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第8号 平成14年4月19日(金曜日)

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平成十四年四月十九日(金曜日)
    午前十時開議
 出席委員
   委員長 河村 建夫君
   理事 斉藤斗志二君 理事 鈴木 恒夫君
   理事 田野瀬良太郎君 理事 増田 敏男君
   理事 平野 博文君 理事 山谷えり子君
   理事 斉藤 鉄夫君 理事 武山百合子君
      伊藤信太郎君    小渕 優子君
      岡下 信子君    金子 恭之君
      実川 幸夫君    高市 早苗君
      谷垣 禎一君    谷田 武彦君
      馳   浩君    林田  彪君
      松野 博一君    松宮  勲君
      森岡 正宏君    大石 尚子君
      鎌田さゆり君    中津川博郷君
      中野 寛成君    藤村  修君
      牧  義夫君    牧野 聖修君
      山口  壯君    山元  勉君
      池坊 保子君    西  博義君
      佐藤 公治君    石井 郁子君
      中西 績介君    山内 惠子君
    …………………………………
   文部科学大臣       遠山 敦子君
   文部科学副大臣      岸田 文雄君
   文部科学大臣政務官    池坊 保子君
   政府参考人
   (文部科学省生涯学習政策
   局長)          近藤 信司君
   政府参考人
   (文部科学省初等中等教育
   局長)          矢野 重典君
   政府参考人
   (文部科学省高等教育局長
   )            工藤 智規君
   文部科学委員会専門員   高橋 徳光君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月十九日
 辞任         補欠選任
  近藤 基彦君     金子 恭之君
  杉山 憲夫君     実川 幸夫君
同日
 辞任         補欠選任
  金子 恭之君     近藤 基彦君
  実川 幸夫君     杉山 憲夫君
    ―――――――――――――
四月十八日
 育英会奨学金制度の充実に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一九〇二号)
 同(石井郁子君紹介)(第一九〇三号)
 同(小沢和秋君紹介)(第一九〇四号)
 同(大幡基夫君紹介)(第一九〇五号)
 同(大森猛君紹介)(第一九〇六号)
 同(木島日出夫君紹介)(第一九〇七号)
 同(児玉健次君紹介)(第一九〇八号)
 同(穀田恵二君紹介)(第一九〇九号)
 同(佐々木憲昭君紹介)(第一九一〇号)
 同(志位和夫君紹介)(第一九一一号)
 同(塩川鉄也君紹介)(第一九一二号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第一九一三号)
 同(中林よし子君紹介)(第一九一四号)
 同(春名直章君紹介)(第一九一五号)
 同(不破哲三君紹介)(第一九一六号)
 同(藤木洋子君紹介)(第一九一七号)
 同(松本善明君紹介)(第一九一八号)
 同(矢島恒夫君紹介)(第一九一九号)
 同(山口富男君紹介)(第一九二〇号)
 同(吉井英勝君紹介)(第一九二一号)
 同(児玉健次君紹介)(第二〇二八号)
 教育基本法の改悪反対に関する請願(山内惠子君紹介)(第一九二二号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 教育職員免許法の一部を改正する法律案(内閣提出第三六号)


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     ――――◇―――――
河村委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、教育職員免許法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として文部科学省生涯学習政策局長近藤信司君、初等中等教育局長矢野重典君、高等教育局長工藤智規君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
河村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
河村委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松宮勲君。
松宮委員 おはようございます。自由民主党の松宮勲でございます。
 本日は、教職員免許法の一部を改正する法律案の審議でございますけれども、劈頭の御質問の機会をちょうだいいたしまして、大変光栄に存じております。
 私は、この法律案にも関連いたしますが、その前提となるべき学校教育全般について御質問を幾つかさせていただきながら、一、二問、この法律案にも関連した質問をさせていただきたい、かように思っております。
 まず第一点は、多くの全国の関係者が関心を寄せております、新学習指導要領に基づく新しい教育課程の問題でございます。
 多分、間違いなしに、周到な準備のもと、新しい学習指導要領に基づいて、新年度、四月一日から授業時数も減りましたし、教育内容についても抜本的な改革が実施に移されております。みずからの力で考え、そして問題解決能力を習得することをねらいとし、単なる知識偏重から、強い、心身ともにたくましいお子様を育てていくということは、今日の置かれております我が国、あるいは学校教育の実情、あるいは日本の経済と教育との関係等に照らして、まことに当を得た方向だろうと私は思います。
 ただ、問題は、多くの関係者が今なお心配もしておりますし、それから、現実に現場においても幾つかのトラブルなり心配が起きておりまして、懸念は依然として解消されていない幾つかの問題があるということでございます。
 俗っぽい言い方をいたしますと、後ほど御質問させていただきたいと思いますが、カリキュラムで授業時間数が、算数、国語、理科等の科目で大幅に減っている。
 それから、もちろんこれは完全週休二日制への移行とパッケージでございますから、ある程度やむを得ない問題ではございますが、しかし、学力低下に対する懸念が、高校サイド、大学サイドはもちろんのこと、一般の小中学生をお持ちになっているお子様の家庭においても、そして小中学校の心ある教職員の間でもそういう声が起きているということでございまして、実際には、塾がひとりほくそ笑んでいるというような、あってはならないようなことがもし起こっているとすれば大変これは問題でもございますし、そして、デジタルデバイドならぬ教育デバイドというのが、経済的に、相対的にゆとりのある御家庭とそうでない御家庭との間で格差が生じ、お子様に負担がかかるというようなことが、これまたあってはならない問題でございます。
 等々の問題意識を持たせていただきながら、まず大臣に改めてお伺いさせていただきますが、これまでの戦後の日本の学校教育の多様な経験を踏まえて、本年度、四月一日から新学習指導要領に基づく新しい授業内容、そして教育内容を実施に移された背景とねらいについて、簡潔にメッセージをお願いいたしたいと思います。
遠山国務大臣 新しい学習指導要領の策定の背景には、おっしゃいましたように、社会の変化というものが十分に考慮されていると思います。
 新しい世紀に入って、いろいろな事件が起きておりますけれども、これらは私どもの想像を絶するような変化、また速さで動いております。それ以外にも、科学技術の発展、情報化の問題、さまざまなことが非常に速いテンポで、しかも予測を超えた内容と方法、手段によって動いております。そのようなことにこれからの子供たちが対応していくためには、みずからきちんとした主体的に生きる力を持っていかないといけないということがございます。
 そのようなことから、新しい学習指導要領におきましては、お話のように、基礎、基本をしっかりと身につけた上で、みずから考え、みずから判断をし、みずから行動する、そして課題解決に取り組んでいける、そういうしっかりした真の力、学力といいますか、確かな学力を身につけていく必要があるということで、指導要領のねらいをしっかりと定めているわけでございます。
 私は、これらは、学力とともに、心の教育も通じて、本当に一人立ちできる、しっかりした子供をこれからの学校教育において育成していく必要がある、そのようなねらいと背景のもとに、新たな学習指導要領が今実施に移されていると思っております。
 私どもといたしましては、今、保護者あるいは国民の方々が懸念しておられる学力低下ということは一切起こさせない、そのような決意で、この新しい学習指導要領のねらいがしっかりと実現され、かつ子供たちが自信を持って将来生きていけるような、そういう力を身につけてほしいということで、いろいろな施策を打っているところでございます。
 また折に触れて御説明したいと思いますが、そのようなねらいと方向性のもとに今仕事をしているところでございます。
松宮委員 ただいま大臣から、懸念されております学力低下は絶対に起こさない、そのための万般の準備、施策を展開するという心強いお話を御開陳いただきました。
 ただ、私は個人的に、学力低下というのが、御家庭のお父さん、お母様に至るまで、心配事として共有されているということを、やはり依然払拭できない一人でございます。
 幸いにして、OECDの学習到達度調査とか、あるいはIEAの調査等、各種調査にかんがみますと、我が国の児童生徒の学力の国際比較というのは、依然相対的に優秀な結果を記録いたしております。
 ただ、御案内のように、昨年発表されましたOECDの学習到達度調査では、数学的あるいは科学的リテラシーについては非常に優秀でトップグループに位置づけられているわけでございますけれども、高いレベルの読解力、判断力については、残念ながらミディアム、中位クラスに格付されております。
 さらには、多分これは文科省ができる前の科学技術庁がおやりになった調査だと思いますけれども、科学技術に関する関心度についての国際比較。これは、科学技術庁の外郭団体なりあるいはOECD等、各種の調査をアグリゲートしてまとめた調査でございますが、必ずしも正鵠を得ているかどうかはわかりませんが、しかし、文科省の資料の中に、ちゃんとその表というのが出ているわけでございます。
 それを拝読させていただきますと、科学技術に関する関心については、残念ながら最低グループに位置づけられている。いわゆる、まごう方なきお子様の理科離れ、あるいはそれとパラレルで数学離れというのが、恐らく今大臣は、変化のテンポが加速度化しているということでございましたが、教育もしっかりしなければいけないというお話でございましたが、私は、まさに理科離れなり数学離れも加速度的に進行しておるのではないかという感じがいたします。
 今度、新学習指導要領に基づくカリキュラムの改訂等を行われましたが、現実に物差しとなるべきお子様の学習到達度を、国内においてどういう調査があって、過去にも、今回じゃなしに、一九七七年に一回目の大変なカリキュラムの改正が行われて、今回は大きい流れでは二度目になるわけでございまして、俗っぽい言い方ですと、間違っていれば後で正していただきたいのですけれども、前回も三割授業数等がカットされ、そして今回も三割だ、掛け算してみると半分になってしまった、一九八〇年に比べますと、この二十年間強でというような俗論が横溢しておりまして、残念なことに、これが学力低下という議論につながっているわけでございます。
 議論だけならいいけれども、現実に、先ほども申しましたように、私は議員連盟を主宰しておりまして、先般、某大学の工学部長さんにおいでいただいてお話を伺ったんですけれども、少なくとも、先ほど私が心配いたしました理科離れなり数学離れは、工学部長さんでございますからある意味で当然かもわかりませんが、その大学に関する限りはそんなに心配することはないと。むしろ、パソコンの処理能力等でオリジナリティーを発揮しながら、新しいソフトの開発等においても大変な力量を発揮するような、そういう可能性を秘めた学生もいらっしゃるということで、そこは余り心配していないと。ただ、表現力、文章力というのは、これは非常に恐ろしい、こういうことをおっしゃっておられます。
