衆議院

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第6号 平成16年3月19日(金曜日)

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平成十六年三月十九日(金曜日)

    午前九時三十三分開議

 出席委員

   委員長 池坊 保子君

   理事 青山  丘君 理事 伊藤信太郎君

   理事 遠藤 利明君 理事 川内 博史君

   理事 平野 博文君 理事 牧  義夫君

   理事 斉藤 鉄夫君

      宇野  治君    江崎 鐵磨君

      小渕 優子君    奥野 信亮君

      加藤 紘一君    上川 陽子君

      城内  実君    岸田 文雄君

      近藤 基彦君    鈴木 恒夫君

      田村 憲久君    西村 明宏君

      馳   浩君    古川 禎久君

      山際大志郎君    加藤 尚彦君

      城井  崇君    小林千代美君

      古賀 一成君    須藤  浩君

      高井 美穂君    土肥 隆一君

      鳩山由紀夫君    肥田美代子君

      牧野 聖修君    松本 大輔君

      笠  浩史君    富田 茂之君

      石井 郁子君    横光 克彦君

    …………………………………

   国務大臣         茂木 敏充君

   内閣府副大臣       中島 眞人君

   文部科学大臣政務官    田村 憲久君

   文部科学大臣政務官    馳   浩君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   林  幸秀君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 田中 順一君

   政府参考人

   (日本学術会議事務局長) 吉田 正嗣君

   政府参考人

   (文部科学省研究振興局長)            石川  明君

   参考人

   (日本学術会議会長)   黒川  清君

   文部科学委員会専門員   崎谷 康文君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 日本学術会議法の一部を改正する法律案(内閣提出第二九号)


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     ――――◇―――――

池坊委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、日本学術会議法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、参考人として日本学術会議会長黒川清君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣府政策統括官林幸秀君、総務省大臣官房審議官田中順一君、日本学術会議事務局長吉田正嗣君及び文部科学省研究振興局長石川明君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

池坊委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

池坊委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。斉藤鉄夫君。

斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫です。よろしくお願いいたします。

 日本学術会議法の一部を改正する法律案、質問をさせていただきたいと思います。

 早速ですけれども、日本学術会議、名前はよく聞くんですけれども、何のために存在しているのかということがいま一つわからないところがございます。

 学術会議法を読みますと、目的は、「わが国の科学者の内外に対する代表機関として、科学の向上発達を図り、行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させること」と書いてございまして、職務は、「科学に関する重要事項を審議し、その実現を図る」という審議的機能、それから「科学に関する研究の連絡を図り、その能率を向上させること。」という研究連絡的機能、審議的機能と研究連絡的機能から成っている、これが学術会議だ、このように書いてあるわけです。

 いわゆる行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させることというふうに考えれば、内閣府があり、また文部科学省があって、その仕事をしております。そして、審議的機能ということになれば、政府の中に多くの科学関係の審議会がございまして、いろいろな政策提言をしていただいております。それから研究連絡的機能ということですが、これはいわば内閣府総合科学技術会議や文部科学省がそういう研究連絡的機能も行っております。そういうことからすると、何のために日本学術会議があるのかということがいま一つはっきりしないということがあります。

 そこで、この日本学術会議が何のために存在するのか。税金を使って、国税を使って、国民の負担で存在しているわけですから、何のために存在するのか、国民にわかりやすく説明をしていただきたいと思います。

吉田政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま先生御指摘になられましたように、この日本学術会議は、我が国の科学者の代表機関でございます。我が国、科学者は七十六万人いらっしゃいますが、その代表機関といいますのはこの日本学術会議だけでございまして、これは法律に規定されておるところでございます。

 そういった全国の科学者の意見あるいは知見をボトムアップ的に集約しまして、それを例えば提言というような形で政府あるいは社会に伝えていく、それでもって社会の発展あるいは政策の推進に寄与していく、こういう機関でございます。

斉藤(鉄)委員 それはわかるんですけれども、ではなぜ、例えば文部科学省にあるいろいろな科学者を集めた審議会、その審議会も政策提言能力や、またある意味での研究連絡調整機能もあるわけですが、そういうものとどこが違うかということを今の御説明ではいま一つすっとのみ込めないんですが。

吉田政府参考人 各省に審議会いろいろ設置されておりますが、それぞれ所掌事務というのが決まっておりますので、その所掌事務の範囲の中で、あるいは意見具申をしたり、答申をしたり、そういうことをされておるわけでございますが、この日本学術会議は、学術、科学のことに関しましてすべての分野にわたりまして意見具申あるいは提言をする、そういう機能を持っております。そういった所掌の範囲の違いがございます。

 それから、審議会は、全国の科学者の代表というような性格はございません。我が国の科学者の意見を代表する意見というものがこの日本学術会議から出てくる、そういうふうにお考えいただければ幸いでございます。

斉藤(鉄)委員 ということは、例えば、審議会等は各省庁にあって所掌事務が決まっている、また、審議会等はある意味で行政の一機関であるけれども、この学術会議はその行政から独立をして政策提言を行う、そこが違うんだ、こういう意味でしょうか。

 ですから、例えば、行政と議会、こういうふうな理解でよろしいんでしょうか。行政は行政で、国民から選ばれて、首長がいて、その行政を行っている。それとは独立して議会があって、その行政に対してチェック機能等、またいろいろな提言機能等が議会にあるわけですが、その行政と議会という位置関係と同じようなものだ、こういう理解でよろしいんでしょうか。

吉田政府参考人 お答えを申し上げます。

 日本学術会議は、法律上も独立して職務を行うというふうに規定されておりますが、これはあくまでも行政部内の機関でございまして、行政と立法との違い、関係というものとはまた違っておるかと思います。行政の中で、行政機関ではあるけれども、独立して仕事を行うことによってその機能を発揮することができる、そういう趣旨であろうかと思います。

斉藤(鉄)委員 この学術会議が全体の中では行政の中にあるというのは理解しているつもりなんですが、内閣府、文部科学省と学術会議の対比、これを今理解しようと私は努めているんですけれども。

 例えば文部科学省、内閣府とは独立した存在としてあって、内閣府や文部科学省がやろうとしているいろいろな科学行政に対して提言しチェックをする、こういう機能だ、それは例えば三権分立における行政と議会の、そういう関係と同じようにとらえていいんですかという質問なんですが、どうなんでしょうか。

茂木国務大臣 ある程度おわかりの上で、議論をクリアにするために御質問いただいている面があると思うんですが、この日本学術会議は大きく分けますと三つの機能を持っておりまして、今先生の方から御指摘いただいておりますのは政策提言に関する機能の部分だと思います。それ以外に、科学者間のいわゆる連携であったりとかコミュニケーション、それから社会全体に対して発信をしていく、情報提供していく、こういう機能も日本学術会議は持つわけであります。

 その最初の部分について申し上げると、行政と議会、こういうことで対比していただいておるんですが、恐らく、行政と議会の関係にしますと、議会の方は決定権があるわけでありますけれども、こちらの学術会議は専門的な立場から、しかし、総合的そしてまた長期的に政府に対して意見具申、提言を行っていく、こういう機能を持つわけであります。

 ちなみに、そういう総合的な提言をする、こういうことでいいますと、内閣の中に総合科学技術会議があるわけでありますけれども、総合科学技術会議の方は、総理大臣を長といたしまして、閣僚も入り、そしてまた有識者議員、科学者の方等々も入って、まさにトップダウンで全体的な政策をみずから決めていく。それに対しましてこちらの学術会議の方は、科学者のコミュニティーの中からボトムアップで政策をくみ上げ、そしてそれを提言していく。

 こういうトップダウンとそれからボトムアップと、手法の違い。それから、総合科学技術会議の方はみずから政策をつくり、そして方向性を設定する、それに対しましてこの学術会議の方は提言機能を担う、こういった違いがあるかと思います。

斉藤(鉄)委員 学術会議と行政の関係、何となくわかったような気がいたします。総合科学技術会議との関係についてはまた後ほど質問させていただきます。そういう学術会議の存在の意義はわかりました。

 その前に、ここで言う科学ですね。「行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させること」が目的である。ここで言う科学の意味ですけれども、我々、一般的には科学というといわゆるサイエンス、自然科学ということをすぐ思い浮かべるわけですけれども、学術会議の組織を見てみるとそうではないということがわかるんですが、ここで言う科学の意味をちょっとはっきりさせておきたいと思います。

吉田政府参考人 日本学術会議法で科学という言葉が使われておりますけれども、一般的には科学という用語は広い意味にもいろいろな狭い意味にも使われるということでございますけれども、この学術会議法の場合は、法律上も人文科学と自然科学という言葉が使われておりまして、人文科学の中にいわゆる社会科学以外の人文科学も含まれているということで、すべての学術分野が含まれておるということで、非常に広い概念で使われておるわけでございます。

斉藤(鉄)委員 ここで言う科学とは、すべての学術をいうということがわかりました。

 では、次の質問に入らせていただきます。

 この目的の文章にこだわりますが、「行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させること」が目的である。いわば、まさに産官学そのものが目的のところに書いてあるわけでございます。産官学の連携と推進ということが書いてあるわけでございます。

 ところが、この学術会議の歴史を振り返ってみますと、産官学こそ学問の自立自主を侵す思想であるという考えのもとで、まさにこの目的に反する、目的に逆行する考え方のもとで運営された時期がある、このように我々理解しております。学問の自由、学術の自由を強調する余り、国民生活への反映浸透ということ、そういう目的とはまさに逆行するような時代があったと我々認識しておりますが、そのことをどのように認識され、またその反省に立ってどのような改革が行われてきたかということについてお伺いいたします。

吉田政府参考人 お答え申し上げます。

 昭和二十四年に日本学術会議が設立されましたけれども、この日本学術会議の会員の選考方法は、当初、選挙によるという方法をとっておりました。その当時、先生の御指摘のように、日本学術会議の活動が科学の進展や学術研究の多様化に対応できないといったようなこともございましたし、またそういった状況もございましたために、会員候補者として立候補する科学者も少なくなって、科学者の日本学術会議離れが進んだ、そういったような状況もございました。

 こういった状況に陥ったことを反省いたしまして、昭和五十九年から、この会員の選出方法がそれに関係するということで改正がされまして、一定の要件を備える学術研究団体である登録学術研究団体からの推薦に基づいて会員を選ぶという制度に改正されたところでございます。

斉藤(鉄)委員 元総務庁長官でした中山太郎先生が、それまでの一部イデオロギーに支配されていた学術会議を正常な姿にした、このようによく語っておられますけれども、そのことがいわゆる選挙方法の改善によってなされた、これは大きな改革であったと中山先生もおっしゃるのを何度も私聞いたことがございますが、その昭和五十八年の改革はその所期の目的を達成したんでしょうか。

吉田政府参考人 昭和五十八年の改正によりまして、先ほど申し上げましたような問題が改善されたわけでございますけれども、近年になってみますと、行政改革会議あるいは総合科学技術会議等の議論におきましては、日本学術会議に関しまして、陳情的な勧告等がふえてきたのではないか、あるいは会員の高齢化、長期在籍会員がいるということで、会員構成が硬直化しているのではないか、そういったような指摘がなされるに至ってまいりました。

 こういった御指摘を踏まえまして、今回、また日本学術会議の改革を行うということで、日本学術会議が我が国の科学者コミュニティーの代表機関といたしまして、より的確にその役割を果たしていくということにすることとしたものでございます。

 具体的に申しますと、会員の選考方法でございますが、個別の学術研究団体の利害にとらわれない政策提言が行えるように、会員選出方法につきまして、現行の学術研究団体からの推薦に基づく方法を日本学術会議みずからが会員を選出する方法に改めるということがございます。こういったことによりまして、前回の改正によりまして近年生じてまいりました弊害を改善できるというふうに考えております。

斉藤(鉄)委員 随分先まで御答弁いただいて、今御答弁になったのは、昭和五十八年に改革をしたと。私の質問は、その五十八年の改革がそれまでの弊害を取り除けたかという質問でした。その質問に答えていただきたいと思います。

 その上で、そのように改革が、もし昭和五十八年の改革が所期に考えていたとおりにいったとして、では、今回なぜ再度また改革をするのかという質問をしようと思っていたんですが、今回の改革はなぜかということについては今お答えいただきましたので、昭和五十八年の改革が、先ほど言った趣旨で改革されたわけですが、その趣旨は徹底されたんでしょうか。

吉田政府参考人 お答えが不十分で申しわけございませんでした。

 前回の改正によりまして、その前にありましたような、先ほどのような状況はなくなったというふうに考えております。ただ、さらに、最近になりましてまた弊害が出てきておる、そういうふうに理解しております。

斉藤(鉄)委員 昭和五十八年の改革で大きく改革をされて改善されたけれども、近年のまたいろいろな諸問題について今回改革をしたということだと理解をいたしました。

 きょうは黒川会長に来ていただいておりますが、世界の観点から、今回の改革についてちょっとお伺いをさせていただきます。

 科学技術基本法ができました。そして、それに基づく科学技術基本計画が出て、日本の科学技術予算も近年大きく伸びております。世界からも大変注目を浴びておりまして、日本の科学技術政策が本当に大きく進んでいる、このように認識されていると私も理解しております。

 そういう意味で、今回の日本学術会議、アメリカには科学アカデミーがあります、それからイギリスにもいわゆるロイヤルアカデミーがある、そのアカデミーに相当するのがこの日本の学術会議、このように理解をしておりますが、いわゆる行政から一歩独立した機関である各国のアカデミー、そのアカデミーの中でも今回の日本の学術会議の改革は注目されている、このように私は聞いております。

 黒川会長御自身が日本の学術会議の世界のアカデミーの中での地位を高めるためにいろいろ御活躍をされている、このように理解をしておりますけれども、現在、この日本学術会議がどのような国際的な役割を担って活動しているのかということについてお伺いしたいと思います。

