衆議院

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第22号 平成19年5月22日(火曜日)

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平成十九年五月二十二日(火曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 佐藤  勉君

   理事 岡本 芳郎君 理事 鈴木 淳司君

   理事 谷  公一君 理事 葉梨 康弘君

   理事 林  幹雄君 理事 武正 公一君

   理事 寺田  学君 理事 谷口 隆義君

      井澤 京子君    石田 真敏君

      今井  宏君    浮島 敏男君

      大塚 高司君    岡部 英明君

      鍵田忠兵衛君    木挽  司君

      佐藤ゆかり君    実川 幸夫君

      杉田 元司君    鈴木 馨祐君

      関  芳弘君    田中 良生君

      土屋 正忠君    土井  亨君

      中森ふくよ君    萩生田光一君

      萩原 誠司君    橋本  岳君

      福田 康夫君    福田 良彦君

      渡部  篤君    安住  淳君

      逢坂 誠二君    後藤  斎君

      田嶋  要君    西村智奈美君

      福田 昭夫君    森本 哲生君

      江田 康幸君    谷口 和史君

      吉井 英勝君    重野 安正君

      亀井 久興君

    …………………………………

   総務大臣         菅  義偉君

   財務副大臣        田中 和徳君

   国土交通副大臣      渡辺 具能君

   総務大臣政務官      谷口 和史君

   総務大臣政務官      土屋 正忠君

   厚生労働大臣政務官    菅原 一秀君

   政府参考人

   (総務省自治行政局長)  藤井 昭夫君

   政府参考人

   (総務省自治財政局長)  岡本  保君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   真砂  靖君

   政府参考人

   (国土交通省都市・地域整備局下水道部長)     江藤  隆君

   参考人

   (兵庫県知事)

   (全国知事会総務常任委員会再建法制等問題小委員会委員)          井戸 敏三君

   参考人

   (北海道大学公共政策大学院教授)         宮脇  淳君

   参考人

   (日本公認会計士協会副会長)           宮内  忍君

   総務委員会専門員     太田 和宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十一日

 辞任         補欠選任

  塩川 鉄也君     吉井 英勝君

同月二十二日

 辞任         補欠選任

  あかま二郎君     佐藤ゆかり君

  土井  亨君     大塚 高司君

同日

 辞任         補欠選任

  大塚 高司君     杉田 元司君

  佐藤ゆかり君     鈴木 馨祐君

同日

 辞任         補欠選任

  杉田 元司君     土井  亨君

  鈴木 馨祐君     中森ふくよ君

同日

 辞任         補欠選任

  中森ふくよ君     浮島 敏男君

同日

 辞任         補欠選任

  浮島 敏男君     あかま二郎君

    ―――――――――――――

五月二十二日

 放送法等の一部を改正する法律案(内閣提出第九四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 地方公共団体の財政の健全化に関する法律案(内閣提出第六八号)

 派遣委員からの報告聴取


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     ――――◇―――――

佐藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、地方公共団体の財政の健全化に関する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、兵庫県知事・全国知事会総務常任委員会再建法制等問題小委員会委員井戸敏三君、北海道大学公共政策大学院教授宮脇淳君及び日本公認会計士協会副会長宮内忍君、以上三名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、各参考人の方々からそれぞれ十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、井戸参考人、お願いいたします。

井戸参考人 兵庫県知事の井戸敏三でございます。どうぞよろしくお願いをいたします。

 総務委員会の委員の先生方には、日ごろから地方自治発展のために御理解と御尽力をいただいており、心から感謝をいたします。そして、今後のさらなる地方分権の推進に御支援をお願い申し上げる次第でございます。

 さて、地方公共団体の財政の健全化につきましては、地方の立場からも考えを示すべきであるという観点から、全国知事会総務常任委員会に再建法制等問題小委員会を設置いたしまして、昨年九月から議論を重ね、お手元に配付しておりますが、昨年十一月には中間取りまとめを、本年二月には「地方公共団体の再建法制について」の取りまとめを行い、基本的な考え方を提示しております。

 今御審議いただいております地方公共団体の財政の健全化に関する法律案につきましては、再生の枠組みを健全化段階と再生段階の二段階の構成とするほか、健全化段階において自主的な改善努力による財政健全化を原則とするなど、知事会で取りまとめた基本的な考え方はおおむね取り入れられているものと考えています。

 再建法制に関する中間取りまとめにおきましては、地方公共団体の再建法制に係る地方としての基本的な考え方として、現行の地方財政再建促進特別措置法は昭和三十年に制定されたものですので、時代の変化を踏まえた見直しを行うことが必要であり、地方自治の観点から地方公共団体のより主体的な運営を実現する方向で行われるべきこととしていました。

 再建法制の基本的な考え方といたしましては、まず、地方自治の観点からは、地方公共団体が自主的、主体的に財政再建に取り組むことを基本とすること。第二に、再建のスキームとしては、早期是正段階と再生段階の二段階の構成とすることが適当であること。第三に、地方公共団体が国の関与のもとで法律の手続に基づく再建を行うのか、あるいは国の関与を受けずに再建を行うのか選択できるようにするべきであること。第四に、再生団体に対する再生促進措置として、一定の行政サービスの維持に必要な資金手当て等の方策が検討されるべきことなどを指摘しておりました。

 法案におきましても、再建スキームが健全化段階と再生段階の二段階構成になっていること。健全化段階においては、国は財政健全化計画の策定やその一般的な原則を法令で義務づけるのみとし、個別具体の関与については当該団体の取り組み状況を踏まえた勧告という限定的なものになっていること。再生段階においては、総務大臣に財政再生計画の同意を求めることができることとし、同意を得ている場合には、収支不足を地方債に振りかえるための再生振替特例債の発行等が可能となることなどが内容とされており、基本的な考え方はおおむね取り入れておられる、このように考えています。

 なお、債務調整についても触れておりまして、いわゆる企業破産と同様の債務調整については、私どもは、地方財政計画や地方債計画などの現行の地方行財政制度の枠組みのもとでは、地方公共団体について債務調整の仕組みを導入することについては基本的には適切ではないのではないか、このように考えています。

 現行制度のもとでは、歳入歳出両面において地方の自由度が小さく、地方公共団体が自己規律できる範囲が狭いため、市場の規律にゆだねる以前に、まずは地方公共団体が自律的、自主的に運営できる範囲を拡大する方が重要であると指摘をしているところでございます。

 これにつきましては、今回の法案には盛り込まれておりませんが、別途、総務省の債務調整等に関する調査研究会が引き続き検討されておりますので、その検討状況とあわせながら、知事会としても見守らせていただくこととしております。

 続いて、本年二月に取りまとめました「地方公共団体の再建法制について」では、国において、今後、健全化判断比率等の具体的な設定など詳細な制度構築をさらに行うに当たって留意していただきたい事項を指摘しました。

 まず、再生法制に係る財政指標の基本的な考え方であります。

 再生法制において用いるフロー指標及びストック指標につきましては、地方公共団体の実際の財政状況を的確にあらわす観点から、普通会計以外の公営事業会計や外郭団体の状況も適切に反映されたものにする必要があると考えていますが、次のような留意点を指摘しています。

 まず第一に、地方公共団体の財政状況については、財政規模や権限、あるいは財政力の相違から、画一的な指標、基準ではとらえられない面があります。必要に応じて差を設けることも考える必要があるのではないでしょうか。

 第二に、外郭団体の債務や地方公共団体による債務負担行為等をストック指標に反映するに当たっては、判断基準について、算定の作業で過度の負担がかかるようでは困りますし、また、地方公共団体が議会、住民等に説明をする際に十分に説明責任が果たせる必要もあります。地方の実情を踏まえた上で、慎重に検討していく必要があるのではないでしょうか。

 第三に、地方公共団体が設けている各会計をカバーする新たなフロー指標を設定するに当たっては、独立採算、発生主義の公営企業会計と税を財源とした現金主義の普通会計というそれぞれの会計の性質の違いを踏まえて設定されるべきであることなどを指摘しております。

 具体の指標の中身等につきましては、今後政令等で定められることになっておりますが、公営企業に関する課題等とともに残された課題となっております。これら指標については、さらに幾つかの課題もございます。

 実質赤字比率ですが、この指標については、現行の実質収支比率と同様のものでありまして、フロー指標としては基本的なものであると考えます。

 連結実質赤字比率についてですが、この指標は、普通会計と公営企業会計を連結させてキャッシュフローの状況を判断しようとするものですが、公営企業については、御承知のようにいろいろな種類のものがあります。地域開発など民間で行われている事業と類似のものから、上下水道、病院等すべての住民生活にかかわる事業まで多岐にわたっており、供用開始までに時間を要する場合や、事業の性質により、やむを得ず赤字が生ずる場合もあります。

 こうしたこととともに、市町においては、公営企業のウエートが高いことも踏まえ、公営企業の資金不足額のうち、どれだけを再生段階、健全化段階の判断に反映させるかについては、一律に考えるのではなく、どういった事業をどう指標に反映させていくのかについて十分検討すべきものと考えます。

 あわせて、公営企業自体の再生法制をどう考えていくのか。

 現在は、地方公営企業法に基づき、法適用事業については不良債務を指標とする財政再建制度が講じられています。

 この再生法制では、健全化段階は個々の公営企業ごとに異なる基準で判断するとのことですが、再生段階は、個々の公営企業ごとには定められておらず、普通会計の実質赤字と合算することにより判断することとなっています。

 そもそも公営企業は独立採算が基本であることを踏まえ、今後の債務調整の議論とあわせて基本的な枠組みの確立が必要であるのではないか、このように考えます。

 実質公債費比率についてです。

 実質公債費比率は、地方債の償還財源を減債基金に年々積み立て、積立残高を実際の償還時期まで保有し続けなければペナルティーがかかるという側面を持っています。

 実質公債費比率は、健全化判断比率、再生判断比率のいずれにも位置づけられていますが、いわばフローの側面とストックの側面を有している比率でありますので、再生段階の判断基準としては、フローの側面に着目して適用することなどを検討する必要があるのではないか、このように考えます。

 将来負担比率についてですが、公社や第三セクターは独立した法人であり、その債務に対する普通会計の債務負担は債務保証や損失補償であって、地方債の元利償還金と異なり、当該公社等が対象債務の支払いができなくなった場合に初めて負担が顕在化する、具体化するものです。健全化判断比率の算定に当たり、どの範囲をどのような基準で算入するかについては、実態に即した検討が必要であると考えます。

 特に、市町においては、土地開発公社や第三セクター等への債務保証、損失補償の額が大きい場合が多いので、画一的、一律の算入は適切ではないのではないか、このように考えています。

 また、損失補償額が将来負担比率に加えられる場合であっても、当該公社等の資産状況を考慮するとともに、例えば多くの都道府県において林業公社が行っている造林事業等のように、その性格上、収益が発生するまでに長期間を有するため、事業資金を借り入れざるを得ない場合などについては、その借入金に係る損失補償等の取り扱いについて配慮が必要であると考えます。

 なお、地方公共団体は、都道府県と市町村で財政規模、財政構造が異なるなど、一律には評価できません。財政再生基準、早期健全化基準も一律、画一に定めるべきではなく、特性を考慮すべきであります。

 次に、国の支援についてであります。

 早期健全化段階では、国は財政健全化計画の策定やその一般的な原則を法令で義務づけるのみとし、個別具体の関与については、当該団体の取り組み状況を踏まえた勧告という限定的なものとなっています。しかし、全くの自主努力にのみゆだねるのではなく、行革推進債等の地方債の優先配分など、財政支援が必要であると考えます。

 再生段階においては、財政再生計画の策定を義務づけるとともに、それについて総務大臣の同意を求めることができることとし、同意を得ている場合は、収支不足を地方債に振りかえるための再生振替特例債を発行することが可能となっています。

 再生段階においても、基礎的な行政サービスの提供は当然に必要であり、過度の行政サービスの切り詰めにつながらないよう、例えば、政府資金による低利な資金の手当てや特別交付税での支援など、国の財政支援が不可欠であると考えています。

 御参考までに、本県の財政状況について、再生法制に係る財政指標とも関連させながら若干御説明させていただきます。

 平成七年一月十七日に発生しました阪神・淡路大震災は、少子高齢社会下における史上初の大都市直下型の大震災でありまして、住宅、上下水道、電気、ガス、道路、港湾、鉄道などの直接被害だけで十兆円に上りました。

 この復旧、復興を単なるもとに戻すのではなく創造的な復興とするために、復興計画、フェニックス計画を定めて、この十二年間、復興事業を推進し、その実績は十六兆三千億円となっています。

 負担としましては、国及び国関係団体で八・四兆、約半分、多大の事業を講じていただいておりますが、本県も二・三兆、市町も二・九兆、復興基金が三千五百億円などの負担割合になっています。

 県としましても、この復興事業のために多額の地方債を発行せざるを得ず、今現在、震災復興関連で約八千五百億円の残高を抱え、元利償還金である公債費は、平成十九年度一般会計当初予算二千四百五十億円のうち約七百億円が震災関連分となっています。

 震災関連として発行した起債の元利償還金を全額償還するには、今後まだ約一兆円の所要額を見込んでおります。

 また、この間の元利償還の財源として県債管理基金を流用、活用いたしましたので、この活用額が三千五百億円に上り、現行県債管理基金は約二千億円でありますので、積み立て不足の大きな要因となっております。

 その結果、実質公債費比率は、減債基金の不足が大きく影響し、許可団体への移行基準である一八%を超え、平成十八年度では一九・六%とワーストスリー、平成十九年度では二一%程度になると試算しています。

 このため、行財政全般について徹底的な見直しを行うことで改善を図り、今後の十二年間の取り組みにより、平成三十年度には一八%程度の達成を目標として財政運営、公債費管理を行うこととし、先般、行財政構造改革本部を立ち上げ、新たな行財政構造改革推進方策の策定に取り組んでいます。

 したがって、健全化段階の仕組みを早期健全化基準により一律に適用するのではなく、さらにその前の段階で、本県のように、自主的な健全化計画を策定、公表して財政の健全化に取り組む団体への財政支援の余地を残しておくことも必要ではないかと考えます。このことは、健全化指標を県民に幅広く事前に公開して警鐘する措置にも見合っているのではないか、このように考えています。

 なお、本県の場合、阪神・淡路大震災の影響により地方債残高が増嵩したものであり、放漫財政の結果として地方債残高がかさみ、財政状況が悪化したわけではありません。

 現在、起債制限に当たっても、阪神・淡路大震災の影響等を勘案した運用がなされておりますが、このような大規模な災害等に対する配慮規定を置いていただくことも必要ではないかと考えます。

 終わりに、以上述べましたように、地方公共団体の財政の健全化に関する法律案につきましては、私どもの基本的な考え方はおおむね取り入れられていると考えていますが、各団体の最大の関心事は、健全化判断比率の考え方と基準値、そして自分たちはどうなるかという点です。

 今後、具体的な健全化判断比率の算定方法の決定などは、個々の団体の財政運営に大きな影響を与えることから、地方と十分意見交換をしながら進めていただきたいと考えます。

 法案が通った後は、早急に原案を示していただき、遅くとも平成二十年度予算編成作業が始まる秋には、その内容を固めていただきたいと考えます。

 特に、ストック指標などは改善に時間を要することから、しばらくの間は基準値につきまして二段階で設定して、数年後にはさらに厳しい基準値とするなど、二段階あるいは暫定措置というような期間を設定していただくことも必要ではないかと考えます。

 また、国から地方への三兆円の税源移譲がありましたが、三位一体の改革により交付税が大幅に削減される一方で、歳出面では福祉関係経費や退職手当、公債費などの義務的経費が増加しているといった状況にありまして、地方公共団体は非常に厳しい財政運営を強いられています。このままでは、まさしく多くの地方公共団体が、特に責められるべき財政運営の結果としてではなく、早期健全化段階に突入しかねない状況にあります。

 地方分権改革の第二期改革が推進されておりますが、国と地方の役割分担の見直しにあわせて、地方公共団体が自己責任、自己決定できるよう、国から地方への権限及び税財源のさらなる移譲が喫緊の課題です。この際、地域間格差の拡大も懸念されることから、地方間の税源格差の是正も必要になってきています。

 いずれにしましても、地方公共団体が自主的、自立的な財政運営ができますよう、地方税、地方交付税等の一般財源総額等がさらに確保され、そして自主的、自立的な経営ができますように、今後ともの御指導をお願いいたします。

 委員各位の格別の御理解と御支援をお願いし、意見陳述とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

佐藤委員長 ありがとうございました。

 次に、宮脇参考人、お願いいたします。

宮脇参考人 北海道大学公共政策大学院の宮脇でございます。

 本日は、当委員会で意見を述べさせていただく機会を与えていただきまして、大変光栄に感じております。よろしくお願い申し上げます。

 それでは、早速でございますけれども、意見を述べさせていただきたいと思います。

 私は、この地方公共団体の財政の健全化法案でございますけれども、今後この実施に当たりましてさらに詰めていくべき課題、あるいは地方分権改革等を推進した際におきましてさらに充実をさせていくべき課題というものは存在しているというふうに思っております。ただ、基本的に、この地方公共団体の健全化に向けた法案というものにつきましては、こういった法案が提出され御審議いただいていることに対して、評価させていただいているところでございます。

 この法案の中身につきまして、評価をさせていただいている点をまず四点挙げさせていただき、その後、今後の課題等について整理をさせていただきます。そして最後に、今後の課題としてこの法案と大きな関係のございます債務調整といった問題についての関連というところを意見として述べさせていただきたいと思っております。

 まず、四点、評価できる点ということでございます。

 まず第一点といたしまして、やはり、地方自治体の財政を健全化する制度といたしまして準用団体制度というものが存在しているわけでございますけれども、この制度は、御承知のように五十年間にわたりまして見直しというものが行われないでまいりました。この間、我が国の経済社会は大きな構造変化をいたしておりますし、特に九〇年代以降におきましては、財政と金融のかかわりというのが大きく変化をする中で、地方財政あるいはその中での地方債のあり方といったようなこともやはり見直しを迫られる、そういう環境にあったかと思います。

 そういう中で、この健全化に向けた制度というものが、戦後の地方財政の非常に危機的な状況を救済するための、ある意味でいいますと臨時的な措置を準用するという形で今日まで続いてきた。この点につきまして、今回、恒久的な制度としての見直しという形でこうした法案が提出をされたことに関しましては、非常に前向きな取り組みではないかと考えさせていただいております。

 そして、評価できます第二点目でございますけれども、やはり、これまでの制度にはなかったいわゆる早期是正という仕組みを組み込んでおられるということでございます。

 これは、私が申し上げるまでもなく、現行の準用団体制度につきましては財政再建団体という制度しか存在せず、早期の段階で地方財政が健全化をするという方向に対して、地域住民も含めて議論をし、また判断をするというツールが必ずしも十分ではなかったと考えさせていただいております。

 したがいまして、今回の仕組みは、早期に地方財政の健康診断ということを行い、そしてそこにおいてある程度の異常な数値あるいは注意をしなければいけない数値というものが出たときに、まず第一段階といたしましては、住民が財政のことをいろいろと考え参加する中で地方財政の健全化に努力をしていくという仕組みであり、地方自治という観点からも、評価できる仕組みではないかと思っております。

 そして、三番目の評価点でございますけれども、これはやはり、指標というものの充実が図られるということでございます。

 これまでの地方財政制度におきましては、要するに実質収支比率というフローの指標によって地方財政の状況というものを判断してまいりました。しかし、この指標が、地方財政全体の診断をするに当たりましては、その見ている範囲というものが非常に狭いというふうに言わざるを得ないと思います。多くの地方自治体におかれまして、財政が危機的状況になる、夕張の件もそうでございますけれども、やはり第三セクターを初めといたしました外郭的な組織における財政的な負担というものが最終的に普通会計に及んでくるという構造を持っております。したがいまして、先ほどの早期是正という仕組みと関係いたしますけれども、場合によっては、地域住民にとっては必ずしも地方財政の実態というものが十分に認識できない中で、ある意味で突然地方財政としての破綻的な状況が目に見えてくるといったようなことも少なくないという実態にあろうかと思います。

 そういう面で、今回指標を充実し、ある意味で第三セクターといったような最終的に普通会計ベースでも負担が発生する危険性があるもの、こういったものを全部含めて住民の皆さんと情報を共有する仕組みをつくるということは、高く評価できるのではないかと思っております。

 また、フロー指標だけではなくて、ストックという形で、過去の財政政策の蓄積という形で起こってきている問題を将来の財政運営に結びつけるための指標といったようなものを組み込んでおられるという点も、これは評価ができると思っております。

 いずれにいたしましても、指標を形成するに当たりましては、私は、規範性ということと客観性ということが必要になろうかと思っております。規範性というのは指標を考える場合の基本的な考え方でございますけれども、これは、やはり地域住民の皆さんがみずからの自治体の財政というものをきちっと議論し認識することができるということが必要であり、みずからの地域の将来の財政状態というものの危険性あるいは抱えている問題というものを共有できるという指標がまず必要だと思っております。

 そして、もう一点の客観性は、比較可能性ということを担保するということだと思います。

 全国にいろいろな状況の地方自治体というものが存在いたします。また、規模におきましてもいろいろな自治体が存在するということでございます。しかし、指標におきましては、いろいろな自治体の置かれている環境というものはございますけれども、それらにつきまして相互に比較ができる仕組みを導入することがまず必要であり、そのことが指標に対する信頼性というものを担保することになるんだろうと考えております。

 ただ、後ほど整理をさせていただきますように、そうした指標に対する評価をどのように行っていくのかということにつきましては、また別の視点が必要になろうかと思っております。

 そして、評価できる第四点目でございますけれども、やはり、再生振替特例債という新しい制度を設けていただいたという点でございます。

 この制度につきまして、赤字地方債ではないかといったような御議論もあろうかと思いますけれども、この再生振替特例債につきましては、再生期間中に必要となる、再生のために負担しなければならない、そういう財政資金が幾らであるのかを確定し、それを明確に示した中で、再建期間中にこれを解消するためのツールであると考えております。したがいまして、新しい借金を抱えるというものではなくて、過去の債務を、着実に、明確に見える中でこれを整理していく仕組みであろうというふうに思っております。

 例えば、私も北海道に住んでおりますけれども、夕張市の財政再建団体化ということがございました。夕張市におきまして、長期間にわたった財政再建に努力をしていかなければならないという状況の一方で、毎年毎年短期の借入金の調達を繰り返していかなければならない、そういう実態もあるわけでございます。したがいまして、長期にわたった財政再建計画がつくられたのであれば、その期間中に着実に再建を果たすための資金調達を行い、そして短期的な不安定な状況からは解き放してあげるということも一つの大きな選択肢であったろうというふうに思っております。

 そういった問題点に対しまして、この新法におきまして、新しい制度といたしまして再生振替特例債という制度を設けていただいたという点が評価の四番目でございます。

 しかし、こうした評価できる点がある一方で、今後実際にこの制度を運営していく場合には、課題というものもまた一方ではあろうかと思っております。

 先ほども御指摘がございましたけれども、指標につきましてこれから政令等で内容を決めていくというふうにお聞きをいたしております。しかし、こういった指標につきまして、比較可能性を担保するということは最低限の条件として必要でございますけれども、例えば、地方自治体の規模ごとにこういった指標について一定のグルーピングをするですとか、そういった配慮というのは必要なのかどうなのかといったようなことも、これは当然、指標を考える場合におきましては重要な課題になってこようかと思います。

 また、そうした指標を評価するに当たりまして、例えば、第三セクターですとか公営企業、さらには、今回すべての地方財政に対する領域というのをカバーいたしておりますので、介護保険でございますとか国民健康保険といったような財政状況の部分につきましても、これを含めてきちっと開示をしてください、そういう仕組みになっております。

 しかし、こういったものの中には、当然、地方自治体単独では健全化の努力に極めて限界があるというものもございますし、公営企業等の中で病院ですとか地下鉄といったような事業に対して、非常にいろいろと政策的な面というものを考えていかなければならないということもございます。

 恐らく、今この指標を導入した場合に、大きく赤字部分として多くの自治体で発生するところといたしましては、やはり病院事業が挙げられるかと思います。そして、土地開発公社といったようなところもあろうかと思います。こうしたものにつきまして、指標としては明確にする中で、どのような評価を行っていくのかということは非常に重要な課題になってこようかと思います。

 そして、もう一点、課題として挙げさせていただきますと、今回の仕組みの中で極めて重要な役割を果たすものといたしまして、外部監査といったような制度があろうかと思います。こういった監査制度につきましても、監査制度が信頼あるものになるために、その環境整備というものに努力をしていく必要性があろうかと思います。当然、そのための環境整備というのは、公会計の改革ですとかそういったものに積極的に取り組んでいく。そのことが、最終的には、外部監査だけではなくて、住民からのチェックにつきましても大きく資するものになろうというふうに考えております。

 そして、最後になりますけれども、債務調整との関係でございます。

 債務調整につきましては、地方分権改革というものが進んだ段階での新しい地方財政の制度の中で、この債務調整のあり方についてどのようにするべきかということで、総務省におかれましても、この研究会を立ち上げて検討をしているという状況でございます。その中で、まず考えなければならない点といたしましては、今回の制度と関係をいたしますけれども、やはり第三セクターや公営企業の赤字というものがなぜ普通会計等に及んでくるのかという点でございます。

 この点につきまして、やはり債務保証ですとか損失補償という仕組みがございます。債務保証につきましては、御承知のように、かなり厳格な制度設計になっておりまして、債務保証を行える対象の組織というのは限定をされております。しかし、損失補償につきましては、こういった財政規律的な制度というものが存在をしないということがございます。したがいまして、こういった事業を行うときに、損失補償という選択肢が、場合によっては財政規律という面から非常に甘くなってしまうというようなことが起き、結果として、それが普通会計ベース、一般会計ベースの負担ということで最終的な影響をもたらしてしまうというようなこともございます。

 ということは、まず、そうした損失補償といったような仕組みについて、地方財政の中でどのようなガバナンスをかけていくのか、そして、ガバナンスをかけた上で、そうした第三セクター等に関する整理というものについてのルール化を行い、また公営企業等の検討を行った上で、普通会計、一般会計のところに最終的な債務調整というツールを導入するべきなのかどうなのかということを、全体的な、新たな分権の中での地方行財政制度の中において考えていくということが必要なことであろうというふうに思っております。

 したがいまして、まず、第三セクターや公営企業といったようなところと普通会計、一般会計との関係を整理していくということが重要な点ではないかというふうに考えさせていただいております。

 最後になりますけれども、今回の地方公共団体の財政の健全化に関する法律案でございますが、これは、やはり現行制度の中におけます地方財政の健全化に向けて必要な制度をおつくりいただくということかと思います。ただ、先ほど申し上げましたように、これから実際に運営していくに際しましての課題ですとか、あるいは、地方分権改革が進んでいく中で新しい地方債の制度ですとか税財政の制度といったようなものが議論されてまいろうかと思います、そのときに、今回御検討いただいている制度をさらに発展させ充実させる、そういうことが必要だというふうに思っております。

 以上、簡単ではございますけれども、私からの意見陳述とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

佐藤委員長 ありがとうございました。

 次に、宮内参考人、お願いいたします。

宮内参考人 日本公認会計士協会副会長の宮内忍でございます。

 衆議院総務委員会に参考人としてお招きいただきまして、まことにありがとうございます。参考人招致は初めての経験で、いささか緊張しており、早口とならないよう留意しながら申し述べたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず最初に、夕張市の財政破綻問題について、私どもが感じているところを申し上げたいと思います。

 実は、まことに残念であり、大変遺憾に思っております。マスコミ報道によりますと、福祉、医療等の住民生活に直結する基本的なサービスが受けられないといった報道がなされており、今さらながら、地方公共団体の財政破綻が地域住民に与える影響の大きさに驚き、心痛めております。その意味で、同様の思いを持たれる国民、住民もふえているのではないかと推測されますが、総じて、国、地方公共団体の財務諸表、財務数値にどれだけの関心が持たれているかについては、いささか心もとない状況であろうかというふうに思うところでございます。

 これまでの私ども公認会計士協会のスタンスとしては、効率的で透明性の高い行財政運営の実現に資するため、会計、監査、さらに評価の実務上の問題点の整理等を行っており、また実務家としてこれに携わってまいりました。夕張市の事件を厳粛に受けとめ、会計専門家として国民の期待にこたえるよう、今後もより一層の公会計改革を推進していくよう最善の努力を行う決意でございます。

 ついては、この場をおかりして、次のような公会計改革の取り組みについて御理解をいただきたいというふうに思っております。

 まず、今回の法案の前に公会計改革が実はぜひ必要であるということでございますが、夕張市の財政破綻問題がもしなければ、地方公共団体の財政の健全化に関する法律案に先立って、公会計改革が必要であろうかというふうに私どもは考えておったわけでございます。

 地方公共団体の実態を適切に財務数値で示すことのできる公会計制度改革が実は必要であり、適切な財務情報に基づいて、地方議会等が政策判断、意思決定できるようなインフラの整備ということが実は最優先されるべき事柄ではなかったかと考えておるところでございます。

 この公会計改革の概要といたしましては、現状、地方公共団体の会計は、我々が申すところの現金主義、単式簿記の会計であると考えられております。これに対して、発生主義、複式簿記の会計へ移行していくということが必要ではないかというふうに考えております。

 現金主義、発生主義は、会計の報告の対象範囲の違いをあらわす用語でございます。多くの経済資源、これはプラスであれマイナスであれ、多くの経済資源を会計の報告の対象とする発生主義への転換がまず重要である。例えば、借入金のみならず、退職給付債務等の把握を通じた世代間負担の公平性についての議論材料を提供するということにも役立つわけでございます。今回の法制の中にはこのような退職給付の金額も含まれているやに伺っており、そういう意味では前進しているということが言えるのではないかと思い、評価させていただくところであります。

 もう一つ、単式簿記、複式簿記に関しては、これは記帳方法の、つまり記録の方式の違いでございます。記録の網羅性、秩序性、関連性において有為な複式簿記への転換が必要である。これは、地方財政法の中に簿記の形態についての記述はございませんが、今までのルールとしては、どうも単式簿記によっていると我々は分析しているわけでございます。

 適正な財務数値を用いて意思決定していかなければならないのは、何も投資意思決定だけではございません。政策決定においても適正な財務数値というのが非常に重要になるわけでございますが、これにおいて、財務諸表を適正につくるということの内部統制上の最低限の条件として、複式簿記というものが存在していることを我々は大きな声で言わなければならないというふうに理解しております。

 次に、公会計改革は、一般会計のみならず、特別会計や地方公営企業会計も含めた、いわば連結財務諸表の作成も取り込まないとならないというふうに考えております。

 夕張市の事例は、特別会計と一般会計の間の取引、及び、出納整理期間と一時借り入れといったような財政上のテクニックを用いた粉飾であるというふうに報道されております。そういう意味では、企業会計における連結に相当するような考え方を取り込んでこないと全体が見えないという状況であり、今回の法案の中にもそのような総合的な物の見方が含まれておることは高く評価されるべきであろうと私どもは考えておるところでございます。

 ただし、地方公営企業についても会計改革が必要であることを申し添えなければならないかと思います。

 地方公営企業においては、借入資本金であるとか退職給付の繰り延べ資産計上などといった、今企業会計においては一般的に取り入れられていない、言ってみれば世代間の負担の先送り的な要素が含まれている部分がございます。これらもあわせて進めていかなければならない重要なテーマであり、第三セクターも含めた経営状態が的確に把握できないため対応がおくれ、結果として一般会計からの補てんを余儀なくされている事例は枚挙にいとまがないのではないかというふうにも言われておるわけです。

 さて、今回の法律案について、財政の早期健全化と再生のための制度化に当たり、関係者の御尽力を高く評価しているところでございます。ぜひ今国会での成立をお願いする次第でありますが、協会としての意見を取りまとめる時間がございませんでしたので、僣越ながら、私見ではございますが所見を述べさせていただきたいと思います。

 法案は、再建制度を約五十年ぶりに抜本的に見直し、財政指標の整備とその開示を徹底し、財政の早期健全化及び再生を図る新たな法制度を整備するものであり、高く評価するものでございます。

 法案の内容としては、各種指標の制定、各会計をカバーする新たなフロー指標、公営企業、公社、第三セクターを含めた実質的負債をとらえるストック指標、それから、報告対象の発生主義的拡大と連結と同様の考え方が取り入れられているということについては、先ほど申しましたように、高く評価するところでございます。

 各種指標に基づく財政状態の判断と早期の財政健全化の義務づけ、さらなる財政状況の悪化に対する財政再生計画の策定義務づけ、これらは大いに評価すべき事柄であろうというふうに考えております。

 今回私どもが招致された理由といたしましては、恐らく、指標のうちいずれかが早期健全化基準以上になった場合には、公認会計士等と個別外部監査契約を締結しなければならないという点があるためであろうかというふうに考えるところでございます。

 これは、平成九年六月の地方自治法改正により、平成十一年度より包括外部監査制度が導入され、都道府県四十七、政令指定都市十四、中核市三十七、条例制定市区十一、計百九団体のうち九十九団体、約九〇%で公認会計士が就任しているという現状からのことではなかろうかと考えており、名誉に思う次第でございます。

 今後の法案審議、その後の政省令や別途行われている債務調整の検討に資する上で、あわせて意見を述べさせていただければと思っておるところでございます。

 一つは、監査は、実は万能薬ではないということでございます。

 監査を行えばすべての問題が解決するわけではなく、運営主体者が作成する情報に対して、監査というのは信頼性を付与する、そういう社会的仕組みであるということをぜひ御理解いただきたい。この辺の社会的な御理解がなかなかいただけていないというところが我々常に歯がゆい思いをするところではございますが、今回もその点に御留意いただきたいというふうに思うところでございます。

 その意味では、包括並びに個別外部監査は財務諸表監査にはなっていないということについても、御理解を賜りたいところでございます。

 いずれも監査の用語を使用しているため、誤解はやむを得ないというところであろうかと思いますが、外部監査は、事件、テーマを選定し、これに対して法規準拠性、経済性、効率性、有効性についてコメントするものであり、調査ないしコンサルティングというふうに言った方が適切なのではないかと私どもは考えておるところでございます。

 したがって、夕張市の事案を包括外部監査により発見できたかというような新聞報道がございましたが、これらについては、私どもは困難であろうというふうに考えておるところでございます。

 もう一つ、今回の問題と並列的に解決していただきたい問題がございます。先ほどから申し上げておりますが、指標作成の基礎資料の適正性の確保というのがまず大前提であろうかと思料するところでございます。

 その意味では、適正な公会計基準の制定、先ほど申しました発生主義会計を採用するという形で適正な公会計基準の制定を行っていただきたいということ、それから、上記会計基準に準拠した財務諸表が作成されているのか否かということに対する財務諸表監査を導入していただきたいというのが大前提でございますが、この財務諸表監査導入に当たっても、先ほど申しましたように、最低限の内部統制の整備として、複式簿記の採用というのが不可欠であるということについて御理解を賜りたいと思っております。

 個別外部監査制度のもう一つ懸念するところがございます。実は、個別外部監査制度の担い手というものが確保できるのかどうかという問題でございます。

 再生法ないしは健全化法の適用団体の財政状態で適正な報酬が確保され得るのかどうか。私ども会計士は監査の対象になっているところの財政状況をつぶさに見るわけですから、どれぐらい払えるのかということについては、懐を探っているようなことになりますのでよくわかるということで、ないそでは振れないと言われると、まことにそのとおりであるということで、お引き受けをしないか、さもなければボランティアスピリットに任せてこれをお引き受けするという方法をとらざるを得ないという状況もあろうかと思います。そういう意味での担い手の確保についても考えていただければありがたいというふうに思うところでございます。

 それともう一つ、健全化計画の達成状況の判定のための継続的な財務諸表の活用並びに財務諸表の信頼性の確保というのが、ここの中においても重要なテーマになってくるであろうというふうに私どもは考えておるところでございます。

 最後になりますが、地方公共団体の財政状況はかなり逼迫していると言われております。第二、第三の夕張市を出さないためにも、本法案の今国会での成立をぜひお願いする次第であります。日本公認会計士協会といたしましても、会計、監査のプロフェッションとして、今後とも地方財政の健全化に協力する決意であることを申し添えたいと思います。

 どうもありがとうございました。(拍手)

佐藤委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岡本芳郎君。

岡本(芳)委員 自由民主党の岡本芳郎でございます。

 きょうは、貴重なお時間をいただきまして、御意見を大変ありがとうございました。今後の審議の参考にしていきたいと思っております。たくさん御意見を言っていただいたわけでございますが、とうとうと言われまして、聞くのも大変でございましたが……。

 だれもが感じておるところでございますが、今、国の経済は順調に回復しつつあるわけでございますけれども、まだ国も地方も膨大な借金を抱えておりまして、今や、国、県を通じた行財政改革というのは、喫緊の課題であるというふうに認識しておるところでございます。

 とりわけ地方経済につきましては、いまだに回復の兆しは見られておりません。こういう点から、何とか地方財政をしっかりさせなきゃいけないなと思うところでございます。このような状況の中で、先般、夕張市が財政再建団体になるということは、まさに地方の厳しさを見せつけられているようなものではないかと思うところでございます。

 地方財政改善のためには、いろいろな方策が考えられております。例えば、地方分権、税財源の移譲あるいは地方の行財政改革等々いろいろな面があるわけでございますが、何はともあれ、第二、第三の夕張が出ないように、早急に手を打つことが急がれると思っております。

 ただ、地方自治体というのは、やはり本来的には、みずからの財政は自分の責任において健全に運営しなければならない、これは当然でございます。ところが、今回のようなことになった結果、どうも法律で縛らなきゃならないような状況になった、これは不幸な面ではないかなと残念にも思うところでございます。しかし、必要なのはやむを得ないだろうとも思っております。

 そこで、思うんですが、今先生方からいろいろお伺いしたわけでございますけれども、指標の決め方ですね、基準。これは、例えば井戸知事の方からはいろいろな検討課題をたくさん言われましたけれども、これを全部網羅するような基準値が果たしてできるのだろうかというようなことも心配するわけでございますし、各先生方皆さんそうでございますが、非常に難しいんですね。ただ、これを運用していく、実施していく場合には、何らかの数字をぴしっと決めなきゃいけない。例えば今の起債の許可基準だとか、あるいは再建団体になる赤字財政の基準だとかあるわけですけれども、こういったものをぴしっと決めなければいかぬわけですね。それが幾つもあるというのも、これはまた複雑化していくわけでございます。

 非常に難しいわけでございますが、三人の先生方の感覚をちょっと教えていただきたいわけでございます。よろしくお願いいたします。

井戸参考人 いろいろな問題点を申し上げましたのは、実を言いますと、そのような諸点を十分踏まえた上で基準の設定をする必要があるから申し上げたわけでございます。

 しかし、基準として運用するためにはどうしても一定の冷厳な数値なりを設定せざるを得ませんので、その数値に基づいて、健全化段階、再生段階を決めざるを得ない。これも構造的にやむを得ないところだと思っております。

 私は、今回の法制度において非常に意義があるのは、実を言いますと、昭和三十年の財政再建団体の法律は、もう地方財政が真っ赤っかで各団体がどうにもならなくて、逆に、健全化計画をつくって、そして手を挙げてもらうことによって助けていくという要因がかなりありました。ですから、兵庫県も財政再建団体に昭和三十一年から三十六年までなっておりました。こういう制度だったんですが、今回の制度は、逆に、事前の予防措置を各団体がとれるような、そういう意味でのいろいろな警鐘措置を重点にしていこう、それで最後は再生段階できちっとした対応ができるような道具立てを用意しておこうというところにあるのではないか、私はこのように思っています。

 したがいまして、各種指標が事前に議会にも報告され、その前には監査委員の方できちっとその指標の健全性をチェックされて、議会にも報告され、県民にも公表され、そして最終的には総務大臣にも報告されるというような事前の警鐘措置がとられているということに意義があるのではないか。それに対応して、財政状況を県民自身が把握でき、そしてそれに基づく行政サービス等のあり方について考えることができる、ひいては当該団体の財政運営の一つの大きな基盤をなす、そこに今回の法制度の意義があるのではないか、私はそのように思います。

 基準をどのように設定するかというのはいろいろな議論があろうと思いますが、これはしばらく議論させていただきたいと思っていますけれども、いろいろな指標、しかも大切な指標が公開されて、警鐘として、シグナルとして県民等に発信されるということは非常に望ましい制度ではないか、このように考えております。

宮脇参考人 御質問にお答えさせていただきます。

 こういうところでの言葉としては余りよくないのかもしれませんけれども、私ども社会学の世界の人間でまいりますと、社会学の数字というのはうそをついて、うそつきがつくる、そういう言葉がございます。

 このうそというのは、ある意味でいいますと、一定の考え方ですとか、そういったものを反映したものになるということで、今先生が御指摘くださいましたように、指標というものについて絶対的に正しいというようなものが社会学の中にあるのかといいますと、それは極めて疑わしいというふうに申さざるを得ないと思っております。

 ですから、今回おつくりいただく指標につきましても、それではでき上がってきた指標というものが判定する場合に絶対的に正しいものなのか、あるいは評価をするときに正しいものであるかということは、常にチェックをしていく必要性があるのだろうと思います。

