衆議院

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第24号 平成26年5月27日(火曜日)

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平成二十六年五月二十七日(火曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 高木 陽介君

   理事 石田 真敏君 理事 土屋 正忠君

   理事 橋本  岳君 理事 福井  照君

   理事 山口 泰明君 理事 原口 一博君

   理事 三宅  博君 理事 桝屋 敬悟君

      青山 周平君    井上 貴博君

      伊藤 忠彦君    今枝宗一郎君

      上杉 光弘君    大西 英男君

      鬼木  誠君    門  博文君

      門山 宏哲君    川崎 二郎君

      木内  均君    小林 史明君

      清水 誠一君    助田 重義君

      瀬戸 隆一君    田所 嘉徳君

      中谷  元君    中村 裕之君

      長坂 康正君    西銘恒三郎君

      比嘉奈津美君    松本 文明君

      八木 哲也君    山口 俊一君

      奥野総一郎君    黄川田 徹君

      近藤 昭一君    福田 昭夫君

      上西小百合君    新原 秀人君

      中田  宏君    馬場 伸幸君

      百瀬 智之君    濱村  進君

      佐藤 正夫君    塩川 鉄也君

    …………………………………

   総務大臣         新藤 義孝君

   総務副大臣        上川 陽子君

   総務大臣政務官      藤川 政人君

   総務大臣政務官      伊藤 忠彦君

   総務大臣政務官      松本 文明君

   文部科学大臣政務官    上野 通子君

   政府参考人

   (総務省人事・恩給局長) 笹島 誉行君

   政府参考人

   (総務省情報流通行政局長)            福岡  徹君

   政府参考人

   (総務省総合通信基盤局長)            吉良 裕臣君

   政府参考人

   (総務省電気通信紛争処理委員会事務局長)     武田 博之君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           有松 育子君

   参考人

   (株式会社日本総合研究所法務部長)        大谷 和子君

   参考人

   (法政大学社会学部教授) 水島 宏明君

   参考人

   (日本放送協会経営委員会委員長)         浜田健一郎君

   参考人

   (日本放送協会会長)   籾井 勝人君

   参考人

   (日本放送協会専務理事) 塚田 祐之君

   参考人

   (日本放送協会専務理事) 板野 裕爾君

   総務委員会専門員     阿部  進君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十七日

 辞任         補欠選任

  木内  均君     門  博文君

  田所 嘉徳君     鬼木  誠君

  長坂 康正君     青山 周平君

  西銘恒三郎君     比嘉奈津美君

  湯川 一行君     助田 重義君

  渡辺 喜美君     佐藤 正夫君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     長坂 康正君

  鬼木  誠君     田所 嘉徳君

  門  博文君     木内  均君

  助田 重義君     八木 哲也君

  比嘉奈津美君     西銘恒三郎君

  佐藤 正夫君     渡辺 喜美君

同日

 辞任         補欠選任

  八木 哲也君     湯川 一行君

    ―――――――――――――

五月二十六日

 電気通信事業法の一部を改正する法律案(内閣提出第七四号)(参議院送付)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 放送法及び電波法の一部を改正する法律案(内閣提出第六九号)

 放送法の一部を改正する法律案(原口一博君外三名提出、衆法第三号)

 電気通信事業法の一部を改正する法律案(内閣提出第七四号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――

高木委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、放送法及び電波法の一部を改正する法律案及び原口一博君外三名提出、放送法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 本日は、両案審査のため、参考人として、株式会社日本総合研究所法務部長大谷和子君及び法政大学社会学部教授水島宏明君、以上二名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用中のところ当委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、両参考人からそれぞれ十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、大谷参考人、お願いいたします。

大谷参考人 私は、日本総合研究所で企業法務を担当しております大谷でございます。

 本日は、意見陳述の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 私は、放送政策に関する調査研究会、総務省が事務局となって行われたものでございますが、こちらで平成十九年改正法の見直し作業に参画してまいりました。その参加者としての立場から、改正法案について意見を述べさせていただきたいと思います。

 平成十九年改正というのは、御承知のとおり、放送事業者の経営の安定の確保といったことを狙いとした大きな規制緩和でありました。今般、この見直しに際しまして、制度利用者である放送事業者のニーズに耳を傾け、微調整の提言を行うことができたことは大変よかったと思っております。

 極めて微調整というものではありますけれども、資産割合制度を見直したり、あるいは認定放送持ち株会社に関する特例、最大十二波の放送対象地域まで地上放送事業者を傘下に置いてグループ経営を行うことができるという特例ですが、その枠内で議決権保有規制を緩和したりといったことが提言できまして、それが法案としてまとめていただいているものと考えております。これは、マスメディア集中排除原則の趣旨を損なわずに、放送事業者にとって経営の選択肢をふやすことに寄与できるよい制度だと思っております。しかも、待ったなしで実現することが望まれると考えております。

 今後も同様に、制度の利用状況を踏まえまして、制度疲労が生じていないかですとか、絵に描いた餅になっていないかということを定期的に見ていくことは非常に肝要だと思っております。

 本日は、せっかくお時間をいただいておりますので、制度整備のあり方を複数の識者とともに検討するプロセスの中で、私自身が重視してきた四つの原則について触れさせていただきたいと思います。特に、放送事業者の経営基盤強化計画の認定制度の創設について述べさせていただきたいと思います。

 一点目でございますが、事業者の自主、自律、創造的工夫を生かすこと、これが第一の原則だと思っております。

 研究会では、複数の事業者の声を聞く機会がございました。キー局である認定放送持ち株会社のほかにも、地域放送の担い手でありますローカル局の声も聞かせていただきました。そういったヒアリングを通じて認識いたしましたのは、ローカル局と一口に言いましても、それぞれに経営の事情が異なっている、その中で工夫を凝らして地域社会への貢献を模索していただいているということでございます。いずれの取り組みにも、前途に大きな可能性を感じさせていただいたと感じております。

 例えば、中部日本放送様ですと、認定放送持ち株会社制度を利用して水平分業を推進するといった取り組みをされています。また、広島のテレビ局でテレビ新広島様では、グループ内あるいは系列内の連携を強化して設備投資の効率化を図り、それで高価な機材なども購入し取材力を高めつつ、積極的に自主制作も行っているといったところでございます。逆に、キー局の出資を頼みとするのではなく、地域の独自性を活路とされている富山の放送局、北日本放送などの例も伺わせていただきました。

 やはり、経営の課題というのは、放送事業者の資本構成ですとか、これまでの発展を支えてこられた沿革などと切り離すことができないものですので、どのような制度を導入するのでありましても、政策立案者が一律の方法を押しつけたり型にはめたりするのではなく、あくまでも放送事業者の自主自律、自主性を生かした仕組みが重要だと痛感した次第です。

 審議中の法案で示されている経営基盤強化計画の認定につきましては、その認定の要件というのをとても幅広いものとしておりまして、事業者の自主性を生かしやすい仕組みとなっていると理解しております。

 二つ目の原則としては、やはりラジオの経営基盤の強化ということです。

 テレビについては、幸い、リーマン・ショックの後遺症あるいはデジタル化投資の負荷というものを何とか乗り越えていただきまして、経営の安定化を見ていると思います。しかし、どの事業者も、ラジオについての行き詰まりは否定できないことでございまして、御高察のとおり、この二十年間でラジオの売り上げはほぼ半分になっております。

 他方、これもよく知られていることですけれども、乾電池一本でもラジオというのは長時間聞くことができますので、災害が起こったときに、どれほど被災地の視聴者に励みになったことかといったことは伝わっております。

 NHKの放送文化研究所のお調べになったことですけれども、地震の発生直後、これは東日本大震災ですが、最初に利用したメディアはラジオだと回答した方が五一%になっていることからも、災害時におけるラジオの意義というのは明白だと思います。

 また、災害時だけではなく平時においても、ラジオというのは、何かほかの作業をしながらでも聞ける音声メディアとして、手軽に情報を取得できるということから、中高年とかシニア層に愛好されています。あるいは、手を休めることのできないドライバーの方とか、それから都道府県とか市町村の観光情報のPRなどにも積極的に使われているということで、少し個人的な話になりますけれども、義理の父は、夫が贈った高感度ラジオを愛用しておりまして、体が動かせなくなってほとんど寝たきりに近い状態になりましても、やはり社会につながる一筋の糸のような感じでラジオを手放さず、ずっと枕元に置いていたのを記憶しております。

 このようなラジオでございますので、ラジオ放送における経営基盤の強化といったものは喫緊の課題でありまして、現行制度では、マスメディア集中排除原則の特例として経営困難特例といったものがありますけれども、これを利用するまでもなく、経営状況の悪化に対して、より早い段階で、より多様な方法で経営基盤の強化を行えるような制度が必要だと思います。

 そして、三点目の原則でございます。やはりラジオメディアの多元性を維持するということです。

 ラジオの経営基盤について考えておりますと、経営救済という観点ではなく、あくまでも視聴機会の確保といったものに重心を置いた制度設計が必要だと思っております。

 視聴機会というのは、単に、ラジオのチャンネルを合わせるとそれが聞けるということだけではなくて、複数の見解であったり、批判であったり、批評、思想に接することができるという、言いかえれば、マスメディア集中排除原則が原則としている多様性、多元性、地域性という原則、民主主義の根幹にかかわる原則だと思いますが、これを大切にしまして、この視点からは、チャンネル数を減らすような事業再編の促進といったことは回避しなければいけないと認識しております。一つの放送対象地域で聞くことのできるラジオの波の数を決して減らさないということは鉄則とも言えます。

 このような原則のもとで放送事業者の収益性の向上をどうやって図るのかということになりますと、やはり異なる放送対象地域で放送番組の同一化を認めるという方法が最も効率的で、かつ、副作用が小さいと言えるのではないかと思います。もちろん、副作用が全くないとは申し上げません。例えば、異なる放送対象地域で地域性が犠牲になってしまう、視聴者数が相対的に小さい地域の需要に合った番組が少なくなっていくということも考えられました。このため、地域性確保措置ということを認定制度に組み込むことが研究会では丁寧に議論されたと記憶しております。

 そして四点目は、認定制度の透明性の確保ということでございます。認定を行う側の都合で恣意的に運用したり、運用し得るように見えるということは望ましくないと考えておりまして、認定の要件を、可能な限り、事業者の自主性を損なわない程度に具体的に規定するということをお願いいたしました。そのため、結果的に条文は非常に長くなってしまっているんですけれども、事業者にとっての予測可能性を高めることにも資すると考えております。

 ここで少し蛇足なんですけれども、研究会は本当に幅広いテーマを扱っておりまして、NHKのサービス拡大についても議論をさせていただきました。個人的な話になりますけれども、私の実家が宮城県にありまして、母はもちろん無事だったわけなんですが、ボランティア活動の一環として、NHKスペシャルに非常に感銘を受けておりまして、ところが録画に失敗してしまったので、その感動を伝えてくれないと。インターネットのビデオクリップなどを一緒に、記憶をたどって探しながら、オンデマンドにたどり着いて、結果的に再視聴ができたという。ビデオクリップの無料視聴期間の延長などは、視聴者同士がこうやって感動を共有するというニーズに応えるものだと感じております。

 きょう最後にお伝えしたいなと思っておりますのは、研究会の報告書では、放送番組には、「経営指標などの数字には現れてこない「無形の財産」が不可欠である。」という言葉が記載されております。一義的には、経営の合理化とか経営の進め方というのは、事業者がみずからの責任と判断で判断していくことが大切であると述べております。その趣旨を皆様と共有させていただくことができれば、本日の参考人としてのお役目は辛うじて果たしたと言えるかと思います。

 この認定制度が成立した暁には、ぜひ、放送番組の同一化という極めて大胆かつ困難な挑戦をされようとしている事業者の志というのを受けとめていただきまして、関係者、特に地元自治体などの応援をお願いしたいと思います。

 これにて終わりたいと思います。御清聴ありがとうございました。(拍手)

高木委員長 次に、水島参考人、お願いいたします。

水島参考人 水島でございます。

 私は現在、法政大学でテレビ報道論などを教えている人間ですけれども、二年ほど前までは日本テレビにおりまして、ドキュメンタリーの制作、あるいはテレビニュースの記者をやっておりました。さらにその十数年前になりますと、札幌テレビという地方局でやはり記者あるいはドキュメンタリーの制作をやっていたり、あるいは海外特派員として外から、BBCであるとか海外の放送局の報道のありようなどを眺めてきました。

 そして現在は、大学の教員をしながら、テレビ報道に物申すという形で、ヤフーニュースなどで、今の報道はちょっとまずいんじゃないかというようなことを時折発信しておりまして、最近ですと、日本テレビのドラマ「明日、ママがいない」の第一回放送が、子供、特に児童虐待を受けた子供に対する加害性があるんじゃないかというような議論を巻き起こして、つい数日前も、虐待防止学会などと一緒にシンポジウムを開いたりというようなことをやっている人間です。

 ですから、今回の法改正そのものについて子細に詳しいわけではありません。ただ、自分の経験から、今地方局がこうなっている、あるいはNHKの報道の中がこうなっているに違いないというような見解は持っておりますので、皆様の議論のお役に立てればと思って、本日、参りました。

 若干インターネットもやっているものですから、現在、ここでの議論がどういうふうに一般的に捉えられているかなども、最初にちょっと触れさせていただきたいと思うんです。

 二年ほど前に大学教員になって私はびっくりしたのは、今の若者は新聞は見ないだろうと思っていたんですね、当然読まないんです、授業で、あのニュース見たと言っても全然わからない、あの報道を見た、記事を読んだと言っても反応はないんですが、実はテレビも見ないんですね。テレビのニュース、ましてやドキュメンタリーなんかほとんど見ていない。話題になったバラエティーは見るけれども、それもユーチューブで見るとか、そういう感じなんです。

 つまり、何を言いたいかというと、ここでの議論が、皆さんが熱心に議論をしたり、あるいは、私はOBですけれども、我々のようなテレビ制作者が一生懸命番組をつくっても、実は今の若者には届いていない。若者はこっち側にいるんです。ネット、ほとんどヤフーニュースだとかそういったもので情報を得ていろいろな判断をしている。そういう状況にあるということを大づかみで把握していただければというふうに思います。

 彼らはやはりネットの言説というか、先生、テレビ時代に何をあおってきたのとか言うんですね。テレビってあおるものなんですかと逆に聞き返すと、そうじゃないんですかみたいな、非常に根本的な議論になってしまうというか、非常に悲しいことなんですけれども、つまり、真っ当なジャーナリズムだと思って制作者だとか報道記者は頑張って日々伝えているわけですが、それが、全く見ていない、届いていなければ、ほとんど意味がないに近いわけです、彼らに対しては。

