衆議院

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第22号 平成13年6月15日(金曜日)

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平成十三年六月十五日(金曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 御法川英文君

   理事 荒井 広幸君 理事 川崎 二郎君

   理事 渡海紀三朗君 理事 平林 鴻三君

   理事 荒井  聰君 理事 田並 胤明君

   理事 若松 謙維君 理事 黄川田 徹君

      赤城 徳彦君    浅野 勝人君

      河野 太郎君    左藤  章君

      佐田玄一郎君    坂井 隆憲君

      新藤 義孝君    滝   実君

      谷  洋一君    野中 広務君

      平井 卓也君    宮路 和明君

      山本 公一君   吉田六左エ門君

      大出  彰君    玄葉光一郎君

      武正 公一君    中村 哲治君

      前田 雄吉君    松崎 公昭君

      松本 剛明君    山井 和則君

      江田 康幸君    山名 靖英君

      春名 直章君    矢島 恒夫君

      重野 安正君    横光 克彦君

    …………………………………

   総務大臣         片山虎之助君

   内閣府副大臣       松下 忠洋君

   総務副大臣        遠藤 和良君

   総務副大臣        小坂 憲次君

   総務大臣政務官      新藤 義孝君

   総務大臣政務官      山名 靖英君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  黒澤 正和君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    五十嵐忠行君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    漆間  巌君

   政府参考人

   (総務省行政管理局長)  坂野 泰治君

   政府参考人

   (総務省行政評価局長)  塚本 壽雄君

   政府参考人

   (総務省自治行政局長)  芳山 達郎君

   政府参考人

   (総務省自治財政局長)  香山 充弘君

   政府参考人

   (総務省郵政企画管理局長

   )            松井  浩君

   政府参考人

   (総務省政策統括官)   高原 耕三君

   政府参考人

   (消防庁長官)      中川 浩明君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局次

   長)           佐藤  準君

   総務委員会専門員     大久保 晄君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十五日

 辞任         補欠選任

  松原  仁君     前田 雄吉君

  山村  健君     松本 剛明君

  高木 陽介君     江田 康幸君

同日

 辞任         補欠選任

  前田 雄吉君     松原  仁君

  松本 剛明君     山村  健君

  江田 康幸君     高木 陽介君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 行政機構及びその運営、公務員の制度及び給与並びに恩給、地方自治及び地方税財政、情報通信及び電波、郵政事業並びに消防に関する件




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     ――――◇―――――

御法川委員長 これより会議を開きます。

 行政機構及びその運営に関する件、公務員の制度及び給与並びに恩給に関する件、地方自治及び地方税財政に関する件、情報通信及び電波に関する件、郵政事業に関する件及び消防に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として警察庁生活安全局長黒澤正和君、警察庁刑事局長五十嵐忠行君、警察庁警備局長漆間巌君、総務省行政管理局長坂野泰治君、総務省行政評価局長塚本壽雄君、総務省自治行政局長芳山達郎君、総務省自治財政局長香山充弘君、総務省郵政企画管理局長松井浩君、総務省政策統括官高原耕三君、消防庁長官中川浩明君及び農林水産省農村振興局次長佐藤準君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

御法川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

御法川委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田並胤明君。

田並委員 おはようございます。

 きょうは、私の後、玄葉委員、それから荒井委員と続いて行いますので、それぞれ分野別に行うということになりますので、私の方は、郵政事業の経営形態について質問を申し上げたいと思っております。

 どうも、郵政事業の経営形態で、民営化に反対するような意見を言うと、抵抗勢力だということでかなり袋だたきに遭うような気がするんですが、しかし、いいものはいい、悪いものは悪いで、自分の考えを述べないと議会ではありませんから、述べさせてもらいます。

 郵政事業の経営形態については、平成十年の六月十二日に施行されました中央省庁等の改革基本法によって、二〇〇三年、国営の新しい公社、そしてそれ以降は民営化の論議はしないということになっておるわけであります。ところが、この法施行後三年にして、小泉総理が誕生した途端に、どうも、聖域なき構造改革の目玉として、この郵政事業の民営化を含めた経営形態の論議が今、巻き起こっているわけでありまして、五月三十一日の日には、小泉総理大臣の私的懇談会としての、郵政三事業の在り方について考える懇談会が立ち上がりまして、いよいよ民営化の論議が本格化をする、こういう時期を迎えております。

 論議は大いに結構でございますが、私は、郵政事業の経営形態をどうするかという論議の結論というのは、国民の皆さんがどのような選択をされるか、これに尽きるのではないか、このように思います。つまり、これまで行ってきた、全国一律で、しかも安価なユニバーサルサービスを維持するために、三事業一体で国営でいった方がよろしいのか、あるいは、経済合理性に基づく競争原理を導入した民営化の方がよいのか、どちらを選択するのかというのは国民の判断であります。

 私が考えるに、経済合理性に基づく競争原理だけでは、どうも、排除される、あるいは阻害される、こういうものが生じて、公正を欠くのではないだろうか、こういう気がするんです。したがって、競争と公正、これが両立をされるシステムというのが私はいい制度であって、それが住みよい国につながるんじゃないか、こういうふうに考えます。

 あえて、私のことを、どうも郵政民営化に反対をするという意見表明をしますと、彼は守旧派だというふうにレッテルを張られますが、私はそうじゃなくて、いい改革はどんどんやるべきだ、改革と公正派だというふうに思っています。向こうが改革派だと言うならば、私は改革公正派だ、こういうつもりでおるわけでございます。

 例えば、もう御承知のとおり、アメリカのカリフォルニア州、電力危機で大変な状態が出現をしております。これは、私、安定供給という一つの枠を取っ払って、とにかく完全な自由競争、市場競争にゆだねるというところに一つの原因があるような気がするんです。特に、エネルギー源の電力が、日本ではちょっと考えられません。戦争中、私なんかも生活していたものですから、停電が随分ありましたけれども、あるいは戦後の混乱期にもありましたけれども、とてもとても、日本で停電があるなんてことは想像できませんし、よほどのことがなければないと思うんですね。それが、ことしの夏も、カリフォルニア州ではかなりの電力危機と停電があるのではないか、こんなことが言われておりますが、そういう最終的なセーフティーネットの確保の問題。

 それから、これはいろいろな評価は分かれますが、国鉄の民営化によって、非常によくなった部分と、ローカル線が廃止され、あるいは第三セクターになって、過疎地がまた過疎がさらに進む。例えば、三十八ぐらいある第三セクターも、恐らく黒字が、平成十一年度の資料によりますと、三社か四社が黒字で、あとの三十社ぐらいがほとんど赤字。これはほとんど、それぞれの沿線の自治体が基金を積み立てて、その基金の運用益、あるいは運用益が足りない場合には基金を取り崩しをして、その赤字を補てんする、こういうシステムになっているようですから、これは、結果的には税金がそこにつぎ込まれている、こういうことになっているんじゃないかと私は思うんです。

 それと、よく話題になるニュージーランドの問題。これも郵政事業を民営化しましたが、それに伴って郵便局が激減をする、そのことによって、ニュージーランドの国民は金融阻害も受けるし、通信の阻害も受ける、こういう事態が発生をして、これは何とか変えなくちゃいかぬという、再び国営の、いわゆる貯金の機関をつくらなくちゃいけないというような動きも出てきているようであります。

 したがって、私は、経済の合理性だけを追求した結果発生をしたこれらの問題点を、十分これからの郵政事業の経営形態を論議をする場合にも頭に入れて論議をしなければいけないんじゃないだろうか、このように思うんです。これまで郵便局が提供してきたユニバーサルサービスや地域社会に果たしてきた役割というものを踏まえて、ぜひ国民的な論議がされることを望んでいるわけであります。

 私は、ユニバーサルサービスを経済合理性に基づく競争政策としてとらえるのではなくて、これはもうはっきり言って社会政策としてとらえて、ユニバーサルサービスは公的部門の役割、責任として国民に提供すべきではないか、こういう考えを持っております。郵政事業は、まさにそういった公的部門の役割をこれまで担ってきたし、今後も担うべきだ、このように考えますので、まず大臣のお考えを聞かせていただきたい、このように思います。

片山国務大臣 今、田並委員から、いろいろなお話がございました。郵政事業は、非営利の国営事業として、全国津々浦々に置かれた二万四千七百の郵便局ネットワークを通じまして、国民生活に不可欠な郵政サービスを三事業一体で、お話のように全国くまなく、公平に、安く、国民利用者の立場に立って仕事をやってきた役割は、私も大変大きなものがあると。明治以来百三十年間、地域社会に溶け込み、住民の皆さんに愛されてきたという実績があるわけであります。

 この将来については、いろいろな議論があることは当然でございましょうし、今、行革基本法では、公社化に移行して、それによって民営化等の措置はしないという確認的な規定も置いておりまして、ある意味では一件落着的な措置だったと思いますけれども、今回、小泉総理が誕生いたしまして、与党三党の合意で、御承知のように、平成十五年中の公社化を実現して、その後のあり方については、懇談会を置いて、民営化問題も含めてどうするか検討する、こういうことで、せんだって懇談会が発足いたしました。

 その際のあいさつの中でも、総理は、自分は民営化論者だ、しかし、そこはとらわれずに議論してほしい、自分は自分の意見を押しつけない、どうぞ自由に、白紙の立場で、こういうことを強調されておりましたし、それぞれ一言ずつ各委員が意見を開陳されましたけれども、いろいろなニュアンス、いろいろなお話でございました。

 私は、この懇談会で活発な議論をして、一定の集約をしていただき、最終的には国民的議論で、国民がどういう選択をするか、今、田並委員のお話のようになると思いますが、その際、委員が言われましたように、競争と公正さ、ユニバーサルサービスの維持と、それからもう一つは、民間にできることはなるべく民間にやらせようという総理のお考えの接点をどこに求めていくかということが最大の課題ではなかろうか、こう私は思っておりますし、カリフォルニア州の電力の話、あるいはニュージーランドの民営化等、諸外国の例も参考にしながら議論をこれから進めていきたい。

 政府側からは総理と官房長官と私がレギュラーメンバーで、それから、臨時に出ていただくことになるのは恐らく財務大臣と金融担当大臣だろう、こう思いますので、私も、今、郵政三事業を預かっている責任者として、総務省の中の意見も聞き、また国会議員の先生方の御意向も体しながら、しっかりと対応してまいりたい、こういうふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。

田並委員 片山総務大臣も懇談会の委員の一人でしょうから、ぜひ今申し上げたようなことをしっかり踏まえて論議に加わっていただきたい。つまり、国民が選択するわけですから、国民の皆さんの意向をしっかり体して結論を出していただきたい、このように思います。

 次に、郵政事業は分割・民営化をされても、郵便局のネットワークは維持をされユニバーサルサービスは確保されるんだ、こういう論を唱えている方がおります。それならば非常にいいんですが、私は、なかなかそういうふうにならないんじゃないだろうか、このように思うんです。

 というのは、民営化された場合でも、ネットワークを残したり、あるいはユニバーサルサービスを確保すると、この論拠として言っているのは、郵便局のユニバーサルサービスを提供するという現行システムが果たして今後とも持続できるのかどうか、それともう一つは、余りにも郵政事業は巨大国営事業なので深刻な弊害を伴う、抜本的な改革が必要だということを問題点として指摘して、したがって、郵便局のネットワークを維持していくためには、現行システムを変えて収益基盤の多様化が必要であって、それを実現する手段として民営化が必要なんだと。要するに、ネットワークを守るためには今のままではだめで、もっと収益源の多様化を求めることによって、当然そこに相当利益が出てくるだろうという想定なんでしょうけれども、それによって何とかネットワークが維持できるんじゃないか、そういうふうに述べているわけですね。

 それで、郵便局のネットワークを維持する具体的な方法として、民間会社になったならば、郵貯、簡保の窓口業務を郵便会社が窓口として引き受ける、そして、個人や法人に対しての融資の仕事もそこでやれるようにする、それ以外に、民営化になれば、今度は、例えばJRみたいにいろいろな事業ができるようになる。ですから、どんどん事業をやることによって、要するに、多様な収益源というものをそのことによって確保して、そうすれば維持できるんではないか、こういうふうに言っているわけですね。

 ところが、それでも心配だと思われるんでしょう。万が一ある特定の地域でネットワークの維持が困難になった場合は、所属する自治体が民主的な討議を経て、議決を経てどうしてもこのサービスが必要だというふうに判断をした場合には、自治体が補助をすればいいではないか、そのことによって残すことができるんじゃないかと。要するに、税金を投入するということであるという主張をしています。

 ユニバーサルサービスの場合は、先ほどと同じように、郵便会社は民間企業並みになるので、政府出資一〇〇%あるいは政府出資が持ち株五〇%以上の場合にはできないけれども、完全に株式が放出をされて完全な民営化になった場合には、民間企業並みの監督だとか規制は受けるけれども、ユニバーサルサービスを義務づけることはしない、こういうことを言っているわけであります、いわゆる民営化論者の中では。

 そうすると、今言ったようなことを考えると、本当にネットワークが維持をされ、ユニバーサルサービスが確保されるんだろうか。要するに、ネットワークが維持されないような自治体が出た場合には、そこで必要ならば税金を投入するけれども、必要でなければ税金を投入しないということになると、ネットワークが崩れるわけです。

 ユニバーサルサービスについても、完全に民営化されて利益が出ないところに何でそんなものを置くものですか。まして、いろいろな仕事ができるといっても、郵便局と農協と漁協ぐらいしかないところで新しい事業をやって、今までの、既存の事業者に対して大変な影響を与えるということが果たしてできるんだろうかどうだろうか。残念ながら、それは不可能だと思うんですね。

 そうすると、結果的には、理屈ではわかっても、現実には、ネットワークもユニバーサルサービスも民営化された場合は、残念ながら崩壊をするんではないかという危惧を持ちます。そういう考えを私は持っているんですが、大臣はどうでしょうか。

片山国務大臣 お話しのように、やはり郵便局ネットワークの維持は、どうしても守らなければならないというか、維持しなければならないあれだと思いますね。結局、今の二万四千七百の郵便局がネットワークで結ばれているということが、国民にとって大変大きなユニバーサルサービスを保障しているということになっておりますから、私は、どんな形になれ、ネットワークの維持は最大の課題だろう、こう思いますね。

 今、国がやる、税金でやる、それを民営化しよう、民営化してネットワークの維持のためにまた税金を入れるということになると、これはどういう民営化だ、こういうことになりますから、そこのところは、これからいろいろな議論があり、あるいはいろいろな提案が出てくると私は思います。

 そこで、先ほども言いましたように、今、とにかくユニバーサルサービスを守る、そのためには今のネットワークの維持が必要だ、こういう観点と、やはり一種の活力を生むための競争をやってもらう、民間にできることは民間にもやってもらう、こういうことの調整、接点をどこに求めるか、私はそれが最大の課題で、懇談会を中心に、総務省としても、いろいろな資料を出して説明してほしい、二回目は、田中座長からのそういう御要請もありましたので、今までの郵便局のやってきたこと、今後どうあるかということは、国民の期待の中で、そういうことも第二回の懇談会ではお話をさせていただこう、こういうふうに思っております。

 いずれにせよ、委員のお考えはよくわかりますので、とにかくネットワークの維持は最大の課題として取り組みます。

田並委員 ネットワークというのは別に総務省のものでも何でもないんですよ、国民の財産なんですから。それをしっかり守ることによって国民生活を向上させる、守る、こういう大きな役割があることについてしっかり御認識をお願いしたいと思うんです。

