衆議院

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第24号 平成18年5月30日(火曜日)

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平成十八年五月三十日(火曜日)

    午前九時三十二分開議

 出席委員

   委員長 中谷  元君

   理事 佐藤  勉君 理事 谷  公一君

   理事 葉梨 康弘君 理事 萩生田光一君

   理事 やまぎわ大志郎君 理事 後藤  斎君

   理事 渡辺  周君 理事 谷口 隆義君

      あかま二郎君    石破  茂君

      岡部 英明君    奥野 信亮君

      上川 陽子君    木原 誠二君

      木挽  司君    桜井 郁三君

      実川 幸夫君    関  芳弘君

      田中 良生君    谷本 龍哉君

      土屋 正忠君    土井  亨君

      萩原 誠司君    橋本  岳君

      福田 良彦君    山内 康一君

      山本ともひろ君    渡部  篤君

      安住  淳君    逢坂 誠二君

      田嶋  要君    寺田  学君

      西村智奈美君    福田 昭夫君

      横光 克彦君    富田 茂之君

      古屋 範子君    吉井 英勝君

      重野 安正君    亀井 久興君

    …………………………………

   総務大臣         竹中 平蔵君

   国土交通副大臣      松村 龍二君

   総務大臣政務官      上川 陽子君

   総務大臣政務官      桜井 郁三君

   総務大臣政務官      古屋 範子君

   政府特別補佐人

   (人事院総裁)      谷  公士君

   政府参考人

   (人事院事務総局人材局長)            鈴木 明裕君

   政府参考人

   (総務省人事・恩給局長) 戸谷 好秀君

   政府参考人

   (総務省自治行政局公務員部長)          小笠原倫明君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局次長)           高橋  満君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房長) 春田  謙君

   総務委員会専門員     太田 和宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月三十日

 辞任         補欠選任

  あかま二郎君     山内 康一君

  永岡 桂子君     木原 誠二君

同日

 辞任         補欠選任

  木原 誠二君     永岡 桂子君

  山内 康一君     あかま二郎君

    ―――――――――――――

五月二十九日

 地方公務員等共済組合法の一部を改正する法律案に反対し、議員年金制度の廃止を求めることに関する請願(江田憲司君紹介)(第二四〇八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国と民間企業との間の人事交流に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第七五号)

 消防組織法の一部を改正する法律案(内閣提出第八七号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――

中谷委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、国と民間企業との間の人事交流に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として人事院事務総局人材局長鈴木明裕君、総務省人事・恩給局長戸谷好秀君、自治行政局公務員部長小笠原倫明君、厚生労働省職業安定局次長高橋満君及び国土交通省大臣官房長春田謙君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

中谷委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡辺周君。

渡辺(周)委員 おはようございます。民主党の渡辺でございます。

 それでは、早速質問に入らせていただきます。

 国と民間企業との間の人事交流に関する法律の一部改正案の審査に先立ちまして、今大変問題になっておりますいわゆる社会保険庁の問題、我々は年金偽装問題というふうに呼んでおりますけれども、連日大きく報道されております年金の不適正手続につきまして、冒頭お尋ねをしたいと思っております。

 これは、五月二十四日の朝日新聞の夕刊に出ておりました、年金不正免除で社会保険局が市に協力要請、大阪の話でございます。これは、内容をざっと申し上げますと、大阪社会保険事務局が昨年の十一月、電話承諾などで申請を代行する不正な手続への協力を求める文書を、課長名で大阪市あてに出していたことがわかったというような記事でございます。

 内容では、免除の申請書は本来、本人が書いてみずから提出、市町村はそれに基づき所得を確認して、社会保険事務所に送付することになっている。ところが、この大阪市の担当者は、事務局からの文書を、電話承諾での代行作成を認める国からの指示と受けとめて、市内の二十四ある各区役所の保険年金課長に転送したということでございます。

 これが明るみに出てから、通常業務での協力要請であって指示ではないというようなことを社会保険庁の方は言っているわけでありますけれども、この問題の中で、こういうシステム、仕組みになっている以上、自治体も何らかの形で意向を受けて関与していたのではないかというふうなことがここには書かれているわけであります。きょうの時点でも、この不適正手続は二十六都府県で十一万件を超す。社会保険庁としては二百七十万件を再確認するというような方向のようでありますけれども、今一番問題となっているこの社会保険庁の年金不正免除、不適正手続につきまして、これは大阪市の問題を含めて、総務省としてはどのようにとらえていらっしゃるのか、その点につきまして、冒頭まずお尋ねしたいと思います。

竹中国務大臣 お答えを申し上げます。

 御紹介いただきました五月二十四日付の夕刊記事は承知をしております。

 御承知のように、もう言うまでもありませんが、この社保庁の今回の事案、政府としては大変重視をしておりますけれども、問題そのものは厚生労働省所管の問題でございます。総務省として独自に何々を把握しているということではございません。厚生労働省におきまして今詳しい調査が行われているというふうに承知をしておりますので、それを見守りたいというふうに思っております。

渡辺(周)委員 これは恐らく総務省も、厚生労働省の話なので、社会保険庁の話なので事情がよくわからぬということだろうとは思いますけれども、こういう自治体にも協力要請をしているというような報道がされております。当然、この二十六都府県で十一万件を超す中で、自治体に対してもこういう例えば働きかけ、指示なり協力要請なりがあったかどうかということは、やはり総務省としても事実確認をしておく必要があると思いますけれども、その点については何か今後対策を講じられるお考えはありますでしょうか。

竹中国務大臣 先ほども申し上げましたように、政府全体としてこの問題は大変重視をしています。けさの閣議後の閣僚懇でも、総理からの御発言もございました。

 それについて、まず直接の担当である厚生労働省で今非常にしっかりとした調査が行われております。それをまず見守りまして、その上で、御指摘のとおり、我々は地方公共団体に対して必要があれば適切な助言を行わなければいけない立場にございます。まず、その一次的な厚生労働省の調査を待ちまして、私どもとして何かやるべきことがあるかどうか、これは適切に判断をしてまいりたいというふうに思っております。

渡辺(周)委員 この問題は、社会保険庁、厚生労働省の問題のみならず、当然、手続上は自治体が間に入って手続をするということでございますので、やはり自治体に対してもこのような形で、実態がいかなるものであったかということについては今回の調査を行う、再確認するようでありますけれども、自治体もどのような役割を担っていたのか、あるいは社会保険庁と今までどのような関係であったのかということについては、ぜひ総務省の方からも、これは政府一丸となってという話でございますので、地方自治体に通達を出すなり、実態解明に協力するなり、やはり何らかの対応をすべきだというふうに考えております。

 全くけしからぬ話でありまして、未納対策のために、とにかく収納実績、これをかさ上げするためにはどうしたらいいか、分子がふえないんだったら分母を減らせばいいという話で分母を減らして、数字だけは何とか偽装をしてでもつじつまを合わせる、こういうことが実は組織的に行われていたわけでございます。ぜひ、この問題については、総務省としても徹底した事実解明に向けて取り組んでいただきたい、いくべきだ、そのことを冒頭申し上げたいと思います。

 それでは、法案の質疑に入りたいと思っておりますが、この官民交流の法律について、平成十二年から法が施行されまして、そもそも何のためにやっているのかということなんですね。出てくるのは、人材育成という言葉が何度も出てまいります。人材育成ということは、これは当然必要なことでありますけれども、人材育成というのは手段であって目的ではないと私は考えるんですね。

 人材育成をして何をするかということを、実際のところ、これまでやってきた中で、結果的にはどういう評価をしたらいいのか、その点については、大臣、率直にどうお考えですか。

竹中国務大臣 冒頭で委員おっしゃった何のためにというのは、本当に重要なことだと思います。日本の組織、特に役所は典型的な終身雇用、年功序列になっておりまして、そういう中でどうしても職場そのものが一つの固定化されたカルチャーのようなものを持ってしまう、それではやはり組織の活性化は図られない、そのために人材の交流というのは大変多面的な意味を持っているというふうに思います。

 評価でございますけれども、平成十二年に交流法が施行されたわけでございますけれども、十七年までに民間企業への交流派遣が四十名でございます。そして、交流採用、採用した側が百七十九名でございまして、その数が徐々にではありますけれどもふえているところでございます。

 その効果としては、実施した府省においても、例えば民間の持っている専門知識が業務に生かされた。また、交流派遣の効果については、幅広い視野や多角的な考え方を身につけた、民間の企業の中に入ってそういう視野を身につけた、そういうふうに評価している府省が多く、高く評価されているというふうに考えております。

 その意味では、今後こうした交流をさらに図っていく必要がある。人材育成は手段でございますが、今申し上げたような専門知識の活用、そして幅広い視野、考え方の育成によって公務そのものがまさに活性化されている。それが目指すところであるというふうに考えております。

渡辺(周)委員 今おっしゃられました、いわゆるこの五年間の実績を見ると、四十名。これはいわゆる派遣した数ですね。いわゆる官庁から民間に行った数が四十名。民間から採用したのが百七十名というようなお話がありました。

 ただ、御承知と思いますけれども、国家公務員は、自衛官を除くと大変な数。三十三万人の一般職の公務員がいる中で、数字からいうとわずかでありまして、その中で今おっしゃった、多角的な視野を身につけたとか、民間の持っている専門知識が業務に生かされていると言いますが、これは全体からいくとまだ非常に小さな数でしかないんですよ。まだわずかな数でしかない中で、果たしてこれを実績と言っていいのかどうなのか。

 なぜこれが当初のもくろみというか当初の意図していたように進まないのかということについては、これはいろいろ理由があるからこそ今回の法改正だというふうになったんでしょうけれども、例えば退職金の問題、あるいは雇用形態の問題、あるいは年金や保険の問題、いろいろ今回の法案でその点についてはクリアされるというようなことと思いますけれども、実際、客観的に、本当に多角的な視野になっているのか、何か客観的な判断ができないんです。これをどういうふうにある程度評価につなげていくかということについては、これは大臣、どうお考えですか。

 客観性を持たせる。つまり、官民交流したことによって本当にこういう効果が生まれた、多角的な視野とか業務に生かされた専門知識というのは、果たしてこれぐらいの数で本当に組織全体、官庁全体に何か影響を与えたかということは、とてもじゃないけれども、何かまだ大海に水滴がぽつんと一滴落ちたぐらいの影響としか私は思えないんですが、今後これをどうしていくか、その点について。この法律の改正によって法的な問題がクリアされれば、もうちょっと官民交流が盛んになるだろう。それによって組織、官庁自体をどうしたいのか、あるいは民間がどうなるのか。その点についてはどういうふうなお考えを持っていますか。これはぜひ大臣としてお答えください。

竹中国務大臣 委員おっしゃいましたように、大海に一滴と評されましたが、現実、数からいうと本当にそういう状況にまだとどまっているというふうに思っております。

 あえて弁護すれば、しかし、一滴でも何もない無滴よりは非常に大きな効果があるのではないか。実は私自身も、若いころそういう交流を経験させていただいた人間として、民間ではありませんでしたけれども、政府系の機関から役所の中に来て交流させていただいた人間として、そういう効果というのはやはり非常に大きいんだろうと思います。

 客観的な評価に努めよということに関しましては、我々もぜひそうしたいと思っております。今アンケートとかヒアリングとかやっていますけれども、本当は、交流した人材が二十年、三十年後に官民の組織の中でどういうふうに評価されているか、そういう統計が出そろえば、これは何らかの結果は間違いなく出てくるんだと私は思います。

 しかし、それにも増して、今どうしてこういうことをさらに法律まで出してやろうとしているのかということに関するむしろ思いでございますけれども、私は、私自身いろいろ経験をしてみて、また、採用しようと思ってみてなかなか難しいことは、やはり日本の雇用、組織全体が終身雇用と年功序列に支えられてなかなか流動化していない。流動化していない中で自分だけが動くと、その個人は非常に大きなリスクを持つわけですね。

 特に民間から役所に来るとき、今まではやめなきゃいけない。そうすると、口約束で社長はまた戻してくれるというふうに言うかもしれないけれども本当か、社長がかわったらどうなるんだ、自分は子供もいる、ローンも抱えている、やはりそういう方は本当に多いわけです。

 雇用が流動化していないからなかなか来れない、なかなか来れないから雇用が流動化しない、そういうやはり悪循環が存在していると思うんです。その悪循環がとれていけば、今度はどこかで雪崩を打ったようにこういう交流というのはむしろ深まる可能性があって、そういう点に早く持っていきたいなというふうに思っております。

