衆議院

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第13号 平成15年5月16日(金曜日)

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平成十五年五月十六日(金曜日)
    午前九時一分開議
 出席委員
   委員長 古屋 圭司君
   理事 奥山 茂彦君 理事 鈴木 恒夫君
   理事 馳   浩君 理事 森田 健作君
   理事 鎌田さゆり君 理事 山元  勉君
   理事 斉藤 鉄夫君 理事 佐藤 公治君
      青山  丘君    荒巻 隆三君
      伊藤信太郎君    小渕 優子君
      大野 松茂君    岡下 信子君
      岸田 文雄君    佐藤 静雄君
      佐藤  勉君    谷田 武彦君
      中谷  元君    林田  彪君
      松島みどり君    松野 博一君
      宮澤 洋一君    森岡 正宏君
      柳澤 伯夫君    大石 尚子君
      鳩山由紀夫君    肥田美代子君
      平岡 秀夫君    平野 博文君
      藤村  修君    牧野 聖修君
      松原  仁君    山口  壯君
      池坊 保子君    東  順治君
      黄川田 徹君    石井 郁子君
      児玉 健次君    中西 績介君
      山内 惠子君    山谷えり子君
    …………………………………
   文部科学大臣       遠山 敦子君
   文部科学副大臣      河村 建夫君
   文部科学大臣政務官    池坊 保子君
   文部科学大臣政務官    大野 松茂君
   政府参考人
   (財務省主計局次長)   杉本 和行君
   政府参考人
   (文部科学省大臣官房総括
   審議官)         玉井日出夫君
   政府参考人
   (文部科学省大臣官房文教
   施設部長)        萩原 久和君
   政府参考人
   (文部科学省初等中等教育
   局長)          矢野 重典君
   政府参考人
   (文部科学省高等教育局長
   )            遠藤純一郎君
   政府参考人
   (厚生労働省労働基準局安
   全衛生部長)       大石  明君
   文部科学委員会専門員   柴田 寛治君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月十六日
 辞任         補欠選任
  伊藤信太郎君     荒巻 隆三君
  近藤 基彦君     宮澤 洋一君
  中谷  元君     佐藤  勉君
  肥田美代子君     平岡 秀夫君
  松浪健四郎君     山谷えり子君
同日
 辞任         補欠選任
  荒巻 隆三君     松島みどり君
  佐藤  勉君     中谷  元君
  宮澤 洋一君     近藤 基彦君
  平岡 秀夫君     肥田美代子君
  山谷えり子君     松浪健四郎君
同日
 辞任         補欠選任
  松島みどり君     伊藤信太郎君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 国立大学法人法案(内閣提出第五六号)
 独立行政法人国立高等専門学校機構法案(内閣提出第五七号)
 独立行政法人大学評価・学位授与機構法案(内閣提出第五八号)
 独立行政法人国立大学財務・経営センター法案(内閣提出第五九号)
 独立行政法人メディア教育開発センター法案(内閣提出第六〇号)
 国立大学法人法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第六一号)


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     ――――◇―――――
古屋委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、国立大学法人法案、独立行政法人国立高等専門学校機構法案、独立行政法人大学評価・学位授与機構法案、独立行政法人国立大学財務・経営センター法案、独立行政法人メディア教育開発センター法案及び国立大学法人法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の各案を一括して議題といたします。
 この際、国立大学法人法案に対し、牧野聖修君外三名から修正案が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を求めます。藤村修君。
    ―――――――――――――
 国立大学法人法案に対する修正案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
藤村委員 おはようございます。民主党の藤村修でございます。
 私は、民主党・無所属クラブ提出の国立大学法人法案修正案について、提案理由及び内容の概要を説明させていただきます。
 政府が提出した国立大学法人法案等は、国立大学にとって、まさに百年に一度の大改革を行おうとする極めて重要、重大な法案でございます。提案理由では、「自律的な環境のもとで国立大学をより活性化し、すぐれた教育や特色ある研究に積極的に取り組む個性豊かな魅力ある国立大学を育てる」とうたっております。しかし、法案内容をつぶさに検討するにつれ、その内容は、提案の趣旨を具現したものであるどころか、これまで国立大学に対して行われてきた以上に国の関与を強め、各大学独自の主体的な発展を阻害し、ひいては我が国の高等教育の将来に資するものとは到底考えられない、改革に逆行する法案であると言わざるを得ません。
 私たちは、現在、国の組織の一部と位置づけられている国立大学を、国の組織から切り離して各大学一つ一つに法人格を与えるという基本的スキームは評価する立場であります。ただし、具体的な法人化の手法については、政府案のそれとは異なる考えを持ち、多くの関係者の御意見も聴取しながら、修正案の提出に至ったものでございます。
 以下、政府提出法案の問題点を指摘するとともに、民主党・無所属クラブ提出の国立大学法人法案修正案について、その内容を御説明いたします。
 まず初めに、法案の目的を定めた第一条について申し上げます。
 政府案では、「我が国の高等教育及び学術研究の水準の向上と均衡ある発展を図るため、」国立大学法人等について定めるものとしております。しかし、「均衡ある発展」とは、今までどおりの横並びの発展としか言えない消極的表現であり、各大学法人が主体的な努力による発展を期待することにこそ、今回の改革のコンセプトを置くべきであると考えます。民主党修正案においては、この点につき、法文において「自立的な発展を図るため、」として、法案全体の性格を明らかにすべきとしています。
 次に、第三十条関係、中期目標の作成に係る部分について申し上げます。
 政府案では、六年間において国立大学法人等が達成すべき業務運営に関する目標について、これを文部科学大臣が定めるものとしております。繰り返しになりますが、国の組織から切り離して、各大学の主体的、自立的な発展を期待することにこそ改革のコンセプトを置くべきであり、さらに、おのおのの大学が目指すべき将来の姿を最も的確かつ意欲を持って策定できるのは各大学法人自身にほかならないことを考えれば、文部科学大臣が財務大臣と協議の上で目標を定めるなどとする根拠は極めて薄いものと考えられます。民主党法案では、中期目標作成主体を国立大学法人等に移すとともに、文部科学大臣に対しては届け出で足りるものと修正しております。
 次に、国立大学法人等の評価について申し上げます。
 評価のあり方については、今回の改革において最も重要かつ困難な課題を含んでいるのは論をまたないところでございます。我々は、評価が、文部科学省内の国立大学法人評価委員会及び独立行政法人の大学評価・学位授与機構の手で行われる点に強い問題意識を持っています。これまでの委員会審議等で、評価委員会の構成、中期目標との関係、運営交付金の算定に評価結果はどう反映されるか等々、たび重ねて触れてまいりましたが、今に至るまで、それらについて納得のいく答弁は得られておりません。
 我々は、極めて困難な作業が予想されるからこそ、適正な評価を行うためには、有識者の知見はもとより、大学関係者、学生、学会、経済界、各地域あるいは国際的観点など、さまざまな立場からの多元的な視点が導入されるべきだと考えます。修正案においては、この点につき、評価委員会が大学評価・学位授与機構以外の機関にも必要な調査を委託できることとし、評価委員会の会議録は公表するものとし、総務省の政策評価・独立行政法人評価委員会による国立大学法人の評価を遮断し、さらに、国は、第三者評価の多元性確保のために、学校教育法に規定する認証評価機関に対して必要な資金の確保を行うものとしております。
 以上述べた主要事項のほかに、民主党修正案においては、学長や役員の任命、経営協議会と教育研究評議会の構成や審議事項、国立大学法人が行う業務の範囲等々について、政府案よりもはるかに各大学の自主性を尊重し、おのおのの創意と工夫を十分に生かしていただくための内容を盛り込んだものとしております。
 委員各位におかれましては、今回の国立大学改革が将来の我が国高等教育の姿を描く上で極めて重要であることにかんがみ、何とぞ本修正案に御賛同くださいますようお願い申し上げます。
 以上、終わります。(拍手)
古屋委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
古屋委員長 この際、お諮りいたします。
 各案審査のため、本日、政府参考人として財務省主計局次長杉本和行君、文部科学省大臣官房総括審議官玉井日出夫君、大臣官房文教施設部長萩原久和君、初等中等教育局長矢野重典君、高等教育局長遠藤純一郎君及び厚生労働省労働基準局安全衛生部長大石明君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
古屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
古屋委員長 内閣提出六法案について議事を進めます。
 質疑の申し出がございますので、順次これを許します。鳩山由紀夫君。
鳩山(由)委員 文部科学委員一年生の鳩山由紀夫でございます。現在、民主党に籍を置いております。
 一年生ではありますが、実は、この国立大学法人法案にはいろいろとかかわる仕事をかつてしておりました。というよりも、まず、国立大学を卒業してから、アメリカの大学でマスター・オブ・サイエンスを二つと、それからPhDを一つ、その後、日本に戻りまして、国立大学に四年半勤めております。東京工業大学でございます。その後、私立の専修大学というところに三年おりました。アメリカと日本の大学のシステム、それから日本の国立、私立、一応、ざっとでありますが、合計で十七年間遊んでおりましたものですから、ある程度経験を持つ人間として、半ば内部におった人間として質問を申し上げたいと思っています。
 私は、実は、アメリカから戻りまして、東工大に勤めた瞬間に感じた、その思いだけを申し上げると、まことに暗い、何だろうこの暗さはという思いがいたしました。それはさまざまな理由があろうかと思いますし、その暗さは大分もう払拭をされたんだというお話もあろうかと思いますが、もう大分昔の話ではありますが、大変大学は暗いな、この暗さはどこから来ているんだ、そんな思いを強く感じておりました。そうある人間だけに、私も、やはり大学は根本的に改革をしなきゃならぬ、そんな思いでこの法案の行方を眺めておりました。
 ただ、若干心配なのは、結論を申し上げれば、下手をすると、これは下手をするとでありますが、ますます文部科学省の影が強く当たるようになって、その影の結果ますます暗くなるんではないかと、その懸念を禁じ得ない内容の法案だとまず申し上げなければなりません。
 また、別の角度で申し上げれば、大学の本分から申し上げると、大学をより改革するということはどういうことか。それはよりよい学生というものを生み出していくということが一つと、それから、よりよい研究というものを生み出していく、大きく分けてその二つがあろうかと思います。
 結論を申し上げれば、本当にこの方向に改革が進められていくのだろうかという懸念を感じるのでございますが、総論的な申し上げ方で恐縮でありますが、この法案の成立によって、学生たちはよりよい方向に向かうのか、また先生や教職員は、よりよい研究土壌に本当になっていくのか、その二点、簡潔で結構でありますから、お答えを願いたい。
遠山国務大臣 今回の国立大学の法人化によってねらいとしているものは、鳩山委員のお言葉をかりれば、まさに大学を明るくし、濶達にし、そして、そこにおける教員あるいは学生たちが本来のすぐれた教育あるいは特色ある研究をやってもらう、そして、社会からもその存在意義を認められていく、そういうものになっていかなくてはならないと思います。方向としては、まさにそのために私どもとしてはやっているわけでございまして、下手をしてそれが逆に暗くなるというようなことには絶対してはならないと思います。
 今回、大きな枠組みとして、独立行政法人の枠組みの中で考えるという閣議決定のもとにやってはおりますが、私どもとしましては、最大限、そうではなくて、大学の特性、特に国立大学の負う社会的使命というものにかんがみまして、できるだけ大学の自治あるいは大学人の自由濶達な発想というものが実現できるような、そういう制度にしようということで今日まで一生懸命やってまいりました。
 そういうことでございますので、私といたしましては、大学自体が活性化をし、みずからの目標というものを明確にして、そして改善をしていく、改革をしていくということによって大学が魅力的なものになっていくということが、まさに学生のニーズにこたえられるわけでございます。
 ちょっと抽象的に過ぎますので、具体的に申しますと、法人化後は、学生のニーズに対応した柔軟な学科、コースが編成できるようになる、あるいは学生による授業評価等も踏まえた教育内容、指導方法の改善が行われる、あるいはスチューデントサービス内容の充実などによって学生の視点に立った教育というものが従来以上に実現されるようになる、またそうでなくてはならないと考えております。
 私どもとしましては、今委員のおっしゃいましたようなことはまず第一に守るべきこととして、心して対応してまいりたいと思います。
鳩山(由)委員 今大臣がお話しされたとおりであるんですが、そうなるかどうかということを一つ一つ具体的に申し上げていかなきゃならぬと思います。
 すなわち、大臣のお話しされたことで正しいと思うのは、なぜ大学が暗いかといいますと、本来持てるはずの能力を、大学を構成している人たち、それは教職員も学生も含めてでありますが、持てる力が十分に引き出されていない、それをいかに引き出すかということで、そのために改革があるんだというふうにお話がありました。
 それでは、一つ一つ伺ってまいりますが、例えば、学生にとって一番心配なのはというか、私は自分で大学におりましたときに感じたんですが、学生に覇気がない。なぜか。一言で簡単に言えば、受験戦争に明け暮れて、受験戦争の申し子のような形で、まあ勝ち組なのかもしれませんが、それに疲れてしまって、もう大学に入ったら目的が達せられた、数年間は遊んでやれと。それも必要なことだとは思いますが。また、四年になると、特に文科系を中心として、あとは就職活動だという話になって、本気でまじめに大学生活を送っているのかどうか。
 私は、アメリカに参ったときに大変びっくりしたのは、自分がそうでなかったからびっくりしたのですが、寮に戻りますと、もう彼ら学生たちは、食事が終わった後、夜中の一時、二時ぐらいまで、部屋はあけっ放しですが、机に向かってずっと勉学をしています。
 そういう環境にあることは、少なくとも今の大学も、かつての大学もそうですが、覇気がないという意味においては変わらないんではないか。そういう意味で、例えば受験地獄のようなものに対してこの法案は何らかの意味を持つものかどうか、お尋ねをしたい。
河村副大臣 鳩山先生御指摘のように、我々もまたそういう思いを同じように抱いておるわけでありまして、日本の大学は変わっていかなきゃいかぬと言われるのはまさにその点にあるのではないかというふうに思います。
 これは、国立大学、私学ともにそうでありますけれども、大学の授業そのものに魅力を感じるというか、目を開かされるというか、そういうふうなものになっていかなきゃならぬと思いますが、教える側の教授陣といいますかそういう方も研究重視、ややもするとそういうことで、いわゆる学生に対するいい意味でのサービスといいますかそういうものが欠けているのではないかという批判もあります。そういうものを、今回の大学法人化によって、一つの契機として、これを一つの刺激剤として新しく生まれ変わっていかなきゃいかぬ、こう思っておるわけでございます。
 そういう意味では、各大学がそれぞれ独立の形をとっていくわけでありますから、もっと国民の前にもずっと開かれた形になって、これまでの文部科学省の中にあった組織が出ていく、それによって競争関係も生まれる、そうすると、どこの大学がいわゆる特色を出して、学生に対してのサービスもやっているかということも競争になっていくであろう、こう私は思っておるわけでございまして、今後、カリキュラムのつくり方とかそういうものについてもその大学の独自性を出すようにさらに努力をしてもらえるのではないか、こう思っております。
 また、そういうことがやりやすくなる。例えば、学部一つつくるにしても、今までは文部科学省の仕組みの中で一々お伺いを立てるといいますか、また、文部科学省もそれを指示するというような関係があったわけでございますが、そういうものが非常に自由にやれるようになっていくという面で、それぞれの大学がそういう意識を持ってもらえるんじゃないか、このように私は思っておるわけでございます。
 もちろん、一般に言われているように、大学生に対する入り口、出口論ですね、今の受験戦争のこと、これでもうほっとしちゃって、ある意味ではほっとするのか、疲れてしまうのか、十分勉学していない。最近の先生方の話を聞いても、静かだと思ったら携帯でメールを打っている、でなきゃ寝ている、こう言われる酷評もあるわけでございまして、それをいかに今後活性化するかということが私は大学の大きな使命だ、こう思っております。
 そういうものが今回の法人化によってまさに改められ、活性化していくということを大いに期待しておりますし、またそうなっていかなきゃならぬ、こう思っておるわけでございまして、そういう学生中心の大学運営というものを十分心がけていただける、そのための法人化である、このように考えておりますし、また、学生からもそういう意識で、学生の授業評価等々も大いに入れていくという方向でやっていくわけでありますから、必ずや大学の活性化につながる、このように確信をいたしております。
鳩山(由)委員 そうなってほしいものだという意欲の表明ではあろうかと思いますが、今河村副大臣がお話をされましたように、では例えば、入り口、出口論というお話をされましたけれども、もうおわかりでしょうが、今までは、入り口は厳しく、入った後は、出口はもうあけっ広げである、入ったら出られる、そういうような大学であった。それがこれからは、入り口は、間口はできるだけ広くする、しかし出口は厳しいですよ、きちっと審査しますからねみたいな、そういう大学に本当になっていくのかどうか。
 これはしかし、今でもやろうと思えばできたはずで、今までできなかった。これが新しい大学のシステムになったらなるのかならないのかというのは、大学次第の部分もあって、本当に教員にそういった意欲が出てくるのかどうか、私は甚だ疑問だと実は感じております。
 なぜこういうことを申し上げるかというと、こちらに肥田委員もおられますが、私もいろいろと、きょうも多くの傍聴の方が来られていますが、傍聴の方々を含めて関係者から大変厳しい御意見もいただいていますし、また、文科省を中心として前向きな御意見もいろいろと聞かせていただいています。ただ、抜けているのは、先ほど遠山大臣が、学生の立場に立って、学生の視点からというお話をされましたけれども、私が少なくともいろいろと関係資料を読みましても、学生の立場から見てどういう改革が望ましいのかという議論がとうとうと並べられているというふうには決して見えなかった。例えば文科省の立場とかあるいは教職員の立場がどう変わる、そういう話は結構ありますが、必ずしも子供の立場、学生の立場に立っての議論、そちらを視点とした議論が私は一番大事だと思うんですが、そこの議論が欠けているのではないか。いろいろな方の話を伺っても、どうも欠けているなと思うものですから、あえてきょうは、どうも最後の日になるのかもしれませんが、ここの部分はしっかりと伺っておかなきゃならないと思っております。
 そこで、今河村副大臣がカリキュラムの話をされました。私もスタンフォード大学のときは、大学に入った瞬間にこのぐらい分厚い電話帳のようなカリキュラムの本を一冊もらいまして、その中で、自分がどういう方向に進みたいかということで、極めて細かい、きめ細やかなカリキュラムの指導がありました。こういうことが今までは必ずしもなされていないで、ややもすると、教授、教員の方々の関心のある分野はかなりカリキュラムは細かいけれども、そうでないところは完全に抜け落ちたりしている。すなわち、学生の立場に立ったカリキュラムになっているか、学生の立場に立っていない、ある意味で教職員の興味の範囲の中でのカリキュラムになっているか、これは結構大きな違いだったと思っていますが、これは、それでは正しい方向に是正されると見てよろしいんでしょうか。
遠山国務大臣 お答え申し上げますけれども、先生は今シラバスのことをおっしゃっていると思いますが、今や国立大学、私立大学を通じて、大学側が、そこで行われる授業について、詳細にわたる授業内容あるいは試験のやり方あるいは参考資料等について、すべての教員が年間の計画を立てて、学生に、入学と同時に、あるいは学年の始まりと同時に、あるいはその前に示すというのは通常の常識になっております。これはもう一九九〇年代の大学改革において、学部教育の充実ということで真剣に取り組みが始まっております。ですから、私は、そのような大きな改革が今既に行われている、それをさらに加速するということだと思います。
 それからもう一点、ちょっとつけ加えさせていただきたいと思いますが、委員が冒頭におっしゃいました、日本の大学は暗いという御印象につきまして、私は最近非常に興味深い話を聞いたことを思い出します。といいますのは、それは非常に国際的にも活躍をしている若い研究者あるいは教授でございますけれども、その人の話では、日本の大学の一番の問題は、教授たちあるいは助教授たちがいろいろな大学の雑務に追われ過ぎている。アメリカの場合は、それがきちんとした分業体制をとっていて、教員の中で、アドミニストラティブなことをやる、あるいはリサーチ・アンド・エデュケーショナルなことをやるというふうに明確に区分している。そこのところが、新たに法人化されれば非常に日本もそういう大学の意思によってそれができるようになるということで、大変期待しているという話を聞きました。それはまさに、学生たちのためにそういうふうでありたい、自分たちのためにもそうでありたいという一つのサジェスチョンであると私は聞きました。
鳩山(由)委員 多少話を、別の視点から同じことを申し上げたいんですが、私もかつて助手を東工大時代、四年半務めておりました。私の息子も今春から助手になりました。お父さんと言われて、助手は正確な専任教員としての身分じゃないようだよという話を聞きましたが、それはどうなんでしょうか。
遠藤政府参考人 国立大学の場合で申しますと、助手につきましては、正式の教員、常勤の教員という位置づけになっております。ただ、学校教育法上、助手の職務としては、教授の職務を助けるといったような規定になっておるということでございます。
鳩山(由)委員 ただ、いろいろと大学設置基準などを調べてみますと、助手という立場は、今お話ありましたように、教授あるいは助教授の演習、実験などを手伝いするみたいな話で書かれていまして、専任教員の定員のところには一切記述がありません。どうもそこが不思議だなと思っておりますが、純粋な意味での専任教員の枠に入っていないのではないかと改めて指摘を申し上げておきます。
 そんな身分のことよりも、私が申し上げたいことは、実は、こう言うと語弊があるかもしれませんが、教授よりも助教授、助教授よりも助手が勉強しています、研究しています。彼らは大変能力があります。そういう能力が必ずしも学内で、いわゆる子供たちに、学生に教育を与える、施すという意味において十分に助手という大変な財産が使われていないのではないか、そこのところを大変心配をしておりますというか、大変もったいない話ではないか。
 私が申し上げたいのは、カリキュラムを細かく書いてありますということではなくて、むしろ、私などは、アメリカに行ったときには、日本人ですから外国の留学生であります。その留学生に対してもきめ細やかに、どういう山に登りたいかということに従ってステップを非常に細かくつくってくれてありまして、その山に登れるようになっている。それも変わってきているんだというお話だとは思いますが、私が申し上げたいのは、しかしそれでも、助手も、能力にもよるかもしれませんが、本来は一番彼らが学生に接していて、そして学生の気持ちもわかって、一番研究をしている人間にもっと教育の機会をどんどん与えることによってカリキュラムを倍ぐらい充実させることができると申し上げたいのでありまして、そこのところがこれからぜひ大学改革の中で、特に国立大学の法人化の一環の中で十分に施されていかれるように強く期待をしておきます。よろしいでしょうか。
遠山国務大臣 御指摘の点は本当に大事なことだと思います。
 大学側が、大学人がそういうふうな助手の使い方、あるいは講義のときに助手も十分その能力を発揮できるようにチャンスを与える等のことは今でもできるわけでございますが、どうもその根底には、国家公務員ということでさまざまな規制があるということから、あるいはそういうのではないかという前提があって不作為が生じているということだとは思います。しかし、今回、法人化によって、そういったことが全く規矩もなく、制度的にも各大学が自由にできる。例えば、若い人で本当に優秀な人には、私は、大学によってはサバティカルを与えて外国に行くなりあるいは研究をするなり、没頭させることもできると思います、助手なり、助教授なり、教授の中でも。そのようなことがこれからはもっと自由にできる。
 今までだってやろうと思えばできるのですが、何らかの制限があるという前提のもとに不作為であったと思います。しかし、今回は、明らかに制度として、そういったいろいろな教職員の仕事の分担、あるいはだれかに特定的に授業時数を減らすだの、あるいはサバティカルを設けるだの、それは、認められた六年間の人的あるいは物的な制限の中ではありますけれども、自由にできるようになるということでございまして、まさに大学が、その大学みずからの意欲と、それから、しようとする努力そのものが問われていく。それが結果的に社会的に評価されて学生が魅力を感じて入るかどうかということになってまいると思いますが、まさにこれからは大学自体の対処の仕方というものが問われてくる時代になると思います。
