衆議院

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第13号 平成13年11月29日(木曜日)

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平成十三年十一月二十九日(木曜日)

    午後一時二十一分開議

 出席委員

   委員長代理理事 川崎 二郎君

   理事 荒井 広幸君 理事 渡海紀三朗君

   理事 平林 鴻三君 理事 田並 胤明君

   理事 松崎 公昭君 理事 若松 謙維君

   理事 黄川田 徹君

      赤城 徳彦君    浅野 勝人君

      伊藤信太郎君    河野 太郎君

      左藤  章君    佐田玄一郎君

      坂井 隆憲君    新藤 義孝君

      滝   実君    谷  洋一君

      野中 広務君    宮路 和明君

      山本 公一君   吉田六左エ門君

      伊藤 忠治君    大出  彰君

      金子善次郎君    玄葉光一郎君

      武正 公一君    中沢 健次君

      中村 哲治君    三井 辨雄君

      山村  健君    高木 陽介君

      山名 靖英君    佐藤 公治君

      春名 直章君    矢島 恒夫君

      重野 安正君    横光 克彦君

      三村 申吾君

    …………………………………

   総務大臣         片山虎之助君

   総務副大臣        遠藤 和良君

   総務大臣政務官      新藤 義孝君

   総務大臣政務官      山名 靖英君

   国土交通大臣政務官    田中 和徳君

   政府参考人

   (総務省大臣官房長)   團  宏明君

   政府参考人

   (総務省自治行政局長)  芳山 達郎君

   政府参考人

   (総務省自治行政局公務員

   部長)          板倉 敏和君

   政府参考人

   (総務省自治財政局長)  香山 充弘君

   政府参考人

   (林野庁長官)      加藤 鐵夫君

   総務委員会専門員     大久保 晄君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月二十九日

 辞任         補欠選任

  荒井  聰君     三井 辨雄君

同日

 辞任         補欠選任

  三井 辨雄君     荒井  聰君

    ―――――――――――――

十一月二十九日

 元日赤救護看護婦に対する慰労給付金増額に関する請願(熊谷市雄君紹介)(第八四三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 地方自治法等の一部を改正する法律案(内閣提出、第百五十一回国会閣法第六四号)




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     ――――◇―――――

川崎委員長代理 これより会議を開きます。

 委員長の指名により、私が委員長の職務を行います。

 第百五十一回国会、内閣提出、地方自治法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として総務省大臣官房長團宏明君、総務省自治行政局長芳山達郎君、総務省自治行政局公務員部長板倉敏和君、総務省自治財政局長香山充弘君及び林野庁長官加藤鐵夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

川崎委員長代理 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

川崎委員長代理 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。平林鴻三君。

平林委員 地方自治法の改正につきまして、若干の質疑をいたします。

 地方自治法という法律は、各委員御承知のところでありますが、日本国憲法と同日に施行されたという、長い歴史を持つ法律であります。今回改正の案の対象になっております住民訴訟の規定というのも、いわば占領時代の日本の国会において制定をされた地方自治法以来の条文であると理解をいたしております。やはり、時代の推移に応じて地方自治の諸問題も次々と生起をいたしてまいりますし、それに対応した改正が行われるということは当然のことであると思います。住民訴訟の問題につきましても、各種の問題が生じて、たしか平成六年には弁護士費用に関する改正の規定が追加されたというようなことも記憶にあるわけでございます。

 私の長い人生といいますか生活の間には、住民訴訟に一度だけめぐり会ったことがございます。これはもう三十年ほど前のことでありまして、知事に対する行為の差しとめの請求がございました。ただし、これはちょっと、今日行われているようなケースと違いまして、一人の一風変わった人が訴訟を起こして、弁護士も使わずに自分で訴訟をするというような変わったものでありまして、そのときには私は県庁の課長をしておりましたけれども、途中でその方が訴訟を取り下げたということで、いわば大した問題にならずに済んだということでございました。

 ところが、最近の住民訴訟というのは、非常に時間がかかる、そして最高裁まで争うというようなことがしばしばあるようでございます。

 今、長い公務員人生を送ったと言いましたが、その間の私の上司あるいは同僚あるいは部下には、住民訴訟の被告になって非常に苦労した経験を持った人が何人もおります。

 私はその詳しい事情は承知いたしておりませんけれども、二、三申し上げますと、例えば、ある市の市長さんでありますが、市長をおやめになった後に亡くなられた。けれども、相続人がこの訴訟の係属を引き続いてなさっておる。御高齢であります、しかも御婦人であります。相続者にとっては大変な心労、苦労であるとお察しをしておるというような面がございます。

 また、同僚の一人は、市長をいたしております間の事業につきまして住民訴訟の損害賠償の請求を起こされた。次の選挙で落選をされた。落選後、非常に生活の苦しい中で、引き続き被告として訴訟をやっておられる、こういうような気の毒な例もございます。

 また、ある人は、この間もひょっこり会って、どうだいと言って聞きましたが、ある市の助役をしておるときに、たまたま損害賠償請求の訴訟を起こされた。助役の期間は比較的短くて、別の場所に住所を移して、別の仕事についておられる。非常に遠い場所であります。にもかかわらず、在任中の事件につきまして、今でも被告として訴訟に当たらなければならない。資料一つ、もとの勤め先からちょうだいして、裁判所に証拠として認めてもらうように出すにしても、大変な手間がかかって閉口しておるというようなことを言っておられました。

 これは、私の身辺のよく知っておる人の問題でありますし、それについてとやかく申すものではありませんけれども、実態としていろいろなことを聞くにつけて、訴訟というものをやっていくのは、被告の側にとってもなかなか大変なことなんだなということを実際に感じております。

 そこで、このたびの住民訴訟に関する地方自治法の改正でございますが、制度の改正につきましては、今までの間にいろいろな議論があって、その議論の一つの結論として、政府側から住民訴訟制度の改正を提案された。私は、これを是とするものでございますけれども、制度改正を行うについては、政府としては、地方自治関係の事項には、ほとんどと言ってもいいぐらい、地方制度調査会という、これももう五十数年続いております政府の諮問機関がございます。重要事項はすべて地方制度調査会の審議を経た後において成案を得て国会に提案される、こういうのが例でございます。

 そこで、自治行政局長にお尋ねをしたいのでありますけれども、この改正法案の立案に当たって、地方制度調査会においてどのような検討が行われたか、その検討経過を説明していただきたい。――そうですか。それでは、副大臣、お願いします。

遠藤(和)副大臣 では、私からお答えをさせていただきます。

 先生お尋ねのとおり、地方制度調査会は、内閣府に設置されている地方制度に関する重要事項を調査審議する内閣総理大臣の諮問機関でございます。

 この調査会は、地方制度に関する学識経験者、国会議員あるいは地方六団体の代表が委員となっているものでございまして、昭和二十七年に第一次の地方制度調査会が発足して以来、数多くの地方制度に対する重要な答申が出されてきたところでございます。

 今お尋ねの住民訴訟制度につきましては、第二十六次の地方制度調査会におきまして、自己決定、自己責任の原則を踏まえた地方分権時代の住民自治制度のあり方について審議がなされたものでございまして、今回御提案申し上げている住民訴訟制度の改正についても、審議事項の一つとされてきたところでございます。

 ところで、具体的な住民訴訟制度の改正案につきましては、この地方制度調査会の専門小委員会で議論がなされてきたわけでございますけれども、その際、執行機関を被告とすることで長や職員の政策的な判断あるいは意思決定の根拠などを明らかにすることができる場が設けられることとなりまして、これは時代の流れに即しているのではないか、あるいは、制度をさらに充実しながら、あわせて現実に弊害が生じている点について手直しをしていく、そういった基本線ででき上がっておって、大変慎重な配慮がなされているのではないかという意見がございました。

 今回御提案をしている方向で意見の集約がなされておりまして、この小委員会で他の審議事項も含めた答申案が作成されまして、平成十二年十月二十五日に総理に答申がされております。その答申を受けまして、平成十三年三月に、この自治法改正案を国会に提出させていただきました。こういう経緯でございます。

平林委員 私はさきにも申し述べましたが、非常に古い歴史のある地方制度調査会でありますが、この地方制度調査会の構成につきまして念のために伺っておきますが、地方制度調査会は、もちろん学識経験者が中心でありますけれども、そのほかに国会議員が与野党ともに参加をいたしておるはずでございます。

 現に私も二回ほど地方制度調査会の委員を命ぜられましたが、この住民訴訟の答申をされるについて、地方制度調査会における国会議員からいかなる賛否あるいは意見の表明があったか、あるいは地方制度調査会の答申決定に当たって特段の意見があったかどうかということを聞かせておいていただきたい。

芳山政府参考人 地方制度調査会の構成につきましては、今御指摘のとおりでございまして、国会議員、地方公共団体の議会の議員、地方団体の長、その他地方制度に関し学識経験がある者という構成になっております。国会議員の皆様も、当時、二十六次地方制度調査会は八名構成メンバーになっておられまして、衆議院の議員さん五名、参議院の議員さん三名というぐあいに相なっております。

 答申につきましては、最終的に全会一致ということを聞いております。

平林委員 今の自治行政局長さんのお話によりますと、国会議員が与野党参加の上でだと思いますけれども、地方制度調査会の審議に加わって、もちろん専門的な部会等には御出席でないはずでありますけれども、問題点の選び方、あるいはそれに対する結論を出す、答申をする総会には必ず御出席のはずでございます。いわばあらかじめ国会側の意見を、国会議員が参加することによって聞いておくといいますか、そういう仕掛けになっておると思うのであります。

 今日、いろいろな審議会や政府の附属機関につきましては、附属機関を整理したり、あるいは国会議員が参加するのをやめようじゃないかというような、いろいろなことがありますが、地方自治に関することは、これは私の意見を言わせていただければ、やはりあらかじめ国会議員が参加した場で政府側の検討をしていただいて、成案を得た後に国会に法案として出してもらうというのが妥当なやり方ではないかと思っております。

 今日、この地方制度調査会の存続の是非についてはさほどの議論があろうとは思いませんけれども、念のために大臣にお伺いしておきたいのでありますが、地方制度調査会は非常に意味のある重要な調査会であると思いますので、その存続をどのように考えておられるか、聞かせていただきたい。

片山国務大臣 今、平林委員からお話がございましたが、地方制度調査会は、昭和二十七年に第一次ができまして、もう大変長い歴史を持っておりまして、我が国の地方自治制度改正の重要部分はすべて地方制度調査会の建議をいただいているわけであります。御承知のように、行政改革の絡みで地方分権推進委員会ができましたり、あるいはそれを受け継いだ地方分権改革推進会議ができておりますけれども、地方制度調査会は連綿たる歴史と伝統と実績を誇っておりまして、せんだっても二十七次の地方制度調査会を発足したばかりでありまして、小泉総理から万般についての諮問もありまして、現在審議が始まっております。

 これは、昔から与野党の衆参の議員さんに代表で入っていただく、審議に加わっていただく、これが特色でございまして、そういうことをやってきておりますので、今後とも、我々は、地方制度調査会の存在を大変貴重なものと考え、その答申を尊重してまいりたい、こういうふうに思っております。

平林委員 ちょっと視点を変えて、現在の地方公共団体の構成員であります長あるいは議会あるいは職員の方たちのいわゆる不祥事件について、この際伺っておきたいと思います。

 といいますのは、住民訴訟にかかわる、かかわらず、かかわることもございましょうし、かかわらないことの方が多いと思いますけれども、新聞記事を見ておりますと、連日とは申しませんけれども、もうしばしば不祥事件が報道をされます。贈収賄の事件もありましょうし、その他の公金の不正使用の問題もありましょうし、これは、例えば一般職員に限らず、警察職員とかあるいは教職員に至るまで、いわゆる刑法犯で新聞記事をにぎわせていることがしばしばある。このことは私は非常に憂うべきことだと思っております。

 住民訴訟の有無にかかわらず、やはり地方公務員のモラルが低下するということは、これはもう地方自治にとってゆゆしいことであります。絶えず注意をしていかなければいかぬと思うのでありますが、最近の一般職の、地方公務員だけでも結構でありますが、不祥事がどのような推移を示しておるか、どのような事件が重立ったものであるかということについての説明を公務員部長にお願いしたいと思います。

板倉政府参考人 私ども、二つ調査をしております。まず、地方公共団体等における汚職事件に関する調べでございますが、それによりますと、最も新しいデータが平成十一年ということでございますので、御容赦をいただきたいと思いますけれども、地方公共団体等におきまして発覚をした収賄、横領、背任、職権乱用等の汚職事件の件数は百三十五件、団体数にいたしまして百二十一団体、関係職員数は百六十七名ということになっております。この職員数のうち、首長、長でございますね、議会の議員等の特別職の職員数は十九名ということでございます。

 次に、地方公務員の分限処分者数、懲戒処分者数及び刑事処分者数に関する調べによりますと、これにつきましても、最も新しいデータが平成十一年でございますが、刑事処分を受けた、すなわち判決等が確定をした一般職の職員数は千百七十一人となっております。このうち、道路交通法違反によるものが千八十二人と大部分でございます。傷害、暴行によるものが二十一人、公職選挙法違反によるものが十四人などとなっております。

 以上でございます。

平林委員 これもまた私の経験から申し上げるのでありますが、公務員の諸君というのは、公共の事務に当たっておるわけでありますから、とりわけ職業としての公務員モラルというものは非常に大事なものだと思っております。事件が頻発するということはまことに憂わしいことで、これをお互いに戒め合いながら地方自治を運営していくということは、私は忘れてはならないことだと思っております。お互いに戒め合って、つまらぬ誘惑に負けて一生を棒に振るようなことがないように、住民に迷惑をかけることがないようにということ、絶えず忘れずに戒め合うということが大事だと思っておるわけであります。

 特に、地方自治を扱う総務省として、あれをやれ、これをやれというわけではありませんが、総務省としても地方公務員のモラルのことについては注意を払っていただきたい、そのことをお願いいたしたいわけであります。大臣の御所見を伺っておきます。

片山国務大臣 委員のおっしゃるとおりでございまして、地方公務員が地方自治を担う、しかも地方住民全体の奉仕者でございますので、そういう意味で、公務員倫理をしっかり確立していく、服務規律を徹底していく、こういうことが必要だと思います。大部分が道路交通法違反でございますけれども、こういうこともないように、今後は十分注意してまいりたいと考えております。

平林委員 時間でありますので、終わります。

川崎委員長代理 次に、武正公一君。

武正委員 民主党の武正公一でございます。地方自治法等の一部を改正する法律案につきまして質問をさせていただきます。

 今回の地方自治法改正の中で私がやはり一番問題と感じておりますのは、いわゆる住民訴訟を二段階に、訴訟体制、被告につきまして個人から機関へといった点がやはり非常に問題であろうというふうに考えております。きょうは、それにかかわる一連の質問をさせていただきたいと思います。

 もちろん、地方六団体等からさまざまな御要望、御要請があるということは承知をしております。そういった御要望については、私は、いろいろなやり方で対応が可能であろう、その点もきょうの質問の中で明らかにしていきたい、このように考えております。

 まず、この住民訴訟という制度でございます。

 直接民主主義制度であろう、あるいはまた、大臣からは、戦後GHQの指導で導入されている、しかし本家本元アメリカではもう余りないよというようなお話もございます。やはりこの住民訴訟の功、プラス面、その果たしてきた役割というのは、私は大変重いものがあると。たとえそれが相手が個人であろうとも、個人であるからこそといった面もあろうかと思っておりますが、既に食糧費の訴訟、あるいは地方におきましては議員野球、あるいは空出張、やみ手当、放漫財政、具体的に言えば、また、自治省の指導を超えるような地方自治体職員の給与の高額化などにもさまざまな役割を果たしてまいりました。加えて申せば、視察旅行、高額飲食、架空接待、そして談合、談合の中でもまた官製談合といった点、さまざまな点でのプラス面があろうかと。

 特にこの住民訴訟の持つプラス面について、大臣の御所見を伺いたいと思います。

片山国務大臣 武正委員お話しのように、私も、この戦後の地方自治制度で導入された住民訴訟制度が一定の役割を果たしてきたものと思いますね。それは、確かに、そういう意味で、いろいろな意味での抑止効果もあり、いろいろなことを明らかにする効果もあったと思いますね。このところ、情報公開制度がかなり地方にも入ってまいりまして、あるいは情報提供ということを行政機関もやるようになって、また局面は変わってきたと思いますけれども、私は、プラスの評価はしなければならない、こう思っております。

 あり方として職員の個人責任というのが、どうも私自身、地方でいろいろな経験をし、中央でもしておりまして、やはり個人の行為というのはないんですね。それはやはり職務に関係した行為なんですよ、背任だ、窃盗だというのはこれはまたちょっと別ですけれども。そういうことについて、今回はこの制度を改正した方がベターだ、私はこう思っております。

武正委員 住民訴訟については、戦後のあり方について一定の評価をいただいたというふうに理解しています。これから特に、地方分権を進めていこう、これが小泉内閣での方針でもあろうと考えますし、総務大臣からもそういったさまざまな御発言がございます。であればこそ、地方自治体のチェック機能としてのこの住民訴訟は、強めればこそすれ、弱めるあるいは後退する、こういうような改革はやはりあってはならないというふうに考えるのでございますが、この点についての御所見を大臣にお伺いします。

片山国務大臣 私も委員と全く同感なんですよ。地方自治がそれだけ重要なものになる、大きな働きをするということになりますと、それだけチェック機能が発揮されなければならない、こう思っておりまして、そういう意味で、これを、単に個人の責任を問うということではなくて、機関の責任を問う、団体の機関の責任を問う、その機関と職員との関係を整理していく。

 それで、今の制度では、機関の責任を問うようになっていないんですよ。個人の責任だけ問うているんですよ。これはおかしいので、機関の責任を問うことによって個人の責任も問う、この方が制度としては筋が通る、制度としてはその方がわかりやすい、私はこういうふうに思っております。

武正委員 機関の責任を問うことはほかの仕組みでできるわけでありまして、この個人の責任を問うといったことから、先ほど話がありました機関が持つさまざまな問題点、これをただしていくといった面での個人を相手にする訴訟というものの役割がやはりあるというふうに考えるわけであります。

