衆議院

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第20号 平成19年5月15日(火曜日)

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平成十九年五月十五日(火曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 佐藤  勉君

   理事 岡本 芳郎君 理事 鈴木 淳司君

   理事 谷  公一君 理事 林  幹雄君

   理事 森山  裕君 理事 武正 公一君

   理事 寺田  学君 理事 谷口 隆義君

      あかま二郎君    井澤 京子君

      石田 真敏君    石原 宏高君

      今井  宏君    岡部 英明君

      加藤 勝信君    鍵田忠兵衛君

      川崎 二郎君    木挽  司君

      実川 幸夫君    関  芳弘君

      田中 良生君    土屋 正忠君

      土井  亨君    萩生田光一君

      萩原 誠司君    橋本  岳君

      福田 康夫君    福田 良彦君

      武藤 容治君    渡部  篤君

      逢坂 誠二君    岡本 充功君

      後藤  斎君    郡  和子君

      田嶋  要君    西村智奈美君

      福田 昭夫君    森本 哲生君

      江田 康幸君    谷口 和史君

      吉井 英勝君    重野 安正君

      亀井 久興君

    …………………………………

   総務大臣         菅  義偉君

   総務大臣政務官      谷口 和史君

   総務大臣政務官      土屋 正忠君

   政府参考人

   (総務省自治行政局長)  藤井 昭夫君

   政府参考人

   (総務省自治税務局長)  河野  栄君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    寺田 逸郎君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局次長)           鳥生  隆君

   総務委員会専門員     太田 和宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十五日

 辞任         補欠選任

  あかま二郎君     加藤 勝信君

  鍵田忠兵衛君     武藤 容治君

  萩生田光一君     石原 宏高君

  安住  淳君     岡本 充功君

  田嶋  要君     郡  和子君

  吉井 英勝君     塩川 鉄也君

同日

 辞任         補欠選任

  石原 宏高君     萩生田光一君

  加藤 勝信君     あかま二郎君

  武藤 容治君     鍵田忠兵衛君

  岡本 充功君     安住  淳君

  郡  和子君     田嶋  要君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 委員派遣承認申請に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 住民基本台帳法の一部を改正する法律案(内閣提出第六九号)

 地方公共団体の財政の健全化に関する法律案(内閣提出第六八号)


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     ――――◇―――――

佐藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、住民基本台帳法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として総務省自治行政局長藤井昭夫君、自治税務局長河野栄君、法務省民事局長寺田逸郎君及び厚生労働省職業安定局次長鳥生隆君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。橋本岳君。

橋本委員 皆さん、おはようございます。御声援をいただきまして、ありがとうございます。

 本日は、住民基本台帳法の一部を改正する法律案につきまして質問をさせていただきます。

 まず、自分の質問に入ります前に、昨日、この委員会の派遣ということで杉並区役所さんに出向いて、山田区長を初め皆様方にお話を伺ってまいりました。

 お忙しいところ御対応いただいて、まことに感謝を申し上げたいと思うとともに、正直言って大変勉強になりました。また、住基のことについてもですし、それ以外についてもいろいろなユニークな取り組みをされている、大変エネルギッシュなというかアイデアのあふれるというか、そういう区長さん、それから、それを支えておられる区役所の方々の姿勢に対して大変感銘を覚えたものであります。

 ただ、住基ネットの問題につきましては、少し私とまだ意見が違うところがあるのかなというところがございまして、そこにつきましては、この質問の中で少し議論させていただきたいと思っております。

 まず、きょうの質問の最初ということでありますので、今回の住民基本台帳法の一部改正案の改正の趣旨、それからその背景になったことを御説明いただけますでしょうか。

菅国務大臣 住民票の写し等の交付制度については、だれでも請求が可能でありますけれども、今日の個人情報保護に対する意識の高まりなどを踏まえるときに、市町村長の交付できる場合の基準をより明確に規定する必要があるだろうということであります。そしてまた、一部で、成り済ましによる住民票の写し等の不正請求や届け出が発生をしている状況にあります。

 住民基本台帳法については、昨年、住民基本台帳の閲覧制度について御審議をいただきましたけれども、その際に、住民票の写し等の交付制度について、「個人情報保護の観点から、さらに厳格な運用を確保するよう努めるとともに、制度の見直しを早急に検討すること。」との附帯決議を衆参両院でいただいたところであります。

 こうした状況を踏まえまして、個人情報に対する意識の高まりへの的確な対応と住民基本台帳に対する信頼性の向上を図るために、今回、住民票の写し等の交付制度を見直しし、個人情報保護に十分留意した制度として再構築をするとともに、転出、転入等の届け出の際の本人確認を厳格化し、成り済ましを防ぐ、そういう観点から今回提案をさせていただいたということであります。

橋本委員 先ほどお話の中にもありましたけれども、去年、実は同じ住基法の改正をしておりまして、附帯決議の中でこの住民票の写しの発行について厳格な運用云々ということを、それこそこの総務委員会の中で決議をいたしまして、それを受けて改正をしていただいたということで、今回の改正については一刻も早くぜひ実現をしようというものであります。

 その上で、もう一つお伺いをしたいと思います。

 昨年の住基法の改正で、住民基本台帳の写しの閲覧制度につきまして、その条件を厳格化する、今まではだれでも閲覧ができたという状況であったものを制限するように法改正をいたしました。その成果というか、その住基の法改正を受けて、閲覧の件数そのほかはどのようになっているのか、国の方で把握しておられるのか。それと、実はこれは今把握中であるというふうに伺っておりますので、それがいつぐらいの時期に把握をされるのか。ぜひ、私たちとしては法改正をしたらその検証をすべきだと思っておりますので、その点について教えていただけますでしょうか。

藤井政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねの閲覧制度の効果等につきましては、ただいま委員御指摘のとおり、この制度改正が十八年十一月一日に実施されたところでございまして、法律上は、閲覧については市町村長が毎年少なくとも一回、その状況を公表するということになっているわけでございますが、公表の状況については現在私ども調査中のところでございます。

 いつごろ公表されるのかということでございますが、一応、市町村からの締め切りが五月十日ということでお願いしているところでございましたので、集計した結果なんかを精査する必要もあるということで、その後やはりしばらくは時間をちょうだいいただきたいと思います。

 ただ、効果につきましては、これも前回の通常国会の審議でも御論議があったと思いますが、この閲覧を利用していたのはほとんどがやはりダイレクトメールなんかのための民間の事業者でございます、こういった事業者が、この閲覧制度の改正によって利用できなくなった。このダイレクトメール業者等の民間事業者が約八割以上を占めていたと言われております。そういう意味で、相当大きな成果があったのではないかというふうに私どもは考えているところでございます。

橋本委員 今、国の方では、全体の集計、調べて、五月十日ということで、ついこの間だったので集計が間に合わなかったということで、いずれまた別の機会にその効果というのを教えていただきたいと思います。

 昨日、杉並区でお伺いをしたところ、杉並区では閲覧について請求理由の限定を法律より前倒しでやっていて、運用上、十七年度の四月から既に実施をされたということであります。その前、十五年度、十六年度は、十七万件、十六万件といった数字であったものが、十七年度から四万二千件、十八年度三万二千件というふうに、その閲覧の件数というのは大変下がっておりまして、法改正をしたことは大きな結果につながるのかなという期待をさせるわけでありますけれども、検証はいずれさせていただければと思っております。

 さて、その住基ネットについて議論をしていきたいと思うのでありますけれども、昨日、杉並区の山田区長さんを初め皆様方とお話をさせていただいた中で、御案内のとおり、住基ネットに参加をする、されない、今されていない状態という中で、段階的な参加を認めてほしいという主張をされて、今訴訟を起こされているわけであります。

 特に、きのうのお話の中で区長が強調されておられたのが、住基ネットへの参加というもの、もしくはIT社会一般のようなふうにもおっしゃっておりましたけれども、選択できることが大事なのだということをおっしゃっておられました。それも、個々人の方がであります。その考えに基づいて、杉並区さんの主張としては、参加をしたい人がする、したくない人はしないでいい、そうしたことが豊かな社会なのだというお話をされておいででした。

 一般論として考えれば、確かにそういう考え方もあるかなということは思うわけでありますけれども、ただ、今回、住民基本台帳もしくは住民基本台帳ネットワークというものについて、それが合理的な考え方なのかというと、私はまだ疑問が残っているだろうと正直思っています。

 特に、選択制というのを認めるその理由は何か。それは、住基ネットというものの参加に不安を持つ、個人情報が漏えいしたりするのではないかという住民の方がいらっしゃる中で、選択をさせる、個人にゆだねることがいいことであろうということが基本的な考え方なわけであるんですけれども、果たしてこの住民基本台帳もしくはそのネットワークに選択的という概念がふさわしいのかどうかというのは、甚だ疑問であります。

 まず、一つ前提といたしまして、住基ネットの安全性についてお伺いをしたいと思っております。

 稼働から年がたっているわけでありますけれども、これまでの間、住基ネットの中から、その中の情報が漏えいをしたようなこと、あるいは、新聞報道などで見ましたけれども、北海道の斜里町で住基ネット関係の情報がウィニーで流出をしてしまったという報道がございました。それもあわせて、住基ネットの安全性について、これまでどういった事件、事故が起こったのか、起こっていないか、教えていただきたいと思います。

藤井政府参考人 住基ネットの安全性については、これも前通常国会での御審議の中でも、極めて重要な課題というふうに御指摘をいただいているところでございまして、私どもとしても、いろいろ指導をする等によって、十分なセキュリティー対策を講じてきたところでございます。

 平成十四年八月の稼働以来、住基ネット本体から住基データが外部に直接流出した例というのはございません。そういう意味で、特段の事故、事件は発生していないと言え、安定的に稼働しているというふうに考えているところでございます。

 いずれにしても、住基ネットの安定的な運用に際しては、セキュリティー対策というのは、極めて重要な、避けられない課題というふうに認識しておりまして、万全を期したいと思っております。

 また、斜里町の事案についてお尋ねでございましたが、これも、報道されているとおり、住基データそのものが流出したというよりは、職員がパソコンにファイル交換ソフトを入れていて、それによって流出したファイルの中に、住基ネットの端末操作に係るパスワード等が含まれていたというものでございます。これは、ある意味では、セキュリティー対策上、極めてゆゆしき問題だと思っております。こういったことがあり得ないようなセキュリティー対策は、講じなければいけないというふうに考えているところでございます。

橋本委員 住基ネットそのものからの情報の流出というのは、とりあえず今までのところないということであります。

 いただいた資料によると、そもそも住基ネット自体について、保有情報について、制限が四情報と住基コードだけなのである。あるいは、外部からさまざまな形で侵入防止の措置をとっている。内部の不正利用の防止をするために、今パスワードが流れたという話があって、それはよくないんですが、その操作者をちゃんと認証する、あるいは刑罰を科す。そのほかのさまざまな措置をとってセキュリティーを守っているところであるし、今の話だけで結論をつけちゃいけないんですけれども、ある意味で、住基ネットそのものが危険、セキュリティー的に安全ではないのだという議論よりも、自治体もしくは住基ネットに接続をしている行政機関一般について、きちんとセキュリティーを上げていただくということもあわせて、もしくは、それの方が実は直面している課題なのかなと個人的には思う次第であります。

 それは総務省さんとしていろいろな取り組みをしておられることは承っておりますが、これについては万全を期していただきたいと思うとともに、そこで、先ほどの山田区長とのお話に戻りますと、要するに、個人情報が漏えいするのが危ないのだ。あるいは、もう一つ、これは一般的な主張として言われるのが、名寄せの危険があるのだ。法律では禁止をされているわけでありますけれども、そういうのが漏れて利用されるようなことになりかねない。そういった主張が住基ネットについて反対される方からされるわけでありますけれども、この問題は、住基ネットが危ないのだということに加えて、実は、住民基本台帳制度そのものが危ないのだと言っているのと、話としてはそんなに変わらないのかなと思うのであります。

 要するに、住基ネットによって情報が集まる、これは危険なことだということでありますけれども、その前に、既に各自治体には、住民の方々、住んでおられる外国人の方は別ですけれども、すべての方の情報がリストになって、電子的な媒体なら電子的な媒体で、あるわけでありまして、実は、これの漏えいだとか、保護されていない、もしくは危ないような事態ということも懸念をしなければいけないし、例えばそこに選択制という概念を持ち込む余地があるのかというと、私はないんだろうと思います。

 要するに、個々の市町村が持っている住基台帳ももちろん安全に守らなければいけないですし、実は、選択制という議論をするのであれば、本当はそこまで議論というのは及ばなければいけないでしょうし、しかしながら、住民基本台帳制度というそのものに、もしくは各個別の市町村が持っている台帳に選択制を導入する余地があるのかというと、私はないんじゃないかと思います。すべての住民の方が登録されていることでいろいろな意味を持つからであります。

 総務省として、今のような住基台帳制度そのものについて選択制というものを導入するということについて、御見解を教えていただけますでしょうか。

藤井政府参考人 お答えいたします。

 住民基本台帳制度というのは、そもそも住民の居住に関する公証のための制度であるということと、それは何のためかというと、いろいろな住民の方は、地方公共団体から行政サービスを受けます。行政サービスを受ける基礎となるデータであるとともに、一々、行政サービス、個々のサービスごとに届け出する、そういう面倒な手間が省ける、そういうための制度であるということと、もう一つ、一般の民間でのいろいろな取引、そういった取引の場合、やはり住所がどこかということを公証する必要性というのがあるわけであります。そういうためには、もともと住基法ができたときに、すべての住民についてこういう住民基本台帳に登録して調製する、そういう制度をつくられたということでございます。

 したがいまして、最初の段階から選択的にそういう制度をつくるという考え方はございませんでした。それはネット化しても同様でございまして、もともと公証制度としてつくられている制度でございますので、住民の方が、地域社会あるいは経済社会の中で生活していくというためには、やはり、自分の氏名、住所それから所在というものは公証する必要がある、そういう認識に立っているんだと思います。

橋本委員 もう一点、山田区長の議論の中で、この住基の事務というのは自治事務であるからして、自治体として大変主体的に判断をしていかなければならないのだというふうなことを強調しておいででありました。

 ただ、その議論が横浜方式についての議論に及んだときに、横浜方式は違法な状態をどうやって解消していくのか、そういうことについて覚書を交わしたのだということは、そのように理解していただいても構わないとおっしゃっておりまして、要するに、現時点、現段階が、住民基本台帳法の趣旨からすると違法な状態であるという認識はお持ちなのかなというふうに私は理解をしたのであります。

 その上で、自治事務だから住民基本台帳の情報というのはしっかり管理をしなければならない義務がある、それと勘案しているのだというお話ではあったんですけれども、やはり、自治事務だから法律に書いてあることを守らなくてもいいという理屈にはならないのではないかと思うわけであります。

 改めてその点を確認させていただければと思います。

藤井政府参考人 御指摘のとおり、住民基本台帳法に基づく事務というのは自治事務ということは明白でございます。

 ただ、これもまた御指摘のとおりでございまして、たとえ自治事務であろうが、法令の規定に従って適切に事務を執行すべきことは当然のことでございます。このことは、地方公共団体においては法令に違反してその事務を処理してはならないということを地方自治法第二条第十六項に明記しているところでございます。