 そこで、これは大臣でなくても結構でございます。新しい学習指導要領に基づく今回の実施の際には、当然、大変な抜本的なカリキュラムの変化というのが、これを実施しても、大臣がいみじくもおっしゃいましたように、学力低下は起きないという大前提、揺るぎのない大前提がおありになったはずでございますから、それの根拠となるべき、お子様、児童生徒の学習能力について、本当に、これまでも心配はなかったし、これからも心配がないということが言えるのかどうか、もし具体的な、客観的なデータ等があったら、ぜひそれを踏まえた御説明をいただきたいと思います。
岸田副大臣 今先生から御指摘がありましたように、さまざまな国際的な調査ですとか、あるいは国内におきましてもいろいろな調査が行われてきたわけであります。そして、学力につきましては、国際的な調査等を見ましても、日本の子供たち、成績においてはトップクラスを維持しているということでありますが、その中で問題点としまして、やはり理科、数学のみならず、全般的に学ぶ意欲に乏しいとか、あるいは学ぶ習慣が十分身についていないということ、このあたりが問題点、課題として指摘されているところであります。
 そして、今までの体制の中での調査の結果等も踏まえてどうなんだというお話でありますが、例えば、昭和五十六年から五十八年、あるいは平成五年から七年、文部省におきまして教育課程実施状況調査というのを行っております。この調査の中でも、学習が受け身で、覚えることは得意だが、みずから調べ判断し、自分なりの考えを持ちそれを表現する力が不十分であるという問題点が指摘をされております。
 こうしたあたりを踏まえて、このたび、新しい学習指導要領、新しい学校の体制をスタートするわけでありますが、この新しい体制においては、今大臣から申し上げさせていただきましたように、今までの問題点、学ぶ意欲あるいは興味、これを大切にしなければいけない、また、学力におきましても、従来のような知識や技能の習得にとどまらず、それをいかに活用するか、問題をみずから見つけ判断し、考えそして解決する、こうした大きな意味での学力というところまで考えて学力向上に努めなければいけない、こうしたことに重点を置いて新しい体制を構築したわけであります。
 今までの問題点を踏まえて新しい体制をつくっていったということでありますから、ぜひこの成果を上げて、今まで指摘された問題点においていい結果が出るように努力をしなければいけないと思っております。
 また、さらに大変重要だと思いますのは、こうした新しい制度をスタートするわけですが、こうした成果をしっかり検証することが何よりも重要だというふうに思っております。ことしの一月から二月、平成十三年度の末でありますが、全国四十九万人の小学校五年生、六年生、中学校一年生、二年生、三年生の子供たちに対して学力調査を再開いたしました。これをぜひ継続的に行うことによって、しっかりとその成果を検証していくということ、これも大切な点だと思っております。
 こうしたこともあわせて、しっかりとした学力の定着に向けて努力したいと考えております。
松宮委員 ぜひ、継続的な学力調査の実施によりまして、新しい施策というのが新しい時代のニーズにマッチしたものであるということの検証をしていただきたいと思います。
 ただ、それにいたしましても、その結果が出る、それから、大変なこれは改革でございますから、検証結果が出るまで相当時間がかかります。その間に万誤りなきを期するという意味でも、私は、結果が出るまでに対応しなければいけないことについては、ぜひとも、臨機応変かつ柔軟、大胆に、必要な施策の展開をお願いしたいと思います。
 幾つかまだ心配点があるのでございまして、大臣も含めまして御承知おきだと思いますけれども、新学習指導要領が実施に移る直前、一週間前の三月の二十三日と二十四日に、某全国紙が三千人を対象にいたした世論調査を実施いたしました。
 その結果、回答数が約千六百人でございますけれども、やはり一番問題になっておりますのは、週休二日制、そしてそれとパッケージになっております授業数のカットに対する懸念でございまして、まず、完全週休二日制移行への反対というのが六九・二%、授業時数の縮減に対する反対、イエスかノーかというような問い方でございますから、反対というのが六七・二%。
 こうした反対の理由といたしまして、選択肢で、重複選択でございますけれども、設問を設けておりますけれども、第一の心配、トップに出てきておりますのが学力低下、六八・六%、二番目が、結局は塾に頼らざるを得ないだろうとお答えになったのが五〇・三%、そして私立と公立との格差がますます大きくなるだろうとお答えになったのが三七・一%、さらには、家庭の懐に負担が過重にかかるだろうとお答えになったのが三割弱の二九・一%。こういうやはり結果が出てきております。
 したがいまして、私は、こういう事実というのは十分に念頭にお入れになった上で、これからの小中高の学校あるいは教育のあり方というのを、ぜひとも柔軟かつ臨機応変に御対応をお願いいたしたいと思うのでございます。
 それに関連いたしまして、一、二問ちょっと御質問させていただきますと、四月一日現在で新学習指導要領が実施に移されましたが、私立の小中高と、それから公立の小中高で完全週休二日制に実施、公立の方は一〇〇%これは実施に移っておりますけれども、私立の場合にどうなっておるのか。
 それから、いわゆる学力の低下に関連いたしまして、公立の場合には、当然教科書につきましてもかなりの指導のもとで新学習指導要領、私も、小中高の学習指導要領を一読させていただきました。各科ごとに全部、時間を相当かけて一読させていただきましたが、これも多少、時間があったら後ほど御質問させていただきたいと思いますけれども、かなりの変革が行われております。
 完全週休二日制に移行していない高校の場合には、あるいは小中も含めてでございますが、特に中学なり高校の場合には、やはり新しい指導要領に基づく教育では、学力低下がこれはもう必定であるということで、お伺いするところによりますと、例えば東京都の場合には、三分の二ぐらいが、私立の場合には週休二日制には移行しておりません。
 それから公立の場合でも、これは大臣がことしの一月に新しく学びのアピールというのをお出しになった所産かもわかりませんが、大阪の北野高校とか、あるいはきのうはたまたま、ある人によりますと、NHKの方で報道していたようでございますが、台東区のこれは公立学校の方でも、土曜日に補習スクールを実施するというようなことでの対応を余儀なくされております。
 一言で申しますと、学力の低下に対する懸念、そして私立と公立との学力格差に対する懸念が、各地の教育委員会なり、あるいは学校の校長なり教職員サイド、あるいはその背後にある御家庭からも出てきているということの証左に私はほかならないと思うのでございますが、その辺については、まず、私立と公立との違いについて、どう実態を認識されていらっしゃるのか、お答えいただきたいと思います。
岸田副大臣 私立と公立の違いでありますけれども、まず、新しい体制、新しい学習指導要領とそれから学校週五日制、これが大きな柱ということになっていますが、このねらいは、先ほど大臣から申し上げたとおりであります。
 社会全体で、教育力が低下する中にあって、家庭、地域、学校、全体で教育を受けとめる、その中で生きる力を養っていく、興味、意欲を大切にするというようなことでありますが、この趣旨は私立、公立通じまして同じであります。
 学校五日制につきましても、今、完全学校五日制に対する移行が進んでいないという御指摘ありましたが、月一回あるいは月二回も含めまして、何らかの形で学校五日制を導入している私立学校ということになりますと、小中高で七八%という状況であります。
 こうした状況の中で、新しい体制の趣旨はぜひ御理解いただくよう引き続き努力しなければいけないと思いますし、その格差の問題につきましては、今先生御指摘のように、やはり根本としまして学力の低下があるんではないか、この不安が大変大きくあり、そのことが格差が広がるんではないかという不安につながっているというふうに思ってもおります。ですから、基本的には、その学力低下に対する不安にしっかりこたえていくこと、これが何よりだというふうに思っております。
 そして、その学力低下の不安に対する説明でありますけれども、今、確かに授業量は、授業数は、全体では七%削減になっております。ただ、項目につきましては、盛んに三割削減、三割削減と指摘をされておりますが、基礎、基本の厳選に当たっては各学年における重複等を整理するというのが中心でありまして、各学年ごとを見ますと、項目がなくなったというようなことが随分指摘されるわけでありますが、高校卒業までの段階ですと、全く項目がなくなってしまった項目というのは恐らく一割に満たないということであります。
 そうした項目の状況であるというようなことを説明申し上げ、さらに、基礎、基本の厳選の上にこの新しい体制というものは、選択ですとかあるいは発展的学習、要するに上乗せを可能とし、そして習熟度別学習ですとか少人数学習ですとか、そうした個々に応じた対応を可能とするわけであります。
 従来の一律に全員に行う教育、言うなれば護送船団方式のような学習の体制とこの新しい体制、大変きめ細かい効率的な授業の使い方になっているわけですが、どちらが一人一人の子供たちにとって定着していくのか、このあたりもしっかり御説明させていただき、御理解いただいた上で、その評価をしていただくということが大切だというふうに思っております。
 このあたり、ぜひきめ細かく我々も説明責任を果たさなければいけない、御指摘を踏まえて強く感じております。
松宮委員 まだまだ新学習指導要領に基づく新しい教育がもたらす問題について御質問をさせていただきたいんですが、残された時間がもうほとんどございません。あと二点、ちょっと本日の法案審議に関連したことと、それからもう一点、別のことで御質問させていただきたいと思います。
 まず、この教職員免許法の一部改正の中で一つ、特別免許状の授与要件の見直しと有効期限の撤廃というのが取り入れられております。第五条及び第九条関係でございます。
 私もこの趣旨については大いに賛成をさせていただきたいと思います。これが実施されることが、今御質問させていただきましたような、新しい知を外から、人生経験あるいは知識の豊富な方を外から学校教育課程に導入することによって、お子様に、多様な教育内容を充実させるという意味でも非常にポジティブな効果があろうかと思います。
 ただ、お伺いするところによりますと、昭和六十年代にこの制度が導入されていながら、今日までに全国でこの免許に基づく教師の資格を得た方が四十四件にすぎない。だからこそ、今回、条件を緩和する等でこの条項が大いに活用される、そういう方向での改正だと思いますが、今回のこの改正に伴ってどれくらい特別免許状の授与の増大が見込まれるのか。
 残念なことに、これまでは、ほとんどが私立校中心でございましたし、それから非常に手続等が煩瑣であったということと裏腹、あるいは非常勤講師制度というのがございまして、これはそれなりにといいますか、大変立派に機能しているということも相まってだと思いますけれども、この制度の活用がなかった。しかし、新学習指導要領の実施ということと裏腹になる形でこの制度の改正を企図されていらっしゃるんだとするならば、その効果、見込みについてお聞かせいただきたいと思います。
矢野政府参考人 特別免許状の活用につきましては、今回の免許法の改正におきまして、学士要件と有効期限を撤廃することにしております。こうした措置によりまして、学歴にとらわれないで、より幅広い人材の中から本来特別免許状を授与されるべき人材を確保できるようになること、そして、有効期限の撤廃によりまして、特別免許状の授与を受ける者の身分上の安定が図られまして、民間企業等から教員になろうとする者の意欲を喚起することとなること等によりまして、その授与が促進されることとなるものと私どもは考えているところでございます。
 また、各都道府県等で行っております教員採用選考におきまして、特別免許の授与を前提とした社会人特別選考を行っている都道府県が非常に少ない、全国で三県でございますけれども、そうしたことから、今後、社会人特別選考の実施を各都道府県等に促してまいりたいと思うわけでございます。
 今回の免許法の改正、それから今申し上げましたような選考のあり方の改善等によりまして、どれだけということは申し上げることは難しゅうございますけれども、私ども、この特別免許状の授与が促進されるものと考えているところでございます。
松宮委員 ぜひ企図するところが実効を上げられるよう期待をいたしたいと思います。