鳩山(由)委員 それでは、それに関連して、教育と研究に対する評価の問題に関してお伺いをしたい。
 私は、大学の役割というのは、研究以上に教育に重きを置くべきである、これは持論なんですが、そう思っております。なぜならば、本当に研究をしてそれを世の中に、あるいは産業などに役に立てたいと思えば、そちらの方向の方が、いわゆる民間の研究所の方がはるかに予算的にも潤沢でありますだけに大きな仕事ができる仕組みになっているはずです。そういうことを超えて、むしろ大学には基礎研究のようなものをじっくりと行う、予算はそれほど潤沢ではないけれども、それだけに基礎研究などを十分行いながら、しかしそれ以上に教育に、子供たちに、未来の日本を背負う子供たちが生まれるように指導していく役割の方が、はるかに私は大学の教員としての役割が大きいと思います。
 ところが、どうも、本当に大学が法人化されるとそちらの方向に行くのかどうか。むしろ、教育というものは評価をしにくいものだから、研究の方が評価がしやすいという発想があって、研究で今までも先生方は評価をされてきた。これからはますますその傾向が強くなってしまうと、結局、子供たちが、学生たちが取り残されるということになるのではないか、私は、その心配、懸念というものを払拭し切れないのでございます。
 この教育の評価ということに対して、これは御承知だと思いますが、東大の佐々木総長とオックスフォード大学のコーリン・ルーカス副学長が対談をされておられて、その中に、何がよい教育かについての真の認識がないので、どうも教育を評価をしようという発想になると、学生たちにいい思いをさせたい、学生たちに喜んでもらいたいと思ってパフォーマンスに走りがちだということが書かれております。そしてまた、教育の本質というものが現実には非常につかみにくいもので、教育の評価をするのに相当なコストがかかり、教員の士気も大変に下がり、結果として時間のむだ遣いになっている。少なくともオックスフォード大学、英国においては教育の評価というものはうまくいかなかったというふうに佐々木総長に述懐をされておられます。
 こういう状況の中で、日本は、おくればせではありますが、教育に対しても評価をしようという。そこで、同じように教員の士気が破壊をされ、時間のむだ遣いにならない手だてというものをお考えなんでしょうか。
遠藤政府参考人 従来から、大学においては、研究を第一に考えて、教育の面がおろそかになっているんじゃないか、こういう御指摘があるわけでございますが、近年では大学、短大への進学率が五〇%になっておりますし、大学だけでいいましても四〇%ということで、やはり大学の第一の使命は、御指摘のように教育である、こういうことで、どこの大学でも、今や教育の質をどうやって上げるかということに力を注いでいるということがあるわけでございます。
 確かに教育の評価というのは難しいわけでございますけれども、その中でも、いろいろな取り組みの一例でございますけれども、教員の教育面での業績評価ということを大学自体が行う、そういう大学もふえ続けておりまして、私どもの統計で見ますと、もう百三十六大学で、大学の約二〇%ぐらいになりますけれども、そういったような取り組みも行われておりますし、学生による授業評価、これも功罪いろいろあるかと思いますけれども、これも大体もう八割近い大学が行って、そういう学生の声を教育をよくする一つの手だてに使おう、こういうことでいろいろな取り組みもなされておるわけでございます。
 ちょっと御質問の趣旨と少し外れるかもしれませんけれども、例えば、私どもの取り組みといたしましても……(鳩山(由)委員「簡単でいいです」と呼ぶ)教授の資格ということでも、今までは教授の第一の資格というのは教育研究の能力ということでございましたけれども、平成十三年に設置基準を改正しまして、教授の第一の資格は教育上の能力である、学生にきちんと教育ができる能力である、それがまず教授の第一の資格だという設置基準の改正もしておりまして、これからはやはり大学では教育が第一ということだろうと私どもは思っておるわけでございます。
鳩山(由)委員 何か、教育は大事だという意欲だけはおっしゃったんですが、現実問題として、果たしてそれで教育の評価というものが十分にできるのか。少なくとも、今お話を伺った限り、私も三十数年前にアメリカで教育を受けたときには、試験の最中に先生が姿を消して、先生の評価をここでしなさいという、これをやるとみんなまじめに書くんですが、日本でやったらまともに書くだろうか、いい点をくれる先生はいい評価をするみたいな、そんな話になるんじゃないか、非常に間違った方向にならなきゃいいがとうわさをした覚えがあります。
 必要なやり方だとは思いながら、現実に果たして日本の風土に合うか合わないかということは、イギリスでもうまくいっていない中で、果たして日本で教育が正しく評価をされるか、私は改めて、そこは意気込みだけではなくて、本気で正しいやり方を探していただきたいと申し上げておきます。
 それから、時間がなくなってまいりましたが、研究の評価というものは教育ほど難しくはないのかもしれません。ただ、それでも、先ほどのルーカス副学長は幾つかのことを話されて、結局、評価期間中にプロジェクトとして答えが出せないようなプロジェクトはどんどん消えてしまっているんだ、すなわち、中長期的な目標というものがなかなか立てられない。一言で言えば、野球でいえば、ヒットを打つ人間は好まれるけれども、大きなホームランをたまに打つようなバッターは余り好まれない。論文の評価、例えば、これは先週でしたか、参考人の質疑の中で、広島大学長の牟田泰三さんが、学術の評価は簡単なんだ、なぜならば論文数など数値で評価できるから、こういうふうに簡単にお話をされていますが、私は、これは事実ではない。論文というものの数が多ければいいという話じゃなくて、今申し上げたように、やはり大きな仕事をやるには時間がかかる、そのことを認識されて、ある意味で大学というのは研究においてもリスクというものを国内で唯一とれるところではないか。研究機関だとなかなかリスクを負いにくいですが、研究において、もし失敗してもということでもリスクを負えるところが大学であって、それが例えば六年間に評価が出せなかったら、その後、こういう研究はもうむだですねというふうにわからない人から烙印を押されたらたまったものじゃないな、そんな思いがあります。
 そこで、このルーカス副学長がお話をされているのはフェルマーの最終定理の話でありまして、フェルマーの最終定理は、河村副大臣、御存じですよね。Xのn乗+Yのn乗=Zのn乗というこのX、Y、Zが整数解があるかどうかということで、これはアンドリュー・ワイルズさんという方が九五年に解答を見つけたわけでありますが、n=二の場合は簡単なんですよ、三、四、五というピタゴラスの定理がありますから。しかし、フェルマーの最終定理はnが三以上のときには実は整数解はないという、これをワイルズさんは十二年から十五年かけて解いたんです。いちずにこればかりやっていた。これをやって、ではどういう評価がされるのかどうか、学術的にどういう意味があるのかというのは私にもわからないところはありますが、しかし、有名なフェルマーの最終定理を解いたわけですね。
 こういうことはこれからの日本の研究の中でなかなかできにくくなるのではないかという指摘に対して、どう答えますか。
河村副大臣 私は、やはり学術の研究の中には、人類の福祉向上にすぐに役立つようなものと、しかし、やはり人類が飽くなき知識欲といいますか、そうしたものを高めていく、そういう役割も多くあると思うんですね。小柴先生がノーベル物理学賞をお受けになったときのお話で最初に言われたのは、私のやったことは、今すぐに国民がこれで豊かになるとかということじゃないんだ、しかし、やはり人類が飽くなき欲求で未知のものに向かって研究を続け、そういうものを見つけていくという、このとうといことにもしっかりひとつ力を入れてくださいと強く言われたわけであります。
 私は、今の定理を残念ながら鳩山委員ほど詳しく知らなくて、名前を聞いたことがあるぐらいのことでお恥ずかしい次第でありますが、私は、やはりそういう研究というものをきちっと評価をしていかないと、まさに人類が求めていく知識とかそういうものが欠けていくことになるんではないか、こう思っておりますので、今先生の御指摘をまつまでもなく、私は、小柴先生のお話を聞いて、やはりそういうこともきちっと位置づけていくことが非常に大事なんだという思いを抱いておるわけでございます。
 そういう意味で、評価の仕方はいろいろあるのでありますが、特に今重点を置かれているのは、COEやなんかの評価を今からやるわけであります、各大学、今いろいろ要望が出ておりますが、それも一個人が何か卓越した研究をしているということも大事だけれども、それを組織全体で、まさに助手のお話もありましたが、そういう方々が一緒になって取り組んで成果を上げているかどうか、また期待が持てるかどうか、そういうことも評価しようということで、そういう意味での評価をきちっとやらなきゃいかぬと言っておるわけでございます。
 そういうことの総合的な中で評価されるということも大事だろう、私はこう思っておりますが、今鳩山先生御指摘のようなそうした研究というもの、そしてそれは未来のことにかけて時間がかかるものであるということも理解を求めていかなきゃならぬ。ある程度いって結果が出なかったらそれで切るというよりも、これは未来にかけてもやらなきゃいけないことであるという、その価値観といいますか、そういうものをやはり評価機関の中できちっと認めていく。評価機関等々に置かれる学者の先生方もそういう意識は持っておられるんだろうと思いますが、文部科学省もそういうことをきちっと位置づけていく必要があろうというふうに感じております。
鳩山(由)委員 位置づけていかなきゃならないということ、まことにそうで、本当にそうやっていただかなきゃならないんですが、現実問題として、私もかつて科研費というものを審査したことが下請であるんですが、下請なんてやってはいけないのかもしれませんが、わからないですよ、現実問題として。見たことも聞いたこともないような分野に対して、一日の間で電話帳みたいに厚いところから三つぐらい優秀なものを選んでくれと言われてもさっぱりわからないから、いいかげんにマルをつけましたけれども。まずいかな。
 そのぐらい、本当は研究の評価、少なくとも独創的な評価ほど難しいんですよ、評価するのは。それを一律にというか、こういう機関でできるようにしたいと言っても、私は非常に不安でして、逆に、今までのように自分の信念で自由に、勉学をあるいは研究をしたい人たちに自由にやらせた方がよほどよい結論が得られるんではないかというふうにあえて申し上げておきます。
 いろいろと申し上げたいことがあったんですが、かつて中曽根元総理とお話をしたときに、文部大臣をかつて経験された中曽根元総理は――失礼しました、中曽根元総理は文部大臣をなさっていないですね、御子息はされていますが、文部省不要論というのをそのときにお話をされていました。その話はきょうは遠慮しておきますが、ある意味で、今回、例えば中期計画などというものも、文科大臣がしっかりと判こを押さなきゃだめだというようなことにするのはおよしになった方がいい。これは、介入することはろくなことじゃない。
 さっき最初に申し上げたように、大学の研究教育の風土というものがより暗くなるばかりだ。なぜならば、学長や、あるいは教職員の方が、失礼な言い方を省みずに申し上げれば、文部科学省の普通のお役人さんあるいは文部科学大臣よりも、本来、学長の方がそのことに関しては頭がよくて見識があるはずなんですから、だから学長をやっているわけでしょう。ですから、彼らの自由裁量で目標を立ててやらせればいい話で、そこに判こを押さなきゃいけないというような介入は、決してろくな結果を生まないのではないか、私はあえてそのことを申し上げておきますが、御返答は結構でございます。
 最後に私が申し上げたいことは、実は、平野委員方の質問の中で、労働安全衛生法あるいは労働基準法の問題に対していろいろと尋ねたところ、答弁が、どう考えてもはっきりしない、つもりでありますみたいな返事であった。そこで確認をしておきたいと思いますが、この国立大学法人法案が通ったとして、その後適用されるようになって大学が違法状態に置かれるということは決してありませんねと、そこは確約していただけますか。
大石政府参考人 現在も国立大学においては、当然、安全衛生の面で種々御配慮いただいているというふうに伺っております。特に労働安全衛生法に準拠した形で人事院規則も設けられておりますので、もし来年の四月一日で違法状態ということは、恐らく現在においても何らかの問題が生じているということになるわけでございますので、その意味では早急な整備というものをお願い申し上げたいというふうに思います。
 来年の四月一日現在で労働安全衛生法の適用という形に変わった場合に、それに至るまでの間で私どもとしてもできる限りの御協力をいたしたいと思います。
 これまでも、各大学から、私どもの出先機関、地方の都道府県の労働局でありますとか、あるいは災害防止団体等にも、大学の意識も非常に高まっておる関係か、いろいろなお問い合わせもいただいておりますし、あるいは、大学でまとまって勉強会を開くのでそこに講師に来てほしい、こんな話があったことも報告を受けているところでございまして、来年の四月に向けて順調に作業が進んでいるものと理解しております。
鳩山(由)委員 それは大石さんとしては、安全衛生部長の立場からはお願いを申し上げたいという話でありますが、それはむしろ、文部科学省として、絶対大丈夫です、予算もついていますという話にならない限り不安というものは消えないわけでありまして、一昨日の平野委員の質問に対しても、平成十四年度の補正と十五年度当初予算で合計二千六百億円がついているという話がありましたが、これは国立大学の施設緊急整備五カ年計画の三年目の関係の費用であって、その中の老朽施設の老朽改善対策費が一部充当されるという話であるわけですから、その老朽改善対策費の中で、まさに百六十九機関の実験施設の中で百五十六機関も改善点が指摘をされている、これが全部改善をされ、法的に万事十分になるというふうに、これは来年の四月一日までにならなければいけないわけでありますが、そこの部分に対して、文部科学省としては、大丈夫ですとここは太鼓判を押せるんですね。もう一回伺いたい。
河村副大臣 当然、大学側がきちっと対応して取り組まなきゃいけない課題でございまして、昨年の十月にこれに対しての調査をやっておりまして、改善すべき点も明らかになっておりますので、これにきちっと対応する、こういうことにいたしておるところでございまして、文科省の施設部長あるいは人事課長名で、各国立大学、あるいは国立高専、あるいは大学利用機関に対しても、そのことをきちっと通達もいたしております。これに対して予算は、先ほど委員の方からも御指摘ありましたような形で対応しなきゃなりません。足らないということであれば、それはもう補正を組んででもきちっと対応するということでなければいかない、こう思っておりますので、早急に改善をして万全を期してまいりたい、こういうふうに思います。
 これは、法律なんかを見てみますと、健康安全管理体制なんかで産業医等々も置かなきゃいけない部門も出てまいります。そういうことについても既に調べてありまして、例えば、東京工大に医者がいるのかということでありますが、保健管理センターにきちっと資格を持った者がいるというふうなことも調べてあるわけでございます。
 そういう意味で、特に、化学物質を使う建物がたくさんあるわけでございまして、そのうち改善を要する建物がどれだけあるということもわかっておりますので、そういうことについてもきちっとした対応をさせてまいります。
鳩山(由)委員 きちっとした対応が本当にとれていればいいのでありますが、どうもそこのところ……。
 それでは、河村副大臣あるいは文部科学省、百六十九機関の実験設備のうち百五十六機関で改善点が指摘されたと。これは文部科学省が調査をしたわけですよね。すなわち、三万八千室の化学実験施設のうちの三分一の一万三千室がおかしかったというわけでありますから、これを全部、文部科学省としては調査をされているのであれば、当然幾らぐらいのお金がかかるかということも調査をされているはずでありますが、改善するためにどのぐらいの額が必要なのか。これはきちっと見てみませんと、我々として、最終的に国会議員として法案を通した、結果として、一年たってみたら法律に矛盾している、違法的な状態になっていたということになれば、当然、国会議員としての資質が問われる話でありますから、これだけは断固として我々とすれば許すわけにはまいらないわけでありますから、ぜひ、この部分の資料は今直ちに提出いただけますか。
萩原政府参考人 お答えいたします。
 昨年、通知を出しまして、現状を調査し、改善対策を立てるようにということを言っておるわけでございますが、今現在、その所要額をつかんでおりません。一昨日の石井委員のときにもお話ししたわけでございますが、大至急、その数字を把握しまして御報告をさせていただきたいと考えております。
鳩山(由)委員 その額がわからないで、来年の四月までに、法律に対して違法状態にはならないと断言できるわけないじゃないですか。おかしいでしょう、皆さん。単純に考えても、私の頭でもこれはおかしいとわかるわけでありまして。
 それでは、もう時間がなくなってまいりましたが、これはできるだけ早い時期に、少なくとも参議院でまだこれから審議をすることになるわけですから、本当は衆議院でもここで扱っていただきたい話ですが、できればきょうじゅうに、本来ならば、我々が賛否を決める前に資料というものを提出していただいて、それで、ああ大丈夫だなと。我々、国会議員として法を犯すようなことだけはやりたくありませんから、法を犯さないためにも、今調べている最中ですなんというのは冗談じゃないですよ。
 そういう話じゃなくて、きちんとこうやっています、それで、ここの部分、河村副大臣が補正予算をつくると言うのなら、補正はどのぐらい立てるということになっているのかなっていないのかというところも含めて、きちんと我々に説得をしていただかなければ、これは当然認めるわけいかぬじゃないですか、国会議員として。そうでしょう。
 ぜひ、このことをお取り計らいいただきたいですし、一つだけ確認をしてまいりますが、それでは……
古屋委員長 鳩山委員に申し上げます。
 質問時間が過ぎておりまして、大臣が参議院に出席がございますので、よろしくお願いします。
鳩山(由)委員 わかりました。一言だけ申し上げます。
 来年の四月までに、この対策が終了しないで違法状態が生じたときには、当然、この法律自体、施行できなくなりますから、凍結しますね。そこはよろしいですね。
遠山国務大臣 違法状態であれば、現在も人事院規則ですか、それに違反しているわけでございますから、早急にこれは直すべきものでございまして、これは施行される前にしっかりと対応いたします。
鳩山(由)委員 答えになっていませんが、時間がなくなりましたら、これで終了します。
 ありがとうございました。
古屋委員長 午前十時四十五分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午前九時五十五分休憩
     ――――◇―――――
    午前十時四十六分開議
古屋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。松原仁君。
松原委員 民主党の松原仁であります。
 国立大学の問題でありまして、今議論がされているわけでありますが、そもそも、国立の大学が、日本の場合は、特に明治維新以降、富国強兵政策というふうな中で、官営工場がつくられたりしたわけでありますが、なぜ国立大学がつくられたか、これに関しては、きちっとしたそれに対しての文章はないというふうにも言われております。しかし、その本質的な、国立大学がつくられた経過、経緯、その部分に関しての検討とか総括が当然行われていなければ、その流れを受け継ぐ国立大学でありますから、今回の議論も土台がない議論になってしまうと思うので、明治のときに今の日本の国立大学をつくったそもそもの理由というものについて、お答えをいただきたいと思います。
遠山国務大臣 これは、詳しく申し上げますと、帝国大学令を引いたりいたしまして長々となりますので、私から、当面、簡潔にお答えしたいと思います。さらに御質問があれば、政府参考人の方からお答えさせていただきます。
 我が国の国立大学、これは、戦前におきましては、大正七年の大学令の制定によりまして私立大学が設置されるようになりますまで、大学は、帝国大学や官立大学のように国が設置するもののみでありまして、高等教育の中心として国家枢要の人材の育成といった使命を担ってまいったところでございます。
 戦後は、大学だけではなく、実務家養成を担っていた旧制専門学校等も統合して、昭和二十四年に全国七十校の新制国立大学が発足いたしました。そして、私立大学も拡充いたします中で、国公私立の大学が、それぞれの設置形態のもとで役割を分担しながら、教育研究水準の向上と、それから全体としての多様かつ特色ある発展を遂げてきたところでございます。
 このうち、国立大学はどういう役割かということで考えてみますと、今日まで、日本の学術研究と研究者養成の中核を担ってきたこと、そして、全国的に均衡のとれた配置によりまして地域の教育、文化、産業の基盤を支えて、同時に、学生の経済状況に左右されない進学機会を提供するというような重要な役割を果たしてまいっております。一方、私立大学の方は、各大学の建学の精神にのっとって自主的な運営を行って、それぞれに特色ある教育研究を展開するというところにその特徴があると考えております。
 そのように、日本の大学制度といいますものは、国公私立大学がそれぞれの役割、個性に応じて力を発揮していってもらうということが重要であるというふうに考えております。
松原委員 今のお話でありますが、私立大学ができてきたわけでありまして、冒頭、大臣がおっしゃった、国家有為の人材をつくるということであれば、これは私立大学も国家有為の人材をつくるということは当然しているわけでありまして、私立大学と国立大学の相違点を含めて、国立大学というものがどういう使命を持っているのかというその原点ですね、今大臣がおっしゃった地方の部分という議論を含め、現状の国立大学は、当然地域の文化の拠点というんですか、地域の掘り起こしをしているわけではありますが、明治のときにできた原点は国家有為の人材をつくろう、私立大学ができた段階で国立大学と私立大学の相違点というのは一体どこに求めるのかということですね。それを端的に教えてください。
遠藤政府参考人 現在、国公私立大学があるわけでございますけれども、その国公私立大学が現在ではそれぞれの設置形態のもとで役割を分担しながら、教育研究水準の向上と全体としての多様かつ特色ある発展を遂げている、こういうことでございます。
 特に国立大学につきましては、今日まで我が国の学術研究と研究者養成の中核を担うとともに、全国的に均衡のとれた配置によりまして、地域の教育、文化、産業の基盤を支え、学生に経済状況に左右されない進学機会を提供するなど、そういうような役割を果たしているということでございますし、私立大学につきましては、建学の精神に基づきまして個性豊かな人材の養成といったような役割を担っておりまして、それぞれその役割のもとで発展を遂げている、こういうことだと思っております。
松原委員 私は、今回のこの法案で、特に文科省が中期目標に大いにかかわってこれをつくる、評価をするというふうなことを考えた場合、その是非の議論の前に、目的がどこまで明確なのかという議論がなければいけない。
 つまり、国立大学は明らかに私立大学に比べたら税金の投下量も多いというふうに言われているわけでして、今の遠藤さんのお話ですと、その違いというのはどうもはっきりしない。それぞれの設置形態に基づいてなんというのは、それは形態の議論であって、国立大学は何をするのかというところの明確な目標が、文科省の方々の中にも、今のような答弁で、では一体何を目標にしてなのか。目標に対しての評価というものは当然行われるわけですから、どうもこれは不十分な気がしてならない。この極めて重要な部分について、もう一回答弁をお願いします。
遠藤政府参考人 大学は、そもそも教育研究、そしてそういう力を使いまして地域に貢献をする、これはおよそ大学であれば国立、公立、私立一緒だと思いますけれども、しかし、その発現の仕方として、私が申し上げましたようなそういう発現の仕方になってくるだろう、こういうふうに思っております。
松原委員 私は、発現の仕方として、そういう発現になるというのでは――何、違うの。では、もう一回答弁して。
遠藤政府参考人 さっき言いましたような発現というのは、ちょっと場合によっては誤解のある言葉で、要するに、そういう大学の目的といいますか使命といいますか、それが実際の場面で、実際上の機能としてどうあらわれるかということで申し上げたわけであります。
松原委員 やはり不十分だと思うんですよ。
 私は、やはり国立大学の使命というのは、私立の場合は極めて自由なそれぞれの、自由といったら国立大学も自由は自由なんだけれども、国立というからには、特に私立大学もこれだけ存在する中において、一つの具体的な、特にこういうふうな、文科省が中期目標の立案や評価に関与するというふうなことを考えるのであれば、これに対してきちっとした明快な国立大学の目標、これを設置するべきだと思うんですよ。
 この目標は、今回は単純にかかる費用を軽減したい、これが目標なんですか。
遠山国務大臣 基本的なことでございますのでお答えさせていただきますけれども、先ほど、設置形態がただ国立、公立、私立だけではないかとおっしゃいましたけれども、実はこれは大変な意味がございます。
 国立大学といいますものは、国の意思によって行われるものでございまして、その設立あるいは廃止といいますものは、この国会にお諮りをして決めるわけでございます。それは、私立大学が、学校法人の自発的な意思によって認可を申請してきて、そしてそれを客観的な審議会にかけまして、そしてさまざまな検討の後に認可していくということによって設立されるものとは極めて違うわけでございます。ただ、大学という角度から申しますと、それは共通の点も、もちろん同じ点があるわけでございます。
 国の意思として設置してまいった、一々の国立大学の設置について国会にお諮りをし、今日まで来ているわけでございますけれども、では、それは何であったのかといいますと、先ほど申しましたように、総括して言えば、日本の高等教育の基盤的な、あるいは中核的な機能を果たすというふうに言えるかと思いますけれども、一つは、日本の学術研究、それから研究者養成の中核的な機関として使命を果たすという点。