 そのほか、自治事務、団体事務との関係で問題にされるのは、やはり自治事務は自治事務にふさわしい国の関与のあり方とか、あるいは、各省庁が直接指示するとかそういうことは自治事務にふさわしいものではないということで、地方自治法も国の関与の原則でそういうものを拒否しているんですが、ただ、自治事務であっても、国としての最低限必要な基準とかそういうようなものは法令で記述されているわけでございまして、そういったものはやはり法令遵守義務、法令に従う義務があるということでございます。(発言する者あり)

橋本委員 今、見直し、検証が必要だというお話が……(発言する者あり)検証、はい、それは確かにおっしゃるとおりだと僕も思います。検証は常にしていかなければいけないし、私たちの希望としては、できれば、検証した結果、皆さん参加をしたいと思ってもらえるような結果が出ることを望むわけでありますけれども、さはさりながら、一応法制度上は、自治事務だからといって今の状態が許されるというものでもないのではないかというふうに私は思っておりますし、総務省としてもそういう見解ということで理解をするところであります。

 さて、今検証という話がありましたけれども、どれだけの効果があるのかわからないという話、あるいは余り多くもないという話もありました。

 これは、正直なことを言うと、先週の週末にちょっと地元でいろいろな方とお話をしたときに、わしは住基ネットを使ったことがねえでという人がいまして、それは、その辺の普通の方がさわれるようなネットワークだったら困るので、そういう御説明をしたわけです。あれは窓口の中の方の人が使っているんですよ、直接さわるものじゃないから、それは見たことがないと思いますという御説明をしたわけでありますけれども、逆に言うと、一般の普通の国民の方、市民の方の認識というのは今そういう状況にあるのかなというふうにも感じたわけでございます。

 ぜひここで、住基ネット稼働に伴ってどのような効果があったのか、どのような公益が実現をされたのか、教えていただけませんでしょうか。

藤井政府参考人 住基ネット稼働に伴う効果についてでございますが、わかりやすいのは、従来の恩給とか年金は、毎年一回現況届というのを出すようになっていました。これが、ネットを利用することによってそれが不要になったということでございます。それから、各種行政手続の申請等に住民票の添付を義務づけているものが相当あったと思いますが、こういったものも、住基ネット利用によってその添付が不要になったというようなことがございます。

 件数的に言いますと、これはまだまだどんどん増加中のところでございます。例えば、現況届の省略件数は五百十万件でございます。それから、写しの添付が省略された件数は三百七十万件。いずれも平成十七年度の数値でございますが、ということになっております。

 こういった利用というのはどんどん広がっていきますが、意外とこういったのは一般の国民の方々の目につかないというか、気がつかない可能性はあろうかと思います。今までやっていたことがやらなくても済むようになった、そういう便宜が出てきております。

 例えば、現況届なんというのは往復はがき等で来る場合があるんですけれども、それを再度郵送で送り返す負担とか、あるいは、住民票を添付するために、わざわざ市町村の窓口に行って写しの交付を受けた上で添付するとか、そういう手間がなくなっているということでございます。そういうことで、この住基ネットというのは住民の方々の負担軽減にもう既に相当メリットが生じているところだと思っております。

 なお、仮にこういった本人確情を送信することというのを、住基ネットのいわば選択方式ということで住民の選択にゆだねるということにした場合、もともとそういう制度は法律上許されていることにはなっておりませんが、紙の文書と電子情報の文書が混在するという形で、これは行政側にとってはすごく負担のかかることにもなりますし、二重コストがかかるというようなことにもなりかねないということで、私どもとしては、ぜひ全員参加という形で対応していただきたいというふうにお願いしているところでございます。

橋本委員 今お話があったように、住民の方が届け出などしなくて済むようになったというのは便利なことだと思いますが、それこそ一人一人にとってみると年一遍のことだったりして、効果的にもそう感じたという実感に乏しいのはやむを得ないことなんですけれども、見えないような形になっているのかなというふうに思うわけであります。

 また、先ほど、選択制にした場合云々という話がありました。やはり、今いろいろな形で利用が進んでいて、そういう公益が得られるようになったということは御説明があったわけですけれども、例えばコストと利益の試算をしてみるとか、そういったことはいずれどこかのタイミングでしていただいて、わかりやすく説明していただけるようなことは御検討いただいてもいいのかなと思っておりますので、これは要望させていただきたいと思っております。

 さて、残り時間が三分ほどになりました。では、もう一点、手短でお願いしたいと思うんですが、住基カードについて、ちょっとこれは細かく議論する時間がなかったので、一応これについて現状と今後の見通しを簡単に教えていただけますでしょうか。

藤井政府参考人 住民基本台帳カードは、平成十五年八月から交付が始まっているところでございますが、平成十九年三月末日では百四十一万枚が交付されているところでございます。

 この住基カードというのは、写真つきのカードで身分証明書として利用できるとか、あるいは市町村によっては、印鑑登録証とか図書館カード、条例で定めるいろいろなサービスを利用できるようになっているものもあるとか、あるいは、いわゆるオンライン申請なんかに対して必要な公的個人認証サービスの電子証明書を保存することができるとか、そういうメリットがあるわけでございます。

 私どもとしては、今後どんどん利用されていくということを期待しているところでございますが、単に待つだけじゃなしに、積極的にPR等をして利用を推進していきたいと考えているところでございます。

橋本委員 住基カードについてもじわじわ利用がふえているような状況と伺っておりますけれども、いろいろもう少し広報されていただいて、せっかくのシステムなので普及に努めていただくよう、例えば、今、運転免許について高齢の方はぜひお返しをくださいということをしているわけでありますけれども、そうすると御高齢の方について身分証明書がないということになってしまうということもあって、そういう場合に使えるというようなこともございます。今後さらに普及をしていかれることを望みます。

 さて、菅大臣にお伺いしたいと思います。

 先ほど、住基ネットについての議論を幾つかしてきたわけでありますけれども、今、杉並区それから国立市、いずれも東京都ですけれども、あと矢祭町、この三つの団体が住基ネットに不参加という状態になっております。私としては、ぜひ皆さんが参加をされて活用されていくことが望ましいと思っておりますけれども、その点について一言コメントをいただけますでしょうか。

菅国務大臣 住民基本台帳法上、市町村は、住民票の記載などを行った場合には、当該記載に係る本人確認情報を都道府県知事に通知するものとされているところであります。住基ネットに参加しない団体は、住民基本台帳法に違反をする、このように考えています。

 不参加団体において、例えば、各種年金事務においては、受給権者は本来不要のはずの現況届の提出を強いられたり、あるいはまた、年金支給機関は現況届を郵送するための経費が必要なほか、年金の過払いが発生するおそれがあります。さらに、各種行政手続において、住民は本来不要のはずの住民票の写しの提出を強いられ、住民は住民票の写しの交付を受けるために市町村窓口まで出かけて行かなきゃならない、さらに、交付手数料を負担する必要があります。また、市町村では、住民票の写しの交付をするため多数の職員を配置しなきゃならない。

 このように、住基ネット不参加団体というのは、住民の利便性を損なっているばかりでなく、国の行政機関等や地方公共団体の行政事務の合理化を大きく損なうものであるというふうに思っています。

 私どもは、今日まで、不参加団体に対して、住基ネットの離脱または不接続を行うことはできず、住民基本台帳法違反になることを通知しているほか、都道府県の知事から是正の勧告を行うなど、速やかに住基ネットに参加するよう求めてきたところであります。今後とも、関係都道府県と連携をとりながら、早期の住基ネットへの参加を促してまいりたい、そのように考えているところであります。

橋本委員 以上で終わります。ありがとうございました。

佐藤委員長 次に、逢坂誠二君。

逢坂委員 民主党の逢坂誠二でございます。

 最初に菅大臣、先週、果実酒の話を菅大臣にさせていただきました。私がつくった果実酒を大臣にプレゼントしたら、それが違法になるかどうかという話で、大臣が、いや、それは違法になるとはわからなかったという話を正直にされました。私の地元に帰りましたら、その大臣の発言が大変評判がよくて、あの大臣は正直だ、いや、あの人は信用できるんでないかという話を多くの人がしておりました。法律のそういう抜け穴、あたかも知ったふうな顔をして、おれはわかっているんだという人よりも、非常に地元では好感を持って受け入れられておりました。あの何とか還元水でこそこそ逃げ回っている大臣とは大違いだという話を地元で言っておりましたので、冒頭に報告させていただきます。

 さて、住民基本台帳法のことについて若干質問したいと思うんですけれども、私がニセコの町長をやっていたときに、こんな問題がありました。お母さんが、自分の十六歳の娘さんの転出届を役所へ出しに来たんですね。お母さんが来ているから当然もう大丈夫だと思って、役所では転出証明を出す。どこかの町へ転入したわけです。次の日、そこの世帯のお父さんが来まして、何だ、あの転出はおれは承認していないんだ、本人、娘が来ていないのに何で役所はそんなことをしたんだ、とんでもない話だということで、大騒ぎになったことがあったのであります。

 この件に関して、総務省としてどう思うかということはちょっと、個別の案件ですから、置いておくとしまして、役所の窓口で、今回の住民基本台帳法の改正によって、あるいは今までもそうなんですけれども、本人確認というのは一体どの程度の強さといいましょうか精度で行うべきなのか、このあたりを若干御説明いただければと思います。

藤井政府参考人 お尋ねの件でございますが、これも率直にお答えするとすれば、どこまでというのはなかなか難しいところはあると思います。実際司法当局のように、捜査権限とか立入調査権限とか、そういう権限があってやる話ではありません。

 むしろ私どもが今回の改正で行おうとしたのは、いろいろ市町村の担当者がそういうトラブった案件を持ち込まれて困っておられる、そういった場合に、法令できちっと、どういう証明書類を提出すればいいのかとか、あるいは、従来は、不当な目的であることが明白でない限りということで、非常にネガティブで、それを市町村の職員が相当確度の高い形で判断しなければできなかったものを、ひっくり返して、正当な理由があるということをむしろ請求者側に主張させて、それをチェックできるようにするとか、あるいは、最終的にはやはり社会通念で、相当の判断で、これは問題のある請求かそうでないかと判断できるようにするというようなことにするということを主眼に置いているわけでございます。

 ただ、それではどれだけ効果があるのかというと、やはりそれはある意味では、従来全国的に統一レベルでやっていなかったこともあるでしょうし、なかなかやりにくかったところもあるでしょうし、そういったところが非常にやりやすくなるという意味では、私どもとしては、やはり成り済まし防止とか、あるいはそういうようなものに効果があるのではないかと思っております。

 もしお尋ねであれば、具体的にどういう書類でチェックするのかということは省令で具体的に決めることなんですけれども、今考えていることを、御質問があれば御説明申し上げたいと思います。

逢坂委員 この住民基本台帳法の運用については、やはり全国の各自治体で運用に多少のずれがこれまであったのかなという気もしないでもありません。

 ちょっと話はそれますけれども、統一地方選挙が終わって、私も全国各地へ行きましたら、あれ、公職選挙法というのは随分各地で運用が違うんだなということで驚きましたね。何か、こんなことやって大丈夫なのかという町もあったり、いや、随分またこれは厳格に判断しているななんというところもあったんです。

 公選法の話はちょっと置いておくとして、この住民基本台帳法も、それぞれの自治体でさまざまな解釈、運用の仕方があるのはちょっとやはりまずいというふうに思われますので、ぜひ全国的に統一的な方向で判断がされるように、この場でお願いをしておきたいなというふうに思います。

 それから、次でございますけれども、住基法に関して、戸籍の付票というのがございます。これは、戸籍の付票というのは実は余り国民の方はよく知っていない、そういうものがあるなどということは知らないのかもしれないんですが、本籍地に自分の住所情報が、生まれたときから転居をするたびに、どこへ移った、どこへ移ったというのが全部書いてある戸籍の付票というのがあるわけですが、今回の法改正によって、住民票の交付も戸籍の付票も、要するに交付する基準、こういう場合には交付できるよというような基準は同じだというふうになっていると伺っております。

 私は、個人にとっての情報の重要性からいうと、戸籍の付票というのは結構これは個人のプライバシーを考える上では奥深いものなのかなというふうに思うんですね。私でいうと、私は北海道のニセコで生まれましたが、その後、いろいろなところ、さまざま転居しました。指を折ってみるともう十数カ所か、場合によってはもっと転居しているかもしれないんですが、その情報が全部戸籍の付票に載っているわけですね。これが簡単に外部に流出するということになると、プライバシーという観点では、場合によっては住民票以上に大きな打撃を受けるものなのかなという気がするわけです。

 したがって、戸籍の付票の交付の基準というのは住民票の写しの交付よりも厳格であるべきではないかというふうに私は思うんですけれども、まず政府参考人、いかがですか。

藤井政府参考人 これは前提条件から御説明する必要があろうかと思うんですが、戸籍の付票を請求する場合というのは、実は付票は本籍地の市町村が管理しているわけでございます。したがいまして、請求者側はその人は本籍がどこかということを知っているというわけでございます。だからチェックする必要がないかというと、決してそうではなくて、本籍地をいわば頼りに、戸籍に記名されている家族なんかの現住所を知りたいというような使われ方が多いわけでございますが、これの情報というのは戸籍情報プラス現住所の情報が重なっている情報ということで、そういう意味では、使われようによってはやはり人権侵害に使われる可能性もあるという意味では、極めてセンシティブな場合もあり得ると思っております。

 ただ、いずれにしても、審査基準は同じではないかという御指摘ですが、同じといっても、それぞれ、戸籍上のその人がどこかに移っているという情報を利用する目的に正当性があるかどうかということ、これがやはり審査の主眼でございまして、そういう情報を利用することに正当性があるかどうかという審査をやった上で、先ほど言いましたように、あとはそういう請求自体が相当性があるかどうかという判断になるわけでございます。法律文言上の基準というようなのは同一でございますけれども、やはり戸籍情報に関連する現住所であるという観点からのチェックが必要であるという意味では、十分なチェックができるんじゃないかというふうに考えておるところでございます。

逢坂委員 では、藤井局長の今の答弁からしますと、住民票情報で足りるものはあえて戸籍の付票の交付はしないというふうに判断してよろしいんでしょうか。戸籍の付票の請求目的を見たら、これはそんな過去の住所まで要らないだろう、そういうようなものであるならば住民票の写しで大丈夫だという場合は、窓口で、戸籍の付票ではなくて住民票にしなさいというふうに言うという意味でしょうか。

藤井政府参考人 実際の使われ方という話になるので、いろいろなケースが想定されます。よく似た話で、住民票の除票を請求するというのもあるんです。いずれにもよくあるのは、本来、債務者が住所を変更した場合、債権者に届け出るとか、あるいは年金なんかの受給資格者も、異動すると届け出るとか、そういうことをやっていれば、債権者なり債務者は場所を知っているわけですから、わざわざ市町村に行って調査する必要はないんですが、そういうものがない場合という前提でお聞きいただければ、除票の方は、前の住所を知っているけれども移った場所は届けられていないという場合には、こういう方法で調査するということになります。

 それから、戸籍の付票の場合、わかりやすいのは、例えば遺産相続なんかで相続人の場所を知る必要がある場合とか、あるいは不在地主なんかを調査する場合とか、そういった場合は、本籍地はわかるんですがその家族の現住所がわからないというような場合、あるいは連帯保証人なんかの場合もあるかと思いますが、それぞれのケース・バイ・ケースの使われ方をしていまして、いずれにしても、請求することが住民基本台帳法の公証制度になじむ、趣旨に沿った使われ方かどうかということを市町村の担当者は厳重にチェックしなければいけないということでございます。

