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第3号 平成14年2月27日(水曜日)

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平成十四年二月二十七日(水曜日)
    午前十時開議
 出席委員
   委員長 河村 建夫君
   理事 斉藤斗志二君 理事 鈴木 恒夫君
   理事 田野瀬良太郎君 理事 増田 敏男君
   理事 平野 博文君 理事 山谷えり子君
   理事 斉藤 鉄夫君 理事 武山百合子君
      小渕 優子君    岡下 信子君
      小西  理君    近藤 基彦君
      杉山 憲夫君    高市 早苗君
      谷垣 禎一君    谷田 武彦君
      中野  清君    馳   浩君
      林田  彪君    二田 孝治君
      松野 博一君    松宮  勲君
      森岡 正宏君    大石 尚子君
      鎌田さゆり君    今野  東君
      中津川博郷君    中野 寛成君
      藤村  修君    牧  義夫君
      牧野 聖修君    山口  壯君
      山元  勉君    池坊 保子君
      西  博義君    佐藤 公治君
      石井 郁子君    児玉 健次君
      中西 績介君    山内 惠子君
    …………………………………
   文部科学大臣       遠山 敦子君
   文部科学副大臣      青山  丘君
   文部科学副大臣      岸田 文雄君
   文部科学大臣政務官    池坊 保子君
   文部科学大臣政務官    加納 時男君
   政府参考人
   (法務省人権擁護局長)  吉戒 修一君
   政府参考人
   (法務省入国管理局長)  中尾  巧君
   政府参考人
   (文部科学省生涯学習政策
   局長)          近藤 信司君
   政府参考人
   (文部科学省初等中等教育
   局長)          矢野 重典君
   政府参考人
   (文部科学省高等教育局長
   )            工藤 智規君
   政府参考人
   (文部科学省高等教育局私
   学部長)         石川  明君
   政府参考人
   (文部科学省科学技術・学
   術政策局長)       山元 孝二君
   政府参考人
   (文部科学省研究振興局長
   )            遠藤 昭雄君
   政府参考人
   (文部科学省研究開発局長
   )            今村  努君
   政府参考人
   (文部科学省スポーツ・青
   少年局長)        遠藤純一郎君
   政府参考人
   (文化庁次長)      銭谷 眞美君
   政府参考人
   (厚生労働省職業能力開発
   局長)          酒井 英幸君
   文部科学委員会専門員   高橋 徳光君
    ―――――――――――――
委員の異動
二月二十七日
 辞任         補欠選任
  伊藤信太郎君     小西  理君
  鎌田さゆり君     今野  東君
同日
 辞任         補欠選任
  小西  理君     伊藤信太郎君
  今野  東君     鎌田さゆり君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 文部科学行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――
河村委員長 これより会議を開きます。
 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として法務省人権擁護局長吉戒修一君、入国管理局長中尾巧君、文部科学省生涯学習政策局長近藤信司君、初等中等教育局長矢野重典君、高等教育局長工藤智規君、高等教育局私学部長石川明君、科学技術・学術政策局長山元孝二君、研究振興局長遠藤昭雄君、研究開発局長今村努君、スポーツ・青少年局長遠藤純一郎君、文化庁次長銭谷眞美君、厚生労働省職業能力開発局長酒井英幸君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
河村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
河村委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。谷垣禎一君。
谷垣委員 おはようございます。自由民主党の谷垣禎一でございます。
 きょうは遠山大臣に初めて質問をさせていただきますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。
 きのう遠山大臣の所信を伺いまして、私は大変共感するところがたくさんございました。今、日本の経済状態といいますか社会状態というのは、やや閉塞感に満ちあふれていると申しますか、かつては、諸外国と比較しても経済のパフォーマンスはやはり何といったって日本がすぐれているというような自信が我々日本人にもあったわけですが、昨今は、そういう自信もなくなって何となくみんな暗い状況になっている。もちろん、政治の場でもそういう経済の状況、目前の問題に一つ一つ手を打っていかなければならないことは当然でございますけれども、これはやはり大きな社会の変化の時期に来ているということになりますと、目前の問題に手を打っていくということだけではなくて、古い言い方ですが、国家百年の大計を考えていくということが基本的に必要なのではないかと思うんですね。
 そういうことで考えましたときに、やはり、将来に向かってうまずたゆまず科学技術に投資をしていく、そしてさらにその背後にある人材の育成に努めていくというようなことが、今の時期に一番大事なのではないかな、こう思います。
 そういう意味で、今遠山大臣のしょっておられるお荷物というのは大変重い荷物を両肩にしょっておられるのではないかな、しかし、遠山大臣がこういう課題に勇気を持って立ち向かっておられる姿というのは、今の閉塞状況の中で壁をぶち破る一つの力として国民に意識されるのではないかな、こんな思いを持ちながら、きのう大臣の所信を聞かせていただいたわけなんです。
 そこで、きょうはいろいろ議論をさせていただきたいことがあるんですが、まず最初に、ちょっと余り、嫌な数字といいますか、そういうのから始めたいと思うんですが、自由民主党の中の、地域経済をどう活性化させていくかという委員会がございまして、そこで先日拝見した資料に、日本の国際競争基盤が今非常におくれているという数字が出ております。
 それは、スイスの国際経営開発研究所、IMDというところから出ております「ザ・ワールド・コンペティティブネス・イヤーブック」というのに、日本の国際競争力、これは一九九二年から九三年、九六年ぐらいまでは大体二番、三番、四番というようなところを上下していたんですが、九七年からはどんどん落ちまして、二〇〇一年には、四十九カ国調査したうちの二十六番目である。毎年トップに立っているのはアメリカでございますが、日本と対照的なのはフィンランドでございまして、一九九〇年代の前半では二十何位というところにつけておったけれども、今は三番とか四番とかいうことになってきている、こういう数字が出ております。
 そして、その中で、「改善すべき代表的な劣位指標」、成績が悪い指標がございまして、その中には、私どもの委員会に関係するものとして、「大学の企業への有用性」というのが四十九カ国で調査をしたうち四十九位である、あるいは「若年層の科学・技術への関心」が四十九カ国のうち四十七位である、こういう調査結果が出ております。もちろんもっといろいろなことがございまして、「政府の透明性」だとか「財政運営」だとか、そういうのもみんな劣位指標にあるわけですが、大変深刻な数字と言わなきゃならないだろうと思うんですね。
 もちろん、このごろ、先ほど申しました閉塞状況の中で、どちらかというと暗い数字とか暗い分析というものが世に満ちあふれておりまして、やや少し自虐的じゃないかなと思うこともございます。
 こういう数字を前にして、当然、文教行政の責任者であられる大臣には、反論したいお気持ちがたくさんおありじゃないかと思いますし、我々、こういう数字を全部真に受けて、真に受けてと言ったら失礼ですが、真に受けて自信喪失する必要はないんだと思うんですね。古い言葉ですけれども、なめられてたまるかという、大和魂といいますか、そういうものが政治家にも経済人にも、あるいは学者にもジャーナリストにもなきゃいけないんじゃないかなという気持ちを私は強く持っております。
 しかしながら、こういう見方があることも事実でございますから、どう、こういう見方に対して我々はなめられてたまるかということでやっていくかということじゃないかと思うんですね。
 そこで、大学の構造改革ということについてお伺いをしたいんですが、遠山大臣の言われる人材・教育・文化大国あるいは科学技術創造立国、これには大学の構造改革、やはりこれが大きなかぎだろうと私は思います。学校や家庭あるいは地域社会の教育力を向上させて、基礎教育の徹底とか心豊かな人間の育成を図った上で、さらに、社会のさまざまな場面でリーダーシップをとることのできる創造性のある人材を育てていかなきゃならない、そのためには大学の競争力を高めて社会の信頼にこたえられる大学にしていくということが必要だろう、こう思うんですが、大臣の大学の構造改革に取り組まれる、なめられてたまるか、そういうようなお気持ちを伺わせていただきたいと思います。
遠山国務大臣 谷垣委員からの御指摘、一々納得するところが多うございます。
 知の時代とも言われます二十一世紀を担うのは、日本にとりましては、まさに人しかないわけでございます。その意味で、すぐれた人材、しっかりした能力を持つ人材をつくり上げていくということは、当人にとっても、それから日本の社会にとっても大変大事であると思うわけでございます。
 それで、日本の大学の教育研究水準については、いろいろなことを言われておりますけれども、例えば研究面では論文数とか論文被引用回数などで、これは国際的な評価のメジャーであるわけでございますが、それで見ますと、かなりの分野で日本の占有率は年々増加しておりまして、世界的に見て遜色のない分野もございます。現にノーベル賞受賞者も出ているということでございます。
 今の御指摘のIMD国際競争力調査でございますが、これはスイスのローザンヌにある国際経営開発研究所の調査でございまして、この調査では、御指摘のように、我が国の大学教育の評価は四十九カ国中最下位でございますが、これは、企業活動を支える環境の一部として大学教育がどの程度役立っているかということについて、その国の企業の人たちにアンケートをとったわけでございます。したがいまして、日本の企業の人たちが、日本の大学があなたの企業に役立っていますかということについて答えたときの率であるわけでございまして、客観的なデータでは全くないわけでございます。
 しかし、そのように評価されているということは、日本の大学にとっても大変な問題であると思いますし、ここでひとつ張り切ってもらわなきゃいけないと思って、その意味、その意味は直接ではございませんけれども、これからの日本の人材、すぐれた人材を輩出していくには大学ということで、構造改革の重要性がまさに浮かび上がってまいるわけでございます。
 一九九〇年代から大学改革、それは大学の個性化、多様化、高度化、そして経営の活性化ということで、これは各大学が真剣になって取り組んできてくれておりまして、最近になっていろいろな成果が出始めております。
 しかし、今まさに日本のターニングポイントにあって、もっと改革を加速していく必要があるということで、昨年、構造改革の三つの方針を出させていただいたわけでございます。
 そこの中では、国立大学についても、もっと足腰の強いしっかりした教育研究機能を発揮し社会にも貢献できるような大学ということで、統合再編を含めていろいろと足腰を強くしていくということを一つ目標に定めております。
 それから、国立大学を法人化いたしまして、国立大学の自主性、自律性を拡大して民間的な経営の手法も取り入れていく、そのようなことについての転換もできるだけ早急に図っていくということで、これも現在、早期移行を目指して作業が進んでおります。
 また、第三者評価に基づいて競争原理を導入するということにつきましても、来年度予算で二十一世紀COEプログラムを計上いたしまして、こういう面についても、国公私を通じてすぐれた研究機能を持つ拠点を日本の各大学の中で選んで重点的に支援を行っていく、そして、よい意味の競争を盛んにしていくことによって質を高めていく、そのことが非常に大事ではないかと思っております。
 もちろん、今申し上げたような三つだけではございませんで、いろいろな意味での、大学を強化し、そして本当の意味で本来の機能を達成してもらうためのいろいろな施策を今講じているところでございますので、今ちょうど転換期でもございます、それで特に産官学協力のようなものは今大学人の意識は非常に変わりつつございます、そのようなことを支援していくというのが大変重要な役割であろうかと思っているところでございます。
谷垣委員 大臣の意欲を伺わせていただいたんですが、今お話の中でも、国立大学の法人化ということにお触れになりました。大学の構造改革の中で、この国立大学の法人化というのは大変重要な課題だと私も思っております。この移行していくことで、大学の中にも不安やらいろいろな問題があると思いますが、いい制度設計をしていただいて、真に自律的で責任のある運営というものが可能になるようにしていただいて、教育研究機能を強化させていただかなきゃならないと思うんです。
 今、専門家の会議が文部科学省の中でいろいろ御議論をいただいていると聞いているんですが、教職員の身分は非公務員型でやっていこうという議論が進んでいっているというふうに聞いております。公務員であるがゆえの兼業規制というようなことが、やはり自由な研究活動やそれを生かしていく上で、何というんでしょうか、桎梏になっていた場合が従来あったように思いますし、外国のすぐれた学者などが国立大学では学長になれないというような制限もあったわけで、こういうことはぜひ撤廃して創造性をもっと出していっていただきたい、こんなふうに思っておりまして、この国立大学の法人化、どういう方途でやっていくのかということについてももう少しお聞かせをいただきたい、こう思っております。
岸田副大臣 今の先生から御指摘いただきました国立大学の法人化の問題、国立大学が自律的に創意工夫しながらその本来の役割を果たしていくために大変重要な意義を持っているという認識は持っておりますし、その場合に、さまざまな規制が緩和されまして大学運営の裁量が拡大する、こういったことが法人化のメリットを最大限に活用するために大変重要だなというふうに思っております。
 そういった観点から、今先生御指摘になられました非公務員型の身分の問題等も含めまして、その調査検討会議において議論を進めているわけでありますが、今申しましたように、この法人化のメリットが最大限生かされるというようなことから、大学ごとに法人化することによって自律的な運営を確保し、各大学が切磋琢磨することを考えるというようなこと、そしてさらには、学外者を役員等に参画させる、あるいはトップマネジメントを導入する、第三者による評価を導入する、こういったことも、非公務員型の導入とあわせて重要なポイントだと思っておりまして、その方向で今検討が進んでいるところであります。
 来月にも最終報告をまとめる予定になっているというふうに聞いております。そうした自律性の拡大によって、各大学の自助努力、その努力が報われるような体制をつくることによって、活力に富み、国際競争力のある国立大学をつくっていくようにこれからも努力していかなければいけない、そのように認識しております。
谷垣委員 先ほど大臣がお触れになった中に、産学官連携も進めていこうというお話がございました。今の経済状況を前提としますと、大学におけるいろいろな知見といいますか、研究成果、こういうものをベンチャー企業などを通して新産業の創出に結びつけていくということは極めて大事な課題だろうと思います。国立大学の法人化というのもそういう産学官の連携に資するところがあるのではないか、こう思っております。
 また、TLO等もいろいろやっていただいているわけですが、私の地元の京都でもそういうことに取り組んでおりますけれども、いろいろ聞かせていただくと、まあまだ日の浅いせいもあるんだと思いますが、なかなか成果がまだ上げられていない。これは、そういう制度はつくったけれども、さらにいろいろな工夫を積み重ねていかなければなかなかうまくいかないのかな、こんなふうにも思ったりしているわけでございまして、今後取り組みをどういうふうにされていくのかということについてももうちょっと聞かせていただきたい、こう思っております。
遠山国務大臣 産学官連携の実際的な動きはまさに今始まったところでございます。しかし、平成十二年度ぐらいからかなりそういう機運が盛り上がってまいっておりまして、私どもといたしましても、大学等を核とする産官学連携を推進いたしますために、これまでも、研究成果の特許化を進める技術移転機構、TLOの承認、あるいは国立大学教官等の兼業規制の緩和など、さまざまな取り組みを行ってきております。
 その結果、例えば企業との共同研究件数も、過去十年間で約五倍に増加いたしております。そして、国立大学等におけるそういった産学官連携の実績は、近年飛躍的に増大しているところでございます。さらに、これらの取り組みを強化いたしますために、昨年六月に、大学を起点とする日本経済活性化のための構造改革プランをお示ししたところでございますが、その中におきましても、大学発の新産業創出を加速するものといたしまして、産学官連携を重点項目の一つに位置づけているわけでございます。
 そういう背景もありまして、来年度予算案におきましても、大学発の新産業創出を支援するため、三つの新しい施策を講じております。
 一つは、大学発ベンチャー創出を促進する研究助成制度、これは新たなものでございますが、十八億円でございます。それから、大学と企業の共同研究を促進するためのマッチングファンド制度、さらには日本版シリコンバレーを目指した知的クラスター創成のための支援制度など、こういった幾つかの具体的な施策を講ずることによって、各大学の研究成果を社会に還元してもらうことについてより積極的にやってもらいたいということでサポートしていきたいと思っております。
 しかし、考えてみますと、十年前、二十年前に産官学連携と言ったら大変な問題になったものでございますね。しかし、今や大学の先生方は、自分たちの研究成果を社会に還元し、そこで産業の創出にもつなげたいという非常に強い意欲を最近お持ちになっていただいておりまして、私は、今ちょうどそのテークオフの時期だと思っておりますが、ぜひともそれをスムーズにテークオフさせて、大学自体の研究の活性化と同時に、産業界の活性化に資するように十分に支援をしていきたいと思っております。
谷垣委員 今、大臣からお話がありましたが、かつての雰囲気と比べますと、私も、随分さま変わりしてきたな、いい方向に進んできたなと思っておりますので、ぜひこれを文部科学省としてもバックアップしていただきたいな、こう思っております。
 それから、産官学連携も、大学というものと、実務といいますか、そういうものの協調といいますか、そういう方向を目指していると思いますが、もう一つ、法科大学院構想というものがございますね。これも、大学あるいは大学院と実務の結びつきをもっと強めていこうという流れの中にある現象ではないか、こう思うわけです。
 司法改革の中で、事前に行政指導で何か余り紛争が起こらないようにしようという社会から、規制緩和をして事後的にチェックしていこうということになると、どうしても司法の基盤というものを充実しなきゃならない。そのためには、いわゆる法曹、法律家の数もふやさなきゃならないし、従来のような司法試験では対応できないだろう。こういうことで、司法試験の一発勝負ということではなくて、プロセスで教育をし、評価をしていく仕組みに改めよう、こういうことではないかと思うんですね。
 一方、しかし、プロセスで評価するということに対して異論もあって、そういうことにすると、やはりロースクールというところに行って、かなり学費をかけて行かなきゃ法律家になれないんじゃないか、それ以外の、今までのように司法試験だけ、司法試験に受かったら法律家になれるという道も残しておいてくれ、こういう議論もあって、今、両方の路線が並行した制度になるように思うんですけれども、私はやはり、ロースクールというものができます以上は、確かに、司法試験を受けてそれだけで、はい、法律家になるという人がいてもいいとは思いますけれども、やはりロースクールというものの教育がすぐれていて、そこがメーンストリームになっていく、プロセスで評価していくということにならないと、この改革は余り成功しないんじゃないか、こう思っております。
 そういう意味で、今いろいろ制度設計をしていただいているわけですが、私も法学部を出たわけですが、昔は、大きな教室に何百人もほうり込んでマイクで講義をして、まあ随分金かけずに教育されたなあという思いもあるわけです。やはり小人数で、実務にたえられるように教育していこうということになりますと、かなり学費もかかるだろう。そうすると、金がなきゃ法律家になれないというのもまずいですから、やはり奨学金を充実していただくとか、それから、今まで大学というのは必ずしも実務との連携が、法学部というのも実務的な学問でありながら必ずしも実務との連携が十分でなかったということを考えますと、もうロースクールの開設まで時間はわずかでございますけれども、実務に通じたスタッフ、教官というものをどう養成していくか。余り時間はないんだろうと思うんですね、ぜひその辺も詰めてやっていただきたいと思っております。
 それと、この法科大学院構想というのは、高度な専門家、職業人というものをポストグラデュエートのところで育てようと。日本はどちらかというと大体、今までの学部で完結して、大学院はむしろ研究者の養成である、実務との結びつきというのは余りない制度設計になっていたと思うんですが、こういう法科大学院みたいなのが出てまいりますと、プロフェッショナルはやはり大学院で育てるんだという流れがだんだん広がってくるんだろう。多分、アメリカのように、ビジネススクールだ、あるいは行政の大学院だとかいろいろなものが今後広がってくるのではないかな、そのトップバッターが法科大学院ではないか。
 そういうことになりますと、では、今までの学部は一体何をするところなんだというような整理も必要だと思います。それから、法科大学院でいわゆる裁判官とか弁護士とか検察官というものの養成のルートはできるわけでございますが、士業というのでしょうか、公認会計士とか税理士とかあるいは司法書士とか、いろいろな法律あるいは実務に関係する資格があるわけでございますけれども、そういうものの養成はどうしていくのか。さらには、行政官等の養成はどうしていくのか。こういうような問題に見直しを迫る改革になっていくのではないかなというふうに私は感じておりますので、相当いろいろな議論をしていかなきゃいけないんじゃないか、こんなふうに思うんです。そのあたりをどうお考えかということを聞かせていただきたいと思っております。
岸田副大臣 我が国の大学院は、従来は研究者養成の場という性格が非常に強かったのが事実であります。しかしながら、今先生御指摘になられましたように、近年、専門職業人養成への期待の高まりを受けて、今までも、各大学におきまして職業人養成あるいは再教育を目的とするコースを設けたり、あるいはいわゆるビジネススクールなどの専門大学院の設置、こういったことも従来までも進んできたわけですが、今回、昨年六月、司法制度改革審議会の意見としまして、法曹養成制度の中核として法科大学院を設ける、従来の点による選抜からプロセスによる養成という形に変えていくという提言がされたわけであります。
 この提言は、一つには、司法制度改革ということにとどまらずに、我が国の大学制度、特に社会科学系の学部とか大学院全体の改革に大きく影響を与える提言だというふうに考えております。だから、大学制度全体にとって重要な、意義あることだというふうに思っておりますし、また事実、社会的にも、こうした構想が発表されまして、ことしあたりから法学部志望の受験生がふえているというような社会的な現象も報じられているというようなことで、法科大学院構想というもの、これは大変大きな影響のあるものだというふうに思っております。
 そういったことから、今、中教審におきまして、法科大学院部会というものを設けて議論をしているところであります。十六年四月が学生受け入れの初めというふうに今予定しておりますが、それまでの間、こうしたさまざまな場面で今先生御指摘になられましたいろいろな点を議論していかなければいけないというふうに思っています。予算との関係あるいは講師の問題等、内容の問題等、いろいろな点をこうした場でしっかり詰めた上で、さまざまな関係者の意見を聞きながら、また関係機関とも十分連携しながらこの問題をとらえていかなければいけない。こうした重要な意義をこの制度改革に感じているところでありまして、そういった思いでこれからも努力していきたいというふうに思っております。
谷垣委員 ぜひ詰めて制度設計をやっていただいて、広範な議論を巻き起こしていただきたいと思っております。
 それから、ちょっと大学教育とかわりまして、ちょっと私もどういうふうに考えたらいいのか迷っている問題について御質問をしたいと思っているんですが、それは、宗教教育というものをどう考えるかということでございます。
 先日、中央教育審議会の「新しい時代における教養教育の在り方について」という答申が二月二十一日付で出まして、私も早速、まだ眼光紙背に徹するほどは読んでおりませんが、ぱらぱらと読ませていただきますと、きょうの日経新聞を見ますとレトロだなんて書いてありましたが、少し基礎に戻ってもう一回きちっとやるかというような感じがにじみ出ていて、私は方向としては結構なことじゃないかと思っているんです。
 では、この中で宗教について触れられたところを見ますと、大体やはり、グローバル化した中で、外国、いろいろな異文化の方々、自分たちと違う価値観を持つ人たちと交流をし理解を進めていくためにはいろいろなことを考えていかなきゃならないけれども、その背景にある宗教というものをやはり理解していないとなかなかグローバル化に対応できないんじゃないかという問題意識がここにあるように思うんですね。
 私もそれは確かにそうだろうと思います。いろいろイスラムの、ではイスラムというのは一体どういう宗教なのかと、我々は余りよく知りませんけれども、そういうことがある程度理解できていないとなかなか対応できないのかなということがございますし、確かにそうだと思うんですね。
 では、しかし、そういう認識を学校教育の中でどうやっていくのかということになりますと、なかなか、憲法二十条やあるいは教育基本法の中で制約があるのではないか。もちろん教育基本法の基本精神は、宗教に対する、言ってみれば寛容の精神というものを背景としていると思いますので、この答申が取り上げているような宗教教育というのが禁じられているというふうには私は思っていないんですね。
 ところが、この答申を見ますと、私ちょっと、やや及び腰だなという気が正直言ってするんです。外国、他者、違う価値観を持つ方の理解のためには背景となる宗教を理解する必要がある、こう書いてあるんですが、では、我々日本人が世界の中に出ていって異文化の方といろいろ接触するときに、我々の足元はどうなんだと。やはり、我が日本を育ててきたのは仏教ではないか、あるいは神道ではないか、あるいは儒教的な精神というものがあるんじゃないかということを考えますときに、人のことばかり理解するけれども自分のことはわかっていないというのも、何かちょっとどうかねという気がするわけでございます。
 こういう問題意識を私は前から持っておりますのは、例えば青少年の凶悪犯罪なんかが起きますときに、いろいろな論評が行われますね。そういうときに、例えば、なぜ人を殺しちゃいけないのかということに対して、正面から答えられないなどという議論があったりするわけですね。
 これもやや極端な議論だとは思いますけれども、我々が高等学校時代に教わった孟子なんかを読みましても、井戸にいとけない子供がおっこちそうになっているときに、平気でいられる人はいない。やはり走り寄って助けようとする。「惻隠の心は仁の端なり」、こういうふうに書いてあったわけでございますね。やはり生命とか、生まれて、そして育って死んでいくというのを正面から引き受けてきたのは宗教でないかというような気が私はしておりますが、しかし、それを学校教育の中でどう取り上げていくのかは非常に難しいなと。私自身も、どう考えていいのか迷ってまいりました。
 だけれども、ちょっと及び腰でないか、そういう感じがするものですから、そのあたり、どうとらえておられるのか。ちょっとこれは、実は質問通告していなかったんじゃないかなという気もするのですが、何かお考えがありましたら、お聞かせいただきたいと思っております。
岸田副大臣 我が国の国公立の学校におきましては、憲法あるいは教育基本法、こうした法律によりまして、特定の宗教のための宗教教育その他の宗教的活動を行うこと、これは禁止されているわけでありますが、しかし、今先生から御指摘いただきましたような国際理解、さらには、日本人自身が自分自身を見詰める上において、宗教的な情操、こういったものは大変大切な、重要な事柄だというふうに思っております。ですから、この宗教的な情操を培うということ、これは大変大切なことだととらえなければいけないと思っておりますし、こうした情操を育てるための施策、これは進めていかなければいけないというふうに思っております。
 そして、今御指摘になられました二月二十一日の中教審の答申でありますが、この答申の中身「異文化を体験する活動の充実」ということで、特に高校生の段階での「宗教を含めた諸外国の文化を理解するため」という形でこの宗教の問題は取り扱われているわけでありますが、この答申の中でも、「指導事例集の作成も求められる。」というようなことになっております。
 こういったことも踏まえまして、文部科学省としましては、国立教育政策研究所教育課程研究センターというところで作成を予定しております国際理解教育指導事例集、この中・高等学校編、この事例集におきまして、宗教を含めた諸外国の文化を理解するための事例、これを取り上げるということを今検討しておりまして、今、センターの方では作成を進めているというところでございます。
 こうした動き等も通じまして、宗教的な情操を培うということ、こういったことの大切さをしっかりと訴えていきたいというふうに思っております。
谷垣委員 なかなか難しいテーマでございますが、御答弁ありがとうございました。
 そこで、今度は、昔は文教委員会と科学技術委員会というふうに分かれておりまして、科学技術の質問も随分あったんですけれども、文部科学委員会になってから科学技術に関する質問が、私も時々居眠りしているせいなのかもしれませんが、余りなくて寂しいなと思っておりまして、私はきょうは科学技術に関して御質問しようと思って来たんですが、大分その前のところで時間を使ってしまいまして、あと残された時間はわずかなんですが、科学技術について御質問をさせていただきたいと思います。
 今、我が国の財政も大変厳しいところですけれども、しかし、科学技術については相当配慮した予算を組んでいただいていると思っているわけなんですね。第二期の科学技術基本計画の中で、政府の研究開発投資、これは地方、政府も含めて、今後五年間で二十四兆やっていくんだという大きな目標を立てていただいております。最初の第一期目の十七兆も、途中では本当に十七兆いくかなと思ったけれども、補正予算や何かで十七兆いったわけでありますが、今度のこの二十四兆の規模というのは、科学技術予算がかなり優遇されているとは思うんですが、今の財政事情を見ると、そう簡単なことでもないと思うんですね。
 ですから、ぜひ文部科学省として、科学技術関係経費の約三分の二を所管しておられるわけですから、頑張っていただかなきゃならない。その辺のお覚悟を聞かせていただきたい、こう思っております。
遠山国務大臣 本当に科学技術、これから非常に大事だと思っておりまして、我が省といたしましては、研究者の自由な発想に基づく基礎研究、それからライフサイエンスとかナノテクノロジーとか、ああいう重点分野について重点的に投資していくこと、あるいは、国家的な重要性を持っている宇宙とか原子力、そういうようなことをさらに推進していくこと、それと同時に、そういう研究環境を整えていくなどいろいろな課題がございます。
 しかし、これはまさにやるべきでありますし、また、やって初めて日本の科学技術創造立国が可能かと、こう考えているわけでございます。
 平成十四年度予算案におきましては、大変厳しい財政状況の中におきまして、文部科学省の科学技術振興費を対前年度比七・六%増の七千五百二億円計上させていただいているところでございます。
 お話のように、トータルで十三年度から十七年度までの政府研究開発投資の総額の規模を約二十四兆円とすることが必要とされているわけでございます。今年度は補正予算もあったりしてある程度の額を獲得することができましたけれども、これからの財政状況を考えますとなかなか厳しいとは思いますが、先生方の御支援もいただきまして、ぜひともこの計画の額は達成したいというふうに今考えておりますので、御支援をお願いいたします。
谷垣委員 科学技術に関心のある議員がバックアップして、何とか遠山大臣の後押しをしたい、こんなふうに思っております。
 いろいろ科学技術として力を入れていかなきゃならないところはたくさんございますが、基礎研究というのはやはりいつの時代でも大変重要なことだろうと思います。大臣の所信の中にもございましたが、名古屋大学の野依先生が去年ノーベル化学賞を受賞されまして、白川先生に続いて二年連続ノーベル賞受賞者が出たということは大変うれしいことだなと思っておるわけですが、そういう基礎研究というのはあらゆる科学技術の基盤でございますし、それから、革新的な原理や技術など将来のシーズを生み出していく一番重要なものだと思います。その基礎研究の推進、充実にどういうふうに取り組まれるのか、そのあたりをお聞かせいただきたいと思います。
