衆議院

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第6号 平成15年3月19日(水曜日)

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平成十五年三月十九日(水曜日)
    午後零時三十分開議
 出席委員
   委員長 古屋 圭司君
   理事 奥山 茂彦君 理事 鈴木 恒夫君
   理事 馳   浩君 理事 森田 健作君
   理事 鎌田さゆり君 理事 山元  勉君
   理事 斉藤 鉄夫君 理事 佐藤 公治君
      青山  丘君    伊藤信太郎君
      小渕 優子君    大野 松茂君
      岡下 信子君    岸田 文雄君
      近藤 基彦君    佐藤 静雄君
      谷田 武彦君    中谷  元君
      林田  彪君    松野 博一君
      森岡 正宏君    柳澤 伯夫君
      大石 尚子君    鳩山由紀夫君
      肥田美代子君    平野 博文君
      藤村  修君    牧野 聖修君
      松原  仁君    山口  壯君
      江田 康幸君    東  順治君
      黄川田 徹君    石井 郁子君
      大森  猛君    児玉 健次君
      中西 績介君    山内 惠子君
      松浪健四郎君
    …………………………………
   文部科学大臣       遠山 敦子君
   文部科学副大臣      河村 建夫君
   文部科学大臣政務官    大野 松茂君
   政府参考人
   (文部科学省高等教育局長
   )            遠藤純一郎君
   政府参考人
   (厚生労働省大臣官房審議
   官)           鶴田 康則君
   文部科学委員会専門員   柴田 寛治君
    ―――――――――――――
委員の異動
三月十九日
 辞任         補欠選任
  池坊 保子君     江田 康幸君
  児玉 健次君     大森  猛君
同日
 辞任         補欠選任
  江田 康幸君     池坊 保子君
  大森  猛君     児玉 健次君
    ―――――――――――――
三月十八日
 小・中・高三十人学級実現、私学助成の抜本的改善、障害児教育の充実に関する請願(木島日出夫君紹介)(第八九三号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 国立学校設置法の一部を改正する法律案(内閣提出第四〇号)


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     ――――◇―――――
古屋委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、国立学校設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として文部科学省高等教育局長遠藤純一郎君及び厚生労働省大臣官房審議官鶴田康則君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
古屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
古屋委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。平野博文君。
平野委員 民主党の平野博文でございます。
 きょうは、四十五分の時間をちょうだいしておりますが、大臣並びに政府委員の方から私の思いの答えをいただけたら早く閉じたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。
 きょうは、国立学校設置法の一部を改正する法律案ということでございますので、この点について、まずお聞きをしたいと思います。
 今回の設置法の改正というのは、平成十三年の大学構造改革の方針に基づく再編統合、こういうことが一つと、医療短期大学の再編が一つの内容になっているわけであります。この三年制の医療短期大学の再編については、それぞれ総合大学へ組み入れる形で統合を行っているわけであります。その趣旨は、医療の高度化、専門化に対応し得る能力を備えた人材の養成を図る、こういう趣旨で今日までやってこられているわけであります。
 そこで、まずお伺いしたいのは、これらの医療短期大学が四年制大学に改組されることによって、具体的にどのようにカリキュラムが組み直されていくのか、あるいは四年制に改める主眼は一体どこにあるのかをお聞きしたいと思います。
遠藤政府参考人 最初に、四年制への改組の趣旨でございますが、先生御指摘のような趣旨でございまして、具体的には、社会的要請のもとに、専門的知識、技術とともに豊かな人間性や的確な判断力を有する資質の高い看護師等医療技術者の養成を図る、こういう観点で行うということでございます。
 カリキュラムにつきましては、四年制への転換に際しまして、各大学でそれぞれ工夫を凝らすわけでございますが、教養教育の重視あるいは専門教育の充実、そして多様で幅広い授業科目を履修できるカリキュラムの編成、大きく言えばそういうことでございます。
 例えば、今回お願いしております東北大学の保健学科看護学専攻、これの例で申しますと、卒業要件につきましては、教養教育の単位数が、これまで短大時代は二十二単位だった、これを四十一単位、十九単位ふやしましょうということ。それから、総科目数、開設している科目数を大幅に広げるわけですけれども、その選択科目の割合を六〇%にまでふやすといった、学生にとっての履修の幅が広がるということがございます。それから、例えば授業科目でいいますと、医療経済学、チーム医療実習、看護哲学と生命倫理、看護管理学といったような新しい科目を開設するといったようなこともございます。
 こういったように、いろいろ各大学で工夫をするということでございます。
平野委員 今局長が御説明されたことはそのとおりだと思うんですが、私は、特に、医療の高度化であるとか専門性というものが時代の変化とともに大きく変わってきていると思うんですね。従来型の発想での教育機関であれば到底そのニーズに対応できない、そういうところから、こうやって三年制を四年制に改組していっているんだというふうに理解をしているわけであります。
 そうしますと、これ以外にいろいろな、医療に従事する、国の認定のもとにやっておられる資格制度があるわけですが、それらのことも含めて、もっとやはり広範に、今の時代に合った、これからの求める人材に合わせたニーズを育てていくための教育機関の充実と改革という視点で、私は求めていかなければならないと思っているんですが、このお話が出てきたのは随分まだ新しいと思うんですね、改組していっておられるのは。
 ところが、ずっと昔からそういう改組の要望があるけれども、なかなかやれていないところがあるわけですね。そうしますと、だれか声を大きく物を言えば改組に動くのか。本当に今の時代に合ったことをしっかりと、それに対応した格好で改組されているのか。こういう関係でまだ残っておるところというのは、局長としては、どういう分野の資格をお持ちの方が残っておると思いますか。
遠藤政府参考人 今の看護師の養成、これは、資格については従来どおり、三年間の学習といいますか、そういうことで受験資格がある。
 ただ、これは、それはそれとして、やはりこれからのことを考えますと、四年間かけてそういうカリキュラムを組んで養成してはどうか、こういう趣旨で、看護師あるいは放射線技師等の医療技術者等々のそういういわばいろいろな形、専門学校もあれば短大もあれば四年制もあるという中で、四年制の方をふやしていこうじゃないか、そして、そういう資質のある看護師なり医療技術者を養成していこうじゃないかという流れで来ているわけでございます。
 今御指摘のように、その話で見ますと、獣医の養成というのは、これはもう大分前の話でございますけれども、資格と結びついて四年制が六年制に、そういうことがございます。
 今御議論されているのは、薬剤師の養成、今四年間でございますから、四年間の薬学部を出た人に受験資格をと。それを、今の薬剤師に求められるいろいろな要請に、本当に四年間でいいのか、こういう御議論がかねてからあるということは承知しております。
平野委員 今、局長、たまたま薬剤師ということを言われましたけれども、私は薬剤師のことについては後段御質問させていただきますが、今の話でありましたら、例えば看護師の問題であれば、三年で資格要件は与えます、しかし四年の修学をしてください、これは少し違うんじゃないでしょうか。私は、やはり、医療現場に従事しておられる看護師は、例えば三年ではこういう時代の変化にきちっと対応でき得る看護師として難しかろうと。したがって、もう少し修学年数を延ばして、そこで初めて、時代の変化に対応した看護師を資格要件とするということの方が正しいことになるんじゃないでしょうか。
 でないと、例えば看護師になりたいと思っている人が三年で資格が取れるとなると、だれも四年制のそういうところへ行かなくなってくると思いますし、この辺は少し、資格と修学をしていくプロセスとの整合性はやはりとっていかなければならないんじゃないでしょうか。その点はどうでしょうか。
遠藤政府参考人 看護師資格の問題につきましては、これも大変難しいいろいろな議論があるということを承知しておりまして、厚生労働省の方でかねてから、その点について、どうしたらいいのかということで大分考えていらっしゃるということも承知しております。
 先生御指摘のように、三年で取れるから四年へ行く人がいないんじゃないかというお話なんですけれども、それは逆でございまして、やはり、きちんと四年やって看護師の試験を受けたいという方が多いというふうに私どもは認識しております。
平野委員 であれば、受験者の方が考え方に整合性をとっているんですよ。行政の方がおくれているんですよ。
 したがって、私は、厚生労働省と教育をつかさどる文科とがしっかりと、そういう要件的な部分、修学する部分、そういう意味では、資格のあり方と修学で学ぶ、人を育てていくあり方というのは、ある意味ではきちっと整合性を持ってやっていただきたいと思います。そういう意味で、特にこの医療の領域というのは複雑怪奇になっていますし、より高度な、専門的な方々を求められているのが今の時代であります。そういうことですから、ぜひ、文科省と厚労省を含めて、連携をしっかり持ってもらってお取り組みをいただきたいと思いますし、私は、この問題について、この法案については賛成の立場で表明をしておきたいと思っております。
 そこで、これにも絡んでくるわけでありますが、医療事故と薬剤監査、こういう視点でお聞きしたいんですが、医療の高度化と求められる人材の変化に伴う教育課程の見直しの問題として、先ほど局長申されましたけれども、薬学教育の問題が一つ、これはもう古い話であります。私が聞きおきますに、もう三十年近くそのことを求め続けてきている。しかし、三十年間求められて、ずっと塩漬けにされてきている、あるいは議論が深まってこない。これは何に起因をして今日まで深まってこなかったんでしょうか。これはお答えできますか。
遠藤政府参考人 十分分析したわけではございませんが、私の受ける印象としましては、医学部ですと大体皆さんお医者さんになる。ただ、薬学部の場合は、当然主流は薬剤師になる方の養成ということなんですけれども、薬学部で養成しているのが、薬剤師さんだけではなくて、いろいろな方面の研究者、技術者等々も養成している。現実の問題としても、いろいろなところにその道を求めているという現実があるものですから、薬剤師養成ということに特化した、そういうあり方についていろいろな議論があったということではないか、こう思っております。