 最後に一点、御質問させていただきたいと思います。これも、お子様たちの学力問題に関連するわけでございますが、英語力なんでございます。
 御案内のように、かねてから英語力の涵養、増強については、いわゆるJET制度の展開等々、あるいは、最近ですと、何かスーパー・イングリッシュ・ランゲージのスクール制度ということで、試行的な試みも始まっているようでございますけれども、御案内のように、今や英語というのは、世界共通の言語というよりは、これはもうツールでございまして、数学の公式とかあるいは物理の法則と同じように、一種の約束事として身につけなければ国家国民の将来も非常に危ういという、今それくらいの時代状況になっていると私は思います。
 だからこそ、例えば、韓国では一九九七年から、小学校三年からは英語は必修化させております。中国の場合にも、上海や北京が先行し、たしか、私の記憶が正しいとするならば、西暦二〇〇三年、来年からは、これまた、どうも小学校三年というのは何か一つのターニングポイントの年次なんでございましょうか、三年からはこれを全国で必修化させるというやに聞いております。あの自国の言葉を大事にするフランスでさえ、英語については、これは必修ではございませんが、小学校教育課程、高学年で相当数が教科に組み入れられている。ドイツしかり、イタリアしかり等々でございます。
 翻って我が国の場合、随分英語についてもこれまでいろいろな試みがなされておりまして、それなりの成果も上げているんだろうと思いますけれども、ただ、国際的にいろいろな記事を拝見いたしますと、例えば、TOEFLなんかの調査でも、中国に比べてかなりの差が出ておりますし、ある時期には、これは真偽のほどは確かでございませんでしたが、アジアの中では日本は、これは国の名前を挙げて恐縮でございますが、カンボジア、北朝鮮と比肩し得るぐらいの最下位にランクづけられているというような結果も、これは二年ほど前に私はメディアに接した記憶がございます。
 ぜひとも、これはお一人お一人のお子様の将来、そして日本の地域社会なり日本社会全体の将来のためにも、やはりこの国、一億二千六百九十万、生存していくためには、資源のない国は、ブレーンのブラッシュアップと同時に、それが学問の、もちろん、その原理原則をきわめていただく、ベスト・アンド・ブライティストを育てることも大事でございますが、一人一人のコミュニケーション能力、そしてそれが外に通用する、四つの島の国内だけじゃなしに、海外とも接し得るような、そういうたくましいお子様を育てていくという意味では、英語教育の重要性というのはますます重かつ大になっていると思いますが、今後の英語教育、とりわけ公教育課程における英語教育についての意気込みをお聞かせいただきたいと思います。
池坊大臣政務官 今委員がおっしゃいましたように、国際化が急速に進展いたします中において、国際社会の中で日本人が生きていきますためには、英語はコミュニケーションの最低の道具だというふうに考えておりますので、文部科学省といたしましてもさまざまな創意工夫をいたしております。
 新学習指導要領においては、中学校、高校において外国語は必修といたしております。そしてまた、基礎的、実践的コミュニケーション能力の育成をより一層重視していかなければいけないと思っております。
 先ほど委員がおっしゃいましたようなJETプログラムによって、平成十三年度には五千五百八十三人の外国語指導助手を中学校、高等学校へ招致いたしております。これによりまして、平成十二年度の調査によりますと、このALTと呼ばれております外国語指導助手の中等科、中学、高校の指導によって、約六割の生徒が英語能力が伸びた、また七七%の児童たちが聞く力が伸びたというふうに言われております。
 そしてまた、現在、英語担当教員の国内外における研修等を進めるとともに、平成十四年度からは、今おっしゃいましたようなスーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクール事業を設けて、英語教育を重視していきたいと思っております。
 また、英語教育というのは、コミュニケーション能力の育成の観点から、私はさまざまな改善が行われていかなければいけないというふうに思っております。本年一月より、各界の有識者による意見交換のための懇談会を設けておりまして、さまざまなこれから御意見が出ると思いますので、それらを踏まえまして、英語教育の改善に一層努めていくべきと考えておりますので、今までとは違った英語教育がこれからなされていくようにいたしてまいります。
松宮委員 ありがとうございました。ぜひ、本当の意味で実のある英語力がお子様に身につくようにお願いしたいと思います。
 それから、英語力のブラッシュアップを含めまして、新しい学習指導要領に基づく教育が、お子様の幸せ、家庭の幸せ、そしてひいては、本日は時間の関係で御質問できませんでしたが、地域なり家庭の教育力もやはり高めていくということになりますと、これは一文科省だけじゃなしに、政府を挙げての国家の一大事でございます。その辺も私どもはしっかり認識させていただきながら、これからの新学習指導要領の実施過程というのを見守らせていただきたいと思いますし、大臣冒頭にお答えいただきましたように、やはり柔軟かつ大胆に、この施策が効果を上げるように格段の御奮闘を期待いたしまして、質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
河村委員長 次に、山元勉君。
山元委員 民主党の山元勉でございます。
 きょうは法案の審議をさせていただくわけですけれども、大変この法案、多岐にわたっていますし、問題が多うございます。
 早速質問に入りたいんですけれども、その前段に、この法改正が必要とされる現状、日本の教育あるいは子供の状態の認識、あるいは法改正の趣旨について大臣に確かめたいんです。
 今の日本の子供たち、教育、例えば、今連日新聞をにぎわせていますが、完全学校五日制になって学力が心配だ、土曜日をどう過ごすんだ。たしかこの完全五日制については、七年間だと思いますが、隔週五日制をやってきたわけですね。十分な試行があったはずですし、検討があったはずなんですけれども、今になると、これは新聞の記事ですけれども、文部科学省がダッチロールしている、迷走している、こう言われるような状況も含めて、親も子供たちも不安を持っている。
 さらには、不登校の問題、前も取り上げさせてもらいましたけれども、今十三万四千人ですか、文部科学省の調査でも。十三万四千人というと、千人規模の学校の百三十四校が空っぽだという状況、これは日本の教育にとってはゆゆしきことです。
 その不登校の子供たちは、学校へ行きたい、あるいは嫌だ、さまざまあります。けれども、やはりこれは、教育を受ける権利がある、教育を受けさせる義務がある、そういう子供としてきちっと対応をしなきゃならぬのですけれども、今やはり十三万四千人いる、こういう状況で教育に対する不安がある。
 もう一つだけ言いますと、失業率が今、率は下がったけれども、数はふえて、三百五十万人。三百万余りの世帯に失業者がいて、そこに子供たちがいることを考えると、これはもう大変な数です。三百五十万人、三百万世帯以上に失業者がいて、そこに子供たちもいると考えると、これは戦慄するような数字なんです。
 そこのところに対して、子供たちに安心して勉強しなさいよということ、あるいは安心して就職活動、高校の卒業生四人に一人が職につけないという状況、こういう子供たちの今の状況というのは、本当に不安やらあるいは学校教育に対する不信というのが強くなっているんだろうというふうに思います。
 こういう状況の中で、私は極めて不満なのは、例えば、きのうでしたか、本会議場で、我が牧野委員が代表質問で、総理の所信表明演説でたったの二行だった、あの長い演説の中で。総理の教育にかける熱意というのは全然私も感じ取れなかった。そういう状況にある中で、この法案が出てきたわけです。
 私は、免許制度にかかわってだけではなしに、このことが今のこういう状況の日本の教育にどう効果を持つのかということを含めて、広い論議をこの法案の審議ではぜひしてほしいなというふうに思います。単なる小手先とは言いませんけれども、免許状のあり方を少し変えたら今の教育がよくなるとは思えないんです。ですから、大臣、ここで、大臣の現状の認識も含めて、この法案の趣旨についてお述べいただきたいというふうに思います。
遠山国務大臣 今教育が抱えております問題は、多岐にわたります。しかし、これらをしっかりと受けとめて、新しい時代にふさわしい教育を展開していくということがまことに大事でございまして、私は、今、新学習指導要領のもとに行おうとしております教育改革は、それにこたえていく上で一番力強い方向であるというふうに確信をいたしております。
 といいますのは、新しい学習指導要領のもと、今、松宮議員の御質問にもございましたけれども、何をねらいとしているかというと、子供たちが本当の基礎、基本というのはしっかり身につけた上で、主体的に生きていくための、あるいは自分で考え、自分で判断し、自分で行動できる、しっかりとした力を身につけるということをねらいとしているわけでございます。そのことを達成するためにいろいろな施策を展開してまいっているわけでございます。
 去る一月に出しました確かな学力も、そのねらいを本当に達成するために、確かな学力を身につけさせるために、もう一度こういう点が大事だということで、リマインドしていただくために出したわけでございます。
 それは基礎、基本をしっかりして、かつ、みずから考えという、ねらいというものは名目上わかるわけでございますが、本当に基礎、基本がしっかりするためには、もっとしっかり教えなくてはならないかもしれない。それから、一人一人がどの段階までいっているからどうしなきゃいけない、これまでのように同じように一律にやるのではなくて、それぞれの力の持ち方あるいは伸び方に応じてきめ細かくやっていく必要がある、そういうことによって基礎、基本がしっかりと身について、みずからの主体的な力を持つということでございます。
 そのことを達成するための、今、教員定数の問題あるいは社会人の登用、それから体験的な学習、総合的な学習の時間、それらを総合的にお考えいただきますれば、私は、制度の変革期にはいろいろな疑問が起きたり、不安を感じたり、あるいはそれをあおり立てたりというような風潮が出るということもあることは十分存じております。その変化に対応しながら、しかし、しっかりと各学校の取り組みを力づけ、そしてそれを実際に可能にしていくための諸種の展開をしていくというのが私どもの役割かと思っております。
 御指摘の点は十分勘案をしながら、そういう疑問にこたえ、そして、特に最近言われております学力の低下というものは絶対に起こさせない、そのためのいろいろな施策をしっかりと展開していきたいと思っているわけでございます。
 そのような大きな変わり目において、私どもといたしましては、教員がまさに学校教育をしっかりしていくことについてのかぎを握ってくれていると思います。その教員を、しっかりした人材を確保し、あるいは、既に教員の役割を担っていただいている方については、さらに専門的なあるいはいろいろな創造力を持っていただきたいというようなことで、今回の二つの法律の改正をお願いしているわけでございます。
 したがいまして、不登校の問題、いろいろなその問題があることも確かでございます。しかし、それらは、今までのように画一的に知識を詰め込んでいったことになれない、あるいはそれに適応できない子供たちがいたということも確かでございます。それが、総合的な学習によって、みずからいろいろな体験をしながら、自分で考えて、手ごたえある教育を受ける、あるいは手ごたえある学習をするということによって、みずからに自信を持ち、学校に戻ってきたというケースもたくさんあるわけでございます。
 そのようなことも勘案しながら、国としましては、長い間かけて準備してまいったこの新指導要領の実施についてしっかりと取り組みたいと思いますし、また、それについて、副大臣からもお答えいたしましたけれども、しっかり検証しながら、柔軟にかつ弾力的に、そのことについてのまた考えも十分に検討しながら、進めていきたいという段階でございます。
 法案につきましては、また御質問に応じてお答えをしたいと思います。