青山副大臣 今御指摘のように、基礎研究は、ノーベル賞を受賞されました白川、野依両教授の研究成果に見られますように、人類の知的資産の拡充に大きく貢献してきました。
 同時にまた、経済を支える革新的技術などのブレークスルーをももたらすもの、そういう評価に対しては、科学技術基本計画や科学技術・学術審議会建議においても、その重要性を認めて、指摘しているところでございまして、文部科学省といたしましても、大学共同利用機関における独創的、先端的な研究を推進する、また、科学研究費補助金や戦略的創造研究推進事業等の競争的資金を拡充していくことに努めてまいりたいと考えております。
 そういう意味で、基礎研究の成果について広く国民の皆様に御理解をいただいて、国民の理解の中で基礎研究の拡充に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
谷垣委員 そこで、いわゆる重点四分野について伺いたいと思うんですが、第二期の科学技術基本計画では、もう言うまでもございませんが、ライフサイエンス、それから情報通信、それから環境、ナノテクノロジー・材料、この四分野を重点分野としているわけですね。
 この中で、ライフサイエンスは、国際的な競争も大変厳しいですし、新薬開発とか医療技術革新といった国民生活に直結した成果が期待できるところだろうと思うんですね。そこで、その推進のためにどういうことを考えておられるか。
 それからもう一つ、ナノテクノロジーですね。このナノテクノロジーは、単に微細なものを扱うというだけではなしに、これからの科学技術の、いわばインフラといいますか、あらゆる部門にこのナノテクノロジーというものが私は必要になってくるだろうと思います。アメリカでも、クリントン政権のときに教書を出して、戦略的にやっていこうというようなことになって、日本がかなり優位性を保ってやってきたのをひっくり返そうというような気持ちもあるんだろうと思いますが、このナノテクノロジーも大変重要だと思っております。
 全部の分野を申し上げたいのですが、もう時間がありませんから、ライフサイエンスとナノテクノロジーの今後の推進の取り組みについてお話をいただきたいと思います。
青山副大臣 ライフサイエンスの重要性については御指摘のとおり、御承知いただいておると思いますが、まさに二十一世紀は生命科学の世紀と言われておりますように、国としても積極的に取り組んでいくつもりでおります。
 そこで、特に、昨年二月にヒトゲノムの解析が行われました、世界的に。そういう段階ですから、現在ではポストゲノム研究が加速されておりまして、この分野においても、重点的に投資を行っていく分野だというふうに考えております。
 それから、もう一点のナノテクでありますが、政府全体のライフサイエンス関係、それから科学技術の新たな領域を切り開くとともに、幅広い産業の技術革新を先導するもので、この研究分野を戦略的に、積極的に取り組んでいこうと考えております。
 具体的に申し上げますと、科学技術振興事業団の競争的資金を活用した、十年後、二十年後の実用化、産業化を展望した戦略的な研究を推進してまいります。それから、産学官で行われております研究活動を効果的に、効率的に推進するために、大型施設等の外部研究者への利用機関を提供していくという意味で、総合的な研究支援を行うナノテクノロジー総合支援プロジェクトの創設を初めとした取り組みを行う考えでございます。
谷垣委員 まだいろいろ聞きたいことがあるんですが、もう時間が来てしまいましたので、最後にITER、ITER計画について伺いたいと思います。
 ITERにつきましては、現在、政府の中で、その参加あるいは誘致の是非について検討が行われているというふうに承知いたしております。大変これは長い時間がかかって、今までも時間をかけて推進してきたものでございますが、これからも相当、何十年という単位で取り組まなきゃならないものでございますし、費用負担というのも多額に上るわけでありますけれども、いろいろな議論はもうあれしますが、やはり将来のエネルギー源としてきちっと取り組むべきものではないかな、私はこういうふうに思っております。
 私自身は、やはり日本に誘致をして、そしてしっかりと日本の中でこの新しい将来のエネルギーがいろいろな技術を蓄積するということにつながっていってほしい、こういうふうに思っているわけですが、やはり同じ核融合研究者の中でも、あるいは原子力関係の中でも、予算をどう配分するかとかいろいろな複雑な思いがあるんだろうというふうに思います。
 私は、ぜひこれを実施して前向きに取り組んでいただきたいという気持ちから、このITERに取り組むお考えを伺いたいと思っております。
青山副大臣 核融合は究極のエネルギー源の確保、人類共通の目的、目標、この辺の御理解はいただいておるところでございますが、ITER計画を推進していく上で、我が国の参加と誘致については、国際動向をやはり十分踏まえていかなければならない。
 そういう意味で、昨年十二月に科学技術政策担当大臣と有識者議員によって考え方が示されておりますが、我が国がITER計画に参加することが望ましい、さらにこれを誘致することの意義がある、こういう考え方が示されました。また、政府は総合的な観点に立って参加ないし誘致を最終的に決定することが適当であるという考え方が示されております。
 そこで、総合科学技術会議において現在議論がなされておりますが、ITER計画を推進するに当たって、政府間協議が既に開始されておりまして、実施協定やサイト選定の手順については議論を進めているところであります。ITER計画への我が国の参加、誘致については、総合科学技術会議において検討されておりますその結果を踏まえて、対応してまいりたいと考えております。
谷垣委員 ありがとうございました。
 終わります。
河村委員長 次に、増田敏男君。
増田委員 与えられた質問が三十分であります。遠山大臣には初めてのお尋ねですが、時間が限られていますので、要領よくお答えをいただきたいな、こう思います。
 そこで、質問に入ります前に、二日ほどの新聞の記事を眺めまして、そのことから要請をひとつしておきたい、こう思います。
 一つは、東京新聞でありましたが、「「新指導要領はよくない」 大臣就任前に発言 「今は支持」と強調」こういうふうに書かれてあります。そこで、このことに関しては、述べられた所信に自信を持って今後この答えをしっかりと出してもらいたい、頑張ってもらいたい、このように申し上げます。
 もう一点は、これはけさの産経新聞であります。「教師増やし「不正受給」 国庫負担の数億円」こういうことが産経の一面に出ておりました。私は、このことを読みながら、これがどうだ、内容がどうだ、どういう見解を持つ、こういうようなことは、信頼する当局ですから、それぞれの機関がきちんと整理をして行政上きちんとした答えを出す、このように信頼をして成り行きを見たい、こう思います。
 私が申し上げたいのは、この内容ではないんです。
 組織というのは、信頼でもつか規律でもたせるか、どうしてもそういう形になります。私は今から二年ほど前に、この新聞に書かれたのは日本海側、その反対の太平洋岸で、有珠山の現地対策本部の責任者をいたしておりました。そのことを今頭に浮かべ、初めて私が、集めた、千数百人いたんですが、その識者を全部集めて訓示をしました。その訓示の第一声は、組織というのは、信頼でもつか、あるいは規律を守ってもらう、これでもつか、組織の命は規律なんだ、規律が守れなかったら、その人たちはきょう限り、私と一緒に仕事をすることができないからこれから現地から帰ってもらいたいということを言って就任をしていきました。
 そこで申し上げたいのは、あなたはこの国の教育のトップであります。自治体のこういう機関まで目を届かせろと言ったって無理でしょうが、ぜひ、組織の中で情報が上がり、指導が届き、方向が示せ、そして成果が期待できる、こういう方向により頑張るように、努力して心がけてもらいたい、これを要請しておきます。心がけてください。
 何でこんなことを言うかというと、質問の前なんで時間をとるわけにいきませんが、私も今のを心配した一人であります。きょうは新聞を持ってきましたので、新聞の中からちょっと申し上げるんですが、これは本年一月の朝日であります。
 これに書いてあるのは結局は、半世紀ほど前に生活経験を重視して教科を超えて活動する学習が学校教育に導入された、しかし、学力低下を懸念する声が起きて、間もなく姿を消してやがて詰め込み教育に入っていった、そして今度はゆとり教育に戻ってきた、だから同じことの、要するに振り子の揺り戻しであってはいかぬと。「憂うべきは子どもが勉強の意欲を失い、学習時間が減っていることである。 補習や宿題を増やすことは、教科の理解を助けるためにある程度は必要だろうが、それだけで意欲が高まり、学ぶ習慣が身につくとは思えない。」これが朝日の方であります。
 そして、その結びの方に、どの学校、どの子供にも当てはまるバランスというのはあり得ない、目の前の子供に何が必要かから考えて、ぜひ週五日制になったこの授業時間が減る中のバランスを保つように頑張ってもらいたいということが、これに書かれてあります。
 今度は産経の方は、「新年度からは、国語や算数など主要教科の授業時間が減った分、教師の裁量による「総合学習の時間」が創設される。」このようになるわけであります。「さまざまな不安を抱えながら、学習量三割減の学校教育が始まる。だが、これほど科学技術が求められる時代に、それに逆行するような教育政策をとっている国は日本くらいだ。指導要領の早期見直しに向けて、最も知恵を絞るべきは文部科学省ではないか。」と。これは産経の記事であります。
 そこで、初めに戻って、所信に戻って、だからこそ頑張ってください。これをまず強く要請をしておきます。
 それでは、時間をとってしまったから、質問に入りたいと思います。
 まず、教育改革についてであります。
 教育改革は国政の最重要課題の一つであります。遠山大臣も所信で述べられておられるように、人材・教育・文化大国の実現のためには教育改革が大きなかぎを握っていると申されております。私も同感です。
 思えば、戦後、混乱の中から教育制度はいち早く復興しまして、その後、国民の教育水準は向上をして、教育は我が国の経済社会の発展の原動力になってまいりました。しかしながら、昨今の教育の現状を見ると、社会の急速な変化についていくことができず、いじめ、不登校、校内暴力、学級崩壊、青少年犯罪が多発するなどし、国民や社会の教育に対する信頼も大きく揺らぐ結果となっております。
 教育は今まさに危機に瀕していると言っても過言ではないと私は思っております。思いやりの心、日本の文化、伝統の尊重など、日本人として持つべき豊かな心、倫理観、道徳心をはぐくむという観点からは必ずしも十分でなく、これらの背景には、少子化や核家族化や都市化の進展とともに、子供たちを取り巻く環境の著しい変化や社会全体のモラルの低下があると思っております。また、これまで子供たちに対人関係のルールを教え、自己規律や協同の精神をはぐくみ、伝統文化を伝えるといった役割を担ってきた家庭や地域社会の教育力が著しく低下したことも否定できないと思います。長年青少年の健全育成にかかわってきた者として、私はこのことを痛切に感じているところであります。
 小渕内閣が教育改革国民会議を発足して以来、森内閣、そして小泉内閣へと、教育改革の取り組みが進められてきておりますが、教育基本法の見直しを含め、これまで以上に迅速に、また抜本的な改革を進めていくことが極めて重要であると考えております。教育改革の基本的な考えをどのように認識されておられますか。改めてお尋ねをいたしたいと思います。
遠山国務大臣 日本が明るい未来を切り開くというためには、人がまず大事でございます。そして、日本人としての誇りと自覚を持って、新たなる国づくりを担うことができる、創造性豊かな人材を育成していくということが我が国の発展に不可欠なものであると認識いたします。同時にそれは、個人にとっても非常に大事なことだと思っておりますが。
 この四月から、全国の小中学校におきまして新しい学習指導要領が全面実施となります。その指導要領では生きる力と呼ばれておりますけれども、基礎、基本を確実に身につけた上で、みずから考え、主体的に判断して行動できる力や豊かな人間性を持つ、そういったことを基本的なねらいとしているわけでございまして、我が省といたしましては、このような教育の実現を目指して、今、二十一世紀教育新生プランを策定し、教育改革を推進しておりまして、引き続き着実に取り組んでまいりたいと思います。
 冒頭、ちょっとある新聞の記事について御指摘ございましたけれども、これは全くの間違いの記事でございまして、新しい学習指導要領について、東京新聞二十六日夕刊の見出しにあるような、新学習指導要領はよくないと、かつて私が民間にいたときに言ったということでございますが、私の物の言いぶりからいって、そのようなことを言うタイプでないということはおわかりいただけるのではないかと思いますけれども、学習指導要領のプロセスについてよく知っている者が、指導要領はよくないというようなことは申すはずがないわけでございまして、そのときは、ゆとりだけが強調されている事態を心配しているということを何人かの友人から聞いたので、そのことを文部科学省幹部に伝えたことがあるわけでございます。
 けさの新聞で、同紙で訂正であったということがきちんと出ておりますので、そのお話については御放念をいただきたいと思います。
増田委員 時間がありませんので、急いでお尋ねをするんですが、わかりました。所信にのっとって、頑張ってください。
 教育基本法について、次はお尋ねをいたします。
 教育基本法の見直しについてでありますが、我が国の教育は戦後五十有余年にわたって教育基本法のもとで進められ、教育は著しく普及し、教育水準は向上しております。しかし、教育基本法制定当時と社会は大きく変化をいたしまして、教育のあり方そのものが問われていることも事実であります。このような状況を踏まえ、私は、家庭、学校、地域社会の教育力を高めるため、それぞれが果たす役割を明確にし、次代を担う子供たちが夢や志を持てるような新しい教育のあるべき姿について考える必要があると思っております。
 教育基本法は我が国教育の基本的な理念を定めておりますが、個人を過度に尊重し公を軽視する風潮を助長したのではないか、日本の伝統と文化を軽視する結果を生んだのではないか等々の批判も一部にはありますが、遠山大臣は現行の教育基本法についてどのような評価をしておられるのか、問題点があるとしたらどこにあるのか、お尋ねしたいと思います。
遠山国務大臣 教育基本法は、昭和二十二年に我が国の新しい教育の基本を定める法律として制定されまして、教育基本法におきましては、個人の尊厳や、真理と平和の希求など、普遍的な教育の基本理念や教育の機会均等など、教育の基本原則について定めているものでございます。
 ただ、以来、我が国の教育は五十年以上にわたって進められているわけでございますけれども、その間、日本の経済社会の動きあるいは教育全般にさまざまな問題が生じるなど、教育のあり方そのものが問われていると思います。
 このような状況を踏まえまして、二十一世紀を迎えた今日に、新しい時代にふさわしい教育基本法のあり方を考えて、教育の根本にさかのぼった改革を推進するために、昨年十一月、中央教育審議会に「新しい時代にふさわしい教育基本法の在り方について」諮問を行ったところでございます。
 この見直しに当たりましては、そこに定められている普遍的な理念は大切にしながら、特に、新しい時代を生きる日本人の育成という観点、伝統、文化など次代に継承すべきものの尊重という観点から、現行法に不足しているものは何かなどについて幅広く検討を行う必要があると考えているところでございます。
増田委員 同じく教育基本法についてでありますが、昨年十一月に、今お話がございましたように、教育基本法のあり方について中央教育審議会に諮問されました。さまざまな議論が中央教育審議会の場でなされていると思います。何回か会議を持たれているようでありますが、諮問の趣旨に沿って進んでいるのかなと、あるいは本年末を目途にまとめたいというような方向で動いていると聞いておりますが、進捗状況はいかがでしょうか。
 それから今度は、二つ諮問してありますもう一つの方の、教育振興基本計画の関係なんですが、中長期的な教育目標や教育改革の基本的方向、政府の施策及び教育投資のあり方等を明示する教育振興基本計画の策定の趣旨、及び教育基本法との関係はいかがになっていましょうか。お尋ねをいたします。
岸田副大臣 済みません、最初の進捗状況等につきましてちょっと申し上げさせていただきます。
 中教審におきまして、昨年十一月諮問を受け、今現在御審議をいただいているところでありまして、御指摘のように、おおむね一年程度を目途に答申を受けることとなっております。現在まで三回総会を開催し、そして部会を設けて、今、具体的な検討を行っているところであります。
 内容につきましては、教育振興基本計画の検討を先行させつつ、新しい時代に必要とされる教育の目標あるいは教育改革の基本方向、こういったものにつきまして活発な意見交換をしているというふうに聞いております。
 いずれにしましても、この教育基本法の議論は、国民の幅広い理解や議論、これが重要だと思っておりますので、今進んでおりますこの中教審での議論、これを中心としながらも、ぜひ幅広い議論を深めていかなければいけない、このようにこの中教審の議論の位置づけを考えているところでございます。
 後半につきましては、政府参考人の方から申し上げさせていただきます。
近藤政府参考人 お答えをいたします。
 教育振興基本計画策定の趣旨でございますが、教育改革を着実に実行し、新しい時代にふさわしい教育を実現するためには、教育を振興し、改革していく基本的な方向と具体的な目標を明示するとともに、これを踏まえた教育施策の総合的かつ計画的な推進を図るということが必要でございまして、そのための教育振興基本計画の策定につきまして、昨年十一月に中央教育審議会に諮問をしたところでございます。
 また、教育振興基本計画と教育基本法との関係についてのお尋ねでございますが、教育振興基本計画の策定は、教育基本法の基本理念等を実現していく手段として大変重要であると考えておりまして、ほかの多くの基本法と同様、その根拠となる規定を教育基本法に設けることにつきましてもあわせて検討する必要がある、このように考えているところでございます。
増田委員 続いてお尋ねをいたしますが、教育基本法の見直しに当たって、教育は国家百年の計であるとの認識に立って、我が国の将来を見据えた人づくりに向けての遠山文部大臣の考え方や何かは先ほど来伺いました。改めて決意を聞きたいと思ったのですが、それはもうわかりましたから、結構です。
 そこで、次に進みますが、学校週五日制における社会教育の役割と、児童生徒の学力低下を防ぐための文部科学省の具体的な施策について。
 私は、完全学校週五日制の課題の一つに、子供たちのさまざまな活動機会や場の拡大の問題があると考えております。土曜日が休業日になることにより、本当に子供たちの教育が充実したものになるためにはどうしたらよいのか、このことに答え、目に見える結果を示すことができなければ、週五日制の掲げる理念も理念だけで終わってしまうと思います。その意味において、教育改革はまさに正念場にあるのではないでしょうか。
 子供たちのさまざまな活動機会や場の拡大のために社会教育が果たすべき役割は大きいと思いますが、具体的にどのように進められておられるのか、お考えをお尋ねいたしたいと思います。
 続いてやります。
 また、新しい学習指導要領において、みずから課題を見つけ、問題を解決する能力を育てることを目的とする総合的な学習の時間が実施されることなどから、今後においては、これまで以上に、保護者や地域の専門家などの人々を初めとする外部の人材の協力を得たり、地域の教材や学習環境などを積極的に活用することが重要となると思います。このような地域における受け皿の整備状況について、文部科学省に見解があったらお聞かせいただきたいと思います。
岸田副大臣 まず、学校週五日制における社会教育の重要性についてのお尋ねをいただきました。
 今、完全学校週五日制が実施され、土曜日をいかに過ごすかということが大変大きな議論になっております。その中にあって、この新しい体制というものは、学校のみならず、家庭、地域それぞれがそれぞれの役割を果たし、それを支えていかなければいけないというふうに思っておりますし、その中にあっても、特に社会教育の重要性は、御指摘のように強く感じているところであります。
 そういったことから、従来までも、平成十一年度から三年間にわたりまして、全国子どもプラン緊急三ケ年戦略と称しまして、関係省庁と連携しながらこうした活動を支える体制の整備に努めてきたところでありますし、また、平成十三年度においては、民間団体が実施するさまざまな体験活動、これへの支援ということから子どもゆめ基金を創設いたしましたし、また、社会教育法の改正、こういったものも行いまして、さまざまな社会奉仕体験活動あるいは自然体験活動、こういったものの充実を図ってきたところであります。
 そしてさらには、平成十四年度にあっては、子ども放課後・週末活動等支援事業、さらには学校内外を通じた奉仕活動・体験活動推進事業、こういった予算項目を挙げて、こうした社会教育の充実に努めているところであります。
 こうした新しい体制を支える大きな柱として社会教育を位置づけて、これからも充実に努めていきたいと思っております。
 また、もう一つ、総合的な学習の時間について御質問がございました。
 各教科等で学ぶ知識や技能を体験的な活動の中で時間を持って理解し、そしてそれを実生活に生かし、そしてそれを総合的に活用していく、こうしたことがこの総合的な学習の時間のねらいとされているわけでありますが、こうした総合的な学習の時間のねらいを実現するために、実生活に即したさまざまな学習活動を充実させること、そして、その地域のさまざまな学習機関等を活用するということは大変重要だというふうに考えております。
 そういったことから、特別非常勤講師を活用する学校いきいきプランの推進、これは現在進めているところでありますし、また平成十四年度予算におきましても、科学系博物館教育機能活用プロジェクト、こうしたプロジェクト等によって地域にありますさまざまな施設を活用する、そういったことによって総合的な学習の時間の充実に努めていきたいと思っております。
増田委員 時間が来てしまいますので、予定したことが半分も運びませんでしたが、まとめて私の考えを含めながらお尋ねを最後にしたいと思います。
 二十一世紀を迎えながら、これからの我が国と世界は、これまで以上に厳しい、激しい変化に直面すると思われます。そのような中で、今後の社会を担う児童生徒が主体的、創造的に生きていくためには、一人一人の児童生徒が確かな学力と人間形成の基本を身につけることが私は重要であると考えております。本年四月からの完全学校週五日制の導入と新しい学習指導要領の実施に関しては、この点に留意をされ、学力低下が生じないように、文部科学省において万全の取り組みを期待いたしたいと思います。
 それから、教育を私は三つに考えて、いろいろ今日まで眺めてまいりました。学校教育、家庭教育、社会教育と、このようにとらえてきたわけでありますが、まず家庭教育についてでありますけれども、私は今でも、教育の基本は家庭にあるだろう。最近、子供をどのように育て、しつけたらよいのかわからず、悩みを抱え、親の責任である家庭教育をあきらめてしまうケースもあると聞いております。心の教育を推進するためには、各家庭でのしつけや子育てのあり方を見詰め直す必要があります。ぜひ、家庭教育を充実するために、ますます支援を深めながら取り組みを強めてもらいたい、このように考えを持っております。
 そこで次に、青少年の社会環境の中の一部なんですけれども、青少年を取り巻く有害環境対策についてですが、青少年を取り巻く環境は、日々悪くなる方向ではないのかな、年々悪くなる方向ではないかな、このような懸念を実はいたしております。
 学校や、こう言うと恐縮なんですが、家庭での教育について先ほど来質問をしてまいりました。今、これで三つ目に入ったところですが、教育の問題はそれだけではなく、社会全体の問題であるというようなことは当然であります。私たち大人一人一人がこの点に立って、自覚を持ち、健全な社会の構築を、心豊かな青少年の育成を行うことが大事だと心に期して行うことが大切だと。
 例えば、高度情報化社会の進展を反映しまして、その影の部分として、さまざまなメディアにおいて青少年に有害な情報がはんらんしています。性や暴力などを取り上げた好ましくない図書や番組が余りにも多く、これらが無規制に提供され、未熟な青少年が簡単に手に入れることができる状況にあります。このような青少年を取り巻く有害環境対策についてやはり真剣に取り組んでいかなければならない、このように思うところであります。
 そこで、お尋ねしたい点なんですが、私の少年時代にはグローバルという言葉はありませんでした。だから、この国内で教育を受けるにしても、人、物、お金、そしてその次にこのものがどういうふうになるかということで来ました。それが戦後になって、今度はグローバル時代になりまして、今は、情報をとろうとすれば国境なくどこでも行き交いできる、人に物にお金に情報に技術、こういうものはすべて国境なく行ったり来たりができる時代になった。それは国境もなく、インターネット等メディアを使えば十分に活用することができる状態が来た。
 こういうことを考えると、私は、社会教育、家庭教育、学校教育、この三つをとらえてみて、文部大臣以下、行政上、学校教育に一生懸命幾ら取り組まれても、家庭教育の中にどれだけ入っていけるんだろうな、社会教育の中に大臣の権限が及びませんから、どれだけ有害な環境を排除するようなことに取り組んでいくことができるのかなと。その辺が、もう大変難しい問題を含みながら、私にとっては、何とかある程度解決をしていかなければ、次代を背負う子供たちの未来、こう考えたときにやはり悩みが残るところであります。
 そこで、これは大臣にお伺いするんですが、行政上、文科省あるいは各教育委員会、一生懸命やっているのは結構ですから、これはこれで引き続いてやってもらいたい。家庭教育の中に何とかアプローチできる方法はないのかなと。
 もう一つ、社会教育に対しては、何とか縦割りでなくて全体で取り組んで、もう少しこの国の姿を直すことができないのか。子供たちを見て、日本の子供たちもここまで来たのかな、こういう心配が起きないように。
 時間がないのでこれで、中途ですが、お答えがあったらお願いしたいと思います。
遠山国務大臣 一言だけでございますけれども、これからの世代に生きていく、あるいは次代を担う子供たちの育成は、単に学校だけでは決して、豊かな人間性を持ち、かつ、確かな学力を持った、生きる力を持つ子供たちを育てていくというわけにはまいらないと思います。やはりそこは、家庭と地域社会と学校とが一体になってやっていく必要があるわけでございまして、これまでも、教育委員会の仕事の中に家庭教育をサポートするいろいろな予算あるいは事業もやっておりますし、社会教育、あるいは生涯教育という角度ですけれども、いろいろな施策も行っております。決して文部科学行政が学校だけをやっているわけではございませんが、しかし、学校を中心としながら、むしろ学校が開かれた存在として保護者あるいは地域との連携をとっていく、そして一人の子供がしっかりした内実を得て成長していくように協力し合っていくというのが本当の教育の姿であろうかと思っております。その方向で頑張ってまいりたいと思います。
増田委員 時間ですので、終わります。
河村委員長 次に、中野寛成君。
中野(寛)委員 久しぶりにお尋ねをいたします。
 日本の教育というのはよくなっているんでしょうか、悪くなっているんでしょうか、さっぱりわかりません。いわゆる学校の荒廃であるとか出てきた事件の現象などを見ると、本当に日本の教育というのは大変な危機を迎えているな、こう思います。
 しかし、あらゆる事象が本当は時代とともによくなっていかなければならないはずです。日本の教育の問題も、中教審、臨教審、そして私的諮問機関に至るまで、いろいろな審議機関が検討をし、そしてその答申を受け、文部省もまた文部科学省も大変な努力をしてこられた。そして、現場の皆さんも努力をしているはずです。しかしながら、不登校だ、やれ学校の荒廃だ、事件だ、学力低下だと、単に我々は危機感をあおっているだけなんでしょうか、現実はどこかよくなっているんだろうか、そういうふうに本当に疑問を持たざるを得ないのです。
 きのうの大臣の所信表明をお聞きいたしました。「教育改革を推進していくためには、子供たちの確かな学力の育成と心の教育の充実が極めて重要です。」私は、教育改革を推進していかない場合でも、確かな学力の育成と心の教育の充実は、これは教育の原点で、当然のことだろうというふうに思うのです。しかし、あえてそれを述べながら教育改革を推進していかなければならないとされる文部科学大臣の現状認識と危機感というものを、そこに読み取れるような気がしてなりません。
 一方、教育等の振興は未来への先行投資だというふうにも述べておられます。未来への先行投資、間違いではないのです。私はこれは、例えば予算審議などではそうだろうと思います、お金の面では。しかし、私は、未来への先行投資と言っているほど、ベースとして考えれば、のんびりしたことを言っているときではないのではないか。むしろ、教育などの振興または教育改革は、まさに今日本が抱えている最大の危機管理だと言わなければいけないのではないかというふうにも思うのです。
 そういう意味で、まず具体的な質問に入りますまでに、大臣のきのうの所信表明をお聞きした中でそういうことなどを感じましたので、ぜひ、大臣の御所見をもう一度お伺いしておきたいと思います。
遠山国務大臣 大変根本的な問題を提起していただいたと思います。
 すべての社会事象について、本当にそれがどういう姿で、どういう評価を受けるべきかというのは、本当にわかりにくい面がございます。日本の経済の状況にしても、あるいは日本の今のいろいろな産業の状況にしても、それから教育の問題にしても、社会事象というのを本当にとらえていくのは、何を問題として何を解決しようとしていくのかというのは、大変難しい問題であろうと思いますけれども、しかし、教育については、そのような難しい中にあっても、やはり変転する、非常に変化の激しい社会の中で、未来を生きる子供たちをどうしていくかということについては、やはりおっしゃいましたように、確かな学力、それから豊かな人間性を持った、心の教育をしっかり与えた子供たちであってほしいという願いは国民共通ではなかろうかと思います。
 もちろん、教育は普遍の部分もございますし、これまでやってきたことが非常にその効果を上げてきたという点もございますけれども、やはり、このように激しく世の中が変化をし、また国際的な動向にも注意を払っていかなくてはならない。科学技術もどんどん発達をしていく、情報量も、過剰なと言えるぐらい多くなって私どもの身の回りを取り巻いていく、そのような中でしっかりと生きていってもらうにはどうしたらいいかということの基礎を与えるのが学校教育ではないかということで、今日の教育改革に取り組んでいるわけでございます。
 さまざまな理想とかさまざまな考え方があろうと思いますけれども、しかし、たまたまことしが新しい学習指導要領の実施に移る年であるということ、それから、昨年、二十一世紀教育新生プランも立てて、そういう大きな目標を持って教育改革に取り組んだ年であるということでその動きを加速させていく、そのことが非常に大事ではないかという考えのもとに所信を作成し、ここで述べさせていただいたところでございます。
中野(寛)委員 本当は、きのうの大臣の所信表明、実はもう少し遠山イズムが出てくるかと思って期待をいたしておりました。ところが、何か随分とメニューをたくさん並べられたなというふうに思いまして、民間出身の女性大臣ということで大変期待をされているのですが、きのうのだけ見ていると、民間も、途中は民間的なところへ行ったかもしらぬがやはり官僚の中の官僚を代表する大臣みたいになってはいかぬなと思って、むしろ、ぜひ遠山イズムを大いに教育、科学の世界で出してもらいたいなという期待を持つのです。
 役所の皆さんとのおつき合いの仕方はもう既に心得ておられるわけですから、言うならば、前に向いてどんどん前進できるお立場にあるはずだな、こう思うんですね。別に田中眞紀子さんのことを言う必要はありませんけれども、そういう意味では対照的な存在でもあるんだろうと思うので、大いに建設的な大臣になってもらいたいというふうに思います。
 さてさて、それで、今の増田委員の御質問にもありましたが、社会教育や家庭教育に期待するというお話がありました。この場ではいつもよく言われることですが、教育の場として、学校、家庭、そして地域社会、これが三位一体となって、こう言われるのですが、私は、三位一体とならなくても、そのうちのたとえ一つでもしっかりしていたら子供たちは幸せになれると思っているのです。今は三つともだめだから、このような状況になってしまっているのではないのか。
 その中で、しかし、学校の果たす役割は大きいなと。なぜかといえば、それは教育のプロ集団だからです。そして、家庭に対しても社会に対しても、教育のリーダーシップを発揮してもらいたい。それだけに、学校の果たす役割というのは極めて責任が重大なのだというふうに申し上げたいわけです。
 そのときに、しかしもう一度原点に返って考えると、教育というのは、本来は親から子へ、先輩から後輩へつなぐものだったのですね。それをフォローするために学校というものができたのだろうと思うんです。よって、家庭教育というのはまさに教育の原点、しっかりしなければいけない。ただ、問題は、今その家庭教育、子供を教育する、子供が接する最初の教師である親が一番問題を抱えているのではないのかしら。
 文部科学省は、家庭教育力活性化事業というのを初めて計画をされました。これは、厚生労働省との関係があるとか総務省だとか、いろいろあるのかもしれませんが、私は、遠慮なく、ぜひこの事業を積極的に進めてほしいと。むしろ遅きに失したとさえ思っているのです。