 したがいまして、その指標をつくり上げる前提となりましたデータ、こういったものが常にオープンにされていること、あるいは、適用されている指標につきましても、できれば第三者的な機関が、そういった地方財政を見る場合の体温計としてどれだけの適正性があるのかを継続的に評価、判断していくといったような仕組みをつくりませんと、基準というのはどうしても時代の変化とともに陳腐化していってしまうということではないかと思っております。

 指標につきましては、やはりどんな指標でも欠点というものがございますので、その欠点をどこまで認識して、これを改善し活用していくか、そういう仕組みをつくるということが指標への信頼性を担保することになるのではないかと思っております。

 以上でございます。

宮内参考人 私も宮脇先生と同じように、会計、監査の専門家でございましてコンサルタントの専門家ではございません、そういう意味で指標をどうつくるのかということについて的確な知見を持っていると思っておりませんが、我々が考えている指標というのは、常に変わっていくものであろうと。企業の指標と全く同じものが会計の仕組みが違う地方公共団体においてそのまま使えるということもないであろうということは十分に理解しておりますので、恐らくこれは、トライ・アンド・エラーを繰り返していき妥当な線におさまっていくという継続的なフォローが必要になっていくのではないかというふうに考えているところでございます。

岡本(芳)委員 ありがとうございました。

 変化する数字であっても仕方ないというような感じでございますので、十分また検討していきたいと思っております。

 次に、先ほど宮内先生の方から夕張の話がちょっと出たわけでございます。私たちが見た場合、例えば行政だとかあるいは議会が非難され、いろいろ処分を受けるのは、これは当然ですよね。ところが、結果を見ると、どうも、より弱者に厳しくかかっていっているわけですね。高齢者だとか障害者だとか、あるいは学校の統合で大変なことになる子供だとか、ちょっと変な気がするんですね。例えばお金を貸した例の金融機関、一切責任をしょっていないわけですね。これはどう見てもやはりおかしい、そういう声もあるわけですよ。

 そこで、いわゆる債務調整というのは皆さんいろいろ御意見あると思うんですが、やはりもうちょっと厳しく審査してやるべきだと私は思うんですが、そういう点について、明快な御意見をお伺いしたいと思います。

宮脇参考人 お答えさせていただきます。

 夕張の件等を見させていただきましても、先生御指摘のとおりで、最終的に財政的な再建におけます負担というものは、もちろん行政機関も大きく負いますけれども、地域住民の皆さんが非常につらい状況がもたらされるということは御指摘のとおりだろうと思います。

 やはり、地方債に関する責任というものを考えていった場合に、行政機関ですとか、あるいはここは住民のチェック、そういったところも当然入ろうかと思いますけれども、借り手の方の責任と、それからもう一つは、よく言われることですが、貸し手側の責任をどういうふうに考えていくのかということは、私は非常に重要なポイントであろうというふうに思っております。

 ところが、御承知のように、現行の地方債の制度でまいりますと、これはあるかないかというところについても議論があるんですが、いわゆる暗黙の政府保証と言われる言葉がございますけれども、地方債の許可ですとかそういったものによって、実質的に最終的に国が負担をしていただけるのではないかという期待感を持った中で金融機関の方が融資をされているといったような状況もあろうかというふうに思っております。

 したがいまして、こういう地方自治体に対する融資につきまして、例えばもう少し細かく見ていって、いろいろな事業性のあるものですとか、あるいはそれ以外のものについての融資について、どのように銀行側、貸し手側の責任を組み立てていくことができるのか、こういったことにつきまして、総務省の研究会の方でも今議論をさせていただいております。次回の研究会におきましては、金融機関等にもお越しいただきまして、こういった融資につきまして、どのような視点でなされたのかといったようなことをお聞かせいただき、議論に反映させていきたいと思っております。

 以上でございます。

岡本(芳)委員 夕張の場合、加担しているんですよね、金融機関が本当に。一時借入金とかなんとかいって、ごまかしてやっているわけでしょう。だから、金融機関も当然知っておるわけですね。なのに、何の罪もしょわない。どう見てもおかしい。こういったことをこれからの制度で研究していただきたいと思うわけでございますが、こういうことはぜひ改めていかなければならないと思います。

 それから最後の、三つ目の質問でございますが、今、地方財政、大変厳しいわけでございまして、新聞等でにぎわしておりますが、ふるさと納税、いろいろ言われております。あるいは法人二税の見直しだとか消費税の見直しだとか、いろいろ意見があるわけでございますが、その中で特にふるさと納税について、三人の参考人の皆さんにぜひ御意見をお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。

井戸参考人 ふるさと納税についての御質問がございました。

 先日、十八日も全国知事会の総会で話題になりまして、大都市側を代表される知事さん方はどうも消極、地方側の知事さん方は積極という、非常に予想される構図になったわけでありますけれども、私自身からいたしますと、ある意味で、もう今二十一世紀の時代、社会経済を支えているのは人材であります。その養成コストを地方が負担して人材を養成して、そして大都市部で働いておられる。それで、その人たちが、ではお父さん、お母さん等が住んでおられる地方の介護保険等の負担をしているかというと、負担をしていない。そして最終的に、両親が亡くなったら相続して財産までとってしまう、こういう状況になるわけですね。そういう非常に負担感の不平等という意識は、かなり地方側にあるのではないか、このように思います。

 それに対して、ふるさと納税という言葉がひとり歩きしておりますけれども、一方で、地方団体というのは、住民と地域と自主的な運営団体、法人という、この三要素があって初めて成立しているわけでありますが、その区域があるということは、実を言うと、課税権の帰属というのもその区域との関連で考えられる。つまり、そこで行われている行政サービスと負担との関係で考えられているということがありますので、その課税権の帰属を納税者が勝手に動かせるような仕掛けがいいのだろうかという基本問題がございます。

 ただ一方で、既に平成六年にふるさと寄附金制度がつくられておりまして、その寄附金をしますと、寄附金控除の一環として控除されるという仕掛けがございます。したがいまして、そういう趣旨としてなり、あるいは地域間の負担感の相違というものに対して税制度としてどこまで対応できるのかどうか、これはかなり慎重な議論が要るのではないかと思いますが、その場合に、私自身も、寄附金控除制度等をうまく活用するということは一つの方策ではないか、このように思っております。

 もう一つ、いずれにしてもこの話は、税配分の地域格差を是正する手段として使うということを目的としようとするならば、それはきっと趣旨が違うだろう。税配分の不適切さを是正するのは、それはやはり国税、地方税を通ずる税体系のあり方をどうするかとか、国、地方の税源配分をどのようにして組み合わせていくのかとか、交付税制度を中心とする調整制度をどうつくっていくかということではないか。しかし一方で、納税者、率直な負担感の不公平さみたいなものに対してどうこたえていくかという意味での一石を投じているのではないか、このように評価をしております。

 税制度として仕掛けるのはなかなか困難な課題がいろいろあるのではないか、だからそこをクリアできるかどうかではないか。私自身は、寄附金控除制度等を活用するというのは一つの考え方ではないか、このように思っております。

宮脇参考人 お答えさせていただきます。

 今も御指摘がございましたけれども、受益と負担という関係からまいりますと、現行税制の中でいきますと極めて難しい問題をはらんでいるというふうに思います。ただ、受益と負担ということを、例えばですけれども、生涯を通じた部分の視点から見る、あるいは世代間の関係の中から受益と負担を考えていくという別の視点を取り入れますと、この制度というものも、ある程度、制度設計がなし得るのかなという点もございます。

 といいますのは、先ほど御指摘もございましたけれども、これは地方財政に密接に関係する部分でございますが、最近起こる事例といたしまして、相続が起きますと、その相続を受けるお子さんの方は大都市部におられますので、今度は地方の方の金融資産がそのまま自動的に東京の方に移ってしまう、そういうことで地方財政そのものの体力が落ちてしまう、地方債調達の面でございますけれども、そういうことも起こってきております。

 したがいまして、世代を通じて地域のつくり方というのをどう考えていくのかといったような大きな視点からこれも議論をしていかなければならないのではないかなと思っております。

宮内参考人 お答えいたしますというか、お答えにならないと思います。

 実は、私どもは財政の専門家では決してございません。何度も申しましたように、会計、監査の専門家でございます。個人的な意見はございますが、私どもの基本的な、日本公認会計士協会としては税財源の負担とこれのあり方について議論をしたことがございませんので、今回は控えさせていただければと思います。

岡本(芳)委員 大変貴重な御意見、ありがとうございました。ふるさと納税、これから本格的議論になると思いますが、やはり地方は非常に厳しいわけでございますので、いろいろ考えていきたいと思っております。

 どうもありがとうございました。

佐藤委員長 次に、谷口隆義君。

谷口(隆)委員 公明党の谷口隆義でございます。おはようございます。

 参考人の皆様方には、御多用の中、当委員会に出席を賜りましてありがとうございます。

 いわゆる財政健全化法と言われるこの法律は、地方団体が大変関心を持ってこの審議の推移を見ていることだと思います。先ほどから三人の参考人の皆さんの御意見を賜っておったわけでございますが、やはり、そもそもこの法案は、竹中大臣の折に、地方分権二十一世紀ビジョン懇といいます私的懇談会から実質的にはスタートしたんだろうと思います。もっとたどりますと、平成十七年でしたですか、三位一体改革が行われて、地方分権の方向を模索しておる状況の中で私的懇談会が開かれたということなんだろうと思います。

 それで、やはりイエローカードを途中で、突然夕張市のように財政が悪化したことが判明して、いろいろ財政上の、経理上の不適正なところがあったと聞いておりますけれども、これではやはり地方団体は困りますし、もっと困るのは地域の皆さんですね。今、夕張の状況を見ておりますと、大変地域の皆さんがお困りになっておるわけで、そういう意味では、この法案は非常にいい、この法案を一刻も早く成立させる必要があると思っておるわけでございます。

 そこで、まず初めに、きょうは宮内参考人も来ていらっしゃいますので、公会計のことだとか四つの指標のことについてお伺いをいたしたいと思います。

 先ほど宮脇参考人の方からお話をしておられた、比較可能性を担保する必要がある、そのことによって信頼性を担保できるんだというようなことがあったわけでございますけれども、しかし、現状は一体どういうようになっておるかといいますと、先ほど宮内参考人からおっしゃったように、現金主義に基づいた単式簿記によって財務書類をつくっておる自治体もあり、また、先進的なところと言えるんでしょうか、複式簿記で発生主義に基づく財務書類をつくっておるところもあります。

 では、そもそも計算書類、財務書類とは一体どういう目的なのかといったときには、当該自治体の過去の趨勢を見るということもあるでしょうし、今の現状を住民の皆さんに公開するということもあるでしょうし、またほかの自治体との間の比較をするという意味も非常に重要なところがあるわけでございますが、一方で、今の現状はまちまちでございますので、当該自治体のトレンドは見られてもほかの自治体との間の比較ができない、こういうような状況がございます。

 ですから、まず統一的な公会計を一刻も早くつくり上げてこれを採用すべきであるというように言っておるわけでございますが、このことにつきまして、宮内参考人、宮脇参考人、また井戸参考人、三人にお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。

井戸参考人 従来、自治体の財政運営の健全性というのを見る場合に、例えば自主財源がどれだけあるか、自主財源比率、それから人件費等の経常的経費が一般財源で賄い切れているかどうか、経常収支比率、それから例えば公債費のウエートが一般財源にどれだけ占めているか、公債費比率というような比率を中心に運営をしてまいりました。これはいずれも、どちらかといいますと単年度単年度の財政運営を見るフロー指標でございまして、ようやく去年の秋から、実質公債費比率という形で、県債管理基金の積み立て状況も反映するストック指標の要素が入れられたということであります。

 従来は、普通会計を中心にして考えてきていた。公営企業会計ですとか、あるいは、本来的に債務負担行為で持っておりますような、将来ツケが回ってくるかもしれないんだけれども、そのツケの回ってくるのが将来なのでそこは勘定に入れないというような形での財政指標を中心として運営をしてまいりました。

 今回議論になっておりますのは、それでは結果として地方公共団体全体としての財政運営状況が明らかになっていないのではないか、それが最終的にやはりいろいろな団体の財政の不健全さにつながっているのではないかというところから、私は、先ほども触れましたように、財政状況をできるだけオープンにする、明らかにするということに今回の健全化法の趣旨が一つあるのではないか。そのために、オープンの仕方を、正式な手続を定めてオープンにしていこうということ。そのオープンにすることを通じて、財政状況がどんどん悪くなっているのではないか、あるいはどんどん改善しているのではないかとみんなが評価できる、そういうことをできるようにしていこうではないかというのが一つの大きなねらいではないか、このように思っております。

 したがいまして、四つの指標を一つのトリガーにしよう、基準にしようということもありますが、基準値を設定されたら、その基準値の以前に、だんだん基準値に近づいているのか近づいていないのかというのがわかってまいりますので、そのことによってその団体の財政の状況から見た運営規制が働いていく、そのことが非常に意味がある制度になっているのではないか、このように私自身は評価をしているところでございます。

宮脇参考人 データについての比較可能性ということでございますけれども、私は大きく分けて二つの視点があろうかと思います。

 先生の方からも御指摘いただきましたように、時間軸の中で比較をする、過去と将来も含めまして比較をするということがございます。

 この場合に重要なことは、やはり網羅性ということではないかと思っております。特に、地方財政の場合には、従来のように普通会計を中心とした赤字というところだけ見ておりますと、どうしてもその視野外のところに赤字がたまってしまうというようなこともございます。それから、自治体の中では、予算書等を拝見させていただきますと、大変地方財政は苦しゅうございますので、当初予算の中に例えば予算操作といったような科目というのが存在する。こういう科目がそれでは公会計上どういう処理をするべきなのかといったような問題もまたあろうかと思います。したがいまして、まず時系列の中で比較可能性を担保する、そのためには網羅性というものが必要だと思っております。

 その上で、他の自治体等との比較におきましては、やはり公会計の整備というのが絶対条件であって、まずこれをきちっとしませんと比較をしても正しい結果が出てこない、その結果を評価にかけてしまうといったような、間違った結果をもたらしてしまいます。したがいまして、公会計の整備とセットの問題ではないか、あるいは前提として踏まえておかなければならない問題だと私は思っております。

宮内参考人 お答えいたします。

 我々会計の専門家といたしましては、会計を行うに当たっては、一般に公正妥当と認められる会計のルールというものの存在を前提にいたしませんと、何が適正な財務諸表であるかの判断が全くできないということになります。

 したがって、会計に関しては、必ず会計のルール、会計基準というものが存在していないとならない。その会計の基準自体、現在もあるわけですけれども、それが必ずしも統一的、網羅的に行われているかどうか、会計の記録という観点から見ると、なかなかそのようになっていないのではないかという感想を持っております。

 そういう意味で、いわゆる財産の保全の機能を十分に備えた、複式簿記とこれを合わせて、発生主義的な会計を持ち込んでこないと、公会計においても十分に説明できるような内容になっていかないというふうに感じているところでございます。

谷口(隆)委員 そうなんだろうと思います。やはり一つのルールがないと、それぞれの自治体の事情で公表される財務書類が大きく異なるということでは困るわけで、住民の皆さんも当然ながら困るわけでございますから、こういう整備を一刻も早くやっていただかなければなりません。

 今回、指標が四つございまして、先ほど宮脇先生がおっしゃったように、従来は実質収支比率ということを中心にして見てまいりまして、また、実質公債費比率ということで、起債の条件も変わってまいりました。今回は、実質赤字比率、連結実質赤字比率、実質公債費比率、将来負担比率、この四つの比率で再建団体であるかどうかを判断しよう、将来負担比率を除いた三つの指標で再生団体かどうかを判断しよう、こういうような状況になっておるわけでございますが、この連結の実質赤字比率というのは初めてなんですね。

 それで、先ほど宮脇先生もおっしゃっておったわけでありますけれども、やはり私たちは、自治体の状況を見ておりますと、国もそうでございますけれども、単体、一般会計だけではわかりません。ですから、もっと重要な問題がほかにないのか。例えば、土地開発公社に塩漬けの土地がないのかとか、また三セクでどういう状況になっておるのかということが、これも先ほど宮脇先生がおっしゃっていることを聞きますと、最終的には普通会計の方に影響するから普通会計でわかるんだ、こういうことなんだろうと思いますが、しかしそれにはやはりタイムラグがありますから。

 この連結実質赤字比率の中に、今回、私はどういう状況でこういうふうになったのかわかりませんけれども、公営企業までになっているわけですね。特別会計まで。ですから、地方の独立行政法人だとか公社だとか三セクは入っておらない。こういうようになっておるわけですけれども、このことについて一体どのようにお考えなのか。端的に、ポイントを得た御回答をいただければありがたいのですが、三人の参考人の方にお願いいたします。

井戸参考人 私は、実を言いますと、連結実質赤字比率をどのようにカウントしていくのかについては、かなり技術的にも難しいところがあると思っています。

 といいますのは、今先生おっしゃった第三セクターだとか別法人になっているようなものとの関係ももちろんありますが、公営企業のように独立採算で、しかも料金やその他の収入をもって転がすのが正しいとされているようなものの赤字と、普通会計で税金でもって運営するのが正しいとされている部分とを単純に足していいのだろうか。というのは、公営企業は、それこそ公営企業の原則に基づいて企業としての独立性を保ちながら運営していこうという趣旨ですので、公営企業の側であっても単純に足していいのだろうかという疑問を持っております。

 ただ、基本的に、今、連結実質赤字比率でトータルにするときに分けられたのは、同一法人なのか同一法人でないのかというところが一番大きなメルクマールになったのではないかと存じます。そのような意味では、そこで切るというのはどうしても一つの判断ではないか、このように思います。

 公営企業でも、先ほどもちょっと触れましたように、民間が行っているのと同じような事業、地域開発事業、住宅整備とかというようなものと、地下鉄だとかバス、バスなんかは民間も随分多いんですが、地下鉄だとかあるいは病院だとかあるいは上下水道、こういうものについてどう考えるのかということになってきますと、これを単純に、赤字が出たから普通会計の責任で、足してみたら一定基準をオーバーして直ちに再生団体だというふうになるんだとすると、それはきっと一般の方々も理解できないということになるのではないか。

 そのような意味で、カウントの仕方をこれから十分に、私どもも提言させていただきますが、議論をして詰めさせていただきたいな、このように思っているところでございます。

宮脇参考人 基本的には、今もお話がございましたように、法人あるいは財政の単位としての性格がかなり違うということがございまして、そこを、全体を連結するということには問題があるというふうに思っております。

 もう一方で、それでは第三セクター等の部分についてどう判断するのかということにつきましては、やはりストック指標の方をどのように充実させるのか、あるいは信頼性のあるものにするのかというようなところが非常に重要な問題で、ストック指標からフローに対する影響といったようなところもまた分析をする必要性があるのではないかと思っております。

宮内参考人 会計士の感覚で申しますと、最終的に負担をしなければならない立場にあるものは、合わせて考慮しなければならないというふうに考えているところでございます。

 ただ、ガバナンスの違い等がございますので、いわゆる企業の連結という感覚とは恐らく違った物の見方をしなければならない。これは、国、日本国の財務諸表を作成しろという話になったときに、地方財政まで含めるのか含めないのかという問題は当然出てくるかと思います。そのときに、地方財政が連結の対象である、こういうふうに申し上げたら、恐らく全国の首長さん方は大変激怒されるのではないかと思います。

 したがって、支配従属の関係というロジックではなくて、最終的に財政負担を持たなければならないところについては、やはり何らかの形で考慮する仕組みを持ち込んでこないとならないのではないかというふうには考えておるところでございます。

谷口(隆)委員 全くおっしゃるとおりなんだろうと思います。

 やはり民間企業ではありませんから、井戸参考人もおっしゃったように、病院会計もあるし、年金も非常に重要な問題だから、なかなかそれも一体にして実質赤字比率でやられちゃうと困るねというようなところがあるんだろうと思います。しかし、いずれにしても、最終的に自治体また地域住民の負担になるということは間違いのない話でございますから、そこは何らかの経営上の努力もしていただかなきゃいかぬというような観点もまた一方であるというようなことだと思いますね。

 それで、あと残り時間がそんなにございませんので、最後に債務調整のお話、先ほどの岡本先生も聞いていらっしゃいましたけれども、銀行がどうして全部焦げつきなしに回収できるのかというような話がありました。

 債務調整ということになってまいりますと、これは債権を切り捨てるという話ですから、そうなってくると痛しかゆしのところで、今、井戸参考人と宮脇参考人の意見がどうも違うようなことでございました。井戸参考人の方は、全国知事会の方針でしょうけれども、やはりこの債務調整は適切ではないというような御発言があり、宮脇参考人の方はいささか前向きな発言があったように思います。菅大臣も、今回はこの法案に入っておりませんけれども、積極的なお考えのように感じます。

 この債務調整について、いろいろ意見の違いがあるんだろうと思いますけれども、もう一度お考えを三人の参考人の皆さんにお伺いをいたしたいと思います。

井戸参考人 債務調整については、昨年の中間報告で触れさせていただいていまして、地方公共団体の特に一般的な行政をつかさどっている部分の状況を考えますと、財源が基本的に税、交付税ですので、こういう部分について債務調整がなじむかという問題と、それから、弱小団体において、もしそういう一般的な債務調整措置が前提だとされたときに、起債、地方債を発行する、借金をしようとしたときに非常に多くのリスク負担をさせられてしまうおそれがあるということもありまして、基本的な意味で、債務調整を入れていくというのはいかがだろうかという方向で議論がされております。しかし、それ以上の議論にまだなっておりません。

 私自身は、先ほど言いましたように、公営企業等で民間に準ずるようなもの、これらについて債務調整全くなしでいいのかというふうに言われますと、いささか銀行としても貸し手責任というのを考える必要があるのではないかと率直に思います。したがって、債務調整をしていい分野、して悪い分野というのをきちっと分けて基本的な仕掛けを考えていく必要があるのではないか。

 ただ、それを、それだけのきめの細かい地方財政制度を仕掛けられるかどうかというもう一方の問題がありますし、地方債というのには色がついていないじゃないか、兵庫県債というのが、これは公営企業なのか、これは一般会計なのか、つけるようにすればいいんですけれども、そういう色がついていないではないのかというような議論もありますので、債務調整の仕掛けについては、実態と、それから基本的な民間の事業との区別があるのかないのかというようなところを基本にしながら仕掛けていく必要があるのではないか、このように考えております。

宮脇参考人 債務調整についてでございますけれども、地方債、御承知のように、非常にカバーしている事業の種類が多うございます。したがいまして、地方債という一言で整理をするのではなくて、やはりその事業の種類ごとに、それでは可能であるのか、そうではないのかといったような分析をしていく必要性があるんだろうと思っております。

 それから、あくまでもこれは、現行制度の中で債務調整ということを考えるというのは極めて難しいと思っております。分権改革等の中で、地方債、こういったもののあり方などが見直されていく中で、それではその範囲はどうあるべきかといったような議論というのは、これは一度する可能性というのがあるのではないかと思っておりますけれども、現行制度の中でこの地方債に対する債務調整といったようなことを考えるということは、そもそも土台のところで少し違うのではないかというふうに思っております。

宮内参考人 これまた私ども、地方債の債務調整の問題について議論してきたことがございません。ここでお答えするのは適切ではないと思います。

 ただ、一点、マーケットにおいて、いわゆる証券取引法のマーケットにおいて対象とされる債券であることには変わりありません。そうすると、基本的には、これらの前提条件としてディスクロージャーが十分に行われるべきであるということは、他のものと異なるところはないと思われます。そういう意味で、先ほど申しましたように、インフラの整備として、会計基準の整備並びにディスクロージャーのより充実といったことが望まれるというふうに私ども考えておるところでございます。

谷口(隆)委員 三人の参考人の皆さん、ありがとうございました。

 私、やはりある程度の緊張感というのは持っていかなきゃいかぬと思うんですね。まさに井戸参考人がおっしゃったようなことなんだと思います。システムの中に入れてしまうと非常に難しいところがあるんですけれども、そうかといって、今のまま置いておくということになってくると、やはり緊張感に欠けるところもあるかもわかりません。個人的には、今後そういうようなことが必要であれば、何かいい方法を考えて、また何らかの対応をしていくことも必要かなというような考え方は持っておりますが、いずれにいたしましても、この法案、早急に成立をするように頑張ってまいりたいと思っていますので、またどうぞよろしくお願いします。

佐藤委員長 次に、西村智奈美君。

西村(智)委員 民主党の西村智奈美と申します。

 きょうは、参考人の皆様、本当に貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。全部メモがとり切れなかったんですけれども、後で議事録をよくまた読みまして、今後の法案審議の参考にさせていただきたいと思います。本当に貴重な御意見を、大所高所から、また細かいところまでいただいたというふうに考えております。

 今回の健全化法案でありますけれども、私は、国と地方の関係を見直す上で、大きなパラダイム転換のきっかけになるのではないかというふうに実は考えております。約五十年ぶりの大型改正ということになるわけでありますけれども、言ってみれば、この五十年間というのは、長期安定政権があり、そしてまた中央集権によってこの国はコントロールされ、そして高度経済成長が行われてきた。この三つが進んできた、こういう五十年間だったんだろうと思います。

 しかし、もう時代は大きく変わりまして、高度経済成長というよりは人口減少、そして国際化など、本当に社会の潮目が大きく変わっている中で、国と自治体のあり方を大きく変えなければならない、変えざるを得ない、そういう時期にあるんだろうとも考えています。今回、竹中総務大臣の時代からの議論もあったんでしょうが、言ってみればこれは時代の必然たる法案ではないのかなとも考えております。しかし、その大きなパラダイム転換のきっかけとなり得る法案である割には、いささか議論が小さいなというふうに感じております。

 特に、三人の参考人の方々が指摘してくださったいわゆる基準、指標についてでありますけれども、早期健全化基準と、それから財政再生基準、この二つについては、この法律の中ではなくて政令で定められるということになっております。もっと地方からいろいろな声が上がってきていいというふうに考えておりますし、また、住民にしっかりとこのことを公開して、議論にも加わっていただいて、もっと大きな議論を巻き起こしていく必要があるのではないかと考えています。

 今ほど、いろいろな重要な点、御指摘をいただきました。早期に、来年度の予算編成の都合もあるので、ことしの秋ぐらいには示していただきたいというような御意見ですとか、あるいはその規模や実態に合わせて示すべきであるというようなことでありますとか、また、実際にその指標をつくったときに、それをどう評価するのか、分析するのか、この問題がまた別の軸としてあるという話ですとか、他の自治体と比較できるようにすべきだというような話ですとかいろいろあったわけなんですけれども、伺いたいのは、この基準づくりのプロセスについてであります。

 この指標づくりのプロセス、つくるまでのプロセスがどうあるべきで、そしてまた、つくってからのプロセスといいますか、つくって以降の基準の生かし方、使い方、また見直しの仕方、これについてはどうあるべきだとお考えなのか、三人の参考人の方々にそれぞれ伺います。

井戸参考人 私は、この健全化法は地方自治を促進する意味での一つの基礎的な装置ではないか、こう思っております。

 といいますのは、地方公共団体の自主性や自立性がこれからますます高まっていくということになりますと、その財政運営につきましてもその団体自身が責任を負わなきゃいけないわけであります。そのときにその責任をどのように負っていくかという、その最後のシステムをきちっと用意しておかないと、その地方団体自身の財政運営上の責任度合いが見えてこないということになりますので、そういう意味からすると、自主決定、自主責任、そして自主経営、そういう土俵を提供する一つの基盤をなす制度として位置づけられてしかるべきではないか。だからこそ事前情報の提供が制度化されている、このように私自身は理解をいたしております。

 今おっしゃいました具体の数値の作成に当たって、我々も、知事会や六団体自身も、自分たちが置かれている状況を踏まえながら意見を申し上げていこうと思っておりますし、総務省の担当の方も、できるだけそのような協議の場をつくって相談していこうと言われておりますので、そのような過程がとられていくだろうと思います。

 本来ですと法律でもっと明確に書くべきではないかという御指摘がありましたが、数値の成り立ちそのものが非常にいろいろな諸要素がありますので、私は、技術的にも書き切れなかった、あるいは実態的にも追加の事情等も踏まえる必要があるというような御考慮があったのではないか、このように拝察しています。

 あと、指標の運用等につきましては、先ほど来、健全化段階、再生段階のトリガーとしての機能もあると思いますが、私が評価しているのはその前の段階、当該団体の置かれている財政的な状況が公開されていく、そしてその公開に伴っていろいろな意味での評価の対象になっていく、そしてそれが団体の運営に対する県民、市民の判断基準になっていく、そのような意味での運用を期待していきたい、このように考えております。

宮脇参考人 お答えいたします。

 今御指摘いただきましたように、この法案というものは地方分権、地方自治を確立する上での一つの基礎になる、そういう法案であろうというふうに私は思っております。

 といいますのは、御承知のように、地方自治体におけます普通会計、こういったところの自由度というのが現状におきましては非常に小さいところがございます。したがいまして、そういった自由度が小さい中で、第三セクターですとかそういったところに新たな政策の展開というのを求めていく、そういう傾向があるわけですけれども、これから分権が進んでいく中におきましてはやはり財政面でも自治というものが求められるわけで、その意味で、そうした住民のチェック、議会のチェックというものを支えるための一つの仕組みとしてこういった法律ができていくのではないかというふうに思っております。

 ということは、指標をつくる、あるいは指標をチェックするに当たりましても、地方自治体あるいは住民の皆様がわかりやすい、そういった観点からの指標づくりというのはやはり必要であろうと思っております。

 ただ、先ほども御紹介させていただきましたように、指標というのは絶対的に正しいというものはございません。したがいまして、できた後のチェックというものがやはり常に必要であろう、そのチェックにつきましても、第三者的なところが継続的にチェックをし、その指標の体温計としての役割というのが本当に適切なのかどうなのかということを開かれたプロセスの中で整理していくことがやはり必要なのではないかというふうに思っております。

宮内参考人 お答えいたします。

 私どもも、先ほど申しましたように、指標自体が、毎年毎年変わるようなことがあっては困るわけですが、未来永劫変わらないというようなものには恐らくならないであろう、それから、まさしく今回これが初めてトライするという局面にございますので、これを継続的に、適正な運営が行い得る指標になっているのかどうかについての開かれた機関における再チェックという仕組みを用意して進めていくことが必要になるのではないかというふうに思っております。

西村(智)委員 ありがとうございます。

 続きまして、それぞれの参考人の方に伺っていきたいと思いますが、まず、宮内参考人からお願いいたします。

 私も、実は地方議会におりまして、監査委員の制度、多少なりとも近くで見ておりました。これは本当に機能しているのかなと思うことがしばしばあります。むしろ、外部の監査の方々の方が厳しい意見を述べておられることが多かったように記憶をしております。大きい自治体ですと、議員と都道府県、市町村のOBなりが入り、あるいは場合によっては有識者の方が入る、こういう構成になっているんだと思うんですね。

 この監査制度の現状について、公認会計士のお立場からどんなふうにごらんになっておられますでしょうか。知事に伺った方がよかったかもしれません。

宮内参考人 実は、監査委員になっている公認会計士もおりますところから、どのように回答していいのか、ちょっと私も困っております。

 かなり多くの行政OBの方が監査委員になられているというのが実態であろうかと思います。この辺は、監査機能がなければいけないということで制度というのはつくられてきております。企業においても監査役監査というのが同じように存在しており、この監査役監査が機能しているのかどうかというのは常に問題になり、なおかつここをエンパワーメントする仕組みというのが常に構築され改革されてきているという歴史を持っております。そういう意味で、監査委員制度が今のままで大丈夫なのかという点に関して言えば、これをより機能化するためにどうしたらいいのかという問題を抱えておるのではないかと思います。

 また、先ほど申しましたように、これの補完的な役割として包括外部監査制度というものも入ってきているということからすると、人によっては二重になっているのではないかという意見を述べられる方もおられるかと思いますが、もともとの機能自体は監査委員監査よりもより限定されたものに包括外部監査制度はなっておりますので、そういう意味では、今の仕組みとしては必ずしも二重になっているわけではないというふうに感じておるところでございます。

 お答えになっているかどうか、ちょっとわかりませんが。

西村(智)委員 私、自治体の中にある監査委員制度、これはもうちょっとやはり機能を強化していく必要があるのではないかと感じております。常勤で、常にチェックできるわけですので、ここはもうちょっと何とかできるのではないかなというふうに感じておるんですけれども、この点について宮脇参考人にも御意見をお伺いできればと思います。

宮脇参考人 監査に関する御質問でございますけれども、私も、地方自治体に対しますそういう監査のあり方ということは、やはりもう少し見直していかなければいけないというふうに思っております。

 今、外部監査につきましては包括と個別ということで御指摘ございましたけれども、ここで行っている監査の領域というのは、ある意味でいいますと非常に限定的な性格を持っております。自治体に対します全体的な財務諸表も含めた監査ということになりますと、外部監査ということではなくて、きちっと継続的にやっていくという機能が必要でございますので、先生御指摘の監査機能の強化といったようなことはやはり大きな課題であるというふうに私は思います。

西村(智)委員 ありがとうございます。

 先ほどいろいろな意見を述べていただいた中で、公営企業ですとか第三セクター、公社についてこの法律が適用されることになれば、恐らくかなり厳しい状況になるのではないか、そういう御意見があったかと存じます。

 私も、実際に多くの例えば地方の公立病院などを見ておりますと、まあ間違いなく、間違いなくといいますか、指標がどうつくられるかというところがまず問題になるわけでありますけれども、実際にかなり厳しい経営を迫られているというふうに承知をしております。

 先ほど債務調整についても少しお話が出ていまして、議論を聞きながら考えたんですけれども、つまるところ、何が地方自治体にゆだねられるべきなのか、国と地方との関係あるいは公と民との関係で、何が地方自治体にゆだねられるべきなのかという議論がやはり放置されたままになっているところからこういった問題が出てきているのではないかなと考えております。

 ここは井戸参考人に伺いたいんです。

 そういったいわゆる地方行財政改革、今、第二期分権改革の中にあると言われているわけなんですけれども、この点の議論がもう少し進むべきなのではないか、そしてその上で再建法制の中での基準づくりも考えられていくべきではないかな、私はこんなふうに考えているところなんですが、井戸参考人、いかがお考えでしょうか。

井戸参考人 非常に大事な御指摘だと思います。

 といいますのは、今の日本の国、地方を通じた仕事のやり方というのは、二重、三重になっているんです。道路一つつくるのを見てみましても、市町村道も国の補助金と市町村の出し分でつくっている。県道もそうです。二けた、三けた国道の管理は県がやっていて、県道の整備も、県分のほか国の補助金を受け、あるいは受益者負担で市町村からももらっている、こんな構造になっているわけですね。つまり、一つの事務にそれぞれのレベルの政府が関与しているという形になっています。

 これを、截然と一つの事務は一つの政府に分けるべきだというのが実を言うと事務配分の基本ではないか。そこがきちっと分けられれば、国の関与や国の権限でもって地方を縛るということもなくなっていく。そのためには、事務配分の原則を明確にして、内政は基本的に全部任せてしまえというぐらいのことを柱に立てて、そしてそれを賄える財政システムをつくり上げていくということが基本だと思っております。

 ただ、これはこれからの大議論でありますので、地方分権を進める上で考えていかなければいけないと思いますが、今の時点では、どうしても、そういう二重、三重関与の各種政府がタッチしているという事務、介護保険にしても、半分は国が持ちますが、四分の一ずつ県と市町村が持ち合って、そして全体の半分を保険料で賄っているというような、こういう構造ですので、ですから、それを急に改めろというわけにもいきませんが、それはそれで前提としながら考えていかざるを得ないのではないか、このように思います。

 それと、つけ加えさせていただきますと、監査委員制度については、監査委員の監査が、従来は財務監査中心でしたが、ようやく事業評価を含めた事業監査も入ってまいりました。ただ、どうしても財務監査中心であった時代の名残が続いておりまして、監査委員事務局や監査委員さんの視点が、やはり財務は絶対にきちっとしておきたいという点に重点が置かれている嫌いが強いのではないか、もっと自由に事務評価をして、それに対する事業ごとの評価監査をしていただくとまた違ってくる可能性はあるのではないか、このように思っております。

 ちなみに、本県の場合は、県会議員二人、それから学識経験者として銀行のOBの方一人、それと県職OBが一人入っているという構成で運用しております。

西村(智)委員 最後に、一点伺いたいと思います。先ほど岡本委員も最後に少し触れておられたふるさと納税についてであります。

 菅大臣が、この委員室だったと思いますが、私が質問したときに、首長さんたちからふるさと納税みたいな仕組みをつくってくれという要望があったような御発言をされました。

 私、地元に帰りまして何人かの首長さんにお会いして、そういうことはありましたかと伺いました。そうしたら、確かに、住民が学齢期や社会人になったときに、それまで投資した分をいわば無駄にするような形で区域外に出ていくということについては本当に残念でならない、そういう思いは話したことがあると。ただ、だからといって、その人から税金を地元の自治体に納めてくれというような、そういう話をしたことがないということなんですね。

 この点について、井戸参考人、いかがですか。

井戸参考人 ふるさと納税制度、菅大臣がおっしゃっておりますが、住民税の一部を直接納入するという方式ではなくて、先ほど申しました寄附金を活用するという方式については、例えば福井の西川知事などは、二年ほど前から提案をされてきておりました。

 私は、税制度として仕掛けることについては難しい点があるということを先ほども申し上げましたが、寄附金控除制度等をうまく活用することができれば、一部対応する余地はあり得るのではないか。それとあわせて、ふるさととの関係をどういうふうにつけるかということが難しいと思います。例えば、家族がふるさとにいる。家族との関係で、一定の範囲内であるならば、いわば一種の仕送りみたいな発想を入れることも可能なのではないかなというふうには思いますけれども、これは、仕掛けも、それから趣旨も、十分議論していく必要があるのではないか、このように思っております。

西村(智)委員 今の御発言で、少なくとも井戸参考人は、菅大臣にふるさと納税のような仕組みをつくってくれというふうな要望をしたことがないということがわかりました。ありがとうございます。

 終わります。

佐藤委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。きょうは、三人の参考人の皆さん、お忙しいところどうもありがとうございます。

 私、最初に宮脇参考人に伺っておきたいと思います。

 宮脇参考人は、新しい地方財政再生制度研究会の方も、それから債務調整等に関する調査研究会なども、ずっと座長として取り組んでいらっしゃって、報告の取りまとめ等では中心的な役割を果たしておられます。この研究会報告では、財政破綻に至らない早期の段階から財政の健全化に取り組むようにと、先ほどもお話を伺いましたが、二段階のハードルを設定して財政再建策を提案しているわけですけれども、ハードル設定が政令にゆだねられるということになるわけですね。自治体の関係者の方は、一体どうなるのかと、戦々恐々といいますか、そこが非常に心配なところになるわけです。

 そこで、早期健全化段階の設定に関連して、報告書では地方債協議制度の許可基準に言及していますが、指標が、フローの指標だけでなくストックの指標も基準に採用される、それで公社や第三セクターの債務も反映されるということになりますが、団体数としてどの程度がこの段階に含まれることになるのか。かなりの数ではないかと思われるんですが、研究会では早期健全化の団体数を大体どの程度と想定して議論をしていらっしゃったのか、参考人の個人意見でも結構なんですが、この程度だったらという数字があれば伺っておきたいと思います。

宮脇参考人 早期是正等に該当する団体数についてどう思うのかという御質問だと思います。

 私ども研究会におきましては、早期是正ということが必要になる地方財政の状況というものがどういうものなのか。それは、早期是正であれば、国ですとか、あるいは市町村であれば都道府県といったようなところが、余り大きく関与することなく自律的に改善することができるという段階でございますので、そういったレベルの地方財政のあり方というのはどういうものであるかということを中心に議論いたしました。

 したがいまして、個別の自治体について、それでは先生が御質問のように該当するのかどうなのかとか、あるいはそのレベルに関します数値を計算する方法がどうなのかというようなことにつきましては、公会計の改革等も含めて検討していただかなければなりませんので、私ども研究会の方でそれを実際に数字として把握するということはございませんでした。

吉井委員 次に、宮脇参考人、引き続いてその内容について関連して井戸参考人に伺いたいと思います。

 宮脇参考人の方に最初に伺っておきたいのは、自治体が財政破綻に陥らない段階で早期に健全化策をとる、これは必要なことだと思うんですが、自治体の自主性は最大限尊重しなきゃいけない。特に、分権一括法以来、国と自治体との関係は上下主従関係から対等協力の関係に今なってきておると思うんです。今後は国の自治体に対する関与は抑制的でなければならない、これは分権一括法のときから大臣答弁などでもそこは示されてきたわけですが、法案の方では国の関与を強めるものになっていると思われるんですけれども、国の関与がふえる点について懸念する声は研究会にはなかったのかどうか。また、参考人は地方分権改革推進委員会の方でもかかわってこられたかと思うんですが、この点についての御意見を伺いたいと思うんです。

 それで、全国知事会の方からは、地方自治の観点から、地方公共団体が自主的、主体的に財政再建に取り組むことを基本とすべきとの意見が出されておりますが、こちらの方で地方分権に井戸参考人がかかわっていらっしゃったと思うんですけれども、御意見を伺いたいというふうに思います。