 つまり、そういったことを考えていくと、放送法改正の議論も、彼らに、次の世代にいかに届かせるかということも、一つの視点としては大事ではないかというふうに考えております。

 特に、言うまでもありませんけれども、真っ当なジャーナリズムというのは民主主義の基本にあるわけですし、国民の知る権利のベースにもなってくるということですね。これは与党、野党を問わず、国会で皆さんが一生懸命議論をしても、それが国民に届かないとなってしまうと、日本人の頭の中がどんどんメルトダウンしてしまうという、そんな時代が来ているのではないかというふうな基本認識を私自身は持っております。

 今回の議論、放送政策に関する調査研究会などの議論も見ていると、しょせんこの業界の延命措置をどうするかというような業界内部の議論に終始している嫌いが、まあ、そればかりとは申しません、もちろん先生方が一生懸命やっていらっしゃるのは承知しているところでございますけれども、ややそういう部分があって、むしろ、ジャーナリズムとしてどういうものを伝えていかなきゃいけないのかということや、国民の知る権利にどう応えていくのかというような、もっと大づかみのところを考えていくべきではないかというふうに感じております。

 その中で、私自身大事だなと思っているのは、やはり放送局というのは、地域ごとに免許をもらって、地域の文化、地域の人たちの知る権利に資する、あるいは地域の問題を全国に発信していく、そういう機能をどう守っていくかという視点ではないかというふうに感じております。

 その上で、大事なこととしては、やはり仕組みの議論がかなり多いわけですけれども、原則をどう徹底させるかということの議論が、特にNHKの会長問題なんかの議論に関しても、あるのではないかというふうに思っております。

 言うまでもありませんが、放送法第一条第二項には、「放送による表現の自由を確保すること。」というようなこと、あるいは第三項には、「放送が健全な民主主義の発達に資するようにすること。」という大原則が掲げられているわけでございますけれども、そういった問題に照らして、今般の放送法改正がどのような影響があるのかという議論をぜひ進めていただければと思います。

 特に、NHK会長問題については、この場でもかなり議論になっていることは承知しておりますので特に触れませんが、ただ、むしろ制度よりも中身の問題、中身というかルールの問題ですね、原則。経営と編集との分離というのはどうあるべきかということ、あるいは、制作者の内部的な自由というのはどうあるべきかという議論をもっと深めていく必要があるのではないか。そうでないと、どうしても属人的な話に終始してしまって、かなり発展性がないなという気がいたします。

 一つは、今回の放送法改正においては、国際放送というのも一つのポイントになっておりますが、私自身、海外にいた時代に、イギリスのBBCのワールドサービスをあちこちで見てきたわけですね。イラク戦争であるとかアフガンの戦争であるとか湾岸戦争の折に、やはりBBCというのは各国が注目している放送局で、アメリカのメディアも、あるいは地元のメディアも見ている。

 それはどうしてかというと、やはり戦争のときに、加害、加害というか参加している、イギリスが参加しているときに、従軍取材のリポートもあるわけですが、他方で、攻撃される側のイラク国民の取材もBBCはやっていたり、その辺のバランスが非常に世界的に信頼されているということがあるのではないかというふうに私自身は感じております。

 日本においても、そうした国際放送、仮にNHKワールドがそういった信頼をかち得るためには、やはりそういったバランスのいい中身の担保といいますか確保をかなりしていった上で、歴史を積んでいって初めてそうなるのではないかという気がいたします。

 NHKについて言うと、私、現在は、テレビ報道に物申すというふうに申し上げましたけれども、今の会長が赴任する前から、かなりそんたくが始まっているんですね。つまり、会長がこうしろと言って命令して、何か放送が影響を受けるということではなくて、私も、民放ですけれども組織にいた人間ですのでわかるんですが、何となくそうしないとまずいよねという空気でみんな変えていっちゃうんですね、放送というのは。

 そのそんたくが、明らかにNHKの場合は、例えばニュースウオッチ9なんかで、卑近な例で言えば、昨年の天皇誕生日での天皇陛下の日本国憲法への言及をあえてカットするとか、そういった不自然な報道があったり、あるいは参議院選の公示二日前に、サミットでの日米の非公式会議があったという映像をあえて入れてくるタイミングの不自然さとか、あるいは特定秘密保護法案の与党合意を、ホット炭酸という特集の後でごくわずかだけ触れるとか、いろいろな不自然さが目立つようになってきました。これは、ずっとニュースを見ていた人間として感じるところであります。

 これは、ひょっとすると政権党の方々にはちょっと不愉快に思われるかもしれませんけれども、逆のケースもあるわけですね。つまり、これがまた政権交代になると全く逆のことがその都度NHKで繰り広げられると、やはり国民にとってはまずい放送だろう。つまり、政治の影響を受けない形で公正な報道が行われるというのが本来あるべき姿だと思うんですけれども、そういった点が、現在、私自身が日々ニュースをチェックする中で痛感しているところであります。

 特に国際放送については、NHKの内部の話をさりげなく聞くと、もっと日本が誇るべき国だということをアピールするような報道をしろ、それは当然だと思うんです、そういう放送があってもいいと思うんですが、他方で、他国に対して非常に非寛容なことをおっしゃっているようなことも耳にします。

 やはり、会長御自身が、例えば消費税のアップのニュースのときに市民のインタビューを入れる必要があるのかないのかというような小さなことに口出しをし出すと、現場は萎縮して、先ほどのそんたくをどんどんするようになってしまう。これは本当に国民にとってもよろしくないことなものですから、そのことはやはり、どういう仕組みがベストなのかということを委員会等で議論していただければというふうに思っています。

 もう一つは、NHKのインターネット活用業務の拡大について、方向性としては、私自身、間違っていないというふうに感じるわけですね。ただ、先ほど申しましたように、今の若い人たちが、ネットの方を見てテレビを見ていない。ネットの方には、例えば先ほど大谷参考人がおっしゃったようなNHKスペシャルとか、すばらしい報道の蓄積があるにもかかわらず、それを、有料じゃないと見せられないとか、あるいは同時にそれが見せられないとか、いろいろな制約があるために、なかなか、若い人たちの教育であるとか、あるいは彼らが情報を得るところに役に立っていないという現状があります。

 インターネットというツールが今拡大する中で、それをどう使っていくかというか、むしろ放送は、通信、放送という、送り方について議論をしていますけれども、既にインターネットというツールで中身はじゃんじゃん出ちゃう時代に入っているので、送り方にこだわっていることがもうかなり時代おくれで、そこをやっている限り、どんどん、みんなはこっちを見ているのにこっちの議論ばかりしているみたいな、そういう現象が続いていくのではないかというふうに私は危惧をしているところです。

 ですから、この点については、同時配信も含めて、どんどんNHKが先鞭を切り、あるいは民放も参入していって、早くこちらのジャーナリズムとして国民に発信する、あるいは知らせるツールを広げていくということは大事だと思います。

 そうなっていくと、では、地方ローカルは困るじゃないかという議論があるのも承知はしておりますけれども、一方で、よくよく話を聞いていくと、地方民放の経営者の中にも、もうそういう時代だ、それをやって、地域からも発信できるという地域の発信の、例えばキー局がやる放送の中に地域枠を設けるとか、そういう形で十分手当てがつくはずだ、むしろネットに乗りおくれていること自体がやはり時代にそぐわないというようなことではないかというふうにおっしゃる方もいるのは事実で、そういう話も私は聞いております。

 他方で、民放のいわゆる認定持ち株会社であるとか、あるいは隣接する県域で同じ放送をするというような地域の枠を取っ払う形の規制緩和については、私自身は、やはり本末転倒であるというふうに考えております。

 というのは、私、現在、テレビのギャラクシー賞の選奨委員というのもやっているんですが、やはり地域から出てくる番組というのはすばらしいものが多いわけです。本当に日本のジャーナリズムとは、地域の本当の山奥の過疎地でこんな日常があるというようなところに、今、日本の社会はこうなっているのかというようなことを感じさせるものがあるんですけれども、そうしたものがなかなかネットには上ってこないという問題もあります。

 結局、今、例えば民放というのはどうなっているかということをごく簡単に御説明しますと、現時点においても、キー局から社長あるいは副社長なんかが地方局に天下るというか、そういう傾向がかなり促進されています。

 その結果、どうなっているかというと、地域発で朝の時間帯に地域情報番組をやっていたのが、非効率的だからやめちゃおうと言って新しい社長さんがやめるとか、そういうことが続いていて、何かこう金太郎あめみたいに、東京のニュースを受けていればいいんだというような、そういう放送局も出始めている。このことは、地域の多様性ということを守っていく放送法のあり方から考えると、逆の現象が起きているわけで、それを規制緩和していくということになりますと、ますますそういったことへの歯どめがきかなくなってしまう、そういう問題があります。

 やはり、地域の放送、あるいは情報の寡占化をどうやって防いで、放送の多様性をどう守っていくかということは、この総務委員会でぜひ議論をしていただいて、守っていただくべきことだろうというふうに思っています。

 私自身は、やはりテレビやラジオというのは公共の財産だと思っています。そのつもりで制作者はつくっておるわけですね。ジャーナリズム、あるいは地域にある問題を、こういうものだというふうに世に問う。それをぜひ広い形で、例えば我々のような大学教員がすぐアクセスできるような形で、無料で見られるとか、あるいはそれを守っていく、制作体制を守っていくような、そういうあり方を、ぜひ放送局の体制の中で今後も維持していただきたいというふうに考えております。

 雑駁ではありますが、私自身の意見陳述は以上でございます。どうもありがとうございました。(拍手)

高木委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

高木委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。門山宏哲君。

門山委員 自由民主党の門山宏哲でございます。

 本日は、御多用中のところ、大谷和子先生、水島宏明先生、どうもありがとうございました。

 大谷先生に御質問いたします。

 先生におかれましては、放送政策に関する調査研究会の構成員として、放送政策のあり方について御造詣が深いことと存じますけれども、今回の放送法の一部を改正する法律によって、NHKのインターネット利用、活用がある程度促進されると思われますけれども、例えば、今後、インターネットでの番組の同時配信などについて、その範囲というのは拡大されるべきであるとお考えでしょうか。

大谷参考人 御質問ありがとうございます。

 NHKの方向性ということですけれども、現在の制度の枠内であっても、我が国の魅力あるコンテンツを海外に展開していく、そして国際的にも競争力のあるコンテンツをどんどん生み出していくといったことについてのリーダーシップを持っていただきたいと思っております。

 そのことを踏まえますと、将来的な課題としては、テレビの同時配信ということも含めて、インターネット業務をさらに積極的に展開することも検討課題になると思います。ただ、個人的な思いとしては、必須業務とか任意業務というのがありますけれども、必須業務とすべきかどうかについてはちょっと懐疑的なところを持っております。

門山委員 NHKによるインターネットでのテレビ配信等、インターネット活用を拡大するとして、例えばこれは消極的な意見ですけれども、受信料を支払わずにパソコン上で視聴できるようになるとすれば、これは不公平である、そういうような意見もあると思うんですけれども、そのような意見についてはどのように対応するんでしょうか。

大谷参考人 私の認識としては、今の放送法のたてつけというのは、NHKを視聴できる設備というのを設置する全ての者が公共放送の運営を支えていかなければいけないという、そういった制度趣旨があると思いますので、負担を公平にするということは極めて重要なことだと思うのですが、パソコンとかスマートフォンでワンセグで聞くといった場合についても受信設備には含まれると思いますので、受信契約の締結義務を決して免れるものではないと認識しております。

 そういったことにつきましても受信契約の締結義務というものが生じてくるということについては、十分に周知していく必要があるのではないかと考えております。

門山委員 放送法六十四条一項の問題だと思うんですけれども、インターネットの活用によって、パソコンとかワンセグとか、いろいろな問題が出てくると思うんです。受信料のあり方についても今後検討が必要になるんじゃないかと思いますけれども、先生は、例えば先ほどの、受信設備を設置したらば放送契約締結義務があるという放送法六十四条一項の規定については、これはどのような御見解をお持ちでしょうか。

大谷参考人 恐らく受信料の支払い義務化といった問題意識をお持ちだと思いますけれども、タブレットとかスマホといった機材で受信する方も含めて、全ての方に公平に負担していただくことだけが狙いだとすれば、現在の受信契約の締結義務ということでも十分にその役割は果たしていけると思います。

 支払い義務ということの制度も、もちろんこれからも十分その意義というのを検討していく余地があると思いますが、支払い義務そのものよりも、どちらかというと、受信料をどういうふうに使っていくかということかなと思っております。

 門山先生の御意見をお伺いしますと、インターネットの活用といったことに前向きな前提での御質問をいただいていると思いますけれども、実際に私、ちょっとコンピューター関係の仕事もしているんですが、同時配信などを可能とするサーバー設備などの配信環境、スポーツ番組、オリンピックなどといいますと、ワールドカップなども含めて、特にアクセスが集中しやすいものですので、設備投資だけでも相当の金額になると思われます。現在、四十億円といった枠内では到底実施が難しいと思っておりますので、受信料の使途とかそれを支払う義務、あるいはその契約のあり方などについては、受信料を負担する負担者にとっての十分な理解、コンセンサスといったものが不可欠ではないかと思っております。

門山委員 私はやはり、この六十四条の規定、設置したら契約締結義務があるというんですけれども、義務があるから、では契約が成立して、結局支払い義務があるという二段階の法律構成になっていると思うんですが、これについては、何となくやはり、裁判でも地裁レベルで争われたりしているし、本当に、では公平な、設置、どれが受信設備になるのかという問題、これからいろいろテレビの役割も変化する中で、どうなんだろうという気もするんですけれども、私は、少なくともこの支払い義務については明文化する必要があるという意見というのは一部ではあると思うんですけれども、そこの点、先生はどうお考えでしょうか。

大谷参考人 ありがとうございます。

 支払い義務ということは、債務の性質、受信料といったものが、今は普通に民法上の債権債務として捉えられているんですが、放送法の中で支払い義務が明示されてしまった場合に、それの法的な性質が全く異なってくるといったことが、放送制作とか、それから放送法の全体にどういう影響を与えるのかといったことについて十分検討しなければ、なかなか、どちらの方向性がいいといったことについては述べられないなと思っております。海外の制度などを見ると、相当柔軟な考え方もありまして、御承知のとおり、ドイツなどでは、支払い義務以上の、設備を持たなくても支払い義務が発生するというような制度も導入されているのだと思うんですね。

 そういった制度なども参考にしながらではあるんですが、諸外国の制度にもそれぞれ放送の事情といったものがあります、お国の事情というのもありますので、支払い義務にすべきといった差し迫った必要性があるのか、それを導入することの功罪とか長短を見きわめるために、十分な検討が必要なのではないかと思っている次第です。