平野委員 それでは、先ほども申し上げましたけれども、今の医療法人の中でも特に求められる役割が、従来の、例えば二十年前の薬剤師さんの役割と今求められている薬剤師さんの役割というのは大きく変わってきていると思うんですね。
 そういう視点で、特定機能病院だけでこの二年間で約一万五千件という医療事故が発生をしているんですね。その多くは、薬剤に関する事故が大半でございます。国立大学でも先月、先ほど申し上げましたように、医療事故が起こっている。事故が後を絶たないわけであります。この一年間で国立大学の附属病院等でどれだけの薬剤に関する事故があったか、あるいは薬剤師の適切な関与がされた上での事故なのか、この点、わかれば御説明をいただきたいと思います。
遠藤政府参考人 十四年の四月以降一年間で、私どもが承知をしております薬剤に関する医療事故は四件ございます。一件は、患者の検査に使う造影剤を誤って別の患者に投与したというのもございますし、それから、薬剤の過量投与というのが二件ございます。それからこれも、過剰調剤ですか、過剰調剤の件が、患者に与えた後に過量の調剤だということが判明したという件が一件、そういうような形になっております。
平野委員 その中で、例えば薬剤師さんが薬剤の適正な使用を監視する機能というのを、それぞれの機能病院に持たせているのでしょうか。
遠藤政府参考人 私ども、事故の件でいろいろ聞いた結果、やはり、例えば処方オーダリングシステムがきちんと整備しておれば避けられたんじゃないかというような事故もあったというふうに聞いております。
平野委員 私も、ある病院のところ、あるいは関係者からいろいろなことのヒアリングをしますと、ドクターあるいは看護師さんは非常に忙しい。その合間にそういう薬剤のことまで、今までだったら看護師さんが管理をしてやっておったという実態を病院の意見として聞いてきました。
 そこで、では、薬剤師さんの役割は一体どういう役割を求められているんですかと聞きますと、やはり、薬剤師さんがしっかりおられて薬剤の監視をしてもらえば、専門家ですから、そういう意味では間違うことはないと思いますと。さらには、今求められているのは、非常に複雑な医療体系で、より専門に特化をしているというところですから、私、このことを現場で聞きますと、薬剤師さんの果たす役割というのは、医療行為の中にまで役割として担っているんだなということを、事実、私は実感したのであります。
 そうすると、薬剤の学業を修学していく中に、臨床医療、さらには医療行為まで踏み込んだ実体験を一つのベースにした教育カリキュラムが、今の仕組みでいったら、今まではありません。それでは今の時代の現場にマッチした、ヒットした薬剤師さんが生まれてくるとは私、実は思わないんですね。
 そこで、私が言いたいことは、特にどのような薬剤師を養成していくのか、まさしくこれは、国民の衛生行政をつかさどる、預かる国の責務なんだろう、このように思えてなりません。したがって、国が主体的に、あるべき薬剤師の養成フォームを、カリキュラムをしっかりとつくっていくことが大事であろうと思うんですが、この点についてはいかがでしょうか。
遠山国務大臣 お話しのように、近年、医療技術の高度化、あるいは医薬分業の進展のようなことがございまして、薬剤師の役割というのは大変重要になってまいっていると思います。
 こうした中で、薬剤師に求められる資質としましては、科学技術の進歩を踏まえた確かな技術を有すること、チーム医療の一員として医療現場で積極的な関与をすること、そして、患者の視点に立ったきめ細かな服薬指導を行うとともに、医療事故防止のためのリスクマネジメントを行うなどの大変高度の知識、技術が求められていると思います。
 こうした薬剤師を養成いたしますために、大学における薬学教育の充実は大変大事でございまして、我が省としましては、大学における薬学教育の充実のため、御指摘の実習の充実というようなことも含めて、システムの整備について責任を負っていると思いますし、そういうことについて、現在大変重要な課題として取り組んでおります。
平野委員 今、大臣も、実習は非常に大事であるということで取り組んでおられるということですが、しかし、これも文科省はやはり遅いんですね。
 ずっと調べていきますと、調査研究協力者会議という会議があるんですが、そのとき既に一カ月程度の実習を目標設定として、平成八年ごろにしているんですよね。その後二、三年で過半数の大学がこの目標に対して実施をしてきたというふうに聞いておりますけれども、今現在どの程度まで各大学が決められた目標に対してやっておられるかということ、私は一、二カ月で十分だとは思っていませんけれども、当初決めたところは、各大学、どの程度までやっておられますか。
遠藤政府参考人 実習期間の現状でございますが、薬科大学、四十六ございます。そのうち、十日間から十九日間という大学が十大学、二十日間から二十九日間とする大学が二十四大学、三十日間以上という大学が一大学、それから、必修ではなくて選択という扱いをしている大学が十一大学ございます。
平野委員 平成八年の時点でも、モデルカリキュラムとしては半年以上の病院実務実習が提示はされているんですよ。しかし、なかなかそれが進展をしない、これはどういう理由なんですか。
遠藤政府参考人 医学部ですと必ず附属病院があって、そこで長期の実習をやるという体制が整っておるわけでございます。
 薬科大学、薬学部の場合には、同じ大学の中に医学部があるという場合もありますけれども、そうじゃない場合もある。したがって、長期の、長期というかある程度長い実習を確保しようとしますと、いろいろなところにお願いをしている。と同時に、指導者を、指導をきっちりしなくちゃならないということもございまして、私どもの方では、そういう申し合わせ、提言があり、いわばそれでやろうと大学がやったことですから、ぜひそうしてもらいたいと思っていますけれども、実情としてはそういうことで、まだそこまで至っていないのではないか、こう理解しております。
平野委員 やはり社会的ニーズは高いんですよ。しかし、渋っているのは、もともと文科省が薬学教育について、もっと時代の変化に対応した薬剤師を育成していく、あるいは教育をしていくための修学時間を多くとる必要はないという消極論から入ってきたことじゃないんですか。病院がたまたま併設していないから導入できなかったんですか。その辺はどうなんですか。
遠藤政府参考人 薬学部の教育期間あるいは薬剤師養成の期間、どのぐらいがいいのかというのは本当にいろいろな意見がこれまであったわけでございまして、文部省がもう要らないとかいいとかというのじゃなくて、そういういろいろな意見がある中でこれをどうしていったらいいのかということで、みんなが、まだ全然、話を、これで終わりということじゃなくて、ずっと議論が続いている、こういうことだと思っております。
平野委員 早く言えば、先送ってきたんでしょう。あるいは医師会の反対があって、どうしてもやはりドクターの方が優位だという見方からなかなか踏み切りができなかったのか。この辺は、時代が大きく変わっていっていますから、今、もうそういうことを言っている時代ではない。もっとドクターの診療の片腕となって患者さんを治していく、こういう関係をつくっていくという視点から見たら、私は、薬学教育の修学年数というのは、実習も含めて考えますと、さらに充実したカリキュラムを投入するということでいきますと、四年ではとても難しい、そういう意味では、今ある現行のドクターの養成であります六年、これはやはり最低限必要ではないかというふうに思っています。
 その根拠を述べさせていただきます。薬剤師の養成の課程における国際比較なんです。
 大体、資格取得の観点からいえば、今現在実習は必須ではない、先ほど申されたように選択でもある。こういう中にあって、薬剤師の養成カリキュラム及び資格の取得をする上において実務実習が必須となっていない先進国は、今現在あるのでしょうか。
遠藤政府参考人 すべての国をつぶさに当たったわけではありませんが、主なところで言いますと、例えばイギリス、ドイツにつきましては、四年間学部教育をやって、その後卒後一年間実習をする、こういう仕組みになっていると承知しております。
 アメリカにおきましては、これはまた養成制度が違いまして、ドクターと一緒で、いろいろな学部を出た後に四年間か三年間の薬学の専門教育を行う。その中で、大学によっていろいろなのかもしれませんけれども、大体千五百時間以上、そういう実習の期間を必要としている、こういうふうに理解しております。
平野委員 私が調べたところでは、OECDに加盟している国で実習のない国は日本だけですよ。ほかは大なり小なり全部実習を入れている。修学期間も、四年で終えている諸外国なんかどこもない。これが国際比較においての数字的、あるいは現状であります。
 したがって、諸外国から日本の薬学に留学してくる学生は極めて少ないんですよ。ヨーロッパやフランスなんかの薬剤師さんに対する社会的評価と、日本の薬学を出てもそういう評価が得られないんですよ。フランスなんか、すごいんですよ、ドクターよりすごいぐらいの位置づけをしているんですよ。これが今国際社会の中では当たり前になっている中にあって、一番端的な例は、留学生が日本の薬学部に留学してこない。それほど国際的な評価の低さを示しているのではないでしょうか。
 そういう意味で、改めて、国際社会の中でも日本の薬学教育というのはやはり第一線級に戻していくべきだ。修学年数だけ高めたら戻るとは一概には言えませんが、少なくとも実習期間、あるいは、これだけの時代変化の中で、高度な医療技術の環境の中での薬剤師の役割、監視、こういう、人命にかかわるところが非常に大きいわけですから、やはり質の向上を含めた薬学教育の充実というのは国際社会から見ても日本はおくれているという実態にあると思いますが、その点は、河村副大臣、どうですか。
河村副大臣 私も、今平野委員御指摘の点については、日本の薬学をもっと高度化する必要があるということを痛感いたしました。いたしましたというのは、関係者等々の御意見等も伺いながら思ったわけでございます。
 例えば、卑近な例として、外国で活躍しているスポーツ選手、実は、これはもうはっきり申し上げてあれですが、参議院の橋本聖子先生あたりは、お話を聞いておりますと、あっちでちょっとしたけがや何かをする、その場合に、ドクターのそばに必ず薬剤師がいるというのですね。
 そういう話がありまして、まさにこれが世界の情勢で、今委員御指摘のような状況になっているということを痛感いたしまして、今回のこの問題については、文部科学省としても、国際化時代、まさにこの高度化の時代におくれないように薬学教育の高度化を図っていくということは重要な課題だと受けとめて、今検討に入っているわけであります。
平野委員 きょうは厚労省にも来ていただいておりますが、厚労省の方、資格を与えていく立場から見たら、大体どれぐらい修学をして、その中に実習をどれぐらい入れてやったら好ましいか。厚生労働の立場から見たときにはどう思われますか。
鶴田政府参考人 現在の薬学教育におきましては、どちらかというと物質的な観点からの基礎的な薬学が中心となっております。臨床に必要とされる薬物療法等の医療薬学に関しては不十分である、そういう認識を持っておりますし、また、医療人としての倫理観、使命感を習得するための薬局、病院等における実務実習が十分ではない、そういう問題点があると考えております。
 厚生労働省といたしましては、薬剤師としての基礎的な知識、技能、態度を習得するためには、医療薬学分野の充実、長期実務実習の履修などが不可欠である、現在の修業年限では不十分であると考えております。また、現在の薬科大学におきましては、医療薬学分野での教育体制が必ずしも十分でないこと、また学生にとってもカリキュラムが過密になっておるということの問題点があると考えております。
平野委員 そこで、過密になっている実態はよくわかっているんですが、では、修学年数は何年ぐらいが好ましいか、それを答えてほしいんです。それだけでいいんです。