 今回お願いしている法律の内容は、その効果も我々はしっかり見定めたいと思いますが、そういう交流を容易にする、今までの障壁をなくすという意味では、私はそれなりの効果があるというふうに期待をしております。そして、そういう経験をした人が累増的にふえていくことによって全体の流れが変わっていくということを期待しているわけでございます。

渡辺(周)委員 今たまたま例示をされましたけれども、実際こういう例があります。これは官民交流とちょっと違う話ですけれども、国際ボランティアに、例えば国立病院のお医者さんや看護師さんが、これは私の友人から聞いた話ですが、いわゆる民生の分野での国際貢献のポスターが張ってある、若くて元気なお医者さんや看護師さんが、自分もずっと同じところで仕事をするよりは、何かしばらくちょっと視野を広げるために行ってみたいと。ところが、やはりみんな思いとどまるわけですね。

 何でかというと、そこに行ってしまって、帰ってきたら自分のいすがなくなっているんじゃないかと。ましてや、そんなところに行くのは変わり者だと。ほかの人間、同期の人間は一生懸命会社の中で仕事をしているのに、あいつはよそへ行って違う空気を吸ってきて、何年かしてブランクつくって帰ってきたら出世するなんて許されないみたいな例えば雰囲気があるわけですよね。

 つまり、やはりまだ、これはある言葉を使うと、就職ではなくて就社である。やはり会社に就くことによって自分の出世のスピードあるいはステップというものが、まだ残念ながら日本企業の中に根強くある中で、一回外へ出た人間に対する評価というのはなかなかこれは定まっていない。

 その点について、やはり民間企業の意識あるいは日本的なビジネスマンの風土の中でどう考えていくかということは、これからやはり考えていくべき、そうしないとこれは活性化しないんだろうなというふうに思うんですね。

 ですから、私自身ちょっと御提案したいのは、今おっしゃったような、受け入れるメリットとして民間の意識やアイデア、多角的な視野、これを受け入れることによって、役所の方も変わるけれども、民間の方もやはり刺激になる。だとすれば、これは数値目標みたいなものを何か定めて、例えば年間これぐらい、十九年度でこれぐらいとか、目標数値を決めるなり何らかの形で具体性を持たせないと、公募しました、手が挙がりました、受け入れましたと、何となくやっているだけでは本当の効果があらわれないんじゃないかと思います。その辺について、何らかの数値目標を定めるなりを考えなきゃいけないというふうに思いますが、大臣並びに人事院の総裁、どんなふうにお考えですか。

谷政府特別補佐人 官民交流を今後一層推進してまいりますためには、各府省の協力が必要でございます。そういう積極的な各府省の取り組みに加えまして、交流採用、交流派遣、双方向の交流について広範で自主的な企業の協力の確保ということも不可欠だと考えます。

 私どもといたしましては、昨年九月に総務省と共同で各府省に対しまして官民人事交流の要請を行いますとともに、十月に日本経団連の御協力を得まして民間企業に対する説明会というものを開催いたしまして、各府省のニーズをお示しして、民間企業側の交流希望の把握に努めました。現在、人事院におきまして、各府省、民間企業の交流希望についての情報交換を仲介いたしまして、交流に関する相談に積極的に応じるなど、その交流の促進をしているところでございます。現段階では、こうした環境づくりに全力を尽くしているところではございますけれども、なかなかはかばかしくないということも事実でございます。

 さらにこれを積極的に推進するために推進目標を設定してはどうかという御趣旨と存じますが、このことにつきましては、官民交流の必要性や有用性というものが公務の組織によりまして一様ではないということ、また交流の相手方でございます民間企業の御事情ということもあるということなども踏まえまして、関係者の御意見を聞きながら検討していく必要があると考えております。

竹中国務大臣 こういう交流という大変重要なことを進めるに当たって目標があるべきではないかという議論は、実は大変理解できるところだと私は思っております。この法案を省内で議論するに当たりましても、実は大分議論をいたしました。ただ、こういう政策目標のような目標を掲げると、非常にその際難しいのは、目標とそれを実現する手段がある程度、完全に一対一にはならないにしても、ある程度あるかということなんだと思うんです。

 先ほど申し上げましたように、社会全体の、労働市場全体の流動化がどの程度進んでいるかというような要因、さらには、あくまで公務でありますから、その中立性、公正性を保障しなければいけないというような要因、それと、何よりもこれは相手企業、民間企業の事情があるということで、現時点で明確な目標を設定するというのは、実は法案提出の時点ではなかなか難しかったわけでございます。

 ただ、繰り返しますが、その御趣旨は大変よく理解できることだと私自身は思っておりますので、これは私自身の宿題として、引き続きぜひ考えてみたいと思っているところでございます。もう少し勉強させていただければと思います。

渡辺(周)委員 この点について、本当に効果が上がるように、もっと言えば民間の発想だけじゃなくて、民間のコスト意識が、お客さんで来ているのではなくて、例えば、何だ、お役所というところはこんな無駄なことをしているのか、民間企業だったら、コストダウンのためにもっとこういうふうな業務の効率化、あるいはコストダウンできるじゃないか、そういう意見がもっと採用されるように、そういう意味では、発想だけではなくて、考え方だけではなくて、民間のコスト意識というものをもっとやはり私は取り入れられるような仕組みにすべきだと思うんです。

 何か両方とも、来た方がお客さんみたいな扱いで、何となく、研修のためにやらせていることだから、お互い研修で来ているようなものだから、人の組織のことは余り余計なこと言わないで、余り余計なことしないで、何となく帰ってしまう、何となく戻ってきてしまうではなくて、ぜひその点はそれぞれの利点が発揮されるように、特に役所については、民間のコスト意識、こういうものが本当に官庁の中に浸透するようなことをぜひしていただきたいなというふうに思うんです。

 今度は企業側の考え方のことをちょっと触れますと、昨年の八月に総務省がアンケートを行って、これは派遣した方の民間企業側ですね、役所側からいうと採用した側というふうな言い方になりますが、どういう効果があったかというと、人脈形成等の効果大とあるんですね。人脈形成、人脈をつくった。これは、考えようによったらビジネスに直結するということであって、やはり特定の派遣先、採用先の企業と役所の関係、これは癒着というかべったりの関係になってしまう、あるいは役所側からすると将来の天下り先の確保、そういうふうな意味で実は見られてしまわないだろうか。その辺について、これもちょっと考えておかなきゃいけない。

 今はまだ数が少ないかもしれませんが、私どもが今訴えているように本当に官民交流を盛んにしていく、そこには当然民間のコスト意識というものが官庁の中で生かされて、何らかの形でやはり民間のノウハウを採用するようになる。しかし、反面で、特定の企業と役所が癒着するような疑いを持たれたり、今のところは過去を振り返ってそういうことはなかったというふうに書いてありますけれども、これからそういう可能性がないとも限らないわけです。

 あるいは、将来的な天下り先ですね。人間関係が、やはり人間は情の世界でございますので、親しくなって行き来をするようになれば、やはりだんだんそこがのっぴきならぬ関係になって、何らかの形で天下り先の開拓先になりはしないだろうか。ちょっとひねた言い方ではございますけれども、そういうふうな可能性は当然あるんじゃないか。当然そういう心配をするわけでありますが、どうその点を公正中立に保っていくか、その辺についてはどうお考えですかね。これは、民間側が考えているメリットというのは非常に危険な感じがするわけであります。その辺をどうコントロールしていくかということについては、大臣、どうお考えですか。

竹中国務大臣 今御指摘の点も私自身大変重要なことだと思っております。

 かつて、今でもあるのかもしれませんが、よくMOF担という言葉が使われたわけです。特に金融機関等々から大蔵省に出向して、その出向者が銀行に帰ると、企画部門等々でいわゆるMOFの担当者になって、結果的にそういう人は結構社内で偉くなっていく、出世コースの一つである、そういうことが露骨にあった時代が私はあったというふうに思います。そういうことに対して、十分気をつけて、目配りしなきゃいけないというのは全く同感でございます。

 先ほど、人的ネットワークを一つの効果に挙げているという御指摘がありましたが、これはアンケートでありますけれども、正確には「人的ネットワークの拡大等人材育成上、効果が期待できる」ということでありますので、人的ネットワークだけではなくて人材育成ということを広く含めて効果があるというふうに指摘はしているわけですが、それにしても、今御指摘のような点は重要だと私も思います。

 したがいまして、実施に当たっては、民間企業については、交流採用する官職や派遣先企業での業務内容に制限を設けております。また、同一企業との連続交流の制限を行う。そして、人事院が交流計画の認定、交流の実施状況の国会等への報告を行う。そういうことを組み合わせて、そういう問題が顕在化しないようにしっかりとやっていく必要があるというふうに思っております。

 もう一点は、やはり人材交流にはいい面があるわけですから、そのいい面を殺してしまわないためにも、今おっしゃったようなことが負の面で出てくる可能性があるとすれば、例えばその後の接待とかそういうものですから、そういうことでしっかりと歯どめをかけていく、総合的な対応が必要であるというふうに思っております。

渡辺(周)委員 MOF担という言葉は、かつて使われていて、役所に要は顔がきく、あるいはそれで役所の人間とすり合わせができるとか、そういうことが一つのやはりビジネスマンとしての大きな武器だったわけですね。どこどこ省には彼は強いとか、どこどこに顔がきく、あるいはどこどこにお伺いを立てて、例えばすり合わせなり、言ってしまえば、解決策を見出すために癒着をして、人間関係の上に成り立ってやってしまう。ビジネスをやっていると当然その辺があるかないかによって大きな問題になってきますし、それがもうかねてから取り上げられてきたわけですけれども、実際、そういう役所との交流、交流という言葉はいいのですけれども、それが行き過ぎると今度は、あの役所には顔がきく、知り合いの世話になった上司が今度偉くなったから、ちょっとあそこに何らかの形で売り込みに行こうみたいな話が当然出てくるわけでございます。

 そこのところは、やはりこれから官民交流が盛んになればなるほど極めて危うい部分もあるなと。ビジネスの世界の人間、民間企業にしてみると当然利益を上げるということがこれは至上命題でありますので、おのれの利潤を追求していけば当然そこのところまで行き着くことでありまして、そこのところは、この官民交流が進む上でやはり歯どめを絶対かけるべきだというふうに思っております。

 その点については、総務大臣、今お答えいただきましたけれども、ぜひ、当然これはいろいろな形で検討を続けていく、あるいはちゃんと法的な枠組みを強化するということをやっていただきたいと思います。

 ちょっともう時間がありませんので、あと二つほどお尋ねをできればと思います。

 これは私、この間の行政改革の特別委員会でやったんですけれども、これは民民の問題だと言われればそれまでかもしれませんが、公益法人の問題を随分我が党は行革特で取り上げました。代表的な例は国土交通省所管の地方弘済会。いわゆる国土交通省の出先から平均九六から九七%の随意契約を受けている実質的な下請組織。これが民法上は民間団体ということになっていますが、ここに、例えば測量コンサルタントの会社から大量に出向しているわけなんですよ。びっくりするのは、正職員が二百人ぐらいしかいないのに出向が八百人いるというようなむちゃくちゃな弘済会、公益法人があったりしました。

 あるマスコミがそれをたまたま取材しまして、この派遣している民間コンサルタント会社に、あなた、自分のところの業務もできないのに何でそんなにたくさん出向させるんだと言ったら、いや、天下りを受け入れられるほど大きくない規模の会社は人を出すことによって仕事をとるしかないと答えているんですね。きっと正直な社長さんなんでしょうね、そこまで言ったわけですから。

 これは公益法人と民間コンサルタントですから民民の関係だと。しかし、実際、随意契約で九七%も受けているような公益法人というのは、実質、附属組織みたいなものでございます。この問題は、ここで総務大臣に聞くのは、ちょっと管轄が違うよと思われるかもしれませんけれども、この間の質疑は恐らく総務大臣も委員会のとき聞いていたと思います。こういう公益法人と出向、これは官民交流というよりも民民の契約だと言われるかもしれませんが、例えばこういう問題についてもこれから考えていかなければいけないと思いますけれども、大臣、この点についてどう御認識しますか。

竹中国務大臣 今もう渡辺委員が御指摘くださったとおりなんですが、これは民民の問題ということになります。公益法人は民法三十四条に基づく民間の法人、そしてそれが民間と交流する、そういう場合には、基本的には、当事者間の契約でありますとか労働関係法規の適用を受けるわけでありますので、それに関して特段の措置を講じるという仕組みにはやはりなっていないわけでございます。