 時間がありませんので、一括して聞きます。まず、郵貯問題についてです。

 郵便貯金が二百五十兆を超えて個人預貯金の三割以上を占めている、大変肥大化した、それが結果的には民業を圧迫している、こういうことで、もちろん、出の問題もありますが、財投の問題もありますが、どうも郵貯が悪者扱いをされちゃっている。預金をしている人がみんな悪者じゃないかというふうにとらえられちゃうんですが、私はそうじゃないと思うんですね。確かに、資産運用というのは、預貯金、それから証券、保険、不動産と、分散運用するというのが一番望ましいのかもしれません。しかし、今の経済状況の中で、何でリスクのあるところへ個人の資産が向かうか。

 要するに、個人資産が向かうためにはそれだけの環境を整備しなければいけないと私は思うんです。そのことを整備しないで、郵貯けしからぬと言って郵貯をなくしてしまおうなんという考え方というのは、なかなか容認ができません。つまり、今、預金をしている人というのは、先行きが不安だから、自分の雇用の問題あるいは福祉の問題、年金、医療、介護の問題についての不安があるので、銀行もちょっと心配だ、証券はなお心配だ、不動産投資も心配だ、では、当面、安い金利だけれども、しようがない、うちに置いておくよりも安全だから郵便局に預けようという金が大半だと思うんですね、小口の預金で。

 ですから、私は、まさにそういう国民生活のセーフティーネットになっている郵貯の存在というものをしっかりと踏まえて論議をすべきだろう、このように思うんです。

 それと最後に、郵貯があるから特殊法人の改革が進まないなんという逆転現象の発言があるようですが、これも含めて大臣の答弁をいただいて、私の質問を終わりたいと思います。

片山国務大臣 これは、郵貯につきましてもいろいろな議論がありまして、特に民間の金融関係の方は、郵貯があれだけの巨額の貯金を持っているんで、しかも、それがリスクマネーを回らないというか、圧迫しているというのか、しているんで、日本の金融はいびつになっている、こういう意見がありますけれども、私はその経済界の人に、大体、郵貯に行く金はリスクマネーじゃありませんよと、リスクマネーを忌避する、そういう金が集まっているという面もあるんで、そこのところは両方の見方があるでしょう、こう申し上げているわけであります。

 せんだっての懇談会でも、ある委員が、自分は地方の方をよく回るんだ、地方の方に回ると、特にお年寄りの人を中心に、大変郵便貯金をあてにして頼りにしている、これがいわばそういう地方の方の安心のもとだ、そこのところを考える必要がある、こういうお話をされましたけれども、私は、確かにそういう役割、機能を郵貯は果たしていると思います。利子は低くても、つぶれることはありませんから。

 そういうことを考えながら、しかし、二百五十兆、二百何十兆という資金が郵貯という形であるのがいいのかどうか、これもまた大変な議論があるんで、この辺は懇談会を中心に、我々もよく考えてまいりたいと思います。

 田並委員が言われましたように、総務省の立場ではありません、国民の立場で、利用者の立場で我々はこれからも対応してまいります。

田並委員 終わります。

御法川委員長 次に、玄葉光一郎君。

玄葉委員 玄葉光一郎です。小泉内閣がよい仕事をするならば、私たちは応援をしたい、そう思っています。足を引っ張るんじゃなくて、頭を引っ張る、こういう姿勢であります。

 ただ、いかんせん準備不足だなと思われるテーマが幾つかある。例えば、これから議論する国と地方の関係における改革、これも準備不足の典型の一つだ、率直に言ってそう思っている。小泉さんのこの問題に対する発言を聞いていても、すべてフォローしています。すべてフォローしても、地方分権、全体の改革の、まさに全体像とか手順とかタイムスケジュールとか全然見えない。はっきり言って準備不足だ、そう言わざるを得ない、そう思うわけです。

 きょうは、交付税の問題とか国庫支出金の問題、税源移譲の問題あるいは国と地方の役割分担、できれば、技術的なことはいいですから、骨太の話をアドリブでしたいと思っているんですが、ただ、その前に幾つか確認だけをしたい、そう思っています。

 一つは、きのう地方分権推進委員会が最終報告書を提出いたしました。この地方分権推進委員会というのは八条機関で、内閣のもとに置かれている審議会だというふうに理解をしています。通常出される勧告というのは、首相は明示規定がなくても尊重しなければならない、いや、尊重どころか、計画をつくって国会に提出をしなきゃいけない、こういうものだと理解をしています。

 ただ、この最終報告書は勧告じゃないという。では、どういうふうにこの最終報告書は理解をしたらいいのかということを、まず最初に確認をしたいと思います。

片山国務大臣 玄葉委員、いいことなら協力しよう、こういうお言葉がございました。ありがとうございます。

 小泉さんも、日本は、今まで前の内閣が続いて、一日でぱっと新内閣になる、ところが、新内閣になった途端に、あれをどうする、これをどうする、おまえの政策はと言われるんで、やはりこれがなかなか大変なんで、本当は準備期間というのか、そういう期間があればいいなということをせんだっても言われておりましたが、確かにそういう点はありますね。今までが前の内閣で、ある一日でぱっと新内閣になって、新内閣の後すぐ記者会見で、あれどうする、これどうする、こうする、こういうことなんで、その点は今後考えていく課題だと私も思います。

 さて、今お話しの地方分権推進委員会は、六年間いろいろ活動をやっていただきまして、昨日、最終報告をまとめて発表されました。私のところにも、おととい、諸井委員長ほか来られまして、いろいろお話し申し上げまして、私から六年間の御苦労について深く感謝を申し上げておきましたが、今回の最終報告は、勧告じゃないんですね。これまでの活動を回顧して、委員会の所感を開陳するという意味と、特に今、地方税財源をどうするかということが大きな課題になっておりますから、そういう中で委員会としての見解を示しておきたい、こういうことを言っておられましたので、勧告という形ではないわけであります。諸井さんは遺言だと言っておられましたけれども。地方分権推進委員会はこれで閉幕しますので、そういう意味で、最終的な地方分権推進委員会の思いを見解とともにおまとめになったんだろう、私はこういうふうに思っております。

 きょう、閣議でも、この最終報告は重く受けとめなければならないということを官房長官も私も発言いたしましたり、地方分権推進委員会が七月二日で終わりますから、新たなる、地方分権を中心に審議する中立的で権威ある機関を、休みなく、飽くことなく、引き続いて立ち上げるような準備を今進めております。

玄葉委員 小泉さんはやはり準備不足だという話がありましたけれども、でも本来は、総裁選挙というか首相指名選挙に出る時点で、国と地方の関係は大切なテーマだから、改革のプログラムぐらいは本当は持っていなきゃいけない。そう考えると、なれると思ってなかったのかな、そう思ってしまうわけですけれども、それはいいとして、分権推進委員会の報告書を重く受けとめなければならないという片山さんや官房長官の発言があったということであります。

 私は、この推進委員会の報告書の内容は、できばえはいいと思っています。実は、私の案にも、また私たちの案にも近い。近いからいいと言っているわけじゃありませんが、かなりの労作だ、そういうふうに評価をしたいと思っています。

 ところで、経済財政諮問会議、この経済財政諮問会議も内閣の中に置かれている。首相が議長だ。経済運営、財政運営、基本方針をそこで調査、審議する。国と地方の関係も議論している。これは首相が議長だから。例えば、地方分権推進委員会と、かなり両者違う意見がいろいろ出ている。それは会議体が違うんだから出ているかもしれない。

 この経済財政諮問会議の位置づけというか、基本的には、これは首相が議長なんで、ここで決まったことが国と地方の関係においても内閣の基本方針になるんだ、こういうふうに理解をしてよろしいですか。

    〔委員長退席、荒井(広)委員長代理着席〕

片山国務大臣 経済財政諮問会議は、名前のとおり、経済運営と財政運営の、これは中期を含む基本方針を議論して集約していこう、それから当面は、来年度の予算編成方針の大綱を、大まかな、基本的な考え方をまとめよう、こういうのが中心です。

 そこで、経済運営、財政運営のところでは、構造改革、経済の活性化を主眼にした構造改革なんですが、その中でいろいろな、例えば私どもの方でいうと、今言ったように、経済運営、財政運営、来年度の予算編成、こうありますと、どうしても今の国の予算の三本柱を議論せざるを得ないんですね、社会保障と公共事業、社会資本整備と国と地方の関係を。そういう意味で、国と地方の関係も取り上げておりまして、最終の意見は今月中ということでございますが、今、調整中です。

 これからは自立型の国と地方の関係を確立しよう。そこで、できるだけ国に対する依存度を減らすということの中で、例えば地方税を充実する、今の国庫支出金や地方交付税をその限りでは圧縮していくとか、あるいは国の関与、国の規制を縮減していく。こういうことを中心に今、議論しておりますから、これはこれで、玄葉委員が言われるように総理が議長ですから、これがそこで決まれば大きな内閣の方針になると思いますけれども、地方分権推進委員会もそうですし、今度立ち上げる審議会は第三者の、内閣そのものじゃなくて、内閣の外で、権威を持って、中立公平にいろいろな勧告というかサジェスチョンをしていただく。それの言われたことは、我々は尊重していく。

 こういうことで、機関はちょっと違いますけれども、言われていることは恐らく、似たようなことになるように我々も努力しなきゃいけませんし、新しい審議会にもそういうことを期待いたしたい、こういうふうに思っております。

玄葉委員 そうすると、結局、内閣の方針をつくるのは、ある意味で、法律に書いてあるところを読めば、当たり前かもしれませんけれども、経済財政諮問会議になってしまうということなんだろうというふうに思うのですね。

 松下さん、いらっしゃっておられますが、そうすると、私たちが基本的に評価しているこの地方分権推進委員会の最終報告書、これは勧告じゃないのですよ。重く受けとめると言っていても、ある意味では、意思表明あるいは見解、遺言という先ほどの御答弁をおかりすればそういうことでありますが、この見解とか遺言を経済財政諮問会議はどういうふうにその基本方針の中に反映をさせていくおつもりか、お尋ねをしたいと思います。

松下副大臣 経済財政諮問会議の議長が小泉総理、座長が竹中経済財政担当大臣、その中の有力メンバーに片山大臣も入っておられますし、塩川大臣も入っておられまして、大変熱のこもった議論をしております。

 最終報告がきのう出てまいりました。この六年間の活動の中で数々の成果を多く上げてこられたわけですけれども、その報告が今回出されたということでございまして、提言という形をとっております。

 諮問会議の中でも、地方の自立に関して、やはり数々の実例を引きながらいろいろな議論がなされておりますけれども、その中で、今回のこの提言というものも十分参考にしながら、これから精力的にいい答えが出るように議論がなされていく、こういうふうに思っているところであります。

玄葉委員 先ほど小泉首相の発言をすべてフォローしたと申し上げましたけれども、経済財政諮問会議の先般の基本方針素案というのですか、それももちろんフォローしました。

 私は、この地方交付税とか国庫支出金という話は、重ねて申し上げますけれども、地方分権改革の全体像の中で議論されなければ間違えてしまう、そう思っているのです。イエスかノーかで結構ですから、大臣、どうですか。

片山国務大臣 言われるとおりです。

 地方交付税自身が国と地方の関係に不可分に絡み合っている仕組みですから、全体像の中でそれだけ取り出してこれを縮減するとかなんとかというのは適当でないと私は思います。

玄葉委員 しかし、率直に言って、小泉さんの発言とか経済財政諮問会議の素案の中身を読み込んでも、全体像が見えない、タイムスケジュールも見えない、手順も見えない、私には見えない。よく読みました。読み込めますか、どうですか、大臣。

片山国務大臣 まだ成案でございませんので、素案の段階ですけれども、私は、全体像はあれでかなりイメージできる、こういうふうに思っております。ただ、後の進め方のスケジュールというのは、あれでは、それはいつ何をどうやるということまではなかなか書けないような性格の、基本方針ですから、そういうものではなかろうかと私は思いますね。

 それから、委員、諮問会議ですから、あそこで決めるのじゃないのですよ。しかし、あそこで方針を出したものを閣議で決めれば、これが政府の方針になる、経済財政の諮問会議ですから、そこだけ、ただ、これは議長が総理というかなり異例な形の諮問会議である、こういうふうにお考えいただければいいと思います。

玄葉委員 民主党は、かんかんがくがく議論しまして、大まかではあるけれども全体像、あるいは、これも大まかではあるけれども、大体のタイムスケジュールあるいは手順、こういうのを決めたのですね、一年ぐらい議論しまして。

 極めてシンプルに単純化して言うと、我々は、まず最初に国庫補助金に手をつけよう。我々中心の政権ができたら、次の年に国庫補助金に手をつけよう。これは自由党の小沢さんも党首討論でもおっしゃっていましたが、我々もといいますか、我々は、これを一括交付金にしてしまおう。

 つまりそれは、もっと言うと、前段で国と地方の役割分担の大幅な見直しがある、そこから先に手をつけないとどうしようもない。これもあえて単純化してわかりやすく言うために例を挙げると、例えば国道がある。国道の五十八号線までは国道だけれども、例えば二百五十号線とか百五十号線は地方道でいいだろう。だけれども、百五十号線とか二百五十号線に行っていた国庫補助、これは基本的に自治体にお渡しをしますから、自由にお使いください。自由にというと実は語弊はあるのですが、自由にお使いくださいということであります。

 実は、これは幾つかに区分をしようということで、しかも、どれを都道府県に、どれを市町村にということで、これも議論しました。これは簡単なようで、当たり前ですけれども、物すごい大変なことです。一年でできるとは正直思えない。だから、我々は、例えば公共事業だけは一くくりにして、実は今、法案を出したのですね、公共事業の補助金だけは、それはそれとして一括、あるいは、今度は福祉だったら福祉は一括というふうにして、順番を追ってというか、現実的に進めていこうというふうに思っているわけです。

 ちなみに、この配分ファクターというか配分基準というのは、過去五年間の、これまでの受け取った補助金、この平均額に実はしているのです。ラフなようだけれども、学者も入れてかんかんがくがく議論して、そう決めた。

 それで、四年後に、正確に言うと、五年後に住民税を税源移譲しよう。そして、片山大臣もこの委員会でおっしゃっていましたけれども、五対五にしよう。ただ、景気回復後と言わずに、税収中立で、歳入中立でやろうじゃないか、こういう基本的な案で、残った地方交付税と残った一括交付金で市町村のでこぼこは財政調整しようじゃないか。

 大まかな全体像、これを極めてシンプルに言いましたから、本当にエッセンスだけですけれども、こういうふうにつくっているわけです。その中で、地方への歳出、確かに国の財政構造改革に資する必要があるね、地方にいわば自由裁量権を与える中で、歳出すべきは歳出していこうねと、こういう全体像の中で実は議論しているわけです。

 しかし、残念ながら、そういうことが私は見えないと思っている、どうですか。松下さん、手を挙げておられる。

松下副大臣 片山大臣がお話にお答えすることが正解だと思いますけれども、お話を伺っておって、地方の自立という問題についての重要ないろいろなお話がございました。

 玄葉先生のお父さんも、またおじいちゃんも、まさにその責任として、現在の地方自治がどういうふうに進んできたかということを身をもって体験してこられたし、いわばその貴重な経験者だと思うのですね。

 やはり問題の所在するところは、国においては八十三兆円のいわゆる予算の規模がある。五十兆円しか収入がないという中で、要するに、八十三兆円のお皿を出して食べてくださいということをやってきた。地方でも、九十兆円のそういう規模がある。しかし、税収は三十五・六兆円。そして、地方債を含めて十二兆円ぐらいある。そこに、借金を抱えている国からの二十一兆円、民間機関からも入っていますけれども、入ってくる。