 前回質問しましたときに、スウェーデンの、言うならば妊娠したときの親に対する社会教育の場というか、みんなが、そこの親たちが集まって勉強をする、そういうシステムがあるということを申し上げましたけれども、そういうことなども含めて、ぜひしっかりと頑張ってもらいたいと思うのですが、これは文部科学省としては新しい事業ですので、その意気込みをお聞かせいただきたいと思います。
遠山国務大臣 中野委員御指摘のように、家庭教育はすべての教育の出発点だと思います。その家庭の中で、子供が幼いときから、順次、自制心とか自立心、あるいは他人に対する思いやり、あるいは善悪の判断など、時に応じてきちんとしつけてあれば、私は、今の子供たちが時に起こしているあのような問題というのは起きないのではないかと思うくらいでございます。
 もちろん、学校が教育のプロ集団と今おっしゃいましたけれども、そういうところでしっかりと心の問題も扱っていくというのは大事でございますけれども、親がしっかりしてもらうということが本当に子供にとっては一番幸せであるわけですし、生き方の基本を学ぶということで大変重要であると思います。
 そのようなことから、御指摘のように、文部科学省といたしましては、家庭教育力活性化支援事業を新たに策定いたしまして、来年度の予算でも二つ新しいことを始めます。
 一つは、妊娠期子育て講座でございます。これは、両親学級、母親学級等の機会に実施するわけでございますが、全国約三千カ所で行おうといたしております。それから、思春期の子育て講座は拡充をし、また、就学児健診等子育て講座については継続をしていく、これが子育て学習の全国展開を図るものでございます。
 もう一つの柱といたしまして、子育て支援ネットワークを充実しようという施策がございます。これは、子育てサポーターをふやしていくということで、今日、全国で九十四カ所でございますが、これを全国百八十八カ所、千八百八十人までふやしていこうということと、新たに家庭教育アドバイザーを全国百八十八カ所、五百六十四人お願いをして、親のいろいろな悩みに対してアドバイスをしていく。
 これはかなり積極的な行政のあり方ではないかと思いますけれども、そういうことで、親の悩みにも答えながら、アドバイスをしながら、しっかりとそれぞれの保護者がみずからの家庭内における教育をやっていただくように、これからも力を尽くしてまいりたいと思っております。
    〔委員長退席、鈴木(恒)委員長代理着席〕
中野(寛)委員 これも、縦割り行政にならないように、ぜひ御努力いただきたいと思います。
 例えば全国の保育所、これは子育ての支援センターとか、いわゆる保育所で子供を預かるというのだけではなくて、保育所に預けていない、家庭で子育てしている、しかも専業主婦であったりお母さんがする、そういうところも、お母さん自体は核家族化の中で困っているというケースは多いわけです。ですから、文部科学省、厚生労働省等々がお互いに縦割り行政で似たようなことを別々にやっているというようなことにならないように、ぜひ協力をし、情報交換をし、力を合わせてやっていただきたいというふうに、これは要請をしておきたいと思います。
 それから、中央教育審議会が先週、教養教育のあり方について答申をいたしました。礼儀作法を重視するなど、これは人によっては何となくうさん臭いと見る人もいるのかもしれませんけれども、私は素直に読み取ろうと思っています。
 「家庭や地域でのしつけの充実」ということで、善悪を区別する力とか我慢する心とかいろいろあるんですが、実はこれ、二十年前から始まったこのゆとり教育の中で、結局こういうことが書けるような内容になってしまったのではないか。別の世界だと言われるかもしれませんが、ゆとり教育の中で、例えば努力するとか我慢するとかということの部分が欠落をしていって、そして、結局いろいろな問題が起こってしまった。
 例えばそのゆとり教育、この二十年間でどういうことが起こったか。これは人の意見も聞いてみますと、明らかな学力低下がある。学力低下があると言うと、ほかの理由で、いやいや生きる力とかなんとかがつけばいいのであってと、抽象的な言葉でまたお互いにごまかし合うところもあるんですが、これは素直に認めましょうよ。明らかな学力低下があるということは、僕は事実だと思うんですね。
 それから、勉強からの逃避、世界で最も勉強をしない日本の子供というふうに指摘されているIEAの調査などもあるわけです。
 それから、学校荒廃の進行が現実に進んでいますよね。校内暴力、中学生の殺人、いじめ、不登校、校内暴力さらに悪化と、こういろいろなことが指摘をされているわけです。
 これはもう現実にあるわけですね。それがこの二十年間に、偶然かどうかわかりませんが、この二十年間にクローズアップされているんです。
 ということになると、私は、中央教育審議会の言う教養教育もさることながら、学校教育の仕組みそのものが、こういうことを必要とせざるを得ないように、中央教育審議会がこういうことを答申せざるを得ないような現状にしてしまったのではないかというふうに、その原点を見る思いがするんです。
 悪いことをすることを防ぐということは大事なんですが、悪いことをしたら罰するぞ、規則を厳しくするぞという、そっちの方ばかりやって、言うならば現象面ができてしまって、その対症療法にばかり目を奪われて、本質的な根源にメスを入れるという、または努力をするということが抜けて、こういうことばかり、対症療法ばかりが話になってしまっているのではないか。
 もう時間がないので、続けてちょっと幾つかの質問を並べます。
 例えば、週五日制がいよいよ完全実施されます。今、週五日制はなぜ行われるのかと問われて、明確にお答えできる人がどれだけいるでしょうか。学校の先生の労働時間を短縮するために始めることなんでしょうか。子供たちのためのゆとり教育の時間を弾力的につくるためにするのでしょうか。
 そして、言うならば授業数の三割削減をゆとり教育ということで行われるわけでありますが、これはもう二十年前からそういうことは行われている。そして、週五日制になることは前々から決まっている。そういう中で、ことしになって大臣は、これはえらいことになるかもしれないと思われたのかどうか知りませんが、そして方向転換ではないという言いわけもしておられるんですが、学びのすすめなるものを発表された。何か私はつけ焼き刃のような気がしてならぬのです。
 結局、子供たちの心をもっとソフトにやわらかにするためにゆとり教育せないかぬかな、週五日制もやってもっと弾力的にと。でも、何かいろいろな弊害が起こりそうだ。よって、学問の勧め、学びのすすめ。
 しかし、それを受けとめる子供たちはどうなるんでしょう。親の心配はどうなるんでしょう。それに対応する、フォローするための地方自治体、地方教育委員会は、十分対応できる能力をこの三月までに整えられるのでしょうか。
 そして、例えば埼玉県の深谷市などでは、この学校五日制時代の土曜の使い方ということで、何かおやりになるようですね。土曜日に学校を開放して学習指導を行う方針を決めた。マスコミは、公立の塾ができるんだろうとやゆしておりますが。
 何か、そこには文部科学省の教育に対する一貫性というものが感じられない。何かつけ焼き刃で、慌てふためいて右往左往しているという姿が見える。そして、それがそのまま地方の教育現場に反映される、家庭に反映される、子供たちの心に影を投げかけるということになるのですが、その意図を大臣に明確にしていただきたいというふうに思います。
    〔鈴木(恒)委員長代理退席、委員長着席〕
遠山国務大臣 ゆとり教育といいますか、昭和五十年代から、教育課程のあり方について、少し時間的なゆとりを持たせながら、子供たちにみずから考える力なりあるいは自由な発想を伸ばすなりというような姿勢で来たということは、私は、それは一つの教育の理念として尊重されるべきものだと思いますし、今日もそれを継承しているわけでございます。
 今いろいろなお話がございましたので、どこに焦点を当ててお答えしていいのかなと思いますけれども、私は、単に学校のいろいろな問題だけではなくて、社会自体がいろいろな問題を抱えてしまったと思うわけでございます、この二十年。特に二十世紀の最後のあたりに、日本は世界でも、経済的に世界第二位の大国になって、その後にバブル、それが崩壊ということで、人々の価値観自体も今、いろいろな迷いといいますか、閉塞感に満ちている。
 そのような中で、学校教育だけはしっかりしてほしいという気持ちがみんなあって、学校に対して、いろいろな考えを前提にしながら、審議会の御議論も経た後に、指導要領をそのたびに改訂をし、今日まで来ていると思います。それは、それぞれの時期において正しい判断のもとにやってまいったと思うわけでございます。
 今回といいますか、この四月から、新たに学習指導要領の実施に移るわけでございますけれども、先般出しました確かな学力の向上に向けてのアピールは、これは新しい学習指導要領のねらいを確認するとともに、指導に当たっての重点を明らかにしたということでございまして、方針を転換するものではないわけでございます。したがいまして、各地で混乱がとか、あるいは教育委員会がどうかというお話ございましたけれども、新しい学習指導要領のねらいにつきましては、これまで何年かにわたって、それぞれの段階で説明もし、そしてそのあり方についていろいろな条件を整えてきているわけでございます。
 ただ、新しい学習指導要領のねらいの際に、ゆとりということのみがどうも強調されているのではないかという懸念が世の中に非常にあるわけでございます。それとまた、先般来発表されました国際的な学力調査におきましても、日本の子供たちは、いわゆる学力はあるわけでございますね、理科とか数学とか、解く力、これは世界でも最高水準であるわけでして、何ら学力は低下していないというふうに言えるわけでございますが、確かな学力、生きる力ということから見た学力という面では、やはり学ぶことへの意欲でありますとか、あるいは自分で学ぼうとする意欲とか学ぶ習慣とか、そういったものが非常に大事だと思われるわけでございますけれども、その点において、どうも日本の子供たちの示したデータは十分ではない。
 そのようなこともありまして、確かな学力を身につける、これは新指導要領がねらっている生きる力をつけるということの大きな柱の一つでございます。生きる力というのは、ブレークダウンすれば、これは私の考えでございますけれども、確かな学力、それから豊かな人間性、それから、もちろん健やかな体とか、あるいはチャレンジする心とか、いろいろなものが含まれてまいると思いますけれども、その主要な柱の一つであるところの確かな学力ということを考えますと、もう少しこういうふうにしていった方が新たな学習指導要領のねらいを達成するのにいいのではないかということで、皆で相談いたしましてあのようなアピールを出したわけでございます。
 それは決して方向転換とか各地において惑いを生ずるというようなことにならないように、私どもとしてもいろいろな形でPRをしているところでございます。既にエル・ネットで各教育委員会にも話しかけましたし、また今週からはPTAとか保護者に対する報道もさせていただいております。あるいは、ホームページで常にこうしたいろいろな施策についてアクセスしていただけるようにしておりますし、あるいは子供の夢をはぐくむ教育改革フォーラムを二月、三月にわたって全国六ブロックで行うようにいたしております。
 そのようなことで、私どもとしては、それなりの最善の努力を常に行い、そして一貫性を持ってこの問題に取り組んできているというふうに考えているところでございます。
中野(寛)委員 私は、例えば数字を挙げてこれがどうだとかいう各論を余り質問していないんですね。先ほどから私の質問は、大臣の御認識、危機感、そしてまた将来に対する計画、展望というものを探っているわけですね。お聞きしているわけです。
 そういう中で、例えば、日本の学力はこういう調査によると落ちていない、トップではなくなったけれどもトップクラスにとどまっているとか、やれ、大事なのは生きる力の方だとか、もうごまかしはやめませんか。もっとお互いに素直に、ここは教育を論じる場ですから、いやいや、確かに読み書き算数、いろいろ検査の仕方はあるかもしらぬけれども最近の検査によるとこうなっているね、これはこれで一つの参考として、やはり自分たちはもっと危機感を持ってきちっと調べなきゃいけないね、こういう基準が必要だねと。また、評価の問題も、評価の客観性というのを国際的にも、また日本においてもどうするかというのを早く確立しなきゃねと。そういう問題解決への努力を前向きにお互いに示し合う必要があるのではないんでしょうか。
 言うならば、いや、学力低下はあるかもしれませんが、トップではないけれどもトップクラスですよというたぐいの、大臣がそう言ったとは言いませんが、そのたぐいの言いわけで終わることはやめましょうよ。そして、本当に自覚を持って、危機感を持って取り組んでいかないと大変なことになるのではないでしょうか。ここでの質疑応答で終わる話ではないので、そういう意味での大臣の御認識をお聞きしたいと私は思うのです。
 むしろここで、いや、大変です、えらいことになりました、責任を感じます、まあ責任を感じなくてもいいです、むしろ、えらいことになっています、それを何とかしなきゃいけないという危機感を持っていますと言って答弁してもらった方が、よっぽど我々は安心できるのです。
 現実に、例えば読み書きそろばんも大事ですが、あわせて、この前もちょっと話をしておりましたら、子供たちが明らかに友達同士や親子や社会とのコミュニケーションに欠けるようになりましたよねと。これは抽象的な表現ですが、私は、残念ながら認めざるを得ない。それは、ゲームに熱中しているかもしれません、そして直接しゃべるよりもEメールの方がやりやすいとか。
 私、この前ちょっと私の娘と、おい、Eメールであんなしち難しいことをやらないで、電話なんだからしゃべったらどうだいと言ったら、一つだけEメールにした方がメリットがあるんだといって、何だと言ったら、料金が安いんだ、ただよという話がありました。それではちょっと困るなと、正直言って思っています。大阪人間ですから、この前ある人に聞きましたら、コミュニケーション、今の子供たちに欠けているのはぼけと突っ込みだよと言う人がいました。そういうことが大事なのではないでしょうかというふうに思います。
 何かいろいろ用意はしましたし、このまま原稿を実はきのうそちらへお渡ししているんですが、このまま言わないところが私の悪い癖で申しわけないと思いますが、少し視点を変えて質問をしたいと思います。
 法務省からもお越しいただいているので、お尋ねいたしますが、先般、法務省と文部科学省で昨年十二月二十日に、人権教育・啓発に関する基本計画の中間取りまとめをお出しになり、そしてパブリックコメントをされているんですね。もう終わったのかな。私のところへもこんな分厚いのが、ここの言葉がいかぬ、ここが足りないといってたくさん要望が来ているのです。
 法務省も昔は、パブリックコメントをいろいろ出したって全然言うことを聞いてくれない、結局はパブリックコメントによってどこかが修正されたというのは聞いたことがないというぐらいの話さえ来ているわけです。
 例えば、人権尊重の意識を高めるだけではなくて、法律の文言と同じように体得するという言葉をちゃんと入れてくれとか、いろいろ御要望が来ているんですが、これはどうなんでしょう、パブリックコメントというのが形式的な手続に終わってしまわないで、本当にしっかりと言うことを聞いてくれるんですかね。
 それから、いろいろな人権運動をしている団体もあるのですが、そういうところから重要な意見が出たときには、そこと大いに意見を交換する、そして、人権の問題ですから、謙虚に、素直にお互いに話し合うという姿勢が必要だと思うんですが、どうお考えでしょうか。法務省から。
吉戒政府参考人 今先生の御指摘の人権教育・啓発に関する基本計画でございますが、昨年末に中間取りまとめということでこれを公表いたしまして、十二月から一月の末ということでパブリックコメントは実施いたしております。
 その結果でございますが、現在のところ、約四万八千通に上る非常に多数の意見が寄せられております。内容的にも非常に多岐にわたっております。この御意見につきましては、内容を十分に検討して、反映することができるものはぜひ反映いたしたいと思っております。決して形式的にやっておるということではございませんで、十分に充実した基本計画にいたしたいと思っておりまして、最後の詰めの作業を現在いたしておるところでございます。
中野(寛)委員 お気持ちはあるようですから、それならばということで申し上げますが、こういう代表的な意見があります。
 憲法や世界人権宣言、国際人権諸条約に関する理解と実現が基本的課題であるということを明確にしてもらいたい。それから、民間団体や自治体との連携と支援に関する指摘が弱いのではないか。これは法務省と文部科学省なものですから、例えば厚生労働省所管の保育所とか、または経済産業省所管の企業とかとなると、意外に意識が抜けているんではないかと思われるところもあるんですね。よって、三番目に、法務省と文部科学省によってまとめられたために企業とか保育所における取り組みなど他省庁にかかわることが視野に入っていないのではないかということも指摘があります。
 それから、いろいろな差別の形態、対象として、例えば障害者であるとか、女性であるとか、HIVの患者であるとか、例が挙げられているのです。これは、恐らくあらゆるものに適用しようという意欲はあるんだろうと思うのですが、ちょっと後で文部科学省に質問する関係もありますので、例えば色覚異常者というのは、私もそうですが、どこに入るんですか。これは障害者の扱いをされないですね。こういうのもあって、本当にその対象というものを、あらゆるところを網羅する意欲と指摘というのは必要だと思うのですが、どうお考えでしょうか。
吉戒政府参考人 先生の方からいろいろ御指摘ございましたけれども、まず、憲法や世界人権宣言、国際人権諸条約に関する理解と実現が基本的課題であること、それから、民間団体や自治体との連携や支援に関すること、これはいずれも大変重要なことであるというふうに私ども認識いたしております。これらの点につきましては、パブリックコメントの中でも御意見が寄せられておりますので、基本計画に反映したいというふうに考えております。
 それから、人権教育・啓発推進法が、これは議員立法でございましたけれども、その後の所管として文部科学省と法務省ということになっておりまして、両省で策定をしておるわけでございます。そこで、企業とか保育所における取り組みなどについて弱いんではないかなという御指摘でございますが、実は、この基本計画の策定に当たりましては、政府の関係各府省庁全部から意見を聴取いたしまして、関係の府省庁における取り組みも盛り込むということにいたしております。
 例えば先生御指摘の企業とか保育所における取り組みに関しましても、企業における自主的な人権啓発活動や保育所の保育指針を参考とした保育の実施などについて、基本計画の中で言及いたしたいと思っております。
 それからもう一点でございますが、色覚異常者に対する差別が基本計画の中でどういう扱いになっておるのかというお尋ねでございますけれども、これは先生御承知のとおり、障害者に関する基本的な法制が、身体障害者福祉法とそれから障害者基本法というものがあるというふうに承知しておりますが、実は、身体障害者福祉法に言う障害者には色覚異常者は条文上該当いたしません。御承知のとおりでございます。また、障害者基本法に言う障害者、これは解釈でございますけれども、該当しないというふうに解されているようでございます。
 ただ、色覚異常を理由といたしまして不当な差別があるということは許されないと思っております。したがいまして、色覚異常の方に対する人権侵害などの人権問題に関しましては、私ども法務省といたしましても、基本計画の中で明らかにしております人権尊重の理念とか、人権教育・啓発の基本的あり方を踏まえて、今後適切に対応してまいりたいというふうに考えております。
中野(寛)委員 色覚異常は一例として申し上げましたが、人権を語るときに、あらゆるものを例示で網羅できるものではないということをぜひ御認識いただいて、抜かりのない対策が講じられるように御要請を申し上げておきたいと思います。
 そこでもう一つ、今度は文部科学省に戻りますが、私は長い間、私自身もそうでありますだけに、今日までこの色覚異常問題についてたびたび取り組んでまいりました。私のこの委員会における指摘で、こういうものを当時の文部省はつくってくださって、各学校に配付してくださったんですね。私、全教師に配っていると思っていたら、学校に一冊ずつでした。大変情けないなと思ったことがあります、その後改善されているのかもしれませんが。
 お聞きしますと、今度はこの色覚検査を、学校保健法の施行規則の改正案をおつくりになる、その準備をしておられるやに聞きました。色覚検査、人生の中では何回もやられるんですね。しかしやっと、文部科学省では学校でこれからそれをやめる方向で検討されているようですね。今日まで、小学校では一年生と四年生、中学校、高校にあっては一学年で、高等専門学校にあっては一学年及び四学年でとやってきたわけですね。
 私は、これを出す前に、色覚検査は何のためにやっているんですかと聞いたら、文部省、お答えがなかった。大分昔の話ですがね。わからずにやっておられた。色覚検査をやる限りは、色覚異常者がそこで発見されれば、その子供に対する進路指導や学習指導を、そのことをちゃんと教師が自覚してやらなきゃいけませんね。
 私は今でも絵をかくのが嫌ですね。そして、私は今でも、文章表現をするときに色の表現を全くしません。子供のころからそうしみついてしまいました。なぜか。小学校一年生のときにかいた私の静物画を見て、担任の先生に、おまえは変な色を塗っているな、これはそんな色していないじゃないかと言ってしかられた。その後色覚異常とわかるのですが、それから私は、色に対する劣等感みたいなものを持って、私の人生は明らかに大分変遷をいたしました。本当は医者になりたかったんですけれども、しようがないので政治家になってしまった。政治家になっても色覚異常というのは不自由なときがある。なぜか。人の顔色の変化がわからぬ。まあ、そういうことぐらいはいいですけれどもね。
 本当に、教育の問題というのはいろいろな問題が山積をしている。しかし、目標を持って歩めればいいんです、遠い山であっても。遠山文部大臣が遠い山で、その目標を持ってやってもいいが、今は、遠い山に目標を持てるどころか、私の名前の中野の、センターフィールドの問題の方が深刻なわけで、こういう問題を一つ一つ解決していかないといけませんが、ぜひそういう問題についても大臣の御所見を、方針もあると思いますので、お聞きしたいと思います。
遠山国務大臣 色覚の問題に関することにつきましては、これまで問題になっておりました色覚検査を廃止する方向でやっておりますし、また、そういうことについての学校での指導を行き渡らせるために、この手引はすべての教師に配付しようといたしております。
 先ほど委員の方から、今の教育の現状について、もっと危機感を持とうよというお話がございましたが、私も大変な危機感を持っております。しかるゆえにこそ、学びのすすめというようなことを出しているわけでございますが、しかし、すべての学校の隅々まで影響のある私どもの立場としましては、今動いている新しい指導要領への動き、このことは、私は、これはきちんとサポートをして、そしてそれを実質的に生かしていくためにいろいろ努力しましょうよということを今全国に問いかけている段階でございますので、御理解と御支援をお願いしたいと思います。
中野(寛)委員 時間が来ましたので、最後に御要望だけ申し上げます。
 全教師に配付するようにしようとされているということですので、私、大変感謝をいたします。色覚検査をなくしますと、同時に、色覚異常問題について教師や子供たちが、今度は意識をなくしてしまう。でも、色覚異常の子供は厳然として存在をする。全国で三百万人とも四百万人とも、一クラスに大体二人はいる、そういう中での問題ですから、言うならば、この手引書の必要性は、検査をなくすことによってなおさら重要になるのです。そういう御認識はお持ちだと思いますから、一つ一つのことにそういうお心配りをお願いしたいと思います。
 あと、実は奨学金制度の問題、育英会が今度は組織がえになるということで、奨学金制度の問題について大変心配しております、用意をしておりましたが、また改めて私なり別の仲間から質問をさせていただくことになろうと思いますが、先般も、仕組みは変わっても内容は大いに充実させたいという大臣の御答弁は一回お聞きしたことがあるので、期待をしたいと思いますから、よろしくお願いしたいと思います。
 ありがとうございました。
河村委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時一分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時二分開議
河村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。武山百合子君。
武山委員 自由党の武山百合子でございます。
 きのう所信を聞きまして、何回も何回もこの所信を読ませていただきました。本当に国民こぞって今、教育改革ということで、やはり教育が一番だ、まず教育改革だということで、どこへ行っても教育改革、教育が根本だということです。
 本当に連日連夜、教育改革ということで、私もきょうはぜひ遠山文部大臣に、この所信の中でまず「我が国が真に豊かで」、こうあるわけですけれども、「我が国が真に豊かで」という、遠山文部大臣がお考えになった真に豊かという状況をぜひわかりやすく国民に説明していただきたいと思います。
遠山国務大臣 これは、「豊かで成熟した国」ということであらわそうとしておりますのは、もちろん先生に御説明するまでもないと思いますけれども、豊かさというのは単に経済的な豊かさだけではないのではないか、それは、個々人が心の豊かさを持ち、あるいは生きることについての理想なり希望なりというものを持って快適に人々が生きていく、そういう状況ではなかろうかと思います。経済的な面だけではなくて心の面も含んだという意味で、「真に」という言葉を使わせていただきました。
武山委員 今御説明を伺いましたけれども、それでは「豊かで成熟した国」、やはり国民は、文部科学相が言っている成熟した国というこの言葉の状況、これをやはりぜひ聞きたいと思います。
遠山国務大臣 これは特に公的見解ということでございませんで、私の考えでございますけれども、「成熟した国」ということは、今日の日本が置かれた世界的な状況の中で、これまで日本が達成してきた右肩上がりのみを追求してきた生き方ではなくて、やはりそこに、市民の生活が安定をし、あるいは政治経済あるいは社会のあらゆる面でしっかりした民主主義が根づき、そして社会の構造としても信頼できる、そういうものをもって、国民自体もみずからの考えを持ち、そして生きることについての自信を持っている、そういう市民で形成されたような、そういうふうな国という意味で表現させていただきました。
武山委員 そうしますと、民主主義が定着したというか、深く民主主義が浸透していった、すなわち国民が主役のそういう社会を描いているのでしょうか。ちょっとその辺をお聞かせいただきたいと思います。どんな民主主義でしょうか。
遠山国務大臣 「真に豊かで成熟した国」ということでねらいとしているものを私がここで詳しく解説したり、あるいは民主主義のありよう自体について詳しく申し上げるようなことではないとは思いますけれども、一国の社会のあり方が安定をし、そして人々が生き生きと生きていっている、そのような国の総体を指して、真に豊かで成熟した国家ということを申し上げているわけでございまして、個々の人たちの心根のありよう、生き方と、それから総体としての国の秩序なりあるいはそこでの制度なりというものも含めて考えてもいいのではないかなと思います。
武山委員 それでは、文部科学相は、このたびの所信の中で、だれを中心にした教育改革をしたいと思っていらっしゃるのですか。
遠山国務大臣 「教育改革」という言葉が随所で出てまいりますけれども、今回の教育改革でねらいとしているのは、国民一人一人、特に子供たち、未来を生きる子供たちがどのように育ってほしいかということを念頭に置いて、そのことを実現していくための諸制度なり諸条件なり、そういったものを改善していこうというのが考え方でございます。
武山委員 それでは、次の文章も。
 「世界の平和と繁栄に貢献していくため」というこれは、世界の平和と繁栄に貢献していく日本人を育てたいということなのでしょうか。この「世界の平和と繁栄に貢献していく」でどんな青写真を、日本の教育改革の中でどんな状況を、青写真を描いたのでしょうか。
遠山国務大臣 日本の今日置かれた世界の中における役割というものは、繰り返し、総理の所信表明なり、いろいろな場面で議論されておりますけれども、世界の平和そして繁栄に貢献していく、そのような国でありたいということは国民が広く思っていることではないかと思います。そのようなことを背景として、日本の国のあり方の一つの表現として申し上げたわけでございます。
 そして、それを実現していくには、一人一人の国民の自覚なりあるいは能力なりというものが問われてくるということは当然でございます。
武山委員 この「貢献していく」、どんなところにどう貢献していくということでこれを書いたのでしょうか。そこもちょっと、もっと具体的に、国民は具体的に聞きたいのですよね、状況を。
遠山国務大臣 「世界の平和と繁栄に貢献していく」というのは、しばしば随所で使われていると思いますけれども、日本の貢献の内容ないし度合いというものはその時々のシチュエーションによって力点が変わってくるとは思いますけれども、ここで表現しようとしているのはその姿勢でありまして、個別具体に何について貢献していくというのを列挙して考えていくということを前提としているものではございません。
武山委員 質問を受けて、ただ、姿勢ですと言うのでは納得がいかないと思います。この教育改革、ことし、平成十四年の、教育に関してどんな所信を文部科学大臣がするか、そして内容はどうか、その具体例はどうなのかということを、国民はみんな聞きたいわけですね。
 ですから、あちらこちらで言われている、姿勢だ、もちろんそれも全くゼロじゃないと思います。しかし、やはり具体的に、どんなことを想定してと。ただ姿勢だけでは、納得いかないと思います。具体的にどんな――ただ姿勢だけの議論だったんでしょうか。
遠山国務大臣 ここでの力点としましては、今後我が国が真に豊かで成熟した国として発展して、そして、一国の中の繁栄なり豊かさなり成熟度ということだけではなくて、世界の平和と繁栄に貢献していこう、そういう精神を述べているわけでございまして、教育改革のねらいそのものは、個別具体に、その後の人材・教育・文化大国実現の箇所でありますとか、随所に、そこで、力点としている改革の方向性については述べている、そういうことでございます。
武山委員 それでは、ここの文章で、例えば「世界の平和と繁栄に貢献していく」という部分は、今度、週五日制の小学校教育の中ではどんなふうな姿勢で教育の中に取り入れるんでしょうか。
遠山国務大臣 週五日制だからということではなくて、これまでも、学校教育の中で、世界平和に対する貢献でありますとか、あるいは他国の文化を理解する、あるいは国際的な交流を重視していく、そのようなことが随時いろいろな場面で教育の中で教えられ、あるいは課題として取り上げられてきたのかと思っております。
武山委員 「国家百年の計に立ち、」ということで、これだけ、国家百年の計に立つわけですから、もっと、ただ姿勢だけではなくて、具体的な議論というのは当然行われたと思います。根幹にも触れたと思います。日本人とは何ぞや、日本の伝統、文化は何ぞや、それぞれ幅広く議論もされたことだと思います。ただ姿勢だけを述べているというのでは困ると思います。
 次に行きまして、まず「人材・教育・文化大国の実現」ということで、「日本人としての誇りと自覚を持ち、新たなる国づくりを担うことのできる、創造性や豊かな人間性に富んだ人材を育成する」。日本人としての誇りと自覚、詳しくはどんなことを言っているんでしょうか。
遠山国務大臣 これからの教育を考えるに当たりましては、グローバル化が一層進展する新しい時代を生きる人材をいかに育成するかということを考える必要があるわけでございますが、このために、国際化が進展する社会の中にあって、日本人としての自覚あるいは誇りを持ちながら人類に貢献していくということの大事さ、そういうことを考えますと、我が国の伝統、文化など次の世代に継承すべきものを尊重し、発展させていくことが必要であろうかと思います。
 このような観点から、日本人としての誇りを持ち新たなる国づくりを担う、そういう人材、さらには、創造性や豊かな人間性に富んだ人材というものを育成していくことが教育の目指すところであろうかと思っております。
武山委員 では、例えば日本人としての誇りと自覚を持つような人といえば、具体的にどんな状況を言うんでしょうか。
遠山国務大臣 日本人としての誇りというのは、日本人であることについての自覚を十分に持って、そして社会の一員として必要な規範なりルールなりを守るという心を持つのと同時に、日本の文化、伝統についても知識を持ち、あるいはそのことについての洞察をすることができる、そのような人であろうかなと考えます。
武山委員 日本人であるということ、非常に大事なことだと思うんですよね。大人の世界では、日本人であるということがどういうことかというのは大抵の人が知っておるであろうと思いますけれども、でも、文部科学省としてここで言っている、日本人であるというその根幹、どういう状況を日本人であると考えておりますか。青写真をどういうふうにここは描いているのか、具体的に示していただきたいと思います。
遠山国務大臣 日本人としての誇りと自覚を持つということは、これはもう日本人である限り基本的な、必要なことだと思っております。日本の場合には、四辺を海で囲まれておりますので、日本人としての自覚という角度から見ますと、諸外国に比べまして必ずしも持ちやすい状況にはないと思います。国境線を身近なところに持っているような国の国民にとっては、その国の国民であるということについてより自覚的であるのかもしれません。