 しかし一方で、我々は公益法人の制度そのものをしっかりと見る立場にあるわけでございます。本来でしたら、公益法人が設立されて、その目的のためによいことはするはずだけれども悪いことはしないはずだという前提になっているわけですが、公益法人制度という観点から、どうも非効率なことをやっている、よくないことをやっているぞというような場合には、つまり、公益法人の適正な事業運営に支障を及ぼすおそれがある場合には、これは当然、個々の事情に応じて主務官庁が適切に指導するということになるわけでございます。

 この地方弘済会の詳細を私は存じ上げる立場にありませんが、そこはやはり、今申し上げたような範囲で、もし問題があれば、不適切であれば、主務官庁、大臣がしっかりと対応するということに尽きるのだと思います。現実に、本件について、所管の国土交通大臣から、民間からの出向の実態を把握し、改善方法を検討するという旨の発言がなされたというふうに承知をしております。まず、そういう取り組みを徹底していただきたい、我々としてはそのように期待をしております。

渡辺(周)委員 質問時間が終わりましたので終わりますけれども、この官民交流は、当然、民の方にしてみれば、やはりどこかビジネス、あるいは利潤を期待しているところもあるわけでございます。そこのところは、官庁はもちろんですけれども、この公益法人も含めて、公の仕事の中立性、そして専門、特殊性からかんがみて、これから官民交流が盛んになると言われる中で、ぜひその点についてはしっかりとした中立性の担保ができるように、ぜひこれからもリーダーシップを発揮していただきますようにお願いを申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

中谷委員長 次に、逢坂誠二君。

逢坂委員 民主党の逢坂誠二でございます。きょうもよろしくお願いいたします。

 きょうの本題に入ります前に、大きく二つのことをちょっと先立って御質問したいと思います。

 と申しますのは、週末地元へ帰るたびに言われるのが地方財政の問題でございまして、特に今回、二十一世紀ビジョン懇のあり方について、やはりまた地元で随分といろいろな議論、意見あるいは疑問というものを聞いてまいりました。

 実は先般、五月の二十七日ですか、これは私の地元の北海道新聞ですが、いわゆる竹中総務大臣の私的懇談会、二十一世紀ビジョン懇が最終報告をまとめた、ほぼ決まったというような記事が載っておりました。その中に、二〇〇七年度予算から新型交付税の導入を決めた、来年の通常国会に地方交付税法改正案などを提出すると、ある種断定的に書いてあるわけですね。それから、竹中総務大臣は最終報告を六月の政府の骨太の方針に反映させる考えというふうに書いてある。これは新聞記事、北海道新聞でございます。ほかの全国紙も、こちらへ戻りまして見たところ、ほぼ似たような論調で報道がされているようであります。

 これまでの議論の中で、二十一世紀ビジョン懇というのは政策を決定する場ではないというふうに私は伺っていたように思うのです。総務省あるいは総務大臣として考えをまとめる上で多様な、多角的な議論をしていくことが大事だから、そういうためにあるんだというふうに聞いているわけですが、これではあたかも二十一世紀ビジョン懇の議論が政策決定の場であるかのように受け取られかねないわけです。このあたり、大臣、いかがでしょうか。

竹中国務大臣 この問題に関しましては何度か御答弁をさせていただきましたが、基本的に、この懇談会で議論していただいているのは、まさに専門家に集まっていただいて、全体の改革の方向性について私自身に、総務相にインプットしてもらいたい、その姿勢、それは全く変わりません。

 先般、中間報告の段階でそのインプットを受けまして、暫定的に、その時点での私なりの考えというのを今度諮問会議に出しておりますけれども、内容、表現も含めて懇談会とダブる部分もありますけれども、少し違う部分もあろうかというふうに思います。その意味では、この懇談会で何か政策が決定されるとか、そういう性格のものでは全くございません。

 いずれにしましても、先般報告案を取りまとめて、暫定的な取りまとめで、今座長預かりになっております。今後は、地方六団体でも検討を行っておりますので、その検討委員の皆様方と大田座長と何らかの形で一度話し合っていただいて、地方の考え方ももう一度確認して、それで私の方に出していただいて、あくまで総務省の責任者として、今後この中の、報告はそれなりの内容、ある程度の分厚さかもしれませんが、その基本的な方向について、政府・与党のしっかりとした議論を経て、骨太方針に反映できるものは反映させていきたい、そのように考えているところでございます。

 一方で、今政府・与党の財政経済一体改革の会議の議論で、歳出歳入一体改革、これは歳出削減、量を中心とした議論も行われておりますので、政府・与党全体として、どのような形で国全体の財政の改革そして地方の財政の改革を進めていくかということについて、大きな方向を見出していきたいというふうに考えております。

逢坂委員 ということでありますれば、二十一世紀ビジョン懇としてのある種の報告、そうしてそれを受けて総務省あるいは総務大臣としてどんな考えを持つかという、ある種二つのものが今後世の中に出るということなのかどうかということをひとつ確認したいということと、二十一世紀ビジョン懇は最終的にあと何度会議が行われるのか、この二点、お伺いします。

竹中国務大臣 基本的には、ビジョン懇を私たちにインプットしていただくわけです。そして、私たちがインプットしていただいたものについてそれなりに考えて、政府・与党として一体のものを可能な範囲で骨太に含めるという方向で取りまとめていく。その意味では、二つあるのかというふうに聞かれますと、あえて言えば、ビジョン懇の懇談会の結論はあくまで独立のものとしてそこにある、政府としては政府・与党一体となって政策を、それのアドバイスをいただきながら考えていく、そのようなものになります。

 あと何回開くのかということについては、これは座長の方で御判断をされるということだと思いますけれども、地方との意見交換を踏まえて、最終的に、何回開く必要があるのかないのか含め、御決定をされるというふうに思います。

逢坂委員 そのあたりが極めて不透明といいましょうか、地方の側から見ていると、大臣が幾らビジョン懇は政策決定する場ではないとは言いながらも、どうもビジョン懇の議論にいろいろなものが引っ張られていくのではないか、そして、そのビジョン懇の議論に対して地方の意見というのはどう反映されたのか、あるいは、総務省内部にも財政やら地方の行政についての専門家がたくさんいるわけですから、その方たちの専門性というのはどのように発揮されたのかというのがなかなかわからないところがあると思うんですね。ですから、そこはやはり明確にすべきではないか。気がついてみたらビジョン懇の議論がいつの間にか骨太にするするっと入っていたということでは問題が多いと思いますので、この点、大臣十分御留意をいただきたいなというふうに思います。

 時間の関係もございますので、ちょっと次へ行きたいと思うんですが、お手元に私ペーパーを四枚用意させていただきました。地方財政関係資料ということで用意をさせていただきました。これは、十八年の四月二十日と日付が打ってありまして、財務省がつくった資料でございます。

 内容は、国と地方の基礎的収支の推移に関するグラフでございまして、あとの二枚は新聞記事、この国と地方の基礎的収支のグラフをベースにした、それぞれ新聞の社説でございますけれども、このグラフを見てどのように感ずるかということなんですが、これだけを見ると、あたかも地方の方が財政的には盤石であって、国の方が、基礎的収支、グラフの下の方にいっていますから、大変なように見えるわけであります。

 しかし、地方の財政というのは、いわゆる赤字地方債の発行というのは国ほど自由ではございません。非常に限定された範囲でしか赤字地方債の発行というのはできないわけですね。

 それからもう一つは、自治体の予算というのは、ここにはかつて自治体の関係者の方も多いわけですが、年度当初にそもそも赤字予算を組むということは通常はもう考えられないわけでして、歳入の範囲で、本来計上すべき歳出を抑え込んで、とりあえず予算を組み上げて、一年の収支の状況を見て途中で、国とはまた違った形で頻繁に補正予算を組んで、何とか歳入の範囲内で最後黒字に持っていくというようなものが地方の財政運営なわけですね。

 そもそも国と地方の財政を運営していく上での条件が違っている中で、こういうグラフを財務省が世に出して、あたかも地方の方が余裕があって国が大変なんだという議論を誘引するというのは相当問題ではないかというふうに私は思っているんですが、これに対する総務大臣のお考えをお聞かせいただければと思います。

竹中国務大臣 今ここに引用してくださっているグラフや新聞のことも含めましてでありますが、これもずっと、総務大臣に就任させていただいて以来ここで申し上げていますけれども、地方の財政の制度というのはなかなか複雑な面があって、それを正しく理解されないままに、一部で非常に安易な議論が行われてきているということは大変残念であるというふうに私自身も思っております。プライマリーバランスの考え方そのものも、地方交付税という移転支出をどのように位置づけるか、それを移転した後か前かによって評価は全然違ってくるわけでありますので、そこでの評価自体も非常にあいまいなまま議論されているケースが多いということ。

 それと、何よりも、逢坂委員御指摘のように、国というのは立法すれば赤字国債の発行が可能なわけでありますけれども、地方の場合は実質的な意味でのそういう自由というのが国のようにはないわけでありますから、それと同様に考えるというのも非常にフェアネスを欠く議論だというふうに思います。

 そういう観点から、これまでは、国と地方をあわせてまずプライマリーバランスを改善しようという議論が進んできたわけでありますけれども、ここに来て、かなり一方的な、国の、そして地方のというような議論がなされてきているということを私も危惧しております。事あるごとにそのことを政府の中でも発言をさせていただいておりますが、政府内部においても、この地方財政の仕組みについて十分な理解をしておられない方がまだかなりいらっしゃるなというふうに思っております。ここに掲げられております社説など、本当に物を書く人はもっと勉強してほしいなというふうに思います。

 そういうことを含めて、しっかりと説明をしていく努力が私たちに求められていると思います。

逢坂委員 竹中大臣から、このグラフを見て危惧をしているという言葉と、私が例示をした社説を見てもっと勉強してもらいたいという話がございまして、非常に私どもと気持ちを一にしているのかなというふうに思った次第であります。

 しかしながら、こうした発言を地方の人たちがしても、どうせ自分たちの利益獲得のために言っているんだろうというような非常にうがった見方をされているのも事実でございますので、ぜひとも大臣には今後とも大局的な見地から、公平な見地で、やはりそうではないんだということを主張していただきたいなというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 それで、今国と地方のことで若干思いついたのでありますけれども、国と地方というのは、なかなかやはりこれは誤解の多いところでもあるなというふうに私は感じているところであります。

 何か地方の財政というのはいろいろ結構つらいんだということがなかなか伝わらないんですが、と同時に、実は、私は国会に来てつくづく思っているんですが、地方議会というのは国会に比べると随分やはり議論に制約が多いななんて思ったり、あるいは、ここにも地方議員の方もいらっしゃいますけれども、地方の議会というのは、これはちょっと言葉は悪いかもしれませんが、あらかじめシナリオを決めておいて、学芸会と言うと問題がありますけれども、ある程度、てにをはまで決めて議論をするなどという議会も地方によってはあるようでございます。それで……(発言する者あり)いろいろな声が出ておりますが、要するにそれぐらい多様性があるということですね。

 そういうことから踏まえますと、竹中大臣、私はこの総務委員会というのは極めて自由闊達に議論ができているなというふうに思っているんですが、大臣、いかがですか。

竹中国務大臣 私は、大変申しわけありませんが、地方議会の経験がありませんで、十分な見識を持っておりません。その点は、先生方にぜひいろいろなことをお教えいただきたいと思っております。しかし、この委員会におきましては、これは、与党、野党を問わず、非常に忌憚ない御意見をいただいているということに私も感謝を申し上げています。

 とにかく、この地方財政の問題というのは、本当に複雑であるがゆえになかなか理解されないところがある。そういう点について踏み込んだ専門家としての御議論をこの場ではいただいておりますので、その点引き続き、ぜひ私自身もよい議論ができるように心がけたいと考えております。

逢坂委員 いろいろな意見があるようでございますけれども、私は、ここの議論というのは本当にいい議論をしているなというふうに感じるんですが、実は先般、二十一世紀ビジョン懇の話にまた戻るんですけれども、二十一世紀ビジョン懇は自由な議論をするために個人ごとの発言の議事録を公開しないんだという話がございました。しかし、私はそれは本当にそれでいいのかなというふうに思うわけですね。こちらはすべて公開ですね。ここで自由闊達な議論が行われて、今総務大臣からの指摘もあったとおり、地方財政についても非常によい議論が進んでいると思うわけですね。ビジョン懇が公開しない理由というのは、どうも私には理解できないんですけれども、このあたり、いかがでしょうか。