山元委員 即この今の現状に対応する決め手があるとか、あるいは今求めてできるものではないというふうに私も思います。けれども、今の大臣のお話を聞いていると、いかにも確かな学力をつけさせるためにそのキーは教員が持っているんだ、こう一般論になっているような感じがして、そうかという、例えば、少なくともそういう免許を持っている人たちの意識を鼓舞するような、あるいは元気を出させるような、そういうお言葉はなかったような感じがするんです。中教審においてもこれから論議が続くわけですから、ぜひ具体的なものについて見えるようにしていただきたいなというふうに思います。
 ところで、この中教審は、論議の中で三つの柱を立てて、総合化、弾力化の問題、それから更新制の可能性の問題、それから特別免許状の活用の問題、これをずっと三本の柱で論議をしてこられた。私は、今、教員の適格性やあるいは専門性というのが求められていますから、こういう論議をしていただくことは大変大事だと思いますし、出てきたものについては私も一定評価をする立場に立ちます。
 とは言いながらも、私は、大きな課題が幾つも先送りされた、残ったという感じがするんですね。文部科学省として、この今の法案で、先送りとは悪い言葉は言いませんけれども、残した課題ですね、急がなきゃならぬ課題、どういうふうに認識していらっしゃるのか、それはどういう論議の過程で出てきたのかということについて、お尋ねをしたいと思うんです。
矢野政府参考人 委員御指摘のように、本年二月の中央教育審議会の答申では、大きく三つの点について検討が行われたわけでございます。一つは、教員免許状の総合化、弾力化、そして二つには、教員免許更新制の可能性、そして三つには、特別免許状の活用促進といった、大きく三つの点について検討が行われまして、このたびの教育職員免許法とそれから教育公務員特例法についての改正につながる御提言をいただいたところでございます。
 この答申の中では、幼稚園、小学校、中学校、高等学校等の学校種に分かれた免許状の総合化の問題につきまして、一つの課題として残されているわけでございます。
 この総合化の問題につきましては、理由といたしまして、単純に総合化を行えば要修得単位数が大幅に増加するといったこと、さらに、その総合化を幼小とするのか、小中とするのか等といったような総合化のあり方について現時点で一定の方向性が見出せないといったようなこと、さらには、免許状を取得するに当たって履修すべき科目について、それぞれの学校種により固有の専門性を有する部分と学校種共通する部分とについての整理、分析が必要なことといったようなことなどから、この総合化の問題につきましては、今後の中長期的な課題として、今後、専門的、学術的な調査研究を進める必要がある、こうした御提言をいただいたところでございます。
 私どもといたしましては、この指摘を踏まえまして、幼児期から高等学校段階までを含めた一貫指導の推進あるいは各学校段階間の連携の強化、そういった観点から、免許状の総合化について、中長期的な課題として残されております免許状の総合化について検討を進めてまいりたいと考えているところでございます。
山元委員 総合化の問題については後ほども触れますけれども、確かに急がなければならない課題だ、悪い言葉で言えば先送りをした、長い間課題が提起されていながら先送りされた。例えば、特殊教育の在り方に関する調査研究協力者会議、ここでもやはり提起をされているわけですから、これは急がなければならない問題であったんですが、先送りをされました。
 そういう先送りの問題は別にして、各項目について少しただしていきたいわけですが、最初に、他校種免許状による専科担任制度の拡大の問題です。
 これは、先ほどもありましたように、接続を円滑にすること、あるいは小中高の先生方それぞれがそれぞれの学校の共通性を持たせた教育をする、こういうことが大事なんだろうというふうに私も理解をします。
 この中教審答申でも、そういう意味のことがしっかりと書かれています。大事なことは、この中教審答申の中で、「今後の学校教育は、地域のニーズに応じた教育を実施していくことが必要であるが、これを実現するためには、地域の幼稚園、小学校、中学校及び高等学校の連携や各学校間の教員の連携、交流が不可欠である。」こう書いてあるんですね。これは私は今の状況をしっかりとつかまえた文言だというふうに思います。地域のニーズにこたえた教育を実現するためにこういうような法改正をするんだ、こういうことなんです。それが一番大事なんだと。先ほど大臣は確かな学力とおっしゃっていましたけれども、そういう一面もありますけれども、中教審はこういう指摘をしているんだということ、それは法改正の趣旨として間違いないですね。
岸田副大臣 御指摘の地域のニーズという点、大変重要な点だと認識しております。
 今回の法改正の趣旨ですが、各学校段階間の連携の一層の促進ですとか、学習指導の連続性、一貫性の確保ですとか、小学校高学年における専科指導の充実、こういったものをねらいとしているわけですが、これを実現するために、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、各学校間の連携ですとか、各学校の教員間の連携ですとか交流を図るわけですが、こうした連携、交流はやはり地域のニーズに基づくものであるということ、これは大変重要な点だというふうに認識しておりまして、こうした法改正によって地域が期待するような学校のあり方が実現することをぜひ期待したいというふうに思っております。
山元委員 私もそう思いますが、ここで、ともすると、私も現場に二十年ほどおりましたからよく見聞きしたんですけれども、人事の異動、交流について、地方教育行政の中での安易なこれの利用といいますか、そういうことが行われる。地域の人々から見ても、何であの先生がということでやられる人事があるわけですね。そういう安易な人事交流の手がかりにされる、手段にされるということは、これはやはり心しなきゃならぬというふうに私は思うんですけれども、行政指導上どういうふうに考えていらっしゃるか。
岸田副大臣 今回の法改正の趣旨、今申し上げました、各学校段階間の連携の促進、特に小学校における専門性の高い教科指導の推進、これをねらいとするものであります。これは、安易にこれを使って人事異動等を行うというようなことに使われてはならないというふうに思っております。
 これは、具体的な方法につきましては、中学校等の教員を小学校の教員に異動するとか、あるいは中学校等の教員に小学校の教員を兼職させるとか、二つのやり方があると思いますが、この辺はそれぞれ任命権者の判断によるというふうに思っております。
 その具体的な方法において、今申し上げました趣旨がしっかり徹底されて、この新しい制度が運用されるということ、ぜひ周知徹底していきたいというふうに思っております。
山元委員 具体的なことに入りますが、この法律案の概要でも出ていますけれども、高等学校の専門教科の教員、例えば、情報、農業、工業、商業、福祉等というふうに例が挙げてあります。その教員が、中学校の相当する教科、理科、技術等及び総合的な学習または実習を担任することができると書いてあるんです。
 なぜ考古学とか社会がここへ挙がってこないんですか。例えば地域のニーズに応じた教育ということで考えると、例えば、この地域は埋蔵文化財があって歴史的な町なんだ、だからそういうことについて力を入れているんだといえば、それじゃ、あの中学校に例えば考古学にたけた先生がいるから中学校へとか小学校へとかいうことがあってもいい。あるいは、この国際情報化社会の中で、そういうことについて本当に経験豊富な人があの学校に二人もいるからこっちに一人欲しい、そういうことが社会やあるいは考古学にあってもいいでしょう。
 なぜ、こういうここのところに、情報、農業、こういうことになってあるのか、なぜほかの一般教科の方については排除したのか、その理由についてお尋ねをしたいんです。
矢野政府参考人 今回の専科担任制度の改正の趣旨は、教科等における専門性の高い指導を推進することなどを目的とするものでございます。
 そういう意味で、今回の改正では、中学校の専科担任について高等学校の普通教科の免許状を対象にしない、御指摘のようにしたいとしているところでございますけれども、その理由といたしましては、中学校と高等学校につきましては、御案内のように、ともに教科担任制をとっておりまして、教科別の免許状が授与されておりますことから、中学校の教科と一致する高等学校の普通教科の免許状を持った教員による専科指導につきましては、今回の改正の趣旨でございます専門性の高い指導を推進する、そういう点では、必ずしもそういう意味での専科指導の趣旨には合わない、またそのことについてのニーズが高いとは考えられないということでございまして、もちろんこれは一般的な話でございます。一般的な話として、そういう必要性なりニーズが高いと考えられない、そういう事情等を踏まえまして、高等学校の普通教科の免許状を対象にしないということにいたしたところでございます。
山元委員 これは通らぬですよ。
 今申し上げた例、専門性低いですか。埋蔵文化財があって歴史の町なんだ、博物館もつくった、一生懸命やって、子供たちに、そのことについて誇りを持ちなさいよ、知識持ちなさいよということについて、エキスパートが中学校にいたら小学校、あるいは高校にいたら小学校、いいじゃないですか。なぜ社会がだめなんです。専門性が低いんですか、それは。
 それは、最初にあったように、地域のニーズにこたえる教育をつくり上げていくために、いるんだったらそういうことができるんですよと。こんなに教科、だあっと、工芸、書道、看護、情報、これは法案ではもっと詳しく書いてあるわけです。看護や書道や工芸や、そういうものはよろしいとなったわけでしょう。今、私こだわるわけではないけれども、例えば考古学だとかあるいは国際交流だとか、何で専門性が低いんですか。だから、地域の、うちは中国とこういうふうに兄弟になって一生懸命になってやっている、そういうことについて得ている人を異動してもらうということについては、私は、やはり地域に任すべき。こんなところにきちっと工芸や農業や、ずっと科目を書く必要はない。
 最初の中教審の思いから言うと、こういう法案にきちっと書道、工芸、ずっと書いてあるということについて、私は、これから文部科学省は、幾つかの手だてがあろうと思うけれども、それは例外があってもよろしいよということにしなきゃ、これは大変こっけいな、世間で言うしゃくし定規といいますか、石頭の法律だ。言い過ぎかもわかりませんけれども、これはこれからぜひ検討していただきたいというふうに思います。
 それから、次に行きますが、高校から、相当免許状を持っている者が中学校へ、小学校へ、あるいは高、中が小学校へ、高が中学校へ行くことができるというふうになっているわけですね。しかし、なぜ小学校から中学校へ行けないのか、なぜ中学校から高校へ行けないのか。これは、上から下というのは年齢と考えてもらっていいですけれども、一方通行になっているわけです。
 私の知っている教員でも、小学校の先生が三年間中学校へ行ってきて、音楽の授業を担当して、本当にいい勉強になった、中学生たちは、授業をしてみると、中学の音楽というのはこうなって、成長をしてこうなるんだということがよくわかったというて、小学校へ帰ってきて生き生きと授業をしていらっしゃるのを見た。
 なぜ、小学校が中学校の体験をする、あるいはそこで教育活動をすること、中学校の先生が高等学校の教育活動をすることが妨げられるのか。なかなか難しいと思いますよ。けれども、このことは、やはり道はしっかりとつけておくべきだというふうに思うんですが、いかがですか。
矢野政府参考人 今回の他校種免許状による専科担任制度の趣旨は、特定の教科に関して深い理解や専門性を有している高等学校あるいは中学校の教員が小学校において専科担任ができる、そういう道を開こうとするものでございます。したがいまして、全教科担任制を原則とする小学校の教員が、必要な免許状なしで教科担任制をとっている中学校や高等学校で指導を行うことは、想定していないわけでございます。
 しかしながら、また、今回の改正では、小学校の教員がみずから得意とする教科等で中学校の指導を行えるように、現職教員について隣接校種の免許状の取得を促進する制度を新たに設けることといたしておりまして、小学校教員が中学校の免許状を取得することによって双方向の交流が進むものと考えているものでございまして、私どもとしては、そういう意味での相互の交流というのは大変意義深いものというふうに考えているわけでございます。
