衆議院

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第23号 平成14年6月13日(木曜日)

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平成十四年六月十三日(木曜日)
    午前九時三十分開議
 出席委員
   委員長 平林 鴻三君
   理事 荒井 広幸君 理事 稲葉 大和君
   理事 川崎 二郎君 理事 八代 英太君
   理事 安住  淳君 理事 後藤  斎君
   理事 桝屋 敬悟君 理事 黄川田 徹君
      赤城 徳彦君    浅野 勝人君
      伊藤信太郎君    大野 松茂君
      河野 太郎君    左藤  章君
      佐藤  勉君    新藤 義孝君
      滝   実君    谷  洋一君
      谷本 龍哉君    野中 広務君
      平井 卓也君    山口 泰明君
     吉田六左エ門君    吉野 正芳君
      荒井  聰君    伊藤 忠治君
      玄葉光一郎君    島   聡君
      田並 胤明君    武正 公一君
      中村 哲治君    松崎 公昭君
      松沢 成文君    遠藤 和良君
      山名 靖英君    春名 直章君
      矢島 恒夫君    重野 安正君
      横光 克彦君    三村 申吾君
    …………………………………
   総務大臣政務官      河野 太郎君
   総務大臣政務官      滝   実君
   参考人
   (作新学院大学大学院経営
   学研究科教授)      石井 晴夫君
   参考人
   (株式会社日通総合研究所
   常務取締役経済研究部担当
   )            塩畑 英成君
   参考人
   (東京大学経済学部教授) 神野 直彦君
   総務委員会専門員     大久保 晄君
    ―――――――――――――
委員の異動
六月十三日
 辞任         補欠選任
  大野 松茂君     山口 泰明君
  左藤  章君     平井 卓也君
同日
 辞任         補欠選任
  平井 卓也君     左藤  章君
  山口 泰明君     大野 松茂君
    ―――――――――――――
六月十二日
 国家公務員の残業改善に関する請願(矢島恒夫君紹介)(第五一六九号)
 シベリア抑留者に対する未払い賃金支払いに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第五一七〇号)
 同(奥野誠亮君紹介)(第五二九九号)
 同(佐藤剛男君紹介)(第五三〇〇号)
 同(近岡理一郎君紹介)(第五三〇一号)
 同(中川智子君紹介)(第五三〇二号)
 同(荒井聰君紹介)(第五四九八号)
 同(後藤斎君紹介)(第五四九九号)
 同(重野安正君紹介)(第五五〇〇号)
 同(稲葉大和君紹介)(第五七〇七号)
 同(横光克彦君紹介)(第五七〇八号)
 法人事業税の外形標準課税導入反対に関する請願(木島日出夫君紹介)(第五二九八号)
同月十三日
 地方公務員の育児休業期間中における所得保障等に関する請願(矢島恒夫君紹介)(第六〇九六号)
 シベリア抑留者に対する未払い賃金支払いに関する請願(黄川田徹君紹介)(第六〇九七号)
 同(玄葉光一郎君紹介)(第六〇九八号)
 同(児玉健次君紹介)(第六〇九九号)
 同(塩崎恭久君紹介)(第六一〇〇号)
 同(仙谷由人君紹介)(第六一〇一号)
 同(高木陽介君紹介)(第六一〇二号)
 同(長妻昭君紹介)(第六一〇三号)
 同(春名直章君紹介)(第六一〇四号)
 同(藤木洋子君紹介)(第六一〇五号)
 同(矢島恒夫君紹介)(第六一〇六号)
 同(吉井英勝君紹介)(第六一〇七号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 日本郵政公社法案(内閣提出第九二号)
 日本郵政公社法施行法案(内閣提出第九五号)
 民間事業者による信書の送達に関する法律案(内閣提出第九三号)
 民間事業者による信書の送達に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第九六号)


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     ――――◇―――――
平林委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、日本郵政公社法案、日本郵政公社法施行法案、民間事業者による信書の送達に関する法律案及び民間事業者による信書の送達に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の各案を一括して議題といたします。
 本日は、各案審査のため、参考人として、作新学院大学大学院経営学研究科教授石井晴夫君、株式会社日通総合研究所常務取締役経済研究部担当塩畑英成君、東京大学経済学部教授神野直彦君、以上三名の方々の御出席をいただいております。
 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところ当委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 まず、各参考人の方々からそれぞれ十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、念のため参考人の方々に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対し質疑をすることはできないことになっておりますので、よろしくお願い申し上げます。
 それでは、石井参考人、お願いいたします。
石井参考人 おはようございます。きょうは、このような機会をいただきましてありがとうございます。時間が十分ということで、大変限られている中でございます。少し早口になるかもわかりませんけれども、御了承いただきたいと思います。
 論点は、四点ほどございます。お手元に簡単なレジュメを配らせていただいておりますので、それを中心に報告させていただきたいと思います。郵便におけるユニバーサルサービスの重要性、そしてまた、今後それをどういうふうに持っていったらいいのかという方向性を述べさせていただきました。
 まず第一点の、その重要性でございます。
 だれのための民間事業者の参入なのかということでございます。郵便の民間事業者による参入は、あくまでも国民利用者の立場に立って考えていただきたいというのが、まず最初に私のお願いでございます。
 利用者という言葉は、時とすれば、使う人によって、またその場によってもいろいろ違ってまいります。今の新聞紙上等の議論を見ていますと、どうしても、利用者の立場では大口の利用者の方が優先されるんではないかというふうに思っております。
 だれでもがこれからも公平かつ平等に郵便サービスを受けられるためには、クリームスキミング、つまり、収益性のある分野や地域のみに限定的に参入するのではなくて、何としてもそういったクリームスキミングは避けなければならないというふうに思います。そのことは、郵政公社を守るという観点ではなくて、大都市と地方との地域間格差がいろいろな意味で、今、広がりつつあります。そういう中で、真に国民利用者の生活を守るということが不可欠であるというふうに考えております。
 そして、現在うまくいっている郵政三事業のサービスを、何としてでも低下してはならないというふうに思います。改革の名によって、利用者を混乱に陥れてはならないというふうに思います。
 第二点、参入による影響等でございます。
 郵便事業の特徴から、他の産業と比較しても、民間事業者による新規参入が総じて容易であることは言うまでもありません。しかし、民間事業者は、利益追求の目的から、大都市やダイレクトメールを中心としまして、クリームスキミングを発生しやすいわけでございます。
 郵便事業のクリームスキミングに対する脆弱性は非常に強く、そしてまた、参入は容易であります。逆に、過疎地や個人向けサービスの低下が個人利用者の不利益をもたらす可能性が極めて大きいわけでございます。
 現状では、こうしたことから、郵便の民間参入につきましては、国民利用者から大きな心配が寄せられております。つまり、全国津々浦々まで、毎日、郵便の集配サービスが五十円、八十円という低廉な料金で絶え間なく行われているからでございまして、こうした公共的サービスを今後とも維持してほしいということを、国民は強く望んでおります。
 もちろん郵政職員の皆さんも、全国の方々が、九七年の行革会議の検討以降今日に至っても、自分たちの職場の議論が非常になされておりまして、経営形態もどうなるのかわからないというような発言もございます。そういう中で、職員の皆さんも、本当に日夜懸命な努力をしているにもかかわらず、本体の屋台骨の経営形態の議論が行われているということで、本当に心配しております。そのことも、ぜひ御留意いただきたいと思います。
 そして、郵便市場に対する基本的な考え方でございます。
 このような郵便サービスの特徴を再認識し、サービスの低下や個人利用者への不利益を回避できる方法をまず検討すべきであるというふうに思います。すなわち、競争導入による効率化とユニバーサルサービスの維持という公益性の両立が必要でございます。これはなかなか難しいというのが改革論者の方々の御指摘でございますけれども、これは外国の事例を見てもうまくやっておりますし、今までの郵政事業を見ても、うまくやってきたことは論をまたないわけでございます。
 時間がございませんので、二の諸外国におけるユニバーサルサービスの位置づけのところに入らせていただきます。
 外国におきましても、ユニバーサルサービスをどのように維持するのかということが極めて重要な課題となっておりまして、そのことに対する対策というのは、さまざまな点から講じられております。三ページでございます。したがいまして、多くの国々では、我が国と同様に郵便事業は独立採算で行われておりますけれども、ユニバーサルサービスを達成するために、事業上も強い配慮がなされているというのが事実でございます。
 三、直面している課題でございます。
 郵便の民間参入に関しましては、郵便のシステムやネットワークに与える影響等を考慮することが必要でございますが、この場合、郵便ネットワークが大規模なネットワークであり、社会的な影響も大きいことに留意していただきたいというふうに思います。
 特に、クリームスキミングの弊害を、先ほども申し上げましたように、いかに避けるのかが最も大きなことでございます。したがいまして、無条件全面参入のように、長い間培われてきた郵便のシステムとネットワークを崩壊するような変革は、ぜひ避けていただきたい。他の公益事業におきましても参入・退出規制は存在してございまして、公益事業の持つサービスの日常必需性等に伴い一定の規律が明記されているのは、もう当たり前のことでございます。
 クリームスキミングの弊害を排除する観点からは、諸外国のような部分的自由化も考えられると同時に、民間事業者のクリームスキミングを直接排除する方法も考えられるわけであります。
 また、郵便が、現行のサービスを維持しながら、効率化やサービスの質的向上を進められるような形での水準で参入を促すべきであるというふうに思います。現行の郵便局ネットワークを最大限活用しつつ、全国どこにおいても、国民利用者の利便性向上とユニバーサルサービスを維持することが最も重要であります。
 最後に、日本郵政公社法や信書便法等及びその政省令をきちんと今後、作成、制定していただき、この細かい政省令のところもですが、そして、特定の事業者や圧力団体の意向に振り回されない制度の確立が何よりも大切であるというふうに思います。
 まとめでございます。
 郵便の民間参入は、新たに発足する郵政公社に大きな試練を与えることになります。そのためには、健全経営を可能とする手段を公社に付与しなければ、自律的かつ弾力的な経営を標榜する日本郵政公社が存続できないということは、明らかでございます。したがいまして、経営の自由度やサービス水準の向上、さらにはコスト削減のためには、最低限の投資条項を盛り込んでいただきたいというふうに思います。
 この投資条項に加えまして、国庫納付金等の問題も残されております。非営利で国民利用者の利便性を第一とする国営の郵政公社は、国や地方公共団体における公共機関と同様の取り扱いがなされていいのではないかというふうに私は思います。国や地方公共団体の機関というのは、税制上も相当の国税、地方税も免除されておりますし、公益事業も、民間企業でありながら、公益特権というのが付与されているということは事実でございます。まして、同法案では、金融庁の検査などもうたわれておりまして、外部監査等も含めて、経営の透明性が一層向上することになります。
 信書便法案では、クリームスキミングを排除する措置が講じられているものの、個別課題につきましては検討を要する部分もございます。具体的条件等は、今後、国民利用者のコンセンサス、ぜひこの辺を中心に御議論いただきたいと思いますけれども、具体的な施策、そしてまた、その制度を考えていただきたいというふうに思います。
 信書の範囲を狭めれば、実質的に無条件全面参入と同じになることは明らかでございます。せっかく信書便法案に全面参入の条件を設けていますので、その条件を改めて変える必要はないのではないかというふうに私は思います。
 公社化後は、経営者がみずからの責任と判断で事業対応に邁進し、そしてそれを推進していくことが大切であるというふうに思います。
 以上でございます。ありがとうございました。(拍手)
平林委員長 次に、塩畑参考人、お願いいたします。
塩畑参考人 日通総合研究所の塩畑でございます。ペーパーを御用意できませんで、大変失礼をいたしております。
 私からは、物流事業者が信書便のマーケットをどういうようにとらえているのかという点、もう一点は、民間参入のあり方についての若干の考え方について意見を述べさせていただきます。
 信書便のマーケットでございますけれども、物流事業者が今どういうふうに受けとめているかという点でございますけれども、そもそも小口貨物の全国輸送という事業は非常に難しい事業なんですね。投下資本が莫大になる、そのネットワークを効率よく運用するノウハウが問われる、その割には余り採算性は上がらないといったようなことでございますので、五万数千社あるトラック事業者のうちでも、長距離の積み合わせ輸送をやる事業者は二百数十社にとどまっているわけですね。