 こういう仕組みがずっと続いてきているという根源のところをやはり自立ということ、それから分権、どう進むべきかということを含めて、お金の問題がやはり大事なところに、根っこにきちっとあるなということは、私もこの財政諮問会議の話をずっと傍聴し、陪席しながら思っているところであります。やはりそこのところを、お互い地方の自立、それから知恵を出し合いながら元気な地方をつくっていくのに、これからどういう知恵を出し合えばいいのかというところに、それぞれがやはり知恵を出すべきではないかな、こう思っているのです。それだけ申し上げたくて立ったわけです。失礼しました。

    〔荒井(広)委員長代理退席、委員長着席〕

玄葉委員 松下副大臣、私は、その知恵というのがあると思うのですよ。あると思うのです。残念ながら私は、そこに余り、経済財政諮問会議が気づいているのかもしれないけれども、どうしても、まず地方交付税交付金、国庫支出金削減ありきという感じになってしまっているのではないかという気が私はしている。少なくとも報道ぶりからすると、私はそう思っています。

 知恵というのは、私は幾つかあると思っているのですよ。私たちが、例えば一括交付金化、これはラフに聞こえるかもしれないけれども、実は今回の分権推進委員会も、包括補助金、包括交付金という話をいよいよ持ち出しましたね。はっきり言いまして、我々の案ですよ。そういうこともいよいよ持ち出してきた。あるいは七県知事、浅野さんとか北川さんが、あるいは橋本大二郎さんがアピールされましたね。つまり、交付税の削減一律ありきというのはおかしいのではないか。私はもっともだと思うのです。国による地方への歳出の義務づけというのがそのままにされていて、つまり、地方への手足を縛っておいて、締めるだけ締めるのか。これはもっともだと私は思いますよ。

 だから、私は、地方の自由裁量の幅をまず広げてあげてから削減の話をしないと、私はこれはうまくいかないと思いますよ。私は、絶対に削減がだめだと言っているわけではないのです。このままの削減だったら私は反対しますよ。歳出の義務づけプラス国庫補助金で、おっしゃったように、八十四兆円のいわば国の税収だと。それが、国税四十九兆、地方税三十五兆だと。でも、地方税の中には、いわば交付金と補助金、負担金というのがある。この補助金、負担金のところにきちっと目をつけるということと、あと、国による歳出の義務づけというところにきちっと目をつけて知恵を出していかないと、私は間違えてしまうと思うのです。もしあれば。

松下副大臣 経済財政諮問会議の話をずっと整理しておりますと、気づくことが一つあるのです。

 これは鹿児島県の例ですけれども、谷先生はおられなくなりましたけれども、昨年、新過疎法ができました。そのときに、過疎を脱却する、いわば卒業するという町村が鹿児島に四つあったのです。全部山中先生の選挙区でした。その町長さんたちが、山中先生のところにお願いに行ったのです。山中先生は、こう言われたのです。おめでとう、君たちは自立して卒業した、立派になったと。町長さんたちは言葉を失ったのです。本当は何とか過疎にしてほしい、入れてくれということを話しに行ったのですね。山中先生は、おめでとうと言われたのです。そして、これから生きていけという話だったのですね。

 これは、全く別のところですけれども、三十人ぐらいの町長さんや村長さんが集まっているところで食事をしていた。そこにある町長さんが、これはどこの例かは何も言いませんよ、入ってきて、よかった、過疎になったと。

 だから私は、根本のところに、その補助金とか交付金とかというもののお金の流れの中に、本当に地方の自立とか、自分たちで何か知恵を出し合って何かしたいのだというところが、どこかに欠けているところが、長い間のこの仕組みの中にあったのではないかと思うのです。それを私は発言できませんけれども、陪席し、資料を整理しながら、そこのところからの脱却といいますか、知恵の出し合い、力の出し合いが必要かなということをしみじみ思っているところです。

 以上申し上げたくて……。

玄葉委員 ぜひ、あれですよ。まさにその知恵を出せる環境をつくってあげながら、国の財政構造改革に資するようなプランというふうにしないと、本当にいかぬと思います。重ねて言いますけれども、私はこのままだったら反対に回りますね。今の経済財政諮問会議の素案だったら、民主党は反対だということであります。

 時間が余りなくなってきて、まだ半分もいっていないのですけれども、ちなみに片山総務大臣、これは包括交付金、分権推進委員会がいよいよ検討だということだけれども、出してきたのですね。我々とか小沢さんの言う案に近いのですけれども、何回かこれは議論されていますけれども、どうしてだめなのですか。

片山国務大臣 私の勉強不足もあるのかもしれませんが、一括交付金のくくりを、今のお話だと公共事業だとか社会保障だとか、こうされるのでしょう。私は、そんなことなら交付税にしてしまった方が早いのですよ。第二交付税の思想ではないか、こういう感じがするので、そういうことなら、全く、いろいろな計算をして、交付税の額をふやした方がいいのではなかろうか。

 何でその負担金だとか補助金があるかといいますと、負担金は社会保障や公共事業が多いのですが、国と地方の両方の利害に関係があるものを、両方が一定のあれで金を出し合うというのが負担金なんですよ。補助金というのは、国がある行政目的の達成のために、誘導するために、奨励するためにお金を出す。だから、補助金というのは、私も何度か申し上げたことがありますけれども、できるだけ縮減した方がいいと思います。

 ただ、負担金の方は、これは残さなければいかぬのですね。そこにもいろいろな考え方があるので、私はナショナルミニマムという言葉は余り好きではありませんけれども、一定の行政目的を達する、国と地方の利害が共通することについては、国も出す、地方も出す、こういうことでやってきたわけです。

 ただ、そこで、玄葉委員御承知のように、国道は国が自分のお金と責任でやればいいのです。都道府県道は国から補助金を出さずに都道府県のお金と責任でやればいい。市町村道も同じですよ。ところが、都道府県道にも、市町村道にも補助金が出ていますよ。国道は直轄事業に負担金を取っているのですよ、都道府県から。さらに、国道の一部については都道府県に仕事をやらせて補助金を出しているのですよ。この辺は、私も整理した方がずっとわかりやすい、こう思っております。

玄葉委員 おっしゃるように、これは一つ一つの議論はすごく大変なのです。我々も、実はやったのですよ。

 例えば、負担金一つとっても、義務教育の国庫負担金というのがある。これを地方に任せようという話ですから、要は、それぞれの都道府県で、教員の給与とか教員の数とか、今まで国が決めていたけれども、決められるようにするという話なんですね。

 だから、それを一つとったって、うちの中でもかんかんがくがくあるのです。ざっくばらんに言うと、日教組の人たちとかの議論とかありますよ、はっきり言って。だけれども、そういうのを全部押し切って、いや、もう都道府県に任せよう、もう都道府県で十分できると。そういう議論を経て、実は我々はくくったわけです。

 第二交付金とどう違うかというのは、率直に言って、最初に申し上げたように、全部一遍にやってしまうと、これは現実にはできない。だから、一つずつくくっていって、大体、四区分か五区分ぐらいにして、くくってできるものからどんどん出していく。そういうふうにしなければいけないだろうというふうに思っているのです。

 これは五次勧告のときに、私はすごく心配して、懸念しているのは、国と地方の役割分担の見直しの議論を大分したのですね。大分した。少々政党の悪口になって申しわけないけれども、だけれども、推進委員会のメンバーにも何人か直接聞いたのです。あるいは、大森さんという人が見事にそのときの様子を書いているけれども、国と地方の役割分担の見直しをしようと思うと、物すごい、これは国土交通省も当然でしょう、あと、自民党、物すごい抵抗があった。抵抗があってできなかった、ここに文書もありますけれども。

 私、これは確かに大変なことだとは思うんですよ。大変なことだとは思う。だけれども、例えば、こういう役割分担の話をした。例えば、さっき道路の例を挙げたから、まさに道路の話をした。五十八号線はまだ国道だ、あとは地方道だ、そういう話をしたら、そんなのは現場を知らない素人の学者グループがつくったんだなんて言いながら、最後は、国土交通省と地方分権推進委員会、没交渉だ、直接交渉しちゃいかぬ、だめだ、そういうふうに徹底して抵抗して、結局、この話はだめになった、それで生まれたのが統合補助金でしょう、率直に言って。

 私、はっきり言いまして、統合補助金というのは改革の名に値しないと思っています。つまり、あんなのは、あくまで採択するのはやはり国ですから、箇所づけ、国はしないなんといったって、実質上採択しているんですよ。どの都道府県のどの市町村にその統合補助金を採択するか、予算づけするかというのは国が決めているんですから。それではだめなんですよ。それでは全然、陳情政治とか、いわゆる政治の構造改革に何にもつながっていない。

 だから、包括交付金の話とか一括交付金の話というのは、実は物すごい大変な話なんですよ。大変な話なのをわかって言っているんです、わかって言っている。物すごい抵抗があるのもわかっている。だけれども、これは、実は陳情政治とか政治の構造改革とか、そういうものにつながるんですね。もっと言うと、交付金化しちゃうと、将来、税源移譲したときの財政調整の財源に使える。

 だから、これから地方分権全体の改革を考えていく上では、この国庫支出金をどうするかというのが最大のポイントだと言っても過言ではない、実は私はそう思っている。

 こういう族議員の抵抗をはねのけてやってもらえませんか、片山大臣。

片山国務大臣 私は、総合補助金も、国の関与が全くなくなるわけじゃないんだけれども、まず一歩前進だと思いますね。

 それは、過渡的に一括交付金と、こういうお話をされているので、この辺は交付税との関係を整理して、だから、大変共感できる部分と、いささかどうかなというところがありますので、今後ともよく御提案は研究をさせていただいて。

 ただ、私も、地方財政の構造改革は必要だと思っておりますから、この間、経済財政諮問会議でもいろいろ話しましたし、特に、国が警察官や教職員の定数を全部決めて、財政措置もしているというのはいかがかなと思いますよ。消防だってそれに近いんだから。そういうことを見直していく必要はあると思います。

玄葉委員 本当にこれ、私も与党の経験三年だけして、あと野党なんですけれども、野党を五年やっているんですが、ある意味では野党じゃないと、確かにつくりにくい案なんですよ。だけれども、それは気軽さゆえにつくれたということではないんですね。つまり、野党だから、どうせ選挙をやっても補助金何だかんだという選挙はできないわけですよ、一般には。一般にはできない。

 だから、逆に言えば、地方分権改革というのを進めるときには、与野党の政権交代というのはやはり必要だなと率直に思う。これは一般論としてそう思っているんです。

 最後に、ちょっと、もう時間が過ぎちゃったんで、荒井聰さんに少し時間をいただいて、もう一つだけ質問したいと思うんです。

 我々のプランでいけば五年後なんだけれども、税源移譲の話をするときに、片山総務大臣はいつも景気回復後、こう言っている。この考えは今も変わらないんですか。景気回復後と、この間の本会議でもおっしゃっていた。だとしたら、いつ景気は回復するんですか。景気の回復というのは何をもって景気の回復と言っているんですか、単純なことですが。

片山国務大臣 私は、二、三年後に経済成長率が二%前後になれば景気回復だ、こう思っております。

 というのは、私は、国の財政の立場というものを考えていかなければいかぬのかな、こう思いながら今まで議論してまいりましたが、新しい審議会ができれば早速に税財源問題は議論を始めていただきますし、我々も総務省として議論を始めます。

 ただ、それでは、来年度、国債を三十兆に抑えて、今のままでいっても三兆数千億は切り込まないといかぬと塩川さんは言っておられますよね。国が二兆切り込むから、地方も一兆ぐらいつき合ってもらえぬかと。今、地方の財政計画八十九兆ですから、約九十兆だから、一%で九千億、そのくらいどうにかなりませんか、こういうことを言われておりますけれども、そういう中で、今、税源をこっちへ持ってくるというと、それで国債をふやさなきゃいけませんから。

 そういうことの中でどう考えていくかは、すぐ来年度といってもなかなか現実的ではないけれども、議論は始めますよ。議論は始める。大方の納得が得られて、よし、税源を移譲してやろうと言われるなら、もう喜んで来年度からいただきますけれども、なかなかそういうことには、今の状況は大変だな、私はこう思っておりますので、よろしくお願いします。

玄葉委員 いや、国税の穴があくということなんだと思うんですけれども。

 今回の分権推進委員会は、我々が言っているように、基本的には歳入中立でやる。そういうことだったらどうですか。

片山国務大臣 それは私も諸井さんに申し上げたんですが、一つの意見ですね、税収中立で。

 例えば、今、消費税の一定割合が交付税の中に入っていますから、その分交付税を下げて、地方消費税の実を上げるとか、あるいは国庫支出金をこれこれのものは将来的なものはやめて、これを例えば所得税から個人住民税に移すとか、そういうことは可能でございますので、そういう議論は、税源移譲じゃなくて今の中の仕組みの変更ですから、プラスの移譲じゃなくて仕組みの移譲ですから、こういうことは議論していってもいいと私は考えております。

玄葉委員 歳入中立でやるときに、結局、最大のポイントになるのは財政調整でしょう、今度は。だから、そのときに国庫支出金をきちっと交付金化か何かしておかないと、財政調整、大変ですよ、こういうことなんです。

 小泉さんのスローガンは、構造改革なくして景気回復なし、こう言っているわけですから、景気回復して国と地方の構造改革だというんじゃないわけですよね。税源移譲は構造改革の最たるものの一つだと私は思うんですけれども、そういう意味では逆ですからね。やはりここは精力的に進めながら、私も別に来年やれと言っているわけじゃないので、そこは精力的に進めてもらいたい、全体の中で議論してもらいたいというふうに思います。

 終わりますけれども、いずれにしても、現在の経済財政諮問会議とか小泉さんの発言等々を聞いていると、率直に言って、地方交付税交付金、国庫支出金削減ありきの感が否めない。全体像の中で議論をしなければならないということをもう一度申し上げて、質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

御法川委員長 次に、荒井聰君。

荒井(聰)委員 きょうはたくさんの人に来ていただきましたし、今、玄葉さんから少し時間をとられましたので、なるべく簡単にお答えいただければなと思っております。

 今、玄葉さんと松下副大臣との間で、私は、基本的に地方財政の構造の問題点とかそういうものはほとんど明らかになったと思うんですね。今むしろ問題なのは、地方財政の自立が必要だ、そういう自立意識が欠けているんではないか。そこがどのあたりに欠けているのかというと、実はこんなことを言うとあれですけれども、それを経営している地方自治体そのものに、つまり、市町村長さんそのものにそういう意識が最も欠けているんではないか。それはどうしてかというと、今の経理制度、会計制度、予算制度、そういうものがよく見えなくしているんではないか。

 ですから、先進的な地方自治体では既に導入されているところもありますけれども、企業会計的な予算制度というものを早期に導入して、何が自立のために必要なのか、自分たちの自主的な財源はどうなっているんだろうか、そこを喚起する必要があると思うんですけれども、片山大臣、いかがでしょうか。

片山国務大臣 今、荒井委員が言われましたような御指摘は、実は前から私も聞いておりますけれども、しかし、地方公共団体の会計を即民間と同じような会計にするのは私個人はいかがかなと、一律に導入することは。ただ、民間的な手法を入れるのはよろしゅうございますし、例えば荒井委員、まさに釈迦に説法でしょうが、地方公営企業は企業会計とほとんど同じ方式で今やっているわけでありますし、今、私どもの方で地方団体にお勧めしておりますのは、地方団体の財政状況を住民にわかりやすく開示するやり方としてバランスシートをつくったらどうかということを言っております。全都道府県ではそれを作成するか作成寸前に至っておりまして、市町村も三割ぐらいがやってもいいよ、こういうお話がありますので、そういうことを別の意味で奨励しようと思っております。