 これは実は、例えば学術研究ということになりますと大学院の研究というものが重要になるわけでございますけれども、大学院について申せば、博士課程の六二%を国立で担っているわけでございますし、また特に理工系の場合には、修士課程で全体の六六%、それから博士課程で八五・九%を国立大学でやっている。そのような、数値で申すよりはもう少し質的なものだと思いますけれども、高度な学術研究の推進を行うというのが一点ございます。
 それから、地域の活性化への貢献というものがございますし、先ほど申した、高度な学術研究の推進と同時に、理工系人材については、社会のニーズに応じて修士課程あるいは博士課程に多くの割合を受け入れるということにおきまして社会に対する責務を果たしているわけでございます。
 地域の活性化への貢献あるいは大学教育の機会均等に貢献するということで、国立大学は学生の六割以上が三大都市圏以外の地域に所在しております。私立の場合は三大都市圏に七六%あるわけでございます。そのように、地域に全国的な均衡のとれた配置をもって、しかも学部間における授業料に差を設けない等の勉学の機会を与えるなどの使命を持っていると私は考えております。
松原委員 私は、今の答弁というのは極めて大事なことだと思うんですよ。国立大学は日本の国の意思を体現するんだと。私は、国家の意思というものを体現する、これは大臣は何げなく答弁をしたかもしれませんが、極めて重要な答弁だと思っておりまして、それは大事なことだ、むしろその部分は評価をしたい。
 ただ、そのことに関してのきちっとした、例えば明治維新のときだったら富国強兵、そういう一つのスローガン的なものもあった。だから、今の国立大学は日本の国益に対してどの部分で貢献するのか、これをもうちょっと明確に、こういうふうにやる以上は、それがやはり明確になっていなければ、単なる数字の部分の、これは経費がかかり過ぎるとか過ぎないとか、そういう議論になってしまうかもしれない。やはりそれをもっと明確に、例えば国際競争力を持つ産学協同を行うというのだったら行うと言って結構ですから、それを大臣、答弁してください。
遠山国務大臣 これは、すぐれた人材の育成、教育、そして先端的あるいは特色ある学術研究を実施するというのが一点ございます。そして、これらを通じて、さらには地域への貢献ということも通じながら、社会に対する大学としての役割を果たしていく、そこに大きな国立大学の使命があると私は思っております。
 もちろん私立大学におきましても、教育研究、そして社会貢献というのが大事な要素でございますけれども、国立大学として納税者の貴重なお金を投入して設立し維持する以上は、私は、大学としては、それは工場とか企業とは違いますから、目に見えた利益を生むというような角度では絶対論じてはならないとは思いますけれども、教育研究あるいは社会貢献というものを通じてしっかりと社会に役割を果たしていく、その中核部分を国立大学としては担うべきだというふうに考えます。
松原委員 それは工場ではないわけですけれども、しかし、私は、やはり今の日本の特に国益、我々の日本にとってどこまで国立大学が貢献するのかということを問う視点から、当然、今回の新しい法案は精査されなければいけないと思っていますから、今おっしゃった部分の議論からいくと私は不十分だと思います。ただ、国家の意思ということをおっしゃった部分については、私はそれは大事なことだ。国家の意思が何なのか。この大学において、私立と違うんだから、税金を使っているんですから、まあ私立も使っているけれども、これをどういうふうにやっていくのか。例えば、いろいろな新産業分野において、海外に負けないようなところまで持っていくんだとか、そういう具体的な目標をやはり設定して、それに対する評価というものを一方においてやっていくべきだと思うんですよ。
 日本の大学についての評価というのはさまざまな評価があるわけですが、ゴーマン・レポートというのがあって、ゴーマン・レポートの評価というのは大分下の方に評価をされているわけであります。この評価について、これはちょっと余り相手にする必要がないというふうなことを言う人がいるかもしれないけれども、私は、仮にそういう認識だとするならば、ゴーマン・レポートに対して何も言わないということは、それを知っている以上言わないということは認めたと同じなんだから、文科省として反論するなりなんなりのことをしているのかどうか。ちょっとこれを教えてください。
遠藤政府参考人 ゴーマン・レポート、かなり低い位置づけにされておりますし、御指摘のようにゴーマン・レポートに対するいろいろな評価もあります。
 私ども、やはり、評価が出た以上、それはその評価が果たしてどこまであれなのかということはありますけれども、やはり謙虚にそういう点は受けとめる必要があると同時に、また、いろいろな、ゴーマン・レポート以外の日本の大学に対する評価もあるわけでございまして、例えば論文の引用回数といったような、最近新聞にも出ておりましたけれども、アメリカの民間会社が調査した平成十三年度の状況ということでいうと、世界の論文被引用回数における我が国の占有率が九・二%で世界で四位だったといったいろいろな評価があるわけでございます。そういういろいろな評価を受けとめながら、いい方向に持っていくというのが大事なことだろうと思っております。
松原委員 私は、謙虚に受けとめるというふうにおっしゃると何か日本は格好よく聞こえるかもしれないけれども、別にそれは謙虚に受けとめなくてもいいと思うんですよ。ゴーマン・レポート、おかしいじゃないかと言い返すべきですよ、それは。自分の学問分野が海外の研究機関によってそういう非常に低い評価になったとき、謙虚に受けとめるなんというのは、それはもう自虐的な発想ですよ。やはりそれは言い返さなきゃいかぬですよ。私は、だから、ゴーマン・レポートに対して言い返すなら言い返せばいい。
 今の部分で、論文の引用数というのは日本はかなり水準が高い。さっきの鳩山さんの質問で、ヒットの数か、ホームランの数かというのは別の議論ですよ。ヒットの数ではたくさんあるけれどもホームランがないという議論かもしれないけれども、これは一つの評価としてあるでしょう。
 ただ、一方において、私が今言ったのは、国家の意思というものは国立大学には体現されるんだと大臣はおっしゃった。これは大事なことですよ、非常に重要な発言ですよ。国家の意思というのは、当然日本の国益というものを考えながらこれをきちっとやっていくんだということになる。そのときに国家の、ちょっと時間が既にあと十分なんですが、また違う側面にも触れたいと思うけれども、とりあえずは産学協同的な部分で国際競争に日本が勝ち抜いていくという部分の、そういう闘争的な部分の議論というのは当然この目標設置また評価において問われるわけです。
 スイスのビジネススクールが、経済に対しての大学教育の貢献度というのをチェックしているデータ、これは文科省に出してもらったものですからお持ちでしょう。これは、聞いたら、それぞれの当該国のエグゼクティブ、経営者が判断している。私は、ゴーマン・レポートは反論していいと思うんです。ただ、日本の経営者が日本の教育を評価して最下位としているというこのことに対して、これをどういうふうに認識するか。
河村副大臣 このIMDの国際競争力の話ですが、もう三年ぐらい前からこういう結果が出ておりまして、今回も最下位だ、こういう話であります。
 今おっしゃったように、これは、客観的にといいますか、そういう評価じゃなくて、経営者が今の大学に何を期待し、その大学から出てきた人材をどう評価するかという見方になっておるようでありまして、これは私は、企業人がかなり厳しい見方をしておられるという思いを第一に抱くわけであります。
 私は、かなりそこにはギャップというのがあるんだろうと思うのでありまして、これは、それぞれの経営者が集まって、ある程度基準をお互いに決め合ってやればもっと違った結果が出てくるんではないかと思いますが、日本はある意味では高い教育力を誇ってきた、その割にその期待にこたえていないという思いで評価をされておるのかな、こう思っておりまして、これについてはもうちょっと、それにこたえるには我々としてはどういうふうな形で大学教育をこれから変えていくか、また、その期待にこたえるにはどういうふうにしていったらいいかということは、これはそういう結果が出ているわけでありますから、経済界の意見もやはり十分伺わなきゃならぬ。
 これまで、ややもすると、日本が高度経済時代には、いわゆる平準化、標準化した人材をしっかりつくってくれ、あとは企業がもう一回再教育するというような意向もあったのでありますが、今こういう経済状態の中で、例えば工学部の教授なんかと話してみても、かつてはそうだった、人材をどんどんよこしてくれ、平均的な人材でいいから、あとは教育するんだと。しかし今は、きちっと教育をして、そして資格を取って、そして企業の要求にこたえられるような人材だというので随分変わってきた、こう実際に工学部の先生方は言っておられますから、そういう目で非常に企業人の見方が厳しくなっているんだろう、私はそう思っておりますが、やはり、それにはこたえるだけの努力は文科省はしなきゃならぬ、こういうふうに思います。
松原委員 私は、くどいようでありますが、日本の国立大学は、それは、日本の国家の意思を体現するんだ、いい言葉ですよ。そして、そのためには、国益のためのそういったことを、もう産学協同だけじゃないですよ、やらなきゃいかぬ。しかしながら、文科省の方に聞くと、論文の引用数はこれは大変なものだ、何かデータ的にアメリカの次ですか、非常に水準が高いと。しかしながら、日本の経営者で国際競争の中で戦っている人間が、自国に対して自虐的に見て言っているのかどうかという議論があって、自虐的だったら経営者の方の意識が違うということで、ここはしかしすり合わせをしなきゃいけないし、今副大臣がおっしゃったように、きちっとこの部分のこれを是正することが、結果的に、後世が今回のこれを評価するか評価しないかの一番のポイントになりますよ。変わったところが、依然として三十番のままだったと、これは三十番になっているけれども、これでは、いわゆる文部科学省の文部科学省による文部科学省のための法律だったというふうになってしまう。
 そうじゃないと大臣が言うならば、こういう人たちの認識の中でも、つまりそれは、自国、日本人のエグゼクティブが日本人の教育を評価しているんだから、これはいけるというふうにしなきゃいかぬと思うので、そのためにはどういうふうに評価するか、云々するかというところにやはり新機軸を加えなきゃいかぬと思うんですよね。大学に対して中期目標を文科大臣が決めるという中で、これが実際、達成できるんですか、大臣。
遠山国務大臣 私は、日本にももっと評価機関のすぐれたのが出てきて、諸外国の大学と比べて日本の大学はこんなにいいと言ってくれる評価機関がないかと思うぐらいでございまして、日本の中には、そういう国際的な評価機関、各国の大学を評価し自国の大学も評価しというようなのがまだまだ発達していないというか、まだないんですね。それほど日本にとって評価というのは、外国の評価を重視するということでございますが、副大臣も申し上げましたように、私は、IMDのは特に、日本の企業の人たちの期待値が高いのに比べて、どうも日本の大学というのは十分こたえてくれていない、そういう思いがあると思います。このことにつきましては、実は、二十世紀の後半におきまして、大学が産業と協同をするということについて強いイデオロギッシュな反対がございました。
 産学連携などということは、一九九六年以降に初めて私どもとしても行政的に取り上げられる事態になったんですね。今日ではもう、産学連携、産官学連携ということが大学の当然の社会的任務のように言われておりますし、そういうことを受けて、大学の特に工学あるいは農学、医学の先生方は、自分たちの研究が社会に役立つということが大変うれしいわけでございまして、今、産業界との連携が大変進んでおります。これは目を見張るぐらい進んでおりまして、ベンチャービジネスも立っている。また、我が方も、大学における知的財産というものを知的所有権としてしっかり確立する等々のさまざまな政策を打っております。
 ただ、私は、産学連携というのを大学の目的にしてはいけないと思います。大学は、すぐれた人材養成、そして特色がある研究というものを通じて、世界に冠たるいい教育研究をやっていただいて、その成果を十分に社会に反映していく、やはりそういう関係でないといけないと私は考えております。
松原委員 国の意思なんだから、産学連携という表現を使う必要はないと僕は思うけれども、ここの部分は、やはりきれいごとじゃないと思うんですよ。国家の、国益のための国立大学なんですから。私立は違いますよ、国立大学なんだから、その辺はきちっと目的を持ってもらった方がいいと僕は思うんです。
 それで、さっき、鳩山由紀夫委員がおっしゃった、日本の大学は暗いと。何で暗いというふうに思うのかということですね。私は、これは単なる直観ではないと思うんですよ。つらつら考えると、ある意味で、人間というのはずっと、いろいろなものを求めてきたけれども、豊かさを求めてやってきた。豊かさというものは、当然、例えば新しく冷蔵庫が出てくるとか、自動車が出てくるとか、クーラーが出てくるとか、そのことによって付加価値が伴ってきて、新しい豊かさというのが当然そこに生まれてくるわけですね。
 しかし、私は、豊かさというのはそれだけではないと思っているわけです。それは何かというと、やはり文化そのものが富をつくり出す。アメリカなんかは非常にうまいですよ。それは、ディズニーランドが出てきて、それで、そのものに物すごい財の価値があるわけですよ。自動車が百万円、ディズニーランドに一万円出して行く人が百人いれば同じことですから。それに対して金をアメリカの方が取っていく。
 いわゆる文化というのが、今まで我々は、加工貿易ですから、物を輸出するという観点でやってきたけれども、日本の場合、特にアニメーションなんかが非常に高い水準にあって、大学でアニメーション研究科というのがあるのかどうか僕はわからないけれども、結局、そういう文化というものが非常に富として認知される。ブランドというのもその一つのあらわれでしょうし、そういう時代に入っている。これは、商標をとったからいけるという話じゃないんですよ。その前段階として文化というものが来ることによって、発信することによって、これはそういう価値を生んでいく、世界的な、普遍的な。この戦略を日本はとるべきだと私は思うんですね。
 それがないから、単に物をつくるというような、日本はそこが得意だということもあったけれども、その部分に特化し過ぎてきた。いわゆるポストインダストリアルソサエティーという言葉があるけれども、それに向かっての文化で、こういう文化様式というものを輸出して、そのことによって日本は富をかち得るんだ。そういうものがあれば、それは富をかち得るだけではない。富をかち得るだけではなくて、日本そのものが世界に対して一つの力を持つことになる。日本が平和を希求するならば、それはそれで力を持つことになる。そういうことをやらないから暗いんじゃないかというふうに鳩山さんは言うんだろう。
 文化的な輸出力を持とうとするならば、理工系の方は理工系の方の議論があるだろうけれども、いわゆる文化系の方も、実は冷蔵庫をつくる以上の富を文化系の方のそういったしぐさの中でできるんだ。こういうものについて文部科学省の人が評価できるのか、非常に疑問を持っているんですが、ちょっとおっしゃってください。
遠山国務大臣 私は、文化も実は経済力に反映すると思います。委員の御指摘は大変大事な点だと思いますし、日ごろ私もそのように考えております。
 今、我が省でいえば、文化庁を中心にして、例えばアニメを含む映画の振興策について先般報告が出ましたけれども、こういった、映画のように目で見える形の文化の日本が持っているオリジナリティーというものに世界は注目しています。今、アメリカのそういった産業の人たちが日本に来て、いかにしてああいうものが生まれるのかという秘密を探ろうとしているぐらいでございます。それ以外にも、私は、無形文化財なりさまざまなものの日本が蓄積してきた伝統、文化というものが、いかに世界の中で冠たるものかということは、次第にわかってきていると思います。
 その意味で、私どもといたしましては、教育・文化立国、そして科学技術創造立国というのが二つの柱でございまして、科学技術も大事ですけれども、製造工業というものは隣に中国がある以上なかなか難しい見通しもある。したがって、科学技術につきましてはどんどん先端を行く研究をしていくということがまさに大事ですし、他方で、文化、これについて日本が持てる潜在力をさらに活性化していくと同時に、また新しいものをどんどん創造していく。
 そういった両方、私は、日本の未来を担うのは科学技術であり文化であり、これらの発信力であり、そしてそれらの持つ経済効果だと思っております。そして、その根底を支えるのが教育であると思っておりまして、別にこれは我が省の全部の守備範囲を我田引水的に言っているのではなくて、それぐらいの大きな構想のもとに考えていくのが日本のあり方ではないかというふうに考えているところでございます。
松原委員 私は、そういったことを実行するためには今の閣法では限界があるだろうというのが基本的な発想なんです。つまり、文部科学省の中の方々を中心にした評価、実態としてその方々を中心にした中で、そこまで競争原理にもさらされていないという中でこれはできないんじゃないかということなんですよ。目指すものは国の意思だ、その方向性でやると。しかし、今議論したようなことを実現するには、結果として今のこの形では限界があるというふうに私は思っている。
 済みません、すぐ終わりますから。この間議論したときに、それぞれの国の大学から出してもらって認めるんだ、たくさんあるから一つ一つを文科省はやらないんだとおっしゃった。であるならば、それぞれの大学の意思決定に初めからゆだねる、中期目標はもう任せるというふうに言った方がはるかに自由度も出てくる。自由競争の中で、自由な発想の中で、今大臣がおっしゃったことも含め実現できるというふうに私は思っております。
 時間が三十分しかないので終わりますが、そういった意味では、今の議論の中で明らかになったこととして、僕は、それは方向として必要だ、しかし、それがこの法案のこういった中期目標や評価でたえられるのか、厳しいんじゃないかということを申し上げて、私の質問を終わります。
 以上です。
古屋委員長 山元勉君。
山元委員 民主党の山元でございます。
 質問に入ります前に、先ほどの我が党の鳩山委員の質問について少し確かめておきたいことが二つありますから、申し上げたいと思います。
 一つは、現在の大学の改善しなければならない件数、状況について話がありました。どれほどの件数があって、改善のためにどれほどの予算が要って、どういうふうに措置をされるのかということは、質問にはあったけれども明確な答弁がなかったわけです。鳩山委員は、我々審議しておる者に重要な責任がある、こう言われたんです。これは、きょうすぐは無理とすれば、次の参議院の審議の間にはきちっと明確にして、日本の国立大学は違法な状態に置かれないということがわかる資料を出していただくことをぜひ約束していただきたい。
 二つ目は、文科大臣が先ほどおっしゃった中で、現在の大学でも違法状態にある、こうおっしゃったんですが、これはゆゆしいことなんですよ。今の大学の条件については人事院が決めてやっている。けれども、切りかわったら労働安全衛生法がきちっと適用されるように改善するんだとおっしゃるけれども、今もずっと違法な状態が続いているんだ、違法な状態にあるんだ、これはゆゆしき問題です。
 ですから、この二つについて確認をさせていただきたいと思うんですが、御答弁を。
河村副大臣 私が大臣の答弁をお聞きしておった段階では、一応今、さはさりながら、人事院規則の中で現実に実験をやり、あそこで研究がされておる。その状況の中で、一応の基準があるわけですね、人事院規則。それにのっとってこれまできちっとやってきたわけでありまして、そのことそのものが法律違反を犯しているわけではないわけです。ただ、今度一般の企業的なものを当てはめるとすれば、新しい労働衛生法が入ってくる。そうすると、もっと厳格な面が出てくる。資格者を何名置けとか、そういうことになってまいりますから、そういうことをやらなきゃいけないし、施設的にも、もっと安全装置をつけろとか、そういうことがあるんじゃないかと、子細はまだ十分把握いたしておりませんが、私はそういうことだと思うんです。
 そこで、当然、新しく移管すれば、そういう問題が発生する部分については厚生労働省側とも十分協議をしながら、どうしても、これだと完全に違反状態だというものと、改善で済むものと、私はそういうものがあると思いますね。当面、まず調べたところ、法律にきちっと照らし合わせていくと、これは改善じゃないかというものを今出したわけでありますから、これはその中でさらにもっと精査をする必要があると私は思っております。当然、すぐ、予算的にもきちっとやらなきゃいけない問題、しかしここは危険度が低いので改善で済む問題とか、私はそういういろいろなことがあると思いますので、確かに、御指摘のように、来年四月の法人化に向かってはそういう視点の指摘がないようにやるということ、これは文部科学省として当然確実な対応をしてまいるということであります。
 それから、先ほどの数字の問題でございますが、この点については私もその数字が出せないかということを今協議しているわけで、出せる方向で、あらあらの数字でも全体的なものでも、実際に改善したらどのぐらいかかるんだということを出せないかということで、参議院ですからすぐになりますが、できるだけ急がせますが、今事務局に検討させておる段階だ、こういうふうに申し上げます。
山元委員 形態が変わって、労働安全衛生法だけではなしに、例えば労働基準法だとかさまざまな新しい法律適用があるわけですね。そこのところを違法状態にあるとけろっと大臣が言うような状況がそれぞれの部面で出てきたらえらいことになるわけです。きちっと厳格に、新しい法人としての大学の教職員なりあるいは学生なり施設について、こういうことが行われるんだということはしっかりとしたものを持っていただかないと、ずるずるっと看板だけがかわるということでは改革とは言えないということを承知しておいていただいて、資料についてはまたぜひ出していただきたいというふうに思います。
 そこで質問に入りますけれども、この法案については四月の三日から審議が始まりました。確かに統一地方選挙だとかあるいは連休があって、少し間が延びましたけれども、六回にわたって質疑をしてまいりました。けれども、私は、やはり実感として、審議が尽くされて国民の皆さんも理解あるいは支持をしている、我々もこれだったら努力の範囲内だ、こういう感じにはどうしてもならないわけです。
 そこで私どもは修正案を用意して、先ほど提出をして論議をしていただきたいと。これは以前から質疑の中で申し上げてきましたけれども、与党は、審議を尽くした、あるいはそれまでに十分な検討をしてきた、こういうことで、修正の協議にも入っていただけませんでした。
 私は、今の時点で、やはりこの大改革、大臣自身も本会議でおっしゃった、百年に一回の大改革だと。私は、言い方を変えると、国家百年の大計を誤るのではないかという危惧を今実感として持っています。そういう意味で、こういう場にいる私ども、大きな責任を感じます。この一つの法案で、お忙しいでしょうけれども、たくさんの傍聴者が、会場を配慮しなきゃならぬほどたくさんおいでをいただいて、これはやはり関心があって、安心だということになっていない、そういうあらわれだというふうに思います。
 そこで、私は、我が党の最終の質問者になってしまいますから、修正案を提出したポイント、大事なところと、そして、あえて賛成できないけれども、最低限の担保として附帯決議を私どもは提出をしたいというふうに思っています。
 そういう立場で、重要な点、先ほどから、あるいはきのうまでにずっと、大変たくさんのポイントの質問がありましたけれども、今のような立場で改めて確認する、そういう立場での質問をさせていただこうというふうに思います。
 最初に、これほど時間を急いで、少し乱暴なまでに審議を終結してこの法案を成立させようとする。一体、文科省が求めている日本の大学の明確な理念あるいは姿というものを、一言でと言ったらおかしいですけれども、もう一遍、改めて言うとどういうことになるんですか。
遠山国務大臣 今回提出しました国立大学の法人化法案につきましては、平成十一年四月の閣議決定以来、我が省におきまして、大学関係者はもとより、関係省庁あるいは各界の有識者などとの間でさまざまな議論を重ねて、四年の歳月を費やして検討を行ってきた結果でございます。
 私は、十分な議論と、特に大学関係者と国立大学長、あるいはさまざまな有識者など、ここにもその経過がたくさんございますけれども、そういった議論を通じて、これは大学のことでございますから、大学の学長たちあるいは関係者たちの意見を十分聞きながら今日まで来たと私は思っております。
 この法案は、このような議論の背景のもとに、国立大学がこれまで果たしてきた日本の学術研究と研究者養成の中核を担うということをしっかりやりますとともに、地域間あるいは分野間等のさまざまな面での日本の大学制度の調和のとれた発展に貢献するといった重要な役割を一層しっかりと担うことができますように、自主的、自律的な環境のもとで、より個性豊かな魅力ある国立大学に変革してもらおうということを目指しているものでございます。
 私どもとしては、そういう高い理想のもとに今日提案させていただいているというふうに考えております。
山元委員 高邁な話は何回か聞かせていただきましたが、すとんといかないんですよ。例えば私、今この四十五分の休憩の間に部屋へ帰ったら、どっとまたファクスが、きょうの採決まかりならぬというのがどっと来ています。それは国民の皆さん、とりわけ大学の当事者の皆さんが心配をしていらっしゃる。そういう高邁なことで四年間やってきたと言っても、これは今見えていないんだというふうに私は思いますよ。
 第一、今大臣がおっしゃった国大協の皆さんだって、きちっと束になって十分論議をしたということになっていない。この間も、お会いしたら、あるいは参考人としておいでいただいたときに、総会は六月に開く、六月だったらこれは成立してしまっているわけでしょう。そういう今の大学当事者の皆さんの対応にも私は問題があるとは思いますけれども、決して、国大協の皆さんが束になって、こういう日本の大学をつくるんだということに意思は統一されていないというふうに私は認識をしていますから、ここのところはやはり心してこれから対応していただかなきゃならぬのだというふうに思います。
 そこで、具体的なことですけれども、自治の問題です。
 今まで目標の設定だとかあるいは評価の問題についてたくさん出ました。大学、とりわけ国立大学の社会的な任務というのは、政治的な、社会的な圧力に屈しないで、学問的な真理に基づいて教育を行う、研究を行う、これが大学に期待をされているんだろうというふうに思います。だからこそ憲法の中にも学問の自由だとかあるいは大学の自治だということがずっとうたわれているわけですが、今度の場合、それが脅かされる第一の懸念は、やはり独立行政法人通則法を準用する。