 しかし、私どもは、一人一人が日本という国を形成しているその大事な存在であるということ、同時に、その一人一人が輝くことによって、国としても必要な力を持つということにつながっていくのではないかと思っております。
 その意味で、一人一人の国民が、その国民であるということについての自覚、そして、そこで必要とされている基本的な知識でありますとかあるいは生き方、そういったものについてしっかりとした考えを持っている、あるいは行動をとり得る、そういうことではないかと思います。
武山委員 この日本人であるというのは、もう本当に教育の根幹だと思うんですね。これは、国が一番しっかりしているということが前提のもとで、家庭教育、社会教育、学校教育、地域でどう根差していくか、その根幹がしっかりしているということが一番大事なことなんですよね。
 ですから、日本人であるという根幹の定義、これ、物すごい大事だと思うんですよ。もうあらゆるところで、日本人であるという、何が日本人かという定義をやはりしっかりと議論すべきだと思うんですね。ただ姿勢だけ、ただファジーな、そういう形だけではいけないと思うんですよね。教育の中ではきちっとカリキュラムを組んで、それで、きちっと学校教育の中で、家庭の中で、また地域でということは、その基本がしっかりしていなかったら、教育をする上に当たって根本がしっかりしていなかったら、それを実践することはできないわけなんですね。
 ですから、そこの部分が一番大事であろうと思うから、私はこういうふうに力を込めて聞いたわけなんです。そこの部分をぜひ十分議論して、しっかりとまとめていただきたいと思います。その辺の議論をちょっとお聞かせ願いたいと思います。根幹の問題なんですね。
岸田副大臣 今先生御指摘になられたように、日本人であるということ、これについてしっかりと確認をし、そして明らかにすること、大変重要な点だと思っております。
 その点につきまして、本当にこれからもいろいろな議論や理解を進めていかなければいけないと思いますが、今大臣の方から申し上げましたような、その自覚、アイデンティティー、あるいは誇り、あるいはみずからの文化とか伝統、こうした、みずからどうなのかということもしっかり確認していかなければいけませんし、先ほど、その前の段階で先生御指摘になられましたように、国際社会の中でどう貢献できるかという部分にもかかわるわけですが、今、二十一世紀を迎えて、国際社会、世界全体で取り組まなければいけない大きな課題、環境ですとか経済ですとか、本当に大きな、グローバルな課題があります。こうした課題に全世界を挙げて取り組まなければいけない。その中にあって、日本人がどうかかわっていくのか。もちろん、その一員として、メンバーとしてかかわらなければいけないんですが、日本人としてどうかかわるべきなのか。そういった国際社会の中での位置づけ、こういった意味からも、日本人のアイデンティティー、そのあり方、こういったものも考えていかなければいけないと思っております。
 みずからのあり方を考えると同時に、国際社会の中でどんな位置づけを我々が求めるのか、こういったことも含めてぜひ議論を深め、そして、そういったものを教育の中に位置づけるよう努力していきたいと思っております。
武山委員 今のお話ですと、これから議論するということですよね。やはり、日本の根幹を揺るがすこの日本人のあり方というものをこれから議論していたら、本当に危機的状況だと思います。もう十分議論して議論して議論して、こういう方向性だということで出せなかったら、危機的状況だと思うんですよね。
 去年、ちょうど一年前の町村文部大臣の所信でやはり、もう危機的状況だ、瀕死の状況だと言っているわけですね。今回、かつてなく厳しい状況にあると言っていて、そして今から議論するという、そういう姿勢では、絶対にみんな根幹がふらふらしているということですよ。それはもう、学校教育においても、そして社会においても、家庭でも、ましてや経済の分野でも、そういう根幹がぐらぐらしていたら、社会の基本がわかっていない。それで世界で貢献する、それは難しいことだと思います。その根幹をしっかりと、きちっと議論してやはり方向性を出さなければ、またきちっと決めなければいけないと思いますね。これはもう十年もかかっているわけですから、本当に危機的状況だと思います。これはちょっと、一言つけ加えさせていただきます。
 それから、教育改革の推進ということでこの所信に「教育振興基本計画の策定と教育基本法のあり方について中央教育審議会に諮問し」、そして「今後、教育の目指すべき姿とその実現のための施策」とありますけれども、この教育の目指すべき姿、これをやはり具体的に説明していただきたいと思います。教育の現場も家庭もみんな、これはどういうことかということをやはり注目しているわけですね。ですから、ここをぜひ具体的に示していただきたいと思います。
遠山国務大臣 ここの文脈で書いておりますことは、中央教育審議会に教育基本法のあり方と教育振興基本計画の策定についてお諮りをしているということでございまして、その内容をさらに一歩踏み込んで申し上げようとして書いたものでございます。
 教育の目指すべき姿、これはそれぞれ、教育についてのいろいろな思いがあり、あるいは理想があり、これは本当に一人一人の国民が持っているようなものであるのかもしれません。
 しかし、日本の国の教育の根本法である教育基本法にかかわる論議でありますことから、これは一国における教育の目指すべき姿ということでございまして、何を今後の力点に考えていくか、もちろん既に、教育の理念とすべき事柄については教育基本法の、既存の法律の中に書き込まれておりますけれども、そこにおいて書かれていること以外に、今日さらに必要なことがあるのかどうか、あるいは、先ほど来御議論のように、日本人としての自覚を持つ国民を育てていく、そのことのために何が、何か欠けているものがあるのかどうか、あるいは非常に変転する世界、社会の中できちんとした生き方をしていくためにはどうあったらよいのかというような、そういうさまざまな問題を前提にしながら、その中で、教育の目指すべき姿について大いに論じていただきたい。それによって目標を、目指すべき姿を明らかにして、それを実現するための施策というものを明らかにしていく必要があるのではないかということの意味で、ここに書いているわけでございます。
武山委員 聞いていて何か非常に、教育の目指すべき姿、こうだという青写真を示されるべきことを私は期待しておりました、日本の教育の目指すべき姿はこうだと。それが全然感じられないんですね。それで、これから国民的な議論を一層深めてまいりたいと。もう全部投げているわけですね。では、文部科学省の役割というのは何なんでしょうか。
遠山国務大臣 今お話しいたしましたように、教育基本法なりあるいは教育振興基本計画、これを考えます際の根幹的なところは、かなり現行法の中にも書き込まれているわけでございますけれども、その制定の後に変化したいろいろな事態、そういうものをどうとらえていくかということでございまして、一つには、日本の伝統、文化でありますとか、まさに日本人のアイデンティティーにかかわる部分をどう明確に教育の目指すべき姿の一つとして取り上げていくか、あるいはそのことについても議論が要るかと思いますけれども、そういう問題。あるいは、社会規範を尊重して郷土や国を愛するような、そういう公の心を持った心をどのように育てていくかというようなこと。さらには、変化する社会の中でどのようにこれから学んでいくか、変化する社会への対応、あるいは生涯を通じた学びへの対応、そういったことがあると思います。
 それは個人の考え方を超えて、私は、国の教育の基本のあり方については幅広く議論をしていただく必要があると考えて、諮問をしているわけでございます。
武山委員 広く議論を進めていただきたいということだけで、文部科学大臣として日本の教育の目指すべき姿というところが見られないので、非常に残念です。
 それから、確かな学力の育成と心の教育の充実等ということでその次に書かれておりまして、「全国の小中学校において新学習指導要領が全面実施となります。」ということですけれども、まず、この四月一日から週五日制になりまして、この中で特に「心の教育の一層の充実」、そして「善悪の判断」、それから「社会のルールを守るなどの基本的な規範意識を身につけさせる」、こういうふうに出ておりますけれども、これは例えば、善悪の判断はどういうところで、どう新学習指導要領の中では教えていくんでしょうか。
遠山国務大臣 私は、今、多くの子供たちは健全に育っているとは思います。しかし、そうではなくて、さまざまな問題を提起している子供たちもあるわけでございます。でも、一人一人のどの子供にとっても大事なのは、豊かな人間性を身につけていくことであろうかと思います。そのために心の教育を充実していく必要があるということは、私は国民のどなたも異論のないところではないかと思っております。
 もっとも、子供たちだけではなくて社会人も含めて、心のあり方については常に自己研さんをし、磨いていく必要はあるわけでございますけれども、特に真っ白な心を持つ子供たちに、人間としてあるべき善悪の判断のあり方、あるいは他人を思いやる心、そういったものを、理念で話すだけではなくて、できればいろいろな体験活動を通じたり、あるいは人生を豊かに歩いてこられた方々の話を聞くことによって感動したり、あるいは本物の芸術に触れたり自然界に触れたりして、人間の心を感動させるようなものが存在する、あるいは人間を超えた畏敬すべきものがあるということについての認識、そういったものをいろいろな形で援用しながら心の教育をやっていくのではないかなと思っております。
 ただ、今申し上げましたことは大変抽象的でございますけれども、この心の教育のあり方につきましては、わかりやすい一つの方法といたしましては、来年度から、小中学生の一人一人に心のノートというものをお配りいたします。これは目下、河合隼雄先生を編集長とします心のノートの作成の作業が進んでおりますけれども、これは年齢段階に応じまして、小学校の低学年、中学年、高学年、それから中学校というところで四種類の心のノートをつくっております。そういったものを折に開きながら、教師と生徒、教師と児童との間、あるいはうちに持ち帰って親と子の間でいろいろな話し合いをしながら、人生の生き方について話し合うというようなことをきっかけにしながら心の教育を充実させていってもらいたいと思っております。
 心の教育の重要性を書きながら、これにつきましても今いろいろな具体的な施策、取り組み方を、各学校なり地域で取り組む際に参考になるようないろいろな資料等も考えているところでございます。
武山委員 心のノート、去年、平成十三年に小中学校に配付したということで、ことしもまた予算で、配付したところとことし配付するところがあろうかと思いますけれども、実際にもう始めているわけですね、その心のノートは。書き始めているところもあると聞いております。
 それで、今度は新学習指導要領で、今度週五日制になりまして、ゆとり教育ということで、どの時間で心のノートを使うのか、また道徳教育とどうリンクさせていくのか。その辺、細かいところはわかりませんけれども、私、一つこういう方法がいいんじゃないかなというのをちょっと思っているんです。
 小学生や中学生の場合、きちっと書いたものを親に見せる。親がちゃんと見たというサインをきちっともらう、親が見たよと。ただ見せっ放しで、それで親も、学校と家庭と地域とやはり連携しないと、小学校教育、中学校教育、初等教育はやはり連携が大事だと思います。そういう中で、きちっと両親に見せたということを確認できるということ、それをぜひやっていただきたいと思います。
 例えば、欧米なんかきちっと、全部一々見せたかどうかというのを、チェックを必ずもらってくるんですよね。そうすると、親に見せなきゃいけないと。初等教育の過程で、親とのつながり、親にこういうものはきちっと見せなきゃいけないという、そういう習慣がつくんですよね。
 ですから、日本の場合、例えば通信簿、年三回出ますけれども、その通知表をきちっと親に見せない、いわゆる一学期の終わり、二学期の終わり、そのまま学校に返してくる子がいるわけなんですね。そのときに、どうしてこうなのかなと私はニューヨークの日本語学校で学校の先生をしていたときに思ったんですが、そういうサインをきちっとしないからなんですね。親に見せたというサイン、署名、そういうのを考えておりますでしょうか。
遠山国務大臣 本当に親にも、保護者の方にも、子供が学校でどのようなことを学び、どのようなことを目標として授業を受けているのか、あるいは、先生からのいろいろなメッセージをきちんと親に伝えていく、これは非常に大事だと思います。
 先生が今御提案されたようなことは、実に有効な手段だと思いますが、それをすべての学校に強制するといいますよりは、私はそういった方法もあるよというようなことをいろいろな場面でお話を申し上げて、そういったことも参考にしながら、それぞれの学校なり教師なりの自主性においてそういったことを実行してもらえれば、大変教育も成果が上がるのかなというふうに考えます。
武山委員 強制とかそういう意味で私は言っているわけじゃないんですね。それは先生が、お父さんかお母さんにきちっと見せてサインをもらってきてちょうだいと、一言言えば済むことなんですよ。それを、やはり文部科学省のお役人の立場からすると、強制か義務づけかというそういう発想になろうかと思いますけれども、そういうことを実は言っているんじゃないんですね。普通の自然とした状態を、それはもう自然とした状態だと思うんですね。普通のことが、当たり前のことが当たり前になっていないところに問題があると思います。
 それから、この確かな学力の育成と心の教育の充実というところで非常に問題になりますのは、先生の資質向上ですね。どんな先生に自分の子供が一年間担任をしていただけるのかどうかということで、大変その担任の先生の力量というか、その先生自身のすべてから子供は影響を受けるものですから。
 これはたまたま私のところで聞いた話なんですけれども、教員の資質向上で、まず今、新任、新任から五年、十年ですか、研修制度があると。ただ、十年後も、二十年、三十年を経ても新鮮な教育観を持ち続ける意味で、今、新任の新任研修、それから五年研修、それから十年研修ということで義務づけられているそうですけれども、それを今回、所信の中では、法案として「教員免許制度の改善や十年経験者研修制度を創設するための法改正」とありますけれども、ぜひ十年以降も、二十年も三十年も三十五年もたっていくと研修はぜひ必要であろう、ぜひやっていただきたい、そういう声が出ております。それについてはどうお考えでしょうか。
岸田副大臣 先生御指摘のように、教員の資質というものの重要性、本当におっしゃるとおりだと思っています。そして、教員の資質の向上のために、その養成段階、採用段階、そして研修を通じてその資質の向上に努めていかなければいけない。
 その中で、研修のあり方ということについてであります。
 中央教育審議会の方で、教員の免許のあり方等も含めてこのあたりも議論が行われたわけでありますが、その中で、教職十年を経過した教員に対する新たな研修制度、これも単なる研修ではなくして、しっかりとした教員のあり方、これを評価した上で、どのような研修が具体的に適当なのか、そのあたりまで含めて新しい研修制度をつくるということを今検討しているところであります。
 そういった位置づけの十年研修、大変大きな意義があると思っておりますし、これは単に十年でやればすべて問題が解決するということではないということ、これは当然のことでありまして、この十年研修、これから検討し、そしてまた法改正をお願いするわけでありますが、そういった動きを進めながらも、絶えず検証していき、その後の体制についても検討していきたいと思っております。
武山委員 それから、研修をしたからといって直るわけではないと。これはある校長先生が言ってきたんですけれども、不適格な教員をスムーズにやめさせられる法律を整備してほしいと。こんな強いことを言ってきた校長先生もいるということを、一言つけ加えさせていただきます。
 それから、新学習指導要領に矛盾を感じると。例えば、小学校で英語の授業を取り入れようとしているのに中学校で英語の授業を減らすのはどうしてか、どういう意図に基づいているのかという質問が参りました。この新学習指導要領で、小学校で英語の授業を取り入れる、ところが中学で英語の授業を減らす、そういう状況がある、どういう意図に基づいているかということを聞かれたんですけれども、その辺、状況を説明していただきたいと思います。
岸田副大臣 新学習要領の目的、ねらい、いろいろな内容を盛り込んでいるわけですが、まず、その一つの考え方といたしまして、基礎、基本については厳選をする、その上で選択の幅は広げるというのが一つの考え方としてあるかと存じます。そういった中にあって、小学校における英語の授業は、その選択肢の拡大ということで考えられるというふうに思っております。
 中学校の英語の授業の削減ということについては、全体のバランスの関係、総合的な学習の時間あるいは体験学習等、さまざまな要素が入ってまいります、そのバランスの中で、事実上、数字的には多少減少されるということはあるわけでありますが、これは全体の、新しい学習指導要領、新しい体制のねらいの中でのバランスの問題だというふうに思っております。小学校における英語教育と中学校における英語の時間数の問題、そんなふうに考えるべきものかなと考えております。
武山委員 常識で考えますと、小学校で一、二時間英語の授業を取り入れるのであればそれ以上に中学校になりましたら時間数がふえるというのは、語学を学ぶ意味で当然かなと思いますけれども、その辺のバランスの説明はきちっと、やはりそういうことであるということをすべきであると思います。非常に現場は混乱しているということを申し伝えておきたいと思います。
 それから、最近これは聞いてびっくりしたんですけれども、小学生や中学生も留学する機会がふえてきたというんですね。これはびっくりしました。世界に通用する学力が必要だと考えられると。今までは、留学を希望するときは塾に頼っていたというんですね。本当に物すごい雪崩現象というか、小学生、中学生も留学をする機会がふえたというんですね。もう本当にびっくりいたしました。
 そして、これも校長先生が言った話なんですけれども、世界に通用する学力が必要だと思うというわけですね。これは、今までは留学を希望するときは塾に頼っていたというんですよ。もう本当にすごい状況に進んでいるのだなと思いまして、私自身は大変びっくりしております。
 この辺についての所感をお聞かせ願いたいと思います。
岸田副大臣 小学校のころから留学するという動き、例えばイギリスの寄宿舎つきの学校に小学生の子供を行かせるというような親がいるということ、そういった動きについては、先生御指摘のとおり、そういった動きがあるということを我々も認識しております。これは、言ってみるならば、学校の空洞化ということにもつながる大変重大な現象だというふうに思っております。
 これに対して、やはり日本の国内の公教育というものの信頼が今問われているというふうに認識した上で、これから、新しい学習指導要領あるいは学校週五日制、こうした体制の中で、日本の公教育の信頼回復、こういったものにしっかりと努めていかなければいけない、こういった問題意識を持って、このあたりについてもしっかりと見詰めていきたいと思っております。
武山委員 終わります。
河村委員長 次に、平野博文君。
平野委員 民主党の平野博文でございます。私の持ち時間の範囲で質問に入りたいと思いますが、私は、特に留学生の問題について御質問をしたいと思います。
 私はふだんおとなしいわけですが、非常に昨今怒りを持っておるわけでございます。我が国に多くの留学生を受け入れて、国際貢献、さらには国際交流を果たしていこう、また留学生を受け入れて、生徒が我が国の中でステップアップしていただいて本国に帰っていただく、この本来の趣旨が生かされていないんじゃないかと。
 特に、文部省が昭和五十八年からですか、十万人留学生体制ということで量だけに、余りにも数をたくさん入れることを目標としたために、本当に質が、中身が問われていなかったのではないか、そういうふうに思わざるを得ない昨今でございます。
 そういう視点で、特に新聞紙上で言われておりますが、酒田短大の件について質問をしたいと思っています。
 実は、この留学生の大量受け入れを酒田短大が始めたのは平成十二年の十月から大量に受け入れを始めたわけであります。その年には、学校全体で学生数が六十九人しかいなかったわけであります。一学年百人の定員をはるかに超える百四十六名の中国人の留学生を受け入れた、こういうことでございまして、そのときには地元のマスコミ等々で報道されておるわけであります。
 文部科学省は、そのときにそういう報道がされておって、事実関係を掌握しておったのか。さらには、大学当局に対して受け入れの体制調査などを行った経過はあるかという事実確認を、まずしたいと思います。
岸田副大臣 文部科学省におきましては、教学面においては私学委員、それから経営面については学校法人運営調査委員という制度を設けております。そして、この制度のもと、毎年一定数の大学について実地視察を行い、またその問題点について指導助言を行うという制度をつくっているわけですが、御指摘のこの定員超過状況につきましては、私立大学について自律的に運営がなされることを期待するということから、網羅的な調査というのは行っておりません。
 ですから、新しい学部を申請するとか、それから補助金を申請する、そういったときには調査を行うわけでありますが、それ以外に、私立大学に対して定員超過状況の調査を行っていないというのが現状であります。
 そして、酒田短期大学が大量に留学生を受け入れ始めたのは平成十二年十月だというふうに聞いておりますが、この十二年十月時点においては、今回問題になりましたような状況を把握していなかったというのが実情であります。
平野委員 文部科学省としては、その実態調査は特に定例的にやっているというわけではない、まして酒田については私学助成を受けていない、こういう立場からやっていないということでありますが、やっていなかったとしても、学校の経営状態や学生の定員管理というのは、一義的には文科省にはないとしても、しかし、現実的には文科省が認可をした学校法人であることには変わりないわけであります。
 当然そこには学生がいるんです。加えて、外国からの留学生を受け入れているということは、少なくともその学校に来たら、その学校の教育環境云々を含めて、これが日本の学校であるということをその学生が見るわけであります。それがイコール、ああ、これが日本のスクールなんだ、大学なんだというふうに認識すると思うんですね、そこに来た留学生は。少なくとも、そこの学校で学校を見ているわけですよ。
 そうしますと、私は、一義的にはそういう義務はないにしても、しっかりと文部科学省としては、そういう国際貢献、国の仕組みにおいてやはりやろうということですから、網羅的にしろとは言いませんが、そういう国際間のあるいは二国間のしっかりとした約束のもとに外国人を受け入れるわけですから、しっかりと見ていかなきゃならないという責任があるわけでございます。
 加えて、奨学金なり学費を減免している制度をとっているわけであります。これは少なくとも公金を使ってやっているわけでありますから、私学助成を受けていなくても、国の税金を使って迎えている、こういう仕組みにおいては、文部科学省としては、今副大臣が答えられたような仕組み、スキームでは無責任ではありませんか。
岸田副大臣 まず基本的に、今回のこのような事件、出来事、状況が発生したこと、これは大変遺憾なことだというふうに認識しております。
 そういった中にあって、実態の把握の手段として、制度上、先ほど御説明したような制度になっておるために、今回の件、その事実が発生した当初においては把握ができなかったわけであります。この制度の中でこうした実態の把握、問題の重要性にかんがみて問題の実態把握がどれだけできるのか、これはしっかりともう一回検証しなければいけないというふうに思っております。
 そして、あわせて、本人に支給すべき奨学金が渡されていなかったということ、このことについては、それに加えて別の観点からまた大変重要な問題だというふうに考えております。その辺の実態についてもしっかりと把握をしていかなければいけないと考えております。
平野委員 そこで、基本的なところをもう一度確認しますが、これは学校法人瑞穂学園という学校法人のもとに酒田短期大学が実はあるわけですね。今文部省が掌握をしております、瑞穂学園、学校法人の役員、理事長はどなたでございますか。
石川政府参考人 お答えを申し上げます。
 学校法人瑞穂学園の理事長は、貝原秀輝さんという方でございます。
平野委員 それは正式に登記、登録されておりますか。
石川政府参考人 私どもが最近入手した資料では、登記簿上の役員に貝原秀輝さんが入っておることは事実でございますけれども、役員の届け出等はここしばらく出てきておらないという状況でございます。
平野委員 いや、もうちょっと正確に答えてくださいよ。
 これは、登記簿に届け出する部分と、文部省に届け出する部分とがあるんですが、少なくとも私が理解しているのは、貝原さんというのは届け出ない状態で理事長さんを現実にやっておられる。それで、文部省に届け出があった最終の役員というのは、登記簿に届け出られているのは冲永さんというふうに私は理解しておりますが、間違いないですか。
石川政府参考人 かつて冲永嘉計氏が理事長であったことも事実でございますけれども、十一年七月から貝原氏が理事長となったということにつきましては、私どもいろいろな、学園からのさまざまな資料の提出やそれに伴うヒアリング等を通じて、事実上その点は把握をし、確認をしてきておるところでございます。
平野委員 そのことを文部省が知ったのはいつですか。
石川政府参考人 これは、貝原氏が十一年七月に理事長に就任をしているということは、その時点から承知をいたしております。
平野委員 登記簿に届け出たのはいつですか。
石川政府参考人 お答えを申し上げます。
 平成十三年八月時点においた登記簿上は、貝原氏が役員として、理事として登記をされております。
平野委員 もうちょっと正確に答えてくださいよ。怒っているんだよ、おれ。
 文部省に届け出のあった最終の役員一覧表、平成十年五月の八日には冲永さんですよ、理事長さんは。たまたま今回の問題があって、二月の十四日、現地調査で報告を受けた役員は、平成十四年二月十三日に貝原さんと聞いているんですよ。では、この報告は違うじゃないですか、今お答えしているのと。
石川政府参考人 平成十一年の十月二十七日に登記がされておりまして、その時点で貝原氏が役員になっておるということは間違いのない事実でございますし、十一年の七月でございますか、先ほど申し上げましたけれども、その時点から理事長職、理事長に就任しておるということは私ども承知をし、また確認をしてきておるところでございます。
平野委員 ちょっと待って。
 では、これ登記をしましたと。文科省にそうした届け出をする必要がございますね。届けられたのはいつなのよ。
石川政府参考人 ただいまお話がございましたように、学校法人の役員につきましては、変更等、就任がございました場合には、登記をしなければいけないということになってございます。そして、この登記をした場合には文部科学省の方に届け出をしなければいけないということになっているのも、先生今御指摘のとおりでございます。
 そして、この届け出そのものにつきましては、大変遺憾なことでございますけれども、学校法人からは平成十年の五月以降、役員についての届け出がなされておらないところでございまして、私ども、ずっと督促をし続けているところでございます。
平野委員 いいかげんなこと言うなよ。今あなた、承知しておりますということを答えておったじゃないですか。だけど、届けられてないんだろうが。承知しておる、届けられてない。どういうことなんですか、それ。いいかげんなことを言うなよ、いいかげんなことを。
石川政府参考人 これは、私どもは、そういった意味で理事長就任、役員就任ということは聞いておったわけでございますけれども、届け出がなされておらないということで、ずっと引き続き、早く届け出を出してくださいという要請をしてきておるところでございます。
平野委員 何回督促いたしましたか、そこまで。
 では、理事長がかわったと言っておる、承知している、届けられてないと。積極的に何回その督促をしましたか。
石川政府参考人 これは、何回という回数を正確に申し上げることはなかなか難しいのでございますけれども、折に触れて強く求め、指導してきておるところでございます。
平野委員 折に触れてという言い方をしましたが、では、今回の問題は毎年、平成十二年十一月から中国人が大量に入ってきている、こういうことも承知する中で督促をしておったんですな。知らなかったということではないんですな。
石川政府参考人 私が折に触れと申し上げましたのは、学校法人にさまざまな資料提出とかお願いをしたりすることがございます、そういった機会を通じてということでございます。
平野委員 これもよくわからない。先ほど副大臣は、私学というのは、私学助成とかそういうものを受けてなかったときは自主性、自律性に任せると。それ以外に、文科省から定例的に資料を求めるときというのは、そういうケースがあるんですね。ということは、しっかりチェックできる機会というのは、そういう状態でなくても、私学助成を受けてなくても、文科省としては私学に対してはしっかりと見ているというふうに理解してよろしいんだね。――いや、イエス、ノーでいいですよ。そういうことですか、私の素朴な質問に対して。先ほど余り見ないんだよという副大臣の答えが出てきたから、言っているんだよ。
石川政府参考人 失礼いたしました。
 私が申し上げているのは、いろいろこちらの行政施策を展開する上で、いろいろな資料とか、あるいはその状況をお聞きすることはございます。ただ、それは、その時々の要請に、こちらの必要性に応じて行ったりするものでございますので、必ずしもその時点時点で学校法人の状況が網羅的に把握できるということではございません。
平野委員 ということは、実態は、してなかったんですよ。してなくて、今慌ててどうしようかということなんですよ。
 だから、私は言っているじゃないですか。新聞でそういうことを報道されたときに、ふだんはしてなくても、そのときぐらいはしっかりと事実なのかというチェックを入れましたかというのが、まず最初に私が状況確認したかったこと。
 加えて、この酒田の問題について、学校法人の理事長がかわっているにもかかわらず、登記簿が平成十三年にされているんだったら、本来、文科省に届け出をしなきゃならないのに、していない。初めて、この間現地調査に行ったときに、かわっていましたよというのが、これは当局から僕がもらったデータですよ。登記簿上では違う人の名前、実際運営は別の人が理事長でやっている、そんなおかしな状態が続いているのが酒田の短大ですよ。
 加えて言えば、酒田短大のずっと経過を見ると、いろいろトラブルが発生して経営者がどんどんかわっている、いわゆる問題のある学校ですよ。そういうことを文科省はつかんでおると僕は思うんですよ、それだけ理事長がかわったりいろいろしていますから。学校法人もかわっています。にもかかわらず放置しておった責任というのは、私は、重いよと。
 逆に言えば、まじめに学ぼうとして留学してきた、本国から見たら、日本の酒田の短大は、留学した国の学校はむちゃくちゃじゃないかというふうに、本来、国際交流で相互間の交流をしようとしている趣旨とは合致しない状態になっているというこのことを、もっと重く文科省としては受けとめなければならないんじゃないでしょうか。大臣、どうですか。大臣ですよ。怒っているんだから。
遠山国務大臣 本当に、今の酒田の短大の状況については私も大変憂慮をいたしておりまして、学校法人につきましては、関係法令の遵守はもとより、極めて高い公共性を有する存在でありまして、普通の法人以上に高いモラルが期待されていると思っております。その意味で、今推移している状況というのは、私は大変大きな問題をはらんでいると思います。
 ちょっとこれ以上申し上げられないのは、ちょうど今、同時刻に、大学において今後どうしていくかということについての理事会が開かれていると仄聞いたしておりまして、そこでの結論を待って、さらに今後、学校法人としてのあるべき姿について強く促し、厳しく指導をしていきたいと思っています。
平野委員 では、少しあれしますが、現況の酒田短大の留学生は、実態はどうなっていますか。現地調査されたんでしょう、この間。
岸田副大臣 二月十四日の酒田短期大学への実地調査の際に、在籍する三百三十四人の中国人留学生の内訳といたしまして、酒田在住者が百四十一人、県外に在住し、連絡のとれる者が九十七人、そして確認のとれない者が九十六人、このような状況になっているという報告を受けております。
平野委員 まず、酒田短大に在籍する三百三十四人の中国人の留学生、定員二百ですよ、酒田短大の定員は。当然、定員に沿った教授陣、学校の教員の定数というのは決められているはずですね。一・五倍の人が入っている。大半が中国人の留学生。加えて、ほとんど酒田にいない。半分以下ですよ、いるのは。九十七名は首都圏の、県外におる。県外でこれは何しているんですかね。行方不明になっている九十数名、この人らは連絡もとれない。こんな状態に今あるんですよ。
 加えて、いっときは、首都圏におるその人を対象にしてかどうかは知りませんが、サテライト教室なんという教室を東京に開いている。そこに行けば授業を受けたと同じ資格を与えますよ、こういうふれ込みのもとに、ビデオとか見られる、そういう施設をつくっているんです。
 この事実、ございますか。
工藤政府参考人 昨年の十月から十二月に閉じるまで二カ月余でございますけれども、東京にいわゆるサテライトを持っておられたというのは事実のようでございます。ただ、短大側の説明等によりますと、それは、そこで授業を行うというよりは、首都圏等に出た留学生の連絡先の把握でございますとか、あるいは授業料等の回収等のために設置されたものということなのでございますが、私どもも精査してみますと、学生向けの告示などを見ますと、あたかも、そこでビデオ等を見ることによって授業の一環であるかのごとき誤解を与える表現があったのは適切ではなかったのではないかというふうに考えてございます。
