば、電気事業法上の指定電気事業者、それからガス事業法上の指定一般ガス事業者などがございます。これらの場合、所管大臣により指定を受けた事業者は、振りかえまたは接続供給約款の作成、届け出、公表義務といった特別の義務が生じる仕組み、いわゆる上乗せ規制というふうになっております。

 次に、電気通信分野における非対称規制についての諸外国の立法例でございますけれども、米国では、九六年通信法第二百五十二条に基づきまして、例えば、四つのベル系地域電話会社を対象として特別の接続義務などの非対称規制を課しております。また、ヨーロッパでは、EU相互接続指令第四条のほか、ドイツの電気通信法第二十五条、フランス郵便電気通信法典L三十六の七条等、各国の通信法において、顕著な市場支配力を有する事業者に対しまして接続義務その他の非対称規制を規定いたしております。

若松委員 それでは、公取にお聞きしたいんですけれども、市場支配的事業者規制の導入につきましては、独禁法の規制に加えてさらに規制をする必要があるのではないか、検討すべきと、こんなことが言われているわけですけれども、今回の規制、いわゆるこの非対称規制とかに対しての公取の立場からの評価はどうでしょうか。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 今回導入されようとしています市場支配的事業者規制については、現在、我が国においてIT革命を成功裏に進めることが喫緊の課題となっていることにかんがみまして、電気通信分野においては、いわゆるネットワーク産業であり、競争相手の事業者と接続することにより利用者の効用が大きく増加するなどの特殊性を前提とした上で、独占から競争への過渡的な状況にあることから、公正競争促進の措置として、公共性あるいは利用者利益の確保の観点から、必要最小限の範囲で行われているものと認識しております。

若松委員 同じく公取の方にお聞きしたいのです。

 今ちょっと触れたと思うのですけれども、御存じの我が国の重要課題のいわゆるIT革命、これを政府・与党も一体となって推進しているわけですが、特にこの電気通信分野におきます反競争的行為を迅速かつ効果的に防止、除去することが大変重要だと思います。このような観点から、今後、公取は総務省と当然、密接な連携を図っていくべきと考えますが、公取、いかがでしょうか。

鈴木政府参考人 公正取引委員会といたしましては、電気通信分野における事業者間の公正な競争の促進のためには、総務省と公正取引委員会が緊密に連携しつつ、反競争的行為を漏れなく迅速かつ効果的に防止し、除去し得るようにすることが必要であると考えております。

 このような観点から、今後、総務省との間で必要な連携を行う仕組みについて検討を進めることといたしております。

若松委員 済みません。国民の皆様に、局長と公取の方から、非対称規制と独禁法規制との違いをちょっと簡単にわかりやすく説明していただけますでしょうか。どうぞ、どっちでも結構です。

鈴木政府参考人 独占禁止法は市場におきます競争に関する一般的なルールでございまして、この法律の基本的な趣旨は、事業者、企業の自由な事業活動を制約して、市場における競争がなくなるような方向で行いますことを規制いたしますもので、これはすべての事業者に相通ずる基本的なルールでございます。

 これに対しまして、非対称規制と申しますのは、あらかじめ一定のシェア等の基準を設けまして、特定の事業者については、特定の行為等について若干厳しい規制をかけるということでございます。

金澤政府参考人 総務省として今回の電気通信事業法等の一部を改正する法律案の中で非対称規制を設けることといたしましたのは、まず電気通信分野固有の事情がございます。先ほどもございましたけれども、ボトルネック設備と接続しなければ他の競争事業者は、例えば、当然NTTと競争し得る状況にはならないという電気通信分野固有の特殊性がございます。

 それから、電気通信分野は、御承知のように、日本電信電話公社という公社形態、完全な独占経営体から徐々に競争分野へと移りつつある、独占から競争への過渡期的状況にあるという特殊性、こういうものを踏まえまして、電気通信分野における支配的事業者につきましてあらかじめ禁止すべき行為類型を定めまして、独占の乱用を防止したいというものでございます。

若松委員 この言葉はやはり難しいですね。この辺でやめておきます。

 それでは景山大臣政務官にお聞きしたいのですけれども、昨年十二月末現在でインターネットの利用者が四千七百万人に達したようです。その一人が私でございます。

 しかし、定額制通信料金によるインターネットアクセスは地域間でばらつきがあるわけですね、電気通信審議会におきましてもその重要性は認識されているようですが。その結果、インターネット利用サービスは、いわゆる次世代ユニバーサルサービスと位置づけている。インターネットもユニバーサルサービスだと。既に国民の三人に一人がインターネットを利用しているわけですから、今後インターネットの定額サービス、例えばISDNも今回のユニバーサルサービスの対象、省令なりで対象に入れるべきではないか。また同様に、移動体通信につきましてもユニバーサルサービスと位置づけて、日本全国でいわゆる不感地帯をなくしたらどうか、こう考えるわけですけれども、いかがでしょうか。

景山大臣政務官 先生御存じのとおり、インターネットサービスにつきましては現在、利用が非常に拡大をいたしております。今世帯普及率というのが大体三四%くらいで、これは平成十二年度の調査ですけれども、にとどまっておる。ところが、携帯電話も六千五百万台くらい普及しておりますが、固定電話を上回る普及は見せておりますけれども、携帯電話相互間のトラフィック、通信量、そういうものはまだ全体の一八%くらいしか進展していない。こういう中で、先生がおっしゃいましたけれども、ユニバーサルサービスをこの二つがやるには、もう少し検討していかなければいけないのではないのかなというふうに思っております。

 ただ、先生がおっしゃいますように、今後、次世代ユニバーサルサービスの位置づけとか、引き続き公的支援、こういうものも当然検討していかなくてはいけないと思いますし、また、電気通信市場というのは非常に変化が激しい分野でありますので、各種のサービスの普及、利用状況、こういうものを踏まえまして、今から、財源の負担の見直しを含めまして、いろいろと適時適切に検討していく準備は必要ではないのかなというふうに考えております。

    〔委員長退席、渡海委員長代理着席〕

若松委員 これは要望だけですけれども、いろいろ事情もあるでしょうけれども、検討をぜひ早めていただいて、可能な限り定額制で、かつ全国的に一律とか、そういうユニバーサルサービス体制に持っていっていただきたいと要望して、次の質問に移ります。

 それで、小坂副大臣にお伺いします。

 小坂副大臣、通信・放送の大変プロでございまして、これは質問通告していませんが、放送・通信の融合というのでしょうか、これはかなりの面、進んでいるのでしょうけれども、何年くらいたったらもう実質的に垣根というのがなくなって、今は放送法と通信事業法と分けておるわけですけれども、そういう法体系が意味がなくなってくる時代というのは遅かれ早かれ来ると思うのです。それはいつごろくらいなのか、もしお考えがありましたら、教えていただきたいと思います。

小坂副大臣 いわゆる通信・放送の融合と言われる状況の中には、端末の融合、すなわち、テレビとコンピューターが一緒になったような端末が開発されたり、あるいは携帯電話でいよいよ新しいサービスも始まりましたけれども、テレビのニュースのようなものが携帯電話で受信できるようになる、こういった状況が端末の融合と言われるわけですし、また、伝送路の融合と言われる、ケーブルテレビのように、通信回線を使ってケーブルテレビジョンの放送が行われる、こういうようなことが出てくる。

 それでは、この通信・放送融合は一体どのくらいになったら両者の区別がなくなってしまうのか、こういうことでありますが、これはなかなか一概には言えないのですね。

 デジタル化というものが進んでまいりまして、放送のデジタル、通信のデジタルが一緒になりますと、そのコンテンツは相互に利用しやすい環境ができますし、また、通信回線を通じてケーブルテレビのようにテレビ番組が送り込まれて、それが受信機の中にあるいわゆるサーバーと呼ばれるような蓄積機能を持った受信機で蓄積をされてしまいますと、経路が、電波で放送として入ってきたのか、インターネットのようなものでケーブルを通じて入ってきたのか、通信のような回線で入ってきたのか、蓄積された後は全く区別がなくなってしまう、こういうようなこともあります。

 そういった機器も市場にはもう既に出てきておりますし、そういう意味では通信・放送の融合状況というのはかなり進展してきておりますから、あと三年ぐらいしますと、両者が混然一体となってくるような状況は確かに出てくると思うのです。

 しかしながら、放送と通信の法制をどういうふうに切り分けるかというのは、またちょっと別の観点から考えなきゃいけない問題だと思っておりまして、それではこの法律の垣根が三年で完全になくなってしまうのかといえば、どうもそうではないような気がいたします。

 各国ともこの辺は非常に注意をして法制を見直しているようでございまして、私ども、まだ検討段階にありますので、明確には申し上げられませんが、状況としては、サーバー受信機のようなものが売り出されている環境、それから次世代携帯電話がもう市場に出てきた状況、こういうのを見ますと、三年ぐらいでかなり接近してくるのではないかな、このように考えております。

若松委員 もう一つ聞いていいですか。

 御存じのように、マイクロソフトとか、従来のコンピューターのコンセプトというか、ディスプレーとハードディスク、こういう概念ですけれども、ハードディスクがこれからサーバーに組み込まれるというところと、先ほどの放送と通信事業と本当に一体化してきているということで、現実的にはかなり進んでいると思うのですね。

 ところが、他国ですと、基本的に法律体系は分かれているのでしょうけれども、かといって、それでは本当にこれから日本が新しい状況に、やはり法律の体系を全く、新しいものに挑戦するということも大事だと思うので、そういった観点もぜひ引き続き検討していただきたいということを要望して、一言それに対する何かレスポンスをいただいて質問を終わりたいと思います。

片山国務大臣 当委員会でも若松委員初め多くの委員の皆さんから、放送との融合、将来どうあるのか、法的な体系の整備を含めて御質問をいただいております。私自身も、そういうことはきっちり整理する必要があるのではなかろうか、こう思っておりますので、御指摘はしっかりと受けとめてまいります。

若松委員 ありがとうございました。

渡海委員長代理 次に、黄川田徹君。

黄川田委員 自由党の黄川田徹であります。

 前回に引き続いて質問いたします。電気通信市場でのNTTの独占をただし、他の通信事業者との公正な競争を促す視点の継続として、具体的にお聞きいたしたいと思います。

 まず、消費者の利益に直結する料金問題から始めたいと思います。

 固定電話の三分間で例えば八・五円といったダイヤル通話料金の比例費レベルは、競争効果を反映し、徐々に低廉化してきております。また一方、基本料金として、住宅用の場合、人口五万人未満は一千四百五十円、五万人から四十万人未満は一千六百円、四十万人以上は一千七百五十円を毎月支払うことになっております。比例費が下がりつつある現在、基本料金の固定費の割高感が目立ちます。特に、携帯電話の普及による固定電話の利用頻度の低下により、なおさらその感が強いわけであります。私は先日、東西NTTの合理化問題で指摘したとおり、この際、競争可能な将来のレベルを見定め、基本料金の適正な値下げを、総務省は指導すべきであると考えますが、いかがでしょうか。

 また、ユニバーサルサービスの観点から、利用頻度の低い地方は所得水準が低い高齢者の比率が高いこともあり、基本料金の傾斜を改めるべきではないでしょうか。電気料金では、東京電力の場合は電気供給約款によりますと、基本料金は契約アンペアに応じ、七区分にも分かれており、低利用者への配慮がなされているところでありますが、総務省の見解をお尋ねいたします。

小坂副大臣 黄川田委員の御指摘の趣旨は私も非常に共鳴するところが多いのでございます。しかしながら、一方で、今御指摘のように、四十万以上の加入者の地域を三級局、五万から四十万の間を二級局、五万未満を一級局と区分して料金設定が行われているのは事実でございます。

 都市部においては確かに利用頻度も多いわけでございますし、隣のうちとも近いということで、多分回線を敷設するコストも安いだろう、みんなで負担すれば安くなるだろう、こう思われるわけですが、都市部はいろいろな事業者が参入して競争も激化しておりまして、特定の事業者がそういう地域の方を地方よりも高い料金を設定しますと、競争上不利益になって、結局、その事業者は排除されてしまう。こういうことになると、全体の料金が採算性がとれない結果、また値上がりをするという結果にもなりかねない。また、外国におきまして事例を見ますと、以前は地域区分という別の料金体系でしたが、だんだん単一料金になってきている、こういう傾向も見られます。

 それらを見たときに、やはり所得水準が低い地方だから安くした方がいいという、私も政治家としての気持ちとしては黄川田委員のお気持ちはよくわかるのでありますが、しかし、事業者の側に立った場合にそういう判断が働くのもやむを得ない部分があるかな、こう思うわけで、行政がそこに関与して特別に基本料金を引き下げさせて、都市部を上げさせるというか、都市部の方をむしろ高くした方がいいというような指導はなかなかしにくいという状況にあります。

 自由競争の中で、やはり同じような考え方を事業者が持って、地方の料金をできるだけ低廉にしてもらうように、そういった意味の競争をしてもらう。また、事業者間の話し合いにおいて、地方の料金が安くなるように、統一して下げてもらうような努力を期待したい、このように思うところでございます。

黄川田委員 東西NTTの問題の本質は、圧倒的な市場占有率を持つのに膨大な人件費の負担があること、あるいはまた、全世帯のサービスの要請をされて不採算部門から撤退できないことなどがあると思いますけれども、ぜひとも組織をスリム化されまして、基本料金にも対応できるように頑張っていただきたいと思っております。

 それでは次に、各委員からもお話がありましたけれども、電気通信事業紛争処理委員会の機能強化について、私からも重ねてお尋ねいたしたいと思います。

 本年三月末、IT戦略本部が決定したe―Japan重点計画において、有線、無線の多様なアクセス網により、すべての国民が極めて安価にインターネットに常時接続することを可能にするとの目標が定められ、電気通信分野における競争を促進するための各種の施策の導入が提言されております。