 なお、状況を申し上げますと、平成十年の学校教員統計調査によりますれば、現職の小学校教員のうち、中学校免許状の保有者は六三%でございます。これに対しまして、中学校教員のうち、小学校の免許状保有者は二八・〇%ということで、小学校の教員は大体六割を超える人が中学校の免許状を持っているというふうな状況にあるわけでございますので、こういう免許状の保有状況から見れば、小学校の教員が中学校あるいは高等学校に行く道も、現在におきましても相当程度開かれているというふうに考えているところでございます。
山元委員 だったら、高から中、中から小という道をきちっと明確にするのであれば、もう一方の通行も明確にして、そういう交流なり連携なり、あるいは経験を積むということが大事ですよという道を何でつくらないんですか。
 そのことが、それぞれの地方の教育に、あなたたちの地域の教育はあなたたちがつくりなさいよ、最高の知恵を出しなさいよということになるんだと思うんですが、今の局長の答弁では、理屈は、それは保有の率から見て、ある、現状は。けれども、積極的にそういう今の状況を打開していく、あるいは、そういう免許状を持っている人、持っていない人、交流や連携に協力をしてもらうということについては、道をきちっとつけておくべきだというふうに思うんです。
 これも、これからの方向として、文部科学省で検討してもらいたい。ここでたちまち修正案を出そうとは思いませんけれども、これはやはり一方通行過ぎます。本当の意味の交流や連携というのはできないというふうに思います。
 このことは中教審も言っている。平成十一年十二月に、接続について中教審は指摘をしてきた。二年半前ですよ。二年半前に、同じ中教審が、幼児期から高等学校段階までを一貫したものとしてとらえて指導を行う必要があるから、連携を強化するんだと。幼稚園から高校までの連携、本当に一体になった、一貫した教育ということを考えると、こういうことはお粗末過ぎるというふうに指摘をしておきたいと思います。
 もう一つ、次に行きますが、これは指摘をしておきたいんですけれども、小学校では、御承知のように学級担任というのがあって、そして、私もそうでしたけれども、学級担任はするけれども、音楽は苦手だからとか、あるいは授業時間数の均衡からいって図工は持ってもらうとかいうことで、お互いに、週二十時間前後というようなことも含めて、こういう授業形態があって、学級担任が中心でした。子供たちの生活だとかあるいは学習だとか家庭の状況だとかいうのをきちんと学級担任が見る。
 ところが、高学年へ行くと、私は高学年を持っていましたけれども、私のことになるんですが、だんだんと個性なり才能なり、そういうものが際立ってくるわけです。そのときに、子供たちそれぞれの、一人一人の子供たちの状況をしっかりと把握するのが学級担任の仕事だというふうに思っていました。
 今の一貫性のことを考えると、中学校はこれが弱いわけです。ホームルーム担任制になっているわけです。学級担任とは言わなくて、学級担任はホームルーム担当で、一定の世話はするけれども、やはり教科が中心です。今の状況からいって、中学校においても学級担任制というのを導入するというと、大変人数が要ることになると思います。少なくとも、中学校のホームルーム担任は小学校でいう学級担任のような任務をしっかりと果たす必要がある、そういう指導が必要だというふうに思うんです。
 今、本当に子供たちの幅が広くなっています。だから、去年あれだけ言ったけれども、実現してもらえなかった。四十人学級で、三十八人、四十人の子供を、今申し上げましたように、個性だとか才能だとか家庭の状況だとか進路の希望だとかいうものをしっかりと把握するというのは、全人的な指導をするというのは、やはり学級担任が必要なんだろう。
 うちの子供はあの先生が一番面倒を見ていてくれるように預けてあるんだということが言える、何かあったらあの先生に言ったらいいんだということになるような方策が今の状況で必要なんだろうというふうに思いますけれども、大臣、どういうふうに認識していらっしゃいますか。
矢野政府参考人 私の方からお答えをさせていただきますけれども、御指摘のように、小学校ではいわゆる専任の学級担任制をとっているわけでございますが、中学校では、専門的知識に基づく指導の必要性といったようなことから教科担任制をとっておりまして、それぞれの教員は特定の学級のみを担当するものではないわけでございます。
 しかし、これも、御指摘のとおり、特定の学級の道徳あるいは特別活動の学級指導の指導を行うとともに、学級経営やあるいは生徒指導に当たるものとして、通例、学級担任が置かれておりまして、その役割は、委員御指摘のとおり、大変大事な役割としてあるわけでございます。
 さらに、中学校におきましては、生徒指導、進路指導、極めて大変大事であるわけでございまして、それぞれの学校では、大変重要な役割を果たす学級担任が中心となって、生徒指導主事あるいは進路指導主事とともに、学校全体で、教員間の十分な連携を図りながら、これらの指導が進められるべきものと考えているわけでございます。
 そういう意味で、教員においては、学級担任の役割を果たす教員、それから生徒指導主事あるいは進路主事等々のそういう所掌、分掌を担当する教員ともども、学校全体でのそういう指導というのが大変大事になるわけでございまして、今の専任のというか、学級担任をというお話でございますけれども、私どもとしては、今言ったような形での学校全体での取り組みが大変大事であろうというふうに考えているところでございます。
山元委員 そのことも、それは大事です。例えば、今配置されている生活指導の担当だとかあるいは進路指導の担当だとか、これが機能していくことが大事です。
 私が申し上げたのは、四十人なら四十人の学級の中で毎日一緒に子供たちが生活している、そういう子供たちの単位をしっかりと大事にするような、いわゆる学級担任的な役割を持つ先生をきちっと意識する必要があるのではないか。これからますます生徒が多様になってくる、そういうのに対応する必要がある。これは指摘をしておきますから、また検討をしていただきたいというふうに思います。
 次に、隣接校種の免許状の問題です。
 これも、先ほどのように、学校間の接続を円滑にするんだ、連携を密にするんだ、こういう趣旨であるというふうに理解をします。全く一緒と言ってもいいくらい、校種間の交流をやる、相互に乗り入れをしてという趣旨だというふうに思いますが、特別の思いがございますか。
矢野政府参考人 まさにこれは、小中高の学校種を通じての一貫的な指導あるいは体系的な指導といったようなことを強める、さらには学校種間の教育指導等の連携を図る、そういう観点から、各学校段階の隣接校種の免許状の取得を促進する、そういうものとして御提案を申し上げているものでございます。
山元委員 一つの手だてだというふうに私も了解をしますが、具体的に少しお尋ねしたいんですが、六条の別表八でしたか、例えば小学校の教員が幼稚園の免許状を取ろうとすると、三年間の経験で六単位を取りなさいというふうに書いてあるわけですが、この中身について、どういう単位を取るのか、どういう方法で取るのか。
 例えば、大学で取るのか、あるいはそれぞれの地域の教育行政の中でそういうことが行われるのか。具体的に、三年間の経験を有する者が六単位を取ればよろしい、その六単位というのはどういうものだというのが見えてこないんですが、どういうふうに検討していらっしゃいますか。
矢野政府参考人 隣接校種間の免許状を取得する場合の具体的な必要修得単位の内訳でございますが、私どもの考え方といたしましては、ちょっと具体的な話で大変恐縮でございますけれども、教職に関する科目のうち、学習指導要領に沿った内容を教授する各教科の指導法、それから、子供たちの発達段階を踏まえる必要があるものでございますから、生徒指導、進路指導及び教育相談に関する科目、これにつきましては、それぞれの学校種でそれぞれ独自性があるため、これらに関する科目については必ず修得させることといたしたいと思ってございますし、また、道徳の指導法を修得していない幼稚園あるいは高等学校の免許状を持つ者が小学校や中学校の免許状を取得する場合には、これを修得させることといたしているところでございます。
 また、単位の軽減措置でございますけれども、単位の軽減措置につきましては、教科に関する科目につきましては、既に大学で修得している科目については修得を要しない、それから教科または教職に関する科目につきましては、在籍年数を評価いたしまして、原則として修得を要しない、こういうことを想定しているところでございます。
山元委員 これは、いずれ文部科学省令で決めていかれるんだろうと思いますけれども、具体的に、本当にそういう目的に資するような実質的な修得の方法といいますか、内容をつくり上げていっていただきたいというふうに思います。
 そこで、もう一つ、具体的なことですが、幼稚園の教員の問題についてお尋ねをしたいんです。
 幼稚園の教員というのは、二種免許状でやっていらっしゃる方が、圧倒的に多いというか、九割以上は二種免許状であるし、勤務年数は極めて短いのが例です。確かにベテランの先生も幼稚園の先生にいらっしゃいますけれども、どうしても、やはり短い先生が圧倒的にこれまた多いわけです。給与も低い、待遇も非常に悪い状況になっているのが実態だというふうに思います。
 そういう中で、小学校の教員が幼稚園の免許状を取って経験をすることは大変大事なことだということは、今の状況ではできないわけです。中教審も言うように、幼稚園から高等学校まで、行き来、交流、連携をするということであれば、小学校の先生にも幼稚園の教員を経験してくださいと。というと、幼稚園の教員の養成というのは簡単ではないというふうに思う。けれども、私は、将来、子供たちの成長のスピードが速くなっている中で、四歳児、五歳児の子供たちがもっともっといろいろの高度の教育を受けていく流れになっていくだろうし、そして、そのことがしっかりされなかったら、幼稚園から小学校へ来た子が全く白紙の状況、あるいは幼稚な状況で来る可能性があるわけですね。だから、大事な幼児期の教育というふうに幼稚園教育を考えると、小学校との連携というのは大事にしなきゃならぬ。今の状況だったら、私は、免許状の種類の問題もあるけれども、給与の問題等もあって、あるいは公立の幼稚園が少ないということもあって、大変難しいと思う。
 だから、一つの方法として、幼稚園の免許状も、四年制の大学で一種の免許、幼稚園一種というのをつくってどんどんとベテランを養成するというのも一つの方法だろうというふうに思いますが、この幼稚園、幼児の教育というのを重視する方向というのは、文部科学省どう考えていらっしゃるのか。私は大事だというふうに思うのですが、いかがですか。
矢野政府参考人 御指摘のとおり、幼稚園教員とそれから小学校教員が相互にその教育課程を理解し指導方法を身につけたりするということが、一貫性ある継続的な指導を行う上で大変有益であるというふうに私は考えるところでございます。
 そういう意味で、今回、双方の免許状の取得を通じて校種間の相互理解を進めるということを考えたわけでございますが、委員御指摘のように、具体的な話になりますと、小学校の教員と幼稚園の教員は、任命権者が違います、給与体系も違いますといったようなところで、その辺のところの具体的な人事交流になりますと、必ずしもスムーズにはいかないという実態があるわけでございます。そういう意味で、私ども、現在、幼稚園と小学校の連携に関する総合的な連携方策の開発、あるいはその推進を図るための実践研究を、人事交流を含めて実施をいたしているところでございます。
 私どもといたしましては、そうした実践研究の成果を生かしながら、今御指摘がございましたような問題点をクリアして、積極的な取り組みが行えるように進めてまいりたいと考えているところでございます。
山元委員 これも、やはり日本の教育を高度化していくといいますか、立派にしていくためにも、一つの考えなければならない、検討しなければならない課題だというふうにぜひ認識をしていただいて、取り組みを進めていただきたいというふうに思います。
 次に、特殊教育諸学校の免許状について少しお尋ねをしておきたいのです。
 答申では、障害を持つ児童生徒等の重度・重複化等の課題に対応するため、盲・聾・養護学校の免許状の総合化を早期に行うことが必要である、こう出てきてある。それは、既に、一年以上前に特殊教育の在り方に関する調査研究協力者会議の皆さんが最終結論を出していらっしゃって、免許状について、関係者の意見を聴取しながら検討すること、というふうに報告を出していらっしゃる。それから一年以上たって、そしてまた今度中教審も出してこられた。
 今の状況、検討することというのは一年半前にある、そしてこれを十分中教審も意識していらっしゃる、早期に行うことが必要であると。文部科学省、今の検討の状況と、どういうふうにお考えに今なっていらっしゃるのか、お聞かせをください。