鶴田政府参考人 薬学教育六年制のあるべき姿につきましては、薬剤師問題検討会を厚生省が持っておりまして、昨年の六月から開いております。
 この検討会におきましては、六年一貫の方向で意見が集約されつつありますし、厚生労働省としても、これらの意見を尊重していきたい。それから、実務実習につきましても、少なくとも六カ月以上の実習期間が必要である、薬剤師の国家試験の資格要件としても必要である、そういうふうに考えております。
平野委員 今、厚生労働省の審議官の方からありましたが、文科省は、それに対してはどういうふうに思われますか。
河村副大臣 今、厚生労働省の方からもお話がございましたが、薬学教育を高度化して六年制の方向というのは、これはもう、一つの方向が出されておるというふうに理解をいたしております。
 特に、今後進めていく上で一番の問題は、もちろん、薬剤師の道、創薬の道、この議論もありますけれども、あとは受け入れ、実習の問題ですね。この目標をどの辺に立てるか、六カ月が必要なのか、三カ月が必要なのか、一年なのか、これはもうちょっと詰めていただいて、病院、薬局の受け入れ体制、それから大学の指導体制等も課題でございまして、薬剤師会の方からは六カ月でも大丈夫だというような意見もいただいておりますが、私はもうちょっと詰める必要があろうと思います。
 いずれにしても、今日の時代に合った形での薬学教育のあり方を求めていく中で、方向性が決まっていくのではないか、このように思います。
平野委員 厚生労働省とはちょっと違って、副大臣、いつになく歯切れが悪いですけれども、私は、薬学の、薬剤師学会さんとかいろいろな関係者と話をしますと、病院実習がすべてではありません、地方へ行けば地方の薬局、薬店での調剤の実習、要は原体験をしっかり踏まえていくことが大事なんだと思うんですね。それは、文科省なり厚生労働省が連携を持ってしっかりやっていただいたら、受け皿としては日本国内に十分、直接の受け皿になるかどうかは別にして、実習という意味での受け皿機能は十分にあると私は思っております。
 したがって、今、副大臣、方向としてはそういう方向だということでありますが、早くやらなければ、ますますこれはおくれていくんですね。薬剤師さんというのは、やはり特に今、医薬分業、ある人は分業と言わずに分立とか言っておられる先生もおられますけれども、医薬分業に入っていく。そういう中にあれば、ますます地域社会の中においても、薬剤師さんも、ただ単に薬を調剤するという役割から、薬の監視をしていくというある意味の医療の立場に、医者にかわってでもやっていこう、そういうリスクマネジメントをしていく役割になってくると思うんですね。
 そんな意味で、私はこれを早くやっていただきたいと常に思っているところでございますが、見通しとしては、いつごろ、この考え方をもって具体的に法律としてやろうと決断をしていただけますでしょうか。
河村副大臣 協力者会議で取りまとめをいただくわけでございます。最終的なまとめが秋ごろという話になっておりますが、夏には基本的な中間報告をいただくということでございますから、それを見ながら、このままでいけば、これは最短をとっての話でありますけれども、この関係法案、最終的には法律にしていくわけでございますので、そのめどとして、私は、来年の通常国会には法案が出せる方向で詰めていかなきゃいかぬ、このように思っておるわけであります。
平野委員 来年と言わず、この国会でも結構ですよ。お出しをいただいたら、大いに議論して、前向きにとらまえていきたいと思っておりますし、それだけ社会のニーズが高いテーマだと、私、実は思っています。
 それと、もう少しつけ加えますと、患者の視点から見た薬剤師さんに対する評価、やはりある意味では、ドクターからもらった方が安心するわ、こういう人もいるわけですよ。したがって、まだまだ薬剤師さんの社会における認知度が、かなり高まってきていることは事実でありますが、そういう意味では、質の高い薬剤師さんのニーズがこの地域社会にはあると思うんです。それさえすれば、もっと医薬分業が加速度的に進んでいくと私は思います。
 もう一つは、医師、ドクターとの対等性ということであります。そういう意味で、まだまだ薬剤師は医師と対等関係にあるとは、私、思えません。やはりドクターが優位で、ドクターの言うことを聞いて云々ということでありますが、違う観点から見たら、処方をチェックする、こういう意味では、薬剤に関しては対等以上の役割を担ってもらうようなことであります。
 したがって、私は、すばらしい、質の高い薬剤師がいるということは、国民はそのメリットを享受するわけでありますから、薬剤師の育成にかける社会コストというのは、国なり教育機関がしっかりとそれを受けとめていかなければならないと思うんですね。
 まだ時間は七分ありますが、委員長から言われていますから終えたいと思いますけれども、ぜひとも大臣、この問題について、今副大臣は来年の通常国会に出したいということですが、私としては、国際比較云々、一貫した教育ということで、六年制の一貫した教育体系のカリキュラムのもとに、実習も十分入れた薬学、薬剤師の教育養成課程をつくっていただくことを、最後に、重い決意をもって御答弁いただけませんでしょうか。
遠山国務大臣 本当にこの問題は長い間かかっておりまして、私も、高等教育局長をしているときに、かなり急ぎたいと思ったのでございますが、諸般の事情がございまして、今日まで至っておりますけれども、今、何か、その時は来たれりという感じがいたします。
 十分に問題点も洗った上で、一番いい形で、いろいろな知恵を集約して、できるだけ早くこの問題に対応してまいりたいと思います。
平野委員 もう終わりますが、できるだけ早くと言わずに、大臣がおる間に詰めていただきますことを最後に切に願いまして、早いですが、終わります。
古屋委員長 議事進行に御協力ありがとうございました。
 佐藤公治君。
佐藤(公)委員 自由党、佐藤公治でございます。
 本日は、国立学校設置法の一部を改正する法律案ということでございますけれども、まず最初に、きのう、アメリカ大統領のイラク攻撃最後通告という大統領演説がございました。遠山大臣は、平成八年のときですか、トルコ大使をやられて、まさに、世界情勢は私たちよりも詳しかったり、あちらの地域に関してはまた思いもいろいろとあるかと思います。
 総理のやられてきたこと、言われてきたこと、小泉内閣がやられてきたこと、私たちも、本当に場当たり的であり、まさにその場しのぎ、全くビジョンも方向性も明確にしないまま、矛盾だらけの中で、きのう支持ということを表明されたというふうに私は思っております。私たちの立場、私たちの考えは、全く納得できないような状況であり、また、私たちは、やはり国連中心主義という考え方から、時間がない中でも一層の努力をしていくべきだというふうにも主張してまいっております。
 きのう、支持ということを小泉総理がおっしゃられましたけれども、これに関して、大臣としては、総理のおっしゃられていること、また、私たち、総理からきちっと説明も受けておりませんが、御納得されておるんでしょうか。
遠山国務大臣 全世界のだれもが、平和を願うという気持ちは共通だと思いますけれども、今回の一連の事柄といいますのは、十年以上にわたってのイラクの振る舞いにかかってきたと思います。
 きのう、ブッシュさんの演説の後で総理がおっしゃいましたその方針というのは、これは、私、国としてのいろいろな国益も考えた上でのしっかりした立場を主張されたと思っております。その意味で、総理の示された方針に沿って、今後十分に推移を見守りながら、私どもとしては、我が省で対応すべきことについてはしっかりと対応していく、そういうつもりでおります。
佐藤(公)委員 ということは、遠山大臣は小泉総理を支持ということでよろしいんでしょうか。
遠山国務大臣 当然ながら、内閣の一員でございます。総理の出された方針というものに、これはしっかりと対応していくというスタンスでございます。
佐藤(公)委員 これに関しては、本来はここで議論するべきことじゃございませんので、そこの部分はのけて、では、もしも支持ということであるのであれば、今後、日本国内においていろいろな最悪な状態、危機管理体制というものが想定されると思うんですけれども、小泉総理が支持を打ち出され、それを遠山大臣も支持されるということであれば、今後、日本国内において危機管理体制、どんなことが想定されると思われ、そしてここ一日の間にどんなことを考えられ、または指示されたのか、所管の文部科学関係でどういうことがあり得るのか、簡単に、御説明できればしていただければありがたいと思います。
遠山国務大臣 まだブッシュさんが猶予期間として定められた四十八時間がたっておりません。そういう段階で、きのう国の、政府としての安全保障会議が開かれました。それにのっかって、それぞれの関係大臣がみずからやるべきことをしっかりやってくれということでございまして、国内のいろいろな事態が起き得ることに対する防護、防御のいろいろな使命を帯びたところがそれぞれのやるべきことをやっていくということでございます。
 我が省といたしましては、先般もう既に佐藤委員の御質問にお答えいたしましたようなことを考えておりまして、この問題がさらに明確になってきた場合には、本部を立てる等、常に万全の体制を今考えているところでございます。そのことについて準備をするようにということで、昨夜、我が省の担当者とももちろん意見を交わしたところでございます。
佐藤(公)委員 考えているということなのでございますけれども、果たして今の御説明で、国民の生命と財産を本当にいざというときに守れるのかなという気はいたします。
 やるべきことをやってくれというふうに総理の方から言われたということですけれども、では、大臣、やるべきことというのは現状、何だと思われているんですか。
遠山国務大臣 それは、それぞれの専門とする、役割を持つ機関があるわけでございまして、国防の関係あるいはテロに対応するいろいろな部門、それから入国管理を初めとするさまざまな部署において、それぞれやるべきことをやる。
 我が省におきましては、先般もう既にお話ししておりますけれども、いざというときのために、いかに子供たちの生命を守り、しかも原子力施設といいますか、原子力の研究開発も行っておりますそういう機関についてどうやっていくかというようなことを考えているわけでございまして、それに対応して、いざという場合は必要な体制をとる。
 あした、どういう展開になっていくかわかるわけでございますが、そういう場合には、再び国としての安全保障会議も開かれ、閣議も開かれるという中で、それぞれ分担関係を持ちながら、みずからやるべきことについてやっていく、そういう関係に立つと思います。
佐藤(公)委員 今の説明では、ちょっとちゃんとした説明になっているとは僕は思えませんし、今のお話を聞いて、僕は本当に、文科省の管轄である原子力関係とか子供たちに対して、やはり非常に心配をしているところは強くあるんです。
 副大臣、いかがですか。今の答弁で、同じような御答弁をされるんでしょうか。
河村副大臣 前回の委員会の際にも御指摘があったことでございますが、どういうことが想像されるか、何か日本が攻撃を受けるようなケースがあるのかどうか。現時点で考えられるのは、テロが発生するのではないかということであって、私は、これは各省庁一斉に、この問題についてはそれぞれ関係省庁が対応しているわけでございまして、これは政府と一体になってやらなきゃいけない課題だろうというふうに思っております。
 もちろん、文部科学省としては、万一そういうケースがあった場合の学校生徒の避難の問題、これは日ごろからやはりやっておかなきゃいかぬことでございます。それは、次官を中心とした本部体制をつくってやるということは組織としてあるわけでございまして、それを動かしていく。原子力施設については、これはまた、それに対する必要な、現時点では注意喚起にとどまると思うのでありますが、万一の場合の必要な措置というのは、それのマニュアルがあるわけであります。それから、負傷者の場合には、文部科学省の場合には国立大学の附属病院の協力体制の問題等々があるわけでございます。