門山委員 ありがとうございます。

 NHKによるインターネットの活用については、受信料のあり方も含めて私は検討すべきであると思いますけれども、国民の利便性や知る権利の確保の観点から、放送の多様性に配慮しつつも、ネット活用を含むサービスが拡大されることを期待しまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

高木委員長 次に、濱村進君。

濱村委員 公明党の濱村進でございます。

 本日は、大谷そして水島両参考人におかれましては、大変お忙しい中、貴重な御意見をお伺いすることができました。大変にありがとうございます。

 まず最初に、両参考人にお伺いしたいんですけれども、認定放送持ち株会社制度についてお伺いしたいと思います。

 大谷参考人におかれましては、放送政策に関する調査研究会における議論、この点を踏まえてお伺いしたいんですけれども、うまくいった事例、あるいはうまくいかなかった事例、それぞれ内容についてヒアリングをされてこられたかと思うんですけれども、どういった議論、コメントがあって、そしてまた、それを改善するにはどういったところがポイントであるのか、どのようにお考えかという点をお伺いさせていただきたいのと、水島参考人におかれましては、御自身が会社におられたというところも踏まえて、そういった御自身が体験された点から見てどのような改善点が必要とされるか、御意見をお聞かせ願えればと思います。

大谷参考人 御質問ありがとうございます。

 御質問の趣旨は、認定放送持ち株会社制度の利用実例といったことかと思います。

 認定放送持ち株会社制度を利用されている放送事業者、手元の資料では四つ以上のグループで既に実施をされているわけなんですが、その中で、失敗例というのはもちろん耳にすることはありませんで、いずれの事業者からも、その仕組みを導入したことによって資金調達などについての効率性を高めていたり、あるいは人事回り、経営資源といったものを効率的に使うことができるといった効果について積極的な評価をいただいているというようなことを研究会のヒアリングの過程では伺っているところです。

 ただ、先ほどちょっと冒頭にも申し上げましたように、少し使いにくい点があるとすれば、資産割合の比率ですとか、そういったところの計算で、毎年決算の時期には相当苦労するというようなお話がようやく見えてきたり、あるいは、もともとこの制度というのは、もしかするとキー局とローカル局の連携あるいは支援といったものを強めるというような効果も期待されていたわけなんですが、そのような形ではなかなか使いにくいという声が出てきたり、その理由につきましては、もともとの三分の一と五〇%の間というような問題が提起されたりといったことで、課題があるということが示されてまいりました。

 その点について、私も参加した研究会の中では、手当てをするということで、議決権の割合を、三分の一と五〇%の間については最大十二までの範囲ということの十二地域特例といった特例の範囲内でそれをカバーすることができるのではないかといって、微調整を図るといった結論を見たわけですね。それが現在の法案になっていると思っております。

 ただ、それが抜本的な解決として放送事業者から圧倒的な支持を受けているかというと、さらなる解決も必要な時期が来るのではないかといった御意見もいただいているところですので、これについては放送事業者のニーズといったことにこれからも耳を傾けていただく必要があるのではないかと思っております。

 以上です。

水島参考人 質問ありがとうございます。

 私は、制度については専門家ではございませんけれども、認定放送持ち株会社の制度については、私自身の経験談を多少申し上げますと、例えば、東京の放送局にとって大事なことというのは、日々の制作においては、関東の視聴率なわけですね。地方のニュースあるいは地方の情報が入ると、最近は関東の視聴者は余り見てくれなくなっておりまして、端的に言いますと、朝の情報番組がそのよい例なんですけれども、かつては、各地から中継が入る番組がかなり視聴率を稼いだ時期があるんですが、現在は、東京銀座でこんなお店がはやっていますとか、その種のものが関東では視聴率をとるんです。それゆえにどうなっているかというと、朝の情報番組は、東京銀座のグルメ情報だとかそんなのが全国津々浦々に流れるというような東京中心の放送がどんどん進んでいるということになっているわけです。

 あるいは、夕方のニュース番組でも、全国ネット枠と東京ローカル枠、一応、何分から何分まではローカルというふうに分かれているんですが、実際には、それを運営する報道のデスクは、関東で視聴率をとろう、あるいは関東の視聴者を念頭に置くために、全国ネットの枠でも、例えば幕張にでかいアウトレットモールができましたみたいなニュースを冒頭に、全国枠で持ってくる。

 そうすると、二、三年前にあったんですが、東北で、被災している地域で除染の問題が深刻になっていて、例えば福島でニュースを見ていると、全国ニュースになると、冒頭、千葉のアウトレットモールの話で、お気楽なニュースをやっていて、ローカルにかわった途端に、除染の問題というシリアスな話になってくるという、全国ニュースが関東の視聴者を相手にするというようなことがあって、どうも、ローカルを、あるいは、ローカル向けにどう放送するか、ローカルの情報をどうやって全国に出すかということが意識されていないという現実を目の当たりにしました。

 その中で、認定放送持ち株会社の制度について、現在、先ほどの大谷参考人の話でもそうですが、キー局とローカル局の間では、この制度を使ってキー局がローカルを支配するというようなことには至っていないんですね。ただし、やはり、株はキー局あるいはホールディング会社が持つということはどんどん強まっていて、現実的には実効支配が強まっています。

 実効支配という形で、ローカルの局の社長に東京からぼんと行くというようなことがどんどんどんどん進んでいて、その結果として、先ほど申し上げましたように、地域の情報番組がなくなるとか、東京目線でつまらないとかというようなことを判断されたり、効率で判断されたりということで、地域で細々と営まれてきた放送が消えつつあるような現状も見えておりますので、それを守っていくための配慮、あるいは、これは条文として項目に入れていただいてもいいかもしれませんけれども、そうした地域放送に配慮する、あるいは守っていくというようなことを、ぜひどこかで明文化していただくというのも一つの方法かなと思います。

濱村委員 ありがとうございます。大変丁寧にお答えいただきました。

 最後、一つだけ水島参考人にお伺いしたいと思うんですけれども、マスメディア集中排除原則についてお伺いしたいと思います。

 参考人は、御自身の身をもって御体験されたことかというふうに存じますけれども、現状、マスメディア集中排除原則について、どのように評価されておられるのか。先ほども、経営と制作をしっかり分けるべきだというような点について触れられておりましたけれども、そういった御意見について、さらにお伺いできればと思います。

水島参考人 また質問ありがとうございます。

 マスメディア集中排除原則については、何々系列だからこういう報道しかできないんでしょうと言われることがよくあります。

 ただ、実際には、テレビ局と新聞社の間で、何々系列であっても、必ずしも新聞社の社論がそのまま系列テレビ局の社論になるわけではありません。むしろ、その関係は、かなりフラットというか、日常的にはそんなに意識はしない。仮に、社長が新聞社から入ってきたとしても、それによってテレビ局の言論が左右されるということはないんですけれども、一方で、そういう兆しがローカル局なんかには出てきているというのも事実です。

 マスメディアの集中排除原則と持ち株会社制度、やはり規制緩和という意味では、どんどん東京の資本が全国津々浦々のテレビなどを支配するという構図が進んでいるのは間違いありませんので、それが特定の、例えば憲法問題であるとか、いろいろな今後大きな争点になってくる問題がある場合に、一つの資本の影響を受ける可能性がないだろうかということを私自身は危惧しています。

 現実にどこの局でどうあったということは今のところ承知はしておりませんが、やはり一番怖いのは、NHKでもどこでもそうなんですけれども、おもんぱかってしまう、そんたくするということなんですね。地方の経営者なり現場の人がそんたくし始めると、それはじわじわと、気がついたらそうなっちゃうということを避けるためには、やはり過度に集中排除の緩和が進むことには懸念があります。

 以上です。

濱村委員 ありがとうございました。終わります。

高木委員長 次に、原口一博君。

原口委員 民主党の原口一博でございます。

 きょうは、大谷和子参考人、水島宏明参考人、お忙しい中、本当にありがとうございます。

 また、放送行政あるいは通信と放送の融合の中でも、大変貴重な御意見をいただきました。水島参考人におかれましては、送り手の話だけではなくて、その受け手、特に若い方の傾向や、あるいは報道の現場からも貴重なお話をいただきました。

 そこで、私たちは、何といっても、放送の多元性、多様性、そして民主主義に資するということで、言論のとりでということで、私、担当時代にタスクフォースをつくっていただいて、どんな政権であろうとも放送、報道の自由、そして表現の自由に介入しない仕組みをつくるためにはどうすればいいかという議論をしてまいりました。その中で、今資本による系列化の御懸念をお話しいただきましたけれども、そんたくと萎縮と、それから内部規制という言葉によるさまざまな報道の自由への侵害といったことについては、極めて私も、水島参考人と同じ問題意識を持っております。

 そこで伺いますが、やはり法でもって担保できるところと、それから、論文にも書いておられますが、制作者の内部的な自由、これをルール化して、それはあくまで自主的なルール化なんだと思いますけれども、しっかりとそれを国民・視聴者にも共有していくという努力が必要なのではないかと思いますが、今の報道の現場で何が起きているのかも含めて、水島参考人にお答えをいただければというふうに思います。

水島参考人 質問ありがとうございます。

 今の現場で何が起きているかというのを詳細に私自身が知っているわけではありませんけれども、経験上、例えば自分の組織の上の人がこういう方向でというようなことをにおわせることがあるわけですね。よく、報道の介入とかという場合に、上司がこうしろと言ったから、そういう命令が広がって現場まで伝わるというイメージを皆さんお持ちかと思うんですが、実際にはそうではなくて、空気のようなもので、原口議員もおっしゃった、萎縮であるとか、そんたくして先回りして、結果的にそうなるというようなことは、時々私自身の周辺でもありました。

 そうしたときに、ではそれをどうやって解消するかというと、やはり制作者の内部的自由ということをどう定着させるかということが私自身は大変重要だと思っております。制作者の内部的自由というと、一ディレクターや一記者が好き勝手やるんだろうというふうに思われる方、一瞬聞いて、多いかと思うんですが、決してそういうことではないわけです。ただ、物事というのは取材をしてみて初めてわかるということがあるので、取材をした上で事実をつかまえて、それを報道するのが報道活動なんですけれども、ともすれば、そもそも取材をしないというようなことが、現場で萎縮した結果、起きることがあるわけですね。

 そうなってくると、本来は調査報道で明るみに出すべきことが出ないとかということになって、国民にとっても不利益ということになりますので、制作者の内部的自由、これはドイツに実は前例があります。そういったことも研究していく必要があるだろうと。

 ちょっと時間がないので、この程度にさせていただきます。

原口委員 ありがとうございます。

 やはり制作者の内部的自由を、私たち国会にある者も、あるいは政府にある者も、それをちゃんと尊重するといったことが求められているんだというふうに思います。

 また、大谷参考人もお話しになりましたが、地域の多様性を守るということは極めて大事だというふうに思います。

 その中で、実際には、今回、マスメディア集中排除原則は維持をしながらも、地域の独自性や、あるいは自主的な番組といったものはやはり減っている。その中で、水島参考人に伺いたいと思いますが、NHKが、いわゆる地方の放送局の人員を本部や拠点局に集中させるという方針を打ち出したことがありました。このことによって、私たちは、何が起きるのか、つまり、地域の自主性や多様性といったものについて非常に大きな懸念をそのとき抱いたわけでございます。

 こういった実情の報道の現場に当時おられたと思いますが、NHKと民放ということで違うと思いますが、どのようなことをお聞きになったのか、少し御紹介をいただければというふうに思います。

水島参考人 NHKの地方削減の問題でございますけれども、これについては、私自身が現場にいるときに間近でという経験談ではございませんが、一般的に、民放はどうしても拠点集中主義の布陣をとっております。

 これはどういうことかというと、北海道でも九州でもそうなんですが、例えば北海道であれば、札幌に取材陣を集中させて、例えば根室だとか網走だとか、先の方には社員がいない。通信員というか契約の人だけを置いて、ニュースがあると拾うというような形をとっていて、そうじゃないと、なかなか経営的に厳しいというところもあるものですからそうなっているわけですが、これまでNHKは、そういう、北見放送局であるとか、あるいは帯広であるとか小樽であるとか、あちこちに職員をきちんと配置して、報道なり番組制作を行ってきました。現在もそれは民放に比べればはるかに手厚いんですが、それをかなり縮小して、より拠点主義というか、札幌だとか、ある程度都市部に集中させるというシフトに今しているわけですね。

 その結果、何が懸念されるかといいますと、やはり地域の声というのが、なかなか、例えば北海道民なら北海道民、あるいは全国の国民に届かないというようなことにつながってきつつあるのではないか。

 具体的に言いますと、例えばTPPの問題。あれはいろいろな産業が絡まって、結論としてどれが正しいというのはにわかには言えないわけですけれども、でも、少なくとも、北海道の道東で暮らしている農民にとってあの問題はどうなのかという視点は、一つは、やはり全国民が知るべき情報として必要だと思うんですね。そうした報道なり番組制作がきちんと行われるのかどうかということを、私は、ちょっと今後のNHKに関しては懸念を持っております。

 以上です。

原口委員 今お話しのような視点で、私たちは放送法の改正案を出させていただきました。

 先ほど水島参考人がお話しになった、若い学生さんの、テレビはあおるものではないんですかということは、やはり極めてショッキングな話だと思います。けさも、テレビは、多分インターネットでアクセスの多い数点について、それをどの局も同じように流している。もう若い方々は、そういうものに対して、関心そのものというよりか、目を向けなくなっている。

 一方で、通信と放送が融合して、先ほどインターネット利用についても水島参考人にお話をいただきました。送り方にこだわっている時代ではないということは、まさに私もそう思います。ただ、通信の原則は秘密の保持であり、放送の原則は公正性、公益性、公表でございます。この二つの異なる原則を守りながら、どうやって、通信と放送が融合した時代に、公平公正で、しかも放送、報道の自由を守っていくか。それが問われている今回の法改正の議論だということを私は思います。

 きょうは、本当に貴重なお時間をいただきましたお二人に、最後になりますが、心から敬意を表して質疑を終えたいと思います。本当にありがとうございました。

高木委員長 次に、三宅博君。

三宅委員 日本維新の会の三宅博でございます。

 時間も限られておりますので、早速質問に入らせていただきます。

 NHKの二十六年度予算に、日本維新の会は反対をいたしました。この二十六年度予算は、八年ぶりに全会一致とならなかったんですね。まあ、予算は通りましたけれども。しかも、その反対理由、ほかの反対の政党の皆さんは、籾井会長の言動に非常に大きな問題がある、そういう理由で反対されました。しかし、我々日本維新の会は、NHKの報道内容といいますか、偏向報道に異議ありということで反対の表明をさせていただいたんです。