平野委員 誤解じゃないんですよ。これは実際にそういうふうに言っていますよ。それを誤解と言ったら失礼ですよ。告示している、ポスターに。あたかもじゃなくて、事実そういうことを、ここに来たら結構ですよということをちゃんと言っているんです。それを認めないというのも、当局もいいかげんな調べ方だよ。事実ですよ、これは。もし事実だということを証明しろというのだったら、してあげますよ。だから、それは認めなさい、そういうことをやっていたということは。
 それは法的には許されないことでしょう。どうですか。
工藤政府参考人 今、情報通信技術が大変発達してございますので、遠隔の地にありましても、双方向の指導を受けたりすることによって、授業、つまり通学と同じ効果を得るような形態もあり得るところでございます。ですから、そういう通学と同じような授業形態がとれる状況であれば、サテライトといいますか、遠隔の地における授業の実施も可能なんでございますが、調べてみますと、東京のサテライトというのは、双方向性ではなくて、酒田における授業のビデオで撮ったものを放映しているだけということでございますので、これが授業とはなかなか認めがたいところでございます。
 私ども調査しました結果によりますと、教授会等ではそもそもこれが授業の一環とは認識していないということでございますとか、昨年の十二月十三日付の学生諸君への御案内でも、このスタジオ利用での、二カ月余りの時期でございましたけれども、ここでのビデオ学習というのは正規の授業じゃないので、酒田に戻ってしっかり、補講等も行うから授業を受けてくれという呼びかけもしているというふうに承知してございます。
平野委員 そのことはまあよろしいわ、もう明らかに違法なんだから。
 そこで、私は時間がないものですから次に行きますが、UMAPという、これは奨学金の、これはいつからですかね、平成何年かにでき上がっているんですが、留学生の支援奨学一時金、いわゆる渡日費用を一律一人十五万円ずつ渡そう、こういうことを実は決めて渡しているんです。これは全国的にはたくさんいるんですが、酒田の留学生に対しても、累計で三百四十一名に対してはUMAPから一律十五万円を支給する対象に実はなっていた。加えて、その学生のうち三十八人に、文科省の言ういわゆる私費外国人留学生学習奨励費として月五万二千円がそのうちさらに三十八人に対しても支給されておる、こういうことなんですね。
 ところが、実態は、本来これは留学生に渡さなきゃならないお金でありますが、個人に渡さずに、学校を経由して本人に渡すと称して、学校には当然このUMAPからはお金を振り込まれているんですが、本人に行き渡っていない、こういう事実がある。加えて、私費外国人の留学生の毎月五万二千円のこの費用についても、三十八人にしっかりと渡っているかといったら、その事実についても余り定かではない。これは、少なくとも公金であります。我々の、国民の税金を使って、そういう高い志のもとに出している奨学金の費用であります。そのチェック体制はどうなっているのか、これが一つ。
 もう一つは、私の調べた限りでは、渡っていないんです。では、渡っていなかったら、学校に振り込んでいるんですから、学校の口座にその残金がなきゃならないのに、残金がほとんどない。そうしますと、この費用はだれが使ったのだ。公金を横領しているんじゃないかということを私は思うんです。
 私が今申し述べたような事実があるかどうか、お答えいただけますか。
工藤政府参考人 御指摘のように、渡日一時金ということで酒田短期大学の方に支給しておりました三百四十一人分のうち、五十一人分は支払われておりますけれども、二百九十人分は支払われていない。それから、私費外国人留学生学習奨励費という留学生に対する奨学金がございますが、これにつきましても、一部支払われていないという事実は確かにございます。しかも、先般の私どもの方の現地調査で確認しましたところ、学園としての預金残高が極めて乏しい状況にあるというのも事実でございます。
平野委員 されば、その振り込んだ我々の税金はどこへ行っているんですか。
工藤政府参考人 学園側の説明によりますと、学園全体としての資金状況が芳しくない中で、どうも、利用されたといいますか、学園全体の運営費の中で一時使われた可能性がございまして、そのあたりも含めて、現在、学園での調査の徹底と、少なくとも現に留学生がいるわけでございますので、留学生に対する本来の支給のための資金の確保について大学側が努力しているところでございます。
平野委員 ちょっと待ってくださいよ。本来は国が個人に支給する、それを便宜的に学校を経由して個人にお渡ししましょうという、善意が悪意にこれは変わっているんですよ。本来、生徒さんは、やはり生活費とか、生活環境が変わっていますからお金がかかる。一口十五万円くれる、毎月五万二千円くれる、そういうことでくれるんだったら、この都心に来ますやろか。
 新聞によれば、いないから渡していないんですというような報道もありましたわ、学校側の言い分として。いないから渡せないんです。それだったら、当然そこに担保されたお金がなきゃならない。しかし、今局長おっしゃったように、ほとんどないと。これは明らかに公金横領ですよ。
 そのチェックを文科省どう思っているのかということと、そんなずさんな管理体系のもとに、文科省は私学教育あるいは留学生の受け入れ等々やってきたんですかと。これは文科省の責任も重いし、この酒田短大というのは、そういう奨学金、あるいは留学生を入れたら、学校にはほとんど生徒がいないからどんどん入れちゃえば学校運営に随分助かる、経営上の観点だけで人を集めている、これが酒田じゃないですか。
 加えてもう一つ言えば、酒田短期大学の外国人留学生四月生募集要項を見ますと、試験も何にもない。何にも試験がないんですよ。入国できるかどうかというチェックがあれば、あと、必要な書類が整えば、随時書類選考によって入学が決まってしまう。これが募集要項の一覧ですよ。こんな学校が学校と言えるのでしょうか。私、改めて、この学校の許可をした文科省の責任を問うとともに、この学校なんてもうつぶすべきですよ。許可を取り消すべきに等しい大学ですよと私は思っているんです。どうですか。
工藤政府参考人 御指摘のように、国あるいは国民の税金からの補助金なども含めまして、その経理も含めまして、大変ゆゆしいといいましょうか、けしからない管理運営の学校法人であったというのは事実でございます。
 ただ、他方で、留学生の募集の仕方にもよりますけれども、当初は、酒田市内、都心とは違いましてなかなかアルバイト先なども少ないわけでございますけれども、大学側として、例えばラーメン屋を出店して、そこでのアルバイトの糧をふやしたりとかいう、それなりの努力もしていたようでございますけれども、結果としてこういうことになったのは、やはり大学の管理運営として極めて遺憾なことでございます。
 ただ、他方で、現に在学している留学生もいらっしゃるわけでございます。学校法人、公の法人ではございますけれども、やはり教育責任はしっかり果たしていただかなきゃいけないことでもございますので、先ほどの、今後の精査によっては返還してもらわなきゃいけないお金もあるわけでございますが、とりあえずは、まず学生の教育を十分責任を持って行っていただくこと、そのための資金の確保に学校法人の役員が全責任を負って当たっていただくこと、しかる後に返すべきは返していただくことなども含めまして、今後厳正な対応に努めてまいりたいと思っております。
平野委員 だけれども、局長、もともとここに来る留学生は、物販、家電、流通、各企業に勤める社会人で、企業が留学費用を負担する私費留学生が七割も占めている。国営企業に勤めて、公費で来る学生さんもいますよ。これがもともとのベースなんですよ。山形にあるという理由はどうなんですかといったら、吉林省と山形との関係が非常に友好的なので、そういう友好のもとに留学生を受け入れた経過なんですよ。
 それが今日ゆがんでしまっている。ここに対してどうチェックをするかということと、費用さえ払えば入学できますよと、こんな学校なんてあるのでしょうか。何にもないです。入学志願書、身上書、こんな一連の事務手続さえあればいいと。ただ唯一大事なところは、入国ができるかどうか、入国審査の問題が非常に大きなかぎになるわけであります。
 したがって、もう時間がないわけですが、きょうは法務省の方にも来ていただいていますが、留学生に対する在留許可の判断について、どんな判断をされているのか、お聞きしたいと思いますが。
中尾政府参考人 お答え申し上げます。
 留学生の入国につきましては、留学という在留資格を必要といたします。したがいまして、その基準につきましては、主に、当該申請人が本邦の大学、短大、専門学校等の高等教育機関において教育を受けること、もう一つは、本邦に在留する期間中の生活に要する費用を支弁する手段が確保されていること、これが大きな要素でございます。
 もっとも、留学生の入国を促進するというのは国の基本的な方針でございますので、私どもの方といたしましても、当該教育機関が在籍の管理能力が十分ある高等教育機関につきましては、それなりに、入国の段階で所要の負担を与えるのは好ましくないという判断から、原則として、それ相当の大学、短大につきましては、教育機関が入学を許可したという事実を最大限尊重いたしまして、書類等の簡素化に努めてきたところでございますが、今回のことにつきましては、その私どもの信頼が裏切られたというふうな感じを持っているところでございます。
平野委員 今、管理局長の方からありましたが、生活に要する費用が十分確保されていること、教育機関が確固たる教育機関として存在していること、この条件のもとに、留学生の在留許可を出していたということですね。代理人は、信頼関係にあって、教育機関が言ってくれば、それを受けて代理人として認めてきた、こういうことですが、どうですか、今の実態を見たら。生活する費用、このことがなくなって、都心に来たり、いろいろな状態になっている。
 したがって、私は法務省の方にもぜひ言いたいんですが、国の施策として進めてきたことが逆に、結果としては裏切られている。逆に言いますと、私、これは新聞ですが、大学サイドはその留学生に対して除籍処分をも考える、私はこんなことを実は報道で見ました。もし、在留許可があって、大学生でなくなった、除籍処分になったその人間というのは、即中国なり当該の本国に強制送還されるのですか。
 時間がないですから、手短に。
中尾政府参考人 現行の入管法によりましては、留学生が大学を除籍されたという事実だけでもって退去強制手続はとれないことになっております。そのため、委員の御指摘のとおり、留学生が大学を除籍されても、在留期間が残っておれば、その残余の期間が在留できるということになります。
 この点には御批判があろうかと思います。私どもといたしましても、この点は、公正な在留管理という観点から、その対策につきまして、鋭意、あるべき姿はどうすべきかという点を含めて検討しているところでございます。
平野委員 そうすると、一義的に、そういう状態になったときの責任、管理責任はだれが負うのですか、その学生に対する管理責任は。どこが負うのですか。文部省ですか、酒田短期大学ですか、法務省ですか。
工藤政府参考人 これは、大学側のヒアリングも含めて私ども指導しているところなのでございますけれども、受け入れた以上、そのフォローアップについては、大学がしっかり責任を持ってほしいということでございます。
 ただ、大変残念なことに、連絡のとれない留学生がいらっしゃるということで、これは在京中国大使館とも御連絡しながら、関係方面力を合わせながらその把握に努めて、かつ、御案内のとおり、留学生ビザで在留したまま学校に行かないで不法就労しますと、それは強制送還という、まあ不法就労問題に及ぶわけでございますので、そういう御本人の意思が、働くためなのか、本当に勉学のためであれば、酒田あるいは他への転学なども含めて、関係者ともども、私どもも努力してまいりたいと思っております。
平野委員 時間が来ましたから最後に二点だけ、一点は委員長にお願いしたいことでございますが。
 したがって、そうすると、在留許可がある間は管理責任は学校側にあると言いながらも、行方不明で連絡とれない。そういう人については、事実上、日本国内にいるということであります。もし、一年半、二年と在留許可があったとしたら、その方が国内で何をしているかというのが全くわからない。こんな状態がもしこの留学受け入れ制度のもとに起こってくるとしたら、ゆゆしき問題になる。したがって、法務省もそういう、今法整備の不整備なところについても至急に検討していただきたい。この一点。
 もう一つは、この大学についてはまだまだよくわからないところが多うございます。したがって、これは委員長にお願いでございますが、理事長、さらには事務局長の参考人をぜひ呼んでいただいて、実態をしっかりと究明しなければ、逆にこれは外交問題に私はなっていくような気がしますし、もしこれが氷山の一角だとしたら、もっと広く日本国内に同じような事例であるとしたら、私はゆゆしき問題だと思いますので、ぜひ委員長に、理事会で、参考人を呼んでいただいて、もっと詳しく究明、原因究明を追求していかなきゃならないと思っておりますので、お取り計らいをよろしくお願いしたいと思います。
 以上でございます。
河村委員長 ただいまの件は、理事会で検討させていただきます。
 次に、斉藤鉄夫君。
斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫でございます。
 きょう、私は、文化芸術政策と科学技術政策の二点について質問をさせていただきたいと思います。
 昨年秋の臨時国会で、きょう御出席の委員会の皆様にも御審議いただいて、文化芸術振興基本法が成立をいたしました。私は、科学技術と文化芸術というのは、ある意味で、知識集約的な二十一世紀の日本の産業のあるべき姿を示していると思っております。その中で、特にまたあえて分類をすれば、科学技術というのは情報も含めた物の先端研究、そして文化芸術というのは心の満足の先端研究、この二つが今世紀の、特に日本のような先進国の産業の中心になるべきであって、その根幹になる法律なのではないか、このように私自身考えております。
 法案成立後、事務所に電話がかかってきまして、この不景気なときに何が文化芸術だ、ふざけるなというふうな有権者の声も来たわけですけれども、逆に、不景気な今だからこそ、新しい産業を興していくための文化芸術振興という側面もあるのではないかと私はその電話に答えたわけですが、それは私自身の考えですけれども、この文化芸術振興基本法成立を踏まえて、大臣の所信にも、文化国家を目指すという文言がございましたけれども、大臣の御決意をお伺いいたします。
遠山国務大臣 長年、国民や文化芸術関係者が待望しておりました文化芸術振興基本法が、各党の先生方、特にこの委員会の先生方のおかげで成立をいたしまして、本当に心からお礼を申し上げたいと思っております。
 これを契機といたしまして、私は、大きな文化芸術の振興の動きが今始まったと思っております。それは、来年度の文化庁の関連予算につきましては、大変厳しい財政状況の中でございましたけれども、対前年度比七十六億円増、八・三%増の九百八十五億円ということで、一千億にもうあと少しという画期的な伸びを示したわけでございます。しかも、その中身が、二十一世紀アーツプランと申しますか、文化芸術創造プランを創設すること、そして、伝統文化、文化財の活用と次世代への継承、さらには国際文化交流の推進など、非常に中身のある、内容を伴った予算を組むことができたと思っております。
 今後とも、この基本法の趣旨を踏まえまして、私どもとしましても、日本の芸術文化の振興のために、これは一人一人の心を豊かにするということと同時に、大変波及効果も大きい分野でございますので、力を入れて、その推進に取り組んでまいりたいと考えております。
斉藤(鉄)委員 よろしくお願いいたします。
 この文化芸術振興基本法の中に、二つの形の支援というものが書かれております。一つは、財政支援でございます。よくフランス型と呼ばれておりますけれども、国が一たん国民の皆さんから税金をいただいて、その税金を国が文化芸術支援として配るというやり方でございます。もう一つが、いわゆるアメリカ型で、文化芸術活動に対する寄附金を促進する税制でございます。
 そのいずれも、日本は大変大きくおくれておりまして、フランス型、財政支援型で言えば、国家予算に占める文化芸術予算というのは、日本はフランスの十分の一、お隣の韓国に比べても六分の一という数字でございますし、アメリカ型の寄附税制もほとんどないと言っても過言ではない状況でございます。
 文化芸術活動への寄附金ですけれども、これは一九九七年だったか八年だったか、ちょっと数字を忘れましたけれども、アメリカの寄附総額が大体一兆二千億円程度、これがほとんどが個人による寄附、日本の場合は二百億円、これはほとんど企業による寄附、その開きや一対六十ということで、これはそれを促進する税制が完備していないということによるわけです。
 先ほど大臣御答弁ありましたように、フランス型、財政支援については、今御努力もあって、今回大きく伸び始めたということでございますが、こういう新しい税制に向けて頑張っていかなきゃいけない、寄附を促進する税制を頑張っていかなきゃいけないということで、基本法の中にも、三十一条に、文化芸術活動を行う者の活動を支援するため、文化芸術団体が個人または民間の団体からの寄附を受けることを容易にする税制上の措置をとらなくてはならない、このように明確に書かれたわけでございます。財務省の抵抗もかなりあったと聞いておりますけれども、このように明確に書かれました。
 しかし、財務省の抵抗は非常に、抵抗が強いと言いましょうか、ガードがかたいものがございます。担当者と話しましたら、斉藤さん、こんな税制を設けたら、これを悪用する人ばかりになりますよというふうな答えしか向こうから返ってまいりませんでした。
 そういう意味で、大変厳しい壁があるとは思いますけれども、アメリカの場合、少々そういう悪い人がいたとしても、それを大きく上回る善意の寄附が集まって、これが結果としては社会を大きく潤しているということもございます。そういう社会を目指していく上でもこれを進めていかなくてはならないと思いますが、この三十一条に書かれていることの実現への決意をお伺いします。
遠山国務大臣 文化芸術関連の経費につきましては、公的な支援ももちろん大事でございますけれども、今委員の御指摘のように、個人あるいは私的な企業の方々の善意の寄附金というのは大変大事だと思っております。
 しかし、これまで特定公益増進法人の制度あるいは社団法人企業メセナ協議会を通しての助成でありますとかという制度はございますけれども、まだまだ、本当に必要とされている寄附を推進していく、そういう状況にはなっていないと思います。
 我が省といたしましても、今後とも、あの基本法の趣旨を踏まえながら、民間芸術団体が私的な寄附を受けることを容易にするための寄附税制につきまして、できれば現在検討が始まっております経済財政諮問会議でありますとか税制調査会の議論に反映させて、この法律の趣旨が生かされるように努力をしていきたいと考えているところでございます。
斉藤(鉄)委員 この三十一条は国会の意思でもございますので、当局もぜひそれを踏まえて頑張っていただきたいと思います。
 次に、科学技術振興策について質問をさせていただきます。
 大臣の所信、読ませていただきました。科学技術振興につきましては、その最初に、科学技術基本計画を踏まえた科学技術・学術の振興ということで、二つの大きな柱があるんだと述べておられます。一つが「戦略的重点化」、それからもう一つが「すぐれた成果の創出、活用のための科学技術システムの改革」。戦略的重点化と科学技術システムの改革、この二つが大きな柱で、これをやっていきますよという所信を読ませていただきました。そして、これは第二期の科学技術基本計画と基本的に同じ考え方だと思います。
 では、話を一つ目の柱、戦略的重点化ということについてまず最初に質問させていただきたいと思いますが、この戦略的重点化は、大臣の所信によりますとまた二つから成っている。一つが「基礎研究の推進」、それからもう一つが「国家的、社会的課題に対応した研究開発への優先的資源配分」だと。基礎研究の推進及び優先的資源配分、この二つがその戦略的重点化の中身だ、このように述べておられます。
 そこで、お聞きするのですが、私は、戦略的重点化という言葉と、基礎研究の充実、多様な基礎研究を充実させていくということが、どうもしっくり、自分の中で理解がすっと落ちないのです。
 私のイメージでは、基礎研究というのは、本当に基礎的なところであって、これからここを一生懸命やればこんな成果ができて将来こんなふうに役に立つということの評価にまだ乗らない、いろいろな細かい、細かいといいましょうか、そういう段階の研究、これが基礎研究ではないか。
 その基礎研究を一生懸命やりますよということが戦略的重点化という大きな柱の中に出てきているわけでございますけれども、その点も含めまして、この戦略的重点化ということに対してのお考えをお聞かせ願えればと思います。
遠山国務大臣 確かに、科学技術基本計画の中では、大きく分けた重要政策の柱の一つの「科学技術の戦略的重点化」の中の一番目に「基礎研究の推進」というのが入ってまいりますけれども、これは斉藤委員御指摘のとおりでありまして、私は、研究者の自由な発想に基づく研究というものが一番基盤であろうかと思います。ノーベル賞につながっていくような独創性のある、そして特に萌芽的な研究というものも大事にしていかなくてはならない。
 その意味では、確かに、戦略的重点化というのとややトーンが違うというお話でございますけれども、まさに私どもも、その大事な基礎研究、本来の意味の基礎研究を大事にしていこうという精神には変わりないわけでございます。
 この所信の中でも書きましたように、「本基本計画の柱は、基礎研究の推進や」ということで一つ出しておりまして、その後に「国家的、社会的課題に対応した研究開発への優先的資源配分」ということについての、くくりとしては戦略的重点化ではございますけれども、そのことの大事さというものは私どもの科学技術を振興していく考えの基本に据えているところでございます。
斉藤(鉄)委員 今の質問とちょっとダブるかもしれませんけれども、この戦略的重点化、二つの大きな柱のうちの一つ、戦略的重点化、それは、競争的資金というものを拡充していきます、このように書いてございます。公募して、アイデアを競って、これはという研究にお金を重点的に投入する。このこと自体、私は、間違っていない、まさに戦略的重点化の一つの大きな方法だと思いますが、この競争的資金が基礎研究もカバーする、基礎研究やRアンドDの優先的、いわゆる重点化された研究も基礎研究もこの競争的資金で評価をしていきますというふうな内容になっていると思います。
 例えば、いわゆる科研費、千五百億弱だったと思いますが、この科研費等も競争的資金ということにくくられているわけですけれども、どちらかというと、科研費というのは、畑全体に水をまくような、どこから芽が出てくるかわからないというふうなニュアンスを私は持っておりまして、それさえも戦略的に重点化をするくくりで配分が行われますと、いわゆる大臣がおっしゃるところの多様な基礎研究の拡充につながらないんではないか、このように思いますが、いかがでしょうか。
青山副大臣 まず、競争的資金のことですが、創造的な研究開発活動が活発に行われるためには競争原理が働くことが非常に重要であるということは、御理解いただいておるとおりです。そしてまた、個人の能力が最大限発揮される。そういう意味では、競争的資金の中に科学研究費補助金が、ボトムアップ研究として資金が使われていることは御承知のとおりです。
 同時に、戦略的創造研究推進事業という、いわゆる科学技術の芽を社会ニーズに対応していくために、今度はボトムアップではなくてトップダウンで、戦略的に使っていきたいという資金を平成十四年度予算では四百二十七億円計上させていただいておるところでありまして、ボトムアップで資金を提供させていただく部分と、トップダウンで戦略的に使っていきたい、社会のニーズに大きくこたえていきたいという意味でトップダウンで使っていきたいというふうに考えておるところでございます。
斉藤(鉄)委員 それでは、こういう理解でよろしいでしょうか。多様な基礎研究と大臣所信の中にございます。それは、戦略的重点化というところでくくられてはおりますが、実際の資源配分等はボトムアップで、ある畑の一部に集中的に栄養をやるという方式とは別に、畑全体に有機肥料をまく、水をまくというふうなこともきちんとやっていきます、こういう理解でよろしいんでしょうか。
青山副大臣 そのとおりでございまして、科研費の方は千七百億円以上を用意していきたい、計上させていただいておるところでして、トップダウン方式としては今申し上げたように四百二十七億円のことで、ボトムアップ方式の場合は、研究開発を公募して、すぐれた研究に投資していくというものですから、そのあたりは相当幅広くなってくると考えております。
斉藤(鉄)委員 よくわかりました。
 それから、戦略的重点化ということについてもう一つ質問させていただきますが、第二期の科学技術基本計画、約一年前にできたわけですが、このときから、ライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテク・材料、この四項目が含まれておりまして、今回の大臣所信の中にもこの四つの重点分野ということですが、基本計画は五カ年計画です。五カ年もこの四重点項目でずっといくんでしょうか。もう時代は非常に早く変わっておりまして、そういう意味では、重点ということについては柔軟な見直しがあっていいのではないかと思いますが。
遠山国務大臣 昨年三月に閣議決定されました第二期の科学技術基本計画におきましては、機動性やスピードの要求される時代にあるということを前提として、研究開発の重点化の対象、内容について、総合科学技術会議が継続的に精査し、適時の見直しを行っていくということになってございます。
 さらに、科学技術の発展によりまして、これまでナノテクノロジーやゲノム科学のように急速に成長してきた研究領域があるということを踏まえまして、著しい成長が予想される研究領域を先見的に抽出して、そしてそれに対して機動的に対応していくということにしております。
 これはむしろ、総合科学技術会議といいますよりは、我が省の中に置かれました科学技術・学術審議会の中に研究計画・評価分科会などのいろいろな分野別の委員会を設けまして、そこで常にウオッチしながら、何がこれから伸びていく領域であるかということを常に見ながら、必要に応じて機動的に対応していくということになってございます。
 ただ、今、本基本計画が策定されてから一年でございまして、ライフサイエンス等の四つの分野への重点的取り組み自体は、これは直ちに見直すような状況にはないと思っておりますが、基本的にこういう問題については柔軟に対応するという姿勢で取り組んでいるところでございますので、御理解を賜りたいと思います。
斉藤(鉄)委員 それでは次に、もう一つの柱、科学技術システムの改革という方に入っていきたいと思います。
 大臣所信の中に具体的に三つ、こういうことで科学技術システムの改革をやっていきますというふうに書いてございまして、一つが、研究開発に係る評価システムの充実、まあ評価をやりますということです。二番目が、産学官連携の抜本的強化ということです。それから、これは上の二つに並べられるかどうかわかりませんが、具体的な名前で知的クラスター創成事業、地域における科学技術の振興ということでございます。それぞれ、端的にで結構でございますので、わかりやすく。
 研究開発に係る評価システム。これはいろいろ議論されてきて、いかに難しいかというのもこの委員会で何度も議論されてきました。ですから、これをどういうふうにされようとしているのか、端的にわかりやすく。それから二番目の、産学官の連携の抜本的強化。これもここ二、三年、強く言われてきましたけれども、なかなか難しいということが言われておりますので、ここに対しての具体策。それから、知的クラスター創成事業。よく聞くんですけれども、これまでも地域での科学技術振興または基盤整備事業、随分旧科技庁時代から行われてきました。それと何が違うのか、それぞれ、端的にわかりやすくお願いします。
青山副大臣 まず、科学技術の振興に当たっては、適切な評価を実施するということが非常に重要でございまして、それは競争的で開かれた研究環境を実現していかなければいけない、それからまた、資源の重点的、効率的な配分を進めていかなければならない、そういう意味で適切な評価を実施していかなければいけないという立場でございまして、これは第二期の科学技術基本計画でも、また昨年十一月における総理大臣の決定におきましても、評価指針を策定する作業を進めているところでございます。
 この際には、例えば、すぐれた研究開発の育成であるとか、柔軟かつ競争的で開かれた研究開発環境の創出であるとか、何といっても評価の結果による資源配分への反映をしていく、それが評価を進めていく上で非常に重要であるというふうに考えておりまして、指針案の検討を進めているところであります。これが一点。
 それから、産学官連携でありますが、大学などが研究者の独創的な研究成果を活用して産業界と協力をして経済の活性化に寄与していく、この産学官連携の重要性が非常に今強く産業界からも一般社会からも大学の方からも出てきておりまして、この機運は非常に大切な段階だと私は思っております。
 そういう意味で、大学における研究成果の特許化を進める技術移転機関、TLOの承認であるとか、国立大学教官の兼業規制の緩和など、さまざまな取り組みを行ってきているところでございまして、少し細かくなりますが、平成十四年度予算案においては、大学発ベンチャー創出を促進する研究助成制度を、また、大学と企業の共同研究を促進するマッチングファンドの制度を創設していく、大学の共同研究センター等への産学官コーディネーター、いわゆる目ききの人材を支援していく。それから、日本版シリコンバレー、先ほど御指摘がありました知的クラスター創成のための支援制度を平成十四年度の予算案に計上させていただいているところでございます。我が国の経済の活性化に、産学官連携を進めることによって努めてまいりたいと考えております。
 それから、最後に出てまいりました知的クラスターでございますが、今申し上げましたように、我が国経済の活性化を図るためには、やはり地域における産学官連携が今重要な課題となってきておりまして、新しく大学を中心とするといいますか、地域の研究機関や研究開発型の企業等々と連携をして、知的クラスター創成事業を実施する段階に今来ていると考えております。現段階では、まだ十地域程度を考えておりまして、平成十三年度末、今年度末をめどに、提案をいただいておる地域の中から来年度より事業を展開する予定としているところでございます。
 なお、経済産業省が進めております産業クラスター計画等の関連事業との連携を図ってまいりたいと考えております。
斉藤(鉄)委員 今お答えいただいた一つ一つにまたちょっといろいろ追加の質問をしたいのですが、ちょっと時間がありませんのでそのまま行きますけれども、評価をして、それを次の資源配分に役立てる。これはぜひ、大変難しいと思いますけれども、試行錯誤でも結構ですから、スタートしていただきたいと思います。
 国立研究所やいわゆる特殊法人の研究機関では、随分これがだんだん進んでまいりました。残された大きなところは大学だと思います。先ほどの、基礎研究を大事にせよと言ったのと矛盾するじゃないかと言う方もいるんですが、そうではなくて、基礎研究には基礎研究なりの評価があると思いますので、その点をぜひしていただきたいと思います。
 次の質問に入ります。
 その戦略的重点化、科学技術システム、その他そういう施策で科学技術創造立国をつくっていくということですが、そのもととなる科学技術や理科に対する国民の関心、子供たちの関心、理科離れということが言われるわけです。その対策をお聞きいたしますけれども、私の個人的考え方は、小手先のことではなくて、基本的に、日本社会がいわゆる技術者そのものを評価する社会になっていない、そこに根本的な原因がある、私自身、理科系を出ましたので、実感としてそのように感じます。
 これは科技庁の科学技術政策研究所でしたか、ちょっと忘れましたけれども、課長、部長、取締役、社長、その中に技術系の占める割合というのが出ていまして、どんどん小さくなっていくのです。課長クラスでは六、七〇%あったのが、部長で三、四〇%になり、取締役で一〇%になり、社長になるとほとんどなくなる。出世するのが評価されていることの指標につながるかどうかは別の議論として、これに端的に示されるように、日本はスペシャリストが評価されない、ゼネラリストでないと出世できない、こういうことがあって、理科離れの根本はそこにあると私自身は思っておりますが、理科離れ対策についてお伺いします。
青山副大臣 御指摘の点は私も同感でございます。
 ただ、よく言われることですが、日本の児童生徒の理科の成績はどうかというと非常に高いのです。成績は国際的に見て上位に位置しておるんですが、理科が好き、あるいは将来科学を使う仕事がしたいという生徒の割合が最低レベルであるということは御承知のとおりでございまして、そういう意味では、科学技術離れ、理科離れが指摘されておりますので、具体的に我々は、新しい指導要領において、理科については観察や実験、課題学習などを重視して、児童生徒の学ぶ意欲を伸ばしていきたい、あるいは、知的好奇心、探求心を高めていきたい、理科の好きな生徒を育てて、ふやしていきたいということから、平成十四年度から、理科、数学に重点を置いた教育を行ういわゆるスーパーサイエンスハイスクールの創設や、大学などと教育現場との連携によって知的探求心を伸ばすためのプログラムを開始していきたい、科学技術・理科大好きプランというプランを開始していきたいと考えております。