逢坂委員 戸籍の付票の議論はきょうはこの程度でやめたいと思いますが、住民票の写し以上に、場合によっては相当重たい情報が入っているのが戸籍の付票である、しかも、その存在を国民が余り知らない、そういうものがあることすら実は知らない国民も相当多いだろうというふうに思いますので、この取り扱いというのはやはり慎重を期す部分もあるのだろうということを指摘して、この点についての質問は終わりたいと思います。

 次に、住基ネットについてお伺いをしたいんですけれども、住基ネットは平成十四年の夏にスタートしたわけですが、このときに実は私は、いわゆる個人情報の電子化というのは、これからの技術の進展などを思うとどうしても検討しなければならないことだろうというふうに思っておりました。しかも、そのときに、個人情報が大量に流出をするなどということがあってはいけない、流出には万全を期すべきだということも当然のように主張するわけであります。

 それとあわせて、私が当時、私の地元の町民から聞いていたのは、住基ネットの必要性はわかる、だけれども、いつ、だれが、どこで、どんな形で私の情報を見ているのか、使っているのかということを知らない、教えられないというのは非常に不安だし、何となく気分が悪いよね、それは確かに便利なものかもしれないけれども、だれが、いつ、どこで、どんな形で情報を使っているんだ、このことはやはりリアルタイムで知らせてもらいたいものだねという要望が町民の中から幾つかございました。当時の総務省にそのことを申し上げて、この考えについてはどう思いますかと話したところ、総務省の方では、それはもっともだというような話をしていただきまして、では、逐一それはネット上で公開しましょう、どこの機関が、どの情報を、どんな形で、例えば随時なのか常に、あるいは必要に応じて情報をもらってくるのか、あるいは別の形があるのか、それで情報を利用している、あるいは三カ月後、六カ月後にはこの機関がこんな形で今情報の利用を予定しているというようなものを公開するというようなことになって、現に十八年の九月からそういうことをやっていただいたわけであります。

 ところが、最近、総務省のホームページをのぞいてみますと、それがどうも、その後何か更新されているような雰囲気が見られない、あるいは、それらの情報が加わっているような姿が見えないんですけれども、まず、政府参考人、このあたり、いかがでしょうか。

藤井政府参考人 お答えします。

 まず、住基ネットの利用機関に関してホームページに掲載されている情報ということですが、その中で、御指摘のあった本人確認情報の提供先、利用状況の一覧というのが、これはe―Govのホームページで掲載することになっているんですが、十七年四月一日現在が最新のものとなっております。そういう意味ではちょっとおくれておるので、これは私ども努力したいと思っております。

 それから、指定情報処理機関における本人確認情報の提供状況に関する公告というのがございますが、これは、平成十八年八月二十九日現在で、財団法人地方自治センター理事長名で公告されているところでございます。

逢坂委員 いずれにしましても、国民にとって少しでも安心感を与えるようなことで情報の提供をお願いしたい。そのことによって、おかしいぞというチェックもきいてくるでしょうし、ひいてはそれは、最終的に国民全体のためになるというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 住民基本台帳に関しては余り菅大臣に聞くことはなかったのでありますけれども、菅大臣は御自身で戸籍の付票というものをごらんになったことはございますか。

菅国務大臣 自分では見たことはありません。

逢坂委員 そうなんですね。私も多くの方に聞いてみたんですけれども、戸籍の付票の存在を知らない方も多いですし、存在を知っていても、自分の付票を見たことがないという人が結構多いんですね。ところが、やはり、生まれてから今までの、どこに居住していたかの情報が全部載っているものですから、取り扱いは慎重であるべきかなというふうに思っておりますので、大臣、よろしくお願いいたします。

 さて、それで、きょう、次の質問をちょっと、住民票とは若干関係ないんですが、ふるさと納税について、先週こちらで西村智奈美委員が質問をいたしました。それから一週間たってみたら、随分何か、あのときの議論の深まり、厚みと一遍に変わって、突然、税制の喫緊の課題に上がってきたような気がするんですが、まず大臣にお伺いしたいんですけれども、ふるさと納税を提唱する目的、意味、これをお伺いしたいのと、現時点で大臣はこのふるさと納税に対してどんな課題があるというふうにお考えか、お聞かせください。

菅国務大臣 これは、私ども自民党の税制調査会でもここ数年来議論を続けられてきた問題だったんです。

 私は、今日、国民のライフスタイルというのは大きく変わったというふうに思っています。それに果たして今のこの税がこたえられるかどうか、私、非常に実は疑問に感じていました。

 副大臣になって、総務大臣になって、そういう中で多くの地方自治体の長の皆さんと懇談をするときに言われましたことが、地方で、高校まで、福祉だとか教育だとかそうしたものに大変大きな多額のお金がかかる、そして、いざ税を負担してもらえる年代になると都会に出ていってしまう、国民のそうした循環システムというんですか、そういうものに対して今の税そのものがこたえていないんじゃないのか、もっと柔軟性があっていいじゃないのか、実はそういうことも多くの皆さんから言われました。あるいはまた、都会に出てきている人からも、やはり自分を育ててくれたふるさとに何らかの形で恩返しをしたいというんですか、そういう意見も数多く寄せられていました。

 そういう中で、個人住民税というのは地域社会の会費ということで、行政サービスの経費を払うために、基本的に一月一日の居住地に納める、こういうことにされておりますけれども、果たしてこのことが今の時代にすべて正しいのかどうか、そういうことも含めてさまざまな議論があるということは、私は問題があることも承知しています。

 しかし、先ほど申し上げましたけれども、こうした時代のライフスタイルに合わせるために、さまざまな研究をする中で、こうした制度というのはあっていいんじゃないかな、そういうことで私は提案をして、研究会を立ち上げるとしたことであります。それが一挙に、こんなにマスコミで大きな問題になるとは私は正直思っておりませんでしたけれども、基本的にはそういう考え方から問題提起をし、私どもは研究会を開いて、暮れの税制で、この方針についてしっかりとした理論というものを構築して、ぜひ導入してもらいたい、そういうことで研究会を立ち上げる、こういうことをしたところであります。

逢坂委員 もう一点お伺いしたいんですけれども、このふるさと納税というのは、発案はそれでは菅総務大臣ということでよろしいのでしょうか。報道を見ると随分大きく、総理も、この件についてやったらいいというような発言をしているようにも報道ではされておりますけれども、総理の発案なんですか、菅大臣の発案なんですか。

菅国務大臣 私とか総理ということでなくて、これは数年来、自民党の中で議論をされてきていたところであります。毎年と言っていいぐらい実は税調で議論されてきておりました。しかし、私自身が総務省の副大臣、大臣になって、そのことを具体的に進めようと。当然総理とも相談をさせていただいています。

逢坂委員 このふるさと納税というのは、一見、ちょっと聞くと、非常によい、ああ、そういうものがあるといいねと、多くの方がそういうふうに言う性質のものだというふうに思うんですが、税制でありますとかあるいは日本の都市と地方の関係でありますとか、そういうことをいろいろ考えてみますと、やはり相当課題も多いのではないかというふうに私は思っております。

 まず一点目ですが、先ほど大臣、ライフスタイルの変化に今の税制がついていかなくなったという話をされましたが、それは、ライフスタイルの変化に今の税制がついていかないのであれば、税制そのものを、例えば交付税というものをどうしたらいいのかということをもっと真剣に議論しなければいけないし、あるいは、例えば介護保険の財源なんかを見ても、あれは保険者の範囲の中だけのお金でやっているわけではございませんよね、国の税金も入っている。それはまさに、田舎から都市へ出てきた人たちの税も介護保険の財源の中に入っているわけですから、要するに、所得、富を再配分していくという機能は、本来的にはやはり税制で担うべきものだろうというふうに私は考えるんですけれども、この点いかがかということが一つ。

 それから、恩返しをしたいという言葉が、大臣の言葉の中から出ました。田舎でおれは育って今都市へ出てきている、育てられた田舎、あそこに自分の人格の原点があるんだ、あの田舎に恩返しをしたいなと。でも、恩返しをしたい、したくないというものを税でやるべきものかということについては、私は極めて疑問であります。というのは、恩返しをしたいのであれば、それは寄附でありますとか、そういう自分のまさに恣意性、自主的な判断が大きく及ぶものによってやるべきでありまして、税制でやるのは税の根幹を揺るがすのではないかというふうに思っているんです。

 実は、税を納める人たちのことを納税権利者とは言いませんよね、納税義務者というふうに言うんです。義務なんですね。それで、しかも、これは本来、国民の皆さんに聞いたら、税は納めたくない、あるいは税は少しでも安い方がいいというふうに多くの方は多分おっしゃると思います。すなわち、税というのは最小限のサイズで行ってもらいたいというのが多くの国民の思いだと思うんです。なぜ最小限であるかというと、一般に使うお金と税というのは性質が違うからですね。

 大臣の財布の中には一万円札が入っているかもしれません、私の手元には千円札しかないんですが、千円札持ってコンビニに行って六百円のものを買ったら、六百円の物品と四百円のおつりが来る。これが日常のお金であります。ところが、税にはこの性格はないんですね。どんなに大臣が百万円納税しても、大臣のところへは役所から直接的に百万円分のサービスは来ないんです。私が、ちょっと余り縁起でもないことは言いたくないんですが、次の選挙で落選をして、無職、無収入になって全く生活に困るというふうになると、当然納税はしないわけです。納税はしないけれども私のところにサービスが来るわけでありますね、生活保護の形で来る可能性があるわけです。すなわち、一般の市場のお金というのは、みんなが合理的に納得できる、払ったお金と受ける対価が一致しているから合理性がありますねというふうに言えるわけです。

 ところが、税というのはそうではないわけですね。払ったお金と受けるサービスとの間に一致の関係がないわけですから、市場の目線で見ると税というのは極めて不公平なものなわけです。だからみんなは、税の必要性は理解しつつも、税で実現する価値というのは少ない方がよいのではないかというふうにベクトルは向くわけです。だからそこに、個人の判断で自由に納められるというような自主性というものをなるべくそぎ落として、小さくしていっているのが税制だというふうに思うんですね。

 そういう観点から考えますと、思いを実現したいというところに税制を使うのはいかがかという気がするんですが、二点について。今の税制がたえられるかということは、それは本来の税制の中で考えるべきだろうという質問と、恩返しの思いを実現したいということであるならば、税制ではない、例えば寄附などでやるべきではないかということについて、いかがでしょうか。

菅国務大臣 寄附の問題というのは、これは私は十分に考えられる問題だというふうに思っています。いずれにしろ、そうした問題も含めて、私どもは研究会を立ち上げるわけでありますから、それは素直に、さまざまな可能性について私は検討すべきだというふうに思っています。ただ、非常に課題があるからといって何もやらない、そうでなくて、私はやはり、課題があればあるほどさまざまな研究をするべきだというふうに実は思っております。

 そして、税全体の問題でありますけれども、これについてはさまざまな意見があるというふうに私は思っています。しかし、やはり少なくとも、地方で育ててもらう中では、それなりの地方からのお金がかかっているわけですね。これはそれぞれの地域によって違うのでしょうけれども、例えば十八歳まで二千万負担するという話もあります。それはだれが負担をするかとすれば、多くはそこの地域の人たちが負担をするわけです。しかし、いざ納税の段階になると、都会へ出てきている、納税は都会に行われている。果たしてこれでいいのかどうかというのは、税の根本からして、私は十分検討する余地があるだろうというふうに思っています。そして、税全体の中で、さまざまな問題について私は大いに議論していくべきだというふうに思います。

逢坂委員 今の大臣のお考えを聞いて、私はやはり、今の大臣のお考えがベースにあるのであれば、ふるさと納税はおやめいただくべきかなというふうに思っています。きょうは、このことを議論する本当の場ではないので余り深くは言いませんが、幾つか問題点だけをさらに指摘させていただきたいと思います。

 大臣はよく、地方財政の面で予見可能性という話をされます。このふるさと納税を入れることによって、地方財政における予見可能性は高まるのでしょうか。私は逆に予見可能性が低くなるというふうに思います。

 あるいはまた、このふるさと納税を入れることによって、あたかも都市からいわゆる田舎へお金が流れるように思われていますけれども、その流れの方向というのは一様なのでしょうか。場合によっては、小さな町の住民が、うちの町の町長は本当に不正ばっかりやってどうしようもない、おれはこんな町に税金を払いたくないといって、小さな町だったら納税者が千人とか千五百人、一気に、一固まりになって、うちの町へ納税するのをやめよう、じゃ、みんなで東京へやろうか、あのいい菅大臣のいる東京へ納税しようなんということにもなりかねないわけですよね。だから、ベクトルの方向が一様になる保証もこのままではないわけであります。それからもう一つ。東京の方が去年はニセコ町に納税した、でも来年は宮崎へ納付しようかなという人も出てくる可能性もあるわけです。

 だから、そういうことを考えると、大臣が常々主張している予見可能性という点で極めてこれは危ういというふうに思わざるを得ないのであります。

 住民税の収入が減るところは、最大限一〇%しか減らないでしょう、一割ですから。でも、収入がふえるところに関して言うと、たくさんの申し込みがあればそれは一〇%以上ふえるわけであります。それは喜ばしいことかもしれませんが、そのことが先々までも安定的に保証される確約はどうもこの制度ではなさそうに見えますので、そういった点も問題だというふうに思うんですね。

 だから、予見可能性は高まらないと私は思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

菅国務大臣 かねがね言っていますけれども、地方については予見可能性のある税制というものにきちっとすべきだということを私は言い続けています。そして、このことについては、基本的な形で、偏在度の低い地方消費税ということを私は主張し続けてきています。

 このふるさと納税の仕組みについて、予見可能性と相反するんじゃないかなということでありますけれども、少なくとも最初の一、二年は、どういう傾向になるかということはやはり実際行ってみなければわからないと思いますけれども、それを行うとそんなに変動するものじゃないだろうというふうに私は考えていますから、予見可能性という基本的な問題と別に、切り離して考えてもいいのかなというふうに私は思います。

逢坂委員 あと、幾つか、現時点で思い当たることを時間の範囲で指摘をしたいと思うんです。

 住民税の課税主体というのは全国にたくさんいるわけですね。自治体の数だけ住民税の課税をする主体がいるわけであります。そのことと、一〇%を切り離して自由に納税させるということになるその関係というのは、だれがどこでどう判断をするのか。課税の主体にしてみれば、その後の自分の一割というものは、どこに今度帰属をする税なのかということがだんだんわからなくなるのではないかなというふうに思うんですね。

 例えば、ふるさと納税で一割を選択して、それをどこかの町へ納めようというふうにした方が、一〇〇%納税をしてくれればいいけれども、場合によっては滞納ということもあり得るかもしれません。この場合、一体、滞納処分はだれがやるのでしょうか。もともと住んでいる町の方で滞納処分をしてくれるのでしょうか。あるいは、別なところへ移したいと言っていた移し先の方で滞納処分をせざるを得ないものなんでしょうか。この点も、課税の主体がだれかということがあいまいになることによってわけがわからなくなってくると思うんですね。

 あるいは、ふるさと納税、あたかも自分の町へたくさん来ると田舎の首長さんたちは思っているかもしれないけれども、交付税の基準財政収入額との関係はどうなるんでしょうか。留保財源率についてはどのように考えるのかということも含めて、もし真っ当な住民税だとするならば、それは当然基準財政収入額に加えざるを得ない。そうなってくれば、結局は、制度はつくってはみたけれども、現実に地方に残るお金というのはふえないということにもなりはしないかということですね。