 さまざまな事業者間で競争が行われる環境を整備すれば、利用者にとって望ましい料金の低廉化やサービスの多様化、高度化が進展すると考えます。しかし、一方で、さまざまな有線、無線のネットワークを結ぶ接続の形態は複雑化し、事業者間の費用負担をめぐる交渉もより厳しいものになるわけであります。そのため、結果として、協定や契約の締結に際して事業者間で多くの紛争が発生し、また、紛争内容が複雑化すると考えられます。これに対応するため、今回の法改正では、電気通信事業紛争処理委員会を設置して、紛争処理を専門に担うこととなりますが、この委員会の権限や機能強化について考えてみたいと思います。

 先ほどからお話がありますけれども、米国には証券取引委員会SECや連邦通信委員会FCCといった組織があり、それぞれ証券行政全般、情報通信行政全般を所掌しております。これらの組織は、大統領制のもとで立法府、行政府、司法から独立し、しかも非常に強い権限を持ち、大きな裁量を与えられておるところであります。

 我が国において、米国と同様の委員会方式の組織を設けて、同様の権限を与えてはどうかという意見が少なくありません。先般もいろいろ委員がお話しされておりました。今回、紛争処理委員会を創設し、事業者間の紛争の解決に向けこの委員会を機能させていかなければなりませんけれども、今回の国家行政組織法の八条委員会から、米国FCCの機能に近い、公正取引委員会並みの権限を有する三条機関のように、十分な権限が与えられていることが重要であると考えます。この点について、総務大臣の御見解はいかがでしょうか。重ねて質問いたします。

 また、今回の紛争処理委員会は、迅速かつ円滑な紛争処理を行うため、具体的にどのような権限が与えられているのか。また、それで十分な機能が果たせるのか。あわせてお尋ねいたしたいと思います。

    〔渡海委員長代理退席、委員長着席〕

片山国務大臣 電気通信事業に係る紛争処理委員会についてのお尋ねでございますが、黄川田委員が言われますように、これからこの部門はどんどん大きくなっていきますから、紛争の事案もふえるでしょうし、紛争事案がまた複雑化、高度化することも事実だと思います。そこで、この際、そういうことを処理する専門の対応組織をつくろう、こういうことで、今回の法律で紛争処理委員会をつくらせていただくことにしたわけであります。

 この委員会はあっせん及び仲裁を行う。今、役所だけの、総務大臣だけの裁定でございますけれども、それよりはある意味では柔軟に、自由に対応できるような処理方式を入れることによって、選択肢がふえてスムーズな紛争処理ができるんではなかろうか。全体としては紛争処理を迅速かつ効率的にするための機能強化である、こういうふうに考えておりまして、もう既にお話がありましたが、委員が五名で直属の事務局をつくってこれに対応してまいろう。

 ただ、アメリカのFCCとの比較は、毎回出るわけでございますけれども、我々は、まずこれで出発して状況を見ながらと、こういうことでございまして、私は必ずしもアメリカのFCCがいいと思っておりませんので、EUを見ましても、それをばらばらにやっているところがないわけじゃありませんけれども、その多くは日本の場合と同じようなやり方をやっております。とにかく委員会をつくらせていただくことが一歩も二歩も前進ではなかろうか、こういうふうに思っておりますので、ぜひ御理解を賜りたいと思います。

黄川田委員 産業の振興と規制、監督の仕事を同じ役所で行うということは、好ましいことではありません。そこで、消費者、利用者の利益を図ること、これを第一に挙げて公開の場で議論されるような委員会になることを強く望んでおきたいと思います。

 次に、マイライン営業をめぐる公正競争上の問題についてであります。

 NTT東日本が、マイラインの勧誘をめぐり、グループ会社のNTTコミュニケーションズと一体となって不公正な営業行為を行ったことが大きな社会問題となっております。

 これは、再編成によりNTT東日本とNTTコミュニケーションズが分社化されたものの、持ち株会社のもとで資本関係の一体性が維持された結果生じている、いわばNTTグループの構造的な問題であると私は考えております。

 マイラインをめぐる営業活動について、NCCからの苦情申し出を受けて、今月、総務省はNTT東日本に対し行政指導を行ったとのことでありますが、具体的にどのような問題行為があり、これに対しどのような指導を行ったのでありましょうか。

 また、今回、新たに市場支配力を有する事業者に対する規制を導入するとのことでありますが、この措置により本件のような問題の解決にどのように役立つのでしょうか。総務省にお伺いいたしたいと思います。

金澤政府参考人 総務省は、NCC五社からの意見申し出を受けまして、独占的なネットワークを保有するNTT東日本とNTTコミュニケーションズがマイラインをめぐり一体営業を行っている点につき公正競争上問題があると判断し、去る五月十七日、NTT東日本に対し、再演防止のための適正な営業活動の徹底を図る旨の行政指導を行ったということでございます。

 今回の法改正によりまして、市場支配的事業者に係る公正競争ルールが整備されるわけでございますが、これによりまして、公正競争上問題となり得る営業活動のうち、法律上の禁止行為に該当するものについては、従来のような行政指導という方法ではなく、具体的な法律上の規定に基づいた適切かつ効果的な対応が可能になるものというふうに考えております。

黄川田委員 それでは、次に、ユニバーサルサービスと地域課題についてであります。

 山間、離島の多い我が国においては、社会経済生活において、過疎化の進行や高齢化の進展など、さまざまな地域課題が存在しております。とりわけ高齢者にとって、人と人とのコミュニケーションが疎くなるのではないかとの懸念もあるなど、地域固有の問題を抱えております。

 このような状況の中、物理的に移動することなくコミュニケーションを行うことができる電話などの通信手段は、地域課題の解決に大きな役割を果たし得ると思っております。このように、電話はまさに国民生活に不可欠なユニバーサルサービスとして、地方の生活に欠かせない社会的インフラであります。

 今般の法改正によるユニバーサルサービス基金の制度整備が、地域課題の解決にどのように役立つのか、総務省にお尋ねいたしたいと思います。

景山大臣政務官 先生おっしゃいますように、地方におきましてはまさに過疎や高齢化で非常に悩んでおるわけでありますし、地域間格差などにおきまして電話という基礎的通信手段というのは絶対に確保されなくてはいけないと思っております。

 現在、ユニバーサルサービスとして電話サービスの全国あまねく提供いたしておりますのは、東西NTTによって賄われております。ところが、今後、地域通信市場におきまして競争が進展してまいりますと、仮に、ユニバーサルサービスの提供というものが競争原理の中に巻き込まれてしまいまして、不採算地域においては料金の引き上げやサービスの切り捨てといったことが起こるようなこともあると思っております。

 その中で、今度の法の改正によりまして、ユニバーサルサービスの提供の確保に必要なコストを東西NTTだけに負担させるのではなくて、他の事業者にも応分の負担を求める、こういうことにいたしております。不採算地域を含めましてユニバーサルサービスの維持を図って、今後も地域間の格差が絶対にないように、また、そういうことが発生しないように防止していきたいというふうに考えております。

黄川田委員 過疎地の電話サービスには過疎地の交通手段などへの支援と変わらないような公的な支援が必要だと思いますので、特段の配慮をお願いいたしたいと思っております。

 それでは、時間も半分過ぎましたので、次に、携帯電話、特にiモード等の普及に伴う社会的トラブルについてお伺いいたします。

 まず、バーチャルな世界の事件防止であります。

 IT社会の進展は、国民生活に大きな光と便益をもたらす反面、インターネット上を流通する違法・有害情報の問題や個人情報の漏えいなど、いわゆるIT社会の影の部分を象徴する課題が、まさに顕在化している現状にも目を背けることはできません。これらの問題を放置することは、IT社会の健全な発展を阻害し、その光の輝きを失わせることにもなりかねないと思っております。

 そこで、こうした違法・有害情報の流通や個人情報の漏えいなど、いわゆるIT社会の影の部分に対してどのように対処していくおつもりなのか、お尋ねいたしたいと思います。

金澤政府参考人 IT社会の影の部分として、違法・有害情報に対していかに対策を講じていくかということは、非常に重要な問題であるというふうに認識しております。また、個人情報保護についても、これをかちっとした形で規制していく必要があるものというふうに考えております。

 まず、違法・有害情報対策についてでございますけれども、業界団体による自主規制のガイドライン、モデル約款の策定の支援、それから有害情報を取捨選択することができるフィルタリング技術の研究開発というふうなものを行っております。

 また、個人情報保護につきましては、電気通信事業における個人情報保護に関するガイドラインを策定、告示いたしまして、その周知徹底に努めているところでございます。

 さらに、違法情報に関するネット上の紛争の解決に当たりましては、例えばホームページ上の違法・有害情報を削除した場合にプロバイダーがどのような責任を負うのかというふうな点についての責任の明確化、また、匿名訴訟というのは現在認められておりませんので、民事上の損害賠償請求を行おうと思っても、相手方がわからないという場合に訴訟が起こせないというふうな問題がございます。このような問題に対応するための基本ルールを今策定中でございます。

 また、個人情報保護につきましても、現在、国会に上程されております個人情報の保護に関する法律案、これは基本法という形になっておりますので、私どもとしては、電気通信分野における個人情報保護のための個別法を検討してまいりたいというふうに考えております。

黄川田委員 ではもう一つ、携帯電話の迷惑メール対策であります。

 携帯電話端末を用いたインターネット接続サービスの利用者は二千万人を超え、我が国はこの分野では世界で最も進んだ国となっております。しかしながら、出会い系サイトの利用者が殺人事件に巻き込まれるなど、最近、このような便利なサービスを悪用する事例が生じております。

 現在、大きな社会問題になっているものとして、迷惑メールがあります。これは、登録等をしたわけでもないのに広告メールなどがいきなり送られてくるもので、多い場合には一日に四、五通も送られてくるということであります。しかも、事業者によっては、利用者が望んでいないメールであるにもかかわらず、その受信料金を支払わなければならないことになっております。これに対し、事業者がメールアドレスの初期設定の変更など、各種対策に取り組んでいるとの報道もされております。このように、最近、大きな問題となっております携帯電話等による迷惑メールの問題を解決するために、有効な対応策を講ずる必要があると思うわけでありますけれども、総務省の見解はいかがでしょうか。

小坂副大臣 黄川田委員の御指摘のように、私も、夜中に突然電話が鳴って、何だろうと思うとメールが届いている、それも出会いとかいう全く何だかわけのわからぬようなものが届くわけで、携帯電話を投げ捨てようと思うぐらい頭にくるわけであります。

 昨年十月は三千件ぐらいであった苦情が、先月、四月には四万二千件というふうに急増いたしておりまして、その中でも、大半が電話番号をメールアドレスに使っているドコモの携帯に対する苦情も多いというふうになっておりまして、そういった点から、メールアドレスの管理というものが非常に問題になってまいります。

 一つは、掲示板のようなインターネットサイトに自分のメールアドレスを載っけておきますと、それを自動的に集めて販売するようなソフトまでインターネット上では販売されている。こんな状況にありますので、必ずしも電話番号にしているからすべていけないのだということでもなくて、あるいは、それを変えたからすべてなくなるというものでもないようであります。

 今、委員の御指摘のように、初期設定のメールアドレスを英数字の組み合わせによってコンピューターが割り振ったもので容易に想像しがたいもの、あるいはコンピューターから生成しにくいようなものを割り当て、そしてその中で、電話番号と一致させる方が自分は利便があるというふうに考える方はそれを自分で変えることができる、あるいは、自分の電話番号以外の、あるいは初期設定以外のものにもまた変えることができるような方法を、事業者は具体的に今、対策を考えているようでございます。

 そういったものができることによって、この苦情の件数は激減するものと思われますけれども、同時にまた、欧米の例を見ますと、法律の上で、そういったスパムメールあるいは迷惑の、販売を求めないようなセールスのものを以後受け付けたくないということを申告できるというような法律をつくるような動きもあります。そういった海外の動きも参考にしながら、苦情に対応してまいりたい、このように考えております。

 この急増しております状況を踏まえて、四月二十七日に各事業者を呼びまして、問題の現状及び対策について調査、検討をし、報告するように要請をいたしました。また、私自身も、業者に個別にアイデア等を提供しながらその指導をしてきたところでございます。

 五月二十五日までに各事業者からの報告を受けまして、先ほど委員が御指摘のように、それぞれその問題意識を持って、メールのアドレスの変更の仕方等の広報を一層強化する等の対策をとっていく、このように回答を得ているところでございまして、対策が順次進むものと考えております。

黄川田委員 迷惑メールの最大の問題点は、受信者が受け取りたくなかったメールの受信料を支払わなければならない、そういう点にあると思いますので、早急な対応をお願いいたしたいと思います。

 通告をまだまだしておりましたけれども、時間でありますので、最後に、IMT二〇〇〇等第三世代技術開発の課題と展望についてお伺いいたしたいと思います。

 昨日から第三世代携帯電話の試験サービスも開始され、いよいよ次世代の移動通信が実現されようとしております。IMT二〇〇〇は、世界じゅうで使用可能であり、固定電話並みの高品質な音声サービス、簡単な動画の伝送等、マルチメディア移動通信サービスの提供を特徴としており、現在の携帯電話よりも高度なサービスを提供することが可能となります。

 このように、移動通信は、より一層の高度化に向けて発展を続けていくものと想定されますけれども、その実現のためには、さまざまな技術についての研究開発が必要であると思います。

 本年三月に決定されたe―Japan重点計画では、IMT二〇〇〇の次の世代である第四世代移動通信システムについての記述がありますけれども、第四世代移動通信システムについては、既に国際的な検討が開始されていると聞いております。iモードのように国際的に注目される技術を今後とも生み出すためにも、我が国が主体的に研究開発に取り組むことが重要であります。

 そこで、第四世代移動通信システムについて、我が国の取り組み状況をお伺いいたしたいと思います。

景山大臣政務官 今は第二世代というのでありまして、きのうからドコモで試験サービスとして第三世代の実験サービスが行われるようになりました。

 そして、第四世代移動通信につきましては、これから十年後を見越してでありますが、現在、情報通信審議会におきまして、このシステムの基本概念といいましょうかコンセプトの実現に必要な研究開発課題について検討をしておるところでございます。