荒井(聰)委員 ありがとうございます。

 私は、できるところから民間の知恵というかそういうものをどんどん地方自治体でも取り入れていく、そういう指導をぜひしていただきたいと思うのです。

 ところで、小泉政権の最大の政策テーマというのは、国債を三十兆円に抑える、それから、約二十兆円弱でしょうか、銀行が抱えている債務を償却していくということが一番大きな公約だと思うのですけれども、これはいずれも回り回ると、最後は地域経済に全部影響を与えてくるのですね。

 私は北海道におりましたから、拓殖銀行というわずか一つの銀行が倒産しただけで、多分数兆円だと思うのですけれども、その債務を償却しただけにすぎないのだろうと思うのですけれども、それでも北海道の経済に与えた影響というのは物すごく大きいわけです。回り回っていくと、伝統的な木材産業でありますとかそういうものがつぶれていく、そうすると、市町村の中で主企業である木材産業がつぶれると雇用に響いてくる、結局、雇用問題を抱えた市町村長さんが一番あっぷあっぷしていく、そういう状況になっていくわけですね。

 したがって、一刻も早く、地域の雇用をどういうふうに改善していくのか、そのための吸収をどうやっていくのかという、それは、産業政策として新しい産業をつくる、そのことも必要です。しかし、それは少し時間がかかるのですね。そうしましたら、今すぐそういうものの雇用が吸収できるような政策というものを考えていかないといけないということだろうと思うのです。

 それで、私たちの社会の中でまだ余り注目されていないのがNPOなんですね、あるいはNGOと言ってもいいかと思います。

 きょう、農林省、来ていますか。

 イギリスで、サッチャーの時代、サッチャー政権が始まってすぐぐらい、やはり雇用問題が非常に大きくなったときに、サッチャーのとった政策の中で非常に注目する政策が、グランドワークという運動が起こりました。これは、NPOの組織を活用して地域の環境整備をしていこう、ひいては雇用もその部分で若干でも吸収しよう、そういう運動の一環なんです。

 農林省は、今のイギリスでの状況、あるいは日本でも導入したと聞いているのですけれども、そこをちょっと、簡単でいいですから、御説明願えますか。

佐藤政府参考人 グランドワーク活動についてのお尋ねでございます。

 グランドワーク活動というのは、我々が理解している限りでは、地域住民の方、行政、それからその地域に関係する企業、こういうような三者が協力をして、永続的な地域組織、これをグランドワークトラストというふうに言っておりますけれども、そういうものをつくり、その地域の身近な環境を見直しながら、みずから環境改善とか保全をしていく、そういう運動、活動というふうに認識しております。

 イギリスでは、先ほどお話がございましたように、一九八〇年の初頭に活動が始まりまして、現在の、一九九九年の状況を把握いたしますと、大体四十四の地域組織がつくられている、その地域組織が中心になりまして、地域レベルの環境改善の活動をしっかりとやっていると聞いております。イギリスでのいわゆる地域レベルでの環境改善活動というようなものに、こういうトラストが非常に重要な役割を果たしておると聞いております。

 一方、日本についての活動でございますけれども、日本の方は、ちょうど十年ほどおくれて一九九〇年にイギリスの活動を参考にしながらグランドワーク活動の取り組みが始まっております。現在では、地域の環境整備計画の策定ですとか、それから環境改善活動の実施、こういうようなものに取り組んでいると聞いております。

 また、一九九五年、平成七年でございますけれども、日本におきましては、財団法人の日本グランドワーク協会というのが、農林水産省それから環境庁、国土庁、郵政省、自治省、この五省庁共管の法人として設立をされております。このグランドワーク協会では、各地域の活動している団体に対する助言ですとか指導、それから各地域での環境改善活動についての調査とか研究、さらには英国のグランドワーク協会との交流、こういうような活動に積極的に取り組んでいるというふうに聞いております。

荒井(聰)委員 ありがとうございます。

 日本のグランドワークの運動というのはまだまだのようですので、ぜひもっと頑張ってほしいなというふうに思うのです。

 NPO全体でいきますと、アメリカは約一千万人ぐらいこれで雇用しているのですね。日本は、NPOというと、どうもボランティアで賃金はただというような感触があるのですけれども、アメリカのボランティア運動、NPO運動というのは、低賃金というか、賃金はちゃんと払う、そのかわり責任もちゃんととってもらうよ、そういうスタイルが普及していて、雇用の吸収の一つの場にもなっていると同時に、イギリスほどではないのですけれども、相当行政の補完的な機能も果たしている、そういうふうに言われております。

 私は、これから、雇用の面だけではなくて、市町村の合併でありますとか、地域のコミュニティーづくりということが大きなテーマになってきますので、教育の分野、福祉の分野あるいは環境の分野でこのNPOというものを積極的に行政が支援していく、あるいは行政組織の中に組み入れていく、そういうことが極めて大事だと思うのですけれども、大臣、いかがでしょうか。

片山国務大臣 私も、今のNPO法案、参議院の国対委員長で受け取りまして、与野党で協議をして、かなり修正させていただいたのですよ。

 そのときのいろいろな議論で、私は、NPOというのはボランティアで反対給付を求めずにみずから進んでやるんだ、こういうことでそのときいろいろ協議しましたら、いや、そうじゃないんだ、外国には、今、言われましたように、有給スタッフというのがどんどんふえて、それが雇用創出にもつながっているんだという話を野党の方からも聞き、経団連がまた、ぜひ通してくれと私のところに、経団連が。

 それが、今、委員が言われたようなことを含めて、大変大きな効用があると、こういう話でございますので、私はこの点、今、私の県にもNPO法人が相当できておりますけれども、見ていますと、なるほどなと思うところがありますので、今後ともそういう意味での雇用創出的な効果をNPOに期待いたしたいと思いますし、私どもの方では交付税でNPOの支援の財政措置を、額の細かいことは知りませんけれども、いたしておりますので、今後ともそういうことで対応してまいるつもりでございます。

荒井(聰)委員 そのほかに、これから市町村合併がどんどん起こらざるを得ないのだと思うのですね。そのときに、身近な行政と思われている市町村がちょっと離れてしまう。

 あるいは、江戸時代からずっと日本の特色であった村落共同体的な、伝統的なコミュニティーというものは日本にもあったわけですけれども、それがどんどん崩壊していって、特に都会では極端な形でほとんどなくて、隣の人は何をする人ぞという感じになってしまっている。それがさまざまな形の犯罪につながっていく。本当は、隣の人が何をしているかということがよくわかれば、これはよく気をつけておかないといけないなという意識が働いて、この間の池田小学校のあんな事件などは未然に防げたのではないだろうか。私は、もう一度こういう地域のコミュニティーの再構成ということを考えていくべきではないだろうか。

 もともと日本のコミュニティー、伝統的なコミュニティーというのは、調べてみますと、そこが、庄屋さんたちが特定郵便局長の組織に移っていったり、あるいは水係の組織が土地改良区の組織に移っていったりということで、ともすると、政治的に少し利用され過ぎてしまって変質をしてしまったのかなと。あるいは町内会なんか、特定の政党の何か選挙運動をしているみたいな感じのところもあったりして、そういうところからむしろ地域コミュニティーが壊されていったのではないだろうか。

 再構築するためには、そのあたりも考慮しながら、NPOという新しい枠組みをも考えながらやっていくことが必要なのではないだろうかというふうに思いますが、大臣、御所見いかがでしょうか。

遠藤(和)副大臣 市町村合併が進むと、役場が遠くなって地域コミュニティーが崩壊するのではないかという心配をされる方が多いのですね。これは本当は逆でして、地域のコミュニティーを大切にする、そして、地域のコミュニティーに対する行政サービスを一層拡充するために財政力を大きくする、スケールメリットをつくるために市町村合併を推進するのだ、こういうことだと思うのですね。

 今お話がありました、NPOに対するお話ですけれども、日本の社会は、自助とそれから共助、公助という仕組みで考えていかなければいけないのですけれども、自助と公助の部分は今まであったわけですが、共助ですね、そういう部分が欠けていたのではないかと私は思います。それがまさにコミュニティーの話でありますし、NPOの世界ではないかと思うのですね。そこの部分を強くしていくことによって、地域の住民に対するサービスを、第二公務員のような形で提供することが可能であろう、このようなことを考えております。

 また、私どもの所管をいたしております郵政官署ですね、これをぜひ地域のコミュニティーの場として御利用いただきたいということで、郵政官署で地方自治体の事務が取り扱えるような法案を提案しているのですけれども、まだこの委員会でも採決をしていただけないような状態になっておりまして、できるだけ早く採決をしていただきまして、地域のコミュニティーの場を現実につくっていただきたい、心から要請をするものでございます。

荒井(聰)委員 今、質問した以外のことも答えていただきましたようですけれども、冒頭グランドワークの話をしました。グランドワークというのは、企業と地域に住んでいる人と行政体がパートナーシップを組んで何かしよう、そして、その中から地域をマネージしていく人材を育てよう、そういう機能を随分イギリスでは果たしたようであります。これはまさしく地域のコミュニティーづくりの原型なのではないだろうかというふうにも私は思いますので、そのあたり、ぜひ総務省でも研究をされて、地域コミュニティーづくりというものに努力を払っていただきたいと思うのです。

 ところで、NPOの運動の中に、大きな運動としてイベントとか祭りというのがよく一つの結果として出てくるのですね。札幌でも先週土曜日、日曜日によさこいソーランというお祭りが行われました。これはこの十年間で日本最大のお祭りになったと思います。たった一人の大学生が始めて、今NPOの組織として組織化されて、そこが運動をしているのですけれども、ところが、こういうNPO的な運動をしていくと必ず反対する人も出てくるみたいで、昨年は爆弾騒ぎ、手製の爆弾が破裂しまして一人の学生が重傷を負いました。ことしはNPOのホームページに爆破予告というのがたくさん出まして、それに振り回されていた。昨年の経緯があったものですから、ことしは北海道警察が物々しい警備をいたしまして、聞きましたら、延べ一千人ぐらいの警備をしていたということでございまして、そのおかげでそういう爆弾騒ぎみたいなものはなかったわけなのです。

 このごろ、ホームページを使ったり、あるいはプリペイド方式の電話を使っての犯罪というものが随分ふえているように思います。警察庁に、今、IT絡みの犯罪という状況はどういうことになっているか、ちょっと御説明願えますでしょうか。

黒澤政府参考人 インターネットの急速な普及に伴いまして、ハイテク犯罪の検挙状況でございますが、増加傾向にございます。特にネットワーク利用犯罪が大変急増いたしておる傾向にございまして、平成十二年におきましては四百八十四件の検挙を見ておるところでございます。これを一年前と比べますと、ほぼ倍増の状況にございます。

 警察といたしましては、またこのほかに犯罪には至らないものも含めまして各種の相談を受けておるところでございますけれども、平成十二年には一万一千余の相談を受けておりまして、これまた前年と比べますと、四倍近くまで急増をいたしておるところでございます。

 委員御指摘のように、IT絡みのこういったハイテク犯罪が大変急増しておる、そういった中で、私どもといたしましても、各種の施策を推進いたしておるところでございます。

 犯罪につきましては、当然、検挙、取り締まり、厳正に捜査を行っておるところでございます。それから、犯罪にはならない、いわば有害な情報、こういったものにつきましても、プロバイダーでありますとか、あるいは関係機関と連携をいたしまして、もろもろの対策の推進を行っておるところでございます。

 今後とも安全なネットワーク社会を実現していくため、関係機関、関係業界と連携しつつ、違法・有害な情報の対策を強化してまいる所存でございます。

荒井(聰)委員 IT絡みの犯罪というのは非常に簡単なのですね。そして、罪を犯しているというか重大な犯罪を犯しているという意識が非常に薄いのだと思うのです。ところが、電話一本、あるいはホームページにひょいと書き込むだけで、札幌のお祭りの場合には、数万人の人を会場から出さざるを得なかった。恐らく、それに要する費用だとか、あるいは警官の、警察の努力というのは大変なものだったと思うのですね。したがって、新しい事態に対応した予防のIT技術、そういうものを研究開発していく必要があると思うのですけれども、総務省、いかがでしょうか。

小坂副大臣 荒井委員の御指摘のとおり、インターネットの普及で、今警察庁の方から話がありましたように、犯罪が構成されるような情報や青少年に有害な情報がはんらんをしている。これに基づく犯罪も現実のものとなっている、こういうことから、今、委員が御指摘になりましたように、この新しい技術に対応する、それを予防する方の技術も推進すべきだ、こういう御指摘のとおりに、例えば不正アクセスに関しては、不正アクセスの発信源を追及する技術を開発するとか、あるいは情報セキュリティーの確保に必要なセキュリティー基盤の技術研究を進め、あるいはその中間に立っているプロバイダーによる違法情報、有害情報に対する自主規制のガイドラインを設定したり、そういった面で、私どもも努力をさせていただいております。

 また、Eコマースというようなものもこれから頻繁に、より一層拡大してくると思いますので、そういった意味で、著作権の保護、確かな流通のための認証制度あるいは電子透かしのようなものを利用したコンテンツの不正利用の探知技術だとか、こういった技術の開発にも努めておりまして、いわゆるインターネットの影の部分を極力少なくするように、なお一層の努力を重ねてまいる決意でございます。

荒井(聰)委員 きょうは警備局長さんにも来ていただいています。せっかくなので、ちょっとお尋ねしたいのです。

 来年、ワールドカップがありますね。ワールドカップでは、世界じゅうでフーリガンという、僕らには余りよくわからないのですけれども、相当ひどい問題が発生するのだということが言われていて、来年の警備対策というのは大変なのではないかと思うのですね。これと、IT絡みで、簡単にホームページに書き込んだり、電話一本でという、そういう事態が起きたときには、どんな状態になるのかというのは想像ができないくらいのことだと思うのです。

 私は片山総務大臣にお願いしたいのですけれども、恐らくこのためには、特別交付税の措置とか、そういうものも見ていかないとできないのではないかなというふうに思います。このあたり、警備局長、何か来年の対策ということを御検討しておられるでしょうか。

漆間政府参考人 来年のワールドカップ対策に関しまして、基本的には、三十二カ国が参加する、そのうち日本と韓国とフランスは出るというのはわかっていますが、そのほかにどこが出てくるかというのはまだわかりませんし、具体的にどうするかというのは、またいろいろなこれからの詰めの問題があると思うのです。

 一般論として申し上げれば、基本的には、ワールドカップサッカー大会というのは国際的なスポーツの祭典でありますから、まず原則論としては、やはり国内外から来る観客が楽しめる、そういうような対策を講じていかなければいかぬというふうに思っています。

 ただ、他方、観客の中には、すべての観客ではありませんが、前回のフランス大会で見られましたように、フーリガンというのが競技場周辺で暴動等を行うというようなこともあるわけでありまして、そういうようなフーリガン対策というのも十分考えておかなきゃいかぬということで、今、関係の機関あるいは各国の関係機関とも情報交換をしながら、具体的な対策を考えたいと思っています。

 それを踏まえて、ITの関連で、何らかの形でホームページ等への書き込みとかいろいろな問題が起こるという可能性もないわけではありませんので、その辺も含めまして、今後、具体的な対策を立てていきたいと考えております。

荒井(聰)委員 質問時間がなくなったのですけれども、最後に片山総務大臣に。

 結局、行政の最大のテーマというのは、地域をどうやって活性化するか、地域を支えていく人をどうやってつくっていくか、そういうことだと思うのですね。そのためには、今度法律をつくられましたけれども、行政評価とか情報公開とかということが大変重要になると思います。情報公開に関しては既に地方の方がはるかに進んでいるのではないかというふうにも思うのですけれども、情報公開を行政評価にどう結びつけていくのか、あるいはその結果、地域の活性化にどのように結びつけていくのか、それらについて御所見を賜って、私の質問を終わりたいと思います。