 今の時点ではそういうことで、我々としても万一の場合には即、もちろん閣議等もあるでありましょうが、それに応じて、我が省の省議をもってきちっとした本部体制をしくということが今の時点で決まっておる段階でございまして、この体制をきちっと徹底するということになっていくのではないかというふうに思います。
佐藤(公)委員 では、この辺の話に関してはもうこれぐらいにさせていただきますけれども、これは大変な問題だと思います。そして、私たちの主張は、もう断固、支持、政府の対応に関しては納得できない、これは反対姿勢ということで私たちもきちっと主張してまいりたいと思います。
 では、国立学校設置法の方のお話に移らせていただきたいと思います。
 いろいろと御説明、またいろいろなものを読ませていただく中で、今回のこの国立学校設置法、統合ということでの話の中で、パワーアップという言葉がいろいろと出てきます、大学のパワーアップ、大学のパワーアップということで。ただ、このパワーアップというのは非常に抽象的な言葉なんですけれども、これを進めていったらなぜパワーアップができるのか、その根拠、また、それにおける文部科学省としての後ろ盾、担保という言い方は、またこれは義務教育に関しての負担金と同じような言葉も使うことになってしまうのかもしれませんけれども、その根拠と、やはり担保というものがどういうものがあり得るのか、教えていただけたらありがたいと思います。
遠山国務大臣 今回の大学改革、一連の施策の中で目標といたしておりますものが、大学の活性化、それによる日本の知の拠点としての大学の教育研究あるいは社会貢献の活動の活発化ということでございます。
 そういうパワーアップにつきまして、それぞれの大学でその重点の置き方もさまざまだと思いますけれども、私が考えておりますことは、一つには、教育という角度から申しますと、教養教育の豊富化ということでございまして、幅広い分野の科目開設などによるものでございますし、また専門教育の充実という角度からは、例えば実験環境の整備などをきちっと行っていく。それから、研究の学際化と申しましょうか、現代の科学技術に対応した研究の充実ということでございますし、あるいは再編統合を通じて全学的な大学のあり方について企画力を増していく、さらには産学連携機能を充実するなどのことが考えられるわけでございます。
 では、今回の統合ではどういうふうにそれを支援するのか、担保するのかということでございますが、これもそれぞれの大学の重点の置き方によりましてこちらの支援の施策も違ってまいるわけでございますが、今回お願いしておりますいろいろな大学の中で、例えばでお話しいたしますと、教養科目などの増設のために教員の体制を充実するところ、あるいはカリキュラムの改善のために大学教育開発センターを置きたいというようなところには、きちんと予算措置もしようとしているところでございます。
 そのような、それぞれの大学の重点に従って支援をしていくというのが私どもの考えでございまして、そうしたことを通じて、大学の教育研究及び社会貢献等の機能のパワーアップといいますか、そういうものを図っていこうというふうなねらいでございます。
佐藤(公)委員 予算措置というのはとても大事なところだと思います。この辺はよく考えていかなくてはいけないかと思います。
 こういう合併の中で、単科医科大学の学校が幾つもあるわけでございます。これは、さかのぼれば、私が知り得ている話では、まさに、あれは昭和四十七年の田中内閣時代の、無医大県なし、なくしていこうということで進められた政策の中で出てきた構想だと思うんですけれども、実際、当初の目的と、現在こうやってまた合併をしていくに際して、当初の目的がどういう目的だったのであろうか、また、それがどう対応して、達成されたから今回に行き当たったんだろう、当然これは考えられていると思いますけれども、当初の目的及びその現状の達成度ということをどういうふうに文部科学省としては考え、今回の合併に進めているのか、教えていただけたらありがたいと思います。
河村副大臣 委員御指摘のとおり、昭和四十年代に、医師の養成ということで、人口十万人当たりに医師数百五十人という目標が、いわゆる医科大学、医学部も含めて、設置調査会から示されておりまして、またその中で、経済社会基本計画においても、とにかく全国の県で医学部あるいは医科大学のない県はなくそうということが閣議決定までされたわけでございます。
 それを受けまして整備に入ったわけでございますが、昭和四十八年から五十四年度にかけて医科大学及び医学部の整備を推進して、五十四年度に無医大県解消計画が達成されたということでございます。そこで、ちょうど十万人当たり百五十人という医師数の目標も達成されたというところでございます。
 単科の医科大学を設置したのは、現在の既存の大学では困難な、新しい立場から教育研究ができるだろう、あるいは管理運営組織の編成について検討可能であるということで生まれていったわけでございます。その結果、医学の教育研究の進展に対応するための講座の編成とかその弾力化、あるいは基礎と臨床の一体化とか、そういうことも行われましたし、また学外の有識者の意見を大学運営に反映させる、あるいは六年の一貫教育を実施する、こういうことで、当時は単科大学の方が効果を上げやすいということで来たわけでございます。
 その後、今のいわゆる医科の高度化とかいろいろなことを考えてみたときに、特に総合大学との関連の方が、例えば医学、工学の連携とか、いろいろな新しいテーマが出てまいります。特に学際領域の研究、さらに教育研究基盤を強化するというような問題、それから教養教育をもっと充実するためには、合併して総合大学の方がいいだろうという流れの中で、今日の単科大学を一つの形で総合大学にしていくという方向が生まれてきたものであります。
佐藤(公)委員 だとするのであれば、なぜもっと早くやらなかったのかなと思うんですけれども、いかがですか。
河村副大臣 委員おっしゃるとおりで、年次計画、一遍に全部というわけにいかないので、何カ年計画を立てて、今日、今回の北海道大学等々で完成をするということになったわけでございまして、一遍に全部やれればそれでよかったんでしょうが、いろいろな各大学の事情もあり、検討をしながら進めていったということで、今日に至ったということであります。
佐藤(公)委員 またいつもの議論になってきてしまうんですけれども、また補足説明があったら後で、次でお願いをしたいかと思います。
 まさに将来における国のあるべき姿、またそこから出てくる教育のあるべき姿ということ、ここがなかなか見えない、わからない、場当たり的になっているという指摘をずっとさせていただいております。
 そういう中で、ちょっと私、質問をいろいろと考えていたんですけれども、たまたま河村副大臣から「体当たりの教育改革」という河村副大臣の本を先ほどいただき、今二十分間ぐらいでざっと見てみたんですけれども、非常にいいことが書いてあります。
 この中で、実際、町村文部大臣がおっしゃられた「時代が変わったのに、我々は国家のシステムも仕組みも時代に合わせて変える努力が少なかったのです。」これはまさに、今までいろいろな委員会でもお話しさせていただいているように、やはり国会議員がもっと努力をして、前向きに、正面からとらえていかなくてはいけない、こういうことを物語っていると思いますけれども、河村副大臣、努力、まだまだできるんじゃないんですか。まだまだやれることがあるのに、今、いたし方ない、しようがないで、型にはまっているようにも思える部分がありますけれども、この辺はもう型を破ってやっていっていただきたい。
 そして、ここに河村副大臣が書かれている中で、まさに大学、高等教育に関して、入学は易しく、多くを受け入れて、卒業を厳しく、難しくしていくべきだ、これは方法論というか、これも一つのビジョンになってくると思います。
 しかし、今議論されていることは、そういった大事な根本論のところじゃなくて、まさに技術的なことばかりの話が多く、将来のビジョンが見えないというのはそういうところになってくるかと僕は思いますけれども、この本をざっと見せていただく中、河村副大臣の高等教育、大学における考え方というのがまだ少し見えない部分があるんですけれども、河村副大臣、いかがでしょうか。
河村副大臣 お答えする前に、先ほど私答弁いたしました、医療技術短大の転換の話であったということでありました。失礼しました。
 今委員御指摘の、今の大学改革の大筋の問題、これは国民の皆さんも、やはり今の大学教育を見ているときに、ともかく大学にやればいいということで、親の方もそう考えてこれまで来たかもしれぬけれども、しかし、現実に就職の状況等々を見たときに、やはりそれは、もっと勉強して成果を上げてもらいたいという方向でありますから、先進諸外国といいますか、欧米の先進国等もやっているように、やはり大学の門戸は、少子化ですから、もうそういう方向にはなってきているのでありますが、門戸は広げて、出口のところできちっといわゆる勉強の成果を見ていく、そして卒業していくという方向がこれからの方向であると私は思っておりますので、そういうことも含めて大学改革をやるべきだ。
 だから、今後国立大学も法人化してまいりますが、アドミッションオフィス等をしっかり取り入れて、いわゆる人間力を見るような入試に変えていけば絶対に変わるんだ、そのスタートのところから変わっていく、私もそういう思いでございますので、そういう方向でこれからの改革を進めていかなきゃいかぬ、このように思っています。
佐藤(公)委員 今副大臣がおっしゃられたことは大変大事なことであって、やはり将来の教育、全体はともかくとして、高等教育において、大学においては、僕は非常に賛成するところがございます。そういう形をもっともっと、河村副大臣、縛られることなくどんどん言って、断行して、大臣と一緒にやられたらいいんじゃないかなと思うんですが、何かまだまだ小ぢんまりとなられちゃっているような気がいたします。その辺は力を持って、やはりできる立場なんですから、私は、言うだけじゃなくて、ぜひどんどん推進をされればいいんじゃないかなと思います。その中で、やはり私たち是々非々で、できるものは賛成をしていきますし、できないものは議論をしていくということを考えていくべき。
 それで、もう時間も少なくなっているんですけれども、私たち、我が党でもこの法案に関していろいろと意見交換をしたときに、東京に大学が幾つあるだろうか、まさに国立で十二校ある、公立で三校あるということで、全部で十五校。公立の方はともかくとしても、国立の方ですけれども、極端なことを言ったら、東京大学は東京にある必要が果たしてあるのか。地域という一つの組分けの中からしたら東京にあることで、考え方としてはわかりますけれども、統廃合していくのであれば、これは東京大学、東京医科歯科大学、東京外語大学、東京学芸大学、東京農工大学、東京芸術大学、東京農工大学なんというのは東京にある必要があるのかなと。まして、東京商船大学というのは東京にある必要があるのかなと。
 統廃合の中で、まさに地方にこういった大学を統廃合していきながら、地方が活力を持ったり、例えばこういう学校を広島に持っていったり、こういうことによって地方に分散しながら組み立ててやっていく、こういう考え方はなかったんでしょうか。こういう考えがあるのかないのか、また、そういう方向性を考えていけるのかどうか、いかがでしょうか。
河村副大臣 確かに東京に十五の国公立大学が集中しているということで、確かに数の上からは多いわけでありますが、これをちょっとよく見ますと、都立大学が若干総合大学の傾向がございますが、あとはそれぞれの専門分野を持った単科大学だということでありまして、それはこういうものが地方にわっとできればその地方は活性化するであろうということは想像はつくわけでございますが、これは、当時といいますか、各県に大学をという運動が起きたときに、やはり各県は各県で大学をつくっていきたいということもあって、地方大学がそれぞれ県にできていったわけであります。