 さらに、宅配便あるいはメール便というように、扱うものが小さくなると、それだけ難しさも増してくるというようなことが一般的には言えるだろうかと思うんですけれども、しかし、企業努力等がありまして、御案内のように、宅配便につきましては相当成熟したシステムができ上がっております。メール便につきましても、幾つかの大手の事業者は既に全国展開をしているというような状況にまでなってきております。
 そういうような状況を考えますと、メール便の隣接分野というように言ってよろしいのではないかと思うんですけれども、信書便の事業も、大手の物流事業者にとりましては、新しい事業の領域としてターゲットになりつつあるというような状況ではないかなと思うんですね。このことは、今、物流事業者が、荷主ニーズにいかに的確に対応するか、的確に対応できないと生き残れないというような状況になっているわけですけれども、その荷主ニーズへの対応ということでもあろうかと思うんですね。荷主企業では、ロジスティックスシステムの導入ですとか、あるいはサプライ・チェーン・マネジメントの導入といったようなことで、物流の新しい取り組みを始めている。
 そういう中で、DMの送達みたいなものも含めまして、企業活動の全体最適を図るような方向になっているわけです。物流を、ばらばらじゃなくて、トータルで管理していこうというようなことなわけですけれども、そういう中に、少なくともDMの送達あたりが含まれてきているということですから、顧客ニーズへの的確な対応という面でも、少なくとも大手の事業者は、サービスメニューの拡充という中で、最近は信書便のマーケットというのが検討課題になってきているんではないかというように見てよろしいのではないかと思うんですね。
 一方、信書便の送達マーケットへの民間参入に関してでございますけれども、恐らく、民間企業がこのマーケットに参入するということを考えますと、段階的に入っていかないと非常に難しい、一遍に全国展開をしていくというようなことは現実的ではないのではないかなというような気もするんです。
 一方で公社の経営への影響を見きわめながら次のステップにつなげていくというようなことを考えますと、私といたしましては、段階的あるいは部分的に開放をしていくというのが現実的な方向ではないかというように見ておりましたけれども、しかし、いずれは全面的に開放をして競争原理を最大限に発揮させるんだというようなことであれば、もちろん、この段階開放のデメリットもないわけじゃありませんから、今回の法案にございますように、一遍に全国全面開放だというのも、考え方としては理解できるというようには思っております。
 もちろん、新規参入ということになりますと、公社とのいわゆるイコールフッティングの観点から一定のユニバーサルサービスを義務づけるというのは当然でございまして、絶対の条件であるというように言ってもいいだろうかと思うんですね。
 ただ、参入するサイドから考えてみますと、一定の義務づけをされた上で、一遍に全国、全面的に参入するというのは極めて難しいわけです。したがって、民間の参入の難しさというのは、この全面開放ということで、難しさは相当強まったのではないかというように思うんですね。参入するとなると、全国展開の場合ですけれども、相当大きなリスクを負うわけです。実際、どういったような扱いが現実にできるかわからないというようなことですから、そういうような検討には、恐らく相当時間がかかってくると思うんですね。
 現実には、この後、政省令で細部の基準が明らかにされた上で、それぞれの事業者が検討に入ってくるということになろうかと思うんですけれども、直ちに参入だということにはならない可能性は極めて高いのではないかなというように考えております。限定されたサービス、特定サービス型ということになろうかと思いますけれども、この分野ですと、もう実態として相当類似の事業をやっている事業者がございますので、こちらの方は、恐らく早期の参入が見込まれるのではないかなというように考えております。
 民間事業者とのイコールフッティングの話を申し上げましたけれども、民間事業者がそうでありますように、恐らく公社の方も、これから顧客ニーズへの対応ということになりますと、少しサービスメニューを物流サイドの方に広げていくような必要性も出てくるのではないかなというように思うんですね。そういうことを考えますと、公社も、関連する事業分野に出資をするとか、あるいは直接そこに進出をするといったようなことが可能になるような制度にしておくということも必要なのではないかなというように考えております。
 私からは以上でございます。ありがとうございました。(拍手)
平林委員長 次に、神野参考人、お願いいたします。
神野参考人 東京大学の神野でございます。
 私は、財政学を専攻しておりまして、郵政事業につきましては、むしろ委員の皆様方にお教えを請わなければならない立場にございます。全く素人ではございますけれども、財政学の立場から参考意見を述べさせていただきたいというふうに考えております。
 財政学というのは、十九世紀の末にドイツで誕生いたしました。財政学の考え方は、今の主流の経済学とちょっと違っておりまして、競争原理で営まれる市場経済と、それから、人々がお互いに助け合って協力原理で営まれる財政、この二つの経済が車の両輪となってうまく機能しなければ国民経済というのは発展しないのだという考え方に立っているということでございますので、少し考え方が違うという前提を御理解いただければと思います。
 そして、この財政という言葉は、パブリックファイナンスという英語の翻訳語でございまして、現在では中国に逆輸入されて、中国でもパブリックファイナンスのことを財政というふうに言っております。だれが翻訳したのかといいますと、慶応義塾を創設いたしました福沢諭吉が最初に翻訳したのではないかということが、いろいろ説がありますけれども、そう考えられております。
 きょう、福沢諭吉の「福沢全集緒言」、最初の言葉を、明治三十年に発行されました福沢諭吉全集、持ってまいりました。お手元に配付資料としてあるかと思いますので、一ページをおめくりいただきまして、四十一ページをごらんいただければと思います。最後から四行目ですね、福沢諭吉が郵便事業を調査するに当たってどれほど苦労したのかということが書いてあります。
 かの郵便事業の取り調べ、調査に苦しみたるは今に忘れることができない。フランスの都パリに在留中に手紙を出そうとして、その手続を偶然来た来客に尋ねたところ、その客は、紙入れから四角なる印刷の紙片を出して、この印紙を手紙に張って出せば直ちに先方に達すべし、こういうふうに言った。それは飛脚屋に頼むことかというふうに問えば、否とよ、パリにそんな飛脚屋はなし。町内いずれのところにも箱のようなものがあるゆえ、その箱の中に投ずれば手紙は自然に表書きの届け先に届くと言う。いよいよ不思議に思って、江戸の飛脚屋京屋島屋に手紙を頼むに、江戸より京大阪まで七日限りと言えば、書状一本につき金二歩の定価なり、日を限らぬものにても一本につき二、三百文払うというふうに我が国では市場原理で決まっているのに、フランスでは、ただ印紙を張りさえすれば手紙はあたかもひとりで先方に届く。さてさてまれなり。無理に客を引きとどめて事柄の次第の全体を聞けども、その日は要領を得なかった。そこで重ねて訪問し、費やすこと三、四日にして、初めてわかった。なるほどうまい通信法なりと感心し、今日我が国一般に行われる郵便法なり、こういうふうに言っているわけでございます。
 ここでの皆様方の審議は、日本の未来を決める審議だというふうに言っていいかと思いますが、私たちが制度を変える場合には、その制度は先人たちの知恵の産物であるということですね。状況は変わった、したがって、制度を変えなければなりませんが、制度を変えるときに重要なのは、先人たちがその制度の原点をどういうふうに理解したのか、その原点を失わずして、状況に合わせながら変更していく、改革をしていくというのが制度改革の本質ではないかというふうに思います。
 ここで福沢諭吉が強調している点はといいますか、感心した点は何かというと、先ほど来、参考人の皆様方が強調されているようなユニバーサルサービスというふうに言っていいだろうと思います。だれでも、どこでも、そして同一条件で手紙が届くということに感心して、それが必要なのだということだろうと思いますので、そうしたユニバーサルサービス、つまり、福沢諭吉が感心した、感動した原点を少なくとも失わないような改革でなければならないというふうに思っております。
 それは言いかえますと、先ほど財政というのは社会の構成員の共同の事業だというふうに申し上げたと思いますけれども、公の事業、つまり、社会の構成員の共同の事業として営まれるということが重要だろうと思います。それが官僚に壟断されている官業ということであれば、これは国民が、特に皆様方代表者を通じてコントロールできる公の事業にしていくということが改革の方向ではないかというふうに考えています。
 もちろん、この郵便事業にかかわって、小口の金融、それから簡易の生命保険も行われるようになっておりますが、こうした小口の金融とか簡易の生命保険というのも、社会の構成員の共同の事業として行わなければならないというふうに考えられ、それによって行われているのだということだろうと思います。
 共同の事業ということを考える場合に重要な点は、公の思想であります。私の恩師であります宇沢弘文先生がいつもおっしゃっておりますが、公園の思想というのはゲーテが考えました。ゲーテは、封建領主や貴族に独占されている美しい庭園をすべての社会の構成員に開放しようということで、公園の思想を世界に訴えました。したがって、これはユニバーサルという考え方に通じるわけですね。だれも排除しない、すべての人々に開放しよう。
 それからもう一つ重要な点は、山登りの思想であります。共同事業で行う限りは、共同で山登りをするときに重要なことと同じように、山登りをするときには、皆様方御存じのとおり、ペースの一番弱い者にペースを合わせて山を登らないと遭難する危険があるわけですね。共同事業も同じことです。社会の仕組みというのは、社会の構成員の一番弱いところにペースを合わせながらデザインされなければならないということだろうと思います。そう考えてまいりますと、私は今回の改革についてはほぼ支持できるというふうに考えております。それは、この制度の原点を守ったということの限りでございます。
 先ほど来からユニバーサルサービスそのものについては御説明がありましたので、例えば、小口の貯金などについて申しますと、これを社会の共同の事業にはしないで民間の競争原理に任せるというようなことをしてしまえば、当然ですが、もうからない地域には民間企業は出ていきません。民間金融というのはもともと競争原理で行われるべきものですから、これを護送船団方式などでやるのはむしろ好ましくないので、そのかわり、共同の経済である共同事業の方では護送船団方式で行うというのが筋だろうと思います。そこで、民間金融は恐らく利益が上がらないような地域には出ていかないだろうと思います。逆に、もしも現在共同事業で行っている郵便貯金を市場原理の方に変えてしまえば、これは郵便局の方も効率の悪い地域から撤退せざるを得ないわけですから、当然のことながら共同事業としては成り立たなくなってしまうということだろうと思います。
 今回の改革で重要なのは、私は、公のことにすること、つまり、民主主義を貫徹するという観点が重要だろうと思います。民主主義を貫徹するのには二つの方法がありまして、一つは、皆様方国会がコントロールする。つまり、トップダウンでこの事業を国会がコントロールするという仕組みをつくることと、もう一つは、できるだけ下部に、事業を行う最先端の人々に権限を移譲していく、そのことによってエンパワーメントして効率を図りながら民主主義を図っていく、この二つの方法がありますが、国会がコントロールするという方法と、下部に権限を移譲していくという方法をどこで調和させるのかというのが、今回の審議のポイントになるのではないかというふうに思います。
 以上、素人談義に及びまして、感想めいたものになってしまったことをおわびいたしまして、私の参考意見にかえさせていただきます。(拍手)
平林委員長 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
平林委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。浅野勝人君。
浅野委員 参考人の先生方におかれましては、御多用の中を当委員会に御出席くださいましてありがとうございました。御協力いただいたおかげで、充実した審議ができることに感謝を申し上げます。
 早速ですが、まず石井参考人に質問いたします。
 今、全国各地で市町村の合併問題が住民の方々を巻き込んで真剣に論議されております。地方自治行政のスリム化と同時に地域における住民サービスのあり方が問われておりまして、行政サービスの低下につながりかねない不安感を人々に与えている側面もあります。
 そんな中で、郵便局は、きめの細かい公的なサービス機関としての役割を果たしておりまして、人々の頼りになる存在なんですが、公社になれば何がどう変わるのか、今より何がよくなるのか、それがはっきり見えませんと、民営化への一里塚と位置づけられてしまいます。公社化するメリットは何だとお考えでございますか。
石井参考人 御指摘のとおりだと思いますが、現在、郵便局は、先ほど来お話がございましたように、郵便、為替貯金、簡易生命保険という三事業を提供しておりますほか、ワンストップサービスということで、また来年以降は、郵政官署が地方公共団体の事務の一部を委託できるという法律ももう既に制定されております。そういう中で、住民に対しまして信頼感と安心感を持たれる、もう既に地方に、地域においては唯一の公的機関となっているということは御承知のとおりだと思います。このように国民に信頼されておりますサービスは、先ほど来申し上げましたように、今後とも継続して、何としてでもさらに発展させていただきたいというのが私の考え方でございます。
 公社化のメリットでございますけれども、まず第一に、公社は今度、来年以降はそれぞれの発意によりまして、認可、届け出、またはそういったものが不要になる部分もあると思いますけれども、弾力的なサービスの提供あるいはそういったことを開発することが可能となります。したがいまして、地域においては限定的なサービスといったものも可能となるんではないかというふうに私は思います。