 ほかにも幾つかいろいろ問題はあると思うのですけれども、大臣、この問題は、入り口としては非常に耳に聞こえのいい、わかりやすい議論だというふうに私は思います。だから、多くの方に、ふるさと納税、いかがですかと聞いたら、住民のうちの七割、八割、場合によってはもっと多くの方がいいよというふうに言いかねない問題だというふうには思うのですが、税制の根幹でありますとか今の財政の仕組みを考えたら、ぜひ、研究ではなくて、なぜこれがだめだと言われているのかをまずよく考えてからやらなければいけない。そのだめだと言われているものにチャレンジをしなければというような性質、たぐいのものではありません。

 私が冒頭に大臣のことを非常に高く評価いたしましたが、もしかしたら税制についてもう少し配慮が必要なんじゃないかなとか、あるいは、「頑張る地方応援プログラム」もそうなんですけれども、あれをやることによって、実は、交付税の本来の趣旨を逸脱しているのではないかなという声もやはり全国にあるわけです。

 あの「頑張る地方応援プログラム」も、ちょっと聞いた感じではよく思えるんですよ。だけれども、十分深く考えてみると、あれ、もしかしたら今の交付税の制度というものとはちょっと相入れないことかもしれないという議論もやはりあるわけで、そういうことも含めて、今の御提案のことは、私は、大臣のすばらしい力で、私は大臣を評価いたしますので、ぜひ撤回をしてもらえるとありがたいなというふうに思います。いかがでしょうか。

菅国務大臣 私、逢坂委員と議論をしていますと、何か立場が違ってくるのかなと時々思うときも実はあるわけであります。

 ただ、やはり、今の状況の中で、地方全体として閉塞感があるということ、これは事実だというふうに私は思っています。

 そういう中で、ある意味で最小限というんですかね、昭和二十五年につくったこの仕組みであります。まだまだこの当時につくった仕組みというのは数多くありますから、当時は想定されないような要因が多くなってきているのも事実でありますので、こういうことについて研究をするあるいは地方に活力を生み出すというんですかね、そういう中で、基本は基本としながらも、研究会を立ち上げて、こうした税制をぜひ私は実現をしたい。

 それは、そのときについては、当然、来年のこの国会で、ここで地方税法改正の場合には議論をするわけでありますから、それはきっちりと納得のいくようなことでなければならないということも当然のことであるというふうに思っています。ただ、先ほどから申し上げていますけれども、非常に問題があるということで、何もやらないような状況ではなくなってきている、このように私は思っております。

 当然、この課税と徴収の関係をどうするとかいろいろな問題が今指摘されたように出てくると思いますけれども、そうしたものについては真摯に検討して、しっかりとしたものを打ち出したいと思います。

逢坂委員 質疑時間が来ましたのでこれでやめますけれども、研究会をおつくりになることは、私はそれは押しとどめることはできないのでありますけれども、研究会のメンバーは、偏った意見を持った方だけを集めて御自身の考えを追認するような研究会にすることのないように。どこかにそういう研究会があるやに聞いておりますので、そうではなくて、この問題に対して極めて明確に反論を持っている方も含めてやらなければ民主的とは思えませんし、大臣の将来も危うくなるというふうに思いますので、ぜひ、多様な意見を持った方を含めてしっかりと議論をした上で慎重に、できれば私はやめていただきたいということをお願い申し上げて、終わりたいと思います。

 ありがとうございます。

佐藤委員長 次に、寺田学君。

寺田(学)委員 寺田学と申します。

 住基法について三十五分ほど質疑をさせていただきたいと思っております。

 大臣自身、ちょっとお顔の表情がお疲れになられている表情なので法案を淡々とやりたいんですが、今、逢坂委員がふるさと納税のことについて質疑されましたので、その範囲内で、私、通告していないんですけれども、少しだけ自分の疑問点を解決したいと思うんです。

 目的のことですけれども、恩返しであるとかライフスタイルの変化というお話がありました。事新聞を見ていますと、税収面でということだと思いますけれども、地域間格差を是正するためにという言葉もちらほら出ていますし、御党の幹事長もそういうような発言をされている場合も多々あります。私自身としては、地域間格差は確かにあって、それを是正しなきゃいけないと思うんですが、このようなやり方でするというのは余り本筋ではないなと思っております。

 そういう意味で、大臣自身はこのことを、「頑張る地方」に続く平仮名政策シリーズ第二弾みたいな感じですけれども、目的として地域間格差を是正するという意味でお考えになられているのかどうかということをちょっとお答えいただければと思うんですが、いかがですか。

菅国務大臣 私は、実はこう思いました。と申しますのは、私どもは、国税と地方税の関係についてだけ総務省とすれば今日まで議論してきた、このことについても私は当然のことだというふうに思っていますので、私の交付税、地方税の考え方についてはずっと申し上げました。

 しかし、都市、地方間の税の問題については、余りと言ってもいいほど私どもは考えてなかったわけでありますから、そういう中で、今、このふるさと納税という問題について、やはり都市と地方の問題、こういう中で私は考えてもいいのかなというふうに思っています。

 格差是正とかそういうところではなくて、都市と地方の、先ほど申し上げましたけれども、ライフスタイルに合わせた税制というのは考えていいだろう。結果としては、地域の活性化だとか、そうした格差の是正というんですかね、そういうものにも最終的にはつながってくるんではないかなというふうには思っています。

寺田(学)委員 地域の税収の差を埋めるためにやるという意味ではないと。結果的にそこを埋める形にはなるかもしれないけれども、そういう目的ではないということでよろしいですか。

菅国務大臣 そのとおりであります。

 まず全体としてのライフスタイルに合った形の税制というのはあるべきだ、そういう議論の中であります。結果的には、やはり地域の活性化だとかその地域間の格差の是正にも私はつながってくるだろうというふうに思っていますけれども、目的としては、まず、今、国全体を考えたときにライフスタイルに合った形の税にはなっていないんじゃないかなというのが私の思いであります。

寺田(学)委員 そのライフスタイル、そしてまた、逢坂委員の方から恩返しという言葉を引用されていましたけれども、逢坂委員も指摘されましたけれども、予見可能性ということは非常に大事だろうと。大臣も御答弁されていましたけれども、御答弁の中で、二、三年たてば落ちつくんじゃないかと御想像をされている御見識を御披露いただきましたけれども、とすれば、逢坂委員が懸念されていた、ことしは宮崎だ、ことしは横浜だ、何だ何だということではなくて、本当に平仮名のふるさとというところにのっとった納税先ということになるのかなと想像しています。

 そういう意味でいうと、ふるさとの定義というものをある程度固めて、いわば自分でどこかに選択して納税するということではなくて、本当にふるさとと定義された中で限定された場所に自動的に配分されていくような形を御想像されているのかどうか。ふるさとの定義をしっかり固められるのかどうか、今の段階での大臣の御見識をお伺いしたいと思います。

菅国務大臣 恩返ししたいという話は私は大げさだというふうに思いますけれども、ただ、そういう思いがあるところに納税できたらということでありまして、それは何も特定のものを限定するかどうかも含めて、あるいは、ふるさとだけでなくて、例えば自分が毎週末生活するところもあるでしょうし、あるいはさまざまな思いというのはあるでしょうから、そういうものを研究会でさまざまな問題について検討してもらう、そういうことです。

寺田(学)委員 今の御答弁を聞いていますと、一義的には大方の人がふるさとに納税するだろうという意味を含めてふるさと納税と言われているのかもしれませんけれども、大臣の中のお考えでは、自分が何かしらお世話になった、もっと飛躍して言うと、自分が納めたいところに一部納めていく。納めるための気持ちに関して言うと、別に生まれ育ったところではなくても、働いた場所であるとか、半分住んでいる場所であるとか、そういうような形で自分の意思で納税先を決めていくような制度という色合いが強い御答弁だと思いましたけれども、そういうふうにとらえてよろしいですか。

菅国務大臣 そうしたことも含めて研究会で検討しようということです。

寺田(学)委員 ふるさと納税に関しては以上にしたいと思いますけれども、いずれにせよ、非常に論点が多いし、ネーミングとしてはふるさと納税なんでしょうけれども、今の御答弁を聞いていますと、かなり広範なところに納税することができる制度を御想像されているんだなということはわかりましたので、以後、これをどういう機会に今国会で議論するのかは難しいですけれども、一般質疑の中ででもやらせていただければと思います。

 それでは本法の方に戻りますけれども、ありていに言うと、住民票の写しをもらいに行くことに関して、成り済まし等が多くなったことを踏まえて、本人確認を厳格化、法定化し、そして成り済ましを防いでいくような形で今回の法改正は行われるんですが、実際、私自身も秋田の市役所に行って住民票をとろうとするんですが、私の知名度が足りないせいか本人確認をされてしまって、寺田学と申しますというようなことがありまして、そこら辺もしっかりされているなと。今、自治体の方で法定化される前に自主的に運用されているところもあって。ただ、現場の方の話を聞くと、本人確認書類を持っていない方が多かったり、本人確認は非常に難しいという話も聞きました。

 本人であるかどうかを確認するということを今回初めて法定化するわけでしょうけれども、実際、政府としてどのようなことを本人確認として御想像されているのか、どういうような行為を現場の方でされることを想像されているのか、御答弁いただけたらと思います。

藤井政府参考人 本人確認の方法については、今回の改正案では、「住民基本台帳カードを提示する方法その他の総務省令で定める方法」ということで、総務省令にゆだねることとしていますが、その内容につきましては、今先生御指摘だったんですけれども、既に運用上、あるいはこちらも指導しているんですけれども、指導している方法で合理的なものを考えておりまして、例えば、今の法律の条文案にもありましたが住民基本台帳カード、それから運転免許証等、こういったのは本人の写真が貼付されているということで、顔が一番ある意味での認証の印にもなりますので、そういうものはまず入れたいと思っております。

 その他の、官公署が発行した免許証、許可証、こういったものを提示させるということ、そういったものをお持ちでない方もいらっしゃると思うんですが、そういった場合は、健康保険証など市町村長が適当と認める書類を提示、提出させるということを考えております。

 なかなか書面だけで実は難しいという面があるんですが、そういう場合には、市町村長が適当と認める書類を有していない場合などは、市町村長が必要と認めるとき、適宜口頭で質問するというような形で確認することとしたいとしているところでございます。

 それと、もう一つつけ加えますと、本人確認の条文は、実は請求者なり届け出者に対する提出義務という形でつくっているところでございます。ですから、先生御指摘のように、なかなか請求者、提出者が証明書を持ってこないというような場合は、むしろ、これは法律上の義務になっているんですよというようなことを言えるようにするということが一つの大きなねらいでもあるところでございます。

寺田(学)委員 法律で決まっているんですと言ったところで、そんな法律知らぬかったとか、これでいいじゃろうということで、いろいろ現場の方でもめることが相当予想されるんです。私自身、今まである意味無秩序に写しが請求され、それで交付されていたことは問題とは思いつつも、今回の法定化によって役所の方で本人確認が義務づけられるというか、やらなきゃいけないので、相当現場の仕事量というか事務量というのがふえると思うんですけれども、そういうものもどれぐらいふえるものだと御想像されていて、それに対して、何かしら今回の法改正に基づくそういう事務作業量の増大に関して対応すべきことが政府としてあるかないかとか、そういうことも含めて、いかがでしょうか。

藤井政府参考人 本人確認手続を導入することによる事務負担の増減の問題についてのお尋ねでございますが、これも率直に申し上げて、別にモデル的に調査したこともございませんのでそういうデータをもって御説明することはできないんですが、ただ、今先生も御指摘だったように、結構市町村の窓口で既にやっていることであるということと、あと、トラブルが生じていて、このトラブルが生じると非常にまた急激に事務負担が増大するんですが、そういうトラブルに伴う事務負担をむしろ低減することも考えられるということで、私どもとしては、今の段階ではそんなに大幅に急増するものというような認識はございません。

寺田(学)委員 事務作業量がそんなに劇的にふえるというわけではないということでしたが、これも、今までやられているところがある以上、今回法定化することによってどれぐらい本当に新たな自治体がそれに取り組まざるを得ないような環境になって、法定後どれぐらい事務量がふえるかというのは、本当に少し現場を見てみないとわからない部分はあると思います。

 もう一点、法定化したことによって問題になると思うんですが、今回、いわば成り済ましであるとか不正に住民票の写しを使う方からある意味個人の権利というのを守るためにこういう法定化をし、役所の方に本人確認を義務づけることになると思うんですけれども、実際、そういうような法定化された後に成り済ましの事件が起きた場合、今までは法定化されていないわけですけれども、これからは法定化されて、役所の方でしっかりと本人かどうかを確認しなさいよということを義務づけておきながら成り済ましが起きた場合、今までとは違った役所の責任というのは出てくると思うんですけれども、今回の法改正後、成り済まし事件が起きた場合において、役所側の、現場側の責任というものは増大するのかしないのか。どのようになるのか御答弁いただけたらと思いますが、いかがですか。

菅国務大臣 今回は、本人確認というものを厳格化することでありますから、住民票の写しの交付の請求者や転出、転入等を行う者、またこれらの代理人などは、市町村長に対し住基カードの提示などによって本人であることをまず明らかにしなきゃならない。

 ですから、市町村長にあっては、今回の住基法の規定にのっとって本人確認を行わずに、その結果として本来交付すべきでなかったものを交付した場合、こういう場合にはやはり責任を問われるということは私はあり得るというふうに思います。

寺田(学)委員 先ほど局長の方から、身分証明に必要なものというか身分証明書として今のところ例示できるものとして、住基カードやら運転免許証やら何やらということを提示されていて、全員が全員そういうのを持っているわけではないので、本当にそういうものをお持ちでない方の本人確認に関しては、いわゆる当該自治体の方で首長が認めるものを本人確認の材料として認めていくわけですが、まさしく現場として、全員が全員、住基カードは全く持っていない方が多いと思いますけれども、運転免許証をお持ちでない方もたくさんいらっしゃいますし、保険証に関しても、違うルートですけれども、偽造されるケースも多々あるというふうに聞いております。

 そういう意味で、役所側の責任というものもある程度はっきりしていない限り、役所側としても、必要以上に厳格化し、その結果住民のサービスが停滞するようなことがあってしまったり、責任を軽んずるようなことをもって成り済ましを抑制する効果を発揮できなかったりということになると思いますが、局長で結構ですけれども、今後この責任の問題に関して、何かしら役所の方から自治体側の方に働きかけたり一つのガイドラインを出したりということはやられるような御予定はないでしょうか。

藤井政府参考人 今大臣から申し上げましたが、住基法の規定にのっとって本人確認を行わず、その結果として交付すべきでないものを交付してしまったという場合には責任が生ずるということでございまして、その意味は、本人確認というのは実は手段的なものでございますが、制度論的に言いますと、むしろ本来交付すべき人にだけ交付するための手続として定めているわけでございまして、しかも、それも、先ほども申し上げましたが、請求者側の義務として設けているわけでございます。

 したがいまして、こういう確認手続そのものが所定の身分証明書で行われなかったからといっても、それだけでは責任という問題が行政側に生ずるということは余りないのじゃないかと思っております。むしろ、その結果としてと大臣の方から申し上げましたけれども、市町村側の義務として大事になるのは、正当な目的でないものに使われる、正当でない人に交付される、そういう事実が確認が不十分なために起こったという結果から逆に責任を問われることはあるということを申し上げていますので、多分、そういう違法な交付が行われた場合は、まさにその違法性を判断する根拠として所定の手続がきちっととられていたかどうかということが大きな論点になるんじゃないかと思いますけれども、そのときの一つの法律で定めているルールというふうに御認識いただければと思います。もちろん、そういう意味での指導というようなのは、改正法を成立させていただいたら十分やりたいと思っております。