 さっき水島先生が、最近の若者は報道番組やニュースに興味がないと。そのことは非常にゆゆしき問題だと私自身も確かに感じているんですけれども、それでは、それは若者に原因があるのか、あるいは、ひょっとすれば、報道内容そのもの、ニュースそのものにも一つの原因があるんじゃないかなというふうな思いもするんです。

 それは、学校教育でもそうなんですけれども、特に歴史教育、社会教育、これに対して今の児童生徒が本当に興味を示さなくなってきているんですね。それはなぜか。ある生徒は、きょうもまた学校に行って日本の悪口を聞くのか、もううんざりや、そういうふうな思いで歴史、社会の教育に興味を持てなくなったという部分があるんです。

 NHKの報道あるいはその他の報道番組は、そういうふうな問題点があって若者の興味を引かなくなった部分があるんじゃないかなと思うんですけれども、そのあたり、水島先生はいかがお考えでしょうか。

水島参考人 非常に難しい御質問でございますけれども、一つは、若者たちがなぜテレビを見ないのかというのは、簡単でございまして、インターネット、特にスマホを中心に、情報を得るツールがあるからなんですね。

 やはりテレビはかったるいわけです、時間が限定されていますし。現在、テレビのニュースがインターネット上に流れていても、それもやはりテレビサイズになっていますので、それをクリックして見るかというと、彼らはそんなに見ません。

 私自身もインターネットで発信してよくわかるんですが、やはりインターネットはインターネットなりの文法とか尺度が、分数という時間の長さがあるものですから、NHKが例えば五十分をそのままネットでばんばん解禁したところで、それを見るかというと、そうではないんですね。やはりもうちょっと工夫をしないと、若者が見るものには恐らくならないであろうというふうに思います。

 そうした中で、報道の中身にも問題があるのではないかということなんですが、先生は歴史認識の話をされておられるんだろうと思いますけれども、必ずしも私自身は意見を同じにするわけではありません。ただ、今の若者にそういった傾向が強いことも事実だ。つまり、自分にとって耳が痛い、不快に思うことは余り聞きたくない。これは授業なんかでもそうなんですね。

 ただ、それをどこかのチャンネルできちんとやっていないと、自分の都合のいいというか、非常に耳ざわりのいいことだけを信じて、それで歴史についても何についても考えてしまうという人間がどんどん量産されてしまうので、どこかでそのことをきちんと議論する場だとかそういうものを設定していかないと、なかなか、例えば歴史認識ということになりますと相手国もいたりするわけですから、こちらがこう思っていても相手は違う、では、それを客観的に見たらどこで折り合いをつけるのがいいのかというような、そういう歴史を踏まえた議論ができたり、あるいは考えたりする場というのをつくっていくということが大事で、そのための放送あるいは教育というのが必要だというふうに思っております。

三宅委員 歴史認識ですと相手方の立場もある、それはわかるんですけれども、最近の報道番組でいいますと、その相手方の主張とかこういったものばっかりが尊重されて、日本の方の主張というものはほとんど、遠慮されてか何かわかりませんけれども、主張されてないんじゃないかな。だから、本来、そういう部分でも国民の知る権利も損なわれている部分があるんじゃないかなというふうに思います。

 それから、さっき水島先生は、NHKの内部の空気について、非常に批判的な感じでお話しされました。それは、そんたくといいますか、上の方の意向を現場サイドがそんたくして、みずから萎縮して、おもねるような、そういうふうな形になっているんじゃないかなというふうなことをおっしゃったんです。

 それではお伺いするんですけれども、過去、NHKがやってきたとんでもないいろいろな番組がありますよね。一つは、平成十三年に放送されました女性国際戦犯法廷という番組がありまして、ここで被告になったのは昭和天皇なんです。それは、従軍慰安婦の強制連行やら、あるいは日本軍による性奴隷制度といったありもしないような内容で昭和天皇を断罪して、死刑判決まで下した。あるいは、それ以外にも、五十一年目の真実といって、従軍慰安婦の問題で、これは日本が組織的に関与したんだとか、あるいは「JAPANデビュー」、台湾の問題で、日本は台湾を植民地支配したといって、台湾の方々の日本に対する非常に尊崇の念といいますか、これをゆがめて放送している。現場サイドがやりたい放題やってきたんですね。

 そういった中で、今の籾井会長に、自民党政府の方は、やはり国民の良識、常識が働くような報道内容をつくってくれと。だから、そういうふうな意向で来られた新会長、これは、国民の良識、常識というものを尊重しなければならない、そういうもとで新会長人事があったんですけれども、それをある程度現場サイドがそんたくする、これは当たり前じゃないかなという部分もあるんですね。

 今みたいに、さっきお話ししましたように、現場サイドがやりたい放題やってきた、こういうことが果たして許されていいのかどうかという部分があるんですけれども、今私がお話ししましたことに対して、水島先生、どのようにお考えでしょうか。

水島参考人 私はNHKの代弁者ではございませんので、その辺はちょっとお手やわらかにお願いしたいと思います。

 正直、例の従軍慰安婦問題の番組などは、現在、その番組そのものを見ることができませんので、私自身その中身がどうであるかというのをちょっとコメントのしようがないということがあります。

 ただ、一般論として申しますと、私は放送の批評家もやっておりますけれども、NHKの一連の、特にドキュメンタリーの質は物すごく高いものがあります。例えば、ちょっと委員が質問された歴史問題とは違いますけれども、原発事故の、なぜあれが起きたのかを徹底的に今究明しているメルトダウンシリーズ、NHKスペシャルなどは、本当にNHKの予算と人材だからこそできるような、いろいろな実験を繰り返したりして、新聞社もやっていないような報道をやっています。あれは恐らく国際的にも物すごく評価されて、いろいろな賞もとっているわけです。

 先生はやりたい放題という言葉を使われましたけれども、やりたい放題というか、私自身もドキュメンタリーの制作をやっていたんですね。そうすると、そのときそのときは一生懸命やっているわけです、この問題について自分なりに調べて、当事者に当たったりして。テレビの制作というのは、個人の力で、誰か特定の曲がった思想を持っている人間が好き勝手にやれるというものではないんですね。いろいろな、カメラマンがいたり、編集マンがいたり、プロデューサーがいたり、そういう合議の中で進んでいきますし、相手もいるわけですから。ですから、必ずしもやりたい放題という、一般的にはイメージはわかりますが、実際には、それはかなりできない。

 ただ、間違うこともあります。例えば、事実だと思って、佐村河内さんの話なんかもまさにそのとおりで、あれは私自身がディレクターだったとしてもひょっとしたらだまされたかもしれないということはあるので、間違った場合に速やかにそれをオープンにするということが極めて大事だろうというふうに思っています。

 あともう一つだけ申し上げますと、現場は政治の声にとても萎縮します。籾井会長の話もそうなんですが、偉い人、権限を持った、権力を持った人が、あれはまずいと言われると、何もできなくなっちゃいます。ですから、むしろ自由につくらせて、もっと民主主義に資するようないろいろな番組をつくらせて、本当に問題があったときには、それは取り上げるのは当然だとは思いますけれども、そうでなければ温かい目で見守っていただいて、こういう場で余りあの番組がとかと言っていただくと、本当にどんどん何か型にはまったものしか出てこなくなってしまうという現状があると思います。

三宅委員 籾井会長でも、そんな、おっしゃるほど権限は持たされていないと思うんです。だからこそ、ここまで批判されていると思うんですね。特にNHKの報道につきましては、余りにも日本に対して、あるいはまた皇室に対して冷淡過ぎる、だから、その部分が相当国民の批判を浴びたんじゃないかなと私自身は考えております。

 質問を終わります。

 以上です。ありがとうございました。

高木委員長 次に、佐藤正夫君。

佐藤(正)委員 みんなの党の佐藤正夫でございます。

 きょうは、お忙しい中、ありがとうございます。

 今いろいろ御議論を聞いていましたけれども、今回、いわゆる放送局の経営安定化のための法律と言っても、ある意味間違いないだろうと思います。

 そこでお尋ねをしたいんですけれども、いわゆる認定持ち株会社なんですが、全国で十二の放送局を支配できるようになっているということは、逆に言えば、放送法の放送の多元性、多様性、地域性の確保とちょっと相矛盾するように思いますけれども、その点について両参考人から御見解をお聞きしたいと思います。

大谷参考人 御質問ありがとうございます。

 全く御指摘のとおりだと思っておりまして、やはり、放送の多元性、多様性、地域性を守るためにマスメディア集中排除原則というのを設けておりまして、放送局が潰れてしまっては元も子もないわけですけれども、健全な放送番組をつくる活動を安心して進めていただくための、例えばグループ経営とか、そういったことが十分にできるような体制として認定放送持ち株会社が設けられた場合でも、十二地域の特例といったことで上限を設けることが、その三原則を維持するために不可欠と認識しております。

 私が参加させていただいた研究会におきましても、特に民放各社からは、十二地域特例というのは、実際に十二地域あるというふうに見えましても、首都圏など、それから関西などでは、それだけで七地域とか六地域とかになりますので、あっという間に使い果たしてしまうわけですね。ですので、実際には十二地域という上限が有効にきいておりまして、過度に他の放送局を支配したり、キー局がローカル局に対する支配を強めたりすることのないような制度的な措置が講じられているものと認識しております。

 また、それを補完するために、例えば、資産割合の制度ですとか、それから役員の人数の制限とか、そういった細かい制度も導入されていることから、現在の制度というのは、放送の多元性、多様性を損なうことのない、ぎりぎりで今運用されていると思っております。

 以上です。

水島参考人 質問ありがとうございます。

 今、大谷参考人もおっしゃったように、先生の質問はまさに矛盾するわけですね。つまり、地方の自律、地方放送局の自主的な番組をふやす、あるいは独自性、地域密着性をふやすということと、地域安定化のために中央の金をどんどん入れるということは、よくよく考えれば本当に矛盾するわけで、では、それをどう、地方の放送を残していくか、独自性を残していくかというところを考えていかなければならないのだろうというふうに思っています。

 本来は、中央からどんどん金が行って中央支配が行われるという構図は望ましくないというふうに思うんですが、しかし、それがなければ倒れてしまうと言われると、ほかに案があるのかというと、デジタル設備などへの助成金をふやすとか、そのぐらいしかちょっと思いつかないのも正直なところです。

 申し上げましたように、やはり、地域放送を残していくとか、あるいは地域の株主等の声を残していくなどの何らかの方策、既に大谷参考人が説明されたような施策はあるものの、私自身はこのままで大丈夫かなという懸念はある、だから具体的にというところがないのが申しわけないですが、そこだけ申し上げておきます。

佐藤(正)委員 水島参考人が先ほど来から地域の独自性と言われておりましたけれども、逆に、今大谷先生が言われたように、実は、安定化するためにどうするのかと、非常に矛盾を僕も感じております。だから、ちょっと質問をさせていただいたわけですが、なかなかその矛盾は解決できないんだろう。地域でそれだけのいわゆるスポンサーがついて、しっかりと放送ができれば、これにこしたことはないんでしょうが、ただ、一つ、より一極集中してしまうというところがちょっと懸念をしております。

 先ほど言ったように、東京の銀座で何がどうだというと、全国で物すごく興味を持つんですね。私ごとですが、この間、立ち食いステーキというのに行ってきましたけれども、あれが銀座にあるよと言うと、地方では、みんな行きたい、そういう一つの情報に群がっている、これも事実だと思います。

 しかし、やはり、それぞれ、地域の情報というのは非常に大事なものだと思います。例えば、九州の情報を全国の方に見ていただきたい。要するに、これから人口が減少すると思います。そういう中で、地域でどういうふうに頑張っているのかというのを全国の方々に見ていただくというのも、非常に大事なことだと思っております。

 ちょっともう一つ、もう時間が余りないのであれですけれども、例えば、水島先生が言われた、地方はそんなに支配されていない、僕はそう聞いたんですけれども、要するに、例えば四国新聞というのがありまして、この間もちょっと取り上げたんですけれども、四国新聞はメディアの株を、いわゆる三事業支配は原則禁止というのがあるんですけれども、四国新聞も持っているけれども、その身内も株を持っていて、もう三〇%、四〇%の支配をしているということが実は地方ではあるんですね。となると、やはり、そこに一つの影響力が出てくるんだろうと思います。

 この中で、例えば、一〇%という枠はあるんだけれども、それの会社の社長さんが個人でまた持っているとか、そういった現象があるんですけれども、その辺について何か御意見があったら、それについてどう思うか、両参考人にお聞きしたい。

大谷参考人 御質問ありがとうございます。

 ちょっと、四国新聞という固有名詞について、私はその細かい資本構成などは認識しておりませんけれども、恐らく、もともとの支配についての十分の一の規制といったものは、少なくとも形式的には整った形で運営をされているのではないかと認識しております。ただ、表面的、形式的にはそういう要件を満たしていたとしても、実質的に影響力を及ぼす形で運営しているのではないか、そういうケースもあるのではないかという御指摘だと承りました。

 現在のそういう支配関係についての規制といったものが制定当初の意図を外れていないかといったことについては、やはり定期的に見ていく必要がありますし、形骸化しないように見ていくということは極めて大切だと思っておりますが、先ほど以来、水島参考人の方から御指摘があったように、メディアは非常に多様化しておりまして、新聞、放送といった従来型のメディアだけではなく、インターネットなどを通じて、さまざまな、複数の思想とか見解に接することができる世の中にもなっておりますので、現在、放送とか新聞のところだけを見て、影響力が及んでいるという分析は必ずしも妥当ではなくて、総合的に、例えば、インターネットなどを経由して、それを主な情報取得源とされている方々が受けている影響といったものを勘案しますと、実質的、本質的に心配になるようなケースというのは、まだこの国内では生じていないのではないかと私自身は認識しております。

 以上です。

水島参考人 御質問ありがとうございます。

 おっしゃる点はそのとおりで、やはり地方民放の中には、例えば非上場の会社などは物すごく多いですし、場合によっては、地域で新聞と放送が一体となったような会社というのも少なくありません。

 そういう古い体質というのは、現在においても幾つかの会社においては見受けられていて、そういう会社の社員と話をすると、現在、先ほど申し上げたように、どんどん東京から経営者が送り込まれるような局も出てきているという中で、まだましじゃんみたいな、そういう議論も出てきたりするわけです。つまり、うんと古い会社はおっしゃるような傾向があり、最近の大手資本が入る支配というのは、まだましというふうな捉えられ方をする場合も時にあるんですが、一番大事なことは、やはりガバナンスの透明化だというふうに思います。

 やはり、これまで地方民放は、特に、経営状態がどうなっているのか、あるいはどういう議論を日々経営者が行っているのかなどについては、住民にそれほど知らせなくても、ぬくぬくとやってこれたわけですね。でも、今後はやはり、選別される時代にも入っていますし、生き残っていくためには、そうしたオープンな情報開示というのは大切になってくるのではないかというふうに思います。