黒川参考人 どうもありがとうございます。

 今のお答えですが、現在、世界は、科学アカデミーあるいは科学者コミュニティーの連合体の動きが非常に激しくなっております。その理由は、人口の増加、環境の劣化、それから南北問題、このようなものを解決するのには、政治あるいは私的な企業では解決できないものがたくさんあるということが認識されているからであると思います。

 一つは、国際学術連合のアンブレラオーガニゼーションでありますICSU、国際科学会議でございますが、これは、前会長の吉川先生がちょうど去年まで三年間、日本人では初めて会長をされましたけれども、それ自身が今大改革の最中でございまして、私もその企画委員に任命されているところでありまして、年に三回パリに行って、いろいろな討議をしておるところでございます。

 そのほかに、全体の自然科学アカデミーの連合体、八十数カ国からできておりまして、これの第一回の立ち上げの総会が、学術会議がホストとなりまして二〇〇〇年に行われたところでありまして、国連その他と非常に近い関係を現在構築しつつあるところであります。

 そこで、十五のアカデミー、私どもも参加しておりますが、最初に、南北の教育の問題、格差の問題についての第一回の提言が現在出まして、これを国連に二月五日にプレスリリースされまして、国連のアナン事務総長、国連の全大使、それからスタッフ、プレスを呼びましてこれを公表いたしまして、それぞれの国あるいは地域でぜひこの報告書の一部でもいいから実現させる政策をとってほしいという談話を出したところでございます。

 そういうわけで、アジアでの日本あるいは世界での日本は非常に大事に認識されておりまして、このような活動をしているというのが一つでございます。

 二番目に、アジアで非常に大事なアクティビティーがありまして、アジア学術会議というのが、日本学術会議が中心になりまして十年間の活動をしておりましたけれども、三年前からアジア各国持ち回りということで始まっておりまして、バンコク、クアラルンプール、バリと毎年行っておりまして、ことしソウルで行われることになっています。

 これも、これから成長してくるアジア、経済それから環境、そのような問題について科学者のコミュニティーがどのような提言ができるかということを現在討論しておるところでありまして、恐らく第一の報告書がことしでき上がってくると思いますし、そのような幾つかの報告書を各国の政府、あるいは国際的な政府、あるいはユナイテッドネーション、あるいはそのようなアカデミーに提言しようと思って現在やっているところであります。

 このボディーは、おととしヨハネスブルクで行われましたワールドサミット、環境サミットでは、ウブント宣言というものにサインをすることになりました。

 このウブント宣言は、去年の国連の持続可能な社会へのコミッティー、十一回目のコミッティーでございますが、そこで我々の提言が取り入れられまして、実は私ども、科学者コミュニティーといっても、実際かなりの部分は教育者として務めているわけでありまして、新しいステークホルダーとして、例えば、女性の問題あるいは若者の問題というものがいろいろ取り上げられたのがヨハネスブルクのサミットであったわけです。今度、国連では、科学者コミュニティーと教育者という一つのステークホルダーがあるんだということがこのウブント宣言の結果認められて、文章が入ることになりました。

 このようなことで、日本の学術会議は、そういう意味ではいろいろなところで国際的な学術連合の中心的な役割を担ってきたということが非常に高く注目されております。

 そのほかに、私個人としてはパシフィック科学連合の現在会長に指名されておりますし、そのほかに、四年続けて持続可能な社会の形成についての国際会議を主催しておりまして、第一回が、先ほど申しましたアカデミーの連合体の総会をホストしたこと、それから、二年前にはノーベル賞の百周年ということを日本で開催いたしまして、これも、ノーベル授与機関の執行部が全員集まったというのはヨーロッパ以外では初めてだと言っておりましたけれども、このようなことをやっております。去年の一月には、ITによる科学能力開発ということを沖縄で開催いたしまして、これもユネスコの教育担当の事務総長も来られまして、大変いろいろな、特に第三国の教育の問題その他について討論したところでございます。

 それから、去年の十二月にはエネルギーについての持続可能な社会の形成の国際会議をやりまして、これもいろいろな方が来られまして、ちょうどきのう出た「ルックジャパン」というのにもこの報告書が出ておりまして、海外では相当今知られた存在になっておりますけれども、御指摘のとおり、国内でそれほど認知度が高くないのは何かということについては、やはりこちらの、今までの日本の、一般にそうじゃないかと私は思っていますけれども、十分な広報戦略がないのではないかということで、私自身としてはかなりそれを考えていきたいと思っております。

斉藤(鉄)委員 国際社会の中で日本学術会議がかなり、かなりと言ったら失礼ですが、大変活躍されているということがよくわかりました。

 今回、副会長を二人から三人にふやすということでございますが、そういう国際戦略との関係がありますでしょうか。

吉田政府参考人 今回、副会長、現在二人のところを三名にふやすということにしておりますが、これは、御指摘のように、海外のアカデミーや国際的学術団体との連絡調整など、国際交流機能の面で会長を補佐する、そういう役割を想定しております。

斉藤(鉄)委員 茂木大臣、先ほどちょっと総合科学技術会議についても言及されましたけれども、総合科学技術会議とこの日本学術会議、内閣府の中で車の両輪というふうに言われております。

 しかし、その総合科学技術会議、先ほどは行政と日本学術会議の関係について、私、はっきりさせるために質問させていただいたんですが、今度は総合科学技術会議と日本学術会議の役割の違いについて、先ほど黒川会長から、ああいう国際的な活動をされている、あれは確かに学術会議でないとできないなというのはわかったんですけれども、この点についてわかりやすくお願いいたします。

茂木国務大臣 先ほど日本学術会議とほかの機関との関係の中で若干触れさせていただいた部分もあるわけでありますけれども、総合科学技術会議、これは内閣総理大臣を議長といたしまして、関係閣僚と有識者議員から構成されます会議でありまして、政府全体としての科学技術政策の司令塔として、トップダウン的にみずから政策決定を行う、そういう会議体であります。

 これに対しまして日本学術会議、これは科学者のコミュニティーの中からボトムアップ的に広く意見を集約いたしまして、中立的な立場から政府に対して政策提言を行っていく、そういう会議体でございます。

 このような役割分担があるわけでありますけれども、両会議、これから一層連携を深めながら、我が国の科学技術政策の推進に寄与していきたい、こんなふうに考えております。

斉藤(鉄)委員 最後に、先ほど黒川会長がPR不足ということをおっしゃったんですが、私もそのことを感じております。

 例えば、私三年前に、中国に捨てられた遺棄化学兵器の調査に行ってきました。現地まで行ってきたんですが、実はきのうまで、学術会議が、中国に捨てられた遺棄化学兵器の廃棄技術に対するリコメンデーションをされているというのを知りませんでした。それは私の勉強不足ですから、それを棚に上げて言うつもりはありませんけれども、しかし、私のところに説明に来る内閣府のお役人の方も、このことについては一切触れられておりませんでした。

 事ほどさように、学術会議がこのような大変な努力をされながら、日本社会の中で認知をされていない、国際的にはアカデミー間で大変高い評価が得られているようですが、一般国民に認知をされていないということを痛感いたします。

 このことに対してどのように考えていらっしゃるか、今後どのようにされるかということを最後にお聞きしたいと思います。

黒川参考人 どうもありがとうございます。

 実は、この遺棄兵器につきましては、二つの報告書を出しておりまして、これは大変大きな問題だという認識があります。

 この報告書はもちろん、関係する省、府には報告書を出しておりますし、このスタディーはある意味では内閣府の大臣官房参事官も委員として参加しております。つまり、だれが参加するかというのは、学術会議の人だけではないということを見せているわけでありますが、ただ、こういうものの、どこにプレスリリースをするかというのは、どうしても私どもは科学担当の記者にプレスリリースしますので、今振り返ってみると、むしろこれは社会部あるいは政治部の記者にプレスリリースをすべきだったかなという、その戦略性が欠けているということを私は認識しているということであります。

 さらに、ことし一月、またこれの続きのシンポジウムを先日やったところでありまして、これは小冊子をつくって、より広いところに配付したいと思っております。

 そのほかに、最初の御質問ございましたけれども、実はおととし、農水省から森林の多面的な機能という諮問を受けまして、それについての答申を出しております。それがWTOで、去年カンクンで、後で農水大臣から伺ったんですが、学術会議からこういう答申をもらっているというふうに出したところ、相手側から大変に信用が、顔つきが変わったということを伺っております。つまり、関係省庁の審議会ではなくて独立した学術のコミュニティーからそのような答申を受けているということが非常に高く評価されたのでびっくりしたというふうに聞いております。

 さらにこのほかに、例えば、南極問題が昭和三十年に国際的な枠組みで行われたんですが、そのときも学術会議がこれに参加すべしという提言を出しまして、これを審査、提言させていただきまして、昭和三十年から南極に行っております。

 今南極大陸の中にある基地を持っているのは日本を含めて三カ国、この日本の昭和基地が世界で初めてオゾンホールを見つけて、世界をあっと言わせたというような実績もありまして、このような科学者コミュニティーから、独立した、国際的な枠組みからのいろいろな提言を出しているというところに非常に大事な機能があるということだろうと認識しております。

 そのようなことから、いろいろな活動をしておりますけれども、例えば科学者の不正行為についての報告書、あるいは食の安全についての報告書も去年出しておりますが、このようなことをどのように生かしていただくかということについては、広報、あるいはその報告書を届ける先についてのいろいろなことを戦略的に考えなくてはいけないということは、私は常々考えているところでございます。

斉藤(鉄)委員 終わりました。ありがとうございました。

池坊委員長 鳩山由紀夫君。

鳩山(由)委員 民主党の鳩山でございます。

 きょうは、学術会議の黒川会長にまでお出ましをいただきました。斉藤さんもドクターでございますが、二人続いて、ある意味で科学に関してそれなりに勉強してきたはずの二人からまず話を申し上げたいと思っておりまして、先ほどの黒川会長のお話を伺いながら、やはりそうかという思いをいたしたことがございます。

 実は、私は夢を持っておりました。それは、大学に留学をしてアメリカにおりましたころに、一九七二年ごろだったと思いますが、ローマ・クラブが「成長の限界」というものを発表いたしました。それは大変刺激的な内容でありまして、先ほど黒川会長がお話しありましたような、人口爆発とそれに伴う環境の破壊。経済が発展すれば、成長すれば、これはバラ色の未来があると思っていた我々に、ずどんと大変大きな衝撃を与えたテーマであったと思います。

 それからいろいろな議論がなされていることは、今も伺ってよくわかったわけでありますが、私は、例えば日本の政府とかあるいは政党というものが、大きな計算機を常に回転させながらこういった問題に対して常に自分みずからのデータで議論をし続けていけるものだというふうに思って、政治に興味を持ったのでありますが、自民党に行ったときにもそういう議論は一切なかったようでありますし、また民主党に来ても、残念ながら、そのような党の中で政策をみずから、すなわち大きな世界規模の議論というものを行うということはなかなかできないという実態に当たりました。

 かつて経企庁にもその辺の話を申したことはあるんですが、いやいや、こんな二十年、三十年、五十年先の予測などしたことありませんという答弁でもありましたし、どうもそういう中でやはり学術会議の皆さん方に、こういった世界規模な、あるいは世界規模的な議論の中で日本が何をなすべきかという議論をとことん行っていただきたいと思います。

 現実に行っているんだ、世界のいろいろな会議で提唱されているということは伺いましたが、日本学術会議の中でそのような大きなテーマをぜひ取り扱っていただいて、そこでの日本の役割は何だというようなことをしっかりと我々に与えていただけるような学術会議であってほしい、あるいは学術会議になっていただきたいと思っております。

 そういった意味で、前向きな議論をきょうはさせていただきたいと思っておりまして、黒川会長のお出ましを心から感謝を申し上げます。

 そこで、そのような大きな望みを持っておる者として、あるいは会長として、今回の日本学術会議法の改正は、自己採点されると何点ぐらいかというふうにお考えでしょうか。

黒川参考人 これは、現在、茂木大臣ともよく会ってお話をしておりますし、学術会議の中でも随分議論を重ねているところであります。ここ数年間でございますけれども、かなり、これからの将来の日本にとっては、学術会議の科学者コミュニティーを集めた、一つの知の結集としてのいろいろな提言を出すということは非常に大事でありまして、今回の改正によって内部的な自由度がかなりふえると思います。

 これは、学者の先生たちに言っておりますけれども、我々自身の社会的責任がこれから問われるようになるということを十分に注意するというか、それが一番の社会的ミッションだというふうに話をしているところでありまして、いろいろな報告書を、前も出しておりますが、これからもさらに出していきたいと思っております。

鳩山(由)委員 自己採点をとお願いしたのでありますが。

黒川参考人 申しわけありません。

 方策としては、恐らく八十点以上だと思いますが、これがどのようなアウトカムを出すかというのは、我々にかかっていると思っております。

鳩山(由)委員 それでは、その八十点の内容をいろいろとまた吟味させていただきたいと思いますが、八十点より、やはり当然八十五点、九十点の方がいいわけでありまして、あるいは百点を目指すべきものだと思います。

 したがいまして、例えばきょうのこの委員会も、ただ単に言いっ放しみたいな話ではなくて、もし、会長がお考えになられて、そうだな、そちらの方が正しいな、修正をするべきだなというふうに思われたら、委員会というものはそのぐらいの柔軟性が本来あるべき、だからこそ会議を開いているわけでありますだけに、例えば鳩山や民主党の同僚議員がこれからいろいろとお尋ねやら提言などを申し上げたいと思います、そういったものに対して、ぜひ前向きにお考えになっていただければと思っております。