 例えば、官官接待などを例に挙げれば、これは、自治省さん、旧自治省さんでありますけれども、やはり地方自治体を監督する立場から、各地方自治体が一生懸命中央省庁に対して官が官に対する接待をしなければ補助金がもらえない、こんなおかしなことがまかり通っていたわけでありまして、これが是正されるというのは、旧自治省あるいは総務省としてある面応援をしてもいいんではないかというぐあいに思うわけであります。

 こういった点も含めて、この地方分権時代にあっての個人を相手にする訴訟制度、これをやはり存続すべきだと思いますが、再度御所見を伺います。

片山国務大臣 今の制度はこういうことなんで、個人を通じて機関の責任を問うているんですよ。機関の責任をまず問うべきなんですよ。首長というのは、これは執行機関のトップですよ。職員というのはその補佐機関で、機関なんですよ。まずそこの責任を問うて、それから個人の責任を問うべきなんで、私は、今の制度は全く話が逆だと思っているんですよ、個人の責任を問うてそれによって機関の責任を問おうというのは。地方自治法の制度として、いろいろな指示行為を明らかにするという意味で、今の制度を直した方がいいと私は思いますし、それは官官接待云々とはまた別の議論ですから。

 私は、官官接待がすべて悪いなんて思っておりません。相当悪い部分があったと思いますよ。悪い部分があったと思う。だから、今の国家公務員法、倫理法についても、ああいう仕組みになっておりますけれども、私は、きょうは午前中、参議院の総務委員会でも言ったのだけれども、ちょっと常識を超えているところがあると言ったのです。その部分は直すということは、今後検討する必要がある。官官接待を認めているわけじゃありませんよ。しかし、同窓会に行って、割り勘でも、利害関係者がおったらだめだなんということ、これが今の常識の中で全部だめだということになるのかどうか。

 これはまた別の話だと思いますけれども、今回の、そこは目的は同じ、効果の期待も同じなんですよ。そこのところ、今の制度を是認するというより、制度全体としてどうあるべきかを考えて議論される方が、私は適当じゃないか、こう思っております。

武正委員 今、総務大臣が、官官接待は必ずしも悪いものではないという御発言で、それを補足する中で割り勘というお話がありましたが、では、接待というのが割り勘なのかというと、やはり通常の接待というのは、何らかの形でお招きをするというようなものが世間の常識でありますので、当初の、官官接待は必ずしも悪いものではないというのも、私は、やはり総務大臣の発言としては問題であろうということを指摘させていただきます。

 今、首長は個人であるというような形で総務大臣がお話を続けておられるのですけれども、個人といっても、選挙で選ばれた公人であろう、あるいは知事部局というような言い方でいえば機関というような見方もできようというふうに考えるわけですが、これについての御所見をお伺いいたします。

片山国務大臣 私は、首長は個人なんて言いませんよ、首長は機関なんですから。公人としての首長というのは、機関の長としての首長なんですよ。まさに公人というのは機関の長なんですよ。ところが、今は、個人、私人という個人をつかまえて訴訟を起こしているから、制度としていかがかなと私は申し上げているのです。

武正委員 私人としての個人をつかまえている、でも、公人である、機関であるというようなお話ですが、公人であって機関であれば、今の仕組みは首長を訴えておりますけれども、例えば補助参加というような形で機関が裁判に参加することができるわけですね。ですから、たとえ被告が個人というようなお話である、でも個人と公人で、先ほどのお話ですとちょっとこんがらがってしまうのですが、補助参加するということで機関として対応ができるのでありますが、これについてはどのように考えますか。

片山国務大臣 今はそうなっていますよ。ただ、逆に言えば、機関をつかまえて個人も参加できるのだから、効果は同じなんですよ。首長なり首長の部下の職員が財務会計制度にのっとって会計手続をやるときに、不正、違法があれば訴えられるという制度でしょう。それを勝手に個人として考えてやるわけじゃないのですよ。ちゃんと予算があって、手続があって、命令を受けて財務のいろいろな手続に参加するわけでありまして、そこに違法があれば、まさに機関としての責任を問うべきなんですよ。

 ただ、個人としての部分もあるから、それこそ補助参加してもらったらいいのですよ。今は、個人をつかまえているのですよ。公の機関の方を補助参加させているのですよ。だから、私は話が逆だと言っているわけであります。

武正委員 首長が機関であって、あくまですべて機関で決定されているというお話でございましたが、個人として首長が、例えば議会や監査委員とのいろいろな関係も含めて、絶大な権限を持つ個人、選挙で選ばれた首長としてさまざまな判断、決定をするわけでありますが、それが機関を代表して決定をしていると必ずしも言えないところがある。個人の判断、個人としてのさまざまな決断、そういった意味で、今回、この被告対象としてすべて機関で受けますよというのは、やはり問題があるというふうに考えるわけであります。

 平成十三年六月十三日の日経を見ておりますと、小泉首相が、行政訴訟もやはり見直さなきゃいけない、これは司法制度改革審議会の答申を受けての発言であります。

 アメリカとの比較というものを大臣はよく口にされます。アメリカのGHQの指導で導入したけれども、アメリカ本国ではないのだよ、こういう個人を対象にというようなことを答弁されておりますが、もう一度それを確認したいと思います。

芳山政府参考人 我が国の住民訴訟制度は、米国の納税者訴訟を参考に、昭和二十三年の自治法改正により導入されたものでございます。

 今御指摘がありましたように、米国の状況でございますけれども、我が国の文献によりますと、米国の納税者訴訟においては、違法行為の事前差しとめを求める訴訟が一般的であるというようなことで、長や職員個人に賠償を求める訴訟は余り利用されておらないというように聞いております。

 なお、この今回の改正案は、米国における状況も参考にしつつ、両国の法体系の違い、成文法である、不文法である、また訴訟手続の違い等十分配慮した上で、我が国において地方分権時代にふさわしい住民訴訟制度のあり方を検討し、立案したものでございます。

武正委員 私の手元にあるのは、「国家責任法の分析」ということで、宇賀克也さんの書かれたものであります。ちょっと一節を読みますと、アメリカでは、

 不法行為に基づく損害賠償請求につき、公務員個人を被告とすることなく、合衆国、州、自治体を排他的被告とし、公務員の統制は、求償、懲戒、刑事訴追等の手続に委ねようとするものであるが、我が国では、昭和二二年に国家賠償法が施行されて以来、このシステムが採用されているのである。したがって、アメリカの国家責任法制の研究が我が国の立法論に直接資することは、それほどないと言わざるを得ない。

今、法体系の違いということをお話ししたその一つの論拠であります。

 また一方、「ニューヨーク州「納税者訴訟」制度 その制度と日米比較」ということで、財団法人自治体国際化協会の調査によりますと、職員が個人として賠償責任を負う場合というのがあるということを書いております。こういった例もあるわけであります。

 そういったことで、アメリカのことをよくお話に出されるわけですが、先ほどの日経の記事を見ますと、行政訴訟の件数なんですが、九七年度新規受理件数で見た場合、日本が千七百十一件であるのに対して、米国は連邦地裁で国を被告とする訴訟だけで三万九千三十八件に上っている。これによって、自民党では、訴訟要件の緩和により日本の行政訴訟が活性化し、先進国並みに行政をチェックできる態勢が整うということで、行政訴訟の改革を御党でも取り組んでおられるという記事でございます。

 そういったこともございまして、アメリカでは、個人を被告とはしていないよというようなことをよくお話にしますが、被告としている例があること並びに法体系が違うこと、加えて言えば、例えばアメリカではディスカバリー制度などの徹底した、そういった証拠を提出しなければならない、証拠提出命令というのがございます。このような中であるわけでありますので、この日本の戦後五十年培ってまいりました個人を対象とする住民訴訟、これをここで対象を機関にするといったことの説明にはならないというふうに考えますが、御所見を伺います。

片山国務大臣 今、行政局長が答えたとおりですが、こういうあれもあるのですよ。連合軍総司令部の指示に基づき短時間で立法化されたゆえ、不明確で、解釈上疑問の点が多かった。これがため、運用において、住民による監査請求あるいは訴訟の提起に当たり、あるいは裁判所における訴訟の審理に当たり疑問となる点が多く、裁判所当局はその運用に苦慮し、我が国の制度になじみやすく、しかも解釈上疑義の生じないような制度に整備することが望まれていた。この制度のことですよ。アメリカでは州でやっているのですよね、訴訟制度というのは。

 だから、私は、その意味が全くないなんて言っていません。冒頭に申し上げましたように、一定の役割は果たしてきたと。しかし、この制度をさらにいい制度にするためには直した方がいいと思うのですよ。直した方がいい。それは、機関の長の責任を問うのだけれども、個人の責任もありますよ。だから、そこが明らかになったら、機関の長が個人の責任を問うのですよ。今は個人なんですよ、個人だけになっているのですよ。だから、そこのところを改めて、機関の責任も問う、その部分に個人の責任もあったらさらに個人の責任も問う方が、責任の問い方として、住民から見ればよりはっきりするのですよ。私は、その点の御理解が、武正委員のような人がなかなか御理解いただけないのかなと実は思っております。

武正委員 大臣からお褒めの言葉をいただきまして、ありがとうございます。

 ただ、やっとちょっと整理がついたんですが、個人だ個人だと言いながら、先ほど大臣は、首長は機関であるというふうにお答えになりましたが、そのお答え、もう一度確認をしたいと思います。

片山国務大臣 例えば、どなたでも結構なんですが、武正さんが千葉県の知事に仮になるとすると、千葉県の知事という、これは機関ですよね、機関の長。天皇機関説、昔ありましたけれども、それと武正さん個人というものと、これは両方あるのですよ。そこで、財務会計に基づいていろいろなことをやる、いろいろなことをおやりになるかもしれぬけれども、それは公の職務としておやりになっているのですから、機関の長としておやりになっているのですよ。だから、その機関の長としての責任を住民は問うわけですよ。ただしかし、それは機関の長だけれども、別に個人として妙なことをやっているかもしれぬ。だから、こっちに問題があれば、機関の長である武正さんが、個人である武正さんの個人の責任を問うのですよ。

 今は逆なんですよ。武正さん個人の責任を問うているのですよ。ところが、この個人は全く自由にやっているわけじゃないのです。職務として、しかもいろいろな手続、意思決定の中で、財務のいろいろなお仕事をおやりになっているのですよ。だから、機関としてやっているのだから、まず機関の長としての責任を問うて、そこで個人との間の責任の分担関係が明らかになれば、今度は機関の長が個人の責任を追及するのですよ。しかも、これは補助参加させるのです。だから、今と実態は一つも変わらないのですよ。機関の長としてが表に出るだけ、住民から見れば、前よりは明確になるのですよ。そういうふうに私は考えております。

武正委員 今のその説明だと、やはりなかなか理解ができないわけでありまして、首長は機関の長である、今の、その機関の長として首長を訴える、これでいいんじゃないですか。それで機関も補助参加できるわけですから、決して個人を訴えているわけではないわけです。それは、名前は個人でありますけれども、先ほど大臣が言われたように、個人である首長は機関の長である、機関を代表しているというふうに言われるわけですから、しかも補助参加できるわけですから、私は、今の制度で一向に問題がないというふうに、今の御答弁から考えるわけであります。

 この点、先ほど同僚委員からもよく御質問がございましたし、私もいろいろな方から言われるところなんですが、住民訴訟が、被告の方が亡くなられた後、相続人の方が相続する、これは大変気の毒であるというようなことを、やはり地方六団体からも御要望を受けております。私もまた、その心情、大変によくわかるところであります。現在、相続人が相続している訴訟件数は何件あるか、お答えいただけますでしょうか。また、その率もお願いいたします。

芳山政府参考人 財団法人自治総合センターの調べによりますが、平成六年度から平成十年度までの五年間に提起された住民訴訟の件数が八百七十八件でございます。このうち、訴訟係属中に被告が死亡した事件であって現段階で把握できるものは十件でございます。全体に占める割合は一・一%。なお、十件の内訳は、相続人である妻と子が承継したものが七件でございます。被告の死亡によりまして訴えが取り下げられたものが三件でございます。

武正委員 確率が低いからよしとはいたしません。ただ、そういった確率であること。それで、他の法との体系からいって、この面だけ相続放棄というのはなかなか難しいといったことも聞くところであります。その点、例えば相続人についてもそうでありますが、後ほど触れます賠償額を、議会の議決があれば公金を支出できるなど、いろいろな、さまざまな手をつけることによって、この相続人の問題も解決が可能ではないかなというようなことも考えるところであります。

 さて、先ほど来、首長のお話を中心でやってまいりましたが、先ほどの調査によりますと、やはり職員の方も二五%ぐらい訴えを受けております。その職員の内訳を、例えば課長職以上とかあるいは予算執行職員以上、そういったことで、具体的にどういう内訳なのか、お答えをいただきたいと思います。

芳山政府参考人 全体の件数が、延べ件数でございますけれども、平成六年から十年までの五カ年に提起された四号訴訟でございますけれども、延べ件数は八百六十三件でございます。そのうち一般職の職員等が被告とされたものは二百二十一件で、全体に占める割合は二五・六%でございます。

 このうち、今お尋ねでありました部長、課長、課長補佐、係長というものが被告となっておりますけれども、その調べの中で、今具体的に管理職以外の職員、一般職はどういう形になっているかというのは把握されておりませんので、御了承賜りたいと思います。

武正委員 把握をされていない状態でこういった法律の改正を出すというのは、国会の審議にとって大変問題があるというふうに考えます。二百二十一件の内訳について、早急な調査をこれは委員長の方にお願いをしたいと思います。

川崎委員長代理 後刻、理事会で協議いたします。

武正委員 その職員の方が訴えを受けるについて、これはある面、組織として動かざるを得なかった、あるいは上司の命令でというようないろいろなケースが考えられると思います。

 そういった中で、予責法、予算執行職員等の責任に関する法律八条には、上司の命令がおかしい、法令に違反するのではないかと、その担当者、特に予算執行職員でありますが、考えた場合に、文書をもって上司を通じて任命権者にその意思を表明しておけば、後でその賠償請求など責任を免ずることができる、そういう条項があるわけなんです。やはり、これを地方自治法に入れ込むことによって、この職員の方の免責といったものを、国同様に地方自治体の職員にも認めていくべきではないかと考えるのですが、大臣の御所見を伺います。

片山国務大臣 機関の長と個人が同じではないかと武正委員言われましたけれども、機関の長でない個人なら、訴訟も全部個人で対応するのですよ。資料なんかも個人で集めたものしか出せないのですよ。機関そのものの長の責任は問えないのですよ。だから、私は、機関の長にした方がいいということです。機関の長にすれば機関そのものの責任が問えるし、訴訟対応も機関で行うし、資料だって機関の責任で出せるのですよ。個人なら限度があります。機関と個人との責任の関係は後ではっきり明確にすればいいのです、同じことを言ってもしようがありませんけれども。

 それで、この規定も戦後の、昭和二十五年にできているのですよ。一遍も使われていないのです。こんなもの言われたからあなたの言うことは聞けませんといって文書で突き返して、日本の職場の雰囲気や状況がそういうことになっていますか。それで責任を転嫁する。これは、およそ日本になじまない制度だと私は思いますよ。これはどういう経緯で入ったか知りませんよ。そういう一遍も実績がないような、我が国の職場環境になじまないような制度を地方自治法に書けと言われても、それはそういうわけにはいきません。

武正委員 職場の雰囲気がそうであるというお話でございましたが、これがいわゆる組織ぐるみの犯罪といったことを招く原因になっているのではないかなと思いますし、それが今問題となって、外務省を初め問われているわけでありまして、これは日本人が、組織の一員であってもやはり個人として自分の意思を表明し、物を言い、そうでなければこれからの国際社会には到底、日本は置いてきぼりを食ってしまう。これは私の意見でありますので、これにとどめておきます。

 先ほどちょっと触れましたが、弁護士費用、今百万円以下が七〇%以上、こういった調査もあるのですが、この弁護士費用を負担していただくというのは、これは何とかならないかというようなことをやはり考えるわけであります。例えば、この対象範囲を拡大して、訴訟の取り下げや和解あるいは請求放棄などにも広げたらどうか。あるいはまた、先ほどちょっと触れましたが、賠償費用についても、議会の議決があれば公金支出の道を開いてもいいのではないかというような形での修正をして、私は、冒頭申したような、被告対象を個人のまま残して、そして地方六団体などの要望はこのような形で対応できるのではないかというふうに考えますが、今の弁護士費用と賠償費用について、副大臣、お願いいたします。

遠藤(和)副大臣 四号訴訟におきまして、職員が勝訴した場合の弁護士費用の公費負担制度は、平成六年の地方自治法改正により創設をされております。しかしながら、職員に対する弁護士費用の公費負担は、勝訴あるいは一部勝訴の場合に限定して規定されておりまして、事実上の勝訴とも言えるような原告住民の訴えの取り下げとか和解とかいう場合には対象にならない、こういう問題が生じているところでございます。

 今回提案させていただいている第四号訴訟の訴訟類型の再編成によりまして、地方公共団体の機関そのものが被告になるわけでございますから、御指摘のような問題はすべて根本的に解消される、このように考えております。

 それから、公金を支出できるような議会の議決制度をつくればという話ですけれども、これは今でも、地方公共団体が有する損害賠償請求権等の債権について、地方自治法第九十六条の規定に基づきまして、現行制度におきましても、議会の議決があれば権利放棄できる、こういうことでございますから、これで対応ができるということでございます。

武正委員 この後ちょっと話をさせていただく談合については、今副大臣がお答えになった、すべて解決するということが実は問題であろうというふうに考えます。

 これはもう多くの方から言われているのですが、これまで住民の方が談合業者を訴訟対象としていた、これが今回の改正によって、機関を訴える、談合している業者を直接訴えられなくて、機関を訴える、地方自治体を訴える、そして、地方自治体が住民からの訴訟を受けて、裁判で住民と闘う、談合業者を、まあ代弁して、守るために裁判で闘う、負ければ地方自治体が談合業者に損害賠償を請求する、これは甚だおかしい。まして、今副大臣が言われたように、訴訟費用を地方自治体が負担してまで、なぜ談合業者の弁護をしなければならないのか。こんなことはやはり到底理解ができないのでありますが、この点、大臣、いかがでしょうか。