 以上です。

佐藤(正)委員 時間が参りましたので、終わります。

高木委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。

 二人の参考人の皆様には、貴重な御意見、本当にありがとうございます。

 早速、大谷参考人からお聞きしたいと思います。

 放送政策に関する調査研究会の第一次取りまとめにおきまして、マスメディア集中排除原則との関係で、これまで、五分の一の出資規制、これを三分の一に引き上げるということが過去行われました。それをさらに二分の一に引き上げる、認定のもとで関連会社としていくという規制緩和が今回盛り込まれるわけですけれども、その第一次取りまとめにおきまして、この上限、つまり三分の一近くまでローカル局の議決権を保有している事例が既に六つあるという例示がありました。

 これは具体的に見ていきますと、皆、フジ・メディア・ホールディングスの系列のローカル局であります。ほかのホールディングスを見ましても、五分の一をちょっと超えているようなところというのは幾つか見受けられますけれども、三分の一にぎりぎりに張りついているような、そういう出資というのはフジだけであります。

 そういう点で、今回、三分の一を超えて二分の一というときは、実質、要望そのものをお聞きしても、民放連が出しているのは全体の要望ですから、その中に入っているとしても、個別のホールディングスで見ると、フジの要望ということもありますので、そういう点では、何かフジだけの要望というふうにも受けとめられかねないんですけれども、その辺の事情についてはどのように御承知でしょうか。

大谷参考人 御質問ありがとうございます。

 やはり個社別の事業戦略、最初に述べましたように、非常にそれぞれである。認定放送持ち株会社においても、どういった事業経営に力を入れるのか。フジについては、ヒアリングの過程でも、地方のローカル局との連携を強めていこう、そういった戦略をよく認識することができました。

 ですので、塩川先生の御指摘は全くそのとおりだなとは受けとめておりますが、恐らく、そういう潜在的なニーズというのは、地方で放送局になかなか出資ができない、ちょっと疲弊した地方などには共通してあると思われますので、たまたま顕在化しているのはフジを取り巻く事情であっても、ほかの認定放送持ち株会社においても、ある意味、そういう経営の選択肢もあるんだなといったことで広がりを見せていく、ちょっと可能性を秘めている制度ではないかと思っております。

 もちろん、上限もありますので、それがいたずらに東京の一極集中になったり、系列化による支配といったことが強まるといった懸念は、今のところは心配はしておりません。

 以上でございます。

塩川委員 ありがとうございます。

 このホールディングス、キー局の事業戦略の一つの選択肢という話でございます。

 あわせて、認定放送持ち株会社の資産要件の緩和について重ねて大谷参考人に伺います。

 これは、研究会のいろいろな議論、ヒアリングをお聞きしましても、例えば東京放送ホールディングスにおきましては、認定持ち株会社が事業会社から利益剰余金を配当の形で吸収する、放送事業との境界面の事業拡大を通じて経営基盤の強化を図るなど、認定放送持ち株会社としてのグループ戦略に取り組むほど、資産要件から乖離する度合いを強めてしまう、こういう指摘をしておりますし、その他の関係者の方のコメントでも、事業者が頑張って現預金がたまると資産要件上ではマイナスに働く点が課題として指摘されるとか、一番の問題は、現預金、売り上げに色がついていないこと、こういう指摘があります。

 そうなりますと、今回の認定放送持ち株会社の資産要件の緩和については、資産の要件の見直しではありますけれども、そもそも放送の資産に入らないような現預金がふえている、こういう点というのが一つ理由としてあるのではないのか。つまり、背景には、持ち株会社において利益剰余金などの現預金がふえているということがあり、また、放送外収入をふやしたいという経営戦略というのがその背景にあるのではないかと考えますが、その点についてはどのようにお考えでしょうか。

大谷参考人 ありがとうございます。

 全くその点は御指摘のとおりだと思っておりまして、リーマン・ショック以降、そして地デジ化といったことでかなり吐き出した部分といったものを今、回収しつつあり、経営の安定化に向けて、現預金も含めた構成といったものが資産に占める割合というのが大きくなってきている。その使い道については、中長期的な戦略の中でまだ十分に見出せていないのか、あるいはこれから模索していくのかという状況だと思いますが、それについて資産要件といったものがあるので、決算のときにその処遇を慌てて決めなければいけないというようなことが、ささいなことと言ってしまってはしようがないと思いますけれども、かなり苦慮されているといったことをヒアリングの過程で吐露していただいていたと思います。

 こういった現預金も含めた企業体力に基本的につながっていくといったものは、設備投資もさることながら、特にコンテンツのインターネット展開とか、これから産業競争力を高めていくためのそれぞれの民放各社のイノベーションにどのように投資していただくかということについては、私も大変興味を持って、関心を持って見詰めているところです。そのための自由度が、この資産要件の緩和によってできることになるということを期待して、この制度に賛同しているものです。

 以上です。

塩川委員 そういう点では、キー局、持ち株会社の経営の自由度を高めるという方向のものではあるわけですけれども、一方でやはり、マスメディア集中排除原則のような、放送を通じた表現の自由を確保する、国民の知る権利を確保する、そういう観点がどうかということもまた問われてくるわけであります。

 その点で、水島参考人に伺いますが、冒頭の意見陳述におきまして、今回の法案は業界の延命措置、業界内部の話というコメントがございました。今お聞きした点などについては、まさにそこと重なる部分があるんだろうなと思うんですが、そういう点でも、放送外収入をふやしていくような各持ち株会社の経営戦略に応えるような今回の法改正というのが、そもそもの、ホールディングスの経営戦略、経営強化策に資するものというのが、結果として、表現の自由や国民の知る権利との関係でさまざまな支障も出てきはしないのかという懸念というのも、ローカル局との関係で思うわけですが、お考えのところをお聞かせいただけないでしょうか。

水島参考人 質問ありがとうございます。

 この問題に関しては、大谷参考人ほど私は知識を持ち合わせていないのが正直なところでありますけれども、何回か申し上げましたように、集中排除原則の緩和によって、地方局がこれまで地域密着でいろいろな形の番組を開発したりしてきていたのが突然なくなったり、あるいは、東京の経営者が入ってくることで少し環境が変わったりということを散見はしております。そういうことを考えますと、やはり、地域の放送をどう守るかということはとても大事だというふうに思っています。

 それから、私自身が先ほど、業界の延命措置、そういう面がもちろんあるわけですが、これが民主主義にとってすごく大事だというふうに申し上げましたのは、やはり、私、インターネットの人たちと最近一緒につき合ってニュースをつくったりとかということをやったりしているんですね、授業の関係もありまして。そうすると、少なからず、ジャーナリズムのルールとかいうことがよくわからないまま参入している人たちもいらっしゃるわけですよ。

 そうすると、放送局というのは、これまで、報道の自由とは何かとか、あるいは実名報道か匿名報道かとかいろいろなことを考えて、これまでの蓄積の中で現在の形があるわけですね。それは、もちろん、今のままでも偏っているとかいろいろな批判があるのは重々承知なんですが、しかし、それを経験している局と全く未経験なところの人たちと、どっちがまだ国民にとって豊富な、役に立つ報道になるかということをちょっと考えていく必要があるだろうというふうに思います。

 ぼやぼやしていると、こっちが、未経験な方が、気がついたら報道の大半を占めているということを私自身は懸念しますし、そうした中で、地方局は、何か、埋もれていく、ガラパゴスの取り残されていく側のほんの末端みたいな取り扱いになりやしないか。それを避けるためには、ここで建設的な議論を繰り返していただければと思っております。

塩川委員 時間が参りました。終わります。ありがとうございました。

高木委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。大変にありがとうございました。(拍手)

    ―――――――――――――

高木委員長 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、参考人として日本放送協会経営委員会委員長浜田健一郎君、日本放送協会会長籾井勝人君、専務理事塚田祐之君及び専務理事板野裕爾君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

高木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として総務省人事・恩給局長笹島誉行君、情報流通行政局長福岡徹君、総合通信基盤局長吉良裕臣君、電気通信紛争処理委員会事務局長武田博之君及び文部科学省大臣官房審議官有松育子君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

高木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

高木委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。近藤昭一君。

近藤(昭)委員 民主党の近藤昭一でございます。

 本日もまた質問のお時間をいただきましたことを、感謝申し上げたいと思います。

 さて、早速質問に入りたいと思います。

 最初に、NHK受信契約と受信料の問題についてお伺いをしたいと思います。

 三月二十五日の本委員会で、放送法改正で支払い義務規定を導入する方向で検討するのかについてお聞きをして、新藤大臣からは、「国民・視聴者を初めとした関係者間でさらなる十分な検討が必要なのではないかと私は現在考えております。」との答弁をいただきました。

 受信料について、現行の契約義務にかえて支払い義務を課そうとしたことはこれまで三回あったわけであります。一九六六年、一九八〇年、そして二〇〇七年であります。さきの二回は審議未了に終わり、二〇〇七年は法案化そのものが見送られました。二〇〇七年の背景には、当時の政府が支払い義務化の条件として受信料の値下げを要請したことに対して、NHKが明確な方針を出さなかったため、法案化が見送られたと承知しております。

 そこで確認したいのは、第一に、今回の放送法改正に支払い義務規定が盛り込まれなかった理由について、また第二に、受信料の支払い義務化について、政府とNHKが現状でいかなるお考えを持っているのか、検討状況を含めてお答えいただければと思います。

福岡政府参考人 お答えを申し上げます。

 まず、今回の放送法改正案に支払い義務規定が盛り込まれなかった理由でございます。

 今回の放送法改正案は、平成十九年の改正放送法の附則におきまして、施行から五年後の検討を求められているということがございます。したがいまして、それらの事項を中心に、総務省におきまして、一昨年来、放送政策に関する調査研究会を開催して検討してまいり、またその検討の過程で、NHKや民放からのヒアリングやパブリックコメントを経て、今般の改正案に盛り込む内容を固めてきたものでございます。

 御指摘の受信料の義務化につきましては、この附則におけます検討対象に含まれていないということが一点、また、検討の過程で受信料の支払い義務化に係る議論を重ねてきたわけでもないということから、結果として今回は盛り込んでいないというものでございます。

 受信料の支払いの義務化につきまして、これまでの三回の動きの御指摘、それから先般、大臣の方から、国民・視聴者を初めとした関係者間において十分な議論が必要というように答弁をされましたことはそのとおりでございますし、この受信料支払い義務化という問題が、今後も公共放送のあり方を考えていく上での論点の一つであるということの認識は持ってございますが、総務省といたしましては、NHKの要望あるいは諸外国の状況等も踏まえながら、研究を進めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

浜田参考人 経営委員会は、現在、執行部が受信料の公平負担の徹底を目指してさまざまな努力を行っているという報告を受けております。現時点では、経営委員会として、支払い義務化についての具体的な議論は行っておりません。

 この問題は、今後、さまざまな経営課題の検討とあわせ、必要に応じて受信料制度全般の中で議論されるテーマの一つだというふうに認識をしております。

 いずれにしましても、まずは現行制度のもとで、支払い率を向上させ、受信料の意義について視聴者・国民の皆様の理解を得ていく努力を最大限行うことが重要だというふうに認識をしております。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 大臣、何かお答えはよろしいでしょうか。

新藤国務大臣 ただいま申し上げましたとおり、これは、国民各層の意見を聞きながら、しっかりとした検討を進めていかなくてはいけない、このように考えております。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 今もお話がありました、総合的な判断、検討が必要だと思いますので、またの機会にもいろいろと議論させていただきたいと思います。

 それでは、浜田経営委員長、これで質問は終わりますので、委員長の御判断で退席していただければと思います。

高木委員長 では、浜田経営委員長は御退席いただいて結構でございます。

近藤(昭)委員 それでは、次の質問でありますが、今回の放送法改正により、NHKによるインターネットの活用が大幅に拡大されるわけでありますが、それによって民業が圧迫される懸念が上がっているわけであります。

 放送政策に関する調査研究会において、民放連や新聞協会から提案があったわけでありますが、それは、NHKが新たにサービスを行う場合、そのサービスが適正かどうかを事前に審査する第三者機関を導入するというものでありました。こうした第三者機関は、既にイギリスやドイツにおいて導入をされているわけであります。

 例えば、イギリスでは、BBCにおける過度の業務拡大を抑制するために、最高意思決定機関のBBCトラストによる事前審査制度として、公共価値テストが二〇〇七年に導入されています。また、ドイツでは、二〇〇九年に、イギリスの制度をモデルとした事前審査義務が導入され、公共放送が新たなサービスを行う場合や既存のサービスを大きく変更するなどの場合に、それが公共放送として適切かどうかを審査しているわけであります。

 ところが、今回の政府案では、NHKによる大幅な業務拡大のみが認められ、公共放送としての適性や民業圧迫の懸念を検証する第三者機関の仕組みについて、導入が見送られています。その経緯と理由について御答弁いただきますと同時に、引き続き、第三者機関の導入について検討の意思があるのかどうか、その検討状況について御報告をお願いしたいと思います。

    〔委員長退席、橋本(岳)委員長代理着席〕

福岡政府参考人 御指摘をいただきましたとおり、第三者機関の仕組みの導入につきましては、放送政策に関する調査研究会での検討の過程の中で、日本民間放送連盟や日本新聞協会から提案されていたものでございます。

 この点につきまして、この研究会で、御指摘の英国やドイツの実情も踏まえて検討を行いましたところ、問題点として、まず一つには、審査に非常に時間がかかり、新たな業務展開に機動的に対応することの阻害要因となっているということが一つあるということ、例えば英国の例では平均六カ月程度かかるといったようなこと。それから二番目に、膨大な経費を要するということ。それから三番目に、審査機関の事務的な負担が大きい。四つ目に、各公共放送の内部機関が審査を行うということで、第三者機関ということでございますが各公共放送の中に置かれているというようなことで、中立性について疑問があるといったような課題が指摘されたところでございます。

 こうした調査研究会での検討結果を踏まえまして、今般の改正案では、第三者機関の仕組みを導入していないものでございます。また、今後につきましても、第三者機関の導入につきまして検討することは、少なくとも現時点では想定をしていないという状況でございます。

近藤(昭)委員 今いろいろと理由を述べられたわけであります。財政的なこと等々、人員的なこと、あるいは時間的なこと。ただ、私が申し上げたいのは、そうした業務拡大の中で起こってくる課題に対してしっかりとチェックをする第三者機関が必要だ、そういう中で、そうした機関によって課題を克服していく必要があるんだ、こういうふうに思います。