 なお、毛利宇宙飛行士が館長をしていただいております日本科学未来館、これは児童生徒には非常に関心を持っていただいております。非常に関心を持っていただいていることは、大変期待しておるところでございます。何といっても、科学技術に対する関心の喚起を促していきたいと考えております。
斉藤(鉄)委員 御努力をお願いします。
 次に、原子力や宇宙等の国家プロジェクトについて質問をさせていただきます。
 原子力につきましては、いわゆる発電等の産業については経済産業省、それから研究については文部科学省というふうに昨年の省庁再編で整理をされたところでございますが、まず原子力研究についてでございます。
 私は、原子力の使命は大変重大だと思っております。特に地球温暖化対策、また京都議定書の問題もあるわけですけれども、勉強すればするほど、この京都議定書のメカニズムで約束を、国際公約を達成するためには、原子力の役割を本当に見直していかなくてはいけないと思います。百三十万キロワット一基で、大体、二酸化炭素排出量、日本の一年分の〇・七%に相当する。十基つくれば七%でございます。これは、ほかの新たな技術開発等ではなかなかできないことでございまして、安全性に力を注ぎながら原子力と共存をしていく、また拡充を図っていくというのが民意ではないかと私は思っております。
 しかしながら、現実は原子力の安全研究について非常に厳しい目が注がれておりまして、例えば、特殊法人改革ということもあったのですけれども、日本原子力研究所、核燃料サイクル機構の予算は大幅に減っております。そういう意味で、民意と政策とが矛盾をしている、私はこのように思っているんですが、これに対する文部科学省の見解をお伺いします。
加納大臣政務官 原子力が果たしている役割が非常に大きいという斉藤先生の御指摘は、全く同感でございます。
 二つの分野があろうかと思います。一つは、発電、原子燃料サイクルといったエネルギー面で社会の基盤を支える、そういうエネルギーとして。それからもう一つは、放射性同位元素、ラジオアイソトープでございますが、これの利用。農業用、工業用、医療、こういうものによって人の命が救われ、そして生活が豊かになるという面で、放射性同位元素の利用は大きな貢献をしている、それの研究開発が重要であるというのが斉藤先生のお話だと思っております。
 このエネルギーと非エネルギーと両面におきます研究開発の方向につきましては、原子力研究開発利用長期計画、原子力長計と言っておりますけれども、この中でも明確に位置づけられ、重視されているところでございまして、どういう方向かということでございますが、核融合、加速器、次世代型、革新的原子力技術、原子力安全に関する技術、それからFBR「もんじゅ」の開発を中心とする核燃サイクル技術の研究開発等が重要なものでございます。
 今先生から御指摘のありましたように、原子力発電が果たしている大きな役割、特に日本の、もっと言えば、世界のエネルギーのベースロード、基盤としての大きな役割、日本でいうと、一次エネルギーの一三%、電気の三五%を担い、関東地区では四二、三%は担うという大きな役割を果たしている安定した供給力として、また、先生も御指摘になられましたように、温室効果ガスを発電レベルでは排出せず、原料の採取から廃棄まで含めたライフサイクル、一生涯を通じての比較をしましても、最も温室効果ガスの排出量が少ないということで、先生今数字も挙げられましたけれども、日本のCO2排出の二〇%、世界では一〇%の削減を原子力発電だけでやっているというのも事実でございます。
 そこで、先生の第二の御質問でございますが、そういう中において、サイクルなりあるいは原子力研究所、これが今回統合するということで、現在その準備に私ども入っているわけでございますが、こういうことによって原子力の予算面ではどのように考えているのかということでございます。
 私どもは、研究開発の重要性、まさにさっき先生からお話がありました戦略的重要性、そして基礎的な分野両面におきましても、この原子力に関する研究開発は、日本の安全保障に直結している、日本の環境コミットメントに基礎をなすものであると考えておりますので、重点化を図ってまいりたいと思っております。
 もちろん、大きなプロジェクトが一つ進むということによって予算が減るということは当然ございますけれども、長期的に見まして、核融合も含めまして、これからの原子力、日本の科学技術創造立国の路線の上に、充実した体制を組んでまいりたいというふうに考えているところでございます。
斉藤(鉄)委員 大変力強い加納政務官の初答弁でございました。私も全く同感でございます。
 では、それに関して、二つ。
 一つは、端的にお伺いします。「もんじゅ」がとまったままです。高速増殖炉というのは、今、日本だけが研究を進めておりまして、私は、この研究がある一定の段階に達すれば、これは日本が世界に貢献する非常に大きな分野だと思いますし、世界の研究者もそのように言っている人がたくさんおります。そういう意味で、もう一兆円以上国費を投入した研究炉でございますし、この研究再開を急ぐべきではないかという点が一つ。
 それから、先ほど加納政務官の答弁にRIというのがございました。放射性同位元素です。
 放射性同位元素について、実は、きのうの読売新聞に、今の日本の基準を見直して、IAEA、国際原子力機関のスタンダードを使おうと。しかし、そのスタンダードに日本の基準を合わせますと、かなり厳しい基準になって、現在、例えば土木現場で使われている水分計ですとか、私たちの家についている煙感知器、あれもすべて基準の対象になって、一つ一つ管理者を置かなきゃいけないというふうなことになるかもしれないという記事が載っておりました。
 大変国民生活にも関係深いものですから、この二点についてお伺いします。端的にお答えください。
加納大臣政務官 端的にお答えいたします。
 「もんじゅ」については、再開を目指したいと思っております。「もんじゅ」は、御案内のとおり、日本のエネルギーの中でも、特に私は、化石燃料と違って、再処理をすることによって、まだ使える燃料をリサイクルできる、リサイクル性にあると思いますから、そういう意味では、プルサーマル、そして高速増殖炉というのは、原子力を選んだ以上は当然の技術パラダイムだと考えております。
 「もんじゅ」は、九五年の十二月以降、二次系のナトリウムの漏れがありましてとまっておりますが、対策を十分に練りまして、現在、安全審査中でございます。安全審査終了を待って、運転を再開し、そして「もんじゅ」の徹底的な検証を行って次の戦略につなげたい。
 世界がやめているからやめるんじゃない。世界がやめているけれども、やがて必要になれば、今から日本がトップリーダーになれるんだ。商業用の高速増殖炉の開発は急務でなくなりました。だからこそ、今時間があるのです。この時間を十分に生かしてトップランナーになりたいというのが「もんじゅ」でございます。
 続きまして、RIでございます。
 ラジオアイソトープ、放射性同位元素等でございますが、おっしゃるとおり、IAEAのことが、今週だったですか、新聞に載りました。
 これは先生御指摘のとおりでございまして、放射性同位元素の利用というのは、大変な光もあるけれども、影の面として放射線障害というものを起こすリスクがあるので、どこで基準を決めるかという大事なことでございます。
 日本の場合には放射線障害防止法等で規制をしているわけでございますが、これとIAEAが知見を集めてつくった、先生今おっしゃいましたのは、電離放射線に対する防護及び放射線源の安全のための国際基本安全基準という長い名前の基準でございます。
 これを比較してみますと、先生、今、厳しくなるよとおっしゃったんですが、確かに厳しくなるところもあるんですが、例えばコバルト60でございますとかセシウム137とかいろいろあるわけでございますが、ストロンチウム90とかいろいろなものを見ていきますと、日本の基準でやっているのとややとらえ方が違うんですね。日本の場合にはグループ別にしておりました。第一群から第四群、それから密封型、非密封型。国際原子力機関、IAEAの基準は核種ごとにやっているわけでございます。そういうのでちょっと違う。
 密封とか非密封、ちょっと専門的になっちゃうので申しわけないのですが、先生、専門家でいらっしゃるのであえて申し上げますが、そういうところがちょっと区分が違うということであって、一つだけ例を挙げますと、例えばコバルト60の場合、日本ですと、密封型ならば十の六乗、非密封型なら十の四乗というのがリスク免除、規制免除の限界なんですね。IAEAの方は十の五乗ということで、ちょうど間に入っております。ということは、あるものにとっては厳しく、あるものにとっては緩むということであります。
 これらにつきましては、放射線審議会、その中の基本部会でもって十分に議論を今やっているところでございますので、その審議の結果も受けまして、原子力安全利用、特にこの放射性同位元素の安全利用の面で遺漏なきを期していきたい。それに伴って、国内の基準も見直すということを現在やっている最中でございます。
斉藤(鉄)委員 各家庭の天井についているあの煙感知器にすべて管理者を置けというようなことのないように、よろしくお願いいたします。
 それから、最後に宇宙開発についてお伺いします。
 H2A一号機、二号機打ち上げ成功は、大変喜ばしいことだと思っております。その前のH2の五号機と八号機、二回連続して失敗しました。このときに、そもそも、NASDA、発注者と、受注者、メーカー、このメーカーとの責任体制でありますとか情報の交換でありますとか、そういういろいろな問題点が指摘をされました。NASDAのシステムインテグレーターとしての機能も問題視をされました。
 そういう反省を踏まえて、新しい宇宙開発体制で今回のH2Aの二回の成功につながったんだと思いますけれども、これも端的に、どういうところが反省点としてあって、ここをこう直して今回成功しました、この報告をお聞きいたします。
青山副大臣 今回のH2A試験機二号機をどう評価するかですが、ロケットとしての機能は十分に果たしまして、予定した軌道へきちっと入ってきましたし、試験機器から来るデータは予定のものが入っております。
 ただ、一部、ロケットの一部と分離をさせることができなかったことは、これは基礎的な、最も基本的なところで間違いがあったのではないかと今原因が明らかになってきておりますが、本質的な、我々が求めてきておった目的は達成されてきておると思います。
 したがって、今後さらに取り組まなければならない人工衛星の搭載によるロケットの打ち上げについての基本的な技術の基盤は確立した、獲得することができたと受けとめております。
 それから……(斉藤(鉄)委員「H2ロケットの失敗、何を学んで、今回成功に結びつけたか」と呼ぶ)どちらかというと、日本は失敗の経験の少ない国でございまして、あの失敗を有効な反省点という点ではむしろよい点が生かされて、試験機一号機のときも試験機二号機のときも、非常に真剣にその反省点の上に立って取り組んできたことがいずれも成功に結びついてきたことというふうに考えております。
 基本的には、エンジンでございますから、相当なたくさんな部品を使ってやるところでございまして、一つ一つ精密に精査して反省を加えて今回もその前も成功したというふうに考えております。
斉藤(鉄)委員 終わります。
河村委員長 次に、山谷えり子君。
山谷委員 民主党の山谷えり子でございます。
 レーガンが危機に立つ国家の中で、我々は一方的な教育上の武装解除を犯しているなどと言いまして、またブッシュもそれを受けて、今、徹底的な教育のチェックと評価を行っております。それからブレアも、もう教育、教育、そして教育と言って、教育改革に大変に大きな力で取り組んでいるわけでございますけれども、我が小泉総理は、米百俵だけでいささか心もとない。その分を遠山大臣が、学びのすすめをアピールして、これは教育上の武装解除を犯してはならぬと力を込めていらっしゃるということで、保護者も学校現場も引き締まった気持ちでこの四月を迎えられるのではないかというふうに思いますけれども、ただ、今、国民は、教育だけでなく、社会経済環境の中で非常に苦しい思いをしておりますので、外務省の問題それから農水省の問題などで、もう役所と現場とずぶずぶやないかみたいな思いを持っているわけでございますね。
 平野委員が酒田短大の問題をおっしゃいました。私は、けさの産経の朝刊、増田委員が成り行きを見守りたいというふうにおっしゃいましたけれども、この問題を少しお聞きしたいというふうに思います。
 まだけさの朝刊をお読みになっていらっしゃらない方のために、ちょっと紹介をさせていただきますと、文部科学省が、チームティーチングに、加配のためにお金を出している、これは人件費、半額が国庫負担、残りが地方交付金なんですけれども、小樽市の公立小中学校二十校に、TTなど少人数指導を充実させるための加配措置をした、ところが二十校のうち十九校がインチキをしていたという問題でございます。目的どおりに運用せずに、教員全体の持ち授業時間を減らすなど、労働軽減に充てていたということがわかったということでございます。各学校は小樽市教育委員会に対して、そのとおりである、チームティーチングに使っていなかったというふうに認めております、新聞によりますと。
 それから、これは申請するときに、保護者、地域に対する説明とか、いろいろな実績などを報告するものがあるんですが、個に応じた指導ができたとか、保護者会で説明し大きな関心を呼んだ、チームティーチングによる授業の参観を実施したと、していないのにこういうことを書いているんですね。
 これはとんでもないことで、うその文書を作成したということだというふうに思いますけれども、十三年度だけで一億五千万円以上の公金のむだ遣いが行われたということなんですけれども、これに関して、大臣、いかがお考えでございましょうか。
矢野政府参考人 まず、私の方から事実関係を御説明させていただきたいと思います。
 先ほどお話がございました報道についてでございますが、私ども、北海道教育委員会を通じまして小樽市教育委員会の調査を入手いたしたところでございますが、それによりますれば、平成十三年度につきまして、定数加配のございます小中学校、二十校あるわけでございますが、そのうち二十校中十九校につきまして、これは国の加配数は、そうなりますと加配の数が二十人中十九人ということになるわけでございますが、その十九校、十九人につきまして指導方法の工夫、改善の取り組みを全く行っていない、あるいはほとんど行っていない状況であるという報告を受けているところでございます。
 この定数加配は、少人数指導でございますとか、チームティーチング等による指導を通して、子供たちにわかる授業を行うことで、児童生徒の学力の向上を図る観点から特別に加配されるものでございますけれども、今回の事例では、教育に携わる者が、このための指導を行わないで、みずからの負担を軽減する等のために活用したとのことでございまして、そういう意味で、明らかに目的に反する、趣旨に反する使い方であるというふうに思うわけでございます。大変遺憾に思うわけでございます。
 私どもといたしましては、北海道教育委員会による実態確認、それから原因究明、さらには責任の所在等につきまして、詳細で徹底した実態調査の実施と、また再発防止策の策定について、私どもとして北海道教育委員会に対して指示をいたしたところでございまして、さらなる事実関係が確認されますれば、私どもといたしまして、北海道教育委員会に対しまして、義務教育費国庫負担金の返還を求めるなどのそういう厳正な対応を行うことといたしているところでございます。
山谷委員 そうしますと、ルール違反であったということでございますけれども、遠山大臣は学びのすすめの中で、すべての学校で自己点検、自己評価を実施し、教育課程や指導方法の改善を行う、校長のリーダーシップのもとになどというふうにおっしゃっていらっしゃいました。
 また、中教審では学校評価システムを早期に確立することを提言し、これは、学校として伝えたいことだけじゃなくて、保護者の立場を考えてちゃんと伝えなければいけないというようなことで、チームティーチングなど少人数授業、きめ細かい教育、それからきちんと自己点検、自己評価ができる学校づくりというのは、これからの教育改革のもう柱中の柱、そこが虫食いであったということに対して、大臣は、これから調査をなさるということでございますけれども、どのような手順で、いつごろまでに結果をお出しくださいますでしょうか。
遠山国務大臣 本当に今回のケース、聞けば聞くほど許せないという感じでございまして、国民感情としても、決して許されないことであろうかと思います。
 そもそもそれぞれの学校において少人数の授業でありますとか、子供たちのために使われるべく措置したものが、教員のみずからの負担を軽減するなどのために使われていたとすれば、これはまことにゆゆしい問題だと思っております。
 今局長の方からお答えいたしましたように、北海道教育委員会によって、実態の確認、原因の究明、責任の所在など、さらに今詳細で徹底した実態調査を実施いたしておりますので、今いつまでということは、突然でございますので、あれでございますけれども、できるだけ早くこのことは明確にして、厳正に対処してまいりたいと思います。
山谷委員 これは十三年度中の不正が約一億五千万円以上ということでございますので、これは来月中ぐらいには結果を出さなければいけないことだというふうに思いますし、また、この国庫負担金の返還請求というのは五年間にわたってさかのぼるということができますので、五年間さかのぼれば、あるいは数億円あるのかもしれません。これについてもきちんとおやりいただきたいというふうに思います。
 それから、今大臣は北海道教育委員会というふうにおっしゃいましたけれども、確かにこれは北海道教育委員会が調べなければいけないことではございますが、きちんと上がってこなかった場合、文部省財務課、小樽市に対して直接権限がないとは思いますが、これはそのような権限がないとかあるとかいう問題ではないと思いますので、実質的にどのようにきちんと調査結果を上げるということを担保していただけるんでしょうか。
矢野政府参考人 今後の対応でございますけれども、まずは、小樽市における平成十三年度の状況につきましては、これは、先ほど大臣から申し上げましたけれども、できる限り早くということで、私どもとしては三月の中旬までにはその結果の報告を求めたいと思っております。
 また、十二年度以前、これは、私どもとしては、具体的には平成八年から十二年の五カ年を考えておりますから、十二年以前の状況につきましては、これは今年の五月ぐらいまでには結果の報告を求めたいと思っておりますし、あわせて、再発防止策の策定も求めておりますけれども、同時に、北海道全体での平成十三年度の状況につきましても、小樽市の調査が終了した後に、私どもとしては、北海道全体についての調査依頼も行いたいと思ってございますが、いずれにいたしましても、まずは、当事者である北海道教育委員会において責任を持って調査をしていただくように考えているところでございます。
山谷委員 先ほど、レーガンの危機に立つ国家の一節を申しましたけれども、ブッシュは、それを受けまして、学力テストなどをして、アカウンタビリティー政策ということを教育改革の大きな柱にしております。教育成果に関する業績報告というものも出しているわけで、それによって補助金を変えたり、場合によっては閉鎖になる学校もあるということでございます。
 また、ブレアは、学校ごとに、いろいろな結果を新聞、インターネットで発表するということをやっております。四年から六年に一回定期監査をする。これがまたすごいんですね。中学校で一週間、管理職だとか先生だとか保護者だとか生徒に意見を聞きながら、一週間監査をする、学校の実情をチェックする。教授法だけじゃなくて、学習到達度のほかに、道徳的な、文化的な発達もきちんとチェックする。これの予算が、年間、百八十億円ついております。
 これから、私は、考え方としては、地方分権で地方の本当に特性を生かして、あるいは学校の特性を生かして、自由に教育がやれる分量というのをふやしていくべきだと思います。しかしながら、それは、きちんとした評価と公表という担保がなければ、このようにぐじゃぐじゃの状態になってしまう。人間というのは、聖書や文学作品を読むまでもなく、誘惑に弱く、罪深き存在でございますので、このアカウンタビリティー政策をきちんとやるためにも、今回のこのケースというものを、おざなりにしては、なおざりにした形で、うやむやにした結果発表では国民は納得しないし、あしたの教育改革がうまくいかないというふうに思っております。
 ちなみに、今予算では、来年の予算では、児童生徒の学習と教育課程の実施状況の評価のあり方に関する調査研究一千二百万円、学校の評価システムの確立に関する調査研究五千二百万円、まあ、本当に、調査研究ばかりして、一体、ほんまにやるんかいねという、これまでの学力低下問題に対してもきちんとチェックがなかったし、レビューもなかったということを国民は不安に思っておりますので、しっかりと調査をして発表していく。
 それから、これは雪印食品の食品表示の問題で、実は雪印だけではなかったんじゃないか、もっともっと構造的な、日本の食品業界全体の問題ではないかというようなことも浮き彫りになってきておりますので、あるいは北海道だけではない、すべての、全国においてこれは調査していただきたいというふうに思いますが、文部大臣、いかがでございましょうか。
遠山国務大臣 先生の御意見、本当に貴重な御意見だと思います。
 私は、昨年、イギリスの担当大臣とお会いする機会がございまして、何と五千人の、いわば視学官のような人をきちっと雇って、そして、今、先生がおっしゃったように、各学校に行って、教育の進行ぐあいないし学校経営のあり方についてきちんと調べているんだというようなことを聞いた記憶がございますし、ブッシュさんの、この間成立させた、一月八日でしたかね、ノー・チャイルド・レフト・ビハインド・アクトという、これもまさにアカウンタビリティーをしっかりやっていくということを強化していく法律であろうかと思います。
 各国ともに、どちらかというと、日本のこれまでやってきた、学校教育のしっかりした体系を自分たちの国にも実現しようということでやっているような状況でございますが、我が国の学校については、多くの学校はきちんとやってきてくれていると思いますけれども、しかし、やはりアカウンタビリティーが問われる時代になったと思っております。自己評価をきっちりとやり、それをどのように透明性を保っていくかというようなことから始めまして、こういう問題について、ぜひとも、単に研究だけではなくて、それが実際に移せるようないろいろないい方策を考えて実現に移してまいりたいと思っております。
山谷委員 そうしますと、三月中旬あるいは五月、六月にかけて、五年間さかのぼっての調査というのは、結果は、国民、マスコミに発表なさってくださるということですね。
矢野政府参考人 これは、まさに貴重な税金の執行の状態についての調査でございますから、結果につきましてはきちんと発表いたしたいと思っております。
山谷委員 続きまして、キャリアカウンセラーについて質問させていただきます。
 私は、大学で心理カウンセリング、またアメリカの方の大学で聴講生としてキャリアカウンセリングの勉強をさせていただいて、キャリアカウンセラー、キャリアガイダンスカウンセラーという言葉がやっと日本でもデビューしたかということを感慨深く思っている者でございます。
 百五十三国会、二〇〇一年十一月九日、民主党仙谷由人議員の質問の中で、ホワイトカラーの再就職、転職のあっせんのためのキャリアカウンセラーを養成する、これはつけ焼き刃じゃないか、アメリカでは、十七万人、大学院の修了を要するプロフェッショナルキャリアカウンセラー養成のための教官と講座をつくらないとだめだ、もうこれは大学院の修了を要するプロフェッショナルな仕事だというふうに仙谷由人議員が言われて、坂口大臣が、雇用のミスマッチ解消のために必要だ、失業者の早期再就職を図るために、今後五年間で五万人の、アメリカは十七万人、日本は人口半分で五万人、キャリアカウンセラーを養成したい、指摘いただいたように、指導的人材も含めて、キャリアカウンセラー養成のためのカリキュラムを、文科省、民間関係団体と連携協力のもと早急に開発し、キャリアカウンセラー養成に取り組んでまいりたいというふうに言われております。
 文部大臣、文科省との連携協力のもとに指導的人材も含めて養成していくということでございますが、五年間で五万人、一次補正でもう九・七億円ついているんですね。ところが、これが、七百人、三週間の研修という、もう本当にアメリカとは全く違うようなキャリアカウンセラー、九億七千万円でございます。
 百五十四国会、今国会、予算委員会の中で、一月二十五日、民主党の松本剛明議員が、雇用問題に関して質問をしたときに、坂口大臣がこういうふうに答えられております。
 キャリアカウンセラー制度というのは、今まで日本に余りありませんでしたので、これをつくり上げて、そして、いわゆる企業側の意見、個人の意見、そして国の施策、それぞれをお互いに紹介して、納得をもう少しいただけるような体制をつくり上げるというので、第一次補正では、千人規模でございますけれども、これを全国に配置した、次の本予算におきまして、一万人規模のキャリアカウンセラーをつくっていくということをやっておりますということなんですね。
 ところが、今回の本予算では三十五億円、しかしながら、千百人の養成ということしか上がっていない。
 私は、本日、坂口大臣のお答えをいただきたくて要請したんですが、常任委員会を開いていらっしゃるということでございますので、厚生労働省の方からで結構でございますけれども、数字が余りにもでたらめであり、そして養成育成が余りにもつけ焼き刃でイージーだというふうに思うんですが、その辺はいかがでございましょうか。
酒井政府参考人 大臣が、五年間、五万人くらいのものが必要だということを私どもに御指示いただきまして、今、先生がおっしゃったような厳しい雇用の情勢を踏まえて、急げ、こういうことでございます。
 確かに、先生おっしゃったように、アメリカのキャリアカウンセラー、MBAを取っておる人、しかも、カウンセラー協会の試験をクリアしている人、こういう実態も私ども存じております。ただ、非常に幅広い、得意分野がおありのようでございまして、十七万人、十八万人という、先生がおっしゃったような状況であろうかと思います。
 ただ、最近、クリントン政権におきましては、もうちょっと実務的なキャリア開発推進員、ファシリテーターといった方も雇用の場で御活躍になっている。私どもは、そういうこともアメリカの専門家に来ていただきまして実は勉強はしておるわけでございますけれども、今後、やはり労働者の適切なキャリア形成、あるいは失業者の再就職をやるという際には、きめ細かなカウンセリングが必要だということで鋭意取り組みたい。
 今先生おっしゃった五年、五万人ということにどういうふうに立ち向かうかということでございますけれども、これは私ども、官民で協力してやっていこうというふうに思っているところでございます。
 公的部門、官の方では、先生今おっしゃった十四年度予算におきましては、職業訓練大学校におきまして一千百人、予算要求をさせていただいておりますけれども、そのほかに、これは雇用の現場で、ハローワークの相談員であるとか、あるいは職業訓練関係の施設の指導員、教員でございますけれども、こういう者にもすべてキャリアカウンセリングの研修を行いまして、公的部門における養成体制ということで、この人たちを研修もしていきたいと思っております。
 それから、民間につきましても、これは既に先生御案内かと思いますけれども、幾つかの講座がございます。こういう民間の方々、事業者、今そういうものをやっておられるところにも、我々の助成金あるいは教育訓練給付の指定講座とするといったようなことで支援をして、合計五年間五万人ということを目指すことができると思っております。
 ただ、今先生おっしゃいましたように、確かに、アメリカの正式なキャリアカウンセラーと比べますと養成期間が短うございます。これにつきましては、現在、日本型といいますか、そういうキャリアカウンセラーとしての能力要件としてはどういうものが必要であるか等々、専門家にお集まりいただきまして、今検討しておる。既に配置している人につきましても、こういう研究会のまとめを踏まえまして、今後、その能力をさらに高めるといったような再研修といいますか、そんなこともやりながら、いいものにしていきたい。
 ですから、走りながらやらせていただいているわけでございますけれども、今後とも、よりよい内容のものにしていきたいというふうに思っておりまして、頑張っていきたいと思っているところでございます。
山谷委員 養成の大学が、職業能力開発大学校、全国で十校ぐらいあります。これは、厚生労働省の所管の特殊法人雇用・能力開発機構がやっているもので、政府出資金、交付金、補助金等、この機構には三千百十六億円ぐらい入れられている。この十年間で二・二五兆円、これまで累計で四・五兆円ぐらいこういうお金が入れられているというような機構のところの大学校でございまして、普通考えますと、そうすると、これは、本業というか、趣旨はスキルアップのための学校だというふうに思っております。
 それをつけ焼き刃的に、じゃ、ちょっとここで、単位で研修させようみたいな、やはり非常にイージーな感じがいたしますし、本来ならば文科省がもう少し、もう少しというか、もう圧倒的に本気になって、最初、この文科省と厚生労働省との連携というので呼ばれたのは、文科省の生涯学習局だった、もちろん生涯学習局も関係あるというふうに思いますけれども、本来ならば、最初から高等教育局を呼んで、プログラム、カリキュラム、それから、どうやって人間をつくっていくかということを考えていかなければいけない問題だったというふうに考えております。
 アメリカで十七万人のキャリアカウンセラー、六割から七割は学校に配置されているんですね、小学校、中学校、高校。それで、スクールカウンセラー、サイコロジカルなカウンセラーよりもキャリアカウンセラーの方が学校に配置されている。
 どういうことをやるかといいますと、心の悩みといっても、子供の場合は、友人関係、いろいろあるかもしれない。しかし、聞いていくと、だんだんその子のキャラクターとか行動パターンが見えてくる。そうすると、例えばその子がアナウンサーになりたいなんという希望を持っていたとする。普通、日本のカウンセラーだったら、アナウンサーは容姿端麗じゃなきゃいけないわよ、バイリンガルじゃなきゃいけないわよ、偏差値は幾らぐらいの大学を出てなきゃいけないわよなんということで、その子の夢をつぶしてしまうかもしれませんけれども、アメリカのキャリアカウンセラー的な発想だと、それだったら、私はあの保育園、あの図書館で読み聞かせのボランティアグループを知っているから紹介状を書いてあげるわ、読み聞かせのこんないいビデオがあるわ、あげるわ、そういうふうに行動していくうちに、心の悩みも解消していくわけですね。
 そういう意味で、キャリアガイダンスあるいはキャリア的な発想を持ったカウンセリングというのがとても大事で、心の悩みを最初に相談を受けていて、オーケー、では次からはキャリアガイダンスに変えようといって変えるんですよね。そういうような形のカウンセリング、あるいは地域の教育力を高める、あるいは子供の生きる力、自尊心を高めるために、こういったマインドを持ったカウンセラーがぜひとも必要で、別に厚生労働省のこの雇用・能力開発機構が悪いとは言っていませんけれども、こんなところに任せるべき問題ではないんですね。
 大臣、一言何か御意見がありましたら。
遠山国務大臣 強烈なおしかりを受けたというような感じがいたしましたけれども、本当に、大学等におきますキャリアカウンセリングに関する能力の育成というのは大変重要な課題だと考えております。
 現在、各大学におきましては、心理学系の学科あるいは専攻などにおきまして、キャリアカウンセリングに関連する授業科目としましては、進路指導特論、キャリアカウンセリング、あるいは産業心理学などを開設している取り組みがありますし、例えば、筑波大学大学院教育研究科のカウンセリング専攻の職業心理学におきましては、キャリアカウンセリングの基礎を概説し、生涯キャリア発達理論に基づくカウンセラーの実習が行われていると聞いております。
 それと、大学の教員養成課程におきましては、進路指導に関する科目を必須としておりまして、平成十年の免許制度の改正によりまして、生徒指導、教育相談、進路指導等、これは一つに入っているところがちょっとあれでございますけれども、これらに関する科目というものの最低修得単位数を、小中高ともに従来の二単位から四単位に充実したところでございまして、これは平成十二年度の大学入学者から適用されているところでございます。
 我が省におきましては、各大学における充実したプログラムの開発に資するために、進路指導に関するモデルカリキュラムを大学に委嘱して開発して、これは関係団体に周知するなどの取り組みを行っているところでございます。この中では、御指摘のキャリアカウンセリングに関する内容にも触れられているところでございます。
 徐々にではありますが、こういう方向に向かって、高等教育の段階でもきちんと対応していこうということで進んでいる状況でございます。
山谷委員 このキャリアカウンセリングを受けている職業能力開発大学の学生さんの平均年齢、五十代前後ということなんですね。ですから、もうリストラされたか、されそうな方を集めてやっていらっしゃるという、こういうことではやはりいけないと思います。
 それから、教員養成課程、進路指導、これは、中高はまあまあにしても、小学校はやはり少な過ぎるというふうに思いますし、それから、今私が申しましたように、地域のネットワーカー、コーディネーター的な動きをしなければいけない人を育成しなければいけないので、ただ座学だけではいけないというような発想、それから、大学で心理学の一部でやるというのでは全く足りないということと、筑波の大学院もたしか定員三十人弱ぐらいだというふうに思いますので、五年間で五万人育成するというような、この数字を見たときに、文科省はもう少しきちんと出て、責任を持ってプログラム開発と、きちんとしたクオリティーの人材育成に力を尽くしていただきたいというふうに思います。