 本年三月に取りまとめられましたe―Japan重点計画において、二〇〇五年までに必要な要素技術を確立いたしまして、二〇一〇年までに実現を図るといたしております。先生のおっしゃったとおりであります。総務省といたしましては、審議会の答申を踏まえまして、第四世代通信システムの実現に向けて研究開発を、また世界の標準に負けないような形でやっていきたいと思います。

 第四世代というのは、携帯電話の画面からも、今、私たちがテレビを見ているのと同じような動きでテレビが見られたり、例えば子供が運動会をやっていますと、それを携帯電話で受けまして、田舎のおじいさん、おばあさんがそのまま、まさに今のテレビと同じような動きで見られるようになる、非常に夢のような話でありますけれども、十年後にはそういうふうになるのじゃないかと思っております。

黄川田委員 日本の電気通信産業をいかに活性化させるか、これが最も大事な視点であると思います。情報通信を発展させるためには、競争の促進以外にないということを指摘しておきまして、時間でありますので、終わります。

御法川委員長 次に、春名直章君。

春名委員 日本共産党の春名直章です。

 大臣は、前回の質疑で、NTTの効率化は必要だけれども、それを住民サービスの後退につなげてはいけない、こういう認識では私と同じだと答弁をされました。その上に立って、この間のNTTの合理化、効率化が住民に何を押しつけてきたのか、このことについて議論したいと思います。

 まず、NTTの営業窓口ですが、どのように減ってきたか、その推移を、民営化した八五年は幾つ、現在は幾つということでお答えいただきたいと思います。

金澤政府参考人 これはNTTから聴取した結果でございますけれども、営業窓口数につきましては、民営化以前と民営化直後の千八百拠点をピークに、十年度末で六百四十三拠点、平成十一年度末で五百拠点になっていると聞いております。

 それから、販売拠点数でございますけれども、平成十年度と平成十二年度の集計値がございまして、これは、平成十年度末の五百九拠点から平成十二年度末では二百九十一拠点になっていると聞いております。

春名委員 大体四分の一近くになって、すごい減り方なわけです。

 もう一点聞いておきます。

 住民サービスの状況を示す数字に応答率というのがあります。一一六にかかってきた電話に対する応答できた割合というふうに聞いております。この応答率がどういう推移で経過しているか、お答えいただきたいと思います。

金澤政府参考人 東西NTTの一一六番、これの応答率だということでございますけれども、これは、電話の新設、移転やサービスの申し込み等の受け付け業務を行っておりまして、東西NTTからは、全国で約九十拠点存在すると聞いております。

 一一六番の応答率、つまり実際に職員が応答した数を一一六へのダイヤル総呼数で割った数値でございますけれども、これにつきましては、東西NTTからは、全社統一的に応答率の把握が可能となりました平成八年度以降の過去五年間についての数字が出ております。平成八年度九二%、平成九年度九二%、平成十年度八九%、平成十一年度八三%、平成十二年度六七%というふうになっております。

春名委員 九二%から六七%へ下がっている数字をお聞きいたしました。つまり、一一六に電話をしても、三三%、三割以上の方が出てくれないで終わっているという状況なわけです。これはなかなかの数字だと私は思いますね。

 二〇〇〇年から二〇〇二年までのNTTの旧三カ年計画で、今お話がありましたが、営業拠点と販売拠点が九八年末に千百五十二カ所だったんですけれども、これを二百に集約するというすさまじい計画を立てて今進行中です。恐らく、九九年末は先ほど出たように営業の方で五百ですけれども、前回、一昨日、高知の例でも私が示しましたように、現時点ではさらに劇的に減少していることは想像にかたくありません。それらがすべて総合窓口の一一六へ集約をされていく、こういうことになっているわけです。そして、御承知のとおり、一一六のセンターも、九八年末は百五十一カ所だったのが、二〇〇二年には全国七十五カ所に統合するという計画で進んでいます。

 一方、フレッツ・アイとかマイラインとか新商品がどんどん出て、受け付け、販売の新しい業務がふえます。電話をかけてくる数がふえるのは必然であります。このことが、応答できない電話が四割近くにも及ぶ、そういう事態を生み出しているということは明らかだろうと思います。

 そこで、片山大臣にお聞きをします。この窓口の激減、一一六への過度の集約が住民サービスに影響を与えている、こういう認識を現時点でお持ちかどうか、この点をお聞きします。

片山国務大臣 委員言われるように、NTTの拠点の統廃合につきましては、NTTの方でも、例えばコンビニエンスストア等多様な機関による料金収納の実施だとか、一一六番による電話注文受け付け、これは低下しているというお話ですから、何らかの形で人をふやすとか、インターネットによる各種商品の受け付け等を始めるとか、いろいろなことを多様にやっておると私は聞いておりまして、それなりの対応はしているのではなかろうか、こう思っております。

 また、経営の効率化は東西NTTが避けて通れない問題であるとも私は認識しておりますが、そのことが、今までの国民の皆さんに対するサービスが大幅に低下する、こういうことになるのはやはり問題だと私もそれは思いますので、それについては、NTTについてもよく事情を聞いてみたい、こういうふうに思っております。

春名委員 人はふやさず、さまざまな相談事などが全部一一六に集まる状態なんです。だからパンク状態なんです。だから、皮肉ですが、苦情や要望を受け付ける窓口であるはずの一一六がこんな状態ですから、一一六にかけてもつながらないという苦情が、一〇四の番号案内とか一一三の故障相談センターに寄せられるような状況なんですね。これは笑い話にもなりません。

 朝九時過ぎに一一六にかけてもつながらず、ようやくつながったと思ったら、申し込み専用フリーダイヤルにかけてくれと言われて、それもまたつながらない。ひたすらリダイヤルをしてつながったと思ったら、留守録につながって、名前と電話番号を録音させられ、後でこちらから電話するとアナウンスがあった。たかだか申し込みの電話をするのに三時間以上を要した。これは、昨年の八月に総務省の皆さんがおとりになったパブリックコメントからの引用でございますけれども、こういう話がばっと出てきているわけですね。

 東京のNTTの職員の方のお話によりますと、名古屋の方が渋谷の窓口に来た。それは、名古屋の窓口がなくなって、一一六でINSの申し込みをしたのだが全く音さたがない。仕方がないから、東京に出張した機会に渋谷の窓口に来て手続をした。こんな泣くような話がありますね。

 私の住んでいる高知県の中村市から、百二十キロ離れた高知支店に今列車で二時間かけて通っておられる職員の方がいます。この方の話によれば、住民のためのサービスは半減している、みんな怒っていますよ、こういう証言であります。

 こういう深刻な住民サービスの後退を、ユニバーサルサービスを担うという点からどうしても放置することはできない、私はそう考えますが、大臣、改めて認識を問いたいと思います。

片山国務大臣 NTTが、こういう状況の中で一生懸命経営の効率化に努力しているということは評価しなきゃいかぬ、私はこう思っております。

 先ほども言いましたように、それによって大幅なサービスの低下や不便を国民の皆さんに与えているとすれば、それはそれで遺憾なことだと思いますので、NTTその他に状況を聞いてみよう、先ほど申し上げたとおりであります。

春名委員 状況を聞いていただくということについて、一言ちょっとお願いをしておきたいのですが、私がきょうの質問を準備するに当たって幾つかの方にお聞きしてもこういう事態がわっと出てくるわけなんですね。したがって、全国的にどういう事態になっているのかということを、NTTにも要請して、実態をつかんでいただきたいと私は思うのですよ。

 これがもう全国で、ああいう形で拠点が集約をされる、一一六に行く、パンクをする、そういう事態になっているわけなので、そして、それが応答率の劇的な低下という形で数字としてもあらわれているということがきょう明らかになっていますから、住民サービスを後退させないという大臣のかたい決意を具体化する上でも、聞いてみようと思いますという生易しい話じゃなくて、総務省として、今住民サービスがどうなっているのか、NTTとも協力し合って全国的に実態をリアルにつかむ、このことをぜひやっていただきたいと思うのです。そして、報告していただきたいと思うのです。これはどうでしょうか。

片山国務大臣 何度も申し上げましたように、委員の認識と私どもの認識にちょっと開きがありますので、まず当事者のNTTに事情を聞いてからの話であります。

春名委員 それでは、当事者のお話を聞いた上で、また論議をしていきたいと思います。

 ちょっと資料を配ってくれますか。

 それで、既にこんな事態が進んでいる上に、今回、新三カ年計画というのがNTTから今発表されています。二〇〇一年から二〇〇三年。この新三カ年計画の六項目めは、「NTTグループの構造的課題への対応」ということになっていまして、(一)が、今国会での電気通信事業法、NTT法の改正の動向を踏まえ、今後とも公正競争に配意しつつ対応すると述べて、(二)で「東西地域会社の構造改革の推進」をうたっているわけです。本法案と新三カ年計画は表裏一体であります。

 その内容は、固定電話部門を全面的にアウトソーシングするというものです。六万人の合理化、五十歳での退職・再雇用制度の導入、地域平均賃金並みという口実による賃金の二割から三割のカット、大変無謀な計画だと言わざるを得ません。

 今、この新計画が出されて、職場では大変大きな危惧が広がっております。ある職場では、休み時間は労働者同士で専ら退職金の計算ばかりになっている、いつやめるのが一番お金がもらえるのか、得なのか、こんな計算をしているというのです。こんな事態では仕事に身が入らないと思いますし、そんな会社に未来はないと私は思います。

 大臣は、まず、この新三カ年計画の内容についてどんな御感想をお持ちでしょうか。

片山国務大臣 これはNTTさんみずからの経営の計画でございまして、その詳細については、役所としては、私、大臣としては内容を承知いたしておりません。ただ、労使交渉しながら効率化をしてまいりたいという宮津社長のお話は承りました。詳細については我々が聞くべき立場にもありませんので、十分にNTTさん自身が練られた計画を、現在検討中だ、私はこう聞いております。

春名委員 そう言われると思ったのですが、ただし、それでは済まない問題なんですね。

 こういう再構築のイメージというのをきょう一枚お配りしていますけれども、大臣も重々御存じのとおりだと思いますが、一番のかなめは、ユニバーサルサービスを担っている固定電話の東西会社の業務をすべてアウトソーシングするという計画です、見てのとおり。一番かなめになっているのはそこです。

 そして五十歳再雇用制度。労使の問題もありますので、五十歳、一たん全部解雇、再雇用というのも大問題ですけれども、それをきょうここで議論するつもりはないけれども、事ユニバーサルサービスを支える、担うという点では絶対に無視することはできない問題ですから、私はあえてこの問題をきょう議論しているわけなので、私は全然知りませんというふうには言えない問題だという認識で議論をしてほしいと思います。

 電話がユニバーサルサービスとして提供されるには、必要な保守が行われなければなりません。ユニバーサルサービスにおいて、各県ごとに設備保守や故障修理に格差があってはならないと思います。これがNTT法三条の当然の要請だと私は思いますが、御確認を願いたいと思います。

金澤政府参考人 アウトソーシングの問題かと思いますが……

春名委員 いや、そうではなくて、NTT法三条の当然の要請として、設備保守や故障修理に格差があってはならないということについてはどうですかということです。

金澤政府参考人 それは、アウトソーシングが行われた場合であろうと行われていない場合であろうと、つまり、同一の条件が維持されている必要があるというのは、そのとおりでございます。

春名委員 そこで、新三カ年計画は、これをごらんになって御存じのとおり、これは西日本の計画ですけれども、その保守をMEの子会社が全部行うことになるのですね。しかも、この子会社は、各県別ないしは複数県を束ねたブロックに設立をされるという計画になっているのです。各県、ブロックごとにシステムの運用、DB、維持、施工管理、故障修理、設備保守を行う会社ができるということになっています。

 東日本一社、西日本一社であれば、山間部などの保守費用がかさむ地域の費用を他の、保守費用がそれほどかからない地域から補てんするということも可能でしょう。各県別で、独立採算でもうけを出す会社が分立すれば、コストがかかる県では設備保守がきちんと行われない可能性が出てまいります。

 この計画は、私はあえて言いますけれども、ユニバーサルサービスの安定的な供給という大切な理念の問題で重大な支障を生みかねない、そういう制度設計になっていると思いますが、大臣はどのように認識しますか。

金澤政府参考人 今のお話でございますけれども、例えば、NTT東西とアウトソーシング会社の間の契約関係によって担保し得る道もあるわけでございまして、そういう状況の中で全体としてユニバーサルサービスが維持されるべきものというふうに考えております。

春名委員 それは非常に楽観的なことを言われているわけで、各県ごとに子会社をつくって保守を全部やらせる、あるいは各ブロックになるかもしれないがやらせる、アウトソーシングする。つまりそれは、効率化、合理化の名前のもとにそれをやるのですよ。そうなるとどうなりますか。過疎が多い高知県とか、岡山県も過疎が結構多いですけれども、そういうところは大変苦しむわけですね。東日本、西日本一社ではそれを補てんし合うような仕組みにつくったけれども、あえてそれを放棄するという方針を立てているわけですよ。ですから、そんな甘いことを言っていいのかということが出てくるのではないですか、大臣にもう一回認識して議論してほしいと思うのだけれども。

 それで、各県別に保守や管理の会社が設立されると、必然的に、県別にコスト計算するということになってまいります。それは契約の中身によっていろいろあるだろうと、今、気楽なことを言われていますけれども、そういうことをねらってやるわけなんですから、いずれコストに見合った料金という発想になっていかざるを得ない制度設計にこれはなるのじゃないですか。

 そこで、私は確認したいと思うのだけれども、ユニバーサルサービスの料金が各県ごとに違うということはだめだ、県別料金は認められないというのがこれまでの総務省の認識だと思いますが、これは改めて確認を願いたいと思います。

片山国務大臣 委員、仮定に基づく議論もされているので、特に、料金が県別になるとかならないとかいう話は。

 我々は、アウトソーシングの有無にかかわらず、ユニバーサルサービスである以上、同じ料金を設定していただくようにNTTには求めたいと思います。

春名委員 私は、その姿勢は正しいと思います。だったら、今私が申し上げたようなやり方がユニバーサルサービスを担う会社のやり方として本当にふさわしいのだろうかということを問題提起しなければいけないのじゃないですか。だって、県別に、ブロックごとに保守管理。これを見てください。ME子会社が、一一三も含めて全部やることになっていますでしょう。そういうのをつくっていくんですよ。