竹中国務大臣 その点については、かねてからいろいろな御議論があるということを承知しております。

 ただ、これはもう一つの通信・放送の懇談会にも重なるわけでございますが、ここでの議論というのは、例えば先生のところは先生のところで、民主党は民主党で、非常にしっかりとした理論武装をされて、そしてこの場に臨まれる、我々もそれなりに勉強して、そして一生懸命議論をさせていただく。しかし、そういう理論武装をするというか、そもそも論を議論する場では、人もやはりいろいろな迷いがあって、ああでもないこうでもない、この間こう言ってみたけれどもやはりこうなのかな、この間言ったことは違うのかなとか、非常にまさに最先端の理論武装の議論の中では、そういう議論が私はやはり大変重要だと思うんですね。そういうものを果たして全部公開するということはよいのかどうかというのは、そこで議論する方々の立場を考えて、ここは非公開の方がいいという判断は私はやはりあり得るんだと思います。

 しかし、決して非公開、完全に非公開ではございません。だれがどう言ったかということについては明言はしておりませんが、こういう議論があった、ああいう議論があった、そしてまた立ち返ってその問題を議論して、前はこういうことを議論したけれども、やはり前はちょっとまずかったなとか、そういうやはり試行錯誤のプロセスというのは私はどこかで必要なんだと思うんですね。まさに懇談会というのはそういう場であるというふうに考えております。だからこそ、あくまで私の私的な懇談会であり、私にインプットしていただくためのものである。そこはいろいろな会議の性格づけによるのではないかというふうに思います。

逢坂委員 今の話を聞いておりまして、私は、実は、全国の自治体関係者がどれほどこの二十一世紀ビジョン懇の議論に注視をしているか、そして、その帰趨、議論の行方というものによって自分たちの地域の命運がどれほど左右されるか、本当にもうはらはらしながら見守っているという実態があるわけですね。にもかかわらず、今のような、ある種自由闊達な議論というのはいい、理論武装というものが必ずしもしっかりしていないからどうしても明確にしない方がいいんだというような話でありますけれども、先ほどの、骨太と二十一世紀ビジョン懇との関係なども含めて考えてみますれば、委員の皆さん方それぞれにはもっともっと重大な責務を担っているという心構えがないと、そんなところへ参加してはいけないのではないかという気すらするわけですね。いかがでしょうか、大臣。

竹中国務大臣 私の表現が少し誤解を与えたらおわびを申し上げますが、委員の皆さんはそれぞれの分野の最前線の方で、本当に真剣に議論をしてくださっています。

 しかし、ぜひお考えいただきたいんですが、この地方財政の制度の話も、そして放送と通信の話も、本当にこれは最前線の議論なんです。そして、いろいろな部分的な批判は今までありますけれども、では、どういう形で全体として整合性のとれた政策をやっていくか、しかもそれが現実的に適用可能である、そういうところの体系的な議論というのは私の知る限り行われておりません。そういうものがあれば、むしろ私たちは楽なわけです。

 部分的にいろいろな実証とか、いろいろな議論がなされてきている。しかし、それを全体として組み合わせて整合的にするためのやはり努力というのは私は大変なものだと思うんです。そういう議論を私たちはやはりせざるを得ない。そういう政策の最前線に今日本経済が立たされているし、総務省が立たされているというふうに考えております。その意味で、そういう試行錯誤的なことも含めて、これは忌憚なくぜひ第一線の専門家に議論していただきたいという思いでやっております。

 私の説明の仕方が非常にゆらゆら揺れているというように聞こえたのであるならば、それはおわびを申し上げますけれども、そういう今までに議論されていない整合的な議論、そういう最前線の議論をしているんだということについての御理解はぜひ賜りたいと思います。

逢坂委員 何度伺っても、このビジョン懇の議論を非公開にする理由というのは私には理解できないんですが、本題の方へ移ってまいりたいと思います。

 きょうの官民交流法に関してでありますけれども、私は実は、組織を考える上で、組織の中には多様な価値が入っていることが重要だというふうに思っています。これは組織のみならず世界の文明、インカとかマヤとかチグリス・ユーフラテスとかいろいろな文明があるわけですが、文明の成り立ちを見ても、多様な要素が入り込んでいる文明と、単一な価値で成り立っている文明、外界との交流を絶つというような文明では、その後の世界史の上での動きが大きく変わってきている。いろいろな要素が入り込む文明は、いさかいもあってなかなか大変なことも多いんだけれども、最終的に世界史の中で名をなすようないろいろな働きにつながっている。自分たちの中で閉鎖型の文明は、どちらかというと、外敵が来たときに一気に滅ぼされるなどということもあったのかなというふうに思うわけですね。

 そういう意味で、今後、公務員の社会においても、官民交流はもとより、いろいろな形での公務員のあり方というものを考えていくことが私は重要だと思っております。

 そこで、まず人事院総裁にお伺いしたいんですが、官民交流を初め、多様な公務員のあり方ということを考える上でのデメリット、メリットは先ほども伺っておりますので、デメリットあるいは留意点みたいなものがございましたら、お聞かせを願いたいと思います。

谷政府特別補佐人 大変広範な御質問をいただきましたが、現在問題になっております官民交流ということに即して申し上げたいと思います。

 特に現代の社会におきましては行政課題が複雑高度化をしているわけでございまして、御指摘のことに加えまして、国民に対して質の高い行政サービスを提供していくためには、これを担う公務員自身の質、能力を高めていくということは何よりも重要であると考えます。

 そのための方策の一つといたしまして今回のこの制度もあるわけで、この制度は大変重要だと思うわけでございますが、他方、この観点からいたしますと、官と民との人事交流というものは、公務の公正性、このこともまた今現代の非常に大きな問題の一つでございますけれども、そのことに対する国民の信頼を確保しつつ運営していく必要があるわけでございまして、ちょっと言葉が過ぎるかもしれませんけれども、相矛盾するような二つの要請を調和させていく方策を考えていかなきゃならぬというわけでございます。

 そういう意味で、この点だけに絞ったお答えになりますけれども、この点をどのように調和させながら、しかし、やはり公務の世界の中に民間でいろいろ使っておられますような要素というものを積極的に導入していくということは必要な命題でございますので、どのようにそれを導入していくかということがやはり重要なんであろうというふうに思っております。

逢坂委員 竹中大臣は、官民交流を初め、多様な公務員のありようにおけるデメリット、留意点についてどのようにお考えでしょうか。

竹中国務大臣 逢坂委員御指摘のように、本当に多様性を持つということが重要だと思うんですね。私なりの理解では、これはダーウィンじゃありませんけれども、いろいろな状況に変化できるものが生き残る、変化できる組織がやはり強いんだと。変化できるような状況にするためには、やはり多様性を持っていなければいけない、そうしないと変化できないということ、私はそのように理解をしております。そのためにいろいろな人材の交流というのが直接的に大変大きな意味合いを持つんだと思います。

 直接的なお尋ねはデメリットでありますから、デメリットに関しては、いろいろな意味で、先ほど渡辺委員からもちょっと御質問がありましたけれども、特に公的な部門と民間企業の間の関係について、不信、疑念を持たれるような状況が生じないようにしなければいけない。そこがやはり運用上、私は一番重要なところであろうかと思います。そうではなくて、むしろメリットの面、柔軟な発想とかいろいろな経験を積む、そしてコスト意識を持つ、そういうメリットが生かせるようにしていくことであろうかと思います。

逢坂委員 私も自治体の首長をしておりましたときに、民間企業の職員を私どもの役所へ入れて研修をしていただく、これは大手企業、中小、いろいろございました。それから、新聞記者なんかにも来ていただいて職員として研修をしてもらう。あるいは、当然、職員も出ていくということもやりました。あるいは、海外の自治体の職員に、オーストラリアですとか韓国から職員に来てもらって研修をする。それから、多分ことしは、もう私は自分の席を離れましたけれども、私が前いた職場では、海外の自治体にも職員を派遣するというようなこともやるというようなことですね。だから、非常に多様なやり方をしている。

 それから、研修のあり方、あるいは採用のあり方は、もちろん中途採用もありますでしょうし、いろいろな、多様な取り組みが実は自治の現場では行われているんだというふうに思います。

 そこで、私は、国はやはり組織が大きいために、必ずしも自治体のように多様性のあるやり方は十分にはできないのかもしれないんですが、今回のこの官民交流法の改正を含め、この法体系の中で自治体のある種の自由度を余り阻害しないような方向というものを考えてみるべきではないかと思うんですけれども、このあたり、いかがでしょうか。

竹中国務大臣 地方公共団体においても当然官民交流というのは大変重要だと思います。もう逢坂委員はそれを率先してやっておられたというふうに伺っております。そういう意味では、さまざまな制度を活用して、今後とも地方公共団体における官民交流が進展していくことを我々も期待しております。

 地方公共団体における民間との交流については、従来から、例えば職務命令による民間企業への派遣研修があると思います。また、民間企業等経験者の中途採用等、これも民間交流だと思います。さらに、制度としましては、平成十二年に地方公共団体の一般職の任期付研究員の採用等に関する法律が制定されている、御承知のとおりだと思います。そして十四年には地方公共団体の一般職の任期付職員の採用に関する法律が制定される、そして十六年にはこれが改正されまして、任期付採用の範囲が拡大されるとか任期付短時間勤務職員制度が設けられる、そういう制度の整備も進んできたというふうに思っております。

 地方公共団体におかれては、この官民交流を今後ともぜひ、こういう制度もうまく活用していただいて、進展をしていっていただきたいと思っております。

逢坂委員 今後、公務員のあり方も随分とやはり変わってくるのだろうというふうに思うわけで、実は、そのことが最終的に公務員の組織をある種強くし、柔軟性を高め、国民にとってプラスになるんだろうと私も認識をしています。

 ただ、私は、留意点があるというふうに思っておりますのは、官民交流にとどまらず、公務員の身分がいろいろと変わる、例えば大学へ派遣されるとかその他の法人組織へ派遣されていくというようなことになりますと、その方の人件費というものはだれがどう負担しているのだということがわかりづらくなる可能性がありますね。

 例えば、この人件費という言葉だけでいってもくくれない、要するに、国の費目でいえば人件費として出ている場合だけでなくて、いろいろな形で出ているものも中にはあるかもしれません。あるいは、身分保障についても、いわゆる派遣というところへ行きっぱなしの職員も場合によってはいるかもしれないけれども、もとの公務員の組織へ戻ってこられる職員というのもいるかもしれない。

 したがって、人件費という言葉は抜きにしまして、要するに、その方のいわゆる給与というものをだれがどのような形で負担しているのかとか、あるいは、その方の将来の身分というのはどのように保障されているのか保障されていないのかというふうなことを、国民の皆さんに、これは国、地方を問わず明らかになるようにしておくことが大事だと私は思うんですが、大臣、この点はいかがでしょうか。

竹中国務大臣 交流に当たって留意すべき事項として、今委員が御指摘のような、負担の問題、身分の問題というのがあろうかと思います。

 今回の法律は、そういう意味での当事者の関係についてより柔軟にいろいろなことが行われるように法の整備というのを考えておりますが、今の委員の御指摘は、さらに加えてそれが国民にわかるようにすることも必要ではないかという御指摘であったかと思います。

 この法律、ぜひ御審議いただいて御賛同いただければ、今回の法律の周知徹底にあわせてそのような広報についてもしっかりと行っていきたいというふうに思っております。

逢坂委員 官民交流に限らず、やはり公務員の身分というのは、国民から見ればある種保護をされているということがどうしても前提になるものですから、やはり不透明さというものを排除することが極めて大事だというふうに思いますので、ぜひ、官民交流に限らず、今のようなお考えを広げていけるようによろしくお願いしたいと思います。

 時間がもうなくなりましたので、もう一度、最後に先ほどの問題に戻りたいと思うんです。二十一世紀ビジョン懇の議論でありますけれども、公開にしない理由というのは、大臣には大臣なりの理由があるということは、話としては承りましたが、だとするならば、大臣、二十一世紀ビジョン懇の議論が今回終わったらその議事録というのは公開できるというふうに私は理論的には思うんですけれども、いかがでしょうか。

 まさに現在進行形の議論を阻害しないためにいろいろな議事録を現在進行形では公開しない。だけれども、終わった後ならこれは公開できるわけですよね。そのあたりはいかがでしょうか。

竹中国務大臣 まず、委員、非公開というふうにおっしゃいますが、決して非公開ではございません。その都度ブリーフィングを行って、それで議事についてブリーフをしておりますので、ただ、そこにだれがどう言ったかという詳細が記されていない、そういう意味で、完全な意味でのフルバージョンの議事録を公開はしておりませんですけれども、情報の公開は私たちとしては行っているつもりでございます。

 それで、お尋ねのフルのバージョンのようなものは考えられるのかということでございますが、先般も大田座長がここにお見えのときにそのような御質問をいただいたと聞いております。前から申し上げておりますように、イメージしていますのは、諮問会議についても議事録的なものを出して、あれは五年たったらですかね、フルのバージョンを出すということになっているわけですが、大田座長もちょっとそのようなイメージでお話をされたのかと思います。これは、座長ともよく相談をしてみます、また委員の皆さんとも相談をしてみます。出せる範囲でしっかりとお出ししていくということは、私も必要だと思っております。