 それから、コミュニティースクールについて続いてお話を伺いたいんですけれども、いろいろなバリエーションのある教育を受けるチャンスを広げるためのコミュニティースクールでございますが、ことしの一月二十五日、予算委員会で、民主党松野頼久委員が、文科省、平成十四年度予算で約三千万円のコミュニティースクールに対しての、モデル校ですね、予算を要望しているということでございまして、遠山大臣は「実証的な研究をまずすべしということで、来年度予算案に学校運営のあり方に焦点を置いた実践研究に係る経費を計上したところでございます。」というふうにお答えでございます。
 去年の暮れ、十二月二十六日付で、文部科学省初等中等教育局初等中等教育企画課長辰野裕一さんのお名前で各都道府県・指定都市教育委員会指導事務主管課長あてに、新しいタイプの学校、つまりコミュニティースクール等なんですが、その設置を促進する観点から、今後、新しいタイプの学校の可能性や課題について検討するので、実践研究の指定を希望する学校がある場合は平成十四年二月一日までに御提出してくれということがございます。
 何でこの暮れの十二月二十六日に出して、二月一日締め切り、これは、現場は混乱しているんじゃないかと思いますが、締め切りは終わりましたけれども、これはもう集まったということでございましょうか。何件ぐらい集まりましたでしょうか。
矢野政府参考人 正確な数字は持っておりませんけれども、約三十件ほど、やりたいというお申し出をいただいております。
山谷委員 その三十件はこれからどの五つに絞ろうかというような、絞られるというふうに思うんですけれども、コミュニティースクールに関しては、二〇〇〇年三月、教育改革国民会議で言われ、二〇〇一年七月、総合規制改革会議で中間報告でまた言われ、二〇〇一年十月、経済財政諮問会議の改革先行プログラムで言われ、二〇〇一年十二月十一日、総合規制改革会議、規制改革の推進に関する第一次答申、法制度整備に向けた検討を行うべき、こういうことが答申で言われて、これは閣議決定されている。法制度の整備に向けて検討、十五年中に措置ということでございますけれども、つまり、非常にもう進んでいると考えていいというふうに思うんですが、そのコミュニティースクールのモデル実践研究を行うに当たっては、これは総合規制改革会議のペーパーですが、「校長公募制の導入、十分に広い通学区域の設定、教員採用における校長の人選の尊重、教育課程、教材選定、学級編制などにおける校長の意向の尊重等の要件を満たすよう努めるべきである。」というふうに書いてあります。
 そうしますと、この五つのモデル校というのは、多少副教材をつくるためにお金を上げるよとか、その程度じゃ本当は許されない、このスピードで進んできていることを考えれば。この五つのうちの一つぐらいは校長公募でほんまにやるかいとか、あるいは一つぐらいは広い通学区域でやってみるかとか、あるいは一つぐらいは校長が教員を採用する、選任するというような形でやるかとか、そのぐらい踏み込んだ形での五つの選定というのがなされなければいけないというふうに思いますが、その辺はいかがでございましょうか。
矢野政府参考人 コミュニティースクールについてでございますけれども、先ほどお話がございましたように、新しいタイプの学校の検討に当たりましては、学校運営のあり方に焦点を置いた実践研究ということがまず必要であるということで、そのために必要な予算を来年度予算に計上いたしているところでございます。
 実践研究の指定でございますけれども、先ほどお話し申し上げましたように、予算を相当上回るお申し出があるという状況の中で、どういう観点で指定をし、お願いをするかということでございますが、今、私どもが考えておる観点のポイントの一つは、地域のニーズを踏まえた学校運営を行うための学校あるいは学校長の裁量権の拡大、その点が一つのポイントになろうかと思います。
 もう一つは、地域の学校運営への参画というところでございまして、地域学校協議会などを設置して地域の学校運営へ参画したり、あるいは学校評価を行うというような形で、地域がどういう形で学校運営に参画できるかといった点に焦点を置いた研究であるかどうかということを総合的に勘案をして指定をいたしたいと考えているところでございます。
山谷委員 それは、どういう形で選考して指定されたかということもぜひ御発表いただきまして、それから、今後、実践研究を踏まえてどう進めていくかということも含めて発表していただきたいというふうに思います。
 最後に、留学生の問題について質問させていただきたいというふうに思います。
 中曽根内閣が留学生十万人計画と言いましたけれども、現在の留学生七・八万人、そのうち中国人留学生四・四万人、韓国一・五万人、台湾四千人、これがベストスリーでございまして、中国の留学生が大変この一、二年ふえております。
 というのは、中国も一人っ子で、あるいはまたお金があるということで、けれども大学の数がまだ足りないということで、大学に入れない若者が毎年三百万人ぐらいいる。それで日本に対しての中国からの留学生がふえているわけですが、日本では中国人留学生は出稼ぎみたいなことを見る人もいると思うんですね、あのような酒田短大の不幸なことがありますと。それから、中国は中国で、日本の大学は質が悪いじゃないか、これは双方にとって非常に不幸な状況だというふうに思います。
 日本と中国の教育担当者が何か抜本策をこれは考えなきゃいけないのじゃないか。アメリカは英語で教育してくれるし、それから世界的な競争力のある大学がありますので、中国人の優秀な留学生たちはアメリカへ行きたいと思う。それから、EUも上海に飛んで教育プログラムをつくっているんですね、カリキュラムを。そういう努力をしているわけです。
 小泉総理は、一月十四日のASEANでの演説で、ASEAN諸国との協力は未来への協力だ、第一に重視したいのは教育、人材育成だ、大学等々の交流なども考えていきたい、それから、ASEANプラス3、日中韓の枠組みを最大限活用すべきだ、豊かな人材と経済の大きな潜在力を持つ中国は、この地域の発展に多大の貢献を行うことでしょうというようなことも言っているわけでございます。
 遠山大臣は、日中学術交流など、本当にいろいろ長いこと中国との関係があるわけでございまして、また中国への思いというのも深いものがあろうかというふうに思いますけれども、中国人の留学生で非常に困っているのがアルバイトとか住居、それから日本企業の就職、これがアメリカに比べると非常に困難が伴う。それから、中国にいる間になかなか進路大学を決定できないということがある。それから、私費留学生、就学生の学習奨励費がカットされてきている。授業料減免法人援助事業も減ってきて、早稲田などは申請した学生の、ことし何か半分以下しかもらえなそうだということ、いろいろございます。
 国立大学等には、若干の、留学生の生活、精神面のカウンセリングとか帰国後のアフターケア、寄宿舎運営の補助などあるわけでございますけれども、これは、本当に未来への、日中間あるいはアジアの豊かさのためにも非常に大切な問題だというふうに思いますので、この辺、具体的にどう取り組んでいこうと思われていらっしゃるか。あるいは、遠山大臣の方に小泉総理から、何かこんなプログラムをというようなディレクションがございましたでしょうか。
岸田副大臣 ちょっと私の方から取り組みだけ申し上げさせていただきたいと存じます。
 従来から御指摘がありました留学生受け入れ十万人計画、これは推進をしているところでありますが、その中におきまして、援助の充実ですとか宿舎の整備、あるいは英語による授業の拡大、あるいは短期留学推進制度、こうした施策を講じているところですが、それに加えまして、平成十四年度からは、これまでも、今先生から御指摘がありましたが、来日前に入学許可を実現するために、年に二回、海外十都市程度、またさらに国内でも十五都道府県を考えておりますが、こうしたさまざまな場所において日本の留学試験を実施する、現地において留学の是非を確認できるような便宜を図る、こうした施策も盛り込んでおりますし、特に、最先端分野の学生交流の推進、こういったものも、平成十四年度から力を入れていくというふうに今施策を予定しているところであります。それが今具体的に対応している施策の中身でございます。
山谷委員 私が書きました小説が、ちょっと中国とか台湾とかでテレビドラマになって放映されて、遊びに行きますと、現代社会の、日本のポップカルチャーとかあるいは家族、嫁しゅうと問題とか、非常に聞きたがるんですね。
 ですから、こちらが受け入れる場合には、もっと責任を持って充実したプログラムを進めていくことと同時に、中国、アジア側に、日本の現代の、例えば最新日本事情のようなものを発信していくということも大事だというふうに思います。中国の場合ですと、ネット人口、今五千万人くらいございますので、受け入れる側、それから発信していくということも含めて、留学生の問題をこれから重く考えていくときに来ているのかなというふうに思います。
 質問をもっとしたかったのですけれども、時間が参りましたので、以上でございます。
河村委員長 次に、石井郁子君。
石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。
 四月から新学習指導要領の本格実施が始まります。それを目前にしまして、文部科学大臣が一月十七日に学びのすすめを発表されました。私は、まずこの問題についてお聞きをしたいというふうに思います。
 アピールでは、放課後の時間の活用や補充的な学習、それから朝の読書などの推奨、支援、適切な宿題や課題など家庭における学習の充実等々を勧めているのかなというふうに思います。こうしたことは、学力低下に対しての批判、今各方面から起きておりますけれども、それを意識して出されたのでしょうか。
    〔委員長退席、鈴木(恒)委員長代理着席〕
遠山国務大臣 学びのすすめの中に書き込んでございますけれども、新しい学習指導要領の本当のねらいというものをしっかりと徹底するといいますか、その趣旨が第一でございます。
 新しい指導要領というのは、本当に生きる力を育成しようということでございまして、そのことを考えていくと、確かな学力を身につけること、そして豊かな人間性を育成することを初めとして、いろいろな総合的な力を称して生きる力と言っているのだと思いますけれども、学校教育において一番の力点になってくるものの一つが確かな学力ということでございまして、そこのところをしっかりやってもらいたい。
 といいますのは、生きる力をはぐくむということで、繰り返し新しい学習指導要領のねらいとして強調されておりますのが、基礎、基本を確実に身につけて、それをもとに、自分で課題を見つけ、みずから学び、みずから考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する能力を持つなど、こう書いてあるわけでございますが、そのことを本当に実現してもらいたいということが一つございます。
 それと、先ほど来たびたび御説明しておりますけれども、いろいろな調査によりますと、いわゆる学力についての懸念は今のところないわけでございますけれども、本当の意味の学力といいますか、学ぶ習慣でありますとか、学ぶことの楽しみについて体験しているかどうか、学習の意欲があるかというようなことを考えますと、どうも十分ではないわけでございますし、そのことについてしっかりした習慣を子供のころから身につけてほしいということが一つございます。
 同時に、新しい学習指導要領でねらいとしております、きめ細かな指導で基礎、基本やみずから学びみずから考える力を身につけることとか、あるいは一人一人の個性等に応じて発展的な学習をしていく、あるいは特色ある学校づくりというようなことも大事であるということで、五つの角度からこういうことを重点にやってもらいたいということで私どもの考え方をお示ししたところでございます。
石井(郁)委員 今伺っていまして、私は、学習指導要領あるいは学校教育の目標はいろいろあるということで、その中にやはり学力をしっかりつけるということがあるというふうにおっしゃったと思うのですけれども、それはまさに学校教育でつけるべきことですよね。学校教育の第一の課題というか学校教育の目標と思うのですが、先ほどは、放課後の時間を活用しなさい、補充的な学習もしなさい、宿題や課題は家庭でやりなさい、では学校は何なのかという問題がまず浮かんでくるんですよね。
 それで、もう一点伺いたいんですが、文部省は昨年教育白書を出されておりますけれども、今議論しようとしている学力問題では、やはりこの当時からいろいろ各界からの懸念というのがございました。
 わざわざこの中で質問を立てまして、こういうふうに言っているんですね。学習指導要領が改訂され、教える内容が減ることによって学力が低下するのではないかと心配なのですが、どうなのでしょうかと。それは、文部省がここで答えをつくっていらっしゃって、共通に学ぶ知識の量は減りますが、ゆとりを持って繰り返し学ぶことで基礎、基本の確実な定着を図る、自分で学ぼうとする意欲や学び方をしっかり身につけさせるとともに、高等学校卒業レベルの教育内容の水準はこれまでどおりとしている、学力が低下することのないようにしていますと書かれています。
 新しい指導要領によって学力が低下することはありませんと答えていらっしゃいますが、これは今も間違いありませんね。
遠山国務大臣 今おっしゃったようなことを本当に担保するために、確かな学力の向上のための二〇〇二アピールを出したということでございまして、そのことについて、もちろん新しい学習指導要領のねらいが本当の意味で生かされていけば真の学力は身についていくんだと思いますけれども、しかし、できるだけそのことが確実に実現されるように、こういうことについて留意をしてほしいということで今回のアピールになったところでございます。
石井(郁)委員 それでは、新しい学習指導要領については、別に問題はない、このとおりやっていくということでございますね。
遠山国務大臣 新しい学習指導要領については、そのとおりこの四月一日から実施に移すということでございます。
石井(郁)委員 しかし、いろいろとこの問題をめぐっては国民の間で議論があることはもう文部科学省自身が一番御存じだと思うのです。
 これは毎日新聞の二月六日付の社説をちょっと御紹介したいと思うのですが、こういうふうに言っていますね。学力低下を批判された文部科学省が、学力低下を心配する父母らに配慮する余り、新指導要領の基本的な考え方、路線を変えたと受け取られるような言動をとっている、このことが事態を一層複雑にさせていると。つまり、宿題や放課後の補習授業だ、さらに指導要領の内容を超えた発展的な学習というのを奨励している、確かな学力向上のための今申し上げたアピール、出された、これはその典型だと。各学校の創意工夫にゆだねた部分を広げた新指導要領の考え方にも逆行するのではないか、準備を重ねてきた現場は混乱するばかりだ、今文部科学省に第一に求められるのは、基本姿勢を明確にすることだということでございます。
 現場を混乱させているという認識はございますか。それから、今、文部省はこの基本姿勢を明確にしなさい、してほしい、これは国民の声にもなっているわけでしょう。これはどのようにお答えになりますか。
遠山国務大臣 基本姿勢は、まことに明快であろうと思います。この確かな学力の向上のための二〇〇二アピールというのを読んでいただけば、そこに冒頭から、本年四月からの全国の小中学校で実施される新しい学習指導要領のねらいをしっかり伝えるために今回のアピールを出したということがるる書いてございます。
 もちろん、国際的な動きでありますとかその他のこともございますけれども、冒頭に書いてありますように、確かな学力の向上と心の教育の充実というのが今進めようとしている教育改革の非常に重要なポイントであって、特に今の学校教育における大きな課題であるというところから今回の施策を明らかにしたということが書いてございます。
 その中でも、これまで、新しい学習指導要領の全面実施に向けて、精力的に各学校それから教育委員会で準備を進めていただいているところである、そのことをバックアップするという意味もあって各種の施策を講じているということでございます、そしてさらにそのねらいを確実にしていくために今回のアピールを出したということで、私どものスタンスは非常に明快であろうかと思います。
 また、このことについていろいろな論評はございますけれども、むしろ多くの論評としては、この趣旨をきっちり読み込んでいただいて、そして、そういう展望を留意しながら新しい学習指導要領の実施に向けてやっていくということについて、現場の先生方あるいは教育委員会からも、このアピールについてのサポートをいただいているところでございます。
 また、このことについては、私どもも確かに広報は非常に大事だと思っておりまして、文部科学省のホームページは常にオープンになっておりますし、また、エル・ネットを通じまして、各教育委員会に対するもの、それからPTA及び保護者に対するものも今放映中でございます。また、小泉内閣のメールマガジンの一月十七日に、そのことについても書かせていただいております。
 私どもは、現場に、むしろ自信を持ってこのようなことに留意していくならば新しい学習指導要領のねらいがきっちりと到達されるのだなということを、むしろそのことを確信していただくためにこのたびのアピールを明らかにしたというふうに考えております。
石井(郁)委員 大変文部省が今ここで揺らいでいるというのはやはり言えないんだろうとは思いますけれども、しかし、そうおっしゃればおっしゃるほどというか、そして学びのすすめなどというアピールを出すがゆえにというか、私は、現場は大変混乱をしているというふうに思うんですね。
 そう文部省が確信を持って、これで学力がつくとおっしゃっているようですけれども、今地方ではそうじゃないでしょう。いろいろな動きが起きてきて、新聞にも報道されている。
 例えば、東京の台東区では、第一、第三週の土曜日には区内の中学生を対象にして国語、数学、英語の補習授業を実施すると。五日制ということで始まった新学習指導要領ですよね。それできちんと学力もつくんだという学習指導要領の改訂だったわけですけれども、こういう実態。埼玉県の深谷市でも、十九の小中学校で、学力低下は困るから毎週土曜日に希望者を募って補充授業を行うと。それから茨城県古河市、第一、第三土曜日に補習授業を行うことを決めたと報道されています。
 何かもう地方では、教育委員会も含めて、補習授業だ、こうしなければ心配だということが出てきている。だから半強制的にこれがなっていって、これはもう学校五日制を崩していくことにもなるわけでしょう。
 それから、学習塾の団体に対しても、文部省はこの二月に、土曜日は体験学習にしてほしいという何か希望、要請をしたようですけれども、学習塾へはそういうふうに言いながらも、一方では学校自身が補充授業をしなきゃいけない、これはどういうことになるんですか。こういう土曜日の補充授業というのは、補充学習というのは、どうなんですか、文部省は放置するのですか、認めるのですか。いや、これは大臣できょうは答弁をお願いしていますので、大臣とやりたいと思います。
遠山国務大臣 学校週五日制を実施していくというのが新しい指導要領の前提になっております。土曜日の活動につきましては、それはそれぞれの教育委員会において判断されることでございますし、各教育委員会におきましては、土曜日におきます児童生徒のさまざまな活動の場、あるいは機会の充実について、完全学校五日制の趣旨を踏まえて既にもうさまざまな工夫を適切に対応していただいておりますし、今後ともその工夫を大いにやっていただきたいと思っております。
 国としましても、週末の使い方につきましては、子どもプランでございましたか、週末の二日間をどのように、地域社会及びいろいろな人の援助によってサポートしていくかということについても、三年間にわたっての準備を、各省庁との連携をとりながら、そういうことも準備をしてまいっております。
 今先生がおっしゃいましたような例について、よく見てみないと、私は本当にそれが週五日制を壊すような中身であるのかどうかわからないために、今簡単には申し上げられませんけれども、一般論としましては、土曜日に学校におきます授業の延長と同じような形態で補習を実施することは、望ましくないと言えると思います。
 学びのすすめにおきましては、放課後の時間などをむしろ活用して、補充的な学習でありますとか、児童生徒の主体的な学習を支援することを提案しているわけでございますが、これは、授業時間だけではなく、放課後や休み時間などを含めて、学校の教育活動全体で児童生徒一人一人に応じた学びの機会の充実を図ることを求めたものでございます。休日、休養日となる土曜日についてまで補習を行うことを推奨するものではないわけでございます。
 ただ、それぞれの地域の取り組みは、よく見てみますと、その一般論に当たるものであるかどうかというのは必ずしも単純に言えないのではないかという気がいたします。
 また、塾の関係者を集めて担当の方で会をやってもらいましたが、それは、新しい学習指導要領のねらいというものを御説明して、そして塾のあり方を考えるときに参考にしてもらいたいということでお話をしたものと伺っておりまして、学校だけではなく、家庭も地域も、そしてそういう塾のようなあり方も、すべてが子供たちが健全に生きる力を育成していくということにおいて共同してやってもらいたいということから、いろいろな施策を展開しているところでございます。
    〔鈴木(恒)委員長代理退席、委員長着席〕
石井(郁)委員 この問題でもいろいろもっと深めなければいけないと思うんですが、時間の関係もございますので、私は、やはり学習指導要領に一つの問題があるというふうに思っておりまして、そのこともきょうは残念ながら深くは立ち入ることができないわけですけれども、今回の新学習指導要領は、本当にいろいろな問題を含んでいると思いますが、最低基準というふうに文部省は位置づけているんですよね。果たして本当にそうなんだろうかということで、一点例を挙げたいと思うんですね。
 これは小学校理科なんですけれども、五年生、種子の中の養分についてはでん粉だけを扱え、同じようにまた、土を発芽の条件や成長の要因としては扱わない。それから六年生では、生物とその環境を扱うときに食物連鎖は取り扱わない等々、これはやっちゃいけないと書いていることが多いんですよ。つまり、学習指導要領には、目標があって内容があって、その内容上の取り扱いということがあるんですけれども、その内容上の取り扱いというところにこういう、これ以上やっちゃいけないと書いてあるんですよ。
 例えば四年生も一つ挙げますと、月の動き、三日月とか満月などの中から二つの月の形を扱いなさいと。つまり、それ以上はやっちゃだめです、こう書いているんですよ。だから、これは事実上、もう最高水準じゃないのかということでしょう。
 私は、こういう形でできている教科書、そして学習指導要領の縛りのもとでの学校というのが、本当に子供の興味や関心や、そして先生方の教えたいと思う創意や工夫やそういうことにこたえることになるのかという問題が一つあるんですね。
 これは、教科書執筆者の皆さんが、今回の教科書をつくってみて、今までと全然違うということを言っていらっしゃるんですよ。それは小学校でも中学校でもそうですが、この中学校の理科の場合でいうと、今まで当たり前に表紙の見返しに入っていた周期表を削れと言う、密度の公式はなくせと言う、密度の単位もなくせと言うと。だから、指導要領というのは余りにもひどくて、いろいろと先生方が工夫して、学習を豊かにしようということで、日常生活とかいろいろな環境の問題とか取り上げてきたんだけれども、そのコラムまでもこの最低基準に沿わせるようにして削れというふうに言われると。これは、本当に、今までこんなこと見たことないというふうに言われるんですね。
 だから、私は、もう時間の関係で申し上げますけれども、こういう学習指導要領の縛り、そしてこんな押しつけというのが、むしろ現場の自由な教育活動あるいは創意工夫を阻害しているわけですから、今考えるべきことは、今これだけ学力低下の心配が起きている中で、学習指導要領の押しつけをやはりやめるという立場にもう踏み切った方がいいのではないか。
 そういう点で、大臣の所信でも、学ぶ楽しさを体験させたいと、これはもうみんなの悩みになっているわけですから、長年の教育実践、いろいろな教師たちの力量やそんなことも、また親の協力も含めて考えて、そういう学習指導要領で、今、四月から始まることにたくさんのいろいろな問題が出ていますから、私は、本当は、これは実施するというふうに文部科学省は頑張らないで、思い切って見直しをするというぐらいに今踏み切ってほしいと思いますが、そこにいかないにしても、現場の創意工夫はもっと自由に認めるということはぜひしていただきたい。いかがですか。短く答えてください。
遠山国務大臣 いろいろなことをおっしゃいましたのですけれども、一つだけお話ししておきたいことがございますけれども、学習指導要領に示す各教科等の内容は、特に示す場合を除き、いずれの学校においても取り扱わなければならないとされておりまして、学習指導要領は最低基準としての性格を有しております。
 新しい学習指導要領におきましては、基礎、基本の確実な定着を図る観点から、すべての児童生徒が共通に学ぶ内容を厳選するとともに、個に応じた指導の充実とか選択の幅の拡大などによって個性の伸長を図ることにしているわけでございます。
 そこで、今お話ございましたけれども、各学校においては、児童生徒の理解の程度に違いがあることを踏まえまして、学習指導要領に示す内容の理解が不十分な児童生徒に対しては、繰り返し指導など補充的な学習を行いましたり、学習指導要領に示す内容を十分理解した児童生徒に対しては、学習指導要領の内容のみにとどまらず、理解をより深めるなどの発展的な学習に取り組ませていくというふうなことが基本的な考え方でございまして、個に応じた指導の充実を図っていく。
 先ほどお挙げになりました理科のことについても時間があれば御説明したいと思いますけれども、それは省略させていただきまして、今回の指導要領では、例えば、総合的な学習の時間の使い方でありますとか、カリキュラムの組み方でありますとか、いろいろな点で、それぞれの地域、それぞれの学校、それぞれの教師のいろいろなアイデアが指導の上に反映されるような学習指導要領の考え方になっておりまして、新しい教育課程の実施に当たっては、それぞれの地域の、各学校の取り組みというものが大変重要になってきております。その意味では、大いにねらいを実現するために、各地でいろいろな工夫をしていただきたい、そのような構造で新指導要領はできているということだけはつけ加えさせていただきたいと思います。
石井(郁)委員 私、きょうはもう一点のテーマで質問をさせていただきます。教員養成系大学の統廃合というか、教員養成系大学・学部の再編統合問題についてでございます。
 これは、昨年の六月、大学の構造改革の方針、いわゆる遠山プランが突如として経済財政諮問会議に出されまして、それ以来といいますか、大学は、今、戦後初めてと言ってよいほど、私は、重大な事態に至っているというふうに考えているわけです。
 その昨年ですが、暮れも押し迫る十一月二十二日、国立大学の教員養成系大学・学部の在り方に関する懇談会、この報告書、これも出されました。きょうは、このことで伺いたいわけですが、この委員会の、今後、国立学校設置法の審議もございますけれども、それに先立ちまして、今ちょっと緊急を要することが出てきておりますので、教員養成大学・学部の統廃合問題をお聞きするわけです。
 まず、この一月二十八日から二月一日にかけて、文部科学省は各大学のヒアリングを行ったと思うんですね。それで、教員養成大学の統廃合で具体的計画を出した大学はあるのでしょうか。あるいは、私は、すべての大学が教員養成課程をやはり維持したいという希望を出されたのではないかというふうに、漏れ聞いているわけですけれども、まず、その点で、これも、済みません、きょうは大臣でよろしくお願いします。
遠山国務大臣 教員養成というのは、私は、大変大事な仕事だと思っております。それを確実にしていくために、再編統合ということは前向きの仕事として取り組んでいきたいと思っているところでございまして、その趣旨は、私は、それぞれの関係大学が今抱えている問題を省みれば十分わかっていただけることではないかと思っているところでございます。
 去る一月下旬に、各大学からそれぞれの検討状況をヒアリングしたところでございますけれども、各大学では、先ほど引用されました懇談会の報告の趣旨を踏まえて、目下、鋭意検討している段階と聞いております。また、その結果について、個別のことは聞いておりませんけれども、目下、鋭意検討している段階でございます。
 私どもとしましては、この問題、大変重要なことと考えておりますので、各大学との共同作業によって、できるだけ早く再編統合の計画をまとめてまいりたいと思っています。
石井(郁)委員 私は、統廃合という問題を一律に各大学に押しつける事態というのは大変重大だというふうに思うんですけれども、大臣もおっしゃったように、教員養成がどうあるべきか、その大学はどうあるべきか、これは本当に重大な問題だというふうに考えますと、やはり慎重に行わなければいけないということだろうと思うんですね。ところが、今、各大学では、何か浮き足立って、計画をつくらなきゃいけないという状況にあると私も幾つか聞いているわけであります。
 だから、その背景には、文部科学省が三月中にも計画書を出しなさいと言っていることはありませんか、本当に文部省はそういうことを言っているのかどうか、そういう指導を行っているのかどうかという点はいかがですか。
遠山国務大臣 そのような期限を限って計画をというようなことは言っておりません。
 今、御答弁いたしましたように、各大学で検討が進められている段階でございまして、そのような大学における検討をできるだけ尊重していくということを基本として考えていきたいということを申し述べたいと思います。
 また、大学だけではなくて、地元教育委員会等の関係者の意見を聞くことも必要と考えておりまして、広く関係者の意見を聞き、理解を得ながら、この問題は取り組んでいきたいというふうに考えています。
石井(郁)委員 今、御答弁いただきましたように、各大学が検討中、だから、まだ結論は到底出していない、もっともそうだろうと思うんですが、そのように聞きたいというふうに思うんですね。
 十一月二十二日に出されたこの懇談会の報告書ですから、もしこれをもとに学内で議論するとしても、本当にまだ時間がない、要するに、始まったばかりだ。私は、これはあくまでも懇談会の報告書であって、一つの参考資料だろうというふうに思いますけれども、三月中になどと言うのは、本当にとんでもない話だというふうに思うので、そうではないということを確認しておきたいというふうに思います。
 しかし、もう一方で、大学でまことしやかに言われているのは、来年の概算要求のころ、六月ころには遅くとも間に合わせなければいけないということも聞こえてくるわけです。これはいかがですか。
遠山国務大臣 今担当局長に確かめましたところ、それぞれの大学で今検討しておられるところでございますので、その検討段階を踏まえた上で、来年度の概算要求までというのも一つのあれかもしれませんけれども、私どもとして、そこまでにというふうなことを明確に言っているわけではございません。
石井(郁)委員 私は、やはり大学のあり方ですから、本当に地域の発展やあるいは地域の人材養成というか、本当に国民に責任を負う点で、いろいろな大学が取り組みをしてきているわけですから、大学の、大学人の意見というか、大学内の合意というか、大学の自主的な判断というか、そういうことを本当に最大限尊重しなければ、こういう問題は前に進まないというふうに思うんですね。
 そういう点で、私は、そういう期限を切っていないと、当然だと思うんですけれども、そういう期限を切らないで、本当に、今大学がどうあるべきかということについて、文部科学省としては、地域も含めて、大学内外、当事者間の粘り強い話し合いをしていく、そういう大学の合意形成を最大限尊重するという立場をはっきりと言明すべきだと思いますが、いかがですか。
遠山国務大臣 先ほど申したとおり、大学や地元関係者、広い意見を聞きながら、しっかりした計画にしていかなくてはならないと考えております。
石井(郁)委員 それを信じたいわけですけれども、ここでもう一点、ぜひ確認をしておかなければいけません。
 それは、そういう答弁どおりにはなっていないんですよ。今大学では、本当に急いで、拙速に、何とか計画を出さなきゃいけないという動きになっているという点で、その背景に、私は遠山文部科学大臣の御発言そのものがあるというふうに考えております。
 これは、昨年の六月十四日に、国立大学の学長会議の際の大臣あいさつがございまして、このように言われているわけですね。学長の皆様から、将来の大学像を念頭に、それぞれ特色としっかりした内実を持った、真に国民の期待にこたえられる国立大学を目指して、積極的に、再編統合等の大胆な計画をお聞かせいただきたいのでございます、皆様の御意見を伺いながら、最終的には当省の責任において具体的な計画を策定したいと思っておりますと。
 この最終的には当省の責任において、それは文部省としてそういう広い一般的な意味での責任はあるかもしれませんが、文部科学省が具体的な計画を策定するというふうに皆さんこれは受け取れるんじゃないですか。だから、こういう発言をされますと、一定の時期が来たら、これはもう文部科学省が計画をつくるんだ、つくってしまうんだという形で、今浮き足立ってしまうということがあるわけです。
 私は、当省の責任においてこの計画を策定するという発言は非常に問題だというふうに思うんです。どうですか、これはトップダウンで大学の自治に介入するという発言にもつながります、撤回する意思はございませんか。
遠山国務大臣 今進めようとしております大学の構造改革は、これは本当に、日本の大学がその果たすべき本来の機能を発揮していくために必要な構造改革であると私は思っております。
 その意味で、十分各大学において議論をされて、そしてよりよい方向に持っていくということにおいて、ぜひとも御努力をいただきたい、そのことを最大限尊重しながら、しかし、設置者である国としては、ある時期において判断をするということはあり得るのではないか、その趣旨を申し上げたということでございまして、各大学の取り組み、またそのプランがいいものであれば、それを最大限尊重していくというスタンスに変わりはないわけでございます。