 そうすると、こういう制度設計をやりますと、そこの部分の大変なところはどうしたって料金にはね上げるというようなことに、おっしゃるとおり、したらだめなんですけれども、しかし、そういうことにもなりかねない、仮定の話じゃなくて、この制度の仕組みからいってそういう方向に行かざるを得ないようなものになってきているという心配が今あるから、私はその問題をあえて提起しているのです。

 ですから、こんな計画はNTTの計画だから私は余りよう知らぬと言わずに、私はそういう問題提起をしているわけなので、一体どうなっているのかということや、ユニバーサルサービスをちゃんと支える仕組みになるのかどうか、そのあたりを責任を持って大臣として点検するということが必要じゃないでしょうか。いかがですか。

金澤政府参考人 アウトソーシングしようとしまいと、料金決定権というのは当然NTT東西が持つわけでございまして、その問題は、NTT東西の料金政策にかかわる問題だというふうに認識しております。

春名委員 第一次答申の中でも、「東・西NTT各社の業務区域内における市内通話料金については、均一料金の維持を基本とすることが適当である。」昨年十二月にそういう答申を出しているばかりですから、その制度設計を揺るがすようなことをまさか総務省は認めないと思いますけれども、そういう問題提起をきょういたしましたので、改めて認識をして、この新三カ年計画についての中身を総務省としてもユニバーサルサービスの問題として吟味するということを要請しておきたい。

 それから、もう一点聞いておきますが、子会社に行きますとこうなるのです。

 現在、加入電話の取りつけ、修理を行っているのはNTT・MEです。NTT加入電話ネットワークの修理などを行っていますから、当然、NTT加入者の個人情報にアクセスができます。現在、MEのほとんどの社員はNTTからの出向です。NTT法十九条の縛りがかかっています。これは、職務に関してわいろを収受するとか個人情報の漏えい、そして収賄があれば刑事罰の対象にするという十九条があります。御存じのとおりです。

 ところが、新三カ年計画では、MEの子会社へは出向じゃないのです。転籍、つまり一度NTTを退職してNTT・MEの子会社に行くということになるのです。そうなりますと、このNTT法十九条の規定は、これらの職員の方々には適用されなくなります。これは確認したいと思いますが、間違いなくそうなると思いますが、そうでしょう。

金澤政府参考人 みなし公務員規定から外れますので、そのとおりでございます。

春名委員 先ほど局長は、電気通信分野の個人情報保護の制度をつくらなければならないということを、今検討しているとおっしゃいました。私、それはすごく大事だと思います。ただ、この制度設計は、今まであったNTT法十九条の個人情報を漏らさない仕組みの規定を排除されているような方々、それの規定を受けない方々が、一たん退職をしてその子会社に行って、個人情報をどっさり受け持つ保守の仕事、故障の仕事、そういう固定電話の仕事を全部やることになるんですよ。ですから、皆さんが言っている個人情報をきちっと守るという流れとも反するような方向にこれは行くんじゃありませんか。

 その面からも、このまま、もうどうぞ好きにやってくださいなんということを言えないんじゃないですか。大臣、どう思いますか。

片山国務大臣 この問題は、電気通信事業における個人情報保護に関するガイドラインというのをつくっておりまして、例えば、アウトソーシングのときもこれを守れ、こういうことなんですよね。

 だからそれは、東西NTTがアウトソーシングする場合には、ガイドラインの規定が遵守されるようなアウトソーシングを考えてもらわなければなりませんし、そういう意味では、東西NTTにその趣旨は徹底いたします。

 また、局長が言いましたように、我々も法律を考えておりますから、法律の中で今委員が言われたようなことに対する対応も位置づけたいと、実はそういう検討を始めております。

春名委員 その法律は期待を持ってしっかり見ておきたいと思うんです。

 ただ、ガイドラインの遵守を言うというふうに言っても、それは大事なことですけれども、しかし、今局長がおっしゃったとおり、転籍でもって一たん退職をして子会社に行かれる方々は、NTT法十九条は網にかからないんです。これはそういう仕組みになっているんです。だから、わざわざそういう仕組みをつくるということは、皆さんがおっしゃっている個人情報を保護するということの流れから見ても逆行するような制度設計になっているんじゃないかという問題提起をしているわけです。

 時間が来ましたので、最後に一言大臣にお聞きしたいと思います。

 六万人の合理化ということになりますと、個人の消費が拡大しないために、今不況が大変なことになっている、大変な心配が広がっています。この労働条件の問題も、不況との関係でも大きな問題だと私は思います。そして、住民サービスの後退という問題、個人情報保護という問題でも、こういう角度から、何よりもユニバーサルサービスを担っていくという角度から、私は、この新三カ年計画についてむとんちゃくであるわけにはいかないと思うんですね。

 今、お話は出ていますけれども、私、改めて問題を指摘しましたので、その角度から点検、監督するといいますか、必要ではないかと思います。改めて最後に意見を聞いておきたいと思います。

片山国務大臣 六万人云々なんというお話が今ありましたけれども、これは一つも決まっている話じゃないし、まさに労使交渉の中心になる事項ですよね。

 我々は、NTTのみずからの経営改善の努力を見守りたいと思いますし、今委員がいろいろ言われた問題点については我々も腹にはおさめて、そういう意味では、NTTの対応について注目してまいりたいと思います。

春名委員 では、以上で終わります。

御法川委員長 次に、重野安正君。

重野委員 社民党・市民連合の重野です。

 e―Japan計画との関係を中心に、電気通信事業法改正案について幾つか質問をいたします。

 まず第一に、今後五年間で世界一の情報大国とする、これがe―Japan計画の基本目標となっておりますが、これについて、内閣はかわっても政府公約である、そのことには変わりはない、まずこの点を確認したいと思います。

片山国務大臣 今、委員言われますように、e―Japan戦略に基づくアクションプランはつくりましたが、この施策は、数字であらわしたものもありますけれども、こういう施策をやりますという各省庁の責任で文言で記されたものでございますから、今後どのくらいの投資を各省庁がやり、政府全体としてはどうなるかということは今明示できる段階にない、大変困難である、こういうふうに申し上げざるを得ないと思います。

 ただ、本年度予算におけるIT関係に関する予算は、これは内閣府の概算でございますけれども、総額は一兆九千二百四億円になっております。

重野委員 今ちょっと、その次に聞こうと思ったことについて答弁されたようです。

 では、二つ目に、e―Japan計画による今後五年間の官民合わせての総投資額はどの程度に見込まれておるのか、その点についてお伺いいたします。

小坂副大臣 このe―Japan重点計画に盛り込まれた施策を各省庁においてこれから具体化されていく。その五年間の投資見込み額を明示するというのはなかなか難しくて、現時点で算出をすることはできません。

 ただいま大臣が申し上げましたように、十三年度予算において、高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する予算ということで、内閣の概算でいきますと一兆九千二百四億円、こうなっている。この数字が、今持ち得る数字でございます。

重野委員 このe―Japan計画は、五年間と切っているわけですね。これはもう何十年先の話をしろと言っているわけじゃないわけです。しかも、今年度政府予算における、今副大臣が述べられました一兆九千二百四億円という数字が推計されるわけです。だとすると、五年間という限られた期間の中で国が財政投資をする、その見積もりが今は言えないというのは、僕はちょっと納得できないのです。

 およそどれくらいのものを我々は考えているのだということを、五カ年計画ということを銘打っている以上、それはやはり国民にこうですよということを言うのが政府の義務だと僕は思うんですが、どうですか。

片山国務大臣 この社会は、全くドッグイヤー的な大変状況変化の激しい分野でございまして、五年間というともうかなり長期になりますね。そういうものの投資額の概算なんというのはなかなか難しかろうと私は思いますが、来年度、e―Japan二〇〇二プログラムというのをつくることが決まったんですよ、年次目標が。そういうことの中でかなりはっきりしてくると私は思いますし、経済財政諮問会議やIT戦略本部、そういうところで、これから何を中心にどれだけの投資をするかの議論が積み重ねられていくと思いますので、次第にその輪郭は明らかになってくるんではなかろうか。

 ただ、予算みたいにぴしゃっと何兆何億、どうだ、こういうことにはなかなかなりにくい性格のものだと私は思います。

重野委員 ここで具体的に数字が示されるということにはならないようでありますが、当然、経済財政諮問会議でこの問題についても議論されるであろう。したがって、今この時点でそこら辺の積み上げたものを言えないというのであれば、せめて来年度の予算要求の輪郭が明らかになる時点までにそのことを積み上げて、我々におよそこうですということを言っていただきたいと思うんですが、これはどうでしょう。

片山国務大臣 御承知のように、経済財政諮問会議は、六月中に来年度予算に関する骨太の編成方針というんでしょうか、それをまとめるということになっておりますから、その中では、IT関係の、概算要求についての方針も当然何らかの言及はあると思いますので、そういうことはまたこの委員会で皆様に、御質問等があればお答えするということになろうと思います。

重野委員 それでは、期待をしておきますので、よろしくお願いいたします。

 次に、投資額に関連して、NTTの株売却について質問をいたします。

 その前に、現行の株売却益の扱いでありますが、現在の政府保有株の割合は四五・八九%と承知をしております。したがって、政府保有義務三〇%を一五%ほど上回っているわけですが、このうち、今年度は百万株、金額にして七千三百七億円の売却益を当て込んでおると承知をいたしております。

 問題は、この使途については、法律どおり国債整理基金特別会計に繰り入れられるべきものというふうに私は受けとめておりますが、そういうことでいいのかという点が第一。また、これまでの株売却益を原資に政府は公共事業関係等々に充当してきたのではないかというふうに思うんですが、今後も保有義務分を超える売却益については国債整理基金に繰り入れられるべきものと私は考えるんですが、そこについて大臣の見解をお聞かせください。

牧野政府参考人 今、先生お尋ねの件でございますが、平成十三年度のNTT株式の売り払い収入につきましては、これは全額、国債整理基金特別会計の歳入に受け入れるということになっております。

片山国務大臣 現在は、委員御指摘のように、すべて国債整理基金特別会計に入る、こういうことでございまして、政府保有義務、三分の一でしょうか、それを緩和して、その義務分の株式を売却した場合にその売却益はどうなるんだ、こういうお尋ねだと思いますけれども、現段階においては、法的には何ら決まっておりません。

 ただ、先ほどの委員会で議論もありましたし、ITがこういう状況ですから、ITの投資の額も予算的にどんどんふえてまいりますので、我々の期待としては、その売却益を回してもらうということも十分あるのではなかろうか、こう思っております。先ほども言いましたが、これから経済財政諮問会議等での予算編成の大きな考え方の整理もありますし、御承知のような国の状況でもありますから、今後、政府部内等を中心に幅広い論議、検討の中で結論が出ていくのではなかろうかと。ただ、我々としての期待はあるということだけは御認識賜ればありがたいと思います。

重野委員 総務省としての期待と受けとめておきます。

 次に、昨年十二月の電気通信審議会第一次答申によりますと、政府株式保有義務は基本的に撤廃する方向で検討することが望まれる、今後、政府保有義務分に係る株式を売却することとなる場合、その売却収入の取り扱いについては、政府保有の経緯や国の財政事情を踏まえ、十分討議が行われることが必要、こういうふうになっていると承知をしております。

 そうしますと、この行間からかいま見るに、政府保有義務の撤廃、NTTのユニバーサルサービスのための支援措置として売却収入を扱うことを期待しているというふうに読み取れるのでありますが、この保有義務制度に対する大臣の見解をもう一度お聞かせください。

片山国務大臣 保有義務については、これはこれで十分議論されて決まった話だと私は思いますけれども、状況が相当変わってきておりますから、この保有義務をいつまでも維持するのがいいのかどうか。これをもう一遍見直す必要があると思いますし、その場合に、その売却益についてどういう使途をするのが一番国民のために適切かということも考える必要があるのではなかろうか、こういうふうに私は思います。

 答えになっているようななっていないようなことを実は申し上げているんですが、ぜひこれについても一定の前進が見られることを我々としても強く希望いたしております。

重野委員 いずれにしても、そこについて国会の中で十分協議をする、議論をする、そういうことをお忘れなきよう、ひとつよろしくお願いいたします。

 そこで、財務省にお聞きいたしますが、現在の保有義務を超える保有株もそうでありますが、仮に保有義務を撤廃したとしても、NTT株売却イコールNTT支援財源という等式は必ずしも成り立たないのではないか。むしろ、国民共有資産としてのNTT株でありますから、先ほども触れましたけれども、国債償還を基本に国民的利益のために使われるべきだというふうに私は理解をしています。したがって、このe―Japan計画のための特定財源化、こういうことはあり得ないと考えますが、財務、総務両省の見解をお伺いします。

藤井政府参考人 お答えいたします。

 NTT株式に係ります三分の一という政府の保有義務、これにつきましては、昨年十二月の電気通信審議会答申あるいは本年三月の規制改革三カ年計画等におきまして、この義務を緩和する方向で検討を進めるということになっております。

 その場合の政府保有義務分の株式の売却収入の使途につきましては、今、総務大臣からるる御答弁がございましたように、現段階におきましては明らかに定められておりません。これにつきましては、今先生がおっしゃいましたNTT株式が国民共有の資産であること、あるいは国の極めて厳しい財政事情というようなことも踏まえまして、財務省といたしましても、今後、政府部内におきまして十分に検討していく必要があるというように考えております。

重野委員 次に、ユニバーサルサービスの提供に対するコスト負担について質問をいたします。

 本案では、このコスト負担のための基礎的電気通信役務支援機関の設置など、枠組みについて定めております。しかし、肝心のコストについては見えてきません。法案で制度を定める以上は、当然、その裏打ちとなるコスト試算額を同時に示した方が非常に議論がしやすいのではないかと思うんですが、その点についてはどのようにお考えでしょうか。