片山国務大臣 団体と機関は違うのですよ。団体というのがこうあって、団体の中に意思決定機関である議決機関と執行機関があるのですよ。団体と機関は全然違うのですよ。

 そこで、今の談合の問題ですけれども、今度の制度でも、第三者である業者について訴訟告知がなされるのです。しかも、当然判決の効力は及ぶわけで、何の問題もない。談合談合と言われますけれども、もし談合が違法なら、これは機関が、機関の長が損害賠償を必ずとるわけですから、もし談合でなければ、それはとらないのは当たり前の話で、それは今の制度だろうが新しい制度だろうが同じであります。

武正委員 この間民主党で、官製談合の防止法案を二十二日に提出いたしました。与党プロジェクトチームが提出提出ということで絶えず新聞に出ておりましたので、それへの対案を急がなければならないということで準備をしてきたのですが、臨時国会が始まってしまえば、いつの間にやら官製談合防止法案は提出できないというようなことを聞いたところであります。

 談合というものを、特に官製談合については、今もそれを取り締まる法律がない。今大臣のお話にありましたが、まず談合の事実を見つけるのが大変難しい、特に官が絡んだ談合についてはというようなお話であります。そんなことも含めて、今の御答弁では到底納得ができないわけでありまして、特に弁護士費用をなぜ自治体が負担してまで訴訟に応じなければならないのか、これについてはいかがでしょうか。

片山国務大臣 いや、それは自治体の機関が訴えられるからですよ。訴訟の対象になるからですよ、機関が。新しい制度ですよ、新しい制度は、機関が対応するのが当たり前の話ですよ。ただそこで、どちらが裁判の費用を持つかは勝った負けたで決まるのですから、御承知のように。

武正委員 勝った負けたで決まるといっても、その弁護士費用を負担して、機関が談合業者の裁判を請け負って裁判に臨む、こういうことは到底理解できないわけなんですが、この点はいかがでしょうか。

片山国務大臣 言われることがよくわからないのですけれども、住民が、新しい制度ですよ、訴訟の対象にするのは機関の長なんですよ。機関の長が受けて立つのですよ。そこで、談合したのかどうか知りませんが、業者がいるとすれば、それは訴訟参加するのですよ。訴訟参加によって効力は当然及ぶのですよ、自動的に。そこで、費用負担の問題は勝訴敗訴で変わってくるのは当然ではないか、こう言っているわけで、別に、訴えられたのが機関の長だから、業者云々ということは出てこないわけであります。

武正委員 訴訟参加できないということでありますけれども、この点、いかがでしょうか、大臣。

芳山政府参考人 先生お尋ねの談合企業と弁護士の費用の関係ですけれども、今回の四号訴訟は機関である長を被告にするわけです。そうしますと、今、住民訴訟の一号、二号、三号は機関である長を訴える、それで、今度の四号も機関である長でございますから、一号から四号まで、すべて自治体が被告になる。自治体が被告になると、一号も二号も三号も四号も弁護士費用は持つ。

 ただ、これは事前に住民監査請求というのが当然起こっております。住民監査請求が起こって、自治体と住民の間で意見が分かれております。住民の皆さんは談合であるではないか、ところが、地方団体の方はこれは談合ではないというようなことで意見が分かれた上で、その監査委員の勧告に、監査委員の意見なしなり措置について、住民は不服であります。そして、それに基づいて住民は訴訟に出るということでありますから、住民訴訟の段階では、談合であるかないか、有無は前提になっておらないというようなことでございますので、御了解賜りたいと思います。

武正委員 前提に立っておられないというのは理解できないわけでありまして、訴訟を起こす当事者は、談合している会社がある、こういった確信を持って、その監査請求、却下なり棄却なりを受けて不服として訴訟するわけですから、まだはっきりしていない、確定はしていないというのなら答弁になりますが、前提であるというのは、これはそういった前提を、確信を持って訴訟を起こしているということで、これはもう御答弁は要りませんので、結構でございます。

 時間がかなり押し迫ってきてしまっているのですけれども、民訴法の改正で、文書提出命令が出せるように、今年度改正になりました。この点について、よく大臣は、機関が訴えられれば裁判に文書をたくさん出せますよというようなお話でありましたが、もう民訴法は改正されているのですけれども、この点についての御答弁をお願いします。

芳山政府参考人 さきの通常国会で民事訴訟法の一部が改正されまして、今御指摘がありましたように、公文書についての文書提出義務が一般化されました。しかしながら、裁判所による文書提出命令に従わなかった場合の効果が、今回の場合、命令の対象が、執行機関としての地方団体が訴訟の当事者となる、ないしはならないというときに異なるわけでございます。

 今度の新しい四号訴訟でございますが、地方団体を当事者とするということになりますと、不利益文書が存在しながら文書命令に従わない、文書を提出しないという場合には、被告であります執行機関等に訴訟上の不利益が生じます。法律上生じます。そういうことから、第三者としての参加に比べまして、地方団体に対する文書提出の効果が促されるというぐあいに考えております。

武正委員 機関が訴えられれば文書を出しますよというようなお話でありますが、到底そうは思えないわけであります。被告になって、情報提供について裁判所からの文書提出命令があったとしても、そのときに、では裁判所がどの程度行政知識を有していて、どういう文書がそれぞれの被告の地方自治体にあるのか、これをすべて把握しているとは到底思えないわけなんでございます。

 この点について、大臣、いかがでしょうか。司法裁判ということの限界を私は感じるわけでありますが、司法裁判の裁判官が幅広い行政知識を有して、そしてさまざまな文書提出命令を出す、これはちょっと想像できないのですが、この点いかがでしょうか。

片山国務大臣 日本は三権分立で、裁判所が、持ち込まれたものを、あらゆることを判断するということになっていますから、専門の知識がなくても、アンパイアみたいなものですから、AとBの意見を聞いてどちらが正しいか判断すればいいわけでございまして、そんな行政の細かいことまで裁判官は知るわけないので、それは勉強もしていただかなきゃいけませんけれども、私は日本の裁判あるいは裁判所というのは信用していいと思っております。

武正委員 先ほど局長が、裁判所から文書提出命令があれば出せるのだというお話でしたけれども、今の、そういった知識がないということになってしまうと文書提出命令も出せないわけなんですね。

 そういったところも含めまして、実は日本には行政不服審査法というのがあるのですけれども、ただ、これは地方自治体は対象ではないというふうにされておりますが、この点、確認をしたいと思います。

片山国務大臣 行政不服審査法というのがありますね。これはそれで機能していると私は思いますが、直接地方団体の事務については、機関委任事務以外は恐らく対象にはなっていないと思います。

武正委員 機能しているというお話なんですが、ちなみに、これは平成六年度ですか、ちょっと古いのですけれども、行政不服審査法に基づく一万八百三十五件の申請に対して、棄却が七千五百七十七件、七割、却下が千二十三件、九%ということで、約八割が取り下げられてしまうということでありまして、この点も、先ほど小泉首相の行政訴訟取り組むべしといったところにあらわれておりますし、御党が改革をしようといったところにもあると思うのです。そういった意味で、行政不服審査法の対象にも地方自治体は外れているわけでありますから、そういった面では、住民訴訟、しかも大臣が先ほどから言われているように、機関の長である個人、首長を今は訴えている、この体系は変えるべきではない、このように考えるわけであります。

 議会が議決をし、監査委員の監査があるのに、なぜ首長だけがというようなお話がよく出てまいります。議会の議決と監査委員が、それぞれ議決に参加をし、監査委員も監査しているじゃないか、こういった中で首長の判断を問われるのはいかがなものかというようなことを答弁の中で言っておられますが、この点について、大臣、再度御所見を伺います。

片山国務大臣 ちょっと私、答弁を間違えまして、行政不服審査法の対象に地方団体の自治事務はならないだろうと言いましたが、行政という観点から、地方団体の事務は全部対象になっているそうでございます。

 それから、今の質問はちょっとあれでございますが、一番のポイントは監査が機能していない、こういうことでございますか。

武正委員 議会の議決があって、監査委員が監査しているじゃないか、それで首長が個人の判断を問われるのはいかがか、それだけ組織を挙げてやった行為だよということです。

片山国務大臣 それは、今の地方団体の仕組みは、議会がいろいろなことを議決して長はそれに従ってやる、それについては監査委員が、これは内部監査ですけれどもチェックする、都道府県や政令市や中核市については外部監査もある、こういう仕組みになっております。

武正委員 私はそういった認識を問うたのでありますが、今のような仕組みで首長さんは判断をし決断をし活動をしていくということでございます。

 ただ、議会の構成につきましては、もう大臣御案内のように、地方議会はよく言われるオール与党というような形で、首長の与党が多数を占めている、少数与党は大変少ないといったこと、あるいは監査委員も首長が選任をするといったこと、ある面やはり首長の意向が強い、あるいは首長の意向にはなかなか、逆らえないといったら言葉はあれですが、指摘しづらい雰囲気があるという指摘もございます。

 また、これは埼玉県の例でありますが、平成七年からの四年間で二千百七十件を監査委員さんは監査をいたしました。監査事務局数は三十人であります。ですから、四で割りますと年間五百件ぐらいの監査対象がある。これではなかなか、今の監査というものも機能していないというふうに言われるわけであります。もちろん、また事務局についても、出向人事でありますから事務局の専門性にも欠ける。こういった点があるわけなんですが、首長を取り巻く議会と監査委員とのチェック機能がある面働いていないという認識については、大臣、いかがでしょうか。

片山国務大臣 これも一概にどうだと私はなかなか言えないと思いますね。地方団体によっては、今の議会や監査委員のシステムが機能しているところもあると思いますし、しかし、地方団体では執行機関と議決機関の仲がいいところが多いですね。私は見ていてそう思います。

 私はいつも地方議会の関係者に言っているんですよ、つかず離れずがよろしいと。地方は大統領制ですから、執行機関と議決機関が車の両輪で、チェック・アンド・バランスなので、バランスの方だけウエートがかかってチェックの方が緩んだらおかしいでしょうということは申し上げているのです。

 しかし、私は、今の議会の制度なり監査委員の制度は、これもそれなりの効果を上げていると思います。そんなものが全部だめだ、こう言ったら、それは地方自治の制度そのものが成り立たなくなるし、しかも、首長さん、議会は住民が選挙で選んだ結果ですから、これについてもおかしいということになってしまう。それは民主主義の根底の議論につながると思いますので、私は、それなりに地方議会も頑張っているし地方の監査委員さんも努力されていると思います。

武正委員 先ほど大臣から外部監査のお話がありまして、これも既に導入されて数年がたつわけですが、外部監査の監査について、これは昨年七月三日の日経でありますが、「外部監査 自治体を刺激」ということで、いわゆる財務監査以外の業績監査についてもかなり外部監査人が突っ込んだ指摘をしている。それを新聞で取り上げているわけなんですが、最後に自治省さんのコメントということで、「「財務内容をチェックするのが本筋で、やや目的から外れている」と困惑気味だ。」というコメントが出ているわけなんです。

 私は、外部監査人を、できれば監査委員と同格ぐらいにしていいんじゃないかと。例えば住民監査請求も、今は直接監査委員は監査いたしますが、外部監査人はワンクッション置いて監査ができるといったことですが、これを、外部監査人を監査委員と同格にして、住民は外部監査人も直接監査請求ができるようにして、選択肢をふやしてやったらどうか。また、それが監査委員にとっても、ある面切磋琢磨というか競争原理にもつながってくると思うのですが、大臣、これについていかがでしょうか。

芳山政府参考人 外部監査と監査委員の並立のお話ですけれども、個別監査について、議会からの要求とか事務監査の要求とか、また住民監査請求による要求、いろいろございますけれども、おのおのそのチェックについては議会で、その受け付けをするかどうかチェックするということになっております。

 ただ、住民監査請求の場合には、期間があることから議会でチェックがなかなかできないということで、監査委員において受け付けるかどうかの決定をするというようなシステムになっておりまして、制度ができたばかりでございまして、今後の動向を踏まえていろいろ検討してまいりたいというぐあいに考えています。

武正委員 第三セクターについて、下関の訴訟が巨額な賠償責任を市長さんに課した、これが今回の法改正のきっかけにもなっているという見方もあるというふうに伺うところでありますが、今現在の第三セクターについての損失補償対象数とその額についてお聞きをしたいと思います。

香山政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもの調査、これは二五%以上地方団体が出資している法人でございますが、六千七百九十四ございまして、そのうち、地方団体が損失補償をつけておりますのは七・七%に当たる五百二十法人でございます。損失補償限度額、これは当然これがすべて地方団体の負担になるというものではございませんけれども、限度額としては二兆六千三百十四億円でございます。

武正委員 今の御答弁は、さきに私が通常国会で質問したときと同じ数字でありますが、それはいつ時点の調査でございますか。

香山政府参考人 平成十一年でございます。

武正委員 平成十一年のいつでございましょうか。

香山政府参考人 十一年度という意味でございまして、調査期日は平成十二年三月三十一日でございます。

武正委員 もう一年半を経過しているわけでありまして、この第三セクターについて、既にいろいろな方々が第三セクターの破綻あるいは損失補償の問題点を指摘しているわけであります。本改正で、いろいろな方々からも下関の例を挙げられているわけでありますし、これからも、第三セクターの破綻ということが地方の住民の方にとっても大変関心が強くなる、当然訴訟の対象にも挙がってくることが予想されるわけなんですが、この点の調査が十一年度、十二年三月三十一日以降新しい数字がない、前の答弁と同じであるというのは大変問題意識としていかがなものかというふうに思うんですが、再度、新しい数字はあるんでしょうか、あるいは調査をされているんでしょうか、お答えください。

香山政府参考人 お答え申し上げます。

 十二年度につきましても調査をいたしておりまして、現在集計中でございまして、近く公表できると考えております。

武正委員 今もう十三年度なんですよね。もうすぐ十三年度も終わってしまうわけでありまして、これだけの大変大事な問題が、前回と、半年前と同じ答弁をこの国会でいただかなければならないというのは、特に第三セクターの問題が絡んでいる本改正の背景からすると甚だ遺憾であるということを申し上げたいと思います。

 さて、各首長さんが、第三セクター、これはそれぞれいろいろと今の経済状況、大変問題を抱えておられる。それが、必ずしも本人の意ではないところ、経済状況も反映して、土地の値下がりなどを含めてある。その大変な心配は六団体の皆様からもうかがい知るところであります。そういったときに、これをすべて地方自治体の首長さんの責任に果たして課していいのかどうかといったところが私はやはり問題があろうというふうに考えます。

 というのは、平成四年をピークにつくられました地方自治体の第三セクターでありますが、私は、九〇年代にあって、政府の進めてきた景気回復、雇用創出、これを地方単独事業でといったところがやはり限界にあると。あるいは第三セクターというものをもっともっと活用していけないかという国のさまざまな後押し、NTTの無利子融資などを含めた、あるいはリゾート法、あるいは民活法、さまざまな形で国はこれを後押ししてきたわけでありますので、これについて、地方自治体の首長さんにその責任を負ってもらうというのはやはり問題があろうというふうに考えます。この国の責任、第三セクターの今の行き詰まりあるいは破綻、そして先ほど平成十一年度末の二兆六千億円の損失補償が今幾らになっているかわからないというお話でありますが、これについて大臣の御所見を伺います。

片山国務大臣 バブルの前、バブルの最中、バブルの崩壊後、第三セクターがやり方として本当に一番いいんだみたいな時期が確かにありました。しかし、やるかやらないかは首長さんの判断が私はかなりあったと。ただ、首長さん全部の責任じゃありませんよ。しかし、それは相当部分は、やはり自分でやるかやらないか決めればいいんですから。

 ただ、今委員が言われたように、なるほど国の民活法やリゾート法もありました。NTT株の売却代金の無利子貸し付けもありました。そういうことで、景気回復の一助としてそういうことをやってくれということは、ある程度進めた時期もあると私は思いますので、それは私は今、経済財政諮問会議でも、いろいろなところで言っていますよ、その責任を全部地方団体に負わせるのは酷である、国も景気対策ということで頼んだではないかと。そうでしょう、地方団体についても。だから、そこのところは認識してもらわにゃいかぬということを言っていますよ。

 ただしかし、最終的には、それではつぶれるような第三セクターを全部すべての首長さんがつくったかというと、そうじゃありませんよね。それは何人か、何カ所かでありますから、そこは首長さんも責任を感じてもらわなければならないし、その首長さんのもとにあるというか、車の両輪であった議会の方もそこはよく考えてもらわにゃいかぬ、こういうふうに思っております。

武正委員 十一年度末で七%ということでありますので、損失補償の対象団体数は確実にふえている。また、その額も、一体幾らになっているのかといったところは想像できないところでありますが、確実にふえているというふうに思うわけであります。

 また、今、議会というお話がありましたが、ここにやはり議会の責任あるいは監査委員の責任といったものも問われてくるわけでありますが、そうはいっても、地方自治体では首長さんのやはり絶大な権限があるというわけですので、今回の改正で、その対象を首長さんあるいは職員さんではなくて、機関が受けるというのは、この第三セクターについて国の責任をきちっと首長さんたちにもしっかりと表明した上で、これはやはり首長の、あるいは個人を対象というのは変えるべきではないというふうに思うわけであります。

 最後になりますけれども、地方の首長さんがあくまで決めたんだよというようなお話でありますが、各地方自治体に中央省庁からたくさんの方々が出向されております。今、総務省さんから地方自治体に何人の出向者がいらっしゃって、そして、その方々の中で訴訟対象になっておられる方がいらっしゃるかどうか、あるいは過去の例で、中央省庁であるこの総務省あるいは旧自治省から出向した職員さんでどの程度訴訟対象になっているのか、参考になる数字で結構ですので、お答えをお願いします。

團政府参考人 お答えいたします。

 御質問の地方公共団体への出向者数でございますが、ことしの分は現在取りまとめ中でございますが、昨年八月時点で、この時点では総務省は発足しておりませんで、旧郵政省、旧自治省、旧総務庁の合計で二百七十七人、そのうち、都道府県へ二百二十一人、市町村へ五十六人でございます。ことしは、取りまとめ中でございますが、余り大きな変更はないものというふうに考えております。