逢坂委員 これで質問時間が終わりですので、最後に一言だけしゃべって終わりたいと思いますが、もし多様な意見を聴取するだけだということであれば、あえて懇談会の形をとる必要はなかったのではないか。しかも、議論に行きつ戻りつがあっていろいろと難しいところもあるというのであれば、事務方が専門家にヒアリングをするという方法だってこれは十分あり得るわけですよね。それをあえて懇談会にしている、しかもそれはブリーフィングしかしないというところに、何か、どういう意図があるのかがどうもやはりよくわからないわけですね。

 それは、ある種正しいことのようには思いつつも、でもやはり、密室性が高いとか、国民にとって言いにくいことをあえて言わざるを得ない、それの責任はとりたくないとか、そういうふうにしか見えないわけですので、ここの点は、議事録の公開ということについては、実はそれほど責任のある仕事を担っているんだということを考えていただいて、ぜひお願いしたいと思います。

 以上でございます。どうもありがとうございます。

中谷委員長 次に、田嶋要君。

田嶋(要)委員 民主党の田嶋要です。二十分よろしくお願いします。

 きょうのこの法律改正でございますが、まず、今の国と民間企業の人事交流の実態、現状に関しての御質問をさせていただきます。

 私、きょうはお手元に資料を配っておらなくて恐縮でございますが、交流派遣と交流採用に関して、先ほど四十と百七十九という数字がございました。この今の人事交流の実態、制度開始から五年間たちましたけれども、その状況を今、当事者としてどのように評価されておりますでしょうか。総務大臣と人事院総裁からそれぞれお願いいたします。

谷政府特別補佐人 確かに現在の状況ということにつきましては十分とは申せないと考えます。先ほども申し上げましたけれども、行政課題が複雑高度化する中で、国民に対して質の高い行政サービスを提供してまいりますためには、これを担当する公務員の質や能力を高めるということが何よりも重要な状況でございまして、そのためにこの制度は大変意味のある制度であるということを考えますと、この現状についてはとても十分とは申せないと思います。

 これは数だけではございませんで、これを行っております府省についてもかなりの偏りが見られているわけでございまして、そういう意味で、全体として見れば、さらに推進に努めていく必要があると認識いたしております。

竹中国務大臣 現状の評価でございますが、もう数については先ほど申し上げたとおり、十七年度まで、計、派遣した人数が四十名で、受け入れた人数が百七十九名、徐々にはふえてはいますけれども、数はもちろんそんなに多いわけではない、そういう評価になろうかと思います。

 ただ、仕事の内容に関しては、民間人を採用したところは、専門知識が業務に生かされたという評価をしている府省が多くございます。また、派遣に関しては、民間企業に派遣して幅広い視野や多角的な考えを身につけてくれたというふうに評価している府省が多いということで、派遣をした当事者に関してはそれなりに高い評価がなされているというふうに私は思っております。

 私自身の経験でありますが、金融担当大臣をしておりますときに、専門家を外からお招きしていたことがありますけれども、やはりここは、極めて技術進歩の速いそして法律的な枠組みが難しい金融等々の分野で、その専門家の皆さん、採用した皆さんは非常に活躍しておられたという印象を持っております。

 そういう効果を踏まえて、さらなる量、質、両面の拡充をぜひ図りたいというふうに考えております。

田嶋(要)委員 特に総務大臣にお伺いしたいんですけれども、これは法律を提出されたのは総務省なわけでございますが、総務省の交流派遣、交流採用はほとんどないと言ってもいいのではないでしょうか。交流派遣は今日まで五年間の実績ゼロというふうに書いてありますし、交流採用に関しては、わずかに百七十九名中二名でございます。旗振り役の役所としては極めて数字が問題だろうと私は思うんですが、その点、大臣、いかがでしょうか。

竹中国務大臣 御指摘のように、気がついてみると、足元で十分ではないと私自身大変厳しく受けとめております。

 理由はそれぞれに多分あるんだと思います。例えば、電波行政などのように非常に強い許認可を持っている部分とかについては、なかなか直接そういう関連部門に採用するのが難しいという面もありましょう。地方財政についても同じような問題があるのかもしれません。また、総務省、旧総務庁的な行管等々については、やはりなかなか仕事が特殊で、役所向けの仕事で特殊だという点もあったかと思います。しかし、それは個別の事情で、そういう事情はどこにでもあるんだと思います。私自身、ぜひ省内をしっかりと督励して、結果が出るように持っていきたいというふうに思っております。

田嶋(要)委員 きょうは、国土交通省の方からもお越しいただいております。

 国土交通省は、四十名の交流派遣の中で二十六名、交流採用の方でも百七十九名のうちの三分の一以上が国土交通省でございますので、逆に、ある意味では非常に一生懸命やっていらっしゃる省庁を代表いたしまして、この制度に対する取り組み、今までどういうようなお気持ちでやってこられたか、そこら辺を副大臣の方からお伺いしたいと思います。

松村副大臣 お答えいたします。

 国土交通省では、平成十七年におきまして、十名の職員についてメーカーなどの民間企業への交流派遣を実施するとともに、銀行、証券会社などの金融機関、メーカー、電力・ガス会社などの民間企業から十七名を職員として交流採用しております。

 国土交通省におきましては、民間企業におきます経営経験を積む機会を積極的に活用しようという観点から、本省の職員を民間企業に派遣しているとともに、国土交通行政の推進において民間的な知見を参考にし、経営的な考え方を生かしていく観点から、民間企業からも積極的に職員の受け入れを行っております。

 所期の目的を達しているというところから、今後とも、民間的な発想を取り入れた行政の推進を図るとともに、施策の実施においても民間のソースを生かしていく観点から、官民交流を一層推進してまいりたいと考えております。

田嶋(要)委員 副大臣、国土交通省だけこれがやりやすいという特別な事情か何かおありだと思いますか。

松村副大臣 他省庁の実態についてよく存じませんので、比較して国土交通省がどうしてできるのかということについてはよく分析していないわけでありますけれども、それぞれ社会資本の整備をする過程におきまして、役所だけでは進んだ、突っ込んだ情報がない、あるいは分析ができない、あるいは、民間の方からしても、行政が何を考えるか、あるいはやり方について学ぶという点において、何か特徴があるのかなというふうに思っております。

田嶋(要)委員 それぞれ役所の事情はあるかと思いますし、それから一般職の国家公務員の数自体相当違うということで、国土交通省の場合には一番大きい役所の一つだというふうには理解しておるんですが、それでもこの偏りを見ると、やはり余り真剣に取り組んでいないということを私は感じざるを得ません。人事院あるいは総務省が旗を振って、もっとしっかりと協力をしてもらうようにしていただかなければいけないというふうに思うんですね。

 ただ、一つ、先ほど総裁の方から御答弁がありました、まだこの数字が十分じゃないという御指摘がありましたが、私、正直申し上げて、これが十分かどうかということもよく判断できないんです。なぜかというと、この制度自体が、一体どこまで何をやろうとしている制度かがよくわからない。何を目指してやろうとしているか、どこが最終的な規模としてのゴールなのか、質としてのゴールなのか、その辺がよくわからない制度だなというような印象を持つわけでございます。

 先ほども別の委員の御指摘の中で数値目標というような話がございました。聞くところによりますと、役所の中では、課長になるまでに大体二度、外の空気を吸いに行くようなチャンスを与えていくというのが基本的な人事方針だというふうに聞いていますが、総裁、そういうことでよろしいですか。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 内閣の方針として、そういう方針がとられていると承知しております。

 それから、人事院の管理職になるときの基準といたしましても、交流経験があるということを要件にしております。

田嶋(要)委員 そういうことであれば、多様な人材育成の一環として、そういうふうな基本的な方針があるのであれば、やはり総数から大体のターゲットというのはつくっていけるのではないのかなというふうな感じが私はいたします。

 私も、たまたま人事院で留学をした者なんですけれども、人事院でほかの財務省さんとかいろいろな方々と話すと、実は留学もしたくない人が多いんだ、留学をして二年間本省を離れると出世コースに外れるというようなことを私は役所の人から直接聞いて、非常に驚いたことがあるんです。だから、留学もやはりちゅうちょする方が多い。やはり外の空気を吸いに行くということは、それをリスクというかそういうふうにとらえている方もいるのではないのかなというふうに思います。

 もし課長さんになるまでの間に二回外の空気を吸いに行くということが一つの方針としてあるのであれば、それが民間に行く話であれ、留学であれ、あるいは地方公共団体の方に出向していく話であれ、総数を決めて、そのうち大体何割ぐらいは留学をさせる、そして何割ぐらいは外へ派遣をしていく、そのようなプログラムをやはり組んでいく。先ほど大臣の方からも前向きな御答弁をいただいたというふうに思うんですが、やはりその辺、何名というぐらいのターゲットを、それは強制力はないのかもしれませんが、各省庁にお示ししていく必要があるのではないかというふうに考えておりますけれども、大臣、いかがでしょうか。

竹中国務大臣 先ほども申し上げましたように、私としては、これを実効あらしめるために何らかの、もう半歩、一歩踏み出たことができないのかという思いを持っております。それで、私自身も今考えているところなんですが、今の御指摘は、これは人事院と御相談をしなければいけない問題であるというふうにも思いますけれども、今の田嶋委員の御指摘も踏まえて、私の方でぜひこれはしっかり考えてみたいと思います。

田嶋(要)委員 大臣、これは同じというか若干共通の、任期付職員法というものに基づいた採用というのがございますね。もちろん目的は全く同じということではございませんが、こちらの方も制度が始まって六年の実績がありますが、今日までの累計で約七百名でございます。官民人事交流で採用している方々の約四倍来ており、なおかつ、広範な役所のところに採用がされておるということでございます。

 こういうような制度が他方であり、こちらの官民人事交流というのは、やはり幅広く人材育成、そして民のいいものを官が吸収したいということであれば、それぞれの役所の事情を超えて、もっとしっかりと取り組んでもらわなきゃいけない。若干なめられてしまっているのかな、この制度を本当に真剣にやっていこう、そういう空気がないのではないかなということを強く実感いたしました。

 続きまして、次の点に移りますけれども、今回、官民の法律の改正で雇用の継続ということが実現をされていこうとしておるわけですが、その前段階で、平成十七年の一月に人事院の規則の改正というものが行われまして、このときに交流基準が緩和をされました。そのとき緩和が行われ、そして今回、さらに民間会社にそのまま籍を置いた形で採用されることを実現していこうということです。

 私、このアプローチも、これは今の数字じゃだめだから、こういったところを緩和してもっと交流をふやしていきたいということだと思うんですが、私は、今申し上げたとおり、根本的な原因というのは、各省庁がまじめに取り組んでいないからだと思うんですね。ここをさわること、今申し上げた雇用の継続性というところを今回大きく緩めていくということは、一方で危険性もあるのではないかなということをやはり指摘しなければいけないというふうに思っております。

 それで、先ほども委員の方からございましたが、官民の癒着ですね。これは同床異夢みたいなところがありまして、やはり民間側からすれば、いろいろな意味でのコネクションができるということで希望する会社も多いのではないか。五年間何も起きていないから、五年間何もまずい問題が起きていないから今回こういう改正をしたいというような文書をどこかで読みましたけれども、非常に説得力がない話ではないかなというふうに思うんです。もし将来、三年後、五年後に一件起きたら、一気に萎縮をしてしまう制度になりかねないかなというふうな思いがするわけでございます。

 この点、この癒着のリスクがこれからやはり上がってくるのではないかという点に関しまして、総務大臣、どのようにお考えでしょうか。

竹中国務大臣 我々も、官民交流をしっかりと進めたいという思いと、そして、今まさに御指摘がありましたように、さはさりながら、やはり官民の癒着のリスクをしっかりと除去していかなければいけない、そこをしっかりと両立させなければいけないという強い思いを持っております。であるからこそ、ステップ・バイ・ステップというか、少しずつその条件等々も緩和をして、状況を見ながら今進めてきているわけでございます。十七年の改正以降、そういった意味での問題のような状況は発生していないというふうに認識しているということをその意味では述べさせていただいているところでございます。