金澤政府参考人 今回の基金制度において交付金算定の基礎となるユニバーサルサービスの提供費用の算定に当たりましては、経営の非効率性を排除しやすい長期増分費用方式、いわゆるLRICを用いることを予定しております。

 この長期増分費用方式というのは、一定の前提条件のもとで作成したモデルを用いて算定するものでございまして、現在もう既に着手しておりますけれども、このモデルは、約一万程度の方程式、ステップ数でいきますと約三万ステップから成る大規模な技術モデルとなることが想定されます。

 このLRICモデルの作成には、加入者回線部分については、現実の地中化状況がどのような状況にあるかというのをすべて調べまして、これを反映していく必要があること、また離島通信につきましては、本土―離島間の通信媒体を特定する必要がありまして、これは海底ケーブルによるかとか衛星によるかとか、すべて特定する必要がある。それから、緊急通報につきましては、現在コスト計算が全くやられておりませんので、緊急通報に必要な設備とは何かという特定をまずする必要があります。これに基づいてコスト算定が必要であるということでございます。

 全国を約二十三万個のメッシュ状の区画に分割いたしまして、それぞれのメッシュから局舎までの間の最適な設備構成を決定し、最終的には、五百六十七のメッセージエリア単位にコストを集計することによって地域別のコストを算定する必要があるということでございます。

 このような非常に膨大な作業が必要であることから、まだコストの算定ができていないところでございますけれども、現在、私ども、算定に向けて努力中ということでございます。

重野委員 この長期増分費用方式という説明でありますが、先ほど冒頭に申し上げましたように、いわゆるe―Japan、五カ年計画という大枠は絞っておるわけですね。したがって、そう気の長い話であっていいはずがないと思うのであります。いずれにいたしましても、KDDIであるとかJTグループであるとか電力系を中心にこの負担を当然背負わなきゃならぬわけで、その関心も大きい。そういう業者に対し、より早くそこら辺の内容というものを明らかにすることが求められているのではないかと私は思うのです。

 例えば、長期増分費用方式によるコストを知る手がかりとして、私の調べたのが間違っているかどうか知りませんが、諸外国の状況を見ますと、アメリカが二千百億円だとか、イギリス、フランス、イタリアで百億円台から二百億円台、こういうふうな数字を見ることができたのであります。我が国の条件を考慮しますと、これらの国と全く同レベルで見ることはできないと思うのでありますが、いずれにいたしましても、私は、利用する側にとって、およその推計コストという問題については関心があると思うのですね。そういう意味で、それをより早く知らしめるという責任があるのじゃないか、こういうふうに考えているのですが、そこら辺についてはどのようにお考えでしょうか。

金澤政府参考人 このコスト算定の場には当然NCC、NTTも入っておりまして、利用者の考え方を十分聞きながら、合理的な金額を算定しているというところでございます。また、先生が御指摘なさいましたように、これをできるだけ早く国民に示していくということは当然必要でございますので、私どもとしても、最善の努力を尽くしていきたいというふうに思っております。

重野委員 いずれにしても、e―Japan計画、何回も申しますが、五年という一つの縛りをお互いかけているわけですから、その中で、それだけ縛りをかけたということは、可能な限り関係する各位に対し、速やかに輪郭が具体的に見えるように、そういう努力をしていただきたい、そのことをお願いして、終わります。ありがとうございました。

御法川委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

御法川委員長 この際、本案に対し、大畠章宏君外二名から、民主党・無所属クラブの提案による修正案が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を求めます。大畠章宏君。

    ―――――――――――――

 電気通信事業法等の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

大畠委員 私は、ただいま議題となりました電気通信事業法等の一部を改正する法律案に対する修正案について、民主党・無所属クラブを代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 我が国のIT革命がおくれをとり、欧米はもとより韓国、シンガポールなどアジアIT先進国の後塵を拝している一つの理由は、効率的、機動的な通信情報政策を進める行政体制がつくられていなかった点であると考えております。

 IT革命を断行するためには、通信と放送の融合を制度面からも推し進めるとともに、通信分野における公正な競争政策を確立することが必要であることは、委員の皆さん御承知のとおりであります。

 今般、政府案において、国家行政組織法第八条に基づく機関として、電気通信事業紛争処理委員会の設置が盛り込まれましたことは、裁量型行政からルール型行政への移行を図る上で一歩前進と受けとめております。しかしながら、将来的には、国際競争も含めた幅広い観点から、民間事業者間の競争を公正な立場で監視、裁定する機関の創設が不可欠であり、IT先進国の例を見ましても、三条委員会として強力な権限を持った中立的な裁定機関、すなわちIT公正競争監視委員会の創設が不可欠だと考えております。

 本件につきましては、竹中IT担当大臣も、日本版FCC並みの機関の設置が必要との認識を示されており、こうした見直しも視野に入れた行政組織の検討に関する条項を追加することが、情報通信分野における自由で公正な競争条件の確立に資するものと判断した次第であります。

 したがいまして、お手元に配付させていただきましたように、附則第六条に次の条文を追加することを御提案いたします。

 以下、追加する条文を読み上げます。

  政府は、電気通信事業の公正な競争を一層促進するため、情報の電磁的方式による発信、伝送又は受信の規律に関する行政事務をより中立公正に行うための行政組織の在り方について総合的に検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

以上が修正案の内容であります。

 委員各位の御賛同をいただき、成立が図られますようお願い申し上げ、趣旨説明を終わります。(拍手)

御法川委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

御法川委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。矢島恒夫君。

矢島委員 私は、日本共産党を代表して、電気通信事業法等の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。

 反対の第一の理由は、全国あまねく適切、公正かつ安定的な電話サービスの提供の確保という東西NTT会社の責務をさらに後退させるものであるからであります。

 これまでもNTTは営業窓口の閉鎖など地域住民へのサービスを切り縮めてきましたが、今回の法案の成立を前提として、ユニバーサルサービスを実質的に保障する設備の保守、故障修理などの業務の子会社へのアウトソーシングは、通信の秘密や個人情報保護へのNTTの責任をあいまいにするだけでなく、各子会社にコストダウンを求めることで、ネットワークそのものの維持に重大な支障を生じさせかねません。

 第二の理由は、ユニバーサルサービスの確保のために導入されるユニバーサルサービスファンド制度が、ユニバーサルサービスを維持、発展させていく制度となっておらず、反対に、その維持すら困難にする欠陥を持っているからであります。

 法案は、世界的な基準よりユニバーサルサービスの範囲を狭く規定することを前提にした上に、ユニバーサルサービスファンド交付金の算定原価の計算方式として長期増分費用方式が予定され、その結果、ユニバーサルサービス提供コストがこのファンドによる交付金によって十分に補てんされず、範囲の拡大どころか縮小の方向が必至だからであります。

 第三の理由は、電気通信事業紛争処理委員会の設置は、紛争処理の前提となる規制機関の独立というグローバルスタンダードが未確立の上に、総務省とNTT及びNCCが天下りの人脈で覆われているという根本問題を棚上げにしており、そのもとでの活動には限界があるからであります。

 第四の理由は、NTT持ち株会社の外資の規制の緩和を行うことで、国内のサービスの後退を招く危険性を増大させるからであります。現に、NTTコミュニケーションズが出資した米通信会社が倒産しており、海外投資の失敗によって、日本のユニバーサルサービス及び国民生活に不可欠な情報通信手段となりつつある携帯やインターネットの提供に支障を来すようなことは認められるものではありません。

 なお、民主党提出の修正案については、考え方を異にするので反対であることを申し上げて、討論を終わります。

御法川委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

御法川委員長 これより採決に入ります。

 電気通信事業法等の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、大畠章宏君外二名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

御法川委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。

 次に、原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

御法川委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

御法川委員長 この際、ただいま議決いたしました法律案に対し、渡海紀三朗君外五名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、社会民主党・市民連合及び保守党の六派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。荒井聰君。

荒井(聰)委員 私は、この際、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、社会民主党・市民連合及び保守党の六会派を代表し、電気通信事業法等の一部を改正する法律案に対しまして、次の附帯決議を付したいと思います。

 案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきます。

    電気通信事業法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法施行に当たり、左の点についてその実施に努めるべきである。

 一 地域通信市場の競争が進展する中で、電気通信事業の公正な競争の一層の促進を図るため、市場支配的な電気通信事業者に係る契約約款の認可制等の適正な運用を図るとともに、その実施状況等を勘案し、その見直しを含め必要な検討を行うこと。

 二 移動体・インターネットの急速な普及、地域通信市場の競争の進展等、市場構造が急激に変化する中で、電気通信事業者がその財務基盤を確立し、IT革命に貢献できるよう、電気通信事業者の業務の在り方について検討を行うとともに、ベンチャー系電気通信事業者の育成と支援に努めること。

 三 光ファイバアクセス網の構築及びその開放を促進するため、公正競争の確保に配慮しつつ、より一層の規制改革の推進に努めること。

 四 外資の本格参入等、我が国の通信市場のグローバル化が進展する中で、我が国の電気通信事業及び技術の国際競争力の強化の在り方や、国の安全及び通信主権の確保の在り方について速やかに検討を行うこと。

 五 「規制改革推進三か年計画」におけるNTTの「自主的な実施計画」の取扱いに当たっては、本法の立法趣旨、国会における審議を十分に踏まえ、NTTの経営の自主性を損ねることのないよう十分に配慮すること。

 六 いわゆるユニバーサルサービス基金制度については、ユニバーサルサービスを提供する電気通信事業者等の経営や利用者の料金に悪影響を及ぼすことのないよう運用し、基金の発動時期や交付金の決定方法について早急に明らかにすること。

 七 市場構造の変化や通信技術の進展に対応するため、通信と放送の融合等を踏まえ、通信と放送に係る許認可等を含む規制の在り方の見直しを総合的に検討すること。

 八 高速インターネットアクセスや移動電話サービスといった、いわゆる次世代のユニバーサルサービスと見込まれるサービスについて、その早期全国展開を可能とするよう、早期にデジタル・デバイドを解消する観点から、必要な公的支援の範囲の拡大と充実を図ること。

 九 NTT株式の売却収入の使途については、情報通信基盤の高度化を実現するために活用することを基本とするよう、政府のNTT株式保有義務の撤廃を含め幅広い観点から検討すること。

 十 連結納税制度の早期導入について、その実現のため能動的な努力を行うこと。

 十一 今後増加が見込まれる電気通信事業者間の接続等に係る紛争の解決に当たっては、公正競争の促進及び利用者利益の保護に配慮しつつ、迅速、公正な処理を図ること。

   また、電気通信に係る規律等に関する事務を中立公正に行うため、電気通信事業紛争処理委員会について、その事務の執行状況、事務処理体制等を勘案し、公正競争確保の観点から、その在り方について総合的に検討し、その結果に基づいて必要な措置を講ずること。

  右決議する。

以上であります。

 何とぞ皆様方の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)

御法川委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

御法川委員長 起立多数。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、総務大臣から発言を求められていますので、これを許します。片山総務大臣。

片山国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、その御趣旨を十分に尊重してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

御法川委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

御法川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

御法川委員長 次に、内閣提出、消防法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として消防庁長官中川浩明君、厚生労働省労働基準局安全衛生部長坂本由紀子君及び経済産業省製造産業局次長小平信因君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

御法川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

御法川委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大出彰君。

大出委員 民主党の大出彰でございます。よろしくお願いいたします。

 消防法の一部を改正する法律案の、いわゆる危険物の範囲の見直しの方から質問をさせていただきます。

 いわゆるヒドロキシルアミン及びヒドロキシルアミン塩類というのを、第五類、自己反応性物質に加えるということでございます。これは、昨年の六月十日に群馬の尾島町で、化学薬品メーカーの日進化工群馬工場の蒸留塔が爆発をして炎上し、蒸留塔は跡形もなく吹き飛び、爆風により広い範囲に飛び散り、七十七世帯の窓ガラスが割れて一部停電や電話が不通になった。死者が四人で負傷者が二十八人という、実はこの事故を受けての改正案だと思うわけなんです。私は、当時テレビを見ておりまして、大変なことになったなと思いまして、危険物の指定というようなものはしていなかったのかなと実は思ったのですね。多分していなかったんだろうというわけなのです。

 実は、本当はこの事故が起こる前にもっと早く指定をしておいたらよかったのではないだろうかという素朴な疑問を感じました。というのは、ちょっと調べてみましたら、群馬におけるこの二〇〇〇年六月十日の事故の前に、ほかにも例があるんですね。ですから、素朴に、なぜ危険物指定ができなかったのかという点で、ちょっと過去のほかの例を挙げてみたいと思います。

 一九九九年の二月十九日に、USA、アメリカのアレンタウンの工業地内の化学工場で、ヒドロキシルアミンの蒸留中に爆発がありまして、高さ二十五メートルの壁が崩れ、窓ガラスが割れたというような事件が既にあるのですね。

 それだけではなくて、一九七四年には、兵庫県の尼崎の製薬工場で、硫酸ヒドロキシルアミンとメチルイソブチルケトンからオキシムを合成した廃液に希硫酸を加え濃縮放置中に爆発をしたという例が実はあるのですね。さらには、一九七二年十月十六日に、愛知の名古屋の東亜合成名古屋工場で、ブチルアルドオキシムを合成、減圧蒸留中に爆発をして火災になったという例があります。

 一番びっくりしたのは、この群馬の日進化工が、二〇〇〇年の六月十日よりも以前に、実は同じようなことを起こしているのですね。一九九八年の十一月に、同じ群馬の尾島町の日進化工で、蒸留塔にある真空ポンプ内を通常の気圧に戻すために空気を入れる作業中にポンプ爆発、部品が吹き飛び、従業員に刺さって、一人負傷したというのが既にあったのですね。

 これを見てきますと、ちょっと待てよと。なぜ、二〇〇〇年六月十日の段階で既に危険物の指定をしていなかったのだろうかという素朴な疑問なので、まずその点についてお答えください。

    〔委員長退席、渡海委員長代理着席〕

山名大臣政務官 今御指摘のように、ヒドロキシルアミン、その塩類、こういったものにおきまして、今日まで、国内におきましては毒物及び劇物取締法の規定の中の劇物に指定をされていたわけでございます。