 とりわけ、目に見えるので言うと、独立行政法人の認証機関が評価をする。これは文科省が設置する評価委員会とは別のところでやる。それは独立行政法人ですから、独立行政法人の理念に基づいて評価をするんでしょう、総務省が後ろにいて。そのことについては、大学の今申し上げましたような自治とか自由というのはそんたくされないのだろう。だから、国立大学の主務官庁、文部科学省が評価委員会をきちっと守るということでないといけない。
 ですから、我々民主党の修正案は、中期目標も計画も大臣がというのではなしに、各大学が目標を立ててそれを大臣が認める、それぞれ頑張りなさいよという姿勢で受けとめるというふうに修正すべきだと考えているんですが、今のような形で、あえて文科省という、こういうふうに文部科学大臣が定めるんだけれども、大学の自主性、自律性は侵さないんだ、そういうルール、配慮がきちっとあるんだということが言えますか。
河村副大臣 山元委員御指摘になりましたが、独立行政法人制度でまいりますと、このまま当てはめるということになりますと、例えば学長の任免等々について、いわゆるそこの理事長に当たりますか、代表者の任命は国の方から一方的に任命できるような形でありますが、これも独立行政法人制度と違って、この大学法人制度、いわゆる国立大学法人という名前をわざわざ別途設けたというのも、やはり大学の自治とか自主性とかそういうものを重んじ、そして大学改革がさらに進まなきゃいけないという観点からそうなっておるわけでございまして、そういう意味では、大学の自主性に基づいて、学長の任免の方法はまた新たにありますけれども、大学自身が決める、そして申し出に基づいてやるようになっているということが一点。
 それから、中期目標については、独立行政法人制度で考えれば一方的に中期目標も設けるわけでありますが、国立大学法人においては、文部科学大臣に、国立大学法人の意見の事前の聴取義務またそれの配慮義務ということもちゃんと課してあるということでありますし、今委員御指摘になりました評価についても、特に教育研究面については大学評価・学位授与機構の評価結果を尊重することとして、その中でさらに専門家によるそれぞれの学問分野ごとのきめ細かい評価、いわゆるピアレビュー、こう言っておりますが、これをきちっと導入するということになっております。
 そういう点を考えても、国立大学の自主性、自律性ということは十分配慮されておるわけでありまして、特にまた教育研究の特性への配慮義務といいますか、そこにも非常に力を置いておるわけでございまして、今回のこの法案によって学問の自由とか大学の自治というものが侵されるというよりは、むしろその点を十分配慮して、それの結果、大学というものが今までと変わって活性化していくということを私は確信をいたしておるところであります。
山元委員 河村副大臣が確信とおっしゃる。確信が持てなければこういう政治をしてはならぬわけですから、それは言葉としてはわかりますよ。しかし、やはり独立行政法人の手法に準じているわけですよ。あっさりと、それだったら、各大学が自分のところの伝統だとかあるいは目標だとかあるいは地域の特性だとか、そういうものに応じてきちっとした目標を立ててきなさいと。これからずっと大臣が、八十九の国立大学の特性だとか今までの経過だとかそういうものを一人でわかるわけには、ほとんど文部官僚の皆さんがやるわけでしょう。先ほども出てきましたけれども、例えば小柴さんの研究を評価するのはだれがやったんだということになる。
 だから、そういう目標の設定と評価というのは裏腹の問題ですから、やはり一番は大学の自主性、自律性だ、それぞれの大学が意欲を持って頑張ってくださいということが大前提での目標の立て方、評価のあり方ということにならなきゃならぬと思うんですが、河村副大臣は確信を持っているとおっしゃいますから、これはうそだろうということにはならぬわけですから、これはしっかりとこれから担保していただきたいというふうに思います。
 それから次に、大学の運営組織のあり方ですけれども、学長の位置づけというのが随分と変わります。大きな権限を与えて、そして役員会、経営協議会等、全部座長になるわけですね。そういう絶大な権限を持つ学長が、それにふさわしい人材が本当に選べるのか、選ぶ手順はきちっと明確になっているのかということの不安があるわけです。
 それぞれの国立大学、たくさんの学部をそれぞれ持っているわけですけれども、あそこの学部はこういう勉強をしている、こういう教育をしている、こういうことがしっかりとわかって、皆さんの民主的な意思によって大学を運営していこう、きちっとそういう立場に立って、そして、大学の学長みずからが高い見識を持っていらっしゃる、そういうすばらしい学長を選ぶのはなかなか至難のわざだと思うんですよ。
 そこで、そういう人を選ぶルール、これだから大丈夫だ、そういうすばらしい人が選べるんだというルールは、簡単に言うとどういうことになるわけですか。
遠藤政府参考人 今回、学長を自主的に、学内に置かれます学長選考会議で選ぶということでございまして、学長選考会議には、学内の代表の方が半分と、それから外のいろいろな意見を体現していただく、経営協議会に入っている学外の委員が半分ということで選ぶということでございますから、そして、最終的にはその選考委員会で選ぶわけでございますけれども、選び方についても、その選考委員会でルールを決める、そのルールにのっとって、そういう形でいろいろな角度から見て立派な方を選ぶ、こういうようなシステムになっていると思っております。
山元委員 そういうのは、言葉で言うと、丸投げというんですよ。例えば経営協議会、学外の人を二分の一以上と決めているんでしょう。私どもはこれについても修正案を出している。大学の経営にかかわる人たちが、半分以上が学外者だ、それほど、先ほどから申し上げているような大学の研究や教育に通じた人が経営に半数以上参加をして、本当に自主的なそういう経営ができるのかということについて大変な危惧があるわけです。経営協議会と、そして研究評議会が同数出してやるわけでしょう。少なくとも四分の一以上は学外の人ですよ。そして、そういう人たちがルールを決めると今おっしゃるんでしょう、こういうふうにして大学の学長を決めようと。
 そして、もう一つ問題なのは、そこへ現職の学長が入っているわけでしょう。現職の学長が入って、現職の学長が任命した、そういう会議のメンバーが決めていくわけでしょう、次の学長をどうしようか、あの人が立派だなと。本当に真摯な論議がされるのか、わしが立派だという人がいるのと違うか、こういうような選考会議というのは、私は意味がないと思うんですよ。本当に大学をよくしていくという意味からいうと、学長の選考のあり方についてはもっと明確な構成といいますかルールが必要だというふうに思うんです。
 固めて聞きますが、それではルールが不足だということ。学長自身が学長が指名した委員と一緒になって構成をするということも問題。そこへそれぞれの学校の教職員の皆さん、汗をかいている先生方、職員の皆さんがどういうふうに参加をするルールをつくっているんですか。もう一回だけ確認したい。
遠藤政府参考人 学長選考会議に学長が入るということでございますけれども、基本的には、経営協議会の学外委員の代表者と学長や役員以外の教育研究評議会の代表者から同数ずつの学長選考会議で選考を行う仕組みということでございますが、大学によりましては、例えば規定などで学長が再選できないといったようなこともあるわけでございまして、要するに、学長選考においてその学長が当事者にならないといったような場合もあるということで、いろいろな選び方があっていいのではないかということで、学長または理事を加えたような形で構成することもできる。いろいろな選び方ができるという意味でそういう規定にさせていただいているということでございますし、もし仮に学長自身が候補者の一人ということであれば、利益相反といいますかそういう形で、その場には入らないというのが通常考えられるルールじゃないか、こう思っております。
山元委員 通常、現職の学長は入らないと。それだったらそう書いたらいいじゃないですか。今、現にあるのでは入れるとなっているわけでしょう。
 最悪の心配をするわけですけれども、本当に、大学の経営がしっかりと円満にやられていない、みんなが力を合わせて大学をつくっていない大学で学長選挙をやったときにどういうことが起こるか。本当に教職員の皆さんが、こういう大学にしたい、教授会の皆さんはこうおっしゃる。けれども、独断専行の学長が、自分が再選を、あるいはわしのかわりにあれをというような学長の選考になっていったら、そういうまじめな、一生懸命になって働いている、勉強している教職員がいらっしゃる学校では、対立が激しくなって混乱が起こるのではないか。最悪の状況になってしまう、そういう可能性を引き起こす。そういうことがあっても、大学はそれで考えてくださいと言う。それを先ほど言った丸投げというんですけれども、それではならぬでしょう。
 だから、最悪のことが起こらないような歯どめ、ルールというのをきちっとつくっておかなければならないと思うんですが、大臣どうですか。
遠藤政府参考人 要するに、学長の権限が強くならないようなルールということでございますが、これまでの大学が、ほとんど、いわば実質的に学長の権限がなくて戦略を立てられないというような、いろいろな御意見をもとに今回のこういうルールをつくったわけでございますけれども、学長の権限につきましては、監事を設けて……
古屋委員長 遠藤政府委員、整理の上、再答弁してください。
 遠山大臣。
遠山国務大臣 私の方からちょっと答えさせていただきますけれども、法人化後は、教育研究に関する高い識見、それから経営面でのすぐれた手腕というものが学長に必要になってまいるわけでございます。そのために、学内の学部長等の代表者で構成されます評議会が学長を選ぶというこれまでの方式を改めて、経営協議会の学外委員の代表者と教育研究評議会の代表者とが同数で構成する学長選考会議というもので、経営の手腕も加味しながら、広く学内外から学長の適任者を責任を持って選考するというシステムにしようとするわけでございます。
 そうなりますので、法人化後の学長選考に当たりましては、経営協議会の学外委員の代表者と学内者でございます教育研究評議会の代表者とが同数で構成される学長選考会議において適切な選考ルールを決めて、そして実際の選考を行うということになるわけでございます。
 したがいまして、学長選考会議の判断によって、選考プロセスの中で何らかの形で学内の幅広い意向聴取手続をとるということは想定し得るわけでございまして、私は、今回の法案の中で学長選考会議というものを設けて、そして、そこの自主的な、あるいは良識ある判断のもとにルールを定めてやってもらうということにおいて、これは丸投げということではなくて、むしろ大学人の良識に期待するというところでございます。
山元委員 ここでこのやりとりしていても今の状況が続くだけのことやというふうに思うんです。実際にきちっと教職員が参加をすることができるんですよとか、あるいは学長は引っ込んでいて、本当にこの大学のための学長選びをやるという場をつくるとか、そういうルールがきちっと明確にならないと、今の大臣の言葉で言うと良識ある判断を期待する、それではならぬのですよ。時の文部科学省として、こういうふうに大学をよくするんだ、自主的な大学をつくるんだということを明確にしなきゃならぬ。それではやはりなっていないという結論だというふうに私は思います。
 これだけでやっておれませんので、次に、大学のあり方について、評価の問題も大きな問題だというふうに思うんですね。
 今度の法案では、国立大学評価委員会、これは文科省につくるわけです。そして独立行政法人の認証機関、大学評価・学位授与機構、この二つが評価をお互いにする。例えば授与機構では研究内容について評価をする、こうなっておるんですけれども、これは第三者とは言えないですね。独立行政法人学位授与機構も、これは文部科学省が監督をするし、指揮するんです。国立大学法人評価委員会も文科省が監督するわけです。だから、第三者の評価を受けるということになっていないというふうに私は思うんですよ。
 実際に日本の国立大学の質を高める、あるいはそれぞれの努力を評価するという評価のあり方について、文部科学省の目だけで、手だけでやることについては、将来、やはり大きな誤りを犯すことになるだろうと思うんです。なぜ全く第三者機関の評価を受けるような仕組みをつくらなかったのか。そこのところはどうですか。
河村副大臣 今御指摘のように、評価委員会は、国立大学法人評価委員会がまずある。国立大学法人の評価をそれがいたして、いわゆる中期目標、中期計画の達成状況を見るわけでございます。しかし、大学は教育研究機関でありますから、特にその上については、大学の教育研究機関であるという特性を配慮して、その部分について学位授与機構が専門的な評価をする、まさにピアレビューといいますか専門的な評価をしてもらうということになっている。それを受けるわけであります。そして、それを受けて国立大学法人評価委員会は国立大学法人の業務全体に対して総合的な評価を行うわけでございまして、これが最終的には一体化としてくるわけであります。そしてさらに、総務省のもとに評価委員会がございます。これは全体をやるわけでありまして、総務省の評価委員会は、教育研究についてでなくて、この評価そのものがきちっと適正に行われたかどうかということをもう一回そこで評価をする。
 こういう仕組みを国全体として考えておるわけでございまして、それにゆだねていくということで、大学法人評価委員会というものを、文部科学大臣が委員を任命することによって、これを中心にやりながらやっていくということであります。
山元委員 私、総務省ということまで言わなかった。これを言ったらそれだけでも時間が足りませんから。総務省にチェックを受けるというのは、これはまさに独立行政法人効率化、減量化のためのチェックをするという総務省の存在が見えてくるわけでしょう。財務省が評価をするという場合には、チェックをして、財政的にどういうふうに絞るかということになってくるわけです。だから、そういうことよりも、しっかりとした、大学のありようについて評価をする第三者というのを広く求める、育てるというような、そういう観点がないと正しい評価はできないというふうに思います。これも今までから何回か論議がありましたから、そういうことについてはきっちりと指摘をして、文科省にこれから努力をしてもらいたいというふうに思います。
 評価についてもう一つですが、この間、参考人に意見をお聞きまして、むだにしてはいかぬと思うんですが、あのときに佐和参考人が、個人の研究や論文を評価するのは非常に難しい、いわんや組織を評価するのは難しい、この大学はこういうことをやっている、だから点数が高いんだ低いんだと言うのは難しい、至難のわざだと。これができる、そういうルールがあるのかどうか。そういうことができるという自信をお持ちなのか、一言お願いしたいし、そして、そういう評価のあり方について、これも政令でたくさん出すと言っているんですが、政令で定める、そういうスケジュールとか、それを実施していくというものが書かれるんだと思いますけれども、その努力について約束をしてもらいたいんですが、そのスケジュールと、それから、本当に組織的な評価というのができるルールがあるのかですね。
遠藤政府参考人 今回の評価でございますけれども、教育研究面につきましては、大学評価・学位授与機構が専門家によって、いわゆるピアレビューというような形で実施をするということでございまして、その評価に当たりましては、各大学の中期目標、中期計画がどの程度達成されているのかという観点から行われることになるわけでございます。この点については教育評価あるいは研究評価も同様でございまして、その組織ごとに全体として評価する、こういうことでございます。
 例えば、教育評価につきましては、大学として目指している人材育成、どういう人材育成をするかということが中期目標、中期計画で書かれている、そういう点がきちんとなされているかどうかといったような点、あるいは、学習環境が適切に整備され活用されているかといったような総合的な評価ということになろうかと思いますし、研究につきましても、これもまだこれからでございますから、例えばとしか申し上げられませんけれども、当該組織を構成する教員の個別業績をもとに、それらを総合した研究水準が当該組織の中期目標に照らしてどのぐらいになっているかという点、あるいは、当該大学の研究活動が地域の産業や文化にどの程度貢献しているかといったようなことをその学部等の組織ごとに全体として評価をしていく、こういうことになるだろうというふうに理解をしてございます。
 スケジュールという点でございますけれども、この法律が本年十月に施行されるということでございますので、その評価の大もとの国立大学の法人評価委員会、これは十月の施行後直ちに設置をしまして、諸準備遺漏なきよう進めてまいりたい、こういうふうに思っておる次第でございます。
山元委員 ああ、そうですかというような説明はいただいたとはどうしても思えぬ。この評価というのは非常に難しい。これはだれもが認めているところですよ。そのときにきちっとやはり最大限の努力、あるいは、至上のというか、その場で考えられる最高のルールというのが見えてこなければいけない。極めて不十分だというふうに思います。
 時間がありませんから、触れたい点に対して簡単に一言ずつ御答弁をいただきたいんですが、五十五の国立高等専門学校の統合、一つの機構にまとめるというのがあります。このことについては余り論議がされていないんですけれども、それぞれ専門分野で人材を教育している、地域の特色に応じた、あるいは分野の特色に応じた五十五の国立専門学校を一つにまとめて、あるいは統廃合を考えているんではないかというふうに思えるんですけれども、そうではない、それぞれの自主性、自律性がきちっと尊重されることが大前提だということは、確認してよろしいですか。
河村副大臣 高専のことにつきましては、委員御指摘のように、今回一括して独立行政法人化をするわけでございますが、もちろん、運営の効率化とかいろいろなことが考えられますけれども、それをいわゆる統廃合等々において考えているかということについては、文部科学省としては考えておりません。
 むしろ、御案内のように、今、高専は、この不況の中においても就職率も非常にいいし、産業界にも大きな期待をされるし評価もされておるわけでございます。また、地域的な活性化といいますか、地域からの期待も非常に大きいという点があります。
 そういう意味では、一つの独立行政法人化をすることによって共通的な課題等々には適切に対処することができるということがございますが、さらに、今回独立行政法人化することによって高専がさらに発展をするようにということで、文部科学省としても財源措置を初めとして力を入れてまいりたい、このように考えておるところでございます。
山元委員 もう一つですが、今まで、御承知のように、地方公務員の給与というのは、民間準拠で国公が決まって、地公の給与が決まる。国家公務員たるその教職員がなくなるわけですから、地方公務員の、現在の義務教育諸学校の教員の賃金の決定条件が前提が崩れるわけですね。
 この間の藤村委員の質問で、これは変わらないんだ、こういうふうに御答弁があったんですが、もう一遍確認をしておきたいんです。例えば、きちっと人事院勧告制度にかわるもの、あるいは人材確保法の確保、あるいは超勤手当等についての給特法、こういうものがこのことによってたちまち影響を受けるのではない、こういうきちっとした義務制諸学校の教職員の現在の勤務条件、給与条件というのは変わらないんだということは確認してよろしいですか。
遠山国務大臣 今回の改正は、国立大学の法人化に伴いまして、国立大学の教員が非公務員と整理されますために、国立学校準拠制を見直す必要がございます。そして、地方の権限それから責任の拡大という観点から、各都道府県が地域ごとの実態を踏まえて、教員の給与や諸手当の額を主体的に決定できるようにするということでございますが、その場合でも、教員の給与につきましては、三点御留意いただきたいと思うわけでございます。
 一つは、一般の公務員給与水準に比較して優遇措置が講じられなければならないという人材確保法の規定は維持する。この法律は厳然としてあるわけでございます。
 それから、教員の給与は、その職務と責任の特殊性に基づき定める。これは教特法の方がまだ生きるわけでございます。
 それから、地方公務員一般の原則として、職員の給与は、国や他の地方公務員等の給与その他の事情を考慮して定められなければならない、いわゆる均衡の原則というのがございますが、これは地方公務員法二十四条でございますが、そのように定められておりますので、引き続きその一定程度の水準は保たれる。
 ただ、国が何かを決めてそれに完全に準拠してという制度は変わるわけでございます。このような改正法の趣旨につきましては、通知などによって、各都道府県教育委員会に対してしっかりと周知していきたいと考えております。
山元委員 時間がないので、最後に一つだけお願いをしておきたいんですが、御承知のように、三月の二十日に、中央教育審議会が答申を出しました。文部科学大臣からの教育振興計画と教育基本法の在り方についてという諮問をされて、三月二十日にそれが返ってきた。これは逆になっているので、私はおかしいなと思うんですが、諮問は、計画が先で、改正が後なんですけれども、答申を見たら、教育基本法の改正が先で、振興計画が後になったが、いずれにしても、「新しい時代にふさわしい教育基本法と振興計画の在り方について」という答申が出ました。
 つい先日の新聞で、与党間での協議が始まったということが報じられていました。ちょっと心配になってきたんです。というのは、この大事な国立大学の法人化法案の扱いについても、確かに、ずっと与党はやってきたとおっしゃるけれども、野党とというか国会としての論議はなくてずっと続いたわけでしょう。この教育基本法の改正の問題について与党協議が始まったということは、それは当然なされるでしょう。けれども、この今の法案と同じような形で、ずっと論議をしてきました、ある日協議が調って、閣議決定でした、法案が出てきました、こうならないかという心配が、その協議が始まったというところで、この今の法案の審議と絡んで、私は頭をよぎりました。
 そこで、文部科学大臣に特にこれはお願いしたい。こういうことにならないで、教育の憲法ともいうべき教育基本法の改正については、今の教育の現状、子供たちの現状をしっかりと論議して、そこから始まって、一つは憲法をどう変えるのか、憲法というのは教育基本法ですね。一つは振興計画を、財政が苦しいけれども、米百俵の精神でとおっしゃった人があるけれども、きちっとやるんだ。振興計画と基本法とをきちっとする。そうしたら今の困難な教育の状況は改善されるだろう、日本の教育は明るくなるだろう、こういう基本法論議をすべきだというふうに思うんですね。
 ですから、一方的に、与党協議が始まった、調った、閣議決定だ、委員会に提出だということにならないという約束をしてほしいんですよ。これは広い国民の皆さんと論議をして、改正なら改正ということについて論議をしなきゃならぬと思うんです。
 ですから、私は思いつきで言うのではないんですけれども、例えば教育基本法についての小委員会をこの文科委員会の中につくるのか、今までも例がありますね、高等教育の小委員会だとか、いろいろ小委員会をつくったことがある。そういう専門的な機関をつくる。あるいは憲法ということから思うのは、憲法調査会のような教育憲法調査会のようなものをつくるとか、そういうきちっとした国会内の論議、広い国民の皆さんとの論議をする、そういう手順は必ず踏みますよということの約束といいますか見解をいただきたいと思います。
遠山国務大臣 教育基本法につきましては、去る三月二十日に中央教育審議会の答申が取りまとめられまして、教育基本法の改正の必要性が提言されたところでございます。
 我が省といたしましては、この答申を受けまして、あしたから全国五カ所での教育改革フォーラムを開催いたしますほか、各種の広報の手段を用いまして、さまざまな工夫をしながら教育基本法改正に関する国民的な理解を深める努力をしているところでございます。これまでもかなりやってまいりましたが、今もやっているところでございます。
 他方で、与党三党におきまして、去る五月十二日、与党教育基本法に関する協議会が設置されて、教育基本法の見直しに向けた検討が開始されたと伺っております。我が省としましては、この与党協議会における協議の状況を見据え、十分相談しながら、教育基本法の改正にしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
 今委員お話しの、国会に特別な小委員会あるいは調査会を設けて審議を行うかどうかという点につきましては、私は、これは国会において御判断いただくものと考えているところでございます。
山元委員 これはぜひ、この国立大学の問題も大きな問題ですけれども、教育基本法、日本の教育の姿をどういうふうに描くのかという大事な問題ですから、そういう論議の場をつくるということで、これは与党の方々もぜひ御努力をいただきたい、御理解をいただきたいというふうに思います。
 もう一分ありますから、もう一つですが、これもきのう、おとといの新聞ですか、新しい教育について中教審に諮問をされました。その中で、義務教育費国庫負担制度についても触れていらっしゃるんです。これは苦い思いがあるんです。これは前にこの国会で、この間、義務教育費国庫負担制度について、私らの側からいうと削減、改悪がありました。そのときに、大臣は何回も繰り返し繰り返し、三位一体だ、こうおっしゃったんです。小泉さんもおっしゃった。今度は違う。新聞の大きな見出しで、税源移譲が先送りというような見出しになったでしょう。三位一体というのはどこへ行ったんだ、こう言わないかぬ。そうすると、それは小泉さんが言うから、総理大臣が言うから文科大臣遠山が言うていたんや、どないしてくれるんやといって、むしろ旗を立てて官邸へ行ってもらわないかぬ。話が違うわけでしょう。
 本当に、地方分権の中で地方に努力をしていただくんだ、それはきちっと三位一体で税源は移譲するんです、こう言って、二千三百億でしたか、削った。けれども、三位一体は先送りだと言われると、何だ、こうなるわけでしょう。そういうことにやはり今度の諮問でもなってはならぬと思いますし、そういうことについては、やはり国民的な合意があったらそういうことにはならぬと思いますから、ぜひこの基本法の問題も、新しいこれからの諮問の問題も、扱いとしてはきちっとした、国民の皆さんがわかったということになるように御努力をいただきたいということを申し上げて、終わります。
 ありがとうございました。
古屋委員長 この際、暫時休憩いたします。
    午後零時四分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時二十四分開議
古屋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。佐藤公治君。
佐藤(公)委員 自由党の佐藤でございます。