 しかし、それをさらに今後進めていくためにどのようにしていったらよいだろうか、その両立のために何が必要だろうかということを考えていきますと、結局のところ、各府省への公務の中立性、公正性確保というのを徹底すること、そして、人事院による交流計画の認定等の措置の適正な実施を行うこと、そして、インターネット等を利用した広範な企業への平等な情報提供、これも重要だと思います。そして、人事院による交流状況の国会報告等、そういうことを組み合わせていく。そしてまた一方で、これは終わった後、また会社に戻った後のことでありますけれども、接待等々についての公務員の倫理規程等々をしっかりと遵守していくこと、そういうことをやはり組み合わせていくことしかないのかなというふうに思うんです。

 どれか一つ欠けても、委員御指摘のように、どこかが崩れて、そして官民交流そのものを否定するような論調になるという懸念があると思います。ですから、そこは、総合的なことを本当にしっかりと我々としてはやって、取り組んでいく決意でございます。

田嶋(要)委員 いずれにしても、もう六年もたっているので、本当にもっと意味のある規模にまで拡大させていかなければいけないというふうに思います。

 その中で、やはり若干懸念を持ちますのは、所管関係と契約関係の部分ですね。私は、所管関係と契約関係の会社は、あえてそういう会社に対してわざわざ人を派遣したりする必要はないのではないか。この制度の目的として、特に役所にいる若い方々のいろいろな意味での教育ということが目的であるのであれば、派遣するべき会社は山ほどあるわけでございまして、それこそ、そんな所管関係とか契約関係のところは外しておいても、学ぶべき対象は無数にある、あるいは来ていただく可能性のある会社は幾らでもある。

 今は、やはり大企業とかにかなり偏っているのではないかなというふうに思うんですね。ITベンチャーやバイオベンチャーや、そういうところも含めて、そういうところに派遣するとか、そういうところから来てもらうとか、そういうことももっと盛んにしていかなければいけない。

 それから、業種なんかも、例えば役所の方が二年間も出るんでしたら、民間に行くんだったら、官にはなくて民にあるもの、これはやはり営業ですよ。営業でお客様に頭を下げる仕事をもっとやらせた方がいいと私は思います。

 それからもう一点。では、どういうところから来てもらうかということで、今、営利企業に特化をしておるというふうに理解をしておりますが、やはりここももっと多様性を持たせていっていいのではないかなということで、NPOのような営利ではない団体からも人を採用していくということも御検討いただけないかなというふうに思うんですが、人事院総裁、その点はいかがでしょうか。

谷政府特別補佐人 一般的に申し上げまして、行政を担当いたします公務員が、行政の対象となります社会の状況につきまして十分な知識を持ちますこと、また、社会で行われております業務等の管理の手法や、その手法のもととなります基本的な考え方についての知識を深めていくということは、大変重要なことであると考えております。

 ところで、現在の官民人事交流でございますけれども、これにつきましては、国とは異なる組織原理に基づき活動を行っている民間企業につきまして、その効率性、機動性を行政運営に活用するためにその組織との交流を行うという趣旨で設けられております。

 他方、NPO等の非営利法人、非営利団体でございますけれども、このことにつきましては、先ほど申し上げました一般論では、この分野の知識も深めるということは意味のあることであると考えるわけでございますけれども、しかし、今申し上げましたように、効率的かつ機動的な業務遂行の手法を有しているいわゆる民間企業とは若干その機能を異にするわけでございまして、そういう意味で、こういった団体、組織との人事交流を行う仕組みを考えるに当たりましては、これを推進する意義、必要性とか、さらには、それによってもたらされる効果も民間企業とは異なるものと考えられますので、それらの点にも留意しつつ、幅広い観点から検討してまいりたいと考えております。

田嶋(要)委員 官に足りないものは大変多くあると思うんですね。だから、自分の周りは全部先生だと思って、民間企業だけじゃないと思いますよ、NPOから学べるものもいっぱい役所にはあると思いますので、ぜひその辺の御検討もよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

中谷委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 私は、最初に、政府特別補佐人の方に幾つか伺っておきたいと思います。

 一九九九年十二月七日の内閣委員会で成立した官民交流法ですね。あのときは、制定の際に、民から官へ交流ということで行くときに、官民の癒着を招いてはならないということで制限を設けていたと思うんですが、まず、どういうものであったのかを伺います。

谷政府特別補佐人 御指摘のとおり、官民人事交流の実施に当たりましては、官民癒着等、公務の公正性に対する疑惑を生じないようにすることが必要だということで、この制定に当たりましては、人事院による公募、それから各府省がお立てになります具体的な交流に当たりましての計画の認定、それから交流状況についての国会等への報告といった、透明性、公開性を確保した手続を定めますとともに、交流元企業と密接な関係にある官職につくことを禁じます官職制限や、契約関係等に関係します交流制限といった措置を講じたところでございます。

吉井委員 そのときに、官から民へは退職規定をあえて設けなくて、あのときの中島さんの答弁にありますが、要するに、そのことで、服務規制とか信用失墜行為の禁止とか懲戒処分とか、官民癒着によるさまざまな問題が出てくることを防止する措置としてやるんだと。

 一方、民から官へについては、企業を退職するという条件がつけられていますね。この退職するという制限を設けた理由は何ですか。

谷政府特別補佐人 交流採用についてでございますけれども、この法制定当時におきましては、官民癒着でございますとか公務員不祥事の続発という状況がございまして、全体の奉仕者としての公務員の基本的な地位、それから公務の公正な執行の確保との関係で、国民の皆様から疑念を生ずることのないようにしなければならないということを大変重視いたしました。その結果、交流採用職員が民間企業の雇用関係を継続することについては、あえてこれを禁止するという意見の申し出をさせていただいたところでございます。

吉井委員 今おっしゃったように、要するに、公正性が保たれるようにする、それから国民の信頼を得られるようにする、そのために民間企業の職員を、社員の身分を退職していただくということが制限をつけた理由だということで、これは中島人事院総裁の答弁の中でも示されております。

 当時、振り返ってみると、先ほども出ておりましたけれども、人事院の年次報告の中でも示されておりますように、ずっとその間、例えば八八年のリクルート社と労働省の幹部それから文部省の幹部のいわゆるリクルート事件とか、それから九五年のMOF担による大蔵省の過剰接待問題だとか、九六年には石油商と通産官僚の癒着問題、そして九六年には厚生省の幹部、いわゆる岡光事件とか、九八年にはまたMOF担がかかわった銀行、証券の関係の問題など、繰り返しそういう問題があって、それで官民癒着に関して国民から強い批判があって、だからその点はしっかりしておこうということで交流元企業から退職してくることを条件にしたのではなかったかと思うんですが、改めて伺っておきます。

谷政府特別補佐人 特定の事案の関係ということではなくて、全般に、先ほど申し上げましたように、いろいろそういう問題が起きておった、その中で、公務の公正性を確保する、国民の御信頼を得なければならないということを考えまして、あえて身分関係を断ち切るという提案をさせていただいたという経緯でございます。

吉井委員 特定の問題だけに着目しなかったにしても、一連の問題がずっとあって、これを条件としてつけたことはもう明白なんですよ。そうすると、その問題が今もう解決できたのかということが問われてくると思います。

 これは、防衛施設庁の天下りの多い企業ほど受注額がふえていっているという問題、それから、落札率が九九%台という高落札率で、そこにはそもそも入札予定価格は漏えいしていたという疑惑の問題。そして談合事件、これは防衛施設庁の関係でもありました、もうつい先ごろあったばかりですし、それから国土交通省の関係でいっても、外郭団体に天下りをしていく問題もあれば、橋梁談合、それもほとんど九九%台という高い落札率の問題などありました。

 この癒着問題が、これはもう解決してしまっているのか。もともとこの問題があってこの規定を、制約条件を入れたんですが、この癒着問題というのは、この制約条件を外していいほど解決をしているというのが人事院としての見方なのか、あるいは法を出してきた側の考え方なのか。政府参考人の方でも結構ですが、伺っておきます。

谷政府特別補佐人 退職する公務員の民間企業への就職関係等につきましていろいろ問題が出ておるということは承知をいたしております。いろいろな問題があるということは事実でございまして、それらについては、解決のためにあらゆる努力を尽くさなきゃならぬということは当然でございますけれども、本件官民人事交流の必要性ということもまた事実でございます。

 先ほど申し上げましたけれども、この官民人事交流の必要性と、それから官民間の不適切な関係を断ち切るという、ある意味では一見矛盾する要請をどのように調和させながら目的を達成していくかということでございまして、その仕組みの一つとして、制定当時におきましては、当時の状況にもかんがみまして、慎重な対応をしたわけでございます。

 その後、この制度の実施状況等を考えますと、なかなか制度本来の目的を達成するだけの十分な状況になっているかどうかということについては問題もあるわけでございますし、また、この制度につきまして関係者の意見をお聞きしたりいたしますと、やはり一たん退職しなければならないという取り扱いが非常に交流採用の促進を妨げる大きな要因の一つとなっているという御指摘も受けておるところでございます。

 そういう意味で、官民の不適切な関係を防止するための措置をできる限り講ずる中で、この問題についても今回改めさせていただけたらと考えた次第でございます。

吉井委員 防衛施設庁の談合疑惑が発覚したわけですが、その背景には、単なる天下りの問題だけでもないんですね。要するに、官と民とのさまざまな形を通じた癒着の問題があって、これだけ大問題になる不正事件が起こってきたわけですね。談合もあれば、落札率九九・九%と。大体、こういう談合がなく、まともな入札だったら、二割落ちたとしただけでも、全体で見れば何兆円かの国民の税金の節約にもなってくるぐらいの問題なんですよ。だから今、官と民の癒着を断ち切るということ。

 九九年のときには、おっしゃったように、公正性が保たれるということと、それから国民の信頼を得られるものにしなきゃいけないということで、民間企業から天上がってくる人の場合、天上がりというか、要するに交流の場合ですね、元企業を退職するという制約条件をつけたわけですね。

 今、では癒着の問題は解決したのかといったら、さっき、ほかの意味でではありますが、五年間の経過というお話がありましたけれども、この五年間、この癒着問題が解決したどころか、深刻な問題、ことしも出ているわけですね。そういう中で、今回、百八十度の方向転換なんですよ。退職してこなくてもいいですよ、しかも今度は、地位も在職時のポストのままでいいですよ、こういうふうにしているわけですね。だから、民間企業在職時が課長だったら課長、部長だったら部長という、少なくとも法律上は在職時のポストのままでいいですよと。

 こういうふうに、なぜ百八十度の方向転換ができるのか、これを伺いたいと思うんです。

谷政府特別補佐人 いろいろ問題のある分野があるということは事実でございますけれども、少なくともこの官民交流法で実施しております分野につきましては、この五年間、そういう御指摘をいただくような事例は生じていないわけでございます。

 繰り返しになりますけれども、この官民人事交流は、やはり公務組織の活性化、人材育成の観点から推進すべきである。その際に、このことが大きな制約の一つになっているという御指摘がある。それから、この言い方は適切ではないかもしれませんけれども、官民交流をして交流採用で来ていただく民間の方々も、退職はされますけれども、期間終了後は再雇用されるということを前提といたしております。そういう意味では、出身元企業との関係は全くゼロになっているわけではございませんで、そういう関係は継続しているわけでございます。したがいまして、前後の当該官職との関係についてもいろいろな制限を付してやってきておるわけでございまして、その中で、現在までのところ、不適切な関係が指摘されるような事態は生じていないということでございます。

吉井委員 民から官へ来たときの官の部署を狭く限れば、いろいろな議論もある場合もありますけれども、広い観点で見れば、例えば電力会社から、この五年間にも、資源エネルギー庁だとか、資源エネルギー庁のもとには組織機構上は原子力安全・保安院がありますね、交流で行っていますね。では、電力会社で事故がなかったのかとか、そのときに内部告発をきちんと、経済産業省が早い時点で内部告発を受けたのをチェックしたのかといったら、そうじゃなかったということは、東京電力不正事件などでも出ているわけですよ。

 ですから、これでこの五年間何もなかったというふうに、うんとセクションを狭く見れば、その人は必ずしもそこにおらなかったという言い方はできるかもしれないけれども、これは簡単な話ではなくて、もっと全体をよく精査してかからなきゃいけないものであります。

 それで、現行法上は制約を課した上で、その制約を課すときも、先ほども若干御答弁がありましたが、九九年の国会のときは、要するに、官民交流を行うことによりまして、官民癒着が生じるということになりますと元も子もない、これは公務が信頼を失いまして、とんでもない結果になりますので、官民癒着をどのように防止していくかということを考えなきゃならぬという、これはこの法案の一番難しいことだろうと答弁していたわけですね。