 それから、その出向者に対する、住民訴訟の対象になっているのかどうかという御質問でございますが、出向の場合は、御承知のとおり、国家公務員を辞職しまして、同じ身分で地方公共団体の職員として職務を執行しております。したがいまして、そういう職責や職務に応じまして住民訴訟の対象となることもあり得ることでございますけれども、同じ身分でやっておりますので、出向者ともともとの職員さんとの別での数字は把握しておりません。

武正委員 把握をしていないというようなお話でありましたが、日経の地方経済レポートによりますと、このときの数字でありますが、何といっても中央省庁からの出向は自治省さんがトップであります。特に、自治省さんからの指定席というふうに言われておりますが、「副知事で十三人と全体の二八%、総務部長で二十人と四三%、財政課長で二十六人と五五%と圧倒的な割合を占める。」という記事であります。

 平成八年末、当時の白川自治大臣が、同一ポストに連続して出向はしないというような方針を出したわけなんですが、出向について自治省幹部の方は、そうはいっても、これだけ中央が補助金などを含めて地方自治体に対する影響力を持っているので、これを引き揚げるというのはなかなか難しいんだよというような答弁というか記事もあるわけなんですね。

 こういった中でありますが、私は、地方分権を進めようというこの小泉内閣にあって、その担当大臣である片山総務大臣は、やはり地方への出向というものを減らしていく、そして地方自治体のことは地方自治体に任せていく。先ほど言われたように、第三セクターだって地方の首長さんがやるかやらないか決めるんだ。決して、中央からいろいろな補助をしてやってくれ、やってくれという過去の過ちはもう繰り返さない。そのためにも、中央政府から地方への出向は、一番数の多い総務省が先頭を切って変えていく、これを最後にお聞きして、私の質問を終わりたいと思います。

片山国務大臣 旧自治省、今、旧郵政省、旧総務庁と一緒になっていますけれども、総務省が特定のポストを言って人を押しつけるようなことは一切やっておりません。我々は、対等、平等、協力の関係で、適任者が欲しいと知事さんなり市長さんが言われれば、それではお送りします、こういうことをやっているわけであります。

 私は、一つの地方団体が閉鎖的な人事交流をやるよりも、その地方団体以外のところから適任者を求めて、二年か三年かわかりませんけれども、そういう人事交流をやっていく方が刺激にもなるし、いろいろな関係がありませんから思い切ってやれるというようなところもあるし、そこは首長さんの御意向を体してやっているので、だから、それを今、委員から減らせと言われても、減らすかどうかわかりません。ふやすことは、特別にふやさなければいかぬとも思っておりませんが、あくまでも御要請、御注文に応じて対応していく。あくまでも我々は地方自治を守り育てる役所ですからね。そういうふうに考えております。

武正委員 地方自治を守り育てる役所として、ぜひ地方のことは地方に任せるという小泉首相の所信表明を体現していただきたいことを御要望して、質問を終わります。ありがとうございました。

川崎委員長代理 次に、松崎公昭君。

松崎委員 民主党の松崎でございます。

 大臣、私は元来気が弱いものですから、余り怒らないで穏やかに、これは地方自治体のために、また民主主義の原則の、住民の民主主義的な手法を減らさないようにということですから、対決ではございませんので、ひとつよろしくお願いを申し上げます。

 さて、武正議員が全般に対して、全体的に、住民訴訟の四号訴訟に関しましてお話を申し上げました。私も大体同じようなお話をすることになると思いますが、若干違う角度、あるいは深めてお聞きしたいな、そんなふうに思っております。

 そもそも、この住民訴訟あるいは住民監査制度そのものが、確かに今まで機能もしていましたけれども、最近問題が起こり始めた。これは、私たちも身近の各自治体の状況を見ていますと、わかりますよ。

 ただ、今回の改正は、どうも首長さんの個人的な悩みとか煩わしさみたいなものが一番根本にあったんじゃないか。それによって機関を、特に四号訴訟なんですね。住民訴訟は一から四まであるんですよ。一から三号まではきちっと団体が受けて、政策判断等も、いろいろの公金の支出等ですからしっかり入っている、財務会計の事務行為ですから。ですから、それは全部入っているんですよ。たまたま四号に関しては、中にはやはり判断が悪かったり、いろいろ問題を起こす職員もおりますよ。ですから、そこに対して、個人を、そこだけはチェックしましょうよということで四号があるんですね。

 だから、何か住民訴訟全体が、全部、個人の訴訟対象になるとかそういうことではございませんで、根幹の民主主義の原則というところを、いわゆる住民が参加をしていく、そういう大事なところをやはり残していかなければならない。

 その上で、我々は、現実の、確かに、乱訴とは私は言いませんが、たまたま一人でたくさん、趣味的にやる方もいるかもしれない、それから金額が膨大になる場合がある、こういう問題に関しては、幾らでも取り除く方法があるではないか、そういう提案を交えた議論なんでございますので、そこはひとつ建設的にやっていきたいな、そういうことですね。

 その中で、確かに、首長さんは五八%ですね。担当職員というのは二五%ぐらい、八百六十三件のうち二百二十一件、こんなものなんですね。ですから、この辺はやはりもっと、構造の問題点、これを変えることによって問題が相当起こってしまいますよという点をやはり私たちは注目して、だから今の四号訴訟は個人のままの方がいいんです、そういうことなんですね。

 一番根幹である住民が、つまり住民が、全然利益をもたらしません。自分の自治体が損をする、不当な会計行為によって損をさせられるから、自治体にかわって住民がやるわけですね。勝訴したって全然プラスにならないんですよ、自分たちの時間をかけて。こんなすばらしい市民は本来はいないはずなんですね。こんなすばらしい市民はやはり生かすべきであると。

 そういう意味で、今度は団体が、個人の問題点のありそうな訴訟の、個人のかわりに全部受けるとなると、やはり裁判でしょうから、被告という形になりますと、先ほど大臣も、資料がよく出てくるというお話がありましたけれども、私は逆だと思うんですね。裁判になりましたら被告になりますから、やはり勝とうと思いますよね。それが裁判の仕組みですよね。どんなに重犯罪者でも、刑法の場合でも、やはり、何とか刑を軽くする、無罪になる、そういう闘いをするのが裁判なんです。ここも同じなんです。

 そうすると、団体が被告になりますと、資料は、やはり自分の有利なもの、勝つための資料は出すと思うんですけれども、やはりこれはなるべく隠しますよね。どうでしょうか、その辺、先ほどの御答弁に対して疑問に思いましたので。

片山国務大臣 先ほども言われましたけれども、京大の法学部の教授が書いていますように、ばたばたっと制度化したんです。そこで大変に裁判所も困り、いろいろなことが困った制度だと私は思うんですよね。

 基本的に、アメリカは、ポストというのは個人に固定しているんですよね、割に。ポストで人を採って、それをまたかえていったり、それからシティーマネージャーなんというのは、これは全く雇われるあれですから渡り職人みたいなもので、専門性を買われて雇われるわけです。日本は、みんな一緒に採ってもらって、いろいろな職務をやって、いろいろなポストをやるんですね。組織対応なんですよ。だから、やることが職務なんですよ。仕事で、上司に命令されたり、いろいろなことが決まっているからやる、財務会計上の行為も。

 そういうところが基本的にはこの制度にあるんですよ。日本としてもう一つ昔からなじめない制度だな、私はこう思ってきましたのは、そういうことがあると思います。

 そこで、今松崎委員が言われる、住民が本来訴えるということは、訴えの利益がないと普通の裁判所は却下なんですね。ところが、これだけは訴えの利益がなくてもいいんですよ、訴えの利益がなくても。納税者として関係があればいいということですから、これも訴訟としては大変おもしろい制度になっているんですね。そこで、住民が団体にかわって機関の長を訴える制度だと私は思いますよ。団体にかわって、団体を訴えるというのは、これは自己矛盾ですからね。団体の中の長なり長の補助職員がやったそのことを、団体の大きな利益を守るために住民がかわってやる。

 したがって、個人の場合と機関の長の場合でどうかというと、訴訟の対応を個人でやるというのは大変なんですよ。機関の長なら、私はそれはかなり対応できると。そういうことの中で、それは機関の長の方がいい資料しか出さないだろう。そういうことは場合によってはあるかもしれません。しかし、個人で対応する方が資料なんというのは出にくいですよ、個人としてやるとすれば。それから、手間もお金も大変ですよ。

 そこで、個人的にそういう悩みがいろいろあるということは私も聞いています。しかし、その悩みだからこの制度を変えようというんじゃないんですよ。二十六次地方制度調査会で、民主党の代表の方も入られて、大いに議論を闘わせた結果、御答申をいただいて、我々はそれを受けて出しているので、首長さんの悩みも聞いていますよ。職員さんの悩みも、おまえ、わしの言うことを聞かないと訴えるぞとおどかされると。そういう例はあるようですよ。私も聞きました。そういう悪用されるのもいかがかな、こういうことでございますが、あくまでも二十六次地方制度調査会の答申でございます。

松崎委員 私も二十七次の地方制度調査会の委員に任命されましたので、なかなか難しいんですけれども、ただ、恐らく、一般的に審議会というのは、大体行政側なり国なりの意向を承りながら答申をつくっていく。いわゆる隠れみのと言われている。最近は、小泉さんがつくったものなんかは、大分自分でつくったのと違いますね。でも、一般的にはそうなっています。だから、そういう意味では、総務省なり自治体の市長会さんなんかの意向が十分に入った答申だろうと思いますので、それを尊重しないとは言いません。ただ、再三言っておりますように、やはりこれはどうも裁判上も矛盾が出てきているな、そう思います。

 それから、さっき監査委員のことを武正さんはおっしゃっていました。私も、実は地方自治体で監査委員をやっておりました。正直言いまして、さっき武正さんが言ったとおり、議会の同意を得て首長が選任して、大体、自治体側の立場に、あるいは人事の、何というのですか、充て職のあれでやるんですよ、保守系というか与党の人たちは。だから、そんなに客観性のある監査制度ではないんじゃないかと、私の経験を通じて。

 そうしますと、結局、監査の内容がしっかりしていれば、こんなに住民訴訟にはならないんですよ。だから、私は、監査委員制度そのものをもっと、これは本来は委員会なんですから、独立した委員会のはずなんです。ですから、監査委員が出した結論というのは、自治体が出した結論じゃないんですよ。委員会が出した結論なんです。だから、そこで、その客観性に疑問があるということで、住民がもう一回裁判制度の中で闘えるということなんですね。

 だから、ぜひその辺で、私は、監査委員制度そのものを、どうも今の制度のままではいけない、そんなふうに思っていまして、もっと抜本的に、外部監査制度を入れましたけれども、外部監査制度も実はまだ少ないんですね。全国で八十七しか入っていません。だから、外部監査制度をつくったからというのはちょっと理由にならぬと思いまして、私は監査委員制度そのものをしっかりつくり直しをしなきゃいかぬと思いますので、副大臣、どうですか。

山名大臣政務官 今御指摘のように、監査委員制度がもう少ししっかりしておれば云々ということでございますが、御承知のように、監査委員制度というのは地方行政の公正で能率的な運営を確保するという意味からも重要な使命を持っておるわけでございまして、特に、地方行政の、住民に身近な問題はできる限り身近な行政主体でそれを解決、処理していく、こういう本来の意味を持っておるわけでありまして、そういうことから、御承知のとおり、平成十一年度から外部監査制度を導入いたしました。

 包括外部監査契約、これに基づく監査が全四十七都道府県で今設置をされております。また、指定都市におきましても、あるいは中核市においてもそれが義務づけられましたので、中核市以上はすべて設置されている。さらに、個別外部監査契約に基づく監査につきましては条例に基づいてこれを実施するということとなっておるわけでございまして、今御指摘がありましたけれども、監査委員制度の充実を私どもとしては図っているところでございます。

 特に、今回の法案の中でも、住民監査請求があった場合におきまして、監査委員による暫定的な停止勧告、仮処分等の勧告を行える、そういう制度を設けましたし、さらには、首長や職員の陳述の聴取を行う場合、請求人を立ち会わせることができる、こういうことも加えまして、より監査機能の充実策を図ったところでございます。

 今後とも、御指摘のように、監査機能がさらに充実、確保できるように努めてまいりたいと思っているところでございます。

松崎委員 つまり、住民監査請求、これは七年から十一年の四年間の統計でも、二千八百六十六件のうち棄却は千七百六十九、六一%、正しくやられたという前提なんでしょうけれども、私の経験からいきますとかなりいいかげんだということで、結局、この辺の監査制度そのものが信頼がやや少ないということで訴訟までいく。ぜひ、この辺は今後の全体的な地方自治制度の中でやはり考え直しをしていく。それから、議会の機能が低下しているのはもう既に御承知のとおりでありますので、この辺も、住民訴訟がやたら多くならないためにも、やはりそういう周辺のきちっとした整備をする必要があるだろう。

 それから、先ほど談合の問題がございました。どうもちょっと、大臣の答弁では業者が訴訟参加できるようなお話になっておりましたけれども、私はそうじゃないと思いますよ。

 特にこの問題、談合の業者を、今までは直接個人を訴えられたんですね、四号訴訟で。ところが、今度は、談合をしたであろう、これは役人が絡んだ絡まないは別としても、そこに直接できなくて、機関が受ける。つまり、自分たちがひょっとしたら損害を受けている談合問題に対して、自分が、自治体がそれを弁護したり、談合がありませんよという証明をする裁判をするわけでしょう。やはり役人ですから、多少問題があったかなと思ったって、自分たちがまずかった話は、そのまますぐ、そうです、我々は失敗しました、間違った、そんなことは言えないですよ、これは。

 だから、そういう意味で、これを一つ見ても、どうもおかしいんですよ。団体がひょっとしたら損をしたような談合で、業者だけやるのもありますよね、それを訴えた住民の受け手が自治体で、その談合の業者を、ある意味では、ないよ、なかったという立場に立って弁護をして被告になるんですよ、負けたらもちろん業者からとるわけですけれども。そのときに裁判上、自分の非を、あるいは自分たちの非を認めるような裁判で原告側と闘うんですよ。これはどう考えても、この一点はどう説明しても説明がつかないので、だからやはり個人じゃないとおかしいんだと。

 しかも、再々言います、一号から二号、三号は、全部政策判断やらさまざまな自治体の行為をしっかりと受ける。四号だけが個人に残された部分の問題なんですよ。だから、これを普遍化してはだめですね、一号から三号があるんですから。

 ぜひ、その談合の問題。

芳山政府参考人 談合行為における訴訟の問題でございます。

 住民監査請求が前置でございますけれども、住民監査請求の段階で、住民と地方団体の間に談合行為の存在の有無について判断のそごを来しております。それを受けて住民が、これまでは、今、先生言われましたように、企業を直接訴えることができたということでございます。それで、今回の改正は、地方団体に対して、業者に損害賠償を請求せよという履行請求の訴訟を地方団体の執行機関そのものに訴えることをするわけであります。これまでは企業に対して地方団体に払えという訴えをしていたわけですけれども、今回は地方団体の機関に対して企業に対して損害賠償を請求せよという訴えになります。

 それで、今、訴訟告知のお尋ねでございますが、そういう訴えが出ますと、第三者である業者に対しても訴訟告知がなされます。訴訟告知をしますと、住民訴訟における判決の効力が及ぶようになります。そういうことで業者は訴訟参加をすることができるようになります。訴訟参加をすることができるようになる。そういうことで、談合行為の有無について裁判で実態の解明が争われる。

 我々としては、地方団体としては執行機関が被告になるということで説明責任を果たすということで、仮に機関が敗訴をした場合には、一定期間に企業に対して損害賠償を請求するということになりますし、また、今までは、当該事案のみが、業者と住民との間のその事案のみが事件のケースでございましたけれども、今回は、団体がなりますので、発注者としての入札事務全般にわたる再発防止がなされるというぐあいに思っております。

松崎委員 再発防止はどうもこじつけみたいな話になっているんですけれども、どうもよくわからないですね。

 それは、業者が裁判に、例えば第一段目の裁判で業者が参加できるということなんですか。

芳山政府参考人 そのとおりでございまして、訴訟告知をしますと、企業でありますとか、長個人であっても、職員であっても、訴訟参加をすることができます。

松崎委員 そうすると、妙な話ですね。訴訟をやっているんですけれども、片や住民は、自治体が損をさせられたんだからよく談合らしいものをしっかり調べろと。団体は、ひょっとしたら自分たちは損をしたかもしれぬけれども、相手である、あるいはそこに職員が絡んでいる場合もあるかもしれませんけれども、その業者も一緒になって、それはなかったということに当然なりますね、裁判だから。業者は、そんなことはありませんと当然やるでしょう。それで、こっちの、利益を得なきゃならない自治体も、業者と一緒になってなかったという話を弁護するようになるんですか。妙ですね。

芳山政府参考人 先ほど申し上げましたように、住民訴訟は住民監査請求前置でございまして、住民監査請求の段階で、今、住民の判断、談合があったという主張と、地方団体の方には、ないという主張があって、その段階で監査委員としてはそういう判断、談合行為はなかったという判断をしているものと思います。それに不服な住民が住民訴訟を訴えるというわけでありますから、訴訟の段階においての議論というのは、その談合行為の有無が、あったかどうかということが争われるということでございます。

松崎委員 答弁になっていないじゃないですか、それは。全然違うでしょう、答えているのは。裁判になった話をしているんだよ。一段目の裁判になったときに、あなたは今、業者が訴訟参加できるとなるでしょう。そうすると、こちらが住民ですよね、原告です。受け手の団体と業者が一緒になって原告と争うわけでしょう。そのときに、こちらの二人は利害が本来は反するわけだよね。談合がなきゃいいですよ。あった場合には、今度第二段目の訴訟では団体が業者を、負けた場合また訴えるわけだけれども、この利害が反するようなところで、つまり、自治体だって、談合があってむだなお金を、余計に市民の税金を払ったとしたら、これは絶対被害者ですよね。そうすると相反するんだ。その相反する二人が一緒になってこちらの原告と争うというのは、おかしいんじゃないのという話をしている。