 ただ、これはむしろ茂木大臣にお伺いするべきなのかもしれませんが、これは小泉首相もそうなんですが、しばしば何かを改革するという話になると、本来、改革するということは、今まで必ずしも十分機能していなかったという強い反省から生まれなければならないのであります。ただ、残念ながら必ずしもそうではありませんで、もともとこれは機能していた、しかし、時代が変わってきて、その時代に合わせていくために今少しばかり改革をするんだという話が大抵の筋書きでありまして、余り反省の弁というものを聞いたためしがありません。

 むしろ、学術会議を変えたい、変えなければならないということであるならば、なぜ機能してこなかったのか、あるいは十分ではなかったのかという強い反省が必要だと思いますが、その辺はいかがでしょうか。

茂木国務大臣 反省も含めて答弁をさせていただきたいと思っております。

 この日本学術会議、まさに、我が国の科学者の内外に対する代表機関としてさまざまな提言を政府に対して行ってきたところでありまして、政府におけます施策の策定に寄与する科学的な助言を行ってきた。この意味で、一定の役割を果たしてきたんだと思っております。

 ただ、その提言の内容を見てみますと、個別の学術団体などの利害を反映した陳情的なものとなり、大局的な視点、鳩山議員が最初にローマ・クラブのお話も出しておられましたけれども、まさにそういう大局的な視点に欠けていた点もあったのではないか、こんなふうに考えております。

 このため、日本学術会議のあり方に関する総合科学技術会議の意見具申を踏まえまして今回の改革を実施することによりまして、科学者の専門的な視点から、将来の科学技術の進展の方向性を示し、また、我が国や人類社会全体の課題に先見性を持って対処するための方策を提示する提言を行うなどの役割を果たしていく、そういうことをこれからの日本学術会議には期待してまいりたいと考えております。

鳩山(由)委員 その方向でこれから改正案というものが本当に進んで、なされているものかどうかということを検証していきたいと思っております。実は、ある学術会議の会員から三日前にこういう声が届いてまいりまして、メールでありましたが、存在感が薄い日本学術会議から脱皮し、学術の力を国民のために役立て、国民の目に見えるような活動を行う組織に改革したいというふうに、これは学術会議の会員の方からメールが届いております。

 先ほど斉藤委員からのお話もありましたが、国民の皆さんに、我々、ある意味で科学を志した、志そうとした人間にも必ずしも十分に見えていない。中の人間にも、存在感が薄いとみずからおっしゃっている。まして、外の、一般の国民から見て、学術会議は何をやっているんだろうかという、ほとんどその内容が、今この会議に出席をされておられる方は一部御理解をされたと思いますが、なかなか伝わっていない。

 科学アカデミー的なものを目指すという話であれば、まず一番大事なことは国民の皆さんに信頼される学術会議でなければならないのに、中身が何であるかというものがほとんど、存在感さえ十分に伝わっていないとするならば、先ほど自己採点で八十点というお話がありましたが、改革をされて八十点になればいいなと、現在の状況もその程度のものなのかなというふうにしか思えないのでございます。

 やはり今の茂木大臣の御答弁も、反省というよりも、むしろ現状のところから出発をしてよりよいものにしていくんだという発想のように聞かれまして、強い部分での反省の念がやや足りないのではないか、そう思うのであります。

 そこで、角度を変えて申し上げれば、今回の改革というものが本質的な改革になっているのか、あるいは暫定的な、本当にやりたいことはまだあるんだけれども、それはさておいて一歩前進で行こうではないかということで、まあまあ、しようがないな、暫定的な意味での改革であるのか、どちらなのかということを、これは会長にお聞きしてよろしいでしょうか。

黒川参考人 これは、今先生のおっしゃったとおりでありますが、今議論していることはこういうことであります。

 つまり、これから我々の考えを、非常によく改定されておりますので、今の会員からの御説明もありましたけれども、私は常に言っております。先生たちは科学者コミュニティーの代表ですよ、そうすると、学術会議に何をやってほしいではなくて、先生たちは今まで何をやってきたんですか、そういう人たちの集合体になって初めて信頼されるのではないか。ですから、そういうことをやれるフリーダムがふえたということで、私は非常に期待をしているところであります。

鳩山(由)委員 期待をしているというお答えはいただいたんですが、ならば、それは十分本質的な改革になっているというふうに採点をされるということでございますね。うなずいておられるから、そういうふうに判断をいたします。

 しかし、必ずしも私はそうは思っておりません。

 実は、総合科学技術会議の中でも議論されている答申の一つの部分として、今回の改革後十年以内に、新たに日本学術会議のあり方を検討するための体制を整備しなければならないというふうに書いてあります。

 すなわち、今回改革するけれども、さらに改革後十年以内に新たな学術会議の姿を整備するということをうたうということであれば、これは本質的というよりも、まず仮に、今まで議論してきたことからいろいろな壁もあるから、その壁を取っ払うのはなかなか難しい、ならば、今できるのはこの範囲なのかなということで出してきたような改革案としか見えないのであります。それでも本質的な改革と呼んでよいんですか。

茂木国務大臣 若干、先に先ほどの答弁につけ加えさせていただきたいと思うんです。

 私申し上げましたのは、学術会議の持っている政策提言機能、それから学者の間のコミュニケーション機能、そして社会に対するコミュニケーション機能の中の最初の政策提言機能で言いますと、大局的な政策提案というのはなかなかできなくなってきた、個別の陳情的なものになっている、そういう反省を踏まえて今回の改革を行った、こういう話であります。

 そういう中で、また三つ目の、委員御指摘の社会に対するコミュニケーション、これはやっぱり不足していたんじゃないかな。先ほど来黒川会長の話を伺っていまして、ああいう調子ですべての学者の方もやってくれると、もう少し学術会議も国民の皆さんから広く理解していただけるんじゃないかな、こういう思いも持ったところであります。

 さて、今回の改革でありますけれども、確かに、意見具申の中では、進捗状況を見て、改革後十年以内に、より適切な日本学術会議のあり方について改めて検討する、このようになっているわけであります。

 これは恐らく、今後、本当に独立した形態にしていく、理想的な形でいいますと完全に政府から独立した機関、こういうことになっていくというのも一つの方向だと思うんですね。そうなると、例えば、では財政的な基盤をどうするんですかとか、それから今ある科学者のコミュニティーに対する国民の認知度からいって本当に大丈夫なんでしょうか、こういった問題も、この改革で見きわめていかなければならない。

 しかし、今回の改革は、組織も変えます、それから会員の選考方法も変えます、運営体制も変えます、こういうことですから、決してマイナーなチェンジではなくて、本質的な部分には踏み込んでいる。ただし、本格的に理想とする姿にするためにはもう少し時間がかかる、こういうことだと私は考えております。

鳩山(由)委員 もう少し時間がかかるというのなら、もう少し時間をかけてしっかりと議論をして、よりよいものにして改正案を提出されればよいのになと思うんです。いや、まじめにですよ。

 今、組織を変えるというお話がありました。確かに、組織を内閣府というところに移すという意味においては変わっているとは思いますが、果たしてそれで、独立性、中立性というものが最もとうとばれなければならない学術会議の中立性、独立性というものは十全、大丈夫なのかという問題があろうかと思います。

 一つ一つ、ある意味で具体的に伺ってまいりたいと思いますが、将来はもっといいものにしたい、でもまだできないから、ここまでにしたいということで今回内閣府の中に置いたと。先ほど茂木大臣からお話がありましたように、将来は完全に政府から独立をさせた方がよいのではないかという思いが伝わってまいりましたが、どうして今回の改革の中でそこまではたどり着かなかったんでしょうか。

茂木国務大臣 私が申し上げましたのは、今回の改革の素案をつくりました総合科学技術会議においての意見具申の中に含まれた項目について申し上げたわけでありまして、そこの中では、日本学術会議の設置形態につきまして、最終的な理想像としては独立の法人とすることが望ましい方向と考えられる、しかし、我が国における、学術界からの提言の受けとめ方、そしてまた寄附に対する税制の状況などを留意して、なお慎重に検討する必要がある、こういうふうに結論づけられたわけであります。

 理想的な姿にするために、まず第一ステップとして重要な改革をやっていく、私はこのことは必要だと思っておりまして、理想的な姿、これも必ずしも一つではないんだと思います。そういうものを追い求めることは必要ですけれども、理想的なものではないから改革をすべてストップする、こういう考えには今回の改革は立っておりません。

鳩山(由)委員 理想的な姿にするのにそんなに苦労は要らないと思っておるんですが、やはり何か政府の抵抗があるのかなというふうに思わなければならないなと。

 そこで、申し上げたいんですが、これは黒川会長にお尋ねした方がいいと思いますが、やはり学術会議は将来的には理想的な形に近づける、すなわち完全に政府から独立した機関にしたいという思いを持っておられますね。そのことを表明していただけますか。

黒川参考人 これは私の全く個人的な考えですが、今までのアカデミーというのは、それぞれの国の歴史によって形態が違います。しかし、今、西洋の科学は、ルネサンスを迎えて十五世紀から始まったことでありまして、イタリアのリンチェイアカデミーが一六〇六年、それからイギリスのロイヤルソサエティーが一六六〇年、そんなような、国の形態によって違うわけですので、これからの日本の国の変わりようと学の世界の変わりようというのは、これは非常に大事な問題になってくると思っております。

 そのような、非常に個性輝くすばらしい国になるような学術会議としての役割を十分に果たしていけると思いますし、果たしていきたいと思っております。

鳩山(由)委員 ちょっと私がこだわっているのは、やはり独立性とか中立性というものを求める科学者の集団として、それが内閣府のもとに置かれる、すなわちこれは公務員ということになりまして、特別職非常勤公務員だということだそうであります。当然、他の国々のアカデミーを見て、科学アカデミーは民間人で構成されている。今お話がありましたように、歴史の差があるんだという話がありましょう。ならば、その歴史の差というものを今埋めて、理想型の形にもっと近づける努力をされるべきではないか。

 やはり政府のお役人の方々から強く言われると、なかなか科学者の方々も、いや、それはわかっているけれどもなかなかできないと言われると、ああそうですかという話になるのかもしれませんが、今こそ、科学というものが日本で、あるいは世界で果たすべき役割は非常に大きくなってきていることは紛れもない事実でありますだけに、そのような努力をぜひ払っていただきたい。重ねてお願いをしておきます。

 なぜ申し上げておりますかといいますと、例えば、まだ政府の特別の機関であるということになると、言いたいことが一〇〇%本当に言えるのかどうか。

 例えば、これは見解が違うかもしれません、しかし我々からすれば、例えば今回のイラクに対する英米軍の戦争というものに対して、大量破壊兵器が見つかっていないのに英米軍が戦争を仕掛けるのは、これはどう考えても、科学者としてもおかしいのではないかというような思いをお持ちになったとしたら、そのようなことも中立性の中で述べられるのかどうか。いや、これはやはり政府の機関に、あるいは公務員になっておりますと、そういうところまでは難しいなと、どうしても政府に対する強い批判的な提言とか勧告というものはなしにくいのではないかというふうに思っております。

 そういうことを含めて、今のは一つの例でありますから、その例にお答えいただく必要はないのでありますが、完全に独立性、中立性というものを保つために、やはり理想的な姿に早くたどり着く努力をぜひとも成し遂げていただきますようにと思っておりまして、そのことを改めてお願い申し上げておきます。

 いま一つ申し上げたいのは、そうなりますと、予算が完全に一〇〇%国費で賄われている学術会議ということになります。果たしてそれもよいのかどうか。科学アカデミーの各国の例をなぞってみますと、必ずしもそうではない、むしろ国費の依存度というものは三割から八割程度だというふうに伺っております。

 一〇〇%依存しておりますと、そのことでもやはり、なかなか言うべきことが口に出てこないのではないかというふうにも思っておりまして、ぜひここはもっと、国費に一〇〇%依存するのではなく、例えば個人あるいはさまざまな団体からの寄附を募るとか、あるいは政府機関でもいいでしょう、民間の機関でもいいでしょう、そういったところとの契約、さまざまなコントラクトを行って、その契約で委託研究を行って金を得るとか、あるいは出版を行って、広報が大変足りていないというお話もありましたから、出版活動を行って世の中にそれを、むしろ学術会議の大変大きな学問成果という資産を発表されるとか、そういうことを行いながら、国費に一〇〇%依存するという体質から早く脱却をされるべきだと思いますが、その点に関してはいかがでしょうか。

茂木国務大臣 まず、この日本学術会議でありますけれども、我々政府側からしますと、中立的な立場で専門家としての提言をしていただきたい、こういうふうに考えております。せっかく御提言いただくわけでありますから、単に政府の立場を追認するということよりも、科学者の目から広く見て、どうあるべきか、そういう提言を真に我々としては期待しております。

 ただ、委員の御指摘もわかる部分がございまして、やはり財政的に完全に独立できていない、そうすると、受ける側で、我々としてはそういう提言を期待するといいましても、どうしてもどこまでというところがあると思いますので、先ほども申し上げたように、税制の問題とか我が国における寄附のあり方、こういうことの問題点があるわけでありますが、将来的な姿としては財政的にも独立した機関となる、このことが私は望ましいと思っております。

鳩山(由)委員 ぜひ望ましい姿に早く導いていただけるように、大臣としても御指導願いたいと思います。

 いま一つこれも関連して申し上げたい話でありますが、国費で全額賄われている、その国費がどのように使われているかということになりますと、それほど多額な額とは伺っておりませんが、若干の報酬とか、あるいは会員の出張したときの旅費とか、あるいは日当とか、そういったことに充当されている。当然、それだけではありませんで、職員の給料とかさまざまあろうかと思いますが、報酬、日当、旅費、こういったものが支給されているというふうに伺っておりますが、それは事実ですか。

吉田政府参考人 日本学術会議の会員はすべて非常勤の公務員でございますが、例えば、会議等に御出席になられた際には手当及び旅費を支払う、こういう仕組みになっております。