 現行法上は、十分、不十分はあるにしても、私たちはとても十分なものとは思っていませんでしたけれども、要するに、退職という制約がかかったんですね。民間企業での部長だ、課長だという役職を残したままじゃないということになっていたんですね。なおかつ、公務の公正性、国民からの信頼を得るために交流元の企業を退職するという条件がついていたんですが、それを取り払うんですからね。では、今度は、公務の公正性は大丈夫かということが当然問題になってくるので、これにかわる新たな条件というものをつけているんですか。

谷政府特別補佐人 現行におきましても、官民癒着との御批判を招くことのないよう、人事院による公募、交流元企業との密接な関係にある官職につくことを禁ずる官職制限、契約関係等による交流制限、交流状況についての国会等への御報告などによりまして公正性の確保を図っているところでございます。

 今回、交流元企業との雇用関係の継続を認めるということを考えますに当たりましては、ただいま申し上げました手続制限に加えまして、各府省が交流元企業との間で締結する雇用に関する取り決めにおきましては賃金の支払いを行うことを内容として定めてはならないということ、それから、交流採用職員は、任期中、雇用に関する取り決めに定められた内容に従って交流元企業の地位につく場合を除きましては、当該企業の地位についてはならないということ、それから、現行と同様でございますが、いかなる場合におきましても交流元企業の事業事務に従事してはならないということ、それから、人事院は毎年、国会等に対しまして、交流採用職員が交流元企業で占めている地位を含めて報告しなければならないということ、こういった措置を講ずることによりまして、公務の公正性に疑念を生じさせないようにしたいと考えております。

 また、そのほか、さらに詳細につきましては、交流基準等の中でも考えてまいりたいと考えております。

吉井委員 今のお話というのは、これまでと余りそう変わる話じゃなくて、要するに、退職しなさいという制約条件を外す、部長であれ課長であれ、もとの企業の肩書を使ってよろしいというわけですから、そうすると、これまでの制約条件を外したことにかわる新たな条件として厳しいきちんとしたものを持たなかったら、この癒着問題ということについて、公正性とか国民の信頼を失ってしまう問題について解決できないわけですね。だから、どういう新しい条件をきちんとつけているからどうなんだとか、そこをやはりきちっと示さなきゃいけないと思うんです。

 念のために重ねて聞いておきますが、今回の改正で、交流期間の間でも出身企業の地位につくことができるようになっていますね。だから、民間企業の課長あるいは部長の肩書を持ったままの交流採用、つまり肩書つき採用、これは可能ですね、確認します。

鈴木政府参考人 法律上は特に制限はございません。

吉井委員 そこで、○○株式会社の課長あるいは○○株式会社の部長の肩書を持つ国家公務員が今後は誕生するということがあり得るわけなんですね。そのことは、国公法第百一条の職務専念の義務、それから国公法百三条の私企業からの隔離の規定との関係。つまり、もともと公務員の場合は全体の奉仕者という立場がありますね。営利追求の社員という身分を持ってくるという場合の関係、これについてはどういうことになってきますか。

鈴木政府参考人 百一条の職務専念義務の関係でございますけれども、今般新設する雇用継続の交流採用職員を含めて、交流採用職員は国家公務員として採用されることになりますので、基本的には国家公務員法上の服務義務がそのまま課されるということになります。したがいまして、百一条の職務専念義務も適用されるということになります。

 ただ、交流採用職員は、官民交流法上、その任期中、交流元企業の事業事務に従事することが禁止をされますので、任期中は公務に当然専念をしていただくということになります。交流元の身分は持っておりますけれども、法律で交流元企業の事業事務に従事することを禁止しておりますので、そういう担保によって、任期中、百一条の職務専念義務を果たしていただくということになります。

 それから、百三条の関係でございますけれども、交流採用職員が離職後交流元企業の地位につく場合につきましては、官民人事交流法第二十一条の二項によりまして、国家公務員法百三条の二項の規定が適用除外とされております。

 これは、もともと百三条二項の規定が、職員がその在職中に、離職後特定の営利企業に就職をする目的で、当該企業への利益供与等のためにその地位や職権を濫用し、公務の公正な執行をゆがめることを防止しようとする趣旨でございますので、復帰がもともと予定されている交流採用職員の場合には、交流元企業への新たな就職活動のために公務の公正な執行をゆがめるというおそれはないと考えております。

 それから、実際に、もともと復帰を前提にして採用されているものでございますので、復帰に支障がないようにする必要があるということ、それから、申し上げておりますように、もともと交流元企業と密接な関係にある官職等につけてはならないということになっておりますので、離職後において、任期中に得た情報等によって公務の公正な執行をゆがめるおそれはないと考えられるところでございます。

吉井委員 公務員が民間会社に交流派遣で行った場合の話で、さっき言いましたように、公の責任ということでは、国家公務員法上の服務規律だとか、信用失墜行為の禁止だとか守秘義務だとか、それから懲戒処分の要件等、公務員法上の規定で縛られている面がこれまでもあったんですよ。

 民間の人の場合は、退職しておったわけですが、今度、部長だ、課長だという肩書つきで来ることができるわけです。例えば、セールスエンジニアをやっていた技術屋さんが部長待遇という肩書を持っていたとして、この人がどこかの役所の企画の部門に仮に入ったとして、直接今までの技術開発の仕事とは違いましたということにしても、御本人の意図とは別に、その人が名刺交換で、○○会社のセールスエンジニアで部長待遇であったという名刺も持っているわけですから、今度は法律上それは別に悪いわけじゃないですから、お渡しをするというのは、企業の立場からすれば、企業利益を追求する上でプラスになるという問題が出てくるわけです。

 ですから、全体の奉仕者ということと営利追求の企業としての社員の関係というのをあいまいにしたままでは、癒着の問題とか、そして九九年の審議のときには問題になった公正性とか国民の皆さんからの信頼の問題というのは、私は、このやり方ではとてもじゃないが実現できないというふうに思います。

 大臣に伺っておきますが、国民の感覚からすると、一つだけ例を挙げますと、商船三井から外務省に交流採用で、これは民間企業から国の機関に採用として職員が派遣されているわけですが、派遣先は外務省本省じゃなくて在パナマ日本大使館なんですね。しかも、任期二年務めると交代の人が商船三井から派遣されてくるわけですね。さっきは連続はないという話ですが、三回続いているんです。やっている仕事というのは、パナマの経済情勢の分析、パナマ運河及び運河両端の港湾を中心とした国際港湾に係る調査分析ということなんですね。

 ほかに希望する会社がなかったのでこういう結果になったというのが外務省の説明なんですが、それは表向きの話なんですね。実態は、企業の方からこの部署なら職員を派遣できますよという話があって、それではということで官庁の方がその仕事内容を人事院に知らせ、こういうふうになったわけです。

 御存じのように、商船三井というのは、世界をまたにかけて海上輸送、旅客輸送を展開している会社ですね。パナマにも現地事務所を持っています。当然ながら、その現地事務所には日本から社員が派遣されて仕事をしているんです。官民交流法は交流元の業務に従事することは禁止されているんですが、やっている仕事は、先ほど言ったように、パナマの経済情勢の分析、パナマ運河を中心とした国際港湾に関する調査分析で、要するに、商船三井の現地事務所がやっている業務と重なっているわけですよ。極端なことを言うと、商船三井の職員一人を国費で派遣しているようなものと考えることもできるような話なんです。

 こういう事例が現在の官民交流の中にはほかにもあるわけですが、そういう状況のもとで、今度は企業の地位についていたままで交流採用を可能にしようという、これで公務の公正性を確保することができるのか、国民の信頼を得られることになるのか。ここは大臣にしっかりお答えをいただきたいと思います。

竹中国務大臣 今の外務省の事例でございますけれども、在外公館でそういう分析等々のための交流採用を行っている例はございます。このパナマの例も、公募に対する商船三井の応募によりまして、官民交流の手続によって外務省に採用されたものというふうに承知をしております。

 当然のことながら、この採用に当たりましては、個別の交流計画につきまして、人事院が公務の中立性、公正性の確保の観点からその審査と認定を行っているところであります。また、交流採用された職員は、そういった交流元企業との契約の締結等の業務に直接携わることは禁止されているわけでございます。そして、交流状況については、毎年、人事院が国会に報告している。

 委員御指摘の交流採用につきましても、そういう意味では、定められた適切な手続にのっとっているものというふうに承知をしております。

吉井委員 法律を通して、あとは人事院の責任だ、私はそういう無責任な法律のつくり方はよろしくないということを申し上げて、質問を終わります。

中谷委員長 次に、重野安正君。

重野委員 社会民主党の重野安正です。

 この間の皆さんの質疑を聞いておりましても、現行の官民人事交流制度が有効かつ効率的に運営されているか、疑問を感じる部分もなしとはしません。また、それが制度や運用によるものなのか、あるいは交流そのものの必要性や緊急性の度合いに由来するものなのか、議論を深める余地は十分ある、そういう問題意識を持ちながら、以下、質問に入ります。

 まず、人事院総裁にお聞きしますが、今回の改正案は、本年二月二十三日、国会及び内閣に提出をした意見の申し出によるものと理解しております。重複いたしますが、官民の人事交流促進の必要性について総裁はどのように考えているかという点が一つ。また、今回行った意見の申し出はいかなる趣旨、目的に基づくものなのか、改めてお聞きしたいと思います。

谷政府特別補佐人 行政課題が複雑高度化をいたしております中で、国民に対して質の高い行政サービスを提供してまいりますためには、民間の有為の人材や高い専門的知識、経験を有する方を確保し、活用いたしますとともに、公務員を民間企業に派遣いたしまして、人材育成及び組織の活性化を図っていくということが必要なわけでございまして、このために官民の人事交流という制度ができているわけでございまして、この制度は大変重要なものであると認識いたしております。

 人事院といたしましては、これまで、人事院規則で公務の活性化のために民間の人材を活用する場合の特例、それから国と民間企業との間の人事交流に関する法律、一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律といった、広い意味での官民人事交流に関する制度について、意見を申し出、あるいは整備を進めてまいりました。

 このうち、官民人事交流法でございますが、公務員を民間企業に派遣し、また民間企業の職員を公務に採用することを通じまして、民間の業務手法に学びながら行政運営の活性化を図る趣旨のものでございます。

 現行制度におきましては、民間から公務への交流採用に当たりまして、一たん民間企業を退職していただくということを要件としておるわけでございますが、平成十二年三月の法施行後の運用の実績を踏まえ、交流採用をさらに拡大していきますためには、交流元企業との雇用関係を一定の要件のもとに継続することができるようにすることなどが必要であると考えまして、これはいろいろ関係者の御意見を聞きます中でもそういったことの御意見の申し出が非常に多いということがあるわけでございますが、そういう考えのもとに人事院としての意見の申し出をさせていただいたところでございます。

重野委員 そこで、これまでの実績について聞いておきたいんですが、本法施行以降の交流実績はどのような実績にあって、そうした実績について人事院としてどういう評価を持っておられるか、その点について、人材局長。

鈴木政府参考人 お答えをいたします。

 官民人事交流法が十二年の三月二十一日に施行されて以降、昨年の十二月末までの状態で、官から民の交流派遣が四十名、それから民から官の交流採用が百七十九名ということでございますけれども、十八年の三月末までの状況で見ますと、百七十九名が百八十四名ということになります。

 交流採用につきましては、数字を見てみますと、年々人数がふえてきておりますけれども、交流派遣につきましてはなお少ない人数にとどまっておりまして、交流派遣、交流採用ともに府省によって偏りが見られるなど、交流実績全体としてはさらに推進に努める必要がある状況というふうに考えております。

重野委員 どういう評価をしているかという問いに対する答弁もありましたけれども、当初、この法律をつくる議論の中で、今ある現状というものを想定してはなかったと思うんですね。もっと活発に相互の交流が行われるだろうと思っていたのか、行われるべきだと思っていたけれども結果としてこうなったのか、その点はどうなんですか。

鈴木政府参考人 たしか記憶では、制定されたときの委員会審議等で、どのくらいの数字が予想されるのかというような議論があったように記憶しておりますけれども、なかなか予測が難しいという当時の答弁だったような記憶がございます。

重野委員 今の答弁はちょっと問題だと思いますね。そうすると、では今後どうしたらいいかという方策が出てこぬじゃないですか、今のような答弁では。やはり、どこに問題があって今があり、そして今ある問題をどう克服して、そしてこの法律をつくった目的を達成していく、そういう道程というものが明らかにされないといけませんよ。

鈴木政府参考人 失礼いたしました。

 官民間の人事交流が思ったほど進まない理由といたしましては、一般的に申しまして、一つには、我が国の労働市場におきまして、官民を問わず、雇用慣行として若年採用、長期雇用の傾向がなお強くて、キャリアの途中で所属組織を離れて他の組織で働くことに不安やちゅうちょを感じる者が多いという現状が一つあるというふうに思っております。