片山国務大臣 おかげさまで政策評価制度がスタートいたしまして、法案も間もなく成立させていただけるだろう、私、こう思っております。いよいよ政策評価制度を根づかせていきたい、こう思っております。

 この制度は、基本的には、国民に対する説明責任を明らかにする、意思決定の過程を明らかにする、こういうことがありますので、情報公開制度と結びつけていかなければならないと思いますし、特に、評価結果等の情報の公表を各省庁、行政機関に義務づけておりますから、これができるだけ国民にわかりやすい形で公表されることを期待しておりますし、我々の方も調整をする、あるいは全体の進行管理をする役所としてそういうことを徹底してまいりたい、こう思っております。

荒井(聰)委員 ありがとうございました。

御法川委員長 次に、黄川田徹君。

黄川田委員 自由党の黄川田徹であります。

 政府の経済財政諮問会議は、六月下旬にまとめる経済財政運営の基本方針の具体案を最近公表しておるところであります。それによりますと、国と地方の関係について、均衡ある発展から地域間の競争による活性化へと基本理念を根本的に転換し、国庫補助負担金は国が特に必要なものに限定し、地方交付税の見直しとともに地方税の充実を図り、かつ、法人事業税の外形標準課税を早期に導入するなどとしております。

 私は、去る六月十二日、地方自治法等の改正案に対する本会議での質問におきまして、国と地方の税財源の再配分に関して、地方交付税の減額問題、国の事業補助金や負担金を原則として廃止し、その分の財源を地方に移譲することなどを総務大臣にお尋ねいたしました。

 したがって、ここで同じ質問の繰り返しはやめますが、諮問会議は基本方針の具体案の詰めの段階にあり、地方の自立、活性化を柱の一つに掲げておりますけれども、当初案から微妙な後退が見受けられると聞いております。例えば、地方債の元利償還金の一部を地方交付税で補てんする制度がありますが、これも見直しの時期が消えるなど、まだまだ流動的な面が多いと思われます。

 そこで、国と地方の役割分担、これに係る部分は、現段階では概略どのようなものでしょうか、総務大臣にお伺いいたします。

片山国務大臣 今、黄川田議員お話しのように、現在、素案を出しまして最終調整中でございまして、今月中にはまとまる、こういうことでございます。

 この案によれば、今後の国と地方の関係につきましては、自立した地方が潜在力を発揮して、互いに競争していく中で経済社会の活力を引き出すべきである、こういう観点から、地方に対します国の関与を見直すとともに、国に依存しなくても自立し得る自治体をつくるために、市町村の再編等による自治体の行財政基盤の拡充が必要である、こういうことを基本的な姿勢にしております。

 私も、地方の自立に向けた構造改革が必要であるという点は共通する、こういうふうに言っておりますが、余り個性ある地域の発展、地域間の競争による活性化ばかりでは、それはこれからそういうことを志向していくということは結構だけれども、これまでの均衡ある発展を全く捨て去るというのもいかがかな、均衡ある発展の上に個性ある発展、それによって地域間の競争で活力を引き出す、こういうことはいいけれどもということを申し上げております。

 また、市町村の再編による自治体の行財政基盤の充実、これはそれでいいのだけれども、今回の合併は強制的、画一的、押しつけ的なものではない、これはあくまでも関係の自治体、市町村の自主的な合併である、我々はそれを誘導する、支援する、啓蒙する、こういう立場であるということを、私も経済財政諮問会議で申し上げているところであります。

黄川田委員 大臣から御答弁をいただきましたけれども、私も共通するところが本当にありますので、よろしくお願いいたします。

 昨年四月、地方分権一括法が施行されまして、国と地方は対等な関係になったわけであります。本格的な地方分権時代を迎えて、自己責任原則に基づく地方公共団体の意思決定がなされるためには、地方自治の根幹をなす地方議会の活性化、そしてまた住民参加の積極的な拡大が必要不可欠であります。真の地方自治は住民の意思と責任に基づいて、主体的に形成されるべきものでありまして、住民自治のさらなる充実が求められるわけであります。

 地方の自立、活性化を掲げ、諮問会議の基本方針案は所得税の一部を住民税に振りかえるなど、国から地方への税財源の移譲の検討を進めております。また、昨日は、地方分権推進委員会から提出された最終報告もこれに触れられておるところであります。税財源の地方への移譲がなされてこそ、真の地方分権は達成されるものと私は考えます。

 先ほど玄葉委員からもお話がありましたけれども、総務大臣は、これまで税源移譲は景気が回復してからと主張してこられました。今回、諮問会議で税源移譲問題の検討に踏み込んだのは、評価に値すると私は思っております。しかし、最近、財務省の次官が税源の地方移譲に否定的発言をするなど、政府内の意見もまだまだまとまっていないような感じを受けるわけであります。

 そこで、諮問会議の基本方針案における地方交付税の簡素化や地方税の充実など、地方財政に係る制度の抜本改革について、その趣旨はどのようなものか、重ねて総務大臣にお伺いいたします。

片山国務大臣 諮問会議の素案、原案では、地方財政制度につきましては、地方に関する国の関与や国庫補助負担金を限定、縮小して、地方がみずからの選択と財源で効果的に施策ができるようにしたい、こういうことを書いております。

 それは結構でございますが、地方交付税はできるだけ客観的かつ単純な基準で交付税を決定するような見直しをしてほしい、それから、国と地方の税源配分を見直して、そのあり方を検討して、地方税を充実、確保し、地方の基本的な財源を地方がみずから賄えるようにしてほしい、こういうことを言っております。

 私は、地方交付税算定の簡素化は必要である、また事業費補正や段階補正も、この委員会でもいろいろ議論が出ましたけれども、そういうものは見直していく。しかし、現実には、そういうことの中で簡素合理化をしていきますけれども、基本的には、何度も言いますけれども、地方の歳出の七割は国によってある程度コントロールされているので、そこはちゃんと見直してほしい。それから、国と地方の財源配分の見直しでは弱いので、税源移譲ということをはっきり打ち出してくれ、これは強く言っております。

 そうすることが受益と負担の関係を明らかにするし、現在の地方の収入と支出の乖離を、税の方は六、四で、やる方は三分の二を地方がやっているのです。四割しか税はないのだけれども、仕事の方は三分の二やっているのです。国は六割の税をとって、仕事の方は三分の一ですからね。この乖離を埋めているのが地方交付税と国庫補助金なので、まず地方税の充実、地方税源の充実、それには税源移譲、こういうことを強く申し上げているわけでありまして、これはまだ現在、財務省は別のお考えのようですから、調整中でございまして、先ほど松下副大臣が言いましたように、諮問会議でも大変、私と財務大臣が論争している最中でございます。

黄川田委員 ぜひとも財務省に負けずに、大臣の総務省としての、地方分権のためのリーダーシップをとっていただきたいと思っております。

 それでは、ここで視点を変えて、地方自治の構造改革について考えてみたいと思います。

 今まで、地方分権の推進の観点から、経済財政諮問会議の地方改革など国の立場から考えてまいりました。しかしながら、自立した国と地方の関係を確立していくためには、立場を変えて地方から問題点を掘り下げていく必要があります。特に、地方が抱える負の側面をしっかりと見定めておかないといけないと思っております。そうしなければ、市町村合併もうまくいかないわけであります。企業同士の合併と同様、市町村合併も互いに相手の経営実態をきちんと理解しておかないと、順調に話が進まないと思います。

 そこで、地域住民に密着した課題でありますが、三点ほどちょっと指摘していきたいと思います。

 最初に、公営ギャンブル事業についてであります。

 報道によりますと、平成十一年度の競馬、競輪、競艇、オートレースの四事業の投票券発売による売り上げは、合計三兆六千億円で、ピーク時の平成三年度に比べ約三分の二に落ち込んでおります。自治体への繰り入れは売上高同様、平成三年度を境に急減しております。平成十一年度の繰り入れ実績をピーク時と比べると、競艇は五分の一強、競輪で六分の一、競馬は七分の一、オートレースは二百八十四億円から十二億円に大幅に減少している現状にあります。もはや公営ギャンブル事業は過去のように打ち出の小づちではなくなり、赤字団体が続出しておるのが現状です。

 実は、私の地元の岩手県競馬組合は、この四月、九州の佐賀、荒尾の両競馬と馬券の相互販売を開始いたしましたけれども、売上目標に達していないのであります。撤退やむなしとの自治体もあるやに耳にしておりますけれども、各競技の施行自治体数は最近どのような状況でありましょうか。また、公営ギャンブルの不振の原因はどこにあると考えられますか。総務省の見解をお願いいたします。

香山政府参考人 公営競技の施行団体数についてのお尋ねでございますけれども、平成三年度当時は、地方競馬六十九、競輪二百五十五、オートレース八、競艇百七十三、合計五百五団体ございましたけれども、現在では、地方競馬六十九、競輪百二十九、オートレース八、競艇百七十六、合計で三百八十二団体となっております。全体として百二十三団体減少しておりますが、減少が一番大きいのは競輪関係でございます。

 公営競技につきましては、近年、全般的に売り上げが落ち込んでおるわけでございますけれども、景気の低迷、レジャーの多様化等が主な原因ではないかと考えておる次第でございます。

黄川田委員 関連しましてお尋ねいたします。

 今までは、公営競技の収益からかなりの額が自治体への繰入金になっていたと思います。繰入金の最近の実態はいかがでしょうか。また、公営競技がお荷物になり逆に自治体の負担となり、維持するために地方が財政支出をしておるのではないかと心配しておりますが、いかがでしょうか。これらに対する総務省としての対応をお伺いいたします。

香山政府参考人 公営競技からの繰り入れのお尋ねでございますけれども、ピーク時の平成三年度では約三千六百五十億円ほどございましたけれども、最近の決算、平成十一年度でございますけれども、約七百六十億円、ピーク時の二割程度にとどまっておりまして、これは、普通会計の歳入総額に占める比率も、平成三年の当時〇・四%でございましたけれども、現在は〇・一%に落ちておるというような状況でございます。

 一方で、今度は逆に普通会計から公営競技の方に赤字補てん的な繰り出し、これは、平成三年の当時にはもちろんなかったわけでございますけれども、平成十一年度でいいますと、競馬の場合で三団体、約二十七億円、競輪で五団体、約二十億円となっておりまして、本来地方財政の収入を得る目的の公営競技に対しまして、逆の繰り出しをしなくてはならないという大変厳しい状況にあると私どもは考えております。

 総務省といたしましては、こういう状況を踏まえまして、各団体に対しまして経営改善計画の策定を強く求めておりまして、施設改善、ファンサービスあるいは開催経費の縮減、こういったことにつきまして経営の合理化を徹底していただくように強く指導をさせていただいておるところでございます。

黄川田委員 全般的な見直しをぜひとも強く指導していただきたいと思います、もちろん自主的に地方団体がやらなければいけないことでありますけれども。

 次に、第三セクターの経営問題に移りたいと思います。

 最近の民間信用調査機関の資料によりますと、債務超過の第三セクターの数は、三十二都道府県で百八団体、債務超過に近い団体は三十九にも及んでおります。全国にある三セクの数は、平成十一年一月時点で八千四百強であり、バブル期に急増し、経営見通しの甘さが経営悪化を招いております。また、三セクは自治体幹部の天下り先にもなり、経営悪化に拍車をかけていると言われております。昨年一年間で破綻処理の方法が固まった三セクは、三十二社と過去最高になりました。ことしになって二月に宮崎市の大規模リゾート施設、シーガイアの運営会社が倒産いたしました。負債総額は二千七百億円強と、三セク会社では過去最大で、総合保養地域整備法、いわゆるリゾート法の適用第一号として鳴り物入りでスタートしたわけでありました。

 一般に第三セクターは、自治体による情報公開が徹底しておらず、民間企業では当たり前の経営分析ができていない場合があります。事実上自治体の隠れ借金でありますが、経営実態が明らかにされていないものが多く、借金の全体像がつかみ切れていないという状況にあります。旧自治省は、平成十一年五月に第三セクターに関する指針をもって一応指導しておるようでありますけれども、国や自治体は、いたずらに延命は避けて、整理検討の基準を設けて積極的に対処すべきであると私は考えますけれども、総務省の見解はいかがでしょうか。自治体の三セク問題についての基本的な認識をお伺いいたします。

遠藤(和)副大臣 第三セクターの経営状況ですけれども、お尋ねのとおり、特に大型のリゾート施設等を中心にいたしまして、バブルの崩壊後、大変に経営状況が悪化している、これは事実でございます。それで、こういうふうな経営悪化の状況の兆候が初期に見られたにもかかわらず、問題を先送りいたしまして、状態をさらに悪化している傾向が見られる、こういうことがございましたものですから、平成十一年五月、お尋ねのとおり、地方団体に対しまして第三セクターに関する指針を通知したわけです。

 この通知の中に、大まかに三つポイントがございまして、第一は、まず第三セクターの経営状態を定期的に点検、評価していくことが大切だ。二番目は、その結果を議会並びに住民に公表してよく説明する、明らかにする、こういうことが大切。それから三番目は、問題を先送りしないで、深刻な経営状態のところにあっては、事業の存廃を含めてきちっと対処すべきである、こういうふうな指針を出したわけでございまして、この指針の考え方を今後も徹底いたしまして、適切な対処が行われるように地方自治体に指導してまいりたいと思っております。

黄川田委員 それでは、三番目に移ります。

 自治体病院はつぶれないと、安心していられたのは過去の話になりつつあります。医療費抑制政策などで、民間も含めた病院経営が悪化する中、都道府県や市町村などが持つ自治体病院に民間の経営コンサルタントを入れる動きが広がっております。多額の借入金などで病院事業を支えてきた自治体も、最近の財政事情の悪化で、病院を聖域扱いできなくなってきたのであります。病院経営にふなれな戸惑いもあり、コンサルに委託すればそれで済む、そういう時代ではなくなってきているのであります。

 自治体病院は全国に平成十一年末で約千ありますが、旧自治省によりますと、平成十一年度決算で経常損失を生じた病院は五七%にも達しており、自治体病院の半数以上が赤字経営を強いられております。また、平成十年の旧厚生省の調査によりますと、自治体病院の約六一%が赤字経営で、医療法人の二六%を大幅に上回っているとのデータもあります。僻地医療や救急医療などの不採算部門を抱えているとはいえ、これらは、過疎化対策上重要な課題であり、自治体病院の経営の難しさ、厳しさの一因にもなっているわけであります。

 そこで、自治体病院の最近の経営課題は何であるか、また、自治体はその課題解決にどう対処しようとしているのか、総務省の見解はいかがでしょうか。

香山政府参考人 ただいま御指摘にございましたように、病院につきましては、十一年度の決算で経常損失が総額一千億を超えるというような大変厳しい状況にございます。

 地域医療の確保というのを公立病院が責任を持っておるわけでございますけれども、地域における医療ニーズに照らしてみまして、病院の役割あるいは診療科目、病床規模、こういったことについて十分な吟味がなされておるかどうか、あるいは、他の医療機関との役割分担、連携、こういったところに十分な検討がなされておるかどうか、あるいは、経営の合理化のために民間委託等を十分行っているかどうか、こういったところが現実の経営の課題であろうと思っております。

 私どもも、こういった諸点に的を絞りまして、その健全化が図られるように、各事業体に対しましていろいろ指導なり助言をさせていただいておるところでございます。

黄川田委員 これまで、公営ギャンブル、第三セクター、そして自治体病院の三例を自治体が抱えている負の側面として見てまいりました。

 自治体は足腰を強くして、間近に控えた国の構造改革に対応して対処しなければならないと思っております。そのため地方は、マクロ的な地方自治の構造改革のシナリオづくりは重要でありますが、これは当然でありますけれども、ミクロ的な地域に密着した負の遺産といいますか、そういうものに対しても地道に対処していかなければならないと思っております。それが肝要であると思っております。また、先ほどお話がありましたとおり、これは、やはり住民に対しきっちりと情報を公開することが最も大事ではないかと思っております。国にあっても特段の取り組みをお願いいたしたいと思います。これは要望であります。