鳩山(由)委員 各国の科学アカデミーの実態を見させていただくと、ほぼ皆さん無報酬で仕事を行っておられる。ある意味で名誉職である、ボランティア職だと言ってもいいのかもしれません。すなわち、自分でこういうことをやりたい、あるいはこの会員であることに大変な誇りを感じているから、だからこの誇りの中で自分たちがやりたいことを行うし、提言をどんどん発表していくんだという姿だと私は理解をしております。

 どうも余り多額ではないということは伺っておりますが、逆に、日当とか旅費とか報酬というものを提供する、支給することによって、むしろ小さなお金をもらうと大きな仕事ができないんじゃないか。名誉的な立場で、誇りの中で仕事をやらせていただくという立場であれば、各国に倣って無報酬でいいんじゃないんでしょうか。いかがですか、その点は。

吉田政府参考人 各国の事例、それぞれ違うことと思いますが、各国の場合も、例えば旅費等の実費あるいは会議に要する費用、そういったものは支給されている例が多いように思います。

 確かに、手当といいますか、これは一日出席されますと二万円から三万円程度、二万円ちょっとでございますけれども、そういった報酬を払うという例は少ないように伺っております。これも、各国のアカデミーのそれぞれの形態の違い、あるいは歴史の違い、あるいはその社会におけるアカデミーの置かれた地位の違い、さまざまな原因があろうかと思いますけれども、我が国の場合は非常勤の公務員ということで、こういう手当を支払っておるということでございます。

鳩山(由)委員 だから、最初からそういう問題にやはりなってしまって、公務員であるからお金を払うんだということでありますが、それが結果として、お金を払っている、日当も旅費も出す、年間の予算は十四億円程度であると。大した額じゃありませんが、そのぐらいの額の中から報酬とか日当、旅費を払っていると、ほとんど何も残ってこないという話になる。どうせ少ない額であるならば、いっそ払わないようにして、この二百十名という会員数、これは各国に比べたら余りにも少ないじゃありませんか。その会員数を広げて、そのかわり、もっと誇りを持って仕事ができる学術会議にしたらどうか。

 鳩山はちっぽけな、お金の話をしているなというふうに思われているかもしれませんが、小さな話かもしれませんが、むしろ、会員を二百十名と限定しなければならないその一つとして、例えば日当とか報酬が払われなくなるからふやせないんだみたいな話だったら、これは本末転倒な話であります。そこで、もっと会員数を何倍にもふやしたっていいのではないか、そして、もっと大きな仕事、誇るべき仕事をしていただく、そのかわり無報酬だよと。

 日当、旅費は各国払っているところもあるいはあるのかもしれませんが、それも、必ずしも必要最小限以上のものを払う必要はないというような、限定的なことをして大きな仕事をやってもらえるという発想に変わった方が正しい学術会議になるんじゃないかと、私はあえて、むしろ提言の形で申し上げておるのでありますが、改めて、いかがでしょうかね。

吉田政府参考人 海外の場合、ボランティア的な意識で科学者がみずから進んで無報酬で参加される、そういう形態ももちろんございますが、日本学術会議の場合、これは政府に対する提言、そういったものを重要な役割としております。そして、そこで会員がなされる調査審議活動、そういったものは行政に非常に寄与するものでございますし、行政の一環としてとらえておるものでございます。そういった活動をされる方々に対しまして一定の手当をお支払いするということは、これは必要なことであろうかと思っております。

鳩山(由)委員 やはり見えてきたのでありますが、これは行政の一環だという話で、結局行政で科学者の意見を縛っているのではないか、小さなお金で科学者が縛られたら本来たまったものじゃないなという思いを改めて感じたわけでありまして、事務局の方からお答えをいただくと必ずそういう話になるだろうなというふうには思っています。

 むしろ、そうではなくて、科学者の立場から、もっと自由な、本当にこの国を、世界を憂うる立場から、あるいは、みずから功成り名を遂げた立派な科学者としての誇りの中で仕事ができるような学術会議であってもらいたいと改めて願うわけであります。

 それでは、今のお話を伺うと、大幅に会員の数をふやそうというような発想は、事務局としてはどうもなさそうだということはわかりましたが、日本学術会議の会長として、もし自分の発想が自由に生かされるならば、もっと会員数はふやして、そして、本気でこの国や世界というものに対してどんどんと今までより質の高い提言というものを行っていこうではないか、そういう発想を会長としてはお持ちではありませんか。

    〔委員長退席、青山委員長代理着席〕

黒川参考人 実は、現在は、研究連絡委員会というのがありまして、その委員が大体二千四百人弱おりまして、その方たちもしょっちゅう集まっていろいろ会議をしておりまして、旅費は支給しないとやはりやっていけないというところもありますので、そういうことになっていますが、新しい改正では、連携会員というのがありまして、すぐにいくわけではありませんが、最終的には二千人を超えるような、非常にアカデミックな業績のある方たちを選び、その中のまた代表のような形で二百十人が執行部のような格好になっていければいいなということを考えております。

 今、そのような方向に運営できるという可能性が出てまいりますので、大変、私どもとしては、これをどう生かすかというのは私たち全体にかかっている責任であろう、特に社会的責任を果たさなくてはいけないということを前から言っているところでありまして、ぜひそれに向かって一生懸命やっていきたいと思っております。

鳩山(由)委員 法改正の枠の中ではそういう御答弁なんだろうと思いますが。

 研究連絡会員というのが今でも既にあって、二千四百人おられる、それがまた二千人を超える連携会員というものになるというと、名前が違ってあとはどういうふうに変わるのかなと。今でも部門、部会その他があって、やろうと思えばさまざま自由な研究活動あるいは提言活動ができるのではないかと思っております。

 いずれにしても、今これ以上詰めるつもりはありませんが、本来ならばそのような連携というような形での会員の姿ではなくて、真の意味でのアカデミーを形成する会員の数を、もっと大胆に各国並みにふやすぐらいの努力を行うべきだ、あるいはそのぐらいの思いを会長としてぜひともお持ちいただきたい、改めて申し上げておきます。

 実際に、先ほど斉藤議員の質問の中で幾つかは伺ったわけでありますが、それではどのような活動をされているかということで、最近行われた勧告というものを二、三挙げていただけますでしょうか。

吉田政府参考人 最近の勧告として幾つか申し上げますと、例えば、平成十一年には「我が国の大学等における研究環境の改善について」あるいは「地球圏―生物圏国際協同研究計画の促進について」、そういった勧告がございましたし、平成九年には「計算機科学研究の推進について」、平成八年には「脳科学研究の推進について」、そういった勧告がございました。

    〔青山委員長代理退席、委員長着席〕

鳩山(由)委員 今お話をいただきましたが、例えば、平成八年に脳科学研究の推進という勧告がなされた、それで何らかセンターができたという話も伺っておりますし、また、計算機科学の推進ということも確かに必要なことであろうかと思いますが、それが、今お尋ねいたしますと平成八年とか平成九年という話でございます。

 実際に私が大学におりましたころというと、もう三十五年以上前になるわけですが、私の専門は、計算機、バイオ関係、生体工学というものを専門にして世の中で研究してみようと思っていた時期がございます。そのころ、すなわち三十五、六年前からもう既に生体工学、すなわち脳というものを解明して脳にそっくりのコンピューターをつくろうではないかというような発想で行動しておりました。

 計算機科学の推進という話もまさに私も重要だとは思っていますが、そういった議論、勧告が平成八年と九年に出るというのは、やはりどう考えても、数十年と言うと言い過ぎかもしれませんが、十数年はおくれているのではないかという気がするのです。これは政府の中でもっと頑張らなければならぬという話もよくわかりますが、むしろ、最先端の学問の誇りとして努力をしておられる学術会議としては、さらに、こういうような提言を、勧告をもっと時代に即して発表できるような勧告をお願いしたい。

 それが今回の、例えば会員の選び方とか、あるいは総会主義を幹事会に変えるとかいうような、小手先と言うと失礼かもしれませんが、そのような改革で、本来やるべき仕事ができるようになるのかどうかということをお尋ね申し上げたい。

黒川参考人 先生のおっしゃるとおりでありますが、私、事務的に言いますと、例えば、全国七大学に共同利用の大型計算機センターをつくるということを提言しているのは昭和三十八年でございますので、かなり先見性のある提言は幾つも出ていると思います。先ほど言った南極の探検の昭和三十年ということもそうであります。

 もう一方、先ほど先生がおっしゃいましたローマ宣言がございますが、あれについても、実を言いますと、その後、ブルントラント宣言というのが国連で出ております。これは一九八七年でございますが、その後、リオのサミットがあり、ヨーロッパからはヨーロピアン・パースペクティブというのが出まして、いろいろな提言書が出ております。

 実際は、日本もおととし、ジャパン・パースペクティブという、これからの日本の計画というのを、アメリカからの一つの提言、それからヨーロッパからの提言に対して、日本からも、アジアの日本はどうなるのかという話を出しておりまして、現在、これは英語版を出しまして、これは公文で出ておりますけれども、それについても現在働いているところでございます。

 さらにもう一つ、九・一一以後、先生おっしゃいましたけれども、アメリカでは、この学術会議に対応するナショナル・リサーチ・カウンシルがすぐにメーキング・ザ・ネーション・セーファーという報告書を出しております。実は、今度、二国間でもやっておりますが、我々は、より先見性のある提言とともに、対応が早くできるような対応についても構築できるべく、総会ではなくて、より早い対応もできるような組織になるということで、大変期待しているところでございます。

鳩山(由)委員 総会主義から幹事会に変えるということで、今私が申し上げたような、例えば迅速な提言あるいは勧告というものができるようになると、本当にそう思われますか。

 なかなかそこは十分思えないのでありまして、今でも総会は年に二回と定まっているようでありますが、必要であれば臨時的に何回でも開けるように法律ではなっております。開こうと思えば開けるわけでありますし、また、連合の部会とか、研究するためにはさまざまな部会を積極的に当然動かしておられるのだろうと思います。動かしておられるはずですし、そこで自由度というものを求めようと思えば、必ずしも総会主義がすべて結論を遅くさせたというのは当たらないのではないかというふうに思っておりまして、要はある意味でのやる気の問題ではないか。この総会の中でも、本当にやる気のあるシステムが、あるいは学者の皆さん方が糾合しておられれば、そのようにおくれたような報告書、勧告を出すということではなくて、時代に即した議論ができているのではないかと思うのでありますが、そんなにやはり総会と幹事会では変わるんですか。もう一度、それでは事務的でも結構ですが、聞かせていただきたい。

吉田政府参考人 総会につきましては、原則年二回ということでございます。

 これは、二百十名の会員の方が東京の学術会議にお集まりになるということで、会員の方々は全国にいらっしゃるわけでございますが、そういう方々が、これは普通は一日だけではございませんで、三日ないし四日連続して行うということもございます。そういうこともありまして、なかなか頻繁にこれを開いて集まっていただくということには現実的には困難があるということは事実でございます。

 一方、今は運営審議会というのをやっておりますが、部長クラス以上、十数名あるいは二十数名の規模で会議をやっておりますけれども、こちらの方は一月に一回集まってやっております。このぐらいの規模になりますと、月に一回程度は開けるということで、機動的な対処が可能になってくるというふうに考えております。

鳩山(由)委員 運営審議会というのは今でもあるわけですね。

吉田政府参考人 現在は、会長、副会長及び七人の部会長等で運営審議会というのをやっております。

 これは日本学術会議の経常的な運営について審議をする機関ということでございますが、今回法律改正をしまして幹事会を設け、さらに一層総会の権限を移譲しまして、提言でありますとか先生おっしゃいましたような事項につきまして機動的にやっていこう、こういう趣旨でございます。

鳩山(由)委員 余り組織のことに関して、これから改革してやっていくんだというところで空論を重ねていても、実際にやるんだとおっしゃる方と、どうもそこは不安だなと思っている私どもと、意見をすり合わせようとしても、実際にまだやらないうちから申し上げることは失礼だと思いますので、ぜひ、それならば、まさに時宜にかなったようなしっかりとした勧告なりあるいは政策提言なりを行っていただけるように強く期待を申し上げます。

 そこで、政策提言に関しても若干触れたいと思いますが、最近の政策提言を幾つか述べていただけますか。先ほど遺棄化学の話は聞かせていただきましたが、そのほかに幾つかあればお聞かせください。

吉田政府参考人 最近の主な政策提言といたしましては、平成十三年に、先ほどお話が少し出ましたけれども、農林水産大臣から諮問がございまして、その答申といたしまして「地球環境・人間生活にかかわる農業及び森林の多面的な機能の評価について」、こういう答申をいたしております。また、今もお話がありました、平成十四年には、中国の「遺棄化学兵器の安全な廃棄技術に向けて」の提言、あるいは、平成十五年には「食品の「安全」のための科学と「安心」のための対話の推進を」、こういった提言をいたしております。

鳩山(由)委員 最後にお話しされた、食の安全に対する科学と安心のための対話の推進という話がありましたが、これも多少調べさせていただくと、この提言を出すに当たって、平成十三年からというふうに伺いましたが、結局二年ぐらい提言を出すのにかかっているというふうに伺っております。いろいろとBSEの問題などがあって迅速な対応が望まれてきた中で、二年かけてしまうのはいかがなものかというふうに思っております。

 またそれも、先ほどのお話のように、ではこれの結論を出すのに総会から幹事会に変えるから大丈夫なんだというふうに話をされるのかもしれませんが、別に、今までのことに余りいちゃもんばかりつけるつもりはありません。むしろ大いに期待をして、もっと適宜適切に時代に合った政策提言をお出しいただきたい。下手をして、これはよく国会の中であるわけですが、法案を出したときにはほとんど意味がなくなっていたというようになってはいけませんから、そういうようにならないような先見的な政策提言というものをどんどんお出しいただきたい。