 しかし、このサービス内容に関しましては、そもそも三事業が、先ほどの福沢諭吉先生のお話ではありませんけれども、百年以上にもわたりまして歴史のあるサービスでございます。そういう中で、基本的なサービス内容は法律で現在規定されておりますことから、その内容を大幅に改善する、あるいは変更するということは、改善することはあっても変更することはそんなにはないんではないか。そのため、公社化されても地域に親しまれる郵便局は変更されることはなく、むしろ弾力的なサービスをさらに提供していくということが可能となるというふうに考えます。
 さらに、自律的かつ弾力的な経営が認められますことによりまして、経営競争等の環境変化に対しまして、みずからの創意工夫といったものによって経営の効率化あるいはサービスの質的向上、こういったものが可能となる。さらに、経営責任が明確化されることによりまして、迅速なサービス改善が可能となると思います。
 そして、最後でございますけれども、企業会計原則が導入されることになります。したがいまして、この企業会計原則によりまして、経営成績の把握のみならず財政状態の把握というものがはっきりとしまして、経営の透明化というものが一層高くなり、国民利用者によりわかりやすくなると思います。そういったことが民営化のメリットだというふうに思います。
 ありがとうございました。
浅野委員 国の事業である郵政事業庁から国が事業を委託する形の公社に衣がえしたからといって、職員の身分は国家公務員のまま何も変わりませんし、総務省が郵政公社と民間事業者の双方を監督するという意味では旧態依然のままなんですね。もとの運輸省と国鉄、郵政省と電電公社との関係のように、レフェリーとプレーヤーの区別が混然としていた例はかつて幾らもありましたけれども、またこれからもこのままのシステムでいいのかなといささか疑問を感じます。
 公益事業に造詣の深い石井参考人から見て、公正な競争の原則に問題はないか、その点についてのお考えを伺います。
石井参考人 その辺が一番、私もまず最初は心配したところでございます。公社は、現在の総務省の一部門としての郵政事業庁から分離するものでございます。そういう中で公平性をどういうふうに担保するのかということは、極めて重要な課題であると思います。
 しかし、私の経験からしましても、国鉄や電電公社などは、規制官庁でありました当局とは、そういう意味でレフェリーとプレーヤーというものにはっきりと分かれておりまして、私たちが思っているほど、クロスオーバーしている部分というのは少ないというふうに思います。
 むしろ、規制当局と事業の実施部隊であります公社は、互いに切磋琢磨して業界の発展に貢献しなければならない。通信も鉄道も、あるいはたばこの方も、そういった中で昭和二十年代、二十四年、二十七年、この旧三公社ができてから、業界発展に大変な貢献をしてきたというふうに思います。
 もちろん総務省も、御存じのとおり、行政機関として既に通信や放送の分野で所管しておりますし、他省庁でも民間事業者を監督することになっておるというのが一般的でございます。例えば電力事業ですと、東京電力やそういう大手九社、ないし沖縄電力、十社、それと、例えば新規参入、IPPでありますダイヤモンドパワーとか、そういった新規参入事業者も規制しているということでございますので、こういった中で、総務省が今後公社を監督管理することになりますけれども、互いに緊張感を持ってこの事業の発展に取り組んでもらいたいというふうに思います。
 したがいまして、行政は中立性を保った監督、規律を行っていくことは前提でございますけれども、法的にも行政手続法も制定されておりまして、審査基準も策定するよう求められておりますことから、公平中立の確保というものは可能であるというふうに思います。
 ありがとうございました。
浅野委員 塩畑参考人に伺います。
 信書便事業に参入するには、条件が余り厳し過ぎるとだれも参入しませんし、逆に条件が緩過ぎるとクリームスキミングを防げなくて、結果としてユニバーサルサービスが確保できなくなります。したがって、条件づくりは、極めて難しいさまざまな課題を抱えているわけですね。
 今回の条件、つまり、全国均一料金、いつでもどこでも簡単に投函できて、秘密が守られる、ポストのたぐいがおよそ十万個、原則として毎日集めて毎日配達する。今のこの条件を、物流業の専門家である塩畑参考人はどのように分析されますか。
塩畑参考人 先ほども申し上げましたけれども、新規参入の事業者に一定のユニバーサルサービスを課すのはどうしても必要だと思うんですね。問題は、そのレベルの程度ではないかなというように考えております。
 今、先生が挙げられました、一つは全国均一料金、これは、恐らく利用者利便を考えたとき、あるいは現実に新規の参入業者がどうやってこの料金を徴収するかということを考えたときには、おのずからこれを均一料金にせざるを得ないということで、これは難しいハードルでも何でもないというように考えております。
 それから、ポストのたぐいなんですけれども、これが十万本がいいのか何万本がいいのかという数は、大変恐縮ですけれども、私もスタディーしたことがないものですから、よくわからない。ちなみに、ポストの構造ですとかその設置場所、どこでなきゃいかぬのかというようなことも含めて、恐縮ですけれども、ちょっと私個人の意見は持っておりません。
 ただ、言えることは、恐らく百何十年もかけて整備をしてきた今の郵政のレベル、それと同じレベルのものを新規の事業者にいきなり義務づけるというのは、これは少し酷なのではないかなというように考えていまして、少し時間的な猶予を持たせるとか若干ハードルを下げるということが、この点についてはあってもいいのではないかというように考えています。
 それから、一通から毎日集めて毎日配達ということでございますけれども、これは、この法案でも三日以内の送達ということになっていますので、現実に、今の宅配便がもう三日以内でやっていますし、メール便もそういうことですから、その三日以内というようなことを考えますと、どうしても毎日集めて毎日配達をしないとクリアできないわけですね。ですから、これはそう難しいハードルではないというように考えております。
 以上です。
浅野委員 郵便事業体が、信書だけではなく、大型コンテナのようなものも含めて、積極的に貨物の分野に進出して利益を上げている例がさまざまな国で散見されるようになっております。同時に、この分野では国際的な競争が盛んになってきていることも事実であります。この場合、例えば、アメリカに子会社を置いて巧みに展開しているドイツ・ポストのように、子会社方式をとっている例が多いんですね。
 郵政公社も、国内の貨物便の扱いに力を入れるだけではなくて、国際的な貨物の市場に打って出る、視野に入れて展開していくという考え方についてはどうお考えでございますか。
塩畑参考人 郵政公社の業務として、今回の信書の民間開放、それの延長線上にある事業だというようには考えておりませんけれども、確かに先生御指摘のように、今、国際的な中で、物流業界の非常にドラスチックな再編成がなされているわけですね。非常に活発化しております。
 どちらかというと、我が国企業はやや受け身に回って、主役の座には少なくとも立っていないというような実態だろうかと思います。そういう実態を踏まえて、いわば日本代表の一つとして海外に打って出るんだということであれば、検討の余地はあるんではないかなと思うんですね。
 ただ、恐らくその目的を相当はっきりさせなきゃいけないことなんでしょうし、公社の経営にどんな影響を与えるのか、あるいは、とりわけ我が国の国際物流事業者にどういうような影響を与えることになるのかというあたりを、少しスタディーをしてみる必要があるのではないかなというように考えております。
浅野委員 参考人、この法案では、子会社は郵政公社の出資の対象になっていないんですね。この種の規制は時代錯誤とお考えになりませんか。
塩畑参考人 確かに、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、民間事業者がどの程度参入してくることになるかわかりませんけれども、民間事業者との公正な競争を促すといったような側面、あるいは恐らく利用者からも少し幅広いメニューを要求されるようなことになってくると思うんですね。当然、公社の経営の効率化も進めていく必要がある。そういうことを考えますと、子会社も含めて、関連事業への進出や出資はできるようにするのが望ましいというように考えております。
浅野委員 市場原理一辺倒では世の中はうまく機能しない、むしろ政府が一定のセーフティーネットの役割を果たすことが大切で、それを上手に組み合わせることが不可欠だというのが神野参考人の持論だと理解をしております。
 そこで、伺いたいのは、市場原理に任すべきものと政府や公的機関がセーフティーネットとして役割を果たすべきもの、その区別のメルクマールはどのようにお考えになっていますか。そして、この郵政事業はどちらの範疇に属すべきものとお考えでしょうか。
神野参考人 どうもありがとうございます。私の意見をよくそしゃくしていただきまして、本当に感謝いたしております。
 基本的には、私は、社会の構成員、つまり国民が決定すべきものだというふうに考えております。ただ、財政というのはお金もうけをしてはいけない領域、それから市場経済というのは、これはお金もうけをしてもいい領域ということになると思います。
 そして、お金もうけをしてはいけない領域の方では、租税によって、必要に応じて配られるようなサービスですから、国民の生存を維持するために不可欠なサービスということになるだろうと思います。それから、市場原理でやっていいサービスは、お金持ちはたくさん使ってもいいサービス、購入していいサービス、貧しい人々は買えない場合があってもいいようなサービスだろうというふうに考えております。
 ただ、実際には中間ゾーンがございまして、これを共同でやるのかどうかということが難しい問題になってまいります。私は、郵政事業などはこのグレーゾーンに入ってくる領域だと思いますので、料金を取って一部市場原理を入れても構わないけれども、グレーゾーンで実施すべきものだというふうに考えています。
浅野委員 小泉総理が民営化論の分が悪くなるとよく使うレトリックなんですが、赤字を垂れ流す特殊法人は、郵政事業を通じての郵便貯金が資金として供給されるから、その特殊法人が存在できるんだ、その特殊法人の赤字は、つまるところ税金で補てんされることになるから、もとをただせば郵政事業に税金をつぎ込んでいることになるんだよと。だから、郵政事業を民営化すれば、郵便貯金が民間金融機関と同じ質のお金になるから、赤字の特殊法人には流れ込まないので、質の悪い特殊法人は整理できるんだという指摘なんですね。
 風が吹くとおけ屋がもうかるみたいな話だなという気がしないでもないんですが、参考人、どうお感じですか。
神野参考人 政策金融というのは、財政学の定義では、補助金としての国家信用の供与というふうになっております。つまり、租税資金と民間の金融とのちょうど中間形態であるというふうに考えられています。つまり、先ほど言いましたようにグレーゾーンですから、そういうふうになるわけですね。
 特殊法人の赤字問題というのは、特殊法人に租税を入れたというのが赤字ということであれば、そもそも租税を入れないで済むような事業であれば、民間に任せればいいのであって、もともと租税を入れ込むということを前提にしていると考えるべきだと思います。
 ただし、経営効率などが悪くて、租税資金を国会が決めた以上に、予想以上につぎ込まざるを得なくなった、これは別途の問題でございますので、もともと租税資金を使うべきものだと考えれば、郵便貯金のような債務は、いわゆる公債を発行したときに行われる財政債務と違って、行政債務、行政活動を行っていく上で債務が生じてしまうというふうに考えておりますので、その行政債務と租税資金とをあわせて運営されていくものですから、特殊法人の赤字問題とは無関係というふうに考えております。(発言する者あり)
浅野委員 ちょっと聞いていただきたい方がいたという場外発言ですけれども、わかりやすい言葉で彫りの深い議論をさせていただいて、ありがとうございました。これで終わります。
平林委員長 次に、荒井聰君。
荒井(聰)委員 きょうは、参考人、お忙しい中ありがとうございます。
 私は、神野参考人と少し議論をさせていただきたいなというふうに思います。と申しますのは、私は、ずっと地方自治行政にタッチしてございましたし、また、地方分権問題というのにもタッチさせていただきましたので、神野参考人はそちらの方で大変深い見識を持っておられます。
 ところで、この公社あるいは信書便法案にしても、信書便にかかわる議論が大変多いんですけれども、私は、この郵政公社なり今回の法案の中で、むしろ本質的な議論というのは、先ほど最後に出ましたけれども、金融の問題のところに本当はあるのではないだろうか。三事業一体という論理が展開されているんですけれども、この三事業一体というのは一体どういう意味なんであろうかということを、もう一回国民的な議論をしていくべきではないのかなというふうに思います。
 一つは、分離するという議論もあるんですけれども、私は、北海道で拓殖銀行という銀行が倒産した倒産劇を見ています。あの銀行が倒産したときに、北海道の金融界、あるいは取りつけ騒ぎが大々的に起きるのではないかという心配を実はしましたけれども、結果的には起きませんでした。それを分析してみますと、この郵便貯金の果たした役割が大変大きかったという結果になってございます。そういう意味で、ある意味の金融のセーフティーネットを構成していたんだな、そういう分析をしたんですけれども、しかし、だからといって、郵便局が大きな預貯金を集めていく、全体として金融マーケットにある意味のマーケットメカニズムが働かないような形にもしているというところもあるんではないだろうか。
 この巨大なネットワークが活用されて、巨大な資金が郵貯の中に流れている、こういう現状をどうお考えなのかということ、それから、金融の中のセーフティーネットとしての役割というものをどうお考えになっておられるのか、そういう点、ちょっとお聞きさせていただきます。
神野参考人 私の意見も荒井先生と多分そう変わらないとは思いますが、まず、郵便貯金がセーフティーネットの役割を果たしてきたというのは、これはもう国民は何度も経験しております。世界恐慌のときに民間の銀行が、金融恐慌、その前の金融恐慌と破綻したときに救ってくれたのは、やはり国民が頼りにしたのは郵便貯金でございます。そうした歴史的な経験を踏まえても御指摘のとおりだろうというふうに思います。
 ただ、それが巨大に失して民業を圧迫しているのではないかという御指摘だろうと思いますが、私は必ずしもそうは思いません。と申しますのは、先生も今御指摘のように、北海道などでは、むしろ地域金融として回すという役割があるわけですね。そうした役割を考えてみますと、ドイツの貯蓄銀行とかそうした金融機関を、これも郵貯に近いものだというふうに考えていけば、規模としては決してヨーロッパの国々と比べて大きなものというふうには考えられないのではないか。ヨーロッパの国々でも、小口の貯蓄については共同事業としてやっていこうという運営の仕方がかなり強いというふうに私は理解しております。