宮脇参考人 お答えさせていただきます。

 今回の健全化法でございますけれども、あくまでも早期是正というところを中心に行う。したがいまして、地方自治体におきましては、健康診断を受けて、早い段階で健全化に向けた努力をしていきましょう、努力をするに当たりましては、可能な限り住民の皆さんに財政情報というものを提供して、自主的な改善ということに努力をしていただきますということが基本的な理念形になっております。したがいまして、早期是正というところにつきましては、研究会におきましても、関与が強まるというような議論というのはございませんでした。

 ただ、再生段階につきまして、国あるいは都道府県が、基礎自治体に対して、それではどこまで財政再建に関与するべきなのかということにつきましては、これは研究会ベースでも議論がございました。やはり根本は、できるだけ再生段階にはならないというところを原則にして早期是正に取り組んでいただける仕組みが重要であって、非常に残念ながら再生段階に入った場合においては、現在の財政再建団体ですとか、そういった仕組みをベースにしながら、最低限の関与といったようなところで考えていくことが必要なのではないかというふうに思っております。

井戸参考人 私ども、再生段階と早期是正段階とを分ける必要がある、再生段階というのはいわば一種の破綻状態ですので、これはかなりいろいろなシステムを導入してでも立て直していく必要がある、しかし、それ以前の段階は、基本的に自主性に任せるべきだということを主張させていただいたものでございます。あえて私はさらに、その前の段階もあるぞということを申し上げたつもりでございます。

 早期是正段階では、議会で健全化計画を、承認を受けて、そして定めていくということでありますが、議会の関与がこのような形で行われることによって、いわば財政健全化計画がオーソライズされるという意味で、早期是正段階で自主的な再建という担保をとっているのではないだろうか。あわせて、市町村や県につきましては、総務大臣や知事等の関与は勧告でとどまっております。したがいまして、勧告というのは、心配だから注意をするよという喚起の意味でありますので、そのような意味合いから見ましても、早期是正段階はかなり自主性が担保されている措置だ。

 でありますが、私はその前の段階でも準早期是正段階というのがあっていいのではないかというようなことを申し上げたつもりでもございます。

吉井委員 技術的助言等の助言と勧告とは、大分そこは違ってくると思うんですが。

 次に、宮脇参考人と宮内参考人に伺いたいと思いますが、研究会報告書は、財政健全化の判断比率の指標の客観性、正確性を担保するために第三者機関の活用を提案していますけれども、その提案を受けて法案には、指標の公表、議会への報告に当たって、監査委員の審査を絡ませる、そのことによって、指標の客観性、正確性を担保しよう、こういう考え方だと思うんですが、現状の監査委員会は本当にこの機能を発揮することができるのかどうかということですね。

 また、今回の財政再建法を契機に、監査機能の強化の具体の提案などについて、お二人の参考人から御意見を伺っておきたいと思います。

宮脇参考人 御質問にお答えさせていただきます。

 ただいまの御質問の中で、指標の客観性、正確性の担保というところでございますけれども、これは基本的には、我々の研究会でも、第三者機関を設けて、そこで継続的に評価をしていただくということが信頼性を担保するためにはやはり必要ではないかというふうな議論をさせていただきました。

 やはり指標については継続的にその信頼性というものをチェックしていきませんと、現実の財政運営と乖離をしてしまったり、あるいは当初より必ずしも適切ではないといったようなことも起こり得ると思います。こういったものにつきましては、できるだけ第三者機関的なところでチェックをしていただく、それがどういう機関であるのかということにつきましては幾つかの選択肢はあろうと思います。その第三者機関のあり方については、やはり今後もこういった制度を動かしていく中で、継続的な議論というものは私は必要なのではないかというふうに思っております。

宮内参考人 お答え申し上げます。

 先ほども申し上げましたように、企業のチェック機関としては、監査役監査とそれから会計監査人監査と二つの種類がございます。そういう意味で、大きな組織になった場合には会計監査人監査が企業においても広く導入されているように、地方公共団体においても、財務諸表監査という、指標の算定の根拠となる情報に信頼性を付与するという一般的な仕組みを導入していただくのが望ましいものであろうというふうに私どもは考えておるところでございます。

吉井委員 次に、井戸参考人に伺いたいんです。

 分権ということがずっと言われてきているわけですが、これまではどちらかというと、地方分権のこの分権も、自治体の執行部側の権限の拡大ということではかなり地方に目が向いたといいますか、それをチェックする議会と住民の側の権限の拡大というのが漏れているというか、おくれているというか、そういう面があったかと思うんですが、今回の指標の公表に当たっては、議会への報告やそれを公表して住民監視にゆだねるといいますか、住民的にさらすといいますか、そういう手法をとられているという点で、議会のチェック機能の強化とか住民監視の力を一段と高めるということが今大事になってきていると思うんです。

 知事会の方からは、住民監査請求の要件緩和を検討してほしいとの意見もあるようですが、議会のチェック機能の強化とか住民監視の力を引き上げるという点では、何か具体的な提案とか議論などがあったのかということと、それから井戸参考人自身が、こういうことをやればという積極的な御意見などをお聞かせいただければと思います。

井戸参考人 例えば夕張の問題も、結局夕張市の財政状況が明らかにされていなかった。特に、議会にはかなり情報が入っていたのかもしれませんが、一時借入金の限度額の予算化を認めたわけでありますから。しかし、住民にはそういう情報が入っていなかったというところが一つの大きな問題点だった。

 それが今回は、議会への各種指標の情報提供、またそれを通じた住民への情報提供が行われます。これは非常に大きな運営のチェックをする基盤をなすものになると私は高く評価しております。

 問題は、今御質問のように、そのような中で具体的なアクションを逆に起こそうとしたときに、起こす手段としてどんな手段があるんだろうかということになろうかと思いますが、住民の場合は、住民監査請求ですとか、あるいは、もし不正だとすると住民訴訟等の手段がある。議会におきましても監査の請求等も行える。ですから、この辺は、現行制度もかなりチェック・アンド・バランスのシステムができ上がっている。

 だとすると、そういう情報がオープンにされたことを踏まえて、これをどう活用していくかということにかかっているのではないか、このように思っております。そのときに、住民監査請求などの要件で、もし支障になるような要件があるようだったらそれは見直していったらいいのではないかというのが我々の報告書に書いたところで、まだ具体的な議論には至っておりません。

 私は、現実には既にいろいろな、各自治体においてはオンブズマンの活動等がありますし、情報公開制度を活用して現実にいろいろな問題点が指摘されてきているということを考えましたとき、これからの情報公開、情報提供ということを踏まえたチェックの機能というのは数段高まるのではないか、そのことが行財政運営に非常に好ましい影響を与えるのではないか、それがまた事前チェックにつながるのではないか、このようにも考えております。

吉井委員 今、ちょうど夕張のお話もいただきましたので、報告し公表するという問題にかかわって、三人の参考人の方にそれぞれ御意見を伺っておきたいと思うんです。

 夕張で見ますと、銀行債権が、北炭の破綻といいますか、炭鉱から転換していくときには、銀行が北炭に持っておった銀行債権の一部が夕張市に移っていった問題とか、リゾート法に基づいてリゾート開発をやったときには、開発を失敗しますと、松下興産に対して銀行が持っていた債権が夕張市に移されていった問題とか、言ってみれば、銀行債権の夕張市への移しかえという問題、つけかえという問題がありました。先ほどもありましたけれども、銀行の貸し手責任の話ですね、やはりそれが問われてくるものがあると思うんですね。

 銀行の方は、自己資本比率でいったら、分母の方のリスクアセットの中で地方債のリスクウエートはゼロ%ということですから、銀行は、財政状況を知りながらでもどんどん貸し込んだところで余り困らない。しかし、それは本来ならば銀行も、議会の方もいろいろ知っておらなきゃいけないんですが、銀行の方も、審査して貸し付けるわけですから、本来、銀行自身にも貸し手責任というものが問われてくるのに、夕張のような形になってしまって、銀行は全部債権回収して、ツケが市民に回るというああいうやり方というのは、非常におかしいわけですね。

 一方、公社などを含めた、これから公表しましょうということですが、個々の金融機関別の、市や公社等に幾ら貸し付けていたのか、そういう銀行債権の公表というのはないままという状況ですから、本来ここまでは銀行が責任をとらなきゃいけないものとか、一部債権放棄を考えなきゃいけないものとか、そういうことがさっぱり明らかにならないまま全部市民にツケが回ってくるのはおかしいというのは、これはかなり多くの人たちが感じているところだと思うんです。

 そういう点では、やはり仕組みそのものを、夕張に見られるような銀行債権、市の方からすれば債務、こういうものをどれだけ公表し、どれだけ議論して、どれだけ債務を減らして市民の負担を減らすかとか、やはりそれをきちっと考える仕組みというものを今改めて研究していくといいますか、検討していかなきゃいけないときではないかと思うんですが、三人の参考人の方からそれぞれに御意見を伺っておきたいと思います。

井戸参考人 率直に申し上げますと、夕張の場合は、地方債の残高だけの問題ではなくて、地方債の許可も得られないという状況の中で、一時借入金、これを活用していったわけですね。それが雪だるま式に膨れていったということが非常に問題だったわけです。その一時借入金で金を融資する先が公社だったということですね。ですから、そういう意味からすると、今回の場合は、その基本としているような仕掛けとは大分、事態そのものが異なっているのではないかと思います。

 私は、公社とか第三セクター等の債務については、損失補償だとか債務保証をしている限りで判断しようというのが今回の基準ですので、第三セクターとか公社等については、別途、どういう情報公開の仕組みをつくるかというのは検討すべきではないかと思いますが、本体としての地方団体の財政運営の中での責任をどうとるかという分野で考えたときには、やはり損失補償だとか債務保証をしているような範囲の中で議論をせざるを得ないのではないか、このように考えているところでございます。

 別途、第三セクターをどうするかというのは、別の次元でもう一度議論しなくてはならないと思います。

宮脇参考人 地方財政に対する債務調整の導入の是非でございますけれども、これはやはり地方自治体が担っている事業の性格によって検討していく必要性があると思います。

 第三セクター等につきましては損失補償という形が見られる。第三セクターについては、御承知のように、特定調停等の手続も可能である場合が多いわけですけれども、そういう場合でも損失補償といったような仕組みが入っておりますと、これは全額、普通会計の方等で負担をしなければならない。ということは、損失補償等の意思決定でありますとか、そういうところに対する一定の規律といったようなものはやはり必要なのではないか、それは情報公開等も含めてやはり機能させていくべきなのではないかというふうに思っております。

 また、地方債につきましては、やはり地方債全体の制度の自由化というんでしょうか、そういったものも視野に入れながら議論をしていかなければならないというふうに思っております。

宮内参考人 基本的に、債務調整の問題については、先ほども申しましたように私どもの専門的な分野ではございませんので、差し控えさせていただきたいと思います。

 それ以前の、今宮脇参考人が言われたような債務保証の問題であるとか、それから暗黙の債務保証と言われるような、最後は国にまで及ぶような問題については、これを慣行の中でやっていくのではなくて、明確なルール等の中でやっていかなければならない。

 地方公共団体の場合には、債務保証の枠というのは明確になっているはずでございますので、そこの中で規律がとれていたのかいなかったのかという問題は多分にあるだろうと思いますし、そこは、もしあれば、これは今の法律の中でいくとやむを得ないということにならざるを得ないんだろうと思いますが、ただ、経済実態として、先ほどの先生の御指摘にあるような実態は、多分どなたも感じるところであろうかと思いますので、そういう意味では、最後の、おしりの問題として、債務調整の問題も出てくるのではないかというふうには思います。

吉井委員 どうも、お忙しいところをありがとうございました。

佐藤委員長 次に、重野安正君。

重野委員 社会民主党の重野安正です。

 参考人の皆さんにおかれましては、本日は、公務御多端な折にもかかわらず出席され、また、先ほど来貴重なお話を聞く機会を得ることができました。まず最初に、厚く御礼申し上げたいと思います。

 早速質問に入ります。

 まず、井戸参考人にお伺いをいたします。

 先ほど来、主として知事という立場において、この再建法制案に対する意見なり、あるいは知事会として集約されました意見等々が開陳されました。そこで、二点お伺いいたします。

 まず第一に、再生法制にかかわる財政指標の問題であります。

 本案では、四つの指標について政省令にゆだねられております。この点について、法律で定めることの可否、あるいは政省令にゆだねる場合のあるべき数値について、地方自治、地方財政の実務に携わっておられる知事としての御意見をひとつお伺いしたい。それが一つであります。

 それからもう一つは、知事会の中間取りまとめの内容に関する問題です。

 この中で「住民監査請求の要件の緩和」また「監査委員、外部監査人の権限強化等、監査機能の充実について検討されることが必要」、こういうふうに述べておられますが、この点についての具体的な構想をお聞かせいただければありがたい。

井戸参考人 四つの指標につきましての水準をどうしていくのか、これは非常に難しい面がございます。

 例えば、現行制度ですと、起債制限比率という制度がございますが、一五%を超えると黄色信号で、二〇%を超えると単独事業等についての起債が制限されるという基準になっています。今度、実質公債費比率という指標では、地方債の発行について、一八%未満ですと協議制、本県のように一八%を超えていますと相変わらず許可制でありますし、二五%を超えると、先ほどの起債制限比率の二〇と同様に、単独事業等の起債が制限される、そういう基準として運用されております。これらの長い間培った運用実績というのも一つ参考にしていっていただかなきゃいけないのではないかと思います。

 それから、財政再建の準用団体の基準が、標準財政規模に対して実質赤字が道府県ですと五%、市町村ですと二〇%という形で運用されてきました。これも我々の財政運営上のレーゾンデートルだということで運営してきていることもありますので、この辺の数字も一つの参考にして考えなきゃいけない。

 しかし、四つの指標はストック指標もかなり加味されております。実を言いますと、ストック指標については今まで余り目が向けられなかった部分であります。したがって、実態的な今の状況自身を十分に把握していただいた上で適切な水準を設定していく作業が必要ではないか、そのようなこともあったので、技術的な基準だということで基本的な考え方を法律に書かれて、政令に具体数値は定めるということにされたのではないか、このように考えております。

 私どもとしても、実態に応じた数値をぜひ設定していただきたいという意味でこれからも意見を申し上げていきたい、このように思っております。

 それから、住民監査請求の要件緩和それから監査委員の機能アップでございますが、今までの情報に基づいて行ってきた住民監査請求ですとか監査委員の監査と、これから行われます財政指標の情報提供を踏まえた上での運用というのはおのずと差が出てくるのではないか。そういう、おのずと差が出てくる、つまり、かなり財務状況がオープンにされますので、そのオープンにされた状況を考えた上での監査委員の機能あるいは住民監査請求の機能というのをきちんとチェックしていこうではないか、その上で改正すべき点があるならば改正していただきたい、そういう意味で委員会としては書かせていただいているというところでございます。これからさらに十分に詰めさせていただこうと考えております。

重野委員 ありがとうございました。

 それでは次に、宮脇参考人にお伺いいたします。

 宮脇教授は、この再生法制のもととなりました、新しい地方財政再生制度研究会の座長であります。また、地方分権二十一世紀ビジョン懇談会の委員でもありますので、そうした研究会の内容等について質問いたします。

 まず第一点は、いわゆるビジョン懇報告に関する質問です。

 同報告の「「再生型破綻法制」の整備」と題する部分についてですが、「「国が何とかしてくれる」という神話が、財政規律の緩みにつながってきた面を否定できない。」こういうふうに記述されております。

 私は、それを読んで、そんな神話に踊った自治体が悪いんだと言っているのかな、こういうふうに受け取るわけであります。地方財政がある種の困窮状態に陥ったときに国が何とかしてくれたことが今まであったとは私は思わないのであります。それが私の基本的な受けとめでありまして、そうした神話を振りまき、地方をかつては高度成長に、そしてバブル崩壊後は景気対策に動員したのはほかならぬ政府であった、こういう明白な事実がございます。

 そうした事実を見るときに、自治体に財政規律の緩みがあり、それを神話なるものによって原因の一つとするのはいかがなものかということを私は申し上げたい。むしろ地方自治に自治たる地方財政制度を保障してこなかった中央政府の政策こそ問われるべきではないのか。私はこういう考えを持つんですが、その点について教授はどのように考えておられるか。それが一つ。

 それから第二点は、新しい地方財政再生制度研究会報告書の「今後の取組」で言及されている問題について質問いたします。

 ここでは、債務調整について、「地方財政規律の強化に向けての選択肢として評価しうる」、このように指摘されております。最後に「地方分権改革と同時並行的に議論を進めていく必要がある。このため、本研究会において整理した債務調整を制度化する場合の課題については、地方分権改革の議論に結び付けていくため、さらに具体的な検討を深めていくことが必要」、このように書いております。

 この文言をそのとおり私なりに読んで思うんですが、この債務調整制度は地方分権改革推進委員会の議論にも結びつけていく、そういう考えをお持ちかどうか、そういうことになるんだろうか。折しも教授は地方分権改革推進委員会の事務局長でもありますので、この点、率直なお考えをお伺いしたい。

 以上です。

宮脇参考人 二点、御質問をいただいたかと思います。

 第一点目のことでございますけれども、地方分権のビジョン懇における取りまとめのところでございます。

 国が何とかしてくれるという意識が財政規律を緩めたんだという表現は確かにございます。このことは、俗に暗黙の政府保証と言われるところを表現した部分かと思っておりますけれども、その暗黙の政府保証というものにある程度依存をした部分は、これは地方自治体側にあったかないかといったようなことについてはいろいろ御評価があるかと思いますが、例えば先ほど来御議論がありますような一時借入金等についても、これを金融機関側から調達できたというようなところの背景にはそういった考え方、思想というものもあったんだろう。

 ただ、それは自治体側だけの問題ではなくて、金融機関側にも当然あったということで、この暗黙の政府保証といったようなものが非常に不明確な中で過去戦後において動いてきたことが、国、地方自治体あるいは住民、民間金融機関等において今日のような問題を抱える一つの原因になったのではないかということがそこにおける整理でございます。

 それから、もう一つ御質問いただいております債務調整に関する御質問でございます。

 債務調整について地方分権改革推進委員会の方で議論されるかどうかというのは、これは委員の皆様の御議論によるかと思いますけれども、新しい地方財政の研究会の方で議論をした際には、債務調整の是非ということは、地方債を含めました現行の地方財政の中のままでは議論することは適切ではない。

 したがって、地方行財政が仮に抜本的に変わるというようなことがあったときに、それでは債務調整という議論をどの範囲で行うことが適切なのか、これはいろいろな議論というものがあり得ると思います。あるいは、地方債制度が変わる中で、そういった議論というのも、先ほど来ございますように、第三セクターなど業務範囲を特定した中で行うということもまたあろうかと思います。そういった意味で、今後の分権改革において議論する必要性がある。

 私ども、研究会というところですべてを議論する能力もございませんし、そういう立場でもございませんでしたので、そこでは非常に大きな課題がありますということで締めくくらせていただいたというところでございます。

重野委員 次に、宮内参考人にお伺いいたします。

 まず第一に、公認会計士という立場にあるわけですけれども、その立場から見て、本案に対する評価、どういう評価がなされるのか、それが一つ。

 それから二つ目は、現行の地方自治制度における監査制度、あるいは個別監査、包括外部監査、そういうものについてどのように考えておられるか。

 三つ目に、今後自治体の財政運営において公認会計士が果たし得る役割、それを保障する機能についてどういう御意見をお持ちか。

 以上、三点お伺いいたします。

宮内参考人 お答えいたします。

 三点、御質問があったかと思います。

 第一の本法案についての評価ということでございますが、先ほど意見を述べさせていただいたとおり、基本的には、この法案はなるべく早期に成立させるべきであるというふうに積極的に評価させていただいております。

 ただ、それと同時並行的に、地方公共団体における会計制度、公会計制度の改革もあわせて進めていかないと、言ってみれば、今回の指標をつくって、これに基づいて判断していくというのはまさしく経営マネジメントにかかわる問題であると理解しているわけですが、その判断材料となる基礎データがきちっとした適正なものであるかどうか、これが保障されていないと、上に出てきた数字だけでこれを見ていくというのは、どちらかというと十分な基礎を持たない結果になりかねない。企業会計においても粉飾という言葉がございますし、また夕張市の問題についても粉飾が現実にあったということを考えると、そこのところの担保が必要になるのではないかというふうに考えておるところでございます。

 そういう意味で、二番目の御質問でございましたが、監査の分野としては、現在、監査委員監査に公認会計士も何名かの者が就任しており、さらに、包括外部監査は先ほど御紹介申し上げましたように九割を公認会計士が占めているという状況でございます。これらはそれぞれ役割を持っており、その役割において真摯に努力を積み重ねていくということが今後も必要になるであろうというふうに思います。

 最後の三番目の御質問にかかわる問題でございますが、そういう意味では、公認会計士は、それぞれ監査委員として職務に携わる場合並びに包括外部監査の職務に携わる場合、個別外部監査もそうですが、これともう一つ、財務諸表を監査するという役割を付与していただけるならば、より多くの責任とそれから力を発揮できるのではないかというふうに考えておるところでございます。

重野委員 ありがとうございました。以上で質問を終わります。

佐藤委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の皆様には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時四十四分開議

佐藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 内閣提出、地方公共団体の財政の健全化に関する法律案を議題といたします。

 この際、本案審査のため、昨二十一日、北海道に委員を派遣いたしましたので、派遣委員を代表いたしまして、私からその概要を御報告申し上げます。

 派遣委員は、理事谷公一君、林幹雄君、武正公一君、寺田学君、委員鍵田忠兵衛君、逢坂誠二君、江田康幸君、塩川鉄也君、重野安正君及び私、佐藤勉の十名であります。

 会議は、昨二十一日午後一時三十分より旭川市内の旭川グランドホテルにおいて開催し、意見陳述者の方々から、現在本委員会で審査中の本法案について意見を聴取した後、これに対して各委員より質疑が行われました。

 意見陳述者は、北海道副知事山本邦彦君、旭川市長西川将人君、乙部町長寺島光一郎君及び北海道大学公共政策大学院教授石井吉春君の四名でありました。

 その陳述内容について簡単に申し上げますと、再生振替特例債の金利軽減策など、さらなる支援策を検討する必要があること、地域の実情に応じて健全化判断比率に差を設ける必要があること、早期健全化基準、財政再生基準の数値の設定に当たって慎重な対応をする必要があること、行政コストの把握と開示や、外部監査の活用などについてさらなる進展を図る必要があることなどであります。

 次いで、各委員から陳述者に対し、本法案に債務調整が盛り込まれなかったことについての評価、財政指標の情報開示についての認識、地方公共団体の財政の予見可能性を高める方策、本法案による財政悪化の早期段階からの国の関与についての見解、本法案についての評価などについて質疑が行われました。

 以上が会議の概要でありますが、議事の内容は速記により記録いたしましたので、詳細はそれによって御承知願いたいと存じます。

 なお、今回の会議の開催につきましては、地元関係者を初め多数の方々の御協力をいただきました。ここに深く感謝の意を表する次第であります。

 以上、御報告申し上げます。

 お諮りいたします。

 ただいま報告いたしました現地における会議の記録は、本日の会議録に参照掲載することに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔会議の記録は本号(その二)に掲載〕

    ―――――――――――――

佐藤委員長 引き続き、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として総務省自治行政局長藤井昭夫君、自治財政局長岡本保君、財務省主計局次長真砂靖君及び国土交通省都市・地域整備局下水道部長江藤隆君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。関芳弘君。

関委員 私は、自由民主党の関芳弘でございます。

 午前中は、兵庫県知事がこちらに来ていただきまして、いろいろお話を聞かせていただき、今回の財政健全化法案、大半において非常にいい内容だというお話をいただいたかと思います。私も、兵庫県という震災などを経験したところでございますけれども、財政の健全化が地域の住民に安心、安全の気持ちを与えることに非常に大きなことだ、いいことだと思っております。今回のこの財政健全化法案にも本当に期待するところが大でございます。

 この法案につきまして、現行制度との相違点としましては、比率の公表制度を設けて、住民や議会に常時チェックの機会を与えるなど、非常にいい点があると思いますし、また、危険水域に達した段階で早期健全化のための制度を設けた点、また、地公体の判断に任せずに、比率により義務的に制度利用を行うというふうな点などは非常に特筆すべき点だと思います。

 それで、この法案につきまして、詳細につきまして質問をさせていただきたいと思います。

 まず、この法案の非常に大きな特色でございます健全性に関する四つの比率でございます。実質赤字比率と連結実質赤字比率、また実質公債費比率と将来負担比率、こう四つ比率が設けられて健全性を図っていこうというところでございますが、この四つの比率の指標の併用の意味につきまして、御説明をいただきたいと思います。

菅国務大臣 本法案において設けられた四つの比率のうち、実質赤字比率と連結赤字比率については、健全な財政運営のためには収支均衡が基本であることから、地方公共団体の財政の主要部分である一般会計等の収支不足を示す指標として実質赤字比率を用いる必要がある。また一方で、公営企業等の特別会計等を含め、当該団体全体として一定以上の資金不足を生じないようにすることが当該団体の財政運営責任を果たす上で重要であることから、連結実質赤字比率を併用することとしたところであります。

 また、実質公債費比率と将来負担比率につきましては、公債費や公債費に準ずる経費は一度増大すると削減することが極めて難しい経費でありますので、実質公債費比率を用いる必要がある一方で、公社、第三セクターに対する損失補償等を含めた実質的な将来負担が増大すると、将来の実質的な公債費に大きく影響を与える可能性があることから、実質的な負債と債務償還能力を比較する将来負担比率というものを併用したところであります。

関委員 この指標が十二分に活用されて、本当に財政の健全化に大きく寄与してもらうことを期待したいと思います。

 また、この中で、将来負担比率というのが一つございます。この将来負担比率につきましてはリスクの定量化という考え方があるかと思いますが、このリスクの定量化の考え方について御説明をいただきたいと思います。

岡本政府参考人 お答えをいたします。

 将来負担比率は、地方公共団体が抱えております債務のうち、一般会計等の地方債現在高というような確定いたしております債務のほか、第三セクターに係ります損失補償など、将来負担という意味でまだ確定していないものがございます、この確定しているもの、それから未確定でも将来発生するものについて、一般会計等の負担としてこれをとらえておくことによってその当該団体の財政状況の健全度の指標にしようとするものでございます。

 具体的な算定法につきましては今後政省令等において定めることといたしておりますが、例えば販売用の不動産を持つ法人については、不動産価格の著しい下落により売却によって債務を償還できないことが見込まれる部分に着目するといったようなことなど、委員御指摘のように、地方団体にとって将来負担を可能な限り定量的に、的確に把握できるように定めていきたいということで、今後検討を進めたいと考えております。

関委員 将来のことを考えると非常に難しいわけでございますけれども、この将来の負担におけるところのリスクの定量化、ここの考え方をしっかりとしていただきますと、本当に将来におきまして安全な、健全な財政がつくられていくもとになると思いますので、この点、リスクの定量化を今後決めていかれますときには、十二分にかた目に考え方を図っていただきたいと思います。

 続きまして、現行の再建法に基づく国の関与と比較しまして、この新しい財政健全化法案ではどの程度国が関与していくのかというところを具体的にお尋ねしたいと思います。

 まず一つ目は、例えば計画の実施を行いました、その早期の段階におきまして実効性に疑問が生じた場合、なかなかこういう場合はまれなケースだと思うんですけれども、ビビッドに対応していかれるのかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。

菅国務大臣 財政健全化計画や財政再生計画の計画期間中に、災害などの、計画策定時には予測をすることが困難なような事態、こうした場合には、計画の変更というのは必要になってくると思います。また、計画の変更の必要がある場合においては、まずそれぞれの団体が自主的に計画の変更の手続に基づいて変更する、そういうものを私ども想定をしております。

 ただし、財政健全化計画については、各団体において計画変更がなされずに、計画の実施状況を踏まえ、財政健全化が著しく困難と認められた場合には、総務大臣または都道府県知事が計画の見直しについて勧告をすることができる、このようになっています。また、財政再生計画については、財政の再生が困難と認められる場合には、総務大臣が計画の見直しについて勧告をすることができる、このようになっているところであります。

関委員 今、大臣からお答えいただきました点で、国は勧告手続ができるというところがございました。国が勧告手続を行うわけですけれども、その勧告だけで実効性がいかほど担保されるとお考えか、聞かせていただきたいと思います。

菅国務大臣 総務大臣が勧告することができる例としては三つありまして、一つは、財政の早期健全化が著しく困難であると認められた場合、あるいは財政の再生が困難であると認められるとき、そして三つ目は、公営企業の経営の健全化が著しく困難であると認められるとき、このように規定をされています。例えば、財政健全化団体に対する勧告については、財政の早期健全化が著しく困難と認められる場合に、必要な勧告を行って、計画の修正等を通じて財政の健全化の実現を図っていくことになっています。

 また、勧告が行われた場合、その勧告内容を議会に報告するとともに、監査委員に通知しなければならないこととすることによって、当該団体における財政健全化に関する前向きな議論が喚起されるだろう、そういう仕組みをつくらせていただきました。

 さらに財政状況が悪化した場合には、財政再生の段階に至って、国の同意を得るか、または国の同意を得ない場合には地方債の発行というものを抑制しながら確実な財政の再生を図るものとしているところであります。

関委員 勧告されたことの実効性、本当に高い段階での実効性が確保されることを、私も心からその旨を願っておるところでございます。

 では、続きましての質問でございますが、多くの自治体では、将来的に、健全化計画の策定時に、運営の問題以外に、実際には構造上の問題と考えられる場合がいろいろあるかと思います。そのようなときに、制度上の課題の見直しまで大きく考え直そう、手をつけていくかどうなのかという点につきましてお考えをお伺いしたいと思います。

菅国務大臣 本法案に基づいて、それぞれの地方公共団体が健全化判断比率を公表するとともに、財政指標が一定程度悪化した団体が財政健全化計画や財政再生計画を定めることで、まず、それぞれの団体の財政運営上の課題が明らかになるというふうに思っています。そして、国として全国的な状況を取りまとめる過程において、各団体に共通した行財政制度上の課題が認識される、こういう場合もあり得るというふうに思います。

 そうした場合において、各団体の財政健全化の取り組みとともに、必要に応じて関係省庁等とも連携をしながら制度的見直しに着手することもあり得るものと考えます。

関委員 きょう午前中お越しいただいた方々のいろいろな意見を聞いておりましても、やはり地域、地方というのは財政が苦しいんですという話を本当によく聞かされたところでございます。

 私も、神戸市が選挙区でございますが、何せ阪神大震災の影響が大きくて、今後新しいことを何かやろうというふうな話をしましても、どうしても財政が苦しいからということでとまってしまうようなことが多うございます。しかしながら、今回、このように財政健全化を早期にやっていこう、みんなでやっていこうという法案をつくって、本当に我々の将来が明るくなるという非常にすばらしい法案が今まさに生まれていこうとしております。

 この法案の成立に向けまして、大臣の現時点におきます志を聞かせていただけたらと思います。

菅国務大臣 この法案に評価をいただきまして、感謝をしています。

 実は、昨年の暮れに夕張市があのような財政再建団体になりました。そのことによって、多くの全国の国民の皆さんは、自分の町、住んでいるところはどうであろう、そういうふうに関心を持ち始めてくれたと思います。夕張市は、もしこの法律ができていたならばあそこまでいかなかったというふうに私は思います。

 確かに、今、関委員指摘のように、それぞれの地方自治体というのは、過去に発行した地方債の償還だとか、あるいは高齢化に伴うさまざまな福祉的な経費を中心に、非常に厳しい状況になっているということを私自身も承知をいたしております。しかし、そういう状況にあって、やはり住民の皆さんに、自分の町の財政状況はどうなっているかということを、情報を透明化して理解をしてもらう、そういう必要があるというふうに私は思っております。

 こうした状況の中で、地方公共団体というのは、住民ニーズを踏まえ、自律した財政運営を行う、このことが物すごく大事だというふうに思いますし、さらに、これから地方分権を私ども進めていきますけれども、そういう中においても財政規律を確立しておく、これも大事なことであります。

 そういう中で、今回、現行の再建制度を約五十年ぶりに抜本的に見直しをして、財政指標の整備とその開示を徹底して、財政の早期健全化及び再生を図るための新たな法整備を検討するということであります。

 今法案の成立のもとに、やはり、地方分権を推進する時代にふさわしい、地方の自己規律による財政の健全化、そうしたものが図られることを私も期待いたしております。

関委員 ありがとうございます。

 私も、本当にこの法案は、大きく大きく期待をいたしておるところでございます。

 私も、地元で政治活動をさせていただいて住民の声を聞いておりますときに、やはり一番大事なのは、自分たちが住んでいるこの地域を自分たちの活動で財政状況をよくしていこう、その気概を全住民が持つことだと思います。今回、その指標となるいろいろな四つの比率を明確にあらわして、しかも早期に健全化ができるような仕組みをつくり、そして住民や議会に常時チェックをしていただく機会を与える。これこそが、住民全員が本当にみんなで一丸となって財政再建に向かえ、また、将来の我々自身の生活を本当によくするためのすばらしい法案だと私は思っております。

 私は、いろいろな打ち合わせ、部会とかに出ますけれども、どの部会に出てどの省の方々に聞いても、菅大臣は国士だ、国士だというお話をたびたび聞かされております。私も、本当に、この法案こそ国士の菅大臣が実施していただくいい法案だと思っておりますので、ぜひともこの法案を成立していただきまして、これから、本当にすばらしい、地方分権時代に沿います、いい日本の国をつくっていただきたいと思います。私も頑張りたいと思います。

 少し早いですが、これで終わらせていただきます。ありがとうございました。

佐藤委員長 次に、井澤京子君。

井澤委員 自由民主党の井澤京子でございます。

 通常国会もいよいよ最終盤を迎えまして、あとちょうど一カ月となりますが、現在、衆参両院で重要法案が審議され、きょうも幾つかの法案の趣旨説明が行われました。

 私は、この財政健全化法というのは、今後地方分権を進めていく上でも、国にとってはなくてはならない、まして、地方公共団体にとりましては大変意味があるものと思っております。きょうは、そのような中で質問の時間を与えていただきまして、ありがとうございます。限られた時間でございますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 早速ですが、私の選挙区は、京都府南部を一体とする京都六区という地域になります。その中に笠置町、和束町、南山城村という京都府唯一の村も含みます、小さな町村が幾つかございます。この地域は、宇治茶に代表されます、ちょうど今新茶の収穫の時期になりますが、第一次産業を中心にして頑張っているにもかかわらず、急速な高齢化、過疎化がとまらずに、大変厳しい財政事情を抱えております。

 そのような中で、この二町一村では、さまざまな行政サービスや教育の問題などについて七つのワーキンググループをつくり、共同で行えるものはお互いに協力をし合い、人件費削減などの行政改革を行いながら、魅力あるふるさとづくりへの取り組みを始めました。全国からも、この取り組みを勉強しようと視察に来られたりもしております。

 しかし、どんどん若者が都会へ進出して、高齢者がこの地域だけでも四〇%に達しようとしている中、義務的経費ばかりがかさみ、脆弱な財政基盤を何とか再生しようと必死な努力を続けておりますが、解決すべき課題、難問を多く抱えております。このような自治体は、全国的にもまだまだ存在しているのではないでしょうか。

 私ごとになりますが、実は、さきの衆議院選挙に立候補する直前まで、三月に解散しました産業再生機構の職員として、企業再生や地域再生の現場を、各地、いろいろと歩いておりました。もちろん、企業の再生、倒産、清算という法的な枠組みと、住民の公共サービスを担う地方公共団体の再生とは異なる部分もあるかと思いますが、主な違いは、地方公共団体の財政破綻というのは住民のサービスの低下や生活不安にすぐ直結をしてしまう、それをいかに未然に防ぐかが最大の課題であるという点だと思います。

 きょうは、地域に住む地域の住民の視点という立場から、今回の地方公共団体の財政の健全化に関する法律案について質問をさせていただきます。

 まず最初に、今回の法律案は、昨年から、地方分権化時代を見据え、約五十年前につくられた地方財政再建促進特別措置法が抱える課題を踏まえて検討されたものと理解しております。それが当初の予定よりも前倒しとなり今国会に提出されてきた背景としては、先ほども質問にもありましたように、北海道の夕張市の財政破綻の問題があるわけです。夕張市の財政再建計画は八百ページにも及び、三百五十億円をはるかに超える赤字が十八年間で計画的に返済がなされるよう、北海道が夕張市にかわってその額を貸し付けるという形をとられてこられました。

 まず、なぜそのような事態になったのかと考えますと、やはり不適切な財政運営の結果であり、ツケが住民へと回されてしまった結果と思います。何と、住民一人当たりの借金は二百八十万円に上るそうです。新聞によると、夕張市の人口は五月一日現在で一万二千五百五十二人、一年前に比べると五%減という人口流出が続き、高齢者の比率も四割を超えるそうです。

 そこで私が懸念するのは、例えば、ある市がこのように財政破綻の状態に陥り、その市が属している都道府県が今回の北海道と同じような措置を行った場合、また隣の別の市が破綻してしまうような場合はあると思います。国はもちろんのことですが、地方自治体の財政が非常に厳しい中で、同じような手厚い支援を行うことができるかという懸念があります。この法律が施行されて、同じ都道府県内で複数の自治体が財政再建団体に陥る、容易に考えられることです。

 そこで、今回の法律案について、財政再建に陥った自治体が赤字を長期、計画的に解消する手段としてどのような措置が講じられるようになるのか。また、国及び各都道府県が再生団体に対して、その再建を支援するためにどのような役割を担うことが期待されるのか。最初、少し大きな視点からでございますが、以上二点についてお伺いいたします。よろしくお願いします。

菅国務大臣 財政再生の段階までに至った場合については、まず、徹底した自助努力に基づく財政再生計画の策定が義務づけられます。そして、その計画に国が同意した場合、収支不足額を確定して、計画期間内の償還を前提として、再生のため必要な資金を安定的に確保する方策として、再生振替特例債、こういうものの活用が認められます。また、この再生振替特例債の資金については、国は、資金事情の許す限り適切な配慮を行いたいと思っています。

 さらに、本法案では、国や都道府県に、財政再生計画の円滑な実施についての配慮義務というものも求めております。具体的には、例えば、計画の円滑な実施に資するための情報の提供だとか、あるいは当該団体の財政負担を伴う事業の抑制を初め、個別のケースの事情に応じた支援を行うことが期待をされているものであります。

井澤委員 ありがとうございました。

 次に移ります。

 今法律案では、四つの財政指標を整備し、それを地方公共団体が毎年度公表することとしています。いわば、地方公共団体の財政状況を民間企業の財務諸表のようにガラス張りにして、その地方公共団体が客観的にどのような状況にあるのか、住民や国民がより把握しやすいようにするということが一番の主眼であると考えます。地域住民は、日常生活の中では、地元自治体と自分の生活とのかかわりを知って生きている人はそう多くないと思います。

 そこで、まず、地方公共団体の財政状況について、現在各自治体や国でどのように地域住民に公表をされているのか、その現状をお伺いいたします。

 その上で、地方公共団体の財政状況がわかりにくい原因は何なのか、そして、今回の法案によってわかりにくさがどのように改善されるかについて、総務大臣に御見解をお伺いしたいと思います。お願いいたします。

岡本政府参考人 私の方から、各団体におきます現在の財政状況の公表状況の方を御説明させていただきます。

 今委員御指摘のように、地方団体が住民に対してその財政情報をできるだけわかりやすくかつ透明に開示することが非常に重要な問題であるというふうに認識をいたしております。

 まず、全都道府県、市町村では、詳細な財政情報がございますが、これを一枚で全部一覧できるような決算カードというものを、十三年度以降の決算についてはそれぞれホームページ上で公表しております。

 また、十六年度決算からは、その財政情報だけでは、一体自分の市町村が、例えば類似する財政状況や産業構造のところではどのようなポジションに位置をしているのかがわかりにくいということがございますので、類似する団体間で主要な財政指標を比べられる、そういう意味での財政比較分析表といったものを全団体についても公表するということを始めさせていただいております。

 また、十七年度決算からは、この普通会計の状況に加えまして、公営企業会計など特別会計の状況や、公社、第三セクターなどの経営状況及び財政援助をしている状況も含めた各地方団体の総合的な財政情報について、これも、一覧性をもって開示する財政状況等一覧表といったものを公表する取り組みも進めさせていただいております。

 さらに、この財政情報の公表の仕方について、いわゆる従来の予算決算といった形ではなく、財務諸表等を用いた公会計の整備を行っていくということも重要なことが求められておりますので、これらの連結ベースを含めた財務書類の整備にできるだけ早く取り組んでいただくよう、政令市以上については現在取り組んでいただいておりますが、それより小さな団体におきましても、その取り組みを進めていただくよう、そういう要請をし、できるだけわかりやすい情報の開示に努めていただいているところでございます。

菅国務大臣 私は、大臣に就任をしてから常に、もっとわかりやすくすることをずっと実は言い続けてきています。そのときのうちの事務方の私に対しての説明というのは、地方公共団体の業務の範囲が広い、また団体ごとに会計の範囲や業務の実施方法が違う、そういうことを言うわけですけれども、しかし同じようなものはあるだろう、そう言いながら、グループごとにできる限りわかるような、そういうものをつくるように今強く求めているところであります。