 そこで、総合科学技術会議の中にも書いてありましたように、長期的な、あるいは総合的というか分野横断的な、あるいは国際的な視野に立った提言なり勧告なり、そういったものを行うために改革を行うのだというお話を伺ったわけでありますが、果たして、今までの議論を積み重ねた中で、長期的な観点にどのようにしてなり得るのか、あるいは分野横断的になり得るのかというところがいまだ判然としないところがあります。

 国際的にという話は、国際的に開かれて、科学アカデミーとしての位置づけをさらに発揮されればなし得るものかもしれません。

 ただ、分野横断的だということになれば、逆に、今まではそれぞれの学協会で推薦をしていた、そういう意味ではそれなりの広がりの中から人が選ばれてきた。これからはそれを変える、学術会員の中で次の学術会員を決めるというやり方をするようにするんだと。どのように決めるかが判然としないところがまだあるわけでありますが、会員の中で次の会員を決めていくというやり方で、日本で本当にうまくいくんですか。こういうやり方で長期的なビジョンに立つことができるのか。

 あわせて申し上げれば、今までですと最高九年、会員として活動ができる、しかし今回は六年だと。九年から六年ということは三年短くなっているじゃないか、短い任期の中でより今まで以上に長期的なビジョンに立ち得るのかという話が一つと、先ほど申し上げたように、分野横断的に、果たして会員がみずからを選ぶという機能の中でできるようになるのか。何か下手すると逆行してしまうのではないか、そういう危惧がありますが、それに対してはいかがですか。

黒川参考人 まず、分野横断的なことですが、現在、先ほどから申し上げている世界的な、地球的な規模の問題については、やはり文科あるいは社会科学の方たちとの協力、あるいは医学関係、あるいはエンジニアが非常に大事だという認識が自然科学アカデミーの中で出ておりまして、そういう意味では、学術会議の構成員は極めてユニークであるという評価がだんだん出てまいっております。

 しかし、先生がおっしゃるように、このような人たちの力をどう結集するかということですが、新しい案では連携会員というのがありまして、これが、先生がおっしゃっているような欧米のアカデミーのような母体になってくるだろうと思います。

 この選考のプロセスは、自分たちで選んでいると言っておりますが、実は私どもは、アメリカ、イギリスあるいはスウェーデンその他のアカデミーに、どのようにして会員を選考しているのかというやり方についても勉強に行っておりまして、基本的には、イギリスやアメリカのやり方は極めてオープンでありまして、オープンで、しかも自分たちで選んでいくプロセスが極めて明快であるということで、できるだけこのような、後で検証していただくときにも、これからも極めて、それは次の会員が決めることではありますけれども、プロセスについても随分勉強させていただいておりますので、ぜひ先生方の期待に沿えるような方向に持っていきたいと思っております。

鳩山(由)委員 連携会員というものがそれほどすばらしいのであれば、ぜひ、先ほど申し上げているように、連携会員などという言い方ではなくて、その人たちを早く本物の会員にしてよろしいのではないとさえ思うのであります。

 私のお尋ねに関して、すなわち、任期が短くなるので逆に短期的な視野になってしまうのではないかという危惧に関して、いや必ずしもそうはならないよ、連携会員がいるんだからというお話をぜひ信じたいとは思いますが、もともと研究連絡会員というものが存在して、それが連携会員になることによって、ではどう本質的に変わるのかなという疑いの念をまだ消し去ることはできないことだけ申し上げておきます。すなわち、将来的に、ああ、連携会員がこういう仕事をやっているんだという姿をぜひとも国民の皆さんに見せていただくように御努力をお願い申し上げたい。

 そこで、もう時間がだんだんなくなってまいりました。だんだん私の言いたいことをさらに詰めて申し上げたいと思いますが、事務局に伺わせていただきます。

 学術会議とそれから総合科学技術会議、先ほど違いの説明を大臣からいただきましたが、一応、職員数とそれから会議体の会員、あるいは総合技術会議は議員というんでしょうか、その数だけ教えてください。

吉田政府参考人 日本学術会議の場合、会員数は二百十名でございます。事務局は、定員が現在のところ六十一名でございます。

 総合科学技術会議は、議長は内閣総理大臣でございますが、議長及び議員十四人以内で組織するとされております。その事務局機能を持っております内閣府、内閣府政策統括官、科学技術政策担当でございますが、その定員は五十二名ということになっております。

鳩山(由)委員 今はそういった方々がそれぞれの役割分担をして、一方は、トップダウンで総合科学技術会議が政策を決めていく。他方は、ボトムアップで学術会議は進めていく。

 企業体などを見れば、当然、ボトムアップとトップダウンというものが別々に存在しているのではなくて、一つの企業の中で仕組みをうまく、ボトムアップの部分とトップダウンの部分を区別しながら、あるいは両立させていきながら一つの仕事を行っていく。

 今あえてお伺いしたのは、なぜ、それならば役割分担だといって仕事を二つに分けておられるのか。せっかく内閣府に移されるという話であれば、もはやこれを何らかの形で統合して、それこそトータルとしての科学政策の決定も学術会議の方でもできるように仕組みを変えられたらよいのではないか。せっかく総務省から内閣府に移されるのであれば、ついでにというか、もっと本質的にそこのところも統合させていくべきではないか。トップダウンとボトムアップで違うから分けるんだではなくて、違いというものを認めながら一つにまとめていくという作業を行う努力をされる方が、スタッフが別々に数十名ずつおって別の仕事をしているよりは、はるかに効率的になるのではないか。

 あえてそのところをお尋ねしますが、総合科学技術会議と学術会議というものを将来統合させるという思いはありませんか。

茂木国務大臣 これから同じ内閣府に入るわけでありますから、一層の連携強化というのは私は必要であると思っております。事務局の体制等々につきましても、効率化できる部分があったら効率化していく、こういう必要はあると思っております。

 鳩山委員の方から、企業の組織になぞらえて御質問いただいたわけでありますけれども、恐らく企業でいいますと、ボトムアップ、例えば営業を持っている支店長会議と、それからトップダウンで物を決める経営会議、支店長会議と経営会議を一緒にするというのはなかなか企業でも難しいんだと思います。そうすると、そのアプローチの違う二つの機関のよさは残しながら連携を強化していく、私はそういう方向が望ましいと考えております。

鳩山(由)委員 それでは、さらに、もっと大きな統合の話を申し上げていきたいと思います。残りの時間を使わせていただいて、欧米のアカデミーと日本のアカデミーと言われている学術会議と比較を申し上げながら、話を進めたいと思います。

 ところが、日本のアカデミーが日本学術会議と訳されるわけではなく、ジャパン・アカデミーというのはほかにあって、日本学士院であるというわけでありまして、そこが非常にわかりにくいということが一つございます。

 その意味においても、学士院と学術会議、学術会議の方がアカデミーと世界では思われている。しかし、日本でのアカデミーは学士院であるというわかりにくさを一つ解消すべきではないか。その意味では、できる限り、本来はこういうときに全体的な、抜本的な改革を行って、日本学術会議だけの議論ではなくて、全体を統合するぐらいの話にすべきではないかと思っております。

 そこで、科学アカデミーの世界的な役割というものを大きく三つに分けますと、一つは、科学者で功成り名を遂げた方々に栄誉を与える栄誉機関にする、その役割が一つあろうかと思いまして、そこを今、日本の学士院すなわちジャパン・アカデミーと呼ばれているものが担っている。

 もう一つの二つ目の役割は、例えば、若手の人たちにどんどん研究をさせるために研究費などを支給する、あるいは、日本でいえば科研費に当たるものではないかと思いますが、そういった補助金とかあるいは科研費というものを与える役割、それは現在は日本学術振興会というところがその役割を負うている。

 さらに、三つ目の欧米のアカデミーの役割として、政策提言とか勧告というものがある。政策形成に当たっては、今、茂木大臣もお話しされましたが、総合科学技術会議と日本学術会議というものがあわせて受け持っている。

 ざっと言うとそういう話になって、さらにもっといろいろな団体があるのかもしれません。見落としているのがあれば申しわけないと思いますが、欧米の科学アカデミーという大きな世帯では、実は一つの世帯になっている。そこで基本的に大きな三つの仕事をこなしている。日本ではそれを、くどいようですが、学士院と学術振興会と学術会議、あるいは総合科学技術会議、多少外していいのかもしれませんが、そのようなものが受け持っている。

 ならば、いっそ、世界に向けては、アカデミーは日本学術会議なんだというふうに思われているんだとすれば、それを全体を統合するような構想というものはお持ちじゃないんですか。

黒川参考人 今先生がおっしゃったとおりで、それぞれの国にアカデミーという、これは一種の栄誉機関という位置づけだと思いますが、学士院はまさにそのような機能をしている、すばらしい先生方の集まりだと思います。

 一方、国によって歴史は違いますけれども、ファンディングエージェンシー等がありまして、学術振興会はそのような役割をしている。例えばNIHとか、そういうような対応をするような機関ではないかと思っております。

 そこで、学術会議は何かと言われますと、これはやはり助言機能とかカウンシル機能が中心になってまいりまして、アメリカの場合でも、国によって違いますけれども、ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス、ナショナル・アカデミー・オブ・エンジニアリング、それからインスティチュート・オブ・メディスン、この三つから、歴史的に一九一六年にナショナル・リサーチ・カウンシルというのをつくりまして、議会、大統領府、あるいは民間、いろいろなところからのカウンシルを受けて活動しているというところであります。

 恐らく、私どもの目指すところは、このカウンシル機能を、総合科学技術会議と車の両輪ではありませんが、いろいろなカウンシル機能、中長期的な政策の提言、あるいは緊急的な対応に対する提言、そのようなものが中心的な役割になってくるのではないかと、私どもは目指しているところでございます。

鳩山(由)委員 時間がなくなりました。最後にいたしますが、やはり政府の壁なんでしょうか、むしろ科学者としてより自由な発想を今後もお持ちいただきたいなと思っておりまして、確かに、今この法案を通すということになりますと、どうしても狭いところでの話になりがちであります。

 そのことは理解をする中で、しかし、このままではいかぬということは、十年後にもう一度見直そうではないかというぐらい、総合科学技術会議の中でもうたわれている話でありますから、そのときには、あるいはそこまで待つことも、猶予がないとも思います。

 そのぐらいの危機感の中で、学術会議のみの改革にとどまらずに、そして、政府というもののひもがついている機関という話ではなくて、将来的には独立をして、中立的な立場で政策提言ができるような、まあ国会の中に置けという議論もあるいはあろうかもしれませんが、そういったことも含めて、もっと大胆な発想をぜひ将来的に持っていただきますように強く期待を申し上げて、私からの質問を終わります。

 ありがとうございました。

池坊委員長 牧義夫君。

牧委員 民主党の牧義夫でございます。

 茂木大臣、そして黒川会長にはお初にお目にかかります。本日は、この文部科学委員会にようこそお出ましをいただきましたこと、改めて御礼を申し上げたいと思います。

 先ほど来、斉藤委員、そして鳩山由紀夫委員の方から質問がございました。科学者のお二人から高尚な、まさに学術のあり方の本質にかかわる質問がございましたけれども、大物に続いて小物が出てきたと思って、気楽に御答弁をいただきたいと思います。

 また、私は決してアカデミックな環境に育った者ではございませんから、余り高尚な議論にはならないかもしれませんけれども、この文部科学委員会、まさにこの国の学術振興のあり方を議論する場でございますから、そういう観点から、ただこの日本学術会議の機構の改革やらそういう小手先のことだけじゃなくて、なるべくこの国の学術振興のあり方の本質にかかわる議論にしていきたいと思っておりますので、よろしくお願いをいたしたいと思います。

 先ほど来の質問とややダブるところがあるかもしれませんけれども、今回の日本学術会議のあり方について、昭和二十四年法施行以来のこれまでの変遷があったわけであります。平成十三年の中央省庁の再編に先立って、行政改革会議において検討が行われてきたとも聞いておりますし、また、その後、総合科学技術会議において検討が重ねられて、今回の法改正に至る、その意見具申が総合科学技術会議から出されたわけであります。

 まず、一般市民の視線から、この日本学術会議というものがどんなものなのか理解する上で、ちょっと稚拙な質問ですけれども、お許しをいただきたいと思います。この日本学術会議というのは行政機関なんでしょうか。

吉田政府参考人 日本学術会議は行政機関でございまして、現在は総務省に置かれておる特別の機関ということでございます。

牧委員 だからこそ、行政改革会議においてそのあり方がまず議論がなされてきたんだと思います。

 そういう中で、今回の法改正が行われようとしているわけですけれども、先ほど来の大臣の御答弁の中にも改革という言葉がございました。今回の法改正をもって改革とする、その意義についてお聞かせをいただきたいと思います。

 これはやはり、今回同じ内閣府のもとに置かれるわけでありますから、大臣の今回の法改正の意義、そしてまた黒川会長の方にも同じ質問をさせていただきたいと思います。同じ内閣府のもとで同床異夢であってはいけませんので、そこら辺、お一人お一人お聞かせいただきたいと思います。

茂木国務大臣 牧委員に初めて答弁させていただきますが、アカデミックでないと御本人はおっしゃっていましたけれども、経歴を拝見しますと、愛読書が新約聖書だということでありまして、大変アカデミックな方だな、緊張感を持ちながら答弁させていただきたいと思うんです。

 今回の改革でありますけれども、総合科学技術会議の意見具申により求められておりますとおり、日本学術会議が我が国科学者コミュニティーの代表機関としての役割を真に果たすために行うものであります。

 具体的に、今後日本学術会議にさらに期待される役割として、既に申し上げている点もありますが、一つは、政府への政策提言を行う機能、これもやはり、的確な科学者としての中立的な提言を的確なタイミングでスピーディーに行ってもらう、こういうことがより求められているんだと思います。同時に、科学者間の連絡調整機能を図っていく。そして三番目に、社会とのコミュニケーション機能、これもどちらかというと不足した部分ではないかなと私は考えておりまして、そういったことを発揮することによりまして、科学的観点から時代を先導する役割を果たしていく、こういうことだと思っております。