 それでは、ここで視点を変えまして、地方の課題を少しく広い視野でちょっと考えてみたいと思います。

 市町村行政の広域化に対応して、一部事務組合や広域連合など、市町村の枠組みの変更を伴わない広域行政に関する、廃棄物処理や介護問題など特定の分野における事務の共同処理が既に広く行われておるところであります。一定の成果は上がっておりますけれども、責任の所在が不明確となるというようなこととか、関係団体との連絡調整に時間、労力を要し、迅速的確な意思決定を行うことができずに、事業の実施に支障を生じる場合も見受けられると言われております。

 一部事務組合は、平成十年七月で、複合事務組合を含めて二千七百七十組合で近年多少減少傾向にあるようであります。また、広域連合は、介護保険との絡みでありましょうが、平成十三年五月現在、七十四団体、七百六市町村に及んでおります。しかしながら、どちらも構造的問題として、財政上から見てみますと、事業実施に際し分担金としてもらえるものとの考えが強いわけでありまして、予算における独自での歳入の確保の意識というものが弱いのではないかというさまざまな問題があると思っております。

 一部事務組合や広域連合が既に存在するのであるから、今さら市町村合併まで進まなくてもよいのではないかとの、消極的な意見を間々町村レベルで耳にすることがあります。無論、これを弾みにして市町村合併を促進しなければならないと思いますけれども、これについての総務省の見解はいかがでしょうか。

遠藤(和)副大臣 一部事務組合や広域連合等が、ごみの処理であるとか介護保険制度の実施であるとか消防の体制を整備する、そういう意味で設立されているわけですけれども、これは一定の成果を上げているのですが、御質問にありましたとおり、責任の所在が不明確になりがちであるとか、意思決定に時間がかかり過ぎるのではないか、こういうふうな問題点があることは事実だと思います。

 したがいまして、さらに進めて市町村合併になれば、これは責任の所在が明確になりますし、意思決定も早くなります。したがって、事業を実施するスピードも速くなる。こういうことで、私どもは、やはり一部事務組合あるいは広域連合からさらに進めて、市町村合併に進む方向で地域の意見をまとめていただければありがたい、こういうことを期待しているところでございます。

黄川田委員 残り時間が少なくなってまいりましたので、通告の順序を繰り下げまして、ちょっとIT関連といいますか、そういうものについて、デジタルデバイドについてお尋ねいたしたいと思います。

 IT革命の推進に当たっては、すべての国民がITのメリットを享受できることが必要であります。一方、地域、年齢、障害、教育などさまざまな要因により、ITを利用する上での格差、いわゆるデジタルデバイドが生じることが懸念されております。このデジタルデバイドを解消することは極めて重要であると思いますので、まず、地域の問題についてお伺いいたします。

 ITは、距離と時間の制約を克服する機能を有するものでありまして、ITの活用により都市と同等あるいはそれ以上の生活、経済環境を実現することも可能と考えられまして、過疎地域等の条件が不利な地域においてこそ、都市以上に情報化の推進が重要であると思います。しかしながら、これまでのところ、地方は都市に比べておくれがちでありまして、このままでは情報化においても都市と地方の格差が広がるのではないかと危惧しております。

 そこで、都市と地方間のデジタルデバイドの解消について、総務省の基本的な考え方、そしてまたその取り組みについてお尋ねいたしたいと思います。

高原政府参考人 先生おっしゃいますように、情報通信というものは、都市であると、また地方であるとを問わず、ネットワークを広く構築することによりまして非常に大きな効用を発揮し得るという性格を有しております。

 総務省では、従来から地理的要因による情報格差、デジタルデバイドの解消に向けた施策に取り組んできておりますけれども、ことし三月にIT戦略本部で決定されましたe―Japan重点計画におきましても「デジタル・ディバイドの是正」という項目がございまして、その中で、地理的情報格差の是正が位置づけられております。ここで、過疎地、離島等の条件不利地域において、情報通信基盤の整備や情報通信技術を活用した公共サービスの充実等を推進するということになっておるわけでございます。

 このため、取り組みといたしましては、平成十三年度予算において、公共サービス高度化のための公共施設を光ファイバー等で結ぶ地域イントラネット基盤施設整備事業、あるいは移動通信用鉄塔施設の整備をします移動通信用鉄塔施設整備事業等の補助事業について、情報通信格差是正事業として公共事業関係費に組みかえまして、予算の充実を図ったところでございます。

 また、それ以外にも、CATVの施設整備の補助、あるいは、民間事業者によるインフラ整備の補助といたしまして、過疎地等における光ファイバー網やDSLの整備をより強力に推進するための超低利融資制度の拡充等を行ったところでございます。

黄川田委員 それでは最後に、バリアフリーの問題について伺います。

 我が国においては、現在、六十五歳以上のお年寄りが、国立社会保障・人口問題研究所の推計によりますと約二千百八十七万人、また、身体に障害のある方が、厚生労働省の調査によりますと約二百九十三万人おられます。高齢化は今後さらに進み、二〇一五年には国民の四人に一人が六十五歳以上の高齢者となるものと推計されておりまして、また、年齢を加える、加齢に伴う障害の発生により、障害のある方の割合もふえていくことが見込まれるわけであります。

 こうした状況において、IT革命を進めるに当たっては、お年寄りや障害のある方もITを利用できる環境を整備することが重要であります。ITは、むしろお年寄りや障害のある方の自立、社会参加を可能とする新たな手段であり、こうした方々のためにこそ活用されるべきものと思っております。

 そこで、お年寄りや障害のある方と、そうでない方との間のデジタルデバイドの解消について、総務省の考え方、取り組みをお尋ねいたします。

小坂副大臣 黄川田委員御指摘のとおり、情報通信技術の発達は、お年寄りや障害者の方々をさまざまな制約から解放し、これまで難しかった社会参加の実現に道を開くもの、このように認識をいたしておりまして、これまでも、障害者等電気通信設備アクセシビリティ指針というものを制定いたしまして使いやすい情報通信機器の指針をつくり、また情報バリアフリー関連技術の研究開発への助成を行い、また情報バリアフリー・テレワークセンター施設整備事業等の支援を行ってきているところでございます。

 これらの施策については、今後さらに、障害者等電気通信設備アクセシビリティ指針を見直しましてより多くのお年寄りや障害のある方々に対応できるように拡充をすること、それからまた、研究開発の成果をより実用化につなげるようにすることなどを考えております。

 さらに、この五月には、厚生労働省と共同でシニアネットやパソコンボランティアなどNPOの全国組織化などの支援策を取りまとめたところでございまして、これを踏まえて、今後ともさらに情報バリアフリー環境の整備を一層進めてまいりたいと存じます。

黄川田委員 時間が参りましたので、これで終わります。ありがとうございました。

御法川委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午前十一時二十三分休憩

     ――――◇―――――

    午前十一時五十四分開議

御法川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。春名直章君。

春名委員 若干寂しいわけですけれども、始めさせていただきたいと思います。

 消防職員の団結権の代償という形で、消防職員委員会がつくられました。五年目を迎えております。そこで、きょうは、その話をまずしたいと思います。

 九百二十三の消防本部すべてにこの消防職員委員会が設置をされておりますが、開催の推移はどうなっているか、九七年から二〇〇〇年までの開催の推移をまず報告していただきたいと思います。

中川政府参考人 平成九年度につきましては、九百二十三消防本部のうち七百十一本部、七七%において開催され、平成十年度は、九百十七消防本部のうち七百本部、七六・三%において開催され、平成十一年度におきましては、九百十一消防本部のうち六百五十四本部、七一・八%で消防職員委員会が開催されております。平成十二年度、二〇〇〇年度につきましては、現在集計中でございます。

春名委員 二〇〇〇年度はいつ、もうすぐわかりますか。

中川政府参考人 現在、各都道府県からの報告をもとに集計中ですが、あと二県ほどまだ報告がございませんので、今のところ、秋口ぐらいになるのではないかと思っております。

春名委員 二県ですか。あと二県来ていないわけですね。では、それを除いた数字を教えてください。

中川政府参考人 二県においての集計がまだ終わっておりませんので、全体の数値は把握しておりません。

春名委員 こだわっているのは、これは非常に大きな問題でして、要するに、団結権の代償という形で消防本部ごとに、九百二十三あったんですが今九百十一ですか十二になっていて、そこが消防職員委員会を置いて、いろいろな要求や労働条件の問題を議論して解決していこうというために五年前につくられたものなので、開催そのものがないと役に立ちませんので、その推移がどうなっているかというのが非常に大事なわけなんです。

 それで、今お話を聞いただけでも、九九年が七一%だというお話でありまして、年を追って減っております。こういう開催そのものの実態について、ILOの方には報告されておられますか。

中川政府参考人 消防の団結権問題につきましては、かねてよりILOにおいていろいろな議論があった経緯がございますので、この消防職員委員会の制度を発足後も、その状況につきましては報告をいたしておりますが、毎年報告をいたしているわけではございません。

春名委員 いや、一般論ではなくて、開催の状況の推移、これは報告していないということでよろしいですか。

中川政府参考人 消防本部のうち、幾つの消防本部において開催されているかというような詳細なデータについては、報告をいたしておりません。

春名委員 つまり、私も年次報告、二〇〇〇年の秋に出したものを見ていますけれども、そういう報告はILOにはしていないんですね。

 それで、開催されない数が年を追ってふえてきている。なぜそうなっているのかということを少し議論したいわけです。

 第一は、消防職員委員会で議題となって、実施すべきとされた事項の処理の問題があるだろうと思います。出された意見や要望については四つの類型に分けていまして、第一に、実施することが適当、第二に、諸課題を検討することが必要、第三に、実施困難、第四に、現行どおりでよいの四種類に分けて対応するということになっています。

 この実施すべきとされた意見や要望の割合がどのくらいで、そのうち、どの程度が実際に実施をされているのか、このことをお答えください。

中川政府参考人 平成九年度から十一年度までの三年間におきます消防職員委員会の総審議の件数は、一万六千三百二十九件となっております。そのうち、ただいま先生がお引きになりました、実施することが適当であるといたしておりますものが六千五百四十六件、四〇・一%、諸課題を検討する必要があるとされておりますのが五千七十六件、三一・一%、実施は困難と考えているが千八十件、六・六%、現行どおりでよいが三千四百三十九件、二一・一%となっております。

春名委員 その四割の中で、どの程度が実際に実施をされているのか、これを把握していますか。

中川政府参考人 平成十一年度について見てみますと、各消防職員委員会におきまして審議されました件数は全国で五千二十六件でございますが、そのうち千九百九十五件の案件につきまして、パーセントにいたしますと三九・七%でございますが、実施が適当であるとされ、その結果が消防長に意見として提出をされております。

 そのうち、実現をいたしたものとしましては、資格取得のための助成制度、分煙対策の実施、休憩室の設置、難燃性作業着の導入などがございますが、その千九百九十五件のうち、どの程度の件数が実施されたのかというデータについては把握をいたしておりません。

 現在取りまとめ中の平成十二年度分の調査におきましては、平成十一年度に審議されました件数のうち、実現した意見の件数も把握をすることといたしているところでございます。

春名委員 消防庁、政府は、ILOに二〇〇〇年年次報告を出していまして、今、長官からお話があったように、法の趣旨に沿った円滑な運用がされているというふうに報告して、その根拠として、審議結果という項目の中で「約四割の案件については実施が適当である」ということを報告されていて、資格取得のための助成制度等の実現がされているという報告をしているわけです。円滑によく機能しているという評価をする上での大事な指標として、このことをILOに提起しているわけです。

 したがって、こういう後追いをしているわけですから、こういう報告をする以上は、四割のうちどれぐらいが実際に実現をしたということは実際にはもうわかっているんじゃないですか。そうでなければこんな報告にはならないと思うんです。

中川政府参考人 ただいまお答えいたしましたように、実施することが適当であるとされた案件がどのような内容であるかということにつきましては、適宜、各消防本部からの報告のうち、適例と思われるものを把握いたしましてILO等には報告したところでございますが、その総体の数値等については、平成十一年度までは把握をしていないということで御了解を賜りたいと思います。

春名委員 実際には、実施すべきとされるんだけれども、ナシのつぶてになっている場合が多いというふうに私は思っているので、このことを問うているわけなんです。

 ある消防署では、地震対策として仮眠室内に設置されているロッカーを固定にしたらどうかという提案、救急機関員の健康管理上、走行距離を百キロを基準に交代してはどうかという提案等々、十一ほどの項目が実施すべきと挙げられましたが、実際実現できておりません。もちろん、これは予算を伴いますので、一年もたたないうちにすっとできるというものもあるでしょうし、そうでないものもあると思うんですね。しかし、その十一項目の中に、例えば十年度、今から三年前に出されていた水難救助の手当の支給を改善するということもいまだに何の改善もされていない、こういう事態がある。

 改めてお聞きをしますが、実施することが適当となったものについては、少なくともきちんと実現するまで手だてをとる。それはもちろん消防本部自身の努力の問題でしょう。それからそれぞれの、自治体消防ですから、そこの検討が必要なわけですが、少なくとも四割が実施可能だ、適当だというふうになって、そのことをもって消防庁自身がILOに、団結権の代償として機能しているという、ただ一つの評価じゃないけれども、そういう報告をしておられるわけだから、四割のこの実施すべきだということについて、最後まで、どこまで実現できたのか、また実現する手だてがどうなのか、これをどう実施されるのか、ここまで消防庁全体として責任を持っていくという姿勢ははっきり言って持たないと、絵にかいたもちになるというように思いますが、いかがでしょうか。

中川政府参考人 消防職員委員会を設置いたします法律改正の際に、消防庁といたしましては、各消防本部に対しまして、この委員会の取り扱い、委員会の運営等について通知をいたしております。その中の一項目といたしまして、消防長は、委員会の意見の趣旨を尊重して処置するように努めるものであるということを明確にいたしておりますので、ただいま御指摘のように、実施することが適当であるという意見が消防職員委員会から消防長に提出されました案件につきましては、当然のことながら、関係各方面とも調整をしながら実施をするのが消防長としての尊重する義務でないかと考えております。

 したがいまして、その件数をどのように把握するかは、御指摘のように、我々としても、今後できるだけその件数を把握いたしまして、実態を各消防本部に対しましても連絡して、今後の参考にするように努めてまいりたいと思います。

春名委員 第二点は、初めから議題にも取り上げられない要求が多々あるという問題なんですね。

 ある消防本部の例ですが、十九件の意見のうち六件が審議事項から冒頭から外されました。その外された意見というのは、消防力の旧基準と新基準を比較して現有の消防力を詳細に明示してほしい、新消防力基準による本市の消防予算を明らかにしてほしい、管轄外の宿泊届を廃止してほしい、重大な労災が発生したときは直ちに安全委員会を開催してほしい、こういう項目が含まれていましたが、審議そのものがされていません。

 別の消防本部では、門前払いの項目として、仮当番制を制度化し全本署で実施をする必要があるんじゃないかという提案、体力錬成の時間を一日五十分以上の時間が必要ではないかという提案、大災害による指令センターの機能不全のサポートのためセカンドセンターを建設するという提案、極めて建設的で切実な提案が冒頭から却下をされております。審議されていません。