 そういう過程を通ってみて、今こういう時点で見ると、本当は、そういう単科大学というのが地方にどんどんできておれば、もっと人口のバランスとか学生の集積とかいろいろあったのではないかということは、今この時点で、御指摘は私もわかるわけでございますが、現実に、それにかわるものとして、各県でそれぞれの地域の特性を生かした国立大学をつくっていこうということでつくっていったという、この現実がございます。しかし、少子化時代を迎えて、それらをどういうふうに今後集約していくかという問題に今直面をしているわけでございまして、総合的なこれからの大学のあり方を含めてそういうことを考えていかなきゃいかぬと思っております。
佐藤(公)委員 わざわざ地価の高いところに、東京農工大学とか東京商船大学、わざわざ地価の高い東京にある必要性はないんじゃないか。あえて地方に持っていって、それで、より環境もいいところで本当に研究をしていくというふうにも思います。地方分権ということを言っているのであれば、そういったことを大胆にしていくことがまさに政府の方針であり、それを酌んで各省庁がやるべきことであり、文科省としてそういうところに生かされていくべきだと思いますが、これはよく検討してみてください。私は、あえて東京にある必要はないと思います。
 この全部の、十五大学のうち、なきゃいけないところもありますけれども、ある必要がないようなところもありますので、それは地方に、やはりよりいい環境のもとで、そして地方分権、地方の活性化ということであれば、考えていくべきだと思いますがいかがでしょうかともう一回振らせていただきます。
河村副大臣 東京にあります十五の大学も含めて、それぞれの大学が歴史を持って発生をしていったものだと思います。しかし、改めて日本の国土全体を考えるそうした構想から考えますと、やはりこれは全体の日本の国土形成、それから過疎過密なく国土を発展させていくという視点に立った場合には、私は、そういうものも視野に入れながら、それはいわゆる国策の一環として考えていく課題だろうというふうに思います。
佐藤(公)委員 前向きな答弁をいただきましたので、私はこれで質問を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございます。
古屋委員長 石井郁子君。
石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子です。
 私、今回は、大学教員等の任期制の問題で質問をいたします。
 任期制の問題をめぐっては、一九九七年の法案審議がありましたし、その審議の過程や、また法成立があるわけですけれども、その法そのものを無視して行われているような状況が出てきておりますので、きょうはお聞きしたいわけでございます。
 大学の教員の任期に関する法律第三条は、こうあるわけですね。学長は、「当該大学の教員について、次条の規定による任期を定めた任用を行う必要があると認めるときは、教員の任期に関する規則を定めなければならない。」とあります。「これを公表しなければならない。」ともしているわけであります。
 そこで伺いますけれども、口頭による申し合わせで任期制を導入するとか、そしてそのもとで失職するということなどはできないはずだと思いますが、いかがでございますか。
遠藤政府参考人 御指摘のように、この法律におきましては、任期つきの任用を行うという場合には、あらかじめ学長が評議会または教授会の議に基づいて任期に関する規則を定めて公表する、こういう手続が必要だ、こうなっておるわけでございます。
 ただ、そういう法律に基づいた任期つきの任用というのもございますが、任期法に基づかない、大学と教員との合意に基づいて、一定期間経過した後に他大学への異動等を求めるという、いわゆる事実上の任期制というものもございます。これはあくまでもその当事者間のいわば紳士協定によって行われている、こういうふうに理解しておるわけでございまして、これについての法的な拘束力はない、あくまでも紳士協定だ、こう理解しておるわけでございます。したがいまして、その紳士協定で決めた期間の経過をもって当然にその教員の身分を失職するということはないというふうに理解しております。
石井(郁)委員 やはり国家公務員としての教員でございますから、私は、その身分の保障というのは、本当に軽々しく行うことはできないというふうに思うんですね。
 もう一点、重ねて確認ですけれども、この任期制法律、任期法と呼んでおきますけれども、第三条第一項等の規定に基づく任期に関する規則で記載すべき事項及び同規則の公表に関する省令もつけられましたよね。この二条で、任期に関する規則の公表は、刊行物への掲載その他広く周知することができる方法によって行うものとしているということで、今の御答弁では失職はできないということは確認されましたが、一方で、紳士協定はいいんだ、申し合わせによる任期制ということもあっていいんだというふうにも聞こえるんですが、しかし、申し合わせでできるのかどうかという点で言うと、やはり任期制法律があるんですから、これはできないということをきっぱり言うべきじゃありませんか。
遠藤政府参考人 もちろん、御指摘のように、こういう法律ができたわけでございますから、その趣旨にのっとって、法律に基づいた任期制をきちんとやっていただきたい、これはそういうことでございます。
 ただ、いろいろな事情から、その任期制によらない、いわば一種の慣行といいますか紳士協定といいますか、そういうことでの任期制をやったとしても、あくまでそれは紳士協定ということでございますから、それを一概に全部禁止するというところまではしなくてもいいのではないか、こう理解しておるわけでございます。
石井(郁)委員 やはり文科省としては大変あいまいな態度だ、あいまいな答弁だというふうに私は思うんですね。
 先ほどの失職という問題でございますけれども、これは実は大阪大学なんです。ことし助手の任期が切れたということで失職になった方が生まれたんですね。確かに、ここの大学では今、紳士協定的な、口頭による申し合わせ的な任期制を助手に入れているということがあるようです。
 それは、大学院生、これほどたくさんあって、そして院生、就職もないという中で、例えばその口頭の約束というのはこんなようですね。任期が来たら自主的に退職するとか、これが了解されなければ採用しないということを言われて採用に応じているというふうに聞いているんですけれども、それで任期が切れましたということなんです。だから、こんなことがやはり起きてくるわけですよ、口頭による申し合わせでやっていくと。重大な問題でしょう。
 私は、やはり紳士協定的にある問題をどうするかというのは一つこれとして考えてほしいんですけれども、こういう形での任期制というのはやはり無効だ、そして任期が切れたからといって失職させるなどということがあってはならないというようなことで、大学はその助手の身分を保障しなければならないと思いますが、もう一度御見解を聞かせてください。
遠藤政府参考人 紳士協定に基づく失職の問題につきましては、私が先ほど申し上げましたように、そのことだけをもって、期間が来たということだけをもって失職ということにはならない、こう思います。
 ただ、今の大阪大学の件でございますけれども、具体の事実関係については私どもも今まだ承知していませんので言えませんけれども、考え方としてはそういうことだと思います。
石井(郁)委員 そこで、大臣にも御答弁いただきたいと思いますけれども、今回のケースは、具体がどうかというのも少しいろいろあるかと思いますが、私どもの聞いたところでは、要するに教員の流動化ということで任期制を入れるという話でしたから、どうもそれでもないんですね。それで、いわばリストラの対象として助手のポストを減らしていくということから出ているというふうにも聞いているんですよ。そうなりますと、なお問題になるわけですね。
 当時の雨宮高等教育局長ですけれども、こういう答弁がございました。「教員を解雇するために任期制が乱用されるというようなことはあってはならない」とありましたよね。だから、今回のケースというのは、明確な法律違反でもあるけれども、また乱用でもあるわけですよ。
 だから、このような口頭申し合わせによって任期制をどんどん広げていったり、あるいは解雇するなどということはあってはならない、これは無効だということをやはり文科省としてははっきりと言うべきだというふうに思いますが、ここは、今お聞きになっての大臣の御答弁をいただきたいと思います。
遠山国務大臣 御質問が個別のケースを前提とした御質問でございますので、ちょっとそのケースの中身を私承知いたしておりませんので、そのことについて直接お答えいたしますよりは、任期制はそもそもということで申し上げれば、おっしゃいますように、教員の流動性を高めて教育研究の活性化を図るという方策でございまして、任期制を導入するかどうかは各大学の判断でやるわけでございますが、その導入については、法律上、一定の手続が必要でございますし、御存じのようないろいろな制度的配慮もされているわけでございます。そういったことを前提として今後はやっていただかないといけないと思っております。
 各大学は、一方では定削とかさまざまな課題を抱えていることは確かでございまして、そういう中でもできるだけ、制度の趣旨といいますか、あれはきちっと守りながら運営をしてもらいたいものだと思います。
石井(郁)委員 今回提出の国立大学の統合の場合につきましても問題があるわけです。それからまた、法人化に向けて、今またこの任期制問題が、いろいろ各大学が動き出している、どういう動きかといいますと、やはり無限定に任期制が導入されたり、また導入されようとしているということがあるようなんですね。
 今回提出の統合問題についていいますと、九州のある医大でございますけれども、昨年三月に任期制を導入した。新規採用教員については原則として任期制をとる。現職については、同意書を配布して、同意の得られた教員から任期制に切りかえるということをやっている。ここまではそういう手続かなと思うんですが、ところが今度、ことしの四月一日から全教員を対象に任期制にするという切りかえ、そういう通知が出されているんですね。さらに、任期制にしたら研究費を上げる、アップするということまで言われている。
 それでお聞きしたいわけですが、今、現職の教員に対して、研究費を上げるから任期制にしてくれ、する、こういう財政誘導で全教員を対象にした任期制というのは導入できるのかどうかという問題でございます。御答弁をお願いします。
遠藤政府参考人 話を二つに分けますと、一つは全教員ということでございますが、これについては、任期法で要件がいろいろ書いてございます。要件に合致し、そして本人の同意が得られれば、これは任期制の対象になるということでございます。
 もう一方、今先生がおっしゃるのは、研究費をつけるから、こういう話でございますけれども、これは、任期制というのは、やはり研究の活性化、そしていい研究をしてもらおうということでございますので、それに伴っていろいろな研究計画がある、それに対して、学内の問題として研究費を若干手厚く配分する、若干じゃなくてもいいんですけれども、そういうことは、大学の行き方、あり方として当然ある話だろうと思います。
石井(郁)委員 この問題は、しかし任期制の審議のときを振り返ってみても、今ちょっと二つ問題がありますから、二つのことの最初の、財政の問題でいいますけれども、小杉文部大臣、こう言っていたんですよ、決して意図的に財政誘導を行おうとするつもりはないと。やはり、財政誘導でそういう任期つきポストをつくっていくということがいかに大学のあるべき姿をゆがめるかということがありますから、そういうことが大変審議になりましたよ。そして、参議院では、「任期制の導入を当該大学の教育研究支援の条件とする等の誘導や干渉は一切行わないこと。」と附帯決議もされたでしょう。