芳山政府参考人 先ほどから再三申し上げておりますように、住民監査請求の段階で、地方団体は、談合行為がないということは損害賠償請求をする必要はないという判断をしているということで、住民訴訟になっている、こういう状況でございます。

松崎委員 それは、監査委員が判断しているんだよ。何かこの資料でも間違えているんですよ。団体が判断して監査委員が判断したみたいなことを言うけれども、そうじゃない。私はやっているんだ。私も二年間やったの、監査委員。客観性を持つ立場で、自治体が問題があれば勧告するわけでしょう。そうでしょう。そのときに、監査委員がそれは問題ないと言うかもしれない。それは、自治体が問題ないなんて言ったんじゃないんだよ。冷静な第三者の委員会の監査委員が言っているんですよ。それは全然答弁が違うじゃない。

片山国務大臣 それは、委員、業者を相手にするんですよ、前のものは。今度は地方団体の機関を相手にするんですよ。訴訟告知によって参加するかもしれませんよ。しかし、それは、ずっとこの方が事実が解明できるし、機関の長の方がずっと良心が本来あるはずですからね、業者が全部悪いわけじゃありませんよ、仮にもしあるとすれば。

 だから、私は、事実の解明はずっとこっちの方がはっきりすると思う。業者そのものをやるのであれば、業者は必ず否定するに決まっている。しかし、機関の長は、もし仮にそういうことがあったとすれば、やはりこれは団体の利益を守らないといけませんよ、公金ですから。私は、その点、こっちの方が解明がずっと進むと思いますよ。

松崎委員 談合だけじゃなくて、たくさんある訴訟の、まあ首長が多いんですけれども、こういうのを見ていると、確かに怪しげなというか、まじめに政策判断してやったかもしれませんけれども、実際結果としてそうじゃないというケースが訴えられている。そして、それがまた負けている場合もあるわけですね。

 だから、本来的には相反するんですよね。個人の、問題がなければ、大体九割方は住民側が負けているんですよ。自治体がちゃんと勝っているんです、正しくやっているところはみんな勝っているんだから。だから、ここでやられるのは、問題のある首長さんとか職員なんですよ。それを自治体が守る形でやらなきゃならないというのは、やはりどう考えてもおかしい、見解の相違だと言えばそれまでなんですけれども。

 では、ちょっと変えますけれども、先ほどの談合業者は、一段目で団体が負けたというか、負けるというと語弊があるのか、請求しろというふうに住民側の意見が通ったという場合に、その訴訟費用は、今度二段目で業者へ損害賠償請求しますね、そうすると、一段目の裁判費用というのは、自治体はもう業者に請求するということはないわけですね。

芳山政府参考人 地方団体が被告になっているわけですから、一号から三号と同じでございます、地方団体が主体として費用を持ちます。

松崎委員 そうですか。何か納得できませんね。

 これは、例えば談合だとか、原告側の意見が通って、首長も含めてそういう方々が今度自分で支払うようになりますね。第一段目の訴訟が効力を発揮して、二段目ではそうなってきます。そうすると、自治体が必ずとるわけですね。そのときの一段目の費用は自治体が持ったままということですね、わかりました。これも何か非常に納得のできないような話。

芳山政府参考人 先ほど、訴訟告知と補助参加の話をしましたけれども、企業としてないしは第三者として補助参加をすれば、多分企業としては弁護士をつけるということになろうかと思います。それは企業の負担でございます。(松崎委員「第一段目の話ですよ」と呼ぶ)済みません。

 第一番目の訴訟として被告になりますと、訴訟告知を企業にしますよね。訴訟告知をすると、企業としては補助参加をすることができると申し上げました。そうすると、第一番目の訴訟で企業としては補助参加をしますから、多分弁護士をつけるだろう、その弁護士費用は企業の負担でございます。

松崎委員 いや、僕の質問は、第一段目の費用を自治体がそのまま持ったままかということを言ったのです。ちょっと答えがなっていない。もう時間がないものですから。

 ただ、大臣、ちょっと心配なのは、この改正をされますと、皆さん、チェック機能がかなり弱くなるというか、るんるん気分になって、どうも執行部が安易に走るんじゃないか、抑制力がなくなっちゃうんじゃないかという心配をするのですが、どうですか。

片山国務大臣 いや、私は、個人の責任が機関の長の責任に拡大しますから、むしろ、それは普通の首長なら大変だと思いますよ。今、個人の責任で対応するわけでしょう。今度は機関の長の責任になりますから、私は、それで抑止効果が落ちるとかチェック機能が落ちるとかと思いません。私は性善説ですからね。

松崎委員 それは、だれでも性善説をとりたいです。一つ、この辺は相当状態が変わってくるんじゃないかと私は危惧をしております。

 もう時間がないのですけれども、我々民主党といたしましては、来週早々に、先ほど冒頭に言いましたように、住民訴訟の、住民側の直接かかわりを持つ権利というものは残していく。そして、特にその中でも個人の問題点に対しては、四号訴訟は今までどおりやっていく。そのかわり、今問題の起こっている、さまざまな問題がございますね、それを、例えば政策の判断を大まかに四号訴訟から外すとか、四号訴訟の非管理職、これもいろいろ条件をつけるつもりではおりますけれども、そういう方々を外す。それから弁護士費用、これは先ほどもありましたが、取り下げとか和解、請求の放棄、こういうものは一定の条件の中で団体が持ってあげる。それから、先ほどちょっと大臣からえらい怒られておりましたけれども、予責法の問題。それから損害賠償の限度額、これは株主代表訴訟で今回二年から六年の、そういうようなものに近いものを盛り込んで、現在の原型はとどめたまま、いろいろな手で、現実の問題点を除きましょう、そういう形で修正案を出していきたいと思っておりますので、ぜひ御検討をいただきたいと思います。ありがとうございました。

川崎委員長代理 次に、黄川田徹君。

黄川田委員 自由党の黄川田徹であります。

 前回に引き続きまして、質問させていただきます。そしてまた、これまでの議論で重複するところもありますけれども、よろしくお願いいたしたいと思います。

 二十一世紀を迎え、国も地方も行動原理を変えていかねばならない、そういう時代になっていると私は思っております。行政の末端に至るまで、今、何が国民にとって必要であるのかを考えていかなければならないと思っております。国民にとって真に欲しいサービスを目指すだけではなく、そのサービスを提供するのに、いかに低いコストで、効率的に実現していくかを考えていかねばならないと思っております。そしてまた、公務員一人一人の行動原理を変えまして、成果重視を徹底していく必要があると思っております。この観点で、政策決定に至るプロセスを広く住民に情報の公開を行うとともに、的確な政策評価を実施し、その評価結果を住民にきちんとしなければならない、そういうことであります。

 このような視点で公務員が自分の行動原理を変えていくことで、住民との対話が深まり、本来あってはならない住民訴訟が減少すると私は思っております。

 それでも、公務員は人間でありますから、思わぬミスを犯すこともあるでしょう。その際のミスを事前に防止するのは、内部の相互の監査であり、また外部の識者による外部監査であると思っております。それらがうまく機能することによりまして、住民からのさまざまな訴えはさらに減少すると私は思っております。

 したがいまして、最初に、監査制度についてお尋ねしたいと思います。

 地方分権改革は、地方分権一括法が昨年四月一日に施行されて以来、私は、大きな一歩を踏み出したと思っております。今後、地方公共団体の自己決定権の拡充に伴い、その適正な執行をチェックするという意味での監査委員制度の役割はより重要になると思っております。

 また一方、平成十一年度に導入された外部監査制度は、包括及び個別外部監査契約に基づく監査につきましては、私もこの二月の一般質疑でお伺いいたしましたが、着実な成果を上げているが、制度導入後間もないことでもあり、総括的な評価を行うことは難しいという答弁でありました。

 そこで、まず、片山大臣に私からも改めてお尋ねいたしますけれども、地方分権改革をより実効性のあるものとするために、監査制度のさらなる充実が大事だと思いますけれども、大臣の御見解をお伺いいたします。

片山国務大臣 我々は、地方分権を進めたい、こう思っておりまして、さらに、国から権限や事務の移譲、税財源の移譲を考えておりますけれども、そのためには、地方団体自身が自浄作用ができるということでなきゃいかぬ、チェック機能が働くということでなきゃいかぬと思いますね。そういう意味では、黄川田委員が言われるように、監査制度のさらなる充実ということが大きな課題だ、こう思っております。

 これも、内部監査だけだったものを、お話しのように、外部監査を平成十一年度に導入しましたし、今とりあえずは、外部監査でお願いするというのは、都道府県、政令市、中核市でございますけれども、状況を見ながら、さらに拡大の検討をしようと思っております。

 内部監査の監査委員さんも、役所のOBの方が本当は多かったんですよ、詳しい人が多いから。やはり役所のOBだと、なあなあになるんじゃないかという御指摘もあったものですから、それも限定するようにいたしました。

 そういう意味では、今後とも、監査機能の充実については十分努力してまいりたいと思っております。

黄川田委員 大臣お話しのとおり、これまでは、OB職員といいますか、実務にたけてきたというような形で採用されるといいますか、任命される部分が多かったのでありますが、それの選任制限も強化した。あるいはまた、監査結果の措置の公表ですか、こういうものをやってきた。さらには、外部監査制度ということでどんどん進めてきた、対応してきたとは思いますけれども、やはり時代の先取り、何度も言いますけれども、情報公開の時代、説明責任の時代、政策評価の時代でありますので、先取りをした監査制度の充実をお願いしたいと思います。

 次に、外部監査制度についてでありますけれども、先ほど少し触れさせていただきましたが、包括外部監査契約に基づく監査及び個別外部監査契約に基づく監査の実施状況は現在どうなっているのでしょうか。二月に平成十一年度の実績は伺っておりますので、その後の、平成十二年度以降どのように推移しておるか、総務省にお尋ねいたしたいと思います。

山名大臣政務官 お尋ねの平成十二年度における外部監査制度の運用状況ということでございますが、実は、調査結果を今集計中でございますので、現段階で把握をしておる範囲内で申し上げさせていただきます。

 包括外部監査契約に基づく監査は、平成十二年度におきまして、すべての都道府県四十七、指定都市十二団体、及び中核市、当時は二十七、今は二十八になっておりますが、二十七団体、このほか、東京の八王子、文京区、豊島区、三重県の四日市市、それから岡山・倉敷市、この五団体において行われているところでございます。それから、任意に包括外部監査契約に基づく監査を行っている団体は、平成十一年度よりも三団体ふえているというところまで今把握をしております。

 それから、個別外部監査契約に基づく監査につきましては、すべての都道府県それから指定都市、中核市合わせて八十六団体、そのほか二十七の市区町村、合わせて百十三団体が条例を制定いたしまして、いつでも監査の実施できる体制を整えている。これも、平成十一年度よりも十六団体ふえております。

 いずれにしましても、今後とも、外部監査制度の趣旨、仕組み等を徹底いたしまして、運用に関する情報の提供と助言に総務省としても取り組んでいきたい、このように思っております。

黄川田委員 今のお話によりますと、包括外部監査についても任意に導入している団体がふえているということ、そして、個別の外部監査につきましては、条例制定、また、いつでも実施できる体制の自治体もふえているということで理解してよろしいわけですね。

 先ほど武正さんの調査の件でも、まだまとまっていないということでありまして、今回の私の、状況はどうかというのも取りまとめ中ということでありますので、後で、資料がまとまりましたらいただきたいと思いますので、その辺よろしくお願いいたしたいと思います。

 それでは、今回の法案でも、住民監査請求制度の充実を図るという観点からの改正事項も含まれておりますので、次に、住民監査請求に関してお尋ねいたしたいと思います。

 まず、住民監査請求がなされた場合、その行為が違法であると考えられるに足る相当な理由があり、その行為により地方公共団体に生ずる回復の困難な損害を避けるため緊急の必要があり、かつ、その行為を停止することが人の生命または身体その他公共の福祉を害するおそれがないと認めるときに限って、監査委員がその財務会計行為を暫定的に停止すべきことを勧告することができることとするとしておりますけれども、この新しい制度を導入した理由は何でしょうか。

 また、この停止勧告ができる場合を、三要件を満たした場合ということにしておりますが、限定したのはなぜでしょうか。あわせてお願いいたします。

芳山政府参考人 地方団体におきましては、違法な財務会計行為につきまして、損害賠償等の事後的な措置よりも、事前の停止を求める住民監査請求を通じて、行政がみずからの判断により、事前に対処することが望まれるわけであります。

 したがいまして、停止を求める住民監査請求の実効性を担保するために、住民監査請求の審査段階におきまして、監査委員は、一定の要件のもとに、監査手続が終了するまでの間、長等に対して当該行為を停止すべき旨の勧告ができることとしたわけであります。

 その要件としましては、この監査委員による暫定的停止の勧告は、あくまで監査結果が確定するまでの間の暫定的かつ予防的な措置であります。そういうことでありますから、当該行為が違法であると断定できないまでも違法であると思料するに足りる相当な理由があればよいというのが一点でございます。また、監査が確定するまでの事前予防の措置という性格上、当該行為によりまして地方団体に生ずる回復困難な損害を避ける緊急の必要がある、また、当該行為を差しとめることが公共の福祉を害するおそれはないというような限定的な場合を付して行うことができるということにした次第であります。

黄川田委員 芳山局長さんからさまざまお話をいただきましたけれども、いずれにせよ、監査機能のより一層の強化といいますか、そのためには、単に制度面だけではなくて、実質的なやはり監査事務局体制の充実が私は大事だと思っております。その監査を担う監査委員や事務局職員の資質の向上ですか、これが一番の課題であると私は思っております。

 そこで、事務局職員の資質を高めるためには、事務局外のいろいろな職場をローテーションさせるとか経験を積ませるということが必要だと思いますけれども、監査事務を行うとき、事務局員の監査をする立場が、監査対象職場の職員の立場と距離が近くなって、互いに身内意識といいますか、独立性が逆に薄れるという欠点も出てくると思っております。

 実は、私も地元の県の監査委員、一年だけやっておりまして、特に地方の小さい監査の組織でありまして、この人材育成の難しさを本当に感じておるところなのであります。

 そこで、この監査委員及び監査の事務局職員に対する研修の充実がやはり必要だと思うわけですよ。大事だと思うわけなんです。ですから、さまざま今言ったような問題点を勘案しまして、この人材育成をどのような形で持っていったらいいのか、その工夫、それから、今後どのように改善していこうとするのか、あわせてお伺いしたいと思います。

山名大臣政務官 御指摘の監査委員及び事務局職員の研修ということでございますが、委員御指摘のとおり、重要な立場にあるわけでございまして、今、全国単位、ブロック単位あるいは都道府県単位でそれぞれの監査委員協議会連合会、こういった組織がございまして、そういったところで、財務に関する実務の実例研究といいますか、こういうことを定期的に行っているところでございます。

 総務省におきましても、監査等に関する行政事務につきまして一定の経験を有する職員が外部監査人となることができる、こういうことになりましたわけでございますので、自治大学校に監査専門課程を置きまして、これは平成十二年度からでございますが、監査委員の事務局の職員を対象といたしまして研修を三カ月間行う、こういう制度も導入をしているところでございます。

 いずれにしましても、今御指摘のように、監査制度が適正に運用されるということが、当然、分権型社会にとって必要不可欠のものであることはそのとおりでございますので、今後とも、監査委員並びに事務局職員の資質を向上させるための取り組みを一層拡充させていきたい、こういうふうに考えているところでございます。

黄川田委員 この監査に関しては、個人的な気持ちとすれば、都道府県に一つ一つあるんじゃなくて、例えば私、地元が東北でありますので、東北ブロックで大きな監査の組織としてやれるような仕組みがあればなと思っているわけなんですが、いずれ、職員の資質の向上には特段の取り組みをお願いいたしたいと思っております。

 次に、住民監査請求に引き続く住民訴訟の質疑に移りたいと思います。

 御案内のとおり、現在の住民訴訟制度は、住民監査請求による監査の結果もしくは勧告、議会、長等の措置に不服がある場合には、その請求にかかわる違法な行為または怠る事実について、住民訴訟を提起することができることとされております。

 今回の改正は、訴訟類型の見直し、特に四号訴訟等を見直し住民訴訟制度の充実を図るものであると言われておりますけれども、また一方、これでは首長等の不正、腐敗を防ぐ上で絶大な抑止力を持っていた住民訴訟制度が機能不全に陥ってしまうという意見もあります。現行の四号訴訟は、住民が地方公共団体に代位して、長や職員等の財務会計上の違法行為にかかわる責任を追及するものでありますけれども、実際には、関係する職員個人の責任追及という形式をとりながら、財務会計上の行為の前提となる地方公共団体の政策判断や意思決定が争われている事例も、これまた見受けられるところであります。

 そこで最初に、今までの住民訴訟の実績、すなわち提起された訴訟件数と訴訟結果はどのようなものか、そしてまた、そのうち四号訴訟の実態はどのようになっておるのでしょうか。改めてお伺いいたします。

芳山政府参考人 財団法人自治総合センターの調べによりますと、平成六年度から十年度までの五年間に提起された住民訴訟は八百七十八件でございます。このうち、期間内に終了し、または判決がおりたもの、これは五百八十四件となっております。

 これは、いわゆる一号訴訟から四号訴訟までの全体の住民訴訟に係るものでありまして、四号訴訟のみに係るものは集計されていませんが、このうち、請求の全部または一部が認容される、また、原告が勝訴をしたというケースは三十七件でございます。その割合は六・三%というぐあいに相なっております。

黄川田委員 この改正案の四号訴訟の特徴でありますが、これは、二段階に変えることであります。最初に住民が自治体に対し、あなた、自治体は被害者なのだから、加害者、首長らに損害賠償を請求しなさいという訴訟を起こします。そして、住民側が勝訴すれば、次に自治体が首長らを訴える。この二段階方式は、裁判に大きな費用と時間を要して、住民側に過大な負担を強いることになるなど、批判がこれまた多いわけであります。

 そこで、なぜこのような訴訟類型に再構成したのか、その背景と理由をお聞きいたしたいと思います。

片山国務大臣 もう既に何度もお答え申し上げておりますけれども、今までは、職務で財務会計行為をやる、またはやらない、それを、個人の責任として訴訟を提起されて個人で訴訟に対応していく、これが大変不合理ではないか、こういう発想でございまして、個人に着目されますから、機関の責任というのがあいまいになる、こういうことで、そこは改めた方がいいんではないか、こういう考えです。