 そして、普通会計の財政指標だとかあるいは個別の公営企業会計のみを対象とした財政指標が算定、公表されてはいますけれども、しかし、地方公共団体全体の財政状況や、当該団体に財政的負担を及ぼすような公社だとかあるいは第三セクターの状況を含めた財政状況を端的にあらわすもの、財政指標というのは今までなかったんです。そういう中で、指標の数値の根拠がわかりにくかった、このこともその大きな一つの原因だったというふうに私は思っています。

 今回、本法案においては、地方公共団体の全会計を対象としたこと、公社や第三セクター等、将来地方団体が負担をする可能性がある債務についてもその対象にしたこと、そして、それぞれの指標の根拠となる書類を整備し、監査委員の審査に付した上で公表することとしておりまして、地方公共団体の財政状況がこれによってよりわかりやすく示されることになるだろうというふうに考えています。

井澤委員 今、大臣の前向きな取り組みについてお伺いいたしました。大臣自身も最初にわかりにくいということをお気づきということを、今改めて認識いたしました。とにかく、地域住民がわかりやすい情報開示をしていただき、お年寄りのみならず地域住民の方が手にとってわかるような公表の仕方なりを何かお考えいただければと思います。

 次に、関連する質問をさせていただきます。

 最近、テレビでよく夕張市の特集などがあり、私も見ておりますが、見て明らかなのは、とにかく不適切な財政運営の結果を負担するのはそこに住む地域住民だということです。その地域住民というのは、お年寄りのみならず、幼い子供を抱えた働き盛りの方、夫婦で病弱な方など、いわゆる社会的弱者の方が多いわけです。

 今回の法律案で公表が義務づけられております各種指標によって、地域住民は地元自治体の財政状況をどれぐらい理解できるのかなと思います。財政指標の数値の絶対値で財政の状況を理解するというのは、相当の専門家でないとやはり難しいのではないかと心配をしております。

 そこで、繰り返しお伺いする内容になるかと思いますが、国や都道府県が、各種の指標の持つ意味について、地域住民に対して理解を進めるためにどのような対策を具体的にお考えなのか。そして、それをだれが見てもわかりやすい形で公表されることも必要だと考えております。政府としての具体策について、お伺いできればと思います。

菅国務大臣 本法案における各比率の数値については、各地方公共団体において毎年度議会に報告をするとともに、住民に公表する、このようになっています。

 都道府県や国においても、各団体の報告を受けて、都道府県内市町村の状況や全国の状況を取りまとめて、その概要を公表することとしております。

 その際、総務省としても、各比率の意義だとかあるいは比率の数値を類似団体間で比較した情報等について、広報誌やホームページを活用し、わかりやすく広報しているところであります。

 各地方公共団体において、これらを活用し、少しでも多くの住民の方々に御理解いただけるような広報というものを私どもこれからも促していきたい。

 いずれにしろ、そこに到達するまでも、インターネット、非常に難しい、わかりにくいとかという批判も受けていますので、そうしたことも含めまして、わかりやすいものにするように努力をしていきたいと思います。

井澤委員 ありがとうございました。

 地域に住む住民がわかりやすい周知徹底の施策の取り組みをよろしくお願いいたします。

 続きまして、今回の法案では、早期健全化基準や財政再生基準の具体的な数値は政令にゆだねられております。少なくとも早期健全化基準については、ある程度の数の地方公共団体が該当するような水準の数値としなければ、せっかく法律で枠組みをつくっても、実際機能しない制度となってしまいます。逆に、数字を厳しくすればするほど、健全化団体、再生団体が相次ぐ可能性もあります。

 私も地方議員として、仮に選挙区内の小さな地方自治体の多くが早期健全化基準や財政再生基準に達してしまえば、それは地方として大変なことであり、まして地域住民にとっても、精神的な不安を持たれるような事態にもなりかねません。だからこそ、財政破綻に陥る前に、しかも早期に、本当に早期に手を打つことで、最悪のケースを免れる、今回の法整備はそれが一番の柱ではないかと考えます。

 そこで、各種の早期健全化基準や財政再生基準の具体的な数値をどのようなレベルや水準でお考えなのか、その基本的な数値の考え方とともに、正式な決定までにどのように進めていくのか、地方公共団体の意見を聞く機会なども設けられるのかなど、改めてお伺いいたします。

菅国務大臣 財政の早期健全化とか財政再生の対象となる団体の基準については、年内に政令において定めることといたしております。その際には、本法案に定められております財政の早期健全化及び財政の再生の規定の趣旨を踏まえて、地方公共団体の意見を十分に伺いながら策定していきたいと思います。

 具体的には、市町村については二〇%以上、都道府県については五%以上の赤字比率になった場合、再建団体にならなければ起債が制限される現行再建制度の運用、また地方債協議制のもとで、実質公債費比率が一八%以上で許可団体となり、また二五%以上で単独等の起債が制限されるといった現行の地方債制度の運用など、こうしたものを踏まえながら、四つの比率間の整合性を勘案しながら、円滑に進むように検討を進めていきたいと思います。

井澤委員 ありがとうございました。

 基本的な数値ばかりではなく、地方公共団体の意見をできるだけ取り入れて進めていただきたいと思っております。

 では、若干角度を変えまして、金融の面から御質問させていただきます。

 地方債は、今や相当程度マーケットで消化をされております。平成十八年度の地方債の計画を見ましても、地方公共団体が起こす地方債の資金のうち、何と六割以上は市場公募債や銀行などの民間の資金であり、額にして約八兆七千億円に上ります。このような状況において、地方公共団体に融資をし、また債券を引き受ける民間金融機関にとって、今回の法案はどのような意味を持つのでしょうか。

 民間金融機関の債権保全への影響と、それと裏表の関係にあると思われます今後の地方債の金利の動向や影響について、これは私の推測ですが、よい方向に徐々に向かっていくのではないかと思います。総務省の御見解をお願いいたします。

岡本政府参考人 お答えをさせていただきます。

 委員御指摘のように、地方債につきましては、多くの資金を市場から今調達をしている状況でございます。

 そのような地方債につきまして、現行の再建法制下でも、地方財政計画や地方交付税による財源保障でありますとか地方債の協議制におきます早期是正としての許可制など、こういう制度と相まって、御案内のようにBIS規制上のリスクウエートはゼロ%とされております。

 これらに加えまして、今回の法案は、現行の再建法制で課題でございました、財政情報を多角的に開示する、あるいはその財政情報の正確性を担保するということ、それから早期の健全化という制度を導入していること、ストックに関する指標を導入したこと、あるいは部分部分の公営企業の早期の健全化を図るというような対応を今回とっているわけでございます。

 これらの改正につきまして、私ども、市場関係者にも御理解いただくべく御説明をさせていただいておりますが、市場関係者からも、セーフティーネットが強化される方向にあるという点でポジティブな内容であるとか、地方財政の悪化を早期に発見、防止する早期是正措置の整備が相当程度進んだというような評価もいただいているところでございまして、委員御指摘の方向に資しているのではないかというふうに認識をいたしております。

井澤委員 ありがとうございました。

 最後に、ぜひお伺いしたいことがあります。通告はしておりませんでしたが、先ほど関委員からも質問がありましたことに関係しております。

 たしか大臣は、昨年の末に夕張市を視察、訪問されております。私が今回質問をするに当たり、地元の議員にいろいろと今地域がどうなっているのかという話を聞きましたら、意外な答えが返ってまいりました。国や都道府県で支援をしていくことも一つの道だ、全面的にバックアップすることも大変重要だけれども、ある意味では地域が自立をして独自で再建していくという道筋も一つ必要になっていくと言われたことが、意外な回答であり、ある程度地域自体が自律、そして今の現状認識をしていくことが重要なのだなと私は思いました。

 大臣が視察をされて、また今、支援もしなければならない、片や自立の道も促していく、そのバランスについて、視察を踏まえた御感想なりお伺いできればと思います。よろしくお願いいたします。

菅国務大臣 私、昨年の十二月二十九日に夕張市を視察しました。

 視察をして非常にうれしかったのは、夕張市の市民の皆さんが、自分たちの夕張を自分たちで再建していきたい、そうした内圧力というんですか、そういう思い、エネルギーというんですか、そういうものを私自身肌で感じられるほど、夕張市の皆さんは自分たちのまちづくりについて非常に真剣でありました。

 そして、今回市長選挙が行われて、経営に非常にしっかりとした新しい市長が誕生しましたので、私は、夕張市の皆さんのあの思い、そして新しい市長のもとで、まさに皆さんがしっかりと、自律というものが非常に芽生えたんじゃないかなというふうに思っていますので、夕張市は間違いなくいい方向に行くだろう、そして私どもも北海道庁を通じながら全面的に支援をしていきたい、こう思っています。

 そして、一般論で言うならば、やはりこれからの地方自治体というのは、自律というのがある意味では一番のキーワードだというふうに思います。ただ、よく言われますけれども、自律をするにも最低限の財政は確立されていなければならないわけでありますから、そうしたことも、自律しようという地方を支援するための地方財政の確立のために私ども全力で取り組んで、そしてまた支援していく、このことも大事だというふうに思っています。

井澤委員 ありがとうございました。

 時間が参りましたのでこれで終わりますが、最後に、今お話がありましたように、町は自分たちの町だ、その町に暮らす地域住民の生活に十分に配慮した法整備を進めていただくようにお願い申し上げ、私からの質問とさせていただきます。

 本日はありがとうございました。

佐藤委員長 次に、武正公一君。

武正委員 民主党の武正公一でございます。地公体再建法案の質疑を行わせていただきます。

 民主党も、昨年の十二月二十五日、大臣が行かれるちょっと前でございましたが、鳩山幹事長を団長に十名の国会議員で夕張に行ってまいりましたことは、何度かこの場でお伝えをしたとおりでございます。私、やはり印象深かったのは、議長さんだったんですけれども、仕方がなかったんだ、こういうような言葉が出たことでありました。もちろん、その後、青年会議所理事長の、やはりおれたちが責任を持って立ち上がらなかったらいけないんだ、こういう一言でがらっと雰囲気が変わったこともお伝えしたとおりでございます。

 きょうの質疑を通じて、なぜ夕張でいみじくもそういう仕方がなかったんだという言葉が出たのか、そして、二度とこういった仕方がなかったということがないように、いかにということで質疑を行わせていただきたいと思います。

 まず、政府提出法案の中で、長及び職員の責任について触れられているのかどうか、一点お伺いをしたいと思います。

 二点目、以前この総務委員会では、いわゆる住民訴訟の二段階訴訟、これまで長を直接住民が訴えられた法体系を、いわゆる地公体を訴えて、その後地公体が長を訴えるという二段階方式、これにした経緯がございますが、民主党はそのとき、やはりこれはおかしい、直接住民は長を訴えられるようにすべきであって、何で二段階にするんですか、こういうやりとりで反対をいたしまして、そのときは、通常国会をまたぎまして、臨時国会での政府・与党による成立といった経緯がございます。

 二点目は、いわゆる長を二段階で訴えるような法改正になって、その後、件数がどうなったのか。法改正前五年間と法改正後五年間、この件数をお知らせいただきたいと思います。

菅国務大臣 まず、長及び職員の責任についての考え方であります。

 地方自治法においては、首長やその補助職員等について、契約などの行為は法令または予算に従わなきゃならないこと、また、会計管理者が法令または予算に違反せず債務が確定していることを確認しなければ具体の支出はできないことなどの義務が定められております。

 また、こうした支出に係る事務の権限を有する職員や補助する職員等が、故意または重大な過失により法令の規定に違反をし、地方団体に損害を与えた場合の賠償義務も定められております。

 さらに、職員等に違法または不当な公金の支出等があると認められる場合には、住民監査請求、住民訴訟の制度も設けられているところであります。

 本法案では、こうした地方公共団体の長や職員に係る法令の規定を前提として、その上で、財政情報の開示の徹底を図るとともに、財政の早期健全化及び再生を図る制度を整備し、財政規律を確立しようというものであります。

 地方公共団体における住民訴訟の件数についてであります。

 総務省ではおおむね五年に一回の調査を行っておりますけれども、直近では、平成十一年度から十四年度までの間における状況を把握いたしております。その間において住民訴訟が提訴されたものの件数は八百六十六件でありまして、そのうち、平成十四年の住民訴訟制度の改正前は七百三十五件であり、改正後におきましては百三十一件であります。

武正委員 単純に二つには割れませんが、件数が減ったということがわかると思います。

 さて、既に大臣からは、国にも責任があったということは、夕張に関しては発言があったと思います。今回の政府提出法案で、今、長や職員の責任についてはこれまでの法律で整備がされているので、とりたててこの法律には明記していないということでありまして、後ほどやはり長の責任ということも議論をしていきたいと思いますが、国あるいは都道府県の責任というものについてはこの法律では何か規定をしているのか、あるいは、規定していないとすればなぜなのか、大臣としての御認識を伺いたいと思います。

菅国務大臣 まず、規定はしておりませんし、なぜということであれば、自治法上にそういう規定があるということであります。

武正委員 自治法の何条にそういう規定があるのか、御披瀝をいただければと思います。

菅国務大臣 第二百四十三条の二です。

武正委員 そこにもし条文があったら、せっかくですので、恐れ入りますがお読みいただけますでしょうか。

菅国務大臣 会計管理者もしくは会計管理者の事務を補助する職員、資金前渡を受けた職員、占有動産を保管する職員または物品を使用している職員が故意または重大な過失により云々ということでここに書かれております。

武正委員 そこでお伺いをしたいんですが、既に夕張に関して国に責任があったと言っておられる大臣でありますが、今例を挙げられたのは、いわゆる予算執行責任者に関するそうした責任ということで、職員の方ということだろうと思うんですね、地方自治法に関しては。ですから、やはり長に関してはこの法律では規定がなくて、今までのもので準用するんだということだというふうに伺ったわけです。

 まず、その予算執行責任者についてもちょっと伺いたいんですが、予算執行責任者が全国の都道府県、政令市でそれぞれ何人いるのか、それぞれによって決め方というか規定が違うようなんですが、合計数をぜひ総務省からお聞きしたいのが一点。

 それから、今挙げられた二百四十三条の二もそうですが、先ほど大臣が答弁されたのもそうですが、いわゆる故意または重過失ということでの責任ということなんです。実際、例えば十八年度、あるいはそれがなければ十七年度で結構なんですが、国や自治体に損害を与えて賠償責任を負ったり懲戒対象になった国、地方それぞれの公務員数は何人なのか。いわゆる故意または重過失ということでいいますとなかなか対象が少ないのではないのかということが言われているので、その数も教えていただきたい。また、特にこの五年間もあわせて教えていただきたいと思います。

菅国務大臣 都道府県、政令市に予算執行責任者が何人いるかということですけれども、委員がいみじくも言われましたように、非常にその規定というのはなかなか難しい部分もあることをぜひ御理解の上、私から答弁させていただきます。

 地方自治法では、普通地方公共団体の長が予算を調製してこれを執行することにしており、また、地方公営企業法では、地方公営企業の業務は管理者が執行権を有することとしております。したがいまして、法律上は首長及び地方公営企業の管理者が予算の執行の責任者である、こう考えるのが自然じゃないかなというふうに思います。

 そういう意味でいうならば、四十七都道府県の知事、政令指定都市の長は十七でありますけれども、あるいは都道府県だとか政令指定都市の地方公営企業の管理者、これは十七年度決算によりますと約三百ということであります。

 ただ、この予算執行責任者というのが予算執行について実務的に決裁を行う者という意味であれば、地方自治法においては、長の権限に属する事務は補助機関である職員に委任する、こういうことができることとされておりますので、さらに、それぞれの団体内部において決裁の権限を補助職員にゆだねている事例は数多くあるというふうに思いますので、その総数については掌握をしておりません。

 そして、この五年間で懲戒対象となった公務員の数でありますけれども、国家公務員に関しましては、故意または重過失により国に損害を与え賠償責任を負ったり懲戒処分の対象になった数については、把握をいたしておりません。

 地方公共団体においては、平成十一年度から十四年度において、地方自治法二百四十三条の二に基づき職員の賠償責任が問われ、監査委員による監査の結果、賠償責任があるとされる案件は四十二件でありまして、賠償責任があるとされた者は五十五名であります。

 なお、同条の規定に基づいた事由によって懲戒処分を受けた地方公務員の数については、把握をいたしておりません。

武正委員 内閣委員会で、今、国家公務員の、民主党いわく天下りバンク法案、民主党提出天下り根絶法案、先のは政府案、民主党は根絶法案ということで審議中でございますが、きょうも朝、理事会で、やはりもともと総務省が国家公務員、地方公務員の所管省庁なのに何でまた内閣委員会に行ってしまったんだ、こういう議論をしまして合同審査を求めました。内閣委員会の理事などに聞いても、やはり内閣委員会に総務大臣が来てもらわなかったらなかなか議論が深まらないんだ、もちろん担当大臣はいらっしゃいますが、そういうような声もよく聞かれるわけであります。

 今ただ、お伺いしたのは、やはり予算執行責任者、国では十万人ぐらいと言われていたんですね。郵政民営化の前でありました。地方で一体何人いるかがわからないということで、では、先ほどの、今回のこの法案、長も職員もこの再建法案にとりたてて明記しなかった、これまでの既存の法律があるんだよということであります。

 私はぜひ、少なくとも都道府県、政令市に照会をしていただきたい。予算執行責任者がそれぞれ都道府県、政令市では何人いるのかというのをお願いしたいと思うんですが、総務大臣、いかがでしょうか。

菅国務大臣 冒頭私が申し上げましたけれども、それぞれの自治体によってさまざまな形態があるだろう、そういうことでなかなか掌握するのは難しいという話をさせていただきました。今、問い合わせということであります。ほかならぬ武正委員の提案でありますので、私もできる限りその調査をさせたい、こう思います。

武正委員 ぜひ委員会の方に御提出をいただきたいと思いますが、委員長、お取り計らいをお願いします。

佐藤委員長 理事会で協議をさせていただきます。

武正委員 それと、後段の方の質問についても、賠償責任、懲戒対象についてなんですが、国については把握していない、地方公務員は四十二件、五十五名だということなんですが、これは国家公務員については総務省が把握する所管省庁ではないということでお答えなのか、あるいは政府として把握をしていないのか、どちらでしょうか。

菅国務大臣 これは基本的に人事院で掌握しているのかなというふうに思います。処分件数の中で大枠というのは出ていますけれども、そこまで具体的なことは把握していない、掌握していないということです。

武正委員 では、人事院に聞けばわかるということなんでしょうか。

菅国務大臣 例えば、人事院の資料を私は今持っているんですけれども、多分、横領等関係で例えば百七人免職するとか、当然こういう数字は出ると思いますけれども、実際そこまで事実関係を、具体的にどうかなということを掌握していないということでありますので、御理解いただきたいと思います。

武正委員 また人事院にも聞かなければなりませんが、いずれにせよ、こうした再建法案というものを出していくときに、長あるいは職員の責任の所在というものが明らかになるような制度がやはり必要であろう、現在の制度がそれにこたえられないのであればそれを補完する必要もあるし、また、とりわけ公務員制度の所管省庁と言われる総務省がやはりそれをきちっと把握するべきであろうということで申し上げたのでございます。私の意見とすれば、重過失は過失に改めていくべきだろうというふうに思いますが、これについては、時間の関係もありますので、大臣の御所見を伺うことはきょうは控えておきます。

 そこで、先ほど来お話がありました、政府提出法案における金融機関の貸し手責任について、大臣としてどのようにお考えなのか。債務調整、今回いわゆる棒引きにしなかった理由というのは既存の法律があるからということで、この理由についてはもう既にお聞きをしております。

 あわせて、今の貸し手責任についての考えとともに、ちょうど日経の五月十九日の記事に、地方版再生機構創設へ、第三セクター処理も対象という記事が日経に出ておりましたが、ここには、主要融資行に債権放棄を求める、こういうような記事も出ているわけですね。

 先ほど来、貸し手責任について問う委員のさまざまな意見がありましたが、今回の法律ではいわゆる債務調整については検討委員会に先送りということになっている一方、この秋にも臨時国会に提出する法案と言われている記事でありますのでまだ定かではありませんが、主要融資行に債権放棄を求める、こういうような記事もあるわけなんです。

 まずは、貸し手責任についてのお考え、これが一点。それから地方版再生機構創設、この法律、今検討中なのかもしれませんが、主要融資行に債権放棄を求めるという考えがこちらの方にはあるのかどうか、あわせて公的資金を見返りに充てるというような報道もありますが、この点をお伺いしたいと思います。

菅国務大臣 まず、本法案というのは、現行の地方行財政制度の基本的な枠組みの中で、財政指標の整備とその開示の徹底、財政悪化を早期に防止するための財政の早期健全化とか財政の再生、この制度を整備しようとするものでありまして、私とすれば、債務調整というものを実は大臣就任以来非常に関心を持っているという話をさせていただきました。そして、この債務調整問題について、総務省の中に債務調整等に関する調査研究会というものを設置して、今この問題について研究をしていただいているところであります。

 私自身、この債務調整というものに関心を示しているという一つの例として話させていただきますと、例えば夕張市の場合、六月に財政破綻を市長が表明した、しかし、私はよく言っていますけれども、七月にボーナスが前の年よりも配分された。通常、金融機関というのは、その時点で融資はないと私は思うんですよね。ですから、民間会社であると、多分そこで金融の手続、やりくりというのができなかったと思います。しかし、債務調整というものがないものですから、そういう中で七月に行われた。

 私はそうした事例を見て、やはり緊張感、緊迫感というのが地方自治の運営についても必要だろうと。そういうことで、債務調整というものを何らかの形で導入できないだろうかという考え方のもとに私が現在もいることは事実です。

 しかし、それを導入することによって、非常に財政力の低いと言われる、厳しいと言われる地方公共団体に対しての貸し渋りだとかいろいろな問題が出る可能性が実はありますので、それで今研究会を開いていただいて、そうした問題も含めて検討していただいておるものでありまして、今回、貸し手責任についてはこれに盛り込むことができなかったということであります。

 いずれにしろ、この問題については、やはり私は、この研究会の結果を踏まえて、地方分権推進委員会にしっかりとしたものを提示していきたいというふうに思います。

 そして、地方版再生機構創設、第三セクター処理も対象とするという報道であります。

 実は、私もこの報道を見て驚きました。私は、このことについて、正直全く何も承知をしておりませんので、今武正委員からいろいろな趣旨の質問がありました第三セクター云々について、債務調整の問題も、知らないのに中途半端な答えをしても混乱を生じさせるのかなと思っています。ですから、答えは控えさせていただきたいと思います。

武正委員 まず前段ですけれども、総務省さんにお聞きしても、地方金融機関が、あるいは都銀もそうでしょうけれども、特に指定金融機関を中心に地公体にどういうお金をどういう条件で貸しているのか、これは個別的なことについてはお答えできませんと。先ほども委員が指摘をしたとおりでございます。

 そうすると、こうした再建法の審議についても、いや、この債務調整、議論はあったけれども見送ったんだ、これから研究会でやりますよと。でも、法律は出てきているわけですね。地方債は、大臣にお聞きしたように、この十年の間に百兆が二百兆に膨れ上がって、どうやってこれから削減していくんですか、縮減を図るんですか。一兆、二兆、これは何とかこうやってこうやって返しますというような話がありましたが、いわゆる財政再建の展望についてはこれからというお話でございました。

 そしてまた、この後話が出るんですけれども、いわゆる借換債、これは今回認めていくわけなんですね。先ほど宮脇参考人も、いやこれはいいんだというお話がありましたが、でも地方債は地方債ですから、やはり地方債の二百兆円の縮減の道筋がないまま、これが膨れ上がっていく可能性があるのではないか、これはこの委員会の皆さんが危惧するところだと思うんですね。

 そうしますと、今は金融機関がどういう内容で、どういう利率で、あるいはどういう条件でそれぞれの地公体にお金を貸しているのかというのを、単に地方債の引き受けに占める民間資金の割合が十九年度見通しで六三%という以外にもっと細かに情報開示がされないと、やはり今回の再建法の議論にも資することはできないというふうに思うんです。もっと情報開示、地公体と指定金融機関を中心とする金融機関との関係について公開をしていく必要があると思うんですが、この点についてはどのようにお考えなのかというのが一点。

 先ほどの地方版再生機構、報道で初めて知ったというお話ですが、それでは今こういう法律が検討されているのかどうか。検討されていない、少なくとも総務省は一切相知らぬということを、もう一度伺いたいと思います。

菅国務大臣 私は、確かに契約上の問題というのはそれぞれ金融機関と地方自治体にあると思います。しかし、地方公共団体ということであれば開示した方がいいだろう、このことについて私は一貫しているわけでありますけれども、なかなか事務方と距離が縮まっていないということも事実であります。

 ただ、私はやはり、そういう中で今度債務調整の研究会を私ども開いたということで、そのことは理解をしていただけるのかなというふうに思います。

武正委員 二点目の地方版再生機構、総務省では一切相知らぬ、あずかり知らぬことだ、研究も何もしていないということでよろしいでしょうか。

菅国務大臣 少なくとも、今この時点では全くしておりません。

武正委員 そうすると、こういうことがどこで検討されているのか。検討されているとすれば、例えば金融庁とか、あるいはお得意の内閣府、内閣官房なのかもしれません。ただ、こちらのスキームでは、債権放棄を求めるというようなことがもしあるとすればやはり整合性というものも問われるでしょうし、この委員会でも、やはりそうはいっても小さな自治体では民間金融機関からの資金調達というのはなかなか難しいんだ、市場からのお金も集めにくいんだよと。

 ということであれば、やはり地方債の共同発行も含め、あるいはこの間お話をした東アジアでの流通も含めて、かなり総合的に、それこそ債務調整の研究会、先ほど宮脇さんは余り大きくやっていないんだというようなお話をされていましたので、やはりここはもうちょっと時間をかなりしっかりと急ぎながら、御議論についてよりてこ入れが必要なのではないのかなと思うわけであります。

 ぜひ情報開示を、個別具体的な契約内容までは言いませんが、もう少し立法府、国会の方に情報が提供されないと議論が深まらないと思いますので、その点は重ねて総務大臣にお願いをしたいというふうに思います。

 さて、監査制度の強化について議論を移したいと思います。

 監査委員のあり方、先ほど西村委員からも質疑で、参考人に、どうですかという話がございました。公認会計士、税理士、弁護士などの有資格者の登用、あるいは監査委員の公募、あるいはまた包括外部監査対象団体を拡大したり個別外部監査対象団体の範囲を拡大するなどが、私はやはり監査制度の強化の一つとして考えられると思うんですけれども、この点、以上、総務大臣の御所見を伺いたいと思います。

菅国務大臣 まず、公募することについての考え方であります。

 監査委員の公募については、現行法上も、識見を有する者のうちから選任をされる監査委員の選任に当たっては、あらかじめ監査委員になることを希望する者を公募し、首長が希望者の中から候補者を定めて選任議案を提出することは可能だというふうに私は思います。いずれにしろ、今後とも、地方公共団体において、監査機能の充実の観点から、適切に監査委員の選任が行われることを期待し、総務省としても必要な情報提供等をしっかり行っていきたいと思います。

 そして、公認会計士、税理士、弁護士等有識者の登用の義務づけでありますけれども、今回の法案においても、公共団体の赤字だとかあるいは将来の財政負担の状況も含めた財政指標を整備して、この指標の議会への報告あるいは公表に際して監査委員の審査に付することとしており、この指標を監査委員会が適切に審査する能力というのは当然求められます。

 一方、公認会計士等の有資格者の監査委員登用に当たっては、有資格者の登用を義務づける必要性についてどのように考えるのか、また、一定の団体において既に外部の有識者による外部監査を実施していることとの関係をどう考えるのかだとか、あるいは有資格者の人員の確保が実際に可能かどうか、こういう検討は必要だというふうに私は思います。

 しかし、まず地方公共団体において、監査委員がみずからの権限を十分に行使して実効性のあるチェック機能を果たすことが重要であり、総務省としても、監査委員制度の充実強化を図る観点から、必要な検討を行うとともに助言指導を行っていきたいというふうに思います。

 さらに、包括外部監査を義務づける団体の範囲を拡大すべきじゃないかなというふうに思っています。このことについては、これまでの外部監査制度の運用状況を十分検証するとともに、地方分権の進展に伴う地方行政体制整備の必要性を踏まえて、必要な検討というものを行っていきたいというふうに思います。

 さらに、個別外部監査対象団体の点についてであります。これまでの外部監査制度の運用状況を十分検証するとともに、地方分権の進展に伴う地方行政体制整備の必要性を踏まえながら、やはりこれも必要な検討というものを行っていきたい。

 以上であります。

武正委員 先ほど公認会計士協会の副会長さん、宮内さんからもお話がありまして、今、包括外部監査百十一、そのうち百は公認会計士がやっているよと。もちろん弁護士、税理士などもそれにかかわっているわけであります。

 公認会計士さん、頑張っていただいているんですけれども、地方では、やはり公認会計士さんが必ずしもいらっしゃらない地域というのもある。私は、前に税理士会の方においでいただいたら、たしか全国で六万人とか七万人いらっしゃるんでしょうかね、やはり税理士さんに外部監査で、あるいは監査委員も含めて、もっともっとお願いしていったらどうかなというふうに思っておりまして、そうした公募あるいは有資格者の登用というものも、いろいろな工夫があっていいと思うんですね。小さな自治体だけでなくていろいろな、複数協力しながらということも含めてやっていったらどうかなと。

 あわせて、包括、個別の対象団体も、平成十七年度、包括外部監査が今百十一、個別外部監査、条例制定団体が百四十一ということで、まだまだ少数にとどまっていると思うんですね。今回の再建法で外部監査を義務づけはしますけれども、私は、条例制定も含めて、当初から義務づけていったらどうかなというふうに思うんですね。

 個別外部監査は一件五十万円ぐらいからやっているところもあるんですよ。包括外部監査が大体一千万から二千万台が六割ぐらい占めているんですけれども、個別外部監査は五十万円とか、かなり少額でもできますので、私は、やはりこうした点も考えていくべきだろうというふうに思うんですけれども、大臣、何か御所見があれば。

菅国務大臣 これを全国に義務づけるというのはどうかなというふうに私は思います。ただ、条例でできることですから、そういう方向性というのは正しいというふうに私は思いますけれども、国が全部義務づけるというのはどうかなということであります。

武正委員 例えば、個別外部監査の対象を市以上に義務づけていって、そしてそのほかは、条例で決めたところはできるようにする。ですから、それはそれぞれの町村の自由になっているわけですし、例えば東京都で杉並区などは毎年個別外部監査をやっていますね。ですから、やはりそれは、条例で定めた町村に拡大していくということは選択肢としてあってもいいんじゃないかと思うんですが、その点はいかがでしょう。

菅国務大臣 今の仕組みでも、町でもどこでもそれは条例でできることになっておりますので、私はそうした方向に行くことについては全く否定をするものではありません。

武正委員 そこで、先ほど公認会計士さんのお話をしましたけれども、監査委員あるいは監査をする立場から公認会計士協会の方が前に述べていたのは、そうはいっても、財務諸表監査、これがやはり必要なんだ、これがきちっと整備されていないと、幾ら監査委員が頑張っても、土台あるいは内部統制がきちっとできていないと監査にならない、こういうようなお話でありまして、いわゆる連結財務諸表の整備というのが義務づけられないのかどうか。

 あるいは、財務諸表作成の基準の統一、これは、総務省方式、財務省方式、結果、二〇〇六で財務省方式、財務四表の準備ということに落ちついたようでありますが、この点についてどのようにお考えになるのか。特に、財務諸表作成時においていわゆる簿価と時価、これをどうするのか、時価に統一できれば一番いいんだと思うんですけれども、以上の点、お答えをいただきたいと思います。

菅国務大臣 まず、地方公共団体において、資産だとか債務管理や財務情報のわかりやすい開示の観点から、連結ベースも含めた財務書類を整備するというのは私は極めて大事だというふうに思っています。

 その観点に立って、地方公共団体に対して連結財務書類の整備を義務づけることについては、現金主義、単式簿記による現行の予算決算の意義、国の取り組みの動向、地方公共団体の財務全体のあり方等を十分に考慮した上で、慎重に検討する必要があるというふうに思います。

 総務省としては、昨年の五月の研究会報告書を踏まえて、新たな公会計モデルを活用して、連結ベースを含めて、今後すべての地方公共団体において財務書類が整備されるよう要請をいたしておるところでありますけれども、公会計の整備が地方の規律ある財政運営の実現に資するよう、さらにこのことについては積極的に取り組んでいきたい、このように考えております。

 また、この財務書類の整備については、現在、新地方公会計制度実務研究会において、財務書類の作成方法や資産評価について実務的な検討がなされております。連結に当たっては、会計基準統一は行わず、各法人の財務書類の金額を基礎として連結することを原則とするものの、売却可能資産等に係る評価については、可能な範囲で時価で統一する。そして、今後、一定の方向性というものは、その時価統一という方向性で出されるものだろうというふうに思っております。

武正委員 地方公営企業金融機構法附則十条二項で、資産、負債の承継について大臣とやりとりをして、「時価によらないことができる。」という条文について、いや、原則あるいは基本的に時価でというお話もございました。地方公営企業についても時価会計の導入ということになっていくんだということだと思いますが、特に、今回の四つの指標がありますけれども、実質赤字比率、連結実質赤字比率、実質公債費比率、将来負担比率、特にこの将来負担比率は、私はやはり時価でまず試みをやってみてもいいのかな、将来像を描いていく意味で、ここら辺がまず導入するには導入しやすいのではないかなというふうに思うんですね。

 これについてどうでしょうか。将来負担比率の方にこの時価会計というのを導入していくについて。

菅国務大臣 この趣旨そのものが、市民の皆さんに自分たちの財政状況がどうなっているかということをできる限りわかりやすく情報提供する、そしてまた監視もしていただく、そういう観点もありますので、私は将来的なものについても、できるだけ時価でわかりやすい方向の方が望ましいというふうに思います。

武正委員 最後に、住民監査請求について伺いたいんです。

 この住民監査請求の期間、その対象が一年ということがあって、そのことが発覚をして、では住民監査請求をしようとしても、もう一年過ぎてしまっている、こういったことがよく言われるわけなんですけれども、例えば、この期間を拡大していくこと、要件の緩和、これは全国知事会も指摘をしている点で、先ほど井戸知事からもいただいたペーパーの方にその指摘があったわけなんですけれども、この住民監査請求の要件緩和、これについての御所見を伺いたいと思います。

菅国務大臣 この住民監査制度というのは、住民訴訟制度とあわせて、地方公共団体における住民の行政監視制度の一つとして極めて大事だというふうに、まず私の認識を申し述べさせていただきます。

 そして一方、この監査請求というのは、住民個人が請求をすることができるために、その要件を緩和することによって件数がいたずらに増加することだとか、あるいは長や職員による政策判断に対する過度の慎重化や責任回避、士気の低下などが生じて、地方公共団体が積極的な施策展開を行うことが困難になる、こういう懸念も当然考えなきゃならないだろうというふうに思います。

 したがって、要件を緩和する、このことについては、地方公共団体における円滑な事務執行を確保する観点も踏まえながら検討していくべきことになるだろうというふうに思います。

    〔委員長退席、岡本(芳)委員長代理着席〕

武正委員 地方独法、地方三公社、第三セクター九千二百八団体。自治体からの貸付金四兆四千二百二十四億円。債務保証、損失補償計九兆三千八百五十三億円。この間、この委員会でも取り上げたように、独立行政法人、いわゆる独法化に当たって、十二兆円のいわゆる減殺ということもありました。これから、その地方の再生機構、これによっての債務放棄なども記事がある中で、説明責任がきちっと求められる中で、やはり何といってもその原資は地方あるいは国の税金でありますので、それがいつの間にかなくなっている、減殺をしてしまっているようなことがないように、きちっとそれは説明にたえられるような、そしてそういう説明の道は残しておくべきであって、私は、住民監査請求の拡大は、全国知事会の要望に沿って取り組むべきというふうに思っております。

 そうでないと、何度も申し上げますが、長を訴えられる例の法改正によって住民訴訟の件数が減った、こういうのはやはり説明責任からいうと逆方向であるということを改めて申し上げて、私の質疑にかえさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

岡本(芳)委員長代理 次に、逢坂誠二君。

逢坂委員 民主党の逢坂誠二でございます。きょうは、自治体の財政再建法制について、一時間時間をいただきましたので、いろいろ議論をしたいと思います。

 今回の再建法制について、非常に評価をする声、要するに、人間の健康診断に例えると、健康診断項目が多くなって非常によいではないかというふうに評価をする声を各地で聞きます。こういうことを早目に取り入れてやっていれば、財政もこんなにならなかったのになという声も聞く。歓迎する声が私のところにもたくさん来ております。

 しかし、その一方で、自治体の活動というのは、人間のように、病気で悪いところがあるからといって、完全にストップをして、入院をして治療に専念をするというわけにはなかなかいかないわけであります。治療をしつつ、でも活動もしなければいけないということで、職場に通いながら通院をするというような状況ですね。完全に仕事をストップさせることができないという側面を抱えておりますので、人間ドックの診断項目がふえて病気をすべて発見し尽くして、一から十まで全部治してからよいしょと活動するということにはならない点も、やはり留意が必要なのかなと思っています。

 それからまた、同じ病気であっても、自力で、薬を飲んで再生できるというような病気、自分が生活習慣を直して何とか再生できるというような病気もある一方で、あるいは自己の責めによらない、自分の力ではいかんともしがたい病気というのもあるのではないか。このあたりをしっかり分けて考えなければ、自治体関係者のみならず、国民の不安というのはやはり高まっていくのかなというふうに思っているところです。

 きょうはそのような意味から何点かお伺いをしたいんですが、まず最初に、国が自治体の財政をどのような形で把握しているかということをお伺いし、そして、今回の法制度が施行されればそれがどう変化するのかということをお伺いしたいんですね。

 私も自治体におりましたので、国の皆さんがどんな方式で自治体の財政を把握しているか。一番大きなのは決算統計というのがあろうかと思います。これは毎年度やって、定期的に自治体の財政を調べる。それから、都道府県においては、財政事情のヒアリングというのをやっている。当初予算の編成状況だとか、九月の補正予算の段階の状況だとか、あるいは決算見込み、これをヒアリングしている。あるいは、市町村においては、ある一定のライン以上に自治体財政が悪くなった場合にはヒアリングをするようなこともやられているというふうに伺っております。そして、これらをもとにして、総務省のホームページではさまざまな自治体の財政情報が公表されているわけですね。

 さらに今、公会計のことについても、総務省レベルで全国の自治体にも公会計を広げていくような取り組みもされているというふうに聞いているんですが、現時点で、今私が述べた幾つかの方法以外に、自治体の財政を把握するためにやっていることというのはあるんでしょうか。政府参考人の方から、まずお伺いしたいと思います。

岡本政府参考人 お答えをいたします。

 大体総務省で行っております、自治体の財政の実態をお聞きしてどのような状況にあるかということにつきましては、基本的には今委員御指摘の範囲内であろうと思っております。

逢坂委員 大体今の範囲で、実は、自治体関係者に今回の法制のことについて聞きますと、健康診断の項目がふえてよいことだという声がある一方で、これができることで国の関与が強まるのではないか、何か必要以上にああだこうだ、やいのやいのと言われるのではないかと、岡本局長はそんなことはないとは思うのでありますけれども、そういう声を聞くわけですね。

 それで、今回の法律がもし通過したとして、今私が述べた現在の自治体の財政の状況を把握する手法以外に、何か新たなことというのはふえるんでしょうか。それとも、今とほぼ変わらないと。例えば、決算統計の一部、表は多少変わることはあるけれども、手続、手順としては同じようなものだということになるのか、そのあたりはいかがでしょうか。

岡本政府参考人 お答えをいたします。

 委員御指摘のように、今回の法律改正によりまして、新たな指標が加わるということになります。もう言わずもがなでございますが、今回の指標は、従来用いてまいりました実質赤字でありますとか実質公債費比率でありますとかいうものが、その自治体全体の財政状況を住民にわかりやすく全体的に、一体的にとらえてもらうにはやはり欠けている面があったのではないかという点から、連結の実質赤字でありますとか将来負担比率という指標を一定の積算基準を明確にしながら公開しようという意味で、住民に対してきちんとそれを開示するというものでございます。

 当然のことながら、そういうものは、今御指摘ございましたように、今までやってまいりました決算状況の調査といったものについて、そういう指標を聞かせていただくということにもなりますし、また、年に何回かやっております県を通じました財政事情のヒアリングといったものについても、そういう事情をお聞かせいただいて、それについて類似団体や他団体と比べた場合に問題があるといったことについて議論をさせていただき、必要な場合には助言をさせていただくという場面になろうかと思います。

 そういう意味で、回数が変わるとかやり方が変わるという面はそんなに直接的にはないと存じますが、例えば将来負担比率といったようなものを考えてみますと、例えば、従来、ともすれば、決算状況調査や財政事情のヒアリングでは、やはり第三セクターでございますとか公社といったものについて、それを今後どのように考えていくのか、あるいはその抱えている問題がどうかといったことについて、ざっくばらんに申し上げれば、そう突っ込んだ議論がやりとりされていたというような面が、場面場面にあったかもしれませんが、総体的なこれまでの感想として申し上げれば少なかった面があろうかと思いますので、新しい指標を導入したことに伴いまして、ある意味では非常にわかりやすくなってくる部分について、議論としてはそういう意味でのいろいろな深まりが出てくるのではないか。また、それがそうあって全体的な財政の健全化に結びつくということを我々としては期待しているということだと思います。