 ですから、私は今最初に申し上げた、ある大学のやり方の一つ、任期制にしたら研究費は上げるんだ、こういうことというのは、この国会審議と附帯決議からしても反していませんか。やはり好ましくないということはきちんと言うべきじゃありませんか。
遠藤政府参考人 衆参の委員会で附帯決議をいただいておるわけでございますが、その附帯決議では、「いやしくも大学に対して、任期制の導入を当該大学の教育研究支援の条件とする等の誘導や干渉は一切行わないこと。」ということでございますから、平たく言えば、国が、その大学が任期制をとったら要するに予算措置を少し増額するよ、だから任期制をとりなさい、その大学、こういうことをしてはいけないという附帯決議だと思います。
 それは、あくまでも大学がそれをとるかとらないかの問題でございまして、今ここで問題になっているのは、大学の中で研究費についてどう配分を、大学の方針としてどうするかという問題でございますから、附帯決議とは若干違う問題じゃないかな、こう思います。
石井(郁)委員 今はこの点ではこれ以上深入りをしないことにしておきますが、もう一点の問題の、全教員を対象にする、しかも現職の教員を対象にする、この問題は私はさらに重要な内容を含んでいるというふうに考えておりますので、伺います。
 これも九州の大学の例でございますが、一律に研究院の全教員を対象にして任期制を実施しようとしているということなんですね。先ほどの法律に戻りますけれども、この任期に関する法律第四条一項は、おっしゃったように要件をつけていますよね。「教員を任用する場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、任期を定めることができる。」一号から三号までということで、任期制の範囲を限定している。しかも、「職に就けるとき」と書いていますよね。だから、任用のときだと思うんですよ。なぜそれが現職教員に対して途中から任期制の導入ということが可能なのかということは、私はちょっと理解できませんが、いかがですか。
遠藤政府参考人 御指摘のように、任期法の第四条では、こういう場合には、こういう教育研究職につけるときにはいいですよ、こう書いていまして、一つは、簡単に言いますといわば流動型といいますか、長ったらしいんで言いませんけれども流動型、それから研究の助手型、プロジェクト対応型、この三号に決まっているわけですね。
 したがいまして、任期制を導入しようとする職が、職といいますか、それに期待されるものがそのいずれかに該当するということであれば、当然任期法に言う任期制に切りかえていく。ただし、その場合にも、そこに具体にその職についている人がいれば、その人の同意が必要だ、こういうことだと思います。
石井(郁)委員 ですから、今省略して、流動型、研究助手型、プロジェクト型というこの三つに該当する場合についてという、これが例えば一つの大学の全学部、全学科に適用になるということは考えられますか。
遠藤政府参考人 全部まとめてそうだと言うとそれは問題だと思いますけれども、一つ一つ子細にチェックをして、これはこういうことだから該当するんだと全部やった結果、結果として全部になるということはあると思います。
石井(郁)委員 それは全然、おかしいですよね。だって、何のためにこの要件を決めたんですか。この要件の範囲で任期制だということで、厳しくこれは審議したじゃないですか。そんなこと、出てきませんよ。
 これはそれこそ今後の法人化の議論の中にもっと出てきますけれども、今、法人化に向けての議論の中でも、全教員に任期制を導入するというのが始まっているんですよ。だから私も問題にしているわけで、私は、国会審議の中身からしても、そしてこの法律そのものからしても、こういうことは法律違反だというふうに考えますが、これは大臣、御答弁いただけますか。河村副大臣、いかがでございますか。
河村副大臣 これから国立大学も法人化してまいりますし、各大学ともその活性化にいろいろ知恵を絞っておられる段階でございまして、そうした中で、任期制の導入ということは、一つのこれからの活性化の大きな課題になっておるわけでございます。
 ただ、任期制を導入するかどうかというのは一義的には各大学が自主的に判断をされておやりになることでございまして、それから、任期制を導入する場合には法律上の一定の手続を課す、こうなっておりますし、本人の同意もいただくということになっておりますので、教員の身分保障というものは十分制度的な配慮がなされておるというふうに考えております。これで、全学的に任期制が導入されたということになった場合に、直ちにこれによって教員の身分が不安定になるというものでもないと私は思いますし、それによって法律違反になるという考え方には立っていないのでありますが。
石井(郁)委員 私は、そういう御答弁じゃ到底納得できないんですが、これは九七年の国会審議のときにも、先ほども御紹介しましたけれども、当時雨宮高等教育局長、この問題でこういうふうに言っているんですよ。この要件をつけた、読み方の問題でですけれども、その第一号、「先端的、学際的又は総合的な教育研究であること」ということで、これはこれ自身が広がるんじゃないかということの懸念が当時ありましたからそういう審議をしたわけですけれども、こういうふうにおっしゃっていますよね。これをわざわざ例示して、「要するに多様な人材の確保が特に求められるような、そういう教育研究組織の職につけるときなんです」と。だから、特に求められる、そういう職が必要だというときになんですということで議論したし、私たちはそれが政府答弁だということで確認しているわけです。
 それで、今の問題もこれ以上立ち入ったらもっともっといろいろやりとりしなきゃいけないんですけれども、とにかく重大なのは、労働契約で行うのだから、法人化では学部、大学に一律に導入してもいい、そういう発想で事を進めようということが出ています。ある大学、これは人事制度に関する検討専門委員会、ここでは、大学の教員人事制度において任期制度を導入することはそれほど違和感はないように思われるというふうに書かれまして、全学に任期制を導入しようとしているわけですね。
 この法律に戻っても、例えば私学、そういう法人の場合でも、「前条第一項各号のいずれかに該当するとき」と。法人になっても、いずれかに該当するときに労働契約において任期を定めると、これはなっているでしょう、第五条にも。だから、法人になって労働契約でできるんだから全部できるんだ、こういう理解だって、私は、法を逸脱しているというか、非常におかしいと思います。
 要するに、この任期制の法律というのは、選択的任期制だったんですよ。選択的なんですよね、こういうところには任期制ですよという。決して、大学が丸ごと任期制だ、こういう想定はどこもしなかったんじゃないですか。それが政府の見解でもあったわけでしょう。だから、この法律どおり、選択的任期制だということについてはきちんとした見解でするべきですよ。全学的に導入、一律に全部やるんだと、しかも今言われたように現職の教員にやるんだなどという無謀なことは、到底考えられない。このことをはっきりしてください。
遠藤政府参考人 その選択的の意味でございますけれども、一律に助手だとか教授だとか何学部だとか、こういうことじゃなくて、大学が大学の判断で、広狭いろいろな幅があると思いますけれども、いろいろなパターンで任期制を導入できる、そういう意味での、大学の自主性に任せ、大学がどういう形で任期制をやるかというのを選択するという意味での選択というふうに理解しております。
石井(郁)委員 だから、もちろん政府として、文科省として、それを強要することもできないし、各大学だってそれを上から一律に導入することはできない、そういう意味での両方にとっての選択的な任期制であることは言うまでもないんじゃありませんか。私は、今、文科省がこの法人化を前にしてそういう態度をとっているというのは、やはり非常に問題だと思うんですよ。法律の趣旨をゆがめていますし、法律違反のことをやっていますよ。
 これは、昨年の国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議、例の調査検討会議ですね、そこで非公務員化がすっと出てきたわけですけれども、そこに文科省が提出した文書がございますよね。「国立大学の職員の身分―「非公務員型」の場合に考えられる対応例」というのをあなた方が出していらっしゃる。それを見ますと、「任期制の導入 大学教員任期法による三類型を離れた任期制の導入が可能」だと。
 これは驚きましたよ。今まで三類型で該当する任期制ということを決めて、範囲が、枠があったわけですけれども、三類型を離れた任期制の導入が可能だと。どういうことですか、これは。あなた方、みずから出したでしょう。私は、この文書というのは本当に法律の趣旨に違反すると思いますよ。そう考えませんか。
遠藤政府参考人 法制的に御説明いたしますと、今、国会にお願いしております国立大学法人法におきましてはいわゆる非公務員型であるということでございますので、任期法の適用についてはいわば私立大学と同じになる、こういうことでございます。
 私立大学教員と任期法との関係でございますが、これによって初めて教員に任期制がつけられるということではございませんで、現行の労働法制の枠内でも任期制はとれますが、任期制で任期をつけられるということを確認的に規定したというふうに理解してございます。
 任期をつけたということについての合理性をどう判断するかという法制、何かややこしい話で恐縮でございますが、そこで、任期法に基づいた任期制でございますと、これは任期制なんだからということですべて片がつくけれども、任期法に基づかない任期制の場合については、仮に争いがありましたら、一つ一つのケースについて労働法制上どうかということが問われる。そういう違いはありますけれども、基本的には、私立大学の教員の場合につきましては任期法がなくても任期制がとれる、こういう趣旨でございますので、そういったような趣旨から、法制的にいえばどうかというと、そういうことだという趣旨だと思います。
石井(郁)委員 時間もありませんので私もこのぐらいにしますけれども、今のは全然おかしいですよ。だって、任期法には私立の大学の教員の任期ということで、第五条にちゃんと書いているじゃないですか、これも。そしてそれは、国立大学でさっき三つの要件をつけたことと同じようにしなきゃいけないと。その場合でも、例えば規則を定めておかなければいけないとかいろいろありますけれども、その要件は一緒だと書いているんですよ。
 だから、法律のいいかげんな解釈をしてもらったら、あなた方は専門なんですから。それはきちっとやはり法律の趣旨にのっとってこの問題を見ていただきたいということを、私はきょうはそこまでで、強調しておきたいというふうに思います。
 最後、ちょっと一つだけ、時間がありますから時間の範囲でですけれども、重ねて、私たち、我が党としては、この任期制法案、本当に反対しました。しかし、やはり法律があるわけですから、法律に沿って、その範囲で行うべきだということで今質問したわけで、おきますけれども、またちょっと繰り返しの点でもありますが、予算の配分と任期制の導入というのは別問題だというのは、当時の小杉文部大臣も雨宮局長も繰り返し述べられていたんですよ、それは。ところが今、あなた方は、それもどんどん何かあいまいにしていくというようなことになっている。
 そして、法人化の中では、中期目標・中期計画の項目の中にも、教職員の適正人事ということで任期制のことが入っていく。そして、どうも、これで数値目標達成の対象にすべきだということになっていくと、結局予算とリンクしていくじゃありませんかということで言っているわけで、非常になし崩し的にこの法律の解釈がどんどんゆがめられていくという点では、私は、今きちんとすべきだということで考えているわけでございます。