 そして、これらの機能を十分発揮できる体制を整備しなければいけない、これが今回の改革でございまして、そのために、日本学術会議の会員の選考方法、組織、運営、所轄等について所要の改正を行わせていただいております。

黒川参考人 恐れ入ります。

 私ども、かなりグローバルなネットワークで動いております。例えばの話ですが、先日、アメリカと、安全と安心の日米二国間の科学技術についての政策、省庁間の対話がございました。そのとき、私もアカデミーの代表として、向こうからもナショナル・リサーチ・カウンシルの方がおられましたので、私も出席させていただきました。

 もちろんそれでは、バイオマーカーとかいろいろな、両方の科学技術政策をやっているよということをすり合わせしまして、今度新しい提言をやろうという話が出たんです。しかし、私どもは、向こうのナショナル・リサーチ・カウンシルとそれから学術会議と、共同でパラレルに、新しいスタディーというか、コミッティー、委員会を立ち上げようということになりまして、そのようなところで恐らく総合科学技術会議とは非常に補完的な役割ができるのではないか、こういう例を出しまして、これから科学者コミュニティー全体の意見がそのように集中して、中長期的な政策が出せれば具体的になってくるのではないだろうかと期待しているところでございます。

牧委員 おおよそ今回の改正点については、概要はもう伺っておりますけれども、今回の改正で、一言で一体何が変わるんだということを教えていただきたいと思います。

吉田政府参考人 一言でということでございますが、これは一言で申し上げますと、日本学術会議は科学者の代表機関でございますが、真に科学者の代表機関となるように今回の改革を行うということでございます。

牧委員 今の御答弁で、今までが真に科学者の学術会議じゃなかったということがよくわかりましたので、次の質問に移りたいと思います。

 省庁再編前には廃止論もあったというように聞いております。また、総合科学技術会議では国から独立させた法人化論もあったと聞いておりますけれども、結果として今回のような結論に至った理由をお聞かせいただきたいと思います。

吉田政府参考人 御指摘のような議論がございまして、日本学術会議の設置形態につきましては、行政改革会議の最終報告におきまして、「日本学術会議は、当面総務省に存置することとするが、今後その在り方について、総合科学技術会議で検討する。」とされました。平成九年のことでございます。

 これを踏まえまして、総合科学技術会議において検討がなされまして、昨年の二月に意見具申として「日本学術会議の在り方について」というものが出されました。その中では、先ほど来お話が出ておりますが、「最終的な理想像としては、国家的な設置根拠と財政基盤の保証を受けた独立の法人とすることが望ましい方向である」、ただ、我が国社会における学術界からの提言の受けとめ方や寄附に関する税制の状況などに十分留意して「なお慎重に検討する必要がある。」とされまして、当面は国の特別の機関の形態を維持するが、今回の改革後十年以内に、新たに検討体制を整備して改革の進捗状況の評価などを行い、より適切な設置形態のあり方について改めて検討を行う、そういうこととされたわけでございます。

 こういったことで、引き続き国の特別の機関として存置されることとなった、そういうことでございます。

牧委員 私が聞いたのは、時系列的なことを聞いたんじゃなくて、どうして国の機関でなければならないという結論に至ったのかという、その理由についてお伺いしたのであって、そこら辺、お聞かせ願えますか。

吉田政府参考人 議論の中では、国の機関の方がいいのか、あるいは独立した法人にすべきではないかと、両方の意見があったわけでございます。

 この議論の中で、繰り返しになりますけれども、国から独立した法人といたしますと、我が国社会における学術界からの提言の受けとめ方、こういったこととか、あるいは寄附に関する税制の状況などがございますので、若干の問題があろうかということで「なお慎重に検討する必要がある。」そういうことにされまして、当面は国の機関とするということにされたものでございます。

牧委員 これ以上これを追求してもしようがないので、当面はということで理解をさせていただきたいと思います。

 総合科学技術会議の意見具申の中で、先ほどの鳩山委員の質問にもございましたけれども、十年以内という話がありました。その文言をそのまま読み上げさせていただきますと、「設置形態については、欧米主要国のアカデミーの在り方は理想的方向と考えられ、日本学術会議についても、今後十年以内に改革の進捗状況を評価し、より適切な設置形態の在り方を検討していく。」このように意見具申がされておりますけれども、はっきりと総合科学技術会議としては「欧米主要国のアカデミーの在り方は理想的方向と考えられ、」このようにおっしゃっております。その理想的方向というのはどんな方向なんでしょうか、教えていただきたいと思います。

林政府参考人 お答えいたします。

 総合科学技術会議の意見具申におきましては、日本学術会議が中立性、独立性を確保しまして、政府に対して政策提言を行ったり、あるいは諸課題に対しまして柔軟に組織や財政上の運営を行っていくということのためには、国から独立した法人格を有する組織であるといったことが国の行政組織の一部であるよりもよりふさわしいと考えられる旨述べております。また、科学者コミュニティーの意見を集約しまして政府に対して提言を行うことを考えますと、全くの民間機関にするということも適切ではないというふうにしております。

 これらの点を考慮しまして、欧米のアカデミーの例に倣いまして、法律等による国家的な設置形態の根拠を持つ、かつ国により財政基盤を保証される、そういった格好での独立の法人とすることが望ましい方向であり、最終的な理想像と考えられるというふうに述べております。

牧委員 済みません。今のお話、もっと具体的に、欧米のどこのアカデミーというようなことがあるんでしょうか。

林政府参考人 十五年の二月、昨年の二月に出されました意見具申におきましては、欧米主要国と書いてございますけれども、これは、具体的に言いますと、法律とか詔勅と書いてございまして、特にヨーロッパの国、そういった国を頭に置いてこの意見具申が書かれたというふうに承知しております。

牧委員 わかりました。

 それで、結局、具体的なモデルというのがそのようにあるわけですね。具体的なモデルを目の前にして、なおかつそれが理想的方向と考えられるということをおっしゃっていながら、その理想のモデルが目の前にあって、そこに持っていくのに十年以内と。これは問題を先送りしているとしか思えないわけですけれども、いかがでしょうか。

林政府参考人 お答えいたします。

 この意見具申におきましては、先ほど申し上げましたように、理想像として独立の法人が望ましい方向であるということは述べておりますものの、さらに加えまして、次のような理由をもちまして、当面は国の特別の機関という形態を維持すべきであるというふうに述べております。

 その理由でございますけれども、まず、現在の我が国の社会や科学者コミュニティーの状況に照らしますと、直ちに独立した法人とすべきかどうか判断が難しい、判断をしがたいというのが第一点。それから、法人化するにしても、どのような設置形態にするか慎重な検討が必要である、これが第二点目。さらにつけ加えまして、我が国の社会におきます学術界からの提言の受けとめ方や寄附に関する税制といったものの状況を十分に留意すべきであるという点の理由を挙げております。

 このような点を踏まえまして、意見具申におきましては、今回の法案として提案しておりますような改革を早急に行いなさいということで、学術会議においてそれを積極的に推進することを求めております。

 その上で、これらの改革に関しまして進捗状況を評価するとともに、社会や科学者コミュニティーの状況の変化を見きわめつつ、今回の改革後十年以内により適切な設置形態等について検討を行うこととすべきであるというふうに述べておるわけでございます。

牧委員 この問題はまた、多分後々の質問者からも出るかもしれませんので、これ以上深入りしないようにして、次へ参りたいと思います。

 総合科学技術会議の先ほどの意見具申、あり方が出る前に、日本学術会議としてもみずからの改革案を公表されていると聞いております。この中で、例えば地球環境問題を初めとする新しい科学の提唱などを挙げられておりますけれども、黒川会長、この新しい科学の提唱、新しい科学者としての使命というものについてどうお考えなのか、お聞かせいただきたいと思います。

黒川参考人 先ほど実際の活動をお示ししましたけれども、現在、ヨハネスブルクを迎えて、世界じゅうが、人口の問題、環境の問題、南北格差の問題、それから特に日本は、これから成長してくる世界の五五%の人口を含むアジアについて科学者コミュニティーとしてどのような提言ができるかということのネットワークづくりをしているところでございます。

 そういうことからいうと、環境問題もそうですけれども、どのような科学的な事実に基づく政策提言ができるか。それを決めるのは政治でございますけれども、そのような中立的な立場の助言を、国だけではなく、国際的あるいはアジアからのネットワークをつくって出していきたいということで、かなりデシジョンも早くなっておりますし、それから各国間の協調体制も現在構築しつつあって、その中で日本学術会議が非常に高い評価を受けているというのが現在のあり方だと思っております。

牧委員 ちょっともう一回、初歩的な質問でありますけれども、その中立的な立場での助言というのはどこに対する助言なんでしょうか。

黒川参考人 これはアメリカやイギリスのやり方を見ているとよくわかるのでありますけれども、中立的な助言、いろいろな政策の提言、科学的な事実に基づく提言は常に公表されておりまして、それを議会あるいは政府についても提言をしております。政策の決定は政治のことですので私どもはやりませんけれども、そういうような事実に基づいてどういうデシジョンをしたかというプロセスが見えるようになっている。それが五年、十年後にどのように評価されてくるかというプロセスが極めて明快になっているので、ぜひそのような機能をこれからも発揮していきたいということでございます。

牧委員 そうすると、学者の皆さんのいろいろな研究の成果やらいろいろなことがボトムアップ型で上がってきて、そこで意見をまとめて国の政策なりあるいは国家戦略にそれが適切に反映される、それが望ましい形だと思うんです。

 たまさか環境問題のお話が出ましたので、ちょっとお伺いしたいんですけれども、ヨハネスブルクのお話も出ました。例えば京都議定書を、日本がその数値目標をしっかり実現するための地球温暖化対策推進大綱、政府のつくった大綱がございます。

 この大綱が取りまとめられる経過をざっと見ると、結局、計六回、関係審議会の合同会議というのが開かれております。中央環境審議会から始まって、総合資源エネルギー調査会だとか、産業構造審議会、そういったところが一緒になってこの問題に取り組んで、そして国や地方自治体の取り組み方、あるいは産業界の取り組み方、またそれぞれの民生部門での取り組み方というものが一つの国の戦略としてまとめられているわけですけれども、例えばこの大綱をつくるに当たって日本学術会議が果たした役割、あるいは審議会の合同会議への、もっとそれに先立って何らかの意見具申やら提言がなされてきたのかこないのか、そこら辺のところをちょっと教えていただきたいと思います。

黒川参考人 現在、そのことについてちょっと具体的なことは私存じませんが、先ほどの大型計算機とか、いろいろな今問題になってくるようなものをかなり先取りして提言していたことは確かでございます。

 しかし、今先生がおっしゃったようなことについては、実はアメリカの京都議定書のプロセスもそうでありますけれども、例えばブッシュ大統領がそのような政策をするときに、科学者コミュニティーの意見としてはどうなのかということを具申しております。まだそれについての研究をする余地がいろいろあるんだという提言が出ております。

 そういうことを、理由と言ってはおかしいんですけれども、そのようなサジェスチョンがありますよということを、省庁ではなくて、やはり特別な機関としてのアカデミーを代表する機関に諮問してその答申を受けているというプロセスがずっと構築されているというところの機能をこれからも果たす必要があるのではないかというように、今会員の意識もかなり変わっているということは確かでありますし、そういう役割を、国際的なあるいはアジアでのネットワークの中で今構築しているところだということでありまして、これをぜひさらに強化していきたいと思っております。

牧委員 会長の御答弁としては今のお話が精いっぱいだと思うんですけれども。

 事務方で結構なんですけれども、今のお話、さっき茂木大臣のお話の中にもやはりPR不足というようなお話がありました。もし私の誤解だといけないので、ぜひこの一点に絞ってちょっとお答えいただきたいと思います。

 国の温暖化対策大綱策定に当たって日本学術会議が果たした具体的な役割、何らかの意見具申なり提言があったら教えてください。

黒川参考人 ごく最近のでは、去年の夏だと思いますが、南極探検について持続する話についても報告書を出しております。

 南極探検は、先ほど言いましたように、昭和三十年から始まって、世界でオゾンホールを見つけたのが昭和基地だということは大変よく知られておるわけでありますけれども、例えば南極の観測は続けようという提言を出しております。それはなぜかというと、温暖化のCO2をはかるのにはあのように全く緑がない場所ではかることが非常に大事だというような事由で出しておりまして、これは全く科学的な根拠による提言を出しているというのが、例えば一つのエグザンプルかと思われます。

牧委員 ぜひそういうことを、PR不足と言われないようにどんどん意見具申していただいて、それをやはり国民の目にわかるように発信をしていただければありがたいなと思います。

 余り時間がございませんのではしょってまいりますけれども、さっき鳩山委員の質問にもありました、日本の科学者コミュニティーとして、学術会議初め学士院だとか、あるいは役割は違うのかもしれませんけれども日本学術振興会などがございます。これらを私の頭の中でもまだきちっと整理ができておりませんけれども、ちょっと学士院の部分だけ。

 やはり私もちょっと違う観点から頭の中にひっかかるものがあったものですから、改めてちょっと頭の中の整理の意味で、日本学士院、これは昭和三十一年に日本学術会議から分離をした形になっております。当時、鳩山一郎内閣のもとでそういう形ができたわけですけれども、この学士院の目的やら役割やら、どのように頭の中を整理したらよいのか、お聞かせいただきたいと思います。

石川政府参考人 日本学士院についてのお尋ねでございます。

 日本学士院は、学術上功績顕著な科学者を優遇するための機関として位置づけられておりまして、学術の発達に寄与するために必要な事業を行うことを目的としております。

 主な事業といたしましては、学術上特にすぐれた論文、著書等の研究業績に対します日本学士院賞などの授賞、あるいは学士院会員が提出、紹介をいたしました学術論文などを発表するための紀要の編集あるいは発行ですとか、それから外国アカデミーとの交流事業、こういったようなことをやっております。