 国際連合の危険物輸送専門家委員会、これは我が国も加盟をいたしておりますけれども、国際間の危険物の安全輸送を確保する基準を策定することを目的として設置されておりますが、その専門家委員会におきましても勧告という形で、従来、火災危険性が高い物質ということではなくて、むしろ腐食性物質ということで分類をされているところでございます。今回あのような形の事故が起きたわけでございますが、自己反応性を有する危険物ということでの認識が従来国際的にもなかった、こういうことでございまして、大変そういう意味での対応のおくれがあったことは事実でございます。

 そういう反省に立ちまして今回こういった法律を出したところでございますので、御理解を賜りたいと思います。

大出委員 腐食物の認識があって国際的にも危険物の認識がおくれたということだと思いますが、ヒドロキシルアミンあるいは塩類と似たような物質がまた今後出てくる可能性が当然あると思うのですね。それについて、危険物指定をまだしていませんけれども、今後危険物になるかもしれないというものについては、どのような準備体制みたいなものがとられているのかをお答えください。

山名大臣政務官 今回の反省に立ちまして、今後このような事故を未然に防止するために、科学技術の進展等によりまして新たに出現する物質で火災の危険性を有することが想定されるものにつきましては、危険物という形で規制をいたしまして、保安の確保を図ることが必要だ、このように考えております。

 その前提といたしまして、物質の性状、性質ですね、あるいは流通の実態、こういったものを早期に把握することが重要でございます。このためにも、独立行政法人の消防研究所、こういうところ、また関係省庁の連携の強化、関係団体との協力体制の強化に努めまして、火災危険性を有する新たな物質に係る情報の把握、その危険性評価のための体制の強化充実、そして保安の一層の確保、こういったことを今後ともしっかりと図って取り組んでまいりたい、このように考えているところでございます。

大出委員 素朴な質問なんですが、ヒドロキシルアミン、こういうものが危険物であるぞと決定する機関はどこなんですか。

中川政府参考人 ある物質が危険物であるかどうかの認定は、最終的には、許可の申請を受けます消防機関が行うことになっております。

大出委員 ヒドロキシルアミンの話はこの辺にしまして、やはり起こったときにこんな危ないものが放置されていたのかと思われないように、国民の生命と財産の安全のために頑張っていただきたいと思います。

 次に、この改正案の中の、火を使用する設備、器具等に関する方に移りたいのですが、この中に財団法人日本ガス機器検査協会というのが出てまいります。

 これについて、経済産業省の方、つまりは所管がそうだということなのでおいでいただいていると思うのですが、この財団法人は公益法人改革の総点検の中で当然――ことし、与党の行財政改革推進協議会、古賀さんが座長のようですが、公益法人の見直しを急ぐことで一致し、政府側では、当時の橋本行革担当大臣が一月三十日に閣僚懇談会でいわゆる公益法人の総点検を指示したということなんですね。その観点として四つありまして、一つは、民業を圧迫していないか、二つ目は、活動が許可された目的に一致し、十分な情報開示が行われているか、三点目が、役員の報酬、退職金が高額ではないのか、四点目が、公益法人からの委託先や発注先が公正に選定されているかという観点から総点検を行うように関係省庁に要請した、こうなっているわけなんですね。

 それで、この四点について、どのような総点検結果であったかをお答えいただきたいと思います。

小平政府参考人 ことしの二月、今委員から御指摘のございました公益法人の点検を、この日本ガス機器検査協会につきましても、今御指摘のございました四点につきまして行ったところでございます。その結果、この協会につきましては、四つのいずれの観点からも特段問題は認められないという結果でございました。

 具体的には、まず第一に、民業圧迫やユーザー利益の阻害はないかという点でございますけれども、平成八年に閣議決定されました公益法人の設立許可及び指導監督基準に従った適正な事業運営がなされておりまして、特段の民業圧迫やユーザー利益の阻害は認められず、問題はないというふうに判断をされたところでございます。

 また、昨年秋、ガス事業法等に基づきますガス機器検査業務が政府認証から第三者認証に移行いたしまして、その中で、この協会は他の民間法人と同等の認定検査機関として位置づけられたところでございます。また、今回御審議が行われております消防法の改正案におきましても、実態上他の民間法人と何ら変わらない検査機関としての位置づけをより強めるということになっているところでございます。

 第二の点でございます、目的と活動の内容の整合性、適切な情報公開の観点でございますけれども、この点につきましては、目的に照らしまして適切な事業内容になっているということとともに、財務等に関する資料を事務所に備えまして、一般の閲覧に供すること等によりまして情報公開を行っておりまして、問題は認められなかったところでございます。

 第三の、役員報酬、退職金は高額になっていないかという点でございますが、民間企業等におきます役員報酬、退職金の水準等を参照いたしまして、当該役員の職責等を勘案いたしますと適正なものであるということで、問題はないというふうに判断されたところでございます。

 第四の、委託先、発注先は公正に選定されているかという点でございますけれども、そもそもこの協会は委託先、発注先がございませんので、問題がないというふうに判断をしたところでございます。

大出委員 四つとも問題がないと言われたということでございます。

 それで、若干追加的にお聞きをしたいのです。役員の報酬、退職金の点なんですが、文部科学省では、報酬が二千万円を超えているか、退職金が五千万円を超えているかといった具体的な基準で調べたというのですが、その点で比べるとどうなんでしょうか。

小平政府参考人 今御指摘のございました点から見まして、問題がないというふうに判断したところでございます。

大出委員 問題がないということで、わかりました。適切な検査機関、認証機関であるということですね。

 それで、実はこの火を使用する設備、器具等に関する改正なんですが、一点は、長くなるから詳しい話はしませんけれども、消防機関によって認定が異なったりしたもので、混乱をしたからというところで法律改正ということになっている面がありますが、問題なのは、市場アクセスの一層の改善という点がありまして、そのことがあるから、政令によって条例制定の際の統一基準を設定するということに変えるんだということなんですね。

 しかし、ここのところはどうも、「基準・認証制度等に係る市場開放問題についての意見」、つまり市場開放問題苦情処理推進会議第六回報告書では、「現状では、自治省消防庁により、特定の公益法人の認証表示がされた一部の製品についてだけ、条例運用にあたっての具体的な判断基準が定められているが、そのことが外国製品の市場参入阻害要因となっている。」と指摘されているんですね。そうしますと、政令によって条例制定の際の統一基準を設定しますというだけで市場アクセスの一層の改善につながるのかなとちょっと疑問に思ったものですから、その点をお答えいただけますか。

中川政府参考人 ただいま御指摘のような意見がありますように、これまで離隔距離についての具体的、統一的な基準が示されていないこともございまして、消防機関として必要な判断をみずから行うということをやや怠っていた点がございまして、例えば、日本ガス機器検査協会の検査などに全面的に依拠してしまっていた点がございます。

 今後は、政令によりまして基準をより明確にすることになっておりますので、各消防機関におきまして、協会の検査結果が仮に添付されていないという場合であっても、みずからの判断でその適否を判断することができるようになるという点で、市場アクセスの改善につながるというふうに理解をいたしているところでございます。

大出委員 外国で認定された部分では実は耐火基準に合っているということですが、日本に来たら、日本のこの財団法人に頼まなければできなかったという苦情があったわけですね。そうしますと、その点について、外国との提携か何かがあって、外国で、例えばアメリカでオーケーだから日本でもオーケーだ、そういうことはないんでしょうか。

    〔渡海委員長代理退席、委員長着席〕

中川政府参考人 今後、条例でそれぞれ政令の基準に従いまして基準を定めることになりますので、その基準に適合している限り、どこが証拠としてのデータをつくるということは、どこがつくりましてもそれに従って判断がなされるものでございまして、委員が御指摘のように、例えば外国のメーカーその他がデータを提出いたしましても、それをもとに判断をすることは可能となるものでございます。

大出委員 もう時間がないですが、この財団法人は外国の機関とも提携をしているようなんです。例えば、各国の認証機関と相互に認証契約を結び、代行検査なども行っておると書いてあるんですが、現実に、例えばさっき言ったアメリカがオーケーならばオーケーだとは今はなっていないんでしょうか。

中川政府参考人 御指摘の日本ガス機器検査協会の実態については必ずしも十分承知をいたしておりませんが、我々、現時点においての消防機関の判断は、ガス機器検査協会が独自の判断で検査をした結果を提出しているもの、そういう前提で、現在、条例の規定に適合するかどうかが判断されているものと考えております。

大出委員 ありがとうございました。時間になりましたので、これで終了いたします。

御法川委員長 次に、黄川田徹君。

黄川田委員 自由党の黄川田徹であります。本日、二回目であります。初めに、常備消防、そして非常備消防についてお伺いいたします。

 消防団は、消防本部、消防署が置かれていない非常備町村にあっては、消防活動を全面的に担っているほか、常備市町村においても初期消火、残火処理等に積極的に活動しているところであります。また一方、消防団員は非常勤の特別職地方公務員でありますが、都市化による住民の連帯意識の希薄化、過疎地域における若年層の減少及び国民の就業形態の変化等、最近の社会情勢の変化の影響を受けて、地域で活動する消防団に関して、団員数の減少、団員の高齢化、サラリーマン団員の増加等の問題が生じてきており、消防団の充実強化を一層推進することが喫緊の課題となっております。

 そこで、まず、消防団並びに常備消防の充実強化を図るため、消防庁はどのような具体策を講じているのでしょうか。そしてまた、消防団員数、そのうち女性消防団員数及び消防職員数は、全国ベースで最近どのように推移してきているのでしょうか、あわせてお伺いいたしたいと思います。

中川政府参考人 消防団の充実強化を図ることは大変重要な課題であると考えておりまして、そのため、まず、施設、装備の充実を推進するという観点から、消防団活性化総合整備事業や、消防団拠点施設等整備事業などを実施いたしております。特に消防団活性化総合整備事業につきましては、本年度は昨年に比べまして一一・三%増の金額を確保するなど、財政支援措置の充実に努めているところでございます。

 また、消防団員の処遇改善の面におきましては、地方交付税により措置をいたしております年額報酬、出動手当等の引き上げを行っておりまして、平成十三年度におきましても同様の改善措置を講じております。

 さらに、消防団のイメージアップを図るため、ポスター、テレビ等を通じましたPRを行っておりますし、団員の制服を今回全面的に見直す措置もとっているところでございます。また、平常時におきます地域に密着した消防団活動について、優良な事例を表彰して全国に紹介する制度も本年度から採用することといたしております。

 次に、消防団員数及び消防職員数についてのお尋ねでございますが、平成十二年四月一日現在で、団員数は九十五万一千六十九人、このうち女性の団員は一万百七十六人、消防職員数は十五万三千四百三十九人となっております。

 消防団員数は減少傾向にございまして、最近十カ年におきましては約四万六千人程度減少しておりますけれども、女性消防団員は逆に八千二百人程度増加をいたしております。消防職員数は増加傾向にございまして、最近十カ年では約二万人程度増加をいたしております。

黄川田委員 また、消防の常備化については、市町村はどのような基準に基づいて、その結果どのように義務づけられているのでしょうか。さらに、常備化市町村数は全体でどの程度か、及び市町村別の、市は多分一〇〇%だと思いますけれども、市町村別の常備化率はどの程度か、あわせてお尋ねいたしたいと思います。

中川政府参考人 消防組織法及びこれに基づきます政令によりまして、すべての市、そして総務大臣が人口、態容、気象条件等を考慮して指定した町村につきましては常備化が義務づけられているところでございます。

 平成十二年の四月一日現在、市につきましては一〇〇%、町村につきましては九七%が常備化を達成いたしておりまして、非常備の町村は、したがいまして七十六残っているという実態にございます。この非常備の町村におきましては消防団が唯一の消防機関となっているところでございます。

黄川田委員 消防団員は、日ごろの訓練と自分たちの地域は自分たちで守るという郷土愛護の精神で、一致団結して我が町のために災害に立ち向かうわけでありますが、その活動は、住民から本当に称賛されておるところであります。また、お話のとおり、全体の消防団員数が減少傾向にあるということでありますけれども、女性消防団員は逆に増加傾向にあり、ひとり暮らしの老人宅への防火訪問あるいは応急手当ての普及など、女性の優しさや細やかさなど、それを生かして活動しているところだと思います。このように、消防団は地域における身近な消防のリーダーとして貴重な役割を担っているところであります。

 また、消防団員への登録及び災害時の出動等に関して、個人商店主や農林業の従事者等は自分の意思で比較的自由な行動をとりやすいわけでありますけれども、反面、団員として増加傾向にありますサラリーマンの場合は、事業主の理解と協力がないと災害時において迅速な行動をとりにくいのであります。

 そこで、消防庁は、このような理解を示す事業主や事業所に対し、どのような支援または促進策を講じておられるのでしょうか、お伺いいたします。

中川政府参考人 御指摘のように、就業構造の変化等によりまして、消防団員につきましてもいわゆるサラリーマン団員が増加をいたしておりまして、平成十二年四月一日現在では全団員の六八%を占める実態にございます。

 消防庁といたしましては、これまでも地方公共団体に対しまして、いわゆるサラリーマン団員の団活動への参加を容易にするよう、また昇進等の面での平等な取り扱いを求めるなどの点につきまして、事業所側に働きかけてまいっておりますし、貢献度が高い事業所に対しましては感謝状の贈呈を各市町村でやっていただくなどについて配慮していただくよう、旧通商産業省等とともに要請をしてまいっているところでございます。

 団員を雇用いたします事業所への対策は重要な課題と考えておりまして、これからも、その具体的な対策としてどのようなことが講じられるのか、真剣に検討してまいりたいと考えております。