寺田(学)委員 本人確認ということを横軸にいろいろ質問させていただきたいのですが、郵送請求の際、今回、本人確認というものを義務づけない形で法案改正がなされますけれども、こういう場合においても、どのようにして本人を正当な目的で交付される者だというふうに判断を役所側はするべきか、局長で結構ですので、御答弁いただければと思います。

藤井政府参考人 御指摘のとおり、現在も、郵送による転出届とか住民票の写しの交付、これは請求者の便宜のために認められているところでございます。この本人確認というのは、どうしても郵送を介してやらなければならないということで、難しいところはあるわけですが、いずれにしても、先ほど挙げたようなものの写しとかそういったものをまず出してもらうとか、それでなお判断がつかないというような場合は、適宜、必要と認める場合においてということになりますが、電話等によって確認をするとか、あるいは、郵送によって転出届を行った後、義務者である本人に対して届け出を受理した旨の通知等によって確認するとか、そういうようないろいろな工夫、そういったもので正確性を確保していきたいと思っております。

寺田(学)委員 郵送の件もそうですけれども、正当な理由で交付するという一つのあり方とユーザーの利便性というところがやや対立する部分がたくさんあると思うんです。

 私自身住民票を必要とする場合も多々ありまして、ただ、自分でとりに行く時間がなかったりということで、よく代理の人間に行ってもらってとる場合があるんですが、その場合においても委任状等を義務づける、義務づけという言葉だったかどうかちょっと定かではありませんが、代理人に委任状を持たせることを要求する法内容になっていると思います。この委任自体に関しても、すごくうがった見方をすると、幾らでも偽造等はできるのかなというふうに思っております。そもそも本当に成り済ましを徹底的に排除するということが、やろうと思えばやろうと思うほど市民の方々の利便性というものを阻害していく形にならざるを得ないんですが、代理人を使って住民票の写しを請求する場合のこの委任状ですけれども、これ自体も成り済ましを防ぐ手段にはなるのかなと思いつつも、実質的には幾らでも抜け道があるような気がするんです。

 この代理人による請求に関して成り済まし等を防ぐ手段というのは政府としてどのようにお考えになられているのでしょうか。

藤井政府参考人 代理人による請求の場合は、これはもう既に先生からの御指摘があったんですけれども、やはり委任状をまず添付させる、それ以外に本人確認のためのいろいろな身分証明書等なんかを添付させるんですが、そういうことを考えているところでございます。

 委任状の真偽について疑念がある場合は、これも質問等ができるようにしているということでございます。

 あわせて、不正な手段による取得については三十万円という、今度は過料じゃなくて罰金を設けるということも、若干の抑制効果はあるんじゃないかと思っております。

 ただ、これも、逢坂先生にも申し上げましたし、今委員からも御指摘ありましたけれども、不正手段の根絶というのはそんな簡単な話ではないと思っております。巨額な不正が絡めばやはりそれだけ偽造技術なんかも高度なもの、手間暇もかけるということになって、なかなか見抜きにくくなるというのは事実であります。しかし、今までこういう委任状すらとることが法令上認められていなかったわけですけれども、これを明確にしたということは、普通の偽造しようという方についてはもう確実に抑制力になると思いますし、それ以上に、市町村長は、担当窓口で疑念があればさらに突っ込んで、まさに相当と認めるに足りるような請求であるかどうかということをチェックできるということになっているわけですから、そういうことで、少なくとも市町村職員は努力すれば可能になるという仕組みになったということでございます。

寺田(学)委員 いずれにせよ、今回の法改正は非常に前向き、かつ、現場自治体の方々にしてみると、法定化していただくことによって、窓口のときに本人確認をお願いする際、理由として市民の方に非常にお話ししやすくなるということはあると思いますが、一番いいのは、最初から本人確認が必要なんだということを一般のユーザーの方が理解をしてスムーズにそういう受け渡し業務ができることだと思いますので、広報という意味でも非常に大事だと思っていますので、その点も自治体と協力してやっていただきたいと思っております。

 続いて、住基ネットと住基カードのことについて、残りの時間質問したいと思うんです。

 昨年か一昨年ぐらい、私も総務委員会で質問させていただいたんですが、住基カードの方の普及率が思ったより進んでいないということは事実として挙げられると思いますが、今のところの普及状況はどのようになっているか、いかがでしょうか。

藤井政府参考人 住民基本台帳カードは、平成十五年八月から交付されたところでございますが、平成十九年三月末までで約百四十一万枚ということで、まだまだ不十分とはいうものの着実に増加している状況にあるというふうに判断しております。

寺田(学)委員 当然ながら聞きたいなと思っていたのですが、菅大臣、住基カードをお持ちでしょうか。

菅国務大臣 持っています。

寺田(学)委員 持っていないわけがないとは思いますけれども、いつぐらいに取得されましたか。

菅国務大臣 大臣に就任をしてすぐつくりました。

寺田(学)委員 それだけでねちねちとやりたいところですけれども、副大臣もされていたわけですから、副大臣時代はお持ちでなかったということは、何かしら、この住基カードの利便性に対して不満を持たれていたのか、住基ネットの安全性に関して疑問を持たれていたのか、いろいろな理由があると思います。

 副大臣時代になぜ持たれていなかったのかと聞いてもあれですので、では、なぜお持ちになろうと御決意されたのか、いかがでしょうか。

菅国務大臣 私、所管の責任者になりましたので、これは当然そうすべきだと思いまして、その手続をしました。

寺田(学)委員 百四十一万枚ということで、着実にふやしているとはいいつつも、恐らく当初予定されていた発行枚数よりはがくんと実績は減っているものであるとは思っています。

 一つ一つ理由を確かめた上でその対策をしなければならないんではないでしょうかということを一昨年ぐらいにやらせていただいたのですが、大臣、お持ちになって、便利だなというふうにお感じになられましたか。

菅国務大臣 大臣に就任してまだたしか使っていないというふうに思っています。

寺田(学)委員 安全性を確保することが一つでしょうし、カードを持つという動機に関してですけれども、それとともに利便性、便利だということがあるからそれを求めてカードを受けるということ、二面あると思います。

 便利であるかどうかということと安全面、二点で質問したいんですが、カード発行が自治体ごとであることが住基カードを持つ持たないに直接影響しているかどうかは難しいでしょうけれども、ある自治体でカードを持っていて、その自治体外でも住民票を引き出せるという便利はありますけれども、引っ越した際にもう一度申請してカードをとらなきゃいけないということは不便じゃないかと指摘される方もおりました。

 そういう意味において改善点はたくさんあるんですが、カードの発行自体に関して一元的に管理する等々のことも考えられているのかどうか、局長で結構ですので、御答弁いただければと思います。

藤井政府参考人 この住基カードというのは、住民基本台帳法から発生してきたカードでございます。一つは、カードを発行した自治体が住民基本台帳を管理している市町村であるということとか、あるいはカードの利用、用途を考えてみますと、いろいろ多目的な用途があるんですが、身分証明書なんかのかわりに使う場合、普通のカードであれば氏名、それから年齢、性別とか、そういうものですけれども、このカードは現住所まで明確にされている。やはりそういういい面もあると思っております。そういうことを考えますと、やはり市町村ごとに管理する仕組みは避けられないのかな。

 御指摘のとおり、引っ越すごとに一々再交付を受けるのは利便性を欠くんじゃないかというような面はあろうかと思いますけれども、本カードの性格上、各市町村ごとという仕組みはやむを得ないものというふうに御理解いただきたいと思います。

寺田(学)委員 住基ネットが稼働して約五年ぐらいになるんでしょうか、一つの区切りの時期、タイミングに来ていると思います。

 きのう委員会で視察に訪れた杉並区の方でも、杉並区としていろいろ裁判で争われている部分はありつつも、まずこの仕組み自体を、五年たったんでしょうから総括して、改めて考え直す部分を含めて検討していただきたいという要望もありました。

 そこを踏まえて、大臣自身にお伺いをしたいんですが、この住基ネットの仕組み、もちろん、ユーザーにしてみれば住基カードということも含めて聞きますけれども、これ自体、五年たちましたけれども、政府として総括して議論されるおつもりはあるのか、そしてまた、今考えられている中での問題点等、お話しいただければと思います。

菅国務大臣 住基ネットにつきましては、セキュリティーに万全を期して運用されてきておりまして、平成十四年八月の稼働以来、情報漏えいなどの特段の事故もなく、安定的に運用されているだろうというふうに思っております。

 住基ネットから本人確認情報を提供したことによって、各種年金事務等においては、現況届などが省略されることによって、受給権者は現況届に記入し郵送する等の負担が不要になった、あるいは、年金支給機関は受給権者に対し現況届を郵送するための経費が不要になったとか、年金の過払いを防止することができた、こういうことがあります。

 また、各種行政手続については、住民票の写しの添付が省略されることによって、住民は、住民票の写しの交付手数料の負担だとか、あるいは住民票の写しの交付を受けるために市町村窓口まで一々行かなくてよくなっただとか、また、市町村は、写しの交付枚数が減ることによって職員の仕事量も減っただとか、こういうメリットも現実的にあるというふうに私は思っております。

 そういう意味で、住基ネットというのは、住民の利便性の向上、また行政事務の合理化、こういうものに大きな役割を果たしてきているというふうに思っております。

 これらの住基ネットの効果でありますけれども、住基カードの普及にかかわらず実現をするものでありますけれども、住基カードについては、民間及び行政機関の窓口、オンライン手続など、さまざまな場面において本人確認を求められる場合がふえていることなどから、その重要性は増してきているというふうに私は思います。

 そして、住基カードは、住民の希望に応じて交付するものでありますけれども、住民の利便性の向上のためにさらなる普及を促進してまいりたいと考えています。

寺田(学)委員 杉並区の方でいろいろ御意見を伺ったときには、ある種利便性を享受したいという住民と、絶対的な安全性に関して信用できない、安全性に対して不安視する、自分のプライバシーを守りたいという二つの保護法益の対立があるだろうと。一つの自治体が入る入らないというか、それを一斉に入れてしまうということに対してやはり区長としても非常に悩ましく感じるところがあるので、いわゆる横浜方式と言われる、住民が参加するしないを決められるような仕組みを採用したいということで、稼働当初からそういうような形をとられていると伺いました。

 大臣自身、横浜自体は今すべて接続したということになっていますけれども、この横浜方式、その理念というか考え方に関して、是非とお伺いしていいのかわかりませんけれども、どのようにお考えになられているのか、いかがでしょう。

菅国務大臣 私は、当時は、やはり横浜もすぐ参加をすべきだというふうに思いました。

 しかし、横浜方式というのは、ある意味では、十五年八月の本格稼働までには横浜は全員参加する、そういう前提で、短期間の経過的な措置であったということ、あるいは、こうした取り扱いは、住基ネットの導入される時期における、ある意味では経過的というんですか、過渡的なものであったというふうに思っています。そして、横浜市が問題としておりました個人情報保護法が国会で成立をしましたので、既に横浜も安定的に稼働しているということであります。

 また、杉並は、今寺田委員から選択制のお話がありましたけれども、個人情報保護法が既に成立をし、施行されておりますので、当時と状況は違ってきているというふうに私は思いますので、住基ネットに一部の住民の本人確認情報のみを送信することは認められない、そういう意味で、ぜひ参加をしてほしいなというふうに思います。

寺田(学)委員 直接的に横浜方式の是非を伺うことはできなかったんですが、いずれにせよ、百四十一万人しか参加されておらず、大臣自身も大臣になられてからということもありまして、まだまだ普及状態というものは芳しいものではないと思いますし、やはりそこには、安全性という意味では、実害が、クリティカルな被害というのは出ていませんけれども、まだまだ安心できる段階にはないと国民の大半の方が思われているのかもしれませんし、利便性としてもまだまだ、便利だからとろうというぐらいまでのモチベーションがわかないような状態でもあると思いますので、そこら辺、五年もたちましたので、もう一回全体的な枠組みを総ざらいした上で、考え直す部分は改めて、進化させる部分は進化させていただきたいと思います。

 以上で質問を終わります。

佐藤委員長 次に、西村智奈美君。

西村(智)委員 民主党の西村智奈美です。

 住民基本台帳法の一部改正、昨年の改正に引き続いて、二年連続ということなんですけれども、ことしは戸籍法の改正とあわせて行うということで、私といたしましては、法改正そのものは歓迎すべき方向で行われているのではないかというふうに考えております。

 ただ、実際に現場での運用ということになりますと、今ほど寺田委員の方からも質問がありましたけれども、かなり現場の運用にばらつきがあるのではないかということも指摘をされておりますし、既に、本人等請求、本人あるいは同居する家族などによる請求については、請求事由を明記するようにというふうに求めている自治体もあれば、そうでないという自治体もあったりして、その自治体の、主には首長さんの考え方なんだろうと思いますけれども、それによってかなり運用面でのばらつきが出てくるのではないかというふうに私も考えております。

 そこで、今回の法改正を受けまして一体どのくらいの業務量が変動を生じるのかということについて伺いたいというふうに考えておるんですけれども、まず冒頭伺いたいのは、これまで、住民票の写し等の交付件数、また戸籍の付票、そして住民異動届け出などについては、年間でどのくらいの請求件数があったのでしょうか。

藤井政府参考人 お答えいたします。

 平成十七年度の件数ということで御承知おきいただきたいと思います。

 住民票の写しの交付件数でございますが、これは七千五百二万九千九百二十一件、戸籍の付票の写しの交付件数でございますが、四百二十一万二千四十七件、住民異動届け出の件数でございますが、そのうち転入届については四百二十五万六千六百三十一件、転出届は四百十二万五千九百六十九件、転居届が二百五十九万二千七百二件、世帯変更届が九十五万三千五百三十二件。

 写しの交付が大体七千五百万、それ以外の写しの交付とか異動は四百万オーダーというふうに御理解いただければと思います。

西村(智)委員 そうしますと、足し算すると、ラフな足し算ですけれども、ざっと年間八千万件以上の件数があるということであります。

 多くの市町村の窓口は、言ってみれば市民課というところが交付窓口になるんだと思うんですけれども、今回戸籍法の改正が行われて、例えば戸籍謄抄本の交付などについても同じ窓口で審査を行うんだというふうに承知をしておりますけれども、かなり窓口の負担というのがこれでふえるのではないかというふうに懸念をされております。

 業務量の増減について総務省はどのような見通しでおられるのか、その点について伺いたいと思います。

藤井政府参考人 今回の改正については、私どもとしては、やはり市町村を擁護する立場でございますので、市町村の事務負担というものを非常に懸念していて、いろいろ市町村の実情等もお聞きしながら制度改正を検討したところでございます。

 ただ、今回の改正というのは、先ほども話がありましたけれども、市町村側から、手続整備についてやはりきちっとしてもらいたい、そうすることによって手続が円滑に動くということで、これが一つの大きな要素でございまして、そのために、法律上明確な根拠規定を置いたというところでございます。したがいまして、このように法律で手続あるいは根拠規定が明確になるということは、市町村窓口の写しの交付とか届け出の事務処理についての円滑性がむしろ推進されるという面も大きいと思っております。

 そういったことを総合的に勘案しますと、私どもとしては、先ほども言いましたが、別にテスト調査をやってみたわけではありませんが、今回の改正というのが大幅な事務増につながるというふうには考えておりません。