 また、官民人事交流法に基づく交流の実績が不十分な理由といたしまして、官から民への交流派遣につきましては、比較的民間企業の受け入れニーズのある若手の公務員がやや層の薄い状況にあるということ、それから、民間企業においても厳しい経費削減が求められる中で受け入れることが必ずしも容易でないということ。あるいは一方、民から官への交流採用につきましては、民間においても厳しい人事管理が行われていることに加えまして、交流元企業を一たん退職しなければならないということが大きな理由として言われることがありまして、そんなことも踏まえまして、先般意見の申し出を行いまして、現在、御審議をいただいているところでございます。

 人事院といたしましては、こういった状況でございますので、昨年の一月に、交流審査会の意見を聞きまして、過去五年間の実績を踏まえまして、交流基準の若干の緩和を行っております。また、昨年九月には、総務省と共同で各府省に対しまして官民人事交流促進の要請を行いまして、十月には、日本経団連の協力を得まして、民間企業に対する説明会を開催し、各府省のニーズを示して、民間企業側の交流希望の把握に努めたところでございます。

 現在、人事院におきまして、各府省、民間企業の交流希望についての情報交換を仲介いたしまして、交流に関する相談に積極的に応じるなどいたしまして、交流促進に努めているところでございまして、今後ともさらに進めてまいりたいというふうに考えております。

重野委員 人事院の今までの努力についての説明がありました。それはそれとしてわかりました。

 総務省人事・恩給局長に聞きますが、先ほど来話がありますように、府省によって、交流派遣のない府省、採用のない府省など非常にばらつきがありますね。この法律ができて、法を守るべき府省が結果としてこういうところになっている。これはいささか問題ありという感じがするんですが、そこら辺はどのように受けとめて、そして今後どうしようとしているんですか。

戸谷政府参考人 お答えいたします。

 官民交流の実績でございますが、表をごらんいただきますと、経済関係の府省において比較的多いというところがございます。これらにつきましては、民間企業にとってもその省の業務の内容がわかりやすい、あるいは府省の側にとっても民間の人材に来ていただくとどういうふうに活躍していただけるかということがよく見えるということが理由として挙げられるのではないかというふうに考えてございます。

 一方で、各府省相手の管理的な省庁でございますと、なかなかこれは民間企業にも縁が薄いというような状況があってやりにくいというところがあるのかと思っています。

 私どもといたしましては、これまで実績の少ない府省も含めて、各府省に官民交流の取り組みを要請していくとともに、先ほど人事院の方から説明がございましたように、民間企業の方にもいろいろな意味で働きかけをしていって、この制度の周知を図り、応募をしていただくというようなことについて努力していきたいというふうに今考えております。

重野委員 そこで、今話がありましたように、国土交通省がこの間、十二年からずっと追っていきますと五十六人、一番多いんですけれども、なぜ国土交通省が一番多いのか、国土交通省としてどういうふうに受けとめておられるか。

春田政府参考人 お答えいたします。

 国土交通省におきましては、いわゆる交流の人事の関係、数といたしましては、いわゆる交流の派遣が十名、また民間企業からの採用が十七名ということでございますが、先生御指摘のように、今までの経緯を見ていただきますと、年を追うごとに基本的には増加の傾向をたどってございます。実は、実績を重ねる中で、やはり民間から来ていただいている方につきましても、私ども行政の分野でお仕事をしていただくという中で、それなりにお見えいただいた方にとっても得るところがあるというような評価もございまして、そういうものの積み重ねがあろうかと思っております。

 特に、私どもといたしましては、いわゆる本省の方に、私どもの役所の方にお見えいただく方につきましては、国土交通行政の中で民間的な知見も参考にしながら経営的な考え方を生かしていく。そういう意味では非常に評価をしているところでございまして、行政の側におきましても積極的にこういった職員の受け入れをしている、こういう背景がございます。

重野委員 先ほども指摘がありましたけれども、業界の方から見れば、そういう三年なら三年の人事交流の中で国土交通省とより密接な関係ができる、それが後々自分の本業の会社の仕事においてプラスになる、こういうふうな思いがないと言えばうそになると私は思うんですが、現実、そういう点についてどういうふうな配慮というか規制というか、それをなされているんですか。

春田政府参考人 お答えをいたします。

 官民の交流の関係の中では、特に派遣元の企業との関係で、許認可の業務であるとかあるいは契約の関係というようなことで、そういう業務を行っている仕事にはつくことができない、こういう形のルールになってございまして、運用におきましても、そのような形で民間の企業から採用ということは私ども行っておらないところでございます。

 そういった意味では、いわゆる事業との関係でいきましても、直接関係のないところでいろいろな経験をしていただく、私どもとしても、仕事の直接の関係というよりは、企業のいろいろな経営的な取り組みの仕方であるとか仕事の仕方であるとか、そういうようなことを組織としていろいろと勉強させていただく、こういうようなことでございます。

重野委員 こういう質問でいきますと、人事交流というものが無制約的に拡大すればいいというふうなものでもない。ここの部分が非常に難しいところだと思うんですが、総務大臣、この官民人事交流、一定の限度あるいは秩序というのは当然あるんだろうと思うんですが、そこら辺について大臣はどのように認識を持っておられますか。

竹中国務大臣 委員御指摘のように、人事交流というのは多ければ多いほどいいというものではもちろんないと思います。一定の限度があると思いますし、内部の方と交流しておられる方の適切な組み合わせというのがまさにあるんだと思います。

 問題は、恐らくそういうところとはまだほど遠いところに現状はあるということなのではないかと思います。先ほどから数字をいろいろ挙げさせていただいていますけれども、こちらへいらっしゃる方が百七十何名ということでありますので、まだその意味では本当に手探りで、このシステムが始まったばかりのところで、私たちまだ手探りでやっているという状況だと思います。

 いずれにしても、重要なのは、それぞれ補い合うところがあるわけですから、人材交流を通してお互い学び合う、そしてそれが公務の適正化に生かされていく、その意味では、やはりキーワードになるのは適材適所、そういうことなんだと思います。これは決して無制限でやっていいわけではありませんし、一定の限度があるというのはそのとおり。しかし、そこに至るまではまだ遠い道であるというふうに思っております。

重野委員 そこで、総裁にお聞きしますが、これは先ほども質問がありましたけれども、いわゆる雇用継続、雇用が継続されるというところが一番大きな改正点だと思うんですが、この部分というのは、前回の議論においても、法案審議においても問題にされたところであることは御案内のとおりです。今回これを認めたということ、これは一体どういう積み上げの中でそういう結論に達したのか、改めて。

谷政府特別補佐人 この法の施行当時につきましては、いろいろな公務員の不祥事等が続発をいたしておりまして、そういったことの中で、雇用関係を継続することについては、あえてこれを禁止して、公務の公正な執行の確保と国民の疑惑を招くことのないようにするということを大変重視して、そういう意見の申し出を行ったわけでございます。

 その後、施行後約六年が経過いたしましたが、交流採用職員につきましてはまだ百八十四名にとどまっているという状況にもございまして、こういった、十分にこの制度が運用されているとはちょっと言いにくいのではないかというこの状況につきましては、その原因の一つに、いろいろ原因はあるわけでございますけれども、民間企業を退職しなければならない仕組みであるということもこの促進を妨げる要因の一つであるという御指摘も受けておるところでございます。

 そういう意味で、公務の公正性を確保しつつも、やはりこの促進を図るための措置をとらなければならないということで、交流元企業との雇用の継続を可能とすることについて検討してきたわけでございますが、これまで、交流元企業と密接な関係にある官職につくことを禁ずる官職制限、それから所管関係等によります交流制限、交流状況についての国会等への御報告など公務の公正性を確保する措置を講じてきました結果、これまでの運用の中では官民人事交流に関して公務の公正性に疑念を抱かせるような事例が生じておりませんこと、今後も、これらの措置を適切に運用し、さらに必要な措置を講ずることといたしますれば、交流採用職員について、交流元企業との雇用を継続すること自体が公務の公正性の確保に支障を生ずることにもならないのではないかと考えまして、雇用継続を認める意見の申し出をさせていただいたところでございます。

重野委員 そこで、新しく雇用関係の継続を認めるわけですから、そうなると、公務の公正性という点に着目をすると、そこら辺の担保措置はどうなのか、こういうことが出てくるわけですね。

 任命権者と交流元企業との取り決めにおいて賃金の支払いを行うことを内容として定めてはならないとしておるんですが、その理由は何か。

 二つ、人事院人材局長。

鈴木政府参考人 お答えをいたします。

 交流採用につきましては、現在におきましても、人事院による公募とか、交流元企業と密接な関係にある官職につくことを禁じる官職制限、あるいは契約関係等による交流制限、それから交流状況についての国会等への報告による透明性の確保等、公務の公正の確保を図っているところでございます。

 今回、交流採用職員の交流元企業の雇用関係の継続を認めるに当たりましては、今申し上げた手続、制限に加えまして、まず、各府省が交流元企業との間で締結する雇用に関する取り決めにおいては賃金の支払いを行うことを内容として定めてはならないこと、それから、交流採用職員は任期中、雇用に関する取り決めに定められた内容に従って交流元企業の地位につく場合を除いては当該企業の地位についてはならないこと、それから、現行と同様に、いかなる場合においても交流元企業の事業事務に従事してはならないこと、それから、人事院は毎年、国会、内閣に対して交流採用職員が交流元企業で占めている地位を含めまして報告をして、その透明性を確保していく等の措置をとることによりまして、公務の公正性に疑念を生じさせないように努めているところでございます。

 それから、賃金についてでございますけれども、賃金につきましては、これを交流元企業が雇用継続交流職員に支払った場合には特に公務の公正性確保に疑念を生じさせるおそれがあるということから、支払うことを禁じるということにしているものでございます。

重野委員 もう終わりの時間が来ましたけれども、一つだけ。

 今回の改正で、少ない方の交流派遣についての見直しというのはなされていないわけですね。交流採用は今言ったような形になったんですが、これはなぜですか。

鈴木政府参考人 お答えをいたします。

 官から民への交流派遣の方が進まない理由につきましては、制度的な面での障害というよりは、行政需要が増大する中で若手職員の層が薄い状況にあること、あるいは、民間企業においても厳しい経営の中でなかなか受け入れることが容易でないといった、各府省や民間企業の事情によるところが大きいというふうに考えております。

 このため、今回は、交流の促進に資するよう制度的な整備ということで提案をしているわけでございまして、引き続き、人事院といたしましては、交流採用だけではなくて、交流派遣につきましても積極的に行われますように各府省に働きかけを行いますとともに、民間企業に対しても説明会を開催するなどして推進を図ってまいりたいと思っております。

重野委員 終わります。

中谷委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

中谷委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。吉井英勝君。

吉井委員 私は、日本共産党を代表して、国と民間企業との間の人事交流に関する法律の改正案に対し反対の討論を行います。

 交流元との雇用関係を絶つからこそ、官民癒着の防止あるいは公務に対する国民の信頼、公務の公平性、公正性が保障されるというのが九九年二月の立法時の政府の説明であります。

 ところが、法案は、民間企業との雇用関係が継続したままで交流採用できるようにするもので、これまでの政府の態度を百八十度転換するものであります。民間企業との雇用関係を継続したままで、しかも、民間企業の地位についたまま大手を振って国の機関に天上がりができるようにして、どうして官民癒着の防止、公務の公平性、公正性、国民の信頼を得ることができるでしょうか。

 最近の防衛施設庁の談合疑惑は、改めて国の機関と天下り企業や団体との癒着防止が重要な国民的課題であることを明らかにいたしましたが、法案はこうした流れにも逆行するものであります。

 官民癒着の防止、公務の公平性、公正性、国民の信頼を損なう法案は容認できないことを表明して、討論といたします。

中谷委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

中谷委員長 これより採決に入ります。

 国と民間企業との間の人事交流に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

中谷委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

中谷委員長 次に、内閣提出、参議院送付、消防組織法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。竹中総務大臣。

    ―――――――――――――

 消防組織法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

竹中国務大臣 消防組織法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 災害の多様化等に対応した市町村の消防の体制の整備及び確立を図るため、自主的な市町村の消防の広域化を推進する等の必要があります。

 次に、法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。

 本法律案は、自主的な市町村の消防の広域化を推進するため、消防庁長官が定める基本指針、都道府県が定める推進計画及び広域化を行おうとする市町村が作成する広域消防運営計画等について規定するほか、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、この法律案の提案理由及び内容の概要であります。

 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。

中谷委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る六月一日木曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時五十四分散会


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