荒井(聰)委員 今、神野参考人がおっしゃったように、私も、地域金融としてもっと機能を特化させる、あるいはそういう法整備を整えていくべきではないかというふうに思います。
 国の財政も大変厳しいですし、あるいは銀行という市中金融機関も、地方自治体に直接投融資していく、そういう環境にはございませんから、しかも、郵便局というのは、個人の資産が集まってくるところという意味からいっても、地域にその資金を還元していくという手法をもっと整備していく必要があるんではないかというふうに思うんです。今回の法案では余りそういうところは整備はされていないと思うんですけれども、先生はこのあたり、地域金融として機能させていくという仕組みをどのように整備したらよろしいのかという点について、御意見がございましたら、お願い申し上げます。
神野参考人 地域金融そのものについては、いろいろ分割するとかという案があろうかと思いますが、私は、まず、一番重要な点は、先ほど御紹介いたしましたドイツの貯蓄銀行などでも、基本的には地方債を引き受けているわけですね。したがって、地方債の引き受け、これも、大きな意味で地域金融ということで考えれば、今回の法案では一応これまでどおり債券に限っておりますので、どうしても国債、それから地方債というようなことにならざるを得ないだろうというふうに思ってまいります、もちろん社債その他もありますけれども。
 そうなってくると、今回の法案でもある程度地域金融と結びつけていくということができるだろう。それをもうちょっと明確な形にするというのは、これは別途考えていくことになることだとは思いますが、現在の方式でも地域金融ということをある程度重視できるというふうに考えています。
荒井(聰)委員 そういう点では、若干、地域金融としての性格を強めようという方向はあるのかもしれませんけれども、ただ、あの巨大な資金を安全に運営していくというその仕組みがきちっと整備されているのかどうかというところになると、若干不安がございます。
 経営責任と資金の運営というのは密接不可分だと思うんですけれども、その運営のところについては、経営主体、経営責任者というよりも、むしろ審議会のようなもの、第三者機関のようなものをつくって、それを運営、指導していく、そういうやり方をとっているんです。私は、それでは経営主体というものの責任が全うされないんではないか、肝心な部分がどこか別な部分に委託されている、そういう印象を持つんですけれども、この経営主体というものと、それから運営責任、運営というもの、そのあたりは先生はどうお考えになりますでしょうか。
神野参考人 ここも先ほどちょっと申し上げましたけれども、民主化のところで申し上げましたが、トップダウンかボトムアップかという問題になることだろうというふうに、今先生のお話を聞いていて思いました。特に、地域の実情その他から上がってくる国民の声と、それから国会などで審議したガイドラインを決めていく方針、それをどこでどうやって折り合いをつけるかということだろうと思いますが、今の方式はそれをうまく中間レベルの段階で調整をつけようというふうに思っているわけですね。それがうまく機能するかどうかというのはなかなか難しい問題ではないかと思います。
 ただ、やってみることが重要だということが一つの考え方と同時に、これまで行ってきた公社化あるいは民営化などの例をとりながら御審議していただくというのが重要なポイントかというふうに考えております。
荒井(聰)委員 従来から、官がかかわった企業体というのはほとんど失敗しているんですね。地方自治体では第三セクターがほとんど失敗しておりますし、国でも、旧国鉄を例に挙げるまでもなく、多くの企業経営を目指したものは失敗をしています。その一つの失敗の例は、やはり経営主体、経営責任というものが全うできなかった。先ほど先生は国会でのコントロールというお話をされたんですけれども、むしろ政治のさまざまな介入というものが経営責任を不明確にしてしまい、その結果、本当の効率的な経営ができなくなってしまっているというところに官業の失敗というのがあるんではないかと思うんですね。
 今度の公社経営ではかなり、国ですとかあるいは政府ですとかあるいは国会ですとかが余り関与しないような、自主的な、抜本的な、今までの経営主体ではないような、そういう形を目指しているように私は思うんです。そのあたり、先ほど先生は国会でのコントロールと権限をどのぐらい移譲するかがポイントだというお話をされたんですけれども、私も全くそのとおりだと思うんですけれども、今のこの目指している新しい経営主体というものを先生のその視点から見たときに、どう思われますでしょうか。
神野参考人 お答えいたします。
 国会が携わることによって、むしろさまざまな政治的な利害がかかわる可能性があるのではないかというお話だと思いますが、私は、繰り返しますけれども、国民がやはりコントロールする、その一つの手段が国会を通じてコントロールする手段だろうと。建前からいえば国会を信頼しないというわけにはちょっといかないと思いますので、国民は国会を通じてコントロールする。しかし、そのほかにも、国民は事業現場を通してボトムアップでも発言を反映させることができる。そして、経営の現場にいる者は、下から上がってくる、現場から上がってくる情報も吸い上げていく。その情報と、国民の代表といいますか、国民が国会を通じて得た経営方針とをうまくすり合わせる、そういうやり方を申し上げたというふうに御理解いただければと思います。
荒井(聰)委員 ところが、実際は、地方郵政局でありますとかあるいは総務省の中の組織形態というのも、それほど大きな変更を加えずに、現行の事業庁の形を管理部門についてはそのまま踏襲しているのではないかというふうに思われる部分がありまして、そこのところは、本当に下部に権限がおろされていて、そこをしっかりと経営主体として経営責任を持った人が運営できるかどうかという点になりますと、大変心配な点があるわけですね。
 ここは、さまざまな許認可権を持っている中央省庁と事業主体である公社との関係というのをもう少し整理するべきではないのかなというふうに私自身は考えるんですけれども、先生、いかがでしょうか。
神野参考人 お答えいたします。
 私の考えでは、先生の御質問は、多分、組織形態がいわばピラミッド型になっていて、従来型のことを引き継いでいるのではないか、それをむしろフラットオーガニゼーションみたいな形にした方がかえって効率がよくなるのではないかというお考えだろうと思いますが、その点は、私も、もう少しフラット化して効率のよい組織化というのは今後の課題として残るだろうというふうに感じています。
荒井(聰)委員 ありがとうございました。
 次に、塩畑参考人にお聞きしたいんですけれども、信書便にかかわる、メールにかかわる、その部分というのは大変成熟したマーケットだというお話がございました。
 これは、民間に参入をしてもらうということは、ある意味ではマーケットを広げていく、あるいは新しい商品を開発していく、あるいは開発競争を通じてマーケットを活性化させていく、そういうことなんだろうと思うんです。しかし、成熟したマーケットだという定義をしてしまえば、これは当然民間は参入しないし、あるいは民間といいますか公社になっても、新しい知恵というのは余りわかないのではないか。このあたり、本当の意味でマーケットは成熟しているのかどうか。
 それから、信書便とは全く違う形態の、例えば電子メールみたいなものがどんどん出てきておりまして、今の若い人たちというのはそちらの方にどんどん流れているような気がするんですけれども、このあたりの関係をどう見たらいいのかというマーケットについての見方というのを御教示いただければと思います。
塩畑参考人 先ほど、宅配便では成熟したシステムができ上がっているというふうに申し上げましたけれども、宅配便の全国的な仕組みが、既に大手何社かがきちっとした仕組みをつくっているというのを成熟したというような表現で申し上げたわけでございまして、宅配便のマーケット、あるいはカタログ、冊子のたぐいのメール便のマーケットがもう成熟して伸びがほとんどとまっているという意味で申し上げたわけではございません。この分野は、御案内と思いますけれども、相変わらず相当高い伸びを続けております。
 信書便の方なんですけれども、数字を見ますと、余り拡大したマーケットではないわけですね。先生今御指摘ありましたように、インターネットの進展なんかを考えますと、どうもこの先、そう拡大をするというようなマーケットではないのではないかと思うんですね。ただ、急速に需要が減退してしまうというようなマーケットでもないと思うんですね。ほぼ横ばいか、あるいは若干伸びるか減るかという程度でしばらくは推移するようなマーケット規模なのではないかなというように考えています。
 したがいまして、民間の物流事業者がこれを魅力的なマーケットととらえるかどうかということになりますと、やはり二兆円という非常に大きなマーケットなものですから、このうちの幾らかでも扱えるようなことになると、これはもう相当なことになるというようなことでは魅力的と考えている事業者は少なくはないのではないかなというように考えております。
荒井(聰)委員 普通、民間業界というのは、マーケットの大きさも確かに大きな関心事だと思うんですけれども、伸び率の方に大きな興味、関心を持つのではないかと思うんですね。その意味では、世の中でいろいろ言われているほど、本当にこのマーケットというのは魅力のあるマーケットなのかどうか、そういう点については、私自身も少しそうではないのではないかなという感じを持ってございます。
 最後に、石井参考人にお聞きしたいんですけれども、今度の議論の根本には恐らく、独占というものについてどう考えるのか、そういう基本的な考え方、基本的なテーマがあるんだろうと思うんですね。
 我が国では独占禁止法という法律があるんですけれども、何となく、ヨーロッパとはちょっと違いますけれども、アメリカなどでは独占禁止法というのは大変重たい法律なんですけれども、日本では、それほどというと公取に怒られちゃうんですけれども、独占禁止というものがなぜ悪いんだろうか、そういう感覚が一般的なんではないかと思うんですね。
 特に郵便関係では、ある意味ではパブリックの企業としては大変成功しているというか、あるいは低コストで効率的な企業をやっている。そこになぜ民間開放をしなきゃならないのかという国民の素朴な疑問があるので、そこが大きな議論のポイントになっているんだろうと思うんです。
 この独占禁止法という法律、独占を許していくということは、結果的には、国民の消費レベル、コストレベルを高めてしまうということにつながるんだという、独占禁止法の精神といいますか、そういうものからのある意味のこの法律の趣旨なんだろうと思うんですけれども、そのあたり、独占禁止法との関係で先生はどうお考えになるのか、お聞かせ願えますでしょうか。
石井参考人 極めて重要な御指摘だと思います。
 それで、今、荒井先生の方から、独占によってコストを高めているんじゃないかという御指摘がありましたけれども、むしろ私は逆だと思います。独占によって郵便事業あるいは郵政三事業はコストを下げているということを、まず前提が、認識が違うんじゃないかなというふうに思っております。
 それはどういうことかと申しますと、先ほど、公益性のものかあるいは企業性のものかという議論、それからまた、三事業一体で効率的なのかどうかというような御指摘もございましたように、これは非常に、経済学では範囲の経済性という言葉があるんですけれども、地方の郵便局へ行きますと、一つのカウンターで三、四人あるいは二、三人で、三事業あるいはそれに関連するもろもろの、百ぐらいあるいろいろなサービスを提供できるということでございます。
 それで、アメリカの場合の独占禁止法の取り扱いも、これは郵便に関しては非常に例外規定がございまして、それで、USPS、御存じのように、私たちはアメリカ郵便事業体というふうに呼んでおりますけれども、ここでは独占の範囲が非常に大きいんですね。ですから、ほかのヨーロッパのいろいろな国、あるいはEU指令等々から見ましても、非常に広いということで、郵便の持つ社会的な有用性というか必需性、これが非常に大きいということだと思います。
 さらに申し上げさせていただきますと、私たちのセーフティーネットとしての郵便、五十円、八十円。どうして民間事業者が一般信書便の方に入ってこないのか、これはやはりもうからないからだと思うのですね。ところが、今の郵政事業庁でやっている郵便事業は、今は確かに赤字ですけれども、これから収支均衡を図って健全経営でやっていくんだ、それからまた累積黒字も出しているんですね。
 ですから、国鉄とか何かとよく批判されるんですけれども、あるいはよく比較されるんですけれども、そういった中で、もう崩壊寸前の、ある意味では二十数兆円の借金を負った国鉄と、郵政事業は、赤字だといってもまだ累積黒字を出している郵便事業、あるいはほかの貯金や保険と、同じように議論するというのは、私は対象が違うんじゃないかなというふうに思います。
 ですから、五十円、八十円という中で頑張って利益を出していくところに入ってこないというのは、民間事業者の方がむしろもっとコスト削減をやって、マーケットに対する信頼性を確保すべきだというふうに思います。
 以上でございます。
荒井(聰)委員 ありがとうございました。これで終わります。
平林委員長 次に、山名靖英君。
山名委員 公明党の山名靖英でございます。
 三人の参考人の皆様、本日は大変ありがとうございます。かなり論議が尽くされてまいりましたが、私の方から何点かの質問をさせていただきたいと思います。
 先ほど石井先生からコメントがありまして、郵便のユニバーサルサービス、これの重要性というのを冒頭でお話をされました。郵便への民間参入、これはあくまで国民そして利用者の立場に立って考えていかなければならない、まことに的確にその重要性をお述べになったわけでありまして、そのためにも、国民あるいは利用者の側に立って参入というものを考える場合、やはり先ほどからもお話がありますように、クリームスキミング、これを避けなければならないというのは私も当然であろうかと思います。企業体として利益を追求し、そしてその利益のあるところのみに参入する、こういうことでは、本来の国民の側に立ったユニバーサルサービスというこの観点が崩れていく、このことは私も当然必至の事態ではないかと思っております。