 先日の委員会に続き、またきょうも、私の代表質疑の部分がちょっとあるかもしれません。また、参考人の方々がお話しされたこと、ここにおいての疑問点を少し大臣、副大臣にお聞かせ願えればありがたいかと思います。
 そういう参考人の御意見の中で、私、参考人の方々のお話、また、大臣、副大臣、役所の方々のお話を聞くと、何かどこかで、価値観なのか、歯車が合わないのかな、いつまでたっても、話してもこれもまた平行線が続くのかなというふうに思う部分があります。
 そういう部分の中で、参考人の方々が今三つの問題点というのを指摘されています。これは佐和参考人のおっしゃられた問題点の部分なんですけれども、「では、何が問題なのか。その答えは次のとおりであります。第一に、日本における科学、学術研究への社会的関心と評価が、欧米先進国のそれらと比べて、いささかならずいびつであること。」いびつという意味合い、いろいろととり方があると思います。「いびつであること。その結果、科学、学術に対する国の出資といいますか、お金を出すのも非常に少ない。」こういうことを問題点の第一点に挙げております。
 これをお聞きになられまして、大臣、副大臣、いびつというふうにお思いになられるのか、心当たりがあるのか、また、その出すお金も非常に少ないとお思いになられているのか、では逆にどれぐらい出せば現状合うんだろうか、ここら辺をお答え願えればありがたいかと思います。
遠山国務大臣 日本において科学について社会の関心が低いというのは、これは私もある調査を知りまして、国際比較でも日本の社会人がいろいろな基本的な質問に対して答えた正答率が極めて低いのでございますね。そんなことを、つい昨年ですか、経験いたしまして、これはやはり社会の関心が低いというのは本当に残念だと思います。
 これはだれの責任かというのはなかなか言えないわけでございますけれども、もう少しサイエンスといいますか、サイエンティフィックなこと、あるいは学問に関する敬意、それからその重要性について社会がもっと認識した方がいいというのは確かでございます。日本のインテリジェンスのレベルが高いにしては低いということで、諸外国よりはよほど高いと思いますけれども、そういうふうに思います。
 いびつかどうかということでございますが、日本の学問の振興の重要性ということで真剣に長年取り組んでまいった我が省といたしましては、最近、例えば一番基礎部分の研究を支える競争的資金の代表格でございます科研費、科学研究費補助金につきましては、これは今着実に上がってきておりまして、特に科学技術につきましては、先般、第二期の科学技術振興計画が立ち上がりまして、それの目標としては、今の研究費を倍増しようということが明確にされております。そのような目標のもとに、毎年、科学技術関係予算をふやしてまいっております。そういうことをこれからも努力してまいるべきときであるというふうに私は思います。
佐藤(公)委員 もう一度今のことについてお聞きしますと、毎年ふやしているというのはわかりますけれども、今、現状、日本の出すお金が非常に少ないというのが言われているわけですけれども、実際少ないと思うから年々ふやしているわけですよね。では大体どれぐらいの規模、例えばGDP比というあらわし方もあり得ると思いますし、いろいろなあらわし方があると思います。大臣、副大臣がお思いになられる、せめてこれぐらいまでは何とか文部科学省として持っていきたい、やるべきだということ、計画を立てられていることもわかりますけれども、今この場で、副大臣、今メモをお持ちになられたようなので、一体全体どれぐらいまで持っていけばある程度そこそこそれは満たされていくことになるのか、そこの一つの目標を明確にお答え願えればありがたいかと思います。
河村副大臣 これまでも議論されてきたところではございますが、佐藤委員も御承知のとおり、特に高等教育については、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツの先進国の大体半分だ、こういう言われ方をしております。〇・五、向こうは一・〇、こういうことです。ただ、これの算定の仕方等、あるいはもともと、財政の支出の率とか、それから日本においては私学が非常に、八割近い学生を担っているというような、そういう特殊な事情もあって、一概に、高等教育にかける総費用で見ればまた違ってくるんじゃないか、私はこう思うわけであります。
 国の財政としてどうかと言われると、できるだけこれに近づける努力をすべきだ、こう思いますが、今の時点で倍増計画を立ててと、思いはそういう思いでありますけれども、今のこの財政の中でそれはなかなか、現状は非常に難しいことではないか、こう私は控え目に申し上げるわけでありますが、やはり目標は、数字の上でも引けをとらない、またそれを上回るものだということで努力をしていかなきゃいかぬ、私はこう思っております。
佐藤(公)委員 今具体的に倍増ということ、例えば〇・五%だとすれば一%にすべきだと、何で副大臣ははっきりそうおっしゃっていただけないんですか。力強く、おれは一%に持っていくんだということで副大臣がおっしゃっていただければ、私は、そのように動くと思います。しかし、副大臣がちょっとわからないなというふうに言っちゃうと、まあまあになっちゃう。やはりここら辺のきちっとした目標を明確にし、そういうこともしていくことがとても大事だと僕は思うんですけれども、この議論をずっとしていきますと、きょう午前中質問された方とダブる部分もたくさん出てきます。
 予算的というところにかなり集約されていくのも事実なんですね。予算的なところに集約されていくところも事実だと思います。ここら辺の話、また後で私学との話等もさせていただきますけれども、佐和さんが第二点におっしゃられたことは、「第二に、科学研究費の配分の仕方が決してフェアでない。」問題点の二番目として、科学研究費の配分の仕方が決してフェアではない、これを問題点として挙げております。
 このフェアではない、この前の議論でも、大臣は、アンフェア、フェア、意味がわかる、わからない、いろいろと話がございましたけれども、これだけをとって判断できづらい部分もあるかもしれませんが、この科学研究費の配分の仕方にフェアではないという心当たりがもしもあるのであれば、もしくは、フェアですよ、文科省がやっていることは、これに関しての配分は全部フェアです、それだったらそれで一つのお答えです。でも、フェアではないと指摘されている方がいらっしゃる中、これに対してどうお答えになられるのか、いかがでしょうか。
遠山国務大臣 これまた、フェアでないという、どういう角度からの御議論かということをしっかり見きわめた上でお答えしないといけないのかもしれませんけれども、科学研究費補助金の配分につきましては、これは日本学術振興会がやっておりますけれども、戦前からある組織でございますが、長年日本の学術界に対する研究費助成のあり方について研究をし、そして改良を加え、さまざまな角度から審査をした上で決定していると思います。
 年間十三万件を超える申請数ですか、それに対して四万件を決めて、そして非常に早い時期に決定しているという、ほかの省では見られないやり方だと思います。しかも、その担当の職員が百人弱というようなところでやっておりますのは、これは先ほど鳩山先生もおっしゃいましたけれども、自分も何か下請と言っちゃ悪いのかもしれないけれども審査に当たったと。ですから、優秀な若手、あるいはシニアのいろいろな研究者の知恵を集めまして、これは千人を超えるオーダーだと思いますけれども、そういう人たちの知恵をかりながらやっているわけでございます。これがアメリカですと、NSFは六百人と最近言いましたね、そのような専門家を抱えてやっておりますが、日本の場合はそのところがまだまだ十分でなくて、しかし、それよりも、在野のすぐれた研究者たちの協力を得てやってきているという面では、私は、日本の制度の中で最もフェアなやり方でやっていると思います。
 ただ、最近聞きました関係者の御不満の中で、日本の科研費の配分結果を見るとどうもシニアの教授中心、四、五十歳代中心に行き過ぎていて、若い人への率が少な過ぎる、これを何とかしようではないかというのを、その結果の数値も見せられましてお話がありまして、これはやはり若い研究者が本当に意欲的にやれるように、そこでこそ、二十代、三十代の人こそ最もいい発想をするわけですから、これに傾斜していかなくてはならないなというふうに思ったわけです。恐らくシニアのところへ持ってきたお金もそういう人のところへ行くんだと思いますが、ノミネートしてきちっとあなたのところへというところに意味があるとすれば、そういったような改善点はあろうかと思います。
佐藤(公)委員 このフェアじゃないというのは、価値観、歯車が合わない部分もあるかもしれませんが、今大臣がおっしゃられたことというのは、まさにそこの部分というのがあると思います。実際問題、予算がふえていけば、また若い人たちの方に行き渡ることも十分あり得る。こういう部分は十分改善していってあげるべきであり、将来、二十年後、三十年後、研究が本当に大事であるのであれば、そこの部分というのは僕はとても大事な部分だと思います。そこに対する配分、それをフェアというのかアンフェアというのか、またこれは人それぞれの価値観によってちょっと違うと思いますが、十分考えていただきたいと思います。
 第三の問題点として、「日本の大学の仕組みが、教員に研究、教育に没頭することを許さないこと、言いかえれば、研究、教育の妨げになる雑用が多過ぎること」、これが三番目の問題点ということで指摘をしております。これはもう先ほどから大臣、うなずいていらっしゃるので、心当たりがたくさんあるんじゃないかなという気もするんですけれども、ここの問題点ということ、これに対して大臣、副大臣はどうお答えになられるのか。また、もしもこの問題点が非常に大きな第三の問題点というのであれば、どう改善をしていくべきなのか、また考えていくべきなのかということを、思いをお答え願えればありがたいかと思います。
河村副大臣 今度の法人化で、国立大学における経営責任が非常に高まるということですね、それだけ自由度が増すわけでありますから。そのためにいわゆる教学の部分と経営の部分とをはっきり分けて、最終的には学長がリーダーシップを発揮する、こういうことになるわけです。そういう仕組みを今回とっていて、少なくとも学術研究部門における教授連中あるいは助教授の方々の負担を軽くすべきだ、そして研究、教育に集中していただこう、こういう配慮を今回して、ああした経営協議会とそしていわゆる教学部分での評議会、こう分けたわけでございます。
 私は、これによってそうしたものがかなり軽減されていって、教育研究に対する集中が高まるであろう、このように期待をいたしておるところであります。
佐藤(公)委員 でも、副大臣、前回の質問を思い出していただけたらありがたいと思いますけれども、この法案に賛成をされている方ですら、行政量が膨大にふえ、事務量が膨大にふえていく、ある意味で雑用がどんどんふえていくということを心配している、危惧しているところがあるということが言われておりました。今回の国立大学法人化に関して賛成をしている人ですら、そこの部分が今よりももっとふえていくんじゃないかと。実際ふえていくということは間違いないと僕は思いますけれども、現状における問題点でもたくさんあるのに、もっともっとこれ以上ふえちゃって、大変なことになる。反対をしている人も、今、煩雑な事務が多いということを指摘している。
 それと、あと、移行に関しての事務、これとまた現状の事務という分け方はあるかもしれませんが、ここにおける雑用がどんどん多くなっていくということがお互いが心配している部分だと思いますけれども、本当にこの法人化法案でそうなると思われておっしゃられているんでしょうか。
遠山国務大臣 大きな制度改革でございますので、その制度改革に伴ういろいろな仕事があるということは確かだと思います。したがいまして、大きな制度改革の際には、その任に当たる人たちの労働というのが非常に大きくなるというのは、どの場面でもそうだと思います。大学につきましては、これまでのいわば国の行政組織の一環として整然とやってきていた、あるいは前例どおりやってきたのから比べれば、民間的な発想のもとに会計制度も変わる、人事制度も変わる、あるいは組織運営のあり方についても変わるというようなこともございますので、いろいろな準備が一斉に行われているんだと思います。
 ただ、今の状況でございますと、例えば来年度何をするかという極めて細かい予算要求をして、また、我が省も国家組織の一部ですから、どうしてもそれを国として決める場合に詳細な計画書をとりというようなこと、これがなくなるんですね。六年間の目標を立てて、年次計画を立ててもらったら、あとは、そこで賄われる。計算されて出てくる運営費交付金というものをベースに、各大学で五年間、しかも翌年に繰り越すこともできるわけです。それをとるだけでも非常に仕事はやりやすくなるのではないか。ただ、それは不正に使ってはいけませんから、その辺、きっちりとした透明性のある書類を整えておくなどということは、もちろんどんな場合でもそうだと思いますけれども。
 そういったことを考えていけば、今まで以上にという御懸念は、これは当たらない。今はちょっと、しばらく、来年の初めに至るまで、あるいは来年走り出すまで、走り出してもしばらくそうかもしれませんけれども、これは事務が大変だと思います。しかし、今回はそういった面の事務の効率化等もやっていこうということでございますので、それは、今解決できないことがもっと解決できなくなるということでは困るわけでございますし、私どもとしても、その辺は大学内でも、今まですべての人が同じように、均等にいろいろな問題に携わっていたのをもう少し分業化していくとか、いろいろな工夫がし得ると思っております。
佐藤(公)委員 当然、国立大学から法人化されたことによって、今までやっていたことがなくなることがあることもわかります。その分によって雑用がなくなっていくこともあると思います。でも、逆に新たに、国立大学法人化法案、これが通ることによって、法人化することによって、違ういろいろな雑用がふえてくることも一般的には事実だと思います。
 これは代表質疑のときにもお話をさせていただきましたけれども、予算の獲得等、経営的なことでの財政面での苦労というのは、これは大変な苦労にもなると思います。そういったことからすれば、本当に大臣のおっしゃるように、移行期間においては混乱したり作業量がふえるというのはある程度は当然だ、しかし、それが済めば今よりもよくなるんだよ、雑用は少なくなるんだよ、研究にも専念できるんだよ、こういうふうに本当になればいいのかもしれません。そうなることを今は祈るしかないと思います。もう、祈るしかない、そんな気持ちでいざるを得ないのかなという気が私はいたします。
 ところで、先ほどもお話ししました、前回の質問でもいたしました、国立大学法人化ということと私学との垣根がなくなるということで、そこにおけるフェアな環境をつくるべきじゃないかということをお話しさせていただきました。つまるところ、私学の振興ということに今後とも力を入れてやっていくということもございます、でも、基本的に私の言いたいことは二点あって、文部科学省の介入問題の件と、あとはやはり財政的な面、この二点に話がほぼ集約されていく部分があるのかなという気がいたします。
 今、現状、この前もお話ししましたが、私学と国立大学法人化になっていくことによって垣根がなくなる、その中で、財政措置というのが国立大学は、当然ですけれども非常に優遇されている、税金というものからやはりお金が私学の方にも回って、私学も運営をしている、その大小は別にします、大きい少ないは別にしていますが、こういうところでのフェアな形を考えていく必要性もあるんじゃないかということを話しました。
 では、この次、文部科学省における関与、介入の仕方ですね。文部科学省の関与、介入、私学に関しては、その大小は別ですが、同じお金、税金を払っているのに、ある程度自由にやらせているじゃないですか。国立大学も同じようにやはり自由にさせる。これは逆に、この次に国立大学にとってフェアな形をとるべき状況、環境というのは、介入というのを極力少なくすべきであり、まさに、中期目標に関する大臣の認可というか、こういったものを変えていかなくてはいけないのではないか。そのほかにもかなりいろいろな影響を及ぼす部分があります。
 私学だって同じようにお金を、公金を渡しているわけですから、そこの部分からいったならば、私学は全然緩やかにやらせてもらっているんじゃないかと思います。ただ、ここ最近、評価というものをつけて、やはりそこにおける経営、運営を厳しく図っていくということは、これは当然な部分があると思いますけれども、それにしたってまだまだ自由だと思います。
 先般の委員会の中でも、斉藤委員の質問に対して大臣は、一見、中期目標や中期計画という新しいフレームができたために権限が強化されるように見えるということがありますけれども、実際には、法人化によりまして国の権限が拡大するという指摘は逆でございまして、大学の裁量が大幅に拡大するというふうにとらえているものでございますと。
 国の権限が拡大するというよりも、それは逆であるということをお話しされているんですけれども、やはりだれが見たって権限が強くなっているとしか言いようがないと僕は思えるんですね。私学もそういうことでお金を出してやっているのにあれだけ自由にさせているのであれば、やはり国立を法人化するに際して、そこの部分というのはかなり、もっともっと自由にさせてあげるべきだというふうに思います。
 僕はなぜ言うかというと、いろいろと今までの議論を聞いていまして、必ず出ていること、参考人の方からも出ているのは、お金は公金、税金から、出資者管理義務というような言葉を使うケースがありますが、出しているんだから、それぐらいはするのは当たり前じゃないかと。確かに当たり前な部分があることも事実です。しかし、私学を見る限りは、かなり自由にさせていただいている部分というのがあると僕は思うんですね。それからすれば、国立大学というのは、法人化をしていくに際しても本当はもっと自由にすべきなのに、この辺が不平等に見えるんですけれども、いかがでしょうか。
遠山国務大臣 まず、国の介入、関与という言葉を再三お使いになりますけれども、これは私の考えでは、今回の法律の目的からいってなじまないお言葉であるというふうに私は考えます。
 国立も私立も国の経費を出している点では同じではないか、だから同じだというお話でございますが、設置形態論、けさほどもやりましたけれども、これはやはり厳然とした違いがあるわけでございます。国立大学は国の意思によって設置をされまして、その責任のもとで運営されるものでございまして、学校法人が自由な意思に基づいて設置する私立大学とは、国の責任というものがおのずから異なっているわけでございます。
 例えば、国立大学の設置は、現在の場合ですけれども国立学校設置法、この国会においてしっかりと御議論の上決められるわけでございまして、国の意思で設立されるわけでございますし、再編統合、改廃についてもそうでございます。他方で、私立大学というものは、学校法人の自発的な意思に基づいて当方で認可するという違いがございます。
 それから、国立大学の教職員の任命権は文部科学大臣が有するわけでございますけれども、私立大学の人事については国は関与をしない、それは設置者の義務がないわけでございます。それから、国立大学の運営につきまして文部科学省は設置者として広範な権限を有するわけでございますが、私立大学については原則として運営には関与しないということでございます。
 この差異というものを前提にしまして、財政的な面の違いが出てくるわけでございます。
 国から出ているお金ではないか、だから同じだよとおっしゃいましたけれども、それは、国立大学につきましては、基本的に今後ともその経費を国に依存するという形になるわけでございまして、他方で私立大学は、学校法人がその責任を負うことを前提に、私立学校の教育条件の維持向上、あるいは学生の修学上の経済的負担の軽減ということを目的として、国が学校法人に補助を行うわけですね。国立大学法人につきましては、国が責任を持って運営費交付金という形で出すわけでございまして、国立大学と私立大学に対する公費支出の性質はそれぞれ異なっているものでございます。そのように御理解をいただければありがたいと思います。
佐藤(公)委員 それがよくわからないんですよ。それが僕はよくわからなく、このままでいったら本当に何もかも一緒のようなことで、ただ結局文部科学省の御都合で分けているのかなというふうに思わざるを得ないところがあります。
 でも、結局、僕が最終的に言いたいことは、高等教育の予算全体の底上げをやはりもっとすべきだということです。それに関しては、与野党を問わずみんな一致した意見ですから、これは僕らもみんな協力をしてやっていくことであり、与野党は別にしても、やはりみんなある意味で応援団でもあると思います。
 結局、私学のことにしても、いろいろな整理統合、指導も必要かもしれません。でもやはり、高等教育全体の国としての予算が少ない、ここにいろいろな問題点が発生している部分があり、先ほど河村副大臣がおっしゃいましたけれども、言い切りたいということもありましたが、言い切っちゃって、それで財務省とけんかしながら、下手な公共事業に回すよりも、みんなでやはりそこの部分をとるべきだと僕は思います。そこら辺の力強い副大臣、大臣のリーダーシップ、これはぜひとも期待をしております。
 こういう何か割と和気あいあいとやると、賛成みたいな話で進んじゃうような感じですけれども、そうはいきません。
 それで、結局、もう時間もないので私も結論からどんどん先に言っちゃいますけれども、この前も、省令や政令であれだけまだ不確定なことがあり、しかも、これは前の方の委員の方々もおっしゃっておりましたけれども、国立大学協会の方でも、まさに「国立大学法人制度運用等に関する要請事項等について」なる文書を配付して、みんなからいろいろな要望を今聞いていると。現状を聞いている段階ですよ、どういうところに配慮していったらいいか。これは大臣、副大臣、どういうペーパーを回しているか、Eメールで送られているのかはもう御存じだと思います。
 こんなことが今現実に行われていて、やはり、これをある程度集約して、その上で形をもう少しはっきりさせてから法案を通すべきじゃないかと私は思います。僕が言っていることは、その賛否を、採決をするなと言っているわけじゃないんです。やはりもう少し形づけたもので採決をしていくべきだというふうに、私は常識的に考えて言っているつもりですけれども、副大臣、それでもやはり、もう全部終わった、これで全部整った、採決をすべきだというふうにお考えになるんでしょうか。
河村副大臣 大学側ともいろいろなお話し合いを進めながらやってきたわけでございまして、準備が大変だとおっしゃるのもその辺にあるんだろうと思います。
 しかし、今の大学の活性化というのは、急ぐという言い方はあれでございますけれども、やらなきゃいけないことでありますから、中には施行と一緒にやっていく部分もありましょうし、やはり事前にきちっと整えておかなきゃいけない部分もある。スタートしながら整備をしていく、こういう部分もあるわけでございまして、今国会で法案をお通しいただきましたら、今準備を急いでやっていただいておりますが、間に合わない部分がひょっとして出てきても、それはもう早急に、立ち上げと同時に執行していくという形で、文部科学省としては移行について万全を期して、遺漏なきを期してやっていくということには変わりないわけでございます。
佐藤(公)委員 この前の委員会でもお話ししました、信頼関係があればそれでいいのかもしれません。私、厚生労働委員会もやらせていただいている中、まさに全部、すべて同じような状態で、とりあえずこれだけ通してくれ、後からちゃんとやるからと、こういうお願いの仕方が今の与党さんに非常に多いのではないか。
 例えば、厚生労働委員会の健康保険法の一部改正、三割負担なんというのは、まさに抜本改革を二〇〇〇年までにやると言いながらやらずに、またお金が足りなくなったから二割から三割に上げてくれ、頼む、この次こそやるから、こういうやり方ですよ。これじゃ信頼関係なんというのは、僕は持てるとは思えませんね。そういう意味で、信頼関係を持つ上でも、やはりここをきちっともう少し形づけてからやるべきです。
 そして、参考人の方々もおっしゃられているのは、まさに大学協会における意見というのも、決してまとまったものが全部の意見ではないというようなことの話で、本当に大学協会としての手順、まとめ方、やり方というものに非常に疑問を持つような御発言もございました。
 ここら辺は、やはりみんながある程度納得するような状況で進めていくべきためにはもう少し時間が必要なんではないか、その上で採決をするんだったら結構ですと、私はそれだけを申し上げておきたいと思います。
 そして、もう時間もなくなったんですけれども、先ほど、午前中の方々から同じお話があったと思います。まさに二〇〇四年四月一日までに労働安全衛生法を適用する施設が可能であるか、これに関しては、可能であるというような答弁だったようにも思えます。とするのであれば、本当にどのような実施計画であるのか、財政的な保障を含めて、文部科学省が資料をまず示すことですよ。これ抜きには、適法的というか、いい形での法人運営を開始することは、僕はすべきじゃないし、不可能だと思います。これは、まずきちっとした計画と資料を出してもらいたい。これが出ないことには、採決に行くのはちょっといかがかなと僕は思います。
 そして、これはこの前の質問とダブることにもなりますけれども、二番目に、法人移行に当たって国立学校特別会計の債務返済計画を立案する必要があるということですよね。本当に、どのような返済計画があるのかということを具体的にちゃんとした資料として出して、国立大学の健全な財政運営の前提条件が欠けているということ、やはりこの辺をきちっと補って考えていかなきゃいけないと思います。
 三番目に、法人移行のための費用、まさにこれは国立大学全体でどの程度の額になるのか、お金がどれぐらいかかるのか、また、移行後の制度整備のためにどの程度の額が必要になるのか、こういったことをきちっと具体的に資料で示していくことが必要なんじゃないかというふうに思います。移行費用が保障されなければ、まさに二〇〇四年四月一日までの法人化はまだまだすべきではないというふうに僕は思いますけれども、この三点に関していかがでしょうか。
    〔委員長退席、鈴木(恒)委員長代理着席〕
玉井政府参考人 お答えを申し上げます。
 労働安全衛生法に基づきます各種の施策、特に施設等の整備でございますけれども、緊急に調査をしながら今整備を進めようと努力をしているところでございます。昨年十二月の通知で、各大学等に実情を踏まえた改善計画の立案と速やかな対策の実施を指示しているところでありますが、これを早急に把握いたしまして、できるだけ速やかに報告をさせていただきたい、かように思っております。できるだけのものを精査いたしたい、速やかにいたしたい、かように思っております。