 最後に、大臣の、その点でのきちんとした文科省の姿勢を少し示していただければ大変ありがたいかなと思いますが、いかがですか。
遠山国務大臣 先ほどもお話がありましたように、やはり教員の任期制というのは、大学の活性化を図るために教員を流動化していく、流動性を高めることによって教育研究等の諸活動を活性化するというためでございます。ですから、任期制を考える際にも、そのことの理念というのをしっかり考えてそれぞれの大学で判断をしてもらうということだと思います。
 予算につきましては、これからは法人化が達成されますと運営交付金ということになってまいると思いますが、その場合には、任期制あるなしといいますよりは、その大学において教育の質がきちっと担保されているかどうかというのは、もちろんその評価においてあらわれてくることだと思っております。そのようなことで、制度の趣旨というものはしっかり体しながら、新しい法人化の際には、予算の配分等についても、それは透明性を持って運用していくべき問題だと考えます。
石井(郁)委員 終わります。
古屋委員長 中西績介君。
中西委員 定員数が足りぬようですけれども、この中でやってよろしいかどうか、委員長の御判断をいただきます。
古屋委員長 ちょっと確認していますから、待ってください。――定数、そろいましたので、質問をしてください。
中西委員 私は、わずか三十分しかありませんからはしょって申し上げますけれども、この問題、大学改革とのかかわりがあるということで、今文科省が最も重要な課題として抱えておる大学改革、こうした本来的なものとあわせてただしておきたいと思います。
 国立学校設置法の一部改正は、提案理由を見ても極めて簡単で、二十大学を十大学に統合、短期大学の改組による廃止にとどまっているようであるが、大学改革を進める中で、全国九十七国立大学の将来のあり方を決定することにつながると思います。したがって、この基本的な問題について確認しておきたいと思いますので、以下質問を申し上げたいと思います。
 一九九七年、大学審議会が設置をされまして、九八年十月に審議会は、「二十一世紀の大学像と今後の改革方策について」、その副題として「競争的環境の中で個性が輝く大学」を答申しました。この表題についている「競争的環境」というのは、ちょっと私自身が理解しにくい。それともう一つは、「個性が輝く大学」というのはどういう内容をイメージすればいいのかと思いますので、この二つについてまず確認をしたいと思います。
遠山国務大臣 今の御指摘の、平成十年十月二十六日、大学審議会から出されました「二十一世紀の大学像と今後の改革方策について」という答申を、私は、今後の新しい世紀における大学のあり方について大変示唆的な内容を持つ答申だと考えております。その副題に「競争的環境の中で個性が輝く大学」ということで、答申の方向性を端的にあらわしていただいたのではないかなと私は推測するわけでございます。
 では、その競争的環境というのは何かということでございますが、これは、一つは、さまざまな規制を緩和して、弾力的な制度のもとで、各大学などがそれぞれの理念、目標に即して創意工夫を凝らし得るようにする、これによって、社会や学生の変化に適切に対応して、そして個性豊かな魅力ある大学などを実現するように互いに切磋琢磨しながら一層努力することが求められる、そういう環境を想定したものだと理解をいたしております。
 それから、個性輝く大学というのは、これは個性輝く大学という、まさにその指しますとおりに、それぞれの大学が持つ理念、目標というものに基づいて大学の教育研究活動のあり方を考えていく、そういう個性を持った大学というのが大事だという観点から指摘されていることだと思います。
 そういうふうに見ますと、どういうふうな個性と輝き方があるかということでございますが、もちろん多様だと思いますけれども、例えて申しますれば、総合的な教養教育の提供を重視する大学、それから専門的な職業能力の育成に力点を置く大学、さらには地域社会への生涯学習機会の提供に力を注ぐ大学、また最先端の研究を志向する大学、さらには学部中心の大学から大学院中心の大学といったように、それぞれの大学が特質を持っていく、皆同じようにただ大学という門戸を開いているということではなくて、それぞれが個性を出して、特色を出して、そして人材養成の目的も掲げてしっかりやっていってほしいという趣旨に基づいて、個性輝く大学ということのあり方について提言をいただいたものと考えております。
中西委員 この環境の中で今言われました中身の中で、ちょっとひっかかるんですけれども、互いにというのは何を指して互いにというんですか。
遠山国務大臣 互いにという意味は、いろいろな意味があると思います。大学の中でそれぞれの教員たちが競い合うという面もございましょうし、また、大学像という絡みから申しますれば、大学間において、しっかりとお互いの存在価値を発揮して、その発揮する過程において切磋琢磨し合うという意味ではないかと思います。
中西委員 私、競争的という言葉が、近来、いろいろな改革案だとか遠山プランを見ましても、すべてそういうので塗り固められておるんじゃないかという気がするものですから、それが全体的な大学像の中でということになってまいりますと、日本の大学のあり方というものが非常に問題視されるようになってくるんじゃないかということを私は懸念し、心配するものですから、このことをお聞きしたわけであります。
 したがって、今の御答弁の中ではいろいろ指摘をしたいけれども、時間がございませんので、再確認する意味で、もう少し具体的にお聞きをしたいと思います。
 それは、大学審議会からの答申の中に、大学像ということでいろいろ出されています。二十一世紀の大学像の「国公私立大学の特色ある発展」という項目の中に「国立大学が果たすべき機能」ということで出ておりまして、三点にわたって示しています。「国費により支えられているという安定性から、短期間には成果が見えない新たな創造的研究に積極的に挑戦することができること」、二が「設置者である国の判断により、社会の需要に応じた政策的な定員管理等が可能であること」、三が「大規模なプロジェクトに取り組むことができることなどの特性を有している」ということとあわせて、その後に「現在、各国立大学が果たしている機能は多様であるが、上記のような特性から今後国立大学が特にその社会的責任として果たすべきことが期待される機能」としては、一から五点にわたって示されています。
 これを見ますと、「人材養成の実施など国の政策目標の実現」、二番目が「現時点では社会的な需要は少ないが、我が国の学術・文化等の面から重要な学問分野の継承」、それから三番目に、今問題になっておりますように「衛星通信大学間ネットワーク構築事業の実施など、社会の変化や学術研究の進展に応じた先導的・実験的な教育研究の実施」、四番目に「各地域特有の課題」が挙げられています。そして「解決への貢献及び都市圏のみでなく全国的に均衡のとれた大学配置による教育の機会均等の確保への貢献」、五番目が「学生が経済状況に左右されることなく自己の関心・適性に応じて高等教育を受ける機会を確保することへの貢献などが挙げられる」、こう示されていますね。このことは、大学像としてはもっともなことだろうと思いますね。
 ですから、そのことがさっきの、私が指摘をいたしましたこの中の競争的環境というのは、あるいは個性が輝く問題というのは、私は、こういう中からやはり具体的に示していただきたかったわけであります。しかし、それはありませんでした。ですから、そのことをまず私は強く指摘をしておきたいと思います。
 そこで、質問であります。
 この考え方は文科省の政策あるいは行政の主要な柱として今なおちゃんと残っておるかどうか、この点についてどうでしょう。
遠山国務大臣 二十一世紀は知の時代とも言われるわけでございますが、教育・文化立国、科学技術創造立国を目指す日本にとりまして、知の創造と継承を担う大学の役割というのは大変重要でございまして、特に国立大学につきましては、今委員から御紹介いただきましたようなさまざまな機能を持っているということは、現在ももちろん同様でございます。
 その中には、計画的な人材養成の実施というようなこともございますし、特に研究の分野で、単に学生に人気があるものだけということではなくて、脈々とつながるような大切な学問分野というのももちろんあるわけでございまして、そういったものを継承、発展させていく。あるいは、最先端の、世界の最高水準を抜くような、そういう先端的な研究をやってもらうというような機能も大事でございますし、全国的に配置された各地域の知的な人材を養成するという機能ももちろん重要であるわけでございまして、学生の状況に応じた、ニーズにこたえていくというようなこれらの機能というものは、国立大学が持っている機能として今後とも重要であると私は考えております。
 もちろん、私立大学それから公立大学、それぞれの特色もありますし、地域の大学のあり方についてはそれらの大学ももちろん大変重要な役割を担ってくれていると思いますが、私は、その答申で示された国立大学の機能については変わることはないと思っております。
中西委員 私は、これが変わっていないということが、特に私がゆっくり読みまして声高に言いましたけれども、そういう点が非常に大事だろうと思い、これからの大学のあり方そのものが、どういう体制をつくり上げていく、これが大学なんだという、このことの基本になるものはここに集約をされておる、こういうふうに私は感じましたので、その点の確認をしたわけであります。
 したがって、もう一つ、その後に「各国立大学においては、それぞれの実情を考慮しつつ」云々ということがありまして、「教育研究の実施や組織運営体制の整備が図られることが必要である。このような機能を十分果たしていない国立大学については、適切な評価に基づき大学の実情に応じた改組転換を検討する必要も出てくる」と。教育研究の実施あるいは組織運営の体制ですね。さっき前段に言いました五つの基本姿勢、それを踏まえた上で教育研究の実施あるいは組織運営体制の整備ということになるわけでありますけれども、この点についても確認していただけますか。
遠藤政府参考人 御指摘のように、国立大学は国費に支えられて、先生先ほど……(中西委員「イエスかノーかでいいです」と呼ぶ)はい。
 こういった期待にこたえるための教育研究を実施する、そして体制を整備する、これはもう当然のことだ、こう思っております。
中西委員 それでは、論議するのに私と大体同じ立場に立ち得たと思いますので、その視点から今度は確認をしていきたいと思います。
 そこで、二〇〇一年、平成十三年五月に、小泉総理の参議院での答弁、国立大学民営化あるいは地方移譲などという発言がありましたけれども、これと軌を一にしたようにいたしまして、その次の月、六月に遠山大臣が「大学(国立大学)の構造改革の方針」を発表し、経済財政諮問会議に報告をされました。通称遠山プランと言われる内容です。これを見るとこの方針の三つの柱があるわけでありますが、これをずっと見ていきますと、私は、一口で言いますと、大学の知の企業化プラン、産業競争力回復のために大学の知的資源を利用する意図は大体そういう方向に向けて動いていくというのがこの方針ではないかと思います。したがって、大学が、高等教育政策の観点でなく、経済政策の一環にはめ込まれたのではないかという指摘もあるくらいです。
 ですから、先ほど私が確認したことと、ここに述べられておる事柄がどう継続をするかということであります。指摘されておると私は思うということで先ほど言いましたが、まずこの点について、いかに考えておられるのか。そして二点目に、一九九八年の大学審議会の答申の、先ほど確認をいたしました基本理念と、この方針との整合性について明らかにしてほしいと思います。
遠山国務大臣 大変重要な御指摘だと思います。