岸田副大臣 特殊教育につきましては、近年、児童生徒の障害の重度あるいは重複化、さらには多様化が進んでいることから、一人一人のニーズに応じた教育を推進するということ、大変重要だと認識しております。そして、特殊教育担当教員というもの、もちろん専門性は確保しなければいけないわけでありますが、あわせて総合的な専門性が求められるというふうに認識しております。
 そういったことから、盲・聾・養護学校すべての校種において教授可能とする総合的な免許状の創設を検討すること、これは喫緊の課題だというふうに考えております。
 その中で、今先生からも御指摘ありましたように、二月に、中教審答申、今後の教員免許制度の在り方の中におきましても、特殊教育諸学校免許状の総合化について、早急に実現すべき課題として、専門委員会を設けて検討するべきだという提言をいただいているところであります。
 これを受けて、現在、中央教育審議会初等中等教育分科会教員養成部会のもとにワーキンググループを設置して検討をお願いしているところであります。ワーキンググループ、これまで四回開催しておりまして、ことし夏ごろをめどに報告を取りまとめていただくという予定でおります。これが現状でございます。
山元委員 答申の中でも触れられているんですが、私は前から聞いていたんですが、改めて数字を見て愕然としましたよ。例えば、調査研究協力者会議の資料でも、文部科学省も認めていらっしゃるんだけれども、盲学校で盲教育の免許状を持っているのは二一%、聾学校で聾教育の免許状を持っているのは三一%、三分の一ない。
 今、ノーマライゼーションの社会をつくろう、障害がある人もない人も、高齢者も幼児も分け隔てなく人間として生活できるそういう社会をつくろう、こういう取り組みがどんどん進んでいる状況の中で、視覚障害を持つ、聴覚障害を持つあるいは身体障害を持つ子供たちが特殊な学校へ入った、けれども、わずかに五人に一人しか例えば盲学校ですと点字がわからない、すぐわかるのかもしれませんけれども、現に免許状を持っているのは二一%。聾学校へ行っても、手話ができる、あるいは免許を持って来ている人は三一%しかない。これは考えられぬ。
 この研究協力者会議の資料で見てみますと、例えば、二一%といいますが、平成元年では二三%あったのが、どんどん時代に逆行して下がっていっている。三八%あった聾学校の免許状が、三八%から三〇・八%で、どんどん下がってきている。こういう状況というのをどういうふうに文部科学省が認識するのか、あるいは中教審の皆さんが認識したのかということについて、やはりここのところで論議をしておかなければならないと思うのですけれども、大臣、どうです、この実態は。どうお考えになりますか。
矢野政府参考人 まず私の方から、状況と、また我が省としての対応策について御説明をさせていただきたいと思います。
 現行の制度上、特殊教育の教員免許状を保有していなくても、盲・聾・養護学校の教員となることができる特例が設けられております。そして、委員御指摘のように、その特例によりまして、特殊教育諸学校教員の特殊教育教諭免許状の保有率は、盲学校が二〇%、聾学校が二七%、養護学校が五二%と大変低い状況にあるわけでございます。私ども、大変ゆゆしい問題であるというふうに認識をいたしているところでございます。
 このような状況に対しましては、任命権者である各都道府県教育委員会におきまして、教員の採用、配置、それから研修等を通じた取り組みを積極的に進めることによりまして、教員の特殊教育教諭免許状保有率の向上を図ることが必要であるわけでございます。
 このため、我が省といたしましても、こうした都道府県の取り組みを支援すべく、従来から、都道府県教育委員会が実施しております免許法認定講習に対して国として補助を行ってきているところでございます。
 さらに、新たに本年度からでございますけれども、放送大学におきまして特殊教育教諭免許状取得のための科目を開設することといたしましたほか、今年度から新たに、盲・聾・養護学校の専門性向上推進モデル事業というものを行うことといたしているところでございます。これは、免許法の認定講習やあるいは校内研修プログラムの開発、さらには、多様な人材を活用した専門性の高い特殊教育のための指導体制を構築するといったようなことについて実践的に研究をしていただく、そういう内容の事業をモデル事業として行うことといたしているところでございます。
 私どもといたしましては、今後とも、これらの取り組みを進めることによりまして、教員の特殊教育教諭免許状保有率の向上を図ってまいりたいと考えているところでございます。
山元委員 だから、それが目に見えてこなきゃいかぬ。逆行していっているでしょう。そこのところに危機感を持って、きちっと文部科学省として具体策をつくっていただかないと、今、例えば聴覚障害のある人には、どこの市役所へ行っても手話のできる人が配置されていてという状況になってきたんです。耳の不自由な学校あるいは目の不自由な学校、例えば盲学校で、点字がしっかりと学校の中で使われていて、そして世間の人に、目の不自由な人にはこういうふうに対応をこうなんですということの、しっかりと確信を持って言えるという状況をそこから発信していかなきゃいかぬ。
 たったの二割しか教員免許状を持っていない状況というのはやはり早期に克服する必要があるし、そういう免許状を取るための手だてを具体的に、都道府県任せにしないで、文部省は大きな旗を振ってほしいと思いますし、そして、それはやはりこれからの教員養成の中で、しっかり総合化についても考えていただきたい、検討していただきたいというふうに思います。
 時間が余りないので、たくさんのことを申し上げたいのですが、一つ、この資格のことについてですが、この間、四月の九日、我が党の肥田議員や堀議員が、拡大教科書、弱視者のための拡大教科書について文部科学省と文化庁へ申し入れを、これは著作権の問題ですが、された。
 私は、そのときの回答のメモを見て愕然とこれもまたしました。憲法二十六条に、すべての子供が能力に応じて教育を受ける権利があると書いてあるのですね。目が弱視、不自由だ、だから教科書が、検定教科書がもらえないというのは、これはいつまでほっておくのですか。協力をしていただく人に、この拡大教科書を、大きな字の教科書をつくっていただいて、一冊が一万五千円とかいう。
 そういうふうにしてそれぞれが努力をしなければならない今の状況というものについての認識、例えばこれは、話し合いに行って、文部科学省の担当の人と話をした答えはこうでしたというメモ。拡大教科書は検定教科書になっていないけれども、発行者が文部科学大臣に申請して、決定許可を受ければ可能ですと、こんな水臭い話がありますか。本当に、目の不自由な子にはこういうものが必要なんだといったら、たとえそれが二百人であろうと五百人であろうと、きちっとこれは憲法の保障するとおり保障してあげるのが温かい文部科学省でしょう。できたらできますよと。そして一万何千円かかる、奨学奨励費で充当されていますよ、けろっと言ったと、けろっとかどうかわからぬけれども。
 そして、例えば著作権の問題についてもそうです。著作権法を改正して、そういう目の不自由な、弱視者に対する教科書に、私の作品は教科書と同じように使ってよろしいよということで、著作権法を改正すればいい。文部科学省の答弁は、関係団体とも相談、研究を始めたところだが、それが難しければという、こういう言い方はないでしょう。
 私は、やはりこの免許状を、しっかりと資格を持つ先生を盲・聾・養護学校、特殊教育学校に配置をして、その人たちをしっかりと教育を受けさせるということの保障というのは文部科学省の仕事だと思うのですが、この拡大教科書についてはもうやりとりしなくてもいい。これはやはり愕然とした事例です。ぜひこれは努力をしていただきたいというふうに思うのですが、大臣から一遍、どうですか。
遠山国務大臣 拡大教科書の課題につきましては、これまで委員会でも、別の委員会でも取り上げられまして、私も最近になってこの問題の所在について認識したところでございます。
 文部科学省としましても、今検討を急ぎやっておりまして、私としてもできるだけ早くこの問題についてよい方向を見つけ出したいというふうに考えております。
山元委員 大臣、これは教科書の無償給与が始まって何十年たっている、戦後五十年たっている。このようにして置かれてきたということについては愕然とするという思いを大臣もしっかりと持っていただきたい。これはそう難しいことではない。何億円も要る話ではないのです。手続をきちっと大臣が決断していただければ、来年の四月からでも教科書についてはきちっとできるはずです。私は、そのことについてぜひ決断をしていただくように、そうすると、大きな前進だというふうにみんなが安心をする、喜ぶ、そういう教育のありようをぜひ大臣につくっていただきたいというふうに思います。
 それから、半分残してしまうのですが、特別免許状のことです。
 これは確認だけしておきたいのですが、特別免許状を、例えば、今までの原則がありました。教員は大学で養成する、あるいは開放制と言っていますけれども、どの大学でもそういうコースがあれば取れる、そういうものですけれども、しかし、こういうふうに特別免許状というのがどんどんと出されるようになってくると、この原則が崩れていくことになるわけです。教育についての基本的な資格、資質を持つように、きちっと大学で二年ないし四年間勉強してきて免許状ということがきちっとないと、やはりこれは混乱をしてくるだろうと。
 だから、そこの原理原則だけはきちっと守らなければいけないのですが、それは変わらないで、例外措置だというふうに考えていいかどうかです。大きく変わっていくのか、それとも原理原則は変わらないんだというふうに確認していいですか。
遠山国務大臣 端的に申し上げれば、原則は変わりません。
 ちょっと御説明させていただきますと、教員免許制度上、大学における教員養成が原則となっております趣旨は、教職の専門性を身につける上で、最高学府であります大学において、他の社会に出る人々と共通の教養の上に教員として必要な専門的な知識経験を修得させることが適当と考えられたことによっております。
 また、開放制免許制度は、教員組織を多様なものとして活性化することを目的として、教員養成を専門的に行う大学だけではなくて、一般大学においても免許状取得を可能にしたものでございまして、教職の専門性と幅広い人材の確保との調和のもとに制度化されているものであることは御存じのとおりでございます。
 他方、特別免許状制度につきましては、学校教育が多様化しているということに対応いたしまして、一般社会で専門的な知識、技術などを身につけた方を学校教育に登用いたしまして、実際に即した教育活動が期待できる、あるいは児童生徒のさまざまな要求にもこたえることができて有意義であること、また、広く一般社会から教育に熱意を持つすぐれた人材を教育界に迎えることによって教員組織の活性化を図るということでございます。そういうことを目的としてこうした人材に対して教職への道を開くという、一種の特例的な制度でございます。
 したがいまして、今回の改正は、現行免許制度におきます大学における教員養成あるいは開放制といった原則を変えるものではありませんで、大学における教員養成の充実をますます図っていくこともさらに重要になってまいっております。目的としては、学校教育の充実、教員の活性化ということで、いろいろな方法を駆使しながら、しかし原則を変えるものではございません。
山元委員 高い専門的な技術を持っている人たち、あるいは地域ですぐれた経験を持っている人たちに参加をしてもらうことは大事なことだと私も思います。けれども、そういう原則は曲げてはならぬと思いますし、そしてもう一つ、一方、今学校にそれぞれ専門教科を持っている、専門性のある授業をしている先生が現にいるわけです。その人たちの力量を高めるための手だてというのは、私は不十分だと思うのです。
 実際、学校に行ってごらんなさい。学校では本当に忙しい、自分の専門教科の勉強がきちっと進んで、だんだんと変わってくるんやと言って、生き生きとしている先生というのは少ない、できないのです。だからそういう、現に学校にいる先生の専門性を高めるといいますか、磨かすような手だてというのは、これは配慮をする必要がある、施策として持つ必要があるだろうというふうに思うのです。