 それから、法人化後の病院収入と病院等に係る長期借入金債務等でございますけれども、これは前回もお答えしていますように、きちんとした収入を前提としながら確実に償還を続けてきているわけでございます。そして、十四年度末の債務につきまして当然それはもう計画がきちんと立っているわけでございまして、必要に応じてまたいつでもお示しをいたしたい、かように思っているわけでございます。
 それから、法人化移行に当たっての準備経費ということでございますけれども、確かにこれは、円滑な移行に向けて必要となる準備というのがございまして、その経費が必要な部分がございます。具体的には、各国立大学法人に属する土地建物等の資産の確定、あるいは企業会計システムの構築及び導入の準備、さらには法人内部規定の整備や概算要求も含めたいろいろな準備等が考えられるわけでございまして、これは実は、平成十五年度予算において国立大学運営改善経費として既に適切に計上をしているところでございます。現在、各大学とも、所要額の精査と準備が整ったものから順次予算措置をしているところでございます。
 それから、その法人化後にもいろいろな経費がかかるのではないかということでございます。御指摘のとおり、各大学共通に新たに必要になるものがございます。具体的には、例えば、事業主として各大学に加入が義務づけられる労災保険や雇用保険にかかわります事業主負担分、あるいは、法定監査というものがきちんと入りますので、法定監査人の監査に要する費用が考えられるわけでございますが、これらの経費につきましては、今後速やかに試算を行い、運営費交付金の算定に確実に反映させてまいりたいと考えております。
 例えば労災保険、これは十六年度できちんと見込まねばなりませんけれども、仮に十五年度の人件費から推計いたしますと五十四億、それから雇用保険も、十五年度の人件費の予算額から推計すれば、見込額百十三億というような推計もあるわけでございますので、私どもとしては、こういうものを念頭に置きながら遺漏なきよう万全を期してまいりたい、かように考えているわけでございます。
佐藤(公)委員 今お答えになられたこと、前の方々とほとんど同じ答えなんですけれども、では一つだけ聞かせてもらいます。
 速やかにというふうにおっしゃいました。速やかにというのは、何日間ぐらいで、いつなんですか。
萩原政府参考人 お答えいたします。
 大学の方の準備も整っているようでございますので、きょう調査票を発出いたしまして、今月中には報告できるように集計したい、このように考えております。
佐藤(公)委員 今月中ですよね。今月中、あともうわずかですよ。それが出てから一回議論して、それから採決したって遅くないと僕は思います。それぐらいはやはり考えてもらわなきゃ、まさに本当に大学改革の大事な議論をしているのに、そこが全部、それは参議院もありますといけばそれまでの話かもしれませんけれども、それは衆議院として、きちっとその資料が出て、それからきちっと議論して採決するのがやはり筋だと僕は思います。立法府においてそんな無責任な法律の立て方というのは、僕は、与野党含めて考えるべきで、国会全体で考えるべきだと思いますね。
 もうだんだん時間がなくなってしまったんですけれども、聞きたいことがちょっと、これからやっと総論からだんだん各論に入っていくんですけれども、きょうで終わりなんといったら各論を聞かずに終わっちゃうのかなというふうに思いますけれども、実は、積立金、余剰金のことなんです。このことを答えられますか。
 これは事前通告していないもので、今まとめて全部話をしちゃったものなので、最後に一つだけ、各論の部分というか細かい部分で話をさせていただければ、積立金とか余剰金というのは、実際問題剰余金ですね、剰余金の使途に用いることができる部分ですけれども、大臣の承認が必要である。中期計画自体が認可を必要とするということ、また法案は、この積立金のうち、文部科学大臣の承認する額を次期の中期目標期間の業務の財源に充てることができるとしている。これは法案の三十二条一項ですね。
 大臣の承認しなかった残余、残りの分は国庫に返納されるということになっているんですけれども、大臣の承認しなかった残余はまたこっちに戻すということになっているようでございますけれども、このあたりはもう少し、国立大学法人化、法人化をしていくんですから、向こうに対して剰余金というかそういうものを考えていくべきというふうに考えます。その辺はいかがですか。
玉井政府参考人 御質問にぴったりとお答えできるかどうかあれなんですけれども、今の御趣旨を体しますと、確かに、国立大学法人等は、損益計算において利益が生じ、前事業年度から繰り越した損失を埋めなお残余があるときは、文部科学大臣の承認を受けて中期計画に定める剰余金の使途に充てることができる、そういうことを予定しているわけでございます。
 それで、剰余金が生ずる原因でございますけれども、自己収入の増によるものと、それから運営費交付金の節減によるものとに大きく分けられるわけでございます。それらのうち、国立大学法人の経営努力によるものを剰余金の使途に充てることができる額として承認するということになっているわけでございます。その際の具体的な判断基準というのはこれからになってくるわけでございますが、現時点で具体的に定めているわけではございませんで、この承認に当たってはあらかじめ国立大学法人評価委員会の意見を聞くということになっておりますので、今後、同委員会での検討を踏まえて、適切な判断基準を探っていくということにいたしたい、かように思っております。
 なお、経営努力の認定でございますけれども、これはなかなか難しいところがございますけれども、既に行われている他の独立行政法人というふうに見ますと、他の独立行政法人において、自己収入の増によるものにつきましては、合理的な当初見積もりに比して増収があった場合の増収分について経営努力の認定がなされておりますし、また、運営費交付金の節減によるものにつきましても、当該独立行政法人の事業ごとに予算及び決算の対応関係が明瞭であり、経費の節減がどの事業で生じたか具体的に説明がなされたものについて、経営努力の認定がされているのがこれまでの例でございます。
    〔鈴木(恒)委員長代理退席、委員長着席〕
佐藤(公)委員 もう時間でございます。最後に一言だけ、同じことを言わせていただきますけれども、やはりきちんとした資料が出てから採決はすべきだと僕は思います。もしも資料が出てこないというのであれば、資料が出た段階で法案の審議に入るべきだと思います。そういうことをしていたのであれば、十年後、二十年後、後悔するような法律により一層なるような気がします。
 これにて私の質問を終わらせていただきます。
古屋委員長 児玉健次君。
児玉委員 日本共産党の児玉健次です。
 私はきょうの質問が最初です。そして、この間の質疑を聞いていると、まだ論議は緒についたばかり、本格的な審議をしないといけない。これは日本の半世紀後、一世紀後の将来を決める重要な法案ですから、そういう意味で、私は、真剣に聞きたい、古屋委員長にもその立場で審議の進行をしていただきたい、こう思います。
 さて、まず最初です。学校教育法五十九条「大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない。」こうなっています。重要な事項を審議する教授会は、今後も当然学校教育法に基づいて必置です。この点を最初に大臣に確認したい。
遠山国務大臣 学校教育法のその部分、今回改正をいたしておりません。そのまま残ります。したがいまして、教授会は残るということでございます。
児玉委員 教授会は残る、必ず残らなきゃいけませんね、これは法律がそのことを求めているんだから。
 そこで、国立大学法人法案が予定する大学、大学法人では、教授会はどこに置かれるのか、どのような重要事項を審議するのか。これは、皆さんの言う国立大学がなくなることに伴ってこの法案が成立すれば消滅する国立学校設置法、その中身はこれまで大学の運営にとって非常に重要なものであった、それから教育公務員特例法、これらを踏まえてそれぞれにおいて判断されるものだと私は考えます。河村副大臣、どうですか。
河村副大臣 児玉委員御指摘のように、また、さきの大臣の答弁でありましたように、学校教育法によって教授会は必置されるわけでございます。ただ、法人化後は、非公務員型の法人ということでございまして、教員の任命権者は文部科学大臣から学長になるとともに、教育公務員特例法の適用がなくなって、人事については教授会の議に基づいて行うということの規定の適用はなくなるわけでございます。したがって、教員人事については、今後は各国立大学法人の創意工夫にゆだねられる、これが原則になるわけでございます。
 ただ、その国立大学法人制度は、各法人の自主性、自律性を高めて自己責任の拡大を図っていくという面もございまして、こうした観点から、内部組織については可能な限り法人の裁量にゆだねていきたいということでありまして、今回の法律等では規定されておりません。これまで教授会の設置の単位とされておりました学部や研究会については、法律上、規定はないわけでございます。こうした点を踏まえて、どのような教育研究組織の単位にどのような形で教授会を置くか、これについては法人の定めにゆだねることになるわけでございます。
 そういうことを考えますと、法人化後の大学に教授会の形があって、それがどのような形でこれから運営されていくかということについては、それぞれの大学が自主的にお決めをいただくことになる、このように考えております。
児玉委員 私の質問を、副大臣、よくお聞きいただいたと思うのだけれども、これまであった国立学校設置法、これまであった教育公務員特例法、これらを踏まえながら、それぞれにおいて判断されるべきだと私は理解するが、どうかと。
 なぜそう言いますかというと、あなた、今教育公務員特例法云々とおっしゃったけれども、今度の改正を見てみても、もしある自治体においてある公立大学が法人化の道を選ばないとすれば、そのとき教育公務員特例法の内容というのはそのまま残っているじゃありませんか。残すでしょう。どうですか。
河村副大臣 法人化の道を選ばないということであれば、これはまた別の問題になってくるわけでございまして、今回は国立大学は全部法人化するという考え方に立っております。
児玉委員 河村さんは鋭敏だから先へ先へ答えようとするんだけれども、私が聞いたのは公立大学です。国立大学じゃないんですよ。
 例えば広島県の、ないしあなたの山口県の県立女子大学があるとする、ありますね。その大学が、県と協議をした上で、法人化の道を選ばないということは可能なんだから、そして、そのときのために、この教育公務員特例法の幾つかの部分、例えば学長の選考だとか教員の採用、昇任、それらは、皆さんのこの教特法の今度の改正の第三条の中に明記されているじゃありませんか。それは自治体立の大学が法人化の道を選ばないときに残したんであって、当然この精神というのは全体として生きていくし、そして、それをそれぞれどのように活用していくかというのは、先ほど言ったように、国立学校設置法や教育公務員特例法等の内容を踏まえつつそれぞれにおいて判断する、そう理解していいでしょう。どうですか。
河村副大臣 現状では地方自治体のことと今回の国立大学法人とは別に考えておるわけでございまして、地方の公立大学におけるいわゆる地方公務員の身分は残るわけでございますから、その精神は生きる、こういうふうに思います。
児玉委員 今、この教育公務員特例法というのは、適用を受けていない日本の私立の大学にも非常に大きな影響力を与えていて、例えば教官の絶えざる研究及び修養の問題、そして大学の自治の支えである教員人事の自主的、自律的な決定の問題、これらにおいて、私立の大学では、たとえ法の適用がなくても、それが見事に生かされていますよ。
 今の河村副大臣のお答えで私は大体思いがわかるんですが、結局、国立学校設置法や教育公務員特例法、私はあえてこれまでのと言っているんですよ、これまでの国立学校設置法やこれまでの教育公務員特例法、それらを踏まえつつ、教授会がどこに置かれ、どのような事項を審議するかというのはそれぞれにおいて判断される、こう理解するわけですから、それでいいでしょう。
河村副大臣 児玉委員のおっしゃることもわかるわけでございますが、今回のこの大学法人法によって公務員の身分というのはなくなるわけでございます。扱いではみなし公務員という考え方もございますけれども、そういうことでありますから、それがそのまま生きるということにはならない、こういうふうに思うわけでございます。
児玉委員 後ろの人が必死になっていろいろ耳打ちをしているけれども、副大臣の判断で私は答えてほしいんですよ。すなわち、私が踏まえてと言っていることの思いをあなたはおわかりでしょう。今まで日本の国立大学を律してきた二つの法律を踏まえてそれぞれに判断する。私は余り細かなことは言うべきでないと思う。どうですか。
河村副大臣 国立大学と、そしてもう一つの公務員であります公立大学というものがございます。非公務員化ということになりますと、法的には教特法の適用がなくなるということは、これは厳然たる事実になるわけでございます。
 しかし、これまでそういう形でやってきたわけでありますから、地方自治体については、これは自治体の選択権に任せておるものでございまして、これをはっきり法律上明確にせよと言われれば、国立大学の方は教特法の適用はなくなるし、しかし公立大学は、今いわゆる地方の独法化の問題もございますから、それを選択されればまた別でございますが、地方公務員の制度、公立大学をそのまま残すということであれば、これは教特法の適用が残るわけでございます。そこのところは明確なんであります。
 ただ、これまでそういう形で運営されてきたということでございますから、いわゆる国立大学は大学法人化されてもみなし公務員という残る部分もございますので、そういう精神を踏まえてとおっしゃることは私は理解できるわけであります。
児玉委員 残念ながら、この法律がもし成立すれば、国立大学に関していえば、教育公務員特例法は適用除外になるんだけれども、除外になるかどうかを私は議論しているんじゃないんです。
 そこで、今まで提起されてきたその内容を踏まえてと、あなたは大体今その趣旨のことを述べられたから、次の問題に入りたいんです。
 遠山大臣、あなたと私は、昨年、大学の自治の問題について三月に議論したことがありました、教員養成系の大学の問題で。御記憶だと思う。国立大学法人法案では、大学の自治を支える制度の根幹である教育公務員特例法の適用が除外されます、皆さんの仕組みによれば。
 ところで、大学の学長、教授、その他の研究者が大学の自主的判断に基づいて選任される、それが大学の自治の支えだ、これは最高裁大法廷の判例ですが、このことはこの後どのように保障され、担保されるでしょうか。
遠山国務大臣 学長の選考の仕方については、今回の法案の中でもしっかりと明記されているわけでございます。
 法人化ということに伴って、学長に必要な資質というものも、これまでよりは経営面でのすぐれた手腕が必要になる、もちろん教育研究に関する高い見識というのは必要なわけでございますが、そういったことをかんがみまして、学内の学部長等の代表者で構成される評議会が学長を選ぶというこれまでの方式を改めて、経営協議会の学外委員の代表者と、それから学内者で構成されるところの教育研究評議会、この代表者とが、同数で構成する学長選考会議におきまして、どのような形でそれぞれの学長を選ぶかということを決めて、しかも、広く大学の内外から適任者を責任を持って選考するということでございます。そこにおきまして大学の意思は反映されるわけでございます。
児玉委員 大学の意思が反映されるかどうかじゃないんです。最高裁が言っているのは、大学の学長は大学の自主的判断に基づいて選任されるんですよ、そうでなければならないと言っているんだから。あなたが今言った学長選考会議なるものについては、これは本当に、世界に出してみたら恐らくまれな存在になっていくでしょうね。この仕組みを私いろいろ計算してみると、ある場合は、学長選考会議の構成員というのは過半数が学外者になってしまいますね。そんなところでどうしてこの最高裁の判例が担保されるか。
 東京外国語大学地域文化研究科教授会がことしの三月二十日にこういう意見を表明されている。大臣、ちょっとしっかり聞いてください。「学長の選出についても、「最終報告」では、必要に応じて「学内者の意向聴取手続き」」投票など「が取られるべきだとされていました」、あなたがもう頭の中に入れているこれです、この国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議、平成十四年三月二十六日、それの三十二ページの冒頭のところに「具体の選考過程において学内者の意向聴取手続」わざわざ「(投票など)」こう書いている。
 それで、東京外語大学のその教授会は、最終報告ではそのように書かれていたけれども「「法案」では、その規程がまったく消えて、「経営協議会」の学外委員と「教育研究評議会」の学内委員とが同数選出され、」この計算は私は同意しない。必ずしもそうではないと思う。「それに学長自身が加わることのできる「学長選考会議」によっての選考という規程になっています。しかし、このような選考方法では、学内コンセンサスの確保がむしろ難しく、学長の地位と指導力をかえって危ういものにすると考えられます。」教授会はそう判断していますね。
 私が端的に聞きたいのは、この最終報告に言う「学内者の意向聴取手続(投票など)」は、この後どのようにして行われていきますか。お答えください。
遠山国務大臣 先ほど申しました学長選考会議におきまして、どのような形でその大学の学長を選んでいくかということを、ルールづくりも含めて決めるわけでございます。したがいまして、まさにその大学の学長を決めるという、大変大事なことでございますけれども、そのことについて、学内における選考会議で決めるということでございますので、その中に、そこに書かれているようなことを用いるということもできましょうし、それ以外の方法で選考するのもよしということでございまして、まさにそれぞれの大学が自主的に判断をしてやってもらいたいというのが、私どもの考えていますこの法律案の意図しているところでございます。
 したがいまして、大学の中での組織でございますので、大学が選んだことになるということに変わりはないわけでございます。
児玉委員 「学内者の意向聴取手続(投票など)」これはそれぞれの大学で決めてもらえばいいと。文部科学省の方でそれの是非について述べることはありませんね。
遠山国務大臣 学長選考会議の枠組みは決めておりますけれども、そこにおいてどのような形で学長を選んでいくかというのは、先ほど申しましたような趣旨を考えながら、各大学でお決めいただくものだと思っております。
児玉委員 そこでもう一遍、大臣と私はかみ合わせた議論をしたいんです。
 どんな仕組み、どんな構造になっているかというのは幾らか理解しました。問題は、それがどんな効果を発揮し、この後の大学をどう律していくかという問題です。
 私が先ほど出した問題、憲法二十三条に「学問の自由は、これを保障する。」日本の憲法の中で一切留保抜きの自由を規定しているものは数少なくしかありません。その中の一つです、これは。まさに無留保です。
 そして、それを大学でどうするかという場合に、あなた自身が何とおっしゃったかというと、去年の三月二十二日のこの委員会で、私の質問に対してあなたはこのようにお答えになった。「申すまでもなく、大学におきます教育研究が多様でかつ独創的な発想のもとで活発に行われていきますためには、」大賛成ですよ、こうでなきゃいけない。「学問の自由あるいは大学の自治というものは不可欠なものであります。そのことから、特に人事等の取り扱いにつきましては、別に教育公務員特例法が定められているところでございます。」あなたはそう語った。
 国会の答弁は重いものです。そして、この会議録は日本の議会が続く限り残ります。あなたはこの考えをお変えになりましたか、それとも今でもこのようにお考えになっていますか、お聞きしたい。
遠山国務大臣 国家公務員としての国立大学の教員についての話でございます。
 今の法改正は、国家公務員としてではなくて、非公務員型としての国立大学法人の職員ということでお諮りをしているわけでございまして、私は、そこで申しましたことにおける学問の自由あるいは大学の自治というものは、今御提案をしております国立大学法人法においてもしっかりと守られる。まさにそのことを守るがゆえに、独立行政法人通則法の例外をさまざまに考えて御提案をしているところでございます。
 そこはいろいろな各条に書き込んでございますけれども、教育研究の持つ特性をしっかり配慮しようから始まって、大学の意見をよく聞いて目標を定めよう、計画についても考えようということでございまして、私どもは、そこにおける精神あるいはそこでねらおうとしているものは、まさに私どもが真剣になって学問の自由を守り、そして大学の自治を守るという姿勢のもとにこの法案を作成しているところでございます。
 これは憲法の規定でございまして、まさに委員がおっしゃいますように無留保のことでありますがゆえに、独立行政法人通則法ではない部分をかなり入れ込んで、そこのところを守ろうとしているのが私どもの姿勢でございます。
児玉委員 いろいろおっしゃいましたけれども、私の極めて素朴な聞き取りによれば、去年の三月のこの発言は、国家公務員であった当時の国立大学について述べたことだというふうに最初おっしゃった。
 そこで言いたいんですが、あなたはそういうふうに答えていないんです、去年の三月。こう言っているんですよ。私が、教員養成系、これは全部国立ですけれども、それで述べたとき、その後あなたは何とおっしゃっているか。「今御指摘のように、」というのは児玉の指摘ですね。「大学の自治は憲法二十三条によって保障された」ものでありましてと言われた後、「これは何も国立大学に限ったことでございませんで、国公私立を通じて、大学における自律性、自主性、」それが保障されなきゃいけない、そう言っているんです。その点、変わりがないですね。
遠山国務大臣 憲法の規定に基づく学問の自由でございますから、これは国公私を超えて守られるというのが日本国のあり方だと思います。
児玉委員 話がかみ合ってきました。
 そうであれば、国家公務員であったときに保障された学問の自由や大学の自治がこの後も当然保障されなければならない。それは現に国家公務員でない私立についても、あなたは、「歴史的に積み上げられてきた制度、慣行」であって国と同じだとおっしゃっているんですから、そこのところをひとつはっきりさせておきたい、そう思います。
 そこで、次の問題です。
 この法律は、皆さんのスケジュールによれば、たしか二〇〇四年の四月一日に現在の国立大学から法人に移行する、法の施行は二〇〇三年の十月一日、そのとおりですね。
河村副大臣 御指摘のとおりでございます。
児玉委員 その移行のプロセスがどうなるかということについて、先日の議論でもありましたし、きょう、お隣の鳩山さんを含めて、非常に重要な議論があった、こう私は思います。
 そこでお聞きしたいんですが、一昨日、私どもの石井郁子議員の質問に対して文部科学省は、労働安全衛生法の国立大学における適用について、通知、指示文書等を発しているとお述べになった。つい先ほども佐藤さんに対してそう答えた。当たり前の話じゃないですか。出しているか出していないかが問題じゃないですよ。今問われているのは何が問われているかというと、明年四月一日の時点で労働安全衛生法に基づく施設設備における教職員の健康、風紀、生命の安全保持、そのために必要な改善措置、これが必要です。人事院規則、人事院規則と言われるから、熟読してみました。人事院規則はその点ではかなりラフですね。
 そして、どのような人が置かれなきゃいけないかといっぱい挙げてありますけれども、安全管理者、衛生管理者、産業医等の配置、そして労働者、労働組合の推薦されたメンバーを含む安全委員会の設置、来年の四月一日という時点でもしこれらが整備されない場合、あなたたちがこの文章の中でも盛んにおっしゃっていた日本における知の拠点としての大学が超法規的な措置になると私は考えるけれども、どうですか。
河村副大臣 さきに大臣も御答弁申し上げたと思いますが、今回、労働安全衛生法、これの重要性をかんがみながら、四月一日に間に合わせるために最大の努力をして、今の御指摘のないようにするというのが文部科学省の私どもの責任であるというふうに思っておるところでございます。
児玉委員 これは決意表明じゃ済まないんです。結果責任なんです。その瞬間にどうなっているか。指示を出したとか通達を出したというのは問題じゃないというのは、私はその意味で言っているんです。今どうなっているか。
 例えば、この点で、日本の大学というのは本当に残念な経過を幾つか踏まえていると私は思います。
 遠山さん、一九九一年十月二日に大阪大学豊中キャンパスで何が起きているか。基礎工学部の五階研究室で爆発が起きて、物理系専攻の院生と電気工学科四年生が亡くなって、そして負傷が随分出た。このとき、私どもの石井郁子議員は、大阪に、この現場に行きました。一九九二年八月十日午前十一時、北海道大学工学部応用物理学科G百五十二教室で何が起きたか。液体窒素を使っていた実験研究の中で助手、院生二名が亡くなって、このときは、私はその直後に北海道大学に行きました。そして、なぜそういう事故が起きたかということをいろいろ伺った。
 そこで、私は聞きたいけれども、先ほどから出ている労働安全衛生法に適合する状態になるための予算の算定をしたのか、しなかったのか。今からすると言っているので、私はどうも理解できない。そして、その財源をどこから出すかといったら、きょうの午前中でしたか、河村副大臣は補正予算とおっしゃったけれども、不明にして私は、この後小泉内閣が今年度中に補正予算を出すということを約束しているとは聞いたことがないんです。
 この労安法に移行するために必要な予算を算定したのか、しなかったのか。そして、当然、皆さんはその点では熟達しているから、どのくらいの推定額か、そして財源はどこから出そうとしているか、改めて聞きたい。
河村副大臣 私が補正予算ということを申し上げましたのは、内閣の方針が決まっていないのに僣越であったかと思いますが、どうしてもこれは必要であれば、政府に対してといいますか、文部科学省として要求しなきゃいかぬな、私はとっさにそう思ったから申し上げたわけでございます。
 現状では来年の四月一日から実際に移していかなきゃいかぬ。法律違反的な条項あるいはそれをなくしてスタートさせる、これは当然のことだ、私はこう思っておりますが、現実に、その細部にわたってということになりますと、この労働安全衛生法の適用の、どの部分をどうすればいいかということを今厚生労働省とも詰めなきゃいけない部分もあるわけでございます。これは改善命令で、いつまでに改善しなさいということで済むこともありましょうし、法的にきちっとしなきゃいけない部分も出てくるでありましょう。
 そういうものをある程度精査しなきゃいかぬということで、さきの、午前中に山元委員にもそのようにお答えをしたわけでございますが、当面は整備費二千六百億ですか、そのうち一千億を用意しておりますが、それを充当してやっていくということで、早急にその細部を出せと先ほどからも求めておられるわけでございますが、今月中にかなり詰めた数字を出していきたいというのを今事務当局で考えているようでございますから、その時点ではそういうものがはっきりするというふうに思っております。