 そのことはまた今後もいろいろと主張してまいりたいと思いますが、時間の関係で、次に参りたいと思います。

 次に、インターネット配信と受信料制度の問題について、以前もお聞きしましたが、改めてお聞きをしたいと思います。

 四月八日の委員会でありました、二重取りではないかというスタンスから質問させていただいたわけでありますが、その続きです。

 政府案の放送法改正によってインターネット配信が大幅に拡大されることが予想されるわけでありますが、現状では、本来業務としての国内放送のインターネットによる同時配信は原則として行われていない。ただ、例外として、災害時のニュース番組のインターネット同時配信や一部ラジオ番組の同時配信が試験的に行われていると承知しておりますが、これは任意業務という扱いになっているわけであります。

 現行の放送法は、受信料の支払いについて、テレビ受信機を設置した者が対象となっているわけですが、テレビ放送を見ている人たちの受信料を財源として、任意業務としてのインターネット配信サービスが拡大していくという構図に疑問を覚えるわけであります。

 この受信料と放送の関係については、籾井会長も昨年十二月二十日の会見で、とっくに変えておかないといけない、なぜ変わらなかったのか、インターネットとの関係で、どう克服していくかが課題だと述べられておるわけであります。

 私の考えとしましては、将来的なインターネットへの同時配信の解禁を視野に入れて、インターネット配信の本来業務化と受信料制度の見直しの検討が不可欠だろうと思うわけでありますが、政府案では、受信料制度の見直しを伴わないまま、NHKによるインターネット配信サービスだけが拡大していく、そういう構図になっているわけであります。

 そこで、政府とNHKに対して、インターネット配信の今後の展望と、受信料見直しに関する現状でのスタンスと検討状況について御報告をお願いしたいと思います。

    〔橋本(岳)委員長代理退席、委員長着席〕

福岡政府参考人 お答えを申し上げます。

 今御指摘をいただきましたように、今般の改正案につきましては、NHKの目的やそれから必須業務、あるいは受信料制度につきましては改正せずに、NHKの任意業務の中でインターネット活用の業務を拡大するというのは、御指摘のとおりでございます。

 それで、今後の展望、検討状況ということでございます。

 これも御指摘のとおり、インターネット活用業務をさらに推し進めるということとすれば、実態的には、これは国内テレビ放送の同時配信というものを恒常的に行うということが、次なる、あるいは大きな課題となるものということは、十分想定しているところでございます。

 まず、これにつきましては、いろいろと国民・視聴者のニーズもございますし、実施に際しましての著作権処理や通信設備に係る経費の問題などもございます。そういう意味では、まず、NHKにおいての経営判断というものがあるだろうと、一つは思います。

 その上で、国内テレビ放送の同時配信をするということになりますと、これは前回も御指摘ございましたので簡単に申し上げますが、やはり、現在、テレビ受信機を設置して受信料を負担している方との公平の問題等が生じてまいるということでございます。そういう意味では、これも御指摘の、NHKの必須業務としてどう考えるべきかといったような問題も新たに出てくる。そして、受信料のあり方など、根本からの検討が必要になるだろうというふうには受けとめてございます。

 ただ、私どものスタンスといたしましては、例えば、欧州の公共放送では既に同時配信を行っているというようなこともございます。インターネット活用をさらに推し進めるということは時代の流れだというふうには認識をしてございますので、これらの制度上の課題につきまして、NHKの経営判断が一つあるわけでございますが、総務省としては前向きに研究してまいりたいと思っているところでございます。

籾井参考人 お答えいたします。

 今回の改正案には受信料制度の見直しは含まれておりませんので、NHKとしましては、現行の受信料制度のもとで、NHKオンデマンドやハイブリッドキャストということで、視聴者の利便性を高める努力を続けてまいります。

 テレビのインターネット配信サービスにつきましては、今回の法改正の後も、避けて通れない重要な検討課題だというふうに認識しております。

近藤(昭)委員 引き続き、いろいろと課題についてはまた議論してまいりたいと思います。

 さて、次の質問に参りたいと思います。

 米軍人軍属並びにその家族らのNHK受信料支払いについてお尋ねをしたいと思います。

 在日米軍の軍人軍属及びその家族並びに米軍基地内の売店等の事業所が、NHK受信契約を拒否して受信料を支払っていないという問題がありましたが、現在もなお、契約を拒否、受信料を支払っていないという認識でよろしいでしょうか、NHK、答弁をお願いしたいと思います。

塚田参考人 お答えいたします。

 在日米軍は、NHKの基地内立ち入りなどを認めていません。そのため、受信契約の締結を基地居住者等に勧奨することができず、現在、在日米軍の基地内にはNHKの受信契約はありません。

近藤(昭)委員 立ち入りができないということで契約がないということでありますが、それでは、在日米軍の軍人軍属及びその家族並びに米軍基地内の売店、PX等の事業所は、NHKと放送受信契約を締結の上、放送受信料を支払う義務があるのか、政府の明確な答弁を、大臣、よろしくお願いします。

新藤国務大臣 NHKの受信料でございますけれども、政府としては、日米地位協定に規定する租税には該当せず、在日米軍等も受信契約を締結する義務がある、こういう立場をとっております。一方で、在日米軍側は、受信料は租税に該当し、したがって免除される、このように判断をし、支払いを拒否している、こういう状態でございます。

 これは、基本的には在日米軍とNHKとの契約に係る事項でございますが、日米地位協定にかかわる問題でもあることから、外務省やNHKとともに、在日米国大使館及び在日駐留米軍への説明や申し入れは過去から行ってきております。

 NHKにおいては、約二年置きに要請文書を出しておりまして、直近では本年二月二十六日付で、そういったものでまた文書を出しております。

 今後とも、これは、関係各機関等、協力を仰ぎながら、根気強く米国政府側に申し入れをしていきたい、このように考えております。

近藤(昭)委員 今大臣の方からは、そういう義務があるけれども、米軍側と認識が違う、そういう中で申し入れ等々をしているということでありました。大臣からは、政府としてそういうお答えをいただきました。

 籾井会長、NHKとしてお答えをいただければと思います。

塚田参考人 これまでの経緯がありますので、私の方から答弁させていただきます。

 NHKでは、昭和五十三年以来、米軍側と文書や会談による対応を重ねています。受信料の性格について説明して、契約及び支払いについての協力要請や基地内立ち入りの申し入れを行ってまいりました。

 最近では、先ほど大臣から御答弁ありましたけれども、ことしの二月に、文書によって、在日米軍、米国大使館、外務省、総務省、NHKの五者による状況打開に向けた会合の開催を求めております。現段階では回答を得られておりません。

 なお、基地の外に居住する在日米軍人軍属、その家族に対しては、ほかの居住者と同様に、訪問等により契約対策を行っております。ただし、NHKが受信契約を取り次ぐ際に契約者の国籍や職業を尋ねることはありませんので、契約状況については把握しておりません。

近藤(昭)委員 政府そしてNHKそのものが、もともとの支払い義務があるという認識のもとに、そうした申し入れあるいは協議を行っているというところであります。

 ただ、米軍関係者が受信料を支払っていない、支払わなくてはならないという前提のもとで払っていないということは、今、協議等々はしているとはいえ、公平性の担保ということから、問題、疑問があると思うんですね。

 NHKは、受信契約を拒否している者に対する訴訟を続けておるわけであります。現実に勝訴判決を得た例もあるわけでありますが、在日米軍に対しては、協議をしておるということでありますが、訴訟ということでは行っていない、これはなぜなのか、あるいは、訴訟を準備している、こういう状況があるのか、お答えをいただきたいと思います。籾井会長、お願いしたいと思います。

塚田参考人 お答えいたします。

 在日米軍がNHKの基地内立ち入りなどを認めておらず、テレビの設置状況の把握や受信契約の勧奨などができない状況にあります。そのため、在日米軍に対して受信契約の締結や支払いを求める民事手続を行っていないというのが現状であります。

 まずは、根本的な解決を目指して、基地内への立ち入り要請など、関係機関の御協力をいただきながら、米軍側への働きかけに努めていきたいというふうに考えております。

近藤(昭)委員 会長、いかがでありましょうか、トップとして。今、そういう状況がある中、だからこそ、私は、訴訟という方法もあるのではないかと思いますが、籾井会長、いかがでありましょうか。

高木委員長 質疑の時間が過ぎておりますので、短目にお願いいたします。

籾井参考人 まずは、根本的な解決を目指して、基地内への立ち入り要請等、関係機関の協力を得ながら、米軍への働きかけに努めていきたいというふうに考えております。

 引き続き、努力をしてまいりたいと思います。

近藤(昭)委員 ありがとうございました。

高木委員長 次に、三宅博君。

三宅委員 日本維新の会の三宅博でございます。

 きょうは、朝鮮総連のメディアコントロール、マスコミ工作、こういったことやら、教育番組のことについてお伺いしたいと思います。

 まず最初に、教育番組のことなんですけれども、これは、「早ね早おき朝ごはん できることからはじめてみよう」ということで、文科省の方が全国の児童生徒に無料で配付しているものですね。ただ、このキャラクターといいますか中心になっているのが、はなかっぱというキャラクターなんですね、私はテレビで見たことがないんですけれども。これに対して、NHKは、その著作権料はNHKの好意によって払っていないということなんです。著作権料を払う払わないというよりも、NHKは特殊法人ですので、それの宣伝行為になるんじゃないかなというふうに思うんですけれども、そのあたり、いかがでしょうか。

 果たしてこういうことを、全国の生徒に無料配付して、特定の放送局のキャラクターを配付するというのはいかがなものかと思うんですけれども、御意見どうでしょうか。

上野大臣政務官 委員の質問にお答えさせていただきます。

 委員も持っていらっしゃると思いますが、これが「早ね早おき朝ごはん」、文科省でつくっている、小学校一年生に配付しているリーフレットでございます。

 文科省では、子供に、早寝早起き、朝御飯の摂取などの生活習慣づくりの大切さについて普及啓発を行うために、平成十八年度から「早寝早起き朝ごはん」国民運動を推進しており、平成二十五年度より、本運動の一環として、このはなかっぱのキャラクターを使用したリーフレットを作成し、小学校一年生を対象として配付しているところでございます。

 子供に対して普及啓発を行うことに当たっては、子供に興味、関心を持ってもらうことが重要であり、その使用する漫画やキャラクターは、広く全国的に認知されていること、また、男の子、女の子ともに人気があること、そして、保護者や祖父母から認知度があり、また好感度が高いことなどから、このはなかっぱのキャラクターを使用しているものであり、特定企業に肩入れするものではございません。

 そもそも、NHKの「はなかっぱ」で放送されているはなかっぱというキャラクターは、NHK独自のキャラクターではなく、はなかっぱの漫画の方は、絵本として、原作あきやまただし氏がつくられ、そして、それをもとにしたアニメ「はなかっぱ」は、製作委員会方式で作成されており、NHKは製作、出資はしていないものでございます。

三宅委員 NHKとじっこんな関係といいますか、このこと自体が、やはりNHKの教育番組に対して、教育番組といいますか、最終責任者である文科省がNHKに対して意見が言えなくなってくるんじゃないかなというふうな思いがいたしましたので、ちょっとお聞きしたんですよ。

 これは本当に、それではどういうことがあったかといいますと、教育番組で「五十一年目の戦争責任」という番組があったんですよ。これはかなり古い番組なんですけれども、この内容というのは、NHKもこれは、内容が非常に公正を欠いていたということでみずから反省したんですけれども、これは教育番組ですよ。

 そこで、これは慰安婦の募集の件なんですね。従軍慰安婦の強制連行という一つの虚構といいますか、これに、言ったら、応援するような番組だったんですけれども、従軍慰安婦募集に関連して軍が出した通達文を改ざんしたんですよ。全く正反対に改ざんした。

 本来は、不正な方法で慰安婦を集めている不届きな業者を取り締まるように指示したという、軍部のそういうふうな文書なんですけれども、これを反対に、不正な方法を用いてでも慰安婦を調達せよと命じていた証拠を突きとめたといって、NHKはこの番組をつくったんですな。

 だから、もう全く正反対、悪意に満ちた、そういうふうな番組をつくってしまった。NHK自身も、その部分を指摘されて、これについては余りにも番組構成が公正を欠いていたということなんですけれども、今、急に言って、上野先生に答えてくれというのもあれなんですけれども、教育番組に対する文科省の基本的姿勢、あるいは、教育番組に問題があったときに文科省はどのように対応をするのか、ここらあたりをちょっとお聞かせいただきたいと思います。

有松政府参考人 ただいまの御質問についてでございますが、文部科学省といたしましては、基本的に、御指摘のような放送事業者の放送番組の編集内容等について行政指導等を行うという立場にはございませんので、そのことについてはなかなか指導ということは難しいと思っております。

三宅委員 放送倫理の話を私は聞いているんじゃないんですよ。教育番組でしょう。児童生徒に対してどのような影響があるかどうか、そのことに対して、文科省は教育の責任者として、どのような関心を持ってごらんになっているか。また、本来の、学習指導要領に記載された教育の目的、こういったものと違背する場合はどういうふうな対応をされるのかということをお聞きしているんですけれども、ここらあたり、どなたかお答えいただけますか。

有松政府参考人 お答え申し上げます。

 さまざまな教育活動について文部科学省が興味、関心を持つというのはそのとおりでございますけれども、ただいま御指摘の件は、あくまでも放送番組についてどう考え、どうするかというような御質問でございますので、放送番組であるという範囲で、放送番組の内容等について、文部科学省として指導を行うという立場にはないというところは変わらないというふうに思っております。

三宅委員 上野先生、やはり政治家として、またあなた自身も教育者として、放送には多大の関心を寄せていらっしゃると思うんですね。文科省の今政務官でいらっしゃって、そのあたりの立場から、どのようにお考えでいらっしゃるでしょうか。

上野大臣政務官 私自身としましては、やはり、子供たちに選択の自由というのはなかなか難しいことでありますから、周りの大人がきちんと対応して、子供に見せていいのかどうか、きちんと判断しなければいけないと思います。その判断が放送局等で偏った形であれば、それはそのときに文科省としても検討もしなきゃならないかもしれないんですが、言論の自由はあくまでも憲法で決まっていますので、どこまで介入していいかは大きな問題だと思います。

三宅委員 そのような御意見を私もお聞きしたかったんです。ありがとうございました。

 次に、朝鮮総連のメディアコントロール、先日もちょっと私は質問をさせていただきましたけれども、これは非常に重大な問題ですので、もう一度お聞きしたいと思うんです。NHKの北朝鮮関係の番組、これに対して朝鮮総連の方から組織的な抗議、こういったものはあったのかどうか、もしあったとしたら、その内容はどんなものであったか、ちょっとお聞かせいただきたいんですけれども。