 会員は、非常勤でございますが、特別職の国家公務員と位置づけられておりまして、現在、百五十人の定員という組織でございます。役員といたしましては、院長、幹事、それから部長二人がございます。年間の予算額は約六億円強ということで運営をされておるところでございます。

牧委員 そうすると、先ほどからのお話でいうと、日本学術会議というのが日本の科学者コミュニティーの代表機関ということですけれども、日本学士院というものはあくまでも代表機関じゃないと。ただ功績のあった方たちの栄誉をたたえる、いわば、プロ野球でいうと野球の殿堂というのがありますけれども、学者の殿堂みたいな、そんな位置づけで考えればよろしいんでしょうか。

石川政府参考人 現実問題として、功績のあった学者の栄誉をたたえる機関という性格を持っております。ただし、外国のアカデミーも大半は同じような性格を持った機関として位置づけられておりまして、この日本学士院も、そういった意味では、いわゆるアカデミー、外国のアカデミーに相対する機能、位置づけを持っているものというふうに理解しております。

牧委員 今の質問は、この日本学術会議の今度の法改正に、たまたまというか、国会法でこの文部科学委員会が議論の場だということですのでここで議論がある、そのついでにと言ってはなんですけれども、質問をさせていただきました。これにはまだまだいろいろな問題があろうかと思いますので、今後、この委員会において、あるいは一般質疑の中でまた議論を深めていきたいと思うんです。

 この学士院の会員、定員が百五十人ということですけれども、今、定数は満杯じゃなくて、百三十九人だと聞いております。この人たちは、結局、終身会員ということで、この法律の定めるところによって年金を受け取っている。年金の金額は月にならすと約二十万ちょっとだと思います。今、我々議員の年金のこともいろいろ取りざたをされておりますけれども、普通、年金というのは、拠出とそれから給付の関係があるものだと思います。我々も、議員年金というのは、毎月歳費から天引きをされて、それが後々戻ってくるというような解釈ですけれども、この学士院の会員の皆さんの年金というのは、そういった負担と給付の関係で成り立っているものではないと私なりに理解をしておりますけれども、そうですよね。

石川政府参考人 学士院会員の年金に関するお尋ねでございます。

 ただいま先生の方からお話がございましたように、学士院の会員の年金につきましては、会員に年額で二百五十万円という年金が支給されておりますが、これにつきましては、基本的に、会員の功績を顕彰するとともに、我が国の学術の進展に対する貢献に報いるという性格をまず持つものでございます。

 それと同時に、会員は、学術の発展に寄与するために必要な事業を行うというような職務を持った非常勤の国家公務員という身分を有しておるわけでございまして、この点から、この年金は、公務員としての給与というような一面をあわせて持っているというようなことが言えるというふうに考えられております。

 このことから、日本学士院の会員年金というのは、ただいまお話にありましたように、いわゆる拠出制の給付を前提とするような共済年金などとは基本的に性格を異にするものでございまして、これらと連動させたり、調整を行ったりというようなことではございません。

牧委員 わかりました。

 何が言いたかったかというと、これはまた、こういう場が適切なのかどうかわかりませんけれども、たまたまこの話で私もいろいろ調べていたらこの問題にぶつかったわけで、これはひょっとすると大きな問題じゃないかなと。

 日本国憲法第十四条第三項、「栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。」こうなっているわけで、これがその栄典に対する特権だと、どう考えても私にはそういうふうにしか読み取れないわけで、こんなことをつついてもしようがない、憲法問題ですから、これはまた大きな議論にあるいはなるかもしれませんけれども、本当に、この日本の学術の世界のあり方あるいは学術振興のあり方を今後深めていく上で、やはり、先ほど鳩山委員のお話の最後にもありましたように、全体でもう一回とらえ直す必要もあるのかなと。その中に昔からの遺物というか、そういったものとしてしか私の目には映らないものが飛び込んできたものですから、あえてその辺のところをちょっと摘出してお話をさせていただいた次第です。

 取りとめのない質問になりましたけれども、時間が来ましたのでこれで終わらせていただきます。ありがとうございました。

池坊委員長 松本大輔君。

松本(大)委員 民主党の松本大輔です。

 先ほど牧先生の方から、斉藤先生それから鳩山先生の両先生に比べると自分は小物ですというような大変謙虚な御発言があったんですが、では一回生議員の私はどうすればいいんだと、非常に悩ましいわけでございます。この点は平に御容赦いただきまして、元気に質問を続けさせていただきたい、かように思います。

 さて、最近は、「十三歳のハローワーク」という本がどうもはやっているようでございます。私が小学校のころは「はたらくおじさん」というNHK教育の人形劇があったわけですけれども、たしかタンちゃんとペロくんという二人の人形が気球に乗っていろいろな仕事場を訪問しまして、気球の上から働く大人の姿を見詰める、こういう内容だったように記憶しております。私も、社会科の授業のときにそれを拝見しておりました。

 今、私の事務所には、春休み中の大学生が研修生として来てくれています。さすがに気球の上からというわけにはいかないんですけれども、あのカメラと申しますか、インターネット中継を通じて働く我々大人の姿を眺めているのではないか、このように思います。

 きょうは、せっかく、茂木大臣それから黒川会長、ダンディーなお二方にお越しいただいていることですので、働く男の気概といいますか、やる気といいますか、それを存分に発揮していただきまして、若者の将来にぜひ夢を与えていただきたい。働くというのはすばらしいな、大人になってもいいことがあるんだな、早く大人になりたいな、そのように思っていただけるような働く男の色気みたいなものも出していただければ、かように思う次第でございます。

 本日は、黒川会長にお越しいただいたということで、私も「日本学術会議をめぐる課題と展望」という黒川会長の論文を熟読してまいりました。適宜引用させていただきながら、質疑を進めさせていただきたいと思います。

 きょうは、日本学術会議法の一部を改正する法律案ということなんですが、まずは会長にお伺いしたいと思います。

 日本学術会議は、かつて学者の国会と言われていたようですが、くどいようですが、まずはこのことの意味について教えていただけますでしょうか。

黒川参考人 そのころは私は会員ではありませんでしたので、よく存じておりませんが、そういうことと呼ばれていたというのは承知しています。そのゆえんはよくわかりませんが、いろいろ調べてみたりあるいは推察してみると、そのころは、会員が、みずから学者が立候補し、その登録した選挙人が自分たちで投票していたということがあったからであろうかと思われます。

 それが、そのときの学のあり方、あるいは国のあり方、いろいろなことから、昭和五十八年の法改正になり、選挙により直接会員を選ぶということではなくて、むしろ所属する学協会からという、そのメカニズムというかプロセスにしたということでありまして、恐らく、私個人といたしましては、現在、学術会議を学者の国会と呼ぶことについては適切であるとは思っておりません。

松本(大)委員 私はちょっと違った理解の仕方をしておりました。

 かつて日本学術会議は、日本の原子力平和利用の三原則、民主的な運営、日本の自主性を失わない、すべての事項を公開する、このような原子力平和利用の三原則を打ち立てた。国立公文書館の設立は、戦後の公文書の散逸防止と公開に役立ったわけでございます。それから、会長御自身先ほど述べていらっしゃいましたとおり、学術会議の提言が南極地域観測への国際参加となって、昭和基地によるオゾンホールの発見という国際貢献に寄与した。行政に対するチェックといいますか、行政が抜け落ちている視点というものを独自に提言を行っていく、このような機能を持っているからこそ、学者の国会、そのように呼ばれていたのではないか、私はそのように理解をいたしております。

 ところが、今日において、私自身の反省も含めて申し上げるんですけれども、学者の国会と聞きましても、ぴんとくる方は少ないのではないか、率直に申し上げてそのように思います。

 そこで、今度は学術会議の事務局長にお伺いいたしたいと思います。先ほど鳩山先生から言及もありましたが、関連ということでお許しいただきたいと思います。

 最近十年間で日本学術会議が出された勧告と答申の数について教えていただけますでしょうか。

吉田政府参考人 日本学術会議で過去十年間に行った勧告と答申ということでございますが、勧告は五件、答申は十一件でございます。

 また、あわせて、このほか対外報告というものもやっておりますが、こういったものにつきましては約二百件行っておりまして、ホームページ等に掲載をしたり関係者に配付をしたりということをいたしております。

松本(大)委員 先ほどのお答え、勧告は五件、答申は十一件ということなんですけれども、それでは設立当初がどうであったかということなんですが、こちらの「日本学術会議の勧告、要望、声明等件数一覧」というものを見ますと、設立から十一年間で五十件の勧告、それから五十九件の答申を出していらっしゃいます。

 しかも、今の御答弁では、最近十年間の答申が十一ということでしたけれども、このうちの大半、恐らく九個は、毎年出しているルーチンワーク、平成何年度民間学術研究振興費補助金の交付についてというルーチンワークでありまして、実質的な答申というものは一つしかございません。客観的な数字で見れば、大分活動が低調と言ってもよろしいのではないか、私はそのように考えるわけであります。

 このような学術会議になってしまったことについて、私は国にも責任があると考えておりまして、一九五九年に科学技術会議が設置されて以降、政府の言うことを聞かない当時の学術会議よりも、政府の方針に沿った科学技術会議をつくり、そこに諮問するという手法がとられた。先ほど来答弁にもありましたけれども、一九八三年には大きな変革というものも行われております。弊害を取り除いたというような表現が行われておりましたけれども、会員選出方法を公選制から学会や協会による推薦制に改めたと。当時は恐らく学術会議の反対を押し切る形でこういった変更が行われたのではないかと思います。

 しかし、その反面、先ほどの数字でも見ましたとおり、活動はどちらかといえば低調となり、今日に至ってしまった。先ほど学者の国会という表現を使いましたけれども、その学者の国会であったはずの学術会議が行政改革の波にのまれた。そして、最終報告において、当面総務省に存置する、そして何年間かかけて総合科学技術会議でそのあり方を検討する、こういう事態に陥ってしまった、私はそんなふうに理解しております。

 例えば、薬害エイズの問題それからBSEの問題等を例に挙げるまでもなく、科学的見地から行う政府への批判的な検証というものの重要性は、これは疑うべきもないことであります。そのために、先ほど各委員が御指摘なさっているとおり、中立性とか独立性というものが求められてくるのではなかろうか、私はそのように思います。国の立場から、あるいは国民の視点から見た際に、学者に何を期待するのかといえば、専門的知識を生かした行政への提言及びチェック機能ではないか、私はそのように思います。

 今回の、学術会議の役割について、大臣からは、提言機能のほかに、科学者の連携、それから社会一般へのコミュニケーション、情報発信という三つの役割があるという御答弁をいただいております。確かに、科学者コミュニティー論というものもあるかもしれませんけれども、コミュニティー、それから社会へのコミュニケーションというのは、科学者に限らず、いわばどのような業界団体でもやっていることでありまして、これは国の機関であるかどうかには関係なく、どちらかといえば、どうぞ御自由にやっていただければと、私はそのように思うわけでございます。

 さらに申し上げれば、必ずしも国民の税金を投入してやることなのかどうか、コミュニティーの必要性については理解できるとしましても、だからといってそれが直ちに国費投入というものにつながるのかどうか、議論が分かれるところではないか、私はそのように思います。例えば経団連傘下の産業団体が税金で運営されることについて、国民の理解が得られるでしょうか。私はそうは考えないわけであります。科学者だけを特別扱いするのであれば、それだけの国費投入についての納得感というものが伴わなければならないのではないか、私はそのように考えます。

 行政への提言機能というものがもしその理由であるのならば、先ほど来各委員も御指摘されておりますが、既に総合科学技術会議という組織があって、そこには有識者議員という方もいらっしゃるわけです。先ほどの答弁によれば、総合科学技術会議と学術会議、車の両輪です、片方がトップダウンで片方がボトムアップですということでございました。

 副大臣にお伺いしたいと思います。総合科学技術会議の民間議員、こちら何人で、そのうち学術会議の出身者はどなたかいらっしゃるんでしょうか。

中島副大臣 委員の質問にお答えを申し上げますと、まずその前に、総合科学技術会議においての「日本学術会議の在り方について」の意見具申を平成十五年の二月に行っております。

 意見具申では、まず、科学者コミュニティーの果たすべき役割として、科学者の英知を結集し、科学技術の進展を方向づけ、人類社会の課題への対処について助言することを挙げている。

 次に、日本学術会議に求められる機能として、次の三点を指摘しております。長期的、分野横断的、国際的な観点からの政府に対する政策提言機能、我が国の科学者の意見の集約と各国科学者との連携、交流を行う機能、科学技術活動に関する情報発信と社会の意見を吸収、反映する機能、さらに当面の改革案及び設置形態のあり方について意見を述べて……(松本(大)委員「済みません、人数をお伺いしているんです」と呼ぶ)人数ですか。その前提……(松本(大)委員「学術会議出身者がどなたかということを御質問させていただいたんですが」と呼ぶ)

池坊委員長 中島内閣府副大臣、挙手をして御答弁いただきたいと存じます。

中島副大臣 はい。

 大臣以外の議員は八人おります。そのうち一人は、関係する国の行政機関の長のうちから内閣総理大臣が指定する者であり、現在、日本学術会議会長が指定されております。それ以外の議員七人のうち日本学術会議の会員でもあるのは、阿部博之議員一人となっております。

松本(大)委員 民間出身者というのは八名ということなんですけれども、学術会議出身者ということについては私は違った理解をいたしております。

 阿部博之議員だけということなんですけれども、正確には、もちろん黒川会長もその議員のお一人でいらっしゃいますし、松本和子教授、こちらは第十七期、十八期の化学研究連絡委員会の委員でもいらっしゃいました。黒田玲子東京大教授、第十七期、十八期、前期と前々期の化学研究連絡委員会の委員でもいらっしゃいました。