西村(智)委員 市町村の方から法的な根拠を明確にしてほしいというお話があった、そういう中身の御答弁だったかと思うんです。

 確かに、そのこと自体は私も何となくイメージはできるんです。例えば本人確認などで、あるいは請求事由などの審査のときに、窓口で、何でこんなことをやる必要があるんだと窓口に来られた方が言われたときに、担当者は、いやこれはまあそのと言葉を濁してしまうと、恐らくそこで審査に余計なといいますか、余分な時間がかかってしまうということになる。それが、例えば住民基本台帳法で今回こういう改正になりましたということであれば、理由が明確に述べられるということはあるのだろうと思うんです。

 ただ、窓口で文句といいますか、ごねる方というのは、住民基本台帳法が改正になりましたと言っても、何でそんな改正になったんだとか、ごねる人は何か理由をつけてやはりごねることになるんだと思うんですね。一体それで業務量の微増程度に本当にとどまるのか、ちょっとこの辺は心配をするところであります。

 また、実際にどこまで審査をするのかということについていえば、市町村の窓口での運用によるところがやはり大きくなるのではないかというふうに考えておりますけれども、もう一度、業務量の考え方、見通しについて伺いたいと思います。

藤井政府参考人 私ども網羅的に承知しているわけではないんですが、いわゆるクレーマーと言われるような方々が非常に限定的ながらいらっしゃって、それが結構市町村なり都道府県の窓口業務で負担になっているという話は、確かに私どもも聞いたことはございます。

 さはさりながら、これは繰り返しになって恐縮でございますが、先ほども申し上げましたが、この事務量というのは、大体手続というのは、物理的な受け渡し、それから形式審査、実質審査で決定、判断、こういう流れになるんですが、一番重要で、また時間がかかるのはやはり実質審査のところでございます。そういった実質審査の面で、まさに今回の法改正というのは、どちらかというと根拠とか基準を明確にするというものでございます。

 私どもとしては、実際結果を見てみなきゃわからないといえばそれまでですが、私どもの期待としては、こういう改正によって、実質審査、こういったものが合理化、効率化されるということは十分期待していいというふうに考えているということでございます。

西村(智)委員 同じように効果は期待したいというふうに思いますけれども、運用後、これはしばらく状況を見守りつつ、また必要があれば法改正につなげていく必要があるというふうに考えております。

 引き続きまして、先ほど寺田委員への答弁の中で、大臣の方から利便性の確保というお話がありました。これは住基カードのことについてでありましたけれども、私も、例えば今回の住民基本台帳法だけではなくて、個人情報に関するさまざまな法律というものを考えたり見たりするときに、結局、保護法益というのは、いろいろなサービスを受けたり提供したりする側の利便性、それから、言ってみれば情報がきちんと守られるという安全性、この二つがあるんだろうというふうに考えています。

 例えば、いろいろな法律をつくったり、そしてまた運用したりする側というのは、どちらかというと情報を使っていろいろなことをやりたいサイドだと思うんですね。情報を持っていて、情報の持ち主として、この情報がどうやって守られていくのか、そういう安全性により重きを置いたサイドではないということからすると、国会での審議というのは、むしろ、より安全性を求めるサイドに立っての議論が必要なのではないかというふうに考えています。

 今回の住民基本台帳法の改正は、請求を行ったり申し出を行ったりしたときに、より厳格な審査を行うことによって個人情報を保護しましょう、住民票の写し、これを保護しましょうという考え方。これ自体は非常に私も重要だというふうに思っておりますし、それについては異論はないんですけれども、やはり、そのほかの仕組みによって守っていく、そういう検討も必要なのではないかというふうに考えております。

 大臣、これは通告していないで大変恐縮なんですけれども、個人情報を保護するという観点から、一体どういう手だてで例えば行政などが保有する個人情報を保護していくことができるというふうにお考えでしょうか。今回の住民基本台帳法の改正に照らしてもお答えいただければと思います。

菅国務大臣 それは、個人情報を保護するということのために組織内でそうした仕組みというのをつくっていくことということも大事なことだというふうに思います。

西村(智)委員 請求や申し出のときに厳格な審査を行う、それは大変結構なことだと思います。

 ただ、情報がその先に出ていったときに、きちんとそれが請求事由、つまり目的のとおりに正しく使われているかどうか、そして、横流し、この間も本当にいろいろな事件もありました、戸籍データの漏えいですとか住基データの漏えい事件などもありましたけれども、そのようにデータが不正に利用されていないかどうかという事後のチェックをしっかりと行うことが必要なのではないかというふうに私は考えております。

 そこで質問なんですけれども、昨年の住民基本台帳法の一部改正、閲覧制度の件につきましては、市町村長が住民基本台帳の一部の写しの閲覧に関して申し出者に対して必要な報告をさせることができる、こういう規定が設けられております。ですけれども、今回、住民票の写しなどの交付制度の改正においては、このように申し出者に対して市町村長が必要な報告をさせることができるという規定はありません。そういう措置は講じられておりません。

 例えば請求や申し出どおりの使用がなされているかどうか、やはりこれは確認する機会をどこかで設ける必要があるのではないかというふうに考えているんです。今回そういった措置はないということなんですけれども、今回、住民票の写しの交付制度の見直しに当たって昨年と同じような措置を講じなかった理由について局長に伺いたいと思います。

    〔委員長退席、岡本(芳)委員長代理着席〕

藤井政府参考人 お答えします。

 昨年の住民票の写しの制度に関する改正については、もともと写しの閲覧というものの利用者というのは主としてダイレクトメール業者のようなものが多いわけでございまして、大量の個人データを閲覧によって収集して、それで他の人に転々流通させる、そういうことに対する非常な危惧みたいなものがそもそも制度改正の背景にはあったということで、今御指摘のような仕組みというのが設けられているということでございます。

 今回、写しの交付については、これも実態が重要なのでございますが、写しの交付制度が利用される場合というのは、むしろ背景に特定の債権債務関係があって、例えば銀行からお金を借りている人、債務のある人が住所を届け出ずにどこかへ行っちゃった、そういうような使われ方が多いわけでございまして、写しの交付を得たからといって、だれかにその情報を渡すということは、閲覧とは違ってそんなに想定する必要はない。仮にあるとすれば、多分、銀行なんかの場合は、顧客台帳みたいなものが別途ありまして、顧客台帳に転記するというような形で、むしろ顧客台帳の保護みたいなものが重要になるんだろうと思いますが、これは御承知のようにむしろ個人情報保護法のところの規律になるということで、今回の改正では、主として、写しの交付、その直接の当人、それについての規律なりを決めるということで対応をしているというところでございます。

西村(智)委員 次に、情報の横流し、流出をどうやって防止するかということについて伺いたいと思います。

 今回は、行政罰に加えて新たに刑罰が適用されることになった。非常に重たい措置だと思うんですけれども、実際に、これは直接住民票の写しなどの交付を受けた者に限られておりまして、そこから先、仮にその情報が外部に流出した場合にはこれは及ばないということになるんだろうと思います。

 しかし、この間、戸籍それから住基漏えい事件なども起きておりますし、また、それを売買するなどということも起こっておりますので、こういった被害を防止するという点から、住民票の写しなどの交付を受けた者から先の情報流出の防止策を講じる必要があったのではないかというふうに考えておりますけれども、これは一体どこで、どういう歯どめをかけることができるんでしょうか。

藤井政府参考人 罰則の関係ですが、今回の改正案では第四十七条の第二項で定めようとしているところでございますが、その構成要件というのは、偽りその他不正の手段により写しの交付を受けた者ということになっていまして、まさにどの点をこの罰則で処罰しようとしているかというと、不正な手段によって交付を受けた、そういう行為でございます。

 なぜそういうものだけを限定するのかというと、まさに住基法の裏には信頼性もありますし、住基法という住民の貴重な個人情報、そういったものを保護する、そういう保護法益はあると思っていますが、いずれにしても、その構成要件としては、やはり不正な手段によって入手したということに着目しているということです。

 その不正な手段で入手した人からさらに受けた人はどうかということになるんですが、これは、住基法の守備範囲というよりはむしろ一般の個人情報保護法の守備範囲ということで、現行の制度では規律されているということで、現行の個人情報保護法の規律対象というふうに整理しているところでございます。

西村(智)委員 個人情報保護法の世界できっちりと規律がされているということで理解をいたしたいと思います。

 次に、交付請求書の本人開示、そして交付の事実の本人通知についてなんですけれども、罰則の強化も私は一定程度評価をいたしたいと思いますが、罰則に加えて、それを未然に防止するという点から、やはり情報の流出などの監視を強化するということがむしろ重要なのではないかというふうに考えております。つまり、自分の住民票の写しなどが請求された事実を本人が知らされるということなどについてなんですけれども、住民票の写しの交付制度等のあり方に関する検討会、ここでもこの点について議論がなされたようであります。

 報告書の中では、例えば「交付請求書の開示については、自らの情報がどのように取り扱われたかを知り得るという観点から重要な論点である。」というふうに言われておるんですけれども、交付請求書の開示制度を将来の課題と認識して、動向を注視していくべきであるというような書き方にとどまっておりますし、また、本人通知につきましても、さまざまな意見が存在するということでまとめがされているところなんです。私は、この開示制度、本人開示そして本人通知、これらが不正に住民票の写しなどが取得、利用されるといった事件を防止することに本当に貢献するのではないかというふうに考えておりますけれども、これが今回の住民基本台帳法の改正の中で位置づけられなかった理由について伺いたいと思います。

藤井政府参考人 お答えします。

 これは先生が質問の中でおっしゃったとおりでございますが、一つは、今回の交付制度の見直しをするに際して、私ども研究会を設けて、有識者それからヒアリングなんかでいろいろな御意見をちょうだいしていたんですが、交付請求文書を開示する仕組みをつくるとか、あるいは、もう一歩踏み込んで、本人に通知する制度を設けるということについては、いろいろな意見があるということで、今の段階ではまとまらないということで、今後の検討課題になったということでございます。

 むしろわかりやすく御説明するという趣旨からは、では、どういう意見が実際あるのかということ、意見の内容を御説明させていただきますならば、制度を認めるべきという積極的な方、これは、今先生がおっしゃったように、住民票の写しをとられた本人にはそのことを知らせることで不当な目的によって請求するということを抑制する効果があるんじゃないかとか、あるいは、むしろ極めて理念的な物の考え方なんですけれども、第三者に住民票の写しを交付するのであるから、写しをとられた本人にもそのことを知らせないのはバランスを失するんじゃないかというような御意見。

 他方、制度を認めるべきではないという意見は、交付請求した人、実はこれも個人情報でございます。交付請求書には、請求した人と、いわば請求対象になった住基法の個人情報の両方の個人情報が載っかっているわけでございます。確かに住基法上の個人情報というものも保護に値するんですけれども、請求者である個人情報というものもやはり保護に値するんではないか、その辺のバランスをどうとるんだというような考え方でございます。それから、写しを交付するのは正当な理由がある場合に限定するんだから、不当な理由でいくということだったら問題ですけれども、正当な理由でいくんだから一々知らせなくても、見せなくてもいいんじゃないかと。

 長くなりますから省略させていただきますけれども、いろいろそういう意見があって、現段階ではちょっと結論を得るのは無理だということで先送りしているところでございます。

西村(智)委員 問題点については理解いたしました。

 ただ、制度として導入すべきだという御意見と、導入は慎重にすべきだという御意見と両論あったわけなんですけれども、やはり、両論ある以上は、引き続きこの導入について検討を行っていくということにすべきではないか、これで問題の整理を図らずに、やはり検討を続けて行っていくべきではないかと考えていますけれども、この点については、大臣、お願いします。

菅国務大臣 交付請求書の本人開示制度だとかあるいは本人通知制度について、今局長が言いましたようにさまざまな意見が存在しました。多くの課題があることから今回は盛り込まなかったところであります。

 交付請求書の本人開示制度については、一つの課題であると私どもは認識をいたしておりまして、今後とも、将来の課題として、個人情報保護及び情報公開に関する法制や戸籍法等の状況、また第三者に交付された住民票の写し等の利用状況などについて、その動向というものをこれから注意していきたいというふうに思っています。

 また、本人通知制度についてでありますけれども、交付請求書の開示制度をさらに一歩進めたものであって、交付請求書の開示制度以上に多くの課題があることから、その対応については困難なものである、このように考えています。

西村(智)委員 悪意のある請求というのはやはり法の網目をかいくぐって次々と編み出されてくる。これは住民基本台帳の昨年の閲覧制度のときにもそう感じたんですけれども、悪意のある請求をきちんと抑止できるような、そういう観点からぜひ引き続き検討をお願いできればというふうに考えております。

 最後の点は、先ほど申し上げました検討会報告の中でも触れられておりますドメスティック・バイオレンスやストーカー行為の加害者による請求、これについて何点か伺いたいと思います。

 この報告書の中で、ドメスティック・バイオレンスやストーカー行為の加害者による請求は、請求事由を明らかにする必要があって、かつ交付を拒否することとしている、今もそういうふうになっているし、今後もそういうふうに取り扱っていくことが必要だという検討会の報告なわけなんですけれども、どういう状況下でドメスティック・バイオレンスやストーカー行為の加害者であると認識することができるのでしょうか。

藤井政府参考人 写しの交付の場合ですので、閲覧とはちょっと違う実態があるのかなと思います。写しの交付の場合は、大体、世帯を同一にしていた夫婦が別居をしまして、別居先をいわば加害者である人にないしょにして、ただし、いろいろ住民サービスを受ける必要があるものですから、やはり住民票の転居届はしなければいけないようなケースということを想定していただければと思うんですが、この場合には、先ほど先生御指摘のとおり、市町村の職員がみずからそういう状況を把握するというのはなかなか困難なものですから、これは、今までも通知でもって、やはりできるだけ被害者の方に申し出てほしいと。申し出ていただくとそういう状況がわかるものですから。

 そういう申し出があった場合は、従来も不当な理由での利用が明白ということで断れたんですが、今回はもうちょっと緩い判断基準ですね。積極的に、そういう加害者が正当な目的で使うんですよとかにする、あるいはいろいろな周囲の状況から見て何かあやしいなというような場合、むしろ市町村の職員が相当と認めるというようなぐらいまでは判断できる。そういうような基準になっておりますので、基本的にはそんなに大きく変わるというものでもないものの、制度的には拒否できるそういう仕組みが整備されたというふうに考えているところでございます。

西村(智)委員 ことし、DV防止法の改正の年度に当たっておりまして、今、そちらの方も議論が進んでいるところなんですけれども、被害者の方に申し出てほしいと、先ほど局長の御答弁の中にありました。

 被害者の方が申し出て初めて、支援措置申出書で、例えば私の住民基本台帳の閲覧ができないように支援措置を求めるもの、住民票の写し等の交付についてその支援措置を求めるもの、チェックをするようになっております。これは被害者本人からの申し出ということになりますと、こちらはDV防止法の世界になってくるのかもしれないんですけれども、きちんとそれが遺漏なく行われているのかどうかというのは非常に気になるところなんであります。

 これは、年間大体何件くらいこの支援制度の申し出というものがありますでしょうか。そしてまた、すべて被害者の方から遺漏なく申し出が今までなされているというふうに言ってよろしいのかどうか。そのあたりを伺いたいんですが、いかがでしょうか。