板野参考人 お答えいたします。

 朝鮮総連から、今おっしゃられたような組織的な抗議とかそういうものがあったというふうには聞いておりません。

三宅委員 報告が行っていないだけじゃないんですか。

板野参考人 私が知る限りにおいては、そのような事実はないということでございます。

三宅委員 余りにも、現場の実態に詳しくないようですね、あなたは。

 朝鮮総連が内部文書で、NHKの北朝鮮の紹介の番組がちょっと悪意に満ちている、だから、朝鮮総連の、在日の総連の会員の方々といいますか組織の方々に、組織を挙げてNHKに抗議をしなさいと。それに対して、事実、やはりあったということなんですよ。それを聞いているのに、いや、聞いていないとか。聞いているか聞いていないかというのは、あったかどうかというふうに聞いているんですよ。あったはずでしょう。何を恐れているの。

板野参考人 お答えいたします。

 私が承知していないということでございまして、ひとつ、ここは調べまして、また別途、お返事を申し上げたいというふうに思います。

三宅委員 きのうからストックホルムで日朝局長級協議というのが始まっているんですね。ここで日本政府は、日本の政治の最重要課題である拉致問題、これの安否調査といいますか、被害者の再調査を非常に強い調子で求めているんだということなんですね。

 相手は宋日昊さんですね。日本の方の担当者は、外務省の伊原アジア大洋州局長なんですね。伊原局長といえば、エリート外交官ですね。宋日昊さんといったら、それは本当に、我々の感覚でいうと、外務省のエリート官僚とは全く違うような世界の人間じゃないかなと思うんですね。

 そういった中で、向こうの、北朝鮮当局の方の主張というものが、日本の外務官僚に対して非常に威圧的な態度で臨んでいるんじゃないか。しかも、その中身はやはり総連の中央本部の問題ですよね。この問題が解決しない限り、もう拉致も何も吹っ飛んでしまうぞとか、まずはこれが大事だというふうなことが今現在でもされていると思うんです。

 先日もお話ししましたように、飯島さん、内閣官房参与ですね、この人がBSテレビに出て、向こうの代弁者であるかのような意見を表明されたりというふうなことなんですけれども、こういうメディア工作が、日朝交渉といいますか、これに非常に大きな影を落としている、あるいは、日本の司法に対する介入そのものも画策されているように思えて仕方がないんですね。

 そういうことはないと思いますけれども、日本の高裁の売却決定が政治的な力によって左右されるということはないとは思うんですけれども、余りにも、拉致被害者の再調査といいますか、この手柄をとりたいために、あるいは、先日もお話ししましたように、北朝鮮当局の方からの番組内容に対するさまざまな介入、こういったものがあるように思えて仕方がないんですけれども、このあたり、NHKの会長とそれから大臣、ちょっと御意見をお聞きしたいと思っております。

新藤国務大臣 まず、我が国が政策決定、判断を行う際に、他国からの干渉や、ましてや圧力によって政策を変更することはいたしません。また、そういったことは現状行われていないということであります。

 それから、NHKについては、これは、自律した放送を保障されている報道機関として、自主自律の精神にのっとって適切な運営をされているというふうに思いますが、いずれにしても、他国の政府や団体がNHKに、放送における影響を及ぼすことはできない、このように考えております。

籾井参考人 まず、はっきり申し上げておきたいのは、少なくとも私が着任して以来、朝鮮総連に配慮をしていることは全くございません。

 これは明確に申し上げておきたいと思いますが、NHKは、御承知のとおり、不偏不党の立場を守り、何人からも干渉されることなく番組編集の自由を確保する、そういう強いスタンスで業務を行っております。

三宅委員 先日、私はこの委員会の席上でもお伺いしたんですけれども、朝鮮総連の担当者とNHK、あるいはその他の放送局の外信部で定期的に意見交換を御飯を食べながらやっていないですかと言ったら、NHKはやっていませんと。もし、後日、証拠が出てきたときに、やっていないということを言ったんですから、そのことだけは絶対に忘れていただきたくないですよ。別におどしじゃ、何でもないんですよ、これは別に普通に言っているんです。

 これはやはり、放送の中立性、公平性といいますか、これを確保するために、そういうことがあってはいけない。特に、北朝鮮の日本のメディアコントロールの現状というものをうかがい知るにつけ、これは非常に大きな危惧を抱いておりますので、そういうことを言っております。

 NHK放送の報道の偏向、これもちょっとやはり問題があるんじゃないかなと思うんです。

 けさの新聞にもちょっと載っていましたけれども、EUの議会選挙、あの結果に対して、NHKの昨日のBS番組を見ておりましたら、こういうことがNHKの方で解説されていましたけれども、極右政党が大躍進だと言って、フランスの国民戦線が極右政党というふうに。

 なぜ極右政党が大躍進したかというと、やはりEU支配の強化に反対ということなんですけれども、実態はそうじゃないんですよ。一つは、国民戦線を極右政党というふうな規定をするのは、これは極めて失礼じゃないかなというふうに思うんですね。本当にそう思いますよ。それと、これはやはり移民問題なんですよ、本当は。この部分に対して、非常に治安の悪化とかあるいは失業、これは移民の問題から来ている。移民問題が問題の核心だ。

 ところが、その部分をずらして、EU支配とかそういうふうに言っているんですけれども、これはちょっと問題じゃないかなと思うんですけれども、そのあたり、会長、いかがでしょうか。

籾井参考人 けさのテレビでヨーロッパの情勢を報告したのは事実ですが、今委員がおっしゃったような言葉遣いが適切かどうかということについては、ちょっとまだ私は何も検証しておりませんので、もう少しヨーロッパの状況を、何がこういうふうにしているのかというようなことをもう少し勉強させていただきたいと思います。

 今ちょっと即答はできません。

三宅委員 ヨーロッパの選択、特にフランスの選択に対して、極右政党というふうなレッテルを張るでしょう。いかにも印象が悪い。これは非常に失礼なことだし、翻って、国民戦線が極右政党、ではNHKは日本維新の会にどのようなレッテルを張るのかな、こういう危惧まで本当に抱くんです。

 まして私なんかは、NHKからするとどのような見方を、ごちごちの極右とかそういうふうなレッテルを張られるんじゃないかなというふうな心配まで本当にしてしまうんですけれども、私なんかは、自分でそんなことを考えたこともないですよ、真ん中も真ん中、中道そのものだというふうに本当に思っているんです。

 右左と言うからおかしくなるんですよ。これはもうその時点でわなにはまっているんです。右左と言うから、これは真ん中があるんですよ。そうじゃないんですよ、正しいか間違っているかなんです。真ん中と言うたらどうか。半分間違っているんです。真実かうそか、真ん中と言うたら半分うそなんです。

 私は、常に真実を言い、正しいことを主張し続けたいというふうな思いでいるんですけれども、そのあたりも、右というふうなレッテルを張られると、やはり多くの方々から誤解を受けますので、そういうことのないようにやっていただきたいと思います。

 それから、視聴者から、NHKの苦情対応がどうも余り誠意ある対応がないみたいに思うんですけれども、それが私のところへいろいろ来るんですよ。中には、番組内容に気に入らなかったら裁判を起こせとか、あるいは、開き直ってどなりつけたりするようなNHKの担当者もいるということを聞いているんですが、こういう部分はやはり誠意を持ってもっと対応していただきたいんです。

 今私がお話ししましたNHKの苦情対応の実態について、会長、ちょっとまた、やはりその辺のところは御指導いただきたいんですけれども。

高木委員長 質疑の時間がもう過ぎておりますので、答弁は短くお願いいたします。

塚田参考人 はい。

 NHKには、一年間に四百万件近い御意見やお問い合わせなどをいただいております。基本は、きちんと視聴者の方々の御意見、お問い合わせを伺って、迅速的確に対応するという方針でやっております。

 基本的に、視聴者の皆様の御意見に丁寧に対応する、適切に対応するということでこれからも努めていきたいというふうに思っております。

三宅委員 もう時間も過ぎていますので終わりますけれども、五月三日に、NHKの内部の空気について朝日新聞が報じたんですね、非常に重苦しい空気が漂っていると。経営者側の意向をそんたくし過ぎたりしているということで、そういうふうな重苦しい空気が支配しているということなんですけれども、これは、今までやりたい放題やってきた現場サイドに対して、国民の厳しい批判が向けられたわけですよ。言ってみれば、暴走族が今までやりたい放題走り回っていた、それを、取り締まりがきつくなって重たい空気が支配してきた、こういうふうな問題じゃないかなと思うんです。

 最後に、このあたり、一言だけ、会長、ちょっとお聞きしたいと思います。

高木委員長 三宅君、質疑の時間が過ぎておりますので、答弁はもうなしで。

三宅委員 はい、わかりました。

 では、質問を終わります。ありがとうございました。

高木委員長 次に、佐藤正夫君。

佐藤(正)委員 早速、すぐ質問します。みんなの党の佐藤正夫です。

 まず、お手元に資料をお渡ししておりますけれども、一ページ目を見ていただきますと、主要国の放送の規制監督機関という表を出しておりますが、この表を見て、基本的には、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツは独立行政委員会が規制を見ているということなんですけれども、総務大臣、時間がございませんので、これを見て、大臣の見識をお尋ねしたい。

新藤国務大臣 行政機関のあり方というのは、各国の政治体制、またその国民性等から異なるわけであります。我が国は我が国として、効率のよい、また議院内閣制のもとでの適切な運営体制として現行の体制をしいている、こういうことでございます。

佐藤(正)委員 今の世界の状況も見ながら、今後やはり検討していかなきゃいけないんだろう、このように思っております。

 それから次に、先ほど参考人の方にもちょっとお尋ねをした件ですけれども、認定放送持ち株会社の件、全国で十二の放送局を支配できるようになっている。関東、関西で七局ぐらいになると先ほど参考人の方からも教えていただきましたけれども、これをやると放送の多元性、多様性、地域性の確保と矛盾しないのかということを参考人御両人にお尋ねしましたが、御両人の見識は、確かに矛盾はある、しかし、やはり経営安定をさせなければならないということが今回の法案の大きな趣旨だということでした。

 福岡局長、お尋ねします。どういうふうにお考えですか。

福岡政府参考人 お答えを申し上げます。

 認定放送持ち株会社の制度は、一の者、ある者が複数の放送事業者を支配することを原則として禁止しております、いわゆるマス排原則の特例として、平成十九年の放送法改正で導入をしていただいたものでございます。これによって複数の基幹放送事業者を子会社とすることが可能になるということでございますが、趣旨は、持ち株会社のもとでグループ経営を強化するということを、まさに経営の安定化という御指摘でございましたが、事業者にとっての経営の選択肢として提供したものでございます。

 これは、もちろん資金調達の容易化でございますとか、経営資源を効率的に運用するといったようなこと、あるいは、昨今、今回も話題になってございますが、インターネットを通じたコンテンツ配信事業などの展開などもしやすくなるというようなメリットを考えているところでございます。

 他方、多元性、多様性、地域性の確保との関係で申し上げますと、そういった点もあるものですから、この制度におきましては、これも御指摘の、まず一つは、子会社とすることができる事業者を最大で十二の放送対象地域までに限定するということ。それから、放送法第百六十三条で、子会社であります地上の放送事業者に対しましては、それぞれの地域向け番組の自主制作の努力義務というものをこの法律で明確に課しているということ。それから三点目に、持ち株会社、親会社そのものに対する株主が、特定の者が大きく支配してしまいますと子会社の放送事業者を一挙に支配してしまうことになりますので、一の者が持ち株会社に対して保有できる議決権の上限を三三%とする。そういったような幾つかの措置をとっているというところでございます。

 そういう意味で、おっしゃるとおり、放送の多元性、多様性、地域性には十分意識した上で、これをなるべく矛盾することがないように枠組みを整備させていただいているということかと理解してございます。

佐藤(正)委員 先ほどの参考人との議論の中で、非常に難しい、岐路なんですよね。今そうやって三三%とか役員の数とか決めて、枠ははめていますけれども、基本的に参考人が危惧されたのは、地域の特性の番組がなくなっていくのではないかな、両参考人の方がそういうふうにおっしゃっていました。そこはしっかりこれからも見ていきたい、注視したい、このように思います。

 次に、電気通信紛争処理委員会と電波監理審議会というのがありますけれども、これは、どういうふうにどう違って、どういう状況で開催されているのか、お尋ねをしたいと思います。

吉良政府参考人 お答え申し上げます。

 電波監理審議会は、電波法、放送法に関する事務の公平かつ能率的な運営を図るために、電波法、放送法に基づいて規定されます総務省令の制定または廃止、携帯電話の基地局等に係る開設計画の認定やその取り消し、無線局の免許付与等の必要的諮問事項について審議しております。それから、総務大臣の処分に対する異議申し立てについて審議することということでございます。それから三つ目の機能としまして、必要的諮問事項に関して必要な勧告をするというような、三つの機能を有しております。

 一方、電気通信紛争処理委員会は、電気通信事業者間、放送事業者間の紛争を公正、迅速に処理するための機関でありまして、裁判外紛争解決手続、ADRにより解決することを目的とする機関でございます。

 機能としましては、電気通信事業者間、無線局を開設、変更しようとする者と他の無線局の免許人との間、ケーブルテレビ事業者等と地上デジタルテレビジョン放送事業者との間の紛争に対してあっせん等を実施すること。それから二つ目は、総務大臣が地上テレビジョン放送の再放送同意の裁定等を行う際に、総務大臣から諮問を受けまして、審議、答申を行う。それから三つ目として、あっせんや諮問に対する審議、答申に対して意見があれば、総務大臣に対して必要な勧告を行うというような、三つの機能を有しているところでございます。

 開催につきましては、電波監理審議会では、平成二十五年では十四回開催しておりまして、一回の平均審議時間は大体一時間半程度ということでございます。異議申し立ては、平成二十五年には二件ございます。

 それから、紛争処理委員会につきましては、平成二十五年度に委員会を十一回開催しまして、平均審議時間は一時間半ということでございます。それから、二十五年のあっせん処理件数は三件ございまして、委員会とは別にあっせんに係る意見聴取を三回ほど行ったところでございます。

 以上でございます。

佐藤(正)委員 持ち時間が二分ぐらいになりましたので、もうこれで終わりにしたいと思うんですが、もう一点だけ。

 例えば、今回の行政不服審査法でも、不服審査をする人は、裁判に行ってもいいですし、審査をしてもいいですよということになっていますが、電波監理審議会というのは、そういう仕組みになっているんですか、そこはおわかりですか。

新藤国務大臣 この電監審につきましては、これは、総務大臣の処分に不服がある者は、裁判所ではなくて、まず総務大臣に対する異議申し立てを行うことになっているということであります。

 それは、今般国会で御審議をいただいております行政不服審査関連三法案の中身にもかかわってくることでありますけれども、この不服申し立て前置の見直しを行っているわけであります。しかし、その前置の見直しを行うものは、訴訟の一審代替性があるもの、また大量の不服申し立てがあるもの等々ございますが、この電監審の不服審査制度については訴訟の一審代替性が認められているということでありまして、今般のこの整備法の、前置することになっている、こういう枠の中で、そういう規定で進めていく、こういうことになっております。