児玉委員 私は、それは衆議院の審議に対する侮辱じゃないかと思う。それだったら、今月中、審議続けましょう。参議院に行ったときに資料なるものが出てくる、そういうのは後の祭りと言うんですよ。こんなふまじめなことでいいですか。
 例えば、同じように、最近独立行政法人に移行した産業技術総合研究所というのがあります。ここも技術研究その他を真剣にやっている。職員は三千二百人、箇所数は、ちょっといろいろ調べてみたけれども、あれを一カ所と見るかどうかというのがあるようなんで、十数カ所と言っておきましょう。ここで二〇〇一年法人移行に際して、責任を負う省庁は結果責任をとりましたよ。そして、それを、指示を出したとか調査はしているなんて、そんな生易しいことでなくて、何十何億何千何百万円という予算を明確につけて、そして二〇〇一年四月一日に法人移行したようです。そのことの是非は別ですよ、独立行政法人化がいいとは私は思わないから。
 そこで、もう一遍聞きますが、河村さん、確かに補正予算を出すというのは今からの大問題で、あなたや遠山さんに決めていただくことではないだろうと思う。三千二百人のこの産総研でも、アバウトに言って二十五億円かかっているんですよ。そして、全国の大学でどうかというのは、さっきの大阪大学と北海道大学の例にも、悔しいけれども見事に出ている。
 そういう中で、今現場の人たちがどういう思いをしているか。国大協、この前参考人に来た石さんは、私はその点では無責任だと思う。というのは、このままだと四月一日の施行が無理だから運用上の配慮ができないかなんというような文書を出す国大協の責任者というのは、責任は負えない。そして、その文書について、例えば山形大学のある学部長が山形大学の仙道富士郎学長に対してこの五月十三日に意見を出していますよ。
 運用上の配慮とは、教職員の労働安全に関する権利を無視する違法行為を合法化することです。労働基準法と労働安全法の国立大学法人への適用を除外する超法規的措置が文部科学省の権限でできるとは思えません。そして、運用上の配慮によって教職員が違法行為に加担させられます。
 まさにそうなるじゃありませんか。大臣、どうです。
遠山国務大臣 来年四月に法人化いたしますと、現在の人事院規則に掲げられている基準より、委員は人事院規則をラフだとおっしゃいましたけれども、私はそれなりのしっかりした中身だと思いますが、それよりさらに詳細な面も含まれる法律、別途あるわけでございまして、それに合法的でなくちゃならないというのはおっしゃるとおりでございます。
 まだこれから四月一日までの間に時間がかなりございます。私どもといたしましては、既に各大学の実情を調査し終わっております。そして、それに対する改善計画を今各大学がつくっております。それについて、それぞれの内容をもらいまして、それを精査し、そして国としてこれぐらい、これからどれだけ要るかということをもちろんやるわけでございますが、私どもの考え方では、十分に必要なことにこたえられるだけの予算措置は今のところしているのではないかと思います。
 それは、まだ細部にわたっての幾ら幾らというところまではいっておりませんけれども、これから四月に至るまでの間の私どもの責任でもございますし、各大学の責任でもあるわけでございます。そういう違法状態が生じないように一生懸命やるということを、政府の責任において答えさせていただきます。
児玉委員 今あなたの言った言葉を決意表明と言うんですよ。やりますと言うけれども、結果がどうなるか――何ですか、いいじゃないですかと。何と言った、あなたは。言いなさい、今の言葉を。失礼じゃないか。まじめにやれ。
古屋委員長 児玉健次君、審議を続けてください。
児玉委員 今の言葉、取り消しなさい。
古屋委員長 委員長が指名をした言葉ではございません。
児玉委員 あなたに聞こえたでしょう。
 そういう態度で、あなた、大臣が務まると思いますか。
 そこで言いたい。この労働安全衛生法について言えば、百十三条というのがあって、経過措置は極めて限定されています。
 あなたは今、私はちゃんと聞いたけれども、いいじゃないと言ったけれども、労働安全衛生法に関する管理体制が不備である場合は、事業所への立入検査、建造物の使用停止命令、罰則等が適用されます。そういった場合に、あなたはどのような責任をとりますか。いいじゃないと言いますか。
遠山国務大臣 今の時点で、政府が責任を持ってこの点については対処をするというお答えをしたわけでございます。
 そのことにつきまして、私としては、ここで明言することによりまして、各大学におかれてはぜひ改善計画をしっかりと立てて、そしてみずからも努力をし、我が省も努力をするという形で、来年度の法適用後において違法がないように一緒に努力すべきではないかと思います。
 今、労働安全衛生法に違反した状態が仮にあった場合どうなるかということで調べてもらいましたけれども、通常、労働基準監督署から指導があります。そして、それでもなお改善されない場合、それから労働災害が起こってその原因がこの違反であったような場合にいろいろ罰則適用とかがあるわけでございます。
 私どもとしては、そこに至るまでの間に、これからの四月までの間に必要なことについてはしっかりと対応する、そういう考えでおります。
児玉委員 きのう、私は、まさに労安法を担当している厚労省の担当者と相当突っ込んだ議論をしました。あなたが今言った、直に罰則だとか立入検査が来るのではないと。そこにあなたは期待しているんですか。
遠山国務大臣 私の言いたいことは、法施行までの間にしっかりと国と大学とが協力をして、この問題を事前に解決し終わっておくべきだと思っております。
児玉委員 まさに結果責任で、あなたは今答弁の中で、それぞれの大学において努力してもらうという趣旨のことを言ったけれども、これはそんな性質のものではない。あなたたちの責任です。
 そして、そうならなかったときに、あなたはどのような責任をとるか、はっきりさせてほしい。
遠山国務大臣 大学の施設でございます。大学がその教育研究に用いる施設設備につきましてしっかりと管理をして、そして本当に必要であれば、緊急のものについては優先的に私どもでそれを安全なものにするように努力するわけでございまして、私は、大学が何も責任がないというおっしゃり方は、それは大学に対してむしろ問題ではないかと思います。
 この問題は、大学側と我が省と両方で問題の解決に当たるという性質のものでございましょう。
児玉委員 あなたが言うせりふではないんです。文部科学大臣がそれぞれの大学の責任においてなんということを、この法律を出した立場から言えませんよ。それぞれの大学は今まで人事院規則について一定の努力をして、国大協は間に合わないと思ったから運用上の配慮と言ったんです。
 そこで、最後に言いたい。
 私は、これは結果責任だと思う。四月一日にそのようにならなかった場合に、この法案を凍結すべきだ。どうですか。
河村副大臣 私どもとしては、そういう事態の起きないように全力を尽くす、そういうことを申し上げたいと思います。
児玉委員 終わります。
古屋委員長 中西績介君。
中西委員 私は、今まで論議をずっとお聞きいたしておりましても、多くの問題があるということを痛感いたしながら、きょう採決ということでございますから、総括的なものも含めまして討論に参加をしたいと思います。
 そこで、昨年三月、国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議、これが最終報告として、「新しい「国立大学法人」像について」を提出いたしました。
 その結果、二十一世紀に向けて、今までの論議でもわかりますように、不十分な法案を提出したわけでありますが、国立大学を法人化することによって国民が期待する展望を開くことが可能だとお考えかどうか、この点についてお答えください。
遠山国務大臣 これからの未来を考えますと、人類の真に豊かな未来の創造に向けて知の再構築が求められております二十一世紀におきまして、日本の高等教育が世界的な水準の教育研究を展開して、その期待される役割を十分に果たしていきますためには、各大学が教育研究の質を不断に改善をし、あるいは向上をし、維持をし、そして切磋琢磨する中で、それぞれが個性輝く大学として発展していくことが求められているわけでございます。
 我が省としましても、このような基本的な認識のもとに、大学の自律性を高めるために、諸制度の弾力化、あるいは責任ある意思決定と実行を可能とする組織運営体制の整備、さらには多元的な評価システムの確立などの大学改革を展開しているところでございます。
 今回の国立大学の法人化に当たりましても、こうした大学改革の流れというものを前提として、独立した法人として意思決定を行うことができるしっかりした経営体制の確立を図った上で、大学ごとに法人化をし、互いに切磋琢磨しながら一層の個性化を図り得る状況をつくり出す、そして、専門的な角度からのきめの細かい評価などによって、各大学が教育研究の質の向上に積極的に取り組む環境をつくり出すというようなねらいのもとに、国立大学の改革を飛躍的に推進するための仕組みを盛り込んでいるところでございます。
 私どもといたしましては、このように、知の世紀を担う我が国にとって非常に大事な大学でありますところの国立大学におきまして、新たな展開、新たな確実な歩みを始めてもらえるようにということで、現在の法案を提出させていただいているところでございます。
中西委員 そうしますと、法人化することによって大きな進展を、そういう展望を開こうとしておるということを言われるわけでありますけれども、時間がありませんから細かいことに触れませんが、それでは国立大学では、改革が不可能だったんでしょうか、今言われたような事柄ができなかったんでしょうか。
 私見を言わせてもらうならば、公務員削減二五%から始まり、その後における改革と称する幾つかの提言なり報告なり、いろいろなものが出ました。それは全部、私たちから見ると、経済活性化のための大学改革としか映らないんですね。そのことが大学を改革することにつながるだろうか。むしろ私たちは、少なくとも、大学の本来の責務だとか、あるいは本来持たなくてはならない基本原理を生かしながら、役割があると思うんですね。だからこそ、私は国立大学であったと思うんです。
 ですから、そういう基本的な問題が、このようにして論議する際も、数は少数でありますけれども、半数の、野党の皆さんはほとんどこれに反対をして今論議をしておるという状況。では国民の側から見ると、それは、内容がどうなのかということを本当にまだわかってはおらないと思うんですね。だのに、昨年、こうした国立大学の法人化へ向けてということ、前からあったということを先般から何回か答弁にはありましたけれども、法制化し、そして来年四月一日から実施をしなくちゃならぬというような事柄。そして、今になって、具体的なものを知らなかったという大学人がみんな意見を言い始めているという状況。
 こういうところを見ますと、私は、よほど自信がないと国立大学では改革が不十分だったということを言えないんじゃないかと思うんですけれども、その点、お答えいただけますか。
河村副大臣 委員御指摘のとおり、今回の大学の法人化は、やはり大学改革の一環としていくというのが基本理念にあるわけでございまして、実は、国立大学をこれからどうするかという議論は随分前から行われてきたわけでありますし、世界に発信する、また大学の活性化が必要だと言われ続けてきたわけであります。それで、平成十一年四月の閣議決定、大学の自主性を尊重しつつ、大学改革の一環として検討しようというあのときの閣議決定、これを受けたわけでございまして、大学の教育研究の活性化を図る、こういう観点から大学改革をしていこうということで来たわけでございます。
 そして、今の国立大学については、もちろん国の財政措置といいますか、これを前提にしながら、さらに自律性を求め自主性を高めながら、国の事務事業を効率的、効果的に実施していかなきゃいかぬ、こういう考え方で、特に、独立行政法人の制度の発足に当たってこの考え方が導入されていったわけでございます。
 しかし、大学の教育の特性ということから考えて、独立行政法人のいわゆる独立行政という考え方、行政という考え方は大学にそのまま適用しない、大学はやはり教育研究の場であるから、別の法律で考えていかなきゃいけない。もちろん基本理念はそういうことが当然これからあってもしかるべきだろうけれども、しかし、大学改革というものはそれだけではできないということで、国立大学法人という新しい形をとってやっていこうということになったわけでございます。
 確かに、大学改革の視点から見ても、これまでの国立大学というのは、今までも随分言われてきたように、まさに文部科学省の仕組みの中の一組織の中に完全にすっぽり入っていた、まさに護送船団方式の中で一緒に動いておった、こういう形でございますが、そのために組織・定員の問題についても、一々文部科学省への要求等々、担当省庁の審査を経なきゃいけないという、よく文部科学省がはしの上げおろしまで言うのかと言われておりましたが、そういう状態から外れていかなきゃいかぬ。
 予算についても同じようなことが言える。単年度主義によって年間の繰り越しが困難だというような問題が国家予算にある、そういうこともクリアできるだろう、費目間の流用も可能になっていくだろう。
 人事についても、給与法に細部まで決められておるというようなこともございます。あるいは学長、公務員制度の壁があって、外国から学長を求めたいと万一考えたとしても、全く手がつかないという状況もあった。そういうような運用上の制約もこの際外していきながら、大学が活性化する。もちろん大学の自律性、そして自己責任というものも拡大し、そうした中で今まで以上に創意工夫が大学に生まれていく。
 そして、外に出る、独立することにより、適当な競争関係も生まれながら、まさに大学間の切磋琢磨というのももっと生まれていくだろうということ。それから、欧米の諸国を見ても、大部分の大学がいわゆる法人格を付与されている現況を見ても、日本の大学もそういう形でこれからさらに発展をしてもらいたい、こういう思いが今回のこの法人法の中に込められておる、私はこのように思っておるわけであります。
中西委員 国立大学法人のこれを進行させたときに幾つかの問題が出てくるということは、この前から多くの皆さんからも指摘をされておる部分がありますね。あなたが今言われたことは、文科省、かつては文部省です、これがむしろ管理統制という面を強めておったからそのことがあったのであって、それを今度は抜け出ようとするとそれを全部処分していく、こういうやり方をしてきたんですね。むしろ、文部省が、文化省なら文化省、スポーツ省ならスポーツ省というぐあいにちゃんと分かれて、そういう権限を持たなかった方が自由でよかったんじゃないかと私は思うんですよ。それくらいに思うんです。
 あなたたちは分権という言葉をよく使いますけれども、分権をといいながら、この前のこの運営資金の問題のときに出てまいりましたように、財政上の問題からするとやってはならないようなことをやって、しかもそれはどうするかというと、皆さんからいろいろなものを出させて皆さんのお目に通ったものについて補助金をするという、分権からするとまた逆の。そういうことこそちゃんと各地方に財政的な措置をさせて、それによって各地域に根差した本格的なものを、そこに主体的に起こってくるものをどう引き起こしていくか、こういうことを、環境をつくり、財政的なものの援助をし、それが文科省じゃないかと私は思うんですね。ところが、今も、出てくるのはみんな逆になるんです。依然としてまだそれが続いています。
 ですから、私が今度のこの問題について特に感じます点を申し上げますならば、先ほど申し上げましたように、二五%公務員削減から始まって、この法人化というのがずっと進行して、皆さんが先ほどから言われましたように、私なりに要約すると、規制の緩和と大学の自由の裁量の拡大だとか、大学の独自運営による多様化の進展だとか、適切な競争原理、第三者評価による国際競争力のある大学などなど、こういうように言われていますね。ところが、では本当にそうなるだろうかということを、私は懸念します。大学というものが、質の高い高等教育、学術研究を、市場競争社会で本当に実現できるだろうか、私、特にそのことを感じます。
 特に、何と言ったってまだ国立ですから、原資を持っているのは文科省なんですよ。ですから、今までずっと出てまいりました、いろいろありますが、例えば経済財政諮問会議、これが立てました方針を見てみますと、五年に二十四兆かけて、生命科学だとか情報通信だとか環境だとかテクノロジーだとか、こういうようなものを四つ挙げましたね。
 そうすると、今のようなやり方でやりますと、例えばトップサーティーの問題にいたしましても遠山プランにしましても、ずっと見てみますと、運営資金の配分がそれぞれの法人の何と直結していくかというと、中期目標であり、中期計画であり、大臣の許可であり、しかも、これは総務省の許可がまた要るわけでしょう。こうなってくると、結局、そういう政策面だけ、さっき私が最初に申し上げたように、経済活性化に向けて、おくれたから大変だ、これをどう補完するかということで、特定の教育だとか研究分野にのみ偏る可能性は、私は全くないとは言えないと思いますよ。
 評価するときに、何を基準にして評価しますか、こういう問題が一つあります。この前選びましたね、三十選んだ。こういうことからしますと、これは、選ばれたものは、さっき言うものの中から大体選ばれていっていますよ、見ていただければわかるように。こういう状況からしますと、結局、ますます、大学間の格差が拡大、増大するということになってくるだろう、私はこう指摘をせざるを得ません。
 そして、もう少し大事なことは、大学内における問題です。教育研究分野の内部における競争が今度また出てくる可能性があるんだ。なぜかというと、御存じのように、補助金を二年間使った結果、今度はだめだと判定したときには、それを返さなきゃならぬようになっているわけですから、そういうことから考えますと、長期的視野に立った研究だとか基礎研究、あるいは教養教育などの総合的人間知、社会倫理の責任知だとか社会科学の批判的知がなおざりにされる可能性があるじゃありませんか、奨励するところはそういうところじゃないんですから。
 だから、大学の役割とは何かということの基本論議と連ねて考えてみた場合に、本当に、私が言う質の高い高等教育、学術研究、こういうものが行われるということを自信を持って言えますか。
河村副大臣 中西委員がおっしゃった、いわゆる市場競争原理だけで大学の質の高さというものが保持できるかという御指摘がまずあったわけでございますが、市場競争原理といいますと、私の頭の中には、いわゆるコスト面であるとか、あるいは消費者を対象とした消費拡大であるとか、売り上げを伸ばすとか、まさにそういうような競争があるわけであります。大学における、大学は知の創造と継承を担う、大学によって担っていく、そして、高等教育、学術研究、非常に高度な、専門的なものにかかってくるわけでございますから、そういう観念でこれが導入されるということは私も考えにくいし、そういう機能がここに働くとは思わないわけでございます。
 しかし、適切な競争関係という言い方をしておりますが、やはり各学部等において、研究機関が、自分たちの研究をさらに高めるためにいろいろ努力をされる、切磋琢磨される、それは必要でございますし、最近は、工学部と医学部が一体となってこういう研究を進める動きも出てまいりました。これはある意味では、そうしたいい意味での競争、そして切磋琢磨が出てきておるというふうに思うわけでございます。
 もちろん、そのためには、御指摘のようなCOEもそうでありますが、これを客観的に見る、また適切に見る評価機関といいますか、これをもっと熟度を高めていかなきゃいかぬということも当然これに伴ってくることだ、こう思っておるわけでございます。
 そういう意味で、さきの午前中の議論の中にも、鳩山委員からも御指摘がございましたけれども、やはり、人間の福祉向上に即役立つような、そういうものではないにしても、いわゆる学問を深める、知識を深めるような研究とか時間のかかるような研究、そういうものにもきちっと目を当てながらやっていくのが大学研究でなければいかぬ、私はこう思っております。
 午前中も申し上げましたが、小柴先生のノーベル賞のあの考え方、あれがすぐ役に立つものじゃない、こういうものを大事にすることが、まさに人間としての、人類としての知識に対する欲求、これが大事なことなんだとおっしゃった、そういうものがやはり大学で行われなきゃならぬ。あのカミオカンデなんというのは、恐らく私学ではできなかったろうと思うんですね。国立大学だからできた。
 今回の法人化というのは、国立大学が持ってきたそうしたものは生かしながら、もちろん運営は効率化していただきますが、運営のやり方をもっと変えていこうということを考えておるわけでございます。中西委員が御懸念のような点についてはもちろん十分配慮しなきゃなりませんが、これはむしろ、これから、各大学がそういうことを十分考えて、自由にやる段階で、私は、そういうことがもっと高められていくだろうし、もちろんその中には、科学技術創造立国として二十四兆を計画いたしておりますが、そういうものも当然含まれてくる、これはやはり知の創造という意味で大事なことだと思いますから、そういうものもその中に入っていくわけであります。
 ただ、御指摘のように、私は、経済財政諮問会議が経済効率だけで教育を考える嫌いがある。これは私の偏見かもわかりませんが、どうもあの動きを見ていると、そういう動きがある。経済効率第一に考えながらやっていこうとする動きがある。私は、これは要注意だ、こう思っておりまして、それだけで教育を律するわけにはいかない、もちろん経済効率ということはいろいろな運営体には必要でございますけれども、そういう思いで、今、この問題に取り組んでおるところでございます。
中西委員 今あなたが最後におっしゃったところあたりは、それがとめられていないんですよね。八〇年代から大学改革という問題が論議され始め、特に九〇年代になってそのことが加速してきて、ここ数年の間における加速度というのは、また顕著なものがあるんですね。
 そういう歯どめが、あなたたちが自信を持ってやれるというなら、私たちも安心できますけれども、それができないんです。だからこそ、主張しなきゃならぬところをまだまだ主張して、足りないんではないかということを私は言っておるんです。ですから、先ほどから出ておりますように、今度は、国立大学の公共性と条件の均等性というものは、これをやることによって本当に守られるのかどうか、維持できるのかどうかということを非常に懸念します。
 時間がありませんから、これについては余り言いませんけれども、少なくとも、公共性と教育の機会均等が重視されて初めて、国立大学だからこそ、競争原理によって自己の大学のみの利益拡大、こうすることをやめて、あなたが最後に言ったように、共同研究だとか、横の連携を強めてやりさえすれば、先ほど問題を出しましたけれども、三十のそういうトップクラスをつくるとかいっても、どんどん尻をひっぱたくような発表をするじゃありませんか。本当にそういうことでできるのか。基礎的なもの、底辺の広いものでなくちゃ、教育というのは私は実を上げることはできないと思うんです。特定の人だけをやるなんということは、私、今までずっと見てきておりますけれども、それでそう成功したという例はありませんよ。
 だから、やはり国立大学としてのこの公共性というものをもう少し、でなかったら、もう国立大学を放せばいいじゃないですか、あなたたちさっきから言うように、自由にするとかなんとかというふうなことを言うんだったら。そして、私立大学に全部して、そこに全額今の金を。
 さらに、先ほどから出ておるように、最後に言おうと思っていたんだけれども、日本の予算というのは、外国に比べて半分あるいは三分の一なんですよ、関係費、国のGDP比からいいましても。こういう国の中で無理をしてやるとすれば、なおさら公共性のあるものを生かしていかぬと、国立大学の意味というのはなくなると私は思いますよ。そういう点が、これをつくるに当たって、あなたたちの視点の中にはもうなくなっている、そのことを私は言いたいんです。
 もう一つ大事なこと、先ほどから大分問題になっておりました学問の自由と大学の自治、教授会自治、こういうふうなものは大学によってすべてということを、大体、先ほどの言葉から聞き取ればとれるような発言をなさっておられます。果たしてそうでしょうか。
 私が一番心配しているのは、一番最初に言った、目標だとか計画だとか、すべて許可であり、そして今度は学長を選ぶに当たってもそうだし、今度、外部から人を入れるにしてもそうだし、先ほど言った教授会の位置づけというのは、先ほどお聞きしましたからわかりましたけれども、いずれにしても、こうした点が、皆さんが最初に掲げた規制の緩和と大学の自由裁量、これを本当に拡大できるということになるのかというと、私たちがこの法律を読んでいくと、むしろ規制を強めるような内容になっているんじゃないかということを、私たちは危惧をした。この前からの論議はほとんどそうですよ、皆さん。ここが私は一番問題じゃないかと思いますね。
 ただ規制緩和でいいますならば、事務量の簡素化、効率化なんと言うけれども、例えば、経営協議会だとか、教育研究評議会だとか分離しますね。あるいは、企業会計の原則を入れてやるとかなんとか、目標、中期計画の作成、そういういろいろなものから全部ずっとしていきますと、むしろ規制の方が強まっていきますよ、事務の簡素化はされません。これは大学の人たちがみんな言っているわけです。
 ですから、そういう点からしますと、私は本当に、あなたたちが、決意じゃなしに、結果はこうなるんだというものをぴしっと出していただいて、そしてここでみんなで論議をするならば、みんななるほど、それならいいじゃないかということになるし、意見のある人もおるでしょう。やはりここがそういう場にならぬと、本格的なものにならぬと私は思いますよ。だから、これは非常に拙速主義です。何かありますか。
遠山国務大臣 大学の自治の問題あるいは大学の自主性の問題について大変御懸念をされたり、今回の法改正でそういうことのいろいろな自主性というものが規制されないようにとおっしゃっておりますわけでございますけれども、まさにそのことによって今の国立大学といいますものが活性化されていない面がある。それを、いろいろな規制を取り払って、そして自由濶達にやっていただこうというのが趣旨でございまして、この問題については再三御説明しているとおりでございます。
 しかしながら、国費を出すということにおいて、一種の枠組みというものは使わざるを得ないわけでございます。しかし、その際にも、さまざまな規定におきまして、教育研究の特性を配慮、それから国立大学の意見をよく聞くようにから始まって、さまざまな特例を定めているわけでございます。
 私は、今回の法改正の特色につきまして、中期目標あるいは中期計画の定め方において最終的に文部科学大臣が決定なり許可というようなことにかかわるという点のみに集中されて、むしろ、何をねらっているかということにおいてもっと広くそのプラスの面をお考えいただいたり御説明いただいたらいいのではないかと思います。