 一昨日、小泉総理に対する質疑等もございました。もう御承知かと思いますが、小泉総理は、まず公社化をしっかりやることからだ、まず公社化だ、こういうお話がございました。また、今後の委員会審議の中で修正の話もあるわけでありますが、民間参入を阻害するような修正は断固として応じられない、こういうお話もございました。
 一方、ヤマト運輸の有冨社長からは、参考人の質疑の中で、今やろうと思えばヤマトとしては全面参入できるんだ、ただ信書便の概念がはっきりしない、明確でないし、むしろこの法律は規制強化法案だ、こういうふうな弁もあったところでございます。
 そこで、まず塩畑参考人にお伺いしたいと思いますが、日通の関連の研究所のお仕事をされている立場から、この小泉総理のコメント、そしてヤマトの有冨社長の、そういう信書便参入への思いといいますか、これについてどのようにお考えなのか、さらに、そういう事業者の立場に立って、クリームスキミングは避けることができるのかどうか、この点からまずお聞きしたいと思います。
塩畑参考人 この信書便につきましては、従来から官による民業の圧迫だというような御指摘が一部にあったかと思うのですけれども、しかし、実態をよく分析してみますと、民間事業者には郵便の信書を送達するというノウハウはほとんどないんですね。メール便をやっているという話をさっき申し上げましたけれども、最大手の企業でも数億通の規模なんです。郵便が二百六十億通を上回るというような規模で比較しても大体もう御想像つけていただけますように、そういう膨大なものを取り扱う、この仕組みは持ち合わせていないというのが実態だろうと思うのですね。
 ただ、一部どうしても重なる部分はあるわけです。恐らくその重なる部分のところを自由にやらせてほしいというような意味合いのことを一部の物流事業者が申し上げてきたことなんだろうと思うのですね。しかし、それは全体ではないのではないかというのが私の認識でございます。
 今回のように、全国全面サービスだというようなことになりますと、今のメール便のシステムを少し強化して対応できるかというと、これは全くそんなことでは対応できないわけですね。何よりもまず、引き受けの義務を課せられてしまう。例えば宅配便を何年かやってきまして、結果的に今現在は全国津々浦々どこでも決められた日数で配達できますよというような事実になっておるということと、初めから義務づけられるというのはまるっきり違う話でございまして、いきなり数億通のシステムをその何倍ものシステムに一遍に切りかえるというのは、現実問題非常に難しいと思うのです。これはもう経営判断ですから、それでもやるということになるのかどうかわかりませんけれども。
 そういうことからいいますと、規制云々というよりは実態として、今のところは少なくとも、一部重なる部分はありますけれども、民間のやっている部分と郵便の部分とはある程度すみ分けはできているというように私は認識をしております。
山名委員 重ねて塩畑参考人にお聞きしたいんですが、いわゆる物流の環境問題ですね。
 最近、我が国の物流界の環境変化というものがかなり進展をしているようでありまして、当然、低経済成長の中で企業間競争が激化しておりますし、企業においても物流の重要性というものが今まで以上に高まっているというふうに伺っております。
 在庫削減、こういったところに伴って、いわゆる小口化、それから短納期化といいますか、それが非常に強く叫ばれている、それから物流コスト削減の必要性というのも言われておりまして、そういう意味でも、企業の物流への取り組みというのが強化されているという環境変化があるようでありまして、そういった物流環境の変化、それと今回の郵便事業への参入、こういった相関関係といいますか、こういったものがあるのか。先ほどのお話、当然、DMの送達を含めて、いわゆる物流企業としての生き残り作戦でもあるんだという趣旨のお話もあったようでございますが、その点についてお聞かせいただきたいと思います。
塩畑参考人 確かに、今、先生御指摘ございましたように、メーカーあるいは卸、小売業の物流への取り組みというのは以前とはまるっきり変わってきておりまして、物流をトータルでコントロールしていこうというような動きから、さらには、物流だけではなくて、生産と販売の調整機能も物流セクションに持たせて、全社の最適な仕組みをつくり上げていこうというようなロジスティックス思考、さらには、それを企業単位ではなくて流通経路全体でもってロジスティックスの一つの仕組みをつくり上げようというSCM、そういったような取り組みが相当活発になってきております。
 そういう中で、やはり物流は非常に難しい、自分自身で仕組みをつくって運用していくのが難しいというようなことから、物流にかかわるその周辺事業、あるいは物流ロジスティックスのシステムをつくり上げる業務まで包括して物流事業者の方にアウトソーシングをするというような動きが相当に出てきております。そのときの、包括してアウトソーシングするその包括の範囲の中に、DMあたりまで最近入ってきているということを申し上げたわけですけれども、ほとんどの企業がそういうような実態になっている、そういうようなニーズを物流事業者が多くの企業から要求されているということではありませんで、一部そういうようなニーズが出てきて、そういうものへの対応が必要になってきているというようなお話を申し上げました。
 これは、本当に信書全般までその包括的な外注というような範囲に入ってくるかどうかは判然としませんけれども、方向としては、DMのたぐいをうまくコントロールしていくというあたりまで民間事業者に、物流事業者にアウトソーシングしてくる企業が少しふえてはくるんではないかというような認識は持っております。
山名委員 石井参考人にお伺いしたいと思います。
 現在でも民間事業者による宅配便あるいはクール便、クーリエサービス、バイク便等、新たなサービスが進出をいたしまして、特に小包輸送だとか事業用書類、DM、こういった輸送分野の競争が激化をしているわけですよね。一方で、ファクシミリだとかEメール、こういった電気通信、コンピューターの利用による文書送信というものも急速に今普及をしているわけでありまして、この通信、コンピューターと郵便、今度はこういったものの競争という面も一方で今出てきているわけであります。
 そういう意味では、郵政公社化した後のいわゆる事業計画、経営方針というのも、極めてそういう時代の流れ、利用者のニーズ、こういったものに的確に適応するような内容のものを考えていかなければ、これは太刀打ちできないという認識を私は持っているわけです。
 特に、今後の郵政事業のあり方について、新しい時代のニーズ、利用者のニーズに合った新商品といいますか新しいメニュー、こういったものを一方で提供するという必要性があるんではないか、こういうふうに思っておりますが、その辺の問題について、石井参考人のお考えをぜひお伺いしたいと思います。
石井参考人 確かに、先ほど来のお話にもございますように、IT技術の進展等によりまして、信書送達市場においてはネガティブの面が想定されると思います。また、これからどういう通信の媒体のサービスが出てくるか、これは相当郵便の部分を代替するんではないかというようなことも予測する、懸念要因というのはあるというふうに思っております。
 しかし、一方では、昭和五十年代を振り返ってみますと、五十年代はニューメディアの時代ということで、かなり通信が例えば交通とかそういうものを代替するんじゃないか、皆さん、テレビ会議システムとかそういうもので、東海道新幹線を利用しなくて、もうみんなこれからテレビで会議なんかもできちゃうというようなことを言われましたけれども、その後のデータをいろいろ検証しましたら、むしろこのニューメディアあるいは今のマルチメディア、ITによりまして、交通トラフィックも、もちろん通信トラフィックはもう倍々ゲームですけれども、交通トラフィックも伸びているという状況にございます。
 したがいまして、今、二兆円市場である郵便市場がありますけれども、アメリカなどから比べますと、一人当たりの郵便物数というのは七分の一とか八分の一でございます。これは、確かに小切手の決済とかそういったものが日本では余りありませんので、アメリカとは直接には比較できないと思いますけれども、成熟化と言われながらも、新サービス、新商品の提供によるこのマーケットの拡張、拡大というのはまだまだあり得るというふうに思っております。
 ですから、これから相当、郵政公社になりまして、先ほど来管理機構の話も御指摘がありましたが、これも今、来年スタートする公社でございますので、なかなかそこまでは手がつかないというようなことで、公社になってから、現体制のピラミッド型方式というのは、かなりの部分がフラット型あるいは現場主導になってくるというふうに思います。
 そうなりますと、サービスも、提案で、新しいサービスそれからまた地域限定のサービスというものが私は相当出てくると。もちろん、ユニバーサルサービスで、五十円、八十円を中心とするこの信書、そこには三種、四種というサービスももちろんございますけれども、そういった以外にも、地域限定サービスとかいろいろなことが出てくるのではないか、それからまたその技術対応としてのサービスが出てくるというふうに思います。
 したがいまして、新規参入事業者も想定されている中で、この郵政公社は、コンテスタブル、つまり競合可能な市場、だれでもが入れるんだよと。今回の信書便法案はまさにそういうことですね。この一般信書便の事業あるいは特定信書便の事業、そういう法律をつくることによって、だれでもがその法律要件を満たせば入れますというその条件をつくりましたので、今度はだれでも入れる。そうなりますと、それはコンテスタブル、つまり競合可能な市場なんですね。
 そうしますと、これは飛行機なんかもそうなんですけれども、パイロットも飛行機もみんなリースでできるようになるということになりますと、だれでも入れる。そういうようなマーケット、産業の中では、いつも緊張感がありますから、価格はできるだけ低く、サービスは新しいサービス、そしてまた質的なサービスを高めるということがこの郵政公社にも要請されてまいります。
 ですから、私は、そういった中でいろいろなサービスがこれからは出てくるし、そしてまた、私たちが今のところはまだ想定できないようなマーケットの状況にありますけれども、これからは、郵政公社の創意工夫によって相当いろいろな形で変わってくるというふうに期待しております。
 以上でございます。
山名委員 ありがとうございます。
 もう時間でありますので、最後に一問だけ神野参考人にお伺いしたいと思います。
 財政学という観点からお教えいただきたいと思うんですが、今、我が国で、全国で二万四千七百の郵便局があるわけであります。その郵便局が持つ社会インフラというのは、まさに大事な国家的財産ともいうべきものだと思っておりますし、全国あまねく、都市あるいは過疎地域に配置をされておりまして、情報拠点、地域の拠点としてその機能を果たしているわけでありますが、一方で、やはりコスト問題というのは避けて通れない話であって、サービスに努める一方でコスト、こういう同時発生的な問題があるわけであります。
 公社化すれば、今後そういった問題も当然深刻になるわけでありますが、公企業あるいは公益企業の経営の効率化という問題、それから事業運営の主体をいわゆる都市型に移行している、こういう中で、いわゆる公共性、企業性、あるいは公益性、効率化といいますか、こういったバランスをどうとっていくかということがまたこれからの一つの大きなテーマではないかと思っているわけであります。
 その点、神野先生の御見解をお伺いして終わらせていただきたいと思います。よろしくお願いします。
神野参考人 お答えさせていただきます。
 私は、効率性というのには二つあると思うんです。これは公共部門には二つあるというふうに言った方がいいかもしれません。一つは、内部効率性と申しまして、コストをとにかく低くしようという効率性ですね。もう一つの効率性で公共部門で一番重要なのは、住民のニーズに合っている。住民のニーズに合っていないサービスを幾ら安くつくっても意味がないわけですので、ニーズというのは必要不可欠なものですので、必要不可欠なものを的確に埋めるということが重要だろうと思います。つまり、重要なのは、ちゃんとニーズに合ったサービスが出ているかどうか、そしてそのサービスがいかに安くつくられているかどうかということで、二段構えで効率性は考えるべきだと思います。
 おっしゃるとおりに、郵便局という全国的に張りめぐらされた網はさまざまなものに利用できます。スウェーデンでやっているように、インターネットでもって発注して、そしてそれをユニバーサルサービスによる郵便局がいつでも配達してくれるという制度があれば、これからの情報化時代に過疎地でも十分に人間的な生活が営めるようなシステムができ上がってくるわけですので、そうした時代に合ったさまざまな資源の利用の仕方というのを考えていくべきだというふうに思います。
山名委員 ありがとうございました。
 今後とも御指導いただきますようによろしくお願い申し上げまして、終わらせていただきます。
平林委員長 次に、黄川田徹君。
黄川田委員 自由党の黄川田徹であります。
 参考人のお三方の皆様には本当にお疲れさまでございます。そしてまた、これまでの質疑で重複するところがあるかもしれませんけれども、確認の意味でお尋ねいたしたいと思いますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
 まず最初に、神野参考人にお尋ねいたしたいと思っております。郵貯、簡保でありますけれども、これが金融市場で巨大な公的金融となっておりまして、民間金融の阻害要因となっておるという見方もあるわけであります。これまでにもお話しいただきましたけれども、重ねて郵貯、簡保の位置づけ、その役割についてお考えを述べていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
神野参考人 私どもの財政学というのは、現在の主流の経済学と全く逆の立場に立っておりまして、公共部門が担うべき第一に金融が出てまいります。ワーグナーという財政学者が、政府がコントロールしなければならない第一として金融、その次に通信、交通、公益事業、こういうふうに出てまいりますので、そもそも金融というのは、これは民間にやらせても構いませんけれども、政府がコントロールすべきだというふうに考えています。
 政府がということは、繰り返すようですが、国民がというふうに言いかえていただければと思いますが、国民がコントロールするということですね。その上で、私は、郵貯とか簡保とかというようなものは、国民が共同の意思決定に基づいて、社会の構成員の共同事業として行っていくものだ、非常に小口な金融になるので、それは各国とも程度の差こそあれやっている、日本が必ずしも高いかというとそうではなくて、それぞれの国のあり方や何かで決まってまいりますが、ドイツやフランスと比較しても、大陸諸国と比較すればそれほど高いわけではないというふうに考えています。