黄川田委員 いろいろと対応されておるようでありますけれども、公務災害の補償など、消防団員の処遇改善等にはなお一層の推進を図られるよう要望しておきたいと思います。

 次に、最近の新聞報道によりますと、大津市、長野県真田町など一部の自治体は日本国籍のない外国人を消防団員として採用していると聞いております。消防法によれば、消防団員は常備消防職員と同様、火災現場で一般の人の立ち入りを禁じたり、建物を壊したりすることができるとされております。これらが、公権力の行使と解釈され、多くの自治体は禁じていると思いますが、消防団員の国籍条項について、消防庁は基本的にどうとらえているのか、また、自治体にどのように指導しておるのか、あわせてお尋ねいたしたいと思います。

中川政府参考人 公務員に関する当然の法理というものがございまして、公権力の行使または公の意思の形成への参画に携わる公務員となるためには日本国籍が必要である、このことは国家公務員のみならず地方公務員の場合も同様であると解しているところでございます。消防団員は、現行の消防法等の法令上、消防吏員と同様の公権力の行使を行う権限が与えられている地方公務員であるわけでございます。

 このような点を踏まえまして、日本国籍を持たない方を地方公務員である消防団員として任命するかどうかについては、各市町村において、このような当然の法理あるいは現行法令を十分勘案して適切な判断がなされるべきものである、このように考えております。

 いずれにいたしましても、消防庁といたしましては、地方公共団体から御相談等がございましたら、適切に対応して助言等を行ってまいりたいと考えております。

黄川田委員 地方にありましては、消防団員の高齢化あるいはまたなり手不足が問題化しております。なお検討の余地はあると思いますので、さまざまな議論をここでは要望しておきたいと思います。

 それでは、ここで今回の消防法の改正における引火点問題に移りたいと思います。

 欧米先進国では百度C前後を上限とし、それ以上の引火点を持つ物質に対する制限はほとんど存在しておりません。これらの高引火点物質は危険物とはみなされておらず、管理は事業者の自己責任に任されております。

 そこで、今回なぜ引火点の上限を二百五十度C未満としたのか。その根拠はどこにあるのでしょうか。

中川政府参考人 引火性液体の性状を有します危険物を試料とする火災危険性の評価試験を行っております。この評価試験の結果によりますと、試料にバーナーの炎を接触させる試験、着火試験におきまして、引火点の高い試料ほど着火しにくい傾向が見られ、引火点が二百五十度以上の試料では着火をしなかったところでございます。

 また、油槽に満たした試料の上に火源を浮かせ、油槽の全面に火炎が拡大するかどうかを見ます試験、漏えい火災試験におきまして、引火点が高い試料ほど火炎の油槽全面への拡大には大きな火源が必要となる傾向が見られ、引火点が二百五十度以上の試料では、火源を大きくいたしましてもその火源からの延焼はなかったという結果を得ているところでございます。

 また、過去十年間の火災事故の発生状況からは、引火点二百五十度以上のものが大半を占めます動植物油類の火災の件数は少なく、被害は死傷者を伴わないものであることが確認されております。さらに、第四石油類の火災の大半が、作動油、潤滑油、タービン油など、平均的な引火点が二百五十度未満の油種の火災であることが確認をされているところでございます。

 このような点によりまして、引火性液体の性状を有するものとして危険物といたしております消防法別表第四類の物品の引火点の上限を、今回の法律改正によりまして、二百五十度未満とするものでございます。

黄川田委員 また、今回の改正は、第四類の石油類及び動植物油が対象になりますが、具体的にどのような物質が危険物から外れるのでしょうか。また、今回の改正により、危険物から外れたものについては全く規制はなくなるのでしょうか、あわせてお伺いいたします。

 それから、時間ですので最後になりますけれども、規制緩和の観点から、消防法、労働安全衛生法、高圧ガス保安法の保安三法に係る民間検査機関が統合化されることが望ましいと私は思っております。しかしながら、検査機関の民間法人化に関して、その指定基準が保安三法間で整合化が図られていないので統合が難しいとも言われております。そこで、関係省庁の取り締まりの部署の早急な調整が望まれるわけでありますけれども、消防庁はこれに関してどのような方針をとるおつもりでしょうか、お伺いいたします。

中川政府参考人 危険物から外れることになります物質でございますが、動植物油につきましては、大豆原油、これは引火点が二百九十度、大豆サラダ油、同じく三百二十二度、菜種油、三百十七度などが除外されると考えられます。なお、動植物油のうち、サメ肝油、これは引火点が二百四十四度、鯨油、引火点が二百三十度などにつきましては危険物から除外されないということになります。

 第四石油類につきましては、同一油種であっても引火点に相当の開きがございますため、物質名では一概に申し上げられませんけれども、一部の絶縁油、焼き入れ油、スピンドル油などが危険物から除外されるものと考えております。

 今回、危険物から除外されます引火点が二百五十度以上のものにつきましては、新たに政令で指定可燃物に指定することといたす考えでございまして、指定可燃物に指定されますと、市町村条例に基づいて、貯蔵、取り扱い等の技術上の基準を守るべきこと、あるいはその貯蔵、取り扱いの届け出等を義務づけられることになるわけでございます。

 次に、消防法、労働安全衛生法、高圧ガス保安法の保安三法に係ります民間検査機関の指定の問題でございます。

 消防法に基づきます危険物施設の検査を行う機関につきましては、規制緩和推進三カ年計画に基づきまして、石油コンビナートに係る保安四法の合理化・整合化促進に関する実務者検討委員会等におきまして検討を行っております。

 検討の結果、危険物の保安の確保上問題のない範囲内で、高圧ガス保安法または労働安全衛生法の検査機関のうち消防庁の基準を満たすものを、消防法に基づきます危険物施設の検査を行う機関として明示をすることとし、昨年十二月に審査機関の基準等を定め、各都道府県、関係省庁あてに通知をし、周知を図ったところでございます。

 検査機関等を指定いたします基準の整合化につきましては、各法に係る検査の内容等が異なるということもございますので、難しい問題であると認識をいたしているところでございます。

黄川田委員 時間でありますので、終わります。

御法川委員長 次に、春名直章君。

春名委員 ヒドロキシルアミンとヒドロキシルアミン塩類を危険物に加えて規制を加えることは当然のことであり、遅過ぎたぐらいだと私たちも思っています。同時に、この法案の中に、引火点二百五十度以上のものを危険物から除外する、こういう問題が含まれています。

 そこで、この点に絞って聞きます。

 今まで消防庁は、一九八八年四月二十一日の参議院地方行政委員会の当時矢野消防庁長官の答弁ですが、こういうふうに言っておられます。いかに高引火点危険物といえども、加熱、取り扱いの状態によっては火災の危険がある、引火点が極めて高い物品として、例えば動植物油であるとかギア油などの第四石油類も、高温、高圧で取り扱われている場合に火災事故が発生している現状です、こういった観点から、引火点が高い物品でも危険物として規制する必要があるのです、こういう立場でございました。

 なぜこの立場を変えるのか、この点をお答えいただきたいと思います。

中川政府参考人 消防法では、物質の危険性に着目いたしまして危険物の規制を行っておりますが、今回の消防法改正は、今回新たに試験を行いまして、火災危険性の評価試験を行いまして、その結果、そしてまたもう一つは火災事故の発生状況分析の結果から、引火点二百五十度以上のものを法律上の危険物から除外したとしても、これを市町村の条例によります指定可燃物として規制をすることによって、その貯蔵、取り扱いの保安が十分確保できる、安全性が損なわれることはないという判断によりまして、今回の法律改正を御提案しているところでございます。

春名委員 今のお話では、平成元年から八年度で、第四類の引火性液体の事例と七百四十件の火災事故の中で、第四石油類が八%、動植物油が一・五%ということで非常に少ないんだということだったと思うんですけれども、ただ、少ないといえども、なくなってはいないんですね。

 しかも、当時の矢野長官が言われているように、高引火点物質といえども安全とは言えないことは自明のことです。潤滑油、動植物油は、製造所では高温、高圧で取り扱われています。加熱された油が漏れて着火したり、植物油では、抽出溶剤のノルマルヘキサンの爆発から植物油の工場が火災したり、米ぬか油の油かすが空気に触れて自然発火した、そういう火災事故もあります。ですから、この十二年間、十三年間に高引火点物質の物質の性状が変わっているわけじゃないんですね。そういう点は指摘をしておきたいと思うんです。

 そこで、消防庁は、危険物の危険性状として三点挙げていらっしゃいます。二〇〇〇年度の消防白書でもこう言っています。消防法では、一、火災発生の危険性が高い、二、火災が発生した場合に火災を拡大する危険性が高い、三、火災の際の消火の困難性が高いなどの性状を有する物品を危険物として指定し、その貯蔵、取り扱い、運搬について、国民の生命、身体及び財産を火災から保護するとともに、火災による災害を軽減することを目的として必要な規制を行っている、こう述べていらっしゃいます。

 消防研究所にやってもらった今回の試験は、この三つの角度から実施をされたのかどうか、これをお答えください。

中川政府参考人 消防白書では、ただいま御指摘のように、危険物指定の根拠といたしまして、火災発生の危険性、火災拡大の危険性、火災の際の消火困難性の三つを掲げておりますけれども、今回の評価試験におきましては、火災発生の危険性及び火災拡大の危険性の二つの観点から評価試験を行ったところでございます。

春名委員 今おっしゃったとおり、三番目の消火困難性の問題についてはやっておられないわけなんですね。それが大問題だというふうに私は言いませんけれども、しかし、今まで引火性液体が危険物として規制の対象になっていたのは、引火点の高低ということではなくて、それにかかわりなく、可燃性であること、そして液体、そういう性質に着目していたから、引火性液体が危険物として対象になっているんだと思うんです。そして、高引火点の物質は、一般的に高分子でありますから、一たん燃えると消火は著しく困難になることは、前提といいますか、当然のことです。ですから、私は、やはりこれを引火点のみでどこかで線をぴしゃっと引いてしまうというのは、少し無理があると思うんですよ。そういう点を私は指摘をしておきたいと思うんですね。

 さて、危険物から除外をされますと、まず第一に、許可制から届け出制に変わります。第二に、貯蔵や取り扱いの問題では、製造所、一般取扱所の保安距離、それから保有空地、保有空地というのは消防活動を行うための空間ですが、その規制がなくなります。屋内の貯蔵所の保有空地も規制がなくなります。保安距離でいえば、危険物でいいますと、住居から十メートル、学校、病院から三十メートル、重要文化財から五十メートル、高圧ガス施設から二十メートルの距離を置かねばならなくなっておりますけれども、これらの規制もなくなります。野外タンク貯蔵所の保有空地は三メートル以上ですけれども、これが一メートルになって、消防車も入れなくなります。施設の基礎地盤試験も必要なくなります。

 ですから、私はあえてもう一回お聞きしたいのですが、これはまた条例で必要な規制をするということなのかもしれませんけれども、なぜ今あえてこの二百五十度以上を外すような規制緩和をやらなければならないんだろうか、これがどうしても疑問であります。その点について、明快なお答えをいただきたいと思います。

中川政府参考人 危険物の規制を含め、消防法の規定によります物質の安全をどのように確保していくのかというのは大きな課題でございまして、同時に、常に見直していくべきものであろうと考えております。

 今回、いろいろな要望もございましたが、その見直しに当たりましては、十分科学的な根拠を前提とすべきだということから、先ほど申し上げました火災危険性の評価試験及び火災事故の発生状況の分析によりまして危険物から除外することとし、指定可燃物として規制をすることにしても十分その安全が確保できる、こういう判断に立ったものでございます。

春名委員 先ほど、要望もあって、それと科学的な実験をやって、それで見直しをしたということで、二点おっしゃいました。

 ところで、確認しておきたいのですが、今後、二百五十度以下には絶対に下げないというふうに言えるかどうか、この点はいかがでしょうか。

中川政府参考人 繰り返しで恐縮でございますけれども、今回の消防法改正によります引火点の上限の設定につきましては、試験及び事故の状況分析の結果から判断をしたもの、結論を得たものでございます。

 将来の引火点の上限のあり方につきましては、今後の火災事故の発生状況等の分析も行いながら、今後、引き続いて検討し判断をしていくべきものだろうと考えております。

春名委員 私は、消防研究所にお邪魔して、いろいろ研究をやった姿も見せていただいたんですが、ぴしゃっと二百五十度でないとだめだという科学的根拠はないんですね、幾つかの点では実験をされていますけれども。

 それから、先ほど、要望もありということが出ましたけれども、まさに要望がかなり矢のようにあったわけですよ。

 経団連は、第四類の第三石油類のうち引火点が百度以上のもの及び第四石油類を危険物の指定から外すべきであるという要望を九九年に出しました。それから、同じく経団連は、新たな規制緩和推進三カ年計画、昨年十月十七日ですが、この中で、国際的な水準との整合性も考慮し、従来から高引火点として定義している百三十度以上の油を危険物から除外すべきであるという要望をしておられます。

 このように財界や経団連の方が言われるのは、アメリカの基準が九十三度である、これを国際基準と見ている、こういう方向に下げてほしいということが背景にあるわけです。そういう要望も受けて変えたという面もあるんじゃないですか。

中川政府参考人 今回の改正案の検討に当たりましては、御指摘のように経済界の要望があったことは事実でございます。

 ただ、その際に、具体的に何度以上を危険物から除外するかということについては、先ほど来申し上げておりますような試験あるいは火災事故の状況分析によったものでございまして、外国の実態は承知をいたしておりますけれども、それに自動的に準拠しているものではございません。

春名委員 大臣に、やりとりを聞いていただいて、少しお伺いしたいと思います。

 国際基準という点では、アメリカ基準、九十三度というのがあるんですね。それから見ればかなり高いなというふうに言われるかもしれません。ただ、国際基準に合わせるのが、それでいいというふうにはならないと思うんですね。

 それで、日本には、やはり安全確保上、日本の特殊性があると思うんです。それは、言わずと知れた日本は有数の地震国であり火山国であるということ、それから極端な人口密度の都市部を抱えているということだと思うんですね。そういう日本の中で、消防法というのは非常に大事な役割を、今も果たしてきたし、これからも果たすだろうと思うんです。国民の生命、財産、安全を確保する上で、本当に重要な役割を果たしていってもらいたいと思っているんです。