 ですから、後から出てくる一般の十年研修とか五年研修というのも、私は一般的な教員研修として必要だというふうに思いますけれども、専門性の教育、専門性を磨く、高めるということを現職の教員に保障するような手だてが要るのだということについて、御認識をいただきたいということを申し上げたいと思います。
 あと三分ですから、失効の問題についてです。また機会があったらお尋ねをしたいと思いますが、一番心配なことだけを申し上げますと、公平性の問題です。
 懲戒免職になったら免許状を取り上げますよ、簡単に言えばこういうことになると思う。現に現場にいて、飲酒運転で懲戒免職になって、そして免許状を取り上げる。今現職にいなくて同じことをしたときには、この人は免許状を返す必要がない。教育委員会は捕捉しがたいでしょう。だから、現にある者と今休んでいる者との公平さはない。
 さらには、私立と公立。公立の学校ですと、公務員制度上の処分があって懲戒免職ということになって、そして免許状が失効するという免許制度上の処分が出てくる。けれども、私立学校だったら、公務員制度上の懲戒処分はないわけです。園長さんなり校長さんが、だめだと言って首にする。けれども、そこのところで免許状を取り上げるか取り上げないかは、それは違う。そこのところの、公務員と私立の学校の教員との公平さというのはどういうふうに保障するのか。
 もう一つ、一気に言いますと、よくあることなのです。例えば同じ事件を起こして、飲酒運転で人身事故を起こした。同じ程度なんだけれども、ここの教育委員会は処分をして、懲戒免職でやって、ここの教育委員会は、処分はするけれども、減給だ、停職三カ月だということで違いがあるわけです。実際、それは都道府県間にありますよ。そういう公平さというのをしっかりと目に見えるものにしなければ、不公平な制度になってしまう、恣意に使われる可能性も出てくる、こういうふうに思うのですが、その点についてはどうですか。
矢野政府参考人 失効及び取り上げの処分につきまして、三点にわたっての御質問がございました。
 まず、現職教員と非現職教員の別でございますけれども、これにつきましては、私ども、基本的にはその取り扱いを異にする必要があるというふうに考えております。
 現行制度上、非現職教員の免許状の取り上げ事由は、法令の規定に違反して、その情状が重いと認められるときとされているわけでございます。他方、現職の教員につきましては、免許状取り上げの処分を受けた場合に、教育職員にとどまることができなくなりますことから、免許状の取り上げ事由が、懲戒処分を受けて、その情状が重いと認められるというふうに限定されているわけでございます。現行制度におきましても、非現職教員と現職教員の取り扱いに違いが出ているわけでございます。
 そこで、私どもといたしましては、近年の、児童生徒に対するわいせつ行為等の非違行為により懲戒免職の処分を受ける教員がふえている、そういう状況にもかかわらず、授与権者の判断によって免許状が取り上げられない場合が多く見られる、また、これらの非違行為は、教員に対する信頼を失わせ、ひいては学校教育全体に対する信頼を損なうものであり、免許状に係る措置についても制裁的な観点から厳正に対処する必要がある、こういう考えに基づきまして、今回の改正では、教員に対する信頼を確保するため、現職教員については懲戒免職またはそれに相当する解雇という事実をもって、免許状の失効あるいは義務的取り上げ事由として規定するわけでございます。
 それに対しまして、非現職教員による非違行為につきましては、そのことが直ちに教員に対する信頼性を失わせるものというふうには限られないものでございまして、また、そのことにつきましては、個別具体の事案に応じ、免許状の取り上げ事由に該当するかどうかを判断する必要があるというふうに考えるものでございます。そういう意味で、非現職教員の免許状の取り上げ処分につきましては、従前どおり、都道府県教育委員会の裁量にゆだねることといたしたところでございます。
 これが、現職教員と非現職教員の取り扱いを異にする私どもの理由でございます。
 それから、私立学校教員との関係でございますが、これはまさに御指摘のとおりでございまして、私立学校の教員の場合は、その解雇の事由が使用者たる学校法人の就業規則等により千差万別となっているわけでございますから、解雇をもって一律に失効扱いとすると、これは当該者に、不当に不利益を課すおそれがあるわけでございます。
 そういう意味で、今回の改正では、私立学校の教員につきましては、国立または公立の学校の教員の場合における懲戒免職の事由に相当する事由、そういう理由によって解雇されたと都道府県教育委員会が認めたときに限って、その免許状を取り上げなければならないというふうにいたしたところでございます。
 最後に、任命権者による懲戒処分の扱いによって、結果として、この取り上げあるいは失効に差異が出てくるのではないかという御指摘でございますが、免職を含めまして、どの程度の懲戒処分とするかは、これは教員の任命権者である都道府県、指定都市教育委員会の裁量にゆだねられているわけでございまして、その権限と責任において判断されるべき事柄でございます。したがいまして、任命権者の裁量にゆだねられている懲戒処分について、国として統一的な基準を設定するというのは、事柄の性格上、適切ではないと考えるものでございます。
 しかし、もとより、任命権者の裁量が乱用される、あるいは逸脱するようなことがあってはならないものでございますから、そのような場合には、国としても必要に応じて指導をする必要があろうかと考えております。
山元委員 終わります。ありがとうございました。
河村委員長 次に、西博義君。
西委員 公明党の西博義でございます。
 今回の法律改正は、他校種免許状による専科担任制度を拡充すること、それから、隣接校種免許状の取得を促進させることにより、小中高間の連携を行いやすい環境を整えるとともに、特別免許状の有効期限が撤廃されることとなりまして、多様な人材が教育現場に立つ環境が一層整備される、こういうことで、私としては評価をしております。
 これに関して、教員養成、採用や学校のスタッフの多様化、さらに時間があれば免許更新制などについて、順次質問をさせていただきます。
 初めに、児童生徒が小学校から中学校、中学校から高校に入学したときに直面するというふうに指摘されております学習面での大きなギャップ、これを埋める作業が教員に課せられている、こういうふうに思います。その意味で、教員が小中高間を行き来することにより、それぞれお互いの立場を理解する機会を得られることは大変重要なことだ、こう認識しております。
 ところで、人事交流の形態は、例えば、高校の先生をある期間、中学校に派遣するということが考えられますが、大規模な中学校では十分な時間がとれるということも考えられるのではないか、こう思います。そんな意味で、高校の先生を一年間中学校に派遣するというようなことも考えとしてあるのかどうか。具体的に、どのような形態で派遣するというふうに考えているのかということをお伺いしたいと思います。
    〔委員長退席、鈴木(恒)委員長代理着席〕
遠山国務大臣 お尋ねの教員の人事交流の形態につきましては、教員の帰属の観点から見ますと二つあるかと思います。
 このケースとしては、県立高等学校の教員を市町村立の中学校に派遣する場合でございますが、一つの方法としては、高等学校の教員を中学校の教員に異動させる場合がございます。これは一たん退職をして、そして採用するという手続が必要でございます。
 それからもう一つ、高等学校の教員に中学校の教員を兼職させる場合があると思います。これは、今おっしゃったように、週にほんの短い時間というようなことであれば、後者の方の方法もとれるかと思います。
 高校の先生を中学に派遣いたします場合に、この二通りのどちらの任用形態によるかは、任命権者であります教育委員会の判断によることとなるわけでございまして、どちらかを援用しながら、特色ある教育の実現のために生かしていただければと思っております。
西委員 異なる学校種間で先生が派遣をされる、そして授業を担当する、その仕組みについて若干お伺いをしたいと思います。
 これは、最終的には都道府県教育委員会が計画をつくるとか、市町村も考えられると思うんですが、そういうふうにするのか、また、各学校ごとの希望を聞いてどこかが調整するのか、または個別交渉でやるのか、派遣される先生は、本人の希望によって決めるのか、それとも命令を出すのか、その辺のことを少しはっきりとさせていただきたいと思います。
岸田副大臣 異なる学校種間の教員の派遣につきましては、都道府県教育委員会が計画的に行う場合と、各学校が希望を聞いて個々に対応する場合と、二通り考えられると考えております。どちらをとるかということにつきましては、任命権者であります各教育委員会の判断だというふうに考えております。
 そして、派遣教員の決定につきまして、本人の希望によるのか、あるいは職務命令によるのかということでありますが、基本的に、同一の地方公共団体内に派遣する場合、例えば市町村立の中学校教員を同一市町村立の小学校に派遣する場合でありますが、こういった場合につきましては、本人の同意は不要だと考えております。そして、異なる地方公共団体に派遣する場合、例えば都道府県立の高等学校の教員を市町村立の小中学校に派遣する場合、この場合には、本人の同意に基づき行う必要があるというふうに考えております。
西委員 ところで、中高一貫教育制度が導入されて数年がたちましたが、まずその進捗状況を報告していただきたいと思います。
 また、こうした中高連携の実践を踏まえて、現在課題となっている点はどういうことがあるのか、この点についてもお伺いしたいと思います。
 現在の中高一貫教育制度は、中学校から高等学校へのいわば進学という側面に重点を置いて連携をしたわけですが、今後は、教科間の学習面に着目した連携というのが、そういう考え方を視野に入れた連携が必要になってくるのではないか、こう思います。また、今議題となっている内容も、そういう側面をそのまま引き継いでいるのではないかと思っております。
 異なる学校種間の免許制度が活用されるためには、中高一貫教育を議論した際に、連携型という一つの方式がありましたけれども、そのような枠組み、高等学校と中学校、例えばその間での枠組み、もう少し言うと、例えば学校間の協議会みたいなものがあってもいいのではないか。それは、進学ということではなくて、教科の学習面での連携、協議、こういうものを何か制度化してもいいのではないか、こう思いますが、見解を伺いたいと思います。
矢野政府参考人 中高一貫教育は、ゆとりある安定的な学校生活の中で個性や創造性を伸ばすため、特色ある教育を行うことをねらいといたしまして、平成十一年度より制度化され、平成十四年度には、これは直近のデータでございますけれども、七十三校が設置されるに至っているところでございます。
 この中高一貫教育校の課題といたしましては、連携型の場合で見てみますと、これまでの実施校からの報告によりますと、中学校と高等学校間の教職員の打ち合わせに多くの時間を要することなどといったような、そういうある種の問題点も挙げられているわけでございますが、他方、教職員間の交流により、相互に相手校の生徒の学習状況を知ることができ、また中学生が高校に入学したときのつまずきをなくすことができるなどの、おおむね良好な成果が報告されているところでございます。
 また、御指摘の異なる学校種間の免許制度の活用についてでございますけれども、各学校相互の協議や交流により、これは現行の制度の中でも実施可能でございまして、これまでも各自治体において、教員間や生徒間の交流など、さまざまな取り組みがなされているところでございますけれども、これはまさに御指摘のとおり、連携型のようなそういう枠組みができれば、より円滑、有効な活用ということが期待できるわけでございます。
 私どもといたしましては、引き続き、連携型を含む中高一貫教育校の設置や、あるいは各自治体における連携の取り組みを一層推進してまいりたいと考えるものでございます。
西委員 今報告がありましたように、連携型でも中高間の打ち合わせに相当時間がかかる。確かに、この問題は、お互いが理解し合うために、相当綿密な理解が必要な面があるんじゃないかと思います。こういう制度だけつくって、ぽんと地方に投げてそれが有効に働くかというと、やはりもう少しそういう仕組みをつくってあげた方が、現実、うまくいくのではないかという要望を申し上げておきたいと思います。
 次に参ります。