逢坂委員 この点につきましてはこの程度でやめたいと思いますけれども、こういう健康診断の項目がふえることはよいことではありますけれども、ぜひ、過度な自治体への関与というものがないようにやはり御配慮願いたいということを一点、申し上げておきたいと思います。

 それから、次になんですけれども、きのう旭川で地方公聴会が行われました。その席上でも意見陳述者の方から出ておりましたけれども、住民生活に極めて密接に関係のある会計、例えば病院でありますとか下水でありますとか、あるいは、きのうは出ていなかったかもしれませんが交通事業会計でありますとか、これらの状態というのは必ずしも全国的に芳しいものではないというふうに思われます。しかし、今回の新しい再建法制が適用されることになると、それらの会計についても、財政規律をしっかりするんだということで、大幅な見直しが迫られることになろうかと思います。

 しかし、冒頭に申し上げましたとおり、病院会計の見直しが必要だ、だから診療科目をどんどん切り捨てていきましょう、お医者さんの数を減らしましょう、病院から診療所に規模を縮減しましょうなどというようなことがもし全国でどんどん行われるようなことになれば、これはこれでまた、財政規律の保持だけは達成されるけれども国民生活はもう大変な状況になるというのは、これは火を見るより明らかなわけであります。

 十七年度の自治体病院の決算の状況、これは公営企業決算統計からの数値でございますが、私の手元に今あるんです。これを見ますと、全国でおよそ千の自治体病院の会計がありますけれども、そのうちの六三%ぐらいが十七年度で赤字になっているわけですね。しかも、その十七年度の赤字幅が一千八百六十億を超えているわけであります。これはもう本当に大変な状況です。しかも、これまでの累積の赤字を見ますと、これは一千億などというレベルではなくて、一兆七千八百億を超えているというようなのが今の自治体病院の累積の赤字の実態なわけであります。

 それから、これも私の手元の資料でありますけれども、では具体的にどんな病院が赤字なんだというリストが、今私の手元にその六百二十六病院の個別の名前があるんですが、どこを見ても、いや、これは全国本当にあまねく赤字なんだなということが感じられるわけであります。

 まず政府参考人にお伺いしたいんですけれども、今回の再建法制、こういう病院会計に直接、もう即機械的に当てはめるというようなことを考えるのか、それとも、こういう実態を見ると、少し段階的にやる、あるいは経過措置を設けるというようなことが必要か必要でないか、そのあたり、まず事務レベルとしてどのような検討をされているでしょうか。

岡本政府参考人 今委員御指摘のように、病院事業については、例えば救急医療の経費でございますとか高度医療の経費でございますとか、能率的な経営を行ってもなお採算をとることが客観的に困難な経費といったものについては、公営企業でありましても一般会計が負担するといったことになっているわけでございます。

 したがいまして、今回のいろいろな指標の計算に当たりまして、委員御質問の点は、それぞれの四指標、連結をした場合のものと、それから、例えば公営企業独自で経営健全化をやる場合のいろいろな資金不足の比率といった点の両方があるかと思います。

 例えば資金不足の問題に関して考えますれば、いわば今病院が抱えている全体の状況、ですから、今の日本の自治体病院が置かれている平均的な状況といったものを踏まえた中で、やはり相対的にもう少し早急な健全化が要るのではないかといったような、ある意味での分類分けでございますとか、今申し上げましたような一般会計との負担関係がどのようになっているのか。それから、病院だけではございませんけれども、例えば企業の性格上、立ち上がりに一定経費必ず赤字が出てしまうような形態の公営企業もあるわけでございますから、そういう公営企業のそれぞれの特性といったものに着目しながら、かつ、今委員御指摘のような、今の置かれている全体のそれぞれの事業別ごとの状況といったものを見ながらラインを定めていくということで検討をしていきたいというふうに現在考えておりますが、まだ具体的にその辺について、どの辺が目標点としてあるのかというところまでは検討の段階には至っておりません。

逢坂委員 今岡本局長から話がありましたとおり、これはやはり一律に当てはめるということでは地域の崩壊が起こってしまうおそれがありますので、ぜひ慎重にやらなければいけないというふうに思っております。

 そこで、きょうは菅原厚生労働政務官にもお越しいただいておりますけれども、菅原政務官にお伺いしたいのは、確かに自治体病院ですから、これは自治体の会計であります。しかし、先ほど私が紹介いたしましたとおり、自治体病院の累積赤字が一兆七千億というレベルに達しているわけですね。これは、いわゆる財政規律だけから何とかしろというようなレベルではなくて、社会問題、大問題ではないかという気がするわけです。すなわち、医療制度そのものを抜本的に見直すというような姿勢を持たなければ、この一兆七千億などという累積赤字をうまく解消していきつつ地域の医療を守るということはやれないのではないかという気がするんですね。

 私、北海道内のさまざまな自治体病院を今歩いておりますけれども、お医者さんに話を聞きますと、制度改正のたびに自治体病院の経営がやりづらくなっている、あるいはお医者さんの勤務条件が極めて過酷な状態になっているという声を聞くわけであります。だから、財政規律という点では今回の総務省が提案している法律というのはいいんですけれども、地域の医療を守るという観点では、どうしても厚生労働省として地域の病院経営に対してもっと突っ込んだ姿勢というものが必要になってくると思うんですけれども、まず、政務官、いかがですか、この一兆七千億という累積赤字を聞いて。

菅原大臣政務官 ただいま逢坂委員の方から大変重要な御指摘を賜りました。

 全国、各自治体に自治体病院があって、なおかつ、大変な赤字を抱え厳しい経営状況にある、これは現実のものとして認識をいたしております。しかしながら、僻地あるいは離島、いわば地域であればあるほど、ある意味では医療ニーズが大変必要なところが実際には赤字経営に至っている、こういう現実もあろうかということも認識をいたしております。

 いずれにいたしましても、経営の問題に関しましては、例えば医業に限った収益に対する費用だけを見ますと、私的病院が九九・六%に対しまして、自治体病院が一一五・二%となっておりまして、いわゆる収益よりも費用が大変高い傾向にあるわけでございます。

 医療法人などの私的病院の約四八%が赤字であるという状況の中で、自治体病院についてはその九〇%が赤字である、このような調査結果が出ておりまして、国民の生命、健康を守っていくという大きなテーマまた使命に向かって、厚生労働省は、自治体病院の経営もしっかりとかんがみながら、どうあるべきか、しっかり取り組みを進めていきたい、こう考えております。

 まずは、そう申し上げます。

逢坂委員 しっかり取り組むというようなことでありますけれども、自治体病院の存在意義というのは何かということを考えてみたら、民間病院というのは、やはり収益性、ちゃんとやってももうかるんだという地域でやるわけですね。自治体病院というのは、収益が上がらない地域であっても、そこに医療ニーズがある、国民の生活、安全を守る、命を守るという意味では、収益性が悪くてもどうしてもやらなければいけない、そういう仕事、役割を地域の皆さんはやはり自治体病院に期待するわけですね。

 したがいまして、自治体病院だけがという意味で私は言うんではないんですけれども、例えば収益性の低いと思われるような地域の病院の診療報酬体系を少し変えるとか、そうしなければ医療制度というのは維持していけないのではないかという気がするんですが、政務官、その辺を踏まえて、もう一度厚生労働省としての姿勢をお願いします。

菅原大臣政務官 ただいま診療報酬とのかかわりについての言及がございました。

 今るるお話がありましたように、全国的に、僻地医療や小児救急医療等について、厚生労働省といたしまして、引き続き補助金制度の中で自治体病院も施設整備費や運営費の助成対象としているところでございます。今後とも、総務省の地方財政措置と連携をしながら、適切な地域医療の確保に努めてまいりたい、このことをまず申し上げたいと思います。

 あわせまして、これからの議論になるかもしれませんが、仮に診療報酬において地域差を設けるというようなことがあるとするならば、同一のサービスについて医療機関の受け取る報酬や患者が支払う自己負担が地域ごとに異なるわけでございます。厚生労働省といたしましては、国民がひとしく保険診療を受けることができる国民皆保険を理念として持っているところでございまして、その点については、多岐にわたる議論、慎重な議論が必要ではないか、このように考えております。

逢坂委員 診療報酬のことについては私は一つの例示として申し上げたわけで、必ずしもそれだけをやれということではなくて、もし、国民がひとしく医療を受ける権利、チャンスというものを保障する意味で診療報酬は全国一律の方がいいという結論になるというのであるならば、では、実際の機会、チャンス、医療機関があるないというチャンスにおいては、経営のやりやすいところとやりにくい地域があるわけですから、別の手法も含めて、政務官が御指摘になったように、幅広くこの問題を、しかも早急に検討しなければ、日本の各地、格差是正、格差是正と言っているけれども、ますます格差が広がっていく状況になりますので、ぜひギアを入れかえて検討をお願いしたい。総務省は総務省で、財政の面からもどんどんブルドーザーを押してきますので、それはそれで大事なことなんですけれども、そこをよろしくお願いしたいと思います。

 政務官、もう大体よろしいです。ありがとうございました。

 次に、やはりこれは同じくきのうの公聴会で出ておりました下水道会計についてお伺いをしたいんです。

 平成十六年の十二月十六日付で、国土交通省の下水道企画課下水道管理指導室長名で、下水道経営に関する留意事項という文書が全国の自治体に発信をされています。この文書を見ますと、下水道事業管理者は、「能率的な経営の下で必要となる事業の管理・運営費用のすべてを回収できる水準に下水道使用料を設定し、これを確実に徴収するように努めなければなりません。」ということが書かれているんですね、この平成十六年十二月の全国に発した文書に。すなわち、大ざっぱに言うと、自分のところでかかった経費は下水道使用料でちゃんともらいなさいよということであります。

 ところが、実は私がニセコの町長時代にこの文書をいただいたんですけれども、確かにこれは建前であるけれども、本当に現実に下水道会計というのはそういう実態になっているかなというふうに思いまして、昨年の五月十二日の国土交通委員会でこの点確認させていただきました。そうしたところが、当時、平成十四年度時点で、この文書に該当する自治体が千二百三十六団体あって、そのうち、この文書どおりに下水道料金を適正にやっているというのは四十四団体しかないというお答えを国土交通省からいただきました。

 この文書で言うところの努力規定が千六百団体のうち四十四しか達成されていないんですけれども、あれからまた年数が経過いたしまして、今はどの程度の団体がこれを達成しているのか、あるいはまた、達成するということは本当に現実に即したことなのかどうか、このあたり、お伺いいたしたいと思います。

    〔岡本(芳)委員長代理退席、委員長着席〕

江藤政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま委員の方から紹介がありました通知の文書の趣旨でございますけれども、昨年も申し上げたんですが、経営の健全化のためには適正な料金徴収をぜひ検討していただきたいという趣旨で発出しております。

 この適正な料金ということなんですけれども、下水道事業というのは非常に長期間にわたりまして、しかも整備の進展とともに料金収入がふえていくという構造になっておりますので、料金を考える際に、単年度ごとの収支で料金を考えるべきではない、収支期間全体でその料金というものを考える必要があるというふうに私ども考えておりまして、そういう趣旨で、収支期間全体を見通して適正な料金水準となるように検討いただきたいということでこの文書を出しております。

 一般的には、初期の段階ですと、どうしても使用水量が少ないものですから料金収入が少なくて、単価をはじくと逆に非常に高いものになってしまうということでございますので、実際の公共団体における料金設定に当たっては、段階的に料金を値上げして収支期間全体で収支をとるというような形でやられております。そういう面で、昨年、四十四団体というお答えを申し上げたんですけれども、その数字についても、一気に単年度で解消していくという性格のものではないというふうに思っております。

 それから、実際数字がどうかというお尋ねでございますけれども、この下水道料金というのは公費で負担すべき部分を除いて料金をいただくという仕組みになっておりまして、その公費で負担すべき部分というのが総務省の方の一般会計の繰り出し基準という形で示されております。その考え方、ルールが実は昨年度大幅に改定されましたので、その十八年度決算の状況を見て分析したいと思っておりまして、現時点ではその数字を把握いたしておりません。

逢坂委員 数字を把握していない、しかし、自治体には一応ちゃんとやりなさいという文書を出している。自治体にしてみると、この文書を受け取ると、やはりこれはなかなか深刻なわけであります。

 そうして、現に、それでは一体どの程度料金を引き上げればこの国土交通省が出した十六年度の文書に沿うようなことになるのかというものを、これは実は十八年の三月に、総務省の自治財政局が今後の下水道財政の在り方に関する研究会の報告書というのを出しております。

 この中を見ると、例えば、農業集落排水なんかは今、大体月二千六百円程度の下水道使用料だ、これを国土交通省が言うようなレベルまでに引き上げるためには月額の料金を一万円にしなければいけないということが書いてあるわけですね。あるいは、特定環境保全公共下水道もやはり似たようなもので、現時点では月二千八百円ぐらいだ、ところが、この料金を九千八百円に引き上げなければいわゆる国土交通省が言うところの適正水準にはならないということなわけですね。

 そこで、これはまず国土交通副大臣、渡辺副大臣にいらしていただいておりますけれども、果たしてこういう引き上げというのは、これは国民生活を考えたときに現実的なものなんでしょうか。二千五百円、六百円のものを一万円に引き上げなければ実は下水道会計の適切な経営、運用ができないのだということであるならば、どこか、そもそも根本的に下水道事業というものに対する見方を変える必要があるのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

渡辺(具)副大臣 委員御指摘の御意見はもっともな御意見だし、委員が長い間自治体の経営に直接かかわってこられただけに出てくる現実的な御指摘だと思いますし、また、この下水道事業に対しましてそういう御理解をいただいていることに対して、むしろ我々としてはありがたいといいますか、そういうふうにも思うわけでございますけれども、しかし、現在は、現在の仕組みの中でもう少し工夫して、あるいは切り詰めて経営改善の努力をしていきたいというふうに思っているわけでございます。

 先ほど下水道部長も申し上げましたように、確かに厳しい状況にあるんですけれども、地域の自律性、裁量性を高める観点から、汚水処理施設整備交付金を創設し、事業進捗に応じた浄化槽等の汚水処理事業間の予算の融通を可能にして、地域特性に応じた、それぞれ地域の特殊事情に応じた下水道整備の推進を図っていったり、あるいは水道整備を行うときも、従来の技術基準にとらわれないで、ローカルスタンダードによる低コストな整備手法を導入するとか、先ほども申し上げましたように各種の汚水処理事業との共同化など一層連携を強化するとか、そういうことをして、まずは現在のシステムにおいての改善を図っていきたいというふうに思っています。

 抜本的な見直しということも、先生御指摘の意見は十分わかるわけでございますが、この点に関しては、国土交通省だけでもできないことでもありますし、当面は現在のシステムの中で改善を図っていきたい、このように思っております。

逢坂委員 現在のシステムの中で最大限の努力をするというのは、これはまず第一条件として当たり前のことだというふうに感じます。

 さて、そこで、今度は総務省の政府参考人にまた改めてお伺いをしたいんですが、下水道会計が今のような状況、実態であります。いわゆる会計を適切に運用していくために、料金を相当に引き上げなければならない現実がある。しかし、今渡辺国土交通副大臣からも話があったとおり、それはなかなか大変な事態だということも理解をするという話がございました。

 とすれば、今回のこの再建法制、やはりこの下水道会計においても何らかの段階的な適用、一足飛びにもう全部法を適用するんだということをしてしまうと相当な混乱が起こるような気がするんですが、このあたり、政府参考人の方で、現時点で事務レベルとしてどのようなお考えを持っているか、お聞かせいただきたいと思います。

岡本政府参考人 下水道事業についてでございます。

 今いろいろ議論がございましたように、下水道事業については、その事業実施に多額の建設投資が行われているわけでございまして、供用開始後一定期間、末端管渠の整備が進まない、加入率等が低い、そういう意味で料金も余り高くできない、収入が少ない等の事情によって、構造的にやむを得ない赤字が生ずる場合が多くの場合はあるというふうに考えております。

 そういう中から、その進捗に応じて使用料等の見直しを行って効率化をしていただいて、できるだけその均衡を図っていただく。当然、一般会計で負担すべきものは負担するという前提の上ででございますが、そういう御努力を各団体にもお願いするということではございますが、委員御指摘のように、下水道事業についてそのような構造的な実態があるということ、また、現在におきます下水道の使用料についての一定の実態といったものがあるわけでございますので、下水道に係ります具体的な指標、基準といったものはこれから検討してまいるのでございますが、先ほど申し上げましたように、下水道事業についての性質上、供用開始後一定期間やむを得ず発生するような赤字といったものがこれは観念上考えられるというふうには考えておりますので、そういうものについて適切に考慮していくということを現在検討している最中でございますし、また、地方公共団体からもそういう、いわばやむを得ず発生する構造的な赤字といったものと使用料等についての状況といったものについての御議論もございますので、そういう意味で地方団体ともよく意見交換しながら検討を進めてまいりたいというふうに考えております。

逢坂委員 そこで、菅総務大臣にお伺いをしたいんですが、今たまたま私は病院会計と下水道会計の例を出しました。特に病院会計などというのは、今回の再建法制の適用を一足飛びにやってしまうと大混乱が起こる可能性も否定できない、それで一兆円、二兆円近い累積赤字もあるわけであります。したがいまして、この法の適用について、大臣として、基本的に国民生活を混乱させないという観点から、どのようなお考えをお持ちなのか、お聞かせいただきたいと思います。

菅国務大臣 今、病院、下水道事業についていろいろな質疑がありました。前にも病院会計については委員から指摘をされました。

 今度の会計を導入するに当たって、私どもは、円滑に導入する、こういうことを基本に考えていますし、導入することによって、それぞれの財政状況というものを明らかにすることによって、緊張感と同時に、これからのそうした、それぞれの自治体の全体方向の財政再建に資することができればいいな、そういう思いであります。特に病院については、地域の中で多くの皆さんから非常に関心のあり、そしてまた利用もされております。そういう中で、一律に線を引くということは当然避けるべきだろうなというふうに私は思っております。

 いずれにしても、これから私どもは決めるわけでありますけれども、現在のものを前提としながらも、今回の指標は指標として、それとは別に、公的病院のあり方というものは、これは先ほど厚生労働の菅原政務官からも答弁がありましたけれども、その地域における重要性というものをかんがみながら、しっかりと私どもは対応していきたい、こう思っています。

逢坂委員 今、菅総務大臣から、一律に適用するということではやはりまずいだろうというような答弁がございました。しかも、あわせて、病院のあり方についても厚生労働省ともしっかり考えていきたいということでございますが、ぜひ、これはやはりギアを一段も二段も入れかえてスピードを速くやらなければ、まさに現に困っている地域、人がたくさんあるわけですので、これを機会によろしくお願いしたいと思います。

 渡辺国土交通副大臣、お出ましいただきまして大変ありがとうございます。

 それでは、次の論点をお伺いしたいんですけれども、国の財政のチェックについてなんであります。

 自治体の財政は、例えば経常収支比率でありますとか財政力指数でありますとか実質公債費比率、あるいは今回の法制によっても幾つか新しい指標というものができるわけであります。自治体の財政というのはある種客観的な物差しによって判断できるというように思うのですが、それに比較すれば、国の財政というのを客観的に判断する指標のようなもの、例えば自治体でいえば経常収支比率みたいなものというのはあるのかないのか。きょうは主計局次長に来ていただいておりますけれども、まず、このあたりについてお教えください。

真砂政府参考人 今先生御指摘の指標でございますが、私ども、財政を見るときにいろいろな指標をつくりまして見ておりますし、国会にも御報告しておりますけれども、法律の仕組みとして、ある指標を前提に、その指標が一定の数字を超えればこうなるというような法律的な枠組みというものは特にございません。

逢坂委員 法律的な枠組みはないということでございますけれども、であるならば、これも次長にお伺いしたいんですが、どんな方式で国民の皆様に客観的に日本の財政の状況をお知らせするのか。あるいは、そういう指標がなければ客観性というのは得られないのではないかという気がするんですが、いかがでしょうか。

真砂政府参考人 例えばでございますけれども、実質公債費比率に相当するものとしまして、例えば国債費を一般会計税収で割りました数字で見ますと、十九年度当初予算で約四割、国債費が二十一兆、税収が五十三兆でございますので、その比率は約四割になるということでございます。また、例えば将来負担比率ということで、国の長期債務残高、これは六百兆を残念ながら超えておりますけれども、これを、交付税を除いた一般会計税収、約四十兆円弱ですけれども、これで割りますと十五・三倍というような数字でございまして、国の財政は危機的な状況にあるということは、例えばこの二つの数字をごらんいただいても御理解賜るというふうに存じておるところでございます。

逢坂委員 すなわち、財務省ではその時々でいろいろな手だてといいましょうか、やり方で財政は厳しいんですよということを言っているんですが、私はそれはもちろん大事なことだとは思うのですが、ある一定のルール、やはり客観性というものを持たなければまずいのではないか。確かに財政の厳しさは私も理解をするわけですが、それについては、やはりどうしてもある一定の動かない指標みたいなものというのはある必要があるのではないかなというふうに思っています。

 お手元に、資料の二というのを用意させていただきました。グラフが上と下についているものでございます。これについて若干お伺いをしたいんですけれども、この上の方のグラフ、「基礎的財政収支の推移」というものでございます。これは国と地方の基礎的財政収支を一枚のグラフに載せたものであります。そうして、そのタイトルの横に四角囲みで「基礎的財政収支は、地方は黒字、国は大幅な赤字となっています。」というふうに書いてあるわけです。これは適正な比較なのかというふうに私は思うんですね。

 きょう、田中財務副大臣にもお越しいただいているんですが、財務副大臣にお伺いしたいんですけれども、このグラフというのは、同じグラフ上に国と地方の基礎的収支をプロットするということは適正だというふうに副大臣は思われますか。

田中副大臣 私どもも、財政の状況というのを毎年国民の皆様に、また、国会議員の方々にもわかりやすく説明していかなきゃいけません。また一方、我が国の今日の立場を考えると、国際的にも、当然、やはりわかっていただく状況というものも示していくときに、何らかの数字を示していかなければなりません。委員がおっしゃるように、いろいろな方法があるんだろうと思いますけれども、今日ではこのようにお示しをさせていただいているという状況にございます。

逢坂委員 私は適正かどうかということを聞いたんですが、私の感じで言いますと、これは同じグラフに温度と湿度のグラフを書いて、こんなに差がありますよと言っているようにしか思えないんです。

 といいますのは、地方の財政というのは、もう皆さん、釈迦に説法でありますけれども、基本的には歳入と歳出のバランスがとれなければ予算の提出は一般的にはできません。すなわち、黒字基調にぶれるのはこれは地方の財政というのは当たり前、そういう仕組みになっているわけであります。一方、国の財政というのは、赤字国債の発行が認められるわけですから、それは歳出がふえたらどうしても赤字に大きくぶれるというのはそもそもの財政の性質上持っているものなわけであります。

 それを一枚のグラフに載せて、地方の方が黒字で国は大幅な赤字、確かに国が大幅な赤字なのは事実ですが、あたかも地方の財政の方が調子がよくて国は大変なんだというようなこと、これは客観性に欠ける。これは一つの例として示しているんですが、ちょっと財政のわかる人が見たら、こんなグラフ一つに載せて見せられちゃかなわぬよと。でも、国民はこういうのを見ると、ああ、地方は黒字で大丈夫なんだ、国は大変だ大変だ、やはり地方の歳出を切らなきゃいけないと。でも、地方の歳出はどんなに切ったって切ったって、基本的にはこの黒字基調は変わらないんですよ。そういうのが地方財政の基本的な性質なわけです。そういうルールにしているわけですから。

 そこで、私は、何度も言うんですが、やはり国の財政をはかる物差しも客観的なものをきちんと持たなきゃいけないんじゃないか、その時々で自分たちの都合のいい説明を国民にしてもらっちゃ困るという気がするんですが、副大臣、いかがでしょうか。

田中副大臣 もう委員もよく御存じでお尋ねになっておられるわけでございますけれども、地方の自治体の財政状況も先ほど来お話ありますように基準をつくってきているわけですから、国の方も当然やはり、問題があるというか、大きな赤字になっていけば、それだけ国民に負担が大きくなる、持続可能な社会の存在というものが非常に危うくなってくるわけでございまして、我々も必死で、財務省として、少しでも財政のよくなる方向に、また悪い状況を正直に、やはり皆様方にわかっていただくために努力をしておるわけでございます。

 何度も同じような話になるかもしれませんが、特例債の発行は国会で御審議をいただくということでございまして、大変重い扱いになっております。国によってはそういうことができない国もあるというふうに聞いておりますけれども、日本は、特例債、赤字国債については国会で御審議をいただいて御承認をいただくという筋でございまして、やはり私たちも慎重に扱いをいたしておる制度というのが我が国の中に当然あるわけでございます。

 また、一方では、客観的なものとしては、ユーロの発行をしている国々がマーストリヒト条約というのを結んでおることは御承知のとおりでございまして、GDP対比六〇%までの公的な負債等についてはいいんじゃないか、それ以上のものについてはそこにたどり着くように再建をしようというような流れが現実にありまして、これは何もヨーロッパの国々にだけではなくて、世界じゅうでマーストリヒト条約に対するGDPの数字というものはやはり非常に重いものがございます。

 私たちも現実に、今日の状況を踏まえて、やはり国民の皆さんにもわかっていただくように、なるべくわかりやすくわかりやすく説明をしていく。日本の国も大変厳しい状況にありますので、財政再建に向けて、プライマリーバランスはもちろんでございますが、将来はGDP対比の赤字幅を非常に少なくしていくための流れを、マーストリヒト条約の流れに向けてやっていくために頑張ろうという思いでございますので、委員の方にも御理解をいただきたいと思っております。

逢坂委員 意気込みは非常によく理解をできます。日本の国の財政が大変だということも理解をできます。この委員会でも先ほど来、夕張市の問題が随分取りざたされておりますけれども、実は、夕張市の一万倍モデルが日本の国だというふうによく言われます。夕張の人口を一万倍すると一億二千数百万、夕張の借金を一万倍すると六百兆、だから、実は夕張よりも日本の国の方がマクロで見ると財政的には厳しいんだというふうなことを言うテレビのコメンテーターもいるわけでありますから、副大臣のその意気込みはわかるわけであります。

 きょう、副大臣はこうおっしゃられました。正直にという話をしました。わかりやすくという話をされました。きょうは本題ではありませんので、その点に私は余り突っ込もうとは思っておりませんけれども、であるならば、本当に国の財政の状況を正直にわかりやすく国民に示しているでしょうか。アウトプットとしての借金はこんなにあるということは国民には説明はしているけれども、なぜその借金が積み上がっているんだとか、国のどこに無駄があるんだとか、天下りをしている団体にたくさん補助金が出ているんだということも含めて、正直に、本当に無駄を説明する気になっているかどうか、そのことはきょうはとりあえず申し上げてだけおきたいと思います。御答弁はもうよろしいかと思います。

 このグラフについて、本当は岡本局長の見解を聞きたいところではあるのですが、余り聞くと内閣不一致になっても困りますので、きょうのところはこの程度にとどめておきたいと思います。

 田中副大臣、どうもありがとうございました。正直に、よろしくお願いいたします。

 さて、それでは次の論点でございます。

 今回の法案でございますが、お手元に資料をもう一枚配りました。これは衆議院の調査局がつくったものをコピーしたものですが、政省令への委任事項が今回の法案は極めて多いわけですね。基本的なルールはたくさん法案本文にもありますけれども、でも、自治体の皆さんが一番気にされるところ、実際の基準はどうなるんですかというようなあたりなどを含めて、政省令への委任事項が極めて多いわけであります。

 そこで、お伺いしたいのは、まず政府参考人にお伺いをするんですが、政省令の制定時期と内容の詰め方、進め方、決め方、これはどのようにされるおつもりなのか、まず事務レベルでお考えをお聞かせください。

岡本政府参考人 今回の法案におきまして、幾つかの点につきまして政省令に委任をさせていただいております。例えば健全化の判断比率、資金不足比率といいました、いわば健全化団体、再生団体といったようになる意味での基準でございますとか、あるいは起債の制限をする例外的な事業、国直轄事業のうち各省各庁の長において総務大臣に対する通知を要する事業など、幾つかの点について政省令に委任をいたしております。

 それぞれの政省令の策定時期でございますが、何よりも今回の健全化法が、これまで御議論ございますように地方団体にできるだけ早期の健全化に取り組んでいただくということで、また、その物差しとなるものが先ほど来議論ございます早期健全化の基準等でございましょうから、地方公共団体、従来はこういう新しい基準がなく、現在の再建促進法でありますとか、地方債の許可の基準でありますとかいうものが事実上の、ある意味では基準といったような役割を果たしてまいってきたという経緯もございますが、そういう意味で、それを踏まえながら、新しい指標を見ながら平成二十年度の予算編成に取り組んでいただけるよう、年内にはこの指標について整備をしたいというふうに考えております。

 また、年内の指標の整備に当たりましては、各地方公共団体の御意見をできるだけ早い時期にたくさん伺いながら定めていきたいというふうに考えております。

逢坂委員 二十年度の予算編成に間に合うようにできるだけ多くの自治体の意見を聞きながら決めていきたい、これだけしゃべれば多分よかったんだと思うんです。

 それはそれでわかるんですが、この際に、多分、自治体側の立場、意見というのは多様だというふうに思います。この部分はもう少し基準を緩くしてくれとかここは基準は高くてもよいのではないか、多様な意見があると思うんです。

 これも政府参考人にお伺いをしたいんですが、自治体の意見を聞くというのは具体的にどうやられることなのでしょうか。要するに、たくさん言ってもらって、聞きましたよということでとめ置くのか、たくさん聞いて、こんな意見があった、でもこれについてはこういう判断で却下をしました、これは採択をしましたというようなことを明らかにするのかしないのか、そのあたり、いかがでしょうか。

岡本政府参考人 現在も、昨年来研究会の議論をしておりました際、またこの法案を国会に提出させていただきまして以来、地方公共団体からいろいろな御意見、実はもうたくさんいただいております。

 市町村レベルで申し上げれば千八百の意見をある意味で全部聞くというわけになかなかまいりませんが、例えば、いただいております中で、政令指定市に関しては特に地下鉄とか大きな公営企業や公社を抱えていらっしゃるという実態もあります中から、普通の市と政令市というのを、先ほど逢坂先生も、一律じゃなくというふうな御指摘ございますが、いろいろな御意見をいただいております。

 私どもは、その際に申し上げておりますのは、できるだけ具体的な数字と、それから政令市なら政令市でどういうふうに物事を考えるのか。ただ、何よりもそれは、ざっくばらんに申し上げますれば、健全化団体にひっかからないためということではなく、どのような段階であって、それが住民に対してきちんと開示をして、これはそういう健全化義務を課さなくても一定のこういう努力によっていけば大体大丈夫なんだということも同時に説明をしなければいけないわけでございますから、そういういただいた御議論について、当然私ども、いただいた市に対しては、これこれこういう意見でそういう意見は、では例えばこういうふうに考えて入れていきたいとか、こういうものについては入れられないとかいうことはもちろんお話をさせていただいて、それに対してまた当然地方団体側の御反論もあると思いますので、そういう議論をやりとりしていく過程の中から指標というものは決定していくということになろうかと思います。

逢坂委員 ありがとうございました。

 ぜひ、地域の実態に応じた形で声を聞いていただきたいというふうに思います。

 そのときに、大臣、単に自治体の首長が、再生団体になりたくないとか再建団体になりたくないというようなことで判断するのは、やはり私は決して適切なことではないだろうと思うんですね。そうではなくて、先ほど私が説明したとおり、例えば、このことをやってしまうともう病院のサービスが全くできなくなるんだとか、そういうところに追い込まれるか追い込まれないか。最終的には国民の利益、不利益。国民が本当に生きていくために最低限のことすら保障されないような事態、それをやはり回避するという視点を持ちながら今後の作業をしていかなきゃいけないと思うんですが、大臣、この政省令への委任事項を決めていくに当たって、省内にどんな号令を発しますか。よろしくお願いしたいと思います。

菅国務大臣 まず一つは、やはり円滑に移行するということ、これが大事だと思います。それとまた、客観性、透明性、これも私はやはり大事だというふうに思います。それと同時に、先ほどもお話しさせていただきましたけれども、病院のような特殊事情、このことについては、やはり地域の実態というものを十分に配慮しながらも、それが地域の皆さんに不安を与えぬような形で解決していく、このことも大事だというふうに思いますし、私、個人的には、病院問題というのはもっと違う次元で私ども取り組む必要があるのかなというふうに今思っているところです。

逢坂委員 ぜひ大臣、よろしくお願いしたいと思います。

 それでは次でございますけれども、菅大臣は日ごろからこういうことをおっしゃっておられますよね、今、国と自治体の歳入のバランスと歳出のバランスに乖離があるんだと。大ざっぱに言うと、国が六歳入をして、地方が四歳入。でも、支出は逆転をしている。そうではなくて、やはり国も地方も歳入歳出イーブン、一対一にすることが大事だという話を大臣はされているわけであります。

 大臣、これは具体的にどんな手法で今おやりになる、やる方向でお考えになっているんでしょうか。

菅国務大臣 私自身は、やはり仕事量に合った分、地方が六、国が四ですから、本来は財源も六と四、こうなるのがやはり一番理想だというふうに思います。

 その中で、今、地方分権推進委員会、この四月一日からスタートしました。そこで、国と地方の役割を明確に分担する、そして権限、財政、税源というものを移譲させて、そこできちっとした形でこうしたことが実現できればいいなというふうに思っています。そして当面の目標として、一対一、五対五、六、四から五対五に持っていきたいというふうに私は思っております。

 そして、それについて今指摘していますのは、法人二税が東京に余りにも集中し過ぎている。この四年間で東京の法人二税の税収増というのは一・四兆円でありまして、東北六県の一年の予算、一年分でも一・一兆円でありますから。ですから、やはりそういうことによって、医療費の問題だとか、余りにも全国に差が出過ぎてきている。そういうことの中で、やはり東京問題というのは絶対にまず解決をしなきゃならない問題であるというふうに思っています。

 そして、その先というのは、偏在度の小さいというのですか、この法人二税というのは六・五倍の偏在がありますから、地方消費税、そこに持っていくべきだろうというふうに実は思っております。

逢坂委員 法人二税と地方消費税が一つの眼目にあるということは理解をいたしましたけれども、それは大臣は税源移譲でやろうということでございましょうか、それとも、税源移譲ではなくて財源を移すということでやろうということでありましょうか。その辺のお考えというのは今決まっていますでしょうか。

菅国務大臣 このことについては、私どもと財務省の中で研究会を開いて今取り組んでいるところであります。

逢坂委員 では、まだそのあたりについては考えが決まっていないということに理解をするわけですが、私は、例えばことし三兆円の税源移譲がございましたけれども、これ以上の自治体への税源移譲というのは自治体間の財政格差を助長する、その方向へどんどんどんどん進んでいくのではないかなという気がするわけであります。

 したがいまして、やはり、財政調整、財源保障の機能を持っている地方交付税の制度というものをもっとしっかりとしたものにする必要があるのではないかという考えを持っているんですが、世の中の趨勢は逆のようでありますけれども、特に地方交付税の財源の法定率、これを引き上げるということが実は日本においては極めて大事なことではないか。何か、こういうことを言うと、守旧派で、とんでもない、地方へ金をばらまく悪いやつだみたいに思う方が多い時代のようでありますけれども、私は違うと思うんですね。単に税源だけを与えてもだめだろう、きちんとバランスのとれた財源配分をされていくことがやはり大事だと思いますので、地方交付税の法定率の引き上げなどということは、今回、大臣が国と地方を一対一にしようという中では、一つのアイデア、検討事項としてお考えになられる余地はありますでしょうか。

菅国務大臣 私は、この間うちの役所の中で議論したんですけれども、今まで総務省というのは、国対地方というんですか、そこにだけ主眼を置いていたんじゃないかな、地方間の税源調整というんですか、財政の調整というんですか、そういうものも含めて検討する時期に今来ているのではないか、こういうことを実は内部の勉強会で提案をしたところであります。

 いずれにしろ、私は、東京問題を考えたときに、先ほど言いましたけれども、地方は六歳まで医療費無料ですけれども、東京は中学校三年生まで医療費無料になってきていますから、そうしたことが全国同じ国民としてやはりかなり問題がある、そういう問題意識を持っています。

逢坂委員 交付税の法定率の引き上げについては言及されませんでしたが、その中で、地方間の調整という話が出ました。

 そうすれば、例えばこういう考え方、地方六団体、知事会が提案しています地方共同税というよな方式。そもそも交付税は地方固有の財源だということは、これはもう、ここにいらっしゃる皆さんはお認めになることでありますけれども、それをより具体的な形としてあらわすために、配分権限みたいなものも地方共同税として自治体側が持つのだという考え方、これはまさに横の調整ということにつながっていくかと思うんですが、この考えについては、大臣、どうお考えになりますでしょうか。

菅国務大臣 自治体からそうした意見が何回となく私どもに求められていることも事実でありますし、私ども自民党内にもそういう研究会があることも事実であります。果たしてそのことがいいのかどうかも含めて、私は検討に値するものではないかなと思います。

逢坂委員 今回の自治体の財政の再建法制、冒頭にも申し上げましたとおり、健康診断の項目がふえるということで、特にもし私が今現にニセコ町長をやっているとしたら、基本的には歓迎をしただろうなというふうに思います。

 しかも、こういう法制ができるできないにかかわらず財政状況をきちんと正直に明らかにしておくというのは、これは自治体の基本的な責務であり、自治体どころか、もう財務省の方はお引き取りいただきましたけれども、国だって当然それをしなければいけないというふうに思っているわけです。

 しかしながら、財政の改善だけが目的になって、国民生活が破綻をする、地域が破綻をするということになると、これまた本末転倒でありますので、その二兎を追わなければいけない難しさを菅総務大臣は負っているのだというふうに思います。

 ぜひ、今回の法制の意味の大きさ、そして総務大臣の責任の大きさをしっかりと改めて御認識いただいて、よりよい方向へ進むようにまた議論を進めていきたいと思います。

 以上で終わりたいと思います。ありがとうございます。

佐藤委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 私はまず最初に、今回の法案では、全国一律の基準を設定して、その基準を超えた場合、財政健全化計画、財政再生計画の策定を自治体の長に義務づけておりますが、策定した計画については、議会への報告、住民への公表に加えて、市町村は都道府県知事に、都道府県と政令市は総務大臣に報告しなければならないとされていることについて、また、計画の実施状況についても同様に報告しなければならないと、報告、報告と出てくるわけですが、この報告の規定を盛り込んだ理由についてまず伺います。

岡本政府参考人 お答えいたします。

 本法案におきましては、地方公共団体の長は、今御指摘のように、健全化計画とその実施状況について、議会への報告、公表とあわせまして、総務大臣それから都道府県知事、市町村の場合は都道府県知事を経由して総務大臣にその概要、要旨を報告するということとなっております。

 また、財政再生計画とその実施状況についても、議会報告、公表とあわせ、総務大臣に報告ということといたしております。

 これは、総務大臣や都道府県知事が、財政健全化計画等の内容を承知いたしますとともに、これを取りまとめて、その概要を当該都道府県の住民や国民に対して公表するというための前提として設けているものでございます。

 このような報告、公表、広く国民に地方のそれぞれの団体におきます財政健全化、再生への取り組みの状況といったものを公表することによりまして、広く他団体との比較、あるいは地方財政についての関心、そういう意味での情報開示を徹底いたしますとともに、当該団体の住民や議会が他団体と相互に比較し参考とすることができることによりまして、健全化の取り組みといったものがより適切に行われるよう期待をしているというものでございます。

吉井委員 要するに、この法律で、地方団体から国への報告、報告、報告と、報告が非常に多過ぎる、そういう批判もあるわけですが、大臣はそういう地方の声にどういう配慮をしているのか、どういうことを考えてはるのか、そこのところを伺っておきたいと思うんです。

菅国務大臣 今局長から答弁をしましたけれども、私ども国としても、そうした全国の地方自治体の財政状況というものの報告を受けて、そしてそれを広く国民の皆さんに私どもが公開をするということも、私は一つこれは重要なことじゃないかなというふうに実は思っております。

 そういう意味の中の報告であって、地方分権の中で、地方自治体に対して私どもがさまざまな縛りをかける、そういうことではあり得ないということであります。

吉井委員 法案の第七条と二十条、ここで、計画が目標どおり達成されない状況だと報告を受けた、報告を見て、大臣あるいは知事は必要な勧告ができるとしているわけですね。この勧告の規定を入れた理由についても、次に伺っておきたいと思います。

岡本政府参考人 まず法案七条についてでございます。法案七条におきましては、財政の早期健全化段階におきます勧告を定めております。財政健全化計画の実施状況を踏まえまして、基本的にはその当該団体の自主的な財政の健全化が行われているということを想定した制度になっているわけでございますが、その状況を見ますとその早期健全化が著しく困難だというような場合に、国または都道府県が勧告によって当該団体に警鐘を鳴らし、議会や住民等に前向きな取り組みを喚起するという趣旨で設けているものでございます。