石井(郁)委員 しかし、これは大変問題ですよ。最終的には当省の責任において、その最終というのは、これはある面で何か期限が切られるようにも受け取れるじゃないですか。
 では、同じような意味で、工藤高等教育局長もこの会議でここまで言っていらっしゃるわけですね。統合再編について、各大学での検討は一、二年かけていては間に合わない、ある局面では文部科学省でまとめることになる。どうですか、これは。これはもうおどしじゃありませんか。こんなこと言っていいんですか。
 大学はどうあるべきか。大学は国民に対して責任を負わなきゃいけないじゃないですか、地域に対しても、あるいは日本の未来に対しても、青少年をちゃんと教育する場としても。そんな簡単に事をこんなふうに進めていいわけですか。私は、こういうことを言う文部省は本当にけしからぬと思います。
 この発言は撤回すべきだと重ねて申し上げたいと思います。いかがですか。
遠山国務大臣 その部分だけをお取り上げになりますと、何かそれなりの意味を持つかのようでございますけれども、やはり今回私どもが進めておりますいろいろな改革の手法、あるいは各大学の意図を十分そんたくしながら進めているということを注目していただき、かつまた、先ほど申し上げました各大学の取り組みを尊重するという基本的な態度であるということを十分に御説明しているわけでございまして、しかし一方で、国民の側から日本の大学のあり方について、ある程度のスピードも持って迅速に、しかし中身のあるものをやってほしいという願いはあるわけでございまして、その辺のところを表現した一つの言い方であるということでございまして、現在、私どもの取り扱っていると申しますか、あるいはこの問題について取り組んでいる姿勢そのものについて御理解をいただきたいと思います。
石井(郁)委員 本当に今のやり方というのは強引過ぎますよ。この今後の国立の教員養成系大学・学部の在り方について、十一月の二十二日ですよ、懇談会の報告書。それで一、二カ月の間に、例えばもうヒアリングもされたわけでしょう。それから、期限は切らないと言うけれども、一、二年ではもう間に合わないとまで言っておられる。こういう強引さというのは、ちょっと今までありません。大学の取り組みを尊重するということを言われました。しかし、本当にそこをやはりきちんと文部科学省としては行動で示していただきたいというふうに思うのですね。まず、期限を本当に定めないという点では、もう一度確認してよろしいですか。
遠山国務大臣 構造改革のねらいに照らして、しっかりと各大学で取り組んでいただきたい。そして、その成果を私どもにもぜひ御説明いただいて、ともにこの作業は進めていかなくてはならないと思っております。
 したがいまして、これからどのように展開していくか、これは動きながら考えていく面もあるわけでございますけれども、しかし、目標は明確でございますし、そのことについての各大学の御努力、大変ではあろうともちろん思います。しかし、私どもも努力をしながら、これは各大学のためでもあり、かつ国のためでもあり、そして国民のためでもあるというスタンスをきっちりと持った上で、この問題については取り組んでいきたい、そのように考えておりますので、御理解を賜りたいと思います。
石井(郁)委員 私、最初に申し上げましたけれども、この一月末から二月初めのヒアリングのときには、各大学は検討中というお話ですが、しかし、大方は教員養成課程はやはり存続したい、存続させたいという意向じゃなかったんですか。そういうことが出てきた場合、これはどうなんですか、構造改革に反するんですか。やはりそういう大学の意向は尊重するということでいいわけですか。
遠山国務大臣 私は、その個別のヒアリングについて詳細な報告を受けておりませんし、今はそれぞれの大学が鋭意検討中であるということで聞いております。
 しかし、懇談会でお示ししました考え方もあるわけでございまして、しかも今各教員養成課程が抱えている大きな問題もございます。そのようなことを乗り越えた上で、どのような形で国民の期待にこたえるような教員養成ができていくかという大局的な御判断もいただきたいともちろん思っております。しかし、その過程においては十分に相談をお互いにしながら、共同作業で進めていくというふうな姿勢でいるところでございます。
石井(郁)委員 もう時間が参りましたので、この問題で終わらなけりゃいけないんですけれども、やはりこの報告書というのは、あくまでも高等教育局長の私的懇談会の報告書なんですよね。懇談会の報告書ですよ。これがどうして各大学をこれほどまでに、あなた方が今進めているように縛る場になるのか。懇談会というのは、出席者の意見の表明または意見の交換の場にすぎない、決して合議機関としての意思が表明されたことではないというのは、もう常識の話でしょう。だから、それをもうこれしかないんだという形で、私は到底、大学に押しつける、あるいは大学の今後の改革の方向としてこれを金科玉条のごとく使うわけにいかないというふうに思うんです。
 このことも厳しく申し上げまして、やはり今のような強権的な、あえて言わせていただきます。大変強引ですよ。こういうやり方を大学に押しつけるということになれば、これはもう本当に大学を大学あらしめてきた自由や民主主義というのは死んでしまうんじゃないですか。それから、本当に社会的な役割を果たしてきたそのこと自身もまさに失われてしまう、存亡の危機にあると言ってもいいというふうに思うんですね。
 その意味で、繰り返して、私は、大学人の意向を本当に尊重する、あるいは大学の自主的な判断ということ、これは国民のために責任を負って大学自身がやるということでもあるわけですから、そういう意向というか取り組みを本当に最大限尊重してほしい、すべきだということを重ねて申し上げまして、質問を終わります。
河村委員長 次に、山内惠子君。
山内(惠)委員 社会民主党の山内惠子です。
 初めに、小泉総理の、女の涙は武器であるというあの発言につきましては、他の委員会でも取り上げられているんですけれども、改めて、遠山大臣、この言葉をどのように受けとめられて、お考えになって、次の質問のときに、率直に表現するのは人格の魅力の一つというふうにお答えになったのでしょうか、ぜひお聞かせください。
遠山国務大臣 予算委員会におきまして、総理の発言についてどういうふうに思いますかという質問がございました。私は、「感想を求められたときに率直にお話しになるというのは、一つの人格の魅力であろうかと思います。」と答弁いたしました。このとき、私は、小泉総理が日ごろから率直なお人柄をもっていろいろなことを発言されるということを思い浮かべながらこのような答弁をしたところでございます。
山内(惠)委員 政治は最大の教育というふうに私はいつも申し上げているんですけれども、大臣の今回の所信の六ページに、男女共同参画社会の形成、環境教育、人権教育の充実に努めますという文言があるんですけれども、小泉総理や大臣の発言はマスコミにものりますので、子供たちにとっても、大きな影響を与えます。特に、小泉総理は、男女共同参画推進本部長でもあります。また、文部科学省は、ジェンダー教育推進事業に取り組んできたわけです。
 その意味で、今回の総理大臣の、女の涙は武器であるという発言、これをジェンダー問題から見ると、これははっきり言って差別だと思うんですが、遠山大臣は、女性差別撤廃条約や男女共同参画社会基本法の中の理念と、私の言っているこの主張、差別であるということは、つながると思われるのか、思われないのか、その点だけお聞かせいただきたいと思います。
遠山国務大臣 私は、総理の御発言は、これはまさに、申しましたように、率直な御感想であって、決して女性べっ視による発言ではないというふうに考えております。
山内(惠)委員 差別というのは、本人が差別しようとかしないとか考えたからそうだったということでは全然ないということがあります。法律ができても意識の改革には百年かかると言われています。それだけに、学校現場で、子供たちの意識改革、保護者の性別役割分業に対しての意識改革には、大変時間がかかっています。
 特に子供の育て方におきまして、男の子が泣いたときに、泣くんじゃない、男の子でしょうというこの言葉は、多くの家庭でごく当たり前に述べられている言葉なんですけれども、これが男女の育ち方を分けていく点にも影響があると私は思っています。
 一方、男の子は泣かずに強くあれと言われた男の子たちも、どれだけ泣きたいときにつらかったことかということを考えると、例えばリストラによる自殺者の例ということを挙げるまでもありませんが、泣きたいときに泣ける、そして困ったときには男女で支え合えるような社会にするということが大変重要なだけに、ただいま文部科学大臣の、ジェンダー問題の推進の観点からいうと、問題はなかったとおっしゃられる部分については、ジェンダー問題のぜひ敏感な視点での御発言をあのときいただきたかったという私の願いを受けとめていただきたいものと思います。
 時間がありませんので、次の質問に行きます。質問の順を少し変えて申し上げたいと思います。
 現場をむしばんでいる教育内容への介入問題についての質問なんですが、学校現場にとっては、つらい三月がやってきます。卒業式の季節だからです。
 これも、なぜか北海道。札幌南校の卒業式での君が代を斉唱するという学校長の方針に対して、札幌弁護士会から山本校長に対して、生徒に対する人権侵害を認める勧告が出されました。山本校長は、昨年の四月に赴任されたそうですが、この方針を九月に出した後、全校生徒の調査結果、昨年の十二月だったそうです、八四%が、実施するべきではない、それで校長と話し合いが持たれたそうです。十二月に二回、六時間以上に及んだ意見交換会。子供たちは、一回目、百五十人、二回目には百三十人の参加があったと聞いています。しかし、生徒が学校長に聞いた、君が代を南校で行う必要性を説明してほしい、卒業式は生徒のものだという、この意見を参考にすると言いながら、学習指導要領を守る職責がある、いつもその部分に行き着いてしまっていたということだそうです。
 申し立てをしたのは十人の生徒だと聞いていますが、この勧告は、子どもの権利条約十二条に反するというふうに言われたそうです。大臣、このことをどのように受けとめられますか。
岸田副大臣 学校における国旗・国歌の指導、学習指導要領に基づいて、児童生徒に我が国の国旗と国歌の意義を理解させ、これを尊重する態度を育てるとともに、諸外国の国旗と国歌も同様に尊重する態度を育てるために行っているものであります。
 そして、今の御指摘の件が児童権利条約に反するかどうかという御質問でありますが、児童権利条約第十二条、児童といえども、自己の意見を形成し得るようになれば、その児童個人に関するすべての事項について自己の意見を表明する権利を認め、その意見について相応に考慮されるべきとの理念を一般的に規定しているものでありますが、この児童権利条約の解釈からは、国旗・国歌の指導を含む教育課程の編成、これはその児童個人に関する事項とは言えず、第十二条に定める意見表明権の対象とならないと考えております。
 また、同十二条の意見を表明する権利については、その表明された児童の意見が、その年齢や成熟の度合いによって相応に考慮されるべきという理念を一般的に定めたものでありまして、これは必ず反映されるというところまで求めているものではないと理解しております。
 よって、御指摘のケースは、校長が学習指導要領に基づきその実施を決定したものでありまして、当該実施の決定は、第十二条の意見表明権の対象とならないと考えております。
 以上が解釈であります。
山内(惠)委員 このことを長く話をすれば、きっときょうの時間全部を使って話し合わなければならないかと思いますけれども、ということは、札幌弁護士会の出された勧告は間違っているということなんでしょうか。
 実は、国旗・国歌法が制定されたときに、元官房長官であった野中さんは、子供の内心の自由を侵すものではないとまでおっしゃっていることです。子供というのは十八歳未満ということですから、この子供たちの意見表明権というのが十二条にあり、それから、児童は表現の自由についての権利を持っているという十三条があり、十四条では、思想、良心及び宗教の自由についてもこの子供たちの権利を保障しているということを考えたとき、今の御答弁はちょっと当たらないんじゃないでしょうか。札幌弁護士会に対して、その判断は間違っているとおっしゃられるんですか。
岸田副大臣 私どもの判断は先ほど申し上げたとおりであります。ですから、弁護士会の判断云々を私どもが判断する立場にはありませんが、私どもは、先ほどの解釈に基づいて、本ケース、児童の権利条約に反していないと解釈しております。
山内(惠)委員 三月一日に子供たちの卒業式が参ります。そこで子供たちがどんな結論を出すかは子供たちの判断だと思いますから、基本的には、この弁護士会を……(発言する者あり)これは小学生じゃありませんよ、高校生ですよ。そこのところをしっかり受けとめて、決して処分なんかしないでいただきたい、子供たちの意見の表明権を受けとめていただきたいということで、次の問題も関連していますので、次の、北海道の小学校六年生の学年通信、配りましたが、コピー、コピーのまたコピーでしたので、大変読みにくいものであるかと思いますが、お許しください。
 この学年通信は、複数の方で書かれたものなんですけれども、裏表がありますけれども、参観日云々と書いた方でいえば、「二十一世紀こそ平和な地球を!」というところで、国会議員は偉いと勘違いしている国会議員さんがいるようですが、これは大きな問題ですという、この一行ちょっとのところが国会議員を冒涜しているということで、それと裏の問題も含めてなんですが、訓戒、口頭の処分がされたというんですが、この文言の後ろに、その国会議員を選んでいるのは、ほかならぬ国民全体であります、このことが書かれているにもかかわらず、この表現ということは、間違っているんじゃないかというふうに思うんですね。
 私は、現在、国会で起こって追及されていることを考えれば、そういう人も選んだ人たちの思いということもやはり受けとめた有権者でなければならないという意味で、しっかり物を考えさせる一項目だと思います。
 もう一つ、裏のページなんですが、「十二月八日侵略戦争を考える日」というこのプリントなんですが、この侵略戦争を考える日が法律にないという理由で、これが裏表あわせての訓戒になったそうです。もしこれを、法律にないというのはおかしな話ですが、この八日が……(発言する者あり)あの、恐れ入りますが、やじやめていただきたいと思います。侵略戦争を考える日にとでも書いたらいかがだったんでしょうね。
 その意味で、これは、きょう副大臣にも私質問をしましたので、ちょっとここは副大臣にお聞きしますが、昨年のこの委員会で、私が、テロ問題で自衛隊が海外に行くということについて、学校現場はどう教えたらいいのかということを大臣に質問しましたら、副大臣がお答えになって、副大臣は現場に任せるということをおっしゃったんですが、今回のこの問題ぐらいは現場に任せてもいい問題じゃないでしょうか、いかがでしょうか。
岸田副大臣 この二つの案件、御指摘いただいた案件でありますが、北海道教育委員会からの報告によりますと、学年通信本来の目的を逸脱した内容を掲載した学年通信を作成、配付したことを理由として、服務監督権者である市町村教育委員会が訓戒を行ったものというふうに承知しております。
 服務監督権者であります市町村教育委員会、訓戒等の服務上の措置を行う権限を有しておりまして、今回の事案につきましても、その権限と責任に基づいて対応がされたものだというふうに思っております。
 御指摘の、現場に任せるという部分でありますが、その部分に関しましては、その学校の現場の意見が尊重されなければいけないと思っておりますが、今回のケースは、学年通信本来の目的等に照らしてこの問題を考え、その上でこうした判断、そして処分を行ったというふうに理解しております。
山内(惠)委員 学年通信が、本来あるべき姿が何かの文章で書かれているわけでもなくて、実はこれは、過去の戦争を考えようということで、親子で考えていただけたらとなお思ったと思いますが、これは私の実践ではありませんけれども、できれば、こういうことをもう少し丁寧にごらんになっていただきたいなと思うんですが、私は、ここでお返事いただけない、もう時間がありませんから悔しいのですけれども、ユネスコ憲章のことをあのとき申し上げましたように、戦争は人の心の中で生まれるものだから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならないという発想からいえば、過去の戦争がどうであったのかをしっかり学んで、戦争のない社会をつくっていくという意味で、六年生ともなればこれぐらいの勉強をするのは当然だというふうに思います。
 ところで、ちょっと聞いてください。「どの方向に進んでもなぜかむかい風」、この句は、「お〜いお茶」というあのお茶の缶に掲載された、旭川の、私の出身地ですけれども、高校生、小笠原麻衣さんの作です。
 もしかしたら、この今の現在の先生方または先ほどの高校生にとって、少しだけ皆さんと違うことを考えたり違うことをやったときに、すぐそこで処分などということが来るとしたら、どんなに住みにくくなる、住みにくい社会だろうなということを私はつくづくと思います。この通信一つでも、訓戒などという処分じゃなくて、十分話し合ってくれたら済む問題じゃなかったかなというふうに思います。そのように受けとめて、見ていただきたいものと思います。
 きょうの時間の中ですから、急いで次の質問に行きたいと思います。
 新学習指導要領、この部分でいえば、学校五日制、先ほど、何のために学校五日制なのか答えられる人がいないとおっしゃったんですが、この間、子供たちを地域に返すんだということで学校五日制は進んできたはずです。放課後云々、もう本当に問題外のはずです。
 かつて文部科学省が進めてきた、十五期中教審、十六期と流れてきたこの中教審の中で、生きる力、新しい学力観ということの視点で物を考えるとき、この確かな学力向上のアピールというのは、本当にどなたもおっしゃっていますけれども、整合性の問題で問題ありと思っています。時間がないので、この質問はちょっと質問しないで次の方に回っていきますが、今回のこの学力向上のためのアピールが総合的な学習つぶしの役割を果たしているのではないかとまで言っている人がいます。
 文部科学大臣は、経済同友会の方との何か意見交換をなさったときに、企業の方も生きる力を望んでいるとおっしゃったじゃありませんか。その意味で、新しい学力観というのは、大臣、短く言って、どんなことを想定していらっしゃいますか。
遠山国務大臣 新しい学力観は、基礎、基本を大切に確実に身につけた上で、みずから考え、みずから判断し、みずから行動することができる、そういう力を養うというところにあると思っております。
 同時に、生きる力という角度からいいますと、それにさらに心の問題、あるいは体の問題、あるいは意思の問題などがつけ加わって、もっと総合的な力を指そうかと思いますけれども、確かな学力を身につけるということは極めて大事だと思っておりまして、それに対応するのは、今申し上げたような中身を指していると思います。
山内(惠)委員 受験勉強ははげ落ちる学力と表現した人がいます。受験勉強をなさった経験のある皆さんだったら覚えているかもしれませんが、ペーパーテストに書いた後、しばらくたつとみんな忘れていく学力という傾向がある。それだけに、このことを、新しい学力観とか生きる力をと言われた当時のことを私は思い出します。
 例えば、子供たちは鉛筆をナイフで削ることができない、電動があるからだ、それからリンゴの皮をナイフでむくとすぐけがをする、カッターナイフを使うとすぐけがをする、そんなことも随分言われたんですが、転んだときに突然手が出てこないので前歯を折るとかいうことまで、いろいろ子供たちの状況に警鐘を鳴らされたときがあります。その意味で、この新しい学力観というのは、伝統的な点数中心の学力とは違う、はげ落ちない学力を目指してのことだったと思います。
 その意味で、実は、今回の文部科学省の予算をしっかりと見た方の発言がここにあるんですけれども、子供の学力の実態について、大阪の約十万人を超える中学三年生が年間五、六回受験する業者テストがあるんですが、この社長さんが学力についておっしゃっているんですが、できる子は以前よりもすごく勉強している、できない子はがたっとできませんので、真ん中がへっこんだフタコブラクダのような状況になっていると言うんです。それで、これは現場の先生たちも、もしかしたらそのような感触を持っているようなんですね。
 文部科学省の今回の予算の概算要求を見てみますと、このフタコブラクダの前のこぶに対する子供たちに対する手厚い方策が見られると言うんですね。学力論争を避けるようにというのはここはいいとして、これだけエリート養成をしていますよと言っているぐらい、例えば、世界水準の大学、国立、私立三十校に特別な予算とか、新規に準備されたスーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクール全国二十校とか、スーパーサイエンスハイスクール二十校とか、学力向上フロンティア事業ですか、全国千校の指定とか、この前のこぶに当たるところに対しては大変手厚く学力向上施策がされている状況にあります。
 では、次の、後ろのこぶに対して、例えば、この間勉強が余りできない子たちの中に起こってきた、少年法の厳罰化がありました、出席停止の問題がありました。並べてずっと考えると、問題を起こしている子たちに対しては厳罰主義で来ているのがこのごろではないでしょうか。
 こういう問題を起こす前にこそ、学校はおもしろいんだ、勉強はおもしろいんだ、そういうふうにしていかない限り、不登校の子供たちやいじめの子供たちの行く道がないんじゃないかというふうに思います。
 それに対してのお答えに、私は、わかっていない子にも習熟度別で手厚く勉強をするんですよとおっしゃるんですけれども、そのこと以外のお答えで、こういう子供たちの意欲をどんな形で引き出そうとしているのか、対応をお聞きしたいと思います。
岸田副大臣 新しい学習指導要領におきます学力というものですが、従来から、学力の定義としまして、知識や技能の習得にとどまるという考え方がありました。しかし、それに加えて、それにとどまらずに、問題解決能力、みずから考え、判断し、決定する、こうした問題解決能力も含めて学力というふうにとらえる、こういった考え方がありました。今、国際的な学力に対するとらえ方は後者の考え方になっているというふうに理解しております。きょうもいろいろなところで御指摘がありました国際的な学力の調査、この調査も、この後者の学力に対する定義に基づいてさまざまな調査が行われているというふうに考えております。
 ですから、新学習指導要領においても、知識、技能の習得にとどまらず、問題解決能力も含めた部分で学力というふうにまずとらえております。こうした学力のとらえ方、この国際的な流れにも合致したとらえ方のもとに、これをいかに確実なものにしていくかというのがこの新しい学習指導要領であります。
 ですから、その中にあって、まず基礎、基本を確実にした上で、一人一人の能力に応じて補充的な学習もあれば発展的な学習もあり、そうしたさまざまな選択肢を用意するというのがこの制度の基本的な仕組みになっています。まず学力というもののとらえ方、これを改めて、今の、現代における学力のとらえ方を確認した上で、個々の能力に応じたさまざまな選択肢を設ける、こういったことによって、それぞれのやる気、意欲を引き出していく、これがこの新しい学習指導要領の基本的な考え方だと思っています。
山内(惠)委員 今のような学力観を考えて、生きる力、新しい学力観ということでいかれる一方で、今回のアピールなさった放課後の勉強だとか朝の読書だとか宿題をちゃんとやれとかいう発想は、相当大きな矛盾があるというふうに思います。
 これは、読者の声の欄で、ゆとりと教育を取り上げましたのでごらんになった方もいると思いますけれども、四月からの学校五日制で、文科省が学習塾の団体や大手の進学塾に休日に活動できる受け皿づくりへの協力を呼びかけたというふうにこの方は言っているんですが、何で塾にと奇異に感じる、そもそも受け皿は必要なのだろうか、文科省は補習や宿題を奨励するアピールを出している、これでは華々しくデビューしたゆとり教育の意義はどこかに吹き飛んでいくのではないか、塾はすべての学びたい子供たちに開かれているわけではありません、経済的に苦しい子たちは、行きたくても行ける状況にはありません、公立学校の教育が塾が必要な教育では困るのだと。
 これは、お二人の意見をあわせて私は使わせていただきましたが、もう一人の方は、平日、学校帰りに約束して遊んだり道草したりしてくることが子供たちにとってどれだけ大事なことか、ゆとりを言うなら、まず子供同士が伸び伸びと遊べる場所と時間を確保してほしいものだ、その意味で、文科省は、石の上にも三年で、児童生徒の好きなようにやらせてみようではありませんか、そうすれば子供たちは必ずや生きる力を身につけていくと思うというふうに、さまざまな方が、これで今三人の方のをあわせて読み上げたんですが、そのように保護者の方も思うし、学校現場の者も思うし、本当に大きな混乱です。全国行脚、大臣なさるそうですけれども、矛盾した問題を提起しているということは受けとめる必要があるんじゃないかと思います。
 ヘンリー・ソローという人が言った言葉が、子供は世界史を最初から歩くという言葉があります。世界史を最初から歩く、もうちょっと詳しく言うと、子供たちは、歩き始めた世界史は途方もなく圧縮されたものである。最初は、はいはいから始まるわけですよね、抱かれているところから。そして、十七歳までの間に、引きこもりなんという時間も本当のことを言って許されないような状況で、旧石器時代からハイテクの社会まで適応しなければならないような教育内容が準備されているという現実にあるんだということを、子供たちのことを一回受けとめてくだされば、子供にとって休日がどんなに重要か、自分の発想で自由にする時間、眠る時間が欲しいというのが高校生や中学生なんですよ。それから草原に寝転びたい。本当にこの子供たちにそういう時間を与えようといって始まった五日制だったのではなかったかと思います。
 この問題は、この問題を受けとめていただいておきたいと思います。今後、さまざまな実践でまた話し合いをしていく時間があるのじゃないかというふうに思います。
 次に、今回、教育振興計画案ですか、それから教育基本法の関連で質問なのですが、これも時間がありませんので一つに絞りまして、出した質問とちょっとニュアンスが違いますが、私は、日本教育新聞を見て、教育振興基本計画検討項目、投資などという、ここにびっくりしました。この投資、何を諮問なさったのですか、ちょっとそこのところだけお聞きしたいと思います。教育基本法と振興計画を見直すに当たって、投資という言葉が書かれているのですよ。子供の目線で見ていない証拠じゃないのでしょうか、これは。
岸田副大臣 御指摘の諮問ですが、その諮問の二の第三といたしまして、「総合的かつ計画的に教育施策を推進するために必要な教育投資の在り方についてである。教育に対する投資は、我が国の活力ある健全な発展に不可欠な社会的基盤の形成に寄与するものであり、望ましい教育投資の在り方について検討する必要があると考える。」こうした諮問を投資という部分について行ったところであります。
山内(惠)委員 また改めてゆっくり別の機会に質問したいと思いますが、今回の大臣の所信全体を通して、全ページ一貫して流れている問題に、人材・教育・文化大国の実現、科学立国、この国のために人材があるかのような記述であることを大変私は残念に思っているところです。この言葉も投資としての教育という発想につながるのではないかという疑問を持ちましたので、改めてまたこの問題についてはお話しさせていただきたいと思います。
 私の最後の質問です。
 実は、教育改革国民会議で論じられたことなのですが、この中で何が論じられたかということで、少し丁寧に議事録などを見せていただきました。大臣が大臣になられる前の分科会での発言ですから、大臣は御存じなかったかもしれませんけれども、曽野綾子さんがおっしゃっているこの言葉のところからの関連で奉仕活動が出てきたのだということがとても見える文言でした。それで、ちょっとここのところを御紹介いたします。
 本当にこれは驚きました。これが直接奉仕活動とつながるのかどうかと思いますが、産む、産まないは女の自由ではありません、ああいうものを見過ごしたからです、これは前段、ちょっと後につながらないですけれどもね。命が宿ったら殺すわけにいきません、産む、産まないのは女の自由じゃないんです、これは、マスコミがもてはやしたなんということをここでは、ちょっと一行言って、その後の中でまたもうちょっとすごく言っているのですね。
 同じように、産む、産まないは女の自由ではないの後に、大東亜戦争、大体今こんな言い方しませんけれども、大東亜戦争の戦死者は三百万といたしますと、この中絶によって一億の人が殺された、大東亜戦争三十三回分殺した、このようにこの方は言っているのです。もうちょっと全部説明したいところですけれども、大東亜戦争の死者と中絶の数とでこのことをおっしゃっていることについて、大臣、短く、どう思われますか。これはきのうから質問をお上げしてある項目です。
遠山国務大臣 曽野綾子先生の御発言につきましては、どのような趣旨、お気持ちでそのような発言をされたのか承知していないところでございますけれども、人工妊娠中絶の問題については、胎児の生命の尊重や女性の自己決定の尊重などの観点から国民の間に多様な考えがある、考え方があると聞いております。また、この問題については、国民個々人の倫理観あるいは道徳観、宗教観ということとも深く関係していると私は思います。
山内(惠)委員 本当はここも深くお話し合いしたいと思いますけれども、女が産む、産まないを御夫婦なりで御相談されるような幸せな状況にあるときはこの方が言うことも一理あるときがあると思うのですけれども、まだまだ日本も男中心社会です。男の子が生まれなければ、次も産んでほしい、どんどん産んで、私は嫌だと言うことが難しい地域もあります、だから代理母などという問題も出てくるのですけれども。
 外国でいえばもっとそういう問題が多くて、その意味で、国連の会議でリプロダクティブヘルス・ライツというのが取り上げられた、女性の生涯にわたる健康問題を取り上げられている、その中で言われたせりふなのです、産む、産まないの決定権は女にありという。その意味で、ここのところもぜひ今後のところでは受けとめた考え方で進んでいただきたい。男女共同参画、それからジェンダー問題の観点です。
 しかもこの方は、曽野綾子さんは、障害児にも、それで、これは続くのですね。
 十八歳で国民を奉仕活動、奉仕役に動員することだということを主張しているのですね。小学校、中学校で一週間から二週間程度云々と言っているのですね。十八歳において、一番最初はしようがない、一、二カ月でいいと。そこで言っているのは、共同生活、質素な生活、暑さ寒さに耐えること、労働に耐えること、このような基本をやっていく必要がある、こういうことをやっていくことで生き抜く力がつくのだ、このような発想なのですね。
 だんだん時間がないので残念です。
 それで、この方はもっと言っているのですね。男女の関係なくできることをやらせると言っているのですが、その次に、身体障害者も同じように動員し、できる仕事をさせるというふうに書いているのです。
 この部分でいえば、ハンディを持った子供たち、大人もそうですけれども、場合によっては命がけの作業になりかねないようなこの最初の文章ですよね。労働をさせる、しかも寒さも暑さも強烈な、簡単な建物の中でと書いているのですね。もしかしたら、ハンディを持った人であれば、障害は人と環境によってもあり得るわけですから、環境を変えれば障害にならないということもある中で、このようなひどい環境の中で、バリアフリーにもしないで、こんなことを言っている方が奉仕活動を提言し、日本人としての自覚を持てということをおっしゃっている。
 しかも、この方の言葉の中に、驚くことがまだまだたくさんあります。生きる力のところで言っているのですが、生きるというのは、まず相手を疑うことだというところからスタートしているのですね。これは論争になって、ちゃんと議事録があるのですよ。
 私はまだまだお読みしたいところですけれども、本当にぎりぎりの時間になっているのですけれども、ここのところはまだ紹介する時間がありそうですね。相手を疑って、時にはかっぱらうことです、盗むことです、そうやって生きていくんです、そういうことが全然論議されないということが問題なのだということを書いているのですね。
 この例は、でも、世界じゅうの貧困の世界では生き抜く手としてあるのだと、よその社会で言っているのですけれども、では日本の子供たちにということを言ったときにはさっきの状況になるわけです。暑さ寒さ、質素な生活、共同生活、トイレの問題まで書いています。
 そのようなことから、奉仕活動、私はこの文言の中に、子供に対する温かいまなざしを今回も感じることはできませんでした。そして、この続きで奉仕活動を論じて、十年経験をした教職員にも、この奉仕活動というときに、この発想の問題点こそただしてからやっていただかなければならないということを訴えておきたいと思いますが、一言、大臣、感想を含めて……(発言する者あり)笑っていらっしゃるけれども、これが曽野綾子さんの言葉です。ぜひ御意見いただきたいと思います。
遠山国務大臣 大変識見のある方が、みずからの信念に基づいていろいろな場面でいろいろなことをおっしゃるというのは、私は、それは言論のあり方ではないかと思います。
 奉仕活動の問題は、私は、もっと多方面の角度の議論の上に今日の制度があるというふうに考えております。
 曽野綾子先生の個別の御発言について、私はコメントする立場にございません。
山内(惠)委員 ありがとうございました。このような考えが根底にない活動をぜひ考えていただきたいということを申し上げて、質問を終わります。
河村委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時十一分散会


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