黄川田委員 また同じような見方でありまして、郵政公社は、郵貯資金あるいは簡保資金合わせると三百七十兆円ですか、これを自主運用する巨大な金融機関となっておりまして、これまで財投の制度でいろいろ運用されたということでありますけれども、この巨額の資金はどのような運用の仕方が適切であると考えておられますでしょうか。
 私も地方から来た議員でありまして、自治体におりまして、地方債を発行すると簡保資金によって手当てをしてもらうということもありますけれども。それからまた、このような運用なのでありますけれども、株式市場に与える影響といいますか、そういうところも含めてお考えをお尋ねいたしたいと思います。
神野参考人 私は、前の財投を割と評価しておりますので余り――予算のコントロールの財政投融資を議論する人というのは金融論の立場の人が多いんですね。金融論の立場ではなくて、財政投融資というのは、財政なんだけれども、財政の支出形態が投融資、つまり、一般的に支出するのではなくてリターンするものとして、先ほど申しましたように、補助金の性格の強いものとして貸し付けたり出資したりするというのが財政投融資だというふうに考えておりますので、本来、政策目的の手段として活用すべきものだという理解に立っております。
 したがって、むやみやたらに民間金融機関と同じようにもうかりさえすればいいというのではなくて、政策目的を達成する手段として租税をうまく組み合わせながら政策を実現していくということだろうと思います。
 ただ、現実には、これは現在政策と遮断されてしまいましたので、そうだといたしますと、運用の仕方としては、今おっしゃったように、国債をも含みますけれども、地方債などの運用を中心にしていくということだろうと思います。
 ただ、それによってかなりのものが余ってまいりますけれども、それは私は本来は、やはり何らかの政策目的と結びつけて運用し、国民が、共同事業でやっていくお金がそう大もうけにならなくても安全に運用され、かつそれが私たちの生活の支えに使われていくということで多分預貯金をしているのだろうと思いますので、運用の仕方もそうした政策的な配慮は念頭に置かれるべきではないかというふうに考えています。
黄川田委員 それでは、切り口を変えまして、地方分権に関連してお尋ねいたしたいと思います。
 総務省は市町村合併を強力に推進しておるわけなのでありますけれども、郵便局を市町村合併の際の受け皿として活用しようとする動きがあります。御案内のとおり、ワンストップサービス、郵政官署法が通りまして、それぞれ自治体との契約なんか取り交わしているところもありますし、そしてまた福祉関連のひまわりサービスもあるわけでありますけれども、国の役割、地方の役割といいますか、国の機関としての仕事、市町村行政、今までは国の仕事、県の仕事、市町村の仕事とさまざまばらついておりました。合併の動きの中で取り込むような形もあるんじゃないかという考え方があるわけなんですけれども、市町村の合併、自治体のあり方といいますか、それも含めましてお考えをいただきたいと思っております。
神野参考人 合併問題につきましては、私は、合併にはメリットとデメリットがある。合併をするという意思決定をしたらば、合併のデメリットを消した上で合併すべきだ。つまり、合併をするかしないかではなくて、合併をすると決めたらば、合併のデメリットを消すような形で合併すべきだ。逆に、合併をしないという意思決定をするのであれば、合併をしないというデメリットがありますから、それを消すような形で合併をしないという意思決定をすべきだというふうに考えています。
 合併をすると規模が大きくなりますので、公共サービスで、規模の利益の働く公共サービスについては安くなります。しかし、先ほど申しましたように、公共サービスで重要な点はニーズを満たすということですので、ニーズを満たす、ニーズに適切に合ったサービスということになると、大きくなると住民から遠い政府になってしまいますので、遠い政府になってしまうというデメリットが働くわけですね。
 そこで、大きくして財政的な効率性、つまり低コストでやるという内部的な効率性は高めるけれども、それぞれの地区ごとに、これは地区委員会と申しますが、意思決定機関をつくって、意思決定をそれぞれの地区でできるような仕組みもつくっておくというようなことをして、身近な政府であり続ける工夫をするというようなことが必要だろうと思います。
 郵便局の利用については、コストを低めるという意味で、さまざまなサービスについて郵便局に委託できるものがあるのではないか、つまり活用できるものがあるのではないかと思いますので、そうした観点から、うまく分権といいますか、地方自治体の公共サービスの効率性を高める中に組み込んでいくということが重要だと思います。
黄川田委員 地方制度調査会でも、このように合併が推進される、あるいはまた、したくても環境が許さないというような形の中で、県の役割を見直そうといいますか、町村の仕事を取り上げて県でやるとか、いろいろこれから議論されるというような方向であります。
 今総務省がやっております二〇〇五年三月までという、あめとむちの合併の仕方、取り組みについて、簡潔明瞭に感想をお話しいただければと思います、今やっている総務省のやり方について。
神野参考人 今申しましたように、強制的な合併をするかしないかという問題を含めて申しますと、先ほどちょっと例に引かせていただいたスウェーデンでは、強制的に合併をやらせました。そして、二千五百の市町村を二百七十八までに減少させたわけです。しかし、減少した後で、それぞれの市町村ごとに各地区が手を挙げて、私たちのところでは教育については独自の委員会でやりたいんですと言えば、それを認めているんですね。
 したがって、今合併が推進されていますけれども、その中で、合併をする自治体が、合併をした後にどういうふうに住民の意思、つまり、大きな政府になりますと遠い政府になってしまいますので、身近な政府であり続けるという工夫をするかということだろうと思います。これは、地制調の方でも大分検討が進んでいるというふうに私は了解をしております。
 それから、先ほども先生の御質問の中にありましたように、市町村の中には、どうしても合併が不可能なような地理的な条件とか、しても全然意味がないというようなところがあるわけですね。そういう場合には、そのできない仕事の一部については、道府県にいわばやってもらうという選択もないわけではありませんし、この点については、それよりも身近な、中国なんかではそういうやり方をとりますが、非常に近接した市町村がかわって面倒を見るというやり方もあるだろうと思いますので、これもまだ地制調の方でも結論づけていないというふうに考えております。
黄川田委員 ありがとうございました。
 それでは、残り時間も少ないのですが、次は石井参考人にお尋ねいたしたいと思います。
 石井参考人からは、郵便におけるユニバーサルサービス確保の重要性とそのあり方ということで御意見をいただきましたけれども、そこで、百三十一年ですか、明治四年以来の郵便局のネットワークの果たしてきた役割をどう評価するのでしょうか。そしてまた、郵便局の地域社会において果たす役割、これもあわせてどう評価するか、お話をいただきたいと思います。
石井参考人 基本的なところでございまして、明治四年に前島密さんが近代郵便を日本に導入されまして、もう既に百三十年ちょっとたっております。この間の長い長い道のりがございまして、今日また制度改革の議論が行われているということは非常に感慨深いものがあります。そういう中で、郵便局、そしてまた全国に二万四千七百数十ある郵便局のネットワークというものが、簡単にできたものではないということは先生方の御指摘のとおりでございます、長い長い年月によってできた。
 したがいまして、今国会で郵政関連法案に基づいていろいろ議論されておりますことは、やはりこの長い年月によって培われてきた私たち国民の財産である郵便局の今後の方向性を担う議論であるからだというふうに私は理解しております。このネットワークでございますけれども、郵政三事業、郵便、為替貯金、簡易保険というこの三事業が、本当に私たちの生活のセーフティーネットになっているということは紛れもない事実でございます。
 御存じのように、今市町村合併の話がございましたように、現在、市町村はどんどん合併の方向にございますし、総務省もその方針をとっております。これは、合併自治体だけではなくて、現在ある自治体も、出先機関等々の見直しをやったり、あるいは出張所等の統廃合もやっております。農協も同じような統廃合をやっております。
 そうしますと、もう地域においては、どこで年金をもらえばいいのか、そういったお年寄りの方々の本当に切ない要望もございます。どうしたら私たちの生活を守ってくれるのかということで、今本当に唯一の公的機関として、郵便局が地域社会の中で改めて問われているということだと思います。足の便が非常に悪くなっている。鉄道も、中小私鉄あるいは三セクも廃止の区間もございます。バスも廃止になっている。自分たちはもう免許もない。そういうことで、地域社会の唯一のよりどころの郵便局をぜひ守ってほしいというのが切なる願いでございます。
 そして、やはり銀行の、バンクスのネットワークと同じような郵便貯金のネットワークは民間に開放されておりますし、ATMの相互利用、これは大変な民間からの利用が行われております。現在では、郵便局のATMにおいて民間のカード、銀行、金融機関のカードを使った引き出しというものが物すごい量でふえております。そういう中で、ネットワークも民間に開放している。これは、大変な社会貢献、地域貢献になっておるわけでございます。
 保険もしかりでございます。保険のネットワーク、どこにおいても無診査、そしてまた職業やそういう人々の差別、そういったものが全くなく、国民として同等な権利を行使できる簡易保険でございます。この簡易保険のネットワークも、どこの郵便局でも入れる、これは大変なことでございます。
 ですから、ぜひとも、この郵便局のネットワークは私たち国民の大変な財産でございますから、それを今後とも守っていただきたいというのが私の願いでございます。
 以上でございます。ありがとうございました。
黄川田委員 加えて、もう一点だけお伺いいたしたいと思います。
 信書便に民間が参入するということで、その中にあってユニバーサルサービスを確保するためには、参入者が出し合ってユニバーサル基金というもので対応するというふうな考え方もあります。ユニバーサルサービスでありますけれども、本来的にはどのように確保されるべきであるか、御意見がありましたら、お尋ねいたしたいと思います。
石井参考人 そこも極めて重要な点でございまして、ユニバーサルサービスをどのように確保するかということでございます。この信書便法案では、一応の基本的なところのユニバーサルサービスは確保できるというふうに私は思っておりますが、今後の政省令等で細目を決めていただく、その際の議論というのが非常に大切になるというふうに思っております。
 そういう中で、民間参入という条件を整えたということでございますので、そこで、条件等の関係というものは、その後の細かいところの細目の設定に尽きるというふうに思っております。現在のところでは、クリームスキミングを何としてでも排除して、同等な立場で、一般信書便事業に基づく参入というものが大切だというふうに思っております。
 それからまた、ユニバーサル基金の話でございますけれども、やはり先生の御指摘のように、電気通信の方ではそういう基金を設けている、あるいは、一部ヨーロッパの方では放送においてもそういった制度を設けているというふうに理解しておりますが、郵便の場合には、なかなかユニバーサルサービス基金を設けるというのはなじまないというふうに思っております。
 それはなぜかというと、一部部分的なところで、参入のある事業者からいろいろなところで基金を拠出させるということでございますけれども、これは、ネットワークといっても、郵政事業庁もそうですし、それから現在の宅配便会社あるいはバイク便等々の会社もそうですけれども、それぞれのマーケットで、それぞれの形態で事業を行っているという状況にございます。それで、民間の場合には、非常に参入がしやすくて撤退がしやすいというのが、部分的な小包や、そしてまたメール便等の事業でございます。ですから、民間の場合にはすぐに撤退もしてしまうというような状況にございまして、そういう事業者に遡及して基金を後から拠出させるというのはなかなか難しいというふうに思っております。
 ですから、サービスの質的なもの、それからサービスの形態というようなものもございますので、そこでなかなかユニバーサル基金の設定というのは郵便事業にはそぐわないんじゃないかというふうに私は思います。
 以上でございます。
黄川田委員 塩畑参考人にも質問があったんですけれども、時間が参りましたのでこれで終わります。またの機会、よろしくお願いします。
 ありがとうございます。
平林委員長 次に、矢島恒夫君。
矢島委員 日本共産党の矢島恒夫でございます。三人の参考人の皆さん方、本当に御苦労さまでございます。同時に、大変貴重な御意見を伺わせていただきました。ありがとうございました。
 そこで、幾つかお尋ねさせていただきます。
 最初に、石井参考人にお尋ねしたいと思います。
 今もありましたように、ユニバーサルサービスの問題なんですが、実は、一昨日、小泉首相に質問する機会が当委員会でありました。私、小泉首相が今まで発言した中身で、参入できるところからどんどん参入したらいいんじゃないかという発言があるので、いいとこ取りの問題で二、三やったわけです。やりまして、最後の段階で、このクリームスキミングとユニバーサルサービスというのは両立するのかどうか、どう考えているかという質問を小泉首相にやったんです。そうしたら、私の予想したものとは正反対で、これは両立すると言ったんです。そこで時間がなくなったんです。
 そこで、実は、この両立するという重大な発言については今後またぜひ総理を呼んでやりたいと私は思っているんですが、石井参考人、両立するかどうかという問題で御意見がありましたら、お尋ねしたいと思います。
石井参考人 御指摘のとおりだと思います。やはりユニバーサルサービスを守るためにクリームスキミングは避けなければならないということでございますので、そのことは先生の御指摘のとおりだというふうに私も理解しております。