 また、法案二十条でございますが、これは財政の再生段階の勧告についてでございます。再生団体の財政の再生が困難と認められる場合という、財政状況を改善する緊急性が高い場合におきまして、当該団体の財政状況を具体的に改善し再生が可能となるよう、その当該団体の長に対しまして、予算の変更、再生計画の変更その他必要な措置を勧告することができるというふうにしたものでございます。

吉井委員 報告を受け勧告をする、勧告、勧告ということなんですが、この勧告というのは、地方自治法第二百四十五条の四の勧告とそれから二百五十二条の十七の五の勧告がありますが、どちらに該当する勧告ですか。

岡本政府参考人 今回の法案で設けました第七条の勧告、それから第二十条の勧告といったものにつきましては、これらの勧告は、いずれも自治法の二百四十五条の四に規定する勧告の範疇にあるというふうに考えております。

 なお、地方自治法二百五十二条の十七の五に規定する勧告については、総務大臣、都道府県知事が、当該団体の組織及び運営の合理化を図るために総合的見地から行うものというふうに理解をいたしております。

吉井委員 それで、今お答えいただいたように、二百四十五条の四の第一項に規定する勧告の方なんですが、地方自治法の二百四十五条の四の規定というのは国の関与を規定した条文だと思いますが、この点はどうですか。

藤井政府参考人 国の関与については、今ほども答弁がありましたが、類型としては二百四十五条に規定されているところでございます。

 その助言というところがその関与という概念に入るかどうかというと、これは二百四十五条の第一項第一号に、最初に「助言又は勧告」というような規定が書かれておりますので、そのうちの一つの規定であろうかというふうに考えております。

吉井委員 二百四十五条の四で、「技術的な助言及び勧告並びに資料の提出の要求」など、ここに勧告ということがあるわけですね。

 それで、地方自治法第十一章「国と普通地方公共団体との関係及び普通地方公共団体相互間の関係」で、第一節「普通地方公共団体に対する国又は都道府県の関与等」で、二百四十五条の四はそこの条文ですね。以前成立した地方分権改革推進法の第五条の関与については、こちらの方はどういうふうに書かれていますか。

藤井政府参考人 地方分権改革推進法第五条は、今回の地方分権改革で講ぜられるべき国の施策の基本を定めているわけでございますが、その中で、いわば分権のための一つの方策として、同条は、地方自治法第二百四十五条に規定する地方公共団体に対する国または都道府県の関与について整理合理化の措置を講ずるものとするという旨規定しているところでございます。

吉井委員 今おっしゃったように、地方分権改革法の五条では、関与については、今の地方自治法二百四十五条に規定する普通地方公共団体に対する国または都道府県の関与の整理及び合理化その他所要の措置を講ずるものとすると。つまり、関与を減らそうというわけですよ。

 改革推進法の第五条では、自治法第二百四十五条に規定する関与は整理合理化すると書いているんですが、今回、関与をふやすということですから、これは分権改革推進法の規定に逆向きの方向へ進む、規定に反するものになってくるんじゃないですか。

藤井政府参考人 今回の分権改革においても、またそのもととなっている前回の分権推進法に基づく地方自治法の改正においても、分権を進める中で関与を少なくすべきだ、そういう考え方は当然あるわけですが、必要な関与についてまで減らせというような趣旨ではないというふうに考えておりまして、まさにそれぞれの関与の必要性なり合理性の吟味が重要だというふうに認識しているところでございます。

吉井委員 地方分権改革推進法第五条では、普通地方公共団体に対する国または都道府県の関与の整理合理化をうたっているわけですね。それはさっきもお答えいただいたとおり。

 この法案の健全化判断比率の公表、財政健全化計画の策定などは自治事務ですね。そうした自治事務の処理については、分権一括法の審議のときに当時の野田自治大臣が、ここに会議録を持ってきておりますが、「自治事務の処理については特に地方公共団体の自主性、自立性が発揮されなければならない分野でありまして、仮に違法な事務処理が行われた場合であっても、まず基本的には地方公共団体みずからの手によって自主的に是正される、そういう自立的な是正措置がとられるということが基本であると考えております。」と、これは野田さん、当時の自治大臣の答弁です。

 当時の自治大臣答弁の立場から見ると、これは大臣に伺っておきたいんですけれども、今回の法案では国の関与の仕方はやはりかなり問題があるんじゃないかというふうに思うんですが、大臣、どうですか。

菅国務大臣 今、野田大臣の話を引用されましたけれども、そのことは私もそのとおりだというふうに思います。

 そういうことであると同時に、地方公共団体の財政については、さらなる地方分権というものを念頭に置く場合には、私は、従来にも増してその財政の規律を確立し、住民によるチェックという自治本来の機能を発揮させるということが極めて大事になってくるというふうに思っています。このような観点から、本法案というのは、財政指標の開示や議会の議決を経た財政健全化計画等の策定の義務づけなどの基本的なルールを定めたものだというふうに私は思います。

 その際、国の関与については、あくまで当該団体の財政健全化計画の取り組み状況を踏まえた限定的な勧告や、財政再生計画に国の同意を求めるか否かは団体の選択にゆだねるなど、それぞれの団体の自助努力を促して、あるいは確実な財政の再生を図る観点から必要最小限のものにとどめているというふうに考えております。したがって、本法案が地方分権の推進に反するというような御指摘は当たらないというふうに思います。

吉井委員 けさの参考人質疑で参考人の方からもお話があったように、議会に明らかにする、住民に公表して明らかにする、健全化判断比率の公表や財政健全化計画の策定、公表というのは、情報を明らかにして住民的に関心も高め判断もする、それは、地方自治の中における自律を高める、自覚的にみずから解決する、そういう意味を持っていると思うんですよ。それを、財政悪化の前に早期の段階から総務大臣に報告させる、また、計画実施の状況についても報告させて、計画どおりにいっていないから国が勧告する。

 大臣、これから第二次地方分権改革を推進しようというときなんでしょう。そういうときにどうしてそういう国の関与を強めるようなことをするのかということは、やはり問題になってくると思うんです。つまり、分権改革を進めようというときに逆向きのエンジンを吹かしているということになってくるんじゃないですか。

菅国務大臣 地方分権というのは当然推進をしていかなければならないというふうに私考えています。そういう中で、地方のそれぞれの財政状況というものを、全国のものを公表してそれぞれの比較をしてもらう、やはりこのことも私は大事なことではないかなというふうに思います。

 いずれにしろ、今回の報告というのはそうした財政健全化に資するためのものであると考えます。

吉井委員 大臣は、分権改革を進める大臣なんでしょう。一方、国の関与を強める大臣までやってしまったら、全然逆向きの方向へ行こうとする。これはおかしいわけなんです。

 だから、分権改革だと言うんだったら、私さっき言ったように、健全化判断比率の公表とか財政健全化計画の策定や公表、それを議会の皆さんにも諮る、それからそこに住んでいる地方自治体住民の皆さんに公表する、そういうのはインターネットを通じてでも何でも他の人たちも見ることができるわけですからそれはまだいいとして、そういう財政悪化の前に早期の段階から総務大臣は報告をさせる、そして計画の実施状況についても報告させる。報告、報告、報告、勧告、勧告と、その関与を深めるというのは、これはやはり問題だというふうに思うわけです。

 地方分権一括法では、国と自治体の関係は上下主従関係から対等協力の関係にしていくんだ、こういうふうになってきているんだというのはこれまで政府が言ってきたわけですね。政府もそのように説明してきたんですが、それを、国の方で上から一律に基準を定めて、その基準を超えたら計画をつくりなさい、つくったら報告しなさい、途中の実施状況も、計画が終了したら終了したことも報告しなさい、国の意に反したことがあれば勧告もする。対等協力の関係だと言いながら、それで対等協力の関係と言えるのかどうか、大臣に伺います。

菅国務大臣 私どもは、あくまでも必要最小限度のものでありまして、財政規律を確立して住民の皆さんにチェックをしてもらう、そうした自治本来の機能を確立するためにそうしたことが必要ではないかなと思っていまして、地方分権に反するものではないというふうに私は考えています。

吉井委員 方向が違うと言うてますねん。要するに、健全化判断比率の公表とか財政健全化計画の策定、公表、これを議会と御相談したりそこの住民の皆さんに全面的に公表していろいろ議論をする、それはまだいいとして、それを財政悪化の前の早い段階から総務大臣に報告させる、実施状況も報告させる、そして計画どおりにいっておらなかったら国の方で勧告をする、そういうやり方というのは、分権改革と言っている方向とはそもそも向いている向きが違うんじゃないかということを言っているんですよ。

 政府の進めている規制改革では、これまでは規制改革、規制改革と言って、昔は事前チェックの時代だったがこれからは事後チェックの時代だと言ってきたんですね。それを言って規制緩和というのをやってきたんだけれども、財政健全化計画をつくらせて財政悪化を早期にチェックするというやり方は、規制緩和と言ったときには事後チェックだと言って、今度は事前チェックでしょう。この点でも話はおかしいんじゃないかと思うんですが、どうなんですか。

菅国務大臣 これは、そもそも考え方の次元が違うんじゃないかなというふうに私は思います。

吉井委員 いやいや、考え方が違うという、違う話にすりかえちゃだめなわけで、今までは、事前チェックを廃して事後チェックに切りかえるんだというのが規制緩和という言葉であった、全体の考え方としてやってきたわけですよ。ところが、今度は、事後チェックの話じゃなくて、事前にやりましょうと。

 こういうことで、さっきも言いましたように、健全化判断比率の公表とか、かなり早い段階から自治体がみずから議会にも諮り相談もする、住民の皆さんにも全面公開する、情報公開する。それは、早い段階からの自主規律が、自律的な効果が生まれるわけですから、それはある意味では、事前チェックの役割というのは自治体の中で働くわけですよ、早い段階から。しかし、その段階から報告させ勧告するというやり方は、それはそもそも言ってきたことと違うんじゃないか、私は今のようなお話では通る話じゃないと思うんです。

 今、財政健全化計画でも、公債費負担適正化計画でも、計画を策定すれば起債の許可が受けられるように、国から財政の手当てがあるわけですね。法案の財政健全化計画をつくって、自治体に対して国からの財政的な手当てがあるのかどうか。法案をつくるからには、自治体に対する国の財政的手当てがあるかどうかについても伺っておきたいと思うんです。

岡本政府参考人 今回の財政健全化計画、再生計画、それぞれ地方団体の財政の健全化を進めるという意味から策定をしていただくものでございますが、健全化計画の方は、基本的には、その当該団体の自主的な努力といったことによって、財政のいわば早期の段階での健全化を促すという観点から設けるものでございますから、現段階で特段の国の支援といったものを想定しているものではございません。

 また、再生計画につきましては、先ほど来この委員会で御議論ございましたように、再生振替債でございますとか、そこに対する資金の配慮でございますとか、国との同意ということを選択された団体に対しましては、それに一定の国の支援というものを前提として行っているというものでございます。

吉井委員 念のため、もう一遍、今の話を確認しておきますけれども、財政健全化計画に関連しては、この法律案の条文上、国からの財政的措置はありませんね。

岡本政府参考人 健全化団体になった団体に対しまして、この法律上、特段の支援措置といったものは規定いたしておりません。

吉井委員 自治体が財政再建団体に陥らないように、事前の段階でいろいろなチェックを行うことは必要なことだと思うんですが、しかし、そのチェックは、自治体の自主性を尊重して、議会や住民の皆さんがみずからの、住民監視の力を強めるとか、本来はそういう形でチェックが働くというのが、これは地方自治の拡充とか分権というのはそういうことだと思うんですよ。そこには、やはり議会や住民の監視の力に対する信頼を寄せて見ていくということが大事だと思うんですが、現行再建法でも、自治体が手を挙げるようになっているわけです。自治体の方から手を挙げてこないのに、おまえさんのところはもう破綻しておるから、国の方でこうするんだああするんだというわけじゃないんですね。ところが、破綻してからでは遅いので早期に手を打つというと、何をやってもいいというわけじゃないと思うんです。

 健全化計画の策定と議会への報告、住民への公表など、チェックというのは自治体の段階にとどめるべきで、国への報告とか国による勧告、こういうものは、やはり早い段階から国が関与していくということについては、自治体を信頼できないというか信頼していないというか、そういうことになってくるんじゃないかと思うんですが、大臣、この点はどうですか。

菅国務大臣 先ほど来申し上げていますけれども、私どもは、必要最小限についての関与ということでありまして、それは、あくまでも地方自治体でその財政状況というものはきちっとした形で公表していくというのは当然のことだというふうに思います。

 ただ、再建の過程の中で私どもが報告を受ける、そのことは、ある意味では地方財政に私どもは責任を持つ立場でありますから、それは必要最小限の中に入るのではないかと思います。

吉井委員 地方財政に責任を持つ立場の方が夕張のような事態を招いてしまったのは、一体どういうことかなと思うんです。

 今度は早期健全化計画を策定しなければならない団体の数について伺いたいと思うんですが、大臣は、十一日の本会議で、財政の早期健全化と財政の再生の基準について聞かれたときに、「具体的には、現行制度で用いられている地方債における許可制への移行基準や、現行の再建団体にならなければ起債が制限される基準等を十分勘案して、検討してまいりたいと思います。」これが答弁でした。

 ここで念のために伺っておくんですが、前者の方が早期健全化基準で、後者の方が財政再建基準のこと、こういうふうに考えてよろしいかということです。

菅国務大臣 四つの比率については年内に政令で定める、こういうことにしておりますけれども、その際には、やはり現行の再建制度だとか、あるいは地方債制度の運用、こうしたことを踏まえて円滑に進めていく必要があるというふうに私は思っています。

 そういう意味で、例えば実質赤字比率の財政再生の基準については、現行の再建団体にならなければ起債が制限される基準を踏まえて、また、実質赤字比率の早期健全化基準については、現行制度で用いられている地方債における許可制への移行基準及び財政再生基準との関係を踏まえて検討中だ。

 さらに、この四つの比率間の整合性というのもこれから勘案する必要というのがあるというふうに思っていますので、それについては、十分地方自治体の意見を聞きながら対応していこうということであります。

吉井委員 それで、早期健全化基準を参考例として挙げられた、現行制度で用いられている地方債における許可制への移行基準とは、実質公債費比率が一八%以上の団体で、その団体は都道府県四団体、市町村四百十二団体ですが、大臣は十八日のこの委員会の答弁で、従来の考え方を極端に変えると不安を引き起こすことになる、円滑に法施行をしたいという趣旨の答弁をしてはりました。ですから、大体四百前後の団体は財政健全化計画を策定する団体になるということなのかなと思うんですが、この点を伺います。

岡本政府参考人 早期健全化基準、財政再生基準といったことにつきましては、政令で定めるということでございます。

 今、委員御指摘のような、実質公債費比率の地方債の許可の基準といったものが、例えば一八%以上で四百十六というふうにございますが、そういう意味で、今の協議制の段階で、地方債を自由に発行できる段階から許可団体になっているものが四百十六だということでございますので、一八%以上になったらこれが健全化の基準になるんだというふうには考えてはおりません。

 いずれにいたしましても、先ほど申し上げたように、そういう運用をしている中で、例えば、二五%になれば単独事業の起債制限を受ける、あるいは、三五%以上になれば一般公共事業の起債制限を受けるというような運用もいたしているわけでございますので、そういう既存の運用も、やはりそれが、先ほども申し上げさせていただきましたが、事実上、各地方団体におきます一つの財政規律の目安にもなっておりますので、そういう従来の経緯等を踏まえながら、円滑な基準を定めていきたいということでございます。

吉井委員 移行基準を勘案してと言っているわけですから、そのレベルを基準として設定するということだなというふうに思います。

 最後に、健全化判断比率には、実質公債費比率のほかに、実質赤字比率、連結実質赤字比率、将来負担比率がありますが、それぞれの比率について早期健全化基準が定められ、その基準を超えれば財政健全化計画を策定しなければならないということになるわけですから、財政健全化計画を策定しなければならない団体というのはかなりふえてくることになるんじゃないかと思うんです。

 早期健全化基準を超える団体は大体どのぐらいと想定をしているのか、これを最後の質問として伺います。

岡本政府参考人 現段階で早期健全化基準を超える団体がどのぐらいになるかというようなことを想定しているものはございません。

 先ほど来御答弁させていただいておりますように、早期健全化基準、財政再生基準といったものに関しましては、現在の各種運用している基準や、それから地方団体の御意見といったものも十分にお聞きしながら、年内に検討、整備をしていきたいというふうに思っております。

吉井委員 予定しておりました他の質問は次回に回したいと思います。

 これで終わります。

佐藤委員長 次に、重野安正君。

重野委員 社会民主党の重野安正です。

 きょうは、今出されています再建法、これについては具体的にこの次の委員会で聞くとして、私はやはり、なぜ今日、地方の財政状況、国、地方を含めて大変厳しい状況にある、こういう議論をしなければならない状態に立ち至った、そこのところをやはりきっちり押さえて、そこからおのずと国、地方の責任分担というものが明らかになってくるだろうというふうに考えておりますので、まずそこら辺についてきょうは聞いておきたいと思います。

 今回の法案は、昨年一月に設置されました地方分権二十一世紀ビジョン懇談会に端を発していると考えています。ビジョン懇は、地方の責任の明確化のための改革を検討項目の一つとして取り上げまして、護送船団方式により形成された、国が何とかしてくれるという神話が財政規律の緩みにつながったんだ、そういうことは否定できない、こういうふうに言っています。経営に失敗すれば自治体破綻という事態に立ち至る、そういう危機感を持つことが地方財政の規律の回復のために必要である、こういうふうに指摘をしております。そして、いわゆる再生型破綻法制の検討に早期に着手して三年以内に整備すべきである。つまり、今回のこの法案は、地方の責任の明確化のための改革、そういう位置づけが非常に強く感じられるわけであります。

 一方、地方六団体の新地方分権構想検討委員会の考え方をまとめますと、国主導による財政再建ではなくて住民主導による財政再建を、そういうものでありまして、全国知事会による昨年十一月三十日の再建法制に関する中間取りまとめ、こういうものが出ていますが、それによりますと、地方自治の観点から、地方公共団体が自主的、主体的に財政再建に取り組むことを基本とすべきである、こういうふうに言っております。

 つまり、国に甘えるな、地方の責任だというのと、住民や住民の代表機関としての議会による監視が重要、住民主導で地方自治の観点から自主的、主体的にというのでは、これは大きな違いがあるわけで、まずこの点について大臣の所見をお伺いしたい。

菅国務大臣 今回の法律案につきましては、今重野委員から御指摘ありましたけれども、昨年の地方分権二十一世紀ビジョン懇談会、これの報告書を踏まえて、総務省において開催をした新しい地方財政再生制度研究会の報告書に基づき立案をしたものであります。

 この研究会報告書では、地域の自己決定、自己責任の理念に基づいて、行政における国から地方への分権改革を加速させよう、そういう基本認識のもとに、今後の地方分権の推進を念頭に置けば、従来にも増してできるだけ住民のチェックという自治体本来の機能を発揮することによって地方公共団体の財政規律の強化を図っていくことが重要である、その観点から、財政指標の整備やその開示の徹底、議会の議決を経て財政健全化計画の策定等を内容とする今回の法制が提言をされたというふうに考えております。

 また、本法案では、地方公共団体の財政規律の確立を主眼としておりますけれども、住民自治による財政健全化を重視してもおります。こうした点については地方六団体の委員会報告の視点とも共通しているのではないかというふうに思います。

重野委員 それでは、以降、具体的な質問に入ってまいりますが、この財政健全化法案の内容をただす前に、冒頭に申し上げましたように、この間の地方財政の流れ、どういう事態がその間の方策の中で惹起されてきたのか、まずそういう点について、くどいようですけれども、明らかにしておく必要があると思います。

 当然のことでありますけれども、地方財政は国の経済政策、財政政策とのかかわりで大きな影響を受けるわけであります。地方の財政危機や地方の借金の問題もまずその中で考えるべきだ。今の地方財政危機の原因をどう大臣はとらえておるか、そして、国としての責任はどうなんだ、その点を明らかにしていただきたい。

菅国務大臣 地方財政全体について言えば、バブル崩壊によって経済そのものが崩壊をし、税収が低迷をして、そしてまた、その間の累次にわたる景気対策によって、公共投資の追加や減税などに伴って多額の借り入れを行ってきたことが財政悪化の主な原因であるというふうに私は思っています。

 これは我が国の経済財政運営によるところが大きいわけですけれども、バブル経済崩壊後、長期にわたって景気低迷が続いたことを考えると、ある意味ではこうした措置というものはその当時としてはやむを得なかったのかなというふうに思っております。

 総務省としては、地方財政全体の悪化がすべてそれぞれの地方公共団体の財政運営の責任であるとしてこのような法案を提出するものではなくて、地方分権時代にふさわしい、地方の自己規律による財政健全化を推進していくことが必要である、そういう観点から、現行の再建法制というものを五十年ぶりに抜本的に見直しをした、そういうことであります。

重野委員 前半の部分の認識は共有できるのでありますが、後半に入ってきますと、なぜ、こういうふうに思わなきゃなりませんね。

 おさらいになりますけれども、一九八〇年代後半から、経済摩擦あるいは円高問題に起因する内需拡大を要求する国際圧力、これが非常に強まってきました。日米構造協議で最終的に公共投資六百三十兆円、これを約束したわけですね。しかし、国は金がない。そこで、頑張る自治体、やる気のある自治体を応援と称して地方債で優遇し、しかも、後年度の元利償還費について地方交付税で措置するといった誘導措置を行いました。地方単独事業をあおったわけですね。全国の自治体は競って単独事業に走ったんです。

 単独事業に認められる地域総合整備事業債については、事業費の七五%まで起債を認める、その元利償還の三〇から五五%を交付税の基準財政需要額に算入。これによって、建設費の後年度負担だけでなくて、つくったものの維持管理や運営費をどう捻出するかということで、箱物づくりに伴うツケが自治体にもたらされた。

 私は、この一つの事例をとっても、そういうふうな財政誘導をしていった旧自治省の責任というものは免れない、そういう認識を持つんですが、こういう経過に対する大臣の認識はいかがでしょうか。

菅国務大臣 交付税措置のある地方債を増発して地方単独事業を拡大し、そしてそのことが公債費を累増させて地方財政の悪化の一因になってきた、私は、このことは否定することはできないというふうに思っております。ただ、当時、景気低迷の中でそうした景気対策というものも必要であったということも事実であったのかなというふうに思います。

 ただ、いずれにしろ、そうした公共投資というものは余りにも度が過ぎていたということも事実であるというふうに私は思っております。

重野委員 つまり、バブル経済崩壊後の国の対策ですね。先ほども指摘をいたしましたけれども、表向きは、補助事業よりも単独事業の方が地方は自主性を発揮しやすい、こういう言いぶりでありました。

 そういう理由から、しかし本音は国の財政難対策、国も財政難である。したがって、景気対策を打つ場合に、いわゆる単独事業の方に誘導していった。そのえさというか、地方が乗りやすいというふうな側面から、例えば地方債の元利償還金の一部を交付税で充当する、そういう措置がとられる。さらに、地方債の充当率の引き上げ。

 この間の経済対策を振り返ってみると、そういうふうな対策を講じながらの経済対策、九二年八月の総合経済対策から、九三年、九四年、九六年、九七年、九八年、補正予算を伴うものだけで八次にわたる総合経済対策あるいは緊急経済対策が打たれたんですね。これに対して、その中で地方単独事業だけで七・四兆円追加された。

 しかも、景気対策を理由に、これまで起債充当率は七〇%にとどめていたものが、費用の全部を借金で調達することさえよろしい、こういうふうに変えられる部分もあった。あるいは、財源不足を理由に交付税を減らすことの埋め合わせとして、自治体が借金でやれるように財政規律を緩めていったんですね。結局、借金による財源調達に走っていくわけです。結果として、自治体が借金漬けにはまっていった。これはもう否定できないと思うんですね。

 当初、政府は、いずれ景気対策が功を奏して経済が上向いてくれば税収もふえる、そうすると借金も返せるだろうと楽観視していたんではないかと思うんです。同時に、地方は、国がそう言うのであれば安心だというふうな形の中で、景気対策を優先する国の意向に沿って借金をどんどんやったわけです。公共投資ラッシュにのめり込んでいった。これも否定できないと思うんです。

 これが、自治体の甘えのなせるわざだ、つまり自治体の自己責任に帰すべき事態なのか。私は、一〇〇%そのように思う立場に立たない。少なくとも、この経済対策の経過というものを考えるときに、そういう方向に誘導していった国のいわゆる責任というのは非常に大きいと私は思うんですね。交付税で面倒を見るから借金を重ねて単独事業をやりなさい、そういうふうに誘導していった国の責任は大きい、ここは率直に認めるべきだと思うんですね。大臣、どうですか。

菅国務大臣 バブル崩壊後に、非常に厳しい経済状況の中で景気浮揚策としてそうした政策誘導を行ってきた、そういうことは事実でありますから、私は、そのことについてどうだと言われれば、当然それは委員の指摘のとおりだと思います。

重野委員 次に、税収動向から見てもはっきりするんです。

 都道府県税収入を見てみますと、九一年度の十六兆一千八百三十五億円をピークに、九二年には前年割れ、三年連続して前年度を下回る。その後若干の回復を見せたのでありますが、再び大幅な減収状態となります。九九年度の地方税収は、交付税制度始まって以来の最悪の大幅減収となりました。

 経済的な要因、政策的な要因、それぞれが重複を重ねながらこういうふうなことになっていくんですが、例えば法人二税の動向を見てみますと、経済的要因の大きさというものが非常によくうかがい知れるわけです。九二年度から法人二税の税収が急激に落ち込んでいきます。ピーク時の半分というところまでなってしまうんですね。大阪、神奈川、愛知、東京といった、裕福と言われる都市型の都府県が相次いで財政危機宣言を出さざるを得ない状況となった。

 同時に、低金利政策を背景とします利子課税収入の落ち込み、個人の勤労所得の全般的あるいは継続的縮小による個人住民税の伸び悩み、こういうことが同時に進行していくわけです。

 しかし、問題はそれだけではなかった。景気対策、消費、投資の刺激策として実施された特別減税に続いて、個人住民税の最高税率の引き下げ、定率減税の実施、法人事業税の基本税率の引き下げ、軽減税率の引き下げ等が矢継ぎ早に実施された。一九九九年度でありますが、地方税だけで平年度ベース一・九兆円の減税がなされました。しかも、国の所得税、法人税減税の交付税はね返り分もありまして、財政危機下の自治体にとっては大きな事態となったことは指摘するまでもない。

 このような歴史的な経緯を見たときに、こうした政策的影響と、そして今日の財政状況との関連、これはどういうふうに見られていますか。

岡本政府参考人 今委員御指摘のように、日本経済が低迷している中で何回かの減税が行われたわけでございます。これは、地方全体として、国全体として景気を浮揚させるために行われたわけでございます。

 例えば、平成十一年度に実施されました恒久的減税に伴いまして、十一年度以降十八年度までで、地方税では総額十四・二兆円の減少、国税の減収に伴いまして交付税が総額十一・二兆円の減少というふうになっております。

 それぞれこの財源不足については、御案内のようにたばこ税の移譲でありますとか交付税の法定率の引き上げなどの補てん措置を講じてまいったわけでございますが、この結果、地方財政全体で見ますと、減税補てん債約三・六兆円、地方負担の交付税特会借入金五・九兆円の債務といったものも増加をいたしております。地方財政全体としては多額の債務を負うこととなったわけでございますが、景気を下支えする一定の効果はあったものというふうに考えております。

 いずれにしても、我が国において、歳入歳出におきまして、国と地方といったものはその公経済におきます車の両輪という考え方で、減税、それから先ほど御指摘ございました公共投資などの経済対策といったものが行われ、地方も一定の負担をしてきたという経緯だと考えております。

重野委員 さらに、バブル崩壊後、地価が大幅に下落をいたしました。これまで固定資産税収というのはそうがたっと落ちるということはなかったんですけれども、このバブルは固定資産税収も減少させるという事態を引き起こしました。

 さらに問題なのは、国の地価買い支えの要請に基づきまして自治体は公有地取得を、ある意味では要請されたと言っていいと思うんでありますが、土地を買ったんですね。不良債権でしかない土地が土地開発公社や自治体の公有地に塩漬け状態、こういうふうになっている。

 将来の公共事業の用地を事前に取得しておく公共用地先行取得事業、六兆円の追加が行われたと聞いております。この結果、多くの自治体の土地開発公社で含み損が拡大した、御認識のとおりでありますが、これもまた国の政策の結果ではないのかと言わなきゃなりません。

 そこで、自治体が開発公社において抱えている土地、あるいは自治体が債務保証をしている土地などの状況はどうなっているのか、お知らせ願いたい。

岡本政府参考人 お答えをいたします。

 全国の土地開発公社が平成十七年度末現在で保有している土地は、二万一千七百四ヘクタール、五兆一千二百三十二億円でございます。

重野委員 さらに聞きたいんですが、ちょっとかわりますけれども、総務省のホームページによりますと、地方財政の借入金残高は平成十六年度末で二百四兆円。ところが、このホームページがなかなか更新されないんですよね。これはなぜなんですか。仕組みを説明するためのものとしても、最新のデータをやはり使うべきじゃないんですか。これが一つ。

 そうはいっても、そのページのデータを使っていきますと、地方税収等の落ち込みや減税による減収の補てん、景気対策等のための地方債の増発等により借入金残高は急増し、平成三年度から二・九倍、百三十四兆円の増となっている。そのホームページはそういうふうに書いているんですね。この借入金の増のうち、減税補てん債、財源対策債、減収補てん債、臨時財政対策債、交付税特別会計借入金という特例的な借入金が七十六兆円、六割程度を占めている。特例的な借入金のうち赤字地方債である減税補てん債、臨時財政対策債及び交付税特別会計借入金の合計が五十六兆円。数字も古いんですが、これは一体何を言いたいのか。これが一つ。

 それから、地方の責任によるものではないと言いたいのであれば、そうでないかもしれませんが、財源不足が生じないように制度改正をすればよいではないかと私は思うんですね。要するに、この借入金増の責任が地方にないということをはっきりする必要がある、こういうふうに私は思うんですが、これについてはどうですか。

岡本政府参考人 お答えいたします。

 地方財政の借入金残高は、平成十九年度末見込みで百九十九兆円でございます。このうち、特例的な借入金としては、今御指摘ございましたような、地方財源不足を補てんするため、通常発行する建設地方債を上回って発行する建設地方債、これが十九末残高で約二十・六兆円と見込んでおります。また、地方財源不足を補てんするために発行いたします地方財政法五条の特例となります赤字地方債、臨時財政対策債、減税補てん債でございますが、これは十九末見込みで残高約三十・一兆円。さらに、交付税特別会計借入金の十九末残高見込み三十三兆円というふうに見ております。また、平成三年度から、先ほど来御指摘がありますバブルからの借入金残高の増加分が約百二十九兆円というふうに考えておりますので、特例的借入金の増八十四兆円が約六割程度となっているのは御指摘のとおりだというふうに考えております。

 このようなことを指摘させていただいておりますのは、この地方財政が全般的に借入残高がふえている、そういうことの要因として、累次の景気対策といったことによるものが多くあるんだということ。それは、一定の、いわば国に責任があるから地方に責任はないんだという趣旨ではなくて、そういう景気浮揚を図っていくという意味で国、地方が公経済の両輪としてやってきた、そういうことの、公債を活用して景気対策等を講じたという結果が現在の百九十九兆円とか二百兆円の公債残高になっているということを国民の方々に御理解いただきたいということで、そういう御説明をさせていただいているものでございます。

重野委員 もう一つ、指摘をしておきたいし答えをいただきたいんですが、地方財政は、御案内のように、九四年度以降財源不足が続いております。九七年度以降九年連続して、地方交付税法第六条の三第二項の規定に該当する状態にあったんですね。

 しかし、税源移譲を含む本格的な制度改正も交付税率引き上げも行われておりません。本来の意味での交付税法六条の三第二項に基づく制度改正を総務省はサボっておると言っていいと思うんですね。地方財源不足を補てんするために借入金で手当てする、そして総額は抑制される、地方債への振りかえによる財源不足の圧縮方法をとる、そういうことで、本来の財源不足に見合った補てんは行わなかった。また、国庫支出金の一般財源化、国庫補助負担率の引き下げ、補助対象事業の縮減に伴う地方の負担はふえたんですが、それもきちんと補てんされているわけではありません。

 一般財源化された額に対する交付税総額の伸びはどうなっているのか、それが一つ。本来の財源不足をきちんと補てんせず、後回しにしてきたことのツケをどう見るのか。答弁をお願いします。

岡本政府参考人 平成六年度以降、バブル経済の崩壊を受けまして地方財政が大幅な財源不足を生じているわけでございます。この大幅な財源不足に対しましては、地方交付税法第六条の三第二項に基づきまして、地方行財政制度の改正または交付税率の変更を行うということとされておりますので、その状況を踏まえまして一定時期ごとに交付税法の改正をお願いし、国の一般会計加算と臨時財政対策債により折半で補てんする、あるいは交付税特別会計借入金によって補てんするなどの地方行財政制度の改正を行うという形で、このような財源不足に交付税法の規定に基づいて対処してまいったところでございます。

 なお、御指摘の一般財源化を伴うものにつきましては、毎年度の地方財政計画の策定に際しまして、一般財源化に伴います地方負担の増について、これを地方財政の歳出として計上し、地方財政対策の中で地方財政収支の均衡を図るという形で対処をしてまいったものでございます。

重野委員 いずれにしても、国の政策に地方自治体はつき合うわけでありまして、その結果が今であります。今があるからこの法案が出ている、そこに私は飛躍があると。この部分について、本当に国が地方自治体に対して責任を果たすという構えが見えないと私は言わざるを得ないんです。

 この次の質問の機会には、出されているこの法案について質問をしていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 以上で終わります。

佐藤委員長 次回は、来る二十四日木曜日午前九時理事会、午前九時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十四分散会

     ――――◇―――――

  〔本号(その一)参照〕

   派遣委員の北海道における意見聴取に関する記録

一、期日

   平成十九年五月二十一日(月)

二、場所

   旭川グランドホテル

三、意見を聴取した問題

   地方公共団体の財政の健全化に関する法律案(内閣提出)について

四、出席者

 (1) 派遣委員

    座長 佐藤  勉君

       鍵田忠兵衛君   谷  公一君

       林  幹雄君   逢坂 誠二君

       武正 公一君   寺田  学君

       江田 康幸君   塩川 鉄也君

       重野 安正君

 (2) 意見陳述者

    北海道副知事      山本 邦彦君

    旭川市長        西川 将人君

    乙部町長        寺島光一郎君

    北海道大学公共政策大学院教授         石井 吉春君

 (3) その他の出席者

    総務省大臣官房審議官  椎川  忍君

    総務省大臣官房総務課長 渡会  修君

     ――――◇―――――

    午後一時三十分開議

佐藤座長 これより会議を開きます。

 私は、衆議院総務委員長であり、今回の派遣委員団団長をさせていただいております佐藤勉でございます。

 私がこの会議の座長を務めさせていただきますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 この際、派遣委員団を代表いたしまして一言ごあいさつを申し上げます。

 皆様御承知のとおり、当委員会では、地方公共団体の財政の健全化に関する法律案の審査を行っているところでございます。

 当委員会といたしましては、本案の審査に当たり、国民各界各層の皆様方から御意見を承るため、当旭川市におきましてこのような会議を催しているところでございます。

 御意見を述べていただく皆様方におかれましては、大変御多用の中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。どうか忌憚のない御意見をお述べいただきまして、この会議が成功に終わりますことを心から御祈念を申し上げまして、ごあいさつとさせていただきます。

 それでは、まず、この会議の運営につきまして御説明を申し上げます。

 会議の議事は、すべて衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、その都度座長の許可を得て発言していただきたいと思いますのでよろしくお願いをいたします。

 なお、御意見をお述べいただく皆様方から委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきを願います。

 次に、議事の順序につきまして申し上げます。

 最初に、意見陳述者の皆様方からそれぞれ十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えを願いたいと存じます。

 なお、御発言は着席のままで結構でございます。

 それでは、派遣委員を御紹介申し上げます。

 自由民主党の林幹雄君、谷公一君、民主党・無所属クラブの武正公一君、寺田学君、自由民主党の鍵田忠兵衛君、民主党・無所属クラブの逢坂誠二君、公明党の江田康幸君、日本共産党の塩川鉄也君、社会民主党・市民連合の重野安正君、以上でございます。

 次に、各界を代表して御意見をお述べいただく方々を御紹介させていただきます。

 北海道副知事山本邦彦君、旭川市長西川将人君、乙部町長寺島光一郎君、北海道大学公共政策大学院教授石井吉春君、以上四名の方々でございます。

 それでは、山本邦彦君から御意見をお述べいただきたいと存じます。

山本邦彦君 道の副知事の山本でございます。

 高橋知事がこの場で御意見を述べさせていただくところでございますが、出席がかないませんで、お許しを賜りたいと存じます。

 本日は、いわゆる地方財政健全化法案に関しまして、道としての考え方を聴取していただきまして、大変ありがたく存じております。

 この法案の検討は、現行の再建法制の見直しが論議されてきた中から始まったと承知してございますが、夕張市の問題がこの議論を加速させる契機となったものというふうに認識もいたしているところでございます。夕張市におきましては、総務省に三月に同意をいただきました財政再建計画に基づきまして行財政運営がまさに始まったところでございます。

 これまでの取り組みに対しまして、この場をおかりいたしまして、佐藤委員長初め衆議院総務委員会の皆様、そして総務省関係者の皆様にお礼を申し上げたいというふうに存じます。

 お手元にレジュメを用意させていただきましたので、これに沿ってお話をさせていただきます。

 初めに、道の財政状況について若干お話をさせていただきます。

 北海道は大変厳しい財政状況が続いてございます。十七年度の一般会計決算も道政史上初めて実質収支赤字となりました。実は、平成四年度以降でありますが、特に国の景気、経済対策に呼応しまして、地方債を財源として景気対策を積極的に展開してきたわけでございます。しかし、そうした景気対策にもかかわらず、結果として道税収入が落ち込み、その際に発行した地方債の償還費も増嵩しております。

 また、国の三位一体改革あるいは歳出削減の動きが進む中で、地方交付税が大幅に削減されるなど、一般財源が厳しく制約されております。赤字再建団体への転落も現実的な状況という厳しい認識を私どもも持っているわけでございます。

 北海道が現行の再建法で赤字再建団体へ転落するとされる赤字の規模は六百億円でございます。実は、平成十九年度に収支不足額として今千八百億円を見込んでおるところでございまして、何とかその解消に向けまして、平成十八年、平成十九年の二カ年で、集中的に歳出の大幅削減でありますとか歳入確保に取り組んでいるところでございます。

 何とかこの赤字再建団体への転落を回避するということで、道では今給与の一〇%カットでありますとか、職員数の三〇%削減の計画を進めるなど、行財政改革を不退転の覚悟で実施しているところでございます。

 こうした道財政健全化への取り組みを進めている道の立場として、この地方財政健全化法案につきまして若干意見を述べさせていただければというふうに思います。

 法案に対する評価として、一応五点整理をいたしました。

 まず一点目でありますが、この法案の内容は、地方自治体の財政状況が容易に判断できる財政指標を整備されております。そして、地域住民にもそれを公表するということを基本にされております。そういう観点から見ますと、住民によるチェックという自治本来の機能を発揮させる観点からも、今回のこの法案の考え方は地方自治、地方分権をさらに進めていく意味で妥当なものではなかろうかというふうに考えます。

 特に、今回一部事務組合や地方公社、また第三セクターへの自治体の負担を含めた財政指標というものを作成、公表するという仕組みになっております。これは、その団体の財政状況全体をよりわかりやすく住民の前に明らかにするという意味からも重要なことではなかろうかというふうに思います。

 二点目ですが、これまでの自治体の財政診断というのは、基本的には普通会計を中心に行ってきたかというふうに思います。夕張市の財政問題への対処がおくれましたのは、御案内かと存じますが市の観光事業会計などに多額の赤字が隠されていたことが最大の原因ではありますけれども、観光事業会計など特別会計そのものが今の再建法では対象外となっていたということも財政悪化をとめられなかった要因の一つであろうかというふうに考えております。そういった意味からも、今回普通会計以外の会計なども含めた指標の整備をなされるということは大変望ましいのではないかというふうに考えます。

 三点目ですが、地方分権を推進するという観点から、直ちに国の関与による再建といういわゆる再生段階のみではなく、その前段に早期健全化段階を設けることによりまして地方団体の自主性を重んじた財政再建を促す仕組み、これも妥当なものではないかというふうに考えております。

 四点目ですが、計画的、安定的な財政再建を進めていくために、再生団体に対しまして、収支不足額を振りかえる再生振替特例債という制度が設けられているわけであります。

 道も実は夕張市に対しまして一時借入金の借りかえに必要な資金の貸し付けを行っているわけでありますけれども、そのことを考えましても、計画的、安定的な健全化に寄与するという意味で、この再生振替特例債は評価できるものというふうに考えます。

 それから五点目ですが、この法案によりまして、地方公共団体の財政健全化というものが制度的により明確なものになろうかと思います。特に、投資家あるいは金融機関関係者などの、地方団体の地方債に対する見方あるいは理解というものがさらに深まることが期待されるかというふうに思います。