藤井政府参考人 恐縮ですけれども、数字的には把握しておりません。事例的には聞くことはあるということです。

 ただ、今先生から御指摘ありましたけれども、むしろDV法とかストーカー防止法の方で、そういう関係行政機関で情報共有がなされるというふうな形にでもなればそれはまたそれで、何も本人からの申し出だけじゃなくても正確な情報の把握はできるというようなことで、今のはちょっと思いつき的な考え方ですけれども、連携の可能性はあるんじゃないかなと思ってはおります。

西村(智)委員 そこのところは、関係機関の連携ということになりますので、非常にしっかりやっていただきたいなというふうに考えております。

 局長がお話しになられたように、例えば被害者の方が加害者のもとを離れて家を出たとしても、住民票が移っていないとさまざまな行政サービスを受けることができないわけなんです。ただ、そこのところが悪用されて、加害者の方が被害者の居場所、居住地を知るというようなことになってしまって、またそこで新たな被害が起こる、そういう可能性、危険性もありますので、そういったことが生じないように、ぜひ関係機関の連携がきちんととれるように、そこは総務省の方からも一定の働きかけをしていただきたいと強く願うところであります。

 最後に一点伺いたいんです。

 冒頭申し上げたとおり、私は、今回の法改正は基本的には望ましいというふうに考えておりますけれども、やはり現場の市町村の判断によって多少ばらつきが出てくるんだろうなということも考えております。

 現在、本人などの請求による交付請求であっても請求事由を明らかにすることを求めている市町村も数多くあるというふうに承知をしておりますけれども、この法改正がなされたときに、多少でこぼこになっている、進んでいる市町村は進んでいる、請求事由が必要でないというところはそのままだった、そういったところがみんな横並びに、同じ条件で審査が行われるようになるのかどうか。その点について総務省の考えを伺いまして、質問を終わりたいと思います。

藤井政府参考人 基準については先ほども省令で定めるということを申し上げましたけれども、あくまでも省令というのはやはり全国的に見て基準となるようなレベルということでございまして、地域の実情あるいは地域の工夫でよりいい方法があるとそれは当該市町村で自律的にできる、そういうようなやり方で持っていきたいというふうに考えているところでございます。

西村(智)委員 終わります。ありがとうございました。

岡本(芳)委員長代理 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 私は、きょうは最初に政府参考人に伺っておきたいと思いますのは、住民票の交付が住基ネット運用後少し減ってきたんじゃないかと思われるんですが、一体どれぐらい発行されているかということを伺いたいと思うんです。

 市町村の窓口での発行分と、それから自動交付機の発行分と、それから郵便局ですね。その発行場所ごとに、二〇〇五年度で見た場合、それぞれ大体どれぐらい発行されているものか、これをまず最初に伺います。

藤井政府参考人 まず住民票の写しの交付件数全体でございますが、平成十五年度は八千百三十一万二千四十三件、それから平成十六年度は七千八百七十六万五千八百三十五件、それから平成十七年度は七千五百二万九千九百二十一件ということで、十五年度と比べて減少傾向にあろうかというふうに見ておるところでございます。

 また、自動交付機による交付件数でございますが、これは、平成十五年度は百五十七万三千六百八十六件、平成十六年度は百六十八万三千九百三十三件、それから平成十七年度は二百四万三千八百五十三件となっているところで、これは増加しているところでございます。

 また、郵便局における住民票の写しの交付件数については把握をしておりません。ただ、住民票の写しの交付件数に占める割合はわずかであり、残り大部分は市町村の窓口による交付というふうに見ているところでございます。

吉井委員 同じ総務省管轄のところなんですが、郵政公社の方の資料を見れば、郵便局の発行枚数を把握していないということなんですが、この資料では、郵便局は百三十五市区町村の五百二郵便局で発行しているわけですね。発行可能となっていて、二〇〇五年度には、住民票、戸籍、印鑑証明など六種類合計で二十一万八百六十一枚となっておりますから、やはり同じ総務省で扱うわけですからこういうものをきちっとつかんでおいてもらいたいと思います。

 これは、郵便局、郵政公社でやる場合にしても、個人情報保護ということから、藤井さんはかつて担当の室長でもやってきはったから個人情報保護は詳しいところですが、公務員たる郵便局職員だけで、アルバイトは扱えないと思うんですが、それだけに厳格な運用が非常に重要な分野なんですね。

 そこで、市場化テスト法、特定官署法では、住民票などの請求の受け付けと引き渡しに従事する者は法令により公務に従事する職員とみなすというふうにしていると思うんですが、その理由は何ですか。

    〔岡本(芳)委員長代理退席、委員長着席〕

藤井政府参考人 公共サービス改革法等はちょっと所管法ではないということで、あくまで一般論ということになると思いますけれども、御指摘のみなし公務員規定というのは、そもそも公務員でない者に対して、その業務の性質上、刑法その他の罰則の適用について、刑法第七条第一項の「法令により公務に従事する」者とみなす規定を適用するためのものというふうに認識しております。

 具体的には、刑法上の公務員となりますと、例えば賄賂罪あるいは収賄罪の主体となったり、あるいは公務執行妨害罪の客体になるというような形で、むしろ公務の適正な遂行が保護法益としてあるというふうに理解しております。

吉井委員 結局、自治体の指揮監督が及ばないところでは、委託できる業務は受け付け、引き渡しだけに限定して、そして、守秘義務だけじゃなしに、やはりみなし公務員という形の人を、単なるアルバイトじゃなくて、みなし公務員を置くということにしているんじゃないかと思うわけですが、それはそういうことでいいわけですね。

藤井政府参考人 ちょっと繰り返しになりますが、他省の所管法でございますが、ただ、私どもの理解としましては、公共サービス改革法というようなのは、民間事業者の創意と工夫が反映されることが期待される一体の業務、いわば一体的業務について、一定程度独立してみずからの責任において業務を実施する、そういうケースを念頭に置いておられるというふうに理解しております。

 すなわち、受託した民間事業者が独立してみずからの責任において業務を実施することは、個別の業務について指揮監督するとかあるいは管理するとか、そういうものじゃなくて、ある程度ロットの大きい形であると。であるからこそ、それなりのやはり制度的な手当ても必要だったんじゃないかというふうに理解しております。

吉井委員 そこはそういうことなんじゃないかと私も思っているわけです。

 ですから、住民票の請求の受け付けと引き渡しは、さっきも言いました五百二カ所の郵便局でも行われているわけですね。市場化テストによっても行えることということになっておりますが、どちらもみなし公務員規定を置いているわけですね。それは、市区町村の事務所の中にあれば、そういう業務請負のような場合はちゃんと公務員が責任持ってやるわけですけれども、指揮命令はやっても公務員が責任を持つわけですが、市区町村の事務所と離れて郵便局なりそういうところでやっていくということになりますから、ですから、この守秘義務ということとともに、みなし公務員を置くということでやってきているということになると思うんです。

 市区町村の事務所内において住民票の受け付け、引き渡しを業務委託している市区町村もあると思うんですが、これは今幾つぐらいありますか。

藤井政府参考人 ちょっと数は把握しておりません。

吉井委員 それは、把握しておりませんと簡単に言うんじゃなくて、やはりきちんとつかんでもらう必要があると私は思っているんです。

 市区町村の事務所における受け付け、引き渡しを業務委託する場合は、これはみなし公務員にする必要はないわけですね、みなし公務員の適用とはならない。住民票の請求受け付け、引き渡しという同じ業務を行うにしても、一方の郵便局などでは、適正な業務の運営に資するみなし公務員の適用というのがどうしても必要ということになってくるわけです。

 そこで、この点については大臣の考えを伺っておきたいんですが、住民のさまざまな個人情報を扱う公務職場では厳密な守秘義務が課されなきゃならない。それだけに市場化テスト法で言う窓口業務の従事者はみなし公務員であるわけですが、現在の業務委託などで現実に行われている窓口業務などもやはりみなし公務員としての規定をきちんと整備していくということをやはりこれからやっていくことが必要だと思うんです。これは大臣の考えを伺っておきたいと思います。

菅国務大臣 公共サービス改革法においての住民票の写しの交付の受け付け、引き渡し業務については、民間事業者の創意と工夫が反映されることが期待される一体の業務について、郵便局と同様に、コンビニエンスストアや民間金融機関等において、一定程度独立してみずからの責任において業務を実施するケースを想定いたしております。

 一方、このような形態によらない民間委託については、従来から住民基本台帳法の枠組みの中でも、市町村の適切な管理のもとであれば、一部の事務は市町村の職員でない者に行わせることができるとされてきたところであります。

 このように、住民票の写しの交付事務について、公共サービス改革法に基づく委託と通常の業務委託には、市町村職員による適切な管理が及ぶか否かについて違いがあるところであります。このような通常の業務委託の場合には、市町村の判断によって、個人情報保護条例や委託先と締結する協定などで、受託者に対し秘密保持義務等の個人情報保護措置や業務の適正執行などを義務づけることができるとされております。

 したがって、法律で一律にみなし公務員や守秘義務を規定することは、必ずしも必要ではないというふうに考えます。

吉井委員 愛知県の高浜市の窓口業務委託仕様書というのを見ると、住民票に関する証明書の作成及び交付とあります。証明書の作成となると、これは公権力の行使としての行政処分を含むことになってくるわけです。ですから、現場では、住民票の業務でも、受け付け、交付以上のことも実際には業務委託とされている場合がやはりあるわけなんです。

 ですから、みなし公務員の規定というのは、住民基本台帳法上もやはりはっきりさせていく。郵便局なんかははっきりみなし公務員としているわけですから、そこはきちんとやっていくということが必要だと思いますから、先ほどの大臣の答弁は答弁として、やはりこれからの問題としてはそこはきちっとはっきりさせていくということが必要だということを重ねて申し上げておきたいと思います。

 次に、厚生労働省の政府参考人に伺いますが、自治体の指揮監督のもとに行われる民間委託、業務委託では、その従事者と自治体の関係は請負契約なのか派遣契約なのか。これはどうなりますか。

鳥生政府参考人 お答え申し上げます。

 契約の形態のいかんを問わず、委託業者が雇用する労働者を自治体がその指揮命令のもとに労働に従事させるということは労働者派遣に該当するというふうに考えております。

 また、具体的な事案が労働者派遣と請負のいずれに該当するかということにつきましては、労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準に基づき、その実態に即して判断されるものでございます。

 実態が労働者派遣に該当する場合には、労働者派遣法第二十六条に基づく労働者派遣契約の締結のほか、同法各条に則して適正な事業の運営を行うことが必要でございます。

吉井委員 厚労省の方に引き続いて伺っておきますが、労働者派遣、請負のいずれに該当するかは、今のお話にもありましたように、要するに、契約形式でなくて実態に即して判断されるわけですね。したがって、請負という契約であっても派遣と判断されることはあり得るわけです。

 労働者派遣法改定後、三年を超えて派遣労働者を使用しようとする場合は雇用契約の申し込み義務が生じるということですが、この雇用契約の申し込み義務は市町村の業務への従事者においても適用されるものであるかどうか、これを伺います。

鳥生政府参考人 労働者派遣法に定めております雇用契約の申し込み義務につきましては、地方自治体を適用除外とする規定はないということでございまして、地方自治体が派遣先である場合にも適用されるものでございます。

 なお、いかなる労働条件で申し込みを行うかということにつきましては、おのおのの地方自治体の判断にゆだねられているところでございます。

吉井委員 そうすると、今度は総務省の方の政府参考人に伺っておきますが、雇用契約の申し込み義務というのは地方公務員法で想定されているのかどうか、これはどうなりますか。

藤井政府参考人 御指摘のケースが、公務員の身分を有している者なのか、あるいは派遣職員とかパートとか賃金職員とか、そういう者なのか、その辺の状況がちょっとよくわからないので、私ども公務員法を正確に消化しているわけじゃないですが、ただ、公務員法は、あくまでやはり常勤なり非常勤の公務員の身分を有する者に対する法律ということになっていまして、それ以外については、今厚生労働省からもお話があったように、労働基準法等、一般の労働者に適用される労働法制が適用される場合があるというふうに承知しております。

吉井委員 要するに、派遣労働法では、三年を超えて雇用契約が続いていた場合には正職員にするということを考えていかなきゃいけませんから、地方公務員法上これまで想定がなかったとしても、これはやはりきちっとやっていかなきゃいけないと思うんです。

 実は、自治体における民間委託や業務委託は偽装請負という法律違反を官庁みずから犯すことになってはいけないと思うんですが、実際には、社会的に、労働者が偽装請負などで劣悪な労働条件や環境に置かれていることが問題になっております。例えば、昨年、兵庫県篠山市で、行政サービス代行会社プロビスささやまの偽装請負というのは法律違反だということで認定され、昨年十二月には、労働局は派遣労働法違反として是正指導というのを行っております。

 ですから、ここは大臣に伺っておきたいんですが、自治体で法律違反の偽装請負は許されないという立場で自治体の場合もきちっと臨んでいくということは大事なことと思いますが、これはお考えを伺っておきます。

菅国務大臣 それは基本的に当然のことであるというふうに思いますし、この住民基本台帳法では、委託に際しての具体的な契約の形態については特段の制約は設けられておりませんので、市町村の判断によっては請負契約を活用することもあり得るというふうに思います。

 しかし、市町村がその事務を執行するに当たって、偽装請負の指摘を受けることのないように関係法令を遵守するというのは当然のことでありますし、各市町村においては関係法令というものを十分に勘案し、適切に対応される、私はこのように考えます。

吉井委員 次に、個人情報保護と守秘義務の問題について伺っておきたいと思うんですが、住民票の写しの不正請求による個人情報漏えい事件というのが起こっております。窓口での適正な対応というのは当然なんですが、市町村の住基システムとともに、住基ネットのシステムについても厳正な対応がやはり必要だと思うんです。

 住基ネットの端末操作の民間委託の中で、例えば宇治市では住民基本台帳漏えい事件が発生したと思いますが、どんな事件だったか、お聞かせいただきたいと思います。

藤井政府参考人 御指摘の事案は、平成十年四月ごろ、宇治市がシステム開発業務を民間業者に委託したところ、当該業務の再々委託を受けた会社のアルバイト従業員が、宇治市の住民基本台帳等のデータを不正にコピーし、名簿販売業者に販売したというものでございます。

 これに対して、宇治市においては、業務の再々委託先のアルバイトを宇治市の条例違反で告発した上で、記者会見等において市民に対して事実を説明するとともに、管理体制の総点検と強化の徹底、それから外部監査の実施などの再発防止策を講じることとしたものというふうに承知しているところでございます。

吉井委員 それで、最高裁の方は、実質的な指揮監督関係があったとして宇治市の使用者責任を認めたものと思いますが、それはそのとおりでいいんですね。

藤井政府参考人 御指摘の事件については、平成十三年十二月二十五日の大阪高裁判決において、宇治市における民法第七百十五条による使用者責任について、宇治市が業務を再委託することを承認したこと、宇治市の担当者が再々委託先の従業員と打ち合わせを行ったこと、再々委託先の従業員は宇治市の庁舎内で開発業務を行っていたこと、それから、本件データを庁舎外に持ち出すことについて宇治市の承認を求めたことなどから、実質的な指揮監督関係があったということを認めまして、住民の慰謝料等の請求を認めることとされたものでございます。