 私どもも、この大変重要な問題につきまして、長らくやってまいったわけでございますが、特に大学関係者との意思疎通につきましては、最初から非常に腐心をいたしてまいっております。直接に、さまざまな国立大学長あるいは協会としてのまとまり、さらにはノーベル賞クラスの有識者を含みますさまざまな懇談会、さらには調査検討会議を開催いたしまして、その方向性について十分相談をして、そしてそこで練られました、そこでおまとめいただきましたものをいかに法律に表現するかということにおいて、各省との協議におきましても大変な労力を払ってきたわけでございます。
 その精神は、やはり大学という学問及び教育を展開する場のあり方の基本を定めるということにおいて、私どもとしては真剣にやってきたつもりでございまして、ある部分のことのみを強調されますと、私どもといたしましても、それはむしろこの大きなねらい、日本の未来がかかっているようなこの法案でございます。私どもとしては、ここにおいてはしっかりと、その理念なり哲学なりというものを、各大学において十分にこれをこれから実現していただきたい、また、そのためにさまざまな支援はしてまいるわけでございますけれども、そういうことについて御理解を賜りたいというふうに思います。
中西委員 ですから、先ほどから、きょうの論議をずっと聞いておりましても、先にそうした法律なりなんなりを全部整え、そして先ほど出ておりましたように、例えば労働安全衛生法、こういう問題だとか、あるいは法人に移行するに当たっての、移行前の問題だとかあるいは移行後の問題、そういう財政的なもの、これがなきゃ大学運営はできませんからね。そういうふうなものをちゃんと、人に言われてから、急いで今から調査するなんていうようなことをさっき言っていましたけれども、こんなことで私たちに論議をせよということ自体が、委員長、どう思いますか、余りにも不見識なんです。国会軽視なんですよ。
 これは、与党の皆さんもみんな、与党の皆さんは、先にこの論議をずっとしておるからある程度理解はしておるといたしましても、我々、ここで論議するところですから、こうした点がやはり不十分だということは十分考えていただかなくちゃならぬと思うんです。
 そこで、時間がもうなくなってまいりましたから先を急ぎますけれども、私は、本来大学のあり方というのは、むしろ、国際競争力ということよりも、これからの日本のあり方自体、問題になりましたように、財政諮問会議から出されたときに野依さんが言われましたように、これから先は、日本を支えるこういう四分野を、次に来るところを大学なりなんなりで本格的に研究する、基礎研究をする、そのために資金をどんと投入するということを言わなきゃだめだというんですよ。そういう指摘が盛んに今されておるわけでしょう。ですから、私は、競争ということよりも、むしろ貢献をどうしていくかということがこれから大学なりあるいは日本の果たす大きな役割ではないかと思うんですね。
 あるいは先端技術。例えば金のかかる先端技術なんというのは、さっきから言われておりますように、国際的に協力して各国の分担ですみ分けをしたりすればやれるようなことがたくさん今あるじゃないですか。一国でやれ、そして突出をせいというやり方をやったらだめなんですよね。もうそういう時期じゃないということなんです。
 あるいは、国益を争う前に国際的な連携をして、人類の課題をどう解決していくかという問題等を中心にして、これから基本的な理念をどこに置いてやるかということをやっておかぬと、大学のあり方そのものがおかしくなると私は思う。そうなればなるほど、大学間における競争だけではまだ問題がある。
 ですから、私は、少なくともこれからは競争より連携、このことが大学のあすを開いていくようになるんじゃないかという気がしてなりませんので、こうした基本的な理念というものをもう一つ打ち出してもらって、合意をした上でやっていくという形をとっていただきたいと思います。もう時間がありませんのでやめますけれども、こうした点についてお願いをしたいと思います。
 それから、細かいことになりますけれども、これは通った後また問題になる点があると思いますから。
 法第三条の、「国は、この法律の運用に当たっては、国立大学及び大学共同利用機関における教育研究の特性に常に配慮しなければならない。」こうあります。中期目標あるいは計画策定の際に文科省と財務省との協議が行われるであろうが、第三条を十分に踏まえて行われなくてはならぬと私は思います。予算は単年度主義でありますから、この点について、この計画を達成していくためには裏打ちする財政措置、これは絶対必要なんです。この点、財務省はどのようにお考えか。
杉本政府参考人 国立大学等におきます教育研究につきましては、その自主性、自律性を尊重することが重要であることはもとよりのことでございます。
 先生御指摘のように、国立大学法人法三条、法律の運用に当たっては常に教育研究の特性に配慮しなければならないと記載されていることは、私どもも十分承知しておりますので、財政当局といたしましても、中期目標及び中期計画の協議におきましては、このような国立大学法人の教育研究の特性について十分配慮していくことが必要だと考えております。
 次に、国立大学法人に対する財政措置についてでございますが、これにつきましては、中期計画の定めるところに従いまして、運営費交付金及び施設整備費を毎年度の予算編成の中で確実に手当てすることとしております。具体的には、中期計画において期間中の予算額算定のためのルールを定めまして、各年度の予算編成におきましては、このルールの具体的な適用を図る予定でございます。したがいまして、国立大学法人に対する予算につきましては、単年度予算を前提とする国の予算制度のもとにおいても確実に措置されることになると考えております。
中西委員 財務省はあのように言ったんですから、今度は文科省がどれだけ頑張るか、主張がどう通っていくかということが問題ですから、ひとつ頑張ってください。
 それから、私、かつて地方公務員をやっておった経験がありますので、二、三について、時間がもうありませんけれども、聞きます。簡単に聞きます。きのう質問要綱を通知してありますから、それについてお答えいただければと思います。
 一点は、教職員にかかわる特例法です。教育公務員特例法は、教職員にかかわる特例法と理解できるかが一つです。
 それから、二つ目です。教職員、特に職務と責務の特殊性に基づく教職員の範囲についての確認、これがどうなるのか。例えば、事務職員、栄養職員、現業職員などを含みまして、地方公務員法五十七条による特例措置と理解してよろしいかどうかです。
 そして三点目。この点につきましてはいろいろずっとありますけれども、現行法の中でも一般職員に比べましていろいろ特例が多く出ています。採用、昇任、あるいは給与の問題、あるいは研修、さらにまた勤務成績の評定などなどたくさんございますけれども、こうした点については、教育公務員特例法の制定趣旨を踏まえて協議することが必要だと思いますけれども、この点についてお答えください。
矢野政府参考人 ポイントをお答え申し上げます。
 まず、教特法を教職員にかかわる特例法と理解してよいかということでございますが、教育公務員特例法は、地方公務員法五十七条の規定による特例法に該当するものでございます。
 また、法人化に伴って非公務員となることについての教員等の身分取り扱いについての何点かのお尋ねがございましたけれども、一括して申し上げますれば、国立大学法人化後の公立学校の教員等の身分取り扱いにつきましては、先生が今御指摘の点も含めてでございますが、これは教育公務員特例法等の関係法令を今回整備いたしておりますので、それによりまして、引き続き現行と同様の制度を維持することにいたしております。
 特に、教員の給与でございますが、教員の給与について申し上げますれば、これは、給与水準の決定は各都道府県にゆだねることとしたところでございますけれども、現行の教員給与体系の基本は維持することといたしております。
中西委員 時間が参りまして大変恐縮です。ですから、先ほどから申し上げましたように、何人かの方が指摘しましたように、労働安全衛生法の問題にいたしましても、財政問題等につきましても、やはりそうした計画をちゃんと出して、我々国会側にこれだけ要求しているわけですから、いついかなるときにするということまでして、今度は我々に示していただくということを、ぜひ委員長の方からもお約束させていただければと思っています。
 まだ多くの問題がたくさんありますけれども、時間が参りましたので、これで終わります。ありがとうございました。
古屋委員長 これにて各案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
古屋委員長 これより各案及び国立大学法人法案に対する修正案を一括して討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、順次これを許します。鈴木恒夫君。
鈴木(恒)委員 私は、自由民主党、公明党及び保守新党の三党を代表して、政府提出法案につきましては賛成、民主党・無所属クラブ提出修正案につきましては反対の討論をいたします。
 我が国の二十一世紀を輝ける世紀とするためには、私たちは、時代の潮流に応じた教育立国と科学技術創造立国という大きな目標に向かって、国の礎づくりをハイスピードで進めていかなければなりません。そうした中で、高等教育と学術研究の双方を担う大学、とりわけ国立大学の役割と責任は極めて大きいものがありまして、その改革に対する国民の期待は高まっていると私たちは確信をしております。
 そのためには、各国立大学がお互いに競い合い、魅力ある教育や特色ある研究を展開することが可能な環境を整備することが、とりわけこれから大学で学ぼうと高い志を持っている若者たちにとって必要であります。
 以上のような点にかんがみますと、政府提出法案につきましては、国立大学を法人化し、大学の自主性、自律性を高めるとともに、民間的経営手法の活用などによる責任ある経営体制を確立することによって、国の責任のもと、国立大学の役割を一層しっかりと担うことなどを目指すものでありまして、必ずや日本の高等教育の新しい夜明けを招くものと確信をいたします。
 一方、民主党・無所属クラブ修正案につきましては、大学運営の基本的方針である中期目標等についての国の関与を否定するとともに、経営協議会の半数以上は学外有識者で組織する旨の規定の削除などを主な内容とするものでありますが、中期目標などの仕組みは、国が財政措置を行う上で必要最小限の関与であると思いますし、大学運営を学外者の参画を得つつ、開かれ、かつ機動的、戦略的なものとすることが現在強く求められていることなどを考えますと、修正案は、国立大学への国の責任をあいまいにするとともに、大学運営をむしろ閉鎖的なものにしかねない、そう問題点を私たちは指摘せざるを得ません。
 以上のことから、我々は、勇気を持って新しい改革を進めるという決意を改めて固めて、政府提出法案に賛成をし、民主党・無所属クラブ提出修正案につきましては反対の意思を表明するものであります。(拍手)
古屋委員長 次に、牧野聖修君。
牧野(聖)委員 民主党の牧野聖修です。
 私は、民主党・無所属クラブを代表して、内閣提出の国立大学法人法案に反対し、民主党修正案に賛成する立場から討論を行うものであります。
 委員会審議の中でも明らかになりましたように、政府提出の国立大学法人法案は、多くの点で欠陥があります。特に、大学法人の中期目標を文部科学大臣が定めるとする政府案第三十条は、大学の自治、研究の自由を否定するものであると断ぜざるを得ません。
 また、政府案では、経営協議会や教育研究評議会、学長選考会議の構成について細かく規定し、また個別大学の理事数を法定化するなど、おおよそ遠山大臣の言う「さまざまな束縛から大学を解放」するという姿からはかけ離れた内容であり、断じて容認できません。
 大学法人の評価についても問題があります。政府法案は、各大学の生殺与奪権を握ると言っても過言ではない評価委員会の構成や運営交付金の算定基準など重要な部分をすべて不明確にしたままで、見切り発車をしようとしています。これでは、各大学は、文部科学省官僚の顔色をうかがいながら大学運営に当たらざるを得なくなるでありましょう。こんな状況を許していいわけがありません。
 また、議会人として、このような重要な点が不明のままこの法案に賛成するということは、無責任のそしりを免れないと言わざるを得ないと私は思います。
 これらの点について、民主党の主張する修正がなされない限り、我が党は、国立大学法人法案並びに国立大学法人法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案には反対することを表明いたします。
 また、独立行政法人国立高等専門学校機構法案については、全国五十五の、本来ならばそれぞれに特色のある国立高等専門学校を乱暴にも一本化し、文部科学大臣が策定した中期目標を押しつけるという内容からも明らかなように、国立大学法人法案以上に各学校の独自性、主体性、学問の自由を否定するものであり、反対であることを明らかにして、私の討論を終わります。(拍手)
古屋委員長 次に、石井郁子君。
石井(郁)委員 私は、日本共産党を代表して、国立大学法人法案など関連六法案について反対の討論を行います。
 我が国の高等教育の大改革と言われながら、法案の審議は、参考人質問二日を入れてたったの五日というのでは、立法府として余りにも無責任と言わなければなりません。審議は尽くされたどころか、審議されなければならない多くの問題が残されたのです。独立行政法人メディア教育開発センター法案などは、全く審議されないまま採決されようとしています。こうした中の無謀とも言える委員長職権による採決の強行に厳しく抗議するものであります。
 この間の短い審議にもかかわらず、国立大学法人法案は、憲法に反する欠陥法案であることが浮き彫りとなりました。
 大学の中期目標を文部科学大臣が定めるなどということは、世界に例を見ません。また、中期計画について文部科学大臣の変更命令に従わなかった場合、二十万円以下の過料が課せられるという異常なものです。
 その上、中期目標や中期計画がどれだけ達成されたか、文部科学省内に設置された国立大学評価委員会で評価された上に、総務省内に設置された政策評価・独立行政法人評価委員会の評価を受けなければなりません。そして、中期目標終了時、すなわち六年ごとに、文部科学大臣は、廃止、民営化を含めて所要の措置を講ずるとしているのです。
 これでは、大学の自主性、自律性どころか、憲法に保障された学問の自由、大学の自治を奪う教育研究への国家介入、統制強化法にほかなりません。
 しかも、国が立てる目標を忠実に実行できるように学長の独断専行体制の確立とともに、学外者の権限を極端に肥大化させているのも問題です。
 さらに、一兆三千億円もの巨額の債務を附属病院を持つ国立大学法人に押しつけることや、労働安全衛生法という労働者の生命と安全を守る国の基準を満たさず、違法状態のまま出発せざるを得ないことも明らかとなりました。
 まさに法案は、我が国の高等教育機関の発展と国民の教育権を危うくするものです。このような欠陥法案は廃案にすべきです。
 民主党の修正案についても、国による大学の設置責任の放棄、財政責任の法人への転嫁、教職員の身分問題など、政府案と基本的スキームは変わらず、反対せざるを得ません。
 この間、我が国の大学の行く末を憂慮した多くの大学人がこの委員会傍聴に駆けつけています。また、学部教授会の批判的決議が相次いで上げられているように、この法案の大学関係者の合意はなされていません。国立大学協会が六月十日に総会を開き、意見を集約すると言っています。自主性、自律性を言うならば、法案を押しつけてはなりません。
 このことを強く指摘し、討論とします。(拍手)
古屋委員長 次に、山内惠子君。
山内(惠)委員 社民党の山内惠子です。
 国立大学法人関連六法案に反対の立場で意見を申し上げます。
 私は、大学は改革されるべきだと思っています。しかし、今回の法案は、多くの人々の願いにこたえるものではありません。どなたかがおっしゃったように、文科省による文科省のための改革と言われても仕方がないような法案です。
 国立大学法人法案は、国立大学の制度的なあり方を根本的に変更するものであり、ひいては私立大学を含む日本の大学制度全体に影響を与えるものです。だからこそ、学長のみならず、大学の教職員の皆さん、学生、保護者の方々、国民の声に耳を傾けるための公聴会を開くべきだったと思います。
 この法案によって、文科省・官僚の統制が強くなる一方で、予算一つを見ても、21COEの考え方が示すように、競わせて淘汰していく。その結果、何が起こるのか。財政の逼迫している地方の大学や、弱い私学はつぶれていくことになるでしょう。そのことによって、地方では、仕送りのできる家庭の子供だけが中央の大学に進学できるという時代を迎えることになるのではないでしょうか。
 だからこそ、審議の途中でワンクッション置いて、危機感を持っている地方の声、私学の声に耳を傾ける地方公聴会が必要だったと思います。なぜこんなに急ぐのか、理解ができません。
 法案の内容もひど過ぎます。先日の山岸参考人は、法案の最大の問題は、中期目標を大臣が定めることだとおっしゃっています。大学の自治、学問の自由は保障されなくなります。
 大学のありようは、富士山型ではなくて、八ケ岳型がいいとおっしゃっていますが、法案による大学のありようは富士山型です。これでは、この国の学術の研究は必ず行き詰まります。
 今回の法案では、富士山の頂点に強大な権力を持つ学長を置いているように見えます。学長が大学をうまく運営すれば、その学長が再任される、しかし、問題があれば解任する、それは当然のことですけれども、学長選考会議のあり方は八百長まがいのシステムになっていると指摘した方がいます。学長選考会議に学長が入っているからです。これでは、被告と裁判官が同一人物であるという、八百長だということではないでしょうか。その上、その学長の任命権と解任権を文部科学大臣が握っています。ひどいではありませんか。
 ですから、今後、我が国の教育が一層困ったものになるのは、文科省を頂点とする峰が一つとなるということが見えるからです。この法案は、八ケ岳のようなたくさんの峰をつくる道を閉ざす法案だと私は思います。
 また、このたび明らかになったように、国大協文書に見られるように、二〇〇四年四月一日法人移行は、違法状態を生み出しかねません。移行のためにかかる費用、移行後の費用が明らかでないので、法案の前提条件が保障されていないというふうに私は思います。法人化したけれども財政支出はふえた、これでは、国会として国民に対して責任をとれません。それも、教育研究のための費用がふえるというならまだしも、そうではないでしょう。
 国大協文書にあるように、不安材料があり過ぎます。しかも、この文書に対して、文科省の虚偽答弁は許せないものでした。通り一遍の答弁、この審議を通して具体的なことが全く明らかにならなかったと思います。明らかに審議は不十分です。
 この法案は、日本の高等教育、学術研究の将来にかかわる重大な法案です。しかし、法案の内容がひど過ぎます。答弁の内容がひど過ぎました。やり方が急ぎ過ぎました。これでは理想の大学改革はできないということを指摘して、反対の討論を終わります。(拍手)
古屋委員長 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
古屋委員長 これより順次採決に入ります。
 最初に、内閣提出、国立大学法人法案及びこれに対する修正案について採決いたします。
 まず、牧野聖修君外三名提出の修正案について採決いたします。
 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
古屋委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。
 次に、原案について採決いたします。
 原案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
古屋委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 次に、内閣提出、独立行政法人国立高等専門学校機構法案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
古屋委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 次に、内閣提出、独立行政法人大学評価・学位授与機構法案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
古屋委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 次に、内閣提出、独立行政法人国立大学財務・経営センター法案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
古屋委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 次に、内閣提出、独立行政法人メディア教育開発センター法案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
古屋委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 次に、内閣提出、国立大学法人法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
古屋委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
古屋委員長 この際、ただいま議決いたしました各案に対し、鈴木恒夫君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及び保守新党の四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を求めます。山元勉君。
山元委員 私は、提出者を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。
 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。
    国立大学法人法案、独立行政法人国立高等専門学校機構法案、独立行政法人大学評価・学位授与機構法案、独立行政法人国立大学財務・経営センター法案、独立行政法人メディア教育開発センター法案及び国立大学法人法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案に対する附帯決議(案)
  政府及び関係者は、本法の施行に当たっては、次の事項について特段の配慮をすべきである。
 一 国立大学の法人化に当たっては、憲法で保障されている学問の自由や大学の自治の理念を踏まえ、国立大学の教育研究の特性に十分配慮するとともに、その活性化が図られるよう、自主的・自律的な運営の確保に努めること。
 二 国立大学の運営に当たっては、学長、役員会、経営協議会、教育研究評議会等がそれぞれの役割・機能を十分に果たすとともに、相互に連携を密にすることにより自主的・自律的な意思決定がなされるよう努めること。また、教授会の役割についても十分配慮すること。
 三 役員等については、大学の教育研究や運営に高い識見を有し、当該大学の発展に貢献し得る者を選任するよう努めること。
 四 文部科学大臣は、中期目標の作成及び中期計画の認可に当たっては、大学の自主性・自律性を尊重する観点に立って適切に行うこと。
 五 国立大学の評価に当たっては、明確かつ透明性のある基準に従って行うとともに、基礎的な学問分野の継承発展や国立大学が地域の教育、文化、産業等の基盤を支えている役割にも十分配慮すること。また、中期目標等の業績評価と資源配分を結びつけることについては、大学の自主性・自律性を尊重する観点に立って慎重な運用に努めること。さらに、評価に係る業務が国立大学の教職員の過度の負担とならないよう努めること。国立大学法人評価委員会の委員は大学の教育研究や運営について高い識見を有する者から選任すること。
 六 運営費交付金等の算定に当たっては、公正かつ透明性のある基準に従って行うとともに、法人化前の公費投入額を十分に確保し、必要な運営費交付金等を措置するよう努めること。また、学生納付金については、経済状況によって学生の進学機会を奪うこととならないよう、適正な金額とするよう努めること。
 七 国立高等専門学校については、各学校の自主性・自律性を尊重し、教育研究の個性化、活性化、高度化が一層進むよう配慮すること。
 八 国は、高等教育の果たす役割の重要性に鑑み、国公私立全体を通じた高等教育に対する財政支出の充実に努めること。また、高等教育及び学術研究の水準の向上と自立的な発展を図る立場から、地方の大学の整備・充実に努めること。
 九 職員の身分が非公務員とされることによる勤務条件等の整備については、教育研究の特性に配意し、適切に行われるよう努めること。また、大学の教員等の任期に関する法律の運用に当たっては、教育研究の進展に資するよう配慮すること。
 十 公立の義務教育諸学校の教職員の処遇については、学校教育の水準の維持向上のための義務教育諸学校の教育職員の人材確保に関する特別措置法を今後とも堅持し、国家公務員に準拠する規定が外されることにより同法の趣旨が損なわれることがないよう、十分配慮すること。
以上であります。
 何とぞ御賛同くださいますようお願いを申し上げます。(拍手)
古屋委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
古屋委員長 起立多数。よって、各案に対し附帯決議を付することに決しました。
 この際、ただいまの附帯決議につきまして、文部科学大臣から発言を求められておりますので、これを許します。遠山文部科学大臣。
遠山国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その御趣旨に十分留意をいたしまして対処してまいりたいと存じます。
 どうもありがとうございました。
    ―――――――――――――
古屋委員長 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました各法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
古屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
古屋委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後三時五十一分散会


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