 以上のような点からも、道といたしましては、この法案による自治体再生の仕組みというものについては高く評価をしているところでございます。

 この法案が成立、施行されるに際しまして特に御留意をいただきたい点について、これも五点に絞ってお話を申し上げたいと思います。

 まず一点目ですが、地方団体は、再建団体になりましても、例えば義務教育あるいは高齢者への医療福祉サービス、警察、消防といった行政サービスは当然に継続しなければならないわけであります。財政再建に当たりましては、当該地方団体がみずから努力することはもちろん当然でございます。しかしながら、地方公共団体間の財政力格差がございます。住民にとりまして必要な行政サービスというものを継続的に提供できますように、特に地方税、地方交付税といった一般財源総額の確保とその適切な配分がまずもって重要ではなかろうかというふうに考えております。

 二点目ですが、現在、道また道内の市町村は、長引く景気の低迷で地方税が伸び悩み、財政運営に将来展望が開けない、そういう厳しい状況にあるわけであります。一般財源の伸びが期待できなければいや応なく歳出削減によって収支均衡を図らなければならないわけでありますが、今申し上げたように、必要な行政サービスの提供もしなければなりません。地方の裁量では地方団体の歳出に削減できないものも数多くあるわけであります。老人医療費や義務的経費も年々増加してきているわけであります。

 特に申し上げたい点として、今地域医療の確保の問題が地方団体の喫緊の課題として差し迫っております。深刻な問題となっております。地域医療の確保と財政再建の両立については、これは個々の地方団体の努力だけではなかなか困難な問題も多いかと思います。特に、国におきましては、財政再建と医療確保の両立が図られますように、医師確保対策を含めた総合的な対策を講じていただければというふうに思います。

 三点目ですが、今申し上げた病院事業に限らず、各分野の行政サービスを継続するに、それぞれにやはり構造的な問題が宿されているかというふうに思います。国の施策を通じましても、当然に、効果的な対策が実施されなければそうした問題が解決できないかというふうに思います。

 今回の法案の二十一条に配慮規定も書かれておりますけれども、国の各省庁ができる限り踏み込んだ支援策をとられることがその団体の健全化にもつながるものではなかろうかというふうに考えます。その辺をぜひお考えいただければというふうに思います。

 それから四点目ですが、やむを得ず再生団体となった場合には、確実な再生計画をつくって赤字を解消していくということは当然であります。また、他の団体の住民と同様に、必要最低限の行政サービスも維持されることは必要であろうかと思います。ただ、赤字は解消したけれどもその地域での生活が成り立たなくなったら元も子もないわけであります。ぜひとも地域の実情に応じた再生期間、再生方策というものを柔軟に設定していただければというふうに思います。

 それから、最後に、国としても、再生を推進するための支援として今回再生振替特例債の制度が設けられたわけでありますが、例えばその金利を軽減していただくなど、さらなる支援策につきまして御配慮をいただければ、こういうふうに考えます。

 以上、法案に対する評価五点、法案に対する御要望五点を申し上げました。この法案の成立によりまして地方財政の健全化がさらに進むことを御期待申し上げまして、私としての発言を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

佐藤座長 ありがとうございました。

 次に、西川将人君にお願いをいたします。

西川将人君 御紹介いただきました旭川市長の西川と申します。

 まず、本日は、諸先生の皆様方には日ごろから地方財政に大変御理解を賜りまして、心から感謝を申し上げます。

 また、本日は、このような公聴会をこの旭川の地で、また、発言をさせていただく機会をいただきましたことに厚く御礼を申し上げます。

 本日のこの地方公共団体の財政の健全化に関する法律案について、旭川市また地方自治体、市という立場から、幾つかの意見を述べさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 まず、今回の財政健全化法案に対する全体の評価でございますが、今回の法律案につきましては、今年度から財政再建団体となりました夕張市の問題を踏まえまして、全体として適切な制度となっているものと考えております。

 地方自治体につきましては、法令にのっとった財政運営を行う限り財政再建団体になるような赤字を発生させることはできない制度になっております。地方自治体は、国と異なりまして、地方財政法第五条の規定から、赤字地方債は一部の起債に限定されておりますことから、歳入が減り、財政状況が悪化をすれば、当然歳出削減を行わなければならないからでございます。

 しかしながら、今回の夕張問題につきましては、出納閉鎖期間中の特別会計との貸付金のやりとりによって普通会計の赤字額を見えないようにしたものであるということから、財政健全化法案では、企業会計を含めた全会計の連結による赤字額を財政の健全化を判断する財政指標としておりまして、適切なものであると考えております。

 また、財政の健全化を判断する指標の基礎となります数値は、毎年度総務省が実施しております地方財政状況調査、いわゆる決算統計に基づき算出されるわけでございますが、その正確性について、健全化判断比率を監査委員の審査に付するということと、早期健全化段階あるいは再生段階になった際の外部監査によって担保するなど、今後、巨額の赤字を抱えるまで財政再建についての取り組みが行われない状況となることを未然に防ぐという点からも適切なものであると考え、評価をさせていただいているところでございます。

 ただ、今後検討していただきたいと考えております事項もございますので、幾つかの点につきまして意見を申し上げさせていただきたいと思います。

 まず、早期健全化基準、財政再生基準を定めるに当たりまして、地域の実情に応じて定めることの必要性についてでございます。

 北海道の北部を、この地域も含めまして道北と呼んでおります。道北地域にあります九つの市の市長の会議で先日出ておりました意見でもございますが、道北地域の市は、旭川市を除きまして人口が数万人というものでございます。こうした地域において医療機関の数は限られておりまして、例えば、公立病院といいますのは地域住民の生命を守る上で重要なものでありますが、昨今の医師不足や医師確保の経費などで非常に厳しい運営を余儀なくされております。

 しかし、だからといいましても、公立病院を廃止するということは直接地域住民の生命にかかわる問題でございまして、地方自治体の財政状況には画一的な指標や基準ではとらえられない面もございます。早期健全化基準ですとか財政再生基準を定めるに当たりましては、あるいは健全化判断比率の算定におきましては、差を設けることの必要性もあるのではないかと考えております。

 次に、先ほど評価しました点にかかわる問題で、健全化判断比率の監査委員の審査についての問題でございますが、法案では、第三条第一項におきまして、健全化判断比率とその算定の基礎となる事項を記載した書類を監査委員の審査に付し、その意見をつけて議会に報告することとなっております。監査委員の審査をどの程度まで行わなければならないかという部分につきましては、現時点ではまだ不明でございますけれども、先ほども述べさせていただきましたが、健全化判断比率の基礎数値は決算統計に基づいて算出されるわけでございます。この決算統計自体に記載されております数値全般についての審査から行うということになりますと、かなりの事務量となることが想定されまして、場合によりましては監査委員の増員も考えなければならないということも想定をされております。また、九月の地方自治体の決算議会のスケジュールに影響が出るということも想定をされております。

 早急に、実際の現場である自治体の側からどのような審査を行うべきかということを、これは研究をしていかなければならない重要な課題であるという認識を私どもも持っておりますが、健全化判断比率の公表等につきまして、二〇〇七年度決算、すなわち来年の決算議会に向けて公表しなければならないということであれば、準備期間としましては決して余裕のあるものではございません。よって、二〇〇七年度につきましては、地方の状況を把握しながら、その結果を踏まえまして、経過措置を定めることも検討していただきたいと考えております。

 次に、連結実質赤字比率の中に、歳入の大部分が国ですとか都道府県、または市町村からの公費負担額で運営されております特別会計の実質赤字額をそのまま含めることに対しての疑問と御提案でございます。

 例えば、老人保健事業についてでございます。老人保健法が高齢者医療の確保に関する法律に改正されたことによりまして二〇一〇年度から廃止となる特別会計ではございますが、二〇〇七年度決算から四カ年の間は連結実質赤字比率に含められるものでございます。老人保健事業の医療費に要する費用は、支払基金の交付金ですとか国庫支出金、都道府県の支出金ですとか、また一般会計の繰入金などによって補われているものでございます。しかしながら、各年度の事業費は年度終了で確定されるわけでありますが、各歳入の確定は事業の精算後となりますため、概算申請額に対し一定の交付率を掛けた額で交付されているところであります。

 こうした事情によりまして、例えば単年度で実質収支が赤字となる場合がありますが、精算後、翌年度に交付される歳入と合わせますと赤字とはならない性質を持っている特別会計でございます。財政力が弱い自治体にとりましてはこうした赤字額でも影響が大きい場合もございまして、こうした特別会計の実質収支額をそのまま連結実質赤字比率に加えることは妥当なものではないのではないかというようなことも申し上げさせていただきたいと思っております。

 最後にもう一点でございますが、今回の法案では、その制度に関しましては盛り込まれておりません、債務調整についての意見を述べさせていただきたいと思います。

 一般的に言います借金の棒引きという部分についてのことでございますが、二〇〇六年十二月の、総務省の新しい地方財政再生制度研究会の報告書によりますと、地方債の債務調整につきましては、地方行財政制度の抜本的改革が進展した場合における地方財政規律の強化に向けた再生ツールの選択肢として評価できるとしておりますが、このことは、地方行財政の抜本的改革が行われない限り債務調整の必要性は薄いと言っているものではないかと理解をいたしております。本法案につきましても、こうした考えに基づきまして債務調整の規定が設けられていないものと理解しているところでございますが、この考えにつきましては、地方としましても、極めて妥当、適切ではないかと考えております。

 しかしながら、同研究会のスタートとなりました地方分権二十一世紀ビジョン懇談会の最終報告におきましては、財政規律を促すために債務調整は必要であるという考えが強く、今後、財政規律の強化のために債務調整が必要であり、その整合を図る方向で地方行財政の抜本的改革が進められていくのではないかという危惧を持っているところでもございます。

 地方財政再生制度研究会の報告書におきましては、地方行財政の抜本的改革とは、例えば、国による事務などの義務づけの廃止ですとか、地方税の充実、投資的事業に対する財源措置の抜本的な見直し、地方債の自由化、国庫補助負担金、交付税の改革などとされております。

 確かに、現在の地方行財政制度は、時代の変化に応じて見直しを行っていかなければならないものもございますが、日本全国どこで暮らしても一定水準の生活が保障されるということにつきましては、やはり一定の事務などの義務づけやその財源保障でもあります地方交付税制度というものがあったからであると認識をいたしております。また、その必要性は今後も変わらないものと考えておりまして、ぜひこのことにつきましては御理解をいただきたいと強く思っているところでございます。

 以上、このたびの地方公共団体の健全化に関する法律案に対する御意見を述べさせていただきました。

 どうもありがとうございます。

佐藤座長 ありがとうございました。

 次に、寺島光一郎君にお願いをいたします。

寺島光一郎君 乙部町の寺島でございます。

 乙部町はどこかご存じない方がほとんどだと思いますが、道南の、平成五年に南西沖地震で壊滅的被害を受けた奥尻島の対岸と言った方がおわかりになると思います。本日は、このような発言の機会を与えていただきましたことにまずもってお礼を申し上げるところでございます。

 今回の法案についてでございますが、今、全道の町村長は、夕張等の問題を教訓にしまして、その責任を一層認識して行財政運営に当たってきているところでございます。そういう中で、今回の開示の問題ですが、私は、それぞれの地方の自治体の首長が自覚と責任を持って行財政運営を行うことは当然のことでありまして、特に法律にこのように示されなくても、みずからの判断でもって財政状況等を開示しまして、住民にその姿を明らかにするということが当然である、そのように考えております。そのような観点からしますと、地方自治体全体の信頼性を高めるためにも、今回の財政状況の開示を行うこのような法案は、まことに時宜を得たものであるというふうに考えております。

 ちなみに、乙部町は、平成十三年ころ、交付税がそろそろピークだ、将来は三割切るという話が出た中で、地域住民にも現在の状況、そして将来どうなるかを説明した中で、早くから徹底した行財政改革に取り組みまして財政の健全化を図ってきたところですが、この法案はこのような早期健全化の取り組みを促すもの、そういう意味ではその方策として大変高く評価しているところでございます。

 次に、現在の道内町村の財政状況について簡単に申し上げまして、それを踏まえまして、この法案に対する要望を含めた意見を述べさせていただきたいと思います。

 道内の平成十七年度一般会計決算では、都市部では地方税や地方交付税が増加しておりましたが、町村では地方税が前年に比べまして八%の減、地方交付税も六%の減少という状況でございます。全体では一二%の歳入減少となっております。

 当然、歳出につきましても、給与や職員の削減などによりまして、人件費を十七年度で一二%の減少、また公共事業等の見直しを行いまして二一%減少させまして歳入歳出を合わせているところでして、十八年度につきましても、まだ全部の決算は公表されておりませんが、それ以上の削減を進めてきているところです。

 このように、各町村とも相当厳しい行財政を継続しておりますが、過去に行われました国の景気対策等に伴う地方債の償還負担や税収の伸び悩み、さらには三位一体改革によります交付税の削減などによりまして、引き続きまして今厳しい財政運営を強いられているところでございます。

 特に、地方の過疎地域の自治体病院では、先ほど山本副知事のお話にもございましたように、地域医療を確保するために、やむを得ず一般会計から多額の繰り入れを行い経営の維持に努めてきましたが、病院会計への繰り出しにつきましてももはや限界に来ております。

 特に、昨年、平成十八年四月からの医療制度の改正は、地方の実態とは大きくかけ離れたものであり、多くの自治体病院で大幅な減収となり、地方の病院そのものの存亡が問われております。この問題はまた、地方の医療は国が行うのか道が行うのか地方自治体が行うのか、別の大きな議論が残っておりますが、現実的には地方自治体が今担っているところでございます。

 このように、各町村では、集中改革プラン等を初め、今あらゆる改革を行い、身の丈行政の確立に向けまして積極的に取り組んでおり、特に北海道の町村の行財政改革は、全国に比較しましてもより一層進んでいる現状を御理解いただきたいと思います。

 ちなみに、当町におきましても、平成十四年から五カ年間、職員の全面採用ストップ、さらには、構造改革特区による公営民営化によりまして五年間で二三%の職員の削減を行い、今後五年間で退職者の半数採用ということで職員の三分の一を削減し、また、給与水準につきましても、二十年前から地域準拠の給与水準を取り入れまして、現在、ラスパイレスは九一%台でございます。当然議会も、車の両輪でございます、三分の一の削減をお願いしたいということで、議員定数も十六から十名にし、報酬も一〇%削減し、また、地域の住民につきましても、痛みは一緒にしていい町をつくろうということで、福祉も含めて削減をお願いしているところでございます。

 そういう中で、今回の法案の運用も含めまして意見を述べさせていただきたいと思います。

 第一点目は、今回の四つの指標につきまして、私は、都市部も地方も一律の同じ基準で適用していくことは、地域の実態を反映しない面が生じまして、数値のみがひとり歩きすることがあるのではないかという懸念を持っております。特に、北海道の町村では、少ない人口と広大な面積を有しておりまして、集落も広域に分散しておりますから、行政経費は通常よりも多額となっておりますが、地域住民への必要不可欠なサービスを提供していく使命もあり、その維持に今懸命に努力しているところでございます。

 具体的には、自治体病院や上下水道といった地域のライフラインの確保であります。特に自治体病院につきましては、先ほども申し上げましたが、赤字であっても地域住民の命を守るため続けていかなければならないのが地域の現状であります。

 私たちは、財政の健全化に向けて最大限の努力を行うことはもちろんですが、住民にとって不可欠な行政サービス、特に地域住民の安全、安心を確保するための施策の一環である、ただいま申し上げました病院や下水道事業などは、他の事業と一律同様に判断すべきではなく、必要な行政サービスが確保されるように、関係省庁の施策の改善とあわせまして、一定の配慮が必要ではないかというふうに考えております。

 さらに、介護、国保など、医療福祉施策につきましても同様の配慮が必要ではないかというふうに考えております。

 二点目は、地方財源が大幅に削減される中、財政状況は一層行革を進めても厳しさを増しておりまして、今回の指標のどのラインで早期健全化基準、また財政再生基準の線引きをするかによっては、北海道は特に多くの再建団体等を発生させることにもなりかねませんので、慎重に対処していただきたいというふうにお願いするところでございます。

 最後に、現在議論されている第二期分権改革についてでありますが、国と地方の役割分担を明確にした上で、権限、財源を確実に地方に移譲しまして、国と地方の信頼関係が確保された中での真の分権改革が実現されるようにあわせてお願いし、発言を終わります。

 ありがとうございました。

佐藤座長 ありがとうございました。

 次に、石井吉春君にお願いをいたします。

石井吉春君 公共政策大学院の石井と申します。

 地域政策なり地域経営というようなものを主に担当している観点からお話をさせていただきます。

 これまでの話でも、北海道の厳しい財政状況なり、それに対する努力というふうなお話も出ておりましたが、今回の議論自体、夕張問題等に端を発している面は否めないものの、かなり構造的な問題としてとらえる必要があるのではないかと考えております。

 基本的には、九〇年代の景気対策等が今の財政悪化の大きな要因ということが言えると思うんですけれども、ある種、財政錯覚といったものをもたらしやすい現行の制度的な運営がそういった流れに少なからず影響したというふうに私自身は考えております。

 幾つもの論点がいろいろな方から出されておりますけれども、例えば地方交付税を考えたときも、ある種、特別会計で借り入れを行って配っていくというふうなこと一つとっても、なかなか借り入れがふえていることに対する認識が地方に伝わらないといったことが起こったり、当然地方債なんかがかなり財源の割合としては位置づけられるわけですけれども、いろいろな制度の中で将来の基準財政需要額で措置するというようなことも、はっきりした数字はわかりませんけれども、一説によると六、七割ぐらいはそういったものではないかというような見方もあります。そういった中で、なかなか財政の厳しさということが浸透しにくかった面が率直にあるんではないかと。

 それとともに、国からの補助金なんかにつきましても、当然、国の財政の状況からいいましたら、国債を発行してある種調達している中で財政運営をされているわけですけれども、そういったものもある種遮断されているというようなことで、その上に非常に細かな規律づけを行って配分されているということですから、地方側の裁量性もほとんど発揮できないという現状があるわけでございます。ある意味では、国自体の現行制度がかなり制度疲労していると言えるんではないかと思っております。

 とはいえ、地方側もその意味でいうと、ある種自己責任、主体的な責任を十分自覚しなかったことは当然問題としてはあるんではないかということで、例えば、最近大きな政策で市町村合併が進んでおりますけれども、遅いんですけれども市町村の十七年度決算がやっと出たので、二ページ目にちょっと数字を整理しております。一日がかりでつくったこんな表なんですけれども、いつ合併したかというところで、歳出、地方交付税、地方債がどう動いたかというだけの表でございます。

 要は、二〇〇四年度が合併特例債等の非常に厚い恩典を認めた時期の合併事例ということでございます。見ていただくと、そこら辺の財政というのは初期的にお金がかかるというだけでなく、むしろ何もしないところよりもかなり財政が膨張しているというようなところが現状としてはあるということでございます。こういったあたりは、まさに地方側が自主的に主体的に財政運営をやれていない一つの証左ではないかということで、ともにそこら辺をきちんと自覚して変えていかなくちゃいけないんではないかということが私の今感じている立場ということでございます。

 いずれにしても、今の財政の状況を考えますと、財政規律を高めていくということは不可欠の方向でございますので、その中でいろいろな課題と整合性をとりながらどうやっていくかが大きなポイントになるんではないかというふうに考えております。

 この法案自体は、そういった観点からいうと、私は基本線としてむしろ相応の評価をしてもいいと思っておりますけれども、一つは、特に北海道は非常に財政依存が強い。したがって、なかなか自立的な経済の体制をとれておりません。ここら辺を何とかしていくためには、やはり財政が非常に大きな位置づけ、ウエートを持っているということをぜひ御認識願えればと思っております。

 当然、減らしていく中で、一定の地域経済への波及なり効果をどうつくっていくかということが大きな課題になりますから、そこら辺に関しては、いわゆる一律にこれをやれ、あれをやれという規律づけを相当程度に緩めて、自主裁量の中で地域経営ができるようなシステム改革といったものと一緒に規律づけをやっていく必要がどうしてもあるんではないかということでございます。官から民というだけではなくて、国から地方へという流れを本当の大きな流れにしていただければありがたいというふうに思っております。

 一方で、いわゆる地方分権、地方自治ということを考えますと、自己決定と自己責任というようなことがもちろん基本になりますけれども、ごく最近の日本企業なんかの運営を見ておりましても、いわゆるコーポレートガバナンスといいますか、いろいろな利害関係者がきちんとその立場で、悪く言うとチェックする、規律づけをすることがその存在にとっても非常に有用になっているということでございますので、自治体、国なんかも同じかもしれませんけれども、公的なセクターに関しても、そういった意味のいろいろなステークホルダー、これは市民が一番のステークホルダーでございますし、そのほかの利害関係者がきちんと見守っていきながら協同、連携するという姿がどうしても必要だろうと思っております。

 その進め方の中で、相対的に情報公開も政策評価も地方が積極的に始めて一定のレベルまで来ておると考えられますけれども、まだ、いわゆる公会計改革といいますか、コスト情報の把握と開示がおくれているんではないかということです。

 私がかかわっていたところの首長さんが、自分のところの学校給食費が一食千五百円かかっているというようなお話をされて、笑い話にできずにちょっとびっくりしたことがありますけれども、状況によってそういった値段が出てくるということで、むしろ事実を正確に把握することから始めなくちゃいけないということだろうと思います。外部監査といいますか、外が見るというようなことも、大きな自治体は包括外部監査を法定化されている部分もありますけれども、もう少しいろいろな使い方なり、場合によっては制度化しながら、そういった枠組みということも、むしろ健全な運営のために必要ではないかというふうに思っております。

 そこら辺に関して、せっかくきょうは旭川においでいただいて、市長もおられますけれども、次のページに旭山動物園の収支というものを、冗談でつけたわけじゃないんですけれども、入れてあります。私、ある程度、民間財表と公会計の違いをどう認識するかというようなことを授業等でもやっているものですから。

 要するに、動物園なんというのは、一般会計でやっているものから特別会計、さまざまやり方がある。もっと言えば民間がやっているような枠組みもあるわけです。旭川市さんは特別会計でやっておられますから、比較的姿が見える形になっております。しかしながら、いわゆる減価償却費といったものも見込まない大福帳的な収支であることは変わりございませんので、なかなか経営状況が見えないということでございます。

 これは展示の仕方がかなり全国的に有名になっておりますけれども、裏を返せば、着実に計画されて、四十億円を超えるような設備投資をやられて、その結果として今の入り込みがあるということでございますから、そういったものをきちんと見ていかないとなかなか地域経営自体が見えてこないような側面があるということで、身近なところから公会計の問題というようなことをぜひ考えていく必要があるんじゃないかというふうに思っております。

 あと、債務調整の問題は非常に難しい部分があると思うんですけれども、結局、地方債というものが、自立、分権と言いながら国の信用に結局すべてを依存する仕組みというのはある種のトートロジーがあるということと、厳しい財政状況が長期化すると持続性を急速に失うようなリスクも高いということで、レベニュー債的な債券、ボンドの導入等もいろいろ検討されているようです。そういったものを足がかりにするというようなことも一つかもしれませんけれども、いずれにしても、ある程度規律づけが外から見てきちんと完成するような制度設計ということを、全体の進捗なり、地方の経済なり、財政の状況を見ながらぜひ御検討いただければというふうに思っております。

 私からはとりあえず以上でございます。

佐藤座長 ありがとうございました。

 以上で意見陳述者からの御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

佐藤座長 これより委員からの質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。谷公一君。

谷委員 自由民主党の谷公一でございます。兵庫五区から選出されております。よろしくお願いいたします。

 先ほど来、大変貴重な、また現状に裏打ちされた御意見をありがとうございました。今後の審議に役立たせていただきたいと思います。限られた時間でございますので、まず、各陳述者の方にお尋ねをしたいと思います。

 山本副知事には、ペーパーで整理されて、高く評価していただいて、なおかつ何点か御要望をいただいているわけでございますが、御要望の四番目に、地域の実情に応じた再生計画、再生方策が必要、それから三番目に、法二十一条の配慮規定、各省庁の支援ということをお話ししていただいたわけでございますけれども、西川市長なり寺島町長からも、地域の実情に応じた期間とか指標とか方策という御意見も出ました。具体的なものがあればちょっと補足をしていただければと思います。

 続いて、西川市長には、経歴を見させていただきますと長らく民間におられた、そういう立場から見まして、端的に、今回の夕張市の破綻の責任はだれが負うべきか、市長個人になろうかと思いますけれども、民間経験が豊かな立場から御意見をお願いしたいと思います。

 その後に、寺島町長の方に、大変ベテランで長く務めておられます立場から、夕張のときにしばしば、では監査委員なり議会はどうしていたんだということが、市民だけではなくて全国の多くの方々は、どういう機能というか仕事をしていたんだろうかという素朴な疑問もいろいろあったろうと思います。監査委員の今の機能あるいは議会のこういう決裁に対する機能の現状について、どういうふうに、監査なり議会に今後の提言もあればお聞かせ願えればと思います。

 最後に、石井教授の方でございますけれども、債務調整につきましては我々与党の中でもさまざま検討して、今回は債務調整について記載していないわけですけれどもそのことについての評価と、それから、今回の新法で何か問題があった場合の市長等の経営責任ということをどう考えておられるのかということについて御意見をお聞かせ願えればと思います。

山本邦彦君 私の方から五点ほど要望させていただいた中で、特に三番の法二十一条の配慮規定に関連しまして一つ申し上げるといたしますと、先ほどもちょっと触れさせていただきましたが、やはり例えば地域医療の確保の問題などは今北海道は大変厳しい状況になっているわけでございます。これは寺島町長さんの方からもお話がありましたように、一地方団体だけではなかなか今解決できないほどの厳しい問題があるわけでございます。今、道も何とか地域医療の確保をしなければならないということで、今年度から総合的な対策を講じる所存でありますけれども、いかんせん、やはり国に抜本的な対策を講じていただかなければこの問題はいかんともしがたい、それほど根深い、そして構造的な問題をはらんでいるかというふうに存じます。

 再生団体におきましても、当然に病院、地域医療の確保というものは、住民に対してその責めを負わなければならないわけであります。しかしながら、現実的に、再生団体になっていない北海道においても、今、市町村においては病院事業会計が大変厳しい状況に置かれているわけでありますので、なおのこと、再生団体に置かれた場合に病院事業会計を本当に運用していけるのかという問題がございます。

 ここは、医師の確保の問題、看護師の確保の問題、診療報酬のあり方の問題、それから特に今、臨床研修医制度というものが、地域の医師の確保ができなくなっている要因にもなっているかというふうに私自身も考えているわけでありますが、こうした臨床研修医制度のあり方などについても、ぜひ国において抜本的な対策を講じていただきたい。

 法二十一条の配慮規定というのがございますけれども、この配慮規定の考え方の精神で、各省庁において構造的に抱えている問題について、ぜひとも国が抜本的な対策を講じていただければということを強く申し上げたいというふうに存じます。

 再生期間、再生方策については、これも夕張の場合は十八年ということでございましたけれども、それぞれの地域の事情があろうかと思いますので、ここは地域の事情を十分反映した再生期間あるいは再生方策を講じていただくということを強く申し上げたいというふうに存じます。

 以上でございます。

西川将人君 このたびの夕張市の破綻という件については、私ども道内の道民、自治体においては大変な波紋が広がっております。民間の視点からというお話をいただきましたが、その背景について若干触れさせていただきたいんです。

 産炭地でございまして、夕張市は一番多いときで人口が十一万人以上おりました。それが今一万何ぼということですから、当時の十分の一に人口が減っているという状況にございます。それがこの二十年、三十年という短い時間で起きてきたんですけれども、都市のインフラ等は、十一万人、十二万人規模の町に合わせて、病院や学校、上下水道、電気等が整備されておりました。結局、人口縮小に対して、都市の財政、都市機能をスリム化させることが追いつかなかったというのが一番の原因ではないかと背景としては思います。ただ、そこには長い間、市役所も、また地域の住民の皆さんも、また市議会議員や市長さんもずっと介在しておりましたし、財政が大変な状況にあるという認識は私は持っていたのではないかなと思います。

 いつか国は何とかしてくれるんじゃないか、道はいつか何とか、これだけ借金があるけれども、本来であれば私どもの自治体でも考えられないような処理をしていた中で、なかなか表に出てくるのに時間がたってしまったというようなこともあるかもしれませんけれども、そういった責任の不在といいますかなれ合いというのが最終的には大きな原因になったのではないかなという思いでもございます。

 ただ、私どももそういった気持ちからやはり転換していかなければいけないという時代に入ってきておりますし、自治体はしっかり自分たちの身は自分たちで守らなければいけないという意識改革というのもやはり大変重要ではないかなと思っておりますが、しかしながら、大都市首都圏と地方都市北海道とは財政、財力という部分でも差がございますので、そのあたりをやはり今日までも交付税などで処置していただいておりますので、しっかりと考えていただきたいなという思いでございます。

 以上です。

寺島光一郎君 監査委員、議会の件ですが、実は私ども同じ自治体であっても町村会と市長会は違うものですから、全く、新聞情報しか把握していないというのが事実なんです。そういう意味では先生方の方が国の段階で情報があると思うんですが、ただ言えることは、少なくとも監査委員なりが、普通は滞納があっても、少し赤字になっても、決算には私どものような小さいところでも必ず意見をつけます。どういう努力をしているのかということで、こういう努力をしてほしいと。それが決算についてのどういう監査意見であったのか。適正であったというのか、何かつけてあったのか、その辺が一つです。

 それから、議会につきましても、どういうふうな決算書を出したのかわかりませんが、隠し切れるものではなかったんではないのかなという気がしております。そういう意味では、そこはどういうふうなチェックをしたのかは普通の状況では考えられないことではないのかな。これはそういう新聞等の情報でのあれですので正確かどうかわかりませんが、そういう気がしております。

 また、提出する方としましても、例えば、例が違うかもしれませんが、地方自治体病院で今お医者さん確保が大変なんですが、それがいなくなったときには首長あたりが夜も寝られないというのが、その程度でも寝られないというのが実態ですので、これだけの赤字があった中でその辺の取り組みはどうであったのかというのは甚だ私も疑問があります。

 もう一つ関係してやったとすれば、北海道市町村備荒組合というのがあるんです。百八十全部の市町村がお金を出し合って、例えば災害があったとか緊急にお金が要るときに融通し合うという互助組合のようなものがあるんです。

 市長会の会長と町村会の会長が二年交代でその組合長を非常勤でやるんですが、たまたま私が一年前になって、事件にぶつかって、そこが二十億貸したと。これは三月に借りて五月に返す手法で、四年くらいでずんずんずんずん、五億が十億、十五億、二十億にふえてきちゃったということで、そういうところからも、やはりそういう兆候はかなり早くわかっていたんじゃないかと。それで、そのとき、指定金融機関が、一時借入金、幾ら貸してやったかというのがありまして、やはり二十億しか貸していないんです。

 指定金融機関ですので詳しい情報は当然把握していたので、相当危険な状況にあるというのを承知していて、そういう中で、市とどういう形で、そろそろあれしたらどうかというアドバイスをしたのかはわかりませんが、そういう状況はあります。

 お答えになっているかどうかわかりませんが、この程度で終わらせていただきます。

石井吉春君 最初の債務調整の問題ですけれども、これは制度として考えると、何らかの債務調整ということを盛り込む形が制度としてある種均衡、全体のバランスがとれるんではないかというような印象を率直には持っております。

 ただ、今時点で、入れるかどうかということに関しては、まさに、むしろ今交付税が削減されることをもって地方財政に対する規律づけというのはかなり現実的に動いてきておりますので、むしろ多重的な制度を入れる、いろいろやることでいろいろな問題が出るとしたら、さっきも申し上げましたが、ある程度タイミングをきちんと見ながら順次制度を進化させていくというような考え方は当然あるんではないかというふうに思っております。

 それと、首長の経営責任ということで、会社の社長になぞらえて、もっと責任が重いんじゃないかという議論がありますけれども、当然一定の責任はあると思いますが、むしろ、特に基礎自治体の場合ですと、市民、住民のいわば責任といったことをもっときちんと前面に出しておかないと、ある種民主主義がワークしないんじゃないかというような感じもいたします。もう少し市民が非常に強い関心を持って行政を見ていくということの方がより必要な印象を持っております。

谷委員 石井先生の今のお話なんですけれども、首長の責任について、市民の方がもう相当、責任ということを言われたんですけれども、寺島町長にお尋ねしたことと絡むんですけれども、住民の代表が議員であり、また監査委員も議員から出ている、その辺についてちょっと先生のお考えを。

 つまり、何も夕張市だけではなくて、一般的に、いろいろな不祥事が出たときに、その市長なり知事なり町長の責任は当然にしても、ではそれをチェックしていたあるいは審査していた議会の責任はどうかな、あるいは監査をしていた方々の責任というのはないのかなという素朴な疑問もありますし、また、それがそういう議員の仕事でもあるしというふうに思うんですけれども、どうでしょうか。

石井吉春君 むしろ直截にそういうふうに言えばよかったのかもしれませんが、まさに議員がもっと監視能力といいますか、意思決定能力だけじゃなくて監視能力を高めるためにも、住民が意識、自覚をすべきだというふうに申し上げればよかったのかもしれません。

 ただし、これは逆に企業でも一緒なんですけれども、内部からの牽制というのはどうしても限界がありますから、監査委員というのは独立の機構として成り立っておりますけれども、これだけではやはり不十分という側面があって、費用の問題なりレベルの問題はありますけれども、外部の監査なりある種の監視、評価という部分をもう少し強めて、逆にそういった客観情報を議会のソースにしていくというようなことがもう少し進んでいかないと、議会のチェック機能自体も動かしにくい面は実情としてはあるんじゃないかというふうに思っております。

谷委員 ありがとうございました。

 それぞれの陳述人の方々の貴重な意見、特に国への支援というのは、とかく今までの再建法の考え方でいくと、旧自治省、今で言う総務省ばかりがつい思い浮かぶんですけれども、もっと幅広く、地域医療を初めそういったことも含めて、国全体としてきちんと支援していく、そういう御指摘も特に重く受けとめまして、質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

佐藤座長 次に、江田康幸君。

江田(康)委員 公明党の江田康幸でございます。きょうは、四名の意見陳述人の皆様には、大変お忙しい中をこのように出席をいただきまして、また、貴重な御意見をいただきましてありがとうございます。

 幾つか質問をさせていただきたいと思っているんですが、まず最初に私の問題意識でございますけれども、私は、地方分権改革を進めていくためにも、また、中央と地方の格差を是正していくためにも、今まさに地方自治体の財政の健全化が大変重要な時期であると考えております。他方で、しかし、自治体の財政がわかりにくい、ともすればこの議会、また住民も含めて現状認識が不十分であったり、また、過去のしがらみに引きずられたりしがちでございます。夕張のようなわざと赤字を隠すという事例は論外としても、一般会計は黒字でも、先ほど来お話があっているように病院事業や観光事業など特別会計に赤字や借金がたまっているとか、団塊の世代のこれからの退職金がふえていくとか、地方公社、第三セクター等の運営に問題がある、こういう潜在的な財政悪化の原因を抱えたままのケースも多いのではないかと思います。やはりわかりやすい情報をなるべくオープンにするということが大変重要なことではないかと先ほど来の御意見でも確認ができたわけですが、今回の法案は、まさにその評価をしていく、また、自治体がみずから自立、再生等も含めて評価をしていく上で大変重要なルールをつくるものだ、そのように私どもは理解しているわけでございます。

 そこで、まず現状認識とこの法制の必要性ということを再度確認させていただきたいんですが、今申し上げましたように、この法律は、自治体の財政状況の開示を徹底させるために、毎年財政指標を監査委員の審査に付して、議会に報告した上で公表する、現在の再建法にはない仕組みを導入しているわけでございます。現在の地方財政のそれぞれの状況を踏まえまして、このような情報開示の仕組みの必要性についてどのようにお考えであるか。

 また、今回、早期の財政健全化の仕組みが導入されることになるわけですけれども、このような仕組みの導入が自治体の財政健全化の取り組みに与える効果、あるいは議会や住民の意識にどのような影響を与えるか、そこのところについて四人の先生方にまずお聞きをしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

山本邦彦君 先生今おっしゃったように自治体財政がわかりにくい、それを、わかりやすい情報をオープンにするということがまず基本ではないかというふうに私自身も今考えているところでございます。

 地方自治体の財政状況が容易に判断できる財政指標を整備しなければ、多分住民の方々はいろいろな情報を知りたがっているんだろうと思いますが、なかなかそれがわかりづらさがあるんだろうと思います。そういう意味で、今回はわかりやすい財政指標をオープンにする、財政情報を開示するということは大変重要なことではなかろうか。それが住民によるチェックということで、いわゆる地方自治本来の機能を発揮させるということになるのかなと思います。

 道の財政も大変厳しいので、できる限り道民の方々にそれをわかりやすく説明をしなければならないというふうに思っておりますけれども、まだまだそれは足りないんだろうなというふうに思います。そういう意味で、今回のこの法案が示唆するところは大変大きいのかなというふうに思っております。

 特に、普通会計、一般会計じゃなくて特別会計に赤字を抱えている市町村が大変多いわけでありますが、そこの部分がなかなか見えづらかったというふうに思います。それを、一般会計も含めて、普通会計も含めて、特別会計全体を今回あからさまにするというところがポイントではなかろうかと思いまして、ここはぜひこの情報開示の仕組みを実現していただければというふうに思います。

 それから、今度のこの早期健全化の仕組みの導入の効果ということかと存じますけれども、早期健全化段階を設けるということは、財政再建を促す仕組みとして問題が深刻化する前にそれを解決するという意味では大変意義があるのかなというふうに思います。それで議会の方々あるいは住民の方々が当該団体の財政をチェックできるという仕組みになりますので、これは大変効果があり、早期健全化の仕組みというものは必要かなというふうに私自身も考えてございます。

 以上です。

西川将人君 監査の部分に関しまして、この必要性というのは私も必要だなという認識を持っております。

 ただ、例えば、先ほども申し上げさせていただきましたが、監査事務局の職員をふやしていくことが必要性として出てきたりですとかということもございますので、これを導入していく場合には、二〇〇八年度の決算、平成二十年度の決算からスタートしていただければ、自治体としてもそれに向けての準備ができるのではないかなというような御提案をさせていただきたいと思っております。

 また、今回の法整備に対しての効果でありますが、これは一般会計のみならず、特別会計ですとか地方公営企業の企業会計ですとか、こういった部分に関しても、しっかり財政を考えていくということを自治体が認識するきっかけになると思っております。

 全体の流れとしては、私どももいい流れだというような認識を持っておりますが、ただ、一律単年度という部分で若干弊害が出てくる部分もございますので、例えば、先ほども申し上げさせていただいた老人保健事業ですとか、複数年で算定していただくですとか、地方では公立病院の必要性ということもあるものですから、連結実質赤字比率が標準財政規模の二〇%という基準で決められるのであれば、財政力の弱い自治体に対してはそれを三〇%まで引き上げるですとか、自治体ごとの弾力性があってもいいのではないかなというような思いでございます。

 以上です。

寺島光一郎君 この法案が出るという段階で、既に各町とも自分の数字はどうなるかということで、例えば百八十の市町村でいったら必ず数字が一から百八十まで順番がつくわけですから、どの辺になるかということが非常に皆さん気になっておりますので、そういう意味では、さらに一層効率的な、そしてわかりやすい指標が出ることについての関心は非常に高くなっている。そういう面では、私はこれは非常に効果があると思うんです。

 ただ、先ほども申し上げましたように、そのために地域に必要な事業まで場合によっては赤字があるとなると切らざるを得なくなるという事態が出た場合、それがあるために順位が悪いと。むしろそういう再建団体なりの健全化計画をつくらなければならなくなった場合、それをどうするか。そこを一緒にしなければ、ですから、これは各省庁の施策の改善を含めてしなければ、逆にそういうマイナス面も懸念されるということですが、基本的には、こういう中でこの数値をよくしよう、そして健全にしていこうということの流れは、各市町村とも競ってやることになりますので、私は基本的には賛成です。

石井吉春君 今回、連結基準も入れた、従来よりは幾つかの視点を踏まえた、なおかつ、わかりやすい情報として整理されているんだろうと思いますので、ある種の横並びの格付情報的なイメージとして考えると非常に意味があるんではないか。

 ただし、中に対する説明ということを考えますと、今寺島町長もおっしゃいましたけれども、逆に、いいこと悪いことについてむしろ従前よりも中身をきちんと説明していく必要があるということをまさに首長さんが自覚されることがその前提になるんではないか。要するに財政指標というのは結果ですから、それがいいことがいわば行政の目的ではない。ただし、とはいえ、いいことについては非常に重要な要素であるということをまさに踏まえて、首長さんが悪いなら悪いことをきちんと開示して説明して、住民なりも含めた意思決定をしていくという、より民主的なルールにつなげれば非常に意味があるんではないかと考えております。

江田(康)委員 ありがとうございます。

 今、今回の法案の情報開示の必要性、また早期の財政健全化の仕組み、これまでになかったことが盛り込まれていることに関する評価もいただいて、おおむね評価をいただいているところですが、今まさにおっしゃいました、大変私も勉強になったわけでございますけれども、財政の早期健全化や財政再生の対象となる団体の基準について改めてもう一度お伺いをしておきたいと思うんです。