 その役割という点で、一つの例を挙げたいと思うんですよ。

 タンクローリーがありますでしょう。タンクローリーの事故がふえ続けています。日本ハイウェイセーフティ研究所の東名高速道路での調査によりますと、大体二分に一台の頻度で危険物を積んだタンクローリーが走っている状況だそうです。これは二、三年ほど前になるのでちょっと新しくないのであれですけれども。

 走る貯蔵庫を、タンクローリーを辛うじて規制しているのは消防法なんですね。今度の改正で危険物の指定がなくなった、その油などを積んだタンクローリーはどうなるかといいますと、こうなるんですよ。完成検査済証、点検記録の備えつけ、危険物取扱者の同乗義務、これが免除されちゃうんです。それから、危険物の表示が要らなくなるんです。タンクローリーの構造も変わっちゃうんですね。危険物なら三トンが上限なんですけれども、一トンずつに全部構造的に分けているわけです。一つのタンクが壊れても、あとの二トンは大丈夫なようにするという構造になっているんです。それの間仕切りがなくなって、しかも三トンという上限もなくなっちゃうんですね。

 走る貯蔵庫で、二分に一台の頻度で危険物を積んで走って、事故もふえているというような状況の中で、私は素朴に思うんですが、このような規制緩和を、絶対安全だと言われたらそうかと言うしかないのかもしれないけれども、しかし、あえて今こういう緩和の道を開くことは、私は余り得策ではないなという気がしてならないんですよ。

 大臣は、その点はどのようにお考えでしょうか。

片山国務大臣 委員の言われるように、消防は国民の生命、身体を守るという義務がありますから、安全確保が第一ですね。しかし同時に、不必要とは言いませんけれども、過剰な規制はやはり簡素化していく、緩和していく、この二つの兼ね合いだと思います。ただ、消防法の精神は安全ですから、今後ともそれを第一に考えてまいります。

春名委員 時間が来ましたので終わりますが、一言。

 過剰な規制は緩和していくという点が違うんですよ。過剰な規制でなくて必要な規制を緩和しそうになっているというふうに私は思っていまして、ヒドロキシルアミンの危険物への追加は、先ほど言いましたように当然だと思うんですが、この点でやはり同意できないということを申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。

御法川委員長 次に、重野安正君。

重野委員 社会民主党・市民連合の重野安正です。ただいま議題となっております消防法一部改正案に対し、質問をいたします。

 まず、日進化工群馬工場の爆発事故についてでありますが、同工場のヒドロキシルアミン製造過程において、危険物指定もないことから尾島消防署所轄の立入調査をした実績はないというふうに聞いておりますが、それは間違いないんでしょうか。同時に、危険物と指定されていなかったとはいえ、フロンの代替物質として使われている事実を見れば、科学的性状に注意を払い、積極的立入調査が期待されたのではないか、このように思うんですが、見解をお聞かせください。

中川政府参考人 群馬県の化学工場が昨年の六月に爆発火災を起こしました。その工場に対しまして所轄の消防機関が立入検査をしているかどうかということでございますが、危険物を一部扱っている部分がございますので、事業所そのものには立入検査をしているというように聞いておりますけれども、ヒドロキシルアミン水溶液の製造過程については、当時は危険物ではございませんので、具体的な立入検査は行っていない、このように聞いております。

 また、今回、ヒドロキシルアミン等を危険物として追加することといたしたわけでございますが、これまでなぜやっていなかったかということにつきましては、ヒドロキシルアミンやその塩類は、国内においては毒物及び劇物取締法に規定する劇物に指定されておりまして、国際連合の危険物輸送専門家委員会の勧告におきまして、火災危険性が高い物質というものではなくて、腐食性の物質として分類されていることもございまして、これまで自己反応性を有する危険物という認識がなかったために指定をしていなかったということでございます。

重野委員 厚生労働省に聞きますが、労働安全衛生法上、これについて今後どのような方策を講ずるつもりか、お聞かせください。

坂本政府参考人 ヒドロキシルアミンにつきましては、現在の労働安全衛生法におきましては特段の規定をいたしておらないところでございます。

 ただ、化学物質等の危険有害性等の表示に関する指針によりまして、ヒドロキシルアミンのような一定の条件下で爆発性を有するものを取り扱う場合には、その危険性に応じた安全衛生管理を行うために、譲渡または提供する場合には、危険有害性の内容でありますとか取り扱い上の注意などを記載した化学物質等安全データシートの交付を規定いたしております。

 今回の事故の原因につきまして、現在、独立行政法人の産業安全研究所において原因を究明いたしておるところでございますが、考えられる原因といたしましては、製造設備内のヒドロキシルアミン水溶液に鉄等の金属が混入した、あるいはヒドロキシルアミン水溶液が過度に加熱をされて異常化学反応が促進されたということが考えられるのではないかと思っております。

 この調査結果を踏まえまして、今後、工場の具体的な配置状況でありますとか操業状態等に即して、施設や作業方法等の具体的な安全確保対策を講じる必要があると考えております。

重野委員 消防庁にお伺いします。

 八八年に大幅な見直しをしたと承知しております。この化学物質についての危険性はその当時全く知見されなかったのかという点であります。また、当時危険性が知見されていなかったとすれば、群馬工場の爆発事故後初めて危険な性状があることを知ったということになるのですが、そういうことなんでしょうか。

中川政府参考人 一九八八年に危険物の体系全体を見直しまして、新しい危険物の範囲等を明確にしたわけでございますが、残念ながらその時点におきましては、今回追加をしようといたしておりますヒドロキシルアミン及び塩類については、危険物としての認識を我々として十分持っていなかったという実態にございます。

重野委員 昨年の六月に爆発事故が起こったわけですが、その事故以前に、九七年と九九年、アメリカで爆発事故があったのですね。アメリカにおけるその種の爆発事故について、消防庁はそういう事実を把握しておったのでしょうか、どうでしょうか。

中川政府参考人 一九九九年二月にアメリカで類似の事故が発生していることは把握をいたしておりました。

 一九九九年二月、アメリカのペンシルベニア州アレンタウンのヒドロキシルアミン製造工場において事故が発生をいたしております。その被害は、死者五名、負傷者十三名、また当該工場及び工場周辺のビルが破損するなどの物的被害が発生をしたと聞いております。当該工場におきましては高濃度のヒドロキシルアミンを取り扱っており、爆発は当該物質のタンクから発生したと見られております。

 なお、現時点におきまして、当該事故についての米国の化学物質に係る安全性及び危険性調査委員会の事故調査報告書は取りまとめ中でございまして、事故原因等については、現在まだ我々としては承知をいたしておりません。

 一九九九年二月の事故について、アメリカで発生したことはその時点で把握をしたものでございます。

重野委員 そこで、少し視点を変えて質問いたします。

 これは消防庁の外郭団体なのかどうなのかということが定かでありませんけれども、消防試験研究センター委託による危険物保安委託協会の本年三月の同工場爆発事故調査報告書でありますが、それによりますと、ヒドロキシルアミン類にかかわるアメリカの事故事例として、まずプルトニウム分離工場では一九六八年から九七年までに八件、また硝酸ヒドロキシルアミン製造工場でのそれは一九九二年から九九年まで五件の事故例を指摘しています。

 そこで聞きますが、これ以外に過去にこれに類する可能性のある事故例は内外ともにないというふうに理解していいのかどうなのか。その点について伺います。

中川政府参考人 私どもといたしまして、事故事例の把握でございますが、今御指摘のように、一九九七年五月十四日、アメリカのワシントン州ハンフォードのプルトニウム分離工場での硝酸ヒドロキシルアミンの希硝酸溶液の入ったステンレス性タンクの破裂事故を承知いたしております。

 国内におきましては、ヒドロキシルアミン等に起因すると見られる事故としては、二つの事故について把握をいたしております。

 昭和四十九年に製薬会社におきまして、製造工場で発生した事故でございます。当該事故の原因といたしましては、硝酸ヒドロキシルアミン廃液の蒸留脱水中に硫酸ヒドロキシルアミンの加熱分解が起こりまして、反応槽の破裂に至ったものと推定をされております。この事故におきましては、負傷者が一名発生をいたしております。

 二つ目は、平成四年に農薬製造会社において発生したものでございまして、当該事故の原因といたしましては、ヒドロキシルアミンに水酸化ナトリウムを混合させていた際にアンモニアガスが急激に発生し、反応がま内部の圧力上昇により反応がまが破損したものと推定をされております。二名の負傷者が発生をいたしております。

 国内におきましては、この二例を把握いたしているところでございます。

重野委員 四十八年前、一九五三年、日本火災学会発行による「火災」四号というのがあるのですが、その中に名古屋消防局予防課の東亜合成化学工業株式会社名古屋工業所爆発事故概要と題する報告があるのです。

 それによると、一九五二年七月二十三日、同工業所の爆発事故によって二十数名の死傷者、百数十名の負傷者が出た。その予想される原因として、明確に断定はしておりませんけれども、ラクタム廃液内の不純物、特にヒドロキシルアミン、亜硝酸は不安定な物質で、ヒドロキシルアミンは還元性の強い物質であるから云々という報告があるのですね。ヒドロキシルアミンに対する疑念を示している。

 消防庁と関連をする部署で五十年前にそのような報告書が出されているということを、もちろん消防庁は承知しておったと思うのですが、承知しておるとすれば、この問題について、やはり具体的な対応策というものが当然とられてしかるべきではなかったのか、こういう疑問を持つのでありますが、そこら辺についてどのようにお考えでしょうか。

中川政府参考人 先ほどもお答えをいたしましたように、ヒドロキシルアミン及びその塩類につきましては、国内において、毒物及び劇物取締法に規定する劇物に指定されて一定の規制が行われてきた経緯がございます。また、このような規制は、国際的に見ても国連等の委員会の勧告におきましてもうなずけるところでございまして、過去においては危険物としての認識が十分でなかったということは事実そのとおりでございます。

 今御引用のいろいろな論文等においての御指摘はあろうかとは思いますけれども、我々としては、毒物、劇物としての規制が行われているということで、危険物としての規制は、必要性について十分認識をしていなかったということでございますので、御理解をいただきたいと思います。

重野委員 そのように、過去の事例が幾つも報告をされるわけですね。そういう事例を的確に把握して、それにどう対処するか、そういうことがなされておれば、群馬工場におけるこの種の事故というものに対し、いささかなりとも抑止的な役割を果たし得たのではないか。したがって、今後、内外のその種の情報把握、そして独自の試験研究の体制をつくって、この種の事故が発生しないために、消防庁も強力な役割を果たしていただきたい、このように思いますが、長官の決意をお聞かせいただきたいと思います。

中川政府参考人 今後、このような事故を未然に防止するために、科学技術の進展等により新たに出現する物質で火災危険性を有すると想定されるものについては、危険物として適時適切に規制をし、保安の確保を図っていくように努力してまいりたいと考えております。

重野委員 終わります。

御法川委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

御法川委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 消防法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

御法川委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

御法川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

御法川委員長 次に、内閣提出、行政機関が行う政策の評価に関する法律案及び地方税法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 順次趣旨の説明を聴取いたします。片山総務大臣。

    ―――――――――――――

 行政機関が行う政策の評価に関する法律案

 地方税法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

片山国務大臣 ただいま議題となりました行政機関が行う政策の評価に関する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 中央省庁等改革の大きな柱の一つとして、本年一月の中央省庁再編にあわせ、新たに政策評価制度が全政府的に導入されたところであります。

 政策評価制度は、政策について、常にその効果を点検し、不断の見直しや改善を加えていくことで、効率的で質の高い行政及び成果重視の行政を推進するものであり、同制度に対しては国民各界各層から強い期待と関心が寄せられているところであります。

 このような中で、政府は、本制度の実効性を高め、これに対する国民の信頼を一層向上させる観点から、その法制化について検討を進めてきたところでありますが、このたび、行政機関が行う政策の評価に関する法律案を取りまとめ、御提案することとなったものであります。

 次に、法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。

 この法律案は、行政機関が行う政策の評価に関する基本的事項等を定めることにより、政策の評価の客観的かつ厳格な実施を推進し、その結果の政策への適切な反映を図るとともに、政策の評価に関する情報を公表し、もって効果的かつ効率的な行政の推進に資するとともに、政府の有するその諸活動について国民に説明する責務が全うされるようにすることを目的とするものであります。

 この法律案の要点は、第一に、各行政機関が、みずからの所掌に係る政策について、適時その効果を把握して、必要性、効率性、有効性等の観点から評価を実施し、その結果を当該政策に適切に反映することとするものであります。また、評価の実施に当たっては、合理的な手法を用い、政策の特性に応じて学識経験を有する者の知見を活用することとしております。

 第二に、政策評価の客観的かつ厳格な実施を確保するとともに、国民に対する説明責務を全うするために、政府全体の政策評価に関する基本方針を策定し公表するとともに、各行政機関が中期的な基本計画と一年ごとの実施計画を策定し公表することとしており、また、政策評価の結果については、過程に関する情報も含めた評価書を作成し、インターネット等により公表することとしております。さらに、政策評価の統一性、総合性及び一層厳格な客観性を確保する観点から、総務省が各行政機関の政策について評価し、勧告等を行うこととしております。

 なお、この法律案は、一部を除き、平成十四年四月一日から施行することとしております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。

 続いて、地方税法の一部を改正する法律案の提案理由とその要旨について御説明申し上げます。

 最近の経済情勢等を踏まえ、個人投資家の市場参加の促進等の観点から、個人住民税について、長期所有上場株式等の譲渡所得につき特別控除を行う特例措置を講ずる必要があります。

 以上が、この法律案を提案いたします理由であります。

 次に、この法律案の要旨につきまして御説明申し上げます。

 個人住民税につきまして、所得割の納税義務者が、平成十三年十月一日から平成十五年三月三十一日までの期間内に、所有期間が一年を超える上場株式等の譲渡をした場合においては、当該上場株式等に係る譲渡所得の金額から百万円を控除することとしております。

 以上が、地方税法の一部を改正する法律案の提案理由及びその要旨であります。

 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。

御法川委員長 これにて両案についての趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る六月五日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後七時十六分散会


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