 ただ、黄川田委員が言われたように、二段階になるではないかと。それは、訴訟告知をして、何度もこれは申し上げておりますけれども、判決の効力は及ぶんですから、第三者を、それでは私も参加すると、補助参加するかもしれません。だから、一遍で済んじゃう。恐らく、いろいろなケースが想定されますけれども、ほとんどが、今私が言ったように、訴訟告知、補助参加で、二段階ということはほとんどないんではなかろうか、こういうふうに思っておりまして、それにかかる手間や時間やお金は膨大なことにならないんではないかと思っております。

黄川田委員 一方、株主代表訴訟に関して、取締役の賠償に対して、報酬の二年から六年分の上限を設けるなどの商法改正案が上程されて、本日、衆議院で可決したわけなんでありますが、四号訴訟の多大な損害賠償の判決に対しまして、共済制度や保険制度を設けるなどの対応策を講じてはどうかとの声も聞くこともあります。

 そこで、とかく批判の多い大がかりな訴訟類型の再構成をせずに、このような何らかの現行制度を補完する方式はあり得ないのでしょうか、副大臣。では、政務官、お願いいたします。

山名大臣政務官 そういう主張があることはよく承知をいたしておりますが、今回の四号訴訟の改正というのは、先ほど御指摘があったように、あくまでも、首長さんや職員が個人として被告になっていたものを、執行機関、組織を被告とする、こういうことでありまして、そのことによりまして、今まで以上に地方公共団体の説明責任が高まり、資料の提供が十分できる、そして、地方公共団体として組織的に違法行為の是正を行う、いわばこういうことをねらったものでございます。

 そういう意味では、御指摘のあった賠償限度額の制限だとか、共済制度あるいは保険制度の導入、こういうことにつきましては、首長や職員個人が被告となることには変わりはないわけでありまして、こうした目的を達することはできないわけでございます。

 実際、実体責任、こういう観点から考えても、こういった実体責任の制限あるいは共済制度の整備というのは、結果として、住民訴訟制度の持つ違法行為に対する抑止効果を減ずる、こういうことになるんではないか、むしろマイナスではないか、こういうふうに考えているところでございます。

 特に、実体責任を制限する点につきましては、住民の皆さんに納めていただいた税金という公金によって運営されている地方公共団体が被害をこうむっているにもかかわらず、損害賠償に制限を加えるということが果たして適切なのか、こういうこともございます。

 さらには、まさに地方分権の進展が今音を立てて流れているわけでありまして、当然、地方公共団体の自己決定あるいは自己責任の原則、こういったものが高まる中、首長さんあるいは職員の果たす役割というのがますます大きくなっておるわけでございます。そういう意味からも、この実体責任を軽減するということが果たしてこの流れの中でどうか、こういう問題も存在をするということも言えるんではないか、こういうふうに思っているところでございまして、ぜひ今回の法案のお認めをいただきたい、このように思うところでございます。

黄川田委員 先ほども指摘しましたけれども、この四号訴訟の見直しで、長等が個人として被告とならなくなることによりまして、抑制力が薄れ、行政執行が安易に走るおそれがあるとの批判があるわけであります。

 そこで、関連してお尋ねいたしますが、弁償額を自治体が長等に求償するとした場合、その額の算定をだれがどのようなルールで行うのでしょうか。また、その際に、客観性や公平性が保たれるのでしょうか、あわせてお尋ねいたします。

芳山政府参考人 今回の改正によりまして、被告が地方公共団体の執行機関になりまして、長や職員個人に対して損害賠償請求をするよう求める履行請求の訴訟となります。御指摘がありました点につきましては、住民が、住民訴訟において、長や職員個人に請求すべき金額を主張するわけでございます。裁判所が証拠に基づいて請求すべき金額を認定することに相なると思います。その上で、住民が勝訴した場合には、裁判所で認定された金額を地方公共団体が長や職員個人に対して請求するということになります。

 したがいまして、損害額の認定については、公平中立な裁判所において判断されます。そういうことで、客観性、公平性は十分に担保されるというぐあいに考えております。

黄川田委員 時間も残り五分でありますので、最後に、さらにこの四号訴訟の改正案では、原告側が勝訴した場合、執行機関が損害賠償の支払い等を請求しても、六十日以内に支払われなかった場合、損害賠償の請求を求める訴訟を提起しなければならないとしております。しかしながら、この訴訟の請求を提起する期限が明示されておりません。

 そこで、執行機関が訴訟をおくらせたり、あるいは訴訟を起こさなかった場合は、どう対処すればよいのでしょうか、あわせて最後に総務省にお尋ねいたします。

芳山政府参考人 今回の改正案では、長や職員個人に訴訟告知をすることを義務づけておりまして、その新しい訴訟の判決効力は原則として長や職員個人に及ぶというぐあいになります。住民が勝訴した場合には、その後の訴訟で争う実益がなくなるわけでございまして、通常は、訴訟に移行するまでもなく、損害賠償金等が支払われることになるというぐあいに思います。

 仮に支払われない場合が存した場合におきましても、今回の改正案の中で、四号訴訟で住民が勝訴した場合に、判決が確定してから六十日以内に損害賠償金が支払われないときは、地方団体が訴訟を提起するということを明文化してございます。このため、訴訟を提起する義務を有する長としては、正当な事由がない限り、速やかに訴訟を提起しなければならないという義務を負うことになるというぐあいに考えております。

黄川田委員 住民訴訟につきましては次の委員会でまた御質問いたしますし、そして、別件で二件通告しておりましたが、これも次の委員会に繰り延べて質問いたしたいと思います。

 時間でありますので、終わります。

川崎委員長代理 次に、春名直章君。

春名委員 日本共産党の春名直章でございます。

 地方自治法第二百四十二条の二第一項第四号の代位訴訟制度の見直しについて、私からもお聞きします。

 先ほどの松崎委員や武正委員の御答弁も聞いていて、不思議な見直しをするなと私は思っております。要するに、総務大臣は、地方公共団体の長や職員は、職務として仕事を行っているのであって、個人でやっているわけじゃないと、だから、今度の制度は、個人じゃなくて機関としての長あるいは機関の一員としての職員、つまり、自治体なんですけれども、に対する訴訟にしていくということで、整合性があるという御答弁をされていると思います。

 ところで、職務として仕事をするのはごく当然でありまして、また組織として仕事をするのはごく当然でありまして、そのことを前提にして、なおかつ個人として違法あるいは不当な行為があると住民が判断した場合に、裁判所にその長や職員、個人を訴えることができるというのが、この四号訴訟の中身なんですよ、性格なんですね。それで今まで営々と五十年間やってきて、今さら、なぜこれをあえて変えるのか、先ほどの議論を聞いていても、私はさっぱりわかりません。わかるように御答弁いただきたいと思います。

片山国務大臣 私の説明能力が乏しいからですよ。

 機関の長、機関の一員として職務でやったことについて、住民の皆さんが、おかしいと、違法だと機関の長、機関の職員として訴訟を起こすべきで、それが個人の失敗やいろいろなあれがあるとすれば、今度は機関の中における個人の責任を追及すればいいのですよ。ただ、訴訟はそれをやると、黄川田委員が言ったように、二段階になりますから、訴訟告知を義務づけているのですよ。だから、判決の効力は当然及ぶのですよ。私は、もう前から、かなり昔から、これはアメリカの制度をそのまま入れちゃって大変だな、こう思っておりまして、だんだん大変さが大きくなってきたのですね。

 そこで、第二十六次の地方制度調査会がいろいろ御検討されて、国会の代表の方も入っているのです、何度も言いますけれども。衆議院も参議院も入っているのです。本当に代表者の方が、大変良識のある方が入って十分な審議を重ねられた結果、答申をいただいたものですから、我々は地方制度調査会の答申は大変重いものだと思っておりますから、それによって今度、ほかのところもやっていますよ、監査請求の差しとめだとか住民投票だとか、いろいろなことを御承知のようにやっておりますけれども、それは地方制度調査会の答申をそのまま尊重して制度化したわけでありまして、ぜひその辺はひとつよろしく御理解を賜りたい。

春名委員 大変さが大きくなっていたというところが重要でありまして、そこのところを後できちっと議論しておきたいと思うのですが、ただ、原理論を確認しておく必要があると思うのですね。つまり、そもそも四号訴訟はなぜ私人としての個人を被告にするという仕組みにしているのか。一―三号までと違って、四号はなぜ個人を被告にしているのか、その点の原理論を答えてください。

芳山政府参考人 住民訴訟制度は、二十三年の地方自治法改正により導入されたものであります。現行の四号訴訟は、先ほど御議論がありましたけれども、三十八年の地方自治法改正時に規定の整備が図られました。そのときに、長や職員、相手方は個人として損害賠償、不当利得返還請求等の被告となるというぐあいにされまして、一号、二号、三号、四号をつくりました。

 このような個人を被告とする訴訟が導入された経緯は明確ではございませんけれども、三十八年改正時に、商法上の株主代表訴訟ないしは米国の納税者訴訟を参考にしながら、地方公共団体が実体法上有する請求権を住民が地方団体に代位して請求するという性格を明確にしたというぐあいに理解をしております。

春名委員 それは制度の中身を説明しているだけであって、なぜ個人を被告にしているのかという説明は全然ないのですね、あえて避けているのかもしれませんけれども。

 私、いろいろな権威ある人たちの論文を読んでみました。全部共通しているのがあるのですよ。聞いてください。住民訴訟の本質的な性格は、対内的ないろいろな統括権だとか、あるいは財務会計上の適法性などを確保するさまざまな権限を地方公共団体の長が有しているのにもかかわらず、その権限を行使しないでその自治体に損害を与える、あるいは与えるおそれがあるときに、その是正措置の一つとして住民に訴権を与える、これは住民訴訟全般ですね。そして、とりわけ四号訴訟という性格は、その訴えられた本人、つまり、自治体の長などですけれども、長などが組織としての役割を果たしていない、つまり、権限行使を行うことを放棄したに等しい、そういうことを理由にして訴えを提起するわけなんですよ。

 だから、これは私人たる個人として訴えなきゃいけないのですよ。性格はそういうものなんですよ。そして、裁判で個人の違法性、公益性との関係なんかを議論して違法性が問われるわけでしょう。だから、個人を訴えるというところに意味があるのですよ、この四号訴訟というのは。その個人が権限を十分持っているのに、財務会計上の適法性などをしっかり確保するための権限を持っているのに、それを十分果たしていないということを言って、だから、その個人を訴えて地方公共団体の損害を守ろうと、これが四号訴訟の精神じゃないですか。何でこれを変えなきゃいけないのですか。

片山国務大臣 権限がある個人というのは、機関の長なんですよ。組織の長として、その権限を曲げて使ったり使わなかったりすることは、機関の長として不適格で、責任があるということですよ。だから、そこに着目して住民が訴訟を起こすのですよ。そうした方が、理論構成はずっとそれがわかりやすい。あなたの言うことは、そのまま今度の新しい制度の正当性を裏づけている説明ですよ。

春名委員 なかなか、やはり弁が立つ大臣だなと私は思いますけれども、これはなかなかの議論になりますけれども、しかし今、個人の、私人としての個人ですよ。だから、もう明確にしましょう。私人としての個人、機関としての長、これを区別せよということを私は言っているのですよ。あなたはそれをあえて混同させて、整合性があるというふうな言われ方をしているのだけれども、私人としての個人がその権限を持っているにもかかわらず、十分それを行使しなかったということにかんがみて、住民がそれに対して自治体に損害を与えないようにという立場から、住民自治の立場から、その個人を訴えるという仕組みなんですよね。これは非常に整合性があるのですよ。大臣が言われることは、何かキツネにつままれているような感覚で私は今聞きました。

 だって、大臣はもう地方自治の権威ですから、いろいろな論文を全部読まれていると思うのですけれども、住民訴訟の本質的な説明をしている論文は、全部今私が言ったような立場で、だから、私人としての個人を訴えることが整合性があるし、四号訴訟というのはそのためにやられているんだという説明をされているのですね。だから、あえて、なぜそれを今改変してしまう必要があるのかということが私にはどうしても合点がいかないので、もう一回きちっと言ってください。

片山国務大臣 その権限があるということが、これは私人は権限がないのですよ。権限があるということは、機関の長だからなんですよ。何とか県知事だとか何とか市町村長という地位、機関の長であるから、権限がくっついているのですよ。私人はその辺、歩いているだけですから、だから機関の長の責任を明らかにするということなんです。

 それが、前の制度だと、我々が考えている改正前の制度だと、個人しか責任が問えないから機関の責任が問えないじゃないか、機関の長としての責任が問えないじゃないか、それをまずはっきり問うて、その上で個人にも責任がある場合には賠償させる。訴訟参加を義務づけて、訴訟告知を義務づけている、こういうことにしたので、それは地方制度調査会でしっかり議論していただいて、良識ある先生方と衆参の代表の方が入って議論していただいた答申を受けているから、我々はそれを制度化しよう、こういうわけであります。

春名委員 要するに、こういう私人としての個人を訴えて自治体の損害を守るという制度が導入されている背景には、この討議の中でも、大臣が、地方自治の本旨という問題で、住民自治も重要な構成要素であるというお話をされていると思うのですが、その問題が私はこの制度の中に含有されていると思うのですね。

 それで、この四号訴訟というのは、今私がお話ししましたように、自治体の長や職員が違法な行為などを行って自治体に損害を与えた場合に、その自治体に住民が成りかわって、代位というのはそういう意味ですから、成りかわって住民が損害賠償請求あるいは不当利得返還請求を行って、自治体の行財政運営の適正を確保するというものとしてつくられているものですね。

 つまり、これはどういう論理構造になるかというと、住民が自治体の分身として違法行為をした長や職員を訴えるという構造になるわけですね。まさに住民自治の具現化、まあ言えば、参政権の一つというふうに言えると思うのですよ。ここでは住民と自治体は同格であって、身内であって一体だと、住民と自治体が。現行の四号訴訟はそういう関係なんですよ。そういう構造になっているのですよ。私はこれが住民自治だと思いますけれどもね。

 今度の改変で、はっきり言って、これは根底から崩されるわけなんですよ。なぜかといえば、この改正は住民と自治体が率直に言って敵対関係になっちゃうんですよ。これは幾ら何でも住民自治の大きな後退になると私は思わざるを得ないと思うのですね。この点、どうでしょうか。

片山国務大臣 住民が団体に代位して訴訟を起こすというところはいいのですよ。相手は団体じゃないのですよ、機関なんですよ。

 団体というのは、日本国でも東京都でもいいですよ、東京都というのは団体ですよ。東京都知事は機関なんですよ。東京都都議会も機関なんですよ。東京都監査委員も機関なんですよ。大きい東京都の利益を考えて、東京都の住民が、知事や知事の補助機関である、例えば、出納長でも総務局長でもよろしゅうございますけれども、それの責任を問うのですよ、財務会計行為で違法行為があるという。だから、団体と住民が敵対するんじゃないですよ。住民が団体の利益のために機関と敵対するんですよ。しかも、それは監査請求を前置するんですよ。監査請求をまずやるんです。その上でのことでございます。

春名委員 では、私はお聞きしますが、現行の制度の個人が訴えられるということが続くということで、何が不都合なのか、どういう問題があるとお考えなのか。先ほど、大変さが大きくなってきたと言われましたので、これはどういうことなのか、その点を言ってください。

片山国務大臣 私人個人が訴訟の対応をせなければいかぬのですよ、手間も時間も精神的なプレッシャーもお金も、私は大変だと思いますよ。機関の一員として職務で行った財務会計行為について、個人として対応するわけですよ。その件数が、御承知のように、ふえているか減っているか知りませんが、まあふえているんでしょうね、そういうことで、いろいろなそういうことの苦情やお話もありますし、地方制度調査会の答申もありましたので、そこで私は、今回はこういうことで地方自治法の改正をほかのものとあわせてお願いしよう。これは、今、春名委員が言われた住民自治にとってはこの方がプラスだ、こういう判断から今回お願いしているわけであります。

春名委員 住民自治にとってプラスというのは全く違うのですけれども、それはおいておいて、要するに、せんじ詰めて言えば、首長の負担を軽減してほしいというのが一番の改正の目的といいますか、直接の動機ということで今おっしゃったんですが、そういうことでしょうか。

片山国務大臣 春名委員、質問されたほかの先生方に何度もお答えしておりますけれども、機関の責任をはっきりさせる、機関の説明責任を住民にしっかり知らしめる、一番のねらいはこういうところにあるんですよ。住民自治の徹底というのは、そういうことを地方制度調査会も言っているんですよ。

 ただもう一つ、個人として訴訟の対応をするから、株主代表訴訟とは違いますよ、違うけれども、個人をつかまえられて、個人が訴訟当事者になって対応するということは私は似ているところがあると思うので、そういうことについての大変さというのがあるんだな、これは私個人の認識ですけれども、私個人はそういう認識を持っておりますし、何度も同じことを言いますけれども、地方制度調査会の権威ある答申が出たものですから、それにのっとってと、こういうわけであります。

春名委員 違法なことをしたり違法と疑われるようなことをするから訴えられるのであって、そうでない、身に覚えのない首長は正々堂々としていればいいんですね。そして、しかも、最近五年間に提訴された住民訴訟事件で自治体が裁判参加を申し出たケースは二百七件あって、そのうち二百四件は裁判所もそれをお認めになって自治体が裁判参加をやっているわけですね。その瞬間、役所は公金を使って弁護士を雇うこともできる、こういうことになっているわけですね。堂々としていればいいんですね。それで、被告となる迷惑というのは、せいぜい弁護士を依頼して、その費用を勝訴判決が出るまで立てかえるというときには少し負担になると思うんですけれども、そういう問題なんですね。だから、何でこんなことを今変えなきゃいけないのか、私はどうしても不思議で不思議でしようがないんです。