佐藤(正)委員 要するに、一遍に訴訟じゃなくて、そこに行きなさいよという話なんですね。過去を調べてみたら、それがわからなくて、最初に訴訟に行って、それは違うんですよといって、また新たに行ったというケースが多々あるんですね。ということは、一般の方はよくわからないんです、確かに。大臣はよくわかっていらっしゃるんでしょうけれども。そういったケースがあるので、私は、ずっと問題提起しておりました、窓口の業務のところでしっかりそういったものも教示していただく、こういうことをしっかりやっていただきたいということを指摘して、質問を終わります。

高木委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 認定放送持ち株会社の認定要件の緩和に関連して質問いたします。

 二〇一〇年の改正で、マスメディア集中排除原則の特例として、議決権保有の上限五分の一が三分の一に緩和をされました。各認定放送持ち株会社においてこの特例を活用している件数が何件になっているのかについて、お答えください。

 あわせて、今回の法改正に向けて放送政策に関する調査研究会が行われましたが、その第一次取りまとめでは、この三分の一の上限近くまで、三割以上ですね、ローカル局の議決権を保有している事例が既に六つあるとも触れておりますけれども、その持ち株会社がどこかについても、あわせてお答えいただけますでしょうか。

福岡政府参考人 お答えを申し上げます。

 平成二十三年の緩和を受けまして、本年の四月一日現在で、五分の一以上の議決権を保有する事例といたしまして、総務省で公表している出資比率のデータで見ますと、まずフジ・メディア・ホールディングスにおいて十一事業者、それから日本テレビホールディングスにおいて二事業者、テレビ朝日ホールディングスにおきまして一事業者の事例があるというように承知をしているところでございます。

 それから、三分の一の上限近くになっているというお尋ねでございますが、三〇%を超えている事例といたしまして、これはいわゆるフジテレビの系列でございますが、六事例、具体的には、岩手めんこいテレビ、仙台放送、福島テレビ、新潟総合テレビ、テレビ新広島、沖縄テレビ放送の計六事例であるということで承知してございます。

塩川委員 この上限規制のところでは、つまり、二割を超えているというところも、日本テレビやテレビ朝日系列も一つ、二つありますけれども、十一と特段に多いというのがフジであります。そういう中で、三分の一の上限近くというのが六つを占めるというのもフジだけであります。そういう点では、フジが活用しているということです。

 これは、結果として、今回、三分の一を二分の一に引き上げるということなんですけれども、そういう要望というのは、もちろん民放連から出されていますが、それは、各キー局、ローカル局を含めての要望が取りまとめで出ているから入っているだけで、実際にキー局、持ち株の中での要望を私も見ましても、フジだけだと思うんですよね。そういう点では、フジの要望に応えるというのが、この三分の一を二分の一に引き上げるということなんですけれども、何でそういう要望が出ているんでしょうか。

福岡政府参考人 お答えを申し上げます。

 前回と申しますか、平成二十三年の六月に、議決権比率の上限を五分の一から三分の一に引き上げるという、施行されたときもそうでございますし、今回の、三分の一近くまで認められているものを、認定放送持ち株会社の傘下に置くことのできるという形に限ってという法案を提出させていただいているわけでございますが、これを緩和してほしい、するべきであるということにつきましては、ともに、これも御指摘のとおり、日本民間放送連盟から、放送事業者の総意として、要望として承ってきたということが一つの経緯となっていることは事実でございます。

 また、私どもがこういった制度改正を行うに当たってパブリックコメントを行いました際には、御指摘のフジテレビ、あるいはフジテレビの系列以外のいわゆるキー局、あるいは他の放送会社からも、賛同するというコメントはいただいているところでございます。

 実態上、フジテレビホールディングスあるいはその系列の各社におきまして保有率が高くなってきているというのは、もちろん事実でございますけれども、個別の制度を活用する、あるいはしないといったような判断につきましては、個別の社の判断でございますし、それがどのような特別な事情があるのかということにつきましては、私どもはそこに余り深入りはすべきではないと思っております。あくまで、その実態を踏まえて私どもとしては対応すべきかなというふうに考えているところでございます。

塩川委員 ぎりぎりまで使っているのはフジだけということは実際のところでありまして、そういう点では、フジの経営戦略との関係で上限規制の緩和を求めるというのが出てくるんじゃないのかなと思うんです。

 例えば、フジのホールディングス、フジ・メディア・ホールディングスの有価証券報告書を拝見しますと、系列局がネットワークを離れると、その地方での放送エリアを失い、結果として、全国規模の広告を行う広告主にコマーシャル放送時間枠を販売できない事態が生じ、当社グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります、このように述べているわけです。

 つまり、系列を維持しようという動機が出資引き上げの背景にあるんじゃないのか。そういう点では、個別のホールディングスの経営戦略に応える緩和ということも言えるところであります。

 あわせて、先ほどの参考人質疑でも、この認定放送持ち株会社の資産要件の緩和について、東京放送ホールディングスの例を紹介いたしました。認定持ち株会社が事業会社から利益剰余金を配当の形で吸収する、放送事業との境界面の事業拡大を通じて経営基盤の強化を図るなど、認定放送持ち株会社としてのグループ戦略に取り組むほど、資産要件から乖離する度合いを強めてしまう、このように、要するに、持ち株会社の経営戦略として、現預金をふやしている、あるいは放送外収入を拡大していきたい、こういう要望というのがこの緩和の背景にもあるということです。

 大臣にお尋ねしますけれども、今回の改正によって、キー局、認定放送持ち株会社の経営戦略、経営強化策が優先をされて、結果として、放送の多元性、多様性、地域性が損なわれることになりはしないのか、特に地域性が損なわれることになりはしないのかという危惧を覚えるわけですけれども、この点についてお答えをいただきたいと思います。

新藤国務大臣 今般のマスメディア集中排除原則の緩和、これは、持ち株会社のもとでグループ経営を強化することを民間放送事業者にとっての経営の選択肢として挙げたわけであります。

 しかし一方で、改正後の持ち株会社に対しても、現行制度と同様の規律がございます。それは、放送事業者、子会社と合わせて、全国の放送対象地域を十二ということで区切っているわけでありますし、また、関係会社、放送事業者に対し、地域向け番組の自主制作努力義務を課すですとか、そういったものはこれまで同様にあるわけでございまして、そもそも、経営の多角化、強化を図りつつ、放送の多元性、多様性、地域性というものはそれぞれ発揮していただきたいと期待をしておりますし、制度においてこういったものが損なわれることにはならないのではないか、このように考えております。

塩川委員 もともと、地方のローカル局を支える地域経済が疲弊をして、株を放出したいというときに受け皿がないという話がありますけれども、しかし、今の地方のローカル局を含めて経営実態を見たときに、全産業平均の経常利益率に対して、こういう民放関係はなべて高いわけですよね。それはローカル局を含めて高い傾向にあるわけです。

 そういった実態を考えると、そういう地方の実情というよりは、先ほど指摘をしたような、フジグループがいわばネットワークを強化していく、ローカル局に対する支配を強めていく、そういう意図に応えるというのが前面に出るような改正というのは、やはり結果としては地域性を後退させることになりはしないのかという懸念というのは拭えないわけで、先ほどの経営基盤強化計画で、同一放送ということを含めて、今回の法改正というのが地域性の後退になりかねないという問題があるということを指摘して、時間が参りましたので、終わります。

高木委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

高木委員長 これより両案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。塩川鉄也君。

塩川委員 私は、日本共産党を代表して、放送法及び電波法の一部を改正する法律案への反対の討論を行います。

 第一の理由は、認定放送持ち株会社による株式保有拡大を可能にし、マスメディア集中排除原則を緩和させるものにほかならないからです。

 この原則は、憲法二十一条に保障された放送による表現の自由ができるだけ多くの者によって享有されるようにすることにより、放送の多元性、多様性、地域性の確保を目的とするものです。

 二〇〇七年に認定放送持ち株会社の子会社化の特例、二〇一〇年に系列局の議決権保有の上限が見直され、原則が緩和される中で、一部の放送持ち株会社で、地方局の株式保有を引き上げ、関連会社化、ネットワーク体制の強化が進められています。

 放送の多元性、多様性、地域性の確保よりも、持ち株会社の経営戦略、経営強化策を優先するものであり、視聴者・国民の知る権利の後退につながるものです。

 第二の理由は、経営基盤強化計画の認定制度を創設し、認定を受ければ、違う放送対象地域の放送事業者が全て同一の放送番組の放送を行うことも可能となり、計画認定された地域の視聴者・国民は、地域の情報を恒常的に得られなくなりかねないからです。さらには、民放系列ネットワーク全体の番組制作機能を低下させる懸念があります。

 地方局が放送事業者として事業を継続していくには、地域に密着し自主番組をつくり、視聴者、地域に欠かせない存在となっていくことが欠かせません。自主制作番組をふやしていくことこそ求められています。ローカルラジオ局は、AM、FMともに、自主制作は五〇%を超えています。だからこそ災害時の役割も注目されるのであります。

 そもそも、放送の普及計画で、放送は地域社会を基盤にし、情報の多元的な提供及び地域性の確保を求めていますが、こうした放送のあり方を覆すものです。

 質疑の中で、この計画と産業競争力強化法の併用が行われれば、株主利益追求、事業再編、リストラ合理化が優先されかねないことも指摘をしました。これでは、放送事業をゆがめるものになりかねず、問題です。

 なお、NHKのインターネット業務の拡大には、受信料で行うものであり、留意が求められることを指摘しなければなりません。

 放送法の一部を改正する法律案、衆法については、経営委員会の合議制をゆがめるものとし、反対であります。

 以上述べて、討論といたします。

高木委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

高木委員長 これより両案について順次採決に入ります。

 まず、原口一博君外三名提出、放送法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

高木委員長 起立少数。よって、本案は否決すべきものと決しました。

 次に、内閣提出、放送法及び電波法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

高木委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

高木委員長 この際、ただいま議決いたしました内閣提出、放送法及び電波法の一部を改正する法律案に対し、橋本岳君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、日本維新の会、公明党及びみんなの党の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。橋本岳君。

橋本(岳)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきます。

    放送法及び電波法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府及び日本放送協会は、次の事項について、十分配慮すべきである。

 一 基幹放送事業者が認定経営基盤強化計画に従って放送番組の同一化を行う場合において、地域性が著しく後退しないよう講ずる地域性確保措置については、政府において、有効な当該措置となり得る典型例を示すなど、透明性や予見可能性を高めるための取組を行うこと。

 二 認定放送持株会社の認定の要件の緩和については、マスメディア集中排除原則が放送の多元性・多様性・地域性の確保に大きな役割を果たしてきたことに鑑み、マスメディア集中排除原則の趣旨が損なわれることがないよう十分に配慮すること。また、複数の情報メディアを支配することにより、表現の多様性が損なわれることがないよう、マスメディア集中排除原則については、今後の通信と放送に関する法体系において、総合的な検討を行うこと。

 三 認定放送持株会社が傘下に置くことが可能な基幹放送事業者の範囲を拡大することにより、ネットワーク系列内での資本的つながりが強化されることとなるが、地域性の確保の観点から、政府は、ネットワーク系列ローカル局における番組の自社制作比率が低下しないように留意すること。

 四 政府は、協会がインターネット活用業務を行おうとするときに定める実施基準の総務大臣の認可に関し、国民・視聴者や利害関係者からの意見、苦情等については適切に対応すること。また、協会は、インターネット活用業務について、少なくとも三年ごとに行うとされている実施状況評価を着実に実施すること。

 五 世界各地での協会のテレビ国際放送(NHKワールドTV)の認知度は、必ずしも高いとは言えない状況であることから、協会は、国際放送の番組の質の向上等に務め、認知度向上に一層努力すること。また、海外の受信環境の整備等については協会による取組だけでは自ずと限界があることから、我が国の情報発信強化のため、政府全体として支援すること。

 六 日本特有の文化や流行を海外に発信することが、海外需要開拓支援の推進、ソフトパワー外交の基盤となることから、放送コンテンツのインターネット配信について、日本の放送局や番組製作会社と周辺産業の連携、新規参入の促進等を進めること。

 七 災害放送をはじめとする地域情報のさらなる充実を図るため、周波数逼迫地域等における新たな周波数確保など、コミュニティ放送の一層の普及を図ること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

高木委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

高木委員長 起立多数。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、総務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。新藤総務大臣。

新藤国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、その御趣旨を十分に尊重してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

高木委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

高木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

高木委員長 次に、内閣提出、参議院送付、電気通信事業法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。新藤総務大臣。

    ―――――――――――――

 電気通信事業法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

新藤国務大臣 電気通信事業法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 電気通信役務の確実かつ安定的な提供を確保するため、電気通信設備の管理体制の拡充を図るとともに、技術基準等の適用対象となる電気通信事業者の範囲の拡大等を行うほか、技術基準適合認定等の表示方法に係る規定の整備等を行う必要があります。

 次に、法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、内容、利用者の範囲等から見て利用者の利益に及ぼす影響が大きい電気通信役務を提供する電気通信事業者として、総務大臣により指定された者は、当該電気通信役務を提供する電気通信事業の用に供する電気通信設備を、技術基準に適合するように維持しなければならないこととしております。

 第二に、事業用電気通信設備の管理規程について、その記載事項を設備の管理の方針、体制、方法等に関する事項と定めるとともに、総務大臣は、その変更及び遵守を命ずることができることとしております。

 第三に、電気通信事業者は、事業用電気通信設備の管理の方針、体制及び方法に関する事項を統括管理させるため、電気通信設備統括管理者を選任しなければならないこととしております。

 第四に、電気通信事業者は、電気通信主任技術者に、総務大臣の登録を受けた者が行う事業用電気通信設備の工事、維持及び運用の監督に関する講習を受けさせなければならないこととしております。

 第五に、技術基準適合認定等を受けた端末機器を組み込んだ製品の製造業者等が、その端末機器に付されている技術基準適合認定等の表示を製品に適切に転記することを可能といたします。

 第六に、携帯電話端末等の技術基準適合認定等を受けた端末機器の修理業者が、技術基準適合性に影響を与えない範囲での修理の確認を行う場合に、総務大臣の登録を受けることを可能といたします。

 以上のほか、所要の規定の整備を行うこととしております。

 なお、この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしておりますが、技術基準適合認定等の表示の転記に関する改正規定は公布の日から三月を超えない範囲内において政令で定める日から、電気通信主任技術者の講習を行う者の登録制度に関する改正規定は公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。

 以上が、この法律案の提案理由及び内容の概要であります。

 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。

高木委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る二十九日木曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十七分散会


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