 総合科学技術会議のメンバーは、総理を議長として十五人いらっしゃって、そのうち七名が、茂木大臣を初めとした、いわゆる閣僚、政治家の皆さんです。先ほどの御答弁のとおり、残り八人が民間出身であるわけですけれども、そのうち半分の四人が日本学術会議の関係者でいらっしゃるわけです。

 既に十分過ぎるほど、ボトムアップという意味では意見を吸い上げていらっしゃるんじゃないか。総合科学技術会議の中に日本学術会議のメンバーが既に関係者として四人も入っていらっしゃるわけですね。既に十分、総理に直接物申せる立場にある方がいっぱいいらっしゃる。それでも、総合科学技術会議がトップダウンで政策形成をするということであれば、学術会議関係者であるその四名の方は一体何のために参加していらっしゃるのかという素朴な疑問がわき上がってくるわけです。

 学術会議の傘下には七十三万人の学者さんがいらっしゃいます。当然、中央省庁の御用達である審議会のメンバーとしても数多く参加していらっしゃるのではないか、そのように思います。審議会を通じて既に現場レベルの意見が各省庁にボトムアップで集約されている。既にもう十分じゃないかなというのが私の率直な感想であります。

 先ほど会長からお話もありましたけれども、連携会員の件なんですけれども、この点に留意しなければ単なる焼け太りというような批判を受けてしまう可能性もあるのではないか、私はそのように思います。

 先ほども触れましたけれども、総合科学技術会議は、日本学術会議のあり方を検討するという立場だったにもかかわらず、そのメンバーの中に多数の学術会議の出身者の方がいらっしゃっている。行革の対象になっているその行政機関のメンバーがみずから参加して、みずからの行政機関の改革の方法を考えていく。

 これは、例えば公団の改革なんかを例にとりますと、公団改革を行う、その公団のメンバーがみずからも属する公団の改革を行っている。まさに、これではお手盛りという批判を免れ得ないのではないか、私はそのように思います。

 委員会のメンバーが十五人、そのうちの四人が日本学術会議の出身者でいらっしゃる。そんな改革のチームはあり得ないのではないか、私はそのように思うわけです。これでは、権益を守るためのメンバーと思われても仕方ないのではないかなという気がいたします。

 副大臣にお尋ねいたします。このような状態で、真剣な見直しというのが総合科学技術会議において可能になるとお考えでしょうか。

茂木国務大臣 二点ぐらいについてちょっとお答えしたいなと思っているんです。

 まず、総合科学技術会議と日本学術会議の関係でありますけれども、確かに総合科学技術会議の方にも学術会議の関係者の有識者の方がいらっしゃいます。ただ、国としての大きな科学技術の方向を決めていく、そういうときに、総理をトップとした政治判断も必要でありますが、見識を持った科学技術に対して知識のある方、これを排除するというのは、私は決していい方向は出てこない。そういった意味におきまして、政策決定をする機能であります総合科学技術会議の方にも有識者の議員の方にお入りをいただいている。しかし、それはその方の見識としてのお話をしていただくという形であります。

 もう一つの、ボトムアップで科学者コミュニティーの考えをまとめる、そういう機能につきましては、日本学術会議の方にゆだねているという形であります。ただ、日本学術会議の方は、政策提言をする機能、こういう形でありますので、必ずしもみずから政策を決める、こういう立場にはないわけであります。

 それから、今後は、改革に伴いまして、この政策提言についても、例えば年一回とかそういうことではなくて、やはり適時適切に、ただ数が多ければいいということではないと思うんですけれども、いろんな提言をしていただく、こういうことを期待したいな、こんなふうに思っております。

 それから、今回の改革につきまして総合科学技術会議におきまして提言をまとめたということでありますけれども、これは、もし日本学術会議そのものがすべて自分たちの改革をする、こういうことでしたら、お手盛り、そういう御批判をいただいたわけでありますが、そういう御意見も出るかもしれませんけれども、必ずしも全体を代表するということではなくて、総合科学技術会議のメンバーの中に、やはり学術会議の現状についてもよく知っていらっしゃる何人かの方が入る、こういうことは私は、決して不自然な姿ではない、こんなふうに思っておりますし、実際にそういう中から、会員の選び方につきましても、現状選ばれている会員の形とは違う、こういう新しい改革の方向も示せたのではないかなと考えております。

松本(大)委員 私の理解力不足なのかもしれませんけれども、どう聞いても、言葉は悪いですけれども、へ理屈にしか聞こえないわけであります。

 先ほど鳩山先生からも御指摘ございましたけれども、総合科学技術会議の意見具申がどうだったかといいますと、設置形態については、当面、国の特別の機関を維持しつつ、十年以内により適切な設置形態のあり方を検討すると。要するに、そのようなメンバー構成だったからこそ抜本改革が先送りされてしまったのではないか、私はそのように考えるわけであります。

 しかも、総合科学技術会議との関係についても、総合科学技術会議と重複して、利害関係が生じる研究予算配分については、学術会議の提言事項に含めないという一文があります。

 十年先に結論を先送りするだけではなくて、お金の話にまで手をつけさせようとしないで、こんな中途半端な改革があるのか、どう考えてもやはり真剣な見直しにはなっていないんじゃないか、抱き込まれているからこそこんなことになっているんじゃないか、私はそのように思うわけであります。

 今度は総務省にお尋ねをしたいと思いますけれども、行革会議はこのような結論を得るために総合科学技術会議に検討をゆだねたんでしょうか。今回の改革案は行革会議の最終報告の趣旨に沿ったものかどうか、お考えをお聞かせください。

田中政府参考人 私ども、行政機関の組織管理を担当させていただいております立場から、お答え申し上げます。

 今御指摘のように、行政改革会議の平成九年十二月の最終報告におきまして、先ほどから御議論になっています日本学術会議は、「当面総務省に存置することとするが、今後その在り方について、総合科学技術会議で検討する。」こととされております。

 それで、いわば第三者機関の報告でございますから、私どもここに書かれております字で判断するしかないわけでございますけれども、この最終報告におきましては、一つには、当面の所管を決めたことと、それから、以後の検討段取りを決めたということだろうと思っております。

 今回の改正案、内閣府の重要政策会議でありますところのまさに総合科学技術会議で検討がなされ意見具申されたことを踏まえて、科学技術の振興に関する企画立案及び総合調整を所管する内閣府に移管をするということでございましたので、私どもといたしましては、行政改革会議の最終報告の趣旨に沿っているというふうに考えております。

松本(大)委員 正直申し上げて、何をおっしゃっているのかわかりません。

 当面の所管を決めたということで趣旨に沿っているというふうに聞こえたんですけれども、もしそうであれば、私は宿題を出した行革会議自身が及第点かどうかということを聞きたいわけなんですけれども、行革会議はもう解散しちゃったし、フォローする者は政府内にいないし、とりあえず所管事項を決めたので、それでいいじゃないか、そのような趣旨に聞こえてしまうわけです。

 私は、官僚機構の最大の欠点というものは、プラン・ドゥー・シーの最後のシー、あるいはチェックと言ってもいいかもしれませんけれども、この過程がどうしようもなく欠落していることではないかと思います。今回の行革会議の最終報告の趣旨に沿った改革であるかどうかということも判断を避けていらっしゃる。フォローする責任があるのかどうかという点もはっきりおっしゃっていない。私は非常に残念でなりません。

 最近、勤務実態という言葉が世の中を騒がせているわけなんですけれども、例えば野党議員の私の場合は、チェック機能を働かせる、建設的な議論を行っていくというのが野党の私に期待されている勤務実態じゃないかなというふうに思っています。与野党間の緊張関係、白熱した議論、これが本来の国会の姿ではないかと思います。

 しかし、日本学術会議が政府・与党にすっかりとのみ込まれてしまっているとしたら、冒頭にも申し上げましたけれども、学者の国会としての役割を果たせるのか、私は大いに疑問なわけであります。学者の国会としての勤務実態がない、予算に見合う働きをしていないという批判を免れ得ないのではないか、私はそのように思います。

 鳩山先生から脳科学についての言及もありましたが、どうも時宜にかなった提言なのかどうか、後追いになってはいないかどうか。学術会議の第十九期活動計画、こちらにも載っておりますけれども、創造性とか、時代に先駆けたとか、ユニークボイス・オブ・サイエンティストとか、学術によって駆動されるというすばらしい言葉が並んでいるんですけれども、そのようなパイオニア的精神というものを一体どこに見つけ出すことができるのかと、私は少し疑問に思うわけであります。

 会長が、冒頭にも申し上げましたこちらの論文でも触れていらっしゃいますとおり、政策決定というものは政権によって変わり得ます、それは基幹政策の一つである科学技術政策にしても同じかもしれないと。だからこそ、政治とも利潤とも本来的に独立した科学者コミュニティーからの監視と提言というものを時の政府、行政に対して行っていく必要があるのではないか、私はそのように思います。

 会長は政治や私的企業という言葉をお使いになっていらっしゃいましたけれども、しかしながら、それは必ずしも車の両輪になることを意味しないのではないか、私はそのように思います。車の両輪のように完全に行政の一部として取り込まれてしまって、会長がおっしゃるような、利潤とも政治とも本来的に独立した立場からの、独立した視点からの監視が本当に機能し得るのかどうか、他の委員も再三御指摘されているとおり、私は非常に疑問に思うわけであります。

 会長さんがおっしゃるように、社会変革、国の進歩、正しい改革への方向、この流れに抵抗するのはどこの国でも行政組織でありますと、まさにこの論文の中にも会長が触れられているとおりです、正しい改革への方向、この流れに抵抗するのはどこの国でも行政組織でありますと。

 学術会議の事務局長さんにお伺いしたいんですけれども、今回の改正案で、学術会議はその流れに抵抗する行政組織に対して学者の国会として復権できるのかどうか、お答えをお願いします。

吉田政府参考人 今回の改革は、日本学術会議が我が国の科学者コミュニティーの代表機関としての役割を果たすために行うものでございます。

 社会、人間に対する科学の影響が近年日増しに強まっておりますが、そういった中で、科学者コミュニティーの代表機関としての役割というのは非常に重要となってきております。そういった中で、我が国や人類社会全体の課題に先見性を持って対処するための方策を提示するなど、科学者の知見を集約して政策提言を行っていく、そういった役割が今回の改革で求められている、そういうふうに考えております。

松本(大)委員 行政組織とは独立した立場だからこそ、先ほどおっしゃるような機能を存分に発揮することが可能なのではないか、私はそのように思います。そして、そのことは、先ほども触れましたけれども、会長御自身が正しい流れに抵抗するのは行政組織であるとおっしゃっているとおりであります。正直申し上げて、少しがっかりをしたわけですけれども。

 学術会議、先ほど来、海外のアカデミーとの比較というものが行われております。アカデミーというのは、恐らく紀元前、ギリシャのプラトンがアテネ近郊に開設をしたアカデメイアという学園に由来するのではないかと思います。プラトンは、人間は洞窟の中の囚人であるというふうに述べておりました。国立国会図書館、たまに私も使うわけですけれども、そこのカウンターに刻んであるとおり、真理は我らを自由にするということであります。しかしながら、今回の改革案は真理の追求よりもあえて不自由を選んだ、私はそのように思えてならないわけであります。

 行政や産業界にもおもねることなく、政官業の癒着とは全く無縁の立場で、ただひたすらに真理を求めていく、そのような気骨ある学者の姿勢がやはり我々をしびれさせるのではないか、そのように思います。学術の復権というものは、そういった気骨ある学者、この自主独立の気概にかかっているのではないか、私はそのように思うわけであります。

 会長がおっしゃったカウンシル機能というものについても、やはりこの自主独立の気概が大変重要になってくる、私はそのように思います。行政機関のもとで庇護され続けることを選ぶと、いい子ちゃんになってしまって、それは危険な大人の香りがしないわけであります。どちらかといえば退屈なわけであります。

 会長は、科学者の担う教育という役割とか、社会的責任とか、国内外の広い社会での貢献というものにこの論文の中で触れていらっしゃいます。ぜひ、学ぶことや働くことの意味を見出しかねている若者たちのためにも、何のために学んでいるのか、真理を探求することというのは一体どういうことなのか、学ぶことと社会に働きかけること、あるいは働くことと社会に対してかかわりを持つこと、その意味をポジティブにとらえられるような御答弁をぜひお願いしたいと思います。事務局長さんのような御答弁ではなくて、ぜひ会長の御意見を最後にお伺いしたいと思います。十年と言わずに、今すぐ抜本改革に会長みずから着手していただきたいと考えますが、最後にお考えをお聞かせいただけますでしょうか。

池坊委員長 発言者の持ち時間は既に終了いたしておりますので、恐れ入ります、答弁者は簡潔にお答えいただきたいと思います。

 黒川参考人。

黒川参考人 おっしゃるとおりだと思います。

 私どもは、この学術会議についての総合科学技術会議のあり方委員会の答申につきましては、三度ヒアリングに呼ばれておりまして、各世界でのあり方その他を調査して、いろいろ意見を申しました。現在のところでは、この改革案は、全体を総合すれば、先生のおっしゃることはもっともでありますけれども、日本全体のことを考えると大変適切な判断だったのではないかと私は個人的にも思っております。

 国の将来を考えると、おっしゃるとおり、若者にどういうメッセージを伝えるかというのは、今回、学術会議のOBを含めて、地域その他の小学校、中学校、あるいはコミュニティーの教育あるいは参加を宣言しようということを、今度、五月にやりますので、そのようなグラスルーツのアクティビティーもぜひやっていきたいと思っております。

 そういう意味では、これは必ずしも相反するものでなくて、現在のところでは適切な判断だったと私は思っております。

松本(大)委員 ありがとうございました。

池坊委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時九分散会


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