 それで、先ほど松崎委員が御質問をされていましたが、先ほどの談合の問題ですけれども、これはどう考えても矛盾中の矛盾ですよ。訴えられた側は、当然、談合などの違法行為はなかったというスタンスに立って住民側の主張が成り立たないことを立証する、裁判というのはそういうものですから。裁判というのはそういうものですから、それぞれ原告と被告があって、被告の側はそれは間違っていますということを立証するために裁判に立ち臨むのであって、それが、原告の住民、相手は自治体も一体になって、談合業者も一体になって住民に立ち向かってくるということになって、そういう仕組みにしたら資料がたくさん出てくるだとか自分に不利な資料がいっぱい出てくるだとか、裁判でそんなことなるわけないじゃないですか。裁判制度そのものを否定するようなことを言われるから、私は本当に不思議でしようがないわけです。そういう矛盾が起こるんですよ、こんな仕組みをつくっちゃうと。私は全然説明を理解できないですね、どうですか。

芳山政府参考人 先ほどもお話ししましたように、今度の新しい訴訟体系は、相手方たる第三者、企業のみならず、いろいろの職員も相手方になります。首長もなり得ると思うんです。

 いずれにせよ、今回の場合、執行機関が被告になるわけでございますから、そのときに訴訟告知をする。訴訟告知をすれば訴訟参加をするということになりますが、その段階では、住民の判断と被告である執行機関の判断が、前置であります監査請求の段階で意見が分かれておるということで、住民監査請求の措置に不服なわけでございます。それで住民訴訟になっているというのが今度の新しい体系であろうと思います。

 それで、訴訟について、その訴訟の事実の有無を争うということでございますので、判決の効力も当然、訴訟参加をする第三者にも及びますし、それが敗訴になれば賠償請求、賠償命令をするぐあいになるという構図でございます。

春名委員 それは松崎さんに言われていることと同じことを繰り返しているんですけれども、監査の話はいいんですよ。前置主義でそういう議論をやって、不服だからといって住民がやるという話なんでしょう。

 だからといって、では、自治体が談合業者と一緒になって、つい立てになってそれを守るというのを、裁判で、構図でつくっていいんですかと言っているんですよ。そんな仕組みがありますか。

片山国務大臣 今の制度なら、談合業者、談合業者というのはいかがかと思うけれども、その業者、直接、業者を訴えてやるんですよ。業者は否定するに決まっている、訴えられているんだから。今度は、機関の長なり、長の補助職員、職員が訴えられるんですよ。もちろん、業者は訴訟告知で補助参加するでしょう、補助参加することが多いと思いますよ。

 今度は、表に立つのは機関の長なり職員なんだから、それが談合業者と一緒になって、談合業者と一緒になって、それは地方団体に対する冒涜ですよ。そういう団体もあるかもしれぬ、そうでない団体もたくさんあるんだから、それはその方がずっと、訴訟をやってみて、どっちがどうかというのはわからない、私、そう思いますよ、私は地方団体を信じているから。業者の言うとおりになるようなことはありませんよ、それは。だから、訴えた住民としては、業者よりは地方団体の方が相手としてはずっといい相手なんだから、目的を達することが多いと思います。

春名委員 それは、大臣の方が自治体を冒涜しているんですよ。自治体をそういう立場に置かせるような制度設計をこの仕組みで導入するということになっちゃうから、問題だと言っているんですよ。裁判というのはそういうものでしょうが。

 監査請求をやった後に、訴訟を起こして裁判するんでしょう。そのときに、まず訴える相手は自治体であって、その先にある業者ではないんですよ、今度は。間に、そこに立つわけですよ、自治体が。さっき、機関の長だ、長だと言うのですけれども、これは自治体と同じ意味ですから、自治体が立つんですよ。そして、自治体と、その、談合業者という言い方がだめなら業者が、疑われている業者が来て、裁判の中でやるという仕組みは、その裁判で談合はしていないという話をするために裁判があるんですから、向こうは。そうなっちゃうじゃないですか、だれが見たって。これは大きな矛盾じゃないですか。大臣、どうですか。

片山国務大臣 何度も同じことを言うのもあれなんですけれども、それは、業者を相手にするよりは、その業者の仕事をしたり、いろいろな財務会計の手続を、お互い関連があったりするのは、それは団体じゃないんですよ。団体と機関というのは分けてもらわなきゃいけませんよ、これはもう行政法上はっきりした別の概念なんだから、団体のいろいろなことを決めるのが機関なんですよ。だから、簡単に言うと、地方団体でいえば執行機関と議決機関があるんです、ほかにもありますけれども。

 執行機関である首長さんか首長さんの部下が、当面、訴えの対象になる。しかし、その首長さんや部下は何であったかというと、議会で議決された予算に基づいて、あるいはいろいろな手続を経て、場合によっては命令を受けてやっているんですよ。職務としてやっているんですよ。ただ、それが違法だったかもしれませんよ、違法でないかもしれぬ。そこが争いになるわけで、業者はもちろん関係があるけれども、直接のあれは、やはりそういうことをまず争って、しかし、業者を逃がすわけじゃないんだから、業者も補助参加するんですから、訴訟告知して効力が及ぶんだから、問題があるとすれば、業者からちゃんと賠償を取り上げるわけですから、私は、その点は御心配が要らないので、むしろ、前の制度よりすっと責任体系が明らかになって住民自治が徹底する、こういうふうに思っているわけであります。

春名委員 なかなかすれ違いの議論になるのですけれども、そうであれば、そういう効果を期待するのであれば、今住民個人が業者に対して直接訴訟できるという仕組みを今さら変える必要はないんですよ。何でそこで、そういう、私に言わせたらへんてこりんなものを入れてしまうのかというのが、今の議論を聞いていても、私は、なかなか国民、住民を納得させるものにはならないという気がしてならないですね。

 それでもう一点、今度変えようということの趣旨で、こういう議論をされているのですよ。要するに、公金支出の違法性が争われる場合が多いわけですよね。そのときに、手続上の瑕疵というよりも、当該支出の公益性、これが結果的に問われることが多い。だから、組織として仕事をやっているということと、冒頭から話していることと一体の話なんですけれども、当該支出の公益性、これが結果的に問われることが多い。そういう公益性というのは議会が多数決で決めたりしている、そういうものも多いのに、争われている。これは、政策判断、こういうふうなものが争われるのは困るという議論もあるし、前回の議論でもそういう意見が御答弁でもあったと思うのですね。この点も次にまた議論をしたいのです。

 総務大臣にお聞きしておきたいと思うのですけれども、公金支出の公益性が裁判で問われるのは、ある意味、当然といえば当然だと思うのですよ。公益性を逸脱しているから違法だという判断が下されるのであって、公益性のない話というのはないわけで、公益性を逸脱しているかどうかが争われるわけであって、支出の公益性が問われるというのは、ある意味、当然だと私は思うのですよ。その点どうかということ。

 それからもう一つは、政策判断に関係するから、財務会計上の行為だけじゃなくて、首長の政策判断に関連することが議論をされて、それではなかなか、いい政策判断にちゅうちょが出る、こういうお話も確かに前の議論でも出たわけなんですね。しかし、何か新しいことを始めた場合に、それに伴う財政支出が確かに問題になるのですよ。ですから、言うたら、公金支出が政策判断に関連するのはもう当たり前のことなんですね。

 ですから、政策判断に関することだから、あるいは支出の公益性自身が結果的に問われているから、あたかも、今の制度はまずい、この訴訟のやり方はまずいというようなニュアンスのことが議論されるのですけれども、これは当たらないんじゃないか、私はそういう認識を持っておりますが、その点をお答えいただきたいと思います。

片山国務大臣 いや、だから、公益性や公共性の是非を争われる、政策判断が争われることは、個人じゃないんですよ。首長としてどういう政策判断をしたか、公益性や公共性をどう判断したかがまさに争われるのです。だから、機関の長でなきゃおかしいんですよ。その辺を歩いている普通の個人では、単なる私人じゃだめなんですよ、機関の長、組織の長であるその人の判断が争われるんですから。

 だから、機関の長で、おまえの政策判断は問題がある、責任があるということを住民から訴えられて、そこで訴訟をやるということがあるとすれば、私は、まさに個人でなくて機関の長の方が正しい、こういうわけであります。

春名委員 私の質問を全部逆手にとっていただきまして、そうではなくて、例えば、裁判所の判決は、あくまでその職員個人の行為について違法性があったかどうかが判決で問われているんですね。裁判というのは、それで違法性があるかどうかを問われているので、政策判断そのものの是非を問うているような裁判はないんですよ。

 そういう意味で、個人のやったことの違法性について、公益性を逸脱しているかどうか、そういう議論をしっかりやって、証拠も出して、裁判で議論をして、白黒をつけるという作業をやっているんですよ。四号訴訟というのは、そういう形でやって、だから、私人としての個人を対象にしてやっているんですよ。それが大きな効果も今上げてきているし、大きな監視機能も発揮しているわけでしょう。

 その点を、政策判断だから、だから、機関の長にした方がいいんだなんというんじゃなくて、それはちょっと別の世界の話で、違う話なんです。その点、間違えないでください。

片山国務大臣 全然間違えてないですよ。政策判断に基づく行為の違法性が争われるんですよ。政策判断に基づく財務会計行為の違法性が争われるんですよ。政策判断に基づく財務会計行為というのは、まさに機関の長としてやっているんですよ。あるいは、機関の一員として職員がやっているんですよ。だから、それを正面から責任を問う方がずっと訴訟としてはすっきりするし、筋が通るわけであります。

春名委員 それでは大臣、ちょっと私、基本的な認識で聞いておきますけれども、政策判断そのものが住民訴訟で争われて、そのものについての是非が問われた、そういうふうな判例があるのかないのか。突然の話なのでわからないかもしれませんけれども、どういう御認識でしょう。

芳山政府参考人 事例があるかどうかというお話でございますけれども、ほとんどの訴訟案件は、一部政策として争われている行政事件でございますけれども、例えば埋立事件、福祉施設の設置、それについては、財務会計の手続については違法じゃない、その先行行為である土地取得とかが争われるということでございますので、職務行為ないしは政策行為について、先行行為として後行行為が違法承継するのかということで、政策が伴って争われているというのが実態だろうと私は認識しております。

春名委員 だから、例えば、公金の支出が公益性を逸脱しているかどうかということが争われて、違法性かどうかが争われているということだろうと思うんですね。

 もう時間が来ましたので終わりますけれども、また次の機会にもう少し深めてみたいと思いますが、今回は、この四号訴訟は二段階構造にしてしまう。そうなりますと、例えば、日弁連などからも、訴訟の蒸し返しとなって訴訟の不経済にもなる、法的な不安定状態がいたずらに長引く、損害回復の著しい遅延ももたらすことになりかねない。市民オンブズマンネットワークの皆さんからは、住民が提訴できるのは前段階のみで、勝訴した場合でも後段階では住民は一切関与できなくなる、提訴の適否を含め、事件への対処を公共団体の長、長が被告の場合には監査委にゆだねるしかなくなる、住民の監視がそこにはもう届かなくなる。こういう疑義の声が多数寄せられておりますので、私は、この改正はやるべきではないということをはっきり申し上げておきたいと思います。

 以上で終わります。

川崎委員長代理 次に、重野安正君。

重野委員 それでは質問いたしますが、私の質問は、合併協議会設置に関する住民投票と間接民主主義における議会の権能、そういう関係を中心に質問いたしますので、よろしくお願いをいたします。

 一昨日の私の質問で、現行地方自治制度は間接民主主義を基本とし、直接民主主義はこれを補完するもの、総務大臣はそのように答えられました。この点について、確かに憲法上も間接民主主義をよりどころとしていることも明らかでありまして、そうではありますけれども、一方では、前回の質問でもただしましたが、町村総会の規定にも見られますように、現行地方自治制度は間接民主主義一辺倒となっているわけではない。条例の制定、改廃、解職請求制度等々もその一例であります。

 そこで、大臣にお伺いしますが、近年、地域社会のあり方とそれに対する自治体の政治姿勢あるいは施策をめぐって、住民投票の実施を求める声も高まっています。調べてみますと、一九七九年以降最近まで九十一件の請求がある一方、この請求のあるなしにかかわらず行われた住民投票が十三件となっています。したがって、直接請求のほとんどは、首長や議会の反対で実現しなかったわけですね。これが現在の直接民主主義の一つの現実である。

 そこで、大臣、こうした実態にある住民の直接民主主義について、いかような見解をお持ちでしょうか。

片山国務大臣 重野委員が言われましたように、直接請求が九十一件ということで、大部分が議会の反対で実現していない、こういう御指摘がありましたが、今の日本国憲法は、地方自治制度については、国政もそうなんですけれども、間接民主主義でいく、これは憲法上はっきりしていますね。しかし、同時に、今の地方自治法では直接民主主義の制度もいろいろ取り入れているわけですよね。しかも、今度の二十六次の地方制度調査会の答申でも、もう少しそれを充実したらどうかということが、例えば、住民投票だとか直接請求の要件の緩和だとか、そういうことにいろいろなっているわけですね。

 それで、今一番問題は、議会制民主主義の議会と生の皆さんの住民との間の意思が、おおむね一致しているんでしょうけれども、やはり乖離しているケースが多い、こういうことでございまして、そこを補うために直接民主主義の手法が取り入れられているわけでありまして、結局、間接民主主義中心なんですけれども、議会制民主主義中心なんだけれども、そこでどこまで補完するか、私はその程度が実は問題だと思います。それはやはり最終的には、立法政策というんでしょうか国民の選択というんでしょうか、そういうことじゃないでしょうかね。我々は、今の直接制を少し今度は拡充しようというのがこの法案でございまして、御承知のように、監査請求についても、直接請求についても、住民投票についても、今回のこの改正案でそれを取り入れるようにしているわけであります。

 ちょっとお答えになったかどうかわかりませんが、そういうふうに答弁させていただきます。

重野委員 住民自治とは、法制度上、間接民主主義を基本としている、そうはいっても基本は直接民主主義であると理解をいたします。昨今の住民投票に関する直接民主主義はそのことを示しているのではないかと思います。

 こうした趨勢を踏まえるならば、直接民主主義は間接民主主義の補完、補完という考え方そのものの再検討が必然的に迫られているのではないか。この点では、二〇〇〇年十月の地方制度調査会答申、その中で、「代表民主制を補完する意味で、直接民主制的な手法を導入することも必要」こういうふうに言われています、まあ、としか言われていませんがという表現がいいかもしれませんけれども、今後の住民自治には、相互補完、多角的といいますか多重的といいますか、そういうふうな関係が求められているのではないか、このように思うんですが、大臣、どのようにお考えでしょうか。

片山国務大臣 民主主義はみんなで決めるということですから、それは委員が言われるように、直接制民主主義でできるのが一番いいんですよね。しかし、それは物理的にもいろいろな観点からできないから、住民の代表を選んで、間接的に、住民の代表が住民全体にかわって物を決めていく、政治を進めていくというのが間接民主主義といいますか、議会制民主主義ですよね。

 今の憲法はその議会制民主主義を採用しておりますが、民主主義の根本は、それは私も直接民主主義だと思います。できないから、フィクションとして、今の間接制、議会制を採用している。こういうことですから、そこでやはり直接制民主主義で補完する、あるいは今、委員の言われましたように、相互補完というんですか、多様にする、多重にする、そういうことの必要はあるという認識が二十六次の地方制度調査会の答申なんですね。

 何度も言いますけれども、直接請求の要件緩和や合併に係る住民投票の採用や今回の監査請求、差しとめができるようにしたり、あるいは住民訴訟もそれで変える、こういうことでございまして、それはやはり直接制の重視だと、私は二十六次の地方制度調査会の答申を思っております。それを我々は尊重して、今回、制度化しよう、こういうことでございます。

 今後の傾向はやはり、この前も言いましたが、インターネットなんか物すごい普及をしてきまして、まだ四割ですけれども、ということになると、直接制の導入というのが改めて議論になると思いますね。

 ただ、それは国民が最終的にはお決めになることで、その間接と直接と組み合わせですね、どの程度直接制を導入していくかは、私は、最終的には国民の選択、ということは国会の選択、こういうことになるのではなかろうかと思っております。

重野委員 そこで、市町村合併特例法における合併手続過程での住民投票制度の導入という問題についてお伺いいたしますが、地方制度調査会答申は、市町村合併については、一つに、「まさに地方公共団体の存立そのものに関わる重要な問題であること、」それから二つに、「地域に限定された課題であることから、その地域に住む住民自身の意思を問う住民投票制度の導入を図ることが適当」、このように言っているわけです。

 これを素直に読みますと、市町村合併について住民の意思を問うこと、つまり、最終意思決定としての住民投票、こういうふうに読めると私は思うんです。また、そう読むのが妥当と考えるんですが、本改正案では合併協議会設置にかかわる手続にすりかえられている、このように私は読むわけです。副大臣、この点についてはいかがでしょうか。

遠藤(和)副大臣 お尋ねのように、第二十六次の地方制度調査会の答申ですけれども、重野委員がおっしゃったように、市町村合併については、「まさに地方公共団体の存立そのものに関わる重要な問題である」、あるいは二として、「地域に限定された課題であることから、その地域に住む住民自身の意思を問う住民投票制度の導入を図ることが適当である。」こうあるんですけれども、その後段の方に、「制度化に当たっては関係団体の意見を十分聴取の上、円滑な運用が図られるものとすることが適当である。」こういうふうななお書き的なところが入っております。

 それからさらに、その後ですけれども、地方分権推進委員会の方で御議論をいただきまして、市町村合併の推進についての意見におきまして、ここでは、「住民発議が行われても合併協議会設置に至らない場合が多いことにかんがみ、住民の意向がより反映されるよう、住民発議による合併協議会設置の議案が議会で否決された場合に、合併協議会の設置を求める住民投票制度の導入を検討する。」このように、一般的な住民投票制度の導入で行うのではなくて、合併協議会の設置を求める、こういう問題につきまして限定的に住民投票を導入することが大事だ。

 それからまた、住民に合併の是非そのものを問う、こういうことはやはり間接民主主義を否定するものになるわけですから、手続上の問題として、手続の一環として、住民発議制度、そして、それをさらに議会で否決された場合になおかつ住民の投票でそれができる、このように限定的に導入した、こういうことでございます。