 そこで、具体的なところをどうするのかということでございます。クリームスキミングというのは、御指摘のようにおいしいところだけ、いいところだけをとるということでございます。そういう中で、ユニバーサルサービスは、全国あまねくサービスを提供しなければならない、どこでもだれでもが本当に安い料金で、簡便な方法、切手、そしてまたポスト投函というような形でございます。ですから、先ほど来お話が出ていますように、そういった形で、ユニバーサルサービスを守るために、クリームスキミングを排除するということでよろしくお願いいたします。
矢島委員 もう一つ石井参考人にお尋ねしたいんですが、それは、先生が書かれた「現代の公益事業 規制緩和時代の課題と展望」の中の、これはいろいろな方が書かれていますが、石井参考人が書かれたところとして、第四章のところに「公企業の財政と会計」というのがあります。
 そこで、実は、これも私が当委員会で取り上げた問題の一つなんですが、公企業に対しての企業会計原則というものがどうなのかということですね。郵政公社も企業会計原則でいくわけですけれども、例えばその中で特に退職給与引当金の問題を私はここで取り上げたんです。結局、債務超過になっていく、それを計上することになりますから。そこで、私としては、退職給与引当金は必要ないんじゃないかという観点からいろいろただしたんですが、これを積んで、そして後で何とか債務超過を解消していくというような政府側の答弁なんです。この辺のことについて御意見がございましたら、お願いしたいと思います。
石井参考人 これも極めて重要な御指摘でございます。
 私も、企業会計を導入するということの意味は、一番大事なところは二つあると思うんですね。
 第一点というのは、収支あるいは効率性、この見方をどこで判断するのかということだと思います。
 それから、もう一つは、結果責任、つまり、今までは、官庁会計ですと、単年度予算主義と申しますか発生主義を今郵政事業も導入しておりますけれども、これは完全なる発生主義ではないというふうに私は思っております。したがいまして、来年以降公社が発足しますと、企業会計原則を適用されるということは法律にも明記されておりますので、こういった形になりますと、そういうプロセスと結果、両方のディスクローズ、そしてまた会計上の責任も負うということになってまいります。
 そこで、先生御指摘の退職給与引当金や減価償却引当金等々の積立金の問題が極めて重要になります。これは、ゴーイングコンサーンという言葉をよく言われておりますけれども、企業として継続して事業を行っていくためには、どうしても将来予見される支出、これに備えていかなければならない、これは発生主義の基本原則でございます。ですから、その期に発生した取引はその期にきちっと処理する、これを、今までは、官庁会計の場合には単年度で処理していったということでございます。したがいまして、当然、退職給与積立金、つまり引当金や償却、償却前と後という議論もありますけれども、私は、きちっと償却の後で収支ははっきり把握しなければならないというふうに理解しております。
 したがいまして、積み立てをしますと債務超過になる、あるいは資本が出てこないというような問題点が御指摘されておりますけれども、これは、そこのところでは、企業として自律的かつ弾力的な経営を本当に郵政公社に期待するんだったら、そのことを念頭に置いて、出資、当初のスタートの段階で、国や政府はきちっとした手当てをすべきだというふうに私は心から思います。ですから、それなくして、大義名分の自律的かつ弾力的な経営というようなスローガンだけだと、これはやはり事業としても長続きはしないということでございます。
 それから、もう一つ、最終的な企業会計原則を導入することによって、アカウンタビリティーがきちっとつくということでございます。会計上の説明責任。ただ公表して、どうですか、これは国会への報告というのもございますけれども、それだけではなくて、きちっとその根拠を説明しなければならないというふうに思います。総務省では行政評価というのをスローガンにしておりますので、まずみずから総務省が監督、管理する事業として、やはり国民利用者の方々に最も身近なサービスを提供するわけですから、きちっとした説明責任を行わなければならないというふうに思います。そのための仕組みをきちっとこれからも検討してつくっていかなければならないというふうに、大枠はもうできておりますので、あとは細目だと思います。
 ありがとうございました。
矢島委員 次に、塩畑参考人にお伺いしたいと思います。
 先ほどもありましたけれども、御意見の中で、宅配便は相当成熟したシステムになってきている、メール便の隣接分野の信書便も物流事業者のターゲットになりつつある、こういう御意見がございました。
 そこで、大体成熟したシステムができ上がっているこの信書便の中にヤマトが参入するんじゃないかとかいろいろ言われてきたわけですが、例えばヤマトのシステムで今の郵便事業のかわりができるのか、その辺で何か御意見がございましたら、お願いしたいと思います。
塩畑参考人 ヤマト運輸のシステムを十分に承知しているわけではございませんけれども、一般的に申し上げまして、とにかく取り扱っている通数がまるっきり違うわけですね。現在扱っている通数の何割かふえるという程度であれば、常識的に考えまして、既存のネットワークを、それぞれリンクの部分を強化する、ターミナルの部分を強化するといったようなことで対応が可能になろうかと思うんですけれども、その何倍ものものを一挙に扱うと。
 ここで、ユニバーサルサービスということで極めて重要なのは、三日以内に配達するんだとかいうことは、もう既にこれは物流業者は十分にクリアできる水準だと思うんですけれども、非常に重要なのは、やはり一通からの引き受け義務を負うんだというところだろうと思うんですね。義務を負うのと負わないのとは、経営のやり方としてもまるっきり違う。義務を負わなければ、自分のところのネットワークの許容量に応じて調整できるわけですね、引受量を。そういう形でネットワークの効率化を図ることができるわけですけれども、そうでないということになると、これは相当、もう抜本的に仕組みをつくりかえる必要がある。極端なことを言いますと、雇用する人間も、この事業に参入したときから一遍に何万人もふやしていかなきゃいけないというようなことに常識的にはなるだろうと思うんですね。
 したがって、どうも、どの程度の今のネットワークの補強で、補完でできるのか、ちょっと私はわかりませんけれども、一般的には難しいんではないかなというような感じを持っております。
 以上でございます。
矢島委員 引き続いて塩畑参考人にお聞きしますが、今お話しになりましたように、年間取扱数だって、郵便の場合には二百六十四億以上ですか、それに対して、宅急便の方でいきますと、これはヤマトですけれども八億少しというような状況。
 そこで、実はもう一つ私が大丈夫かなと思っていることとして、郵便の方は、単価は封書で八十円、はがきで五十円、こうなっています。宅急便の方でヤマトを調べてみましたら、取次店の持ち込みの最低料金として六百四十円という額になっております。つまり、私が危惧する点というのは、五十円、八十円、こういう郵便事業に参入していって果たして事業が成り立つのか、その辺が非常に疑問に思うところなんですが、何か御感想がありましたらお願いします。
塩畑参考人 恐らく、信書便の分野に参入するとしますと、ひな形になるのが、宅配便のシステムではなくてメール便のシステムだと思うんですね。
 宅配便は、今お話ございましたように五百円、六百円という金額で受け取るわけです。かなりの貨物を自動仕分けの装置でもって仕分けをして、配達をする、これは自動車、小型のトラック、軽トラックなんかで配送をするというような仕組みになっております。それの余った部分を埋めていこうというような発想で、メール便という、冊子、カタログのたぐいの輸送サービスを開発してきたわけですね。
 したがいまして、当初は宅配便のネットワークの中でこれはうまく処理をしていたんだろうと思いますけれども、やはり、これがふえてきますと独自のシステムが必要になるということなんです。今現在のやり方でいいますと、ほとんどこのメール便につきましては手で仕分けをして、家庭の主婦なんかをアルバイトに頼んで、それぞれ受け箱に配っていくというようなやり方で、宅配便の仕組みとは別の仕組みだというように御理解いただいた方がよろしいと思うんですね。こちらの方の単価は、詳しいデータを承知しているわけじゃございませんけれども、百数十円というような価格で大体やっているのではないかなと考えております。
矢島委員 それでは、神野参考人にお尋ねいたします。
 先生が書かれた、中央公論の三月号、「思慮深さを放棄した構造改革」というところを読ませていただきました。これは、民間でできることは民間でという問題を先生は取り上げていらっしゃったわけなんですが、小泉首相は専ら、民間でできることは民間でということで、当面公社化、いわゆる郵政三事業は公社という形でつくるけれども、実際目標としているのはまず民営化という方向、これが持論であるわけですね。
 そこで、私、先ほど来お聞きしておりまして、いわゆる社会の構成員によるところの共同の事業、そして一番弱いものにペースを合わせるんだ、非常に共感したわけなんですが、そういう観点からいきますと、先ほどちょっと出ました小口金融の問題なんです。
 私、調べてみまして、非常に郵便局の定額、いわゆる小口庶民金融といいますか、定額貯金というものが利用されておる、そしてまた、そのことが一般の国民には、将来のいろいろな、病気だとか進学だとか生活設計の中で重要な役割を果たしている。それで、大手銀行を調べてみたんです、同じようなものをやっているかどうか。そうしたら、大手で三行か四行始めたんです。始めたけれども、もう撤退しちゃっているんですね。つまり、この取り扱いは現在行っておりません、こういうふうに出てまいりました、インターネットで。
 ですから、私、なるほどこの小口の定額貯金のサービスというのに対して風当たりも一方ではあるわけですけれども、決して民業圧迫なんというものじゃない、庶民にとって必要なものなんだと。ところが、では、大銀行やってみなさいと、結局みんな撤退しちゃっているんじゃないか。
 つまり、私が言いたいのは、何でも民間でできるものは民間でとやったって、民間は撤退したくなればすぐ撤退するんだから、そういう国民のニーズというものを考えないで何でもかんでも民間だというようなやり方には非常に危険を感じているわけなんですが、神野先生、どのようにお考えでしょうか。
神野参考人 私も先生と全く同じ考え方だというふうに理解していただいて構わないと思います。
 こういう場では失礼かもしれませんけれども、民間でできることは民間でということであれば、何でも民間でできるんですね。例えば、防衛であっても、言い方をかえてみますと、タリバンというアフガンの政権はアルカイーダというNGOに防衛を民間委託したんだと言えないこともないわけですね。
 私たちは、何を共同事業でやっていくのかということを決めてやらなければならないので、その基準は、単純に民間でできるから民間でやるのではなくて、共同事業として何をやっていくのか、どういう場合にやっていくのかということを決めないと、これは先ほどちょっと別の委員の御質問のときにお答えしましたけれども、そういうメルクマールをちゃんと考えてやるべきだというふうに考えております。
矢島委員 最後になると思いますが、石井参考人にもう一度お尋ねしたいことがあるんです。
 というのは、今度の出されておる法案の中で、第三種、第四種の郵便物の減免制度の問題なんです。何回かこの場でも取り上げ、そしてまた、これを存続してもらいたいというたくさんの障害者の方やそのほかのいろいろな方々からの要望の中で、一応は点字のもの、これは法律からはなくなっちゃったんですけれども、でも、やるんだと。ただ、今の水準を本当に維持できるのかどうかという問題があるし、そういうことをやったら今度は赤字を公社に押しつけるわけだから、公社として、公社が自分で決めればいいんだという形になるわけなんですけれども、やはりこういう政策的な郵便料金、こういうものを公社もぜひ引き継いでもらいたいというのは国民的な非常に強い要望だと思うんです。
 何か御意見がございましたらお願いします。
石井参考人 今の御指摘も、もともと社会政策上の配慮から郵便事業の方にも入ってきたというふうに私は理解しております。
 それで、結局は数年前から、旧郵政省では、郵便の種別の損益、あるいは機能別、サービス別の損益というのを公表するようになりました。それを見ますと、今一種は若干の赤字になっておりますけれども、数年前までは一種も若干の黒字、二種でもうけて、三種、四種も含めて、全体的な内部相互補助を行っていくということでございます。したがいまして、私は、全体の中で郵便事業として収支均衡を図れれば、当然三種、四種も社会的な要請が非常に強いわけでございますので、維持、存続をしていくべきだというふうに思っております。
 したがいまして、その収支均衡をとれる、つまり健全経営を図れるような、その仕組みをまずつくるということが一番大切だというふうに思っております。よろしくお願いします。
矢島委員 ありがとうございました。終わります。
平林委員長 次に、横光克彦君。
横光委員 社民党の横光克彦でございます。
 きょうは、お三方の参考人、本当に御苦労さまでございます。また、貴重な御意見、ありがとうございます。
 今回、郵政公社法案とともに、信書便法案、このことによって、郵便にも許可を受ければ全面参入できるという法案が今審議されているわけでございますが、そういった法案がこうして国会で審議されているにもかかわらず、全面参入しようという民間事業者、今のところ動きがないわけですね。ある意味では、摩訶不思議な現状だな、法案はつくるのですが、その法案を生かそうという形はあらわれていない、非常におかしな状況が生まれているのですが、多くの課題がこれまでの審議の中であるからであるというのはよくわかっています。
 ただ、その中で、郵便を自由化したいならば郵便法第五条を撤廃すればいいんだ、これをヤマト運輸の元会長でございました小倉さんが言う、小泉さんはそれだけを言えばよかったのだと非常に簡単に言いますが、言葉は簡単ですが、中身は非常に大きいわけですね。この郵便法第五条を撤廃するという意見につきまして、まず石井さんにお聞きしたいのですが。
石井参考人 この郵便法第五条は信書の独占をうたっている条文でございまして、このことによりまして、この信書という概念等々を旧郵政省の時代からいろいろ議論、そしてまた昭和三十年代には最高裁の判例も出されたというふうに思っております。