 中教審の大学分科会は、専門的な職業人を養成するための新たな大学院として、専門職大学院制度の創設を、中間報告、きのう出たんでしょうか、ちょっときょうの新聞に載っていたように思いますが、盛り込むというふうに報道されております。対象分野として、国家資格など職業資格と関連した専攻分野であること、それから二番目に、社会的に人材養成が必要とされている専攻分野であること、そういうふうになっておりますが、教育の特徴は、研究より実践的な教育を重視するということでございます。
 私は、今後、原則として、教員免許を取得する条件として、大学院レベルの教育課程を修めるということを目標にすべきではないか、こう思っているんですが、教員や管理職、さらには学校経営などの専門家を育成する専門職大学院をそういう意味では教育の分野でつくるべきではないか、こう考えておりますが、見解をお伺いしたいと思います。
矢野政府参考人 現職の教員が大学院修士レベルの研修を受けることによってその資質向上を図ることは、私ども、大変望ましいものと考えておりまして、これまで、大学院修学休業制度の創設を初めとして、その機会の拡充に努めているところでございます。
 ただ、教員免許取得の条件として大学院の卒業を要件とすることなどにつきましては、いろいろ問題点があろうかと思うわけでございまして、例えば、現在、多様な人材を教職に迎え入れる観点から、広く国公私立の大学、短大におきまして教員養成が行われているというようなこと、さらに、教員の資質、能力は、大学での養成だけではなくて採用、研修の各段階を通じて向上が図られるべきものであるといったようなこと等々のことなどから、これらに与える影響を含めて、教員免許の取得の条件として大学院卒という問題については、今後の検討すべき課題というふうに考えるわけでございます。
 そこで、専門職大学院についてでございますが、御指摘がございましたように、昨日、中央教育審議会から中間報告として、その創設の必要性が報告されたところでございます。そして、今委員の御指摘がございました教員や管理職、さらには学校経営などの専門家の育成について、専門職大学院の制度を導入すべきではないかという御提言でございますが、現段階におきましては、私どもといたしましては、私どもといいますのは、初等中等教育教員養成を担当する立場におきましては、中央教育審議会における今後の検討の状況を見守りながら、今後どのように対応すべきかという点も含めて、これは慎重に検討をしていかなければならないというふうに考えているところでございます。
西委員 ぜひとも前向きにとらえて、教員の資質向上のために一つのシステムをつくり上げていっていただきたい、これが私の要望でございます。
 次に行きたいと思います。
 今回、特別免許状の有効期限が撤廃されるということになりました。このことによって多様な人材が教育現場に立つ環境が一層整備されることになるということは評価をしております。
 これも教員採用段階での改善ということでございますけれども、例えばドイツでは試補制度、こういうことを参考にして、我が国でも、一定期間内に教員の身分を撤回して他の事務職へ転職できるという制度を検討してみてはどうかというふうに思います。教員に不向きであるということが、例えば一、二年の間に自分自身が自覚をした、こういう段階では自主的にキャリアチェンジを認める制度、これを導入してはどうかというふうに思います。
 教員の経験や専門職大学院で学ぶ教育行政の知識というのは、例えば社会教育においてもまた教育委員会等の行政に携わる面においても有意義にまた活用できるというふうにも思いますので、一つの考え方として提案を申し上げたいと思いますが、御意見をお伺いしたいと思います。
    〔鈴木(恒)委員長代理退席、委員長着席〕
矢野政府参考人 御提案の一定期間内に教員の身分を撤回して他の事務職に転職できる制度についてでございますけれども、これは、同一地方公共団体内でございますれば、現行制度上も公立学校の教員を教員以外の職に転職させることは、その職に必要な能力を有している限り可能であるわけでございます。
 実際、ほとんどの都道府県におきましては、公立学校の教員を教育委員会事務局あるいは教育委員会が所管しております施設等に転任をさせまして、教職経験を通じて培った知識や経験を活用しているところでございます。
 また、大学院において教育行政等につき学習した場合につきましては、それを教員以外の職務の遂行に生かすことも考えられるところでございます。
 さらに、これは御質問の御趣旨と必ずしも合っていないかもしれませんが、昨年、児童生徒の指導が不適切な市町村立の小中学校の教員については、都道府県の教員以外の職に転職させることを可能とするような法律改正を行っていただいたところでございますので、そういう意味で、御提案の趣旨は、そういうきちんとした一般的な制度としてはございませんけれども、人事運用の運用のあり方として実際にはできるようになっているというふうに考えているところでございます。
 そういう意味で、私ども、今後とも都道府県教育委員会に対しまして、今の御指摘の趣旨を生かすような形でこれらの諸制度を適切に運用するように指導をしてまいりたいと考えているところでございます。
西委員 ありがとうございました。余り理解していない面もあると思いますので、その辺はきちっとまた周知徹底をお願いしたいと思います。
 次に、国立教育政策研究所の木岡氏らのグループが、欧米諸国における初等・中等学校教員の職務実態と分業システムに関する国際比較研究を、長いタイトルですが、著しておりまして、欧米各国の教員の職務実態、それから分業システムについて詳細な調査研究をしておられます。多様な学習需要や教育上の問題を抱えた児童生徒の中から問題行動が多発し、その多様性に応じた指導を行える教職員集団の柔軟性それから専門性が今求められている、こういう観点から、分業システムについて研究を行っているものでございます。
 この研究によって、学校においても分業化もしくは専門化というもとで組織の近代化が図られて、多様な職種と職務が配置されている欧米のこのスタイルは、責任の明確化や職業的自律性の高さ、他の機関との連携など、日本の学校改善にとっても有効な示唆を今後の問題として与えているんではないかというふうに考えております。
 教員以外のスタッフ、例えば会計、生徒指導、部活動などのスタッフですが、その配置を積極的に行って、教員は教員としてのあるべき専門性をさらに高めていく、こういう学校の形態を今後考えていくべきだ、こう思いますが、いかがですか。
矢野政府参考人 現在も学校には教員以外に学校事務職員、学校栄養職員等の多様な職員が配置されておりまして、それぞれ専門性を生かして学校運営の重要な一部役割を担っているところでございます。また、各学校や地域の実情に応じまして、学校外の専門性を有する人材がスクールカウンセラーあるいは心の教室相談員、部活動の指導者等として活用されている例も多くあるわけでございます。
 我が省といたしましては、それぞれの学校が個性や特色ある教育活動を展開するためには、学校内外の多様な人材を積極的に活用していくことが重要であるというふうに考えておりまして、都道府県教育委員会に対しましては、今御指摘のような趣旨も含めて、その活用方策を検討するよう引き続き指導してまいりたいと考えるものでございます。
西委員 同じ木岡先生の、また同様に筑波大学の濱田先生、お二人の研究ですが、学校組織開発に関する実証的研究という研究がございまして、その中で、体罰、いじめ、セクハラ、それから近隣の騒音、それから著作権など、学校が直接間接的に法的な問題や対応を迫られる事態が増加しているということを予想して、学校の法的ガードの強化をやるべきだ、こう示唆をしております。
 法律的な的確なアドバイスがないために、いたずらに問題を隠ぺいしてしまうようなこととか誤った判断をするというようなことがあるわけですが、学校ごとに学校医というお医者さんがおられるように、学校弁護士、ここまで学校別にというのは難しいかもしれませんが、少なくとも各都道府県の教育委員会の中に、学校に対して、法律的なアドバイスをきちっと受けられるような体制をつくる必要があるんではないか。いわばリーガルアドバイザーという制度みたいなものですね。そういうことがもう差し迫った問題として必要な時期に来ているんではないかというふうに思いますが、お考えをお伺いしたいと思います。
岸田副大臣 学校において生じる法的な問題への対応について教育委員会等が適切なアドバイスを行う等支援を行うということ、大変重要なことだと認識しております。このため、現状、各教育委員会におきましても、学校において発生しやすいような法的トラブル、それにおいて必要な法的知識について職員に対して研修を行うというようなことも行っておりますし、また必要な場合には弁護士等の専門家に相談できるような体制をつくっておくということ、これも重要だと思っております。
 現状ですが、すべての都道府県に関して実態を把握しているわけではありませんが、幾つかの県や市におきまして、教育委員会において、学校における法的トラブルに際しまして、顧問弁護士等の専門的な助言を受けながらアドバイスを行っているということ、こうした実例があるということ、我々も把握をしております。
 こうした体制のもとに各学校をしっかりと支援していくということ、これは重要なことだと考えておりますので、こうした支援体制が進むということ、ぜひ促していきたいものだなと思っております。
西委員 常時おっていただく必要はありませんから、きちっと、法的な問題があったときにこの人に相談したらいいということを各学校なんかにあらかじめ周知徹底しておくことによって、いろいろなトラブルにスムーズに行っていけるんじゃないか。これだけそういう法律的な問題が多発する時代ですので、ぜひともそういうことをお考え願いたい、こう思っております。
 最後に、教員以外のスタッフとしては、最近スクールカウンセラーの活躍が大変注目されています。いじめの問題とか、いろいろな心の問題を解決していただくのに大変活躍していただいているんですが、私は、現在学校で欠けているということは、児童生徒の話を聞く時間、機会が少ないと。先ほどもお話がありました、実際には、先生方は多忙で、なかなかじっくり児童生徒の気持ちや意見、また悩みを聞いている時間がない、こういうことが実態だと思います。
 そんな意味で、児童生徒は、その状況に応じてアドバイスを受けたり、ガイダンスを受けたり、心のケア、メンタルケアを受ける、こういう体制がますます必要になってくるんではないかというふうに思います。ふだん児童生徒に必要なのは助言、相談ということであって、必ずしも今の専門的なスクールカウンセラーが行う医療的なメンタルケアというレベルの問題ではない。もちろん、そういうことが必要なこともあるんですが、その前段階として、助言をしてやったり相談相手になってやったりということも大変重要な側面ではないか、こう思っております。
 文部科学省では心の相談員を導入しておりますが、こうした助言や相談を担う者として学校心理士なども十分に活用して、また大学生なんかがピアヘルパーとして活躍しているという事例も各地で見かけます。そういう人たちを十分に活用して、すそ野の広いケア体制といいますか、助言指導体制をつくるべきではないか、こう思いますが、御意見を伺いたいと思います。
矢野政府参考人 今日、学校におきましては、教育相談活動の充実を図ることが大変重要であるわけでございます。このため、心の専門家であるスクールカウンセラーの配置、活用を進めますとともに、御指摘のような、地域の人材を活用し、生徒が悩みなどを気軽に話せる第三者的な存在としての心の教室相談員を配置しているところでございます。
 また、多様な経歴を有する社会人を全国の学校に補助教員として配置して、児童生徒からの相談等を含め、広く教育活動への活用を推進する学校いきいきプランを推進しているところでございまして、教育委員会におきましては、これも活用しながら、学校に相談員を配置したり、派遣する等の事業が行われているところでございます。
 そういう意味では、教諭や養護教諭の日常の相談活動とともに、スクールカウンセラーあるいは心の教室相談員の配置事業、さらには各地方公共団体のさまざまな相談事業等が相まって、御指摘のような人材も含め、多様な人材を生かしながら、児童生徒のさまざまな相談を受けとめる体制の充実を図っていくことが必要であり、今後ともそういう方向で努力をしてまいりたいと考えるものでございます。
西委員 ありがとうございました。
河村委員長 次回は、来る二十四日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時三分散会


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