 これから法案の審査に入っていくことになります。また、財政の早期健全化やこの再生の対象となる団体の基準については年内に政令において定めることが予定されているわけですけれども、先ほど来からあるように、地域も都市も一律に評価されるというのはいかがか、地方の自治体病院、上下水道等のライフラインの維持等においてもかなり地方は厳しい状況に追い込まれているわけでございまして、また、これは赤字でも不可欠なサービスとしてやっていかなければならないというのは、もうおっしゃるとおりだと思うんですね。

 そういうようなところを勘案してそれぞれの自治体の財政状況を評価するというのは、一律にはいかない大変な難しさがあるかと思うんですけれども、ここは地方公聴会でございまして、我々も皆様方の御意見を国に伝え、また、適正なものにする必要がございます、そういうような意味でこれは大変重要なポイントだと思うんですけれども、早期健全化または再生の対象となるこの基準はどうあるべきか、どのように具体的に設定、策定されていくべきか、改めてもう一度御意見をお伺いしておきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

山本邦彦君 今、地方財政というのは、厳しいと言いながらも、多分豊かなところと厳しいところと二極化がされているんじゃなかろうかというふうに思います。そのあたりの実態をまずきちっと踏まえていただければというふうに存じます。

 寺島町長がおっしゃったように一律ですべてそこで仕組まれると、なかなか厳しいものがございます。往々にして国の場合はすべて一律で判断をされる分野があろうかというふうに思います。例えば医療の問題。例えば人口十万人に対する医師の数も、全国二百十二人に対して北海道は二百十六人ですから、全国を上回っているんです。だけれども、中身は全然違います。二十一の医療圏の中で、上回っているのは三医療圏だけで、十八医療圏は全部全国以下なんです。そこを一律に、北海道なら北海道で一本算定されてしまいますとなかなか厳しいものがございますので、そこは北海道の中でも厳しいところと豊かなところ、そうでないところと多種多様でございますから、その辺はぜひ地域の実態を踏まえた基準が設けられればというふうに存じます。

 抽象的でございますけれども、以上でございます。

西川将人君 例えば道北地域におきまして公立病院を持つ自治体が幾つかございますが、ちょっと具体的な名前は挙げられないんですけれども、人口二万七千人の自治体におきまして、この町の標準財政規模が七十七億円になっております。この病院事業会計の不良債務は現在十三億円で、約一七%といったような現状がございます。同じく、人口一万四千人で標準財政規模が四十七億に対して病院事業の不良債務が二十一億円、四五%という現状でございまして、この自治体には市立病院以外、総合病院は一切ないというような現状になっています。旭川市に関しては、標準財政規模が七百六十億ございます。やはり都市規模がある程度大きいとその分も吸収しやすくなるんですけれども、特に小さい自治体に関しては、これは深刻な問題でございます。

 また、今後政令で基準をどのあたりで定めていただくかというのは、これは各県、道におきましても、その切られるところですべて影響が変わってまいりますし、若干財政規模のある自治体につきましても、かなり厳しい部分で切られると、例外なくイエローゾーンに入ってしまうのが現状ではないかなと思いますので、特に地方自治体のあたりを緩和していただいて、その政令の基準を定めていただきたいなという思いでおります。

寺島光一郎君 実態を踏まえてしてほしいということは、緩めてほしいというニュアンスが入るんですが、問題は、仮に今そういう配慮をしてもらっても、例えば病院なり地方の下水道事業に、特に地方は今かかっていますので、これからどんどん起債の額が大きくなって、人も少ないですから、今のままではそれを改善できるめどがないんです。となれば、緩めても、いつかは必ず、累積でそこに上がってくると、むしろ遅くなるという問題が出てくるんです。ちょっと矛盾しているんですけれどもね。

 ですから、この指標をやる中において、当然病院を持っている地方自治体あたりが相当な赤字なりが出てくる、それから、下水道も今やっている地方に出てきた場合、我々地方でできる改善の努力の部分と、各省庁が制度的に改善してもらって、何とかそれを、例えば病院にしても、そういう地域についてはどうするかということを論議した中で救える指標を出していただいて、その中で我々が努力するということでなければ……。

 ただ緩めてもらっただけでは、夕張を例にして悪いんですけれども、長引かせるのと同じことになるので、今回そういうことによって恐らく指標が出る前に把握すると思うので、その赤字の根本原因が何なのか、地方が怠けての赤字なのか、それとも先ほど言ったようなどうしようもない、赤字になってもやらないといけないライフラインの確保のためなのか、そこを国と道と地方の市町村がどう分担するかまで、せっかくこれだけの指標を出していただくので、そういう国の総合的な検討の中で示していただき、そしてその中で地方も努力するということができればなと思っていますので、これはお願いですが、よろしくお願いします。

石井吉春君 今も話が少し出ていましたが、病院の問題もさることながら、下水道なんかは今北海道は経済環境といいますか事業環境が難しい中では非常に普及率が高いというようなことで、私自身は、むしろこのままどんどん続けていくと、ある種、財政の持続性に非常に影響を与える可能性があるのではないかと思っております。ただ、これは、従来は国の長期の社会資本計画にむしろ協力する形でやってきたというような経緯があるわけですから、そこら辺も含めて地方が全部悪いという話はやや無理があるんじゃないかというふうに思います。

 ただ、指標については、余りこの指標が、ある種のタイプによって、要するに大きいところと小さいところで違いがあるとかというような、違いはあってもいいと思うんですけれども、北海道だから同じ人口でも全く違う指標だというようなことだと、つくる意味がほとんど失われる可能性がありますから、そこはむしろある種のボーダーを、まさにボーダーを示すという考え方をきちんと徹底された方がいいように思います。

 ただし、状況に応じてといいますか、当面交付税会計なんかの状況を考えると、多分、交付税削減等がどうしても続いていかざるを得ないように考えざるを得ないんだろうと思うんですけれども、そういった中で、ボーダーがどこかということと、ある種定常的な状態になってくる場合のボーダーがどこかというのは、むしろ時点なり時間の経過で少し考えるようなことはあるかもしれないと思います。

江田(康)委員 先生、皆様、大変にありがとうございました。今後の審議の重要な参考になったかと思います。

 時間でございますので、以上で終わらせていただきます。本当にありがとうございました。

佐藤座長 次に、逢坂誠二君。

逢坂委員 民主党の逢坂誠二でございます。

 四名の意見陳述者の皆さんには、地元ということもありまして、公私ともに日ごろから大変お世話になっております。この場をかりまして、厚くお礼申し上げます。

 では、早速中身に入りたいと思います。

 先ほどの話の中で、西川市長の方から、今回のこの法律では準備期間が短いのではないか、経過措置なんかも必要だという指摘がございました。御承知のとおり、この法律は、正式に適用されるのが二十年度の決算からということになります。やはりこの期間というのは短いなという気がする一方で、総合的な健康診断は一刻も早く受けた方がいいというような気もするわけですね。

 しかし、先ほど来指摘があったとおり、どんなに総合的な健康診断を一刻も早く受けても、自立的に改善できないような会計、病院会計でありますとか下水道会計、例えば、今、全国の下水道事業の実態を見ますと、使用料金を二倍に引き上げても健全な財政にはならないというような下水道会計の実態も多いわけであります。そういうところに幾ら基準的なものを当てはめて早期是正ですと言っても、早期是正を自発的、自立的にやることは不可能だというふうに思うんですね。したがいまして、私は、二十年度から正式に適用するということに果たして妥当性があるのかどうか、このあたりについて、山本副知事、西川市長、寺島町長のお三人に改めてお伺いをしたいんです。

 私は、病院なり下水道なり交通事業会計が自立的に立ち上がっていけるようなてこ入れをした上でなければ、この制度を正式に適用するのはまずいのではないか、したがって、経過期間の中で集中改善期間みたいなものを設けるようなことが要るのではないかなというふうにも感ずるんですが、お三人の方、いかがでしょうか。

山本邦彦君 今おっしゃったように、道内の市町村において、一番大変なのは病院なんですが、次が下水道であります。下水道会計の赤字というのが大変大きな問題になっておりまして、これは多分今始まったものではなくて、構造的な問題があるんだろうと思います。

 そういう意味では、逢坂先生がおっしゃったように、やはり集中改善期間のように、先ほどから何回も申し上げていますけれども、これは国の関係省庁のお力もいただいて、地方団体ができる限りのことを今行った上で、再生、健全化に取り組むという形の方が望ましいのではないかなと私は思います。そういう意味では、西川市長さんの考え方に私も同意するところがございます。

西川将人君 私も大体同じような意見なんですけれども、やはりそれなりの準備期間というのをいただくことができれば、それに合わせて都市計画、事業計画ということも再考する、またいろいろな意見交換ができるようになりますので、これを、二年も三年もというわけにはいかないでしょうけれども、ある一定、若干の猶予をいただくことは、各自治体がそれに向けて改善努力をしていく時間ができてきますので非常に有効ではないかな、そう考えております。

寺島光一郎君 二十一年ですから、昨年からこの考えは出ていますので、十八、十九、二十、もう二年ありますし、私はそういう考えも一つだと思います。もう一つは、それを徹底している中では、これはこれとして走らせて、同時に、先ほど申し上げましたように、改善しなければできないものについては、例えば病院なり下水道については改善しようといったってすぐできませんので、この間に国もこれについてはどうするという各省庁の考えを示してもらって、それとあわせて地方も努力するという中で改善した方が、傷が余り深くなるよりも、同時に国も動いてくれますからむしろいいのかなという考えも持っています。

 そこは二つの考えがあるんじゃないかなと思います。

逢坂委員 よくわかりました。ありがとうございます。

 それから、次の質問ですが、一般的には、お金を使うときには、入ってくる額がどれくらいあるからこんなことにお金が使えるというふうに考えるのが普通であります。ところが、私もニセコの町長を長い間やっておりまして、自治体の財政というのは必ずしもそうではありません。入ってくる額の予測がなかなかつかない。例えばことしの交付税も、多分それぞれの自治体ではまだ詳細の額は決まっていないわけです。でも、ことしの予算は走っている。すなわち、自治体の財政というのは、将来に対する予見可能性が極めて低い中で運営せざるを得ない。そのことが実は自治体財政を悪化させている大きな要因にもなっているのかもしれません。すなわち、やるべき事業を先に決めて、後から財源手当てをするという言葉が自治体にはありますけれども、それの繰り返しだったのかもしれないというふうに思っています。

 そこで四人の方にお伺いをしたいんですが、自治体財政の将来予測を立てやすくすることというのは今まで以上にもっと真剣に取り組まれるべきだと私は思っているんですが、この点、いかがでしょうか。

山本邦彦君 北海道のように税収への依存度が低く、交付税に多様な依存をしているというところにおいては、当初予算において今年度交付税がどれほど入ってくるのかということが全体の予算に大変大きな影響を与えるわけでありますので、その意味で、交付税などの一般財源がどの程度確かな確度で予見可能性があるということは、大変重要なことではなかろうかというふうに思います。そういう意味で、例えば将来の収支試算、地方財政収支試算のようなものも意味があるのかなというふうに考えてございます。

西川将人君 将来の部分で予測をするというのが、今の予算、決算の中では非常に立てづらい部分もあるかと思うんですけれども、例えば決算機能をもっと高めていくですとか、予算は全部使い切らないとその翌年に予算が来ないんじゃないかですとか、また、交付税でなくて、ある程度補助金的なもので国なり道から来る部分について縛りがあって、地域の公共事業的な部分を考えて、地域の負担もあるんだけれどもこれをやった方がいいんじゃないかとか、そういった発想でどんどんどんどん予算が使われてきているところもあると思います。

 例えば本当に地方の裁量に合った部分に関しての交付税というスタイルに変えていくですとか、また、決算機能をしっかりと高めていく中で、その年にお金を使い切らなくても翌年必要な部分に関してはまたちゃんともらえるような制度をつくってもらえるですとか、そういったことで自治体も考え方が変わっていくのではないかなとかねてから考えてはおりました。

寺島光一郎君 逢坂委員も御承知のように、我々、交付税の算定は総務省の課長内簡に従っていつもどこでも立てているんですが、今まではそれから一割くらい少なくしておいて予算が組めたんですよ、はっきり言いますと。少し堅実に見て、最後になって使うものもできたということができたんですが、今はその余裕がなくなっているんです。

 そういう意味では、逢坂委員がおっしゃったように、何とか早く三月段階なりで、国の仕組みですから難しいと思うんですが、内々にこういう事業についてもやれるよと、補助なりも。それは予算が通らない中で国会軽視という話があるかもしれませんが、各市町がやれるような制度というか、運用だと思うんですが、してくれれば非常に楽になるなと思っていますので、おっしゃるとおりだと思います。

石井吉春君 従来、予算というのは使うための予算という感覚だったと思うんですけれども、恐らく本来はある種の目的のための行政サービスを広い意味で購入するために使うということですから、要するに縛りが緩くなればなるほどそういう弾力性が出てくるという意味で、ある程度中期を想定して、国もできるだけ数字を示しながら地方の裁量の余地を入れていく、そういう部分というのは必要じゃないかというふうに思います。

 それと、レベニューボンドなんかが、日本型でどういうふうにするかというのは別にしまして、もう少し小さくなりますけれども、個別の事業に関して税収なり将来のいわば料金収入というふうなものを見ていきながら、ある種長いレンジで物を考える基礎になってくるというふうなことで、そういったものと抱き合わせで少しずつ入れていくというふうな発想も必要じゃないかというふうに思っております。

逢坂委員 ありがとうございます。

 それでは、次に三つ目の質問でございますけれども、今、新聞などで取りざたされておりますふるさと納税制度についてお伺いをしたいんです。

 ふるさと納税制度、住民税の一〇%程度を自分の住んでいる自治体ではなくて自分が育った自治体であるとか、あるいは自分があそこの自治体に頑張ってもらいたいと思うようなところに納税をする、そういう仕組みを導入してはどうかということが今議論をされております。

 この制度は一見非常によい制度のように思われるのですが、私自身はこの制度には反対です。それは、地域の自治体間の格差をなくすためには、やはり税制本来の役割で地域間の格差は補正すべきだというふうに思っておりますし、もし、どこかの自治体に自分が恩返しをしたいという個人の気持ちを実現させるためには、寄附税制の拡充などによる方が合理性があるというふうに思っています。

 一般的に新聞などで語られていますのは、都市から地方へ税金が移るというふうに言われていますが、国民の自由裁量に任せたら、必ずしも人口の多いところから少ないところへ一〇%が移るとは限りません。場合によっては、自分の住んでいる自治体に見切りをつけて、大きな町へ全部お金をやった方がいいと思う国民がいない保証はないわけですね。それから、自治体の歳入の面から見ても、例えば寺島町長さんの町に一〇%を上げたいと思う人がたくさんいて、税収が仮にことしふえたとする。ところが、二年後、三年後もそれが保証されるということはないわけですね。その意味では、自治体の歳入の予見可能性、不安定度を高めることになるのではないか。

 さまざま問題点があると私は思っているんですが、端的にで結構なんですが、このふるさと納税制度、一見耳ざわりよく聞こえるんですが、私のだめだという考え方に対して、四人の方、どんなお考えをお持ちか、簡単にお知らせください。

山本邦彦君 先ほど申し上げましたように、財政の二極分解の中で格差是正というのが絶対必要なことだと思います。そういう観点でこのふるさと納税が議論されているとすれば、私はこれは意味があるのかなというふうに思ってございます。

西川将人君 もし税源移譲という観点と絡めた中で、このふるさと納税が地方への税源移譲の一部として考えていただく中で判断されるのであれば、非常に不確定要素が多いという思いもございます。また、果たして本当にどれだけ機能するのかなという不安もございますし、自分たちが住んでいる町に税金を払わないでほかの町に税金を納めるということに対して、その地域でいろいろなサービスを受けるということもありますから、例えば選挙権の問題ですとか、そこでの電気、上下水道を直接本人は払っていなくても受けているという、結構いろいろな部分に波及というか矛盾が出てくるような予想があるんですけれども、そのあたりの整理が非常に難しいのではないかなと思います。

寺島光一郎君 この問題は、東京をターゲットにするわけじゃありませんけれども、石原知事のあそこにだけ税金が集まっているという中で、地方税としては集まっているが、本当の地方には来ていない、全部東京じゃないかという中で出てきた論議の一環だと思うんです。そういう意味では、何かそこに風穴をあける一つの方策かなという気もするんです。

 もう一つ、これと同時に、私たちも、東京おとべ会とかさっぽろ乙部会とか、大抵、来る人はもう年配の人で、成功した人なんですよね。お金があって寄附もしてくれるんです。去年も一億寄附した人もいるんですけれども。その場合、それについては、先ほど逢坂委員おっしゃったように、そこの税金から本人の申し出でそれを引くなり、そういうのもあわせて論議を進めていく中で、恐らく東京都だってこれはみんなにも少しはやらぬと大変なことになるなと思うので、そういう論議の一つの切り口としては今の点もいいですし、それから、逢坂委員の言うように寄附という手法もあわせてこの際大いに論議が広がってくれればいいなと思っています。

石井吉春君 私も、どちらかといえば寄附税制で対応すべきではないかと思っております。むしろ、住民のいわば地元意識というのが今ですら希薄なのに、それを助長してどんな意味があるのかなということが率直なところです。逆に、東京と地方ということでいうと、例えば世帯持ちの単身赴任というのは東京から発生しているケースが多いですけれども、住民票を移動していないというような実態の方が非常に多いです。

 だから、そもそも、今の制度で十分対応できていないような部分を、むしろきちんと対応していただくということの方がより重要ではないかと思います。

逢坂委員 四人のお話を聞いていて、本当の意味での格差是正が行われることが重要なのかなというような理解をいたしました。

 それでは最後の質問です。

 自治体の会計は御承知のとおり大福帳方式ですね。歳入と歳出しかないわけであります。これが自治体の会計情報を適切にあらわしていないことのあらわれだという指摘がございます。十年ほど前から自治体においても企業会計の手法を取り入れようということで、市町村から独自に企業会計の方式でさまざまな試みがこれまで行われてきました。

 しかし、私はこの点で問題だと思っていることがございます。それは、例えばA市ならA市の方式で、B市ならB市の方式で企業会計を取り入れてしまうということで、全国的に統一された考え方がない、そのことによって、せっかく先進的なチャレンジをしても全国的な比較情報になり得ないというところが問題ではないかと思っています。あるいはまた、自治体の会計は企業と違いまして、資産の分類もなかなか簡単にはいきません。仕分けをどうするかということも企業会計とはやはり違った視点が必要だというふうに感ずるわけです。

 そこで皆さんにお伺いしたいのは、企業会計方式を導入するということは是だというふうには基本的には考えるのですが、そこに統一的な考えをきちんと実現していけるように、これは国なりどこかなりが明確な指針を示すべきではないかというふうに私は感じるのですが、四人の方、それぞれいかがでしょうか。

山本邦彦君 公会計制度を導入するということは基本的に私は必要だと思っております。

 総務省からも指導がございますけれども、道も平成十二年度決算から自主的に検討しております。ただ、道内の市町村でもありますけれども、まだそれは全道的、全国的に広がっておりません。おっしゃるように早く統一的な公会計基準が設けられて、それに沿って決算分析をし、財政運営をするということが必要なことかなというふうに思ってございます。

西川将人君 それぞれの町、自治体によって、いろいろ特色がございます。そこでいろいろな判断基準が出てくると思いますが、非常に大きな見地から見ると、会計予算自体が見えづらくなるということが起き得るのではないかなと想定ができます。やはり統一的な基準、見解をある程度整理してから全国的に進めていただく方が混乱がないのではないかなと思います。

寺島光一郎君 私も同じなんですが、資産が全然あらわれていませんので、本当の町村の実力というのか、本当に赤字なのか黒字かというのは、これだけでは全然見えてきていないのが事実なんです。そういう意味では企業的会計を入れるのは基本的に賛成なんですが、ただいま西川市長がおっしゃったように、それぞれの出し方には特色が出てくるだろうと思うんです。ですから、それを一律にやれるのかどうか、それからローカル基準、例えば北海道なら北海道の基準をとるのか、その辺があるんじゃないのかなと。

 私は、何でも地方が一律にやることについては基本的には反対なんです。できるだけ地方分権なり、法律もそうですが、つくらない方がいい、規制法はつくらない方がいいというのが私の基本的考えです。お互いに自由に競わせてくれた方が地方は発展するという主義なものですから、これについてもそれぞれの中で……。

 かといって二千の市町村全部が違ったら困りますので、ローカルパターンの方がいいのか、さらに全体で共通のものがあって選べる方がいいか、全く勉強不足ですので、これから研究したいと思います。

石井吉春君 私自身は必要性は十分感じておりますが、どちらかというと、現状、バランスシートに偏って作成努力というようなことが行われていますけれども、自治体にとっていうと、国からの補助金等が全部資本金に入るような考え方で幾らつくっても余り実効的な役割を果たさない可能性がある。むしろコスト情報をきちんと把握するということと、キャッシュフロー、特に将来のキャッシュフローを考えていくための基礎情報を整理していくということの方が重要性があるんではないかというふうに思っております。

逢坂委員 質疑時間が終わりました。四人の皆さん、本当に貴重な御意見、ありがとうございました。

佐藤座長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。

 四人の意見陳述者の皆さんには、それぞれ貴重な御意見を賜り、ありがとうございます。

 最初に石井教授にお伺いいたします。

 健全化判断比率のことですけれども、従来からの財政についての現行制度上の基準の実質赤字比率、実質収支比率や実質公債費比率に加えまして、連結実質赤字比率、将来負担比率、こういうのが加えられて四つの指標となる。そういう点では財政の悪化の判断の指標がふえるわけですけれども、この四つの指標の妥当性といいますか、新たな指標の妥当性ということでお考えのところをお聞かせいただけないでしょうか。

石井吉春君 要は、本当は妥当性を判断するためには、自治体の会計情報というのは基本的に不足していると私自身は思っていますので、むしろスタートラインとして示していただくという指標としての意味ということで考えているんですけれども、いわば現状をそれなりに出せて、なおかつ、比較対照する指標という意味では一定の役割を果たすのではないかというふうに思っております。

 ただ、これが四つで完璧なのかというような議論をしたら、当然幾らでも議論ができますし、今申し上げたとおり、何よりももう少し精緻にするには、今の会計情報のなさといいますか、少なくとも今の会計上の情報では特に将来にわたる見通しを立てていく指標は難しいですから、その中ではある意味やむを得ざる立て方ではないかというふうに思っております。

塩川委員 情報開示そのものは住民自治を担っていく上で基本であるし、そういう点での取り組みとしては重要だと思っております。

 この後四人の皆様にお伺いしたいと思っておるんですけれども、財政悪化の判断の指標がふえることによりまして、財政健全化計画の策定の対象自治体がふえることになるのではないかと思うわけですね。北海道は起債の許可団体で公債費負担適正化計画を策定しておりますけれども、旭川市も乙部町も今のところそういう起債許可団体ではございません。この早期健全化基準が、起債の協議団体から許可団体に移行する基準、実質公債費比率の一八%、これを参考に政令で定めるということになっておりますので、全体として国の方が前倒しに健全化策をやっていこうという動きの中ではこの基準が現行よりも緩められるというかきつくなるというか、いずれにせよ策定対象団体がふえる可能性が強いのではないかというふうに思うわけです。そういう点で、混乱といいますか、問題というのはどうなのか、現場の皆さんの実感としてそれぞれお答えいただけないでしょうか。

山本邦彦君 北海道は実質公債費比率が一九・九と、全国で二番目に悪いということで、私の方で今の御質問にお答えできるような状況にないわけであります。ひとえに公債費の負担軽減に努力するとしか申し上げようがありません。

 申しわけございません。

西川将人君 旭川市の実質公債費比率が今一七・一です。一八というのは本当に余裕のない数字ですので、今後、いろいろな意味で厳しくなってくるだろうなということは当然予想されます。

寺島光一郎君 先ほどもお話し申し上げましたが、このとり方によって北海道はたくさん出る可能性があるので、基準のとり方については慎重に対応していただきたいということで申し上げたのは、やはり一八なのか、一九がいいのかわかりませんけれども、どのくらい出るのか、余りたくさん出ても、それは全部が改善した方がいいんですけれども、その辺があるので、省令か何かで決めるんだろうと思いますが、それにつきましては慎重にしていただきたいというのが私の意見です。

 しかし、私も、少なくとも一八というのは相当な数字ですので、そこに該当しそうなところは努力してそれ以下にするように頑張るというのがまず自治体の基本的姿勢だと思います。

石井吉春君 北海道は、特に厳しい実態は私も常々感じているんですけれども、さはさりとて、国全体のいわば財政の厳しい状況といいますか、今、国、地方あわせて何とかしていかなくちゃいけないという中でまさにこういうことが出てきているわけですから、ある種、問題が早くそのことであぶり出るとしたら、そのことにはむしろ一定の意味といいますか、当然にこの制度の考えている意味があるのではないか。決してそのことを喜ぶという意味じゃございませんが、出るとすると、むしろ早く問題摘出ができることの方が意味があるのではないかというふうに思います。

塩川委員 ありがとうございます。

 もう一点お伺いしたいのは、西川市長と寺島町長にお伺いしたいと思いますけれども、今回のスキームですと、従来の現行の再建法に比べても、国の関与、国の出てくる場面がより早くなってくる状況というのがあるわけですね。現行の再建法は自治体がみずから手を挙げる方式ですけれども、今回の法案ですと、政令で定める基準を超えれば自動的に再建団体になって財政再生計画の策定が義務づけられる、破綻までの財政悪化がない段階でも政令で定めた基準を超えると早目の対策として財政健全化計画の策定が義務づけられます。計画を策定しましたら知事あるいは大臣に報告しなければならない、実施状況も同時に報告が求められる。そういう点で、基礎自治体の長として、財政悪化の早い段階から、都道府県、特に国の関与が生じることについてどう考えるのか。自治体に対する財政自主権の保障という観点からも国の関与をどのようにお考えなのか、この点についてお聞かせください。

西川将人君 地方が余り国に信用されていないのかなというような、ちょっと寂しい感じもいたしますけれども、早期にそれを発見するという部分では十分役割はあるのかなと思います。

 ただ、地方にも徴税権がありますので、いろいろな部分で地方で独自に税金をかけていくという動きが起き得る可能性があるのではないかなということで、財政をよくするためにそれぞれの自治体でいろいろな増税活動が起き得る可能性もあるかなという危惧は若干ございます。

寺島光一郎君 私たちのとらえ方は、この段階は、あくまでも早目に、そろそろ危なくなっているので自発的に改善したらいいんじゃないかという、自主的な改善努力による財政再建化のイエローカードというか警告を発してもらって、自分たちでやる段階だというふうに認識しているのです。ですから、報告なりはしますが、つくるのはあくまで地方自治体でありまして、普通のものをつくっていれば当然それは報告義務で終わるので、むしろ地域住民に対して、うちは今この段階にあるので早くみんなで一致協力して改善しようというプラスの面もあるんじゃないのかな。

 ただ、名誉的には、例えば乙部なら乙部がこれになったと、どうもあそこは悪いなと、イメージとしてはよくないんですが、内部的にはむしろ町長としてはみんなを引き締めるためにはやりやすい面もあるのかなというふうに思っていますし、あくまでも、私たちは、財政の再生では国の関与ですが、ここは自分たちの自主的な改善というふうに今とらえておりますので、ぜひ省令等の施行に当たってもそういう観点からしていただきたいなと思っています。

塩川委員 ありがとうございます。

 関連して石井教授にお伺いします。

 先ほどのお話の中でも、国から地方へという話がございました。国や都道府県の関与が拡大することについてということと、昨年成立しました地方分権推進法にも国の関与の整理縮小というのが明記されているわけですけれども、あえてその方向と逆行するのではないかと思うような今回のスキーム。その辺についての率直な御意見と、そういう背景がどんなところにあるのかということでお考えのところがあればお聞かせください。

石井吉春君 確かにこれも関与の一つと言えるのかもしれませんけれども、私自身は関与の性格が大分違うというふうには感じております。

 ある種の制度的な監視、関与ということで地方行財政に対する信任が高まるとすると、それはむしろ有効な関与ではないかということで、どちらかというと全体の効率化をそぐような無駄な関与は今現在でも相当あるのではないかと思うんですけれども、そちらはもっとやめていただいて、むしろそういったもろもろの、ある種制度スキームを維持するための必要な企画立案、関与というようなあたりはより特化して国としてやっていただくというふうに、少しそこは切り分けて考えてもいいのではないかと思っております。

 ほかのことを手放さないでさらに付加されるとすると、それは大変問題になるというふうに思います。むしろ、こういう関与はされながら、地方の自立性が高まるよう、いわば規律づけをやめるということを同時並行でやっていただくことが重要ではないかと思っております。

塩川委員 ありがとうございました。

 西川市長と寺島町長に重ねてお伺いします。

 先ほどの意見陳述の中でも、基準の話ですけれども、この基準について画一的な指標、まあ、画一的にはとらえられないということと、一律同様に扱うのではなく一定の配慮が必要だというお話がそれぞれございました。

 病院の話なんかも特にそうだと思いますし、上下水道などについても、初期の投資、これはどう考えたって黒字になり得るわけはないわけですから。そういった点で、本来その基準の具体的な中身が非常に重要なんですけれども、それが実質省令という形で、なかなか国会の議論としてそこが俎上に上らないという点も私は問題だと思っておりますが、現場でこういう点はぜひとも入れてもらいたいという率直な、自治体の当事者の方として、会計の特質を踏まえ、基準の内容についてお考えのところがあればこの場で一言でも御紹介いただけないかなと思っております。

西川将人君 先ほど病院の件も一つお話しさせていただきました。これは、特に地方においてはやはり考慮していただきたいなという部分は再度お話しさせていただきたいと思います。

 また、上下水道に関してですけれども、大都市は例えば下水道、上水道を一キロ引く間に何万人という人が住んでいますけれども、地方の場合は一キロ引く間に何十人しかいないようなところに上下水道を引き続けてきているんですね。これは明らかに費用対効果ということを考えると不利ですけれども、それでもやり続けてきているということで、これはやはり地方都市と大都市とは違うという部分での差というのも考えていただけたらありがたいなと思います。

寺島光一郎君 先ほど何度も論議していますが、基準を緩めるというのもまた難しいことなんです。

 ただ、どうしても今の二つの問題は、西川市長と同じなんですが、黒字には自分たちだけの努力では限界があるんです。できない、構造的な問題ですので。そこをどう、先ほどからの繰り返しになりますが、国の施策としてどこがやるのか、またそれを踏まえて地方がどこまで努力するのか。私たちも、下水道にしても今見直しをして、ある程度、さらに効率の悪いところを切って中心部だけにするなりの努力をしているんですが、最低中心部だけはしないといけないと思っていますし、それでもこれはどう鉛筆をなめても永久に黒字にはならないんです。

 ですから、改善の余地のところと、我々の努力と、それから国の施策なり道の施策なりのところを分ける方法がないのかどうか。これは、できれば各省庁の一番そういう知恵を持っているところの意見を踏まえながら先生方に議論していただければなと思っていますので、よろしくお願いします。

塩川委員 時間が参りましたので、終わります。ありがとうございました。

佐藤座長 次に、重野安正君。

重野委員 社会民主党の重野安正でございます。

 意見陳述者の皆さんにおかれましては、大変お忙しい中、わざわざ時間を割いて本公聴会に御出席をいただき、また、先ほど来貴重な御意見を幾つか拝聴する機会を得ましたこと、大変ありがたく、まず感謝申し上げたいと思います。

 順次陳述者に質問いたしますけれども、まず最初に、山本副知事にお伺いいたします。

 三月に公表されました平成十六年度県民経済計算というのがありますけれども、それによりますと、二つの県を除き、四十五県が実質経済成長率においてプラスとなっております。北海道も〇・七%の成長を見ております。しかし、最高の成長を示した県と比べますと、その伸び率は約十分の一、こういう数字であります。したがって、成長したとはいえ、下位にあるということになるわけであります。さらに、一人当たり県民所得で見ますと、これは人口や産業構造の違いもあってマイナス〇・八%、こういうことになっております。全国の県平均の伸び率を下回るという現状にあります。先ほど来、副知事さんの説明もそれを裏づける説明であったと受けとめました。

 こうして見ますと、道内の経済は楽観し得るものではないということになるわけでありまして、それは当然、道庁の財政、そしてまた市町村財政を厳しいものにしている。先ほど来、市長さん、町長さんの話に裏打ちをされていると思います。

 これに対して、政府は、この間、三位一体改革と称しながら、結局は国庫補助負担金の廃止にふさわしい自主財源の付与は行わずに、他方では交付税の総額抑制によって財政需要の抑制を図ってきた、これが経過であろうと思います。

 そこで、まず第一に、道庁財政にとって今最も切実に求める財政制度改革、これは何かということが一つ。

 二つ目は、法人二税の配分見直しを図ることと引きかえに消費税率の引き上げによる地方への配分強化を図ろうとする議論があります。いわば法人課税を手放すことによって、この地方税、税率の地方配分を高めるんだ、このような議論が政府の一部に台頭してきております。このような税財政論が現在の地域間格差是正論の王道を行くものであるかどうか、お考えを伺いたい。

 三つ目は、今回の夕張市の財政再建問題と道庁との関係についてです。このような質問はいささか道庁の皆さんにとっては失礼かと存じますけれども、あえて質問させていただきます。

 と申しますのも、今回の夕張市の財政問題は、全自治体に普遍的な問題と私は思っておりません。というよりは、その財政運営において極めて特異なものがあった。そうした特異な財政運営について道庁として把握できなかったのかどうなのか、この点について率直に伺いたいと思うんです。

 四つ目に、同時に、今回の財政再建に当たって道庁が財政支援を行う、道民に対するそれなりの論理が必要と考えます。その点で道庁としてはどのように考えてこの財政再建について措置を決定したのか。

 以上の四点でありますが、まずお伺いいたします。

山本邦彦君 北海道経済がなかなか厳しい状況にございまして、今北海道経済の活性化というのが高橋知事の最重要課題でございます。なかなか厳しい状況が続いておりますけれども、しかしながら、今経済活性化の芽が少しずつ芽生えてきているのかなとも思っておりまして、何とか新しい動きというものを育てながら北海道経済の活性化に努めていかなきゃならないと思います。

 その中で、御質問の一点、道財政で今何を求めるか。やはり、地方税、地方交付税を含む一般財源総額の確保ということを強く求めざるを得ない状況にございます。ひとり立ちができて法人二税が伸びる状況になればよろしいのでありますけれども、ピーク時に比べても法人二税だけでも五百億くらい今落ちているわけでございます。やはり、地方税、地方交付税を含む一般財源総額の確保をぜひとも強く求めるところでございます。

 十六年度の地方財政対策において交付税が削減されたのが大変大きい、今でもその影響を受けているのかなというふうに感じてございます。あのとき、道分で九百億、道内市町村で九百億、千八百億が落ちたわけでありまして、やはり交付税の総額確保についてぜひとも御配慮、御検討いただきたいというのが一点でございます。

 それから、消費税について、これを手厚くするということは大変大きなことではないかなというふうに思ってございます。特に、今の税源の涵養というのはなかなか難しいところがございますけれども、消費税において手厚く地方財政部分が配慮されるということは、これは非常に歓迎すべきことでございます。

 それから、夕張との関係でございますが、道庁として夕張問題については適正に状況を把握し、必要な助言、指導をすべき立場にあったというふうに考えております。そういう意味で、今日の夕張の問題がこれほど深刻な状況にまで至ったことについて、道庁としての一定の責任は私ども感じているところでございます。個人的には私も市町村課長をやったということもございまして、強くその辺は感じているところでございます。その意味で、夕張の問題は、道庁の問題でもあるということで夕張市とともにその再建計画の作成に携わってきたところでございます。

 今回の道の支援につきましては、他の各市町村からも大変厳しい御意見がございました。おっしゃるように、夕張は特異な問題なんであって、なぜ税金を夕張にだけ投入するのかという意見もございました。しかし、そこは道議会においてきちっと議論をさせていただきまして、最低限御理解いただける範囲で、これも総務省の方からも大変な御支援を賜りましたので、道民世論の御理解をいただける範囲内で道の独自の支援策を講じたつもりでございます。

 この辺については、他の市町村の首長さんなどにも、それから道民の方々にもさらに御理解をいただけるように努力していかなければならないというふうに思ってございます。

 以上です。

重野委員 ありがとうございました。

 それでは次に、西川市長さんと寺島町長さん、お二方にお伺いいたします。

 先ほども考え方が述べられましたけれども、今回のいわゆる財政健全化法案についての評価を、先ほどはかなり項目がございましたけれども、もう一度コンパクトにまとめて言えばどういうことになるのかということが一つ。

 それからもう一つは、この間交付税の総額が抑制されて、今年度からは新型交付税なるものが導入されました。恐らく今月末にはこの配分額が決定されるのではないかと言われておりますが、交付税のあり方について、市長さん、町長さんの考え方をお聞かせいただければありがたいと思います。

西川将人君 このたびの法律案につきましては、おおむね私どもも評価をさせていただいております。

 各自治体がみずからの責任感をどう醸成していくかという部分ですとか、将来の地方のあり方という部分で、みずからの頭で考え、しっかり行動していくという部分で、ある面、今まで若干ぬるま湯にあったのであれば、それを後ろから後押ししてもらえるというような部分で意識的にもいい方に向かうのではないかなという部分もございます。

 詳細の基準等については、先ほども申し上げさせていただいたように、その御配慮はぜひお願いしたいと思っております。

 また、交付税でありますけれども、これはやはり、今後とも交付税制度というのは堅持していただきたいという思いでございます。日本は北海道から沖縄まで本当に長い列島でございます。どこに住んでいても、ある程度のサービス、違わないサービスを受けて暮らしていくことができるということが、今日まで均衡ある発展に寄与してきたと思っております。

 そういった中で、私は、国庫補助金といった性質のものと地方交付税といったもの、いろいろ地方財政で大きな役割を占めておりますけれども、補助金から地方の裁量の多い交付税に財源をシフト、移行していただくような大きな予算の流れを組んでいただければ、地方の裁量、地方の自立という部分では大きく寄与するのではないかなという思いもございまして、そういった今後の国の予算制度の変化ということもぜひ期待をしたいなと思っております。

 以上です。

寺島光一郎君 今回の法案につきましては、先ほども何度も申し上げましたが、本来は、こういう法案がなくても、みずからがそういうような指標を地域住民に示して、今どういう状況にある、そして将来はこうなのでこうしたいというのが私たちの務めだと思うんです。

 ただ、今回の夕張問題等もありますし、さらに、このような法案の中で、四つの指標等を明確にした中で、よその町村とも比較ができるような指標が出てくるということは、財政の健全化に向かっての努力とあわせて、私は、時宜を得たものだ、また、早期に健全化をするためにも有効な方策ではないかというふうに考えております。

 それから、交付税につきましては、これは地方固有の財源でありまして、当然、税収の伸びなり、また地方に必要な財源を、ユニバーサルサービスをするためにも、今後ともこの制度は堅持してもらわないとなりません。

 よく私ども地方は国ほど行政改革もしていないと。それから、この前財務省がラスパイレスが地方自治体の方が高いなどと言っていますが、それはどこの世界の話なのかと。北海道を見ても、うちでも九一くらいになっておりますし、どこもそんな状況はありません。ですから、どこか突出したところだけ出してそういう話をしているのか。それと同時に、公務員の削減につきましても、地方の方がまだまだ国から見たらおくれていると四十年か何かの数字を基準にしておっしゃっているようですが、よく見ていただきたいんです。もうやれるだけやっているんです。しかも、さらにやらないといけないという中で、国がまだやっていないというのが私たちの判断なんです。

 ですから、どっちがどうということでなく、財政が苦しい中では地方も国も一体となって切り詰めるものは切り詰めて、一緒になって再建しなければ、そういう不信感だけ助長してもらっては、地方もまた何だということになりますので、そういうことではなくて、この緊急事態に両者が力を合わせて、国も地方も改革を進めて、早く国の借金を少なくするように一緒に頑張りたいと思います。

 そういう中でも、この地方分権の中で、地方交付税につきましては一番大きい財源ですし、これがなければ日本の国がひとしく発展できなかったと思いますので、これにつきましては、これからもぜひさらに制度の改善をお願いしたいと思います。

 以上でございます。

重野委員 石井教授にも質問を二項目準備しておったんですが、もう時間が来てしまいました。大変申しわけないんですが、お許しをいただきたいと思います。意見陳述者の皆様方には、大変貴重な御意見をいただきましてありがとうございました。

 以上で終わります。

佐藤座長 以上で委員からの質疑は終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつを申し上げます。

 意見陳述者の皆様方におかれましては、大変御多忙の中、長時間にわたりまして貴重な御意見を承りまして、まことにありがとうございました。

 本日拝聴させていただいた御意見は、当委員会の審査に資するところ極めて大なるものがあると存じます。ここに派遣団を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。

 また、この会議開催のため格段の御協力をいただきました関係各位に対しまして、心から感謝を申し上げます。どうもありがとうございました。

 これにて散会いたします。

    午後三時五十一分散会


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