 平成十三年六月の大学の構造改革の方針は、日本の大学が一層活力に富んで国際競争力のあるものになるようということで、一つは国立大学の再編統合、二つには国立大学法人への移行、そして第三者評価に基づく競争原理の導入というようなことを打ち出したわけでございます。
 この方針につきましては、当時、経済財政諮問会議が大学改革も含めて広範な経済社会の構造改革に関する方針を取りまとめようとしていたところでございまして、国立大学の民営化というようなことも話題に上っていたわけでございまして、そういうことではなく、大学が本来持つべき機能を十分に発揮するために大学を活性化すると。それで、先ほどお触れになりました五つのようなことをさらに活性化していくためにどうあったらいいかということで出したのが先般の構造改革の方針であるわけでございまして、経済財政という論議の場に、むしろ大学改革という、これまで積み上げてきた成果を集約してあの方針として出したところでございます。
 あの方針の内容は、従来から我が省として進めてまいりました大学改革を踏まえて、とりわけ平成十年の大学審議会の答申の「二十一世紀の大学像と今後の改革方策について」の基本理念であります「競争的環境の中で個性が輝く大学」で示された大学改革の流れをさらに加速するという気持ちを持って取りまとめたところでございます。
 したがいまして、その大学改革の進展といいますものは、結果として日本経済の発展に大きな役割を果たすということは当然であるわけでございますけれども、この方針そのものはあくまで大学改革のために策定したものでございまして、高等教育政策というものが経済政策の一環にならないように、むしろ私どもとしてリードすべくあの方針を明確にしたところでございます。
中西委員 それでは、その整合性をもう少し具体的にお示しいただけませんか。
遠山国務大臣 大学につきましては、従来から、大学審議会の答申などを踏まえまして、高等教育の高度化、個性化、活性化という大きな方針のもとに、諸制度の大綱化あるいは弾力化、それから各大学におきますさまざまな取り組みが行われてきたところでございます。
 特に平成十年の答申におきましては、「競争的環境の中で個性が輝く大学」ということを基本理念といたしまして、一つには教育研究の質の向上を図り、二つには教育研究システムの柔構造化を図り、三つ目には組織運営体制の整備を図り、四つ目に多元的な評価システムの確立というようなものの重要性が指摘されておりまして、各大学が理念、目的といったものを明確にした上で多様化、個性化を図っていく、そういう新しいシステムの構築の必要性が提言されているところでございます。
 十三年六月の大学の構造改革の方針は、この方向性、そしてこれまで積み重ねてきた大学改革のあり方というものを十分に踏まえながら、その流れを加速するということのために基本的な方向として取りまとめたところでございます。
中西委員 今のような答弁をいただくと、どうも私はこの遠山プランというのを、先ほど三つの柱について説明が、簡単ですけれどもありました。これを大体、その中の主要な点をずっと列挙したものを持っておりますけれども、あなたたちが示した分です、これは。それを持っておりますけれども、時間がありませんから読み上げませんけれども、これを見たときに、さっき私が基本的な理念は変わっていないかと言った平成十年、九八年の方針、そのことはここにはほとんど出ていないんですね。それは今、言葉の上では、その間ずっと考えられてきた大学改革という中からこれが出てきたというような言い方をされたんですけれども、そうすると、前の基本的なものがどこに行ったかということが私はわからぬから、その整合性について明らかにしてくれと質問をしたんです。
 しかし、そのお答えをいただきましたけれども、私はやはり大きく、結局、経済諮問会議に出るに当たって主体的な理念というものを示さないとその中にのみ込まれてしまうという懸念があったから、むしろ積極的にこれを出された、こう理解していいでしょう。この遠山プランなるものを出したわけです。
 そうしますと、これが今度は、なぜ私はそのことを言うかというと、前の自民党、これから後になりますけれども、今度の数を合わせろ、少なくしろというものが出てきた、二〇〇〇年における自民党の調査会の意見、それから、もう言う時間がありませんから言いませんけれども、その後におけるそれぞれ出てきたところを見ると、まさに日本の経済がにっちもさっちもいかなくなっている、これを再生するためにはこういうことでやらなくちゃならぬということが中心課題になっていけば、小泉総理が言う民営化、それに近づけるために、そのためにまた独立法人化も出てきておるし、その中身を見てもそうなっていますよ。
 だから、それらの一連のものとしてこれが出され、これが今度は、独法問題を論議するときには、その視点からすると全くそうなっていますから、私はその点についてもうとやかく言いませんけれども、少なくとも今まで続けてこられた姿勢があって、統合なりなんなりがされていった。なぜかというと、地方における大学等も格付してどんどんふるい落とす、三流大学という、こういうものが出なきゃいいですよ、出ている中ですから、もうそれより以下の地方の格付された大学、新しい大学、こういうものはどんどん切り捨てられるんじゃないかということを私は懸念します。
 だから、そういうことからすると、今私が指摘をしましたような、一番大事なところが、大学像そのものが変わったのかということを指摘をしなきゃならぬものですから、今指摘をしたんです。しかし、お答えは、私が納得できるような内容になっていないということはもう明らかです。
 そこで、あと、ありませんからもう一つだけ聞いておきますけれども、大学の再編統合について、大学の構造改革の方針を経済財政諮問会議に報告いたしましたが、遠山プランの三つの柱の中で、国立大学再編統合については「大胆に進める」と言っておる。この「大胆に」というのは、大学の数の大幅な削減を目指してスクラップ・アンド・ビルドで活性化というのが、今度は、さっき申し上げた十三年のもののトップに出てきていますよね。
 そういうことから、文科省は、二〇〇〇年五月の自民党の政務調査会提言に沿ったものと、そのために言われておるんです。だから、沿ったものとして、この大学の統合だとかいろいろなものは全部やられているんだ、こういうふうに言われているんです。ですから、文科省は、二〇〇二年の山梨大あるいは山梨医大、筑波大と図書館情報大、二〇〇三年の十組二十大学を統合して教育研究をパワーアップすると言われておりますけれども、これはどうも、今までの流れからすると、大学の自発的な要請でなくて、文科省の、上からのにおいが強く私にはするわけですね。ですから、この点はどうなっておるのか。
 なぜ私はそのことを言うかといいますと、後で統合計画の特徴について私は指摘をしようと思ったんですけれども、山形大学の教育学部を初めといたしまして、私が指摘をするのは、少人数学級ですね。これに必要な教師の問題、あるいは、将来的には学級定員の変更までしてやらなくちゃならぬということは目に見えて明らかです、あなたたちは抵抗しているけれども。こういう問題だとか、地域の社会教育だとか生涯教育だとか、こういう全般的な、これからの教育の面における視野を大きくして総合的にどうするか、そのときに教育の専門家をどう養成するかということが今この計画の中には入っていない。
 むしろ今、何かといったら、山形大学だとかいろいろなところの論議を聞いておると、学生定員のやりとりのみが表面に出ているような気がしてならぬわけですね。私は、山形大学にちょっと関心を持って関与したことがあるから、なおそのことがはっきりするわけです。
 そうすると、一番肝要な大学のあり方、地域にという、こうした問題が果たして、私たちが納得、あるいは国民側が納得できるような内容で進められた統合なのか。これが、今言うような遠山プランだとかいろいろなことから全部独立した形の中でやられておるというのなら、私は別です。ところが、それがもう全部関連づけられて、その間にずっと出てきたものと合致するような格好になっていますから、それは民営化論であり地方移譲であり、そして肝心の大学像そのものが私はゆがんでくるんじゃないかということを考えますので、この点について、文科省がそういう姿勢であるだけに、地方との関係はどうなっているでしょうか、お答えください。
河村副大臣 今回の大学改革は、まさに中西委員の御指摘のように、そうした懸念をむしろ取り払う意味で、まさに大学が自主的にみずから大学改革を行う方向が必要なわけでありまして、これを文部科学省の命令一下やっているんだというふうに言われるとあれでありますが、文部科学省としては、これまでいろいろ議論をしてきた、考えてきた大学改革の方向というものを打ち出した。これはまた一つの世論といいますか、大学を活性化してもらいたいという世論もあるわけでございます。それに基づいて、委員御指摘のような、それぞれの地域がどのように高等教育をまた盛り立てていくかということにもつながっていくであろうということで、一つの指針を打ち出したわけであります。
 それに基づいて各大学がそれぞれ幅広く自主的な検討を今されているというふうに私ども考えておりまして、そのための必要な助言等々は文部科学省が行ってきておるわけでございますが、しかし、それをもって文部科学省が上から命令的に統廃合を強制している、こういうことでは決してないわけであります。
 むしろ国民側の方から、今の大学の活性化というのは必要であると。また、日本のこれからの二十一世紀を考えたときに大学の持つ役割というのは非常に大きい、そういう意味で、それぞれの大学は、まさに競争的環境といいますか、切磋琢磨の関係で、それぞれの地域の特色を出して大学教育をやってもらいたい。そのために、いわゆる大学教育内容の充実という面から考えて、場合によっては、スクラップするものはスクラップしてもらいたいし、新たに打ち立てるものは一つになってやってもらうということが必要ではないかと思います。
 今、教員養成等の統合等の問題等もいろいろあって、各地域でいろいろな議論がなされておりますが、その推移を我々としてはしっかり見守りながら、まさにそれぞれの大学が自主的に光り輝く大学になるように、そのことを我々は強く願っておるわけであります。
中西委員 終わりますが、今御答弁いただいたように、私感じますのは、なぜ山形大学の例を出したかというと、これは、文科省が集めて論議をして、これが非常に強まってきた、ところが、いろいろ問題が出てきて我々があれすると、今度はその干渉が非常に、弱くなったか何か知りませんけれども、そういうことがだんだん薄くなってくるというような事柄等を含めまして、具体的にあるものですから、この点をあえて申し上げました。
 私は本当に、後の、大学を独立行政法人化する、そのときにまた本格的に論議させていただきますけれども、これは大変、その流れの中で危ないものだということを申し上げて、終わります。ありがとうございました。
古屋委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
古屋委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
 内閣提出、国立学校設置法の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
古屋委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 お諮りいたします。
 ただいま議決をいたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
古屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
古屋委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後二時三十六分散会


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