 では、この郵便法第五条を撤廃すればいいじゃないかということでございますけれども、これを言われますと、もうまさに無条件全面参入ということでございます。ですから、この今の信書便法案、御議論いただいていますこの法案を設けるということ自体が、世界では類を見ない画期的なことだというふうなことをまず申し上げたいと思っております。
 この信書便法案というのは相当の思い切った法案であると考えます。今後、郵政公社になりましたら、相当の効率化、コスト削減、それはもちろん必要でございますけれども、先ほど来の各先生方からの御質問にもございましたように、ユニバーサルサービスを守るためにどうしたらいいのか、その手だてが一番大事でございまして、この全国あまねくサービス、五十円、八十円、そしてまた、全体の中で収支均衡を図れれば、いろいろな社会政策的な文教政策的な、そういう要請にもこたえていくということが現在の郵便事業には求められております。したがいまして、私は、この郵便法第五条の撤廃というのはあり得ないというふうに思っております。
横光委員 かなり現実的でない、暴論に近いというような今の印象を受けました。このことに対しまして、例えば立場の違う、いわゆる参入するサイドといたしまして、塩畑参考人にも、この郵便法第五条撤廃の件についてお聞きしたいのですが、いかがでしょうか。
塩畑参考人 私も、今の石井参考人とほとんど同じ意見を持っております。この条文を外しまして、民間だれでも自由にやれる、無条件でやれるということならば、おのずから国民の便益につながっていかないというような事態が生じてくるのは十分に予見されるということですから、今回のような法案の中で、別途に信書便ということで規定してくるのが一番いい方法ではないかなというように私も考えております。
横光委員 神野参考人にお聞きしたいのですが、今お二方の意見も、郵便法第五条は非常に大事である、そういう意見でございます。この第五条では、郵便の独占ということで第五条があるわけですが、第一条では、郵便法第一条、この目的のところで、いわゆる全国あまねく公平、同じ料金という、ここにユニバーサルサービスというものが目的化されているわけですね。五条の撤廃あるいは完全な民営化ということに仮になった場合、こういった独立採算制のもとでやっていく、いわゆるユニバーサルサービスあるいは独占状況、こういったものが崩れていくわけですね。かといって、ユニバーサルサービスは維持していかなければならない。そうなりますと、そこで税金の投入ということもこれは起こり得るわけですが、こういうことに対しましては神野参考人はどのようにお考えでしょうか。
神野参考人 お答えさせていただきます。
 まず、民間参入ということについて委員が御質問されている背景にあるのは、民間参入というのは単なる手段だろうという御主張が多分あるのではないかというふうに推察いたします。つまり、民間参入をさせることによって何らかの政策目的があるはずですね。そういう目的にとって、民間参入という手段をとることがよければ、そういったことを行えばいいわけですね。
 問題なのは、私たち国民にとって民間参入という手段をとることがメリットがあるのかどうか、何のために民間参入させるのかということだと思いますが、私の理解では、国民は、今アンケート調査などを読んでみても、ユニバーサルサービスをかなり望んでいます。つまり、ある地域は非常に便利になって安くなってしまうんだけれども、ある地域は高くなってしまうということよりも、国民の共同の事業でやって、あまねくみんなで、同一の条件で、だれもがどこでも同じようなサービスが受けられるように共同事業でやっていこうという意思がまだ強いというふうに理解しておりますので、そういう目的に照らして、そういうことが阻害されないような形で、仮に民間参入を認めるにしても考えるべきだというふうに理解しております。そのことによって、もしも経営その他の関係で税金投入が必要になった場合には、それは国民のそのときの判断によりますが、私はやむを得ないというふうに考えています。
横光委員 今回、民間参入を認めるのですよ。認める法案なんです。ただし、そのためには、ユニバーサルサービスというのを義務づけられておりますし、そのための規制というものがかけられているわけですね。その規制が余りにもがんじがらめじゃないか、あるいは、余りにもハードルが高いじゃないかということで、門戸は開いているのですけれども事業展開できないという状況なわけですね。今お話しされましたように、私も、競争原理の導入とか、あるいは利用者の選択肢の拡大とか、いろいろなプラスになる面もあると思うのです。しかし、あるならば、それは今言われましたように、あまねく権利を享受しなければだめだ、これがもう大前提だと思うのですね。
 神野さん、先ほど本当にわかりやすいお話、福沢諭吉先生のお話からいろいろお話しいただいた、公園の話、あるいは山登りの話、ここに行き着くのではなかろうかと思うのですね。この郵政三事業、これまで本当に、非営利、国営三事業一体ということでユニバーサルサービスを確保してきた。さらにその上に、福祉とか三種、四種とか、あるいは災害時の特別な制度とか、ひまわりサービスとかいろいろな形で、それこそ、あまねく地域住民にそういったサービスはもう定着しているわけですね。こういったところが、もちろん民営化になってしまうと一番最初に切り捨てられる分野であろう。そういった意味で、今回、全面参入とはいえ、いろいろなハードルがあるということだと思うんですね。
 そこで、塩畑参考人にお聞きしたいんですが、全面参入はそう簡単には、民間事業者が参入するのは今難しいんだ、そういうお話でございました。ただ、部分的、段階的ならばというお話でございました。こういった部分的、段階的にしても、まだ内容がわからないわけですが、仮に部分的、段階的であるならば、今回参入できたでしょうか、する事業者は多いと思いますでしょうか。
塩畑参考人 どの辺のところをまず開放していくかということにも関係すると思いますけれども、それはもう間違いなく、全面開放よりは格段に参入しやすいと思うんですね。
 それは、先ほど申し上げましたように、全面参入ということになりますと、とにかく今持っているノウハウですとか、ネットワークですとか、それを生かせないんですね。利用できない。まるっきり別の抜本的な仕組みをつくり上げないとできないということですから、今のシステムを、あるいは今のノウハウを活用できるという程度の段階的な開放であれば、あるいはそれを補強すれば済むということであれば、ずっと参入がしやすくなるというように考えております。
 実際、どの程度の事業者が参入することになるかどうかはよくわかりませんが、それはもう格段に参入はしやすくなるというように考えております。
横光委員 競争導入による効率化とユニバーサルサービスの維持という公益性、この両方が必要であるということはお三方も同じ意見だと思っております。
 石井さんも、こういった両立が必要である、一つの手段としては段階的、部分的参入ということも考えられるというお考えであるんでしょうか。
石井参考人 当初、総務省の方では大臣の研究会がございまして、御存じのように、部分的かつ段階的なオプションもありますよという中間報告が出ておったわけでございますけれども、それが急遽、御存じのように、十二月の総理と総務大臣の会見で、全面参入も検討に入れなければならないというようなことになったというふうにお聞きしております。
 そういう中で、部分的かつ段階的な参入というのは、今塩畑参考人が言われましたように、私は、事業者としては相当可能性があるんではないかというふうに思います。それはなぜかと申しますと、やはり全国ネットワーク、全国あまねくサービス、ユニバーサルサービスを守りながらやるということになりますと、もちろんコストもかかりますし、設備やネットワークも今の体制ではできない。
 それはなぜかというと、御存じのように、今、メール便とかいうシステムがかなり郵便の信書にも似通っているということを言われております。ただ、決定的に違うところは、メール便と信書の場合には、メール便の方は、一つのところから集めてたくさんのところに配っていくという、ワン・ツー・メニーだということですね。ところが、郵便の方はメニー・ツー・メニーで、全国十七万数千本のポスト、そしてまた全国二万四千八百弱の郵便局から集めて、そして、ユニバーサルサービスを守りながら、あて名そして住居の所在地があるところは全部配らなきゃいけないということでございます。
 したがいまして、そういうことからしますと、やはり部分的かつ段階的なところというのは、その意味からしても、事業者的にはかなり入りやすくなるというふうに思っております。
 以上でございます。
横光委員 次に、神野さんにお聞きしたいんですが、先ほどから出ております出資条項ですね、これはどのようにお考えですか。今回は盛り込まれていないわけですが、神野さんのお考えはいかがでしょうか。
神野参考人 お答えさせていただきます。
 盛り込まれていないものですので、ちょっとその具体的なイメージはわかないんですが。
 ただ、私は、サービスを提供する上でユニバーサルにサービスが提供されなければならない、しかし、部分的に民間を利用する場合もあり得るということを考えております。それは、その民間の中にはNPOも含まれるのではないか、これは責任問題がありますので非常に難しいわけですが、通常、一般的に言いますと、非営利団体もあり得ない話じゃないんですね。
 出資という意味ですけれども、今言いましたように、ユニバーサルサービスが確保されて、かつ公社が場合によってはある業務を民間、これはNPOを含めてですが、委託するようなことができ得る一つの手段として出資もあり得べしというふうに考えております。
横光委員 同じく神野さんにお聞きしたいんですが、国庫納付金についてはどのようなお考えでしょうか。そしてまた、その場合、預金保険料等もこれに含めるべき、これは財政学的にどのようにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。
神野参考人 お答えさせていただきます。
 国庫納付金という規定が設けられても私は構わないとは思いますけれども、本来、繰り返すようですが、公共部門というのはお金もうけをしてはいけない領域でございますので、どだい何かお金がどんどんもうかってくるというような話ではないと思うんですね。公社の場合には、まだ経営も安定しておりませんので、仮に経営が安定した暁に余剰金がどんどん出てくるという事態が生じたならば、それは本来、料金の引き下げとか、それから預金をしていただいている方たちに還元するのが筋ではないかというふうに考えております。
横光委員 ありがとうございました。
 石井参考人にお聞きします。
 この法案で一番、ユニバーサルサービス、もう一つは信書の定義、これが非常に大きな問題点になっているわけです。信書の定義は、これからガイドラインでいろいろと細かいことは決めるということですが、このときに一番気をつけなければいけないこと、これによって本当にいろいろな形で左右されてくるわけですね。これは、塩畑さんサイドにも影響を与える、公社にも影響を与える。このガイドラインで決める場合の一番、これだけは気をつけなければいけない、こういうことで御意見ございましたら。
石井参考人 お答えさせていただきます。
 そこがやはり一番大事なところだと思います。したがいまして、これは技術革新の進展とともに、十数年前はこれほどクレジットカードが一般化するというのはだれも思わなかったところもありますし、そしてまた、地域振興券、これもその後発行もされていないというようなところもございます。ですから、こういう社会経済情勢をにらみながら、信書の定義というものも相当考えていかなければならないというふうに思っております。
 ですから、ここで今盛んに言われています、これは郵便事業のグレーゾーンの話じゃなくて、信書のグレーゾーンということがよく言われているところに抵触するものがいろいろございますけれども、このところもやはり一つ一つ、今度はその定義を明確にする段階で相当しっかりとした議論をしていただきたいというふうに思います。よろしくお願いします。
横光委員 同じく石井さんにお聞きしたいんですが、先ほど、郵政三事業、郵便事業、これは累積では黒字であるが、現在、郵便事業は非常に厳しい経営状況にあるわけですね。当然、公社となりますと、一段の効率化あるいはスリム化、また人件費の削減とか、いろいろな厳しい問題に取り組んでいかなければならない。そういったことを含めて、具体的に、効率化を中心としてどのような事業体制の構築がこれから必要となってくるか、何か御意見がございましたらお聞かせいただきたいと思います。
石井参考人 これからの郵政公社のあり方でございますけれども、やはり、今回の日本郵政公社法案では、責任体制が明らかにされたというところは画期的なことだと思います。ですから、これは事後評価というのが厳しく問われるということでございまして、総裁、副総裁、理事等々の最高幹部に課せられる責任というのは、四年間の総裁、副総裁の任期が明記されておりますし、理事に関しては二年間ということでございまして、任期途中であっても、事業がうまくいかないということがはっきりしたら、総務大臣は解任も不可能ではないというような法案だというふうに私は理解しております。ですから、そういう中できちっとした体制、先ほど来責任体制の話が出ておりましたけれども、私は、民間企業よりもはるかに責任体制が明らかになっている公社である、旧三公社とは全然違うというふうに思っております。
 ですから、そういう中で、これから事業のあり方というのはいろいろ問われてくると思いますので、そこは徹底したサービスの向上と、先ほど来神野参考人からお話がありましたように、やはり目線はいつも利用者の目線に立って、そして利用者の気持ちを第一として、お客様第一という言葉は今郵便局が標榜しております、だけれども、本当に徹底したサービスができるかどうかというのは、来年のスタートした以降に求められていることだと思います。
 ですから、そういった中で、この法案をもとにして、この法律に準拠して、ぜひとも、日本郵政公社には国民利用者の期待にこたえられるような事業の構築をなし遂げてもらいたいというふうに思っております。
 ありがとうございました。
横光委員 終わります。
平林委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。
 参考人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。
 ありがとうございました。(拍手)
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時二分散会


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