重野委員 よく理解できないんですが、要するに、総務省の皆さんの考えは、直接請求の要件を満たしている住民発議が議会によって否決されてしまうから、これをクリアする手段として、今回のような途中の手続過程に住民投票を導入する、簡単に言えば、そういうことだと思うんです。総務大臣、今、私はそういうふうに受けとめたんですが、それはそうだと思いますが、いかがでしょうか。

 それなら、要件を満たしている他の直接請求、いろいろありますね。例えば、神戸空港建設の可否に関する住民投票についての住民の直接請求なども、基本法である地方自治法において住民投票を義務づけたらいいじゃないかという意見を私は持ちます。特定目的に限って住民投票を義務づけるというのは、ちょっと御都合主義的ではないかという指摘をせざるを得ないんですが、いかがでしょうか。

片山国務大臣 地方制度調査会の答申の読み方がいろいろあるんですけれども、昔は、昭和の大合併のときは、合併そのものを住民投票にかけたんです、市町村合併そのものを。ただ、その前提で、都道府県知事の勧告や内閣総理大臣の勧告がありました。その勧告をした後やらないというときは、その長や議会が住民投票にかけたんです。

 今回も、地方制度調査会は、そういう御意見もあったんです。しかし、合併そのものを住民投票で決めるのは、間接制民主主義をとっている我が国憲法の建前からいっていかがかなというちゅうちょが我々にありまして、ただ、合併協議会を住民発議で出したんだからそれが議会で否決されたら、もう一遍、ワンチャンスで、協議会を置くことを住民投票で決めたらどうだ。協議会ですから、議論する場ですから、合併するかしないかはやはり議会で決めてもらおう、こういうところなんです。

 そこで、今言われたように、ほかのものも、ほかの直接請求が否決されたときはなぜ住民投票をしないのだと。合併は特別だ、合併は、こういう思想でございます。それは地方制度調査会の答申でもそういう趣旨のことは書いておりますので、地方制度調査会は場合によっては合併そのものもという感じがあったんですけれども、しかし、それは関係団体の意見を十分聞け、調整しろ、こういうことでございまして、その関係団体の意見、地方六団体その他の意見をよく聞いて、我々もよく内部で検討した結果、協議会の設置は住民投票でやるということまでは、今のいろいろな枠組み、憲法の中では許されるのではなかろうか。

 しかし、これも、大変議論があるところです。だから、それは、何度も言いますけれども、立法府において大いに議論していただいて、この辺までということを、最終的には、私は、何度も言いますけれども、間接制と直接制の組み合わせ程度は、最終的にはやはり立法政策というか、国民の選択だ、このように思っておりまして、今回は答申の趣旨を生かしてこういう制度にさせていただいたわけであります。

重野委員 御都合主義と指摘をしましたが、その私の疑問を解消するだけの答弁ではないと言わざるを得ません。

 それでは、合併特例法の四条関係について聞きますが、総務省が強調してやまない間接民主主義からすれば、団体意思の決定機関としての議会の議決権は最も尊重されなければならないはずであります。だからこそ、基本法ともいうべき地方自治法は、厳密にこれを規定したわけです。これを制限するようなことは当然許されるはずもない。

 調べてみますと、議会の議決権を制限したものとして、新市町村建設促進法という法律があります。これ以外は、私の調べた範囲、一切ないんです。この点についてどのように認識されているんでしょうか。

芳山政府参考人 御指摘のとおりでございまして、新市町村建設促進法の規定の中には、市町村の境界変更または町村合併に関し、区域内の選挙人の住民投票に付し、市町村の境界変更に関し有効投票の三分の二または町村合併に関し選挙人の過半数の賛成があった場合には、市町村の境界変更または廃置分合の申請があったものとみなすという規定等がございます。

 現行法で、今回の合併特例法の規定のように、議会の議決とみなすというような規定はほかには存しないというぐあいに理解しております。

重野委員 私が指摘しましたように、今回の合併特例法改正案は、議会の議決権を制限する二番目の法律案、こういうことになる。それどころか、これはくしくもと申しますか、どちらも合併に関する点で、実に私が指摘をする問題点をよく示していると思うんですね。それだけに、本改正案がもたらす間接民主主義への影響は非常に大きいものがあると言わざるを得ません。

 そこで聞きますが、四条十七項で、合併協議会設置義務について、「有効投票の総数の過半数の賛成があつたときは、合併協議会設置協議について合併請求市町村の議会が可決したものとみなす。」とされているんですね。くどいようですが、これはなぜそうなるんですか。

遠藤(和)副大臣 今回の住民投票制度は、合併協議会の設置に関して議会と住民の意思が著しく乖離している、こういう場合に、住民の意思を尊重することが適当である、なぜならば、市町村合併というのは、これは進んで住民のために行うということがあります。それから、これは地方分権推進委員会の意見を踏まえているものでございまして、住民発議の手続の一環として行っている。住民発議が行われまして、市町村の議会が合併協議会の設置の議案を否決した場合について導入した、こういうことですね。

 この場合、合併協議会は、関係市町村の議会の議決を経て設置されたものであることから、「合併請求市町村の議会が可決したものとみなす。」こういうことにしたわけでございます。

重野委員 執拗に聞きますけれども、確かに、任意の場合を除きまして、法定協議会の設置は議会の議決事項であります。これは地方自治法二百五十二条の二第三項に規定されています。したがって、法定合併協議会も当然この規定の対象であることは間違いありません。そうであれば、この四条十七項はなおさら問題ではありませんか。

 そもそも、住民発議を議会が否決した場合で、首長が住民投票に付することを明らかにしたとき、あるいはまた首長がこれを明示せず、新たに住民が連署をもって請求したとき、初めて合併協議会設置のための住民投票がなされるこの改正案の仕組みからすれば、議会が一度否決したものを、住民投票で過半数を得たら、それは議会が可決したものとみなすなどということがどうしてできるのか、私のそういう疑問をまだ答弁は解明していない。それでは、この間、総務省が強調します間接民主主義をみずから自己否定することになるのではないか、このように思えるんですね。どうですか。

遠藤(和)副大臣 市町村合併をするかしないかの最終判断というのは、依然として議会がそれを決定するわけでございます。

 ただ、その手続といたしまして、極めて限定的な例外として、間接民主主義の、いわゆる議会の法定協議会設置を否決した場合のみ、もう一回住民から住民投票がある発議があり、それが過半数に達する投票があったという場合だけ、法定協議会の設置を認める。そこの部分だけ若干、直接民主主義が間接民主主義を上回っているというふうに理解していただけたらいいと思います。

 最終的な議会の権能、いわゆる合併するかしないかという最終判断は、依然として間接民主主義の議会が持っている、こういうことでございます。

重野委員 やはり説明に私は無理があると思うのですね。ですから、今までこういうことは二回しかやられていないということですね。このことに象徴的にあらわれていると思うのです。したがって、私は今の答弁ではなかなか納得できるものではありません。

 地方自治法に規定する議会の権能行使として否決されたものが、住民投票に付され過半数の賛成を得たら、それは議会の可決とみなす、これは手品みたいな話ですね。そんなことが特例法に名をかりてどうしてできるのかという思いがいたします。

 間接民主主義における団体自治の行使主体としての議会の権能、そのことと直接民主主義による効果、概念、このような法形式で結合するということが果たしてつなげるものか、そういうふうに思いますが、そういう私の指摘に対し、どのようにお考えでしょうか。

片山国務大臣 そういう意味では、極めて例外的に、この場合は、直接民主主義の方が間接民主主義に勝つようにした例外的な規定だと思っていただきたいと思うのですね。本来は議会が決めることを住民投票で代替するわけですから。

 ただ、事は合併でありますし、やはりその場合に、議会と本来の住民の意思の乖離を、もう一遍ここでどっちが本当は正しいか確認しよう、こういうことのために、合併協議会の設置についてだけは住民投票を認める、住民投票の結果が議会の議決に優先する、こういうことの制度を入れようというわけでありまして、これは第二十六次の地方制度調査会の答申に沿ったものなんですね。

 地方制度調査会の答申の中には、合併そのものもという議論も、先ほども言いましたように、あったわけですが、我々は、答申の中で一番軽い、緩い合併協議会の設置だけ住民投票にかけさせてもらおう、例外ですよ、新市町村建設促進法と二回目の例外ですよ。ただ、それは許されるかどうかという判断は、最終的には立法府でお願いいたしたい。

 我々は、ここまでは許されると、答申もあるし、協議会までは。合併そのものを住民投票にかけるわけじゃありませんと。合併協議会の場をつくることを住民投票で決めてもらう、ここまでは許されるんじゃなかろうかと。合併そのものまではちょっと御遠慮しよう、こういうことでございますので、ぜひ御理解を賜りたいと思います。

重野委員 いや、ちょっと乱暴だと思います。地方自治法二百五十二条の二第三項による法定協議会に対する議会の権能については手をつけられない。一方、住民発議については、議会の同意を得ることは難しい。そのため、合併は進まない。この隘路を特例法四条十七項で乗り越えよう、これが総務省が考え出した手なのかな、そのために総務省は、私は重大な自己矛盾を生み出していると思うのですね。これが今回の特例法改正案の最大の特徴であり、あしき法改正の見本だと私は決めつけさせていただきたい。

 前回の質問で、直接民主主義も間接民主主義も法理論上の優劣はないと総務省は認めておられる。特定課題であれ何であれ、住民投票制度を導入するなら、その限りにおいて、一昨日、大臣は、議会権限は制限されると答弁しているように、議会の議決権の制限を特例法でもうはっきり明記するか、地方自治法上に特例規定を設けるのが筋ではないか、このように私は思います。それができないというのであれば、最終意思決定手段であるにせよ、諮問的意思決定手段であるにせよ、地方自治法において、住民投票制度とそれに関する手続を明確に定めるべきである。そうでないと理屈が一貫しない、そうなるんじゃありませんか。どのようにお考えでしょうか。

芳山政府参考人 今回の住民投票制度は、住民発議の手続の一環として、合併協議会の議案を否決した場合に、合併協議会の設置の是非について住民投票をする、こういう制度であります。

 先ほど来お話がありますように、市町村合併そのものについては、地方自治法上の議会の権限は何ら変えたものとなっておりません。住民発議について規定する市町村合併特例法四条及び四条の二の改正を行うことにより、住民投票制度を導入することとした次第であります。

 なお、お尋ねのありました点につきましては、二十六次地方制度調査会の答申においても、自主的な市町村合併の推進という観点から、市町村合併特例法の中でこの制度は位置づけるのが適当であるという御答申をいただいております。

重野委員 まだ尽きませんが、時間が来ましたのでやめますけれども、やはり平成の大合併を何が何でもやり遂げなきゃならぬというのが先にあって、それにつじつまを合わせる形でこういうふうなものが出されてきていると思うんですよ。これはやはり、住民自治という精神からすれば、歓迎されざる状況だ、このように私は思います。

 今後とも、いろいろな角度から議論をしていただきたいことをお願いしまして、終わります。ありがとうございました。

川崎委員長代理 次に、三村申吾君。

三村委員 私は、青森の小さな町で町長をいたしておりました。こうして冬場になりまして、日が暮れてまいりますと、きょうも雪かな、除雪はちゃんとやっているかな、ふとそんなことを思います。

 それでは、十分しかございませんので、すぐ本題に入らせていただきます。

 さて、今回の地方自治法の改正、特に、私たち市町村長個人が訴えられる、そういう形が改められる提案には、私は大いに賛意をあらわすものでございます。

 ところで、話は変わりますが、市町村合併の議論というものが高まってきたわけでございます。合併は、地域の活性を高め、住民にメリットを感じさせるものでなければならないと考えます。そのためには、お互いの資源、施設であるとか制度の高度な相互利用、例えて言えば、現在ある医療、福祉、文教、体育施設等、介護や教育システムその他の制度の共用あるいは高度活用で、むだを排した便利さというものを地域住民に示さなければいけない、そう考えます。

 そのとき基盤となりますのは、何よりも道のネットワークでございます。合併でよくなったと実感し得るための道路整備というものが、むしろ地方では今こそ重点的に必要と考えますが、国土交通省の御発想を伺いたく存じます。時間がないものですから、簡明にお願いします。

    〔川崎委員長代理退席、渡海委員長代理着席〕

田中大臣政務官 お答えをさせていただきます。

 地方自治体の首長をお務めになられた経験をお持ちの三村委員の御指摘のとおり、市町村合併の促進は国の基本的な施策でございまして、それに向けてのインセンティブの提供、特に道路整備は重要な視点と考えております。

 そこで、日常生活の基盤としての市町村道から国土構造の骨格を形成する高規格幹線道路に至る道路ネットワークを体系的かつ計画的に整備することが重要であります。とりわけ地方道については、医療、福祉、廃棄物処理等の生活に密着した行政サービスを支える基盤でありまして、こうした観点から整備を進めることが必要であることから、国土交通省は従来より公共公益施設の共同利用に資する道路整備の支援を行ってまいりました。

 また、平成十四年度の予算においても、新たに総務省と連携して、市町村合併に関連した道路整備を支援する市町村合併支援道路事業の創設を要求しているところでございまして、この事業は、新市町村の中心部と旧市町村の中心部を結ぶ道路、あるいは新市町村内の公共施設などの共同利用に資する道路を整備するものであります。

 以上でございます。

三村委員 政務官から大変いいお話を伺ったと思います。

 実は昨日、青森の三沢というところで、「いのちの道」フォーラムというものがございました、新聞記事を持ってきましたけれども。道ばた会議という地域の道づくりを考える女性の方々と消防の方、看護婦さん、保健婦さん、九人のお子さんを持つお母さん、そういう方々が集まりまして、道は経済だけじゃないんだ、命や暮らしのかなめとなっているんだというアピールがあったそうでございます。何かといえば市町村長、私もそうでございました、市町村長と政治家だけが道路のことをアピールしているんじゃないか、そういう議論があるわけですが、地方では女性も、まさしく命を守る現場にある方々も必要性を訴えている、そういうことを政務官、強く御認識いただければと思います。

 とにかく時間がありませんので、そこで、総務省といたしまして、合併協議をより前向きに進めるためにも、たとえこの構造改革の中にあっても、地域連携に必要なものは必要として、道路のネットワーク整備の支援を強化する、そういう考えはございませんでしょうか。

    〔渡海委員長代理退席、川崎委員長代理着席〕

遠藤(和)副大臣 道路整備に対しまして、委員が大変熱心に、熱い思いを抱いているということを大変ありがたく思います。

 総務省といたしましても、市町村合併に対して、各省庁、政府の全省庁が一体的に取り組む支援プランをつくろうということで、この支援プランを八月三十日につくりました。これは五十八事業を一体的にやれるという中でございますが、その中でも、道路の整備につきましては優先採択する、あるいは重点投資を行うということでございまして、市町村合併をしようと思うところにつきましては短期間で道路のネットワークが整備できるように配慮している、こういうことで、国土交通省からも応援をいただいているところでございます。

三村委員 まさしく合併とは結婚のようなものでございます。より近くなってより会えるという形、よろしく御支援の強化をお願いします。

 それで、話がまたちょっと変わりますが、地方自治体が自立した自主財源というものを確保するためには、第一次産業というものがしっかりしなければいけないということが重要でございます。

 最近、漁民の方々による森づくりというものが各地で行われるようになりました。私の地元の下北半島でも、漁業関係者が植林を行っております。このような活動は、豊かな森が豊かな海をつくるということが理解されてきた、それが広まってきたことだと思います。その一方で、日本の森林と山村とが逆に危機的状況に陥っているという現実の裏返しであることも事実ではないかと思うわけでございます。

 さきの国会では林業基本法も改正され、森林・林業基本法として成立いたしました。この基本法の十二条二項に、地域における活動を確保するための支援を行う旨の規定があるわけでございますが、森林・林業の厳しい状況からすれば、この規定に基づく施策を早急に講じなければいけない、そう考える次第でございます。

 現在の検討状況や規模について、林野庁にお尋ねいたします。

加藤政府参考人 今、先生お話しになりましたとおり、森林・林業基本法におきましては、森林所有者等による森林施業の実施に不可欠な地域活動を確保するための支援を行う旨規定されたところでございます。この規定を具体化するために、現在、森林施業計画の作成主体である森林所有者などが施業の実施に不可欠な森林の現況調査等の地域活動を実施する場合に、一定の要件を満たす森林の面積に応じて定額の交付金を交付する措置というものを平成十四年度予算の概算要求に盛り込んでいるところでございます。

三村委員 概算要求の方に盛り込んでいるという話がございました。そのような支援は、森林が所在する地域における水の確保、生活環境の向上にも役立つものでございます。ですから、国だけではなく、その地域に密着した行政主体である市町村あるいは都道府県にも、地域の森林整備を進めるための施策を積極的に実施していただくことが必要である、私はそう考えるのでございます。

 ところが、地方の財政状況は、現在、国以上に厳しい現況に置かれておりますので、地方公共団体が積極的に森林整備を推進する施策に取り組んでいただけるよう、これまで以上に手厚い地方財政措置がなされてもいいのではないでしょうか。

 森林整備を促進する地域の取り組みに対する地方財政措置の充実について、総務省の見解をお尋ねするものでございます。

香山政府参考人 お答え申し上げます。

 山村地域の振興あるいは森林の公益的機能の維持増進というのは大変重要なことでございますので、私どもも、従前から、ソフト、ハードを合わせまして、森林・山村対策費というのを地方財政計画に計上いたしました。十三年度におきましては大体三千億円程度の事業費を確保いたしておりますが、ただいま林野庁からお話がありました新しい事業の裏負担等も含めまして、平成十四年度の地財計画の策定に向けて、御趣旨を体したような財源措置の充実について検討してまいりたいと考えております。

三村委員 持ち時間が終了いたしましたが、大変いいお答えをいただいたと思います。

 私の経験でございますが、地方の首長というものは、まさしく資金繰りの毎日でございます。いい財源やいい補助事業を求めまして県庁とか霞が関をとにかくうろついて回る、その中でいい仕事をしていきたいと毎日頑張っているのが地方の市町村長でございます。そういった方々、今、この林野事業のように、第一次産業がよくなれば、真水効果、非常にございます。そういったいい形での地域支援というものを心からお願いいたしまして、質問を終了させていただきます。どうもありがとうございました。

川崎委員長代理 次回は、来る十二月四日火曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五十三分散会




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