 なぜ、こんな事態になるんでしょうか。長官、全国的にこういう傾向があるんじゃないでしょうか。どういう御認識でしょうか。

中川政府参考人 消防職員委員会の審議対象につきましては、消防組織法の定めるところによりまして、消防職員の給与、勤務時間その他の勤務条件及び厚生福利に関すること、消防職員の職務遂行上必要な被服及び装備品に関すること、及び消防の用に供する設備、機械器具その他の施設に関することの三つとされているところでございます。したがいまして、意見の中にはこの三つに該当しないものがあるということは当然予想されるわけでございますが、審議事項に該当するかどうかということについては、消防本部の事務を統括いたします消防長が判断することになるのではなかろうかと思います。

 平成十一年度のデータから見てみますと、消防職員委員会に提出されました意見の五千五百五十七件のうち五百三十一件が審議対象外とされておりまして、率にいたしますと九・六%となっております。

 この中身をどう判断するか、なかなか難しいところではございますけれども、我々といたしましては、法の趣旨に沿った円滑な運用がなされているのではないかというようには考えているところでございます。

春名委員 今、該当しないものは当然消防長の判断であるんだという話なんですが、その点、当局の政策判断にかかわる問題だからそれは審議の対象になじまないという話があると思うんですね。

 ただ、私が今掲げた具体的な話、職員委員会で取り上げるべき項目というのは今、三つに分かれている、その一つ目が消防職員の給与、勤務時間その他の勤務条件及び厚生福利に関する意見というふうになっているわけです。先ほど私が申し上げた例では、体力錬成の時間の問題だとか仮当番制の制度化の問題、あるいは、もっと大きな問題で言えば、新消防力基準ができて、これによって職場の労働条件は大きく変わる可能性があるわけでして、こういう問題は、まさに三つ全体にかかわるし、とりわけ一つ目の消防職員の給与や勤務時間、勤務条件そのものにかかわる非常に大切で切実な審議の内容ではないかと私は思うんですね。それがなぜ対象にされないのでしょうか。私は不思議でしようがないわけです。

 今申し上げたような項目は当然審議の対象にしてしかるべきではないでしょうか。長官どう思いますか。

中川政府参考人 この消防職員委員会の審議の対象とならなかった案件の具体的事例については、我々といたしましては把握をいたしておりませんので、ただいま御指摘のようなものがあったかどうかについては申し上げることができませんが、一般的に申し上げて、この法律の審議対象事項については、具体的な意見をどのように判断するかということについて、今までも具体例をお示しする中で各消防機関において判断がなされているものと我々としては理解いたしております。

春名委員 一点聞いておきますが、各地で今、行革もありまして、例えば特殊勤務手当、そういうものが削減されるという傾向があるわけです。それは、削減した後に問題が出たら議論をしなさい、委員会の審議にしたらどうかという話になっているようですが、削減される前に本当にいいのかどうかを審議するというのが筋ではないでしょうか。団結権にかわる、それを代償するものとして位置づけているのであれば、そういう決定的な労働条件にかかわるような問題、具体的な話ですが、特殊勤務手当については当然議論の対象だということで御検討いただいていいでしょうか。

中川政府参考人 ただいまお示しの事例が消防職員の給与等の勤務条件に関することというこの法律の規定に該当するかどうかということでございますが、基本的にはそれは、それぞれの意見を受けた消防職員委員会を所管いたします消防長が判断するということではなかろうかと思っております。

春名委員 ことし六月十二日、第八十九回ILOの総会が開かれ、基準適用委員会がありました。日本政府がそこで冒頭陳述をされております。そこの中で、消防職員委員会は消防職員の勤務条件改善のために十分機能している、堂々とそういう冒頭発言をされておられます。十分機能しているということが本当であれば、こういう問題をあいまいにすることはできないはずです。そして、十分機能しているということの証左として名古屋の消防局の例を挙げられて、年に三回ほど議論もして、なかなか詰まった議論をされているということが報告をされています。

 しかし、私がきょう申し上げたように、はっきり言って、三割の消防職員委員会はもう既に開催すらされていないのです。そして、開催すらされていないその理由の一つに、審議されて実施すべきだというところまでなったけれども、まだ実現そのものが数多くされていない、ナシのつぶてになっている例、しかも、取り上げられるべき項目が実際には取り上げられていない例、こういうことが続いてきたものですから、委員会を開いても形式的ではないか、こういう方向になっているのです。はっきりそういう傾向があらわれているのではないかと私は思うのです。それが三割ほど委員会も開かれていない要因になっていると考えざるを得ないのですね。ところが、きょうお話しの中では十分機能しておられるというふうに言われているので、何を根拠に言われているのかよくわからない。

 したがって、お願いでありますけれども、要望でありますけれども、今私が申し上げたような開かれていない理由、その開かれていない理由の中身としての、実施が適当だと言っているけれども、実際どれぐらい実施される努力をされて実施されているのか、その割合、それから、もともと審議の対象の外に付されている、こういう事実をリアルにつかんで、それらをトータルにILOにも報告しなければ現実の姿を映し出すことにならないと思うのですね、一面的になってしまう。

 先ほど長官が把握していない面があるとおっしゃられたので、改めて私は、九九年にも同じ質問をしておりますけれども、二年間たって一層形骸化が激しいようですので、そのリアルな実態をしっかりと把握する、調査するということをお約束いただきたいと思いますが、長官、いかがでしょうか。

中川政府参考人 消防職員委員会の運営状況についての調査は毎年やっておりますが、特に、ただいまお答えをいたしておりますように、平成十二年度におきましては、その実態をできるだけ把握できるような調査内容とし、かつ、集計もそのようにいたしたいと考えております。

 ただいま御指摘のような点も含めまして、調査の内容、集計等に改善すべきことがあれば、今後とも検討してまいりたいと思います。

春名委員 改善すべきことがあるのです。あるから言っているので、改めて要望しておきます。

 続いて、新しい消防力基準の問題について聞きます。

 昨年の一月二十日、この新しい消防力基準に基づいて各施設などの充足率が明らかになりました。それによりますと、消防ポンプ自動車の整備台数は、九六年当時二万三千百六十五台だったものが二〇〇〇年には二万二千三百八十六台へと全国で減っているにもかかわらず、充足率が九〇・一%から九五・三%に引き上がっております。同時に、はしご自動車は、千三百二十二台だったのが千二百六十一台へと減っているのに、充足率は六五・九%から八一・八%へと大きくはね上がっています。

 どう見ても納得できません。これで住民の安全が守れるのでしょうか。充足率は、率としては上がったからオーケーだ、そうはならないと私は思いますが、いかがでしょうか。

中川政府参考人 ただいま御指摘のように、消防力の基準につきまして、平成十二年一月に改正をいたしました。その結果、消防ポンプ自動車あるいははしご自動車につきましては、基準の数値が変更になったために、その基礎となります全国の算定数自体も数値が減少をいたしております。

 また、実際の自動車の数、いわゆる整備数でございますが、ただいま御引用になりましたこれまでの平成八年度の調査におきましてはこの整備数に予備車両を含めていたのに対しまして、平成十二年度の実態調査では、予備車両を非常用消防自動車と位置づけることによりましてこの整備車両の数から除外をしたことにより、整備数が減少いたしました。その結果、基準数、整備数とも減少したにもかかわらず、いわゆる整備率が上昇する結果になったものでございます。

春名委員 逆に言いますと、要するに、予備車を入れていますと、台数はふえるわけだが充足率はもっと上がってしまうということになるのですね。

 しかも、危惧するのは、従来は、最小限度必要な基準という扱いに旧消防力基準はなっていました。最小限度のラインだとなっていたわけです。ところが、今度の新消防力基準は指針であるというふうに変わりました。これは、市町村が適正な規模の消防力を整備するに当たって指針となるものである、こういう位置づけにして、いわばこれを指針にして、上もあれば下もあるということだと思うのですが、弾力的にやるべしという位置づけに変わったわけです。私は、本当にこれで住民の安全が守れるのだろうかと不安です。

 同時に、国の対応は、この必要最小限な基準という位置づけにしたのと指針という位置づけに変えたのとでは、従来とどのように変わるのか、この点をお伺いしたいと思います。

中川政府参考人 平成十二年一月、消防力の基準を最低限の基準から指針に改正いたしました。その理由は、地方分権を積極的に推進する観点から、地域の消防力につきましても、地域の実情に対応して当該市町村みずからが判断して決定することが適当であるという考え方によるものでございます。

 この考え方に基づきまして、新しい基準は、近年の都市構造の変化や消防需要の変化を勘案して改正し、市町村が実情に応じた消防力の整備を進める指針として位置づけたものでございます。市町村におきましては、この指針を参考にいたしまして、それぞれの地域事情に対応したより適切な消防力の整備を進めるべきものである、このように考えております。

 単に基準から指針となったということによりまして、その具体的な意味が大きく変わっているというものではございません。

春名委員 容易に想像されることなんですが、今でも定員適正化計画等々の中で、旧来の最低限の基準そのものすら実現できてこなかったということは、もう御存じのとおりです。消防力基準の、消防力の充足率の問題は、長年議論されてまいりました。そうであるのに、今回指針となって下限ではなくなった。当然、これに向けて引き上げていこうというインセンティブが働かなくなって、不十分な事態が放置されるということにつながる危険性を非常に私は感じています。

 どう考えても、充足率を大いに上げていこうということに水を差すことにならないのでしょうか。その心配があるんですが、いかがお考えですか。

中川政府参考人 現在の消防体制は、御承知のように、市町村消防の原則によりまして、市町村がみずから考え、みずから判断の上、みずから整備を行う、こういう前提に立っているものでございまして、それを前提としながら、消防力の基準ということにおいて、その消防の実態をそれぞれの地方公共団体が十分承知をして整備を進める、そういう仕組みに今なっているものでございます。

 また、近年の地方分権の傾向等も踏まえて考えますれば、基準を、最低限のものというよりも一つの目安、指針としてお示しして、独自の判断、それぞれの地域の事情を前提とした判断によって整備が行われることの方がより望ましい、こういう趣旨に従って現在進めているものでございまして、このような変更になったがゆえに整備が進んでいかない、鈍化するというようなことはないものと考えております。

春名委員 どうも十分納得がいかないわけですが、それならば、少なくともここまでは整備しようじゃないかというその基準を、そのものとして位置づけは変えずに置いていたらどうでしょうか。それぞれのところにお任せしますと、実態からいって今でも不十分な体制の中で苦労しているわけなんで、それが最小限でなくなるということになると、結果としてますますその方向が弱まってしまう、充足率を高める方向が弱まるというのは非常にあり得ることだと私は思うんですね。

 消防庁、政府がそうおっしゃる背景には、通常考えられる災害に対しておおむね最小限度必要な水準にまで旧消防力基準で整備された、こういう御認識があるからです。消防力、消防水利の基準というあの逐条問答の本等々の中にもそういう記述が出てきますので、大体もう整備されたという認識があるということだと思うんですね。

 確かに、消防職員数の充足率を見ると、全国的には今七六・五%、全国一つで見ればそれぐらいだ。しかし、問題は、御承知のとおり、各自治体ごとに見れば事態は全然違うんですよね。例えば奈良市の消防本部ですが、新基準でも職員数の充足率が五八%にしかならない。これは大変だ、世界遺産や文化財をたくさん有している奈良の消防がこれでいいのかという苦慮が、その報道が新聞にもされています。オール・ジャパンで見ればおおむね大丈夫と考えていても、個々の消防本部の実際を見ると、非常にアンバランスがあり、不安がある。そこに目をやらなければならないと思います。

 私は、自治体消防ですので、国からあれやれ、これやれと口出しをせよというふうに単純には言いませんけれども、ただ、少なくとも自分が住んでいる自治体の消防施設と職員の充足率が住民にわかるようにして、不安な問題、そのことについてきちっと住民にも説明をする、そういう必要があろうかと思うんですね。そうすることが、設備を整備したり、職員を配置することにもつながっていくと私は考えます。

 そこで、消防庁長官及び大臣にもお伺いしておきたいと思うんですが、全国の消防本部ごとの職員の充足率、消防施設の充足率、その現状、これを積極的に公開していただいて、消防庁自身はそれをホームページや消防白書等に掲載もし、住民の不安と期待にもこたえていく、最小限こういう情報公開はきちっとやっていただくということを強く要望しておきたいと思います。いかがでしょうか。

中川政府参考人 消防の仕事は、市町村の責任において実施されているものでございます。市町村が必要な消防施設、人員を整備するに当たりましては、消防力の基準を指針としながら、それぞれの地域の実情を勘案して、当該市町村が水準を決定すべきものでございます。

 その決定に当たりましては、当該市町村の議会の意見などを聞くとともに、当該市町村の財政状況等も勘案の上、判断をすべきものでございますが、それぞれの市町村においてその現状を説明し、今後のあるべき姿をそれぞれの市町村がどのように住民に説明していくのか、それぞれの市町村の判断で行われるべきものだと考えております。

片山国務大臣 基本的には今の消防庁長官の答弁で御了解いただきたいと思いますが、情報公開時代ですから、できるだけそれぞれの市町村に情報を公開するように指導いたします。

春名委員 では、以上で終わります。

御法川委員長 次に、重野安正君。

重野委員 社会民主党・市民連合の重野です。地方分権及び市町村合併に関する基本的問題について質問をいたします。

 まず、地方分権についてでありますが、地方分権推進委員会は、昨日の最終報告をもって七年間の歴史に幕を閉じることになりました。この間の活動は、国、地方関係の改革史上、特筆されるべきものと考えております。しかし、村山内閣当時制定されました地方分権推進法第六条に定める地方税財源の充実確保、これについての全面的改革指針は提案するに至りませんでした。

 そこで聞きますが、ここに規定する地方税財源の充実確保については、今後に残された重要課題、このように考えますが、いかがでしょうか。

片山国務大臣 重野委員言われるとおりでございまして、我々は、次の大きな課題は、地方に対する税財源問題をどういうふうに議論して、充実するための方途をとるかということだと思っております。

重野委員 既に、政府におかれては、推進委員会にかわる審議機関を設けると言っておられます。これは間違いないか、確認をしたいと思います。

 また、そうした審議機関を設ける場合、法的根拠や課題についてどのように定める考えか、説明願いたいと思います。

片山国務大臣 きょうの閣議でも、昨日の地方分権推進委員会の最終報告が話題になりましたので、官房長官と私が発言しまして、切れ目なく後の機関を立ち上げたい、これは総理の指示でもございますので、そういうことにいたしますと。それで、官房長官は、今月中に所要の政令の整備をしたいと。

 実は、政令か法律か、どっちを根拠にするかという議論はあるんですが、法律は、御承知のように国会の会期末で、まだ私どもの法案はたくさん残っておりますので、ひとつ郵政官署法も早期なる成立、通過をお願いいたしたいと思いますけれども、そういうことなものですから、なかなか法案というわけにいかぬ。そうすると、次の臨時国会か何かでしょう。そうなると、間は途切れますからね。そこで、政令で、総合規制改革会議と同じように、政令を根拠につくらせていただこう。それで、官房長官と相談しまして、先ほども言いましたように、官房長官から発言してもらったんですが、今月中に所要の政令の整備をいたしたいと。

 それで、テーマは地方税財源問題が中心ですけれども、それ以外に、地方分権も、一括推進法が通り、施行になりましたけれども、まだまだあれで十分なわけじゃありませんし、それから合併など市町村の体制をどうするのか、あるいはその上で都道府県の体制をどうするのか、大きな問題がございますから、そういうこともあわせて、私は課題になるのかなと。

 新委員会が立ち上がりましたら、そこで御議論賜らないといけませんけれども、我々の期待はそういうことでございまして、一番大きなのは地方税財源問題だ、こういうふうに我々は考えております。

重野委員 政令と法令、法律上は違うのですね。事情がそういう事情であるということを前提にして、したがって、その重みにおいてはいささかも変わるものではない、そこら辺、確認しておきたいと思います。