 なお、最高裁の件については、当該事件は最高裁へ上告受理申し立てされたのですが、平成十四年七月十一日に不受理となったというふうに承知しております。

吉井委員 宇治市の使用者責任というのはきちっとしたわけです。

 それで、きょう私取り上げましたように、住基台帳にかかわる証明書の受け付け、交付の業務ですね。郵便局等でやる場合はみなし公務員扱いということで、そこにはきちっとした責任がかかってくる。しかし、一方、みなし公務員扱いもないままに業務委託ということでやられているところもあれば、業務請負で入っているところの偽装請負の問題とか、それから端末操作におけるそうした情報漏えいの問題とか、この分野では幾つもの問題が現実に存在しております。やはり法の執行を行うに当たって、そうした点、個人情報保護はもとより厳格な執行というものが必要だということを申し上げて、質問を終わります。

佐藤委員長 次に、重野安正君。

重野委員 社会民主党の重野安正です。

 それでは質問に入りますが、まず最初に、今提案をされております住民基本台帳法の一部改正案。基本台帳の写しの閲覧手続の厳格化、これは昨年の本法改正の内容でした。そして、今回の写しの交付の手続の厳格化、これによって、これまで何人も可能とされていた住民基本台帳制度は基本的に制度転換を果たすことになると考えるんですが、この点についての見解をまず聞いておきたい。

菅国務大臣 今回の法改正は、個人情報に対する意識の高まりに的確に対応していくために、住民票の、何人でも交付を請求できるという現行の規定を見直しして、そして個人情報保護に十分留意をした制度として再構築する、そういうことであります。

 具体的には、交付の請求ができる場合を、自己または自己と同一世帯に属する者による請求、国、地方公共団体の機関による請求、これ以外のものであって住民票の記載事項を確認することにつき正当な理由がある者による請求に該当する、この三点に実は限定をするものであります。

 したがって、今回の改正後も、住民票の記載事項を確認することにつき正当な理由がある者など、一定の要件に該当する場合には、住民票の写しの交付の申し出が引き続きできるというふうにされております。

 そのため、今回の法改正によっても、住民基本台帳制度の公証制度としての枠組みというものは維持されており、その性格が抜本的に変質するものではないと考えております。

重野委員 抜本的に変更するものではないという答弁でした。

 そこで、私は、昨年とことしの改正によって、現行住民基本台帳法の第一条、これについて検討を加えなければならない条件というものが出てきたんじゃないか、こういうふうな感じを持つんですが、この点については、大臣、いかがでしょうか。

菅国務大臣 今回の改正は、何人でも住民票の写し等の交付を請求できるという現行の交付制度を見直しをして、個人情報保護に十分留意をした制度として再構築をするとともに、転出等の際の本人確認を厳格化し、成り済まし防止を図るものであります。

 住民基本台帳制度の目的は、住民の居住関係の公証、選挙人名簿の登録などの住民に関する事務の処理の基礎とすること、住民に関する記録の適正な管理を図ることなどであります。

 改正後の交付制度についても、住民の居住関係の公証制度として位置づけられるものであり、また、転出等の際の本人確認の厳格化についても、住民に関する記録の適正な管理を図るための措置と位置づけられており、いずれも住民基本台帳法の目的にも合致した内容であって、目的規定の改正は必要ないというふうに考えております。

重野委員 そこで聞きますけれども、昨年の写しの閲覧の厳格化、そして本改正による、成り済ましなどの不正手段による住民票の写しの取得を防止する、そういう効果を期待しているのでありますが、その防止効果についてどういうふうに評価されておるのか、昨年の改正とことしの改正含めてですね。

藤井政府参考人 まず、昨年の改正の効果についてでございますが、これは本来、制度上、市町村が実施状況を公表することになっているということなんですが、十八年の十一月一日という、ごく最近改正されたばかりでございまして、まだ調査中である。先ほども言いました、大体五月ぐらいに締め切りで、その後取りまとめたいというふうに考えているところでございます。

 ただ、成果についてどうかと言われると、もともと、閲覧制度というのは、利用者が、従来大部分がダイレクトメールなんかの民間の事業者であったということでございます。こういった者がいわば閲覧できなくなったわけでございますので、そういう意味では、制度的には大幅な成果がある仕組みになっているというふうに考えているところでございます。

 また、成り済まし等による転出、転入等の届け出の件でございますが、これは私どもも検討会でいろいろ研究調査したんですが、こういった事件が発生した問題点と申しますか原因は、いろいろなケースがあるんです。第一には、届け出義務者によりなされた転出届の際に、本人確認書類による本人確認が実施されていなかったため、その後の転入届、それから住基カード交付申請の際の不正防止が困難になったケース、それから、代理人による転出届において、代理人本人の確認を行うとともに、委任状により届け出義務者の意思確認を行ったが、委任状そのものが不正であったというケース、それから、成り済まされた本人自身が共謀していたというようなケース、こういうようなケースがいろいろあるようでございます。

 そこで、今回の改正は、届け出義務者からの届け出の場合においても本人確認手続の実施の徹底を図る。先ほど御説明したように、必要な証明書等を見せて、必要な調査もできる、そういう形になっておるわけでございまして、そういう徹底を図る。また、代理人届け出については、代理人等本人に係る本人確認手続も必要なんですが、加えて、届け出義務者からの委任の有無、こういったものを確認するために委任状を確認する、そういう仕組みを考えているところでございます。

 また、転入届を行うための前提となる転出届については、特にこれはいろいろな本人情報が入っているということもありますし、次の手続の発端になるものでもございますので、特に厳格な運用というものが必要だというふうに考えております。

 そういうような請求時の手続等を厳格化することにより、先ほど来御論議がありましたが、成り済ましによる不正行為の防止対策というものに成果を上げたいというふうに考えているところでございます。

重野委員 この法律を提案している側としては至極当然な答弁だろうと思うんです。しかし、昨今の本人成り済ましに見られる不正取得、法による抑制という点についてもやはり限界のあることも、これまた否めない事実であります。まして、本改正案では一定の条件、手続を付して第三者による写しの交付申請を認めている以上、個人情報保護などの究極的な保障は絶対とは言えないと思いますね。

 そこで法務省に聞きますけれども、戸籍法の改正において、法制審議会戸籍法部会での、交付請求書の開示、あるいは交付請求に係る本人通知について議論があった、このように聞いておりますけれども、その内容について説明願いたい。

寺田政府参考人 ただいまおっしゃいました戸籍法でございますが、この国会で改正案を成立させていただいたところでございますけれども、これまでの、この戸籍法を含めた法体系のもとでは、交付請求書の開示につきまして特段の規定がございませんで、現実に事務を行っておりますのは、法定受託事務ということで、市町村でございますが、市町村の条例等によってその開示、不開示というものが決定される、こういう仕組みでございました。

 この戸籍法の見直しを行うに当たっての法制審議会戸籍法部会での御議論の中で、交付請求書というものを、本人に関する情報というのを自分でコントロールできるという観点から、開示させてはどうかという御意見が一方ではあり、他方では、しかし、これは逆に、請求をする方の個人情報でもあり、そういうところまで制度を持っていくのは不適当ではないかという、両様の意見があったわけでございます。

 そこで、中間試案で、利用者の方を含めた国民一般の方々の御意見を伺った際には、一つは、戸籍法には改めて特段の規定というのを設けない、現状どおりという案と、市町村長が、戸籍に記載された者から謄本等の交付請求書の開示請求があった場合には交付請求者の氏名を含めまして交付請求書の全部を開示するという案とをお示ししたところでございまして、御意見を伺ったわけでございます。

 御意見を伺った結果はほぼ半々でございまして、完全に意見が分かれた状態でございました。そこで、その後の審議の中で、やはり、このような状況を踏まえまして、この段階で戸籍法に特段の規定を設けるというのはやはり問題であるということで、結論は、設けないということになったわけでございます。

 何と申しましても、交付申請というようなことはいろいろなところであるわけでございますけれども、突出して戸籍の部分だけ、それについての交付請求をさらに認めるということを行うだけの条件がないということが、最後に委員の方々に共有された御認識でございました。

 それで、本人通知制度というのは、さらにそこから進みまして、戸籍の申請があった場合に、その対象になる御本人にこれを通知しようということでございますけれども、今のように、戸籍の交付申請書の開示についても結論としてはこれを認めないということでございますので、さらに進んで御本人に通知するというのは実現困難であるということで意見が取りまとめられたところでございます。

重野委員 今説明がありましたように、A案、B案という点についての結論が語られたわけであります。

 そこで、B案不採択の理由として、時期尚早である、こういうふうなことが書かれておりますが、時期尚早であるということを書いた具体的な意味は一体どういうことなんでしょうか。

寺田政府参考人 先ほども御説明申し上げましたとおり、この制度は国民お一人お一人に非常に深くかかわる制度でございまして、やはり、全体として、国民の間にどういう開示の制度をとるかということについてある種のまとまった御意見がない状況で、なかなかそういう新しい制度に踏み切るのは難しいということがございます。

 とりわけ、このことに限らず、個人情報にかかわるさまざまな交付請求があるわけでございますけれども、交付請求が行われた際に、さらに交付請求をだれが行ったかということについての情報開示を、特に一般の情報公開の制度から切り離してつくり上げるということもまた例がないわけでございまして、そういう意味で、そういうことをつくる条件がないということが、最終的な時期尚早という判断のもとにあるわけでございます。

重野委員 それは国の考え方なんですが、現実に窓口で仕事をしているのは市町村なんですね。

 そうすると、この扱いについて市町村によって微妙な違いが出るということが、当然、形の上であり得るんですね。そのとき、その責めを負うのは市町村の窓口、こういうことになるので、そこら辺はやはり国はしっかり受けとめなければいけないんじゃないか。

 確かに、機関の中で議論が成熟していないという説明でありますけれども、しかし、現場ではそのことによって判断が迫られるということになると、これは本来国の事務なんですけれども市町村が今やっておる、その本来の責任を負わなければならない国が、そこのところは配慮して、実際の現場の市町村窓口が責めを負わなくてもいい仕組みをつくってあげないといけないんじゃないかという気がするんですが、その点についてはいかがお考えですか。

寺田政府参考人 一方では、委員の御指摘になられる問題もよく理解できるところでございます。

 先ほど申し上げましたように、現実にはそれぞれの市町村の情報公開条例で定まっているところでございますけれども、一つの市町村と他の市町村との取り扱いが百八十度違うというようなことでは、問題は非常に大きいというように認識されることもなかなか避けられないところだと思います。

 ただ、現実には、そこら辺までは行っておりませんし、他方、同じ市町村の中で、ある交付申請と他の交付申請のバランスもまた市町村ではお考えになられていろいろなこともやっておられるわけでございますし、等質をどういう側面で考えるかということは、今非常に難しいところもございます。

 戸籍の立場から申し上げると、先ほど申し上げましたように、この制度は、やはり、国民お一人お一人の権利、情報にかかわることでございますので、全体的に今の制度を改めようということになりましたら、制度を改めるということについてある程度のコンセンサスをいただけないと、なかなか前に動きにくいところでもございます。

重野委員 それでは、次に、総務省の住民票の写しの交付制度等のあり方に関する検討会報告というのがあります。それによりますと、住民票の写しの交付請求書の開示について、「住民基本台帳法上に特段の規定を設けるべきと結論づけることは困難」、このように述べております。

 戸籍部会においては時期尚早であり、検討会報告では困難、こういうふうなことになっているんですが、これは、両者に認識の違いがあるということなんでしょうか。そうじゃなくて、こういうふうな書きぶりになったということなんでしょうか。そこのところをちょっと説明してくれませんか。

藤井政府参考人 お答えします。

 住民票の写しの交付制度のあり方に関する検討会におきます該当部分をもうちょっと正確に御紹介しますと、住民票の写し等の交付請求についてのみ個人情報保護及び情報公開に関する法制の例外規律を設けることに関してはさまざまな意見が存在するところであり、現時点では、住民基本台帳法に特段の規定を設けるべきと結論づけることは困難であると考えられるとの結論をいただいたところでございます。

 そこで、御指摘の、時期尚早ということと、私どもの検討会では現時点では困難という表現でございまして、基本的に異なるものとして言葉遣いを使い分けているという意識は全くございません。同じだと思います。

重野委員 あと三点ほど通告をしておりましたけれども、もう時間が来ましたので、以上で終わります。またの機会に、これについては質問させていただきます。

 以上でございます。

佐藤委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 住民基本台帳法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

佐藤委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 この際、ただいま議決いたしました法律案に対し、谷公一君外五名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党、社会民主党・市民連合及び国民新党・そうぞう・無所属の会の六会派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。谷口隆義君。

谷口(隆)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきます。

    住民基本台帳法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法施行に当たり、次の事項について十分配慮すべきである。

 一 住民基本台帳の閲覧の公益性に関する市町村の判断が厳格かつ公正に行えるよう引き続き適切な助言に努めるとともに、市町村間の連携の強化その他必要な体制の整備に今後とも努めること。

 二 住民票の写し等の交付制度については、個人情報保護の観点から、厳格な運用を確保すること。

 三 行政機関の保有する個人情報が漏えいする事件が起きていることにかんがみ、住民基本台帳法関係事務の運営に当たっては、データ保護及びコンピュータ・セキュリティの確保などについて徹底した管理に努め、責任体制を明確化する等、個人情報保護に万全の措置を講ずること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

佐藤委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

佐藤委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、総務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。菅総務大臣。

菅国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、御趣旨を十分に尊重してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

佐藤委員長 次に、内閣提出、地方公共団体の財政の健全化に関する法律案を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。菅総務大臣。

    ―――――――――――――

 地方公共団体の財政の健全化に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

菅国務大臣 地方公共団体の財政の健全化に関する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 この法律案は、地方公共団体の財政の健全性に関する比率の公表の制度を設け、その比率に応じて、地方公共団体が財政健全化計画等を策定する制度を定めるとともに、当該計画の実施の促進を図るための行財政上の措置を講じることにより、地方公共団体の財政の健全化に資することを目的とするものであります。

 次に、法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。

 第一は、健全化判断比率の公表に関する事項であります。

 地方公共団体の長は、毎年度、前年度の決算の提出を受けた後、速やかに、健全化判断比率及びその算定基礎を記載した書類を監査委員の審査に付し、その意見を付して当該比率を議会に報告し、かつ、公表しなければならないこととしております。

 第二は、財政の早期健全化に関する事項であります。

 地方公共団体は、健全化判断比率のいずれかが早期健全化基準以上である場合には、議会の議決を経て、財政健全化計画を定めなければならないこととしております。また、毎年度、計画の実施状況を議会に報告し、かつ、公表しなければならないこととしております。

 第三は、財政の再生に関する事項であります。

 地方公共団体は、再生判断比率のいずれかが財政再生基準以上である場合には、議会の議決を経て、財政再生計画を定めなければならないこととしております。また、財政再生計画について、総務大臣に協議し、その同意を求めることができることとしております。

 第四は、公営企業の経営の健全化に関する事項であります。

 公営企業を経営する地方公共団体の長は、毎年度、当該公営企業の前年度の決算の提出を受けた後、速やかに、資金不足比率等を監査委員の審査に付し、その意見をつけて当該比率を議会に報告し、かつ、公表しなければならないこととしております。また、資金不足比率が経営健全化基準以上である場合には、議会の議決を経て、経営健全化計画を定めなければならないことといたしております。

 以上が、この法律案の提案理由及び内容の概要であります。

 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。

佐藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 この際、委員派遣承認申請に関する件についてお諮りいたします。

 本案審査の参考に資するため、来る二十一日月曜日、北海道に委員を派遣いたしたいと存じます。

 つきましては、議長に対し、委員派遣承認申請をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 なお、派遣委員の人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 次に、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本案審査のため、来る二十二日火曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る十八日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時四分散会


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