 次に、地方分権推進法で定めた課題などが文字どおり実行されなかった責任、これは一つやはり大きいものがあると思うのですね、推進委員会の責任ではないと思うし。したがって、期限を定め、課題を明確にし、その推進方法も明らかにした地方分権推進法、これは非常に特異なものであったと思うのですが、それほどに重きをなす地方分権推進法であるにもかかわらず、完全に実行されなかった、このことは、私は非常に重大だと思うのです。これは政治責任の所在というものを当然明らかにしなければならぬ、このように思うのですが、見解を伺います。

遠藤(和)副大臣 地方分権推進法は大変大きな役割を果たしていただいたと思います。特に、機関委任事務の廃止とか国の関与の抜本的な見直し等がありまして、大きく進んだと思います。

 残念ながら、七月二日でこの法律は失効するわけでございますが、昨日、総理の方に地方分権推進委員会の方から最終報告がなされましたけれども、その中でも、この地方分権推進委員会が提言した勧告等について、きちっとそれが実施されているかどうかフォローアップをしていく、こういうことも今後の議題として明示されております。

 さらに進んで、今最大に残されたものは地方の税財源の確保でございます。これがなければ、幾ら事務が地方の方に移管されても、財源がなければ仕事ができないわけでございまして、そちらの方向の議論を、今、片山大臣がお話しになりましたような政令で生まれます次の審議機関、ここできちっと議論をしていただく。このようにして、一体となりまして、今後も地方分権法で書かれた中身のものが具体化していくように取り組んでいきたい、このように思っているところでございます。

重野委員 今、副大臣の発言にありましたように、今後とも切れることなく、この勧告の、推進法の趣旨というものを踏まえて、ぜひ実行していただきたいことを要望しておきます。

 次に、旧大蔵省を初めとする各省庁の抵抗、そして、地方分権に対する橋本、森内閣と続く歴代内閣の政治的な関心が下がった、ここに、私はこれに対する政治的責任というものがあるというふうに認識をいたします。そういう認識に立つならば、今後の審議機関設置について十分納得のいく体制を整備するのは当然でありますし、このことを強く要請しておきたいと思います。

 市町村合併問題について質問をいたしますが、昨年末の閣議決定によって、市町村合併は与党、内閣の方針とされました。ここに至る歴史的経過から見ますと、この問題はやはり受けとめ方が間違っているのではないかというふうな感じがいたします。間違っているというよりも、主客転倒させられているのではないかという感じがするのであります。

 というのも、地方分権の推進に当たって、分権の受け皿論として市町村合併はとらない、これが、推進委員会はもとより当時の自治省の共通認識であり、内閣もまた、これについては何ら条件をつけていなかったと私は理解をしております。それがいつの間にか分権の受け皿、こういうふうにされたのではないかと私は思うのでありますが、これについての見解を伺います。

片山国務大臣 私はかねがね、二十一世紀は地方の時代、本当の名実ともに地方分権の時代にしなければいかぬ、その場合の主役は都道府県でなくて基礎的自治体である市町村だ、そのためには市町村に元気になってもらわなければいかぬ、元気になるためには今の規模、能力で十分だろうか、こういうことを考えておりまして、特に今後は、福祉だとか、保健だとか、環境だとか、都市計画だとか、もうこれは市町村が独自で判断して処理できるような体制にせなければいかぬと思いますね。

 そこで、権限移譲をさらにやろう、事務移譲をさらにやろうといたしましても、また、財源を国から地方へ、こう言いましても、今の市町村で大丈夫ですか、それだけの能力がありますか、きちっと処理できますかということを本当に各省に言われるのですよ。だから、その場合に、いや、大丈夫ですと言うほどの自信が我々もまだないので、ぜひこの際、自主的な市町村合併を推進して、市町村の規模、能力を拡充して、行財政基盤を強化して、ああ、この市町村ならやってもらっても大丈夫だ、こういうことにする必要があるのではなかろうか、私はこう思っております。

 今三千二百二十四ありますから、与党も言われるし、三分の一ぐらいというのが一つの目標かな、こう思っておりまして、内閣にも支援本部をつくり、都道府県にも今幾つか支援本部をつくってもらっておりまして、また、経済界を中心に合併を推進する国民協議会というものも立ち上げていただきまして、これも、都道府県にもできるだけ同じようなものをお考え賜って、国民運動として市町村合併を進めたい。それは、あくまでも地方の時代をつくるために、その主役は市町村であるので、市町村に頑張ってもらおう、こういうことでございます。

 私はそういう考え方で来ておりますので、今、重野議員、主客転倒でいつの間にやら方針、考え方が変わったのではないかと。私は大臣にしていただいたのは十二月五日からでございますけれども、私はそれは、前から旧自治省はそういう方針ではなかったろうか、こう思っております。

重野委員 この問題は、今後、市町村合併の成り行きというものをそういう視点でずっと見続けてまいりたい、いろいろな角度から議論をしていきたいと思います。

 昨年末の行革大綱に示されております基本的考え方を要約しますと、一つは自治体の行財政基盤の強化、それから国、地方の財政赤字への対応、この二つに尽きるのではないかと私なりに理解をいたします。しかし、よく考えてみますと、ここに示されておりますいわば合併の考え方、考え方というよりむしろ手段ではないのかな、こういうふうな感じがするわけであります。

 総務省の示す合併指針にいたしましても、行革大綱にいたしましても、肝心の自治体像が示されているのか、こういうふうな疑問を持つわけです。それがないままに手段が目的化しているのではないか。盛んに数値目標が示されるわけでありますが、そういうことだけがやたらと目について、それが政府のいわゆる市町村合併構想の本質なのか、こういうふうな見方が私なりにされるわけでありますが、そこら辺についてどのように考えていますか。

遠藤(和)副大臣 市町村合併というのは、国がそれを強制するという話ではないわけでございまして、また、財政上の需要からそうあるべきだというふうなことではなくて、住民に一番身近な基礎的自治体は市町村でございますが、ここは、住民のニーズをどのように適切に反映し、そして住民の皆さんに安心をしていただける住民サービス、行政サービスができるかということを真剣に考えるところだと思いますね。そうすると、今の状態では非常に基礎体力が弱い。したがって、やりたい仕事も十分にできない。あるいは、専門的な職員を採用するにしても、そういう人件費の余分な費用は出てこない。したがって、一人二人の職員の方が、三つも四つも五つも仕事をしなければいけない。そうすると、住民の専門的、多角的なニーズに十分にこたえることができないというのが実際問題としてあると思いますね。

 したがいまして、市町村の自発的な意思で、より住民の皆さんのためのサービスを充実し、かつ、専門的ないろいろなニーズにもこたえていくにはどうすればいいか。こうすると、やはり市町村合併を推進して大きな体力にしてということになりますと、職員の数も、専門的な分野あるいは専門的な組織というものもつくれるわけでございますから、そうした部分で、地元の一番近い市町村の方からの気持ちとして、市町村合併を推進していただきたい。

 こういうことで、自発的な市町村の合併ということを特に今回は要望しているところでございまして、全く国の意思でどうのこうのということではなくて、住民のためのサービスをさらに充実していくためには市町村合併は避けて通れない課題である、こういうふうな方向で市町村合併に取り組んでいただきたい、こう思っているところでございます。

重野委員 話を聞いておると、いや、あくまでもそれは基礎的自治体の考え方というものが第一義的ですよ、こういうふうな話ですが、それはそうでしょう。しかし、今回のこの広域合併にかける国の意気込みは、先ほど片山大臣の具体的な説明にもありましたように、そういう意思はやはり非常に強いのですね。僕は、それはそれとしてあるのだろうと。

 それで、今度のいわゆる大合併構想が行財政基盤の強化、そういう点が一つはある。そのことを、本当にそうなるのだろうかという点の疑問がまだ私にはあります。確かに、複数の市町村が一つになれば、財政規模は拡大をいたします。そういう財政規模拡大というスケールメリット、これは否定するものではありませんが、スケールメリットがあれば、今度その裏にはスケールデメリットがある、これも否定できない。これはもうコインの裏表みたいなものですね。こういうスケールデメリットについて、政府は、考えられるデータ、これもやはり同時に示す必要があるのじゃないか。そうしないと、結局、そんなはずではなかった、こういう結果になる可能性がなきにしもあらずなんですね。その点について、どういうふうに考えていますか。

遠藤(和)副大臣 スケールメリットもあればデメリットもある、こういうふうなお話でありましたが、私どもはメリットの方が大きいと思っています。デメリットとして考えられるのは、よくお聞きするのは、やはり役場が遠くなるとか、住民に近いサービスがちょっと不便になるのではないかとか、コミュニティーが崩れてしまうのではないか、そういった御心配をいただいているわけでございます。

 そういうふうな心配を除去するということは大変大切なことでございまして、そのためにも、地域でいろいろなことを相談していただける協議会を充実していくとか、現在ございます役場の支所だとかそうしたものもより活発に住民サービスを提供していただくとか、ただいま御審議をいただいております、郵政官署で地方自治体の事務を取り扱えるように窓口としてやっていただく、あるいは地域のコミュニティーセンターにもなっていただく、こういうようなことによりましてそのデメリットを解消する。一体的に地域の皆さんに心配のないようなものにしていくということが大事ではないのかな、こういうふうに考えておるところでございます。

重野委員 次に、地方分権を担う行財政基盤の問題、特に人的基盤について伺いますが、とかく、中央省庁の職員は優秀で自治体職員は云々、こういうふうな話がちらちらと耳に入ってくるわけです。あるいは、そういうふうな見方が底流に依然あるように思われます。

 私は、そうではなくて、むしろ自治体職員は、地域に暮らして自治行政を担う、地方自治体の職員の現実に根差した創意性、自発性、そういうものがすぐれたものがあると認識するのでありますが、大臣の自治体の職員観をお聞かせいただければ。

片山国務大臣 確かにちょっと前までは、国の職員が一番優秀で、その次が都道府県の職員で、市町村の職員がそういう意味では一番下だというような固定観念があったと私は思いますね。

 しかし、最近はそうでもないのですね。私も県庁その他におったことがありますけれども、いやいや、びっくりするような優秀な人が最近は入ってきたりしておりますし、また研修の機会が飛躍的にふえていますし、それから、このIT時代ですから、情報が地方におっても考え方一つ、工夫一つで瞬時にとれるようになっておりますし、私は、本当に、一遍ちゃんとレベルを調べてみたらいいと思っているのですよ、どういう方法があるのかよくわかりませんけれども。

 そういう意味では決しておくれていないので、今までは中央の役所が情報を独占しておったのですよ。都道府県がその次で、市町村は情報がなかったのですね。ところが、今のこのIT時代は本当に距離と時間がなくなるので、地方でも瞬時にいろいろな情報がとれるし、知的鍛錬の機会もふえておりますから、私は、ぜひそういう意味で市町村にも頑張ってもらいたい、こう思います。

 ただ、問題は、市町村が小さいと職員の数が小さいのですよ。そうすると、一人が何役もやるのですよ。一人が三役も四役もやっていると、専門家になれません。そういう意味で、規模が大きくなれば職員のグロスがふえますから、総体がふえますから、私は、そういう中で専門性も養われるし、また同時に、広くなるだけゼネラル的な能力もふえてくるので、そういう意味でもやはり、人的基盤の養成、確保という意味では、合併の方がそういうことを促進する効用がある、こういうふうに思っておるわけであります。

重野委員 今考えている地方分権というものを本当に内容を豊富化していくためには、地方自治体の職員の持ち場というのは非常に大きいわけで、地方それから中央省庁の職員が同じ目線で、同じ土俵の中で、本当に四つに組んでやるという点を常に念頭に置いて進めていただきたい。

 一九五〇年代の合併によって現在の市町村数は決まっていったというふうに受けとめていますが、その後、五月雨的に合併はあったとはいえ、大規模合併に至らなかった。それは那辺にその理由があるのだろうか、お聞かせください。

遠藤(和)副大臣 いわゆる昭和の大合併のときは大変合併が進んだわけですけれども、これは当時、非常に小さな市町村がたくさんございましたものですから、危機的な財政状況であったということが一つあります。それが背景であった。それから、新制中学校というものが設置される、その管理をする単位として、やはりもっと人口の多い市町村というものが考えられた、それを目標に合併をしたというふうな背景があったと思います。

 これは、昭和二十八年議員立法として成立されました町村合併促進法に基づきまして、人口が大体八千人くらい、八千人以下の小規模町村については、それを解消することを目的にいたしまして合併をかなり強制的に進めた、こういうふうなものでございまして、大きな成果があったと思います。

 しかし、昭和三十六年に新市町村建設促進法が一部失効いたしましたことによりまして終止符が打たれまして、その後、昭和四十年に制定されて、昭和五十年及び六十年に改正、延長された市町村合併特例法におきましては、特に市町村合併を推進するという立場ではなくて、市町村合併を推進する際に障害になる事項はできるだけ除去するという観点から、必要最小限の規定を置いた改正にしたわけでございまして、この間の市町村合併の進展状況は必ずしも大きいものではございません。

 今度の市町村合併は……

御法川委員長 できるだけ簡単に。

遠藤(和)副大臣 はい。できれば平成の大合併になりたいという気持ちで進めておりまして、強制をするものではありませんけれども、一つの目標といたしましては、市町村合併特例法の期限が切れます平成十七年までに、できれば三千二百二十四が千ぐらいになるようになればありがたいことである、こういうことで進めていることでございます。

重野委員 時間が迫ってまいりましたが、今度の合併もいろいろなパターンがあると思うのです。現実にこれが行われるかどうかは別としまして、調べてみますと、合併パターンのうちで面積が最大で人口密度が最小なのは、北海道の遠別町、天塩町、幌延町、中川町、豊富町の合併パターン。これは、面積で香川県よりも広くなるのですね、二千六百三十四平方キロ、人口は一万八千九百六十九、こういうパターン。私が住んでおる大分県の大野郡野津町で六町二村が合併しますと、面積で県面積の約一三%に当たって七百四十二平方キロ、人口で五万五千四百九十七人、県人口比わずかに四%。こういう非常にさまざまな形があるわけです。

 非常に面積が広くなりますから、いわゆる住民サービスというものが変化してくる、こういうことは当然懸念されるわけですね。救急車が駆けつけ、病院に到着するまで、全国平均時間は二十七・一分となっておりますが、果たしてそんなことができるのかな、こういうことが心配されますし、消防車が行って、出動から放水開始まで約六分以内、こういうふうになっているのですが、それが実現できるのかな。そういうふうな広域合併による行政サービスの問題が非常に懸念をされる。そこら辺はどういうふうに受けとめ、どういうふうにされるおつもりか、お聞かせください。

御法川委員長 芳山自治行政局長、簡単にお願いします。

芳山政府参考人 各県の合併パターンは、それぞれの県の状況に応じて設定されております。今御指摘がありました北海道については、面積は大きい、人口は少ないという状況もございますが、その設定に当たって、お聞きしますと、一時間当たりで到達できるおおむね四十キロの範囲内で市町村の組み合わせを考える。それを一つに考えて、次は、その中で人口規模の形として中核市を考える、特例市を考える、四万、二万の体制整備の形を考える。それからステップの三つとして、日常生活圏を考える。そういう設定の中で、北海道の九十七のパターンができ上がっておるわけです。

 そういうことで、もちろん、そのパターンの中で、市町村の組み合わせで合併の具体的な動きが詰まっていくわけでございますが、御指摘にありましたように、広域化に伴いサービスが低下しないように、それぞれの自治体でもって対応していく、また地域協議会でもって御議論してもらうということになろうかと思います。

重野委員 ありがとうございました。終わります。

御法川委員長 次回は、来る十九日火曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時五十六分散会




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